衆議院

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第30号 平成27年7月10日(金曜日)

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平成二十七年七月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 後藤 茂之君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 松野 博一君 理事 西村智奈美君

   理事 浦野 靖人君 理事 古屋 範子君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      加藤 鮎子君    木村 弥生君

      小松  裕君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    谷川 とむ君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      中谷 真一君    中村 裕之君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      橋本  岳君    比嘉奈津美君

      堀内 詔子君    牧原 秀樹君

      松本 文明君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    阿部 知子君

      小川 淳也君    大西 健介君

      岡本 充功君    中島 克仁君

      山井 和則君    足立 康史君

      井坂 信彦君    牧  義夫君

      輿水 恵一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    真山 祐一君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   参考人

   (全国社会福祉法人経営者協議会会長)

   (社会福祉法人南山城学園理事長)         磯  彰格君

   参考人

   (明治安田生活福祉研究所医療・福祉政策研究部長) 松原 由美君

   参考人

   (きょうされん常務理事) 赤松 英知君

   参考人

   (社会福祉法人吹田みどり福祉会理事長)

   (社会福祉法人大阪府社会福祉協議会経営者部会社会貢献活動推進委員会委員長)            菊池 繁信君

   参考人

   (社会福祉施設経営者同友会会長)

   (社会福祉法人大阪福祉事業財団事務局長)     茨木 範宏君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     中谷 真一君

  松本  純君     中村 裕之君

  輿水 恵一君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     田畑 裕明君

  中村 裕之君     松本  純君

  真山 祐一君     輿水 恵一君

    ―――――――――――――

七月九日

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(畠山和也君紹介)(第三三七一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三三七二号)

 同(宮本徹君紹介)(第三三七三号)

 全てのウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援とウイルス検診の推進に関する請願(仲里利信君紹介)(第三三七七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三三七九号)

 同(岡下昌平君紹介)(第三三八〇号)

 同(柚木道義君紹介)(第三三八一号)

 安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員に関する請願(勝俣孝明君紹介)(第三三七八号)

 障害者福祉についての法制度の拡充に関する請願(井上義久君紹介)(第三三八二号)

 同(勝俣孝明君紹介)(第三三八三号)

 同(藤野保史君紹介)(第三四八三号)

 筋痛性脳脊髄炎患者の支援に関する請願(金子一義君紹介)(第三三八四号)

 同(長尾敬君紹介)(第三四八四号)

 国の財源で高過ぎる国民健康保険料の引き下げを求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第三四二七号)

 難病と長期慢性疾病、小児慢性特定疾病の総合的な対策の充実に関する請願(勝俣孝明君紹介)(第三四二八号)

 同(宗清皇一君紹介)(第三四二九号)

 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願(吉川元君紹介)(第三四六九号)

 現下の雇用失業情勢を踏まえた労働行政体制の拡充・強化を目指すことに関する請願(吉川元君紹介)(第三四七〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 社会福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六七号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、社会福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、全国社会福祉法人経営者協議会会長・社会福祉法人南山城学園理事長磯彰格君、明治安田生活福祉研究所医療・福祉政策研究部長松原由美君、きょうされん常務理事赤松英知君、社会福祉法人吹田みどり福祉会理事長・社会福祉法人大阪府社会福祉協議会経営者部会社会貢献活動推進委員会委員長菊池繁信君、社会福祉施設経営者同友会会長・社会福祉法人大阪福祉事業財団事務局長茨木範宏君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず磯参考人にお願いいたします。

磯参考人 皆さん、おはようございます。御紹介いただきました全国社会福祉法人経営者協議会の磯でございます。

 本日は、このような発言の場を設けていただきまして、感謝を申し上げます。

 まず、簡単に私どもの協議会について触れさせていただきます。

 私どもは、全国にある社会福祉法人のうち、約七千法人の経営者が加盟する組織でございます。内訳は、介護施設を中心に経営している法人が約六割、障害が三割、保育が一割という構成でございます。

 その会長という立場で、今回の法律改正案について、どのように捉えているかということについて述べさせていただきます。

 今回は、社会福祉法人制度を見直すという観点から、ガバナンスの強化、財務規律の強化、経営情報の開示、そして地域における公益的取り組みの推進、これらに加えて、人材確保などにおいての改正案が示されておりますが、私の方からは、特に法人制度の見直しについて発言をさせていただきます。

 まず、結論から申し上げますと、我々としては、この法律改正について前向きに捉え、これを生かしていくことで、より一層国民の負託に応え得る組織となり、我々の存在意義を示していけるものと確信をしております。

 前向きに捉えている理由を三点述べさせていただきます。

 まず、一点目でございます。

 法人経営というものに対し、我々みずから、今まで以上に襟を正していくのだという姿勢を国民の皆様に示していきたいからであります。この点は、改正案のポイントの一つ、ガバナンスの強化というところにつながってまいります。

 御存じのように、我々社会福祉法人は、制度発足以来、長年にわたり、行政から定例監査を受けながら、その運営に当たってまいりました。しかし、二〇〇〇年の社会福祉基礎構造改革によって、福祉制度全体が全ての国民の社会的自立支援を目指したことに伴い、社会福祉法人は、その基本理念に基づき法人経営に取り組んでまいりました。

 そのような中、昨年度以降目立って、社会福祉法人に対する批判的な報道がされてまいりました。我々としても、これらの指摘を真摯に受けとめ、正すべきところは正していかねばならないと考えております。

 しかしながら、マスコミ報道にあったような不祥事において、我々の調査では、全国一万七千法人のうち約十例、パーセンテージにしますと〇・一%にも満たない法人が起こしたものであり、それを繰り返しの報道によって、あたかも全国の法人が同様のことを行っているかのような、国民への誤った認識を植えつけられたことに大きな憤りを持っております。

 もちろん、このような不祥事はあってはならないことであります。この法律改正を機に、ガバナンスの強化を行い、全ての社会福祉法人が、法人経営に対して今まで以上に襟を正し、より一層自律的組織となって、みずからのチェック機能を高めていくという姿勢をしっかりと国民に示していくことが肝要であると考えます。

 ただし、小規模法人については、目標地点は同じであったとしても、経過的猶予など一定の配慮が必要だと考えております。

 次に、二つ目の理由でございます。

 本改正によって、国民の皆様が感じておられる我々に対する誤解を解いていきたいと考えているからであります。この点は、財務規律の強化や経営情報の開示というところにつながってまいります。

 我々がその課題解決に努める中、数年前から、社会福祉法人には多額の内部留保があるという指摘が出てまいりました。さらには、一昨年の厚労省の調査の中で、決算を開示していない法人が半数以上あるという事実に加え、正確でない決算書が散見されるといった指摘があったことも承知をしております。

 しかしながら、この内部留保については、オーソライズされた定義がないまま議論が進み、その誤解が広がっていったと考えております。簡単に言いますと、内部留保の算出について、財務省、厚労省、そして我々の業界それぞれが示した方程式が異なっていたということであります。

 例えて言えば、ここに茶筒が一つあったとします。これがどのように見えるかという問いに対し、上から見れば丸に見えます、横から見れば長方形に見えるわけであります。見る場所を決めなければさまざまな見え方になるのと同じで、財務諸表をどう読むかという根本的なところで大きな誤解が生じていったと思っています。

 その意味では、今回の法律改正において、一定の秩序をつくり、財務状況を見る角度を定義していただければ、社会福祉法人がもうけ過ぎている、内部留保が多額にあるといった誤解が解明されてくるものと期待をしております。

 ただ、この改正において提示されている秩序は、いわば基本設計図のようなものでございますので、実施設計、つまり詳細を詰める際には、法人の経営理念を尊重し、そして主体性、自立性を損なわないようなものにすべきであるということは、業界としてしっかり主張をしていきたいと考えております。

 加えて、経営者の立場として、今回の制度改正をしっかり乗り切っていくための法人本部機能の強化は不可欠だと考えており、その点に対する財務面の配慮も求めていきたいと考えております。

 一方、経営情報の開示についても、我々は、公益性、非営利性の高い法人として国民に対する説明責任をしっかりと果たしていくという観点から、当然のこととして受けとめております。

 ただし、これらを進めていく上で、事務負担が大きくなることは間違いありません。もちろん本業をおろそかにするわけにはまいりませんので、情報が集まりやすいよう、できるだけ簡素化していく方向で進めていただきたいと考えております。

 そして、最後でございます。

 三点目の理由でございますが、我々社会福祉法人の存在意義を今まで以上に示していきたいと考えているからであります。このことは、地域における公益的取り組みというところにつながってまいります。

 措置の時代、我々には、介護、障害、保育といった本体事業、その本体事業以外は手を出してはいけません、運営費も使い切らなくてはならないという制度上の制約が長い間続いてまいりました。しかし、我が国の社会福祉制度の歩みは、その多くが、我々民間の社会福祉法人の先達のすぐれた実践の中から理論や技術が形成され、制度化されてきたものであると認識をしております。そして、その取り組みは、それぞれの地域において、我々社会福祉法人が現在においても継続して取り組んでいるものであります。

 一方で、貧困や虐待といった今日的福祉課題に対して社会福祉法人の動きが消極的であるという社会の声やマスコミ報道もよく見聞きしております。このような指摘に対する大きな要因の一つとして、我々は、社会福祉法人の実態が国民に見えにくいことや、法人制度や事業に対する理解が国民の中に浸透していないことであると認識をしています。

 現に、とある東京都の簡単なアンケートでございますけれども、社会福祉法人に対する認知度は二〇%というデータもあるようでございます。

 しかし、実際は、全国のほとんどの法人が、大なり小なり、地域における公益的取り組みを既に推進しております。

 例えば、特養において生活困窮者に対する無料、低額サービスの提供、障害や保育における相談事業、大阪のレスキュー事業に代表される複数の社会福祉法人による取り組みも、私どもの調査では、現在、既に全国八つの府県で類似の活動が始まり、そして十二の都道府県で今年度または来年度実施に向け検討中でございます。

 そのほか、保育園を経営する法人であれば発達障害など支援を必要とする子供たちへのサポート、介護施設であれば地域の住民に対しての介護教室など、繰り返しになりますが、ほとんどの法人で、大なり小なり、地域における公益的取り組みを既に行っております。

 さまざまな背景があり、そのような取り組みを社会福祉法人は社会に対しアピールすることなく、つつましく実施してきました。その結果、国民から、地域のために社会福祉法人が必要な存在だと認識をいただけなかったのかもしれません。今後は、地域とのあり方を我々自身もこれを機に考えていかねばならないと思っています。

 今回の改正、第二十四条の第二項、経営の原則において、我々に対して、地域における公益的取り組みの責務という点が今さらながらに追加されました。このような取り組みについて、当然、我々として異論はございませんが、全国を見渡してみますと、高齢者が多い地域、子供が多い地域、地域性がございますので、全ての法人が積極的に取り組めるように、その内容については限定列挙しない方向で進めていくことが肝要かと考えています。

 少々細かいことも申しましたが、そもそも福祉の本質とは何でしょうか。福祉の本質とは、全ての人々が心地よい暮らしを心豊かに送ることができる社会そのものを示すのではないでしょうか。

 今回の改正を機に、社会福祉法人は、奉仕の精神に徹するだけでなく、社会の動脈として人々のきずなを結ぶ役割を率先して担うべきだと考えております。その使命に恥じない行為を我々も十分に果たしてまいる覚悟であります。

 したがって、我々としましては、先ほど申しましたような三つの理由から、今回の改正案の方向性をしっかりと理解するとともに、その実践に見合う、またニーズに応じた制度策定にも積極的にかかわれることを強く望んでおります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、松原参考人にお願いいたします。

松原参考人 おはようございます。明治安田生活福祉研究所の松原由美と申します。

 今回の法案のもとであります社会福祉法人制度改革について意見を述べさせていただきます。

 まず初めに、社会福祉法人制度改革の目的ですが、それは、公益性と非営利性を社会福祉法人の名にふさわしいように整備したことにあると考えております。

 これに対しまして、今回の改革は厳し過ぎる、これでは経営に幅が持てない、このため事業実施に尻込みする者が出るのではと懸念される向きもあると伺っております。今回の改革が公益性、非営利性の強化あるいは徹底と厳しく受け取られがちではあるのですけれども、社会福祉法人を取り巻く環境は大きく変わってきておりますので、それに対応した形で、世間並みに足並みをそろえたと捉えていただきたいと考えております。

 今回の改革のメーンテーマでありますガバナンス、情報公開、財務規律等は、同じく公益性、非営利性を求められている公益法人や、営利の代表格であります上場企業では、既に二重、三重に行われていることです。従来は一部の人のみを対象として事業を展開していた社会福祉法人が、少子高齢化の進展で、保育や高齢者サービスなど広く国民一般に利用されるサービスを提供するようになりまして、世間に対して大きな影響を持つようになった今、これらと歩調を合わせるということは当然のことと考えます。

 ですけれども、これを御理解いただくには、なぜ社会福祉事業は非営利組織で運営されるのが望ましいかを御理解いただくことが必要だと考えます。

 そこで、釈迦に説法とはなりますけれども、社会福祉事業がなぜ非営利組織で運営するのを適切とするのかについて、改めて一言述べさせていただきたいと思います。

 まずは、社会福祉事業はそもそもどのような特質を有しているのかといいますと、第一は、公益性、社会性が強い事業であるということです。社会的弱者を支援する事業でありまして、高齢化の進展などで、それが国民の一部ではなくて、今や広く国民一般に及んでいるためであります。

 第二は、社会福祉サービスの供給のあり方というものが、支払い能力に応じてではなくて、必要に応じて供給されねばならない、この点です。そして、必要としている人にあまねく行き渡るようにしなければならないサービスであるということでございます。

 第三は、このため、事業費が公的資金で賄われているという点です。社会福祉サービスの供給のあり方を達成するためには、購買力のない人も受けられるようにしなければなりませんので、公助、共助のシステム導入が必要となります。ここで大切なことは、公的資金で賄われている、この点を真剣に認識し、理解するということです。

 ところで、公的資金で賄われているということの意味ですが、これには大きく二つございます。

 第一は、サービスを受けるか否かにかかわらず、全国民が強制的に拠出している資金で賄われているということです。こうした事業では、できる限り低廉な価格で提供されることが求められます。

 公的資金で賄われている意味の第二は、社会連帯システム、あるいは、福祉計画や介護計画などが地域で作成されていることからも明らかなように、計画経済的システムで運営されているということです。このため、公定価格制が導入され、事業運営に当たっては、競争よりも協調、連携が要請されております。

 こうした特質を持つ社会福祉事業では、利益を上げる行為は適切だとは言えません。ストレートに言えば、利益ゼロ、つまり実費で提供されることが望ましい事業と言えます。

 これが、営利ではなく非営利で運営されることが望ましいとされる理由でございます。

 また、国民に対して、拠出した資金がどのように使われているかについて説明責任があるということです。これについては、今回、情報開示が義務化されました。

 ところで、一部の社会福祉事業に営利法人が参入しておりますけれども、それは、供給量確保と多様なニーズに応えるためでありまして、この事業で利益最大化だとか配当拡大を狙ってもらうことが本旨ではございません。社会福祉事業においては、営利法人であっても、非営利組織的考えに基づく経営が求められると思います。

 それでは、そもそも話の前提となります非営利組織について、最後に述べさせていただきます。

 非営利組織にとって利益をどう捉えるかがかなめとなりますので、非営利組織の利益概念について述べさせていただきます。

 先ほど、サービスを受けない国民も含めて、皆が強制的に費用負担する制度のもとでは、利益ゼロが望ましいと述べました。しかし、現実には、事業性のある事業を行う非営利組織は利益を出しております。そこで、もうけ過ぎだとか、ため込み過ぎだとかという議論が出ているわけですけれども、非営利組織の利益というのは、我が国の一般の会計ルール上、利益として計上せざるを得ないので利益と称してはおりますが、実質はコストだということです。

 なぜなら、非営利組織の要件は配当禁止等と言われているからです。利益の使い道は、配当か事業に投下するか、この二つです。非営利組織は配当の道が塞がれておりますので、非営利組織にとって利益とは、全て将来のコストということになります。このところが、営利組織の利益とは決定的に違うところでございます。

 ただし、配当禁止という要件は、上げた利益の処分方法についての規定であって、利益獲得のプロセスについては何ら規定しておりません。その結果、必要以上の利益を上げることが可能となります。しかし、必要利益以上の利益を上げることは、非営利組織の存立目的、趣旨に照らしてふさわしくありません。非営利組織の利益は、事業の安定継続に必要な最低限の利益であるべきと考えます。それ以上の利益が上がるのであれば、速やかに本業の拡充や充実や社会貢献活動などに利用されることが望ましいと考えます。

 言うまでもありませんが、ここで言う必要利益というのは、適正なコストを賄った上での利益でございます。例えば、市場相場並みの人件費を払った上での利益ということです。

 ここで改めて、非営利組織の利益概念、これを必要利益としますけれども、これについて整理しますと、以下の四つです。

 第一は、会計上は利益でありますが、実質はコストだということです。第二は、必要事象が発生するまで内部蓄積を要します。第三は、使用目的は、必要利益計上のもととなる事業に限定されます。第四は、必要利益に何を含めるかは、ここは議論のあるところではあるんですけれども、必要だからといって何でも含めてしまっては、これは十分な利益となってしまいまして、十分利益を獲得できるところというのはなかなかありませんので、必要最小限にやはり限定すべきだということでございます。

 内部留保は利益の蓄積であり、今回の改革では、内部留保について、必要な分とそれを上回る分を区分し、上回る分について計画的に支出することが求められることとなりましたが、これは非営利組織の利益のあり方に合致したものと理解しております。

 最後に一言申し上げますが、私は、決して非営利原理主義者ではなくて、むしろ市場経済信奉者でございます。

 以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、赤松参考人にお願いいたします。

赤松参考人 きょうされんの赤松と申します。

 本日は、このような機会を与えていただき、心から感謝申し上げます。

 きょうされんは、旧称を共同作業所全国連絡会と申しまして、主に青年・成人期の障害のある人たちの働く場や日中活動の場、暮らしの場や相談支援の場、こういった事業所の皆さんが加盟をしている全国連絡会であります。全国に今、千八百を超える会員がおります。

 私どもは、今般の社会福祉法等の一部を改正する法律案、これに対しましては重大な懸念があるというふうに考えております。そういった観点で、本日は五点にわたって我々の意見を発表させていただきます。

 なお、資料といたしましては、私どもが昨年十月に取りまとめました「社会福祉事業とその担い手のあり方に関する見解」、これの概要と本文を配付させていただきました。

 まず、第一点目でございます。

 今回の議論では、他の経営主体との公平性、いわゆるイコールフッティングの観点が強調されました。その主な内容は、多様な経営主体が参入してきたのだから、社会福祉法人への特別な措置は取り払って、同じ条件にするべきだというものだと理解をしております。私たちは、この議論が社会福祉事業の原則である非営利性、公益性をなし崩しにしているのではないか、このように考えております。

 国民の命と健康にかかわる社会福祉事業は、利益を生む、生まないにかかわらず必要だという非営利性、それから、みずからの利益ではなく公共の利益のために行うという公益性、この二つが大原則であります。この非営利性と公益性は、その事業に誰が取り組もうとも貫かれるべき原則だというふうに考えております。社会福祉事業の主な担い手である社会福祉法人が強い公的規制と税制上の特別な措置等を受けているのは、この二つの原則を担保するためであります。

 だとすれば、他の経営主体がこの分野に参入した場合にも同様の規制や措置を講じるのが筋ではないでしょうか。例えば、公金によって社会福祉事業に取り組む以上、事業からの収益を配当には回せない、このように使途が厳しく制限されるのは当然のことでございます。これは、社会福祉事業の非営利性、公益性を担保するために必要な要件であって、決して緩和されるべき不要な規制などではないと考えています。

 ところが、逆に、イコールフッティングの観点は、他の経営主体と同じ条件にするためにこの必要な要件を取り払うというわけですから、この分野の経営主体が事業の非営利性と公益性を担保する前提が崩れてしまいます。

 今求められるのは、憲法二十五条を踏まえ、非営利性と公益性の観点から、社会福祉事業の担い手のあり方に関しての国民的な議論を尽くすことだというふうに考えます。

 第二です。

 今般の議論は、社会福祉法人が黒字をため込んでいるというバッシングに端を発しているわけですが、この内部留保の正確な実態は把握できておりません。したがいまして、議論の前提が崩れているんだという点でございます。

 二〇一一年ごろから新聞報道などで、社会福祉法人が多額の内部留保をため込んでいるという批判が相次ぎました。そして、ここでもイコールフッティングの観点が出てくるわけですが、他の経営主体との公平性からして、税制面での特別の措置などがあって黒字になったんだから、社会貢献をして地域に還元しなければその存在意義が問われるといった意見が聞かれるようになったのです。

 まず、前提として、一部の社会福祉法人が過大な内部留保をため込んでいるという事実につきましては、私たちはこれを対岸の火事とするのではなく、社会福祉事業の適正な運営を図るべく、襟を正したいと思います。しかし、この一部の社会福祉法人の不適切な振る舞いをもって、あたかも全ての法人が過大な内部留保をため込んでいるように喧伝をする風潮や、そしてこれを理由に今般の法改正を行うということには、くぎを刺したいと考えております。

 大多数の社会福祉法人は、地域で真面目にニーズと向き合い、これに応えるために適正な運営に努めております。事業を継続、発展させるために一定の資金が必要ですから、事業の剰余金を積み上げているところもありますが、それは、社会福祉事業の原資である報酬が決して十分な水準ではない中で、さまざまな工夫による節約で何とかやりくりをして、ためてきた結果であります。決して余裕のある経営から生み出された財産などではありません。

 今回の法案では、内部留保の定義が不明確だからこれを明確化するために法改正を行うと説明をされていますが、これは本末転倒ではないかと考えます。内部留保についての正確な実態の把握があって、そこに何らかの問題点が科学的に見出されて初めて法改正の必要性が生じるのであり、現状は立法事実がないというふうに言えるのではないでしょうか。内部留保についての正確な実態を把握しないまま、このまま強引に法案を成立させるようなことになれば、後に禍根を残すのではないかと大いに懸念をしておる次第であります。

 第三です。

 今回の法案では、社会福祉法人が、地域における公益的な活動として、無料または低額な料金で福祉サービスを提供する責務が規定されています。しかし、これは、私どもは、新たな社会福祉、社会保障の制度を確立する道を閉ざすことになるのではないかというふうに懸念しております。

 この規定は、第二で述べた、黒字をため込んでいるという不正確な認識に基づいて、これを使って社会貢献しなければ存在意義が問われるという議論の延長線上ですから、まず議論の出発点に問題があります。

 さらに、地域の福祉ニーズに対しては、最終的にはやはり公的な制度で対応するべきであります。地域では、雇用制度の改悪などによって派遣労働や非正規雇用が増大し、膨大な生活困窮者が生まれていること、また、孤立や引きこもり、虐待なども後を絶たないこと、このように福祉ニーズは確実にふえています。こうした現実を直視して、先駆的に応えてきた社会福祉法人もあります。しかし、こうしたニーズを恒久的に支えるためには、民間による対応でよしとするのではなく、民間の先駆的な実践を踏まえた新たな公的制度を確立する、このことが必要ではないかと考えております。

 私どもきょうされんに加盟する多くの社会福祉法人は、無認可の共同作業所から出発をいたしました。多くの障害のある人たちが家に閉じこもるしかなかった時代に、関係者一人一人、当事者の皆さんも一緒になって、柱一本持ち寄って立ち上げたのが共同作業所であります。制度的な支援がない中で、障害のある人たちに働くことと地域での生活を保障してきた共同作業所の多くは、その後、社会福祉法人格を取得して、地域の拠点として活動を続けています。

 これは私どもきょうされんの例ですが、同じ障害分野の他の社会福祉法人でも、あるいは高齢や保育の分野でも、制度がない中で先駆的な実践を重ね、それを新たな制度として確立してきた社会福祉法人の取り組みの歴史があると思うんです。この歴史こそが、日本の社会福祉の歴史をつくってきたと言ってもいいのではないでしょうか。

 今回の社会貢献活動に関する責務規定は、地域の福祉ニーズへの対応を社会福祉法人に肩がわりさせることでよしとし、新たな社会福祉制度の確立の道を閉ざすことにつながる懸念があります。これは、社会福祉事業に対する公的責任のさらなる後退につながるのではないでしょうか。

 第四に、今回の検討の中で、経営の高度化という観点から、社会福祉法人の規模拡大の推進を求める議論がありました。これを受けて、法案の中にも法人の規模拡大につながる内容が見受けられますが、一律の大規模化を政策的に誘導することは、地域の福祉ニーズへの対応を困難にし、これを置き去りにする懸念があるのではないでしょうか。

 社会福祉法人の中には、一法人一施設という小規模なところが少なくありません。そして、それぞれが身近な地域を舞台にして、そこにおける福祉ニーズと向き合っているのです。

 中には、法人の発展段階の必然としてその規模を主体的に拡大したり、あるいは他の法人との連携の結果、お互いの意思として合併する、そういったところもございますが、このように、社会福祉法人が支援を受ける人の視点に立った共同や連携を主体的に模索することは必要だと考えます。そして、これを支援する制度的な枠組みも求められるのではないでしょうか。

 しかし、今般の法人の規模拡大の推進に関する議論は、こうした主体的な拡大ではなく、主として公費削減のための経営の効率化を求める文脈から出てきているように思われます。

 大規模な法人を否定するわけでは決してありませんが、それだけになってしまいますと、一般論としては、支援の画一化や支援の規格化、こういった傾向が強まるんだというふうに考えられます。大小の多様な社会福祉法人がそれぞれの持ち味を生かして活動を広げる、こういうことが、複雑に入り組んだ現代の福祉ニーズに対応するためには必要なんだと思います。

 経営効率やスケールメリットのみを強調する余り、小規模な法人の活動を困難にすることは、地域のニーズを支える仕組みの多様性を奪い、オーダーメードの支援を必要とする人々をより困難な状況に置くことにもつながりかねないというふうに考えます。

 最後に、第五点目ですが、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直しにかかわって、障害者支援施設等に係る公費助成を廃止することは、福祉人材確保とは正反対の措置であるという点です。

 障害分野の人手不足の深刻さは、今や社会問題と言っても過言ではありません。現場では、募集をしても応募がない、新規事業を予定していたけれども、職員が集まらないから事業が開始できない、こういった深刻な状況が広がっているんです。

 その大きな原因は、社会福祉事業の原資である報酬が不十分であるために支援職員の給与が低い水準にあること、このことが一つの大きな原因であります。今年度の報酬改定では、予算総枠は昨年度と同じ水準を維持したとされますが、実質的にはマイナス改定となっております。そこにさらに重ねて退職共済手当への公費助成を廃止することが、この分野の人手不足を一層深刻にする、このことは火を見るより明らかではないでしょうか。

 公費助成の廃止によって、事業所が負担する退職金の掛金は三倍にはね上がります。したがいまして、厳しい経営を強いられている多くの社会福祉法人の中には、共済契約を解除するところもふえることが懸念されます。そうすれば、この制度の維持存続にも影響する、そういうふうな事態が懸念されるというふうに思っております。

 仮にこの制度が縮小、場合によっては廃止などということになりますれば、障害分野に限らず、社会福祉分野全体の人手不足に拍車がかかるという負のスパイラルに陥ることにつながります。

 こうした現場の厳しい状況を見ずに、その時期が来たから、あるいは他の経営主体とのイコールフッティングの観点から公費助成を廃止するというのは、余りに機械的な対応ではないでしょうか。

 以上、五点にわたって私どもきょうされんの意見を表明させていただきました。こうした問題点を払拭することこそが、非営利性と公益性という大原則のもとで社会福祉事業を健全に発展させる道なのではないかと考えております。誰もが憲法二十五条のもとで、排除されることなく、ひとしく安心して暮らすことのできる社会をつくること、このことにもつながる道、このように考えております。

 障害分野では、昨年一月に障害者権利条約が批准され、これを国内で実施するための取り組みが官民を挙げて今始まっています。

 障害のある人たちが、他の国民との平等を基礎として、当たり前に働き、選べる暮らしを実現する、そしてこの条約を社会の隅々に届ける、こういった観点からも、今回の社会福祉法等の一部を改正する法律案は、拙速に成立させるのではなく、障害のある人を初めとする困難を抱える人たちのニーズから出発をして、社会福祉事業のあり方に関して国民的な議論を広げていくこと、このことこそが今求められているのだということを申し上げまして、私どもの意見とさせていただきます。

 本日は本当にありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、菊池参考人にお願いいたします。

菊池参考人 御紹介いただきました菊池でございます。

 本日は、このような機会をいただきましたこと、関係者の皆様方に心より御礼申し上げたいと思います。

 私は、先ほど御発言された方のように流暢にしゃべることはなかなか苦手なもので、人前に立つのはなかなか好まないたちでございまして、いろいろとお聞き苦しいところがあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 私、法人の理事長の立場ではございますけれども、大阪府社会福祉協議会経営者部会の社会貢献事業の推進委員会の委員長の立場で、きょうは御発言をさせていただきたいと思っております。

 本日は、幾つか申し上げたいことがございますが、まず初めに、先ほどからお話が出ております地域公益事業の義務化について、これまでの現実的なことを踏まえて申し上げたいというふうに思っております。

 そして、先生方には釈迦に説法のようなお話も中には含まれておるかと思いますし、失礼な部分も一部発言の中にあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 このたびの法案において、地域公益事業義務化について盛り込まれております。この義務化について、いささかの憤りを感じております。誤解のないように申し上げますが、やらないということではございません。これまでもやってきたのではないかということであります。

 御承知のように、我が国の社会福祉は、戦後の歴史の中で、立場によって捉え方はさまざまであると思いますが、十分ではない部分も多々ございますけれども、一定、成熟した仕組みを構築されてきたものと思っております。

 しかし、制度が成熟するにつれて、大変窮屈なものになり、そのひずみも多々見られるようになりましたし、実感してまいりました。その一つが、さまざまな制約、規制でございました。公金で賄われておりますこと、また、公の制度であるため、規制そのものが悪いと申し上げるつもりはございません。規制のあり方、内容の問題であると感じております。

 細かいことを申し上げる時間はございませんけれども、私どもはこれまで国や地方の制度に基づく事業を行ってきたわけですが、制度の枠組みの中だけではどうしても対応し切れないさまざまな問題が起こってまいります。その目の前の課題は全て人の生活にかかわるものであるわけですから、放置するわけにはまいりません。かといって、それを支える制度がないからそのような事態が起こるわけです。

 誰が手を差し伸べるか、それは我々の使命として受けとめてまいりました。しかし、行政指導、監査等のもとで指摘の対象になったのも、これは事実でございます。それは、その担当者が悪い、そういうことではなくて、制度のルールに反する、ルールそのものにあったというふうに思われます。要するに、どんなすばらしい制度をつくっても、そのすき間が生まれてしまうということでございます。そのような制約のため、その結果として、さまざまな思いを持ちながら、取り組みを自重せざるを得なかった我々の仲間がたくさんいらっしゃいます。

 このような過去のさまざまな状況を振り返りますと、失礼を承知で申し上げますが、手のひらを返したようにいきなり義務化ということについては、憤りを覚えるものであります。

 先ほど全国経営協の磯会長の方からのお話がございましたけれども、今回の改革の議論のプロセスにおいて、社会の声としてもマスコミの報道等においても、社会福祉法人は本業以外の取り組みがいま一つであるとか消極的であるとか、それから、社会福祉法人の役割を果たしていない、使命が全うできていないかのような御意見や報道も多々ございましたので、その誤解の一部を解くためにも、あえて申し上げる次第です。

 この地域公益事業の件に関して、今回の議論の流れは、ある意味、私どもが以前から長年の願いとして国の方にお願いをしていたわけですので、その願いがかなったわけでありまして大変喜ばしいことではありますけれども、残念なことに、近年の社会福祉法人に対するバッシングとも言える状況への答えとして実現したことについては、大変残念に思う次第です。

 しかし、多くの法人は、このような状況の中でも、それぞれの身の丈に合った、地域ニーズに合った活動を、目の前にあるさまざまな問題の解決のために大なり小なり取り組んでまいりました。しかし、それは当たり前の認識のもとでやってきたために、社会的に特別に発信することもなく今日に至っているのが実態であります。そのサービスを利用される方々も同じ認識にあったと思われます。社会に対するアピールが欠落していたことについて、改めて反省するとともに、悔やまれてなりません。

 また、個別の法人の取り組みとは別に、地域のネットワークのもとでの展開や、法人間のネットワークによる展開も行ってまいりました。

 本日は、その一つであります大阪の社会貢献事業について、その状況を報告させていただきたいと思います。

 準備しております資料にお目通しをいただきたいと思います。

 社会貢献という言葉にはいささかの抵抗がございます。と申しますのは、社会福祉法人だから当たり前でしょうという思いがあるからであります。しかし、ある意味、本業との区別においてわかりやすいことから、この表現に至っております。

 大阪では、これまで、老人施設部会の生活レスキュー事業、保育部会のスマイルサポーター事業の取り組みをしてまいりました。この二十七年度からは、障害施設や養護施設等全ての社会福祉施設がかかわって、社会福祉法人を軸とした大阪しあわせネットワークの愛称のもと、生活困窮者自立支援法の取り組みも含めて事業を展開することになりました。

 それでは、その事業の内容について御紹介を申し上げたいと思います。

 資料をめくっていただいて四ページ目に、「社会福祉法人の強みを活かしたワンストップの総合生活相談」というのがございますので、そこをお開きいただきたいと思います。

 これはイメージ図でございますけれども、この事業を始めるきっかけになった、当時の老人施設部会部会長の三上了道氏の思いを少し申し述べたいと思います。ちょっと読み上げさせていただきます。

 戦前、国の制度が十分整備されていない中、社会事業家と呼ばれる人々は、地域の福祉課題を解決するため、社会福祉施設、社会福祉法人をつくり、先駆的に取り組んできた。社会福祉法人の存在感を改めて示すためには、社会福祉施設経営、介護保険事業経営だけでなく、社会福祉法人が有する施設機能、専門性やノウハウを生かして地域の福祉課題に積極的に取り組み、他の経営主体との違いを明確に示す必要がある。今改めて社会福祉法人制度の創設の理念に立ち返り、社会福祉法人として社会の期待に応えるため、公益性のある事業をみずから開拓して展開させるところに社会福祉法人の使命があると言わねばならない。

 この事業を始めるに当たって、このようなコメントを表明しております。

 これは実は、きっかけになりましたのは、公的介護保険の導入の時期でございまして、いろいろな参入主体がかかわってくる中でこのような考えに至ったということでございますし、それまでもそういった思いを持ちながら事業を展開してきたということでもございます。

 この生活レスキュー事業、少し細かい字で大変恐縮でございますけれども、ごらんいただきたいと思います。

 社会福祉法人、府内の千五百施設が、今後のオール大阪の取り組みとしては、それだけの施設がかかわる予定でおります。真ん中に大阪府社会福祉協議会がございまして、その千五百の施設が、右端にあります生活困窮家庭、そこに対して支援を送るというものでございます。これは、各関係施設が資金を拠出して、その資金を貢献基金委員会の方で管理して、必要に応じて給付をしていくというものでございます。

 下の枠の中、左の点線のところに書いてありますが、「生活困窮者に寄り添い、制度の狭間を埋め、既存の制度につなぐ」。これは、実績として平成十六年から二十五年度まで。一つ目、対象者に寄り添う総合生活相談、既存制度へのつなぎ、自立支援、三万件以上。緊急的な経済援助、これが五千二百二十二世帯以上。地域住民から寄附物品等をいただいてそれを困窮家庭に回していく、これが二千件以上ということでございます。

 右の方ですが、幅広い年齢層、十代から八十歳代の失業、DV、精神障害などさまざまな生活困窮を支援、社会福祉法人の資源、専門性を活用した支援を展開、孤立防止のための地域の居場所、よりどころの提供、自立に向けた就労訓練、資格取得支援など、総合的な取り組みを行っております。

 次のページでございますけれども、ここで少し注目をしていただきたいのは、棒グラフの一番下のところ、これは行政でございます。ちょっと白黒になっておりますので見えにくいかもわかりませんが、一番下のところは、行政から紹介された事例でございます。それが大体五〇%に及んでいる。

 それはどういうことかと申しますと、先ほど申し上げましたように、制度そのものが万能ではない、そのはざまにあるさまざまな課題が山積しておる、非常に多岐多様にわたっておるということでございます。それに対して応えているということでございます。

 ちょっと時間のかげんで次に移りたいと思いますが、保育部会の方では、スマイルサポーター事業というのに取り組んでまいりました。

 これは、きっかけとなりましたのは、一九七〇年代から八〇年代にかけて、ベビーホテルでの子供の死亡事故等、悲惨な事故がございました。そういったときに、現在、大阪府社会福祉協議会経営者部会の高岡会長が、保育園はこのままではだめだ、何とかしなきゃということで、一万人の女性の育児に関する意識調査というのを実施いたしました。これは戸別配布をして戸別回収をするということで、回収率が八〇・九七%という、非常に高い、まれな回収率でございました。

 その結果で得たものをもとに取り組んだのが、最初には育児相談事業でございました。それが、電話の育児相談から始めて、それぞれ個別の保育園で実施することになって、それを平成十九年からスマイルサポーター事業に転換していった。

 要するに、それはなぜかと申し上げますと、育児相談で始めた中で、その資料の中にもあるかと思いますけれども、府内六百五十の会員保育園等の八〇%以上に配置をしております。千五百六十六人を現在スマイルサポーターで認定しておりますが、その次が問題でございまして、平成二十五年度の相談実績では年間五万四千件の相談。これは年度によって大きく違いがあります。八万件くらいを数えた年度もございました。約一〇%が、保育、子育て以外、就労とか虐待問題、いろいろ家庭問題、経済問題になってきた。要するに、育児相談で始めたものが総合生活相談の役割を担うようになってきたということでございます。

 そういった取り組みをしてまいりました。

 そして、最初の資料に戻っていただきたいんですが、今年度からは、先ほどから申し上げますように、オール大阪の取り組みとしてやっていきましょうということで、このパンフレットに書いてありますように、これを総合的にあわせていってみんなで取り組んでいきましょう、そうすることによって、それぞれの持ち味を生かして、さらに手厚い援助ができるようにしていきましょうというのがオール大阪の取り組みでございます。これはまた後ほどごらんいただければというふうに思います。

 先ほどから磯会長の方からお話もございましたけれども、現在、この取り組みが非常に全国的に広がってきておりまして、東京都、神奈川県、埼玉県、滋賀県、京都府、兵庫県、香川県、宮崎県、熊本県、大分県等でその取り組みが始まっております。さらに、それに追随して他府県でも取り組みが始まろうとしております。

 個別の法人においてそのような取り組みをしたことと、社会福祉法人の使命に基づいてこれまでもさまざまな取り組みを行ってまいりましたが、連携してより大きな規模の組織にすることで、より幅の広い、きめの細かい対応ができるようになったということでございます。

 次に申し上げたいことは、先ほど全国経営協の磯会長の発言がありましたが、私も社会福祉法人経営者協議会の会員の一人でございます。会員の一人として、社会福祉法人にかかわる者の一人として、磯会長の発言内容の全てにおいて思いは同じでありますことをお伝え申し上げたいと思います。

 その中で、改めて特に申し上げたいことがございます。

 これも先ほどからお話が出ていることと重なりますが、どのようなすばらしい制度を構築しても、制度は万能ではないと私は思っております。その制度の満たされない部分を柔軟に対応するのが社会福祉法人の使命であると認識しております。

 慈善事業、社会事業、社会福祉事業と、歴史をひもといてみますと、社会福祉の先達の方々が、さまざまな社会状況の中で生活に困難を来している方々に対する人への思い、その問題の感知力とか解決手法を生み出す創造力、そして解決に向けた行動力をもって、実践し、その成果によってさまざまな新たな制度が構築されてきたことを認識しておりますし、また歴史の流れの中で感じ取ること、確認することができます。

 今後の福祉をより効果的なものにするために、社会福祉法人の自主性、主体性、自立性が欠けてはなりません。これまで以上にこの点を尊重していただき、これを損なうことのないよう、この件に関して強くお願い申し上げます。

 最後になりますが、福祉の心とは何かとの問いに、人を思いやる気持ちと答えた尊敬する知人がおります。

 この年になって青臭いことを申し上げるようで恐縮ですけれども、私どもは、単に施設経営を行うことで終始するものではございません。そこには、相手に対する人としての心からの思いがなければなりませんし、その人が幸せを感じる状況に向けた取り組みがなければ、本当の意味での福祉事業とは言えないと思っております。

 一〇〇%とは申しませんが、そのような思いを持った方々が自分の財産を寄附することで社会福祉法人を設立し、今日に至っております。家族経営についても批判されているようでありますが、古い話になりますが、過去には、家族全員の犠牲や奉仕、献身的な労働によって事業を支えてきた時代、実態もあるわけですが、まことに残念なことですが、既にこのような過去の事実、実態は忘れ去られようとしていることが残念でなりません。

 今回の社会福祉法人制度改革については前向きに捉えておりますが、今後の御審議の中で、このような見えざる事実についても御考慮いただければと願っております。

 本当に最後になりますが、仏をつくって魂入れずの言葉がございます。社会福祉制度は、制度はいわば仏であり、魂はその運用と実践であると考えております。これまで、運用をうまくできなかったことによって、その制度が十分に生かされないことがたくさんございました。したがいまして、制度の運用は行政の役割であり、実践は私どもの役割であると自覚しております。制度が生きるか死ぬかは運用と実践によって決まるものだと信じております。

 今後とも、引き続き、人を思いやる気持ちを基本に、今後の福祉制度に魂を入れる仕事の一翼を担ってまいりますとともに、そのはざまにあるさまざまな生活課題にこれまで以上に積極的に取り組んでまいりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、茨木参考人にお願いいたします。

茨木参考人 まず初めに、このような場を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、大阪を中心に組織をしております社会福祉施設経営者同友会の茨木と申します。よろしくお願いいたします。

 今回の法案、ずっとこの間議論がされてきていますが、まず初めに申し上げたいことは、社会福祉法人を守るであるとか社会福祉法人への非課税の措置を守るということではなくて、この法案の行く末は、この国の社会福祉のあり方そのものを変える非常に大きな問題を含んでいるというふうに申し上げたいと思います。

 この法案を読ませていただいて、そこに、今全国で作業所に通っている仲間の皆さん、あるいは保育で一生懸命遊んでいる子供たち、高齢者の方々、あるいは、それを担う、そこで働く人たちの姿が余りにも見えない、そういう法案であるというふうに私は感じております。

 第一の問題は、今回、新たに、第二十四条「経営の原則」に、今までもお話がありましたように、社会福祉法人の責務として第二項が設けられました。そこでは、「社会福祉法人は、」「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。」としております。いわゆる積極的な義務を社会福祉法人に課しているわけです。

 これは簡単に言えば、今、格差、貧困が広がる社会の中で、そのはざまで、社会問題で非常に困っているそういう人たち、あるいは、今、生活保護や医療、介護の窓口が非常に狭くなっています、そういう制度利用の窓口がどんどん厳しくなる中で、その対象外になった人たちへのサービス、そうした制度のはざまの課題を社会福祉法人のお金と人を使って担ってくださいというような、そういう義務ではないかというふうに思っています。

 社会福祉法の第六十一条ではこういうふうに述べています。「国及び地方公共団体は、法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し、又はこれらの者の財政的援助を求めないこと。」そして、国は、「社会福祉事業を経営する者に対し、その自主性を重んじ、不当な関与を行わないこと。」これが社会福祉法第六十一条で述べられています。

 今回の義務化は、法的にも社会福祉法人の経営に国が関与し、あるいは自主性を損なう、そういう意味では、明確な社会福祉法第六十一条違反ではないかというふうに私は思っております。

 さらにつけ加えれば、このような義務を課す云々という以前に、今るると皆さんがお話しされましたように、全国で多くの社会福祉の事業者が、あるいは法人が、ないものは自分たちでつくるんや、そういう気概を持って、障害を持っても働きたい、あるいは、この町で一緒に暮らしたい、安心して子供を産み育てたい、そういう当事者、家族、地域の皆さんの要求や思いを受けとめて、先進的、献身的に事業を立ち上げてきた。

 私どもの法人でも、戦後、戦災で焼け出された母子の方あるいは孤児、そういった人たちを支援しながら、十円保育、十円持っておいでということで子供たちを集めて保育を始めた、そういう長い歴史の中で私たちが築いてきたものがあります。

 そして、それを制度化してきたのが社会福祉制度です。そういう意味では、社会福祉法人の歴史そのものが社会貢献であり、地域公益活動なんだというふうに思います。

 第二の問題は、社会福祉法人のいわゆる内部留保。最近では、このいわゆるという言葉がつきます。内部留保とはもう言えない、そういうことだというふうに思います。一言で言いますと、社会福祉法人には内部留保は存在しません。今回、このいわゆる内部留保を地域公益活動の財源としていることが非常に私は問題だというふうに思っております。

 内部留保とは、本来、営利企業における株主配当等を除いた上でのもうけの蓄えのことです。社会福祉法人が、その事業の公益性、非営利性のもとに、将来的に持続する経営と事業の発展のために資金を確保していくことは、全く次元の違うものです。これらの資金は、施設の長期修繕あるいは建てかえ、人件費、新たな事業の準備、そういう社会福祉事業のために使うという明確な目的を持った必要資金です。

 このいわゆる内部留保は、ここ数年、ため込んでいる社会福祉法人、あるいは特養の純利益はトヨタ以上というような、マスコミを通したバッシングが随分激しくありました。

 結局、この内部留保の定義も二転三転し、余裕財産、再投下対象財産というようにネーミングもころころ変わり、今回の法案では社会福祉充実残額としていますが、その算定方法の基準、つまり控除する資産の中身ですね、それについても実は現在検討中であるというふうに言われています。逆に言いかえれば、こうした生活困窮者等への対策を、今もってあるかないかわからないそういう社会福祉充実残額により実施される程度のものでよいのかということだと思います。

 四月の介護、障害の報酬単価の改定で、現場は大変厳しくなっています。特養の五〇%は赤字になるのではないかというふうに言われています。

 そうした中で、社会福祉充実残額の余裕もない中で新たな費用負担が生まれ、今でも、障害者の皆さんあるいは高齢者の皆さんが、社会福祉の利用者として社会福祉サービスを受けながら人として当たり前の暮らしができているのか、そういうことが保障されているとは言えない状況がまだまだあります。そういった利用者さんへのしわ寄せ、それから、ただでさえ低い処遇水準の労働者へのしわ寄せという、二重のしわ寄せが起こることになります。

 社会福祉事業の報酬は、本来の社会福祉事業のために使われなければならないと考えます。

 第三の問題です。今回の制度改革の根底にあるイコールフッティングです。

 地域公益活動の義務化は、もうかる分野にさらなる企業参入を促し、それ以外の採算のとれない分野を社会福祉法人が担うという差別化を促進するのではないかというふうに考えます。

 この間、福祉に参入した営利企業の実態、モラルハザードが随分明らかになっています。例えば、介護保険事業における虚偽の指定申請や不正請求などによる指定取り消し処分の七割から八割は営利企業です。帝国データバンクの調査では、介護事業所の休廃業、倒産はこの三年間で三倍、その四割が株式会社です。障害分野でも、就労移行支援や放課後等デイサービスに企業進出がどんどん進み、利益を上げるための利用者獲得競争、配置基準が守られない、架空請求、支援の専門性のない事業者による虐待などの権利侵害が起きています。

 福祉は非営利が原則です。イコールフッティングを言うのなら、現在参入している営利事業者に対し、収益の全ては社会福祉に再投資するということなど、社会福祉法人と同様の厳しい規制をするべきだというふうに思います。

 第四の問題は、経営組織の見直しです。

 法案には、全法人への評議員会の必置、評議員会を議決機関とすること、一定規模以上の社会福祉法人へ会計監査人を置くことなどが決められています。全国の約二万、施設経営をしている法人でいうと一万七千、その社会福祉法人のうち小規模法人が多くを占めています。一律の導入は過大な負担を生みます。

 さらに、これまで評議員会は、地域の住民や地域福祉の関係者、あるいは保護者、そうした地域に根差して法人運営を行うという意味で大変御協力いただいてきた評議員の方がたくさんいらっしゃいます。しかし、今回、評議員会が外部監査、外部監督のような組織に変わるのではないか、そういう不安を持ちます。

 制度改革の議論の中で、合併や吸収による社会福祉法人の大規模化や非営利のホールディングカンパニーなどの議論もされてきました。そういう意味では、今回、法案で解散、清算、合併の手続をちゃんと整備しているのは、地域に根差し活動する小規模法人が淘汰され、財源も人材も自前で有効活用できるそうした大型法人を目指す方向なのかと思わされます。

 大事なのは、法人の大小にかかわらず、地域の中で支援の必要な方々に丁寧に向き合い、支援を重ねることではないでしょうか。

 第五の問題です。退職手当制度の見直しです。

 先ほど、きょうされんの方も言われましたが、これは、社会福祉に従事する人材確保を目的とする意味では、全く真逆の措置であります。前回、介護保険事業者が外され、今回、障害が外され、二〇一七年には保育も外されるのではないかと言われています。公費助成がなくなることで、制度の加入が減ることも予想されます。もともと低い賃金水準の福祉労働者の退職金のめどさえ持てない。

 福祉で働く職員の処遇改善は、社会福祉事業のこれからを左右する最大の急務です。公益性の徹底が今回の法改正の目的ならば、社会福祉の仕事に見合う給与水準を保障する報酬をしっかりと設定するべきだというふうに思います。

 本日お手元にお配りした資料は、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会とNPO法人日本障害者センターが中心となり組織された社会福祉事業のあり方検討会が、昨年の十二月からことしの二月にかけて実施された社会福祉法人アンケートです。

 全国二万法人のうち約一万五千法人に郵送し、二千百五十六の法人から回答が寄せられました。

 まず、この制度改革について、詳しく知らない、よく知らないが八六%、ほとんど知らされていない、そういう実情があります。さらに、地域公益活動の義務化については、強制すべきではない、既にもうやっている、そういったところが九三%、義務づけるべきではないとしています。そして、もしも余裕財産というものがあるとしたら、実際は余裕ないんですけれども、七九%が、利用者に対する支援の質の向上、職員の処遇改善に使うべきだというふうにしています。

 現実は厳しい財政状況の中でも、利用者の暮らしと権利を守り、職員の労働を守り、そして経営を守り、地道に現場では実践を行っています。このアンケートの答えは、そんな現場を代表する大変真っ当な答えではないでしょうか。

 社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的に設立された法人です。今回の法案は、成長戦略による福祉の市場化を進めるために、イコールフッティングにより社会福祉法人への支援措置を縮小する、その一方、財務規律や組織改革、行政関与などの厳しい規制をさらに強める、公益性を担保する規制を強めながらイコールフッティングにより公益性を薄めるという、大変矛盾に満ちたものです。

 本来、全ての社会福祉にかかわる事業と活動は、国民の命と尊厳、幸せにかかわる、憲法二十五条、生存権に基づき、公的責任で実施されるのが原則です。人の尊厳にかかわる価値を、金もうけや市場化や成長戦略や、そういうテーブルで論じること自体が私は問題だというふうに思います。

 私は、社会福祉の現場に立つ者として、法案の拙速な審議、採決はやめていただき、真に国民一人一人の命と暮らしが守られる、憲法に基づく人権原理が貫かれた社会福祉制度を求めるものです。

 以上、社会福祉の現場に働く者として発言させていただきました。ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀内詔子君。

堀内(詔)委員 本日は、質問する機会を与えていただきまして、ありがとうございます。自由民主党の堀内詔子です。

 また、本日は、傍聴席に大勢の皆様方がおいでです。この皆様方のお姿を拝見しても、今回の制度改革については多くの方の御興味がある、そういった重要な改革だと思っております。身の引き締まる思いがいたしております。

 社会福祉法人は、戦後、公的な機関で疲弊した国民全体にその社会福祉というものが十分に行き渡らせることのできなかった中に、サービスを民間の力をかりて賄った、そういったことに端を発している制度であります。

 これまで長きにわたって日本の社会を支えてきてくれた社会福祉法人の力を、今回の社会福祉法改正で十分に引き出すきっかけになることを期待しております。

 本日は、社会福祉法人制度改革について、五人の識者の先生方にお越しいただきました。磯先生、松原先生、赤松先生、菊池先生、茨木先生、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、磯先生にお伺いいたします。

 先生は、先ほど自己紹介してくださいましたように、七千もの社会福祉法人が参加する全国社会福祉法人経営者協議会の会長でもいらっしゃいます。福祉事業に携わり二十年以上、経営者として、社会福祉法人の経営について高い知見をお持ちでいらっしゃいます。

 まず一つ目の質問に移らせていただきます。

 社会福祉事業といわゆる経済合理性、この二つはどのような関係にあるとお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

磯参考人 ただいまの御質問についてお答えをさせていただきます。

 社会福祉法人は、先ほども言いましたように、非営利性を担保するとともに、非常に公益性の高い組織であるということはまず確実なことであろうと思います。しかし一方で、制度が変わり、措置制度から契約制度へ変化していくという中で、法人の運営のみならず、法人経営というものに対してもやはり強化をしていかなければならないというふうに思っておりますので、その点はバランスを持って考えていく必要があろうかと思っております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 また、磯先生に二つ目の質問でございますが、今回の改正には福祉人材の確保の促進も含まれております。近い将来、介護人材が不足すると言われております。この課題へどう向き合っていったらよいか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。

磯参考人 ただいまの御質問についてでございますけれども、よく、二〇二五年には三十八万人の介護人材が不足するということが言われております。やはり、さまざまな提案がされておりますが、これは、できるできないということよりも、やっていかなければならないという覚悟を持ってさまざまな取り組みを進めていくべきだろう。

 しかしながら、今、国として出されている政策の中で余り決定打というものがないわけでございます。今回の改定も同じようなものであるかもしれませんけれども、私自身は、現場で仕事をしておる者の一人として、それに加えて、それぞれの法人がそれぞれの地域においてその実践をしっかりと示し、先ほど来お話が出ておりましたように、地域における公益的な取り組み等を通して住民の関心を高めていき、そして結果的には、いい方向に進めていく。地域の方がその社会福祉法人のことを知っていただくことによって、ここにボランティアに来よう、またここで勤めていこう、そういった地道な活動がやはり最善の策ではないかなというふうに私自身は考えております。

 人材確保に関しては、私ども京都でございますけれども、京都府の取り組みが非常に実績を上げておりますので、また御参考にしていただきながら、確保だけではなく、育成、そして定着をあわせて考えていくことが必要かと思っています。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 やはり、地道な取り組み、それが何よりも必要だということがわかりました。ありがとうございます。

 また、さらに続けて磯先生に質問させていただきたいと思います。

 先般の報酬改定において、介護、障害の両分野とも実質報酬ダウンとなりました。次回、平成三十年改正は医療分野との同時改定が予定されております。この改正について御所見をお伺いしたいと思っております。

磯参考人 障害、介護におきまして、今回の報酬改定で、全体的に、声を聞くところによりますと、介護で約五%、そして障害で三%ぐらいのダウンということを聞いております。

 もちろん、それによって厳しい状況が生まれてきたわけでありますが、我々経営者としては、先ほどお話がありましたけれども、そのことをすぐに人件費に直結させるというようなことは、私自身は経営者として失格であると思っておりますので、やはり、この現状、日本の国情を踏まえて、この報酬単価において、例えば収入増を図っていくために、介護報酬であれば、障害もそうでありますが、加算をとっていくということで収入を上げていく、また、支出を見直していくというようなことを徹底的に進めていくということで今までのことを何とかカバーしていくということが、まず経営者としての役割だと思っております。

 最終手段として、どうしても立ち行かなくなった場合には人件費を削減するという状況が起こり得るかもしれませんけれども、その段階までには至っていないと私は理解をしております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 磯先生のさらなる経営手腕を発揮していただきますことをよろしくお願い申し上げまして、磯先生への質問を終わらせていただきたいと思います。

 磯先生はお医者様でもあられまして、献身的に福祉事業を推進されておりますことに深く敬意を表します。これからも御活躍いただき、御指導いただきたいと思います。ありがとうございました。

 続きまして、松原由美先生にお伺いしたいと思います。

 先生は、社会福祉法人について多くの論文を発表なさっていらっしゃいます。社会福祉法人に大変な御見識をお持ちと伺っております。社会福祉事業は非営利組織であり、それに見合った分析は必要である、また、営利企業の経営分析とは異なる、そういったもの二つを同一視することによって混乱と誤解を招いているといった注意喚起をなさっていらっしゃいます。社会福祉事業の特性に注目し、経営評価分析の大切さも御提案されております。

 そういった中、公的資金で賄われる社会福祉法人であるがゆえに、どういう評価分析をして、それをどのように一般の方々に開示すれば、一般の方々の御理解をより得やすくなるとお考えでしょうか。

松原参考人 どのように社会福祉法人を評価するのかという御質問と賜りました。

 営利企業の場合には、御存じのとおり、いかに多く利益を出しているかということが大切になりますけれども、そうではなくて、非営利組織、社会福祉事業の場合には、まさに本業をどれほど全うしているのか、ミッションを最大化しているのか、この点で評価されるべきと考えます。

 また、財務諸表の面につきましては、先ほど申し上げましたとおり、今の現状では、利益は配当しないというだけで、配当はしないということは将来のコストとしては使われることは確実なんですけれども、その将来のコストが必要なものなのか、それ以上なのかということの明確化はやはり必要だと考えております。

 といいますのも、この事業というのは、サービスを利用しない人までもがそのコストを負担して、公的資金で賄えている事業ですので、こういった事業におきましてはなるべく低廉なコストで行うという意味でも、必要以上のものなのか、必要な利益なのかということの明確化を今後は図っていくことが求められるのではないか。

 そのためにも、まずは情報開示、そして、今回、内部留保につきましても、必要な内部留保とそれ以上と明確化するようになりましたけれども、公的資金である以上、国民に対してそうしたアカウンタビリティーを果たしていく必要がある。

 繰り返しますが、何で評価されるべきかというと、本業が全うされているかどうか、一方で、財務諸表に関しましては、人件費も含め適正な支出を行った上で、必要利益以上を上げているかどうか、必要利益以上であれば、今内部留保でやろうとしていますけれども、計画的に本業の充実、地域貢献に使う、そういったことが達成されているかどうか、こういった点で評価されていくべきと考えております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 また、松原先生にお伺いしたいのですが、社会福祉法人に対するいわゆる課税の議論がくすぶっております。その件に関してどのような御意見をお持ちでいらっしゃいますか。

松原参考人 先ほど申し上げましたとおり、営利企業の利益と非営利組織の利益は全く異なるものでございます。営利組織の利益というのはまさに自由に処分できるものですけれども、非営利組織の利益は事業にしか投下できませんので、将来のコストです。将来のコストに課税するということがあってはならないと考えております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 確かに、おっしゃるとおり、将来のコストについての課税、それはあってはならないものだと私も思います。

 続きまして、また松原先生にお伺いしたいんですが、財政面におきましても、社会福祉法人への誤解があると主張されておいでです。この点について、もう少しわかりやすく御説明いただけますでしょうか。

松原参考人 財政面についての誤解の最たるものは、内部留保についてでございます。

 まず、内部留保について、特養に関して、一施設当たりの内部留保が三・一億円もあるということで、もうけ過ぎ、ため込み過ぎと批判されたわけでございますが、このときに指している内部留保というのは、ちょっと専門的になりますけれども、貸借対照表の右側の貸方側ですね、貸方側にあるいわゆる一般企業でいう利益剰余金、利益剰余金を指して、三・一億円もある、こんなにため込んでいるという話をしているわけですけれども、そもそも貸方の利益剰余金というものは、あるのかないのか定かではないものでございます。

 多くの事業は借金などしておりまして、その借金返済に多くの利益が流出しております。組織外に流出しておりますので、利益剰余金というのはあるかないかわからない。あるかないかわからない金額を指して、過大だ、活用しろということは、これは筋違いだと思っております。

 もう一点。では、あるかないかわからない方ではなくて、実在している、いわゆる換金性資産ですね、借方側にある換金性資産をもってこれを過大だという向きもありますけれども、これにつきましても、絶対額だけで過大か否かを判定できるわけがございません。何らかの基準を持って初めて、過大なのかどうなのかわかるのでございます。

 現在行われている議論というのは、まず対象が間違っている、そして、判断基準なく、過大だ、活用しろと言われている、この点が最大の誤解だと思っております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 共感するものが多くございました。これからも社会福祉法人についてのさらなる御考察を深められ、御指導いただきたいと思っております。

 松原先生、ありがとうございました。

 続きまして、赤松先生にお伺いしたいと思います。

 きょうされんの皆様方には、障害者への福祉サービスを献身的に御提供くださり、小規模作業所を初め、通所型事業所、グループホーム、相談センターなど、障害のある方とともに豊かな地域社会、地域づくりを進めていただいておりますことに心から敬意を表します。

 時間も少なくなってまいりました。一問だけ、赤松先生に質問させていただきたいと思います。

 共同作業所が、障害者やその御家族に多くの恩恵を与えていると私も思っております。けれども、小さい規模のものが多い中で、今回の改正がどのような影響を与えるか、どのような形で小さい作業所が生き残っていけるとお考えになっていますでしょうか。

赤松参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、共同作業所は、その成り立ちから申し上げまして、非常に小規模なところが多うございます。その後、社会福祉法人格やNPO法人格を取得したところも、やはり規模の小さいところが多うございます。

 今般の法改正においては、こういう小さいところがもう生き残れないのではないかという不安を非常に多く感じておるというのも現状でございます。

 私ども、先ほども申し上げましたが、小規模な法人が地域で果たしている役割というものを改めて確認をする必要がある。そして、大きな法人には大きな法人の役割が当然ございますし、小さな法人には小さな法人の役割も当然地域の中ではあるわけでございまして、小さいからこそ機動的に対応できる福祉サービス、こういったことも実際にあるわけです。

 ですから、このように本当に複雑に福祉ニーズが多様化してきている現代においては、法人の規模の大きいところも小さいところもそれぞれの持ち味を出して、そして福祉ニーズにトータルとして対応していける、そういう仕組みをつくることが大事なのであって、何か大きい法人が生き残るような仕組み、そちらの方に偏るような仕組みでは、小さい法人はつらいというふうに思っております。

 以上です。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 今後とも、障害者の方々の生きがいにつながる、働ける環境をつくることに御貢献くださいますようよろしくお願い申し上げ、質問を終わらせていただきたいと思います。

 次に、菊池先生にお伺いしたいと思います。

 先生は、オール大阪の社会福祉法人による社会貢献事業に精力的に取り組んでいらっしゃいます。大阪府内の全ての社会福祉法人、社会福祉施設がそれぞれの強みを生かし、その力を社会に還元する流れを形づくってくださいますことに、心より感謝を申し上げます。

 これから、大阪のような大都市圏を中心に高齢化社会が訪れます。特に大阪のような大都市には、介護人材の不足と高齢者の人数の増員、そういったもののアンバランスが大きく生じてまいると思います。その点について、どのような解決策があるとお考えでしょうか。

菊池参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 大変悩ましい問題であると思っております。

 介護人材に限らず、保育士の確保の問題につきましても、昨年度は特に厳しい状況にあったかと思います。少子高齢化がどんどんどんどん進む中で、ますますそれは厳しい状況になるのではないかなと思っておりますけれども、私ども、大阪の社会福祉協議会の中で人材センターがございまして、そこでいろいろと知恵を絞って、どのような対応をすれば効果的に人の確保ができるのかということで、今検討している最中でございます。

 ただ、これは我々だけで解決し得る問題でもないかなというふうに思っておりますので、国それから地方自治体のお力添えもいただきながら、何とかいい形を生み出していきたいというふうに思っております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 これからも菊池先生の御奮闘をお祈り申し上げます。

 最後、時間がなくなってまいりましたが、茨木先生に一つお伺いしたいと思います。

 先生は、社会福祉施設経営者同友会の会長でもいらっしゃいます。社会福祉法人のこれからについて、どのような将来像を持っていらっしゃいますか。

茨木参考人 社会福祉法人は、これからも、社会福祉事業の主たる担い手としてその役割が発揮されなければならないというふうに思っています。ずっと議論にもありますように、公益性、非営利性を担保に、今後も、利用者さん、地域の皆さん、御家族の皆さんの権利と暮らしを守って、社会福祉法人は奮闘してまいります。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 本日、先生方それぞれのお立場からの御意見が、国民の皆様方のお声を代表しているものと思います。貴重な御意見をありがとうございました。

 この社会福祉法人制度の改革を機に、より一層の福祉の充実を目指してまいりますので、今後とも皆様方の御指導をどうぞよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

渡辺委員長 次に、山井和則君。

山井委員 きょうは、五人の参考人の方々、まことに重要なお話、ありがとうございました。お一人お一人の御発言、そのとおりだなと私は本当に感銘を受けました。

 そういう意味では、この四月、介護報酬は、消費税の増税分を差し引きしますと過去最大の引き下げとなりました。また、障害者福祉の報酬に関しても、物価上昇分を差し引くと史上初の引き下げ。特に、障害に関しては、何か介護報酬を下げるとばっちりで、道連れで史上初で下げられた。こんなことがあっていいのかと私は強い怒りを感じております。

 また、私自身、もともと化学を研究しておりましたが、なぜそこから転換したのかといいますと、六年間、母子寮、母子生活支援施設というところでボランティアをしておりまして、そこで、虐待を受けた子供たち、障害のあるお子さんたち、またそのお子さんたちを支えるお母さん方と、遊んだりいろいろな活動をする中で、まさにその母子生活支援施設も社会福祉法人です、そこの職員の方々が、いつも泣いているのは子供と障害者と女性であるということをおっしゃって、そういうところに本当に政治の声が届いていない。

 そして、糸賀一雄先生の言葉、この子らを世の光に。この子らに世の光をではなく、この子らを世の光に。障害のあるお子さんたち、そして障害のある方々が社会のど真ん中で暮らせるような、そういう社会をつくる。私は、そういう糸賀先生の思想に共鳴をして、感動して、そういう社会をつくりたいと思って、化学の世界から福祉の世界に転換したわけですが、そういう意味では、私の人生の原点が社会福祉法人での出会いにありました。

 きょうも多くの方々が傍聴にお越しくださっていますし、立ち席の方々も来てくださっていますし、そこで働いている方々のみならず、当事者の方々もお越しをいただいております。

 この法改正のポイントはただ一つ。きょう傍聴に来てくださっている方々にとって今回の改正はいい改正なのか悪い改正なのか、そのことに尽きるのではないかと私は思っております。

 先ほども言いましたように、報酬がカットされて今危機的な状況。さらに、この法案の中には、地域貢献とか公益事業をしなさいという項目も入っておりますけれども、恐らくきょう出席されている厚生労働部門の議員の先生方は党派を超えて思いは一緒だと思いますが、週末になれば、福祉施設の福祉バザーに行って、もうそんなものは、言われなくても地域貢献なんか嫌なほどやっておられるわけですよ。そういうことを義務づけるということに関しても、私は何か、甚だ失礼な話じゃないかというふうに思います。

 そういう意味では、私の今回の法案に関する一つの感想は、本当にこれは悔しいなと思うんですね。全ての社会福祉法人の方々は、本当に必死になって、利用者のため、入所者のため、お子さんたちのため、障害のある方々のため、高齢者のために、人生をかけて、経営者の方、職員の方は、当事者の方々、地域のボランティアの方と一緒に必死になって頑張ってこられたわけです。

 それに対して、確かにごく一部、残念ながら、先ほど磯さんからも、〇・一%ぐらいじゃないかということをおっしゃいましたけれども、ごく一部、確かにため込んでいるところはあるでしょう、残念ながら。ごく一部そういうところがあるがゆえに、こういう法改正の議論をせねばならないということに関して、私はじくじたる思いを持っております。

 そんな中で、磯さんからは、襟を正さねばならない、誤解を解かねばならない、存在意義を示さねばならないという御発言がございました。経営協の会長さんとして、本当に憤りを感じながらも、福祉現場を守るためにどうすればいいのかということをお考えになられた末のお言葉だと私も重く受けとめたいと思っております。

 そこで、時間に限りがありますので全員に質問できるかどうかわかりませんが、お聞きしたいんです。

 まず、赤松参考人。

 これはちょっと聞きづらいんですが、特に小規模の障害者の作業所にとって、今回の法改正は何かメリットはありますか。法改正というのは、こういう点はいいけれどもこういう点はマイナスだとかあるんですけれども、今回の法改正の中で、小規模作業所にとって、マイナス点はいっぱいあると思うんです、はっきり言って。マイナス点はあるけれども、こういう点はちょっとプラスかなというところはあるんでしょうか。いかがですか。

赤松参考人 御質問ありがとうございます。

 小規模作業所に関しては、この法案は視野に入っていないのではないか、蚊帳の外ではないか、このように思います。そして、法内事業ではございますが、例えば地域活動支援センター、こういった事業も、ここにはほぼ目が行っていない。

 やはり、主眼としているのは社会福祉法人、その中でも規模の大きなところ、ここに主に着目した法改正、このように見ております。

山井委員 的確に赤松さんがおっしゃってくださったように、言い方は悪いけれども、さまざまな社会福祉法人、ごく一部のもうけているところも、大多数のもうかっていないところも、そして大規模なところも小規模なところも、そこを何かごちゃまぜにしてやっているというところがあると思うんです。私は、そういう意味で本当に、非常に乱暴だなというふうに思うんですね。

 おまけに、四月の報酬改定で大幅にダウンして、私も、週末いろいろな福祉バザーへ行くと、怒られてばかりなんですよ、何ということをしてくれているんだと。ただでさえ人手不足で、職員の方の給料が低いのに困っている、もちろん今回処遇改善加算がありましたけれども、まだまだ不十分であります。

 そういう意味では、この法案、今後修正をするのかどうかということも私は一つの議論だとは思うんですが、今、赤松さんがおっしゃったように、小規模の作業所にとってはデメリットばかりでメリットはほとんどないと。それで、言っちゃなんですけれども、一番経営も厳しいと思うんですよね、本当に。だから、そういう一番厳しい社会福祉法人に一番直撃するというのは、ちょっとやはり問題があるのではないかというふうに私は感じざるを得ません。

 それで、磯さんにお伺いしたいんですが、先ほどのお話、襟を正さねばならない、誤解を解かねばならない、存在意義を示さねばならないと。同時に、一部の金もうけしている、先ほどまさに茨木さんがおっしゃったように、一般的な内部留保じゃないんですよ、これは別にため込んでいるわけでは全然ないんだから。必要なお金や建物があるだけであって、一般的な内部留保ではないんですが、でも、そういう意図的なバッシングによってこういう法改正を政府が提出せざるを得ないところまで、社会福祉法人の課税を逃れる一つの方法なのかもしれませんが、追い込まれている。

 そういう状況の中で、磯さんにお伺いしたいのは、やはりこの四月の報酬改定ですよね。私は、本当にはらわたが煮えくり返るぐらいの思いをしています。現場でこれほど必死に、安い給料で現場の方々が社会福祉法人では頑張っておられる。保育の現場も、障害の現場も、まだまだいい人材を集めるためにはもっともっと賃金を上げたいわけですよね。にもかかわらず、今回報酬が大幅に下げられた、まあ処遇改善加算があるとはいえ。そのことに関して、磯さんとしてはいかが思われますでしょうか。

磯参考人 御質問ありがとうございます。

 この点については、先ほども御質問がありましたので同じような答えになりますけれども、我々、社会福祉法人を経営していく中で、三年ごとの報酬改定がある、これは医療も同じでございますけれども、もっと広げて考えると、一般企業においても順風なときと逆風のときがあるのと同じで、もちろん、今回の報酬改定においては、厳しくないと言えば当然うそになりますので、厳しい状況ではありますが、先ほど申しましたような、収入をふやしていくための知恵を絞る、そして支出を削減するための知恵を絞っていくというようなことで、その結果がまた実態調査で出てくると思いますので、次期の障害、介護の報酬にそれを反映していただければいいかなというふうに考えております。

山井委員 処遇改善加算をとって職員の方々の賃金を上げる、一方では、報酬のベースが下がっているからということで、大変な御苦労を、やりくりをされているということです。その取り組みには敬意を表したいと思いますが、ただでさえ苦しい思いをしているところに、そういう報酬の大幅ダウンというのは本当に問題だと思っております。

 改めて、赤松参考人にお伺いしたいんです。

 やはり、特に、ただでさえ経営が苦しくて人手不足が深刻な中で、一番直撃を受けるのは、退職手当の公費助成を廃止するということなんですよね。これは、たしか一人当たり一年間八十万円ぐらいの事業所の持ち出しになるんじゃないかと思います。報酬がダウンして、そして、それによって、逆にそこを支援するために助成を拡大するというんだったらわかるけれども、逆に追い打ちをかけるように廃止していく。

 それで、茨木さんもおっしゃったように、イコールフッティングと言うけれども、もちろん、多少、イコールフッティングにした方がいい面はちょっとはあるかもしれませんよ。でも、何でもかんでもイコールフッティングで、都合のいいところだけ介護とイコールフッティングにされたらたまらないと思うんです。やはり障害には障害の特性が当然あるわけですし、障害ゆえの大変さというのも当然あるわけです。

 そういう意味では、公費助成が廃止されるということについて、いかがですか。

赤松参考人 赤松です。御質問ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたように、事業所の掛金、これは、廃止になると三倍になるんですよね。一人年額で二百数十万円分を事業所が負担することになります。これは、小規模、大規模、規模にかかわらず、大きいところなんか数千万円単位ですよね、負担増が。小さいところでも、ただでさえ厳しい中で、この負担が三倍になる。

 これは実に深刻な話でありまして、経営という観点だけではなく、結局、これによって、支援する職員が福祉分野にはまたさらに来ない、この分野がまさにどんどん先細りしていく。そのことは、結果として、障害のある人たちの地域での生活への支援、これの量が、質が十分じゃなくなっていくということにつながりますので、私は、ぜひ今回の見直しというものは思いとどまっていただきたい、こんなふうに考えております。

山井委員 私も二十代のころ介護施設で半年ぐらい実習をさせてもらったことがありまして、本当に、腰痛で倒れましたし、おむつ交換、入浴介助、車椅子への移動、何から何まで大変。でも、さらに大変なのは賃金が安いということで、私は、そういう施設でずっと実習させてもらった経験からいって、本当に、障害者施設、保育園、そして介護施設、児童福祉施設で働いておられる方々はみんな神様だと思いますよ。本当に大変な仕事です。

 肉体的にも厳しい、きついし、また愛情を持って接せねばならないし、さらに待遇はよくないし、何よりも、さっき言ったように、腰痛とか、体を壊して、みんなコルセットを巻いて仕事をしている。それで、もっと言えば、障害者の施設の方なんかは、残念ながら、急に発作が起こった利用者の方から殴られてしまって、脳しんとうで病院に行ったとか、本当、そういうことすらあるんですよね、実際。

 そういう意味では、今、報酬が下がって、ただでさえ財政的に大変だ。

 さらに言うならば、法改正すればするだけ、デスクワークがふえるんですよ。現場の方々は、もういいかげんにしてほしいと。当事者の方々のお世話が一番の最優先なのに、法改正のたびに、資料をつくらねばならない、役所に話をしないとだめだといって、デスクワークにどんどんどんどん時間をとられて、パソコンをやらねばならない、ソフトをかえねばならないとか、そういう労力が今回の法改正によって起こることを私は危惧しております。

 ただ、磯さんもおっしゃったように、襟を正さないと社会福祉法人は厳しい目の中でもたないんだということもわからないではありません。

 ただ、そういう手間暇のことも私は反対ですが、それ以上に、今の退職手当共済の公費助成をなくすというのは、ただでさえ苦しみもがいている障害者の施設を、財政的にさらに負担増するわけでしょう。

 私は、言ってはなんですが、この四月に介護、障害者福祉報酬が上がって、共済の公費補助をなくすのに見合うぐらいの手当てはしてありますからというぐらいのことがあるんだったらわからないではないですよ。史上初めて障害報酬を下げて、おまけに追い打ちをかける。これは、せめて施行の延期ですね。撤回の方がいいに決まってますが、せめて、当面、施行の延期をすることが必要なんじゃないかというふうに私は個人的には思います。

 それで、次にまた磯参考人にお伺いしたいんですが、地域でモデルとなる取り組みをされておられて、かつ全国の施設を束ねるお仕事をされていることに本当に心より敬意を表したいと思いますが、そういう中で、特に障害者福祉に特化して、もちろん、経営協の会長さんですから、もっと大きな観点でもいいですが、やはり中心になってやっておられるのが障害ですから、主に障害ということを念頭に置いて、今後、国への要望、この法案のことはちょっとおいておいて、ぜひこの機会にお聞かせをいただければと思います。

磯参考人 御質問ありがとうございます。

 非常に大きな質問でございますが、まず冒頭に、私の今回の法律に関しての思いを一点だけ述べさせていただきますと、我々を取り巻いている環境、そして、さまざまな批判に対して、我々はやはり、繰り返しになりますが、襟を正していかなければならない、そのことをネガティブに捉えているのではなくて、私自身はこれをポジティブに捉えて、そのことを前に向いていくべきではないかというのが私の趣旨でございます。

 今、山井先生がおっしゃられましたように、法改正になりますと、一番大きいことは、経営上の問題からいいますと、事務作業が膨大になってまいります。さらには、こういった仕組みの中ででは、法人のいわゆる本部機能、小規模の法人の方にとってはなかなか難しいことかもしれませんけれども、中規模以上の法人においても、やはり法人の本部機能をつくらないとまたいろいろな問題が出てくる。要するに、事務方に対するいわゆる財政の配慮というものはぜひお願いをしたい。

 恐らく、小規模の法人でも、保育園の園長さんが事務長さんをやっておられるというようなことになりますので、右と左の決算が合っていないというようなことが指摘をされてもおりますので、まず、その事務にかかわる費用というものを私としては御配慮いただければというふうに考えております。

山井委員 どうもありがとうございます。

 おっしゃるように、事務がばかにはならないんですよね。本当に、何よりも、施設の、事業所の本来の任務は当事者の方々を幸せにすることでありますから、それ以外のところに係る事務が、今回の報酬改定でも、加算のこととかを含めてかなり事務がふえているわけですから、本当に大変なことである、ここを何とかせねばならないと思っております。

 さらに、私の経験でも、保育園、私がボランティアしていた施設というのは、母子生活支援施設と保育園が併設されていまして、保育の現場、そして発達障害のお子さん、あるいは、母子生活支援施設ですから、お母さんに障害があるケース、そういうさまざまな方々が保育園と母子生活支援施設で生活をしておられました。そういう方々をどうやって支えていくかということが非常に重要であると思います。

 大変失礼なことで、松原参考人、菊池参考人、茨木参考人にも質問させていただこうかと思っていましたが、質疑時間がもう終了という紙が来てしまいました。

 本当に、党派を超えて、私たち、きょうお聞かせいただいた皆さんの現場の声、また研究者の方々の声をしっかり受けとめて、この厚生労働委員会で社会福祉法人の応援をしっかりできるように頑張ってまいりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

渡辺委員長 次に、足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 きょうは本当に、参考人の皆様、貴重な御意見をありがとうございます。

 磯会長、それから松原部長には、私は政治を志す前の仕事でも大変御指導をいただいていまして、きょうは御無沙汰をしております。それから赤松常務、菊池委員長と茨木事務局長さんは大阪からということで、ありがとうございます。私も大阪でふだん活動しておりますので、大変興味深く御意見を賜りました。

 まず最初に、私は、一番実は今回の法案で気になっていることは、現場の、現場というか、社会福祉法人の当事者の経営者あるいは働いていらっしゃる方々にとって、この法案がどういう感覚で受けとめられているかということなんです。

 私も、いろいろな社会福祉法人の方、経営者の方々ともおつき合いさせていただいていますが、総じて申し上げれば、無税なので社会福祉法人という形に甘んずるというか、そういう形で仕事をしているが、実際、役所のいろいろな通達とかさまざまな規制については若干辟易している方が多いです。余りに手かせ足かせが多いと、もう税金を払った方がいいやという声も一部あるのが現状だったんです、私の理解はですね。

 その中で、今回、きょうは法人の話を中心にさせていただきますが、ある種、社会福祉法人のバージョンアップを図る、公益性、非営利性ということで、特に公益性の観点を徹底するということになります。

 もし、今私が御紹介したような感覚の、感覚というか、そういう方が多いとすると、今回の制度をバージョンアップすると、もう有税でいいやというように、イグジットですね、要すれば、この社会福祉法人制度から外に出たいというような方が少なからず、少しはいらっしゃるように私は思います。

 特に、これは二つの意味があって、一つは、手かせ足かせというような、義務がいろいろかかってくるということもありますが、もう一つは、きょう菊池参考人が御紹介くださったように、社会福祉法人として頑張っていらっしゃる方の多くは、もともと御自分の財産を供出して頑張ってこられたという方もいらっしゃるし、家族を挙げて、地域のため、福祉のために頑張ってこられた方もいらっしゃるわけです。

 ところが、今回の制度だと、公益性の徹底ですから、そういう家族制みたいなもの、あるいは、ある種の、制度的には帰属していないわけですけれども、徹底的にそれは地域のものだということになるわけでありまして、若干そこがしんどいのかなという印象を持っています。

 私は、極論すれば、これだけの制度を構築するのであれば、出口、イグジット、要は、別の形に移行するような出口を用意してあげないと、全ての社会福祉法人が全てこれでいきなさいというのはやはりきついという印象を持っていますが、きょうお越しの五人の参考人の皆様、私が今申し上げたような意見についてどうお感じになるか、一言ずつで結構ですので、御紹介をいただければと思います。

磯参考人 今の質問でございますが、もう釈迦に説法みたいな話になりますが、財団型である社会福祉法人といわゆる社団型である株式会社というのを比較しますと、社会福祉法人には構成員というのが存在しておりません。また、財産が特定の個人に帰属することもございません。一方、株式会社は、株主がおりますので、会社の財産は株主に帰属している。これは大原則としてございますので、つまり、法人そのものの基盤が根本的に異なっているということから、それは私自身はあり得ないんだろうというふうに思っております。

 加えて言えば、今後、社会福祉法人の役割がさらに重要になってくると思いますので、その必要性は乏しいというふうに考えております。

 ただ、一点だけ言いますと、今回、合併という仕組みが一つ明記されておりますので、そこを精査していくことによって、その方が、お父様が建てられたんだけれども、息子がもうその仕事をやる気がないというような場合が出てこようかと思いますので、それも一つ、一策として考えてもいいのかなと思います。

 以上でございます。

松原参考人 今回の法改正によりまして、簡単に言うと、いろいろ負荷がふえる、面倒だというお話だと思いますけれども、そもそも、一部の人だけを対象にした時代ではなくて、これだけ社会の中心で社会福祉法人が事業をするようになった以上、もう既に公益法人も上場企業の営利企業もやっていることですので、これはやはり世間並みに足をそろえる努力が当然に必要だと思います。従来やっていなかったことを行うことになりますので、負荷がふえるのは事実ではございますが、これは、社会的責任からして求められる時代になってしまったと受け入れていただきたいと思っております。

 次に、では、営利になればいいじゃないかという話ですけれども、社会福祉事業に携わる以上、たとえ株式会社であっても、非営利組織並みの理念、経営の仕方が求められると考えます。

赤松参考人 先生がおっしゃるその手かせ足かせの話が、社会福祉法人にいろいろかけられている公的な規制のことをおっしゃっているんだとすると、私は、やはり、先ほども申し上げましたように、社会福祉法人の非営利性とそれから公益性を担保するためには必要な規制や要件だと考えております。私の知っている社会福祉法人の多くは、そういった規制を受けながら、きっちりと地域で役割を果たしているという形をとっているというのが実態であります。

 ですので、もし先生が、手かせ足かせの問題で、やはり出口のことも考えないといけないということであれば、そのことは、実態をちゃんと調査するなり、そういう実態の把握をした上での議論ということになるかなというふうに考えます。

菊池参考人 先ほどの私の発言の中に触れていただきましたけれども、過去に家族でそうやって事業を支えた時期があったのは事実でございますが、大変そのときから時代も変わってきております。そのことを歴史的な事実として忘れてはならないことだというふうには思っておりますけれども、今の時代にそういった考え方が合うかどうかというと、必ずしもそうではないというふうに思っています。

 なぜかと申しますと、その当時から比べますと、制度もかなり充実しておりますし、そういった家族の犠牲を払わなくてもできるような状況になっているということでございます。ただ、過去の事実は事実としてやはりしっかりと受けとめた中で、今後を考えていくことも大事だろうというふうに思っております。

 それから、課税の問題でございますが、一部に、収支差額が出たら課税オーケーじゃないかと、非常に危険な発言をされる方がいらっしゃいます。ただ、収支差額に対してだけ課税されるのかというと、必ずしもそうではないというふうに理解しております。多分そこのことを御存じないから、安易におっしゃっているのではないかなと。

 これは介護保険導入時にもあったことでございますけれども、一部の介護事業関係者の中から、課税オーケーという話が非常に沸き立った時期がございました。ただし、今、それをおっしゃっていた方たちも、ほとんどそれはおっしゃらなくなりました。それは多分、課税の実態を御存じになったからではないかというふうに思っております。

 そういう意味からしますと、私は、あくまでも、社会福祉法人、それは公益性を徹底して守りながら、非課税の状況をある意味では堅持していきたい、ぜひそうお願いしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

茨木参考人 社会福祉法人は、やはり公益性というところで強い公的規制を受ける一方で、いろいろな支援の措置を受けてきた。それが、先ほど話が出ていたような非課税の問題であったりとか補助金であったりとかということだというふうに思います。

 そういう点でいうと、やはり社会福祉法人の制度というのは、歴史的に形成された、きちっと運営がされて、そして国と地方自治体の財政措置がきちっとされる中で運営されれば、日本がつくってきた特有の、非常に評価すべき制度だというふうに思っています。

 そういう点では、やはり社会福祉法人は非営利を徹底するべきだというふうに思いますし、出口論をまず語る前に、やはり今の営利が参入してきている実態をきっちりと見ていくべきではないかなというふうに思っています。

足立委員 ありがとうございます。

 菊池参考人の方から今、私も先ほど菊池参考人の言葉を引用しましたけれども、私、過去の経緯をしっかりとみんな心しておくということが本当に重要だと思っています。

 一方で、なぜこういうことを申し上げたかというと、社会福祉法人の中には、例えば保育園だけをやっていらっしゃる方、あるいは介護保険事業だけをやっていらっしゃる方もいらっしゃいますね。これも私が申し上げるまでもないですが、今、それぞれの制度が変わってくる中で、例えば保育の分野も営利企業が参入しています。それから介護保険もそうです。先ほども御紹介ありましたが、実際に営利企業がもう活動しているんですね。先ほど松原参考人の方からは、いや、それは供給量の確保や多様なニーズに応えるためであるという一応御説明をいただきましたが、実際に今そこでいるんですね。

 だから、そういう営利会社と、マーケット、まさに市場の中で混在をしていることをどう考え、処理したらいいか。磯参考人、松原参考人、まずはお二人から伺えればと思います。

磯参考人 二〇〇〇年の基礎構造改革以降、民間の参入がされました。しかしながら、現在も、利用者、処遇の困難な方等々に対しては、第一種、第二種というふうに区分けされておりますし、第二種に関しては民間が参入できるようになっておりますので、それ以上のことでもなく以下でもなく、この状況を当然保つべきではないかというふうに考えています。

松原参考人 同じ市場に非営利組織と営利組織が参入している状況をどのように考えるかということですが、先ほど申し上げましたように、そもそもこうした社会福祉事業、介護事業も保育事業も含めて、こうした事業に営利組織が入ってきた目的は、供給量の確保と充実と多様なニーズに応えるためでございますので、あくまでも非営利組織の考え方、理念で経営してもらわなければ困る、公的資金で賄われている事業である以上、そうした考え方、規律というのが必要だと考えております。

足立委員 ありがとうございます。

 今御紹介いただいたように、松原参考人はもうずっと公的資金ということを強調されていて、私も賛成ですが、先ほど紹介した保育の分野とか介護保険の分野で営利会社が活動している。彼らも公的資金ですね。同じですね、それは。

 すると、先生方、松原さんを初めとしておっしゃっているロジックを敷衍すると、今私が紹介したような営利会社は、規制で配当制限をすべきだということになると思いますが、それはどうお考えになりますか。松原参考人、お願いします。

松原参考人 今直ちにここで配当制限すべきとまでは申し上げませんけれども、まさにおっしゃるとおり、その事業のほとんどが、営利組織の行っている事業のほとんどが公的資金で賄われている場合であれば、それは、そういうことも検討の余地は十分あると考えております。

 ただ、一方で、営利法人は、多くの場合、いろいろ多角化しておりますから、この事業だけやっているというわけではありませんので、なかなかそういうことは現実的に難しいと思いますが、もし限定できるのであれば、社会福祉事業で得た事業これだけでと限定できるのであれば、そういったことも検討の余地は十分あると考えます。

足立委員 それぞれの、保育であれ介護であれ、活動されている方々、本当に皆さん一生懸命されている。きょうは菊池参考人の方から大阪の取り組みを御紹介いただいて、浦野理事はよく御存じで、いつも教えていただいているんですが、本当に、困難な状況があるからこそ一生懸命そういうふうに取り組んでこられている、そういう現場の思いみたいなものが、十分にこれからも国としてもお支えしていける体制が本当に重要だと思うんです。

 一方で、今我々が直面している制度的現状というのは、財団という話はよくわかりますが、そういう今申し上げたような異なる主体が、端的に言うと、医療なんかでは公共も一緒に競争しているわけですね。だから、さまざまな、違う、民間と公的な主体が競争していることをどうさばいていくかということが、これだけ規模が大きく、何兆円、何十兆円というマーケットの中で、本当にこれを整理していかなければ、持続というか、みんな混乱して大変だ、こう思っているわけです。

 最後に、もう三、四分ですが、この議論は尽きないわけでありますが、私は、政府の取り組みに対しては、全体としては理解をするが、若干受け身、守りの姿勢で全て対処していると。例えば医療制度改革、この後に医療法が出てくるんですが、医療も、株式会社の参入の議論があると、それから逃げるようにして、持ち分を否定する。そうですね。先生はよく御存じだと思います。それから、この分野も、内部留保を批判されると、こういう形になる。

 若干受け身になっているわけですが、私は、きょう先生方が御紹介くださったような現場の思いみたいなものを実現していく、もっと前向きの、本当にこの分野の制度はどうあるべきかという構想力を我々政治家も持たなあかん、こう思っています。

 最後に、ちょっとそういう観点から御意見、御見識を賜りたいと思うのは、松原参考人なんかは、よく昔、準市場ということで、財源は公だけれども活動主体はみんな民間なんだと。これが、日本の介護でもそうだし、医療でもその特徴だと思います。そうした意味で、民間の活力を導入しながらも公的な仕事をやっていく。

 その民間というときに、経営力、民間というのは必ず経営力に差があります。今回、制度的に地域公益事業義務化というようなことになっていますが、私は、必ず社会福祉法人にも、経営力のある法人と経営力のない法人とあると思います。経営力のない法人は、にわかに古い建物が、建てかえの必要はあるがお金がないという法人がたくさんあります、今、現場に。一方で、内部留保がたまってどうしようもない、行き場がないという法人、両方あります。経営力の差というのはあるんですね。これをどうやってこの社会福祉法人制度は解決するのかというのが、実は私はわからないんです。

 経営力のある者はどんどん拡大していきます。そうですね。経営力のないところはなかなか苦しい状況がずっと続きます。これを社会福祉法人制度がどういうふうに解決をしていくべきなのかについて、ちょっと時間が限られていますが、磯参考人、それから松原参考人、菊池参考人にもぜひお言葉、御見識をいただければと思います。

磯参考人 法人による規模と経営力というのは、そこのトップリーダー、経営者の力によって動いてくるものだろうと思います。

 実は、私どもの法人も、スタートのときはスタッフ八名からスタートをいたしまして、五十年経過をしておるわけであります。

 繰り返しになりますが、公益性、非営利性、そのことを担保して、国民の期待、負託に応えていくということに関しては、私自身は、最終目標地点、例えばガバナンス等々、そこのことは、小規模だからということで甘んじてはいけないなというふうに感じております。

 以上です。

松原参考人 例えば報酬とかというのも平均的な事業者を前提に設定されておりますので、足立議員おっしゃるように、決して、だめなところはずっと居続けるというわけではなくて、ちゃんと努力しなければ生きていけない状況になっているのではないか、そういう面は忘れてはいけないだろうと思っております。

菊池参考人 確かに、マンモス法人と非常に小さな零細法人と、たくさんございます。そこに経営力の差があるのは当然のことでございますが、ただ、一つだけ大切なことは、やはり、いかなる状況にあっても、存在する限りは、その法人のミッションというのは忘れてはならないなという気がしております。

 そういう意味からすると、公益性の担保をすることは、一つガバナンスとして大事なことだと思うんですが、実は今回も、評議員の設置の問題で、零細法人の方からいろいろ意見が出ております。それが一定の考慮をされる方向で、今、猶予期間をいただく方向でいっておりますけれども、そういったことについても、否定することではなくて、受け入れて、その地域とともに生きていく、零細法人であっても生きていく、そういう体制をつくっていく。そこで、地域の中から人材を求めて、そういった体制を整えていくことが大事ではないかなというふうに思っております。

足立委員 済みません、時間を超過しました。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 参考人の皆様には、本日はお忙しい中御出席を賜り、また貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私の方からも幾つか質疑をさせていただきたいと思いますけれども、時間も限りがございますので、全ての参考人の方にお伺いすることができないかもしれません。あらかじめ御容赦いただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 今回の法改正は、社会福祉法人の公益性、非営利性の確保を強化するという観点から、経営組織のガバナンスの強化、それから財務諸表の公表など事業運営の透明性の確保、内部留保の明確化など社会福祉法人制度の改革と、今後の高齢化の進展で不足が深刻化するだろうと言われている介護人材を中心とした福祉の人材確保、これを促進するというのが大きな二つの柱となっているわけでございます。

 このうちの社会福祉法人制度改革というのは、全般的に見て、どちらかといえば社会福祉法人にとっては受け身の改革で、その背景は何かといえば、先ほど来参考人からもお話がありますけれども、社会福祉法人の中でもごく一部の法人に不適切な運営が見られて、それが社会福祉法人全般にそのような印象が持たれてしまっている、そこを払拭する必要に迫られての改革というのが一つ大きな背景であると思います。

 今回の制度改革の対象となります社会福祉法人といっても、今全国で二万近くあって、やっている仕事もまちまち、さらに規模もさまざまという中で、特に小規模な法人からは、今回の改正が事業の継続に支障を来すことになるのではないかという不安の声も上がっております。そうした点も含めて、参考人の御意見を伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず初めに、今回の社会福祉法人制度改革の背景となった、ほんの一部の法人の不適切な運営、それが大きく国民から社会福祉法人全体の存在意義が問われてしまっているということに対して、やはりこれから、社会福祉法人としても、主体的にその役割などをしっかりと国民に理解していっていただく努力というものが求められてくるのではないかと思っております。

 こうした見地から、今、状況も変わりまして、福祉の分野にほかの主体も入ってきている中で、これからの社会福祉法人のあり方、社会福祉法人はどう変わっていくべきとお考えなのかということについて、これは磯参考人と、また、先駆的な地域での取り組みをされている菊池参考人、まずこの辺についてのお考えを伺えればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

磯参考人 御質問にお答えさせていただきます。

 当然、民間参入等々が入ってきておりますが、御存じのように、民間は利益第一優先ということでございます。

 そもそも、今現在ある多くの制度というのは、本来、制度があって事業が始まったということではなく、やはり地域の中でのニーズを拾っていくことによって、制度のあるなしにかかわらず、ニーズに対応してきた、そのことが結局、制度になってきたということでございます。

 そういった意味からは、社会福祉法人としては、社会福祉事業の主たる担い手としての役割と、さまざまな困難なケースに対応していくというのが本来の目的であると思います。

 だから、制度がある、ない、そして利益が出る、出ないということ以前の話であろうと思います。

菊池参考人 先ほど私ども大阪の事例を御紹介させていただきました。十分な説明の時間がなくて、資料を見ていただくだけにとどまったんですけれども、その事業の取り組みの中で、我々がある覚悟をしていることがございます。それは、先ほど磯会長の方からもお話があったように、やはり、過去の歴史の中で、先駆的な取り組みが制度に変わっていった。多分、それはこれからも変わらないんだろうなという気がしておりまして、私どもが今やっておりますオール大阪の社会貢献事業、これが次なる制度に結びついていくことができればいいなという願いを持っております。

 ただ、それがまた制度に変わっていったときに、また新たなはざま、すき間が生まれてくる。では、それをまた、我々の団体で取り組んでいって、対応していく。そして、それが社会全体に定着したときに、また制度に変わっていく。これの繰り返しではないかなというふうに認識しております。

角田委員 ありがとうございました。

 それでは、今回の改正の具体的な中身についてお考えを伺っていきたいと思うんです。

 今回の社会福祉法人の経営組織のガバナンスの強化ということについて、親族等、特殊関係者の理事等への選任を制限する、一定規模以上の法人への会計監査の導入など、改革が盛り込まれております。

 経営組織に関する規定は、昭和二十六年の制度の創設以来の大きな見直しということになると思いますが、この背景として、先ほど言いました、社会福祉法人の役員による公私混同、また、法人の私物化といった、一部の、本来の目的から逸脱する行為に対する批判というものが非常に強くあったということがあります。

 幾つかの社会福祉法人の理事長さんや理事の方からお話を伺う中でも、一部の不心得な法人のせいで社会福祉法人全てがそのような目で見られることは非常に心外である、多くの社会福祉法人は真面目に、使命感を持って仕事をしている、不心得な法人がいなくなるよう、そのための改革ならば結構なことだというようなお話も伺いました。もとより、多くの法人というのは、使命感を持って地域の福祉に取り組んでこられたし、また、これからも取り組んでいかれようとしていると思います。

 本来だったらば、このような改革というものも必要ないのではないかというふうにも思いますけれども、ただ、一方で、今言ったように、一部にそういうようなことが見られることから、今回、内部統制が働くような改正が行われるということになった。このガバナンスの強化ということに対する評価、どのように受けとめていらっしゃるかということを、参考人の皆様全てに御意見を伺いたいと思います。

 ただ、その中で、特に今回、評議員会の必置ということが盛り込まれました。評議員会を、現行、任意で設置の諮問機関としての場、これからは、牽制機能を持たせるような、がらっと性格を変えた、そして、しかも、全て置かなければいけないというふうに変更が加えられたわけでございます。

 本来、評議員会というのは、ある意味、地域のニーズを酌み上げたりとか、また、利用者さんの声を酌み上げて、できるだけきめの細かなサービス、また、ニーズに合ったサービスを提供するための一つの機関であったというふうに思うんですけれども、こうした評議員会の性格が変わるということで、特に福祉の分野というのは機動的に対応しなければいけない部分というのが非常に多いと思っておりまして、そうしたことを逆に今回の改正が阻害するのではないか、そういった懸念の声も聞かれております。

 また、例えば、私のすぐ近くの社会福祉法人の評議員さんは、法人のすぐ裏のお米屋さんのおかみさんがやっているんですね。PTAの役もやっていて、やはり地域の声をいかにつなげていくか、そういう役割を今果たしているわけですけれども、今回の、評議員会の性格が変わるということで、そういったメンバーも見直さなければいけないのではないか。

 特に、評議員会を今置いていない規模の小さい法人等にとっては、そうした評議員にふさわしい人の確保であるとか人選、これがまた一つの大きな負担になってくるということも考えられます。一定規模以下の法人については経過措置が設けられてはおりますけれども、法人任せだけで適格者を選ぶことができなければ、制度改正の目的である牽制機能ということの発揮もおぼつかないということになろうかというふうにも思っております。

 こうしたことに対して、国、地方においても法人の負担をできるだけ軽減するための支援等も考えなければいけないかと思いますけれども、この点も含めて、今回の内部統制の強化ということについてどのように評価をされているか、また注文等があればお伺いをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

磯参考人 簡単に、先ほどと重複する話でありますけれども、まず、基本的には社会福祉法人は公益法人の一つであるということ、そして、今回のガバナンスの強化によって社会福祉法人の公益性そして非営利性を担保していくとともに、自律的な組織を目指し、今薄らいでいる国民の信頼、そして抱かれている誤解というものをしっかりと払拭していくべきだというふうに考えております。

 ただし、小規模法人に関しては、先生おっしゃられたように、経過的な措置というものは、猶予というものは必要だろうというふうに考えております。

松原参考人 世間並みにするというだけのことですので、今回のことは社会的に必要なコストと捉えていただいて、大変だとは思います、やっていなかった部分、大変だと思いますけれども、ぜひ前向きに捉えてやっていただきたいと思っております。

 あと、評議員がなかなか見つからないというお話も聞きますけれども、本当にその地域で、地域に密着して福祉サービスに従事していれば、あそこを手伝いたいと心から思う人はいると思うんですね。そういう意味でも、評議員が見つからないということもそんなにないのではないかなと考えております。

 当然、小規模法人については弾力的な運用というのが求められると思います。

赤松参考人 私は、小規模の法人にとっては、そしてなおかつ郡部にあるようなところは、評議員を集めるのは相当苦労すると思います。こういった実態をやはりしっかり見た上で議論が必要だというのが一点。

 それから、今回のガバナンスの議論に関しては、確かに公益法人改革という到達があるので、そちらに合わせるということだと思うんですが、社会福祉法人の特性というものがやはりあると思います。

 私どもの会員の中にも、ガバナンスやらあるいは透明性の確保なんかでさまざまに独自の努力をしているところもあるわけでありまして、そういった取り組みに関する調査なんかも、やはり私は、本当は実態を把握するということがこの議論の前提として必要だったんだろう、そういった実態を踏まえた上で、公益法人改革の制度なども参考にしながら、公益性と非営利性を担保する観点から今回ガバナンスを見直す、こういったプロセスが必要だったと思うんですが、少し機械的に公益法人に合わせている、そんな印象を持っております。

菊池参考人 ガバナンスの強化については、公益法人である限り、もっともなことではないかなというふうに思っております。

 実は、公益法人制度改革の議論が始まったのは十九年ぐらいでしたでしょうか、そのときに、私個人が何となく感触として思っておりましたのは、公益性の高いと言われる社会福祉法人よりも、その他の公益法人の方が先に行ってしまった、ガバナンスが非常に高いものを要求されたということを考えますと、いずれこれは社会福祉法人に及ぶものだというふうに何となく思っておりました。それが今日に至ったということでございます。

 我々が公益性の高い法人であることを世間に向けて言うのであれば、これはやはり受けとめていくべきテーマだろうというふうに思っております。

 ただ、皆さんおっしゃっておるように、零細な法人については、それなりの配慮はやはりしていただきたい。なぜかと申しますと、そういったところもきちっとその体制をつくれるようにしていくためには、ある一定の配慮が必要だろうというふうに思っております。

 それから、人材が確保できないじゃないかということですが、実は私どもも、非常に小さい規模であったときに、今もそんなに大きな規模ではないんですが、一施設をやっていたときに、ある小さな事業を始めたことをきっかけに、評議員会の設置を求められたことがございました。そのとき、だけれども、その気になって、地域の方々、基本的に施設は地域の住民の方々と結びつきがございますので、その地域のいろいろな役をしておられる方々とかにお願いをすることによって、逆に評議員会設置によって地域の支援者がふえたように、私は自信を持ってお話をすることができます。

 以上でございます。

茨木参考人 まず、評議員会に関しては、僕は、先ほどもちょっと申したんですけれども、これまでの役割とちょっと違う、決議機関ということで、しかも今回、理事、評議員、監事、それから会計監査人には損害賠償責任という、こういうことも今回の法案に入っております。そういう点でいうと、やはり、もっとしっかりと議論をして、どんな組織が必要なのかということを議論するべきだろうというふうに思います。

 それと、先ほど言いましたけれども、地域の声であるとか保護者の皆さんの声とかをどこで把握するのかというところで、具体的には、例えば地域協議会というようなものをつくるんだというようなことも言われておりますが、そんなにたくさん、評議員会をつくって、地域協議会をつくって、運営委員会というのも出てきていますが、そんなに委員会をいっぱいつくってどうやってまとめていくのかというふうに思います。

 そういう意味では、もっとシンプルに、今の社会福祉法人制度のあり方をめぐって、公益性を徹底するという視点で、ガバナンスを高めるというのは、それはそのとおりだというふうに思いますので、あるべき制度というか形をつくっていくべきだというふうに思っております。

角田委員 続いて、内部留保の明確化ということに関してお伺いしたいと思います。

 事業の継続に必要な最低限の財産を差っ引いて、余裕財産が実際にどれだけあるのか、それらを明らかにしよう、その上で余裕部分を社会福祉事業、地域公益事業、その他公益事業に使ってもらおうという趣旨ですけれども、この際、事業継続に必要な最低限の財産をどう見るのかが、極めて法人の経営についても大きな影響を与えてくることになると思います。

 先ほども言いましたように、社会福祉法人、二万近くあって、やっている仕事もさまざまで、規模もさまざま、そうした中で、具体的なことについては制度実施までの間に検討、整理するということにされておりまして、現状では具体的なたたき台すらもないので議論もできないんですけれども、これはやはり本当に丁寧な検討というものが不可欠であろうかと思います。

 これについて、磯参考人と松原参考人にお伺いをしたいと思いますけれども、特にこういったところに留意してほしい、また留意しなければならないといったことがあれば、お考えをお伺いさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

磯参考人 冒頭のプレゼンテーションのときにもお話をさせていただきましたが、今、基本設計図ができているという状況でございますので、実施設計、詳細を詰めていくときには、法人理念を尊重しつつ、社会福祉法人の主体性、自立性を損なわないようなものへと考えていただきたいというふうに思っております。

松原参考人 必要な内部留保の計算、それに関しましては、施設事業にとって、施設が建てかえられなければ安定継続できませんので、ぜひとも施設建てかえに必要な内部留保を確保できるように、具体的には、借金を返済するのに利益が必要ですので、そういった借金返済のための利益とか、あと、建物を四十年後に建てかえるときに、同じものというのはあり得ませんので、インフレも起こりますし、アメニティーも向上しますし、そういった部分に対応できる分、また、大規模修繕費用分、そして補助金比率はどんどん下がっていますので、その補助金比率削減にも対応する分、こういった点をぜひ考慮いただきたいと思います。

角田委員 時間があれですので、あともう一点、退職手当共済制度の見直しということについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これは、職場への定着促進を図ろうという観点から、長期加入の職員の方の支給乗率の引き上げということと、それから、出産等の理由で一時、退職金を受け取らずに退職した方が、これまで二年以内に職場に復帰をすればそれが合算をされていたわけですけれども、それを、利用が少ないということで三年に延長をするということが、その対応として今回の改正でとられているわけですけれども、これの効果についてはどのようにごらんになっているかということで、時間がないので磯参考人にお伺いしたいと思います。

磯参考人 今回のこの障害の手当に関しては、全国経営協としては、国の財政状況というものを考え、今回の変更について二つのことを申し上げました。詳しく言うと三つあるんですが。

 一点は、この制度を今後もしっかりと存続させていってほしいということでございます。そして二点目は、既存職員の期待利益は必ず守っていただきたい旨の要望をしてまいりました。

 この廃止に当たっては、当然、障害者施設への影響は多少なりとも出てくるかと思われますけれども、当初私どもが要望しておりました、加入者に対する公費助成を維持されるというふうに承知をしております。

 改正が通った後は、法人運営に大きな影響を与えないように、経営実態等を把握した上で、適切に障害者福祉サービスの報酬改定をやはり行っていただきたいというふうに考えております。

角田委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

渡辺委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 きょうは皆さん、本当に貴重な御意見ありがとうございます。時間も限られていますので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 初めに、松原参考人にお聞きしたいと思います。

 私は、一昨日、この委員会で、社会福祉法人におけるいわゆる内部留保の定義についてお聞きをしましたら、最初の答弁は、貸借対照表上の純資産の額を一番広い内部留保と捉えるんだというものでありました。しかし、参考人もいろいろなところで指摘されているように、内部留保というのは、そもそもは利益剰余金をベースにして、捉えようによってはさまざまな要素を加えていくこともあるんだということでありますが、ですから、私、ちょっとそれはおかしいんじゃないかと問いただしまして、その次の答弁は、社会福祉法人が事業継続に必要な額とそれ以外の額が明らかにできるような基準というものを法制上つくろうというのが今回の法案だという答弁でありました。

 つまり、もうこれは内部留保と関係のない話ではないか。きょうも参考人のお話で、利益としては計上せざるを得ないけれども、実質はコストなんだというお話でありました。社会福祉法人における内部留保という定義は結局はっきりしないというふうに思うわけですが、この点いかがでしょうか。

松原参考人 社会福祉法人の内部留保をどのように定義するかということについては、計算方法も含めて、今、担当所轄庁が検討しているところと伺っております。

 ちまたで言われている内部留保というのは、先ほど申し上げましたように、BSの貸方の利益剰余金を指して内部留保と一般に言われております。それで、これが過大だ、過大だと。特養や社福だけではなくて、営利企業に対しても過大だと言われているわけですけれども、この利益剰余金というのは、過大だと言われて、使えと言われて、幾ら使ってもここは減っていかないわけですよね。減っていかない部分を内部留保と捉えて、過大だとか活用しろというのは、これはナンセンスではないか。

 そうすると、では、どこを捉えるべきかというと、内部留保のそもそも経営上の意義は何だと考えますと、それは将来事業に対する備えなんですね。備えということは、既に使っちゃっていては困るので、まだ使っていないものということで、借方側にある換金性資産、こちらが実在している内部留保。

 もし過大だとか活用しろという議論であれば、実在している内部留保を捉えて議論をしていくべきだろうと考えております。

堀内(照)委員 この内部留保論については、茨木参考人にもお聞きしたいと思います。

 大キャンペーンがあって、吐き出せということで、バッシングもひどかったわけですが、この問題を経営者の立場からどう捉えておられるのか、お聞かせください。

茨木参考人 いわゆる内部留保というのが発端になってこの社会福祉法人制度改革が軌道に乗ったというふうに思っております。つまり、何かこの内部留保問題が、バッシングをする上での一つの大きな柱としてそもそも考えられていたんじゃないかなと思われるぐらいのタイミングで出されてきたというふうに思っております。

 ちょうど、社会福祉法人のあり方検討会が発足して、そのまとめが出たのが昨年ですけれども、前後してすごくマスコミの間で、社会福祉法人はもうけ過ぎているとか、理事長が暴走しているであるとか、いろいろな報道がされました。最近では、一部、あの報道は間違いでしたと謝っている新聞もあるんですね。それぐらいの報道がされる中で、社会福祉法人はもうけ過ぎている、あくどいことをしているということがまるで空気のように伝わってしまった。

 ところが、実際、きょう皆さんがお話をしていますように、多くの社会福祉法人は、本当に真面目にこつこつと仕事をしている。一部社会福祉法人の不正があるのなら、それは行政の指導監査できっちりと正したらいいだけの話で、こんな大きな法制度の改革にしなくてもいいというふうに思っております。

 そういう意味では、内部留保問題というのは、今回の社会福祉法人制度改革を進める上での一つのきっかけではなくて、何か目的的に使われたのではないかというふうに思っております。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 赤松参考人にお聞きしたいと思います。

 今回の法案二十四条第二項で、全ての社会福祉法人にいわゆる社会貢献の事業をすることを努力義務として課しております。国は、義務づけではなくてあくまで努力義務だということでありますけれども、この問題についてです。

 きょうもいろいろな方から、国から言われるまでもなくやっているんだというお話でありましたが、一つは、そもそも社会福祉法人の本旨というのは社会福祉事業であって、公益事業というのは「社会福祉事業に支障がない限り、」とされていました。

 それが、これも一昨日の私の質疑の中で大臣の答弁では、社会福祉法に列挙されている社会福祉事業のほか、地域の幅広い福祉ニーズに対応する公益事業を行う法人として社会福祉法に位置づけられていると。何か、いつの間にか、公益事業もやっても当然だと言わんばかりのことで、非常に違和感を感じるんだという意見が私の事務所にも届いたわけですが、一点、これをどう考えるのか。

 それからもう一点は、努力義務とはいえ、そういうことを法的に位置づけることについての影響や懸念についてお聞かせいただけたらと思います。

赤松参考人 本当に地域のニーズというのは多様化して、困っている人がふえている、困難を抱えている人がふえている、この現実はもう明らかに我々も直視をする必要があると思っております。

 それにどう対応するかという話で、今回、責務規定ということになったわけですけれども、基本的には、こうした対応、先生おっしゃるように、社会福祉法人の側から申し上げますと、報酬は本来事業に対しての報酬ですから、この報酬に関しては本来事業について使うというのが筋である、そのためのものであるということがまず第一点。

 そして、やはりこういった責務規定を置くということは、この社会福祉のニーズに対して、社会福祉法人がこれを公にかわってやりなさい、社会福祉法人に肩がわりをさせるんだという形をどうしてもつくり出してしまう、そういう仕組みだということが一点。

 そして最後に、結果的にそのことが、本来、公で対応する必要のある、対応するべきであるそうした新しいニーズに対する制度、これをつくり上げることの道を阻むことになるんだというふうに考えておりますので、私どもは、この社会貢献の責務規定そのものが不要なんだというふうに思っております。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 次も赤松参考人と、あと茨木参考人にお伺いしたいと思います。

 社会福祉充実残額の算出について、一昨日の委員会では、事業の内容、規模、さまざまなので、そういった運営の実態をきちんと反映させた形で基準をつくってまいりたいという答弁でありました。しかし、千差万別の事業所の実態をどこまで反映させることができるのか、そして、一たびできた基準で一律に線引きをされるということになると、事業所の運営にも大変支障があるのではないかと私は懸念を持つわけですが、この点、残額の算出のあり方、意見があればお聞かせいただきたいと思います。

赤松参考人 御質問ありがとうございます。赤松です。

 そもそも、実態を把握するための基準をつくるんだというところが私は出発点として逆だというふうに思っておりまして、実態をまず把握してから法改正の必要性を確かめるべきだというふうに考えておりますので、そういう意味では、まず前提として、実態把握をするために法改正を行うという、このことそのものが立法事実がないことを証明しているんだというふうに考えている点が一点。

 それから、やはり社会福祉法人も規模によって経営実態も相当違いますので、先生おっしゃるように、一律の基準をつくるというのはかなり困難じゃないかというふうに考えております。

 したがいまして、基準をつくるに当たっても、基準をつくるためにも、先ほどから申し上げている、今の本当にやっている経営の実態の調査、公に行政による調査が基本にないと、基準づくりにも、本当にいい基準ができないというふうに考えております。

茨木参考人 先ほど来の話の中で、社会福祉充実残額という今回ネーミングになったわけですけれども、実際に社会福祉充実残額なるものが残るのか残らないのか、それもわからないという議論の中で、それを使って地域公益活動をやりなさいという非常にむちゃな議論がされているというふうに思っております。

 そういう点でいうと、社会福祉法人は、社会福祉事業を行うための報酬単価なり公定価格なりを得て、それを本体の事業のために使っているわけですから、当然、その残額なるものは、先ほども言いましたが、将来の社会福祉事業であったり、利用者さんのために、労働者の処遇のために使うのが本旨であって、社会福祉充実残額という概念そのものが私はおかしいというふうに思っております。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 次も、赤松参考人、茨木参考人、お二人にお聞きしたいと思います。

 そもそも、実態として、今もありましたけれども、社会福祉充実残額が生じるような経営、財務状況なのかということで、人手不足、労働者の処遇という点でも、また利用者の暮らしや人権を守るという点でも、本当にぎりぎりのところで踏ん張っておられると思うんですね。

 先日、私の部屋にある方が、重度の障害を持つ娘さんを預けておられる方が施設のことで訴えられていまして、お風呂も週に三日ほどだ、外出も月に一回、二時間ほどだ、これが本当に人間らしい生活と呼べるんでしょうかという訴えでありました。

 今の報酬のあり方でも決して十分ではないと思うわけですが、そうした利用者の実態や労働者の実態も含めて、少しそういう御意見があればお聞かせいただきたいと思っています。

赤松参考人 報酬の低さ、水準の不十分さに関しては先ほども指摘をさせていただいたところですが、本当に、如実にあらわれるのは、支援職員の給与水準、これと全産業との比較での非常に極めて低い水準だということであります。

 報酬の水準が問題だということになると、一方で、議論としては、それは報酬の水準の問題ではなくて労使の問題だから、労使で解決するべき議論じゃないかというような御意見をいただくことがあるんですが、事業の原資である報酬そのものが十分でない中で、労使で解決しようがないことがいっぱいあるというのがまず一点であります。

 それから、報酬が低いから、いろいろな加算制度をつくることで、報酬はこれでいけるんじゃないか、こういった御議論もあるわけですが、私は、やはりこれは基本報酬を抜本的に見直すべきだというふうに考えております。

 加算というのは、一つ一つ要件を設定して、これをとることで加算が加わる、加わるということになりますが、事務量がどんどんふえていくということとあわせて、そもそも加算方式というのが、ある意味の成果主義、こういうことを達成したから御褒美として加算を上げるよという発想なわけでありますね。

 しかし、こういう社会福祉の分野で、人の命やあるいは健康やらそういったものを預かっている我々としては、そういった成果主義の発想をこういった分野に持ち込むということに非常な違和感を感じております。そういった加算主義ではなくて、報酬本体を抜本的に引き上げること、このことが今本当に必要なんだというふうに思っております。

 以上です。

茨木参考人 そもそも報酬単価がどういう水準で決定をされているのか、その辺が非常にわからない、不透明であるということがまず問題だというふうに思います。

 今回、報酬改定をされましたが、報酬単価の設定に当たっては経営実態調査に基づいて決まる、そういう仕組みなわけですね。

 こういう数字があります。これは厚労省の通所介護のデータですが、社会福祉法人の収支差率が九・九%、営利法人が一二・九%です。経営実態調査は営利法人もカウントして決めますから、その分、収支差率は高くなるんですね。ところが、実際は、社会福祉法人はそんなに収支差率は高くない。私の組織の同友会でも、収支差率は本当に低いものです。

 そういう点では、必要なサービス水準、必要な人件費の水準がちゃんと算定されて、それで報酬単価がちゃんと決定されているのか、そこの問題を明らかにしない限り、何か恣意的に報酬単価を上げ下げするだけでこれは済む問題ではないというふうに思っております。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 菊池参考人にお伺いしたいと思います。

 大阪での実践は、お話にもありましたように、全国でも同様の事業が進められるなど手本にもなっておりまして、私もきょうお伺いしまして、社会福祉法人の自主的な取り組みとして本当に貴重な努力なんだろうというふうにお聞きしました。

 全社協、社会福祉法人全国社会福祉協議会の政策委員会がその実績をまとめられたものを読ませていただきました。実践事例集ですね。

 今後の課題ということで書かれているんですが、一つは埼玉で、「制度の狭間にある方に寄り添い、支援をしていく役割を担っている。しかし、制度の穴を埋め続けるのではなく、そもそも制度やその運用が不十分なために、サービスを受けられずに困っている人がいるという現実に対して声をあげる必要がある。」と指摘をしております。

 大阪の事例の中でも、「「制度の狭間」や支援を必要とする人びとの「声なき声」をそのままにせず、調査・研究・分析し、政策提言へとつなげていくことが求められている。」「地方から国の制度や社会のあり方を変えていくダイナミックな事業展開が期待できる。」と記されております。

 はざまをはざまのままにしておくのではなくて、制度化していく、公的な支援を強めていく、そのことでこういった社会福祉法人の努力がさらに豊かになるというふうに私は考えるんですが、いかがでしょうか。

菊池参考人 先ほどの御質問ともちょっと重なるところがあろうかと思いますけれども、この取り組みについては、私どもには一定の、ある覚悟といいますか思いがあると申し上げました。

 今、実は、埼玉、東京、神奈川、大阪と、ずっとこの件に関しての連絡会を持っておりまして、絶えず情報交換をして、それでお互いに刺激を与え合って次を目指していくような状況ができておるわけですけれども、その中でもいつもそういったお話が議論の中に出てまいります。

 先ほども申し上げましたように、私どもは決して、いつまでもその制度と制度のはざまを放置しておくのは必ずしもいいことだとは思っておりません。ただ、それが制度化されるまでの間、では誰がやるのかという話になってきたときに、それは多分我々しかいないのではないかという自負を持っております。

 そういう意味で、これも先ほど申し上げた話ですが、これまでも、社会福祉法人、それからもっとさかのぼれば慈善事業家と言われたとき、社会事業家と言われた時代もございましたが、そういったときも、先達が一生懸命、社会に目を向けて、そういった生活課題を解決していった後に制度ができ上がった歴史がある。それは多分今もそうですし、今後も同じことの繰り返しになるのではないかなということを痛切に思っております。

 そういう意味では、我々仲間と一緒に取り組むことが早く制度化されることによって、その方たちが救われる社会が来ればいいなと。ただし、制度になれば、またかたくななものになってしまわざるを得ない、またすき間が生まれる、それの繰り返しだろうなというふうに感じております。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 最後に、茨木参考人にお聞きしたいと思います。

 今の話とも関連しますが、既に、国から言われるまでもなくそういう事業をやっている、しかし、そういうことを法律で縛ってしまうということで、私は取り組みの性格が変わってしまうんじゃないかという懸念もあるわけであります。

 その点について、これからの社会福祉法人に求められていることとあわせてお答えいただけたらと思っております。

茨木参考人 ありがとうございます。

 今回、社会福祉法人にスポットが当たった制度改革になっていますが、私は、やはり本来的には、社会福祉事業がどうあるべきかという議論がもっとされなければならないというふうに思っています。その中で、社会福祉法人の役割はということをきっちりと議論することが必要ではないかというふうに思っています。

 最初に述べさせていただきましたように、私たちの仕事は、憲法二十五条、生存権に基づいて、利用者の皆さん、国民の皆さんの人権と暮らしを守る、支援する、それが私たちの仕事の本旨です。ですから、ここまでが本体事業で、ここからが地域公益ですよ、ここからが社会貢献ですよという分け隔てができない今の国民の皆さんの暮らしの実態があるというふうに思っています。そういう意味では、社会福祉法人はその先頭に立って、公益性、非営利性を徹底しながら、私たちは事業を進めていかなければならないというふうに考えております。

 私は、きょう一人でここに立たせてもらっていますが、多くの現場で働いている労働者の皆さん、それから保育園の子供たち、障害の施設、作業所の皆さん、高齢者の皆さんが私の後押しをしていただいているというふうに思っております。

 ぜひ、拙速な議論はやめて、今回の社会福祉法人改革法案については十分な審議をして、納得できるまで話を進めていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 時間の関係で磯参考人には質問できなかったことをお許しください。

 以上で終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る十五日水曜日午前八時三十分理事会、午前八時四十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十八分散会


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