衆議院

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第2号 平成13年11月6日(火曜日)

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平成十三年十一月六日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 栗原 博久君

   理事 竹本 直一君 理事 中山 成彬君

   理事 後藤 茂之君 理事 田中 慶秋君

   理事 久保 哲司君 理事 達増 拓也君

      衛藤征士郎君    小此木八郎君

      梶山 弘志君    後藤田正純君

      高木  毅君    西川 公也君

      根本  匠君    馳   浩君

      林  義郎君    平井 卓也君

      松宮  勲君    茂木 敏充君

      保岡 興治君    川端 達夫君

      北橋 健治君    後藤  斎君

      鈴木 康友君    中津川博郷君

      松原  仁君    松本  龍君

      山田 敏雅君    赤羽 一嘉君

      石井 啓一君    土田 龍司君

      大森  猛君    塩川 鉄也君

      大島 令子君    西川太一郎君

      宇田川芳雄君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    西川太一郎君

   参考人

   (神奈川県信用金庫協会会

   長)

   (湘南信用金庫理事長)  服部 眞司君

   参考人

   (全国商工会連合会理事)

   (香川県商工会連合会会長

   )            都村 忠弘君

   参考人

   (全国商店街振興組合連合

   会副理事長)

   (株式会社白牡丹代表取締

   役社長)         鯉江  盈君

   参考人

   (日本弁護士連合会倒産法

   制検討委員会委員長)

   (弁護士)        多比羅 誠君

   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君

    ―――――――――――――

十一月二日

 脱原発への政策転換に関する請願(金田誠一君紹介)(第三二四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三二五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 経済産業の基本施策に関する件(中小企業問題)




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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件、特に中小企業問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、神奈川県信用金庫協会会長・湘南信用金庫理事長服部眞司君、全国商工会連合会理事・香川県商工会連合会会長都村忠弘君、全国商店街振興組合連合会副理事長・株式会社白牡丹代表取締役社長鯉江盈君、日本弁護士連合会倒産法制検討委員会委員長・弁護士多比羅誠君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず服部参考人にお願いいたします。

服部参考人 御紹介をいただきました服部でございます。

 まず、参考資料を見ていただきながら、自己紹介をしていきたいと思います。

 私の湘南信用金庫は、大正十三年三月の設立でございまして、平成元年に鎌倉信用金庫と横須賀信用金庫が合併をいたしまして、湘南信用金庫に相なっております。平成三年、茅ケ崎信用金庫を合併、平成六年、東京大和信用組合を合併、そして、来年の一月でございますけれども、神奈川県青果信用組合の破綻に伴いまして事業譲渡を受ける、こういうようなスケジュールになっている信用金庫でございます。

 本店は横須賀にございます。そして、現在の店舗数は六十、法人代理店が二つということで、六十二の支店を構えております。

 従業員は九百五十九名でございます。

 預金量がちょうど九千億円、貸し出しが六千五百九十億円、預金と貸し出しのバランス、預貸率が七三%というところであります。

 全国に信用金庫が三百六十九ありますけれども、預金量の規模では二十番目に属するところであります。

 こんなようなところを自己紹介させていただきまして、これから申し上げたいと思います。

 皆さんのお手元に、参考資料二といたしまして「SHONAN景況リポート」という冊子が行っております。これはお時間があるときにごらんをいただきたいと思いますが、これについてまず申し上げてみたいと思っております。

 この景況リポートというのは、営業地域の中小企業、零細企業六百社余りを対象にいたしまして、各店舗長、支店長が直接企業主に面談いたしまして業況を聴取して、二カ月ごとに一回お客様に配布をしております。お客様だけじゃありませんで、監督官庁を初めとして、日本銀行その他主要な役所、あるいはマスコミにもこれをお配りしております。

 簡単に言いますと、不動産業あるいは製造業に多少の明るさが見えてきているという結果が私のところの調査では出ておりますが、建設、卸、小売業、サービス業は大きく落ち込んでおりまして、全体的にはじり貧でございます。

 特に、今回の米国同時多発テロあるいは狂牛病、こんなところから、小売業あるいは卸売業、肉屋さん、焼き肉屋さん、こういうところはもう八〇%も売り上げが減、こういう状況でございまして、いわゆる町じゅうに不満が噴出をしている、こんなようなところであります。

 これを見ていただきまして、中小零細企業の実態を肌で感じていただければありがたいと思っております。

 日本銀行や経済産業省の景気動向調査というのは、大変遅うございます。三カ月、四カ月後に出てくるという状況であります。特に、中小だけじゃありません、零細企業に対する動向調査というのはほとんど反映されていないというところでありまして、大企業を中心とした景気動向調査、これだけで政治家の皆様が御判断するのは非常に難しい、こういうふうに思っておりますので、どうぞその辺を御承知おきいただきまして、必要であれば私の方からお送りをいたして、実体経済あるいは中小零細のところをごらんいただければありがたいと思っております。

 順番といたしまして、貸し渋りとか貸しはがしがあるかどうか、こういうことからちょっと触れていってみたいと思っております。

 新しくできました大きな銀行でありますが、割賦弁済をいきなり期日一時決済に変更し、承知をしなければRCC行きだ、こういうことで、貸し渋りどころの騒ぎじゃありませんで、貸しはがしというのが多数見受けられるようになっております。それから、都市銀行等の統合、合併によりまして、複数取引をしている中小企業が選別に遭いまして資金調達困難に陥っているということは、皆さんも御承知のとおりだと思います。そんなところから、最後には、私ども地域金融機関のところに頼ってくるというお客様が非常に目についているところであります。

 倒産に至った例を一つ二つ挙げてみたいと思います。

 月末に資金決済をするために、手形の決済をするために送金した銀行がこれを返済に充ててしまいまして、いわゆる不渡りを出す、こういう状況で倒産に至ったという例が三つも四つもあります。決済資金だというのに返済に充ててしまう、こういうことで、何しろ無理やりに破綻に導いていかれてしまったというところが多々あります。

 それから、産業廃棄物業者で、ダイオキシン排出規制に対応するため融資相談をいたしましたけれども、断られたということから、これが調達できず廃業に至るというようなところもあります。今、ダイオキシン問題が大きく取り上げられて、社会問題であるにもかかわらず、そのような実態が出ております。

 それから、保証協会の保証の役割がなくなってしまったというところに、皆様御注目をいただきたいと思います。

 中小企業安定化特別資金といたしまして、平成十年十月にこれができ上がりましたけれども、しかしながら、最近の保証協会の保証というのは、いわゆる担保に重点を置いてまいりまして、担保がなければ貸さない、あるいは、今までの返済に当たって条件を変更してほしいという申し出がありましたら、次回からは資金の調達は保証協会を通じては一切できない、こういう状況であります。

 そもそも、保証協会というのは、担保不足の人もどうにかしてやりたい、こういうことから始まったことでありますし、それから、中小企業安定化特別資金というのも、この際一気に苦難を乗り切っていかなければならないということからでき上がったにもかかわらず、最近では担保重点主義、それから時間は三カ月もかかるようになってしまった、こんなような状況であります。これはお察しすれば、相次いで保証協会のいわゆる保証の先が不振に陥ってしまっておって、保証協会が苦況に立ち至っているということは間違いないと思いますが、そんなところであります。

 その結果として、金融機関はどういうふうにしていくかということであります。

 まず、金融機関の行う行動を幾つか分けてみますると、最大の原因は自己資本比率一辺倒の、いわゆるアメリカの物まねをしたグローバルスタンダードの金融行政にあるということであります。何しろ自己資本を改善するのには資産を圧縮しなければなりません。それにはどうしたらいいかといったらば、金を貸さないことであるということでありまして、徹底して今の状況は金を貸さない指導が行われている、こういうふうにみなしてよかろうかと思います。お客様の心理からしますると、借入金の返済ができないのは当たり前だということで返済しないという、責任感がお客様の中になくなってきつつある、こういうことであります。

 また、きょうここにいらっしゃいますが、弁護士等の指導でいわゆる自己破産の勧め、そして、それで飯を食っている弁護士が相当の数に上がってきてしまっている、こういう状況は皆様も御承知のとおりだと思いますが、そのようになっております。十両で首が飛ぶという時代が江戸時代にあったわけですが、今は堂々と借金を返済しないで威張っているというのが多く見受けられるようになって非常に残念であります。

 きょうの日経新聞をごらんいただいているとおりでありますが、余裕資金は我々金融機関にたくさんあります。当信用金庫も三千億円以上の金が余っておりますが、これは外債購入に走ってしまっているということであります。

 次に、需要がないわけではないのであります。需要が旺盛な先はたくさんあります。特別養護老人ホームとか、福祉関係、ケアサービス、デイサービス、保育、産業廃棄物、リサイクル、駅前マンション、こんなものがたくさんあるのですけれども、これにほとんどの金融機関が貸さないということであり、今金融機関から金が借りられるところはまず珍しいと言ってもいいかと思います。

 一つ申し上げます。産業廃棄物のプラント法ができ上がりました。当金庫で四十五億円の資金を投入いたしまして、開業を十日前にいたしました。開業を見届けてから中小企業金融公庫が金を貸すと言ってきたということでありまして、そこまでいって開業ができたら何の心配もないわけでありますが、政府系金融機関が必要がないというのはそんなところにもあるのではなかろうかと思います。

 もう一つは、時価会計であります。今なぜこんな時期に時価会計をするのかということであります。不良債権は金融機関の経営者の責任でありますが、これはかなり進んで整理ができております、大きな銀行は別といたしまして。しかしながら、自己資本比率が下がると、時価会計というのは有価証券の値下がりに大きな影響を受けているということで、こんな非常時にやられたら大変であるということであります。

 もう一つは、ペイオフ解禁についてであります。きょうも日経新聞にペイオフ延期という記事と、それから絶対に死守するという記事と両方出ておりますが、ペイオフというのはどういうことかといったらば、これは預金が流出をしてしまうわけであります。

 いわゆる郵便局の預け入れについて問題があります。これは何かといったら、その他のただし書きがありまして、郵便貯金法では法人団体無制限になっております。国、地方公共団体、信用保証協会、宗教法人、学校法人、社団法人、財団法人、社会福祉法人、商工会議所、国家公務員共済組合、健康保険組合、厚生年金等々二百の団体の預金は、一千万円を超えてもペイオフの対象にならない、こういう不公平な状態にあって、そして民間金融機関だけペイオフを来年の四月一日から実施するということは、これはいわゆる自爆に等しい、こんなふうに思います。ぜひ、この辺については一考をお願いいたしたい、こんなふうに思っております。

 時価会計をこの際やるというのも、これまたおかしな話であります。よくなってから、あるいは二年後、三年後、いわゆる完全に不良債権の処理ができた時点でいわゆる時価会計、それから、それに伴いまして土地の税制、それから有価証券取引に関する諸税制、これを改正してから時価会計に突入すべきだと思っております。

 時間がありませんので、最後に申し上げます。

 当信用金庫を初めとしまして、中小零細専門金融機関、こういうところは、貸し出し当初から要注意債権の先であります。金融検査は、ソニーとかホンダとかと中小零細企業も同じスタンスでこの検査をしていくということであります。預金がこのところ若干減りつつあります。当信用金庫は九千億円の預金がありますが、仮にペイオフを実施されますると、公金、団体預金等が減りまして、来年の三月末では約四百億円の預金が減少するという予測に立ってシミュレーションを行い、そして今それの対応を進めているところであります。

 最後に申し上げます。当信用金庫は、住宅ローンを二・五%、三十五年、いわゆる固定金利で実施をいたしました。合計二百億円を限度としているのでありますが、ほとんどなくなりました。これはどういうことかといったら、住宅金融公庫がこの世の中からなくなると、小泉総理大臣がそんなようなことを発言しているのを先取りした形であります。しかしながら、お客様は、この住宅ローンに殺到している、こういうような現状を申し上げます。

 そして最後は、役割、人格の働きということで私は一生懸命やっていきたいと思います。万が一には、自分の地位や命を犠牲にしてもお客様や従業員を守る、こういう姿勢を貫いて今日の経営に当たっていることを皆様に申し上げまして、時間が参りました、終わりたいと思います。

 いろいろお聞き取りをいただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、都村参考人にお願いいたします。

都村参考人 先生方、おはようございます。

 本日は、発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。限られた時間でございますので、ポイントを絞って意見を申し述べさせていただきたいと存じます。

 私は、全国商工会連合会の理事をいたしております。あわせまして、四国の香川県の商工会連合会会長を二十年間ほど務めております。また、小さな会社ですが、八十名ほどの従業員とともに体育器具とか公園施設等を製造いたしております年商約十三億程度の中小企業の経営者でもございます。

 中小企業を論じますときに、今まで何年もの長い間、いつもいつも、中小企業を取り巻く環境は極めて厳しいものがあります、こういう言葉が言われてまいりました。厳しいという言葉は、まるで中小企業のまくら言葉のように使われてまいりましたけれども、私は、今日ほど本当に文字どおり、厳しい現実を経験したことはかつてありません。

 私の地元香川県におきましても、販売不振等による不況型倒産が相次いでいます。当分この状態に歯どめをかけられそうにもありません。私の企業も御多分に漏れず、この不況下で対前年比売り上げが二割減少している状況にあります。新製品の開発やベンチャー企業と提携をして共同研究をしたり、新しい提案型、創造型の企業として社会に貢献をし、生き残りを従業員と一体となって懸命に今図っているところであります。

 今回直面している景気の状況は、従来の、オイルショックその他の不況時と大きく違う点が三つあると思います。

 一つは、先の見通しが全く見えないということであります。二つ目は、サービス業のみならず、製造業を含めたあらゆる業種全般を巻き込んでいるということであると思います。三つ目は、私ども地方の中小企業にもグローバル化の波が大いに押し寄せているということであります。

 特に本日は、中小企業が直面している金融問題と経営の実態について、所見及び要望を数点申し上げたいと思います。

 まず最初に、金融、特に資金繰りについてであります。

 中小企業の倒産、廃業が相次いでいますが、やむなく倒産に追い込まれる状況の大きな原因は、金融、特に資金繰りにあります。放漫経営によるものは別といたしまして、私たち中小企業は、一年ごとの利益計画などの目標は達成できたとしても、毎月の資金繰りに四苦八苦しているのが現状であります。一カ月でも資金がショートすれば、即倒産という事態に直面します。極端に言えば、一年、十二カ月のうちで資金繰りで十一勝一敗であったとしても、銀行の融資がとまれば倒産となる事態を御理解いただきたいと思います。

 また、銀行から設備投資資金の融資を受けた場合の返済は、法定減価償却分以上の返済をさせられているのが通例であります。これが運転資金などの資金繰りを逼迫させているのが実態であると思います。

 さらに、銀行借り入れで土地を購入した場合には、全額利益から返済しなければならず、償却資産以上に資金繰りを逼迫させております。

 できますれば、設備投資資金の返済については、法定減価償却額以内とするなど、中小企業の実態に即した貸し付け条件にしていただき、また、土地に係る融資の返済についても、資金繰りに支障を来すことのないような条件の配慮をしていただきたい、このように思っています。

 いずれにいたしましても、中小企業は資本市場からの直接調達はなく、ほとんどが銀行からの間接金融であります。金融機関への依存度が高い中小企業は、その生死は金融機関が握っていると言っても過言ではありません。

 次に申し上げたいのは、銀行における担保の評価の問題についてであります。

 私どもの地方でも地価はかなり下落をしておりますが、概して大都市近郊の地価の下落ほど極端に下落しているわけではありません。しかし、銀行の担保としての土地の評価は、バブル期には時価の一〇〇%の評価をしてくれておりましたけれども、現在では、不安材料もあり、平均評価率は時価の六〇%程度となっております。これは株式を担保にした場合も同様であります。

 したがいまして、例えば、バブル期に一億円の評価の土地担保で一億円の借り入れをしておりましたものが、地価が仮に二割下落をしたとして八千万円となりますけれども、その六〇%の評価率ですから、評価額は四千八百万円となります。その約一億円の半分程度を担保増または返済等を求められているわけであります。土地の下落は仕方がないとしても、評価率の改善をしていただきたいと要望させていただきたいと思います。

 以上のような状況のもとで、今の金融問題を解決するためには、セーフティーネットの充実強化が非常に大事なことであり、政府系の金融機関と、また信用保証協会のフル活動、フル稼働を多くの中小企業は望んでいると思います。

 金融情勢が厳しいからこそ、逆に政府系金融機関の役割が増大しているのであり、政府系金融機関の存続はもちろん、貸し付け条件の大幅な緩和と信用保証協会の保証料の引き下げを要望させていただきたいと思います。借り手側とすれば、借入金の金利が一%ないし二%に対して約一%の保証料は大きな負担となっている実態を御理解いただきたいと思います。

 次に、借り手側といたしまして、地域の中小金融機関、特に信用金庫、信用組合等を見た場合に、金融庁の検査マニュアルでは、検査では規模や特性を十分に踏まえ、機械的、画一的な運用は行わない、こういうふうになっておりますが、信用金庫、信用組合からの話では、機械的、画一的な検査になっているようなことも漏れ聞いております。

 株式など、保有する有価証券の時価会計の導入とともに、これらが金融機関の経営に大きな影響を与えた場合には、即中小企業にはね返ってまいると思います。既に一部に貸し渋りが見られるのも、厳しい検査の影響が及んでいるのだと思います。金融機関の実情に応じた検査や会計処理の運用を借り手側として望むものであります。

 次に、ペイオフの解禁の延期と個人保証制度についてであります。

 ペイオフについては、私ども地方においても、具体的に中小金融機関において資金移動が出始めておりますが、現在の非常時においては、金融機関のみならず、地域経済全体に及ぼす影響が極めて大きく、切に延期を望むものであります。

 企業債務の個人保証について申し上げます。

 私ども経営者としては、自分の企業に責任を持つことは当然のことであります。大企業と違って所有と経営が分離していない中小企業の場合には、企業債務に個人保証を要求されることはやむを得ないと思っておりますが、現在行われている経営者の連帯保証は、家族のすべてを巻き込み、会社法にうたわれている有限責任とは違って、無限責任と言っていいと思います。経営者は、不幸にして倒産の場合、身ぐるみはがされ、基本的な生活権すら侵されるものであり、やはり行き過ぎと言わざるを得ないと私は思います。このような、経営者の再起を妨げ、起業、創業をおくらせる要因にもなってきますので、最低限の一定の個人財産の確保がされまして、再度挑戦する機会のある仕組みに変えていくべきでないか、このように考えております。

 最後に、過度に物的担保、人的担保に依存をした金融からの脱却へ向けまして、売掛金債権の担保融資制度の創設が重要であると思います。

 厳しい金融環境でありますので、中小企業にとりましては、資金調達手段が多ければ多いほど好ましいことであり、大企業などでは支払い手形の発行をしないような方法を検討されているやに聞きます。本制度の創設は、もろ手を挙げて賛成であり、大変ありがたいことだと思っております。

 ただ、この制度の創設に当たりましては、ぜひ利用者の立場に立った、使いやすい制度にしていただくことを強く要望いたしたいと思います。率直に申しまして、簡単、迅速、低コストという仕組みと、相手方取引先が本制度を利用することについて余計な不安を持つことのないような本制度の説明、PRをお願いしたいと存ずる次第でございます。

 以上、ふだん考えておりますことを申し上げましたが、今は日本経済の非常時であるという認識の上に立たれまして、日本経済の九九%を占める中小企業の置かれた厳しい環境を御理解賜り、委員の皆様方初め政府の特段の御支援をお願い申し上げます。

 委員の先生方におかれましては、日本のために御活躍を心から御祈念申し上げまして、意見の陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、鯉江参考人にお願いいたします。

鯉江参考人 ただいま御紹介にあずかりました全国商店街振興組合連合会の副理事長並びに三重県商店街振興組合連合会の理事長を務めております鯉江盈でございます。三重県津市の中心部におきまして、私は、ビルあるいはレストラン業等々を経営いたしております。

 先生方には、平素何かと商店街、中小小売商業の振興のために御支援、御協力を賜り、まことにありがたく、深くお礼を申し上げる次第でございます。また、本日は、私ども中小小売商業者にこのような発言の機会をお与えくださいまして、まことにありがとうございます。あわせて厚くお礼を申し上げます。

 なお、私ども商店街振興組合は、昭和三十七年に制定されました商店街振興組合法に基づく商店街の法人組織でございます。また、商店街の組合員が共同して商店街のハード整備やソフト事業を実施する、いわば組織そのものが町づくり組織でございます。全国商店街振興組合連合会傘下の組合数は二千二百、会員組合員は十四万二千人でございます。

 さて、先生方御高承のとおり、商店街は、私ども商業者の懸命な努力にもかかわりませず、長期化する不況に加えまして、郊外型大型店や低価格専門店等の熾烈な競争、市街地大型店の撤退、中心市街地の空洞化、さらには同時多発テロや狂牛病問題が追い打ちをかけ、極めて困難な状況にございます。また、金融機関の不良債権処理の加速等による貸し出し姿勢の萎縮や地価の下落に伴う担保価値の下落等を要因に、金融調達もますます厳しくなっておる現状でございます。

 平成十一年度商業統計速報によりますと、平成六年から平成十一年までの五年間に、小売業全体の商店数は中小小売店を中心におおむね九万店減少し、百四十万店となっております。減少率は六・二%であり、これは中小小売商業者の経営環境の厳しさを如実に示しておると言えます。

 また、中小企業庁の平成十二年度商店街実態調査によりますと、商店街への来街者は、五年前と比較いたしまして、来街者が少なくなったとの回答が全体の八〇%を占め、多くなったとする回答はわずかに五%でございます。商店街における空き店舗率も、平成十二年度には八・五三%と平成七年度調査時より一・六六%増加し、また、商店街の最近の景況についても、停滞及び衰退しているとの回答が九一・四%を占め、繁栄しているとの回答はわずか二・二%であります。このような数字からも、中小小売商業、商店街の非常に厳しい実態が浮き彫りにされております。

 また、責任の所在がはっきりいたしておりますので、私の地元のことを申し上げますと、三重県の商店街におきましても、郊外大型店の出店等で中心市街地の空洞化が進み、シャッター通りと呼ばれるほど疲弊した商店街が多数ございます。

 例えば、三重県において、桑名市から伊勢市、近鉄沿線の駅前あるいは都心と言われております中心市街地は大型店が続々撤退して、かわって郊外では増床あるいは出店等々、一言で言うとラッシュでございます。

 恐らく三重県の実態は、全国の実態と必ず同じだと思うのですね。大変申しづらいのですけれども、言うなれば、中心市街地の列島メルトダウンがやはり三重県において象徴されるということを私は申し上げたいと思います。

 また、当丸之内商店街においても、Dの撤退に続きましてJの撤退という状況で、中心市街地は、本当に懸命の努力にもかかわらず、最初は共存共栄して一緒にやっていきましょうやというのが、都市型に逆行して都市化はどんどん進んでいるという状況でございまして、町そのものが大変危機的状況にございます。

 こうした中で、私ども商店街は、個店、商店街、町が再び元気を取り戻すように、地域住民や行政等と密接に連携し懸命の努力をしているところでございます。

 私は、商店街を元気にするキーワードは、一つは個店の魅力、もう一つは地域との連携ではないかと思っております。

 魅力のある個店は町、商店街の活力、発展の源泉であり、魅力ある個店なくして町や商店街のにぎわい、楽しさ、ひいては地域住民の暮らしの向上はあり得ないと考えております。

 また、商店街が地域の住民組織やNPOと連携し、商店街を舞台にさまざまな活動を行うことにより、地域住民の信頼を得、人々が集うことにより町や商店街が元気になってまいります。

 個店の魅力づくりに取り組んでいる商店街に、品川区の中延商店街がございます。この商店街では、以前すべての個店に経営コンサルタントが評点した通信簿を配りました。それぞれの個店に自覚と改善意欲を持ってもらうためでございます。また、通信簿の配付後に、経営指導を受けたい希望店を募りまして、毎年五店舗ずつモデル商店として組合経費で指導を行いました。その結果、指導を受けたお店は売り上げが向上したということでございます。

 一方、地域との連携に関しては、再び私の地元の話となりますけれども、三重県津市におきましては、TMO株式会社まちづくり津夢時風や丸之内商店街振興組合にその事例がございますので、簡単に御紹介をさせていただきます。

 津市においては、TMO構想の推進役といたしまして、平成十二年三月に株式会社まちづくり津夢時風を第三セクターで立ち上げました。そして町づくりに取り組んでおります。

 皆様のお手元に御案内のとおり、平成十七年の春には中部国際空港が開港することになっておりますが、その三重県側の海上アクセスの拠点として津市が名乗りを挙げ、市民一丸となって開港に努力をいたしております。津市の中心市街地はその港湾にほとんど隣接しておりまして、そういった意味でアクセス道路も、フェニックス通りの愛称で親しまれたすばらしい道路もございます。

 まちづくり津夢時風においては、これらの地の利を生かした町づくりを市民一体で行うために、津夢時風のパートナーシップを募集し、タウンミーティングを数回開催しております。これは各種のNPOとか任意団体とか同好会とか、そういった方々みんな出ているのです。そして、そういった中で積極的に市民の意見を町づくりに反映することに努めております。言うなれば、これこそ市民がつくる中心市街地の活性化であると自負しておる次第でございます。

 港と道路そして中心市街地、この三つをうまく絡ませた町づくりが市民みずからの手で行えるように導いていく、このような取り組みをやっております。

 先ほども申し上げましたが、中心市街地の活性化には地域との連携は欠かせません。この連携をどのように保っていくかが非常に難しく、また地域商業の、地域中心市街地の将来を占うことになると実は思っております。そういった意味で、津市を中心とした、市民を中心とした活性化への取り組みを、今懸命の努力をしながら、都市の再生に努力を傾注しておるところでございます。

 このほか、その他の地域でも、NPOと連携し、空き店舗を活用し、託児所とかあるいはNPOの活動拠点をつくるとか、あるいはいわゆる観光の案内所をつくるとか、さまざまなケースもございますし、また地元の大学や高校とも連携して町づくりについて一緒に考える等々、近時、地域と商店街が連携し地域活動を行っている事例があります。まさに地域社会のいわゆる一端を担って、ともに地域のいわゆる明るい豊かな未来を築き上げようというような心意気でやっております。

 それでは、商店街の活性化のために今後何が必要かについて、要点を述べたいと思います。

 私はただいま個店の魅力と地域との連携がキーワードと申し上げました。しかし、これだけでは正直言ってまだまだ足りません。まず一つは、TMOの役割、機能の強化、二番目として、町づくり三法の一体的な運用、三つ目として、一元的な土地利用規制の確立等の実現がぜひとも必要であります。

 TMOの強化については、資金、運営面での基盤確立を図り、中心市街地活性化に係る作業を円滑に進めることによりまして、早期に当初の目的を達成しなければなりません。

 また、町づくり三法については、整合性を持った一体的な運用がされることが必要であり、特に、大店立地法の指針にある地域づくり、町づくりへの配慮を生かした厳格な運用がなされることが絶対に必要であると思っております。

 一元的な土地利用規制につきましては、町づくりに地域の意見をより一層反映させるために、早期に都市計画法と農地法、農振法等の関係のあり方を含め、一元的な土地利用規制の実現に向けて検討に入っていただきたいと実は願っております。

 このような大きな柱に加えて、当然のことながら、効果ある景気対策、金融対策を講じていただかなければなりません。

 次に、その景気対策や金融対策等を含め、幾つかお願いをさせていただきたいと思います。

 まず第一に、一刻も早い景気回復の実現でございます。

 我が国経済は、デフレスパイラルが懸念される極めて深刻な状況にございます。これを回避するためには、適切なマクロ経済運営を図る必要がございます。このために、政府におかれましては、特に中小企業が活力ある成長を遂げることができるように、経済状況に十分配慮し、構造改革を推進するとともに、大胆かつ効果ある景気浮揚策を講じていただく必要がございます。特に、適切な補正予算の編成、成立と早期の執行を強く要望いたします。

 二番目は、金融対策の一層の充実でございます。

 景気低迷を背景に中小小売商業者の収益状況は悪化しております。また、地価の下落等、担保力も低下しておりまして、貸し手の金融機関においても、自己査定の厳格化、金融庁による特別検査の実施による不良債権額の増加から、貸倒引当金を積み増しし、また、株価低迷による含み損、この拡大に伴い評価損を計上する等、赤字決算となる銀行も続出することが懸念されております。

 そうした中で、一部銀行においては、自己資本比率維持のため、融資回収の指示をしているとの新聞報道もございます。借り手の信用力の低下並びに貸し手の信用収縮の動きを勘案しますと、中小小売商業者の金融調達環境は非常に厳しい状況となってまいります。

 つきましては、まず第一に、信用保証協会の保証制度の充実と運用に当たっての弾力的な対応を実現していただきますことをお願い申し上げます。

 第二に、政府系金融機関の融資制度の充実強化でございます。

 その関連で、現在、特殊法人改革に当たって政府系中小企業金融機関の見直しが実施されておりますが、同金融機関の金融機能の縮減に強く反対するものでございます。政府及び組合出資により効率的に政策運営をされている商工中金の民営化は行うべきではない、かように思っております。

 第三に、ペイオフの解禁につきましての十分な御議論であります。

 私ども中小小売商業者の多くが取引を行っております地元金融機関である信用金庫、信用組合にペイオフ解禁により預金の流出などの影響が生じるとすれば、地域に重大な影響が生じると憂慮するものでございます。現在の景気状況を勘案いただき、ペイオフ解禁の是非については十分に議論をしていただき、中小小売商業者が金融調達にそごを来すことのないように対応していただきたい、かようにお願いする次第でございます。

 三番目に、個店対策の拡充強化でございます。

 先ほど来申し上げておりますように、元気ある個店とは町、商店街の活力、発展の源泉でございます。中小小売商は顧客に支持される魅力のある店づくりに最大限努力しなければなりません。しかしながら、経営資源の不足する中小小売店の自助努力にはおのずと限界がございます。

 そういうことから、国はその補完と真摯な努力に対して、一、商品力強化等の経営革新への取り組みの支援、二、経営改善のためのアドバイザー派遣、三、創業、業種転換支援等々、きめ細かな個店対策を抜本的に拡充強化していただきたいということをお願い申し上げます。

 最後に、町づくり、商店街対策の一層の充実でございます。

 元気をなくした町、商店街にいま一度活力とにぎわいをもたらすために、国は、商店街等が地域と連携もしくは一体となって取り組むTMO等の事業活動をしやすくする、二番目に、NPO等、地域との連携活動、三番目がコミュニティー施設等集客施設の誘致等々への支援を創設していただきたい。そして、それを強化するとともに、商店街IT対策、商店街等組合強化対策、商店街マネジメント対策等をさらに充実し、骨太の町づくり、商店街対策を確立していただきたいということを切にお願い申し上げます。

 続いて、牛海綿状脳症問題の現状と要望を行います。

 商店街の食肉店、焼き肉店等が甚大な影響を受けております牛海綿状脳症、いわゆるBSE問題に対して、全振連が実施しました影響調査に基づき御報告を申し上げますとともに、抜本的な問題解決策と対象業者への手厚い経営支援についてお願いをさせていただきたいと存じます。

 この調査は、都道府県連合会を通じ、全国の商店街に対し、電話、ファクス等で実態把握を行ったものでございます。実施期間は十月二十五日から三十一日までの一週間、対象先は商店街にある食肉店、焼き肉店、レストラン、牛乳店ほかでございます。回答数は三百七十九店でございます。

 調査回答先全体の対前年同期比の売り上げの減額率は、店全体の売り上げでは、安全宣言前三四・四%減、安全宣言後三一・九%減、うち牛肉関係の売り上げのみでは、安全宣言前では四五・二%減でございます。安全宣言後においても三九・五%減と大幅に減少いたしております。中でも、食肉店、焼き肉店につきましては、現在においても売り上げが半減したままの状態が続いております。

 続きまして、BSE問題に関して困っていることとして挙げられましたのは、まず一つが、売り上げが大幅に減少しており、このままでは店を存続させることができない、二番目に、この売り上げ不振がいつまでも続くのであれば従業員を解雇せざるを得ない、三番目に、売り上げの減少に伴い運転資金が不足し、仕入れ先への支払いができない等、事業縮小、廃業、倒産の危機に直面している業者も少なくございません。憂慮いたしておるところでございます。

 次に、売り上げの減少や困っていることへの対応策についての調査回答では、牛肉は安全である旨のポスターやチラシ等を掲示、配布あるいはお客様に説明しております。それから、牛肉以外の肉の品ぞろえや総菜の充実、牛肉を使わないメニューの追加等を行っております。アメリカ産とオーストラリア産の牛肉のみを扱うことにし、その旨店内に掲示した等々、現状いまだ消費者に牛肉の安全性に対する不安感があるため、不安感を取り除くためのPR、説明や、不安感のない商品へのシフト等に努力している姿が見てとれます。

 BSE問題について、政府は現在、相談窓口の設置、セーフティーネット保証、貸し付けの実施などの対策を講じておられるところでございますが、今申し上げたように、関係者は本問題で大変苦労しております。

 したがいまして、政府におかれましても、一刻も早く国民の懸念を払拭し、安心して牛肉が食べられるような抜本的な対策を講じていただきますようお願いを申し上げます。

 以上、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、多比羅参考人にお願いいたします。

多比羅参考人 ただいま御紹介いただきました弁護士の多比羅でございます。

 私は、現在、日本弁護士連合会の倒産法制検討委員会の委員長をしており、倒産法改正に現在取り組んでおります。また、昨年四月から施行されました民事再生事件につきましては、今までに既に九件に関与しております。

 そういう私の体験から、私は、経営破綻の危機にあります中小企業の再建を容易にする方法として、まず第一に、経営者の個人保証の軽減を図ること、それから第二に、民事再生の申し立てをした会社に対し再建のための資金を融資すること、つまりDIPファイナンスをすることが重要であるというふうに考えております。

 この二点につきまして、私の考えをお話し申し上げたいというふうに思います。これから申し上げますことは私の個人的見解でございまして、日弁連の意見では全くございません。

 きょうお手元に配付申し上げております資料、二つございますが、一つは、「動き出した民事再生法」というようなのが一番上についておりますが、これは本日のテーマに関して私が出版した関係のものから抜粋した資料でございます。もう一つ、A4の横書きの、「中小企業の再建を容易にする施策」と書いた二枚のペーパーがございますが、これがこれからお話し申し上げることの内容の骨子でございます。これに沿ってお話し申し上げたいというふうに思います。

 最初に、保証債務の軽減化についてです。

 個人保証の弊害。中小企業の場合、経営者は金融機関からの借り入れに際して個人保証をしているのが通例です。会社については、民事再生の申し立てをした場合、経営者は、個人責任の個人保証の追求により自分の全財産を失い破産に追い込まれるということを恐れて、無謀な資金繰りを続け、会社財産を食いつぶしながら、あすの支払いができるまで経営を続けている。なかなか民事再生の申し立てをしようとせず、申し立てを決断したときには既に再建の時機を逸しているというケースがよくあります。

 金融機関は、融資に際して個人保証を求め過ぎている嫌いがあるというふうに思います。融資すべてについて、個人保証させるのは行き過ぎではないかというふうに考えます。むしろ、今後のあり方としては、個人保証中心ではなく、リスクを金利でカバーするなどの対応をすべきではないかというふうに思います。

 次に、現状での解決案ですが、会社が倒産した場合、保証した経営者の保証債務をどのようにして私どもは解決しているかお話し申し上げたいと思います。

 実際、最近私のところで本当にあった話でございます。

 最初の事例、これをA社とします。

 不渡りを出したA社について、自己破産の申し立てをいたしました。社長自身については、保証はあったのですが、自己破産の申し立てをせずに、担保に提供しておりました自宅を売却して金融機関の返済に充てました。会社の破産手続は終わって二年近くたったごく最近になりまして、保証した金融機関二社から合計約六億円の保証債務の請求がありました。自宅は売却ですから既に借家で、預金と生命保険合わせて約百五十万円程度の資産があるのみ。六十三歳で、年金とアルバイトで暮らしております。

 このケースにつきまして、私は、近々、残念ではありますが、自己破産の申し立てをしようかというふうに思っているところです。

 二番目のケース、B社とします。

 B社は七年前に倒産しました。私が私的整理で清算いたしました。そのときの弁済率が二五%。金融機関は、保証人がついているんだからという理由で残債を放棄しませんでした。そして最近になって、その金融機関は、残債約三千万円でございますが、債権をバルクセールで売却し、買った会社の債権回収会社から保証人である社長のところに請求が来たわけです。その社長が、私のところへこういう内容証明が来たと持ってこられましたので、私は、七年前の資料を引っ張り出して調べて、会社も保証人である社長ももう資力がない、しかも、七年前の債権でもう消滅時効にかかっているというふうに回答して、支払いを拒絶してあります。

 そして現在は、相手の方であきらめてくれるのをじっと待っているところでございます。

 三番目の事例、これをC社とします。

 C社は、ごく最近、東京地方裁判所に民事再生の申し立てをいたしました。社長は既に自宅を売却して金融機関の返済に回しております。しかし現在、それでもなお金融機関に対する保証債務が約二十億あります。資産としては、預貯金と自動車合わせて数百万の資産があるだけです。そして、社長の奥さん、その奥さんは、ある金融機関、銀行に対して、会社の借り入れ五千万についてだけですけれども個人保証しております。専業主婦です。聞きましたけれども、預金は一切ありません。全くの無資産です。

 そこで私は、保証した金融機関に対して交渉しました。その金融機関は、社長夫婦がもう資産がないことはわかっている、しかし、債権は放棄できない、破産してもらえるならそれでいいけれども、それができないなら、不良債権の処理のために社長夫婦に対する保証債権をバルクセールで売却する、いずれ買った方から請求が来るでしょうから、そのときになって先生の方で資産がないからといって交渉したらよろしいんじゃないでしょうかと。

 社長夫婦は、もう自己破産を覚悟しております。自己破産するしか方法がないのでありましょうか。

 ことしの四月に施行された個人再生手続というのがございます。これを使えないのか。しかし、この手続、この対象は、債務総額が三千万以下の人でございます。中小企業の保証人は、保証債務が三千万を超える人ばかりでございます。したがって、せっかくつくっていただきました個人再生手続、これでは救済できません。

 最近、私は、個人保証人を救済するために、自己破産の申し立てではなく、会社が民事再生の申し立てをすると同時に、保証しております経営者個人についても一緒に民事再生の申し立てをするということを提唱し、実践を始めたところでございます。

 会社と一緒に申し立てですから、個人の負担も軽いというわけでございまして、先ほどの社長夫婦については、私の方で本日、民事再生の申し立てをする予定であります。

 個人保証再生手続の立法化、これについてお話ししたいと思います。

 保証した経営者について通常の民事再生の申し立てをするというのは苦肉の策でございます。保証債務の軽減のために正面から取り組んだ立法をしていただきたいというふうに思います。

 私は、それが個人保証再生手続の創設だというふうに思います。消費者保護のために個人再生手続が創設されたわけでございますから、そこで、経営者など個人である保証人が、破産に至ることなく、個人再生手続と類似の手続によって再建を容易にする手続を立法すべきだというふうに思います。

 私の考える具体的な内容は、次のとおりでございます。

 一番目に、会社について破産ですとか民事再生等の法的手続に入っており、保証債務について請求されているということ。

 二番目に、保証債務が負債総額の五〇%を超える債務を負っている個人であること。保証債務の少ない人や保証人が法人である場合は除きます。

 三番目に、破産したと仮定した場合の予想配当総額または三百万のいずれか高い方の金額を最低弁済額として支払う。そして、その金額を三年以内に分割で支払い、残りは免除してもらうという計画案を提出するということです。なぜ三百万を一つの基準にしたか。これは、個人再生手続における一千五百万以上の負債を負っている人の最低弁済額を参考にいたしました。

 そして四番目に、そのような計画案を債権者の決議にかけて、過半数の反対がなければこれは成立したものだというふうに取り扱っていただく。これも個人再生手続と同じでございます。

 会社が民事再生等の申し立てをした場合に、保証人の保証債務を軽減する制度をもしつくっていただけました場合には、恐らく、保証人となっている経営者はその手続を使って早く会社を再建しようということで、再建の機運も高まって、再建できる企業もふえてくるのではないかというふうに思います。

 次に、もう一つの、DIPファイナンスの重要性についてお話し申し上げたいというふうに思います。

 法的再建手続の申し立てをした会社というのは、社会的に信用を失っておりまして、金融機関から融資を得られにくい状況になっております。しかし、資金調達ができない場合には、どうしても再建のスピードが遅くなって再建に長期間を要する。

 私が申し立てをして再建計画を成立させたある会社の場合、成立した直後に各方面から出店してほしいという要請がありました。そこに出店できるならばかなりの利益を上げられるということが予想されたんですけれども、法的手続の再建中あるいは一たん倒産した会社ということで、新規の設備投資に要する資金をどこの金融機関からも融資してもらえずに、涙をのんだことがございます。

 DIPファイナンスにつきましては、日本政策投資銀行がことしの四月から、商工中金が七月から、それぞれ開始いたしました。しかし、伺うところによりますと、民事再生申し立てをした会社そのものに対する融資は、現在のところ、日本政策投資銀行が三件、商工中金も申し立てした会社そのものに対する融資は一件だということでございます。

 民事再生の申し立てをした会社というのは、去年の四月からことしの九月までに約一千三百社ございます。全部の会社がDIPファイナンスを必要としているものではございませんが、それにしても融資の実施件数は少な過ぎるというふうに思います。もっと積極的に融資を行っていただきたいというふうに思います。

 なお、日本政策投資銀行は、申し立て後の運転資金を融資するほかに、再建計画案が成立後の運転資金あるいは設備投資資金の融資も行うことになっておりますけれども、商工中金は、どうやら申し立て後の運転資金の融資のみで、計画成立後の融資は予定していないようでございます。

 中小企業に対する計画成立後の長期運転資金及び設備投資資金の融資は、中小企業金融公庫が実施することを検討中というふうに聞いております。これは、どうか議員の皆様方のお力でぜひ実現していただきたいというふうに思います。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩と申します。

 国会議員の中にもいろいろな議員がおりまして、私などは銀行に行って頭を下げてお金を借りたことのない人間ですから、いわゆる体一つで生きてきた人間ですので、そういう意味では、いわゆる中小企業、零細企業の皆さん方の厳しさや、金融機関の皆様方の地域にかける情熱というものにつきましてはまだまだ認識不足のところもありますので、きょうは、我々に御指導賜ると同時に、中小企業庁や経済産業省の方々も来ておりますので、まだまだ言い足りなかった部分などのお話を伺いたいと思います。

 何よりも、けさの日経を初め各紙の社説にも出ておりましたペイオフの解禁、我が党の麻生政調会長などは延期を求めての論陣を張っておられますが、服部参考人、都村参考人、口をそろえて、今現状では、非常に厳しい中で、反対の方の論陣を張っておられましたけれども、社説などには、何だ、日本の金融機関はそんな気力も体力もないのかというふうな挑発的な文言等もありましたよね。このペイオフの解禁に向けての、まさしく服部参考人、都村参考人の現場からのお声というものを、ぜひもう一度お聞かせ願いたいと思います。

 と同時に、延長しろというのであるならば、いつ、どういう状況になったら解禁してもよいというふうなお考えもあるのかどうか、こういったところもぜひお聞かせいただきたいと思います。お願いいたします。

    〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕

服部参考人 私の方からお配りをした資料の三をちょっと見ていただけるとありがたいのでございますが、この資料三には、関東甲信地区の信用金庫、百一ありますが、これの預金と貸し出しの比率が出ております。

 預金はわずかながら一・二五%一年間で伸びておりますが、貸し出しは五%のマイナスであります。預金と貸し出しの割合は四・一六%のマイナスになっております。

 これはどうしてマイナスになっているかといったらば、やはりペイオフを解禁すれば、一千万円以上のものについては、一千万を限度といたしまして破綻をした先からは払い戻しが不可能になるということから、安全なところということで、もう資金の流動、流出が始まっているというのが明らかにここで出ております。

 これがどこに行っているかというと、余り具体的に言ってはいけないと思いますけれども、まず郵便局と某都市銀行であります。いいから具体的に申し上げていいと思いますが、東京三菱銀行一点に絞られてしまっているということであります。

 先ほど私申し上げましたが、郵便局は二百に上る例外が設けられておりますので、いわゆる地公体を中心といたしましてすべて郵便局が安全だ、こういうことになってくるかと思います。郵便局は預金保険にも払っておりません。ダイレクトメールはただであります。それから、いわゆる特定郵便局には一千万程度の交際費等も出ていて、領収書も必要なし。それから、税務調査も入らない。

 こういうような、公平にできていないところでペイオフを開始したら資金が偏ってしまうだろう、こういうことであります。

 そこで、それではどういう時期にペイオフを解除したらいいか。これはやはり景気優先でありまして、景気が回復傾向になる、あるいは、政府は、三年から五年かけていわゆる不良債権を処理する、こういうことを言っておりますので、少なくても三年ぐらいの凍結は必要、その間に郵便貯金法の改定をしていただく、こんなようなところで、本当にいわゆる公正で、そして安全で、それから地域から偏った都市に預金が流出をしないようにすべきだと私は思っております。それでないと、それに対応しては、先ほど申し上げたとおり、貸し出しを一切しない、それで自分を守っていくしか手がないわけであります。

 以上、お答えを申し上げました。

都村参考人 ペイオフの解禁について御質問がございました。

 私は、基本的には、この景気の悪いとき、不況というものを本当に非常時ととらえていただきたいと思っています。従来までの、ここまで来れば景気が回復するという見通しが見えた場合にはいいんですけれども、今回の場合は本当に、非常時としてとらえた場合に、このペイオフが行われますと地域の経済に非常な影響があると思います。

 今、貸し手側の参考人の方からお話がございましたけれども、もう貸さない、こういうことになってきますと、我々借り手側としますと、貸してくださいと言っても貸さないと言われる、それが地域経済の崩壊につながる、このように思っています。

 いつまでかということになりますと、これはやはり先行きが若干でも見えたときということで、お答えをさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

馳委員 続きまして、服部参考人にお伺いしたいと思います。

 事前にいただきました資料の中に、服部参考人は以前から、地域に対するいろいろな支援というか、地域の取りまとめこそ信金の生き残り策であるという観点から、メセナ活動にも積極的に取り組んでおられるようでありますが、もともとそういう文化活動に対してバックアップをするということを一つの使命として実行なされてきた背景にはどういう考えがあるのかということを、改めてお聞きしたいと思います。

 というのは、私もイタリアの方に行きましたときに、ちょうどローマのコロセウムの改修、これはローマ銀行がやっていたんですね、メセナ活動で。そして、ローマ銀行が、二十一世紀にコロセウムをよみがえらせますという看板をでかでかと掲げて、宣伝なのかな、いや、違うだろうな、これはやはり一つの哲学だろうなという観点からお聞きいたしました。

 こういう地域における文化活動への支援、これはある意味では鯉江参考人などが訴えておられる、我が商店街こそ地域を活性化させていく拠点となるんだ、この考え方をしっかりと政治家の皆さんも認識してほしい、こういった部分ともつながると思うんですが、それなりの哲学といったものをぜひお聞かせいただきたいと思います。

服部参考人 御質問に答えられるかどうかよくわかりませんが、湘南信金に名前を変えてから十三年がたっております。その時点で、どういう地域の金融機関になりたいかということを決めたわけであります。

 当時はバブル時期でございましたので、いわゆる一%クラブだなんていいまして、利益の一%を出してそして還元をしようというのを大手がさんざんやりました。特にゴルフなんかの冠あるいはマラソンの冠行事、こんなようなことを盛んにやっておりましたが、今は一つもなくなってしまったと言っていい、こんなふうに思います。

 私は、地域の活性化というのは、文化とかスポーツとか福祉とか、これが一番大事であると。特に、私のところは都市銀行じゃありません、世界を相手にしている金融機関ではなくて、ごく限られた湘南地域の金融機関でありますから、そこに文化とか福祉だとかスポーツが根づけば、これはお客様と一体感が一層できまして、そして本当に、自分のところの金融機関であると。それから、文化活動を通しまして、いわゆるグレードが上がります、知識も上がります、いいお客様が参ります、こういうことでございます。

 例えば、亡くなりましたけれども、団伊玖磨先生にお願いをして、もう七回も八回も演奏会をやっておりました。これはどうしてかといったら、もう三年目、四年目になりましたら服装まで違ってきた、これはそういうような文化が地域の繁栄に寄与するということであります。

 私のところは、いわゆる利益の還元はどういう方法かというと、四分法をとっております。まず会社に蓄積、いわゆる従業員に配付する、それから利用者に配当として還元をする、あるいは金利を安くする、そのほかに文化活動を通じて地域の皆様に利益の還元をしていきたい、こういうことで今日まで続けております。大変厳しい状況でありますけれども、自費でも続けていくつもりでおります。

 以上、申し上げました。

馳委員 次に、これまた我が党内でも議論の分かれているところでありますが、政府系金融機関の整理統合、これは特殊法人改革の中で、今月末を目途に大きな議論になっております。先ほど都村参考人は、商工中金の存続等を強く訴えておられました。

 まず、服部参考人にお伺いいたします。住宅金融公庫が廃止あるいは民営化等をされれば、十分それに対抗してやっていけるだけの商品開発はもう既にしている、需要もあると。逆に、都村参考人にお伺いしたいのですが、地元にある信金で、いろいろ整理統合の進んでいる話もありますが、十分対応できるんじゃないんですか。そういう意味でいえば、政府系金融機関をあがめ奉って、そればかりに頼るというふうな経営方針というか考え方というのも、これも転換期に来ているのではないかなと思います。

 ちょっと立場を異にするお二人に、この点についての見解を改めてお聞きしたいと思います。

服部参考人 お答えを申し上げます。

 最近の政府系金融機関の融資先は、破綻をした先で十分に担保があるところに融資を積極的に進めているということでありまして、まさにハゲタカの存在でありまして、外資系の金融機関と全く同じような行動を行っております。これは政府系金融機関がやる仕事ではないと私は思っております。

 そのほかに、先ほども申し上げましたように、きちんと私のところで四十五億円を投資いたしまして、そしてリサイクルの、ダイオキシンが出ない焼却灰を処理する工場ができ上がって稼働を始めましたらば、中小企業金融公庫が、今まで断っていた融資を、その仲間に入れろと言ってきました。

 安全なときに政府系の金融機関が出てくる、こんなばかな話はありませんで、逆であります。安全なときは民間金融機関が出てくるので、危険を冒してやるのが政府系金融機関ではなかろうか、こんなふうに思っております。

 住宅ローンにつきましてもそうであります。今住宅金融公庫は十年間二・五%の金利、十年を過ぎますると、いわゆる固定金利が外れまして、市場に連動して金利が上がるような形になっております。

 政府が言っているのはおかしいのであります。子孫にツケを残さずと言って、三十五年の住宅ローンをやっております。三十五年かかって住宅ローンを返済するのに、子孫に借金を残さないで返せますか。私なんか生きているわけないんですよ、三十五年先は。ばかなことを言っている。やはり子孫に借金を残した方が子供も孫も一生懸命働く、私はそんなふうに思っております。

 先生のようにスポーツマン、これは何といったって体を張ってやっていく、それから危険を冒してもやっていく、みんなのためにだったら命も落とす、こういうようなことを本当は政府系金融機関がやらなければいけないのであります。

 反論をされると思いますけれども、政府系金融機関を存続させろというのは甘ったれでございます。自力で、そしていわゆる自分のところと相性の合った金融機関とずっとおつき合いをしていくというのが経営者の最たるものである、こんなふうに思いますので、私、小泉総理を応援するわけじゃないですけれども、政府系金融機関で必要なものはごくわずかしかない、こんなふうに承知をしております。

 以上でございます。

馳委員 最後に、都村参考人。

都村参考人 私は、常々、金融問題につきましてこういう考えを持っておるのです。

 借り手側と貸し手側というのがあります。借り手側の私どもとしては、企業とかそういったものを見る見方として、必ずフローの面を中心に見ます。売り上げまたは販売をどうしていくかというような形で見ます。そして、貸し手側の方は、その会社のストックの部分を、よく担保とかいろいろな形で見るわけであります。そこに必ず摩擦が起こったり、問題が起こったりします。その摩擦とか問題とかを本当に解決していくのがやはり政府の施策であり、信用保証協会であり、またその中の一つとして政府系金融機関の存在というものがあると私は思います。

 したがいまして、そういう意味からいきますと、やはりこれは立場が違いますから、貸し手側は、必ず会社全体を見ましたときにストックを中心に見るわけでありまして、私ども経営者としては、その会社をどう流していくかというフローの面を見るわけであります。これは当然の立場の違いでありますから、その立場から出てくる問題点の解決をしていただくのが政府の施策であり、保証協会であり、政府系金融機関である。そういうことで、私は存続を主張させていただきたい、このように思っております。

 以上でございます。

馳委員 次の方に譲ります。ありがとうございました。

中山(成)委員長代理 中津川博郷君。

中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。

 中小企業対策の方のワーキングチームの事務局長をやっておりまして、きょうの四人の参考人の皆さんたちのお話、私も常日ごろ考えていること、また党を挙げて今やっていることに非常に具体的に参考になりました。何せ質問時間が限られております。本来多くの質問をしたいのですが、十五分でありますので、少し簡潔に、ポイントだけ質問させてもらいたいと思います。

 個人保証の問題が出てまいりましたが、日本独特の問題、融資の制度でありまして、お金を借りるときは保証人をつけろというのは、もう親から言われて、日本の慣行のようなものなのですが、実はこれが大きな弊害であった。

 アメリカの識者から、何で日本は会社が倒産したぐらいで自殺するんだという質問をされるわけですが、日本というのは、担保至上主義、担保をとられて、そして社長個人の保証人もとられて、かみさんの保証人もとられて、そして足らなかったら親戚、仲間の保証人もとられる、だから会社が倒産するということはもう再起不能、路頭に迷うということである、こういうふうになっているんだと言うと、日本というのは何でそんな野蛮な国なんだ、何でそれをずっとやっているんだ、こんなふうに言われるわけであります。アメリカはこういうのはないんですね。

 ですから、アメリカの経済の発展というのは、IT産業の大きな発展とそれから金融システムというシステムが違う。だから、一回や二回人生に失敗しても、倒産しても、幾らでもチャレンジがきく社会なんですよ。日本の場合は、一回倒産したりあるいは挫折する、失敗すると立ち上がれないのですね。これがやはり大きな問題じゃないかなと常日ごろ考えているわけなんです。

 アメリカの企業の大体半分以上はもう一回倒産を経験している、その人たちがまた頑張っているんだというようなことも聞いているわけでありますが、そんな中の一番のガンがこの個人保証制度だと思うのですね。

 それで、多比羅参考人、法律の専門家の立場できょうは新しい提案もいただきました。早速党で検討したいと思うのですが、今、実は党内で、経済産業委員会のグループで、我々の場合はもう一歩進んで、個人保証制度を廃止する立法化、このワーキングチームをつくっているのです。今精力的にやっておりまして、いろいろ当局とも相談しながらやっているのですが、法律家の立場でその問題点、それを実現するためにお知恵、御意見を賜りたいなというのが一点であります。

 それからもう一点は、きょう、個人保証再生手続の立法化という中で、会社が倒産して、会社の民事再生法と同時にやはり個人も再生する、これはなるほどなと思ったのですが、ここで四点ほど提案されておりまして、数字が出ておりますね。

 一番から四番まで提案で、二番目に、保証債務が債務総額の五〇%を超える云々、こういうふうに書いてありますね、五〇%。それから三番目に、破産したと仮定した場合の予想配当総額、または三百万円のいずれか高い方の金額を云々と書いてありますね、この三百万。その下にまた三年というのもあります。それから四番目には、時間がないから言いませんが、二分の一を超えないというようなことがありますが、この数字の根拠、これをちょっとお聞きしたい、こういうふうに思っています。

多比羅参考人 多比羅でございます。

 二点御質問があったかと思います。

 個人保証をそもそもなくすことについてどう思うかというのが一点あったかと思います。その点につきましては、個人保証について弊害を申し上げておりますが、中小企業における融資の際に個人保証を全く廃止するのがいいかどうか、これについては疑問を持っております。

 やはり中小企業の場合には、個人の資産と会社の資産がなかなか峻別しにくいということが一つと、全く個人保証をなくしますと、経営者が役員報酬の形で会社の財産を個人の方に移行してしまう、それによって、借り入れた会社の債務の弁済原資がなくなるのではないか。それから、やはり責任を持ってビジネスを行うという点から考えると、全くなくすのはどうかなというのが私の意見です。全く排除するということについては、私はどちらかというと否定的でございます。

 二番目の点の、私の提案申し上げました個人保証人に対する再生手続の創設のところでいろいろな数字を出しております。この数字はすべて、昨年の秋、国会でつくっていただきました個人再生手続、これは消費者破産が十万件をとうとう突破してしまった関係から、そのカード破産、消費者破産をなくすためにつくっていただいた法律、そしてことしの四月に施行された法律でございますが、それを参考にしております。そこの数字をもとにしております。その延長線で考えているということを御報告申し上げたいというふうに思います。

 以上でございます。

中津川委員 次に、都村参考人、それから鯉江参考人にお聞きしたいのであります。

 今、金融機関、銀行初めもう自分の頭のハエを追えない状況だ。特に金融審査、特別審査、これが今始まって、もうひいひい言っている。それで、銀行の方も本当にもうこの数字をしっかり出さなきゃいかぬということで、ここのところに来て、私も中小企業の経営者でありますが、仲間たちの、貸し渋りがもうますますひどくなっている、今までは自然にいったんだけれども、もう全く貸さなくなったという非常に大きな声を聞いているわけですね。

 そこで、唯一の救いが政府系の金融機関なんだというようなファクスなりいろいろな声が、ここのところに来て声高に叫ばれているんですね。中小企業金融公庫、国金、商工中金ですね。政府の方も、そこのところは存続というような議論も今出ているとは聞いております。

 現場でいらっしゃるお二方に、こことにかく一週間ぐらいだと思います、そんなような中で、政府系金融機関、存続をしてほしいというような声、あるいはもうちょっと広げて、今の銀行に対して、これだけ対応がここのところに来て厳しくなったというような具体的な事例がもしございましたら、お聞きしたいと思っております。

都村参考人 先ほども自民党の馳議員さんにお答え申し上げたところでございますけれども、今本当に、金融機関全体といたしまして、金融機関自体も大変な時期に入っているのは、私よくわかりますけれども、それが借り手側の方にどんどんと影響してきておる事態のときに、これはやはり、私先ほど申し上げましたけれども、本当に借り手側としても非常時とどうぞ考えてください、非常時にはやはり、駆け込み寺といいますか、政府系金融機関また保証協会、今はぜひ存続をしてください、そういうことを常に申し上げておるわけでありまして、ぜひひとつ、そういったことについて御考慮賜りたい、このように思っております。

 どうぞよろしくお願いします。

鯉江参考人 当面、商店街並びに個人の中小企業が困っておりますのは、まずは、一つは資産デフレによる担保価値の減少ですね。これによって、今まで一億の資金があって一億の借金をしておった、右肩上がりの場合でしたら、それがまだ五〇%、上がっていくので、含み益が出てくるわけですね。逆に今、土地の担保が半分に下がったということになりますと、実は五〇%のいわゆる含み損になります。合わせますと一億の大損ということになりまして、そういう損をしている中で、新しい企業があるいは創出できない、あるいは苦しい中で、だれも好んで赤字を出したり倒産したい人はいないわけでありまして、大変な苦しみの中で余儀なく赤字を出しておるわけです。

 そういった中で、企業の再生を願って借金をして、さらに業種転換をしたり、あるいは業態転換をしながら、あるいはいろいろないわゆる工夫をしながら、借金をしながら店を再建したいというときには、ほとんどお金が借りにくい状態、それをどうするかということですね。

 それは、やはり政府系機関にお願いするか、もしくは日ごろ御厄介になっております地元の銀行にお願いするか。しかしこれは、借りやすくするためにやはり担保の土地を高くしてくださいというのが実は本音でございます。

 二番目に、政府系機関にお借りする理由は、町づくりという一つの視点からいいますと、商店街というのは実は社会活動もやっておりますし、社会活動の基盤整備もやっております。何をやっておるのかというと、公共財としてアーケードがあったり、ポケットパークがあったり、植栽があったり、町の景観まで整えながら、いわゆる地域の利便性にこたえるために一生懸命やっておるわけであります。

 そういった施設の中で、NPOであるとかPTA縁であるとか、いわゆるそういったつながりの中でますます地域との連携を深めていこうという中で都市を再生していこうという意欲のある商店街ですね。こういう中で、商店街がやっておることはすべて、自分らのもうけの種をつくっておるんじゃないかと。とんでもない話でございまして、その中には、今お話しになったように、メセナもやっておるわけなんですね、文化活動も。いろいろなことをやっておる。金にならぬことをやっておるわけです。

 そういったことをやりながら商売をしておるわけですから、例えば公共財、どこからお金を借りるのか。金もうけの種にならぬ、金もうけにならぬものは市中銀行はなかなかお金を貸してくれませんから、そうしたら、公共金融機関からしかお金が借りられないという、担保の問題があります。

 それから同時に、例えばアーケードとか街路舗装とか植栽とかポケットパークとか、そういったものは、既に地方自治体あるいは建設省の道路であったりするわけですね。そこへ建てるわけですから、借金を返せなかったら、銀行さん、これを担保で持っていってくださいというわけにはいかない。その上へ建てさせていただく、そういう公共財は、すべて公共的な金融機関から借りなければしようがないですね。

 そういう意味で、ぜひひとつ、公共的な金融機関だけは残してほしい、実はお願いでございます。

 以上。

中津川委員 今、参考人から、土地を上げてほしい、そんな言葉が聞かれましたが、実は、私ごとで恐縮なんですが、今度「正論」の十二月号に書いております。

 土地を、とにかく地価を安定させなければ、不良債権処理、幾らRCCをつくったって同じなんですよね。処理をして、そしてまたふえる。イタチごっこですから。土地を安定化させる、それはバブルのとき出した政策を、土地基本法を発動すれば今できるんですよね。だからこれを、やはり政府が十年間放置したところに、ばんそうこう手当てだけだったですから、つけ焼き刃の手当てばかりですから、土地をとにかく安定化させる。そうすれば、企業も収益還元法なんか考えて、どうやったらここでできるかというようなことを私書いておりますので、また御意見を賜りたいと思います。

 時間がなくなりましたが、最後に服部参考人に。

 私も、担保至上主義の融資というのはもうだめだと。日本は間接金融で土地を担保にしてやってきて、それはそれで意味があったわけですね。ほかに地下資源がないから。これだけ国民の資産がふえたけれども、またそれが今下がっちゃって、国民の全部の資産が失われている。だから、もう担保至上主義を廃止してだんだんと直接金融に、プロジェクトファイナンスみたいな。大阪のユニバーサルスタジオ、あれなんかうまくいっているみたいですね。ああいうのを中小企業でももう適用しなきゃいけない、こんなふうな思い。それから個人保証制度の廃止というようなことをセットで、今回、今月号の「正論」で書かせてもらっているんですけれども、自分はそういう考えを持っているんです。

 今の私の考えも含めて、服部参考人が考えていらっしゃる新しい中小企業への、中小企業だけとも限りません、企業に対しての融資、これからの二十一世紀の融資のあり方をちょっとお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。

服部参考人 お答えを申し上げます。

 議員のおっしゃるとおりでございまして、担保不動産が毎年毎年七、八%ずつ下がっていくということでありますから、幾ら引き当てをしても足りないのでありまして、私ども程度の規模でも、毎年二十億、三十億という利益がそれでなくなってしまうのでありまして、この辺で何とか、土地は値下がりはとまったという、どなたかが言い出していただけると大変うれしいし、大体そんなふうになりつつある、こんなふうに思います。

 個人的な保証というのは、今お話がありましたとおり、自分の財産と会社の財産とが一緒でありますので、そうすると、担保物件については、個人の保証をおつけいただくことは、個人の担保物件をお出しになっている会社がありますから、これはある程度はやむを得ないと思いますけれども、通常は、個人の担保はいただかないようにしていくべきだ、私の方もそのようにしております。

 これは、昔はそうじゃなかったんですけれども、融資する姿勢というのは、人物とそれから、いわゆる企業の先の見方であります。二食にしても返済をする人がいるんですが、三食食べて夜食も食べて、そして外車を乗り回して借金を返さない人もいるわけでありますので、結論というのは、そういうところだと思います。

 それから、私たち、以前は、大蔵省の検査を何回も何回も受けておりまして、おまえのところは担保依存主義でいかぬ、こういうふうに言われておりました。人物を見て、あるいは事業の将来性を見て金を貸す審査能力が不足しているという指摘をされましたが、最近では、担保がないじゃないか、こういうことになってしまっておりまして、その担保がどんどん下がっていくわけでございますから、十年前言ったことと今言っていることと全然相反するようなことが多いと思います。

 しかしながら、やはり安定したときには担保もちょうだいをするというのはどうしても必要なことだと思っておりますが、何といいましても、人とそれから事業の将来にお金を貸すような体制をつくっていきたいと思っております。

 以上でございます。

中津川委員 ありがとうございました。

中山(成)委員長代理 達増拓也君。

達増委員 自由党は、平成十年の後半から去年の四月まで、三月の終わりまで連立与党として政権に参加しておりまして、その一年半の間、ここ五年間の中でその一年半の間だけ日経平均株価は一貫して上昇を続け、そして景気も回復基調であったということを自負しております。

 そこで、ここ十年、日本経済はいろいろ苦しい展開をしてきたわけでありますが、その中でもやはり、景気を回復させていくための財政政策、マクロバランスを適切に維持するような減税でありますとか財政出動でありますとか、そういったことともう一つ、大胆な改革、自自連立のときにやりましたのは衆議院の定数二十人削減でありますとか、もうここ五十年で一番の改革というような、そういうことを次から次へとやっていくということが、日本の経済社会を変えて強くしていくことではないかと考えております。

 翻って今、痛みを伴う改革というスローガンを政府が出しているわけでありますが、その痛みを伴う改革というのは、非常に格好いい言葉でありますし、言葉そのものはだれも否定できない美しい言葉なんだと思います。

 そもそも、改革、変化というものは新しい創造を伴うものでありますから、産みの苦しみという意味での痛みというのは、あらゆる改革には伴うものでありましょうから、痛みを伴う改革というのは、それはそれでいいんでしょうが、それが具体的な政策となったときにどう評価すべきか。実はまだ見えてきていないんだと思うんです。今度の補正予算、まだ閣議決定していませんけれども、それが出てこなければわかりませんし、それが出てきても二次補正があるかもしれないとか言われていて、まだよくわからない。

 いろいろ政府・与党の方から聞こえてくるのを総合しますと、どうも大きい流れとしては、とにかく徹底して、二、三年は低成長でもいい、あるいはマイナス成長でも仕方がない。二、三年は景気の悪化というものを甘受しつつ、その中で不良債権処理の断行、これは非採算部門からの徹底的な撤退ということでありましょう。

 もう一つは、倒産すべきところは倒産し、失業すべき部分は失業し、そして非採算部門、古い産業、古いビジネスにいた人材や経営能力といったものを新しい産業やニュービジネスにどんどん移していく。そこのお手伝いは、セーフティーネットということで教育訓練とかいたします。それで、日本の経済社会は力強く生まれ変わる。そういう基本的な方向性なのかなと思うんです。

 ただ、古今東西、経済が悪くなる中で新しい産業に挑戦、ニュービジネスの展開ということは、なかなか例はないんじゃないかと思うんです。回復の兆しがある中で、戦後、瓦れきの中から復興していったときに、いろいろな新しい産業、ビジネスが出たわけですが、それもやはり回復基調の中でそういう新しい転換が行われたんだと思うんですね。

 そこで、これは四人の参考人の皆様から順番にお答えをいただきたいんですけれども、そういう景気後退の中での不良債権処理でありますとか構造改革、それは新しい産業、ニュービジネスへの挑戦、商店街においても新しいことへの挑戦ということだと思いますけれども、そういったことが本当に現実的なのかどうかということを伺いたいと思います。

 では順番に、服部参考人からお願いしたいと思います。

服部参考人 先ほども申し上げましたが、来年の一月に、破綻をいたしました神奈川県青果信用組合の受け皿に私の方がなることになっております。

 一つ、八百屋さんの例をとりましても、大手のスーパーマーケットに行って仕入れてきて、そして自分の店頭で売っている、こういう安易なというのかめちゃめちゃな商売をしているからおかしくなるわけであります。

 今度、事業譲渡を受けるに当たりましては、いわゆるシイタケは中国のシイタケとはどれだけ味が違う、ネギは泥のついたネギを売る、大根は葉っぱまで食べる、こういうやり方をしたら必ず再生できるよということで、今お互いにそういう打ち合わせをしながら、存続するいわゆる八百屋さんと話をしながら、事業継続をしていこうということでやっております。ですから、中国の輸入問題とは全く関係ありません。高くたってそういうものはお客様は買ってくれる、安全である、そういうことであります。

 それから、私の方は、投資事業有限責任、しょうなん産学連携ファンド、それから、しょうなん産学連携事業化支援ファンド、この二つのファンドを持っております。一つは大和証券系。二つ持っておりまして、そして、主に東海大学松前総長とお話をしながら、東海大学と連携をしながら、もう既に合計で十二銘柄について投資を行っております。融資じゃありません。これはベンチャーであります。よろしければ、後ほどこれはコピーをとってお渡しをいたしたいと思いますけれども。

 例えば、アサリを一年じゅうおいしく食べる方法はなかろうかということで、東海大学の海洋学部の方に持ち込んでいるというようなことから始めまして、いろいろな事業に対しまして、いわゆるベンチャーに対して投資を十二銘柄行っております。

 いずれにいたしましても、古いものは古いいいところを、それから新しいところには危険を冒しても積極的に、そうやっていくしか今方法はないかと思っております。これはサラリーマンの頭取がやっているような銀行ではできないのでありまして、体を張って、だめな場合は自害をするぐらいのつもりでやっております。

都村参考人 こういった不況時にニュービジネスだ、ベンチャーだといろいろなことはどうだろうかというような御質問だと思います。

 これは決して、新製品を開発したり、ニュービジネスをしたりするのが新しい会社という解釈ではなくて、例えば私どもの小さな会社でも、もう十年前とがらっと変わっております。新しい製品を開発したり、それからベンチャーの企業と提携をしたりして新しいものをやったり、本当に中小企業は、十年前を振り返りますと、極端に言えば、私の会社も十年前から同じものをしていたら、必ず今倒産していると自分で思っておりますけれども、そういった形で、いろいろ中小企業が、本当に新しい製品に取り組んだり、ベンチャー企業と一緒になって取り組んだりしてやっておるようなのが現実だと思います。

 そういったところでは、どうぞひとつ、既存の中小企業も今ある中小企業も、どんどん新しいものに挑戦をしているというようなことで御解釈をいただきたいと思いますし、逆に言えば、十年一日変わっていない中小企業は、私から言えば、倒産するのもやむを得ないのではないかなというぐらい変わっておる時代だと思っておりますし、それにみんなで挑戦をしていこうと頑張っておるような状況でございます。

 どうぞよろしくお願いします。

鯉江参考人 まず、商店街にとってあるいは日本の経済にとって問題は何かというと、創業と廃業が逆転しているということですね。ですから、欧米の先進国を見ますと、廃業も多いけれども、創業率の方が上回っているということ。日本は、創業率がだんだん減って廃業率がふえてきた、これは全く逆転現象でございまして、これからさらに後進国のキャッチアップによってその傾向は強まっていくという心配がございます。

 そういった中で、競争率を高めるために商店街あるいは個人のお店は何をやっておるかという具体的な事例を一つ申し上げます。これも手前みそでございますけれども、御勘弁いただいてお聞き賜りたいと思います。

 例えば、ITに取り組む姿勢。今ごろIT、ITと言う。何事や。私どもは十三年前から、私の事務所を見ていただければわかりますけれども、ずらっと十台ぐらいパソコンが並んでおりまして、その中で、全国に先駆けてあるいは世界に先駆けて、商店街カード、プリペイドカード、これを真っ先に、日本で最初に発行いたしております。まさに、モデルのないところのIT革命を一商店街がやり遂げたというベンチャースピリットが必要なんですね。

 そういうベンチャースピリットを持ち続けない商店街やお店というものはこれから露骨に淘汰の時代に入っていく、そのように考えておりますから、そういう意味では、新しい時流をとらえながら一つ一つ果敢に挑戦していくという試みはやっております。

 それからもう一つ。物売りとか商店街というのは生活の場ですから、オフィスもあるんですね、いろいろな生活の場として、アートもある、何もある。そういった中での、いわゆる時代を見る触覚が非常に敏感でございます。そういったITとかそういう時代の流れをつかみながら、しかし、やはり古きよきものは残していこうと。アナログ産業とか、ついついばかにしますけれども、あれほどサービス関係で人手がかかるものはないわけでありまして、現在の五・三%の失業率を見ておりますと、やはりよき古き時代の手間暇かけてやる仕事もこれからもっともっと大事にしていかなければいけない。

 そういった中で、私どもは何をやっているかということを説明いたします。

 まず、先ほど来から、アライアンスだのコラボレーションだの、同盟を組んでみんなで一緒に共同事業をしましょうなんて言っておるけれども、具体的に一つだけ説明いたしますと、例えば、地産地消という一つのキーワードをつくります。地というのは地元ですね。地産で、地元でつくったものは地元で消化しようという、消化の地消。

 これをキーワードに、例えば農協さんとタイアップして、中に入るのがNPOであったり、そういった方々と、地元にある商品はすべて地元で、経済は地元で循環しましょう、それから、さらに力をつければエリアを延ばしていきましょうという運動を今やっておりまして、市場をつくっております。現在、地産地消の市場を、約百坪ですから三百平米ぐらいでやっておりますが、非常に好感度で迎えられております。まさに地元でつくったものは地元で売るという仕掛けをしております。実際苦戦のところもありますけれども、プラスになっておるところもある。

 その中で、めでたく地力をつけまして、もうこの市場から外へ出て自分で店をつくりたいという花屋さんが出てまいりました。実際に商店街の一角で、その市場を出て、自分の独立店舗で、空き店舗を利用して御商売をなさっておる。そういうのがぼつぼつ出てきたということは、やはり苦しくても努力をするという気持ちがないと次の手を打てぬわけでありますね。

 そういう意味で、私どもの地元のもう一つのモットーは、ふるさとは一つ、一つのふるさとに一つの心、そしていつでも夢を、仲間とともにという精神で、みんなで、老若男女手をとり合って町づくりに邁進しておる、その中から一つ一つ成功を見つけていくという取り組みをやっております。

 以上でございます。

多比羅参考人 景気後退時期における企業のあり方でございますが、先ほども触れましたけれども、民事再生法、これは大変評判がよろしいようで、私の事務所にも、会社の経営が悪くなったから民事再生法で何とかしてほしいという相談が非常に多くなっております。

 しかし、話を聞いて会社の財務内容を調べると、非常に収益力が悪くなっている、それから資金繰りにも窮している。再建させたくても、収益力が悪い、利益が出ないような会社は、これは再建できない。しかも、資金繰りに窮して、申し立てした後の資金手当てがつかない、運転資金がないような会社、これは再建できないわけで、結局、相談に来る、決断するのが非常に遅くなっている。

 つまり、こういう時期ですから、会社の中身についてよく見て、危険を感じた場合に、早い申し立てをして、十分まだ収益力が残り資金繰りもあるうちに再建すれば、雇用の確保もできるし、取引先に迷惑をかける率も少なくて済む。それにもかかわらず、非常に遅い、遅過ぎる決断が気になっております。

 そのためには、早い申し立て、決断ができるような社会的な雰囲気をつくっていくことと、それからそれを支えていく制度をつくっていくべきであろう。そして、今、倒産法の改正について行われていますが、そういう早い申し立てができるような立法政策にしていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

達増委員 ありがとうございました。

中山(成)委員長代理 大森猛君。

大森委員 日本共産党の大森猛でございます。

 四人の参考人の方には、本当にそれぞれ大変忙しい中、国会に出席いただき、本当に今の厳しい状況の中でそれぞれ奮闘されているお話を伺わせていただき、心からお礼を申し上げたいと思います。今の陳述等の中で出されました皆さんの要望や提案についても、私どもも積極的に検討し、取り組んでいきたいと思います。

 最初に服部参考人にお聞きをしたいと思うんですが、私も湘南方面に住んでおりまして、けさも御社の支店の前を通って駅の方に出かけたわけでありますが、冒頭の陳述でお話のあった、例えば、決済資金を返済資金に回してそのために破綻してしまったとか、あるいは、ダイオキシン対応の施設の改善、そういう融資も断られてしまったというようなお話との関係であります。

 金融機関がそういう社会的な責任、社会的な使命といいますか、そういうものを果たす中で、地域の金融機関への信頼、こういうものが成立していくということで、今後の金融機関のあり方といいますか、再生の一つの大きな方向、柱として、そういう社会的責任、環境問題、福祉の問題あるいは教育問題、これらにかかわるそういう責任を果たしていくことが金融機関の再生につながる大きな道の一つではないかと思うんですが、この点、まずお聞きをしたいと思います。

服部参考人 議員のおっしゃるとおりでありまして、遅まきながら、私どもが今、総勢十五人で個々に一つずついわゆる担当の会社を持ちまして、そして総ざらいをしながら、どうやったら再生できるか、こういう取り組みを始めているところであります。銀行等のようにばっさり切ることはいたしません。

 ですが、中小零細企業には、かなりむだとか旧来の癖が残っております。においとか癖とか、こういうものがありまして、かなり改善する余地がまだまだ残されております。

 それは、それまで私たちも不勉強だったわけですが、お客様と一体となって、今後どうやっていこうか、これを検討するチームを発足させて、間もなく一年がたちます。今まで、要注意債権とか破綻懸念債権と言われていたのが次々に改善されてきておりますので、これをもっと強力に進めていきまして、政治家の皆様の御心配がないようにしていきたい、こんなふうに思っております。

大森委員 お話にもありました不良債権の処理の問題については、私ども、これは当然やらなくてはならないことだと思うわけでありますけれども、しかし、今のような政府のやり方、これについては本当にいろいろなところでいろいろな意見を聞いてまいりました。きょうも陳述がありましたけれども。

 例えば、私が伺った、これはある信用金庫の方でありますけれども、先ほどは、もう地域の金融機関は最初から要注意先が相手だというお話もあったわけなんですが、破綻懸念先に区分されている企業であっても、中小企業の場合、いろいろな親戚、家族等々から資金繰りをして、おくれてでもとにかく返済はやっている、しかし、今のやり方では、こういう懸命に生き続けている企業も殺してしまうことになるのじゃないかというような意見。

 最終処理の対象も破綻懸念先からさらには要注意先まで拡大される、そういうおそれも出てくるし、金融機関がそういう要注意先への貸し出しを渋ったり、減らしたりする、そういうことも懸念される、あるいはこれはもう現実のものになっているわけでありますけれども。そうなると、中小企業への貸し出しがますます厳しくなるし、地域の金融機関としても貸出先がなくなってしまう、地域の金融機関の存続の基盤にもかかわってくるのじゃないか、そういう声まで伺ってまいりました。

 そういう点で、服部参考人に改めてこの点でのお考えを。

 関連しまして、金融機関の検査マニュアルについて、これはとにかく自己資本比率一辺倒ということを一律に地域の金融機関に当てはめるのはどうか、こういう御意見もありました。私もそう思います。特に、地域金融機関の場合には、そういう自己資本比率一辺倒ではなく、やはり地域の経済等々への貢献のぐあいとか、あるいは中小金融機関の発展にどうかかわっているかとか、そういう検査の基準マニュアルなどが必要になってくるのじゃないかと思いますけれども、この二点についてお聞きをしたいと思います。

服部参考人 まず、金融検査マニュアルについてでありますが、当初は、アメリカの物まね、あるいは大銀行のものをそのまま持ってきて中小金融機関に当てはめていったという嫌いはありましたが、最近では大分それが修正をされつつありますし、私たちの勉強不足のところから、金融検査マニュアルをそっくりそのまま丸写しで、そしてそれに適応していったら大変なことになった、こういうことでございました。

 しかしながら、中小零細企業の現状をきちっと把握をしながら、私ども、独自の自己査定マニュアルをつくっていきまして、監査法人とともに一緒につくりながら検査に臨んでおりまして、そしてそれでよろしいというようなお話も最近は聞けるようになってまいりましたので、この辺は、もう少し双方、双方というのは役所も我々も、もう一回、やはり金融機関別の違いがあるということを明らかにした自己査定マニュアルにしていきたい、こんなふうに思います。

 それから、もう一つでありますけれども、要注意債権から破綻懸念先にならないかなんというような境目のところがあったり、正常債権から要注意債権の境目のところにあったりしますが、例えば、条件変更をいたしますと、これは要注意債権にされてしまうのです。当初十年で返済をするというのを十五年にしたら、もうこれはいかぬ、あるいは、金利をまけたら、これは条件が変更だから要注意債権だ、こんなふうになりがちであります。

 これは、自己査定マニュアルを自分のところに合ったように変えていきましても、なかなかお認めいただけないというところがありますので、議員のお力をかりまして、いわゆる業態別にやはり取引先が違うのであります、資本金が一千万円とか三百万円とかという有限会社とか、父ちゃん母ちゃんでやっているとかというのと、ホンダとかソニーと同じにされてはだめでありまして、この辺は私たちももう少し勉強を続けていきまして、折衝をいたしたい、こんなふうに思っております。

 それから、湘南信用金庫の自己査定マニュアル、これは独自につくっていきまして、そしてこれに基づいて査定をいたしまして、金融監督庁とかあるいは日本銀行の考査に対応をしていっておりますので、大分この辺で御理解がいただけるようになってまいりました。自己査定のマニュアルがちゃんとでき上がるようになりました。

 以上でございます。

大森委員 ありがとうございました。

 次に、都村参考人、鯉江参考人にお聞きをしたいと思うのです。

 先ほど来の地域の商店街等々の大変な寂れ方といいますか、そういうお話は本当に私もよくわかります。きのうも、実は、千葉県のある市の商工会議所の専務理事さんとかなり詳しくお話しもしたのですが、今の地域の商店街、地域経済を本当に発展させるには何が必要かという点で、いろいろ御意見もありました。

 お話のあった、旧大店法が廃止になって、町づくり三法という形で一定期間たったわけでありますけれども、もちろんそのことだけで言及というわけにいかないでしょうけれども、地域の商店街あるいは地域経済の発展にとって、この数年たった町づくり三法、総括的に言って、こういう面でよかった、こういう面でやはり不十分じゃないか、大型店の一方的な進出やら、あるいは一方的な撤退、こういうお話もありましたけれども、それらも含めて、御意見をお聞かせいただけたらと思います。

 加えて、鯉江参考人には、先ほど、要望の中で、土地利用規制についての厳格な運用というお話がありました。ちょっと踏み込んで、その点の御要望、中身を御説明いただけたらと思います。

都村参考人 私どもの小さな町でも、商店街の活性化を目指しまして、TMO活動とか数々の活動をやっております。

 ただ、その実際について申し上げますと、町づくり三法とかいろいろなことでやっておるのでございますけれども、地元でやらせていただく場合の方から申し上げますと、できるだけメニューが多い方がありがたい、その地域地域に即したメニューを私どもの方としたら採用させていただきたいな、こういったことの希望をいつも持っております。

 私どもの方がずっとTMOなんかでやっておりましても、だんだんと商店街自身の体力が落ちておるのは現実でございまして、ですから、TMOとかいろいろな形のもので商工会なりから働きかけても、補助金なりをいただいての自己負担の分だけのものに耐えられるか耐えられないかというようなところまで商店街も来ているということをぜひ御理解いただいて、新しいメニューを、こちらの方で、借り手側として本当に活用できるようなものをどんどんと出していただきたいな、こういうことを要望申し上げたいと思います。

鯉江参考人 先生御指摘の点は二つありましたですね。一つは、セーフティーネットの件ですけれども、一言で言いますと、日本の景気政策、今インフレ対策をやっておられるのじゃないかなと思うのですが、実は私どもひそかにインフレ政策に期待をいたしておりまして、要は株と土地さえ上がれば、極端な言い方ですけれども、日本経済は浮揚するのではなかろうかという期待がございます。

 そういった中で、一応、セーフティーネットの陰に隠れて、最終処理についてどんなひどい状況が行われているかということを申し上げたいと思うのです。

 例えば、最終処理に対してかかわっておられるほとんどの方が、不動産屋さん、それから暴力団関係ですね、それから取り立て屋さんとか、そういった方なんですね。実際に最終処理される場合には、いわゆる正当な土地評価は、大体三百万のところであるとすると、まず、それの半分なら話がわかる、三分の一でも話はわかるけれども、三十万とか、こんな値段で実は落札しているわけなんですね。これはもう株が下がる、土地が下がる、物価が下がる、すべてスパイラルといった状況の中でさらに拍車をかけるように非常にひどい状態なんですね。ですから、この処理の方法について、一度政府の方でひとつ歯どめをかける、規制をかけるという、土地規制の問題というのは、ここら辺もあるのかなと実は思っております。

 三法についても申し上げたいと思います。

 土地規制というのはよい規制と悪い規制があって、ただいま申し上げた規制もよい規制だと思うのですね。どこかで歯どめをかけるという規制。この三法に関しても土地問題については農地、農振法、そういった中で、いわゆる政府の大事な税金を使われておるわけでございますが、それがあるとき突然市街地に編入されまして、そこで使った排水事業、塩水排水事業あるいは農道等が一企業に利用されてしまうといったことはまさに税金のむだ遣いでありまして、そういう点では、欧米では土地規制に対してあるいは都市計画に対してきちんとしたいわゆる厳罰の罰則もあるわけなんです。

 ところが、日本にはないから、例えば都心で町づくりをするという市民の共存共栄の思いをそでにして郊外で出店したり、増床したりしながら、自分のところの方は、土地利用も自由勝手にやりたい放題、これはちょっとやり過ぎじゃないかというようなお声もあるわけでございますので、そういったものにもやはり規制というか、歯どめをかける仕組みも必要かな、実はかように思っております。

 そうでないと、幾ら都心再生と申し上げましても、そこに安心して金を投資できないわけなんですね。傍ら、そこへ投資したって、郊外へそういうものがぼんぼんできてきたら、ただでさえ大企業の大型店さんも競争、オーバーストアで大変苦労をしておられるのに、さらにまた御苦労なさる、みずから苦労する必要はないと思うのです。

 ゾーニングの中でやはり適正な立地というのは、商業地域や工業地域や農振地域、そういうところがそれぞれそこで競い合って、お客様に、生活者に御便宜を図ってもらうというのも企業の社会的責任の一端を果たすことだと思いますので、そういう意味で、ぜひ地元の中心市街地のいわゆる土地の処理の問題、それから、ゾーニング等の規制の問題、これはやはり正しい秩序を保つためにも必要であるということをお願い申し上げたいと思います。

 以上でございます。

大森委員 時間が参りましたので、多比羅参考人にも、民事再生法の関係で、一つは大企業が民事再生法申し立てについてどう考えたらいいのかというような建議やら労働債権をどう確保していくかという点についてお聞きをしたかったのですが、また先生の著書などで勉強させていただきたいと思いますので、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

中山(成)委員長代理 大島令子さん。

大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。きょうは、大変お忙しい中、それぞれのお立場で、貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございます。

 私ども社民党は、去る十一月二日に雇用対策についての考え方を発表させていただきました。その中身を大きく申し上げますと、雇用不安から消費減退、収入がないから物を買わない、そしてそれがさらなる不況につながるという悪循環を断ち切って、先の見える社会をつくろうということでございます。

 職をなくされた方に対してセーフティーネットを張りめぐらすことは大変重要なことであると思いますが、きょうは、まず中小企業の経営者に近い方々がお越しくださっておりますので、どうすれば雇用が維持できるのか、首切りしなくてもいいようになるのかという観点から質問させていただきたいと思います。

 まず、多比羅参考人に伺わせていただきたいと思うのです。

 先ほど来経営者の方の状況を細部、多事例にわたって、民事再生法という中で報告を受けました。私は、労働債権の保護の実態と今後の立法ということに関して四点伺いたいと思っております。

 企業倒産の増加が続いている現状において、労働債権の保護という立場から立法化も政府では検討されているようです。それは、労働債権の重みが個別の労働者にとっては非常に大きいこと、例えば、倒産企業は多くの債権者の一人にすぎないわけですが、労働者にとっては唯一の債務者になるということですね。また、労働者は企業の財産形成に貢献してきました。そして、企業を取り巻く経営環境ですとか経理状況などの情報を得ることが労働者にとっては非常に困難であり、そうした情報を得る機会や力の差が債務者として不利に働きがちであるということです。

 以上のような観点から、労働者が会社の倒産を予兆するのは一般的に困難であると言われております。しかし、現在の労働債権の法的位置づけは、倒産による任意整理においては一般の実体法、民法とか商法とか国税徴収法とかあるわけですが、一般の実体法における債権の優先順位と同一で、まず一番が不動産の保存、二番目が抵当権などの被担保債権と租税債権が同じ位置に来まして、その次が労働債権ということになっているようです。しかし、働く人にとっては、みずからの生活とか家族の生計を唯一賃金に頼っているため、生活を維持する賃金の確保は非常に重大なわけで、会社の倒産というのは経営者と同等以上に大切であると思っております。

 そこで、具体的な質問なんですが、民事再生法における現行の労働債権の取り扱いは、再生手続開始後は共益債権とされておりますけれども、再生手続前は一般の先取り債権の対象とされている範囲内で随時弁済を受けられる立場にあるようです。参考人が実際に御経験されている中で、労働債権はもっと保護されるべきかどうかという問題が一点。

 二点目は、民事再生法の中で、労働債権にかかわる点について改善すべき点があればお聞かせいただきたい。

 三点目は、現在の会社倒産の中で、労働債権が現実としてどのような順位にあるのか、実体法に即して聞かせていただきたい。

 四点目は、労働者は会社倒産を泣き寝入りしている現状が多いと思いますが、今後どのような立法措置がとられれば労働者の権利が救われるのか。

 以上、四点にわたってお考えをお聞かせください。

多比羅参考人 労働債権の確保、これは企業倒産に関与する者にとっても非常に重要なことだというふうにとらえております。

 したがいまして、私は、企業倒産に際して会社側に立つことが多いわけですが、その場合でもやはり雇用の確保をどうやっていったらいいか、労働債権の確保をどうしていったらいいか、それを念頭に置きながら進めております。

 その観点で、労働債権については、確かに一般の取引債権あるいは金融機関からの借入債権の無担保な債権に比べれば、労働債権というのは優先性はあるわけでございますが、何といっても企業の場合には、会社の資産については担保を設定しております。その担保権を行使した残りのいわゆる担保権の及ばない資産についての中でございますので、そういう点でいきますと、まず担保の制度が非常に行われているのが不動産でございます。

 不動産については大抵の場合に担保が設定をしてありまして、現在の場合には担保余力はない、オーバーローンでございます。そうすると、中小企業の場合に残った資産は何かというと、売り掛け債権等の債権があるわけですが、これについては現時点では、確かに担保に供されていないことが多いわけでございます。

 ただ、担保制度がだんだん整備されてきて、売掛金債権についても担保を容易に設定できるようになってくる。というと、企業が倒産した場合に、担保設定されていない資産、これが引き当てになるわけですが、そこの部分が非常に少なくなってくるだろうというふうに予想されます。

 そういうときに、そこで順位が一番あるのが租税債権でございますが、その租税債権の比率も非常に高いということ、それから租税債権は、これがないと国がやっていけないということは重々わかっていて、重要なんですけれども、租税債権について非常に優遇し過ぎているのではないか、もう少し制約があってもいいのではないか。倒産した会社について、持っている不動産について健全な企業と同じように課税が行われている、そして、しかもそれは優先順位が非常に高いということについては非常に疑問を持っております。もう少し制約していっていいのではないか、そして、その関連において労働債権の比率を高めていくというふうにしていったらいいのではないかと思っております。

 したがって、今倒産関係の法律の改正が検討されているわけですが、その際にも、現場に関与する者としては、租税債権についての制約をもう少し設けていいのではないかということと、労働債権についての配慮、これも検討する必要があるというふうに思っております。

 そして、それでは実例ではどうか。実際に民事再生その他の倒産手続に入った場合の労働債権の取り扱いはどうかといいますと、これは、企業が再建中の場合には雇用が維持されますので、その場合に労働債権について非常に迷惑をかけるということはありません。ただ、再建できない企業が非常にふえております。先ほども申し上げましたように、申し立てが余りにも遅過ぎて再建できないということがあるものですから、そういう場合に従業員の方の労働債権が制約を受けて、退職金について十分に支払いができていないということはあります。

 では、どういうふうに確保していったらいいのかというと、先ほどのところへ戻って、やはり残された資産についての分配の問題ですから、多少優先順位を変更するということと、何よりも雇用の確保のためには早い再建に努力する。つまり、労働債権という一つを取り上げて保護するだけではなくて、企業が破綻を来した場合に、早目に手続をとって雇用を維持できることが大事ではないかというふうに思っております。

大島(令)委員 ありがとうございました。

 鯉江参考人と都村参考人にお伺いします。

 まず、鯉江参考人は、さっき商店街はシャッター通りだと。私の質問原稿にも書いてありまして、ちょっとあれなんですが。

 景気が悪い、収入がない、耐久消費財は買いませんよね。本当に必要最低限の支出しかしない。そういう中で、商店街がどんどん寂れていく。店を閉めるからシャッター通りだ、こういううれしくない言葉が飛び交っておりますけれども、個人商店や中小企業の場合に、融資を受ける際に土地や家を担保請求されたり、連帯保証を求められたりした場合、そしてその結果、不幸にして倒産に陥ったときに多額の負債を背負い込んでしまい、本当に文字どおり、先ほどおっしゃったように身ぐるみはがされてしまう。

 こういうことを防ぐために、担保強制から免れる保証、信用保証協会の保証制度。先ほど、信用保証協会の弾力的運用をもっとしてほしいとおっしゃいましたが、実際に御経験の中から、現行の保証制度がどんなふうに変わればもう少し救われるのか、そういうものを具体的に教えていただきたい。例えば、返済期間が、運転だと五年ですとか設備だと七年とかいうことがあります。そういう角度から教えていただきたい。

 都村参考人には、今回、補正関係で売り掛け債権という法案が出てくる予定でございます。そういう中で、実は私も相談された件なんですが、融資を受けた債務者に、その融資を得た金員の中から、融資の窓口である当該金融機関がかつて融資していた分を先に返済させてしまう、いわば書きかえと言った方がわかりやすいのですが、こういうことが広く一般的に、ある愛知県の信用金庫さんでも行われていた現状があるわけなんですね。

 そういう中で、資金調達手段、中小零細企業の方にとっては信用保証協会というのは本当に頼みの綱であるわけですが、金融機関の救済、金融機関の債権の回収にこの制度がなってしまう、やはりこれは白紙に戻す措置が必要だと私は考えているわけなんですが、実際、商工会の役員を長年されてきたということで、こういう苦情とか相談を受けたことがどのくらいあるのか教えていただきたいと思います。

 時間がないものですから、簡潔にお願いいたします。

鯉江参考人 先生御指摘のとおりでございまして、まず事例から挙げますと、築後十年足らずのそこそこの建物がある。しかし、建物には担保価値がないということなんですね。土地は下がっている。その上に、築後まだ新しい建物、これにも担保価値がない。これは欧米では考えられぬことですね。

 日本だけなぜ建物に対して担保価値がないのか。十分使えるものまでまた壊して廃材の山をつくって、捨てるところがないとか、こんなこと。やはりリニューアルというか、今あるものも良質なものは残していくという根本的な考え方が欧米に比べて日本は少ないのかなと。古都数千年の建物も、木造も、手入れ次第で千年もつわけであります。何で早く壊すか。

 したがって、何が言いたいかというと、土地と建物に対して評価を高めてください、そうしたら、いわゆる再生の延命も可能である、かように思います。

 以上。

都村参考人 今回御検討されております売り掛け債権担保融資のことにつきまして、書きかえ等で実際にいけないのではないかというような御懸念をお持ちの御質問だと思います。

 私どもといたしましては、いずれにいたしましても、銀行から借り入れをする場合に、土地であれ何であれ、今まで担保を提供してやっておるわけですけれども、この売掛金債権というものも一つの担保として今度できるわけですから、担保がふえるようなことには考えております。ですから、そういった意味では、資金の調達手段としては大変好ましいことであるというふうに考えております。

 ただ、書きかえによって今まである分に返済をされるのではないかとか、いろいろなことの懸念はあると思いますけれども、こういったことは、ぜひひとつ運用の面でいろいろと、本当に御指摘いただいてやっていただいたらありがたいと思いますし、応援していただいたものとして受け取らせていただきたいと思います。

 とにかく、この制度自身は、私どももろ手を挙げて賛成をいたしておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

大島(令)委員 どうもありがとうございました。

中山(成)委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会




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