衆議院

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第5号 平成28年3月15日(火曜日)

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平成二十八年三月十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江渡 聡徳君

   理事 小松  裕君 理事 後藤 茂之君

   理事 白須賀貴樹君 理事 初鹿 明博君

   理事 山尾志桜里君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    大串 正樹君

      大西 宏幸君    木村 弥生君

      佐々木 紀君    新谷 正義君

      田中 英之君    田村 憲久君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      中川 俊直君    永岡 桂子君

      長尾  敬君    丹羽 秀樹君

      丹羽 雄哉君    比嘉奈津美君

      福山  守君    堀内 詔子君

      牧原 秀樹君    松本  純君

      三ッ林裕巳君    宗清 皇一君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      中島 克仁君    西村智奈美君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    浦野 靖人君

      重徳 和彦君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    三ッ林裕巳君

   参考人

   (中央大学大学院戦略経営研究科教授)       佐藤 博樹君

   参考人

   (学校法人日本女子大学家政学部家政経済学科教授)

   (一般社団法人日本ケアラー連盟代表理事)     堀越 栄子君

   参考人

   (さわやか法律事務所弁護士)           田島 優子君

   参考人

   (全国労働組合総連合事務局長)          井上  久君

   参考人

   (明治大学法科大学院専任教授)          野川  忍君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     佐々木 紀君

  長尾  敬君     宗清 皇一君

  丹羽 秀樹君     大西 宏幸君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     丹羽 秀樹君

  佐々木 紀君     田畑 裕明君

  宗清 皇一君     長尾  敬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中島克仁君外八名提出、衆法第一二号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び中島克仁君外八名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、中央大学大学院戦略経営研究科教授佐藤博樹君、学校法人日本女子大学家政学部家政経済学科教授・一般社団法人日本ケアラー連盟代表理事堀越栄子君、さわやか法律事務所弁護士田島優子君、全国労働組合総連合事務局長井上久君、明治大学法科大学院専任教授野川忍君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 ただいま御紹介いただきました中央大学の佐藤です。専門は、企業の人事管理、あるいは、ワーク・ライフ・バランスとか女性活躍の場拡大みたいなことに取り組んでいます。

 きょうは、そういう意味で、人事管理の観点から、仕事と介護の両立支援のあり方について少しお話しさせていただければというふうに思います。お手元にパワーポイントの資料をお配りしているかと思いますが、それにのっとって簡単に御説明させていただければというふうに思います。

 一枚目の下でありますけれども、仕事と介護の両立に向けてどういう条件整備が必要かというと、大きく三つあるかと思います。

 一つは、国として、介護の社会化を前提として、特に大事なのは、要介護者の家族が働いている、最近であればフルタイムで働いている、こういうことを踏まえた上で、その働いている家族が仕事と介護を両立できるような仕組みをつくっていく。

 一つは、介護保険による介護サービスであります。もう一つは、ここで議論する法定の両立支援制度で、これが仕事と介護の両立を可能とする仕組みかどうかということで、今回は、介護休業の分割ということが入っていますし、介護休暇についても半日単位で取得できる、これは両立にとって非常に重要なことかなというふうに考えております。

 例えば、在宅介護でいうと、月に一回、要介護者の家族がケアマネジャーさんと会うということになります。十二回ですよね、年間でいうと。もちろん、時間はそんなに長くありません。介護休暇、今まで五日だったわけであります。そうするとどういうことが起きるかというと、家族からケアマネジャーさんに、平日は仕事です、土日来てくださいとか、夕方会いましょうということになります。これはもちろん、家族からすればやむを得ない面もあるわけでありますけれども、ケアマネジャーからすると、ケアマネジャーさんのワーク・ライフ・バランスを阻害することになるわけであります。

 そういう意味では、今回、半日単位でとれますから、これで十回分です。あと、もちろん有給休暇がありますので、そういう意味でも、家族が平日、例えば昼間半休をとってケアマネジャーさんと会える。そういう意味では、ケアマネジャーさんのワーク・ライフ・バランスの観点からも大事だろうというふうに思います。

 こういう介護保険サービスなり企業の両立支援制度についての情報を得られるように情報提供をする、これが大事なこと。これは後でお話しします。

 二つ目は企業ですけれども、当然そういう法定の制度を整備すると同時に、それが使いやすく、その使い方について正しい情報を事前に社員に提供する。これも後でお話しします。

 それともう一つは、働き方なんですね。後でデータを示しますけれども、過度な残業が多いとか有休がとりにくいとか、あるいは介護の課題があったときに上司や同僚に相談しにくいというような職場風土だと、やはりこういう会社では、介護の課題に直面すると仕事を続けられないのではないかなというふうに思いがちになります。そういう意味で、こういう整備を企業としてやる必要があるだろうというふうに思います。

 最後に、要介護者の家族自体が、介護保険による介護サービスあるいは勤務先の両立支援制度、こういうものについてきちっと利用の仕方を理解した上で、自分が仕事を続けながら、かつ要介護者の家族が、必要な介護サービスを得られるようなマネジメントをする。もちろん、家族は何もするな、しないで済むというわけではありません。そういうマネジメントと同時に精神的なサポート、これは家族がやらなきゃいけないわけでありますけれども、そういうようなことをやっていくということかなというふうに思います。

 次のページ、もう既にお話ししたことでありますけれども、二枚目の上、スライドの二であります。残念ながら、働いている人の側から見ると、今お話ししたような、介護保険制度でありますとか勤務先の両立支援制度についての情報を欠いている人がすごく多いです。その結果、介護の課題に直面すると、自分が直接介護を担わなくてはならないのかと思い、そうすると、仕事を続けられるというふうに考えられませんよね。やめなきゃいけないのではないかということで、介護不安を持っている人はすごく多いです。

 そのデータが二ページの下であります。介護の課題に直面したときに、続けられるというふうに明確に答えた方は二割程度であります。残りの方は、わからないとか続けられないというふうに答えています。

 その結果、三ページの上ですけれども、非常に不安だと。介護の課題に直面したら仕事と介護を両立できない、仕事をやめなきゃいけないんじゃないか。その不安の背景には、その下にありますように、例えば公的な介護保険制度についてどういうサービスなのかわからないとか、もちろん、介護はいつまで続くかわからない、そういう中でどう両立していいか、あるいは勤務先の両立の支援制度があるかどうかわからない、あるいはどうやって両立するのか。

 例えば、子育てであれば、勤務先に育児休業をとった人とか短時間勤務をとっている人がいるわけです。ただ、まだまだ仕事と介護を両立しながら仕事を続けるというモデルがないわけですね。そういう情報を欠いているということが背景にあるのではないかと思います。

 例えば、具体的に、本当に介護保険の制度を知らないのかなということで、三ページ、スライドの五ですけれども、これは、四十歳代、四十になると介護保険の被保険者になるわけでありますけれども、四十代、五十代でも、自分が介護保険の被保険者ということを知らないという人が、このデータですと三割、ほかのデータですと四割ぐらいいます。

 なぜかといいますと、四十になったときに介護保険の被保険者になります。給与から天引きされます。ただし、多くの企業では、給与明細が電子化されています。多くの方は手取りしか関心がない。それだけじゃないんです。企業や国として、あなたは介護保険の被保険者になったんですよというような情報提供をしていないわけであります。

 保険料を取られるけれども、保険証がないんですね。健康保険であれば、当然保険証があるわけですけれども。では、いつ保険証が来るのかというと、六十五歳の誕生月であります。つまり、自分が介護保険の被保険者であることを知る機会を欠いているというわけであります。

 他方で、実際六十五歳を過ぎて保険証が来て、自分が要介護、要支援であれば、認定を受ければ使えるわけでありますけれども、そのことを知らないわけです。ですから、親が要介護になったときに、認定を受けて、介護保険のサービスを使いながら仕事と介護を両立する、例えばそのことを知らない要介護者の家族がいるということであります。

 もう一つ大事なのは、四十から六十四歳でも、特定疾患であれば介護保険によるサービスを使えるんですけれども、そのことも知らないということであります。

 次、スライドの六でありますけれども、今は介護保険のサービス等を知らないというお話をしましたけれども、もう一つは、勤務先の両立支援制度についても十分な情報を得ておらず、あるいは知っていてもその使い方を誤解している、こういう人が少なくないです。その結果、介護休業はあるけれども、その使い方を間違っている。

 例えば、法定の介護休業は九十三日ですけれども、大企業は、半年なり一年、延ばしている企業は少なくないです。そうするとどういうことが起きるかというと、どういうふうに誤解しているかというと、介護休業は自分で介護するための制度だというふうに考えている人も少なくないです。

 例えば、うちの勤務先は六カ月介護休業がある、ですから介護休業をとる、ただ、実際上六カ月で介護が終わるわけじゃないわけです。では、六カ月自分で介護していた後、六カ月たったので、では仕事に復帰するか、なかなかそうはなりません。やはりやめるということが起きたりします。

 そういう意味で、やはり介護休業というものが仕事と介護を両立するための準備の期間だということを十分知らないというようなことが問題にあります。

 ですから、七ページは、これは正社員として働いていた方が、離職した人なんですけれども、離職する前にどういうことをしていたかというと、かなり、直接介護も含めて自分が抱え込んでいるんですよね。介護保険のサービスは余り使っていないんですね。

 他方、八ページですけれども、両立している方は、もちろんいろいろな支援をしているんですけれども、直接的な介護は自分はできるだけ少なく、やらないようにしている。要するに、マネジメントに徹する、あるいは精神的支援をやっている。そうしないと両立は難しいということであります。

 十一ページですけれども、そういう意味では、やはり介護休業制度についての知識をきちっと教えるということが大事で、例えば、十二ページですけれども、介護の課題に直面したときに働き続けられるか働き続けられないか分けてみますと、働き続けられるという人は、勤務先の両立支援制度について理解度が高い。十三ページにありますように、介護休業の使い方、これは自分が介護を担うのではなくて、もちろん緊急対応はする必要はあると思いますけれども、介護認定の手続をするとかケアマネジャーさんを探すとか両立の体制をつくるとか、そういうふうに使うのだという人は、介護の課題に直面しても続けられるというふうに思っています。

 あとは、十四ページ、十五ページは、既にお話ししましたように、やはり普通の働き方であります。子育てと違って、介護は急に訪れます。ですから、例えば、元気だったんだけれども、庭で倒れて病院に入院する、病院から電話がかかってきて、来てください。そうすると、一週間、十日、急に休まなきゃいけなくなるんです。急に休むようになっても職場が回るような仕組みをつくっておくということは大事であります。そのためには、当然、いつもいつも残業であるとか、有休がとりにくいという職場ではそういうことができませんので、そういう意味では働き方改革というのが大事になります。

 最後ですけれども、十六ページであります。

 これから国に求められる施策としてどういうことがあるかというと、一つは、ケアマネジャーの役割をもう少し広げるということであります。

 ケアマネジャーは、要介護者の状態をきちっと把握して、その人が質の高い生活を送れるようなケアプランをつくるということはケアマネジャーでありますけれども、同時に、要介護者の家族が仕事を続けられるようなケアプランをつくる、あるいはアドバイスをすることがすごく大事であります。実際上、要介護者と要介護者の家族、両方見れる人は誰かというとケアマネジャーなんですね。

 そういう意味では、ケアマネジャーさんの上乗せ資格として、両立支援ケアマネジャー、こういうものをつくるということがすごく大事かなと。

 企業は、要介護者の家族は働いているんです、でも、要介護者を直接見ることはできないわけであります。基本的には、家族が、ケアマネジャーさん等の、あるいは包括支援センターのアドバイスを受けながら、どう両立できるのか、あるいは要介護者がどういうサービスを受けたらいいのか。つまり、要介護者の家族がきちっと両立をマネジメントし、仕事を続けられる、そういうためには、例えば両立支援ケアマネジャーが大事なのではないか。

 もう一つは、既にお話ししましたように、さまざまな制度についての知識が事前に、介護の課題に直面する前に要介護者の家族が知識を持っているというのが一つであります。そういう意味では、介護保険に入ったとき、四十歳のときに基本的な情報提供をするというのが国の役割ではないか。もう一つは、企業も、社員が介護保険の被保険者になったときに、自社の両立支援制度の内容なり、どう使ったらいいのかというような情報提供を四十のときにやるということがすごく大事かなと。

 もう一つは、やはり介護保険制度、これがすごく大事であります。

 企業の両立支援制度だけでは仕事と介護の両立は難しいわけであります。そういう意味では、介護保険制度を、要介護者の家族が働いている、働き続けられる、そういうことを考えた介護保険サービスにやはり見直していくということが大事かなというふうに思います。

 一応、これで私の説明は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、堀越参考人にお願いいたします。

堀越参考人 日本女子大学、それから日本ケアラー連盟の代表理事をしております堀越と申します。よろしくお願いいたします。

 私の資料は、このA4の三枚の資料、それと新聞記事とパンフレット、この三つになっています。主にレジュメに沿ってお話をさせていただきます。

 私も、雇用保険法の一部改正案についての意見と言われたのですけれども、とても全部の点からできませんので、特に介護休業の部分についてまずお話をさせていただきます。

 (一)の、仕事と介護の両立の必要性については、これはもう皆さんおわかりになっているかと思うんですけれども、当事者にとって、この当事者というのは介護者、いわゆるケアラーのことです、仕事と介護の両立が図られた場合に、退職、離職を回避して就業継続が可能になる。そうしますと、収入を得ることができて、社会参加ができる。それから、若者期、中高年期、高齢期などライフステージごとの生活が安定する。就業収入の確保と、低年金、無年金の回避。それから、ウエルビーイングの増大、ウエルビーイングというのは、WHOで定義づけられていますけれども、解釈としては、体や心、社会的に良好な状態であるということになります。イギリスのケアラーアクトという介護者のための法律の中では、ウエルビーイングを確保するということが目指されています。

 企業にとっては、貴重な人材の流失が回避できる。社員の安心感、企業への信頼感が増す。

 社会にとっては、困窮者を減らすことによって、社会的なコスト、リスクを低減する。介護を社会全体で支えることにより、安心社会の創造につながるというメリットがあるかなと思います。

 両立できない場合については、この反対になりますので、ちょっとごらんになっていただければというふうに思います。

 法改正案の評価ですけれども、介護休業部分について述べますが、基本的な方向としては私は賛成をいたします。

 ちょっと法案の順番ではないのですが、ポイントについて述べさせていただきます。

 まず、介護休業は九十三日ですけれども、今回、分割取得が認められました。それは上限が三回というふうになっています。介護が始まったとき、終わりそうなとき、その間というふうになっていまして、調査の中で、多分、三回とると、介護休業をとった人の九割ぐらいはカバーできるということになっているのですが、私はどうかなというふうに思っています。

 分割できた方が使い方の範囲は広がりますけれども、対象家族一人につき三回上限でいいのかどうか。既にもう四回とっている人がいるということと、平均で四年とか、それから、十五年ぐらい介護している人もいます、その人が三回でいいのでしょうかというその疑問があります。

 それから、もう一方、介護休業の分割取得の際に、介護休業というのは、佐藤先生がおっしゃったように、段取り休暇、段取りをつけるための休業でありますので、その間、介護休業期間中に自分が介護と仕事が両立できるようなシフトがつくれるかという、そこの支援がないと休業しても意味がないということになります。

 二番目の、所定外労働の免除制度の創設は、これにも賛成でして、長時間労働回避のためにとても有用であると思っています。

 それから、介護休暇の一日未満、半日の単位での取得、これについても、私も要介護五の九十六の母がいますけれども、こういうとり方というのはとても助かるなというふうに思っています。

 ただし、介護休暇は年五日というふうになっていまして、ケアマネジャーの人を頼んで月一回のモニタリングをしますと、例えば半日としても十二カ月で六日間かかりますので、五日というのは余り根拠がないのではないだろうかと思っています。それから、日本の場合、通勤時間が長いので、もしも一日かかるとすれば、十二日という案もあるのではないだろうかと思っています。

 それから、給付率の引き上げで四〇%から六七%。これも経済的困難を回避するためにとてもいいというふうに思いますが、その次のページに行っていただきまして、社会保険料について、育休同様の免除が求められるのではないかと思っています。

 それからもう一つ、介護休業取得を理由とした不利益防止のための雇用管理上必要な措置というのも、これも、結局制度があってもとれない雰囲気であるということがとても問題になっていますので、社員への周知や実効ある不利益防止はとても重要だと思っています。

 ひとつこのパンフレットを見ていただきたいんですが、これは二〇一〇年の調査です。七ページをごらんください。

 七ページは、介護しているケアラー自身が欲しい支援です。下の方を見ますと、とても欲しいというので、二十番、二十一番、専門職や行政職員のケアラーへの理解、地域や職場のケアラーへの理解が欲しいということで、こうした職場での制度の周知や実効ある不利益防止はとても重要だというふうに思っています。

 それから、二番目の、きょう意見をというふうに言われました介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案に係る見解ですけれども、これも、基本的な方向性は賛成しています。

 つまり、処遇改善の費用を国が支給するというものでして、今行われているものについては、介護あるいは障害等々、いわゆる直接処遇をする職員について処遇改善の給付をするということです。

 実は、私も社会福祉法人の理事と評議員と二カ所でやっていますが、これは本当に困りました。つまり、チームで働いているわけですね。職場の中で、確かに直接に処遇する職員の方は大事ですけれども、職場の中に差を持ち込むということが、職場運営にとって問題があるという判断もあったかと思います。私のかかわっている社会福祉法人では、そのため、本部から持ち出しをして、そのときに、当たらない事務職の人等も含めて支給をするということをいたしました。

 ですから、今回の、事業所によって、全職種に給付するのか、あるいは介護や障害の職種なのかというのを選べるということについては、とてもいいのではないかというふうに思っています。額についてはちょっと問題があるかと思いますが、制度上はとてもいいのではないかというふうに思っています。

 そこにサービス分野と書き過ぎたんですけれども、就労支援の職員にも出ているんですが、東京都の単独事業については該当しなかったという意味でちょっと書きました。

 それから、介護休業については、介護に直面してからの事後対応型の制度です。ですから、事前教育を含む総合的な事前対応モデルがこれからは必要なのではないかということを考えています。

 この点で六点申し上げたいんですけれども、一つ目は、介護休業の対象者像を、イメージを二十代、三十代にも広げてほしいと思います。

 中高年が老年代を、あるいは老老介護が言われますが、十代、二十代、三十代でも介護をしている若年者はふえています。あるいは、学生の相談もありますが、就活の時点から就業を諦めるという若者たちも出ています。離職、退職に追い込まれる若者もいますから、若者世代も視野に入れて、全世代対応型のことを考えていただきたいというのが一点です。

 二点目は、介護者教育をしていない。

 最低限四十歳からは、保険料を払っているわけですから、しかも、介護者になる可能性があるので四十歳から被保険者になりました、ということで、介護をすることになった場合に、介護の知識だけではなくて、どのようなリスクが生じることがあるのだろうか、あるいはどんな制度が使えるのかも含めて、そういう研修等々が必要です。

 これは、大企業はできるかもしれないけれども、中小企業等、研修機会を持つことが不可能な場合には、自治体と連携をして、地域での研修を可能にする取り組みが求められると思います。

 あと、年代にかかわらず、子供でも介護をしているヤングケアラーというのはいますし、今調査をしているんですけれども、小学生でも親の介護をしている子供がいます。学校に行けなかったり、親が心配でうちにいたり、小さい自分の妹、弟の面倒を見たりということで、学習に問題が起こったり、洗濯がちゃんとできていなくてにおってしまったりとか、栄養状態が悪いとか、いろいろなことがありますので、そういうところの教員に対する教育も実は必要なのではないか、そういうこともあります。

 三ページ目ですけれども、介護の多様化に対応するということで、遠隔地介護、複数介護、ダブルケア。

 今、結婚年齢が遅くなっているので、育児と介護をしている人が、就学前の子供を持つ人の六%ぐらいはおります。それから、家族の形態、世帯構成が変わっているので、介護休業の対象家族の同居、扶養要件が決まっていますが、これでいいのかというと、漏れる人が大分出てくるのではないかと思います。

 四番目については、先ほど申し上げました。

 五番目について、介護休業、先ほど申し上げた段取り休暇ということですので、そのアピールをすべきだということと、ただ一方で、それは地域での介護条件が整わないととても大変なことになってしまうということがありますので、特に総合相談の受け入れ体制をつくるということがあります。

 このように、介護者支援、ケアラーの支援は総合的、包括的ケアシステムの中で行う必要がありますので、介護者支援をぜひ制度化、法制化も含めて、していただく必要があるというふうに私たちは考えて活動をしています。

 介護保険制度や障害者総合支援制度があっても、家族の介護、看護は必要です。介護休業が取得できたとしても、介護者には日常的に大きな負担がかかりまして、仕事と介護と生活、三つです、それがトリプルで成り立つということを考えるための国のバックアップというものがとても大事だと思っています。

 最後に、佐藤先生はケアマネジャーの役割がとても大事ということをおっしゃって、それはそうなんですが、ケアマネジャーは介護が始まってからの役割になりますので、その前から考える必要があるかなというふうに思います。

 ケアマネジャーは要介護者の味方です。それは必要な役割です。でも、介護する側の味方が、同じ要介護者の味方が介護者の味方というのは、ちょっと引き裂かれる感覚になるのかなと思うので、私はその辺の制度設計についてはもう少し考えた方がいいかなと思います。

 必要なことは、要介護者、介護が必要な人にはケアプランを立てていますが、介護者、ケアラーにはライフプランが必要だということですので、そこを強調して問題提起にかえさせていただきます。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、田島参考人にお願いいたします。

田島参考人 弁護士の田島でございます。

 雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、雇用均等分科会及び雇用保険部会の一員として議論に参加し、報告書の作成に参画しました者といたしまして、意見を述べさせていただきます。

 第一点は、仕事と介護の両立支援制度についてです。

 雇用均等分科会では、仕事と介護の両立支援制度は、家族の介護が必要な労働者がみずから介護を全面的に引き受けるのではなく、さまざまな介護保険サービスを十分に活用しながら働き続けられるようにするためのものであるべきとの基本的考え方に沿って、議論をいたしました。

 また、介護休業制度は、介護の体制を構築するために一定期間休業する場合に対応するものとし、介護休暇制度につきましては、日常的な介護のニーズに対しスポット的に対応するものと位置づけました。

 所定労働時間の短縮措置等、介護との両立のための柔軟な働き方の制度については、日常的な介護のニーズに対応するものとしています。

 休業や柔軟な働き方の制度と介護保険サービスを組み合わせて、介護に対応できるようにすることが重要であり、その意味で、介護休業を三回まで取得可能とする分割化や、介護休暇の半日単位取得、選択的措置義務の期間を、介護休業と合わせて九十三日とされている現状から独立させ、三年に延長したことなど、多様なメニューを柔軟に利用できるようにしたことは、妥当な結論であると認識しております。

 使用者側からも、家族の介護を行う中堅あるいは基幹的立場にある労働者の問題は非常に重要と考えているとの趣旨の御発言がありました。

 今回、仕事と介護の両立支援制度について、大幅な拡充を労働政策審議会で合意することができましたのは、使用者側にも、そのような課題認識のもと、雇用管理の負担との兼ね合いで最大限の御努力をいただいたものと考えております。

 第二点は、仕事と育児の両立支援制度についてです。

 仕事と育児の両立支援制度の関係では、有期契約労働者の育児休業取得要件の緩和について、労使で合意することができました。

 要件上、特に問題とされたのは、現行の、子が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件のわかりにくさでした。そこで、この要件を削除し、さらに、子が二歳に達するまでの間に労働契約が満了し、かつ、契約更新がないことが明らかである場合を除くとしていた要件について、一歳六カ月に達するまでと期間を短縮しました。

 育児休業取得の促進のためには、よりわかりやすい取得要件とする必要がある一方で、育児休業が、休業を取得した後、復帰して働き続けることを前提とする制度でもありますので、今回の育児休業取得要件の見直しは、双方を踏まえた妥当な結論であると認識しております。

 この見直しによって、育児休業対象者の範囲が拡大するとともに、労働者も育児休業の申し出をしやすくなるなど、有期契約労働者の育児休業取得が促進すると考えております。

 第三点は、マタハラ防止措置についてです。

 事業主による妊娠、出産、育児休業取得を理由とする解雇、降格などの不利益取り扱いは、既に法で禁止されていますが、近年、事業主による不利益取り扱いのみならず、上司、同僚からの嫌がらせなども問題となっております。昨年実施した調査でも、上司、同僚から嫌がらせが行われることが多く、このことが原因で不本意な退職をした者がいることがわかりました。

 このため、今回の改正案では、上司、同僚からの言動によって、妊娠、出産、育児休業等をした労働者の就業の継続が困難とならないよう、事業主に防止措置を義務づけることとしたものです。これにより、妊娠、出産、育児休業等を経ても、継続就業しやすい環境の醸成につながることが期待されます。

 第四点は、雇用保険の基本手当及び就職促進給付についてです。

 基本手当のあり方について、労働者側委員は、給付日数、給付額、給付率等の給付水準や給付制限期間の見直しを行うべき旨の意見でしたが、使用者側委員は、基本手当受給者の再就職状況、基本手当支給額と再就職時賃金の状況等についてのデータに前回改正時との間で大きな変更が見られないことや、モラルハザードの観点などから見直しに慎重姿勢であり、意見が大きく分かれて、合意には至りませんでした。

 この問題は、リーマン・ショックの際に創設された個別延長給付等の暫定措置が平成二十八年度末までとなっていることを踏まえ、これらの取り扱いとあわせて引き続き検討することとされました。

 また、就職促進給付についても議論を行い、その結果、再就職手当の給付率の拡充や、就職面接の際に子の一時預かりを利用する場合の費用等に対する給付の創設等を行いました。

 雇用保険は、失業者の失業期間中の生活保障とあわせて、再就職の促進を目的としています。そのような観点から、雇用保険制度の今後の検討課題として、基本手当と就職促進給付をセットで検討することとされたのは、妥当な結論であったと認識しています。

 第五点は、雇用保険の六十五歳以上の者への対処についてです。

 六十五歳以上の雇用者数やハローワークにおける求職者数などは大幅に増加しており、また、経済的な理由も含め、六十五歳を超えても高齢者の就職希望は非常に多くなっています。

 六十五歳以上の者への対処は、雇用保険部会でも長年の懸案事項であり、今般、六十五歳に達した日以後に雇用される者についても雇用保険の適用対象とするとともに、これまでの保険料の徴収免除措置について、企業負担に配慮して、一定の経過措置を設けた上で廃止することにしました。

 この結論に至るまで、雇用保険部会では、企業の保険料負担が重くなることや年金との関係など、さまざまな意見がありましたが、六十五歳以上の雇用をめぐる社会の構造変化と、失業者のセーフティーネットの確保という雇用保険制度本来の要請を踏まえ、労使ともに、いずれは対応すべきという問題意識は共有できたと理解しており、妥当な結論であると認識しています。

 第六点は、雇用保険の財政運営についてです。

 失業等給付に係る雇用保険料率については、平成二十四年度以降、各年度について弾力条項の発動が行われ、現行制度の下限である千分の十とされています。こうした中で、財政収支は近年黒字基調で推移しており、平成二十六年度の差し引き剰余は千九百六十五億円、二十六年度末の積立金残高は過去最高水準の六兆二千五百八十六億円となっています。

 近年、雇用情勢が改善し、完全失業率が低下する中、過去十年間の平均的な雇用情勢を想定しますと、収支がおおむね均衡となる雇用保険料率は千分の十二程度になります。これを踏まえ、今般、法律上の原則の雇用保険料率を千分の十四から千分の十二に引き下げ、さらに、弾力条項を発動すれば千分の八まで引き下げができるようにいたしました。

 なお、雇用保険部会では、かねてより雇用保険の国庫負担の軽減に係る暫定措置を廃止するよう求めてまいりました。これは、雇用保険法附則第十五条にも規定されており、平成二十三年の雇用保険法改正審議において全会一致で成立したと聞いております。今回の見直しの議論に際しましても、労使双方から暫定措置廃止の強い意見があったことを申し添えさせていただきます。

 第七点は、育児・介護休業給付についてです。

 介護休業の分割取得、有期契約労働者の育児・介護休業の取得要件の緩和、育児休業の対象となる子の範囲の追加等に伴い、介護休業給付及び育児休業給付についても対処されることとなりました。

 また、介護休業給付については、平成十三年以降、給付率が四〇%のまま据え置かれておりますところ、少子化対策等の観点から順次給付率が引き上げられてまいりました育児休業給付に合わせて、今般、六七%に引き上げられることになりました。あわせて、賃金日額の上限額も引き上げとなっております。

 急速な高齢化が進行する中、要介護の認定者数は増加傾向にある一方、家族の介護や看護を理由とする離転職者数は年間約十万人に上っており、介護休業期間中の所得保障の拡充は、雇用継続に一定の効果をもたらすものと期待しております。

 最後に、本改正についての所感を申し述べますと、このたびの改正は、働き続けたいと願う国民の一人一人が、妊娠、出産、育児期や家族の介護が必要な時期に、無理なく仕事と家庭の両立を図れるようにするために必ずや役立つものと考えます。

 育児期であろうと介護期であろうと、一旦仕事をやめてしまうと、その期間を脱した後の原職復帰は容易ではありません。原職どころか、希望職種への再就職が全くかなわない例も数多く見受けられます。使用者の立場でも、時間と費用をかけて教育し訓練した労働者がやめてしまう事態は労働経済上好ましいものではなく、労働力の確保、定着は重要課題です。今回の法改正により、これまでは不本意にもやめざるを得なかった労働者が働き続けられる環境づくりに役立てていただけることを強く願っております。

 他方、介護休業や有期契約労働者の育児休業取得促進の実現のためには、これらの制度の周知が欠かせません。昨年の調査でも、介護休業や育児休業をとらない理由として、制度があることを知らなかったと答える者が多数いたことが大きな驚きでした。せっかくよい制度をつくっても、誰も知らないのでは宝の持ち腐れです。義務教育課程に労働法制のカリキュラムを取り込むなど、国民誰もが知る情報として、労働法制を活用することが重要と認識しております。

 労働政策は、多くの場面で利害の対立する労使関係を規律するものであるため、その実効性確保のためにも、労使の間で議論を尽くし、両者の合意を得て進めることが重要です。今回の法改正に際しましても、その点に十分配慮して一致点を見出すことに努めた結果、議論が熟さず、結論を今後の検討に委ねたものがありました。

 そうした課題も含め、今後とも、労使と丁寧な議論を重ねながら、よりよい労働政策の実現に向けて力を尽くしていきたいと考えております。

 どうも本日はありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、井上参考人にお願いいたします。

井上参考人 本日は、このような場を与えていただきまして、ありがとうございます。

 幾つか所見を述べたいというふうに思いますけれども、まず、私が感じていることの第一は、これだけ多岐にわたるものを、しかも、一つ一つ重要な内容を、なぜ一つの法案にまとめなければならないのか、しかも、予算関連ということで年度末に成立を図る、これはやはりおかしいのではないのかということを感じています。私、配付した資料の中に、施行期日を脚注で入れたものを入れました。必ずしも四月一日施行ではないものも含めてあるわけですから、切り離して、一つ一つ十分御議論いただきたいということをまず思っているところであります。

 育児や介護、それからマタハラ対策等、いずれも重要な課題であります。また、シルバー人材センターにおける要件緩和の問題は、たとえごく一部であっても、生きがい事業だというシルバーの原則を外れるものです。やるべきではないと思いますし、ガイドライン等の内容は一切明らかになっていません。慎重な議論が、四月一日施行ではなくて、行われる必要があるんだと思います。

 本体の雇用保険制度の課題であります。

 私は、これも、雇用保険の役割は何かということをよく考えて、しっかりとした議論をお願いしたいと思います。

 時間の関係から、以下、雇用保険制度に限って私の意見を述べたいというふうに思います。

 まず第一は、雇用情勢は着実に改善しているという基本認識が示されていますけれども、ここがそもそも誤っているからこのような法案になったのではないのかということを私は感じています。確かに数字上は、求人数もふえました、失業率も下がっています。しかし、現場の実態というのは、やはり再就職は困難だというのが本当のところだというふうに思います。

 資料の七ページから、別紙として、我々の加盟組合が時々行っていますハローワーク前アンケートの結果を入れさせていただきました。

 これは、ハローワークの前で求職者らの方々に直接お話を聞いてとっているものでありますけれども、八ページから、自由記載、聞き取りの内容がございます。そこを見ていただければ、再就職が困難だというのが求職者らの実感だということは一目瞭然だというふうに思います。

 十二ページから、ハローワークの職員らでつくる全労働の労働組合の見解を入れさせていただきました。その最初のところに「雇用保険制度の現状」という部分がありまして、数字も詳しく載せられていますけれども、求職者の希望している賃金と実際の求人の賃金数字には大きな乖離があります。結果として、たとえ再就職できても、前の仕事から大幅に賃金が下がる、多くが非正規雇用にならざるを得ないというのが今の現状です。

 問題は、なぜそういう中でも失業率が下がっているのかということがあるんだと思います。

 私は、いろいろな相談を見ていて感じるのは、蓄えが乏しいゆえに、生活が困窮しているがゆえに、たとえ悪い仕事だというふうにわかっていても飛びつかざるを得ない、そんな人たちがたくさんいるんだということだというふうに思います。裏を返せば、失業給付の不十分さが日本の雇用を劣化させている、それが今の現実なのではないでしょうか。

 私は、年越し派遣村であるとか、翌年の公設派遣村のときのワンストップの会で実行委員をやり、その後もいろいろな相談を受けてまいりました。

 年越し派遣村には五百五人の方が見えましたけれども、その大半が蓄えが底をついた方々でした。残念ながら、生活再建のためには生活保護しか使える手段がありませんでした。あのとき、年明けには百名強の方が出ていきましたけれども、そのかなりの部分が、年明けの配送などの仕事が数日間あるという方でした。いろいろ説得しましたけれども、生活再建だと言うけれども、うまくいかなかったらどうなるんだ、きょうもらえる六千円をあなたたちは補償してくれるのかと。日々の暮らしに追われている中ゆえの反応だったと思いますけれども、そんな方たちがたくさんいました。

 今も、そうした方々はたくさんいらっしゃいます。変わったのは、リーマン・ショックみたいに一どきに大量の派遣切りが行われるということではなくて、切ったり復職したり、そういう苦しい状況が続いている、そういうことなんだというふうに思います。

 近年、さまざまな分野で人手不足が深刻化しています。しかし、余り賃金は上がっていません。相変わらず非正規雇用がふえ続け、ワーキングプアも増大をしています。労働法制の規制緩和が問題であると同時に、もう一つは、生活保障の不備がこうした状況をつくり出しているということを踏まえて考える必要があるのではないかと思います。

 さて、保険料率の引き下げの問題です。

 雇用保険は、保険財政の悪化を理由に、二〇〇〇年以降幾つもの改悪が重ねられてきました。離職理由での区別といいますか差別が持ち込まれ、それから、実際の給付日数、給付額も大きく減退しました。一九九〇年代まで、実際の失業者のうち、失業給付を受けている方は四割台でしたけれども、それが二割台にまで下がってしまいました。雇用保険が十分に機能していないというふうにやはり言わざるを得ないと思います。

 だとすれば、雇用保険財政が好転した今こそ、給付の内容を改善していくということ、そして、雇用保険が本来果たすべき役割を果たせるようにしていくことが必要なんだと思います。

 なお、国庫負担割合については、本則は二五%ですが、現在一三・七五%になっております。やはりこれを戻すことなども含めて、経営が大変な中小零細企業やそこに働く労働者への軽減措置等も考えることができるのではないかというふうに思います。

 経済界の方からはモラルハザード論なども出されていますけれども、むしろモラルハザードは、膨大な利益を上げながら、内部留保をふやし、飛躍的に株主配当をふやしている大企業の側ではないのか。多くの求職者は、何とか仕事を見つけたいということで日々奮闘しています。やはりそうした現実を見る必要があるんだと思います。

 そこで、私は、できるだけ速やかに再就職という考え方はやはり見直した方がいいと思います。

 求職者の方々は、突然の解雇であるとか雇いどめで痛手を受けた人です。その人たちに早く早くというふうに急がせても、なかなか面接までたどり着きません。自分は社会に必要とされていない人間、そんな思いに陥っている人がたくさんいます。そして、運よく仕事が見つかってもブラック企業、またやめて、そして心が打ち砕かれ、人が壊れていく、そんな実例を私はたくさん見てきました。

 そうしたことも考えれば、やはり失業給付できちんとその人の生活を支え、ハローワークの相談体制や公的な職業訓練等の充実によって、良質な仕事、長く働き続けられる仕事にいざなっていく、そうしたことが今求められているんだというふうに思っています。

 労働移動支援助成金の問題がこの委員会でも問題になったと見ていますけれども、私は、あれは悪質な業者の問題ではないと思います。制度のたてつけそのものがそういうふうになっているという点に最大の問題があると思っていまして、例えば電機産業などでのいろいろな相談の実例を聞いていても、同じような話がたくさん転がっています。中には、ようやく紹介された再就職先がもとの職場で、部課長だった方が、もとの部下に使われている派遣労働者という実例なども幾つか聞きました。

 こうしたことを考えたとき、雇用保険制度の優位性というのははっきりしているんだと思います。そうした点では、これをきちんとしていただきたいということで、離職理由による差別、区別をなくすこと、所定給付日数や給付額をもとに戻していくことなど、本来あるべき姿を考えた改正を十分御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、野川参考人にお願いいたします。

野川参考人 私は、労働政策審議会雇用保険部会の公益委員であり、また、本日の参考人の先生方とは違って法律学者でございまして、今までの先生方はかなり具体的、現実的な内容についてお話をくださいましたが、私はちょっと理念的、原則的なことをお話をしたいと思います。若干大学の講義のような内容になるかもしれませんが、皆さん、学生時代にもつまらない講義を聞くと眠たくなったことと思いますが、ちょっと御寛恕をいただければというふうに思います。

 お話しすることはおおむね三点でして、一つは、雇用保険法及び雇用保険制度というのが日本の法体系の中でどう位置づけられているのか、その位置づけの中から、今回の改正については、どういう限界といいますか制約が出てくるのか、あるいはどういう考え方が出てくるのかということ。第二点は、日本の雇用保険制度の特徴、とりわけ、先ほどもお話が出ましたが、国庫負担率の問題、それから弾力条項による保険料率の決定の問題についてお話をし、それから第三点として、今後の課題について少しお話をしていきたいと存じます。

 まず、憲法の二十七条一項は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」というように書いてございまして、これは小学校で学ぶことの一つなんですね。

 というのは、小学校の社会科では国民の三大義務というのが出ております。その中に働く義務というものがあって、その観点からこの二十七条一項というのは小学生のときから覚えるんですが、この働く義務の方ではなくて働く権利の方、全て国民は勤労の権利を有しているという労働権というのは、日本における雇用政策の憲法上の原則を示しておりまして、実は雇用保険制度は、この労働権保障という憲法上の理念に由来しているわけでございます。

 この労働権というのは、本来は、働く意欲と能力がある人には適当な職場が与えられるように国が施策を行う、こういう意味でございます。労働する権利というと、自分は職が欲しい、だから職を下さいと言えば国が自動的に職をくれる、そういう意味ではない。日本は、マーケットメカニズム、市場経済を採用している国でございますので、そうではなくて、できるだけ職が与えられるようなサポートを政策によってしていく、こういう趣旨でございます。

 この考え方から、第一に、完全雇用を目指す雇用政策の策定、第二に、行政によるサポートとして、働く意思がありながら職が見つからない事態を避けるための具体的な制度を整え、あるいは失業者が職を見つけるまでの支援措置を設置し、運営していくというシステムを講じる必要が出てくるわけでございます。

 このことから、非常に重要なのは、日本においては、例えば金融市場であるとか住宅市場であるとか、さまざまな製品の市場についてどのように国が経済政策として介入を行うかは、これは純粋に政策の問題ですが、労働市場についてはそうではない。唯一、労働市場だけは、これに国家が政策的な介入をすることが憲法上要請されているので、労働市場を何ら手をつけないまま放っていくことは憲法違反なんですね。よろしいでしょうか。労働市場という市場だけは違うんです、ほかの市場と。必ず国家が政策的介入を行わなければならないということが憲法によって定められているという国なんですね。ほかの国では必ずしもそうではありません。日本はそういう国であるということです。

 ここから、国は、労働者に対して、能力と意思に応じて適切な就労の機会が与えられるよう政策上の対応をすることと、それから、労働の機会が得られない労働者に対する一定のサポートを行うことを要請されております。

 前者の要請によって、日本には、雇用政策の策定と実施に関する基本法規として雇用対策法を初め、主として労働市場における労働力の円滑な活用等を内容とする職業安定法、それから労働者の能力開発を支援、促進するための職業能力開発促進法など、多様なアプローチによって労働権の保障を実効あらしめるための法制度が整えられております。また、働く意思と能力がありながら、実際には職を得られず、あるいは職を失ってしまった者のための支援措置として、雇用保険法と、それから、近年、求職者支援法という新たな法律が出ているわけでございます。

 このように、雇用保険制度というのは憲法二十七条の労働権保障の理念に立脚しておりまして、その対象範囲を画するのは働く意思と能力でございます。つまり、働く意思と能力のある全ての国民に対して雇用保険制度は適用されるというのが原則でございますので、性別、年齢、あるいは障害の有無といったことによってこれを限定するというのは、その必要がある、非常に例外的な場合に限られる。

 つまり、社会保険のメカニズムを採用しておりますので、必ずしもこの理念が全面的に常に実現するというわけではありません。しかし、原則と例外の関係ははっきりしております。つまり、全ての国民が雇用保険制度の適用対象となるべきであって、これまでのように六十五歳未満の国民にしか適用されていなかったのは、さまざまな事情に基づく例外であるということです。

 したがって、今回の改正で、この雇用保険法本体の改正として最も重要な内容である、六十五歳以上の求職者を高年齢被保険者というカテゴリーによって明確に制度の対象としたということは、原則に戻るということであって、必ずしも政策的に新たな、いわば付加をした、つけ加えたということではないということを御理解いただきたいと思いますし、私は、この方向は大変適切なものであると。

 今後も、事情によっては制約があり得ますけれども、雇用保険法というのは全ての国民に対して押しなべて例外なく適用されていくということを確認したいと思います。

 この雇用保険法にはいろいろな特質がございます。その中で申し上げたいのは、日本の雇用保険制度は、労使の負担する保険料のみによらず、一定割合の国庫負担によっております。これは、雇用保険制度が昭和二十二年に発足した失業保険法というのを出自としているわけですね。もともとは失業保険法と言った。失業保険制度というのは、当時の深刻な雇用情勢への対応という趣旨を有していたことから、かなりの割合の国庫負担を伴うことが初めから想定されていたわけですね。昭和二十年代の前半ですから、大変労働市場は混乱しております。かなり国が積極的な財政的対応をもってこれに当たらなければならなかったという事情がございます。

 当初は基本手当の三分の一が国庫負担によるものとされていたんですが、その後、四分の一に引き下げられ、雇用保険法に移行してからも、一時期を除いて、ほぼ一貫して四分の一でございます。現在、先ほどもございましたが、一三・七五%。日雇労働求職者給付については一八・三%ですが、いずれにせよ、二五%にはほど遠いという状態であります。

 この国庫負担については、国の財政状況によって弾力的な運用が図られているものですが、雇用保険が果たしている役割の変化に対しても一定の意味を有していると思います。

 すなわち、もともと労使の保険料負担によりつつ、政策の実現という観点等により国庫からの支出が正当化されるというのは、先進諸国における同様の社会保険の共通の構造ですが、特に日本の場合には、基礎的な負担率に加え、さらに一定率を乗じて減額する措置が恒常化する傾向にあり、とりわけドイツやフランスなど大陸ヨーロッパ諸国に比べて国庫負担率の割合が低いわけです。

 この点をどう考えるか。失業や劣悪な雇用を労働市場の必然的な負荷と捉え、その救済や改善、労働市場の参加者である労使の拠出による社会保険システムを通して実現されるのが原則である、こういうように考えるのか、あるいは、労働市場は国家の責任においてコントロールされるべきであると考えるか、大きくはその違いによるわけですが、日本は言うまでもなく前者の立場をとっているわけです。

 しかし、今後、求職者支援のための恒久的な制度を拡充していく必要性等がありますので、それを考えますと、雇用保険をどう位置づけるかについては、なお検討が必要であります。

 その中から、国庫負担の率が、現在、本則二五%でありますが、かなり低い率になっているということ、これをそれでいいと見るのか、あるいは戻すと見るのかということも、この雇用保険法の役割いかんをどう考えるかということによって決まっていくものであろうと思います。

 それから、弾力条項というものがございまして、労働保険の保険料の徴収等に関する法律によって、失業等給付に係る弾力条項と雇用保険二事業に係る弾力条項があって、要するに、厚生労働大臣が保険料率を変えることができる。これによって、保険料率は、平成二十七年度は一三・五パーミルということになっております。本来は一七・五パーミルですから、保険料率は低い。

 この弾力条項は、被保険者の負担軽減という意味では確かに重要な役割を果たしているわけですが、他方で、これはよく言われることですが、雇用保険財政は潤沢ではないか、ならば、むしろ給付額の増額に向けるべきではないかという考え方もあり得るのは言うまでもありません。

 国庫負担を弾力的に引き下げる仕組みとあわせ、現在の雇用保険制度が、可能な限り国や労使の負担を回避する方向で運営されているというような見方が可能であろうと思います。これも、それをよいと見るのか、それとも、そうではなくて給付額の引き上げ等にどんどん向けていくべきであるというふうに見るのかということは、雇用保険という制度の基本的な考え方によるだろうと思います。

 それから、今後の課題について、二点ほど申し上げたいと思います。

 一つは、先ほどちらっと申し上げましたが、近年、求職者支援法という法律ができました。これは何かといいますと、最近の労働市場は、御承知のとおり、非正規雇用が大変増大しておりまして、既に四割に達している。もう以前から、女性は半分以上が非正規雇用で働いているわけです。このような状況から、雇用保険からの支給を受ける要件を満たすことができない労働者がたくさん出てきているわけですね。

 つまり、間欠的に、二カ月の期間雇用で働いたらその後三カ月失業しちゃった、その後一年間働くことができたけれども、また半年失業してしまったというようなことをしていきますと、働いている期間は足せばそれなりに長いけれども、雇用保険の要件を満たさない、だから雇用保険からの給付を受けられないという方がたくさん出てきているわけです。

 こうした状況は、国際的に見ても共通でございまして、それを見越して、ドイツなどでは、ハルツ改革といって、前世紀の終わりに大改革が計画され、シュレーダー政権のときに、さまざまな法律の改正によって、求職者基礎給付といって、そういった雇用保険、ドイツでは失業保険の適用を受けることができない者に対して一律のお金をまず与えて、それを土台として職業訓練を受け、仕事を見つけていくということが定着し、ドイツ経済はそれで随分とよくなりました。

 日本でも、そのいわば日本版として求職者支援法ができ、いろいろな要件はありますが、月に十万円という額のお金を元手としてさまざまな職業訓練を受け、ハローワークと連携して労働市場に出ていく、こういう仕組みでございます。

 この仕組みが、今後、より一層重みを増していくだろうと思います。

 というのは、先ほど申し上げましたように、なかなか、雇用保険の要件も随分緩和されてきてはおりますけれども、それでもそれに対応することができない方は多い。こういう求職者支援法の拡充と、要するに、財源はやはり雇用保険になりますので、雇用保険の役割とをどのようにバランスよく考えていくのかということが重要なんだろうと思います。

 最後に、マルチジョブホルダーについてちょっと申し上げておきます。

 マルチジョブホルダーというのは、単一の事業主のもとで働いていないという方でございまして、例えば、週十時間ずつ三カ所の使用者のもとで働く、こういう労働者は、現行法のもとでは雇用保険の対象となり得ません。しかし、そういう方は多い。

 要するに、三十代でもフリーター、ニートというのが問題になっております。仕事を見つけてもせいぜいアルバイト的。幾つもそれをやっていると、週何十時間も働いているのに、一カ所の事業所では七時間、八時間ということですと、雇用保険の対象になり得ない。

 こういう方もこれからどんどんふえていくという状況のもとでは、このマルチジョブホルダーに対してどのように雇用保険を適用していくのかということが本格的に考えられなければならないと思います。

 それに当たっては、やはり、単にどんどん付加的に制度を加えていくというよりは、労働市場が、一つの企業で雇用を維持していくというよりは、労働市場全体で雇用を維持していくという方向に変わってきていることを踏まえた抜本的な雇用保険のあり方というものの見直しにつながっていかなければならないだろうと考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新谷正義君。

新谷委員 自民党の新谷正義と申します。

 参考人の皆様におかれましては、本日、御足労いただき、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。

 限られた時間でございますので、参考人の皆様全員に質問できないかもしれませんが、可能な限り御意見をいただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 このたび、内閣提出の雇用保険法等改正案、これを審議させていただいておりますが、この法案が提出された背景には、まず何より、我が国で少子高齢化が進んでいるということがございます。それによって、何もしなければ、将来、労働力人口は必ず減っていく、こういった厳しい現実がございます。

 一方、高齢化したとはいいましても、同時に、健康寿命も延びてきております。仕事をしたいという高齢者の方々もふえてきております。この社会変化に合わせて制度も変わっていかなければならない、そのように考えております。高齢者の方々が安心して働いていけるような、そして、ニーズに合った多様な働き方ができるような、そのような環境を整備していかなければならないと考えております。

 働くということは、収入をもたらす、これだけではなくて、生活の豊かさ、あるいは生きがいにも大きくかかわっていくと考えております。さまざまな見地から、我が国において高齢者の就業機会を確保していくことは、避けてはならない課題だと思います。

 一方、雇用全般で見てみますと、ライフステージによって、個人、社会ともに、まだまだ解決しなければならない多くの課題がございます。

 女性が輝く社会を目指し、女性が活躍できる環境整備を進めていかなければなりません。また、少子化の我が国において、子育てしやすい環境の整備も待ったなしでございます。また、親の介護など、介護と向き合わなければならなくなったとき、仕事をしっかりと続けていけるような体制の整備も進めなければなりません。

 今回の雇用保険法等改正案、これは、そのようなさまざまな雇用、仕事の課題解決に向けて、より大きく前進するものであると考えております。

 そして、法案の内容に関してでございますけれども、まずは、高年齢求職者給付金、これに関して佐藤参考人に質問させていただければと思います。

 今回、内閣提出の改正案によりまして、六十五歳以上で新たに仕事についた方、転職した方、転籍した方も含めて、雇用保険に入れることになります。これまでは、同じ会社でずっと働いていたとしても、定年後には関連会社に移ってしまったら雇用保険に入れないことになっておりました。今回、改正案では入れるようになります。

 高齢者の方々が仕事をしていく上で、よりセーフティーネットが整備されることになると考えておりますが、今回、改正案のその効果に関して、改めて佐藤参考人にお伺いしたいと思います。

佐藤参考人 一番最初にお話ししましたように、人事管理が専門ということで、労働政策は専門ではないんですけれども、私の今回の雇用保険法改正についての所感を述べさせていただければというふうに思います。

 やはり、高齢期になっても希望する人が働き続けられるという、そして、その人たちが雇用保険によるサービスを受けられるようにする、僕は、委員が言われたように、そういう意味では、年齢で切るのではなくて、今回はその本来の趣旨にのっとって、就業する人たち全体にセーフティーネットを広げるという点では非常に評価できることではないかなというふうに思います。

新谷委員 ありがとうございます。

 御承知のように、今回対象となった六十五歳以上の高年齢者の求職者、これはふえてきております。

 この年齢の新規の求職申込件数、平成二年には八万件でございましたが、今や五倍以上の四十三万件にまでふえているところでございます。

 今回新たに雇用保険に入れることになった方々にも、条件を満たせば失業したとき一時金が支給されます。賃金の五割から八割が最大五十日まで支給されることになりますので、高齢者の方々はより安心して働けるようになると思います。

 ただ、しかし一方では、この改正によって、失業のたびにこの給付金を受け取ることができるようになりますし、あくまで場合によってはですけれども、再就職を急がなくなるケースもあり得るかもしれないと思っております。

 できるだけ早期の再就職を促すというのがこの制度の趣旨でもございますし、ここは、本来あるべき目的にちゃんと沿った制度になっているかどうか、今後しっかり見ていく必要があると考えておりますが、この点に関して佐藤参考人の御意見をまた伺いたいと思います。

佐藤参考人 確かに、失業給付があるということで就職時期を繰り延べするということが、高齢者に延ばしたときどうなるかということはまだわかりませんけれども、若い世代でいうとその傾向が見られることは事実でありますけれども、現状でいえば、残して早く就職すれば給付金が出るような形になっていますので、それで実態としては相当改善しているのではないかなというふうに思います。

 ですから、高齢期も多分そういうふうになるのではないかというふうには思っています。

新谷委員 ありがとうございます。

 次に、介護休業に関しまして、佐藤参考人、堀越参考人、田島参考人にお伺いしたいと思います。

 我が国の介護離職、つまり、家族の介護や看護が原因で仕事をやめてしまった人の数ですけれども、年間十万人に達しているところでございます。しかも、何もしなければこの数字はまたふえていくことが予想されております。

 将来の働き手という観点からしますと、我が国の年間の出生数は百万人でございますので、この年間十万人もの介護離職というのは非常に深刻な数字である、そのように思っております。しかも、働き手の中核となる四十代、五十代の方が仕事をやめてしまっている。これは非常に大きな問題です。

 今回、内閣提出の法案によりまして、これまで分割して取得することができなかった介護休業が、九十三日を三回まで分割して取得することが可能になりまして、そのとき支給される介護休業給付も賃金の四〇%から六七%にまで引き上げられます。この休業期間に、自分で全て直接介護をするというより、仕事と両立できるようにするための準備にぜひ取り組んでいただきたい、そのように考えております。

 まず、この今回の改正案に関しまして、介護休業が分割可能になるということに関しまして、働き手あるいは女性活躍推進という観点から、まず佐藤参考人と田島参考人に御意見を伺いたいと思います。

佐藤参考人 今回の改正の中で、一つは介護休業の分割ということがあるわけでありますけれども、これは、仕事と介護の両立の体制を準備するときに実際どういうふうに使われているかというのを調べてみますと、やはり連続してとるというよりかは一定期間分けてとるということが多いわけでありますので、現状でいうと、法定どおりの企業であれば、一回とると次はとれない、その結果、両立しにくいということもあったわけでありますけれども、今回、分割取得できるということで、仕事と介護の両立の体制準備には極めて有益な仕組みになったのではないかなというふうに思います。

 それで、九十三日、今回は延ばさないことになったわけでありますけれども、ただ、仕事と介護の両立の仕組みとして考えなきゃいけないのは、介護休業を単体としてとるということではなくて、介護休業の分割、介護休暇、あるいはこれは三年までですけれども短時間勤務等の措置義務、残業免除、これをシステム全体として考える必要があると思います。そういうふうなものも含めますと、九十三日の中で分割取得できるということで、両立は可能なのではないかなというふうに考えております。

田島参考人 介護休業をこれまでに取得されました方の休業期間を調べますと、約二週間という例が多数になっておりますので、その程度の休業期間があれば、一応、介護の体制整備ということには対応できるであろうというふうに考えます。

 それで、一回しか介護休業がとれないということになりますと、いつもっと厳しい状況になるかわからないので、なるべく休業しないでとり控えようというようなことも多く出てまいっておりましたので、九十三日間で三回に分割してとれるということになりますと、非常にそれがとりやすくなりますので、とり控えということも減少すると思います。

 就業の継続のためには極めて効果的な措置になると考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 介護休業制度は、あくまで緊急的対応措置と位置づけられております。政府も労政審も同じ認識であると伺っております。自分一人で介護を全部やるという、この体制の整備に向かってしまうと、先ほど申し上げた介護離職する方々、これはもっとふえることになってしまいます。

 あくまで一時期だけの休業の制度であって、離職を進める制度ではないこと、これは制度を運用していく上で必ず気をつけていかなければならないことである、そのように考えておりますが、佐藤参考人そして堀越参考人、御意見をいただければと思います。

佐藤参考人 委員御指摘のように、働いている人たちが例えばフルタイムで働きたいとすれば、直接自分で介護を担うと、当然、仕事は続けられませんよね。

 他方で、例えば親が要介護の状態にあれば、やはりその子供の、働いている家族からすれば、親もちゃんと生活できるような介護サービスを得られるような、それをどうするか。

 ですから、そういう意味では、要介護者の家族は、例えば介護休業の分割、介護休暇を半日単位でとれる、短時間勤務等の措置義務、あるいは残業免除、こういうものをうまく組み合わせて活用しながら仕事と介護の両立を。

 例えば、休業というのは体制準備ですよね。その後、継続的にまだ介護は続くわけですけれども、そのときは、例えば在宅であれば、介護休暇を使いケアマネに会ったりとか、あるいは、残業免除なり、短時間勤務の措置義務を使いながら仕事と介護を両立していく、そういう方向の整備ができるのではないか。

 ただ、そのためには、御指摘のように、やはり要介護者の家族自身が、どういうふうにそういう制度を使いながら、これは介護保険のサービスもありますけれども、どう両立の仕組みをつくり、かつ親御さんなどが必要な介護サービスを得られるか、これのための情報をきちっと得られるようにするということが大事かなというふうに思います。

堀越参考人 先ほど申し上げたことと重なるかと思うんですけれども、やはり介護をこれから進めていくための段取りを最初はつけるということで、あと、途中の経過が、かなり状況が変わりますので、そのときにまた新たな体制を整えるということのために使うものなんだろうというふうに思っています。

 しかしながら、やはり介護は続きますので、体制を地域でどうつくっていくかということが大事ですし、介護休業をしたときに、きちっと相談窓口があって、そこで相談ができるということが両輪としてないと、休業をとった意味というのが薄れてきてしまうのではないだろうかなというふうに思っているところです。

 相談窓口についても、今のところ、要介護者の相談についてはかなり乗ってくれますけれども、介護者の状況については、聞くという体制には余りなっていないし、仕事の中にも入っていないんだと思うんですね。

 だから、介護休業をとる、それで介護の段取りをつける、そのときに、きちっと介護者に寄り添って相談窓口をつくり、要介護者の権利と介護者の働く権利、あるいは、事によっては親との関係、例えば親を介護することにしても、親との関係を壊さないということのためのサービスの利用ということももちろんあるので、そういう包括的、総合的に介護というものを考えて、その中に休業制度を置いて、しかもそれが効果を発揮できるような仕組みの中で休業を生かしていく、そういうふうにちょっと全体的に考えることがまだまだ必要なのではないだろうかなというふうに思っています。

新谷委員 ありがとうございます。

 時間が来てしまいましたので、以上で私の質問を終了したいと思います。

 今後、議論を進めていく上でも貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。

渡辺委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 民主・維新・無所属クラブの中島克仁です。

 本日は、雇用保険法等の一部を改正する法律案と、我々野党五党で共同提出しております介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特措法の審議におきまして、五人の参考人の方にお越しをいただきまして、それぞれのお立場で意見を聴取させていただき、大変参考になりました。お忙しい中御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。

 時間もございませんので、早速質問させていただきたいというふうに思います。

 冒頭、井上参考人から、今回の雇用保険法の改正、多岐にわたる内容を一括して審議ということに違和感をというお話、私も大変そのように思いますし、また、労働移動支援助成金の問題点についてもお話がありました。

 私からは、短い時間でございますが、介護分野に関しまして質問をさせていただきたいというふうに思います。

 政府は、今、一億総活躍と、その実現のための新三本の矢、介護離職ゼロというものを掲げて、予算措置もされて、具体的な法改正というものに関しては、今回の雇用保険法改正、介護休業、介護休暇を弾力性あるものにしているということになっているわけでありますが、先ほど来お話がございましたように、両立支援、働き方の工夫と、そして必要な介護サービス、これが両輪でいかないとというお話、大変印象的でありました。

 その一方で、その中間というか、それを支える、両立支援のために、佐藤参考人はケアマネジャーということ、堀越参考人はケアラー支援制度というようなことであったと思います。

 先ほど、前の委員からも御質問があったように、これは、毎年毎年十万人ずつ、さきに私が質問したとき、現在進行形で介護を理由に離職をして介護に従事している人は累計で約三十六万人とも言われている。これは、当然ながら、人材喪失という観点、経済からいっても大変重要な課題であって、この介護離職ゼロについて、やはりこれはもう喫緊の課題だと言わざるを得ない状況だと思います。

 先ほども、今後こういう取り組みがというお話はされたんですが、やはり、今からでもすぐ、真っ先に取り組まなければいけない問題、これはまず先にやらなきゃいけないということについて、佐藤参考人と堀越参考人から御意見をいただきたいと思います。

佐藤参考人 どうもありがとうございます。

 まず、今回の、特に育児・介護休業法の法改正、これはすごく大事な点だと思います。ですから、これをまずやり、かつ、この新しい仕組みについて、企業も働く人たちもちゃんと理解するということが大事だと思います。

 もう一つ、堀越参考人も言われていたように、やはり、要介護者の家族が自分だけで両立の仕組みをつくっていく、これは難しいです。やはり専門家のアドバイスというのはすごく大事です。

 ですから、そういう意味では、地域包括支援センターなりが、要介護者の介護の相談だけではなく、要介護者家族がどう両立できるかというようなことについて相談できるような機能を持たせるとか、ケアマネジャーも、在宅であれば、ずっとケアプランをつくる支援に回るわけでありますから、要介護者家族と月に一回少なくとも会うわけでありますから、そのときに、働き方を考えながら、要介護者の状態を見ながら、どう両立の仕組みを支援するのかというのはアドバイスできる。

 ただ、そのためには、現状でいうと、ケアマネジャーの方が支援するための知識を持っていないんですね、研修を受けていない。そういう意味では、そういう研修をするような、僕はそういう意味で両立支援ケアマネジャーとか産業ケアマネジャー、上乗せ資格として、全員とは言いませんけれども、そういうことをやれるようなケアマネジャーをつくっていく。

 あと、もう一つは、やはり、四十歳で介護保険の被保険者になるときに、介護保険の制度はこういうものであって、例えば親御さんが要介護になれば、認定を受けて、こういう手続をすれば使えるんですよというふうな情報を四十歳のときに提供するということが大事かなと。

 確かに、六十五歳でないと保険証は来ないんですけれども、実は、この六十五歳のときの保険証は要らないんですね。そういう意味では、介護保険制度の仕組みなり、できれば法定の介護休業なり介護休暇の仕組み、あるいは利用の仕方も、四十歳のときに働く人たちに提供するということがすごく大事なことかなというふうに思います。

堀越参考人 私も、一つは、当事者というか働いている側の人のエンパワーメントが必要で、今、佐藤先生がおっしゃったように、四十歳の介護者事前教育、これはすぐでもできると思います。四十歳の、介護保険料を天引きするときに、医療保険の関係から書類が行けばいいわけですから、国保の場合は国保の方から行けばいいので、何かあったときにここに連絡すればいいという、地域包括支援センターの電話番号を持っているだけでも全然違うと思うんですね。

 あとは、働く人に力をつけていくということと、もう一つ、介護休業取得を理由とした不利益防止のための雇用管理上必要な措置というのが今度できましたけれども、やはり、会社の中で、介護で離職はさせないと特にトップの方たちに宣言をしていただいて、育休等についてはよく優良企業の表彰なんかもありますけれども、うちの会社に入ったら介護ではやめさせない、そういう会社になるという宣言をするようなこと、あるいは、そのための計画ですね、企業にとっての計画をつくっていくという、何か自分で作業してみて、それを自覚するということが、経営者側と働く側の両方について必要ではないか。

 もう一つは、やはり、国として、介護で離職はしないでくださいというキャンペーンをきっちり張っていくということがとても大事だと思います。

 ちょっと例えはあれですけれども、認知症についても、全く理解がなかった日本の社会の中で、あれだけキャンペーンをし、認知症のセミナーをし、みんなオレンジリングをつけるようになって、そのときすぐ助けてあげられなくても、まなざしを持つようになるわけですよね。認知症というものが世の中にある、この人たちについて理解をして、何か困ったことがあったら声をかけて、どこかにつなごうと。

 そういう、仕事で介護で困っていたらば、職場の中、あるいは地域でもそうですけれども、特に職場の中でその人たちを排除しないということがどれだけできるのか。それを国が宣言もし、経営者も宣言もし、それから、働く人にも知識を持ってもらう、やめなくてもいいんだよという知識を持ってもらう。そういう知識を持つというのはエンパワーメントにつながるので、そのこととキャンペーンをきちっと張っていくというのは、もう今からでもできるのではないだろうかなというふうに思います。

中島委員 ありがとうございます。

 本当に、今、この問題は非常に根が深いんだ、これはもう言うまでもないというふうに思いますし、これから二〇二五年の問題、そういったこと、さらに、もう現状でも介護の多様化、遠隔介護であり、老老介護であり、独居の介護であり、さまざま、多種多様化している。

 これに対応していくために、直近の課題、共通しておるのは、事前教育の必要性と、そして、国民的なキャンペーンというお話も少し今出ましたが、今回は、育児休暇、育児休業も含めて拡大してあるということなんですが、やはりこれは企業の取り組みとして、先ほど佐藤参考人からもお話がございましたように、これはもう介護の準備のための期間なんだ、こういう認識が非常に欠けているのかなということも一つの原因だと。やはり、真っ先に取り組むべきことというと、事前教育のようなものは、各企業にも、そして個人にも今からでもすぐ取り組めるということなのではないかと理解をいたしました。

 私は、もう一つの観点として、先ほど言ったように、やはり、介護休暇、介護休業を準備の期間としても、育児休業と全く違うところは、直接育児にかかわるのが育児休業。介護休業、休暇というのは、やはりそこの必要なサービスをうまく利用してということになるというふうに思います。そういう意味で、車の両輪の一つの必要な介護サービスが今現在本当に整備されているのか、そして今後本当に整備される見通しになっているのかというのは大変私は危惧するわけです。

 昨年は介護報酬が最大幅マイナス改定をされました。地域の小規模事業所を含めて、その基盤となるサービスが非常に厳しい状況にあるのではないかということが言えるというふうに私は思います。

 我々野党五党で、まず、その原因となっております介護人材の不足、本当に介護サービスの基盤をこれから確保できるのかというのはまさに私は最大の課題だというふうに思うわけですが、そういう意味も込めまして、まずは、その原因となっておる介護人材の確保、その処遇の改善のための法案を我々五党で共同提出したわけですが、先ほど堀越参考人からは、この法案について評価をいただきました。

 ちょっと時間がないので、佐藤参考人、井上参考人から、今回我々が提出いたしました介護の人材確保のための特措法についてどのように思われるか、御意見を賜りたいと思います。

佐藤参考人 人材確保のことを御説明する前に、少し、先ほどのお話で、僕は、企業の中でいうと、介護休業というふうな名前で制度を入れているところが多いんですけれども、できれば介護休業・介護準備休業というふうに社内制度の名前を変えるだけで相当違いますというのが一つです。

 人材確保。御指摘のとおり、やはり制度的には前回の介護保険法の改正で相当よくなりました。ただ、問題は人なんですね。例えば、デイサービスなんかの時間も延びたりもしています、二十四時間対応。ただ、人の問題をどうするか。そういう意味では、やはり人材の確保、定着をどうするかという点で、処遇等の改善はすごく大事だと思うんです。

 ただ、処遇だけで済むのか。なかなか難しくて、現状でいうと、現状の制度の中でも、事業所の間ですごくばらつきが大きいんですね。つまり、一律に定着率が低いわけではなくて、人材がきちっと定着して育っている事業所と、すごく離職率が高いところとあります。そういう意味では、もう一つの部分は、やはり事業者の雇用管理の仕組みがうまくいっていないところは相当多いと思います。ですから、この点も含めながら事業所の改善をしていくということが大事かと。

 もう一つは、介護職が親の介護の課題で離職する可能性がある。僕たちの調査では、介護職自身が残念ながら勤務先の介護休業のことを知らないとかということが結構多いんです。あるいは、過度な残業をすることがあって、自分が介護の課題に直面したら、介護職が仕事を続けられないという人も相当多いと思いますので、そういう意味でも、介護職自身が介護の課題に直面しても続けられる仕組みというのは大事かなというふうに思っています。

井上参考人 私、額的にはまだまだ不十分だと思いますけれども、前進だと思います。今後さらに他産業との賃金格差を埋められるような議論をしていただければというのが一点と、他の産業も含めて、労働力不足というのは深刻になっています。やはり全体として働き続けられる賃金や労働条件はどうあるべきかという議論をやられていくきっかけになればなというふうに感じております。

中島委員 ありがとうございます。

 介護の人材の課題は、本当に、今、佐藤参考人からもお話しいただきましたように、単純に処遇だけの問題ではない。これも我々も理解はしておるんですが、完全に悪循環に陥っている。処遇改善というのは、これはまた介護報酬から来ている、市場原理が働かない部分であって、これはやはり政府が、国がしっかりと手当てをしながら、その処遇改善、全体的な課題について取り組む内容だというふうに私は思っております。

 もっともっとたくさん聞きたいことはあるんですが、先ほどの、ケアマネジャーと別に、生活支援、ケアラー支援のための制度。私は実際、医者として在宅医療もやっているんですが、ケアマネさんが家族の就労継続の観点があるかないかと言われると、正直私は、そういう観点で今ケアマネさんが働いているよりも、ケアプランを立てて、費用がかさまない、そこに観点があるのではないかと。

 もう時間もございませんが、堀越参考人に、介護者を支援、別の部分、生活を支えるというところによって、具体的に、もう少し詳しく、何が変わって何がよくなるのか、お話をいただければと思います。

堀越参考人 先ほど、要介護者の人にはケアプランを、介護者、ケアラーにはライフプランをと申し上げたんですけれども、自分がどれだけの介護をしていて、今自分の体や心がどれだけ疲れていて、何を解決したらもう少し将来の見通しを持って働いたり社会参加ができるのか、そういうことを寄り添って一緒に考えてもらうということの中で、それぞれの人の生きる力が湧いてくるし、それから、社会参加もできるし仕事にも力が湧いてくるということで、人を生かすことになると思います。

 ただ、そのためには、自治体が多分アセスメントをしたり支援のためのサービスをつくるということが必要に、またそれの仕組みが必要になるかなというふうに思います。

中島委員 時間が来てしまいまして、たくさんもっと聞きたいことがあって、全ての参考人の方に御質問できませんで、大変申しわけございませんでした。

 きょうの意見を貴重な御意見として審議に反映させていきたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日は、参考人の皆様、貴重な御意見、示唆に富んだ御意見、まことにありがとうございます。

 限られた時間でございますので、皆さんに質問できないこともあるかと思いますが、御理解いただければというふうに思っております。

 まず冒頭、佐藤参考人、お伺いしたいと思います。

 佐藤参考人には、月刊公明にも寄稿いただきまして、我が党の機関誌にも今回この案件について寄稿いただきまして、非常に勉強させていただいております。

 まずお伺いしたいのは、介護と育児の違いという点でございます。

 というのは、今回の法改正の中で、介護・育児休業法という改正、そもそもの趣旨は同じだと。つまり、雇用をしっかりと継続していただく、あるいは離職を防止するという観点、この共通した観点があって、具体的なそのたてつけを見てみましても、今回、例えば、介護休業の給付率を六七%にしよう、四〇から引き上げよう、これで育児と同じ高さに合わせるというようなこともございました。

 ところが、本質的に育児と介護が違う、対応が違うところも多々あると理解をしておりまして、そもそも介護は、いつから始まるかというのもわからないし、またいつまでかというのもわからない。こういう状況の中で、制度設計をしていく上でも、それぞれに合った形というのを、同じ介護・育児休業法の中でもそれぞれの特徴に合った制度設計をしていくべきだと私は思っておりまして、今回のこの法改正、この観点からコメントをいただければと思います。

佐藤参考人 委員が御指摘のように、仕事と子育ての両立支援と、仕事と介護の両立支援、やはり相当考えるべき点が違うということが大事だと思います。

 子育ての場合、例えば企業の中でいえば、父親も母親もやはり、男性も含めてという意味でありますけれども、子育てに積極的にかかわっていただく、それができるような形の制度をつくっていく。ですから、育児休業も男性もとってくださいということだと思いますけれども、介護の場合は、極端な言い方をすれば、直接介護を担わなくていいようになんです。もちろん、精神的な支援、これはやらなきゃいけないわけでありますけれども、家族が介護を担わなくてもいいような形で支援するということが大事だと思います。それが一番ポイントであります。

 それともう一つ、委員が御指摘のように、突然起きるわけで、いつまで続くかわからないわけです。

 そういう意味では、いろいろな、どうやって両立していいかという情報については、子育ての場合は、例えば妊娠がわかってから情報提供して間に合うんですね。うちにはこういう育児休業があります、短時間勤務もあります。でも介護の場合は、介護の方が直面してから情報提供しても遅いわけであります。そういう意味では、やはり事前に、働いている人たちがもし課題に直面したらどういうふうに両立していくかということを事前に知っておく、これが一つですね。

 それと、やはり長く続くわけであります。平均でも四年前後、十年以上の方も一五%ぐらいいます。そういうふうに、いつ終わるかもわからない、かつ長い場合もある。こういう中でどうやって両立していくかというと、そういう意味ではかなり、休業というだけじゃなくて、いろいろな、働き方も含めて全体の両立の仕組みというのが特に大事で、そういう意味で、今回のような、休業を、準備のための体制整備、かつ三回に分けてとれる。あと、介護休暇も半日休、これは毎年毎年ですから。あるいは、短時間勤務の措置義務が、これは三年、かなり長い期間二回ですので。あとは、残業免除がずっと、介護が終わるまで。

 そういう意味では、両立支援の仕組みを、かなり働き方、通常の働き方も両立できる仕組みに整備していくというような形に踏み込まれたということは、非常に仕事と介護の両立に合ったような法改正ではないかというふうに思っています。

伊佐委員 ありがとうございます。

 さまざまな違いという観点で、実際のたてつけもこういう違いになっているという話でございました。恐らく、そういうところが、介護休業だと九十三日間だけれども育児休業だと一年間というような話になっているんだと思いますが。

 では、その九十三日間、あるいはこの三分割というのも、この委員会においてもさまざま議論になっておりました。きょうも参考人の皆さんからもそのお話をいただいておりますが、いま一度ちょっと質問させていただきたいのは、介護における休業期間、介護休業期間というのは、介護休業・準備というふうにも佐藤参考人はおっしゃいましたが、まさしく仕事と介護を両立するための準備の期間なんだ、これが九十三日間なんだというお答えでした。

 田島参考人にお伺いしたいのは、ただ、今回この委員会でも議論がありましたのは、九十三日間で本当に十分なのかと。つまり、準備といっても、実際に今施設は待機がたくさんあってなかなか入れない、いつの間にか九十日たってしまった、こういうようなケースもあるんじゃないか、こういうお話もありました。

 きょういろいろ参考人の皆さんからお話を伺って私が理解したのは、これは、九十三日間だけあるわけじゃなくて、あくまでいろいろな制度を組み合わせてそれは対応していくんだ、柔軟性がポイントなんだというお話でした。もしそれであるなら、今回三分割、これは当然、柔軟性を持たせるのであれば、もっと分ければもっと分けるほど柔軟性はふえていくわけです。今回堀越参考人の方からも指摘がありました、もっと分けてもいいんじゃないか、もっと分割できるようにしてもいいんじゃないかと。

 今回、田島参考人、分科会で会長も務められたわけですが、さまざまな意見があったと思います。最終的にこの報告書の中で三分割というふうにまとまった。その中で、なぜ、たくさん、柔軟にやるんじゃなくて、三分割ぐらいが適当だということになった議論について、もう少し詳しくお話しいただければと思います。

田島参考人 議員おっしゃいますように、九十三日間では足りないのではないか、いろいろなケースがあるのでもっと長い期間を設ける必要があるのではないかという御意見はございました。

 ただ、九十三日を超えて介護休業の期間を設定するとなりますと、これは使用者側の方の労務管理上の問題も多々出てまいります。大企業であれば対応がしやすい面もあるかもしれませんけれども、中小零細企業となりますと、そういう形で不安定な期間が延びるということは労務管理上さまざまな困難な問題が発生するという御主張もあり、なかなかそれを延ばすことは難しいというように考えました。

 他方、労働者みずからが介護に当たらなければならないということではなく、介護保険サービスを利用しながら介護を続けていくということが大前提ということで、介護に対応するための準備、あるいはその介護の準備が終わるとき、その中間の三回程度の休業のタイミングが整えば、先ほども申しましたように、一回の介護休業というのは大体二週間程度でとられているということもございますので、対応が可能ではなかろうかということで、現時点ではこの九十三日間の間に三回という数字に落ちついたというところでございました。

伊佐委員 大企業だけじゃなくて中小企業の皆さんへの配慮というのも検討されたと。当然、これは労使の合意という中でしっかりと物事を今前に進めているんだというお話と私は理解をさせていただきました。

 きょうは介護の質問がずっと続きましたので、ちょっと育児についても質問を田島参考人にさせていただきたいと思います。

 有期契約労働の皆さんの育児休業の要件緩和、今回、大分三つの要件が緩和されました。ただ、もっと緩和すべきじゃないかという声もございます。

 これをどう考えるかということをお伺いしたいんですが、今まで三つの要件がありました。例えば、一年以上まず継続して雇用されていることという一つ。二つ目は、一年以降も雇用継続の見込みがあること。ただ、これはちょっと余りにわかりにくいので今回なくしましたという改正です。三点目は、二歳までの間に更新されないことが明らかな者を除く、二歳になったときには雇用されないということがわかっている場合はとれません。これも今回、一歳半まで緩和されたわけです。

 つまり、残ったのは、第一要件と、第三要件を少し緩和したものということになりますが、今回この委員会でも意見があったのは、第一要件だけでいいんじゃないか、つまり、一年以上継続して雇用されているということで育児休業の取得が可能にするように制度設計すべきじゃないかという意見もございましたが、その点について、田島参考人の御意見を伺いたいと思います。

田島参考人 育児休業という制度は、雇用の継続を図ることが前提のものとなっております。したがいまして、雇用が継続されないことが明らかである方に育児休業をとっていただくというのは、そういった制度に矛盾するものだというふうに理解しております。

 現状、原則では、子が一歳になるまでの期間、育児休業をとることができますので、それとのバランスで、少なくとも一年間は就業されて、その実績の上に休業される。それから、復帰されてすぐおやめになるというのでは制度にもとりますので、少なくとも、復帰後六カ月間は就業される見込みがあるということが要件である必要はあろう、そういう理解でございます。

 ですから、一年ということではちょっと制度の趣旨に矛盾するので、やはり復帰後、二年という期間を、六カ月に短縮したという対応で御理解いただきたいと考えております。

伊佐委員 ありがとうございました。

 第一要件であれば、そもそものこの制度設計の大前提に矛盾するんだというお話。つまり、雇用の継続であったりとか離職の防止という観点がこの制度のそもそものスタートなんだから、その前提と矛盾するというお話を伺いました。

 次に、堀越参考人、そろそろ時間もなくなってまいりましたので、一点だけお伺いしたいと思います。

 きょうのお話でも、事前教育の話をいただきました。例えば、二十代あるいは三十代の皆さんに対してしっかり介護というものを周知していくという話であったりとか、あるいはケアプランだけじゃなくて介護者の皆さんにとってのライフプランというものをつくっていくというお話。これは私は本当に大事な御提案だというふうに思っております。

 つまり、介護に対する意識を広い世代に理解していただくということは、ひいては介護予防にもつながっていくという観点では非常に重要で、今まさしく求められているものじゃないかというふうに思っておりますが、具体的にどのように進めていくのか、学校でやるべきなのか、あるいは地域で進めていくべきなのか、ぜひアドバイスをいただければと思います。

堀越参考人 それぞれの対象別にやる必要があるかなというふうに思っているんです。

 お配りした新聞の(三)というところに、高校生のときからお母さんと二人でお父さんの介護をしたという方の記事をお配りしてあるんです。彼は、そのとき介護保険について知らなくて、市役所に行ったらば、お母さんと一緒に来なさいと言われてしまった。それを、まだ役所に頼る状態じゃないというふうに誤解をして、介護保険を使うのに三年かかりましたというんですね。

 だから、働くこととか、本当にこういう生きていくことに必要なことを授業の中で学ぶという、社会の中で学ぶのか家庭科で学ぶのかはあるんですけれども、そういう、生活をしていく上での自分と社会のかかわり、制度のかかわりをきちっと教えていくというのは一つ教育の中で必要だというふうに思います。

 あとは、この彼は高校のときに自分はヤングケアラーだったんだと後で気づいたんですけれども、今、調査を南魚沼市というところでやっていまして、小学生、中学生でも、教員の方たちが、あっ、この子は介護者だと気づく子がいるんですね、そういうヤングケアラーという概念を提示すると。

 そのとき、どんなふうに子供に、私も助けてもらっていいんだというふうに気づいてもらうかというと、それは、この間、イギリスの事例をちょっとおかりしたんですけれども、学校にヤングケアラーを支える人たちが行って、全部の生徒の前で、こんなことはありませんかというので、例えば、朝御飯をつくっていますとか、クラブに出ないで早く帰りますとか、妹の面倒を見ますとかという札をいっぱい持つと、それがあふれていっちゃうんですね。そうすると、これはやはり子供は無理ですね。そうすると、その子たちは、ああ、自分はあれに該当するなと思うと、お友達に知られないようにして、相談に乗ってほしいという札を何か箱に入れるとか。

 だから、やり方はいろいろあると思うんですけれども、小学生、中学生、高校生、大学生、あるいは最低限四十歳からというそれぞれのやり方がいろいろ工夫はできるかなと思います。

 佐藤先生たちの御研究でも、企業の中でセミナーを受ける、パンフレットをもらう人たちの方が不安は少ないというのも出ていますので、それぞれのライフステージに合って、相手の受けとめる能力に合ったやり方をすればいいのではないかなというふうに思っています。

伊佐委員 ありがとうございました。

 本日お話しいただいた件、しっかりと受けとめて審議を続けてまいりたいと思います。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 きょうは、参考人の皆様、お忙しい中、貴重なお話をいただきまして、本当にありがとうございます。限られた時間ですので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、井上参考人にお伺いしたいと思います。

 私も、先週火曜日の本会議と金曜日のこの委員会で、この法案、質問に立たせていただきまして、失業給付の拡充を求めてまいりました。政府からの答弁では、早期再就職が大事だということで消極的なものでありましたが、早くいい仕事につきたいというのは誰しも思うことであります。しかし、井上参考人も述べられましたように、どんな仕事でもいいというわけにはいかないと思うんです。

 参考人は、失業や求職活動を通じて労働者の心がくじかれる、人が壊れていくという実例を幾つも見てきたということでありますが、なぜ給付の改善が必要なのか、この給付制度のもとでの労働者、失業者の実態というのをより具体的に御紹介いただけたらと思うんですが、いかがでしょうか。

井上参考人 実態といいますか、実際上、給付が削減されてきましたので、受けられないという方々が、経済的な理由から、とにかく急いで探さなきゃいけないというふうになっているんですね。

 もともと、やはり失業された方、求職者の方は探そうとしていますから、それが悪循環を生んでいるというのは、見つけてみたらまたブラック企業でぼろぼろになるとか、大体、毎日ハローワークに通っても、そう仕事が変わっているわけではないですから、結局、なかなかなくて時間ばかりかかる、次々書類を送っても書類審査で落とされるとか、そんなことが多々あるというふうになっていまして、それが求職者の問題だと思うんです。

 もう一つあるのは、そうした中で、やはり意に沿わない、余りよくない仕事にしがみついていなければならない、半失業などと言われる方々がたくさんいらっしゃる、一千万人を超えている、求職者の方で言えば、そうした状況があるということが言えるんだというふうに思います。

堀内(照)委員 今のこととも関連して、さらに井上参考人にお伺いしたいんですが、陳述の中にありました失業する権利という言葉、私は新鮮に受けとめました。

 つまり、ブラック企業であってもしがみつかざるを得ないという現実がある中で、しかし、そういう会社をやめることができる、やめても安心して職探しや職業訓練等を行って、次のいい仕事に結びつけることができる、それでこそブラック企業は排除され、雇用の安定が図られるんだと思うんです。これは非常に大事な視点だなと思って伺いました。

 このことと関連して、みずからやめると自己都合となり給付制限期間が生じるなど、給付に差が生まれてまいります。しかし、井上参考人が述べられましたように、それでは質の悪い企業から離職することが困難になると思うんです。実際には解雇であっても、企業が自己都合での退職を強要した事例も多いということでありますけれども、このあたりの実情についてお伺いしたいと思うんです。

井上参考人 労働相談で実際に来られる方でいいますと、離職票自身は自己都合というふうになっていても、実際にはいじめやいろいろな形で、事実上やめさせられた方というのが大半であります。しかし、そうした方が実際上は解雇だったという証明をするのはなかなか、証人をどう立てるか困難な局面もありますし、実際上の問題としてやはりこの区別が、その後待期期間、三カ月以上ということが出てきたりしますので、不都合を生じているんだと思います。

 そもそも、二〇〇〇年の改正で雇用保険財政が厳しいからという形でこういう離職理由による区別ができましたけれども、雇用保険の制度上はその区別をする理由はもともとないものだというふうに思っていますから、そこはきちんと見直していただきたいなというふうに強く感じております。

堀内(照)委員 続いても井上参考人に伺いたいんですが、今回の法改正で、シルバー人材センターの派遣、職業紹介業務について、週四十時間までの就業を可能にしようとしています。

 井上参考人は、高年齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに地域社会の活性化に貢献するという大原則を曲げる改悪だと指摘をされましたけれども、具体的にどんな問題が生じるとお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

井上参考人 最初にも申し上げましたけれども、もともと生きがいですから、最低賃金の規制がかかっていません。ところが、これが実際上、今相当いろいろな分野に広がっていまして、だから、一般の雇用をそういう低賃金の仕事が奪ってしまっているという状況が生まれています。

 これは、やはりその原則を、しかも今回四十時間まで認めるというふうにしたときに、これからどれだけ広がるのかということは原則に立ち戻って考えなければならないというふうに思っておりまして、相当なやはり悪影響が、低賃金労働が広がってしまう、日本の雇用の質を下げることにならないかというふうに危惧をしております。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 続きまして、佐藤参考人と、あと堀越参考人にお伺いしたいと思います。

 今回の法改正で、介護休業について、九十三日間を三回に分けて使えるようにするなどとしているわけですが、この休業は、みずから介護をするためではなくてマネジメントのためだということでありますが、今の介護制度のもとでは、在宅ともなりますと、デイにせよショートステイにせよ、利用できる時間というのは限られているわけで、同居家族への負担というのは大変大きいものがあると思います。

 一方で、介護休暇の方は年五日、今回半日に分割ということで、最大でも十日ということで、堀越参考人からは、一カ月に一回とっても年十二回になっていくではないか、必要ではないかという話もございました。

 ですから、まだ課題という点ではさまざまあるんだろうというふうに思うわけですが、佐藤参考人からは、国に求められることということで、最後に介護サービスの見直しということも指摘をされました。その課題といった点、介護サービスの見直しということでどういう課題があるのか。それから、堀越参考人には、現場ではなお家族負担の深刻な実態というのがやはりあるんだと思うんです、その実態と課題ということを改めて整理していただくとどうなるのかということで、お伺いしたいと思います。

佐藤参考人 私の資料の一番最後の点だと思いますけれども、現状の介護保険サービスについても見直す必要があるだろう。

 その視点は、先ほどお話ししましたように、やはり、介護保険制度ができたときの要介護者の家族のあり方と現状というのは相当変わってきますし、これからもどんどん変わっていく。やはり、要介護者の家族が働いている、それも、できれば、働きたい人は働きたいように働けるということだと思います。

 そうすると、例えば、今デイサービスのお話がありましたけれども、従来は十時から四時というような形で、確かに前回の法改正で少し長いサービスが入りましたけれども、十時から四時というようなことでいうと、例えばフルタイムで働きながらその制度を使うというのはやはり難しいわけでありますよね。

 前回の改正、その点では評価できるわけでありますけれども、今後も、ほかのサービスについても、やはり要介護者の家族が働いているという、そういう意味ですと、例えば二十四時間のサービスも出てきましたけれども、仕組みとしては出ても、先ほどお話ししましたような、人材がいないのでできないということがありますので、そういうことも含めて、やはり全体として、次の介護保険制度の見直しのときに、そういう要介護者の家族のあり方が違うということを踏まえた上でどうするのかということをぜひ検討していただきたいという趣旨であります。

堀越参考人 まずは、実態が明らかになっていないということを言いたいんです。

 日本の介護者の調査というのは体系的にやられていなくて、国民生活基礎調査というのがあるんですけれども、その中でも、どのくらいの介護をしていて、例えばどんな、介護者に対して、健康や生活への影響が出ているかとか、働くことに影響が出ているかとか、それを経年的にきちんと調査をするということはできていないと思います。国によっては、国勢調査の中にそういう項目を入れている国もありますけれども。

 それで、民間でかなり調査をやって、私たちも調査をしたわけですけれども、介護する前から働いている人、あるいは、もうそのときに働いていなかった人がもちろんいまして、介護する前に働いていて、介護によって転職をした、退職をした、どういう支援があれば退職をせずに済んだかということもあるわけですよね。そういうことをきちっと調査をする。

 あるいは、実際に働きながら、あるいはもう職は退いているけれども、介護を一日どのくらいの時間している、サービスを利用している日にどのくらいの時間介護をし、サービスを利用していない日にはどのくらいの時間介護をし、ならすと一週間にどのくらいの介護をしているのかとか、そういう実態がきちっと把握できていなくて、私たちも今回、二〇一〇年の調査の後、二〇一五年にも今やっていますけれども、物すごく大変な人というのは、おおよそですけれども、介護者の二割ぐらいはとても孤立していて、とても疲れていて、言葉は悪いですけれども、介護殺人、介護自殺、介護心中にいきそうな方というのはいるんじゃないかと。

 平均で見ても、対象は少なかったんですが、都市の方で、一週間四十九・五時間、平均介護しているという結果も出ています。労働基準法の一週間の労働時間は四十時間ですよね、それを上回る介護をしていて、しかも土日の休業もない。なので、それは一部じゃないかと言われれば一部なので、みんなが納得できるような調査をきちっとするということがまずとても大事なことだというふうに思っています。

 課題とすれば、新聞記事にも書きましたけれども、一つは、非常に孤立をしてしまう。社会から孤立をする、孤立をして切り離されることによって非常に追い詰められる、追い詰められることによって虐待が起こったりするということで、介護は家族がすればいいという単純なものではないというところの、そこから入っていただいて、きちっと調査をして、課題を明らかにするということがとても大事だというふうに思っています。

 ちょっと直接な答えにはなっていないんですけれども、そういうことを考えています。

堀内(照)委員 ありがとうございました。

 最後にもう一度、井上参考人に伺いたいと思います。

 全労連が行った女性アンケートを拝見いたしますと、マタハラの温床になっているのが職場の余裕のなさだということが指摘をされておりました。今回のような法改正は当然もちろん必要なわけですが、男性は育児や家庭生活と両立できないような長時間労働であるとか、女性は家事、育児と仕事の両立で、本当に大変だという。

 労働者の働かせ方自体が大きく問われているんだと思うわけですが、その点について御所見を伺いたいと思っております。

井上参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 マタハラだけではなくて、育児・介護休業などをとれるかどうかとか、いろいろな部分も含めて、職場の労働条件がいいといいますか、労働時間が適切に管理されていて、長時間の残業等がないということがやはり必要だと思います。

 という意味でいいますと、別の法案ですけれども、労基法の改正法案、八時間労働制の原則を崩すのをやめて、上限規制をしっかりされることが必要だというふうに感じております。

堀内(照)委員 以上で終わります。全ての皆さんに質問できなかったことを御容赦ください。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 本日は、お忙しい中、参考人の皆様、どうもありがとうございます。

 おおさか維新の会の浦野です。よろしくお願いをいたします。

 この介護休暇、育児休暇、両方、求めれば強制力があってとれるという位置づけのものになっておりますけれども、実際はなかなか取得できないという現状があります。

 そこで、幾ら対象を拡大していっても、実際にとれなければ何の効果も発揮をしないので、では一体どういうふうにすれば実際にとってもらえるようになっていくのか。もちろん労使間のお話し合いの部分はありますけれども、皆さん方が考えて一つ挙げるとすれば、とりやすくなる方法というのを一つ挙げていただけたら、各参考人の方にお伺いをしたいと思います。

佐藤参考人 一つというか、二つでいいですか。

 一つは、企業からして、なぜ社員が介護休暇を利用しやすいようにする必要があるかということですね。四十代、五十代という中核人材、もちろん三十代、四十代が大事じゃないという意味ではありませんけれども、四十代、五十代の人が両立できないとやはり離職していく。これを避けるためには、企業にとって不可欠なことだというふうに理解していただく、これが一つだと思います。

 あともう一つは、やはり働く人たちが、これまでも出ましたように、例えば介護休業であれば法定の権利ですよね、勤務先にそういう規定がなくてもとれるわけであります。ですから、少なくともそういうような知識を持つということがすごく大事なことかなというふうに思います。

堀越参考人 やはり知ること、知識を持つことなんですけれども、企業にそういう担当者がきちんといて、採用の、福利厚生の説明がありますので、そういうところからして、チャンスがあるごとにきちっと説明をしていく、それを周知するということが早いんじゃないかなと思うんですね。

 雇う側の責任として、そういうとれる権利のある労働の権利について、介護休業だけじゃないですけれども、育児休業、介護休業、産業衛生、労災のこととか、そういう知識をきちっと提供して、安心して自分の会社で働いてもらう、そういうことを地道にやっていけば、早くて効果はあるんじゃないかなというふうに思います。

 あとは雰囲気づくりで、それはトップがちゃんと宣言するということだと思います。

田島参考人 私も同じ意見になりますけれども、やはり介護休業と非正規労働者の育児休業については、権利があることが知られていないという面もあろうかと思いますので、国の方でも積極的に周知に努めるということ、それから、企業の方にも、さまざまな相談窓口なり相談を受ける担当者なりを設けて、相談に乗れる体制をつくることが重要だろうと考えております。

井上参考人 ワーク・ライフ・バランスといいますか、働き続けられる職場、そういう文化をつくることだと思うんですけれども、今のように長時間労働のもとでいえば、周りの同僚から考えても、とれないような状況というのを含めて広がっています。それがやはり労働時間規制などにつながると思いますけれども、そうした今の人手不足の中でいいますと、人がやめない職場をつくっていくということは企業にとってもいいということをしっかり認識されることではないのかなというふうに思います。

野川参考人 育児休業は比較的年齢的に固まりやすいところがありますが、介護休業は満遍なく介護に携わる人がおりますし、どちらかといえば年齢層の高いところで介護休業が必要になる。

 そうしますと、私はやはり、部長とか課長とか管理職の方が介護休業をまずとる、そのことで、部下が、介護休業をとるのは当然なんだ、むしろとらないとやはりまずいんじゃないかというぐらいの状況をつくっていくというのが、わかりやすくていいのではないかと思います。

浦野委員 やはり、職場の環境をどうしていくかというのが非常に皆さんの共通したお話だったと思います。

 先日の厚生労働委員会の質問の中で、今、隗より始めよということで、厚生労働省が、そのときは育児休業の話ですけれども、育児休業をとりたいという方が必ず上司に相談をする制度をつくって、そういう話を部局で、局内で必ずできるようにしたというその効果で、非常に育児休業の取得率が上がっているということをおっしゃって、まさに今参考人の皆さんがおっしゃっていたような取り組みを、今厚生労働省では行っているんだろうと思います。

 ただ、では、各省庁はどうですかと聞くと、余り他省と比べると後で文句を言われることもあるのでなかなかそれはちょっと言えないというふうなことも裏ではおっしゃっていましたけれども、そういうことだと思うんですね。

 私、例えばフランスなんかは、育児休暇をとった後に復職する場合、必ず離職前の身分を保障するというところまで法律で書き込んでいるというふうに聞いたことがあります。日本でそれができるかどうかはわかりませんけれども、私は、そこまでのことをやって初めて、介護休暇もそうですし、育児休暇もとりやすい、一定の期間離職をしても必ず会社に必要とされる人材として復職できるんだというやはり担保ができると思うんですね。

 そのことについて、堀越参考人、あと野川参考人にお伺いしたいんですけれども、堀越参考人には、そういった取り組みについてどうお考えかということと、野川参考人には、法律的にそういったことまで書き込める余地があるのか、法律的に意見をいただけたらと思います。

堀越参考人 余りきちんと考えたことがないのでごめんなさいということなんですけれども、育児休業もそうですけれども、原職復帰ができるということはとても大事なことと、結局、自分が休んだ後、介護休業の方が短いですから代替要員のことはちょっとおいておいたとしても、育児休業の方だと代替要員がきちっと入らないととりにくいというのがありますよね。

 あと、今、離職とおっしゃいましたか。(浦野委員「離職というか、休暇をとる」と呼ぶ)休業、そうですね。それはもちろん原職復帰が一番だと思います、帰って椅子がないのは困っちゃいますから。

 あと、ちょっとずれていて申しわけないんですけれども、離職ということにちょっと触発されたんですが、万が一離職したときに、再就職の支援もきちっとしていただくというのが現状の中ではとても大事じゃないかなというのを、今ちょっとお伺いしながら思いつきましたので、済みません、つけ加えさせていただきます。

野川参考人 原職に復帰するということ自体を特定して法律で強制するというのは、なかなか難しいだろうと思います。

 むしろ、問題なのは、日本の企業も非常に流動的で、例えば一年離れていれば、もう職場の例えば同僚にしてもあるいは人事構成にしても変わってしまっているということが通常ですので、むしろ私は、法律でそういうことを強制するというよりは、例えば通達等で、もとの職場というよりは、介護休業や育児休業から帰ってきたときに職場がなくなってしまっている、もうどこにもつけられないということがないようにと、そちらの方が大事だと思うんですね。

 つまり、企業としては、もうあなたが戻ってくる場所はないよというふうに、そこまで言うのはやはりフェアではないと思いますので、むしろ、原職にこだわると、もとの職場はもうないんだから、だったらあなたはもうやめてもらわなきゃいけないということになりがちですので、それは逆で、何かしらのポストはあるということを努力する、そういったことは指導できるのではないかと思います。

浦野委員 やはり、身分保障というのがある、ないでは、かなり取得率も変わってくるだろうと思っています。

 次なんですけれども、今、参考人の方々からも、国庫負担を、本来は四分の一でありますけれども、それが今は低いと。これは、今あれだけ特別会計に積み上がっている中で、そこは本来の姿に戻すべきだということを我々も思っているわけですけれども、政府はなぜそれを渋っているのか。

 今、潤沢に、六兆円以上積み上がっているわけですけれども、それを、では、未来永劫、本則に戻すとなると、それはどんどん目減りしていくのはもちろんわかりますけれども、日本は今、借金をしながら毎年の予算を組んでいる状態で、それでもそこにお金をため続ける理由というのは私にはよくわからないんです。

 こんな質問もおかしいですけれども、なぜ国はそれをやりたがらないのかというのを、恐らく井上参考人に聞くのが一番いいと思うので、井上参考人にお聞きします。

井上参考人 済みません、意味がよく……。本則になぜ戻さないのかということですか。逆なのではないのかというふうに……

渡辺委員長 もう一度どうぞ。

浦野委員 済みません。

 お金がある中で、国の負担をなぜふやさない、その大きな理由は何だとお考えですか。

井上参考人 正しい答えになるかどうかわかりませんけれども、もともと、二〇〇〇年からの数次の改正は、雇用保険財政が厳しいということで絞り過ぎてきたというのが今の結論だと思うんですけれども、私はやはり、余裕が出た今だからこそ、失業給付等を充実させて、それで雇用をよくする、賃金の底上げを図った方が、結局は、所得税等の収入は行く行くはふえるわけですし、それと同時に、雇用の安定によって少子化にも一定の歯どめがかかるというふうに思っていますので、やはり雇用保険制度とは何なのかという議論をしっかりしていただきたいなというふうに、制度の軽視があるのではないのかというふうに感じております。

浦野委員 わかりにくい質問で済みませんでした。

 現在、政府は景気がよくなっているというふうに言っていますけれども、数字的に見てもなかなか厳しい数字が並んでいる今現在こそ、この雇用保険の制度をしっかりと考えていかないといけないと思っていますので、また、きょうの質問のさまざまな意見を参考にさせていただいて、我々もこれから頑張っていきますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 改革結集の会の重徳和彦です。

 本日、参考人の皆様方、お忙しい中、まことにありがとうございました。

 まず初めに、野川参考人にお尋ねしたいと思います。

 憲法二十七条の要請から、国が労働市場には介入していく義務があるんだという議論、大変おもしろく聞かせていただきました。大学時代の講義も、今聞いたらまたおもしろい発見がいろいろとあるのかななんて思いながら聞かせていただきました。

 今回は雇用保険の適用に関する話なんですが、そもそも勤労する権利というものが全ての年齢差によらず認められるべきなのであれば、改めて、今、定年制度について、よく言われますよね、六十五歳、七十歳になっても元気なお年寄りはたくさんいるんだから定年にするのはおかしいよと。最近出会う、いや、ことしで定年でしてとおっしゃる方は、ええっとびっくりするぐらい、もう定年なのと、そういう若々しい方がたくさんお見えになります。

 そういった憲法の関係と今の社会情勢に鑑みて、定年制度のあり方について見直すべきじゃないか、こんなような議論についてどのようにお考えでしょうか。

野川参考人 定年制については、かねてから実務上も、また学会でも、昔は、定年制という制度を設けることは違法ではないか、例えばそういう就業規則等の制度があったら無効ではないかというような議論もあったくらいなので、深刻な問題ではあります。

 ただ、その問題が若干緩和されつつあるのは、御承知のとおり、既に高年齢者雇用安定法で、六十五歳まではとにかくどこかでは雇用されることになるという仕組みが整えられつつありますし、七十歳の雇用も射程に置いた対応がなされつつありますので、現実に定年制をなくすという議論の深刻度は少なくなっていると思います。

 ただ、一点私が申し上げたいのは、日本の企業が、これまでのように、新卒、新規学卒採用がどんどん内部で昇進をしていってその企業の幹部になるという長期雇用システムというものをまだまだとっています。その中では、誰がいつやめるのかということについて、一定の年齢になったらやめるというのは、ある意味で一番フェアでわかりやすいんですね。つまり、そこには恣意が入らない。要するに、事実として年齢が来たらやめるんだ。これが、そうじゃなくて、年齢が来たけれども、定年制はないけれども、この人にはそろそろやめてほしいというようなことでそれぞれにやめてもらうということになると、大分差しさわりが出てくるというような状況がまだまだ日本の企業風土にはあるのではないかと思います。

 そこを改革していくことと定年制というものがやがてなくなっていくこととがリンクしていくのではないかというふうに思っております。

重徳委員 ありがとうございます。

 もう一点、国の労働市場への介入という点で野川参考人にお伺いしたいんですが、これは、井上参考人からも御指摘のありました国庫負担の関係です。これについて、本則二五%、現在一三・七%というお話であります。

 これは、国際比較、先ほど少し先生言及されましたけれども、ドイツ、フランスあたりと国庫負担のあり方についての考え方とか現実の支出の水準の違い、これは、何か違いがあるとしたらどのような考え方に裏打ちされるのかとか、そこ自体は大して違いがないのかとか、そのあたりを少し御知見を賜れればと思います。

野川参考人 御承知のとおり、大陸ヨーロッパ諸国は、ソーシャル・ヨーロッパという言葉もあって、社会保障に大変力を注いでおりますし、ウエートを置いております。したがいまして、国庫負担も非常に大きい。これは、一概に何%というのは、これも変わりますので言えませんが、少なくとも三〇%を下回るというようなことは余りないだろうというふうに思います。

 ただ、そこには、先ほどもちょっと申し上げました考え方の違いがやはりあって、例えばアメリカのように、外部労働市場が非常に活発で、簡単に首にはなるけれども長期失業者の数が一番少ない、つまり、失業してもごく短い期間に就職できるというような活力のある外部労働市場があるところでは、それほど失業者に対して手厚い保護をする必要はないという考え方になります。

 しかし、日本のように、内部労働市場は物すごく高度化していますけれども、外部労働市場がまだまだない、解雇されれば前にいたときよりもいい条件で転職するなんということは極めてまれであるというようなところでは、どうしてもドイツやフランスなどと同じように手厚く保護しなければいけないということになります。

 ただ、国庫負担という点に関しては、低いのは二つ理由があると私は思います。

 一つは、先ほど申し上げました考え方の違いがあって、今後、日本は、国で失業者の面倒を見る、だから、外部労働市場はもう成熟しないということを前提として失業したら面倒を見てあげるというようなことから、やはり活力のある外部労働市場に向けてどんどん進んでいくんだという方向性が一つあるということです。

 もう一点は、確かに今、六兆円を超えるお金はありますが、リーマン・ショックのときには物すごく少なかったわけですね。たしか数千億、一兆円をはるかに下回っていた。だから、労働市場は国際的な情勢も踏まえて大変大きく変動しますので、それを考えると、やはりなかなか思い切ったことができないというようなことがあって、今、国庫負担をいきなりふやすというよりは、国庫負担が少ないままでこういう状況があるといういわば良好な状況を維持していくということが一つの選択だというふうに政府も考えているのではないかというふうに思います。

重徳委員 ありがとうございました。

 次に、堀越参考人にお伺いしたいんですけれども、今回の介護休暇の改正によりまして、五日間、これを省令に定める単位で休暇をとれるようになったということですが、きょうの陳述をお聞きしておりますと、そのこともいいんだけれども、現状を考えると、五日という限定の方がむしろ足りないという御指摘が先ほどあったと思うんです。

 実情、実態はいろいろと調査が必要だということは、客観的に実情を捉えるためには必要でしょうけれども、今、堀越参考人が感覚的にも捉えていらっしゃる感じからして、やはり五日ではこういうことで足りないんだということを、もう少し詳しくお聞かせいただければと思います。

堀越参考人 現実的には、多分、有給休暇をとっていらっしゃる方もいらっしゃると思うんですけれども、考え方からすると、先ほど申し上げましたように、介護保険を使うときにケアマネジャーは月一回モニタリングをするということが決まっていて、そのとき家族と話をしますので、もしも月一回、半日それで使うとすると、一年で十二回ですので、最低限六日にはなるだろうというふうに思います。

 それから、サービス担当者会議というのをケアマネジャーさんが来る日と一緒の日にやるかどうか、また別の日にやったり、いろいろ、制度を使うための契約であるとかそういうモニタリングであるとか、幾つか必ず生じるものがあるので、それを考えると、五日間というのは私の実感からいっても少し少ないな、また理屈からいっても六日というのが最低限ではないかなというふうに思いました。

重徳委員 ありがとうございます。

 なぜ五日なのかという話は、また政府の方にもちょっと詰めていってみたいと思っております。

 次に、井上参考人にお尋ねしたいと思います。

 資料を拝見しておりましたら、年越し派遣村やワンストップの会などで実行委員をされていたというような話を拝見しまして、村長をやっていました湯浅誠さんと、私もまだ役人だった時代に、横浜市を舞台に、ワンストップサービスといいましょうか、パーソナルサポート特区というものを目指して一緒に活動していたことを思い出しました。

 そして、資料の四ページにありますように、「雇用の厳しさを見るにつけ、「できるだけ速やかに再就職」という論についても慎重に考える必要があると考える。」というのは、非常に御指摘ごもっともで、もちろん、すぐに仕事が欲しい、そういうニーズはたくさんあるとは思うんです。だけれども、やはり私の経験からしても、たとえ若い、まだまだすぐにでも働けるはずの年齢の方も、病気があったり、障害があったり、借金を抱えていたり、家庭に問題があったり、教育に問題があったり、いろいろな多重な問題を抱えている、そういう方も少なからずお見えになるわけですよね。そういう方に対して、何でもいいから就職すればいいじゃないかというのはやはり違うと思っておりますし、そこは適切なパーソナルサポートというものを、その人に見合った、寄り添う支援をしていくということもやはり必要なことだと思うんです。

 ちょっと今回の法案とは別の法案で、今回、地方創生で地方版ハローワークという仕組みができます。この地方版ハローワークは、言うまでもなく、国がこれまで一元的に国の仕事としてやってきたハローワークを地方自治体も行うことができるというようなことになりまして、そうなると、より自治体が地域にあるいは個人の実情に密接な行政サービスを、もともと行っているわけですから、それに加えて、ハローワーク、職業関連のサービスを行うことができるようになる。こういったこともあわせて、仕事探し以外の課題をさまざま抱える人に対するサービスもより提供できるようにうまくいけばなるのではないか。さまざまなことを総合的に私なりに考えてきたところなんです。

 今回の地方版ハローワークも含めた、この委員会の所管外でありますが、所管外じゃないのか、関係ありますね、このあたりの問題についての所見をいただければと思います。

井上参考人 さまざまな制度ができることはいいことなんだと思うんですけれども、私、一番問題だと思うのは、今のハローワークそのものの機能が人員体制も含めて弱められていますよね。あそこに最もやはりノウハウの集積があるわけですよね。やはりベテランの職員というのは、本当に、その人にちょっと面談するだけで、その人の特性やいろいろなことも含めてやって、かつてであれば、中小企業の社長に頼み込んで、ぶこつだけれども技術がある人をちゃんと就職させるとか、いろいろな機能がありました。そこをしっかりと充実させるということが必要だと思います。それを民間人材ビジネスに持っていくということではなくて、やはりハローワークそのものの充実がなければ地方自治体との連携等もうまくいかないんだというふうに思っております。

重徳委員 ありがとうございます。

 では、最後に佐藤参考人にお伺いしたいんですが、介護・準備休暇です。これは休業じゃなく、休暇の方ですね。(佐藤参考人「いや、後で言います」と呼ぶ)

渡辺委員長 ちゃんと質問してください。

重徳委員 済みません。

 これは、非常にネーミングというのは大事なところだと思うんですよね。制度趣旨の周知徹底のためにも、そして何よりも、介護を原因として離職するようなことというのは、本当にこれは深刻な問題だと思いますので、この名称一つでそれを救うことができる可能性が少しでもあるのであれば、ぜひとも検討すべきことじゃないかと感じたわけなんですが、この名称にかける思いのようなものをもしお述べいただけるのであれば、よろしくお願いいたします。

佐藤参考人 どうもありがとうございます。

 企業内で現状でもすぐやれるということで御説明したわけでありますけれども、就業規則での介護休業制度の名称を介護休業・介護準備休業というふうに変えるだけでも、やはり社員へのメッセージは違うだろう。これは社内の制度でありますので、法律どうこうは関係なくやれると思います。

重徳委員 参考人の皆様方、ありがとうございました。

渡辺委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して改めて厚く御礼を申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十四分散会


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