衆議院

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第3号 平成28年3月9日(水曜日)

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平成二十八年三月九日(水曜日)

    午前九時七分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江渡 聡徳君

   理事 小松  裕君 理事 後藤 茂之君

   理事 白須賀貴樹君 理事 初鹿 明博君

   理事 山尾志桜里君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    井上 貴博君

      大串 正樹君    大西 宏幸君

      金子万寿夫君    木村 弥生君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    田村 憲久君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      中川 俊直君    永岡 桂子君

      長尾  敬君    長坂 康正君

      丹羽 秀樹君    丹羽 雄哉君

      比嘉奈津美君    福山  守君

      堀内 詔子君    牧原 秀樹君

      松本  純君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      中島 克仁君    西村智奈美君

      柚木 道義君    伊佐 進一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      浦野 靖人君    重徳 和彦君

    …………………………………

   議員           山尾志桜里君

   議員           初鹿 明博君

   議員           高橋千鶴子君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   内閣府副大臣       高鳥 修一君

   厚生労働副大臣      竹内  譲君

   厚生労働副大臣    とかしきなおみ君

   厚生労働大臣政務官    三ッ林裕巳君

   厚生労働大臣政務官    太田 房江君

   国土交通大臣政務官    津島  淳君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長) 木下 賢志君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        中島  誠君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        小野田 壮君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 掛江浩一郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 内藤 尚志君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       香取 照幸君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         潮崎 俊也君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  松野 頼久君     井坂 信彦君

三月九日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     長坂 康正君

  木村 弥生君     大西 宏幸君

  田畑 裕明君     金子万寿夫君

  高橋ひなこ君     井上 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     高橋ひなこ君

  大西 宏幸君     木村 弥生君

  金子万寿夫君     田畑 裕明君

  長坂 康正君     大串 正樹君

    ―――――――――――――

三月八日

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中島克仁君外八名提出、衆法第一二号)

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

同月三日

 介護報酬の緊急再改定に関する請願(岸本周平君紹介)(第五三四号)

 保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(牧義夫君紹介)(第五三五号)

 同(志位和夫君紹介)(第五四五号)

 同(近藤昭一君紹介)(第五九八号)

 同(田嶋要君紹介)(第五九九号)

 新たな患者負担増をやめ、窓口負担の大幅軽減を求めることに関する請願(堀内照文君紹介)(第五三六号)

 じん肺とアスベスト被害根絶を求めることに関する請願(吉川元君紹介)(第五六七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五七七号)

 同(池内さおり君紹介)(第五七八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第五七九号)

 同(大平喜信君紹介)(第五八〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第五八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五八二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第五八三号)

 同(志位和夫君紹介)(第五八四号)

 同(清水忠史君紹介)(第五八五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五八六号)

 同(島津幸広君紹介)(第五八七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第五八八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五八九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第五九〇号)

 同(畠山和也君紹介)(第五九一号)

 同(藤野保史君紹介)(第五九二号)

 同(堀内照文君紹介)(第五九三号)

 同(真島省三君紹介)(第五九四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五九五号)

 同(宮本徹君紹介)(第五九六号)

 同(本村伸子君紹介)(第五九七号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現を求めることに関する請願(真島省三君紹介)(第七二八号)

 若い人も高齢者も安心できる年金を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第七二九号)

同月九日

 社会保障費の大幅な削減を中止し、保育、医療、介護、年金などの拡充を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七六八号)

 同(池内さおり君紹介)(第七六九号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第七七〇号)

 同(大平喜信君紹介)(第七七一号)

 同(笠井亮君紹介)(第七七二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七七三号)

 同(斉藤和子君紹介)(第七七四号)

 同(志位和夫君紹介)(第七七五号)

 同(清水忠史君紹介)(第七七六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七七七号)

 同(島津幸広君紹介)(第七七八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七七九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七八〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第七八一号)

 同(畠山和也君紹介)(第七八二号)

 同(藤野保史君紹介)(第七八三号)

 同(堀内照文君紹介)(第七八四号)

 同(真島省三君紹介)(第七八五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七八六号)

 同(宮本徹君紹介)(第七八七号)

 同(本村伸子君紹介)(第七八八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八三〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八三一号)

 食品衛生監視員を大幅にふやすことに関する請願(斉藤和子君紹介)(第七八九号)

 同(堀内照文君紹介)(第七九〇号)

 保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(重徳和彦君紹介)(第七九一号)

 同(篠原孝君紹介)(第七九二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八二八号)

 同(松本剛明君紹介)(第八二九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八七三号)

 社会保障制度改革に関する請願(階猛君紹介)(第八二二号)

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第八二三号)

 労働時間と解雇の規制強化に関する請願(池内さおり君紹介)(第八二四号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第八二五号)

 じん肺とアスベスト被害根絶を求めることに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第八二六号)

 安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員に関する請願(志位和夫君紹介)(第八二七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中島克仁君外八名提出、衆法第一二号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長木下賢志君、内閣府子ども・子育て本部審議官中島誠君、子ども・子育て本部審議官小野田壮君、警察庁長官官房審議官掛江浩一郎君、総務省大臣官房審議官内藤尚志君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長香取照幸君、社会・援護局長石井淳子君、老健局長三浦公嗣君、年金局長鈴木俊彦君、国土交通省大臣官房技術審議官潮崎俊也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島克仁君。

中島委員 民主党の中島克仁です。

 今国会も厚生労働委員会に所属することができました。大変うれしく思っておるところでございますので、どうかよろしくお願いしたいというふうに思います。

 本日は、大臣所信に対する質疑ということで質問させていただきたいと思うわけですが、私からは、予算委員会でも質問させていただきました介護離職ゼロについて、また、昨年、介護報酬の改定が行われました、大幅なマイナス改定だったと思いますが、それに対する事業所への影響、また処遇改善加算もとられたわけですが、その取得状況等について質問させていただきたいというふうに思います。

 大臣は、所信の中でも、一億総活躍社会への挑戦と題して、その決意を述べられておられました。先ほども申し上げたように、予算委員会でも、介護離職ゼロ、一体いつまでに実現するつもりなのかという質問に対しては、この春に取りまとめられる予定のニッポン一億総活躍プランの中で十年間のロードマップ策定をしていく、そして、一億総活躍大臣の加藤大臣とも連携をして、介護離職ゼロに向けて取り組んでいくというふうにおっしゃっておりました。

 確認ですが、十年をめどに介護離職はゼロにするということでよろしいのかどうか。

塩崎国務大臣 介護離職ゼロは、二〇二〇年代の初頭までに、介護を原因とした離職を防いで、特別養護老人ホームへの入所を希望しながら自宅待機をせざるを得ない方をなくすなどの一億総活躍社会の実現のための重要な施策の柱として、この介護離職ゼロというのを掲げているわけでございます。

 その実現に向けて、必要な介護サービスの確保と働く環境改善、家族支援を両輪として進めるということとしておりまして、具体的には、在宅・施設サービスやサービスつき高齢者向け住宅を合計で十二万人分当初の予定より整備量を上積みして、約五十万人分とする。それから、求められる介護サービスを提供するために必要な介護人材、これについても育成、確保を図る。それから、昨日審議入りをさせていただきました育児・介護休業法の改正において、介護休業が活用しやすくなるように制度見直しを行うということにしておりまして、補正予算、そしてまた来年度の予算案に必要な措置を盛り込んだところであります。

 このロードマップについては、今お話がございましたが、ニッポン一億総活躍プラン、この春にまとめるわけでありますけれども、より広範な観点から一億総活躍社会実現に向けたしっかりとした道筋を取りまとめようということでございまして、十年間のロードマップを策定するということとなっていると承知をしておりまして、加藤大臣ともよく連携をして、介護離職ゼロの実現に向けてしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

中島委員 新三本の矢の一つに介護離職ゼロとはっきりうたってあるわけですよね。十年のロードマップと言いますが、その十年の根拠は何なのか、そして取り組み状況というのはどうやって判断していくのか、私は大変疑問に思うわけです。

 もちろん、介護離職の問題が大変重要な課題だということは十分承知しております。ただ、この問題は大変根が深いです。介護離職そのもの、これを何とかしなきゃいけないということについて共有はできていると私は思うわけですが、やはり、大看板で介護離職ゼロとはっきりうたっていて、十年のロードマップで本当に実現できるのかどうか。そういう部分も含めて、介護離職ゼロということに対して大臣がどのように認識をされ、厚生労働省として今現在どのように把握しているのかということを、基本的なところからちょっとお尋ねをしたいと思います。

 これは総務省のデータで、資料の二枚目になりますが、家族の介護、看護を理由とする離職者数の推移というもの、これはたびたび目にするわけですが、基本的な認識として、介護離職される方は実際にふえているのか減っているのか、大臣はどのように考えられているのか、お答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 先生から今お配りをいただきましたけれども、平成二十四年就業構造基本調査、これは総務省でございますけれども、これによりますと、直近の平成二十三年十月から平成二十四年九月まででは、家族の介護、看護を理由とする離職者は約十・一万人となっておりまして、過去十年を見ると、平成十八年十月から平成十九年九月には十四・五万人となるなど、年によってばらつきが若干ございますけれども、大体八万人から十万人で推移をしてきているというのが、介護、看護を理由とする離職者の数だという認識でございます。

中島委員 ふえているかふえていないか、大体八万から約十万弱の方々が年間に介護を理由に離職をされておるということで、我が党の部会でも、この認識、何か説明を聞いていると、決して介護離職する方はふえていないんだ、横ばいなんだというようなニュアンスで非常に捉えるんですね。しかし、これは、本当は実際どうなのだろうか。

 例えば、資料の一枚目でございますが、これは要介護認定者の数です。これは年々年々ふえて、平成二十六年四月現在で五百八十六万人、この十四年間で約二・六九倍にふえているということがあります。

 要介護の認定者はふえているのに、介護離職ゼロ、これは年間数でいくとふえていない、横ばいになっているということ、この現実はどのように分析されるんでしょうか。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、ばらつきは若干あるにせよ、大体八万人から十万人ぐらいの離職者がいるという結果、そういうことだろうということを前提に今回の介護離職ゼロということを考えているわけでありますし、四十万から五十万人にするという根拠も、そういうところから来ているわけであります。

 もう一つは、なぜ離職するのかというところが問題でありまして、今、何で要介護認定を受けている方がふえている中で離職者がふえないのかということでありますが、やはりそれは、一つは、介護サービス、そしてまた施設の充実を一貫して進めてきているわけでありますから、それによる介護離職をしなくても済むということになること。

 もう一つは、やはり職場での理解というものが非常に大事で、働き方の改革をしないと難しいというのが、アンケート調査でも、働き方の方がむしろ、施設やサービスの不足よりも大きな要因として挙げていらっしゃる方が多いことを考えてみると、働き方についてもそれなりに改善はしているだろうとは思いますが、まだまだだということがアンケート調査でも見てとれますから、これは働き方についても同時に改革をしていかなければならないということで、今回、介護休業についても法律改正をさせていただく、こういうことになっていると考えております。

中島委員 ふえているか、ふえていないかということと、今、働き方の問題はまた別問題で、私は、厚生労働省、大臣の認識はちょっとずれていると思うんですね。

 例えば、平均の介護期間、これは厚生労働省で調べておられれば後でお答えいただきたいわけですが、これは民間の保険会社等々で、平均の介護期間は五十五カ月から五十九カ月、約五年です。

 そして、これは一般論で数字が大ざっぱになるかもしれませんが、日本人の平均寿命、男性と女性それぞれですが、それから健康寿命を差し引くと、男性では約九年、そして女性では十二年、一般論とすれば介護期間があるということになっているわけです。

 それで、資料の二枚目になると、これは介護離職する人の数というのは年間十万人前後、十万人弱で推移して、ばらつきはあるということですが、もちろんこの数字、平均の在宅介護期間というのは、在宅に限らないですね、介護期間というのは在宅介護にも当てはまるわけです、だとすれば、これは、毎年毎年約十万人ずつの方がふえ続けているというのが正確な認識だ。

 もちろん、途中経過の中でお亡くなりになったりとか、施設に入られたりとか、そういう方はおられると思いますが、この数は決して横ばいというようなイメージではなくて、これは毎年毎年十万人近い方々が上乗せされる。平均の介護期間が五年であるならば、現段階で五十万人近く、そこまでいくかどうかわかりませんが、それぐらいの方々が、今、介護離職、介護を理由に離職をされ、現在在宅介護をされているという認識が非常に重要だと私は思うわけです。

 現在、介護を理由に離職をされている方々、全体で、累計として、現在進行形で在宅介護をされておる方、何人おられるのでしょうか。

塩崎国務大臣 これまで介護を理由として離職をした方のその後の状況について見てみますと、復職との関係あるいは家族の介護との関係などについて、いろいろなケースがあるということがわかるわけでありますが、例えば、平成十九年十月から平成二十四年九月までの五年間で介護それから看護のために離職をした方を累計してみると、四十八・七万人ということでございまして、そのうち平成二十四年十月一日時点で仕事に復帰をされている方々、これを見ますと十二・三万人、そして、お仕事にまだついていらっしゃらない方は三十六・四万人ということになっているわけでございます。

 こういう方々につきまして、各市町村が介護保険事業計画を作成しておりますけれども、事業を実施する中で、住民の介護ニーズとして考慮をして介護サービス基盤の整備を進めておりまして、今後さらに、自治体による介護離職の観点も含めた介護ニーズのより的確な把握をしていかなければならないというふうに思いますし、ハローワークにおいて、個々の事情をしっかり伺った上できめ細やかな再就職支援もしなければいけないし、地域包括支援センターなども、あるいは労働局も、この介護サービス等に関する情報提供を強化していかなければならないというふうに考えているところでございます。

中島委員 私がきのう聞いたときは、厚生労働省は答えられなかったんです。

 今お答えいただいたのは、累計で、現在進行形で介護を理由に離職をされた方、そして現在進行形で在宅介護にかかわっておられるという可能性がある方、四十八万人ですよ、そのうち十二万人が再就職されておる、差し引いても三十六万人の方が現在介護離職されて、今、介護されている。

 この実態を今回、介護離職ゼロ、そして十年のロードマップと言いますが、もちろんこの先、介護離職、年間の十万人の数を減らしていくんだということだとは思うんですが、私は先日、先週の金曜日、先週の金曜日だけではございませんが、アンケートもとったり、そして実際に今、介護離職もしくは介護転職しておられる方の話も聞きました。

 金曜日に話を聞いた方は、五十四歳の男性です。十年前からお母さんが、当時は要介護一でした。まず介護転職をされ、その間の期間の中で介護離職もされ、そして、当初年収八百万だった方が現在は年収百六十万です。そういった方々が、現在進行形ということであれば、三十六万人いるかもしれない。そして、その方に尋ねられたのは、今回、政府は介護離職ゼロだと言っておる、ということは、我々に対しても何かしら、この三十六万人の方々に今回の介護離職ゼロがどういうメリットが出てくるのか。私も、それに対して具体的にどうするのか、正直そのとき答えられませんでした、今の政府の方針からですね。

 この三十六万人、もしかしたらそれよりも多いかもしれない、現在進行形で介護離職されて今在宅介護をされておられる方、今回の介護離職ゼロでどのような取り組みがされるのでしょうか。

三浦政府参考人 先ほど大臣の方からもお答え申し上げましたとおり、二〇二〇年代初頭を目指して介護基盤の整備を進めていくということになっておるわけでございまして、特に在宅サービスも含めて、その基盤の整備は重要だというふうに考えているところでございます。

 そういう意味で、今回の整備の中では、例えば小規模多機能型居宅介護ですとか、あるいは看護小規模多機能型居宅介護を含めて基盤の整備を進めていく。その中で、在宅の方々のサービスの受け皿というのも、従前の地域における介護事業計画に基づく整備と相まってお支え申し上げるということになろうと考えております。

中島委員 私は、介護離職ゼロを大看板に掲げて、そして、実際に今、きょう答弁いただいたら、三十六万人の方ですよ、今現在いる方に対して、今回具体的に介護基盤を整備するとか、その前に、もっと後で質問しようと思いましたが、では、本当にそれはできているんですか。介護基盤を整備するために、今どのような進捗状況にあって、整備されていると考えているのか、お答えください。

三浦政府参考人 介護保険の基盤整備につきましては、御案内のとおり、介護保険事業計画に基づいて、都道府県などが地域においてその資源を整備するということで行っているところでございます。

 そういう観点から申し上げますと、介護保険が制度創設以来、その見込み量を集計して、さらに現在、必要見込み量とそれから現在の整備量というものを比較いたしますと、ほぼ予定どおり進捗しているという理解をしております。

中島委員 では、昨年の介護報酬のマイナス改定、昨日も我が党の岡本議員から、雇用保険法の改正、その中で、昨年の四月、二・二七%のマイナス改定による介護事業所への影響、これに対して大臣もお答えになっておりましたが、まだ速記も見ておりません。昨年の介護報酬が地域における介護事業所に及ぼした影響について、もう一度、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 これは少し数字がアップデートされましたけれども、二十七年度の介護報酬の改定によりまして、全体として、このときは事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るように、適正化を行うということと、月額一万二千円相当の処遇改善を実現する加算を行う、それから、中重度の要介護者などの受け入れに関する加算など、言ってみれば、ニーズに合った形での報酬体系というものを組み直すということで、質の高いサービスを提供する事業者に手厚い報酬は行くようにということで、一律の引き下げとはならないようにしてまいったところであります。

 これは先生がかねてから御懸念をされていたことで、東京商工リサーチなどによる倒産とか、そういうことをよくお取り上げをいただいてまいりましたけれども、その結果について、例えば倒産については、平成二十七年一―三月の介護報酬改定前の件数の増加分が多く、そして四月以降の増加件数はそれに比べると若干減少するということで、必ずしも二十七年度の介護報酬改定の影響によるものと断定することはできないのではないかというふうに考えておるわけでございます。

 また、介護報酬改定後も、介護報酬の請求事業所数については、もう何度か申し上げたとおり、引き続いて増加をしておりまして、現在、安定的に介護サービスが提供をされているというふうに理解をさせていただいているところでございます。

中島委員 影響はないと大臣は答えられているわけですよね。私、きのうの質疑も聞いていても、加算によって質の高いサービスは維持できている、そして安定した介護サービスは提供されていると。先ほども参考人からありましたように、基盤整備は進んでいる、計画に沿ってやっておるというふうに答えられるわけです。

 では、本当にそれが実態かどうか。私、昨年からたびたび質問させていただいておりますが、例えば、資料の四枚目、「訪問・通所介護 四割赤字 報酬下げ響く 苦しむ小事業所」というふうにあります。

 この内容、資料の三枚目が、これは日本政策金融公庫総合研究所、この記事のもとになったデータでありますが、これを見ると、訪問介護の採算でいけば、赤字は全体で四七%、通所介護は四二%が赤字になっておる。そして、改定の前と後で報酬がふえたと回答した事業者は全体の八・八%、変わらないが三三・六%、そして、減収になったと言っておるところが五七・六%です。

 こういう状況の中で、今の御答弁を聞いておると、加算をつけた、加算を適切にとっていけば介護サービスは維持できているはずだというふうにおっしゃるわけですが、この数字、四割が赤字に陥っておるという数字は、大臣の先ほどの答弁からいくと、これは想定内だったということでしょうか。

塩崎国務大臣 当然のことながら、私ども、報酬改定をした影響がどういうふうに出るのかということについては、絶えず都道府県などを通じて把握をしなければいけないというふうに考えておりまして、今お取り上げをいただいたようなことも含めて、しっかりと情報収集をしてまいらなきゃいけないと思いますし、また、来年度には介護事業者の経営実態について経営概況調査というものを行う予定になっているわけでありまして、この経営概況調査の結果についてしっかりと分析を行って、次期介護報酬改定に向けた検討に活用していかなければならないと思います。

 いずれにしても、今申し上げたように、私どもの意図した政策が展開をされているのか、あるいはそれがどういう影響をもたらして、大事なことは、高齢者の自立と要介護度の改善が行われるようになっていくかということであり、また、その供給体制もしっかりとしたものとして続けられるようになっているかどうかということについて、しっかりと見ていかなければならないと思っておるところでございます。

中島委員 経営概況実態調査は、いつやられて、いつ結果が出るんでしょうか。

三浦政府参考人 経営実態の概況につきまして調査するということで、現在いろいろその内容について検討しているところでございます。

 今までの概況調査の内容、そしてまた、新しいいろいろな指摘などを受けて見直しを行うということでございまして、来年度の前半で調査を行うということで、取りまとめは来年度中に行う予定にしております。

中島委員 来年度中ですか。

 これ、本当に無責任だと思いますよ。去年あれだけ我々は危惧して、何度も大丈夫ですかと質問して、マイナス二・二七%の報酬改定をやって、マイナス、史上最大幅ですよ。そして、民間の調査、東京商工リサーチもそうですが、大臣は請求事業所がふえているから大丈夫だ大丈夫だ、そのような言い方、言いっぷりです。

 しかし、この状況は、私は昨年の質疑でも何度も言わせていただきました。一昨年、経営実態調査があって、これは想定された数字なんですよ。

 これは資料の六枚目。これは、一昨年の介護事業経営実態調査結果です。通所介護のところを見ても、収支差率、このときは、介護事業所、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、それぞれの収支差率が一般の企業よりも大変高い、そういうデータのもとになったものですが、通所介護でいけば、もちろん収支差率が高いところもあります、しかし、全体の収支差率が五%以下のところだけで四〇%あるんですよ。

 だとすれば、昨年のマイナス改定でこれぐらいの赤字になるなんということは、厚労省はしっかりとわかっていたはずじゃないですか。ということは、厚労省はわかっていながら昨年マイナス改定をして、現在四割の事業所が赤字になっている。そして、その実態調査は来年度初頭にして、来年度中にその概況がわかる。

 これは何度も指摘をしておりますが、実際に倒産件数、請求事業所がふえているとはいっても、東京商工リサーチの結果やこの赤字の状況を見ると、一年たったこの四月から、この一年間の間に閉鎖もしくは倒産する、特に小規模事業所、まさに地域包括ケアシステムの基盤となるような、介護保険創設以来頑張ってこられた事業所が倒産する、その可能性は非常に高いと私は思うわけです。

 例えば、今回、請求事業所は確かにふえています。これは、資料に行くと、資料の五枚目。確かに請求事業所はふえています。一方で、廃止の理由、そして、ふえている請求事業所がどういう形態でふえているのか、そのようなことも含めて、厚生労働省はどのように把握しているんでしょうか。

三浦政府参考人 私ども、直接それぞれの、例えば倒産をした事業者の方々からお話を伺うという機会はないわけでございますけれども、全体として、先ほどお示しございましたように、介護報酬の経営の実態というものを見てみますと、一定の幅があって、それぞれの事業者が経営されているということは承知をしてきたところでございます。

 介護保険の報酬のあり方につきましては、そもそもが、介護サービスを提供するに必要な費用の額、その平均的な額を勘案して設定するということになりますので、それぞれの事業所の経営の幅というものはもちろんあるわけでございますが、一方で、その平均的な費用というものも勘案しながら考えるということになろうと思います。

 それからもう一つ、先ほど調査の中身でお話ございました調査でございますが、これは、金融機関が融資をしている事業所に対する調査も含まれておりまして、そういう意味では、滑り出し、なかなか厳しい経営というのがあるのかもしれません。そういう意味では、さまざまな経営の実態というのがそこの中には含まれているという認識を持っております。

中島委員 もう時間が来てしまいましたけれども、何度も言うようですが、厚生労働省の認識は大変甘いと言わざるを得ないと思います。これは、もう想定できていて、私だって想定できていることを全く無頓着に今も答弁されておる。そしてさらに、加算を加えたといっても、何度も申し上げますが、特養だって空きベッドがありながら人材不足で、そして、地方へ行けば小規模事業所ほど人材が足りないんです。まずは人材の確保が大優先だということは、何度も何度も私も訴えさせていただいております。

 処遇改善加算、この取得率も七割に届いていないじゃないですか。残りの三割の方々が、なぜ加算を事業所がとらないのか、その理由についても、恐らくきのうの段階では調べていなかった。あれだけのマイナス改定をしておいて、この状況、報道でこれだけされていて、民間が調べているのに、厚生労働省は全く無頓着。これは、本当に私が想定しているとおりになったら、厚生労働省はわかっていながら何の手も打たなかったということになるわけです。

 先ほどの、介護離職された方がなぜ介護離職、介護転職されるのか。朝九時から十時の間にデイサービスが迎えに来て、そして、夕方四時にはもううちに帰ってくるわけです。もともと勤めていた会社で四時に退社できない。

渡辺委員長 中島君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

中島委員 申しわけありません。

 また、この件についてはもっともっとたくさん質問することは残っておりますので、雇用保険法のときにもこの課題について質問させていただきますが、とにかく認識が甘いということだけは何度も申し上げさせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。維新の党の初鹿明博です。

 安倍政権は、女性の活躍ということを言っておりますが、女性が活躍をしている、そういう職場である美容業界、また、女性の方が活躍するためにきれいになりたいということで通う美容業界の件で一つ質問をさせていただきます。

 お手元に新聞の記事をお配りしているんですが、まつげエクステについてです。

 結構この委員会は女性の委員の方が多いので、女性の方はまつげエクステは知っていると思いますが、とかしき副大臣はやったことありますか。

とかしき副大臣 私、化粧品メーカーに勤めておりましたけれども、残念ながら、したことはございません。

初鹿委員 やったことないということですが、恐らく議員さんの中でも経験したことがある方はいるんじゃないかと思いますが。

 この記事にありますけれども、二〇〇八年から、それまでは特に資格なくやっていたものが、健康被害が多いということで、美容師免許を義務づけるということがされたわけです、通達が出されて。それ以降、かなり厳しく取り締まりがされて、無許可でやっているような、美容師免許を持たないで施術をしているようなサロンはなくなったんです。

 ところが、この記事にあるとおり、最近、考える人がいるんですね、セルフ方式といって、自分でつけるやり方を教えますよと。教えるだけだから、さわらないから美容師法に抵触しませんよなどと言ってやり始めている。

 しかも、本当は資料を添付したかったんですが、いろいろ問題があって添付をしてないんですが、ある、協会と称しているんですが恐らく一般の事業者なんですが、そこは、インストラクター養成講座といって、教える講座を、やる人を養成する講座をつくっているんですよ。そこのホームページにはしっかりと、当協会はセルフまつエク、自分でつけられるようになるための技術を教える講座ですので、講座内でインストラクターがお客様に触れることは一切ありません、よって美容師免許も不要です、二〇一四年十二月二十六日、保健所確認済みと書いてあるんですよ。これは、一日、たった四時間講習を受けるだけで教える側になれますよ、そういう講座を開いているんですよ。

 私は、これは不適切だと思うんですよ。少なくとも、美容師免許を取るのには、学校に行って、それなりの時間と労力をかけて試験に受かって、美容師になって、それでまつげエクステの施術を行っているわけですよね。そういうきちんと資格を取った方がやっている一方で、こうやって抜け道的にやるのを認めるのはいかがなものかと思います。

 先般、質問主意書を出したんですけれども、非常にそっけない答弁だったので、改めてここでもう一回質問させていただくんですけれども、このように、教える行為、そしてさらに、素人が教えて、教わった人がまた教える側に回る、これがずっと続いていったら、そのうち、自己流のやり方で教えて健康被害が出てしまうんじゃないかなと懸念するんですよ。確かに、自分でやるわけだから自己責任かもしれないけれども、でも、やはりその可能性があるんだったら、とめるのが私は厚生労働省の仕事じゃないかなと思うんです。

 美容師養成施設指定規則というのがあって、美容師の免許を取るために養成機関に行く、その規則によると、美容理論や美容実習の先生になるためには、美容師免許を受けた後、三年以上の実務に従事した経験のある者であって、厚生労働大臣の認定した研修の課程を修了した者、もしくは、美容師の免許を受けた後、九年以上実務に従事した経験のある者と。教える先生は、実務経験、かなり厳しく言っているわけですよね、美容師になる人に教える先生は。ところが、素人に教える人は素人でいいというのはやはり理屈に合わないような気がするんです。

 ですので、この講座を教える人は美容師に限るというふうにしないといけないんじゃないかと思いますが、大臣、御見解を伺います。

塩崎国務大臣 今先生御指摘のような講師、個人に教えるという講師でありますが、これが美容師免許を必要とするかどうかということについて、質問主意書も頂戴をして、お答えをしているわけでありますけれども、個々の営業する行為が、美容を業とする者が行う行為である施術に該当するかどうかを個別に判断する必要がございます。

 となると、一概にお答えすることは難しいということだと思いますが、大事なことは、健康被害が起きるかどうかとか、そういうことが私ども厚生労働省としては一番大事なことで、美容師の免許にしても、これは生活衛生の観点から、国民を守るということでやるわけでございますので、そういう点については、もちろん絶えず感覚を鋭くしていかなければいけないと思っています。

 今、消費生活センターというのがございますが、現時点において、セルフまつげエクステンションの講座での健康被害が消費生活センターに報告された事例はないと聞いているわけでございます。

 健康被害情報を注視して、消費者庁とやはり我々厚生労働省は連携をして、必要に応じて国民への情報提供に努めなければならないと思いますが、まず一つは、法治国家である日本としては、法律の枠の中でどういうふうな整理ができるのかということを考えてみると、今申し上げたようなことで、一概にお答えすることはなかなか困難であるということで、美容を業とする者に当たるかどうかということについて、個別に判断すべきではないかというふうに考えているところでございます。

初鹿委員 一つ一つ見て、それで仮にさわっていたら、これは美容業に触れるということでアウトですよ、そういう趣旨のことを今説明されたんだと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、やはり、教える行為自体も、資格を持っている人がやる必要があると私は思いますし、このような脱法行為をして、資格を持っていなくても同様のことがやれるというのを認めてしまったら、一生懸命勉強して資格を取った人の仕事をやはり侵害していることになると思うので、私はもう少しきちんと検討していただきたいと思います。

 確かに、消費生活センターにまだ苦情がないということですけれども、これは講座で直ちに健康被害があるわけじゃなくて、やり方を教えているわけですから、自宅に帰って自分でやり出して、そこで健康被害が出てくるわけですから、そのときに、講座が原因だったのか、自分が技術が足りなかったからこうなったのかということになったら、恐らく後者でそういう申し立てをしていないのではないかなと推測もできますから、必ずしも、今の時点で報告がないから健康被害が起こっていないということではないということを指摘させていただいて、もう少し何らかの方法はないか検討をお願いして、次の質問に移ります。

 次は、今度はタトゥーなんですよ。タトゥーが今問題になっております。

 彫り師の方が略式起訴をされたんです。何でかといったら、タトゥー、入れ墨を入れる行為は、厚生労働省が、医業だと。医療だから、医師法違反だということで起訴をされました。

 この彫り師の方、そのまま罰金を払ってもよかったんだけれども、いや、このままだとタトゥーの文化が廃れていってしまう、それに、今まで法律に明文規定もないものが、ある日突然、一枚の通達で仕事が全くできなくなるというのは職業選択の自由に反するんじゃないか、また、芸能人やスポーツ選手でも、今はタトゥーを入れている人はたくさんいますから、そういうファッションとして入れたい方の、それこそ幸福追求権を侵害するんじゃないか、憲法違反の疑いがあるんじゃないかということで、これは訴訟を起こしているんですね。

 お伺いしたいんですけれども、大臣、医療というのは何ですか。

塩崎国務大臣 大変広い概念であろうと思いますけれども、狭義に考えれば、やはり、人体に侵襲を加えるということが医療の本質ではないかというふうに思います。

初鹿委員 辞書で調べると、「医術・医薬で病気やけがを治すこと。治療。療治。」と書いてあるんですよ。要は、病気やけがを治すことが医療だと思いますし、多くの人はそう思っていると思いますよ。

 入れ墨を彫るという行為は、何か病気を治している行為でしょうか。治している行為じゃないと思います。治していることではないと思います。

 古代の時代から、これは卑弥呼の時代からずっと世界じゅうでやり続けられている行為であって、そして、また最近のタトゥーとか、見ていただければわかりますけれども、非常に芸術的なわけですよ。これを医療だといって、では、お医者さんがタトゥーを彫れますか。彫れますか、彫れないですよ。なぜなら絵を描けないからですよ。ですよね。絵が描けないわけですよ。要は、だから、医者の世界と別に競合しているわけでも何でもないわけですよ。それを医療だといって規制をするのは、私は少しやり過ぎではないかというように思うんです。

 海外の例を調べてみました。そうしたら、海外は、私が調べた限りでは、医療としているところは一つも見つかりませんでした。ただ、例えば、アメリカだと、州によって異なるんですが、ライセンス制にしていて、きちんと規制をかけております。イギリスは登録制で、衛生環境等で規制が定められていて、監督官庁に立ち入り権限が認められているわけですね。また、イタリアも、これは規制はないんですけれども、法律はないんですが、ガイドラインがある。フランスは届け出制だということですし、また、オランダもライセンス制。また、オーストラリアもそうなんですね。

 そういうことを考えると、医療として規制をするんじゃなくて、海外の例のように、きちんと法律を別個つくって、それで届け出制なり許可制なり、または免許制でもいいですけれども、きちんと管理をするようにしたらどうなのかなと思うんですよ。

 一部、和彫りの彫り師の方が暴力団と関係があるとか、そういうことが過去、事件になったり指摘をされたりしたこともありますが、ちゃんと許可制にすれば、そういうことは要件にしてこれを排除することもできると思うんですよ。今このまま医療だといってそのままにしていると、どんどん地下に潜ってやるようになります。

 実際に、これはもともと、発端はアートメークなんですが、アートメークから始まっているんですが、アートメークをやっているエステサロンに二十件ぐらい電話をかけてみました。アートメークをやっているところに、私じゃなくてスタッフにかけてもらいましたが、ほとんどのところが、アートメークはやっておりまして、医者じゃないけれども経験をした人がやるので大丈夫ですと答えていました。

 結局、こういう、規制をしてもそのとおりになっていないわけですよ。それを追っかけていって全部取り締まりをするのではなくて、別個の法律をつくればいいじゃないですか。例えば、医療と似たような行為で、はり、きゅう、あんま、マッサージや柔道整復というのは、それぞれ別の法律をつくって、医業類似行為だということで法律で認めていますよね。それと同じような観点に立って、入れ墨の彫り師についても何らかの法律をつくって、きちんと許可制にして、業としては認めていくという方向を検討してもいいのではないかと思いますが、大臣の御見解を伺います。

塩崎国務大臣 先生からこの御質問をいただくということで、私も厚労省の中でいろいろ議論をしました。

 個別の事案は、もちろん、私は判断をする、コメントする立場にはございませんが、今の解釈は、入れ墨行為というのは、針先に色素をつけて皮膚の表面に墨などの色素を入れ込むという、侵襲をする、そういう行為であって、当然、保健衛生上の問題が起こり得る、感染症になる、そういうおそれがありますから、全く医師免許を有しない者が業として行えば、医師法第十七条に違反するものと考えるという考え方自体はあり得ることだということだと思います。

 今はそういう理解で行われているということでございますが、しかし、おっしゃるように、一つの言ってみれば文化的な側面もあると考えられるわけで、もちろん、銭湯なんかに行きますと、入れ墨をした人は入ってもらったら困ると書いてあるような社会的位置づけでもあるということでありますが。

 いずれにしても、私どもとしては、国民的にどういう考えで整理すべきなのかということを議論していただき、また、先ほど、柔道整復師とかそういうことの例が取り上げられましたが、それぞれの方々はそれぞれの団体としての声を上げられていろいろ議員立法などがなされたということも考えてみると、どういうニーズがあるのかということは、当事者あるいは関係者、こういった方々がどういうふうに考えているのかということを押さえるとともに、社会の中で今申し上げたような位置づけになっているということも含め、しかし一方で、今、先生が御指摘のように、世界でもいろいろ扱いがそれぞれの国によってあるように、それぞれの文化で対処しているわけでありますから、そこのところは議論を深めていただくということが大事なのかなと私は個人的にも思いますし、きょう、厚生労働省の中で議論したときも、そのようなことだというふうに思いました。

初鹿委員 恐らく、初めてこういう質問を受けたので即答できないと思いますが、この質問をきっかけに、少し検討していただきたいと思うんですよ。

 これから二〇二〇年に向けて、オリンピックを招致することで外国人もたくさん来るわけですよね。オリンピックの選手でも、入れ墨をしている選手はたくさんいますよ。日本の芸能人でも、ちょっと調べたんですけれども、宮沢りえさんだとか浜崎あゆみさんだとかもしているわけですよ。サッカー選手の澤穂希さんもしているし、ベッカムとかもしているわけですよ。

 そういう方が来て活躍をしたら、ではこのワンポイントの入れ墨をしてみたいなという人がふえてくる可能性も高いわけじゃないですか。それに、そういう観光客の人たちが、では温泉に入るだ何だといったときに、入れ墨だからだめですよといつまでも言っている時代じゃなくなってきていると思うので、これを一つのきっかけとして議論を深めていって、できればきちんとライセンス制みたいなものをつくって、衛生管理や、また、暴力団などが排除できるような仕組みをつくっていただきたいということをお願いさせていただきます。

 では、次の質問に移ります。

 次の質問は、先般から問題になっております労働移動支援助成金についてでございます。

 きのうも岡本充功議員から本会議場で質問をしておりますが、私も、この事案を聞いたとき、本当にびっくりいたしました。人材会社が、企業に対して、こうやってやったら退職させられますよという指南をして、そのやめた人を自分のところで職業紹介をする、そして国から助成金を受け取る、こんなマッチポンプみたいなことが行われている。本当に驚きですよ。まさに国がリストラの後押しをしたと言われてもおかしくない、そういう事業だと思うんですね。

 この助成金が拡大をしていった発端は、先般、大西委員も予算委員会で指摘しましたけれども、二〇一三年三月十五日に産業競争力会議で、人材派遣会社最大手のパソナグループの会長である竹中平蔵氏がこうやって発言しているんですよ。今は、雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算が千対五くらいだが、これを一気に逆転するようなイメージでやっていただけると信じていると。少なからず、この発言は一つのきっかけになって、雇用調整助成金の予算が減らされ、労働移動支援助成金の予算がふやされていくことになっていった、これは間違いない事実だと思います。

 私は、厚生労働省がこれまで、リーマン・ショックや大不況があったときに、雇用調整助成金という制度をつくって、雇用を守ろう、特に中小企業の方を頑張って支えて、首を切らないでくださいと頑張ってきた、これは物すごく評価をしていますよ。ところが、今回、この発言から見ると、雇用を守るということはもうやらなくして、やめる方向にして、今後は、やめることはもうしようがない、やめた後の再就職の支援をしようということに完全に転換したというふうに感じるんですね。

 この点について、大臣はどう考えているんですか。もう雇用を守るということは必要ない、とりあえず一回やめてもらってその後再就職先が見つかればいいんだ、そういう判断をしているということでよろしいんでしょうか。

塩崎国務大臣 私も、日本銀行に勤めて長らく経済政策をやって、連鎖倒産防止とかいろいろなことをやってまいりましたが、経済の局面によって必要な政策というのはそれぞれあるんだろうというふうに思います。

 実際、リーマン・ショックの際に、私も地元で工業団地なんかを一軒一軒歩いてみて、またその中の私の友人などの経営者から聞いてみて、雇用調整助成金がああいう際に機能するということは十分あり得る、つまり、緊急避難的に雇用を守るということに役立つということは、私もあの際にもよくわかりました。その後、努力をして、その会社は、調整助成金から脱して、そして別な方向で新しいフロンティアを開いて、今隆々と事業を展開しているということになって、それにはまた別な政策的な支援を使っているというふうに思います。

 したがって、雇用調整助成金的な、緊急避難的に雇用を守るという政策は当然持ち合わせていないといけないと思いますが、しかし、それに頼り過ぎて産業構造の転換ができないという反省が大きかったということが問題なので、リーマン・ショックみたいなところから脱した後は、これからは、失業なき労働移動で、むしろ付加価値の低い産業から高い産業に、産業構造も移り、同時に、働く人たちもスムーズな形で移行していく、それを応援していくということが大事だねということなので、いずれも大事なものだというふうに思います。

 今、決定的に私どもが大事なのは、やはり、他の国には絶対負けない産業構造を新たにつくり直していくという、かつて、第三の矢、新三本の矢じゃなくて古い方の三本の矢の三本目についてこの政策を進めていくことが大事で、その中の一つとして、失業なき労働移動ということでこの労働移動支援助成金というのが考案されたというふうな理解だというふうに私は思います。

初鹿委員 そうではなくて、やはり、雇用を継続していくということは私は最優先に考えるべきだと思うんですよ。確かに、今、景気がある程度好転して雇用状況が改善しているから、雇用調整助成金を使う必要がなくなっていると思いますが、また再びリーマン・ショックのような大きな不況が来たときに、私はやはり、雇用調整助成金のような仕組みというのは非常に有効だと思うんですよ。これを、竹中氏が言っているように、千対五くらいの力の入れ方を変えろと言っているわけですから、逆に、千対五になって労働移動支援助成金だけにシフトをしていってしまうと、私はどこかで間違うのではないかなというふうに思いますので、その辺は少し考えていただきたいと思います。

 不況になったときはきちんと雇用調整助成金を増額して対応する、まずは雇用を守るということを中心に考えるということをしていただきたいと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 それは、先ほど私が全く同じことを申し上げたとおりで、局面によって政策というのは使い分けていかなきゃいけないのであって、中長期的に労働移動をして付加価値の高い産業構造に移っていくということは必ず大事なことであって、ただ雇用を守るということだけでその雇用が長い間守れるかどうかということを考えてみると、それは必ずしも、全てを守れば全てがそのままずっと中長期的にも守られるということには決してならないというふうに思います。

 そこは局面ごとに使い分けるということで、雇用調整助成金を廃止したわけでも何でもありませんから、リーマン級のものが来たら、我々は雇用を守るためにあらゆる手を尽くすということは当然でありますけれども、同時に、中長期的にも雇用が守れるような産業構造にしていくための労働移動を支援していくということは、必ずやらなければいけないことだというふうに思っております。

初鹿委員 きのうの質問の答弁についてちょっと伺いますけれども、きのう岡本議員から、民間人材ビジネス会社が、この制度を利用して、企業に退職勧奨を行うことを提案しています、このようなリストラ提案型営業は、民間人材ビジネス会社の仕事として適正なものでしょうか、見解を求めます、そういう質問に対して、大臣は、職業紹介事業者がみずから退職者をつくり出すようなことは事業の趣旨に反するものであり、働く方に対して自由な意思の決定を妨げるような退職強要を実施することは適切ではないと言っておるんですね、まず一点目で。その次に、企業に対して積極的に退職勧奨の実施を提案することも好ましくないこと等の通知を発出すると答弁しています。

 最初の方は、退職強要を実施することは適切でないと、適切でないという言葉を使っているんですが、次は、退職勧奨の実施を提案することは好ましくないという表現になっているんですよ。これは、不適切、適切ではないんじゃないんですか。

 厚労省が好むか好まないか、それはどうでもいいでしょう。好ましくないけれども、不適切だとは言われていないから、別に厚労省に好まれたいと思わないからやりますよという企業が出てきてもそれは構わないということですか。私は、ここは適切ではないという通知にしないとならないのではないかと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 ここは表現の問題で、今先生おっしゃるように、適切ではないというふうに言いかえても構わないというふうに思っております。

初鹿委員 適切ではないというふうに大臣も判断をしているということですよね。そういう理解をさせていただきました。

 その適切ではないことを行って、今回は助成金をもらっていたわけですよね、人材派遣会社、そして王子ホールディングス。今回の例は王子ホールディングスですが。

 この後、ではどういう対応方針にするんですかと言ったら、こういう人材派遣会社と積極的にかかわっていた企業がわかった場合は助成金の支給をやめるということを決めたということですが、そういうことですよね。助成金は支給しないということでいいんですよね。

塩崎国務大臣 退職強要するような会社が助成金を受け取るというようなことがあれば、それは対象としないということにしたい、不支給とするということにしようと思っています。

 この助成金の支給に当たっては、再就職支援会社が、退職者をつくり出すという一方で、その方に対する再就職支援サービスを受託するということがないように、これまでももちろん、再就職支援会社から退職勧奨を受けなかった点について退職者本人に確認署名を求めるということ、それから、企業が作成した再就職援助計画について労働組合等の同意を得るということは支給要件としてやってきたわけでありますが、さらに、来年度からは、この趣旨、目的を一層明確にするために、再就職支援会社が退職コンサルティングと再就職支援サービスを行う場合については不支給とする旨を要件として定めて、支給申請書上でこれを確認していく方針としたところでございます。

初鹿委員 その方針自体はいいと思うんですけれども、でも、これまでやってしまったところはやり得だと思うんですよ。これからもらえなくなるけれども、今までもらっていなかったものがもらえないだけで、別に痛くもかゆくもないわけですよ。でも、もう既にもらっている分はそのままもらえるわけですよね。

 退職を強要された労働者の方は、強要されて仕事がなくて大変な思いをしているわけですよ。ところが、こういう不適切、違法に近いような退職強要をして労働者の首を切った会社、また、それをマッチポンプのように後押しした人材会社は何のペナルティーもないというのは、私は解せないんですよ。

 これは、ペナルティーなしでいいんですか。紹介事業会社は許可事業ですよ。国の許可事業ですから、例えば、許可を取り消すとか、それが難しいというなら、更新の際に更新をしない事由にするとか、何らかのペナルティーを科さないと、やり得で終わっちゃっているんですよ。これでよろしいんでしょうか。

塩崎国務大臣 一つ申し上げておかなければいけないことは、先ほど先生おっしゃるマッチポンプのようなことをやった場合のこの助成金の扱いについては不支給とするということを要件に明確にするということが大事であって、今まで要件にそのことが明確に書いていなかった。ですから、言ってみれば、この制度を、私どもの政策意図、政府の政策意図と反する形で使われてしまったということで、ですからそれを、言ってみれば、そういう間違った使い方をしていただかないように要件を明確にするということが第一だというふうに思います。

 したがって、根拠なく免許を取り上げるとかなんとかいうようなことにはなかなかなりにくいのではないかというふうに思うわけでございます。

 私どもは、やはりこういうことが、何が好ましくないのかということをしっかり明確にしていかなければならないというふうに思うわけでありまして、この再就職支援会社というものが退職強要に該当するような行為のマニュアルを企業に提供したりすることは適切ではないということ、それから、企業の労働者に対して、みずから直接退職勧奨を実施するということも再就職支援会社として好ましくないということなどを通知として明確にすることで発出を今検討中でございまして、その内容の周知徹底を図ることでこのような事案の発生の防止に努めるということ、それから、それらの行為を把握した場合にはしっかりと指導をしてまいらなければならないというふうに考えているところでございます。

初鹿委員 先般、部門会議に出席していただいた労働弁護団の棗弁護士が指摘をしておりましたけれども、有料職業紹介事業の許可基準を規定している職業安定法第三十一条一項三号に、申請者が、当該事業を適正に遂行できる能力を有することとあるんですね。

 適正に遂行するということですが、不適正なことをやっていたら、やはりここに抵触するということで許可の取り消しとかをしても私はいいのではないかと思うんですよ。ちょっとその辺もぜひ検討していただいて、このまま何にもペナルティーなしということはしないでほしいなということを指摘させていただきます。

 次に、では、退職強要をした企業の側についても同様だと思うんですよ。何のペナルティーも今のままだとないんですよ。

 この企業、王子の場合はひどいですよ。早期退職、ここで退職するんだったら退職金は上乗せしますよ、会社都合にしますよ、でも、ここで認めないんだったら、テンプスタッフに出向してもらって、自分の仕事を探す業務をやってもらいますよと言っているんですよ。

 自分の仕事を探す業務、これは適正な業務命令ですか、雇用契約上認められるんですか、大臣。

塩崎国務大臣 リストラ企業の行為について今お尋ねがあったわけでございますが、一般に、企業というのは、従業員に対して無限定に業務を命ずるということはできるわけではなくて、必要性あるいは合理性のない業務を命令することは、これは労働契約法や、その大もとは民法でありますが、権利の濫用ということで無効になるわけです。

 他方で、労働者保護を使命とする厚生労働省としては、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を労働者に一方的に押しつけるというような人事権の濫用は不適切であると考えておりまして、企業における適切な労務管理を促すために、今般、啓発指導に用いているパンフレットに、参照すべき、今お話があったようなものに関連するような裁判例、判例を新たに追加する、それで、これを通達の上でも広く周知をしていくということを考えておりますし、企業に対する啓発指導、これもさらにしっかりと行っていかなければならないと思っております。

 退職勧奨が違法なものかどうかということについては、これは、退職勧奨に関する裁判例にも示されている幅広い観点から、個々の事案ごとに司法において判断をされるものであって、行政が民事上違法か否かを断定するということはふさわしくないのではないかというふうに考えているところでございます。

 民事上の問題ということなので、私どもとしては、労働政策を預かる立場として、明確な立場を明らかにしていくということだと思います。

初鹿委員 裁判で決着しろ、そういう趣旨なんだと思いますけれども、少なくともこれは、国の政策によって首を切られる、退職強要をさせられて仕事を失っているわけですから、やはり国にも一定の責任はあると思いますよ、このような仕組みをつくってしまって。意図はそうじゃなかったと言うのかもしれないけれども、それを悪用されたわけですよ。これで、首を切られた人はそのまま、あとは裁判でやりなさい、企業側には何のペナルティーもありませんということにはならないんじゃないかと思うんですよ。

 私は、せめて、この労働移動支援助成金を支給するために、支給をすることでやめさせられたような人は、何らかの救済措置を設けるべきだと思います。裁判でやれといっても、やはり裁判や個別労働紛争でやったら何年もかかるし、仕事を探しているのに、そんなことに構っていられないわけですよ。そして、子供が例えば受験を控えている、そういった場合に、仕事がなくて、では、大学進学は諦めようか、私立の高校に行きたいけれどもやめようか、そういうふうになって、首を切られたその労働者だけじゃなくて、子供の人生まで狂わせることになるんですよ。

 そのこともちゃんと考えて、私はきちんと救済措置をとるべきじゃないかということを申し上げさせていただいて、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 おはようございます。民主党の柚木道義でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 資料の方もお配りをさせていただいておりますが、今月、三月の一日に、厚生労働委員の皆さんは特にもう御承知のことと思われますが、列車事故で亡くなられた認知症の方、その家族に、最高裁が初めての判断を下されまして、賠償の責任は今回の事案については求められない、そういう判断が下されました。

 同時に、これは資料の二枚目にもおつけをしておりますが、この判断ではございますが、「「認知症の人の監督責任が問われないケースもある」と賠償責任を限定的に解釈する考えを示した。超高齢社会の実情を踏まえた判断で、認知症の家族団体は「介護の実態に合った画期的な判断だ」と歓迎した。一方で被害の救済をどう図るかという課題は未解決のまま」と。つまりは、監督義務者と認定された人がどのような場合に賠償責任を負うのか、逆に負わないのか、そういった基準については示されていないということでございます。

 この判決が示すものというのは、私も今回、この御遺族の方からもお話を伺いましたし、家族団体の代表の方からもお話を伺いましたが、前向きに捉えられる面と、しかし、他方で、今後、類似のことが仮に起こったときに、その場その場の司法判断に委ねられる部分も余地としては残るという意味において、認知症の御本人はもとより、御家族の方や、あるいは介護の仕事に携わる方々も含めて、やはり本当の意味で安心できる、そういった判決にしていけるかどうかというのが、まさにきょう介護の議論もされているんですが、今後の政治や行政の対応にもかかっている面が多分にある、そのように認識をしております。

 そこで、きょうはそれぞれ関係省庁にもお越しをいただいておりまして、今回、鉄道事故ということでございますが、鉄道事故で死亡した認知症の方の人数、そして、損害賠償請求を受けたケースについて、まず国土交通省の方から御答弁をいただけますか。

津島大臣政務官 柚木委員にお答え申し上げます。

 国土交通省では、鉄道における運転事故等について、鉄道事故等報告規則に基づいて鉄道事業者から報告を受けております。

 平成二十六年度からは、認知症の方々の徘回や事故等の問題に鑑みまして、事故の死傷者が認知症との情報が関係者等から得られた場合には、その旨の記載をして報告するよう鉄道事業者に求めているところでございます。

 そこで、お尋ねの死亡者数でございます。平成二十六年度の鉄道の運転事故による死亡者数は二百八十七人であり、そのうち、死亡者が認知症と報告があったのは二十二人でございます。

 また、損害賠償請求の有無については、当事者間の個別の交渉にかかわるものであることから、報告対象となっておりません。したがって、国土交通省では承知をしておりません。

 以上です。

柚木委員 今の御答弁でございます。全体として二百八十七人で、うち、死亡された方の二十二人が認知症でいらっしゃる。また、損害賠償請求については把握をしていないという御答弁であるんですね。

 確認なんですが、この二十二人というのは、全体の一割ぐらいの数ですが、認知症の方で鉄道事故で亡くなられた方というのは、そういう意味で、私も、この規則に基づいた報告書のそれぞれの、二十九件、二十二人の個別ケースも拝見をしたんですが、これはあくまで聞き取り等によって上がってきた数ということでございますので、二十二人以上、亡くなられた方で認知症であった方がおられる、そういう可能性があるということでよろしいですか。

    〔委員長退席、小松委員長代理着席〕

津島大臣政務官 柚木委員にお答え申し上げます。

 この報告にございます死亡者数でございますが、まず、統計をとりましたのが平成二十六年度からということで、時間がたっていない、浅いということ、また、認知症であるということの報告をいただくということは、個人情報の絡みがありまして、御家族等あるいは警察からの情報提供によるものとされております。したがいまして、この二十二名の方の死亡というのは、ある意味、死亡者数の下限、これ以上少ないということはないという認識を持っております。

 しかし、実態としてどの程度あるのかというのは、今後の調査の結果等を見て、この調査結果を評価していかねばならぬ、そのように考えております。

柚木委員 これは後ほど、私も各省庁の連携が必要だと思っているので、場合によってはちょっとお伺いもさせていただくんですが、御答弁のように、今回認知症と把握できたケース、実態はもっと多い可能性があるということなんですね。

 もっと言うと、損害賠償請求についても、今回は裁判になって最高裁まで行きましたからこういうそれぞれの経緯が明らかになったんですが、この二十二人についても、今回のこの裁判の中でも、鉄道各社は、こういうことが起こった場合に、その亡くなられた方の相続権が放棄されない場合には御家族の方、御遺族の方に損害賠償請求をするというのが一般的だという認識で私もおります。

 そういうことも踏まえつつ今後の対策を考えていかなきゃいけないと思うわけですが、きょう警察庁にもお越しいただいておりますが、交通事故で加害者となった認知症の方の人数は何人になるでしょうか。

掛江政府参考人 交通事故の加害者となった認知症の方の人数そのものは把握してございませんが、平成二十六年中に、全国で、交通事故を端緒といたしまして、認知症であるということで運転免許の取り消し等を行った件数は、七十五件でございます。

柚木委員 ありがとうございます。

 それぞれ、きょう国交省と警察庁からそういうことで伺っておりまして、時間がないので、損害賠償請求の有無については警察庁としては把握していないということだったと思います。

 厚生労働省、大臣、これは非常に重要な問題だと思うんですが、きょう、資料の四におつけをしておりますが、警察庁のデータ、厚生労働省の取り組みについてということで、いわゆる認知症一万人問題というのを私も以前質問させていただきましたが、二十六年、一万七百八十三人、そして、所在確認状況のところをごらんいただきますと、一万八百四十八人のうち、死亡確認というのが四百二十九人でございます。ちなみに、この四百二十九人の内訳、あるいはこの中に認知症の方がどれだけおられるかというのは、もっと実際には多い可能性もあるという御説明をいただいておるんです。

 私は、今回のこの事故を受けて、ぜひ大臣にお伺いをさせていただきたいのは、さまざまな、こういった事故等に認知症の方が巻き込まれないための、その地域のネットワークづくりですね。私の地元でも、昨日も、倉敷の市議会でも、見守りネットというのを企業や団体等と連携をして地域の皆さんとつくっていくということを地元の市長も表明をされておられますが、そういったことはもちろん必要なんですが、しかし、そうはいっても、こういった今回の裁判のような事例を全くゼロにするというのはなかなか困難であろう、そういうふうに認識をしております。

 そこで、私、これは一つ提案でもあるんですが、今回、この種の損害賠償責任が請求をされるような事案についての新たな保障制度というものを議論、検討していく必要性があるのではないのか。これは、与党の中でもそういう必要性について今議論がされているというふうに伺っておりまして、ぜひ塩崎大臣も、そういった与党の議論も踏まえつつ、そして、私、我々野党の提案も踏まえつつ、この保障制度も含む対応、検討をリーダーシップを持ってお進めいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔小松委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 今回の最高裁の判決というのは大変重要な考え方をお示しいただいたというふうに思っています。

 特に、監督義務の有無の判断に際する六項目の考慮事項というのが示されたわけで、いかにいろいろなケースがあり得るかということが示されたわけでありまして、事は、しかし、裏返してみれば、そう単純で簡単なものではないということも同時にわかったと思います。

 先日、日曜日に、私は大牟田に行ってまいりました。ふだんは、三千人余りの市民の方々が参加をして、認知症の方が行方不明になったことを想定した訓練を九月に毎年やっているそうでありますが、この間、模擬訓練をやっていただいて、私も参加をして行方不明者を無事に皆が集まっているところにお連れをするという役もやりましたが、大事なことは、やはり、今回の判決が在宅で暮らす認知症の方や家族の不安につながらないように、地域の支援があるという安心感を持っていただくように私たちは社会をつくり直していかなきゃいけないんじゃないかということを、大牟田の先駆的な例を見ても思ったわけです。

 御案内のように、去年の一月に、それまでの厚労省だけだったオレンジプランを、オール政府の国家戦略として新オレンジプランというのをまとめさせていただきましたけれども、これは、地域住民による認知症の方の見守りネットワークの構築、認知症サポーターなどによる見守り体制の整備など、自治体が認知症の方を地域で見守ってコミュニティーで支える枠組みづくりを推進していくということで、こういう今回のような不幸な結果に至らないような仕組みをどうつくるかということもとても大事だというふうに思うわけであります。

 確かに、保障のあり方、今先生から御提案がありました。民間の保険を活用するような、さまざまな対応の選択肢が提案をされたりしていることもよくわかっております。

 しかし、先ほど申し上げたように、さまざまなケースもありますから、大事なことは、高齢者がちゃんと家族を中心にコミュニティーで、地域でしっかりと見守られながら生き続けられるということが大事でありますので、今いただいた御提案も含めて、これは与党とも、それから関係省庁とも、そしてまた国会でもよく議論をし、そしてまた実態把握をさらにやはり私ども厚生労働省としてはやっていかなきゃいけないのではないかというふうに思っておりますので、国民的な議論につながるような形で私どもも議論をリードしていきたいというふうに思っております。

柚木委員 まさにそういった方向で今後検討を進めていただきたくて、私はさらにちょっと具体的な提案を申し上げたいんです。

 確かに、保障制度はもちろん考えていただきたいし、ネットワークをしっかりとつくっていく、大牟田の事例、そういったことも含めて全国で取り組んでいただくことは重要なんですが、今回のその御家族、御遺族の方に伺っても、御高齢の奥様、そして息子さんの奥様、そして息子さん、それぞれが分担をして介護に取り組んでおられた。私も実際伺って、ある意味ちゃんと家族で分担をしてそういう取り組みができていたにもかかわらずこういう事案が起こっているわけですから、もっと切実に、老老介護、独居高齢者の方、ひょっとしたらそういう方の中からこういう事例が出てきかねないという危機感を私は今回改めて強く持っているんですね。

 その意味では、やはり、もしものときのための保障制度、つまり、一生懸命御家族の介護をされていたのに、御家族を失って、おまけに損害賠償請求までされるというようなことであれば、本当に、それこそ育児のことでも、保育園に落ちた、日本死ねのような、そういう恨みを国の方に言ってしまう。まさに介護についても同じように、家族の命まで失ったのに損害賠償請求までされるということであれば、これから、五人に一人が認知症、御家族の方を入れればもうほとんど関係のない方がおられないような状況になっていくわけでしょう。

 この保障制度をどうしていくのかというのは、これからの日本が、オレンジプランも含めて、二〇二五年に向けていろいろなモデルの取り組みを今やっていますけれども、やはり私はその中でも非常に中核をなすものだと思うんですね。

 そこで、ぜひ私は、今の大臣の前向きな御答弁を含めてお願いしたいのは、今回質問するに当たって、それぞれ国交省、警察庁、認知症にかかわる方々の死亡事案あるいは損害賠償請求の有無等について問い合わせをしたんですが、なかなか把握されていないケースが、フォーマットも含めてあるわけですね。

 ですから、私は、ぜひ関係省庁で、もちろん厚生労働省、それから鉄道事故であれば国交省、交通事故であれば警察庁、もっと言うと、民法の関係でいえば法務省、さらには保険の関係でいうと例えば金融庁とかが所管になるかもしれません。関係省庁でぜひ連携をして、今回のこの事案に対しての保障制度のあり方を研究、検討するような、そういう受け皿をつくっていただきたくて、そういう意味で、厚生労働大臣、きょう、大臣として、他省庁とも連携をしてそういう研究、検討の場を設ける、そういったお考えをぜひここはお示しいただければと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、国民的な議論を深めていただくということが大事で、正直、私の身内でも実は鉄道事故で命を落とした八十代の女性がおりましたが、そのときはしっかりと賠償金を支払ったということは記憶にあるわけであります。

 先ほど、関係省庁とも連携をして実態把握をし、そして国民的な議論につながるようなことをリードしていきたいと申し上げましたが、新オレンジプランをつくる際に、各省の連絡会議をつくって幅広くオール政府でやるということをやりました。そのフレームワークを使わせていただいて、議論が深まるようにしていきたいというふうに考えております。

柚木委員 非常に前向きな御答弁をありがとうございます。

 ぜひ、今初めて国会でそういう御答弁をいただけたと思うんですが、そういう連携の会議の場を通じて、新たな保障制度の構築についても、与党の皆さんともしっかりとやりとりしながら、我々野党とも連携をして、構築を進めていただきたいと思います。

 それから、時間が限られているので、もうあと一、二問しかできませんが、きのうも本会議で、要介護一、二の方々、いわゆる軽度者切り問題についてやりとりがありました。これは私も非常に危惧しておりまして、要介護一、二といっても、その中にまさに認知症の方も含まれておられますし、福祉用具等の利用が制限をされて、私もたまたまちょっと、ここのところ腰を痛めていて、きょうはコルセットを巻いて、一週間ほどいるんです。そうすると、歩行の補助器とか用具とか、そういうものを使って歩かれている方々にやはり目が行くんですよ。

 そういうことで、アンケート調査をすると、これはシルバー産業新聞にも出ていますけれども、外出を諦めるとか、お風呂、食事、いろいろなことを、掃除も含めて、諦めるというような方もどんどん出てくる結果も出ているんですね。

 もちろん、介護保険の制度の持続可能性、私は認識しますけれども、大臣、資料にもきょうおつけしていますが、これは読売新聞の資料ですけれども、そういう軽度者切りのようなことになって、それで、まさにこういう認知症の方々が容体が悪化をするとか、場合によってはこういう事故が惹起されてしまうというようなことにならないためにも、この軽度者支援のあり方についてはぜひぜひ私は慎重な議論をお願いしたいと思うわけですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 いわゆるこの軽度者に対する生活援助サービスについての議論は、もう何度も申し上げておりますけれども、これは経済財政諮問会議において取りまとめられました経済・財政再生計画の改革工程表の中で検討事項とされておって、それを社会保障審議会の介護保険部会で議論が始まったばかりのところでございまして、これは、高齢者の自立支援、それから介護の重度化の防止という、この介護保険のそもそもの理念、そこから照らし合わせてみて、軽度の要介護者の生活を支える観点からしっかり検討しなければいけません。

 何よりも、財源は三つしかないというのをいつも申し上げておりますが、保険料、そして税金、自己負担、これへの長期的な見通しなどを含めて考えた上で議論を深めていただくということで、何ら、今、初めから何か決まっていることがあるわけではないし、大事なことは、高齢者の自立と重度化の防止ということに照らしてみてどうなのかということの議論を深めていただこうと思っております。

柚木委員 時間が来たので終わりますが、もう少し認識を厳しく、切実に持っていただきたいんです。これは本当に、こういうことが進むと、家族介護の負担がふえて、一億総活躍どころか、逆行してしまう懸念もありますし、きょうはちょっと質問できませんけれども、やはりきょう議論があった介護職の方々の介護職離職ゼロにするため、私も地元でアンケートをとると、現場で働いている方は、これはやはり賃金と人手不足なんですよ、事業者、経営も。

 ですから、そういう点、そして、この軽度者への支援のあり方等を本当によくよく、しっかり考えていかないと、私は、この最高裁判決のような事案も含めて、本当に不幸な事案が今後も出てきかねない、そういう強い危機感を持っておりますので、今後も、そういった視点を持ちながらしっかりと議論をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 きょうは、所信質疑ということでありますので、安倍政権が掲げる一億総活躍社会、そしてアベノミクスの成長戦略の目玉である失業なき労働移動に深くかかわる、先ほども初鹿委員が取り上げた、労働移動支援助成金、そして、それを活用した退職強要問題についてお聞きをしていきたいというふうに思います。

 私がこの問題を最初に取り上げたのは二月二十二日の予算委員会であります。その日の会議録を読み直しますと、当日の朝刊で報じられた王子ホールディングスの事案について、私から、ぜひこれをしっかり調査してほしいというお願いをしたところ、大臣がこのように答弁しています。きょうの報道でございますので、これは私どもとしても当然中身を確認したいと思いますと答弁しています。

 そこで改めて大臣に確認したいんですけれども、この王子の案件を大臣が最初に知ったのはいつなのか、また、どういう報告を受けて、また、それに対してどういう指示をしたのか、お答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 昨年の十二月の二十四日に、基準局の担当者から、民主党の議員の方からの御指摘があるということを一報で聞いたところでございます。

大西(健)委員 年末に、二十四日にもう知っていたんですよね。でも、先ほどの答弁のように、予算委員会では、何か朝日新聞の記事を見て初めて知ったかのような答弁をされた。

 私はこれは不誠実ではないかというふうに思いますが、あわせて、では、どういう指示を昨年末時点でされたんでしょうか。

塩崎国務大臣 二十四日は一報を聞いただけで、こちらから指示を特に細かくしたわけではありませんで、そういう指摘があるならばしっかりと調べるということを言ったというふうに記憶をいたしております。

大西(健)委員 今の答弁だと、では、一報を受けただけで余り詳しい話は聞いていないということなんでしょうか。改めて、ちょっと確認を。

塩崎国務大臣 中身については余り詳しくは聞いておりません。

大西(健)委員 予算委員会でもちょっと申し上げましたが、私の手元に、十二月二十二日の日に、王子側が作成をした、厚労省にヒアリングを受けたときの議事録メモというのがあります。

 これを読みますと、厚労省の出席者としては、北條雇用開発企画課長、松本需給調整事業課長、それから村山労働条件政策課長といった、この問題に関係する責任者が顔をそろえておられます。その中で、このペーパーにどういうことが書いてあるかというと、先ほど御答弁があったように、十二月二十四日昼ごろに大臣説明、その内容で対応スタンスが決まるとのことと書かれています。

 また、これは王子側のメモということでありますが、おかげさまで全般的に弊社の施策に対し違法性はないことを理解いただけたという感触ですと書かれているんです。

 厚労省、これは違法性がないとか問題がないとか、お墨つきを与えるようなことを十二月二十二日に王子側に言われたんでしょうか。いかがですか。

塩崎国務大臣 もちろん、そういうことを言ったということは聞いておりません。

大西(健)委員 この王子側のメモということでありますが、私、見て驚いたのは、退職強要に遭った労働者側に立った発言というのは一切ないんです。例えば、反対に、ヒアリングの中の雰囲気については、詰問調ではなく、議員からどのような主張がされ、どのように答弁するか、検討するためにできるだけ情報を得ておきたいという雰囲気であったというふうに書かれています。

 また、これは北條課長の発言として記録されていますが、議員に資料を漏えいした社員の見当はついているのかという発言も記録をされています。

 専ら関心は、国会対策、犯人捜しなんです。そこに労働者のことなんかこれっぽっちも考えていないという様子がうかがわれるんですね。

 ですから、私は、厚労省というのはまさに人材ビジネスの味方なのか、それとも労働者の味方なのか、このメモを見る限り私は労働者の方を考えていないんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今お読み上げをいただいた資料は、先生の御指摘によれば王子側がおつくりになられたペーパーのようでございますけれども、これは内部資料であるわけでありましょうから、厚労省としてコメントをするような立場にはもちろんないわけでありまして、少なくとも私どもは御指摘をいただいているような形での発言というものは行っていないというふうに担当者から聞いているわけであります。

 当然、今お尋ねがありましたが、厚生労働省は設置法によって労働者の保護というのが省としての使命でございますので、労働者の保護を絶えず考えるということは当然のこととして私どもの責務として履行をしていかなければならないことだと思っております。

大西(健)委員 おっしゃるように、これは王子側がつくったメモであります。

 ただ、この日は王子側を厚労省が呼んでヒアリングしているわけですから、厚労省にも当然この日のヒアリングのメモ、議事録というのが残っているはずだというふうに思いますので、ぜひ私はそれを提出していただきたいと思うんです、そんなこと言っていないというなら。問題ないとか、違法性ないとか言っていない、あるいは犯人捜しのような発言をしていないというならば、そのメモをぜひ提出してくださいよ。

 個人情報等、黒塗りの部分があっても構いません。ただ、少なくとも、厚労省側の発言が明確にわかるような形でメモを提出していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 私が担当の者から聞いているのは、面談概要等の記録は作成していないというふうに聞いております。

大西(健)委員 私も役所で働いていましたから役所の仕事というのはわかりますけれども、当然つくりますよ。これでつくっていないというのは、これは私はうそだと思いますよ。つくっているはずですから、もう一度確認していただけませんか、あるかないかも含めて。

塩崎国務大臣 確認してみます。

大西(健)委員 委員長、ぜひ、これは今、確認していただけるという大臣の御答弁をいただきましたので、委員長にも、今の十二月二十二日に王子側を呼んで厚労省がヒアリングを行ったときの議事録の提出について理事会でも協議していただきたいと思いますが、委員長、お願いできますでしょうか。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

大西(健)委員 私は予算委員会でこの問題を二度取り上げましたけれども、予算委員会での大臣やあるいは総理からの答弁というのは極めて不十分で、また、私は不誠実なものだと思いました。

 ただ、さすがにこのままでは雇用保険法の審議がもたないと思ったのか、一昨日の月曜日の我が党と維新の党の合同部門会議に、厚労省から対応策、改善策というのが出てまいりました。それをきょうは資料としてお配りさせていただいています。資料の一ページ目です。

 私は、個人的には一定の評価をします。これだけのものが出てきた、前進はあったというふうに思います。ただ、不十分な部分も多々ありますので、その部分をちょっと確認させていただきたいと思います。

 まず、1というものですけれども、労働移動支援助成金の支給要件を厳格化するということであります。そして、その厳格化の中身として、退職強要がなかったか否かを確認する本人署名欄を設けるとともに、後で何か問題があったときに直接確認できるように住所記入欄もつくるということであります。

 ただ、これは署名といっても、書類上は真正なものかどうかというのは確認のしようがありません。それからまた、今回のようなケースの場合、根負けして最後は退職勧奨に応じてしまう、そういうような人の場合は、言われるがままに署名をしてしまうようなケースというのも私は考えられるというふうに思います。さらに言えば、一般の方というのは、退職勧奨と退職強要の法律上の違いというのはよくわからないというふうに思うんですね。

 ですから、私は、例えば、確認して署名させると言っていますけれども、退職強要がありましたか、はい、いいえみたいな設問を設定しても、これは無意味だというふうに思います。

 そういう意味では、私はぜひ、事実上の退職勧奨を断ることができない状態、つまり、自由な意思決定が妨げられるような状態がなかったかどうかということを、労働局が、電話でもいいと思います、ちゃんと本人に確認した上でこの労働移動支援助成金を支給するというスキームにすべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 お答えをした三月七日付のペーパーにありますように、「本人の住所欄を設ける。」と書いてありますが、当然のことながら電話番号も書いていただくわけで、今先生おっしゃったように、御本人が、実際はかなり厳しい状況の中で同意せざるを得なくなるということはあり得るかもわかりませんので、当然、そういうことを御本人に確認ができるように住所欄というのを設けるということにしていますので、それは私からそういう提案をして、電話番号は当然あるわけですから、これはもう無作為抽出でも調べるということをしていくことが大事だというふうに思っておりますので、そのようなことはあり得べしという前提でもって私たちはこの欄を設けるということを考えたところでございます。

大西(健)委員 後で確認できるように住所欄なり連絡先を書かせるというのは当然なんですが、私が今言いましたように、署名をさせるに当たっては何かの設問があるわけですよ。例えば、退職強要がありましたか、ありませんでしたか、はい、いいえみたいなのは、さっき言ったように、意味がないと思うんです。だって、退職強要が何か、一般の人はわからないわけですから。

 だから、ちゃんと労働局の担当者がその労働者に、電話でいいと思いますよ、一々会いに行くというと大変ですから電話で、あなた、退職勧奨のときに、自主的にそれは合意されたんですか、それとも、この間の件みたいに、断ってもパソナ、断らなくてもパソナ、選択の余地がない中で合意させられたんじゃないんですかというようなことを口頭で聞き取って、それで強要がなかったということを確認すべきじゃないですか、署名させるといっても、結局は設問の仕方次第で、確認は、その署名は余り意味がないんじゃないですかということを申し上げているのですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 それは事後の話ではなくて事前ということで私どもは電話番号が大事だというふうに思っておりますので、先生おっしゃるように、全員やるというのはなかなか大変かもわかりませんが、事前にそういうことがないかどうかを確かめることができるようにするという意味でも、この電話番号を含めた住所欄を設けるということでございます。

大西(健)委員 私は、ぜひ事前にやっていただきたい、そのことを要件にしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。これから検討するということでありますけれども、ぜひ事前にちゃんと確認をとって、強要がなかったということが確認をとれたものに労働移動支援助成金を支給するというのが当然のことではないかというふうに思います。

 次に、私、予算委員会で安倍総理に対して、退職勧奨を断った場合に再就職支援会社に出向させて自分の仕事を探させるというのはいいんですかということを何度も聞きました。でも、最後まで、適切ではないという答えはいただけませんでした。

 だから、この点について、先ほどちょっと初鹿委員も触れられましたけれども、この一昨日厚労省から出てきた資料、4の二つ目の丸の、一般企業について通知を出すという部分ですけれども、企業に対する通知の中で、人事権の濫用に当たる裁判例等を周知するとしておられます。その中には、使用者の労働者に対する業務命令や出向命令が人事権の濫用に当たり無効となる事例を追加するというふうに書いてあります。

 ここで確認したいんですけれども、これは、退職勧奨を断った場合に再就職支援会社に出向させて自分の就職先を探させることは労働契約法の趣旨に反して人事権の濫用に当たるおそれがあると、通知の中にこれを明記していただけるという御理解でよろしいでしょうか。確認です。

塩崎国務大臣 これは先ほど御答弁申し上げましたけれども、一般に、企業は従業員に対して無限定に業務を命ずるということはできるわけではなくて、必要性や合理性のない業務を命令するということになれば、権利の濫用ということになるので無効となり得るわけであります。その上で、実際の業務命令が権利の濫用に当たるかどうかというのは、個別の事案ごとに、これは最終的には司法において判断されるということは何度も申し上げてきたところであります。

 一方で、労働者保護を使命とする私ども厚生労働省としては、通常甘受すべき程度を著しく超えるような不利益を労働者に負わせるような人事権の濫用は不適切であるというふうに考えておりまして、企業における適切な労務管理を促すために、今回、啓発指導に用いているパンフレットに参照すべき裁判例などを新たに追加をして、これを通達の上、広く周知をしていくということを考えておりますし、企業に対する啓発指導をさらにしっかりと行っていこうというふうに考えているところでございます。

大西(健)委員 そういう抽象的なことを聞いているんじゃなくて、この資料の一ページ目の一番右の下の部分、アスタリスクが二つ書いてあるところで、「使用者の労働者に対する業務命令や出向命令が人事権の濫用にあたり無効とされた裁判例」を追加する事項として想定していると書いてありますけれども、ここに、この事例の一つとして、先般来ずっと申し上げている、出向先で自分の仕事を探させるということは、まさにこの人事権濫用に当たる事例として明確にそこに書いてくださいということを申し上げているんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、これは最終的には民事の問題であるんです。これはどうやってもそういうことでありますので、先ほど来申し上げているような言い方をしているわけであって、どういう形の出向かとかそういうことは、今おっしゃっているような会社の例がどういうことなのかというのはやはり表現し切れないわけでありまして、どういうケースはいいのか悪いのかというのを書くのはなかなか難しいというふうに思います。

 したがって、裁判例で確定しているものについて御参考にして、権利の濫用がくれぐれもないようにしてもらわなければいけないということを明確にしていこうじゃないかということを申し上げているので、最終的にはその働いていらっしゃる方と経営側の、最後のとりでは裁判でありますから、そこで争うということになるわけでありますけれども、しかし、私どもとしては、そこまで至らないでも同様のケースじゃないかということが推測できるような形のパンフレットをきちっと啓発指導のために整えて、今よりも使い勝手がよく、また、先生がおっしゃっているような、今回のようなケースに近いようなことを参考までに載せることをふやすということを申し上げているところでございます。

大西(健)委員 労働弁護団の棗弁護士も、例えばベネッセコーポレーションのリストラ部屋事件、東京地裁立川支部の判決などでも、こうした、例えば出向をさせて、あるいは自分の仕事を探すのが仕事だというのは、これは違法な職務命令ですよという判例はあるんです。

 ですから、そういうことをちゃんとここに明記してください、先ほど来言っているように。自分の仕事を探せというのは、これは人事権の濫用なんですよ。ですから、そこをちゃんとこの裁判例のところに明記してくださいということを申し上げているのであって、それは私は難しいことじゃないと思うんですが、何でそこまでかたくなにやろうとしないのかが、意味がわからないんですけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 いや、かたくなに言っているわけじゃなくて、日本の法律の枠組みがどうなっているかということを説明していることであって、考え方は先生も私も同じ方向を向いているというふうに私は思っています。

 裁判例も、一件一件それぞれ状況は違うわけでありますから、同じ出向といってもいろいろな出向もあり得るわけでありますので、何が違法に当たるような出向なのかということがわかるような、そういう判例を載せようということで、今先生がおっしゃった、このベネッセコーポレーションの場合のものについても、入れることも含めて考えていきたいと思っております。

大西(健)委員 出向させて、そこで自分の仕事を探せという職務命令は、これは労働契約法上、私は人事権の濫用に当たると思いますので、そういう判例をぜひそこに明記をしていただきたいとお願いをしておきたいと思います。

 次の資料をごらんいただきたいと思うんですけれども、労働移動支援助成金の支給先を見ますと、平成二十七年、半分以上が大企業になっているんです。中小企業よりも大企業が活用している傾向が見られます。従業員数の七割、これは中小企業が雇っているんですね。ですから、中小企業が納めた雇用保険の事業主負担で大企業のリストラを支援しているというのは、これは私はいかがなものかというふうに思います。

 また、次の資料ですけれども、これは先ほど初鹿委員も触れた二〇一三年三月十五日の産業競争力会議での田村前大臣そして竹中平蔵氏、安倍総理の発言とともに、予算額の推移というのを載せておりますけれども、ここにあるように、官邸主導で、まさに平成二十六年度に予算額が五億円から三百億円に大幅アップしている。そして、制度の拡充も図っているんですが、平成二十七年度の決算額を見ていただくと、三百五十億も予算を積んでいるのに、使えているのは十五億なんですよ。だから、使えていないんです。

 そこで、この予算をもっと活用しろ活用しろと言うと、今回のようなことが私は起こるんじゃないかというふうに思うんです。つまり、そもそも、平成二十六年度に予算を大幅に増額して、そして制度を拡充して、大企業でも使えるようにするとともに、再就職したかしないかにかかわらず、委託しただけで十万円出す、こういう制度改正を行ったことに、私は政策の誤りがあるんじゃないか。

 ですから、これをもとに戻して、大企業に使わせない、そして、委託しただけで十万円なんというのはもうやめるというふうに、もとに戻した方がいいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 一つは、大企業、中小企業の問題で、直近では、大企業と中小企業と同じ件数ぐらい扱ってはいるわけでありますけれども、確かに大企業の方は金額が大きいわけでありますので、問題提起があってもそれなりの意味はあるかと思っておりますが、中小企業のみにするかどうかという問題で、そういう考え方ももちろんあるというふうに思いますが、何度も申し上げますけれども、何の目的でこの制度をつくったかということが大事だというふうに思います。

 企業が事業縮小を行う、あるいは新規分野に行くために古い分野については事業を廃止するとか、そういうようなことがあって、リストラを行うことに伴って離職を余儀なくされる方の次の再就職先を早く探すということを目的としているわけで、失業なき労働移動、まさにそのとおりだと思っております。その方の再就職支援の必要性は、離職元の企業規模にかかわらず、大変大事なことだというふうに思います。

 大企業の考え方の中では、今のような考え方に基づいて、中小企業だけではなくて、保険料を拠出している大企業についても支給対象とするという整理で今の制度ができているわけでありますけれども、しかし、大企業よりも中小企業の助成率を高くしておりまして、引き続き、規模の小さい事業所に対して手厚い支援は行っていかなければならないと考えているところでございまして、先生のお考えは、一つの考え方として受けとめてまいりたいというふうに思っております。

 それから、いわゆる最初の十万円の、手付のような形の助成でございますけれども、この助成金というのは、対象者の再就職が実現した段階だけではなくて、企業が再就職支援会社に対して再就職支援サービスを委託した段階においても、その委託経費の一部を支給するという仕組みでございますけれども、これは、企業が事業縮小等のリストラを行った際に、再就職支援会社を活用して失業なき労働移動を促進することを目的としたもので、この仕組みによって、一人でも多くの再就職の実現ができればということであります。

 なお、検討中の、再就職支援会社が退職コンサルティングを行っていた場合は不支給とする等の要件の厳格化によって、もちろん、さらにこの適切な活用を深めていきたいというふうに思っているところでございまして、言ってみれば、この助成が進むに資するかどうかということを考えて、この十万円のあり方ということを考えていくべきなのかなというふうに思います。

大西(健)委員 平成二十六年度に予算を大幅に増額して拡充したときの会議録をちょっと読み直してみると、共産党の高橋委員もこういうことが起こるんじゃないかということを指摘されていますし、あと、我が党の参議院の石橋さんなんかも同じようなことを言っているんですよ。やはり、そのとおりになっているんです。ですから、私は、この二十六年度の制度の拡充がやはり誤りだったと思いますので、ぜひこれは直していただきたいと思います。

 時間がないので次に行きますが、先ほどの厚労省の提出資料、一ページ目の3というところで、厚労省は、王子ホールディングスとテンプスタッフキャリアコンサルティング以外でも、人材会社が退職勧奨を行い、それを断ればリストラ会社が当該人材会社に出向を迫るというケースがないか、調査を実施するということを言われています。

 私も、王子、テンプは氷山の一角で、他の人材ビジネスでも同様のビジネスモデルが展開をされているおそれが極めて高いんじゃないかというふうに思っています。

 ひところ、いわゆる追い出し部屋というのがはやりましたけれども、社会的な批判を受けて下火になっていきました。しかし、今、かわってはやっているのが、この王子、テンプのケースを含む、外部追い出し部屋を人材ビジネスが請け負う、こういうモデルなんです。

 資料をごらんいただきたいんですけれども、資料の五ページ目ですけれども、日本雇用創出機構というのがあります。これは、名前を見ると公的機関みたいな名前ですが、パソナの南部さんが会長を務めている、パソナグループの子会社なんです。この会社は、在職出向の形で人材を受け入れて就職活動を行わせる、人材ブリッジバンクというサービスを提供しています。右側の下の方に写真、ちょっと不鮮明ですけれども載っていますけれども、出向者は、写真にあるような、机の上にパソコンと電話だけが置いてある、こういうオフィスに通って、自分の出向、転職先を探すということに専念できますというサービスなんですね。

 私は、これは、ていのいい追い出し部屋だと思うんですよ。これが日本雇用創出機構という公的機関かのような名称で堂々と商売していること自体が私は不適切だと思いますが、大臣、どうお受けとめになられますでしょうか。

塩崎国務大臣 個別の案件については、お答えをすることは差し控えたいと思っています。

 在籍出向というのがもちろん制度としてはあるわけでありまして、これを命ずるには、やはり個別な同意を得るか、または出向先での賃金、労働条件、それから出向の期間とか、出向でありますから復帰の仕方とかなどが、就業規則等によって労働者の利益に配慮して整備されている必要があるというふうに思っています。出向の命令が、その必要性とか、あるいは対象労働者の選定等に係る事情などに照らして、その権利を濫用したものだったということが認められるような場合には、その命令は当然無効になるというふうに思いますので、こうした法令にのっとって、しっかりとした対応をしていただく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

大西(健)委員 ぜひ、これが外部追い出し部屋のような実態ではないのかどうなのかということを厚労省としても私は調べていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、資料の最後につけましたけれども、これは経産省の予算なんですけれども、多様な「人活」支援サービス創出事業というのがあります。これは何かというと、平成二十五年度から三カ年のモデル事業でやっているんですけれども、例えばヘッドハンティングみたいな市場というのはある、それから若者の労働移動市場もある、ところがミドル層の労働移動のマッチング市場がないので、それを創出しようというモデル事業であります。

 ただ、これは受託先を見ると、下の方を見ていただきたいんですけれども、パソナ、テンプスタッフ、マンパワー、全部人材ビジネスなんですよ。

 そもそも、ミドル層の労働市場がビジネスとして魅力的だったら、勝手にやりますよ。あるいは、そういう市場開拓というのは、本来企業のやるべき話であって、これを国が金を出してやってあげる必要があるんだろうかというふうに私は思うんですね。

 先ほども言いましたように、労働移動支援助成金の拡充は、初鹿委員も指摘されたように、パソナの会長である竹中さんの鶴の一声で、ばあんと五億が三百億になったわけですよ。あるいは派遣法の改正も、これも人材ビジネスがもうかるような改正になっているんです。

 安倍政権の進める労働政策は、全て人材ビジネスがもうかるような方向になっているんじゃないですか。私は、これでは人材ビジネス栄えて国滅ぶということになるんじゃないかと思いますが、大臣の感想をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 経済産業省のスキームでありますので、そのものずばりの多様な「人活」支援サービス創出事業ですか、これについて直接的なコメントをするというのは差し控えたいと思いますけれども、大事なことは、私どもは、企業から離職を余儀なくされる方々を支援して、仕事が継続的にあるようにしていくということが大事であって、それにかかわる企業や離職を余儀なくした企業に対してどうこうというよりは、働く方々にとって大事なことを守るということが大事なんだろうというふうに思います。

 ということでありますので、先ほど来出ております労働移動支援助成金についても、大事なことは、言ってみれば、離職を余儀なくされる人をつくるようなことを人材の紹介をする企業がみずからやるというような、矛盾したことをやるようなビジネスモデルは不適切だというふうに思うところでございます。

大西(健)委員 まさに離職を余儀なくするようなことが行われたわけですよ。それで今もう人生を狂わされた人がいるということです。

 最初に私は予算委員会で塩崎大臣とこの問題を議論したときも言いましたが、私、今回この事案で衝撃を受けたのは、テンプスタッフキャリアコンサルティングは、黒字水準の企業に対して、ローパー、ローパフォーマー、非戦力社員の入れかえというのを提案しているんです。リストアップをして、事実上、指名解雇するという提案をビジネスとして展開しているわけですよ。

 我が国では、単に能力が平均以下であるということで簡単に解雇することができないという仕組みになっているんです。それは、我が国の雇用慣行が、よく言われるように、ジョブ型ではなくてメンバーシップ型であることと深くかかわっているというふうに私は思います。雇用慣行が欧米と全く違うのに、解雇ルールだけ欧米型に合わせようとすれば、そごが生じるのは私は当たり前だというふうに思います。

 メンバーシップ型雇用の日本の雇用慣行の中で、今回のようにメンバーシップを剥奪されるということは、これは死刑宣告に近いんです。ですから、個々の労働者の人生や暮らしに与える影響というのははかり知れないというふうに私は思います。

 ぜひ、大臣、そのことについて一言御感想をいただきたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 今先生御指摘のメンバーシップ型の雇用というのが日本的な雇用の一つだというふうによく言われるわけでございまして、いわゆる正社員について、職務の限定が弱いメンバーシップ型の雇用が広く見られる。使用者が残業命令とか配置転換、出向など幅広く人事権を行使する一方で、働く側に雇用の継続に対する期待感が形成をされて、解雇回避努力も幅広く求められているというふうに思います。

 能力不足を理由とする解雇について、単に成績不良というのみでは許されず、こうした雇用慣行も踏まえて確立したルールに基づいて、解雇に客観的に合理的な理由があると認められるかどうか、解雇が社会通念上相当と認められるかどうか、例えば成績の改善の見込みや、配置転換による解雇回避の可能性、能力を発揮する機会が十分与えられていたかどうかなどの諸事情について、司法で一般に厳しく判断される傾向にあるものと認識をしているわけでございます。

 企業において、こうしたルールのもとで積み上げられた裁判例を踏まえて適切な労務管理が行われるよう、厚生労働省としても、関係法令の周知徹底、また関連する裁判例に基づく啓発指導等、必要な取り組みを行ってまいりたいと考えておるところでございます。

大西(健)委員 時間が来たので終わりますが、同じような退職強要に遭う人を二度と生まないということは当然のことでありますが、先ほど初鹿委員も指摘をされたように、既に退職に追い込まれてしまった人、そのことによって人生を狂わされた人への責任をどうとるのか、この問題が、まだ大きな問題が残っております。それを含めて、この問題に一定の決着がつかない限り、雇用保険法を通すなんてことは私はあり得ないということを申し上げて、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 西村智奈美です。

 きょうは、私は、保育料の値上がり問題と、保育人材の確保について質問したいと思っています。

 まず、塩崎大臣に伺いますが、実は、昨年九月から保育料が実際に大幅に値上がりをした世帯がありました。月二万五千円とか月三万円、保育料が実際に値上がりした世帯がありましたけれども、こういう状況を大臣は御存じでしたか。

塩崎国務大臣 今、九月というお話でありますけれども、四月というケースもあるというふうに聞いているわけでありますが、保育料が上がったという事例については、子ども・子育て支援新制度の施行に伴って、保育料の算定の基礎となる世帯の課税所得の算定に際して、平成二十二年の年少扶養控除廃止に関する取り扱いが変更されたことなどが関係しているというふうに考えられておりまして、この変更は、改正前後で保育料に極力影響が出ないよう配慮をしながら行ったわけでございます。

 ただし、例えば三人以上子供を有する場合に、保育料の負担が重くなるケースもあり得ると承知をしているところでございます。

西村(智)委員 そのとおりなんですね。

 昨年の三月三十一日に、子ども・子育て支援法施行令に伴いまして通知が出ております。内閣府令ですが、年少扶養控除廃止による調整方法を行うことで、不利益変更が出てくる世帯が出てくるということで、この通知は、経過措置を講じて、経過措置によって判定された階層区分に基づく利用者負担の上限額を、当該支給認定保護者の利用者負担の上限額とすることができると。つまり、何を言っているかといいますと、再計算、再算定をし直して、扶養控除が廃止される前の状態で算定をするというその経過措置をとることができる。その場合には、国の方からも、その経過措置をとっている自治体に対しては支援をしますということだったんです。

 ところが、この措置は、夫、妻、子二人の世帯をモデル世帯として設定をされました。ですので、そういった子供二人の世帯につきましては、年少扶養控除廃止前とおおむね同じ程度の保育料となるように、利用者負担額算定の基礎となる市町村民税所得割額が設定されたんですけれども、子供が三人以上の世帯においては負担増となるケースがある、実際にあったということなんです。

 どうしてこういうことが起きてしまったんですか。内閣府に伺います。

高鳥副大臣 西村委員にお答えをいたします。

 まず、保育料が上がる要因でございますけれども、毎年九月に保育料が改定されるわけでありますが、過去の収入に基づいて算定をされるため、前年度の収入が上がれば保育料も上がるということがまず一つございます。

 そして、今ほどお話がございましたけれども、昨年九月に年少扶養控除のみなし適用を行う経過措置を講ずることをやめた自治体があったということなど、複数の要因が考えられ、その要因ごとに影響の実態について把握することは困難であるわけであります。

 年少扶養控除のみなし適用の廃止について申し上げれば、子供が三人以上いる世帯においては負担増となるケースがあり得るものと想定をされたため、市町村の判断により、既に入園している子が卒園するまでの間に限り、年少扶養控除のみなし適用を行う経過措置を講ずることを可能としているところでございます。

西村(智)委員 一点、今の答弁を伺った上で確認したいのは、今、現に入園している子供たちが卒園するまでの間は経過措置をとることが可能だと。つまり、これから入ってくる子供たちについてはその経過措置の適用はないということで、確認してよろしいですね。

高鳥副大臣 御指摘のとおりでございます。

西村(智)委員 つまり、値上がった状態のまま、今いる子供たちが卒園をしていってしまえば、新しく入ってくる子供たちについては全てが新しい算定方式になって、三人以上の子供のいる世帯においては保育料が今のまま大幅に値上がっている自治体が実際にあるということなんです。

 これは、昨日いろいろヒアリングを行いました。実際に、どのくらいの自治体で、どのくらいの世帯の皆さんが保育料が上がっているということを把握しているのか。これは、内閣府、きちんと調査をしているでしょうか。

 これは、やはり国が、子育て支援は大事だ、環境整備もやりましょうと言っているからには、最低限それくらいはやっていてしかるべきだと思ったんですけれども、この状況、全国的な、経過措置をとっている、とっていない、あるいは値上がりをしている状況ということについては、内閣府は調査をしていますか。

高鳥副大臣 お答えをいたします。

 子ども・子育て支援新制度における保育所等の利用者負担額の算定に当たっての年少扶養控除のみなし適用については、まず、市町村の事務負担が大きいということがございます。そして、年少扶養控除廃止後、一定の期間が経過していること、今後、他の税制改正が行われれば、再計算が相当複雑になる可能性、これらを考慮いたしまして、新制度の実施主体となる市町村の御意見も踏まえつつ、子ども・子育て会議で御議論いただいた上で、廃止することといたしたものでございます。

 この廃止に伴う負担増でございますけれども、市町村の判断により、既に入園している子が卒園するまでの間に限り、年少扶養控除等の廃止前の旧税額に基づく利用者負担額を適用する経過措置を講じることを可能としているところでございまして、こうした廃止に至る背景や経緯、経過措置を設けていることを総合的に考慮いたしますと、改めて実態調査を行う必要はないと考えておりますが、多子世帯に係る保育料の問題については、二十八年度予算におきまして、保育料の軽減として、年収三百六十万円未満相当世帯について、多子計算に係る年齢制限を撤廃し、第二子半額、第三子以降無償化を完全実施するとともに、一人親世帯等の保育料軽減、負担軽減として、年収三百六十万円未満相当の一人親世帯への優遇措置として、第一子は半額、第二子以降は無償とすることとしており、所要の経費を計上したところでございます。

西村(智)委員 今の答弁、とてもびっくりしたんですけれども、自治体の調査を行うつもりはないということですか。そんなことで、子ども・子育てを進めようという内閣府、そして一億総活躍、希望出生率一・八を掲げる安倍政権として、本当にそれでいいと思っているんですか。私は、少なくとも自治体の調査はやるべきだと思います。実際に、今、現に上がっているところがある。

 北海道テレビの取材で、子ども・子育て会議の会長の無藤先生へのインタビューがありました。その中で、この第三子の保育料の値上がりについては、子ども・子育て会議では細かいところまでは議論ができなかった、そこまでは承知していなかったというふうに会長みずからがおっしゃっておられました。

 また、これも北海道テレビの取材ですけれども、指定都市市長会の会長、林横浜市長も、これは国が責任を持って対応すべきだというふうに述べておられます。実際、政令指定都市の中で、約半数の市がこの問題に対して対応していない。つまり、軽減措置をとっていないとか、あるいは、とっていても、さかのぼって保育料をお返しするということをしていないとか、そういう実態にあるわけですから、ここは少なくとも自治体の調査は最低限やる。

 自治事務ですから、それはなかなかやりにくいというふうにもしかしたらおっしゃるかもしれません。ですけれども、やはりここは、子ども・子育て新システムで、本当に苦労に苦労を重ねてスタートした仕組みじゃないですか。こんなおかしな形で保育料が値上がって、第三子以降のお子さんたちに対して保育料が物すごくふえてしまったという状況を本当に放置していいと思いますか。

 副大臣、もう一回お答えください。

高鳥副大臣 お答えをいたします。

 先ほど来申し上げているとおり、保育料が上がった要因というのは複数あるわけでございまして、経過措置を取りやめたことによってどれだけ影響を受けた方がおられるかということを、この要因だけで取り出すことは極めて難しいわけでございます。

 そして、委員おっしゃったとおり、これは自治体の自治事務ということにされておりますので、内閣府としてはこのことについて調査をする考えはございません。

西村(智)委員 こんなに無責任な答弁で、私、もうどうしたらいいのかわからないですよ。

 保育料が値上がりした要因、確かにそれだけではないと思います。計算の仕方が違うというだけではなくて、それはあるかもしれないけれども、でも、今政府は、幼児教育の無償化を段階的に進めていこうとしているわけですよね。段階的に無償化を進めていこうとしている中で、どうして保育料だけが値上がっちゃうところがあるんですか。こんなの本当に放置していいと思いますか。

 年収三百六十万円未満相当の子育て世帯の方々については、確かに平成二十八年度の予算事業によって、第二子、第三子以降減免される子供たちは出てくると思います。だけれども、世帯年収三百六十万円というと、今大体、世帯年収の中央値が四百十万円とか二十万円ぐらいでしょうから、恐らく、三百六十万といってもほとんどの世帯は対象になってこないのではないか、大多数の世帯は対象になってこないのではないかというふうに思います。

 副大臣、もう一回お伺いしますけれども、ここはやはり自治体の調査をやって、でないと、安倍政権が言っていることと実際に行われることが全く逆行しているという、この汚名がこれからも続くことになってしまいます。ぜひ調査はしていただきたい。そのことはもう一回答弁いただけませんか。

高鳥副大臣 先ほどもお答えしたとおりですけれども、保育料が上がったという要因は複数あるわけでございまして、その点だけで取り出すことは非常に難しいということがございます。

 そして、多子世帯への子育て支援、これは、幼児教育無償化の段階的推進ということは方向性は出しておりますので、その中で引き続き検討してまいりたいと思います。

西村(智)委員 段階的な幼児教育、保育料の減免というのは予算事業なんですね。法律事業ではありません。しかも、今回、社会保障と税の一体改革の中で、当初一兆円だと見込まれていた子育て、保育に係る予算は〇・七兆円に削られてしまい、プラス、余分があれば何とか追求して保育の質の確保もやりたいと言っていた〇・三兆については、まだ財源が見つかっておりません。つまり、お金は、どこにも安定的な財源としては存在していないんです。

 来年度の予算は百億円。この根拠を聞きましたら、何だかよくわからないんですけれども、つかみ金かなというふうに私は思いました。そうすると、来年度以降だって厳しい予算編成になってくるわけでしょう。軽減税率でもう既に一兆円もお金がなくなっちゃう、社会保障のお金がなくなっちゃっているわけですから、ここはやはりきちんと手当てをするということをしないと、さらに多子世帯で保育料が値上がったままだという世帯が皆さんの町にいらっしゃるということになるんですよ。いいんですか、本当にそれで。私は、この点については改めてまた伺っていかなければいけないと思います。

 副大臣、きょうは省にお帰りいただいて、調査は何とかするという方向で、加藤大臣の説得もぜひお願いをしたいと思います。

 それで、次は、保育人材の確保について伺いたいと思います。

 子育て支援員というのをスタートさせるということで伺いました。今年度から事業がスタートして、この子育て支援員の研修が各自治体において始まっているということのようなんですけれども、厚労大臣に伺います。塩崎大臣に伺います。

 この研修の実施状況、今はどのような人たちがどういう研修を行っておられるのか、それについて伺います。

塩崎国務大臣 今先生から御指摘のありました子育て支援員研修、これは、子ども・子育て支援新制度のもとで実施をされます小規模保育それから家庭的保育等において、子供が健やかに成長できる環境や体制が確保できるように、地域の実情とかあるいはニーズに応じて担い手となる人材を確保することを目的として、平成二十七年度に創設をしたところでございまして、今年度においては、都道府県それから市町村を実施主体として、地域保育コース、それから放課後児童コースなど、子育て支援の内容に応じた各コースの研修が二百五十五の自治体において実施をされ、約二万四千人の方々が受講をされる見込みとなっているところでございます。

 この子育て支援員研修は、小規模保育等の子育て支援分野の各事業に従事をしている方、それから地域において子育て支援の仕事に関心を持つ方を対象として、子育て経験などを生かして、子育て支援の分野で支援の担い手となっていただけるよう、必要な研修を実施しているところでございます。

 引き続き、子育て支援員研修の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。

西村(智)委員 答えていただいていないんですけれども、私は、今どのような人たちがどういう研修を受けていらっしゃるのか、つまり、子育て支援員として活躍されると期待される人たちはどのくらいの固まりでどのくらいいらっしゃるのか、それについて、今年度からスタートしている事業ですから、もう今年度もあと一カ月で終わりです、そろそろ把握していらっしゃるんじゃないか。

 これは、政府の産業競争力会議で発案がされたのは、もう今から約二年前。閣議決定されて、ここで、これもどうかと思いますけれども、育児経験が豊富な主婦等が活躍できるようにということでスタートさせたこの子育て支援員の研修制度でありますので、そろそろ姿が見えてきていないとおかしいんじゃないかと思いますが、どうですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、子育て経験などを持っていらっしゃる方で御関心のある方が応募してきてくださっているというふうに聞いておりまして、多様なバックグラウンドの方々がおられるというふうに聞いております。

 そういう方々が全国で約二万四千人、二百五十五の自治体におられて、研修を受けつつあるということだというふうに聞いておるところでございます。

西村(智)委員 大臣、これで本当に保育人材の確保につながるというふうにお考えでしょうか。

 私は、幾つかのところ、ヒアリングをしてみたんですけれども、実は、この研修を自治体が本気でやっているかといいますと、どうも疑わしいところがあります。

 今回の子育て支援員の研修、国から二分の一の補助が出ますけれども、二分の一は自治体で負担しなければいけないということで、予算的に厳しいということであったり、あるいはテキストが有料ですとか、いろいろな問題があって、自治体の方は、どうも子育て支援員について、少し、国ほどにはというか、政府ほどには積極的ではないというふうに私は受けとめております。

 それから、問題は研修のあり方なんです。

 実は、研修を検討する場面に、子育て支援員となって実際にかかわることになる現場の人が入っていない。つまり、現場のことをわからない人たちで研修内容を検討していて、そのもとで研修が行われて、実際に、きょうは資料もおつけしませんでしたけれども、子育て支援員研修の体系というのを見ますと、地域保育コースとか、地域子育て支援コースとか、いろいろありますけれども、この研修は非常に短時間で終わってしまう。

 例えば、小規模保育それから家庭的保育、また事業所内保育、ちょっと一時預かり保育はおいておくとしましても、今申し上げた三つの保育の形というのは、言ってみれば、子供たちとすごく濃密な時間を過ごすことになるわけですよね。だけれども、そういった方々も、合計で、基本研修を除いて大体二十時間ぐらいの研修を受ければ、すぐ子育て支援員として、今申し上げたような、小規模保育、家庭的保育、事業所内保育で仕事ができるようになる。しかも、定員内の職員としてカウントをされて仕事ができるようになるということなんです。

 こういう制度は、私は実は、余りよろしくないんじゃないか。

 つまり、確かに、ファミリー・サポート・センターなどで、ボランティアで、善意で、研修を受けた人が二時間くらい子供と一緒に遊ぶという意味では、これも同じ二十時間くらいの研修なんですね、二十時間くらいの研修を受けて子育て支援員となって、そしてそういう子供の遊び相手となるというのは、これはあると思うんです。

 だけれども、今申し上げたような、小規模保育、家庭的保育、事業所内保育というのは、言ってみればすごくハードな仕事だと思うんですよ。恐らく、こういうところでは、ゼロ歳児、一歳児、二歳児、こういった子供が多いんだろうというふうに思いますし、はいはいをする子供と、立ち上がって走り回る子供と、同じ施設の中で、しかも余り広くないと思われる施設の中で一緒に預かることになるので、これは例えば普通に年齢別の保育をやっている大きな施設の保育所と比べても、やはり高いスキルが必要になってくる、逆に、もっとそれよりも高いスキルが必要になってくるのではないかというふうに思うんですね。

 そういった人たちをつくるこの子育て支援員研修も、本当にこの二十時間の研修でいいのでしょうかということが私の質問なのであります。

 このような制度設計、私は、ちょっと根本的に間違っているんじゃないか、もう少しばらけさせるとか、目的をきちんと明確にするとか、そういう形にしていくべきではないかというふうに思いますが、大臣の答弁を求めます。

    〔委員長退席、小松委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 もともと、この子育て支援員の制度そのものは、小規模保育とか家庭的保育などにおいて、半分は保育士さんでありますけれども、それに加えて子育て支援員ということで、多様な保育を行おうということだったと思っております。

 今、二十時間の研修のお話をいただきまして、それで十分なのかということでございますが、当然、保育士の正式な資格をお持ちの方よりは研修の時間は少ないというのはそのとおりでありまして、そもそも、ですから、先ほど申し上げたように、多様な保育のあり方としてこういう形を考え出されたというふうに理解をしているわけでありまして、これで終わりということでは決してなくて、保育士さんを含めて、それぞれまたOJTで学ぶということが大事になってくるわけでございます。

 あるいは、小規模保育事業あるいは事業所内の保育事業の一部において、保育を行う者の二分の一以上が保育士であるという最低基準があるわけでございますので、そういった配置基準上の定めを守りながら、保育士とともにチームを組んで、保育の担い手として活躍をしていただきたいというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 研修時間二十時間で、比較すれば短い、比較すればどころの話じゃないですよ。

 保育士になるために、今どのくらいの勉強をされるか、当然、大臣、御存じですよね。きちんとした専門的な知識を持って、実習も出て、そして資格を取って、保育士になって、仕事をされておられるんです。

 今、大臣は、二十時間で短いかもしれませんがなんておっしゃいましたけれども、短いどころじゃないですよ。短いどころじゃないですよ、二十時間。これで、今申し上げた、小規模保育、家庭的保育、事業所内保育で、実質的には保育士と同様の仕事をしていただくということになるわけですから、これは私はやはり大きな問題だというふうに思います。

 何度も申し上げますけれども、私、子育て支援員という制度そのものを否定しているのではありません。もちろん、善意で子供を例えば二時間とか預かる、そういった形はあっていいと思うし、できればそういった地域ぐるみで子供を育てるという形が整っていけば、今保育にまつわるいろいろな課題もそこから解決に向かっていくということは期待はしています。

 だけれども、今申し上げたような、実質的に保育士と同じような仕事をする、人を育てる子育て支援員の研修が二十時間というのは余りにもおかしいんじゃないですかということを申し上げております。

 それで、今回もう一つ気になりましたのは、この子育て支援員の方が研修を受けた後に、実際にどういう形で御自身の職場を見つけていくのだろうかということであります。

 東京都の事例を見てみましたら、東京都は、自分たちでは子育て支援員として研修を受けた人たちに対しては仕事のあっせんなどはしない。しないで、ハローワークに行ってくれという話なんですね。ハローワークに行っていただきますと、事業所の皆さんがどういうふうにそういった方々を見るか。これは私も想像の世界でしかありませんけれども、最終的には、やはりそういった子育て支援員の方々、恐らく多くの方が短時間勤務になっていくのではないか。要するに、時間勤務と申しましょうか、フルタイムではなくて時間勤務でということになってくる、パートとか。

 そういうことになると、今度心配になってくるのが、その方々も含めた保育現場での労働条件です。これについて大臣はどういうふうに見ていらっしゃいますか。

塩崎国務大臣 今お話しの、昨年四月から、子育て支援員など一定の研修を受けた方については、小規模保育事業、それから事業所内の保育事業における保育従事者のほかに、保育所等における保育士の補助など、さまざまな保育の現場で御活躍をいただいていくということが期待をされているわけでありまして、勤務形態などは、これらの方が希望する働き方などにより異なってくると考えられるわけでありまして、先ほど申し上げたように、保育士とチームを組んで常勤として働く方も多く出てくるのではないかと考えております。

 これらの方々が、保育現場での経験を通じて、保育士資格の取得を目指してキャリアアップしていくことも考えられておりまして、さらなる処遇の向上につながっていくことも期待をされるわけであります。このため、平成二十七年度の補正予算において拡充をいたしました奨学金制度の活用促進などによって、これらの方々の保育士資格の取得もしっかりと支援をしていかなければならないというふうに考えております。

西村(智)委員 何か、ぬえみたいな答弁なんですけれども。

 つまり、チームで仕事をする、それはそれでいいことだと思いますが、今政府として最優先に取り組んでいかなければいけないのは、保育の質の向上ですよね。

 保育の質の向上というのは何であるかということは、これはもうずっと議論になっていますけれども、最終的には、やはり保育士の待遇改善ですよ。

 今、全産業平均と比べても十一万円も低い保育士の皆さんのお給料、これをしっかりと確保することによって、スキルがあり、専門的な知識もあり、訓練も受けていて、そして、だんだん継続年数がふえてくればそれだけの経験も積み上がってくる、そういう保育人材、そういう保育士さんたちの確保、これを私は最優先に考えなければいけないと思いますし、今、子育て支援員という中で、家庭的保育とか小規模保育、事業所内保育という、言ってみれば少し小さい空間の中で、研修を受けた方々であっても働けるということになっていけば、私は、保育士の待遇改善に向けたインセンティブがやはり弱まってくる、こういうふうに思います。

 私は、ですから、今回の子育て支援員の研修の制度、あり方について、もう一回見直してほしいというふうに思っています。

 それから、あわせてもう一点伺いたいのは、教員のOBを、内閣府令を改正して、今度、認定こども園で働けるようになる、するということのようなんですけれども、そのことは事実でしょうか。

    〔小松委員長代理退席、委員長着席〕

高鳥副大臣 お答えをいたします。

 保育士が不足している、これは深刻な実態があるわけでありますが、これに対しまして、厚生労働省の保育士等確保対策検討会におきまして、平成二十七年十二月に、保育の担い手確保に向けた緊急的な取りまとめが出されたところでございます。

 この取りまとめに基づきまして、まず、保育所において、保育士と近接する職種である幼稚園教諭や小学校教諭、養護教諭の免許を有している方を一定の範囲内で活用できる旨、平成二十八年二月に、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準が改正されたところでございます。

 保育士資格を持つ方が必要になるということは認定こども園でも同様でありまして、保育所との並びにおいて、朝夕の保育教諭の配置の要件の弾力化、それから、小学校教諭免許等の保持者の活用、研修代替要員等の加配人員における保育教諭以外の人員配置の弾力化といった措置を行うべく、認定こども園の基準の改正を予定いたしております。

 なお、基準の改正につきましては、平成二十七年度内に行うべく、現在パブリックコメントを実施しているところでございます。施行日は、平成二十八年四月一日とする予定でございます。

西村(智)委員 待機児童を解消し、受け皿拡大が一段落するまでの特例措置ということなんですけれども、私は、これは一度始めてしまったらなかなかやめられない事態になってくるんじゃないかと思います。

 政府が今言っている緊急の対応プラン、これで本当に平成二十九年度末までに五十万人分の新たな受け皿を確保できるか、この見通しについて、私は、大変残念ですけれども、怪しいというふうに思っています。そうすると、内閣府令で拡大された、保育士の資格を持っていないけれども認定こども園で働ける人たちをふやすというこの制度、これが、言ってみれば、ずっと継続的に続いていってしまうんじゃないか。このおそれが非常に強いと思うので、いつまでやるのかということについて、ここは明確に答弁をいただきたいと思います。厚労大臣からでしょうか。

塩崎国務大臣 今の特例の扱いについてのお尋ねがございました。

 保育の受け皿整備を進める中で、保育士の有効求人倍率が二倍を超えているような状況でございまして、保育士の確保が難しい状況を踏まえて、先ほど申し上げた、朝夕における保育士配置要件の弾力化などを行うこととしておりますが、待機児童の解消に向けては、待機児童解消加速化プラン、これに基づいて保育の受け皿拡大を進めているところでございまして、今回の特例については、待機児童を解消し、保育士確保が困難な状況の背景にある受け皿拡大が一段落するまでの緊急的、時限的な対応というふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 結局、いつまでにやめるのか、いつまでやるのかということについて、明確な答弁はなかったわけなんです。

 最後にもう一回、最初の保育料の問題について、内閣府副大臣と厚労大臣に伺いたいと思います。

 私はやはり、これまでの質問の中でも、どうも安倍政権は、一億総活躍とか希望出生率一・八の実現とか言っている割には、保育のこと、保育支援、それから子育て支援については、非常に後ろ向きだ。つまり、保育料が上がっても、それを見過ごすというか無視する。それから、子育て支援員については、やはり、保育の質の充実につながるようにという多くの願いがあるにもかかわらず、それを無視して、とにかく今この急場だけしのごうということで、内閣府令一本で、学校の先生のOBに資格を一時的に与えて保育現場に入ってもらうとか、このように非常に軽んじられているということが私は本当に我慢なりません。

 改めて内閣府副大臣と厚労大臣に最後に一点伺いたいのは、やはり、この保育料が上がったという問題は放置できないと思います。実際、今入園している子供たちが経過措置をとられている自治体においても、これから入ってくる子供たちは経過措置の対象外になってしまうということは、これはやはりおかしいというふうに思います。

 そういった現実を直視していただいて、来年度以降も、経過措置がとられてきた期間よりも保育料が高くなることがないように、来年度以降というのは再来年度以降もという意味ですが、将来、経過措置がとられていた期間よりも保育料が高くなることがないように、きちんと政府の責任で対応するということをぜひ明言していただきたい。お願いをいたします。

渡辺委員長 既に持ち時間が経過しております。答弁は簡潔に。

高鳥副大臣 お答えいたします。

 政府といたしましては、委員御指摘の、方向性は決して違っているわけではないと思いますけれども、財源を確保しながら、可能な限り、子育て、また多子世帯における保育料負担軽減について努力をしていきたいと思います。

塩崎国務大臣 一億総活躍社会づくりの中で、多子世帯への配慮ということは安倍内閣としても優先課題としてやっていることでございますので、引き続き、保育料の負担軽減を含めて配慮してまいりたいというふうに思っております。

西村(智)委員 終わりますが、政府がお金がないのよりも、実際に今子育てしている皆さんが大変苦労されているというこの現実の方が重大なんですよ。そのことを私は最後に申し上げて、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 大臣、保育園落ちたの私だ、今こういう署名活動が瞬く間に広がりまして、きょうまでに二万五千通、その署名が集まりました。二万五千を超えております。今この場に届いたのが、その二万五千の悲鳴です。

 きょう、傍聴もやはりしたいという方がこの国会に来てくださっているのですけれども、見てのとおり、この場にはそうたくさんの方はおられません。多くの方が、赤ちゃんと子供さんと一緒にお母さんが来ています。今、別室でこの中継をごらんになっています。

 この署名の発端は、二月中旬に投稿された一通のブログでした。「保育園落ちた日本死ね!!!」と。予算委員会で私は安倍総理にこのブログを紹介して、やはり軽減税率一兆あるいは年金のばらまき三千九百億より子育て支援三千億を優先すべきだ、こう思って議論に挑んだんです。

 ところが、予算委員会では、この投稿者が匿名だという理由で、ブログをパネルで紹介することや委員の皆さんにお配りすることができませんでした。きょう、こちらの委員会では、皆さんのお手元に、このブログと総理の反応、その反応に対する投稿者女性のコメントなどが記事になっているものを配付できております。

 予算委員会では、パネルも資料も示せなかったので、私がブログの内容は読み上げました。きょうは静かにお聞きいただいていますけれども、あの予算委員会では、読み始めたその瞬間から物すごいやじと怒号の嵐でした。その中身は、やめろよやめろ、出典はどこだ出典は、誰が書いたんだと。私、やじにはなれて、声は大きいんですけれども、それでもブログを朗読する声が私自身にも聞こえないぐらいでした。さらに、それに続く総理の答弁は、承知していないが、匿名である以上、実際のことは本当かどうかも含めて確かめようがない、こういうものでした。

 この予算委員会の出来事をきっかけに、匿名なら聞かないんだ、匿名なら聞かないということであれば、保育園に落ちたのは私だと声を上げようと署名が始まり、国会の周りでスタンディングデモが始まり、きょう、この場に二万五千を超える署名が集まり、そして今、赤ちゃん、子供を連れたお母さんたちが別室でこの中継を見守っています。

 この署名の中には、保育園落ちたの私だ、さあ、名前を出しましたよ、こんなに大勢いますよ、これでも対策は後回しですかと。この中にあります。やじを飛ばした議員の名前と顔を出すべきだと思います、こういう声もあります。実態を知らない安倍さん、海外に取り残された母子を救うと叫んでいましたが、日本に住む母子を救うことにもっと真剣であってほしい、こういう声もあります。

 大臣、問題は、誰が悲鳴を上げたかではない、悲鳴が納得を呼ぶ現実、悲鳴に共感する声が強烈なスピードで社会に広がっているという、我々も驚いてしまうようなこの現実、これが問題だと思います。

 それでも、名を名乗れということなので、きょう、ここに二万五千のママたちの署名、賛同する方の署名を持ってきました。私は、ここまでしないと耳を傾けない政治はおかしいと思います。

 大臣、安倍総理のあのときの、今紹介した答弁は適切だったと思いますか。やじを飛ばした議員の皆さんの対応は適切だったと思いますか。匿名だとやじるなら、やじった方はみずから名乗りを上げるべきだと思いませんか。まず、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど対策を後回しにするのかというお話がございましたが、それは全く安倍内閣としては逆であって、待機児童解消加速化プランは、もともと、二十九年度末までに四十万の受け皿を用意して解消していこうということでありましたが、それを、どうもこのままでは、二十七年の四月時点でそれまで減っていた待機児童が逆にふえてしまった、事情はいろいろありますけれどもふえてしまった、これは、さらにまたこれから女性が活躍される中で受け皿が必要だということで、十万ふやして五十万人分の受け皿をつくろうということでありましたから、私は、山尾委員もそれから安倍総理も全く同じ方向を向いていて、やるべきことは一つ。

 それは、やはり子育てをしっかり支援をして、日本の未来を背負う子供たちをしっかりみんなで育てていこうということで、同じ思いでいるはずだと私は思っておりますので、引き続き、議論を深めながら、こういった形で困るお母さんたちがいなくなるように、私たちは最善の努力をしていかなければならないと思っております。

山尾委員 不適切だと言うどころか、私と安倍総理が同じ方向を向いていると思うとおっしゃいました。勘弁してほしいと思います。軽減税率一兆円が突然横入りして、三党で決めた子育て支援三千億を後回しにしている政権と私は同じ方向を向いていません。

 受け皿をふやそうとしているというのは私も存じ上げています。でも、皆さんのお手元に資料を用意しましたけれども、二ページ目、これは、都市部を中心に、つまり、待機児童が厳しいところは、保育所の開設、要は、受け皿開設もおくれている。自治体によっては、計画の六割、半分、こういう自治体があるんだ、こういう記事を用意しました。結局、受け皿、受け皿と言いますけれども、政府の打ち上げている予想の数字と実態はずれています。達成率は、ここにあるグラフのとおりです。

 これは、どの政権だって難しいことですよ。でも、私がこの場で申し上げたいのは、例えば、この記事で、近隣住民の理解なしに保育園を新設することは難しいと言われる中で、待機児童の切実さに理解のない総理や大臣がこの国を動かしていたら、保育園の受け皿づくりだって進みませんよ。保育園に落ちるということがどういうことか……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。保育園に落ちるということがどういうことか、この署名の中から一通紹介します。

 日々の厳しさに泣きそうになります、主人の収入は少なく、私も働かねばなりません、でも、保育園には入れてもらえませんでした、認証保育などもいっぱいです、そもそも、入れても高額過ぎて、私が働く意味がありません、子供をおぶってでもよければ働きたい、それくらいの気持ちですが、社会はそれを許してくれません、つらいです、本当につらいです、子供は幾らでも欲しい、何人だって欲しい、子供の多いお母さんを見るとうらやましくて涙が出ますと。

 大臣、まず、この署名、二万五千を超えています。この署名、私がこの場でというより、後ででいいので、ママたちから、当事者の皆さんから、賛同する皆さんから、まず受け取っていただけませんか。

塩崎国務大臣 身内の話をして大変恐縮でございますけれども、私にも息子が二人いて、そのうちの下の子供が、数年前でありましたが、東京で、目黒区に住んでいて、自分のすぐ近くの保育園に子供を入れようとした。共稼ぎでありますから、勤めるためには保育園が当然必要だということでありましたが、目黒区は一つもあいていない。無認可も認証もなかった。隣の区なども調べてみて、結局一つだけあったのは、認証保育園で、港区でありました。

 聞いてみると十数万円月にかかるというので、これはまだ若い二人の給料ではとても無理だなというふうに思いました。おまけに、東京駅近辺で働いていた若いお母さんは、車で子供を連れていくということになると駐車場を職場近くに当然借りなきゃいかぬということで、四カ月ぐらい、東京駅近辺で月決めで借りれば月三、四万は軽くするわけで、結局二十万近く払う。これはきっと諦めるんじゃないかなと思いましたが、二人は決断をして、自分でそれは負担をしていくことを決めました。四カ月間行って、これは運よくではありましたが、四月から望んでいた目黒区の保育園にたまたま入れたということであります。

 したがって、そのときたまたま入れていなかったら、そのブログにあるようなことになっていたわけでありますから、私はそのブログに書かれていることはよくわかるわけでありまして、やはりそのくらいやってでも、ですから、二十万として、四カ月行ったら八十万ですから、八十万かけてでも子供を預けられる場所を確保して働きたい、そういう人がいることはよくわかっています。

 したがって、先ほど受け皿づくりに後ろ向きだということをおっしゃいましたが、私はそんなことは決してないし、安倍総理こそが四十万から五十万にふやすと言っているわけでありますから、いろいろやりとりはございましたけれども、そこのところはお考えをいただければと思います。

 先ほどの、署名を受け取るかどうかということについて、当然それは受け取りたいと思います。

山尾委員 直接会って受け取っていただけますか。

塩崎国務大臣 受け取りたいと思います。

山尾委員 それでは、しっかり、これは直接会って、当事者の声を聞き、受け取っていただきたいと思います。この場で約束いただきました。

 大臣、この中に、今のカウントの中では待機児童にカウントされないんだけれども、同じように苦しんでいる人の声というのもあるんです。こういう声です。

 求職のとき、二人の子を同時に申し込みしたら、上の子だけ入園許可で、下は待機児童に、でも、上の子を入園させた以上、二カ月以内に仕事を見つけないと退園だと。下の子の預け先を必死で探し、やっと見つけた一時保育は時給より高い保育料、何の罰ゲーム、仕事しちゃいけないということかと。

 今のカウント方法でいけば、恐らくこの方は待機児童家庭に当たりません、認可外とはいえ入れているからということで。でも、今の声を聞いたら、これは解決しなきゃいけないですよね、ほっといたらいけないですよね。

 お手元のペーパーを見てください。三枚目、「待機児童数の推移」という厚労省が作成した資料です。

 平成二十七年、待機児童数は二万三千百六十七人。でも、この数には、今のように認可外には入れて待機している人は入っていません。右側が線が引かれています。昔だったら、認可外で生活をしのぎながらも認可を待って待機している人はカウントに入っていたんです。

 大臣にお伺いします。

 昔のこの定義、認可外でも頑張って待機している人も合わせた今の数字は何人なんですか。

塩崎国務大臣 待機児童の数については、毎年度、各市町村から集計をして把握をしているところでございますけれども、平成十三年度以降、今お話がありましたとおり、新しい待機児童の定義というのができまして、それに基づいて把握をすることとしておりまして、それ以前の旧定義による数値、変更後の数値については、現在、把握をしていない状況でございます。

山尾委員 今申し上げたように、認可外でも、生活をしのぎながら、やはり認可に入らないと生活がやっていけないと待機している人の数は、厚労省は把握していない。

 把握すべきだと思います。大臣、把握していただけませんか。

塩崎国務大臣 厚労省として今数字は把握をしていないということを言ったまでの話であって、当然、これは、潜在ニーズがどれだけあるのかというのは、厚労省としても、子育て世代の女性の就業が進む中でありますし、保育の受け皿拡大は、顕在化してくる待機児童数のみに着目するのではなくて、やはり、潜在的にこれからどうふえるんだろうかということも踏まえて進めることが大事だというふうに思っております。

 当初、四十万と言っていた加速化プランの目標値でありますけれども、市町村による潜在ニーズの把握を積み上げて目標設定をしておりまして、今後女性の就業がさらに一層進むということを念頭に、一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策によって、加速化プランに基づく平成二十九年度末までの整備目標を、先ほど申し上げたように、四十万から五十万にふやそうということを言っているわけです。

 今お話がありましたが、認可か認可ではないかというのは、要するに、その地方公共団体の公費が入っているかどうかということでありまして、そこで線を引いておりますけれども、さまざまなケースが今先生御指摘のようにあろうかと思いますので、そういうところについてはしっかり把握することも大事だというふうに思っております。

山尾委員 はっきりお答えいただきたいんですけれども、だから、旧定義による待機児童数もやはりしっかり把握をして、私は両方把握をし、公表すべきだと思うんですけれども、それをやっていただけるんですか、いただけないんですか。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、潜在ニーズを踏まえた上で、大きく見積もって五十万ということで、今、受け皿整備を進めて、特に都市部がお困りであるわけでありますから、そういうことをやろうということをしておりますので、そこのところは御理解を賜りたいというふうに思うところでございます。

山尾委員 全く理解できないんですけれども、潜在ニーズを踏まえてとおっしゃいますが、私たち国民や私たち議員には、では、どういう潜在ニーズの数なのか把握させてもらえないんですか。簡単なことです、以前は旧定義でやっていたんですから。

 見てください。平成十三年は、両方、新定義と旧定義、認可外で待機している人を含むとこの数字だよ、認可外で待機している人を含まないとこの数字だよ、これは両方公表していたんですから、やればいいじゃないですか。なぜやらないんですか。

塩崎国務大臣 この平成十三年は、切りかえ時で両方の数字があるということでありますので、先ほど来申し上げているように、今お話しのようなことよりもはるかに大きな潜在ニーズを踏まえた上での数字、そしてまた予想も含めて、これからの女性の就業の伸びなども含めて試算をした上でやっておりますので、そういうようなことで、この数字を四十万から五十万にするということでやらせていただいているところでございます。

山尾委員 できることをなぜやらないのか、今の説明でも到底理解できません。

 確かに、この二つの数字が全てを反映するものではないということは私もわかりますよ。

 でも、もう一度言いますけれども、認可外で待機している人を含まない今の定義だとこういう人数になります、でも、それを含むとこういう人数になります、それを毎年きちっと把握して、公表して、これは政府だけでできることじゃないんだから、やはりみんなで現状把握して、協力して、この国の待機児童を解消していこうと、そんなの、正直に、把握して、公表すればいいじゃないですか。

 なぜそんなに調査をしたがらないのですか。なぜそんなにそれを公表したがらないのですか。すごくふえちゃうからですか。

 今のはやらないということなので、もし後でやるという気になったら言ってください、やりますと。

 もう一つ調査してほしいことがあります。保活、保育活動なんです。

 これもこの声の中に出てきた話ですけれども、働かなきゃ、でも保育園がない、保育園は求職中に入れるというけれども、実際は、満員で、仕事が決まってないと入れない、仕事が決まっても保育園に入れるかわからない、そんな状態じゃどこも雇ってくれない、スパイラルから抜けられないお母さんが多いです、事実がわからないって議論にならないなら、国会開催を一日取りやめて、その費用で未就学児がいる家庭にアンケート調査したらよいと思います。

 大臣、保育活動の問題、調査を厚労省でされていますか。されていないんだったら、やるべきだと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げた私の息子の場合も、いわゆる広い意味では保活でありますが、そういうような形で、どういうふうになっているのかということについて、厚労省としては、地域児童福祉事業等調査において、保育所への入所状況や利用状況等を調査しているところでございます。

山尾委員 私も事前に、平成二十四年にやった調査の一部だというこの二枚をもらいましたけれども、これは別に、どんなに保育所に入るのが大変で事前に親御さんたちが苦労しているか、これを調査するためのものではないんですね。

 それで、実際はそういうものが厚労省の方に聞いてもないと言うので、私も民間の調査で探すしかなかったので、皆さんのお手元に置いてあります。

 資料四ですけれども、ゼロ歳児から三歳児のお母さんの三人に一人が保活を実施している、こういう結果が出ています。そのうち、自分の就労条件を変えたという人が一三・八%。この中でも、具体的には、勤務時間を延ばしたという声が一番多い。そして、出産後の職場復帰を早めたという人が九・二%。

 つまり、大臣、私たちは時短の制度というのをつくりましたけれども、せっかく時短をとれるのに、フルタイムで出勤しないとポイントが稼げないから、保育園に入るためにフルタイムで出勤する。一年育休、私たちは育休制度をつくりましたけれども、一年育休をとりたいのに、四カ月で復帰しないとポイントが上がらないから四カ月で復帰する。

 本末転倒だ、そういうことをお母さんはわかっていても、苦しんでも、そこまでしないと保育園に入れないからやっている、そこまでしても入れる保証はない、それがこの国の現状だということで、制度で幾ら育休を延ばしたり、復帰の仕方のバリエーションを私たちがふやしても、保育園に入れない、この一点で水の泡になってしまうんです。お母さんたちは、育休を縮めて、復帰を早めて保活をやっています。

 大臣自身も、保活のことは御自身の経験で理解されているというのはあるんでしょうけれども、やはり全体像を把握していただきたいんです。サンプル調査でもいいと思います。これを早急にやっていただけませんか。

塩崎国務大臣 ポイントを上げるためにいろいろ御苦労されているという話は、さっき申し上げたように、私の身内でもあったことなので、これはずっと私は、大臣になる前から自民党の中でも、子育て支援のプログラムの際に、ポイントを上げるような苦労というのはやはりなくすようにした方がいいんじゃないかということでやりました。

 したがって、私も、厚労省の中でこのことをずっと言ってきておりますので、ぜひ実態調査はやりたいというふうに思います。

山尾委員 早急に実態調査をやって、また報告をいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、私がびっくりしたこの中の声は、こういうのがありました。下の子を預けて保育士に復帰しようとしたら、入れる園がなかったのは私、もう冗談みたいな状況になったのはこの数年の話ではないと。

 保育士が足りなくて待機児童が列になって、その列の中に保育士さんがいて、保育士不足が全然解消しない。これをやはり何とかしたいんです。

 そしてまた、保育士さんも人の親なんです。保育士さんの給与改善、これを今やらないで、いつやるんですかと私は思います。

 そこで、お伺いします。

 冒頭申し上げましたけれども、消費増税のときに国民に約束した子育て支援の充実、ここにパネルがありますけれども、この三千億のリスト、これは財源が見つかっていません。この中には当然、2で保育士さんの給与改善が入っています。一方、その後唐突に出てきた軽減税率一兆円、そのうち六千億が財源が見つかっていません。

 予算委員会で安倍総理は、軽減税率の財源は必ず三月までに見つけると言い、子育て支援は財源がなければできないと私に言いました。結局、軽減税率の横入りで子育て支援のこの三千億が事実上断念になっているんですけれども、諦められないので、私はこの場で厚労大臣である塩崎大臣に問いたいと思います。

 私は、軽減税率なんかやめて、まず子育て支援の三千億の財源を見つけ、この約束を果たし切ることに全力投球すべきだと思う。それは子供たちやお母さんたちのためだけじゃなくて、この国の未来のためにそうすべきだと私は思います。

 大臣、どちらを優先させるべきだと考えますか。

塩崎国務大臣 申し上げておかなきゃいけないことは、私ども社会保障を預かる厚生労働省、厚生労働大臣としては、社会保障の財源を確保することは最優先の課題であるわけでございますが、私どもは軽減税率を採用することにいたしましたけれども、民主党政権がもし続いていたら、恐らく、三党合意に基づいて給付つき税額控除というのを御採用になって、さらに総合合算もおやりになったのかもわかりません。では、そのときの財源はどこに求めるのかということもやはり考えていかなきゃいけないことになるわけであって、それはどの手段をとっても財源は当然必要になるわけで、それは逆進性をどう解消するかというための財源であるわけであります。

 しかし、一方で、私どもにとって、この子育て支援は、おおよそ一兆円程度の資金が必要だということは三党合意で認めたことであります。それはともに背負った私たちの宿題であって、それはそれとして三千億は探していくというのが、我々共通に、与野党を問わず、三党は少なくとも背負っていかなきゃいけないことでありますし、特に、今先生が御指摘になられている処遇改善の問題については、それは一番大事だということは我々も思っているわけでありまして、要保護児童のことを考えると、約四百億円、今お示しいただいていますが、これは要保護児童のことが入っていませんので、それを含めていくと、四百億円の財源が必要であります。

 したがって、それについても私たちはしっかりと財源を、それは恒久財源としてですよ、一時的なものではありませんから、恒久財源を探して早く手当てをするというのが私たちに課せられた使命でありますので、どちらが先とかいう問題ではない、いずれも大事なことだというふうに私は思っております。

山尾委員 さっきも、安倍総理と私は同じ方向だとか、今は、主張していることが違うのに、ともに背負っていこうとか、余りそういうことを言われても困るんです。もちろん、この子育て支援を一緒にやっていこうという気持ちは同じですよ。でも、ちょっとその物言いは、私は大変不本意です。

 逆進性というお話をされましたけれども、もうこれは予算委員会で私たちは何度も何度も明らかにしましたが、この軽減税率のやり方でいくと、結局、年収五百万円以上のそういう御家庭にその一兆円の財源のうちの六割が行っちゃって、年収三百万円以下の厳しい御家庭にはその一兆のうちの一割しか行かない、こういうことも明らかになっています。

 私たちが主張している給付つき税額控除であれば、一兆も要らないんです。三千六百億や三千九百億、こういうボリュームで済むんです。だから私たちは、そんな選挙の前にどこかとの約束である軽減税率を優先させるんじゃなくて、増税のときに国民とみんなで約束したこっちの子育て支援を優先させましょうと。これは私たちの提案です。皆さんと違うんです。違う提案をさせてもらっています。

 大臣、どちらも大事だ、どちらが先という問題ではないとおっしゃいましたけれども、どちらもではだめなんです。閣議決定で期限も切られていない子育て支援より、結局、法律で期限まで切られている軽減税率が優先されてしまうんです、どちらもどちらもなんと言っていると。

 だから、大臣、はっきりさせてほしいです。軽減税率六千億より、こっちの子育て支援三千億を優先させるべきだ、これは必ず財源を探してやり抜くと言っていただきたいんですけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 六千億の財源も、これは社会保障に使われるわけでありますので、どちらが先かという問題ではなく、いずれも、子育て支援を含めて六千億もあるわけでございますし、そして、この三千億についても、民主党政権時代からずっとまだ答えの出ていない問題に答えを出そうという決意で臨んでおりますから、そこのところは、それぞれ重要な問題でありますので、各年度の予算編成過程でしっかりと検討をやり込んでいきたいというふうに思っております。

山尾委員 結局、優先する、財源を見つけてこれを必ずやり切るということは、総理も言わなかったし、厚労大臣もおっしゃらないんですよね。こちらの方からは、やり切るという気持ちが聞こえてくるんですけれども、大臣はおっしゃらないんですよね。総理もそうだった。

 でも、私、本当に諦め切れないのでちょっと食い下がりますけれども、総理は、この三千億の話をすると、そこにプラス幼児教育の無償化の拡大もやりたいので、それもまた一緒に検討の俎上にのせるんだみたいな話をされるんですよ。これは、私は、一歩一歩というなら、まず、三党で合意した三千億、その中でもこの給与の引き上げ、これを優先させるべきだと思うんです。幾ら保育所を建てても、保育園や幼稚園の無償でただにしても、保育士さんがいなければ預けられないんですよ。だから、一つ一つ決めたことをやっていきたいと思うんです。

 総理は、幼児教育の無償化をさらにここにくっつけて、これも全部ごちゃまぜにして検討してなんと言っていますけれども、大臣もそういうお考えですか。

塩崎国務大臣 別にごちゃまぜにする気はないと思いますが、五十万人分の保育の受け皿拡大に伴って必要となる保育人材の確保に当たっては、これはもう何度も言っていますけれども、処遇改善、それから勤務環境の改善など、総合的な対策が当然重要であって、国としてしっかりと取り組んでまいりたいと思いますし、厚労省も同じでございます。

 具体的には、保育の現場で働いている方々の処遇改善について、平成二十七年度の当初予算で既に消費税財源を活用して三%相当の処遇改善を行っているわけでありまして、今後とも、財源を確保しながら、さらなる処遇の向上に向けて取り組まなければならないというふうに考えているところでございます。

山尾委員 頑張っている、頑張っているとおっしゃっているんですけれども、これをやろうというのが約束だったんです。これをやらなければ後退なんです。三%上げましたと言いましたけれども、私たちの約束は、それではとても足りないから、一歩一歩上げなきゃいけないけれども、二%さらに上げましょう、こういう約束をした。これがこの2です。

 やったやったと言っても、やり切ることをやっていなくて、ほかの財源が横やりになって、もう事実上断念になっている。もしこれができなかったら、これはやったことにならないですよ。これは後退ということですよ。

 今、やろうということをやり切らず、この四月から、幼稚園の先生とか小学校の先生とか養護の教師さんとか、そういう人を緊急的に保育士さんとして扱う、こういう話になっています。これはいつまでですか。

塩崎国務大臣 先ほどもお話が出たと思いますけれども、保育の受け皿整備を進める中で、保育士の確保が難しい状況を踏まえて、時限的な対応として、朝夕における保育士配置要件の弾力化など、保育士以外の多様な人材の活用を行うことにしていますけれども、これは、先ほど申し上げたとおり、一時的な措置としてやるということでありますので、その事態が解消するまでやるということでございます。

山尾委員 「待機児童を解消し、受け皿拡大が一段落するまで」と書いてあります。十年以上、待機児童をゼロにしようと言って、今ふえたんですよね。一時的にとおっしゃるけれども、では、永遠にこの状況が続くんじゃないですか。

 私が申し上げたいのは、保育士さんの登録者というのは百三十一万人いるんです。実際保育士さんをやっている人が四十五万人。三分の二が潜在保育士さんになっています。やっていないんですね、資格は持っていても。まずここをしっかり手当てすべきで、いつになるかわからない、でもその間はほかで穴埋めしようなんていうことをやるんじゃなくて、低賃金のままほかの職業で埋め合わせをしよう、ほかの職業の人たちはそれはそれでその職業のプロですから、そういうことをするんじゃなくて、ちゃんと保育の専門家に保育の専門家なりの相応の賃金を準備して、しっかりその三分の二の方にやってもらおうというふうに思います。その肝が結局給与なんですよ。

 なので、大臣、私たちはもう待てないので、保育士さんの給与を上げる法案を私たちが準備して、今国会、出しますから、大臣として応援、賛成していただけますよね。

塩崎国務大臣 議員立法でございますので、それは国会でお決めをいただきたいというふうに思います。

山尾委員 議員立法です。議員立法とはいえ、やはり、厚労大臣である塩崎大臣がやっぱりそれはやるべきだというふうに思うかどうかはとても大きなことです。

 私たちは出しますから、ぜひそれをしっかりと受けとめていただいて、ともに子育て支援をやろうとおっしゃったんだから、私たちの法案に賛成していただけるものと確信して、私は質問を終わらせていただきます。

 以上です。

渡辺委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十分開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。牧原秀樹君。

牧原委員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 現在、私は青年局長を務めておりまして、若い学生の皆さんを含めて、いろいろな御意見を賜っておりますので、こういう視点も含めてきょうは質問させていただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

 私は、二〇〇一年から三年、四年にかけて、海外に留学をしておりました。もう今から十五年前ぐらいになりますけれども、そのときに、実は、首相官邸にメールを送ったことがございまして、そのときは全く政治家になるなんて夢にも思わず送ったんですけれども、日本はタイタニック号のようだというふうに送ったんですね。それは、中にいると、豪華で、自分たちが一番安全な場所にいるように見えて、そして満足感もあるけれども、外から見ると、船底に穴があいていて、ほっておくと沈んじゃうよというふうに見えるということです。

 私は、そのときは同時多発テロが起こったりして、いろいろなことを、海外から日本を見ていたわけですけれども、日本の中で何か海外から見ると余り重要でないことで足を引っ張り合ったりしているというのは、沈みそうになっているタイタニック号の上で、レストランで何かウエーターの人に粗相があって、船長を呼べとか、このウエーターを首にしろと言って争っているように見える。船の外から見ると、そんなことをやっている場合じゃないでしょう、そのままいったら船が沈没しちゃうよというふうに見えるということでございます。

 あれから十五年ぐらいたちましたけれども、私は、この日本の底にあいた穴はますます大きくなっているのではないか、こういう危機感を抱くものでございます。その大きな穴とは何か。これは、やはり人口減少と少子高齢化だというふうに思います。もう一つは財政の問題でございます。

 これはよく見る図でありますけれども、きょうは資料で「日本の人口の推移」というのをお配りさせていただきました。これが一枚目。そして二枚目は、人口構造をピラミッドで見たときの図でございます。そして三枚目は、先日明らかになりました平成二十七年の国勢調査の結果でございます。

 この三つを比べますと、明らかに、日本は既に人口のピークを超えていて、そして人口減少の時代に入ってきているということです。

 先日の国勢調査では、二〇一〇年から一五年の間に九十四万七千人の人口が減ったということです。この五年間の平均では十八万九千人の減少ですが、直近では二十八万人ぐらい人口が減っていると言われておりますので、実は、次の五年を見ると、百万人とかいうレベルではなくて、もっと、百五十万人近い人口が減っていくだろうと予想をされます。

 四十七都道府県のうち、三十九の道府県で減っている。これは大変なことでございまして、これに加えて、さっき見ていただいた二枚目で見ていただくように、人口のピラミッドを見れば、これから人口がずっとふえていくというか、一番人口が多い世代というのは、団塊の世代と団塊ジュニアの世代であります。私は団塊ジュニアの世代ですが、この世代がいよいよ本格的に高齢者になったとき、第三次ベビーブームというのは今のところ起きていませんので、それを支える人は誰もいなくなるんじゃないか、こういう恐怖感みたいなものがあるわけですね。

 今の時点でも、既に、年金負担の重さや税金の負担の重さ、そして先輩たちを支える社会保障の費用が大変なことになっていて、一兆円の借金を超えているんじゃないか、こういうふうに言われているわけですから、これからこのことがどんどん進んでいけば、果たして日本の社会保障はこのまま持続できるんだろうか、こういう不安が若い世代を中心に色濃く、どんどん色濃くなっているという現状がございます。

 少子化という問題を一つ取り上げてみますと、私、十一年前に初めて議員になったときに、当時、猪口邦子さんが初めて少子化担当大臣として特任でつかれたわけですけれども、もう今やらないと間に合わないと。団塊ジュニアの世代が、要するに、適齢期と言われている時代にちゃんと第三次ベビーブームをつくるようにやらなかったら、その次は、仮に出生率が回復したとしても、出生数は回復しません。だから、この十年が勝負ですと申し上げてきたわけですけれども、そのときの当時の厚労省も、当時は、第一次エンゼルプランというのが終わって、第二次エンゼルプランということに移行したころでありましたけれども、いや、我々はよくやっているんだというような認識でありました。

 この十年間、たってみて、改めて、第三次ベビーブームというのはいまだ来ていなくて、そして、このままいくと、これから団塊ジュニアの世代が、今、私がことし四十五になる年、そして、最後の四十九年生まれの人が四十一になる年だと思いますけれども、そういうふうに入っていくと、その次の世代というのは人口ががくんと減っていくのはさっきのピラミッドを見ていただくとわかるとおりでございまして、出生率のそこそこの回復では出生数は回復しないということが明らかでございます。

 改めてこういう現状を見て、これは厚労省ではなくて今は内閣府の方になっているということでございますけれども、これまで取り組んできた政府の少子化対策についてどのように評価をしているのか、お伺いをしたいと思います。

小野田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、政府は、一九九〇年代に本格的に少子化対策の検討を始め、エンゼルプラン等をまとめるなど、子育て支援などの対策を進めてまいりました。二〇〇三年には、議員立法により少子化社会対策基本法が成立し、同法に基づき、大綱を策定しつつ、育児休業制度等の雇用環境の整備、保育サービス等の充実などに着実に取り組んできたところでございます。

 こうした中、子育て支援体制の整備などは進んできておる一方で、総務省人口推計によりますと、我が国の総人口は、二〇一一年以降は減少が続いてございます。また、二〇一四年の出生数は約百万人と第二次ベビーブーム期の約半数であるなど、依然として我が国の少子化は厳しい状況にあるものと認識してございます。

 こうした中、少子化の主な要因は、未婚化、晩婚化、それと夫婦が持つ子供の数の減少と考えられておりまして、こうしたことも踏まえまして、政府といたしましては、昨年、少子化社会対策大綱を閣議決定したところでございます。

 子育て支援の充実としまして、昨年四月から子ども・子育て支援新制度を本格実施するとともに、新たに結婚の段階からの支援を行うこととし、個々人がライフデザインを描くための情報提供、地方自治体による結婚に対する取り組みへの支援を行うこととしてございます。

 また、少子化の状況や原因は地域により異なりますことから、地域少子化対策強化交付金を措置し、地域の実情に即した取り組みを強化することとしているところでございます。

牧原委員 伺いまして、一生懸命やられているということはわかりますし、出生率だけを見ると一時期よりは若干微増しているということもあって、決して効果がないというわけではありませんけれども、私は、何となく、もう少し深いこともしっかり見ていく必要があるんじゃないかということを思っております。それは、ちょうど私も団塊ジュニアということで、自分も子供を育てていて、周りもそうした世代と、今まさに渦中にある者として感じるわけでございます。

 一つは、きょうも待機児童で入れなかったママの皆様がいらっしゃるということがあって、こうしたことをやはり充実することは明らかに必要ですし、今、青年局としても、世代間の公平みたいなものをもうちょっと考えてほしいという意見を若者から多く受けるものですから、こうした観点も必要だと思います。

 他方で、例えば、よく、子育て支援の話みたいなこととか、あるいは子供の貧困、これは私、先日、議連を立ち上げたメンバーにも入って、大変重要な問題だと思いますけれども、そうしたことが問題であることは間違いありませんが、ちょっとデータを見てみますと、例えば、一般的に今の世代は、非正規で平均収入が低くて、そして結婚してもなかなか難しいのでというこの収入の問題が挙げられておりますけれども、日本で一番出生率が高いのは沖縄です。これは断トツで高いんですけれども、この沖縄県、資料にも配らせていただいて、これは一四年のデータですが、沖縄は一・八六ですね。次が宮崎、島根、長崎というような形で都道府県の出生率が上位になっております。他方で、出生率が低いのは、ワースト、断トツで低いのは東京、そして京都、奈良、北海道、宮城、埼玉、こういうふうになっていっております。

 こうしたデータと、例えば都道府県別の一世帯当たりの年間収入、その一枚前につけさせていただいておりますけれども、一番高いのは東京、福井、愛知、神奈川とかですね。一番低いのは沖縄、宮崎、青森などとなっています。そして、先ほどちょっと言及させていただいた子供の貧困率、これは最後のページにつけさせていただいていますけれども、断トツで高いのはやはり沖縄でありまして、そして福井とかが一番下になっていっているわけでございます。

 これを見ると、何となく、先ほど申し上げたように、やはり収入が低いからだとか子供の貧困率が高いからだということは大変重要な問題で、これ自体は絶対に何とかしていかなきゃいけない問題でありますけれども、それと先ほどおっしゃった少子化のことをそのまま結びつけるということは、今申し上げたデータとそぐわないような気もするんです。

 政府としては、こういうデータについてどのような分析を行って、そしてどのように少子化対策に生かしていらっしゃるんでしょうか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生の方から、所得の状況あるいは子供の貧困という状況と、東京とあるいは沖縄との比較のデータがございましたけれども、一般的に、直接出生率に影響を与えます、例えば結婚の動向あるいはそれぞれの出産の動向から見ますと、例えば東京都につきましては、全国で最も未婚率が高い、そして有配偶の出生率は全国平均よりもやや低いということが出生率の低さにつながっているのかなと思っております。また、一方、沖縄県は、未婚率が全国平均よりやや高いものの、有配偶出生率は全国で最も高い、そして特に第三子以降の出生率が高いということが出生率の高さにつながっていると思っております。

 しかしながら、出生率は、結婚ですとか出産という直接的な要因だけではなくて、やはりさまざまな要因の影響を受けていると思っておりまして、一つは、例えば、合計特殊出生率と週六十時間以上働く雇用者の割合との間には負の相関関係が見られます。また、合計特殊出生率と女性の有業率と育児をしている女性の有業率の差につきましては、正の相関関係が見られます。いずれの指標も、沖縄県と例えば東京都では対極的な関係になっております。

 こうしたことを踏まえますと、やはり雇用形態あるいは労働環境といったような働き方も大きな影響を与える部分だと思っております。そうした意味で、少子化の状況、要因は地域によって異なっており、国全体での少子化対策に加えまして、地域ごとの要因分析、課題設定、対策などのいわゆる地域アプローチが重要であると思っております。

 このため、先月、各地域の少子化あるいは働き方の指標というものをまとめ、そしてその指標を活用した具体的な分析例あるいは施策例を取りまとめました「地域少子化対策検討のための手引き」というものを公表いたしました。あわせて、同時に、地域ごとの少子化の分析あるいは働き方改革に向けた取り組みを支援するために、地域働き方改革支援チームというのを国に設置いたしましたところでございます。

 地域ごとに効果的な少子化対策について、必要な支援を今後とも行ってまいりたいと考えております。

牧原委員 ぜひ、これまでの延長ではない取り組みを多角的にやっていただきたいというふうに思います。

 時間がなくなってしまったので、介護についてちょっとお伺いをします。

 持続可能性について考えると、今、これは誰もそうですけれども、やはり介護の問題というのは大変重要で、私の地元でも、介護施設を開いたけれども人材が集まらないのでといって、空き部屋になっている施設がたくさんございます。

 介護については、やはり人件費が安いというような問題を私も施設に行くとお聞きするわけですけれども、先ほどの図を見ていただくと、今人材不足なわけですから、これからますます高齢化が進んで、ますます人が少なくなっていけば、これは大変深刻な問題になることは明白でございます。

 介護賃金を上げるということは大変重要で、現場での指摘がございますけれども、それに加えて、何か具体的に、魅力的な職場にするような具体策はあるんでしょうか。

竹内副大臣 お答えします。

 政府におきましては、一億総活躍社会の実現を目指しまして、その重要な政策の柱として介護離職ゼロを掲げ、介護施設などの整備とあわせ、必要な人材の確保についても、就業促進や離職の防止、生産性の向上などに総合的に取り組んでいくこととしておるところでございます。

 このため、平成二十七年度介護報酬改定による処遇改善の着実な実施を図るとともに、今回の補正予算及び来年度予算におきまして、まず第一に、介護福祉士を目指す学生に、介護職に五年間の勤務で返済を免除する奨学金制度の拡充、それから、一旦仕事を離れた人が再び仕事につく場合に、介護職に二年間の勤務で返済を免除する再就職準備金貸付制度の創設、さらに、地域医療介護総合確保基金を活用した、働きやすい職場づくりに取り組む事業者のコンテスト、表彰の実施や、介護施設等における職員のための保育施設の開設支援の実施、さらに、介護ロボットの活用促進や、ICTを活用した生産性向上の推進などにより、介護人材確保対策の充実強化を図ることとしておるところでございます。

 さらに、介護の生産性の向上を図ることにより、介護の仕事をより魅力あるものにするため、業務プロセスの改善に取り組む経営者や、ICTの専門家、先進的な取り組みを行う介護事業者等をメンバーとする懇談会をこの一月十二日に設置いたしまして、先進的な現場の実践も踏まえた議論を行っているところでございます。

 今後とも、介護人材の確保のために、さらに着実に推進してまいりたいと考えております。

牧原委員 ありがとうございました。

 ぜひ、厚生労働省には、三十年後、五十年後を見据えた意味での政策、私たちも一生懸命それを支えていき、一緒にやりますので、よろしくお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、白須賀貴樹君。

白須賀委員 自民党の白須賀貴樹でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず最初に、やはり厚生労働委員会はすごくいいなときょう思いました。特に、午前中の質問の中で、初鹿先生がまつげのエクステの話、そしてタトゥーの話、本当に新たな気づきをいただきましたし、また、柚木先生の質問、本当によかったと思います。私も認知症の問題は何とかしなきゃいけないなと思っておりますし、本当に質問の内容もすばらしかったと思います。

 やはり厚生労働委員会というのはいいな、そのように感じたところで、その後の質問の中でさまざまな御意見もありました。特に、私はいつも思っているんですけれども、与党も野党も、やはり保育の問題に関しては問題認識は一緒だと思っております。

 私たちの自民党の厚生労働委員会の今筆頭理事をやっております江渡先生も保育園を現場でやられておりますし、また、私自身も保育園をやっております。そして、うちの家内は、同じ歯科医師でございますが、歯科医師から保育士を取って、今、保育園の園長として現場で働いておりますから、家に帰ると、保育の問題についていつも問題提起をされて、眠れない状況でございます。

 ですから、私たち自民党、公明党、与党も、そして野党の皆様方も、やはり、待機児童の問題、そして保育士さんの確保の問題、この問題認識は一緒だと思います。ですから、この厚生労働委員会では、ありとあらゆるそういう、感情論ではなくて、どうやればこの問題を乗り越えることができるのか、そして、限られた予算の中でどうやって効率よく、そして問題を解決する方法が頭を使ってひねり出せるか、そういう場にしていきたいと思っておりますし、そして、感情論が高ぶった去年のように渡辺厚生労働委員長が首をけがされないことを、ことしは心からお願いを申し上げます。

 さて、保育士さんの問題は今度またもっと時間のあるときに質問したいと思いますが、がんの問題について私ちょっと質問したいと思います。

 私、がんに対しては特に思い入れがありまして、私の父が、自分が二十のときに五十七で、肺がんからあらゆるところに転移して、発見してから三カ月で他界しました。ですから、私も、歯科大学を出た後に、口腔がん、口の中のがん専門の口腔外科というところに残って、そしてがんの治療に当たってまいりました。

 なかなか口腔がんというと皆さん知らない方が多いと思うんですが、いわゆる口の中で歯以外の白いもの、ピンクの粘膜のところに白いものがあると大体悪いものなんです。口の中を鏡で見て、見つけることが可能です。つまり、皮膚がん以外で、自分でがんを見つけることができる唯一の場所かな、そのように考えているんですが、実は、子宮頸がんで亡くなられる方は大体年間に六千人ぐらい、口腔がんは、咽頭がんも含めますと大体年間六千人ぐらい、ほとんど同じぐらいの発生率で同じぐらいの亡くなる方々がいらっしゃる。

 ですから、私は、口腔がんというもの、自分で見つけることができるがんなんだから、あとは、国民の皆様方が少し、例えば三カ月とか半年に一回ぐらい鏡を見てもらったり、そしてまた、同僚の歯科医師の方々が、虫歯とか歯周病だけじゃなくて、少し口の中全体を見てもらうだけで相当早期発見ができる、そういうがんの一種であります。

 しかも、例えば胃がんとかは、大きくおなかを切ってあけて、そして胃を部分切除して閉じたとしても、洋服を着てしまえばもう傷口は見えません。しかし、口腔がんというものは、転移するときに、首のリンパ節を通って転移していきます。そして最後、肺に行きますと肺がんが転移して、大体亡くなってしまうんです。つまり、転移が認められると、この首のところに切開を入れて、そして、大きく、頸部郭清術というんですが、リンパやその組織の周辺の筋肉とか、そういったものを全部撤去して、そしてもとに戻しますから、物すごく傷口が目立ちます。

 これは例えば、女性の方だったらどうでしょうか。顔の、見えるところに大きな傷が残ってしまう。それが本当に早期発見ができれば、そんな傷をつくらず、その方々は、本当に一部だけの切除で、その後は全く問題がない。この間、ちょっと問題でやめられました甘利大臣も初期の舌がんだったはずです。今、全く問題なく政治活動をされているじゃないですか。ですから、いかに早くがんを見つけてあげられるか、これにかかっているわけです。

 そしてまた、きょう私が質問したいのは、三ッ林政務官に質問したいんですが、三ッ林先生は、医師でありながら歯科大の病院長でございます。数多くの口の中のがん、そういったものに触れてきた希有なお医者さんでございますので、どうか三ッ林先生からもお答えをいただきたいと思うんですが、この口腔がん、どうやって早期発見をしていくか。

 そして、私の中の考えは、早期発見して、別に歯医者さんが治療する必要はないんです。見つけることさえできれば、どこの診療科に行ったって構いません。そして、早く治療することができれば、それだけその方々のQOLが上がるんです。ですから、この口腔がんの早期発見、どうやればできるんだろう、私も考えておりますし、また、がん対策基本法もできました。このことも含めて、これからどうやってがんに対して対策を取り組んでいくか、三ッ林厚生労働政務官からお話をいただきたいと思います。お願いいたします。

三ッ林大臣政務官 御指名ありがとうございます。

 私、白須賀議員の口腔がんに対するこれまでの経験、また取り組み、そういったことを本当に尊敬するものであります。

 私も、二十年来、歯科大学病院におきまして口腔がんと向き合ってまいりました。早期発見、早期治療、これは歯科医療の中でも口腔外科が中心となって行っておりますけれども、やはり医科歯科連携、これも必要であると思っております。そして、早期発見の啓蒙、これも必要であると常々思っておりました。

 申すまでもありませんけれども、がん対策は、議員立法で成立したがん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画、及び基本計画をさらに進めるため、昨年十二月に策定したがん対策加速化プランに基づき進めております。

 加速化プランでは、予防、治療・研究、がんとの共生を三つの柱として、がん検診、たばこ対策、がんのゲノム医療、小児がん、就労支援、支持療法、緩和ケア等に取り組むこととしております。

 なお、議員の御指摘のとおり、例えば、口腔がんのうち最も多い舌がんは、患者のうち約三分の二が早い時期にみずから病変に気づいて受診しており、適切な時期に受診し、治療につなげていくことが重要と認識しております。

 厚生労働省では、本年春から第三期の基本計画に向けた議論を開始することとしており、口腔がんも含め、がんによる死亡を減らすとともに、がんになっても安心して暮らせる社会の構築に向けてがん対策を推進してまいりたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。

白須賀委員 ありがとうございます。

 本当に、がんは早期発見が最大の治療だと思っております。検診を初め、がんというのは、早く見つければ見つけるだけ、本当に治りが、予後が、そして五年生存率、十年生存率が高いです。どうか、これからもがん対策基本法をますます進めていただいてもらって、がんの早期発見、早期治療、みんなで力を合わせていきたいな、そのように考えております。

 ちょっと時間が余ったので、さっきの話に戻って、保育士さんの話を少しだけさせてください。答える必要は、結構です。

 私がこの間嫁さんに怒られたんですけれども、うちの園を保育士さんがやめられました。出産が終わって、そのお子さんをうちの園に預けられれば自分もそのまま職場復帰ができる、そういう状況でした。しかし、自治体によっては、自分の勤める園に自分のお子さんを預けちゃいけません、そういうルールのある自治体もあります。

 理由は、どういう理由かわかりません。例えば自分の子供だけえこひいきするとか、そういうくだらない理由があるのかもしれません。でも、そういう場合にはほかの学年の担当をさせればいいだけであって、今、保育士さんが足りない、どうしようという中で、やはりさまざまなタブーを取り外していくべきです。一人でも二人でも、うちの園としては、保育士さんが戻ってきてくださる、そしてもう一回働いてくださる、それだけでも助かります。ですから、本当にさまざまなアイデア、いろいろなアイデア、そういったものを動員してもらって、一刻も早く保育士さんの確保。

 そしてまた、箱物をつくる、いわゆる保育園をつくるのは簡単です、簡単と言っても簡単じゃないんですけれども。つくるに当たっても、さまざまないろいろな障害があります。例えば、子供の声がうるさいから絶対に嫌だと近隣住民の方々から反対運動をされたということも実は私は経験しております。

 ですから、一概に市が、そして国が、県が保育園をふやそうとしても、本当にさまざまな障害や、現場で問題がたくさんあります。ですから、行政だけが悪いわけじゃないし、そしてまた、地域の方々も、自分たちが住んでいる中でさまざまな嫌な思いもあるでしょう。ですから、誰もが悪くないんです。

 結果的に言いたいのは、みんなで本当に協力しない限り、この問題は解決しません。国だけが動いても、県だけが動いても、市だけが動いても、これは何ともなりません。地域の住民の方々の理解もいただいて、国全体で、子供たちを育てよう、そして保育園をふやそう、お母さん方が本当に働いても安心できる環境をつくろうと国全体で思わない限り、この問題は解決できません。どうか、この委員会の皆様方には同じ思いを共有していただいて、どうやれば子供たちが本当に健やかに、そして、お母さん方が不安なく働くことができるか。

 そしてまた、保育園というのは預かるだけの場所ではありません。やはり次の小学校に向けても含めて、最低限の教育と、そして幼少期に必要な社会性や集団性、思いやりやいたわりやお互いさま、そういったものを教えなきゃいけません。ですから、保育士さんの方々もやはりスキルアップをしていただかなきゃいけないし、結果的に、二十年後の、三十年後の育った子供たちが、また家庭をつくりたい、子供たちを産みたい、そういう思いを持たせなければいけません。

 ですから、これは国全体、日本国民全体の問題としてみんなで捉えていかなきゃいけないな、そのように提案をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、所信に対する質疑を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 新三本の矢の中の介護離職ゼロについて、まずお伺いをしてまいりたいと思います。

 川崎市の介護つき有料老人ホームで高齢者が相次いで転落死をするという、大変衝撃的な事件がございました。この背景にあるのは、介護職員のストレス、また閉鎖的な構造、多くの介護現場に共通をしているものかと思われます。

 介護職員による高齢者への虐待が急増しております。私も、二〇〇三年、初当選をして以来、高齢者虐待防止の取り組みをしてまいりまして、新人で初めて議員立法をつくりまして、自民党とも協議をし、また野党とも協議をして、二年目に成立をさせることができました。この高齢者虐待防止法が成立をして、間もなく十年となります。

 この法律ができてから、やはり虐待件数はふえております。特に、施設介護また居宅サービスの職員による虐待がふえている。二〇一四年度においては三百件、二〇一二年度の百五十五件から二年で倍増をしております。八年連続で過去最多を更新しているということで、まず、この虐待防止についてどういう取り組みをされているのか、お伺いしたいと思います。

 また、一億総活躍社会の中で、介護離職ゼロという目標を掲げていらっしゃいます。何度も申し上げるようですが、介護離職ゼロということは、まず介護職員の離職をゼロにしていかなければならないというふうに考えます。介護職員の人材の養成確保、また離職者の再就職支援など、一体的に進めるべきであると考えます。

 ことし一月の本会議におきまして、私も代表質問をさせていただきました。それに対して総理の方から、介護人材の確保については、基金の活用により都道府県の取り組みを支援するとともに、介護報酬により処遇改善を実施して介護職員の離職防止と就業促進に努めてまいりました、介護福祉士を目指す学生に返済を免除する奨学金制度の拡充、また、一旦仕事を離れた人が再び仕事につく場合の再就職支援準備金の創設、介護ロボットの活用、ICTを活用した生産性向上の推進などに取り組んでいく、そういう答弁があったわけなんですが、高齢者虐待の防止を含め、介護人材の養成確保、また介護者支援についてお伺いをしたいと思います。

竹内副大臣 お答えいたします。

 まず、虐待防止の取り組みについてでございますが、平成二十六年度に、家族、施設合わせて全国で約一万六千件の高齢者虐待事案が発生をいたしておりまして、引き続き増加傾向にあることが明らかとなりました。

 このため、まず、高齢者虐待の未然防止、早期発見、虐待初期段階での迅速かつ適切な対応といった対応の流れを再度周知するとともに、市町村などの先進的な取り組み事例を参考に、地域の実情に応じた体制整備などの充実を促進するなど、対応の強化に取り組んでおりまして、引き続き、一人でも多くの高齢者の尊厳を守るため、市町村や都道府県等に対する支援に努めていきたいと考えております。

 また、市町村に対する調査によりますと、介護施設従事者等による虐待の発生要因として、教育、知識、介護技術等に関する問題や、職員のストレスや感情コントロールの問題が上位を占めております。

 このため、介護人材の確保に当たり、一定の知識、技術を有する人材の活用や、新人職員に対する指導体制の確保などの職場環境の整備を進めることが重要であると認識をしております。

 こうした点も踏まえまして、介護人材確保に向けて、今回の補正予算及び来年度予算におきましては、まず、介護福祉士を目指す学生に、介護職に五年間の勤務で返済を免除する奨学金制度の拡充、二つ目に、地域医療介護総合確保基金を活用した、新人職員に対する指導体制の整備や、働きやすい職場づくりに取り組む事業者のコンテスト、表彰の実施、さらにまた、一旦仕事を離れた人が再び仕事につく場合には、介護職に二年間の勤務で返済を免除する再就職準備金貸付制度の創設などに取り組むこととしているところでございます。

古屋(範)委員 今、竹内副大臣の方から、さまざまな介護職員の養成確保に対する取り組みについてお話をいただきました。ぜひ総合的に、また強力に進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 先月、二月十日ですけれども、二〇一六年度診療報酬改定が取りまとめられました。この中で、やはり、高齢社会にあって、団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年を見据えて、限られた財源を効率的に使っていく、そしてまた、医療、介護の質を向上させていく、こういう課題がある中で改定が決められました。

 特に、これまで進めてきた、超高齢社会に備えて、自宅にいながら治療を受けられる地域医療を推進する、この明確な方向性が固まったものと思われます。

 また、私がこれまで取り組んでまいりました個別案件になりますが、脳脊髄液減少症、これを十二年間取り組んでまいりまして、このたび保険適用ということで、この治療法、ブラッドパッチ療法が保険適用となりました。交通事故あるいは体育の授業であるとかさまざまな原因で髄液が漏れて、頭痛、目まいなどに悩む方々が非常に多かった。これに対する保険適用が決まりました。患者の方々も非常に喜んでいらっしゃいます。

 また、約八年、うつ対策に取り組んでまいりましたけれども、医師による面接を通じて心の負担を軽くしていく認知行動療法、これも、一定の研修を受けた専門の看護師とともに面接を行うチーム医療に保険が適用となりました。さらに、この認知行動療法、不安障害も追加をされることとなりました。こうした形で、うつ対策に対する、また不安障害も含めて、認知行動療法が大きく普及をしていくことが期待されております。

 先ほども介護人材の確保ということで申し上げましたけれども、これから高齢社会にあって、入院、そして施設、そして在宅、こういうものが包括して、一体的に医療、介護のサービスが提供されていかなければいけない、そういう時代にあって、今回の診療報酬、この意義についてお伺いをしたいと思います。

竹内副大臣 お答えをさせていただきます。

 平成二十八年度診療報酬改定では、地域包括ケアシステムの構築と、質が高く効率的な医療提供体制の構築に向けて、まず、入院医療につきましては、病床の機能分化、連携のさらなる推進、救急医療や認知症患者の対応の充実、さらにまた、外来医療、在宅医療につきましては、かかりつけ医、かかりつけ歯科医のさらなる普及、重症患者、小児への在宅医療の強化、さらにまた、医薬品、調剤につきましては、後発医薬品の使用促進、価格適正化、かかりつけ薬剤師の推進、いわゆる大型門前薬局の調剤基本料の適正化などを行うとしたところでございます。

 個別にも、今先生からお話がありましたブラッドパッチ療法や、また認知行動療法に対する保険適用の拡大、拡充等も進めたところでございます。

 高齢化の進展などによりまして、医療費の増大が進む中ではありますが、こうした見直しによりまして、国民皆保険を堅持しながら、国民一人一人が安心して質の高い医療を受けられるようにしてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 今回の診療報酬改定、やはり地域包括ケアシステムを推進していく、病床の機能分化、連携、また、かかりつけ医のさらなる推進、救急医療の拡充、こうした観点が盛り込まれた診療報酬改定である。そして、こうした診療報酬改定において、地域包括ケアシステムを推進していく。入院患者が退院をしてあるいは施設に行く、こういうところの連携を促していく、入院患者のスムーズな在宅復帰を促していくものであると思います。

 医療の側面ではなく、在宅医療、在宅での生活というものを考えていきますと、生活全般へのサポートが必要であるということがございます。また、ひとり暮らし、あるいは夫婦しかいないというような高齢者世帯がふえてきております。在宅での医療、介護を充実させるといっても、日常生活、ここに視点を置かなければ、なかなか地域包括ケアシステムの実現は難しいのではないかというふうに思います。

 この中で、福祉用具の活用ということを取り上げてまいりたいと思います。

 これは先月、二月の十七日でありますけれども、二〇一八年度の介護保険制度の見直しに向けた議論が社会保障審議会介護保険部会で始まっております。要介護度一、二の軽度者向けのサービスの見直しが検討課題とされておりまして、この福祉用具、住宅改修費用の給付のあり方も検討されるということでございます。

 先日、私は、介護ベッドであるとか車椅子、歩行器といった福祉用具を自分でも体験してまいりました。また、介護保険給付の対象となっている福祉用具の貸与をめぐって、全国福祉用具専門相談員協会、日本福祉用具供給協会の皆様とも意見交換をしてまいりました。

 その中で、この団体の皆様が調査を行っていらっしゃいます。福祉用具の有効性というものを体験いたしまして、介護が必要な高齢者が福祉用具を利用する際に、本人の希望、身体の状況、またその置かれている環境等を踏まえて、専門的知識に基づいた福祉用具を選んで、必要な人には適切な福祉用具を用いていく、自立支援の観点からも、使用法等々も含めて助言を行う福祉用具専門相談員、この方々の役割、重要性を改めて認識した次第でございます。

 調査を行ってくださったんですが、もしも、福祉用具、例えば車椅子であるとかあるいは角度が変わるようなベッド、こういうものを使えなくなった場合には一体どうするかという調査をいたしました。例えば車椅子の場合には、使えなくなった場合には、やはり介助者を頼むしかないということでございます。あるいは、もう諦める、入浴とかそういうものも諦めるしかない、こういう回答が返ってきております。

 こういった福祉用具があれば、散歩に出られる方もいらっしゃるでしょうし、また自分で起きてトイレに行く。これが使えなくなれば、トイレに行く回数もやはり少なくなってしまったり、外に出ることもなかなかできなくなってしまう。なおかつ、それを頼むとすれば、やはり人に頼むしかない。家族、家族がいない場合には、当然これは訪問介護を頼むようになってくるわけです。その回数も時間もふえてくるということであります。

 ですので、重症化を抑えていく、転倒したりしてはいけない、自立した生活を実現し、あわせて介護保険費用の増大を抑えていく、これが福祉用具であると思います。特に、日本の場合には、貸与して、それをまた洗浄したり消毒をしたりして使い回していくわけですので、国際的にも先進的な制度であると思います。

 この調査に基づいて、三カ月以上福祉用具を利用し、自立した生活を維持する要支援一から要介護二の方を対象に、福祉用具を利用できなくなった場合の対応というのは、先ほども申しましたように、人を頼むかあるいはもう諦めるということでありますので、これは介護費用の増大につながっていくものと思われます。

 二〇一四年度の福祉用具レンタル費用額、これは二千七百二十五億円であります。訪問介護にかかるコストのわずか三割、全体九千六億円の三割であります。人的パワーを補って、介護環境の改善にも寄与する福祉用具を適切に活用していくということが、ある意味、介護の人材、そこのところを有効活用するということにもつながっていくのではないかというふうに思います。

 今後も、福祉の用具が適切に使い続けられるように、また、低コストで在宅介護の基盤を担う福祉用具サービスの重要性をぜひとも認識していただきたいと思っております。このサービスが切り捨てにならないよう、今後の検討の中でぜひとも御配慮をお願いしたいと思います。

 これについての見解をお伺いいたします。

竹内副大臣 お答えいたします。

 恐らく、先生の問題意識の背景には、昨年末に経済財政諮問会議において取りまとめられました経済・財政再生計画の改革工程表におきまして、軽度者に係る福祉用具貸与等のあり方が検討事項とされておりまして、こうした点も含めて、社会保障審議会介護保険部会において次期介護保険制度改正に向けた検討を開始したということがあるのだろうというふうに思っております。

 一方で、御指摘のように、福祉用具は、介護が必要な方ができる限り御自宅で、人に頼ることなく自立した暮らしを継続することができるよう支援するために、介護保険から給付が行われているものでございます。

 そういった意味で、高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐといった介護保険の理念に沿って、介護が必要な方の生活を支える観点から、今後もしっかり検討を行ってまいりたいと考えているところでございます。

古屋(範)委員 確かに、無駄な福祉用具を使っていくことは、これはやはり介護保険全体に影響してまいります。しかし、適切に福祉用具を使っていくということが、介護の重度化を防ぎ、自立を促し、また、介護人材を本当に必要なところに回していくということにもつながっていくというふうに思います。ぜひともここのところ、検討をお願いしたいというふうに思います。

 次に、保育事故防止について伺ってまいります。

 四月、子ども・子育て新制度がスタートいたしました。認定こども園また小規模保育など、新たな子育て施設がふえております。

 その一方で、やはり保育事故というものも重要な課題となっております。政府は、全国の保育所など子育て施設などで起きた事故発生状況、要因分析などをデータベース化して、ホームページで公開をしております。国としてこれまで事故の分析や検証はしていない。また、今後、集積した情報をもとに具体的な再発防止策が打ち出されることが重要かというふうに考えております。

 昨年、この分野の、保育事故の専門家であります多摩北部医療センターの小保内小児科部長より、保育事故問題についてお話を伺う機会がございました。そして、先日、竹内副大臣にもお話を聞いていただきました。

 保育施設での重大事案が年々増加傾向にあるにもかかわらず、詳細に検討する機関がない。さまざまな個々の事案から安全対策を抽出していく作業が行われておりません。このため、有効な安全対策が実施をされていないのが現状であると思います。この状況を改善して、親のためにも、また保育士のためにも、安全、安心な保育環境をつくっていかなければならないと思います。

 死亡事案を予防するためには、今まで起きた死亡事案の発生の起因、原因というものを明らかにして、そこから得られた情報をもとに安全対策をつくっていくということが重要であります。そのためには、病理学あるいは法医病理学、小児科学、こうしたものを専門とする委員によって構成された重大事案検証委員会というものを設置して、詳細検討を実施する必要があると思います。重大事案を調査して研究する、こうした重大事案の検証委員会の設置が必須であるということでございました。

 特に、地方自治体でこういう対策をとっていくといたしましても、あってはならないんですが、全国にしてみますと、自治体にとっては少ない数になってまいります。毎年、死亡事故というのは十人を超えている。昨年は十七人でありました。また、重大事故というものも、二〇一二年から一三年、続けて百人を超える。昨年は百七十七人に上りました。多い数でありますけれども、自治体でこうした事案を集積し研究するほどの数ではないということであります。ですので、これはやはり国で、こういう案件を収集し、そして分析、調査をし、安全対策を立てていく必要があるということだと思います。

 保育施設の拡充がともかく必要である、もうこれは待ったなしであります。それに伴って、安全、安心な保育環境も同時につくっていかなければならないということであります。

 私も、乳幼児突然死症候群に長年取り組んでまいりました。昨年、教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会、この最終取りまとめが内閣府から発表されました。しかし、大事なことは、専門家による有識者会議を設置して、国における再発防止策を早急に進めることではないかと思っております。

 この件に関して、竹内副大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

竹内副大臣 お答えいたします。

 子供たちが一日の大半を過ごす保育所等は、安心して過ごすことのできる環境でなければならず、事故で子供の命が奪われることがあってはならないと考えております。

 子ども・子育て支援新制度の施行に向けて、内閣府を中心として、教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会を平成二十六年九月に設置し、教育、保育施設等における事故の発生やその再発を防止するための措置について御議論をいただいてまいりました。

 昨年十二月のこの検討会の最終取りまとめにおきましては、死亡事故等の重大事故につきまして、地方自治体において外部委員で構成する会議で検証する仕組みを設けるとともに、国においても、事故報告の集約や傾向分析、再発防止の提言等を行うための有識者会議の設置についても御提言をいただいているところでございます。

 現在、専門家が参画する有識者会議の設置に向けて、内閣府を中心に、文部科学省、厚生労働省が連携して準備を進めているところでございまして、これらの取り組みを通じて、保育施設等における重大事故の発生や再発の防止にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございます。

 保育施設はともかくふやしていかなければならない、待機児童は解消していかなければならない、これは待ったなしの課題であります。とともに、やはり、子供にとって安全な環境をつくっていく、これもそれ以上に必要な課題であります。ですので、それを有識者会議をつくって検討していくということでございますので、そこに、これまで長年この分野において専門的な研究を続けてこられた専門家をぜひとも入れていただきたいということをお願いしておきたいと思っております。

 最後になりますが、児童手当の課題についてお伺いいたします。

 先日、新聞報道がございました。生活保護世帯の子供で、児童養護施設に入所していた場合に、ここを退所する際、家庭に戻った場合には、入所中に施設長が積み立てていた児童手当、これが貯金として収入認定をされてしまう。

 これは、民主党政権時代に法改正をしたときに、それまで給付がなかった児童養護施設にいる子供たちにも給付ができるようにいたしました。それは、退所をするときにこれが積み上がって、次への、就職なり進学なり、そういうときにアパートを借りたり、進学のための積み立てをして、それが資金になっていく、そのために私たちも法改正をしたつもりでございました。

 しかし、生活保護費が減額をされてしまう、あるいは一時停止になるという可能性が高いという問題であります。子供が大学に進学をしたり就職をしたりするときの資金としての積み立てという、私たちが目指していた本来の目的が果たせなくなるのではないかということは非常に残念であります。

 児童手当がその子供本人のために使われていく、そして、施設退所後に、本来であれば、家庭にやはり戻るという方が多いと思うんですね。直接自立をしていけばいいんでしょうけれども、やはり家庭に戻るケースが多いと思います。ですので、この場合、収入認定されないような、認定から除外する方策というものはないのかどうか、この点についてお伺いをいたします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、現在では、児童手当は、児童養護施設等、施設に入所している児童についてもその支給の対象となっているところでございます。

 そして、生活保護でございますけれども、利用できる資産、能力その他あらゆるものを活用することを前提として行われているため、児童養護施設を退所した子供が生活保護受給世帯に戻る場合、入所中に積み立てられました児童手当については、原則として収入認定をされ、保護費を減額している実態があると承知いたしております。

 一方、貧困の状況にある子供たちが健やかに育成をされ、貧困が世代を超えて連鎖することがないよう環境を整えていくことは大変重要でございます。児童養護施設等に入所中の児童に係る児童手当をその将来の自立のために活用することが難しいという現状には課題があると考えております。

 先生の御指摘を真摯に受けとめたいと思っておりまして、児童手当制度の趣旨を踏まえた上で、施設退所時の児童手当の収入認定に係る取り扱いを変更することについて前向きな対応を考えたいと思っております。見直しに向けて検討を進めたいと思っているところでございます。

古屋(範)委員 ありがとうございます。

 児童手当がぜひとも子供のために、それも児童養護施設にいる困難を抱えた子供本人に、ぜひとも自立のために使えるよう知恵を絞っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。

渡辺委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 子ども・子育て新制度から間もなく一年となります。新年度を前に、待機児童の問題は引き続き深刻であります。

 午前中の山尾委員の質問も受け、大臣は先ほど、「保育園落ちたの私と私の仲間だ」、この署名を受け取られたと伺いました。二万七千六百八十二名と、文字どおり、多くの皆さんの痛切な願いのこもった署名だと思います。

 これを受け取られた受けとめをまず冒頭に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先ほど三人の女性の方々から、お二人はお子様も連れてこられておりましたが、直接お話をお聞きし、署名、そしてまたお一人お一人が御自分の思いを書かれたという分厚いものをいただきました。入る寸前だったものですから、まだ中身は拝見をしておりませんが、戻ってからしっかりと見たいというふうに思っております。

 いずれにしても、東京あたり、特に都市部で、御苦労されて、保育に恵まれないで、仕事が、そして子育てがなかなかうまくいかない、こういう人たちがどのように困っていらっしゃるかということをしっかりと受けとめ、私どもはこのところ十万単位で保育所の定員をふやしてきておるわけでありますけれども、追いつかないということを踏まえながら、これからさらにこれを加速するということをやっていきたいというふうに思っております。

 第二の矢でありますこの子育て支援、しっかりとやっていきたいというふうに改めて思ったところでございます。

堀内(照)委員 ぜひ正面から真剣に受けとめていただきたいと思います。

 待機児童解消ということで昨年から始まった新制度では、保育士の配置基準などを規制緩和した地域型保育を導入しています。しかし、この小規模保育等を卒園した子供たちの行き先が決まらない、三歳の壁というのが今起こっております。

 保護者からは、やっと入れたと思ったけれども三歳でまた保育所探しをしなければとか、仕事しながらの保育所探しで本当に大変だ、いつまで保活をしなければならないのかと悲鳴が上がっております。

 小規模保育や家庭的保育は、そもそもゼロ、一、二歳のみの施設ですから、三歳になれば卒園しなければなりません。その受け入れ先の連携施設をつくらなければならないんですが、今、全国で、小規模保育は千六百五十五カ所、家庭的保育は九百三十一カ所です。これらのうち、連携施設が決まっているのは何カ所で、何人の三歳児の受け入れが可能になっているのか、お答えいただけますか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 家庭的保育、あと小規模型の地域の保育でございますが、今先生お話ありましたように、都市部において非常に待機児童が多いということで、待機児童の多くがゼロ―二歳だということもございまして、こういったゼロ―二歳の子供について特段の対応をするということで、新たな制度として子ども・子育て新制度でつくられたものでございます。

 お話しのように、ゼロ、一、二がベースということですので、その後の三歳児以降の受け入れということで、原則として連携施設というのを設定するということをお願いしてございます。これにつきましては、一応経過措置が置かれておりまして、五年を経過する間は確保しなくても開設ができるということになってございます。

 これにつきましては、制度を施行してまだ一年たっておりませんので、現時点で連携施設がどれくらい設定されているか、あるいはその連携先との関係で三歳児をどれくらい把握できているかということについては、まだ一律的な把握はしておりません。これにつきましては、四月に改めて調査をすることにしておりますので、その段階で確認をして把握をいたしたいというふうに思っております。

堀内(照)委員 五年の経過措置というんですが、この春から三歳児が出て、行き先が問題になっているわけであります。

 NPO法人全国小規模保育協議会のアンケート調査では、回答のあった三二%の事業者がまだ連携施設を設定できていないと答えています。半数の事業者が三歳児以降の受け皿としての連携施設が見つからない。つまり、連携施設が設定できても、三歳児の受け入れができないというところもあるんだと。それはそうだと思うんです。みずからのゼロ、一、二歳がそのまま上に持ち上がれば、もう筒いっぱいで入らないということになるわけです。

 ですから、連携施設とその受け皿の問題、今、把握を四月からとおっしゃいましたけれども、三歳児の受け入れ先についても国が責任を持って実態を把握すべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 平成二十八年の四月時点での各自治体における連携施設の設定状況について、これについては調査を行うこととしておりまして、実態を把握の上で、連携施設の設定促進に役立ててまいりたいと思っておりますが、今お話がありましたように、必ずしも三歳以降の受け入れがなされていないというような、そういうことも、連携施設といいながら、なかなかうまくいっていないというところがあるという御指摘もございまして、今申し上げたように、この設定状況について調査を行うということを今考えているところでございます。

堀内(照)委員 受け入れ先が問題ですので、そこをしっかり把握していただきたいと思うんです。

 神戸市のある小規模施設では、連携施設があるにはあるんですが、直線距離で十キロ以上離れている、車でも二、三十分かかるところで、とても利用できない。三歳児が今五人いるそうなんですが、このままだと三歳どころか四歳になっても行き先がなかなか展望が見えないと。

 神戸市全体では、この春、小規模からの卒園児が二百七十人いるということですが、現時点で一次選考に漏れた方が四十三人、三歳児全体の保留通知が二百四十六人もいますので、これは本当に入れるのか。連携先で受け入れられない、市町村の利用調整でも入れない、こうなってくるとどうなるのか。小規模を退園して仕事をやめなければならないのか。これはどうするのでしょうか。

香取政府参考人 連携施設のお話でございますが、マクロで見ますと、三歳児の受け入れ児童数が約百四十五万人ということで、定員が百四十五万人でございます。三歳児の待機児童は約三千人ということで、二十七年度の全体の二万三千人に対してはその一〇%程度ということですので、マクロでいうと三歳児の待機児童は一般的に多くないということなんですが、お話しのように、個別の地域によっては、三歳児で保留が出るということはもちろんございます。

 ということで、今お話がありましたように、一つは、市町村の利用調整で定員にあきのある保育所について調整を行うということが一つ。もう一つは、利用調整の際には小規模施設から上がってくる子供については優先入所ということで、調整の中で優先的な取り扱いをするということを行っております。最後、例外的に、どうしても受け入れがないという場合には、当該小規模保育等でそのまま受け入れ続けるという選択肢も一応残すということで対応いたしたいというふうに思っております。

堀内(照)委員 つまり、行き先がなければ特例としてそのまま小規模に入り続けるということだと思うんです。

 ゼロ歳からの乳児の居場所に三歳以上の子供がともに生活することになるわけです。現場の保育士さんから伺いますと、ゼロ、一、二歳を一緒に預かるだけでもなかなか大変なんだと。例えば、二歳児ぐらいになると動きが活発になってきます。ゼロ歳の子を寝かせるためには、一緒にできないので、上の子供たちを夏の暑い中でも散歩に連れ出さなければならない、体調を崩した子もいる。雨の日になると外に出られませんので、ゼロ歳児が泣き通しだと。

 一歳と二歳の子供を二人小規模に預けていたお母さんは、上の子の方がだんだんと活動範囲が広がっていく中で、施設の居室だけではなかなかおさまらずに、それでも保育士の手は限られていますので、保育者の方から、私たちがもっと外に連れ出してあげられたらよかったのですが、こう言われたというんですね。

 現場の保育士さんの実感から見ても、子供の安全が守られ、成長や発達が本当に保障されるんだろうかと思うわけであります。ゼロ、一、二歳児のみの在籍を前提にした施設で三歳児が混在する、これは大臣、問題だとは思われませんか。

塩崎国務大臣 基本的には二歳までということになっておるわけでありますけれども、特例的に三歳児までということになりますと、今先生御指摘のように、元気な、活発な子がゼロ歳児と一緒にいるみたいなことがあり得るわけです。

 三歳未満の子供を主に対象とする小規模保育事業等においても、例外的に三歳以降の子供を受け入れるということが可能でありますけれども、その場合においても、保育者一人当たりが保育することができる乳幼児の数、乳幼児一人当たりに必要な面積、必要な設備、構造等について、国が定める基準に従って条例で定める基準、これを遵守していただくこととされているわけでありまして、このため、安全面それから子供の発達についての問題があるというふうには考えておりません。

 一方で、小規模保育事業等の施設においても、安全面が確保されるように保育室を区切るとか保育室の利用の仕方を工夫することや、小規模保育事業等の保育内容について支援などを行う保育所等の連携施設における子供同士の触れ合いなどを通じて、年齢に応じた子供の活動への配慮が行われることが適当ではないかというふうに考えております。

 いずれにしても、本来的には、希望する三歳以上の子供について、保育所それから認定こども園などに適切に入所できる環境整備に努めてまいることが基本だというふうに思っております。

堀内(照)委員 問題があるとは考えていないというのは重大だと思うんですよ。

 厚労大臣が発した厚労省告示である保育所保育指針では、「三歳未満児の保育に関わる配慮事項」として、特に感染症にかかりやすい時期であるとか、事故防止に努めながら活動しやすい環境を整えるですとか、情緒の安定を図りながらなどとされているわけであります。

 活発になっていく三歳児以上とこうした配慮が必要な乳児とが一緒に保育されるという、基準を守るのは当然なんですが、それでもなお危険があるじゃないかと私は指摘しているわけであります。

 三歳児の発達という点でも、外遊びや集団遊び、それから人間関係でも集団行動というのが必要になってくる年齢であります。こういった指針が掲げている方向から照らしても、それとは異なる状態を生み出してしまう。しかも、連携先が見つからない、もしくは受け入れ先が見つからない、そうした特例というのが常態化しかねないんじゃないかと私は危惧をするわけであります。

 今大臣は、ですから保育所ですとか受け皿をしっかり整備する必要があるんだとおっしゃいました。本当にそこが私は求められているんだと思うんです。規制緩和された施設のさらに特例なんということになると、本当に安全、発達に責任を負えるのかと思うんです。

 そこで、この三歳児の行き先、私はやはり公立保育所で受け皿をつくるなど自治体が責任を持つべきだと思うわけですけれども、その点、大臣、いかがでしょうか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 小規模保育事業等の事業者に対しては、利用乳幼児に対する保育が適正かつ確実に行われるとともに、卒園後も満三歳以上の児童に対して必要な教育または保育が継続的に提供されるよう、連携協力を行う連携施設を適切に確保することを求めております。

 厚生労働省としては、各市町村に対して、みずから公立施設を連携施設として設定することも含め、積極的な関与や役割を果たすよう求めております。

 また、公立保育所の施設整備費については、地方六団体の提案による三位一体改革の結果、平成十八年度に一般財源化されたものでありますが、施設整備に係る事業費のうち、五〇%が一般財源化に係る地方債の対象とされ、その償還金の財源として地方交付税措置が講じられているところであります。こうした枠組みに沿って対応していただきたいと考えております。

堀内(照)委員 自治体の責任ということを本当にはっきりさせる必要が私はあると思っています。

 小規模に預けていたある方は、子供が三歳になって、行き先が見つからない中で、何度も行政の窓口に相談に行ったというんですね。ところが、担当者からは、あなたが小規模を選んだのだから仕方がない、こう言われたというんです。しかし、最初に利用申し込みをしたときには、認可保育所に入りたいという希望を伝えたんです。しかし、そんなことを言っていたら入るところはないですよ、こう言って、第一志望を小規模にするように促されていたわけであります。

 新制度の指針でも、新制度の教育、保育給付や他の支援事業は市町村が実施主体だと明記されているわけであります。決して親の責任じゃない、自治体の責任だということをやはりはっきりさせるべきだと思います。

 今答弁がありましたように、自治体が責任を果たす上で、やはり公立の役割というのは大事なんだと思います。認可保育所を思い切ってふやす、その中でも、この公立の役割が非常に大事だ。

 しかし、きょう資料でお配りしていますが、全国で公立保育所はむしろ減っているわけであります。廃止、民営化が進んでいます。グラフにありますように、今本当に、そして答弁がありましたように、整備、運営にかかわる財源が一般財源化されたからにこれはほかなりません。ちょうどその時期を境に公立と私立の施設数が逆転をしているわけであります。私立の方が今や多くなっている。そこへ、今、施設の老朽化が進み、建てかえや改修が必要になっている。そういうことも契機となって、今、次々と公立保育所が廃止されたり、民営化が進んでいるということです。

 この財源、やはり一般財源化したということが私は大きな原因だと思います。ここをしっかりもとに戻す、そして、公立保育所の老朽化対策等、自治体の裁量ではなくて、財政面で、先ほど五〇%はという話がありましたけれども、しっかり国がもっと責任を持つ、今でもこうですから、もっとしっかり責任を持つということが必要ではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 先ほどもお答えいたしましたけれども、公立保育所の施設整備費については、地方六団体の提案による三位一体改革の結果、平成十八年度に一般財源化されたものでありますが、施設整備に係る事業費のうち、五〇%が一般財源化に係る地方債の対象とされ、その償還金の財源として地方交付税措置が講じられているところであり、こうした枠組みに沿って対応していただきたいと考えております。

堀内(照)委員 そういう対応ができるじゃないかということでありますけれども、もう一方で、総務省は、自治体に向けて、公共施設等総合管理計画の策定要請を今出しております。公共施設等の最適化などと称して、老朽化が進む公共施設の維持管理について、自治体に中長期計画を持たせ、人口や利用需要、そして民間代替可能性などを検討して、整理統合、解体、撤去を進めるものだと言わなければなりません。

 この公共施設というものに公立保育所は含まれるんでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 公共施設等総合管理計画につきましては、過去に建設された公共施設等がこれから大量に更新時期を迎える一方で、地方公共団体の財政は依然として厳しい状況にあること等を踏まえまして、各地方公共団体が公共施設等の全体を把握し、長期的視点に立って、保有する公共施設等の維持管理、更新等を適切に行っていくため、各地方公共団体に対し、策定を要請しているところでございます。

 このような趣旨を踏まえまして、計画の対象施設は、公共施設、公用施設その他の当該地方公共団体が所有する建築物その他の工作物全てとしておりまして、御質問の公立保育所も含まれるものでございます。

堀内(照)委員 公立保育所の整備費が一般財源化された中で、老朽化した公立保育所の改修、建てかえなどは、自治体にとっては本当に財政的に苦しい事業なんだと思います。運営費も当然一般化ですから、改修した後、維持するということも懸念として出てくるわけであります。そこへ、今のメニューですね、公共施設の最適化。集約化、複合化、除却を進めよと。取り組みを後押しするために地方債措置をとるとしているわけであります。

 これでは、さらなる民間移管や廃止へ国が誘導しているようなものじゃないかと思うわけですが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 もともと、三位一体の議論の際に、国と地方の役割分担ということで、いろいろな議論がありましたが、こういう形になって、一般財源化というものが行われたわけであります。

 今、保育が民営化の方に追いやられるんじゃないか、こういうことだろうと思いますが、それはそれぞれの地方がお考えをいただくというのが地方自治の基本だというふうに思いますので、必ずしもいわゆる民間の保育だけに偏っていくということではないんだろうというふうに思います。それは地方が決めることではないかと思います。

堀内(照)委員 財政的に苦しい中でそう追いやられている実態があるんだと私は言わなければならないと思うんです。

 連携先が、そして受け入れ先がない中で、本当はふさわしくない特例をせざるを得ない、こういう問題を解決するためには、やはり思い切って公立が積極的な役割を果たすことが必要だと。これは、答弁も今あったとおりです。

 その公立が大事だと言いながら、今現に公立保育所はどんどん少なくなっている。ここをどうするのかということが私は問われていると思うんです。だからこそ、公立保育所の運営、整備にかかわる国の財政的な責任をもっと果たしていく必要があるということを厳しく指摘したいと思うんです。

 保育園ふやし隊@杉並の皆さんが、三歳の壁について保護者アンケートをとっておられます。八四%という圧倒的多数が認可保育所への入所を希望しております。先ほども少し答弁で、保育所だけではなくて、こども園ですとか幼稚園の預かりなんかも確かに受け皿の一つなんだと思うんです。しかし、八四%がなぜ認可と言うかというと、理由は、幼稚園での預かり時間では仕事を続けられないと言うんです。

 確かにそうで、私、神戸市の公立で調べましたら、一番長く預かってくれるのは五時までなんです。四時までとか、週何回しかできませんとか、これではフルタイムで働くお母さんはとてもじゃないけれども預けられない。だから、なかなか三歳の行き先が今ないんだ。とりわけ、そういう中ですから、やはり公立保育所が役割を果たすことが必要なんだと思うわけであります。

 こういう声に応えるためにも、規制緩和ではなくて、公立を初めとした、基準がきちんと定められた認可保育所のさらなる増設へ思い切った手だてを強めるべきだと厳しく指摘したいと思うんです。

 保育士確保、処遇改善についても伺いたいと思います。

 今、保育士のなり手が少なく、公立の正規でも人が集まらないですとか、保育士を採用できずに開所できなかった小規模施設があるなど、保育の受け皿づくりの上でも、保育士確保が欠かせません。

 神戸市の認定こども園で働く一年目の保育士の女性の方から私は話を伺いました。ゼロ歳児保育の担任をしておりまして、やりがいもあるけれども、勤務時間のほとんどがどうしても子供を見る時間に割かれ、記録や打ち合わせの時間がなかなかとれない、結局、事務作業はサービス残業になる、家に帰っても、くたくたで、もう仕事がたまる一方だ、仕事がきつく、幼い命を預かるその責任の重さの割に、手取りでは月十四万ほどだ、本当に割に合わないと。そして、割に合わないだけじゃなくて、いよいよ体調を崩してやめていく人も、先輩を見ていて、大体みんな二年ぐらいでやめていくんだという話でありました。こういう実態はどこも共通していることだと思います。

 この間、公務員の給与改定に対応して、公定価格に算定される保育士の本俸基準額も引き上げられてきましたけれども、十九万九千九百二十円、資料の二枚目に表をつけておきました。国家資格を持った専門職として、そして命を預かる責任の重さから見て、それに値する水準とは、私、決して言えないと思うんです。キャリアを積んだ主任保育士でも二十三万四千四百九十八円が基準額です。手取りにすると、二十万そこそこあるかないかじゃないかと思うんです。

 大臣にこれを伺いたいんですけれども、これで、生涯にわたって生活を支える職業として選択するに値する賃金と言えるでしょうか。

塩崎国務大臣 待機児童の解消に向けて保育の受け皿拡大を大きく進めていく中で、大事なことは、保育の担い手をどう確保していくかということで、極めて重要かつ喫緊の課題であるということは、我々も深く認識をしているところでございます。

 個々の保育士の賃金水準は、置かれた状況によってそれぞれでありますけれども、御指摘のように、生活できるような待遇になっていないと断定するというところまで言えるかどうかというのは、いろいろ評価があろうと思うわけでありまして、保育士として勤務しない理由などに給与水準の低さが挙げられることが多いということは、やはり保育士の処遇を改善していくことは人材確保を図る上で重要な課題であるということ、これはやはり変わりはないんだろうというふうに思っています。

 それで、平成二十七年の四月から施行いたしました子ども・子育て支援新制度、この中で、消費税財源を活用して、処遇改善等加算として三%相当の改善を行うとともに、人事院勧告に従った処遇改善も行ったところであるわけであります。

 今後とも、この処遇改善に取り組んでいくことが重要だと思いますけれども、何分にも、先ほど来議論が出ているように、財源であります。財源なしに、上げることだけをお約束するのは空手形になってしまうわけでありまして、恒久的にやはり財源を確保していくということが極めて大事であるわけで、一体改革の中の、先ほど来も取り上げられております三千億超の財源確保につきましても、私ども自由民主党の中でも、かつて私がまだ自民党で政調会長代理をやっていた際には、本当に、この三千億をどう確保していくのかということを、しばしば議論を真剣に行ってきたことであります。

 この財源確保によって実施をする事項に、質の向上というのが中心的な役割を果たしていくというふうに思っているわけでありまして、その中で、二%相当の処遇改善が約四百億円ぐらいかかるわけでありますけれども、この財源を恒久財源として確保しながら取り組まなければならないということで、引き続き全力で取り組んでいきたいというふうに思っております。

堀内(照)委員 消費税財源について、私たちは全く立場は違うわけでありまして、財源論の話をし出しますと、それこそ、なぜこれだけもうかって内部留保をため込んだ大企業には減税なのか、財源といえば、もっと取るところがあるじゃないか、それはもう議論がもちろんあるわけですから、当然、私たちは、そういう財源はしっかり確保してやるべきだと訴えているわけであります。

 今、処遇改善のことも言われました。資料の三枚目にそのイメージ図をつけておきました。これを見ていますと、階段状に、勤務年数、経験年数に応じて加算がされていくということになっているわけですが、これは十一年で頭打ちなんです。

 これはなぜ十一年で頭打ちなんでしょうか。十一年以内に離職するということが前提なんでしょうか。

中島政府参考人 お尋ねの処遇改善等加算でございますけれども、これにつきましては、保育士さん等の人材の確保及び資質の向上を図り、長く働いていただける職場の構築を促すべく、職員の平均勤続年数や賃金改善等に応じた人件費の増について評価をさせていただくという仕組みでございます。

 委員御指摘のように、この加算率については、平均勤続年数が十一年を超えた場合には一律となるという仕組みになっていることは、御指摘のとおりでございます。

 これにつきましては、二十七年四月施行のいわゆる新制度の施行前に、民間の保育所に対しまして、現在の処遇改善等加算と同様の機能を果たしていた民間施設給与等改善費、保育士等処遇改善臨時特例事業において同様の考え方で制度を組んでいたということでございまして、十年を超えた場合、加算率が一五%で一律ということだったということでございます。

 新制度、去年の四月施行でございましたが、それ以降の現在の処遇改善等加算では、それにさらに工夫を加えまして、平均勤続年数を一年延長して十一年に、そして加算率を一%分上乗せして四%とさせていただくということで、保育士等のさらなる処遇改善のために努力はさせていただいているというところでございます。

堀内(照)委員 長く働いていただくためだと言いながら、なぜ十一年でとまるのかという話なんですね。理由は、結局、以前から民改費等はそういう仕組みだったということですから、十一年で頭打ちにするという確たる理由は見当たらないんだと私は思うんです。

 厚労省告示である「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」というのがあります。ここでは、給与水準の確保の必要性とともに、「従事者のキャリアアップの仕組みを構築するとともに、国家資格等を取得するなど、高い専門性を有する従事者については、その社会的な評価に見合う処遇が確保され、従事者の努力が報われる仕組みを構築する必要がある。」こう書いてあるんです。

 まさに、社会的評価に見合う処遇の確保のために、本俸の部分をしっかり引き上げることと、そして、従事者の努力が報われる仕組みというんだったら、この勤続年数に合わせて、十一年で頭打ちではなくて、しっかりそういう勤続年数が反映されるような、昇給が続くような財源保障を公定価格でもしっかり見るべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 年功によって引き上げていくという考え方は、一般的に我が国の雇用慣行ではあるわけでありますけれども、これは、民間の、企業でのお話はともかくとして、今内閣府から答弁があったように、公定価格ということで決められているわけであります。

 これについては、やはり財源をどうするかということが大事であって、消費税等に関する考え方が違うというお話がありましたが、私どもとしては、当初、七千億は消費税で、その中で三%の引き上げを行ったわけでありまして、あと、必要だということで、民主党、公明党、自民党の中で合意を見た後、三千億分に対応する二%相当の処遇改善をしていくということを、何度も申し上げますけれども、恒久財源を確保しながらやっていくということを今最大の課題としているわけでありまして、とりわけこの処遇に関しては、先ほど申し上げたように、約四百億円かかるわけでありますので、ここのところをどうするのかということで、今回、この十一年以上、以下の問題については、限りある財源の中でここまで精いっぱいやったというふうに理解をしております。

堀内(照)委員 先ほど紹介しましたけれども、保育士で十九万九千九百二十円、主任保育士でも二十三万四千四百九十八円、所長でも二十五万三千三百円が基準額なんです。ですから、本当に、今の大臣の答弁を保育を目指す学生が聞いてどう思うかと私は思うんですね。やはり、抜本的にここは引き上げないと、本当に保育士確保というのであれば、夢を持って、志を持って保育を目指す学生が、この仕事なら続けられると思うような仕組み、メッセージを発する必要があるんだと思うわけです。

 保育士の給与をこの基準からさらに引き下げる要因になっているのが、私は人員配置の低さだと思うんです。保育士は、子供の保育だけが仕事ではありません。勤務時間の中で事務や打ち合わせ、研修等も必要です。それらを保障するために、公定価格上、保育士の配置がどのように算定されているんでしょうか。

中島政府参考人 保育士さんに行っていただきます事務処理や会議への出席、さらには研修への参加に伴います負担を軽減していただくということは、大変重要な課題だと思ってございます。

 したがいまして、公定価格の基本分単価におきましては、以下申し上げる二点を盛り込んでおるところでございます。

 一つは、これは新制度施行の前から措置されていたものでございますけれども、保育士さんが事務処理や会議出席、休憩の時間を確保できるよう、いわゆる休憩保育士、そうしたものを加配していただく、そういう部分の人件費というものを引き続き措置させていただく。

 そして、これに加え、新制度になりました今日は、消費税一〇%への引き上げを前提とした、いわゆる七千億メニューを前倒しする中で、研修を受講する保育士さんのかわりに保育に従事していただくために加配される、いわゆる研修代替保育士に係る人件費といったものもあわせて新たに評価をさせていただくということで、保育士さんのもろもろの負担軽減等について、職員配置上、公定価格で手当てをしているということでございます。

堀内(照)委員 今の休憩代替は具体的に何人分でしょうか。それから、研修代替は年に何日分でしょうか。

中島政府参考人 いわゆる休憩保育士につきましては、利用定員が九十人以下の施設につきましては常勤保育士一名、それから九十一名以上の施設につきましては非常勤保育士一名の費用を算定しているというのがまず最初のお答えでございます。

 二つ目、研修代替保育士につきましては、年間二日分の費用を算定させていただいているというところでございます。

堀内(照)委員 クラスは何クラスもあるわけで、一人分、それから研修は年二日分、これは本当に負担軽減になるんだろうか。

 計画を立てる、記録をつける、保護者への支援、職員相互の話し合い、小学校に送付する資料づくり、これは全て保育指針で定められている業務なんです。そういう保育指針で定められた業務自体が、幼稚園の場合は基本四時間教育、残りは事務作業に充てられるでしょう、ところが、保育所の場合は、勤務時間のほとんどがやはり子供と向き合う時間ですから、そういう事務などの時間がとれないわけであります。

 そもそも、保育所職員の配置基準が実態に見合わない、少ないんだと私は思うんです。大臣、これはぜひふやすべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 保育所等の職員配置基準については、児童の年齢ごとに、国が定める最低基準を上回る範囲で都道府県において定めることとされております。

 昨年四月より始まった子ども・子育て支援新制度においては、消費税財源を活用し、三歳児の職員配置について、最低基準である保育士一人当たり二十人を上回って、保育士一人当たり十五人とした場合に公定価格上の加算を行う改善を図ったところであります。

 今後、〇・三兆円超の質の向上メニューに含まれる一歳児や四、五歳児の職員配置基準についても、必要な財源を確保しながら、さらなる改善を行っていくこととしております。

 このほか、平成二十八年度においては、保育補助者の雇い上げ費用の支援や、保育所等におけるICT化の促進を行い、保育士の負担軽減を行うこととしており、これらを通じて保育の質の確保に努めてまいりたい、このように考えております。

堀内(照)委員 ぜひ現場の実情をしっかりつかんで対応していただきたいと思うんです。

 NHKの朝の情報番組で取り上げられておりました埼玉のある園なんですが、子供の午睡の時間に正規職員の打ち合わせ会議ができるように、パート職員を上乗せ配置しております。しかし、その給与というのは、正規職員の給与を削って捻出しているわけです。

 今、虐待など子供とのかかわりでも、親への対応、支援でも難しいケースがふえています。にもかかわらず、配置基準が少ないがために、ただでさえ少ない給与を削減してでも手厚く人を配置する必要が出てくる。現場ではそういう努力が行われているわけであります。

 ですから、この低賃金、過重労働が改善しないわけです。配置基準を実態に見合ったものに抜本的に改善すべきだと強く指摘をしたいと思うんです。

 最後に、保育の担い手確保ということで、朝夕の保育士配置の要件を変えようとしております。保育士は最低二人以上必要なわけですが、児童が少数である時間帯に保育士一名と無資格者でいい。今年度に限り特例で認めていたものを、省令改正して広げようということだと思うんですが、これは少数でやるというんですが、何人なんでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘のように、今、必ず保育士は二人配置ということで、どんなに人数が少ない場合でも、朝夕で子供が少なくなった場合でも二名配置ということになっているものにつきまして、一定の緩和措置を講じるということでございます。

 この場合の児童の少数の考え方でございますけれども、例えば一歳児ですと、子供六人に対して保育士一人というのが標準的な配置になります。それに対して、現在は、六人を下回った場合でも二人配置をしなさいというのが今の基準で、これを、一名プラス研修を行った者一名という形で代替するということになりますので、その意味でいいますと、子供六人に対し一人ということになりますので、六人を下回った場合ということになろうかと思います。

 例えば、五人預かる場合、基準上は一人でいいものを、二人と今しておりますので、一人プラス一人という形でやっていただけるようにする、こういう趣旨でございます。

堀内(照)委員 私は、少数だからいいというわけにはいかないと思うんです。

 朝夕の時間というのは、乳児、幼児混合の保育となります。けがをしないようにと、それだけでもしっかり目を配らなければならない時間帯であります。そういうときに、朝は、例えば、きょうは子供が熱を出しましたと保護者から電話がかかってくる、早くから来ている乳児にはお茶やお菓子を出したりする。夕方は、けがなんかがあったら、きちんとそのことを親に申し伝えなければなりませんし、保護者への支援という育児相談などの時間にもなるわけであります。何かと保育士が忙しい時間帯でもあります。

 厚労省の資料の中に自治体へのアンケートもありましたけれども、そこでも、七一%が特例を認めていない。けが等の発生が多いことから、最低基準に基づく保育士の配置は必要だとか、保育の質及び子供の安全面の確保という観点から、質や安全性の低下を懸念する意見が多く寄せられています。

 現場からこういう声が上がっているのに、どうして導入するんでしょうか。大臣、いかがですか。

香取政府参考人 今回の措置につきましては、今の話では、保育士二名の配置のうち、一名については保育士と同等の知識、経験を有するものと認められる者で代替してもよろしいということになりますので、職員を二名配置している、その意味でいうと、人を減らすということではないということが一つ。

 それから、この措置につきましては、地方団体からの要望を踏まえて、一年間の特例措置で行ったものを延長するということでございますので、むしろ自治体側の御要望も踏まえて私どもとしては対応したということでございます。

堀内(照)委員 そのアンケートでも、やるべきだというのは二七%に対して、やるべきではないというのが二九%というのが出ていましたよ。

 それで、この問題を報道で知った学生が、こう言っているというんですね。これは大臣にぜひ最後にお答えいただきたいんです。学費をかけて四年間学んだにもかかわらず無資格者と変わらないのか、子供の貧困や虐待なども含め専門性を身につけたいと学んでいるのにどういうことなんだと。

 これでは、保育への志をそぐことにしかなりません。保育士確保にはむしろ逆行だ、やはりこういうのはやめるべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 一生懸命勉強していただいて保育士の資格を取って、その方々が保育を行うというのが原則であることは、これは変わりがないところでございまして、今回の保育の受け皿整備を進める中で、時限的な対応として、先ほど来申し上げているように、先ほど来御指摘のような制度を行っているわけであります、朝夕における保育士配置要件の弾力化などを行うということにしているわけであります。

 これはやはり、十一時間開所をして、いっぱいいっぱいに皆さん頑張っておられる、そういう保育現場の実情に応じて柔軟な人材活用を可能とするということが趣旨でございまして、例えば、朝夕など児童が少数となる時間帯において、保育士一名に加えて、先ほど来出ている子育て支援員の研修を修了した者、保育所で保育業務に従事した期間が十分にある者、家庭的保育者などの、先ほど地方からの声がという話がありましたけれども、都道府県知事が認める一定の知識等を有する者が一名配置されていればよいということとしているわけで、専門職である保育士と一定の知識のある者がチームを組んで行う体制としているわけでございまして、保育の質の確保は引き続きしていく。

 先ほど申し上げたように、この弾力化措置は、児童が少数となる時間帯に限って、待機児童を解消して受け皿拡大が一段落するまでの時限的な対応ということで、保育所等における保育は、さっき申し上げたように、生涯にわたる人間形成の基礎を培うものでありますので、専門的な知識と技術を持った保育士にお願いをするというのが原則であることに変わりはございません。

堀内(照)委員 時間なので終わりますけれども、指針でも子供の最善の利益ということが明記されているわけであります。それを考えると、やはりやるべきではない。

 さらなる規制緩和でもある企業主導型保育なんかも検討されているわけで、そうではなくて、認可保育所をしっかりふやしていく、保育士の処遇の抜本的な改善に乗り出す、そのことを強く重ねて申し上げて、終わります。

渡辺委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 おおさか維新の会の浦野です。よろしくお願いをいたします。

 きょうは二十分ですので、早速質問に入りたいと思います。

 きょうは三問お聞きしますけれども、一つ目、既に予算委員会等で話題にもなっていますし、対応していただいていると思っていますけれども、一八九ですね、虐待通知番号。一八九にかけた多くの人が途中で切ってしまうという問題ですけれども、これは、ガイダンスが長いために切られるんじゃないかというふうに言われています。

 これは、もちろん今もう既に答弁をされて、春には半分にしたいというふうにおっしゃっていますけれども、今、多分もう春なので、いつそれが実現できるか、ちょっとお聞かせください。

塩崎国務大臣 もともと三桁にすることについては、先生からの御提案もあってやらせていただいてきたわけでございますが、長過ぎるというこのガイダンスを、何とか時間をとりあえず半分以上短縮する、それから、携帯電話からかけた際に、その場所を特定する番号入力などの操作の手間を減らすといったことを可及的速やかにということで、この春、といっても、もう既にもうすぐ桜も咲くころでありますけれども、桜の咲く月には何とかしたいというふうに考えているところでございます。

浦野委員 それはそれで、できるだけ早くやっていただきたいと思います。

 ただ、それでも恐らく、短くなればどれだけ効果が出るかというのは未知数ですけれども、やはり私は、人が対応するコールセンターを考えるべきだと思います。

 このコールセンター、ではやりましょうと言ってすぐできるような話でもありませんので、そんなに急にやれとは私も言いません。ただ、どれぐらいの時間がかかって、どれぐらいの予算がかかるかというぐらいは、やはり僕は厚生労働省として試算だけはしておくべきだと思うんですけれども、試算だけでもしませんか。

塩崎国務大臣 御指摘のコールセンターの設置についても、一つの提案だということでしっかり受けとめたいと思っておりますが、先ほど申し上げたように、ガイダンスなどの短縮については、今、通信事業者と詳細を詰めておりまして、できるだけこれは早く実現したいと思いますけれども、今のような抜本的なことについても、他の、例えば一一〇番とかそういう形で、しっかり一カ所でどこでもうまくつながる、対応できる、そういう体制をやはり組まないと、もともと命にかかわることでありますから、そこのところはしっかり、先生の今の御提案も正面から受けとめて、対応してまいりたいというふうに思います。

浦野委員 次、二問目になりますけれども、大臣所信で、子育て世代包括支援センターの法制化という項目があります。これは、今、各市町村で取り組んでいただいているものを、三十二年までにやろうということで取り組んでいますけれども、なかなか、現在、二十七年度で百五十弱、百五十まではいっていないと思いますけれども、それを二十八年度に二百五十まで何とか伸ばそうということです。

 この取り組みが少ない理由が、法制化されていないという原因も一つあるだろうとおっしゃっているからこそ法制化をしようということだと思うんですけれども、それだけの理由でこのセンターが前に進んでいないのかという、ちょっと私は、これだけではないと思うんですけれども、何かほかに原因があると思うんですけれども、その理由はお伺いできますか。

塩崎国務大臣 例えば、埼玉の和光市はたしか五カ所、既に同様のものがありますし、三重県の名張市ではたしか十三とか、正確には覚えておりませんが、たしかそのくらい、子育て世代包括支援センターと同じような役割をなしているところをしっかりと地域のものとして運営しているということをやっておられました。

 なぜこれが今まだ進まないのかということでありますけれども、基本的には、これは地方がしっかりとこの重要性を受けとめて、やはり、子供を妊娠したときから子育て期に至るまで一貫して相談から対応もできる、和光市の場合には子供も産めるというところも助産所としてございましたが、そういうような理解を深めた上で、その地域でやっていただくということが大事なんだろうと思うので、その理解をやはり深めるように努力をしなければいけないというふうに思います。

 一方で、ただ建物をつくるわけではありませんので、その中に入る方々として、まずはやはり保健師さんとか助産師さんとか、そういう専門職の方を確保することが難しいといったことがあり得る。

 今申し上げたようなことでありまして、では、うまく回っているところはなぜうまく回っているのかというような市町村の好事例を私どもとしては周知して、このような形でおやりになって、人材確保もこうやっているということを示していきたいなというふうに考えております。

 また一方で、法定化を含む児童福祉法の改正というのがございまして、これも子供の、先ほど先生から虐待のことが御指摘をいただきましたけれども、それらを含めて、子供というものに対する問題の大事さということをさらに全国的に広めていく、深めていくということを私どもとしてもやっていかなければならないんじゃないかというふうに考えているところでございます。

浦野委員 きょうは、非常に子育てに関する、特に保育に関する質問が多い一日でした。

 私も最後に保育の関係の質問をしますけれども、要は、きょうの質問も聞いていても、とどのつまり、保育士不足なんですよ、全ては。人材不足なんです。保育士が足りないからこそ保育園がつくれない。箱はつくれても子供を預けることができない。それはなぜか。保育士がいてないからなんですね。

 これはずっとずっと、私も、去年もおととしも、国会に送っていただいてからこのことについては絶えず皆さんにお願いをしてきました。正直、国はやれることをやっているとは思います。それは十分成果が出ていないというのはありますけれども。人を育てるには時間がかかってしまう、これは仕方がないんです。

 これは保育に限らず、介護もそうなんです。今、日本が必要としている分野において、人材不足というのが今一番大きな問題になりつつある。でも、これは、先ほど山尾委員もおっしゃっていましたけれども、待機児童はもうずっと前から問題になっているわけですよね。保育士不足も今に始まった話ではありません。十年と山尾委員はおっしゃっていましたけれども、実は、そんなのもっと前から、四十年、五十年前から同じことがずっと言われ続けているんです。

 私も、地元に戻れば保育園を経営していますから、先ほどの白須賀さんと同じように、妻が保育園の園長をしていて、帰るたびに、国会議員は何をやってんねん、保育園大変やねんでと、みんな、怒られると言ったらあきませんね、叱咤激励を毎週受けております。やはり現場を一番よく知っている保育園の園長の、妻でもある園長から、これはどうなっているの、あれはどうなっているの、何とかしいやと、毎週私は勉強するわけです。まあ、私ももともと保育士だったので、ある程度は知っていますけれども。

 ただ、でも、やはり保育士を育てるというのはそんな簡単な話じゃないんです。先ほど二十時間でという話がありました、研修。二十時間なんかで保育士のかわりになるような人は育てられません。保育園実習だけでも何週間行くか御存じですか。朝から晩まで、毎日毎日、実習先の保育園に行って、最後、その日のまとめを書いて、三時、四時までかかって書いて、毎日毎日寝不足になって、三週間、みんな頑張るんですね。そういう努力もした上で、勉強した上で、みんな立派な保育士になって社会に出てくるわけです。

 堀内委員も最後おっしゃいましたけれども、その保育士と同じように横並びでされると、確かに保育士としてのアイデンティティーというのがどんどんなくなってしまうじゃないか、それは私も心配はします。

 ただ、これは、待機児童解消という大きな大きな政府のとっている政策目標をクリアするために、びほう策じゃないですけれども、その場その場でやらざるを得ないからやっている、それは私も理解はできます。ただ、余りやり過ぎると、保育園の質、保育士の質がどんどんどんどん下がっていくんじゃないか。今でももう下がっています。だって、試験を受けたら全員通るわけですから。そこに競争がありませんので、質のいい悪いなんて関係なしに保育園に採用されていってしまう。それがどんどんどんどん保育士の質を下げていく結果になりかねないんです、今。私はそこは非常に危惧をしています。

 では、待機児童解消を保育園のそういう政策だけでやっていけるかといったら、僕は無理だと思っています。なぜ待機児童がふえるか、これはただ単純な話で、都市部に人口が集中し過ぎるからです。

 私は、だから、これは初めて言うわけではないですけれども、人口の分散をやはり政府としてしっかりと本気でやらないと、保育所問題は絶対に解決できないです。一方で地方で定員が割れている保育園がたくさん出てきている、一方で保育園に入れない人が二万何千人もいてる。このいびつな状況をやはり改善しない限り、待機児童の解消というのは絶対まずできない、私はそのように思っています。人口の分散をやっていく。ロンドンなんかは、人口の集中がひどかったので、わざと人口分散の政策をとっています。日本もそれをすべきです。

 それと同時に、今、市町村事業で保育園をやっています。ただ、市町村の枠を超えて保育園に入れるように一応制度はなっています。しかし、この制度もほとんど使われていないように私は思うんですね。ちょっと市町村を超えれば保育園があいている地域があるのであれば、そこにすぐに入れるような簡素化をすべきだと思うんですけれども、この人口分散と市町村の枠を超える件について御答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 東京一極集中を解消しないといけないということは、安倍内閣としても正面から受けとめて、地方創生担当大臣を置いて、今さまざまな試みをしているわけでありますし、特区についても、地方であろうとも特区を認めていく、そういうことで、東京に人口が集中するということはやはり解消していかなきゃならないというふうに私どもも思っているわけでございます。

 若い世代が子育てをしながら働ける環境を地方につくっていかないと、やはり若いカップルは帰ってきてくれないわけでありますので、そのためにも、やはり我々は、待機児童解消加速化プランを実行するとともに、少子化社会対策大綱にさまざま定められた目標がありますけれども、これもしっかりやらなきゃいけないというふうに思っております。

 最近、首都機能移転というのが余り議論にならなくなっております。かつては福島もその一つであったわけでございますし、もちろん、他の地域、近畿も含めて、いろいろなところが手を挙げていたわけでありますから、改めて、そういうことで、今、一部、消費者庁、文化庁などの移転ということも含めてやっているわけでございます。

 それから、市町村を超えて保育所を利用できるようにということでありますけれども、いわゆる広域利用は、周辺自治体において保育の需給が不均衡である場合の緩和策や改善策として、待機児童の解消にもこれは資するのではないかというふうに考えております。

 広域利用に当たっては、保護者が、利用者ですね、居住する市町村と保育所等が所在をする他の市町村間において、児童の入所に関する連絡調整というのが必要になります。その際に、簡素で効率的な手続となるように、留意すべき点などを私どもはしっかりと通知などでお示しして、自治体に周知を図らなければならないと思っておりますし、また、それを今やりつつあるわけでございます。

 来年度から導入予定の企業主導型保育事業、これは市町村の利用調整を介さずに広域でサービス利用が可能となる仕組みでございますので、しっかりと事業を推進して、広域で利用できるように保育施設についてやれればなというふうに思っております。

浦野委員 きょうは、朝からずっと保育の問題をやってきました。財源の問題というのも指摘をされてきました。

 私は、財源については、実は、こういうふうにしたらよかったのになというふうに思っているものがあります。それは何か。平成二十六年に二千七百六十七億円、平成二十七年に五百十億円、平成二十八年に四百三十一億円、合計で三千七百八億円。この三千七百八億円は何に使われたか。これは、実は、公務員の人件費を上げたんですね。この人件費、上げずに子供に使ったらよかったんじゃなかったですか。皆さんも賛成してくれるんじゃないですか。今からでも遅くないです。

 この財源を子ども・子育てに回すということを私は考えた方がいいと思います。公務員の人件費を上げるよりも子供たちのための予算をつけていく、それが、今、国会で、きょう一日じゅう審議されたことではないかと思います。

 もちろん、私たちは、公務員の皆さんだけに負担を押しつけるんじゃなくて、我々も協力をして、その予算に恒久財源ができるまで、少なくとも、恒久財源を政府がちゃんと見つけてきてくれるまで私はそれに協力すべきだと思います。これに反対する政党はないと思っていますので、ぜひお考えをいただけたらと思います。

 最後に、これは、うわさでは、共産党の吉良よし子先生もお子さんが保育園に入れなかったということでツイッターで嘆いておられました。目黒区ということで、旦那さんが目黒区の区会議員さんなので、区の方で何とかしてあげたらいいのになとはちょっと思いましたけれども。ただ、四三パー、これは山尾先生の資料にもありましたけれども、目黒区は一番、今回、保育園をつくろうと思ったけれどもできなかったというところの一つなんですね。

 ここはやはり、当事者たち、私の子供も実は兄弟入所できなくて、兄弟が違う保育園に行かなあかんようになったんですよ、自分のところの保育園なのに。うちの市は、自分のところの保育園に自分の子供を入れられる市なので、白須賀さんのような問題はなかったんですけれども、ただ、違う保育園に入れないと、兄弟で同じ保育園に入所できなかったです。それぐらい、やはり私の市も厳しいです。

 私は、この財源の問題も含めて、一度集中審議をしたらどうかなと。保育だけに限らず、子ども・子育てに関する集中審議をぜひ厚生労働委員会でお願いをしたいと思います。

渡辺委員長 理事会で協議をいたします。

浦野委員 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 改革結集の会、重徳和彦です。

 私は、きょうは、認知症の鉄道事故への賠償責任について、柚木委員からも御質問がありましたが、私の方からも少し掘り下げてみたいと思っております。

 二〇〇七年ですから、もう八年以上前ですね。当時九十一歳の男性が鉄道でひかれました。そして、その奥さんが、当時は八十五歳という高齢でございました、そして、御長男がおみえになるというところに対して、鉄道会社が振りかえ輸送の費用として損害賠償を請求したというものでありますけれども、最高裁の結論としましては、賠償責任がないということでありました。

 さまざまな報道がありまして、やはり遺族の皆さん、よかったと安堵しているという見出しが躍りました。

 でも、この本当によかったというのが、私は、賠償責任がないよという判決がよかったというだけではないと思います。

 裁判所という公的な機関が、認知症の本人そして御家族の実情を理解してくれてよかった。それから、自分たちは、その一つの家族だけじゃなくて、多くの、何百万人という認知症とその家族の方々をしょって立つ、自分たちだけの裁判ではないというプレッシャーとの闘いが済んでほっとした。さらには、当然のことながら、肉親の方が亡くなっているわけですから、その死とともに、よもやの大企業との八年余りの法廷闘争、本当に不安な、そして、一審、二審では厳しい判決が出され、そういう苦しい日々からようやく解放されてよかった、さまざまな思いがこれは想像されるところであります。

 きのうの朝も、記事に出ていましたね。貨物列車に認知症の男性が、これは七十九歳の方が宮城県の方でひかれたということがございました。

 認知症の方で、家族がお店、ドラッグストアの中で買い物をしている間、車に残っていたんだけれども、家族が戻ってきた際にはいなくなっていた。そして、ちょっとびっくりなんですが、お店からおよそ二十キロ離れたところに数時間後にいて、そして線路内で列車にはねられたということであります。

 本当にいつ自分事として起こるかわからないようなこのような事故、事件なのでありますけれども、基本的には、今回の判決はよかったと思いますが、さまざま課題が残っています。

 裁判所は、法律上の責任を負うケースを、監督義務を引き受けたと見るべき特段の事情がある場合に限定をしたということでありますが、これは総合判断でありますので、一々、家族のかかわり方、介護の状況、いろいろな諸般の状況を総合考慮しないと監督義務があるのかないのかわからないとか、それから、被害を受けた側からすれば、賠償責任を負う人がいるのかいないのかもわからない、こういう社会の安定性、安心感に支障が生じるのではないか、こういう声も多いんですけれども、まず、厚労省の御見解をお伺いします。

三浦政府参考人 まず、今回の件で亡くなられた認知症の方には、改めて御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 今回の判決を受けまして、認知症の方の事故に対する賠償の問題につきまして、例えば民間保険の活用など、さまざまな対応の選択肢が指摘されていると承知しているところでございます。

 今後、社会として備えるためにどのような対応が必要かということにつきましては、広くさまざまな立場から議論していただくということが重要だと考えております。

 そのような観点から、関係省庁と連携いたしまして、実態の把握に努め、認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議において、各省庁間での情報交換も含め、議論が深まるようにしていきたいと考えているところでございます。

重徳委員 地域づくりとか認知症の方をみんなで支えていくというのは、政策論としてはどんどん進めていくべきことだと思うし、このニーズはどんどん大きくなると思うんですが、やはり法律論として今回の裁判結果というのは大きな課題を投げかけたと私は思っています。

 今回のケースとはちょっと違うんですけれども、今一万人いると言われる行方不明の認知症の方、こういう方がどこかで何かの事故や事件に巻き込まれたというような場合に、今回の判決を踏まえると、責任を問われるようなケースというのは想定されますか。

三浦政府参考人 今回の判決などを拝見いたしますと、認知症の方が第三者に損害を与えてしまった場合、家族に損害賠償責任が課されるか否かということにつきましては、介護をしている家族に監督義務があるかどうか、今回の判決で掲げた六つの事項を総合考慮し判断されるということ、また、監督義務があった場合に、家族がその義務を怠っていなかったかどうかを個別に判断し、決定されるということになると考えております。

重徳委員 行方不明だからといって、その定義もいろいろありますけれども、だけれども、全くどこに行っちゃっているかわからないからといって、責任が全くないとは言えない、総合考慮をした上で、六つの事項に当てはめて、そういう御答弁だったと思います。

 つまり、この一万人と言われる方々についても、どこかで何かが起こったときに責任を問われるケースはないと一概に言い切ることはできない、そのような御答弁だったと思います。

 これはすごく大事なところなんですよね。確かに、毎日かかわっていて、本当に必死の思いでお世話をされている家族の方が、さらにその上いろいろな責任をしょわされる、そして、その可能性がどのぐらいあるのかわからないということでありますし、いなくなっちゃったからといって、どこで何をしているかわからないわけなんだけれども、それでも何かしらの賠償責任を含む責任論が生じ得る、こういうことでありますから、非常に不安のただ中にある方が、これは統計のとり方によりますが、全国で四百万人以上いると言われる認知症の方を取り巻く問題が、このように起こっているということであります。

 これは、認知症の方が、今回の鉄道事故のように、ある意味、鉄道会社に対する被害をもたらす、つまり、加害というとちょっとイメージが湧かないんですけれども、被害を与えてしまうという場合もあると思うんです。

 一方で、認知症の方本人が行方不明になったりして、被害者というか、誰からも構われずに病気になっても捨て置かれるとか、そういう被害者になることもあると思うんですけれども、通常、これに対する保護責任があると思うんですけれども、家族には。このあたりも同じような考え方でいいんですかね。ちょっと、通告しておりませんけれども、どんな御見解でしょうか。

三浦政府参考人 監督義務ということでございますので、その点につきましては、今回の判決と同じような考えということが考えられるのではないかと考えております。

重徳委員 どういうケースであれ、監督責任の有無、その義務があるかどうかという、有無が問われるということなんですが。

 もう一度、翻って、最初の今の三浦局長の御答弁で、地域で認知症の方をみんなで支える、見守るという体制を関係省庁で整えていくということなんですが、さっき言ったように、政策論としてはそれは非常に、有効な方向に誘導していく政策というのがあったらすごくいいと思うんですけれども、やはり、これは民法七百十四条ですが、この規定というのは、被害を受けた方の救済という面が非常にあると思うんですよね。だから、誰のせいでもない、みんなのせいだよねというか、みんなで守らなきゃいけないんだよねと言っているだけでは、何の解決にもならないわけであります。

 しかも、この鉄道事故の場合は、大きな、JR東海という会社なものですから、理屈は理屈として賠償請求をするけれども、結果として認められなかったならば、それはそれで仕方がない、企業としての損失はあるけれども仕方がないということになると思うんですが、個人が何かしらの形で被害を受けたときに、これはもう本当に泣き寝入りになってしまうというケースがあると思います。

 地域でということをよく言われますけれども、地域で認知症の方を見守っていこうといったときに、その地域の方にもそういう法的な責任が何か及ぶという可能性はありますか。その辺、イメージは持っておられますか。

三浦政府参考人 一般的には、住民の方々はまさにそこで生活をされていて、一般的な意味で、何か注意すべきことというのはあるかもしれませんが、少し具体的にどのような状況なのかということもその検討には必要なことだというふうに思います。一概にこうだというようなことを申し上げるというのは、この段階では難しいのではないかというふうに思います。その状況によりけりだというふうに考えております。

重徳委員 もともと、地域で支えるということは、必ずしも責任論とか法律論となじまないような場面もあるかもしれませんけれども、でも、事金銭的なことに限らず、精神的なものも含めて、やはり法律上の責任が伴うケースというのは想定されると思うんです。政府を挙げて、これから何百万人という認知症の方々、とりわけ重度の方を支えよう、地域で支えるシステムをつくっていこうということであれば、これはやはり、非常に重たい、目を背けたくなるような現実にも目を向けなければならないというふうに思うんです。

 決していいこととは思いませんが、家族が責任を負うということであれば、それはそれで一つのわかりやすい割り切りなんですよね。だけれども、さまざまな事情を考慮して、今回、最高裁が必ずしもそうじゃないという判断をした以上、では、誰が認知症の方を支えていく責任があるのか、そして何か起こったときに責任をとらなきゃいけないのか、こういうことも法制度として検討していく必要があるんじゃないかな、私はそう思っております。

 柚木委員からは、結局誰の責任でもない、誰も責任をとれないという場合だって結果としてあるわけですから、その場合に、起こった被害を賠償する保険制度というものを、さまざま御提案ありまして、そういった仕組みもぜひとも検討していく必要があると私も思いますが、その前提として、今回の、総合的に六項目に基づいて判断するという基準らしきものが最高裁から示されたものの、具体的当てはめというものが非常に想像しにくい、抽象的な基準になっております。

 こういったことについて、大臣にお尋ねしたいんですけれども、今現状、今認知症の方のお世話をしている方々は、今回の最高裁判決をもっても、さっき言ったように、一旦ほっとする部分もある一方で、自分の場合はどうなるんだろうかということに、また悩ましい課題に直面されているんじゃないか、そういう面があるんじゃないかと私は考えますが、厚労省として、この曖昧な感じ、基準は示されたもののまだよくわからない、そういうものに対して、一定のルールづくり、ガイドラインといいましょうか、もう少しみんながわかるような明確なルールを何か検討して、作成して、公表していく、こういったお考えはないでしょうか。

塩崎国務大臣 今回の最高裁での判決に至るまでに、下級審で責任あり、形は第一審、第二審、少し異なるわけでありますが、そういう判断が出た後に、最高裁で今回のような結論になったということがございまして、私どもとしてはやはりこれを重く受けとめて、一つの司法が下した判断ということで受けとめなければならないと思っています。

 この六項目の、監督義務者としてのその責任があるかどうかということの判断の中身を見てみると、例えば、認知症の方と親族関係の有無や濃淡、それから、認知症の方の心身の状況や日常生活における問題行動の有無、内容。こういったことを考えると、右か左かとか、白か黒かとかいうことでは全くなくて、グラデーションのある、非常に無限大の組み合わせというものがある中で、これらの項目についてどう考えるのかということで、監督義務を果たしているかどうかということを判断するということなんだろうなと、今回の判決は。見る限りはそんな感じがいたすわけであります。

 いずれにしても、第三者に認知症の方が損害を与えてしまった場合の家族の監督義務の有無については、今回の判決を踏まえて、やはり個別の事情に応じて判断をしていくことになるんだろうと思うので、今先生おっしゃったように、お気持ちはわかりますが、ルールとかガイドラインとかそういうようなものを設けて、そこで皆さんに安心していただいたらどうかということではありますけれども、なかなかそれをするのはそう簡単ではないというふうに受けとめるところでございます。

 そういうようなこともあって、とりあえず、今回、新オレンジプランをつくったときの省庁連絡会議、この枠組みの中で、一体、実態としてはどういうことを、我々、これから本格的な高齢社会を迎えるに当たって、認知症もふえるという中にあって、どういうことを押さえなきゃいけないのかという実態把握をやっていきながら、国民的な議論をリードしていければというふうに思っております。

 そして同時に、やはり新オレンジプランで示した、地域で、みんなで、認知症に仮になったとしても当たり前のように安全で安心の暮らしができる、そういう仕組みを、これはヒューマンネットワークですから、お互いに気がついた人がどう助けていくのか。大牟田市で拝見しましたけれども、本当に携帯電話に、スマホにどんどん情報が行って、多くの人がそれに目を向けて、守ろう、救おうということをやっているのを見て感銘を受けましたが、そういうことを含めて、しっかりやっていかなきゃいけないというふうに思います。

重徳委員 終わりますけれども、政策はどんどんどんどん進めていくべきだと思いますが、さっきから申し上げているように、やはり心配なのは法律論でありまして、いつ賠償責任を負わされるようなことがあるかどうかわからない、こういう不安の中でも御家族の方は一生懸命やっているということでありますので、この点、難しいということはもうおっしゃるとおりであります、ぜひ、みんなの英知で、しかしながら、やはり安心して認知症の方を見守り、支える仕組みをつくっていくことができればと思っております。また議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 次に、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び中島克仁君外八名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎国務大臣 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 少子高齢化の進展に伴い労働力人口が減少する中で、高齢者、女性等の就業促進や雇用継続等を図り、国民一人一人が活躍できる社会づくりを進めることが我が国の重要な課題となっています。

 こうした状況を踏まえ、高齢者が安心して働き続けられる環境の整備及び高齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保を行うとともに、子育てや介護と仕事が両立しやすい就業環境の整備等を行うため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、高齢者の雇用が進展している状況を踏まえ、失業中のセーフティーネットを確保するため、六十五歳以降に新たに雇用される者を雇用保険の適用対象とするとともに、就業促進手当の引き上げその他の就職促進給付の拡充を行うこととしています。

 第二に、着実に改善が進んでいる現下の雇用情勢、雇用保険財政の状況を踏まえ、失業等給付に係る保険料率を引き下げることとしています。

 第三に、高齢者の希望に応じた多様な就業機会を確保するため、都道府県知事が指定する業種等について、シルバー人材センター等が行う有料の職業紹介事業及び労働者派遣事業に関し、業務の範囲を拡張することとするとともに、地方公共団体は、高年齢者の就業機会確保に係る計画を、地域の関係者から成る協議会の協議を経て策定することができることとしています。

 第四に、妊娠、出産、育児休業、介護休業の取得等を理由とする上司、同僚による就業環境を害する行為を防止するため、事業主に雇用管理上の措置を義務づけることとしています。

 第五に、男女ともに働きながら子育てができる環境を整備するため、有期契約労働者に係る育児休業の取得要件の緩和や、育児休業の対象となる子の範囲を拡大することとしています。

 第六に、介護を理由とする離転職を防止するため、介護休業を三回を上限として分割して取得できるようにするほか、介護休暇の一日未満の単位での取得を可能とし、労働者が請求した場合は、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならないこととするなど、介護のための柔軟な働き方を支援する制度を強化するとともに、介護休業給付の給付率を引き上げることとしています。

 最後に、この法律案は、平成二十九年一月一日から施行することとしていますが、失業等給付に係る保険料率の引き下げ等については平成二十八年四月一日、介護休業給付の給付率の引き上げについては平成二十八年八月一日から施行すること等としています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

渡辺委員長 次に、山尾志桜里君。

    ―――――――――――――

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山尾議員 ただいま議題となりました介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案につきまして、提出者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 まず、本法案の提案理由について御説明いたします。

 安倍政権は昨年四月から介護報酬を二・二七%も引き下げました。物価高を勘案すれば、過去最大の引き下げです。介護事業所には深刻な影響が出ており、既に休止や廃止に追い込まれた事業所が出てきています。

 また、安倍政権は、介護離職ゼロの看板を掲げながら、平成二十七年度補正予算や二十八年度本予算では、一番求められている介護職員の賃金引き上げは盛り込んでいません。このままでは、人手不足で介護サービスが崩壊し、逆に介護離職がふえるおそれがあります。

 本当に介護離職を削減するには、介護職員の賃金を引き上げてすぐれた人材を確保し、介護サービスの基盤を立て直すことが不可欠であることから、介護職員等の処遇改善を図る本法案を提出しました。

 次に、本法案の概要を説明いたします。

 第一に、都道府県知事は、賃金を改善するための措置を講ずる介護・障害福祉事業者等に対し、その申請に基づき、介護・障害福祉従事者処遇改善助成金または介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金のいずれかを支給することとしております。

 この介護・障害福祉従事者処遇改善助成金による賃金改善の対象は、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬における処遇改善加算の対象職種とし、助成金の支給により、平均して一人当たり月額一万円の賃金引き上げがなされることを見込んでいます。

 また、介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金による賃金改善の対象は、処遇改善加算の対象職種にとどまらず全ての職種とし、助成金の支給により、平均して一人当たり月額六千円の賃金引き上げがなされることを見込んでいます。

 第二に、国は、都道府県に対し、助成金の費用の全額及び事務の執行に要する費用を交付することとしております。

 第三に、この法律は、制度について見直しが行われ、すぐれた人材の確保に支障がなくなったときは廃止することとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、本法案の提案理由及び内容の概要であります。

 介護は誰の身にも降りかかる問題であり、介護する人、される人を支える介護職員等の処遇改善は、党派を超えて政治が一丸となって取り組まなければならない課題です。全ての議員の皆様方からの御賛同をいただけるものと信じております。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

渡辺委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る十五日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十一日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会


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