衆議院

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第14号 平成27年5月15日(金曜日)

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平成二十七年五月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 後藤 茂之君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 松野 博一君 理事 西村智奈美君

   理事 浦野 靖人君 理事 古屋 範子君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      加藤 鮎子君    木村 弥生君

      黄川田仁志君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      谷川 とむ君    豊田真由子君

      中川 俊直君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    橋本  岳君

      比嘉奈津美君    堀内 詔子君

      牧原 秀樹君    松本  純君

      松本 文明君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      山井 和則君    足立 康史君

      井坂 信彦君    牧  義夫君

      伊佐 進一君    輿水 恵一君

      角田 秀穂君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      永岡 桂子君

   厚生労働副大臣      山本 香苗君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    高階恵美子君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            生田 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局雇用開発部長)       広畑 義久君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       安藤よし子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  唐澤  剛君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           舟引 敏明君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  牧原 秀樹君     黄川田仁志君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     牧原 秀樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 この際、塩崎厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 法案説明用の補足資料として作成されたいわゆる一〇・一問題ペーパーにつきまして、私は、五月十三日の衆議院厚生労働委員会の答弁において、局長、部長が知らなかったと申し上げましたが、実際は局長、部長ともにペーパーの作成について報告を受けており、その発言を訂正して、おわび申し上げます。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長岡崎淳一君、職業安定局派遣・有期労働対策部長坂口卓君、職業安定局雇用開発部長広畑義久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大岡敏孝君。

大岡委員 自民党の大岡敏孝でございます。

 今回、質疑の時間をいただきましたので、先日の本会議、委員会で質問されたことと重複しないように、できるだけ広く議論ができるように質問を続けてまいりたいと考えております。

 まず、この派遣法は、昭和六十一年の制定以来、時代や経済背景の変化とともに、数度の改正を経て今に至っております。

 私の学生当時は、高い専門性を持った自由な働き方、当時、パートが主体でありました女性の働く方にとってみれば、専門性を身につければ結婚後も高付加価値な仕事ができる、ある意味で憧れの働き方という認識を持っておりました。

 そこでまず伺いたいのですが、制定当時、どのような狙いで、あるいはイメージで派遣労働を捉えていたのか、また、その賃金については制定当時はどのような状況であったのか、教えていただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのこの派遣法制定当時の状況でございますけれども、労働者派遣制度制定当時におきましては、本来派遣先で直接雇用すべき労働者に取ってかわることがないようにすることを前提にいたしまして、まさに今委員御指摘のような特に専門性の高い業務等において、職を求める方々のニーズと、迅速に人員を確保したい企業のニーズの双方を結びつけるという一定の役割を期待するということで制定をいたしたということでございます。

 それから、賃金の状況でございますけれども、専門性の高い業務として付加価値の高いもの、時代によって変化するということはございますけれども、当時でございますと、民間の一般労働者の賃金が日額で平均約一万三千五百円でありましたのに対しまして、派遣制度の関係の、特定労働者派遣事業を営む事業所で特に今申し上げましたような専門性の高い関係ということでございますので、当時の通訳、翻訳、速記の業務でいきますと、一日一人当たりの平均が三万七千五百九十六円。それから、ほかの業務でも、例えばソフトウエア開発であれば一万九千六百二十五円、機械設計でも一万八千三百二十二円というような状況ということでございます。

大岡委員 ありがとうございます。

 派遣の状況、先ほどの話を伺いますと、もともと非常に付加価値の高い、決して低スキル、低賃金と決められた労働ではなかったということを確認することができました。

 今回の法改正で、派遣の期間制限を受けなかった、つまり、長い期間の派遣が許された二十六業務がなくなりまして、全ての仕事で三年という期間制限を受けるようになります。

 そうしたときに、先ほど申し上げたような、かつて私が学生時代に持っていたイメージのような、例えば外国語ができて外国の契約書も読める、そういう女性の役員秘書さんは、今でももちろんたくさん派遣で働いておられるわけでございますが、こういう方からすると、派遣を一時的、臨時的だと法律で定めることにも、低スキル、低賃金を前提に期間制限を受けることにも違和感を持っておられる方というのはいらっしゃると思います。

 新たに始めた海外との取引が三年で完了するということはございません。逆に、海外から来た役員が三年以内に本国に帰るということもございません。現在、グローバル化が進んでおりまして、これまで国内取引をしていた中小企業が、新しく急に海外取引をすることもあり得る。そうすれば、外国語ができる役員秘書が必要になります。さらには、アメリカ、フランス、さらには中国から、日本の会社でありながら、役員が向こうからやってくるということもあります。そういったケースでは、この法改正後、どのような対応をすることになるんでしょうか。教えていただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答えします。

 確かに、今委員御指摘のように、今回、専門的な業務、いわゆる二十六業務も含めまして期間制限をかけていくということでございます。

 これは、やはり派遣労働が直接雇用に比べて雇用の安定やキャリア形成が図りにくいという面があることからということでございますが、全体として、今回の法改正の中では、派遣元に対しまして、同じ職場で三年派遣で働いた方が引き続き就業継続を希望されるというような形では、派遣先への直接雇用を含む雇用安定措置でございましたり、計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングといったものも新たに法的に義務づけるということにしておりますので、そういった専門スキルも持った方も含めまして、さらに三年、三年の節目で自分のキャリアを見詰め直していただいて、それでキャリアアップの契機にしていただいて、さらに専門性を高めていただくというようなことをお願いしたいということでございます。

 それから、今委員からも御指摘のあったようないろいろなケースがあろうかと思いますけれども、派遣で働く方が担当する業務が、例えばその派遣可能期間内に完了しないというような場合もあろうかと思うんですが、例えばでございますけれども、仮に、同じ方を継続してその業務に従事させるということを派遣先の方も希望されるのであれば、その業務の完了までの間、直接雇用に結びつけていただくというようなことも考えられようかと思います。

 それから、今回、先ほどの期間制限の中でも、派遣元で無期雇用されている労働者の方については期間制限の対象外ということで、派遣会社が無期雇用するインセンティブを高めるという部分で、より安定的に働くことを希望される方については、そういった方にまた活躍していただくというようなことも考えられるのかと思っております。

大岡委員 ありがとうございました。

 現行の二十六業務を見ますと、大変おもしろいのは、特定されている二十六の業務のうち、四つが何とテレビ関係の業務でございまして、中には、派遣労働者数が全国で合計七十七人という項目名、放送番組の大道具さん、小道具さんというものもございます。

 これを見ますと、テレビ業界に合わせて業務が追加されたのかなとか、テレビ業界というのは派遣で回しているのかなとか、あるいは、派遣法が改正されて、テレビ番組はちゃんと放送されるのかなということも心配になってまいります。

 しかし一方で、余り大きな声がテレビ業界から出ていないというのも事実でございまして、この背景には、日本の法制度上、法律不遡及という原則がある、これは当然のことでございますが、つまり、今回どのように法改正をしたところで避けられない事実といたしまして、今回の派遣法改正前に契約された合法な契約は有効である。つまり、この二十六業務に関する合法な契約があれば、テレビの大道具さんであろうと小道具さんであろうと、今後も期限の定めなく派遣を続けられるということが背景にあると考えております。

 既存の二十六業務につきまして、多くの合法な契約は、いわば建物でいえば既存不適格ということで、新法が遡及適用されることなく、派遣期間の上限が適用されないということになりますが、そのとおりでよろしいんでしょうか。

 あわせて、今回の法改正に伴いまして、こうした方々でも受けられるプラス面としてどういったものがあるのか、この点についてお答えいただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、今、改正法の施行日前に締結されました労働者派遣契約につきましては、その派遣契約の期間が終了するまでは改正前の期間制限の適用を受けることとなるものでございます。

 このため、これらの改正前の期間制限の適用を受ける人の中には、例えば駐車場管理の業務に従事される方など、派遣期間の上限なく派遣される方もあり得るということでございます。

 ただ、今委員の方からも御指摘がございましたけれども、今回につきまして、こういった方々につきまして、新法のキャリアアップ措置、先ほどの計画的な教育訓練でありますとか、キャリアコンサルティングというようなものをちゃんと受けていただくようなことを派遣会社の方に義務づけるという規定を設けておりまして、そういった規定の適用についてはもちろんございますので、これらの方々につきまして、派遣に固定されることなく、そういったことの規定をよりどころとしてキャリアアップが図られるようにということで、行政としてもそういった法の趣旨ということをしっかり丁寧に周知をしてまいりたいと思っております。

大岡委員 ありがとうございます。

 法制度上やむを得ないというか、当然のこととして遡及されない、この事実は丁寧に説明をしていただきたいし、あわせて、先ほどおっしゃったようなキャリアアップ措置をうまく使って、こうした対象の方であってもキャリアアップによって高スキル、高所得を目指していける、そうした道筋もしっかりとお示しをいただきたいというふうに思っております。

 次に、今回の法改正では、正社員化ということを大きな目標に定めているように見えます。それはそれで非常に重要なことだと考えています。しかし、その一方で、派遣労働を低スキル、低賃金、不安定と、いわば一面的で固定的な見方に定めているのではないかと懸念をしております。先ほどの質問でも出しました、例えば外国語の大変堪能な女性秘書などは、低スキルでも低賃金でもなく、まさに派遣労働者が目指すべき一つの形ではないかというふうに考えております。

 この正社員化を目指すという考え方の背景に、従来の価値観、つまり、正社員が上で派遣が下、下の人ができるだけ上になるように目指していく、こういう価値観がどこかに残っているのではないかと考えます。

 そこで、では、総理が発言をされている多様な働き方というのはこれなのかということを考えてみますと、恐らくそうではなくて、正社員が上で派遣が下という考え方これそのものを改革して、もっと水平的にしていくと。正社員もあるし、契約社員もあるし、そして派遣もあるしパートもある、それぞれをそれぞれの個人あるいは家庭の状況やライフステージに合わせて選択をしていく、自主的に選択をしていく、そういう生き方を目指すことこそが、総理の言う多様な働き方ではないかというふうに考えております。

 そうしたことからすると、派遣を低スキル、低賃金とするいわばリーマン・ショック以降のステレオタイプな見方から、スキルとやる気があれば、女性であっても、学生時代あるいは就職後にしっかりとスキルを身につけることによって、出産、育児で一旦社会を離れてももう一度高所得そして自己実現を目指していける、そういう目指すべき高みとしての派遣労働のあり方をしっかりと定義づけるべきではないかと考えております。

 この法案とそして一連の政策で目指している派遣労働のあるべき姿、さらには目指すべき高みの部分につきまして、大臣、どのようにお考えなのか、教えていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今、大岡委員の方からお述べをいただきました考え方に、基本的に私はそのとおりだというふうに思っております。

 安倍内閣の成長戦略では、一人一人がそれぞれのライフスタイルとか希望とかに応じて社会で活躍の場を見出せるように、柔軟で多様な働き方が可能になることを目指しているわけであって、労働者派遣制度の見直しもその実現に向けた重要な取り組みの一つだというふうに思っております。

 派遣で働く方の中には、今お話がありましたけれども、正社員で働きたいというニーズがある一方で、派遣労働者、それも、いろいろなそれぞれの独自の力を持って、能力を持っておられて、そしてステップアップしていきたいというニーズもあるわけであります。派遣で働く方の希望に応じたキャリアアップを図ることができる環境を整備することが重要であると思います。

 このため、今回の労働者派遣制度の見直しでは、雇用主であります派遣元の事業主に、派遣で働く方のキャリアアップ措置とか、あるいは正社員化を含む雇用安定措置の責務を課すこととしているわけでありまして、これらの見直しを通じて、派遣で働く方のさらなるスキルの向上や処遇の改善につなげてまいりたい、このように考えているところでございます。

大岡委員 ありがとうございます。

 次に、多様な働き方を目指すためには、派遣法だけを見て議論するのではなくて、当然、関連する政策を見ていかなければなりません。

 そこで、先日質問でも出ました労働時間法制の見直し、高度プロフェッショナル制度についてお尋ねをいたします。

 先日の質問では、希望なのか同意なのか、あるいは、労働者側から希望したのか使用者側から希望したのか、そのような議論に終始していたのではないかと思いますが、私から言わせれば、これは当然、労働契約ですからビジネス行為でありまして、どちらが先に言ったとか、希望したとか希望していないとかということが重要なのではなくて、そうじゃなくて、対面してしっかり話し合う場所が持たれたかどうか、そのときお互い明確な条件を出されて正しく合意に至っているかどうか、さらにはその交渉の中で立場が対等であったかどうか、これが守られていることこそが注意すべき点ではないかと考えております。

 そこで、この労働基準法改正案、高度プロフェッショナル制度について、総理も大臣も、希望をしない人には適用しないと発言されているわけですが、本来大臣が国民に伝えたいことの意味、そしてそのことを法案においてどのように担保をされているのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただきました高度プロフェッショナル制度というのは、時間ではなく成果で評価をされる働き方を希望する高度な専門職の方を対象とする、そして、その意欲や能力を存分に発揮できる環境をつくるために設けるものでございます。

 そうした働き方にふさわしい人に限って制度を適用するために、国会に提出しております労働基準法の改正法案では、働く人の同意を得ることを要件としたものでございまして、法律の第四十一条の二というところに、「書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における」云々、こう書いてあるわけでございます。

 働く人が制度の適用を希望した場合にのみ同意することになりますから、この要件を設けることによって、希望しない人には適用しないということが担保されるものだと考えておりまして、労働政策審議会から出されました建議には、「同意を得なければならないこととし、これにより、希望しない労働者に制度が適用されないようにすることが適当である。」このように書いてあるわけであります。

 まさに、今先生がおっしゃったように、どういう形かは別にして、希望した場合にのみ同意をするわけでありますので、その要件を設けることによって、希望しない人には適用しないことが担保されるわけでございます。

大岡委員 大変明快でございましたので、ぜひ周知をしっかりとしていただきたいというふうに思います。

 次に、正社員と派遣などの非正規労働との解雇規制における格差についてお尋ねをいたします。

 例えば、企業業績が低迷をいたしまして、いよいよ人員整理をしなければならない、そうしないと会社が倒産して元も子もなくなるという状況になったときに、現在では、裁判所の求めとしまして、合理性、妥当性、必要性とともに、まず先に派遣を切りなさい、契約社員を切りなさい、正社員についてはその後の話だとされております。

 これは解雇整理の四要件というふうに言われておりまして、特に最後の、解雇回避努力と言われるものは、同じ労働者でありながら、何とも言いようのない差別的なことが要求されておりまして、まさにこの解雇回避努力と言われたものに従って、リーマン・ショックのときには多くの派遣の方々が雇いどめになるという事態を招いたわけでございます。

 あなたはやる気も能力もあるけれども、残念ながら派遣だから切らせていただきます、もう一人の人はやる気も能力もないけれども、肩書が正社員だから最後まで守られますというのが、残念ながら今の状況なんですね。このように、人を見るのではなくて立場や肩書を見て解雇順序を決めているというやり方が、本当に制度として正しいのでしょうか。

 正社員が上で派遣が下とする従来のやり方を改めて、水平的で民主的で、そしてしっかりと人を見て、つまり、やる気と汗がしっかりと報われて評価をされる仕組みの構築の一環として、この立場による解雇規制の格差を見直すべきではないかと考えますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

山本副大臣 御指摘の整理解雇に関するルールにつきましては、正社員であっても、非正規社員であったとしても、ひとしく適用されるものです。

 ただ、おっしゃるように、裁判所におきましていわゆる解雇回避努力が幅広く求められる傾向にあるのは、勤務地や職務が限定されないことが多く、配転や出向など企業の幅広い人事権が認められるといった実態を反映いたしまして、いわゆる正社員の側に、長期雇用する、雇用継続をするといったことの期待権が形成されるといった我が国の働き方の実態が大きく裁判の判断に影響しているものだと私たちとしても承知をしております。

 こうした働き方の実態というのは、長年にわたる我が国の労使が築いてきた雇用システムの中で形成されてきたものでございまして、今後とも、当事者である労使の御意見を十分伺いながら、当然、働く人の雇用の安定がいたずらに損なわれることがないよう留意いたしまして、働き方をめぐるさまざまな問題といったものに取り組んでまいりたいと考えております。

大岡委員 ありがとうございます。

 これは大変丁寧な議論が必要でございますが、やはり多様な働き方をつくり出していく上では非常に重要な点でもあろうかと思いますので、今後も私も研究をしてまいりたいというふうに考えております。

 次に、派遣労働に対する一面的な見方が改まってくれば、この派遣という働き方にはさまざまな可能性が見つけ出せるものではないかと考えております。

 そのうち二つを挙げさせていただきますと、一つは失業者の派遣、そしてもう一つは障害者の雇用の増進でございます。

 まず、失業者の派遣につきまして、現在は、失業すると、一般的なケースですと、三カ月間は何ももらえない、雇用保険をもらえないわけでございますが、その後九十日間支給をされる。つまり、多くの場合は半年間仕事しないんですね。そうすると、当然、本人から見たら、半年も仕事しないと、スキルもやる気も低下をする。一番ベストなのは、失業してすぐ働き出すことでございまして、それが最もやる気もスキルも維持される、また生活もしっかりと維持されるということになりますが、残念ながら、雇用保険の制度がそうした運用を進める仕組みになっていないというのも事実でございます。

 そこで、失業した人に対して、直ちに派遣の仕組み、特に、紹介予定派遣、将来的に正社員になる派遣等を使いまして、失業期間をできるだけ短く、すぐに派遣で働き出してもらう、そのかわり、もらえなくなった雇用保険につきましては、派遣労働の期間に薄く広く乗せることによってその制度を使わないデメリットを解消する、そういった方法で、今回の派遣法が主眼に置いている正社員化という狙いを有効に活用する方法の一つとしてこの失業者の派遣、失業者に対して派遣を上手に使って正社員化を進めていくということがあり得るのではないかと考えますが、当局の考えをお伺いしたいと思います。

山本副大臣 紹介予定派遣につきましては、御存じのとおり、派遣期間中に、派遣先は、派遣労働者のいわゆる業務遂行能力等が直接雇用するにふさわしいかどうか見きわめることができる、他方で、派遣労働者は、派遣先における仕事が自分に合っているかどうかということを見きわめることができますので、双方にとってメリットのある制度であると考えております。

 そのために、紹介予定派遣を活用いたしました取り組みといたしまして、平成二十六年度から、就労経験の乏しい学卒未就職者等の若者を対象にいたしまして、派遣元での研修と派遣先での就労経験を通じて派遣先での正社員就職を目指す、若者キャリア応援制度というものに既に取り組んでいるところでございます。

 また、こうした取り組みもありまして、紹介予定派遣につきましては派遣先での就職に一定の実績が認められますので、今回、手続の簡素化等によりまして、さらに派遣先におけます正社員採用や直接雇用を後押ししていくという考え方で進めてまいりたいと思っております。

 冒頭に雇用保険とのリンクでおっしゃっていただいたんですが、雇用保険については、派遣に限らず早期に就職した場合に、再就職手当の支給等によって、早く就職すればさらにインセンティブが持たされるようなものが既にございまして、今後とも、失業手当がもらえるから、得をするからといった形でモラルハザードが起きないような形の運用をしてまいりたいと考えております。

大岡委員 ありがとうございます。

 こうしたことも含めて、派遣法の新しい活用の方法も含めて、今後しっかりと検討していただきたいと思いますし、そうすることによって、社会にも個人にも、また制度的にもメリットのある形というのが目指していけると思いますので、ぜひ検討を重ねていただきたいと思います。

 もう一つの可能性としまして、障害者の雇用の推進ということがあるかと思います。

 現在、障害者雇用は、法定雇用率、そしてそのポイント制度などがありまして、派遣はポイントにならないんですね。したがって、基本的には、直接雇用へ誘導するという仕組みになっております。

 しかし、障害を持つ方々というのは、健常者以上に職場の周囲の環境あるいは人間関係のマッチングというのが非常に重要でございまして、つまり、健常者以上に継続的に就業するということに対する困難があるわけです。

 そこで、派遣のよさを生かしまして、マッチングのよい事業者を上手に探していく、あるいは、場合によっては、ジョブコーチと障害者をあわせて派遣をすることによりまして、先方の事業所の環境整備をしたり、人間関係をしっかりとつくったり、今後も引き続きその障害者を受け入れられるような環境整備をしていく、体制整備につなげていくなどの活用も考えられるのではないかと思います。

 そこで、この派遣法改正を機に、派遣の強みを障害者の雇用の拡大に生かせるようなそういう取り組みができないか、法定雇用率やポイント制度の拡充、あるいはジョブコーチの活用、拡充などが考えられないかと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者の雇用を促進することにつきましては、非常に重要であると考えておりまして、ハローワークを中心といたしました障害者と企業のマッチングの促進や、短期間の試行雇用、お試し雇用でございますけれども、こういったことによりまして障害者雇用についての事業主の理解を促しつつ、その後の継続した雇用への移行を進めます障害者トライアル雇用事業などを通じて、きめ細かな支援を行ってございます。

 委員御指摘の、障害者を派遣する際に法定雇用率のポイントを拡充することにつきましては、例えば、派遣元の実雇用率にカウントするだけではなくて、派遣先の実雇用率にもカウントしてはどうか、こういった御意見も平成十九年当時の労働政策審議会においてございました。

 しかしながら、障害者である派遣労働者の方の実態調査をしてみましたところ、非常に少数であったことに加えまして、派遣先も含めました雇用率のカウントが障害者雇用の推進に資するのか疑問だということで慎重な御意見もございましたところ、結果的には、慎重に検討すべき課題とされたところでございます。

 安定的に障害者雇用率を達成するにつきましては、委員御指摘のとおり、直接雇用の方が方式としてはすぐれているのかなということもございます。あるいは、派遣先企業といたしましては、先ほど御紹介申し上げましたけれども、お試し的にやる場合にはトライアル雇用奨励金がいただけたり、あるいは、短時間、三十時間の短時間雇用をする場合でも、一人ではございませんけれども、〇・五人にカウントする、こういった制度もございます。

 御指摘につきましては、現時点では、実態をよく見きわめつつ対応すべき課題であると考えております。

 一方で、雇用機会の拡大により障害者雇用が促進することは、委員御指摘のとおり重要でございますので、派遣業も含めまして全ての業種におきまして、こうした助成金を積極的に御活用いただき、少しでも障害者雇用が進展するよう、制度の周知に引き続き努めてまいります。

大岡委員 ありがとうございます。

 平成十九年当時検討されたということでございますが、今回派遣法を変えるわけですよね。つまり、これまでと違って、上限のない派遣形態はなくなるということ、将来的に正社員を目指していくということであれば、先ほどもおっしゃったような、障害者を安定的に雇用していくことにも十分つながる今回の改正案だと思うんです。

 したがいまして、当然、改正後は状況が変わりますから、もう一度この点につきましても検討していただきたいと思いますし、このポイントも、単純に一ポイントを〇・五と〇・五に割るというだけではなくて、もう少し実態に即した、どちらがどれだけの人件費負担をしているのかということも含めて再検討していただければ、私は、十分障害者雇用につながってくると考えております。

 あわせて、ジョブコーチ等のいわゆる専門的スキルを持つ人たちは、それぞれの企業にはいないんですね。したがいまして、こうした方を一緒に障害者とともに派遣する、そして、このジョブコーチの方々もこの派遣労働を通じてスキルを高めていく、そして、その事業所の環境整備に全力で取り組んでいくということは、十分可能性の広がる話でございますので、ぜひ引き続き検討していただきたいと思います。

 最後に、法制定後の行政機関としての対応についてお尋ねをしたいと思います。

 今回は、いわゆる一〇・一問題等もありまして、法施行後の行政機関の対応というのが非常に重要になってまいります。

 まず、周知徹底につきまして、どのように対応されるつもりか、お答えをいただきたいと思います。また、各労働者、あるいは派遣先、派遣元から、さまざまな問い合わせがあるかと思います。その対応体制は今で十分なのか。また、苦情や係争が出た場合はどのように対応するのか。そうした指導体制、対応体制も含めて、十分な体制がつくれているのかにつきましてお答えをいただきたいと思います。

坂口政府参考人 今回の改正法案の成立をさせていただけますれば、今御指摘ありましたように、派遣元、それから派遣先、派遣労働者、その三者の方に対しまして、きめ細かく、厚生労働省あるいは都道府県労働局におきまして、ホームページでありますとかさまざまな媒体を工夫しまして、それからあと、業界団体等もいろいろ御協力をいただいて、制度の周知徹底ということをしっかり図ってまいりたいと思っております。

 それから、今御指摘ありましたような、さまざまな相談対応でありましたり、あるいは苦情等々への対応ということも必要になってこようかと思っておりますけれども、今回、先ほど来御指摘、あるいは御説明させていただきましたように、派遣元、派遣先、いろいろ新たに課せられる義務の着実な履行を図っていく、あるいは、相談対応ということに向けてしっかり対応していくということが必要でございますので、そういった業務を行う都道府県労働局の需給調整指導官というものが適切に対応できるように、必要な研修や適正な人員配置等を行うことによって専門性の一層の向上ということをしっかり図ってまいりたいと思っております。

 また、体制の関係についても御指摘がございました。需給調整指導官、今申し上げました担当者でございますけれども、近年、いろいろ増員を図らせていただいておるところで、例えば本年度、二十七年度には二十七名の増員ということを図っておるところでございますが、今委員御指摘がございましたように、しっかり対応していくということが必要でございますので、今後とも引き続き、必要な定員の確保に努めて、適切な指導監督、今御指摘のようなさまざまな対応ということができるようにしっかり努めてまいりたいと思っております。

大岡委員 以上で質問を終わらせていただきますが、今回の派遣法の改正を機に、法律をつくれば終わりということではございませんので、これにしっかり魂を入れ込んでいく。それは、まさに行政機関が、周知徹底も含めて、対応も含めて、また、新しいこの派遣を使った可能性も含めて、しっかりと探っていくということが何よりも重要でございますし、各地元地元の労働局あるいは労働基準監督署の対応も当然重要になってまいりますので、ぜひ引き続き努力をしていただきまして、この派遣法をすばらしい形で運用していただきますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。本会議に引き続きまして、厚生労働委員会で質問の機会をいただきました。心より御礼を申し上げたいと思います。

 早速質疑に入らせていただきます。

 今回、この派遣法改正法案、三回目の提出になるわけですが、報道でも与野党の対決法案だというふうに言われております。賛成、反対、それぞれいろいろな思惑があるのかもしれませんが、ずっとこれまでの議論を私は聞いておりまして、まずそこに見えてくるものは何かというと、非常にこの派遣法自体がまず複雑だというところ、なかなか簡単には理解しにくいというところがあるのではないかと思っておりますので、きょうは少し掘り下げて質問させていただきたいと思っております。

 まず最初の質問は非常にシンプルな質問ですが、今回の法改正は規制強化に当たるのか、それとも規制緩和に当たるのか、どちらでしょうか。

坂口政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の改正法案でございますけれども、内容的にも、まず、労働者派遣事業につきまして、現在は四分の三が届け出制ということになっておるわけでございますけれども、今後はこれを全て許可制とするということで、健全化と義務の履行の確保を図っていくということを盛り込んでおります。

 また、正社員を希望される派遣で働く方につきましては、その道が開かれるようにするために、派遣会社の責任を強化するということを盛り込んでおります。

 具体的には、いわゆる雇用安定措置という形で、派遣期間が満了した場合に、正社員になったり別の会社等で働き続けることができるような措置を設けるということ。それから、先ほども御答弁いたしましたけれども、計画的な教育訓練というようなものを派遣会社に行っていただくことを新たに義務づけるというような形で、派遣就労への固定化を防止する措置を強化するということにしております。

 さらにでございますけれども、みずからの働き方としまして派遣を積極的に選択されるという方もおられるわけで、そういった方につきましては、賃金等の面で派遣先の責任を強化するというようなことを通じて待遇の改善を図ることとしております。

 こういった形で、全体を通じましては、派遣で働く方の保護の観点から、必要な規制の強化をしっかり図っていくというものでございます。

伊佐委員 今の御答弁では、規制の強化がメーンだということだと思いますが、ずっといろいろなこの法改正の内容を見ておりまして、規制を強化するところと規制を緩和するところがまじり合っているところもあると思っています。ただ、先ほどの答弁のとおりで、ほとんどが規制強化、つまり、労働者を保護するんだという観点での規制強化だ、しかも、今までなかったようなことがさまざま取り入れられております。

 さっき例で挙げられましたように、今まで事業所の四分の三が届け出制というようなものを許可制にしっかりと一本化して、もし何か違反するようなことがあれば許可を取り消すことができる、これは間違いなく規制強化であります。

 また、雇用安定措置、これも、派遣期間終了後、これまでは、雇用を継続するような措置を講ずるようなことは全く何の措置も義務化されていなかったわけですが、これも強化。キャリアアップ支援、先ほども、なかったものを義務化していったということだと思います。

 ところが、一つだけ入りまじるところというのは何かというと、これが派遣期間制限、この期間制限のところだけが、規制強化の部分と規制緩和の双方が混在している。ここが非常に複雑にしていて、この法改正をわかりにくくしていて、逆に言えば、こういうところで意図的な批判というのも出てくるんじゃないかなと思っております。

 申し上げたとおり、この派遣期間以外のところについては、全部、派遣労働者の保護を目的とした規制強化が並んでいるわけです。だから、そこについては、新しい措置もたくさんありますので、これがおかしいんじゃないか、反対だと、この方向性について反対する人は恐らくいないんじゃないか。なかなかそこは反対しにくいんじゃないかと思っております。

 問題は、議論になる、争点になっているのは、この派遣期間、規制強化と規制緩和が混在している、ここをどう理解するかというところだと思いますが、ここを少し踏み込んで議論したいと思います。

 これまでの審議で私なりに感じたところは、そもそもの期間制限の大きな二つの目的、それは、まず一つ、常用代替防止という観点があります。もう一つは、派遣労働者の保護という観点がありますが、この二つの観点というのが混同されている議論もあったのではないかなと思っております。

 そこで、いま一度確認で質問させていただきますが、常用代替防止というのは、どういう趣旨で、もう一つの観点の派遣労働者保護とどういう関係にあるのかということについてお答えください。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘ございました常用代替の防止ということでございますけれども、これにつきましては、派遣先において、正社員から派遣で働く方への置きかえ、これが常用代替ということになるわけでございますけれども、これを防ぐということを主眼としておるものでございます。

 今回の改正法案では、具体的にこの措置を防止するために、今御指摘ありましたような期間制限について一定の見直しを行うということでございますし、その中では、特に事業所単位の期間制限を設けた上で、三年を超えて派遣で働く方を受け入れようとする場合には、過半数労働組合からの意見聴取というような手続についても新たに法的に義務づけるというようなことで担保していこうというものでございます。

 もう一方、今ございましたように、派遣労働者の保護ということにつきましては、まさしくこういったものとあわせましてでございますけれども、今回も、先ほど申し上げました雇用安定措置でありましたりキャリアアップ措置というようなものを派遣会社の方に義務づけるというようなことを含めて、派遣で働く方自身の正社員化でありましたり処遇の改善ということを図っていくという趣旨でございます。

伊佐委員 派遣労働者保護と常用代替防止の関係はどうなっていますでしょうか。

坂口政府参考人 お答えさせていただきます。

 常用代替防止そのものにつきましては、やはり派遣先の正社員で働く方との置きかえということに着目しているということでございます。

 一方で、今おっしゃったような派遣労働者御自身の保護ということにつきましては、まさに派遣労働者に着目して、今回、いろいろな形での法の規定ということを設けながらしっかり派遣労働者に対してのものを図っていくということで、直接的に裏表で規定が成り立っているということではございませんけれども、全体としましてその双方をしっかり今回は担保していきたいというものでございます。

伊佐委員 役所の立場ではっきりと言うのはなかなか難しいのかもしれませんので、少し私の方からも私の理解を申し上げさせていただきます。

 今ある事業所単位の期間制限、つまり最長三年と言われるものについては、これは、おっしゃっていただいたとおりで、常用代替防止。つまり、三年以上やれるような仕事なのであれば、これは派遣の仕事じゃないんだ、正社員の仕事なんだ、だから、正社員の仕事を守る、つまり、本来正社員の仕事を派遣に代替させちゃいけないんだという意味での常用代替防止、これが今の派遣法、今ある規定だというふうに私は理解しております。

 派遣法のこの常用代替防止こそが、これまでの派遣法の主な目的だったと思います。派遣労働者保護ではなくて、いかに正社員を守るか。これは、もともとの成り立ちもそうですし、また、そもそも派遣労働者を守るという規定も入ったのは最近ですから。

 例えば今回の議論でも、規制改革会議でも、こういうふうなことを言われております。派遣法の根拠はあくまで正社員の保護を目的としており、派遣労働者の保護とは必ずしも相入れないというふうに認めているところです。

 その上で、恐らく、正社員を守るという観点と派遣労働者を守るという観点、つまり常用代替防止という観点と派遣労働者保護という観点は、これはバランスをとるのが非常に難しい、どっちかを守ればどっちかが立たない、こういう観点もあるんじゃないかと思っております。

 派遣労働者保護、このもう一つの先ほど申し上げた観点というのは、さっき申し上げたような規制強化される部分、今回恐らく誰も反対しないだろうという部分については、しっかりと派遣労働者保護という観点でさまざまな新しい措置がとられるわけです。ところが、今回、期間制限の中で複雑になっているもう一つは、今まで事業所単位しかなかった期間制限を、個人単位の期間制限というものを初めて規定したわけです。これがまさしく派遣労働者保護の観点、つまり、常用代替防止ではなくて、派遣労働者を保護するという観点で初めて設けられた個人単位の期間制限だというふうに私は理解しております。

 では、個人単位の期間制限がなぜ派遣労働者の保護につながっていくのか。つまり、どんな個人でも三年たったら切られてしまうわけです、個人単位の期間制限というのは。これがなぜ派遣労働者の保護というものに効果を持つのかということについて答弁願います。

坂口政府参考人 お答えさせていただきます。

 今委員の方から御指摘ございましたように、先ほどの常用代替防止との関係で申しますと、先ほど御指摘があったように、これまでの現行法の期間制限、あるいは今回新たに組みかえた事業所単位の期間制限というものについてはまさに常用代替の防止からということでございますが、今御指摘の個人単位の期間制限ということを今回新たに設けるわけでございますが、これにつきましてはまさに労働者保護ということで、これは、今委員から御指摘ありましたように三年という上限ではございますけれども、逆の面でいくと、派遣労働者を派遣という働き方ということから固定化を防止するということがまず大きな部分であります。

 それをもう少しきめ細かく申し上げますと、実際、派遣で働く方にとってみると、三年ごとに必ず節目がやってくるということでございますので、御自身のキャリアということについてもしっかり三年ごとに見直していただく。

 もう一方で、派遣会社の方に対しても、今回、教育訓練を計画的に行うというようなことについても法的に義務づけるということでございますので、そういった規定と相まちまして、派遣で働く方について、この三年という個人単位の期間制限によってキャリアアップにつなげていただく、そして、節目節目にちゃんと自分のキャリアの見詰め直しをしていただくというようなことを通じての派遣労働者の保護ということをしっかり図ってまいりたいということでございます。

伊佐委員 ここは非常にわかりにくいところだと思いますが、私が理解していますのは、有期の反復雇用、つまり、有期でずっと反復、何度も何度も限られた有期雇用が反復反復で繰り返されるという状況が一番不安定だというふうに思っております。こういうものをどうやって脱していくのかという観点でこの個人単位の期間制限というものが設けられたというふうに理解をしています。

 よく、今までの質問を聞いておりまして、例えば、個人単位の期間制限があっても、派遣先企業で三年ごとに人をかえれば、同じ業務に派遣労働者をずっと配置し続けることができるんじゃないか、だから常用代替防止にならないんじゃないかという批判もありますが、そういった意味で、結局、個人単位の期間制限というのは常用代替防止が目的ではないわけです。あくまで派遣労働者保護の観点を目的にしておりますので、そこはしっかりと区別をしながら理解していく必要があるんじゃないかなと思っております。

 さらに言えば、二十六業務の話でも、例えば、よく議論がありますのが、今まで二十六業務に該当してずうっと安定して雇用されていたんだ、ところが今回、二十六業務を撤廃して、期間制限が全員三年というふうになった、不安定じゃないかというような批判もあるわけです。

 でも、これは中身を見てみますと、二十六業務で期間制限がないと言われている人たちは、派遣全体の中で四割。ところが、期間制限がないにもかかわらず、ちゃんと無期で雇われている人というのは一七%しかいない。そのほかの方々というのは、期間制限がないと言われているにもかかわらず、有期で、しかも有期が反復でどんどん雇用されている、次は果たして契約更新されるのかどうか、常に不安の中で仕事をされているというふうな状況です。

 今回は、無期でずうっとやっていた方々、一七%の方々だって、無期雇用するのであれば、これは全て期間制限が撤廃されます、例外になりますので、このまま一七%の方々が無期雇用されれば、同じなわけです。いや、それどころか、今までなかったキャリアアップ措置というものが提供されることになる。だから、今まで無期だった人にとってもプラスなわけです。

 さらに言えば、先ほど申し上げた雇用が反復反復されている方々、こういう方々にとってみれば、キャリアアップ支援というのも新しくできるし、雇用安定措置というのも提供されるしという意味で、いずれにしても、いずれの立場から見ても一歩進んだものになるんじゃないかというのが私の理解です。

 もう一つの批判について少し質問させていただきますと、よく、こういう批判もあります。今回は、まず、事業所単位の派遣期間は三年です。だから、三年で過半数組合の意見聴取さえすればどんどん延長できるじゃないか、どんどん延長可能じゃないか。つまり、派遣のポジションが常用代替防止できずに残り続けるじゃないか。さらに、一方で個人期間制限というのがあって、個人は三年間で絶対切られるんだ、派遣というポジションがずっと残り続けるのに、個人は三年で切られる、これは非合理じゃないか。これがよく言われる批判です。

 ここで私ちょっと振り返ってみたいのは、平成二十四年に労働契約法が改正されました。この労働契約法でも実は同じような議論があったと私は思っております。当時、民主党政権下で大きな争点の一つになったのが、無期労働契約への転換、十八条の話です。改めて、労働契約法十八条の無期労働契約への転換、この意義、そしてそのときの批判について伺いたいと思います。

岡崎政府参考人 御指摘の労働契約法第十八条でございますが、これは無期転換ルールということで、同一の使用者との間で有期労働契約が五年を超えて反復継続するという場合には、労働者の申し込みによって労働契約が無期契約に転換するわけでございます。

 その趣旨というか意義でございますが、有期労働契約の濫用的な利用を抑制する、そして有期雇用労働者の雇用の安定を図ろうということでございます。

 ただ、この議論の際に、では、五年を超える前に雇いどめを招くのではないかという御懸念が示されたというのは事実でございます。このところにつきましては、そういう懸念がないような形でしっかりと企業が対応するような対応ということが求められてきたということでございます。

 労働契約法には、第十九条という雇いどめの法理を定めた部分もありますので、こういったものを含めてしっかりと企業に認知していただきまして、有期雇用労働者の安易な雇いどめということがないようにというようなこと、あるいは、無期雇用への転換を目指す企業に対しましていろいろな支援をしていく、そういう対応を現在しているということでございます。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

伊佐委員 つまり、無期労働契約への転換。平成二十四年の議論のときには、先ほどおっしゃっていただいたとおりで、五年を超えたら、労働者は私は無期で働きたいんですというような申し出をすることができて、それを受理しなきゃいけない、こういう契約をしなきゃいけない。つまり、五年を超えると無期に転換しやすくなる。それに対する批判というのは、五年直前で雇いどめになるじゃないかという批判だったわけです。ところが、これは平成二十四年には成立した。これは実は、今の労働契約法の改正も、本来の趣旨、第一趣旨というのは、無期転換しなさいという趣旨だったと理解しています。

 同じように、今回の派遣法も、個人単位で三年で切られるじゃないかというのが本来の趣旨ではなくて、無期は除外されますから、無期転換すれば期間制限はないわけです。そういう意味で、無期転換をできるだけしてあげなさい、正社員を目指していく中で、まずは無期転換をしてあげて、今までの反復反復で契約が繰り返されるような一番極度な不安定な状況からまず無期転換してあげて、その上で正社員を目指していく。私は、これが今回の一つの意味じゃないかなというふうに理解をしております。

 次に、では、そのときに重要なポイントになりますのは、無期となったときに、無期契約の立場がどうやって守られるかということです。

 先ほど申し上げたように、労働契約法の趣旨、無期転換しなさいよという趣旨もあります。我々公明党も、目指しているものというのは、期間の定めのない労働契約にどんどん転換していくべきだというふうに思っております。

 ただ、問題は、無期という契約であったとしても、派遣元と無期契約をしています、ところが、派遣先から、もうあなたは必要ありませんと言われたときに、派遣先との契約終了という時点で、派遣元との無期契約も、解雇といいますか、契約解雇というようなことがあってはならない。それだったら、何のための無期契約なのかということになります。

 こうした無期雇用派遣について、派遣契約の終了をもって解雇になるような、こういうことをしないように、させないようにするのが重要だというふうに思っていますが、それはどう担保されるでしょうか。

坂口政府参考人 今先生の方から御指摘があった点につきましては、今回の改正法の議論をいただいた労働政策審議会の方でも、公労使の先生方の方でもまた御議論をいただいたところでございます。

 それで、労働政策審議会の建議におきましても、無期雇用の派遣労働者をめぐってということで、派遣元事業主は、無期雇用の派遣労働者を派遣契約の終了のみをもって解雇してはならないということを指針に規定する、それからまた、派遣契約の終了のみをもって解雇しないようにすることを許可基準に記載することが適当であるという建議を御頂戴しておるところでございます。

 私どもとしましては、この建議を踏まえまして、今委員も重要ということでおっしゃっていただきましたけれども、このような措置を講ずることによって、無期雇用派遣労働者の雇用の安定をしっかり図っていくというようなことを考えてまいりたいと思っております。

伊佐委員 恐らく、その建議を実現するため具体的にどうしていくか、省令で書いていくのか、通達でするのかとか、あるいは指導でやるのか、この辺はこれからの議論じゃないかと思いますが、しっかりとそこは担保していただきたいと思っております。

 次は、均等待遇、均衡待遇。これもずっと議論がありました。これまでの国会答弁でも何度も質問がありまして、先日の本会議では全員がこの質問をしたというふうに私は認識しておりますが、そのときの答えは、全員当然同じ答えですが、一つの重要な考え方です、ただ、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し責任を負っている労働者と経験の浅い労働者とで賃金を同一にすることについては、直ちに広い理解を得ることは難しいというような答弁だったと理解しております。

 では、有期と無期、派遣じゃなくて有期と無期の雇用の関係を今申し上げると、労働契約法二十条というのがあって、有期と無期、この雇用形態の差で不合理な労働条件の相違を設けることは禁止というふうに書かれております。均等待遇まではいかないにしても、少なくとも、形態の差で不合理な条件は禁止だというふうに書かれている。より均衡から均等に肉薄するような、こういう表現があるわけですが、残念ながら、派遣法というのは今ここまでは書いていない。書いているのは、あくまで、労働条件の相違というものを説明する義務、あるいは配慮義務ということで、有期と無期との関係、均等待遇の関係からすると、ちょっとまだ一歩おくれているところじゃないかなと思っております。

 では、均等待遇を実現するための壁になっているとよく言われるのが、我が国の雇用慣習とかというふうに言われておりますが、有期と無期ならここまで書ける、でも、派遣との間ではここは書けないというのはなぜか、伺いたいと思います。

坂口政府参考人 失礼いたします。

 今委員御指摘のように、有期と無期の雇用の労働者の関係ということにつきましては、労働契約法の二十条というところで規定があるわけでございますけれども、派遣の問題ということにつきまして言いますと、派遣という働き方というのが、いわゆる派遣労働者の派遣元、派遣会社に雇用されて、それで、いわゆる派遣先の指揮命令を受けるということで、雇用者と使用者が異なるという形態であるということが圧倒的に、有期、無期の関係との比較対照において、派遣という働き方というものの独特の働き方ということがございます。

 こういう形になっておりますので、派遣で働く方の賃金などを決定するのがいわゆる雇用している派遣会社ということになるわけでございますけれども、そういう状況の中で、指揮命令をしている使用者との関係が出てくる、いわゆる使用者というのが派遣先でございますけれども。ということでございますので、比較対象となる派遣先の労働者の賃金情報等をきっちり比較していくためにどう入手していくかということがなかなか難しいというような部分もございます。

 それから、今申し上げました、派遣先における労働者との均衡を比べていくということになりますと、その比較対象となる労働者をではどうやって特定していくのかということがまた、雇用者と派遣先という形での、雇用形態が異なる中での特定をしていかなきゃいけないということで、困難。

 それから、同じ派遣会社の派遣労働者の中で派遣先が異なって派遣される方がおられますので、今度は派遣会社の中での派遣労働者間の待遇のバランスをどうするかというような問題もあるということで、これは、有期と無期との違いのみならず、派遣という働き方に着目した幾つかの難しい課題があるということでございます。

伊佐委員 今のお話、つまり、本来労働者と契約をしている派遣元になかなか情報が、そもそも比較するようなものがないんだ、そこがなかなか大きな、一気に均等待遇にいけない、この条項が書けない一つのポイントじゃないかというお話だったと思っております。

 答弁されませんでしたけれども、でも、今回のこの法案で一歩進んでいるのは何か、書けなかったけれども一歩進んだのは何かというと、まさしくその原因、つまり、派遣元に対して今まで派遣先の情報提供がなかなか、では、どういった仕事で、どういった待遇で、賃金がどれぐらいで、これを情報提供するのはやはり企業は相当嫌がります、嫌がる中で、今回初めて義務化というものを導入してきた。

 つまり、賃金についても何についても、派遣先は派遣元に対して、この人をこういう処遇をしていますよ、ほかの人たちはこういう賃金を持っていますよというものを、経済界の反対は相当あったんでしょうが、そこに一歩、手を突っ込んで、ここをしっかり義務化していったというのは、均等待遇に一歩でも近づく努力をされているんだというふうに私は認識をしております。

 いずれにしても、派遣、雇用形態によって、同じような価値労働をしているのに処遇に差があるというのは、我々はこれを、最終的には均等待遇は目指すべきだと思っておりますので、ぜひ、またさらに一歩一歩と進めていただきたいと思います。

 最後に、大臣に申し上げたいと思います。

 今さまざま議論させていただいたとおり、今回の法改正で、二十六業務の撤廃を含めて、シンプルにしたところもあるんですが、その多くの部分というのは非常に複雑に絡み合っている。規制強化と規制緩和、あるいは正社員と派遣労働者の権利というものですが、これは、我が国だけではなくて各国いろいろ苦労しているんじゃないかと思っております。

 よくドイツの例が挙げられますが、ドイツは二〇〇三年に派遣期間の上限を撤廃して、その後、派遣労働者がふえていった。ところが、再度上限を再設定しようという方針を定めたら派遣労働者の増加がとまったというふうに言われておりますが、私は必ずしもそうじゃないと思っておりまして、その間、リーマン・ショックもあって、派遣の労働者数というのはどおんと減っているわけです。つまり、結局、いろいろな要因があって、経済情勢とかさまざまな要因があって労働者の数がふえたり減ったりというのがあるんだろうなと思っております。ドイツはもともと派遣の期間制限を撤廃したのは、当時失業率が高かったので、これをいかに抑えるか、派遣で吸収しようとしたわけです。ところが、結局うまくいかなかった。

 そういう意味では、ほかの国各国を比べてみても、やはり派遣労働の立ち位置というのは非常に、いろいろなバランス、いろいろな要素を考えながら苦労しているんだろうなと思っております。

 この労働法制というのは、私は、こうすればこうなるというものはなかなか難しい。法改正をすればすぐに派遣が減るのかといったら、そうとも、そう簡単に言えるものじゃないだろうと思っております。恐らくいろいろな状況があると思うんです。

 いずれにしても、今回、今国会ではほかのさらにまた複雑な労働法制も抱えておりますので、一番大事なことは、国民の皆さんにわかりやすいような、丁寧な説明をしていただけるのが大事だろうと思います。

 最後に御所見を伺って、質問を終わります。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 今先生御指摘のとおり、労働法制というのはなかなか一般の国民にはわかりづらい、複雑な法律でもございますので、労働者それから使用者、双方にとって正しく理解をされて、そして、その国々のそれぞれの文化やあるいは経済の実態に合った形で円滑に運用されるということが重要だろうと思うので、そういう意味では、法制を変えるということは、丁寧な説明が大変大事だということは先生今御指摘のとおりであります。

 したがって、今回の労働者派遣法の改正のこの案についても、労使双方を含め、国民の皆様方に丁寧に説明していくことが重要でありますし、それぞれの働き方を皆さんされている、既に派遣で働いていらっしゃる方々もたくさんおられるわけでありますから、そういう方々を含めて、しっかりと丁寧に説明をして御理解を賜ってまいりたいというふうに思います。

伊佐委員 以上、終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省スポーツ・青少年局長久保公人君、厚生労働省職業安定局長生田正之君、職業安定局派遣・有期労働対策部長坂口卓君、雇用均等・児童家庭局長安藤よし子君、保険局長唐澤剛君、国土交通省大臣官房審議官舟引敏明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 一般質疑ということで、三十分時間をいただきましたので、質問させていただきたいと思います。

 まず冒頭、昨日の夕方、閣議で、名づけられた名前は平和安全法制、私たちはこれは日本が戦争できる国にするための法制だというふうに思っておりますけれども、これが閣議決定をされました。聞くところによりますと、新法を含めて十本もの法律が一本の法律として、物干しざおのようにぶら下がって提出をされてくる、そして、極めて乱暴なやり方だと思いますけれども、審議が始まってくるというようなことだそうでありますけれども、実は、提出されようとしているこの新法の中で、医療、宿泊、施設の利用など、厚生労働省及びこの厚生労働委員会にかかわってくると思われる部分が非常に大きいというふうに私は思っています。

 まず、昨日の閣議決定に抗議をしつつ、今後、この議論の中では、厚生労働省も、あるいはこの厚生労働委員会も非常に重要な議論の一翼を担っていかなければいけないというふうに思っておりますので、そのことはまず冒頭申し上げておきたいと思います。

 そして、二点目ですけれども、先ほど大臣から、委員会の冒頭、一〇・一ペーパー問題について、答弁が間違っていたということで、その訂正とおわびの発言がありました。私は、そのこと自体は了として受けとめたいというふうに思います。

 しかし、問題は、既に配られてしまったそのペーパー、厚生労働省の中で冬に作成されて、そして、なぜ九月一日に労働者派遣法の改正案が施行されなければいけないかという、その本当に重要な問題について説明するペーパーで、多くの議員、複数の議員のところに説明資料として回られているという実態が既にあるということなんです。

 ですから、厚生労働省は、このペーパーが間違っていたということで、二月中に配付したこの資料について、ようやくゴールデンウイークになって、改めて資料を作成し直して、何と各議員のところに、今度、説明して回り直すということではなくて、ポストに入れてそれで終わりというようなやり方でありますから、これは私はとても大きな失態だというふうに思います。

 ぜひここは、もう一回説明をし直す、そして、労働者派遣法が、きちんとみんなが同じ前提で、頭の中がきちんと整理された状態で法案審議に入れるようにということを、まず冒頭、強く申し上げたいと思います。

 またこの点については我が党の他の委員からも質問があるかというふうに思いますので、そちらの方で議論をお願いいたします。

 さて、先ほど法案の質疑ということで一時間質疑が行われまして、労働者派遣法の改正案について幾つかの議論がありました。

 私は、労働者派遣法は、多様な働き方を働く人たちに提供するという極めて耳ざわりのよい言葉で飾り立てられてはおりますけれども、労働者の権利、そして女性の権利ということからすれば、やはりこれは大変大きな問題がある制度だというふうに思っております。

 この労働者派遣制度ができ上がった過程は、まさに日本が右肩上がりの経済成長を続けていた時代で、そしてその中で、男性が外で仕事をし、女性は家庭の中で家事や育児や介護をする、こういう性別役割分業意識というものが根強くあった。そこにもってきて、スキルを持った女性もいらっしゃるわけであります。専門的な業務、通訳ですとか、いろいろなその仕事をされている方々がいらっしゃる中で、自分の都合のいい時間帯を使って外に出て働くということは、まさに性別役割分業意識とぴったり鍵穴が合うように、マッチしたように社会の中に広がってしまった。

 それがどんどんどんどん専門業務以外のところにも広がってきてしまって、今や本当に、一つの職場の中で正社員の方もいれば派遣労働者の方もいる、またパートやアルバイトの方々もいる、そして、一人一人がどのような仕事をしているかを全く問わず、責任の重さがどうであるかを問わずに、雇用形態が違うということで分離、分割されてきてしまった。そしてその中で、均等待遇というものが置き去りにされて、均衡待遇というものだけが議論の俎上にのってきたということで、本当に雇用が分断されてきた数十年間だったというふうに私は思っているんです。

 ですから、今回は、この労働者派遣法の改正案の中で、常用代替の防止ということ、それから臨時的、一時的であるという原則、この労働者派遣の原則である二つの原則が、派遣業務の制限が撤廃されたこと、そして派遣期間の制限がなくなってしまったこと、このことによって本当に大きくねじ曲げられてしまったというふうに思っています。大変大きな問題であります。

 私は、きょう、この派遣制度のことについて、そして派遣法の改正案について少し触れながら、その中身についても少しだけ質問をしたいというふうに思っておりますけれども、まず、労働政策審議会の議論の過程についてであります。

 今回の労働政策審議会分科会では、派遣業界の代表者の方が二名オブザーバーとして加わって発言をされてきたというふうに聞いております。聞くところによると、その派遣業界の代表者の方が発言しているボリュームが非常に大きい。言ってみれば利害関係当事者でありますよね。そうした方々の発言が極めて長い時間を占めたと言われている労政審でまとめられた建議、それからそれに基づいて今回提出されている法案、これについては私はやはり問題があるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、この点については、大臣はどうお考えですか。

塩崎国務大臣 今回のこの改正法案に至るまでの審議は、当然のことながら労政審で行われてきたわけでありまして、そこの中で議論を尽くして建議として方向性が示されたわけで、それに従って法律をつくらせていただいている、こういう理解でございますので、公労使、この三者構成による労政審における審議に基づく今回の改正ではないかなというふうに思っておるところでございます。

西村(智)委員 労政審の中でさまざま議論が行われたということを厚生労働省の側は言うんだというふうに思いますけれども、私はやはり、今回の労働者派遣法というのは、派遣業界の方の意見よりは、むしろ聞くべきは、派遣で働いていらっしゃる方々の実態がまさにみんなが共有する情報として議論されるべきだったのではないか、その実態をつかんだ上で今回の審議会は進められるべきではなかったのかというふうに思います。

 残念ながら、大臣も、派遣労働をされていらっしゃる方々の意見はなかなか聞く機会がなかったというふうに漏れ聞いております。法案が作成された後でようやく何人かの方とお会いになったということなそうでありますけれども、それではやはりちょっと遅いんじゃないでしょうか。

 だから、この法案の中身は、雇用安定措置という名のもとで、さまざま派遣元あるいは派遣先についていろいろなことが求められてはおりますけれども、言ってみれば絵に描いた餅に終わってしまっている。それが大きな問題だということなのであります。

 私は、今回の改正案の中で規定されている雇用安定措置、これについては、実効性は大変疑わしいというふうに思います。

 昨日ですか、我が党の部門会議で法案ヒアリングを行いまして、そこで説明を受けたんですけれども、雇用安定措置として、派遣元に対して、派遣期間が一定期間に達する有期雇用派遣労働者については、以下のいずれかを実施する責務を新たに課すということで、一、二、三、四、このように四つの項目が挙がっておりまして、派遣先への直接雇用の依頼をしたときに、直接雇用されなかったときは、そのほかの措置のいずれかを講ずるものとするということになっているんですね。

 つまり、これは何かというと、依頼をすればいいということ、あるいは、依頼をして断られたら、それ以上の義務はそこにはもう何も課されていないということなのであります。義務違反に対しては指導するというようにも厚生労働省は言っておりますけれども、私はこれは、厚生労働省が派遣元に対して指導するだけではなくて、本当は派遣労働者の権利としてきちんと書き込まなければいけないということなんだと思うんです。

 これは、裁判なんかになりますと、必ず争点になるのはそこです。派遣労働の方が、例えば職場でいろいろな問題が起きて不条理なことが起きた、訴訟に持ち込んだときに、裁判で勝てるかどうかというのは、それがまさに権利として法律に書かれているかというところが大きな肝になるわけですから、そこはやはりしっかりと担保をしなければいけない。

 これが、雇用安定措置が図られ、そしてそれによって本当に派遣労働者の雇用が安定するという担保、それが派遣労働者の権利であるということは、今回の改正案のどこに書いてあるのでしょうか。

塩崎国務大臣 今回の雇用安定措置というのは、今まで、現行法では派遣元は派遣期間終了後の雇用継続を図る責務がなかったというところが、派遣労働の雇用が不安定な原因の一つになっていたというふうに思われるわけでありまして、そして、そういうことを踏まえた上で、初めて、派遣労働者の雇用継続を図る派遣元の責務を創設したというのが今回のこの雇用安定措置でございます。

 今回の改正案における雇用安定措置は、同じ職場で三年派遣で働いた方が引き続き就業することを希望する場合には、雇用の安定を図るための措置を講ずることを派遣会社に新たに義務づけるものでございますけれども、今、労働者の権利としての位置づけはどうだ、こういうお尋ねでございましたが、これは、労働者派遣法がそもそも事業を規制する法律でございまして、法制的には、労働者の権利として位置づけるものではなくて、派遣会社の措置義務として位置づけるものでございます。

 労働者派遣事業については、現在四分の三が届け出制となっておりますけれども、今後は全て許可制とすることとしておりまして、許可制を通じて雇用安定措置の履行もしっかりと確保してまいりたいというふうに考えておりまして、今、権利として条文化がどこにされているのかという御質問に対しては、これは事業規制法でございますので、派遣会社の義務として定められているということでございます。

西村(智)委員 大臣みずから、今、実効性がないということをお認めになった、権利としては書かれていないということをお認めになったわけであります。

 ですから、雇用安定措置というふうに名前を変えても、看板をかけても、これは何の実効性もない、また、これをもって本当に派遣で働いていらっしゃる方々が安定した職場で安心して働き続けることはできないということが明らかになった、残念ながら、そう申し上げざるを得ません。

 そして、キャリアアップ支援というのも、今回は、新たな支援策といいましょうか、推進をされるということであります。

 しかし、これも先ほどと同じ話なんですけれども、派遣労働者の方一人一人に着目をしたときに、先ほどの雇用安定措置、そして私が今から話をしますキャリアアップ支援、これは、本当にもっと実効性のあるものとして書き込まなければ、うそじゃないか。名前だけ、キャリアアップ支援だとか雇用安定措置だとか言っておきながら、それは業を支援するものであるということにとどまってしまっているわけですから、派遣で働いている方々には、言ってみれば、どれくらいのその後の労働条件の向上に実際つながるかということは全く見えないわけですね。

 このキャリアアップ支援についてなんですけれども、これも私は本当に不思議に思っています。

 派遣元が派遣労働者に対して教育訓練とかキャリアコンサルティングを行う、そういった義務違反に対しては厚生労働省がまた指導するということなんですけれども、これは、派遣元が、みずからが持っている派遣労働者に対して本当に中身のある教育訓練あるいはキャリアコンサルティング、こういったものを実行してくれることになるんでしょうか。私は、そこは大変疑わしいと思います。

 なぜかといいますと、例えば登録型派遣は、教育訓練などを幾らやっても、その投資をどのくらい回収できるかというのは、登録でその都度ということになりますから、これはなかなかわからないわけであります。

 例えば、派遣労働者に対して派遣元が一生懸命教育訓練をやったというときに、競合しているほかの会社からフリーライドされたりしてしまったらということを考えると、私は、派遣元自身に派遣労働者に対する教育訓練をやるインセンティブというかメリット、これはなかなか生まれないと思うんですよ。

 そこを厚生労働省が、指導とか、あるいは許可制にするからということで、申請だとか更新だとかということをちらつかせながら指導するということでは、これは新たなイタチごっこを生むだけで、本当に派遣労働者のための制度ではないというおそれがあります。

 これについては、大臣、どうお考えですか。

塩崎国務大臣 先ほどの話にちょっと戻りますけれども、何人かの方々あるいは何社かの方々から私も派遣の実態、派遣で働くことの実態についてもお話を聞きましたが、やはり今までの状況を見てみると、先生今御指摘のとおり、必ずしもキャリアアップの努力を派遣元はしていないケースが散見をされるというか結構あったということは、私も問題意識として持っておりました。

 そこで、今回このような法改正をさせていただいて、今まで、例えば正社員化のためにキャリアアップをするということを派遣元に対しては何ら義務化をしていなかったわけでありますけれども、今回は、教育訓練あるいはキャリアコンサルティングを許可要件として、教育訓練等を義務として創設すること自体が、今までとは全く違う措置として大きな意義があると私たちは思っています。

 なおかつ、この許可要件という前提は、何度も言っているように、今回は、四分の三が届け出だったものを一〇〇%許可制にするということでありまして、許可をする際に、そもそもキャリアアップに向けた教育訓練等の仕掛けを持っていないところは許可をされないということにまずなるわけであります。

 そういう中で、キャリアアップに向けての教育訓練をやってもらうということになるわけでございますので、これは今までとは全く違うことでありますし、教育訓練は当然、義務でありますので、有給、無償で行われるということになるわけでありますから、これまでとは違う、全く違うということをまず御認識をいただければありがたいなというふうに思います。

西村(智)委員 私は、派遣元も業として一つの会社を運営しているわけですから、自分の会社の利益を最大化するためにいろいろなことを考えて経営をやられるというふうに思うんです。その中で、厚生労働省が義務として創設するということなんですけれども、会社自身になかなかインセンティブというものが生まれてこない仕組み、労働者派遣という仕組みの中でもうそれは持って生まれた性格なんですけれども、やはり私は、このキャリアアップ支援も本当に実効性に乏しいものになるというふうに思います。

 また、そのことを通じて本当の意味で均等待遇につながるのかということは、どこにも担保されていません。均等待遇につながっていくということがこの法律のどこかに書いてあるのであれば、私は、キャリアアップ支援もそれは意味をなしてくるというふうに思います。雇用安定措置も意味を持ってくるというふうに思います。だけれども、均等待遇というものが全く書かれていない。そして、派遣労働者の皆さんが、例えば何かあったときに派遣元や派遣先に対してそれを権利として要求することができるという仕組みがないわけですから、これはもう絵に描いた餅でしかないというふうに私は断言をいたします。

 派遣労働者の実態を、大臣は先ほど何人かの方から聞いたというふうにおっしゃいました。賃金が下がっています。過去十年くらいのスパンで見ても、単価が、時給が下がっている。そして、生活と仕事の両立が非常に難しい。特に女性へのセクハラ、これは大変深刻です。先ほどもありましたけれども、派遣元が派遣先にいろいろな気を使って、何か相談事があったとしても声すら上げられない。また、派遣労働をしている人たちも、何か自分が一言言ったらすぐさま派遣が打ち切られてしまうんじゃないかというその不安で、言い出すことができない。

 これは、連合が行った調査でいいますと、例えば、育児休業を申し出る、あるいは妊娠をしたということを申し出るときに、正社員の人は、会社の上司に言うときに少し言いにくいという気持ちがあるんだけれども、派遣で働いている人たちは、正社員の人たちよりももっと高い割合で、やはり自分がそういうことを言い出したら派遣が打ち切られるんじゃないかということを非常に不安に思っていて、言い出しにくいと。保育所に預けられないから、本当は働きたいんだけれども働けないという実態もある、こういうこと。

 そして、社会保険の適用ですとか、それに関する差別なんかもさまざまありますし、それから、労災補償を申請したときに、やはり派遣労働者というのは労働の実態がなかなかつかみにくいということもありますから、本当に不条理な働き方を強いられているというのが、私は、今の日本の労働者派遣制度の実態なんだというふうに思います。

 今回の改正で、厚生労働省は、これで正社員への道が広がるんだというふうに胸を張っています。しかし、これまでの実態を見ても、派遣社員の方を正社員へと転換した企業は本当にごくわずか、一握りでしかありません。

 また、総務省の労働力調査を見てみますと、そもそもが非正規で働いた人が正規社員へと転換される人数は少ないんですけれども、その中でも、例えば平成二十二年から平成二十六年の五年間のスパンをとってみても、派遣社員から正社員へと転換する人の人数は減っているんです。この五年間で半分ぐらいになっているんです、毎年毎年。こういう実態の中で、本当に正社員への登用というのが進むのか。

 そして、私は、これからもまた問題になってまいりますいわゆる一〇・一問題、申し込みみなし制度が十月一日から施行されることになっているということで、これに期待をしている派遣労働者の方がやはりいらっしゃるということを大臣はしっかりと受けとめてもらいたい。そういった皆さんの希望を言ってみれば踏みにじるようなことをして、今回、法改正をして、この申し込みみなし制度を言ってみれば潰してしまうような、派遣労働をしている方々の思いを潰してしまうような法改正は、私はやはりあってはならないというふうに思います。

 大臣への質問は、今回、改正によって、みなし規定の適用の幅は狭まることに残念ながらなってしまいます。これらを通じて、今私が申し上げたような現状、派遣社員から正社員に転換される人は極めて少ないということ、そういうことを実施している企業も少ないということの中で、本当に正社員への登用というのが進んでくるのかどうか。これについて、本当に大臣は、これから正社員への登用が、今までは減ってきているけれどもこれからは進むんですということを断言することができますか。

塩崎国務大臣 今回の派遣労働についてでありますけれども、もともと派遣労働は多様な働き方の一つであることは言うまでもないわけで、正社員を希望する人もいれば、また逆に、臨時的、一時的な働き方として派遣を積極的に選んでいる方も、私が会った中にも何人かはやはり、むしろ派遣の方がいいんだという、家庭の主婦が働くとかそういう場合の働き方としてはそちらの方がむしろありがたい、フルタイムで働くことは子供の関係で難しいというようなこともおっしゃるわけでありますので、なかなか難しいと思うんです。

 しかし、いずれにしても、正社員化を希望している人が正社員への道が開かれるかどうかというお尋ねだと思いますのであれですけれども、派遣会社に関して、今回、今申し上げたように、今までなかったものとして、まず雇用安定措置も導入をすることにいたしました。これは直接雇用の依頼を含むわけであります。それと、正社員化を含むキャリアアップの措置として、先ほど来申し上げております教育訓練、キャリアコンサルティングの実施を、これも新たに法律で義務づけるということをしている中で、派遣就労への固定化を防ぐための措置を強化しているということであります。

 先ほど申し上げたとおり、今までがよかったということを決して言っているわけではないわけで、問題があったことはよく理解をした上で、さらによくするためにやろうじゃないかということで今回の改正をさせていただくわけであります。

 まず、許可制というのも、今申し上げたように、キャリアアップのための義務を新たに課すという中で、それぞれがキャパシティービルディングをしていただければ、恐らく派遣元も、こうやって義務化されれば、どこが正社員になる率が高いのかとか人数が多いのかとか、当然のことながらこれは競争にもなるというふうに思うんですね。ですから、そういうようなことで新たな義務を課す、そして、許可制を初め新たな規制を強化する、そういう中で、正社員になる手だては今までよりもはるかにふえているというふうに思います。

 結果としてどうなるのかということは、さっきお話がちょっとございましたけれども、いろいろな諸要件によって、あるいは御本人の希望にもよりますし、いろいろな形でどうなるかというのは、数字の上でふえるか減るかというのは、それはまた別問題であります。

 ただ、今はっきりしていることは、働き盛りの五十五歳以下の方々の中では、たしか八四半期だったと思いますが、正規から非正規になるよりも、非正規から正規になる人の方が多くなっているというのが昨今の事情でございますから、経済全体が伸びている中で今そういうことが起きて、むしろ、非正規ももちろんふえてはおりますけれども、非正規から正規になる方々も大変ふえているということも事実であることを加えておかないといけないというふうに思います。

西村(智)委員 厚生労働省が義務を課すことによって新たに民間企業の競争が生まれるなどという話は、私は聞いたことがありません。

 それから、これで派遣労働者がふえるか減るか、それは経過を見るというような大臣の発言は、非常に無責任だというふうに思います。

 私は、やはり今回の労働者派遣法というのは、極めて大きな、制度的といいましょうか構造的といいましょうか、そういった問題をはらんでいるこの日本の雇用慣行の中で、派遣労働者の皆さんが本当に不条理な思いをして働いていらっしゃる、それを解消するものでなければならないというふうに思いますし、また、本来であれば、均等待遇を実現するということ、そして、働いている人の権利を守るために何ができるかということのために今回は知恵を出すべきだったのではないかというふうに思います。

 労働条件の提示等々を派遣先が行うということ、これは義務化された。これは一定の評価はできるというふうに思います。だけれども、問題は、労働条件と乖離している派遣労働の実態があるということなんです。それをどうやって把握するのか、それが全く手だてとして含まれていない。

 このような改正、制度については、私はもともと、一〇・一ペーパーの問題については、大臣は先ほど謝罪をされましたけれども、厚生労働省は、新しいペーパー、どこをどう直しました、だからこの新しいペーパーに、ここの部分を変更してなりましたということの説明を含めて、もう一回説明をし直して回っていただかないと、法案審議の状況は整わないというふうに思います。

 そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

渡辺委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 私からも、冒頭、前回の委員会が職権で立てられて、そして趣旨説明が強行されたことについて抗議を申し上げておきたいと思いますし、その上で、本日の派遣法の審議というのは与党だけであって、あくまで我々は一般質疑ということで質問させていただくということを申し上げておきたいと思います。

 というのも、私も本会議で取り上げましたし、前回、山井委員が本委員会で取り上げたいわゆる一〇・一問題のペーパー、これは法案の施行期日にかかわる問題です。いつまでにこの法律を成立させなきゃいけないか、こういう重要な問題でありますので、これは審議入りの一つの前提だと私は考えています。

 さらに、法案審議が始まる前に虚偽の内容に基づいて根回しが行われていたとすれば、これは前代未聞の大問題であって、過去二回の廃案につながった条文ミスであったりとかあるいは答弁間違いであったりとか、これに匹敵する大失態だというふうに私は思っています。

 ところが、きょうの委員会の冒頭で、大臣はさらりと、ちょっと言い間違ってしまいましたみたいな感じで答弁を訂正されるということがありましたけれども、私は正直、聞いていてちょっと唖然としました。私は、この問題というのはそういう軽い話ではないんだというふうに思います。

 きょうは生田職業安定局長と坂口派遣・有期労働対策部長にお越しいただいていますので、改めて確認をしたいと思います。

 昨日の我が党の厚生労働部門会議におきまして、お二人から、この一〇・一問題ペーパーについては説明の補助資料として作成したものとして報告は受けていたが、中身については精査をしていなかったと。ただ、かばんの中に手持ちの資料として持ち歩いていて、実際、説明のときに使用したかどうかというのは記憶が定かでない、こういう説明だったと思いますが、生田局長、坂口部長、それぞれから、端的に、私の今の説明のとおりで間違いないですか。間違いないかどうかだけ確認させてください。

生田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のペーパーにつきましては、担当課の判断で補足説明資料として作成されたものでございますけれども、担当課が説明資料として使用していることにつきましては、使用当初から知ってございました。

 まず、補足説明資料とはいいましても、誤解を招きかねない表現が盛り込まれておりましたことにつきましては、私どもの精査が全然なかったので申しわけないというふうに思っております。

 それから、情報提供として資料をいただきましたので、それはかばんに入れましたけれども、その資料を使ったかどうかにつきましては、私自身は使っていないと思っているんですけれども、記憶が定かではございませんので、断言することはできないというふうに考えてございます。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のこのペーパーにつきましては、担当課の補足資料として作成されたものでございますけれども、担当課が資料として使用していることにつきましては、私も、二十六年の冬ごろ、使用当時から承知していたところでございます。

 補足資料とはいえ、誤解を招きかねない表現が盛り込まれていたという点につきましては反省しておりますし、十分精査する等の必要があったということで考えております。

 それから、説明、配付につきましては、私も、法案の説明の段階では通常、基本説明資料を使用して説明しているところでございますけれども、今御指摘がございましたように、このペーパーを使用して説明したかについては、記録もなくて、覚えていないということでございます。

大西(健)委員 まさに知っていたんですよ、こういうペーパーがあることを。しかも、かばんの中へ入れて持って歩いていたんですよ。渡したかどうかは記憶がないと言っていますけれども、これは我が党の議員の中にも説明時に受け取ったという話もあります。これははっきりさせていただきたいというふうに思いますし、かつ、こういう資料をつくりましたと報告を受けていて、中身は精査しませんでした、それで、かばんに入れていましたなんて、こんなことがあり得るんでしょうかね。

 かつ、富田課長は我が党の部門会議でこう言っています。これは課内で作成されたものである、そして、課内で作成されたものである以上、作成責任は課長である私にありますと言って認めているんですよ。ところが、今の、その上司の局長は、いやいや、つくったというのは報告を受けていて、自分もかばんに入れていたけれども、渡したか渡していないかは覚えていない。

 課長は、責任があると自分で言っているんですよ。課長に全部罪をなすりつけて、局長は、こういうペーパーがあると部下から報告は受けているけれども、中身も精査していないし、かばんには入れていたけれども、渡したか渡していないかは覚えていない、そんな無責任な話があるんですかね。

 課長は、課でつくったものである以上、厚生労働省がつくったと言っているんですよ。だから、これは厚労省が作成した正式な資料なんです、行政文書なんです。あなたたちが何と言おうと、これは厚労省の担当課で正式につくった行政文書であって、あなたたちはそれをかばんの中に持って歩いて説明に回っていた。これは私は間違いないことだというふうに思います。

 ということになると、大臣は先ほど、答弁が間違っていました、ごめんなさいと言いましたが、それで許されるんですかね。まさに虚偽の答弁をしていたわけですよ。間違っていたんです、答弁が。

 これは、前回もこの法案が廃案になったときも、大臣が間違った答弁を繰り返されたことによって、あるいは条文ミスがあったことによって、法案が二度も廃案になっている。

 今回も、前回の委員会で言ったことをいきなりきょうの委員会の冒頭で、いや、言い間違いでした、ごめんなさい。こんなことが続くんだったら、こんな審議成り立たないじゃないですか。何回やったって、きょう答えたことがまた次の委員会の冒頭で、いや、間違いでした、ごめんなさい。こんなことだったら、この審議できないですよ。

 ですから、まさにこの審議をやる意味がなくなるんです。ですから、この責任をはっきりさせてもらわないと私たちは前に進めないというふうに思っています。

 かつ、もう一つ私は大きな問題があると思っているんです。それは、こういう問題なんです。

 まず、大臣が改めたことは、これは百歩譲って、間違いですから、ことわざにも、過ちて改むるにはばかることなかれということがありますので、直してもらうのは結構です。ただ、もう一つ、覆水盆に返らずということわざもあるんです。

 大臣は、不正確だったり不適切だったりするので以後はこのペーパーは使用していないんだ、また新しいペーパーを作成したと言っていますけれども、虚偽のペーパーに基づいて根回しをしたというこの過去の事実は消えないんです。新しいペーパーを幾らつくろうが、訂正しようが、間違ったペーパーに基づいて説明して回ったというこの事実は消せないんです。

 そこで、資料の二をごらんいただきたいんです。

 これは、恐縮ですけれども、きょうも委員会に出席をされています維新の足立委員が二月二十三日の衆議院予算委員会に提出をした資料ですけれども、下のところを見ていただくと、「衆議院予算委員会 維新の党 足立康史 資料1 出典:厚生労働省」と書いてあるじゃないですか。

 皆さん御存じのように、我々が委員会で資料を配るときには、理事会で出典を明らかにせよと言われるんですよ。出典は厚生労働省なんですよ。厚生労働省が正式につくった資料だとあなたたち与党が理事会で認めて、提出されているんですよ。

 ですから、あなたたちが幾ら非公式な文書ですと言おうが、これは厚労省がつくった文書なんですよ。そして、この文書を資料として配付して、その上で足立さんが質問をされているわけです。

 この質問の会議録を次のページにつけております。線を引いた部分ですけれども、「資料の一枚目にもつけておりますが、もしこの国会で派遣法が成立しないようなことがあれば、これは労働市場に大変な混乱をもたらすわけでありまして、」と、足立さんがこれに基づいて、まさに資料の三のように質問をしているんです。

 ですから、これは足立さんはある意味被害者ですよ。虚偽の内容を信じて、そのレクを受けて、それに基づいて……(発言する者あり)いや、これは、資料を見ると大変なことになると書いてあるから、大変なことになりますよと質問しちゃっているわけですよ。

 そういう意味では、足立さんのその先には、傍聴席で聞いていた人もいます、記者さんもいます、あるいはインターネットの審議中継を見ていた国民の皆さんもいるわけです。ですから、その人たち全てに対して説明して回るわけにはいかないわけです。

 だから、間違った資料に基づいて、それを信じた議員さんがそのことに基づいてもう質問しちゃっているわけですよ。それを聞いた人たちがいるわけです。これはもう消せないんですよ。

 そういう意味では、これは取り返しのつかない大失態だというふうに私は思いますが、大臣、厚生労働省としてどう責任をとるつもりなんですか。(発言する者あり)

渡辺委員長 静粛にお願いいたします。

塩崎国務大臣 今、足立先生……(発言する者あり)

渡辺委員長 静粛に。

塩崎国務大臣 足立先生の資料が配られて、私も初めてその日に知ったわけでありまして、そこに厚生労働省と書いてあるのは、足立先生が厚生労働省の職員から受け取ったからだろうというふうに私も思います。それはそのとおりだというふうに、つまり、必ずしも与党だけではないわけでありますが、しかし、これは何度も申し上げているように、必要に応じて、施行期日が問題になったときにお配りを申し上げてきたということでございまして、ですから、何度も申し上げているように、与党の議員の中にも見ている人の方が少ない、持っている人の方が少ないというぐらいしか配られていないものでございます。

 しかし、そうはいいながら、これは課長がつくり、そして局長、部長も知っていたということを、私も実は、きょう、おわび、訂正いたしたように、私は最初は、作成段階では局長、部長はまだ知らなかったというふうに思っておりましたけれども、それは間違いだったので、私はきょう、おわびして訂正を申し上げているわけであります。

 ですから、そういう意味では、厚生労働省がつくったということは、正式な文書じゃないにせよ何にせよ、厚生労働省の職員が配っているわけでありますから、これは、厚生労働省でつくった時点で責任があるのは、局長まで上がっていたということですから当然これは局長が責任がある、その時点はですよ、そういうことであります。

 したがって、足立先生の配付資料で、私が見て、これはちょっと何ぼ何でも大げさで、誤解を招くし不正確な表現が幾つもあるので、これはもう直せと。直せというよりは、結果、直せと言った後は使っていないわけでありますが、それが後に民主党の部門会議で取り上げられて、それに従って直すことになったわけで、それまでは使っていないものですから直していなかったということだろうというふうに思います。

 私のことにつきましては、今申し上げたように、冒頭に、つくられたときには局長たちが知らなかったというふうに思っていたことを、私が知らなかったことで大変誤解を招くことを申し上げたということで、先般の発言を訂正させていただいたというわけです。

 それで、きのう申し上げたように、四月二十八日にこの問題ペーパーを、津田先生の御指示によって、厚労省として正式につくり直せ、こういうことがございましたので、つくり直すとともに、私は、局長、部長、課長に厳重注意をし、なおかつ、三十日、五月一日に、これは衆参の厚生労働委員会のメンバーの議員会館のお部屋にお届けをしたというふうに私たちは対応したところでございます。

大西(健)委員 今の説明の答弁の中で、私は二つ問題があると思うんです。

 一つは、要は、あなたたちがどう思おうが、まさに足立さんがそう受けとめたように、厚労省から出てきたペーパーだから厚労省のものだとみんな思うんです、これは。当たり前じゃないですか。

 それからもう一つは、後で、不適切だったから新しいものをつくり直して、それを衆参の厚労委員に配ったと言っていますけれども、先ほど私が申し上げたのは、その間違った資料が予算委員会で配られ、それに基づいた質問が行われているわけです。それを聞いた人たちがいるわけです。その席には安倍総理もおられたのかもしれません。それから、このインターネット審議中継、テレビ中継をされていたのかどうか知りませんけれども……(発言する者あり)テレビはなかったということですから、インターネット審議中継を見ていた国民の皆さんもいます。傍聴席にいた人もいます。記者さんもいます。たくさんの人が聞いているわけですよ、この間違った資料に基づいて質問をされていることを。

 それは、後で新しいものをつくり直して衆参の委員に配ったからそれで消せる問題じゃないんです。まさに覆水盆に返らずなんですよ。やってしまったものが間違った資料に基づいて、足立さんはかわいそうですよ、間違った資料で説明されて。それで、その質問を聞いた人がいるわけです。これはもう消せないわけですよ。この責任をしっかり、私はやはり明らかにすべきだというふうに思います。

 この問題については、後ほど、前回の委員会でもやった山井委員から追ってやっていただきますので、私はここでとどめたいというふうに思います。

 ただ、私は、この一〇・一ペーパーに限らず、厚労省というのは意図的に情報操作している部分があるのではないかと。

 資料の四というのをごらんいただきたいんですけれども、これは先ほどもちょっと話に出ましたけれども、大臣もよく、派遣で正社員を望んでいる人ばかりじゃないみたいなことを言うんですね。それで厚労省がよく出してくるペーパーとして、派遣労働者として働きたいという人が四三・一%で、派遣社員ではなくて正社員として働きたい人が四三・二%で、これは拮抗しているんだ、こういう数字をよく出してくるんですよ。

 ところが、次の資料をごらんいただきたいんですけれども、これは同じ厚労省が、しかも調査時期はより新しい、そしてしかも、前の調査というのは事業所を介して行っている調査ですけれども、これはインターネットで直接派遣労働者に聞いている調査なんです。同じ厚労省がやっている調査ですよ。これでは、正社員として働きたいは六〇・七%なんですよ。

 ですから、まさにこっちの数字を使うべきじゃないですか。派遣労働者の本音というのは、やはり正社員になりたいんだと。ところが、なぜか厚労省が使うのは前の方のペーパーばかりなんです。

 もう一つ、資料の六というところにそれを並べておきましたけれども、まさにここにありますように、上の方、正社員として働きたい人が六〇・七%で、今のままでいいと言っている人は一九・三%。こっちの数字を使うべきであって、何で下の方のばかり使うんだと。これは私は情報操作だというふうに思いますよ。ぜひ上の方の数字をこれから使っていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは何度か御説明を既に申し上げているところでございますけれども、確かに二つ統計が、特に正社員として働きたいということについての数値が、四三・二とそれから六〇・七という二つあるわけでありますが、一つは、私どもがいつも四三・二を使う理由は、これは統計法に基づく政府統計であるからでございます。したがって、信頼性が高い。

 一方で、もう一つの六〇・七というふうに出ているのは、民間事業者に委託をしてやってもらったインターネットの調査でありまして、二つのサンプルを比べてみても、有効回答数は、四三・二になっている政府統計の方は八千四百七、一方で、インターネット調査は四千でございます。それから、調査の対象も、政府統計の方は無作為抽出でありまして、一方のインターネット調査は規定値に達した時点までの回答のみということでございます。

 そういうようなことで、私どもは、政府統計として厚労省の統計情報部がつくった四三・二というのを使っているわけでありまして、もちろん、インターネットの調査も事業者への委託であることはありますけれども、私どもとしては、やはりサンプル数が倍多い、そして無作為抽出で客観的にとったものを使うということであります。

 いずれにしても、私どもがヒアリングをしても、やはり正社員で働きたいんだという方々と、逆に、むしろ今の自分の置かれた事情や経済的な環境を考えてみると派遣の方がありがたいという方もおられますし、むしろ、かなり高度な技術に特化をした派遣の方々からもお話を聞きましたが、そういう人たちは、例えば自動車メーカーであれば、トヨタとかホンダとか日産とかを横断的に派遣で行かれるということがまた名誉なことでもあったりして、それでキャリアアップを積んでいくということもやっておられるようなので、いずれにしても相拮抗するということで、派遣は全部要らないとかいいとかいうような話ではないということの証左ではないかというふうに我々は思っております。

大西(健)委員 ただ、まさに、事業所経由で配付調査をやっているのか、インターネットで直接労働者に聞いているのかということの違いというのも、私はしっかり見ていただきたいと思います。

 それから、ほかにもやはりちゃんと数字を、都合の悪い数字もちゃんと国民に私は説明すべきだと思っています。

 例えば、今回の法改正について、政府は派遣労働者が正社員になりやすくなる内容だと繰り返しています。

 先ほども西村委員の質問の中でも出てきましたけれども、資料の七、次のページですけれども、これは平成二十四年の派遣労働者実態調査の結果。先ほどの正式な政府統計云々というものですけれども、ここに、過去一年間に派遣労働者を正社員に採用したことがある事業所、たったの一・七%ですよ。たったの一・七%。

 そこで、私はお聞きしたいんですけれども、先ほども西村委員との間のやりとりがありましたけれども、では、このたびの法改正で、派遣労働者を正社員に採用する事業所の数、この一・七%が何%ぐらいにふえる、あるいは、ふやしていこうと思っておられるのか、これについてお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 今、一・七%しか派遣労働者を正社員に採用したことがあるという回答をしているところがないということについての御指摘をいただきまして、これをふやすターゲットはあるのか、あるいは、それをふやすつもりはあるのかということかと思いますが、基本的にまず第一に申し上げられるのは、ターゲットは特に設定をしているわけではございません。

 それから、ふやしていくつもりはあるのかというのは、当然、これはもう繰り返し総理も私どもも答弁をしてまいったように、正社員になりたいと思っていらっしゃる方にはやはり正社員の道が開かれるということが大事だというふうに思っていますので、その数字がどうなるのかは、先ほど西村先生にもお答えを申し上げたとおりであって、それはやってみないとわからないということですが、はっきりしていることは、今までやっていなかったことで、今回、正社員化につながる措置というものを義務化することを法律に幾つも入れているということを繰り返し申し上げなければいけないと思っております。

 それは、雇用安定措置であり、それから教育訓練、キャリアコンサルティング、これらは許可要件として、入り口で、このシステムがない会社は派遣元にすらなれないということになるわけで、今までは必ずしもそうではなかった。そこは率直に認めなきゃいけないことだというふうに思っておりますし、先ほど西村先生からもお褒めをいただきましたが、賃金についての情報提供を派遣先に課すということを……(発言する者あり)そこだけというお話でありますが、決してそんなことはないということをよくごらんいただきたいというふうに思うところでございます。

大西(健)委員 やってみないとわからないということでは、やはり、雇用安定化措置に実効性がない以上、正社員がふえるというのは私は絵に描いた餅ではないかと思います。

 最後に、資料の最後につけましたけれども、去る十二日の本会議で維新の党の井坂委員が、派遣労働者の直接雇用に関する派遣元への動機づけについて質問をされています。

 その中で、この上の方が答弁なんですけれども、私も、そもそも派遣先が直接雇用するような優秀な人材というのは、言われなくても派遣先は正社員にすると思いますし、反対に、そんなに優秀な人材であれば、派遣元としては、言い方はちょっと悪いですけれども、手駒として自分の手元に抱えておきたいと思うんじゃないかと思うんですね。だから、そこで派遣元に何らかのインセンティブが必要じゃないか、私もそう思うんです。

 その質問に対する答弁ですけれども、「派遣元に紹介手数料を支払う旨の規定等を盛り込むことの義務づけを通じて、」と書いてあるんですね。私はこれを議場で聞いていて、へえ、そんなことあるんだとちょっと思って聞いていたんです。

 その下、これはきのう付で山井委員に対して出されたペーパーですけれども、ここには、「派遣先が派遣元に金銭を支払うことは認められないと考えております」と。

 これは全く矛盾しているんじゃないかと思うんですけれども、これについて御説明をいただきたいと思います。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 少し違う話を今比べられているので。今、十四日付の部門会議で配られたというのは雇用安定措置の場合の話を言っているので、これは、言ってみれば引き抜きをした場合、そのときにはちゃんと払うようにしてくださいねということを……(発言する者あり)

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 いや、全然間違っておりません。

 需給調整事業課という紙で配っているのが雇用安定措置の場合の話でありまして、この私の答えているのは、言ってみれば引き抜きの場合の話をしているわけでありまして、五月十二日の衆議院本会議での答弁は、いわゆる引き抜き行為により、派遣元からの依頼なく派遣先が直接雇用した場合の取り扱いをあらかじめ定めておくことを義務づけることを説明したものであって、手数料の徴収は、あらかじめ定めておくべき事項の例示として挙げたものでございます。

 一方、今お話ありました、きのうの、この需給調整事業課というクレジットがあるものについては、これは、事務方が説明したのは、雇用安定措置のうちの一つである直接雇用の依頼について、派遣元が派遣先から金銭を授受することは認められないということを考えている旨を説明したものであって、したがって、両者は矛盾するものではない。

 そして、いずれにしても、こうした取り組みを通じて、派遣で働く方の正社員採用や直接雇用を後押ししていこうということで、二つは少し違う話をしているということを御理解いただきたいというふうに思います。

大西(健)委員 これは、会議録の方を見てください。真ん中に線が引いてあるように、「派遣労働者の直接雇用に関する派遣元への動機づけについてのお尋ねがございました。」と。次の段ですけれども、「三年派遣で働いた方が引き続き就業することを希望する場合の派遣先への直接雇用の依頼を含む雇用安定措置を新たに法的に義務づけております。」と、雇用安定化措置の話をしているわけですよ。それで、「派遣で働く方を正社員として雇用した場合のキャリアアップ助成金の拡充、派遣契約に、派遣先が派遣終了時に直接雇用する場合に派遣元に紹介手数料を支払う旨の規定等を盛り込む」。

 これは、まさに安定化措置の話の流れで言っているわけですよ。引き抜きなんて話はどこにも書いてない。全く書いてない。

 だから、全く矛盾している答弁じゃないですか。また修正するんですか。本会議の答弁もまた間違いでしたと修正する、そんなことであったら全くこの審議はできないというふうに思いますが、しっかり整理をして答弁をするなり、この矛盾について整理をしたペーパーを後ほど出していただけませんか。

塩崎国務大臣 この議事録をよくごらんいただきたいと思うんですね。私のしゃべっている中の、アンダーラインが引いてある最初にあるのは、派遣労働者の直接雇用に関する派遣元への動機づけについてですが、ワンパラグラフあって、その次に、「政府としては、今回の措置に加え、」というのがこの右側の安定措置であって、それに加えてということで書いているもので、違う話をしているということを御理解いただきたいというふうに思います。

大西(健)委員 後ほど井坂議員もきょう質問に立たれますから、井坂委員からも聞いてもらったらいいと思いますけれども、井坂委員の質問はそんなことじゃないですよ。まさにさっき私が言ったように、派遣元にとっては、そんな優秀な人を直接雇用をお願いしてしまったら、それは自分のところから優秀な手駒がいなくなるんです。だから、そういうインセンティブは派遣元にはありませんよね、だから、派遣元に何か派遣先に直接雇用するインセンティブがないとこの安定化措置というのは実効性がないんじゃないですか、そのインセンティブは何ですかという質問なんですよ。(発言する者あり)

 そうですとおっしゃっていますよ、今。後で聞いてもらったらいいと思います。だから、それに対して何か、引き抜きだ、どうだこうだなんて聞いていないですよ。ですから、これは明らかに矛盾していると思いますよ。この答弁も私は怪しいと思いますよ。修正をしていただくことを求めたいというふうに思います。

 時間が参りましたので、あとは仲間の議員に譲ることにして、私の質問はここで終わります。

渡辺委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは、一般質疑だということでありますけれども、私も派遣法について少しお聞きをしたいとは思います。

 一般質疑の枠の中ですので、細かな条文についてというつもりはありませんが、せっかくですから、話題になっているこの一〇・一ペーパーの新しい版について少し私は聞きたいと思っています。

 皆さんにお配りをしています。これが現行の厚生労働省のペーパーである、これで間違いないですね。

塩崎国務大臣 これが新しいバージョンのものでございます。

岡本(充)委員 そもそもこのペーパー、いろいろ課題があるなと思っているんですけれども、左上、「二十六業務の該当の有無がわかりにくい」、こう書いてある。

 それで、私は、きのう、もう少し前から聞いているのかな、おとといから聞いているんだと思いますけれども、この二十六業務でどのようないわゆる指導だとか監督とか、実績はどうなんだと言ったところ、二十二年の三月、四月の適正化プラン実施強化期間、この指導監督の実績のみ出してきて、それ以降、出してきてもらっていないんですね。

 法改正をなされてから、一体どういうふうな指導監督がなされていて、だからそこが明確化できていない、こういう話が私はやはりあるべきじゃないかと思うんですが、指導監督の数字、実績、何件ですか。

塩崎国務大臣 ちょっと今聞こえなかったんですが、専門二十六業務派遣適正化プランに関連しての取り組みですか。

岡本(充)委員 いや、適正化プランのときは出ていた、二十二年の三月、四月分だけ。

 これは法改正されたのが二十四年なんですよね。それで、それを受けて今後どうなのかという話が始まってきたはずですから、それ以降、指導監督の実績はどうですか、こう聞いているんです。

塩崎国務大臣 今お話が出ましたが、専門二十六業務派遣適正化プランというのは平成二十二年に実施をしたものでありますが、このプランでは、平成二十二年の三月と四月を集中的な指導監督期間として、集中的な指導監督の実績を集計の上で、その実績を二十二年の五月に公表したわけでありますけれども、その集中的な指導監督期間が終了した後は、いわゆる専門二十六業務と称した違法派遣に特化した集中的な指導監督実績は行っておりません。

岡本(充)委員 二十六業務に特化したとは言いましたけれども、指導監督は行っていないということですか。

 いや、そんなことはないはずですよ。ちゃんと秘書官の話を聞かれてから答弁された方がいいと思いますけれども。

 特化したじゃなくて、二十六業務がわかりにくいと書いているから、わかりにくいのであれば、実際にわかりにくいという声が上がっているはずですよ。そういう意味で、私は、実際、指導監督のときにどういう話があったのかという、件数を教えてくださいと言っています。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、二十六業務のことについてということだったものですからそういうふうに言っていますが、もちろん、二十六業務に特化をしていなくても、全体の中で二十六業務の問題について、あれば当然、その指導監督の中に入っているわけで……(岡本(充)委員「それが何件ですか」と呼ぶ)その数字の話でありますけれども、今のプランが終了した後、期間制限に係る平成二十五年度の行政指導件数につきましては、派遣元事業主に対しては約四%、それから派遣先については約一二%の違反が確認をされております。

 実数を申し上げますと、派遣元の事業主では五千七百六十六件、うち、期間制限違反が二百二十六件で約四%でございます。それから、派遣先の事業主は、全体、監督件数が千六百六十八件で、うち、期間制限違反が百九十七件、一二%というのが実績でございます。

岡本(充)委員 平成二十六年はどうですか。

塩崎国務大臣 二十六年の数字はまだまとまっておりません。

岡本(充)委員 二十六年の数字も、もう二十六年が終わって四カ月たっているわけですから、そろそろ出てもおかしくないと思うので、早急に出していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 可及的速やかに出したいと思います。

岡本(充)委員 ぜひ、この審議が始まる、私が質問に立つころまでには出してもらわないと、きょうはあくまで一般質問ですから結構ですけれども、審議に入るときにはぜひ出してください。

塩崎国務大臣 確約はできませんけれども、努力はいたします。(発言する者あり)

岡本(充)委員 私が答える間もなく声が出てきているようですけれども、理事会でもぜひ諮っていただきたいと思います。

渡辺委員長 後刻、理事会で協議いたします。

岡本(充)委員 その上で、この期間制限違反の中で、専門二十六業務の解釈にかかわる違反、指導は何件だったんですか。

塩崎国務大臣 内訳はとれておりません。

岡本(充)委員 二十六業務の該当の有無がわかりづらいと書いているんですから、これはやはり、わかりづらいという指導監督の現場の声があるはずなんです。まずスタートはここからスタートなんだとこのペーパーはなっているわけですから、当然のことながら、そのデータが私はあってしかるべきだと思う。ところが、それがないという。

 二十六業務がわかりづらいという声は、では、どういうふうにして、どういう話で最近のところ、昔じゃないですよ、最近どういうふうな話があったんですか。

塩崎国務大臣 御案内のように、二十六業務も、できて大分時間がたって、例えば、よくあるのは、一番件数が多いのは事務用機器操作というものですが、それについての……(岡本(充)委員「もう一回聞きます」と呼ぶ)はい。

岡本(充)委員 いや、どういう声があるんですかじゃなくて、いつその声を聞きましたか。

 疑義解釈通知を出しているんです、厚生労働省。疑義解釈通知以降に、そういう声が具体的にどこから上がってきているのか、具体的に、こういうときにこういうようなわかりにくいという話があったということを教えてください。

塩崎国務大臣 そういう細かいところの事前通告をいただいていないものですから、一般論的なお答えで恐縮でございますけれども、現在でも、派遣先に対する行政指導の約一割が期間制限違反に係るものでございます。

 いわゆる専門二十六業務の範囲については、依然として、派遣先などから頻繁に疑義照会が実は来ております。そういう状況であることから、単に行政指導などの件数だけで期間制限の見直しの判断基準とすることは、必ずしも適当ではないと考えております。

 こうした状況の中で、十月一日から労働契約のいわゆる申し込みみなし制度というのが施行される場合に、派遣先が意図せずに違法派遣を受け入れて労働契約申し込みみなし制度が適用されてしまうというようなリスクがあるのではないかという声が寄せられておったものですから、そういうことで派遣先が派遣で働く方の受け入れを十月一日前にやめてしまうというようなことがあって、派遣で働く方の雇用が不安定となるような可能性は避けなきゃいかぬ、こういうことから、私どもは、労働契約申し込みみなし制度の円滑な施行に向けて、施行日を九月一日としたところでございます。

岡本(充)委員 その話は後でやるんです。大臣、前段です。

 二十六業務の該当がわかりにくいという声は疑義照会のペーパーをつくって以降減ってきている、こう原課から私は聞いています、レクのときに。かつてのように頻繁には、大分そういう意味では周知されてきているんじゃないんですか。

 では、疑義照会がそれ以後どのようにあったか、数字として出していただけますか。

塩崎国務大臣 事前通知をいただいていないものですから速やかにはわからないので、出せるかどうかを含めて調べたいと思います。

岡本(充)委員 いや、出せないのであれば、二十六業務が本当にわかりづらいという声が出ているのかどうかということ、それは一部はあるでしょう。ただ、非常にたくさん出ているのかどうか。

 疑義解釈も出した、そういう意味では、はっきりしてくれということをやった、はっきりしようということもやった、にもかかわらず、それでもわからないという人たちがどれだけ出ているのかということを一つ聞きたいし、もう一つは、繰り返しになりますけれども、指導監督が何件二十六業務違反であったのか、これもやはりはっきりさせることが、結果として、二十六業務違反の該当がどれだけあったかということを明確にすることでありますから、この件数も、二十五年、二十六年、あわせてお出しをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 疑義照会に関しては、なかなかやはり数字はとっていないんだろうと思います。

 一方で、今の指導監督は、先生御指摘のように、指導監督が法律に基づいてやるものである限りは数字は集められると思いますので、把握ができると思いますので、これについては努力をしたいと思います。

岡本(充)委員 この件についても、ぜひ理事会で御協議いただきたいと思います。

渡辺委員長 協議いたします。

岡本(充)委員 その上で、後段です。

 では、本当に該当の有無がわかりにくいという話があったとして、「十月一日以降に想定される状況」、このペーパー、これは正確じゃないなと思っているんです。右上に「問題」と書いているんですね、一番のタイトルが。「労働者派遣法が改正されずに平成二十七年十月一日を迎えた場合の問題」。

 問題は一体何かというと、二十六業務の派遣の受け入れをやめる可能性がある、こう書いていますけれども、この法改正がなされたとしても、専門二十六業務の人は期間制限が発生することになりますね。場合によっては、今働いているところ、三年で人の入れかえだ、こういう話になってくる、二十六業務の人。こういう人が出てくる可能性はありませんか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 ちょっと質問の意味がよくわからなかったんですが、二十六業務は、今、期間制限がかかっていないわけですよね。それで、新たにこの法律が通ってかかるようになった場合の話をされているんでしょうか。

岡本(充)委員 新たに、この法律が通った場合、無期の雇用の人たちは期間制限がなくなる、それで働き続けられる、こういう人たちが出てくる、一七%ぐらい。今二十六業務の人たちはどうなるんですか。

塩崎国務大臣 有期の人は期間制限がかかるわけですね、三年の。無期の方はかかりません。

岡本(充)委員 二十六業務の方、現行で今期間制限がかからずに働いている方は、期間制限がかかるように、有期だったらなりますね。

塩崎国務大臣 現状、二十六業務は期間制限がないわけですけれども、法律が通れば、有期の場合には期間制限がかかるということでございます。

岡本(充)委員 ということであるとすると、この二十六業務の人に限って言えば、この法律が成立をすると、いわゆる雇いどめが起こる可能性が出てくるということですね。

塩崎国務大臣 それは、必ずしもそうじゃないと思います。

 例えば、無期雇用に転換すれば何にも問題ないわけでありますし、そうじゃなくても、いろいろな可能性があるわけでございますので、それはそれであり得るというふうに思います。

岡本(充)委員 何があり得るんですか。

塩崎国務大臣 雇いどめにならない可能性がありますよと言っているんです。

岡本(充)委員 それは余りに不誠実ですよ。

 雇いどめになる可能性がありますかと聞いているんです。それについて、あり得るという答弁しか私はあり得ないと思いますけれども。

塩崎国務大臣 今回の期間制限を変えた場合に雇いどめになるかということには、必ずしもそういうことにはなりませんということを申し上げているんです。(発言する者あり)

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 雇いどめの可能性を一〇〇%否定することは私はできないと思います。それはあり得ます。

岡本(充)委員 ということは、あり得ますね。

 結局、僕が聞きたかったのは、専門二十六業務の人は、これまで期間に定めがなく、仕事がこれからもずっと続けていけるという期待があったにもかかわらず、今回の法律改正によって、期間制限が入ってくる、そういう働き方に切りかわる人たちが出てくるわけですね。そこは間違いがない話なんですよ。それはそうですね。うなずいてみえる。

 それで、このペーパー。

 いろいろな可能性がある中で、専門二十六業務の派遣の受け入れをやめる可能性もあるけれども、この法律が通ったら、専門二十六業務の方の新たな期間制限の結果、雇いどめが起こる可能性があり得るんですよ。だから、この法律が通ったときの二十六業務のあり方としては、ここに可能性と書くのであれば、当然、二十六業務の雇いどめの可能性が出てくるということが書かれなきゃいけない。これは一方的じゃないか。どうですか。

塩崎国務大臣 このペーパーは、みなし制度が発動されるかされないかという話をしているのであって、雇いどめが起きるかどうかという話で書いているわけではないわけでございます。

岡本(充)委員 二十六業務を撤廃する影響というか効果というか、どちらにとるかですけれども、それについてこれは書いているんですよね、このペーパー。要するに十月一日。それで、二十六業務がわかりづらいから、結果として、みなしも適用されるかもしれない。二十六業務がわかりづらいから、撤廃をした結果、雇いどめが起こるかもしれない。これは、本当は二つ書かなきゃいけないんじゃないのか。

 結果として、労働者に起こるリスクをきちっと説明するペーパーになっていないんじゃないかと私は思う。一方的な、企業側から見た、いや、ここに書いてあればいいですよ、例えば、企業側から見た懸念とかね。前は書いていた、確かに。でも、そういうことではなくて、公正に見た場合に、これはやはり不正確じゃないかと思うんですが、いかがですか。

塩崎国務大臣 先生は多分わかっておっしゃっているんだろうと思いますけれども、みなし制度が十月一日からスタートする、施行になるということは、今回の我々の法律とは関係なくもう決まっているわけです。それに対して、今回の法律改正によって、二十六業務を含めて期間制限がかかるようになります。そういうことになると組み合わせで混乱が起きる可能性があるので、そうならないように、十月一日前に今回の改正法が施行になるということが大事ですねということをこの紙は書いているというふうに御理解をいただきたいと思います。

岡本(充)委員 いや、大臣、こういう整理なんですよ。結局、これが、みなし制度の適用についての課題というならわかる。十月一日を迎えたときの問題と書いているから。これは問題じゃないんですよ。みなし制度の課題なり、みなし制度についての話ならまだわかるんだけれども、十月一日の話だけ。

 私が言いたいのは、法改正をされたとき、されなかったとき、これは結果として、可能性としてですけれども、それは裁判になる人もいるでしょう、それから実際に受け入れをやめる人もいるかもしれない。でも、それは一体どのぐらいの数なのかということを考えたときに、本当にそれだけ多いのかというのが先ほど来ずっと問題になっている大量解雇云々の話です。

 そういう意味では、こういう書きぶりだとしても、実際に起こり得る効果、それからデメリット、これをちゃんと比較してやはり書かなきゃいけない。それは、法改正しなければ、結果として十月一日以降も二十六業務の人は働き続けることができるわけでありますし、法改正をされると、二十六業務の人は期間制限がかかってくる、こういうことをフェアに書いてやはりやらなきゃいけない。そもそも、こっちの、みなし制度とはという説明をする話ではなくて、この法律を改正したときの効果、影響、これをフェアに書く話を、私はこれはある意味アンフェアに見ていると思う。

 もっと言えば、国民が裁判を起こすことは問題なんですか。

 大臣、ちょっと聞いて。私の質問はこれですよ、違うことを答えてください。国民が裁判を起こすことは、行政として問題なんですか。

塩崎国務大臣 先生御指摘のとおり、もともとこれは二十四年の法改正の際に、二十六業務の問題についてのわかりにくさということが附帯決議で指摘をされました。

 それはそれとしてありますけれども、今回のこのペーパーについて、先生がおっしゃるように、確かにこの「問題」というのは私も問題だと思います。これはむしろ、今から考えてみたら、影響とか課題とか、中立的な言葉を使うべきだったなというふうに、率直に、今御指摘を受けて思います。問題であることはありますけれども、課題とか影響とか、そういう言葉の方がよりふさわしかったのではないかというふうに思いました。

岡本(充)委員 大臣、珍しく私の主張を受け入れていただいて、これまで、私、累次にわたっていろいろ御指摘をしていますが、今回受け入れていただきましたので、ぜひ新しいペーパーが出てくるのを期待して待っていたいと思います。

 それでは、次の課題に行きたいと思います。

 もう一つは、先ほどから話題になっています雇用安定措置の話ですね。

 これは本当にうまく適用されるのかという話でありますが、大臣、派遣期間は三年、雇用期間が一年半、このような方の場合、この雇用安定措置は努力義務ですか、義務ですか。

塩崎国務大臣 三年の見込みが立たないと、それは三年未満というふうに見られて、努力義務になると思います。三年を超えるというふうに見込まれるような、三年が見込まれるという場合には、義務ということになると思います。

岡本(充)委員 三年を超えると見込まれる場合ですか。

塩崎国務大臣 いや、さっきちょっと言い直したつもりだったんですが、超えるということではなくて、三年の見込みの場合は義務であり、それに満たない場合には努力義務だということであります。一年以上でですね。一年未満見込みの場合にも、一部、努力義務もございます。

岡本(充)委員 三年を超える見込みの派遣労働者というのは、これから、法改正後、誕生するんですか。

塩崎国務大臣 今言い直したように、三年ということでございます。

岡本(充)委員 三年を超える見込みの派遣期間の労働者は、これから誕生するんですか。

塩崎国務大臣 今のは派遣の話ですか、雇用の話ですか。(岡本(充)委員「派遣」と呼ぶ)

渡辺委員長 岡本充功君、もう一度。(発言する者あり)

 いやいや、今聞こえなかったので。

 岡本充功君。

 では、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 今回の期間制限は、これはもう何度も申し上げているように、今回は二本立ての期間制限を導入するわけでありますから、事業所単位での常用代替防止のための期間制限と、それから個人単位のものがあります。

 今、派遣としての三年以上はいるのかということでありますが、それは、同じ場所で同じ係ではもちろんないわけでありますから、課をかえたらそれはあるかもわからないということでございます。

岡本(充)委員 あらかじめ見込まれる三年を超える派遣の社員が出てくるということですね。

塩崎国務大臣 最初から三年を超えるということを前提にするわけではございません。

岡本(充)委員 では、雇用期間について、三年を超えるという見込みで雇用期間になる派遣者が出てきますか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 派遣として更新をするということを前提に三年を超える雇用契約はあり得るということです。

岡本(充)委員 大臣、結構、これは雇用安定化措置の肝なんですよね。やはりそこは、ちょっともう時間がなくなってきましたから、次回以降また聞かせていただきたいと思っています。

 もう一つ、マージン率の話。これは通告していなかったので、大臣、率直に聞きたい。

 前回の法改正以後、マージン率を公表することになりました。ピンはね、言葉を悪く言えば。(発言する者あり)言葉を悪く言えば。言葉を悪く言えばと言っているんです。

 この率、大臣、率直に、どのくらいが最高だと思いますか。これは間違っていたからといって問いません。後ろに聞かないで、大臣の率直な、最高どのくらいあると思いますか。

塩崎国務大臣 かつて見て、今改めて見ましたが、六〇%以上というのがあるということを、ごく一部ではありますけれども……(岡本(充)委員「最高何パーセントだと思いますか」と呼ぶ)

渡辺委員長 発言は委員長の許可を得てからやってください。

 はい、どうぞ。答弁してください。

塩崎国務大臣 最高については、ちょっと手元にはございませんので、どのぐらいかというのはわかりません。

岡本(充)委員 大臣の率直な感想でいいんです。どのくらいまであるのかな、こういう認識なのかという、大臣の率直な、予想でいいんです、違っていたからといって、後で責める話ではないんですから。

塩崎国務大臣 いろいろ極端なケースは、極端な御質問もあるように、きっと世の中にあるんだろうというふうに思いますが、今言ったように、統計的に六〇%以上としか見たことがないものですから何とも言いがたいところでありまして、何とも言えないですね。

岡本(充)委員 極めて慎重になられているんでしょうけれども。

 いわゆるマージン率というのは、どのくらいまでが大臣の思うマージン率としてあり得る数字なんでしょうか。それはどうですか、大臣の感覚として。これを超えたらさすがにマージン率とは言わないよね、搾取だよねというような数字はどのくらいなんですか。

塩崎国務大臣 これは、いろいろだろうと思いますので、特にべき論は余り言っても意味がないというふうに思います。

岡本(充)委員 では、次回にしますけれども、どれだけマージン率が高くても、別にそれはいいんじゃないかという認識だとすれば、それはやはり問題だとむしろ僕は思いますよ。やはり、ある一定の上限があってしかるべきだと私は思っています。

 そういう意味で、きょうは大臣の所見をお伺いしたということで、次回以降またお聞きをさせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、山井和則君。

山井委員 四十分間質問をさせていただきます。

 まず最初は、四十分間ということで質問をさせていただきますが、きょうは一般質疑ということで、今回の一〇・一虚偽ペーパー問題、それによって、今回は法案審議に入れない。なぜならば、前代未聞の大事件で、今回の労働者派遣法改正法案が通らなければ大量の派遣労働者が失業するという、うそのペーパーを国会議員に配り、予算委員会で安倍総理もそのペーパーを見て答弁をする。前代未聞です。

 厚生労働省というのは、労働者を守る役所じゃないんですか。

 そして、その虚偽ペーパーについておとつい私が質問したら、それに対して、事もあろうに、塩崎大臣がまたうその答弁をした。先ほど修正した。

 塩崎大臣、大臣はこの委員会の重みというものを理解すべきですよ。

 先日も、岡田代表と一緒に、私は六人の派遣労働者の方々とお目にかかりました。

 お一人の女性は、セクハラの被害を派遣会社に訴えたら、改善されるどころか、逆に解雇通告を受けたわけですよ。こういう女性の方々も弱い立場に置かれておられます。

 二番目の方も、セクハラ被害を受けて、そのことについて派遣会社に訴えたけれども、改善してもらえず、結果的に精神疾患になって離職を余儀なくされた。

 三番目の女性の方は、生後六カ月の赤ちゃんを抱いて私たちのところに来られました。昨年十月に子供を出産した。半年の育児休暇をとった。四月から仕事に復帰する約束だった。ところが、三月末に急に解雇と言われてしまった。ひどいじゃないですか。派遣労働者では育休をとれる人はたった四%、正社員では四〇%。非常に女性にとっても厳しい働き方です。

 さらに、四人目の派遣の方は、リーマン・ショックでも派遣切りに遭われ、東日本大震災でも派遣切りに遭われ、寮から追い出され、路頭に迷われ、五十代を過ぎられたけれども、結婚をしようと思っていたけれども、結婚も、そういう不安定雇用、低賃金の中でなかなかかなっていない。

 また、五番目の三十代の男性の方も、三カ月更新を五年間、製造業の派遣で働いた。でも、派遣のままでは、ローンも組めない、自動車も買えない、結婚どころか恋愛もできない。苦しんでおられました。

 そして、最後、六番目の女性の方は、五十代で、十五年間、三カ月更新六十回、一般事務の派遣をされていた。しかし、五十代になったからといって、もうそろそろお年ですからやめてもらえませんかという話が来つつある。派遣会社に、このままでは、自分もシングルマザーで、老後も不安だという話をしたら、派遣会社からは、御高齢の女性の派遣先はもう余りありませんよ、そう言われてしまった。

 臨時的、一時的、かつ均等待遇、これがヨーロッパを初めとする派遣の世界の標準ルールなんです。ところが、今回の法案では、均等待遇もなきまま、一生派遣の労働者がふえかねない。つまり、この委員会審議は、日本のこれからの若者が一生派遣になっていいのか、そういう人生がかかっています。

 さらに、この法案はリストラ促進法と言われますが、これによって、正社員から派遣への置きかえ、正社員のリストラも進みます。

 実際、ドイツでは、今回の日本と同じ派遣上限の撤廃を二〇〇三年にしたら、三十三万人だった派遣労働者が、二〇〇八年、五年後には七十九万人。二・四倍にふえました、五年間で。日本と同じ期間制限をやった。それで、二〇一一年にドイツでは、貧しいワーキングプアの若者がふえて社会問題になったということで、もう一度一年半の期間制限を入れることを決めた。

 こういう人生のかかった重要な質疑において、虚偽のペーパーを配付する。おまけに、このことを質問したら、塩崎大臣がうその答弁をする。あり得ないじゃないですか。

 塩崎大臣、配付資料にありますが、おとついの答弁で、この五ページにあります。「私としては、これについて知らなかった局長、部長、それから本人の課長には厳重注意」、「これについて知らなかった局長、部長、」この答弁は正しいんですか、うその答弁ですか。

塩崎国務大臣 冒頭、おわびして訂正をいたしましたし、それから、先ほど来御説明も申し上げて、私は、局長、部長が作成当時に知っていたということを知らなかったということでありまして、それは、うそということでは全くない。事実を知らなかったので、おわびをして訂正をしているわけでありまして、それをうそ呼ばわりされる理由は私にはないというふうに思います。できれば、そのうそ呼ばわりは撤回をしていただきたいというふうに思います。

山井委員 国会の答弁、国会の議事録は重いんですよ。さっき言ったように、私たちのこの一問一問で、若者の雇用、労働者の人生がかかっているんですから。

 では、大臣、改めて確認します。

 なぜ部長、局長は知らなかったと答弁したんですか。この問題が一カ月、二カ月前から問題になっていて、どういう経緯かと聞いたら、部長と局長は知っていたことはわかるはずじゃないですか。私たちでも知っていますよ、局長と部長がこれに関係していたことは。塩崎大臣、どういう説明を聞いていたんですか。答えてください。

塩崎国務大臣 山井先生、よくごらんをいただいて、議事録を読み返していただきたいと思うんですね。私がどう言ったかというと、「私としては、これについて知らなかった局長、部長、」というのは、作成をした段階で知らなかったと私は思っていたので、そう言ったのでありまして、それは私が間違っていて、実は、作成をしたことは局長は知っていたわけです、冒頭、去年の冬。ですから、それについてはおわびをして訂正をしただけであって、それは、私はそれを知らなかったことについて訂正をしたということだけでございますので、そこのところはもちろん、何でかというと、それは、私が初めて知ったのは、何度も申し上げているように、足立議員が資料として予算委員会に配付をしたとき、二月の二十三日でありますので、そのときに、これは内容が不正確だし、不適切な表現もあるねということで、それを注意したわけで、それ以降は使っていなかったわけですね。もう配付もしていないと。

 もちろん、もともと自民党のあるいは自公の部会で全員に配るようなことは全くしていなかったペーパーで……(発言する者あり)部会長がそう言っているわけですから、そのとおりだというふうに言っていますが、必要に応じて、お問い合わせがあったときに、施行日の問題についてこれに触れたということでございます。

 そういうことでありますので、何度も申し上げますけれども、冒頭、作成した段階で知らなかった局長、部長ということを私は言っているので、それは事実に反したわけですけれども、しかし、それの訂正をした上で、私が厳重注意をしていますし、何らそこで、さらにそれ以上の批判を受ける理由はないというふうに思います。

山井委員 この五ページの議事録のもう一つの赤線のところで大臣はどう答弁しているか。担当課において、施行日の補足資料として作成されましたものであって、厚生労働省の公式見解ではございませんと。

 今、作成経緯を知らなかった等々の答弁でしたけれども、では、担当の部長、局長は、このペーパーを持って議員に説明に行ったんですか。説明に行ったのは課長だけですか。部長、局長もこのペーパーを持って説明に行ったんですか。いかがですか。

塩崎国務大臣 私が聞いている限りは、局長、部長は、作成された段階で上げられてきたものを見ただけで、それ以上、かばんには入れていたと言っていますが、配ったということは記憶をしていないということであります。

山井委員 国民が聞いたら不思議に思うんじゃないですか。何で配らない資料をかばんに入れておくんですか、この虚偽の資料を。配らないのに何でかばんの中に入れているんですか。

 それと、やはり大臣、もう身内をかばうのはやめられた方がいいですよ。そこで大臣、局長や部長も配ったんじゃないのかということは疑問に思われませんでしたか。

 ここで改めてお聞きします。

 局長、部長さんは配られたんですか、配られていないんですか。なぜならば、これは重要ですよ、担当課が勝手につくったという話は、言っちゃ悪いですけれども、これは一歩間違うとトカゲの尻尾切りになりますからね。もし部長や局長も配って説明していたにもかかわらず担当課の責任にしたとしたら、これは一般のサラリーマンの世界でも一番あってはならないトカゲの尻尾切り、上司が部下の責任にして自分たちの責任を免れる、そんなことは絶対あり得ない。

 塩崎大臣、部長と局長は配付しなかったんですか、したんですか。

塩崎国務大臣 本人に聞くのが一番早いと思いますが、私は、もちろん、どうしたんだと聞いたら、配った記憶はないと言っていました。そのとおりのことを先ほどここで局長も答弁をしておりました。

山井委員 火曜日の参議院の石橋議員の質問に対して、局長は、三ページ、こう答弁していますね。担当課の判断で法案の施行日の説明を行う際の補足資料としてつくったと。部長も、今安定局長が答弁したのと同じでございますと。

 局長、部長は無関係だと言っています。この答弁は修正するんですか、修正しないんですか、大臣。状況は変わっていますよ。

塩崎国務大臣 修正する必要はないと思います。

山井委員 塩崎大臣、担当課の判断で使ったということは、今修正する必要はないとおっしゃいましたね。部長と局長もみずから配って説明していたということになれば、この答弁は違ってきますよ。そこはいいんですね、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 議事録に書いてあるとおりでございまして、担当課の判断で法案の施行日の説明を行う際の補足資料としてつくったものでございます、担当課が、個別の御質問があった場合に必要に応じて使っているという事実につきましては、使用当時、この前の冬ですけれども、から承知はしておりましたと、私が先ほど言ったとおりのことを言っているというふうに思います。

山井委員 塩崎大臣、これは、局長、部長も配ったということになれば、組織ぐるみということになりますよ、課長だけではなくて。これは完全に公式ペーパーということになりますよ。

 塩崎大臣、これは調べていただいて、正式に理事会で回答してください、配ったのか配っていないのか。一言つけ加えますが、局長から受け取ったという議員は複数います。そのことは言っておきますが、それは私の見解ですから、厚生労働省、大臣のもとに調査してください。調査をして、回答をしてください。なぜならば、これは、配ったのに配っていないと言っていたら、これは虚偽答弁ですよ、また。

 塩崎大臣、配っていないんですか、配った可能性はあるんですか、はっきり言ってください。

塩崎国務大臣 山井議員は、先ほどの生田局長の答弁を聞いていらっしゃらなかったんですか。もうそれに尽きますから。

山井委員 この問題の最終責任は厚生労働大臣なんですよ。調べてください。これは理事会で協議してください、委員長。

渡辺委員長 これは、答弁しております。

山井委員 いや、だめですよ、それは。答弁が違っているかもしれないんですから。

 この問題は、ぜひとも理事会で協議していただきたいと思います。部長と局長が配ったのか配っていないのか、そして、これは、配ったのであれば、組織ぐるみですからね。

 そして、これは予算委員会で配付されて、安倍総理も答弁をされています。予算委員会のメンバーも全員、このペーパーは見ております。

 私はさまざまな問題があると思いますが、ここにこう書いてあるんですね。「十月一日以降に想定される状況」「ケース2 三年以上二十六業務に従事する派遣労働者が、派遣先に直接雇用されたいため、二十六業務以外の業務を故意に行う。」

 これは、派遣労働者がわざと違法行為をしかねないということを書いているんですか。ひどいじゃないですか。派遣労働者をそんな目で見ているんですか。私は、これは失礼だと思いますよ。こんなペーパーをつくって、担当者が配って、そのことが、予算委員会でも配付されて安倍総理の目にも触れている。

 塩崎大臣、厚生労働省は派遣労働者をこういうことをする方々だという目で見ているんですか。私は許せない。こういう、派遣労働者の方々が違法行為をしかねないというような認識を持っている役所に、派遣法の改正なんかを審議する、そんな資格はありませんよ。謝罪してください。

塩崎国務大臣 この問題については、既に前回謝罪を申し上げたところでございまして、不適切な表現があったことは事実でありますので、大変申しわけなかったということを申し上げたと思います。

山井委員 結局、派遣労働者を、物扱いだと言った。物扱いしているのは厚生労働省じゃないですか、こういうことを見たら。派遣労働者を応援しようというかけらも感じられない。

 それで、二月二十三日、予算委員会でこのペーパーを見たんですよね。塩崎大臣、即問題だと思われて、この説明を配った人たちに修正のペーパーを配られていないじゃないですか。

 だから、塩崎大臣は人ごとのようにおっしゃっていますが、この一〇・一虚偽ペーパー問題で一番責任が重いのは塩崎大臣ですよ。このことがわかってから、新しいペーパーを配付して、説明し直しましたか。いつやりましたか、それを。

塩崎国務大臣 これも何度も申し上げておりますけれども、この二月二十三日の足立先生の御質問の際に、私も見て、不適切だということで指摘をして、それ以降は使っていなかったわけであります。

山井委員 使っていなかったじゃないでしょう。間違った説明をしたんですよ。そして、安倍総理にもこのペーパーは手渡っているんですよ。

 間違ったペーパー、塩崎大臣がこれがおかしいと思ったら、担当者に言って、どこに配ったんだ、間違ったペーパーだったら正しいペーパーを配って認識を変えてもらいなさい、派遣労働者はこんな故意に違法行為をやったりはしない、大量失業の不安なんて、これも大げさ過ぎる、うそだ、その修正に回るように塩崎大臣は指示されたんですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げるように、高鳥部会長も先ほどうなずいておられたように、これは自民党や公明党、与党の部会で全員に配ったような資料でもございませんし、私は確かに、足立先生のお配りになった資料を見て、ああ、これは余りよろしくないねということで指摘を厳しくして、それで使わなくなったわけでありますので、それで、その際に、どの程度配っているのかということで聞いたところ、部会に全員に配ったとかそういうことでは全くなく、必要に応じて使ったことがあったというふうに聞いたので、それ以上使わないということであれば問題はないかなというふうに思っておりました。

山井委員 その認識が間違っていますよ。

 既に多くの議員に配付され、予算委員会で予算委員全員に配付され、安倍総理にも配付されているわけです。それに対する、これがうそだったという修正を全くやっていないじゃないですか。そして、本当に違うペーパーを出し出したのは、問題になってからじゃないですか。そういう意味では、私は、塩崎大臣のこの間の責任は担当課以上に重いと思います。

 そして、この問題で、一歩間違えば、虚偽公文書作成罪とか、そういう問題にこれはなるんじゃないですか。これは深刻ですよ。法案審議にかかわる、施行日にかかわる問題で虚偽のペーパーを作成して、その法案審議にかかわる国会議員に配付するのみならず、内閣総理大臣にもこれが手渡っているわけですからね。これは単なる間違いの問題じゃないですよ。これは法案審議にもかかわる重大なことですよ。私は別にちょっとしたミスとかそういうのだったら言いませんよ。でも、これは余りにも悪質じゃないですか。

 さらに、派遣労働者の立場からすれば、違法派遣であるところが、十月からみなし雇用が発動して直接雇用されるということはいいことなんですよ、派遣労働者にとったら。派遣労働者を守るために、みなし雇用制度は自民党も賛成して、この改正案で入れたんですからね。塩崎大臣も賛成しているんですよ、この制度に。

 その意味では、施行日を延ばしてそれが使えないようにする、これは一歩間違えば、違法行為をしているブラック企業を応援することにもなりかねないんですよ。おかしいじゃないですか。違法派遣を取り締まろうとしているのに、それまでに、発動するまでに法改正して、違法派遣が違法でないようにしたい。ブラック企業を応援することになりかねません。塩崎大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 もともとこのみなし制度は、十月一日から施行になるのはもう既に、法律が通って施行になるわけでありまして、一方、今回の御審議をお願いしている派遣法で、二十六業務を含めて全てに期間制限をかけるという制度変更をお願い申し上げる。その際の影響がこういうところに出てくる可能性がありますよということだったわけですね。

 したがって、それがいろいろな意味で、雇用されている方にも、あるいは雇用している側にも混乱がないようにということで、これは、十月一日の前に今回お願いをしている法律が成立をしないと混乱が広がるな、こういうことだったわけであります。

 もともと二十六業務については、平成二十三年の十二月の七日に衆議院厚生労働委員会で附帯決議がございまして、この専門二十六業務について、わかりやすい制度にするように速やかに見直しの検討を開始しろということを書いてあるわけで、これに対して応えているのが今回の法改正であります。

 その中で、こういう形で不適切な表現が含まれたものが配られたので、別にうそではなくて、不適切であって、うそだとか虚偽だとかいろいろおっしゃいますが、そういうつもりではないわけで、これは、何度も申し上げているように、不適切な表現が入っているということでありますので、こういうことを御理解賜りたいというふうに思います。

山井委員 世間一般では、こういうのは虚偽と言うんですよ。大量の派遣労働者が失業しないのに、厚生労働省の幹部がそれを国会議員や安倍総理の目にも届くようなところで配付する。こういうのは虚偽と言うんです、一般的には。

 塩崎大臣、今回、局長も部長もこのペーパーをかばんに入れて持ち歩いていたということもわかりました。ということは、これはもう担当課の問題じゃなくて、厚生労働省の組織ぐるみでこのペーパーは活用したということをお認めになりますね。

塩崎国務大臣 先ほど生田局長みずからが答弁をしたように、配付した記憶はございませんと言っているので、今おっしゃっていることは、不適切な表現の入ったペーパーを厚労省でつくったということは、それはもうさっきから謝罪をしているとおりでありますから、それはそれとして、今申し上げたような、局長、部長のことをおっしゃるわけでありますが、そこはもう先ほど答弁したとおりであります。

山井委員 でも、何度も言いませんが、局長からもらったという議員は複数おられますよ。これは、記憶がないと言って済む問題じゃないですよ。どうするんですか、もらった議員がペーパーを出して、何月何日にもらいましたと言ったら。そうしたら、言っちゃ悪いですけれども、おとついも、火曜日も、きょうの答弁も全部虚偽ということですから、当然、派遣法の審議になんか入れませんよ。当たり前ですよ。私の質問時間も、全部返してもらわないとだめですから。

 組織ぐるみじゃないと言っていて、実は局長も配付していました、それでは済まないですよ。塩崎大臣、それは認めてください。もし局長が配付していたんだったら、組織ぐるみだったから、今までの答弁は修正しますと。それはお認めいただけますね。

塩崎国務大臣 生田局長は配った記憶がないと言っておるわけでございますので、それ以上でも以下でもないということであります。

山井委員 配った記憶がないというのと、配っていないは全然違うんですよ。

 そうしたら、配った可能性もあるということは、塩崎大臣、お認めになりますね。

塩崎国務大臣 それは、本人がここで答弁をしているわけですから、それ以上でも以下でもないと私は先ほど来申し上げているとおりであります。

山井委員 私は、この間、本当に気になるのは、結局、局長も一緒になって活用しているという声が実際出ているにもかかわらず、国会答弁では、課長がやった、担当課の責任だ、そう答弁をする。そして、塩崎大臣も、自分はわからない、局長がこう答弁していると。責任者は、塩崎大臣、あなたですよ。

 常識で考えて、かばんに入れて持ち歩いていて、配ったかどうか局長が記憶にないと言っているということがどういうことを意味するのか、普通わかるじゃないですか。配っていないと言っていないんだから。

 私がなぜこのことを言っているのかというと、繰り返しますよ。組織ぐるみでこのペーパーを活用したのであれば、これはもう法案の審議は諦めてくださいよ、派遣法の審議は。虚偽答弁でもあるし、組織ぐるみで虚偽のペーパーをつくって、おまけに、一番私たちが守らねばならない派遣労働者をおとしめる、侮辱する表現も入っている。そんなことはあり得ない。当然、そのような局長や部長がこの場に来て派遣法の答弁をすることなんかあり得ないですよ。課長も含めて出入り禁止ですよ、ここからは、この委員会では。当然じゃないですか。

 派遣法の担当者というのは、本来、国会議員以上に派遣法について詳しい人であるべきじゃないんですか。その人たちが、虚偽のペーパーを配って、派遣労働者に対して愛情のかけらもないペーパーを配って、そして仕事をしている。そういう方々が答弁をしたりメモを出してくることで、審議をやりようがないじゃないですか。

 さらに、塩崎大臣も、なぜ昨年末に派遣法が二回目廃案になったか御存じですよね。一日の間に五回も間違った答弁をして、それで、間違っていない間違っていないと言って、高橋議員が最後に本当に大丈夫ですかと念押ししたのにも間違っていないと言って、ところが、二日後に、間違っていましたとペーパーを出してくる。

 つまり、幾ら委員会をやっても、次の委員会で答弁が変わっているんだったら審議できないんです。そんな軽い法案じゃないんですよ。

 先ほども言ったでしょう。上限撤廃したドイツで、五年間で三十三万人から七十九万人、五年間で二・四倍に派遣労働者はふえたんですよ。今回、同じ改正、期間上限の撤廃、これがこの法案の肝ですよ。ということは、ドイツの例でいくならば、今百二十万人の日本の派遣労働者が、数年後に二百四十万人という、倍増する危険性は否定できないんですよ。私も多くの派遣労働者の方々と話をしていますけれども、一旦派遣の世界に入ったら、なかなか抜け出せない。みんなそれで苦しんでおられるんです。

 一旦緩和して、派遣労働者になっちゃって、実際、ドイツのように、派遣がふえ過ぎて失敗した、だから二〇一一年に、もう一度上限を決めようということになったわけですね、上限規制、一年六カ月、EUの指令に基づいて。日本ではそんなことは許されませんよ。

 皆さん、これは与野党関係ありません。正社員をふやして均等待遇を確保するいい法案だと思っていたけれども、やってみたら、派遣労働者がふえて、正社員が減って、政府が説明したのと真逆のことになってしまった、あっ、ごめんなさい、こんなつもりじゃなかった、何とかもとに戻さないとといったとしても、そのときに既に派遣になってしまって、そう簡単に直接雇用に戻れない人の人生は戻ってきませんよ、これは。

 今でも、高卒、大卒の最初の就職が非正規は既に四割になっています。

 塩崎大臣、関連してお聞きしたいんですが、きょうの資料の中に、今ふえているサービスというのがあるんです。企業の具体名は出しませんが、今までから私が取り上げています。十二ページです。

 ある人材派遣会社が常用型派遣ということで、ミラエールという、こういう働き方を求人しています。そして、これは正社員になっています。「「正社員」として雇用」「正社員からはじめる未来。」

 次の次のページも見てください。「雇用形態が正社員」と。十三ページにも書いてあります。これは求人サイトです。そして、全部書いてあります、正社員と。

 それで、このミラエールの一番冒頭に、「正社員(派遣)」となっているんですね。意味わかりますか。「正社員(派遣)」。日本語の意味わかりますか。これで今、利用者がふえているんです。非常に好評だということが十六ページにも、ニュースで出ております。非常に反響が大きく好評だと。

 でも、私、素朴な疑問なんですが、私は何度も塩崎大臣に、この求人はおかしいんじゃないか、若い人たちが正社員だと思って入ったら、派遣である。

 塩崎大臣、派遣労働者を正社員という名称で求人広告を出していいんですか。

塩崎国務大臣 職業安定法によりますと、働く方の募集を行う者は、労働契約の期間、労働時間、就業場所等の労働条件を明示しなければならない。そして、これによって一般的に雇用形態が判断されるわけであります。

 労働関係法令上、正社員という確立した定義は存在をしていません。確かに、スタッフサービスのこれを読みますと、「正社員」と書いてあって、括弧して「無期雇用派遣労働者」と書いてありますが、常用型の派遣の方の中には派遣会社に無期雇用されている方もおりまして、そのような方について正社員という呼称が使われている場合も、このスタッフサービスに限らずあるわけでございます。

 ただし、そのような場合であっても、職業安定法によって、働く方の募集を行う者が雇用形態を明示する場合には、こう書いてあります。応募者に誤解が生じないように努めなければならないというふうに書いてあるわけでありますので、今お話がございました点については、いろいろな、正社員という定義がそもそも、確立したものはないので、こういう使い方もないことはありませんけれども、同時に、応募者が誤解を生じないように努めなきゃならないのが職業安定法の定めでございます。

山井委員 私は、この会社そのものを批判しているわけじゃないんです。厚生労働省の見解を聞いているんです。

 今の答弁によると、驚いたことに、派遣労働者の求人を正社員として出すことに関して塩崎大臣は否定をされませんでしたね。誤解を招かないようになんて。私は誤解を招くと思います。派遣労働者は派遣労働者です。

 なぜならば、資料十五を見てください。厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」、正規雇用労働者の定義は「派遣労働者として雇用されている者でないこと。」。派遣は正規雇用労働者じゃないということを明確に書いてあります。

 ということは、塩崎大臣、今回の派遣法改正において、正社員をふやす、正社員化を図るとおっしゃっていますが、その塩崎大臣が答弁している正社員の中には、派遣労働者も含まれるということになりますね。そうだったんですか。

塩崎国務大臣 全く間違っておられて、このキャリアアップ助成金、我々がこの助成金として、「派遣労働者として雇用されている者でないこと。」としているのは、我々が言っている正社員というのは、当然、非正規雇用ではない方々を指して、派遣でない方を指しているわけでありまして、今回の法改正によっても、正社員化というのは、当然、派遣ではない、無期雇用を含めた正社員ということを言っているわけでございますので、そこはもう明らかで、これはたしか、もう予算委員会などでも明らかにしてきたところだと思います。

山井委員 後で議事録を精査した方がいいですよ。今、明確に、派遣ではない正社員とおっしゃったじゃないですか。でも、派遣を正社員として求人しているのはいいと一方では答弁しながら、国会答弁でいう正社員には派遣は含まれませんというのは、意味がわからない。

 つまり、皆さん、わかっていただきたいのは、今回の法改正が成立したら、こういう働き方がふえるんですよ。正社員と呼ばれる派遣労働者がふえる。実際、もうふえ出しているんですから。こんなことで本当にいいんですか。

 私は、そういう意味も含めて、この虚偽答弁、虚偽ペーパーの問題、こういう問題が整理されなければ、きょうの審議でもそうですけれども、五分ごとに審議がとまっているじゃないですか。毎回、間違い答弁があるじゃないですか。

渡辺委員長 山井君、既に時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 はい。

 ですから、もう委員会はとまらない、虚偽答弁の修正をしないということをしっかり確約してもらわなければ、また今回の、局長が本当に配付していないのか、配付しているとしたら組織ぐるみですからね、議事録が完全にこれは修正になります。そのことがどうなのかということをきっちりと理事会で報告をしてください。そのことがしっかりするまで、今まで二回の委員会の質疑が虚偽であった可能性がある段階では、法案審議には絶対入ることができません。

 委員長、理事会でお取り計らいください。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

 終わりにしてください。

山井委員 以上で終わります。

渡辺委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二十二分開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 本会議を挟みましたが、その前の山井委員の質疑の熱気がまだ冷めやらぬ雰囲気でありますが、その民主党さんの質疑で派遣法の話が出ましたので、通告も若干していますので、派遣に関して一言だけ取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、今私は二期目なんですけれども、一期目、二期目はとにかく目立たないように、目立たないように努めてきたんですけれども、残業代とか大阪都構想とか、それから一〇・一問題、松野理事は、何かこれを足立問題と、さっきから足立問題、足立問題、こうおっしゃっていますが、名前が出て本当に不本意であります。

 先ほども山井委員でしたか、大西さんでしたか、予算委員会の話が出ましたが、私が予算委員会でとにかく訴えてきたことは、きょう民主党さんがされたような質疑はもうやめようと。すなわち、レッテル張りとか、それから揚げ足取り、言葉尻を捉える、そういうことを余りやっていると、マスコミも含めてでありますが、ぜひそういうことではなくて、まさにきょう午前中に大岡委員、また伊佐委員がされたようなすばらしい質疑を、私は、実は経済産業省におったものですから、労働法制はある程度勉強してきた経緯があるんですけれども、本当にきょうは、大岡委員、伊佐委員の質疑には勉強させていただいて、よく、なるほどと思ったところも多くありました。

 ただ、一〇・一問題に関するペーパーについては、高橋委員の方から、しっかり真実を述べてきなさいと、いらっしゃらないですね、御指示もいただきましたので、ちょっと申し上げておきます。

 とにかく、私がこのペーパーを予算委員会に出したのは事実でありますが、役所がまだそれなりの心の準備ができていなかった紙を、私が資料として衆議院の予算委員会に、それも総理がいらっしゃるところでお出しをしたことは、これはもう人生最大のミスである、私のですね、私の人生最大のミスだ、こう思っています。改めて、厚生労働省の皆様に陳謝をいたしたいと思います。

 ただ、考えたんです、私も。何で僕、これを間違ったかなということを考えたんです。改めて、自分が間違って、間違ってか何かわかりませんが、配ってしまった紙を、きょう午前中、テーブルの上に置いてずっと眺めていたんですけれども、理由がわかりました。

 もうほとんど書いてあることに私は異論はないんです。要すれば、ふだん私が事業者の皆さんや現場で伺ってきた内容に極めてフィットするので、ちょっと過剰かなとか、例えば、大臣、ごめんなさい、私、ちゃんと聞いていなかったんだけれども、大臣初め厚労省の皆さんが誤解を招きかねない云々ということをおっしゃったのかもしれませんが、私の実感としては、元紙というか、直される前の紙は極めて真っ当で、大量という言葉は定性的な言葉ですから議論はあるかもしれませんが、少なくともあの紙に書いてあるロジックは完璧だと思っていますので、だから私は、全く違和感がなく、普通の紙だと思って……(発言する者あり)ああ、抑え目に。普通の紙だと思って出させていただいた事実は事実として、済みません、井坂委員には、私、弱いものですから。そういうことだけ。

 したがって、大西委員が、足立さんは被害者である、こうおっしゃったのは、全くの名誉毀損であります。

 私は、自分が国会議員になる前からずっと思っていた労働法制に関する考え方、短くやりますが、例えば派遣もそうですが、基準法の問題、特に解雇の問題。

 例えば、先ほどの大西委員が配ってくださったこの紙にも、後半にこう書いてあります。解雇の金銭解決というのは解雇紛争の金銭解決であってと。これを安倍政権は、一次内閣のときだったかな、要は、マスコミの批判にさらされて引っ込めちゃったわけです。

 私は、安倍総理に予算委員会で、引っ込めないでくれ、なぜならば、労働法制にあって、需給調整の派遣法みたいなものもそうですが、基準法とかいろいろな法律が相まって動いているわけでありまして、解雇も含めて、あるいは派遣法も含めて、そして労働時間規制も含めてしっかりと議論していきましょうということを総理に申し上げた、その文脈で御紹介をしたわけでありまして、全く、何か労働省の事務方にだまされて予算委員会で発言してしまったとか、それはもう全くのデマでありますので、ぜひその点は修正をさせていただきたいと思います。

 それで、質問ですが、私は、こうやって派遣法の議論が若干ややこしくなる理由の一つは、やはり政権交代があったからだと思っています。要すれば、民主党政権の時代に、なかなか難しいというか、現場に即していない、現場から遊離した立法をしてしまったために、その制度と現実の乖離を何とか埋めていこうという労使の努力の結果、今回の法律が出てきている、私はそう思っています。

 ぜひ一つだけ聞いておきたいのは、二十四年の法改正と今回の派遣法改正案の関係というか経緯を、先ほども出ていましたが、改めて御紹介いただければと思います。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございましたように、平成二十四年にこの労働者派遣法の改正が行われました。その際に、実は衆参で、委員会の方で国会審議の附帯決議がなされております。たびたび大臣等からも御紹介させていただいておりますけれども、その附帯決議の中で、期間制限の問題について、「いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先企業に分かりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始すること。」といった決議を御頂戴したということがございます。

 これを受けまして、この期間制限につきましては、労使双方にとってわかりやすい制度とするようにという御指摘でございましたので、今、労使の御努力ということの御指摘がございますが、公労使から成る労働政策審議会の議論を踏まえて建議を頂戴し、今回の改正法案を提出させていただいたというものでございます。

 中身的には、まさに、業務単位で分かれている期間制限について……(足立委員「答弁が聞こえない」と呼ぶ)

渡辺委員長 静粛にしてください。答弁が聞こえないそうです。

坂口政府参考人 業務による期間制限の区分を見直しまして、全ての業務に適用される派遣労働者個人単位と派遣先の事業所単位の二つの期間制限に見直すということとしたものでございます。

 また、このほかもいろいろ、均衡待遇の確保の問題、あるいはキャリア形成の支援の仕組みを盛り込むといったようなことを今回の改正法案の中では盛り込ませていただくということが経緯と内容でございます。

足立委員 ありがとうございます。

 今、坂口部長から改めて包括的に御紹介をいただきましたが、私は、当時、はたから見ていまして、やはり法改正の前に、先ほどもあった、適正化プランというのがあったわけです。これは長妻プランと言われているのかもしれませんが、長妻プランが出たときに、私も大変危惧をしました、これは大丈夫かなと。

 だから、やはりその二十四年の法改正、さらに、それに先立つ二十二年ですかの長妻プランから引きずって今があるわけでありまして、私は、政府の案が完璧かどうかはともかくとして、しっかり議論していきますが、少なくとも、そういう経緯の中での今回の閣法であるということは承知をしているということだけ申し上げておきたいと思います。

 それで、委員長、委員長に語りかけてもだめか。

 また大阪の問題をちょっとだけやりたいんですが、ぜひ、前回の、おとついの議論で、大臣が私の言葉が聞こえにくそうにされたり、大変申しわけないことがありましたので、本当に静かに議論させていただきたいと思うんです。

 通告の三番目から行きたいんですけれども、おとついですか、大阪都構想にまつわる住民サービスの話をしましたが、大阪都構想で、実は児童相談所がふえます。これは今、大阪市には一つしかありません。橋下市長は今、それを二つにしようとされていますが、今回の大都市法、国が、国会で成立をした大都市法に基づく特別区移行に伴って、大阪市内には五つの児童相談所ができる、こういう内容に協定書はなっています。

 これは、私は、住民自治の拡充であるのは当然として、児童福祉の増進につながるものである、住民サービスが充実するものである、こう理解をしていますが、御見解を伺えればと思います。どなたでも結構です。

塩崎国務大臣 児童福祉法では、都道府県、それから政令指定都市、それから政令で定める児童相談所設置市は、これは具体的には横須賀市と金沢市だけでありますけれども、児童相談所を設置しなければならないと規定をされております。

 大阪市は今、先生御指摘のように、現在のところ、児童相談所を一カ所設置しているというふうに承知をしているわけでありまして、大阪は、今お話があったように、新たに五つの特別区が設置をされる場合に児童相談所の権限を移譲することを検討しているものと聞いておりますが、いずれにしても、一般的に、児童相談所の設置については、地域の児童数とか児童虐待への対応件数、それから市町村の相談支援体制、さらには児童家庭支援センターの状況などを踏まえて、地域ごとに判断していただいているというふうに思います。

 なかなか大変なのは、専門人材をそろえるというのが、今、虐待などが横行している中で、大変大事な課題になっているというふうに聞いております。

足立委員 今、大阪で一つと私は申し上げましたが、地域ごとの若干今御紹介をいただきましたが、東京と大阪、東京都全体とそれから大阪府全体、東京があって特別区があります、それから大阪府があって大阪市があります、それぞれの児童相談所の数を、事務方で結構ですから教えてください。

安藤政府参考人 児童相談所の数でございます。

 大阪府の区域内では、大阪府が設置しておりますのが六カ所、それから大阪市が設置しているのが一カ所、あと堺市が設置しているのが一カ所ございまして、結果、大阪の中では八カ所でございます。

 東京都は、全て東京都設置となっておりまして、二十三区内に七カ所、二十三区以外に四カ所、計十一カ所の設置となっております。

足立委員 今聞いていただいたのでおわかりいただけると思うんですけれども、東京は全体で十一あるわけですが、二十三区内に今七つあるわけですね。それに対して、大阪府は全体で八つあるわけですけれども、二つの政令市それぞれに一つずつ、残りの六つは要は都心部じゃないところにある。

 若干、私が普通に見ても、人口との割合を見ても、大阪は都心部に過少であるというふうに、児童虐待とかいじめとかいろいろな問題が今あって、光を当てていく中で、大阪の都心部は、やはりそういう手当てが、少なくとも児童相談所という数においては過少であるというふうに、私はニュートラルにそう思います。

 橋下市長も、これは問題だということで、今、二カ所目を調整されているとかつくられている、こういうふうに聞いておりますが、いずれにせよ、特別区ができれば、今の協定書の内容では五つできるということになります。

 繰り返しになりますが、大阪市内、特別区ができれば特別区部に、今まで一つだったものが五つになる、これは前進である、こう思いますが、安藤局長、いかがですか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 児童相談所の設置につきましては、地域の児童数や児童虐待への対応件数、市町村の相談支援体制、その他の状況を踏まえまして、地域ごとに、どのような形で設置するかということを判断されているものというふうに承知をしております。

足立委員 ありがとうございます。

 質問をちょっとかえまして、協定書そのものについて、もう一回戻ります。

 おとついの質疑では、大臣の方から、いや、僕は見ていないんだ、こういうお話がありましたが、改めて通告をさせていただいています。

 これは事務方でも結構でありますが、大都市地域特別区設置法に基づいて作成された協定書、これをごらんになられて、いわゆる住民サービスが低下すると読み取れるような内容が含まれているかどうか、御答弁をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 まず第一に、おとといの質疑のときに、私の方から、各省合い議があって、厚労省としては特に意見なしということで返しているようだという話を言いましたけれども、改めて調べてみますと、法律的に合い議が求められていたことではなくて、意見をやはり霞が関では一応聴取するということで、厚労省には、意見を出せ、こういうことであったそうでありまして、そういうことで私には上がっていなかった、こういう意味で、合い議をサボっていたわけではないということであります。

 そこで、その協定書というのを拝見しました。

 御指摘の特別区設置協定書、これを見ますと、今先生御指摘になった住民サービスが低下するかどうかということについて、住民サービスという言葉がどこで使われているのかということを見てみると、二カ所あって、「住民サービスの水準を低下させないよう、大阪府及び大阪市は、適正に事務を引き継ぐものとする。」というのが一つ。もう一つは、「各特別区及び大阪府においては、各種事務事業のサービス水準及びその内容の必要性及び妥当性について十分な検討を行い、住民の福祉の向上が図られるよう、事務事業の見直しに努めることとする。」こういう記載がございました。

 この協定書の記載からは、特別区の設置によってのみでその住民サービスが低下するというのは、なかなか読みにくいのかなというふうに思いました。

 しかし、いずれにしても、これは大阪の皆さん方がお決めになることで、判断することだろうというふうに思いますので、そのプロセスにお任せするということだと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 まさに今、読みにくい、こうおっしゃっていただきましたが、まさに特別区の設置によって低下するものでは私はないと、少なくともそういうものは読み取れないと、大阪市民ではありませんが、はたから見ていて、そう読んでいるわけです。だから大臣にも伺って、それはなかなか読みにくい、こういうふうに御答弁をいただきました。

 なぜこういうことを伺うかというと、結局、今地元でどうなっているかというと、これはくれぐれも、地元のことですが、法律に基づいていますから、御容赦をいただきたいんですが、結局、特別区になると、今、大阪市消防局というのがあります。これが大阪府の、大阪都、まあ、名前はともかくとして、大阪府の消防局になると大阪市内に消防車が来てくれないんじゃないかとか、それから、もうちょっと言うと、介護保険料とか医療保険料が上がるぞとか、そういうことまで言われているわけです。

 例えば、今政府の中に入っている、大阪の、限られていると思いますが、防衛省のある副大臣は、ちゃんと紙で、ブログで、そういうことを書いているわけです。

 私は、大臣、これはぜひ御意見を賜りたいんですけれども、要すれば、今、日本は中央集権的に行政が成立していて、今国会でもさまざまな法律の議論をしているように、医療サービスも介護サービスも、基本的には国で枠組みを決めて、そしてその上で、自治体がいろいろな、あるいは保険者がいろいろと御努力をされているというのが現状であります。

 例えば、保険財政全体が悪くなって、国が法律を変えれば、保険料率が上がったり、年金が下がったり、いろいろするわけでありまして、少なくとも、政令市を特別区にした途端に、医療保険の何か問題が起こるとか、あるいは介護保険の問題が起こるとかいうことは私はないと思っていて、もしそのトランジションの問題があるとすれば、それは一部事務組合という形でそれを担保している、こういうつもりであります。

 きょうは局長さん方、おいでいただいているんやったかな、ちょっと忘れちゃったけれども。医療関係の方いらっしゃいましたか。いないか。では、いいです。

 大臣、私が申し上げているのは、そういう間違った情報ばかりが今流れているものですから、公正性を担保……(発言する者あり)行政コストですか。

 せっかくの御要望ですから、不規則発言に反応するわけではありませんが、行政コストが六百億円ぐらいかかるということで、自民党大阪府連、今の方もそうおっしゃっているわけですけれども、済みません、山本副大臣、御機嫌麗しくないかもしれませんが、もうやめますので。

 行政コストだけちょっと言わせていただくと、行政コストというのは、これは投資なんです。今申し上げたように、大臣、安藤局長、児童相談所を一つから五つにすれば、お金かかりますよね。安藤局長、どうですか、これはお金かかりますね。

 安藤局長、例えば大阪が児童相談所を一つから五つにすると、この財源はどこから出るんですか。要は、国から全部出ますか。

安藤政府参考人 児童相談所の整備に当たりましては、地方交付税措置がなされているところでございます。一時保護所の整備についてのみ、ハードの補助が出るというような仕組みになっております。

足立委員 ちょっと細かくなるかもしれませんが、要すれば、大阪は、さまざまな投資を、すなわち予算をそこに確保して、今回の特別区、要は住民自治の拡充です。だって、今まで一つの役所でやっていたのを五つの役所でやるわけですから、さまざまにその取り組みがふえる。

 今、世間からはいろいろ、今とても大阪の意見とは思えない意見も仄聞しましたが、要すれば、これは二重行政の問題じゃないんです。大阪都構想というのは二つの問題なんです。一つは、広域行政が二つ、二元的、二重になっているから一元化しようという話と、全く別に、基礎自治体の行政がでか過ぎるから地域に密着させようと。これは全く別なんです。

 それをあたかも、児童相談所が一つから五つになったら五重行政だとか、そういうことをこの委員会の中でもおっしゃる方がいるくらいですから、大阪市民の皆様には本当に丁寧に、正確に情報提供していく必要があると改めて感じているところであります。

 大臣にあともう一つ伺っておきたいのが……(発言する者あり)何て。余り反応しない方がいいですね。考えていると聞こえないんです。済みません。

 大臣、もう一つちょっと伺っておきたいのが、今申し上げたように、大都市地域特別区設置法という、皆様につくっていただいた法律は特別区を設置するものでありますが、政令市をやめて特別区をつくると、その結果、基礎的な事務は特別区に移り、広域行政に係る事務は都道府県に移る、これが当然想定されている法律なわけであります。

 今申し上げたように、二つの仕事がある中で、大都市が統一性のある広域行政を東京のように講じることによって大都市が成長することは、その地域の税収がふえて、そして住民サービスに充てる財源も確保できるという、いわゆる好循環ですね。アベノミクスの三本の矢の好循環とはちょっとまた意味が違うかもしれませんが、少なくとも、大都市地域にあっては、都市の成長、そしてそれが財源、税収となり、そしてまた福祉に充たり、その福祉の充実がまた成長に寄与する、こういう本来のサイクルが私はあると思っていて、まさに大阪都構想というのはそういうものを目指しているものであると私は思っているわけです。

 大阪都構想の評価は、先ほど大臣がまさに御見識でおっしゃっていただいたように、今、住民の方に賛否を御判断いただくに当たって、政府の方が何か一方の意見をおっしゃっていただく必要は全くありませんが、ただ、今申し上げたようなサイクル、成長と財政、そして社会保障とか福祉、そういうものにはやはりサイクルがあると私は思っていますが、一般論で結構です、大臣の御見識はいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 大阪のみならず、今、地方創生ということで石破大臣が一生懸命頑張っていただいているわけで、何が必要かということは石破大臣中心にまとめておられるし、また、それぞれの地域がそれぞれのお知恵を出してやっておられるわけです。

 そういう意味で、一般論で言えば、当然、我々も期待をしているのは、地域の活性化ということを期待しているわけで、それが何によってもたらされるかというのはそれぞれだろうというふうに思いますけれども、もちろん、ですから、地域の活性化によって経済の好循環が回っていくようにというのが地方でも起きるようにということは、そのとおり私たちは実現をしようとしているわけでありますので、何によってそれをもたらすのかというのは、それぞれの地域でお知恵をそれぞれ出し合うというのが今回の地方創生の肝じゃないかなというふうに思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 全く今大臣がおっしゃったとおりでありまして、まさに地域の住民が決めることでありまして、大臣初め自民党の皆さんに、公明党の皆さんに、民主党の皆さんにつくっていただいた大都市法は、だからこそ、最後は住民投票、こうなっているわけであります。

 きょうが金曜日ですから、あさって住民投票でありますが、結果がどうであれ、私は、地域の経済と財政と、そして、そういう社会保障というか福祉が循環をしながら、むしろ、ダウンサイドに流れていくのではなくて、日本全体としては必ずしも楽観できない状況でありますが、東の東京に負けないように、西の大阪としてアップサイドで成長していけるように議員として努めていくことをお誓いして、時間がちょっと余っていますが、これ以上大阪のことをやると雰囲気も壊れますので、ここは良識を見せて、自分で言うのもなんですが、質問をこれで終わらせていただいて、浦野委員に引き継ぎたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 質問の順番を間違えたかな、僕が先にやった方が僕はやりやすかったんじゃないかと思いながら今立っているんですけれども。

 とはいうものの、足立委員の質問は、いつも私自身もいろいろ勉強になることもたくさんあって、さらに、委員会の雰囲気が喜怒哀楽全てあらわれる質問ですので、不謹慎かもしれないですけれども、本当に楽しい思いで委員会の質問を見させていただいております。

 私は、きょうは一般質問ということですので、今まで一般質疑のときに時間をいただいたらお礼を言わせていただこうと思っていたことが一つありまして、児童虐待の通知番号三桁化、安倍総理にお願いをさせていただいて、本当に早速実現をしていただきました。ありがとうございました。これは与野党関係なしに、対応していただかなければいけないことにはすぐに対応していただくという、本当に政府の今の福祉行政、社会保障に対する姿勢をさまざまと見せていただいたというふうに思っています。

 三桁化というのは、「いちはやく」という、一八九の数字をちゃんと確定をしていただいて、まだ全国的に啓蒙活動が今展開されていて途中ですので、そういったポスターも、いただいているところといただいていないところがちょっとまだありまして、それは順次恐らくやっていただいているんだろうと思うんですけれども。

 この番号を知っていただくという活動と、さらに、私は、この通知番号三桁化というのは終わりじゃなくて始まりであって、通知番号ができたことによって、虐待されている子供たちの緊急を知らせるものがすぐに知らされるようになる、その後それに対する対応をきっちりとしていく、これが本当は一番大事なことであって、その部分について、これから恐らく財政的に厳しい中で、未来を担う子供たちのためにしっかりと対応していただかないといけないことになりますので、その点については、これからまた、きょうは言うだけになりますけれども、しっかりと対応していただけたらというふうに思っています。

 また、大臣、もし何かこの件に関して一言あるのであれば、お答えをいただけたらと思います。

塩崎国務大臣 今お話がございましたように、実は、この一八九の三桁の番号は、平成二十六年二月十三日の衆議院予算委員会における浦野先生の御質問で、総理がそれに答えて、建設的な御提案なんだろうということで受けとめさせていただいて、この七月一日から実現することになりましたので、本当に浦野先生には、この児童虐待防止の分野に高い関心を持って、また、そういう建設的な提案をしていただいたこと、改めて感謝申し上げたいというふうに思います。

 そういうことで、先ほど来、児童相談所の話が出ていますが、この早期発見、対応というのが大事でありながら、なかなかアウトリーチができないということで、いろいろな悲劇的なことが起きてしまったりすることがございますので、せっかくの機会ですので、これをやはり一つの転機になるようにしていかなきゃいけないので、今先生がおっしゃったように、受け入れ体制、対応の体制をどうするのかということで、この七月一日から一八九というのが実施されて、これは児童相談所にかかるということになります。

 問題は、一つは、だから、児童相談所で受けたときに受けとめる体制になっているかどうかということで、これについては私どもも、今それがどういう体制になっているのかということを調べさせております。

 それと、もっと卑近なことを申し上げれば、例えば夜中に、夜に、あるいは休日に、この一八九にかけたときに誰がとるか、これが実は、どうも調べてみると、都道府県によって随分ばらつきがあるような感じを今受けております。

 例えば、専門性を持った方が電話に出る体制になっているかどうかということについて、二十四時間体制でいなければ多分いけないんだろうと思うので、今ごろは転送サービスというのは幾らでもありますから、どうにでもなる時代ですけれども、さあ、果たしてそれだけの問題意識を都道府県で持っていただいているかどうか、非常に今心配なところがありますので、なお、今、それがどういうことになるか調べているところでございます。

 そういうような、せっかく一八九をつくったわけで、これは虐待だけじゃなくて、実は児童相談所というのは子供の福祉全般についての相談は全部受けるというたてつけに児童福祉法はなっていますから、何でも結構ですから電話していただいて、妊娠の悩みでも何でも受けるということになっております。ポスターにはそういうふうに書いてあります、ちょっと小さいですけれども。虐待とでっかい字で書いてありますが、妊娠から何でも子供の相談までと書いてありますので。

 そういうことでありますが、市町村と連携しながらやることでありますので、体制をしっかり組んでいかなきゃいけないなと思っております。

浦野委員 ありがとうございます。

 今大臣がおっしゃったみたいに、これはこれからの方がやはり重要だと思うので、折に触れてまた質問を通じていろいろと言っていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 きょうは三問ほど通告をさせていただいております。

 一つ目なんですけれども、学校薬剤師についてということで、きょうは文部科学省からもお見えいただいていますけれども、この学校薬剤師、これは幼稚園を設置する場合に学校薬剤師をちゃんと確保してくださいという、ちょっと名前は詳しくは忘れましたけれども、法律で定めがあります。

 これをなぜ私がこの厚労委員会で質問をするかというと、幼保一体型の、保育園から移行していく認定こども園について、この学校薬剤師の設置義務が課せられている。幼稚園の方で設置義務が課せられていますので、それがそのまま法律的にスライドして、保育園から移行した認定こども園にもこれが当てはまることになるということなんです。

 ここでちょっとお聞きしたいんですけれども、私立の幼稚園で学校薬剤師、本当にきっちりと設置義務を果たしている、しっかり果たしているかどうかというのを国で調べたことがあるかどうか、ちょっとお答えをください。

久保政府参考人 学校薬剤師につきましては、幼稚園、小中高等学校で必置となってございます。

 この数値につきましては、学校基本調査に基づきまして、小学校、中学校、高等学校については配置を把握してございますけれども、幼稚園に関しましては学校基本調査の対象になっておりませんので、現在把握していないという状況でございます。

浦野委員 そうなんです。これは実は把握されていないんですね。きょうは厚生労働委員会ですので、その部分はもうこれ以上は追及はいたしません。ただ、数が、設置できているかどうかというのを把握できていないというのが現状です。

 保育園側から認定こども園に移行したところから、やはり、学校薬剤師、初めて聞く名前ですので、学校薬剤師って一体何をするものなんやということで、結構、実は認定こども園の基準を決める会議でも委員の中から質問が出たりとかも確かにしていました。

 今現在、もともと保育園には学校薬剤師というのがありませんので、認定こども園に移行した保育園、元保育園ですけれども、この学校薬剤師というのをどういうふうにしているかというのは厚生労働省は把握をされていますか。

安藤政府参考人 認定こども園における学校薬剤師の配置状況について、厚生労働省では把握はしておりません。

浦野委員 これは設置義務になっていたんでしたっけ、認定こども園も義務なんですよね。だから、ないと認定こども園の認定を受けられないはずなんですけれども、それを把握されていないという答弁だったので、ちょっとあれっと思ったんです。

 ただ、現在、もう四月一日から認定こども園は始まっていますよね。そうしたら、どういうふうにしているんですかね。

久保政府参考人 発足に当たりまして、法律に基づきまして、学校保健安全法第二十三条を準用することとされておりますので、学校薬剤師必置ということでございますけれども、今まで、幼稚園、小中高等学校につきましては、例えば、教育委員会が地域の薬剤師、日本薬剤師会と連携しながら、ふさわしい方を推薦していただいて委嘱するというような手続、一定の仕組みができ上がっております。

 したがいまして、これを、幼稚園の段階では、一緒に教育委員会の方が窓口になってやっているというような状況があると思います。それを、各自治体の中で、その動きを市長部局あるいは知事部局の方でも参考にしながら、同じような仕組みを使ってうまくやっておられるところもあるんじゃないかと思います。

 今後、その辺の周知は課題でございますので、私ども、薬剤師会とかからも実情を聞きながら、その辺の状況がうまくいくように、今後、周知あるいは連携の仕組みをつくっていただくように、いろいろな支援をしてまいりたいとは思っているところでございます。

浦野委員 さっきも言いましたけれども、四月一日から認定こども園は始まっているので、保育園から移行しているところは、これは、いないと設置基準を満たしていないことになるので、厚生労働省としても、一回公式に見解を示した方がいいと思うんですけれども。

安藤政府参考人 認定こども園におきましても、幼保連携型認定こども園に関する部分につきましては、その設置基準が決められているということでございますので、この四月一日以降の状況につきましては、今後、把握をしてまいりたいというふうに考えております。

浦野委員 正直言って、認定こども園という名前にはなってはいますけれども、保育園から移行した場合はもうそのまま、ほぼ運用形態が変わらない、日々の活動は変わりませんので、果たして薬剤師さんが必要かどうかという部分も含めて、非常に疑問が出ているというのは事実なんですね。

 恐らく、義務にはなっているけれども、学校薬剤師さんをわざわざ置かないでも、例えば園医さんとかはちゃんと決まっていますよね。これは保育園でも、園医さんとか、歯科健診とか歯医者さんとかは全部しっかりと契約をしてくださいというふうに決まっていますので、園医さんがいる場合はそれで結構ですよとか、そういうみなしをしたりとかすれば問題はなかったんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、特にそういうふうに指導しているというわけでもないということでよろしいですか。これは確認ですけれども。

久保政府参考人 学校保健安全法ではそれぞれ必要な職員を置くことになっておりますが、これは先生、常勤ではございませんので、衛生検査ですとか騒音ですとかあるいはいろいろな薬品の管理ですとか、そういうものがきちんと行われているかを調べる際に来られればいいわけでございますので、大体数園あるいは幼小中高全部合わせて一人の方が委嘱されて担当しているという例もございます。そうなったりすれば、それほどロードも、荷重もかかりませんので、連携の仕組みさえとれればうまくいくと思いますので、そのあたりをよく相談してやっていただくようにやるのがこれからの課題だというふうに考えているところでございます。

浦野委員 答弁しますか、何か。いいですか。(安藤政府参考人「いいです」と呼ぶ)

 こちらの方で何かしっかりできていないような雰囲気なので、これ以上言うとまたあれなんですけれども、要は、運営している側からすれば、それはきっちり決めておいてもらわぬと対応に困るというか、実際、多分困ってはると思うんですよね、今現在、既に。

 そこは、では、こういうふうにしてくれればいいですよという、もしそういうのがあるのであれば、ちゃんと通知を出してくれたらいいかなと思いますし、四月一日から始まっている制度ですので、ちゃんとできているかできていないかがわからないというのが、ちょっと微妙に心配なんですけれども、そこはまたしっかりと調べていただいて対応していただけたらと思います。普通は認可はおりないんですけれどもね。済みません。

 これ以上聞いたらちょっとあれなので、二番目に行きます。

 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案、非常に長い名前の法案が今回審議されます。その中で、都市公園内における保育所等設置の解禁という部分が出てまいりました。これも私は厚労省に聞こうと思うたら、これも国土交通省だということできょうはお見えいただいています。

 この問題に入る前に、一つ、横浜の保育園の問題点について、私どもの柿沢未途政調会長が一般質疑で触れましたけれども、待機児童、実は解消したと余りにも宣伝し過ぎて、大量に若い人たちが流入をしまして、今度は物すごい待機児童になってしまっているというのが今の横浜の現状ですね。

 横浜は今、これも規制緩和で、各保育園が園庭を自前で持たなくても、公園を園庭とみなして設置基準をクリアさせるという規制緩和を行っていますね、大分前から。これが実は問題になっていまして、一つの公園に何カ園も保育園が、ここはうちの園庭だというふうに指定をして、日中、三つ、四つの保育園がその公園に子供を連れてくる。そうすると、保育園に通っていない一般の子供たちが遊べないぐらい子供がいてる。これはどういうことですかということで苦情が出ているというんですよ。そういう問題が起きているというのは、厚生労働省は把握されていますか。

安藤政府参考人 正式な調査でということではございませんが、さまざまな情報の中から把握しているところでございます。

浦野委員 逆に、公園があるから最低基準はクリアしているんだという話ですけれども、そうなってくるとその前提が崩れてしまうので、一つの公園に複数の保育園がそれを園庭だと認めるというのもちょっと考え物だなというふうに思います。これは都市部の問題ですから、本当にどういうふうにしていくかというのは非常に大きな問題ですけれども、そういった問題が起こっているということは、ちょっと一つ頭の中に入れておいて、皆さんに共通の問題意識として持っていただいて。

 本題のこの設置の解禁についてなんですけれども、これを質問するに当たって、きのうもすぐ飛んできていただいて、いろいろと話を聞かせていただいたら、これは全国で展開するというわけではなくて、特区でそういった対象をある程度絞ってやるということなんですけれども、この対象になる公園ですね。

 これはもちろん、保育園には設置基準の最低基準がありますから、面積もある程度必要ですし、今言うたみたいに園庭を囲って専用のスペースとするのか、もしくはその公園全体がその保育園の園庭だとするのかというのはこれから考えるのかもしれないですけれども、一体どれぐらいの公園が対象になっているのか、ちょっと数を教えていただけたらと思います。

舟引政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案、現在、本日からでございますが、衆議院の地方創生特別委員会で御審議が始まったところでございます。

 具体の中身についてはそちらで審議をいただいておりますけれども、実際は、特区法ができて、さらに特区計画を立てて、それぞれの地方公共団体から御申請をいただくという手順でございますので、現段階で幾つの公園が対象になっているということはわからない状況でございます。

浦野委員 正直、ちょっと、これはやっていただいたらいいと思うんですね。待機児童の解消というのは都市部の問題ですから、都市部でこういったことが行われるとは思うんですけれども、都市部というのは公園もまず少ないわけですよね。そういう、かなりの、一定の大きさを持った公園が、では一体都市部にどれぐらいあるのかという話にもなりますので、これはかけ声は非常にいいんですけれども、かけ声倒れにならないようになったらいいんだけれどもなというふうに私は思っています。

 私は、これはどっちかというとぜひやってもらいたいと思っていますので、ちょっと本当に大丈夫かなという心配があったので聞かせていただいて、まだ全然何も把握できていないということでしたので、これはなるべく早く教えていただけたらなというふうに思います。

 それで、やはりさっきも言うたみたいに、公園がそういう複数の保育園によって園庭化されていますので、非常にそういう争いも起こる可能性が出てきますので、その辺のところもしっかりと考えていただきたいと思います。大阪なんかだったら、大阪城公園の中に保育園があったら、それはすごい景色やなとは思いますので、ぜひやっていただけたらと思います。

 三つ目。これはまたちょっと空気が、いや、空気は悪くならないとは思うんですけれども、きのう、財政再建に関する特命委員会報告、これは自民党の政調会の中間整理の報告が出されました。私も、中間整理の文書をずっと読ませていただきました。

 この中に、次世代に借金のツケ回しを今は行っている状況だということだとか、金額ありきで財政再建のために社会保障費を削減するということではないと。

 これは読めば読むほど、私たち維新の党としても、実際に財政再建をするためには、歳出もやはりどこかで抑制していかないといけない。それはばさっと一律に切るんじゃなくて、やはり取捨選択して、選択と集中をしてそういったことをやっていかないといけないというふうに私どもも思っているわけです。

 この報告の中では、社会保障の制度が持続不可能となるのは明らかだと、ここまで、結構踏み込んで書かれているわけですね。しかも、さらに、どれだけ楽観的に経済の見通しをしても、必ず巨額の財政不足に陥ると。読みますと、「楽観的な経済前提での経済成長による税収増を通じた七兆円の収支改善を見込んでもなお九・四兆円の改善が必要だ」というふうに、「経済成長だけではPB黒字化の目途が立たないことは明らかである。」これは非常に大きく踏み込んだ表現で、私も同感なんですね。

 ただ、これは自民党の政調の特命委員会の報告ですけれども、では、これを実行しましょうという話になったときに、厚生労働省としては、恐らく、何かしらの社会保障サービスを、それがどういうサービスかわかりませんけれども、下げることにつながると思うんです。

 大臣、政権の厚生労働大臣として、今回の報告をどう捉えていらっしゃいますか。

塩崎国務大臣 先生御指摘いただいた今の中間整理は自民党で取りまとめられたものでございますけれども、もともと、去年の総選挙のときに、消費税二%引き上げを一年半延ばすけれども、プライマリーバランスを二〇二〇年までに黒字化するということに関しては守るし、また夏までにその具体的な計画をつくるということをお約束して選挙を戦ったわけでございます。

 したがって、これに向けて今順々に手続を踏んでいるわけで、それの与党側の一つである自民党でまとめられた考え方というふうに理解しております。

 もちろん、我々、これから政府の中でも議論を深めていくことになりますが、最終的には、この夏までというのは、タイミングはまだよくわかりませんが、そう遠くなくまとめなきゃいけないというのは国民に対する約束だと思います。

 一方で、厚労省としては、社会保障を預かる立場でありますから、これをどうするかというのはとても大事で、一昨日ですか、自民党のこの中間整理では、まず第一に、財政再建には、デフレ脱却・経済再生、これが一つ、それから歳出改革、そして歳入改革、この三つをやらなければいけないということが書いてあると思います。

 それで、歳出改革の中で、「世代間の公平性と財政の持続可能性を確保する観点から、社会保障の効率化は」、さっきお話にありましたけれども、「避けて通れない。」それから、「歳出額そのものに着目した目標を設定することも必要」だ、しかし、「毎年度、個別の歳出項目毎に歳出抑制額を割り当てるといった機械的な目標であってはならない。」ということも書いてあります。これは多分、骨太二〇〇六を意識した表現だと思います。今後、社会保障を含む「歳出改革の具体策等を議論して」「六月末を目途に、政府・与党として歳出改革の方向性を取りまとめることを目指す。」ということも書いてあるわけであります。

 そうなりますと、我々としては、厚生労働省の立場で、この自民党の特命委員会の議論も今後も注視をしていかなければならないし、いずれにしても、負担能力に応じて公平に負担をいただきながら、必要な社会保障給付が適切に行われるように、制度の不断の見直しによる重点化あるいは効率化というものを図って、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、厚労省としても取り組みをしっかりと進めていくことが重要であるということで、これから議論を深めてまいりたいというふうに思います。

浦野委員 これとは別に、政府サイドでも一時期よくその話が出て、最近聞かなくなったことだったんですけれども、またニュースになっていましたけれども、救急車の有料化だとか、財政を立て直す上で国民の皆さんに負担をお願いする時期が、遅かれ早かれ、今以上の負担をお願いする時期がこれから恐らくやってきます。でも、その負担をお願いする前に必ず、やはり政府、国会議員、我々も一緒になって、できる限りの無駄遣いをなくしていく、そういう努力は絶えず続けないといけないと思うんですね。

 その関係で、この間、前回の法案質疑の中で私がお願いをした抗がん剤治療の試験の件なんですけれども、あれは別にばさっと切ってくれというんじゃなくて、必要じゃないものを使わないで済むようにするというだけの話ですので、こういった取り組みをたくさんやってほしいというお願いをしましたけれども、その後、どういうふうになっていますか。

唐澤政府参考人 前回、先生から御指摘いただきました抗がん剤の感受性試験でございますけれども、これは、手術などによって採取されたがんの組織というものを用いて、体外で培養して、抗がん剤、どれが効果があるのかということを測定するものでございます。

 したがって、これは、いろいろながんの方でどの抗がん剤を選ぶかということを、より効果のあるものを選ぶことができるという面もございますし、あわせて、抗がん剤はどうしても副作用がございますので、その効果が少ないのに副作用が出るということを防ぐこともできます。あわせて、費用の適正化、医療費の適正化ということも期待できるということで、私どもは大変重要なものであるというふうに受けとめております。

 それで、これは、平成二十一年に開催された第四十七回の日本癌治療学会でも、適切に利用すれば百四十三億円の医療費の削減ができるのではないかと。これは前回、先生からも御指摘をいただきました。

 私ども、平成十一年から先進医療として実施をしてきまして、平成二十年度の診療報酬改定で、胃がんの一部について適用いたしました。保険に導入をいたしまして、このときは二千点という点数でございます。それから、平成二十四年度の診療報酬改定では、胃がんのほかに消化器がん、乳がん、肺がんなど主要ながんに適用するとともに、二千点から二千五百点に引き上げるという改正をさせていただきました。

 ただ、例えば、がん患者の団体の皆さんからは、お話をお伺いいたしますと、この点数というものはもうちょっと引き上げてほしい、これは医療費の適正化にも効果があるんだという御指摘をいただいております。あわせて、病理の先生の確保というのは非常に難しくなっておりますので、そういう点も含めて対応してほしいというような御指摘をいただいております。

 私ども、次回の診療報酬改定に向けまして、関係学会の皆様の御要望も踏まえながら、しっかりと検討させていただきたいと考えております。

浦野委員 時間が来ていますのでこれで終わりますけれども、またいろいろとよろしくお願いをいたします。

 どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 きょうは、派遣法の改正案にかかわりまして、いわゆる一〇・一問題と、それから、昨年の臨時国会の審議前に公明党から示された修正案を今回取り込んだということで、審議に入る以前の問題、前提の問題としてこれも曖昧にできないというふうに考えていますので、まずその問題からお聞きをしたいと思っております。

 一〇・一というのは労働契約申し込みみなし制度の施行日でありまして、期間制限違反など違法派遣があった場合、派遣先企業が派遣労働者に対して直接雇用の契約を申し込んだものとみなす制度です。今度の法案は、その施行の一カ月前の九月一日が施行日となっています。

 本会議で私が安倍総理に質問しましたが、法案施行日が九月一日になっているのは、このみなし規定を実質発動させないためではないですかとお聞きをしたわけですが、総理の答弁は、施行日については、円滑に施行するため、周知期間等を踏まえたものであり、みなし規定を実質発動させないためとの指摘は当たりませんというものでした。

 大臣も同じ認識だということでよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 このペーパーは、何度も申し上げておりますけれども、法案担当課において、昨年冬ごろ、法案の施行日の説明を行う際の補足資料として作成をされたものでございまして、議員に御説明に伺ったときに、個別に施行日に関する御質問があった場合などに必要に応じて使うということがあったというものでございます。

 これは、平成二十四年の法改正によって、派遣先において、派遣受け入れ期間の制限を上回るなど違法な派遣の受け入れがある場合に、その派遣で働く方に直接雇用の契約を申し込んだものとみなす制度が設けられ、本年十月一日からの施行が予定をされているということがまずあったわけでございます。

 一方で、現行制度では、いわゆる二十六業務について派遣受け入れ期間の制限対象から除外をしているわけでありますけれども、対象業務に該当するかどうかというのがわかりにくいなどの課題があるために、改正案では、現行の期間制限を廃止して、全ての業務に適用されるわかりやすい仕組みを設けることとしたわけでございます。

 これは、附帯決議がその二十四年当時にあって、自公民の合意を踏まえて期間制限をわかりやすくしたわけでありまして、これで派遣先の懸念を解消し、労働契約申し込みみなし制度が円滑に施行できる環境を整備していくための見直しを行うものであって、私も総理と同様に、みなし規定を実質発動させないためとの御指摘は当たらないものというふうに認識をしております。

堀内(照)委員 今答弁ありましたけれども、まさにこのペーパーは施行日の説明のためなんだと。

 最初のペーパーでは、もう明確に、経済界等の懸念だとして、「申込みみなし制度が施行されることを避けたい。」と明記されているわけなんですね。いろいろおっしゃいましたけれども、削られたこの部分というのは、まさに今回の法改正の本当の動機、本音を私はよくあらわしているというふうに思うんですね。

 なぜ九月一日なのか。大臣、答弁の中で、派遣先の懸念を解消するんだとおっしゃった。ちょっとその一端があらわれたのかなと思ったんですけれども、まさに、この一〇・一をそのまま迎えたくない、みなし規定の施行を避けたいという経済界の懸念に応えたものじゃないですか。

塩崎国務大臣 今回の改正案は、一部届け出制となっております労働者派遣事業を全て許可制にするとともに、業務単位の期間制限を見直して、全ての業務に適用されるわかりやすい仕組みを設けるなど、派遣で働く方の保護の観点から必要な規制を強化するということを図っているものでございまして、早期に施行することが望ましいというふうに考えているところでございます。

 また、いわゆる二十六業務に該当するかどうかによって派遣期間の取り扱いが大きく変わる現行の制度については、派遣で働く方や派遣元、派遣先企業にわかりやすい制度となるように速やかに見直すことは、平成二十四年改正の際の、先ほど申し上げた自公民の三党の共同提出の附帯決議にも書かれていたものでございます。今回の改正は、この附帯決議を踏まえて、派遣で働く方の保護を強化するものでございます。

 さらに、いわゆる二十六業務に該当するか否かがわかりにくい現行制度のまま十月一日から労働契約申し込みみなし制度が施行されると、派遣先が意図せずに違法派遣を受け入れ、そして労働契約申し込みみなし制度が適用されてしまうというリスクを回避するために、派遣先が派遣で働く方の受け入れを十月一日前にやめる可能性があるとも考えているわけでございます。

 これらの背景から、施行日を九月一日とするものであり、九月一日を施行日にしている意図は、経済界からの懸念に応えるものではないのかとの御指摘は当たらないものと考えております。

堀内(照)委員 大臣は、施行日の説明のためのペーパーなんだと。

 当初のところでは、もう明確に経済界の懸念だということで書かれていたわけですから、法案を作成した担当課としては、施行日がこの経済界の懸念を受けたものなんだと意図していたという事実は否定できないんじゃないですか。

塩崎国務大臣 今もう御説明したとおりで、それに尽きると私は思っております。

堀内(照)委員 総理の答弁で、施行日については、円滑に施行するため、周知期間等を踏まえたと言っているんですよね。これは大臣も同じだと冒頭お認めになりましたけれども、周知期間が要るのであれば、なぜそんなに九月一日と急ぐんですか。これは不自然だと思うんですね。

 なぜ九月一日かというと、やはり一〇・一に間に合わないというのが一番の動機であるということですよね。これはやはり、経済界の懸念に応えるということしか理由はないんじゃないですか。

塩崎国務大臣 私どもは同時に、いろいろなことを考えるわけでありますが、大事なことは、やはり派遣で働いていらっしゃる方々のお立場も考えなければいけないというふうに思っております。

堀内(照)委員 派遣法の枠組みを根本から変える大転換なんですよ。保護と言いますけれども、みなし規定が施行されると、違法派遣なんかがあったら直雇用されるわけですよね。それを、実際には期間制限を効力なきものにしていくわけですから、これは本当に重大な、保護どころか保護されないわけですよ、派遣労働者が。そういう重大な転換を、周知期間がわずか、もう目の前に迫っている、そんなことで施行するというのはあり得ないんじゃないですか。

塩崎国務大臣 新しい法律に基づく期間制限で、そこで違反をするようなことがあってもいけませんし、いずれにしても、この十月一日からの労働契約申し込みみなし制度は、既に法律が成立をして施行が決まっているわけでありますので、ここで現場の混乱が起きないようにすべきではないかということを考えてこういうことでございまして、もともとこの十月一日からのみなし制度というものは我々が通したものでございますので、それにきちっと対応できるようにしておくということでございます。

堀内(照)委員 混乱と言うんですけれども、期間制限のない専門業務だといいながら、実際には一般業務もさせてきた、いわば違法、脱法行為があるわけですよね。その現状をきちんと規制しなければならないときに、それをもう合法化するようなことなわけですよね。だから、その一〇・一を目の前にして企業が慌てているということであって、だから経済界の懸念に応えているということにしかならないじゃないですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、もともと平成二十四年の法改正の際に附帯決議がございまして、それに基づいてわかりやすい制度にしていくということで、これは、あくまでも派遣で働く方の保護を強化するという立場からの見直しを私どもはしているわけで、それによって、今回は、派遣元の規制の強化ということで、この二十六業務の、今までは期間制限がなかったわけでありますけれども、これも三年の期間というものを設けるということにいたしたわけであります。

 一方で、先ほど申し上げたように、十月一日からの労働契約申し込みみなし制度は、もともと既に施行が決まっていることでありますので、これに現場の方々に混乱がないように、しっかりとやっていくためにこういう形にしているということでございます。

堀内(照)委員 これだけ聞いても、ごまかしはだめだと思うんですよね。

 専門業務がわかりにくいと言いますけれども、期間制限のない専門業務だといいながら、実際には一般業務の仕事をさせてきたという違法行為がやはりあるわけですから、みなし制度が生きていると、そういう人は直雇用されていくわけですよね。身分がより安定するわけですよ。それがなくなってしまうわけですよね。

 後でちょっとまた期間制限のこともやりますけれども、そういう、一〇・一を前にして企業が慌てて懸念をしている、そこに応えるというのがまさに本当の理由であって、余りにもそれを正直に書いたものですから、あからさまだから、その批判を前にペーパーを変えたというのが今回の騒動の本当のところだと私は思うんですね。まさに経済界の要望に応えて、労働契約申し込みみなし制度の施行が始まる前にその実効性を失わせようというのがこの法改正の本質だと言わなければならないというふうに思うんです。

 もう一点、さきの臨時国会で公明党から出された修正を取り込んでいるという件なんですが、これも本会議で私お聞きしたんですが、労政審を通っていないじゃないかと。この指摘に、大臣からは、建議の内容の範囲内のものであると認識をしているため、改めて諮問しなかったという答弁でありました。

 それなら、この修正というのは修正前と大差がないのか、何のための修正だったのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 今回の労働者派遣法改正案は、公労使から成る労働政策審議会の建議を踏まえた改正法案でございます。

 さきの臨時国会からの修正に関しても、建議の内容の範囲内のものであると認識をしているために、改めて労政審にお諮りをしなかったものでございまして、一方で、今回の修正は建議の内容の範囲内ではあるものの、これにより、派遣は臨時的、一時的という趣旨がより明確になるなどの意義があるものだというふうに考えているところでございます。

堀内(照)委員 明確にしたとおっしゃるんですけれども、実際には、国民の批判や、前回の国会審議を通じて明らかになった法案のぼろを取り繕ったというのが本当のところだというふうに思うんですね。

 これは厚労省も説明ペーパーをつくっています。修正前、修正後ということで整理もされていますけれども、今大臣が明確にしたという言葉どおり、明確化ということも出てくるんですね。

 例えば、過半数労働組合等に対する対応方針等の説明、これはいつするのかというのがありましたけれども、期間制限に達するまでにやるんだと明確化したと書いてあるんですけれども、まさにこれは前回の審議の中で大臣の答弁が二転三転したところじゃないですか。私はこのときはいませんでしたけれども、議事録を拝見させていただきました。

 明確にしたということは、つまりは取り繕っているということではありませんか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員の方から御指摘ありました点は、派遣受け入れ期間延長に対する説明という部分のことでございますけれども、これにつきましては、先ほど御指摘ありましたように、廃案となりました臨時国会に提出した法案では、派遣先が第三項の規定により派遣可能期間を延長したときは速やかにという形での、対応方針等の説明をしなければならないという規定ぶりになっていたものですから、今委員の方からも御指摘ありましたとおり、延長した後に説明すればよいというようなことの誤解のおそれがあるのではないかという御指摘もあったということもございまして、今回につきましては、この説明のタイミングを、過半数代表から異議があった場合に、期間制限に達するまでの段階で説明しなければならないということを明らかにするという形で、「延長前の派遣可能期間が経過することとなる日の前日までに、」という形で、まさに明確化という形で改正、修正をさせていただいたというものでございます。

堀内(照)委員 やはり、お聞きしたら、取り繕ったというふうにしか思えないんですね。

 それで、この修正について私、もう一点、本会議で、修正で盛り込まれた「雇用慣行が損なわれる」ということについて、これはどういう事態ですか、どういう事態を想定しているんですかということで総理にお聞きをしました。総理からは、正社員が派遣労働者に置きかわる常用代替が常態化するような状況が考えられると答弁がありました。

 これはつまり、やはり、この法案によって派遣労働者がふえるということじゃないんですか。

塩崎国務大臣 これも何度も答弁申し上げておりますけれども、派遣で働く方がふえるか減るかということにつきましては、さまざまな要因が重なって最終的に決まることだというふうに思っておりまして、景気とか、雇用あるいは失業情勢、あるいは働き方において多様性というものを希望する労働者の意向とか、さまざまな要因で、景気全体の上向きか下向きかということもいろいろあると思います。ですから、トータルとして最終的にふえるか減るかというのはなかなか予想困難というふうに考えるべきだろうと思っております。

 なお、今回の法改正では、派遣先に対して、事業所単位の期間制限を課して、そして三年を超えて派遣で働く方を受け入れようとする場合には、過半数組合等からの意見聴取や対応方針等の説明を新たに法的に義務づけることによって、常用代替の防止を図ることとあわせて、派遣元に対しても、キャリアアップ措置とか派遣先への直接雇用の依頼等の義務を課すといったことなどによって、派遣で働く方の正社員化を推進することとしております。

 しかしながら、さきの国会での議論も踏まえて、万が一にも常用代替が進んだ場合のセーフティーネットとして、施行後のいかなる状況にも対応できるように、見直しの検討を行う旨の規定を設けることとしたものでございます。

堀内(照)委員 さまざまな要因の影響を受けるというのはもう当たり前の話でありまして、景気が悪いからこそ、例えば経営者にとったら、安上がりで雇用の調整弁として使い勝手のいい派遣労働者を使おうとするわけですね。大事なことは、雇用は正規、直雇用が当たり前というルールをしっかりつくっていくことだ。そうすれば、景気が悪かろうが、派遣労働はふえようがないじゃないですか。

 結局、やはりこの法案というのは、経済界の言うままに、みなし規定を発動させないがために、これはちょっと後で。今大臣の答弁もありましたけれども、では、期間制限は実際にかかるのかということであります。これをなきものにし、一方で、国民的な批判を前に形だけの修正で取り繕ってみた、ほころびだらけのものだということが本当にはっきりしてきたというふうに思うんですね。そういう意味では、本当に、まさに審議に値しないんだと厳しく指摘をしておきたいと思います。

 その期間制限、実際、臨時的、一時的なものに限定する担保になる、非常に大事だと思うんですが、今度の法案ではこれが本当に骨抜きにされているというふうに思っております。

 ちょっと通告から二問飛ばしますけれども、無期雇用は、今回、期間制限から外すことになっています。これは、有期雇用の派遣に比べると雇用が安定しているんだという理由なんですが、私は二つ問題があるというふうに思うんですね。

 一つは、では、そもそも雇用は安定しているのか。本会議でこれを安倍総理に私は問いましたけれども、総理の答弁は、無期雇用労働者は有期雇用のように雇いどめの対象とならないことから、一般に、有期雇用に比べて雇用が安定していると言えるというものでした。

 なぜ無期雇用労働者は雇いどめの対象とならないのか、その根拠は示されなかったと思うんですね。何をもってそう言えるのでしょうか。

坂口政府参考人 今御指摘ありましたけれども、まさに今御指摘、御質問がありました形態というのは無期雇用の派遣労働者ということでありますので、派遣会社との関係が無期雇用、まさしく期間の定めのない契約であるということでございますので、まさに雇いどめの対象とならないということで、雇用が安定しているということでございます。

 ただ……(発言する者あり)リーマン・ショック、あの喪失といいますか、その後にも、二十四年の法改正、前回のこれは法改正でございますけれども、無期雇用の方に限らずということになりますけれども、派遣先の都合で派遣契約を解除する場合に、派遣先に対しまして、新たな就業機会の確保、あるいは休業手当の支払いに要する費用の負担等の措置を講ずることを二十四年の法改正で義務づけるということでございまして、無期雇用派遣で働く方についても、労働者派遣契約の中途解除で雇用を失うというおそれは少なくなってきているということだろうと思います。

 また、無期雇用派遣労働者につきましては、今回の改正法案におきましても計画的な教育訓練等を義務づけておりますけれども、特にこの無期雇用派遣労働者については、長期的なキャリア形成を視野に入れてそういったことに臨むべしということでございましたり、あるいは、派遣会社が派遣契約の終了のみをもって解雇することがないことを許可基準に盛り込むというようなことを図っていくなどして、無期雇用の派遣で働く方につきましても、さらなる雇用の安定を図っていくという方向で臨んでいきたいということでございます。

堀内(照)委員 根拠を示してくださいと言ったんですね。仕組みとしてそうだということなんですけれども、何かデータとしてあるんですか。有期と比べて解雇されていないというような数的なデータがあるんですか。

坂口政府参考人 具体的なデータということではなく、やはりそもそもの制度の、使用者との雇用契約ということが、根っこが期間の定めのない契約であるということによるということでございます。

堀内(照)委員 実際はそうなっていないから聞いているんですね。

 それで、本会議では、総理の答弁の中で、派遣契約終了をもって解雇されることがないようにするために、派遣会社の許可基準に示すんだという答弁がありました。労政審の建議では、派遣元は無期雇用の派遣労働者を派遣契約の終了のみをもって解雇してはならないと指針に書き込むんだ、許可基準にも明記するということであります。

 ただ、契約終了のみをもって解雇してはならないということは、それのみではなくて、いろいろ努力は尽くしたけれども新たな派遣先は見つかりませんでしたということになったら、やはり解雇は可能になるんじゃないですか。

坂口政府参考人 今御指摘のとおり、今回、労働政策審議会の建議の中で、派遣元事業主が無期雇用の派遣労働者を派遣契約の終了のみをもって解雇してはならないということを指針に規定する、また、許可基準に記載するということとされております。

 私ども、この方向で対応してまいりたいと思っておりますけれども、派遣元指針にこの旨を規定することによって、違反の事例については指導ができるということになるものかと思っております。

 ただ、委員御指摘のようなケースにつきましては、個別の度合いということもありますので、ここで判断をするということはなかなか一概には難しいんですけれども、ただ、派遣契約の終了後直ちに解雇ということではないというケースのようにも考えられますので、そういったケースであれば、指針には反するというものではないかと考えられます。

 ただ、そもそもの、先ほど最後御質問されましたように、解雇とすることがどうかということにつきましては、これは派遣で働く方のみならず、その方を含めて、解雇については、委員御承知のとおり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効とするという解雇権濫用法理が、これは労働契約法の十六条の方にも法定化されておりますので、個別具体的な事案について解雇が認められるかどうかということについては、これに基づいて最終的には司法の場で判断がされるということかと存じます。

堀内(照)委員 リーマン・ショックのときには、無期雇用の労働者も派遣契約が切れたことをもって大量に解雇が行われております。

 技術者派遣大手シーテックは、二〇〇九年四月に、派遣先による派遣契約打ち切りを理由に四千八百人の派遣労働者を解雇しました。派遣契約解除を理由にいきなり解雇すると、今も少しありましたが、整理解雇四要件に照らして違法になるので、一カ月または二カ月の自宅待機、休業させた後解雇しているんですね。理由は、新たな派遣先を探したが見つからなかったと。つまり、解雇回避努力義務は果たしたんだということで、やはり解雇しているわけですね。ですから、無期雇用とはいえ、とても安定しているとは言えない。

 もう一つ問題なのは、雇用が継続しても、あくまでそれは派遣労働者としての身分が固定化されるにすぎないんだと。

 私がお話を伺った神戸のある方、Aさんは、医療材料、医材の物流を担う会社の派遣労働者として、最初は登録型で三年、その後、派遣会社の正社員、先ほどありましたけれども、派遣元の社員として十年間勤務をしてきました。要冷品、要冷蔵の薬などを扱って、一日じゅう温度五度の冷蔵庫の中での激務でありました。

 要冷品の扱いというのはもともと正社員が担っていたんですが、徐々に、低賃金で、物を言ったら解雇されるということで、なかなか物が言えない派遣労働者にどんどんかわっていった、シフトしていった。Aさんは、その中でもある部署の責任者まで任されていたというんですね。休日出勤、当直もどんどんふえて、心身ともに疲弊して、やめざるを得なかった。

 雇用が安定といっても、心身を壊してやめなければ、劣悪な雇用環境、労働環境が継続するだけなんですね。これはやはり、雇用が安定しているからいいんだというようなことはとても言えないと思うんですね。無期雇用の派遣労働者から期間制限を外してしまえば、解雇される可能性が相当に高い不安定な身分か、低賃金、劣悪な身分の固定化かのいずれかしかない。いずれにしても、やはり安定とはほど遠いと言わなければなりません。

 それから、新たに事業所単位、個人単位で期間制限を設けるんだと。国はさまざまに義務を課すことで規制を強化しているとおっしゃるんですけれども、実態はいずれも、義務を課したといっても、期間制限を守らせる歯どめとはなり得ない。逆に、その義務さえ果たせば期間延長がどんどん可能になるという意味において、結局、期間制限の効力をなきものにしていると言わなければなりません。

 事業所単位で期間制限を延長する場合、過半数労働組合等から意見聴取を義務づけ、反対意見があれば対応を説明しなさいということでありますが、逆に言えば、説明さえすれば延長できるわけなんですね。臨時的、一時的雇用に限る担保だというんだったら、なぜせめて同意としなかったんでしょうか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、今回の派遣法改正法案でございますが、派遣先に対して、同じ事業所において継続的な有期雇用の派遣労働者の受け入れは三年という事業所単位の期間制限を課すこととしておりますが、今御指摘ありましたように、三年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合については、過半数労働組合等からの意見聴取を義務づけるということとしておるものでございます。

 この点につきましては、労働政策審議会の建議の中でも、この趣旨は、派遣労働者の受け入れを法律で一律に制限するのではなく、現場でよく知る労使の判断に委ねるということでございまして、現場を重視する我が国の労使関係等からしますと、派遣先が労働側の意見を無視して一方的に受け入れ期間を延長するということは想定しにくいのではないかということで考えております。

 また、今回、意見聴取の仕組みに際しましては、反対意見に対する対応方針の説明でございましたり、記録の一定期間の保存を義務づけるといったことも含めて、この意見聴取の手続の適正さと透明性を担保する仕組みを設けておりまして、こういった新たな仕組みも含めまして、労使の実質的な話し合いの仕組みということをしっかり確保していくということとしているところでございます。

堀内(照)委員 想定しにくいというだけで、実際には、説明すれば派遣先企業の思うようにできるということは、仕組みとしてはっきりしているわけですね。担保というのはどこにもないわけであって、これでは、三年、六年、九年、十二年と、その都度ずっと派遣を使えるという仕組みになるじゃありませんか。そうじゃないというふうに否定できますか。

坂口政府参考人 今お答え申し上げましたとおり、今回、事業所単位で三年という期間制限を設けまして、それを超えた上という形になりますと、三年ごとに、三年を超えてその都度派遣で働く方を受け入れようとする場合については、この意見聴取の手続を義務づけているということでございます。また、先ほど、反対意見があったときはということで申し上げましたとおり、対応方針等の説明ということを新たに義務づけたところでございます。

 特に、先ほどは簡単に御説明をしましたけれども、今回の意見聴取の手続につきましては、派遣先に対して、意見聴取の参考となるデータの提供というようなものでございましたり、あるいは意見聴取の記録の周知というようなこと、あるいは先ほど申し上げた対応方針等の説明というような形で、これまでの意見聴取、これは、これまでの業務単位での一年というものを三年に延ばすという際の意見聴取の手続は一方通行的なものでございましたけれども、今回は、先ほど申し上げましたような仕組みを新たに課して、双方向の仕組みの流れをつくったということでございますので、そういった形での対応ということでしっかり対応してまいりたいと思います。

堀内(照)委員 双方向じゃないんですよ。説明さえすれば一方的にできるという仕組みなんでしょう。

 ですから、当該労働組合にとってみたら、どんなに反対しても、説明されてしまったらもう法的には派遣受け入れ延長は押し切られるわけですね。

 だったら、そもそも意見聴取に応じませんよとなったら、これはどうなるんですか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 先ほどのような形での法的な枠組みを、今回、改正法案については盛り込むこととしておるところでございますけれども、今委員御指摘のような、例えば、派遣先が適切な手続にのっとって過半数労働組合の意見を聴取しようと働きかけたにもかかわらず労働組合がこれを拒否した場合ということになりますと、やはり派遣先が意見聴取を行ったということは考えにくいと考えますところでございますが、いずれにしましても、労働政策審議会においてまた御議論いただきたいと考えております。

堀内(照)委員 つまり、労働組合が拒否をしたら、もうそれは押し切れないということでいいんですね。

坂口政府参考人 今お答え申し上げたとおりでございますけれども、派遣先の方が一定の手続に沿って働きかけたにもかかわらずこれを拒否した場合ということでありますと、派遣先とすれば、意見聴取の手続をやっていこうということを働きかけているわけでございますので、意見聴取の手続を行ったということは考えにくいということで私どもとしては考えますけれどもということで申し上げたとおりでございます。

堀内(照)委員 つまり、どういうことですか。済みません。法案文では、「意見を聴かなければならない。」となっているんですね。聞けていない状態でしょう。

坂口政府参考人 失礼しました。発音が不明瞭で申しわけございませんでした。

 派遣先が意見聴取をしようと働きかけたにもかかわらず過半数組合がこれを拒否した場合には、派遣先が意見聴取の手続を働きかけようとしたわけでございますので、この意見聴取の手続を怠ったとは考えにくいということで考えておるというところでございます。

堀内(照)委員 意見聴取の努力をすれば、それでいいということなんですか。これは「聴かなければならない。」と書いてあるんですけれども、聞いていないんですけれども、それはどうなるんですか。

坂口政府参考人 冒頭申し上げましたとおり、派遣先が意見聴取をしようということを手続にのっとって働きかけたということにもかかわらず過半数組合側がこの意見聴取の手続を拒否した場合ということでございますので、これは、派遣先は意見聴取を行おうということで、行っていこうということで働きかけたにもかかわらず行えなかったということなので、派遣先が意見聴取を怠ったとは考えにくいということで御答弁したところでございますけれども、冒頭申し上げましたとおり、いずれにせよ、労働政策審議会において御議論をいただきたいということで考えております。

堀内(照)委員 これはちょっと重大ですよ。ここははっきりさせないと、「意見を聴かなければならない。」とはっきり書いているわけですから。働きかけなければならないじゃないでしょう、これは。そこは全然やはり違うわけでありまして、そこははっきりしないんですか、つまりは。

坂口政府参考人 繰り返しになりますけれども、これは意見聴取に過半数組合側が応じない、拒否するということでございますので、適切な手続にのっとって働きかけたにもかかわらず拒否した場合ということでございますので、先ほど申し上げましたようなことで私どもとしては考えられるのではないかということで、今お答えしたところでございますけれども、いずれにせよ、労働政策審議会において御議論いただきたいということでございます。

堀内(照)委員 はっきりしないのではやはり困るというふうに思うんですね。ちょっともう時間がないので、これはぜひはっきりさせていただきたい。紙で出していただくということを要望したいというふうに思います。

 委員長、では、紙で出していただくということを。

渡辺委員長 もう一度きちんと言ってください。

堀内(照)委員 委員長、紙で出していただくように要請したいと思います。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

堀内(照)委員 結局、期間制限の歯どめというのは事実上なくなる。派遣法案というのが、まさに労働契約申し込みみなし規定をなきものにしようという経済界の要望に応えたものだということが本当にはっきりした。動機も目的も労働者保護とはかけ離れたものだとやはり言わなければなりません。

 きょう紹介した医材の物流で働いていた方は、冷蔵庫での作業、正社員が担っていたものがどんどんと言いましたけれども、夜勤や休日出勤の中で、八時間の通常業務の後、翌朝の朝八時半までの勤務。それもなかなか八時半には終わらずに十時半ごろまでという日もよくあったそうで、にもかかわらず、深夜勤務の手当や残業代は一切出ずに、代休をとってくれと。本当に違法な働かせ方をさせられていました。まさに廃人寸前のようだったところ、母親が見るに見かねて労働組合に相談をして、退職という形で、過労死することなく救われた。

 結婚や子育てどころか、人間らしい生活や友人づき合いさえできないような過酷な労働環境に悩まされ続けてきたわけですね。人間を使い捨てるようなこんなやり方は、根絶こそすれ、広げるようなことは絶対に許すわけにいかない。

 きょうは与党のみの審議入りでしたけれども、この審議入りに改めて抗議をして、こんな法案は廃案しかないと厳しく指摘をして、質問を終わりたいと思います。

渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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