衆議院

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第28号 平成26年6月13日(金曜日)

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平成二十六年六月十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 後藤 茂之君

   理事 あべ 俊子君 理事 金子 恭之君

   理事 北村 茂男君 理事 とかしきなおみ君

   理事 丹羽 雄哉君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    池田 道孝君

      今枝宗一郎君    大久保三代君

      大串 正樹君    金子 恵美君

      小松  裕君    古賀  篤君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高鳥 修一君    高橋ひなこ君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      永山 文雄君    福山  守君

      船橋 利実君    堀内 詔子君

      松本  純君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      山下 貴司君    大西 健介君

      中根 康浩君    長妻  昭君

      柚木 道義君    浦野 靖人君

      清水鴻一郎君    重徳 和彦君

      樋口 尚也君    桝屋 敬悟君

      中島 克仁君    井坂 信彦君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   参考人

   (近畿大学法学部教授)  三柴 丈典君

   参考人

   (全国過労死を考える家族の会代表世話人)     寺西 笑子君

   参考人

   (大阪市立大学大学院医学研究科教授)

   (公益社団法人日本産業衛生学会理事長)      圓藤 吟史君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     八木 哲也君

  豊田真由子君     池田 道孝君

  村井 英樹君     福山  守君

  輿水 恵一君     樋口 尚也君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     豊田真由子君

  福山  守君     村井 英樹君

  八木 哲也君     赤枝 恒雄君

  樋口 尚也君     輿水 恵一君

    ―――――――――――――

六月十三日

 筋痛性脳脊髄炎患者の支援に関する請願(稲津久君紹介)(第一六三九号)

 同(今枝宗一郎君紹介)(第一六四〇号)

 同(浦野靖人君紹介)(第一六四一号)

 同(小松裕君紹介)(第一六四二号)

 同(重徳和彦君紹介)(第一六四三号)

 同(田中英之君紹介)(第一六四四号)

 同(高木美智代君紹介)(第一六四五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六四六号)

 同(玉城デニー君紹介)(第一六四七号)

 同(とかしきなおみ君紹介)(第一六四八号)

 同(冨樫博之君紹介)(第一六四九号)

 同(中川俊直君紹介)(第一六五〇号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一六五一号)

 同(船田元君紹介)(第一六五二号)

 同(船橋利実君紹介)(第一六五三号)

 同(村井英樹君紹介)(第一六五四号)

 同(荒井聰君紹介)(第一七四二号)

 同(泉健太君紹介)(第一七四三号)

 同(金子恭之君紹介)(第一七四四号)

 同(笹川博義君紹介)(第一七四五号)

 同(清水鴻一郎君紹介)(第一七四六号)

 同(中根康浩君紹介)(第一七四七号)

 同(中村裕之君紹介)(第一七四八号)

 同(橋本岳君紹介)(第一七四九号)

 同(堀内詔子君紹介)(第一七五〇号)

 同(松本洋平君紹介)(第一七五一号)

 同(武藤容治君紹介)(第一七五二号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八一二号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一八一三号)

 同(清水誠一君紹介)(第一八一四号)

 同(三ッ林裕巳君紹介)(第一八一五号)

 年金二・五%引き下げの中止に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一六五五号)

 障害者の生きる権利を保障するヘルパー派遣制度に関する請願(大西健介君紹介)(第一六五六号)

 障害者福祉についての新たな法制に関する請願(井上義久君紹介)(第一六五七号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一六五八号)

 同(佐藤英道君紹介)(第一六五九号)

 同(坂元大輔君紹介)(第一六六〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六六一号)

 同(高橋ひなこ君紹介)(第一六六二号)

 同(玉城デニー君紹介)(第一六六三号)

 同(遠山清彦君紹介)(第一六六四号)

 同(原田義昭君紹介)(第一六六五号)

 同(松本洋平君紹介)(第一六六六号)

 同(秋本真利君紹介)(第一七一五号)

 同(泉健太君紹介)(第一七一六号)

 同(うえの賢一郎君紹介)(第一七一七号)

 同(小川淳也君紹介)(第一七一八号)

 同(小熊慎司君紹介)(第一七一九号)

 同(小倉將信君紹介)(第一七二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一七二一号)

 同(階猛君紹介)(第一七二二号)

 同(田中和徳君紹介)(第一七二三号)

 同(福井照君紹介)(第一七二四号)

 同(小島敏文君紹介)(第一七八六号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第一七八七号)

 同(辻元清美君紹介)(第一七八八号)

 同(林宙紀君紹介)(第一七八九号)

 同(細田博之君紹介)(第一七九〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一七九一号)

 同(村上誠一郎君紹介)(第一七九二号)

 同(山本公一君紹介)(第一七九三号)

 肝硬変・肝がん患者の療養支援の推進に関する請願(河井克行君紹介)(第一六六七号)

 同(清水誠一君紹介)(第一六六八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六六九号)

 同(高橋ひなこ君紹介)(第一六七〇号)

 同(原田義昭君紹介)(第一六七一号)

 同(藤井比早之君紹介)(第一六七二号)

 同(松本純君紹介)(第一六七三号)

 同(保岡興治君紹介)(第一六七四号)

 同(泉健太君紹介)(第一七二五号)

 同(小熊慎司君紹介)(第一七二六号)

 同(大西英男君紹介)(第一七二七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一七二八号)

 同(田中和徳君紹介)(第一七二九号)

 同(務台俊介君紹介)(第一七三〇号)

 同(阿部知子君紹介)(第一七九四号)

 同(左藤章君紹介)(第一七九五号)

 同(竹下亘君紹介)(第一七九六号)

 同(林宙紀君紹介)(第一七九七号)

 同(宮川典子君紹介)(第一七九八号)

 難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患の総合対策を求めることに関する請願(浦野靖人君紹介)(第一六七五号)

 同(勝沼栄明君紹介)(第一六七六号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一六七七号)

 同(島田佳和君紹介)(第一六七八号)

 同(田中英之君紹介)(第一六七九号)

 同(中川俊直君紹介)(第一六八〇号)

 同(原田義昭君紹介)(第一六八一号)

 同(船田元君紹介)(第一六八二号)

 同(武藤貴也君紹介)(第一六八三号)

 同(山下貴司君紹介)(第一六八四号)

 同(吉川元君紹介)(第一六八五号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第一七三一号)

 同(清水鴻一郎君紹介)(第一七三二号)

 同(田所嘉徳君紹介)(第一七三三号)

 同(高橋ひなこ君紹介)(第一七三四号)

 同(中根康浩君紹介)(第一七三五号)

 同(馳浩君紹介)(第一七三六号)

 同(松本純君紹介)(第一七三七号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八〇〇号)

 同(小熊慎司君紹介)(第一八〇一号)

 同(左藤章君紹介)(第一八〇二号)

 同(清水誠一君紹介)(第一八〇三号)

 同(西岡新君紹介)(第一八〇四号)

 同(林宙紀君紹介)(第一八〇五号)

 同(船田元君紹介)(第一八〇六号)

 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願(神山佐市君紹介)(第一六八六号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一六八七号)

 同(佐藤英道君紹介)(第一六八八号)

 同(高木美智代君紹介)(第一六八九号)

 同(泉健太君紹介)(第一七三八号)

 同(小川淳也君紹介)(第一七三九号)

 同(階猛君紹介)(第一七四〇号)

 同(堀内詔子君紹介)(第一七四一号)

 同(大口善徳君紹介)(第一八〇七号)

 同(中根一幸君紹介)(第一八〇八号)

 同(中野洋昌君紹介)(第一八〇九号)

 同(横路孝弘君紹介)(第一八一〇号)

 現下の厳しい雇用失業情勢を踏まえた労働行政体制の拡充・強化を目指すことに関する請願(大西健介君紹介)(第一六九〇号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八一一号)

 安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員に関する請願(志位和夫君紹介)(第一七一四号)

 派遣法大改悪案を廃案にすることに関する請願(阿部知子君紹介)(第一七八二号)

 患者窓口負担の大幅軽減に関する請願(鈴木克昌君紹介)(第一七八三号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(小熊慎司君紹介)(第一七八四号)

 同(原田義昭君紹介)(第一七八五号)

 自己免疫性肝疾患患者の療養支援の推進に関する請願(阿部知子君紹介)(第一七九九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 労働安全衛生法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

後藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、近畿大学法学部教授三柴丈典君、全国過労死を考える家族の会代表世話人寺西笑子君、大阪市立大学大学院医学研究科教授・公益社団法人日本産業衛生学会理事長圓藤吟史君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず三柴参考人にお願いいたします。

三柴参考人 近畿大学の三柴と申します。

 今回は、貴重な場で意見陳述の機会を賜りまして、まことにありがとうございます。

 私は、労働法を専門としておりますけれども、労働安全衛生、中でもメンタルヘルスに力を入れて研究や社会活動などを行ってまいりました。行政との関係では、現在、労政審議会の安全衛生分科会で公益代表委員を務めさせていただいておりますが、今回の改正法案に盛り込まれた内容にも、濃淡はありますけれども、複数の検討会や分科会での審議、厚生労働科学研究などを通じて起案に関与させていただいてまいりました。

 本日は、法案の詳しい内容紹介は省き、本改正法案が持つ主な意義について、焦点を絞り、私見を述べさせていただきたいと存じます。

 本改正法案は、総じて、時代状況の変化などを背景に、今職場で生じている重要な安全衛生上の課題の解決に貢献するとともに、一部は国際的要請に応え、あるいは国際的な制度の水準をフォローする意義も持つものと認識しております。

 本法案に含まれた内容の概要を、私なりに整理して、法律案要綱の番号に沿ってお示しすれば、お手元の配付資料、スライド三、四枚目のようになります。個別の読み上げは省略させていただきますけれども、御一べついただければ幸いです。

 そこに掲げましたところの第三、四、七は、平成二十四年の衆院解散により廃案となった法案に含まれていたもので、第三、第四について、その後の情勢の変化などを踏まえて修正したものです。

 第一と六は、規制の総合的な見直しの一環ではありますが、今回は、その目的が実質的に達成された規制を廃止するなど、規制緩和の意味合いが強い内容となっております。

 なお、本改正法案には、実施に必要な準備期間などを考慮して、公布日からの施行期日を、内容によって、六月以内、一年以内、一年六月以内、二年以内の四種類に区分するとともに、経過措置と五年後の検討の定めが設けられております。

 次に、以上のうち、胆管がん問題を契機とした化学物質対策に関する改正案と、起案の過程で多くの議論がなされた受動喫煙防止対策、メンタルヘルス対策に関する各改正案の主な意義について申し述べます。

 前提として、近年の安衛法規の立案は、監督指導行政や刑事制裁のみではなくて、事案によっては民事裁判の基準として用いられる可能性も意識してなされることが多いことを強調する必要がございます。

 ここでは、事案によってはという点が重要で、裁判所が、個々の事件の個別事情や背景にある社会情勢などを読み取って、そうした規定を使い分けることで判決の妥当性を確保するということでございます。その結果、たとえ努力義務規定や手続的な規定であっても強制ルール的な役割を果たす場合もあれば、その逆、つまり、強制ルールであっても限定的な解釈などによってその役割を半減させられることも理論上はあり得ます。

 まさに、規制の総合的見直しが必要になってきた背景の一つでもありますが、現実に、複雑多様、かつ根の深いリスク要因が職場にふえてきている中で、行政やその関係団体の資源のみで安全衛生の実効を上げることが困難な事情からも、民事責任による規制力というのは、よくも悪くも無視できないものになってきております。

 この点で、これらの改正案は、特に使用者が責任を果たすために尽くすべき手続や、裁判の結果を左右することの多い予見可能性の確定に影響を与える可能性が高いと認識しております。

 その上で、まず、化学物質対策関係条項について申し上げれば、胆管がん問題が起きた当時、それを引き起こした化学物質と同じように、特別規則の対象となっていないけれども、職場で取り扱われている化学物質というのは現在六万種とも七万種とも言われるわけですけれども、それらが持つリスクへの現実的で実効的な対策について、優先順位を考えて法律条文にしたものが本改正案だと認識しております。要は、労使双方にそうした化学物質のリスクを認識させて、その物質の性状や職場の特性などに応じた有効な対策の促進を図る点に主な意義があると言えます。

 なお、たとえ化学物質自体が有害でも、適正使用によって健康障害を防げるので、あくまでリスクをベースとしたアプローチを採用していることを申し添えます。

 次に、受動喫煙防止対策関係条項について申し上げれば、法律レベルで新たに独立した法文を設けること自体に一定の意義があると解されます。社会啓発的な意義のほか、行政による支援、指導の根拠づけ、民事裁判への影響などが見込まれます。

 これまでの民事判例では、受動喫煙が、がんや心臓疾患などの重い健康被害をもたらし得るという一般論は認めながら、訴訟となった個別具体例では、立証が尽くされていないなどとして責任が否定されるケースが多くありました。受動喫煙に基づく労災認定もいまだ例がないと思います。しかし、個別事例の判断も社会認識の影響を受けることはありますので、改正法が一定の影響を与える可能性は否定できないと考えています。

 なお、喫煙については、さまざまな観点からさまざまな議論がなされてきましたが、原則として受動喫煙と喫煙は分けて考えた方がよいという点のみ付言させていただきたいと存じます。

 続いて、メンタルヘルス対策関係条項について申し述べます。

 メンタルヘルスについては、国際的にも確たる定義はなく、心の病についても、何が原因で、どういう状態にあるため、どう介入すれば、どういう転帰をたどるという基本的な部分での理解の共有が不十分な面があります。タイプによっては、どこまでが病かすら判然としない部分があります。

 しかし、現象面では、自殺を筆頭に、疾病休職者の増加、休職期間の長期化、疾病の再発、再燃、コミュニケーション能力の低下や、それによる職業的、社会的排除などさまざまな問題が生じており、当事者や関係者にとっては非常に重く、苦しい課題になっています。

 また、組織活性の低下や民事責任などの点で、組織経営者にとっても無視できない課題となっています。逆に言えば、この対策に組織一体となって取り組むことで、人事労務管理の質の向上、人材育成、職場風土の改善、経営改善につなげられる可能性はあります。さらに言えば、特に中小零細企業では、経営者自身のメンタルヘルスも重要な課題であって、要は、言葉の受けとめ方次第という面があります。

 欧米諸国でも同様の現象が起きておりまして、デンマーク、オランダ、イギリスなどでは、監督官がストレス対策に介入しています。中には、適切に対策を講じない事業者に厳しく指導したり、ウエブページで取り組み状況を公表するなどの施策を講じているところもあります。

 しかし、今のところ、国レベルで劇的効果を上げた実績は見当たらず、他方、国の示したガイドラインを個々の事業が個別事情に応じてアレンジするなどして、組織が一体となって対策に取り組むことで大きな成果が出たという個別報告が多々集められて、分析にかけられているという状況です。要するに、国の法政策レベルでも一定の試行錯誤は避けられないということかと思います。

 そうした状況を横ににらみ、今回提出された改正法案は、さまざまな面で従来の法政策を一歩前に進めるために造形された多面的なガラス細工だと認識しています。

 その基本構造は、平成十七年の安衛法改正により設けられた長時間労働者対象の面接指導制度と共通する部分が多いのですけれども、平成十八年に安衛法に基づいて発出された通称メンタルヘルス指針にも同様の仕組みが示されています。

 日本のメンタルヘルス対策というのは、過労死、過重労働対策として注目されて進展した経緯を踏まえて、まずは長時間労働従事者を対象とするところから法政策、対策は出発しました。

 他方、本改正案は、ストレスチェックを通じて、より幅広いストレス要因へのアプローチを図る意義を持っています。メンタルヘルス指針との関係では、指針のみでは十分な普及がかなわなかった現実も踏まえて、法律条文への格上げを図る意義もあると思います。その他、法定の健診制度や健診結果措置指針などとも共通する部分はありますけれども、これは、趣旨に共通項があることのほか、実施をスムーズにいかせるための配慮という面もあると認識しております。

 なお、メンタルヘルス対策では、不調の発生防止を意味する一次予防、不調の早期発見、早期介入、特に不調者への職場でできる合理的な配慮を意味する二次予防、発生してしまった不調者への事後対応を意味する三次予防の三種が求められます。それも、予防の次元を川上へ、つまり一次予防、ひいては不調者を生みにくい前提条件をつくるゼロ次予防へ引き上げていく必要があります。

 その点で、本改正案は、ストレスチェックという医学的な診断とは異なる検査を頭書に置くこと、その結果をまとめ、集団的データとして組織にフィードバックさせること、検査を担当した専門家や面接指導を担当した医師を通じ、職場のストレス要因を事業者に認識してもらうことなどによって、事業者に一次予防をいざなう意義を持っています。

 本改正案については、ストレスチェックで高ストレスとされた労働者が安易に精神科医に紹介されるのではないかという懸念が示されることがありますが、本来の趣旨は、本人のストレスへの気づきを媒体とした一次予防や二次予防にあります。これは、最近出された東芝事件の最高裁判決を含めて、あまたの民事判例が示してきた使用者の義務とも言えます。

 他方、精神科医療の現状について少なからず問題が提起されていることも事実です。本法案の施行の際には、引き続きそうした課題への対応が進められることを願っております。

 さて、一次予防が重要とはいえ、その性格上、一律的に具体的な措置を義務づけることは適当でないこともあって、本改正案は、その組織や個別の労使関係において有効な措置を導くための手続を定める形をとっています。つまり、合理的な手続を理性的に踏んでいけば、適切な対応法が導かれるように設計されているということであって、その実効性は、手続を踏む者の理性と良識にかかっている面もあります。それだけに、関係者の育成が施行上重要な鍵になります。その事情は、国際的にもおおむね共通しております。

 次に、改正案が予定する情報の取り扱いについて申し述べます。

 新制度は、検査結果について、労働者の同意がない場合の事業者への提供を例外なく認めないという厳しい姿勢をとっております。これは、労働者に安心して受検していただくためのいわば特別な措置であって、本来、風通しのよい職場環境のもとで、必要な情報が、本人の自発的な同意に基づいて適切に伝えられて、適切に管理される状況が望ましいことは言うまでもありません。

 また、関係判例を見ますと、一般的に、使用者が業務上の過重な負荷を課している場合、上司、部下など密接な接触関係にあって不調に気づくべき場合、それから定期健診などで本人がみずから不調を申告している場合、そして使用者が本人が自発的に申告しにくい条件をつくり出している場合などには、使用者は、本人の不調を知らされていないという理由では、対応責任を免れにくくなる傾向がうかがわれます。

 いずれにせよ、一律に論じるべき課題ではなくて、具体的な事案に即して判断する必要があります。

 それから、本改正案が面接指導の申し出による不利益取り扱いの禁止を予定している点についてですが、これは、その申し出によって不調の存在がうかがわれることで、面接指導をお願いしますと言うと不調の存在がうかがわれるということで、不利益に取り扱われることがあってはならないという趣旨と理解できます。

 不調が不明確な段階での不利益取り扱いは当然に禁止されるべきですけれども、それが明らかになった段階で健康管理上必要な措置を事業者がとる場合との切り分けについては、後に指針で詳細が示される予定です。

 もっとも、医師からの意見聴取、本人希望の確認など、要するに手続を尽くしたかが重要な意味を持ってくるでしょうし、既に蓄積されている労働法、民事法上の制約法理もあります。今後施行が予定されている障害者雇用促進法、特に差別禁止条項や合理的配慮に関する条項との関係も整理されることになると思います。

 最後に、PSWがストレスチェックの実施担当に入ることになれば、産業と精神保健福祉の連携を図る上で少なからぬ意義を持つと存じます。今後のメンタルヘルス対策では、結果的に離職が避けられない方の社会・職業復帰支援や、企業のメンタルヘルス文化の発展のためにも、産業と精神保健福祉の連携が必要になってくると考えております。

 以上をもって、本法案の可決、成立を心より願っております。

 ありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、寺西参考人にお願いいたします。

寺西参考人 全国過労死を考える家族の会の寺西笑子です。

 本日は、このような場を与えていただき、心より感謝申し上げます。

 また、先日は、過労死防止対策推進法を可決いただき、まことにありがとうございました。

 本日は、過労死問題ともかかわりの深い労働安全衛生法の一部を改正する法律案について、過労死の遺族の立場、また、遺族から相談をお受けしている者の立場として意見を申し上げます。

 なお、意見の中心は、今回の法案で新たに規定されるメンタルヘルスに関する事項と、企業名の公表にかかわる部分に絞らせていただきます。御了解いただければと存じます。

 過労死は、近年ふえ続けています。詳細はお配りした資料をごらんいただければと思いますが、労災認定件数が大幅にふえ続けています。特に心配されるのが、若者の件数の伸びが顕著なことです。

 さらに御理解いただきたいのが、労災認定されているのは過労死の氷山の一角にすぎないということです。これは、内閣府の自殺統計との比較から見ることができます。

 続いて、具体的な事例に即して労働安全衛生法への意見を述べさせていただきます。内容は、私たちの会員で、随行席にお座りの西垣さんが作成したものを読ませていただきます。

 私の息子は、大手電機メーカーIT関連子会社、千人規模にシステムエンジニアとして就職しました。

 入社二年目の三十七時間連続勤務を含む長時間、過重労働によりうつ病を発症し、二度の休職、復職でもうつ病が改善せず、さらに達成不可能なノルマを課せられ、四年目の二〇〇六年一月、治療薬を過量服用し、人生これからという二十七歳の若さで亡くなりました。

 息子は、入社当時トップクラスの技能を持っており、即戦力として会社の利益優先で働かされました。

 親の命にかえても守ってやりたかった息子がなぜ過労死しなければならなかったのか、労働安全衛生法とのかかわりについての問題点などを述べさせていただきます。

 第一は、復職時において、産業医がチェック機能としての役割を果たせなかったことです。

 息子の会社の産業医は、精神科医ではなく、復職の判断は本人に任されていました。本人たちは、復職しなければ退職を迫られるので、かかりつけ医に勤務可能との診断書を書いてもらい、無理をしてでも復職していたようです。

 また、上司には、システムエンジニアはうつになるのが当たり前、治療しながら、薬を飲みながら、仕事をしながら、五年くらいで治すものだとも言われていました。会社にうつ病に対する正しい理解が欠けており、労務管理が適切になされていませんでした。

 第二は、過労による体調不良を、仕事ではなく本人の勤務怠慢として捉えられていたため、本人がますます追い込まれる結果になったことです。

 息子の会社には健康管理室があり、過労で出勤不可能などになれば、医者にかかることを勧められ、その後も定期的に健康管理などが行われていたようですが、常に問題になるのは、会社の利益にかかわる遅刻、欠勤などの状況であり、過労による本人の健康管理は二の次でした。

 息子は、一回目の復職後、やや緩やかな勤務についていたのですが、破綻しそうなプロジェクトに二カ月間投入されて、再び早朝までの勤務につき、息子のシステム開発能力が高かったこともあり、プロジェクトは仕上がったそうですが、本人は二回目の休職に入り、その復職二カ月目に亡くなりました。

 同期入社七十四人中十二人、約二割が一カ月以上の休職、退職になったとの報告を裁判中にもらいました。

 つまり、会社内部の健康管理では会社の利益優先になりがちで、労働者の健康を守る上で限界があるということです。

 これと同様に、ストレスチェックを行うことは必要かつ大切なことだと考えますが、その医師、保健師が労働者の健康を第一に考え得る立場かどうかが問題になると考えます。

 さらに、過労による体調不良に陥った労働者が、身分上の不利益をこうむらない保証があるのかどうかも大切です。

 第三には、労働災害を発生させた企業に対し、国の責任で速やかに改善指導をしていただきたいと考えます。

 息子の労働災害が東京地方裁判所で認定された後、会社の民事責任として、一年余りの和解交渉の後に、労働条件の改善についても約束していただきました。それは、真の謝罪とは息子を死に至らしめた勤務実態を変えていただくことであり、労災認定を応援してくださった息子の同僚たちを守ることだと考えたからです。

 その和解内容の公の部分とは、会社は「労働時間の短縮、休憩設備の設置、労働法やメンタルヘルスについての講習会の実施等の労働条件の改善について引き続き取り組み、長時間労働による健康障害ないし労働災害の撲滅に向けて取り組む旨の決意を表明した。」です。

 かなり改善されたと聞いていますが、いつまでも私がその会社を見守ることは困難です。

 特に、命にかかわる労働災害を出した会社については、国の責任において、すぐにその改善を指導していただきたいと切に願います。再び同じ過ちが繰り返され、とうとい命が失われてからでは遅過ぎます。過労死は避けることのできる人災です。

 また、労働災害を発生させた企業へ、遺族や本人からも労働条件改善を要求できることが保証されるべしとも考えます。

 懸命に育てた息子や娘の過労死は、親の生きる望みを奪い、夫や妻の過労死は、家族の生きるすべまでも奪います。私の老後に、愛する息子はおりません。

 少子化で働き手の減少が問題になる中、働く人の命を守ることは、企業のリスクを減らし、日本の未来を守ることでもあります。

 そして、何より、懸命に働く者の命が粗末に扱われる貧しい日本であってはなりません。息子が願った健康的に働ける社会の実現を願います。

 労働安全衛生法改正に当たり、過労死初め労働災害をこれ以上出さないよう、労働現場の実態を御参考の上、御論議くださいますよう切にお願い申し上げます。

 以上です。

 今回の労働安全衛生法改正で導入されるストレスチェック制度は、過労死防止に向けて有益だと思います。取り返しのつかない事態が起こる前にチェックする仕組みで、本人、家族以外に、専門家や職場の第三者の目が行き届く可能性が高まります。

 一方で、西垣さんの手記にもありましたが、産業医などが、第三者的に結果を評価し、適切な対応を事業者にアドバイスできなければ、せっかくのストレスチェックも意味がありません。ストレスチェックに限りませんが、産業医などのポジションにある方が、事業者にしっかり物申せる力を持ち、それを担保する仕組みが構築されることで、労働者を守るとりでになり得るのだと思います。

 何より重要なのは、適切な労働環境の整備と労務管理の実施ですので、ストレスチェックがそれらを怠ることの言いわけにならないような運用を切に希望いたします。

 今回の労働安全衛生法改正では、重大な労災を繰り返し発生させた企業名の公表制度が盛り込まれています。これは非常に重要な仕組みです。

 過労死が労災認定された後、三六協定によらない残業を強いるなどの違法労働が明らかになり、企業の責任が裁判などで認められても、職場の長時間、過重労働は何ら改善されない事例を多く見てきました。社内で過労死を出し労災認定されたことさえも社員には知らされず、今までと同じ長時間、過重労働に従事させられている企業や、訴訟で和解解決の際に再発防止を約束させても、実際には何も改善せず、状況を放置している企業も多くあります。

 過労死をなくすために遺族が裁判を起こして、企業責任を認めさせ、職場改善を約束させても、継続した監視はできません。社会全体が過労死を出した企業を監視できる仕組みが必要です。

 企業名の公表は、国民が誰でも問題のあった企業を監視できる方法です。社会からの監視は、企業が改善に尽くす第一歩になります。また、就職活動をしている人にとっても重要な情報になります。ある高校の就職担当の先生は、生徒を過労死させる会社へ送ってしまったと自責の念に苦しんでいます。企業名の公表は、その企業の労働環境の実態を示す重要な情報です。

 一方、課題として、今回の改正では、重大な労災を繰り返し発生させた企業に限られる点です。再発の防止や改善を促進するためには、一回でも重大な労災事故を発生させた企業名を公表すべきです。また、労安衛法のみならず、過労死が関係する労働基準法などへの違反についても、企業名を公表する制度を導入すべきと思います。

 このように、労働安全衛生法による労働者の健康づくりについて意見を述べさせていただきましたが、そのうち最も重大な過労死の原因としては、まず、企業の利益優先の姿勢が挙げられます。利益を上げることは必要かもしれませんが、働く人の体、命が大事であり、優先させるべきことを、経営者、働く人、そして社会全体で認識しなければなりません。

 企業が利益を優先する余り、通常の労働ではこなし切れない業務やノルマを課せば、真面目な労働者ほどそれに応えようとして無理を重ね、あるいは無理を強いられ、結果として身を削り、命を失うことになります。

 また、そうした強力な圧力から一時的にでも逃れようとしても、労働者と雇用する企業の力関係は全く対等ではなく、企業が非常に強い状況です。企業の要求に無理をしてでも応えなければ、仕事を奪われ、不安定な職につくことを余儀なくされ、そしてそこでまた無理を重ねることになります。この恐怖から逃れるためには企業の要求に応えるしかないという、まさに八方塞がりの状況が、多くの労働者にとって現実となっています。

 こうした状況から労働者を救い、過労死や健康被害をなくすためには、今回の労働安全衛生法改正を適切に実施するとともに、労働基準法などの現行法にのっとった正しい労働時間の設定や労務管理、サービス残業の撲滅、長時間労働の規制を確実に実施することが求められます。

 さらには、インターバル規制、年休取得の推進などを、実効性や一定の強制力を持った形で進めていくことや、企業の内側だけでなく外にも相談できる窓口を整備することが必要です。このような企業と労働者という関係の外側から過労死を防止する仕組みの必要性を痛感しています。労働者が安心して働ける、実効性のあるルールを整備して、機能させていくことが重要です。

 以上、労働安全衛生法改正についての意見と要望を述べさせていただきました。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、圓藤参考人にお願いいたします。

圓藤参考人 私、日本産業衛生学会の理事長を務めております圓藤でございます。

 参考人として発言の機会を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。

 公益社団法人日本産業衛生学会は、一九二九年に設立され、日本医学会の分科会の一つとして数えられている学術団体でございます。産業衛生に関する学術の振興と、勤労者の職業起因性疾病の予防及び健康維持増進を図り、もって我が国の学術と社会の発展に寄与することを目的としております。会員数は現在七千五百六十八名で、産業医学、産業衛生に関する研究者、産業保健を職場で実践する専門職で構成しております。

 今回、労働安全衛生法改正で、四つのポイントについて意見を述べます。

 一つ目のポイントは、化学物質の危険有害性の調査であります。

 一定の危険有害性情報がある物質に対して、その情報をもとに安全データシートが交付されることが義務づけされていますが、今回、さらにリスクアセスメントをすることが義務づけられました。そのことにより、リスク対応が可能になります。各職場でどのようにしてつくるのか、事業場が自律的に安全文化を醸成する契機になるものと期待しております。

 二つ目のポイントは、心理的負担の程度を把握するための検査等、いわゆる事業場におけるストレスチェック制度についてであります。

 これまで学会は、事業場におけるストレスチェック制度の義務化に関して幾つか意見を述べてまいりました。それを今回の改正案に反映していただいているものと理解しております。

 さて、この点につきまして、五つほど意見を述べます。

 一つ目は、現在行われている労働安全衛生活動や先進的事例をさらに前進させることであります。

 事業場が自律的に計画を立案、実施し、評価、改善していくことが重要であります。職場の安全衛生委員会の審議を経て、産業医等によるストレスチェックの実施が効果的に運用されている先進事例も数多く見られます。職場ごとのストレスの状況を事業者が把握し、職場環境の改善を図る仕組みを検討することが望まれます。

 それらを踏まえて先進事例をさらに進めることができますよう、通達でサポートしていただけますようお願いいたします。

 二つ目として、ストレスチェック手法のエビデンスであります。

 心と体の健康は一体であり、それを理解した上で健康管理することが必要であります。従来言われていました九項目では不十分であり、職場環境などさまざまな要因を含めて検討すべきであると考えております。

 また、多くの項目から成る職業性ストレス簡易調査票が現在最もすぐれているとされておりますが、それでも十分なものではなく、実用化するには、科学的有効性の検証、さらに効果評価研究やモデル事業を推進して検証していく必要があります。また、項目が多くなりますと、そのことによります弊害も出てまいります。したがって、項目数を絞っていくという作業も必要な作業であります。

 それらのことにつきまして、学会で検証するとともに、新たな手法を開発していきたいと考えております。政府におかれましても、通達でガイドラインや好事例をお示しいただきますようお願いいたします。

 三つ目の意見としまして、ストレスチェックを本人のセルフケアの参考として活用を図ることが重要です。

 ストレスチェックは、一義的に、一次予防として本人のセルフケアに活用することです。現在、産業医や保健師は健康診断や保健指導、面接指導に関与しておりますので、ストレスチェックを運用する際も、産業保健スタッフに心理専門職を加えたものが中心的役割を担い、具体的な役割と手順を整理して運用していく必要があると考えております。

 さらに、他のメンタルヘルス対策を含めて、総合的な労働者の産業保健対策につなげることが必要であります。

 四つ目といたしまして、第七十九回労働政策審議会安全衛生分科会報告にありますように、産業医がいる事業場においては、ストレスチェックの実施及び面接指導に産業医が関与することが望ましいと考えております。

 ストレスチェックの検査結果は重要な個人情報で、慎重に取り扱うべきものであります。その一方で、職場において安全配慮を必要とする情報を含んでおります。

 産業医は、事業者の安全配慮義務履行において専門家としてアドバイスする役割を担い、また、専門家として情報を適切に扱っております。本人の申し出があるまで対処できないとすれば、その必要な対応がおくれることもあり得ます。産業保健専門職がストレスチェックで得た情報を、プライバシーに配慮して適切に加工して、事業者に伝えるなどの方策もあろうと考えます。

 これらの点について整理していただくことを希望いたします。

 五つ目として、小規模事業場においてであります。

 従業員五十人未満の小規模事業場では、当分の間努力義務とされました。小規模事業場では、産業保健専門職はほとんどいないため、ストレスチェックを実施したとしても、情報管理や事後措置を十分に行える状況にありません。

 地域産業保健事業及びメンタルヘルス対策支援事業として、小規模事業場に対して活用推進を図るべきと考えております。小規模事業場への支援を一層強化するよう、その予算や制度の活性化について十分配慮されますことを願っております。

 三つ目のポイントといたしまして、受動喫煙防止につきまして意見を述べさせていただきます。

 「実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。」とされました。受動喫煙対策に取り組んでいる事業場が増加しており、受動喫煙対策をさらに進めるものと理解しております。

 禁煙推進学術ネットワークでは、屋内の職場の全てを全面禁煙とするよう要望しております。政府目標では、二〇二〇年までに受動喫煙のない職場を実現することを掲げております。

 小児が入店する飲食店や未成年者が働いている職場では原則禁止にするなど、次の段階での対策を検討していただきたいと考えております。

 四つ目のポイントは、特別安全衛生改善計画であります。

 重大な労働災害を繰り返す企業に改善計画を作成させ、改善を図らせる仕組みを創設するとされています。計画作成指示等に従わない企業に対しては勧告する、それにも従わない企業については名称を公表するとなっております。

 罪を憎んで人を憎まずという言葉がありますように、労働災害を憎んで、その改善を含め、事例をどんどん公表していただきますようお願いいたします。それを他山の石として再発防止に役立てたいと考えております。

 今回の改正につきまして、以上四点、事業場が自主的、自律的に産業保健を推進するためのものであり、ひいては社会の発展に寄与するものとして意見を陳述いたしました。

 ありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

後藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村井英樹君。

村井委員 自民党の衆議院議員の村井英樹でございます。

 本日は、三先生、厚生労働委員会においでをいただきまして、労働安全衛生法の改正案についての審議に御協力をいただくことを、まず私からも御礼を申し上げたいと思います。

 その上で、十五分と時間が限られておりますので、どんどん質問をさせていただきたいと思っております。私が余り意見を申し上げてもよくないと思いますので、ぜひ先生方に長い時間お答えをいただくようにしてまいりたい、このように思っております。

 まず、もう先生方からもお話がございましたけれども、精神障害の労災認定の件数が三年連続で過去最高を更新するなど、メンタルヘルスを取り巻く環境はより一層深刻な状況になっております。まさに早急に手を打たなければならない状況だろうと思っておりますが、メンタルヘルスに絞って質問をさせていただこうと思います。

 まず伺いたいのは、労使、これが果たすべき役割についてであります。

 もちろん、国の対策、これはこれで必要な部分もあろうかと思いますが、その一方で、まずは労使の方で行うべきことは行っていただく、メンタルヘルスについて気を使うところは気を使っていただくといったようなことであろうと思いますが、三先生にまずお伺いをしたいのは、職場のストレスへの対応のために労働者本人と事業者のそれぞれができること、そしてまた果たすべき役割についてどう考えていらっしゃるのか、三先生にまず伺いたいと思います。

三柴参考人 御質問ありがとうございます。お答えいたします。

 国のメンタルヘルス指針では、本人にはセルフケア、それ以外にはラインによるケアとか、経営者としてできる専門家の活用とかトップとしての態度表明とかいったことが書かれておりますので、それを推進するということが前提になるだろうと思います。

 労働者については、個人レベルではやはり自分自身の成長を図るということが重要だ。また、労組については、今のところまだ存在感が十分でないところがあって、ここは、産業カウンセラーという民間資格がありますけれども、それが果たしているような組織内のコミュニケーションの調整とか、そういうものは果たしていただきたい、せめて窓口を果たしていただきたいなという思いがございます。

 使用者側は、やはり人事労務管理の基本を立て直すということが、人を使うという性格上、基本になるのではないかというふうに考えております。

寺西参考人 使用者側の方には、労働時間管理、過重労働を、無理な形を強いるということがやはり原因としては多くあります。そして、本人が、健康管理と申しましても、長時間、過重労働で時間拘束が長い中、なかなかお医者さんにもかかれないという実情がございます。そういったところ、職場の中では、その会社に入ってしまえば、その会社の資質に合わせていかなければならないというのが働く人の実態であります。

 そういうところを御参考にしていただければと思います。

圓藤参考人 事業者には安全配慮義務がありますし、労働者には自己保健義務があります。その両者の間にも、仲間を守るという職場の風土というのは非常に重要なものであろうと思っております。

 先ほど三柴先生が言われました、セルフケア、ラインのケアといった三つのケアというのも非常に重要でありますし、家族を含めてのケアも非常に重要な点であろうと思っております。

 これにつきましては、各職場でそれぞれ工夫して活動しておりますので、それをぜひとも推進していただくというのが基本でありまして、それと、法的なサポートというのがまた重要なことであろうというふうに思っております。

 以上でございます。

村井委員 各先生から、労使それぞれが果たすべき役割について概略的にお話をいただきました。

 引き続きまして、時間も限られておりますので、三柴先生に。

 労働政策審議会にも御出席されていたかと思いますが、政府のこの審議会の場で、今回の法改正について、関係学会から一部否定的な意見も幾つかあったようでありまして、例えば、今回のメンタルヘルスについて、二次予防ではなく一次予防のための制度として運用される必要があるだとか、科学的根拠が不十分だとか、現在行われている取り組みを後退させないことが必要などの指摘がなされたと聞いております。さらには、労働者は、精神面の健康保持は重要だと思いつつ、ストレスの状況を事業者に知られることに抵抗があるのではないかといったような指摘もなされていたようであります。

 こうした点について、審議会で全体としてどのような議論が行われたのか、そしてまた、先生自身がどのようにお考えなのか、御意見を伺えればと思います。

三柴参考人 今回の法案を実効的なメンタルヘルス対策につなげるためにという意味では、まずは、労働者のセルフケアに、みずからできる精神保健につなげる、また、それに役立つような仕組みにする必要があるということ、また、経営者側においても、みずから快適な職場形成に努めていくという方向でこの制度を設計し活用していくという点では大体意見が一致して、労使ともにストレスチェックの義務化についても大きな反対はなくて、現在に至っているということかと思います。

 また、使用者側からは、既に、相談窓口の対応とか、管理職を中心とした研修制度であるとか、そういったことの取り組みを行っているところも多くありまして、そうした情報提供も分科会に出されまして、そういった取り組みも今後発展させていくべきだろうと。メンタル対策で一次予防というと、実は研修が一つの方策になるという点もあって、非常にソフトな性格を持つ問題ですので、そういった理解の共有が図られたというところもあります。

 また、労働者側は、不利益取り扱いがこの制度を通じて行われないように配慮が必要だという意見がありました。

 その他もろもろの議論がございましたけれども、私自身が総じてどう考えるかという点ですけれども、実は、先ほど申し上げたところにほぼ尽くされております。

村井委員 ありがとうございます。

 先生からさまざまな論点への御意見をいただきましたけれども、このメンタルヘルスをめぐって、さらにもう一つ、これは与党プロセスの中で大きな議論となったポイントでありますけれども、今回の法案では、このメンタルヘルスについて、小規模事業場への特例というものが置かれております。従業員数五十人未満の事業場については、この対策を努力義務とする特例を設けることとしたわけでありますが、この点についてどのようにお考えか。

 この点は、では三先生にぜひ伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

三柴参考人 理想的には、中小零細企業でも問題が多い以上は本来カバーすべきだと思っておりますけれども、実際問題、そのための体制がまだ十分でない。そもそも、法律上も産業医の選任義務が義務としてはないということで、それだけじゃなくて、そのほかの産業保健体制についても十分とは言えない現状がありますので、スタートラインとして努力義務から入るというのは現実的だろう。

 ただ、五年後には検討が予定された法案でもありますので、その時点でもう一度、まさに再検討されるべきかなというふうに考えております。

寺西参考人 先ほど意見を述べさせていただいた中にありますように、大企業であっても、西垣さんのような、そういった十分とは言えない産業医制度というふうなことになっております。ましてや、私の夫のような、小さな会社で働いている者は、夫は二十年間会社で働いてきましたけれども、普通の診療さえ一度もなかったんですね。それで、たまりかねて個人で行ったという経過があります。

 大企業でさえなかなか十分でないところを、やはり小さな会社であっては全く無法地帯というように、それが実情だと思います。

圓藤参考人 一番の問題点は、小規模事業場では産業保健専門職がほとんどいないということであります。産業保健スタッフがいないと、ストレスチェックを行ったとしても、その後の情報管理や事後措置が行える状況にない、このことが一番問題でありまして、産業保健専門職を何らかの形で設置できるようにすることが先決であろうというふうに考えております。

 そのことは、五十人以上の事業場においては産業医を選任する義務がございますので、それに準じた形を五十人未満の事業場でも推進していただけますようお願いしたいと思います。

 以上でございます。

村井委員 ありがとうございます。

 各先生から、今回努力義務になったこの規定について、将来的にはぜひ導入をしてほしいといったようなお話を伺いました。

 時間も来ておりますので、そろそろ最後の質問かもしれませんが、今回の法改正によって、実際、メンタルヘルスで何か問題があると発見をされたときに、就業上の措置を行うべきかどうか、また、どのように行っていくべきかといったような論点がさらにあろうかと思います。

 やはりストレスチェックはやりっ放しではいけない。労働者のメンタル不調を防ぐために、その結果を事業者が残業の削減などの就業上の措置に生かしていくことが健康確保の観点から重要だろうということでありますが、その一方で、もう既に論点にもありますけれども、事業者によるこうした措置は、労働者にとって収入が減るだとか、そういったような結果にもなりかねないんだろうと思っております。

 こういったような就業上の措置の中身について、事業者の判断でよいということになると、会社によってかなりばらつきが大きくなったり、悪くすると労働者にとって不合理な不利益取り扱いがされるようなおそれがあることから、合理的な就業上の措置がなされるようにする必要があると考えておりますが、そのようにするためにはどのようにしたらよいか、三先生から伺いたいと思います。

三柴参考人 端的に申し上げて、冒頭の陳述で申し上げたとおりなんですけれども、要は、手続を尽くして、その中で切り分けが図れるようにすることだと思っております。ですから、まず医師からちゃんと専門的な意見を聞いて、後は民主的に措置を決めていくということになるのではないか。

 ただし、手続を尽くしても、実際、実態と合わない措置が出てくることはあるので、そこは、反証の可能性、反対の証明の可能性を残しておくということが現実的ではないかと思います、どちら側にしても。

寺西参考人 やはり、働いている方のプライベートなことを守ってあげること。ですから、そういう個人情報は、会社の方に直接行くのではなくて、会社外の方で、何とか労働者の立場を守りながら、その人に沿った形で対処していただく、そういう仕組みが大事かと思います。

圓藤参考人 事後措置については産業医が的確に判断すると思います。それを意見として事業者に伝える、事業者はそれに従って対応するというのが基本的な物事であります。それを行っていったら、不利益をこうむるということは比較的少ないだろうというふうに考えております。

村井委員 今回の労働安全衛生法でありますが、三先生からお話を伺って私自身が感じたことは、やはり今回の法改正は一つ必要なんだろうということであります。これをしっかりとまずは形にして、ただ、それで終わりということではなくて、これをしっかりと行政と連携をしながら実効性のあるものにしていく、そしてまた、制度的に足らざるところがあれば、それは一つずつピースを埋め込んでいくということで、しっかりと労働者の安全を守ってまいりたいと私も感じた次第であります。

 きょうは、三先生、お忙しいところをどうもありがとうございました。

後藤委員長 次に、山井和則君。

山井委員 十五分間、質問をさせていただきたいと思います。

 参考人の方々におかれましては、大変お忙しい中お越しをいただきまして、大変重要なお話をお聞かせいただいて、ありがとうございました。

 私、二〇〇九年から一〇年にかけて、民主党政権で長妻大臣のもと、厚生労働大臣政務官をさせていただいておりまして、そのときに、この労働安全衛生法の改正をしようということでスタートした話でもあります。今回、成立に近づいてまいりましたが、それから五年間かかったわけであります。

 何としても、半歩前進、一歩前進かもしれませんが、この改正はしていかないとならないと思っておりますが、三人の参考人の方々のお話をお聞きして、まだまだ不十分な点は多いなということを改めて痛感しております。

 やはり、話を聞けば聞くほど、労使は対等ではない、働く労働者は非常に立場が弱い、体を壊しながらも働かざるを得ない、そういうふうなことを改めてつくづく感じさせていただきました。そのような非常に弱い立場の労働者、自分で体調が悪いとも病院に行きたいとも言えないケースもある、あるいは、もう少し休みたいけれども、これ以上休んだらそれこそ解雇されてしまうのではないか、家族のことを思えば思うほど、つらくてもそれを言えない、そういうふうに感じたわけです。

 労働安全衛生、労働者の健康を守っていく上で、この弱い立場の労働者をいかに守ればいいのか、このことについて三人の参考人の方々の御意見をお聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。

三柴参考人 御質問ありがとうございます。

 メンタルの課題というのは、本質的に、確かに労働者の弱さが、使用者との関係での不均衡が浮き上がる面と、労使の構図では見られない面と、両面あると思っています。

 特に、立場の弱い方にどう手当てするかといったときには、一つにはやはり、メンタル対策といえども、手続をしっかり進めていく中で、例えば、悪質なハラスメントの防止であるとか、それから条件変化が激しいときのサポートとか、人事労務管理にかかわるけれどもここだけは最低限守っていただきたいというところをまず確保すること。あとは、ストレスチェックなりなんなり手続をしっかり進めていくことが基本になるのではないかと思います。

寺西参考人 やはり使用者側が、働く人の健康、そして長時間労働になっていないか、過重労働になっていないか。過労死する人は、全て真面目で責任感が強い人ばかりです。そういう人に仕事が集中する。そして、語弊がありますが、適当にしている人はうまく逃げていく。でも、やはり優秀であればあるほど仕事から逃がしてもらえないというのが実情であります。

 ですから、そういう立場を承知しながら仕事を山積みにするという実情がある中で、やはり少なくとも、使用者側にしてみれば、最低、法的に守る健康配慮というのは必ず義務づけて実施していただきたいというところが、働く人を守っていくのではないかというふうに考えております。

圓藤参考人 使用者対労働者という構図では、かなり厳しい構図になろうかと思います。そこに産業保健というものが見えてくるかどうか。そこに産業保健が見えてくる状況になれば、それの間で適切に判断し、アドバイスし、両者に対して物事が言えることが多いと思います。

 したがいまして、産業保健について多くの方が活動しておりますけれども、まだまだ全ての労働者にサービスが行き届いていない、そういう実態がございますので、至らぬところもまだあろうかと思いますが、やはり、産業保健がしっかりしておれば、それなりの対応は可能であろうというふうに考えております。

山井委員 ありがとうございます。

 先ほどの寺西参考人の話の中で、結局、真面目で責任感の重い人ほど頼られるという話がありました。それに加えて、家族思いで、同僚のことを思っておられる、そういう方ほど健康被害を受けやすいのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、非常に、ある意味でいい人ほど健康被害を受けてしまう、やはりこの構図は何としても打破していかねばならないと思います。

 きょう、中原のり子さんもおられますが、御主人の利郎さんは、小児科医で、子供が大好きで、子供のため、子供のためということで、小児科医の現場でずっと働いておられて、結局、最終的に過労死されてしまうことになりました。また、西垣さんにおかれましては、私も先ほどのお話を聞いて改めて考えさせられたのは、すごく優秀だったわけですよね。優秀だったがゆえに頼られて、しかし、こういうシステムエンジニアの世界では、うつになったりするのはもう当たり前だと。

 幾ら何でも、お話にあったように、確かに企業の利益はもちろん大事ですけれども、しかし、それによって健康を害したり、あるいは命を失ったりすると、それは、本人にとってはもちろんですけれども、企業にとってももちろんよくないわけですから、やはりそういうところを変えていかねばならないというふうに思います。

 そこで、寺西参考人にお伺いしたいんですが、法律を遵守してほしいというお話がありました。私たちは国会議員ですから法律をつくる立場なんですが、幾ら法律があっても守られなかったら意味がないわけで、しかし、残念ながら、こういう労働基準法、労働安全衛生法というのは、割と現場に行くと緩いというか、抜け道があるような気もするんですが、長年活動されてきて、どうすれば企業に少なくとも今ある法律を守らせることができるのか、このことについていかが思われますか。

寺西参考人 例えば交通事故であったりとか、ほかの法令、それはいろいろ厳しい面もあるんですが、本当に、働く人が守られる法律というのは、個人が幾ら努力しても、また、一企業がどれだけ努力をしても、なかなかこの厳しい競争社会の中で守ることができないということがあります。ですから、本日は過労死防止法の直接の場ではございませんが、私たちが求めているのは、国がこの法律に責任を持って過労死を防止する、そういうことを求めているわけです。

 ですから、個人や一企業や、そういったところでできないことは、やはり国の責任でもって防止に向けて指示を出していただきたいというふうに考えております。そうでないと、なかなか、働く人の意識、これは、立場の弱さから意識を変えようと思っても、弱いところから変えられることではありません。

 モラルの欠如というのは、国がそういう方向を示していただくことによって国全体のモラルが上がっていくというふうに考えておりますので、ぜひ先生方のお力をおかりしたいというふうに思っております。

山井委員 今回、労働安全衛生法、メンタルヘルスということが大きなテーマ、ストレスチェックがテーマとなっております。

 私も、高校時代一番の親友が、クラスメートで、三年間同級生でいましたけれども、私の最も尊敬する、私がこういう福祉や政治に入るきっかけとなったすばらしい親友でして、高校三年間、大学六年間、九年間ずっと一緒でありました。

 彼は性格がよくて、優秀で、そして、私からいうと神様のように、自分のことよりも人のことをやってくれる。私も高校時代、勉強を教えてもらったりして、彼は自分のことを後にして困っている人に勉強を教えて、こういう人間になりたいなと思って私も福祉や政治の世界を志したんですけれども、彼もやはり勉強もめちゃくちゃできて、研究もめちゃくちゃできて、その結果、残念ながら、メンタルな病気になって、結果的にはクラスで一番早く亡くなってしまった。それも自死という形をとってしまった。

 だから、とにかく、先ほどもおっしゃっていたように、逆に、どちらかというと真面目でない人の方が力強く生きたりして、一番性格がよくて、家族思いで、仕事に情熱を持っていて、優秀で、そういう人ほどメンタルな病に傷ついたりしてしまう、この現状を何としても変えていかねばならないと思います。

 正直者がばかを見ると言ったら言い過ぎかもしれませんが、このような不条理な現状を変えていくために、改めてになりますが、寺西さん、どういうふうなことをしていけばよろしいでしょうか。

寺西参考人 私ごとですが、私の夫も本当にそうでした。真面目で責任感が強い、優秀で仕事熱心な、本当に頑張り屋さんでした。やはり、そういう人を使い捨てるのではなくて、そういう人を大事に育てていっていただく、そういう社会と、そして会社の考え方、そういうところが大事かと思います。

 そのためにも、真面目で責任感が強い、そういう優秀な人が過労死する社会ではなくて、そういう人が報われる社会、そういった国づくりということをこの国会で考えていただきたいし、私たちはそのような望みを持っているところです。

 私たちは本当にお願いする立場でございますので、先生方で、立法のお力で何とかしてほしいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

山井委員 ここは本当に、きょうのお話は、御本人は当然みずからの健康、命を守れない、職務に忠実であればあるほど守れない、かつ、企業もどちらかというと利益に対して労働者の健康を後回しにしてしまう、この構造を変えられるのは法律であり、まさに政治家の責務だというふうに思うんです。

 そこで、三人の参考人の方にお伺いしたいんですが、今回の労働安全衛生法の中で、企業名の公表というのが入っております。これは、一回ではなくて、繰り返しそういう違反があれば企業名の公表ということになっておりますが、先ほど寺西参考人からは、繰り返しじゃなくて、一回でも企業名公表で、それぐらいしか実効性のある改善措置はとれないんだというお話がありました。

 改めて三人の参考人の方々に、この企業名の公表ということについて、御意見があればお聞きしたいと思います。

三柴参考人 お答えにならないかもしれませんけれども、極めて難しい課題だと思っています。下手に公表してしまうと、取り返しがつかない結果を招くことも一方ではあるわけですね、企業に対して。

 変な話ですけれども、例えばメンタルの課題についても、経営者も悩んでいるはずです。管理者も悩んでいるし、これを、要するに、単純に誰かを悪者にすることで解決できるかというと、そう単純ではないと理解しておりますので、企業名の公表については、本当に悪質なところについては正直あってよいと思いますけれども、その選別において極めて慎重にあるべきだということを考えております。

寺西参考人 過労死を出した企業と申しますのは、先ほどの意見でも述べさせていただきましたが、少なからず労働違反が見受けられます。過労死を考える家族の会では、ほとんどのところが労働違反というようなところが見受けられます。

 そして、過労死ということは命の問題でありまして、企業の世間体が大事なのか、働く人の命が大事なのか、またそういう情報を、例えば労災申請した段階で、労働行政に携わっている行政官は全て知っているわけです。そういった貴重な命を守る情報を、行政内だけで隠してしまうというところに問題があると私は考えています。

 ですから、この過労死ということを、そして労災申請というところを一番よく知っている労働行政の方々が、法律がなくても、これは考え一つで公表できる仕組みだと私は考えております。ですから、命を守る視点で、そういった情報を公表することによって、企業またそこの事業所は本気になって猛反省する、職場改善する。

 そして、何も悪い例ではございません、公表することによって社会的信用を得る、そういう意味も含まれています。ですから、公表したから悪いのではなくて、そういう原因があるから結果が出ているんです。そこをよく考えていただいた上で、そこで反省をして、職場改善なり企業の改善も公表していただくということで、何も企業が、公表されたところが悪いイメージになるわけではありません。

 企業名を公表することによって、例えばブラック企業とか、そういうレッテルを張られるということがありますが、決してそうではありません。反省すれば、そこはまたそれで社会的責任を盛り返すわけですから、ぜひ公表をして、そして企業は反省し、また反省したことを社会が評価すればいいと私は考えておりますから、ぜひともそういった実態は公表して、みんなで共有すべきだという考えを持っております。

圓藤参考人 今、寺西先生がおっしゃられたように、公表してバッシングするというのが目的ではないと思っております。公表するというのは、どのような事案であったのか、どのようにすれば防げただろうかということを検証するためのものであり、今後そのようなことが二度と起こらないようにするにはどのようにするのかということが重要であろうと思っております。

 また、好事例といいますか、非常によくやっている事例、このようにして成功していますという事例も公表するということが非常に重要であろうかと思っております。そうすることによって労働災害が防げてきた歴史がございますので、メンタルヘルス関連に関しても、そのように公表するというのを活用していただきたいと思っております。

山井委員 どうもありがとうございました。

 国会議員の立場から言わせていただきますと、どちらかというと、こういう労働法制というのは、きょうお話をお聞きしたように、正直言ってちょっと緩いという、法律はあるけれども、実態は事実上もう違法すれすれ、あるいは見て見ぬふりみたいなところがありますので、こういうところを、私たち国会議員も、きょうのお話をお聞きして、そういう認識というのは改めねばならないと思います。

 深刻なのは、きょうのお話でありましたように、メンタルな部分も、若者のその状態が、西垣和哉さんのように、非常にふえてきている。こういうことは当然あってはなりませんし、また、中原利郎さんのケースでも、小児科医が過労で亡くなってしまうというのを見て、逆に、有為な若者が、小児科医や産婦人科医や救急医はやめておこうと。やはりそういう社会であってはおかしい、世の中で非常に重要なお仕事をしてくださっておるわけですから。

 きょうの参考人の方々の御意見を踏まえながら、来週水曜日、さらに労働安全衛生法について審議をして、しっかりと労働者の健康を守っていくように頑張ります。

 まことにありがとうございました。

後藤委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 日本維新の会の重徳和彦です。

 きょうは、参考人の皆様方、お忙しい中をお越しいただきまして、また、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。

 私からは、ストレスチェックの制度を中心にお伺いしていきたいと思っております。

 既に、この労働安全衛生法の改正案につきまして審議を進めているところですので、田村大臣初め厚生労働省のさまざまな答弁もいただいている段階なものですから、それと少し照らし合わせるような形で、参考人の皆さんの御意見を伺ってまいりたいと考えております。

 まず、圓藤参考人にお伺いしたいと思います。

 圓藤参考人が理事長を務められております日本産業衛生学会、こちらの方で、これまで、今回の労働安全衛生法の改正案も三年前に一旦国会に提出されたという経緯もありまして、それに対してどういう意見をお持ちかというところからずっと議論を進めてこられたと思うんですけれども、一貫して言われているのが、ストレスチェックがメンタルヘルス不調の早期発見、つまり二次予防に利用されるなら多くの問題点があるという指摘をされています。

 これはどういった問題点があるかということをお伺いしたいんですが、というのは、ストレスチェックを行うことによっていろいろな労働者の状況が実際には把握できるわけですので、一次予防が目的であって二次予防は目的でないとしても、主目的は一次予防だけれども、結果的に、そのストレスの状況によっては、精神疾患が明らかになる、判明するということだって当然出てくると思いますので。

 おとといの田村大臣に対する私の質問で、これは一次予防が目的だよと言うと、建前として言うのはもちろんいいんだけれども、それだけではないというか、非常に微妙な言い方なんですが、一次予防のためだけじゃないですよねということに対しまして、主な目的は一次予防です、ただ、決して二次予防は関係ないということを言っているわけではない、だから、まずは一次予防をして、その結果、二次予防につながっていけば、それは、働く方々にとっても、健康を守るために有用なことであろうというふうに田村大臣はおっしゃっています。

 この捉え方は基本的に私は妥当だと思っているんですが、ともすると、運用上いろいろな使われ方がされて、学会の方で懸念されているようなことにつながり得るのかなとも思うんですが、まず、どういったことを懸念されているかということについてお伺いします。

圓藤参考人 ストレスチェックを行うことによって二次予防できると考えてしまうと、大きな間違いがありますよということで指摘いたしました。

 主たる目的は一次予防です。その目的を果たしている中で、副次的に二次予防につながるということは十分あり得る。したがいまして、大臣のお答え、私は聞いておりませんが、今の御説明どおりでしたら、そのとおりであろうかというふうに思っております。

重徳委員 わかりました。

 それで、次に三柴参考人にお伺いしたいんです。

 このストレスチェックなんですけれども、本来的には心理的な負担の程度、状況はどうかということに用いられて、正しい使われ方をすればもちろんそれがいいわけなんですけれども、これはちょっと邪推も入るんですが、使用者側、事業者側から見れば、この社員はストレスに強いんだろうか弱いんだろうかとか、つまり、言い方は悪いですけれども、使い勝手がいい社員なのかどうかということを判定したり。

 あるいは、直接、社長さんは職場の現場まではわからない可能性もありますので、そこでパワハラを受けているのかどうかとか、上司との関係がうまくいっているのかどうかとか、そういった適切な配慮という意味での人事的配慮ならともかく、職場環境の改善という意味ならいいんですけれども、法律が想定していることとちょっと違う人事に使われるような懸念があるのではないかなというふうに私は思うんですが、この辺、どう考えたらよろしいものでしょうか。

 また、それを防ぐために、どういう使われ方ができるように配慮すべきか。このあたりについて見解をお願いします。

三柴参考人 冒頭でも申し上げたことなんですけれども、このストレスチェックというのは、使う人間次第という面がどうしてもあることは否めません。

 ですので、事業者の側にもその他関係者の側にも十分、偏見や、一般に言う悪意に基づく使用がなされないように啓発がされなければならないわけですけれども、実際、ストレスがかかった状況だからといって、それを悪く受けとめるだけではなくて、適材適所に活用するとか、本来の人事労務管理の質の向上のために使うというのはダイバーシティーの観点でも重要なことですので、そういった方向にいざなうのが妥当ではないかと考えます。

重徳委員 ありがとうございます。

 それでは次に、寺西参考人にお伺いしたいんですが、きょうの御意見の中でも、労災認定されているのは過労死の氷山の一角であるということをおっしゃいました。ここに御提言されているとおり、産業医等が第三者的にストレスチェックの結果を評価し、適切な対応を事業者にアドバイスできなければ、せっかくのストレスチェックも意味がありません、このようにおっしゃっています。

 こういった仕組みについては国の方でしっかりと考えていく必要があると思うんですが、実際に、非常に難しいことだとは思うんですが、これまで本当に悲しいことに起こってしまった過労死ということについて、もっと、どのようなタイミングで、産業医などの方がどのように事業者側に物を言っていけば救われた命があったはずだと。このあたりについて、思いを少し述べていただければと思います。

寺西参考人 先ほど意見陳述でも述べさせていただきましたが、やはり、大企業であっても、西垣さんの息子さんのような事例というのが本当に多いです。大企業であっても、メンタルで休職をしていても会社都合で引っ張り出される、それも、産業医の判断ではなくて本人任せになっている。そこが、やはり産業医であっても専門的な知識がなければ、そういった本当にお粗末な形で、形ばかりの健康管理になってしまっているというのが御紹介した西垣さんの事例であります。

 ですから、そういった意味では、メンタルというのは体の故障ではございませんので、専門医でもわかりにくいところはあろうかと思いますが、そこは働いている人の立場に立って、会社もメンタルというそのものの意識を高めていただいて、本当に心の病を治していただける、このような休職中の人をまた職場の会社都合で引っ張り出すようなことがあってはならないと考えております。

 こうした仕組みが真面目で仕事熱心で優秀な人を死に至らしめる原因だと考えておりますので、こうしたことは、本当に、一企業だけではなくて国の方針として定めていただきますように切にお願いしたいと思います。

重徳委員 ありがとうございます。

 それでは次に、圓藤参考人と三柴参考人に同じ質問にお答えいただきたいんです。

 産業医がいる事業所においては、当然、産業医がかかわることが望ましいわけなんですけれども、そして、これは前回、田村大臣に私が質問を申し上げたときも、産業医が望ましいということは大臣もおっしゃっているんですが、一方で大臣が言われたのが、産業医の数がやはり限られております、これからストレスチェックを五十人以上の全事業所に義務づけるということになれば、なかなか対応するのも大変だろうということなんですね。

 ですが、一方で、ストレスチェックの取り扱い方として、個人名も含めて全部事業者にぽんと渡すだけでは、なかなか適切な運用にならない可能性がある。したがって、学会の方からの御提言にあるように、やはり産業医が適切に情報を加工して、加工といっても変に加工するんじゃなくて適切に加工して、事業者側に対応を求める、伝えるということが理想的なんですが、なかなか大変は大変だと思います。

 国に対して、こういうことに対してどのような指針を示すべきとお考えでしょうか。現場の実情なんかも含めてお答えいただけるとありがたいです。

圓藤参考人 まず、メンタルヘルスだけを切り離して考えるのではなく、心と体全てにおいて産業保健活動というものが必要であるということを御理解いただきたいと思います。

 次に、産業保健活動のサービスを提供するのは五十人以上の事業場に限定するというのが問題であろうかと思っております。確かに、月一回職場に行くということは五十人未満の事業場では難しいかもわかりませんが、それに準ずる形で産業医が執務するということは十分可能であります。

 現在、日本医師会の認定産業医は九万人在籍しております。まだまだ産業保健を提供する能力は備えております。供給は可能であります。したがいまして、その先生方を活用していただきたいと思っております。そうすることによって、メンタルヘルスも含めて、産業保健についてサービス提供できるものというふうに思っております。

三柴参考人 まず、最初に行われるストレスチェックの結果というのは事業者には渡らない前提なので、労働者の同意があれば別ですけれども、そこを踏まえた上でですけれども、産業医は、認定の数だけでいうと既にたしか七万人ぐらいに達しているはずで、相当多いんですね。ですので、今回の法案でも、ストレスチェックに関する医師への研修、私の記憶違いがなければそういったオーダーになっていると思うので、そういった方への研修が鍵になってくるだろうというふうには思います。

 あとは、企業の外部に産業医のチームをつくるということが厚労省から提案されておりますので、そういったところをうまく活用して、今までと違ったスタイルを築いていくという方法はあるだろうと思っております。

 以上です。

圓藤参考人 先ほど言いました、五十人以上の事業場には産業医を選任する、五十人未満の事業場にはどのようにして産業医を選任するかという方策は、幾つかあろうと思います。

 一つは、大きな企業で分散事業場で分かれている場合、それは企業として対応できるであろう。それから、グループで活動している場合、グループとして産業医を選任することも可能であろう。それから、個別の事業場の場合、それは地域ごとに一つのチームをつくるということが考えられるであろうと思っております。例えば、地域産業保健センターという支援センターがございます。その中に産業医はたくさん在籍しております。その者がその地域全体の事業場を担当するということは十分可能であろうと思いますので、その仕組みを発展させていただければいいのではないかと考えております。

重徳委員 ありがとうございました。

 また来週もこの法案の審議がありますので、引き続き、きょうの先生方の御意見を参考にさせていただきまして、真摯な審議を行ってまいりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

後藤委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 三人の参考人の先生方、ありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思います。

 我々公明党、ただいま与党でありまして、大変に苦しんでおります。最初に、難しい話はいたしませんが、大きい話を伺いたいと思います。

 今、総理を先頭に、産業競争力会議などで盛んに、多様な正社員、働き方を変えていこう、こういう議論であったり、時間ではなくて成果ではかれる働き方というようなことであったり、なかなか難しい問題が議論されております。しかし、人口減少時代、労働力減少ということもあって、収益力のアップということは考えざるを得ない、こういう難しい時代を我々は今生きているわけであります。そんな中で、きょう議論になっておりますように、メンタルヘルス対策でありましたり、あるいは過労死の防止の対策、こうしたことも同時に求められている、こういうことだろうと思っております。

 最初に伺いたいのは、まさに労働者の命と体を災害や疾病から守るというこの労働安全衛生法の役割というのはこれからますます大きくなってくる、私はこう思っているわけでありますが、そんな大きな話をどんなふうにお考えか、お三方にまず伺いたいと思います。

三柴参考人 御質問ありがとうございます。

 端的に申し上げて、今先生おっしゃられたとおり、トップランナー対策からバックランナー対策まで多面的にやっていかないといけない、しかも継続的にやっていかないといけないという、ある意味、面倒くさいけれども可能性のある時代に入っているなというふうに認識しています。

 済みません、一点だけ。先ほど企業名の公表についても御質問いただいたんですけれども、これは制度としては設ける意味があると私は思っております。ただし、柳生流の抜かずの剣という使い方がいいのではないかということも含めて申し上げます。

寺西参考人 先ほども似たようなことをお話しさせていただきましたが、企業側、職場等、そして労働者は、対等ではございません。そういったところが原点ですので、やはり、成果を求められても、例えば個人事業主でお商売屋さんをされている経営者同士のやりとりではなくて、働く人とそれを使用している側というところをよく考えていただいて、守られなければならない者、そして労働者なりに尽くす気持ち、その二つをうまくバランスよくするには、一つの仕組み、一つの決まり、そういったものが大事かと思います。成果だけではなくて、やはりそうした対等でないところ、また弱い立場というところをよく考えていただいて、お考えいただきたいと思います。

 先ほどの御質問にちょっと触れますが、随行にいらっしゃる西垣さんなんかは、本当に、息子さんを亡くされて、いらっしゃらないのに、そこの会社の職場改善を約束させているわけです。もう既に息子さんはいないんです。平たく言えば、別に後どうなってもいいわけで、だけれども、こうした後に残っている人のためを思って職場改善を約束させるということを故人の遺族がやっているわけです。

 ですから、やはりこういったことは国が指導して、国がそういう事業所を教育させていくという仕組みを定期的に行っていくことが、そうしたことを防いでいくというふうに考える次第です。という考えを述べさせていただきます。

圓藤参考人 日本産業衛生学会は八十五年の歴史があると言いましたが、八十五年間、いろいろな問題に取り組んできたということなんですね。国の方でも、法律の方でも、工場法に始まりまして、労働基準法、そして労働安全衛生法。しかも、その労働安全衛生法が何回も改正されている、非常に改正されている。それは、その時代ごとに新しくつくり上げてきたことが非常に大きいと思います。その結果、大きな目で見ると労働災害は減ってきているんですね。この成果をやはり自覚すべきだと思います。

 問題は、新しい世の中、また新しい雇用形態が生まれようとしているときに、次のセーフティーネットワークをどのようにつくるのか、それに対応した対策をどうするのか、これをまたつくり上げていくという作業が必要であろうと思っております。それは先生方と意見交換しながらつくり上げていきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 我々立法府に対する御示唆をいただきました。あわせて、与党の一員として、今のお三方の御発言をしっかり受けとめたい、このように思った次第であります。

 具体的な話に入りたいと思いますが、平成二十四年三月以降の、例の大阪府内の印刷事業所の1・2ジクロロプロパン、この事件であります。内容は、きょうは余り話が出ませんでしたが、十年以上にわたって高濃度の暴露による労災事件ということだろうと思っておりますが、本当に残念な事件だなと思います。

 あの胆管がん事件、私もずっと資料を見ておりますが、校正印刷部門の罹患リスクというのは大変に高かったわけであります。こうしたことが放置されていた。当然ながら、先ほどお話がありましたように、化学物質管理のあり方については、以前もリスクアセスメントの努力義務はあったわけでありますけれども、こうした事件になった。

 この事件の本質についてどう思っておられるか、あるいは、今回の労働安全衛生法改正によって期待される成果といいましょうか、これは三柴参考人と圓藤参考人に伺いたいと思います。

三柴参考人 私からお答えするのが適当かわからないんですけれども。

 結局、労働者から声が上がりました、そこにしっかり的確に対応するということも必要だし、使用者自身がきちっとリスクアセスメントをして、リスクを認識するということも必要だ。だから、労使の自律性とそれから専門性と、両方がきちっと機能するような条件がないといけないし、それがなかったことに問題があったのかなと思っております。

圓藤参考人 私はこの問題に非常に関与しておりますけれども、一番痛切に感じましたのは、事業主が、有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則に載っていない化学物質だから安全だと思ってしまったという、我々から見ますと、法律に規制されているのが全てではない、むしろ法律に規制されていないものは自主的にリスクアセスメントすべきであると考えておりますが、そうは認識していなかったというところが根本的な原因であろうというふうに思っております。

 したがいまして、今回の危険有害性調査におきまして、リスクアセスメントの義務化というのは、自分らでリスクアセスメントして、自主的に安全文化を醸成するということに気づくきっかけになるというふうに理解しております。

桝屋委員 先ほど両参考人の冒頭発言にもありましたように、化学物質に対しますリスクに着目をして、労使双方からのアプローチがいよいよ本格的にスタートしなきゃいかぬというふうに私も感じている次第であります。

 次は、ストレスチェック、メンタルヘルスの問題でありますが、先ほどからずっと議論が出ておりますように、現在の産業保健の体制であります。今回、ストレスチェックの話が随分出ておりますが、こうしたことを支える産業保健の体制が本当にきちっと動くかどうかということ。

 今までも、産業保健推進センター、あるいは先ほど話が出ました地域のメンタルヘルス対策支援センター、さらには地域の産業保健センター、こうしたものがそれぞれ動いていた。これに対して、医師会が協力体制をつくることもなかなか難しかったということもあって、三事業を一元化して、それぞれ地域において産業保健の体制が構築されなければならぬ、私はこう思っておりますが、ここはなかなか簡単なことではないだろうと思っているのであります。

 特に、今回は、ドクターのみならず保健師、あるいはPSWという話もございましたけれども、関係職種も絡むということでありますが、この辺の体制づくりについては、圓藤先生、大丈夫でしょうか。期待をされる話を伺いたいと思います。

圓藤参考人 日本医師会の委員も私はしておりまして、日本医師会は非常に協力的でございます。また、産業保健専門職、いろいろな職種の方々がおられますが、皆さん協力的でございます。

 あとは、体制、器づくりといいますか、それを、経営者団体あるいは労働組合、あるいは我々学会員等を含めましてつくり上げていく、そういう作業が残っておりますので、それはそう簡単ではございませんけれども、協力させていただきたいと思っております。

桝屋委員 圓藤参考人、もう一点だけ。

 先ほどの御発言の中で、こうしたメンタルヘルスの対策を進める上でも、先進事例等をしっかり評価して、その取り組みを広げていくということが必要ではないか、こう言われたわけであります。

 特に、産業医がきちっと配置されている、もちろんメンタルヘルス、精神科領域をしっかり勉強していただく必要がありますが、五十人以下の中小・小規模事業者において、成功事例といいましょうか先行事例といいましょうか、もしこうした取り組みがあるよというようなことを今御紹介いただけるのであれば、御発言をいただきたいと思います。

圓藤参考人 実は、その事例につきまして、余り公表されていないというふうに私は理解しております。たくさん事例はあろうかと思いますが、個別に対応しておりまして、余り公表されていない。したがいまして、我々は、それを発掘する、公表していただくよう探していくという作業が必要であろうかと思っております。それらはたくさんあろうかと思います。

桝屋委員 わかりました。

 先ほどの企業名の公表じゃありませんが、ぜひともこうした内容も、多くの中小・小規模事業者、これだったらやれるな、あるいはこうすればいいのかというような事例を、しっかり同時に発信していくように努めていきたいと思います。

 最後になりましたが、重大な労働災害を繰り返す企業の公表の話が先ほどから出ておりますけれども、法令違反の対象、これを労働安全の法規に限るか、あるいは、さっきから出ていますように労基法、そもそも労基法に違反しているというようなこともあるのでありますが、たび重なる労働災害を繰り返す企業、法令違反の場合の対象の法令についてどういうふうにお考えか、三柴さんと圓藤参考人に伺いたいと思います。

三柴参考人 お尋ねありがとうございます。

 今回の制度の枠組みは、法案はよく練られていると思うんですけれども、分科会の中でもお尋ねの点は議論がありました。

 最終的には、やはり労働者の命と健康を守るという目的が重要だから、そこから手を打つということで話がまとまったと理解しているんですけれども、労基法の例えば労働時間規制とか、そういったものにコンプライアンス不十分なところなどがというのはあるんですけれども、結局、長時間労働でも、それだけで例えば疾患を生み出すかとかと言い出すと、ほかにもいろいろな原因が災いするだろうというようなことも考えると、一義的に明確と言えないところがあったりするので、まずは優先順位をつけてということでいかがだろうかという経過だったと理解しております。

 私も、そういうことでよろしいのではないかと思っております。

圓藤参考人 労働安全衛生法はもともと労働基準法から分かれた法律でございまして、両法律が相まって運用されるべきだというのが基本でございます。

 労働基準法に記載されている条項に関することで重大な違反となりましたら、やはり労働基準法の中で処理していただくのが妥当であろうというふうに思いますし、労働安全衛生法に書かれている事柄につきまして重大な違反となりましたら、やはり労働安全衛生法の中でそういう規定をつくっていただくのが妥当であるように理解しております。

桝屋委員 時間が参りました。終わりますが、冒頭お聞きしたように、新しい時代の働き方みたいなものが議論されております。新しい働き方が生まれるのであれば新しい働き方のルールも必要だと我々は思っておりまして、しっかり働いてまいりたい。今後とも御指導賜りますように、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁でございます。

 本日は、三人の参考人の方にはお忙しい中を御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場で貴重なお話を聞かせていただきまして、大変参考になったところでございます。私からもそれぞれ御質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、三柴参考人に、メンタルヘルスケア対策についてお聞きをしたいと思うのです。

 先ほど委員の方からも、精神疾患による労災申請は年々ふえ続け、四年連続で千人を超えておる、認定は四百七十五人で、過去最高を二十四年に記録しているというこの現状。年々ふえ続けている、端的にその要因についてまずお尋ねしたいのと、今現状で、メンタルヘルスに取り組んでいる企業、団体の調査でも、効果を認識できない、また効果不明と、実務者の約六割がお答えになっておる。メンタルヘルスケア対策に実効性を持たせるために、具体的にどのようなことが必要であるのか。その二点について、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。

三柴参考人 お尋ねありがとうございます。

 まず、不調を生み出す要因からですけれども、政府の統計、特に労災補償に関連する統計からですと、まさに長時間労働であるとかハラスメントであるとか、それから、労働条件に大きな変更があった、なのに支援が十分でないとか、そういったところがデータとしては多く上がってきているんですけれども、もう少しさらに掘り下げて考えていった場合には、冒頭で申し上げたように、人事労務管理の基本の崩れがあるのではないかと私は見ております。

 つまり、採用、適材適所を含めた人選も、教育訓練も、それからモチベーションづくりも、職務の設計も、そういったものというのは基本になると思うんですけれども、そこに乱れがあるのではないかというふうに見ております。

 ですので、それに対する対策も、これは一律にこれだけということではいかないわけですけれども、まさに産業保健の充実化も課題であったりするわけですけれども、経営者側としては、人事労務管理の基本の立て直しというのが一つの鍵になるのかなというふうに考えております。

中島委員 私も、こういうメンタル不調の問題、企業だけに押しつけるわけではなく、やはり総合的に実効性を持たせるためには、対話というか連携みたいなものが大変重要かなというふうに、今回、前回の審議もあったんですが、そのように思います。

 また、資料の中でもあったんですが、職場の風土を変えるというような、要するに、労使の関係を超えて、それぞれがいい職場環境をつくるんだ、そういうそれぞれの方々の理解と協力が必要なんだなということは非常に強く感じます。

 続いて、圓藤参考人にちょっとお尋ねしたいんですが、先ほどからも出ていて少し重複するとは思いますが、ストレスチェックの導入。前回の法律案では、全ての事業所が対象となっておった。五十人未満の事業所については今回は努力義務というふうになって、一定の事業所にストレスチェックの実施を義務づけることの妥当性。

 これはやはり、五十人未満、代替要員の確保もなかなか難しい、そして仕事に荷重がかかりやすい、むしろ国はしっかりとそういう部分に関与していくべきではないかなと私も非常に思うわけですが、改めて、今回、五十人未満、中小、さらに小さい事業所に対するこのメンタルヘルス対策のあり方について、御意見をいただきたいと思います。

圓藤参考人 先生の御指摘のとおりだと思っております。小規模事業場だけ外していいということは決してございません。ただ、小規模事業場においては、産業保健サービスを提供できる体制になっていないということが基本的な原因だと思っております。

 メンタルヘルスチェックを行った、しかし、その事後措置ができないというのであれば、これは、メンタルヘルスチェックを行うこと自身が有害でございます。事後措置があって初めて完結するというふうに思われますので、事後措置ができる体制づくりを急いでいただきたいというふうに考えております。

中島委員 ありがとうございます。

 先ほど言ったように、むしろ国が関与していく。情報管理も難しい、そういう理由で、なかなかそういう取り組みがしづらいということでございますので、公的な機関から派遣をしていくなり、独自の取り組みがしづらいところにあえてやはり国が関与して、公的な部分が関与する必要性があるのではないかなというふうに私も思います。

 続いて、圓藤参考人に、産業医の位置づけについては先ほどから質問もあるところなんですが、なかなかこの位置づけが不明瞭になりかけているのではないか。

 嘱託産業医の方に関しては内科や外科が多くて、実は私も医師でございまして、地域の、産業医ではないんですが、いろいろな御相談を受けたりする。そういったところで、その現状の中で、逆に言いますと、専門性のある産業医がいるところでは取り組みが進みやすい、そういう意味もあるのかなというふうに思います。

 今後、産業医の役割ですね、先ほどもあったように、医師が偏在している中で、地域、地方においてなかなかそういう領域に卓越した産業医を確保しづらいということもあるわけですが、今回の法律案でも、産業医の位置づけ、産業医自体が今後どうあるべきかということについて、御見解をいただきたいと思います。

圓藤参考人 私、産業医の質は非常に高くなってきていると思っております。したがいまして、現在選任されている産業医の先生方、非常によく活躍していただいていると思っております。

 ただし、たとえ大企業におきましても、従業員数千人に一人とか、二、三千人に一人というようなことが見受けられます。そうしますと、二、三千人の一人一人の心の悩みまで、一目見てわかるという状況にはないということなんですね。

 したがいまして、産業医だけが活動していたら済むというのではなくて、それを支える産業保健師、あるいは職場の衛生管理者、あるいは職場の同僚、上司を含めて、いろいろなところが目となり耳となりその情報を産業医の方に寄せていただけましたら、産業医は適切な判断をし、指導し、助言することができるだろうというふうに考えておりますので、上手な活用をしていただければというふうに思っております。

 また、小規模事業場、中規模事業場で、嘱託産業医でありましても、連絡を密にしていただければ対応できるだろうと思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 やはり、産業医というものに対して、全く一般の医師とはスキルが違うわけですよね。例えば、ある会社に産業医として入ったら、単純に医師としての役割というよりは、その会社の社風とか目指すべきものとか、それに要するに合っているのかどうかとか、さまざまなスキルが求められる。そういう中で、社会的な産業医の位置づけというのがまだ認知度が低いのかなと。

 今回の法律案でも、産業医の役割というのは大変大きい。先生のお話からも、非常にスキルが高いということになって、質が高いという認識でございます。私もそのように思います。

 ですから、もっと、今回の法律案の中にもあるような、今回はストレスチェックなんですが、やはり一次予防から、その会社にとってどうあるべきかというところに結びつけられるような、実効性あるものとなっていただきたいなというふうに強く思います。

 続いて、寺西参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 寺西参考人は、全国過労死を考える家族の会の代表として、長くこの問題にかかわってこられたと思います。その御尽力には大変敬意を表するところでございます。

 家族会では、労災申請に迷う遺族の御相談に乗ったり交流を深めたりされているとお聞きしておりますが、精神障害にある労働災害の請求、認定が、近年、先ほども言いましたように大幅にふえている中で、その相談に乗っていて、長い期間の中で最近どのような事情が多いのか。特に最近ふえているなというようなことが、特徴的なことがございましたら、お教え願いたいと思います。

寺西参考人 貴重な御質問、ありがとうございます。

 私どもは、過労死をしたというのは、やはり家族が一番よく知っているわけなんですね。朝早く出ていって、帰ってくる時間が遅いということを毎日のように見てきたわけです。

 私ごとですが、十八年前に夫が過労自殺いたしました。そうした中で、今申しましたように、朝早く出て、帰ってくるのは夜遅かった。しかし、会社の中で何が起こったかわからない。家庭内の原因はないのだけれども、会社内で何が起こったかもわからないというところが、私たちのそもそもの大きなハードルになっております。

 労災申請にしても訴訟にしても、訴えた側に証拠をそろえて出す必要があります。確かに、労災申請は監督署へ書類を書けばできるのですが、そうなれば、監督官の皆さんは初動調査の中で何をどうしていいかわからない、こちらが証拠をお示しすることによって、それに沿って確認をしていただくというのが現状であります。その中で、客観的証拠そして証言者、そういったものがそろわない中で、ほとんどの方が泣き寝入りされています。

 私自身も、たまたま、会社をやめられた方が出てきて、証言をしていただく方に恵まれましたけれども、今や、若い人の労災申請の事情は、やはりひとり住まいの方が多い。地元を離れて、例えば私は京都ですが、息子さんは東京へ出て働いていらっしゃる。そうなると、そこで被災されれば、地元にいる親御さんは全くわからないわけです。そこへもってきて、会社に事情を聞いても教えてくれない。箝口令をしかれて、本当のことを誰も言ってくれない。私自身もそうでした。

 一昔、二昔前は働き盛りの中高年でしたが、今は顕著に若い方が、そのようなハラスメントや長時間労働や、また責任の重い仕事に入社間もないのにつかれる、そこで責任とかプレッシャーとかストレスとかがたまって、メンタルになって、自死されるというケースが圧倒的に多いわけですけれども、そうした中で、やはり客観的証拠、証言者がいらっしゃらないということが原因で、実際何が起こったかわからずに泣き寝入りしてしまうというケースが多いわけです。

 そうした中の一番大きな問題は、時間外労働または長時間労働、そういった実態を示すものが会社の中でもみ消されてしまうというところにあります。そうしたことで、労災申請をしようにも、その段階で既に諦めてしまいます。

 そして、どういう苦労をしたところで、亡くなった娘や息子はもう二度と生き返ってこない。生き返ってくれるのであればどんな苦労でもしますが、どんな苦労をしても、亡くなった者は二度と生き返ってこないというところで諦める方もいらっしゃいます。

 本当に、そういった残された者は悲惨な思いをするわけですけれども、やはりその中でも一番悔しいのは、人生これから、また、真面目で責任感が強い人がいろいろな夢を持って職場で働き、周りから信頼を得られた人が、人に言えない亡くなり方をしたということが本当に無念でなりません。

 そういったことがないように私たちは願って、活動しているところであります。

中島委員 ありがとうございます。

 先ほど、最初の十五分の寺西参考人のお話の中で、企業と労働者という関係の外側から過労死を防止する仕組み、そういったことが、やはり労使間を超えてこの問題について取り組む大事な部分かなというふうに私も思いました。

 時間になってしまいましたので、これで終わります。実は、受動喫煙についてちょっとお聞きしたかったんですが、次の井坂先生が聞いてくれるかもしれませんが、途中で終わってしまいました。

 貴重な御意見を賜りまして、残り、まだ質疑の日もございますので、参考にさせていただきながら臨みたいと思います。

 本日は、本当にありがとうございます。

後藤委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 結いの党の井坂信彦です。

 受動喫煙は中島さんがもう先に聞かれると伺っていたので、私、それ以外の質問をつくってしまいました。受動喫煙以外のことを本日は聞かせていただきたいと思います。

 まず、ストレスチェックを集団的データとして組織にフィードバックする、こういうお話を三柴参考人からいただきましたので、その点について参考人にお伺いをいたします。

 データに基づく改善は重要だと、私、かねがねこの厚生労働委員会で発言をしている立場ですが、本法案では、そもそも労働者の同意がなくて本当にこういうことができるのかどうか、お伺いをいたします。

三柴参考人 御質問ありがとうございます。

 集団データを労働者の同意がなくて事業者に提供することができるかという御趣旨ですよね。それであれば問題はない。要するに、個人情報というのは個人が特定できる情報なので、そういうものは保護しなきゃいけないけれども、集団データとして個人が特定できないのであれば問題がないと理解しております。

井坂委員 ありがとうございます。認識を新たにいたしました。

 関連して三柴参考人にこのことをお伺いするんですが、参議院でも衆議院でも、医師が事業主に言っても守秘義務違反にならない具体的な範囲がやはり明確に定められないと、お医者さんも怖くて、どこまで言っていいのかわからないのではないかと。

 またさらには、それを聞いた事業主も、例えばパワハラの場合に、お医者さんが、どうもあなたのパワハラが原因ですよと言ったとして、事業主がそこで、ああ、俺のせいかといって改善をすればいいわけですが、逆に、逆切れをして、そんなことを言うやつは誰なんだ、こうなるといけないということで、事業主の適切な対応、こちらもやはりガイドラインが必要だろう、こういうふうに思っているわけであります。

 医師が事業主に言っても守秘義務違反にならない具体的な範囲、また二点目は、事業主のそれに対する適切な対応、この二点につき、どのようなガイドラインを定めるべきだ、どのような線引きをするべきだと三柴参考人はお考えでしょうか。

三柴参考人 まず、医師がどのような形で何を事業者に情報提供すべきかという点ですけれども、そもそも医師というのは刑法百三十四条で守秘義務を一般的に負っているわけですね。ただ、面接指導の場面で医師が登場するでしょうけれども、そこで聞いた内容で、これは事業者に勧告すべきだという、就業上の配慮といいますけれども、何をすべきかについては伝えるべきだろう。

 ただ、その後犯人捜しが始まるかのような、あるいは本人が事業者ににらまれてしまうであろう、そういう情報についてまで提供するということになると、医師としての、少なくとも倫理、ひょっとするとそれ以上のものにひっかかってきてしまうのではないか。だから、結局、情報を加工して、何を事業者がすればいいのかという、いい意味で結果オーライになるようにすべきかな。

 それから、事業者がそれに対して、こんなことを言ってきたのはけしからぬみたいな対応に出るのを防ぐという意味では、今後、少なくとも不調が明らかになったという理由で行う不利益取り扱いについては、行政の方で対応のガイドラインを出されるということです。それ以外については、既に労働法、民事法上のさまざまな制約がありますので、判例などで築かれてきたものもありますので、そういうものを踏まえながら、個別に考えていかなければいけないだろうと理解しております。

井坂委員 続きまして、圓藤参考人にお伺いいたします。職場のストレス環境評価ということでお伺いをしたいと思います。

 今回のストレスチェックは、労働者側がどのようなストレスを受けているか、受けつつあるか、こういうものを測定する仕組みであります。もちろんこれも大事なわけでありますが、一方で、職場の側がどのようなストレスを与え得るひどい環境なのか、こういうことのチェックも重要ではないかと考えるわけであります。

 産業衛生学会のストレスチェック制度義務化に関する中間報告というところにも、将来的には、職場の心理社会的環境を事業所ごとに評価し、その対策の立案、実施、改善を行うリスクアセスメントを制度として導入すべき、こういうことも書かれているわけであります。

 圓藤参考人にお伺いいたしますのは、大変重要な考え方だと思う反面、本当にそのような職場環境そのものの評価が技術的に可能になるのか、また、先進事例などもあればお教えいただきたいというふうに思います。

圓藤参考人 先ほど、ストレスチェックの集団的評価というものがございました。

 いろいろな職場で、いろいろな部署でストレスチェックを行って、特定の部署だけが異常に高い、好発しているというふうな事態がありましたら、原因は、個人ではなくて、むしろその職場にあるのではないかと疑うのが我々の立場でございます。そうしたときに、どのような状況になっているのか、我々の目で調査していくということが基本であろうかと思います。それにつなげることができるので、今回のストレスチェックは意味がある手法だと思っております。そのような事例はたくさんある。

 それから、先ほどの御質問ので答えさせていただきますと、産業保健上の疾病とかいうものは、私は三つに分けていると考えております。

 私病で事業主が知っておくべきでないような病気、これは、産業保健上、そこでストップするように考えております。

 それに対して、職業病のような、事業主が責任を負うような病気、これについて、労働者の個人の情報であるというふうな考え方はいたしません。これについては、事業主が安全配慮義務を果たすためにはその情報を伝える必要があろうかと考えております。

 三つ目は、もともと原因は個人かもしれないけれども企業として配慮すべき事柄、そのような事態がありましたら、その配慮すべき事柄についてのみ事業主の方に伝えるということが必要であろうと思っております。

 そのような手法で、適切に加工して、事業主に安全配慮義務を果たしていただけるように伝えるというのが我々の責務であろうというふうに考えております。

井坂委員 次に、繰り返し重大な労働災害を起こした企業への指導及び企業名の公表について、これは寺西参考人と三柴参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 これまでの質疑の中でも、企業名の公表ということについて、寺西参考人は非常に重要だとお考えで、一方、三柴参考人は慎重なお立場であります。

 私も、水曜日の厚生労働委員会で大臣とこの点は質疑をいたしまして、現状、今回できた制度というのは、結局、三年間で二度繰り返して、さらに、たび重なる大臣の指導にもかかわらず改善計画すら立てなかった会社のみ企業名を公表ということで、三千社あったって二度やっている会社は十八社だけで、その十八社がさらに大臣の二度の指導を全部無視してということは、私はもうほとんどゼロに近いのではないかというふうに思っております。

 やはり、そうではなくて一度目の会社、あるいはできればもうゼロ度目の会社に抑止力を働かせるべきだというのが私の考えでありまして、そうはいっても、本日、三柴参考人のお考えもお伺いして、かといって何でもかんでも公表は問題があろうというふうにも思いました。

 そこでお伺いをいたしますが、今回、死亡や障害七級以上の重大な労働災害を起こした企業、これは一度目でも全社的な改善計画の策定を求めて、その実行がないまま二度目を起こした企業はもう即座に公表する、これぐらいが非常に抑止のバランスがとれるのではないかなというふうに思うところであります。

 もう一度繰り返します。一度でも重大な災害を起こしたら全社的な改善計画をまず求める、それの策定と実行がないまま二度目を起こしたような会社は、これは悪質だということで即座に公表する、こういう考え方について、寺西参考人と三柴参考人の御見解をお伺いしたいと思います。

寺西参考人 私も、私ごとですが、夫が二十年間飲食店で働いてきまして、この職場はずっと長時間労働でした。それで、いつか倒れるのではないかと思っていたやさきに自殺いたしました。それが長時間労働、過重労働が大きな原因であって、労災認定された経過がございます。

 そして、会社が全く反省がなかったために、会社相手の訴訟を起こしました。この中で、会社側から証言者、同僚、部下、出てきました。皆さんが口をそろえて言うのは、長時間労働、長く働いていたのは寺さんだけではなかったという証言が皆さんの口から出ました。

 何が言いたいかと申しますと、一人が被災した職場は、全て、誰がいつ倒れても不思議ではない職場なんです。私はそこをお伝えしたいというふうに思っております。

 ですから、一度であったとしても、その職場全体がいつ過労死を出すかわからないという職場ですから、一度たりとも過労死また重篤の労働災害を出せば、公表する意味がそこにある。その企業の職場の考え方が全くなされていないというところが大きな原因でありまして、何度も申しますが、例えば過労によって体が不自由になったり、そしてまた、亡くなってしまったりというのは、本当に遺族は大変な思いをします。そういうことがないように、そういうことを防ぐためにも、やはり企業名の公表は大変大事な仕組みだと考えておりますので、ぜひ御配慮いただきたいというふうに考えております。

三柴参考人 安全衛生法というのは、特に実態と体系の両方を意識しながら、その立案、運用をしていくべきものだという理解を持っております。

 それを前提になんですけれども、私は、企業名の公表というのは行政措置であって、それだけで、要は労災を防止できるとかいうことではないと理解しております。

 その意味でも、今、法案として出されている過程というのは、厳格にといいますか、適切に遵守されるべきではないか。また、この案自体も妥当に練られているというふうに理解しております。お答えになりましたでしょうか。

井坂委員 三柴参考人にだけちょっと再度今の件で、今のでは、抑止力も弱ければ抑止の対象になる企業も余りにも少な過ぎるのではないかという私の問題意識に対して、どうお考えでしょうか。

三柴参考人 正直、お答えを差し控えたいというぐらいの難しい問いなんですけれども、件数だけで、しかも、今現状の件数だけから判断するよりも、そこは仕組みとして、行政措置でとるべき措置として適当かどうかという、ちょっと理念的ですけれども、そっちからアプローチして考えた方がいいのかなと思います。

 ですので、これはこれで、もし不十分だとなれば後で見直しを図るということも含めて、現状、このルールで妥当と申し上げたいんですけれども、お答えになりますか。

井坂委員 そろそろ時間が参りますので、これぐらいにさせていただきたいと思います。

 本日、各参考人から、特にエビデンスということもいろいろ御発言があったので、私も大変関心のある部分ですから、本当は、今回、全国的にこういうストレスチェックを行われるに当たって、まだエビデンスがないという批判を逆手にとるわけではないですが、いろいろなパターンを全国でABテストのように使い分けるなりして、より効果的なチェックの仕方また改善手法など、年を追うごとにどんどんブラッシュアップしていく、こういう制度設計も必要だというふうに考えておりますので、また委員会で議論をしていきたいというふうに思います。

 参考人のお三方、本日はどうもありがとうございました。

後藤委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、三人の参考人の皆さん、本委員会に出席をいただき、また、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。

 最初に、三柴参考人に伺いたいと思います。

 精神障害の労災認定数が増加している中で、上司の嫌がらせなどのパワハラと思われる案件もふえてございます。ただ、そのパワハラの定義がないために、正確につかまれていない。

 嫌がらせ、いじめとかというのは一応パワハラに入れるということで、政府のパンフレットにも載っているんですけれども、ただ、例えば、上司とのトラブルとか、いわゆる仕事の無理な指導とか、そういう中にもパワハラというのはあるんじゃないかと、私、実はこの間の委員会で質問したんですけれども、そういうところまではまだまだ分析されていないということがあるかと思うんですね。なので、現実はもっと大きいのではないかという御意見もございます。

 そういう意味で、パワハラの定義や防止策について、やはり何らかの法定化を目指すべきだと考えますけれども、先生の御意見を伺います。

三柴参考人 お尋ねいただいてありがとうございます。

 現状、精神障害の労災認定基準では、業務の範囲内にあるか範囲外にあるかというところで一応項目を分けていまして、少なくとも、業務の正当な範囲外にあるものを、あえて言うならハラスメント、嫌がらせということに説明上なっておりますけれども、そう呼べるのかなというのが一点。

 そして、ポイントは、人格を否定するようなとか、しかも繰り返しとかいうようなところに、特にストレス度が強度と認められるところについてはそういうキーワードが入っておりますので、その辺が鍵になるわけですけれども、その辺については、私個人は、立法適性をそろそろ満たしているのかな、予防のための立法適性を満たしているのかなという感じがしております。

 ただ、これは社会的なコンセンサスが要ることなので手続が必要だと思いますけれども、諸外国では、ヨーロッパを中心に、そうしたハラスメントにはもう明文で規定が置かれ、フランスなんかは、刑法とか労働法とか両方で規制を置いているところもあります。本当に悪質なハラスメントというのは本当に悲惨な結果をもたらすものですので、私個人は、そのあたりが先に進んでいってもいいかなというふうには思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 難しい表現をされましたが、立法適性を満たしているというのは、法制化の時期ではないかという趣旨でおっしゃっているのではないか。先生がそのように書かれたものもございましたので、ぜひもう一歩進めていきたい、現実にかなり起こっていることであるということかなと思っております。

 もう一問、三柴参考人に伺いたいと思うんですけれども、労働法の専門でもあるということで、厚労省の委託事業で、ストレス症状を有する者に対する面接指導等に関する研修事業、先生は講師をされていらっしゃいます。企業の中で、例えば、連絡がなかなかとれない社員とか、産業医の面談を拒否する社員、こうした社員に対してどういう扱いをすればいいのかというふうな、企業側のさまざまな悩みに対して研修をされているのを雑誌で読ませていただきました。

 その中で、先生はこんなふうにおっしゃっています。就業規則にあらかじめ産業医面談や産業医の受診について根拠規定がある場合、その定めと適用に合理性、相当性が認められる場合には、受診等の指示に反する者への懲戒処分等が認められる場合もあり得る、このようにおっしゃっております。

 やはり就業規則にどのように書くのかということが、非常に影響があるのかなというふうに思ったわけですね。

 つまり、今回の法案は、労働者のストレスチェックを義務化はしておりませんし、面接の申し出を理由とした不利益取り扱いはしないことを認めております。ただ、その逆はないわけですよね。つまり、会社にしてみれば、例えば、面接指導を受けたらいいのではないかとか、チェックを受けましたかとか、そういうことに対して、聞かないけれども、実際に不調があって休みがちじゃないかとか、そういうことを自己責任とされて、懲戒の対象となるようなことがあり得るのでしょうか。

三柴参考人 今回の予定された新制度について申し上げれば、あくまで自発性重視、要は、本人がストレスに自覚的に気づいて、それ以後のプロセスを経ていくということが前提になっているので、当然、労働者に対して会社側がするものであっても、原則、不利益措置をとるというようなことは予定されていないというふうに理解できます。

 ただ、メンタル対応というのは、基本、個別性が非常に高いので、この労働者はどうだろうか、会社側に特に背景がない理由で、事例性といいますけれども、周りにかなり問題を引き起こしてしまっているというような方については、立場を問わず困られているという事情もありますので、そういう意味で現実的に対応する。しかも、現実的に、公正妥当に対応するために就業規則というのが鍵になるというのは、おっしゃるとおりかと思っております。

高橋(千)委員 そのことがまた実際の運用の中でやはり労働者の不利益になることにならないか、今のパワハラとも関連すると思うんですが、そういう問題意識を持って質問させていただきました。

 時間があればまた補足して、次の質問をさせていただきたいんです。

 次に、寺西参考人に伺いたいと思います。

 過労死防止対策推進法成立まで、あと一歩まで来たと思います。本当に御苦労さまでございます。また、先日の本委員会での意見陳述には強く心を動かされました。きょうもまた、経験者の立場からの提案に、本当に感謝を申し上げたいと思います。

 何人かの方から企業名の公表について質問が出ておりますけれども、これは私自身も、大分前に、やはり家族の会の皆さんがこれを強く求めているということで、質問もしたこともございますし、もう当然だと思っておりますので、あえて質問しないで、そのとおりだと思いますということだけにしたいと思います。

 それで、質問をしたいのは、今、政府が労働時間規制緩和についてさまざまな議論をしております。法案自体が出てきたわけではないので、それに対する意見を聞くのではなくて、現実に今、過労死された家族や、あるいは過労死寸前までいっている家族の状況というのは、単に時間だけではないのではないか。

 つまり、よく裁判でも問題になるのは、例えば百時間働いていれば文句なしに労災認定されますよね。でも、百時間も働いていないことが現実には多くて、だけれども、それプラス、ノルマであったりとか、結局、成果ですよね、成果を求められることによって非常に追い詰められる、あるいはそのために長時間勤務を強いられる、非常に複合的なといいますか、そういうことがやはりあるんだと思うんですね。

 なので、成果で評価されるから時間と賃金が一緒じゃなくてもいいんだということではなくて、やはり最低でも時間規制を設けることによって、そこを未然に防いでいく力になるんじゃないかな、そういうことが起こっているんじゃないかなというふうに問題意識として私は持っているんですけれども、相談されている事案なども含めて、ぜひアドバイスをいただければと思います。

寺西参考人 先ほども少し触れさせていただきましたが、やはり、果たして何時間働いているのかということが一番家族にとってはわからないところでして、相談者の中からいろいろな事情を伺うところによりますと、例えば、会社では残業規制をしているというところで、決まって夜七時になればタイムカードを押してくださいとかいう形で、正しい労働時間が把握されていないというケースが多い、そういったところで労災申請の条件には合わない、そういうことも申請する側にとっては一番の大きな問題だというふうに聞いております。

 ですから、本人任せの労働管理ではなくて、やはり使用者側がきちっと労働管理をしていただきたいなというのが、私たち働いている側としては考えているところです。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 その点でのきちっとした管理を、規制をしていくということがやはり必要ではないかなというふうに私は思っております。

 次に、圓藤参考人に伺いたいと思います。

 日本産業衛生学会の意見は、前の政府案のときからさまざま拝見をしているところであります。

 そこで、指摘をされていた第六十六条、健康診断についてなんですけれども、事業者は、「厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」という条文がございます。そこに、「第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。」とされました。つまり、これがストレスチェックを健診と別建てにするという意味を持っております。

 衛生学会は、やはりこれを除く規定を削除するべきと主張していたのではないかなと思います。

 義務化をすべきではないということと、健診と一体で行うべきだとするというのは、一見矛盾するかのように聞こえるんですけれども、やはり私はそうではなくて、健診のあり方というのは、体と心を別々ではなく、一体として見るということの趣旨があったのではないかと思いますので、ぜひこの趣旨を御説明いただければと思います。

圓藤参考人 おっしゃるとおりでございまして、心と体を一体として捉える、健康診断はそれを担保するものとして非常に重要なものでございます。

 それが、前回の法律の場合には大きく分断された形になりましたので、これは大変困るというふうな意見を述べた経緯がございます。今回は、ストレスチェックということに関しまして、それの項目のみを別にしております。

 今回の法律にありますように、全ての労働者に義務化されていないというふうな状況がございますので、別の項目立てにされたのではないかというふうに思っています。また、ストレスそのものが必ずしも健康情報とは限らない、いろいろな状況を聞くものでありますので、必ずしも健康診断と同一というふうには至らないと思っております。

 ただし、運用面で健康診断と一体として捉えて我々は対応していきたいと考えておりますので、やむを得ないのではないかというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。非常に重要な御提言だったと思います。

 それで、ストレスチェックの活用は、五十人未満の小規模事業場には努力義務とされているんですが、一方、長時間労働の場合の医師の面接指導については、平成二十年から既に適用となっていると思うんですね。ですから、小規模企業といえども、これはやらなければならないことになっているわけです。

 その経験を通して、やはり今回の活用の面でも総合的にやっていく必要があると思うんですけれども、産業医等、多職種との連携、あるいは地域産業保健センターの活用などが非常に求められると思っているんですけれども、人手の不足ですとか、体制ですとか、あるいは研修など、さまざま課題があると思いますが、どのようにお考えか、伺いたいと思います。

圓藤参考人 ストレスチェックの項目を行ったけれどもその後の事後措置ができないということは、むしろ弊害に近いと思っております。事後措置ができて初めて完結するものというふうに思いますので、それを適切にできる体制づくりをすることを優先したいというふうに考えております。

 したがいまして、先生おっしゃるように、地域産業保健センター事業等で十分できるというふうな状況が生まれましたら、ぜひ、小規模事業場におきましても同じような体制にしていただくということをしたいと思いますので、これから体制づくりをしていただきますようお願いしたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 もっと伺いたいことがありましたが、時間になりましたので、これで終わります。

 三人の方、ありがとうございました。

後藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る十八日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十五分散会


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