衆議院

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第22号 平成26年5月23日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十六年五月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 後藤 茂之君

   理事 あべ 俊子君 理事 金子 恭之君

   理事 北村 茂男君 理事 とかしきなおみ君

   理事 丹羽 雄哉君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大久保三代君    大串 正樹君

      金子 恵美君    小松  裕君

      古賀  篤君    今野 智博君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高鳥 修一君    高橋ひなこ君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      中谷 真一君    永山 文雄君

      福山  守君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    前田 一男君

      牧島かれん君    松本  純君

      三ッ林裕巳君    宮崎 謙介君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      大西 健介君    中根 康浩君

      長妻  昭君    柚木 道義君

      足立 康史君    岩永 裕貴君

      浦野 靖人君    清水鴻一郎君

      重徳 和彦君    輿水 恵一君

      桝屋 敬悟君    中島 克仁君

      井坂 信彦君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   財務副大臣        古川 禎久君

   厚生労働副大臣      佐藤 茂樹君

   内閣府大臣政務官     福岡 資麿君

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            池田 唯一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  香取 照幸君

   参考人

   (全国過労死を考える家族の会代表世話人)     寺西 笑子君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  金子 恵美君     宮崎 謙介君

  田畑 裕明君     今野 智博君

  中川 俊直君     牧島かれん君

  三ッ林裕巳君     前田 一男君

  清水鴻一郎君     岩永 裕貴君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     田畑 裕明君

  前田 一男君     福山  守君

  牧島かれん君     中谷 真一君

  宮崎 謙介君     金子 恵美君

  岩永 裕貴君     清水鴻一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     中川 俊直君

  福山  守君     三ッ林裕巳君

    ―――――――――――――

五月二十三日

 アレルギー疾患対策基本法案(江田康幸君外二名提出、第百八十三回国会衆法第一五号)

 国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案(御法川信英君外四名提出、第百八十三回国会衆法第二一号)

 過労死等防止基本法案(泉健太君外十名提出、第百八十五回国会衆法第二八号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)

 アレルギー疾患対策基本法案(江田康幸君外二名提出、第百八十三回国会衆法第一五号)、国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案(御法川信英君外四名提出、第百八十三回国会衆法第二一号)及び過労死等防止基本法案(泉健太君外十名提出、第百八十五回国会衆法第二八号)の撤回許可に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 アレルギー疾患対策基本法案起草の件

 国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案起草の件

 厚生労働関係の基本施策に関する件(過労死等防止対策の推進)

 過労死等防止対策推進法案起草の件


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     ――――◇―――――

後藤委員長 これより会議を開きます。

 参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特に過労死等防止対策の推進について調査のため、本日午後、参考人として全国過労死を考える家族の会代表世話人寺西笑子君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

後藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

後藤委員長 内閣提出、政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官豊田欣吾君、金融庁総務企画局審議官池田唯一君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官樽見英樹君、年金局長香取照幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

後藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

後藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 おはようございます。民主党の柚木道義でございます。

 きょうも質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速質問に入らせていただきます。

 資料の一ページ目をごらんいただければと思います。今回の年金法の改正案の中で、事務処理誤り等に関する特例保険料の納付等の制度の創設についてというこの一枚目の資料、こういった形で、日本年金機構以降の事務処理誤りが年間約千五百件前後、そのうち、国民年金の適用、徴収関係であって保険料徴収権が時効により消滅しているものなどに該当するものが年間約百四十件程度と想定していて、以下、四類型を示されまして、こういったことに対応できるような制度を創設ということになっております。

 きょう、実は金融庁にもお越しいただいているわけですが、まず、金融庁の方にお尋ねをしたいんです。

 今、資料一をおつけしておるわけですが、ここにあるような事務処理誤りというものが仮に民間の金融機関で起こった場合には、場合によっては、特に金融機関の場合、いろいろな商取引なども含めて、下手をすれば信用不安などにつながり、当該の金融機関が例えば業務停止命令の対象になったり、そういったこともあり得ると思うんです。一つは、このような事例でこれまでに業務停止命令になった事例があるかという点。

 それから二点目ですが、資料一に示されているような、四類型あるんですけれども、これはよくよく、それぞれ見ても、はっきり言ってケアレスミスと言わざるを得ないような類型だったりするわけでございます。こういった単純な事務処理誤りが、資料一につけていますが、このような数で民間の金融機関でも実際に起こっているというふうに把握をされているか。

 以上二点、まず、金融庁の方にお答えいただければと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、行政処分の関係でございますが、金融庁の前身であります金融監督庁が発足しました平成十年六月二十二日以降、銀行に対して、事務処理ミスの発生のみをもって行政処分を行った事例はないものと認識をしております。

 銀行の事務処理につきましては、先生御指摘のとおり、レピュテーションリスク等にも関係してまいります。金融庁の金融機関に対する監督上の着眼点を規定しました監督指針では、したがいまして、事務リスク管理態勢の整備、内部監査態勢の整備、あるいは営業店における事務リスク管理態勢をチェックする態勢の整備等を求め、これらの整備状況については、検査監督を通じて確認をさせていただいているところでございます。

 先生お尋ねの四つの事例という点につきましては、金融機関と日本年金機構とでは業務の内容が異なりますので、直ちにこの四つの事例がどうかということについてはお答えが難しいのでございますけれども、金融機関におきましてこのような態勢整備を行ったといたしましても、事務処理ミスはなお発生し得るものであると言わざるを得ない面がございます。

 仮に事務処理ミスが発生した場合には、顧客への丁寧な説明など適切な顧客対応や、再発防止策の策定、実施等を求めているところでございます。

柚木委員 ありがとうございます。

 次に、田村大臣に伺いたいんです。

 今、こういった事例での業務停止命令というのはこれまでにはないという御説明で、このようなことが実際に民間の金融機関でも起こっているのかということについては単純比較はできないと。私もきのう、実際の、金融庁の民間の金融機関へのいわゆる業務改善命令とか停止命令とかに仮に至る場合のいろいろなフォーマットも拝見しまして、やはり、当然、民間の金融機関は、一たびこのようなことが起これば、下手をすれば本当に業務停止、下手をすれば本当に倒産というような重大な社会的影響もあるということで、相当厳しいフォーマット、そしてまた、民間の中でのそのようなシステムエラーが起こり得ないような二重三重のいろいろな仕組みをシステム化しているというようなお話も伺いました。

 こういうことを考えると、今回、事務処理誤り等に関する制度の創設というのは、制度創設自体は、ヒューマンエラーというのはもちろんどのような分野でも絶対に起こらないとは言えないわけですから、その対応としては私は善処なのだと思うんですが、だからといって、このような事務処理誤りなどが今後も起こっていいわけではないと思うんですね。

 これは、今回、年間約千五百件で、そのうち時効消滅しているものに該当するものが年間約百四十件ということなんですが、まず最初に一点端的に伺いたいのは、これまで時効消滅は年間約百四十件ということなんですが、私もちょっと伺ったところ、年金機構が発足して三年三カ月ぐらいのスパンで調査をした場合には、これはトータルで、発足後の集計期間で大体何件ぐらいになるか。一応レクではやりとりしているんですが、大臣、数字をお答えいただくことは可能ですか。

田村国務大臣 二十二年度、二十三年度、二十四年度、この三年度間の合計でありますけれども、七千五百九十五件ということであります。

柚木委員 恐らく今お答えいただいたのは事務処理誤りのトータルの数だと思うんですが、そのうち保険料徴収権が時効により消滅しているもの等に該当するもの、これは先ほど年間約百四十件程度と想定とあったんですが、そこに限って言うと何件程度になるかというのは、もし可能であればお答えいただければと思いますが、大丈夫ですか。

田村国務大臣 今委員がおっしゃられた百四十件に対応する数字はないんですが、未払いというものに関して言いますと、この三年度間で一千三百五十七件という形になっております。

 ちょっと、委員がおっしゃられた対象のものは今持っておらないものでありますから、申しわけありません。

柚木委員 ありがとうございます。

 仮に単純に三年三カ月程度ということで掛けると四百六十件程度ということになると思うんですが、今、それぞれの件数について、この間、日本年金機構発足以降ということでお答えいただきまして、私もその数字自体は初めてきょう答弁で伺ったわけです。

 そういうような状況を鑑みますと、これは先ほども申し上げましたが、民間の金融機関であれば本当に大変な、預金者の皆様あるいは取引関係の皆様から、これは本当に信用不安になりかねないような状況が常態化しているという認識を本当は持たなきゃいけないと私は思うんですね。

 やはり日本年金機構の場合は、そういうことが起こっても直ちに業務停止とか倒産とかそういうことにならないというような中で、ややもすれば、私もいろいろこのレクを受けていて、ちょっと緊張感が欠けている部分があるんじゃないかというふうな認識を正直持ちました。だからこそ、かつて、五千万件、消えた年金問題等も起こってしまったというふうに私は思っているわけでございます。

 ぜひ、大臣、こうしたヒューマンエラー、システムエラーが起こった場合の今回のような対応も必要なわけですが、本来は、そうしたミスが起こらないようにすることこそ必要なわけでございまして、それに対してどのような対策を講じているのか、今後講ずるのか、御答弁いただけますか。

田村国務大臣 事務処理のミス、これは日本年金機構のみならず、先般の厚生労働省の中にも起こっておるわけでございまして、こういうものはなくしていかなきゃならぬわけであります。

 日本年金機構に関しましては、平成二十二年、ちょうど民主党政権のときに、事務処理誤り総合再発防止策というものをおつくりいただきました。

 中身的には、例えばマニュアル等々、こういうものを作成した上でしっかりと徹底していく、それからヒヤリ・ハットの事例集の作成なんかもここの中に入れていただいておりますし、各種研修等々、こういうものを強化していくということもやっていただいておるわけであります。

 平成二十六年度は、組織目標といたしまして、事務処理誤り、事務処理遅延の根絶というものを挙げさせていただいております。例えば所長等々、それぞれの人事評価等々にこれを一つの指標としていこうということで、そういうことも含めて、事務処理のミス、遅延、こういうものを何とかして根絶に向かいたいということで努力をさせていただいております。

柚木委員 ぜひ、年金制度の本当に根幹にかかわる部分でもございますので、こういった部分への信頼性をしっかりと向上させていくべく、このシステム整備、スキームについてもしっかりと取り組みをお願いしておきたいと思います。

 きょうもちらっと聞きましたらば、参議院の医療介護推進法案のあのミスについても、ミス撲滅チームですか、省内につくってというようなことも伺いましたが、本当に、ミスというのは、もちろんヒューマンエラーというのはゼロにはならないんですが、ゼロにするための体制整備をしっかりとお願いしておきたいと思います。

 続いて、時間の関係で若干質問が前後いたします。

 金融庁、ここまでで結構です、ありがとうございました。

 前回の厚労委員会でもやりとりがあったと思いますが、厚生労働大臣、七十五歳に年金受給開始年齢の引き上げということで報道が出ておりまして、私もその一部を二ページ目におつけしておきました。私がきょうこの点で伺いたいのは、別に田村大臣御自身が七十五歳に年金受給開始年齢を引き上げようとしているとかしていないとかそういう認識以上に、実は、ちょっと幾つか、それ以外の視点で伺いたいもので、そういった観点から御答弁をいただきたいんです。

 現在、消費税が四月から上がって、年金は今後、来年以降の、もちろん年金の財政検証等の結果も踏まえてということになっていくと思いますが、マクロ経済スライド等の発動等も想定をされ、実際引き下げられていく、医療、介護の分野は、この間議論もしてまいりましたが、サービスのカット、いわば負担増先行、充実はともすれば先送りというような、そういうさまざまな負担増というような状況が重なっている中で、今般、突然、選択制であっても年金が七十五歳からでないと受け取れないかのような方向性が国民の皆様に示されたというのは、多分、国民の皆さんから見たら非常に何か不信感が高まってきている状況に、私もいろいろな方から問い合わせがあるんですが、そういう状況にあると私は思っているんですね。

 これはまさに今、きょうも年金法案審議をやっているのに、肝心の年金の財政検証結果がいまだに明らかにされていないということでありまして、こういうことだと余計に不信感が強まるわけであります。

 この七十五歳の問題の前に、大臣、年金の財政検証なんですけれども、私、きのうも、一体いつ出るんですかという話もしたんですけれども、今まさにこの法案審議をやっていて、こういうところでその材料があるかないかによって議論の深まりも変わってくるわけですよ。

 大臣、財政検証の結果というのは、今ここに出せない、あるいは、七十五歳に受給開始年齢を引き上げなきゃならないぐらい悪い内容なんですか。大臣、いかがですか。

田村国務大臣 七十五歳選択制の話は、テレビで私が討論する中で申し上げた話でありますが、その内容をよくお聞きいただいておれば十分に御理解いただける、そういう内容であったと思います。

 見ていただいた方は、決して七十五歳まで年金がもらえないんだと言われる方は私の知る限りはおられないわけでありまして、その後、報道でいろいろ流れる中において若干誤解された方々がおられるのかもわかりませんが、決してそういう意味ではないわけでありまして、それも、今こういう質疑をさせていただく中において、だんだん御理解をいただきつつあるんだというふうに思います。強制的に七十五歳じゃなければ年金がもらえないんだというようなことにはなりませんので、これははっきり断言をさせていただきます。

 財政検証の件でありますけれども、これは決して我々は隠しているわけではありませんでして、今作業をやっている最中であります。

 今般は、いろいろな意味で幾つかのオプションをシミュレーションしておるわけでありまして、そういう部分で若干時間がかかっておりますが、そう遠くない将来、将来というとちょっと何かすごく遠いように思えますので、そう遠くない時期にはお示しができるというふうに思います。

 それはなかなか、やはり法案審議と合わせてやっておるというものではないものでありますから、その点は御理解をいただきますようによろしくお願いいたしたいと思います。

柚木委員 いや、大臣、これは、もちろん年金の法案の内容に関連していろいろなことをやはりしっかり議論していかなければ深まらないんですね。

 私は、本当に、昨日もいろいろな年金の専門家ともやりとりをして、この質問の準備のためにやってきましたけれども、みんな怪しんでいるんですね、何で出さないんですかと。まさに年金法案の審議に出さない、これをみんな怪しんでいるんですよ。これは私が怪しんでいるんじゃなしに、年金専門家の皆さんが、柚木さん、何で出さないんだとぜひ国会で聞いてくださいと。

 法案審議が終わるか、あわよくばこの国会が閉会するまで、年金の財政検証を出さずに逃げ切ろうとしているんじゃないのか、そういう見方をしているんですよ、私じゃなくてその専門家の皆さんが。

 これは、委員長、この法案採決までに財政検証を出してもらって、その上でこれをちゃんと審議して採決ということでないと、私は、これは本来採決すべきじゃないと思うんですよ。

 各理事の皆さんも、これはぜひ、この年金法案の審議に資するべく財政検証をこの委員会に出していただけるように、委員長、理事会で協議していただけませんか。

後藤委員長 ただいまの件については、理事会で協議いたしますが、大臣からはそれなりの説明はあったとは認識しております。

柚木委員 いやいや、委員長、採決までに出していただかないと議論できませんから。採決までに出していただけるように理事会で諮っていただけませんか。

後藤委員長 理事会で協議はいたします。

柚木委員 これは本当に重要な問題ですよね。本当にこれまでもいろいろなことで年金に対する信頼が損なわれてきて、しかも、今後、消費税も上がって、そしていろいろな負担増も先行して来る、そういった中でマクロ経済スライドも来年の春以降、歴史上初めて発動していくかもしれない。

 こういう中で、財政検証の結果が出てこなくて、しかも、こういう七十五歳引き上げなんというものが突然、選択制というのもぽんと出てくると、一体この年金をどういう方向に持っていこうとしているのかと、別に私じゃなくても、国民の皆さんはみんな怪しんでいるわけですよ。これはいろいろ問い合わせがあるわけですよ、地元からも。

 そうすると、ちょっと大臣に伺いたいんです。

 仮に選択制で、別に強制じゃないというような趣旨の御答弁だったんですが、議論をわかりやすくするために、全員が選択制で七十五歳からの受給をもし選択したとして、例えば国民年金でいいですよ、六十五歳でもらい始める場合と比べて、これは平均寿命で受給額を考えるということが、大体試算する場合はそうなんでしょうけれども、例えば、では、七十五歳からもらう人と六十五歳からもらう人で、仮に全員が選択制を判断したとしましょう、一体、得をする人が何割ぐらいいて、これは平均寿命ですから、何歳まで生きる生きないによって損をする人も出てくると思うんですが、損をする人は何割ぐらいいるとか、そういった試算はあるんですか。

田村国務大臣 損をするという意味がちょっとよくわからないんですけれども。

 六十五歳からもらわれたとしても、六十六歳で仮にお亡くなりになられれば、その方は掛けた保険料ほどはもらえないわけであります。

 何をもってして損だとか得だとか言っておられるのか理解ができないので、もう少し御説明をいただければありがたいと思います。

柚木委員 これは当然、割り増し率という形で、いろいろな報道ベースでも、大臣御承知のように、試算が出ているわけですね。六十五歳から受け取った場合、それを七十からとか七十一からということで、割り増し率がそれぞれ、ゼロから四二パーとか、一歳ずつで五〇・四パー、五八・八パーとか。これが、十万だとすると、十四・二とか十五万とか。こういう一定の、十万という仮定でこういう試算を報道で、これは読売の五月十四日の記事で私は見ているんですが、要は、遅くなるけれども割り増しされる。割り増しされて、どれだけ実際の期間受け取るかによって、当然、六十五歳を起点にしてもらう場合とそうでない場合とでプラマイが計算できるわけですよね。その場合に、得する人、損する人というのが、当然、これは平均余命によって出てくるわけです。

 じゃ、聞き方を変えてもいいですよ。何歳まで生きれば得をして、そして、それよりも早く死んじゃえば損をする、そういった試算はあるんですか。

田村国務大臣 まず、毎年の年金額は、御承知のとおり、スライドがかかりますので、物価や賃金の上がり方によってこれは違ってきますから、正確なことが言えないというのは御理解いただく中において、大体の感覚としてという話なんだと思いますが、平均余命まで生きられればそれは損はしないというような、そういう制度設計になっております。

柚木委員 こういう大臣の御発言、国民的関心事で、いろいろ報道が出ているんですよね。

 私もそうなのかと思ってちょっとショックだったのは、例えば、今申し上げたような例で見ると、国民年金の場合で見ると、七十五でもらい始めた場合と六十五でもらい始めた場合の総額、六十五でもらい始めた人を七十五でもらい始めた人が追い抜く年齢が八十七歳のとき、七十でもらい始めた場合は六十五歳でもらい始めた人の総額を追い抜くのが八十一歳のとき。平均寿命より長生きしないと追い抜かないんですよ。これは、間違っているんだったら、そう言ってくださればいいんです。

 そうすると、選択制を選んで自分が平均寿命より早く死んじゃったら結局損をする、そういうことになってしまうんじゃないですか、大臣。

田村国務大臣 平均寿命と平均余命というのがあるんですね。平均寿命は、その年代の方々がおぎゃあと生まれてから、ずっと同じような形ではかっていった寿命であります。六十五歳からの平均余命というのが重要でありまして、その方は六十五歳になられたわけでありますから、それから何年余命があるかという中において考えるのが妥当であろうというふうに思います。これはもう柚木委員も御理解いただいておると思います。

 そう考えると、先ほども言いました平均余命、六十五歳が、例えば、それから平均余命がどれぐらいあるかということを計算した上で、それから七十までもらわなかったという話になれば、七十歳でもらったときと比べて、残りの余命で合わせればそれはほぼ同じといいますか、損をしないというような形で制度設計をしてあるということであります。

柚木委員 今のはちょっとお答えがすれ違っているんですね。ぜひ、ちゃんと、こういう御発言をされたからには、それぞれの試算を出していただきたいんですよ。そうでないと、国民の皆さんは、一体どう判断していいかもわからないんですよ。

 これはぜひ、大臣、だって、読売でもこういう試算が出ていて、一定の仮定のもとで出せますから、しっかりとした試算を出していただけませんか。大臣、御答弁いただけますか。

 速記をとめてください、時間がかかるのなら。

田村国務大臣 ちょっとよく言っている意味がわからないですが、平均余命まで生きられればという話でございますので、そうなれば試算的には損はしないという制度設計でつくってあるわけでありますから、つくってある以上は、今、七十歳からもらわれた場合にはそうなっているということでございます。

 ちなみに、これから七十五歳までというようなことが起これば、これはそのときに試算をしますから、どういう制度設計にするかということは、それはお示しすることになると思います。

 今は、七十はもう既にあるわけでありまして、ある制度が余り知られておりませんので、今般、問題提起をさせていただいて、これを報道していただくということはありがたい話でございまして、七十歳まで今も選択できるということがわかっていただければ、そういうふうな選び方をしよう、選択しようという方も出てこられるというふうに思います。

 そういう意味では、七十歳はもう既にそういうふうになっておりますから、それは、先ほど言ったとおり、平均余命まで生きられれば損をされないような制度設計になっておるということであります。

柚木委員 七十五歳というのを大臣みずから御発言されているわけでありますから、これは、委員長、私たちがちゃんと理解できるような資料をこの委員会にちゃんと提出していただくように、先ほどのとあわせて理事会で協議いただきたいと思います。

後藤委員長 理事会で取り扱いについて協議いたします。

柚木委員 これは、国民の皆さんにとっては、本当に全ての方にかかわる問題ですので、どういう背景でそういう御発言をされているのかについて、あるいはどういう選択をしたらどうなるのかについて、全ての国民の皆さんが理解できる形でしっかりとしたデータを出していただきたいと思います。(発言する者あり)

 これは、大臣、今ちょっと試算をやっているかどうか聞いたらというのもあるんですが、私はもちろんそれも含めて聞きたいんですが、そもそも、こういったものを出す以上は、これは報道ベースでもいろいろな、こういう受給月額のモデルとかあるわけですけれども、そういったものをちゃんと御自分の手持ちで持たれた上で発言されていると思うんですよ、大臣が発言するわけですから。あと、今週、いろいろな雑誌でも出ています、七十五歳選択制、何歳でもらうのが賢いかとか、いろいろ出ているわけですよ。

 だから、これは国民的関心事なわけですから、ちゃんと国民の皆さんがわかるような形で、そもそも試算をしていただいているかどうか、そして出していただくのかというのは、今、扱いを協議ということですから、それをもう一回明確にお答えいただきたい。

 あと、もう一点あわせて聞きますが、将来、仮に選択制であっても受給開始年齢が七十五歳とかに引き上げられる場合は、どんな影響が出てくるのかということについても非常に気になるんですよ。例えば、働きながら年金をもらう人は老齢厚生年金がさらに減額とか、あるいは、今後の財政検証によってはマクロ経済スライドの延長などともリンクしてくるかもしれませんし、いろいろなことが想定されるわけですよ。

 例えば、引き上げられた場合の老齢厚生年金減額とかマクロ経済スライドの延長とか、そういう影響も含めて、今回の七十五歳への延長というのは考えられているんですか。先ほどの試算の件とあわせてお答えください。

田村国務大臣 これは、私がやると言ったんなら、試算していますよ。検討をしましょうという話でしょう。今からそれも含めて検討するんじゃないですか。

 申しわけないですけれども、民主党が政権をとられるときも、いろいろなことをやるとマニフェストに書かれました。全ての試算をやって、それで書かれましたか。そうじゃないですよね。ちょっとむちゃなことはおっしゃらないでください。これから検討するんですから。検討する中でそういう議論をやって、結果、それがだめならば、やらないということでしょう。検討ということは、そういうことですよ。

 ちょっと、あなた方の話を聞いていると、完璧に物ができていなかったら検討もしちゃいけないというのでは、世の中、何もできないという話になるので、そこはよく御理解をいただいて、これからそういうことも含めて検討を始めれば、そういうものも出てくるという話じゃないんですか。

 やるとは言っていないんですよ。検討しましょうという話ですよ。

柚木委員 これは、検討しているから、試算なんかしていないみたいな話ですが、さっきお願いしていますから、ちゃんとこれは理事会で協議してください。

 私は、きょう、GPIFのことも非常に気になっているので、これをお聞きしたいんですよ。

 資料を見てください。きのうの産経新聞の一面の資料をつけておきました、四ページ目。

 今回の改革案、まさに私はきのうもいろいろな方にヒアリングしたんですけれども、もし積立金運用に失敗して損失を出した場合のツケ、これは誰が負うんですか。それこそ、マクロスライドがさらに延長されたり、七十五歳どころかどんどん支給開始年齢が引き上げられたり、さっきも言いましたけれども老齢厚生年金は切り下げられるとか、あるいは、何か死亡消費税みたいな話まで出てきているじゃないですか。

 これは、今回の改革案は、国債の損失リスクに備えて、年金財政改善につなげる狙いもあるとか記事に書いてあるんですけれども、そんな国債変動リスクといったら、そもそも、アベノリスクそのものも、今後の出口戦略によってはまさに変動リスクの一つですし、国内株式への投資規模拡大のリスクとの比較考量も当然必要ですし、財政再建はどうなるんだ、これだってリスクですよ。

 そもそも、そういう資産構成比の許容範囲、これは専門家でも意見が分かれている中で、私は、極めて慎重にやるべきだと思います。

 今回、これは所管は厚生労働省ということになるようです。これは、受給者保護という観点をどう担保されるんですか。そして、大臣、損失を出した場合の最終責任者は誰になるんですか。二点、お答えください。

田村国務大臣 専ら被保険者のために安全かつ効率的にこれは運用していくわけでありまして、GPIFが責任を持ってこれを運用するわけであります。その結果、単年度の損失というのは今までもあるわけですよね。それは民主党政権時代もそういうときはあったと思います。もちろん自民党政権時代にもあった。

 ただ、これは、長期で見た中においてこれをどうするかという話であります。経済状況が変われば、当然、運用利回りが悪いときもある。しかし、結果がどうだという話でございますから、そうならないような運用をするために、分散投資、リスクをある程度分けながら、目標の運用利回りをリスクの最低のところでどうやって確保するかということを分散投資の中でお考えいただく、これがGPIFでございますから、そのGPIFにしっかりと対応していただく。

 責任は、最終的には厚生労働省が負うことになります。その長である大臣という話になるわけであります。

 責任の方はそうでありますけれども、そうならないように、専門家の方々に入っていただいて、GPIFで対応していただくということであります。

柚木委員 もう時間なので積み残しがあって終わらざるを得ないんですが、大臣、最終責任者が厚生労働大臣でも、はっきり言えば責任のとりようがないわけですよ、これは。

 では、もし損失が、これは出る場合だってあり得るわけだから、出ないようにと言いますが、出た場合は、結局のところは、それこそマクロスライドを延長とか、しかも、これは下手をすれば結果的に将来世代がツケを払う、今の世代の方も別にそれを容認したわけじゃないわけですよ。

 例えばこういう損失が起こると、スウェーデンとかはみなし運用利回りを減らして直ちに給付額を減らしたり、カナダは保険料率を即座に上げるとか、直ちに損失回復のための対応をするけれども、そういうことを我が国では全く議論されていません。

 そういうことも含めて何かいいとこ取りのようなことをやって、悪いことは起こりません、起こったときはそのとき考えればいい、こんなことで資金運用されちゃたまったものじゃないですよ。

 私は、ちょっとこの議論はまた今後もさせていただくことを、あるいは後続にしっかりやっていただくことをお願いして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 おはようございます。民主党の中根康浩です。

 大臣、さっき怒っていましたね。それはやはり、大臣が七十五歳という数字を言えば、波紋を呼びますよ。だから、当然それは、選択制といっても、七十五歳になったら年金受給者がどのようになるか、影響をこうむるか、厚生労働省としても試算していないといけないと思います。

 きょう配付をいたしました資料一から三は、今も柚木議員、そして水曜日には大西議員も取り上げた、大臣のNHKでの発言に関連する記事を添付させていただきました。

 それで、きょうは通告もいたしておりますので、今の柚木議員の質問を受けて、改めて私の立場からお問い合わせをさせていただきたいと思います。

 これはやはり、大臣も、百年安心と言われている今の年金制度ではありますけれども、決して百年安心ではない、危ないんじゃないかということを御存じの上で、選択制ということ、あるいは将来の支給開始年齢の繰り下げということも厚生労働省として考えておられるのではないかということを正面からお尋ねしてまいりたいと思います。

 そういう、年金財政が危ないのではないかということがあるわけだから、GPIFでギャンブルも辞さないというような運用の仕方も選択肢の中に入れておられるのではないかということを私たちはやはり考えざるを得ないということでございます。

 保険料を引き上げるのは、これは現役世代に大きな負担を課すからなかなか受け入れられない。所得代替率五〇%以下にするということも、これは約束違反になってしまうからできない。そうすると、年金財政を維持するために残された方法は、支給開始年齢の繰り下げを含めた給付の抑制ということになるのではないかということであります。

 では、支給開始年齢を繰り下げた場合、例えば、大臣が、選択制といっても、七十五歳という数字を、NHKという多くの方が見る番組で、NHKが視聴率が高いかどうかは別として、「日曜討論」で、これはある意味オフィシャルな番組で御発言をされたわけであります。新聞あるいは雑誌なんかでは、いろいろと試算がされております。そういうマスコミ等が試算をしていることを厚生労働省が全くしていないとは私は考えられない。

 その意味で、改めてお尋ねをいたします。

 保険料納付期間を四十年から四十五年にふやすこと、あるいは年金の一律支給繰り下げ、こういったことの、今回の選択制の発言は布石であるということであろうと思いますので、そういうふうに決めつけていいかどうかわかりませんが、あえてそういうふうに申し上げておきますと、六十五歳受給よりも、七十五歳に支給開始になった場合に、年金額はどれだけふえるかということを国民の皆様の前ではっきりとまずお示しをいただきたいということ。それから、七十五歳まで繰り下げた場合に、これは今の柚木議員の質問と全く同じ趣旨の問い合わせでございますけれども、何歳まで生きれば六十五歳受給を上回るのか。現在の男性の平均寿命八十歳、女性は八十六歳、こういう状況の中で、現行の七十歳繰り下げを利用している人はどれほどいらっしゃるのか。

 まず、この三点について、明確に、厚生労働省として正式なお答えをいただきたいと思います。

田村国務大臣 何度も申し上げますけれども、これから検討するので、それも含めてどういう制度設計をするか。やめるなら検討する必要ないので。制度設計をどうするかというのはこれからですよね。

 そのときに、今言われたみたいに、損するものを提案したら、それは国民の皆様方にノーと基本的に言われる。国民の皆様方がこれぐらいならば選択をした方がいいねと思うようなものを出さないと、そもそも、例えば、七十五歳になって、もらえる年金額が仮に減るなんというような、六十五歳のときにもらえる金額よりも減るなんというような制度設計をすれば、あり得ませんけれども、そんなことをすれば誰も選択しない。

 つまり、選択してもらうためには、これならば選択してもいいかなという水準を示さなきゃいけないわけでありますから、それは、これから議論をする中において、そういうのはどうなんだろうということを検討していくんだろうと思います。

 あわせて、まだ、七十五歳の選択にするかどうかも決めておりません。今回、七十五歳の選択というのも一つの案ですねというようなことを、ちょうどあのとき、私は、与党から提案をいただいておりますのでと。これは、自民党のJ―ファイルの中に入れて、選挙を戦った案件であります。国民の皆様方にも既にこういうことを考えますよということでお示しをしたものでございますが、それを例にとって申し上げたわけであります。

 そういう意味では、先ほど来言っておりますとおり、七十歳まで選択ができるということに結構反響がございまして、ああ、そうだったんだとそれを御理解いただいたという意味では、これは非常にありがたいというふうに思います。

 あわせて言えば、こういう議論をさせていただいて、七十五歳は、ああ、何だ、選択だったんだと皆さんが御安心いただくという意味からすれば、日々こうやって御議論をいただくことも大変ありがたいことであるというふうに思います。

 その上で、どうなんだという話なんですけれども、七十歳までの今の制度、これをそのまま七十五歳まで延ばしたとして、新しい制度設計をせずに今のままの制度を延ばしたとして、一月繰り下げるごとに〇・七%年金が増額されるという制度が今の七十歳まで選択制の制度であります、これをそのまま制度設計として、まあこれからどういう制度設計をするかはわかりませんけれども、仮に七十五歳まで広げるというふうにしますと、七十五歳のときには八四%ふえる、単純計算でありますけれども、こういうことであります。

 ただ、こうするかどうかというのは別でありまして、これからの検討の中で、どういう制度設計になるかということは議論をしていく話になろうというふうに思います。

中根(康)委員 もう一度、質問の仕方を変えてお尋ねいたしますけれども、七十五歳にした場合に八四%年金額がふえる、その仮定のもとに、六十五歳から支給開始を選んだ場合と、選択制でありましても七十五歳から支給開始を選んだ場合とを比べて、七十五歳からの支給開始を選んだ方が六十五歳からの支給開始を選んだ方の年金額を上回るのは何歳ということになるのか。これは厚生労働省として責任を持った数字を今お示しいただきたいと思います。

田村国務大臣 これは今の制度でいきますと、六十五歳の平均余命が男女の平均で出ているんだと思うんですが。

 ちょっと待ってください。

後藤委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

後藤委員長 速記を起こしてください。

 田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 申しわけありません。ちょっと男女別しかないものでありますから。正式な計算は全体の平均を出しておりますので……(中根(康)委員「男女別でいいです」と呼ぶ)いや、男女別では出ないので……(発言する者あり)いや、それは男女別では出ません。

 だって、年金は男子と女子で違うわけではございませんので、同じ年金の金額をもらっております。男子も女子も、要するに、もらう年金は、同じ勤務期間であって同じ標準報酬月額ならば同じ年金をもらわれるわけですよね。男は高い女が低いとか、女が高い男は低いだとかあり得ないので。だから、男性は幾つで女性は幾つというわけにいきませんから、平均余命も、男女の平均を出さなきゃいけないわけであります、国民全体の平均余命を出さなきゃいけないので、今ここにないので、ちょっと待ってください。

後藤委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

後藤委員長 速記を起こしてください。

 田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 七十歳までは今ある制度ですから、これは出せないことはないので、ちょっと今試算していませんので、試算をさせていただいてお示しをさせていただきます。

中根(康)委員 今お尋ねしたのは、七十五歳に支給開始を選んだ、大臣は選択制ということを強調しておられるわけですから、それを選択した方が六十五歳支給開始を選択した方の年金額を上回るのは何歳ですかという、これは通告してあったと思います。したがって、御準備していただかなきゃいけなかった。それほど難しい計算ではなかったはずですけれども。

田村国務大臣 それなら答えられます。制度設計していませんから、今出せません。これから検討するわけですから、どういう制度にするかと決めていないんですよ、今。

 今言ったのは、七十歳までならこういう制度ですということを言ったわけです、今ありますから。今ある制度ですから、それならばお出しできますが、七十五歳までにしたときに七十歳までと同じ制度にするのかどうかというのはこれから検討するわけですから、そんな、ないものは出せないわけでしょう。意味はわかりますよね。(中根(康)委員「わかるけれども、今の制度を前提にしてでいいんですよ」と呼ぶ)だから、今の制度を前提にするとすれば、今の話は、今まだ男女でしか数字がないので、手元が、ちょっと計算しないと出ません。今の制度はちょっと計算させてもらわないと出ないので、それをそのまま単純に七十五歳まで延長した場合という意味でおっしゃっておられるんですよね。ということは、七十歳までの制度をちゃんと出させないことには説明ができませんので、ですから、お答えができないので、ちょっとお待ちいただきたいということであります。

中根(康)委員 それは、大臣もNHKの番組で、年金制度のほかの部分をいじるということは言っていなくて、七十歳を七十五歳にということを言ったわけです。だから、ほかの制度は所与の条件として年齢だけ変えるということは、きょうの質問の当然の前提でありますので、そこは想定していないから計算できませんでしたとか、制度設計をそこまで考えていないから計算できませんというのはおかしな話だし、そこまで考えに入れないでNHKの番組で発言をしたということであれば、これは相当大臣の責任が問われる問題だと思います。

 では、今の制度で単純に七十五歳になったらどうなのかということは、次の委員会のときまでに、つまりは来週の水曜日までに、いろいろな前提条件をつけて結構ですので、厚生労働省としての正式な回答、数字というものを出していただけますように、これはお願いをしておきます。

 水曜日の理事会までに出してもらうということで、委員長、よろしいですか。

後藤委員長 ただいまの件についても理事会で協議いたします。

中根(康)委員 大臣、水曜日の理事会までに今の数字を出してもらうということでよろしいですか。

田村国務大臣 正確を期すために申し上げますけれども、先ほど言いましたとおり、年金額は毎年、これはスライドがかかりますので、変わっていきます。ですから、厳密な意味でどれがどうなんだというのは、それはやってみないと、そのときまで生きてみないとわからないわけですよね。もらって、亡くなられるまでの間の面積をはかる以外にわからない。

 ただ、一定の条件を置いたりだとかした上で、大まかという意味で、どれぐらいかという意味でいえば、何年という言い方がいいのかわかりませんけれども、平均余命まで生きれば、そうしたら、要は損はしないというようなことがわかるような、そういう資料は出させていただきたいというふうに思います。

中根(康)委員 それで、前回の大西議員の質問のときから、大臣はしきりに平均余命ということを強調されるわけなんですね。ここもぜひその計算のときに考慮していただきたい部分であります。

 これは、先ほど申し上げましたように、新聞とか雑誌とかはいろいろなシミュレーションをしていますよね。そのうちの一つに、五月二十二日付の産経新聞があるんですけれども、またぜひ後で取り寄せてお読みいただければと思いますが、ここには、七十五歳時に受け取る年金額は倍近くになるが、六十五歳受給開始を追い越すのは十一・九年後だと。これはほぼ八十七歳ということなんですね。

 ところが、七十五歳男性の平均余命は、これは前回の大西議員に対する大臣の御答弁でも示された数字でありますけれども、十一・五七年ということになっているんですね。六十五歳受給開始を追い越すのは十一・九年後。ところが、平均余命は十一・五七年ということで、平均余命よりも、わずかでありますけれども、十一・九マイナス十一・五七、〇・三三年生きなきゃ追い越さないというか、平均余命と追い越す年齢との間に〇・三三歳のギャップがあるわけです。

 つまりは、何が言いたいかというと、大臣が、平均余命まで生きれば得をしますよというようなことをおっしゃるんですけれども、実は、平均余命まで生きても得をしないという試算も、産経新聞などによって示されているわけであります。

 こういったことも含めて、来週の水曜日までに理事会にお示しをいただきたいと思います。

 つまりは、前回の大西議員との議論の中で、大臣はしきりに、大西委員が聞いてもいない平均余命のことを持ち出して、平均余命まで生きれば七十五歳から支給開始になっても得をしますよという言い方をしておられたんですが、そうではないのではないかという試算もなされているわけでありますので、ここは厚労省としての正式な見解をお示しいただかないと、大臣、笑っている場合じゃないんですよ、そういうことなんです。

 そこをもう一度確認してよろしいですか。大臣、出してもらえますか。

田村国務大臣 まず大前提として、いろいろなものをお示ししなきゃならぬというふうに思います、七十五歳選択制というものを仮に採用することがあれば。

 ただ、これをお示ししまして、俺は平均余命まで生きられないかもわからない、俺は元気だから生きられるかもわからない、それともう一つは、今仕事があって年金をもらわなくても十分生活できる、そういうことをそれぞれが選択されて選ぶんですよ。七十五歳までもらえない、強制だというのなら、損しちゃいけないものをつくらなきゃいけないですよ。僕が制度設計と言うのはそういうことなんです。もらえない、絶対損しちゃいけないんだという話だったら、そうしたら、それは、いろいろな制度設計、絶対損しないような制度設計をしないといけないと思います。

 私がなぜ制度設計はこれからだと言っているかといいますと、それはもしかしたら損をするような設計があるのかもわかりません。ただ、それは選択で、自分はそれ以上生きるんだという自信のある方は選択する、もちろん仕事があるということが前提ですよ。だから、そういうようなことを選択しようというのであるので、選択のためのいろいろな条件は、そのときには情報はお示ししますけれども、強制的に七十五というわけじゃないので、絶対に損しちゃいけないという議論ではないと思います。

 その上で今のお話をいたしますと、制度設計は二〇〇〇年なんですよ、先ほど言われたのは多分平成二十四年の平均余命だと思いますので、二〇〇〇年の平均余命よりも平均余命は延びていますから、そこまで生きていただければ、制度上は今の現時点で損をしないという話の事例で出させていただいた話なので、それは損をしない形になっておると思います。

 ただ、一方で、これは二〇〇〇年というのを基準にしておりますが、いつまでも低い平均余命を基準にしていますと年金財政に影響が出てきますから、どこかで見直していくということはせざるを得ない。つまり、平均余命はどんどん延びていますから。

 そういうことを勘案しながら、どういう制度をつくっていくかということをこれから検討、つくるわけじゃありません、検討する中において、こういうようなシミュレーションもあるねということは検討過程においていろいろと議論をしていく話になろうというふうに思います。

中根(康)委員 もちろん、人の生き死にというのはいつ何が起こるかわかりませんので、絶対に損をしないなんという制度はないわけであります。しかし、特に選択制ということを強調するのであれば、七十五歳からの支給開始を選択するかどうかという目安というもの、やはり、これは大臣自身が今おっしゃったように目安というものは示されなければいけないということでございまして、これは大臣が公の場で七十五歳選択制ということを明確に発言されたわけでありますので、だったら、そういうシミュレーションや試算が厚生労働省内部で行われているのではないかということは当然考えるわけであります。

 もし大臣の発言の前になされていないのであれば、こういう質問が出たり国民からお問い合わせがあるのは当たり前の話でありますので、これは早急に、来週の水曜日までに、平均余命のことも含めて試算を、数字を出していただくということは先ほどお約束をいただけましたので、もうきょうはこれで終わります。(田村国務大臣「ちょっと一言」と呼ぶ)では、十五秒。

田村国務大臣 ちょっと誤解を招かないように。今の制度を延長したらというような話でございますので、これから検討するものはいろいろな制度設計ですから、それは同じようなものになるかどうかわかりません。ですから、そこは、今言いましたとおり、同じものを引っ張るかどうかというのはこれからの議論ですから、それはそのときに、仮に採用するのならば、こういうような条件だけれども、それでも選択しますか、しませんか、そういう目安のものは示さなければならないと思いますが、仮に七十五歳選択制が採用されたとしても、今度出すものが必ずそのまま使われるかどうかはわからないということは大前提でお願いいたしたいと思います。

中根(康)委員 それはもう結構でございます。その前提で、その条件で出していただくということをお約束したということでございますので、お願いいたします。

 次の質問に移らせていただきますけれども、あえて、今からの質問は、社会保険の問題を事業主の立場に立って取り上げていきたいということでございます。

 例えば、これは資料を添付させていただきましたが、四ページでありますけれども、こういうケースではどうかということでございます。

 年間一億円の利益を上げているA社とB社があって、A社は十人の正社員を雇用している、B社は百人の正社員を雇用している。そして、ともに一億円の利益を上げているというふうにした場合に、法人税額は基本的には同額だと考えていい。他方、雇用者数ということでいうと、ここに示してあるように、B社はA社の十倍雇用している。すると、正社員、従業員、個々の事情を同一だと仮定した場合に、社会保険料の負担は、B社はA社の十倍負担をするということになるわけであります。

 B社の正社員は百人ということでありますので、資料五ページをごらんいただいてもわかりますように、正社員が十倍いらっしゃるということは、賃金ということでいっても、正社員の方は非正規の方々よりも相当賃金がいいということでありますので、従業員の方の生活にも貢献しているし、所得税収ということについても社会貢献がある。

 それから、六ページ、七ページの資料をごらんいただければわかりますけれども、正社員の方の結婚率というものは非正規の方々に比べて極めて高い、交際状況も顕著な差があるということでございます。

 こういった意味合いで、B社はA社に比べて社会貢献が極めて大きいということなのに社会保険料は十倍負担が大きいというのは感情的に見て納得できないところがあるというのが、多くの事業主の方々の御意見ということであります。

 もう一度繰り返しになりますけれども、正社員ということを前提にしますと、A社とB社、正社員を十人、百人、それぞれ雇用しているということを前提としますと、正社員の方が非正規の方々よりも所得が多い、結婚しやすい、子供が生まれる可能性が高いということであれば、税収にも少子化対策にも貢献をしているということであります。

 つまりは、正社員をふやすということが、この賃金とかあるいは結婚状況ということから見ても極めて重要だということは、こんな回りくどいことを言わなくても、明らかなわけであります。

 特に、雇用の大部分を担う中小企業において正社員の拡大を図っていくということが当然国策としても重要なことであるということになってまいりますが、この場合に、これは話をもとに戻しますけれども、正社員雇用の障害になっているのが、特に中小企業においては、社会保険料の事業主負担ということになるわけであります。

 A社、B社のケースを見ても、利益が同じ場合、法人税は同じように払うのに、正社員が少ないと社会保険料負担は十分の一。正社員が少ない方が社会保険料負担が軽くなるということ。回りくどく言いましたけれども、これは当然わかっていただけると思います。

 その場合に、A社、B社、特に中小企業の場合でいえば、社会保険料負担の重い分だけ、もう一度これは回りくどく言いますけれども、社会保険料負担の重い分だけ、正社員の雇用が抑制されたり、あるいは賃金が抑制されたりということが、もう既にこのA社、B社の場合にも、比較をすれば起こっているということになるのかもしれません。社会保険料負担が重いということが、結果として、中小企業の非正規社員雇用をふやしている、正社員雇用を抑制しているということにつながっているのかもしれないということは、容易に推察ができるわけであります。このように見てくると、社会保険料負担が軽ければ正社員雇用が拡大するという可能性が出てくるわけであります。

 大臣、いろいろと回りくどいことを言いましたけれども、ここまでのところはわかっていただけると思います。

 この格差を解消するためにも、非正社員に対する社会保険料の適用拡大ということもなお一層重要になるわけでありますけれども、一方で、特に中小企業に対して、社会保険料負担が正社員雇用の障害になっているということでいえば、社会保険料負担の軽減を支援するということが政策的に必要になってくるのではないかということを私は提案させていただきたいということでございます。

 雇用をふやすと一人当たり四十万円の税額控除という雇用促進税制というものも導入されましたけれども、もともと中小企業は、これは資料九に添付しておりますけれども、利益が出ているのは全体の三割程度ということになります。つまりは、七割は赤字で法人税を払っていないわけでありますので、この雇用促進税制というものは、特に中小企業において正社員をふやすのに余り効果的であるとは言えないということになるわけであります。

 したがって、正社員をふやした中小企業に対して、何らかの形で社会保険料の負担を軽減するという支援をぜひ厚労省としてあるいは政府全体として御検討いただきたいということでございます。

 もう時間がないのでずっと申し上げますと、では財源はという話になると思いますので、財源は、今でも、消費税収によって余裕が出た分を公共事業に回したりあるいは大企業の法人税減税に回したりということをなさっておられるわけであります。

 したがって、大企業の法人税減税を一部やめたりして、今検討されているものを一部やめたりして、この中小企業の社会保険料負担の軽減という方に回すということ、これは安倍総理の言うトリクルダウンということには反するかもしれませんけれども、私は、この中小企業支援というものがこれからの日本経済の活性化、成長の原動力になるということ、そして社会保険料負担の軽減ということが正社員雇用の拡大につながるということであれば、そこから、結婚し、そして子供がふえるという好循環につながるわけでありますので、こういった中小企業に対する社会保険料負担の軽減というものは検討に値するものだと考えておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

田村国務大臣 労働者に払わせて、企業は払わないという話ですね。そういう話でしょう。労働者にはちゃんと払わせて、半分、企業には払わせない、つまり、おつき合いさせないという話ですね、今の話は。

 私は、中小企業で働く方々は、多分、労働者のうちの七割以上だと思います。そこが払わない、もしくはそこの企業を軽減するという話になると、多分、社会保険者がもたないであろう。今、そういうこともあるから協会けんぽにお金を入れているわけでありまして、これも、協会けんぽに、全て、上限まで入れていないと怒られていますけれども、私は、そういうことも含めて、保険者の中に入れる中において、中小企業が多いわけでありますから、そういうところを勘案しているというふうに認識をいたしております。

 いずれにいたしましても、中小全てなんという話になると、そちらの方が人数的に多いので、多分、保険がもたないというふうに思います。

中根(康)委員 事業主に払ってもらわないということではなくて、払った上で、支援をする、補助をする。これはスウェーデンとか、外国でも採用されている……

後藤委員長 申し合わせの時間は既に大分経過しております。

中根(康)委員 若年者や生活困窮者においては採用されている例もありますので、ぜひ、またやりたいと思います。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 長妻でございます。よろしくお願いいたします。

 先ほども柚木委員の方から、年金の財政検証、五年に一度の話があって、私、ことしの初めには役所の方に確認をいたしましたら、もうとっくに提出されているような時期に出せるというようなお話があったわけですが、まだいまだに出ていないというのはちょっと不可思議でありまして、これは速やかに出していただいて、まさか国会が閉じた後にぱっと出すということでなくて、これは予算委員会でも集中審議が必要な案件でもありますし、この厚労委員会でも財政検証の集中審議を、これはかなりの時間をとって議論する非常に大きな問題でありますので、ゆめゆめ、何か世論対策、国会対策、追及を恐れて遅くするということは絶対にあってはならないというふうに思っております。

 そして、前回も質問いたしましたけれども、いわゆる消えた年金問題の五千万件、未解明の記録が二千万件ある。この二千万件の記録について、再度確認いたしますけれども、結局、二千万件の記録全てが、今、ねんきんネットということで、ある簡単な手続をすればインターネット上で一般国民の皆さんが検索できるようになっている、そういう状況になっているということはわかるんですが、そうすると、皆さんに捜していただく以外は、二千万件の未解明の記録はもう諦めちゃう、ほっておく、こういうことなわけですか。

田村国務大臣 しっかりとこの記録が回復に結びつくように努力をしていくわけでありまして、ほっておくということはありません。

長妻委員 田村大臣、本当に、ずっと気になるんですが、質問をちゃんと聞いていただきたいんですよね、ちゃんと。時間がもったいないので。これはまた何度も同じことを繰り返して、聞いていないんですよ、質問を。そういうときがよくあるんですね、田村大臣。

 二千万件は、今はインターネット上でどなたでもごらんになれるように、検索をできるようになっている。ほっておくというのは、それ以外の方策というのはもうやらないんですか、二千万件について。

田村国務大臣 昨年も大々的なPRをさせていただいて、記録が結びつくように国民の皆様方からも御協力をいただきたいということをやってきたわけであります。これからもいろいろな形で国民の皆様方にこの問題に対して周知徹底はさせていただきたいというふうに思っております。

 また、年金記録のいろいろな回復という意味からすれば、新たに、事務処理誤り等々に対する対応、これは厚生労働省の中にそういうような組織をつくって対応していくわけでありますから、そういうものに関して記録の回復につながっていくということも出てくるであろうというふうに思います。御承知のとおり、スマートフォンなんかでもねんきんネットにアクセスできるように、そのような形も進めていくわけでございます。

 いずれにいたしましても、ほっておくわけではございませんでして、いろいろな形を考えながら、年金記録に結びついていくように努力をしてまいるということであります。

長妻委員 何か、いろいろな形とか抽象的なんですが。

 そうすると、具体的に確認をしたいんですね。二千万件の記録については、確かに、今おっしゃったように、ねんきんネットで全部の記録が検索できるようになっています、国民の皆さんが。スマホでもできるようになるんでしょう。そうすると、それ以外に、具体的に二千万件の記録の回復に結びつく対策、方策というのは何かお考えですか、こういうことを聞いている。

田村国務大臣 これも委員も御承知のとおり、紙台帳、紙記録、これをコンピューター記録に突き合わせるという作業をやってきたわけでありまして、これが終わったわけであります。もちろん、記録をちゃんと給付に結びつけていかなきゃいけない、そういう作業はこれからやらなきゃいけないわけでございまして、そういうことはしっかりやってまいります。

 ほかにもいろいろなことをやってきたのはもう委員が一番御承知で、年金記録問題に関しましてはプロフェッショナルの長妻委員でございますから、民主党政権時代もいろいろなことをおやりになってこられた、そしていろいろな御提案もしていただいた。その上で、いろいろなことをやった上で、まだ二千万件、どうしても残っておるというような状況になっておるわけであります。

 でありますから、これを国民の皆様方に呼びかけて、何とか記録の統合に向かってこれを進めてまいりたいということでございますので、いろいろな努力の末、今、ねんきんネットというものに全力を注いで、記録の回復につなげていくというような努力をいたしておる次第であります。

長妻委員 そうすると、国民の皆さんに検索をしていただく、それ以外の方策はないということで、これで幕引きではちょっと困るんですね、これだけ大きい迷惑を国民の皆さんにかけているわけで。

 我々の政権のときは、一ページ、二ページにありますが、初めの方は、これは我々が追及して昔の自民党政権でやっていただいたサンプル調査もありますけれども、サンプル調査を丁寧にして、その都度対応を考えて前に進めていく、こういう手法をやってきたわけであります。ところが、今の自民党政権になって、もうこういうサンプル調査はやられていないし、しかも、我々が前に進めていたものがその時点でとまってしまって、それでもうその対策をそのまま進めているというような今の状況なんですね。

 やるべきことはまだたくさんあります。例えば、三ページ目で、未解明の記録の二千万件のうち、(2)にありますが、「名寄せ特別便等の対象となったが、未回答等のため持ち主が判明していない記録 八百五十三万件」。そのうち、御本人から回答がないものが三百十五万件ある。これは、民主党政権のときにサンプル調査をいたしますと、まだこれだけふえていない段階でしますと、三千件のサンプル調査のうち二千二百六十二人が接触できた、七五%の人は会えるわけですね。その方のうち三・五%が本人の記録ということで戻ったということでありまして、仮にそのパーセンテージを掛けると、三百十五万件掛ける七五%掛ける三・五%で約八万人というような試算もあります。

 ただ、このサンプル調査三千件は自分のものではないと回答のあった方も含めておりますので、それも厳密に計算すると、もっと多く回復できるというような見込みになるわけでありますので、これは、やはり電話とか訪問を三百十五万件続けていく、あるいは自治体に協力を求めていく、こういうお考えはもう全くないんですか。

田村国務大臣 平成十九年以降、一千万件、名寄せ特別便というものでやったわけであります。この名寄せ特別便というのは、そもそも、三条件がよく似ているというようなものを集めたわけであります。名前が若干違っているけれども、名字が若干違っているけれども、生年月日等々を見ていくと近いねというものを寄せてやったわけであります。

 三回やって、再確認キャンペーンということで、どうですか、どうですかというようなお話もさせていただいたわけでありますが、それでも、その後返事がなかったりして進めなかったということであります。さらに、これはもうほぼ同じだなというようなさらに精度の高いもの八十八万件について、おっしゃるとおり、訪問でありますとか電話調査等々をやったということでありまして、このうち五十八万件が、やはりほぼ同じでありますから、記録の修正につながった。

 しかし、そもそも、ほぼ一緒だろう以外のものは、よく似通っているという話でございますから、どうしても結びつかないわけでありまして、御本人から回答のない三百十五万件、この中において三千件、これは二十三年三月にサンプル調査をした。結果、二千二百六十二人の回答があったわけでありますが、九六・五%の方が、これは、言われるとおり、私の記録ではないということになったわけであります。三・五%は、そうだというものはあった。

 これを受けて、民主党政権下の年金記録回復委員会の中において、やはりこれは九六・五%違うわけだから、これを続ける、記録の訂正に結びつけるために訪問調査でありますとかそういうことをやるというのは、やはりコストがかかって、効果というもの等を考えた場合になかなか難しいのではないかということで、ねんきんネットでの未統合記録検索システムの構築などで進めるべきではないかというような御意見といいますか、最終的に御判断をされたわけであります。

 そういう意味では、年金記録回復委員会の御判断をいただいた中において、我々としてはその作業を粛々とさせてきていただいたわけであります。

長妻委員 今、年金記録回復委員会という話がありましたが、これは今の自民党政権になって解散になっちゃったんですよね。解散させられてしまって、その後どうなったかというと、日本年金機構の中の評価部会の下に特別委員会という形で実質的な縮小をされて、今度、一年たったらそれもなくなっちゃいました。ことしの四月からは社保審に年金事業管理部会ということです。ほとんど開かれていません。この前一回開かれて、今度六月に一回開かれるということです。これは触れないようにされておられるのか、回復委員会もなくなり、チェックする人がいなくなったということであります。

 大臣、ちょっと勘違いされているんですが、この八十八万件、訪問や電話、文書は、これは三百十五万件の内数じゃないですからね。ですから、この三百十五万件について、我々の政権のときにサンプル調査しているわけですから、積み上がっていますので、もう一回三百十五万件のサンプル調査をして、それで、本当にコストパフォーマンス的にいいのか悪いのか、ただ、コストパフォーマンスだけで本当に判断していいのかどうかという判断もあると思うんですが、この三百十五万件、中身はわからないわけですから、調査していただけますか。

田村国務大臣 先ほど八十八万件の内数ではないと言われましたけれども、三百十五万件の中にはこの八十八万件のものも入っておる。全部じゃありませんよ。ただ、これは見つかったものが入っているわけですから、五十何万件。ですから、全く含まれていないというわけではありません。

 サンプル調査、これは民主党政権下でやられたわけですよね。その結果、年金記録回復委員会においてそのような御判断を民主党政権下においてされたということでございまして、その後、我々は、これに関しては、民主党政権下の方針を変えたわけではないわけでありまして、それをそのまま粛々と、ねんきんネット等々、また相談業務等々、そういうものでやっていくということでございますので、現在それをさせていただいておるということであります。

長妻委員 ちょっとずるい答弁なんですね。これは、民主党政権の方針というのは、我々は、さっき申し上げましたように、サンプル調査を続けて前に進めているんですよ。自民党政権に今政権交代してしまったわけで、これは、我々が今政権についていたら、サンプル調査をまたして、また新たな対策をとっていくということで進めていたと思いますよ。何でもうサンプル調査をやめちゃうんですか。

 これは、例えば、かつて平成二十一年の十一月には、名古屋市を初め市区町村に御協力いただいて、訪問とか、あるいは、住所がわからない場合は、国保や介護保険のデータと突合して住所を突きとめていただくということもいたしました。これは非常に確率の高い方にさせていただいて、今回の三百十五万件、返事のない方にはまだしておりませんので、三百十五万件の中を調べて、サンプル調査をしてどういう状況なのかを見た上で、例えば自治体に再度お願いをするとか、そういう方策も、もう全く考えないんですか。これでもう終わりにするということなんですか。

田村国務大臣 三百十五万件の中でサンプル調査を民主党政権下でやられたわけですよね。(長妻委員「やっていないです。二百万件ですよ」と呼ぶ)いやいや、三千件はその中に入っているわけですよね。(長妻委員「入っていないですよ。全部は入っていない」と呼ぶ)いや、全部は入っていないにしても、その内数の中でやっているわけですよね、三千件は。(長妻委員「それは二百万件のときですから」と呼ぶ)いやいや、内数であることは間違いないわけであって、違うものをやっているわけじゃないわけであります。(長妻委員「全部は内数じゃない。違うよ」と呼ぶ)

 ですから、そういう意味からすると、やられている中においてまた同じことをやるのかという話と、先ほど言いました八十八万件は、ほぼ近いのではないか、生年月日も名前も性別も合っているというような、ほぼ近いんじゃないかというものをやって五十八万件回復したわけでありますが、この内数が名古屋のやり方でございますので、それは名古屋のようなやり方をしていただいたからこのような形で五十八万件回復できたんだというふうに思います。

長妻委員 三千件のサンプル調査をしたときはまだ分母が積み上がっていなくて、二百万件の記録の中で三千件のサンプル調査をして今おっしゃったような結果が出たということで、今度は、今三百十五万件積み上がっているわけですから、この全容がまだ動いているわけですよね。

 自民党政権になって、もうサンプル調査はほとんどされないですね、違法未加入年金でも何でも。確かに、役所の中には、これは言っては申しわけないんですけれども、サンプル調査をすると仕事がふえるから余りしたくないという声もありますよ。ただ、それで、大臣は物わかりがいいから役所の皆さんは居心地がいいかもしれないけれども、それじゃ行政はだめですよ、ミスも多発するし、厳しさもないと。役所の理解を得て、ちゃんとサンプル調査を政治主導で、これは下から上がってきませんから、サンプル調査しましょうなんてことは。

 様子もわからないのに、よく幕引きモードに入れると思うんですね。これだけ大きな、総理大臣みずからが、今の安倍総理が最後の一人まで払うというふうに国会でおっしゃられているのに、この三百十五万件についてサンプル調査をして、そして自治体なりに、再度、頼み方も含めて検討していく、こういうような答弁ぐらいいただけないですか。それもだめなんですか。

田村国務大臣 効果のあるサンプル調査というものをやらないと言っているわけではないです。だから、我々も、日々何も考えていないわけではないので、どうすれば記録に結びつくか、こういうことをいろいろと検討はしているわけでありますが、余り効果のないサンプル調査をやっても意味がないわけであります。

 そういう意味では、三千件の九六・五%は関係なかったということが皆様方のときにやられた結果でありますから、これをもう一回やると……(長妻委員「それは二百万件のときだから、今と違いますよ」と呼ぶ)いや、だって、それは内数ですから。それは内数の中で三千やっているんですから、全く違うものをやっているわけじゃない。いきなりこれが、もう一回やったら、九六・五%違っているというのが、違っているのが五〇%で、五〇%は合っているなんていうことはまず考えられないわけであります。だから、そういう意味からすると、これに関しては内数ですから、しかも三百十五万件のうちの二百万件ですから、かなりの部分は入っているわけであります。

 そういう意味では、そういうサンプル調査をやるよりかは、もっとほかにいろいろなことを検討しながら対応していくということが必要なのではないか、このように考えます。

長妻委員 もっとほかのことを考えるとおっしゃるけれども、ないじゃないですか、策が。

 しかし、本当に全部拒絶ですね、野党の提案を。さっきの民主党政権の三千件のサンプル調査、民主党政権がやったからいいじゃないかじゃだめですよ、自民党政権も努力しないと。

 民主党政権でやったものを、これは当時は分母が二百万件でしたけれども、それを当てはめたとしても、さっき申し上げましたように、この三百万件のうち八万件は戻る方がいらっしゃるわけですよ。では、そういう方はもう勝手にしてくれという話になっちゃうんですか。

田村国務大臣 これは我々の政権下ではなかったのでよくわからないところもありますが、多分、年金記録回復委員会の中で、この数字を見て、かけるコスト、それからそれに対して回収できるメリット、これを考えられた判断だったというふうには思うんです。それは、コストも税金ですからね。国民の皆様方の税金を使ってどれだけの記録を回復するかということは、それはやはりある程度の相場観というのはあるんだと思います。

 ですから、この年金記録回復委員会の中でこのような御判断をされたんだというふうに私は思っておりますので、そういう意味からいたしますと、その御判断というのは一つの御判断であるというふうに私どもは思っております。

長妻委員 ですから、そういう誤解を招くような答弁をしていただきたくないんですね。サンプル調査をどんどんもっと進めて、さらに新たな対策があれば、それはとっていくということなんですよ。

 民主党政権で、我々は政権から野党になりましたけれども、その時点の後の進展というのはないじゃないですか。何で努力されないんですか。これでもう幕引きという判断なんですか、これは。

 もう一つ申し上げたいのは、過去、年金記録を相談しに来て、あなたの記録はありませんというふうに言って帰してしまった人、記録がなかった方について、もう一回その方の記録を調べて、やはりありました、これは紙台帳を全件照合しましたので、やはりあったので、記録を統合します、こういうような確認ぐらいはしていただきたいと思うんですが、これもだめなんですか。

田村国務大臣 いろいろな問題はあるんだと思いますけれども、何もやっていないと言われますけれども、要は、ねんきんネットでも記録は回復してきておるので、そういう意味では、決して何もやっていないということではありませんし、そもそも、ねんきんネットは、もとは自民党が申し上げた話であります。

 今委員がおっしゃられた話は、いろいろな紙が積み上がっておるわけでありまして、それは、いろいろな苦情だとか、いろいろなものがあるわけであります。これがその後どうなったかというと、いろいろなPRをやる中において、それがまた記録回復につながってきておる。まさにその中にそのような苦情の方々のものが入ってきておるわけでございまして、そういう意味では、まさに委員がおっしゃられたような方々の分が、その後の努力によって記録回復につながってきておるということであります。

長妻委員 これは、自民党の、与党の皆さんも、本当にこういう答弁でいいんでしょうか。年金の記録を消しちゃったのは自民党政権下ですからね。これは、我々も一生懸命やりましたけれども、我々以上に一生懸命やらなきゃいけないんですよ。

 ですから、役所あるいは記録回復委員会のメンバーの先生方も、そこを心配されているわけですよ。過去に追い返してしまった方々が、今、紙台帳を全件入力したので、見つかる方が非常に多いんじゃないか。それをやりましょうというふうに声を上げておられる方もいるんだけれども、労力が大変だといって、なかなかそれが実現できていないわけですよ。それを、大臣、本当にやらないんですか、もう検討もしないんですか。

田村国務大臣 日々、業務の中で、年金記録の回復というものは進んできているわけで、昨年度、私もこれは新聞発表しましたけれども、「気になる年金記録、再確認キャンペーン」というキャンペーンを、周知しないことには御本人の記憶も戻らないわけであって、それをやりました。その結果も含めて、新たに記録が判明した方七十七万件分についてお客様にお知らせを送らせていただいて、四十七万件が回復しております。

 あわせて、先ほど来の紙台帳検索システムを活用して、これは委員がおっしゃられておられるものであります、未解明記録にひもついている紙台帳の情報をもとに、少なくとも六万人の方々についてお客様にお知らせをさせていただいて、二万件が回復しておりますので、全く何もやっていないわけじゃなくて、日々努力をする中で記録は回復してきているわけなんです。

 ですから、全く何もやっていないとおっしゃられるのは、やはり私は誤りだと思いますよ。実際問題、これだけの記録が回復してきているわけでありまして、それは御評価をいただきたいというふうに思います。

長妻委員 御評価といったって、これは一千三百万人の人は記録が戻っているわけですからね。だから、これで諦めていいのかということなんですよ。これは幕引きでいいのかということなんですよ。終結宣言をいずれ出すことは私は必要だと思うんですが、まだ出しちゃだめですよ、これは、まだまだやるべきことはあるから。

 これは、委員長にお願いしたいのは、そうであれば、今申し上げました三百十五万件の未回答の方、あるいは、過去、年金事務所に相談に来て、ないということで追い返してしまった方々に対して、年金記録の回復のためのサンプル調査をする、あるいは手当てをするとコストがどのくらいかかって、それはコスト的に無理なのか、労力的に無理なのか、ぜひ、その検討をしたペーパーを委員会に、理事会にお出しいただきたいと思うんですが、理事会でお願いします。

後藤委員長 理事会で検討いたします。

長妻委員 それと、この四ページに、今度、第三者委員会が総務省からなくなってしまうということで、厚労省に移動するんですが、そうすると、この職員数が、五百六十八人という職員がいらっしゃいますけれども、これは同じ人数ぐらいの体制でやっていただけるということでよろしいんですか、厚労省に来ても。

田村国務大臣 最大の問題は、先ほどの問題ですね、紙のメモのような形で苦情も含めて来ておりますので、それを全ての年金事務所でちゃんと記録していただいていれば、検索システムみたいな形でしていただいておればそれはやりやすいのでありましょうけれども、積み上がっている煩雑の中、しかも、それは年金記録の訂正だけじゃなくて、いろいろな日々の業務の苦情の紙も残っているわけですね。その中から年金記録のだけを引っ張り出して、しかも書いてあること自体が、フォーマットがありませんから、書き方も担当者個人によって違うわけですね。そういうものを判別してということはかなりの労力でありますし、多分、試算をしろと言われても、試算のしようがないというふうに思います。

 それならば、初めからそのようなものが残るような検索システムみたいなものを全事務所でおつくりいただいておればそういうことができたのかもわかりませんが、我々も頭が回らなかった点は率直に反省をいたしますけれども、委員もその点は御理解を、委員が政権を握られておられたときからのこともありますので、御理解をいただければありがたいというふうに思います。

 その上で、人員の配置でありますけれども、それに関しましては十分に業務が遂行できる人員というものを確保してまいりたいというふうに考えております。

長妻委員 これは、今紙のお話がありましたけれども、確かに、かつての相談は紙で、データベースになっていないということでありましょうが、そうしたら、各事務所で何枚か何十枚か、どういうふうになっているのか、その方に問い合わせて、もう一回検索して、紙台帳検索システムで試しにやってみたらいいじゃないですか。

 何か昔の役人みたいな話ばかりで、できない、できない、膨大だからできないと。全部一気にやるんじゃなくて、だからこそ、我々は、それぞれサンプル、幾つかを取り上げて、そこは効果があるのかないのかということで試行錯誤してやっているわけで、そういう紙の山があるわけですから、そこの熱意が非常に感じられないというのは残念であります。

 この第三者委員会につきましても、この二百三十七人、非常勤三百三十一人、あるいは委員の方が二百四十四人、こういう方々が不足をして、審査が滞ることがないようにぜひやっていただきたいと思います。

 それと、GPIF、年金積立金のことに質問を移します。

 金融庁にも来ていただいておりますけれども、スチュワードシップ・コードというのはどういうことなのか、それはGPIFや国家公務員の共済年金の積立金にも適用せよという金融庁の御指示なのか、その二点について教えてください。

福岡大臣政務官 御承知のとおり、スチュワードシップ・コードというのは二〇一〇年にイギリスで策定されたものでございますが、国際的に統一された定義があるというわけではございません。

 昨年六月の日本再興戦略におきまして、「機関投資家が、対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則」ということで、日本版のことは定義をさせていただいているところでございます。

 また、コードを受け入れるか否かということについては、各機関投資家がみずからの置かれた状況を踏まえてみずから判断することが重要であるということで考えておりまして、先ほどおっしゃられた組織につきましても、みずからの置かれた状況に応じて工夫、判断をされるものというふうに承知をしております。

長妻委員 国会図書館に聞くと、この八ページ目でありますけれども、スチュワードシップ・コードについては海外の公的年金で導入している国は見当たらなかったということなんですが、それはそういう理解で金融庁もよろしいですか。

福岡大臣政務官 委員の御指摘を踏まえまして、私たちも、イギリスのスチュワードシップ・コードの受け入れを表明していますアセットオーナーのリストというものを精査させていただいたところでございます。ここから先は、そこのリストに載っている中で、ペンションという年金を運用しているであろうということで推測されるものを七組織示させていただいているということでございます。

長妻委員 よくアメリカのカルパースの例が出てくるんですが、これはアメリカの公的年金じゃないですからね、カリフォルニア州の州の公務員の人の退職金の運用の話です。よくこればかり出すわけでありまして、私が懸念するのは、スチュワードシップ・コードというのは、事業戦略や行政の指針にも株主としていろいろ口を出すことができる。海外では人事とか企業の合併などに注文をつけることもできるということで、非常に際どい話になるわけであります。公的年金というのは国家がやるものでありますから、国家の意向が企業中枢に行って左右されるのではないかということであります。

 気になる報道が、七ページにあります時事通信で、GPIFはスチュワードシップ・コードを受け入れるという報道があるんですが、これは、田村大臣、今どんな状況ですか。

田村国務大臣 この日本版のスチュワードシップ・コードでありますけれども、GPIFはGPIFとして、言われるとおり、公的な年金であるわけであります。そこも含めて、社会保障審議会の専門委員会の中において、ことし三月でありますけれども、民間活動に与える影響に留意するというGPIF法に即して、日本版スチュワードシップ・コードを踏まえた方針の策定、公表に関しましては、労使推薦の委員を含めた、こういうような構成でつくられております運用委員会、ここの意見に基づいて検討するということになっておるわけであります。

 この運用委員会、これは労使が入っておるそういう運用委員会でありますけれども、ここで御議論をいただいた上で、その後、検討してまいりたい、このように考えております。

長妻委員 きょうは財務省も来ておられますけれども、国家公務員の共済年金の積立金については、これはスチュワードシップ・コードはどうされるおつもりですか。

古川副大臣 コードをKKRが受け入れるかどうかということについては、受託者責任を果たすという観点から、KKRにおいて検討がなされるものと考えております。

長妻委員 一応、金融庁が示した締め切りというのは今月ですよね。五月末までに回答を出すということであります。

 私が懸念するのは、これは田村大臣とも昨年の十一月二十二日、この委員会でやりとりをいたしました、アメリカの公的年金は約二百兆円ありますが、これは全額が国債で運用されております。その理由は、一つは、このスチュワードシップ・コード、これの絡みで、つまり、国家のファンドが一企業に対して株主として発言をし出すと、これは企業としてはたまったものじゃない、官営企業になるというそしりを受けかねないというようなこともあって、これは田村大臣も去年答弁されているんですね、なぜアメリカの公的年金は全部米国債かというと、「スチュワードシップ・コードといいますか、言うなれば企業に対する影響力、支配権が出るわけですね、」「企業等々に支配権を持つわけにいかない、そういう方針の中で、一〇〇%国債に投資しておる」、こういうふうに田村大臣自身が御答弁されておられる。

 懸念するのは、今のGPIFを拝見しておりますと、年金の積立金に関して、成長戦略やらベンチャー育成やら、本筋とは違う、被用者の立場からは違う方向からいろいろな口出しがある。政治の中枢から発言がある。安倍総理もダボス会議で、成長戦略に資するような趣旨の話があるということで、企業に対しても、人事やあるいは事業方針に対して、政治の影響がGPIFに及んで、過度な口出しになるのではないのか。

 安倍総理は、よく言われるのは、法制局長官をお友達にかえ、NHKの会長も経営委員もお友達になって、上場企業も人事が政府のお友達になっちゃうんじゃないのかと。そういうふうな懸念も私は持っているわけであります。

 これは、田村大臣自身は、スチュワードシップ・コードをどう考えられますか、GPIF。

田村国務大臣 企業の自律的な発展といいますか、そういう意味からしますと、企業が持続的に成長していく、こういうものを後押しするといいますか、これは専ら、被保険者の利益という意味では、それを運用しているわけですから、それはいいんだと思います。

 ただ、今委員がおっしゃられたみたいに、GPIFの法律は、企業活動に与える影響に留意するというふうになっておるわけであります。ですから、そのGPIF法の規定にのっとったような形で我々は対応をすべきである、それは当たり前の話でありまして、そのように考えております。

長妻委員 ですから、今の現状が、政府中枢からその法律の趣旨を忘れたかのような発言が相次いでいるから、あるいはそういう委員会の提言が相次いでいるから、申し上げているわけであります。

 これは十二ページ目でありますけれども、今後の年金の積立金で、株や商品先物や、あるいは未公開株まで検討するということで、株の比率もどんどん上げていくというような提言が出されましたけれども、これは私も非常に不可解に思うのが、国家公務員の共済年金は非常に安全運用なんですね。株の比率も半分以下であります。国家公務員にとっては自分たちの積立金というのは虎の子ですから、おかしなことになってはならないということで厳重に運用されているんでしょうけれども、きょう財務省が来られておりますが、国家公務員の共済の積立金は、では、株の比率を今後倍にするとか、かなり大胆に比率をふやしていく、こういうお考えがあるんですか。お考えがない場合は、なぜこれほど一般国民の年金積立金に比べて比率が低いんですか。その二点をお伺いします。

古川副大臣 国家公務員共済では、GPIFに比べまして、現役世代に対する受給者の比率が比較的高く推移をしてきております。そのため、年金支払いのための積立金の取り崩し需要も相対的に高くなるわけですね。したがいまして、これに円滑に対応することができるように、満期あるいは元利払いの金額が確定している国内債券への投資をより重視してきたという経緯がございます。

 一方、こうした中でも、よりリターンを確保しなければならないという要請、そういう観点もございますから、昨年の十二月に基本ポートフォリオを改正しまして、国内債券の運用割合を引き下げて、そのかわり、国内株式の割合を引き上げました。そのほか、国内債券につきましても、より長い年限のもの、長期のもの、ハイリスク・ハイリターンといいますか、よりリスクが高く、よりリターンもある長期の方に債券も移行を目指すというように工夫をしてきております。

 いずれにしても、株式などの運用割合だけで単純にリスクが高いとか低いとかと判断できるということではないのではないかという考えをまず持っております。

 その上で、今後ということなんですけれども、もう委員もよく御承知のとおり、KKRが積立金をどのように運用していくかということについては、みずからの判断と責任のもとで、基本ポートフォリオを決めまして、それに基づいて具体的な投資を行っているわけでございます。今後、KKRが必要に応じて運用の見直しをしていく、繰り返しになりますけれども、そういうことでございます。

長妻委員 いや、今の説明は、聞いておられる方はわかりましたかね。現役世代の年齢が国民年金、厚生年金に比べて高い、成熟度が高いから、積立金を取り崩しやすい、手元資金がすぐ入るような投資というような前半の御説明だったと思うんですけれども、株でも売ればすぐ現金になるわけでありますから、理由になっていないのではないのか。

 ありていに言うと、官僚の方に聞くと、安全第一だというふうにおっしゃるわけですが、何で、国家公務員だけ安全第一で、GPIFはこういう成長戦略の何か手段として議論されてしまうのか。

 こういうことが本当に解せないわけでありますので、やるのであれば、国家公務員共済もGPIFと同じような形で、一体でやっていただきたい。恐らくそうなると官僚の方はブレーキがかかって安全運用にシフトしていくと思いますので、一体として取り組むということをぜひしていただきたいと思います。

 最後に、懸案でありました違法未加入年金、健保の問題であります。

 これは、先日も質問した資料が六ページ目にございますが、結局は、毎年六万人弱の方は、違法未加入年金の方々が、めでたくといいますか、厚生年金、企業健保に加入する、こう厚労省が努力しているわけですね。

 そうすると、推計で何人いるのかということが大臣はわからないと言っておりますけれども、違法未加入年金がほぼ片がつくというのは、これから何年後ぐらいに片がつくんですか。

田村国務大臣 委員がおっしゃられている意味がちょっと私はうまく理解できていないんですが、この未適用事業者の問題もしくは未適用者の方の問題、これを全て解決しようとすれば、事業者が意識が変わっていただいて、未来永劫、そういうことをする事業者がなくならない限りは、それは解決はしません。それを後追い後追いでチェックしていって、そういうところがあれば、それを是正させていくというのが我々の役割であって、全て解決するのは、事業者自体がそういう意識がなくなって、必要な方に全て適用していただくというときだと思います。

長妻委員 大臣、一体、大臣は、大体、違法未加入年金、こういう違法状態で厚生年金に入れない人が何人ぐらい日本にいらっしゃる、どのぐらいだと思っておられるんですか。

田村国務大臣 それは、ひとり歩きしますので数字を申し上げるわけにはいきませんし、今まで、例えば一定の仮定を置いてといいますか、我々がやった方式じゃない方式でこれぐらいありますよというようなことを言えば、それがまた大臣が言った、大臣が言ったと言われますから、そういうことは控えます。

 ただ、そういう未適用者の方々、未加入者の方々を、ふやしていく必要がありますから、この間から申し上げております、何もしないんじゃないんです、基本的には投網をかけていこうと。

 そのために法人企業情報等々をいただいたんですが、この二百四十万件も、これも実は、未稼働の、稼働していない法人があったりなんかして、実際問題、動いていませんから、そこに人がいない、つまり対応者がいないということもあります。ただ、これは、一応、今のところ、五年かけて全てチェックしていこうというふうに思っています。

 ただ、それ以外に、財務省から法人企業の情報、これは稼働しています、これをもらって今の厚生年金の事業者のデータとぶつければ、これによって、ぶつからないところというのは、動いて、そこで給料を払っているのに社会保険に入っていないという方でありますから、そこに入っていく。

 これも今から順次わかってくると思いますけれども、五年ぐらいあれば、大体、それは全部行けるでありましょう。行けば、そこで、入っていなければ指導できるわけでありますから、入っていただく。すると、とりあえずその時点で、この問題というのが一通りは解決をします。(長妻委員「委員長、聞いていないことをずっとしゃべっている」と呼ぶ)

 ただ、また次から次へと出てきますから、それを四年ごとに……

後藤委員長 手短に。

田村国務大臣 全ての事業者を回ってチェックしていくということを根気強くやる以外にないというのが答えであります。

長妻委員 これで時間が参りまして、そんなことを聞いているんじゃないんですよ。違法状態の方が何人ぐらいなのかと思うのかと聞いているんです。

 これは委員長に理事会で御議論いただきたいと思うんですけれども、違法未加入年金の方々は、本当は厚生年金に入るはずが国民年金になっている。それで、本当の自営業の方よりも、会社で働いていて国民年金の方の未納が多いんですよ。

 ですから、今審議している法案は、国民年金の未納率を下げる、そういう趣旨の法案でありますから、そういう方々が厚生年金に入れば、直ちに未納は、そのグループはなくなるわけでありますので、違法未加入年金の、大体何人ぐらいの規模感、そのサンプル調査を、採決までに、するしないということについて理事会でぜひ協議をしていただきたい。

 法治国家で違法状態にいる人がさっぱりわからない、人数さえ……

後藤委員長 申し合わせの時間が来ています。

長妻委員 サンプル調査をすればわかるのに、それもやらないというのは責任放棄だと思いますから、よろしくお願いします。

後藤委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 一昨日に引き続いての質問ということでございまして、前回は、納付率の向上のためには今回の改正案は余り効果がないのではないかということ、またさらに、納付側の利便性の向上のためにはインセンティブが重要なのではないか、さまざまな問題解決のためには歳入庁の創設が重要ではないかというようなことを御質問させていただきました。

 やはり年金制度の根幹にあるのは支え合いの精神であって、負担の公平性の確保のためにも、年金保険料の納付率向上は重要な課題だとは思います。しかしながら、その手段として提案されている納付猶予期間の拡大は、あたかも分母を小さくして納付率を大きく見せるかのような、もしかしたら本末転倒のようなものも含まれているのではないか、そのようにも思います。本改正案に盛り込まれた個々の手段が本当に年金制度への信頼向上に資するものなのかどうか、やはり疑問に思うところでもございます。

 そのような観点も含めて、最後の方でちょっと歳入庁の話をまた御質問させていただきますが、本則のところで何点か確認したいところがございますので、まずそちらの方から、通告と順番がちょっと変わっておりますが、よろしくお願いいたします。

 まず、年金記録の訂正手続の創設について御質問させていただきます。

 現在、年金記録の訂正の仕組みとしては、総務大臣への年金記録訂正のあっせんを求める申し立てを契機とした訂正、二つ目が年金事務所での年金相談を契機とした記録誤りの訂正、そして行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づく訂正請求を契機とした訂正というふうに、三つのパターンがあると思います。

 消えた年金記録の問題の後、年金記録を確認するに当たって、旧社会保険庁に記録がなく、本人も領収書などを保有していない事例に対応するために、国民の立場に立って公正な判断を示す場として、田村大臣も総務副大臣のときに創設に携わったとおっしゃっておりましたが、第三者委員会が設置された、そのような経緯だと思います。

 昨今、過去の年金記録問題への対応以外にも、恒常的に発生し得る年金記録の誤り事案に対応できる訂正の手続を、年金制度において整備することが必要となっている。そのような現状の中で、本改正案において、年金記録について、被保険者による訂正請求を可能とし、民間の第三者の審議に基づいて、厚生労働大臣が訂正する手続を整備する、そういう趣旨だと思います。

 そこで、まず、総務省の年金記録第三者委員会は、国民の立場に立って公正な判断を示す場として総務省に設置されたという経緯になっておりますが、今回、民間組織から成る審議会の審査の過程はあるものの、厚生労働省内で記録訂正の必要性について判断することについて、公平性の担保をどのように維持されると考えているのか、御見解をお尋ねしたいと思います。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案で盛り込んでいる仕組みでございますけれども、恒常的な仕組みとして年金法の中に位置づけるということで、厚生労働大臣のところで訂正請求を受け付けて判断するという法律的な仕組みになっているわけでございます。

 具体的な訂正の決定につきましては、あらかじめ社会保障審議会の分科会において審議し、策定、公表する基本方針、ここで審議の基準でありますとか運営基準でありますとかそういったものを定めていただくわけでございますけれども、そういうものに沿いまして、民間有識者から成る合議体で審議を行っていただいて、その結果に基づいて訂正決定を行うというふうにしているということでございます。

 また、この審議会は、お話がありましたが、外部の民間の専門家によって構成するということにいたしておりまして、これによりまして処分の公平性や透明性を確保するという考えでございます。

中島委員 そもそも、消えた年金の問題で、年金機構、その当時は社保庁ということになると思いますが、そこには任せておけない、信用できない、そういうところで、管轄は総務省の中で、公平性の中で訂正をやっていこうと。今回は、民間の審議会ということで、ただ、最終的には厚生労働省がそれを判断していくという経緯だと思います。

 民間組織から成る審議会はどのようなメンバーを想定しているのか等、総務省の経験、今までずっとやってこられたということですから、そのノウハウをどう生かしていくつもりなのか。厚労省がやるのであれば、現行の総務省の年金記録第三者委員会よりもさらにしっかりとした、すぐれたものにしなければならないと思います。

 先ほども申し上げましたように、もともと社保庁に任せておけないから総務省だということだったわけですので、その辺についてまたお尋ねしたいと思います。

樽見政府参考人 この法案で設けます新たな訂正手続でございますけれども、地方厚生局ごとに基本的には設置いたします、今お話しいたしました民間有識者から成る合議体、審議会でございますけれども、その審議結果に基づいて訂正決定を行うということでございます。ですので、この合議体の判断が例えば訂正すべきというのに、事務局が訂正しないということはできない仕組みでございます。

 この審議会においては、主に事実関係の認定について審議いたすことになりますので、具体的に委員構成としては、社会保険実務や事業主の経理等に詳しい専門家という方々に御参集いただく必要があるというふうに考えておりまして、弁護士の方、あるいは社会保険労務士、税理士、司法書士といった民間有識者により構成することを想定してございます。こうした委員構成は、現在の総務省の年金記録確認第三者委員会の委員の構成と同様でございます。

 また、総務省のこれまでの経験やノウハウを生かすということは、私どもとしても大変重要というふうに考えてございますので、総務省の取り組みの事例の蓄積というものを参考にさせていただいて、審査基準等を示した基本方針というものを作成、あるいは年金事務所段階で迅速に訂正するということもやってきております。そうしたものの実施ということも引き続き取り組むということにしておりまして、また総務省の協力もできるだけいただいて、よりよい仕組みになるように努めていきたいというふうに考えております。

中島委員 多分、信頼性、安全性も含めて担保される、そのための民間の審議会だというふうに思いますが、先ほども長妻委員からありましたように、一旦信頼を失った、それがこの六年間で、消えた年金はまだ四割の未処理があるという中で、本当に信頼が回復されたのか。そういう中で、今回、第三者委員会から厚生労働省に戻ってくるというか、もともとこういうのはなかったのかもしれませんが。

 そういう中で、一方で、総務省の年金確認第三者委員会は今後どうなっていくのか。行政の効率性の観点からいけば、二重行政は御法度だということになると思いますし、新たな仕組みを成立させるのであれば総務省の第三者委員会は廃止するのが当然だと思うんですが、今後どのようになるのか、お尋ねしたいと思います。

田村国務大臣 今法案で新たに創設されます年金記録の訂正の手続は、今言われた第三者委員会のあっせんと同じような効果を打てるわけであります。そういう意味では、第三者委員会というものが仮に廃止されても同じだけのことはできる。

 ただ、どうされるかは総務省が御決定される話でございますので、厚生労働大臣の私が物を申せるわけではございませんので、また機会があればそちらで御確認をいただければありがたいというふうに思いますが、第三者委員会で扱っておられた事案も、御希望をいただければ、こちらの新しい手続の方で対応はさせていただきたいというふうに思いますので、仮に廃止されたとしても、御利用されている方々が困られないような、そんな対応はしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

中島委員 先ほども言ったように、二重行政の観点からいくと、やはりちゃんと役割ということをしっかりやらないといけないのではないかと思います。

 ことしの二月二十五日の総務委員会では、新藤総務大臣は、厚労省と総務省に同じものが二つあることになるわけですから、これは厚労省の方にやっていただくことになる、こういう仕切りをやっていて、これは、法案が提出されて成立すればそのまま移行されていくものだと認識しているとはっきり答弁しているわけですね。

 であれば、これは総務省が決めるというよりは、今回、こういう経緯の中で今法律案がどうなるかわかりませんけれども、成った場合には、しっかりと二重行政のチェックも含めて対応していただかなければいけないことかなというふうに御指摘をさせていただきます。

 次に、年金個人情報の目的外利用、提供の範囲の明確化について御質問させていただきます。

 年金の個人情報の取り扱いについては、職歴や報酬などプライバシー性が高いという特性を踏まえて、日本年金機構法において、行政機関が保有する他の個人情報よりも厳格な情報の保護がされておるということでございます。

 昨今、虐待の事実を調査、確認するため、日本年金機構に対して当該高齢者の年金の受取口座情報及び年金額について提供を求める事例が多いということから、本法律改正案では、そのような情報について、限定的ではありますが、開示するということになっております。

 今回は虐待の事例ということなんですが、このような事例は一体どのぐらいあるのか、お尋ねしたいと思います。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案では、市町村等が行う高齢者虐待の防止に関する事務等の法令の定める事務であって、緊急の場合などやむを得ない事由で本人の同意を得ることができない場合に該当するときは、年金個人情報を目的外提供できるということにしているわけでございます。

 具体的に、高齢者虐待ということで照会がされた件数ということでございますけれども、日本年金機構に確認いたしましたところ、平成二十五年十月から二十六年三月の間で九件というふうに聞いております。

 以上です。

中島委員 九件ぐらいということで、多いのか少ないのか何とも言えないですが、これは以前も話したことがあると思うんですが、私、在宅医療をやっていて、認知症の方の家に市から要請があって行ったときに、重度な認知症、家の中はひどい状態だったわけですが、その方は、年金もそうなんですが、無保険状態でして、当然介護保険料も払っていない。息子さんが同居していたはずなんですが、御両親の年金を担保に借金して、いなくなっちゃった、そのようなことがあったわけです。結果的に措置ということになるわけですけれども。

 今九件とおっしゃいましたが、もしかすると、こういう時代になって、悪徳商法というか、そういうものに利用されるパターンも結構多いのではないか。私、実際にそういうような経験をしたので、この辺については、取り締まりも含めて、現状把握というのを今後しっかりやっていただきたい。

 一方で、例えば特別養護老人ホームに入っている方、いろいろな御家族がいて、その方が年金をどういうふうに使われているのかとか、そういったことを問われるケースも多々ふえておるというふうに聞いておりますので、今後、そういった対応も含めてしっかりやっていただきたいなというふうに思います。

 もう一点だけ、高齢者の虐待以外に、この目的外利用、他にどのようなことを想定されるのか、今後想定されることで構いませんので、確認をさせていただきたいと思います。

樽見政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、高齢者虐待の防止に関する事務等というふうに法律案でございますけれども、そういうものに該当するものということでございます。その等ということでございますけれども、現在のところ、障害者虐待防止法に基づく障害者の虐待の防止に関する事務というものを位置づけることを検討しております。

 以上です。

中島委員 わかりました。

 続いて、納付率向上方策について御質問いたします。

 そもそも納付猶予は、単に所得の多い少ないに着目したものでなく、二十歳以上の国民全てに幅広く保険料納付義務を課しているという関係で、学生とか、そもそも納付を期待できない一定の方について限定的に納付を猶予する、そういう趣旨として私も理解をしております。

 しかし、今回の改正案においてその対象者を三十歳未満の者から五十歳未満の者に拡大するとなれば、ともすると、安易にこれが利用されて、保険原則や制度の公平性を損なうおそれがあるのではないか、そのようなことも危惧されます。

 被保険者の側から見ても、猶予期間はいわゆる空期間でしかなく、老後の生活を支えるには不十分とも言えます。

 安易に納付猶予を拡大するのではなく、納付しやすい工夫、徴収体制の整備こそが本来、本質ではないかというふうに思うわけですが、御見解をお願いいたします。

田村国務大臣 国民年金の納付をしやすいように、利便性を上げて納付が非常にしやすいような環境をつくる、これはもちろん我々も必要なことだというふうに思います。納付手段の多様化ということ、ほかにも、例えばコンビニなんかでも納付できるようにということを今始めようとしておりますけれども、そういうことを通じて、ふだんから納付意識を持っていただくということは大事だと思います。

 ただ、一方で、猶予という方々は、例えば所得が免除のラインの方々で、そもそも、所得を見たら納めてもらいにくいだろう、本来は免除をした方がいいんだけれども、世帯の中で所得を持っている者がおられて免除にならないという方々でございます。だから、そこは世帯主に出していただけばいいんですが、世帯主と本人はやはり別個の個人でありますから、なかなか難しいということであれば、そういう方々の利便性も鑑みて、猶予というものを今回広げようと。そのかわり、十年間、追納できますから、お金ができれば、働くところが見つかって、そして払っていただけるのであるならばそれをちゃんと払ってくださいということでございます。

 委員の言われる観点は観点で必要でありますけれども、今回の猶予というのは、そういう観点から枠を広げさせていただくということでございますので、御理解いただければありがたいと思います。

中島委員 今大臣からありました利便性というのは大変重要な、それを引き出したくて何となく今質問したんですけれども。要するに、今、若い方、さっき、コンビニ納付ということも検討しておるということでしたが、インターネットでの納付も含めて、保険料を納めやすい工夫をどんどん進めるべきだというふうに思います。

 その上で、丁寧な納付奨励を推進して、それでも応じないケースに対して強制徴収、そこはまた課題ということなんですが。従来、やはり利便性の向上ということは大変重要な課題であると思います。

 しかし、これを進めていく上で大きな障害となっているのが、制度ごと、そして役所ごとに事業所情報が分断されている。関係機関との連携は結構ですが、現行の組織、人員を前提とするものでは必然的に限界があるのではないか。どのようにして効率的に徴収の実を上げようとしているのか、その体制整備について、お考えをお聞かせください。

樽見政府参考人 厚生年金の適用促進の業務でございますけれども、これまで、厚生労働省の中で雇用保険の適用事業所情報との突き合わせといったようなことをやってきているほか、地方運輸局、地方整備局などとの連携ということも行いまして、適用促進に取り組んできたところでございます。

 また、先ほどもお話が出ましたけれども、法人登記簿情報を入手して、去年の十一月から、御存じのとおり厚生年金の適用事業所情報との突き合わせということをやって、適用される可能性のある事業所の把握ということに努めているところでございます。

 また、今度は国税庁から稼働中の法人に関する情報の提供を受けるということで御相談しておりまして、年内ぐらいにいただきまして、その後、年度内を目途に厚生年金の適用事業所情報や法人登記簿情報との突き合わせをやりたいというふうに考えてございます。

 現在の体制のもとで、こうした形で関係機関との連携強化も行いながら、しっかりと年金の適用、年金保険料の徴収強化ということに努めてまいりたいと考えております。

中島委員 今、国税とかいう話がございましたが、それができていないわけですよね。

 厚生年金の徴収漏れについてはたびたび質問して、きょうその質問をするつもりはないんですが、あの件も、二年ぐらい前からそのことが指摘をされ、一昨年の末に法務省から登記簿情報が来て、その突合作業、そして今回は稼働法人に関してようやく国税庁から、来るか来ないかよくわかりませんけれども、来るんですね。これは大分前から言っていることなんですよ。その上で、新しいシステムをつくるためにはことしいっぱいかかってしまう。

 約二年近く、この問題は全容がわからないんですね。その間にも、新しく法人ができたり、また法人が消えたり、いつも動いてしまっている。その時点でどうだったかということは全くわからないわけです。

 そういった意味からいくと、資料一にも出しておりますが、これは我が党が今国会にも提出していきますが、歳入庁の設置ですね。二枚目、三枚目には、年金保険料の徴収体制強化等に関する、我々が歳入庁創設はどうですかと聞くと、必ずこの論点整理が出てくるわけです。もちろん、これは徴収体制強化に関する論点整理ですから、結論からいけば、「組織を統合して歳入庁を創設すれば納付率向上等の課題が解決するものではない」、最終結論ということになるわけですけれども。

 先ほど、くしくも大臣が、利便性の向上というのは大変重要だと。我々が歳入庁を言っているのは、例えば今回の法律案であれば、基礎年金という部分からいけば、ほかの保険料の納付率は九〇%以上になっていて、基礎年金だけ低い。当然、そういうことであれば歳入庁に徴収、納付率を上げるために歳入庁は直結しない問題だとは思います、御自身が払いに行ってもらうものですから。当然そういうことになるんですが、やはり利便性の向上というところは非常に大事な観点なんですね。

 そうした中で、先ほども利便性の向上は非常に重要な観点だということであったわけですが、厚生年金の徴収漏れ、先ほど言った他の関係機関との連携、そういったこと、今のままであれば結果的に、今回、納付の窓口、機会をふやすということは、当然事務処理、事務作業がふえていくわけです。そこには、人員は誰でも配置すればいいというものではなくて、その専門性も問われる。

 私、もちろん本法律案の改正は、現状を維持するという流れの中で、将来無年金を減らすという趣旨は理解できます。ですから、本則について一定の理解はあるわけですが、将来のビジョンとして、やはり歳入庁、先ほども言った、納付率だけではなくて利便性の向上であり、今問題になっている厚生年金の徴収漏れ対策についてもやはり将来的なビジョンとして描いていく必要が絶対あると我々の党は思うわけです。

 三党合意の修正前までは具体的な工程表までできていて、自公政権になってから一回の論点整理、しかも徴収体制に対する論点整理だけで、もう歳入庁は意味がないんだと。それはちょっと、余りにもどうかな。せめて、今後の将来像、ビジョンとして、前向きな検討をするとぜひ御答弁いただきたいと思います。

田村国務大臣 私の口から前向きというのはなかなか難しくて、これは財務省ともかかわる話でございますが、厚生年金の事業所の適用という意味からすれば、考え方は、歳入庁なのかそれとも情報を使うのかという意味ではまさに同じ発想であるわけでありまして、これは、御党等のいろいろな提案の中において、我々も、確かにそうだよねという中において、縦割りを排して、財務省の情報をいただいてやろうじゃないかということでございますから、これから劇的に進むと私は思います。

 まあサンプル調査をしてという御意見もありますが、やったところで、全部、軒並み回り続けて見つけていかなきゃいけないというやり方よりかは、ピンポイントで入っていって直せるわけでありますから、これはよほど効率的に網羅的にやれるであろうというふうに期待をいたしております。

 申請手続も一緒になるからいいじゃないかという意味からすれば、究極は、究極と言ったらそれは遠いのかと言われますが、そう遠くない将来、電子申請というものが進めば、もう窓口に行っていろいろなことをやらずに申請ができるということでございますから、今も電子申請を我々は進めておりますけれども、そういうところを進めることによって、申請手続等々は今よりも格段にやりやすくなるような、そういうこともやっていかなきゃならぬ。

 そういうビジョンは我々も持っておるわけでありますけれども、なかなか統合というものは、御承知のとおり、組織と組織が統合したときの、それこそいろいろな、銀行もそうでありますけれども、文化の違いなんかをどう融合させながら、そしてパフォーマンスを上げていくかというのは、やはり組織だけに同じ公務員といっても難しいところもあるのでありましょう。文化も違うでありましょう。そういういろいろなメリットとデメリット等々もあるんだと思います。

 そういうことをいろいろ勘案する中において、メリットだけうまくとれる方法はないのかということで、この検討会でいろいろ御議論をいただいた結果がそうであったのであろうということでございますので、大変申しわけないわけでありますけれども、私の口からそちらの方向を目指すとはなかなか言えないということは御理解をいただければありがたいというふうに思います。

中島委員 今御答弁いただきましたが、この論点整理も、どちらかというと役所側の都合ばかりなんですよ。

 さっきも言ったように、文化の違いだ、それぞれの専門性も違う、それはわかります、今までの長い歴史の中で。ただ、そこの整合性をとらなかったからまさにこういうふうになってしまっていて、これは私は何度も質問しているので大臣からも答弁をいただいているわけですが、例えば歳入庁は、納付率の向上には、上がらないけれども、今も、それぞれの文化が違うからなかなか難しいんだというふうにおっしゃいましたが、十一月六日の大臣の答弁は、専門性も違いますが、社会保険料を徴収するのと税の徴収の仕方、これも違います、あわせて、そんなものは何とかなるだろうと言われれば、それは気合いを入れて何とかなるかもしれませんとおっしゃっているわけです。

 要するに、ここの問題は、我々というか、行政の方の都合ではなくて、国民の皆さんにとっての利便性ですから、そういったものを飛び越えて、今後、しっかりとその整合性をとっていかないと、例えば厚生年金の問題からいけば、これは国民一人一人もそうですけれども、税金や保険料を支払うために幾つも窓口、申請があるわけです。それは、コンピューターを幾ら使っても、その窓口が一本化されなければ、例えば一つの事業所で、税務署、市町村役場、年金事務所のみならず、失業保険に関してはハローワーク、五カ所も六カ所も出向いて手続を行わなければならないわけです。

 そういった煩雑なものの中から、先ほども、今回の厚生年金の徴収漏れ対策も含めて、二年もかかるわけですよ。先ほど答弁をいただきましたが、利便性の向上のためには、国税の情報を共有しながら連携を図る、その姿がまさにこの歳入庁なのではないんでしょうか。

 先ほども言ったように、三党の合意の修正前までは、ここにもございますが、具体的な工程表まであるわけですよ。ぜひ前向きな答弁をしていただかなければ、先ほども言ったように、先ほどの答弁は全てこちら側の都合ですよ。国民の皆さんの利便性と言っておきながら、その利便性、それは今コンピューターシステムも出てきておるとは思いますが、窓口自体が一本化されなければ、そういう事務的なミス、恐らく、このままいくと、消えた年金の問題や厚生年金の徴収も、また同じようなことを繰り返すというふうに思います。

 大臣、どうでしょうか。

田村国務大臣 電子政府がもっと先を行って、利便性が上がると思います。電子申請も今、順次、我が省も申請できるような形に変えつつあります。そういう形の中で利便性というものはしっかりと上げていく。

 役所側の理屈だと言うんですけれども、要は、違う組織が一緒になってパフォーマンスが落ちれば当然受益者の方々へのサービスが落ちるわけなので、その意味からしてどうなんだろうという意見があるのは確かであります。

 それから、混乱時に際してはやはりサービスが落ちる。これは金融機関なんかもそうでありますし、いろいろなものが合併した当初は、いろいろなパフォーマンスが落ちていろいろな事故が起こる、こういうことは御承知のとおりであります。

 でありますから、そういうことも勘案して、多分、この検討会、私は入っていなかったですから議論はしておりませんが、答えになったのであろうと思います。

 精神はおっしゃるとおりでありまして、お互いに持っているいろいろな情報というものを、縦割りでなくて協力しながら使えるようにする、これは重要な観点でございますので、そういうことはこれからも不断に努力をしてまいりたいというふうに思っております。

中島委員 時間ですので終わりますが、残念ながら前向きな答弁をいただけませんので、今回、本則とはちょっと離れておりますけれども、やはり将来ビジョンとしてそのようなもの、一歩踏み込んでいただきたい。とにかく国民の皆さんにとっての利便性なくして、さまざまな年金のトラブルが今後も起きるのではないか、そのようなことも思いますので、残念ですが、本法律案には反対ということを述べさせていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 結いの党の井坂信彦です。

 本日は、主に年金保険料は義務なのかという問題について質問をさせていただきますが、その前に二つほど、それ以外の周辺の質問をさせていただきます。

 まず、付加保険料という制度について伺います。

 月々四百円の追加の保険料を払うことによって、将来、納めた月数掛ける二百円の年額保険料を追加できる付加保険料制度は、単純に計算をするだけでわかりますが、付加保険料だけの年金財政収支というのは大幅な赤字になっているのではないでしょうか。大臣にお伺いいたします。

田村国務大臣 言われますとおり、一月四百円納付をしますと、付加年金という形で、年間二百円という形で年金額がふえるという形であります。

 計算をするとそうなるのではないかという話なんですが、これは、昔と金額が変わっていないという意味からしますと、経済の成長や物価の成長等々を考えると、かなりウエートは低くなっておるということと、それから、これはいいのか悪いのかよくわかりませんが、言いづらいんですけれども、余り御利用いただいていないということがございまして、全体の年金の中で回しておるものでありますから、その中における財政上の影響というものは非常にちっちゃいということでございますので、そういう意味からいたしますと、影響はほぼないというふうに考えていいんだと思います。

井坂委員 これは、普通の国民年金保険料は、四十年間毎月納めると、一生で七百三十二万円、もちろん今の金額でということですが。それに対してもらえる月額年金が六万四千四百円になるということなので、これを百十四カ月もらうと、払った保険料ともらう年金が均衡する。

 こういう割合に対して、付加保険料は、四十年間納付すると十九万二千円、それに対して、月額の追加でもらえる金額が八千円ということで、二十四カ月、二年間もらえば元が取れてしまうということで、ちょっと信じられないぐらいの計算になっているわけであります。

 確かに、金額が微々たるもので、しかもよく知られていないので誰も入っていないから影響は軽微だというのはよくわかるんですが、私が申し上げたいのは、大昔のインフレ時代に有効だった制度かもしれませんが、今はほとんど意味のない制度だと思っておりますので、率直に言って廃止したらどうかと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 もともとの考え方は、基礎年金、国民年金というものは、要は二階部分がないわけでございますので、その二階部分を補完するという形でスタートさせていただきました。

 確かに、昔と比べると非常に全体に対する割合も低くなっておるわけでありますが、しかし、なかなかこういう制度自体を途中でやめるというのは、かなり国民的な御理解をいただかないと難しいわけでございます。財政的に影響が出てくるとなればいろいろと検討もしていかなければならぬわけでありますけれども、全体的に見れば財政的に影響はほとんどないような状況のボリュームであるということも含めて、そういう御意見をいただいておるということは認識させていただきたいと思いますけれども、今すぐこれをやめるというような考えはございません。

井坂委員 大変中途半端な制度になっていると思います。もし二階建てというのであれば、例えば月額四千円とか、本当に意味のある保険料を取って、意味のある年金を払うべきだと思いますし、こういうほとんど意味のない制度、しかも影響が軽微だと逆に大臣がおっしゃるような、本当は、みんなが使っていれば物すごい悪影響のある制度ですよ。そういうほとんど使われていない制度をただ漫然と継続することのコストも、よく考えていただきたいと思います。

 今回、またいろいろな制度がつけ加えられて、本当に複雑怪奇になって、周知徹底、広報、それから、これはこれで個別にちゃんと入りと出を個人個人で管理していくわけでありますから、本当にこういったコストをこのまま支払い続けるのか。やめるつもりはないとおっしゃいますけれども、そんな言い切っていいのか。答弁の修正をしていただけませんか。

田村国務大臣 メリットはあるんですね、委員が今言われたとおり。メリットというのは、これに入っていただいている方はそれなりにメリットがあるわけでありまして、そういうものをやめるということ自体がどうなのかというのはなかなか、やはり国民的な理解をいただく必要があると思います。ほかにも福祉的な給付、例の年金生活者支援給付金という制度が始まります。これは、年金所得の低い方を対象にした制度でございます。

 こういうものも含めて始まるという中において、年金全体の中で、いろいろな議論の中の一つであるというふうには認識いたしておりますが、今すぐやめるということではないわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。

井坂委員 時間がありますので、次に移ります。

 今回、受給資格期間、二十五年払わなければ受給できないと言っていたのを十年に短縮する。これは理解できるわけですが、その条件として、消費税一〇%増税が前提条件である、こことリンクしている、こういう話であります。

 この財政論的な関連は何なのか。なぜここがリンクしているのか。もっと言えば、消費税が一〇%に上がらなければ二十五年が十年にできないのか。このあたり、御説明いただきたいと思います。

田村国務大臣 これは、三党協議の中でいろいろと御議論をさせていただいた中において、受給資格期間の引き下げというものを議論の中で検討させていただいたわけであります。

 ちょうど、社会保障と税の一体改革の中において、消費税を上げる、その財源に年金も入ってきておるということの中において、この部分で必要経費が約三百億円でありますけれども、二・八兆円、一%分の充実分の中にこれを入れておるということでございまして、そのような関連性の中において、このような形にさせていただいておるということであります。

井坂委員 二十五年を十年に短縮することで、今、無年金者になってしまっている四十二万人のうち大体四割ぐらいが、十年以上は払っているということで、無年金じゃなくなる、そこの基礎年金部分を払う必要が出てくる、その財源が三百億円ということで理解をしております。

 確かに、そこに追加で三百億円かかるんですが、ところが、おととい私が議論させていただいたように、一方で、無年金者は将来、相当な確率で生活保護受給者になるわけですね。結局、では無年金のままだったら、そっちでその三百億円は現にかかっていて、年金ありになったら、生活保護がかからなくなる分、年金の方では三百億円必要だ、だからこっちには財源が必要だと。これは非常に片一方しか見ていない、要は福祉、社会保障全体を全く見ていない議論ではないかと思うんですが、なぜここだけ三百億円の財源をきっちり確保しなければいけないのか。

 一方で、二十五年から十年への短縮、私はいいと思うんですけれども、ところが、生活保護費は、推計は難しいかもしれませんが、明らかに浮くわけですよ、無年金者が無年金者じゃなくなるわけですから。そこに対して、そっちの浮く方のお金はなぜ一ミリも考慮されないのか、お伺いをしたいと思います。

田村国務大臣 生活保護者の方々を減らしていくということが重要であって、そのためには、自立いただけるような環境をつくるということが一つだと思います。

 その中において無年金者を減らすという意味で、受給資格期間を引き下げることによって年金収入を得ていただいて、生活保護から脱却いただくということもあるのかもわかりません。それだけではなくて、生活保護の方々、多分この場合は高齢者の生活保護になるんだと思いますけれども、そういう方々に生活保護から何とか自立に向かって頑張っていただくという意味からしますと、やはり一つは、生涯現役社会の中において、働ける環境という形をつくって、六十五歳になってもお元気な方々に関しては、仕事をやっていただいて、働いていただいて自立いただくということの環境整備を我々はやっていかなきゃならぬわけであります。ですから、イコールではないということ。

 それから、今はもちろん確率はある程度高いとはいえども、これから環境を変えることによって、そうじゃない、みずからが選んで、働いてしっかりと頑張っていただくというような社会もつくっていかなきゃならぬという意味からすれば、将来に向かっては、今と同じか、それを脱却するような環境をつくる、これも大事なんだと思います。

 今般、これに関して申し上げれば、もし同じようなことが起こったとすれば、それは、今のまま生活保護の方々が無年金者イコール、今でもイコールではありませんけれども、仮にイコールだと仮定をするならば、それは、一方でその分だけ赤字国債なりが減るという形になるわけであります。理屈はそうでありますけれども、そういう状況を目指しておるわけではありません。

 とにかく、年金制度は年金制度として、保険料を払っていただいている部分を、ある程度は期間を短くしてでも、もらえるだけの権利が本来ありますから、それではもらっていただこうという今回の案と、生活保護の方はそれとは別に、しっかり自立いただけるような環境をつくるという考え方と、この二つはそれぞれ両立しながら進めてまいりたい、このように考えております。

井坂委員 話せば長くなるんですが、年金制度と生活保護制度をそうやって相変わらず分けて考えておられる時点で、私は全然だめだなというふうに思っております。

 だって、無年金あるいは低年金問題が、結局、将来のそういう年金の枠外の福祉制度である生活保護制度で多大な出費が出ているということをセットで考えていかないと、年金は年金で財源が要るんだ、一方で、生活保護の減る分は全然財政的に考慮しないんだということであれば、これからどんな制度変更をするに当たっても、また独自財源が必要だという話になってきて、大変難しいことになるというふうに私は思っております。

 本筋に入りたいんですが、保険料の納付は義務であるということでありますが、ところが、実際、それほど厳しく取り立てられてはおりません。年金保険料の強制徴収コストというのは、百円強制徴収するのに九十円のコストがかかるということでありますから、強制徴収を幾らやっても、年金財政はほとんどプラスにならないということであります。

 一問飛ばしますが、一方で、国税庁へ滞納処分権限を委任できる仕組みがありますけれども、実際、これはほとんど使われておりません。厚生年金でわずか四件、国民年金はまだ一件もないというふうに認識をしておりますが、これはなぜでしょうか。ルール自体は私は承知をしておりますが、なぜそういうルールでやっているのか。お願いします。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁への滞納処分権限の委任制度は、悪質かつ徴収が困難な年金保険料の滞納者からの徴収を強化するということで設けられているところでございます。委任件数でございますけれども、現時点では、厚生年金保険が七件、国民年金はゼロ件というふうになってございます。

 国税庁への委任の検討に際して、並行して、滞納者に対して納付を促す、あるいは財産調査を進めるということに取り組むことにしておりまして、国税庁への委任ということも考慮した納付督励をしていく中で、自主的な納付に結びつくといったようなケースもございますので、そういうことで、委任制度の実質的な効果というものも出てきているところがあるというふうに考えてございます。

 今後とも、国税庁との連携強化に取り組んで、この委任制度はさらに活用を図ってまいりたいというふうに考えております。

井坂委員 年金の徴収コストは、税の徴収コストより非常に高いわけであります。だからこそさっきの歳入庁という話が出てきて、やはり徴収も同じところが一本化してやることで徴収コストそのものも大幅に下がるだろう、こういう見通しで、それも一つの大きな歳入庁の利点として捉えているわけであります。首をそこまでかしげられると議論したいわけでありますが、ちょっと時間がないので、またの機会にしたいと思います。

 ですから、強制徴収が、年金側もコストが高いからできないということ、一方で、国税の方に委託もできるわけだけれども、いろいろ理由はおっしゃるけれども、ほとんど委託をしない、特に国民年金に関してはゼロ件だ、こういう状況であります。

 大臣に伺います。そもそも論で伺いますが、保険料を税と同じ厳しさで徴収をすると、どのような問題が生じるんでしょうか。

田村国務大臣 議論したくなるという話でございましたけれども、いろいろな問題があると思うんですが、やはり国民年金の場合、一番の問題は、少額債権、債務であるということだと思います。

 そういう意味からいたしますと、当然、徴収コストはその分だけ高くなってしまう。同じ人員で行って取れるものが多ければコストはよくなるわけでありますけれども、同じ人員で行って少額でありますから、どうしてもコストが高くなる、そういう傾向はあると思います。

 もっと強制徴収をすればいいではないかという御意見であります。この点は、やはり一つは人員的な問題もございますし、それから費用対効果という問題もあるんだというふうに思います。

 今般、強制徴収というもの、四百万以上の所得のある方々で十三カ月以上に関してはしっかりやっていくというのは、それだけあればしっかり取れるであろうと。つまり、行っても取れない方々もおられるわけであります。そういう方々に関してはどうするかというと、もちろん今、納付特例の段階で市場化テストをやって、そういう方々に対しては、ちゃんと免除の方につなげていくということをやっておるわけでございまして、そういう方々に対しての免除等々に関するいろいろな対応というものも含めてやっておるわけでございます。

 そういう意味からいたしますと、全てが全て強制徴収をやれというと、数も多い、金額も少ない、それに対してなかなか人員的に十分に確保できない、コストもなかなか高いという種々の問題がございます。

 それともう一つは、委員も以前言われていましたけれども、払わないともらえないというところがあるわけでありまして、そこは、税のように払わなくても受益をメリットできるというところとは若干違う性格の部分もあろうというふうに思います。

井坂委員 もらえる金額が少ないからという話であるから、だから、国税と一緒に徴収をすればそういった問題も解決できるのではないかというふうに思うわけですよ。別に、どっちかだけ滞納しているとか、あるいは両方滞納している方もいっぱいおられるわけでありますし、コストの問題、それから回収額が要は単価が少ないという問題は、これは統合するという議論にそのまま直結する話だというふうに私は思っておりますのが一つ。

 それからあと、後から払った分しかもらえないので、では払わなくていいのか、こういう話なんですよ。だから、私はここが本当にわからなくて、義務なんですか、払わなければいけないんじゃないんですかということなんですよ。払わなきゃもらえないんだから、自己責任で払わなくてもいいというものなんですか、さっきの御答弁だと。

田村国務大臣 義務があります。ただ、自主納付というものは言うなれば申告納税みたいなものでありまして、それをしなければどうなるかというと、脱税になるわけでありますけれども、所得が非常に低くて把握できない人たちがそのような形でもし申告納税されていなければ、もちろん課税されるかどうかわかりませんけれども、漏れている人たちが全くいないわけではないと思います。

 ただ、年金の場合は、はっきり言いまして、自主納付をしなければもらえないということが明確に出てくるわけでございますので、そこが違う部分だと思います。納税の方は、しなかったらしなかったで済んでいく。済んでいくという言い方はよくないので、本当はそれも細かく見つけて対応しなきゃいけないんでしょうけれども、それは多分全て対応できていないのだろうと思います、我が省がこんなことを言う必要はないんだと思うんですが。それに対して年金の場合は必ず結果が出て、自分自身が受益を受けられない、税の方は受益が受けられる、そこに大きな違いはあるんだと思います。

 いずれにしましても、税に関しましても年金に関しましても、義務でありますので、我々としては、しっかりと年金に加入していただくように、また納付をいただけるように、これからもさらに努力をしてまいりたいと考えております。

井坂委員 やはり微妙に答弁をずらしておられると思うんですけれども、別に、保険料を払わなかったらその分年金ももらえないから、損するからいいだろうではなくて、義務なら、逆に、やはり集めるこちら側の義務もあると思うんですね。ところが、そこの話は微妙にすり抜けて、払わなかったら損するんだから払うだろうということで、税ほど厳しい強制徴収をしない。

 ところが、その結果、払わない人が今物すごく多いわけですね。払えるのに払わない人も物すごく多い。今般、四百万以上はやると言っていますけれども、別に四百万以上の話だけじゃなくて、要は、猶予や免除の対象にならない人は少なくとも全員強制徴収しなければいけないのではないですか、制度上、義務とおっしゃるなら。

田村国務大臣 税の方はかなりしっかりやっておられるんだと思います。ただ、先ほど言ったように、個人でいろいろなところで所得をもらってきて、それを自主的に申告納税しなければ漏れてしまう可能性はある。同じように、こちらも漏れてしまう。

 というのは、厚生年金ならば投網をかけられますから取れるんですね。ところが、国民年金の場合、それぞれがそれぞれの働き方をされておられるわけであります。特に、いろいろとパート等々で働いておられたりする場合には、そこで源泉徴収をやられる場合はいいんですけれども、年金の場合、それをやられていませんから、そうすると、要するに漏れてしまう可能性があるわけですね。そういう方々は、自分で年金を払わなければならないわけであります。

 そうすると、これは自主納付でありますから、来ないことにはこちらは全てを把握できない。それは、膨大な数の職員を雇って、コストを気にせずに毎日一軒ずつ回って全部シラミ潰しにしていけば、そこで漏れている人たちも網にかかってくるかもわかりませんが、なかなかそういうことはできない中において、限られた人員でどうやって合理的にやるかという意味で、今のようなことをしながら、市場化テストもしてやっておるんです。それでも今漏れる方々が出てくるので、被用者年金の適用拡大ということも、先般法律を通させていただいたわけであります。

 これの拡大はこれから議論をしていかなきゃなりません。これが拡大していけばある程度、本来は、いろいろなところにお勤めになられているけれども、いろいろな理由があって年金に加入されていない、国民年金だという方々は、そちらの厚生年金の方でカバーができていく。

 だから、とにかく、何もしなかったら把握できないわけでございますので、把握できるようないろいろな努力もこれから続けてまいりたい、このように考えております。

井坂委員 申告納税と一緒で自主的なので、こちらから出向かなければ把握ができない。国税の方は、本当に出向いて把握して強制徴収をいろいろやっているわけですね。ところが、年金の方は、人手が足りなくてそれがなかなかできないという話であるから、先ほどの歳入庁の話であったり、徴収の部分は国税と一緒にやったらどうですか、こういう話になるわけであります。

 ちょっと、追加でお伺いをいたします。

 そもそも、国税が怖いから税金はちゃんと払っているけれども、国民年金保険料は払っていない、こういう保険料納付義務者は今何人いますでしょうか。

樽見政府参考人 まず、国民年金保険料の未納者ということで、私ども、二十四カ月分の保険料を納めていない方は二百九十六万人という数字をよく申し上げております。

 この中で、国民年金の方は、免除になる方というのは納付にはかかってこない、税の方も、非課税という基準に当たる人についてはかかってこないということになりますので、そういう方を除いた残りがどうなるかということのお尋ねになるというふうに理解いたしますが、結論を申し上げますと、実は、未納者の方々の納税状況についての情報を持っておりませんので、私どもの方として、税を納めているが年金保険料を滞納されている方の人数については把握をしてございません。

井坂委員 こういったところも、情報の統合が必要な部分だというふうに思っております。

 国税並みの強制徴収という厳しい話をいたしました。義務であるから当然だというふうに思っておりますが、ただ、ここまでだと、大変冷たい話になってしまいます。なぜかといえば、日本の国民年金保険料は、著しい逆進性があるからであります。

 日本の国民年金保険料の著しい逆進性、要は、どんなに所得が低い人でもみんな同じ保険料を払わなければいけないですから、生活費や可処分所得に占める保険料の割合が物すごく大きくなってしまう。事実上、払えない人はたくさんいると思います。

 この問題について、大臣は、改善の余地や改善の必要性は全くないというふうにお考えでしょうか。

田村国務大臣 国民皆年金という、世界でも、全ての人を対象にできる年金、ほかに全くないとは言いませんけれども、すばらしい年金なんだと思います。その一番のもとは、所得捕捉がなかなかできない中において一定水準の年金を守るということになれば、定額で保険料を払っていただくということであれば、所得を捕捉できていなくても、特に自営業の方々なんかはなかなか難しいと昔から言われています、公平な年金制度がつくれるであろうという観点があるわけであります。

 とはいいながら、やはり所得が少なければ満額払えないという方々もおられますから、多段階で減免制度、免除制度等々を置いておるわけでございます。もちろん給付が全て保障されていないわけでありますけれども、そういう中において、保険料等々を負担しづらい方々に対しては対応させていただく、こういう制度になっておるわけであります。

井坂委員 いろいろ議論してまいりましたが、保険料は義務だといいながら、やはり国税並みの厳しい徴収はしないわけであります。強制徴収がないから払わないままの人が現状多過ぎて、それがゆえに、学生さんはいいですよとか、免除の制度をやりますよとか、あるいは三十歳まで猶予します、今回は五十歳まで猶予しますと。私から見れば、本当になし崩し的に、払わなかった人を、では払わないでいい人にカテゴリーを分けましょう、こういう動きにも見えるわけですね。いわゆる分母減らしということであります。

 これで見かけ上の納付率が下がらないかと思いきや、それでもやはり下がり続けて、今現在も将来の低年金者が大量に生み出されているというふうに私は認識をしています。

 おととい申し上げましたけれども、無年金者あるいは低年金者というのは、老後、多くが生活保護にやはり頼らざるを得なくなります。六十五歳以上の生活保護受給者の実に八四%が無年金・低年金者であるという現実があります。

 結局、どうなっているかというと、払わなくても厳しく徴収をされませんし、しかも、払わなくても将来は生活保護で年金を満額払った人と同等以上の生活費のようなお金が支給されるとなれば、年金保険料を真面目に払うのがばからしいという人の気持ち、私は一定わかるわけであります。

 私、本筋は、やはり義務なのだから強制徴収をきちんとする。その大前提として、低所得者にはやはり払える金額を設定し直す。免除の仕組みもいいですよ。ただ、そういう仕組みも含めて、低所得者には逆進性の問題をきちんと解消する。さらに、強制徴収コストが高いなら、国税との事務の統合であるとか、あるいは究極的には歳入庁、こういったことが納付率を上げる王道ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

田村国務大臣 いろいろな不断の努力はしていかなければならないんだというふうに思いますが、保険料を納めないけれども一定程度の年金を保障するというような話になってくると年金制度の根幹が変わってくるわけでありますし、あわせて、その財源をどうするんだというところに最後はなってくるわけでありまして、民主党のときの最低保障年金のときにもそういう御議論があって、消費税何%分が必要じゃないかというようなことがテレビなんかでもいろいろと言われたわけであります。

 なかなかそういうようなところがクリアできないところで難しいところはありますが、おっしゃられるとおり、いろいろな課題がありますから、そういう課題は常に我々念頭に置きながら、年金を充実させていかなきゃならない、このように思っております。

井坂委員 保険料の納付率が低い問題の根底は、やはり制度への不信感があると思います。一つは、今申し上げた、同じ所得なのに保険料を払う人と払わない人がいる、また払わなくたって老後に同等見合いの生活保護がある、この問題と、それからマクロ経済スライドや改革のおくれ、また賦課方式という根本的な問題で、若い世代ほど損をする仕組みがあるということ、あと消えた年金問題、このあたり、しっかり信頼回復をしていただきたいということを申し上げて、終わりにいたします。

後藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

後藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 お諮りいたします。

 第百八十三回国会、江田康幸君外二名提出、アレルギー疾患対策基本法案、第百八十三回国会、御法川信英君外四名提出、国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案及び第百八十五回国会、泉健太君外十名提出、過労死等防止基本法案の各案につきまして、それぞれ提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

後藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

後藤委員長 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 まず、アレルギー疾患対策基本法案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、とかしきなおみ君外五名から、自由民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党、結いの党及び日本共産党の六派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおり、アレルギー疾患対策基本法案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。古屋範子君。

古屋(範)委員 アレルギー疾患対策基本法案の起草案につきまして、自由民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党、結いの党及び日本共産党を代表して、その提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。

 現在、我が国では、国民の約二人に一人が何らかのアレルギー疾患に罹患しております。アレルギー疾患は、全年齢層にわたるいわば国民病であり、国を挙げた対策が求められています。

 このようなアレルギー疾患の中には、急激な症状の悪化を繰り返したり、重症化により死に至ったりするものがあり、職場、学校等のあらゆる場面で日常生活に多大な影響を及ぼしております。地域によっては、適切な医療を受けられる体制の整備が進んでおらず、情報が少ないために、適切な医療機関を選択できず、間違った民間療法で症状が悪化する場合も少なくありません。

 住んでいる地域にかかわらず、適切なアレルギー疾患医療が受けられ、職場、学校等のあらゆる場面で生活の質を高める支援が受けられる総合的なアレルギー疾患対策は喫緊の課題となっております。アレルギー疾患対策については、アレルギー疾患医療、治療法や薬の研究開発、食品に関する表示、学校におけるアレルギー疾患を有する児童への対応、森林の適正な整備、大気汚染の防止など関連する分野は多岐にわたり、省庁横断的に施策を早急に講ずる必要があります。

 このような状況に鑑み、アレルギー疾患対策を総合的に推進するため、この起草案を提案した次第であります。

 以下、主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、アレルギー疾患対策は、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に資するため、アレルギー疾患対策に関する施策の総合的な実施により生活環境の改善を図ること等を基本理念として行われなければならないこととしております。

 第二に、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師その他の医療関係者及び学校等の設置者または管理者の責務を明らかにすることとしております。

 第三に、厚生労働大臣は、アレルギー疾患対策の総合的な推進を図るため、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針を策定しなければならないこととしております。また、都道府県は、当該都道府県におけるアレルギー疾患対策の推進に関する計画を策定することができることとしております。

 第四に、国は、アレルギー疾患対策として、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減、アレルギー疾患医療の均てん化の促進等、アレルギー疾患患者の生活の質の維持向上並びに研究の推進等の基本的施策を講ずるものとすることとしております。また、地方公共団体は、国の施策と相まって、当該地域の実情に応じ、研究の推進等を除く基本的施策を講ずるように努めなければならないこととしております。

 第五に、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針の策定または変更に当たって意見を述べる機関として、厚生労働省にアレルギー疾患対策推進協議会を置くこととしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 アレルギー疾患対策基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

後藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております起草案をアレルギー疾患対策基本法案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

後藤委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

後藤委員長 次に、国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、とかしきなおみ君外四名から、自由民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党及び結いの党の五派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおり、国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。上野ひろし君。

上野委員 国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案の起草案につきまして、自由民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党及び結いの党を代表して、その提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。

 近年、医学、工学等の技術の進展に伴い、より高度な医療機器が開発されてきており、国民の生命及び健康の維持増進を図る観点から、有効で安全な医療機器を国民に迅速に提供することが期待されております。しかしながら、例えば、アメリカでは使用が認められている医療機器が、我が国で使用できるようになるまでの期間、いわゆるデバイスラグは直近で二十三カ月となっており、その解消は喫緊の課題であります。

 また、医療機器産業は、日本の高度な製造技術等を活用し、今後、さらなる成長、発展が見込める分野であり、我が国経済の活性化を図るためにも、国際競争力を有する付加価値の高い医療機器の開発を促進するための施策の整備を行う必要があります。

 本案は、このような状況に鑑み、有効で安全な医療機器の迅速な実用化等により国民が受ける医療の質の向上を図るため、医療機器の研究開発及び普及の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、医療機器について、医療の水準が我が国と同等である外国において実用化される時期におくれることなく、我が国において実用化されるようにすること等の基本理念を定めることとしております。

 第二に、政府は、医療機器の研究開発及び普及の促進に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上または税制上の措置等を講じなければならないこととしております。

 第三に、政府は、医療機器の研究開発及び普及の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画を策定し、基本計画に定められた施策の目標の達成状況を調査し、その結果を公表しなければならないこととしております。

 第四に、国は、医療機器に関する規制の見直しを行うものとするとともに、医療機器の製造販売の承認等の迅速化のための体制の充実等、医療機器の種類の多様化に応じた品質等の確保、医療機器の適正な使用に関する情報提供体制の充実等、先進的な医療機器の研究開発の促進、医療機器の輸出等の促進に関し、必要な施策等を講ずるものとすることとしております。

 第五に、国は、基本計画に定められた目標の達成等を図るため、関係行政機関の職員、医療機器の製造、販売等を行う事業者、医療機器に関する試験または研究の業務を行う者、医師その他の医療関係者等による協議の場を設ける等、関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとすることとしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

後藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております起草案を国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

後藤委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

後藤委員長 引き続き、厚生労働関係の基本施策に関する件、特に過労死等防止対策の推進について調査を進めます。

 本日は、参考人として全国過労死を考える家族の会代表世話人寺西笑子君に御出席をいただいております。

 寺西参考人には、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。それではお願いいたします。

寺西参考人 全国過労死を考える家族の会代表世話人の寺西笑子でございます。

 このたびは、衆議院厚生労働委員会採決に当たり、意見陳述の機会を与えてくださったことに、後藤茂之委員長を初め厚生労働委員会の皆様に、厚く御礼申し上げます。

 私たちは、愛する家族をある日突然に、長時間過重労働やパワーハラスメントで命を奪われました。夫や妻、娘や息子など、かけがえのない大切な家族を失った遺族が悲しみを乗り越え、励まし合って支え合う家族の会をつくろうと声を上げて、一九八九年十一月に、過労死を考える家族の会が誕生しました。以来、毎年十一月に、国へ過労死防止対策を求めて要請行動を行い、過労死のない社会を願って活動してまいりました。

 私ごとですが、夫は、一九九六年二月に過労自死しました。飲食店の店長だった夫は、平成不況のあおりを受け、会社が生き残るために、サポート体制がない中、達成困難なノルマを課せられ、年間総労働時間四千時間にも及ぶ長時間過重労働を強いられました。真面目で責任感の強い夫は、身を粉にして必死の努力を重ねたことで、業績は回復したものの、会社が命令した右肩上がりのノルマには達しなかったため、連日パワーハラスメントを受けたあげく人格否定され、意に沿わない異動を言い渡されたことで身も心も疲労こんぱいして、うつ病を発症し、投身自殺を図りました。

 過労自死に追い込んだ社長は、土下座して泣いて謝りましたが、数日たてば手のひら返したような態度になり、職場に箝口令がしかれました。会社はひどいところと言っていた同僚や部下までが本当のことを言ってくれなくなって、実態解明は困難をきわめました。

 無我夢中の長い裁判の中で過酷な労働実態は明らかになり、名誉回復することはできましたが、夫は二度と生き返ってくることはなく、命を救えなかった悔しさが胸に刻み込まれ、どうすれば死なずに済んだのかを考えていくことが私の生きていくテーマになり、家族の会で活動しております。

 過労死は今もなおふえ続けており、相談者は絶えることはありません。近年、入社数カ月でうつ病になり息子さんが自死された親御さんや、幼い子供を抱えた妻が、悲壮な状態で相談に来られます。

 懸命に育てた息子や娘を亡くした親は、親自身の人生までもが奪われ、乳飲み子を抱えた妻は、あすからの生きていくすべさえ奪われるのです。ましてや、これからという人生を奪われた本人の無念はいかばかりでしょうか。

 労災申請するにはこうした高い壁が立ちはだかり、申請しても、遺族が立証するには限界があるため、泣き寝入りする遺族がほとんどで、認定される遺族は氷山の一角であります。

 職場は違っていても、その背景には、真面目で責任感が強い優秀な人が、長時間、過重労働で心身の健康を損ない、過労に陥り、命を奪われている実態があります。

 これからの日本社会を背負っていく若者が過酷な労働環境に追いやられ、優秀な人材を亡くすことは、日本の未来をなくすことであります。

 私たちは、繰り返される過労死をなくしたいという切実な思いから、過労死をなくすための対策を国にお願いしたいと切望するようになりました。

 この国の過労死をなくす法案を衆議院厚生労働委員会全会一致で本会議に送っていただきますよう、心からお願い申し上げます。

 この日本に初めて過労死という文言の入った法律をつくり、国を挙げて過労死を防ぐ対策を進めてくださるよう、切にお願い申し上げます。

 また、私たちの願いを受けとめてくださった、馳浩議員連盟世話人代表初め泉健太事務局長、及び超党派議員連盟の先生方に、大変お世話になりましたことを、心より感謝申し上げます。

 四半世紀続いた過労死をなくし、あすにでも過労死するかもしれない命を一人でも多く救うために、過労死防止月間をことし十一月から実施できますように、来年度よりはさらに本格的な施行ができますように、この法案を今国会で必ず成立させていただきたいと切に願っております。

 過労死防止法を、私たちも努力していく所存です。

 本日は、全国の私たちの過労死を考える家族の会の仲間が傍聴に来てくれました。皆様からもぜひお願いをしてください。

 本日は、このような機会、まことにありがとうございました。よろしくお願い申し上げます。(拍手)

後藤委員長 以上で寺西参考人の御意見の開陳は終わりました。

     ――――◇―――――

後藤委員長 過労死等防止対策推進法案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において起草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族または家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等に関する調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、この法律は、過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とすること。

 第二に、基本理念として、過労死等の防止のための対策は、過労死等に関する調査研究により実態を明らかにし、その成果を過労死等の効果的な防止の取り組みに生かすとともに、過労死等の防止の重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めること等により行われなければならないこと等を定めること。

 第三に、基本理念にのっとり、過労死等の防止のための対策を効果的に推進する国の責務等について定めること。また、広く過労死等の防止の重要性について自覚を促し、関心と理解を深めるため、過労死等防止啓発月間を設けること。

 第四に、政府は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するため、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定め、公表しなければならないこと。また、厚生労働大臣は、関係行政機関の長と協議するとともに、過労死等防止対策推進協議会の意見を聞いて大綱の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないこと。

 第五に、国は、過労死等に関する調査研究等を行うものとするとともに、国及び地方公共団体は、過労死等の防止の重要性についての啓発、相談体制の整備等及び民間団体の活動への支援を行うものとすること。

 第六に、厚生労働省に、大綱の案の作成に際して意見を聞くため過労死等防止対策推進協議会を設置すること。

 第七に、政府は、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上または財政上の措置等を講ずるものとすること。

 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 過労死等防止対策推進法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

後藤委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております起草案を過労死等防止対策推進法案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

後藤委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 寺西参考人、ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。

 お諮りいたします。

 ただいま決定いたしました各法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

後藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

後藤委員長 午前に引き続き、内閣提出、政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 質疑を続行いたします。足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 私、一昨日に若干予告めいたことを申し上げていたマイナンバーとかは一旦延期をしまして、おとついは、自民党の山下さんが財政検証の話をされました。伺っていて、ああ、そうだ、これをしなくちゃいけないということで、急遽テーマを変更しまして、きょうは、財政検証の話を中心に討論させていただきたいと思います。

 若干時間を長目にいただいていますが、冒頭、これは通告していませんので、私の方から一方的、あるいは、もし若干お答えいただけるようであればお願いをしたいわけですが、七十五歳選択制の話が大分議論になりました。また民主党さんはおられませんが、この前の採決が採決でしたので、結構ですが。

 大臣が民主党の質問者に対して一定の資料を出すよということをおっしゃられた点について、私は、若干懸念を持っていまして、余り中途半端なものは出さない方がいい、こう思います。

 例えば、例の歳入庁の関係で、みんなの党の枠組み、いろいろ出したのに対して、それはみんなの党の前提にのっとった数字なんだという議論がありますね。ところが、やはり数字というのはひとり歩きをする。私もいずれ政権与党の仲間入りをさせていただきたいと勝手に希望していますので、今、自公政権で余り変な数字を出されるとやりにくい、こういうところであります。

 なぜそういうことを言うかというと、大臣、私が申し上げるまでもないですが、七十歳選択制の前提をそのまま延ばして七十五歳選択制について数字を出すことに何か意味がありますか。

田村国務大臣 今何も、これから制度設計も含めて検討して、しかも採用するかどうかもわからないという状況の中で、委員がおっしゃられるとおり、何か意味があるのかと言われれば、余り意味がないということになるんだと思います。

足立委員 まさにこの七十五歳定年制については、自民党さんのJ―ファイルにあったということですが、私も余り精査はしていませんが、大事なテーマの一つだと思っているし、場合によっては、かねがね私ども、クローバック、クローバック、こう言ってきたわけですね。結局、比較的所得あるいは資産があられる方については、年金受給権をある程度、クローバックですから、特に税の部分を戻すというか払い戻すというか、そういう議論について、諸外国、カナダ方式とか、いろいろな形で議論されているわけです。

 私は、この七十五歳定年制を大臣あるいは自民党さんがどういう枠組みでおっしゃっているか、ちょっと勉強不足でありますが、先ほど例えば民主党さんから損になるのか得になるのかという議論がありましたが、別に損になるケースがあってもいいと私は思いますが、大臣はどうですか。

田村国務大臣 七十五歳定年制ではないので、七十五歳選択制でございます。(足立委員「はい、選択制です」と呼ぶ)

 いろいろなパターンがあります。あえてここで私がまた何か言うと、またそれをもってして要らぬ誤解を招きますので。いろいろなパターンがそれは考えられるんだというふうに思います。

足立委員 民主党さんがいろいろ質問されるものだから慎重になられて、出てくるものも出てこなくなってしまうわけですが。

 要すれば、選択制ですから、釈迦に説法ですけれども、ある種の選択だから、その選択が、選択される方がそれでいいんだと思えばそれでいいわけでありまして、だから、制度全体として何か中央値があって、その中央値が、六十五歳からもらうケースと七十五歳からもらうケースを前提を置いて比較して、それが下回っていたら問題だとか、そういうことではなくて、選択される方の人生設計というか、その方の人生において、あるいはその方の働き方においてそれがいいんだということであれば全然問題ない。問題ないということはいいですね。

田村国務大臣 設計がどうなるかはわかりません。これから検討でありまして、やること自体まだわからないわけでありますが、選択でございますので、そういうものを見て、選択というのは、自分が選ぶか選ばないかということをお決めいただければいいのであるということであります。

足立委員 すると、大臣は大臣だから、余り自民党のことは答えられないと思うんですけれども、自民党のJ―ファイルにある選択制というのは、いわゆる財政中立というものなのか、大臣がおっしゃったように、選択する人がいなくても困るけれども、一定の財政改善効果を狙ったものだったかどうか、御存じであれば。自民党のJ―ファイルが言っている七十五歳選択制、選択肢を与えるということは、年金財政的には中立な提言を自民党としてしていたのか、年金財政の改善を含めた提案なのか、どっちか御存じでしょうか。

田村国務大臣 J―ファイルは正確には「高齢者の方々の働く力や意欲を生かせるように、働き方等人生設計に合わせて年金の受給時期や受給額を弾力的に選択できるよう、」こう書いてあるわけで、具体的にそれ以上は書いてありません。

 さらに具体的なのは、今般、鴨下一郎先生が議員連盟を立ち上げられた。その中では、もう少し具体的な御提案をこの間いただきました。その中にも七十五とは書いていないんですね。

 だから、私もテレビ出演のときに、例えばという話の中の例示で出させていただいた七十五歳でございますので、いろいろな選択するための幅があるんだと思いますが、損する、得するということは念頭に置いていないとは言いませんけれども、そこまで厳密に定義をつけてこのJ―ファイルを書いたわけではないと思います。

足立委員 私の勝手な私見を申し上げておくと、本当に私見で、党で調整したものではありませんが、年金財政を改善する効果が一定程度あるようなものがやはり望ましいと私は思います。その上で、しかし、選択される個々人においては一定の選択が行われ、その方にとっては効用が高まるという方式がもしあれば、それはすばらしいと思います。

 いずれにせよ、さっきおっしゃった、七十歳選択制の前提をそのまま延ばして七十五歳選択制について何か政府として数字を出すことについてはやはり注意して、私が申し上げることじゃありませんが、ちょっと丁寧にやっていただかないと、また議論が、余り生産的な議論にならない。むしろ、場合によっては制度の設計の選択肢の幅でいろいろ議論が深まるような、あるいは議論の前提がわかるような、議論に資するようなデータの開陳をぜひお願いしたい、こう申し上げておきたいと思います。

 通告の内容に入りますが、財政検証であります。

 民主党さんはまだ結果が出ていない、結果が出ていないとおっしゃっていますが、いろいろな財政検証の枠組み、フレームは大分出てきているわけでありますので、十分議論には耐え得る中身が出てきています。

 私、きょうその幾つかを取り上げて質問させていただくわけでありますが、二〇〇九年の財政検証の際に、マスコミからいろいろ批判をされました。国会においてどういう議論があったか全部フォローできていませんが、ありました。運用利回りを当時四・一と出したことについて、それは高過ぎるんじゃないかという批判がありました。

 今回は、当時の批判を受けて、特にその批判に対応した形での何か対応、批判に対応した措置というか、そういうことが行われているようには見えませんが、そういうことでよろしいでしょうか。

田村国務大臣 おっしゃられますとおり、四・一%という目標運用利回りが高過ぎる、過去数年を見てそんなに運用利回りは出ていないではないか、こういうお話でありました。

 年金の財政計算上重要なものは何かというと、それは、名目運用利回り引くことの名目賃金上昇率、つまり実質運用利回りが大事であります。なぜかといいますと、名目賃金が上がれば、名目が上がりますから将来給付はやはり上がるので、将来の給付と足元の名目賃金というものは、完全にパラレルとは言いませんけれども、連動して動くわけであります。でありますから、財政の変動を考えた場合には、今申し上げました名目運用利回り引くことの名目賃金上昇率、この間、スプレッドを指標にするというのが重要であるということでございまして、今般は、この実質運用利回りというものをお示しさせていただいて、これを目標に据えていくということでございます。

足立委員 いわゆる年金実務のお話も大分絡んできますので、局長でも大臣でも結構ですが、今大臣がおっしゃった、〇九年の財政検証の際の四・一の内訳であります。これは、いわゆる賃金上昇率を、当時はどう見積もり、今回はどう見積もっているか、ちょっと御紹介いただけますか。

香取政府参考人 答弁申し上げます。

 前回の財政検証では、実は三とおり、成長ケース、中位ケース、成長の低いケースをお示しして、通常言われているのはその真ん中のケースで議論しておりまして、そのときは、名目賃金上昇率が二・五%、名目運用利回りが四・一ということになりますので、今の御議論でいえば、名目賃金上昇率を上回る利回り部分というのは一・六ということになるわけでございます。

 今回は、三月の末に財政検証の前提となるさまざまな諸経済の数字につきましてこの前提で議論するということでお示しをいただいて、今その作業に入っているものがございますが、全要素生産性を一・八から〇・五まで、かつ、労働市場への参入が進むケースと進まないケースに分けて、全体では八パターンお示しをしております。それぞれのパターンごとに物価それから実質賃金上昇率、実質運用利回り、それぞれが一定の幅を持って設定されているということになります。

 例えば、名目賃金上昇率でいいますと、物価二に対して賃金二・二ですから、一・三ぐらいから四・五ぐらいの幅が示されておりまして、それに対応する運用利回りの数字が示されておりまして、その数字のいわば差というのがいわゆるスプレッドになります。

 細かい数字は御説明しませんが、いわゆる中央値といいますか、それぞれの中央値ということで計算しますと、いわゆるスプレッド、名目賃金上昇率と名目運用利回りの差が一・一から一・七までの間におさまる。その間が今回の財政検証で用いる賃金上昇率と名目運用利回りの差の数字ということになります。

足立委員 今おっしゃっていただいたのは、きょうは紙を配っていませんから聞いている方は非常に難しいかもしれないんですが、いわゆる中央値と言っていいのかな。今回のケースでいうと、ケースEにおける名目運用利回りは、再度確認ですが、今、一・一から一・七とおっしゃった、中央値においては幾らになりますか。

香取政府参考人 ケースEのケースですと、これは労働力参入が進むケースで、全要素生産性、TFP上昇率が一・〇というケースですが、これですと、名目賃金上昇率と運用利回りの差、一定の幅がございますが、その中央値が一・七ということになります。

足立委員 同じ〇九年の財政検証においても幾パターンかあるわけですが、当時、全体の名目の運用利回りが四・一となったときの実質運用利回りですか、これは、先ほど御紹介があった一・六だったと思うんです。すると、当時四・一といって批判をされたわけですが、その検討の前提というか基本的な枠組みは、さらに運用利回りは下げているんじゃなくて上げているという理解でいいですか。

香取政府参考人 名目賃金上昇率とか名目運用利回りの算出のプロセスあるいは設定の仕方というのは、基本的に考え方は前回と変わっておりませんが、前回は、四・一という名目値で運用の議論がされた。当時、前提は、ある程度賃金が上昇してくるということで、賃金が二・五上がるということを前提の四・一だったわけですが、実際には賃金はほとんど伸びなかったので、そういう状況下の四・一は極端に高いという御議論で、いわば、私どもの立場からすると、説明が不足をしていたので誤解を招いたということで、今回は、賃金上昇率に対してどれだけ乗せるかということでお示しをする。

 今回の一・七も、申し上げましたように、それぞれの経済前提によって数値は変わってまいります。その中で、今、ケースEということでお話がありましたので、ケースEでお示しをすると一・七ということになりますし、別のケースですと、それぞれまたそれよりも小さい数字のところもございますので、その意味では、一・七というのは、高目に設定をしたということではなくて、計算の結果出てきた数字がそれであるということでございます。

足立委員 大臣、ぜひちょっと参入してほしいんですけれども、香取局長の議論は、プロですから当然ですが、非常によくできた議論でありまして、いろいろな議論ができますが、少なくとも、五年前の財政検証で批判された点について反省、それはやはりそうでしたということではなくて、これは説明が悪かっただけだと。だから、大きく試算の前提を今回、バリエーションはあります、バリエーションはありますが、五年前の試算についても、何かそれが問題があったということではないですね。

 要すれば、見せ方が必ずしも巧みではなかった、今回はより巧みに国民にお伝えをしていかないと正しく御認識いただけない、こういうことで間違いないと思うんです。だから、前回批判されたが、その批判を受けて、プレゼンテーションは変えるけれども、本質的な年金財政に関する物の見方、これは厚生省として何か見直したということはないですね。

香取政府参考人 結論から申し上げますと、年金財政の財政検証の考え方でありますとか基本的な枠組みについては、考え方は変えておりません。今回、やはりモデルをつくって計算しておりますので、モデルの精緻化等々改良は加えておりますが、基本的な物の考え方は変わっておりません。

 今のお話でいうと、運用利回りというものがどういう意味を持つか、どういう考え方で設定されているか、あるいは年金財政にどういう影響を与えるかという意味でいいますと、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、実質的な賃金上昇率というものが年金財政、負担、給付両面に基本的に影響を与えますので、それに対して利回りがどれくらいとれているか、その数字が実はいろいろな計算をする場合でも大きな数字になりますので、名目の四・一ではなくて、まさに運用にとって意味のある数字という形でお示しをする。そういう意味でいうと、お示しの仕方をわかりやすくするということで、今回そういう形をとったということでございます。

足立委員 そういうことで、特に何かを改めるものではないと。大臣も同じですね、一応。

田村国務大臣 前回は、例えば物価上昇率一、実質賃金上昇率は一・五、あわせて名目賃金上昇率二・五、これに対してどれぐらい運用利回りがとれるかということで、こういう経済状況ならば四・一ぐらいは回せるであろうと。

 重要なのは、この一・七という差であったわけであります。事実は二・六ほど運用利回りがありますので、思った以上に成績がよかったというのが結論だと思います。

 実際問題、四・一という名目運用利回りが高過ぎると怒られた。前提は先ほど言ったような経済状況であろうということだったわけでありますが、実態は違っていた。

 ですから、今回は、幾つかのパターンで、経済状況がこうならばこういうパターンが出てきますよねというようなお示しの仕方をしたわけでありまして、前回よりもより、こういう言い方がいいのかどうかわかりませんが、親切にというか、わかりやすくと言った方がいいのかもわかりません、いろいろな状況でも対応できるような書き方をさせていただいたということであります。

足立委員 これは非常にテクニカルなので、ちょっと通告からばらけてというか、通告どおりにやれないかもしれません。

 大臣でも香取局長でもいいんですが、私が実はきょうのこの時間で財政検証について一番確認しておきたいというものを一つだけ挙げるとすれば、まさに今大臣がおっしゃった、いろいろなケースについて試算をするというわけですけれども、そこで言うケースというのは、前提が大きく二つあって、いわゆるTFPというか、労働力に関する設定。労働市場への参加が進むか進まないか。さらには、いわゆる経済成長。中でもTFP上昇率のバリエーションでケースがつくられている。ところが、不思議なのは、運用利回りのバリエーションはないんですね。それぞれの経済状態に対して、モデルに入れると、運用利回りが一意に出てくるモデルになっていますね。香取局長、そういうことでいいですか。申し上げていることはわかりますか。

 経済状態を外生的に入れれば、運用利回りは一意で、もちろん幅はあるわけですけれども、その中央値は、例えばTFP一・〇%のときには一・七、こう出てくる。もちろん幅はつけてあるわけですけれども、この一・七というのは一意にモデルで出てくるわけですね。それはいいですか。

香取政府参考人 モデルで出てまいりますが、例えばケースEのケースで申し上げますと、ケースEは労働力参入が進むケースで、TFP上昇率は二〇二四年度以降は一・〇ということになります。この場合、物価が一・二で、対物価の賃金上昇率に一・二から一・四という幅が出てまいります。これは、いろいろなほかの係数の中で、パラメーターでそれぞれ、例えば国際収支のやりとりをどのくらいに置くかとか、そういった幾つかの要素がございますので一定の幅が出てくる。そうしますと、実質運用利回りもそれに合わせて二・六から三・五と一応の幅が出てくるということで、先ほどの名目運用利回りと実質賃金上昇率の差が一・二から二・二ということになって、中央値が一・七ということになりますので、その意味でいうと、賃金についてもあるいは利回りについても一定の幅がある形でモデル上は出てくるということになります。

 実際の財政検証の計算をする場合には、前回もそうでしたが、一応中央値で数字を使って、あとは、振れのときにどれくらいの感応度で数字が動くか、それをお示しすることで全体の財政検証の形を結果でお示しするという形をとります。その意味では、モデル上決まってくるものではありますが、一個ぴたっと決まるということではない形で、幅がある形でお示しをしているということになります。

足立委員 ちょっと議論を先取りしてしまったので、もう一回戻ります。

 今の議論は、私の問題意識としては、モデルがありますと。結局、モデルなんですね、この検証というのは。モデルのインプットとアウトプットがありますと。もちろんいろいろなパラメーターがあるわけですけれども、モデルによって結果は当然変わるわけであります。

 きょうお配りをしていませんが、このさまざまなTFPの各ケースについて、実質的な運用利回りの中央値と幅がこの図で出ていますが、極端な、極端といいますか、ケースについても、実現する蓋然性の高いケースと、例えば労働市場への参加が進まないケースHでは困るわけでありますから、このケースそれぞれについても蓋然性が高い、あるいは政府として目指すケースが、真ん中か上の方かわかりませんが、あります。そこについてのモデリングがどうかによってこの黒い丸は決まってくるわけでありまして、民主党さんは早く試算を出せと言うけれども、私は、このモデル自体に大変課題がある、そう思っているわけです。

 委員の方には申しわけない、紙を配っておくべきだったんですけれども、まず、せっかくの機会なのでさっさっと通告した話だけいきますと、実質的運用利回りをはじくときに、いわゆる賃金上昇率を使って、物価上昇率を使っていない理由を端的に教えてください。

香取政府参考人 端的に申し上げますと、これは何度も大臣からも御答弁申し上げていますが、まず保険料は、基本的には、賃金の上昇率、賃金に対して一定の料率を掛けて収入を出しますので、賃金上昇率によって収入が決まる。

 歳出の方も、年金は基本的に賃金に見合って出すということと、裁定をするときに、その時々の現在価格に置き直すという作業をします。これは実質的に賃金スライドをさせているということになりますので、給付といいますか支出も賃金で決まるということになりますと、全体として、年金の歳入歳出は、名目的な賃金上昇がどれくらいあるかということによって両サイドとも基本的には決まってくるということになります。

 現在のフレームは、入りの方が保険料、これは料率が固定されていて、積立金とその運用益、出る方が給付ということになりますから、そうしますと、名目の賃金上昇率でふえていく給付、そして歳入、保険料と積立金ということになりますから、その意味でいいますと、名目賃金上昇率に対してどれだけ運用利回りが高くなっているかということが年金財政へ与える影響が非常に大きいということになりますので、名目運用利回りマイナス名目賃金上昇率というのを一つのメルクマールでお示しすることにしているということでございます。

足立委員 この質問をさせていただいているのは、給付と負担、あるいは所得代替率という観点から賃金に着目するというのはわからないではないんですが、私もまたちょっと時間があったらこれを計算というか勉強してみたいと思うんですが、この財政検証において賃金上昇率を使用することの意味というか、意味は今おっしゃったとおりかもしれませんが、それの影響みたいなものはまたちょっと考えてみたいと思います。

 それから、通告の三つ目、運用利回りの想定に大きな影響を与える変数は何か、こう通告をさせていただいている点については、モデルの中身でやりますので飛ばします。モデルの全体像については承知をさせていただいておりますので、割愛いたします。

 私は、大臣、きょうこのテーマを取り上げさせていただいて、先ほど話をしたわけですけれども、〇九年との比較においても、今回の財政検証は、うまく説明していただきたいと思いますが、恐らくマスコミが一番注目をするかもしれない部分は、先ほどの中央値の、中央値と言っていいのかな、いわゆるケースEの一・七、この数字が、例えば五年前であればそれは一・六であったわけでありまして、この一・七という数字が果たしてどうなんだという議論になってくると思います。

 大臣は十三年から二十四年の実績を見てくれということかもしれませんが、私に言わせれば一番実現する蓋然性が高いこのケースEにおいて運用利回りが一番上がる、要は、くの字型の頂点のところがケースEになっているわけです。これはなぜ、くの字型になっているかというと、モデルがそういうモデルだからですね。

 いろいろバリエーションはありますよと言いますが、果たして、ケースEにおいて一・七の運用利回りが実現する見通しは、一般的には、私は、いかがなものか、ちょっとそれは高過ぎないか、五年前と同じような感覚でこの中央値、ケースEについて、くの字型の頂点については高過ぎないかという印象を持ちますが、大臣、お願いします。

田村国務大臣 これは、一定のモデルを置いて出てくる数字でございまして、決して恣意的な幅を持たせているわけではないわけであります。

 これは、TFP上昇率が上の方が逆に、かえって中央値が低い、こういうものらしいです。私も専門家じゃありませんから、賃金が上昇する分だけスプレッドは落ちるという話らしいです。ですから、これは決して恣意的な数字じゃなくて、こういう形で出てくる。

 しかも、今回、余りF、G、Hの方に行ってもらうと困る、これは労働市場への参加が進まないケースですから、そういう思いがあるわけでありますから、進むケースの方を目指したいわけでありますけれども、それぞれの中央値は違いますが、それも含めて、財政検証の中において所得代替率がどれぐらいなのかという話になってくるんだと思います。

 でありますから、我々が所得代替率を守りたいがために何か恣意的な数字を入れておるというわけではありませんし、今回の場合は、それぞれのパターンにおいてそれぞれいろいろな財政検証が出てくるわけでございますから、まだ私の手元にも来ておりませんけれども、それが最終的に発表になられたときに、国民の皆様方に、これを見ていただきながら、いろいろと分析いただき、御判断いただければというふうに思うわけであります。

足立委員 厚生省は厚生省で、専門家を集めてやっているわけですね。厚生省が集めている専門家以外にも、さまざまな専門家がある、あるいはシンクタンクがある。これは、通告でも申し上げている、いわゆるTFPもそうだし、あるいは長期金利、こういったものの見通しについて、やはり甘いんじゃないかという批判が今回も私は来ると思います。必ず来ると思います。

 事務方には私が手持ちのそういう民間の試算もお示しをしたわけですが、今御紹介いただいた、大臣もこういうものだとおっしゃっている財政検証の前提について、その前提になっている成長率とか金利については、民間のシンクタンクも大体そういう相場だ、こういう理解でいいでしょうか。

香取政府参考人 その前に、先ほどの、先生のおっしゃるところの中央値、Eが、中央値が蓋然性が高いかどうかはわかりませんが、一番運用利回りのスプレッドが高くなる、いわばそこで一番高目の運用をとるということになっているのではないかとのお話ですが、ちょっとテクニカルに御説明します。

 上の方のケースは、全要素生産性が高いというケースになります。賃金上昇率は、基本的には経済成長率に連動して高くなっていくということになります。他方、金利の方は、基本的には利潤率をベースに金利が決まってくるわけですけれども、利潤というのは、分母が資本ストックで、分子が収益ということになります。実は、成長が高くなってきますと、経済成長に連動してストックがふえてきますので、分母が大きくなるという構造になります。

 したがいまして、同じような経済環境で運用利回りを我々のような形で算定する場合は、そういう資本ストックの蓄積が、成長が高い方が高くなるということになりますので、その意味でいうと、賃金上昇率との差で見ていくと、スプレッドはむしろ上の方が小さくなるという構造になる。したがいまして、同じ労働投入が進むケースのAからEということになりますと、下の方に行くによって高くなるということになります。

 他方、低成長のケースの場合には、ほとんどゼロ成長に近いので、金利と成長率、あるいは長期金利と利潤率の相関は低いということなので、これはイールドカーブという、市場における将来金利の見通しを使って見ますので、足元の数字に近くなるので、非常に低くなるということになります。

 お話しの、こういった前提をどのように置くか、他のシンクタンク等々がどのように置いているか。これは、それぞれ、御専門の方が数字を置いておられるので、数字は違ってくるということになりますけれども、例えばお話のあったシンクタンクの例ですと、やはり今の日本国の財政状況なんかを見て、国債の金利、長期金利なんかは、恐らく政策的に低目の誘導が行われるであろうといったようなことをちょっと織り込んで、割と低目に設定して計算するといったような、それぞれ、いろいろな現実の市況に対する工夫を織り込みながら推計されておられますので、その辺の見方によって違いが出てくるということがあるのではないかと思っております。

足立委員 財政検証という作業自体に茶々を入れているようで申しわけないわけでありますが、今おっしゃったように、例えば今、資本ストックと利潤率の関係とか、ある種の学説にのっとったマクロモデルになっているわけでありまして、経済学者によっては、その考え方についても違うという学者もあって、そのモデリングの枠組み自体にバリエーションが本当はあるわけですね。

 だから、政府としては、財政検証ですから、本来その幅についてもある程度持っておくべきだし、このモデルを一意に、一つのモデルを選択してしまっているわけですね。そのモデル選択の幅についてはないわけであります、当たり前ですけれども。そうすると、さっきおっしゃった、厚生省が採用している、あるいは委員会、専門家の方々が採用しているモデルによると、まさに、TFPが上がる中で運用利回りが下がっていく、くの字型になっているわけであります。

 すると、多分、財政に与える影響は、結構難しいアウトプットになってくると思います。難しいアウトプットというのは、要すれば、これは個人的な推測ですよ、香取局長、もし大体頭に入っていたらぜひお答えいただきたいんですけれども、多分、計算すると、ケースにかかわらず、ある財政について、楽観的なものか、悲観的なものが出てくるかというのは大体わかりますよね、局長であれば、この前提であれば恐らくどういう見通しが出てくるか。私は、ケースEについても楽観的に過ぎる、こう思っているわけですが。

 それはさておいても、このケースEからケースAは前提がわかっているわけですから、年金財政に与える影響は大体、どうですか、どれが一番年金財政にはよさそうですか。もうわかりますよね、局長であれば。

香取政府参考人 恐らく、どれがよさそうということではないのではないかと思っております。

 年金財政に影響を与える要素というのは御案内のようにたくさんありまして、出生率がそうですし、それから労働力参入、要するにどれだけの人が働くかということもそうですし、さまざまな経済諸前提もそうです。

 かつ、それぞれの要素が相互に絡み合ってくることになります。労働力参入が進まなければ、労働力が不足するわけですから、高い成長が望めないということになりますので、労働力参入しないのに高い成長、高い成長なのに金利がすごく低い、そういう組み合わせはないことになります。

 したがって、言ってみれば、さまざまな諸要素の組み合わせの結果が置いた前提によってどういうふうに年金財政への影響があるか、そういういわばプロジェクションをお示しするのが財政検証ということになります。

 その意味では、一般的には、もちろん成長している方が、賃金も上がるでしょうし金利も高くなりますから、年金にはプラスだ、そういうことが言えるわけですけれども、他方で、成長すれば今度は給付も大きくなるという要素も出てくるわけですから、そうすると、どこで均衡するか、均衡点がどこになるかということになります。

 足元は、出生率も回復をしてきていますし、デフレからの脱却局面にありますので、全体としては年金財政にとってはいい影響が多い、要素が多いわけですけれども、もちろん、今後の成長をどう見込むかとか、先ほどから議論になっております利回りをどのように見るかによって、当然年金財政は違ってきます。

 どれがいい悪い、あるいはどのケースだとうまくいくかというのは、ある意味、むしろ経済前提の方がどうなるかということで年金は影響を受けるので、そこの関係をお示しするのがむしろ財政検証だというふうに、そういう意味で言うと、結果ではなくて、プロジェクションの議論の土台、これからのいろいろな年金の議論をするための土台をお示しするものだというふうに御理解いただければと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 まさに局長がおっしゃったとおりだと思うんですよ。だから、もう土台はほとんどできているわけです。そうですね。

 労働参加のバリエーションとおっしゃったけれども、その労働参加のバリエーションが金利に与える影響等は、もうモデルで回ることになっておるわけです。そうですね。

 すると、ケースがA、B、C、D、E、F、G、H、八つのケースについての諸前提は、モデルでもう決まってきますね。私が申し上げたのはそういうことです。

 だから、いろいろなことで変化しますと言うんだけれども、このモデルを採用した時点で、バリエーションは八つであって、それぞれのケースにおいて、TFPが上がれば労働参加も進み、賃金がこうなり、金利がこうなる、こういう枠組みが一意にあると私は思っているんです。そうですね、局長。

 だから、私が申し上げているのは、結局、ここに財政検証の枠組みがもうあるんです。あるときに、二つ問題がある、この枠組みというのは、大きく二つあるわけです。

 すなわち、いわゆるケースE、ケースEにこだわって申しわけないですけれども、くの字の頂点と、くの字の形、この二つで全部決まっているように、ちょっと乱暴かな、局長からすれば何と乱暴なことを言うやつだと思うかもしれませんが、経済モデルというのは大体そんなものだと思うんですよ。

 だから、厚生労働省あるいはその委員会の専門家の方々が、くの字の形を経済学説としてモデルに取り入れ、その頂点を一・七で置いたと。あとは、国民年金、被用者保険、いろいろなオプション試算をするわけでしょう。オプション試算は厚生省はお手の物です。お手の物だけれども、その大前提が本当にこれでいいんですかということをきょうは議論したいわけですね。

 そのときに、局長、八つのオプション、これは局長は納得がいっているかもしれませんが、国民はこれで納得いくかどうかわからぬと僕は思います。

 特にこのケースEの一・七については、繰り返しますが、五年前の試算と大枠は変わらないんですよ。だから、同じ批判が必ず出てくると思う。

 それから、上の、くの字のこの傾きについては、経済成長、恐らくアウトプットは結構ややこしいというか、必ずしもすっきりした答えにならない。それはそうですよね。だって、経済成長するのはいいことなんだけれども、運用利回りは下がるわけですから。これは、計算してみないとわからないような結論になっていると思うんです。

 モデルとしてはおもしろいと思うんですよ。モデルとしてはおもしろいけれども、では、国民に対して誠実なプレゼンテーションかというと、そうではないのではないかと私は指摘をしたいわけですが、私の指摘の意味、局長、おわかりいただけますか。

香取政府参考人 まず、このモデルですが、お話しのように、モデル自体をどれだけ客観的なものにするかというのはやはり大きな議論でございまして、今回、委員会には配っておられないようですけれども、一定のコブ・ダグラス型のモデルをつくりまして、基本的には、労働投入と資本の投入と全要素生産性で実質経済成長率をはじき出し、それを賃金と資本あるいは利潤等に分けて、それぞれまたモデルに返す、幾つかの指数を外生で与えるというモデルを用意したわけです。

 もちろん、このモデル自体をどう評価するかという御議論は当然専門家の方の間でもあろうかと思いますが、通常、諸外国における年金の長期的な財政推計を行う場合に、こういったマクロのモデルを使って推計というかプロジェクションを行うということをやっている国は、私どもの知る限り、たしかほとんどないはずなので、その意味では、かなり精緻な作業を我々はしているというふうに考えております。

 その意味では、これ自体は、さまざまな見方があろうと思いますが、私どもとしては、それなりに合理性、客観性のあるモデルをつくってお示しをし、かつ、数値は、ある意味客観的な数値を使って出てくるので、前提はそういうものだと。

 結局、それによって、財政の結果、私どもは今作業中なので、果たしてどういう数字が出るかわかりませんけれども、それはそのものとしてお示しをし、一定の幅を持った形でお示しをする。

 やはり成長する場合、しない場合、特に成長しなかった場合のケースをどう考えるというのは必ず議論になりますので、実質的には向こう何十年もゼロ成長になるようなモデルも今回はお示しをしておりますので、出た結果に対する御評価というのはあろうかと思いますが、モデルをつくった段階で全てが決まってしまうということでは多分なくて、やはり出た数字を見て、またそれでさまざまな御議論がなされて、その上に次の制度改正の議論をさせていただくということになるんではないかと思っております。

足立委員 これは前提が変わればアウトプットが変わるわけですけれども、前提が変わらなくても、例えば運用に失敗すれば、国民の財産と言っていいのかな、年金ですから、当然、運用に失敗するケース、運用が、大臣が先ほど御紹介いただいたように、上振れするアップサイドリスクとダウンサイドリスクがあるわけです。むしろ厚生省が世にちゃんとわかっておいてもらうべきは、そういう大きなある種の運用のアップサイド、ダウンサイドの幅がというか、アップサイドにぶれるとこんなにハッピーですよ、でもダウンサイドにぶれるとこんなに悲惨ですよということは、心の準備をしておいてもらう必要が国民に対してはあると思うんです。

 だから、これは誰のために試算しているかなんです。そもそも財政検証というのは、今おっしゃったように、これは何のためにやっているんですか。

香取政府参考人 年金制度の持続的可能性を確認する、将来の経済あるいは人口等々の要素は不確実ですので、いろいろな変動があり得る、そういった変動を織り込んで、年金財政の長期的な安定、持続可能性が図れるかどうかということを確認するという作業です。

 なので、その意味でいえば、非常に経済がいいケース、悪いケース、人口の減少がとまるケース、あるいはさらに進むケース等々、いろいろな前提を置いて、それぞれの前提になった場合に、例えば世の中がずっとデフレだったらどうなるか、あるいは成長すればどうなるか、人口が回復すればどうなるか、そういった前提を置いて、それが年金制度にどういう影響を与えるかというのをお示しをし、その中で持続可能性が確保できているかどうかというのを確認するというのが財政検証だと承知しております。

足立委員 私は、きょう、若干焦点がぼやけたかもしれませんが、これは結構大事な論点だと思っていまして、いわゆる年金財政の今おっしゃったような持続可能性を検証するのであれば、それはまさに、さまざまな前提の間での争いが当然あるわけですね。世の中の学者の中には、それはもう無理だと言う学者もいれば、非常に楽観的な学者もいるわけです。そのさまざまな議論を国民的な議論に付することの方が本当はいいわけで、それを厚生省の中で、もうブラックボックスです、このモデルは。このモデルを多分国民が理解することはできないでしょう。

 すると、厚生省がこれでいこう、あるいは厚生省に集まった有識者の方々がこれでいこうと決めたものについての理解を世の中に広げるということが、それほど、いかがなものかという、要すれば、そもそもマスコミとのコミュニケーション、あるいは国民とのコミュニケーションにおいて、本当にこれは大丈夫かということをきょうは一つ問題提起させていただいたこと。

 それから、冒頭申し上げた、やはり楽観的に過ぎるんじゃないか。これは、我々は野党ですから、いろいろ野党も立場はもめておりますが、野党に大体多くある議論は、やはり年金の抜本改革はまだ要るという話です。大臣は常々、いや、抜本改革はもういいんだ、手直しをしていけばいいんだという議論をされている。それに対して、結いの党であれ、みんなの党であれ、我々であれ、年金改革はやはりちゃんとしないといけない、無年金、低年金の問題もあれば、あるいはこういうマクロの話も含めて、年金改革、抜本改革は要るんだという議論なんですね。

 要るんだという我々の立場からすると、これは極めて大事で、これが楽観的に過ぎると、やはり政府は、政策論として、年金はもう手直しでいいんだという立場をとっていらっしゃるんだから、それに相見合うことに当然なるわけでありますから、いぶかるというか、そういう目で野党が見る、あるいは一部の国民がそう見るのはやむを得ない、私はこう思うわけであります。

 だから、五年前との比較においても、引き続き、次回はもうちょっとわかりやすく、資料を配ってやりたいと思いますが、そもそも、これでやっている作業自体の意味も含めて、ぜひ結果が出る前に問うていきたいと僣越ながら思っておりますし、楽観的に過ぎるんじゃないかというテーマについては、次回はできれば具体的な有識者の試算なんかも用いて討論をしていきたいと思っております。

 あと、本当は、今のはマクロの話でありますが、特に今回は国民年金の法律の話でございますので、いわゆる非正規短時間労働者がどれだけ被用者年金に移っていくのか、この議論が実は一番大事だと思っていて、今回の財政検証でいえば、オプション試算の点が大変重要になるわけであります。

 その議論を含めて、また次回というのはあるのかな、ないのかな、ちょっと忘れましたが、なくてもやっていきたい、こういうふうに思っていますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 いつもありがとうございます。日本維新の会の重徳和彦です。

 今、足立議員が最後、今の政府のスタンスは年金制度の手直しをするという程度におさまっていて、抜本的な見直しという姿勢が見られない、こういうことを言及されていましたけれども、私も、やはり今の制度を少しでもよくしていく努力は必要だと思いますが、それにしても、なかなかつじつまが合わない部分がたくさんあると思います。

 そして、であるがゆえの納付率六〇%という危機的な率になっているんだと思いますし、しかも、地元を回っていても、高齢者の皆さんは、年金が少しでも下がるのは非常に抵抗があるということをおっしゃっていますし、一方で若い世代は、どうせ払っても返ってこないんだという諦め感がある。今、我が国の年金制度は、非常に厳しい状況に追い込まれていると思っております。

 さて、前回は本当に、質問を投げかけましてそれに答えていただく、そういうやりとりに終始して終わりましたが、きょうは少し、その前回のやりとりを踏まえて、深めてまいりたいと考えております。

 まず、今回の法案、政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、納付猶予制度があります。これについて質問をさせていただきます。

 前回も申し上げましたが、やはり人間というものは、とかく後回し、嫌なことは、負担は後回しにしたい、こういう誘惑に駆られるわけであります。そして、後回しにした上で、そのときに積み重なったものを、ツケを払おうというのはなおさら苦しいことでありますので、それがなかなか成り立たないんじゃないかということでございます。

 今回の納付猶予制度は、三十歳未満までだったものが五十歳未満まで認められるというものですね。通常であれば、頑張って頑張ってその都度その都度払う、あるいは家族、親族からお金をかき集めてでも払う、こうやってようやく年金の受給資格の期間を得るのが通常なんです。これに対しまして、この猶予制度は、猶予してくれ、後で払うからということを言えば、受給資格の期間がその分だけ得られるわけですね。非常にバランスがよろしくないんじゃないかと思います。

 年金受給資格といういわば権利を得るためには、その反対にやはり納付、年金保険料を払う、そういう義務を果たさなければならないというのが通常の考え方だと思います。その権利というものも、これからは、二十五年必要だったものが十年に短縮されるので、その権利性そのものも大した権利じゃなくなるのかもしれませんが、それにしても、納付をしなきゃいけない義務を猶予してしまうということを余りに安易に認めてしまうのはどうかというふうに思います。

 ちょっと調べていただいたところ、実際に平成十七年度からこの若年者向けの猶予制度は始まっているわけですが、十七年度に猶予を受けた方が、これまで八年、十年たっておりませんが、八年間の間に何%分追納したかというと、八%なんですね。だから、猶予したら、やはりその後なかなか払わないわけですよ、いろいろな事情があるにしろ。こういうことが今後も十分想定されるわけです。

 そういう意味で、まずお伺いしたいんですけれども、この年金の資格期間を延ばすためだけに猶予制度を使って、結局追納しない、こういうことが十分あると思うんですが、本当にそれでいいんでしょうか。

樽見政府参考人 納付猶予の制度でございますけれども、たびたび申し上げておりますが、まさに就職が困難だった、あるいは失業中であるといったような理由で所得が低い方に対して、経済状況が苦しい場合でも、万が一の障害、死亡といったときの保障というのを受けられる、あるいは、前回、出世払いと申しましたけれども、後で保険料を納めていただけるような道を用意するというものでございます。

 保険料の納付意欲のある方にはこれまでどおり保険料を納めていただく一方、低所得のため保険料を払えず未納になりがちな方々に猶予を受けていただくということを想定しているものでございまして、納めなくてよいというよりも、今までだったら未納になってしまうというような方々に、こういう制度をうまく利用していただくことを想定しているわけでございます。

 そういう意味で、追納の勧奨ということについてもしっかりと取り組んでいきたいと思っています。猶予の制度の場合、老齢年金は保険料を納めていただかないとその部分は年金額に反映しませんので、そういう意味でも、追納の勧奨ということにもまさにしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えてございます。

重徳委員 今、樽見審議官がおっしゃるように、未納という状態を救う、つまり、未納の結果、無年金になってしまうことは救われると思うんですね。だけれども、それは、これから二十五年を十年という要件にするわけですから、それで相当救われると思うんですよ。

 今度は、問題は低年金だと思うんですが、これからこの猶予制度というのは、払わなくていいというか、後回しにするという名目で払わないという結果を誘発するでありましょうから、結局、低年金を容認することになりかねないと思っております。このあたりも含めて、後ほど、これはもっと義務性を高めるべきじゃないかという議論をさせていただきます。

 それから、この猶予制度はもう一つ疑問点があるんですが、審議官はこの間から出世払いとおっしゃっています。その時々に親も家族も誰も全然払えないんだったらしようがないんですが、親が豊かであっても本人が払わないんだったら出世払いでいいよというのは、ちょっと甘過ぎると思うんですね。やはりおかしいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

香取政府参考人 今のお話だと制度設計に係るお話なので、私の方から御答弁申し上げます。

 御案内のように、国民年金制度は、所得のない方もみんな被保険者にして、皆年金にするということで、免除という制度があるわけでございますが、免除というのは、文字どおり、保険料の納付義務を免除するということになります。ということで、世帯主である親ですとか配偶者、今先生の御指摘があったように、家族の所得も見て判断をするという形に立っています。

 これは、一般的に社会保障制度では、この種の措置を講じる場合は世帯単位、家計の単位を見るということなので、家族全体の所得を見て手当てをする。そういう意味では、低所得者対策の一環に位置づけられるものだろうと思います。

 実は、納付猶予というのは最初に学生に導入したんです。学生に導入したのが平成三年、それ以前は学生さんは任意加入だったわけですが、このときに、学生さんは通常収入がないことになりますので、この制度を適用すると、定型的に親が負担をするというのがいわば恒常化する形になる。世代間扶養の保険料を親が払うというのも問題ですし、おっしゃるように、初手で親が保険料を払ってくれる、そういう状態をつくることになりますので、そのことはそのことで、別の意味でモラルハザードになるのではないかという議論があります。

 そうなりますと、いわば学生さんというのは、ここから先は、先ほどの年金管理審議官の御答弁と同じになるのですが、何年間かは学生だ、その後、一人前に就労して払うということになるので、むしろ、こっちは基本的に自分が払うという原則をまず立てて、そのことをベースに物事を考えようということで、本人が後々、後払い、出世払いで払うということで、基本的には本人に着目して考えようということで納付猶予制度をつくった。したがって、このときは、基本的には、本人の能力、本人の所得で判断をしましょうと。勤労学生さんなんかもいらっしゃるので、そうしようとしたところでございます。

 その後、平成十六年、同じ趣旨で、失業状態にある若年フリーターの方について導入したときも、その時点でそういう不安定就労であっても、その後、払える段階になれば払ってくださいよということでいわば猶予をする形をとったということなので、経緯的にはそういうことなんです。

 やはり、納付義務そのものを免除してしまうという扱いと、基本的には本人が払うという義務を残しつつ、払うタイミングをずらしてできるだけ納めてもらうという形にする、いわばそういう制度のたてつけ、考え方の違いから、こういう取り扱いの違いを用意している。

 したがって、給付の方も、先ほどお話があったように、納付猶予の方は、納付をしませんと空期間にはなりますが給付は一切つきませんので、資格はあっても給付はないことになるということでございます。

重徳委員 今の香取局長の御答弁は、ちょっと論点をずらしたような御答弁だと思うんですね。世代間の支え合いという言葉が突然出てきましたけれども、そういう趣旨も、それは広い意味ではあるでしょう。

 今申し上げているのは、本人に対するもっと厳しい義務化をなぜできないのかという話であります。まして、学生というのは、もともと支払い能力が本人にはありませんね。親御さんには普通、払う能力があるわけですから、そういう制度が学生時代に始まった。それが若年者、つまり働き始めた人にも、たまたま学生向け制度があるから、そのまま若者の制度に使っていくというのは、本当になし崩し的な制度づくりをその場その場でしていったという経緯であり、過去の経緯に引きずられっ放しなわけですね。だからこそ、このままずるずるいったら、より暗黒の未来しか待ち構えていないんじゃないかということを指摘申し上げているわけでございます。

 そして、大臣に御質問させていただきたいんですが、納付猶予というものは、後で追納するしないによって年金の水準も変わるんだから、その意味で自己責任の世界、保険の世界だよという部分は、それはそれで百歩譲って理解したとして、今回の、今もありますけれども、猶予制度は、遺族年金、障害年金の資格期間の通算、積算にも猶予期間をはめますよということなんです。

 そもそも、この遺族年金、障害年金というのは、自分自身が将来もらう老齢年金とはやはり性質が違いますし、だから、そこをごっちゃにして、猶予制度を使っておけば、障害者になったとしても、死亡した遺族に対しても責任が果たせるよという要素とちょっと切り離すべきじゃないか。むしろ、最低限のセーフティーネットが遺族年金、障害年金の部分であって、老齢年金というのはあくまで自己責任の世界、本当の意味での保険の世界で、切り分けるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 委員がおっしゃられるのは、例えば今般の猶予制度を利用した方が、空期間のままだったらば給付に結びつかないわけですから、それはある意味、自業自得という言い方がいいのかどうかわかりませんけれども、その方がそのまま払えない所得状況のままだったかはわかりませんが、しかし、払っていないんだから、もらえないのは仕方がないよねと。

 ただし、空期間ということだから、十年という意味で、今は二十五年ですけれども、言うなれば受給資格期間にカウントはしてあげる。だから、本当は、十年間しか支払っていなくて、十五年間空期間があれば、今でもそれに対応する十年分の年金だけはもらえるわけですよね。これが、言うなれば空期間の部分であるわけであります。

 それはそれで仕方がないからわかるけれども、一方で障害基礎年金のようなものは、これは保険料を払っていないのに、そもそも丸々もらえるような形になるのはおかしいんじゃないかという意味で多分おっしゃられたんだと思うんですよ。

重徳委員 ちょっと今の質問の趣旨を申し上げますと、むしろ、そこも全部保険という意味じゃなくて、最低限、言ってみれば税負担でもいいから、障害年金、遺族年金の部分は、別建ての誰でも受けられるセーフティーネットにして、保険料を払わないと障害年金を受けられないよとかそういうことにはならないように、切り分けて考えた方がいいんじゃないかということです。

田村国務大臣 まさに昭和六十年以前はそういう制度がありまして、一定期間に満たない、つまりここで言う空期間みたいなもので、保険料を納めていない、そういうような期間が一定以上ある場合は、障害福祉年金というもので、金額が低かったんです。なぜかというと、全部税でやっていますから、財政とリンクしていくわけですね。財政状況を見ながらしかそういうものは出せないわけなので、そこで、昭和六十年以降、いろいろな声、ひどいんじゃないかという声があって、そしてそれを障害基礎年金という中に取り込んでいって、要は、一定期間ない方も同じような金額を払うようにしようとしたわけであります。

 でありますから、委員がおっしゃるように、もうそれは切り離しちゃえというお気持ちはわかるんですが、それと別途、税財源というものが必要になってくる。その税財源の状況によっては、金額が低くなっちゃったりというようなこともないとは限らない。保険というものでやりますと、財政的には全体から見れば一定程度ですから、だから、以前、付加年金の話もございましたけれども、全体の中でうまくのみ込めていけるということなので、みんなの助け合いの年金という意味の趣旨にもそぐうのではないかということで、昭和六十年にこのような制度に変更したわけであります。

重徳委員 現行制度を前提とすればそういう税財源の話ということになると思うんですが、そもそも保険と税金負担のトータルで国民負担率ということを考えるわけですから、そこを保険の世界と税の負担を切り分けた上でどっちにはめるということよりかは、その制度に合わせて税負担と保険料の負担をコントロールすることができないかというようなこと、要は、それはトータルでの国民負担率を変えずして内訳の話じゃないかということも、今あわせて申し上げたいと思います。

 次に行きますけれども、今は保険という建前になっておりますので、本来であれば、つまり民間保険の世界であれば、自分は年金なんか要らないんだ、たんす預金なりなんなりで自分で運用するんだ、そういうことで拒否するというか年金に加入しないことだって選択肢としてあってしかるべきだと思うんですね。

 だから、前回少し申し上げましたけれども、例えば、私はもう年金は要りませんという宣言をします、だから六十歳になっても七十歳になっても年金は要りません、ただ、長寿のリスクだけはありますので、九十歳以上になったら政府が面倒を見るとか、そういう仕組みを考えることもできなくはないと思うんですね。だけれども、現行制度では、そうはいっても、実際には、なかなかそういう方針には政府はなっていないわけですよ。

 だけれども、では、今現に目の前に、自分は年金なんか要らないから、だから払わないんだと拒否をする人があらわれたら、それでも、これからの方針では、年収が四百万円以上所得があれば、そして十三カ月以上滞納していれば強制徴収という措置をとるということなんですが、そういう、いや、いいんだ、払わない、そのかわりもらわなくていいからと言っている方に対しても強制徴収を行うんでしょうか。

樽見政府参考人 お答えを申し上げます。

 その前に、一点、訂正を申し上げたいと思います。

 先ほどの香取局長の答弁の中で、私、ちょっと後ろで聞いていまして気がついたんですが、学生の強制適用は平成三年からということで、そのときから納付猶予があるような話しぶりだったと思いますが、学生の納付猶予が入りましたのは平成十二年、それが、若年者というのが平成十六年の改正で入ったということでございます。これだけ、一点、事実を確認しておきます。

 それから、今の御質問でございます。

 年金は要らないと言っている人に対して保険料を払わせるのかという御質問でございますけれども、公的年金制度は、個々人では背負い切れないリスクを社会で支え合うという制度でございまして、具体的に言いますと、生活の基礎部分を支えるだけの金額の年金を亡くなるまで支給し続けるという制度でございます。

 そういうことができるのは社会全体で支えているからということでございますので、そういうことで、公的年金は全員強制加入の制度という仕組みになっているわけでございます。そういう仕組みを通じまして、社会経済全体にも貢献しているものでございます。

 したがいまして、個人として年金は要らないという方がいらっしゃっても、保険料納付の義務を免れるということは、こういう制度の考え方、あるいは公平性の観点から認められないと考えております。

重徳委員 そうなんですね。認められないんですよ。だから、強制徴収当たり前の世界にしなければおかしいのではないか。いろいろな形で猶予したり後納を認めたり、でも、結局、納付をしないこと、そういう状態を許すこと自体が本来の皆年金制度に反するのではないか。本当に払えない人はもちろん免除、減免を受ければいいわけです、そういう制度はちゃんとあるわけですから。それ以外の方は、何としてでも徴収をするべきだと思うんですね。

 もう一つ。若い人を中心に、保険料を払ってもどうせ自分のときには十分な年金なんかもらえないんだと、本当にまことしやかにそう信じられています。

 そういう意味では、それでもなおかつ六割の方が、若年者はもうちょっと低いかもしれませんが、納付を続けてくださっているというのは、よっぽど制度の趣旨も理解して、別に自分のために納めているのではないんだ、今のおじいちゃん、おばあちゃんを支えるんだという世代間の支え合いをよく理解している方とか、あるいは、法律上これは義務なんだと政府も言っているから、義務を果たそうじゃないか、こういう非常に美しい心を持っておられる皆さんに支えられている六〇%じゃないかな、こういう見方だってできるわけですね。むしろ、返ってきもせぬようなものを払わないのは当たり前ですよ。だから、四割の人たちの方が経済合理的なのではないかというふうに見ることもできます。

 前回も言ったかもしれませんが、国民年金には二分の一国庫負担が入っているんだから、通常であれば、払った分に税金が上乗せされて倍になって返ってくるというのが単純な発想だと思うんですが、それがそう思われていないというのは非常に深刻な状態だと思います。

 そこで、前回お聞きしたので後でチェックしたら答弁漏れになっていたものですから、改めてお聞きします。

 現場で、保険料を納めてくださいというふうに年金機構の方々が話をするときに、払った分だけ必ず後で返ってきますからというふうな説明は、今しているんでしょうか、できるんでしょうか、そのようなことは。

樽見政府参考人 実際、おっしゃいますように、保険料を納めていただいて、それに国庫負担分がついて支払いがされるという形になるわけでありますけれども、まさに制度の考え方は、先ほど申し上げましたように、個々人で背負い切れない経済的リスクを社会で支えるということにございますので、お一人お一人の保険料の納付総額と受給総額を比較して損得というようなことは、まさに社会連帯ということの趣旨からいうと逆効果になる面もあるというふうに考えているわけでございます。

 ただ、まさに保険料を納めていただくときに、納めた保険料は、将来、先ほど私が申し上げた話ですが、六十五歳以降亡くなるまで、一生涯、老齢基礎年金を受け取ることができます、あるいは保険料を納めた期間が長いほど受け取る年金額が多くなるというようなことは申し上げているということでございます。

重徳委員 そうですよね。だから、損得みたいなことをもって説得することはできないと思うんですよ。

 そういう状態にもう陥ってしまっています。だけれども、社会構造上、経済変動上、それはやむを得ない状況になってしまっているので、それ自体を今批判しても仕方がないことかもしれません、現行制度を前提にすれば。だから、根本的に積立方式などを考えるべきじゃないかという議論が出ているわけです。

 ここでちょっと大臣に確認をしたいんですが、前回、大臣の御答弁の中で、「自主納付とはいいながら義務でありますから、」「強制徴収という制度があるわけであります。」というふうに、よっぽど理解しようと思えば何をおっしゃっているのか何とか理解できるかもしれませんが、自主納付なんだけれども義務なんだよと一般の人に言ったら、何を言われているんだかわからないと思うんですね。だけれども、法律には確かに形式的には義務と書いてありますので、義務は義務なんだと思います。

 それから、そう形式的に法律に書いてあるということじゃなくして、実質的に今、制度のたてつけが保険、自主納付という世界でありながら、これは義務と言わざるを得ない、そして強制徴収せざるを得ないのは、私は、制度的な意味が二つあると思っています。

 それは、何より賦課方式であること。だから、自分の払った分が返ってくるかどうかという問題だけではなくて、世代間の助け合いというんですか、今でいうと上の世代の方をひたすら支えている、こういう状態が崩れてしまうと今の賦課方式は崩壊してしまう。賦課方式であることが一つ。

 それからもう一つは、無年金、低年金の方がたくさん発生してしまったら、ほかの委員の皆さん方もおっしゃっているように、やはり最後は生活保護というところに陥ってしまいまして、結局は国庫負担でその方の最終的な生活を支えなきゃいけない。そんなことになるぐらいだったら、その前からちゃんと払ってもらわなきゃいけない。

 だから、実質的には、そういう賦課方式そして生活保護で最終的には何とかしなきゃいけないということもあるので、義務だ義務だといって強制徴収をしなきゃいけない。このほかに実質的な理由はありますか。大体こんなところでしょうか。

田村国務大臣 要請といいますか、それは、一つは今言われたような賦課方式である。ですから、あなたが、私が払わないから年金は、賦課方式は潰れるわけではありませんが、例えば厚生年金で納めておられる基礎年金分も、二階部分は納めるけれども一階部分は納めないなんということはあり得ないですけれども、そんなことが起こって、一定程度以上基礎年金分が納まらないとなってくると、これは賦課方式でありますから、幾ら積立金を持っているからといって、瞬間成り立たないことが起こってくるわけで、将来その人たちはもらえませんけれども、しかし、一定程度お金を回していかなきゃいけないわけですから、そういう要請はあると思いますね。

 それからもう一つは、年金における要請というよりかは、社会保障全般の中における要請として、言われるとおり、言うなれば将来に向かっての自分たちの準備、そういうものを考えれば、やはり年金というものに入っていただかないと、私はよほど蓄えがあるんだよとか、私は死ぬまで稼げるこういうものを持っているんだよということがあればそれはいいのかもわかりませんが、ほとんどの国民の皆さんはそういうことはないと思いますので、社会保障上の要請みたいな形の中で、生活保護に陥らない、そういう意味で、そういうような方向というのはあるんだと思います。

 自主納付という話は、勝手に俺が納めたらいいんだという話ではなくて、要は、源泉徴収できないですから、どうやって集めるんですかというときに、あなたみずから納めてもらわないと集めようがないんですというような意味合い。ですから、税の方で申告納税という話をしました。自発的にやっていただかないと、なかなか把握のしようがないものですから自主納付という形を言っているわけでありまして、これは、勝手に納めてもいいんだよ、納めなくてもいいんだよという意味で言っているわけではないので、そういう意味合いで使っているということは御理解をいただきたい。

 ですから、自主納付と義務というのは、ちょっと違う部類の話であるというふうに御理解いただければありがたいと思います。

重徳委員 大体、私が申し上げたようなロジックということで、大臣と共通認識だというふうに理解をいたしました。自主納付という言葉はちょっとあれですけれども、おっしゃる意味はわかりました。

 それから、こういうことをつらつらと考えている中でふと思い出して、実は、これは本当はお配りすればよかったんですが、二〇〇八年三月の中央公論に、今の麻生副総理が、二〇〇八年三月ですから福田内閣のとき、だから麻生先生が総理になる直前の段階で、「消費税を一〇%にして基礎年金を全額税負担にしよう」、こういう論文を発表されております。

 まことにそのとおりだなというのがたくさんあります。少し引用しますと、「国民にとって最大の先行き不安は何かと言えば、老後の備えである年金である。」「「国民皆年金」という謳い文句は、もはや死語だ。学生や失業者にも一律定額の保険料の負担を求めるのは、酷であり、未納問題の解消は難しいと言わざるをえない。」「だから私はこの際、基礎年金の運営を保険料方式から全額税方式に改めるべきだと提案する。」、消費税を一〇%、それによって「国民年金で月一万四千円程度の保険料負担はなくなる。」「無年金者の問題は、保険料を支払わなかった人の自己責任の問題だという主張もあるが、無年金者は結局、生活保護の対象となる可能性が高く、最後は税金を投入する羽目になる。」ということから、だったら最初から税金でということなんですね。などなど、これまで保険料を負担してきた人とそうじゃない人の公平性をいかに担保するかというのは、「これまで支払った人の分はそれを記録し、それに応じた金額をプラスアルファ分として支給することでクリアすべきだろう。」と、かなり制度設計に踏み込むところまでおっしゃっています。

 などるる述べられているわけなんですが、結局ここで麻生副総理がおっしゃっていることは、今私どもが申し上げているように、やはり保険料というたてつけのまま低納付率を解消しようとしても、これはなかなか実際難しいだろう、だったら税負担につくりかえた方がいいのではないか、こういう議論でございます。

 大臣は前回の御答弁で、強制徴収する中で差し押さえなどを行う、今回、これからかなり力を入れていくとおっしゃいました。だったら、全員強制徴収をやるということも考えられるけれども、しかし、それは、それだけの、徴収をする側の人員がいないんだというようなことも述べられました。

 しかし、私は、現行制度を前提として、人手が足りないから徴収できないんだというのは小手先の話であって、より本質的には、現行の年金制度の位置づけそのものが曖昧で、だから、ここは思い切って税負担にするなら税負担にするとか、あるいは、自主的な保険というような言葉でなくて、実質、国保に関しては国保税なんという言い方もあるわけですから、国民年金保険税とかいう形で強制性をもっと高めていくような、そういうことも必要なんじゃないか。

 つまり、今、本当に国民にとって非常に理解しづらいことが問題ではないか。先ほどから言っている、払っても返ってこないんじゃないかということもしかりですね。やはり、一体何なんだ、義務なのかそうじゃないのかよくわからないし、払ったって返ってこないんだし、だったら払う方がおかしいじゃないかということで、優先順位が下がるわけですね。

 税金は納めます、医療保険は払います、だけれども年金保険料はいいや、何かよくわからないからという非常に曖昧な部分があるのでいけないんじゃないか、こう思うんですが、大臣、どのように思われますか。

田村国務大臣 税金はいろいろな取り方がありますね。消費税は強制的に取られますし、それから源泉徴収されればそれで取られちゃうわけでありますね。

 その中において、先ほど言いました申告納税なんかを主体的にやられる方々がどの程度、それは真面目にやられているんだと思いますけれども、そういう方々の中にも、もしかしたら国民年金と同じような形で払われないという方もおられるのかもわかりません。

 そういう意味からすると、先ほど来言っておりますとおり、自分から行かないとなかなかわからないというような制度である。しかし、裏返すと、だからこそ国民皆年金制度というものが成り立っているという、そこは裏と表の部分であるわけであります。

 ですから、そこがなかなか難しくて、それを無理やりという話になると、よほど人をそろえて強制徴収、一人ずつやっていかなきゃいけない。そのコスト・ベネフィットを考えるとなかなか、税の場合は、取ればその税金は自由に使えるわけですから、コストが幾らかかっても取った分だけ得するというか、国にとってみればその分だけ自由に使える分がちょっとふえるという話になりますが、年金の場合は、原資として払っていくお金でありますから、それは自由に使える税とは違うんだと思います。ですから、コストに係る徴収した金額という意味も、税と国民年金ではやはり意味合いがちょっと違うのかなというふうに思います。それから、人がいないというのもあります。

 いずれにいたしましても、そういう状況の中で、全ての人を網羅的に把握して全ていただきたいというのは理想で、当たり前なんですが、なかなか世の中というのはそういうわけにいかなくて、どこかで隠れて行われている犯罪も全て見つけて、悪いやつは捕まえたいというのが警察の思うところであろうと思いますが、なかなかそれだけの警察署員がいない中で、それこそ隠れていろいろなことをやられているものまで全て捕まえられないから、覚醒剤も含めて捕まえるのがなかなか大変だというような部分も、同じじゃないですけれども、要は、本当は全部網羅したいんだけれどもできないという中において、我々もいろいろな知恵を使って網羅するように努力しておるというふうに御理解いただければありがたいということであります。

重徳委員 確かに、国民年金の保険料は一律一万五千円程度ということで、所得税の場合はそもそも所得がちゃんと把握できているのかというところから始まるという意味では、スタートラインから違うのかもしれません。けれども、その上で、納税率というのは当然九〇%以上なわけですから、六割しか取れていない年金保険料というのは、やはり根本的に見直すべき部分があるんじゃないかなというふうに私は思います。

 時間もあと十五分ぐらいですので、次に話題を移します。

 年金記録の訂正手続について、今回、法案の中に盛り込まれております。

 まず、ことしの一月に、紙台帳とコンピューター記録七千九百万人分の照合、突き合わせが終了いたしました。ですから、前回も少し触れたところなんですが、ちょっと数字でお答えいただきたいんです。

 二十五年度までは、年金機構に千五百人規模の職員を配置してこの突き合わせ作業をしていただいておりましたが、もうこの作業は終わったわけですから、二十六年度からの人員配置は大分縮小されているんじゃないかと思います。ちょっと手元に資料がなかったので、教えていただきたいことと、あわせて、社会保障審議会の特別委員会報告書には、一区切りついたので、国民年金、厚生年金その他の基幹業務に配置がえをする、そしてそちらの体制強化を行う必要があると。強化というふうになって、では、人のトータルの数はどうなるのかよくわからないんです。やはり一山越えたわけですから、これは行革の観点からも、全体としても人員体制はぐっと減ると思うんですが、その点、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 年金記録問題に従事してきた職員は、年金機構の中でも、今お話しされました正規職員、あと臨時で雇っている職員もございますし、民間に委託しているところもございます。

 記録の、例えば今の紙とコンピューターの突合というようなことで言いますと、民間事業者を使いながらやってきたというところもあって、そういうところはなくなっていく。

 それから、臨時の職員についても減らしているというふうになりますが、正規の職員、それから准職員、正規とほぼ同じ処遇の職員でございますが、正規職員、准職員の体制としては、二十六年度は千人程度ということになってございます。この千人程度で、紙とコンピューター記録を突合した結果、あなたは大体突き当たったので、そうではないですかという確認を求め、またそれに基づいて記録を訂正し、年金の裁定という、金額を変えてお支払いする作業、そういったようなものを中心にやることになってございます。

 また、引き続きまして、例えば、ねんきんネットを使いやすくする、ねんきんネットによる記録の確認の促進、あるいは、ねんきん定期便、ことしも送りますけれども、そうした取り組みといったようなものをやるわけでございます。

 引き続きまして、業務量に応じた体制ということで、年金機構の方で体制を組んでいただくということで考えておりまして、厚生労働省としても、それに必要な予算とか支援とかいうことをやっていくということでございます。

重徳委員 この消えた年金記録問題というのは本当に大問題で、日本じゅうを騒がせた問題でありました。その作業が一区切りついたということでありますので、一般国民からすれば、当時、平成十九年の未統合記録が五千九十五万件あったわけですから、安倍総理の第一次政権のときに、最後の一人までチェックするんだということ、これは物すごくニュースを通じて全国に知れ渡ったお言葉でございますけれども、では、いよいよ最後の一人になってきたのかなという感じがするところ、いや、実はまだ未解明が二千百十二万件あるんですと。これはどう考えても、何か舌をかむというか、あれっというふうになると思うんですね。どなたが最後の一人なのかなということを聞こうと思っていたら、いや、まだ二千万人いてですねと。これはちょっと舌をかまないですかね。

 それは、よくよく聞けば、どうしても、本人に特別便などを行ったけれども未回答だとか、あるいは死亡、国外転居、届け出誤りなど、手がかりすら得られていないもの、そういうものも数百万件あるとか、納得しようと思えば納得できるかもしれませんが、随分違うんじゃないかという印象があると思います。

 とにかく、とりあえず機構の方は体制を縮小していくということですし、実務的には、これからは本当に、これまでとは大幅に違う体制になるわけですから、今この段階で、大臣の方から全国民に対して、消えた年金記録問題のてんまつ、取り組みの成果、現状、この辺をわかりやすくこの場で御説明いただきたいと思います。

田村国務大臣 これは、五千万件と言われたものでありました。この五千万件を、いろいろとあるコンピューターの記録というものをいろいろと調査しながら、何とか特定できる方々の記録に結びつけていこうという努力を始めたわけであります。その間に政権交代も起こって、長妻委員もきょう御質問をいただきましたけれども、私は年金記録担当大臣というような名前もあったような記憶がありますが、そういう形で対応いただいて、結果的に、平成二十五年十二月時点で二千九百九十八万件解明をしたわけであります。

 ただ、まだ二千百万件程度があるわけでありまして、この二千九百九十八万件に至る過程で、例の紙台帳という膨大な台帳を言うなればコンピューター記録と突き合わせるという作業、こういうものをやったわけでありまして、その中でもかなりの数の解明が進んでまいりました。

 ただ、いろいろなことをやったんですが、まだこれはわからない。わからないというのは、届かないのもいっぱいありますし、この人だろうと思ってその人に通知したら、私のじゃないと。名前も近いし生年月日も近い、この人だろうと思って通知しても、そうじゃない。なかなかこれは苦慮いたしておるわけでありますが、ねんきんネットという形で、今般、その情報を開示しまして、あなたのじゃないですかと。これをキャンペーンしながら、見てください、一度確認してください、こういうこともやってまいりました。

 問題は、これもさっきの話によく似ているんですが、日本じゅう一人一人に回って、一人一人に聞いて、この記録はどうですか、あなたのじゃないですか、記憶はないですかと。おばあちゃんは最近ちょっと耳が聞こえにくくなった、そうしたら、娘さんに、おばあちゃんにちょっと聞いてもらえませんかと。そういうことをやればさらに解明ができるのかもわかりませんが、残っておるのがここまでやっての記録ですから、かなり解明が難しいわけであります。

 そこは、何をやるにしても、我々が何かやるときには税金でやらせていただかなきゃならぬわけでありまして、使った税金に対して一定の効果がないと、今度は、使うときの国民の皆さんへの説明も必要なんですね。

 そういう意味で、今、何とか費用対効果も含めて、ねんきんネットということもやっていますけれども、ほかにも何かないか。いろいろと知恵を絞りながら、きょうも長妻委員には怒られましたけれども、いろいろなお知恵もいただきながら、これからも残ったものに対しての解明に全力を挙げて努力してまいりたい、このように考えております。

重徳委員 長妻委員の言われるように、手法はいろいろあるのかもしれません。サンプル調査ということも長妻委員はおっしゃっていますし、やはり未回答のものが三百万、それだけでもあるわけですから、それはどういう人たちなんだろうということは、私は、全部瞬時に当たることはできなくても、そういうことは懸命に努力しているんだという姿勢は引き続き必要だと思いますので、これは強く要望いたします。

 最後に、少し話題がかわるんですが、厚生年金基金に関する法案が昨年成立をいたしました。いわゆる代行割れの問題について、やはり私の地元でも、例のAIJ投資顧問に多額のお金を預けた結果、とんでもない事件になってしまって、多くのお金を失ったという問題が起こっております。

 そこで、事務局を担当している方なんかと話をいろいろとしますと、ある基金では、これまで長きにわたって、四十三年間ずっと運営をしてきたんだけれども、AIJの問題で非常に打撃を受けて、今回、ちゃちゃっと急に方針が定められたので、それに従って解散に向けた手続をとることになるんですが、予定どおり支給できなくなってしまった受給者の方には申しわけないとか、あるいは、代行割れ部分の補填は各事業主が最後は補填するわけです。こういうことは直接間接的にはさらにその従業員の皆さんにも負担がかかることになるわけで、本当に申しわけない気持ちになるというふうにおっしゃっているわけです。

 さらに聞きますと、ここには旧社保庁、厚労省からの天下りの役員が来ていて、その方がどこどこで運用するようにというふうに言ったことに従って運用したと。しかも、私がたまたま聞いた基金の話では、いや、そんなところに託すのはリスクがあるぞということも言ったにもかかわらず、その天下りの方がこっちがいいんだということで、そっちに運用してしまったと。いろいろなケースがあると思いますけれども、やはり天下りの問題も、非常に深刻な問題を招いた一因だと思います。

 そこで、まず、現在、基金の数自体も大分減りましたが、幾つの基金に何人のいわゆる天下りの方が国から行かれているのか、そしてそのポジションは運用責任者なんでしょうか、どうなんでしょうか。このあたり、把握していることを御答弁いただきたいと思います。

香取政府参考人 答弁申し上げます。

 厚生年金基金ですが、役員として再就職をいたしました国家公務員退職者の数は、平成二十四年三月時点で四百五名、二十五年三月時点で三百九十名となっております。

 役員以外の一般職員についてですが、職員として再就職している者は、二十四年三月時点で三百十六名ということになります。

 また、運用を担当する、これは役員、職員合わせてということになりますが、役職員として再就職をした国家公務員退職者等の数は、二十四年三月時点で四百二名と承知しております。

重徳委員 だから、いまだに運用を担当している方が全国で四百二人おみえになるということなんですけれども、これは、それだけが問題だったわけではありませんし、金融経済情勢の中でのことだったかもしれないし、あるいは一部のそういう大手の投資顧問の不祥事も絡んだものですから問題が非常に増幅されているとはいえ、やはりこれは、本来、運用する能力のある方、適切な判断のできる方がしなくてはならない業務を天下り公務員が行っているという非常にゆゆしい状況がまだ続いているということじゃないですか。

 このあたり、これまでの代行割れの問題を招いた責任、天下りの職員の責任も含めて、国として、厚労省として、これをどう捉えているのか、大臣から御答弁いただきたいと思います。

田村国務大臣 厚生年金基金制度ですけれども、確かに法律にのっとって制度が運用されてきたわけでありますが、経緯は、昭和四十年、厚生年金の給付の大幅な改善をするときに、事業主側からいろいろとやはり御意見がありまして、それをするのならば、言うなれば代行部分、こういうものを我々に運用させてほしいというような御要望がありました。それはスケールメリットが出ますので、全体として、厚生年金部分を代行という形で運用すれば、スケールメリットで自分のところの三階部分の基金の部分もメリットが出る、こういうことだったんだというふうに思います。

 その後、いろいろなことがあって、実は、経済状況が悪くなってということもあって必要な運用利回りを稼げなかった。これに関しては、昨年通していただきました改正厚生年金基金法によって、財政状況の悪いところは五年以内に解散をしていただくということになったわけであります。

 そういう対応をしてきたわけでありますが、天下りに関しては、国民の皆様方に誤解を招かないように我々はしていかなきゃならぬと思います。

 基金にOBが入っておられていろいろと運用されておられたということなんですが、ただ、中身だけ見ますと、だからいいという意味ではありませんが、平均運用利回り、平成二十三年度末ですけれども、マイナス一・四五がOBの基金、非OBの基金、つまりOBが行っていない基金の方はマイナス一・六九と、OBがいるところより悪いんですね。代行割れ基金数も、OB基金のところは割合が三六・八%、非OB基金は三八・四%、若干ですけれども非OB基金の方が悪い。でありますから、OBが行っているから財政が悪くなったとは言えないわけであります。

 ただ、おっしゃられるとおり、天下りのようなことで誤解を招くようなことは我々は避けていかなきゃいけないので、今後とも、そのような姿勢のもとで公務員の再就職に関しましては対応してまいりたい、このように考えております。

重徳委員 今の大臣の最後の御答弁は、いま一つ納得がいかないんです。それは、プロであろうと何だろうと結果が全ての世界ですから、たまたまの要素、いろいろな要素が絡んでの運用成績でしょうから、やはりどこまで責任を持てる人物なのか、能力のある人物なのかという観点からの人選というのがなければ、とても納得できることではないと思います。

 現に大きな損失が出て、事業主、そして間接的には従業員の方にも、一般国民の中小企業の方にも負担が及んでいるということをもっとしっかりと受けとめて、そのあたりの御答弁も含めていただきたいなということを最後に指摘させていただきまして、終わります。

 以上です。ありがとうございました。

後藤委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、国民年金保険料の後納制度について伺います。

 三年間の時限措置である後納制度をもう三年延長することになりました。ただし、前回は十年分納めることができたものを今回は五年分にとどめるといいます。私は、二〇一一年、民主党政権下で幻となった政府原案、これには恒久的措置とするべきとあったわけで、この点はやはりここに戻すべきだと考えており、この一点に絞って修正案も準備をさせていただきました。

 そこで、後納制度によって、二〇一二年十月施行からこれまで、累計千四十八万月分の納付が行われ、約一万五千人が老齢年金の受給資格期間を確保したといいます。ただ、当初は、本制度により無年金者ですぐに受給できる方は最大で約二千人程度と見込んでいたわけですよね。まあ、いいことですけれども、見込みよりも大分多い。それはなぜでしょうかということと、その実績についてどう評価しているのか、まず伺います。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の二千人という数字は、後納制度の利用見込みについてサンプル調査を行いまして、それに基づいて推計を行って、平成二十二年三月に公表したものでございます。

 このサンプル調査のときの二千人というのはどういう方かというと、後納制度を利用することによって受給資格期間を満たし得る方ということで、二千人。一昨日御答弁しました一万五千人というのは、日本年金機構が後納制度によって受給資格期間を満たした方として公表しているわけでありますけれども、これはどういう方かというと、後納制度を利用することによって受給資格期間を満たす方、それと、後納制度を利用してさらに任意加入をつけ加えることによって受給資格期間を満たす方、これはいずれも後納制度がなければ満たせなかったということでありますが、さっきの二千人よりは枠が広いわけでございます。その点が一つ。

 それから、このサンプル調査時点は六十五歳以上の方ということでの調査をしているわけでございますが、実は、六十五歳未満だけれども国民年金や老齢年金を繰り上げ受給される方がいます。ですので、年金機構の方で出している一万五千人、後納制度によって受給資格期間を満たした方ということではそちらも入っているということになりますので、実は単純に比較ができないということではございます。

 ただ、後納制度が無年金者の解消に一定の役割を果たしているというふうに考えてございます。

 以上です。

高橋(千)委員 見込み違いだったじゃないかと責めているわけじゃないんですから、そこはちゃんと分析すればいいわけですよ。サンプル調査としきりに言う方もいらっしゃいますが、その前提が違っていたということだったと思うんです。前提が違っているにしても、かなりの大きな数になったということは言えるかなと思うんですね。

 資料にちょっとつけておいたんですけれども、どんなことをやりましたかというふうなことを聞いたときに資料をいただいたんですけれども、「納め忘れがある皆様へ 年金額アップ・年金の受給資格を得られます」ということで、後納制度のメリットというのを示しております。わかりやすいんですよね。計算が面倒くさいですから。それが、一月分保険料を納めることによって年額が千六百十円ふえる、ですからこれを納めれば納めるほどふえていくよというのがすぐわかるわけです。そういうふうな形でさまざまやってきたんだということではないかなと思うんですね。

 では、一方で、六十五歳未満の方は、これも前提が違うという話になるかと思いますが、当時は最大千六百万人と言っておりました、年金額をふやせるんじゃないかと。それに対してどのようになったのでしょうか。また、それをどう評価されているのか。

樽見政府参考人 この千六百万人でございますけれども、六十五歳未満の方については、後納制度を利用できる可能性がある全ての方の人数ということで示したわけでございます。ですので、まさに六十五歳未満の方で、例えば空期間を持っておられる方とかというのはこちらの方ではっきりわかりませんので、むしろこれは、制度が使われた後で初めて、こういう方、こういう人数については実績がどうだったのかということがわかるわけでございます。現時点で、これは先日も御答弁しましたけれども、申し込みは百七万五千件の申込書を受け付けた、千四十八万月分、約千五百四十七億円の保険料の納付が行われて、受給資格期間が確保できる方が一万五千人あったというところはわかっておりますし、年金機構から公表しているわけでありますけれども、お尋ねの六十五歳未満の方で年金額が増加した方ということについては、人数を把握してございません。

 ただ、まさに、先ほどと同様に、これも既に一定の効果を上げているものというふうには認識してございまして、今後とも制度の利用促進を図ってまいりたいと考えています。

高橋(千)委員 受け付けた件数から六十五歳以上の受給に結びついた方を引くと、単純に引くと、百五万九千六百五十三件くらいになるということで、そういう方たちが、もしやふやすことができたんじゃないかということが言えると思うんですよね。

 これは、私は去年も質問していますけれども、最大一千六百万というのは、本当に最大引っ張っての数ですから、そこに近づくというか、ほとんど似た数字になるはずはないわけですね。だけれども、それだけのキャパがあるということは視野に入れながらやっていくということは大事なのではないか、このように思っております。

 そこで、残念ながら、一旦年金が決まっちゃった人、裁定されちゃった人は、どんなに低年金でも後納はできないわけですよね。これはすごい残念だな、もっとふやすことをやったらいいんじゃないかなと思うんですけれども、ただ、今言った、まだ年金をもらっていない方、裁定までたどり着いていない方たちが、それこそ裁定の前ですからね、今頑張れば結びつくかもしれない、あるいは、二十五年ルールがあったときに、とても自分は足りない、ある程度納めてきたけれども二十五年はとても無理だということで諦めていた方もいるわけですから、今この瞬間に、改めて、周知あるいは積極活用を呼びかけていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 後納制度の周知ということでございます。

 これまでも、後納制度が利用できる全ての方に対する個別のお知らせ、これを約二千九万件お送りしてございます。それから、新聞、ラジオの活用、あるいはポスターの掲示といった形での広報、それから市町村や民間企業などの関係団体に対する周知、広報の協力要請というようなことを行ってきたところでございます。

 それから、二十六年度においては、後納制度を利用することで無年金の解消が期待できる方などにつきまして、再度、個別のお知らせを送るということを予定しているところでございます。

 それから、二十七年十月には、これも先般来御議論に出ておりますけれども、年金の受給資格期間の短縮が予定されてございますので、一旦は年金の受給を諦めていた方にも改めて周知、広報を行うということも重要というふうに思いますので、今後、その具体的な広報などの方策について十分検討していきたいと思っております。

高橋(千)委員 まさにその短縮によって新たな可能性が生まれた方ということが言えるわけですので、周知の範囲というか、ツールについても、さまざま努力をしていただきたい、また、市町村との連携などもすごく大事ではないか、このように指摘をしたいと思います。

 そこで、まず、大臣に伺いたいんですけれども、さっきから言っているように、延長するんだけれども時限措置であるということ、それから、五年に短縮するということであります。

 それで、国民年金保険料を納付しない理由というのは、年金機構の調べを見ても、七四・一%が経済的に払うのが困難というものであります。しかも、これは三年ごとの調査で、どんどんポイントが上がっていて、九年間の比較でいうと、経済的な理由というのが一〇ポイント上がっているんですね。

 それに比例するように、平均所得が九年間で八十万円も減っています。これは、減り方が、滞納者の平均所得の方がもっと減っていまして、滞納者の平均所得は、今、二百九十五万円、九年前は四百十六万だったので、百二十一万円も減っているわけなんですね。もちろん、それでも、少なくても払っている人もいるということは承知の上で言っていますが、格差が広がっているということは間違いない。そういう状況で、それを反映した、困難だということでもあると思うんですよね。

 それで、資料の三に、このお知らせの中に、もう既についていますけれども、後納の場合は、当然、同じ保険料ではなくて、付加の保険料を払わなければならない。しかも、古いものほど加算額が高くなるわけですよね。

 ですから、後から払うんだからいいんじゃないかというふうになれば困るとよく言われるんですけれども、当然そこに対しては加算額という形でのペナルティーもあるわけですし、最初に言ったように、理由が、それどころじゃなくて、払うのが大変だと言っているんですね。

 そういうことを考えたら、真面目に払った人と不公平だという議論をするよりも、やはり、チャンスを広げるという立場で、後納制度を恒久的な仕組みにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 今までも、特例納付というような形で三回ほどやってきたわけであります。現行の後納制度が、言うなれば、二十七年九月までのこれが四回目。

 後納制度という言い方と特例納付と違いますけれども、今までも全部やはり時限でやってきたわけであります。なぜ時限かというと、これを常態化すると、今委員は割り増しになるからそれは違うとおっしゃられますが、やはり、後で払えばいいやというふうな意識になって、そのときそのとき払おうという意欲がそがれるのではないか、こういう御意見が多いわけであります。

 今回、十年から五年に縮めるというのは、十年でもいいじゃないかという御意見もありますが、一方で、今般は、受給資格期間を二十五年から十年に縮めるという提案もさせていただいておりますので、十年で後納が無期限ということになると、何にもなくても、一回も払っていなくても、最後十年、後納でやればいいやということも思わないとも限らないと言ったらいいのかわかりませんが、そういうことが事実上できるわけであります。

 やはりそういうことを考えると、今委員がおっしゃられたみたいに、十年のまま、しかも無期限で後納制度を続けるというのは、なかなか関係者の御理解も得づらい。何が関係者なのかよくわかりませんが、関係者の御理解も難しいということでございまして、そういうような中において、今般、このような提案をさせていただいておるということであります。

高橋(千)委員 受給資格期間が十年になるから、では後で一括で納めればいいやという人が出ないとも限らない、そういうことをさんざん理由で聞いたわけでありますけれども、もしも後で十年一括で納められるからいいやというくらいの払う力がある方たちが、その人たちは、ふだんは真面目に納めているんだろうかということなんですよ。

 何が言いたいかというと、全く納めていない人が、やれやれ、十年で資格が得られるや、では一括で納めようといったって、十年ですから。四十年で満額なわけでしょう。その四分の一だから、大した額じゃないじゃないですか、年金としてもらえる額は。払うのはどかんですけれども、もらえる額は大したことないわけですよ。そこに魅力があるだろうか、それだけお金のある人から見れば。

 実際に、既に、後納制度の実績を見ても、平均納付月数というのはせいぜい十一・一なんですよね。つまり、平均で一年にも満たないわけです。これを三年やったって、三年になるかならないか、その程度なわけでしょう。

 そういう中で、では、どんと納めた人がどのくらいあるのかということを考えたときに、そんなレアケースを心配するよりは、一人でも多くの人を救済する立場に立つべきではないですか。

田村国務大臣 二つ論点があって、一つの、無期限という話からすると、期限を切るから納めよう、期限が来るから納めなきゃいけない、今じゃなければこの後納制度が終わってしまう、こういうような意識も持っていただくわけであります。要は、これがずっと、いつ納めてもいいやということになれば、なかなか納める気が起こってこないということだってあるわけでありますから、やはり期限を切るということは私は重要な一つの要素だというふうに思います。

 実は、これをやるときにも、四回目をやったらまた今度来るんじゃないかということで、あのとき納めた方々が不公平になるんじゃないかというような意見もあるわけでありまして、さまざまな意見がある中において、どれが正しいと言うつもりもありませんが、今般、期限をやはり切ることが重要であろうというふうに認識をいたしました。

 それから、十年というものに関しては、そういう御意見もありますが、逆に、受給資格期間を十年にしましたから、そうすると、後から十年分納めれば年金をもらえるんだということが起こるわけでありまして、そういう方々が、実際問題、最後はやはり納められないやという話になって無年金になることだってあるわけでございますので、そういう御意見もいろいろ踏まえながら、今般はこのような提案をさせていただいたということであります。

高橋(千)委員 別に私は、納期限を延ばせと言っているわけじゃないんですから、延ばせというか、期限を全く持つなと言っているわけじゃないんですよね。

 だから、基本は、みんな、期限というものはこうだと思っているわけじゃないですか。それでもチャンスを逃した人が、こういう制度もあるよと後から知ればいいのであって、最初からそこを周知しろと言っているんじゃないんですから、私は、やはりそこはもう少し考えた方がいいと思うんですね。

 それで、年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会の報告書、昨年十二月に出ていますが、その中でも、恒久的な制度とすることは適切ではないと書いてはいます。でも、その下の段落に、「保険料の徴収債権の時効が二年である結果、納付可能期間が二年間となっていることは税と比べても短く、税や他の社会保険料と比べて納付率が低い現状を考えれば、経済的な都合等により二年を過ぎてから納付しようという意思のある者に対しては、モラルハザードに留意しつつ、事後的な納付の機会を設けることとしてもよい」とあるわけですよね。

 これはそうですよね、ほかの国保とか保育料とかいろいろ見ますと、五年ですよね。ですから、そういう意味で、二年というのは確かに厳しいよねということもあって、そういうことも踏まえていろいろ検討する必要があるのではないかと思いますが、これは審議官、どうぞ。

樽見政府参考人 まさに検討会でそういう御指摘をいただいて、納められる期間二年、実際、本来の二年の時効にかかるまでの期間でも納付率が数%上がるという状況にございますので、後で納められる機会はもう少しあってもいいのではないかという議論があったということです。

 ただ、一方で、先ほど大臣からもお話がありましたけれども、やはり保険料というのは、日々納めていただいて、事故があったときにそれが給付になって返ってくるという仕組みでありますので、いわば事故になりそうなときに保険料を納めるというのは保険の原則としてはいかがなものかということもございますので、そういう中で、時限として五年の後納を三年間続ける、そういう案にさせていただいたというところでございます。

高橋(千)委員 ここはまた引き続いて検討をしていただきたいと思うんです。

 前回だって、さっきのお知らせにあるように、三年間ですとお知らせをした後に、また三年延長するわけですから。そういう意味では、そのこと自体が非常に批判をされることにもなりかねないので、だったら納期限を五年にコンクリしてしまうとか、いろいろな考え方があるわけです。そういう意味で提言をさせていただきました。

 そこで、納付猶予制度に関しては、逆に今度大きく拡大をしたわけです。

 一枚目に戻りますけれども、三十歳未満から五十歳未満まで拡大をすることになった。これは非常によくできた、厚労省がつくった資料で、左側が所得制限、右側がその対象者の数ですよね。法定免除が百三十四万人、学生は百七十二万人、若年者は今四十二万人いるわけですけれども、そこを今度五十歳未満と。

 ただ、これは単純に見てしまうと、うまくない。つまり、これは五十歳までずっと猶予されるのかと思っちゃうと、うまくないわけですよね。つまり、五十歳までずっと空期間で、年金を全然納めないで、それから先、五十歳過ぎてから挽回できるというのは考えにくいわけですよね。

 それを狙ったわけではないのだと、その趣旨をしっかり答えていただきたい。

樽見政府参考人 若年者納付猶予制度は、若年者の非正規雇用労働者の増加という社会経済状況の変化を踏まえまして、所得が低い三十歳未満の被保険者に対して創設されたということでございますけれども、近年、もう少し上の層でも非正規雇用労働者が増加しているということを踏まえまして、対象年齢を三十歳未満という線から五十歳未満というところへ拡大する、中高年齢層の方が失業等によって一時的に経済状況が苦しくなった場合においても、猶予制度の利用をしていただいて、まさに未納にならないようにということでございます。

 猶予の制度を申請していただいておりますと、その間の障害あるいは死亡といった保険事故に対する保障が行われるということでございますので、社会保障の充実という観点からも意義があるというふうに思っております。

 この納付猶予を利用して、その後十年間の追納ということが可能になるということでございますので、納付機会の確保につながるというふうにも考えてございますので、そういう趣旨についてもしっかりと周知をしてまいりたいと思います。

高橋(千)委員 まさに、大学を出て一旦は正社員になったんだけれども、三十代後半とかにいろいろ、失業してしまったりとか、そういうこともあるんだ、だから、あくまでも、一時的なときにも空期間ということでつなげていくということが、万が一障害になったときとか、そういうのにいいんだということであったと思うんです。

 やはりそこの趣旨はすごく大事なことで、生かしていって、払わなくていいんだと言っているんじゃない、逆に免除の人だって追納はできるわけですから、そこは少しでも結びつけていくということはあわせてやっていかないと、ただ払わなくていい人を広げただけなんだというふうにとられないように、そこはしっかりやっていく必要があるのではないかと思います。

 それでは、時間の関係で思い切り飛ばしますけれども、年金受給年齢を七十五歳からということが、きょうも大変議論になりました。

 私は、非常に疑問に思ったのは、質問している方たちは、これは七十歳支給開始を前提としているのかしらと思ったわけですね。つまり、七十歳までは今選択制ですよと大臣が答えて、七十五歳までやるとしても選択制を検討しているということなんだと言っていますよね。

 得か得でないかの前に、実際、皆さんの暮らしというのはそれどころじゃなくて、今だって、早くもらってしまえば、その先どんなに長生きしても、年金はふえない、低いままなんだ、ずっと損する、それをわかっていても、それよりも目の前の生活を選んで、早くもらう人というのは多いわけですよね。

 そういうことをやはりちゃんと踏まえないと、得か得でないかという話より前に聞かなきゃいけないのは、七十五歳までは選択制なんという話が出てくるということは、要するに、選択ではなく、開始年齢を七十歳という趣旨なんですかということです。

田村国務大臣 早くもらえば損だという言い方がちょっと適切かどうか、我々はそうじゃないというふうに思っていて、早くもらわれるだけの話であります。

 その上で、七十五歳は、一例で申し上げたんですけれども、あくまでも選択制ということで申し上げました。

 七十歳を前提というわけではなくて、このときに私は申し上げておりますけれども、六十五歳から支給開始年齢を引き上げるというのは、よほど国民の皆様方の理解をいただかない限りは難しいと思いますよというお話をさせていただいております。今、六十五歳まで段階的に引き上げている最中でございますから、それをさらに支給開始年齢を強制的に引き上げるというようなことを考えているわけではございません。

高橋(千)委員 やはりそこが大事で、私は、七十歳に支給年齢を上げるということは絶対あってはならないと思います。

 だけれども、そういう議論は、別にもう始まっているわけですよね。資料の最後につけておきましたけれども、経済財政諮問会議の「選択する未来」委員会の中間整理で、五月十三日に出されたもので、これは一番上にある、五十年後も一億人程度の人口というのが非常に注目されました。

 だけれども、その下の方に、「高齢者 健康長寿を社会の活力に」ということで、「七十歳までを働く人(「新生産年齢人口」)と捉え直し、仕事や社会活動に参加。」というふうに書いているわけですよね。やはり、こういう議論というのはされてきたんだと思うんです。

 七十歳まで働ける人はいいですよ。だけれども、実際に、この間、年金支給年齢を六十五歳まで引き上げたときだって、再雇用制度という形で、結局は、全員がそこに行くわけじゃないですか。やはりそういう考え方が今政府のトレンドになっている。だから、大臣は、やはりそこをしっかりと否定しなければ、幾ら何でも、今、みんなが働けるわけじゃないのに、そこを支給年齢とするのは無理だ、できないということをやはり頑張ってもらいたいと思うんですね。

 これをもう一回答えていただけますか。

田村国務大臣 七十まで年金がもらえないということを書いているわけではないわけでありまして、そういう意味では、七十まで働ければ選択制ということで選択していただければいい、そこで平仄が合ってくるのかもわかりませんが。それを、強制的に年金の支給開始年齢を六十五から七十に引き上げるなどというふうなことは考えていないわけでございまして、この点は、はっきりとここで申し上げたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 大臣は考えていないということでしたので、政府の中でも頑張っていただきたい、外圧も強いのではないかという心配をしておりますので。

 そこで、きょうは、財政検証の問題も随分議論されました。二十一年、〇九年のときは二月に財政検証が出されていたので、確かにそれに比べると遅いというのは事実かなと思うんですね。

 それで、資料の五を見ていただきたいんですけれども、今、社保審の中で議論されているわけで、「具体的な経済前提の設定について」ということで、ここで見ますと、経済再生ケースと参考ケースと二通りあるんですけれども、はっきりわかるのは、物価上昇率が二〇一四年から三年間上がっていくけれども、賃金上昇率はずっとマイナスである。これは当然、消費税に引っ張られて上がるんだ。そこから、次の年から、四年目にして、名目賃金上昇率が三・六で、実質が一・四と、ようやっと追いついてくるという図式になるかなと思うんですね。

 これはやはり消費税にぐっと引っ張られて、また、この二〇一四年の初めのところには、最初のアベノミクスの効果で一気に利回りが九・何%に上がっていますので、積立金が三兆円ということで、プラスからスタートしているわけですよね。だけれども、それが続くわけではないのは誰もがわかっていることで、四年後にようやっと追いついてくる、これすらもかなり厳しい。甘いというか。

 賃金がここまで追いついてきますかということを大臣に伺いたいと思います。

田村国務大臣 これは、物価上昇率というものは当然のごとく消費税の絡みが出てくるわけでありまして、そういう意味でこういうふうな形になっておるわけでありますが、それの影響がなくなってくれば、当然のごとく、これは今賃金が上がるような正常な経済に戻してきているわけでありますから、このような形になっていかなければならないと思っております、していかなければならないというふうに思っております。

 どういうことを念頭に委員がおっしゃられておるのかちょっと私は理解できないわけでありますが、デフレ経済から正常な経済に戻せばこのような形になっていくという中において、このような試算が出てきておるものと考えております。

高橋(千)委員 こんなに物価が上がるのに賃金が追いつかないのかなと、これ自体が大変ショッキングなデータではあるんですけれども、さっき議論をずっとされていたように、前回の財政検証のときは、名目運用利回り四・一%は高過ぎると批判をされた、それに対して答えているのは、平成十三年からの実質的な運用利回りは平均で二・七六%なんだ、十分に目標を超えました、心配はなかったんですという答弁を繰り返されているわけなんですね。

 私、きょうはちょっと間に合わなくて資料を配っていないんですけれども、それがなぜ名目で二・二六になるかといいますと、これはプラマイの計算なんですよね。何かといいますと、十三年度から二十四年度の平均は、名目運用利回りが二・二六%に対して、賃金の上昇率はマイナス〇・四九%です。つまり、十二年間のうち九年間は賃金の上昇率がマイナスです。当たり前ですよね、ずっとデフレだったわけですから。なので、差し引きするとたまたまプラスになったというだけで、賃金がマイナスだったからそうなったというだけの話なわけですよね。

 しかも、まずそういう実態があるということと、そのときの検証のときは有識者の報告書がこういうふうに言っていました、雇用の非正規化が進むと見て、労働成長率を〇・八%に見ていたんですね。そのときだって非正規化が進むと言って、実際、そうなっているじゃないですか。

 政府の成長戦略というのはまさにそういう非正規を固定化する政策になっていて、結局、この賃金上昇率というところの多くを担保するものが、やはり非正規化で、逆の政策になっているんじゃないかということをぜひ指摘したいと思うんですが、どうでしょうか。

田村国務大臣 労働政策といいますか経済政策で、我々はその反省の上に、大胆な金融緩和を初めとするアベノミクスを今実行しておるわけであります。デフレ経済が続けば当然賃金も上がらない、賃金が上がらない社会、デフレ経済ではなかなか需要がふえないわけでありますから、失業率もなかなか改善しない、そういう傾向があるわけであります。全くそうだとは言いませんが、そういう傾向がある。

 そうなってくれば、当然、正規よりも非正規の方が多くなってくるということがあるわけでありまして、そういうことの反省の上に立って、今、失業率を下げ、そして有効求人倍率を上げ、本来正規で働きたいという方々が非正規から正規になっていただくためのいろいろな施策を打ってきておるわけでございまして、ぜひともそのような方向性をこれからもさらに加速をつけて続けてまいりたい、このように考えております。

高橋(千)委員 もう一つやりたかったんですけれども、残念ながら終わります。

後藤委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

後藤委員長 この際、本案に対し、高橋千鶴子君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。高橋千鶴子君。

    ―――――――――――――

 政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を説明します。

 公的年金は、憲法二十五条を根拠とし、老後の支えとなる重要なものです。政府提出法案は、保険料納付機会の拡大などを盛り込み、将来の年金受給や受給額の増加に結びつけようとするものであり、賛成です。

 いわゆる消えた年金問題は、なお二千九十七万件の未統合記録が残されています。年金記録訂正の法的手続の整備を行うことは必要ですが、最後まで国の責任による回復に力を尽くすべきです。

 保険料後納制度は、社会保障審議会年金部会が無年金、低年金を防止する観点からその導入を検討するよう提言し、二〇一一年に成立した年金確保支援法により、過去十年の保険料後納を可能としたものです。当時の政府原案では恒久措置となっていましたが、修正により三年の時限措置とされました。

 本法案は、この後納制度を延長するものの、三年の時限措置とした上、後納期間を過去五年に縮小するとしています。

 後納制度によって、当初の推計を大きく上回る約一万五千人が受給資格を得るなど、無年金、低年金の防止につながりました。もともと、納付できない人の大多数は経済的な理由です。後納制度が納付意欲の低下を招くなどという前に、一人でも多くの人が年金受給に結びつく機会をふやすべきです。そうした点から、本修正案を提出するものです。

 以下、修正案の骨子を説明します。

 三年の時限措置として、過去五年の国民年金保険料を後納することができるとする規定について、これを恒久的な制度とし、過去十年の後納を可能とするよう修正するものです。

 以上、委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。

後藤委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

後藤委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、高橋千鶴子君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

後藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

後藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

後藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

後藤委員長 次回は、来る二十八日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十八分散会


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