衆議院

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第16号 平成25年5月31日(金曜日)

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平成二十五年五月三十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松本  純君

   理事 上川 陽子君 理事 高鳥 修一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 冨岡  勉君

   理事 西川 京子君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    秋本 真利君

      今枝宗一郎君    大久保三代君

      大串 正樹君    勝沼 栄明君

      金子 恵美君    菅家 一郎君

      小松  裕君    古賀  篤君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    武井 俊輔君

      とかしきなおみ君    豊田真由子君

      中川 俊直君    永山 文雄君

      丹羽 雄哉君    船橋 利実君

      星野 剛士君    堀内 詔子君

      三ッ林裕巳君    村井 英樹君

      山下 貴司君    山田 美樹君

      大西 健介君    中根 康浩君

      古本伸一郎君    柚木 道義君

      横路 孝弘君    足立 康史君

      伊東 信久君    浦野 靖人君

      新原 秀人君    高橋 みほ君

      宮沢 隆仁君    岡本 三成君

      輿水 恵一君    濱村  進君

      柏倉 祐司君    中島 克仁君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   議員           中根 康浩君

   議員           山井 和則君

   議員           柚木 道義君

   議員           中島 克仁君

   議員           柏倉 祐司君

   議員           小宮山泰子君

   議員           薗浦健太郎君

   議員           古屋 範子君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   内閣府副大臣       伊達 忠一君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   文部科学大臣政務官    義家 弘介君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           村木 厚子君

   参考人

   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      岩村 正彦君

   参考人

   (NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長)           稲葉  剛君

   参考人

   (東京大学社会科学研究所教授)          玄田 有史君

   参考人

   (埼玉県福祉部副部長)  樋口 勝啓君

   参考人

   (遺児と母親の全国大会実行委員長)        緑川 冬樹君

   参考人

   (NPO法人朝日訴訟の会理事)          朝日 健二君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  古賀  篤君     武井 俊輔君

  豊田真由子君     勝沼 栄明君

  中川 俊直君     秋本 真利君

  三ッ林裕巳君     星野 剛士君

  大西 健介君     古本伸一郎君

  伊東 信久君     高橋 みほ君

  伊佐 進一君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     中川 俊直君

  勝沼 栄明君     豊田真由子君

  武井 俊輔君     山田 美樹君

  星野 剛士君     菅家 一郎君

  古本伸一郎君     大西 健介君

  高橋 みほ君     浦野 靖人君

  濱村  進君     岡本 三成君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     三ッ林裕巳君

  山田 美樹君     古賀  篤君

  浦野 靖人君     伊東 信久君

  岡本 三成君     伊佐 進一君

    ―――――――――――――

五月三十一日

 子どもの貧困対策法案(中根康浩君外八名提出、衆法第一九号)

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案(薗浦健太郎君外一名提出、衆法第二〇号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 生活保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)

 生活困窮者自立支援法案(内閣提出第七一号)

 子どもの貧困対策法案(中根康浩君外八名提出、衆法第一九号)

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案(薗浦健太郎君外一名提出、衆法第二〇号)

 子どもの貧困対策法案(中根康浩君外八名提出、衆法第一九号)及び子どもの貧困対策の推進に関する法律案(薗浦健太郎君外一名提出、衆法第二〇号)の撤回許可に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案起草の件

 子どもの貧困対策の推進に関する件


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、生活保護法の一部を改正する法律案、生活困窮者自立支援法案、中根康浩君外八名提出、子どもの貧困対策法案及び薗浦健太郎君外一名提出、子どもの貧困対策の推進に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、内閣提出、生活保護法の一部を改正する法律案に対し、高鳥修一君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及びみんなの党の四派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。柚木道義君。

    ―――――――――――――

 生活保護法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柚木委員 ただいま議題となりました生活保護法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及びみんなの党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、第一に、保護の開始の申請に当たって、申請書を作成することができない特別の事情があるときは、申請書の提出を要しないこと。

 第二に、申請書に、要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類を添付することができない特別の事情があるときは、当該書類の添付を要しないこと。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

松本委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

松本委員長 本日、各案及び修正案審査のため、御出席いただく参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授岩村正彦君、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長稲葉剛君、東京大学社会科学研究所教授玄田有史君、埼玉県福祉部副部長樋口勝啓君、遺児と母親の全国大会実行委員長緑川冬樹君、NPO法人朝日訴訟の会理事朝日健二君、以上六名の方々であります。

 なお、岩村参考人及び緑川参考人は、出席がおくれておりますので、到着次第、御意見をお聞きすることとし、議事を進めます。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず稲葉参考人にお願いいたします。

稲葉参考人 NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長の稲葉剛と申します。

 本日は、発言の機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

 私からは、生活保護法改正案について意見を述べさせていただきます。

 私は、過去二十年間、東京都内で、ホームレスの方を中心に、約三千人の生活困窮者の方の生活保護の申請の同行を行ってまいりました。こうした申請同行、生活保護の申請に同行するという活動は、全国各地の生活困窮者支援団体が行っておりますが、私たちからすると、これはやむを得ず行っている活動です。

 なぜ生活保護の窓口に同行する必要があるかといいますと、生活に困っていらっしゃる方がお一人で相談に行かれると、ほとんどの場合、追い返されてしまうからです。

 私が実際に経験した方でも、家族に養ってもらいなさいとか、あなたは若いからだめですよとか、あるいは、あなたはこの地域に住民票を設定していないからだめですよということで、これは全て違法なんですけれども、違法ないわゆる水際作戦、窓口で追い返すということが日常的に行われており、そのために窓口で追い返されて、困窮状態のまま餓死される、孤立される方が後を絶ちません。

 私たちが同行することで生活保護につながった方もたくさんいらっしゃいますけれども、一方で、私自身も、路上生活のまま、貧困状態のまま亡くなられた方々にたくさん出会ってきました。路上でぐあいの悪い方、行き倒れ状態になっている方、何人にもお会いしたことがあります。救急車を呼んだことも百回以上あります。餓死寸前の方、凍死寸前の方に路上でお会いして救急車を呼ぶ、ですけれども、次の日病院にお見舞いに行くと、もう既に亡くなっていらっしゃるということにも何度も立ち会っております。

 そして、役所の窓口で一度追い返されてしまったがために、病状が悪化して、がんや結核やそうした重篤な病気がもう手おくれになってしまって、生活保護にようやくつながった、辛うじてつながったときにはもう手おくれで、すぐ亡くなられてしまわれる、そういった方にもたくさんお会いして、そうした方々の葬儀にも何度も参列してまいりました。

 こうした状況は、ホームレスの方々だけに限りません。つい先日、皆さんも報道で御存じかと思いますが、五月二十四日には大阪市北区で、二十八歳の女性と三歳のお子さんが亡くなっているのが発見されました。死因はまだ特定されていませんが、餓死ではないかというふうに言われております。

 報道によると、このお母さんはドメスティック・バイオレンスの被害者であり、被害から逃れるために転居されていた、大阪市に引っ越されていたというふうに言われています。大阪に移られる前に、一度、守口市で生活保護の相談を受けられたこともわかっております。

 そこで具体的にどういったやりとりがなされたのかはいまだわかりませんけれども、なぜこのお二人が亡くならなければならなかったのか、孤立しなければならなかったのか、なぜ生活保護などの社会保障制度につなげることができなかったのか、そのことをぜひ究明して、こうした悲劇が起こらないよう再発防止に努めていただきたいというふうに切に願っております。

 また、昨年一月には、札幌市の白石区において、四十代の姉妹、四十二歳のお姉さんと四十歳の知的障害の妹さんがお二人で部屋の中で亡くなっている、孤立されているのが発見されました。お姉さんが病気で亡くなられた後、冬の寒い北海道で灯油も使えない、そうした状況の中で、四十歳の知的障害を持つ妹さんが部屋の中で凍死をされるという事件が起こっております。

 この事件については、その地元である札幌市白石区の福祉事務所にお姉さんが三度にわたって相談に行っていたということがわかっております。お手元の資料の、七ページ目から八ページ目にかけまして、情報公開請求で明らかになったその白石区の福祉事務所の面接記録の写しを三枚添付しております。

 ごらんになっていただければわかりますけれども、お姉さんが困窮を訴えているにもかかわらず、ほとんど聞き取りを行っていない。下の方に、「急迫状態の判断」という欄がありますが、二枚目、三枚目を見ますと、聞き取りに至っていないということですから、ほとんど話も聞いていません。そして、役所が行ったことはといえば、非常用のパンを渡しただけであります。

 そして、二回目、三回目の相談では、面接記録の中に、「保護の要件である、懸命なる求職活動を伝えた。」と。ほとんどもう所持金もないような人たちに対して、頑張って仕事を探しなさいと言って追い返す、その結果、このお二人が亡くなられるということが起こっているということを重く受けとめたいと思っています。

 こうした餓死、孤立死は、例外的な事件ではありません。資料の二ページ目をごらんになっていただきたいと思います。

 そちらにグラフが掲載してあります。厚生労働省の統計で、全国の餓死者数、国内の餓死者数に関する統計です。国内の餓死者数は、八〇年代、九〇年代前半までは二十人前後で推移していましたが、一九九五年には五十八人、九六年には八十一人、そして二〇〇三年には九十三人と急増しております。

 これは、厚生労働省の人口動態調査において、死因が食料の不足となっている方のみを取り上げた数値です。ですから、狭い意味での餓死ということになります。私も実際、餓死状態の方に出会ったことがありますけれども、何らかの病気を併発していたりとか、直接的な死因は心不全となっていたりとか、必ずしも死因が食料の不足とはなっていないケースがたくさんあります。

 これ自体が氷山の一角だということを踏まえていただきたいと思いますが、それでも、九五年から二〇一一年までの十七年間に、実に計千百二十九人の方が食料の不足により国内で亡くなられているという事実があります。年ベースでいうと、七十人近い方が亡くなられている、週に一人以上亡くなられているという事実があるわけであります。

 生活保護に対する正しい知識がなかったり、制度を利用するのが恥ずかしい、後ろめたいといういわゆるスティグマがあったり、それによって制度の利用をためらう方がたくさんいらっしゃいます。もう一方で、窓口に行っても、違法な水際作戦によって追い返されてしまう、貧困ゆえに、餓死、凍死、孤立死に追いやられてしまう方々が後を絶たない、それが今の日本の現実です。

 これは、行政の責任であり、政治の責任であり、そして私たち社会全体の責任であるというふうに私は受けとめております。

 六ページの資料をごらんください。

 こちらは、国連の社会権規約委員会から、先日、日本政府に対して勧告が出されたものの抜粋になっております。

 そこには、生活保護制度の申請の手続を簡素化する、複雑化する、厳格化するのではなく、簡素化する、かつ、申請者が尊厳を持って扱われることを確保するために、政府は教育を行わなければならないというふうに書かれております。

 そうしたことを踏まえて、今回の生活保護法改正案をめぐる動きを見てみますと、残念ながら、改正の方向性が全く逆を向いているんじゃないか、正反対の方向を向いているんじゃないかというふうに危惧せざるを得ません。

 政府が提出した生活保護法改正案に対して、私たちは、二十四条一項、二項の規定が、申請書や添付書類の提出を要件化するものではないか、違法な水際作戦を合法化する内容になっているのではないかと批判をしてきました。そしてもう一つ、二十四条八項、二十八条、二十九条において、福祉事務所の調査権限を強化し、親族の扶養義務を強化することによって、事実上、扶養を要件化するものになってはいないかと批判をしてまいりました。

 このうち、前半の二十四条一項、二項の申請権侵害の問題については、与野党による法案修正が行われ、一定の歯どめができたというふうに評価しております。しかし、もう一方の、扶養義務の強化という問題はいまだ解消されていません。扶養義務が強化され、生活保護を申請した、親族の資産や収入に対して徹底した調査が行われるということになると、何が起こるでしょうか。それは当然、水際作戦の口実に使われることになります。

 資料の三ページに、日弁連が実施した二〇〇六年と二〇一二年の生活保護電話相談会の報告が出ております。ここでも、違法な水際作戦が横行しているという事実が明らかになっています。そして、水際作戦、窓口で追い返す口実として一番使われているのが、家族に養ってもらえ、扶養義務者に養ってもらえという言い方です。

 先日、私たちもやいの相談窓口に来られた若者も、東京都内のある福祉事務所に行って追い返されました。追い返されたときに何と言われたか。親元に戻りなさい、親元に戻って、あなたが死んでも骨一つ拾わないよというふうに親が一筆書いて持ってきてくれたら生活保護を受けさせてあげてもいいと言って追い返されたということがあります。

 こうした水際作戦が、今回の法改正によってさらに悪化しかねない状況があります。

 また、扶養義務が強調されると、生活に困って相談に行く人にとって、自分が申請することによって家族に迷惑がかかる。今回、福祉事務所の調査権限が強化されて、家族の資産や収入が徹底的に調査されるということになりますので、相談する人にとってみれば、自分が相談に行けば家族が収入や資産などが丸裸にされてしまう、徹底的に調査されてしまうという意識が働くことになります。それは確実に申請の抑制につながってしまいます。

 今までも、こうしたことはたくさんありました。特に、ドメスティック・バイオレンスの被害者の方、過去に親族から虐待を受けてきた方、こうした方が親族に連絡が行くのを恐れて申請しないということは、今までもたびたび起こっております。そうした方の場合、親族に連絡が行くことが、自分や子供の身の安全に影響を与えることになります。大阪で亡くなられた母子の方も、もしかして、これは臆測でしかありませんが、家族に知られたくない、そうした意識から生活保護の申請に踏み切れなかったのではないかというふうに私は推測しています。

 扶養義務が強化されてしまうと、ただでさえ低い生活保護の捕捉率がますます下がってしまいかねません。生活保護の捕捉率は二割から三割というふうに言われています。今、生活保護受給者が二百十五万人になって、過去最高だ、ふえ過ぎだというふうに言われておりますが、たとえ捕捉率が高目の三割というふうに仮定しても、その背後には少なくとも四百数十万人の人たちが、生活保護基準以下で、しかも資産もない状態の中で、困窮の状態のまま放りおかれているということが言えます。

 この捕捉率を上げていくことがまず政治のやるべきことではないかというふうに私は考えております。捕捉率を下げかねないこの扶養義務強化に対しては私は反対していきたいと思っていますし、改正法案の二十四条八項、二十八条、二十九条の各規定については、修正、削除していただきたいというふうに考えております。

 ほかにも、生活保護利用者に生活上の責務を課すとか、ジェネリック医薬品を事実上義務化するなどということがこの法案には盛り込まれています。国連の社会権規約委員会が求める尊厳を持った扱い、スティグマの解消とは正反対に、生活保護の申請者、利用者、その家族を上から管理しようという発想がやはり随所に見られるのではないかというふうに考えています。

 暴走している機関車が今まさに人々をひき殺そうとしているときに、みずから列車に飛び乗って、軌道を少しだけ修正してくれた方々がいることに、私は感謝しています。しかし、残念ながら、この暴走列車の暴走はいまだとまっていない。私たちとしては、これをとめろというふうに言わざるを得ません。

 今回の生活保護法改正は、一九五〇年に今の法律ができてから六十三年ぶりの抜本的な改正に当たります。衆議院では、きょうも含めて二日間しか審議が行われないというふうに聞いております。本来なら、もっともっと時間をかけて、じっくり慎重に審議すべきことです。そして、生活保護の当事者の意見もきちんと踏まえた上で、こうした議論はなされるべきだと思っております。

 厚生労働省においては、生活困窮者の支援に関する特別部会で有識者の議論が行われましたが、そこの中で行われた生活保護の見直しに関する議論、そこには盛り込まれなかった内容が、今回の修正案、今回の改正案にはたくさん盛り込まれている、部会で議論をされていたことと違うという声が委員の方々からも上がっております。こうした最後のセーフティーネット、社会保障の最後のとりでである生活保護を変えるということですから、本当に慎重な議論を求めていきたいと思っています。

 生活保護制度につながることができずに亡くなった方は、もはや声を出すことができません。しかし、生きている私たちは、餓死された方、凍死された方、貧困ゆえに亡くなった方々の無念や絶望といったものを、人間として想像力を働かせることはできるはずです。大阪で亡くなられた母子も、札幌で亡くなられた姉妹も、私が出会ってきたホームレスの方々も、みんな生きたかったんだというふうに思います。

 貧困による死をなくすために、何が必要なんでしょうか。何を変えるべきで、何を変えるべきでないのか、ぜひこうした観点から国会での議論を進めていただきたいというふうに思っています。ぜひ政治の責任を果たしていただきたい、そう切に願って、私の発言を終えさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、玄田参考人にお願いいたします。

玄田参考人 働き盛りと呼ばれる年代が何歳から何歳に当たるのか、いろいろ考え方はあろうかと思いますが、おおむね、二十ぐらいから、六十歳を手前にした五十九歳ぐらいまでは少なくとも働き盛りの年齢には含まれるであろう。

 では、学校を卒業して、働き盛りであり、ただ、一方で、仕事はしていない、加えて、専業主婦のような結婚をしているわけでもない、そういう方々が一体今何人ぐらいいらっしゃるのか。総務省統計局が昨年に実施いたしました社会生活基本調査から試算いたしますと、その数は約二百五十六万人に当たります。ざっと、恐らく大阪市の人口と同じぐらいに当たるのではないでしょうか。

 では、その働き盛りで、結婚していない、そして仕事をしていない、加えて、ふだんの生活の中でずっと一人でいるか、せいぜい家族としかかかわることがない方がどのくらいいるのか。それを同じく社会生活基本調査で試算した結果が、お手元の資料の三ページ目にございます。この棒グラフを見ていただくと、一番右側になりますが、今申し上げた、働き盛りでありながら仕事をしていない、結婚していない、そして、ふだんはずっと一人か、家族だけしかかかわる人がいない人が、今、百六十二万人に達しているわけであります。

 なかなか、こういう数字だけですと、その規模を理解することは必ずしも容易ではありません。厚生労働省が計算しているフリーターの数が約百七十万人強でありますので、実際、誰ともかかわりがない、友人、知人とのかかわりのない人々が、実はフリーターと同じぐらい今日本の中では存在しているわけです。

 この、ふだん誰ともかかわりのない、働いていない働き盛りの人たちのことを、私たちは、今、孤立無業者というふうに呼んでいます。英語ではソリタリー・ノンエンプロイド・パーソンズ、略してスネップ、ぜひアイドルグループと間違えないようにしていただきたいんですけれども、スネップというふうに呼んでいます。今、そういうスネップに当たる人たちが百六十二万人。その棒グラフを見ていただくと、この十年間で八十万人も急増している現実があるわけです。

 実は、この孤立無業者が急増している現実というのが、今回の生活保護の問題、生活困窮者の問題、そして、子供の貧困の問題と密接にかかわっているということを、少しデータに基づきながらお話をさせていただきたいと思います。

 では、こういう孤立無業者がどういう人たちなのかということを、少しその性格を明らかにしたいと思います。

 資料のページをめくっていただき、五ページをごらんいただけますでしょうか。上側の図には、男女別の、先ほど見ました六十歳未満の未婚無業者に占めるスネップ、孤立無業者の割合を計算したものです。この割合が、二〇〇〇年代から、男性、女性とも急増していることがわかります。加えて、あわせて、各年次とも男性がたくさん含まれます。

 ああ、孤立無業者、引きこもりのことかというふうに思われる方もいらっしゃるかもしれません。実際、引きこもりのように、半年以上ずっと家から出られない方が孤立無業者の中には多々含まれています。ただ、一方で、ふだんは外に出ている、ですので、見かけた限りでは全く孤立無業者かどうかわからない。ただ、一方で、調べてみると、誰ともかかわりのない方もたくさんいらっしゃいます。傾向としては、男性の方が多くこういう状態にはなりやすい。引きこもりにかかわるNPOなども、やはり男性の方が多いのではないかというふうなことをしばしばおっしゃることがありますが、孤立無業は男性がなりやすい傾向があります。ただ、一方で、女性も含まれます。

 加えて、衝撃的なのは、下の、年齢による分布です。

 やはり無業者に占めるスネップの割合を計算したものですが、二〇〇〇年代の前半もしくは中ごろまでは、孤立無業者は、三十歳を超えると孤立しやすいというふうな傾向がありました。十代、二十代のうちは、子供のころ、学校時代の友人とのかかわりがある。仕事がなくても、友人が励ましてくれて、頑張ろうぜとか、こういう仕事があるみたいだよ、そういう話があって、就業に近づくことができた。

 ところが、二〇〇〇年代半ばから後半になると、実は、二十代の若者ですら、孤立する傾向が急速に高まっていく。もう三十代とか四十代とか、中高年の問題ではなく、若くして誰ともかかわりがない、そういう無業者が大きくふえていっているわけであります。

 加えて、次のページをめくっていただくと、学歴別の孤立無業、無業者に占める割合が計算されています。

 孤立無業者は、かつては、やはり高校中退者、最終学歴でいえば、中学卒の方々が孤立無業者になりやすい傾向がありました。学校を中途退学して、そのまま友人、知人との関係を失ってしまい、仕事もない、ずっと一人である、これが孤立無業者の中の一つの大きなグループとして存在していました。

 ところが、近年、一番最近の二〇一一年の調査を見ますと、大学もしくは大学院卒でも、仕事がなくなると、もう誰ともかかわりがないという人たちが急速にふえていって、もう特定の学歴の問題ではなくなっているわけであります。

 男性が多い、三十代が多い、中途退学者が多い、そういう傾向に加えて、女性もふえている。そして、若年の孤立無業者もふえている。また、大学に進学した孤立無業者もふえている。やや語義矛盾には聞こえるかもしれませんが、孤立無業者が社会に一般化している、もっと言えば、誰でもが孤立した無業者になるという傾向が日本全体で急速に強まっているわけであります。

 この孤立無業がふえた原因として、インターネットの影響があるのではないか、つまり、ネットさえあれば、特定の誰かに会わなくても、いろいろなことが事足りてしまう、インターネットの影響なんじゃないか、そうお考えになる方もいらっしゃいます。しかし、事実はどうやらそうでないようであります。

 七ページを見ていただきますと、ふだんどのくらいインターネット、例えば電子メールを使っているか、情報検索をしているかを見ますと、実は、孤立無業者の方が、友人とかかわりのある無業者に比べても、インターネットを利用していません。

 孤立しているということは、多分、電子メールを送ろうにも、送る相手先もない、また、いろいろな趣味、関心が広がらないということで、情報を検索しようにも、したい内容がない。つまりは、インターネットが普及したことが孤立を広げたのではなくて、むしろ孤立者は、インターネットからも遠ざかっている。

 今、さまざまな就労支援、対策など含めて、インターネットを使った支援というのが二〇〇〇年代へ入って考えられています。ただ、恐らくは、こういうインターネットは、十分には孤立無業者へ届いていません。実際、みんなが携帯電話を持っていて、パソコンを使っているという時代になっているような印象がありますが、実際には、必ずしもそうではないわけであります。

 加えて、重要なのが、次の、最後の九ページをめくっていただきますと、就職ということとの関係です。

 無業者の中には、仕事をしたいと思っていて、実際にハローワークに行ったり、求人雑誌を見て仕事を探していらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。一方で、仕事はしたいとは思っているんだけれども、さまざまな理由で、求職活動までは行っていない、また、働き盛りでありながら、もう働くことは無理だというふうに諦めていらっしゃる方もいらっしゃいます。この仕事を探していない方、また、働くことを諦めていらっしゃる方のことを、通常、ニートというふうに一般的には呼ばれているわけであります。

 孤立無業者は、働くことをしていない、働こうとしていない、求職活動をしていない割合が大変たくさん、多く含まれています。加えて、深刻なのは、孤立無業者のうち、家族とのかかわりだけはあるという人の方が、実は、むしろ、仕事を余り探そうとしていないということが多い。

 何とか家族の支えがあるから、家族に面倒を見てもらっているうちは、今は仕事がなくても何とかなる、恐らくそういうふうに思うのは通常であろうかと思います。ただ、家族の守りがあるからこそ今は働かなくてもまだ何とかなる、そういう状態が続いているうちに、家族もいつまでも生きているわけではありません。家族と不幸にも離死別した後には、大変厳しい状況が待っているわけであります。

 別の調査を使って調べてみますと、孤立無業者の中には、生活保護を受けることはもういたし方ない、もしくは今すぐにでも受けたい、そういうふうに感じている方はたくさんいらっしゃいます。

 また、過去の経緯を見ると、子供のころに親友と言えるような人間がいなかった、友人がいなかったに加えて、例えば、中学生のころにふだん会話をする先生や親以外の大人が一切いなかった。子供の貧困のうち、経済的な貧困だけではなく、人間関係の貧困の中で大人になってきて、ずっと人とのかかわりを持つということが非常に苦しいというふうな状態の中で孤立無業はふえているわけであります。

 これから、さまざまな貧困、生活困窮を防いでいくためには、この孤立無業の増加に何とかして歯どめをかけなければならないだろう、そういう必要が今まさに迫られていると思っています。

 では、一体どういう対策が必要なのか。一つのキーワードはアウトリーチです。

 アウトリーチという言葉、自立支援等々の専門家の中では一般に使われている用語になりましたが、社会全体では全くまだ認識がありません。支援の提供者が、支援の場で、支援を必要としている人を待っているのではなく、さまざまな理由で支援の場に伺えない人に対して、むしろ支援の提供者がみずから足を運んで悩みを聞き、相談に乗り、また支援のサポートを具体的にしていく。そういう、みずから外に出ていって、困っている人に対して行き届いたサポートをしていくアウトリーチが、まさに孤立無業、スネップには必要になります。

 では、何が大事なのか。そういうアウトリーチのできる人材が残念ながらまだまだ不足をしています。今でも、引きこもりの支援者ですとか、さまざまな状況にある人たちをアウトリーチし、支援している人たちもたくさんいます。ただ、数としては、この孤立無業者の急増に対してはまだまだ不足している現実があります。

 かつて、若者自立・挑戦プランが策定され、その中でさまざまな若者支援の対策に国が乗り出すということが二〇〇〇年代半ばぐらいにありました。たまたま、政府の関係者にこういうお話をさせていただいたことがあります。国が若者の支援に乗り出すことは大変すばらしいことだと思う、ただ、もう一つ大事なことがある、それは、若者を支援することも大事だけれども、若者を支援する若者を支援する。これも同じくらい大事で、支援者をもっとサポートしていかなければ、お金や制度を準備するだけでは、孤立した人たちを社会につなぎとめることはできない。その支援者支援の必要性というのを強く感じています。

 また、就業に対する支援だけではなく、孤立無業者の中では、例えば一人っ子で、病気で寝たきりの家族を介護する、その世話で手いっぱいになってしまって外に出ていく余裕もないといったような、福祉面のサポートをまだまだ必要としている方々もたくさんいらっしゃいます。介護制度ができて、それ自体は孤立無業者が社会に出ていくきっかけになりましたが、ただ、それだけでも十分ではない現実があります。福祉面も含めた支援者の育成というのはまだまだ重要です。

 加えて、もう一つ重要なものを述べるとすれば、やはり孤立無業を予防する。子供の時代からさまざまな大人に出会い、体験し、時には褒められ、時には叱られ、そのような経験をする子供たちがもっともっとふえていかなければ、孤立無業の増加には歯どめがきかないと思います。実際、今、文部科学省も、キャリア・スタート・ウイークという形で体験学習の普及に力を入れていっているようです。

 ただ、もっと共同生活をしながらさまざまな人たちと出会う、いろいろな大人たちに出会う機会というのは、まだまだ必要なのではないでしょうか。

 地域の体験学習の中で、それまで不登校ぎみであった子供たちが学校に行くようになったという事例が兵庫県で報告されていたり、また、人間関係が非常に不安があった子供たちが、大人に言葉で褒められるだけではなくて目で褒められる、それでいいんだよ、それができれば大丈夫だよ、そういう体験をする中で、社会とかかわる、人とかかわる、困ったときにも素直に、助けて、教えてと言える、そういう経験を子供たちがしていかなければ、孤立無業の予防というのは難しいのではないかと思っています。

 まだ十分認識のない孤立無業の問題に目を向けていくことも、これからの生活困窮、生活保護、そして子供の貧困対策の一つの重要な視点なのではないかと思い、お話をさせていただきました。

 ありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、樋口参考人にお願いいたします。

樋口参考人 埼玉県福祉部副部長の樋口でございます。

 本日は、厚生労働委員会にお招きいただき、また、埼玉県の生活保護受給者に対する自立支援の取り組みを御説明する機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 埼玉県では、平成二十二年九月から、貧困の連鎖を断ち切り生活保護受給者の自立支援を図ることを目的に、生活保護受給者チャレンジ支援事業を実施しております。この事業は、生活保護受給者に対し、教育支援、就労支援、住宅支援の三つの柱で実施しております。

 この三つの事業について、その概要を御説明させていただきます。恐れ入りますが、お手元に御配付させていただいておりますカラー印刷の資料一ページをごらんください。

 一番上の写真でございますが、教育支援の様子です。これは、生徒がボランティアからマンツーマンで勉強を教えてもらっている学習教室の写真であります。この事業は、高校進学に向けた支援と高校中退を防止するものです。

 二枚目、右側の写真は、就労支援の様子でございます。これは、埼玉県高等技術専門校で、ガソリンスタンドでの就労を目指し、バッテリー交換など簡単な整備の訓練を受けている写真であります。車の下に入っている方が講師で、作業をのぞき込んでいる方が講習を受講している生活保護受給者です。この事業は、手に職をつけていただき、就労に結びつける支援を行っております。

 三枚目の写真になりますけれども、住宅支援の様子です。これは、住宅のない生活保護受給者の方が、不動産屋さんでアパートの紹介を受けている写真であります。立っている女性の方が不動産屋さん、男性の横で説明している方が支援員で、座って説明を受けている方が住宅のない生活保護受給者でございます。この事業は、無料低額宿泊所から民間アパートや社会福祉施設などへの入居を支援するものであります。

 恐縮ですが、続きまして、資料の二ページをごらんください。

 埼玉県が生活保護受給者チャレンジ支援事業に取り組むこととなった、事業の背景を御説明させていただきます。

 左上の表をごらんください。

 表の一番右にございます平成二十五年二月現在のところでございますが、埼玉県の保護率は一・二九%と、全国平均よりもやや低くなっている状況でございます。

 その下の赤い棒グラフは、生活保護人員となっております。生活保護の人員につきましては、平成十四年から二十年にかけては緩やかな増加でありましたが、棒グラフでごらんいただくように、平成二十年のリーマン・ショック以降は大きく伸びております。

 次に、右上の表をごらんください。

 この表は、生活保護受給者を四つの類型に分けたものであります。六十五歳以上の高齢者世帯、母子世帯、傷病・障害者世帯、そして、その他世帯の四つであります。

 その他世帯につきましては、派遣切りなどで仕事を失った、いわば働ける世帯でもあります。平成二十年九月に四千七百十八世帯でありましたその他世帯につきましては、平成二十四年九月には一万四千二百五十二世帯となり、三倍にも増加しております。その他世帯の増加傾向は、全国的にも同じ傾向であります。

 恐縮ですが、右下の青い棒グラフについてでございますが、埼玉県の生活保護費の推移となっております。

 こちらの方でごらんいただくように、平成二十年に九百六十四億円でありました生活保護費は、毎年百億円ずつ増加しております。しかし、生活保護が必要な方にはしっかりと支援をしていく必要がございます。

 そうした中で、埼玉県は、生活保護受給者チャレンジ支援事業を通じて、その人に寄り添った形で自立支援を行っていきたいと考え、この事業を実施してきたものでございます。

 続きまして、資料の三ページをごらんください。

 生活保護受給者チャレンジ支援事業の愛称として、アスポート事業と名前をつけさせていただいております。これは、あすに向かって船出をする港、すなわちポートと、あすへのサポートをかけた造語でございます。世の中の荒波にもまれ、解雇、病気、DV、離婚などさまざまな傷つき体験を経て、やっと福祉事務所の窓口に来られた方です。一時的にも安心でき、破れた帆を修理できる港になりたいと考え、名をつけたものでございます。

 そして、生活保護受給者チャレンジ支援事業の一番の特徴は、困っている人のところに家庭訪問をする、アウトリーチを取り入れているところでございます。教育支援、就労支援、住宅支援の三つの事業を通じて、アウトリーチを実践しております。

 そういうことで、まず初めに、三本柱のうちの教育支援事業について御説明をさせていただきます。

 資料の四ページをごらんください。

 生活保護世帯の子供への教育支援を、家庭訪問と学習教室の二本柱で実施しております。

 二〇〇七年に、ある自治体で実施された実態調査の結果でございますが、それによりますと、生活保護世帯で育った子供が、大人になって再び生活保護を受ける貧困の連鎖の発生率が二五・一%となっております。

 この貧困の連鎖を防ぐことを目的とするのが教育支援事業であります。この事業については、まずは、将来の選択肢をふやし、将来の就職が有利になるよう、高校に入学してもらうことが目標となります。

 対象は、中学三年生を中心とした中学生二千三百人です。教員OBなどの支援員五十八人と六百人を超える大学生ボランティアに参加していただき、特別養護老人ホーム等をお借りして、県内十七カ所で学習教室を開催しております。

 学習教室には、低学力の生徒も多く参加しております。中には、小学校四年生で習います小数の足し算や分数がわからない、そういう生徒さんもおいでになります。そうしたことから、塾のような授業形式は成り立ちません。このため、一人一人の学力に合った支援をするため、先生役の大学生ボランティアがマンツーマンで教えております。また、そうしたことから、学習教室では、安心して、わからないことをわからないと言える雰囲気をつくるよう努力もしております。

 さらに、特別養護老人ホームをお借りしている理由でございますが、学習教室を単なる塾にしたくなかったということでございます。

 特別養護老人ホームでは、お花見や夏祭りなど多くの行事が企画されております。学習教室に来られた生徒さんが行事に参加することにより、お年寄りや職員と交流が深まります。例えば、お年寄りから高校受験のお守りをつくっていただき、生徒さんはそのお守りを持って受験をしております。そして、合格できたときには、それらのお年寄りにありがとうと言う報告会を行ってもおります。

 また、今まで勉強せずに諦めていた生徒が高校受験に向け頑張り始めると、親も、子供が頑張っているなら私もと考えるようになった事例もございます。

 平成二十四年度の実績でございますが、中学三年生の参加者数は三百三十一人、そのうち三百二十一人が高校に進学いたしました。進学率ですけれども、折れ線グラフのとおりです。平成二十一年度は八六・九%でした。教室参加者では平成二十四年度では九七%となり、全県のいわゆる一般家庭の方の進学率九八%とほぼ同率となりました。

 なお、平成二十四年度に実施した高校中退調査の結果、県公立高校の中退率三・一%に対して、生活保護受給者の中退率は六・九%と、二倍以上の差があることがわかりました。このため、本年度、二十五年度からは、新たに高校一年生を対象とした学習教室を県内五カ所に開設し、高校中退防止にも取り組んでおります。

 続きまして、就労支援事業について御説明させていただきます。

 資料の五ページをごらんください。

 就労支援事業についてでございますが、就労の前にまずは職業訓練を受けてもらおう、そういうことに取り組んでおります。事業を始めた理由は、先ほど申し上げましたとおり、就労できるその他世帯の増加であります。

 埼玉県では、五十歳未満の働ける人を調査したところ、対象者は約二千八百人おいでになることがわかりました。この中には、中学校卒業後すぐに働き始めた人や、高校を中退して働き始めた方もいらっしゃいました。また、職歴も、アルバイトやパート、派遣などを転々としている方も多くいらっしゃいます。高卒の学歴もなく、アピールできる職歴も資格もない、そういう方にとって、再就職のハードルはとても高くなります。実際に、現場では、厳しい雇用情勢の中で、ハローワークに行っても職がなく、何十社と受けても不採用が続き、打ちのめされて、もうだめだと諦めてしまう生活保護受給者の方も大勢いらっしゃいます。

 従来の就労支援といえば、履歴書の書き方や面接の受け方をアドバイスし、ハローワークの利用方法を助言することが中心でしたが、この事業におきましては、さらにそれを一歩進めまして、職業訓練を受けていただき、採用面接でアピールできるものを一つでもふやしてもらおうというものであります。

 さらに、今すぐ採用に結びつきやすい資格といたしまして、フォークリフトや警備員、介護ヘルパーの資格があります。このような、就職と直結している資格の取得を勧め、就職活動を有利に進めるといった支援も行っております。

 また、病気で働けず生活保護を受けていた方が、病気が治ったのでまた働こうという場合もございます。ところが、働いていない期間が長くなると、生活リズムが崩れたり、人と話す機会が非常に少ないという方もいらっしゃいます。

 そのような方のため、食事の用意など家事一般の知識や、職場でのコミュニケーションのとり方など、就労に当たっての基礎的技術を修得するセミナーを開催して、受講をしてもらっております。さらに、介護や製造業、清掃や物流など、さまざまな職場での就労体験を用意しておりますので、そうした体験にも参加していただきます。約一カ月間の就労体験を通じて自信を取り戻すことで、その後の就職活動に大きく役立っております。

 その結果でございますが、二十四年度は七百一人の方が就職できました。今年度は、さらに就労体験先をふやし、就労支援の拡大に努めてまいります。

 最後に、住宅支援について御説明させていただきます。

 資料の六ページをごらんください。

 住宅支援事業は、無料低額宿泊所などに暮らしている方に、アパートなどで自立した生活ができるよう支援するものです。

 無料低額宿泊所は、本来、短期間の住まいを提供する施設であります。ところが、二十二年の調査では、一年以上入所している方が七割以上もおいでになりました。

 このため、この事業では、これら入所者に対し、アパート探しから入居、その後の生活のフォローまで、一貫した支援を行っております。なお、その後の生活のフォローということは、毎月の家賃や公共料金の支払い、ごみ出し、炊事、洗濯についてのアドバイスを行っているものでございます。さらに、介護が必要な方につきましては、老人ホーム等の施設への入所を勧める場合もございます。

 その結果、二十四年度は、七百七十三人の方がアパート等へ転居することができました。

 今後はさらに、転居が困難な高齢者や障害者などの長期入所者を重点的に支援し、老人ホームや障害者施設への入所を含め、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上、教育、就労、住宅の三本柱を御説明させていただきましたが、この分野は単独で行っているのではなく、相互に連携して実施しているのが特徴でございます。つまり、生活保護受給者が抱える問題に応じて、それぞれの分野の専門家が必要なサービスを提供する、チームでの支援が基本となります。

 具体的には、母子家庭においては、お子さんには教育支援員がかかわり、お母さんには職業訓練支援員が支援いたします。このような支援を必要とする人にとって本当に必要なサービスを、それぞれの目標が達成されるまで、担当者がマンツーマンで支援していくこととなります。

 以上で、埼玉県の生活保護受給者チャレンジ支援事業の説明を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、朝日参考人にお願いいたします。

朝日参考人 貴重なお時間をありがとうございます。

 私は、かつて生活保護を受けておりました当事者として、また、生活保護の基準を争った朝日訴訟の承継人として、最近は、第二の朝日訴訟と言われる生存権裁判支援団体の一員として、そしてまた、日本患者同盟のボランティアとして、患者の、回復者の生活相談などを担当している立場から、今回の法改正、そして、八月から行われることが予定されている保護基準の問題について陳述させていただきたいと思っているわけです。

 今回の生活保護法の改正による申請手続は、先ほど修正案をいただいたものの、やはり原則厳格化でございまして、また、ただし書きの中に、特別の事情が判断していただけることになっておりますけれども、その判断はあくまでも行政サイドの側のものにならざるを得ないわけで、私は、本質はいささかも変わっていない。

 むしろ、このことによって、裁判をする、あるいは、二年前ですか、細川厚生大臣のところまで再審査請求をして、温かく裁決をしていただいたケースもございますが、そのような手続を経ないと問題が解決できない。保護を受けるに当たっては、すべからく最初から法律相談所に相談しなければならないような状態になるのではないかというふうなことを憂うものであります。

 そして、就労指導の強化による生活保護からの追い出し、ワーキングプアの拡大、あわせて行われる生活保護の基準の引き下げについては、最低賃金や社会保障など、国民全体の生活水準にかかわることでありまして、これに今回の法改正が行われるということになれば、垣根を高くして寄せつけないで、辛うじて寄ったものの門戸が非常に狭められるという、私たち国民にとっては二重の締めつけを受けるわけです。

 したがって、今回の改正案のうち、できたら、少なくとも厳格化の関連条項については撤回してほしい、可能ならば、法案を厚生労働省の側で撤回してほしいというふうに思っているわけです。保護基準については、今日のように国際的にも批判されるような格差が起きた状態のもとでは、引き下げではなく、むしろ引き上げてほしい。

 以上のお願いを込めて陳述させていただきたいと思います。

 私は、小学校も中学校も級長をやったぐらいで、進学をしたかったわけですが、父親が軍隊から復員してきたときに結核にかかっていて、貧困状態になっておりましたから、進学を諦めて、辛うじて、教師から勧められて通信教育を受けて、山高を卒業するというふうな生活をしました。また、生活保護の医療扶助を受けて結核療養して治癒し、今日があるというふうに思っております。

 そういうふうな体験から、お手元にある朝日訴訟の運動が起きたときに、これに積極的に参加しまして、原告の朝日茂さんが亡くなる一時間前に養子に入りまして、裁判を承継して、その後の三年余りを全国の方々の支援をいただきながら争った、闘ったものであります。

 最高裁では、私が養子として承継することは認められませんでしたけれども、その夜には、日比谷公園周辺に七千人の方々が支援抗議集会に集まってくださって、また、それまで、全国を訪問していきますと、たくさんの方々が駆け寄ってこられて、頑張ってくれと握手をしていってくださった。そういう中で、この生活保護の問題について非常に関心を持つようになったわけです。

 朝日訴訟の運動の中でたくさんの方々の声を聞き、また、朝日訴訟を支えてくださる方々が、例えば、守る会というのが全国で二百七十つくられる、裁判所への署名運動でも二百万筆を超える、患者さんたちが毎月二円カンパ、日雇い労働者の方々も一円ずつカンパをしてくださるという中で、この裁判を闘ってまいりました。

 その結果、二枚目にありますように、第一審勝訴、東京地裁での勝訴判決の結果、その下に図がありますが、保護基準が判決の翌年から著しく引き上げられるようになりました。そして、翌年には、さらに、社会保障制度審議会六二年勧告で国の生活保護の政策を大きく変えていただきまして、例えば、四行目にありますけれども、「一般国民の生活の向上に比例して向上するようにしなければならない。」というくだりなどは、まさに朝日訴訟の東京地裁判決をそのまま持ってきたような考え方でまとめてくださいました。

 それに基づいて、その下に表がございますけれども、それまで、パンツが一年で一枚でいい、肌着は二年で一枚というようなマーケットバスケット方式でございましたが、それが、一九六一年、つまり東京地裁判決の翌年にエンゲル方式に変わり、これで四年、さらにそれを改善して、一九六五年から十九年、格差縮小方式がとられて、合わせて二十三年連続して保護基準の引き上げをしていただいたわけであります。その後、一九八四年に、これは後から一言触れたいと思いますが、水準均衡方式になりましたが、今日、一応物価に比例して引き上げられてきて、一番下の表のようになっております。

 これを私たちが一番大きく意味があったと思われるのは、次の三ページでありますが、これは、二〇〇七年に、参議院で野党の方が多数になってくださって、民主党から提案され、野党が一致して最低賃金法が改正されました。憲法二十五条の条文、そして生活保護法との整合性という言葉まで、二重に枠がはめられまして、以降は、下の表のように厚生労働省の方から目安が示されて、支払い側、財界側の方も抵抗できないような状態のもとで、上の図のように、くの字に曲がっていますが、最低賃金が、この間、リーマン・ショックもあったし、あるいは東日本大震災もありながらも、史上最高の引き上げが続いているところであります。

 しかし、今回、この法案に先立って保護基準の引き下げの問題が出て、第一次は八月から実施されることになっております。四ページの上の表が厚生労働省でおつくりになった表でありますけれども、その表の中に、「高卒単身」という部分は私が新しい基準案に基づいて入れさせていただきましたが、もう初年度の、つまりこの八月から九%を超える引き下げが行われる。これはもう、高等学校を卒業したら、とにかく何でもいいから働けというふうなことをにおわせておられるのかというふうに思わざるを得ないわけです。

 そして、その下の図は、厚生労働省の基準部会で示された資料に基づいて私なりに図表化してみたんですけれども、大体、国民の所得に応じて十段階に分けて、各段階が、石段が一段ずつ所得の低い人に下がっていくとすれば、十段目の、一番最後の段階の人は、一挙に三段階もがくんと下がっている。そこの下がったところをもって保護基準と比べる、しかも子育て世代との違いが大きいという形で、上の表のように、子育て世代の保護基準が大幅に引き下げられることになったわけであります。

 これまでも保護基準の引き上げは一九八〇年代の初頭までは行われたわけですが、八〇年代に入って、先ほど申し上げましたような所得均衡方式がとられて、つまり所得の一番低い層との均衡が行われるようになったわけですが、八〇年代にバブル景気になって大変な所得格差が広がりました。

 その中で最もおくれた最下層との均衡でございますから、その結果でありましょうか、資料で御案内しております五ページはOECDから指摘されているものでありますが、上の表が、我が国はOECDの中で右から四番目。子育て世代でも典型的だと思われる片親世帯については、二番目の表でございますが、日本は一番右端。スカンジナビア諸国が数%の相対的貧困率に対して、我が国は六割近いというふうな、私たちにとっても驚くべき状態が起きているわけです。

 そして、鳩山政権のもとで一番下の表がつくられまして、この中で明らかになりましたように、右に太い文字で三二・一%と書いておりますが、つまり捕捉率が、この三二%というのは、もう預貯金も一カ月を切っている、即刻保護を支給しなきゃいけないような人たち。隣の一五%というのは、所得のみで、預貯金はまだ持っているというわけでありますけれども、右端の三二%は、外国でも九割台でありますが、我が国はこういう状態でありますから、何としても今回の申請の厳格化ということは再考をしていただきたいというふうに思っているわけです。

 最後の六ページは、朝日訴訟の東京地裁の証言の中で、これは当時の厚生省の方が労働科学研究所に当時のお金で百万円を出して最低生活費を研究させて、この本になったものを持って藤本博士本人を連れて大蔵省に保護基準の引き上げについて予算陳情をされたんですけれども、当時は認められず。

 朝日茂さんの側の証人に立って証言されたものでありますが、最低生存費のような生活をしていると、母親は知能が高くても子供はがた落ちになる。右のように、最低生活費の水準で生活しておれば、これ以上幾ら収入が上がっても同じだそうでありますけれども、母親はどうしようもなくても子供は中の上になるということを、これは厚生省の当時の研究結果として出されているわけであります。

 そういう意味では、一番下に、先ほども引用されました、国連の社会権規約委員会の所見にぜひお目を通していただけたらありがたいということをまとめにして終わりたいと思いますが、中央社会保障推進協議会、そしてまた、生活と健康を守る全国の連合会では、改正案は、これまで違法とされてきた、申請を拒否する水際作戦を合法化、さらに法制化するもので、保護の要件ではない扶養義務者の扶養を事実上保護の要件とするもので、これは扶養の要件化です、申請を抑制して、国民の保護請求権、生存権を否定し、現行生活保護法の根幹を前近代的内容に改悪するもので、断じて認めることはできませんというふうにまとめて、先生方のお部屋にお配りしております。

 どうぞよろしく慎重に御審議をお願いしたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、緑川参考人にお願いいたします。

緑川参考人 あしなが育英会から奨学金を借りて大学に通っています、神田外語大学四年の緑川冬樹と申します。

 私からは、子供の貧困問題に関してお話しさせていただきます。

 私は、毎年年末に、政府、各党の代表の方々をお招きし、さまざまな要望をしています、遺児と母親の全国大会の実行委員長を務めております。

 私どもあしなが育英会の大学生は、二〇〇九年に子供の貧困率が発表されたことを受け、一五・七%という数字の高さに驚きと危機感を覚えました。そこで、同じ年の年末に行った遺児と母親の全国大会より、子どもの貧困対策法の制定を訴えています。その声を上げたあしながの学生こそ、親を亡くすなどして経済的に苦労した、子供の貧困の当事者に当たります。

 大きなグラフの載った資料をごらんいただきたいんですけれども、その資料の一ページ目、あしなが育英会の奨学金を借りている母子家庭のお母さんの勤労年収は、一九九八年に平均二百一万円あったものが、二〇一〇年には百十三万円と半分近くにまで激減をしています。不況、リーマン・ショックなどで職を失ったり、あるいは給与が削減されたり、疲労や精神的な負担が重なり就労できる状況になくなってしまったことが原因として挙げられます。

 そういった家庭に育ったあしながの学生が、親を亡くした子供たちだけでなく、全ての貧困家庭のためにと立ち上がって三年半がたちました。

 あしなが育英会、遺児と母親の全国大会実行委員会、そして、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークでは、今国会での実効性のある子どもの貧困対策法の制定を目指し、ことし三月二十九日に、各党代表の国会議員の方々にお越しいただき、また、北海道から沖縄まで、全国から二百五十人の遺児家庭の親子や被災地在住の父子家庭のお父さんなどの当事者らが参加し、院内集会を開きました。

 また、資料を一ページめくっていただきまして、二枚目には、先日、五月十八日に行いました代々木公園での市民集会の報告書を載せております。こちらには、五百人の当事者を初めとする参加者と、全党から各党代表の国会議員、そして、あしながの奨学金の第一期生でもあられる下村博文文部科学大臣にもお越しいただき、子どもの貧困対策法の制定を訴えてまいりました。

 皆様のおかげで、ようやくこの法律の制定が現実のものとなるところまでたどり着きました。

 私は、ちょうど二歳のときに、父親を脳溢血で亡くしました。幸いにして、父を亡くすのが余りにも幼いときであったため、父がいないことが当たり前となり、精神的な苦痛は余り多くありませんでした。また、経済的にも、祖父母の協力で何とか大学に四年間通うことができています。ただ、もし一人っ子でなかったらと思うと、大学に通えたかどうかは正直わかりませんし、また、祖父が大学入学を前にし亡くなったことで、入学に必要なお金を賄いながら、祖父の今までの入院費や葬儀代を捻出するのには大変苦労いたしました。

 あしなが育英会が毎年夏に行う遺児を集めた「つどい」というキャンプや家庭訪問調査を通して、私が知り合ってきた遺児の例を挙げますと、両親を亡くし、八十代の祖父母とともに暮らす男子高校生の家庭では、服装や遊びなど、周りの友達に合わせたい、合わせなければ疎外されてしまうとの思いから、高校生としては祖父母に頼らざるを得ず、祖父母としてもなるべく孫の願いをかなえたいと思いつつも、限られた年金や、孫を養うために八十歳を超えても続けざるを得ない自営業の細々とした収入でやりくりするには、非常につらいものがあるとおっしゃっていました。

 日本の子供の貧困が今まで余り取り上げられてこなかったのは、貧しい身なりをすることによっていじめに遭う可能性が高まることを警戒してのことでもあり、見た目には本人も保護者も気を使っているからです。その分、我慢しなければならないことも多くあります。

 遺児や遺児家庭の厳しい実情は、あしなが育英会の調査結果からも明らかです。資料の八ページ目以降に調査結果を載せていますが、二〇一一年のあしなが育英会の調査で、子育てや教育問題について尋ねたところ、洋服や靴などを用意できない、お小遣いが上げられないと回答した方がそれぞれ四五%もいらっしゃいました。

 また、深刻な例では、進学を希望しているにもかかわらず諦めなければならないというケースも珍しくありません。あしなが育英会高校奨学生に進路希望を尋ねた調査結果によると、大学、短大進学を希望する生徒が四〇%と、文部科学省調査での全国平均五四%に比べ一四ポイントも低いことがわかっています。

 あしなが育英会の高校奨学生の就職希望者は二七%と、これも高い数字となっています。その就職希望の理由として、「進学したいが経済的に無理」二八%と、「進学したいが家計を助けなければならない」一二%を合わせると四割に上り、極めて多くの進学希望の遺児高校生が経済的な理由で進学を諦めています。弟や妹がいて、その兄弟のために進学を諦めて就職する高校生が一割も存在しており、また、家計が厳しく、親から就職を懇願される場合もあります。

 さらに、教育費不足は深刻です。近年、教育費不足を訴える母親が急増しており、二〇一〇年に四一%だったものが、二〇一一年には六六%、二〇一二年には七六%と、この二年間で三五ポイントもふえていることがわかります。

 法律の目的にあるとおり、親の収入、つまり、子供の生まれ育った環境で子供の将来の選択肢が限られてしまうことはあってはなりません。貧困の連鎖を断ち切るため一定の収入を得るには、希望する職につくために大学や専門学校を出る必要がある場合も多く、進学の夢がかなわないことには、貧困の連鎖が子や孫の世代にまで続いてしまいます。

 決して遺児家庭の親が怠けているわけではありません。就業中の保護者は七三%、失業中が一〇%、無職が一二%となっています。遺児の保護者の三五%が病気であると回答しており、無職の理由も、体調不良が五六%に上ります。また、就業していても、その雇用形態は五四%が非正規雇用にあり、子供とかかわる時間を保ちつつ、ダブルワーク、トリプルワークをしても稼げない、あるいは、それによって体調を崩し働けなくなってしまうことがあります。

 さて、私たちは、子どもの貧困対策法に対し、四つの要望をしてきました。資料の後ろから二ページ目以降をごらんいただきたいんですけれども、一つ目に、子供の貧困率の削減を挙げています。今回与野党で合意された法案を拝見しましたが、子供の貧困率などの改善と明記されたことは大きな前進であり、重要な記述です。子供の貧困率削減により、子供の貧困解消に向け直接的に効果が上がることを強く期待します。

 二つ目に、当事者参画があります。先ほど挙げたような貧困家庭の事例を数多く見てきた私たち当事者や当事者支援団体だからこそ言えること、子供の貧困対策のための政策に対し具体的に提言できることがあります。今回、法案採決とセットで採択される委員長決議において、会議の場において私たちの意見を酌み取っていただき、子どもの貧困対策大綱を作成するように決議いただけるようで、大変心強く思っております。

 三つ目に、子供の定義を十八歳ではなく就学中にすること。これは、年齢制限をなくしていただいたことで、広く子供たちに支援の手が行くことが期待できます。

 最後に、法律の見直し規定を設けること。これも、五年ごとに法律の見直しをしていくと記載していただき、時代に合わせた実効性のある法律として保っていくことができます。

 以上のように、私たちが要望してきた実効性のある法律のための条件四つをほぼ全て取り入れていただいたことに、心から感謝申し上げます。

 子どもの貧困対策法が制定されれば、この法律を足がかりとして、私たちが遺児と母親の全国大会で訴えてきた問題が解消に近づくと考えています。

 まず、遺族年金や児童扶養手当の支給期間を、現行の十八歳になる年の年度末から、大学や専門学校などの就学中にまで、せめて二十歳まで延長してもらいたい。大学や専門学校に入った一年目が入学金などで最も出費がふえるにもかかわらず、現行制度ではその直前で打ち切られてしまいます。最も出費がふえるタイミングをカバーすることで、進学希望の生徒が大学や専門学校に進学する上でのハードルが低くなります。

 次に、奨学金制度を充実していただきたい。下村文部科学大臣を中心に文部科学省で検討されている給付型奨学金であったり、無利子の奨学金の貸与枠を拡大していただくことによって、大学や専門学校に進学できる子供の数がふえる。つまり、貧困の連鎖を断ち切って、子供の貧困率の削減を図ることができます。

 貧困家庭にとって深刻なのは、医療の問題です。体力的、精神的な疲労により病気がちな親は遺児家庭でも多く、それによって就労に影響が出てしまい、お金がなくて医療が受けられないという悪循環が続いています。現在、地方自治体独自で行っている医療費助成制度などは内容や対象がばらばらであり、これを全国で統一し、子供が就学中、あるいは、せめて二十歳になるまで、お金の心配をすることなく医療を受けられる制度を設けていただきたい。

 そして、なかなか一つの窓口では完結しない各種の生活支援の手続を、一カ所、あるいは支援員によってまとめて行ってもらえる包括的な相談支援事業が、生活困窮者自立支援法によって提供されることになりますが、こういったワンストップサービス、パーソナルサポートサービスが、子供の貧困に悩む家庭には大変重要です。

 そして、今後、私たち当事者、当事者支援団体も、国会議員の方々も、政府も、そして国民のみんなが力を合わせて子供の貧困問題に取り組むことが最も重要です。私たち当事者や当事者支援団体が会議の場に参加させていただき、私たちの意見にぜひ耳を傾けていただきたい。そして、子供の貧困率の改善に向けた施策を一緒に検討させていただきたいと思います。

 ことしをぜひ日本の子供の貧困対策元年とし、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることがない国にしていきましょう。

 以上で終わりとします。ありがとうございます。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、岩村参考人にお願いいたします。

岩村参考人 東京大学の岩村でございます。

 きょうはちょっと電車の人身事故のためにおくれてしまいまして、審議の順序を乱してしまい、大変申しわけございませんでした。

 私は、厚生労働省が平成二十四年の四月に社会保障審議会のもとに設置しました、生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会に参画をいたしまして、部会長代理という形で議論をさせていただきました。この部会では、十二回にわたる活発な議論というものを行いまして、また、現場にも足を運んで実際に支援を受けている方のお話も伺った上で、ことしの一月二十五日に報告書を取りまとめております。

 政府が今回国会に提出いたしました生活困窮者自立支援法案と生活保護法の一部を改正する法律案というものは、この特別部会の報告書に即して、これを具体化するものというふうに理解しております。そこで、ここからは、報告書の内容に沿いつつ、私の意見を申し上げたいと思います。

 今回のこの二つの法律による改革の背景というものには、近年、御承知のように、生活保護の受給者が増加しておりまして、中でも、稼働年齢にある生活保護の受給者の方がふえているということがございます。

 これは実は、生活保護だけで対処できる問題ということではないように思われます。一九九〇年代半ばからの労働市場の変容とそれから世帯構造の変化というものを背景としまして、生活困窮の方がふえてきております。そして、これらの方々が抱える課題というものも多様化し、また複雑化しているところでございます。この生活困窮、さらには社会的な孤立というものは、いわゆる貧困の連鎖ということによって子供たちの未来にも影響を与えるものでもありますし、また、自立への意欲というものを低減させてしまい、さらには地域社会の基盤というものを弱くしてしまうというようなものでございます。

 こうした現在の状況に対応するためには、生活保護制度の改革というものと生活困窮者支援制度というものの導入を一体として行うということが必要と考えられます。そして、こうした考え方は、私の知っているところでは、昨年八月に成立しました社会保障制度改革推進法にも取り入れられているというふうに思っております。

 部会の報告書におきましては、新しい生活支援体系というものの基本的な視点としまして四つを掲げております。一つは自立と尊厳、二つ目がつながりの再構築、三番目が子供そして若者の未来、そして最後四番目が信頼による支え合いというものでございます。また、具体的な形としまして、報告書におきましては、第一に包括的、個別的な支援、第二に早期的、継続的な支援、第三に分権的、創造的な支援というものが必要であるというふうにうたっているところでございます。

 まず、今回の生活困窮者自立支援法案が提唱いたします新しい支援制度というものは、生活に困窮している方々に対して、生活保護に至る前の段階で早期に支援を行うということによって、困窮状態から早期に脱却していただくということを図るものでございます。

 これは、従来、我が国では存在していなかった画期的な制度をつくろうというものでありまして、第二のセーフティーネットというものの強化につながるものと考えております。このため、国と地方公共団体、そして行政と民間といったものが、それぞれの役割のもと、協働して取り組む必要があると思います。

 生活困窮の皆さんというのは、複合的な問題を抱えているということは先ほど申し上げました。このため、新たな相談支援体制というものをつくり、包括的、継続的に生活困窮の方々を支える仕組みということを整えることが必要と考えております。この相談支援では、地域のネットワークや訪問支援というものを通じた生活に困っている方々の早期把握ということが重要であるという意見もございました。

 また、生活保護が必要な方につきましては、適切に保護につなげるということが重要であり、その旨は報告書の中でも記載しているところでございます。

 就労の支援ということについては、これは既存の仕組みの対象にはなりにくいということがございました。そこで、直ちには一般就労が難しい生活に困窮している方々に対して、支援を行うというふうに考えております。有効だと考えられるのは、生活習慣の形成であるとか、社会的能力を身につけるための訓練といったものを含めた就労準備支援事業だというふうに思います。

 また、それでもなお一般就労というのが難しい生活困窮の方々については、支援つき訓練の場としまして、簡易な作業などの機会を提供する中間的就労の場というものをつくって、広げていくということが重要な課題だろうと思います。

 これについては、社会福祉法人やNPO、民間企業の自主事業として考えるべきだという結論を報告書では採用しています。その推進のためには、これからさまざまな形で、ノウハウの提供とか立ち上げの支援、優先購買の仕組み、税制優遇などということを考えていく必要があると思っております。

 離職をした方が次の就職先を探すには、当然ながら、住所というものが必要であります。その意味で、住居の確保というものは重要でありまして、現在実施されている住宅支援給付の制度化というものを報告書では提言しているところです。また、住居がない生活に困窮している方々に対しましては、緊急的、一時的に宿泊の場所、食事の提供などを行う事業というものも必要だということを指摘させていただいております。

 このほか、生活に困窮している方々の生活再建という視点から、資金の貸し付けということとあわせて、家計収支の改善というものも重要であろうというふうに考えたところでありまして、そのためのきめ細やかな家計相談支援が必要だということも、やはり報告書で提言させていただいております。

 特別部会におきましても、先ほど触れました貧困の連鎖の防止ということにつきましては、活発な意見が出されたところでございます。貧困の連鎖を防止するために、義務教育の段階から、生活に困窮している家庭の子供さんたちへの学習の支援といったことを行う事業の実施が必要だというのが報告書の見解であります。

 これは、地方公共団体が地域の実情に応じて実施できるように、社会福祉法人やNPOなども活用できるようにすることが適当であるというふうに考えているところでございます。

 以上が、生活困窮者自立支援についてであります。

 次に、これと一体として考えるべき生活保護制度の見直しについて、述べさせていただきたいと思います。

 生活保護制度については、これまでも国と地方との協議というものが重ねられてきたということを私としても承知しているところでございます。これを踏まえつつ、特別部会におきましても、支援団体、そして自治体などから提示されましたさまざまな御意見というものに留意をしながら、報告書を取りまとめております。

 今般のこの特別部会の報告書が採用する考え方というのは、保護が必要な人には適切な保護を実施するという基本線はきちっと維持をする、その上で、国民の信頼に足るよう、時代の変化に合わせた自立支援の強化や不正受給対策などが必要であるというものであります。

 まず、稼働が可能な方につきましては、保護開始の直後から保護を脱却する後まで、切れ目なく、就労などを通じて積極的に社会に参加できるよう支援を行うことが必要であるという提言を行わせていただいております。

 生活保護を受給されている方々の中には、健康上の課題を抱えて、生活習慣が安定していないというような方も見られるところでございますので、受給者みずからが健康の保持増進に努めてもらうよう促していくということが必要だというのが報告書の考え方でございます。

 また、社会生活を送る上では、みずから家計管理ができるようになることも重要でございますから、受給者の方の家計管理能力の向上に向けた支援ということを行うことが必要であるという提言も、報告書で行わせていただいております。

 生活保護の不正事案というものは、特別部会で私どもが審議をしていた当時は、金額ベースで見ますと、保護費全体の〇・四%という水準でございました。ただ、一部ではあっても、こうした不正事案と言われるものがあることによって、制度全体への信頼というのが損なわれてしまうということが危惧される状況にあるように思います。このため、不正受給対策ということは必要であると考えておりますが、他方で、もちろんのことですけれども、保護が必要な人が保護を受けられなくなる、そういうことがないようにすることも、また当然だと考えております。

 具体的には、福祉事務所の調査権限の強化であるとか、罰則の引き上げ、そして返還金への加算を検討することなどが必要だということを報告書では提言させていただいております。

 また、扶養義務者につきましては、これは御承知のように、生活保護受給の前提となるものではございません。しかしながら、扶養が明らかに可能な場合に扶養を拒否しているようなケースについては、国民の皆様の理解が得られない側面というのもございます。そこで、そうした扶養義務者につきましては、福祉事務所が扶養の困難な理由の説明を求めることが必要である、そういう結論に報告書では至っております。

 ただし、ここの点は、特に私も重要だと思いますけれども、扶養義務者との関係について慎重な考慮が必要であるというような場合があるということでもありますし、また、家族に対しての扶養の照会というものが、生活保護の受給の抑止効果を持つのではないかといった懸念もあるところでございます。そこで、報告書におきましては、この運用については特に慎重に行うべきであるということを明記させていただいております。

 それから、生活保護の医療扶助についてでございます。

 これにつきましては、重複受診などの問題というのも指摘されているところでございます。他方で、しかし、適正化ということが強調され過ぎますと、かえって生活保護を受給する方々の生活というものを脅かすということにもなりかねません。ですので、この点については、両者の適切なバランスをとることが必要であるというふうに考えております。

 このため、特別部会の報告書におきましては、指定医療機関の指定あるいは取り消しの要件の明確化ということや、後発医薬品、いわゆるジェネリックの利用促進などについて取り組むべきという提言を行っているところでございます。

 最後でございますけれども、現在、生活に困窮する方々がふえている、そういう状況を踏まえますと、この特別部会の報告書を踏まえた改革というものは待ったなしだというふうに思っております。今般、国会に提出されておりますこの二つの法案というものは、この改革を実現していくための一体をなすものでございまして、ぜひ速やかに成立させていただきたいと思っているところでございます。

 また、厚生労働省におかれましては、これらの法案が成立いたしました暁には、特別部会の議論に沿った実効的な取り組みが現場で展開されるよう、さらに関係者の方々の意見というものを丁寧に伺って、詳細な運用、適正な運用というものを検討していただきたいということを期待しております。

 以上をもちまして、私の意見の陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより各案及び修正案を一括して参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子さん。

西川(京)委員 自由民主党の西川京子でございます。

 きょうは、参考人の諸先生方、本当にそれぞれお忙しい中をお時間を割いていただいて、我々にそれぞれのお立場での御意見を頂戴いたしました。本当にありがとうございます。それぞれのお立場からの意見で、聞いていて、それぞれに、なるほどと思うことが多々ありました。そして、やはりそれだけに、それぞれの立場によってまた違う視点での切り口、いろいろと大変参考になりました。ありがとうございました。

 まず、私ども、現実にいろいろな事件が起きている中で、今回の生活保護法の見直し、生活困窮者自立支援法案、そして子どもの貧困対策の推進に関する法律案、これをそれぞれ今国会で何としても成立させたい、そういう思いで今回出させていただいたわけです。少しでもやはり、現実に、それぞれの分野の、それぞれの立場の方々のお気持ちを反映した、それで、なおかつ、国としてきちんとした一線を守る、その法律をつくるためにはどうしたらいいか、そういう立場で今回この法案を出させていただいたと思っております。

 憲法二十五条に、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と。この言葉が、生活保護の根底に一つの論拠としてあるわけですが、この条文に関して、私は、ある意味では非常に能動的に捉えております。多分それは、自由主義的な権利というんでしょうか、非常に、自立する、少なくとも自分でできることは最低限自分で努力した中で自分の人生を全うしたい、それが、ある意味では最低限度の生活を営む権利を有するということの根拠ではないか、基本的にはそういう思いで書かれたものではないか、そういう思いを持っております。

 ただし、それはそれとして、やはり本人に選ぶ権利がない、例えば、緑川さんのように小さいときにお父様を亡くされて、経済的に大変厳しい中で生まれてしまった、そういう自分が選ぶ権利がない環境で育てられた方、あるいは、病気や障害や、それぞれ自分ではどうしようもない状況の中でそういう環境になった方、そういう人たちに対しては、きちんと国が保障しなければいけない。

 この二つの考え方で成り立っているような気がいたしますが、憲法二十五条に関してのそれぞれの御所見を、手短に、それぞれの先生に一言ずつ言っていただきたいなと思いますので、御発言順によろしくお願いします。

岩村参考人 岩村でございます。

 大変難しいお尋ねでございますが、おっしゃるとおり、まず第一に、憲法二十五条、とりわけ第一項というのは、国民に対しまして最低限度の文化的な生活というものを保障する責務というのを国に課しているところでございます。したがいまして、それを具体的に実現する形で生活保護法というものが定められているところであります。

 最低限度の生活といった場合にも、当然のことながら、人によって、いろいろな状況の中でそういう生活状況に置かれるということもございますので、もちろん、努力が可能な方については努力を求めるということはできるかというふうに思いますけれども、そうでない方々も多くいらっしゃるというところをしっかりと受けとめていくというのも、やはり憲法二十五条一項の中で言われていることなのかなというふうに理解しているところでございます。

稲葉参考人 憲法二十五条について、自助、共助、公助ということが言われておりますが、私の考えでは、自助や共助ということを強調する余り、公助、国による生存権保障というのが後退するということはあってはならないというふうに考えております。

 最近、非常に気になっているのは、地縁、血縁で支え合いなさいと。これは、北九州市で生活保護の追い返しによって餓死事件が発生したときに、当時の市長さんも、これからは地域のつながりを大切にしていくというふうにおっしゃっていましたけれども、そこではないのではないかと。本来、やはり国として命を支えていく、生存権を支えていくということが一番求められる。特に、政治に携わる皆さんには、そこをまず、国の責任というものを考えていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

玄田参考人 最低限の文化的生活を支えるさまざまな要素の中で、経済的なもの、文化的なものに加えて、近年では、やはり人とのつながりの中で生まれる自由が今改めて問われているのではないか。

 先ほど申し上げた孤立無業者は、地縁、血縁を超えた人とのつながりというのは全く持っていない。やはり、人とのつながりの中で、みずからが選ぶべき自由、選択がなされるということを考えると、現代では、最低限の文化的生活を支えるものとして、広い意味での個人と個人とのつながりというものが改めて問い直されているのではないかなというふうに考えております。

 以上です。

樋口参考人 憲法二十五条に言います最低限度の文化的生活の保障ということで、具体的には、生活保護はセーフティーネットとして非常に重要な役割を担っているものだと思っております。そういう意味で、生活保護につきましては、本当に、真に受けなくてはならない人が受けられないということは、あってはならないことだと思っております。

 ただ、現場を抱える立場からしますと、やはり、就労なり収入を隠していたり、預貯金を隠していたりという部分が全くないわけではないという部分もございます。その辺をきちんと調査しませんと、やはり、地域の方、市民の方からの信頼を損なって、行政としての信用を損なうという部分があります。

 その辺のバランスが非常に難しいものだと思っておりますが、改めて申し上げますけれども、生活保護を受けなければならない方が受けることができないということは、あってはならないものだと思っております。

 以上でございます。

緑川参考人 私は、子供の立場から申し上げたいと思います。

 やはり、特に子供に関して言えば、頑張りたくても頑張れない環境にある、それこそ、親の収入によって、どうしても頑張ることができない環境にあるという子供たちも数多くいます。なので、せめて子供に関しては、自助ではなく、社会で支えていく。どうあがいても頑張ることができない環境においては、少なくとも頑張ることができるレベルにまで、国が、社会が支えていくということが非常に大事だと考えております。

 以上です。

朝日参考人 素人ではございますが、憲法二十五条第一項については、労働科学研究所の理事長をやっていた、先ほど、証言をしたというところの研究所の理事長ですが、森戸辰男が、これは鈴木安蔵の憲法研究会のメンバーの一員だそうですが、この衆議院の特別委員会で、当時、秘密会議だったそうですが、十三回にわたって討論をして、あの第一項を挿入した。そのときの主たる意見は、国がやるということが第二項に書いてあっても、国民が要求して、声を出していく根拠がなければそれが実現できないから、この第一項が要るんだということが最後に認められて挿入されたというふうに、これはNHKの調査結果でも明らかになっているわけであります。

 その第一項に基づいて生活保護法が五〇年に新法になるときに、当時の厚生省が第一次案として法律を出された中には、最低生活費は国民の平均的生活水準を標準としという文言が挿入されたそうです。それほど当時の厚生省の方々の思いは熱かったというふうに思っております。

 ありがとうございます。

西川(京)委員 ありがとうございました。それぞれに、それぞれの思いのこもった御意見を頂戴いたしました。

 それでは、これからちょっと個別にアドバイスを頂戴したいと思います。

 まず、玄田先生に。

 先生のお書きになったものをちょっと読ませていただいて、大変聞きなれない言葉で、孤立無業者、英語の頭文字をとってスネップというそうです。大変不勉強で恐縮ですが、初めて聞きました。申しわけありません。

 この中で、孤立無業者が大変多くなっているという中で、現在、要は、稼働力がありながら、引きこもり、それで職業についていない二十歳から五十九歳まで、百六十二万人がいる、非正規の雇用の若者のフリーターが百七十六万人いる中で、この孤立無業者という人とフリーターとの違い、その辺、もしよかったら。

 それともう一つ。この人たちをいわば少しでも前向きに社会復帰させるには、今回、私たちも、要は、生活保護に関しては、いわば基礎年金と生活保護費とのアンバランス、さまざまな国民的な御批判もありました。その中で見直しという一つの方向性が少し出てきたわけですが、それとともに、生活困窮者自立支援、これがまず大事だろうと。その意味では、生活保護の見直しと生活困窮者自立支援というのは、二つセットで理解していただかないと困るんですね。

 そういう中で、生活困窮者自立支援の一つの大きな目玉になるような、先生のそういうお考えだと思うんですが、このスネップという人の対策として、非常に上手におせっかいをする人たち、そのお世話をする人たちが必要だという、その辺のところをちょっと詳しくお話を聞かせてください。

玄田参考人 まず、冒頭の御質問でありましたフリーターとスネップの違いですが、最も大きな違いは、フリーターは非正規という形、やはり、就業している、働いているということが一番大きな点でありまして、スネップの場合には、全く働いていない。しかも、調べてみますと、数カ月とか数日とか短期間ではなく、かなり、一年もしくはそれを超えた、もっと言えば、今まで全く働いた経験がないという方がスネップの中にはたくさん多く含まれているわけであります。

 ただ、スネップからまさに就労、自立に行くためには、実は、これもなかなか誤解されるケースが多いんですが、フリーターを正当化するわけではないですが、ある意味、スネップからフリーターを経験し、フリーターで経験を積む中で正社員へとつなげていくというふうな形になることが一番望ましいというふうに考えているわけであります。

 そういう面では、フリーターもふえることは必ずしも社会の安定化からすると望ましいものではないわけですけれども、やはり、まずは、就業の一歩を踏み出すことの必要性がさらに高いのがスネップであるということになろうかと思っています。

 二つ目の御質問に関して、上手なおせっかいと申しますと、スネップの場合には、まさに文字どおり、社会的な引きこもりというような、家の中に閉じこもっているケースもあれば、実は、何気なく社会生活をしていながらも、実際には家族以外に全く接触がない、まさに家族の中で閉じているケースというのが多々ございます。

 しかも、家族が、決して十分な経済的な余力があり、また就業に関する知識を蓄えている場合ばかりではなく、まさに家族からも十分な支援を得られていない、そういうケースで家族だけで何とかしようとすることは、決してスネップの自立支援にとって望ましくないとすれば、やはり、上手に家族またスネップ本人に寄り添い、話を聞き、しかるべき相談の場所ですとか、きょうお話のあった訓練の場所に誘導していく、それが可能となる人材というのがなければ、どれだけ訓練の場所、就業の場所があったとしても、そこへ踏み出すことができない。

 まさに、その非常に難しい緊張感のある孤立無業者、その家族を一歩前に踏み出す後押しをすることが、おせっかいのできる支援者である。それが今大変必要になっている。それが今回法改正とともにセットであれば、非常に大きな効果を発揮するだろうというふうに考えております。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 続きまして、埼玉県の樋口様にちょっとお伺いさせていただきます。

 高校中退者の予防、あるいは高校進学ができない子供たちを何とか支援しようということで、大変印象に残ったのが就学支援の話で、先生のOBや学生のボランティアその他で協力して、子供たちにマンツーマンで学力向上に寄与して、進学率が八七%だったのが九七%、一般と変わらなくなった。大変すばらしいことだと思うんですね。

 貧困の連鎖を食いとめる、これは、子供が何としても自分の人生に対する前向きな姿勢を担保する、その根拠として、やはり高校ぐらいはどんなことをしてでも出た方がいい、私もそう思いますので、大変効果的な支援だと思います。

 その中で、民間企業の就労支援、いろいろ民間企業が協力してくださっているそうですが、就労支援に協力してくれる民間企業をどうやって探されたのか。その辺のところを、私の質問時間は終わりましたので、手短にお答えいただけたらありがたいと思います。

樋口参考人 ただいまいただきました民間企業の支援先の関係でございますけれども、実はこちらの方の事業については、教育支援、就労支援、住宅支援と、それぞれ団体の方に委託をして事業をさせていただいております。

 特に就労支援の関係については、NPO法人のワーカーズコープというところに事業の方を委託しておりますが、そちらの法人さんの方がかなりそういう形で人脈をお持ちになって、そちらの方を活用させていただいております。

 以上です。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 その他の参考人の先生方、本当にいろいろ質問したかったんですが、大変申しわけありません。

 特に稲葉さん、国の方から積極的に国民の最低限度の生活を支援する、いわば義務があると。きずなとか、人間的、お互いの助け合いで少しでも頑張っていこうという考えといわば反対の立場、反対までは言い過ぎかもしれませんが、お立場の意見だったと思うんですね。

 そういう中で、やはり私は、そういう意見も踏まえて、今回の埼玉県の教育、就労、住宅支援、三本柱が連動して、非常に効果的に、なおかつ、それぞれの地域の、また一生懸命ボランティアをする方も、実は思いをいただくところがあると思うんですね。

 社会全体できずなが深まっていくこと、これは国の方も、稲葉さんたちの思いも踏まえてしっかり、国の方もそこに参加することによって、より三者が一体化したきずなが深まる。これが多分、解決の鍵のような気がいたしました。

 本当に、それぞれの先生方、貴重な御意見ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

松本委員長 次に、山井和則君。

山井委員 参考人の方々、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。お一人お一人の参考人の方々のお話、本当に切実かつ重要な御指摘でありまして、しっかり肝に銘じさせていただきたいと思います。

 それでは、全員に質問したいところでありますが、順番に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、自立生活サポートセンター・もやい理事長の稲葉さん。本当に、ホームレスの方々あるいは生活困窮の方々を、日々ずっと相談に乗っておられて支えておられる、そういう人生を送っておられることに対して、私も非常に尊敬をしております。

 そこで、今回、稲葉さんのお話で私も非常にショックを受けましたのは、配付資料の何ページ目ですか、白石区で姉妹の方々が凍死あるいは餓死で亡くなられたケースの方の面接受付票であります。

 一回目、平成二十二年六月一日、非常に困窮して行ったけれども、急迫状態の判断、聴取に至らず。

 それで、二回目の平成二十三年の四月一日、再び行ったけれども、このときは非常用のパン十四缶、七日分掛ける一食、二人。一日一食、パンを二人で十四缶渡して、「食料確保により生活可能であるとして、生活保護相談に至らず退室。」それで、急迫状態、現金保有千円。ライフライン停止・滞納、滞納あり。制度の説明、未実施。生活保護の申請の意思、なし。

 それで、最後が二十三年六月三十日、「保護の要件である、懸命なる求職活動を伝えた。」現金保有、残り少ない。ライフライン、聴取に至らず。制度の説明はしたけれども、保護のしおりは未配付。生活保護の申請の意思、なしということなんです。

 この資料を見て、この後にもう凍死と餓死で亡くなってしまわれたわけなんですけれども、この面接資料について、稲葉さん、改めてどう思われますか。

稲葉参考人 ありがとうございます。

 特に三回目の、死に至る一番最後の面接のときの記録が、気になる記述が多いんですけれども、面接記録の中で、「高額家賃について教示。保護の要件である、懸命なる求職活動を伝えた。」とあります。

 高額家賃といいますのは、生活保護で決められている住宅扶助の金額を上回っているアパートにこのお二人が暮らしていらっしゃったということを指しているんだと思いますけれども、住宅扶助の基準を上回っているところに住んでいたとしても、まず、そこで生活保護を適用して、その後、家賃の低いところに転宅を指導するというのが本来のやり方です。

 ただ、最近も私、こうした相談に乗ったんですけれども、家賃が高い、住宅扶助の基準より高いということをもって、あなたは生活保護を受けられませんよという誤った説明をしている福祉事務所がたくさんあります。

 また、求職活動についても同様でして、働ける能力のある方は仕事を探すというのが義務ではあるんですけれども、こうした状況、本当に所持金もないような状況の中で、求職活動自体が困難な状況ですから、それに対して、働きなさいと懸命なる求職活動を伝えたというのは、明らかに違法な追い返しであろうというふうに思っております。

 今度の生活保護法の改正案の中で、二十四条一項、二項で私たちが一番懸念しているのはその部分です。修正はなされましたが、多くの場合、申請書というのが福祉の窓口に置いていないんですね。相談者が手にとれるところに置いていない。全国の福祉事務所で、申請書が相談者の手にとれるところに設置してあるのは、わずか数カ所だというふうに聞いております。

 多くの場合は、申請書を出してくれないという形で追い返す、相談したという形で追い返すということが行われていて、そうした状況の中で、今回、条文は修正されましたけれども、私たちが懸念しているのは、厚生労働省は今までとやり方は変わらないというふうに言っているんですけれども、それならば、きちんとやはり口頭での申請は認めて、申請書の提出がおくれたとしても、役所側が出してくれなかったりして提出がおくれたりとか申請書を出せなかったりしても、きちんと申請の意思表示があったことをもって申請とみなすということが重要だというふうに思っております。

 あと、二十四条の二項では添付書類についても書かれていますけれども、これもやはり添付書類を最初に出さなくちゃいけないということになると追い返しになりますから、これはもちろん、添付書類については申請後でよいということを確認していただきたいと思いますし、申請書や添付書類が何らかの事情によって出すことができなかった場合でも、それをもって却下をするということは絶対あってはならない。

 そうした点をきちんと国会の審議の中で、既に議論はされていますけれども、きちんと確認をして、違法な追い返しを根絶していただくようお願いしたいというふうに思っております。

山井委員 これは本当に、三回も行ったけれども、十分な対応がしてもらえず、妹さんが知的障害者で亡くなってしまわれた、余りにも痛ましいと言わざるを得ないと思います。

 もちろん、不正受給は厳しく取り締まらねばならない、それはもう当然です。先ほど埼玉県の代表の方もおっしゃってくださいましたけれども、そういうものがなければ生活保護制度の国民の理解と信頼は得られないと思います。

 ただ、一方では、逆に、こういうふうに何度窮状を訴えても受け付けてもらえず、餓死されてしまう、凍死されてしまうということになれば、日本という国は本当に先進国なのか、文明国なのか、どんな国なんだということになってしまうと思います。

 先ほど稲葉さんからも、今回、大阪でお母さんとお子さんが餓死であろうという形でお亡くなりになられた。その方も、一度は生活保護の窓口に行かれていたけれども、なぜかその直前には行政に支援の手を、援助の手を相談に行くことがなかったわけなんですね。

 そういう意味では、不正受給は厳しく取り締まるけれども、本当に困っている方々は、本当に、今、稲葉さんがおっしゃったように、申請書が窓口に置いてあるなり、確実に生活保護という命綱を握ることができるような制度にしていかねばならないと強く感じます。

 次に、緑川さんにお伺いしたいと思います。

 今回、子どもの貧困対策法を三年半前からずっと要望を続けられたわけですけれども、先ほどの御自分の御経験、またお母さんの思い等々をお聞きして、私も非常に胸に迫るものを感じました。今までこういう運動を地道にあしなが育英会としてされてきて、一番、国会議員あるいは政府の人たちにわかってほしいこと、なかなかわかってもらえなくてつらいというふうに思っていること、そういうことがあればお聞かせ願いたいと思います。

緑川参考人 なかなかわかっていただけないことというのを申し上げますと、やはり、子供の相対的貧困というのはなかなか見えにくいというのがあります。

 今、私の服装を見ていただいても、本当にごく一般のスーツを着ていると思うんですけれども、このように、例えば就職活動をするときにはちゃんと就職活動用のスーツを買わなければなりませんし、小学校、中学校、高校、大学と進んでいくに当たって、友達づき合いをする上で、やはり、私服に関しても制服に関しても、一般の、ほかの家庭に育った子供たちと同じような身なりをしていかなければ、それでいじめに遭う可能性がどうしても高くなってしまいます。

 そういったことから、先ほども申し上げましたように、身なりにはすごく気を使っているのが実情でして、見た目ではなかなかわからないというのが一つあります。

 なので、私もここ最近新聞の記者の方からも取材を受けますが、やはり、どの方も貧困が見えにくいというふうにおっしゃっていて、そこは、その分苦労しているところがあるんだというところをぜひ御理解いただきたいと思います。

 以上です。

山井委員 緑川さんに改めてお伺いしたいんですが、今回、子どもの貧困対策法が成立する見込みになりつつあります。これは、名前は子どもの貧困対策法なんですけれども、間接的に応援しているのは、一人親世帯のお母さんであり、お父さんでもあるんですね。誰よりも子供たちを愛し、子供たちの未来を願っているのは、お母さんであり、お父さんであると思います。

 そういう意味では、本当に御苦労して、緑川さんのお母さんもここまで緑川さんをお育てになられたと思いますし、あしながの育英会で出会われた全国の一人親世帯のお母さんやお父さんに対して、今言いたいことがあったらお聞かせください。

緑川参考人 この子どもの貧困対策法ができてすぐ状況が改善するというわけではありませんし、現に、私たち今大学生でこういった運動をしていますけれども、この大学生にすぐ利益があるかといえば、そういうわけではないと思うんです。

 ただ、今まで、このあしなが運動というのは、過去四十年以上にわたって、自分たちの後輩の遺児のためにというように活動してきた背景がありまして、今回も、同じように、私たちの後輩のためにという思いでやっているところも多くあります。

 なので、今、小さな子供さんを育てられている一人親家庭の方ですとか、あるいは、今は普通に生活をしていても、ある日突然パートナーの方を亡くされてしまう可能性も十二分にありますので、そういった意味では、今後、貧困家庭になってしまうかもしれない方々のための法律でもあり、今そういった状況にある方にとっては非常に勇気になる材料になるのかなと思いますので、ぜひ、諦めないで、この法律ができることによって前を向いて歩いていただきたいというふうに考えています。

 以上です。

山井委員 これは三年半前からあしながの方々が運動をされて要望され続けてきたわけで、これはあしなが法案とも言えると思うんですが、まさにあしながの方々だけにとってではなく、多くの貧困家庭の子供たち、そして一人親家庭のお父さん、お母さんに光を当てる法案にぜひしていかねばならないと思っております。

 稲葉さんへの質問に戻らせていただきますが、日本社会の中の一番大変なホームレスや生活困窮者の方々を支援する現場で働いておられる立場から、政府や国会議員にこの際訴えたいことがあれば、お願いいたします。

稲葉参考人 ありがとうございます。

 私が懸念していることの一つといたしまして、今回の生活保護法改正案に盛り込まれている扶養義務の強化というのが、先ほどから話が出ている貧困の世代間連鎖をむしろ助長してしまうのではないか、子どもの貧困対策法の理念と矛盾しているんじゃないかということを心配しております。

 埼玉県の生活保護世帯の子供たちへの学習支援の話がありました。私も埼玉大学で教鞭をとっておりまして、学生にもボランティアに行ってもらっています。そうした各自治体で行われている学習支援によって、生活保護世帯の子供たちの高校進学率が上がる、そして子供の貧困対策が進んで給付型の奨学金が充実してきますと、大学進学への道も開けてくることになります。

 ただ、その時点で、生活保護世帯からは抜けてお子さんが一人で大学に進学する、別世帯になるわけですね。その後、そうした支援策がうまくいった結果として、そのお子さんたちが大人になって、若者になって、経済的に自立することになります。

 それ自体はすばらしいことだというふうに私は思っておりますが、ここで生活保護において扶養義務ということが強調されてしまいますと、親御さんはどんどん年をとっていくわけですよ。そうすると、親御さんたちは生活保護から抜けられないということになります。そうすると、そのお子さんが幾ら経済的にひとり立ちをしても、ずっと、親の扶養をしろ、親の扶養をしろというふうに福祉事務所から言われ続けることになってしまうわけです。

 これは一番懸念している状況でして、今回、三つの法案が一緒に審議されているわけでありますけれども、その中に実は矛盾があるのではないかということをぜひこの国会でも審議していただきたいというふうに思っております。

 あと、政府そして国会議員の皆様にお願いしたいのは、どうしても、生活保護に関する報道、一般の方々の捉え方というのが、不正受給、先ほども金額ベースでは非常に少ないという話がありました、〇・四%、〇・五%しかない不正受給が殊さら大きく取り上げられてしまう、マイナスイメージばかりが広がってしまう。それによって、必要な方が申請抑制をしてしまうということが起こっております。

 政府、各自治体におかれましては、きちんとやはり正確な知識を持って生活保護制度に対する広報をしていただきたい。生活に困ったらこういうすばらしい制度が日本にはあるんだよということをきちんと広報していただきたいというふうに思いますし、各国会議員の皆様、マスメディアの皆様にも、生活保護制度に対する正しい知識と、プラスのイメージ、肯定的な形でもってこの制度をきちんと広く知らしめていただきたい。必要な方に届くように、孤立したまま亡くなる方がいないように、必要な知識を広めていただきたいということを切に願っております。

山井委員 時間が来ましたので、残念ながらほかの参考人の方々に御質問できなかったことをおわびを申し上げたいと思います。

 最後になりますが、稲葉さんもおっしゃったように、今回の三本の法案、これは、不正受給は厳しく取り締まってなくしていくけれども、逆に、必要な人にとってはより受けやすく、やはり、この文明国日本で全ての人間が生き続けられる、そういう社会にしていくための大きな一歩となる法改正になるように、私たち国会議員も頑張ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 今御意見を賜った参考人の皆様方のお話、大変参考になりましたし、また、本日の午後の審議にもしっかり生かしてまいりたいと思います。

 それぞれの方に、それぞれ別の観点でお伺いをしたいのですが、まず、岩村参考人からです。

 まさに、今回の二つの法案のこれまでの検討の経過を御紹介いただいて、特に、先生が、生活困窮者に光を当てられた、特に第二のセーフティーネットについては画期的な内容、そして、その背景には、やはり生活困窮の課題が多様化、複雑化している、こういう御紹介をいただいて、私も全く同感でございます。

 生活保護も、生活保護の制度をしっかりと維持、運用していく、これも大事でございますが、やはり、日本は、失業するとその先に生活保護制度しか事実上ない、こういう非常にいびつな制度になっていた中で、初めて、就労と生活保護の間に、雇用保険という第一のセーフティーネットに次ぐ第二のセーフティーネットについて審議会での御審議をいただいたこと、改めて感謝を申し上げたいと思います。

 一方で、最近の報道ぶりを見ますと、生活保護について、特に口頭申請を容認するとか、さまざまな条文の修正をめぐっての報道が先行をしているように思います。また、国民の皆様の実態についても、いわゆる不正受給、極端な不正受給が喧伝されたり、あるいは、大変残念ながら、生活保護を受けるべき方が受けられなかった事案が非常に取り沙汰をされて、そして、受給されている方と受給されていない方、負担をしている方と給付を受けていらっしゃる方の、ある種の社会的な亀裂が報道を通して広がってしまうような印象を私は受けています。

 そういった意味で、岩村先生の方で、今、最近のこの二つの法案をめぐる報道ぶりについて、もしお感じになるところがあられましたら、おっしゃっていただければと思います。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

岩村参考人 私は、先ほど自分自身の意見陳述の中でも申し上げましたように、生活保護を受けるべき人がきちっと生活保護が受けられるということは非常に重要なことだというふうに考えております。

 その意味で、残念ながら、ごく限られた方ではありますけれども、不正事案というようなことがあって、それが大きく報道されてしまう、そうなると、どうしても国民の皆様の関心というのがそちらの方に行ってしまうということに対しては、率直に言いますと、かなり危惧を持っております。

 そういったことは、そういった心ない方々の行動のために、本来、生活保護を必要としている方が受けられなくなってしまうということが起きることがないよう、そういう意味では、節度を持った適正な情報の提供なりということが必要ではないかというふうに思っているところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 まさに私も、そういう観点で、国会審議では、個々の事例についてももちろん承知をしてやっていかないといけないとは思いますが、やはり制度全体、特に、雇用保険、第一のセーフティーネットと、第二のセーフティーネット、そして生活保護、その全体の中でどうやって国民の皆様の厚生を高めていくか、この点が本当に大事だと思っております。

 稲葉参考人にもお伺いしますが、ちょっと順番を変えて、先に玄田参考人にお伺いをしたいんです。

 先生が、御提言というか、実態をスネップという形で明らかにされた。特に私がきょう伺って思いましたのは、金銭的な問題だけじゃなくて、先ほどもおっしゃったように、人間関係の貧困、特にスネップと呼ばれる方々は、人間関係が地縁、血縁以外にない、まさに、つながりの貧困、人間関係の貧困だと思います。

 そういう方々にこれから福祉がアプローチしていく、あるいは雇用政策がアプローチしていくときに、先生がきょう、アウトリーチあるいは支援者支援ということをおっしゃいました。大変重要な概念だと思います。この二つについて、そんなに時間はありませんけれども、もし補足いただけることがありましたら、お願いをいたしたいと思います。

玄田参考人 支援者支援、アウトリーチを広げていくためには、恐らく、自立の困難度に関するある種の定義づけ、ランクという言葉が適正だと思いませんが、非常に困難度が高い方、ある程度の支援によって比較的自立につながる方のやはり条件づけをしていかなければ、うまいアウトリーチや支援者支援というのはできないのではないか。

 病気は全て苦しい病気ではありますけれども、その中で、大変時間もお金もかかる病気から、比較的簡単に治る病気もあるのと同じように、自立の困難度に関する、やはりそこにバリエーションがあるということを踏まえ、それを国が適正な基準をつくっていくことによって、支援者支援、アウトリーチの環境整備が進んでいくのではないかな、そのように考えております。

足立委員 ありがとうございます。

 御提言いただいたこの二つの概念は、本当に、今の行政に必ずしも日本では十分に定着をしておらない観点だと思いますので、我々もよくそこに注意をしてやってまいりたいと思います。

 稲葉参考人に、きょう伺ったお話は、ちょっと私が聞き漏らしていたらあれですが、比較的、生活保護の話が中心だったように思います。

 さまざまな活動をされておられるお立場から、今、玄田先生がおっしゃったような、こういうアウトリーチとかあるいは支援者支援といったお話について、稲葉参考人の方で、もし、お考え、お感じになることが何かございましたら、コメントをいただければと思います。

稲葉参考人 私たちが対象にしているのは生活に困窮されている方々ということなので、玄田先生のお話とはちょっと若干、アウトリーチといってもずれるかもしれませんが、私たちの活動の中で、実際に困っている方に必要な情報を届けるということは、随時やっております。路上での夜回りもそうですし、あるいはインターネットを通しての情報発信等をやっているところであります。

 そうした中で、例えば、私たちの団体では、生活保護受給者の方を中心に、自家焙煎でコーヒーの焙煎を行って、それを販売して仕事にするということを行っています。ただ、皆様、御高齢だったり障害をお持ちの方が多いので、できる分だけ働いて、足りない分は生活保護で補ってもらう、いわゆる半福祉半就労というふうな形で行っておりまして、そうしたことはほかの団体でも広く行われているかと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 同じく、このアウトリーチについては、きょう、樋口参考人の方からも、お取り組みの内容について、待つのではなくて手を伸ばす支援だということで、まさに玄田先生のお言葉を引かれて、アウトリーチをやっているんだ、こういうお話をいただきました。

 ぜひ、アウトリーチ、どのようなお取り組みをされているか、簡潔で結構ですので、御紹介をいただければと思います。

樋口参考人 それぞれの支援がございますけれども、例えば、就労支援なり住宅支援なりにつきまして、市のケースワーカーとともに、事業を委託しております団体の職員が一緒に生活保護受給者のお宅をお伺いし、一緒になって就労訓練に立ち会ったり、または、住宅のいろいろな相談のために、一緒に不動産屋さんに行って物件を探したり、そういうような形をやらせていただいております。

足立委員 ありがとうございます。

 次いで、朝日参考人と緑川参考人に、同じ御質問をお願いしたいんです。

 きょういただきましたお話で、朝日参考人には大変貴重な資料を提供いただいて、数字を交えて、非常に説得力のある、これまでの経緯も含めて御紹介をいただいているかと思います。

 非常に数字がたくさん並んでいるんですが、これから、この分野で我々が貧困と闘っていく上で、政治行政が目標とすべき数字というか、あるいは何を目標にすべきか。それは、数値なのか何なのか。その辺、政治行政が掲げるべき目標について、もし御意見があったら伺いたいんです。

 それを伺う背景は、緑川参考人のお話でも、御提言の最後のページに、「「子どもの貧困対策基本法」の制定を」ということで、そこで改めて、貧困率削減数値目標をちゃんと設定するんだ、こういう御提言をいただいていますので。一方で、この委員会でも目標については大議論があります、与党、野党でえらい議論になっていますので、この目標について、両先生からお願いをできればと思います。

緑川参考人 今先生がおっしゃっていましたように、私ども、あしながの大学生は、遺児と母親の全国大会で、二〇〇九年から、子供の貧困対策、当時は基本法の制定を訴えてまいりました。その中で、具体的な数値目標を入れてくださいということを当時提言しておりました。

 ですから、今回の与野党で合意された法案には、先ほども申し上げましたように、具体的に子供の貧困率等の指標の改善を図るということで記載していただいたことは非常に重要な記述だ、大きな前進だと考えております。

 政策を行っていく上で、そういった指標というものが、どうしても物差しが必要になってくると思いますので、その物差しとして非常に有効だと考えております。

 以上です。

朝日参考人 御質問ありがとうございます。

 当面の方法として、福祉事務所にケースワーカーの方が、保護を必要とする人に対して非常に少ないですね。法令では八十対一になっているのが、今はもう百人を超えている。やはりここに、生活援助とか、言葉をかえれば指導とかいうものが欠ける状態が、いわゆる先ほどの不正とかという形にもなってあらわれていると思うわけです。本当に保護が必要な人が受けられない状態。

 だから、私は、いろいろお考えになってくださっているけれども、ワーカーをふやしてほしいということが第一。

 それから、デンマークやスウェーデンに行ったときに、病院のお医者さんたちを見ると、女性の方がもう圧倒的に多い。なぜこんなに、あれは看護師さんですかと質問したら、あれはみんなお医者さんですと。なぜ女性が多いか。女性の方が頭がいいからだ、費用がかからないで、大学、医科大学でも、みんな無料で行けるからです、こういうお話なんです。

 私も学校に進学するのに大変惨めな思いをしましたけれども、先ほどの資料の冒頭、「要望一」に、「「高校・大学奨学金制度」の新設」とありますが、ここはぜひ御検討を加えてほしい。

 そして、もう一つは、住宅。北欧の国では、住宅で困っている人は一人もいないというような状況であります。この点をお願い申し上げたいと思っています。

足立委員 ありがとうございます。

 それぞれの参考人の方に御意見を賜りました。それぞれ、お答えをよくかみしめてやってまいりたいと思います。

 最後に、一言だけ申し上げたいと思うんですが、先ほど、冒頭申し上げましたように、私、この委員会での審議は、若干、やはり生活保護に偏っていると思っているんですね。

 先ほど委員長もおっしゃられたと思いますが、今回、二つの法案があり、また、子供の貧困もある。

 岩村先生がおっしゃられたように、この生活保護の問題というのは、不正受給をどうやって解決していくのかという問題と、本来受けるべき方がどうやって本当にその網から漏れることなくお支えをできるか、この二つのテーマがあるんですね。前者は、やはり、財源がかかることですから、国民の信頼が必要だ。この国民の信頼と、受けるべき方がしっかりと受ける、この間でのバランスと岩村先生がおっしゃった点が最も重要だと思っています。

 そういう観点でいうと、この委員会においても、余り生活保護の条文が云々ということばかりに政治的なエネルギーを注ぐのではなくて、むしろ、第二のセーフティーネット、今回の法案でいえば生活困窮者自立支援のあり方にもっともっと政治的なエネルギーを注いで、かつて若者自立・挑戦プランのときに政府全体がフリーター対策に、あるいはニート対策にリソースを割いていったときと同じように、今回もこの生活困窮者自立支援にもっと政治的なエネルギーを注ぐべきであると私は考えておりますので、その点、いただいた御意見に対する一応私の考えということで申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

西川(京)委員長代理 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、現場の視点での貴重な参考人の皆様の御意見、本当にありがとうございました。

 先ほどの遺児と母親の全国大会実行委員長の緑川さん、すばらしいですね、その若さで落ちついた答弁、本当に感動いたしました。どうもありがとうございます。

 さて、現在、生活保護の受給者は年々増加をしている。さらに、非正規雇用労働者や年収二百万円以下の世帯も増加をしている。先ほどの緑川さんのこの資料からも、まさに、一九九八年、遺児の母親の年収が二百一万円だったものが、二〇一〇年には百十三万円と、非常に厳しい状況。それと並行してというか、この状況の中で、就学援助、いわゆる給食費や学用品などの援助を受けている受給者数が八十三万人から百五十五万人に増加をしている、こういった状況でございました。

 まさに、このような状況の中で、今、生活保護世帯のうちの約二五%が世帯主が生活保護出身というか生活保護を受けている、そういったいわゆる貧困の連鎖と呼ばれる状況があるわけでございます。

 まさに、私たちは、この貧困の連鎖をしっかりと断ち切っていく、そして、皆さんが持っている夢あるいは可能性を大きく伸ばしていける、そういった社会を開いていかなければいけない、このように、私たち公明党も全議員が一丸となって取り組ませていただいているところでございます。

 そのような中、今回の生活困窮者自立支援法の中にも、こういった子供の貧困の連鎖を断ち切る視点、さらに、二十五年度の予算にも、社会的な居場所づくりの支援事業の強化、そういった視点でも盛り込ませていただいているところでございます。

 これが一つのゴールではなくスタート、そのような思いでしっかり取り組んでいきたいと思っております。

 そんな視点の中で、まず、樋口参考人の非常に貴重な現場の意見をいただきまして、この点について御意見をいただきたいと思います。

 特に、先ほど教育支援事業ということで、この教育支援事業、私ども公明党の厚生労働部会としても、現場を見せていただきました。この「埼玉県・アスポート 生活保護受給者に対する総合的な自立支援の取り組み」、そういったもので、この現場にも実は行かせていただきました。

 その中で、教育支援の二つの柱として、まず、対象世帯を訪問し、教育相談、進路相談をしっかりやっていく、そして、学習意欲を高めるために子供たちを教室につなげていく、そういった視点と、あとは、わかる楽しさが実感できる学習環境ということで、先ほども樋口参考人の方から、一人一人によって学力の状況とかが違うので、個別の指導といったことも取り組まれている、そういったきめ細かい、本当に丁寧な取り組みがなされている。私は、現場に行って心から感動して、こういうところがあるんだなと思いました。

 そして、先ほどの樋口参考人の資料の中に、例えば実績として、中学三年生の参加者数七百八十二人の対象者中、三百三十一人がアウトリーチによって通うようになった、そして高校進学率も、三百三十一人中、三百二十一人、何と九七%、そういった皆さんが高校に進学をしてさらに挑戦をしていこう、そんな道が開かれてきた、そのような実態を伺いました。

 そこで、まずお聞きしておきたいことがあります。この支援事業の成功の要因、要素、あるいは、どのようなところを努力してここまでこぎつけてきたのかについて、お聞かせ願えますでしょうか。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

樋口参考人 いろいろと本県の事業につきまして高い評価をいただきまして、ありがとうございます。

 やはり何といっても、この事業、貧困の連鎖を断ち切るということが一番の肝であろうと思っております。そうした中で、国の補助金や国の基金というのを十分に活用させていただきまして、実は、国庫の負担十分の十ということで、全額そういう国のお金を使って、委託事業という形でやらせていただいております。

 具体的には、こちらの教育支援なんかにつきましては、一般社団法人の彩の国子ども・若者支援ネットワークというところに委託をして、そちらの方が各大学を回って、ボランティアのいわゆる教育指導に当たっている方を集めていただいて、一緒になって教育支援をしていただいている。多分、そういう部分でいかにボランティアの方を集めて個別指導ができるかが、この事業の一番の肝だったのかなと。

 また、個別に教育支援の担当者が生活保護世帯のところへお伺いされて、教育の重要性を説いて回って御理解をいただいて、お子さんたちを学習教室に通わせる。その辺の部分がやはりうまくいった、それが埼玉県の成果につながっているのではないかなと思っております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに、今、ボランティアという話が出ました、私も調べさせていただきましたら、四十四大学から六百人の大学生のボランティアが協力をしていただいている。その中に、具体的に、ボランティア総数として六百八十六人で、六百二十八人が大学生、さらに社会人も五十八名ということで、そういった取り組みの中で、スタッフと子供たちが一丸となった活動を進められている。

 そんな中で、さらにここで重要だなと思ったことが一つありまして、この会場というか場所の提供、これが、私どもが回らせていただいたところは、特別養護老人ホーム、これの夜、皆さんがデイサービスで帰られた後のその施設を活用して、またそこをうまく利用しながら事業が行われていたところだと思います。

 そこの特別養護老人ホームの管理者さんにお話を聞きましたら、またこれが感動いたしまして、私たち社会福祉法人というのは貧困に苦しむ子供たちの支援は使命なんだ、また、地域の人々の善意をつなげて支援のネットワークを広げていく中心的な存在になっていくのが私たちの役割、そんな思いで一生懸命仕事を、またこういった場の提供をされていました。さらに、勉強だけではなく、時には介護の体験や掃除なんかも一緒にやって、そういった社会性も身につけていただいて、ここから大きく成長していく子供たちを旅立たせていきたい、そんな思いをひしひしと感じたわけでございます。

 まさに、こういった地域の協力、ネットワーク、今ここの事業が、間違いなければ十五施設の協力を得ている、そういった方向で進められていると思うんですけれども、こういった連携の仕方とか、こういった皆さんとの今後の取り組みの方向性についても教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 今、中学生を対象に、二十四年度、若干数がふえまして、十七施設になっております。そのうち、三施設が公民館等を使っておりますが、十四施設については、特別養護老人ホームを会場に活用させていただいております。

 こちらの方は、やはり、今、先生の方からお話もございましたが、特別養護老人ホームの経営者、施設長の皆様方が、何か社会的貢献をしたいというお気持ちが常日ごろありまして、その辺のお話をいただいていた部分が下地になっておりまして、会場を特別養護老人ホームに設定させていただいた。

 当然ながら、会場はただでお借りできますし、また、中学生という多感な時期にお年寄りと接する機会を設けることができるということで、先ほど御説明の中にも、老人ホームの行事等にも参加させていただいたりして、受験の際にはお年寄りの方からお守りをいただいたりとか、また、それに対しての返礼の報告会を行ったりとかという形で、非常に交流が進むことができます。

 そういう、中学生、高校生の世代の方にお年寄りと交流をしていただく、これは、お年寄りにとっても非常に刺激になり、生きがいが出てまいりますけれども、まずはそういう世代に御理解をいただいて、場合によっては、将来、介護の部分で働いていただく、そういう部分にも生きてくるのではないかと思っております。

 以上でございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 こういった施設、また取り組みが全国で広がっていく、こういったことを本当に期待しているわけでございます。

 そこで、緑川参考人にちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、こういった取り組みが地域の中で生まれてきている、また、地域の子供たちを地域で守り、育てていこう、こういった方向性での活動についての率直な感想を聞かせていただけますでしょうか。

緑川参考人 非常にいい取り組みだと私は思っております。

 ただ、残念なことに、これがやはり地域によってというところが、地域ごとにばらばらになってしまっているというところがありまして、全国で統一してこういった支援というか取り組みが行われれば非常にいいと思います。

 子供の貧困の改善に向けても、貧困の連鎖を断ち切るには、やはり教育というのも非常に大きなところがありまして、進学率を上げるという面でも、塾に通えない貧しい家庭の子供たちがそういった例えば学習支援を無料で受けられたりというのは非常にいいことだと思いますので、全国にこういった取り組みが広がっていけばいいなというふうに考えております。

 以上です。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 全国に広がっていくようにという形で、今、埼玉県の、もう一回ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、この補助金を使われて、また、こういった取り組みを積極的に進めていこう、そう考えられて、今、ここまで来られたんですけれども、では、そのきっかけというものについて若干お聞かせ願えますでしょうか。

樋口参考人 やはり、一番初めから、チャレンジの中で三本の柱がございますが、貧困の連鎖を断ち切るというのが一番大きな要素でございます。

 そういう面で、教育支援をやっていかなきゃいかぬ、そういう形で、将来的には各福祉事務所を抱える市ごとに担っていただくべきものなんだろうとは思いますけれども、やはり、そこまでの部分の温度差がまだございますので、県として、全県にひとしく、今、一時間ぐらいで学習教室に通えるような形で教室を設置させていただいて、県がイニシアチブをとって学習教室を開かせていただいております。

 そういう形で、今回御報告させていただいているように成果が上がっておりますので、こちらの方を継続していきまして、そういう貧困の連鎖が断ち切れて、学校に進学した方が、高校中退もせずに、高校を卒業して就労に、そういう形をとっていきたいなと思っております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 やはり、そうですね、地域地域の中でどうやって、私、大事なことは、こういったボランティアの方、また協力してくださる方、そういった方に、今、本当にそういった貧困の連鎖があるという事実をしっかりと伝えていく、そして、そういったことをわかってもらえれば、誰もが、できることを協力していきたい、そんな思いを持っていると思いますので、そういったことを私たちも広く伝えられるような環境をつくりながら、これから取り組んでいきたいと思います。

 その中で、取り組みで特に感動したことがありまして、そちらの教育支援事業を受けながら、高校への進学はもとより、引きこもっていた生徒が部活のリーダーとしても活躍できるようになった、さらに、子供の頑張る姿を見て母親も就労にさらに頑張ろう、そういった形で立ち上がられた、そんなことも聞かせていただきました。こういったことを見るにつけ、日本の一人一人の心とか可能性を非常に頼もしく感じたとともに、そういったことがさらに広がるようにこれからも努力をして、皆さんとともに歩んでいきたいと思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 本日は、まことにありがとうございました。

松本委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。

 きょうは、子供の貧困についてお伺いしたいと思います。

 本来であれば、参考人皆様にお話をお聞かせいただきたいとは思うんですが、きょうは、その代表といたしまして、申しわけないんですが、緑川さんに御答弁いただければと思います。

 先ほど来から、公明党の皆様もおっしゃっていましたけれども、緑川さんは大変しっかりとした答弁をされている。お年がまだ二十一、二歳でその落ちつきといいますか、答弁もまことに見事で、私も見習わなきゃいけないとは思うんですが。逆に、これはまことに失礼な言い方なんですが、その年でその落ちつき、随分御苦労なされてもきたのかなというふうにも思うわけでございます。

 そこで、きょうは、緑川さん、実際にどれだけ御苦労されてきたかというか、御自身の例をきっちり披瀝していただいて、具体性を持って、どれだけつらい環境の中で頑張られてきたのかというのを私はお伺いさせていただきたいと思うんです。やはり、数字というのも大事です、法律というのも当然大事です、しかし、どれだけ御苦労なされてきたかという具体的な話をもって我々や国民の皆様にも伝えていくということが私は大事だと思っていますので。多少、ちょっと立ち入ったこともお伺いするかもしれません、もちろん、全部答えろということではございません、御自身で判断して答えていただければと思います。

 まず一つ目なんですが、医療費の問題。これは、いただいた資料の中にもきっちり数字も入れて書いておられます。そこで、十八歳までしか補助がない、そういう中で、こういうケースで御自身が困ったなというケースがあったら教えていただけますか。

緑川参考人 先ほども申し上げましたように、医療費の制度というのもばらばらなところがありまして、地域によって格差もあります。私の場合には、十八歳までそういった助成を受けることができました。そのために、母親の方から、十八歳の、高校三年生のうちに持病は治してしまいなさいということで、耳鼻科であったり歯医者であったり、そういったものにその年のうちに行くようにと勧められました。

 ただ、やはり私も大学受験を控えておりまして時間的な問題もありましたし、なかなか、十八歳までの間に治療を済ませるということも非常に難しくて、限られた時間の中で治療を受けるというのが非常に難しかったという記憶があります。

 このように、医療費が十八歳までとなってしまっている現状ですと、例えば、ひとり暮らしで今東京に来ている大学生が、診療を受けたい、風邪を引いたとかという場合でも、生活費との兼ね合いでなかなか病院に足が向かない場合もありまして、孤独死という事件も何カ月か前にありましたけれども、大学生にとってみれば、医療費が十八歳で助成が切られてしまうというのが、非常に医療を受ける上での障害になっているというふうに感じています。

 以上です。

柏倉委員 医療というのは、本来、病になったときに、適切な時期に適切な医療を受けるというのが一番体にいいわけですよね。それができない環境にある。今悪化していない状況の中でも、助成、補助がきかないから、今困ってはいないけれども治す。合理的な医療も受けられないというところ、よくわかりました。その点を考えますと、やはり就学中はしっかりと医療の補助をしないといけない、これは国の責任なのかなと強く感じるところがございました。

 次に、緑川さん、当然アルバイトをされていたと思うんですよね。どのようなアルバイトをされていたのか。そして、本来、アルバイトというのは、普通の家庭ですと自分の小遣い、遊びたい盛りと言うと語弊がありますが、いろいろな友達同士のつき合いですとか自分の趣味、本来なら緑川さんの年でしたらそういうものに使うはずなんですよね。どれぐらい実際そういうものに使われたのか、逆に聞けば、結局は家計の足しにどれぐらいされていたのか、その辺、ちょっと具体的に教えていただければと思います。

緑川参考人 私は、大学に入ってから現在に至るまで、コンビニエンスストアで働いております。

 そのうちの給料ですけれども、最近は、こういった運動をしておりますのでなかなかバイトをすることができておりませんが、ある程度いただいていたときは、八万円とか、そういったものが定期的に月に入っておりました。

 それで、ある程度蓄えをしていたんですけれども、やはり家計が厳しくなると、親の方から少しそれを回してほしいという話もありまして、数万円から十万円程度ですかね、何度か、親の方に貸すというか、家計を助けるといったことが何度となくありました。

 以上です。

柏倉委員 本来であれば人生を謳歌する目的でアルバイトをしたい時期、そういった時期にも、やはり家計の足しにしなければいけない。まさにクオリティー・オブ・ライフが小さいころから阻害されているというあかしじゃないかと思うんですよね。やはりそういったところも、国は、かゆいところに手が届くような政策を打っていかなきゃいけないのかなというふうに思います。

 先ほどの話でもありました、緑川さん、一人っ子でいらっしゃるんですかね。一人っ子だから私は大学に進学することができた、そういうことをおっしゃっていました。

 この資料を拝見しますと、母子家庭、そちらの方、大体一家庭平均二・四人、子供さんがいらっしゃるということなんですね。お友達でもたくさん、兄弟がいらっしゃる家庭、友達、いらっしゃったと思うんです、そういう遺児、母子家庭の知り合いの中で。

 そういった方の中で、やはり、自分は長男だから、長女だから、まあ長女長男にかかわらず、ほかの兄弟のためにこれは進学を諦めざるを得ない、諦めて、それ以外の兄弟のためにお金をきっちり稼いで、犠牲になると言うと言い方は悪いんですが、ほかの兄弟のために身をささげるといいますか、人生設計を多少変えざるを得ない、そういったお知り合いというのはやはり多かったんですか。

緑川参考人 添付資料の中にもありますけれども、アンケートを、あしなが育英会の高校奨学生の家庭、三千家庭以上に回答をお願いして、七割に当たる約二千六百名の方に回答をいただきました。その中で、先ほど申し上げましたように、一割の家庭で、兄弟がいる、弟や妹のために進学を断念した家庭があるということなので、単純に計算しても、その中でも約二百五十名ぐらいいるということになります。

 この数というのは多分相当な大きな数だと思うんですけれども、私自身も、夏に行っておりますあしなが育英会のキャンプで、そういった高校生に出会ってきたことも何度もあります。

 そういった理由で進学を断念して、例えば高卒で、中卒で就職をしたとしても、今の日本、まだまだ学歴社会でして、私も先日まで就職活動をしておりましたが、その詳細を見てみると、高卒と大卒、大学院卒ではやはり給料に差があるのが実情ですし、早い段階で就職をすることで、早い時期から収入を家に入れることができますけれども、一生涯を見ていくと、一生涯に得られる給与というのはやはり減ってしまいます。

 将来、子供が育っていって、具体例を言えば、納税者になるのか、それとも社会保障を受ける側になるのかということで、教育を受けられるか受けられないかによって非常に大きな差が出てきてしまいます。

 これから、少子高齢化が進んでいっている日本において、支えなければいけないお年寄りというのはどんどんふえていく中で、本来は支えていくべき若い世代が逆に支えられる側に回ってしまいかねないというのが、今のこの、教育を受けることができない、受けたくても受けられないという実情の中で、非常に大きな問題だと考えています。

 以上です。

柏倉委員 今お話にありました、まだまだ日本は学歴社会だ、これはもう否定できない一面だと思います。そういった中で立ち向かっていく、そのためにも、平等なチャンス、これがやはり保障されなければいけない、私もつくづくそのように今確信をいたしました。国もしっかりと就学支援を、具体性を持って、きっちり数字を考えて支援していかなきゃいけないというふうに思います。

 そして、いみじくもおっしゃっていた、本来であればちゃんと働いて納税者になる人が、就学のチャンスを逃してしまう、それによって結局は収入が少なくなる、最終的にはそういった人たちが生活保護を受給しなきゃいけないようなことも考えられるわけですよね。家庭の貧困の連鎖ではなくて、これは社会自体がそういった意味で貧困の連鎖に陥っていく可能性もあるわけです。そういうことを考えますと、やはりできるだけ早期に、そして、できるだけ具体性を持って、我々はこの法律を進めていかなきゃいけないんだなというふうにつくづく思います。

 次に、母親、お母さんですね、このことをちょっとお伺いしたいんです。

 資料では、母親が病気がち、病気の家庭が三割、三一%ということでした。仕事がないと言った方の五六%が健康を理由に挙げていらっしゃる。つまり、これだけ、負担がかかる、ダブルワークをされていて無理もかかっているという状況があるわけなんです。

 実際に、どうでしょう、緑川さんのお母さんの健康状態、立ち入ったことで非常に申しわけないんですが、可能な限りで結構ですので、もし何かありましたら教えていただけますか。

緑川参考人 私の母親はぜんそくの持病を抱えておりまして、時折発作を起こして、会社を休まなければいけないようなこともあります。そういうことが続いてしまうと、幸い理解のあるところなので今でも勤め続けていることができますけれども、理解のない会社の場合には、やはり退職を勧められる場合もあるかと思います。

 添付資料の中にもありますけれども、遺児家庭への調査の中で、いつも駆り立てられて不安である、三七%、気分が沈み気が晴れない、三四%、自殺、心中を考えた、一五%というように、パートナーを亡くした悲しみであったり、あるいは、残された子供を育てなければいけないというプレッシャーから、精神的な病に陥ってしまう家庭も多くあります。本当は働きたくても働けないという場合も非常に多いんですね。

 あとは、一生懸命子供を育てなければいけないということで、先ほどもありましたように、ダブルワーク、トリプルワークをして、家事をしながら、子育てをしながらということをしていくと、やはり体力的に限界が訪れてしまい、それによって働けなくなってしまう。働けないことによって、収入が得られない、収入が得られないということでさらに精神的に追い詰められるという悪循環が起きているというのが現状で、それが遺児家庭の三割が病気がちというところにもつながってくるのかなというふうに思います。

 以上です。

柏倉委員 お母さんがぜんそくだということで、ぜんそくというのは、これは風邪を引くというようなことが契機で悪くなったり、あとは精神的なストレスで悪くなったり、それだけじゃなくて、台風が来て、それでも悪くなったりするわけです。いつ悪くなるかわからない、ましてや、精神的には不安が常にある、そういうことだけでも体調を壊すわけです。そういった中で頑張ってこられたお母さんというのは本当に大変だったんだなとつくづく思います。

 そこで、時間の関係で、申しわけないんですが、緑川さん、最後に、国にこれだけはお願いしたい、やってほしい、今回の法律の詳細に立ち入らなくても結構ですので、そういったものがあればお聞かせください。

緑川参考人 最も訴えたいことというのは、この法律の中に、ぜひ当事者参画の場を設けてほしいというところですね。

 私たちが子どもの貧困対策法の制定を訴えるに当たって、モデルにした法律があります。がん対策基本法と自殺対策基本法です。これらには、当事者が政治に対して関与をすることができる場を用意していただいています。その結果もあって、がん患者、自殺者というのが年々減少傾向にあるということで、しっかりと成果が出ているんですね。

 子どもの貧困対策法にも、そういった成果をはかるための物差しというのが、先ほども申し上げたように必要だとは思うんですけれども、当事者が具体的な子供の貧困対策の政策に、検討に対して関与することができる場所を設けていただいて、子供の貧困解消に向けて私たちの意見に耳を傾けていただくことによって、子供の貧困対策は大きく前進すると考えています。

 ぜひ、会議におきまして、当事者、支援団体の意見を政策に反映していただきたいというふうに思います。

 以上です。

柏倉委員 当事者参画ということで、我々もしっかり胸に刻んでいきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、六人の参考人の皆さん、お忙しい中御出席いただき、また貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございました。

 時間の関係で、早速質問に入らせていただきます。

 初めに、岩村参考人に伺いたいと思うんです。

 先ほど、特別部会の部会長代理として、報告書の背景についてお話をいただいたと思います。昨年の四月にこの特別部会は立ち上がっていますけれども、その名のとおり、生活困窮者の支援制度のあり方について検討を始めたと。

 同時並行で扶助基準については別の部会があったわけですから、言ってみれば、生活保護制度の大幅な改正というのは、本来はこの特別部会に要請されていたことではなかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

岩村参考人 特別部会につきまして、どういうことを議論するのかということは、もともと設置要綱で課題が決まっていたということでございます。

 その中で、最初から、一方では生活困窮者の方々のための支援というものを考えるとともに、生活保護の問題について、先ほどおっしゃった扶助基準の部分は別ですけれども、そこについても検討するということで、最初から特別部会の検討課題として入っていたというふうに私は理解しております。

高橋(千)委員 これ以上は言いませんけれども、第一回の議事録の中で、どこまで保護制度についてやるんですかという質問が出ております。やはり、すみ分けをするんだというふうな答弁をされていましたし、保護制度そのものについてはできるところからやっていくというのが議論の出発点ではなかったのか。

 先生が最初にお話をされた社会保障制度改革推進法が通ったのは八月ですので、そこから議論が少し変わってきたのかなということを思って、少し残念に思ったな、少し触れていただければよかったかなと思っております。

 次に、稲葉参考人に伺いたいと思います。

 二十年間、三千人の同行、相談をされているということで、本当に、支援活動から貧困のない社会へと活動されてきたことに、心から敬意を表しますし、また、具体的な実体験に基づいた訴えは非常に重いものがあり、国会としても受けとめるべきだ、このように思っています。

 そこで、稲葉さんは、多くの福祉事務所で生活困窮者を窓口で追い返す水際作戦が日常的に行われている、その現場をまさに見ている、指摘をされているわけですよね。

 ただ、厚労省は、今回の二十四条の申請の義務化について、運用は全く変わらないんだと答弁をしています。また、申請に書類が必要なのは今までだって同じなんだから、何も変わらないというふうに言っています。しかし、逆に、法定しておきながら、全然変わらないという説明もまた、矛盾するのではないかと私は思うんですね。

 福祉事務所で現実に今そういう対応がされているのに、しかし法定されたことで、やはり機械的な対応がむしろ進むことにどうしてもなるのではないかなという危惧を持っているんですが、いかがでしょうか。

稲葉参考人 厚生労働省は、国会での答弁でも、今までと運用は全く変わらないと。あと、全国係長会議などにおいても同様の御説明をされているんですけれども、私、全くわからないのは、今までと変わらないのであれば、なぜ条文を変える必要があるのかという点が疑問でなりません。

 つい先日、今週の火曜日も、私たちのところに相談に来られた方で、役所の窓口に、東京都内の福祉事務所の窓口に一人で行ったけれども追い返された、病気があるということを言うと、救急車を呼んで入院になれば生活保護をかけてあげるよというふうに言われたということがあって、こうした水際作戦については、これまでも厚生労働省は、申請権の侵害はあってはならない、申請権の侵害とみなされるような行為も厳に慎むようにということで、再三再四、通知を出されてはいるんですけれども、いまだに根絶されていないということがあります。

 生活保護法を改正するなら、まずここの水際作戦の根絶ということを一番に掲げるべきだというふうに私は考えるんですけれども、残念ながら、今回は、新聞等でも厳格化というふうに言われております。

 厚生労働省が幾ら運用は変わらないよというふうに言っても、やはり地方自治体に与えるメッセージというのがあるのではないか。厳格化されたというふうに受け取られてしまうと、ますます、違法な運用、水際作戦というものが広がって、今以上に被害者が出てしまうのではないかということを一番懸念しております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 本当にそのとおりではないか。やはり、今と変わらないというのであれば、削除をすべきではないかと私も思っております。

 次に、朝日参考人に伺いたいと思います。

 きょうは、大変貴重な機会を得られて感謝をしております。

 朝日訴訟は、まさに憲法二十五条を問いただした生存権裁判として、その後の生活扶助水準の引き上げや日本の社会保障制度に大きく影響を与えた、歴史的な意義を持っていると思います。

 その訴訟から五十六年がたち、当時とは日本の経済も大きく違っております。しかし、一般世帯の消費水準が下がっているからということで、扶助水準も過去最大の下げ幅にしようとしている現在は、どこか当時の状況と似ているところがある、共通しているところがあるということを朝日さんはいろいろな機会に述べていらっしゃいますけれども、ぜひ御意見を伺いたいと思います。

朝日参考人 ありがとうございます。

 私が配りました資料の一ページに、下の方に、自殺の人口十万対の図をお見せしておりますが、この左の山がちょうど朝日訴訟の時代で、左の山で急激に減っていくのが、朝日訴訟で東京地裁判決で勝訴判決が出て、保護基準の連続引き上げが始まってから、この山が急減してきたわけです。

 そういう意味では、この右側の、三つ目の山も同じ高さになっておりますが、鳩山内閣が成立したときから右下がりが始まっている。最近、この四月はなぜ東京や神奈川や愛知がまた反転してきているか、まだ私は理由がつかめないんですけれども、朝日訴訟で勝訴した後、国の方で最低基準を大幅に、連続引き上げてくださった、それが国民に大きな安心感と勇気を与えて、経済の成長にもつながったように思うわけで、私は、その歴史的な経験、教訓を今日まさに生かすときではないかというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 多分、遠慮して、最初の陳述のときに余り朝日訴訟の中身について触れられなかったと思うんですけれども、やはり、今、そのことが問われていると思うんですね。

 つまり、健康で文化的な最低限度の生活を維持するという憲法二十五条の理念に基づきという生活保護法の原則は一切変わりませんという答弁をされています。しかし、その中身が今大きく変わろうとしている。私は、解釈改憲に近いのではないかということを思っているわけです。朝日訴訟は、まさにその最低限度の生活とは何かということを問いただしたわけであります。

 ですから、当時は、一千万人もの極貧の人たちが農漁村にはいるという議論が一方ではあったわけですけれども、しかし、その最下層、ただ生きているだけではだめなんだということがきちんと指摘をされたと思うし、また、予算の有無によって決定されるものではないということが判決に盛り込まれた。そのことの意味がやはり今問われなければならないのかなと思うんですが、もう少し意義についてお話をいただければと思います。

朝日参考人 朝日訴訟の判決について、二ページの冒頭に御案内しておりますが、この四項目、アンダーラインを引いたところの、例えば、憲法二十五条について、生存権的基本的人権の保障、そしてまた二番目に、「健康で文化的な」とは決して単なる修飾ではないというふうに判決してくれております。また、政府の方で予算の有無を申されるんですけれども、三つ目は、むしろこれを指導支配すべきものというふうに判決をいただいたわけです。

 五月三日に、この判決の起案をされた小中信幸先生が写真つきで朝日新聞に登場しておられますけれども、その小中先生に、この辺がポイントでしょうかと言ったら、もちろんそうだけれどもと申されて、三行目に、太文字にしておりますが、「人間に値する生存」というところを指して、ここをポイントに判決を書いたとおっしゃっておりまして、まさに、今回の法案の御審議についても、この辺を大事にしていただけるとありがたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 次に、生活困窮者自立支援法案について、樋口さんと稲葉さんに一言ずつ伺いたいと思います。

 きめ細かい自立支援活動に大変敬意を表します。今回、必須事業として法定するに当たっては、支援事業と保護窓口との連携をどのように考えるのか、また、そのための人材確保が非常に重要だと思いますが、その点について伺いたいと思います。

 それから、稲葉さんの経験の中で、やはり、仕事に対して、えり好みしなきゃそれでいいんだというふうな窓口の対応が非常に多いと。そのこととこれが結びついてしまうと非常に危険ではないかという危惧を持っていますが、一言ずつお願いします。

樋口参考人 私どもがきょう発表させていただきました生活保護受給者のチャレンジ事業につきましては、御存じのように生活保護の受給者だけでございますけれども、さらに、生活保護を受ける手前の生活困窮者の方も今回の法律改正で対象になって、考え方としては、そういう本県で行っております三本柱を中心に行われていくのではないかというふうに認識をさせていただいております。

 そういうことの中で、今後、本県のチャレンジ事業の実施の仕方が一つ参考になるのではないかなと思ったりもしております。具体的には、それぞれの福祉系の団体の方に業務を委託して、ボランティアを活用しながらやっていくというのが一つの参考になるのかなと。

 あと一つ申し上げさせていただければ、今、私どもの方の事業、チャレンジ事業の方については、先ほど、財源につきましては国の補助金や基金を活用させていただいてやっているというお話を申し上げましたが、ここまで非常に成果が上がり、きょうお呼びを受けて発表させていただいたように高い評価を受けておりますので、もうやめることのできない事業ではないかと個人的には思っております。

 そうした中で、こういう形で生活困窮の関係の方まで広げて法制化されるということは、そういう財源の部分についても一つ恒久化が図られるのかなということで、ある意味、ありがたい話ではないかなと思っております。

 以上でございます。

稲葉参考人 ありがとうございます。

 生活困窮者自立支援法案に関してですけれども、私たちの団体では、ホームレスの方々や住まいを失った方々がアパートに入る際の保証人を提供するという事業もやっております。そうしたことから、私は、ずっとこの間、住まいの貧困、日本の住宅政策というのは余りに貧弱なのではないかという問題提起をしてまいりました。

 そうした意味で、これまでの住宅手当制度、今年度からの住宅支援給付が恒久化されるということに対しては、これは私たち自身が要望してきたことでありますし、歓迎していきたいというふうに思っております。

 ただ、これまでの、そして今回法制度化される住宅支援給付が、非常に使い勝手が悪い、実際に困窮している方が使えない場合が多いという問題が生じております。

 住まいを失った方がこの住宅の援助を受けるためには、社会福祉協議会から初期費用、アパートに入るための敷金、礼金等を貸し付けてもらわないといけないんですけれども、そこの審査で落とされるケースというのが頻発しておりまして、そのため、結果的に、この第二のセーフティーネットが使えず、生活保護を使わざるを得ないという方が実際相談窓口ではおります。今回、恒久化されるに当たって、そうした使い勝手の悪さについては改善していただきたいというふうに思っております。

 あと、生活困窮者自立支援法案の中で、幾つか懸念している点があります。

 まず、入り口でワンストップ型の相談が行われるということ自体は評価できるんですけれども、自立相談支援事業と言われる入り口の相談が、そこで結果的に生活保護の水際作戦をしてしまわないか。あなたは生活保護対象者です、対象者じゃないですという形で、法律とは違う形で選別が行われないか、そこできちんと相談者の意思というものが尊重されるかどうかということをまず心配しております。

 あともう一つは、これは、厚労省の生活困窮者の支援に関する特別部会の中で中間的就労というふうに言われていたものが、今回、就労訓練事業というふうに名称化されております。

 この中間的就労については、これまで部会の中でも、最低賃金を適用するのか外すのかという議論が出されていて、両論併記の形で報告書はまとまっていたかと思います。

 今回の法案を見ても、この辺が非常に曖昧な形になっておりまして、もし、就労訓練という、訓練だから最低賃金を外していいということになってしまいますと、そこに悪質な企業が入り込んでしまう、ブラック企業と言われるものが入り込んでしまいますと、これは労働市場全体の劣化につながりかねないという点で懸念をしております。

 生活困窮者、生活保護受給者の就労支援について言えば、先ほど、もやいで行っている事業のことについてもお話ししましたけれども、その方の適性に合った、心身の状況に合った形で、働ける分だけ働くというのが本来の形であって、何でもいいから仕事を探して、お尻をたたいて、生活保護から出していくというのは、結果的に、場合によっては、精神疾患、うつ病などを悪化させることにもなります。

 そうした一方的なやり方ではなくて、御本人の意思とか御本人の状況に合った形での就労支援というものが行われるべきだというふうに思っておりますので、この事業がどう動いていくのかということについては注視していきたいと思っております。

高橋(千)委員 時間になりました。済みません。子供の貧困は、しっかりやります。

 ありがとうございました。

松本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から厚く感謝、御礼を申し上げます。ありがとうございます。(拍手)

 この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十七分開議

松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、生活保護法の一部を改正する法律案及びこれに対する高鳥修一君外五名提出の修正案、生活困窮者自立支援法案、中根康浩君外八名提出、子どもの貧困対策法案及び薗浦健太郎君外一名提出、子どもの貧困対策の推進に関する法律案の各案及び修正案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長宮川晃君、雇用均等・児童家庭局長石井淳子君、社会・援護局長村木厚子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田畑裕明君。

田畑(裕)委員 御指名をいただきました、自由民主党、田畑裕明でございます。

 午前中の参考人の皆さんからの意見陳述や質疑、これまでの当委員会での質疑を拝聴して、さまざまな要因があるとはいえ、社会の影の部分が広がっている現状に改めて危機感を抱いたものであります。

 私からは、十分間という時間を頂戴いたしましたので、余り前置きは言わずに質問をさせていただきたいとも思います。よろしくお願いします。

 また、私自身、地方議員も経験をしておりますが、そのときに、生活保護の申請の相談であったりですとか、ひとり暮らしの高齢者の配食ですとか給食サービスのお手伝い等も、経験をしてまいったところであります。これからも、特に生活保護は、地方自治体の行政の職員の力をかりることも非常に多いわけでありますし、ボランティアですとか地域のまとめ役の声、そういうことをしっかりお聞きすることも怠らず、国民が生きがいを持って生活できる環境整備にしっかり努めてまいらなければいけないと思います。

 一方、これまでの審議の中でも、被保護世帯数であったりですとか、被保護の人員、保護率等、非常に急増しているというのも現実であります。これらの国民に信頼される制度の抜本的な再構築といったようなことが、今回の一連の改正の中で求められているものであります。今回の一連の改正の中で、かえって申請にちゅうちょする人がふえては当然ならないわけでありますし、真に生活保護が必要な人、援助が必要な人、自立に向けて下支えが本当に大切な人にとって効果的な施策の実行を行って、最後のセーフティーネットの有効性を構築していかなければならないと改めて感じた次第であります。

 そこで、まず一点目の質問といたしまして、信頼の回復ということを述べておりますが、改正案の中で、不正ですとか不適正な受給の対策強化が挙げられているわけであります。

 今回の強化策で、果たして不正ですとか不適正な受給者の撲滅ということができるのでありましょうか。

 また、現場の自治体の窓口での対応者であります職員ですとかケースワーカーさんなどが、しっかり職責を果たすための環境整備、これも非常に大切だと思っておりますが、その辺の対応策について、改めてお聞きをしたいと思います。

村木政府参考人 先生御指摘いただきましたとおり、公費で賄われている生活保護の不正受給というのは、大変、制度に対する国民の信頼を揺るがす深刻な問題だというふうに受けとめております。

 また、きょう、それから先日の議論でも出ましたとおり、不正受給があるということで、真面目に生活保護を受けておられる方が肩身の狭い思いをするという意味でも、ぜひこの不正対策をしっかりやっていきたいと考えております。

 今回の改正法の中では、自治体の調査権限の拡大、罰則の引き上げ、不正受給に係る返還金の上乗せ等を行いまして、しっかりと不正対策を強化し、制度の信頼を一層高めたいというふうに考えております。

 また、こういうことを実施していくためには、福祉事務所の体制強化というのが非常に大事だというふうに思っております。ケースワーカーの人件費につきまして、平成二十五年度におきましては、地方交付税算定上の人数を、従来になく大幅にふやしていただいたところでございます。

 これからもしっかり福祉事務所の体制強化というのを図っていきたいというふうに考えているところでございます。

田畑(裕)委員 ありがとうございます。

 もちろん、体制強化、これまでも当然継続的に行ってこられたと思います。自立支援のプログラム策定を国も要請して、それぞれ各自治体でも行っていたと思います。

 それらの結果をどう参考にして、今回の改正において、自立に向けた、特に階層別であったりですとか、それぞれ背景が非常に複雑にまたがっていることが多いわけであります。生活保護の受給者、一くくりにはその対応、対策というのができないわけでありますが、高齢者ですとか障害者、また就労可能な方、対象の類型ごとにどのように区分して実効を上げていこうと考えていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

村木政府参考人 保護の受給者の方は、お一人お一人の事情が大変多様でございます。これまでも福祉事務所で、お一人お一人の事情や自立を阻害している要因を把握した上で、一人一人に合った自立支援プログラムを策定して、支援をやってきました。少しずつこの対策が効果を上げております。

 それから、就労に関しては、これまでやってきたハローワークとの連携での支援、それから福祉事務所に就労支援員を置いて行う支援、こういったものが非常に効果がありましたので、このあたりは、しっかりとこれからさらに強化をするということでございます。ハローワークとの連携につきましては、今年度から連携強化を始めておりますし、就労支援員を使った就労支援については、今回の生活保護法の改正の中でもしっかりと法的な位置づけも行ったところでございます。

 また、これまでのこうした取り組みに加えまして、今度の法改正等にあわせまして、特に就労ができる方については、御本人としっかりと御相談をして、例えば原則六カ月ぐらいで就職をするというようなことで、集中的な就労支援を実施する、そこにマンパワーを投入してしっかり支援をするというようなこと。それから、積極的に就労活動に取り組んでいる方については、やはりそういった就職活動には経費がかかりますので、その経費等を踏まえた就労活動促進費を支給する。それから、働いて得た収入についての控除を引き上げる。それから、保護脱却のときに、就労収入積立制度ということで給付金を支給する。こういったことを、制度を活用しまして、しっかりと就労についてもインセンティブが働くようにしたいと考えているところでございます。

 それから、就労が容易でない高齢者の方というのが、生活保護の受給者の中には大変多いわけでございます。そういう方々については、就労というよりも、むしろ日常生活上の自立、あるいは社会生活上の自立、そういったことがしっかりできるような応援をしていきたいと思っております。

 一部の自治体で、社会貢献活動や職場実習的な軽易な作業をする場所などを提供することによって、受給者から、非常にやりがいが出てきた、自信がついた、気力が湧いたというような声が上げられておりまして、非常に効果があるというような実績も出ております。こういった事業もしっかりできるようにしたいと考えております。

 また、高齢者の場合、住宅の問題が非常に大きいということでございます。高齢者を含めて住宅への入居を希望する方々について、不動産業者への同行ですとか現地確認など、入居支援をしっかり行うとともに、その後の見守りもあわせて行っていただけるような事業も今年度から始めたところでございます。

 いずれにしましても、それぞれの受給者の状況に応じてきめ細かな支援ができるように、しっかり制度を充実してまいりたいと考えております。

田畑(裕)委員 ありがとうございます。

 働けるのに働かない方に対して、これはやはりしっかり連携をとって取り組んでいただきたいと思います。

 午前中の質疑の中でも、そうは申せ、相談にすらたどり着けないというか、埋もれている方々は当然社会に隠れていると思います。スネップ、孤立無業の方ですとか、やはりそういった方をどう相談に導くかということも、これはしっかり汗をかいて考えていただきたいと思います。

 最後に、前段でも申しましたけれども、これまでも生活保護というのは、国と地方自治体、しっかり連携協力のもと、運営や実行がなされてきたと思います。今回の法改正の理念や目指すべき社会像を、国も地方自治体も福祉事務所もしっかり共有をして取り組んでいかなければならないと思っております。

 今回の自立支援法の中では、社福ですとかNPOへの委託も想定をされているわけでありますが、地方自治体においては、福祉部門だけではなくて、いろいろ所管がまたがることも想定をされます。任意事業、必須事業等がありますが、実施主体であります地方自治体の主体性をどこまで勘案しながら、自主性に任せるところ、また国がしっかり関与すること、そういったバランスについてどう考えて取り組んでいくのか、またどんな水準を目指すかについて、お聞かせをいただきたいと思います。

丸川大臣政務官 御指摘のとおり、既に取り組みをされている自治体の中でもやり方がいろいろあったり、あるいはその自治体が持っている地域の社会資源、今おっしゃったような社会福祉法人やNPOで、そうした生活困窮者の方への取り組みをしているようなところがどういうふうにあるのか、ないのかというような状況が違うということは、厚生労働省としても認識をしているところでございまして、まずもって、そういうそれぞれの状況にできる限り柔軟に合わせて、事業を始めていただけるような仕組みにしております。

 自治体が直接実施をしてもいいですし、あるいは、委託ができるところがあれば、民間の団体にも委託をしていただけるというようなことになっています。

 今後、モデル事業をやっていく中で、それぞれの自治体が持っているものを生かす上で、どういうふうにしていけばいいのかわからないというような自治体には、運営の指針をお示ししますし、また、一方で、非常に進んだ取り組みをしておられるところはこういうことをやっていますということをお見せしながら、全体として、少なくとも自立相談支援事業と住宅確保給付金は必須事業でございますので、ここに関しては同じように進んでいけるような状況にしてまいりたいということで、この法案によって国庫支出が制度化されるということになります。

 国庫支出がつくというわけで、自治体では事業を継続していただきやすくなるだろうというふうに私たちは考えているんですが、ぜひ、小規模な自治体も含めて、この取り組みが全国で積極的に進んでいかれるように、厚生労働省としてしっかり働きかけをしてまいりたいと思っております。

田村国務大臣 もともと、自治体のすばらしい取り組みというものを我々は参考にさせていただきながら、今回のメニューをいろいろ考えました。

 しかし、今回のメニューのみならず、自治体にはまだまだすばらしい取り組みがあられるというふうに思います。その自主的な取り組みというものをしっかりと応援させていただきながら、今般、我々がいろいろとつくっておりますそのメニュー、うまくコラボしながら、しっかりと貧困対策というものが組めていければいいというふうに思いますので、自治体の自主性というものをしっかりと我々も応援してまいりたい、このように思っております。

田畑(裕)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

松本委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、時間も短い中でございますので、二問だけお伺いをしてまいります。

 子供の貧困対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によりますと、十七歳以下の子供の貧困率は、二〇〇六年は一四・二%、二〇〇九年時点では一五・七%と上昇をしております。三年間で新たに二十三万人が貧困に陥りました。一九八六年の調査開始以来、最悪の記録となっております。経済協力開発機構、OECD加盟など三十五カ国の中で九番目という、比較的高い方の水準でございます。豊かな日本と思いますけれども、子供の貧困は想像以上に深刻である。

 これは、非正規雇用で働く保護者の増加などが原因と考えられていまして、特に、貧困率が五〇%を超える一人親家庭への対策が喫緊の問題となっているわけであります。

 こうした実情を踏まえまして、自民党、公明党では、今般、子どもの貧困対策の推進に関する法律案を取りまとめました。

 生まれ育った環境によって子供の将来が左右されないよう、そういう社会の実現を理念に掲げまして、教育の機会均等などに向けて、国などの責務を明確にしております。また、政府に対しては、対策を総合的に推進するための大綱の策定を義務づけております。大綱には、教育支援、生活支援、保護者の就労支援、経済的支援などの事項が盛り込まれております。貧困の状況などを毎年必ず公表すること、関係閣僚で構成する対策会議の設置も求めております。

 私たちは、政府提出の、子供の学習支援事業に関する項目などを含む、具体的な、直接的な、子供に必要な支援が届くような生活困窮者自立支援法、これも一緒に、この法律はやはり、いわば積極的な福祉、起きた問題に対してどう対処するかというのではなく、これから就労に向け、自立に向け、積極的な福祉を具現化していく法律だと思います。画期的な法律だと思います。

 また、民主党を初めとする野党の皆様も、子どもの貧困対策法案を出していらっしゃいます。協議を進めて、このたび与野党の合意を得ることができました。野党の皆様にも敬意を表したいと思います。与野党で子供の貧困から救っていく、希望の未来を与えるために取り組む法律として、早期成立を目指したい。

 初めに、この成立後、どのような効果が期待されるか、この点についてお伺いをしたいと思います。

田村国務大臣 委員申されましたとおり、与野党で二つの法律を出していただいております。これからそれぞれ与野党でお話し合いをいただいて、これが一つにうまくなればいいのかな、こんなふうに思うわけでありますけれども、子供の貧困対策、これは総合的な対策、そういう意味からしますと、今おっしゃられましたとおり、大綱という形でひとつおつくりをいただくといいますか、つくっていかなきゃならない。

 そして、もう一つは、やはり閣僚会議、これは貧困対策における会議を閣僚でつくるということでございますから、これは大変大きな意味合いがあろうというふうに思います。

 そういう意味では、我が省のみならず、これは内閣を挙げて貧困対策をしっかりやっていくということでございますから、関係閣僚と協力しながら、貧困、これをなるべく少なくしていく、できれば撲滅に向かって頑張ってまいりたい、このように思っておるような次第であります。

 そのような意味で、この委員会でも本当にいろいろな御議論をいただきました。こういう御議論も参考にさせていただきながら、貧困対策に向かって全力を尽くしてまいりたい、このように思っております。

古屋(範)委員 田村大臣の御決意を伺うことができました。やはり、どのような家庭に育ったとしても、教育の機会を十分に受けられるような社会にしていかなければならない、このように考えます。

 しかし、生活保護世帯の子供の高校進学率、これは一般世帯より一〇%低い。さらに、一般家庭でも、大学進学率は親の年収に比例してしまうと言われております。経済的な理由による教育格差が次世代の貧困を招く負の連鎖、これは断ち切っていかなければなりません。

 大学など高等教育への進学は諦めざるを得ない、同年代が体験することをできない子供たち。また、奨学金を借りて大学を卒業したんだけれども、なかなか就職できずに、結局返済が滞ってしまう。自己破産をしてしまうような若者も現実にいるわけであります。

 こうした格差が広がっていく、これを固定化させないということで、貧困の連鎖を断ち切る学習支援、これが非常に重要だと思います。

 午前中、埼玉の福祉部副部長がいらっしゃって、埼玉での取り組み、御紹介をいただきました。アスポート事業という事業であります。教員OB、大学のボランティアが直接子供に教育支援をしていく。特養ホームなど県内十七カ所で学習教室を開催していらっしゃいまして、中学生にマンツーマンで勉強を教えている。

 成果も上げています。高校の進学率は、一般世帯九八・二%に対して、生活保護世帯が八九・五ということで、低いんですけれども、この教室に参加した一一年度の中学三年生三百五人のうち、九七%、二百九十六人が高校に進学するという成果を上げています。

 この学習支援、また就労支援、住宅支援などを盛り込んだ生活困窮者自立支援法も一刻も早く成立をさせたい、このように考えております。どの家庭でも、努力次第でチャンスをつかめる、そのような社会の構築に全力を挙げていただきたい、このことをお願いして、貧困防止への御決意をお伺いしたいと思います。

田村国務大臣 子供の貧困の連鎖というものは、本当に深刻化いたしております。子供をお持ちの生活困窮家庭、さまざまな問題がありまして、一概にどういう問題があるからとは言えないわけでありますけれども、そんな中において、今言われました学習支援、これは大きな今役割を担っておるというふうに期待をされているわけであります。それから、生活支援、就労支援。就労支援は、お子さんというよりかは、今のお父様、お母様方に対する就労支援を含めてでありますけれども。

 まず、学習支援は、言われましたとおり、生活保護家庭等々におきましても、今まで中学校三年生という枠を一年生からという枠まで広げる、そしてまた、生活困窮者家庭に関しましても、これも同じように学習支援という形で、子供たちの学力強化のためにこれをしっかりと使っていただく中で、言うなれば、いろいろな知識を身につけていただいて、その後、自立につなげていただきたいというふうに思います。

 生活支援に関しましては、やはり生活保護家庭等々で中途退学をされるお子さんが非常に多いわけでありまして、そういうものの防止のために相談支援という形でやっておるわけでございますが、貧困家庭におきましても、そのような形で、包括的な相談支援というものをしっかりと実行していく中で、いろいろなお悩みがあるんだと思います。そういうものの解決に向かってのお手伝いができれば、こんなふうに思います。

 そして、就労支援でありますけれども、社会福祉事務所等々、就労支援員、こういう増員をする中において、一方で、一人親世帯の方々、なかなか資格や技能というものが修得できないという問題もありますので、高等技能訓練給付事業というのがございます。こういうものを使いながら、資格や技能を高めていただいて、結果、安定した雇用といいますか、働き方という中において、貧困から脱していただく。

 それぞれいろいろな制度がありますが、こういうものをうまく使っていただきながら、貧困対策というものをしっかり進めてまいりたい、このように思っております。

古屋(範)委員 子供の貧困をなくしていく、私もそれに力を尽くしていくことを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 私は、今から四十分間、生活保護法の改正案について、国民の皆様の不安を解消できるような質疑をしていきたいと思っております。

 改正原案では、いわゆる水際作戦の強化につながるということが懸念をされています。

 水際作戦とは、言うまでもなく、生活に困って福祉事務所に相談に行っても、あれこれ理由をつけて申請させずに、相談扱いで追い返すことなど。例えば、日弁連の全国一斉生活保護ホットラインには、書類準備の上でないと受け付けられない、あるいは扶養義務者に面倒を見てもらいなさいという、今回の改正原案で心配されているようなことが、少なからず寄せられているということでございます。

 また、これは、三年連続の生活保護行政をめぐる餓死事件を契機に設置された、北九州市の生活保護行政検証委員会の最終報告書におきましては、例えば門司区の事例で、

  二〇〇六年五月、門司区の市営住宅で一人暮らしをしていたAさん、五十六歳が、自宅で亡くなっているのが見つかった。検死の結果、死後四カ月とされた。

  Aさんは、生活困窮の状況にあったため、二〇〇五年九月と十二月の二回にわたり、門司福祉事務所に生活保護を受給するための相談に訪れていた。福祉事務所では、成人した子らに親族で援助できないか話し合うよう促し、生活保護の申請書の交付に至らなかった。

報告書も、「いわゆる「入口」での不適切な対応で、「水際作戦」と呼ばれても仕方がないと言わざるを得ない。」こういうように取りまとめがなされているわけでございます。

 こういった水際作戦による申請権の侵害について、厚労省は、どのような立場をとり、どのように対処してきたか。特に、申請段階の扶養義務者の扶養状況の確認に関して、関係自治体に発出している通知があれば、その内容を教えていただきながら、お示しをいただきたいと思います。

村木政府参考人 保護の相談に当たっての厚生労働省のスタンスでございます。

 まず、基本的なスタンスでございますが、これは厚生労働次官通知におきまして、「相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎むこと。」としておりまして、適切な窓口対応に努めるよう、全国の自治体に通知をしているところでございます。

 このことは、毎年開催される全国会議等々を通じて地方自治体に周知をしております。また、国や都道府県等の監査においても確認をし、問題がある場合は是正指導を行っているところでございます。

 また、御質問の、相談段階における扶養義務者の状況の確認につきましてですが、これは、保護課長通知におきまして、扶養義務者と相談してからでないと申請を受け付けないことや、扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行うことがないようにということを通知しているところでございます。

 こういったことをさらに徹底してまいりたいと考えております。

中根(康)委員 重ねて確認をしたいと思いますけれども、今の村木局長の答弁のようなことは、今回の改正後におきましても維持をされていくということでよろしいでしょうか。

桝屋副大臣 ただいま局長から御答弁を申し上げました、「生活保護法による保護の実施要領について」という厚生事務次官通知、あるいは社会局保護課長通知、こうしたものは、まさに保護の基本姿勢でございまして、私も、長きにわたって、この実施要領を現場で読んできた一人でございます。今回の法改正に当たりまして、こうした内容は、いささかも変わるものではないと考えております。

 とりわけ、委員が御心配の、面接相談時には、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎む必要がある。あるいは、扶養義務者の状況確認についても、扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行うことがないようにすることが必要であると思っております。

 今後とも、最後のセーフティーネットとして、必要な方に対し適切に保護を行うため、今般の法改正の内容について正しく理解していただけるよう、周知を徹底してまいりたいと思います。

中根(康)委員 副大臣あるいは局長から、明確に、これまでの姿勢を継続するということが確認されたわけでございます。

 二〇一三年五月十七日に採択されたばかりでございますが、国連経済的、社会的、文化的権利に関する委員会、社会権規約委員会の日本政府の第三回定期報告書に関する総括所見の勧告、これは委員の皆様方のお手元にも配付をさせていただいておりますが、この勧告について、日本政府として、どのように受けとめておられるか。

 ここには、全ては読み上げませんけれども、スティグマの払拭あるいは申請手続の簡素化というところがポイントとして勧告をされているわけでございますが、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 委員から、今、資料として配付していただいております。これは、委員からもお話がありましたように、五月十七日に、国連の社会権規約委員会から、日本の政府報告に対する第三回の総括所見が出されたということでございまして、出されたばかりでございます。

 その中で、今委員からも御紹介がございましたが、生活保護関係では、生活保護の申請手続を簡素化することや、申請者が尊厳を保って扱われること、あるいは、生活保護につきまとうスティグマを解消する目的で住民の教育を行うこと等の指摘があったと承知をしてございます。

 御指摘の趣旨も踏まえつつ、生活保護制度が最後のセーフティーネットとして今後とも必要な方に対して適切に保護が実施されますよう、こうした所見を尊重して取り組んでまいりたいと思います。

中根(康)委員 尊重をするという副大臣からの明確な御答弁があったわけで、その中には、生活保護の申請手続の簡素化ということも尊重されていくということであると思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 次に、今回の改正で一番大切なところでございますけれども、改正案二十四条の一項について質問を申し上げます。

 保護の開始の申請は、提出しなければならない、これが現改正案でございます。これに対して、私ども、修正案として、保護の開始を申請する者は、提出しなければならない、ただし、申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りではないという御提案をさせていただいているところでございます。

 まず、修正案提出者にお尋ねをしたいと思います。

 開始を申請する者は申請書を提出しなければならないという表現は、申請イコール申請書の提出ではなく、申請書の提出が時期的におくれてもよいということを意味していると理解してもよろしいでしょうか。

柚木委員 お答え申し上げます。

 御案内のように、生活保護の申請というものは、現在、申請書や関係書類等の提出がなくとも、申請意思が明確に示されれば申請行為として認められるものでございまして、必要な書類の提出時期も、できる限り早期に提出していただくことが望ましいわけではありますが、保護決定までの間でよいとされておると認識しております。

 政府案におきましては、この点に疑念が生じかねないとの懸念する声もございましたので、今回の修正案は、これまでの取り扱いが変わるものではない旨を明確にするものでございます。

中根(康)委員 生活保護手帳別冊問答集九の一というものに記されておりますが、申請意思が明確であれば口頭による申請も認められるという裁判例や、従前の事務連絡に基づく考え方は、これからも維持されるということでしょうか。重ねてここは確認をしたいと思います。

柚木委員 お答え申し上げます。

 生活保護の申請は、書面を提出して行うことが基本とされている一方で、事情がある方につきましては、現在の運用においても口頭による申請が認められているところでございまして、例えば、福祉事務所の職員の方が必要事項を聞き取られ、書面に記載した上で、その内容を本人に説明し、そして署名捺印を求めるなどしておるところでございます。

 したがいまして、今後も厚生労働省におかれましては、従前どおりの考え方を維持しつつ、適切に運用いただけるものと考えております。

中根(康)委員 次は、厚労省にお尋ねしたいと思います。

 今、提出時期と申請とがずれてもいい、あるいは口頭でもいいというようなことが提出者から答弁をされたわけでありますが、この修正案を含めた今回の改正が成立した場合に、そういった内容につきまして、省令に明記したり、あるいは実施機関に周知をしたりということを行っていただけるでしょうか。

桝屋副大臣 先ほどから議論が行われておりますが、政府案二十四条第一項でございますが、法制的な観点から、現行においても運用上求めている、保護の申請に際して必要な事項を記入した申請書を提出することを法律上明確に規定するものでありますが、事情がある方には口頭申請を認めている現在の取り扱いを決して変えるものではない、これは大臣も御答弁を申し上げているわけであります。

 修正案についてお話がございました。

 この趣旨を明確にする観点から修正案をお出しになったんだろうと思っておりますが、この考え方につきましては政府原案でも同じでありまして、こうした取り扱いにつきましては今後省令や通知において明確にすることとし、引き続き、支援が必要な人に確実に保護を実施できるよう、関係者への周知にも努めてまいりたいと思ってございます。

中根(康)委員 桝屋副大臣の明確な御答弁、ありがとうございます。

 改めて提出者に質問をいたします。

 ただし書きの「申請書を作成することができない特別の事情」とは、身体障害等で文字が書けず代筆を要する場合だけではなく、申請意思が表明されたのに申請書が交付されなかった場合なども含むと理解してもよろしいでしょうか。

柚木委員 お答え申し上げます。

 現状でも、生活保護の申請については、書面で行うことを原則としておりますが、口頭による保護の申請も、申請意思が明確である場合には認めているところというのは重ねて申し上げた上で、修正案の趣旨は、その取り扱いが変わるものではないことを条文上も明確化するものでございます。御指摘のような、障害などで文字が書けない方が申請される場合も当然含まれていると考えております。

 また、申請意思が明確になされたにもかかわらず申請書が交付されないこと、これはあってはならないことだと認識をしております。したがいまして、万々が一そのようなことが起こり得た場合であっても、そのこと自体がまさに正されるべきことであると認識をしておりまして、厚生労働省としても同様の認識であるのではないかと承知しております。

中根(康)委員 例えば、大阪高裁、平成十三年十月十九日判決。これは、「申請書の提出は生活保護開始申請の要件ではなく、一般論としては口頭による保護開始申請を認める余地も存在するものと認められる。」

 あるいは、小倉北自殺事件、福岡地裁小倉支部、平成二十三年三月二十九日判決。生活保護申請をする者は、申請する意思を明確に示すことすら間々できないことがあるということも十分考えられるところである、法は申請が口頭によって行われることを許容しているものと解されるし、場合によっては、申請するという直接的な表現によらなくても申請意思が表示され、申請行為があったと認められる場合があると考えられる。

 あるいは、三郷事件、さいたま地裁、平成二十五年二月二十日判決。生活保護法は「生活保護の開始の申請を書面で行わなければならないとするものではないから、口頭での申請も認められると解すべきである。」

 こういうように、既に判例あるいは実務においては完全に口頭での申請でもいいということになっておりますので、行政としても、こういったことを最大限尊重して今後取り組んでいただきたいと思います。

 改正案二十四条の二項について伺ってまいりたいと思います。

 現改正案に対して修正案は、ただし書きを追加することになっております。つまりは、ただし、書類を添付できない特別な事情があるときは、この限りではないということになっております。

 まず、この二十四条の二項について厚労省にお尋ねを申し上げます。

 「速やかかつ正確な保護の決定のためには、できる限り早期に要否の判定に必要となる資料を申請者本人からもあくまで可能な範囲で提出して頂くことが望ましいが、書面等の提出は申請から保護決定までの間に行うというこれまでの取扱いには今後も変更はない。」こういうことが、ことしの五月二十日、生活保護関係全国係長会議で示されているわけでありますが、これは確かでございますか。

村木政府参考人 今先生が読み上げてくださいましたのは、五月二十日に私どもが全国の係長会議でお話しをした内容でございます。そのように周知をしたところでございます。

 基本的に、申請書の添付書類は、要否判定に必要となるため、申請者御本人からも可能な範囲で提出をしていただくことに従来からしております。その時期につきましては、迅速な保護決定のためにはできるだけ早い時期が望ましいわけではありますが、申請書提出から保護決定までの間でよいとのこれまでの取り扱いについては、今後も変更はございません。

中根(康)委員 申請のときにそろっていなくてもいいということが、今局長から明確に答弁があったわけでございます。

 提出者にお尋ねをしたいと思います。

 ホームレス状態にある人、あるいはDV被害者はもちろん、紛失その他で省令で定められた書類を所持していない場合も、広く、書類を添付できない特別な事情に当たると理解してよろしいでしょうか。

柚木委員 お答え申し上げます。

 申請書の添付書類の取り扱いにつきましては、政府案により生活保護法が見直されたとしても、これまでの取り扱いに変更はないものと承知しております。

 現在も、速やかかつ正確な保護決定のために、要否の判定に必要となる資料につきましては御本人からも提出いただくことになっておりますが、可能な範囲で御対応いただければよく、修正案は、そのような趣旨を明確にしたものでございます。

 したがいまして、隠匿などの意図もなく、書類を紛失したり、あるいは必要書類を本人が所持していない場合なども、書類を添付できない特別な事情に当たるものと理解をしております。

中根(康)委員 提出者に対する質問は以上でございますので、どうぞ御退席ください。ありがとうございました。

 重ねて厚労省に先ほどと同じことを確認したいと思いますけれども、今の、申請のときにそろっていなくてもいいということ、あるいは特別な事情についてのこと、こういったことを、先ほどと同じように、省令で明記したり、あるいは実施機関に周知をしたりということを行っていただけますでしょうか。

桝屋副大臣 先ほども御答弁しましたが、一項と同じでございまして、二項は、これもやはり法制的な観点から、政府案のとおり法律上明確に規定をしたわけであります。ただ、書類の提出につきましては、今も議論がございました、迅速な保護の決定のためには早期が望ましい、これは事実でありますが、申請書の提出から保護決定の間に行えばよいという現在の取り扱いを変えるものではありません。

 修正案はこの趣旨をより明確にする観点からのものであると承知をしてございますが、この考え方につきましては、もともと政府案でもそう考えておりましたので、今後、省令や通知で明確にすることとし、引き続き、支援が必要な人に確実に保護を実施できるよう、関係者への周知にも努めてまいりたいと考えております。

中根(康)委員 重ねての副大臣の明快な御答弁に感謝を申し上げたいと思います。

 改正案二十四条八項についてお尋ねをしてまいりたいと思います。

 まず、その前提として、四条の二項でございますけれども、現行法上、扶養は保護の要件ではなく、現に、仕送り等の扶養がなされた場合に、その分、保護費が減額されるという優先関係になっております。この条文が改正されないということは、この考え方は引き続き維持されるということでよろしいでしょうか。

桝屋副大臣 扶養義務者が扶養しないことを理由に生活保護の支給を行わないこととした場合には、本人の生活が立ち行かなくなることも考えられるわけでありまして、生活保護法では、扶養義務者からの扶養は、保護を受給する要件とはされていないわけであります。

 今回の改正でも、扶養に関する規定である生活保護法第四条第二項は改正しておらず、これまでの考え方は、何ら変わるものではありません。

中根(康)委員 それで、二十四条八項でございますが、「保護の実施機関は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。」とあるわけでございます。

 実施機関が扶養義務を履行していないと認めた場合に幅広く通知が義務づけられることになると、現在でさえ、扶養義務者への照会を恐れて申請をためらっている人が多いのに、ますます申請をためらい、抑制され、本来保護を必要とする人が利用できなくなるのではないかという危惧が示されておりますが、この点、どうお考えになられますか。

桝屋副大臣 この点も、先日のこの委員会でも議論がなされたところでありますが、明らかに生活保護受給者を十分扶養することができると思われる人に対して何ら対応を行わないということでありますれば、そのまま保護費を支給することは、国民の生活保護制度に対する信頼を失うことになりかねず、適当ではないと考えております。

 このため、扶養が可能と思われる扶養義務者には、その責任を果たしていただきたいと考えているわけでございます。

 一方で、行政が家庭の問題に立ち入ることには慎重にも慎重を期すべきことは当然でありまして、本当に保護が必要な人が保護を受ける妨げとならないよう、慎重に対応していく必要があると考えております。

 このため、扶養義務者への通知は、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる、極めて限定的な場合に限ることとし、その旨、省令で明記をしてまいりたいと考えております。

中根(康)委員 これは資料として配付もさせていただいておりますが、生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会報告書におきましても、例えば、「生活保護を受給するには相当の覚悟を持って申請する場合が多い。扶養関係にある人の援助を受けられるのであれば既にそうしているだろうから、扶養義務の調査については慎重に対応することが必要」である。

 あるいはまた、「扶養義務の強化は、扶養できる方には扶養していただくことが前提であるが、扶養義務の強化は、家族への扶養照会がなされるなら生活保護は受けたくないといったことにならないかが危惧される」といった意見が出されてもおるところでございまして、運用に当たっては、特にこの点は慎重に行うことが必要であると指摘を申し上げておきたいと思います。

 続きましては、改正法案二十八条の二項について伺ってまいりたいと思います。

 扶養義務者に対して、例えば、書類に書いてあることは本当かなどという報告を求めることができるとは、これは扶養義務者に回答義務を課すものであるかどうかということについて、お尋ねをしたいと思います。

村木政府参考人 まず、この規定の報告でございますが、この規定自体の適用につきましては、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められるような、極めて限定的な場合に限ることとしております。その旨は省令で明記をしたいと考えております。

 また、回答義務をかけるかということでございますが、扶養は保護の要件とされていないということも踏まえまして、扶養義務者に対して、回答義務や、回答がされない場合の罰則を科すことはいたしておりません。

中根(康)委員 義務を課すものではないという局長の答弁であったと理解をいたします。

 続きまして、改正法案二十九条の一項に基づいて、扶養義務者等の資産、収入状況について実施機関から照会があった場合に、官公署や日本年金機構等は同条二項でこれもまた回答義務を負うのかどうか、御見解をお示しください。

村木政府参考人 御指摘の規定でございます官公署への回答義務でございます。

 この対象につきましては、今後、施行の際に検討をするということになりますが、先ほど申し上げましたように、扶養は保護の要件ではないということでございますので、今回、扶養義務者本人に対して情報提供を求めることができる根拠規定をいただきましたので、それに重ねて、官公署からの回答義務までは設ける必要はないのではないかと考えているところでございます。

中根(康)委員 これもまた、義務を課すものではないという答弁をいただいたと理解をさせていただきます。

 続きまして、現行法二十九条でも、扶養義務者の資産、収入につき、官公署、銀行等に調査ができることになっております。

 今までそういった例は余りないとは聞いておりますけれども、そのような事例がこれまで何件ぐらいあったか、できればお示しをいただきたいと思います。また、今後、この条文をやたらと活用して、銀行や雇い主まで報告を求めるのはプライバシーの侵害ではないかという見方もありますが、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 お尋ねの扶養義務者の資産及び収入の状況を調査した事例でありますが、生活保護受給者本人、申請者本人であればまた別でありますけれども、扶養義務者の資産、収入となりますと、調査した事例というのは、今委員からもお話がございましたが、事例は把握しておらないわけであります。ほとんどないんだろうというふうに思っております。

 生活保護制度では扶養義務者からの扶養は保護の前提とはしていない、しかしながら、明らかに受給者を十分扶養できると思われる人に対して何ら対応を行わないというのであれば、先ほど申し上げたように、国民の生活保護制度に対する信頼を失うということになるわけでありますから、もちろんその責任を果たしていただきたいわけでありますが、一方で、行政が家庭の問題に立ち入ることは、慎重にも慎重を期す必要があるということでございます。

 このため、扶養義務者に関する調査は、調査事項を保護に必要な範囲に限定するとともに、福祉事務所が法第七十七条により家事審判の手続を活用してまで扶養義務者に費用徴収を求めるケースなど、極めて限定的な場合のみ行うことを考えているわけでございます。

中根(康)委員 ただいま桝屋副大臣からは、扶養義務者のプライバシーに配慮して、必要以上の調査を行うことはないという御答弁であったと受けとめさせていただきたいと思います。

 続きまして、改正法案三十四条の三項、努力規定とされているところでございますけれども、後発医薬品、ジェネリックの利用が事実上強制されるのではないかという懸念がありますが、この懸念に対して厚労省はどのようにお答えをされるでしょうか。

桝屋副大臣 後発品、ジェネリックの問題でありますが、国全体で後発医薬品の普及を図る中で、生活保護でのその普及が医療保険全体に比べておくれているということを踏まえれば、より一層の使用促進が必要であると考えております。

 このため、今回の改正法案では、医師が後発品の使用を認めている場合に限り、医療関係者等が受給者に対して、可能な限り使用を促していくことを規定しているわけでございます。これは、後発品の処方を行う医療機関で、患者との信頼関係をもとに、個々の状況に応じて専門的な知見に基づいた丁寧な説明を行い、理解を促していくことが、患者に服用を促す意味では効果的であると考えたことによります。

 また、今年度、二十五年度より、医師が後発品の使用を認めている場合に、後発品を原則として服用する運用を開始しておりますけれども、本人が後発品を希望しない場合には、一旦先発品を調剤した上で、引き続き本人に対して理解を求めていくという取り扱いにしてございます。

 このように、受給者の理解を得ながら、無理なく後発品の使用を定着させていくこととしておりまして、改正法の施行後も御懸念のようなことにならないよう、周知徹底を図ってまいりたいと思っております。

中根(康)委員 続きまして、改正法案の六十条の、生活上の責務規定のところでございます。

 これもまた先ほどの特別部会報告書でございますけれども、この報告書がつくられる案の段階では、被保護者の責務として記載されておりましたが、委員からさまざま批判が出て、最終報告書では、「生活保護受給者の健康管理を支援する取組について」とか、あるいは「生活保護受給者の家計管理を支援する取組について」、こういう極めて穏やかな表現に変わっているわけでございます。

 しかしながら、この改正法案におきましては、責務規定ということで位置づけられているわけでありますが、依存症とか等で健康管理や金銭管理に困難を抱えた受給者に過度な負担を与えることにならないか、追い詰めることにならないか、あるいは、こういった金銭管理とか健康管理ができないと保護が打ち切られてしまうというようなことにならないかという懸念があるということでございますが、この点についてはいかがでしょうか。

桝屋副大臣 お答え申し上げます。

 これまでも、生活保護法におきましては、生活保護受給者自身の生活上の義務を定めているわけでありますが、受給者の状況に応じた自立のためには、何よりも健康状態を良好に保つということが必要でありまして、また、日常生活をみずから営んでいくためには、適切な金銭管理が必要であると承知をしてございます。

 このため、こうした点について受給者みずから主体的に取り組んでいただくことが重要でありますから、受給者の責務として、法律上、具体的に規定をすることとしたわけでございます。特別部会の報告書においても、その重要性については言及があったというふうに承知をしてございます。

 この規定によりまして、今委員からお話がありましたように、この責務を果たさないということで、保護の停止でありますとか保護の廃止というような事態に追い込まれるのではないかという御懸念でございますが、むしろ、この規定によりまして、保護の実施機関が必要に応じて効果的に助言、指導を行えるようになるとは考えておりまして、あくまでも受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であって、この責務を果たさないことをもって保護の停廃止を行うというようなことは考えておりませんし、あってはならないと思っております。

 議員御懸念のようなことがないよう、こうした法改正の趣旨について、周知徹底を図ってまいりたいと思います。

中根(康)委員 次に、改正法案七十八条の二について伺います。

 不正受給徴収金の保護費からの天引きを事実上強要し、これが差し押さえ禁止規定に抵触する事態を招くのではないかと危惧もされておりますが、いかがでしょうか。

村木政府参考人 まず、基本的な考え方ですが、生活保護の不正受給、これはしっかり防がなければいけない。また、こうしたことを行った方からは確実に費用を徴収するということは、全額公費で賄われている生活保護の制度を考えると、これは必要不可欠と思っております。

 しかしながら、今般の法改正は、まず、効果が及ぶ範囲はあくまでも不正受給の徴収金であるということ、それから、みずから申し出をした生活保護の受給者に限るということ、また、保護費から差し引く金額につきましても、保護の実施機関が最低生活の保障に支障がないと個別具体的に判断をされた範囲内にとどめること、また、不服があった場合には行政争訟もできるということから、問題はないというふうに考えております。

 差し押さえは、受給者が財産を処分することを禁止することでございますが、今回の保護費との相殺に係る規定は、不正受給徴収金の徴収方法の特例を定めているということでございますので、法律的には、差し押さえの禁止規定と矛盾をするということはないと考えております。

 ただ、いずれにしましても、今回の改正法の七十八条の二の規定は、生活保護受給者が申し出た場合に保護費との調整を行うというものでございまして、御心配のような形で強制的に徴収を行うものではございません。

中根(康)委員 続きまして、見直し規定について若干お尋ねをしたいと思います。

 今後、五年後の見直しに向けて、例えば生活保護受給者数、あるいは人口比の受給率の動向、あるいは生活保護申請率の動向、また生活保護開始率の動向、さらには餓死とか孤立死とかそういった社会的な問題事例の動向、こういった視点に基づいて十分に現場の実務の動向を把握し、問題があれば、より踏み込んだ条文の改善を図るというような方向性での見直しということになるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

田村国務大臣 今委員がおっしゃられましたとおり、今般の改正案には、附則第二条に、五年を目途に、必要があると認めるときにはということで見直し規定が入っております。

 今委員がおっしゃられましたとおり、さまざまな指標、生活保護受給者数でありますとか人口比受給率の動向でありますとか生活保護申請率の動向、生活保護開始率の動向、また餓死、孤立死等々その他の問題事例の動向、ほかにもいろいろな動向、指数の動向があろうと思いますが、そういうものをしっかりと次の見直しにおいて勘案した上で、どのような状況なのか、そのときの全体の状況というものが、やはりいろいろな問題がそれにおいて生じておるということであるならば、それを改善していくというのは当然、セーフティーネットとしての生活保護の大変大きな役割を担うための必要なものであろうというふうに思っております。

 でありますから、今言われたようないろいろな動向を勘案しつつ、この見直し規定にのっとって、生活保護制度をよりよく運営していくために努力をしてまいるということであろうというふうに思いますし、また、見直しが行われなくても、そのときそのときのいろいろな状況に応じて、法の精神にのっとって生活保護制度が適切に運営されるように、やはりそれぞれ我々は各自治体に指導もしていかなければならない、このように思っております。

中根(康)委員 今、大臣から総括をしていただいたような気もいたしますけれども、改めて、きょうの質疑において、法改正によっても運用は変わらない、あるいは、私どもが提出をした修正案が成立をすれば、さらにそのことが明確に国民に周知をされるということで、生活保護制度を使うことが本当に必要な人にとって、この制度を使うということに対してのためらいというものが生じないようになるといいますか、そういう方向性で厚生労働省も御努力をいただくということが確認をされたと思います。

 運用が変わらないということであるならば、これはかねてから質疑がされておるわけでありますが、省令であったものをあえて法律に格上げしなくてもよかったのではないかというようなことが依然としてあるわけでありますけれども、今回の改正が、さらなる生活保護行政の進展といいますか改善といいますか、充実というものにつながっていくということを期待いたします。

 最後に、大臣、先ほどと同じであればそれでいいのですけれども、何か御所見があれば、伺って終わりたいと思います。お願いいたします。

田村国務大臣 先般も申し上げたんですが、変わらないのならば別に文言を入れる必要はないじゃないかというような御意見であろうというふうに思います。

 我々は、内閣法制局長官の答弁どおり、調査権限というものに応じて、やはり調査をする前提のいろいろな資料というものも必要でありますから、そういうものを明確に法律に書いた方が法律的にはバランスよくなるのではないか、よりよくなるのではないかということで、これを入れさせていただきました。

 ただし、法制局長官は、必須のものではないということでございますから、なかったらなかったでもこれはいいという判断であられたと思いますけれども、よりよいものであるというのであるならば、我々は、それを入れた方がいいのではないかというような判断をいたしました。

 しかし、それがいろいろな御心配、御懸念を生じたということに関しましては、我々も真摯にこれは反省をしなきゃならぬというふうに思っております。

 それを受けて、この委員会の方でいろいろな御議論をいただいておるというふうに思いますので、そのいただいた議論、その結論をもとに、我々はしっかりと、もともと変わっておりませんけれども、精神を胸に、しっかりと運用できるように周知徹底をしてまいりたい、このように思っております。

中根(康)委員 ありがとうございました。

 終わります。

松本委員長 次に、山井和則君。

山井委員 短時間の二十分でございますが、質問をさせていただきたいと思います。

 私からは、子どもの貧困対策法についてであります。

 このままいけば、子どもの貧困対策法、きょう可決されるというふうに思っております。今日に至るまで、本当に与野党で協力して、また、あしなが出身の下村文科大臣のリーダーシップのもと、また法制局の皆さんにも大変御尽力いただきまして、ここまで来たことに、非常に感謝をしたいと思います。

 特に、今回、私は、与野党協議の上で、かなり実効性のある法案になったのではないかと思っております。

 私の配付資料の一ページ目に、その与野党の修正協議の内容を書かせていただいております。こちらでございます。ここにございますように、「子どもの貧困率、生活保護世帯に属する子どもの高等学校等進学率」「当該指標の改善」ということが明記をされました。やはりそういう意味では、法律としてこういうものを改善させる、具体的に言えば、そのパーセンテージを下げる、貧困率は下げて進学率は上げるということになろうかと思いますが、こういうことが書き込まれたということは非常に重要なことだと思っております。

 ここに資料もございますが、まだ生活保護家庭のお子さんたちの高校進学率は低うございまして、五ページでございますが、一般では九八%、しかし、生活保護世帯では八七・五%。しかし、そこの八七・五%の内訳を見てみると、定時制が一二%、通信制が五%で、全日制の高校に行けている生活保護家庭のお子さんは、まだ六七%にしかすぎません。

 私の知り合いのある女子中学生も、本当は高校に行きたかったんですけれども、妹さんが二人おられて、やはり妹さんたちがよりいい生活ができるようにということで、長女のお姉さんは高校進学を断念して働きに出られたというケースがございました。特に、長男、長女は、弟や妹のことを考えてそういう判断をされるケースもあるんですけれども、やはり中学卒だけではなかなかいい収入の職業にもつけないという現実がございます。

 そこで、このように法律に今回明記されることになるわけですが、生活保護家庭の子供たちの高校進学率を上げることに対する田村大臣の御決意をお聞きできればと思います。

田村国務大臣 生活保護家庭、また生活困窮者の皆様方の家庭、貧困の中でそれを連鎖を断ち切っていくという、山井委員のその思いというものは、私も大変敬意を表するところであります。

 貧困を断ち切るという意味では、今それぞれ、一人親家庭、いろいろ御苦労をいただいておるわけでありますけれども、その家庭で中心で頑張っておられる親御さんをしっかりと、資格もしくは技術等々をつけていただいて、安定した雇用の中において安定した生活をしていただくということが大変重要であろうと思います。

 そういうような意味では、例えば、高等技能訓練促進費事業というものをやっておりまして、こういうところで資格を取っていただく、技能をつけていただくということもやっておるわけでございますし、また、一方で、自立支援教育訓練給付金事業というのもございまして、こういうものでしっかり職業訓練を受けていただきながら、そんな中で能力をつけていただく、こういうこともございます。

 また、一方で、常用雇用に転換をしていただく必要があると思いますので、常用雇用転換奨励給付金事業というのもございまして、これは、常用雇用をしていただいた企業にしっかりと補助をさせていただくというような事業でありまして、一人親の、親の方に着目をさせていただきながら、家計を支えていただく、その支え手として御活躍をいただく、頑張っていただく、そんな支援も準備をさせていただいております。

 ただ、景気が悪い中において十分にこれが機能をしてこなかったというのも事実でございまして、まだまだ、一人親家庭の就労状況、さらには収入状況というものは、改善するどころか、ここ数年悪くなってきておるのも事実でございますから、景気をよくするというのが我々安倍内閣の一つの大きな眼目でございますので、こういうことも相まちながら、しっかりと支え手の親御さんが安定した就労につけるように、こういうようなこともやってまいりたい。

 一方で、お子さん方に対しましては、やはり学習支援というもの、今まで中学校三年生が対象でありましたけれども、これを一年生まで広げまして、早い時点からこのような形で、学習支援もまだ十分に広がっておりません、これもこれから全国に向かってしっかりとその受け皿を広げていくという努力、これをしていかなきゃならないわけであります。

 しっかり学びたいと思っておられるお子さん方が学んでいただいて、高校進学に向かって準備していただく、このような体制がとれるように、今般、生活保護家庭のみならず、生活困窮者の御家庭の皆様方にもその広がりをということで、我々法律を提出させていただいておるわけでございます。

 こういうことをしっかりと、それぞれの制度が協力し合いながら、子供の貧困というもの、そして、子供が望むときには上の学校に行ける、こういう環境をつくっていくことが大事であろうというふうに思っておりますから、山井委員の思いというものをしっかりと我々も受けさせていただきながら、今般のいろいろな対策、これが実効性のあるようなものにしてまいりたいと思っておりますので、御協力のほど、よろしくお願いいたします。

山井委員 非常に前向きな御答弁、ありがとうございます。

 とにかく、キーワードは実効性、やはり、子ども貧困対策法、そして今回の生活保護法改正、生活困窮者支援法、それによっていい形での結果が出る必要があると思います。

 そして、私、先日の田村大臣の答弁でも非常にありがたかったのは、今まで生活保護家庭で大学に行くのは適当ではないというような考え方もあったけれども、田村大臣、今回それはもう転換したと。それで、進学することによって自立していける、貧困の連鎖を断ち切れるということであるならば、それはその道をちゃんとして、行けるような道をつくるべきではないかということで、今回初めて生活保護家庭の大学準備金制度もつくられたと。

 私、今回、生活保護家庭の高校生にたくさんお話を聞かせていただきました。中学生の話も聞かせていただきましたが、非常に考えさせられましたのは、当たり前なんですが、お子さんたちはみんなやはり夢を持っているんですね。その夢というのは、将来、漫画家になりたい、あるいは保育士になりたい、やはり、どんな仕事につきたいかというのがみんな夢なんです。ただし、その夢をかなえるためには、せめて専門学校に行かないとだめだとか、大学に行かないとだめだとか、やはり進学の話とどうしてもリンクしてくるんですね。

 そこで、子供たちはみんな何で悩んでいるのかというと、さっきも言ったように、長男さんや長女さんであればあるほど、自分が進学してお金がかかる、収入を得るのが遅くなる、そのことによって妹や弟に迷惑をかけてしまうと。だから、泣く泣く自分は進学を断念しようという人が非常に多いんです。

 そういう中で、田村大臣に改めてお伺いしたいのは、やはり、高校もそうですけれども、生活保護家庭のお子さんであっても、望むならば、何らかの仕事をとって人生を開くために、大学や専門学校に進んでいく、そういう人たちもふえていくことを厚生労働省としても後押ししたい、進学率も上げていきたい、そういうふうな思い、大臣からもお聞きできればと思っております。

田村国務大臣 ここは、言い回しを気をつけなければいけないと私は思っています。

 なぜかといいますと、一般の家庭でも、大学、短大、こういうところの進学率は、まだ全体で半分強という状況です。ですから、ほとんどの家庭が大学や短大に行っているわけではございません。そういう意味で、今までの生活保護という制度の中で大学に行くということが前提になると、これは、それとのバランスがいろいろあるのではないかという議論がありました。

 しかし一方で、貧困というものの連鎖、これを断ち切るという意味からしますと、お子さん方が、みずから自立するためにいろいろな知識を学んで、その上で自立をしていく、そして貧困の連鎖を断ち切る、そういう強い思いで上の学校を目指そうというお子さん方に、そういう制度を望んじゃいけませんよということ自体が、本来、これは私はやはり問題があるのではないかと感じました。

 そこで、確かに、準備制度といいながら、公費がつくわけではございません。しかし、それぞれの生活保護家庭の中において、御自身も含めて、やはり上の大学、上の学校を目指して、より自立するためのいろいろな知識を身につけたいと強い思いがあられるのならば、それを前提に積み立てることができるようにしようではないかというように思ったわけでありまして、山井委員の思いに十分にお応えできているかどうかわかりませんが、ぎりぎりの判断の中で、今回、このような制度を導入しようということを決めさせていただきました。

 とにかく、生活保護家庭のお子さん方が、しっかりと将来に夢を持って、そしてみずから自立して、社会の中で自分の自己実現をしていく、そんな社会になるように我々も後押しをしてまいりたいというふうに思っておりますので、この点もまた委員からの御協力のほど、よろしくお願いをいたします。

山井委員 答弁、どうもありがとうございます。

 私が痛感するのは、貧困は少なくとも子供たちには何ら責任はないんですね。子供はやはり夢を持つ権利、夢を実現する権利があると思うんです。そういう意味では、今回の子ども貧困対策法を通じて、まさに与党案にも書いてあったように、どんな境遇であっても十分な教育を受けられて、将来に対して夢を持てる、そういう社会をつくっていかねばならないと思っております。

 それで、子供の貧困率についても、今回、その改善というものが法案で明記をされました。田村大臣にお聞きしたいんですが、子供の貧困率、今後、一回目、二回目、いつ発表されて、それは何年の実態が発表されるわけですか。

田村国務大臣 子供の貧困率算出は三年ごとに行われておりまして、国民生活基礎調査の大規模調査がもとになっております。

 ことしが大調査の調査年でありまして、次回が二十六年の七月ごろということでございますので、そういう意味では、二十四年の貧困率を含む結果が公表される予定になっております。そういう意味で、三年ごとでございますから、その次となりますと、二十九年の七月ごろ、二十七年の調査の結果が出るということであります。

 ただ、子供の貧困率というのは、確かに一つの指標ではあると思いますが、よくよく考えなきゃいけないのは、全体の所得が下がって貧困率が下がったというのでは意味がないわけでありまして、やはり、全体の所得が上がる中において貧困率も下がっていくということを考えなきゃいけない。

 そこがなかなか、この貧困率というものだけを目標にすると難しいところがございますので、他のいろいろな指標、指数、そういうものを見ながら、貧困というものの減少というものを我々は目指していかなければならないというふうに思っております。

山井委員 今の答弁にありましたように、来年夏には発表を次にされますが、それは二十四年の実態でありますから、この子どもの貧困対策法は関係ないわけですね。

 そういう意味では、四年後、平成二十九年の夏に発表されるのが平成二十七年の実態でありますから、この法案に明記されているように、子供の貧困率、そして一人親世帯の子供の貧困率の改善、また生活保護に属する高等学校進学率の向上、こういうことに向かって、私たちは、四年後の夏にふたをあけてみたらこの数値が悪化していたということには絶対ならないように、これは政府の責任でもありますし、こうやって法案をつくった全国会議員の責任でもありますので、ともに頑張っていかねばならないと思っております。

 それでは、田村大臣、今回、子ども貧困対策法が成立するようになれば、どのようなメリットがあるか、そのことを厚生労働省としてお答えください。

田村国務大臣 今回の子供の貧困対策に関する法律でありますけれども、総合的な推進、子供の貧困対策ということで、これを推進していく旨を要はこの法律案にしっかりと書き込んでいただいたわけでございまして、そのような意味では、総合的また体系的な大綱というものをつくっていかなければならないわけであります。

 あわせて、関係閣僚間で貧困対策に関します会議を設置するということでございますから、一厚生労働省というわけではなくて、関係省庁、内閣が協力しながら子供の貧困対策というものを、これは全体的にこれを推し進めていくということになってまいるというふうに思います。そのような非常に心強い法案ということのように、私は理解をさせていただいております。

 今般、この委員会でいろいろと御意見、御審議をいただきました。そういう御意見をしっかりと我々も勘案しながら、政府を挙げて子供の貧困対策を進めてまいりたいというふうに思っております。

山井委員 ぜひ、やはり結果が出たという法律にせねばと思っております。

 あと、質問時間がもう五分になりました。お忙しい中、伊達副大臣、そして義家政務官にもお越しをいただいておりますので、失礼ながら、一括して質問をさせていただきたいと思います。

 まず、義家政務官におかれましては、今、あしなが出身の下村文科大臣のリーダーシップのもと、給付型の奨学金、高校生と大学生、検討されているというふうにお聞きしております。それについて、今後それを、予算を獲得してスタートさせたいというふうに考えておられると思うんですが、その上で、今回成立が見込まれております子どもの貧困対策法というものがどのような後押しになる、プラスになると考えておられるのか、お答えいただきたい。

 それと、伊達副大臣におかれましては、今回、この委員長決議の案の中で、当事者の方々あるいは当事者の団体の方々の意見を聞くために、関係する意見を会議で把握した上で大綱を作成するということを、委員長決議、きょうさせてもらう予定になっております。このように、当事者の声を聞いて大綱を作成するということについて、御所見をお伺いしたいと思っております。

 実際、この配付資料でも、最後の方に載せましたけれども、がん対策基本法のときにも、がん患者の方々、当事者や団体の方々が入っておられますし、肝炎対策の協議会でも、肝炎の実際の患者の方々や御遺族の方々、支援団体の方々が入っております。

 以上、一緒で恐縮ですが、義家政務官、伊達副大臣、よろしくお願い申し上げます。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 経済的な理由によらず、生徒や学生が進学を断念することがないよう、つまり、子供たちに希望格差、こういうものが生まれないよう、高等学校や大学における奨学金事業の充実は重要な課題であると、省としても認識しております。

 高校生については、給付型奨学金や低所得者世帯への支援の拡充について、いわゆる高校無償化制度の見直しを行う中で、平成二十六年度以降、新たな制度が実施できるよう、現在、省内で検討しております。かなり細かなシミュレーションもしているところであります。

 また、大学生についても、委員御指摘のとおり、大臣も強い思いの中で検討を指示されていますが、学生等への経済的支援を拡充するための給付型奨学金等の創設を含めた経済的支援のあり方について、現在、検討を始めているところでございます。

 また、本法案は、子供の貧困対策として、子供に対する教育の支援についても明記されているところでありまして、経済的理由により生徒や学生が進学を断念することがないよう、今後とも、教育費負担の軽減に全力で努めてまいりたいと思っております。

伊達副大臣 お答えをさせていただきます。

 政府として、当事者の意見をどのように聞く予定なのかという御質問でございますが、法案において、子どもの貧困対策に関する大綱を策定することとされていることは承知をしておりますが、関係者からの御意見を伺う具体的な方法も含め、どのような大綱に策定していくのかについては、法案成立後、委員会における御議論も踏まえつつ検討してまいりたいと思っております。

 なお、一般論として申し上げれば、子供の貧困対策を検討するに際して、政府として有識者や関係者の御意見を考慮することは非常に大切なことだ、こう思っております。

 以上です。

山井委員 後ほど行います委員長決議の中で、全会一致で、こう書いてあるわけですね。「貧困対策に関し優れた見識を有する者や貧困の状況にある世帯に属する者、これらの者を支援する団体等、関係者の意見を会議で把握した上で、」大綱を作成することとなっておりますので、ぜひ前向きに御検討いただければと思っております。

 先ほども申し上げましたように、四年後の夏には、子供の貧困率等、さまざまな指標も出てくると思います。子供の貧困率は、今、上がる一方であるわけですけれども、やはり、法案をつくって、それによって貧困率が下がった、もちろん貧困率だけではなく、ほかの指標に関しても改善したと言える法律にするのは、これからの政府と私たち国会議員の努力にかかっていると思います。これからもどうかよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 一昨日に続いての、また、きょうの午前中の参考人質疑に続いての質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。若干息切れをしつつありますが、いただいたお時間をしっかり質問してまいりたいと思います。

 私からは、当然、生活保護もそうですし、それから生活困窮者自立支援、これもございます。今、山井委員の方からるる質問された子供の貧困対策、この大きく三つ、今この委員会でかかっておるわけでございます。いずれについても、幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 順番ですが、提出者であります薗浦委員にも座っていただいているので、また前回と同じように、先に子供の貧困対策を進めさせていただきたいと思います。

 今、山井委員とそして大臣、やりとりしていただいたのでもうほとんど終わっていますので、私から改めて御質問申し上げるまでもないかもしれませんが、きょうは本当に傍聴の方もいらっしゃっていますので、この子供の貧困対策、何回PRしても足りないぐらい、これは大事なテーマです。だから、改めて、その子供の貧困対策をどういう思いで、そしてどういう目標でやっていくのか、これをぜひ両サイド、まだ一応両サイドですね、これはまとめていただいているわけでございますが、一応、それぞれのお立場でおっしゃっていただきたいと思います。

 ただ、この思いみたいなものは、恐らくもうこの委員会のメンバー一人残らず、私が思うところ、恐らく一人残らず共有しています。むしろ審議の中で議論になったのは、目標のあり方。これは、恐らく調整されて、少なくとも大綱に、さまざまな、関係者がしっかり共有すべき目標について書いていくことになるんだろうと思います。

 一昨日、私が質問させていただいた際に、与党のお立場から、古屋議員から、相対的貧困率の削減目標値を定めることについての御意見をおっしゃっていただきました。そのときには、例えば、貧困率というのは可処分所得のみで算出をされているために、どうしても現物サービス等の対策の推進力には直接つながらないんだとか、あるいは、資産の保有状況がなかなかそこには反映されないんだという御紹介がありました。

 また、先ほど大臣からも、そもそも経済全体が、あるいは子供だけじゃない、全体の貧困がもし悪化をすれば、相対貧困率は上がるわけでありまして、必ずしもその数字に固執をする必要はないのかなと、多分そのような趣旨の……(田村国務大臣「相対的貧困率が下がるんですよね、みんなが下がる、みんなが悪くなると」と呼ぶ)全体が下がると、相対の貧困率は下がる。上がるですよね、やはり。(発言する者あり)全体が下がると、これは大事ですから……(薗浦議員「ちょっと説明しましょうか」と呼ぶ)では、相対貧困率の話は大事なので、ぜひ薗浦委員、お願いします。

薗浦議員 御説明をさせていただきますが、貧困率というのは、要は、所得を横にずらっと並べるわけです。その真ん中の値を中央値として、その中央値の二分の一以下の所得しかない世帯を貧困と定めて、その率を貧困率というわけです。

 今、恐らく、大臣の答弁にあった、全体の収入が減れば、つまり、全体が貧困の方向に向かえば、当然中央値の値が減るわけですから、ということは、中央値が減るということは二分の一の金額も減る。ということは、貧困率の数字が下がっていくわけですから、当然貧困率も下がってしまうということで、御理解いただけますか。

 要は、具体的に数字を挙げますと、例えば、では、中央値が四百万だったとしましょう。中央値が四百万だったというと、貧困の数字は、二分の一ですから二百万以下になるわけですよ。(足立委員「二分の一、中央値の二分の一ね」と呼ぶ)二分の一ですから。国全体が、例えば、中央値が四百万だったものが、貧困に向かって中央値が三百万になってしまうと、貧困の人というのは、百五十万以下の人が貧困になっちゃうわけです。

 したがって、例えば百九十万の家庭は、四百万が中央値のときは貧困ですけれども、三百万が中央値になってしまうと貧困ではなくなってしまうという意味で、全体的に下がってしまうということをおっしゃりたいんだと思うんです。

田村国務大臣 相対的貧困率というのは、格差を示した数字なんですね。つまり、全員が貧困になって、格差がなくなれば、要は貧困率も下がるということです、簡単に言うと。そういうことです。

足立委員 さすが尊敬する田村大臣、まさに、これは本当にそうで、結局、相対的貧困率というのは難しい指標だと思うんです。

 例えば、OECDはいわゆる先進国のグループですから、OECDの中で比較するというのはわかりやすいんですが、全体が貧しければ、仮に相対的貧困率が悪くなくてもその人たちは貧しいわけですから、それはしんどいですね。仮に、日本の国民全体がますます豊かになれば、全体の底が上がるわけですから、相対的貧困率が仮に上昇していなくても当該人たちは豊かになっている、こういうことでよろしいですね。

 与党、野党で、もし、今の点について。(発言する者あり)

山井議員 それで、先ほど相対的貧困率は格差の問題だという議論がありましたが、何が問題かといいますと、結局、日本では、先ほどあしながの緑川さんが説明されたように、一人親世帯の家庭が非常に貧困家庭が多いという問題なんです。

 結局、一人親家庭では、子供たちが非常に高い確率で構造的に貧困になってしまう。頑張っている、頑張っていないという次元じゃなくて、構造的に貧困に陥ってしまう。その割合が、なぜOECDの中で三十二カ国中べべから二番目、三十一位と高いんだろうかというのが、これがやはり問題になっているわけですね。

 まさに、一人親世帯であるということは、子供には何ら、原因も責任もないわけでありますから、そういう意味では、確かに相対的貧困率というのは、オールマイティーの数値ではありませんけれども、やはり、なぜ一人親世帯でこれだけ貧困が先進国の中で非常に深刻かという一つの指標になるのではないかと思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 この点、とても大切だと思うんです。今幾つか、いろいろやじも飛んでいましたけれども、大事なことは、国民の皆さんにちゃんと理解していただくということです。

 先ほど大臣がおっしゃったように、この子供の貧困の問題というのは、日本全体が豊かなのか、または貧しくなっていくのか、全体の経済厚生の問題とそれから格差の問題、二つあるということですよね、大臣がおっしゃったのは。この点を改めて認識しておく必要があるし、相対的貧困率の数字がひとり歩きするのはいかがなものかという議論が、客観的には多分言えるんだと私は思っています。

 先ほど御紹介したように、公明党の古屋議員の方から一昨日いただいたのはそういう話であったということだと思います。それに対して、山井議員の方からは、それはそれでわからないではないが、議員立法でこの法律をつくり、この政策を推進するにあっては、立法者の意思として、一体どれぐらいの思いで、あるいはスピードで、この問題の対策をとっていくのかということについては、やはり一定のイメージをみんなで共有しておく必要があるという御指摘だと。私はいずれも正しいと思います。

 この法案は、まとまるということであるし、私たちも、日本維新の会も大賛成、一緒にやってまいりますので、もうこれで終わりますが、若干あれしましたので、最後に一言ずつ、特に目標ということについて改めてお願いします。

薗浦議員 ありがとうございます。

 昨日、古屋先生の方から御答弁いただいたという思いも持ちつつ、さはさりながら、さまざまな指標を改善していくということを今後盛り込ませていただきたいと思っておりますので、御理解をいただきたいという点が一点。

 それから、昨日も御指摘をいただきましたように、やはりこれは相対性の問題でございますので、例えば絶対値、がん対策とか自殺の話とか、絶対値であれば、今こういう状況で数字がこうというのは非常に目標として適当かと思いますけれども、あくまで相対性の問題の部分もありますので、そこはいわゆる改善ということで、さまざまな指標を組み合わせながら、それを全体として子供の教育の機会均等に向かっていくという意思でこの法案をまとめさせていただいたということで、御理解を賜りたいと思います。

山井議員 足立委員にお答えを申し上げます。

 前回も、今回も、足立委員からこういう質問の仕方をしていただいたおかげで、私は、非常にやはり審議が深まったと思うんですね。いい意味で、与党案にも、野党案にも、いい点、弱い点があるわけですから、そういうことで本当に感謝したいと思います。

 それで、数値目標ということを前回から足立委員に御質問いただいておりますが、私は、今回、結果的には事実上の数値目標は入ったのではないかと理解しているんです。どういうことかといいますと、子供の貧困率や生活保護家庭の子供の高校進学率を改善させると。改善ということは、子供の貧困率、一人親世帯の貧困率はもちろん下げるということですし、高校進学率は上げるということですから、やはりこれは、先ほども言いましたように、四年後の夏には答えが出るんですね、改善されたのか、改善されなかったのか。

 恐らく、この法案をこれから採決した時点で、国会議員も、政府も、うれしいという思いと、半分はちょっと重たい気分になるんじゃないかと思うんです。これだけ審議をして法律を通したけれども、もしこの数値が改善されなかったら、政府として怠慢じゃないか、あるいは、法案を通した国会議員として怠慢じゃないか。

 そういうことで、私は、ある意味で、本当に実効性ある議員立法をつくるためには、法案が通って終わりではなくて、それから、ある意味で四年間、私たちがしっかり政府とともに仕事をして、重たい宿題を負いながら、四年後に、この法案をつくってよかったのかどうだったのかということをしっかり検証し、また、今回の見直しの中で、薗浦議員のお力もあって、五年後の見直し規定というのを入れていただきました。四年後の数値を検証した上で、五年後、また、もし至らざるところがあれば、しっかりと改善をしていきたいと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 では、子供の貧困対策はこれで終わりたいと思います。ありがとうございます。

 続きまして、あと、私の方からは、生活保護にかかわる問題と、それから困窮者自立支援、これをやるわけですが、ちょっと、どっちから行くか今ずっと悩んでいたんですけれども、先ほどもずっとこの条文の話がありましたので、まず、生活保護の方から入っていきたいと思います。

 私は、この生活保護法改正案の条文修正をめぐる政府・与党と、そして野党とのやりとりについては、若干違和感があるんです。まとまりつつあることは、それはいいんですが。

 私、これはちょっと新聞記事なんですけれども、くしゃくしゃで済みません、ずっと持ち歩いていまして、ごみみたいになっていますけれども。この新聞記事、この一連の与野党のやりとりはずっと報道されていました。これはきのうの新聞かな、きのうの朝日で、口頭申請を容認というのが大見出しです。生活保護法改正案、口頭申請を容認、それで、見出しの次の固まりの小さな見出し、ここで、申請手続を厳格化する規定を緩和すると書いてあるんですよ。書いてあるんです、報道でね。申請手続を厳格化する規定を緩和することにみんなで合意しましたよと、野党が。こういう報道がまかり通っているというか、マスコミの責任は私は大きいと思うんですけれども、残念ながら、そういう報道なんです。

 これは二つとも間違っているんです。政府・与党の案は、別に、厳格化する、もちろん、例えば調査権限を入れるとかいろいろな話がありますけれども、少なくとも、この申請の窓口、水際の問題について、そこについて、何かそれを厳格化しようなんという意図は全くなかったはずです。それは何度もそういうふうに御答弁されていますね。だから、政府・与党案も厳格化する意図はなかったはずですね。だから、もともと、この申請手続を厳格化する規定という部分でまず間違っているわけです。

 加えて、関係政党がそれを緩和することで合意したというのも間違いで……(発言する者あり)そうですよね。これは大事なところですよ。

 したがって、申請手続、水際に係るさまざまなこの今回の議論というのは、実務的には、一切、これを変える意図も何も、政府・与党側にも、修正案を出した側にもないんです。いいですか。

 だから、そういった意味で、先ほど大臣と山井委員とのやりとりの中で、では、そもそもそんな、二十四条の一項、二項なんて新設しなければよかったじゃないかというそもそも論が出てきて、いや、それは法制局の指示なのか、厚生労働省の意思なのかという議論があって、いや、それは一応法制局のアドバイスを受けました云々というやりとりがずっと続いちゃったわけですね。

 私は、そのやりとりについて、興味深くは拝見しましたが、やはり民主党と自民党だけでやるとこうなるなと。ごめんなさい。そういうふうに言うといけませんが、本当に、これは最初から、ごめんなさい、公明党さんもいらっしゃいます。失礼しました。

 やはり政府・与党、自公政権と、そして民主党で、さまざまな政策アイテムについて議論を、今この委員会だけじゃないです。いろいろなところでやっていますけれども、どうしてもマスコミに引っ張られて、マスコミがこう言うと、いや、こうだとか、それで政策が右往左往してしまうということについては、大変懸念をしていて、やはり厚生労働省としては、もっとしっかりと、一体何をやりたくて法案を出しているんだということを、しっかりと説明が、少なくとも、対マスコミでは足りなかったんじゃないかなというふうに言わざるを得ないと思います。

 ついては、まず、先ほども、これは大事な審議ですから、窓口での運用、水際と言われている、そこの窓口での運用が、これまで本当にどういうふうにしてきたんだということを、概略で、簡潔で結構ですけれども、その本質をぜひ御答弁ください。

村木政府参考人 窓口の取り扱いの方法でございます。

 生活保護の相談があった場合には、相談者の状況を把握し、生活保護の仕組みについて説明をし、保護申請の意思が確認された方には、申請書を交付して、必要な調査を行って、その上で、調査に基づいて要否の判定をいたします。

 現在でも、申請は、書面を提出していただき、資産申告書ですとか、収入申告書ですとか、同意書を添付していただくことが基本でございます。

 こうした必要となる書類の提出時期は、早い方が望ましいですが、保護決定までの間でよいということにしております。また、事情がある場合は、運用上、口頭による申請も認めております。口頭でしか申請ができない方については、よく聞き取りをして、担当者が書面に落として、書面に落とした内容をよく説明して、サインをいただくというような形でやっております。

 従来も、それからこれからも、この方法を変更しないつもりでございます。

足立委員 まさに、制度ですから、この制度の執行、運用に当たっては、さまざまに課題はある。それを常に改善していくのが、我々政治が監視をして、行政にそれをちゃんと適正にやらせる、これが仕事です。

 そういった意味では、今回の生活保護の水際の問題については、二つ問題があるわけですね。いわゆる不正受給という問題、本来もらう必要のない人がもらっているじゃないかという議論と、もう一つは、本来生活保護で守られるべき方が守られていないじゃないかという話と、両方あるわけです。

 その両方のバランスの中で、この制度の運用というのはしっかりやっていかないといけないわけですが、今回の議論で、私が先ほど新聞の、マスコミの報道を引用しながら若干苦言を申し上げたのは、こうなってしまうと話がややこしいんです。

 なぜならば、今、民主党さんから修正案が出ていますね。民主党の思いに別に異論があるわけではありませんが、民主党も、政府・与党、自公も、あるいは我々日本維新の会も、思いは同じです。これはしっかりやっていきましょう、思いは一緒です。ところが、条文に書くというのは難しいんです。

 もともと二十四条一項、二項はなかった、政府・与党案はそれを新設した、本意ではないけれども、何かこれまで以上に書類を要求されるようなイメージが広がった、こういう展開です。だから、それを明確化するために修正をするんだというのが、恐らく先ほどの民主党の言い分です。

 しかし、この修正案を見ると、「ただし、申請書を作成することができない特別の事情があるときは、申請書の提出を要しない」と書いてあるわけです。申請書の提出を要しないと書いてあるんですよ。これは、逆のミスリードはないですか。ちょっと大臣、御見識を。政府の案じゃないですけれども、解釈で結構です。

田村国務大臣 修正案でございますので、済みません、私、まだはっきりと拝見させていただいておりませんでして、ちょっと判断をさせていただくにはまだ情報、知識が足らないものでありますから、お許しをいただければありがたいと思います。

足立委員 大変機微な、今やこのテーマは、一旦条文の争いになったからには、大変難しい状況にもう既になっていると私は思っています。

 日本維新の会あるいは私が本当に心配しているのは、もともと水際について変える意思はなかった、ところが、さっき申し上げたように、こうなったものだから、もし修正案が成立しなければ、さっき民主党が主張されているように、何かこれまでよりも書類が過重に要求をされるんじゃないかという不安が広がって、それが、いわゆる本来保護されるべき方と水際との、窓口との距離が広がってしまって、また不幸なことがふえるんじゃないかという御懸念だと思います。

 一方で、この条文を、これは厚生労働省は見ていないんですかね、まだ。見ていますね、大臣は見ていないかもしれないけれども。これは、「申請書の提出を要しない」と書いてあるんです、少なくとも。(発言する者あり)「限り」だけれども。だから、そうだ、俺は事情があるんだと、要は、逆張りの主張さえ出てきかねない面があると思いますが、これについて、大臣に御答弁を求めても先ほどのとおり難しいわけですが、では、村木局長、お願いします。

村木政府参考人 私どもが政府案で提出した法案についても、申請書の提出をしなければならないと書いてあっても口頭も認めるということで、それは、法律だけではなくて、政省令や運用のところで細かいことを決めていくというふうに思っておりました。

 そういう意味では、法律の条文に全てを書き切るというのは、こういう実務というのは大変難しいわけでございます。

 そういう一種の割り切りをしてそういう条文を提出したわけでございますが、拝見をしました民主党の修正案は、政省令あるいは通知で書くことについて条文の中にきちんと書いて、条文だけを読んだときにもわかるようにしてはどうかということが御趣旨ではないかというふうに思います。そういう意味でいうと、条文だけを見たときに、情報量が多いわけでございますので、よりわかりやすく、趣旨が明確になるという御趣旨かというふうに受けとめております。

足立委員 今回、特別の事情があるときには申請書の提出を要しないわけですが、事情というのは変化するわけですね。特別の事情がなくなったときは、これはどうなるんですか。どちらがいいですか。では、局長、お願いします。

村木政府参考人 特別な事情がなくなって、例えば書類が見つかったとか状況がわかったということで御提出をいただけるということであれば、御提出をいただくということになろうかと思います、特別な事情がなくなったわけでございますから。

 それから、保護が決定してから後であれば、きちんと役所は被保護者の状況を、その都度調査して情報をつかんでおりますので、改めていろいろな書類を提出していただく必要はないかというふうに思っております。

足立委員 今おっしゃられたように、特別の事情がなくなれば、当該書類は出していただくわけです。もともとそういうふうにしてきたと思うんですね。これが、先ほど、冒頭、私が村木局長に御答弁いただいた、今の運用の実態なんです。別に、それを変える必要はないんです。

 ところが、この民主党さんの修正案を見ると、これは申請時の話だと思うんです、申請時に特別の事情があると、「申請書の提出は要しない」と書いてあるんです。(桝屋副大臣「要しないじゃない、限りだよ」と呼ぶ)「限り」だ、それは申請時の。

 だから、私が申し上げたいことは、どうしても、条文の話をするとこうなるんです。ずっときょうの委員会、一昨日のこの委員会での質疑、そしてきょうの質疑を全部私も、自分も質問をしながら、こうやって討論を展開してまいりましたけれども、結局、政府・与党あるいは政府、厚生労働省の答弁は、いやいや、いずれにせよ実態は変わらないんですということしか言っていないんですね、わかりやすく言うと。

 すると、では、我々があと何を議論しないといけないか、この場において。まず、実態を変える意思は、恐らく、ある一部の党さんを除いては、これは多分問題ないと思います。ただ、問題は、実態は変えないんだけれども、条文をどうしますかというので争っているわけです。その争いは、今二つの案がある。政府・与党案と民主党の修正案です。

 私は、結論から申し上げると、政府・与党案でよかったと思っているんです。こんなもの、マスコミがわあわあ騒いで、さっき申し上げたように、これは朝日新聞、申請手続を厳格化する規定を政府は出してきたと報道しているんですよ。その時点で、政府の広報戦略は失敗したんですよ。でも、客観的に言えば、ずっと、先ほどもあったように、政府・与党のこの改正案は正しかったと私は思っているんです。だから、私は、日本維新の会は、政府・与党案には賛成の立場ですが、民主党の修正案には反対です。

 ここから大事な話なんですけれども、皆さん、もう一回思い出してほしいんです。今回のこの生活保護法改正案の審議は、これだけやっているんじゃないですよね。生活困窮者自立支援法という第二のセーフティーネットとパッケージなんです。これに意味があるんだということを、きょうの参考人質疑でも、岩村部会長代理を初めとしておっしゃっていたわけです。そして、あわせて子供の貧困対策に光を当てようということでやってきたわけですね。

 この全体を見ると、私が思うところ、生活保護というのはラストリゾートなんだ、だから、ラストリゾートを使い過ぎると、いや、使うんですよ、皆さん、済みませんね、誤解なきように。本来生活保護を受けるべき方が、必ず一人漏らさず受けてもらわないとあかんのです、それは。だからこそ、必要ない人はやめてもらわないと制度が維持できないから、政府・与党は必死になって、本来受けるべき方を守るために厳格化する、要は調査権限を入れよう。

 これは、別に、本来守るべき方が守られないためじゃないんですよ。本来守られるべき方を守るためにやるんですよ。この点について思いをはせれば、この修正案はやはりどうもよくわからないということになります。

 今の点、私が演説して終わってもいけないので、田村大臣、お願いします。

田村国務大臣 政府案が、今マスメディアのお話をされましたけれども、誤解のある報道になったというのは、私も、記者会見等々では変わりませんと申し上げてきたんですけれども、十分にその趣旨が伝えられなかったということでございまして、改めて、私を初め厚生労働省の情報発信力の低さというものに反省をいたしておるわけであります。

 今委員がおっしゃられたとおりでございまして、本来受けていただかなければならない方々には、しっかりと受けていただかなきゃなりません。一方で、受ける必要のない方で受けておられる方々がおられるのであるならば、こういう方々はやはり御退出をいただかなければならないということでございまして、ここをしっかりとすることが、この生活保護制度という制度自体への信頼につながってくるものでありますから、思いを共有させていただいております。

足立委員 ありがとうございます。

 これで終わりますが、この話は本当に大事なんです。先ほど一部の党と申し上げましたけれども、それはおいておいて、日本維新の会は、今申し上げたように、この民主党の修正案はやはりミスリードだということで反対なわけですが、恐らくいろいろな情勢を拝見すると修正は成立するんだろうと思うので、こうしてこの委員会でこの議論をする機会もなかなかございませんので、もう一点だけ確認しておきたいんです。

 この民主党の修正案が成立をしても、この書きぶりが今申し上げた不正受給を助長するようなことにならないように、しっかりと法律の、政省令の整備も含めて、政府・与党案のまま成立したとしても、政省令はしっかり整備しないといけなかったわけですけれども、仮に修正案が成立してしまっても、その弊害を除去するために政省令は相応の整備をしてもらわないと、私が今指摘したようなミスリードが起こると思っています。

 そういう意味で、これはしっかりやるということで結構ですけれども、大臣でも村木局長でも、お願いします。

田村国務大臣 二つの側面があると思うんですね。

 これは、当該申請書を作成することができない特別の事情というものが余りに過小になってしまうと、本来受けなければならない方が受けられなくなっちゃうという話になってしまうわけでありますし、一方で、拡大解釈になると、今委員が御懸念されたような、これを理由にという話が出てくるわけでありますので、ここは本当に厳格に、本当に受けなければならない方々がちゃんと受けられるような形で解釈をされるように、我々も注意深く対応させていただきたいというふうに思います。

足立委員 ありがとうございます。

 補足する必要もありませんが、大臣が今おっしゃった特別の事情という言葉は、我々、私も役人でしたから、普通に使う言葉なんですね。でも、多分、一般の方からいくと、これは「特別の事情」と書いてあるので、そうか、特別の事情が要るのか、こう思われてしまったら、またこれはおかしな方向に行くし、これをいわゆる法律論として正しく解釈すると、広がり過ぎる感もちょっとあるかもしれないということで、大臣がまさにおっしゃったとおりです。いずれのリスクもあるんです。

 だから、問題は、この議論は、もし修正案が成立してしまえば、争点は、特別の事情という五文字をめぐって争いが始まるわけですね。争いというか議論が始まるわけです。これはこれで大変厄介な話なので、田村大臣、そして政務の皆様、また村木局長、ぜひこの点をかみしめていただいて、私たち日本維新の会は修正案に反対ですが、いずれにせよ、思いは同じで、生活保護を受けるべき方がしっかりと受けていただく、一人も漏らさず受けていただく。

 そのためには、不正は不正で、特に、不正の問題で大事なのは金額じゃないんです。金額は微々たるものなんです。ただ、不正があり、それがまたマスコミで報道されると、国民の生活保護制度への信頼が崩れていって、その先に何があるかというと、もう税金はそこに入りませんよということで、制度が小さくなっていってしまうわけです。そういう生活保護制度の悪循環に落ちないために、我々は今こうやって討論をしているということをぜひ確認させていただきたいと思います。

 それから、もう一つ、これは確認ですが、今回の生活保護法改正案においては、新設条項が幾つもあります。その中の一つで、七十八条の二の第二項というところに、先ほども一部議論になっていましたが、徴収金と保護費の相殺という話があります。これについて、本人申し出が必要だというふうに書いてあるんですが、またこれこそ法律論で、条文だけを読むと、そうか、本人申し出が必要なのかと。

 でも、そんなもの、普通、自分から申し出るかという素朴な疑問が湧くわけでありますが、この点は実際の運用はどうなるか、ぜひ、これは大事なことなので、大臣にお願いします。

田村国務大臣 保護が決定した後、本人申請というものを、今、具体的にどのような形にするかというのは検討の最中でありますけれども、確実な費用の徴収を行う観点から、事前に申し出があった場合には、地方自治体は、不正受給に係る徴収金について保護費と調整することができるということでありますが、まず、保護が決定した上で、言うなれば、本人の申し出をいただいて、そして、その上で、不正があって、その後、相殺するような必要があった場合には相殺をさせていただくということであります。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

足立委員 ありがとうございます。

 これは、細かいことというか手続のことですから、村木局長、ちょっと補足できればしてほしいんですけれども、要すれば、この本人申し出というのは、確かに本人申し出なんですよ、法律論でいうと。

 でも、実務においては、徴収金と保護費の相殺をしなければいけない方については、窓口サイドというか、厚生労働省サイドからワンプロセスあって、その上で本人のあれが出てくる。要すれば、じっとしていて本人が申し出てくるかということを私は聞きたいわけですが、ちょっと実務的な観点で補足をお願いします。

村木政府参考人 御指摘のように、この申し出制度があるかどうかも、窓口へ来られる方はわからないので、その方がそれを申し出をするというのは余り想定できないんだろうと思います。

 不正受給金の返還金が確実に徴収できるというのは非常に大事なことでございますので、当然、保護の実施機関から、こういう制度があって、ぜひこの制度に協力をしてくれということをしっかり説明をして、協力を得ていくという形で運用されることになると思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 受給者の方が、このルールというか仕組みをやはりしっかりと理解しておいていただくことが本当に大事だと思います。その上で、該当する方については、待ちの姿勢では当然なくて、今局長がおっしゃったとおりで、しっかりと申し出に至るプロセスを実行していただくよう、確認をさせていただきます。

 私、一昨日も生活保護についてはさまざまな質問をさせていただきました。きょうは特に条文修正の話を取り上げさせていただいたわけですが、冒頭申し上げたように、今回の委員会審議は生活保護法だけじゃありません。

 きょうの参考人質疑で、私、若者自立・挑戦プランを実は経産省におったときに担当しておりまして、当時、厚生労働省と経済産業省と文部科学省、そして内閣府、内閣官房が一緒になってプランをつくって、当時、フリーターだとかニートと言われる、大変、経済的な環境が悪くなる中で、就職等に苦労されている若い方、若い方が就職できないと、やはり社会全体への影響も大変大きいということで、当時、経済産業省が旗を振って、政府全体で相当な予算も動かして取り組んだことを思い起こすわけでございます。

 今回の生活困窮者自立支援というのは、まさに若者の対策に対して、より全体というかブロードな制度を、今度は、雇用対策の側からではなくて、福祉政策の側からやっていこう。

 事務的に、トランポリンでしたか、こういう図をいただいていますけれども、まさに、第一のセーフティーネットである雇用保険と、そして求職者支援事業のような第二のセーフティーネット、第三のラストリゾートである生活保護、こうやって整理をすると、実は、第二のセーフティーネットのところだけが穴があいているんですね。明らかに穴があいているために、本来、生活保護を受けなくてもいい人までが生活保護のグループの中に、プールの中に入っちゃっているわけです。こういう問題意識が、もともと、我々もあるし、今の政府・与党にもあると思います。

 そういう観点で、我々は、さっき申し上げたように、生活保護というのはラストリゾートなんだから、ラストリゾートをしっかりと維持していくためにも、生活保護制度の適正化も必要だし、あわせて、第二のセーフティーネットをちゃんとつくろうよというのが、もう一つの法律である生活困窮者自立支援法。

 ところが、この法律は余り、質問は少ないですよね、生活保護よりは。同じぐらい大事ですよ。あるいは、きょうの岩村参考人の話から私が受け取ったのは、画期的なんだ、画期的な法律なんだということを、これこそ厚生労働省はもっともっとPRをしていっていただきたい、このように思います。

 私がちょっと気になったのは、当時私がかかわらせていただいた若者の自立支援は労働省がやっていたんです。今のこの生活困窮者の自立支援は厚生省がやっているんです。今は同じですけれども、局的に言うと。雇用政策と福祉政策というのは、今、厚生労働省の中でどうなっているんですかというのをちょっとお願いします。

田村国務大臣 福祉政策は福祉政策、雇用政策は雇用政策、それぞれあります。その中で、一体でやっているところもあります。

 例えば、もちろん雇用保険等々の事業でやる職業訓練等々あるわけでありますが、それが失業給付も含めて第一のセーフティーネットというのかどうか、その後に求職者支援制度、今委員がおっしゃられましたそういう制度があって、雇用保険の対象じゃない方々が、生活資金等々も含めて、訓練が受けられるという形になっています。ここは、どちらかというと、意欲があって、基礎的な職業能力がある方が求職者支援制度に行かれる。

 ところが、そもそもモチベーションはかなり下がられていて、仕事をしようという意欲がなかなか湧かない、もしくは基礎的な職業能力がないと言われるような方々が、今回、この生活困窮者対策等々に入ってくる可能性があるんであろうな。そこは、例えば職業訓練といいながら、まず、生活訓練でありますとか社会訓練、そういうもので、場合によってはコミュニケーションみたいなものの能力も高めていただかなきゃいけない、こういう部分であるんだと思います。

 ここはやはり福祉が出張っていきながら、一方で中間的就労というような話もありますけれども、そのような形で、まず、一般の仕事につく前に生活の習慣をしっかりと身につけていただいて、その上で、社会に復帰いただくための準備に入っていただく、こういうことが非常に重要であるわけであります。

 若者に関して申し上げますと、地域若者サポートステーション、サポステというものがございます。これは労働でありますが、ここはニートの方々を対象に、例えば、昔、若者自立塾というのがありました。今回は、これは合宿型で、この地域サポステの中に取り込もうと思っておりますが、ここは、例えば、ひきこもり支援センターの皆様方と協力しながら、いろいろな情報を得て、こちらは福祉ですね、一方で地域サポステは労働、ここが協力しながらという形でありますし、福祉事務所の方にハローワークが出張ってまいりまして、そこで福祉と労働政策とがうまくコラボしながらうまく職につなげていくということも必要であろうと思います。

 あえて申し上げれば、雇用政策みたいなものがあって、福祉政策みたいなものがあって、その間にお互いに協力しながら、福祉と雇用が、労働が協力しながら支援をするというサービスがあるというような、そんなイメージをお持ちいただければありがたいのかなというふうに思います。

足立委員 ありがとうございます。

 ちょっと通告と順番を変えて、若者自立・挑戦プランの話も伺いますが、今の大臣のお話で、私はよくわかるんですが、若干、ぜひ確認というかお願いをしたいのは、ちょっと私の個人的イメージですけれども、やはり福祉政策というのは、今大臣おっしゃったように、生活を支えるというか、生活力みたいなところがあって、それから、雇用政策というのは、しっかり働くということで、まず生活なきところに労働もないわけですから、どちらかというとより基礎的なところが福祉政策で、それをぐんぐん自立の方向に伸びていっていただく、そのエネルギーみたいなものが雇用政策の中で付与されるようなイメージが私はあります。

 やはり政策というのは、単にリーチすればいいだけじゃなくて、要すれば、守るんだけれども、守り過ぎて、本来向かうべき方向じゃない、本来意図しない方向で、例えばその方がその状況にとどまってしまうことを助長してしまったりするようなことは絶対あってはならないと思うんですね。

 だから、仮に、生活力をつけ、また、就労力をつけ、そしてまた、より創造的に活躍をしていっていただく、そういう流れを考えると、別に進歩主義的な意味で言っているわけじゃないんですが、要は、できるだけ上に上にというか、本人にとっても本来やりたいことができるように自立していっていただく、伸びていっていただく、そういう力が、そういう方向で働いていくような施策が重要だと思うんだけれども、申し上げたように、この今回の生活困窮者自立支援策が、福祉事務所中心であったり、あるいは、いわゆる従来の福祉政策の枠にとどまるようでは、それはそういった力が付与し切れないんじゃないかという、イメージ的な懸念を若干持っているわけです。

 だから、ぜひ、大臣の先ほどの御答弁で既に御答弁いただいているのかもしれませんが、生活困窮者自立支援策については、福祉政策として立案されているけれども、雇用政策の側面もあわせてこれは連携しながらやっていくということを、改めてちょっと確認させてください。

田村国務大臣 生活困窮者の家庭も含めて、皆さん、いろいろな諸々の理由で生活困窮に陥っておられるわけでありまして、一概に一つの解決方法というわけではないと思います。

 その中で、先ほど就労準備支援事業のお話をしましたが、例えば、生活が乱れて、昼と夜の生活が逆になっちゃって働けないという方もおられます。夜遅く寝て、昼遅く起きてきて、生活のリズムが崩れている。それからまた、アルコール等々でいろいろな問題があって生活困窮に陥る。いろいろなパターンがあると思います。そのような意味からすれば、まず、生活訓練をしっかりやる、習慣をしっかりつくる、社会訓練して社会性を持っていただく、いろいろなことをやらなければいけないところから始まる方々もおられるわけであります。

 一方で、ちょっと背中を押して、押してあげればという言い方がどうかわかりませんけれども、ちょっとサポートをしてあげれば、そのまま自立に向かって、自信を取り戻して、就労に入っていかれる方々もおられるわけでありまして、そこはさまざまな段階、幅があると思うんですね。

 ですから、福祉色の強いところから、とにかく、それは甘やかすというような意味合いじゃなくて、一緒にともに自立に向かって歩んでいきましょうというところから、頑張りましょうとやったらわかりましたという方々まで、いろいろおられるわけでありまして、そこの幅の中において、うまく雇用政策とつなげていくということであろうかというふうに思います。

足立委員 ありがとうございます。

 それで、きょう、午前中、参考人の方々にお越しをいただいて、本当にそれぞれ、興味深いというか、意味のある、大変有意義な討論をさせていただいたと思います。

 私、特にその中で、なかなかふだんない視点なんだけれどもとても重要だなと思ったのは、貧困というときに、我々、今回、この貧困について討論しているわけですが、貧困には二つ、普通、我々がよく貧困というと、金銭の貧困だ、お金がないんだ、こういう話をいたしますが、きょう、東京大学の玄田有史先生が、スネップという言葉で、孤立無業という表現で御紹介をいただいたような、つながりの貧困、人間関係の貧困ということを御紹介されました。

 質疑に立っていただいた西川委員からも、その点、質問いただいて、私も本当に同じように、これはなかなかまだ知られていないけれども、大事な概念だなと思ったところでございます。

 以前、玄田先生はニートという言葉を広めた最初の方であったと私は認識しておりまして、ニートについては大変今は有名になって、厚生労働省としても把握をされておられるかと思います。

 このスネップという提案についても、ぜひ厚生労働省に御認識をいただいて、つながりの貧困、人間関係の貧困、この問題にやはり正面から向き合って取り組んでいただきたい、こう思いますので、ちょっと厚生労働省としてのそのあたりの御認識、御見識、ぜひお願いします。

村木政府参考人 きょう、玄田先生からスネップに関するお話を伺いました。つながりの貧困という言葉が出ましたが、この生活困窮者支援法をつくるに当たって審議会でさまざま議論をしたときに、この法律の対象になるのは、多くは、抱えている課題が複合的であるということと、社会のつながりから切れている人、この二つの要素を持った方がきっとこの法律の対象になるのだろうというふうに議論をされておりました。きょうのお話を聞いても、そのことが再確認ができた思いでございます。

 ニートということが非常に話題になって、厚生労働省でもニート対策をやってきて、随分、最近充実してきたと思っておりますが、今度の生活困窮者支援法については、ニートは若い人という頭でおりましたが、今度は年齢制限がある法律ではありませんので、スネップのように、五十九歳までというふうになっていましたが、こういった方も対象にできますし、それから、求職活動をしていても対象になるという意味でも、経済的な自立を求めて一生懸命やっておられる方ということで、こういうスネップの方々というのが生活困窮者支援法である程度カバーできるのではないかというふうな思いがいたしました。

 特に、アウトリーチが必要ということで、今回の法律ではアウトリーチの手法も入れたいと思っておりますし、午前中出た大変おもしろい言葉で、上手なおせっかいというお話が出ましたけれども、まさにそういうことができる人材をこの生活困窮者支援法の中で育成していかなければいけないのだということを認識したところでございます。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

足立委員 ありがとうございます。

 まさに今、村木局長もおっしゃっていただいた、あるいは玄田参考人がきょうおっしゃったアウトリーチというのは、恐らく、つながりが切れてしまった方々に対しては、窓口でお役人さんが待っているだけではどうしようもないんですね。だからこそ、改めて、アウトリーチの重要性について、きょう御指摘があったと思います。

 私も若干の留学や駐在で海外に行ったことがありますが、実は、いわゆるアメリカとかいろいろなところ、貧困の問題も非常に深刻な国ですから、どこに行ってもアウトリーチ、アウトリーチなんです。アウトリーチという言葉がどこでも出てくるんです。どんなプレゼンをしても、どんな議論をしても、全部アウトリーチなんです。

 こういうふうに、この福祉の分野、厚生労働省のこの分野については、やはり、アウトリーチという言葉が出ない日はないぐらい、アウトリーチについてはこれまで以上に注意をして、焦点を当てて取り組んでいっていただきたいと思います。

 時間がもうございませんが、アウトリーチについて、せっかくですので、一応、もういいですかね、大臣は。

 むしろ、事務的に、アウトリーチと一言で言うんだけれども、きょう、実は、私は、参考人質疑でも、埼玉県の樋口副部長がお越しで、そのアウトリーチについて御紹介をいただくようお願いをしたわけですが、厚生労働省の行政分野において、アウトリーチという点で、ハローワークとか福祉事務所とかいろいろございます、その実態を若干御紹介をいただければと思います。

村木政府参考人 アウトリーチはどの分野でも大事になってきておりますので、全体を申し上げることは難しいんですが、特に私どもが所管をしている分野でいえば、地域で孤立をしがちなお年寄りについて訪問、見守りをやっていくとか、それから、特に若い方々の引きこもりについては、このアウトリーチという手法を大事にして、今対策を強化しているところでございます。まさしく引きこもっておられるので、これは我々から訪ねていくしかないということでございます。

 今回の生活困窮者支援法でも、できるだけ訪問の形をやりたい。それから、そのためには孤立をしている方を見つけるということが大事になってきますので、地域の、例えば民生委員さんとか、あるいは町内会とかNPOの方々とか、こういう方々から情報をいただける形をつくって、ぜひ早期に困窮者を見つけることができる体制をしっかりつくっていきたい。

 この法案ができましたら、できるだけ地域の連携協議会のような形というものを目指して、地域全体が強くなる、そういう方を見落とさないという形に最終的には持っていければ一番理想かというふうに思っております。

足立委員 まさに今おっしゃっていただいたように、玄田先生がスネップと呼ばれた方々は、一見というか、普通に生活しておられるので、今はそんなに困っていないんですね。なぜならば、例えば家族型と言われたスネップにおかれては、それは親と住んでいたりする。

 ところが、働いていないし、つながりもないということで、仮に、それが高齢化していって、お父様、お母様が御一緒におられなくなったときには、考えれば、ほぼその方々は、きょう議論になっている生活保護に陥ることがもうわかっているわけですね。ところが、見えないものだからなかなかアプローチができないでいるというのが、これまでの行政の現実だったと思います。

 だから、ぜひ、今回、スネップという概念、あるいはアウトリーチという政策の手法、改めてその重要性を確認させていただきたいと思います。

 そして、もう時間が来ましたので、第二のセーフティーネット、第一とラストリゾートの間にある第二のセーフティーネットに、改めてこれから厚生労働行政が注力していただくようお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、生活保護法の一部を改正する法律案、生活困窮者自立支援、子供貧困対策に関する法律案の質疑ということで、水曜日に引き続き、きょうの午後質疑ということでございます。

 午前中には、きょうも多くの方が傍聴されておりますが、参考人の方、本当にさまざまの立場で、いろいろな御経験の中、私どもに御教示いただいたこと、本当に感謝しておるところでございます。特に、あしながの緑川さんには、急なお願いをしても快くお引き受けいただいたこと、本当に感謝しております。ありがとうございました。

 私、きょうはこちらの立場というのも変なんですが、何度もこの質疑の中でも言っておりますが、田舎で診療所をやっている医師ということで、本当に小さい診療所なんですね。医療機関も少ないということもありまして、診療内容が在宅医療ということもありまして、さまざまな案件を持ち込まれてそれに対応するということを日ごろもやっておりました。

 そういう中で、今回、生活保護、そして子供の貧困の問題、私自身、以前から認識を持っておったところでございまして、質疑に関しましては、多くの時間、まだ足りないかなという御意見もあるかもしれませんが、論点は出尽くされているところもあると思います。できるだけ重ならないように御質問させていただきたいと思いますが、確認の意味も含めまして、そして私も体験してまいりましたことを含めながら、御質問させていただきたいと思います。

 生活保護法は、日本国憲法二十五条に想定する、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」との理念に基づき、社会保障の最後のセーフティーネットとしてその役割を果たしてきました。これはそのとおりだと思います。

 近年は、生活保護受給者の増加、また不正受給の問題などが取り沙汰され、社会問題ともなっている現状ですが、受給状況にはやはり、地域格差と言うとちょっと変なんですが、随分段差があるようにも感じております。

 資料のA、都道府県別、主要都市別の被保護人数です。これは別に、多いからいけないとかということではないんですが、かなり保護率には差があるなということは言えると思います。

 生活保護受給世帯、受給者が増加傾向である要因において、高齢化とか雇用問題とかさまざまな原因が挙げられ、対策が問われているところではございますが、この地域間格差のばらつきの精査も必要かなというふうにも考えております。どのように取り組まれるおつもりなのか、どのように認識されているのか、お尋ねしたいと思います。

丸川大臣政務官 お答えさせていただきます。

 生活保護の受給率、確かに自治体間に差がございますが、これは、その地域の産業、雇用の状況であったり、あるいはその地域の相互扶助の慣習であったり、さまざまな背景があるものというふうに捉えておりまして、一概にこういう傾向だということはなかなか言いにくいところがございます。

 その上で、どういう地域であっても、保護が必要な方には保護が届かなければならないわけでございまして、厚生労働省では、都道府県そして政令市に指導監査を直接行っております。全ての都道府県、政令市、残念ながら、各都道府県、政令市、一カ所ずつの福祉事務所ではございますけれども、一年かけてその全てを回るというようなことをやっております。

 この指導監査では、実際に窓口でどのようなやりとりをしたかという、そのやりとりも含めてチェックをさせていただくというようなことをさせていただいておりまして、窓口によってばらつきが出ないようにということを、厚生労働省としても指導監査を通じて努力をさせていただいております。

 また、今回の法律の改正でも、運用については変えるものではないということを改めて徹底させていただきたいと思いますし、これからも、窓口がまず一番でございますので、我々の考え方というものを周知徹底してまいりたいと思っております。

中島委員 取り組まれているということで、先ほども申しましたように、生活保護を受ける方が集まりやすいという背景もあるのかなと。

 私のふるさとにおきましては、逆に、例えば、生活保護だけではないんですが、介護保険一つとっても、完全に基準になる方がまだ加入されていない、申請されていない。逆に、僕の方から、こういう制度があるんですよ、そういうものをうまく利用しましょうと。そういう背景もあります。むしろ、こういう言い方をしていいか、正しいかどうかわかりませんが、生活保護に対してやはり負い目を感じておられる方も多いのではないかと思います。

 私、これは一例ですが、急な往診を頼まれまして、九十近いおじいさんでしたが、明らかに寝たきりなんですね。老老介護で、奥様と一緒に住まわれていた。初めて行ったおうちで、介護度は幾つなんだと尋ねたところ、まだ入っていないと。これは明らかに、介護保険に入りましょう、生活状況はと言いますと、年金だけと。明らかに足りない。

 そうなってくると、生活保護の制度もあるよ、そういう指導を逆にするような感じです。それを問いかけますと、そのおじいさんは何て言ったかと思うと、そんな、俺なんかが国に迷惑をかけるわけにはいかない、そういうことを言う方もおられるわけですね。これは、その方独自かどうかわからないですが、そういう言い方をする方も中にはおられる。

 一方では、お母様が寝たきりになってしまった、そして、しっかりとした介護をしたいということもあって、あえて仕事をやめられて生活保護に移られて、一日じゅう介護に入る、そういう目的で生活保護。

 いろいろな、さまざまな考え方、その中で、これから高齢化、老老介護、ひとり暮らし、そういったものの中で、一概に、今、社会背景的には、先ほども維新の方からもありましたが、不正受給というところもあるわけですが、その辺の実情というか、制度自体が、本当に必要な方に足かせになるというか、生きづらい状況にならないように、いい制度として成り立っていっていただければなというふうにも思います。

 そのような方々にとって、これも繰り返しの質問になるかもしれませんが、二十四条の条文、法制上の整合性をとることが目的とはいえ、結果的に、さらに、必要な方々が受給に至らないのではないかとも考えられる。

 そういった意味で、実務的には問題ないということであれば、またさらに言うわけではないんですが、外したらどうかなと。

 今回、修正案の中にその辺の文言が入っておりますので、私どもは理解の中でいるわけですが、実際の窓口ともなります福祉事務所の方たち、これは、介護保険の話を先ほどしましたが、私も介護認定審査会にも出ておりまして、やはり高齢化率が高い地域でありますと、できれば介護度を低く見積もりたい。介護保険の審査要件でいきますと、年齢と環境とかは全く考慮しない、そういう中で介護度が決められていく。

 生活保護においても、その人の背景、いろいろなバックグラウンドは考慮せずに、申請書類をそろえなさい、それができなければという意味合いで、やはり窓口のところ、先ほども窓口の話をされましたが、実際に窓口となる福祉事務所、その職員の方々への徹底と理解、そういったものは非常に大事な部分だなと思いますが、その辺についてはいかがでしょう。

田村国務大臣 二十四条に関して、もう一度、削除をというお話でございました。

 ここまで来ておりまして、新しい制度を早く成立させていただいて、実効あるものとしてスタートさせていただきたいという思いの中で、各党で修正案の御協議もしていただいておるというようなお話もございます。その点、御心配をいただくような形になったことは、我々としても本意でなかったわけでございまして、ある意味、申しわけなく思っておるわけでありますけれども、そのような、それぞれ各会派の御議論の中で、その点の不安の払拭をしていただければというふうにも思います。

 また、我々は、この五月二十日に全国担当者会議を開きまして、今委員が言われた御懸念の部分、この部分は、そうではない、決して今までと変わるものではないというふうなことは改めて確認をさせていただき、周知徹底を図らせていただいておるわけでございます。

 場合によっては、さらに通知等々でこれを周知していきたいというふうに思っておりますので、どうか御理解をいただき、法案の速やかな審議をよろしくお願いいたしたいと思います。

中島委員 協議をしておりまして、修正案ができております。その内容について、特別な事情があるときは申請の提出を要しないと。

 その辺について、特別な事情、そういったことを、従来どおり窓口のところに、水曜日でしたか、前の質問でもございました、窓口の職員の意識としては、やはりそういうふうなことになった以上ということで、それが前提、正規なやり方ということになってしまいますと、やはりそれが二番目という位置づけになってしまう可能性もありますので、窓口となる職員の方への周知を徹底していただきたい、そのように思います。

 今、通知のことも話していただきました。これもまた議論されているところなんですが、改正案で、扶養義務者に対する通知をすることを義務づけている。

 何度も質問されていることではございます、これも法制上の整合性ということでございますが、この扶養義務者という概念が、民法上の扶養義務者の規定になるわけですね。これは、私、ちょっと認識不足で、逆に教えていただきたいところでもあるんですが、民法上の扶養義務者の規定が諸外国に比較して広いんじゃないか。

 今、この日本の社会の中で、私のふるさともそうですが、独居の方が多い。お子さんとも離れている、さらにその御兄弟、いとことか、そういったところになりますと、もう何十年も会っていない。民法上の扶養義務者、現代の社会状況からして、そういった意味での検証も必要かなと。どこまでどうしていくのか。

 一方では、知られたくないとか、プライベートの問題、そして、そこに至ったDV被害とか、いろいろな背景がある中で、やはり限定的であるのなら、また考えた方がいいのかなということも、重ねて、繰り返しになりますが、民法上の扶養義務、諸外国に比べてというところについて、ちょっと教えていただきたいと思います。

丸川大臣政務官 まず、日本の民法がどうなっているかということから申し上げますと、民法第八百七十七条には、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」となっております。一方、二項で、「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合」、つまり直系血族及び兄弟姉妹のほか、「三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。」ということですので、基本的には扶養の義務というのは直系血族及び兄弟姉妹であるということになっております。

 扶養の義務範囲は、フランス、スウェーデン、イギリス等を見ますと、大体、夫婦間と未成年の子供というふうになってはございますけれども、アメリカもそうですが、扶養に対する考え方というのは、極めてその国の歴史、文化、社会の成り立ちに基づいているものでございますので、一概に比較することがなじむかどうかというのは、私たちは、これは少し疑問に思っておりまして、日本には日本の扶養の義務という考え方があるだろう。

 その上で、今回の法改正に伴って、あらかじめ知らせるということに関してですが、これは極めて限定的な場合に限ることとしております。事前に親族が保護を受けることを把握できるようにするというのを、例えば扶養義務者に対して報告を求めることや、あるいは家庭裁判所を活用して費用徴収をするということがあり得るという場合に通知をするということを考えておりまして、これは現在の運用と変わるものではないというふうに認識をしております。

中島委員 極めて限定的と。条文にも書いておりますが、そうであれば無理に入れなくてもいいかな、改めてそう感じますが、それぞれの国の文化、そして、先ほども申し上げたように、やはり日本においても、社会環境、家庭環境はかなり変化してきている。

 先ほども言ったように、どこまで扶養にしていくのかということは、個々の家庭の事情にもよると思いますが、そういったことも含めて、私も介護保険とか医療をやっておりますと、やはり独居で暮らされている方、その扶養者を探すのに随分苦労することがあるんですね。たどり着いた先が、いや、もう何十年も会っていないんだと。その方に医療費のことや福祉の問題を投げかけるということは、正直、はばかられるところがあるんですね。

 その辺も含めて、全体的に、今、これから迎える時代も含めて、いろいろな制度を横断的に検証していく必要もあるのかなというふうには考えております。

 厳しい雇用情勢、高齢化などを背景に、生活保護受給者は急増しておる。ことし二月には二百十六万人、そういう数字が出ております。資料一ですね。そのうち高齢者世帯が約四二%、障害者、傷病者が約三二%、母子家庭が七・六%となっております。特に、稼働年齢層と考えられるその他の世帯の割合は増加傾向ということであります。

 その他の世帯のほとんどは就労可能年齢と考えられることから、その対策として、本改正案において、就労自立給付の創設が盛り込まれております。

 これは、生活保護受給中における就労意欲の増進と自立を助長するものとして、生活保護を脱却する際のために、収入認定された金額の範囲内で別途一定額を仮想的に積み立て、安定就労の機会を得たとき、保護脱却時に支給するというふうに書かれております。

 月々の仮想的な積立金は、勤労控除の収入認定額のどの程度の割合とするのか。そもそも、その安定就労の基準というのは、正規雇用のことを言っているのか、非正規雇用のことを言っているのか、その辺の基準は何なのか。逆に、このパターンでいきますと、生活保護の受給期間が長ければ長いほど貯蓄はふえていくということで、本当にそれが脱却しやすい方向性に向くのかどうか、その辺についてお考えをお聞かせください。

村木政府参考人 就労自立給付金でございますが、これは、安定的な就労機会を得たことにより、その世帯が生活保護から脱却をできたときに、保護を脱却した後に生じる税や社会保険料等の負担を緩和する、そして、再び保護に至ることなく着実に自立をしていただくことを応援するということで支給をするものでございます。

 支給額等々については、これから詳細を設計していくことになりますが、目安としては、脱却直後に増加する負担分を念頭に置いて、その負担が増加する分の大体三カ月程度を賄えるような額を目安にしてはどうかと考えております。具体的には、単身世帯ですと十万円、多人数世帯ですと十五万円程度を上限としてはどうかと思っております。

 また、長く保護を受ければ得になるという仕組みは問題があろうかと思いますので、就労活動期間が長くなると就労収入の額が同じであっても毎月の積立額が少しずつ減っていくという仕組みを入れてはどうかというふうに考えているところでございます。

 また、支給要件となる安定した職業でございますが、今保護を受けていらっしゃる、それの水準を上回って、要は、最低生活を賄えるような給与がもらえて、一定程度安定をした先々の雇用の見通しがある、それから、プラスアルファで必要になる税や社会保険料を賄えるということで、保護を脱却しても何かあればすぐ保護に戻ってくるというようなことがない、ある程度安定した雇用形態であるということを想定していこうと思っております。

 具体的にどういう要件を定めるかということは、また、施行までにしっかり検討していきたいと考えております。

中島委員 具体的なことはまだ決まっていないということで、生活保護を受けられていなくて、少ない中で貯蓄をされている方との差が広がらないように、本当にスムーズに、稼働年齢層の方に、本当の意味で脱却しやすい、そういう形を整える、いい制度として具体的なことを決めていただきたいなというふうにも思います。

 生活保護費のうち医療扶助が占める割合が約半分ということで、今回、ジェネリック薬品を使いなさいというようなことも書かれておりますが、そんなに差があるわけではないなと私自身は思っております、一般の健康保険で使われているジェネリック薬品と、生活保護の中でのジェネリック薬品の普及。

 私は、この医療扶助の部分が多い理由は、受給者側ではなくて、むしろ医療側に問題があると認識しています。

 私も医者でございますから、やはり実際に医療に携わっていると、生活保護は医療費が免除されます。そうなりますと、こういうこともできるということで、私、今回のことを読みながら、ちょっと、はっとしたんですね、そのこと自体。ある意味では、年金受給者、生活保護者、医療機関とすればどっちが食いっぱぐれがないかと考えますと、生活保護の方の方が食いっぱぐれがないわけです。医療側からするとと言うと、そういう言い方をしますと、そういうことをやっていない先生の方が圧倒的に多いわけですから、誤解を招いてはいけないんですが、むしろ医療費がふえているのは、これは日本全体の問題でもありますし、その凝縮した形が医療扶助の増加につながっている。

 そうなっていきますと、やはり不正受給の部分をしっかりと取り締まらなきゃいけないのが、貧困ビジネス。連鎖を呼び込む、つながってしまう貧困ビジネス。

 今回の法案にはその件は全く触れてはおりませんが、私が経験したのでは、御両親の年金を担保に入れて借金をする。かなり高利なんですね。その息子さんは逃げてしまう。結果、年金は全てそっちに流れてしまう。私はその御家庭に往診に行ったわけですが、お二人とも認知症。当然、国保も払っていない、介護保険料も払っていない、無保険な状態。その方たちが今後どうしていくのか。

 そもそも、そういう貧困ビジネスと言われるものが、実態がどうなっているのか、どう取り組もうとするのか。そのことが、不正受給を防ぐ、水際ではなくて、内容を含めてそういったものを取り締まる、そういった取り組みが必要かなと思いますが、その辺についての取り組みはいかがでしょうか。

村木政府参考人 貧困ビジネスについてのお尋ねですが、生活保護受給者を劣悪な施設に住まわせて、サービスの内容から見てどう見ても高額な利用料を徴収しているケースですとか、あるいは、施設側で入所者の保護費を契約もせずに勝手に管理をして利用料を天引きするケース等々があるということは、私どもも承知をしております。

 社会福祉法に規定をする無料低額宿泊所であれば、法律の規定にのっとって、問題があるところについては、経営を制限したり、あるいはそれの停止を命じることができますので、そういった法律の規定を使って必要な規制をかけているところでございます。ただ、無届けのところもあったりということで、なかなか、全てをきちんと見ていくことができないという状況です。

 実際に、保護者の方が非常に劣悪な施設に住んでいるということがわかったような場合は、その方が引っ越しをするための引っ越し代や敷金等の支給をして、まずはそこから脱出をしていただくということをお手伝いする。

 それから、今年度からですが、住宅の入居を希望する生活保護受給者の方に対して、不動産業者へ一緒に同行をしたり、それから現地確認をしっかりしたりという、劣悪なところに入らないようにするための入居支援を行うとか、あるいは入居した後の見守りをしっかり行って、そういう劣悪なところに受給者が入ることを予防していく、防止していくという事業も今年度から始めたところでございます。

 貧困ビジネスについては、議員立法の動きもございました。今、とまっておりますが、またそういった面で先生方のお力もおかりしたいと思っておりますが、できることをしっかりとやって、よい居住環境を確保できるように、私どもも努力をしたいと考えております。

中島委員 医療費については、今回、指定の機関を設けて、健康保険との整合性もとるということでございますから、別に医療機関が悪いと言っているわけではないんですが、医療の部分、そして生活の部分、それぞれしっかりと、不正受給を取り締まるという意味で、実態を把握しながら取り組まれていただきたいと思います。

 ちょっと時間もないので、生活保護世帯の七・六%が母子世帯となっております。きょうも貧困の問題でいろいろな質疑もされておりますが、年推移で見ると、母子世帯の生活保護率自体は若干減っているということでございますが、この母子世帯と密接に関連するのが、子供の貧困ということになります。

 日本の子供の貧困率は高い水準で、もう何度も言われておることですが、私、きのう、我が党のインターネットの放送がありまして、その中で、今回、子どもの貧困法案が通るんだよという話をして、視聴者の皆さんだけでしたが、子供の貧困に対して認識があるかどうかというのをアンケートをとりました。すぐ出まして、知っていた方は四五%、本当、そうなんだと言われた方が五五%でした。

 要するに、今の日本の社会の中で、貧困という問題が実際に、本当にこれだけのことになっているという認識を持たれている方がやはり少ないと思うんですね。きょうも、私も、午前中の参考人の質疑を聞きまして、改めて、私自身が育ってきた環境が本当に恵まれていたんだなということを認識しておるところでございます。

 資料の二枚目、母子世帯の就業状況を見ていきますと、お母さん方の就職、働いている率はかなり高いんですね。諸外国と比べていきますと、諸外国の場合は、仕事をしていない家庭でやはり貧困率が高い。日本の場合は、仕事をしているにもかかわらず、貧困率が上がってしまう。この現状自体が、俗に言うワーキングプアそのものと言えるんじゃないかなというふうに思います。

 これは、資料二の真ん中、再分配前と再分配後ということになります。日本では、再分配前、普通に給与をもらって、ただ、その後、社会保障、そういったもろもろのものを払っていった結果、逆に貧困率が上がってしまうという現実がある、そういうグラフになるわけですが、これを諸外国と比較してみますと、諸外国の場合は、再分配後の方が貧困率は下がる。日本はかなり特徴的だと思うんですね、再分配後に貧困率が上がってしまう。

 これはある意味、政策的な問題だと私は考えるんですが、その辺はいかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のように、子供の貧困率、数値として高うございますし、とりわけ一人親に属する子供の貧困率が高いという状況でございます。

 議員の御指摘のように、子供のある貧困世帯の逆転現象、これも指摘をされているところでございますが、ごく最近のデータによりますと、ここは緩和されて、今では逆転はなくなっているという指摘もあるわけでございます。

 しかしながら、逆転は解消されたとしましても、ほかの国と比べて、相当、十分とは言えないという状況も確かだというふうに認識をいたしております。

 その原因でございますけれども、一つには、やはり、日本における家族関連社会支出の対GDP比が諸外国と比べても低いということが指摘をされておりますし、私ども、それが一つの原因ではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、子供の貧困、とりわけ一人親の世帯における子供の貧困、しっかり取り組んでいくために、一人親家庭施策、これをしっかり取り組んでいく必要があるのではないか、かように考えているところでございます。

中島委員 本当に、このグラフだけ見ますと、日本だけなんです。要するに、社会保障を払った分、貧困が助長されちゃうということですから、これは一体どういうことなんだろうと言わざるを得ない、この数字だけでいきますと。

 生活保護も含めて、現物給付、現金給付という違いは多少あるかもしれませんが、そうであるならば、やはり実態をしっかりと把握していただきたい。そして、再分配後に貧困率が高くなるようでは本末転倒ということになってしまいますから、その辺をしっかりと精査していただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってしまいました。

 貧困の問題は、私自身、本当に感じていると言ったのは、田舎においても一人親の世帯はどんどんふえているんですね。

 いつも来る患者さんは、二十代のお母さん、七歳と四歳と二歳の男の子を抱えています。仕事をしながら、いつも保育園に預けているわけですが、熱があるとすぐ連れてくる。そして、みんな元気な男の子ですから、来るわけですが、仕事をしながら、お母さん自身も非常に疲れている。お子さんが来たときには、お母さんにも一緒に点滴していきなさいと言いながら、困ったときはいつも相談に来ていただくようにはしておりますが、そういう世帯が田舎においてもどんどんふえています。

 そういう意味で、きょうも、参考人の方からもそのような話もたくさんございました。厚生行政というのは、恐らく、私がイメージしているのは、先ほど、貧困率を下げる、相対的貧困率という話もありましたが、目指すべきは、ゼロですよね。そういうことが絶対あってはならないということを目指すのが本来の姿だと思います。

 ほかのものとは違って、八割方、八〇%うまくいっていればそれでいいかというわけではなくて、むしろ、残りの二割、一割の人にしっかりとスポットを浴びさせて、引き上げてあげる、それが恐らく厚生行政の本質なのかな。それができなければゼロは目指せない。もしかしたら永遠のテーマになるかもしれませんが、全体を下げるというよりは、ゼロを目標にするというところに、目標をぜひ持っていただきたいというふうにも思っております。

 もっと実は質問を用意していて、通告もしてあるんですが、時間になってしまいました。

 改めて、私自身もこういった問題にはこれからも取り組んでいきたいと思いますし、先ほど、窓口の話もありました。実はあしたも外来がありますので、地元へ帰って、市役所へ行ったり、福祉事務所へ行ってこのことを伝えて、理解を求めるように私自身も努力してまいりますので、厚生行政、厚生省としてもぜひ頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 最初に一問、通告しておりませんが、大臣に伺いたいと思います。

 午前の参考人質疑、ごらんになっていないかもしれませんが、非常に重要な意見をそれぞれからいただきました。だからこそ、意見を受けて、もっと十分な審議をするべきではないか、このように思っています。

 特に、子供の貧困はとても大事なことです。あしなが育英会の緑川さんの陳述、大変すばらしい意見陳述でありました。貧困率の削減を明確にして大綱に盛り込むことは、政府の意思になりますので、大変重要だと思います。しかし一方で、やはり、削減をするためには、貧困率が下がるためには、具体的な施策が必要であります。残念ながら、それが民主党の政権交代の一つの大きなテーマでもあったはずであります。非常に残念に思っています。

 ただ、子供の貧困は子供の責任ではないし、学習支援も大変効果的です。しかし、本当に根絶するためには、やはり親の貧困状態を変えなければなりません。子育て世代に大変厳しい生活扶助基準の引き下げは、絶対にやるべきではありません。少なくとも、八月からというのは踏みとどまるべきではありませんか。

田村国務大臣 貧困率という数字がひとり歩きするわけでありますけれども、なかなかこれは、今の御質問は非常に難しいんですが、貧困ラインというものを考えたときに、一人親の生活保護家庭がどういう状況かといいますと、実は、貧困ラインよりもこれは上に来ているんですね。

 ここがなかなか難しいところで、貧困率という考え方、相対的貧困率という考え方が、全体として、本当にどういう数字なのかと考えたときに、それだけではかるのは非常によろしくないであろうと我々は思っております。

 ですから、全体として、子供という意味からすれば、子供の家庭の状況ですね、本当に、例えば、収入があっても子供に使われていない、もしくは、子供に対する対応、こういうものが非常に厳しい状況の家庭においては、それを改善する努力をしていくということが、金銭だけではなくて、全体の、要するに、子供の貧困というものに対しての対応になっていくわけでございます。

 一方で、生活保護家庭のお話でございましたが、これは今まで、それぞれの見直しにおいて議論をいただいた上で、ねじれを直し、また、低所得者世帯との対比ということもございまして、そことの公平感というものも含めて対応する。一方で、物価というものに注目いたしまして、今まで、本来ならば物価等々で下げるべき余裕のあったものを、今回、適正化というような形の中で、適正化で引き下げられるということでございますので、ちょっと、論点が若干違うのかなというふうに思います。

 やはり、子供の貧困という意味は、金銭のみならず、しっかりとした対応をしなきゃなりませんから、学習支援でありますとか、いろいろなものの対応の中において、子供の貧困というものをなくしていくための努力をしてまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 まず、大臣は、答弁の中で、家庭の全体の状況ということをおっしゃった。まさに、私が言いたかったのは、それなわけです。

 ですから、貧困の連鎖を断ち切るために、さまざまな学習支援ですとか、やるのは当然のことだし、子供に特化した支援も大いにやるべきです。お金だけの問題ではない、そのとおりです。

 だけれども、今政府が、この扶助基準の引き下げによって連鎖するもの、例えば就学援助ですとか、そういうことを全体に波及しないように何とか手だてをすると言っている。でも、それは、裏を返せば、全体に波及するということを認めているわけなんです。つまり、最低生活とはどういうものかということのラインを下げるわけです、この扶助基準を下げるということは。

 だから、単に生活保護世帯だけではなくて、子育て世代全体にもかかわる問題なんだという立場で指摘をしてきたわけで、せっかく子どもの貧困法案をみんなで成立させようとするのであれば、まずそこを踏みとどまるべきだという立場で指摘をさせていただきました。

 引き続いて、後のところでまた大臣にはお願いしたいと思います。

 そこで、まず、閣法修正案の提出者に質問をいたします。

 生活保護法一部改正案二十四条について、なぜ提案者はただし書き修正にしたのでしょうか。基本は義務規定となっていることに変わりはありません。二十九日の委員会でも、同じ民主党の長妻議員が指摘したとおりであります。削除をすべきではなかったでしょうか。

山井委員 委員の御質問にお答えを申し上げます。

 政府案の第二十四条第一項、第二項については、さまざまな意見があったところではありますが、生活保護の申請は書面を提出して行うことが基本とされている一方で、事情がある方については、現在の運用でも口頭による申請が認められております。政府においては、今後もこうした運用を変えるものではないという旨の見解が示されました。

 こうしたことを踏まえ、国会の意思として、運用を変えるものではないということをより明確にするため、今回の修正を行ったものであります。

 高橋委員御指摘のように、運用を変えないことを明確にする方法としては、今回提出した修正案のような、ただし書きを加える方法のほか、御指摘のように、二十四条の一項及び二項を削除する方法もあり得るとは思います。

 今回の修正においては、既に閣法が提出されていることを踏まえ、閣法に対する必要最小限の手直しとして、ただし書きを加えるという形で対応をさせていただきました。

高橋(千)委員 まるで政府のような答弁でありました。

 何も、政府の考えをしんしゃくして答弁する必要はないのではないか。長妻議員がこの場でつい一昨日指摘をしたことは何だったのか。また、皆さん自身が、何度も繰り返し、水際作戦のことをこれほど指摘しておきながら、修正案をわざわざ出しているのに、なぜ削除ということが提案されなかったのか、非常に残念でなりません。

 逆に、扶養義務については一切の修正がないのはなぜでしょうか。

 本日の参考人質疑でも、NPO法人もやいの稲葉剛さんが水際作戦の実際を紹介されました。親元に帰って、死んでも骨を拾わないと一筆書いてもらってから来い、こういう非情な実態が現場では行われているということが言われておりました。寄せられる相談の多くが、働けという問題と同時に、家族に養ってもらえという扶養義務の問題だということが指摘をされています。

 また同時に、貧困の連鎖を防止する、これは先ほど来、山井委員が何度も強調している子供の貧困の趣旨でもあるわけですけれども、子供がせっかく自立しても、将来、親の扶養という重荷を背負うことになる、こういう指摘もあるわけです。

 民主党さんは、この問題をなぜ修正しないのか、問題ないと思っているのか。

山井委員 高橋委員にお答え申し上げます。

 私たちも、水際作戦は決してあってはならないものだと思っております。政府案においては、扶養義務者に対する通知や報告要求の規定が盛り込まれており、この規定により、要保護者が保護の申請をためらうことになるのではないか、そういう懸念があったわけであります。

 しかし、今回、二回の法案審議の過程において、この規定の対象は、今までどおり、極めて限定的な場合に限り、本当に保護が必要な人が保護を受ける妨げとならないよう慎重に対応する、つまり、従来の運用は変えないという旨の答弁が繰り返し政府からあったことを踏まえ、この規定の修正は行っておりません。

 私たちは、政府がその答弁に従って適切に制度を運用すると理解をしております。

高橋(千)委員 ですから、与党じゃないんだから、そういう答弁をする必要は全くないんじゃないかなと思います。

 ここでも指摘をしているように、変わらないんだったら、わざわざ厳しく書く必要はないんですよ。報告まで求めるということ、そこまで言われたら、そのニュースを見ただけで、もう私は無理なんだ、別れた夫や縁を切られた子供にまで連絡が行っては絶対困るといって、無理して、保護を受けるのを諦める。そういう実態が、山井委員も随分聞いて、これまでも議論をしてきたのではなかったのかな、そのように指摘をしたいと思います。

 民主党政権のときに、世の中の生保バッシングを受けて、報告をさせるということを法定化することを検討していると、当時の小宮山大臣が答えたことが多分今に響いているんだと思います。

 あわせて、それとの整合性、調査権限を厳しくするかわりに、だったら、申請義務も法定せざるを得ないと内閣法制局が説明したということがこの間の答弁の中であるわけです。根っこはそこにある。民主党政権時代に言ってしまったこと、世間のさまざまな声に反応して言ってしまったこと。

 しかし、まだ、野党になったんですから、改めて見直すことだってできたのにと思って、重ねて指摘をしたい。非常に残念に思います。

 次に、自民党の提出者に伺います。

 昨年八月に成立した社会保障制度改革推進法には、附則として、「就労が困難でない者に関し、就労が困難な者とは別途の支援策の構築、正当な理由なく就労しない場合に厳格に対処する措置等を検討すること。」と盛り込まれております。

 この就労しない場合の「厳格に対処する措置」とは、どのような措置を考えていらっしゃいますか。

高鳥委員 お答えをいたします。

 生活保護法は、生活に困窮する国民の最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することが、法律の目的として、法律上、明記されております。

 お尋ねの社会保障制度改革推進法の規定は、働ける方はその能力に応じて積極的に働いていただくことが必要であるとの趣旨で規定をしたものでございます。この規定は検討規定でございまして、具体的な対応については、政府において検討いただいているものと考えております。

高橋(千)委員 この考え方がこの法案の根底にあるということが、改めて確認ができたと思います。非常に残念ですね。

 それが、どのように厳格化ということで具体化をされたのでしょうか。局長に伺います。例えば、調査権限の強化の中に、就労状況を調査するですとか、生活保護を抜け出した人の再々申請を厳格化する、こういうことが言われておりますが、どのようにするのでしょうか。

村木政府参考人 就労できる方、それから就労できない方、それぞれの方に合ったやり方で支援をしていくということ、これは基本的なことだと私どもも思っております。

 基本的には、就労できる方の支援については、この法案の審議で申し上げているような就労活動促進費ですとか、勤労控除の引き上げですとか、就労自立給付金の創設ですとか、こういったことで行いたいと思っております。

 ただ、委員から先ほど御指摘もありましたように、今般の見直しの中で、働けるにもかかわらず就労活動をせず、複数回、保護の廃止を受けた、何度もそういうことが起こったという方については、もちろん急迫の状況である場合は除きますが、その後、申請があった場合には、審査時の要件確認をよりしっかりと厳密に行うということを検討しているところでございます。

高橋(千)委員 失礼しました、提出者はこれでよろしいですので。

 私は、働ける方が、働けるのに、要するに、例えば、自分で仕事をやめて楽して生活保護を受けたいわという人は、多分、そういう人はもともと受けられませんよね。現行制度でも受けられません。そういうことを言っているのではないんです。

 いろいろな事情があって、働きたいけれども仕事がない、何度も何度も訓練を受けたり、ハローワークに行っているんだけれども、現実は仕事がない、そういう人たちに対しても、あなたは働けるんだ、稼働年齢じゃないかということで保護の要件を切るというふうなことがあってはならないという立場で指摘をしていますので、ここは一緒にしていただきたくないんですね。

 それで、きょう、特別部会の部会長代理である岩村参考人がおいでになって、特別部会の報告書の背景には、受給者がふえたことと、稼働年齢層の増加があって、生活保護だけでは無理であるという現状がある、それと、今私が質問した社会保障制度改革推進法が明確にあるということを述べました。

 そうすると、やはり意味合いが全然変わってきて、保護の一歩手前の方に応援をしますよとか、保護から支援すれば抜け出せる人に応援しますよという意味合いだけではなく、まず働ける人は働け、それは、厳格化によって受給抑制ということになるのではないか。いかがですか。大臣に伺います。

田村国務大臣 まず、先ほど村木局長が申しましたことは、事情があって働けない方は、これは当然、病をお持ちでありますとか、そもそも、まだ生活習慣がしっかり戻らずに働けないという方々には、やはり生活訓練等々を受けていただいて、リズムを直していただいて、それで働けるような環境、それはモチベーションも含めてでありますけれども、そういう環境をつくらなきゃならないというのが、それは我々、今回の制度の中でもしっかり盛り込ませていただいておるわけであります。どう見ても、今委員がいみじくもおっしゃられましたけれども、生活保護を受けていた方がいいや、働けるし、働く意欲もないことはないけれども、だけれども生活保護の方がいいやなんというのはだめだという話の中でございますから、そこは誤解のないように、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 その上で、今のお話の中で、そもそも自民党の方針と今回の制度改革、これが相まつと、要は、生活保護の適用を受けられる方も受けさせないで働かせるというようなお話でありますが、働けるところがあって、その上で、働いた収入が基準よりも少なくない、それを超えられる方は、そもそも働いていただいたらいいわけでありまして、働けるというのは、先ほども言いました、本人にちゃんと働ける環境が心身ともに整っていること、それからちゃんと職がある、こういう状況ですよね、そういう状況の方々は、当然、働いていただければいいわけであります。

 ただ、一方で、職業がどうしても見つからない、その方の職業の能力というものとうまくマッチングができないというような中において、どうしてもこれは働く状況にない、そして、一方で、生活をするための糧がないということになれば、それは生活保護をお受けいただくことになるわけでありますから、そこは厳格に対応をしていくということでございますので、懸念のないような対応を周知徹底してまいりたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 ですから、最初に言ったように、どう見ても働けるのにという人はそもそも窓口でシャットされていますから、そういうことを議論しているのではないんだということです。

 それで、具体的に、今、生活困窮者自立支援法案の中で、自立相談支援事業、就労準備支援事業、就労訓練事業、いわゆる中間的就労、これらが提案をされています。

 まず、保護受給者も対象となるのか、伺います。

村木政府参考人 生活困窮者自立支援法は、生活保護に至る前の段階の方を対象にした法律でございますので、基本的に、こちらの法律で行う事業は、生活保護の方々ではなくて、困窮者、おそれのある方々というふうに御理解をいただきたいと思います。

 生活保護受給者の方々への支援は、生活保護法の規定に基づいて、規定はかなり抽象的なものでございますが、同様の支援をほとんどの事業について行うことができると思います。

 なお、就労支援員等の事業については、今回、改めて生活保護法の方に規定をいたしました。それから、もう一つ、いわゆる中間就労等でございますが、これは法人の自主事業として行う事業として生活困窮者自立支援法でも創設をしておりますので、これらの事業は、生活保護法で対象にするということは今のところ想定をしておりません。

 ただ、生活保護法というのは就労支援等については非常にさまざまなことができる法律でございまして、今も予算事業でさまざまなことをやっておりますので、困窮者法でできた事業で生活保護の方々にも役立つ事業というのは予算事業の形で事業を行っていくことができますし、また、同じ事業なら一緒にやればいいじゃないかという声が必ず起こると思いますが、運用上、一緒にやるような工夫も考えていければというふうに思っているところでございます。

高橋(千)委員 特別部会の報告書の中で、一つ一つについて生活保護受給者も受けられるようにすべきであると。そういうふうな流れの中でこれが出てきているのであろう。ですから、一歩手前の人だけではない、非常に密接な関係があるというのがまず一つあると思うんですね。

 その上で、自立相談支援事業、これは必須事業ですよね。これは、直営並びに民間団体への委託も可能となります。それで、その相談事業を行う相談員、非常に大きな鍵を握るわけですけれども、その資格、条件をどのように考えていますか。

村木政府参考人 御指摘のように、この相談員というのは非常に重要な役割を果たすと私どもも考えております。

 具体的には、生活困窮者が抱える複合的な課題の評価、分析をし、個々人に合った個別の支援計画を策定して、必要に応じてほかの支援機関にもつなぐというようなことが求められるわけでございます。

 こういう支援内容を考えますと、今ある資格の中では、やはり社会福祉士などが要件としては一番近い資格かなというふうに思っておりますが、もちろん、こういう資格を持ってくださっている方を配置できるのが一番いいと思いますけれども、一方で、そういう方に限定をすると、今度は人材不足が起こるというようなこともあり得て、なかなか悩ましいところではございます。特に、必須事業にしておりますので、地域によってはこういう人材がいないということもあろうかと思っております。

 そこで、ぜひ我々も相談員の資質を確保したいと思っておりますので、研修内容については、我々国の方で中心になってカリキュラムもつくり、テキスト等も考えていって、一貫した養成ができるようにしたいと思っております。当分の間、養成そのものも、最初は特に、リーダーになる方々でございますので、国で直接に養成をしたいというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 相談支援事業は、住居の支援から就労の支援から中身がいろいろありまして、午前の部で埼玉の取り組みなども紹介をされて、いい面もたくさんあるわけです。全否定はしていません、もちろん。

 ただ、今言ったように、非常にこの相談員の仕事が重要である、そして、ある意味、これはさっき言ったように重なる部分がありますから、生保の決定にもつながる、かかわる、重大な仕事だと思うんです。そうすると、これをまさか民間に丸投げというわけにはいかないと思う。つまり、行政が必ず介在する必要があると思います。

 そして、そのためにも、例えば、ケースワーカーが今でさえいっぱいいっぱいなのに、その枠の中で分け合うのでは意味がないわけで、当然、ケースワーカーも、保護の現場も、そして相談員も、純増しなければとてもじゃないがやっていけない。どうですか。

村木政府参考人 新しい自立相談支援事業については、民間委託ができることにいたしましたが、実施主体そのものは自治体でございますから、自治体としては、委託をする場合であっても、委託事業者をしっかり監督するということが必要になってまいります。

 また、生活保護法の方でケースワーカーがいるわけでございますが、こういった幅広いメニューを生活保護の受給者の方が使われる場合には、やはりケースワーカーがきちんとそこの支援の中心にいるということが大事だというふうに思っております。

 ケースワーカーの増員については、これまでも努力をしてまいりましたが、引き続きしっかり努力をしていきたい。また、新法については、こういう新しい業務ができるわけでございますから、そのあたりの自治体の体制、それから、民間委託がしっかりできるような事業の運営の仕方というところに工夫をしていきたいと考えております。

高橋(千)委員 実施主体は自治体だけれども委託しているというのは、どの場合でもあるんですよね。それじゃだめなんです。単に監督するとかではなくて、保護の決定にかかわるような機微な部分は、ちゃんと行政が責任を持つ。しかし、それを、単に回り番ではなくて、ふやすという立場で明確にお答えいただきたい。

村木政府参考人 今申し上げたのは、新しい生活困窮者支援法について申し上げましたので、生活保護受給者については、当然、ケースワーカーが責任を持ってやっていくわけでございますから、そこはケースワーカーの増員もしっかりやっていくということでございます。

高橋(千)委員 全然、答えになっていないんですね。

 さっきから言っているでしょう。生活保護とかかわる、重なるんだと言っているのはどういうことかというと、相談の窓口で、自立相談支援をやる中で、保護が必要な方はつなぐと言っているわけですよね。そうしたら、保護の人はケースワーカーですというだけじゃないんです。そうでしょう。でも、その逆もあるでしょうが。保護を決定する前に、まずこちらに行ってくださいよとなりませんか。

村木政府参考人 少し御質問の趣旨を私が十分理解していない部分があるのかもしれませんが、もちろん、生活困窮者自立支援法に基づく相談支援機関に来られた方が、生活保護を受ける資格のある人だということがわかれば、当然、これは保護につながなければいけないわけで、保護の部分は自治体が直接しっかりやっていかなければならないわけですから、そこのつなぎはぜひしっかりやりたいというふうに思っております。

 それから、今まで福祉事務所に来られた方々の中で、審査をした結果、保護に至らないという方もいらっしゃるわけでございますが、それをそのままお帰しするのではなくて、新しい事業でこの方々の支援ができるのであれば、そこにつないでいくという形で実施をしたいと考えているところでございます。

高橋(千)委員 副大臣に質問を、今のところをもう少し明確にお話をしたいと思います。

 保護の部分はと言ったんですけれども、相談を受ける時点では、保護を受けるべき人かどうかわからない。だから、その時点では、私は、やはり行政が責任を持つべきだと言っているんです。つまり、自立相談支援事業の最初の窓口はやはり行政が責任を持つべきじゃないか、丸ごと民間に委託では困りますよということが一つです。

 それと、その逆もあるわけですよね。相談をしてつなぐというよりは、むしろその逆に、保護に行きたいんだけれどもという人を、いやいや、まずこちらにいらっしゃってくださいということになりませんか、自立相談支援をまず受けてくださいということになりませんかということを言っています。

桝屋副大臣 先ほどからの議論を横で聞いておりまして、恐らく委員の御懸念は、今回新しく、第二のセーフティーネットとして生活困窮者自立支援制度の設計をいたしますけれども、これが大きな壁になって、生活保護に至らないケースが相談支援の中で出てくるのではないかという御懸念であろうかと思います。

 もちろん、制度として今回仕込みます生活困窮者自立支援制度は、生活保護の手前の段階で支援を実施することで、生活保護に至る前に生活困窮状態から脱して、生活を改善し、自立生活を継続していただくということを目的とするものでありますが、委員からもお話がありましたように、生活保護受給者の方の就労に対するアプローチも、それはあるんだろうと思います。

 生活困窮者自立支援制度と、それから生活保護。生活保護は、先ほどから何度も話が出ておりますように、保護が必要な人には確実に保護を実施する、この生活保護制度の基本的な考え方は何ら変わらないわけでありますから、要は、先ほどから議論が出ておりますように、保護の要件を満たしている方は、福祉事務所に保護を申請し、受給することができるということでありまして、やはり委員が言われるように、しっかり連携をしていくということだろうと思います。

 一方、では、この自立支援制度の窓口を担当する人が、全部、ケースワーカー経験者とか、あるいは直接のお役所の職員でなきゃならぬかというと、私は、必ずしもそうではない。

 今でも、例えば社会福祉協議会の職員であったり、あるいは社会福祉法人のさまざまな、いわゆる社会福祉法人の役割として地域福祉を担っておられる方、そうした方々が住民の相談を受けて福祉事務所へ連携をするということは大いにあることでありますから、むしろ、そうした取り組みをしっかりしていきたい、そういう趣旨だということを、今後、その旨、自治体に対して周知徹底をして努力してまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 やはり、ここら辺はうまくかみ合わないのは当然なんです。

 なぜかというと、さっきから議論している、働ける人は働くのが当然なんだという議論なんですけれども、実際には、私が一昨日の質問の最初に言ったように、若いからといって、稼働年齢だからといって、即、働けるんだから保護は受けられないよという機械的な対応をしちゃいけないよということを指摘しました。そのとおりだと副大臣はおっしゃいましたよね。だけれども、そういうことが現実に行われているんですよ。

 例えば、交通事故に遭って、車椅子になって、半身不随になって、保護の現場に行ったら、あなた働けますかと言われているんですよ。そういうことが現実に行われています。

 また、秋田の練炭自殺も、札幌の白石の餓死の事件も、政府の訓練制度を受けて、訓練をやっている最中に、間に合わなくて亡くなっているんですよ。

 訓練を受けている、求職活動をしている、だけれども仕事にたどり着いていないんです。それを、こういうメニューを用意したから保護はやらなくていいよということにならないかということを指摘しているんです。

 それは、最初に言っているように、最初のこの法案の意思が、やはり就労可能な人は可能な限り生活保護を利用させない、この精神が基本にあるんですよ。だけれども、それは、皆さんが思っていることと現場が違う。本人の事情と、本人が働けない、もちろん働きたいと思っているんですよ、思っているけれども、現実、今働けていないことと、やられていることが合っていないから、こういう指摘をしています。

 次に続けますけれども、いわゆる中間的就労は、労働基準法、最低賃金法の適用除外となりますか。

村木政府参考人 いわゆる中間就労ですが、これは、対象者の就労能力の向上に合わせて、非雇用型と雇用型、両方の段階をつくることを考えているところでございます。だんだんにステップアップをしていくという形を考えております。

 非雇用型については、これは訓練でございますので、対象者の同意を得て、個人ごとの就労支援プログラムに基づく就労訓練として実施をされますので、労働基準法や最低賃金法などの労働関係の法令は適用されないということでございます。

 また、これは労働ではありませんので、所定の作業日、作業時間に作業に従事するかどうかというのは労働者の自由であり、また、対象者に対して、作業時間の延長や作業日以外の日における作業指示を行うことはできない、こういったルールになろうかと思います。

 それから、雇用型は、当然でございますが労働基準法上の労働者であることから、基準法や最低賃金法などの労働関係の法令が適用されます。

 いずれにしても、双方、非雇用型という看板をかけたから労働法令が適用されないということではなくて、労働者性がないかどうか実態を見きわめて、労働者性がある場合にはきちんと労働法令を適用しなければならないと考えているところでございます。

高橋(千)委員 低額であっても一旦就労、これが、五月二十日の全国係長会議、あるいは昨年の特別部会の中にも資料として出されております。「切れ目のない就労・自立支援とインセンティブの強化について」という形で書かれております。保護開始直後から集中的な支援、それでもだめなら低額でも一旦就労、めどが立たなければ、本人の意思を尊重しつつ、職種、就労場所を広げて就職活動を基本とすると。

 ですから、本人が、本当に短時間だけれども、少しかかわっていきたいんだ、そういう希望をかなえるための社会的就労あるいは福祉的就労、これは当然大事なことだと思っています。ただ、現実に、それが当たり前になっては絶対困るわけですよね。最低賃金を払わなくてもいいんだ、あるいは労働法を守らなくてもいいんだというのが、今とりあえずないからということになっては絶対困る、ここをきちんと担保するものが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

村木政府参考人 中間就労というのは、いろいろな準備訓練をした上でも一般就労につくことが難しい方のコースとして考えております。

 ですから、十分に働けるのにそういう中途半端な、例えば、労働法令の適用のないようなところで働いてほしいと決して思っているわけではない。逆に、我々は、できるだけ安定した仕事、いい仕事についていただきたい、それを一緒に探すという努力をしたいと思って、制度を組んでいるわけでございます。そういう意味では、それ以上の力があるのに、訓練過程で非雇用型においてというようなことはないようにしたいと思っております。

 雇用型、非雇用型の振り分けは、御本人の意向を踏まえて、相談機関の側で御本人の状況を評価した上で決定をするということになります。

 それから、就労訓練事業については、この認定を行うのが都道府県でございますので、そこがしっかり事業者から報告徴収をするとか、それから、自立相談支援機関が事業所訪問等によって支援の状況を定期的に確認をするとか、対象者が不満があった場合にはすぐに相談ができる体制をつくるというようなことにしたいと考えております。

 いずれにしても、そういうプロセスが必要な方の訓練として運用をしたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 報告徴収ですとか、当然、どの企業にでもというわけではないのだからとおっしゃいます。でも、大概、そういうところに参入してくる企業は、最初から悪意を持ってというような、あるいは書類上でおかしいよということには絶対ならないわけでありますから、大概そういうのは当然クリアする企業であろう。

 だから、むしろ、それが当たり前にならないように、低賃金で、労働法を守らなくてもいい就労が手に入るよということにはならないように、これは重ねて指摘をしたいと思っています。問題は、そういう就労があるよということで、保護の脱却あるいは保護に入らなくてもいいということではだめだということをさっきから指摘をしています。

 一月十六日の特別部会で、NPOの代表として参加をしている藤田孝典委員が詳細な意見書を述べていらっしゃいます。非常にどれも大事な指摘で、それぞれ取り上げたいなと思ったんですけれども、私は、それを読んでいてあっと思ったのは、案の案の段階でこの意図がはっきり書かれていたんだなということがわかったんですね。

 つまり、藤田さんは、新たな水際作戦のツールとならないように歯どめを明記すべきである、こういう指摘をしていて、生活保護制度の見直しと相まって、就労可能な人が可能な限り生活保護を利用することなく、自立できるように、この表現を問題にしています。この表現を探したんだけれども報告書にはなくて、案の案の段階、一月十六日の前の案に明確に書かれておりました。ですから、ある程度中和されたというのはあるんですよね。そこまでは書いていない。

 だけれども、そもそも自民党の選挙公約は、手当より仕事でありましたよね。生活保護、手当より仕事だと。だけれども、さっきから言っているように、同列に選べる立場に受給者がないのに、仕事は嫌だけれども、保護はもらいたいわ、そういう状況ではないのに、あなたは働けるんだからだめよということになってはいけないということ。そこが、やはりここに、思想に流れているんではないかということなんです。

 ですから、この自立支援戦略が保護の見直しとセットで出てきた、このことによって生保からの脱却、我々的に言うと追い出しですね、そして水際作戦の強化のツールになってはならない、笑っていらっしゃいますが、もちろんそうではないとおっしゃると思いますが、大臣のお答えをお願いしたいと思います。

田村国務大臣 自立相談支援事業で、水際対策になるんではないかというような御懸念があられたんだと思います。

 そもそも、いろいろな生活の状況を見て、中間的就労にいたしましても、何らかの就労についていただく。それで収入が、要は生活保護の基準よりも上回れば、当然、それは自立になるわけでありますが、下回って他に資産がない、もちろん扶養していただく方もいないということになれば、これは当然、生活保護を受ける基準をクリアするわけでございますから、生活保護を受けていただきながら、それは生活困窮者事業ではなくて、これも関連しておりますから、生活保護の中での就労訓練という話になるのかもわかりませんけれども、それを受けていただきながら、基準に足らないところは保護を受けていただくということになるわけであります。

 一方で、生活保護を受けておられる方も、軽度な就労というような形から入っていただく中におきまして、生活のリズムを整えていただいて、だんだんなれてこられて、それからステップアップをされて、最終的に生活保護基準をクリアする収入を得られるようになれば、そのときには生活保護から脱却をいただくということでございますから、そこのところを明確にちゃんと運用できるようにするのが、我々がやらなければならないことでございますので、今御懸念の部分が顕在化していかないように、我々、しっかりと周知徹底をしてまいりたい、このように思っております。

高橋(千)委員 セットで出されたから問題だと指摘をしています。

 終わります。

    ―――――――――――――

松本委員長 この際、お諮りいたします。

 中根康浩君外八名提出、子どもの貧困対策法案及び薗浦健太郎君外一名提出、子どもの貧困対策の推進に関する法律案につきまして、それぞれ提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 以上で、内閣提出、生活保護法の一部を改正する法律案及びこれに対する高鳥修一君外五名提出の修正案及び生活困窮者自立支援法案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、生活保護法の一部改正案及び生活困窮者自立支援法案に反対の討論を行います。

 最後のセーフティーネットとされる生活保護にかかわる重要な法案を、十分な審議も行わないまま採決することに反対です。子供の貧困対策はもちろん賛成ですし、それ自体、十分な審議をするべきです。まして、本日午前、参考人からの意見を受けながら、午後には採決するというのは、余りに不誠実な対応であり、強く抗議をしたいと思います。

 生活保護法は、「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、」とうたっており、「保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」と明記をされています。この基本理念並びに制度の根幹である無差別平等の原則、必要即応の原則もいささかも揺るがないことは、審議の中でも確認されました。字面では何ら変えていないのに、中身はこの基本理念、原則を侵すものとなっていることに怒りを禁じ得ません。

 以下、法案に反対する主な理由を述べます。

 まず、指摘しなければならないのは、保護の申請を、申請書の提出が必要な行為と義務づけた新たな規定を設けたことです。現在でも、窓口で申請意思を示しても申請書を渡さない、あれこれと条件をつけてなかなか受理しないといった水際作戦が行われています。時にそれが悲惨な結果を生み、申請権を侵害する違法な行為として裁判でも弾劾されてきたものです。今回の改正はこのような水際作戦を合法化するものであり、許されません。四会派提出の修正案も、その本質を変えるものではありません。

 次に、福祉事務所の扶養義務者に対する調査権限の付与、また義務を果たしていないと判断した場合の扶養義務者に対する通知の義務づけは、保護開始の要件とされていない扶養義務の履行を事実上強いるものになります。親族間に不要なあつれきを生じさせ、親族に知られたくないからと、生活保護を受けることを断念させることにつながりかねません。

 なお、不正受給は厳正に対処していくことは当然ですが、不正受給とされる事案のほとんどは、アルバイト代の収入の申請漏れなど、ささいなミスによるものです。生活保護費との相殺や不正徴収金の懲罰的上乗せは、行うべきではありません。

 生活困窮者自立支援法は、生活保護の見直し並びに扶助基準の大幅引き下げと一体のものとして提出されました。生活保護基準を下回る仕事でも、とりあえず就労という形で、生活保護からの追い出しあるいは水際作戦のツールになるおそれがあり、賛成できません。

 また、本年五月に採択された国連の社会権規約委員会所見が、生活保護の申請手続を簡素化し、かつ、申請者が尊厳を持って扱われることを確保するための措置をとることを締約国である日本に求めていることからも逆行するものです。

 人間裁判と呼ばれた朝日訴訟から五十六年がたちます。一般国民の生活水準にまで負の連鎖を生み出す生活扶助基準の切り下げは、断じて許せません。基本理念の否定につながる生活保護法案は廃案とすべきことを強く求めて、討論を終わります。(拍手)

松本委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、生活保護法の一部を改正する法律案及びこれに対する高鳥修一君外五名提出の修正案について採決いたします。

 まず、高鳥修一君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、生活困窮者自立支援法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

松本委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子供が健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子供の貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子供の貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子供の貧困対策を総合的に推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、子供の貧困対策は、子供等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の施策を、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることにより推進されなければならないこと等の基本理念を定めること。

 第二に、政府は、子供の貧困対策を総合的に推進するため、子どもの貧困対策に関する大綱を定めなければならないこととし、大綱は、子供の貧困対策に関する基本的な方針、子供の貧困率、生活保護世帯に属する子供の高等学校等進学率等子供の貧困に関する指標及び当該指標の改善に向けた施策、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援その他の子供の貧困対策に関する事項並びに子供の貧困に関する調査及び研究に関する事項について定めるものとすること。

 第三に、都道府県は、大綱を勘案して、当該都道府県における子供の貧困対策についての計画を定めるよう努めるものとすること。

 第四に、内閣府に、特別の機関として、子どもの貧困対策会議を置くこと。

 第五に、政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

 なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本委員長 本件について発言を求められておりますので、これを許します。山井和則君。

山井委員 民主党・無所属クラブを代表し、子どもの貧困対策の推進に関する法律案について一言申し述べます。

 このたび、この法律案が全会派一致で衆議院厚生労働委員会を通過する見込みとなったことは、非常に画期的なことです。あしなが育英会出身である下村文部科学大臣のリーダーシップのもと、自民党の薗浦議員を初め超党派の多くの議員の方々、衆議院の法制局の方々の御尽力がなければなし得ませんでした。

 特に、修正協議により、子供の貧困率や生活保護世帯の子供の高校進学率等の指標の改善という言葉が法律に明記されたことは、極めて重要な意味を持っております。なぜならば、その数値が改善したか悪化したかを検証することにより、後々までこの法律の実効性を検証することができるからです。その意味では、この法律案は成立させて終わりではなく、私たち国会議員に重たい責任、宿題を課したものとも言えます。

 この法律案の施行の効果を検証できる最初の子供の貧困率の発表は、四年後の二〇一七年の夏です。そのときには、必ず、子供の貧困率や一人親家庭の子供の貧困率、生活保護家庭の子供の高校、大学進学率などの数値が改善しているように、全国会議員と厚生労働省を初めとする政府は一丸となって、ことしを子供の貧困対策元年として、ともに頑張ろうではありませんか。

 また、当事者や当事者団体の声を会議を開いて把握した上で、子どもの貧困対策に関する大綱を作成することが委員会で決議されることも非常に重要なことです。当事者の切実な声を踏まえた大綱が作成されることを切に望みます。

 実効性がある、目に見える結果が出る法律に育て上げていくことをここに皆さんとともに誓い合い、発言とさせていただきます。(拍手)

松本委員長 以上で発言は終わりました。

 お諮りいたします。

 お手元に配付しております草案を子どもの貧困対策の推進に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 次に、子どもの貧困対策の推進に関する件について決議をいたしたいと存じます。

 本件に関しましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において案文を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえたいと存じます。

    子どもの貧困対策の推進に関する件(案)

  政府は、子どもの貧困対策に関する大綱を作成するに際しては、貧困の状況にある子どもの置かれた状況を十分踏まえることが重要であることに鑑み、子どもの貧困対策に関し優れた見識を有する者や貧困の状況にある世帯に属する者、これらの者を支援する団体等、関係者の意見を会議で把握した上で、これを作成すること。

  右決議する。

以上であります。

 お諮りいたします。

 ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。

 この際、田村厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 ただいま決議になられました委員会決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、関係省庁とも連携を図りつつ努力いたす所存でございます。

松本委員長 なお、本決議の議長に対する報告及び関係方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十一分散会


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