衆議院

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第5号 平成25年11月12日(火曜日)

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平成二十五年十一月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 後藤 茂之君

   理事 あべ 俊子君 理事 金子 恭之君

   理事 北村 茂男君 理事 とかしきなおみ君

   理事 丹羽 雄哉君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大串 正樹君    金子 恵美君

      小松  裕君    古賀  篤君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高鳥 修一君    高橋ひなこ君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      永山 文雄君    藤原  崇君

      船橋 利実君    堀内 詔子君

      松本  純君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      大西 健介君    中根 康浩君

      長妻  昭君    柚木 道義君

      足立 康史君    浦野 靖人君

      重徳 和彦君    新原 秀人君

      輿水 恵一君    桝屋 敬悟君

      柏倉 祐司君    中島 克仁君

      高橋千鶴子君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   参考人

   (学習院大学経済学部長) 遠藤 久夫君

   参考人

   (介護保険(要支援)利用者)           渡邉いつ子君

   参考人

   (法政大学経済学部准教授)            小黒 一正君

   参考人

   (神奈川県立保健福祉大学名誉教授)        山崎 泰彦君

   参考人

   (山梨市立牧丘病院院長)

   (気仙沼市立本吉病院非常勤医師)         古屋  聡君

   参考人

   (神戸大学名誉教授)   二宮 厚美君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  大久保三代君     藤原  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     大久保三代君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案(内閣提出第二号)


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     ――――◇―――――

後藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、学習院大学経済学部長遠藤久夫君、介護保険(要支援)利用者渡邉いつ子君、法政大学経済学部准教授小黒一正君、神奈川県立保健福祉大学名誉教授山崎泰彦君、山梨市立牧丘病院院長・気仙沼市立本吉病院非常勤医師古屋聡君、神戸大学名誉教授二宮厚美君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず遠藤参考人にお願いいたします。

遠藤参考人 学習院大学の遠藤でございます。

 本日は、このような場で発言をさせていただく機会を与えていただきまして、本当にありがとうございました。

 私は、この八月まで社会保障制度改革国民会議の会長代理を仰せつかっておりましたので、本日は、本法案と関連の非常に高い報告の内容につきまして、その概要と私の考え方を述べさせていただきたいと思います。

 まず、我が国の社会保障制度は、当然、釈迦に説法でございますけれども、高度成長期を中心に形成されまして、一九六一年の国民皆保険あるいは皆年金の実施を経まして、年金や医療給付の大幅な改善が実施された一九七三年に一応の完成を見たというふうに考えることができると思います。この当時の環境は、六十五歳以上の高齢化人口比率は一〇%以下ということでありましたし、また、経済成長率、賃金上昇率も、現在に比べるとかなり高い水準であったというわけであります。

 しかし、その後、人口の高齢化は急速に進みまして、一九九四年には六十五歳以上の高齢者人口比率は一四%を超えて、日本が本格的な高齢社会に突入したということでございます。また、経済環境を見ますと、バブル経済の崩壊後の長期にわたる経済の不況、グローバル競争の進展等、社会保障の基盤となる経済構造も大きく変わっていったわけであります。さらには、核家族化の進展など、社会保障制度が前提といたします家族の構造も大きく変わっていったということでございます。

 その中で、子育ての不安、あるいは高齢期の医療や介護に関する不安、あるいは雇用の不安定化、社会的なつながり、連帯感のほころび、こういったような新たなリスクが出てまいったわけであります。こうしたリスク等に対応するため、社会保障の機能強化を図ることが求められている。

 一方で、高齢化や医療の高度化などによりまして、社会保障の費用は増加いたしておりまして、経済の成長率を上回って社会保障費はふえている。こうした中で、既存の社会保障の安定財源を確保することとともに、社会保障の機能強化を図るためには、税や社会保険料の負担増は避けられない。しかし、少子高齢化や低経済成長のもとで負担をふやすということは、給付の重点化、効率化も同時に進めていかなければ、社会の理解を得ることができないというふうに考えます。

 こうした状況を踏まえまして、世界に冠たる日本の社会保障制度を将来世代にしっかり伝えるためには、現在の世代はどのような努力をしたらよいのかということを議論し、それを取りまとめたものがこの報告書であった、そのように理解しております。

 国民会議での議論は、社会保障制度改革推進法に規定されました改革の基本的な考え方や、社会保障四分野、年金、医療、介護、少子化対策でございますけれども、これに関する改革の基本方針などに基づき行うこととされまして、こうした方針に基づいて、有識者で専門的かつ実証的な議論を積み重ねることができたと考えております。

 報告書の大きな方向性でございますけれども、一つは、高度成長期の一九七〇年代モデルから、超高齢化の進行、家族、地域の変容、非正規労働者の増加など雇用環境の変化などに対応した、二十一世紀、二〇二五年日本モデルへの転換を図ることとしたことが一つ目。

 二つ目が、全ての世代を給付やサービスの対象とし、全ての世代が相互に支え合う全世代型の社会保障に転換することを目指すということが第二番目の方向性でございます。

 第三番目は、世代間、世代内の公平性の観点から、全ての世代が能力に応じて支え合う仕組みとして、年齢ではなく負担能力に応じて負担をする、こういうような方向性を打ち出しているということであります。

 各論のポイントは次のとおりでございます。

 まず、急速な少子高齢化が進む中、少子化対策は極めて重要だという認識で、少子化対策を各論の最初に持ってまいりました。子育て支援は全ての世代に夢や希望を与える未来への投資である、こういう視点から、全ての子供が健やかに成長できる、子供を産み育てやすい社会を実現しなければならないということであります。

 しかし、長時間労働の職場が多く両立支援が不十分であること、あるいは男性の育児参加が進んでいないこと、いまだ深刻な待機児童問題が残っているということ、また、子育て家庭の孤立化、あるいは育児不安など、子育ての現状は今なお厳しい状況にあり、課題は山積しております。

 そのような中で、社会保障・税一体改革の中で子ども・子育て支援が位置づけられまして、恒久財源の確保が図られることは大きな一歩であるというふうに考えております。特に、平成二十七年度から施行される予定である子ども・子育て支援新制度には、質の高い保育、幼児教育と、地域の子ども・子育て支援が総合的に推進される点に大きな期待を寄せているところであります。

 また、子ども・子育て支援の充実には、量的な拡充のみならず、質の改善が不可欠であります。そのため、今般の消費税引き上げによる財源である〇・七兆円程度を含め、一兆円を超える財源の確保が必要であるというふうに考えております。

 待機児童問題については、保育所待機児童は、三年間連続で減少しているものの、依然として二万人を超えており、深刻な状態にあると言えます。政府においても、待機児童解消加速化プランに基づき、潜在的な需要にも対応して、保育所の整備や保育士の人材確保の取り組みを強力に進めていくことが期待されるわけであります。

 また、子供が健やかに成長できる、子供を産み育てやすい社会を実現するためには、育児休業の取得促進などさまざまな取り組みを通じて、男女ともに仕事と子育ての両立支援を進めていくことが重要です。

 次世代育成支援対策推進法は、平成十七年度から平成二十六年度末までの時限立法として、我が国における少子化対策に大きな貢献をしてきましたが、今後の十年間をさらなる取り組み期間として位置づけ、その延長、強化を積極的に検討していくことが必要だと思います。

 医療、介護につきましては、それぞれ提供体制と保険体制について提言をしております。

 医療、介護の提供体制につきましては、地域完結型の医療・介護サービスを実現していくために、医療から介護へ、病院、施設から地域、在宅へという流れをつくり出し、住みなれた地域で、必要なときに必要な医療・介護サービスを受けることができるよう、医療、介護一体となった改革を進めることが極めて重要だと認識しております。

 医療、介護の改革を一体的に進めることにつきまして、国民会議の報告書の中でも、川上に位置する病床の機能分化という政策、すなわち、病床の機能に適した人的、物的資源を集中投入して入院医療全体の機能の強化を図り、早期の家庭復帰あるいは社会復帰を実現すること、また、在宅医療、在宅介護の充実など、川下に位置する退院患者の受け入れ体制の整備という政策、この川上、川下の二つの政策を一連の流れとして同時に行っていくことが極めて重要であるということを提言しております。

 これらは、社会保障・税一体改革成案などにおいて既に示されている方向性ではありますが、改めて、着実に実行する必要があることを指摘しております。

 また、医療提供体制を整備する上で、地域の実情を考慮することは極めて重要です。

 そのため、国民会議の報告書では、都道府県が、新しく創設することを検討するとされております病床機能報告制度の情報を活用しまして、医療計画の中で地域医療ビジョンを策定することを提言しております。都道府県が、そのビジョンをもとに、地域の医療ニーズを踏まえたバランスのとれた医療機能の分化、連携を進めていくというものであり、医療提供体制の整備に関する都道府県の役割強化を打ち出しております。これは、ある意味で新機軸かなというふうに思っております。

 また、急速な高齢化の進展に伴い、医療、介護の改革は待ったなしの状況であることを考慮すると、次期医療計画の策定時期である平成三十年度を待たず、地域医療ビジョンは策定、実行することが望ましいということも提言しております。

 さらに、地域医療ビジョンの策定は、入院後の受け皿となる介護サービスの整備と一体的に進めていくことが重要であり、医療計画と介護保険事業計画とは、連携の密度をさらに高めていくことが必要、このように考えております。

 地域医療ビジョンを実現して、医療、介護の基盤整備を一体的に進めるには、消費税増税分を活用した診療報酬、介護報酬とあわせて、新たに財政支援制度を創設して、これらを適切に組み合わせて支援することが肝要かと考えております。

 また、我が国では、国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現しており、今後もこの国民皆保険制度を堅持していくことは大変重要な課題でございます。

 高齢化や医療の高度化により、医療費の増大が進んでいる現状を考えますと、今後も安心して必要な医療を受けられるよう、安定した財源を確保しつつ、受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度を構築することが必要であります。

 こうしたことから、医療保険制度の財政基盤の安定化を確保するとともに、保険料負担の公平化、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化などを図るための取り組みも、同時に進めていくことが必要だと考えております。

 財政基盤の安定化としましては、後期高齢者支援金に対する全面報酬割の導入、国保の財政支援を前提とする保険者機能の都道府県への移行、国保への財政支援の拡充による低所得者に対する保険料軽減措置の拡充、国保、被用者保険の保険料上限の引き上げなどを打ち出しております。

 医療給付の重点化、効率化としましては、七十―七十四歳の医療費自己負担の見直し、高額療養費制度の所得区分による限度額の見直し、紹介状のない大病院での外来受診についての自己負担の見直しなどを挙げております。

 また、いわゆる難病への対策につきましては、難病対策要綱に基づき、四十年にわたり各事業が推進されてきております。しかし、事業の対象となる疾患同様に原因不明で治療法未確立の疾患であっても、医療費助成の対象とされないというケースがあるなど、疾患間の不公平が指摘されております。また、予算面でも、医療費助成における都道府県の超過負担の早急な解消が求められているなど、さまざまな課題を抱えております。

 このため、難病で苦しんでいる人々が将来に希望を持って生きていけるよう、難病対策の改革に総合的、一体的に取り組み、公平かつ安定的な医療費助成の制度を確立する必要があると考えております。

 また、長期の療養を必要とするいわゆる小児慢性特定疾患の対策についても同様の課題があり、難病対策と同様の措置が必要と思います。

 さらに、今後、高齢化が一層進展するとともに、認知症高齢者、高齢単身・夫婦のみの世帯が増加する中で、住みなれた地域で安心して暮らしていけるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが、切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現することがぜひとも必要です。

 その際、認知症高齢者に対する初期段階からの対応、生活支援サービスの実現を図ることが必要であります。また、高齢者は、慢性疾患を抱え、医療、介護の両方のニーズがあることから、在宅医療と介護の連携を進めることが極めて重要となります。

 一方、介護サービス量の増加に伴いまして、施行当初は全国平均三千円を下回っていた介護保険料は、既に五千円弱となっており、今後の高齢化の進展や、サービスのさらなる充実、機能強化を図っていく中で、二〇二五年には八千円になるという推計も出ております。介護費用につきましても、当初は三兆円程度であったものが、現在では約九兆円まで増加しております。

 このため、介護保険制度の持続可能性を高めていく視点から、介護サービスの効率化、重点化や、所得や資産がある人の利用者負担の見直しが必要な時期に来ていると認識しております。

 年金分野の改革については、新制度への抜本改革か、現行制度の改善かという捉え方をされることが多いのですが、国民会議は、所得比例型の年金制度は一つの理想型としながらも、現時点において、自営業者を含めた所得比例型の年金制度に必要となる正確で公平な所得捕捉などの条件は、整っていない状況にあること、被用者保険の適用拡大などの課題は、所得比例年金に一元化していく立場からも通らなければならないステップであることを押さえた上で、どのような制度体系を目指そうとも必ず必要となる課題を提示する、そのようなアプローチをとりました。

 この議論を通じて、自営業者を含めて一元化した所得比例型の年金制度を目指していくかどうかについては、その距離感や妥当性について委員の間で認識の違いはありましたが、将来の議論で対立して必要な改革に対する議論が進まないということは、国民にとっても望ましいものではないという認識を共有するに至りました。

 このような認識を共有した上で、長期的な持続可能性をより強固なものとする、社会経済状況の変化に対応したセーフティーネット機能を強化するという二つの要請に沿って改革を進めていくということが必要とされました。その上で、マクロ経済スライドの見直し、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、高齢期の就労と年金受給のあり方、高所得者の年金給付の見直しなどの課題が、どのような制度体系を目指そうとも必要となる課題となるということを報告書に盛り込んだわけでございます。

 以上が、国民会議の報告書の概要でございます。

 これは、二十回にわたって、少子化対策を含む社会保障制度の全分野について、全ての委員の英知を集めて精力的に議論を行い、取りまとめたものであることを御報告したいと思います。

 以上が、清家会長も、報告書の冒頭、「国民へのメッセージ」でおっしゃっているように、社会保障制度の将来のために何がよいか、高齢化が急速に進む中でも、将来の社会を支える世代の痛みを少しでも緩和するために、現在の世代が何ができるのかを考え抜いた国民会議の結論であるわけであります。

 世界に冠たる日本の社会保障制度を将来世代にしっかり伝えるために、報告書に挙げられた事項につきましては、さらに真摯な議論がなされ、改革を具体化することで、社会保障制度を持続可能なものとすることが必要であります。こうした改革の全体像、進め方を法律の形で示し、国民的な議論、理解につなげる本法案は、大きな意義があるものである、このように認識しております。

 以上を私の意見陳述とさせていただきたいと思います。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、渡邉参考人にお願いいたします。

渡邉参考人 渡邉いつ子と申します。

 私は、社会保障プログラム法案について、介護保険制度が改正され、特に、要支援が介護保険サービスから外されることについて、利用者の立場からお話をさせていただきます。

 なお、意見陳述は立ってさせていただきますが、立ったり座ったりが不自由なものですから、質疑応答については座ったままでさせていただきます。御容赦いただければと思います。

 私は、現在七十七歳で、東京都渋谷区内に一人で住んでおります。妹が静岡におり、年二回ほど衣がえなどに来てくれますが、介護保険の要支援の二の認定を受けてサービスを利用しています。週三回、生活援助のホームヘルプを利用できているおかげで、右半身麻痺ながら、何とかひとり暮らしができています。

 今回、要支援が介護保険から外されることにより、今利用しているサービスが減らされたり、自己負担がアップしたり、有償ボランティアによるサービスになってしまうのではないかと心配で、きょう、私の現状を理解していただきたい一心で発言させていただきます。

 言語障害がまだ残っていますのでお聞き苦しいことがあるかもしれませんが、御理解ください。

 私は、六十九歳のときに脳梗塞を起こしました。朝起きたら右手が動かず、急遽入院して治療を受けました。しかし、結果として右半身麻痺が残ってしまいました。

 入院しているときに要介護二の認定を受けましたが、退院後には要支援二と認定されてしまいました。一人で歩くことができず、右手もつっている状態で、とても要支援二という認定を受け入れられる状況ではありませんでしたが、結局、要介護度は変わりませんでした。以来八年間、要支援二で介護保険を利用しています。

 退院後は、一人で歩くこともできませんでしたが、ホームヘルパーの方の専門的で献身的なサポートをいただいて、一生懸命リハビリに励み、一人で歩くこともできるようになり、ひとり暮らしができています。症状の改善と維持のためには生活が安定していることが必要で、そのためには、プロのホームヘルパーさんの家事援助のお力は欠かせなかったと思います。現在でも、専門職のホームヘルパーさんの存在が、自立した生活を送るもとです。そして、元気になる糧でもあります。

 現在は、ホームヘルパーさんに介護保険の中で、一回につき二時間半、週三回、自宅に来ていただいて、買い物、調理の下ごしらえなど、家事の援助もしてもらっています。そのうち一時間は、渋谷区独自のサービスを追加してもらっています。当たり前かもしれませんが、約束した時間に来ていただけるので、本当に安心してお任せできるし、頼りにしています。買い物でも、私の症状や体調に気をつけて、好みのものや特売のもの、安いものを購入してくれます。

 以前に配食サービスを一カ月ほど利用したことがあったのですが、申しわけないのですが、お粗末な弁当で、人生の楽しみを奪われた気持ちになりました。やはり、宅配のお弁当では、なかなか元気は出ません。元気になれたのは、ホームヘルパーさんに手伝ってもらったり、見守ったりしてもらいながら、手づくりの食事を自分でつくっているからだと強く思っています。

 私は、できる限り自立して、自分でやりたいと思っており、調理も一人でやろうとしていましたが、右半身麻痺のため、一度包丁で手を切って出血がとまらなくなってしまったことがあり、それ以来、ホームヘルパーさんに付き添ってもらって、一緒に料理をしています。ホームヘルパーさんは、単に手伝うだけでなく、私の体調を見守るとともに、生活の状態も観察し、ケアマネジャーさんと連携して支えてくれているので、本当に安心して、一人でも生活を送ることができています。

 生活援助として、お掃除については、介護保険とは別に、渋谷区の制度で有償ボランティアをお願いしています。ただ、ぜいたくは言えないのかもしれませんが、結果として、希望しても、一時期有償ボランティアが見つからず、二カ月間来ていただけないこともありました。また、来られるボランティアさんも頻繁にかわってしまい、ホームヘルパー二級の資格も持っておらず、どうしても安心できないという印象が強いです。

 中には、余りこちらの状態を認識されていない方もいらっしゃるようで、善意なのかもしれませんが、有償ボランティアさんが室内のフローリングの部分にワックスをかけてしまったことがありました。右半身に麻痺が残っていますので、夜中にその部分で滑って転んでしまい、骨折をしたことがありました。後から聞いたのですが、専門のホームヘルパーさんであれば、掃除はしてくれても、勝手にワックスをかけるようなことはないそうです。

 細かいことかもしれませんが、私のような体の不自由な者にとっては、こうしたことがひとり暮らしを続ける上では命取りになりかねません。

 また、来られた方が高齢で、お願いしたかった風呂掃除が難しく、渋谷区の方に来られる方の変更をお願いしたこともありました。

 生活の根幹には、専門のホームヘルパーさんにサポートしていただかないと、安心して生活を送ることはできません。ボランティアさんあるいは御近所の方に、たまにごみ出しや趣味のサークルの送迎など、お手伝いをしていただいています。ただ、それが継続することでそれに頼ってしまったりすると、御近所づき合いや対等な人間関係が壊れてしまうことが心配です。

 なお、私が利用している掃除の有償ボランティアは、一回一時間半、千二百円で、自己負担です。一割負担の介護保険のヘルパーさんよりもはるかに高いです。今回の改正により自己負担が市町村任せになるようですが、二割や三割、あるいは現在利用している有償ボランティアさんのように全額自己負担になるのではないかと心配です。

 元気で自立した生活を送るためには、やはり生活に不安がないことが一番です。そして、元気が出なければ、意欲的にリハビリをやろうという気にもならないかもしれません。リハビリを継続できなければ、歩くこともできなくなってしまうかもしれません。今の在宅生活を維持することはできないでしょう。要介護度も上がってしまうかもしれません。

 私は、できる限り、今の自立した生活を維持したいと願っています。そのためには、きちんとしたホームヘルパー二級の資格や専門的な知識と経験を持ち、高い意識を持って、私たち体の不自由な人をサポートしてくれる今のプロのホームヘルパーさんを欠くことはできません。

 また、マンションの管理費や医療費、固定資産税、通信費、光熱費など、どうにもならない支出もある中で、ましてや物の値段が高くなり、消費税も上がる中で、介護保険以外のサービスに頼ることもできません。

 ホームヘルパーさんに来ていただくサービスは、介護保険の自己負担一割として、月に四千四百円をお支払いしています。また、そのホームヘルパーさんに追加で一時間お願いできる渋谷区のサービスは、一回三百円です。一方、お掃除をお願いしている有償ボランティアの方は、週一回、一時間半で千二百円です。やはり介護保険の方が、そもそも安心ですし、負担も軽く、家計にも優しいです。

 今回言われているような介護保険の改正で困るのは、やはりプロのホームヘルパーさんに家庭を支えていただけなくなるのではないか、回数が減ったり、無資格のボランティアさんにかわったり、自己負担がアップするのではということです。市区町村事業に移行という話を聞きますが、なぜ移行する必要があるのか、全くわかりません。

 現在でも、同じホームヘルパーさんに、介護保険の時間に加えて、渋谷区の独自ホームヘルプでもお世話をいただいています。今の形のままでも、自治体の工夫次第で多様なサービスは利用できるのではないかと思います。要支援を介護保険から外す理由がわかりません。

 また、要支援のサービスを介護保険から外すことで、十年後に千七百億円のコストダウンを目指しているとのお話を聞きました。でも、もし私が退院後にプロのホームヘルパーの方の支援を受けられなければ、これまで八年間も要支援二にとどまることはできなかったと思います。要介護度が悪化し、かえって今まで以上に介護保険に頼らざるを得なくなっていたと思います。そうなれば、介護保険全体のコストアップになるでしょう。

 要支援のサービスをしっかりとプロの方に支えていただき、体の機能低下の予防に力を入れることは、要介護度の悪化を防ぎ、介護保険全体のコストダウンにつながるのではないかと思います。

 消費税が上がることは、高齢者の暮らしにとって大きな不安です。それでも、私たちの生活だけではなく、将来の世代のための社会保障に必要ということであれば、必要なことだと思いますし、社会保障が充実するのであれば、暮らしに対する不安も和らぎます。

 しかし、聞こえてくるお話は、負担がふえたり、サービスが減る話ばかりです。来年四月に消費税が三%アップする上、今、物価も上がり、年金も下がり、生活は苦しくなる一方です。この上、命綱である要支援のサービスまでカットされたら、何のための消費増税かわからなくなります。

 政府には、消費税のお金で、どのような福祉を充実させるのか、私たちの不安を軽くしてくれるのかをきちんと示していただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、小黒参考人にお願いいたします。

小黒参考人 法政大学経済学部准教授の小黒でございます。

 本日は、貴重な意見陳述の場にお呼びいただきまして、ありがとうございます。

 持ち時間は十五分ぐらいだと思いますので、簡単に御説明させていただきます。

 お手元の方に資料が配られていると思いますが、全部で五点セットになっております。一番表の表紙に一枚紙でございまして、二枚目が「経済教室」、昔の、今の法政大学の職ではなくて一橋大学にいたときに書いておりましたものでございます。それから、もう一つおめくりいただきますと、週刊エコノミストの記事がございます。こちらも一橋大学の時代に書かせていただいた資料でございます。

 それから、次の資料でございますけれども、「世代間格差を改善するための事前積立方式の可能性」という資料になってございます。こちらの方はちょっと大部になっておりますが、両面資料になってございます。

 それから、最後になりますけれども、「年金給付一%削減で特養待機待ちは解決できる」というような資料をつけさせていただいております。

 お手元の、最初の資料に従いまして説明させていただきます。

 まず、社会保障改革の工程表を定めるプログラム法でございますけれども、これは、冒頭の方からきょうの意見陳述の先生方が発言されておりますように、社会保障費が急増している、他方で、公的債務は二〇〇%に迫るような形で増大するというような形になっている中で、こういったプログラム法を制定するという試みについては、基本的には賛成ということでございます。

 しかしながら、財政の持続可能性や世代間格差との関係で幾つかの懸念を持ってございますので、順次、説明させていただきます。

 まず、一点目でございますけれども、釈迦に説法でございますが、二〇二五年には団塊の世代が後期高齢者、七十五歳以上になるというような状況になっております。そうしますと、医療とか介護費の急増が予測される。基本的には、年金につきましては、二〇〇四年の年金改革で、一応、その財政はある程度、年金財政の方は健全化しているという話になっておりますが、そこもちょっと後の方で説明させていただきます。

 そういった中で、現在、内閣府が、二〇一三年八月にも中長期の経済財政に関する試算というものを出してございますけれども、実は、この試算は、二〇二三年度以降の推計というのは公表していないという形になっております。実は、二〇〇九年ぐらいから似たような試算を出しておりますが、常に、いつも二〇二三年度でとまっているというような現状でございます。例えば、二〇一〇年度に出せば、次は二〇二四年度まで一年延伸して延ばすというのが普通でございますけれども、実は、二〇二三年度以降はずっと公表されていないという状況です。

 このため、政府の公式資料は出ておりませんが、仮に内閣府と似たような手法で中長期試算の参考ケースを延伸した場合に、どのような姿になるのかということを、先ほどのプレゼン資料のところに番号が振ってございますが、二十三ページ目をちょっとごらんいただければと思います。

 この資料を見ていただければわかりますように、左側の方が、国、地方の基礎的財政収支の対GDP比での目盛りですね。それから、その財政収支の目盛り。それから、右側の方が、公債等残高の対GDP比の目盛りになってございます。赤い線と黒い線がございますが、上から順番で、一番上のグループが基礎的財政収支のグループになってございまして、黒い線が内閣府が推計したものになってございます。それから、二番目のグループが財政収支、それから、三番目の下側にあるグループが公債等残高の推移になってございます。

 見ていただければおわかりになりますように、二〇一五年以降、増税した後ですけれども、内閣府の方の試算では、一応、いろいろ、政策経費での刈り込み等がございますので、若干その後も改善していくということになっておりますが、私の簡易試算と内閣府の方で、ある程度同じような推移をたどってございます。そこから延長していきますと、二〇五〇年度でどうなるかといいますと、大体、対GDP比で基礎的財政収支が八%ぐらいの赤字になりますというような推計結果になってございます。

 この均衡には、消費税換算で大体一六%ぐらいの追加増税が必要ではないか。理由としましては、消費税一%で大体二・七兆円もしくは二・五兆円ぐらいの追加増収があるということですので、GDPを大体五百兆円としますと、〇・五%ぐらいのGDP比での増収があるということになります。そうしますと、八%を均衡させるためには、二倍の一六%が必要ということです。

 しかも、内閣府の推計では、実はもう既に消費税が一〇%になっているということを前提にしてございますから、つまり、社会保障を抑制しない場合、どういうことになりますかといいますと、消費税で二六%ぐらいの負担を覚悟する必要があるというような推計結果でございます。

 次に、二点目でございますけれども、今、年金のところについて、ある程度改革が進んで、マクロ経済スライド等が入ることによって年金財政は健全化するというようなシナリオになってございますが、この中長期試算のインフレ率というものを見ていただければわかるんですけれども、ここには二つ、ケースが載ってございます。きょう、ちょっとお手元に資料はお配りしてございませんが、経済再生ケースと呼ばれるものと参考ケースと呼ばれるものの二種類でございます。

 経済再生ケースではどうなっているかといいますと、実は、二〇一四年度から既に二%以上のインフレ率が達成できるというようなシナリオになってございます。他方で、参考ケースではどうかといいますと、二〇一四年度から一・二%以上のインフレ率が実現するというのが前提になってございます。

 そうしますと、例えば、経済再生ケースでは、年金のマクロ経済スライドが順調にある程度発動し、その分、基礎的財政収支は改善するというシナリオになっているはずでございますけれども、過去のインフレ率をちょっと見ていただきたいんです。先ほどの資料の上側、二十一ページ目にございますけれども、これは消費者物価指数、コアの方、コアCPIと呼ばれるものの対前年比の推移になってございます。

 お手元の資料を見ていただければおわかりになりますように、例えば、一九八五年を除きまして、それ以外は、特異的な事例を除いては、二%を超えることはないようなインフレ率になってございます。

 例えば、八九年では、消費税が初めて導入されて引き上がったわけですけれども、このときには二%を超えております。あと、九〇年、九一年、これは湾岸戦争等の影響で原油価格が高騰したことが関係している。それから、九七年も、ここは消費税を三%から五%に引き上げたことによって二%に近いインフレ率になったわけです。それから、二〇〇八年もそうですけれども、原油価格の高騰があります。それ以外を見ますと、ほとんど二%になかなかならないというような形になってございます。

 そうしますと、今、アベノミクスの三本の矢ということで、一本目の矢で異次元緩和ということでいろいろやってございますが、なかなか、経済再生ケースというようなシナリオというのは難しいのではないか。そうしますと、内閣府が出しております中長期試算の基礎的財政収支の推移というものは、もうちょっと厳しい感じになる可能性が高いということではないかというふうに懸念してございます。

 そうしますと、三点目でございますが、将来の財政危機を回避するためには、最終的な増税幅と社会保障の抑制幅というものを政治主導で決めていただくしかない。

 この辺の話をしますと長くなりますので、お手元の資料の「経済教室」とかを見ていただければわかりますけれども、段階的な増税や段階的な給付削減というのは、基本的には若い世代や将来世代ほどだんだん負担が重たくなっていくし、先ほどちょっと意見陳述でもあったところでございますけれども、給付が次第にどんどん切られていくというようなことを意味します。そうしますと、財政の持続可能性はたとえ高まったとしても、世代間格差は改善しないというようなことになるのではないかということを懸念してございます。

 そうした中で、財政の持続可能性を確保しつつ、かつ、世代間格差を改善するためにはどうすればいいのかということでございますけれども、お手元の資料の、プレゼン資料もしくはお配りしました週刊エコノミストの記事を見ていただければ幸いでございますが、プレゼン資料の場合は三ページから十四ページになってございます。ここで挙げられておりますような事前積み立てというものを導入することによって、少し改善したらどうかということでございます。

 ちょっと簡単に事前積み立てだけ御説明させていただきますけれども、プレゼン資料の四ページ目をちょっと見ていただきたいんですが、詳しい説明をしますと長くなりますので、四ページ目のところで簡単に説明させていただきます。

 現行制度では積立金を持っておりますが、単純化のために積立金は除くという形で、左側の下側の賦課方式と書いてあるところをちょっと見ていただきたいんですけれども、今は大体、現役三人で一人の高齢者を支えているというような形になってございます。

 計算上、簡単にするために、年金を仮に三百万円というふうにちょっと考えていただくと、大体、一人百万円ずつ拠出すればいいというような形になります。これが、二〇五〇年ぐらいになりますと、一人の現役で一人の高齢者を支えるというような形になりますので、そうしますと、もし年金三百万円を維持しようとしますと、三百万円拠出しなければいけないというような形になります。

 そうしますと、だんだんその負担は重たくなるし、もう負担を上げないんだとすれば給付を削減するというような形で、社会保障の不安定性が増すという形になるわけですけれども、実は、これを解決する方法はそんなに難しくございません。

 実は、厚生労働省が当初積立金をとった理由も、保険料平準化方式というものを採用していたわけですけれども、もうちょっと多目に、例えば、右側になりますけれども、各現役は、二〇一一年時点で、百万円を拠出するのではなくて百五十万円ずつ拠出する。そうしますと、全体で四百五十万円手に入るわけですが、給付は三百万円して、残りの百五十万円は積み立てておく。この百五十万円を、例えば、二〇五〇年時点で、三百万円負担しなければいけない人の負担を百五十万円に引き下げるために使って、負担を百五十万円にして、全体としては二〇五〇年で三百万円給付するというようなことにする。

 従来、厚生労働省は、積立金を持っていた理由として、こういった負担が上昇していくことを抑制するために積立金を持っていたわけですけれども、こういったものをちゃんと現行制度などで拡充して、負担の水準と給付の水準をなるべく一定にするということをすれば、世代間格差も改善できるのではないかということでございます。

 それから、今みたいな説明をしますと、二重の負担の問題とか積立金の運用問題等についていろいろ懸念が出てくるわけでございます。

 お手元の今の資料の十五ページを見ていただければと思いますけれども、両面になってございますのでわかりにくいかもしれませんが、ここで書いてありますように、例えば、積立金の運用が巨額になるのではないかというような懸念もございますが、実は、今御説明したのは、基本的には現行制度でございます。

 賦課方式の部分と、あと積立金の部分があって、賦課方式の部分というのは、現役から取った保険料とか、もしくは税もあるとすれば、税金の部分も右から左にすぐ渡してしまうということですので、積立金というのはそんなにたくさんになるわけではない。そうしますと、ピーク時の積立金というのを、学習院大学の鈴木亘先生とかが推算されておりますけれども、実は二百兆円ぐらいだという話でございます。

 現行制度の積立金が、例えば厚生年金では二〇〇六年で百四十兆円ぐらいあったということを考えますと、まんざら運用不可能な話ではないということになろうかと思います。もしリスクを嫌うのであれば、例えば、全額を国債で運用するなりという選択肢もあるということでございます。

 それから、インフレに対する懸念もございますけれども、現行制度の積立金でも同じような規模の積立金は持っていたということですから、この問題がネックになるというのはちょっと奇妙な話になってくるかなというふうに思ってございます。

 もしインフレになったとしても、通常はフィッシャー方程式がありますので、フィッシャー方程式では、名目金利というのは基本的には実質利回りに期待インフレ率がくっつくものという形になっている。そこでインフレ率が上昇すれば、積立金の名目利回りが上昇することで対応可能なはずということになると思います。それでも、もし不安だということであれば、物価連動国債を財務省に発行していただいて、それを購入するというような枠組みにしてはどうかというふうに考えてございます。

 それから、ここが重要なんですけれども、今みたいな話をしていると、現行制度で十分じゃないかという話があるかもしれませんが、そこも完全な誤解でございまして、今の場合は、先ほど御説明しましたように、負担はだんだん上がっていく、他方で、給付はどんどん切られていくという形になりますと、若い世代もしくは将来世代になればなるほどその負担が重たくなっていくということになります。

 ですので、なるべく負担を平準化していただき、給付水準もなるべく一定にしていただくというような形で、二〇一四年にまた財政検証があると思いますけれども、そこできっちりやっていただくということが重要ではないかというふうに考えてございます。

 なお、最後になりますけれども、あと、社会保障の総額を適切に管理するということは非常に重要でございます。そういった社会保障に関する受益と負担の均衡を透明化するという意味で、現行では積立金も含めて年金の特別会計なりいろいろな会計がございますけれども、一般会計とのやりとりが不明瞭になってございますので、できればここは政治主導できちんと、外から見たときに見やすい会計制度にしていただくということがまず一点目と、社会保障予算のハード化という概念がございますけれども、きちんと、負担が一〇〇であれば受益を一〇〇にする、長期的にですね。もし負担が八〇であれば給付を八〇にする。一〇〇にしたいのであれば、八〇の負担を一〇〇にするというような形で、適切な財政のメカニズムが働く会計制度をぜひつくっていただければなというふうに思ってございます。

 以上でございます。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、山崎参考人にお願いいたします。

山崎参考人 神奈川県立保健福祉大学名誉教授の山崎でございます。

 本日は、参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。

 提案されておりますプログラム法案でございますが、ここで示しております改革の全体像及び進め方につきましては、国民会議報告書の提案をほぼ尊重し受け入れていただいておりまして、委員として報告書の取りまとめにかかわった者の一人として、深く感謝しております。また、あわせて、重い責任も感じております。

 最初に申し上げておきたいことですが、国民会議は、社会保障制度改革に関して、決して政府から白紙諮問されたわけではございません。

 国民会議の議論に当たっては、三党合意に基づいて制定された改革推進法が示す社会保障制度改革についての基本的な考え方や、年金、医療、介護、少子化対策に係る改革の基本方針、さらには、三党実務者協議で取りまとめられました検討項目に基づいて行うこととされておりました。また、旧自公政権下の社会保障国民会議報告から、民主党政権下での一体改革の成案や一体改革大綱に至る議論なども踏まえております。

 ただし、当時、与党であった民主党と、野党であった自民党、公明党の間で大きな対立がありました公的年金制度と高齢者医療制度の将来のあり方につきましては、白紙諮問に近いものでありましたが、それについても、別途、三党の確認書において、「あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議する。」こととされていましたから、仮に三党の間で一定の方向性を示していただければ、国民会議としても、より踏み込んだ取りまとめができたものと思っております。

 ここで、国民会議の報告書が示す方向性の中で、当面の改革に当たって特に留意していただきたいことを申し述べます。

 第一点は、報告書が最も重視しております少子化対策の分野についてであります。

 一体改革で予定している子ども・子育ての充実には一兆円を超える税財源を要するわけでございますが、そのうち、消費税で確保できるのは七千億円にとどまっております。三千億円超の不足財源につきましては、現状では、一般財源で対応する以外にはありません。何としても、これを確保していただきたいということでございます。

 また、報告書は、ワーク・ライフ・バランスという観点から、育児休業期間中の経済的支援の強化を求めております。早速、厚生労働省において、給付改善に向けて検討に着手されたということなので、とてもうれしく思っておりますが、今後、企業における両立支援の取り組みと子育て支援の充実について、両者のバランスと連動を担保する視点から、さらなる施策の充実と安定財源の確保に向けて検討をお願いいたします。

 第二点は、全ての世代が、年齢ではなく、負担能力に応じて負担し支え合う、二十一世紀日本モデルの社会保障制度の構築に向けての改革であります。

 ここで負担能力に応じた負担と言うときに、特に考えていただきたいのは、社会保障における世代間の公平を確保する上で、年金税制が大きな制約要因になっているということでございます。

 高齢世代と現役世代を比べると、全体として、所得水準においては世代間の実質的な差はなく、資産の保有においてはむしろ高齢世代の方が恵まれております。生活意識においても、生活が苦しいという世帯の比率は、高齢世代よりも現役世代の方が高く、特に、子供を抱えた世帯においてその比率が高くなっております。これは、各種の調査の結果からも明らかなことであります。

 ところが、租税の賦課基準になる所得で見ますと、現実の生活実態とは乖離し、途端に、低所得で支援を要する高齢者が多くなります。

 今、六十五歳以上の高齢者について見ますと、住民税非課税世帯に属する高齢者は約三割ですが、高齢者個人を捉えますと、約六割が住民税非課税なのであります。特別養護老人ホームの入所者について見ますと、約八割もの方が支援を要する非課税者であります。現在の特養は、決して貧しい人向けの施設ではなく、誰にも開かれた施設なのですが、入所者の大半が、居住費、食費についての支援を受ける低所得者とされているわけでございます。

 問題は、高齢者であるからという年齢だけの要件で、低所得の基準が底上げされていることであります。

 給与所得控除が六十五万円であるのに対して、老齢年金受給者については百二十万円の公的年金等控除があり、課税最低限が高く設定されております。さらに、遺族年金、障害年金につきましては、全額が非課税となっておりまして、所得にカウントされていないということになります。

 給与収入であろうと年金であろうと、同じ収入には同じ負担を求め、さらには資産にも着目した応分の負担を求めなければ、現役世代に偏った負担の構造は変わらず、少子高齢社会における社会保障制度の持続可能性は確保できません。

 年金税制の見直しは、国民会議報告書においてもお願いしているところでございますが、年齢別から負担能力に応じた負担への切りかえを進める上で、直ちに着手していただきたいことであります。年金税制こそは、社会保障と税を直接結びつけるもので、この見直しは、社会保障と税の一体改革の一丁目一番地だと私は思っております。

 第三点は、改革推進法の基本的考え方に規定されておりますとおり、国民の負担増を抑制しつつ、持続可能な制度を実現する上で、社会保障の重点化、効率化が避けて通れない課題だということであります。

 国民会議における優先的な検討事項は、消費税増税分のうち、昨年の一体改革関連法で積み残しになっていました医療・介護分野の改革の方向づけでございました。消費税に置きかえれば、実質一兆五千億円の配分でありますが、これは、医療・介護分野の二兆七千億円の充実と一兆二千億円の重点化、効率化がセットになったものでありまして、重点化、効率化を図らなければ、二兆七千億円という充実に向けた財源も十分に確保できないということになっております。

 私は、社会保障審議会介護保険部会において、来年の通常国会に提出が予定されている介護保険法の改正の検討に現在かかわっておりますが、介護分野の重点化、効率化は、民主党政権下の一体改革の議論の過程から検討され、社会保障制度改革推進法でも、介護サービスの範囲の適正化等による効率化及び重点化を図ることとされました。

 その流れの中で、国民会議報告書は、介護保険制度改革につきまして、一定以上所得者の利用者負担の引き上げ、補足給付における資産の勘案、特養の中重度者への重点化、予防給付の見直しなど、厳しい改革を求めることになったわけでございます。この経緯についても、御理解いただけますようお願いいたします。

 最後に、第四点として、社会保障制度改革の推進に当たりましては、これを政争の具にすることなく、党派を超えて対話と協調に努めていただきたいということでございます。

 国民会議において、宮本太郎委員は、政権、政党が独自性を競うよりは、実現可能性を競い合うフェーズに入ってきているのではないかと述べられました。私のとても好きな言葉でございます。また、清家会長は、年金制度改革に関する国民会議の議論について、遠い将来に可能になるかもしれない話と、そうでない話というのを分けて議論することが建設的だろうと集約されております。

 先月、スウェーデン大使を三年務め、旧社会保険庁長官であり、年金局長も歴任されました渡辺芳樹さんが帰国されました。読売新聞紙上で、次のように述べておられます。「スウェーデンにはしたたかで現実的な政治のリーダーシップがあり、社会保障に限らず根幹的な政策は超党派で十分話し合い、非現実的な選択肢を排除して合意点を見つけます。この点も学ぶべきではないでしょうか」と語っておられます。

 冷静に現実と向き合い、漸進的で着実な改革、改善の道を探っていただきたいと思います。

 以上をもちまして、私の意見陳述といたします。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、古屋参考人にお願いいたします。

古屋参考人 よろしくお願いします。

 私は、山梨県の中山間地において、三十床の病床を持って外来、在宅、入院診療を行っている山梨市立牧丘病院という病院の院長です。

 二〇一一年の東日本大震災では、震災直後から現地入りをいたしまして、以後、宮城県の気仙沼市を中心に、現在まで、月二回、数日間ずつ訪問してきまして、避難所、病院、施設、在宅、仮設住宅と、さまざまな場所で医療支援活動を行ってきました。本日は、その経験に基づいてお話をさせていただきます。

 宮城県気仙沼市は、人口ほぼ七万で、高齢化率は発災前でほぼ三〇%、医師数は、二〇一〇年末のデータで、全国平均は人口一万当たり二十三人に対し、気仙沼医療圏では十二人と、半分くらいである医療過疎地域です。基幹病院は四百五十床の気仙沼市立病院、発災前は在宅医療は盛んでなかった地域でした。

 震災では大きな被害を受け、多くの住民は避難所から仮設住宅の暮らしを余儀なくされました。本年の六月末現在で、応急仮設住宅といわゆるみなし仮設住宅の入居者数は合わせて一万人、そして、災害公営住宅、今後永続的な住宅となる住宅への入居予定は来年以降と、まだまだ仮設住宅での暮らしが続く状態です。

 こういう中、気仙沼の仮設住宅の実際の状況をお話し申し上げて、当該法案の問題について考えます。

 まず、気仙沼市は、もともとの高齢化地域で、なおかつ、数の少ない医療機関にアクセスが大変困難でありました。その上、震災で鉄道の気仙沼線は運行できなくなり、BRTというバスシステムに変わっています。そして、津波が襲った沿岸部においては、御存じのとおり、仮設住宅は、当然、海岸沿いではなくてもっと山の、要は不便な場所に建たざるを得ません。先ほどのバスシステム、BRTはもちろん、市内のバス運行にも限りがありまして、バスの停留所にもアクセスしにくい仮設住宅が幾つもあります。

 もともとの高齢化を反映していまして、当然、仮設住宅には高齢者夫婦、独居世帯の方も数多くいらっしゃり、当然、身体の不自由な方がたくさんいらっしゃいます。そして、気仙沼市内の仮設住宅には自家用車を保有できない方も多く、公立病院の送迎などの直接の移動支援も、気仙沼市においては実現していません。

 さらに、震災後二年半を経て、働けたり、もとからの蓄えがあったり、あるいは家族に余力のある方などは自力の自宅の再建を果たして仮設住宅を出ていかれて、仮設住宅には条件の悪い高齢者、障害を持つ方、身寄りのない方が残るような形になっています。

 そこに来て、ことしの三月、宮城県の被災者に対する医療費の免除が終了し、また、来年度から、岩手や福島もそれが行われようとしています。さらには、消費税アップも控えています。

 これは、現場においてはどういう影響を及ぼしているでしょうか。

 医療機関を受診するために、もともと不便だったのに、タクシーなどを利用せざるを得ず、さらにこれに医療費がかかる。病院の日常的な受診に遠い仮設住宅から数千円もかかって、なおかつ医療費も負担しなくてはならない、遠隔地の家族はこれを手伝えないというようなことが起きて、結果として深刻な受診抑制が起きています。

 一例としましては、既に気仙沼医療圏では、気仙沼市立病院脳外科のデータで、二〇一三年七月から九月の脳出血の手術例が、二〇一一年四例、二〇一二年三例に比較して九例と、非常な伸びを示そうとしています。この後、半年とか一年とか見ていく間に、そういう重篤な搬送患者がふえていくことが非常に目に見えている状況です。

 今回の法案の中身から考えますと、こういう地域にこそ、医療と介護の連携、生活支援、介護予防の基盤整備が必要ということになっています。

 ところが、気仙沼医療圏は震災前から在宅介護の体制は十分でなく、外部から在宅医療を担う医師とかが、例えば石巻市には外部から医師、医療機関が入ったりして現地のリソースがふえていますが、気仙沼市街区にはそういうリソースはふえていません。

 また、仮設住宅に特化した予防的観点の健康相談とか健診事業は、気仙沼市においては計画的には実施されておらず、これも石巻市と比較しますけれども、石巻市には保健コーディネーターという医療職が、特に仮設住宅訪問に当たる医療職を採用してあって、訪問頻度は、ある程度、医療職の訪問が確保されますけれども、気仙沼市街区にはありません。そうすると、まだ病院にかかっていない、病気になりそうだみたいな方の定期的なチェックがおろそかになって、病院とかあるいは介護のリソースに実際つなげるような力がすごく衰えることになります。

 つまり、医療機関未受診の生活習慣病患者や、介護保険サービスの導入が必要と思われる虚弱高齢者へのアプローチ、アルコールやうつなど精神的問題を持つ入居者への定期サポートなどに大きな不足が気仙沼市街区では見られています。

 その上、震災後二年半を経まして、仮設住宅のコミュニティーをリードしてきた入居者が自力の自宅の再建などで仮設住宅を去り、実際の仮設住宅に成立している自治会とかそのコミュニティーの役員さんもかわっていく中で、うつとか引きこもりとかで実は健康相談とか医療職の訪問にもなかなか出てきてくれないような引きこもった方々をつないできた現地の自治会の役員さんとか、そういう方々がいなくなって、コミュニティーは非常に力が弱まっています。

 実際に、民間の調査では、二〇一三年になって、岩手県とか福島県に比較して、宮城県での自殺の数はふえていると報じています。

 こういうことを考えますと、今回の法律案の文言の中に、地域包括ケアの中の「住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立のための環境整備等の推進を図るものとする。」という前に、既に気仙沼市街区では崩壊状態にはっきり向かっているように現場に近い人たちは感じています。

 今回の法律案では、公平で安定的で持続可能であるために、個人の要件に基づくお金は応能で自己負担を求め、全体の支出を減らし、一方で、保健事業、予防活動、地域コミュニティーの再建や活性化に当たるものは市町村にその主体を任せ、推進を図るような全体像に私たちには見えます。

 また、何度も言われる地域包括ケアにおいては、その本質たる、もともとの、病の前の未病からカバーするプライマリーヘルスケアという部分については関心が余り払われていなくて、多病多死時代に備えて医療、介護リソースを何とか分配しようというふうなことのみに重点が当てられているように見えます。

 私ども医療職では、対個人の健康増進活動においては、要は受診においては、少なからずの方々が、病気になったら仕方なく医療機関を受診するけれども、予防的な取り組みについては、生活が安定して、意識が高い方ほど取り組む特徴を持っています。生活が不安定で貧困で苦しい方々に、例えば、禁煙をたくさん勧めたり、ジャンクフーズみたいなものをたくさん食べないように勧めたりしても、なかなか耳は開いてくれない、なかなかそういうふうに関心を向けない特徴を持っています。

 こういうふうな政策の場における、施策における健康増進活動や保健予防活動の市町村主体にとかいうふうな言葉も、対個人の健康増進活動と実は似た構造を持っていて、これは、市町村の財政基盤や、あるいは首長の考え方、地域の特性などにおいて大いに影響されて、市町村に非常な格差の出やすい部分になっていると思います。

 したがって、私の発言をまとめますと、今回、難病とか小児慢性特定疾患などの医療費助成の見直しと震災被災者の医療費免除の打ち切りなどは同種の問題と考えますが、医療が余りに生活に影響を与えているような環境下で、公平で安定的という言葉に導かれて、十分な所得でない世帯における個人負担が増加するということは、受診控えなどで実際の健康問題を非常に悪化させる上に、生活自体を立ち行かなくする可能性が大いにあるのではないかと思います。

 そこで、大震災被災者の医療費助成は国に全面的に取り組んでいただいて、また、難病などの現在論議されている疾患の助成の見直し案も、医療によって非常に生活を圧迫されている方々にはそれがなるべく及ばないように、再検討を求めたいと思います。

 一方で、市町村の実情に応じてと言われる保健事業、健康増進事業と、さらに、要支援者に対する介護予防給付などの地域の支援事業を、市町村任せ、その市町村の実情に応じてということでなく、もっと大きな枠組みで、国自体で取り組んでいただきたいというふうに考えます。

 そして、これは厚生労働省の枠を超えるのかもしれませんが、地域包括ケアを実現するための不可欠なコミュニティーの再生の部分、あるいはコミュニティーの維持、地域おこしの部分などを当該省庁の施策とリンクして頑張っていただかないと、実際の地域包括ケアが現地で動かなくなるというふうに考えます。

 これらの施策を論議の末に法律の形にしようとされているわけですけれども、実は既にその先端を走ってしまっている東日本大震災の被災地にこういうできるだけの施策をなるべく早く適用して、現在の被災地の状況をさらに悪化させないようにしていただき、なおかつ、そこでの施策をパイロットスタディーとして、今後、現在の被災地に追随していくような、日本の各地の高齢化の進んだ地域の先鞭とか、あるいはトライアルにしていっていただけるようにお願いしたいと思います。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、二宮参考人にお願いいたします。

二宮参考人 二宮でございます。よろしくお願いいたします。

 今回の法案につきまして、基本的な目的、二つ書いてございます。社会保障制度改革について、その全体像及び進め方、この二つをこの法案では明らかにする、こういうふうに述べられておりますが、まず問題点は、全体像にかかわって、大きな問題があるのではないかというのが私の第一の意見です。

 この法案では、いわゆる社会保障分野でいいますところの共助としての社会保障という考え方を採用して、例えば、「政府は、住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立のための環境整備等の推進を図る」というふうにこの法案は述べてあります。

 ここで強調されているのは、住民相互の助け合い、これが重要であり、さきの国民会議の報告書の言葉によりますと、共助というのが社会保障の基本なんだ、あるいは、共助を言いかえると保険になるんですけれども、その社会保険が社会保障の基本だ、こういう言い方で全体の社会保障のビジョンを明らかにしようとしている。社会保障制度改革推進法そのものが、もともと、引用しておきますと、社会保障の課題について、国民の自立した生活を家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じて実現する、あるいは、年金、医療及び介護においては社会保険制度を基本とする、こういうふうに書いてあります。

 これはもう、明らかに、これまでの社会保障に対する通説は、いわゆる憲法第二十五条に基づく人権としての社会保障というのが私の理解では通説であったと思うんですね。ところが、生存権を担う社会保障とか、人権としての社会保障という考え方を、この数年間、大体、流れとしてはそうなんですけれども、根本のところから覆そうとしている。これは社会保障の通説から見ると、私は重大な逸脱だというふうに思っています。

 したがって、総論において、社会保障そのものを共助に矮小化するといいますか、還元してしまうという発想から、後で申し上げますけれども、さまざまな問題点が出てきている。

 もともと、共助としての社会保障観といいますのは、一九九五年にさかのぼりますけれども、かつての社会保障制度審議会の九五年勧告というのがありますが、ここで政府筋からすると初めて提起されたもの。

 ちなみに、九五年勧告の社会保障観といいますのは、これは、ある意味で非常にわかりやすい表現なんですが、みんなのために、みんなでつくり、みんなで支える社会保障、こういう考え方、これが共助または連帯としての社会保障という考え方の最初の定式化ではなかったかというふうに思います。当時はまだこれは理念どまりだったんですけれども、最近の動きは、この理念に基づいて、社会保障の全体像または各論にわたって大きな変化を呼び起こそうとしている。

 今回、山崎参考人から話がありましたように、国民会議の報告書、これをもとにしてこの法案がつくられたというふうになっておりますが、その国民会議の報告書では、共助としての社会保障というのが、もともと、五〇年勧告、かの一九五〇年の社会保障制度審議会の勧告で、戦後日本の社会保障の出発点を築いた勧告でありますが、この勧告と同じだ、こういう解釈をやっておりますが、これは、私に言わせれば重大な誤解であって、報告書そのものの捉え方が誤りだ、こういうふうに思っています。

 五〇年勧告の報告書を丹念に読み直してみますと、社会保障であるとか、社会福祉及び憲法で言うところの公衆衛生、憲法第二十五条の第二項に盛り込まれているさまざまな施策というのは総じて生活保障を担うものなんだ、こういうふうに五〇年勧告を書いた上で、「このような生活保障の責任は国家にある。」こういうふうに明記してあります。

 すなわち、社会保障というのは、国家の責任において、公衆衛生であるとか社会福祉と並んで生活保障を担うものなんだということでありますから、私は、将来の社会保障を考えるに当たっても、この戦後の原点である人権としての社会保障という考え方に立ち返って、社会保障の全体像を明らかにすべきである。

 これは、決して抽象的な議論ではなくて、かつて、かの有名な朝日訴訟の判決を下しました浅沼武という当時の裁判長がおりますけれども、浅沼武さんの表現をかりて言えば、憲法第二十五条というのは画餅ではないんだ、すなわち、絵に描いた餅ではなくて、食える餅なんだ、こういうふうに語ったというふうに伝えられておりますけれども、こういう視点から社会保障の全体像を語っていくべきである。

 先ほどから紹介があるように、高齢化が進むとか、あるいは少子化というのが問題になるとか、社会保障の持続可能性が問題になる時代であるからこそ、逆に、憲法に依拠して社会保障を構想すべきであるというのが私の意見です。

 そういう意味で、全体像において、この法案に対して私は反対であります。

 それから、全体像とあわせて、今回の法案は、進め方について明らかにするというふうに書いてあります。これは、他の参考人の方々、例えば小黒参考人からは、今回の法案については、これは工程表だ、こういう御指摘がございました。

 私の知る限り、つい数日前、十一月十日の朝日新聞ですけれども、ここでも、いわゆる今回の法案についてはプログラム法案であって、朝日新聞の解説では、「医療・介護などの改革の手順を示す」、つまり、スケジュールであるとか、あるいは、先ほどの言葉で言えば工程表であるとか、手続であるとか手順、そういうものを示すものなんだというふうに書いているんです。

 先ほど来、他の参考人の方々からも内容について触れられましたけれども、この法案は、将来、例えば、介護についても年金についても医療についても保育についても、個別具体的に検討されなければいけない改革の課題をいわば先取りしちゃっているわけですね。つまり、単なる手続であるとか手順を書いたものではない。もうあらかじめ将来の審議を先取りしちゃって、具体的な改革の内容を盛り込んでしまっている。これは、国会から見ると、介護についてもあるいは医療についても、これからどう改革していくのかという中身を検討する以前に、先取りする形でこの法案が方向性を示しているということでありますから、一種の勇み足だと思います。

 そういう意味で、全体像に加えて、進め方を明らかにするという法案の趣旨からすると、いささか勇み足的な問題点を含んでいる。これが、私が本案に反対する第二番目の根拠です。

 三番目は、内容にかかわってです。

 共助としての社会保障という考え方に依拠して、かつ、社会保険というのが社会保障の基本理念なのだというふうな立場から具体的な各制度を検討していくと、どうしても、一言で言いますと、保険主義的な改革方向にならざるを得ない。

 なぜ保険主義的な改革方向になるかといえば、社会保険というものを基本に据えた社会保障を検討しようとすれば、いわゆる保険原理の中に、収支相等の原則という保険原理の第一の原則というのがありますけれども、この収支相等の原則、収入と支出のバランスをとらなければいけないという保険一般の原理原則でありますが、これに即して、およそ改革の具体的内容について方向づけをやらざるを得ない。

 全体の法文を子細に読んでみると、大体、一言で言えば、保険原理を徹底するというのが少なくとも社会保険分野の改革方向としてかなり明らかにされている、こういう印象です。

 そこで、保険原理から出てくる問題点というのは一体どういうことなのか。これは、まとめて言えば、今回の法案には三つの方向が保険原理に即して打ち出されているというふうに考える。

 一つの点は、いわゆる人権としての社会保障というのを退けておりますから、社会保障に対する公的責任、公的責任といいますのは、この場合は、租税財源をこの社会保障の分野に投入することを通じて果たされる責任ということになりますが、消費税を上げるからといって、必ずしも租税財源は社会保障全般に対してちゃんと国が責任をとる形で投入されるものではない、すなわち、租税財源の投入を極めて限定化する方向に社会保障の改革を方向づけているということですね。一言で言いますと、公的責任の限定化、または、よりきつく言えば削減、こういう中身を持ち合わせているというのが第一の問題点です。

 それと同時に、収支相等の原則が働きますと、社会保障財源が将来にわたって不足するということになれば、あとは単純でございまして、先ほど、別の参考人の方から、負担は増加するがサービスは削られるばかりという表現がございましたけれども、まさにこれです。

 すなわち、社会保障制度にかかわる内容上の第一の問題点といいますのは、社会保障給付の削減、制限が方々で打ち出されている。収支のバランスをとるためには、社会保障給付面で削減しなければいけない。

 だから、ここに盛り込まれております例を多少挙げてみますと、病院では、いわゆる医療病床の機能分化の徹底を通じて病床全体を削減する、それから、入院日数についても削減をする。介護では、先ほどから問題になっておりますように、要支援者向けの予防給付であるとか生活支援についてはこれを介護保険から外す、これはだめだというのが他の参考人の御意見でありましたけれども、そういう措置がとられ、特養老人ホームについても、要介護度三以上の者でないと入所できないといった制限措置がとられようとしている。

 こういう、専ら給付を削減するという方向に並んで、同時に、消費税を引き上げながら、社会保障の分野でかなり厳しい追加的な負担、これを求めるという内容になっています。

 例えば、介護におきましては、一定以上の所得を有する者に対しては利用者負担の見直し、すなわち、これは、現在の一割自己負担を二割に引き上げる、具体的にはそういうことを想定した上での内容だと思いますが、このような負担の強化。

 医療の分野では、既に触れられておりますように、七十歳から七十四歳までの方々の医療費の自己負担を、当面、もう来年度から一割から二割に引き上げる、こういったことを代表にして、要するに、給付は抑制するが、同時に、消費税を引き上げるとともに追加的に負担を強化する、こういう中身で、消費税の財源については、先ほど申し上げましたように、かなり限定的な、すなわち、保険原理が適用されてまいりますと、低所得層に対しては、耐えられないほどに保険料が上がるのは目に見えております。

 このことを想定して、消費税の使い道について言えば、低所得層の保険料を軽減するという、ここに絞る形で使うんだ。だから、当初の税・社会保障一体改革の趣旨からいたしますと、先ほど紹介があったように、社会保障の機能強化というのが今回の一体改革の目的であったはずにもかかわらず、消費税が上がったとしても、租税財源一般は保険料負担の軽減、したがって、社会保険の枠組みを維持する、こういう方向にしか使われない。

 このような趣旨のものでありますから、全体として、私は、時間がありませんのでまとめますけれども、この法案については、これは将来の社会保障に極めて重大な禍根を残すような中身のものであって、反対だということを申し上げて、私の意見にしたいと思います。失礼いたしました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

後藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。船橋利実君。

船橋委員 自由民主党の船橋利実です。

 本日は、質疑の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 また、参考人の皆様におかれましては、それぞれのお立場でこの法案に対しまして御意見などを賜りまして、まことにありがとうございました。

 さまざまな御意見やお考えがございましたけれども、重要なことは、少子高齢化を迎えた我が国において、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立し、国民が安心して暮らしていける国づくりを行っていくことであります。

 そのためにも、この改革に向けた個別の課題について、政府が必ず検討を行っていくよう法律上の義務を課し、改革の着実な実行を図るとともに、消費税率の引き上げにより国民負担がふえる中で、増税分が生かされていることが目に見えて実感できる社会保障制度改革の全体像を早期にお示しすることが大事であると考えております。

 そうした考え方に立って、限られた時間の中ではありますけれども、お尋ねをさせていただきます。

 まず、遠藤参考人に伺います。

 遠藤参考人は、社会保障・税一体改革のうち、社会保障改革の具体的内容を議論されてきた社会保障制度改革国民会議で会長代理をお務めになり、報告書を取りまとめられたお立場でもあり、その御尽力に深く敬意を表する次第であります。

 先ほどは報告書の概要をお話しいただいたわけでありますけれども、国民会議の中でなされたさまざまな議論は、私は、国民の期待に応える内容だったと認識をしております。

 そこで伺いますけれども、報告書の取りまとめをされる上で、どのような点に視点を置かれ、配慮をし、結論を導き出されたのか、経過と結果について見解をお聞かせください。

遠藤参考人 ありがとうございます。遠藤でございます。

 御質問の内容は、一つは、議論の報告書をまとめるプロセスについて、それから、その中で何に注目したかということだったと思います。

 これは、先ほど来、プロセスにつきましては、まず、これは白紙委任がされていた内容を審議したというわけではないということがありまして、改革推進法の中で決められている内容について我々は議論をするということでありました。

 そして、できるだけ広い視野で、それぞれのお立場を持った専門家が出席したわけでございますので、できるだけ皆さんの御議論を行いながら、そして、考え方は違うところもありますけれども、できるだけ皆さんの合意が形成できるように、それを平場で行ってきたということでございます。

 そこで、それぞれの先生方、委員は、いろいろお立場が、あるいは専門が特に違っておりますので、それぞれのテーマについてはそれぞれの御専門の方の発言が多くなりましたけれども、それをまた専門外の委員も拝聴しながら、適切な方向を定めるということに終始したわけでございます。

 プロセスにつきましては、各分野についての議論を一通り行いまして、そして、ある程度議論がまとまった段階で、起草委員というものを任命されまして、その起草委員は専らその分野について知見のある方がされたわけでありますけれども、その方が起草案を作成いたします。それで、案を起草されまして、それについて、起草委員会という、仮称でございますけれども、議論を起草委員の間で行いまして、そこでかんかんがくがくの議論をいたします。そして、その段階で、それを各委員に提示するというような形で取りまとめたわけであります。

 これは、ひとえに、清家会長の御尽力によるものであるということでございます。

 プロセスはそういうことでございます。

 基本的に、我々が、最終的な結論の基本方針になりましたのは、この世界に冠たる社会保障制度を今後維持させていくために我々の世代は何をするべきか、こういう視点では全ての委員に共通化されていたのだろうというふうに思っておるわけであります。

 お答えになっているかどうかわかりませんけれども、そのようなプロセスで取りまとめを行ったということでございます。

 ありがとうございます。

船橋委員 ありがとうございました。

 今ほど、経過などについてお尋ねいたしましたけれども、再度、遠藤参考人にお聞かせいただきたいと思います。

 先日行われました衆議院厚生労働委員会での質疑におきまして、ある新聞記事に、社会保障制度改革国民会議の委員として参加をされた方の発言が載っておりました。

 その中で、報告書は官僚主導でつくられたとの指摘も見られますけれども、国民会議会長代理であり、起草委員でもあった遠藤参考人の御認識をお聞かせください。

遠藤参考人 お答えいたします。

 その記事は、私も拝見させていただきました。その委員の方のおっしゃりたかったことがどういうことなのか、直接お会いしていないのでよくわかりませんけれども、新聞記事だけから見ますと、大変残念な御発言だというふうに思います。

 結論から申し上げますと、あそこでは、官僚が政治家と関係団体と調整をとりながら、官僚リードで進めたものがこの報告書であるというような内容だったと記憶しておりますけれども、現実は、そのようなことは全くございません。

 なぜかと申しますと、基本的にはオープンの場でずっと議論はされてきておりました。インターネットでライブで公開されてきたということでありまして、そこでの議論は幾らでもできたわけであります。

 もちろん、官僚主導でという意味合いがよくわかりませんけれども、報告書を作成していく過程においては、官僚の、事務局のサポートを適宜必要な場合には得るということは、これは行われましたけれども、最終的な判断は、当然のことながら、各委員が行ったということであります。

 関係団体との調整ということでありますけれども、これは、もちろん、実務者協議等々との関係もありますので、どういうことが実務者協議で話されているかということを公開の場で公表されておりますし、あるいは、国民会議の議論がまた関係の先生方に御報告をされるということは、そういうことはあったというふうに思いますけれども、そういうような情報のあれはありましたけれども、どこからか圧力があったとか、調整をするということもなかった。

 それから、関係団体との関係から申し上げるならば、当初、関係団体からヒアリングをしておりまして、その考え方にのっとって御主張するということは当然あり得る話だと思いますけれども、どこか、その関係団体と官僚が調整をしながらやったということは、私は全く承知していないということでありますので、事実ではないというふうに理解しております。

 以上でございます。

船橋委員 ありがとうございました。

 次に、遠藤参考人、小黒参考人、山崎参考人にお伺いをいたします。

 社会保障制度改革国民会議は、社会保障政策を政党や多種のステークホルダーの駆け引きに左右されない状況で協議するために設置された会議であり、その主な役割は、社会保障制度改革の大局的な方向性の提示や具体的な制度改正案づくりであり、その任を十分に果たされたと私は認識しております。

 しかし、残念なことに、最終報告書が政府に提出される前日に、この会議の設置者であり、委員を選任した前政権の民主党が、三党協議からの離脱を表明いたしました。この行動により物事の根幹が揺らぐわけではありませんが、無責任ではないかとの声も上がっております。

 そこで伺いますけれども、社会保障改革を円滑に進めていくため、今後のあるべき与野党の関係、あり方についてどう思っていらっしゃるのか、御見解をお聞かせください。

遠藤参考人 先ほど来、私がしゃべっておりますので、短くさせていただきます。

 基本的には、社会保障制度というものは国民全体の生活に非常に重要なものであります。と同時に、改革をしなければいけない時期が非常に迫っているわけでありますので、ここは、右顧左べんすることなく、一つの方向で進めていくべきだと思います。

 そのために、政党間の政争の具というようなことには絶対するべきではなくて、それこそ、実現可能なところで、問題点があればそれを改築していくというようなインクリメンタルイノベーションを続けていくことは必要だと思いますけれども、これは政党の違いなく進めていくべきものだというふうに認識しております。

 以上でございます。

小黒参考人 ありがとうございます。小黒でございます。

 プログラム法案の中には、改革推進本部という閣僚で構成されるものと、それから、有識者から成る改革推進会議というもの、二つが設置されるというふうに書いてございます。

 社会保障の問題につきましては、当然、政権交代がこれからも起こる可能性があるということでございますので、可能であれば、改革推進本部のもっと上部組織として各党から成る検討委員会みたいなものを設置していただいて、十分議論していただくということが重要ではないかというふうに思ってございます。

 あと、余談で述べさせていただければ、改革推進本部では、経済財政諮問会議が強くリードしたように、例えば先ほど申し上げましたように、社会保障予算のハード化でありますとか、あと年金の事前積み立てみたいなもの、もしくは、一番基本になるのは財政の姿がどうなるのかということでございますので、二〇二三年度までではなくて、もっと、二〇五〇年ぐらいまで、ヨーロッパでは二〇五〇年ぐらい優に出してございますので、こういった長期推計をきちんと出していただくということと、加えて、内閣府が出していた世代会計みたいなものもきちんと出していただくということをしながら、あとは社会保障予算の中の資源配分の見直し、こういったこともしていただければなと思ってございます。

 最後に、ちょっと説明ができなかったんですけれども、年金の給付の一%を削減するだけでもかなりちょっと違ったことができるということで、一番最後の資料につけてございますけれども、包括地域ケアみたいな、こういうようなものと関係するようなことがもっといろいろできると思います。ぜひ、そういったことも議論していただければというふうに思ってございます。

山崎参考人 私は、昨年の三党合意に基づく一体改革の推進というのは、日本の政治史上、画期的な出来事だったというふうに思っております。

 小選挙区制のもとで頻繁に政権交代が起こり得る中で、社会保障を政争の具にしないで安定化させる上には必要な政治的な枠組みだというふうに思っておりますので、いろいろ経緯があり、実務者協議を民主党は離脱されたということでございますが、国民会議の報告書でもその辺の配慮を私はしたつもりでおります。

 例えば、三党の合意形成ができない中で、年金制度改革につきましては二段階で位置づけているわけでございますから、民主党が提案する所得比例年金への一元化というのも、近いか遠いかは別にして、射程に位置づけているのがあの報告書でございます。

 それから、高齢者医療の見直しにつきましても、現在は落ちついているという認識を持っておりますが、しかし、今後、必要に応じて見直しを行うという記述になっておりますから、完全に三党の間で合意形成ができない、そういうことには国民会議の報告書の上でもなっていない、同じテーブルに着いていただけるというふうに思っております。よろしくお願いします。

船橋委員 質問としては終わらせていただきたいと思いますけれども、これから、団塊の世代が七十五歳になる二〇二五年を迎えても、データ的には高齢者が微増いたしますけれども、支える青壮年期が最少となってまいります。本当に長期的な視点に立った日本の社会保障を早急に考えていくべきだと考えております。

 また、今後においても、よりよい社会保障制度の確立のため、個別の政策についてしっかりとした議論をしていかなければならないと考えております。これらのことから、先ほども述べておりますが、この法案をぜひとも今国会で成立させ、持続可能な社会保障制度の確立に向けた一歩としていくべきであると私は思っております。

 最後に、参考人の皆様方には貴重なお時間をいただき、感謝を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

後藤委員長 次に、山井和則君。

山井委員 山井和則でございます。

 十五分間、質問をさせていただきます。

 きょうは、それぞれの参考人の方々から、非常に重要な、貴重な御意見をいただきましたことを、心より御礼申し上げます。

 民主党の推薦では、介護保険の要支援の当事者であられます渡邉さんにお越しをいただいておりますので、渡邉さんに優先して質問をさせていただきたいと思います。

 ただ、一点、民主党の社会保障と税の一体改革に対するスタンスを最初にちょっと申し上げさせていただきたいと思います。

 さまざまな話が出ておりますが、私も二年間スウェーデンに留学して、高福祉・高負担はやむを得ないんじゃないか、やはり財源が必要だから消費税アップはやむを得ないということで、民主党政権のときに消費増税法案の推進のために動かせていただきました。

 ただ、その前提は、消費税増税、本当に申しわけないことをお願いするけれども、そのことによって社会保障が充実し安定するならば国民の皆さん方にも御理解をいただけるのではないかという、悩みながらの苦渋の選択でありました。

 ただ、まことに申しわけないんですが、最近少し話が私は変わってきたのではないかと思っているんです。

 例えば、要支援を介護保険から外してしまう問題についても、私も、四年前、長妻大臣のもと、厚生労働大臣政務官をしておりましたが、その当時から、もう要支援は切り離した方がいいという議論がございました。しかし、やはりこれは、要支援というのは非常に重要だということで、民主党政権下ではずっとそこはノーと言ってきたわけですね。それで、そういうことをしなくていいように、消費税増税はつらいけれどもやらなくては仕方ないという結論に至ったわけであります。

 ところが、そういう要支援切りとかをしないために消費税増税を決断したと思ったら、消費税増税はするわ、要支援切りもするわ、これでは話が違うのではないか。

 もっと言えば、おまけに、景気対策で公共事業に二兆円使う、さらに復興法人税廃止前倒しで九千億使う、こうなると、失礼な言い方ですけれども、社会保障と税の一体改革という民主党が願っていた理念はもう消え去ってしまったのではないか。言葉は悪いけれども、公共事業と税の一体改革、国土強靱化と税の一体改革ではないかという心配を持っております。

 しかし、これは、本日もお越しをいただいております社会保障国民会議の委員の先生方お一人お一人、私は尊敬する先生方ばかりであります、これは私は国民会議にも全く責任があるとは思っておりません。逆に、私は、もしかしたら少し被害者なんじゃないかなというふうに思っております。やはり、大きな政権の流れで、民主党政権が考えていた社会保障と税の一体改革の理念が消えていってしまったのではないか。

 もう一点だけ言いますと、例えば、消費税を増税して、難病や小児がんや小児慢性疾患の方々の自己負担を数百億円アップする、これも民主党政権では考えられないことではなかったかと思っております。

 そこで、渡邉さんにお聞きをさせていただきます。

 今、週三回、プロの方のホームヘルプを利用されているということですが、仮に、介護保険から要支援が外されて、今受けているサービスがカットされるとか、自己負担が二割になるとか、有償ボランティアさんになって、プロのヘルパーのサービスが受けられなくなるようなことになってしまった場合、どういうことになってしまうと渡邉さんは思われますでしょうか。その場所でお答えいただければと思います。

渡邉参考人 私が今利用しているホームヘルパーさんがなくなってしまうと、今、ホームヘルパーさんがいるおかげで生活が成り立っていまして、それがなくなってしまうと、例えば調理する時間なんかも、自分一人だとできませんし、そうなってくると、私の体のリハビリをする時間がなくなってしまうんです。私のリハビリをする元気のもとになっているのは、ヘルパーさんが来てくれるおかげなんです。

 ですから、リハビリをできなくなると、私のような体は歩けなくなってしまいますし、だんだん要介護度が増していくと思います。それが、つまり、介護保険のコストアップになるのではないかと思っています。

山井委員 今、ホームヘルプが受けられなくなったら要介護度がアップして、かえって財政的にもかかってしまうのではないかということです。

 今回の政府の提案の中で、ホームヘルパーは、生活援助はするんだけれども、プロではなくて、無資格の方や有償ボランティアさんをふやしていこうという方向性が打ち出されているんです。今、プロのヘルパーさんが調理とか買い物とか、生活援助してくださっているんですが、有償ボランティアさんに変わるということに関してはいかが思われますか。

渡邉参考人 意見陳述でも申し上げましたけれども、有償ボランティアさんは、お願いしても、二カ月間、見つからないからといって来なかったことがあるんですね。そしてまた、お願いした有償ボランティアさんがちょっとお年寄りだったものですから、お風呂の掃除を頼めなくて、かわってもらったこともあります。そして、善意なのかもしれませんけれども、有償ボランティアさんが床にワックスを塗ってしまって、その晩、私が滑って転んでしまい、骨折しまして、一カ月ぐらいギブスの状態でした。

 普通のヘルパーさんだと、そういうことはないかと思います。有償ボランティアさんになるということは、私の生活で安心感がなくなってしまうと思います。

山井委員 この介護保険改正の一つのポイントは、生活援助は有償ボランティアに任せていいじゃないか、それで、プロのホームヘルパーは重い介護の人の身体介護に重点を移したらいいんじゃないかということなんですね。

 ただ、きょうも渡邉さんという当事者の方にお越しをいただきましたのは、やはり男尊女卑的な視点からいくと、生活援助ぐらいボランティアでいいじゃないか、プロがやらなくてもいいじゃないかみたいな、非常に軽く考えている部分があると思うんですが、改めて、かなり世の中には、生活援助、家事援助はボランティアでできるという意見が根強いんですが、そのことについて、渡邉さん、いかがですか。

渡邉参考人 有償ボランティアさんは、そもそも専門的な知識も持っていませんし、ホームヘルパー二級の免状も持っていません。だから、やってくれることが安心して頼めないんです。たまに、来ることが変わったりすることもあります。

 有償ボランティアさんでは、生活の根幹になる部分はやはり専門のヘルパーさんでないと、私たちは安心して生活ができないので、生活のもとになるところは専門のヘルパーさんにお願いして、有償ボランティアさんはその補足になっていただければいいと思います。

山井委員 今回、そういう要支援をカットしていく一つの理由として、財政が厳しい、私たちは高齢者だけじゃなく若い世代のことも考えねばならない、若い世代も苦しいんだから、現役世代の介護保険料が上がりにくくするように、まあ、上がっていくんですけれども、その伸びを抑えるためには高齢者にも少し我慢してもらうべきじゃないかと。

 ついては、生活援助はボランティアさんに任せたり回数を減らしてもいいんじゃないかという意見があるんですが、要支援をカットしないと若者や現役世代の介護保険料が上がってしまう、こういう意見についてはいかが思われますか。

渡邉参考人 将来の人たちの介護保険制度が負担が上がってしまうということは、私としても、それは上げることはなかなか大変なので、そのために私たちの、介護保険制度が要支援がなくなってしまうということは、ちょっと違うと思います。

 若い人が負担が大きくなるということは、消費税が増税で、今度そのために消費税が増税されたと思うんですけれども、社会保障がよくなるために消費税が上がったと思うんですけれども、その上がった消費税がどのように使われているのか。聞こえてくる話は、私たちの社会保障の不安になる材料ばかりなんです。ですから、そういったところを、どのように消費税の増税分を使ってくれるのか、お答え願いたいと思います。

山井委員 要支援をカットすると、介護保険の財政は軽くなると思われますか。それとも、逆に、負担がふえちゃうと思いますか。

渡邉参考人 要支援をカットすると、私たちの体はリハビリをしないと悪化する一方なんです。要支援をカットすることで生活が安定しなくなりますので、リハビリをする意欲がなくなってしまうので、重症化すると思います。それで要介護度がアップするので、これは、要支援を切られたら、介護保険を利用する人がふえてしまうと思います。

山井委員 また、今回の改正では、要支援は今一割負担ですけれども、市町村に任せる。具体的には、サービスによっては、二割負担でも三割負担でも全額自己負担でも市町村の自由にするということなんですが、このように、サービスがカットされるだけではなく自己負担もふえるかもしれないということに対しては、いかがですか。

渡邉参考人 要支援の利用料が二割になるということは、今、新聞にも出ていますのでわかっていますけれども、それが高額所得の人ということなんですね。高額所得の人は少しぐらい払ってもいいんじゃないかなと思って、それはそうだなと思っていましたけれども、新聞を見ましたら、ひとり暮らしだと二百八十万から高額所得ということになっているんです。

 私の感覚ですと、年間二百八十万というのは、固定資産や介護保険料、電気料、マンションの管理費やら、そういう固定費がかかった上で二百八十万という金額は、もう高額所得ではないと思うんですよね。その金額をもっとどうにかすることはできないかとお願いしたいんですけれども、二百八十万は納得できないです。

山井委員 渡邉さん、実は、一定所得の、二百八十万ぐらいの二割負担の話とは別に、要支援は、低所得者でも市町村が自由に、二割でも三割でも、全額自己負担にしていいというのが今回の提案なんですよ。

 低所得の方も含めて二割でも三割でも自由にできるということなんですが、ホームヘルプやデイサービス、それについてはどう思われますか。

渡邉参考人 私は、負担が二割になったら、生活が成り立たなくなると思います。

山井委員 きょう、今は座っておられるんですが、最初、冒頭十五分は無理をして立っておられて、ぜひ立った方が委員の方々に私の思いが伝わるだろうということで、今回、こういう当事者の方に来ていただくのは本当に私も難しいんじゃないかと思ったんですが、本当に、勇気を振り絞って、体が悪い中、お越しをいただきました。

 そのような思い、百万人の要支援の高齢者を代表してわざわざお越しをいただいた、なぜ、一市民の立場であってわざわざここまで来て発言していただいたのか、最後にその思いを御発言ください。

渡邉参考人 私は、今度の改革が、要支援がなくなるということが、何か、自分にとっても要支援の皆さんにとっても大変なことじゃないかと思います。それで、勇気を絞って、私がその人たちの声を何とか届けられればいいと思って、ここにこうして頑張って来ました。どうぞよろしくお願いします。

山井委員 渡邉さん、ありがとうございました。

 ほかの先生方、参考人の方々にも非常に重要な意見陳述をいただきましたので、お聞きしたかったんですけれども、時間がなくなりまして、まことに申しわけございません。

 きょうはありがとうございました。

後藤委員長 次に、上野ひろし君。

上野委員 上野ひろしでございます。

 六人の参考人の先生方、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。心から感謝を申し上げます。

 私の方からは、年金の積立方式への移行につきまして、小黒先生の方に主にお伺いをしたいというふうに思います。

 私は、小黒先生とは、もう二年ぐらい前になるでしょうか、積立方式について議論させていただく機会がありまして、私自身も、積立方式への移行は今の年金の問題を解決する大変大事な、有効な手段だと思っております。

 本会議でも、私も、当時野田総理でありましたけれども、質問もさせていただきました。また、この委員会でも、ほかの同僚の委員の方から質問をさせていただいております。

 そのときに必ず出てくる反論、毎回ほぼ同じような反論が政府の方から答弁をされておりますが、具体的には、現役世代のいわゆる二重負担の問題や、運営に必要な多額の積立金をどう適切に運用するかといった問題があり、積立方式への移行は困難である。これが毎回政府からの答弁、ほぼ同じような答弁が出てまいります。

 これは、今既にある七百五十兆円、暗黙の債務をどう取り扱うのかという問題と、そもそも積立方式自体の是非といった問題が若干混在しているかなという気もするんですけれども、順次、小黒先生にお伺いをしたいというふうに思います。

 まず一つ、二重の負担の問題ということであります。

 私自身の思いといたしましては、その七百五十兆円と言われている暗黙の債務をどの世代で負担をするのかという制度設計の問題であって、仮に現役世代に負担をさせるような制度設計をすれば、当然二重の負担は生じるし、そうでないような、例えば長期で手当てをするといったような手段を講ずれば、そうではない、大きな負担は生じないということかなというふうに私自身理解をしておりますけれども、こういった、二重の負担が生じるから積立方式には移行ができないんだといった考え方について、小黒先生、どうコメントされるのか、評価をされるのか、お伺いをしたいと思います。

小黒参考人 上野先生、ありがとうございます。

 二重の負担につきましては、お手元にお配りしていまして、プレゼン資料の九ページ目と十ページ目をちょっと見ていただければわかりやすいと思います。

 七百五十兆円の暗黙の債務というのは、年金を積立方式にもし変えようとした場合、高齢者の方々が今大体総額で五十兆円ぐらい年金を受け取っているわけですけれども、この負担をどうするのかという話が出てくる。

 それで、消費税は、大体一%で二・五兆円だとしますと、二〇%ぐらい上げないと、単年度では税収を、ファイナンスできないという話になりますので、まずここは難しいという話になります。

 ですけれども、例えば、もし、財務省が絶対反対すると思いますけれども、国債を発行できるというような形になれば、ではどういうふうになるのかといいますと、大体、ずっと発行していくわけではなくて、もし、積立金を持った世代が四十年後とかに入ってくれば、その人たちはもう国債を発行しなくてよくなるということですから、その総額が先ほど言いました七百五十兆円になるという話になります。この七百五十兆円を例えば百年間ぐらいで薄く償却するという話になりますと、年間大体七・五兆円ぐらいになりますので、消費税換算で三%ぐらいの負担で足りるということになります。

 そうしますと、では次に問題になるのは、国債を発行しなければ積立方式に移行できないじゃないか、しかも、だんだんその債務が顕在化していって、七百五十兆円もの債務が新しく国の債務として加わるというような話が出てくるわけですけれども、ちょっとここは説明すると長くなるので割愛させていただきますが、実は、九ページ目と十ページ目のスライドに書いてある内容は同じです。この内容につきましては、週刊エコノミストのお配りした記事に書いてありますように、実は、現行制度の枠組みで可能であるということです。

 その場合、繰り返しになりますけれども、重要なポイントとしましては、積立金がそんなに、七百五十兆円という巨額になるわけではない。なぜならば、今の現行制度というのは、先ほどもちょっと御説明させていただきましたけれども、現役世代が払った保険料の一部は必ず高齢者にすぐ行くので、本当に積み立てなきゃいけない部分というのは実はそんなにない。

 各世代の負担と受益をある程度同じにするというようなレベルの積立金がどれぐらいになるかというのを試算しますと、当然、金利とか成長率などの前提に若干依存しますけれども、二百兆円ちょっとぐらいだという話がございますので、現行の積立金と比較しても難しくはないのではないかというふうに考えてございます。

上野委員 ありがとうございます。

 今の御答弁の中でも若干関連をしてお答えもいただいていたかなと思うんですけれども、運用の問題について、これも改めてお伺いをしたいと思います。

 この運用の問題も、年金という制度をつくるからには、どういった形をとろうとも、恐らく同じような問題というのは生じていて、現行でも当然運用の問題は生じるし、例えばインフレに対するリスク、運用のリスクといったものは、規模の大小というのは当然あるとは思うんですが、まさに今お話しいただいたように、積立方式を仮にとっても、例えば七百五十兆円というほどの規模の積立金額にはならないという話もありました。

 運用の問題、適切にできるかどうか、これも必ず、我々が積立方式を議論するときには出てくる反論であったり意見なんですけれども、この点について何かコメントがありましたら、お願いいたします。

小黒参考人 先ほどのプレゼン資料の十五ページで説明させていただきましたけれども、もし積立金の運用について不安があるということであるとすると、それは現行でも同じだということがまず一点目でございます。

 ピーク時でも二百兆もしくは二百二十兆で、直近でも厚生年金だけでも百四十兆円あったということを考えますと、こういった形で、各世代の受益と負担を均衡させるために、もしくは将来の負担の上昇を抑制するために積立金をきちんと持つということで、もし積立金の運用に問題が生じるとすれば、現行制度でも問題になる可能性があるということです。

 もし、仮にインフレが起こった場合には、先ほどとちょっと同じ話になりますけれども、フィッシャー方程式等で、名目利回りというのは実質利回りと期待インフレ率を足したものでございますから、インフレ期待が起これば、当然、名目利回りも上がるということで、その分はちゃんとカウントされて、きちんと元利がふえていくという形になるということでございます。

 また、もし急激なインフレが起こった場合に、ではどうするのかという話がございますけれども、その場合には、例えばインフレ連動国債を持つとか、あと、先ほどちょっと申し上げなかったんですけれども、この年金債務というのは、国から見たら債務ですけれども、国民から思ったら資産なわけですね。資産が目減りするということは、実は課税しているのと同じ効果を経済学的には持ちます。そうしますと、政府は得してございますので、実は、その分、本当は補填して構わないということがございます。財務省は反対すると思いますけれども。

 ただ、そういうものをヘッジする仕組みとして物価連動国債を持っているということが、その元利分を含めて、きちんと物価変動にも元利を払っていくというふうな仕組みでございますので、そういう仕組みで対応すれば問題ないのではないかというふうに考えてございます。

上野委員 ありがとうございます。

 もう一点、積立方式に関連をして、制度設計の問題です。

 将来、長期間、永続的にですけれども、積立方式を機能させるためには、ある世代の人たちが払った負担と給付を一致させるような推計と制度設計が必要なんだと思うんですけれども、その点について、実現可能性といいますか、どうお考えになるのか、お伺いをいたします。

小黒参考人 そこは、一番、極めて重要なところでございます。私はもともと役人でございますので、実現不可能なことは余り言うつもりはございません。

 これは、あくまでも、現行の賦課方式の年金に積立金を持つということでございます。それで、今、実は年金は積立金を持ってございますから、その積立金の経路と、あと、負担と給付の経路がよくないということでして、一階と二階とかいろいろな年金制度の細かいところはありますが、そこの制度変更をしなくても、二〇一四年にまた財政検証があると思いますけれども、そこできちんと、保守的な形で給付と負担の経路を見て、それに見合う積立金を持つということをすれば、実は、こういった形で、実質的に積立方式に移行しているのと同じ効果を持たせることは可能であるということであると思います。

 したがいまして、そんなに難しい法改正も必要ではございませんし、むしろ、運用の問題であるというふうに認識してございます。

上野委員 ありがとうございます。

 今、幾つか、積立方式への移行について、よく指摘をされる問題点でありますが、私自身が思う点をお伺いしました。

 逆に、年金制度、積立方式についてももうずっと提唱されている、議論されている小黒先生から見て、仮に積立方式に移行する際の課題といいますか、難しい点が何かあるとすれば御指摘をいただければと思うんですけれども、何かありますでしょうか。

小黒参考人 これは、一点、やはりあると思います。

 ここは、過去の財政検証、もしくは、政権交代はしてございますけれども、継続性がある、その中で、例えば、二〇〇四年の年金改革を行ったときには、百年間安心だというふうに明言された。二〇〇九年度でも財政検証をしているわけでございますけれども、そのときでも、一応これは大丈夫だという話になってしまった。

 これは、裏側にはいろいろな制約要因があったということでございます。例えば二〇〇四年であれば、ちょっと余り、はっきりとはあれですけれども、給付水準、これはモデル世帯で所得代替率五〇%を維持する、他方で、負担のところで、例えば、保険料の上限を定めてしまった。

 こうしますと、では、あと帳尻を合わせるとどこで合わせるかというと、積立金の経路、もしくは運用の利回り等で調整しなければいけないという形になります。本来であれば、例えば、給付が一〇〇であれば、長期的には負担は一〇〇です。長期的に例えば負担が八〇であったとすると、当然収支が合わないわけで、そこをうまく帳尻を合わせるということになってしまうということでございます。

 そうしますと、政治家の先生方にぜひお願いしたいのは、給付水準をもし決めるのだとすれば、負担水準の議論は一回専門家に任せていただいて、給付と負担の経路が、負担の水準がどれぐらいであれば給付水準を維持できるのかということをきっちり検証していただく。もしくは、給付の水準をほっておいていただいて、負担の水準が八〇しか上げられないというのであれば、では、そこから導き出された給付の水準というのを専門家に議論していただくという議論がまず必要かなと。

 それはあくまでも世代間での格差を調整する話でございますけれども、当然、世代内の格差も重要でございます。これから二〇五〇年に向けて、先ほど申し上げましたように、一人で一人の高齢者を支えるという話になりますと、かなり大変になる。そのときに、現行の方式であれば、基礎年金のところもマクロ経済スライドが入るということになりますと、かなり貧困の高齢者がふえていくという形になりますので。

 その辺の制度設計はまたおいておくとしても、マクロ的なフレームとして、まず、給付と負担の経路、もしくは積立金の経路をきちんと議論していただくという際に、過去の部分を、一回発言を取り払っていただいて、外部の第三者もしくは民間のシンクタンク等も加えて、正しい経路をぜひ議論していただければなというふうに思います。

上野委員 ありがとうございます。

 最後に、遠藤参考人にお伺いをしたいんですけれども、これまで社会保障制度の見直しについて御議論いただいてきた、携わってこられた立場から、御意見、コメントをお伺いします。

 今、世代間格差の是正、それから、将来世代への負担の軽減、ツケを残さないという観点から、積立方式への移行はどうかという話を小黒先生と議論させていただきましたけれども、遠藤先生、こういった議論もある中で、将来世代にツケを残さない、先ほどそういった御発言もいただいていたと思うんですけれども、では、例えばこういった積立方式についてどう評価をされるのか。

 また、今回のこのプログラム法案を踏まえて、今後、個別の法案の議論といったことにもなるかと思うんですけれども、例えば具体的にどういった方策をもって将来世代の負担の軽減をしていく、世代間の格差の是正をしていくといったことを期待されているのか、お伺いをしたいと思います。

遠藤参考人 ありがとうございます。お答えいたします。

 私自身は、医療経済を専門としておりますので、年金制度については余り詳しくはないということをまず最初にお断りさせていただきたいと思います。

 この年金の問題、積立方式というのは、基本的に、先ほど御発言がありましたように、幾つかの課題があるということは指摘されているわけですけれども、本日の参考人のお話は、どちらかというと、マイルドに変更ができるのではないか、そういう御提案であったというふうに理解をいたしております。

 いずれにいたしましても、後世代の負担という問題は大変重要な問題でありますので、こういったものも含めながら、幅広い視点から検討するということは重要なことではないか、このように考えておるわけであります。

 以上でございます。

上野委員 先生方の御意見を踏まえまして、また委員会でしっかりと議論をしていきたいと思います。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、六人の参考人の皆さん、本当にお忙しい中、御参加をいただき、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。時間の関係で、多分全員には質問できないと思いますけれども、御了解いただきたいと思います。

 最初に、遠藤参考人に伺いたいと思います。

 国民会議の全般について先ほど御報告があったと思うんですが、きょう伺いたいのは、医療提供体制の問題で伺いたいと思います。

 医療機関が担っている医療機能を都道府県に報告する仕組み、病床機能報告制度の創設が盛り込まれました。これは、当然、医療法改正につながると思うんですけれども、報告制度そのものがどのような効果をもたらすのでしょうか。ぜひ伺います。

遠藤参考人 ありがとうございます。お答えいたします。

 たまたま、私、現在、医療保険部会の部会長とともに、その報告制度の検討会の座長もさせていただいておりますので、その関係もありますので、多少情報を持っておりますので、お話しさせていただきたいと思います。

 基本的には、ある地域の中での医療の需要と供給とのバランスというものをとっていこう、そういう考え方であります。

 これは、要するに、地域完結型医療にしようということになりますと、今までのように一つの医療機関が複数機能をたくさん持つというようなことではなくなるということを意味しておりますので、そうなりますと、地域の中で特定の機能の需要と供給のバランスがとれなければいけないということになるわけであります。それを、病床あるいは病棟の機能ということを都道府県に報告することによって、都道府県はどういう機能がその地域の中にあるのかということがはっきりしてくるわけでありますので、それをベースに、地域医療ビジョンという需給バランスを考えた医療ビジョンを構築していくというような流れになっているわけであります。

 報告制度そのものは、したがって、医療供給の、ある特性を都道府県に報告するという仕組みであるわけでありまして、それ自体では完成した形ではないわけでありまして、それを、情報をもとにしながら、都道府県あるいは二次医療圏の中での医療供給の体制をどう変えていくのかということが次のステップになるわけであります。

 そのためにどういう手法があり得るかということ、基本的には、一つはインセンティブでありまして、これは診療報酬であるとか補助金、もう一つは規制的な手法、これは医療法といったようなことになるかと思いますけれども、これらをどう組み合わせていくのかというのが次のステップの課題になるかと思います。これはようやく議論の緒についた段階であって、こちらの方はこれからの議論だ、こんなふうに考えております。

 目的は、したがいまして、地域の中での需給のバランスを整えていくための非常に重要な情報提供をする、そういうような目的で行っているということでございます。

 以上でございます。

高橋(千)委員 多分、今の医療計画の中では見えてこないものを明らかにするということなんだと思うんです、遍在ですとか、そういうのをもっと整備してというお話なのではないかと思うんですが、ただ、やはり、地域完結型、それが望ましいとは思うんですが、それだけで果たして解決できるのか。次のステップに向かう上でも、非常に今疑問を持っているところです。

 それで、古屋参考人に先に伺いたいと思うんですが、先ほど医療費助成の復活の問題をお話しされておりました。私も、何度も国会で質問してきておりまして、特に宮城県は県単独の事業がなくなってしまいましたので、仮設住宅の住民の方たち、自治会長が本当に、皆さん署名を集めるなど取り組みをしておりまして、ぜひこれは復活させたいと思っています。

 そこで、今のお話なんですけれども、地域医療の現場にいる先生の立場から、医療提供体制について、都道府県が地域医療ビジョンを示す、そして地域包括ケアとか、さまざまなことが今検討されているわけなんですが、もともと医療資源の少ない地域にとって、例えば偏在対策とか、病床機能の再編とか、そういう中だけでは限界があるんじゃないかなと思っているんですけれども、伺いたいと思います。

古屋参考人 古屋です。

 私も、医療が比較的少ない地域のことが得意というか、わかっていることが多いですけれども、病床の届け出みたいなことや、県の単位での、あるいはいろいろな単位での機能の把握ができたり再分配するみたいな、その考え方自体は非常にいいとは思います。

 一方では、病床が足りないところでは機能も分化もへったくれもないといいますか、例えば救急と在宅医療を同じところが担わなきゃならないような、大病院と在宅療養の支援診療所で成り立つような医療は困難であって、比較的中小病院が全ての方の医療をやらなければならないことが多いです。

 そういう中では、大きな機能分化をして、そこにお金の配分やら分担をしていくと何でもできるという考え方自体に異論を持っていまして、もっと地域の中小病院が、救急から、在宅から、日常的なゲートウエーの役割から、専門的な病院に患者を振り分けて送れるような機能が十分生かせるように、重点整備をしていただきたいなというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 この後の、報告をして全体像がわかった後で、使えるものといったら、今、地域医療再生基金の充実くらいですので、まだまだちょっとそれでは物足りないなというか、見えてこないなというのが私の問題意識であります。よくまた議論して進めていきたいなと思っております。

 そこで、山崎参考人に伺いたいと思うんですが、三党合意の最大の不一致点が、多分、年金制度改革の必要性についてではなかったのかと思います。国民会議は、支給開始年齢の先送りですとか、デフレ下でのマクロ経済スライドなどが検討ということで、骨格そのものは変えないという中身だったのかなと思っております。

 それで、年金生活者の六割が年金収入のみであるという現実ですとか、基礎年金のみの平均受給額がもう五万円を切るなど、無年金、低年金という問題は本当に深刻になる、なかなか出と入りだけの議論ではできないと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

山崎参考人 そういった低年金・無年金者問題につきましては、今回の改正法では年金生活者支援給付金法という形で、一歩踏み出したことにはなっているのでございますが、それでいいのかどうか、今後どのような本格的な取り組みを進めたらいいのかというのは、検討課題としてそのまま残っているというふうに思っております。

高橋(千)委員 その一歩がなかなか、消費税で吸収されてしまうのかなということもありますので、これはやはり、単に財政の議論だけではなく、これ以上の低年金を放置しておけないのではないかということで質問させていただきました。

 次に、二宮参考人に伺いたいと思います。

 社会保障は自助自立が基本としたプログラム法案は解釈改憲だということを先生も、そういう御意見などもおっしゃっております。私は、実はそういう意見を委員会で質問したことがありまして、まさに社会保障の考え方そのものを大きく変えるものではないのかなと。

 特に、本人と家族の責任ということを自民党の憲法改正草案の二十四条にも入れ込んでいるわけですが、その精神が既に、これまで通った子ども手当の廃止を決めた児童手当法改正には入っておりますし、また、審議中の生活保護法改正案にもその精神が盛り込まれている、そういうときなのではないかなと思っています。

 そういう中で、社会保険が基本といっても、社会保険は本当は、先生がさっきおっしゃった収支相等の原則である保険、ただの保険とは違うわけですよね。そこのところと、それから、皆保険は維持していると政府は説明するんですが、私は違うものになっているんじゃないかと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

二宮参考人 私の報告では若干割愛したところがあるんですが、改革推進法と国民会議の報告書の中身で、いわゆる自助を共同化したものが共助なんだ、その共助が社会保障の基本なんだ、こういう説明をなさっているんですけれども、同時に、社会保障制度改革推進法では、自助と共助と公助の適切なバランスをとるという言い方をしているんですね。

 これは、一般的には同じことを言っているというふうに理解されがちなんですけれども、厳密に言うと、自助の共同化が共助だという言い方をした場合の共助と、それから、自助、共助、公助というふうに三つ並べた場合の共助というのは、意味が違うので。

 といいますのは、自助の共同化というのが共助というふうに言った場合には、これは自助の集合ですから、あくまでも自助が基本なんですね。だから、共助といっても、原点は自助ですから、自助の共同化としての共助は、結局、最後は自助に引き戻されてしまう、そういう関係があって、その意味で、自助の共同化としての保険というのを基本にした社会保障の考え方は、究極のところ、結局、自助に行ってしまう。

 これを保険でいいましたら、自助の共同化というのは、社会保険のことを指すんじゃなくて、私保険のことなんですね、保険論でいきますと。自助を共同化して出てくるのは、社会保険じゃなくて、民間の保険、生命保険であるとか損害保険である。

 これが出てくるにすぎないから、実はこの一、二年の間に、共助としての社会保障という考え方も随分変化をして、結局、基本のところは自助なんだというところへ全体の流れが向いてしまっている。そこが実は大きな問題で、御質問にあった、共助としての社会保険というのが、結局、自助に還元されてしまう社会保険に行ってしまうものですから、医療保険も介護保険も、基本的には自助の共同化というところへ引き寄せられてしまう。

 ここから、参考意見で申し上げた、保険原理というのがある意味で無制約に貫徹するというところになって、社会保障全体の屋台骨を揺り動かしてしまうということになるのではないか、こういう理解で先ほど御意見申し上げた次第です。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 本当はもう一問聞きたかったんですが、また時間がきっとオーバーすると思うので、あと、それぞれの皆さんに本当は御意見をもっと聞きたかったということで、自分の意見を述べて終わりたいと思います。

 渡邉参考人は、本当に貴重な体験とそこからの提言、本当に感謝申し上げたいと思います。介護予防外しについても本委員会で質問をしておりまして、同じ立場で反対をしていきたいと思います。

 また、小黒参考人は、年金についてぜひ伺いたいと思ったんですけれども、ちょっと時間がなくて、次の機会にしたいと思います。

 いずれの問題も、社会保障四分野、プログラム法案は一応今四分野ということになっているんですけれども、まだ議論は始まったばかりなのかなと。国民会議の中では、遠藤先生、ずっと積み上げてきたものがあるかもしれないんですが、この国会の中ではまだ十分な議論をされていないし、さっきの医療提供体制一つとっても、その先に目指すものはどのようなツールでということをもう少し議論していきたいなということもありますので、ぜひプログラム法案の審議の充実を引き続いて委員長にもお願いしまして、きょうの発言を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 六人の参考人の皆さんには、お忙しいところを御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。それぞれのお立場でお考えをお聞かせいただきまして、大変参考になりました。改めて感謝申し上げたいと思います。

 時間の都合もあり、皆さんに御質問ということにはならないかと思いますが、お許しを願いたいと思います。

 私からは、まず古屋先生に御質問をさせていただきたいと思います。

 古屋先生、長年、在宅医として在宅医療に従事してこられたということで、私も同じ山梨ということなので、過疎な地域でということになるわけですが、本当に初歩的なことですが、年間どのぐらい訪問診療を行って、最期、御自宅で診られる方、年間どのぐらいおられるのか。そして、恐らく介護保険導入前から古屋先生は地域医療に携わってこられたと思いますが、平成十二年に介護保険が創設をされて十数年、地域医療、主に在宅医療中心だと思いますが、介護保険が果たした役割、また課題等、ございましたらお考えをお聞かせ願えればと思います。

古屋参考人 古屋です。御質問ありがとうございます。

 私は、山梨で、東山梨という地域で在宅医療をしていまして、自分自身は百ケースくらいの患者を在宅で持っていまして、月間で現在は百二十から百五十回くらい訪問しています。年間の在宅でのみとりの件数は、十五件くらいになっています。

 私は、この前には無床の診療所にいまして、現在の三十床の病院に来て、引き続いて二十数年、在宅医療に携わってきましたけれども、介護保険が導入される前からやっておりまして、圧倒的に、介護保険が導入されたことで生活支援が行き渡ったというのが、最も大きな、大事なところだと思います。

 これまでの論議の中で、介護保険の中の生活支援の部分が少し軽く見られるような御発言があるというか、あったようにお見受けしましたけれども、介護保険の根幹は、私はやはり生活を支えることだと思っております。医療が支えられる部分は実は多くはなくて、そこは医療保険でやっていきながら、医療で支えられる部分のその根底をなすのは、生活が成り立つかどうかということになります。

 かつて、いろいろな病院に長期入院になってしまう方が多かった時代は、そういう方々を、生活が支えられないから、病院がその肩がわりをしてしまったということが、もともと介護保険が出てきたもとだったと思いますけれども、介護保険の中で生活支援の部分をさらにきちんと確保していくということが、これからの標準的在宅医療の推進にも大切なことだと思っています。

中島委員 ありがとうございます。

 介護保険が創設されてから、在宅医療、そのマッチングというか連携というのが非常に重要であって、今それが当たり前ということになっておるわけです。介護保険、創設して間もないということもございますけれども、その運用体制、またその整備は非常に重要かなというふうにも思います。

 そんな中で、古屋先生、先ほどのお話の中でも、東日本大震災、その震災直後から、東北、気仙沼で医療支援に当たられて、そして、今なお月に二回気仙沼に医療支援に入られている。そういったことの中で、もともと医療過疎な東北の地で、さらに震災ということが加わって、私も実際行って経験して、お話も聞きましたが、東北のもともと医療資源が少ない地域で、くしくもその震災によって、やむなく在宅医療をしなければ医療体制を整えられない、そういう現状もあるかと思います。

 そんな中で、今も少しお話がございましたが、医療と介護の連携ですね。これは税と社会保障の一体改革の中でもうたわれておりますが、医療と介護の連携、そして生活支援、介護予防の基盤整備、先ほども少しお話ございましたが、そのために何がポイントで何が重要なのか、もう少しお話を聞かせていただければと思います。

古屋参考人 どうもありがとうございます。

 特に医療過疎地域で医療と介護の連携と言われましても、実は、医療の部分も足りなければ、介護の部分も足りないという特徴を持っています。

 特に医療の中で大事なポイントというのは、在宅の医療が一定の役割を果たすためには、急にぐあいが悪くなった患者を搬送するための救急の体制が不可欠です。救急の体制が十分伴わないところでの十分な在宅医療は、困難ということになります。

 ですから、特に東北の過疎の地域においては、救急にまずかかれる体制が十分整備されることが大事であって、二次とか三次の大きな病院がある手前に、まずかかれるプライマリーな、一・五次くらいのかかれるところがきちんとあることで、非常にリソースの少ない地域で、大きな病院に集中してしまうみたいなことが避けられる大事なところだと思っています。

 医療と介護は、済みません、ちょっとまた考えてみます。

 以上です。

中島委員 ありがとうございます。

 古屋先生、今、現場の立場でお話をということですが、続いて、遠藤参考人にちょっとお尋ねしたいと思います。

 今もございました、被災地は、被災もさらに重なってしまったという現状ですが、日本全国、多くの過疎の地域で、医療資源の問題ということが課題となっております。そんな中で、住みなれた地域で、住みなれた御自宅で最期を迎える、そのための医療や介護、供給体制の整備や、医療と介護を切れ目なく対応していくための地域包括ケアシステムということがうたわれております。

 一方で、先ほど前段でも申しましたが、在宅環境そのものが、ひとり暮らしの方や老老介護の方、年々ふえていっておるという現実もあります。二十四時間介護サービス等、効率性のいい、都市部では運用しやすくしても、過疎の地域においてなかなか運用できない、整備できない、そういう現実もございます。

 その理想と現実のギャップ、整合性について、国民会議等でどのような議論がされたのか、お尋ねしたいと思います。

遠藤参考人 お答えいたします。

 国民会議では、まさに地域包括ケアという、名前としては、あるいは概念としては、かなり既に明らかになっておりましたけれども、それをより具体的な形で推進させる必要性が極めて重要だという点では、ほぼ共通の理解を得たということでございます。

 ただ、理想と現実の違いというようなことは、個々の委員の中には、その辺のところについてお考えをお持ちの方もいらしたかもしれませんけれども、必ずしも医療現場に詳しくない委員が圧倒的に多いということもありましたものですから、必ずしもそういうことが中心課題としての議論にはなりませんでした。

 非常に重要なことは、地域包括ケアの話は、一つは量的な問題でありまして、例えば在宅医療がどの程度進むのかというような問題と、もう一つは介護と医療の連携の問題でございまして、地域包括ケアという言葉からは、どちらかというと介護保険の世界のような、そういうイメージを受ける方がまだ多くて、医療との連携というところを具体的にどうするのか、その調整はどうするのかというようなところは、今後の非常に重要な課題ではないか、そのように考えているわけであります。

 どうも、医療の方からしてみると、外来や入院医療に対峙するものとして在宅医療がある、こういう視点であって、在宅医療の先に居宅介護事業があるというような連携のところをできるだけスムーズにいくようにする必要があるという点では、かなりの共通認識があったんだろう、こういうふうに思っております。

 お答えになっているかどうかわかりませんが、以上でございます。

中島委員 ありがとうございます。

 時間もあっという間に過ぎてしまうんですが、ちょっと社会保障制度そのものについて、年金初め現行の制度、小黒先生も私は何度かお話も聞かせていただいた上で、さまざまな考え方があると思います。我が党も、私も、やはり世代間格差、その是正というのは大前提になってくるのかなという認識のもとで、言うまでもなく、これから少子高齢化のピーク、さらには二〇五〇年、二〇八〇年ぐらいまでもその状況は続く。さらに人口減少社会は進行していく。

 その中で、年金制度初め現行の制度をその延長線上で語れるものなのか。いろいろ制度改革、いろいろな案も出ておりますが、私個人はやはり抜本的な見直しが必要かと。すぐは無理でも、やはりそこに立ち入っていかなければ、非常に厳しい現状ではないかなというふうに私自身は認識しております。

 改めてお聞きします。遠藤参考人、小黒参考人、山崎参考人にちょっと御意見を、時間もないので簡単で結構ですので、現在の制度の延長線上でこれからの社会保障制度を語れるものなのかどうか、お考えをお聞かせください。

遠藤参考人 では、一言で。

 抜本的というのをどのレベルで言っているのかということによって違うんだと思いますけれども、私は、実は、部分改良型でしのいでいくというのが極めて現実的ではないかというふうに思っております。

 これは、インクリメンタルイノベーションなどといいますけれども、これまでもそういうような形で医療制度は改正されてきたというところがあります。時々ジャンプをしますけれども、大きく変わるということは必ずしもなかったし、時間的余裕から見ても、原則はインクリメンタルイノベーション、しかし、イノベーションである以上は常に変えていかなければいけない、そういうふうに私は理解しております。

 以上でございます。

小黒参考人 私は、給付と負担の部分につきましては、最終的なゴール、消費税を二五%ぐらいまで上げるのか、もしくは、場合によっては三〇%ぐらいまで上げなきゃいけないという話が出てくると、もし二五%が限界だとすれば、五%分は社会保障を抑制しなければいけないわけですから、今、切れというわけではなくて、長期的に伸びていく部分をその五%分だけ抑制するという話になる。そうしますと、やはり財政面からは抜本的にやっていただく必要がある。

 ただ、年金以外の医療とか介護については、いろいろ制度設計があるということで、ここは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、部分改良型がやはり重要かなと。

 ただ、社会保障は全体で百十兆円あります。年金だけでも五十兆円ありますから、先ほど言いましたけれども、例えばそこの一部を現物支給するという形で一%削減すると、実は〇・五兆円も生まれます。十年間かけて五兆円も出てくるわけですね。

 したがいまして、社会保障の予算の中の資源配分を見直して、特に医療と介護ですけれども、地域包括ケアというところをやはり中心として、もうちょっといろいろ改良の余地があるのではないかというふうに、その辺については抜本的にやっていただく必要があるかなというふうに思ってございます。

山崎参考人 お答えします。

 先ほどの意見陳述の最後に、現実を冷静に見詰めて、漸進的で着実な改革、改善の道を探っていただきたいということを申し上げましたので、先ほどの遠藤参考人と基本的に同じ考え方を持っております。

 それから、年金制度につきましては、財政的には、前回の財政検証で、一八・三%まで保険料を上げ、その一方で、給付水準の調整をし、所得代替率は五〇%が確保されるということになっておりますから、今の財政フレームのもとであれば、長期にわたって安定しているということになっているんですが、新たな財政検証が来年発表されますので、それを見た上で必要な改善を心がけるということだと思います。

 社会保障全体としては、やはり少子化への対応でさらに踏み込んだ検討が必要ではないかな、安定財源を確保するという観点も含めて、対応が必要ではないかなというふうに思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 ちょっと抽象的な質問で大変申しわけなかったかなと思いますが、時間も迫っております。

 最後に、古屋先生、今、医師不足というよりは医師偏在という現状であると思います。過疎な地域において、今の在宅政策、在宅療養支援診療所の整備によって進んだと思いきや、やはり先ほどと同じように、効率の悪い地域ではなかなか在宅医がふえない。そんな中で、地域医療支援センターを全国に配備しようとされておりますが、そこに期待すること、そして、これから将来の医療を担っていく若い医師たちに、一言お言葉があればと思います。

古屋参考人 ありがとうございます。

 地域医療の支援につきまして一番大切なことは、先ほど医療と介護のことの話もありましたけれども、医療と介護の後追いというか、後を引き受けてみとるだけのことではなくて、病になる前の人たちを何とかする、それで病にならないようにするというプライマリーヘルスケア的視点を持って地域にかかわって、そのかかわった連続上に医療があって、その後に介護も助けられるような、そういう包括的な視点を持った医師を育成することが大事だと思っています。

 地域の中小病院では、そういう志を持った医師がまだ多く生き残っています。そういうところに、いろいろなところで新たな医学生が徐々に学ぼうと、被災地の中でも本吉病院とかで学ぼうとしているので、なるべくそういう総合診療的な医師を地域の中小病院で育成しながら、また、そこに、病になる前の視点から、医療を施して、その後、介護にかかわる継続性の視点を持って学生たちに学んでもらって、特に志のある医学生に医師になってから戻ってきてもらうようにできればなというふうに期待しています。

中島委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。

 参考人の皆さんには、本当にありがとうございました。改めて感謝を申し上げます。

後藤委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、参考人の皆様、貴重な御意見、まことにありがとうございます。

 渡邉さん、本当に長時間こちらの御出席を賜り、本当にありがとうございます。

 先ほどお話をいただきました介護の現場、もしかしたらヘルパーさんがお手伝いさん的な状況になっているのかなと思っていたんですけれども、実際、歩けなかった渡邉さんが、プロのヘルパーさんの助けにより歩けるようになった、そういった一つ一つ改善に向けてのプロとしての仕事のあり方の大切さ、よくわかりました。本当にありがとうございました。

 さて、今、社会保障制度、大きく見直しの時期が来ていると思います。いわゆる医療、年金、介護、子育て支援、一九八〇年のその総額が約二十五兆円だったのが、二〇一〇年で百兆円を超えてしまって、さらに、高齢化が進み、あるいは医療の高度化等によって、二〇二五年、推計で百五十兆円、大体、大枠三割程度が公費の負担になってくる。このままいったら、なかなかこの制度を保つのが難しい。

 そういった意味の中で、重点化、効率化という視点で、この制度をどうやって維持し、皆様が将来にわたり安心して暮らせる地域社会をつくっていくのか、こういった議論が今なされていることと思います。

 そこで、まず山崎参考人にお伺いいたしますが、山崎参考人は、あらゆる社会保障制度を総合的にいろいろな形で研究されていらっしゃいました。一人一人の負担を余り上げるわけにはいかないし、また、サービスを落とすわけにも、求めている方がいらっしゃるので落とすわけにもいかない。そういった中で、あらゆる世代の負担の公平性というか、また、高齢者の方にも状況に応じては、そういった御意見がございました。

 ここをさらに飛躍してしまいますと、私も考えているんですけれども、もう、例えば六十五歳という年齢で支える側と支えられる側を分けて考える、そういった時代ではないのかな。元気な方は、最後までできれば支える側で、また元気に働いていただく、また、そうでない方は、ちゃんとその皆さんの協力を得ながらしっかりとした社会保障が受けられる、そういった環境整備が必要だというふうに思うのですけれども、その辺の支えられる側、支える側の線引きの、今後の引き方をもうちょっと、考え方について御指導いただけますでしょうか。

山崎参考人 お答えします。

 一体改革推進法の考え方でもございますけれども、全世代がお互いに支え、支えられるという社会保障制度を構築しなければいけないということでございまして、特に負担面におきましては、支える側ということにつきましては、もう年齢の区別なく、幅広く、高齢期にあっても、いろいろな形で支え手になっていただきたいなというふうに思います。

 保険料を負担する、あるいは税金を負担するということでもそうですが、特に前期高齢者につきましては、地域のいろいろな活動に参加していただいて、そのことが介護予防にもなるし、健康の維持にもなると思います。その一部は、介護保険の分野で地域支援事業を今回拡大するということになっておりますから、専門的なサービスでなくても、一定程度対応できる部分もなくはないはずでございますから、そういったところに新たに踏み出そうとしている地域支援事業の中で、かかわり合っていただけないだろうかなというふうに思っております。

 以上です。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさに、全体で支えながら、みんなで社会保障制度を守っていく、そういった視点、私もまさにそのように思っております。

 そこで、今度は小黒参考人の方に御質問させていただきますが、小黒参考人は先ほど、社会保障制度の給付と負担のバランス、それをとるためには、このまま推計すると多額な増税というか税金が必要になってくる、そういった中でどうやってこの制度を保っていくのか、そういったお話がございました。

 まさに、負担をふやさず、給付を減らさないでうまくやっていこう、そういったところで、今回、一つの政府の方針として、健康寿命を延ばす産業の育成。いわゆる元気な方をどうやって、今まで、このまま推計すると介護が必要、医療が必要、そういった方を、それが必要じゃなくて元気に過ごせるようにしていくという、そこに新しい要素を加えたときに、またこのバランスが変わってくる。また、そこがどううまくいくかということによって、将来の日本のイメージも変わってくるかなと思うんですけれども、その辺の、健康寿命を延ばすという要素を考えたときの社会保障の見通しみたいなものについての見解を伺えますでしょうか。

小黒参考人 健康寿命を延ばすということでございますけれども、財政面から見ますと、社会保障については幾つかインパクトがあるかなと思います。一つは、まず医療費が削減できる可能性がある、それから介護費も削減できる可能性がある。これはプラスに働くということだと思います。もう一つは、年金の財政に対するインパクトでございまして、こことの関係があるかなというふうに思ってございます。

 ただ、やはり、先ほど山崎先生がおっしゃられましたように、元気で活力ある高齢者の方々が、なるべく現役でずっと働いていただいて、むしろ支えられる側から支え手になっていくということについては、実は、理論的にはダブルのゲインがあるかなというふうに考えられます。

 どういうことかと申しますと、よく、そういった場合に移民を入れろという話がございますけれども、その場合は支える側が一ポイントふえる。支えられる側はふえないわけですね。ですけれども、支えられる側から支える側に変換しますと、実は二ポイント改善しますので、そういった意味で、きちんと健康な人をふやしていって支え手をふやしていくという試みは、重要かなというふうに思ってございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 そういった方向の中で、制度を守りつつも、今回の一つの大きな目玉として、自助、共助、公助、それとバランスがとれた地域包括ケアシステム、そういったものが大きく提案されております。

 本日は、地域医療の現場で働いておられる古屋先生にせっかくいらしていただいているので、この地域包括ケアシステムを考えたときに、私が介護を受ける立場になったときに、医療と介護と、また地域のサービスと、どういうふうに受けたらいいのか、自分にとってどうつないでもらえるのか、そういったコントロールは誰がやるのかとか、その人に光を当てて、適切なその受け方というものをどう指導していくか。

 そういった面では、地域の医療を支えていく先生方から、その状態を見ながら、総合的に、一人一人に合った制度のあり方、支援のあり方をコーディネートしてあげるということが、安心して、また効果的にそういった制度が働くようになるのかな、そういうふうに感じるんですけれども、その現場における地域医療の役割等についての考え方をお聞かせ願えますでしょうか。

古屋参考人 どうもありがとうございます。

 地域包括ケアシステムでは、まず、地域の中に住んでいる方、住民の中の健康問題を適切にピックアップできる能力が必要になります、仕組みが必要になります。そのピックアップした仕組みを適切なところにつないで、その方のレベルに応じて、その方をマネジメントするような方が存在する必要があります。その方のマネジメントをするような方が、その方に必要な多職種のチームのかなめとなって、その方をみんなで、同じような立場で見守るみたいな形がそういうイメージになります。

 端的なのは高齢者であって、高齢者で介護が必要な人というような少し不自由な方がいたら、御家族とかが役場に相談したり、あるいは、近所の人、民生委員さんが役場に相談したりすると、そこでは、役場の保健師さんとかがそういう必要性を知って、現在だと、地域包括ケアセンターなどに連絡すると、その地域包括ケアセンターの担当職員が訪問して、実際の面談を行って、介護保険の該当になりそうか、あるいは、ほかのサポートができるかの相談に乗って、介護保険のサポートが必要そうであれば、御家族とか御本人にお勧めして介護保険を申請する。

 介護保険を申請したら、今度は、もし認定がつけば、ケアマネジャーが堂々とできて、ケアマネジャーは医療も介護も含めたマネジメントを行うという感じになります。

 障害者の場合にも、地域の中のそういうセンターに、そういうマネジメントをできる人が出て、そういう方は、常に、医療に直接携わる医師と連携をとるわけですけれども、イメージしやすいのは、在宅診療医は、いつも患者さんの一番近くにいて、患者さんの状態の多くのことがわかるので、ケアマネジャーとか、そういうマネジメントする業種とは常にやりとりをしながらアドバイスしていきます。

 ただ、在宅診療医みたいなかかりつけ医も、患者さん、そういう方の周りにいる一人にすぎなくて、そういう方がもしもっと高度な医療が必要であれば、もっと高度の医療機関に紹介をするし、そうでない、高度の医療機関から紹介されてきた神経難病とかがんの患者さんとかの方を在宅診療医やかかりつけ医が診ながら、ケアマネジャー、あるいはその他のマネジャー役の方と協力しながら診ていくということに、それは在宅みとりの場合もあるし、病院にまた御紹介する場合もあるけれども、そういう間のかかわりをチームで行う。

 地域包括ケア自体の大切なところは、現在、光の当たっているのが、チームで医療と介護、ケアしながら、最期をどこでみとるかみたいなことに重点が置かれているけれども、地域で元気に働いていて地域活動をしている間に、もっと悪くならないように問題点を早目に見つけて、それに対していろいろな対策を地域で行われながら、肝心なときに医療とか介護に渡されていく、そういうずっとシームレスな形が大切になるので、地域の活動にありながら、どの医療にも、介護にも近い、地域包括ケアセンター、地域医療支援センターというような役割が、どこでもやはり大切になっていくだろうなと思います。

輿水委員 まさにシームレス、コントロールするところがなければなかなかうまくいかないかな、そこがどう構築できるか。あとは、また人材の確保の問題等もあると思いますが、この点について、またさまざま御議論しながら、うまくいくように進めていければと思っています。

 最後に、遠藤参考人に伺いたいと思います。

 遠藤参考人は、社会保障制度改革国民会議の会長代理として、今日までさまざま御尽力をいただきました。

 そして、民主党時代から、この持続可能な社会保障制度ということで、制度の重点化とか効率化ということで、そういった路線の中でさまざま御意見をいただきながら検討されて、今回、国民会議としての御報告書を出していただきました。

 そして、これがまた、今回、その方針が具体的に法律となっていく、そして方向性が定められるという、その法律になる意義についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

遠藤参考人 ありがとうございます。

 お時間もないようですので、一言申し上げますと、やはり、法律という形になって、この法律の中身は、報告書の内容について非常にそれを反映しているものというふうに理解しております。それが法律という形でさらに議論が進み、また国民の理解が進むという意味合い、そして、その後、その法律に沿って具体的なものにつながっていくということで、非常に重要なことだというふうに理解しております。

 以上でございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 きょうは、長時間にわたり貴重なお話をありがとうございます。また一つ一つ、皆様からいただいた御意見をもとに、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、また、皆さんが安心して暮らせる地域社会の構築に向けて、全力を尽くしていきたいと思います。どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

後藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明十三日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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