衆議院

メインへスキップ



第4号 平成27年3月25日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年三月二十五日(水曜日)

    午前八時三十五分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 後藤 茂之君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 松野 博一君 理事 西村智奈美君

   理事 浦野 靖人君 理事 古屋 範子君

      穴見 陽一君    岩田 和親君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      加藤 鮎子君    神山 佐市君

      木村 弥生君    黄川田仁志君

      小松  裕君    佐々木 紀君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      助田 重義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    谷川 とむ君

      津島  淳君    豊田真由子君

      中川 俊直君    中村 裕之君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      橋本  岳君    比嘉奈津美君

      細田 健一君    堀内 詔子君

      前川  恵君    牧原 秀樹君

      松本  純君    松本 文明君

      三ッ林裕巳君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    村井 英樹君

      阿部 知子君    大西 健介君

      岡本 充功君    中島 克仁君

      長妻  昭君    山井 和則君

      足立 康史君    井坂 信彦君

      牧  義夫君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    角田 秀穂君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   内閣府副大臣       赤澤 亮正君

   厚生労働副大臣      永岡 桂子君

   厚生労働副大臣      山本 香苗君

   総務大臣政務官      あかま二郎君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    高階恵美子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局内閣審議官)         堀江 宏之君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            古屋 浩明君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官)    中島  誠君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            小野  尚君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 青木 信之君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    井波 哲尚君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     北崎 秀一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   太田  充君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           伯井 美徳君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           芦立  訓君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  二川 一男君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  新村 和哉君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       安藤よし子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  唐澤  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  香取 照幸君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 今別府敏雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 石井 淳子君

   参考人

   (年金積立金管理運用独立行政法人理事長)     三谷 隆博君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     黄川田仁志君

  加藤 鮎子君     宗清 皇一君

  田畑 裕明君     務台 俊介君

  堀内 詔子君     宮川 典子君

  牧原 秀樹君     神山 佐市君

  松本 文明君     前川  恵君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     牧原 秀樹君

  黄川田仁志君     大串 正樹君

  前川  恵君     津島  淳君

  宮川 典子君     中村 裕之君

  務台 俊介君     岩田 和親君

  宗清 皇一君     加藤 鮎子君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     助田 重義君

  津島  淳君     宮路 拓馬君

  中村 裕之君     細田 健一君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     佐々木 紀君

  細田 健一君     穴見 陽一君

  宮路 拓馬君     松本 文明君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     堀内 詔子君

  佐々木 紀君     田畑 裕明君

    ―――――――――――――

三月二十四日

 新たな患者負担増をやめ、窓口負担の大幅軽減を求めることに関する請願(池内さおり君紹介)(第五三五号)

 同(堀内照文君紹介)(第六一七号)

 国民年金第一号被保険者の出産育児期間中の保険料免除に関する請願(吉川元君紹介)(第五三六号)

 安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員に関する請願(細野豪志君紹介)(第五三七号)

 社会保障の切り捨て中止に関する請願(斉藤和子君紹介)(第五六五号)

 介護従事者の処遇改善に関する請願(池内さおり君紹介)(第五八九号)

 同(大平喜信君紹介)(第五九〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第五九一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五九二号)

 介護労働者の処遇改善に関する請願(畠山和也君紹介)(第五九三号)

 同(藤野保史君紹介)(第五九四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五九五号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現をすることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五九六号)

 同(池内さおり君紹介)(第五九七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第五九八号)

 同(大平喜信君紹介)(第五九九号)

 同(笠井亮君紹介)(第六〇〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六〇一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第六〇二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六〇三号)

 同(清水忠史君紹介)(第六〇四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六〇五号)

 同(島津幸広君紹介)(第六〇六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六〇八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六〇九号)

 同(畠山和也君紹介)(第六一〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第六一一号)

 同(堀内照文君紹介)(第六一二号)

 同(真島省三君紹介)(第六一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六一四号)

 同(宮本徹君紹介)(第六一五号)

 同(本村伸子君紹介)(第六一六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として年金積立金管理運用独立行政法人理事長三谷隆博君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣人事局内閣審議官堀江宏之君、人事院事務総局給与局長古屋浩明君、内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官中島誠君、金融庁総務企画局審議官小野尚君、総務省大臣官房審議官青木信之君、統計局長井波哲尚君、消防庁審議官北崎秀一君、財務省主計局次長太田充君、文部科学省大臣官房審議官伯井美徳君、大臣官房審議官芦立訓君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官樽見英樹君、医政局長二川一男君、健康局長新村和哉君、労働基準局長岡崎淳一君、職業安定局派遣・有期労働対策部長坂口卓君、雇用均等・児童家庭局長安藤よし子君、社会・援護局長鈴木俊彦君、社会・援護局障害保健福祉部長藤井康弘君、老健局長三浦公嗣君、保険局長唐澤剛君、年金局長香取照幸君、政策統括官今別府敏雄君、政策統括官石井淳子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。おはようございます。

 まず大臣、端的にお伺いをしたいと思います。

 この通常国会で、GPIFに関するいわゆるガバナンスの法案、提出をされる御予定があるでしょうか。けさの一部報道によりますと、提案は断念をしたとか、あるいは三谷理事長の再任が内々決まったというような報道がありますけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 ガバナンス法案についてのお尋ねでございました。

 ガバナンス体制を強化するということについては、もう先生御案内のとおり、改訂日本再興戦略においても、政府として、法改正の必要性も含めた検討を行うなど必要な施策の取り組みを加速すべく所要の対応を行うこととされておりまして、極めて重要な課題であろうかと思います。

 一方で、今国会には、国民健康保険法とか、それから労働者派遣法の改正等、数多くの重要法案が出ておるわけでございまして、また、社会保障審議会の年金部会においても、一方、このガバナンスにつきましては、今後十分な議論を重ねて取りまとめていただかなければいけないということがあるわけでございます。

 現在、GPIFは、御案内のように、理事長一人、理事一人で、任意でありまして、そういう体制でありますので、先月提出をいたしました法案、独立行政法人に係る改革を推進するための法案でありますが、これにおいて、GPIFについて、有識者会議の提言とか、あるいは昨年十月の基本ポートフォリオ見直し時の運用委員会からの建議なども踏まえて、年金積立金の管理運用業務の体制強化のために、法律上、必要な理事として、運用担当理事を追加する等の内容が盛り込まれているわけであります。

 この独法につきましては、一昨年十二月の独立行政法人改革等に関する基本的な方針に基づいて、新しい中期目標期間の開始とともに、独立行政法人のままでも迅速かつ着実に実施すべき措置を講ずるものであって、これについては早期の……(発言する者あり)聞いていただけますか。

渡辺委員長 答弁しておりますので、不規則発言はやめてください。

塩崎国務大臣 早期の御審議、成立をお願いしたいと思っております。

 それで、今お話し申し上げたように、今国会には数々の法案の審議をお願いしているわけである一方で、社会保障審議会年金部会の方でさらにこれから十分な議論を重ねて取りまとめをいただくという必要があることを踏まえますと、現時点において、今国会にGPIFのガバナンス体制強化のための新法を提出できるかどうかについては何とも申し上げられないというところでございます。

西村(智)委員 何をおっしゃっているのか全くわかりません。聞いておられる皆さんも、本当に出すのか出さないのか、今の御答弁を聞いて理解された方は一人もいらっしゃらなかったんじゃないでしょうか。

 明確に、もう一度お答えください。

塩崎国務大臣 出すのか出さないのか、提出できるかどうかについては何とも申し上げられないと申し上げているので、出るのか出ないのかわからないとおっしゃるのはそのとおりでありまして、よく御理解をいただいたと私は思いました。

西村(智)委員 詭弁を弄するというのはこういう答弁のことかなと思いますね。

 私は、端的に答えてくださいというふうに申し上げました。これまでも塩崎大臣の答弁は、いつも質問に付随するものが非常に長くて、質問時間がこれでもう五分ぐらいなくなってしまったわけです。

 ぜひ、委員長、そこのところは大臣に、短く端的に、的確に答弁をしてくださるように御指導をお願いしたいと思います。

 予算委員会で質問できませんでした労働者派遣法のことについて伺いたいと思っています。

 私は、派遣労働というのは一時的で臨時的な働き方であるというふうに思っていますし、日本の労働慣行の中で、言ってみれば労働者派遣法という方法で例外的に認められたものであって、これはやはり限定された働き方だというふうに思っています。

 しかし、今回の改正案、これで三度目の提出となっておりますけれども、もう二度廃案となりました。呪われた法案と自民党サイドからも言われているようでありますし、三度目となりますともういわくつきの法案ではないか、そろそろ諦めた方がよろしいのではないかというふうに思いますけれども、提出をされたということでありますし、私も積み残しの質問がありますので、それについて何点かお伺いをいたしたいというふうに思っております。

 今回、昨年の臨時国会で廃案となりましたものから多少の修正が加えられて提出をされているようでございます。中身についてはまだ私も詳細にヒアリングはしておりませんけれども、もともと労働者派遣法の前回までの法案といえば、均等待遇の確保がないままに派遣労働者の受け入れ期間の制限を事実上撤廃するというものであって、世界的な比較をしてもこういった例はほかにはございません。日本だけでございます。キャリアアップ措置あるいは雇用安定措置、こういったものも一応は盛り込まれておりますけれども、実効性がほとんどないということは昨年までの質疑で明らかになっているとおりであります。

 今回の修正案でありますけれども、これで一体、中身は変わったんでしょうか。派遣労働者の受け入れ期間の制限を事実上撤廃するといった法案の効果そのものが、これで変わったのかどうか。私は、法案の効果に影響を与えない範囲で、昨年までの法案については中身が悪かったから今回は修正して出しましたよと、言ってみれば小手先だけの、アリバイをつくるための修正だったのではないかというふうに思いますが、これによって制限撤廃という効果は変更されるのかされないのか、そこを端的にお願いいたします。

塩崎国務大臣 修正をしたことについてのお尋ねでございました。

 労政審の建議において、派遣労働を臨時的、一時的なものと位置づけることを原則とする考え方が示されておりますけれども、今回、法律に、派遣は臨時的、一時的という文言を規定することによって、その趣旨がより明確になる効果を持っているものと考えておるわけでございます。なお、派遣は臨時的、一時的という文言を法律に明記することについては、さきの国会審議においても野党からも求められていたところでございます。

 なお、今回の労働者派遣法の改正法案では、常用代替を防止するため、派遣の受け入れを事業所単位で原則三年とするとともに、派遣労働への固定化を防ぐために、同じ派遣労働者の、課単位ですが同じ職場への派遣について三年を上限とする個人単位の期間制限を新たに課すこととしておりまして、そもそも期間制限を撤廃するものではないということを明確にしておきたいというふうに思っております。(発言する者あり)

西村(智)委員 変わっていないんですね。

 この答弁は昨年までの臨時国会で繰り返されているものと全く変わりありませんし、また、ちょっと今耳に入ったんですけれども、与党席の方からも、変わっていないというつぶやきのようなやじが聞こえました。実際、何も変わっていない。これで本当に非正規の方から正社員へと転換する流れができてくるのかどうか。私は、本当にこれは不透明で、なおかつ、そのようになる可能性は極めて小さいものがあるというふうに思っております。

 実際、二〇一四年、昨年一年間で転職をした人の数が二百六十一万人いらっしゃいます。このうち、正規社員だった百一万人の方で、再び正規社員になった方は六十一万人にとどまっております。残りの四十万人は非正規社員として再就職されている。約四割が、正社員であったところから非正規へと転換をされているわけです。

 一方、非正規社員であった百六十万人の方、この中で、正規社員になれた方は三十五万人です。残りの百二十五万人、約三倍に上る人数の方が再び非正規社員になっていらっしゃる。つまり、非正規社員だった方で正規社員へと転換できた方は、全体で二割しかいらっしゃらないわけですね。

 こういった状況がある中で、しかも、今回労働者派遣法が改正をされると、業務が臨時的、一時的でなくても、恒常的に派遣を利用できることになるということでありますから、派遣が安価に買いたたかれて、正社員を淘汰するんじゃないか、こういうおそれが非常に強い。

 一体、どこで歯どめをかけるんでしょうか。法律の条文にどこで書いて、そういった歯どめの内容が盛り込まれているのでしょうか。正社員の労働条件の引き下げにつながらないその歯どめがどこにあるのか、明確にお答えをお願いいたします。

塩崎国務大臣 一点だけ、先ほど正規、非正規、移動がどうだったかという御指摘がありましたが、これは過去十年間、一年間だけのはちょっと今数字を持っておりませんけれども、少なくとも過去十年間で見ますと、男女ともの六十歳以上の方々が非正規になった割合と、それから女性の、言ってみれば現役の五十九歳までの方々を足し合わせると、ほぼ、ふえた人数の九割がこれで説明ができてしまうということであります。

 一方で、この間の、五十四歳から十五歳までの現役の人たちの正規から非正規になった人たちより、非正規から正規になった方が多いということだけは、この二年間で、八四半期連続でそうなっているということだけは申し上げておきたいと思います。

 正社員に本当になれるのかという、今、西村先生の御質問でございました。

 何度も申し上げますけれども、正社員になりたいと思っていらっしゃって派遣で働いていらっしゃる方と、派遣で働きたいとむしろ積極的に選んでいらっしゃる方がおられるということをまず申し上げたいと思います。

 正社員を希望している方々には正社員の道が開かれることは当然重要であって、今回の改正法案では、派遣会社に対しまして、派遣期間が満了した場合の派遣先への直接雇用の依頼を含む雇用安定措置や、正社員化を含むキャリアアップ措置として、計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングの実施を新たに法的に義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐための措置を強化することとしております。

 これらの義務の履行の確保を図る観点からは、労働者派遣事業については、現在四分の三が届け出制となっておりますけれども、今後は全て許可制とするというのが新しい法律での定めでございます。

 また、派遣先においても、派遣で働く方への正社員募集に関する情報、今はこれは社員に知らされないことになっておりますけれども、この情報提供を新たに義務づけるとともに、予算措置として、正社員として雇用する場合のキャリアアップ助成金の活用などを進めることとしておりまして、これらの取り組みを通じて、派遣で働く方の正社員化を推進してまいりたいというふうに考えております。

西村(智)委員 せっかくの大臣所信なので、大臣の率直な考え方を聞きたいと思うんですけれども、今の御答弁は、私が聞いていること以外のことも長々と答弁をされているし、これでもう本当に時間がどんどんどんどん少なくなってしまうわけですよ。

 ほかの委員の皆さんに対してもこういうことだったら、もう本当に、厚生労働委員会のあり方として、これは大変大きな問題だと思いますので、委員長、ぜひ、ここのところは大臣に厳しく注意をしてもらいたいと思います。

渡辺委員長 はい。適切に運営をします。

西村(智)委員 委員長、大臣に注意をしていただきたいと思います。

 このまま行っても何だかずぶずぶと行ってしまうので、ちょっと先に進みたいと思います。

 先ほどの大臣の答弁は、結局、どこで歯どめをかけるんですかということについては何にもお答えになっていらっしゃらないわけです。法律の条文をただ読まれただけで、どこで歯どめになるかということについては、その条文を読んでも何も書いてないじゃないですか。

 実際のところ、リーマン・ショック、皆さんも御記憶だと思いますけれども、わずか五、六年前のことだったでしょうか、あのときには年越し派遣村というのができて、本当に大量の派遣労働者の方が集結をした。しかし、あそこで、ちょっと私感じたのは、男性の派遣労働者はあそこには来られたけれども、女性の派遣労働者は誰一人来られなかったということなんですね。それはまた別途の問題ではありますけれども。

 あのときに、リーマン・ショックのときに、雇いどめとか違法な解雇というのが大量に発生したというのがすごく大きな問題になりましたよね。そのときに、雇用が継続した人はどのくらいいるかというと、わずか一〇・九%なんです。派遣元で無期雇用の労働者でありながらも、その九四%が解雇によって離職している、こういう現実があるわけです。これは労政審に提出されている資料ですので、厚労省もお認めになっていることだと思います。つまり、無期契約派遣という形でも、派遣元の判断で首を切られてきたんです。

 そういう実態がある中で、派遣元が解雇したら、これは判例的に言っても、それはもう契約がおしまいだから継続できないということになってしまうこの現実の中で、本当に、そういった派遣労働者が違法な解雇、首切りに遭わないという防止策、これが一体どこでどういうふうに打たれているのか、これについても明確にお答えをお願いします。

渡辺委員長 塩崎厚生労働大臣、簡潔に答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 今回の派遣法で、個人単位の期間制限の上限に達する派遣労働者については、正社員になったり、それから、別の会社で働き続けることができるように雇用安定措置というのを導入するということを申し上げているわけで、この雇用安定措置は今まではなかったわけでありまして、これを新たに派遣会社に義務づけることとしております。これらの措置を通じて、派遣期間の上限に達したことによって雇いどめとなることのないように、派遣労働者の雇用の安定を図るということにしております。

 二十四年の法改正、これは民主党時代でありますが、派遣先の都合による労働者派遣契約の中途解除に当たって、新たな就業機会の確保とか休業手当等の費用負担に関する措置など、必要な措置を講ずる派遣先の義務を設けておりまして、派遣契約の中途解除が解雇につながることを防ぐことといたしました。

 なお、派遣労働者に限らず、有期雇用、有期労働契約における雇いどめについては、労働者保護の観点から、一定の場合には無効とするルール、つまり雇いどめ法理というのが確立をして、労働契約法の第十九条に法定化をされているところでございます。さらに、解雇についても、客観的な合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効とする解雇権の濫用法理が労働契約法の第十六条に法定化されておって、不当な雇いどめや解雇が行われないように、こうしたルールについても周知を図っていかなければならないと思っております。(発言する者あり)

西村(智)委員 今、山井委員がおっしゃっていますけれども、派遣についてはその法理は通用しないんですね。実際のところ、判例でそのような解釈、判断がされたというケースではなくて、実際は、派遣元と派遣先の間での契約が解除をされるときには、無期契約の人も例外ではなくて、言ってみれば切り捨てられる、それは、裁判所の判断としては違法ではないというふうにされているわけです。

 ここのところは、きっちりと今までの前例もよくよく読んで判断をすべきであるというふうに思っておりますし、また、派遣労働者という、より立場の弱い働き方をしているからこそ、より一層の言ってみれば保護が必要になるのではないかというふうに思いますけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 今、この法理は派遣には適用されないという先生の御指摘でございますけれども、私どもは、これは派遣労働の場合にも適用されるというふうに理解をされているわけでありまして、それをもとに運ばれていかなければならないというふうに考えております。

西村(智)委員 実際、現実に救われていない方がいらっしゃるわけですね。そこのところはよくよく考えた上で、今回の派遣法は、やはり私はもう一回これは引っ込めていただいて、きちんと出し直すということが必要だと思いますし、もしこれが審議に入るということになれば、私たちは、徹底的に一つ一つの事案について大臣とまた議論をしたいというふうに思っています。

 この後、労働基準法の改正についても御質問が我が党の議員からもあることだと思いますけれども、私の方からも一点伺いたいと思います。いわゆる裁量労働制の適用対象者についてです。

 厚生労働省の調査では、平成二十五年度の労災認定事案のうち、裁量労働制の適用対象者と考えられる事案が十四件あるということであります。本当にとんでもないことです。

 政府は、この裁量労働制の対象業務を拡大するという考え方のようでありますけれども、長時間労働によって病気になったり過労死する人がふえる、こういったことは実際に懸念をされているわけです。

 政府が今回、裁量労働制の対象業務に、いろいろ拡大するということなんですけれども、法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用した商品の販売または役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘または締結を行う業務を追加する、そういうことを検討されているそうなんですけれども、こうしますと、一体どれくらいの人がこの対象業務に当たるのか、本当に懸念されます。

 実際、今般のその拡大によって、裁量労働制を適用される人がどの程度ふえるというふうに想定していますか。

塩崎国務大臣 今お話がありましたように、企画業務型裁量労働制の対象業務として追加をする課題解決型提案営業の業務というのは、法律上の要件として、取り扱う商品やサービスが法人顧客の事業運営に関する事項、つまり事業全体に関する事項などに限られることとか、あるいは企画、立案、調査、分析の業務と一体的に営業を行うものであるということを定めているわけでございまして、また、法に基づく指針というのが後にできますけれども、そこで、店頭販売やルートセールス等、いわゆる単純な営業業務、これである場合などは対象業務とならないことを明示する方針でございます。

 それからまた、もう一つの追加項目であります裁量的にPDCAを回す業務は、法律上、企画、立案、調査、分析の業務を行い、かつ、これらの成果を活用する業務という要件を定めるとともに、法律に基づく指針というのが今申し上げたようにまたできますが、この企画、立案、調査、分析の業務と組み合わせる業務が……(発言する者あり)答えていますのでちょっと聞いてください。個別の製造業務や備品等の物品購入業務あるいは庶務経理業務などである場合は対象業務とはなり得ないということを明確にする予定でございます。

 こうした法律及び指針による制度の趣旨に即した限定等により、対象となる方々の数は相当程度絞られることになるというふうに考えておりまして、お示しする具体的な数字というのはなかなか難しいわけでありまして、しかし、例えば何百万人とかそういうような単位では決してないという、限定的な今回の拡大の方法でございます。

西村(智)委員 これも本当に端的に答えていただければ、最後のところだけ答弁していただければよかったので、大臣、その前のところは結構でございますので。

 私は、これはやはりどの程度ふえるのかわからないというふうに思います。私は、むしろこれが非常に拡大するという方向でふえるのではないかというふうに本当に懸念をしています。

 この前、我が党の部門会議のワーキングチームの中で、裁量労働制の働き方をしていた息子さんが亡くなったという御遺族の方からお話を伺う機会がありました。本当に胸が詰まるようなお話で、いたたまれませんでした。私たちは、やはりそういったことは防止していかなければいけないというふうに思う、それが立法府の責任だと思っております。

 彼のケースは、入社二年目で裁量労働制だというふうに言われたということなんです。採用二年目で、あなたは裁量労働制ですよと言われたときに、一体どういうふうにそれを拒否することができるだろうかというふうにその御遺族の方はおっしゃっておられました。つまり、こうした使用者側と労働者側との力関係の中で、あなたは裁量労働制ですよと言われたら、それはやはりなかなか断ることができない。こういう力関係にあることを念頭に置いて、私はやはり、今回の労働基準法の見直しというのは議論していかなければいけないと思う。そうでなければ、過労死なんかゼロにできないじゃないですか。

 私たちは、昨年、過労死防止のための議員立法、行われました。そのときの趣旨はそういうことだったはずなんですね。過労死で亡くなる人をなくそうということだったわけですけれども、今回、裁量労働制が拡大されていった先に、また過労死がふえてしまうというようなことがあったら、一体誰が責任をとるのか。法案を提出した大臣及び政務三役の皆さん、また厚生労働省の皆さんにも責任があることだと思っております。ぜひこの点は今後も議論を続けていきたいというふうに思います。

 最後に一点、社会保障関係費について伺いたいと思います。

 消費税の八%への導入が行われましたけれども、一〇%への引き上げは延期をされました。社会保障の充実策のうち、年金への上乗せ給付と、それから年金受給資格期間の短縮は先送りされた。そして、低所得の高齢者の介護保険料の軽減策は、大幅に縮小をされました。安倍政権は、消費税率の引き上げを延期したのであるから、社会保障の充実を限定することは当然だというふうに言わんばかりの対応だというふうに思います。

 しかし、私たちが社会保障と税の一体改革で皆さんにも合意をいただいて決めたときには、少なくとも、消費税の引き上げ分の五%のうちの……

渡辺委員長 西村君、申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

西村(智)委員 一%は社会保障の充実のために使いましょうということだったわけですけれども……(発言する者あり)

渡辺委員長 申し合わせの時間です。不規則発言はやめてください。

西村(智)委員 その今回の引き上げ分は一・三五兆円、一%には達していないわけであります。本当にこれは財源を捻出できなかったんですか。安倍政権の社会保障と税の一体改革に関する姿勢が問われています。

渡辺委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

塩崎国務大臣 今先生御指摘の、年金の、一つは低年金者に対する配慮と、それから二十五年を十年にするというものと、それから介護保険料の軽減策でありますけれども、それぞれ、できるところは我々としても、特に介護保険料については、低所得者については二段に分けたうちの一段目はちゃんとやるということでありますし、また、少子化対策としての子ども・子育て支援新制度は、これはもう全部やるというようなことで、優先順位をつけて社会保障についてはやったところでございます。

 先生方も、政権を担っておられたときのことを考えてみれば、なかなか、安定財源を確保した上で、この一体改革の中で恒久的な制度として導入しなければいけないものとして今の年金の配慮も、それから介護保険料についての配慮もあったと思うわけでありまして、我々としては、できる限りのことを優先順位をつけてやった結果がこういうことだということで、できる限りの精いっぱいのことはやったというふうに考えております。

西村(智)委員 民主党政権であったら、私は、社会保障の充実の部分については必ず確保するようにできたというふうに思います。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民主党の阿部知子です。

 ただいまの西村委員の御質疑は厚生労働大臣の、労働分野を所管される塩崎大臣への質疑でございますが、私は、いま一方の厚生部分、その中でも特に医療分野についてお尋ねをしたいと思います。

 実は、私自身のバックボーンというのは医者でございまして、そして、議員になる大きなきっかけも医療事故でございました。

 私は、自分の兄を一九九八年に医療事故で亡くしました。一九九九年に横浜市立大学で患者取り違え事件というのが起きまして、高度先進医療を行うような病院でも患者さんを取り違えたり、右左を取り違えたり、当然行うべき予防措置をせず、私の兄も亡くなりましたけれども、それは医療者である私にとっても、大変に切なく、何とか医療現場をよくしたい、また患者さんの悲しい思いを一つでも少なくしたいと思う立場で国会議員になろうと思いました。

 それゆえ、今回の質問は大臣に、人間塩崎大臣として、大臣であり、でも一人の人間、命を預かる重要な省庁のトップにおられる方としての心からのお言葉でお答えをいただきたいと思います。西村委員の御質疑が過労死ゼロであれば、私の願いは医療事故ゼロでありますので、そのような観点からお伺いをいたします。

 まず、三月の二十日、長年この国会でも問題になっておりました医療事故のために、どうすればこれを少しでも少なくできるかという観点から、医療事故調査制度の中で、大臣のお手元にもございますような、医療事故調査・支援センターというものを含む第三者の調査評価機関の設立も含めたもののガイドラインというのが発表をされました。

 大臣ももともと御承知と思いますが、今回の仕組みは、病院がみずから、これは医療事故であると思い、内部委員会をつくり、調査をし、その結果を第三者機関に上げるということで、実は、医療には、医療者側がいて患者さんがいるという双方向でありますが、医療者側からスタートするという制度でございます。

 そこで、当然、もう一方の対象、患者さん、受ける主体にとって、この制度がどんな意味を持つのか、また、この制度が本当に患者さんと医療者の信頼を築くためのものになるには、何があればよいとお考えであるか、大臣の言葉で、素直な言葉で、端的にお願いいたします。

塩崎国務大臣 最近、群馬大学、あるいはきょうお取り上げをいただくと思いますけれども女子医大の大学病院で、それぞれ死亡事故が、それも連続して起きているというようなこともあって、医療事故の問題は極めて大事な問題として、まず法律を通していただいて、今回ガイドラインをつくった、こういうことであります。

 今先生お尋ねの、何が大切かということであれば、それはもう、一番は、医療というのはやはり医療提供者と患者との間の信頼関係、相互の信頼関係というものがなければならないというふうに思うわけでありまして、患者あるいは遺族からの指摘とか疑問にやはり真摯に医療機関側も向き合っていただくということが極めて大事だというふうに思っております。

阿部委員 大臣のお手元に、日本病院会がとったアンケートの用紙が二枚入れてございます。

 日本病院会は、中小規模あるいは大規模な病院までいろいろな病院が加入して、日本の中で医療を提供している大きな主体でございますが、日本病院会の調査におきましても、今大臣のおっしゃったような、二枚目の下にございます患者家族のケアとか当事者のケアとか、そういうものが医療事故の原因究明に当たっても重要であるという指摘がございます。

 そして、その次のページをおめくりいただきますと、何を医療事故と考えるかということにおきましても、下の段、書いてございますグラフには、関係者の意見をまとめて広く取り入れる、あるいは、患者遺族からの強い疑いと不信に配慮する、すなわち、病院が何を医療事故と考えるかという場合に、患者さんサイドの声が非常に重要だということのこれは指摘でございます。

 何度も繰り返しますが、今回の制度は、あくまでも病院側がこれを事故と思って調査をスタートするという仕組みになってございます。しかし、実際にこれが信頼されるものになるためには、この病院会のアンケートにございますように、常に情報公開、患者に窓が開かれているということが重要であると思いますし、そのように取り組まれると理解してよろしいでしょうか。お願いします。

 患者さん側からは調査のトリガーを引くことができない制度であります。それゆえ、医療者側が十分に耳を澄まし、心を開き、共感を持って事に臨むということが必要な制度と思いますが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 今御指摘のように、医療事故と決める際、患者遺族からの強い疑いと不信に配慮をするというのが一番多いというアンケート結果でございます。

 これも先ほど申し上げたように、やはり医療提供者、この場合は事故と目されることが起きた医療機関と、それから患者あるいは家族との間でしっかり信頼関係がなければいけないわけでありまして、そういうことが厳しい際に、さっき申し上げたように、やはり患者やあるいは遺族からの指摘や疑問に、ちゃんとそれを真摯に受けとめるという中からこの判断を医療機関にはしていただかなければいけないなというふうに思います。

阿部委員 私が繰り返しのように同じことを聞いたのは、実は、これから御紹介する東京女子医大のプロポフォール、これは麻酔薬です、これの不正投与というか、これによって二歳の坊やを死に至らしめた事案についてでございます。

 国の方でこういう調査制度ができる一方、現場では、わずか二歳の、それも首のリンパ管腫という良性の御病気で、三日、四日で済みますよといって入院して帰らぬ、子供は帰ってこない。お母さん、お父さんは、何が原因だったのか、本当に泣くに泣けない、失ったものの大きさにおののいているような事案でございます。

 この女子医大の事件、プロポフォール事件は既に新聞報道等でも御承知のことと思いますが、使われたプロポフォールというお薬は、手術室で麻酔のときに使うのはあっても、集中治療室、すなわち使用時間が長くなるようなところ、まして子供には、いろいろな問題が起きるから基本的禁忌とされておりまして、使う場合にも、患者さんにこれ以外にないという御説明をし、院内でも周知をして、極めて慎重に経過観察をしながら使うという薬でありました。

 しかしながら、この坊やの場合、六人の麻酔医がかわって、誰がそのときの指示をしたかもはっきりせず、薬剤師さんの間でも情報共有がされず、必要な検査も全くなされていない。本当にこんなことが女子医大で起きていいんだろうかと思うような事案でありました。

 それのみならず、実は、この患者さんに渡された死亡診断書には、自然死、病死という言葉があったそうです。自然死、病死、死ぬような病気じゃない、自然に死ぬなんてない、そこから、お父さん、お母さんの疑問は病院に向けられました。

 ところが、病院では、内部調査というのを、中間報告、その以前のとりあえずの報告を含めて二回、そして外部を入れた調査報告が三回。しかし、その間に、御家族からの疑念、あるいは、お母さんが丹念にとったメモとの突き合わせなどを一切行うことなく、結果、お母さん、お父さんは、一年たったときにこの事案を傷害致死として告訴されました。

 先ほど私は、入り口で患者さんの声を聞くこと、調査をしてくれと言われて、きちんと声を聞くこと、それから、起きてしまった後、患者さんの持っている疑念についても、内部調査の段階でもきちんと患者さんと突き合わせて声を聞くことが必要だという事案なんだと思います。それをなさらないと、不信が高まって、また、裁判に持っていかざるを得なくなる率が高くなると思います。

 大臣に、二点目は、入り口も患者さんに開かれた心を医療者が持つこと、調査の中間においても、報告においても、患者さんと常に情報共有をすることが原則とお考えですか、いかがですか。

塩崎国務大臣 今回、医療事故調査制度の施行に係る検討会で随分たび重なる議論をしていただいて、時間もかなりかけていただいたというふうに思っております。

 この三月二十日に公表されました取りまとめにおいて、医療機関が行う院内調査の調査項目として、必要に応じて遺族などの関係者からのヒアリングを行うことというふうになっております。

 それから、遺族から院内調査結果の内容についての意見がある場合は報告書にその旨を記載するということになっておりまして、委員の御指摘のように、途中でも、やはり医療機関はちゃんと遺族、患者側の声にしっかり耳を傾けなければならないということは、こういったところで制度として生かされているのではないかというふうに考えておるところでございます。

阿部委員 必要に応じてというと、誰が必要と考えるかというところがまた問題になるんですね。

 私は、この事案でも、女子医大側が必要と考えて耳を傾けていれば全然違ったと思います、お父さん、お母さんは何が起きたかを知りたかったわけですから。ところが、往々にして、そのことが訴訟につながるんじゃないか、あるいは萎縮医療になるんじゃないかということでどうしても医療現場が心を閉ざせば、その結果がさらに不幸なものになるということだと思います。

 大臣が今読んでいただきましたように、今回、ガイドラインでは、必要に応じてそこの中間報告あるいは報告を患者さんにもお見せできるような形にするということは言われているのですが、大臣、果たして、これは文章で患者さんに示されることが義務づけられてはいないんですよね。努力義務なんです。

 普通、調査報告書というと、例えば食品安全法の中にある食品安全において、あるいは消費者安全において起きた事故でも、運輸関係の事故でも、必ず調査書というのは出るんですけれども、それは被害者にも文章で渡されるんですね。これはそういうスタンダードができているんですね。医療事故に関しては努力義務なんですね、文章で渡すことが。これも私はおかしいと思うんです。

 一人の命がかかっていて、消費者保護あるいは交通安全の中で起きたことについては文章で手渡されている。その書きぶりも、「これらの者に対し、当該事故等調査に関する情報を、適時に、かつ、適切な方法で提供する」と書かれているのが運輸安全委員会設置法なんですけれども、適時適切とは文章なんです。なぜ医療事故の場合だけ努力義務になっているのか。文章で渡すということは本当に重要だと思います。口で言われても、言い間違い、あるいは理解の違いがある。文章に残れば、そこからまた考えるということになっております。

 大臣に、文章で渡すということが人の命への当然の向かい方であると思いますが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 今先生御指摘の点は検討会で最も議論があった箇所でございまして、いろいろな御意見の中で、法律を踏まえた上で今回のような結論になったということであります。

 御案内のように、遺族への説明については、口頭または書面もしくはその双方の適切な方法により行う、調査の目的、結果について、遺族が希望する方法で説明するように努めなければならない、ここを捉えて努力目標ではないかというお話でございました。

 確かに義務ではないわけでございますけれども、御遺族の希望になるべく沿うようにお願いしたいという形になっておりまして、医療機関の皆様方には、我々としてはできるだけ、ぎりぎりの話し合いの結果で結論に至ったガイドラインでもございますので、遺族の希望する方法で調査の結果を説明するように努めていただきたいというふうに考えているところでございます。

阿部委員 私が今申し上げたのは、せめて他の事故の対応並びにしていただきたい、せめてであります。他の事故では、ここにございます運輸安全委員会設置法においても、消費者の安全法においても文章で渡されております。これは私も自分が医療者だからわかりますが、医療現場が萎縮しないようにという配慮もあるのかもしれませんが、しかし、本当に世の中のスタンダードに並ぶということ、これが起きた事故に対しての私は最低の補償だ、補償というか、とるべき措置だと思います。

 今大臣にその思いがおありだろうと私は酌んだ上で、これは非常に運用上も問題になります。文章で渡されることが他の世の中の常識である、命のかかったことについての常識であるということを強く厚生労働省として姿勢として持っていただくと考えてよろしいですか。いかがでしょう。

塩崎国務大臣 今お話ございましたが、先ほど、ちょっとつけ足した方がいいかなと思います。

 一番最初に医療機関が調査をするわけでありますけれども、その際には、遺族への説明とセンターへの報告というのがあります。その後に、センターへの調査依頼自体、遺族がまたできることにもなっているということもあるのと、それから、これは遺族がセンターに依頼をすれば、センターの調査結果については文書で出さなければいけないということもございました。

 そういうことで、今お話がございましたように、今回の最終的な結果が、先ほど申し上げたように、希望する形で行われるようにということで、遺族のお気持ちを最大限配慮するということについては、ここに盛り込まれている、行間に盛り込まれているというふうに私どもは考えておるところでございます。

阿部委員 遺族がセンターに、第三者機関に申し入れれば文章で来るからそれでいいんでしょうというのが今の大臣のを要約したことですが、私は医療現場の信頼の方が大事だと思います。隠し立てしていないということのためにも、医療現場みずから文章で渡すという方がより本当の解決になると思いますので、申し添えます。

 そして、今大臣のお話にもありましたこの第三者機関は、個別の事案について、内部調査のみならず検証をする、第三者の目で見て、これが正しい分析なのかどうか検証をするという機能も当然持っていると考えてよいですよね。これは一言でお願いします。

塩崎国務大臣 改正医療法においては、医療事故調査・支援センターというのは、院内調査の報告によって収集した情報の整理及び分析を行うことになっております。

 この整理、分析は、三月二十日に公表されました医療事故調査制度の施行に係る検討会の取りまとめにおいて、医療機関から報告された事例の匿名化、一般化を行って、データベース化、類型化をするなどして類似事例を集積し、共通点、類似点を調べて、傾向や優先順位を勘案するとされたところでありまして、この趣旨は検討部会の取りまとめにおいても同様であると考えております。

 また、御指摘の検証というのが、医療機関から報告された報告書に不備等がある場合の指摘を指すのであれば、医療機関から提出された報告書に必要な記載がない場合などに、医療機関に対して適切に対応する、助言するなどの支援を行うこととなると考えているところでございます。

阿部委員 大臣、それでは、今現状ある院内調査と第三者機関の、現状ですよ、この法律に載らない第三者機関よりも後退します。今の第三者機関は、院内調査をした後、外部の弁護士とかお医者さんを入れて、やはりこの角度だけでは足りない、こっちの角度からも見ようというふうにやっているのです。だんだん後退していくのであれば、こんなものは意味がありません。

 いろいろな目で起きた事案を見て、もちろんそれを収集していくということも重要と思いますが、大臣がきちんと認識していただいて、読んでいただいてもそれでは本当におわかりかどうかわかりませんので、ぜひ、大事なことですので、新たに設置される第三者機関が患者さんの信頼を得て、医療事故の減少、ゼロに近づくために、大臣、もう一度この仕組みについて勉強をしていただきまして、きちんと事案について検証するということも踏まえて、書き方が悪いだけじゃだめなんですね。書き方は当然なんです。書き漏れがある、これもだめなんです。でも、医療として適切であったかということもきちんと検証していただかないと、これは何のためにやるのかということになります。

 私の時間の関係で、また、大臣が後ろばかり向くので、申しわけないですが、この事案は後でまとめてお答えください。

 では、短くお願いします。

塩崎国務大臣 短く申し上げますが、先ほど、事務方が用意したものだと、やや事務的なことだけ指摘するようなことになっておりますけれども、私の理解では、やはりセンターというのは第三者機関としてあるわけでありますから、当然、医療機関とは別の観点から見るということで、それは中立的に見ていかなければならないというふうに考えております。

阿部委員 何でも自分の言葉で答えていただければより前に向くので、よろしくお願いします。

 最後に、特定機能病院について。

 実は、女子医大も特定機能病院です。日本全国に八十六現在あると思います。一九九二年改正の医療法によって位置づけられて、高度な医療を行い、先端医療も含めて期待されるところの病院ですが、実は、女子医大は、かつて平柳明香さんという十三歳のお嬢さんが、これも心臓の手術で、帰らぬ人になった事案。そのときには、カルテの記載のミスというよりは、隠蔽というか書き直しも含めていろいろなことがあって、二〇〇一年に明香ちゃんの事件が起きて、二〇〇二年から七年まで特定機能病院を取り消しになっております。

 そして、この事案の後、女子医大の患者家族会というのができて、女子医大がそういうことを起こしてしまって、でも、大事な病院だから、ここで起こる医療事故について病院といろいろなことをともに検証していこうという作業までして、二〇〇七年に再認定になったところでまた起きてしまった事案であります。

 恐らく、きょうの午後、この家族会の皆さんが女子医大の特定機能病院の取り消しを求めて、実は、初めて取り消しになった病院が女子医大で、そして、患者さんとの共同作業で再認定されて、また今度は、こんな事件が起こるのでは取り消していただきたいという声が上がっております。極めて深刻な事態であります。

 大臣に、特定機能病院の女子医大の扱いについてが一点と、それからもう一つ、重ねてお願いがありますが、実は、特定機能病院というのは、医療事故などが、大きな病院で高度なことを行うゆえに十分配慮しなきゃいけない、だけれども、現状だと、カルテの保存が五年になっております。このプロポフォール事件でも、さかのぼった五年、六十三例で十一例の死亡があったことが判明していますが、カルテの保存期間がもっと長ければ、もっと問題は深掘りできるんだと私は思います。

 特定機能病院が安全性において重要な役割を担う、ゆえに、今回はきちんと女子医大の対策が必要だ。並びに、特定機能病院について、カルテのあり方について検討をしていただきたいが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 特定機能病院において、管理者に対して、医療機関内における事故報告等の、医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策を講ずることというのが求められているわけでありますけれども、医療機関内で発生した事例を収集、分析することによって問題点を把握して、組織としての改善策を企画立案し、適切に実施することになっております。

 医療安全管理体制としては、常日ごろからこのような取り組みが適切に実施されることがまず重要である上に、群馬と、それから今回の、今御指摘の東京女子医大の二つを見てみますと、本年二月三日から、医療分科会というところで、社会保障審議会の分科会で、特定機能病院の承認取り消しも含めた特定機能病院の有すべき安全管理体制について審議を開始しているわけでありまして、御指摘のようなカルテの保存期間の延長については、医療安全管理体制の確保に関する医療分科会での議論、そして、医療事故調査制度の今後の運用状況とか、あるいは電子カルテの普及といった状況を総合的に踏まえて、今後の検討課題としてまいりたいというふうに思っております。

 いずれにしても、今回、大学病院でこういうことが二つ起きて、病院という単体だけで見ていいのかどうかということも含めて、私は、個人的に、非常に大事な問題として、さらに考えていかなければいけないことがたくさんあるなというふうに思っているところでございます。

阿部委員 もちろん、原則として取り消しは私は必要だと思いますが、それのみならず、よりよくなるような、本当の患者管理がよくなるような、特に安全性が高まるようなことに向けて、厚生労働省として最大限努力すべきだと思います。

 ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 民主党の中島克仁です。

 以前のみんなの党時代から引き続き厚生労働委員会に所属をさせていただいたこと、私も大変うれしく思っております。引き続きよろしくお願いいたします。

 西村委員、阿部先生、労働、医療という流れで、私は介護について御質問させていただくわけですが、予算委員会でもたびたび議論となっておりました介護報酬、物価上昇を勘案すれば最大幅のマイナス改定とも言えるその内容、そして障害福祉報酬に至っては史上初の実質的にはマイナス改定、その件につきましてまず御質問をいたします。

 私は、本業というか、医師でございます。二〇一二年に初当選をして以来、今現在も毎週末土曜日の外来は続けているわけです。

 それはなぜかというと、私はもともと消化器外科の医者だったわけですが、平成十六年、今から十一年前に、私のふるさとであります北杜市、山梨県の北杜市ですが、そこで在宅医療に特化した診療所を開業した。在宅医療に欠かせないのがやはり介護保険、そのサービスです。私の近くには介護施設があり、そして嘱託医をしている障害者支援施設があります。毎週末外来をして、もちろん外来の患者さんもそうですけれども、その介護施設で、利用している方々、そして利用者さんの御家族、さらには介護施設で働く、または障害者施設で働く職員の方と毎週毎週接しているわけです。まさにその生の声を、そして現場の現状を肌で感じることが大変重要である、これは言うまでもないわけですが、だからこそ毎週毎週帰って外来を続けている。

 そんな中で、最近聞こえてくる声、これは私の声というよりは、毎週帰っていて、障害福祉現場、介護現場、もしくは利用者さんの御家族からの声です。

 今回の介護報酬のマイナス改定、障害福祉報酬の実質マイナス改定に対して、昨年の四月に消費税は上がったのに、これでは施設は立ち行かない。小規模デイサービスの経営者の方は、今までこつこつと地域に根差してやってきたけれども、もうこれ以上は無理だ、来年度いっぱい、すぐにはやめません、それは利用者さんがまだ現在おりますからやめられないけれども、このままでは続けられない、介護職員の待遇改善といっても、全体的な経営自体が厳しいのにとてもできないと。

 さらには、利用者さんの御家族からは、ふだん一生懸命介護してもらっている施設が今回の改定で経営が厳しくなる、今までのように利用できなくなってしまうんじゃないか、もしくは質の高い介護が受けられなくなってしまうんじゃないか、介護や福祉にもっと光を当ててほしい、そのような不安な声が聞こえてまいります。

 そして、障害福祉現場からも、今回の報酬改定、プラス・マイナス・ゼロと言いますが、やはり本体報酬は下がっているわけで、施設整備等、利用者へのサービス向上や安全性の確保などの費用がかかって、国や県からの補助金が削減されていく中で今後どうやって維持していけばいいかなど、毎週毎週、怒りというよりは落胆に近い声が聞こえてくるわけです。

 まず大臣にお尋ねをいたしますが、今回の、物価上昇も考えれば、二・二七%、最大幅の介護報酬のマイナス改定、そして障害福祉報酬においては史上初となりますマイナス改定、それに対する今の現場の生の声に対して、それをどう大臣は受けとめられるのか。その上で、今回なぜこのような改定に至ったのか、経緯と根拠。さらには、今後三年間、今回の介護報酬マイナス改定によって、介護現場、障害福祉現場に及ぼす影響をどのように考えられるのか、お尋ねをいたします。

塩崎国務大臣 恐らく、中島先生と私どもとの間の、言ってみれば底流に流れる思いは、介護に対して、あるいは障害者施策についても同様の思いを持って、共有しているのではないのかなということを感じながら聞かせていただいたわけでございます。

 しかしながら一方で、介護保険制度は、当然のことながら、社会保険制度として、助け合いの仕組みとしてつくり上げた、自社さ政権のときに基本的な形をつくったわけでありますが、我々にとって大事なのは、少子高齢化が進む中、そしてまた財政制約が厳しい中にあっても、どうやって介護保険制度をより持続可能なものにしていくかということが一番大事ではないかというふうに思っております。

 そういう意味で、保険料や利用者負担ができる限り過重なものとならないように配慮をしつつ、より利用者のニーズに応じたサービスの提供をしなければならない。そういうことになったときに、では何ができるのかという中で、今回の決断に至ったわけでございます。

 そうした中で、今回の改定では、やるべきことはやはりやっていかなきゃいけないということで、一つは処遇改善、一人当たり月額一万二千円。これについては、介護職員の確保をするためにも必要だ、それで加算をつくる。そして、中重度の要介護者とか認知症に対しては、やはり重点的に、そしてきめ細かく加算も設定する。

 全体としてやはり経営に必要な収支は残るように配慮しなければいけないということで、今先生から大分御心配の向きのお話を頂戴いたしましたが、基本サービス費の適正化を図る一方で、質の高いサービスは、そういう点については評価をするということで、一律の引き下げとかいうことにはならないように、よりよい方向に持っていくようにしようじゃないかということでやったつもりでございまして、今回の改定によって、高齢者の保険料の上昇を抑制し、利用者負担も軽減できると思っております。

 経営のことを大変御心配でございましたが、今申し上げたように、きめ細かく、必要な、質の高いサービスについては報酬で手厚く配慮をしていこうということでございますので、全体としては事業者の経営に必要な収支差が残るように配慮しているつもりでございます。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

中島委員 とても、現場もしくは利用者さんの声を受けた答えとは私は思えないんですね。今、介護保険ができて十五年。ひとり暮らしの方や老老介護の方、私も実際行っています。介護保険のサービスは高齢化社会の命綱になっているわけです。そんな中で、今のお答えは、本当に生の声、納得できるとは到底やはり思えないわけです。

 もちろん、私だって、効率化や重点化が今後必要になるという認識は持っておりますが、やはり今回の介護報酬の改定、また後ほどお示しをいたしますけれども、もう一度答えていただきたいんですが、今後三年間、例えば先ほどの現場の方の生の声、小規模なデイサービスをやっている方々、もちろん今現在利用者さんがいるわけですから、やめることはないでしょうが、当時、二〇〇〇年に介護保険ができて、措置の時代からそういう培ってきた方々が、経験を経て四十代で小規模なデイサービスを始めた方々がたくさんおられるわけです。そういう方々が六十代近くになって、もうこれ以上無理はできないと言っている、その声に対して、大臣、この三年間でなくなってしまう介護施設が出てくる可能性、どうでしょうか。

塩崎国務大臣 デイサービスのお話が今出ましたけれども、デイサービスにおいても、例えば認知症加算とかあるいは中重度ケア体制加算とか、そういう、これから本当に社会的にも必要になる、まさに要介護の方々にとって大事なサービスについては新たな加算もつくって、こういったところでデイサービスが、さらにそちらの方に力を入れていただくというようなことを考えて加算を新たにつくっておるわけです。

 ほかにももちろんいろいろありますけれども、そういうような考え方が基本だということであって、今、これから経営がなかなかうまくいかなくなるところが出ると思うか、こういうことでございますけれども、先ほど申し上げたように、全体としては事業者の経営に必要な収支差が残るように配慮をしているところでございます。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

中島委員 今の大臣のお話を聞いていると、いや大丈夫だ、今回マイナス改定しても、地域の命綱になっている施設は加算とかいろいろな重点化、工夫をしていけば問題ないというお答えだと思うんですが、私はそうは思わないんですね。やはり私は、ややもすれば、今回、地域包括ケアシステムの構築を目指しているわけですが、むしろ逆行した、むしろ崩壊に向かう引き金を引いてしまうような介護報酬のマイナス改定ではないかというふうに思うわけです。

 これは資料の一枚目がそうで、もう皆さん御承知のとおりでございますが、経営実態調査をもとに各介護サービスの収支差率、代表的なのはよく言われる介護老人福祉施設、特養が八・七%。軒並み、これは訪問介護も訪問入浴も訪問リハビリテーションも、収支差率は一般企業の収支差に比べれば非常に高い。

 代表的な特養に至っては、内部留保の問題も含めて、きれいな言葉を並べていても、端的に言えば特別養護老人ホームを含む介護施設はもうけ過ぎている、内部留保、そういう勘案をすれば今回の介護報酬は耐え得ると。そういう中で、今回の介護報酬の改定がこの経営実態調査をもとに決められた。

 三枚目の資料を見ていただけると、これは、介護老人福祉施設、老健、通所、デイサービス、ショートステイの収支差率です。もちろん、平均をとれば、介護老人福祉施設八・七%ということになるわけですけれども、一方では、収支差率がゼロ%もしくはマイナスになってしまうところ、これは現段階でも二五%ぐらいあるわけです。さらに、老健、デイサービスに至っては収支差率がゼロ%以下というところが三三%ぐらい、そして、ショートステイに至っては四〇%ぐらいのマイナスの施設があるわけです。

 そんな中で、この収支差率をもとに恐らく改定、先ほど、端的に言えば介護事業者はもうけ過ぎているんじゃないか、そのような背景の中で、まずこの経営実態調査に至っても、これは回答率五割にも満たないわけですよね。なおかつ、収支差率がマイナスになっている事業所がある。

 今回の介護報酬のマイナス改定で、収支差率が既にもうマイナスになっているところは、赤字が拡大して、なくなってしまうんじゃないですか。

塩崎国務大臣 まず、これはもう釈迦に説法でございますけれども、介護保険の財源は、公費が一番、たしか五七%だったと思いますが、それに保険料と自己負担、窓口負担というか、これで成り立っているわけでありますから、これをプラスにするということは、税を上げるか、保険料を上げるか、自己負担をふやすか、このどれかになるわけでありますので、そういうようなことで、先ほど、持続性が大事だということでございます。

 今の収支差のことで、各サービスの収支のばらつきというものについては、個別の調査を行っていませんけれども、例えば地域のサービス需要や利用定員に対する充足率に応じて収入が異なる、あるいは人員配置の状況に応じて支出が異なるなど、それぞれやはり事業者によっていろいろだと思うんですね。

 今、先生、赤字のところはどうなるんだ、こういうお話でございましたが、やはりそれは、なぜそこが、どういう理由で赤字なのかということも考えていかなければいけないので、個々の事業者の経営状況には収支それぞれのさまざまな違いがあるので、一律に事業者についてどうするというようなことはなかなか難しいのではないかなというふうに考えているところでございます。

中島委員 私はやはり、この経営実態調査の結果を見て、もちろん、おっしゃったように、これは回答率五割にも至っていないわけです。そんな中で、介護報酬というのは公定価格ですから全国一律、一定のはずなのに、これだけ収支差率に幅がある。

 では、マイナスに至っている事業所、これはさまざまな形態がございますが、この実態調査をされていますか。

塩崎国務大臣 これはたしか三月単月の数字を見ているものだったと思いますが、別途、年間を通じてのデータというのも私どもは見ております、サンプルが少し少ないわけですが。そういうようなことでありまして、この経営実態調査については、もちろん、こうやって、サンプルが五割の回答率しかないじゃないかという御指摘もあって、当然、それについては絶えず改善をしていくことを我々は心がけなければならないと思っております。

 一方で、では、これだけで判断をしているのかというと、それは必ずしもそうではなくて、言ってみれば、これはこれの癖のあるところも、それぞれの調査がそれぞれのやや癖を持っているわけですから、それを勘案した上で、トレンドを見て、よくなっているのか悪くなっているのか、そういうようなことを見ながら、なおかつ、一つ一つの施設や事業体に対して、都道府県を通じて、あるいは直接でも話を聞くというようなことをやらなきゃいけないというふうに思っていますし、実際それをやってきておるわけでありますから、総合的に判断した上での今回の結論であります。

 赤字のところだけ見ているかというふうな、調査をしているかということであれば、それだけ調査をしているということはあるとは言えないというふうに思います。

中島委員 いろいろな要素を勘案してということですが、私も、先ほど冒頭に言ったように、毎週毎週地元へ帰って介護事業所を回っているんです。

 そして、資料の二枚目ですけれども、経営実態調査を踏まえて、これは訪問介護です。これを見ていきますと、収支差率はマイナス一〇・一から一四・五%まで、かなり幅広いんですよね。その原因を見ていきますと、一番左の、訪問回数が二百回以下というところ、もしくは人員加算、常勤換算で三人。

 これは、要するに常勤換算、人員が多くて、訪問回数がふえればふえるほど収支差率はよくなっていくわけです。もちろん、そういうシステムなのかもしれませんが、一方では、人が足りなくて、常勤にもできない、非常勤で雇いながら、そして、もっともっと回数を広げたいけれども、遠隔地で、小規模でやっている事業所ほど収支差率が悪くなっているわけです。

 なおかつ、先ほど大臣、さまざまな新設されたり増設されたりしている加算、これを小まめにとっていけば経営は何とかなるというふうにおっしゃいましたが、今でも日常生活継続支援加算とか、みとり加算だってあるわけです。ただ、その加算の取得率は五割未満の加算がほとんどなわけですよ。みとり加算に至っては、全体の一%しか今現在でもとれていないわけです。

 この算定率が低い原因、恐らく厚生労働省さんも調べているんだと思いますが、施設は加算を算定したいに決まっているわけですよ。でも、できない。加算をとりたいけれどもできないその大きな要因は、算定には人員の確保を求めるものが多いわけです。

 介護士不足から人材がいないわけです。加算をとりたくて配置をしたくてもなかなか配置できない、だから加算がとれない。なおかつ、現場に行けばよくわかると思いますけれども、介護従事者の方はみんなコルセットを巻いたり腰を悪くしたり肩を悪くしたり、そういう状況の中で、いっときでも一人欠けてしまえば加算がとれなくなっちゃう。そういう事情の中で、算定ができない、要するに加算の取得率が低いという現状があるわけですよ。

 だとすれば、今回同時に、もちろん月額一万二千円の処遇改善と言いますが、その前にやることは、根本的な人材不足、介護人材の問題を解決することです。その上で重点化、効率化するべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 介護人材の確保が重要だということはもう共通の認識だというふうに思っています。だからこそ今回も、当初一万円と言われていた処遇改善加算については、一人月額一万二千円ということで充実を図っているわけであります。

 それに加えて、来年度は地域医療介護総合確保基金というものも七百二十四億用意をしているわけでございまして、こういったことを活用して、参入の促進あるいは労働環境の改善、資質の向上といった取り組みを総合的、計画的にしっかりと進めていかなければならないというふうに考えているところでございます。

 事業者の皆さんには今回の改定の趣旨がなかなかとりづらいというお話がございました。みとりのこともお触れをいただきましたけれども、みとり加算については、一日八十単位から百四十四単位までふやしているわけでありますけれども、確かに、医師、看護師、介護職員の連携のつくり方とか、いろいろな意味でなかなかチャレンジが多いことはわかっております。

 しかし、では、そのまま今のように医療機関に最期お世話になってみとりをしていただくのか、それともやはり在宅か、あるいは特別養護老人ホームなどの老人施設の中でみとりをしていただくようにすることが社会全体としての助け合いとしてどうなのかということを考えていかなければならないということで、今回このような形で、例えばみとりについてもそうですし、あるいは口腔、栄養管理の加算というものも拡充をしておるわけでありますが、そういうようなことをさまざま考えてやっているところでございます。

中島委員 時間もないのであれですが、今の加算の話もそうなんです。とにかく今、有効求人倍率だって一般よりも倍、そして東京に至っては四倍、要するに介護人材は圧倒的に足りないわけです。二〇二五年に向けても、そのもっと先に行っても、三十万人なのか七十万人なのかわからないぐらい足りないわけです。それに対して処遇改善ということ。

 だからこそ、加算がとれない。先ほど言ったみとり加算もそうなんです。そもそも、みとりをするということは、本来施設側が加算としてとるべきものなのかどうか。この施設で最期を迎えたいと思う、その判断をするのは利用者さんであり、利用者さんの家族なわけですよ。それを施設側の加算として、これをとっていけば加算がとれるよと。本来性質が全く違うものだと私は思うんです。

 先ほど言った配置基準で加算がとれるにしても、それはとりたいに決まっているわけです、だけれども、人が足りないからとれない。やはりその根本的な問題をまずクリアしてから、重点化、効率化と言うならやるべきだと私は思います。

 本日、このことは詳しく聞きませんが、一方では外国人技能研修に介護人材を含めるということも議論されて、これは法務委員会の方で連合審査等にもなるとは思いますが、予算委員会でも大臣は答弁されています。あくまでも外国人技能研修は技能移転の目的であって、今後、介護人材の人材不足に活用するということは絶対ないと明言していただきたいと思います。

塩崎国務大臣 技能実習制度というのは、もう繰り返しでありますけれども、あくまで日本から途上国などへの技能移転であって、介護職種の追加というのは、人材確保の方策として活用することを目的としているわけでは決してございません。

 二〇二五年に向けて最大で約二百五十万人規模の介護人材を確保するには、国内の人材確保策を充実強化していくことが基本であって、今後、あらゆる施策を総動員して、総合的、計画的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

中島委員 これは非常に大事なことなんです。

 私も地元に戻って往診に行ったりすると、そこにいる子供たちは、私も将来こういう仕事につきたい、もしくは看護師さんや医療職につきたいと。そして、そういう希望を持っている子たちが高校生になったとき、私も地元の高校の福祉科、介護科の生徒たちに教えていても、現実がわかってきたときに、みんなもう介護には行かない、親御さんも勧めない。そして、介護の専門学校に行ってももう定員割れです。

 そういう現状の中で、もともと産業自体も少ない、高齢化率が高くなる地域において、介護従事者という立場をしっかりと確立して、処遇改善をしていくことで地方の雇用創出にもつながるわけです。発展につながるんです。それを安易に、私は決して外国人がだめだと言っているわけじゃないんです。私も、EPAの、インドネシアの子たちと毎週毎週、話もします。一生懸命やっています。ただ、その問題と、介護従事者を確保していく、そして地方の雇用創出、これは九〇年代に看護師さんたちの処遇が改善されたときに、診療報酬を上げて、重点化して、そして今に育てたという歴史もあるわけです。

 そういう意味からいきますと、今回の介護報酬のマイナス改定は、本気で介護人材、そして介護の処遇を改善しているとは私はやはり思えません。

 そういう事情の中で、やはり今回の介護報酬のマイナス改定、大臣は、加算をとったり、重点化、効率化することで持続可能というふうにおっしゃられましたが、私は、この三年間でなくなってしまう、本当に地域に密着した小規模な、本来であれば大事にしなければいけない事業所がなくなってしまう可能性が非常に高いと思います。

 私は決して、お金をください、くださいと言っているわけじゃないんです。これは将来に向けて、このツケはもしかしたら十年後、二十年後に倍になって返ってきますよ、そのことが危惧されるから私は強く指摘するわけです。大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど来申し上げているように、今回の改定に当たっては、それぞれの事業所が何とかやっていけるようにということは最低限考えた上でやっているわけであります。

 しかし、やはり実際にどうなるのかということもしっかり見ていかなきゃいけないことも、先生がおっしゃるように事実でありますから、私どもとしても、しっかりと経営状況を見て、地域に不都合が起きないようにしていかなければならない、それが責務だと思っております。

中島委員 時間ですので終わりますが、私は大変、今回の介護報酬、そして、これからいろいろ実態調査、もう時既に遅い可能性もあるわけです。

 高齢化社会の命綱である介護保険、そのサービスが受けられなくなったときに一体どういう状況になっていくのか、将来そのツケが一体誰に回されるのか、そのことを、きょうは時間になってしまいました、私が独自に調べた資料もあるんですが、またの機会に御質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、委員長を初め、筆頭理事を初め皆様に感謝を申し上げます。

 まず最初に、政治と金の問題についてお尋ねをしたいのでございますが、厚労省にお伺いします。

 今、国から直接補助金を受けた企業が献金をする、これの問題が言われております。一年以内の献金は原則禁止、ただし、その補助金が利益を伴わない補助金であればオーケーだ、ただし、利益を伴う補助金はアウトだ、こういう法律、政治資金規正法になっております。

 厚労省にちょっと一週間ほど前にお問い合わせをさせていただいて、例えば厚労省が平成二十六年度交付決定をした補助金等の中で、利益を伴う補助金というのは幾つぐらいあって、どういうものかということをお伺いいたします。

塩崎国務大臣 政治資金規正法は我が省で所管をしているわけではございませんので、同法の解釈についてのコメントをする立場にはないというふうに思っております。

長妻委員 そうすると、所管をしている総務省に同じ質問をお伺いします。

あかま大臣政務官 二十六年度の補助金についてでございますが、平成二十六年度の補助金全体に関して、特に寄附制限の対象となる補助金についてのお尋ねでございますけれども、当該補助金等の交付の決定を受けた会社その他法人から既に寄附がされているということも考えられるところでございます。さらには、政治資金規正法第二十二条の三第一項の規定に違反した場合には罰則が設けられており、既に寄附がされたものが同項に違反するか否か、これは、司法の場で、個別の事案ごとに具体の事実に即して判断されるべきものだというふうに考えておりますので、総務省とすれば、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、一般論として申し上げるならば、寄附が行われる前については、十分な時間的な余裕を持って、補助金を受けている法人などから相談があった場合、十分な時間があれば、補助金の関係府省にも問い合わせをした上で、政治資金規正法第二十二条の三第一項の適用に係る総務省としての考え方を示しているところでございます。

 以上です。

長妻委員 これはちょっとおかしいのが、私は別に、寄附を、例えば政治団体に一年以内に寄附をした、そういう企業を名指しして、その補助金はいい悪いを聞いているんじゃないんですよね。平成二十六年度に交付決定をした補助金等の中で利益を伴うものはありますかと聞いているわけでありまして、つまり、寄附をする前のことを聞いていて、これは話が違うんですね。

 企業からの問い合わせがあれば答えるけれども、国会議員の問い合わせは答えない、これはおかしいと思いませんか。

あかま大臣政務官 今、個別の企業、さらには、例えば長妻委員の事務所からのお問い合わせがあった場合というような話もございましたけれども、これについて、仮に長妻委員の方から総務省に相談があった場合ということをお答えするならば、寄附が行われる前、個別の補助金については、十分な時間的な余裕を持つ限り、先生の事務所からの御相談、これについては総務省としての考え方を示してまいります。

 さらに、長妻事務所から、さまざまな補助金について網羅的に総務省に問い合わせがあった場合、どうするのかという話もあるんだろうというふうに思っておりますけれども、同一の者から多くの補助金について一度に問い合わせをいただいて、全てについて総務省としての考え方を示すようなこと、これについては想定はしておりません。

長妻委員 これは、十二ページ目に、私が予算委員会で高市大臣にお伺いしたんですけれども、確かに、寄附が行われる前に十分な時間的余裕を持って、補助金を受けている法人や、補助金を所管する各省からの御相談が総務省に対してありました場合には答えるということはおっしゃっているので、私は、寄附が行われる前のつもりで、平成二十六年度、聞いております。

 そうすると、数を絞って、時間を、どのぐらい事前に聞けば教えてくれるんですか。個数と時間を教えてください。

あかま大臣政務官 数について、幾つだったらこれは答えられるという種の問題ではなくて、そのボリューム、またケース・バイ・ケースということもありますので、できれば時間的な余裕を持っていただければ、答え得る範囲の中でしっかりと答えてまいりたいと思っています。(発言する者あり)

渡辺委員長 あかま大臣政務官、もう一度的確にお答えください。

あかま大臣政務官 先ほど来お答え申し上げているとおり、寄附が行われる前に十分な時間的な余裕を持って、また、そのケースまたボリューム等々にもよりますので、いずれも十分な時間を持って、前もって、補助金を受けている法人などから相談があった場合には、関係府省にも問い合わせた上で、総務省とすれば、お答えをして考え方を示してまいりたい、そう思っています。

長妻委員 いや、私、別に追及しているつもりはないんです。これは、自民党の皆さんも、企業献金をもらっている方、事前にわからないんですね。問い合わせても、どのくらいの時間的余裕があれば答えられるかどうか。

 自民党は、この件について、法律の改正はしない、運用で対応すると言っているんですが、運用で対応するにしても、アウトの補助金とセーフの補助金が事前に全然わからないということでは、どうやって判断するのかということなんです。

 もう一回明確に聞きますけれども、そうしたら、例えば、平成二十六年度交付決定のうち、アウトの補助金を教えてください、寄附制限がある補助金を教えてくださいということは、これは時間をかければ答えていただけるということでよろしいんですね。

あかま大臣政務官 これまでもお答えしておるとおり、二十六年度中の補助金についても、寄附制限の対象となる補助金について、既に寄附されている場合、またそうでない場合もございますので、十分な時間的な余裕を持ってお問い合わせいただければ、総務省としての考え方、これを示せるものと思っております。

長妻委員 これは法改正を我々も今議論しているので大切なことなんですけれども、そうすると、今全省庁に聞いておりますけれども、平成二十六年度における補助金について、寄附制限のある補助金はどれですかということは、時間的余裕がきちっとあれば全件お答えいただける。当然、寄附制限のあるものだけでいいんですよ、持ってきていただくのは。それはそういうことでよろしいんですか。どのぐらいの時間的余裕ですか。一カ月ぐらいですか。

あかま大臣政務官 十分な時間的な余裕を踏まえた上で、個別な補助金について特定していただければ、お答えできるものと思います。(長妻委員「ちょっとこれはわからない。質問できないです」と呼ぶ)

渡辺委員長 あかま君、大臣政務官として、今の答えをもっと明確に。(長妻委員「委員長、時計を一回とめてください」と呼ぶ)

 では、時間をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 あかま総務大臣政務官。

あかま大臣政務官 全て網羅的にお答えするというよりは、個別に、それぞれによってかかる時間も違いますので、いずれにおいても十分な時間を前もっていただければ、考え方をお答えしてまいりたいと思っております。(発言する者あり)

渡辺委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 今回の案件につきまして、まず理事会において報告をしていただきたい、まず引き受けたいというふうに思いますので、ぜひとも総務大臣政務官としてまとめていただきたいというふうに思います。

 まず理事会で引き受けますので、その後の質問をお願いいたします。理事会で今の案件については引き受けます。

 長妻君。

長妻委員 らちが明きませんので次に参りますけれども、これは不思議ですよね。寄附制限がある補助金か、アウトの補助金かセーフの補助金か、誰もわからない。これは、だから、自民党を別に追及しているわけじゃないんですよ、我々も政権にいましたから。つまり、法律が不備なんですよ。あるいは、皆さんがそういう作業をあえてしないとは思いたくないんですけれども、おかしいんですよね、いろいろ。

 ですから、法律を変えるということを自民党は決断していただかないといけないというふうに考えておりますので、理事会でしっかりと、私は、当然、二十六年度の交付決定のうちにアウトである補助金を一覧で、それだけ持ってきていただくということを理事会で検討いただきたいと思うんですが、委員長。

渡辺委員長 理事会で協議をいたします。

長妻委員 次に参ります。

 GPIFでございますが、財務省に来ていただいておりますけれども、財務省も、半分、株に投資する、こういうことにしたわけですか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 KKRの方で基本ポートフォリオについて見直しを行って、国内株式二五%、外国株式二五%という保有割合の方の基本ポートフォリオに見直したということでございます。

長妻委員 そうすると、株を五〇%にしたということだと思いますけれども、そうすると、GPIFと全く同じになったという理解でよろしいんですか。

太田政府参考人 国内債券が三五%、国内株式二五%、外国債券一五%、外国株式二五%ということでございますので、GPIFと同じ数字になっておるものというふうに承知をしてございます。

長妻委員 これは、私、調べていて、ちょっと言葉はいいかどうかわかりませんが、からくりがあるんじゃないかというふうにも思うんですが、乖離許容幅というのがあるんですね。

 つまり、国内債券をどのくらいまで持っていいのかというのが、GPIFはプラマイ一〇%、ところが国共済はプラマイ三〇%ということで、つまり、国共済は六五%国内債券のままでもいけるわけですね。ところが、GPIFは最大で四五%だけということなので、これは乖離許容幅で非常に、またまた安全第一が国共済だけ、こういうことであるのではないんでしょうか。

太田政府参考人 今ほど委員から御指摘をいただきましたのは、国内債券の乖離許容幅ということだと思います。

 委員からお話しいただきましたように、GPIFの国内債券の許容乖離幅はプラスマイナス一〇%、KKRの方の国内債券の許容乖離幅はプラスマイナス三〇%ということでございます。

 そういうことではございますが、これは、現状といたしまして、KKRの方の運用は、これまで将来の年金給付とのマッチングということを重視して国内債券中心ということでございまして、その結果として、二十五年度末の資産構成において国内債券の割合が七五・六%となっておるということを前提として考えられたものというふうに承知をしております。

 今回の変更に当たりましては、目指すべき資産構成割合としての中央値に向けて資産構成の大きな変更が必要になるということでございますので、円滑に資産の入れかえを行うために広目の許容乖離幅を設けたというふうに承知をしております。

 ただ、そういうことでございますので、したがいまして、今後、資産の移動が進んだ段階では、許容乖離幅の縮小に向けた検討が必要であると考えておるというふうに承知をしております。

長妻委員 私が推察すると、やはり国家公務員の皆さんは安全第一なので、株半分というのは非常にリスクがあると考えて、この乖離許容幅を非常に広くとったというふうにも見えるわけでありまして、そうであれば、やはり国家公務員の皆さんも、今回、リスクが高過ぎるという警鐘をGPIFの点について言っていただきたかったと思います。

 そして、大きな問題でありますけれども、これは塩崎大臣が過去に発言をされているものを拝見いたしますと、例えば我が党の細野議員から、去年の十月三十日の予算委員会で、「ガバナンス改革をやっている最中に、ポートフォリオだけ先に見直すなんということは絶対ないでしょうね。」こういうふうに聞かれたときに、「分散投資をどうするかというときにガバナンス改革が必要だということを言っているので、分散投資というのは、リスクを分散してリスクを下げて、リターンを上げるということですからね。ですから、そういうことで両方を一緒にやらなきゃいけない」とおっしゃっておられる。

 また、去年の十月三日には、運用改革とガバナンス改革は車の両輪で、これをしっかり両方ともやっていくことが必要だと。そして、「閣僚に聞く」という読売新聞の去年の九月五日の記事では、塩崎大臣は、運用とガバナンス改革をやることは既に閣議決定しているんだと。

 つまり、リスクが高くなるのでガバナンスをさらに強化する、これは車の両輪で一体不可分でやらないとだめだ、こういうふうにおっしゃっているんですが、先ほど西村委員の答弁で、いや、法律は出すかどうかわからないと。基本的には出さないというふうに私は聞いておりますけれども、そうであれば、今回、何か金曜日にお経読みするしないといううわさがありますけれども、独法改革法案の中にGPIFの理事長を一人追加して、本社をちょっと動かす、こんな小手先のものをここの国会で議論しろというのは、余りに委員会をばかにした話じゃないでしょうか。

 これは、今週どころか、出し直していただきたい、独法改革法案を。塩崎大臣のおっしゃっていることが、これは全く反するのではないかと思いますので、それを強く申し上げ、まず委員長にそれを強く申し上げます。理事会で。

渡辺委員長 今の提案について、理事会で協議をさせていただきます。

長妻委員 その上で、塩崎大臣、どう弁明されるんですか。

塩崎国務大臣 改訂日本再興戦略で閣議決定をしておりますけれども、そこでは基本ポートフォリオの改革とあわせて、ガバナンス体制の強化を図る必要があるというふうになっておりまして、この閣議決定に沿って、今回の基本ポートフォリオの見直しにあわせて、十月の三十一日に、きょう三谷理事長もおいででありますけれども、運用委員会から建議というのが行われて、GPIFで当面必要なガバナンス体制の強化を進めているということを発表されているわけであります。

 その中身は、もう先生御案内のとおり、内部統制の強化とリスク管理体制の強化ということを二つの大きな柱としてやっているわけでありまして、大事な年金資産を運用するに当たって、できる限りの、ガバナンスを強化していくということの方向に向かって進んでいるわけであります。

 一方で、先ほどお話を申し上げたとおり、今回の独法法案は、おととしの十二月にもう既にオール政府で独法についての改革をやるという方向性が出ておりまして、それにのっとってやっていることであります。

 一方で、再興戦略の中で、ガバナンス改革を法改正の可能性も含めてやれというふうになっているわけでありますが、それについては年金部会で検討をしているところでありまして、これはなかなかそう簡単に答えが出る話ではないわけであって、さまざまな意見がまだ残っていまして、その議論を深めていただくというのが今の私どもの考えでありますからこそ、さっき申し上げたように、そこの議論がどうなるのか。もちろん、その後、仮にまとまったとしても与党で議論もしなければいけないということになれば、今国会は法律は大変たくさん御審議をお願い申し上げているわけでありますから、ここは、出せるのかどうかというのはまだ何とも申し上げられないということが今の私どもの考え方でございます。

長妻委員 非常におかしいのは、ガバナンス改革、そう簡単に答えが出ないと。そうであれば、基本ポートフォリオの変更も同時にやってくださいよ。何でそれだけ先にやるんですか。ますます、株価維持政策あるいは成長のために年金積立金を流用する、もう一つの流用問題みたいなふうに私は見えてくるんですね、そういう御答弁だと。

 三谷理事長、きょうお出ましいただきましたけれども、結局、株に半分投資する、こういう基本ポートフォリオの改正で、リスクは高くなったんですか。

三谷参考人 お答えいたします。

 委員御承知のとおり、リスクにはいろいろなものがございます。したがって、多面的かつ長期的な観点で考える必要があると思っておりまして、そのさまざまなリスクのうち、将来の年金給付をしっかり確保するためには、年金財政上必要とされている積立金額から下振れるリスクをできるだけ抑制するということが重要であると私どもは考えております。

 変更後の基本ポートフォリオは、デフレ脱却、適度なインフレ環境への移行等、長期的な経済、運用環境の変化を踏まえまして、インフレに強い株式等へより分散投資を進めた結果、単年度のぶれは大きくなりましたが、しかし、年金財政上必要とされる利回りを長期的に確保できず、年金財政上必要な積立金から下振れるリスクというものは小さくなったというふうに私どもは理解しております。

長妻委員 そうすると、リスクはトータルで高くなったんですか、低くなったんですか、どっちなんですか。

三谷参考人 単年度でのぶれという観点からのリスクは大きくなっておりますが、しかし、長期的に見て、年金積立金の必要な水準を確保していくという観点からは、リスクは小さくなったというふうに考えております。

長妻委員 これは、日本株を仮に一〇〇%運用するときと、国内債券を仮に一〇〇%で運用するときと、どちらがリスクは高くなるんですか。

三谷参考人 それにつきましても、単年度のぶれということでいきますと、当然株価の方は大きく変動しがちでありますから、単年度のぶれという点では国内債券一〇〇%のポートフォリオの方が小さいことは、そのとおりでございます。

 ただ、この国内債券一〇〇%、まあ一〇〇%に行かなくてもこれのウエートが非常に高い場合には、今の低金利といった情勢を考えますと、年金財政上の必要な利回りは確保できません。したがって、年金財政上必要な積立金から下振れるリスクというものは大きくなるということで、どちらのリスクが肝要かといえば、先ほど申し上げましたように、長期的に見て、年金積立金の必要な水準を確保するということの方が私どもは重要だというふうに思っております。

長妻委員 今の説明は、仮に国内株式一〇〇%で運用した方が、後段のリスクの基準でいえば、国内債券一〇〇%、元本保証の運用よりも、国内株式一〇〇%の方がリスクが低い、こういう説明なんですね。

 これは、国民の皆さんにちゃんと、リスクはどういうものなのかというのを、塩崎大臣、説明しているんですかね、政府は。私、いろいろな集会で国民の皆さんに、どれだけリスクがあるか御理解いただいている方はいらっしゃいますかと言うと、ほとんど、そんなことは知らない、説明がないと思っているとおっしゃるわけです。

 これは我々が聞くと渋々出てくる傾向があるわけでございますけれども、例えばバリュー・アット・リスク、これについて、新旧でどのぐらい違いがあるのかというのは、ちゃんとこれまで自発的に説明されているんですか。説明されていないとすれば、ここでちょっと、幾らか、金額を教えていただければと思うんですが。

塩崎国務大臣 たしか、これは長妻先生から質問主意書が提出をされて、それで、答弁書で閣議決定をしてお示しをしているところでございます。また、答弁の中でも触れたような気もいたします。(長妻委員「幾ら、数字は」と呼ぶ)

三谷参考人 バリュー・アット・リスク、いろいろな計算の方法があるわけですが、先般、長妻先生から御質問いただきましたときのあれでいきますと、信頼区間九五%、二十六年九月末の積立金残高で、私どもで考えております経済中位ケースを想定した場合、単年度では、見直し後の基本ポートフォリオでは二十一・五兆円、見直し前の基本ポートフォリオでは十・四兆円という結果でございます。

長妻委員 九五%の確率で起こる損失最大額が、従来だと十・四兆円だったのが、二倍の二十一・五兆円に膨らんでいると。これもやっと渋々出してくるので、こういうのを積極的にやはり説明しないと、リスクをしないで、いいことばかり説明というのは、私は到底許されないと思います。

 これは、リーマン・ショックの際の損失は、では理事長、どのぐらい変わるんですか、新旧ポートフォリオで。

三谷参考人 今度の新しい基本ポートフォリオに平成二十年度の各資産の市場平均収益率を当てはめた場合の収益額は、マイナス二十六・二兆円でございます。また、実際の平成二十年度の収益額は、マイナス九・三兆円でございます。

 なお、一年間だけで見ますとこのように損失は拡大しますが、長期的に見ると収益率は逆に上回るという結果が出ております。具体的には、新しい基本ポートフォリオに平成十六年度から平成二十五年度までの過去十年間の各資産の市場平均収益率を当てはめた場合の収益率は約四・三%であり、実際に古いポートフォリオで運用しましたときの実際の収益率の三・二%というものを上回っておるということでございます。

 したがって、長期的に見れば、十分リスクは軽減されているということでございます。

渡辺委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

長妻委員 はい。

 では、最後に一問でございますけれども、ガバナンス改革なしで、こういうリスクの説明も、国会で強く問われると渋々されるという姿勢はいかがなものかと思います。

 最後に、きょうは内閣府の赤澤副大臣も来られておられますので、結局、総務省と厚労省で二つの貧困率の指標がある、あるいは、所得のみならず、資産の格差についても検討しなきゃいけないというふうに我々申し上げておりまして、資産の格差についても、あるいは厚労省、総務省、どちらの貧困率を政府は採用するのかについても今ちゃんと検討会は進んでいますか。いつごろ結論が出ますか。

渡辺委員長 中島内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官、簡潔にお願いします。

中島政府参考人 直接担当しておるわけでございませんけれども、内閣府ということで御答弁を申し上げます。

 先生御指摘の相対的貧困率に関する勉強会につきましては、内閣府とともに、国民生活基礎調査を所管する厚労省、そして全国消費実態調査を所管する総務省が共同して調査分析を進める連絡会議を設けておりまして、そこで鋭意検討を進めさせていただいておるというところでございます。(長妻委員「結論はいつごろ出るのか」と呼ぶ)

 設置させていただきましたのが、三月二十三日付で設置をして、今後、鋭意集中的に検討をしていくと聞いております。

 以上でございます。

長妻委員 質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、山井和則君。

山井委員 二十八分間、過労死の防止、そして、今回提出がうわさされております残業代ゼロ法案、その中でも、特にきょうは裁量労働制の営業職などへの拡大、そのことについて御質問をさせていただきたいと思っております。

 きょうは、傍聴席の左の端に山下照之さんにお越しをいただいております。目が不自由なわけですが、本当に、わざわざ傍聴にお越しをいただいております。

 その理由は、きょうの配付資料の一面にもありますように、山下さんは今から七年前にクモ膜下出血でお倒れになられまして、三日間意識不明になられた。それで、一命は取りとめられましたが、ここに書いておりますように、全盲になってしまわれました。「直前四カ月の平均残業時間は月百五十時間を超えた。多い時は年間三百日海外出張し、深夜まで商談。顧客の求める納期に応えるため、自宅でも取引先や同僚からの電子メールに対応した。」ということであります。しかし、会社側は直前四カ月の平均残業時間は月十時間未満だということで、残念ながら、労災認定も受けられておりません。

 そして、今回、高度プロフェッショナルも問題でありますが、同時に裁量労働制の営業や管理部門の拡大というのも入っておりますし、特に裁量労働制の拡大は、年収要件はありませんから、年収二百万円でも、そして新入社員でも適用になります。そういう中で、私のような被害者がふえることを防ぎたい、命を守りたいという思いで今、山下さんも発言をされております。

 昨年の五月にこの場、この厚生労働委員会で画期的な過労死防止法が全ての党派の賛成により衆議院を通過いたしました。自民党さん、公明党さんという与党も積極的に推進をしていただきまして、全ての政党が賛成で過労死防止法ができたということは、本当にすばらしいことであったと思います。

 きょうの配付資料の最後のページにもありますけれども、その中で、過労死等防止対策推進法第四条、国は過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有する、過労死を減らすための国の責務というものが明記をされたわけであります。

 そういう意味では、この過労死防止は、党派は関係なく、政争の具にすることなく、とにかく、特に私たち厚生労働委員としては、どうすれば、過労死大国と世界的にも汚名をつけられているこの日本でどう過労死を減らしていけるのかということを昨年成立させた法案に基づいて今議論をせねばならないと思っておりますし、ことし六月ぐらいには過労死防止対策法に基づいた過労死防止対策大綱もつくられようとしております。

 私の問題意識は、昨年この場で成立した過労死防止法と、今回、今、提出されるのではないかとうわさされている残業代ゼロ法案、政府は新しい労働時間法制と言っているのかもしれませんが、呼び名はともかくとして、その残業代ゼロ法案が矛盾する、もっと言えば、長時間労働をふやすのではないか、過労死をふやすのではないか、これは非常に重要な議論なんです。

 なぜならば、私たち国会議員、特に厚生労働委員の責務というのは国民の命を守ることですから、間違っても今回の法案によって、来年四月施行という予定らしいですから、来年四月以降、新しく対象拡大で裁量労働制や高度プロフェッショナルになった方が、過労死や、あるいは、きょうもお越しをいただいている山下さんのような労災になったとしたら、これはあり得ないことですから、過労死防止法にも反するということにもなるわけです。

 そこで、この山下さんのケースは、自宅に持ち帰り残業をしていて、パソコンで、もちろん、二十四時間体制で仕事をされていたわけですよね。平均残業時間は月百五十時間。ところが、クモ膜下出血で倒れられた後、会社側がそのパソコンのメールや記録を消去してしまった。それで、なぜ労災に認定されないのかというと、何と、働いた証拠がない、成果物がないと。でも、成果物がないと言うけれども、会社側が消去しているんですよ、それは。そういう非常に厳しい状況でなぜ労災にならないかという一つの主張として会社が言っているのが、裁量労働制だから本人の裁量で働いたんです、会社の責任はありませんと。

 山下さんは、クモ膜下出血で三日間生死をさまよわれたときに、臨死体験というんですか、脳死体験というんですか、その中でお亡くなりになられたお母さんにもお目にかかられて、そして、こっちに来るなと言われて戻ってきたということもおっしゃっておられました。

 こう言ったらなんですけれども、本当に生死の境をさまよった山下さんが、今この場にお越しになって、裁量労働制を拡大すると過労死がふえる、そういうことを訴えておられるわけです。

 塩崎大臣、このような現状についてどう思われますか。

塩崎国務大臣 今先生からお話がございましたけれども、今回私どもが提案を申し上げようとしている労働時間法制の見直しというのは、去年の日本再興戦略で示された考え方に基づいて出すわけでございまして、特にワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、つまり健康を重視するとともに、多様なニーズに対応した新しい働き方の選択肢を設け、それによって経済を立て直して、社会保障の財源を含めた経済からの好循環をつくっていこう、こういうことでございます。

 今、先生いろいろな御懸念点をおっしゃったわけでありますけれども、高度プロフェッショナル制度というよりは、どちらかというと裁量労働制の方に重きを置いた御説明をいただいたわけでございますけれども、これも、数々の規制を設けた上で対象を拡大しようとしているわけです。

 まず第一に、働く人が自律的で創造的に働くことを可能とするための制度だということと、業務の遂行手段や時間配分をみずからの裁量で決定する人に対応した制度であって、まず第一に、一番大事なのは、労働時間規制は全て適用する。つまり、例えば、いわゆる三六協定、あるいは割り増し賃金、こういったものは全て適用になるわけでございますし、加えて、労使委員会というのが、事業場の労使同数の委員会で、対象業務を決める、対象労働者を決める、みなし労働時間も決める、健康確保措置も、五分の四以上の多数で決議をするわけでございます。

 裁量労働制において、例えば時間管理ができていないという話がありましたけれども、それは全く間違っておりまして、この中においては、法律でもって始業及び終業の時刻の決定が労働者に委ねられていることを明確化いたしますし、例えば、明らかな……(山井委員「簡潔に答弁してください」と呼ぶ)いやいや、それは、先生の方がやや決めつけをされるので、そういうことではありませんよということを言っておかないと、国民の皆様方も皆そう思われてしまうので、そこのところを明確にしておきたいと思います。

 今のように、始業、終業、こういうものもきっちり労働者に委ねられるのと、それから、指針というのが後ほどできて、例えば、明らかに処理もできないような分量の業務を与えながら相応の処遇の担保策を講じないといったようなことをやるのはだめだということを明確にいたしますし、健康確保措置というものも、先ほど申し上げたように……(山井委員「もういいです。委員長、注意してください」と呼ぶ)いやいや、答弁しているのに注意もないでしょう。(山井委員「長過ぎます」と呼ぶ)いやいや、先ほど十分先生も長くお話しになったわけでありますから……(山井委員「長過ぎます。委員長、注意してください」と呼ぶ)

渡辺委員長 簡潔に答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 この健康確保措置というものも労働時間の状況に応じて導入をしてくるということでありますので、今先生がおっしゃったような御懸念は当たらないということをはっきり申し上げておかないといけないというふうに思ったところでございます。

山井委員 そういう机上の空論の答弁をされるだろうと思って、御本人もお見えになっているわけですよ。御本人を前にしてそういう答弁をされる。

 割り増し賃金が深夜残業で出ると言っているけれども、会社側は平均十時間しか認めていなくて、パソコンの記録は消去しているわけですよ。

 さらに、労働時間を把握していないと言うけれども、把握していますと。ここにグラフがあるじゃないですか。裁量労働制企画型、四二・六%が労働時間不明。不明なんですよ。

 さらに、御自分のパソコンで把握しているということに関しても、今回みたいに、いざ労災申請したら、パソコンの記録が消去されるんでしょう。ほかの御遺族の方からも聞きましたけれども、お葬式の日に、会社が来て、過労死した息子のパソコンを回収して、全ての記録を消去した。その方も過労死の認定はおりていませんよ。

 これはなかなか大変なんですよ。大臣、実態をわかっていないんじゃないんですか。

 さらに、ここに今回、グラフをつくってみました。今回の法案というのは、二段構えになっているんです。高度プロフェッショナル、これは、高度な専門職で年収一千万円以上。将来はこの年収要件も下げられるでしょう。しかし、もう一つは、裁量労働制の方には年収要件も入っていませんし、新入社員でも裁量労働制の拡大で事実上残業代ゼロになります。こちらの対象の方が多いかもしれないという危惧もあるわけです。

 大臣、もう一方のお話。

 「二十四歳のままの“わっきー”へ」という、二十四歳で脇山さんが過労死をされました。二十四歳です。御遺族の方にもお目にかかりました。これも裁量労働制です。

 どういう声が出ているのか。この脇山さんの文集から抜粋させていただきますと、この件も、最初会社側はどう主張して労災が受けられなかったかというと、「勤務時間は長いが、業務の密度は疑問。同じ仕事をしている人で死亡した人がいない。」、二番目、「裁量労働制の職場なので自分で勤務時間を工夫できたはず。」と。二十四歳の若者をつかまえて、自分で勤務時間を工夫できるはず、それは無理でしょう。

 さらに、脇山さんのお母さんの資料によると、ふだんの仕事が手いっぱいなので、顧客の方と会うのが土日に行わざるを得ず、完全に休める土日などなかった、会社の出退勤時刻も、記録を見ると、二十六時、二十八時、三十時などという、地球上にあり得ない表記である、また連日の深夜勤務も裁量労働の名のもとにくくられてしまうと。

 これを営業職に広げようとしているんですよ、今回の法案は。私は、裁量労働制も、今もある制度ですから、全面的に、全員にとってだめだと言う気はありません。その方がフィットしている人もおられるでしょう。しかし、一方では、こういう被害者の温床になってしまっているという現実があるわけです。

 塩崎大臣にお聞きしますが、今回、残業代ゼロ法案の中に入ろうとしているこの裁量労働制の営業などへの拡大、年収二百万円でも、二十代の若者でも適用されるんですか。

 大臣、そんなことを官僚に聞いてどうするんですか。あなたが責任者じゃないですか。

塩崎国務大臣 この法律が出てくればわかると思いますが、法律を読んでいただければわかると思いますが、今回拡大しようとしているものについても二つあって、課題解決型提案営業というもので、これは、先ほど申し上げましたけれども、法人である顧客の事業の運営に関する事項について企画、立案、調査及び分析を行って、かつ、これらの成果を活用した商品の販売または役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘または締結を行う業務と、ちょっと長ったらしくて難しいんですが、要は、かなり企業の経営そのものに、全体に影響を与えるような問題についての課題解決型の提案営業であって、単なるルートセールスとか、あるいは単純な営業、何か物を売るとか、そういうことではありませんので……(山井委員「質問に答えてください」と呼ぶ)いや、質問に答えているんです。なぜ広がらないかということを説明しているわけです。(山井委員「二百万、二十代はどうなんですか」と呼ぶ)聞いてください。

 それから、例えば、裁量的にPDCAサイクルを回す業務というのも……(山井委員「委員長、注意してください」と呼ぶ)

渡辺委員長 今答えていますので、聞いてください。

塩崎国務大臣 これも、後ほどの指針でもって、企画立案調査分析業務と組み合わせる業務が、個別の製造業務や備品等の物品の購入業務とか、あるいは庶務経理業務とか、こういう単純な業務ではないということであって、そうすれば、今御指摘の……(山井委員「質問に答えてください」と呼ぶ)答えていますから、聞いてください。二百万でそういうようなことをやることはまずあり得ない話でありまして、そういう人たちではないということがまず第一であります。

 それと、少なくとも、これは法律で、対象の労働者は、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者で、なおかつ、それに加えて、追って指針でもって、少なくとも三年ないし五年程度の職務経験を経ることが必要だということであって、そうすると、先生がおっしゃったように、入った年とか翌年とかいうことはあり得ないことが明らかになってまいります。

 それから、今申し上げたように、営業も、かなり高度な営業でありますから、報酬もそれに見合った報酬でないとおかしいわけでありますから、報酬の安い方が、低い方が、いきなり入った年に、あるいは翌年にこの裁量労働制になるということはあり得ないということであります。

 それから、さっき申し上げた労使委員会で時間などを決めるわけでありますから、これは労使の自治でもって合意をしてからでないと導入できないということになっていることも御理解をいただきたいというふうに思います。

山井委員 いや、法律にはそんなことは全然書いてないですよ。法律に書いてないことを説明されて。

 それではお聞きしますが、今、二百万円もあり得ないとおっしゃいましたが、三百万円もあり得ないですか。それと、二十代の若者はこの法案の対象にならないということは、今ここに、十一ページに労政審の建議が入っています。これは、この建議と同様の法案になりますから、どう読み取れるんですか。三百万円が入らない、二十代が入らない、どこに書いてあるんですか。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、常識的にそう言っているのであって、金額でどうのこうのということではなくて、先ほど申し上げたような、法律でもって定められた業務についての新たな拡大を、二つのパターンについて追加をお願いしたいということを申し上げている。

 それで、はっきりしていることは、ことし入った新人さんとか、そういうことは、先ほど申し上げたように、指針でもって多分、これは三年から五年ということで……(山井委員「多分じゃないだろう」と呼ぶ)まだ、だって、それは決まっていないんですから。法律が通ってから初めて指針というのはつくるんですから、今はそんな決め打ちはできませんよ。それはもう常識じゃないですか。

 だけれども、我々の考え方は、今申し上げたとおり、三年から五年程度の職務経験を経ることが必要だということでまいりたいということを言っているわけであって、なおかつ、さっき申し上げたように、単純なルートセールスとかそういうのではだめでありますし、物品購入だけとかそういうことでもだめで、もう少しやはり、企業の経営全体に影響を及ぼすようなシステムとか、そういうような大きな話でやっていただくために、ここで裁量労働制を広げて、より効率よく働いていただけるチャンスをつくろうじゃないか、こういうことでやろうとしているわけでありますので、今先生がお決めつけをいただいているような形にはならないというふうに私たちは思っております。

山井委員 本当に、気楽だとしか言いようがないですね。多分省令でそうなるだろう。でも、省令なんて国会の審議を経ずに何度でも今後変えられますよ。

 さらに、常識的にはとおっしゃるけれども、では、過労死で亡くなられた二十四歳の脇山さん、新入社員で裁量労働制で、三百六十五日ずっと働かされて。裁量労働を新入社員で導入されるのが常識的にあり得ますか、裁量がありますか。非常識だと思いますよ。でも、今、非常識な現状があるから過労死がふえちゃっているんじゃないですか。

 先ほども言ったように、月百五十時間残業されて、年間三百日海外出張された方でも、月の残業は十時間、会社側はパソコンを押収して記録を消してしまう、それは非常識ですよ。でも、そういうケースのブラック企業というものが今ふえている。

 ブラック企業というのはどういう定義か。残業代は払わない、異常な長時間労働をさせる。そのブラック企業の手口は、名ばかり管理職と裁量労働制の悪用なんですよ。そういう意味では、まさに、今回の法案、ブラック企業合法化法案になりかねませんよ。

 私は、今、過労死防止対策大綱を議論している最中なんですから、この法案の提出を断念していただきたい。なぜならば、昨年、ここにいる厚生労働委員会のメンバーで、自民党さんも公明党さんも一緒になって過労死防止法をせっかく成立させたじゃないですか。御遺族の方々、関係者の方々、涙を流して喜ばれました。さらに、その御遺族の方々も、過労死された息子さんや御主人の仏壇に手を合わせて、過労死防止法が成立したと仏壇に報告をしているわけですよ。

 それが、その翌年に、今言ったような、過労死を減らすどころか、過労死がふえかねない、そういう法律を提出するというのは、私は、厚生労働委員会に対しておかしいと思うだけではなく、本当は家族ともっと一緒に生きたいと願っておられた過労死された当事者の方々の無念の思いに対しても失礼だというふうに思います。

 この提出を断念していただきたい。そして、私が先ほど質問したような問題点がないかしっかりと精査して、もう一度じっくり検討をして、今回は提出を断念していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど来お聞きをいたしておりますと、必ずしも正確ではない、決めつけが多いような感じがいたして心配をしているわけであります。

 何度も申し上げますけれども、ブラック企業というふうにおっしゃっているのは法律違反をする企業であって、それは法律にのっとって厳しく対処していかなければならないことは当然のことであります。

 今度の裁量労働制は、先ほど私が申し上げたように、労働時間規制というのは全て適用をされたままです。ですから、三六協定も、残業代についてしっかりとあるわけです。それを破れば労働基準法違反で、当然のことながら、私どもは対処しないといけないということでもあります。

 また、割り増し賃金、これは、深夜のみならず、時間外、休日、深夜、全部でありますけれども、これも全部払わなきゃいけないようになっていますから、それを払わないんだったら、それは法律違反で対処していくというだけの話であって、山井先生、今のように、裁量労働制が全部ブラック企業をやるためのものかのようなことを言われたのではちょっと、正確ではないどころか、それは全くの間違いであって、そういうことを我々はやるつもりはない。

 規制はきっちりし、そして健康確保も仕組みを新たにつくり、それを担保するものとして、労使自治で労使委員会がちゃんと一つ一つ見ていく、そしておかしなものはおかしいと言っていただくという仕組みもあわせて導入をしながらこの制度をやっていこうということでありますし、どういう限定をされるのかということについては……(山井委員「短くしてください、答弁を」と呼ぶ)いや、それはぜひ聞いてもらわないといけないので。一方的なお話だけを皆さんに聞かせては、何を我々が本当はやろうとしているかというのが正確に伝わらないので、そこのところは言わせていただかないといけないと思っております。

 ですから、これは、いずれにしても、審議をやるときに改めてよく見ていただいた上で御議論を賜れれば大変ありがたいというふうに思います。

山井委員 この委員会審議というのは、塩崎大臣に実態を私が授業をする場じゃないんですよ。実態と余りにもかけ離れています。

 繰り返しになりますが、今言ったじゃないですか、四二%の人が労働時間不明なんですよ。労災もおりないんですよ。過労死にも認定されないんですよ。割り増し賃金も払われていないんですよ。それが実態なんですよ。そういう実態があるから、さらにそれを助長しかねないと言っているのであって、塩崎大臣がそういう不条理な実態があることを知らずにこんな法案を出してきたら、大変なことになりますよ。

 それで、塩崎大臣にお聞きしますが、あなたが責任者ですから、来年の四月以降、この法案で新たに対象になる高度プロフェッショナルや裁量労働制で過労死する人、絶対ふえないんですか。責任を持ってそれを言えますか。もしお亡くなりになられる方が出たら、それはこの法改正が人を殺したことになりかねませんよ。大臣、それをお聞かせください。

塩崎国務大臣 課題解決型提案営業の業務も、それから裁量的にPDCAを回す業務についても、先ほど来申し上げているように、時間規制は今までどおり守りますし、健康の確保についての措置については、新たに法律でもって定め、なおかつ、省令でそれを担保するような形でやっていきますので、今、御懸念のようなことをおっしゃっておられますけれども、この制度をつくることとそれとはまた全然別のレベルの話だというふうに思います。

山井委員 私は、この残業代ゼロ法案は特に与野党対立する法案では本当はないと思っているんです。私も、多様な働き方、それがふさわしい人もいるとは思います。

 問題は、この法改正の今の安全確保措置では、長時間労働がふえますよ。アメリカの例でも、オバマ大統領も、ホワイトカラーエグゼンプションで長時間労働、最低賃金割れがふえているということで、縮小を指示しています。アメリカでさえ縮小を指示しています。

 さらに……

渡辺委員長 山井君に申し上げます。

 既に時間が終了しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 委員長、そうおっしゃるんだったら、塩崎大臣の長い答弁を注意してください。理事会でこのことも協議してください。

渡辺委員長 やりました。

山井委員 それで、この八ページにもありますように、一つ問題提起しておきますが……

渡辺委員長 終了してください、山井君。

山井委員 三月十九日に企画業務型で一人自殺をされたというデータが、四日後に変わって、企画業務型の過労死はゼロに、四日間でなぜかゼロに厚生労働省のペーパーが変わっておりますので、このことも今後なぜか私は聞いていきたいと思います。

 何よりも、過労死防止法が成立したわけですから、今後私たちが議論する法律は、過労死をどうやってなくすか。まさにこれは与野党関係ありませんから、過労死をなくす法案になるまで提出は待っていただきたいとお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 維新の党の牧義夫でございます。

 きょうは、格差の問題について静かに議論したいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 格差という言葉が政治のシーンに取り上げられるようになって数年たちますけれども、とりわけ最近、殊さら格差問題としてクローズアップされているわけであります。間違いなく格差が拡大しつつあり、社会問題化しつつある、このトレンドは、私は厳然たる事実だと思います。

 だからこそ、せんだっての衆議院の予算委員会においても、格差問題を中心に集中審議も行われたわけでございまして、きょうは、改めてこの委員会で、大臣の認識と、今後の改善策というか方向性について確認をいたしたいと思います。

 ただ、ここで私、情緒的にこういう話をするんじゃなくて、格差といっても、格差イコール悪というわけじゃなくて、やはり格差がなければ競争社会、自由経済というのは成り立たないわけで、例えば、会社に入って、スキルアップして資格を取った方が給料がいいのは当然のことですし、そういう向上心のインセンティブにも当然なるわけですから、それイコール悪ということではないとは思います。

 ただ、社会問題化しつつある格差については、やはりきちっと議論をしていかなければならないと思いますし、このまま放置すると、アベノミクスの光と影という、その影の部分が殊さらこれからますます強調されることになるでしょうし、その影の部分に光を当てるのは、まさに厚生労働大臣の役割だと思います。そんな観点から、これからの議論を進めてまいりたいと思うんです。

 格差と一言で言っても、これは、世代間の格差ですとか、正規、非正規、あるいは男性、女性、それぞれの立場における格差もあり、また地域間の格差もあります。それから、産業別あるいは業種別、それから事業所の規模別の格差といったようなものもありますので、その辺のところをきちっと精査して議論していかなければ本質的な議論にならないと私は思っております。

 ただ、この格差というものをずっと突き詰めて、何が問題だというところまで突き詰めていけば、結局は貧困の問題に行き着くんだろうと思います。

 この貧困こそが問題の元凶ではなかろうかというふうに私は思う中で、まずお聞きしてまいりたいのは、さっきもお話が出たかもしれませんけれども、我が国の相対的貧困率、所得が平均値の半分に満たない人の割合、それが〇七年の国民生活基礎調査によると一五・七%、子供の相対的貧困率が一四・二%で、当時の発表ですと、OECD加盟三十カ国の平均値一〇・二%を大きく上回る結果となったという報告です。昨年、二〇一四年七月の調査だと、この数字が一六・一%、子供は一六・三%、日本人の六人に一人が貧困層ということで、OECD諸国で四番目に高い貧困率だという報告があります。

 これは、間違いなくトレンドとして悪い方向に向かっていると言わざるを得ないと思うんですけれども、安倍政権では、大きな企業が円安などによって収益を上げていく、増収増益になればトリクルダウンでいずれ好環境が生まれる、このようにおっしゃっております。

 ただ、私は、今申し上げたように、事態は悪化の一途をたどっているんじゃないかというふうに思うんですね。昔、中国が改革・開放のときに先富論という、トウショウヘイさんのときのお話がありましたが、中国の格差と日本の格差はちょっと質が違うと思うんですけれども、あそこは農村と都市部というような埋めがたい格差があるんですけれども、このときの先富論が結局は成功していない、格差がどんどんどんどん広がっているわけでありまして、これを思い出すんですね、トリクルダウンというのは本当にあるんだろうかと。

 実際の数字を見て、格差は悪化の一途をたどっていると私は言わざるを得ないと思うんですけれども、大臣の認識をまずお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 先生、今、深い分析に基づく御自身のお考えというのを御開陳いただいたわけでありますが、格差はいろいろな指標を見なければいけないんだろうと思います。

 先生、最後に、貧困が問題だということをおっしゃったわけで、確かに、今、相対的貧困率の数字を挙げていただきましたけれども、趨勢的に、一二年までの数字でありますけれども、それぞれ一般的な相対的貧困率も子供の貧困率も上がっているということは間違いないわけであります。

 一方で、これは何度も総理から答弁していますけれども、いわゆるジニ係数で見た、それも、再配分後のジニ係数で見るとそんなには拡大をしていないということでありますが、しかし、例えば、離婚がふえることによって母子家庭が大変厳しい状況に置かれている、そしてまた就職もなかなかままならない、あるいは、就職は八割ぐらいされていますけれども賃金が低いというようなことで、だんだんとやはり総体的にこの問題については厳しくなっているということであります。

 したがって、問題は、固定化をさせない、あるいは拡大をさせないということが大事であって、この貧困に対しては、今のようにこれは数字の上でも確かにそういう趨勢が受け取られますから、しっかりと目配りをしていかなければなりません。

 社会保障の、これは健康保険の保険料の軽減とか、あるいは高額療養費制度とか、あるいは消費税の際の臨時福祉給付金などなど、いろいろな配慮をしながら、また、今度、生活困窮者自立支援法がこの四月から施行になりますけれども、一人親家庭のサポート、特に親の学び直し、子供の学習支援、そういったこと、あるいは介護保険における低所得者の保険料の軽減等々、あらゆる手をできる限りやっていかなければならないというふうに考えております。

牧委員 私は、先ほど申し上げたように、この問題を情緒的に取り扱うんじゃなくて、ヒューマニズムの問題だとかそういうことじゃなくて、やはり社会政策上の問題としてきちっと捉えるべきだと思っております。

 貧困あるいは貧困の連鎖によって、社会的なコスト負担というのがどんどんどんどんこれから増大してくると思うんですよね。今、離婚の話もありましたけれども、まず一つは、犯罪そのものもふえるんじゃないか。あるいは、いろいろな社会的な措置、求職支援ですとか、あるいは就学支援も必要になってくるでしょう。

 まず、税収そのものも落ち込んでいくかもしれない。また、社会保障制度の基盤そのものが揺らいでくるということも考えると、これを早目に手当てして、きちっと具体的な財政出動をする方が、後手後手に回ってこういったことに対処することよりもコスト的にむしろ安上がりになるんじゃないか。例えば、医療でいえば、予防医学で健康づくりを先にした方が医療費を抑制できるというのと同じで、私はそういうふうに思うんです。

 国全体としてこういうことをきちっとどこかで考えておられるのか、どこかで計算しているのか、その辺ちょっと、もしわかれば教えていただきたいと思います。それは私はぜひ必要だと思うんです。

塩崎国務大臣 先生のような問題意識は大変大事だと思っています。

 この問題については、政府内でもいろいろなところで議論がなされていて、諮問会議でも、当然のことながら、大きな経済政策の中でいわゆる格差の問題も考えています。

 第一次安倍内閣のときは底上げ戦略というのを言っていましたが、要は、どういうふうにして、上を抑えて下を上げようとするのか、それとも全体を上げようとするのかというようなことを考えると、やはり全体が上がっていくということが大事で、先生は今トリクルダウンとおっしゃいましたが、総理も繰り返し、トリクルダウンということを考えてやっているわけじゃなくて、むしろ経済の好循環をつくっていくということが大事なので、それは、単身で頑張っている女性、あるいは母子家庭のお母さん、こういう人たちも、経済が弱くなっていく中で所得を上げようと思っても、これはやはりなかなか難しい。

 そういうこともあって、やはり総合的にこれを判断していって、経済政策全体の中でも、そして私ども厚生労働省の中で扱う、言ってみれば社会政策的な面でも、そして社会保障の面での低所得者に対する配慮というもの、そういうものを総合的にやっていくということがやはり大事なんだろうというふうに思っています。

 この間のいろいろな国会での議論を通じて、総理も当然そういう問題意識を持ちながら、経済政策全体をコーディネートしていくという甘利大臣のところでやっている政府全体の大きな経済政策の中でも生かしながら、先生御指摘のような貧困の問題などに対処していくということではないかと思います。

牧委員 概念的には大変いいことをおっしゃっているんですね。

 当然なお話なんですけれども、あくまでも概念的な話であって、では、その底上げというのは、具体的にどういうことをされるのか、そこを聞きたいんですよ。それが聞けないと、これは何にもならないですから。そのための質問であったわけですから。もしあれば、ちゃんとお答えください。

塩崎国務大臣 アベノミクスというのは、地方創生を含めて、全て、日本の経済体力そのものを強くしていこうということであるわけであって、今度の地方創生も、地方で、まち・ひと・しごとといっても、仕事がなければ全く話にならぬので、ということは、これは、経済、あるいは地方に行けば中小企業、あるいは一次産業、こういったところがどうやって利益を上げられるもとの強さを回復できるのかということに全てをかけて、今、石破大臣が中心になって地方創生もやっているわけです。

 全体の地方の再生なくして日本経済全体の再生もないということでやっているわけで、中小企業政策も入っていますし、農林水産業も当然のことながら入っているわけでありますので、エネルギー政策等々いろいろあると思いますが、そういうようなものは全てやはり、みんなの生活の底上げを図っていく。

 賃上げというのはまさに底上げそのものだというふうに思いますので、中小企業から大企業まで、これがちゃんと賃上げもできるようになるためには、経済が強くならない限りは、企業も強くならない限りは賃上げはできないわけですから、そこのところにどういう政策が有効なのかということを、二年連続成長戦略でいろいろなメニューを並べていますけれども、さらにことしもその改定をやっていこうということで頑張っているところだと思います。

牧委員 おっしゃっていることはよくわかるんですけれども、何となく概念的な、きれいな言葉で終わってしまうなという気がして残念であります。もうちょっと踏み込んだお話をしていただきたかったです。

 時間がないので次に進みます。

 格差全般に対する認識について、これまで予算委員会等での政府答弁を拝見しておりますと、格差に対しては成長と分配が大事だよ、再分配は社会保障面と税制面とで図っていく、格差を固定させることなく、再チャレンジの機会を満遍なく振りまいていくことが大事である、こういった類いのお話をおおむねされているんですけれども、社会保障と税でやっていく、これは三年前の三党合意、社会保障・税の一体改革ということで、私はこれには反対をして、かつて所属していた政党から離れましたけれども、いまだに釈然としないところが私なりにございます。

 まず、再配分ということを考えるのであれば、社会保障の目的税として、なぜ低所得者だとか中小企業に厳しい逆進性の高い消費税を充てるのか、もっと、応能課税で賄う方が再配分の意味をなすんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣の考え方をお聞かせください。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 自公民で合意をしたときの恐らく三党の共通認識というのは、やはり消費税というのは、税収が景気とかあるいは人口構成の変化に左右を相対的にされにくいということ、それと、言ってみれば、広く薄くとよく言いますけれども、特定の人たちに負担が集中しないということが、年々増大する社会保障の費用を賄う財源としてふさわしいというふうに考えたのではないかなというふうに思います。

牧委員 当たり前の話で、特定の人に負担が偏らないというのは、なぜそれを言うかというと、特定の人というのは能力のある人、だから私は応能負担の税に頼るべきだということを言っているわけで、今のお話は論理的に当たり前のお話をされているにすぎないわけですね。

 私が聞きたかったのは、なぜ逆進性の高い税に頼るのかということですよ。社会保障というのは、つまりは再分配ですから、再分配するために逆進性の高い税金でそれを賄うというのは私はおかしいんじゃないかということを申し上げたんです。

塩崎国務大臣 それは、完璧な税はないのであって、先ほど申し上げたように、偏りがあるかないか、あるいは逆進性があるかどうかというような問題について、それぞれ長短があるわけで、その中で三党合意で考えたのが消費税ということだったんだろうというふうに思うんです。

 ですから、先生御指摘のように、逆進性があることは間違いないので、それに対して、複数税率とか、あるいは給付つきの税額控除であるとか、いろいろな知恵がメニューとして用意をされて議論が重ねられているわけでありますので、それについて、ですから、では、所得税でいくか、あるいは法人税でいくかといったときには、では、国内の企業が外に出ていく、あるいは、世界から本当は投資をしてもらいたいということで国内直接投資も倍増するということを目標に掲げていますけれども、それが今度は来なくなるみたいなことでは困るのであって、そこら辺のバランスを考えた上で消費税に落ちついたということではないかというふうに思います。

牧委員 これは、これ以上議論しても平行線だと思いますので、この辺にしておきますけれども、私は、要は、社会保障という名にかこつけて増税をしたかったんだなという解釈をいたしておりますので、申し上げておきたいと思います。

 また、世界じゅうを見回して、社会保障の目的税として消費税、付加価値税を充てている国というのは一体全体あるんでしょうか。

今別府政府参考人 与謝野大臣が財務大臣として、あるいは一体改革担当大臣としてお答えをしていますので、きょうも私は併任先の内閣官房の立場の方がよかったのかもしれませんが、いずれにしても、ドイツあるいはフランスで、社会保障財源の全部ではありませんけれども、付加価値税の一部を社会保障財源に充てるという仕組みを持っていることは承知しております。

牧委員 今のお答えどおりだと思うんですね。

 ただ、私が言いたかったのは、社会保障の目的税としての消費税、そういう態度をとっている国があるかということを聞いているわけで、今のお答えでドイツ、フランスが一部入っているということですけれども、これはあくまでも一部だし、フランスなんかはアルコール、たばこ税ですよね。これは逆進性の高い税とはまた意味が違うものだと思いますし、ドイツはたしか保険料をどこかで軽減するところに充てるだけで、そこでバランスをとっているわけですから、目的税とは全く意味が違うということだけは申し上げておきたいと思います。

 次に、世代間の格差についての御認識をお聞かせいただきたいと思うんです。

 社会保障制度改革国民会議で、全世代型の社会保障への転換を目指す、それから、年齢別から負担能力別に負担のあり方を切りかえる、こういったようなお話が出ているということでありますけれども、具体的に、どのような方向性、この世代間の格差についてはどういう形でそこを埋めていこうと考えているのか、基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 社会保障は、特に世代間の助け合いも大変大事であって、給付は高齢世代が中心、そして負担は現役世代が中心の仕組みというふうに今なっているわけでありますが、高齢世代への給付というのは現役世代による親の扶養とかあるいは介護の負担を軽減する側面も持っているわけであって、世代間の格差を論じる際には、給付や負担の額だけではなくて、そうしたことも考慮をしなければいけないのかなと。いわゆる社会化ということをどう考えるかということだろうというふうに思うんですね。

 社会保障の各分野の制度については、社会保障・税一体改革において、消費税収の使途に、今回、新たに子育てというのを加えることにしました。それと、社会保障制度改革国民会議の報告書を踏まえて、年齢別ではなくて、さっきもちょっとお話が出ましたが、負担能力に応じた負担を求めることにするなど、全ての世代を対象として、全ての世代が相互に支え合う、先ほど先生も御指摘になった、全世代型の社会保障制度の構築や世代間の公平の確保を図るということを行っているところでございます。

牧委員 こういった世代間の格差をどう解消していくかという話になると、これはひとり厚労省だけの話じゃなくて、やはり税制等ともいろいろな絡みが出てくると思います。こういったことを一体化して考える必要ももちろんあると思うんです。

 したがって、大臣の立場でこの場でお答えする立場じゃないというふうにおっしゃられるかもしれないんですけれども、基本的な政治家としてのお考えをお聞かせいただきたいんですが、私もかなり、特に資産に着目をすると、今この国の解決しなきゃいけない問題というのは、やはり資産がいかに世代間でもうちょっと流動的に動いていけるかというところだと思っております。

 私は、国民の金融資産というのは、千何百兆円かわかりませんが、かなり高齢者に偏在していると思うんですけれども、大臣はどんな御認識でしょうか。

塩崎国務大臣 みずから蓄積をされた方の資産と、そうじゃなく、相続をされ、生まれたときから資産が山ほどあるという人も中にはいるわけでありますが、なかなか、この資産というのは、やはり国の形を決めるような問題でもあろうかなというふうに思っております。今先生は金融資産の話をおっしゃいました。つまり、みずからの努力で蓄えた資産をどう社会に還元するのかというあり方というのは、やはり国のあり方に近いような、非常に本源的な問題なんだろうというふうに思います。

 ですから、やはり頑張った人が報われるという部分も必要ですし、困っている人を困っていない人が助けるということも大変大事で、それをどうバランスをとるのかということであります。これだけ高齢化が進むと、例えば、資産を蓄積されて亡くなったときに、それを私的に分配するというのが相続でありますが、その亡くなるまでに公的な資金を、税をつぎ込んだ上でお世話をした場合には、社会的にですよ、それを資産との兼ね合いでどう考えるのかというのは、なかなかこれは難しい問題として、決め込んでいかなきゃいけない問題ではあると私も思っておりまして、これからどうするかということであります。

 金融資産の問題についても同様のことが言えるんだろうと思うので、ここは、やはりさっき先生がおっしゃったように、感情論じゃなくて、冷静に議論をして、国のあり方として考えていかなければいけない問題だというふうに思っております。

 余り方向性を言わなくて申しわけありませんが、そんなふうに思っております。

牧委員 確かにこれは難しい問題でありますし、私も、地元へ帰れば、地元の地域というのはかなり高齢化が進んでおりますから、高齢者から資産を取り上げるような話はなかなかしづらいのであります。

 ただ、一方で、遺産を相続する相続人の平均年齢が六十七歳だというふうに聞いています。そうすると、もう高齢者の仲間入りをしてから親の遺産を引き継ぐわけで、本来であれば、もっと大変な子育ての時期にもうちょっと親からの資産を引き継ぐことができれば、子育て支援だってもっと楽になるはずなんですね。

 ただ、大臣がおっしゃったように、なかなか難しいところはありますから、であれば、そういった相続の実態に鑑み、今、消費税を充てる子育て支援についてもまだまだ私は薄いと思うんですね、そういった意味でいうと。やはりそこまで財産が移動していませんから、その世代というのは。年寄りから取り上げるのが難しいのであれば、そこにやはり国がきちっと、もっと手当てすべきだと思います。

 そういうことだけ私の意見として申し上げさせていただきたいと思います。

 時間がありませんので、次に、年金における、もっと年金に特化した世代間の格差について、御認識と、今後どういう方向性を持って対処するか、まず、簡単にお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 年金制度というのは、かつては家庭内において行われていた老いた親の扶養を、言ってみれば、社会的な扶養へと置きかえていったということだと思いますが、この置きかえの過程で、現在の高齢世代は、負担した保険料は確かに低かったわけですね、かつては。これに対して、三世代同居に見られるように、私的な扶養負担も負っていたわけであります。

 したがって、年金制度における保険料負担と給付の関係のみで世代間の格差を評価することはなかなかできないというふうに考えるわけでありますが、ここで大切なことは、制度の持続可能性をやはり年金については確保して、将来の世代にとっても、年金制度がみずからの老後の所得保障ということになる役割を果たせるようにしなければいけません。

 こういったことで、平成十六年の改正というのが行われて、いわゆるマクロ経済スライド、つまり、将来世代にしわ寄せが行き過ぎないように今の人たちも少しずつ我慢をするということで、二十七年度の改定で長期的な給付と負担の均衡を図るマクロ経済スライドが初めて発動されるということになって、今後は受給者の方々にも物価上昇より低い年金額の改定で辛抱いただくということになるわけでありますけれども、この調整を将来世代に極力先送りしないようにして、現役世代と高齢世代のバランスを確保していくように努力をしていかなければならないというふうに思っております。

牧委員 マクロ経済スライドについてはちょっと後ほどまた議論したいと思うんですけれども、その大前提として、ずっと長きにわたったデフレ下において、非正規労働者がふえ、そして労働分配率が低下して、国民皆年金制度そのものが破綻の危機にあると私は思っております。

 国民年金の納付率というのは、ここ数年、どんなふうに推移しているんでしょうか。

樽見政府参考人 国民年金の保険料の現年度納付率で見ますと、ここ数年、回復の動きが見られまして、直近の平成二十五年度で六〇・九%ということでございます。前年度の五九%から一・九ポイントの上昇というふうになってございます。

 さらに、今年度、平成二十七年一月末時点の納付率ということで見ますと、六〇・五という形になっておりまして、昨年の同期は五八・八でございましたので、それより一・七伸びておるということでございますので、平成二十六年度の納付率ということを、年度末に向けまして、前年度実績を上回る水準で推移するというふうに想定をしてございます。

牧委員 改善しているというお話ですけれども、これは国民皆年金の観点からすると、六〇・幾つという数字はその体をなしていないと私は言わざるを得ないと思うんですね。要は、十人のうち四人は無年金だというお話でしょう。

 これは、給付の方は二分の一国庫負担が入るわけですけれども、それは極めて納税者に対して不公平な話であり、本来、そういった意味でいうと、基礎年金はもう全額税方式にしたらいいじゃないかと私は思うんですけれども、大臣、どうお考えでしょうか、この納付率からして。

塩崎国務大臣 いっときは、やはり公的年金に対してかなり不信感を持っていらっしゃる方が多かった、政治の場からも、もう年金は破綻しているみたいな話が軽々に叫ばれておった時期があったと思うんですね。今は、例えば、マクロ経済スライドも意味があるというふうに野党の皆さん方もおっしゃってくださるわけであります。

 そういう意味で、年金は安易に税方式に行くというわけにもいかないわけでありますから、そうすると、どうやって信頼感を取り戻すかというのが大事だと私は思っていまして、そのことに注力をして、国民に対して、決して損になるものではない、むしろ得になるものだということを理解していただくことが大事で、我々、ミニ集会なんかをやると必ず、もう年金は自分が掛けたよりも少なくしかもらえないよというふうに思っている方が多いんですよね、特に若い人は。

 そういうことを考えてみると、いや、そうじゃないんだというところをきっちり、丁寧に、粘り強く説明をしていくことで納付率を上げていくということをやらなきゃいけないのかなというふうに思っております。

牧委員 時間がないので先に進みます。

 今のマクロ経済スライドのお話なんですが、これは、二〇〇四年に、当時の坂口大臣のときにこの仕組みがつくられたわけで、その後、ずっとこれが発動されずに来たわけで、いよいよこの四月から初めてこれが実施に移されるということであります。

 そもそも、この仕組みの趣旨からすれば、これはインフレのときもデフレのときも同じ計算式でスライドさせるというのが本来あるべき話だったと思うんですけれども、これまでずっと特例水準で来たわけですね。これは、つまり、デフレで物価も賃金も下がっているときにさらにこれを下げてしまうと、一般の国民からすると何となく余計に厳しく見えてしまう、そういうことで、これまで据え置いてきたんだと思います。これは、現政権だけじゃなくて前政権の責任もあると思うんですけれども。

 そうすると、この十年間、本来とるべきマクロ経済スライドをやらなかったがための取りっぱぐれといいますか、ある意味、それによってもしかして積立金の取り崩しもあったのかもしれませんし、この十年間の逸失利益と言ったらいいのか、取りっぱぐれと言ったらいいのか、これは大体幾らぐらいになるんでしょうか。また、それをどうやってこれから取り返すんでしょうか。あわせてお答えください。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今お話ありましたように、平成十一年以降、物価の下落に対応してスライドをかけてきませんでしたので、いわば高い水準に年金水準があった。この間、この四月から発動になりますので、足元まで、平成十二年度以降、計算しますと、約九兆円ほど本来水準よりも高い水準の給付が行われたということになります。

 この部分は、基本的には、五年ごとに行われる財政検証の中でほかの物価変動等々による変動分とあわせて再計算の中で計算しますので、将来のデフレ、マクロスライドの調整期間が変動する、つまり将来世代の負担でこれは調整をするということになります。

牧委員 つまり、わかりやすく言うと、デフレのときはこの仕組みは発動させないで、インフレになったときに要するに前に取りっぱぐれた分も取ってしまおう、そういう仕組みの理解でよろしいんですね。

香取政府参考人 大きな理解で言うとそうですね。マクロスライドの調整率というのは計算上で決まりますので、いわばその分はマクロスライドの調整期間が長くなるという形で調整をされるということになります。

牧委員 つまりは、インフレになったときにどこかで調整しなきゃいけないわけですよね、この分は。これはすごいごまかしじゃないですか。つまり、デフレのときにもちゃんとやっておけばいいわけですよね。

 要するに、一般の国民というのは名目と実質の違いがわからないから、物価が上がっているから年金も上がりましたと言えばごまかされちゃうんですよ。物価が下がっているときに年金を引き下げられると、それはそれでまた怒っちゃうかもしれないけれども。

 つまりは、名目と実質がわからない国民をただ単に欺いているだけで、これからどんどんインフレになっていけば、実質もらえるものと物価との乖離がどんどん広くなっていって、ようやくここで目覚めるわけですね。坂口大臣が百年安心と言ったあの意味がよくわかるわけです、そこで。

 百年安心というのは、年金財政をつかさどる人たちからすると百年安心であって、国民にとっては何の安心でもなかったんだということにそこで初めて気がつくわけですよね。そうじゃないですか。大臣、どう思われますか。簡単に答えてください。

塩崎国務大臣 本来、インフレ、デフレに応じて年金調整をしておけば、特例水準がなくて、マクロ経済スライドは十年前にスタートできていたわけです。今回、これは民主党政権のときに法律が出されて通って、この四月に特例水準が解消されるということで、初めてマクロ経済スライドが適用になるわけですね。

 先生おっしゃるように、何しろ将来世代にしわ寄せが余り行かないように今みんなで我慢しようというのがこの仕組みでありますから、できるだけその調整をした方がいいのは間違いないので、今回私どもが提案をするのは、全然やらないというわけではなくて、調整し切れない部分は翌年に回そうということをやろうとしているわけであります。

 やはり、年金の調整期間が今長くなってしまった。これは多分十年ぐらい長くなっちゃったんですね。ですから、これをどう短くしていくかというときには、そして、調整をきちっとやりながらやるためには、やはり経済成長をしながら賃金、物価が健全に上がっていくという状況をつくり、そのためにも、労働市場の参加率を上げていくというようなことも同時にやっていかなきゃいけない。

 年金制度だけを幾ら調整しようとしても、実は経済全体が、これをマクロ経済スライドというように、どういう経済なんですかと、それがとても大事なので、我々は今、アベノミクスで経済を強くしていく、このことが実は、成長によって調整期間を短くするということもできるので、そうすれば、一定程度の物価だけでもらい始めた人は、調整をしていけばあとはよくなるということになるので、やはり経済政策と一体で年金というのは考えていかなければいけないということだろうというふうに思うんです。

牧委員 そのとおりだと思いますし、大臣がおっしゃった労働市場の参加率、これをもっと高めていかないことには、いかんともしがたいと思います。特に短時間労働の人たちにもっと社会保険に参加していただけるような仕組みも、これからもっとしっかり取り組んでいただければということを私は希望いたします。

 大臣も時間がもう、参議院の方に行かなきゃいけないということで、どうぞ御退室いただきたいと思います。

 大臣も退室しましたので、年金の話はまたいろいろ、GPIF等の議論のときにさせていただきたいと思います。

 ちょっとさっきと前後しましたけれども、もう一回消費税の話に戻るんですが、地方消費税、これは八%のうちの一・七%ですね。一・七が地方で六・三が国という内訳の、その一・七の都道府県配分について確認をさせていただきたいんです。

 一五年度から、つまり四月以降、その比率がかなり大幅に改まる、その算定基準が変わってくるということを聞いているんですけれども、どういうふうに変わるんでしょうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 地方消費税は、最終消費者が実質的な負担者であります。その税収も最終消費の行われた都道府県に帰属させる必要がございます。一方、納税は、製造業者、卸売業者等の所在地でも行われるため、最終消費が行われた都道府県と税収が一旦帰属する都道府県との不一致が生じますので、このことを回避するため、税収を、各都道府県の消費に相当する額を基準として清算をし、最終消費地と税収の帰属地を一致させることとしております。

 この清算に用いる消費に相当する額に用いる統計は、法令の規定によりまして、基幹統計のうち最近に公表されたものとされているところであります。これまで用いてきましたサービス業基本調査が廃止をされ、平成二十六年二月に新たに経済センサス活動調査が公表されたことから、これに所要の調整を行った上で置きかえるとともに、人口と従業者数の割合を変更する見直しを行ったところでございます。

 この経済センサス活動調査は、従来のサービス業基本調査と比べて医療、福祉の調査範囲が拡大していることから、統計の置きかえの結果として医療、福祉の比率が高まったものでございます。

 この見直しによる各都道府県のシェアの異動につきましては、これまでの統計の更新時と比べても大きな変化にはなっていないものと考えております。

牧委員 大きな変化にはなっていないというお話ですが、これは、新聞報道によれば、実質何億円も増収になる県もあれば、減らされる県も当然あるわけですね。

 つまりは、今の説明を平たく言うと、各都道府県内のサービス消費のうち、医療、福祉にかかった分の比率が大幅に高まったという理解でいいわけですよね。

 そうすると、これは簡単に、平たく言うと、医療、介護等の消費が多かった、そういう県にこれから地方消費税の配分がたくさんなされますよという話なわけです。そういう理解でよろしいですね。簡単に答えてください、その理解でいいかどうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 新しく用いる経済センサス活動調査においては、先ほど申し上げたように、医療、福祉の調査範囲が広いわけでございますから、今先生が言われたように、医療、福祉の部分について、その規模が大きければ、清算される結果として税収がふえるところでございますが、この見直しによりまして地方消費税が減収する団体もありますけれども、地方交付税の算定上、そうしたことも適切に反映することとしておりますので、当該団体の財政運営には影響しないものと考えております。

牧委員 今のお話で、厚労省はそれでいいんですか。つまりは、各都道府県で医療費をたくさん使った県、介護費をたくさん支出した県はたくさん地方消費税が回ってきますというお話です。

 では、何も健康づくりだとか医療費を抑制しようという努力をしないで、どんどんどんどんお医者さんにかかりなさい、ジェネリックも使わないでどんどんと高いお薬を使いなさいという県に地方消費税がこれからより配分されるような、そんな仕組みだというふうに私は今お話を聞いていて理解するんですけれども、厚労省はそれでいいのでしょうか。

今別府政府参考人 今のお話は地方消費税の配分ですので、先生がおっしゃるように、医療なり介護なりの負担といいますか、そのごく一部の財源の手当ての話だと思いますので、もとより、我々は、効率的な医療、介護の仕組みの推進のために、今度提案をさせていただく健保法の改正も含めて取り組んでまいる所存でございます。

牧委員 やはり厚労省は、ちょっと、余りぼけっとしていないで、こういうところをしっかり見ていっていただきたいと思います。同じ政府の中で政策的に逆行する政策だと私は思いますから、そこはきちっと政府内でもっと詰めていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 きょうは、済みません、ここから先は官民格差の話をしようと思っていて、ほかの参考人も呼んでおりましたけれども、時間が来てしまいましたので、申しわけございません、別の機会にまたさせていただきたいと思います。

 質問を終わります。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文でございます。当委員会では初めての質問になります。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、介護報酬の引き下げにかかわって伺いたいと思います。

 今回の介護報酬の二・二七%もの引き下げについては、幾ら介護労働者の処遇改善があるといっても、それを上回ってマイナス改定をかぶせれば、事業所にとっては大変な痛手であります。そうなると、人手不足の現場に一層の困難を持ち込むことになるわけで、私たちは反対であります。

 総理初め、これは、利用者の負担を軽減し、保険料の伸びを抑えるため、ふえ続ける介護費用全体を抑制するんだと繰り返してまいりました。十三日の予算委員会では、総理が我が党の高橋千鶴子議員の質問に答え、介護サービスの利用者負担を平均で二%程度軽減できると答弁されました。介護報酬が下がれば利用者負担が減るというのはある意味当然でありますけれども、大臣、この点、間違いないかということを確認したいと思います。

塩崎国務大臣 平成二十七年度の介護報酬改定におきましては、介護職員の処遇改善や中重度の要介護者等に対する在宅生活を支援するためのサービスの充実を行いながら、経営の実態等を踏まえて、全体としてはマイナスの二・二七%という改定率で決定をしているところでございます。

 この結果として、介護保険料の上昇の緩和、それから介護サービスの利用者負担の軽減など、保険料の納付者や利用者の負担軽減にもつながると考えておりまして、このような点について、これまで国会でも答弁をしてきたところでございます。

堀内(照)委員 ところが、それと全く逆行することが起きております。

 兵庫県尼崎市のグループホームで、介護報酬減額による事業所の減収分を利用者に負担をお願いする文書が、利用者のところに郵送をされております。私ども、今回、入手いたしまして、その文面を少し御紹介いたしますと、こう書いてあります。

 今回の介護報酬改定は、介護報酬全体での改定率はマイナス二・二七%となり、そのうち弊社が御提供させていただいている認知症対応型共同生活介護サービスの単価が大幅に引き下げられました。今回の介護報酬改定の結果を慎重を重ね検討してまいりましたが、経営に対する影響が極めて大きく、現状の利用料金では御契約者様へのサービスの提供のみならず、事業継続が困難な事態となります。つきましては、四月一日より介護報酬改定に伴う減額分を御負担いただく目的で、重要事項説明書に記載する以下の料金を四月一日より改定いたします。

 こうありまして、基本サービス費と在所日数、地域区分単価、こういった計算までして改定による影響額をはじき出し、この事業所の場合は一万五千四十八円ということですが、その一万五千四十八円を、そのまま管理費なる費目を新たに創設して徴収しようとしているわけです。

 介護報酬引き下げ分を事業者がそのまま利用者に転嫁する、これはいいんでしょうか。

三浦政府参考人 認知症グループホームなどにおきましては、食材や身の回りの日用品など、日常生活で通常必要となるものにかかる費用につきましては、実費相当額の範囲で利用者から費用の支払いを受けることが認められているところでございます。ただし、この場合にあっても、曖昧な名目で支払いを受けるということは認められません。

 また、利用料金の設定につきましては、利用者またはその家族の方に事前に説明して同意を得るほか、利用料金の額は事業所の運営規程に記載し、変更があった場合には市町村や都道府県に届け出ることとされております。

 これらの費用は、介護保険給付の対象となっているサービスとは重複しない便宜に対する費用であるということから、例えば、介護報酬の引き下げによる減収分を補填するという目的でその引き上げを行うということは認められないものと考えております。

堀内(照)委員 この事業所は、北海道から九州まで二十七都道府県で、百九十五カ所のグループホームを初めさまざまな介護事業を全国展開しております。

 今も答弁ございましたとおり、どういう名目をつけようが、介護報酬引き下げ分を利用者に転嫁するということは許されないわけで、これは調査して是正すべきではないでしょうか。そして、ほかの法人事業所も含めて、こうしたことがないように徹底を図るべきではないでしょうか、大臣。

塩崎国務大臣 今、三浦老健局長からお答えをいたしましたけれども、認知症グループホーム等における利用料金の額については、事業所の運営規程に記載をし、変更があった場合には市町村や都道府県に届け出ることとされておりまして、不適切な利用料金の変更があるかどうかは、市町村や都道府県で確認がなされる仕組みとなっているところでございます。

 厚生労働省としては、市町村や都道府県からの個別の疑義照会に対応することなどを通じて、市町村や都道府県において適切な確認がなされるように支援をしていきたいと思っておるところでございます。

堀内(照)委員 これは、ぜひ国としても、市町村、都道府県をしっかり見届けていただきたいと思っております。

 このように、事業所への減額分を利用者負担に転嫁することは絶対許されませんが、報酬引き下げが事業所の経営を直撃しているということは厳然とした事実であります。午前中もございましたが、現場の困難がさまざまな形で明らかになっているわけですから、介護報酬の引き下げの撤回を強く求めて、次のテーマに移りたいと思います。

 いよいよ四月から、子ども・子育て新制度が実施をされます。依然として、新年度の待機児童は深刻であります。

 この月曜日、二十三日付東京新聞は一面で、都内二十三区で認可保育所に「今年も二万一千人入れず」と報じ、保育必要との認定証が来ても入所不可で、認定証だけもらってもどうしようもないと憤る保護者の声を紹介しております。

 私の地元の神戸市でも、灘区のあるお母さんは、四月からようやく正規で働けるのに、三番目の子の保育園が決まらない、本当は上の二人が大好きな同じ保育所に入れてやりたいが、このままどこも決まらないという事態だけは何としても避けたいと切実な声を寄せておられます。

 ほかにも、私がこの間直接聞いてきただけでも、内定が決まっているのに預け先がなく、内定辞退をしなくてはいけないのではないかとか、下の子の保育所が決まらず、このままいけば夫の事業所内保育施設に行かざるを得ない、そうなると、仕事が終わって兄弟別々の保育所にお迎えに行くわけで、お迎えに行って帰宅、それだけで車で一時間以上もかかってしまうと、各地で深刻な声が寄せられております。

 先日、当委員会で大臣は、待機児童ゼロを目指して取り組みを強力に進めますと所信を述べられました。取り組まれている待機児童解消加速化プランをさらに前倒しで進めることが必要で、そのためにも、自治体への財政支援も含めた緊急措置をとるなど、思い切った支援が必要だと考えますけれども、いかがでしょうか。

山本副大臣 御指摘のとおり、待機児童の解消は待ったなしでございます。

 そのために、今御指摘いただきました待機児童解消加速化プランを進めておりまして、平成二十五年度、二十六年度の二カ年におきましては、従来の二倍のスピードで整備を進めまして、予定どおり、約二十万人分の保育の受け皿が確保できる見込みとなっております。

 また、平成二十七年度におきましては、今後三年間で確保する約二十万人分の受け皿について、前倒しをして整備することといたしておりまして、約八・二万人分の受け皿の確保を進めていく所存でございます。

 この約八・二万人分のうちの約一万人分につきましては、既に平成二十六年度の補正予算で計上いたしました保育所等整備交付金によりまして、保育所整備を前倒しして進めているところでございまして、保育所の早期開設というものをしっかりと進めてまいりたいと思っております。

 今後とも、自治体の待機児童の解消に向けた取り組みを確実に対応していけるよう、政府として最大限努力をしてまいる所存でございます。

堀内(照)委員 今、現に困っている保護者の方々に、まだ十分に応えるというスピード、規模ではないと思うわけですね。そのためにも、さらに前倒しでということで私お願いしたわけで、自治体に対して保育施設と保育士確保に必要な特別の財政支援を緊急に行うことや、用地取得のための国有地無償貸与、また土地取得の助成制度の実施など、さらに踏み込んだ国の施策を求めるものであります。

 待機児童解消のためには、必要な保育施設を保護者の要望に即して整備していくことが欠かせないと思います。しかし、そのもとになる待機児童の把握の仕方に問題があると考えています。

 厚生労働省は、それぞれ各自治体に待機児童調査を依頼する際、待機児童の新しい定義というのを添付しております。このたび、この定義について新たに変更した点というのはどのような点でしょうか。

安藤政府参考人 待機児童の定義につきましてお答えを申し上げます。

 待機児童調査におきましては、統計数値としての連続性にも配慮して、現行の取り扱いを基本としつつ、新制度の施行に伴いまして必要となる見直しを行ったところでございます。

 新制度では、小規模保育や幼稚園を含む新たな共通の給付が創設されることや、保育の必要性の認定の事由に求職活動ということが明確に位置づけられることなどを踏まえまして、待機児童の定義についても整理を行いました。

 主な変更点といたしましては、小規模保育と一時預かり事業の幼稚園型などの補助を受けている幼稚園につきましては、新制度のもとで新たに認可事業である地域型保育事業として位置づけられるということから、その利用児童を待機児童数には含めないということにしたところでございます。

 また、特定の保育所などを希望して、ほかに利用可能な地方単独保育施設を利用しない場合については、待機児童数には含めないという取り扱いにつきましての明確化を図りました。

 さらに、保護者が求職活動中の場合は待機児童数に含めるということにしておりますが、調査日時点で求職活動を休止していることの確認ができる場合には待機児童数に含めない取り扱いにすることにつきまして、これまでやや曖昧だったものを明確化したというところでございます。

 また、育児休業中につきましては、現行の取り扱いを踏まえ、整理をさせていただいたということなどが挙げられるところでございます。

堀内(照)委員 求職活動の休止を確認できる場合と言いますけれども、何をもって休止の判断とするのか。また、育休については、これまで明記されていなかったものを、わざわざ、待機児童に含めないことができるということも明記されているわけであります。

 兵庫県姫路市のある方は、求職活動中でずっと申し込んできたのに、昨年秋、姫路市が待機児童ゼロになったと報道をされた。うちの子は待機児童とは数えられていなかったのかと大変憤っておられました。育児休業が明けるのに保育所が決まらない方は仕事をやめなければならない、本当に深刻なわけであります。

 これまで、求職中や育休については、待機児童数を少なく見せるために自治体の判断で除外する例もあり、その判断が自治体によってまちまちであるがゆえに、実態がつかめないという批判もありました。今度は、国が新たな定義でそういうものにお墨つきを与えることになると思います。定義の変更は撤回をして、求職中や育休について、きちんと待機児童としてカウントすべきではないでしょうか。

安藤政府参考人 まず、新制度におきましては、保育の必要性の事由に新たに求職活動が規定されたことを踏まえまして、保護者が求職活動中の場合については待機児童数に含めるということにつきまして明示したわけでございます。従来は、求職活動の状況把握に努め、適切に対応というような形になっておりました。その上で、求職活動を休止していることの確認ができるという場合には、待機児童数に含めないことを明らかにしたものでございます。

 また、新制度では、保護者が育児休業中の場合については待機児童数に含めないことができることとして、これもまた明確化を図ったところでございますが、育児休業を取得している方の状況につきましては、市町村がその実情を踏まえて判断をしているというのが現状でございまして、育児休業の取り扱いを一律に定めるということは適切ではないことから、待機児童のカウントについては市町村の判断に委ねることとしたものでございます。

 なお、市町村の判断により待機児童に含めないこととした場合におきましても、育児休業を延長した方や育児休業を切り上げて早く復職したいという方のニーズにつきましては適切に把握をしていただいて、引き続き、利用調整を行うよう明確に求めているところでございまして、この趣旨を踏まえまして、市町村におきまして適切に対応いただきたいと考えているところでございます。

堀内(照)委員 一律ではないということなんですけれども、自治体によってばらばらであることがやはり問題であって、正確な実態をつかむということが必要だと思うわけです。

 育休延長も、その期間が終われば職場復帰をします。待機児童とカウントしないと実態が把握できないわけであります。これでは仕事に復帰できない、退職するしかないといった保護者の必死の思いに応えるべきで、待機児童を狭めるようになるようなこの定義は見直すべきだと申し上げたいと思います。

 また、この定義では、認可保育所に入所を希望してもそれがかなわず、小規模などの地域型の施設や幼稚園の一時預かり事業などで保育できれば、待機児童と数えられません。今これも答弁があったとおりです。

 今回の新制度は、潜在的なニーズも含めて、自治体がしっかりつかんで、計画的に施設の整備を進めようというものであったはずであります。保護者の多くは認可保育所の利用を希望しております。しかし、これでは、そのニーズを正確に把握するものにはならないのではないでしょうか。

安藤政府参考人 新制度におきましては、小規模保育などの地域型保育事業につきましては、新たに市町村が認可する事業として児童福祉法上に位置づけをしまして、質の確保されたものとして公的給付の対象としております。また、幼稚園については、幼稚園型の一時預かり事業が創設されまして、午後の預かりについて、消費税財源を活用して安定的な補助がなされることとなっております。

 これらを踏まえまして、こうしたものを利用している場合には、一定の質が担保された保育サービスが提供できているものとして、待機児童には含めないこととしたところでございます。

堀内(照)委員 小規模も含めて待機児童解消のために整備をするということでありますけれども、多くの保護者の希望は認可保育所への入所であります。それは何も根拠なしに認可がいいんだ、認可保育所がいいんだと言っているわけではありません。やはり、子供の育ちにとって最善の必要な環境をと願ってのことであります。

 私が話を伺った保護者の方々が口をそろえておっしゃられたのは、子供は荷物ではないんだ、ただ預ければいいというものではないという言葉でありました。

 小規模や家庭的保育などでは、さまざまな基準が認可保育所とは当然違ってきます。一番のかなめともいうべき保育士の配置基準が小規模と家庭的保育でどうなっているのか、お答えください。

安藤政府参考人 子ども・子育て支援新制度におきましては、小規模保育事業や家庭的保育事業を新たに市町村が認可する事業として公的給付の対象とすることとしております。

 このうち、定員規模が六人から十九人である小規模保育事業につきましては、三つの類型を設けております。具体的には、現在行われている認可外保育事業を含めた多様な事業からの移行を想定いたしまして、保育所分園や小規模の保育所に近いA型、家庭的保育に近いC型、その中間のB型、この三つを設けているところでございます。

 それぞれの職員配置基準につきましては、A型では、保育所の配置基準にプラス一名の配置を求めまして、保育従事者の全てを保育士としております。B型では、保育所の配置基準にプラス一名の配置をこれも求めまして、保育従事者の二分の一以上を保育士としまして、保育士以外の保育従事者には研修受講が必要としているところでございます。C型では、研修を受講した家庭的保育者を配置する場合には子供三人に対し保育従事者一人、その補助者を置く場合には子供五人に対し保育従事者二人というふうにしているところでございます。

 また、定員規模が一人から五人であります家庭的保育事業の職員配置基準につきましては、小規模保育事業のC型と同様、研修を受講した家庭的保育者を配置する場合には子供三人に対し保育従事者一人、その補助者を置く場合には子供五人に対し保育従事者二人としているところでございます。

堀内(照)委員 基本的に資格を持った保育士が配置される認可保育所と、そうでない小規模B、Cや家庭的保育などの地域型事業所では、明らかに保育士の配置という点で格差があるわけです。ほかにも、地域型施設では雑居ビルの一室でもいいとか、給食も外部搬入が可能であるなど、認可保育所との歴然とした違いがあるわけです。だからこそ、保護者の多くが認可保育所を求めているわけで、その願いに応えるべきだと思います。

 ところが、この加速化プランのもとでどう推移をしていっているかということでありますが、この加速化プランが始まった一年間の数字を確認したいと思います。

 二〇一四年四月一日時点での保育所利用児童数、地方単独保育施設利用人数を、前年同日比との変化とその増加率について、それぞれどうなっているか、お答えいただけますか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 認可保育所の利用児童数につきましては、平成二十五年四月一日現在で二百二十一万九千五百八十一人、平成二十六年四月一日現在で二百二十六万六千八百十三人となっておりまして、比較をいたしますと、四万七千二百三十二人、伸び率にして二・一%の増加となっております。

 また、地方単独保育施策として整理をしておりますものの利用児童数につきましては、平成二十五年四月一日現在で一万六千二百六十四人、平成二十六年四月一日現在で二万三百七十七人となっております。

 ただ、この平成二十六年の数字につきましては、平成二十七年四月施行の子ども・子育て支援新制度の先取り実施をするための国の支援策でございます保育緊急確保事業の対象となりました小規模保育事業や幼稚園における長時間預かり保育などが含まれております。こうした国の事業の対象分というのは、従来は地方単独保育施策のカテゴリーには含まれていなかったものでございますが、二十六年につきましては、この保育緊急確保事業の対象となったものについてはその数字に含めるようにという形で統計をとったものでございますので、この二つの数字を一概に比較することはちょっとできないかなと思っておりますけれども、その上で、比較した数字を申し上げますと、四千百十三人の伸び、伸び率にして二五・三%の増加となっております。

 なお、これらを含めました全体の保育料増加分に占める地方単独保育施策として整理したものの増加分の割合は、八%となっております。

堀内(照)委員 単純に比較できないということでありますが、この地方単独施設は、おっしゃられたように、新制度のもとでは、施設が希望すれば小規模や家庭的保育などいわゆる地域型へと移行する施設でありますので、おおよその傾向は見えてくると思うんですね。

 いわゆる地方単独施設の伸びが非常に大きいわけです。特に、待機児童の多い政令指定都市では、保育所の利用の伸びが四%に対して、地方単独は四三%の増。中核市は、保育所が四%の増に対して、地方単独は六七%の増。例えば、中核市、大阪の高槻市は、百一人から三百六人と三倍。兵庫県の西宮市は、ゼロ人だったのが八十一人ということであります。

 地域型がふえることが単に悪いというわけではなく、定義では、そこに入ると待機として数えられないわけで、自治体にとっては、これで待機児童解消だということになれば、本来保護者が求めている認可保育所の整備に向かわないのではないかという懸念があるわけであります。

 昨年六月の当委員会での高橋千鶴子議員の質疑の中で、雇用均等・児童家庭局長は、保育の専門性について、「保育士は、単に子供を預かる者ではございません」、「子供の発達を支援し、健康や安全を確保し、また、保護者への相談支援などを行うといった、保育の専門職としてさまざまな役割を担っている」と答えておられます。

 そうであるなら、基準を緩めた施設でよしとするのではなく、あくまで認可保育所に入所したいという保護者の願いにきちんと応えられることが必要だと思います。認可保育所の整備へ国の責任を果たすよう、重ねて強く要望するものであります。

 あわせて、今、保育所の絶対数が足らず、新制度に移行しようとする中で混乱も生まれております。

 新制度に向けて、在園児も新たに保育の必要性の認定を受けることになっておりますが、その在園児が通っている保育所から退園を迫られるという事例が生まれております。

 岡山県早島町では、二月半ば時点で、新年度の待機児童数が三十六人と過去最悪になりました。その中で、新たな利用申し込みの方の点数が高くなって、在園乳児十一人の保護者に退園通知が出されました。慌てた保護者が集まって、これは生活がかかっているんだと町長と必死に交渉する中で、町も対応され、急遽十一人の定員拡大を行って、退園児を出すという事態は回避をされました。

 このように在園児が退園させられるというようなことはあってはならないと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

安藤政府参考人 子ども・子育て支援新制度への移行に当たりまして、現に保育所を利用しているお子さんについても、市町村が保育の必要性の認定を行った上でその利用を決定するという経過をたどる必要がございましたが、安定した環境で子供の心身の健全な発達を促すという観点からは、一貫して継続的な環境で保育を受けられるようにするということが望ましいと考えております。

 このため、ことしの一月に、各都道府県等に対しまして、現に保育所を利用している児童については、市町村は、現在利用している施設を継続的に利用することを保障することが適当であり、適切な運用が行われるようにということを文書で依頼したところでございます。

 なお、認可外保育施設が認可保育所になる場合についても、同様の配慮をすることとしております。

 各市町村におかれましては、その趣旨を踏まえて、適正な運用を行っていただきたいと考えているところでございます。

堀内(照)委員 もう四月一日目前でありますけれども、改めてこの通知の徹底をぜひ図っていただきたいと申し上げたいと思います。

 同様の混乱は、障害児をめぐっても起きております。

 兵庫県加古川市で、保育園に通う障害児が、保育園生活あと一年という来年度、保育認定を受けられずに、他の幼稚園へ転園させられそうになる事例が起きました。

 このお子さんの母親は、小学校五校で英語の臨時講師として働いているんですが、就労時間が規定に足りなくて、市からは、お子さんは一号認定になるので幼稚園へ転園だと申し渡されたわけであります。

 このお子さんは自閉症で、保育所に通い始めのころはなかなか言葉も発しなかったそうでありますけれども、この一年間の保育園の生活の中で、言葉を発するようになるなど、子供たちの集団の中で成長してきたわけです。やっと成長の兆しが見えた子供の環境を変えることは、子供の成長や発達にとってよくないということは言うまでもありません。

 認定を受けて、十月にそういうふうに言われたわけですが、この半年、お母さんは悩み、また奔走もし、何とか就労時間をふやすことで四月以降も通える見通しがようやく今週に入ってできたわけでありますけれども、このお母さんが言っておられましたのは、市の言うままに、泣く泣く転園させられるケースも多いのではないかということでありました。

 障害を持つ子供たちの成長、発達にとって、子供の集団生活の中で発達の機会が得られる大事な場所が保育所であります。ところが、保育の必要性の認定要件に、障害という項目はありません。この保育の必要性の認定要件に、子供自身の障害ということや、また、発達上課題を抱えている子もいるわけで、発達上の必要というものも加えるべきではないでしょうか。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 新制度では、国が定める保育の必要性の事由に照らしてみて、市町村が保育の利用を希望する保護者を認定する仕組みになるわけでございます。

 子供が障害を持っていることのみをもって保育の必要性があるとすることについては、子ども・子育て会議の中でもさまざまな議論が行われたわけでございまして、虐待のおそれのような、日中、子供が家庭にいることが適当でないようなケースとは事情が異なることなどを踏まえて、国が定める保育の必要性の事由として明示的には盛り込まなかったというところでございます。

堀内(照)委員 私が伺ったこの方のお子さんの場合も、そうやって言葉が発せられるようになっただけではなくて、ちゃんと受け答えもできるようなそういう成長もありましたし、生活面でも、トイレに行けなかったものが行けるようになるとか、本当に子供たちの集団の中でそういう発達をしているわけなんですね。

 この集団の中でということと、それから保育所というのは、一日十時間前後、子供たちの集団生活があるわけです。集団ということとあわせて、生活の場での発達ということもあるわけで、これは療育の施設や幼稚園などにもない、保育所ならではのやはり大事な役割があるというふうに思うんですね。

 今、各自治体では、利用調整のところでは少し優先利用ということがあるわけですけれども、今大臣おっしゃったように、就労が前提で、それではこれだけ待機児童が多い中ではやはりとても入れないということになっているわけであります。障害を持つ子供の親ほど就労時間が短くなるということが多いわけでありまして、やはり基本的な要件のところでほかの人との差がついてしまって、なかなか入れない。既定の就労時間にも満たないと、そもそも認定そのものも受けられないわけであります。

 そうなると、特に三歳未満の障害児の場合は、療育施設の方も今、待機が多いわけですから、集団の中での育ちを保障する場がなくなってしまいます。せいぜい使えるのは一時預かり等でありまして、そのような細切れでは発達が保障されないわけであります。

 保育の必要性を今回認定するようになるということであれば、その認定事由の中に子供の障害や発達上の必要ということをぜひ明記すべきだと思うわけです。

 現行では、自治体の判断で、親の就労に関係なく障害児を受け入れている例が広がっております。この点では、新しい制度においても引き続き、その他市町村が定める事由の中で、障害について保育の必要を認定するという自治体の判断ができるということは確認しておきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほどお答えを申し上げたように、国が定める保育の必要性の事由の中に子供の障害を明示的には盛り込まなかったわけでございますけれども、一方で、議員御指摘のように、現行では、各市町村が独自の判断をして、子供が障害を持つことをもって保育所に入所させている場合もございまして、そのことについては承知をしているわけでございます。

 新制度においても、国が定める保育の必要性の事由の中に、市町村が認める事由に該当することを設けておって、制度の実施主体である市町村の判断によって、引き続き同様に取り扱うことを可能としているわけでございます。

堀内(照)委員 市町村の判断で可能だということは確認をしておきたいと思いますし、ぜひ、そのことを周知もして、障害児にとっても必要な保育が保障されるように重ねて要望して、さらに幾つかただしたいと思います。

 地域型の保育事業には、障害児を受け入れると、児童二人に対して職員一人の配置が加算をされます。しかし、保育所の方は、主任保育士を補助する者に対する加算だけであります。これでは、障害児の受け入れを、保育所より地域型の小規模施設や家庭的保育へと誘導するものではないかと思います。なぜ地域型だけこのような加算になるのか、お答えください。

安藤政府参考人 新制度におきまして新設されます地域型保育事業につきましては、障害児二人に対して保育士一人を配置できるように、障害児保育加算を公定価格に盛り込んだところでございます。

 一方で、保育所における障害児の受け入れ加算につきましては、平成十五年度から一般財源化して、地方交付税措置により対応しているところでございまして、新制度施行後においても、同じ形で引き続き対応していくということにしております。

 なお、新制度施行に伴いまして、消費税財源を活用して、質の改善として、保育所などにおきまして、障害児等の特別な支援が必要な子供を受け入れて、地域関係機関との連携や相談対応などを行う場合には、地域の療育支援を補助する者を配置する療育支援加算を公定価格に盛り込んでいるところでございます。

堀内(照)委員 保育所に対しては一般財源で手当てもしているんだということでありますけれども、この十年、例えば人口十万人の自治体で、障害児保育事業費に係る基準財政需要額というのは八百二十万から八百三十万円で推移をし、そのうち一般財源化影響額というのは五百五十数万円と、ほとんどふえていないわけです。しかし、その一方で、保育所での障害児受け入れは、二〇〇五年三万一千二十六人から、二〇一三年五万三千三百二十二人と、子供はふえているのに、一般財源化される中で、実質、保育所には手当てがふえていないということであります。

 そして、地域型へと傾斜をしていく。その地域型での受け入れ体制はどうかといえば、先ほど確認したように、小規模事業所B型は保育士半分でいい、C型や家庭的保育では資格を持った保育士がいなくてもいいということになっているわけです。そのかわり、定められた研修を修了した者が子育て支援員として担い手となるわけですが、そうした施設で障害児を十分に受け入れることができるんだろうかと思うわけです。

 この子育て支援員の研修について、特に障害の研修というのはどのようになっているでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 子育て支援員の研修カリキュラムでは、子育て支援員が障害児に対応するということを想定いたしまして、障害児支援制度の理解、障害特性に応じたかかわり方や専門機関との連携、障害児支援等の理解などを学ぶ科目を基本研修の中に位置づけまして、原則として、この研修の受講者全員に履修を求めているところでございます。

堀内(照)委員 時間にしてどれぐらいでしょうか。

安藤政府参考人 一時間でございます。

堀内(照)委員 保育士というのは、大学や短大などで二年から四年の学業と実習の上に、国家試験を受けて得られる資格であります。それと比べても、障害についてわずか一時間の研修しか受けていない人が受け入れる施設で、障害児の発達保障という点で本当に十分なのか。いや、もっと言えば、安全を守るという点でも本当に大丈夫なのかと思うわけであります。

 障害を持つ子供の発達や安全をこれで本当に保障できるんでしょうか。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 子ども・子育て支援新制度におきまして、保護者からの利用申し込みを踏まえて、市町村が施設、事業における受け入れ体制等を考慮した上で利用調整を行うこととされているために、あらかじめ障害を有するとわかっている子供については、原則として、受け入れ体制のある施設、事業を利用していただくこととなると考えられるわけでございます。

 その上で、地域型の保育事業については、保育を行う際に、保育士、それから保育士と同等以上の知識及び経験を有する家庭的保育者のいずれかが必ず半数以上いることとしておりまして、また、障害児を受け入れた場合については、それに加えて職員の加算をとることができるため、手厚い対応が可能となっているわけでございます。

 なお、地域型の保育事業のうち、利用対象者を障害児などに限定している居宅訪問型保育事業については、障害児などを保育する場合には、必ず、障害児入所施設等を連携施設として設定することを求めるとともに、保育事業者の研修カリキュラムにおいても、障害等の専門研修を行うこととしておりまして、これらにより適切な受け入れがなされるものだというふうに考えているところでございます。

堀内(照)委員 あらかじめ受け入れ体制がある施設というんですけれども、待機児童が多い中で果たしてそれが本当に保障されるのかということですし、家庭的保育者が保育士と同等だということなんですが、それはやはり全然違うと思うんですね。家庭的保育者というのは、市町村長が一定の研修を受けた者に対して認定をするということですけれども、そういう市町村長認定の者と同等ということであれば、この保育士の国家資格というものは一体何なのかという話になるわけであります。

 先ほど、保育の専門性ということも指摘をしましたけれども、親の就労という観点だけではなく、子供の発達という点でも、一日十時間前後を保育士という専門家がいる場所で生活をし、そして子供の集団の中で過ごすことが障害児の発達にとってどれほど大事なことなのか、また、保護者への相談支援という点でも、障害児を抱えた特有の悩みを持つ保護者の方々に対して、そうした知見を持った保育士がいるということがやはり非常に大事なことなんだというふうに思うわけであります。

 だからこそ、障害児についても保育の必要性をしっかり認定要件にも加えるし、資格を持った保育士が配置をされている認可保育所での障害児受け入れに伴う加配にこそしっかり加算をする、財政的な支援も強めるべきだと申し上げたいというふうに思います。

 そして、保育が必要な全ての子供が入所できる認可保育所の整備こそ求められているんだ、その保護者のニーズに応える整備へ国の責任をしっかり果たすということを最後に重ねて申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 昨年の通常国会までは厚生労働委員会でお世話になっておったわけですが、臨時国会で安全保障委員会にちょっと出向というか、一時的に出向を命ぜられまして行っておりました。

 ただ、再任を固辞された前大臣とちょっと安全保障委員会でいろいろやってしまいましたので、安全保障委員会は出入り禁止になりまして、再び厚生労働委員会に戻らせていただくことができまして、ありがとうございます。当時御一緒させていただいた委員の方々も多くいらっしゃいますし、大臣におかれましては、私、経済産業省におったときからいろいろと御指導いただいてきた、勝手にそう思っているわけですが、尊敬をしておりますので、ぜひ、きょうも忌憚なく御指導いただきたいと思います。

 きょうは、労働政策とそれから医療・介護政策、所信質疑ということですので広く質問させていただきたいと存じますが、まず前半、労働政策について質問します。

 一つ、まず派遣法、これは予算委員会でも申し上げましたが、私、実は予算委員会でこういうことを申し上げました。

 まず、アベノミクスは成功させなあかん、こういうことを言いました。そうしたら、赤旗が、維新は自民党を応援しているのかとかいって書き立ててこられまして、そんなことはないんですけれども、アベノミクスが失敗したら塗炭の苦しみを味わうのは庶民だという思いで、絶対にこの経済運営は成功させなあかん、こういうことを申し上げた。ちょっと私の真意を、共産党の委員の方もいらっしゃるので、申し上げておきたいと思います。

 それから加えて、派遣法についても、もう三度目の正直である、絶対に仕上げてほしい、こう申し上げましたら、党の幹部の方から怒られまして、まだ決めていないということであります。

 これについても、私は別に頭から何でも賛成と言っているわけではなくて、派遣法が三たび失敗をすれば、混乱するのは現場であって、困るのは労働者の皆さんです。だから、まず大臣、派遣法、今国会ぜひよろしく。御決意というか、三たびの失敗はないという、ちょっと確認です、これは。

塩崎国務大臣 もちろん、先生方の御理解と御協力を得て、三度目の正直で必ず成立をさせるということで頑張っていきたいと思います。

 いろいろ、ややレッテル張りのようになりつつあるのを、今、一生懸命そうじゃないということを言っており、また、何か全部が派遣になるかのように言っていらっしゃる方もおられますけれども、今、雇用者全体の中で二%が派遣であります。やはりそれは多様な働き方ができていくということが大事であって、どういう働き方もみずからが選択できるというのが大事なんだろうと思うので、働く人を保護しながらこの改正をやっていこう、こういうことでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 まだ党内、意思決定できていませんが、しっかりと党内の合意形成、一議員の立場でありますが、頑張ってやってまいりたいと思います。

 それから、今申し上げたように、派遣法が三たび失敗したら現場が混乱する、私はこう思っていますが、もし現行法制のまま、ことしずっと、何月でしたか、夏か秋か、過ぎていくと、どういう困ったことになるか。原因は民主党政権にあると私は思っていますが、その辺、ぜひ御紹介をいただければと思います。

山本副大臣 労働者派遣法につきましては、ことしの十月一日から労働契約申し込みみなし制度の施行が予定されております。これは、期間制限違反を含む一定の違法派遣を受け入れた派遣先について、派遣で働く方に直接雇用の契約を申し込んだものとみなすという制度でございます。

 この制度につきましては、いわゆる専門業種二十六業務に該当するかどうか、すなわち期間制限がかかるかどうかがわかりにくいということで、結果として違法派遣かどうかということがわかりにくくなっているという指摘がございます。

 このため、派遣先が意図せずに違法派遣を受け入れて、労働契約申し込みみなし制度が適用されてしまうことになりますが、こうした事態を回避しようとして、このままいきますと、派遣先が派遣で働く方の受け入れをこの十月一日以前で停止して、派遣で働く方の雇いどめが生じるという可能性があると考えております。

 政府といたしましては、先ほど混乱というふうにおっしゃいましたけれども、こうした混乱を避けるために、業務区分による期間制限を廃止して、全ての業務について一律に期間制限を課す今回の労働者派遣法の改正法案の速やかな審議をお願いしたいと考えておるところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 先ほどちょっと言及しておりませんでしたが、塩崎大臣には本当に、先ほど申し上げたように、御指導いただいてきているところですが、山本副大臣におかれましても、大学の同窓でありまして、私が経産省におったときに政務官でおいでで、お仕えもしておった立場でありまして、また引き続きよろしくお願いします。

 今御紹介いただいたことはまさにそのとおりで、しっかりと制度整備をやっていかなあかん、こう思っています。

 もう一つ、党内でこの議論をするときになかなか苦労している点は、私が苦労する立場でもないんですけれども、一応、一人の議員として自分の考えを党内で議論するときに一番苦労しているのは、やはり均衡、均等という話ですね。均衡待遇、均等待遇。

 我が党は、同一労働同一賃金というものが労働市場の基本だ、こう思って、それは私も大賛成なんですが、なかなか実態がそういう前提になっていないわけでありまして、諸外国、ヨーロッパではどうだとかいう議論もありますので、いわゆる派遣労働に係る均等待遇論というものを現時点でどうお考えか、ぜひ御紹介ください。

 ぜひ私が伺いたいのは、現時点もそうですが、では十年後、三十年後、五十年後、日本の労働社会はどうあるべきで、それはヨーロッパ型みたいな形、ヨーロッパには均等論があるわけですから、そういうものが将来入ってくると大臣は見ていらっしゃるか、あるいは、それは日本型、日本の社会では少なくとも予見できる将来は余り想定していないのか、その辺を特に焦点を当てて御答弁いただければと思います。

山本副大臣 当委員会におきましてもこの議論は何度もされておりますけれども、同一労働に対して同一賃金が支払われるという仕組みについては、一つの重要な考え方と我々も認識をしております。

 しかしながら、職務に対応した賃金体系、いわゆる職務給というものがまだ普及していない、能力や経験などさまざまな要素を考慮して働く方の処遇が決定される職能給ということが一般的である我が国のこの労働市場において、すぐさまというには難しいということでございます。

 また、派遣労働者の場合におきましては、では、派遣先の労働者と雇用主が異なるといった場合に、派遣先のどの労働者と比較するのかといった課題も存在いたします。

 このため、今回出させていただく改正法案におきましては、まずはこの派遣労働者と派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとさせていただいております。

 まず、こういったことをしっかりやらせていただいた上で、いわゆる職務給導入の流れが今後どういう形になっていくかということは現時点では定かではございませんけれども、諸外国の制度や運用状況等に関しまして調査研究にしっかりと取り組ませていただきたいと考えております。

足立委員 ありがとうございます。

 ぜひ、この委員会でも、また法案も上がってくると思いますので、しっかり御討議をさせていただきたいと思います。

 次に、労働法制のもう一つの柱が、先ほども民主党の委員の方々が取り上げていらっしゃった、彼らが、彼らがというか一部政治勢力がおっしゃるいわゆる残業代ゼロ法案というものですね。私はその呼び名は大変違和感があるわけでありますが、むしろ、時間ではなくて能力等に基づいた働き方、新しいそういう働き方は必須だ、私はこう思っていますけれども、これは確認です。

 法案を出されてこられるわけですから当然でありますが、なぜ今、今でもないな、以前からこれは取り組んでこられたわけですが、私は、もうできるだけ早く制度整備をしていく必要があるテーマだと思っています。正式にどういう名前か、高度プロフェッショナル何とかとかいうこともありますが、私は余りわかりやすい話じゃないなと思いますが、名前はともかくとして、この制度の必要性について、簡潔で結構です、御答弁いただければと思います。

塩崎国務大臣 これは、全体として労働市場改革、雇用政策改革ということで、この日本の経済をもう根本からやり直すという中で、特に労働生産性を、かつて世界に誇っていたものだったわけでありますが、今はかなり負けている、そういう中で賃金も下がって生活水準も下がるということでありますから、これを挽回していくためには、やはりさまざまな産業が、そして、さまざまな働き方によるさまざまな働く人たちがいて初めてさまざまな能力が生かされて、それでまた勝てる日本の経済になれるということではないかと思うので、個人のレベルからいけば、ワーク・ライフ・バランスを大事にしながら働き過ぎを是正し、そして多様なニーズを生かしていく。

 そういう新しい働き方の選択肢の一つとして、我々は高度プロフェッショナル制度と言っていますけれども、我々から見れば、ユニークな専門性を持った人たちが自由な働き方をできるようにして、能力を目いっぱい発揮してもらう、そのことをやはりきちっとし、今までの時間規制をしないとしても、別な規制をしっかりかけて、一人一人の働く人の健康や生き方を守っていく。

 こういうことで、我々は必ずこれも通していかなきゃいかぬというふうに思っておりますので、御審議をまずいただいて、皆様方の御理解をいただければというふうに思います。

足立委員 ありがとうございました。

 ぜひ、この高度プロフェッショナル制度ですか、法案の審議も通じてしっかり深めていきたいと思うんですが、非常に残念な国会の状況だと私は思っています。

 要すれば、残業代ゼロ法案というような、あるまじきレッテル張りがあって、そういうことによって、結局、政府・与党もディフェンシブになりますよね。新聞も、あることないこと書きますし。だから、非常に、攻める方というか、野党も野党でそういう言い方をするし、政府は政府で、これまでも苦労してきたものだから、どうしても、本当はこう思っているんだけれども、ちょっと丁寧にやろうかということになるわけです。

 そうして、与野党のやりとりの中で制度がなかなかすっきりとしないというか、言えば困った妥協の産物ができ上がっていくわけでありまして、私たちは、やはり国政を預かる国会議員として、本来の議論というか本当の話をしっかりとこの委員会の場で、この委員会の場で何を言っても大丈夫なわけですから、忌憚なく、しっかりやっていきたい。

 大臣、これは、きょう、この残業代の問題というのは大事だと思っていまして、ちょっと正確に通告できていないんですが、可能であれば、政務三役の方どなたでも結構ですから、ぜひ一つ教えていただきたいことがあって。

 というのは、今度、この高度プロフェッショナル制度については、年収要件みたいなもので法律にも文言が入って、年収の下限みたいなものができると思いますが、私は、職種によってはもっと低くてもいいと思っているんですね。いや、個人ですよ。党のコンセンサスはありません。ありませんが、私は、もっと低くていいと思うんです。

 経団連がかつて四百万とか言っていたのはどうかという、それは議論があると思いますが、私は、少なくとも今の議論は高過ぎると。ある職種はですよ。

 例えば営業職、営業職というと一般的過ぎますね。私たち、秘書がおりますね。公設秘書は、先ほど山井先生に教えていただいたところによると、公設秘書は基準法の適用除外だということだそうです。私設秘書、皆さんも私設秘書を雇っていらっしゃると思います、残業代を払っていらっしゃいますか。大臣、どうですか。

塩崎国務大臣 必要に応じて払っております。

足立委員 これは、模範答弁としては、必要に応じて払うというのは当たり前のことですね。

 ちょっと私ごとですけれども、きょうは結構私は覚悟を持って来ていまして、まず自分のことを申し上げると、私の事務所は私設秘書を抱えています。残業代は払っていません。

 先日、かつての従業員、かつての秘書から、受任通知兼請求書が来ました。残業代を払えと。最高裁まで争うつもりでありますが。

 何が言いたいかというと、私たちの事務所、政治家の事務所、多分皆さんわかるでしょう、残業代をきっちりと労働基準法に沿って払えるような体制かということを私はきょう問題提起したいと思っていて、この通知書にはこう書いてあります。メールやフェイスブックを用いた連絡文などの客観的資料に基づき当方で計算したところ、時間外勤務は四千五百時間を優に超え、七百万円を支払えと。ふざけるなと思うわけです。

 だから、ぜひ、委員長、これから労働基準法の改正案が出てきますね、政務三役が、それぞれ自分のところの事務所、労働時間管理をどのようにしていて、割り増し賃金を払っているのか払っていないのか、正確に労働基準法を守れているのか、きょう今御答弁できる方はしてください。できない方は、後刻、資料で出していただくようお願いしたいと思いますが、まず、政務三役の皆さん、どうでしょう。

 まず、三役にお聞きします。三役皆さんにお聞きします。

塩崎国務大臣 追って御報告申し上げます。

山本副大臣 残業が生じるような働き方をしていない人を私設で雇っています。

永岡副大臣 調べまして、後ほど御報告いたします。

橋本大臣政務官 追って御報告させていただきたいと思います。

高階大臣政務官 調べまして、追って報告申し上げます。

足立委員 恐らく、こういうような請求書が来るような事務所はうちだけだと思いますが、ただ、一般論としてぜひ、私は何人かの議員と一般論として議論したんです、この話は。結構シンパシーというか、足立さん、大変やなということを皆言ってくれます。

 実態は、例えばメール、電話、フェイスブック、さまざまな方法で秘書たちとは連絡をとり合っています。正直、二十四時間三百六十五日仕事をしています。私はしています。夜中でも起きます。朝でも起きます。そういう中で、秘書だけ労働基準法に沿って残業代を支払うということは、私はできません。

 だからこそ、労働基準法を直していただくために国会議員になりました。いいですか、そのために国会議員になったんですよ。おかしい。

 私が文句があるのは労働基準法だけじゃないんですよ。

 道路交通法。阪神高速を走ってごらんなさい。一車残らず違反していますよ。もしそこに掲げられているスピードを守ったら交通事故が起こります。みんなと一緒に走ったら違反しているんですよ。いいですか、これが道路交通法の一部です。

 公職選挙法。公職選挙法も、結局うちわがどうなったか知りませんが、法文上どういうふうに解釈していいかわからない問題がいっぱいあるわけです。

 そういう中で苦労しながらみんなやっているんだけれども、法治国家であれば、道路交通法、公職選挙法、そして何よりも労働基準法については、しっかり真面目にやっている人が守れるような制度、これをつくる必要があると思っていて、そういう意味では、きょうテーマになっている、何かしいんとしていますが大丈夫ですか、経済実態、社会の実態、働き方の実態に即して考えたときに、実現可能な立法をしていくのが国会の責務だと思っています。

 きょう、山井委員がいろいろと、ああだこうだということで、問題があるとおっしゃいました。確かに問題があるところもあるが、法律違反をしているところを取り上げて、かわいそうじゃないかという問題は全く別ですよね。法律があって、法律を守っていない会社の労働者が苦しんでいる、それは、エンフォースすればいいわけだから法律の問題じゃない。

 でも、私が申し上げているのは、真面目にやっている人が守れないような法律だったら直さないといけないですよねという、山井さんの問題提起と私の問題提起は全く別の話だということを御理解いただきたいし、また、私は、今申し上げたようなことがきっちりできない限り、山井さんがおっしゃっているような上限規制とかインターバルとか、私はそういう規制は要ると思いますよ。要ると思いますが、労働者を守る法律だけが、労働者を守る事項だけがばあっと制度化されていって、私は今、事務所の経営者です、経営者が法律を守るのが大変なものが、野党の、残業代ゼロ法案になるというようなレッテル張りでマスコミをひっかき回してやるようでは、こちらができないならこちらだってできないよなというバランスの中で厚生労働行政というのは今あるわけです。

 ぜひこの国会では、もう一回、政務三役の事務所の実態を明らかにしていくことを通じて、それはそうですよ、だって提案者なんですから、それを明らかにしていただくことを通じて、今国会の労働基準法の審議をより有意義なものにしていただきたいと思っています。

 一千何十万という一応下限みたいなものが議論になっていますが、これは将来的に引き下げる余地はあるとお考えでしょうか。大臣、どうですか。

塩崎国務大臣 今回の法律では、年収が平均給与額の三倍を相当程度上回る水準ということを法律に書きます。実際に、今想定している一千七十五万円というのは省令に書くわけでありまして、したがって、法律に、年収が平均給与額の三倍を相当程度上回る水準、こういうふうに書いてある限りは、この法律を直さないと、一千七十五万を、四百万だ、三百万だみたいな極端なことを言う方が時々おられますけれども、そういうことは法律を改正しないといけないので国会での御議論になる、こういうことでございます。

足立委員 明快な御答弁で、ありがとうございます。本当に国会の責務は大きい、こう私も思います。

 労働法制、ちょっと微妙な雰囲気が漂っていますが、一旦これで区切りにさせていただいて、委員長、ぜひ、先ほど、政務三役、五人の先生方、追ってということをおっしゃっていただきましたが、紙で。

 要は、私設秘書で結構です。公設はエグゼンプトされているということであれば、私設のスタッフの労働時間管理がどのようにされていて、そして、残業代を、普通は残業していれば支払っているだろうし、山本副大臣のように、残業していないということであれば支払っていないのは当たり前のことですね。

 それから、いわゆる労働時間の管理の実態、要は、勤務表というんですか、そういうものをちゃんとつけていらっしゃるかどうかも含めて確認をしていただきたいということで、委員長にお願いをしておきたいと思います。

渡辺委員長 後刻、理事会で対応させていただきます。

足立委員 わかりました。ありがとうございます。

 では、話を労働法制から医療、介護に移したいと思いますが、あと十五分弱であります。余り時間がありませんが、まず、私が医療制度、介護制度についてどう思っているかということを端的に御紹介した方が質問の意味がわかりやすいと思うので、申し上げます。

 私は、医療と介護は出自は違うと。医療は、民間の産業でありました。民間の営みとしてあった、なりわいというか仕事であったわけですね。一方で、介護というのは、措置として行われてきておった。出自は全く違うものであるが、医療も皆保険制度が整備され、介護についても、おくれながらも、より完成度の高い保険制度が整備をされてきたわけでありまして、今や医療保険と介護保険というのは、私は、もう医療介護保険と言ってもいいぐらい同じような枠組みが基礎にある、こう思っています。

 医療保険と介護保険というのは、もちろん、医療は子供たちも対象ですね、医療サービス。現役世代も対象です。介護は、一部の方を除けば、基本的には高齢の方が対象だったりする。そういうふうに、対象の違い。サービスの内容の違い、これは当たり前です。医療と介護なんだから違う。でも、医療保険、介護保険、保険制度としては本質的な違いはないと私は理解していますが、それでよろしいでしょうか。

唐澤政府参考人 医療保険と介護保険は、御指摘ございましたように、医療サービスと介護サービスという違いはございますけれども、同じ公的な保険として、強制加入である、また保険料納付義務がある、そして必要なサービスを給付して受ける権利がある、こういう基本的な点は同じでございます。

足立委員 まさに、今、端的に御紹介をいただいたとおりで、私もそう思っておりましたが、局長からおっしゃっていただくと、やはりそうなんだなと思うわけであります。

 ところが、厚生労働行政は歴史がありますから、例えば保険局というと、医療介護保険を見ているんじゃないんですね、当たり前ですけれども、医療保険を見ているわけであります。では介護保険を誰が見ているかというと、老健局長が見ていらっしゃる。多分、間違いないと思います。

 また、介護は、いわゆる社会福祉法人が中心的に担っている部分もあれば、営利会社の参入も大きく認めて、営利会社の方々のお力もかりながら介護保険制度というのは運営をされている。でも、医療は、通常国会、去年もおととしもよく私がここで取り上げさせていただきましたが、ますますその非営利性を高める、非営利性を徹底する方向での制度改革が積み上げられているわけであります。もともと民間の営利事業であった医療は非営利性を強め、もともと措置であった介護は営利性を強めているわけです。

 私は、介護と医療、それからもう一つちょっと申し上げておくと、医療は都道府県にどんどん今集めています、さまざまな機能、保険者機能も。ところが、介護は市町村です。これから地域で医療と介護が連携していこうというときに、本当にこの医療と介護の制度の違いというのは何なんだろうということなんです。もう保険の話は今御答弁いただいたので。

 同僚の浦野理事も、社会福祉法人を経営されておられますが、よくぶつぶつおっしゃっています、余り言っちゃいけませんが。要は、いろいろ役所の通達がいっぱいあって、この通達に則するとこうだ、いやいや、こういうことはやっちゃいかぬ、いやいや、こういうことはやっていい、ううん、どっちだろうということを日々やっているわけです。

 それに対して、医療法人は幾らでも会社をつくっていい、何をしてもいい、まあ何をしてもよくないですが、明らかに社会福祉法人よりも、医療保険の上に乗っている医療法人の行為というのは、介護保険の上に乗っている社会福祉法人よりも極めて自由度が高いんです。何でこういうふうに違うのかなと。

 私が親しく御指導いただいている地元のある社会福祉法人の方が、箸の上げ下げまで役所に言われるので、もう法人税を払ってもいいから社会福祉法人をやめようかな、こういう方がおられました。これは私にしてみたら、みんな営利会社にして、会社法に基づく会社に全ての法人をして、もし配当をしちゃいかぬというのであれば、配当制限を法律で定めたらそれで済む、こういうビジョンを私自身は持っていますが、なぜこんなに医療法人と社会福祉法人は規制の濃淡というか、あれが違うのか、端的にもし教えていただけたらありがたいです。よろしくお願いします。

二川政府参考人 医療法人と社会福祉法人の規制等々のあり方の違いといったことでございますけれども、御承知のとおり、医療法人は、病院等を開設する法人として医療法に規定されているものでございます。社会福祉法人は、高齢者を対象とした社会福祉事業の実施を目的とする法人として、歴史的な経緯も踏まえながら制度化されてきたもの、こういったような違いがございます。

 また、それを前提にいたしまして税制措置も違ったものとして位置づけられておりまして、医療法人は、基本的に一般の株式会社等々と同じ扱いを税法上は受けておりますけれども、社会福祉法人の方は、篤志家の寄附等々を前提といたしまして、そういった税制上におきましても特別扱いが行われている。こういった経緯の違いから、制度としてそのように位置づけられているものというふうに認識をしております。

足立委員 現状の御説明を今いただいたと思います。

 私の質問は、何が本質的な違いかということなんですね。なかなか御答弁が難しいテーマなんでしょうが、私が何を聞きたいかは御理解いただけていますか。いますかというのも変だけれども、要すれば、医療はこうだから、介護はこうだから、社会福祉法人、根拠法がそれぞれ違うんだ、税法も違うんだ、税法の適用のされ方も違うんだと。しかし、どうも見ていると、この国会にも社会福祉法人の改革の法案が出てきますが、どちらかというと、現状のあり方、無税で営んでいる社会福祉法人のありようについて世間様に説明がしにくくなってきたので、無理やり公的な仕事をやってねと頼んでいるという印象を持ちます。

 もう一回聞きます、局長。医療と介護、根拠法とか、そんなものはどうでもいいんです。なぜ医療は法人税を払っていて、なぜ介護事業は法人税を払わないでいいんですか。何が本質的違いなんですか。

二川政府参考人 まず、法人制度の現状を先ほど御説明したところでございますけれども、医療と介護、医療サービスと介護サービスそのものの違いということにつきましては、まず医療につきましては、極めて専門性、安全性が高い、要するに医師といった国家資格を有する人が行う、こういったサービスであるということで、医師や医療機関の裁量が非常に大きい。そのサービスを受ける患者サイドとサービスを提供する医療側との情報の非対称性が大きい。

 一方、介護につきましては、具体的に入浴サービスをするとかそういった形で、どういったサービスによって自分の便益が受けられるかということにつきまして、利用者側の認識というのもそれなりに判断ができるであろうと。

 こういったような違いがあるといったことが医療と介護の違いかなというふうに認識をしておるわけでございますが、そういったようなことを踏まえての医療制度、介護制度といったものが実情であるんだろうというふうに考えているところでございます。

足立委員 今、局長は情報の非対称性とおっしゃいました。情報の非対称性が大きいのが医療だ、こうおっしゃいました。

 情報の非対称性というのは、経済学で、これは釈迦に説法ですが、公的規制のリーズニングで出てくるわけですね。すなわち、医療の方が公的規制は強くないといけないんですよ。逆じゃないですか。

二川政府参考人 医療はまさしく、今私が申し上げましたように、情報の非対称性が強いといったサービスでございます。

 そういった形でございますので、医療につきましては非営利性を徹底していくといったことが必要であろうというふうに考えているところでございまして、そういった方向での医療制度というものを実現していくという方向にあろうかというふうに思っております。

足立委員 医政局長ですから答弁は限界がありますが、私は、きょう、所信質疑ということで、医療と介護にまたがるようなテーマをお聞きしているわけですが、時間の関係もあるので一点だけ。

 今、医政局長にお答えいただきました。では、例えば介護の分野で特養、特養は社会福祉法人しかできませんね。これはなぜなんですか。

三浦政府参考人 御案内のとおり、特別養護老人ホームは、そもそも、御指摘ございましたとおり、措置という制度のもとで、高齢者の介護を社会福祉法人が担うという形で進んでまいりました。

 そういう意味で、そもそも特別養護老人ホームということになればこれは社会福祉法人が担うものとして整理した上で、施設のサービスとして介護保険で給付するということで整理したということでございます。

足立委員 お聞きいただいたとおりで、理由はないということが明らかになるわけでありまして、ぜひこれはしっかり、また国会を通じて、審議を通じて討議を深めていきたいと思います。

 最後に、この国会でまた新しい法人制度ができます。地域医療連携推進法人、私は、これは大変期待をしておったんですが、期待倒れであります。

 私が一番問題だと思うのは、せっかく介護保険で営利会社の方々のお力をかりているにもかかわらず、これから地域包括ケアなど地域における取り組みで中核的役割を期待しているこの新法人に営利会社は参画をできません。

 新しい介護保険でせっかくすばらしい制度をつくって、営利会社も参入できるすばらしい保険制度を皆さん厚生労働省がつくってきたのに、なぜ今また新しい制度をつくってそこから営利会社を排除するのか、私は全くわからないんです。理由があれば教えてください。

塩崎国務大臣 いろいろな議論がございました。今回の法律につきましては、やはり去年の日本再興戦略の中で、非営利の医療の法人という位置づけの中でお話が出てまいりました。

 先生、非常に本源的な問題提起をされて、この場を外してゆっくり議論したいなと思っているぐらいでありますが。

 確かに、ややねじれたことになっておりまして、医療は、税金を払っているけれども非営利を追求するということになっています。株式会社の参入というのがよく言われますが、実は、株式会社の本質はやはり株主が配当を受けるということと残余財産の分配を受けるという権利で、これを両方放棄するというようなことは効力を有しないというふうに会社法に書いてあるんですね。ですから、そうすると剰余金の配当と残余財産の分配を両方とも禁止するということはなかなか難しくなってまいりまして、何が一番大きいのかというと、私は、とどのつまり、医療というのはやはり命にかかわることであり、そこに影響を直接与える投薬とかいろいろなことをやるということで、ここは非営利ということになっているんだろうと思います。

 法人の課税するしないの話は、少しまたいろいろな経緯があって違う理由だろうと思いますが、ですから、今回は、医療の法人の中でバリエーションでもっと効率的なことを、しかし、これからは、言ってみれば高齢者の介護と医療を一体的にいろいろ地域ではやらなきゃいけないということは、地域包括ケアシステムもそうだし、今回の法人も、だから社会福祉法人は入っていただこう、それは医療の非営利というものと合わせていただくということが基本かなというふうに考えて整理をしております。

足立委員 ありがとうございました。

 大臣、ぜひ、審議の場を含めて、また御指導いただきたいと思います。きょう取り上げました労働法制の話と医療、介護の話、政治生命が続く限り取り上げ続けてまいりたいと存じますので、また御指導のほどよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、高鳥修一君。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 前の質問者がおもしろ過ぎまして、若干やりづらい感じがいたしておりますが、よろしくお願いいたします。

 北陸新幹線が開業いたしまして、きょうは私、ネクタイも新幹線の色に合わせて気合いを入れてきたところでございます。答弁の方も、できましたら新幹線並みのスピードでお願いできればありがたいなと思っております。また、政府・与党一体とよく申しますけれども、質問の方は是々非々でお願いしたいと思いますので、大臣、どうかよろしくお願いをいたします。

 最初に、大臣にお聞きいたしますが、社会保障制度改革につきまして、今回の所信でもそうなんですけれども、よく、持続可能なという言葉が出てまいります。これは頻繁に出てまいります。

 持続可能なというのは、それは言われてみれば当然といえば当然なんですけれども、制度残って人滅ぶということにならないか。そして、医療、介護、年金等、必要な社会保障のピークはいつごろ来て、それに向かってどういう取り組みをしていくのか。また、十年、二十年、三十年と中長期的な見通しを立てて改革の議論をしていく必要があると思うんです。一方で、重点化、効率化、あるいは適正化、これは言葉としては大変聞こえがいいわけでありますけれども、結果として社会保障の切り捨てにつながることはないのか。

 その辺も含めて、今後の改革の方向性について大臣にお答えをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 制度残って人滅ぶということではいかぬ、こういうことでございました。至言だろうというふうに思っております。

 社会保障は、基本的には、税、それから保険料、そして自己負担というこの三つしかない財源のもとで、つまり、国民負担のもとで維持をされて、その安心を支えるものでありまして、国民の信頼なくしてこの制度はあり得ないということでありますから、この信頼性をどう守っていくかということに一番重きを置いていかなきゃいけないというふうに思います。したがって、犬が尻尾を振っているうちはいいんですけれども、尻尾が犬を振るような社会保障改革はいかぬだろうというのが先生がさっきおっしゃったことだというふうに思っております。

 そのために、社会保障の充実を図るとともに、制度の重点化、効率化というのをやはりやっていかないといけない。その際、負担能力に応じて公平に負担をいただきながら、必要な給付が適切に行われることが重要であって、団塊の世代が全て七十五歳以上になるというのが二〇二五年であります。したがって、その二〇二五年に向かってどうするのかということを今考えていますけれども、それを見据えて、子ども・子育て新制度の施行や、あるいは地域包括ケアシステムをこれから構築する、それから、将来にわたって安心できる年金制度を確立するなどの取り組みをやってきているわけでありまして、医療がやはりその中でも四十兆円ぐらいあるわけでありますので、給付額も大きいわけであります。

 先般、私のもとに、「保健医療二〇三五」策定懇談会というものをつくりました。これは、まさに二十年先を見据えて、医療や保健のあるべき姿のビジョンを描いて、その上で今からどうすべきなのかということを考えていこうということで、この課題解決に向けた政策を検討して、引き続いて、こうした改革をビジョンを持ってやっていくということで、先生のおっしゃるような、制度残って人滅ぶというようなことがないようにしていきたいというふうに思います。

高鳥委員 ありがとうございます。

 改革というのは、いつの時代、どこの世界でも必要だと思いますが、大臣がお答えになったように、本末転倒にならないように、ぜひ、また血の通った、温かい改革になるように御留意をいただきたいと思います。

 次に、医療制度改革についてお伺いをいたします。

 医療費適正化の推進というのは具体的にはどういうことをするのか、お答え願います。

永岡副大臣 高鳥議員にお答えいたします。

 今回の医療保険制度改革におきましては、予防、健康づくりに努力する個人を支援するために、保険者によりますヘルスケアポイントの導入など、個人にインセンティブを与える、そういう取り組みを進めてまいります。そして、保険者によりますレセプト情報などを活用いたしました保健事業、これはデータヘルスと申しますが、これを通じまして、ジェネリック医薬品の使用の促進を図るということもございます。

 また、国保におきましては、保険者努力支援制度というものをつくりまして、医療費の適正化に積極的に取り組みます保険者そして自治体を支援するということにしております。

 このように、医療費適正化に向けましては、保険者の取り組みを推進していくということで頑張ってまいります。

 以上です。

高鳥委員 患者申し出療養ということについてお聞きしたいんですけれども、これは、名称はそうなんですが、実際には医師の方から情報がもたらされるということはないんでしょうか。そして、結果的に、混合診療の拡大、あるいは、お金の有無で命の重さに差がつくということはないのでしょうか。

橋本大臣政務官 お答えをいたします。

 ただいま、患者申し出療養についての御質問でございますけれども、これにつきましては、患者が申し出をすることによって話が始まるというわけでありますけれども、もちろん、患者が治療内容などを理解し、納得をした上で申し出をしていただくということが大事であります。ですから、そういう意味では、かかりつけ医の方などが患者からの相談に応じて支援をするということも重要になってくるのかなというふうに思っております。

 また、同時に、国に申請をしていただくわけですけれども、患者からの申し出によるということを示す書類を添付していただくこととしておりまして、今後、制度の詳細を検討する中で、患者の方がしっかりと御理解、納得をいただいた上で申し出をしていただけるような制度ということを検討したいと考えております。

 また、患者申し出療養では、国が安全性、有効性等を確認していくとともに、保険収載に向けた実施計画作成を医療機関に求めることとしております。したがいまして、それが確認されれば、保険の方に入っていくということを目指しているということになっておりまして、新しい医療技術が保険外併用療養にとどまり続けていく、結果として、先ほど委員御指摘をいただきましたように、混合診療が拡大し、国民皆保険が崩壊するという御懸念は当たらないものというふうに考えております。

 以上でございます。

高鳥委員 ありがとうございます。

 患者と医師の力関係というのは対等ではありませんから、今政務官がお答えになったように、国民皆保険の崩壊につながることがないように、十分留意をいただきたいと思います。

 ちょっと質問の順番を変えさせていただきます。一問飛ばさせていただきます。

 社会福祉法の改正についてお伺いをいたします。

 当初、財務省が指摘した内部留保には、特養など、施設が建っている土地または建物自体も含まれていたと聞きますが、そのようなものを含めれば、内部留保が過大に評価されるのは当然であります。本来、事業を継続するのに必要なものまで計算に入れて巨額の内部留保をため込んでいると指摘するのは、まずおかしいのではないかと私は思います。

 そして、今般の介護報酬、障害福祉サービス報酬改定に当たり、当初、内部留保の話が出ていたと思いますが、途中で収支差という話にすりかわったのではないかなと思います。

 きょう午前中の質疑で中島委員、それから、午後、堀内委員も取り上げておられましたけれども、今回の介護報酬改定、マイナス二・二七%ですね、これをやることによって、国民一人当たりの介護保険料は幾ら抑制できたと推計できるんでしょうか。

三浦政府参考人 この四月から始まります第六期の介護保険料を機械的に推計いたしますと、第五期の介護保険料の全国平均額四千九百七十二円から、自然増で五千八百円程度に増加するところでございましたが、今回の報酬改定などによりまして、五千五百五十円程度になると考えております。

高鳥委員 今のお話ですと、五千八百円が五千五百五十円になったという理解でよろしいんですね。そうすると、単純に申し上げて、二百五十円ということですね。

 この二百円とか三百円とかという金額が高いか安いかということは、これは議論が分かれると思いますけれども、私は、この二百円とか三百円の問題で結果として介護の現場が崩壊してしまうということになれば元も子もないと思います。

 そして、処遇についてお聞きいたしますけれども、職員の処遇改善といいますけれども、加算は本当にとれるんでしょうか。そして、そもそも、職員を確保できずに加算もとれず、全体の介護報酬が圧縮をされる中で、事業の継続を断念せざるを得ないところが出てくるのではないかと私は懸念を抱いております。

 経営実態調査を今後どのように進める考えか、お聞かせください。

三浦政府参考人 介護事業者の経営実態を適切に把握していくということは、極めて重要なことでございます。このため、介護事業経営実態調査につきましても、介護報酬改定の検討においてより有効に活用される調査となりますよう、例えば調査の期間をどうするかなど、報酬改定の審議の過程でいただいたさまざまな御意見を踏まえまして、次期改定に向けて調査のあり方を検討してまいりたいと考えておるところでございます。

高鳥委員 きょうこの場では、しっかり調査をしてほしいということだけ申し上げて、さらに引き続き私は注目していきたいと思っております。

 大臣に一点お伺いをしたいと思いますけれども、サービス提供事業者の中には小規模な事業者もありまして、ある程度の収支差がなければ事業が継続できない、こういうこともあると思うんですね。結果的に、中小企業の平均と財務省が言う二から三%より高いからけしからぬという話が今後も続くならば、介護の現場が崩壊するのではないか。

 恐らく、大臣も強い危機感をお持ちであろうと思いますけれども、大臣から、ぜひ、介護の現場を守る御決意をお聞かせ願いたいと思います。

塩崎国務大臣 今、私たちの周りを見てみますと、必ずお一人やお二人介護をしなければならない人をお身内に抱えていらっしゃる方ばかりでありまして、私自身も、三人それぞれ、妻の方は二人、私の方はまだ母が残っておりまして、三人とも施設に今入っておりますが、そういう意味では、介護のお世話になることは、ますますもって、どこにでもあることになるわけであります。

 これをどうやって、尊厳を持ちながら、しっかりと人生を楽しみながらいけるかというために、どういうサービスをどういう形で提供するのかというのは、本当に、極めて重要であって、今回の改定でも随分私も悩みました。

 悩みましたが、やはりこれは、全体での支え合いというものが長続きしていき、なおかつ時代のニーズに合ったものにしていくということを同時に達成しなきゃいけないということで、今先生御指摘の、事業者が立ち行かなくなるんじゃないかというお話でございましたけれども、それはやはり、頑張っているところには頑張れるようにしていくということが大事であって、そのことについては配慮をしながら、今回の重点化や効率化や、それから、今回のようにマイナスにせざるを得ないけれども、人材確保のためには一万二千円の加算を上乗せするということまで今回総理も決断をしたわけでありますので、そういう覚悟を持って、スタートして十五年ぐらいでありますけれども、この制度をさらに定着させて、高齢先進国として、日本のようにやればいいんだなというふうに思ってもらえるような、世界からも見てもらえるようなものにしていきたいというふうに思います。

高鳥委員 今大臣おっしゃった、人としての尊厳が守られるためには、やはり介護の現場もしっかり守らなければならないと思います。苦しいお立場なんだろうと思いますけれども、厚労大臣としてしっかり闘っていただきたいと思います。

 次に、労働力不足と外国人の参入についてお伺いをいたします。

 外国人技能実習制度というのは、日本のすぐれた技術を送り出し国に移転するためのものなのか、それとも、日本の労働力不足を補うための制度なのか。

 一部には、絶対的に不足する労働力を補うために単純労働者でさえ外国人を受け入れるべき、そういう御意見もございますけれども、私が言っているわけではありませんよ、仮に最低賃金ぎりぎりで働く外国人がどんどん入ってくるような事態になれば、日本人労働者の賃金は上がるどころか賃下げの圧力がかかるのではないか、そういう点も考慮して慎重に検討すべきと思いますが、改めて制度の趣旨をお答え願いたいと思います。

高階大臣政務官 この技能実習制度と申しますのは、技能等の開発途上国等への移転によりまして国際貢献を図っていこう、こうしたことを目的とする制度でございまして、日本の労働力不足を補うといった制度ではございません。

 お尋ねの趣旨に対する回答はそこまででございます。

高鳥委員 私は、若者サポステ事業とか、現場を見たことがございますけれども、まだまだ働ける潜在的な労働力はあると思います。むしろ、介護や看護、あるいは保育の現場で働く日本人労働者の処遇改善が先であって、足りないから外国人を入れるという発想は本末転倒ではないかとこの場では指摘をしておきたいと思います。

 次に、労働者派遣法につきまして一問だけ、一点だけお聞きしたいと思います。

 今回の労働者派遣法の改正は一部の期間制限を撤廃するものと報道されておりますが、いわゆる二十六業務はそもそも期間制限がなかったのだし、課がかわればどころか、今までは、もっと細かい、係さえかわれば派遣のまま働き続ける可能性があったわけですから、今回の改正によって新たに生涯派遣の道が開かれたというわけではなくて、もともとそういう懸念はあったんですね。

 今回の制度改正は、むしろ派遣労働者の保護のための規制強化が図られておるわけでありまして、そこは根本的に誤解をされたまま報道されているのではないでしょうか。短く、はっきりお答えください。

高階大臣政務官 報道に誤解があるとの御指摘でございますが、おっしゃいますとおり、現行制度におきましては、派遣で働く方個人が派遣に固定化されていくことを防止するための規定がございません。実際に、そもそも、派遣で働く方全体の約四二%を占める二十六業種につきましては期間制限がございませんし、また、二十六業種以外につきましても、派遣で働く方の所属する係を変更することによって、期間制限の上限に達した後でも同じ事業所に引き続き同じ方を派遣することが可能でございます。実質的に上限がない状態となっております。

 このため、今回の労働者派遣法改正法案におきましては、派遣先に対して事業所単位の期間制限を課すこととしております。

 また、派遣で働く方が事業所内で異動する場合であっても、過半数労働組合等からの意見聴取をしなければ三年を超えて受け入れることができないこととなります。

 さらに、全ての業務を対象にいたしまして、個人単位の期間制限、これは三年でございますが、これを新たに課しまして、派遣労働への固定化を防ぐこととしております。

 引き続き、丁寧な対応、丁寧な説明を心がけ、法案の中身について理解をいただけるよう努めてまいります。

高鳥委員 私の意図としては、もう少し短く、はっきり、今回新たに生涯派遣の道が開かれたわけではないということをお答えいただきたかったんですが、恐らくそういう趣旨であったんだろうと。余り説明するとわからなくなっちゃうんですね。

 次に、高度プロフェッショナル制度についてお伺いをいたします。

 この制度は、時間外手当の削減、残業代ゼロというのが目的なのか、それとも、時間にとらわれずに成果によって評価される働き方をしたいという人にその道を開くためのものなのか。

 時間の関係で、二問を一問にいたします。

 ハッカー対策に取り組むホワイトハッカーのように、あなたの技術を幾らで買いたいという申し出に本人が同意した場合のみが対象であって、労働組合が強い企業では実際には導入されないという話もございますが、実際にどれぐらいの人が対象となると考えておられるのか、お答え願います。

山本副大臣 一点目につきましては、後者の方でございます。

 二点目につきましては、この制度における対象者でございますが、年間給与額が一千七十五万円以上の方を対象とする方針でございますので、我が国で年間給与額が一千万円超の方の比率は約四%。ここから役員を除きますと約二・五%です。そこからさらに管理監督者を除きます。そして、対象となる業務を限定いたします。その上、御指摘いただきましたように、制度の適用に当たりましては本人の同意が必要となります。よって、約二・五%からさらに相当絞り込まれるものだと考えております。

高鳥委員 簡潔な答弁、ありがとうございます。

 バブルのころですが、私、友人から、証券会社のトップディーラーは年収二億と聞いたことがございます。そういう人に残業手当は要らないと思いますし、何時に来て何時に帰ろうが、成果を会社が買うという考え方もあるんだと思います。

 他方で、今回の制度導入で、一般の労働者は対象にならないと明言できるでしょうか。

山本副大臣 委員の御指摘のとおりでございまして、一般の働く方を広く対象とするものではございません。

高鳥委員 もう一点、アベノミクスと雇用対策についてお聞きをいたします。

 もうきょうは一々数字の列挙はいたしませんけれども、株が十五年ぶりの高値になったとか、ベアが過去最高という企業が出てきたこと、そして、今後、中小企業にも景気判断の改善が広がるという見方が多くなっている。これは三月二十三日月曜日にNHKニュースで報道されたことであります。

 今回、特に非正規と若者雇用対策に絞って御説明を願いたいと思います。

高階大臣政務官 非正規雇用につきましては、正規雇用に比べて雇用が不安定、賃金が低い、能力開発の機会が少ないなどの課題があるために、キャリアアップ助成金などの活用を通じて、正社員を希望する方の正社員化を進めるとともに、処遇の改善に取り組んでまいります。

 また、若者雇用対策につきましては、今国会に提出しております若者雇用促進法案におきまして、平均勤続年数や残業時間など、新卒者の選択に役立つ職場情報の提供を企業に義務づけること、また、若者の使い捨てが疑われる企業についてはハローワークでの新卒求人を受け付けないこと、その一方で、若者の雇用管理が優良な中小企業につきましては認定制度を設けることとしておりまして、これらの取り組みを通じて、若者が生きがいを持ち、安心してチャレンジできる環境づくりに全力で取り組んでまいります。

高鳥委員 新幹線を超えるリニア並みの答弁をいただいたら若干時間が余りましたが、最後に、省を挙げて長時間労働の削減に取り組むと所信にございます。

 私が政務官として省内で見た限り、質問通告が前夜二十三時にならないと確定しないというのは、それを受けて、その時点から仕事をする人、朝六時の答弁レク、中には四時、五時に行われるということもあるやに聞いておりますけれども、徹夜で答弁書をつくって、そのまま日中も働き続ける人が中にはいる状況で、まずそこから変えていかないと深夜の長時間労働はなくならないと思います。

 与野党を超えて厚生労働省の長時間労働削減に協力すべきことを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、小松裕君。

小松委員 大臣、御苦労さまです。

 長寿日本一長野、自由民主党の小松裕でございます。

 本日は、大臣の所信に関連しまして、地域医療を支える医師確保、そして子供の医療費、認知症対策について質問をさせていただきます。

 いわゆる団塊の世代が七十五歳となる二〇二五年まで、あと十年となりました。三人に一人が六十五歳以上、五人に一人が七十五歳以上という超高齢化社会において、国民の皆さんが住みなれた地域で安心して暮らし続けることができる、このような医療提供体制の改革を確実に進めていかなければなりません。

 昨年の通常国会で成立した医療介護総合確保推進法では、病床の機能分化、連携を進めていくため、来年度から、都道府県が地域医療構想を策定することとなりました。現在、その策定のための諸準備が進められておりますが、医療提供体制の改革には、地域における医師の確保が重要であります。

 私も、かつて医療にかかわっていたということもありまして、地元に戻ると、毎回のように、透析のできる内科医がいなくなっちゃったんだけれどもどうにかしてくれないかとか、せっかく来てくれた産婦人科医がまたいなくなっちゃってお産ができなくなっちゃった、こんな話をお聞きすることがあります。

 このように、県として先進的な医療政策に取り組み、地元の信州大学でも一生懸命に地域医療を考えてくれている長野県、このような長野県であってもこのような現状があります。先日、予算委員会分科会においても同僚の務台議員が産科医不足について指摘したところであり、これは日本全国でも同じ状況であります。

 また、地方創生の観点からも、安心して医療を受けられる環境、安心してお産をして子供を育てられる環境、これをつくっていくということが極めて重要であります。医療と教育、これがしっかりしなければ地方の人口減少を食いとめることはできない、このように思っております。

 そこで、まず、今後、この地域医療構想において地域の将来の医療需要が推計される、このことを踏まえて、国として、将来の地域での医師確保に向けた取り組み、これをどのようにしていくつもりなのか、聞かせていただきます。

二川政府参考人 地域医療構想と医師確保の取り組みについてのお尋ねでございます。

 今後、急速に高齢化が進む中で、地域で安心して暮らしていただくためには、医師等の医療従事者を確保していくということが極めて重要な課題であると認識しているところでございます。

 そして、昨年成立いたしました医療介護総合確保推進法におきまして、この二十七年度、この四月から、各都道府県におきまして地域医療構想を策定していただくといったことになるわけでございます。それに向けまして、現在、私ども厚生労働省におきましてガイドラインを示すこととしておりまして、このガイドラインにつきましても、先般、検討会におきましてガイドラインをおおむね取りまとめていただいたところでございます。これを通知の形で近く発出するといったことで準備を進めているところでございます。

 このガイドラインに沿いまして、今後、都道府県が地域医療構想を具体的におつくりいただくということになるわけでございますが、その前提といたしまして、二〇二五年時点の医療機能別の医療需要、高度急性期、あるいは急性期、回復期、慢性期、それぞれの医療機能ごとに医療需要を推計する、それに対応する必要病床数を地域ごとに推計する、この作業から、各都道府県、始まるわけでございます。

 そういたしまして、その機能ごとに、病床の機能区分に応じた必要な医師、看護師などの医療従事者の確保についても地域医療構想の中で検討をいただき、その方策についても地域医療構想に盛り込んでいただく、こういったことにしているわけでございます。

 そういったこととの関連で、医師確保につきまして、今後の取り組みとこれまでの取り組みとをあわせて御答弁申し上げたいと思うのでございますけれども、これまで、都道府県内の特定の地域での勤務を条件とした地域枠、そういったものを活用した医学部入学定員の増加、あるいは、地域枠の医学生に対する都道府県からの修学資金の貸与といった財政的支援、そういったようなことも行ってきております。

 それからまた、地域の医師不足病院への医師派遣等を行う地域医療支援センター、これを医療法に位置づけいたしまして、各都道府県で、県庁に置いてある場合と、県の大学の医学部にこれを設置している場合と、いろいろでございますけれども、そういったところから県内の医師不足病院への医師派遣を行ってきている、こういったところでございますが、そういった地域医療支援センターへの財政的支援、こういったものに取り組んでいるところでございます。

 それからまた、医師不足のきっかけになったのではないかと指摘されている医師臨床研修制度、これにつきましても、都道府県ごとの募集定員につきまして見直しを進めておりまして、大都会で研修をする医師の定員を減らし、それ以外での研修の定員をふやす、こういった取り組みも進めているわけでございます。

 そういったさまざまな取り組みを私ども厚生労働省においても行っておりますし、また、各都道府県においてもそういった取り組みを行っているところでございます。

 そういった取り組みとあわせまして、今後、地域医療構想を実現する過程におきまして、さまざまな取り組みを、都道府県において、医療従事者の養成確保をしていくということになるわけでございますので、厚生労働省といたしましても、引き続き、こういった都道府県の取り組みを支援し、地域におきます医師の確保や偏在の解消に努めてまいりたいと考えているところでございます。

小松委員 ありがとうございます。

 今のお話、そういった取り組みを今までも継続してきたけれども、なかなか効果があらわれていない、そういったことだと思います。本気でこれは取り組まなきゃいけないことだなと認識しています。

 となりますと、将来の医療需要の推計に関して、その地域に何人の医者が必要なのかということ以上に、どの科を専門とする医者がどれだけ必要なのか、そういった観点が極めて重要になるわけであります。必要な科の医者をどれだけ地域に養成できるか、そして供給できるか、こういったポイントをしっかり見据えてやっていかなければいけないんだと思います。

 御存じのように、医者がどの科を専門科とするのか、選択するのか、どこで医療行為を行うか、これに関しましては強制できないという現状においては、専門科の偏在を是正するための仕組みに関してしっかりと知恵を絞っていかなければいけないんじゃないかなというふうに思います。

 そこで、大きくかかわってきますのが、現在、第三者機関である日本専門医機構で進められている新たな専門医制度であります。このことに関しては、昨年の厚生労働委員会でも質問させていただきました。各専門医の質の向上とともに、地域医療構想としっかりとリンクさせて、医師の地域偏在、専門科偏在を加速させない仕組みにするべきというふうに申し上げました。

 平成十六年から開始された新研修医制度、これによって地方から医者がいなくなった、すなわち、医師を育てる仕組みによって医療体制そのものが変わってしまう、このことを我々は学んだわけであります。

 平成二十九年度から開始予定の専門医制度、これに関しましても、決して同じ轍を踏んではいけないということを肝に銘じなければいけないと思います。

 地元でドクターたちと話をしていても、専門医制度の中身がなかなか見えない、そして、専門医をとるための仕組み、養成カリキュラムによっては、専門医になるために、つまり専門的な教育や実践を積むために、研修を終えた若いドクターが再び大都会の大病院であるとか大学病院に戻ってしまうのではないか、移動してしまうのではないか、そして地域に帰ってきてくれないのではないか、こういった不安の声が非常に大きいわけであります。すなわち、地域の専門医偏在をさらに助長するのではないかという不安であります。

 この専門医制度に関して、ちょっと具体的に、わかりやすくお話をしたいと思うんです。

 この新しい専門医制度、これはいわゆる二階建てになっていまして、一階の部分が基本領域専門医、これは、内科であるとか外科であるとか産婦人科であるとか小児科、こういった今までの診療科、この部分の基本領域のいずれかの専門医を取得することが基本ということになっています。さらにその上に二階の部分、これが、消化器、呼吸器、循環器などのサブスペシャリティーの専門医でありまして、例えば私なんかの場合は、基本は内科の専門医であって、サブスペシャリティーが消化器、そういったことになるんだろうと思います。

 これらを、認定された病院群で構成された養成プログラム、ここに基づいて養成して、経験症例数などの活動実績を要件とするとなっているわけであります。

 例えば、小児科の医者が、私の専門は小児科ですと言うためには、小児科の専門医を取得しなければいけなくなるというふうに私は理解しているんですが、そうすると、そのためにある程度の小児科の診療実績が必要となるわけです。

 だとすれば、当然、子供の多い地域の方が専門医をとりやすい、実績を積みやすいということになるわけですから、小児科を目指す、小児科の専門医を取得しようとする医者が、子供の少ない地域から子供の多い地域に移動してしまうという可能性があるのではないかと私は思います。

 このようなことがないような仕組み、すなわち、小児科医が不足している地域に小児科の専門医を取得しようとする若い医師が来る、そしてそこで育てられる、こういった仕組みを誘導していかなければいけないのではないかなというふうに思います。

 また、その地域に必ずいなければいけない専門医と、そうではない専門医があると思うんですね。例えば、心筋梗塞であるとか脳卒中が起きた場合に、近くの基幹病院に行って、すぐに診断して、緊急カテーテル手術で血栓を溶かしたりとか、そしてステントを入れたりとか、そういった緊急手術ができる専門医、これは、現在の二次医療圏の中にある程度はいなければいけないんだと思います。それができないと患者さんを救命できないということになるわけであります。

 それに対して、例えば心臓外科、胸を開いて心臓のバイパス手術をする、こういった専門医に関しましては、少し時間を置くことができるわけですから、二次医療圏を超えた範囲でその基幹病院と専門医があればいいのかもしれないわけであります。

 このように、専門医のそれぞれの特性をしっかりと考えた上で、地域医療に配慮した養成プログラムの設定を行うことが極めて重要であるというふうに考えます。

 そこで、この新しい専門医制度、養成プログラムの作成と地域医療との関係に関して、昨年も同じような質問をさせていただきましたけれども、一年たっていますから、その後の進捗状況も含めて聞かせていただけたらというふうに思います。

二川政府参考人 昨年の本委員会におきましても、専門医の制度と地域医療の連携といった旨の御指摘をいただいたところでございまして、新しい専門医の仕組みをつくっていく際に、地域医療への影響につきましては十分に考えていかなければいけないというふうに認識をしているところでございます。

 この一年間の進捗につきましてまず申し上げますと、昨年の五月に、日本専門医機構が、各学会、病院団体、医師会等々の参加のもとに設立をされまして、その前に厚生労働省の検討会報告書が出ておりますが、同機構が、それを踏まえた形で、私ども厚生労働省と連携をしていただきながら、昨年の七月に、専門医制度整備指針といったものが策定されているところでございます。

 この整備指針におきましては、専門医が専門医を取得するための研修を受ける、その内容につきましては、病診連携あるいは病病連携、それから地域包括ケア、在宅医療、それから地方などでの医療経験、そういった経験を含む、そういった形での研修をするといったことをまず基本の整備指針に掲げているわけでございます。

 それからまた、研修をする施設におきましても、地域医療に配慮した複数の研修施設、いわゆる、一つのところで受けるのではなくて、研修施設群という形で研修プログラムをつくるといったことも基本指針に掲げているところでございます。

 現在、基本のこの指針に基づきまして、日本専門医機構におきまして、診療領域ごとの研修プログラム、基本領域の部分もそれぞれ内容が違ってくるかと思いますけれども、診療領域ごとの研修プログラムの基準を、学会等関係者と連携しながら、現在つくっているところでございます。

 それにつきましては、先ほど申し上げました整備指針にありますような、地域医療に配慮した形で具体的なプログラムをつくるということになっているところでございます。

小松委員 ありがとうございます。

 今の局長の説明を聞いていて、委員の人たちがどれだけ理解できたかというと、大変難しいんだろうと思うんですね。

 ですから、とにかく、第三者機関にただ任せるのではなくて、しっかりと厚労省としてグリップして、そして、この地域医療構想としっかりと連携した形で地域の医師の偏在をなくす、こういった観点をしっかり入れていただいて、この専門医制度を進めていただきたいなということをお願いしたいと思います。知らない間にそういうことが決まっちゃったという、この同じ轍を踏まないということで、ぜひお願いしたいと思います。

 次に、子ども・子育て支援と子供の医療費に関して質問をさせていただきます。

 現在、自治体が独自の政策として乳幼児などの医療費援助を行っております。この制度は、子供を育てる親にとっては、経済的な負担がなくて済むという意味で大変ありがたい制度でありますし、地方創生、そして少子化対策としての効果は大きいものと考えられます。

 しかし、これらは、市町村によって、所得制限の有無であるとか年齢の上限の違いが実際大きく異なっているというのが現状であります。実際、全国を見ても、十八歳まで医療費が無料になる市町村がある一方で、四歳児までしか無料とならない市町村もある。大きな違いがあるという問題があります。

 これらは、それぞれの市町村が厳しい財源の中で、住民に対するサービス、そして若い世代を呼び込むための政策として行っているものと認識しておりますし、そのような市町村の努力に敬意を表したいなというふうに思います。

 しかし、一方で、市町村の独自財源で行われる部分が大きいということで、その市町村の財政力によって、その施策を行うことができるかどうか、これが決まってきてしまうという問題点もあるんだろうと思います。

 実際、地元で話をしていても、この施策をアピールするための過度なサービス合戦になってしまっているという面もある。そして、財政力の厳しい自治体であるとか、特にある程度の人口を抱える地方の中核都市などでは、近隣都市との競争になってしまうことが大変つらいといった話も聞かれるわけであります。ここを国として何とかできないかということでございます。

 もちろん、現在の国の財源を考えると、国による一律の補助制度、これが大変難しいものであるということも理解しておりますし、地方財源などの制度を考えても難しい、これは理解してはいるんですが、しかし、少子化対策は大変重要な課題でありますし、地方創生という観点からも、子供の医療費助成に関して、国として何らかのかかわりを持つということが必要なのではないかというふうに考えます。いかがでしょうか。

永岡副大臣 子育てをしております若い世代の御希望に応えまして、子供の健やかな成長を確保する環境を整えるということは大変重要でございます。

 医療費の負担につきましては、国として支援を行ってきているところでございますけれども、具体的にお話しいたしますと、小学校入学前の子供につきましては、医療保険の自己負担を三割から二割に軽減しているほか、未熟児ですとか、あとは特定の慢性的な疾病を抱える子供たちの医療費につきましては、さらに自己負担の一部を公費で助成しているところでございます。

 他方、先生おっしゃいますように、各自治体が行います乳幼児などへの医療費助成を国によります一律の補助事業とすることについては、やはり地方自治体と一緒でございまして、厳しい財政状況のもとで、ほかの子ども・子育て関連施策との均衡、バランスというものを考えますと、課題が多いということが考えられます。

 いずれにいたしましても、子供の医療などのあり方につきましては、子育て支援、そして地方創生、また地域包括ケアなどの幅広い観点から考えていくことが重要でございまして、今後の少子社会におけます子供の医療のあり方などを検討する場を設けまして、関係者も交えて検討していきたいと考えております。

小松委員 ありがとうございました。ぜひ、検討ということで、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、認知症対策に関してお聞きいたします。

 所信でも、政府一丸となって認知症に対する取り組みを進める、こういった覚悟ある所信表明、大変感謝の気持ちでございます。

 この認知症対策に関しましては、認知症施策推進総合戦略、新オレンジプラン、これが策定されて、推進していくことになっているわけでありますけれども、認知症、先ほどもお話がありましたが、誰でもかかわる可能性があるものとして、それをしっかり社会として受け入れる、そのための教育、啓発が極めて重要であるというふうに考えております。

 同時に、早期対応が必要であることを考えると、高齢者の多くがかかわっているかかりつけ医であるとか、病気を持って病院に通っている患者さんの一般病院での認知症の対応力というのを高めていく必要があるんだろうと思います。

 しかし、実際、国民はもとより、医療関係者、特に医者の認知症に対する認識が余り高くないなということを感じるわけであります。認知症というのは単なる老化現象だというふうに捉えているドクターも少なからずいるように感じますし、受け入れるということと早期治療をするということは、場合によっては相反する対応の仕方でもあると思うんですね。

 ですから、このような観点から、医療関係者、特に医師への認知症にかかわる知識の普及啓発が重要であるというふうに私は考えておりますけれども、その取り組みを充実させるための取り組み、この考えについて見解をお聞かせいただきたいと思います。

三浦政府参考人 新たに策定いたしました新オレンジプランは、「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」ということを副題として掲げているものでございます。これを実現するためには、御指摘のとおり、まずは国民の皆様やさまざまな関係者の方々が認知症に対する正しい知識を持っていただくことがその基盤になると考えております。

 このため、一般の国民の皆様を対象として、例えば、認知症の方の視点に立って認知症への社会の理解を深めるキャンペーンの実施、認知症サポーターの養成と活動の支援などに取り組むこととしております。

 また、認知症の容体に応じまして適時適切に医療、介護などを提供していくことができるよう、早期診断、早期対応にかかわるかかりつけ医の認知症対応力を高める研修や、その相談相手となる認知症サポート医の養成の数値目標を引き上げるとともに、行動・心理症状や身体合併症が見られた場合にも適切な対応ができるよう、引き続き、病院勤務の医療従事者などの認知症対応力を高める研修にも取り組むほか、医師だけではなくて、歯科医師、薬剤師、看護職員が認知症対応力を高めるための研修を新たに検討することとしているところでございます。

 引き続き、医療従事者の皆様に認知症についての正しい理解をしていただく、適切に対応していただくための取り組みを一層強化してまいりたいと考えております。

小松委員 ありがとうございました。

 この新オレンジプランでは、学校教育において認知症を含む高齢者への理解を深める教育を推進する、こういった言葉もあるわけでありますけれども、大学での医学部とか薬学部、歯学部の教育のカリキュラムなどにもぜひこれを入れていただいて、省庁を超えて、医療関係者への啓発ということをぜひお願いしたいと思います。

 日ごろから地元でいろいろな話をしていますと、医療とか年金、介護、こういった安心できる仕組み、これを政治に求めている方が大変多いというのを実感いたします。そのことをしっかりと胸に置いて、これから厚生労働委員としての役割を果たしていく、このことをお誓い申し上げて、私の質問を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速質問に移らせていただきます。

 私が議員にさせていただいて一番最初に行った質問が難病対策でした。まさしくこの厚生労働委員会でさせていただいたわけです。

 公明党は、これまで難病対策にずっと力を入れてまいりました。その中で、今回、新しい措置として、消費税財源を確保する、そしてまた恒久的な施策とするということで、対象の疾患も拡大しまして五十六から三百に、対象となる患者数も七十八万人から百五十万人までということになりました。これによって、本当に私の地元でも、難病に苦しんでいらっしゃる方々で今回対象となった方々から評価の声をいただきました。

 非常に大きな一歩ではあったと思うんですが、しかし、私自身としてはその中で、まだ、もろ手を挙げて、よかった、万歳という状況ではないのではないかと思っております。つまり、今回対象が拡大した、ところが、まだ、残念ながら今回その対象に含まれなかった、今現在難病で苦しんでいらっしゃる方々もいらっしゃる。本日議論させていただきたいのは、その一つであります線維筋痛症の話です。

 御存じのように、線維筋痛症というのは全身に激痛が走る。昨年の四月に、この厚生労働委員会で、参考人として線維筋痛症の患者の方に来ていただいてお話を伺いました。そのときにも、痛みを測定する装置があって、それによると、例えば骨折だと痛みが六百、石、痛いと言われている尿管結石で千ぐらいだ、ところが、線維筋痛症の場合は三千八百八十という痛みだというふうに言われております。

 今、全国で患者数二百万人とも言われておりますが、この線維筋痛症、今回、拡大したんだけれども、残念ながら指定難病にはなりませんでした。なぜならなかったのかについて、まず伺います。

新村政府参考人 お答えいたします。

 難病法の指定難病につきましては、希少性といいまして、人口のおおむね〇・一%程度に達しないこと、また、その範囲を明確にするため、客観的な指標に基づく診断基準が確立されていることなどの要件を満たす疾病であるということを求めております。

 御指摘の線維筋痛症につきましては、まず、患者数が二百万人程度と言われておりまして、これが人口の約一・六%程度に当たるということ、また、自覚症状に基づいた診断方法がとられておりまして、客観的な指標に基づく診断基準が確立していないということから、現時点では、指定難病の対象として検討する段階には至っていないと考えております。

伊佐委員 二点おっしゃっていただきました。

 まず、希少性、患者数が少ないからと。この趣旨というのは、患者数が少ないとなかなか製薬会社が、薬の開発にしろ治療法の開発にしろ、お金を投じていかない、だから、そういうところは研究を進めるためにしっかりと助成するんだ、これが希少性の意味だと理解しております。もう一つは、客観的な判断基準がない、つまり本当に病気かどうかわからない。

 これは、実は両方とも患者さんの観点ではなくて、診る側の、本当にあなたは病気なの、わからないという観点で、ちょっとよくわからないから外しましょうと。あるいは、研究を進めるという観点から、より進めるインセンティブを与えるかどうかという、どちらかといえば患者さんじゃない立場での判断じゃないかと思います。

 実際に、この線維筋痛症の方々はほかの難病と同じで、きょう資料を配らせていただいておりますが、例えば、発病の機構が明らかじゃない、つまり原因が明らかじゃないという点であったりとか、それでいて治療方法が確立していない、つまりどうやって治していいかわからない、また、長期の療養を必要とするもの、こういう点、患者さんの側から見れば、線維筋痛症であっても、あるいはほかの難病であっても、実は一緒だということではないかと思います。

 ところが、そういう観点から今回は指定難病にはなっていない。当然、これは指定難病になっていないと医療費助成の対象にはならないわけですが、実は、この線維筋痛症は、この上の、難病の対象にもなっていないんです。

 難病というのは全部で五百疾患ぐらい今指定されていると思いますが、発病の機構とか治療方法とかあるいは長期の療養とか、こういうものは全てクリアしている。希少な疾病というのは、実は難病の指定要件ではないというふうに伺っております。つまり、右の吹き出しのところに書いてありますように、患者数による限定というのは行っていない、ただ、ほかの施策体系が樹立されていない疾病を対象とするというふうに書かれております。

 これは実は、指定難病でなければ当然医療費の助成の対象にもならないわけですが、難病の対象でもないと、例えば難病だと受けられるはずの就労支援であったりとかあるいは福祉サービスであったりとか、こういうようなものも受けられない。それはなぜかというと、左側の四つの要件は満たすけれども、ただ、ほかの施策体系が樹立されているかどうか、ここが一つ議論になったわけです。

 そのときに、今、厚労省は、この線維筋痛症に対してほかの施策体系が、一定の施策体系が既に用意されているんだということだと思うんですが、では、線維筋痛症に対して、ほかの施策体系というのは実際どのような取り組みを行っているかについて伺いたいと思います。

新村政府参考人 お答えいたします。

 線維筋痛症につきましては、確かに難病対策ということではございませんが、慢性の痛み対策ということの一環で対応しているところでございます。

 線維筋痛症を含めました慢性の痛みを来す疾患は、身体的問題のみならず、心理的、社会的な問題に対する総合的なアプローチが必要であると考えております。

 このため、平成二十一年度より慢性の痛みに関する検討会を開催いたしまして、二十二年九月に、今後の慢性の痛み対策について提言を取りまとめたところでございます。

 この提言を踏まえまして、二十三年度より慢性の痛み対策研究事業を開始し、病態解明、治療法の開発などの研究体制の充実や医療体制の構築等を行っております。

 また、二十四年度からは、からだの痛み相談・支援事業によりまして、慢性の痛みに苦しむ患者の方々に向けた電話相談、医療機関の紹介、あるいは一般向けセミナーの開催を行っておりますし、医療従事者向けの研修会も開催しているということでございまして、情報提供、相談体制の充実を図っております。

 今後とも、研究開発、普及啓発、医療体制の構築などを進めることによりまして、慢性の痛み対策といった中でその対応の充実に努めていきたいと考えております。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

伊佐委員 つまり、線維筋痛症はこの左側の四つの要件は満たしているんだけれども、一定の施策体系がある。それが、さっきおっしゃっていただいたような、電話相談をやっていますよとか、研究にしっかり取り組んでいます、痛みの研究をやっていますとか、あるいはセミナーをやっていらっしゃるということだったと思います。

 厚労省もこうしてさまざま御努力はいただいておるんですが、では、患者さんの側から見てどう映っているか、線維筋痛症の方から見てどう映っているかといいますと、例えばこのセミナーでも、セミナーをやって、普及啓発、全国で線維筋痛症に苦しんでいらっしゃる方々、こういう病気だから皆さん支援してあげてください、これは年二回されていらっしゃると伺っておりますが、しかし、患者さんから見ると、年二回こういうものをやるだけで本当に普及啓発になるんだろうかと。

 私の地元で、ある患者さんがいらっしゃいまして、その患者さん、駅に立っていらっしゃるんです。いつもビラを配っていらっしゃいます。私が朝、駅に立とうと思って行くと、その方が大抵先にいらっしゃって、線維筋痛症の患者として、みんなにぜひ今の病気の現状を知ってほしい、一人ででも普及啓発するんだという思いで駅に立っていらっしゃる。体調の許す限りは毎日立たれていらっしゃいます。そうしてでも患者さんの思いというのをちょっとでもみんなに知ってほしいという方がいらっしゃいます。

 その方に伺いますと、病院ですら、お医者さんですら実は余り認識されていない。最初にその方が線維筋痛症と診断されたのは、実は発症してから三年かかったそうなんです。いろいろな病院を転々として回って、どこに行っても、いや、気持ちの問題でしょう、そういうのを言われ続けて、やっと三年かかって初めて線維筋痛症というふうな確定診断をされた。これは、もし早期発見されていれば、薬の服用とかそういうさまざな手当てによって重症化は防げるというふうに言われております。

 こうした、お医者さんに対してもそう、国民の皆様に対してもそう、しっかりと普及啓発をやっていくということが非常に大事じゃないか、まずそれが第一歩じゃないかと思っております。

 そしてまた、そもそも線維筋痛症になられた患者の皆さんが今どういう状況にあるのかというのを、ぜひ厚労省としても実態調査をしていただきたいと思っております。なかなか、データ、あるいはさまざまな実態を厚労省として調査されたものというのは今ないんじゃないかと思っています。

 一つ私が見つけたのは、あるNPO法人がアンケートされて、そのアンケート調査の結果だけ私は発見することができたんですが、例えばどういうことが載っているかといいますと、就労、働くことに関しては、アンケートでは、働けない人が六七%、制限があるという方が一六%、足して八割以上の方々が就労に困難を抱えていらっしゃる。あるいは、それでいて、身体障害者手帳を受けたいという方、しかし抵抗がある、あるいは断られたという方が五〇%以上いらっしゃるとか、こういう実態があるわけです。

 まず、厚労省として、線維筋痛症について、どういう実態が今あるのか、患者さんの実態調査をぜひ行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

橋本大臣政務官 お答えをいたします。

 まず、委員御議論いただきましたように、普及啓発、周知徹底という御議論がありました。これは、先ほど健康局長が答弁をいたしましたように、一般向けセミナーとか医療機関の紹介だとかをしているということはございます。ただ、これが十分かどうか、御指摘も重く受けとめたいと思っております。

 それと、実態調査というお話がございました。線維筋痛症につきましては、病因、病態が未解明でございまして、客観的な指標に基づく診断基準が確立されておりません。そのことが全体像の把握を困難にしているとされており、病態の解明等を目指した研究を着実に進めることが最も重要であると考えております。

 このため、厚生労働省では、慢性の痛み対策研究事業におきまして、病態の解明、客観的評価に基づく診断基準の確立及び診療ガイドラインの改訂などを推進しており、その過程で、患者数や患者の背景因子、生活の質、QOLですね、等の実態把握に努めているところでございます。

 今後とも、当該研究事業におきまして、患者の実態を把握しつつ、線維筋痛症を含め慢性的な痛みを生ずる疾患に対する必要な対策を推進してまいりたい、このように考えております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 実態調査をすると、いろいろなインプリケーションがあるんじゃないかと思います。つまり、どういうような対応をしていくのか。おっしゃっていただいたような研究、あるいは科学的な観点からのさまざまな調査というのももちろん必要だと思うんですが、そもそも今どういう状況に置かれているのかという点について、ぜひ調査をしていただきたいと思っております。

 このイシュー、この件について最後の質問ですが、これは線維筋痛症にかかわらない話なんですが、外見で支援が必要だとわからない方々、しかし、内部にいろいろな障害であったり問題を抱えていらっしゃる方々がいらっしゃいます。そういう方々にどういう配慮ができるのかということなんです。

 例えば難病の方、線維筋痛症の患者の方もそうですが、体が本当にしんどい、激痛が走っている、そのときに電車の中で優先席に座っている、そうすると周りから、若いのにあんなところに座ってというふうに白い目で見られる、そういうことを日常経験されるというようなこともお話を伺いました。

 例えば、我々公明党が一つ強力に推進したものとして、マタニティーマークというのがございます。これは、妊娠の安定期に入る前、特に外見上から見てもなかなかわからないような状況で、一番体がしんどい、そういう場合には、ああ、この方は支援が必要なんだ、何らかの配慮が必要なんだとわかるようなマークの普及が今されているわけですが、同じように、見た目でわからないような難病の方々、こうした方々のために何らかのマークを全国で普及できないのかと思っております。

 当然、これは難病に限らず、こういうものをつくると、ほかに支援が必要な方々にも適用できるわけです。精神的な、メンタルな病気を持っていらっしゃる方々であったりとか、内部障害を持っていらっしゃる方々とか、あるいは義足であったりとか人工関節が入っていらっしゃる方々とか、外見ではわからないんだけれども支援が必要だという方々に対するこうしたマークが必要なんじゃないかと思います。

 これは、一部の自治体、例えば東京都とか、あるいはNPO法人がこういうようなマークをつくって、ヘルプマークといったり、あるいはハート・プラスマークというようなものをつくって取り組んでおりますが、しかし、ばらばらだとなかなか認知されない。ぱっと見た人が、これは何のマークだろうというのが現状じゃないかと思います。

 ぜひ、難病の方々のマーク、あるいは、そこからさらに外見上わからないような支援の必要な方々まで適用できるような、こういうマークというものを統一して普及していただきたい。夏に向けて難病支援の基本方針を取りまとめるというふうに伺っておりますので、その中でぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

橋本大臣政務官 難病対策におきましてまず何が大事なのかというところで、当然ながら、難病、疾病の克服というのは大事なんですけれども、同時に、患者の方の社会参加を支援して、地域で尊厳を持って生きていただける、そうした共生社会を実現するということを基本理念としております。その上にはやはり普及啓発というのが大変重要だというのは、今委員も御指摘をいただいたことだと思っております。

 これも先ほど御指摘をいただきましたとおり、難病の患者に対する医療等に関する法律に基づいて、本年夏をめどに、医療、調査研究、就労などを含めた難病対策を総合的に推進するための基本的な方針を策定することとしておりまして、本年一月から議論を開始しておりますけれども、今御指摘というか御提案をいただきましたマークの利用など今後進めるべき普及啓発の方策につきましても、その基本方針の検討の中で、患者の皆様方あるいは検討会での御議論などもいただきながら検討してまいりたい、このように思っております。

 なお、一点つけ加えさせていただきますならば、今私がつけておりますバッジがございます。RDD二〇一五、世界希少・難治性疾患の日というものが毎年二月末日にございまして、イベントなどをされております。そうしたものもありますので、ぜひ委員の皆様方にも認知をしていただいて、また広めていただければありがたいなと思っております。

 以上です。

伊佐委員 ありがとうございます。

 難病というのは本当に、誰もがかかる、いつ発症するかわからないというような病気だ、誰もが発症する可能性がある病気だと思っておりますので、ぜひ力強い支援をよろしくお願いします。

 時間も少なくなりましたので、最後、一問だけ大臣に、全く違う観点で、がん患者の就労支援について伺いたいと思います。

 今、二人に一人ががんになる時代というふうに言われておりますが、その中で、実は、がんと診断されて、その時点で職を失ってしまう方々というのが余りに多い。今、現状、調査によると三四%と言われています。三人に一人ががんと確定診断された時点で会社をやめざるを得ないとか、あるいは自営業者の方々だと一三%が廃業する。

 実はそれは当然いろいろな、自分自身で働けないと思ってやめる方がいたり、あるいは解雇される場合もありますし、働きたいと思っていたんだけれども、いざとなると職場に迷惑はかけられないという思い、あるいは治療と仕事をなかなか両立できない、こういうような現状がある。

 それは一つは、なかなかフレキシブルな、柔軟な働き方が認められていないという点もあると思います。例えばフレックスであったり、あるいは時短、労働時間の短縮であったりとか、テレワークであったりとか。こうした、がんの患者が治療を終わって、一〇〇%、いきなりフルスロットルで働き出すことというのはなかなか難しくて、治療と復職を同時に両立しながらやっていくという観点では、いろいろな働き方、多様な働き方というのが認められるべきじゃないかと思っています。

 それは決してがん患者だけじゃなくて、子育て中の女性もそうですし、親の介護にかかわっている方々もそうですし、こうしたさまざまな点、職場の理解、普及啓発もそうですが、働き方もそうですが、いろいろながん患者への就労支援について、最後、大臣の御決意を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先生、大変大事な御指摘だと思います。

 がんの早期発見とかあるいは生存率が上がってきているということで、がんのサバイバーは増加を続けているわけでありまして、現役世代のがん患者数が近年特に増加しているということで、就労支援を進めることは大変重要だという指摘が大分なされているというふうに思います。

 昨年の十一月に内閣府が世論調査を実施しまして、報道もされておりましたけれども、仕事と治療等の両立について環境整備が十分ではない、そういう状況が明らかになってまいりました。日本の社会で、がんの治療や検査のために二週間に一度程度病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思うかという質問をしたところ、約七割の方が、そうは思わないとお答えになったというふうに聞いております。

 厚労省としても、こういうような現状を改善して、がんになっても生き生きと働き続けられるように、就労支援を初め、がん患者あるいは経験者を支えるための施策をより一層積極的にまとめて推進していきたいというふうに思います。

伊佐委員 力強いお言葉をありがとうございます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 初めて質問に立たせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 時間だけは守りなさいと先輩からも厳しく言われておりますので、最後の方、ちょっとまとまりがなくなるかもしれませんけれども、御容赦をいただければと思います。

 初めに、子ども・子育て支援について、所信において、妊娠から子育て期までの切れ目のない相談支援を提供する整備を行うとされたことについて、特に発達障害を含め、気になる子への支援の充実等の関係についてお伺いをしたいと思います。

 子育てに関する相談支援の充実のために、具体的には、ワンストップ拠点としての子育て世代包括支援センターの整備を全国的に進めるとされております。これは積極的な整備が望まれますが、そもそも包括支援センターの目的は、これまでさまざまな機関が個々に行ってきた支援を、子供と保護者のニーズに応じたきめ細やかな切れ目のない支援が講じられるように、サービスのコーディネートを行うということが主眼であると思いますが、このことは、裏を返せば、個々の支援が充実していなければその目的も果たせないということになろうかとも思います。

 妊婦健診であるとか乳幼児期の健診、親子教室など母子保健の事業や、子育て支援センターや保育所、幼稚園など福祉、教育の分野でも、現状、さまざまな支援が行われているわけですが、子育て支援の現状を見た際、もっと充実が必要な支援は、例えば虐待を受けた児童への支援を初め幾つかあると思っておりますが、ここでは気になる子への支援ということに絞ってお伺いをしたいと思います。

 発達障害を含め、気になる子への支援については、何よりも早い段階での気づきが重要になるということは論をまたないことだと思います。早期の気づきから支援へと結びつけていくために、現行実施されているメニューの中で私自身が重要だと思うのは、まず三歳児健診での気づきだと思っております。

 この点について、気になる子の気づきから早期支援に結びつけていくために、どのように取り組んでいくのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 母子保健法では、市町村は、満三歳を超え満四歳に達しない幼児に対して、健康診査を実施しなければならないとされております。

 この三歳児健診では、精神発達の状況、言語障害の有無及び育児上問題となる事項などにつきまして検査を行うとともに、それぞれの児童の精神的発達や社会的適応に関する観点などを踏まえまして、相談対応を行っております。

 さらに、健康診査の結果、必要と判断された場合には、精密健康診査を行うために医療機関へつなげるなどしているところでございます。

 このような取り組みを通じまして、健康診査の場においても、可能な限り、特別な支援が必要となる可能性のある子供の早期発見に努めているところでございます。

角田委員 個々の事業に関して、もう一点伺いたいと思います。

 早期の気づきと支援のための事業として、発達障害等の専門的な知識を有する専門員が保育園や幼稚園などを巡回して施設のスタッフや保護者に対してアドバイスを行う、巡回支援専門員整備事業というメニューが現在用意をされております。

 私自身も、七年、八年ぐらい前になりますが、気になる子への対応に苦慮している、そうした幼稚園等の現場の声を聞いて回って、これは絶対に必要だとの思いで、心理の専門職を含むチームによる、保育所、幼稚園等を対象とした巡回相談を議会で訴えて実施してもらった経験もありまして、これは非常に重要な事業だと思っておりますが、現状は、地域生活支援事業のメニューの一つという位置づけで、やるかやらないかは市町村任せとなっております。

 専門員を配置している市町村は昨年六月末現在で約四百市町村と、全市町村の二割程度にとどまっており、より積極的な取り組みが必要ではないかと思いますが、このことについて御見解をお伺いしたいと思います。

藤井政府参考人 お答えをいたします。

 厚生労働省におきましては、先生の御指摘の、気になる子の早期発見、早期対応のための気づきを進めるために、専門家が保育所等を巡回し、施設職員や保護者等に対して助言等を行います巡回支援専門員の整備を市町村が実施する場合に、統合補助金でございます地域生活支援事業の対象として支援を行ってきておるところでございまして、二十六年の六月三十日時点で、これも先生御指摘のように、全国で四百四市町村で現在実施をしているという状況でございます。

 この取り組みにつきましては、私どもとしましても普及を図ってまいりたいというふうに考えておりますけれども、一つの課題として、気になる段階の支援を担当する市町村の子育て支援の部門と障害福祉の部門の双方の連携が重要であるとも考えておりまして、今後、主管課長会議の場等の機会も捉えまして、市町村における両部門の連携の構築なども促しながら、この巡回支援専門員の普及を推進してまいりたいと考えております。

角田委員 気になる子供への支援の充実ということに関して、最後に、これまでほとんど顧みられてこなかった障害についてもぜひとも支援の充実を図っていただきたいとの思いで質問させていただきます。このことは、先日の予算委員会の分科会でも文科省に対しても質問させていただいたことなんですが、これは保健福祉の分野でも取り組みが必要なことであると思いますので、ここでも取り上げさせていただきたいと思います。

 場面緘黙症という障害があります。選択性緘黙とも言われておりますが、家庭では普通に話せるのに、学校など特定の場面で全くしゃべることができなくなってしまう。実際に緘黙で悩んでいる方の言葉をかりると、いざ声を出そうとしても喉が詰まっているような感じになり、頭が真っ白になってしゃべれなくなる、あるいは、しゃべること以外にもいろいろなことに不安感を持ちやすく、周りの目が気になって体が固まってその場から動けなくなったり、動けても、手が震えたり、思うように行動ができなくなるという障害です。

 場面緘黙症に関する研究はまだ乏しく、なぜ起こるのかも、さまざま言われておりますが、実際のところははっきりしておりません。問題行動を伴うとか、そのような目立つ特徴がなく、家では普通に話せるために親や家族も気づきにくいことから、そのまま放置されることが極めて多い。また、極度の人見知りなどで片づけられることが多かったことが、この障害に注意が払われてこなかった大きな要因だろうと思います。

 発症は大体三歳から四歳ごろと言われますが、気づかれるのはかなり後になってから、しかも、不登校や引きこもりなどの問題で相談した際に初めて場面緘黙症だと気づかれるケースがほとんどということで、その間、適切な支援が講じられてこなかったがために状態が深刻化していることもまれではありません。

 そこで、厚生労働省としては、場面緘黙症、選択性緘黙の子供の実態について把握されているのかどうか、まずお伺いをいたします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる緘黙児についての御指摘でございますけれども、厚生労働省として、緘黙児の実態を把握している状況にはございませんで、今後、どのような手法であればこの実態を把握していくことが可能なのかという点も含めまして研究をしてまいりたいというふうに考えております。

角田委員 ぜひそれも進めていただきたいと思います。

 この場面緘黙症の子供がどれだけいるのか、発症の頻度について国内でも幾つかの調査がありますが、これもかなりばらつきがありますが、おおむね〇・二%から〇・五%ぐらいと推計されているようです。海外では〇・七%とする調査もありますが、仮に出現率を〇・五%とすると、今、小学校に三万三千人、中学校に一万七千人余り在籍する計算になります。

 これに、小中学校の情緒障害を対象とした特別支援教室や通級指導教室で支援を受けている子供の数を重ね合わせますと、実際に教育現場などで支援を受けているのは全体の一%ぐらいしかいない。これは、発現率を〇・二%にしても、二、三%ぐらいしかいないというような現状が推測をされるわけです。

 何の支援も行われていない大部分の子供たちはどのような状況に置かれているのか。ほかの子供と同じように話すことができず、周囲からも理解のない対応、例えば友達からのいじめ、さらには、教師も理解がないため、しゃべることを強要され、叱られたりする中で、自尊心の低下を招き、無力感や不安を引きずったまま、不登校や引きこもりになってしまうというケースもあります。

 また、無理解による嫌がらせを受けながらも無理して学校に通い続けた結果、緘黙症を引きずったまま、うつ病を発症するなど、二次障害に苦しんでいる方もいらっしゃいます。

 この障害に苦しんでいる多くの子供に適切な支援が講じられるよう、気になる子の早期の気づきと支援の充実の中で、ぜひとも場面緘黙症の子供についても注意を払っていただきたいと思います。

 具体的に何ができるかを考えた場合、例えば三歳児健診の機会に、意識して場面緘黙症を拾い上げることができるようにする。緘黙児の約七割に発達障害が認められるという報告もあり、言葉のおくれや手足の動作のぎこちなさなどのサインを示すことも多いといいます。健診に携わる医師や看護師、保健師等への啓発を進めていただき、保護者への相談や、親子教室などで適切なアドバイスや支援に結びつくよう、体制の整備を進めていただきたいと思います。

 さらに、保育所や幼稚園、さらには認定こども園など、幼児期にかかわる保健師、保育士、幼稚園教諭の理解と支援のために、専門家による巡回相談で適切なアドバイスが行われるよう、まずは国立障害者リハビリテーションセンターでの研修等に場面緘黙症についても取り入れることを求めたいと思いますが、ただいま申し上げた提案も含めて、御見解をお伺いしたいと思います。

藤井政府参考人 先生御指摘のように、支援をしていただく方の認識を高めていくということは大変重要な課題だというふうに考えております。

 私ども、まず今考えておりますのは、先生御指摘をいただきましたように、巡回支援専門員の研修といたしまして、これは国が実施する研修として、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて研修を実施しておりますけれども、これまでは、この研修において緘黙児をテーマとするような講義は実施してきておりませんでしたけれども、来年度の研修から緘黙児を研修のテーマに取り入れまして、理解が広がるよう努めてまいりたいと考えております。

角田委員 場面緘黙症それ自体は、発達障害に含まれておりません。それだけに、福祉や教育、さらには就労といった各段階でのサポートが受けにくいという現状があります。私自身は、この障害で悩み苦しんでいる方は、青年を含めて非常に多いという印象を抱いております。ぜひとも、実態を把握していただき、適切な支援が講じられるよう積極的な取り組みをお願いしたいと思います。

 次に、生活保護についてお伺いいたします。

 生活保護に関しては、住宅扶助基準、冬季加算の見直しなどが行われますが、この中で、場合によっては転居も伴うことになるという点から影響が大きい住宅扶助の見直しについて、確認の意味で質問させていただきたいと思います。

 住宅扶助の上限額については、その範囲内で借りられる住宅の割合に全国的にばらつきがあることから、調整を図り、七月から、見直しされた上限額が施行される予定となっておりますが、現在、住宅扶助を受けている方への影響、上限額が引き上げになるところはほとんど影響はないと思いますが、主に都市部は引き下げとなるところが多いようでありますが、影響を受けるのはどの程度になるのか。全国で、例えば単身世帯で引き下げとなる市町村はどの程度あるのかということについて、まずお伺いをいたします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅扶助の上限額でございますけれども、これは、各都道府県の一級地、二級地、三級地別、それから指定都市別、中核市別、合計百五十八の地域区分で設定をいたしております。

 見直し後の額につきましてですが、現在精査を行っているところでございますけれども、今お尋ねございました単身世帯の住宅扶助の上限額、これが減額となる地域は、百五十八地域のうち五十六地域となる見込みでございます。

角田委員 今回の住宅扶助の見直しに当たっては、居住の安定に配慮した経過措置として、住宅扶助上限額の減額の適用を次の契約更新時まで猶予するというふうにしておりますが、家賃が見直し上限額を超えている場合は、次の契約更新時期に大家さんが家賃値下げに応じてくれなければ、上限額以内の新しい住まいを探さなければならないということになります。

 現在、保護を受けている方の中でも、特に高齢者や障害者にとっては、新しい引っ越し先を探すのも極めて困難な方が多くいらっしゃいます。この点について、転居が困難なやむを得ない理由がある場合には見直し前の額を適用するということですが、具体的にその対象となるのはどのような方なのか、確認をさせていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 今般の住宅扶助基準の見直しによりまして、現在の家賃が基準額を超える場合、これは、今御指摘ございましたように、見直し後の基準額の適用を契約更新時まで猶予する。そして、家賃の引き下げが困難な場合につきましては、上限額以内の住宅に転居、これについて助言、指導を行うということでございます。

 その際、今御指摘ございましたように、御本人の意思や生活状況を丁寧に確認することといたしております。具体的には、傷病や障害によります通院や通所の状況がどうなっているのか、それから就労や就学の状況がどうなっているのか、そして高齢者の場合の生活状況あるいは地域の支援状況、こういったものを丁寧に確認いたしまして、現に入居している住宅に引き続き住み続けることがその世帯の自立を助長する観点から必要である、こういうふうに認められる場合につきましては、引き下げ前の額を適用する、こういう措置を講じることを検討しているところでございます。

 七月から施行でございますので、自治体がこういった生活状況を丁寧に把握いたしまして必要な措置を講じることで、生活に支障がないように徹底をしていきたいというふうに考えております。

角田委員 今回の基準額の見直しによって転居しなければならなくなる方も、そもそも本人には何の落ち度もないわけですね。福祉事務所などから、この金額の範囲で家を探すように言われて、そのとおりに自分で物件を探して住んでいるわけであります。中には、保護を受けるに当たって、住んでいる部屋の家賃が上限を上回っているという理由で、上限額におさまる物件を新たに探して、住みなれた地域から引っ越して、ようやく落ちついて今生活しているという方もいらっしゃいます。

 住み続けられる配慮はやはり極力なされるべきだと思っていますが、ただいま言ったような配慮に関する実際の運用が市町村によって差が出てくるようでは、かえって混乱を招くのではないかと危惧しています。

 これから構築しようとする地域包括ケアシステムでも、かなめとなるのは、地域での生活の拠点となる住まいであると思います。特に、要介護、要支援者が住みなれた地域で自立した日常生活を継続することができるように、要介護状態にならないようにする予防や、要介護状態の軽減もしくは悪化の防止のためにも、まずは居住の安定が大前提になると思います。

 せめて要支援、要介護の高齢者や障害者世帯については、住み続けられるよう配慮をお願いしたいと思いますが、この点について見解があればお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、高齢者の方々、特に要介護あるいは要支援の方々につきましては、その生活状況、それから地域におきます支援体制の状況、そういったものを丁寧に確認して、生活に支障が出ることがないように徹底をしてまいりたいというふうに考えております。

角田委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.