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第3号 平成14年3月15日(金曜日)

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平成十四年三月十五日(金曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 栗原 博久君
   理事 竹本 直一君 理事 中山 成彬君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 達増 拓也君
      伊藤信太郎君    小此木八郎君
      大村 秀章君    梶山 弘志君
      阪上 善秀君    下地 幹郎君
      根本  匠君    林  義郎君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松島みどり君    茂木 敏充君
      保岡 興治君    山本 明彦君
      生方 幸夫君    川端 達夫君
      北橋 健治君    後藤 茂之君
      中山 義活君    松原  仁君
      松本  龍君    山田 敏雅君
      山村  健君    漆原 良夫君
      福島  豊君    土田 龍司君
      大森  猛君    塩川 鉄也君
      大島 令子君    西川太一郎君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   経済産業副大臣      大島 慶久君
   経済産業大臣政務官    下地 幹郎君
   経済産業大臣政務官    松 あきら君
   参考人
   (青山学院大学国際政治経
   済学部教授)
   (日本中小企業学会会長) 港  徹雄君
   参考人
   (株式会社東京都民銀行S
   B(スモールビジネス)事
   業部長)         加藤 秀夫君
   参考人
   (社団法人全国信用金庫協
   会会長)         長野 幸彦君
   参考人
   (株式会社鈴木工機製作所
   代表取締役社長)
   (東京商工会議所大田支部
   工業分科会会長)     鈴木 規方君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
    ―――――――――――――
三月十一日
 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)
同月六日
 脱原発への政策転換に関する請願(北川れん子君紹介)(第五六四号)
 同(辻元清美君紹介)(第五八六号)
 中小企業対策など国民本位の景気回復に関する請願(大森猛君紹介)(第六二七号)
同月十四日
 脱原発への政策転換に関する請願(木島日出夫君紹介)(第七六〇号)
 中小企業対策など国民本位の景気回復に関する請願(木島日出夫君紹介)(第七六一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)
 経済産業の基本施策に関する件(中小企業問題)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 経済産業の基本施策に関する件、特に中小企業問題について調査を進めます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として青山学院大学国際政治経済学部教授・日本中小企業学会会長港徹雄君、株式会社東京都民銀行SB事業部長加藤秀夫君、社団法人全国信用金庫協会会長長野幸彦君及び株式会社鈴木工機製作所代表取締役社長・東京商工会議所大田支部工業分科会会長鈴木規方君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうも本当にありがとうございました。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言をいただきますようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、これも御了承をお願い申し上げます。
 それでは、まず港参考人にお願いいたします。
港参考人 おはようございます。港でございます。
 本日、私は、中小企業が今日直面しております困難な状況を生み出しました原因を明らかにしまして、この長期不況から脱却するための私なりの具体案を御説明させていただきたいと思います。
 中小企業が長期にわたって呻吟しております経済の混迷の原因は、根本的には、情報技術革新がもたらした産業経済システムの転換に伴う摩擦にあります。それが過去の誤った景気判断に誘導された不適切な経済政策によって増幅された結果であるというふうに考えております。
 情報技術革新は、グローバルなレベルで高密度な情報を瞬時に伝達できるようになり、取引コストを大幅に縮減させるとともに製品の標準化を進行させております。このことは、経済の効率性を飛躍的に高めるなどさまざまなポジティブな効果を持ちますが、同時に、次のような意味で日本企業にネガティブな影響を与えております。
 まず第一に、日本産業の国際競争力の源泉でありました日本型下請生産システムが持っております優位性を情報技術革新が崩しているということであります。にもかかわらず、情報革新時代に対応した競争力のある新たな日本型産業システムが確立されていないということであります。
 第二に、情報技術革新によって市場機構の有効性が増大するようになり、一部には、古典的経済学が想定したような完全競争市場というものが実現されつつあります。その結果、価格競争が支配的になり、企業のマージン率が非常に低くなっております。その結果としてデフレ圧力を強めております。
 第三に、情報技術革新によって、企業規模の拡大による規模の不経済性というものが縮小しております。そして、生産の集約化、大規模化が引き起こされているのであります。このために、中小企業はその存立基盤を脆弱化させております。
 このような産業システムの転換に伴う大きな摩擦があり、また、その転換のプロセスや新しい産業社会へのビジョンが明確にされてこなかったことが、長期にわたる経済混迷の根本的な原因であると考えられます。加えて、一九九〇年代における経済企画庁の景気判断の誤りが不適切な経済政策を誘導させ、倒産、リストラの増大によって消費マインドが冷却し、さらに不況が悪化するという悪循環に陥らせております。
 また、技術の標準化による生産の海外移転が不況を一層悪化させておりますが、製品輸入の拡大が国内の生産者に大きな打撃を与えているということは事実であります。しかし、製品輸入の増加率は、一九七〇年代あるいは八〇年代の方がはるかに高かったわけであります。
 また、最近の円安水準は、海外投資や輸入増大に一定の歯どめをかける効果をもたらしております。にもかかわらず、空洞化懸念が強いのは、これは、輸入がふえているからとか、あるいは生産が移転しているからということとともに、国内の市場が非常に縮小している。国内の市場が非常に縮小している状況で輸入が増大するということがこういう痛みを伴っているわけでありまして、この空洞化の問題も、言いかえれば国内経済の問題であるわけであります。
 以上の景気認識のもとに、経済と中小企業経営を再生させるためには、まず、企業家や消費者の冷却した心理を改善させ、将来に対する確信、コンフィデンスを強めることであると考えます。かつて、中小企業者を鼓舞した七〇年代の中小企業ビジョン、そういうビジョンが中小企業庁によって打ち出されましたが、近年では、こうした明確で説得力のあるビジョンが残念ながら見出されておりません。
 次に、消費マインドの悪化は、先行きに対する不安感と物価の先安期待によって引き起こされております。したがって、まず、先行きに対する不安感を解消する必要があります。
 現在の雇用情勢のもとでは、失業は最大の不安要因であります。しかし、もし失業者に新しいビジネスを始めるという創業の機会が大きく示されていれば、失業は新たな挑戦の機会というふうに受け取られることも可能であります。このためには、雇用政策と創業支援政策とを一体化させ、減少しつつある日本の自営業者の数を大幅にふやすことが必要であります。
 実際、日本でも、一九二〇年代の大不況の折には、造船工業等で大量の解雇が発生したわけでありますが、そうした労働者、技能者の多くは新しい家内工業的なビジネスを始めたわけでありまして、そういうものが日本の中小下請企業の原形を形づくったわけであります。しかし、今次不況を顧みますと、失業率の増大にもかかわらず創業の増加が見られないということであります。
 一方、英国では、一九八二年から、失業者が創業する場合に、失業保険給付にかわって一週間四十ポンドの手当を一年間にわたって支給するという企業開設手当、エンタープライズ・アローアンス・スキームというものを導入しました。この制度によって最盛期には年間十万以上の自営業が創業され、自営業者の総数は、一九七九年の百六十二万から八九年には三百二十一万と倍増しております。
 中小企業の新陳代謝というものは経済の活力の源泉であります。したがって、構造的にどうしても脱落する中小企業は出てくるわけでありますが、それにかわる新たな中小企業をいかに創出するかということが最大の課題であるわけです。
 ところが、今日の日本は、事業閉鎖が開業を大きく上回っているという状況があるわけでありまして、こうした状況を打破して起業が促進されなければなりません。しかし、従来の経済産業省の創業支援策は、どちらかというと、二十一世紀の日本産業の成長を担うような知識集約型のいわゆるベンチャーに偏ってまいりました。いわばタイの一本釣りというような政策であると言えると思います。しかし、大企業の従業者が離職をして創業するということには大きなリスクと決断を必要とします。したがって、なかなかベンチャーの創業というものが促進されていないのが現状であります。
 日本の自営業者は、一九八三年には六百九十一万人でありましたが、九八年には五百九十四万というふうに百万近くも減少しているわけであります。タイでなくても、たとえアジやイワシのような自営業であっても、こういう自営業を大量に創出するということが日本産業の活力維持にとって非常に必要であります。
 こういうふうな意味で、先ほどから申しておりますように、雇用政策と創業支援政策を一体化するという施策が考案される必要があるというふうに存じます。また、先ほど申しました物価の先安期待による買い控えを解消するためには、デフレスパイラルを断ち切る大胆な政策が考案される必要があると存じます。
 次に、金融の問題についてお話をさせていただきたいと思います。
 イギリスでは、新規開業企業の五年生存率が平均三〇%であるのに対して、信用保証制度を利用して開業した場合には、それが五九%、倍近くまで高まっているという研究がございます。あるいは、信金中央金庫総合研究所の調査では、最近の調査ですが、望ましい中小企業振興策の第一位に信用保証条件の緩和が挙げられております。このように、中小企業にとって重要な意義を持っております信用保証制度をさらに効率化させ、新たな枠組みが創出されなければなりません。
 こうした信用保証制度の新たな枠組みと申しますのは、その効率性、費用効果を高めるような制度、すなわち、現在一律に保たれております保証料率の多様化が検討に値すると思います。現在は一般貸し付けの保証料は一律〇・七%であると存じますが、こうした一定料率では、その保証料以上に経営内容が悪い中小企業が申し込むというようないわば逆選別が生じるわけでありまして、代位弁済率が保険料率を上回って何倍にもなってしまうというようなことが起こるわけでございます。したがって、中小企業の経営内容、倒産確率に応じたランクづけをして料率を変化させるという必要があります。
 例えば、担保力は十分ではないんだけれども、経営内容は良好で倒産確率が低い中小企業の場合には〇・二%程度まで料率を下げる、逆に、経営内容が悪い、倒産確率の高い中小企業の場合には五%程度の保証料を徴収する、こういうふうなことも考えられるのではないかと思います。たとえ五%の保証料を徴収しても、二〇%、三〇%というような高利の商工ローンで融資を受けるよりもはるかに金融費用は少なくて済むわけでございます。
 このように、非常にマクロ、ミクロの両面から中小企業政策の新たな枠組みを考えることが長期不況から脱出するための方途であると私は考えるわけであります。ありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、加藤参考人にお願いいたします。
加藤参考人 東京都民銀行の加藤でございます。本日は、このような発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 私は、現在、スモールビジネスローンという、中小・小規模企業さん向けの融資商品を取り扱っている部署、専門部署なんですが、そちらに属しておりまして今業務についているという状況でございます。ちなみに、SBとはスモールビジネスということで、中小・小規模企業さんという意味でございます。
 ここで、まず、東京都民銀行を紹介させていただきたいと思います。
 当行は、昭和二十六年設立された東京で唯一の地方銀行でございまして、設立当時は、戦後の不況期におきまして中小企業の金融難の時代であった。そういう環境の中で、都内の中小企業さんの金融難を緩和するために、東京都、また経済界、また都内の企業さんの賛同を得て設立された銀行ということです。したがって、当行の経営理念としては、中小企業と個人のためにという経営理念を挙げて現在でも営業しているということでございます。そういう経営理念を持った銀行ですので、現在でも融資先の九九%は中小・小規模企業さん及び個人の方という状況になっています。
 本日、このような機会を与えていただいたのは、多分、スモールビジネスローンという当行が取り扱っている商品が多少話題になっているからかなというふうに私は思っているんですが、この商品の開発の背景と、この商品を通じて見た中小企業さんの状況というのをちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 この商品は、九七年、九八年当時、当時は、大手の銀行さんや大手の証券会社さんが破綻して非常に金融不安が高まった時期でありました。そういった中で、中小企業さん、当行のお客様もそうなんですが、非常に資金調達に厳しい状況にありまして、中小企業専門銀行として東京都民銀行がそういう方々のために何かできるんじゃないか、何かお役に立てることができるんじゃないかということで考えた商品なんですが、これは、銀行側からしますと、東京都民銀行の存在意義の再確認という意味もありました。
 まず、何をしたらいいかということを考えまして、都内の中小・小規模企業さんにアンケートとかインタビューとかニーズ調査をしたわけなんですが、その中で、現在の金融機関に対してどのような不満を、満たされないニーズというんですかね、お持ちですかということをお聞きしました。その結果、金融機関に対する不満というのは、大きく三つの点を挙げられました。
 一つが、まず、金融機関に対して融資を申し込んだ場合に、諾否の回答が非常に遅いという不満がございました。
 どうしても金融機関の場合、一般に審査をする場合に、お申し込みいただいてから一週間、二週間、案件によってはもっとかかる場合もあるのですが、中小企業の経営者の皆様は、そんな時間は待てないよというニーズでございました。
 そういう場合どうなさっているのですかというお話を聞きましたらば、社長さんの個人の資金を会社の方に用立てしたり、知人や親戚から借りたり、また、最悪の事態なんですが、支払いを先に延ばしてもらったりしていると。当時は騒がれたのですが、対応が早いということで、先ほどもちょっとお話が出ていましたけれども、ノンバンクから調達してその場をしのいでいる。ただ、やはり本音は、ふだんおつき合いしている金融機関から借りたい、やはりスピード感をもっとアップしてほしいという御要望がございました。
 第二点が、第二点の不満ですね、満たされないニーズですけれども、これは、金融機関に融資を申し込む際に提出する書類が非常に多い。これは我々も実感するのですが、一般に、審査するためには数期分の決算書とか試算表ですとか資金繰り表だとか、忙しい中でそういうのを一個一個つくってお持ちして時間がかかってしまう。そういうのは面倒で、面倒というのですかね、お手元にある資料ならよろしいのですが、新たにつくらなきゃいけないというのは非常に煩わしいのですという声がございました。
 三つ目が、融資の際に第三者の保証人をつけてほしいということを金融機関からよく言われると。保証というのは借り入れと同じ重さがあるのでしょうけれども、それを例えばほかの方に頼むというのは非常に精神的に負担ですよというお答えがございました。その辺が中小企業、小規模の企業の皆さんのニーズだということを我々把握しまして、結局、審査のスピードをアップして、必要書類を簡素化して、第三者の保証をなくせばお客様のニーズにこたえられるんじゃないかということでスモールビジネスローンという商品をつくったのです。
 この商品の特徴は、翌日に回答します、決算書は一期分でいいです、第三者保証は要りません、当然無担保、担保は要りませんという商品を考えたわけなんですが、ただ、これは銀行側からしますと、今までにない審査システムを確立しなきゃいけないということで、非常に当時は、業界では驚きの目で見ていただいたというような状況です。
 従来の担保主義とか書類主義から脱却して、新たな審査手法を確立しなきゃいけないという状況に我々も追い込まれまして、どうしたらいいかということでいろいろ悩みまして考えついたのが、キャッシュフローや経営者の方のビジョン、その辺をよくお聞きすれば御融資できるんじゃないかということで今スモールビジネスローンの運営をしておるわけなんですが、これは新しい審査手法を、まだ十分じゃないのですけれども確立していこうということで、今調整している状況でございます。
 実際に、ここで、スモールビジネスローンを申し込んだお客様の例を御紹介しますと、例えば広告企業の方なんですが、これは通常頻繁に起こる状況だと思うんですが、例えば、毎月売り先さんから二十日に入金があるのに、先方さんの事務処理の都合で締めが二、三日ずれてしまって翌月になってしまうという場合に、例えば二十五日には皆さんのお給料を払わなきゃいけない。そういう場合に、銀行に申し込んでもスピード差がないものでなかなか難しいということで、当行のこのスモールビジネスローンをお申し込みいただいて、お借りいただいてその場をしのいでいただいた。一カ月間だけ御融資させていただいて翌月に御返済したという状況もありました。
 また、最近、支払い条件の変更とかそういうのも影響しているのでしょうが、これは電気工事の会社だったのですが、今までは、工事を請け負って出来高払いで現金で入金されていたのですが、お取引先さんの方で結局、現金の支払いから手形の支払いに変えてくれないかという要請がありまして、長年の取引で力関係もあったのでしょうが、断り切れず手形でいただいた。
 手形でいただいても支払いに充てることはなかなか難しいわけで、金融機関に申し込みましたら、資金化するには、新規の割引手形をやるにはやはり一週間ぐらいかかりますよということを言われて、そこら辺が対応できなかったということで当行にお申し込みいただいた。当行は担保をとりませんから、その手形があるなら結構ですよということで御融資をさせていただいて、手形の期日に御返済いただいたという状況でございます。
 また、これは衣料品の小売業のお客様なんですが、よく季節物の商品というのがあると思うのですが、それを今までは手形で支払って買っていた。現金で買ってくれればもっと割り引きますよというお話があった。借り入れの金利と割引率を計算したら借り入れた方が得なんですということで、うちのスモールビジネスローンを御利用いただいて、その後順調に、当然毎年同じようなパターンらしいので売り上げは確定しているわけなんですが、売り上げにおいて三カ月後に返済していただいたという状況があります。これは前向きな資金ということで、非常に我々もお役に立ったなというふうには思っています。
 このスモールビジネスローンなんですが、そうはいっても、まだ我々も試行錯誤の状況で今運営しているのですが、取り扱いの数字を申し上げますと、九八年の十一月から始めまして約三年過ぎたのですが、申込件数は延べで二万一千社に上っております。そのうち融資できたのは、我々のスキルの問題もあるのですが、延べ七千五百社の方に融資させていただきました。
 御利用先の業種的な割合を見ますと、サービス業の方が四三%、卸、小売、飲食業の方が二七%、建設業の方が一三%、メーカーですね、製造業の方が一一%という状況になっています。サービス業の方が四割以上ということで非常に大きなウエートを占めているのですが、その中でも広告関連ですとかコンピューターソフトとか建築設計等の割合が高くなっているような状況です。
 これはどういうことかと我々も考えたのですが、これはSOHOの、本当にスモールビジネス、ホームビジネスの方が多いという東京の地区性かなというふうには我々は考えております。つまり、こういう本当に小規模の企業の皆さんというのは、例えば電話一本で契約をなさっちゃうわけですね、発注とか受注を。今までの銀行ですと、契約書はありますかとか何か見積書はありますかとか、そういうお話になってなかなか対応できなかった業種ではないかということで、そういう方々に対しては、我々はある程度役に立ったなというふうには思っています。
 次に、このスモールビジネスローンを通じて見た中小企業さん、小規模企業さんの現状について、ちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 中小・小規模企業の皆さんに総じて言えることは、会社イコール経営者の方というのが総じて言えるのではないか。経営者の方がどのように考えていらっしゃるかとか、手腕とかその人柄とか、そこら辺が非常にウエートが大きいなというのは、我々常々話していて思います。
 ですから、担保がないからといってお断りするのではなくて、その方が二年後、三年後どういうふうにこの事業を持っていきたいのかとか、五年後にはこういう状況にしたいとかというお話をしますと、やはり夢を語られる方が結構多いのですね。そういう方々の事業に対する熱意とか頑張る姿勢というのは、やはり金融機関側もある程度積極的に工夫をしながらこたえていかなければいけないのではないかというふうに、我々の部隊はそう思っております。
 ただ、そうはいっても、中小・小規模企業さんにも問題は確かにあるわけです。
 以下、四点ほどちょっと挙げますと、経営者の方のオーナーシップの欠如というのですかね、失礼な言い方かもしれませんが、どうしても経営者の方は、小規模になりますと営業の方に重点を置かれる傾向がございます。ですから、いろいろお話しさせていただいても、決算書一期分しか我々は見ませんから、決算書を見ながらこうやってお話しするのですけれども、大ざっぱな数字だけつかんでいただければいいのですけれども、そこもわからないと。経理の方に聞いてくれとか税理士さんに聞いてくれ、自分は営業しかやらないんだよと言われちゃいますと、我々もちょっと対処のしようがなくなっちゃうので、いや、ここら辺は覚えておいてくださいということは申し上げるときがあります。
 また、本当に小規模になりますと、資金の流れが非常に不透明ということですかね。例えば、これは小売店さんが多いのですが、売り上げがあって、一回帳簿を通していただければいいのですが、帳簿を通さないでそのまま支払いに充てちゃって、その日はこれだけ残ったというようなお客さんも結構いらっしゃるのですけれども、そうすると、その日の残高しかわからなくて、どういう動きをなさっているのかというのがよくわからないもので、我々も、では今後こういうふうになさった方がよろしいんじゃないですかということでお願いをしている状況です。
 また、こういう金融難の状況ですから、自分の企業が幾ら足りないかというのがよくわからない。わかっているのでしょうけれども、なるべく多く借りたいというお客様が結構多いです。本当は、例えば今月は三百万しか要らないのに、五百万欲しいんですよと言う。よく聞くと、三百万で大丈夫じゃないですかと言うと、先がわからないからと言うわけですね。多く借りることはいいのですが、やはり返済しなきゃいけないという、そういう返済負担とか金利負担を考えますと、我々はどうしてもやはり、これだけ借りて、お返しになったらまたお借り入れすればよろしいんじゃないですかと。銀行からいうと収益性にはデメリットかもしれませんけれども、お客様からしますと、その金利負担とか、余計な資金を借りないで、また借りればいいということを我々はお願いしている状況でございます。
 また、先ほどとちょっと関連するんですが、資金管理ができていないというのが、まず四番目に挙げられると思います。
 というのは、自分の手元資金が余りないのにもかかわらず大きな契約をとろうとする傾向があるわけですね。そうすると、その前に、完成して回収する前に支払いが当然発生するわけなんですが、大きな契約になると、やはり中小企業の皆さんは、いやあ、とれたとれたというんでお見えになるんですが、ちょっと待ってください、その前に支払いどうなりますかということで、では、この支払いの資金調達はどうしましょうかという話で、結構そういうケースが多いです。その辺はいろいろお話をさせていただいて対処している次第です。
 このような状況を踏まえて、金融機関と中小・小規模企業さんの関係は今後どうあるべきかということは、個人的に思うんですが、まず、金融機関においても既存の担保主義とか書類主義の審査から脱却して、新たな評価、新たな審査基準というのをつくっていかなきゃいけないんじゃないか、これはもう時代の趨勢じゃないかと我々は思っています。そうはいっても、組織を変えるというのはなかなか難しいんですが、今やっと挑戦してから三年たったんですが、今でも徐々に変えている状況なんですが、これからも続けていきたい。
 一方、中小企業さんから小規模企業さんについては、経営者としての役割というんですか、そこら辺を果たすことが求められているんじゃないか。つまり、バランスのよい経営をしながら、金融機関とは、飾ることなく何でも相談できる、何でも報告できる一つのパートナーとしての役割、金融機関はパートナーとしての役割を果たすべきではないかというふうには思っています。
 現在、銀行に対してはいろいろ批判的な雰囲気が充満しているんですが、このような中でも新しいビジネスモデルを構築して、中小企業それから小規模企業さんと新たな連携を深めようとしている銀行もあるということもちょっと御承知おきいただきたいと思います。
 私の意見陳述はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、長野参考人にお願いいたします。
長野参考人 中小企業問題、なかんずく中小企業金融問題についてお話し申し上げる機会を与えていただきましたことを、心から感謝申し上げます。
 いろいろお話がございまして、ベンチャーの問題あるいは創造的企業の重要性、雇用対策等からございますが、私の方からは、圧倒的な多数を占める既存の企業の状況について、金融問題を中心にお話し申し上げたいというふうに思っております。
 まず、構造的、基本的な問題として、中小企業は、本来資本不足なんである、こういう御認識を賜りたいというふうに思っております。
 本来、資本が足りないんだ、それを一生懸命やっているんだ、なぜ今までそういうようなことがやってこられたのか、それは、二つの理由があるんじゃないかというふうに思います。これは、経済が右肩上がりで、つくったものはどんどん売れる、売れれば利益が上がる、こういう状況でやってきたということが一つ。いま一つは、社長を中心とした経営者一族の資産があったということであります。
 右肩上がりということと、それから社長の個人資産がたっぷりあった、この二つのことで本質的な、本来的な、構造的な資本不足をどうにかカバー、解消しながら今までやってきたんだ。これが、御案内のように、右肩上がりがストップした、そして社長個人の資産も物すごく目減りをしている、そういう状況の中で、資金不足、こういうような状況が来ている、こういうことがまず一つあるだろうというふうに思います。
 そこで、そういうような状況の中で、当面の問題と、それから多少長期的な問題、二つに分けてお話し申し上げます。
 当面の問題としては、これもいろいろお話がございました。やはり信用保証協会の問題、そういうことが一つあるだろう、構造的な問題としては、中小企業に対して長期の資本を調達するような制度というものを確立する必要があるのではなかろうか、この二点であります。
 いろいろ苦労していたわけでありますが、先月、二月の二十七日に緊急デフレ対策というものが出されまして、我々が悩んでおりましたこと等についていろいろ対応策というものが出されたわけでありますが、これはうまいぐあいに効果が出てくればいいなということを期待しているわけであります。
 そのうちの一つは、まず信用保証協会の問題であります。
 皆さん方御存じだと思いますが、例の平成十年の安定化特別保証制度、そのことについては私ども信用金庫が中心になってやったわけでありますが、そのことの高い評価をいただくということと同時に、いろいろ御批判もございました。何だ、金融機関の救済、返済に充当しているんじゃないかとか、あるいは政治家の先生方からのいろいろあっせん、紹介というようなものによってこの制度が悪用されているんじゃないか、あるいは、じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ要らない資金を出して、そして企業に借り入れ負担を増加させているんじゃないか、こういうことがあるわけでありますが、あれの本来の趣旨というものは、緊急避難的な措置としてやったわけでありまして、時間の余裕を与えよう、これが基本的な趣旨だというふうに思っております。
 平成十年につくった緊急避難的な措置ではあるけれども、まあ二年、場合によっては三年というような時間の猶予を与えれば、その間に企業そのものも、一生懸命やって企業の経営力をつけることができるだろう。それより以上に、二年、三年たてば景気もまあ何とか回復してくるんじゃなかろうか、二、三年の時間的な余裕を与えようということであの制度ができたというふうに思っておりますが、この時間的な余裕が十分活用できていない、御承知のとおりであります。
 したがいまして、現在一番困っていることは、まず、ああいうものを中心にして、保証つき融資、借りたもの、どうも返せない、返済条件を変更、緩和してくれ、こういう要望がある。緩和してくれということになると、緩和したことによって、いろいろあるわけでございますけれども、債務者の信用度が落ちてしまう、格付が落ちてしまう、こういうようなことになってしまわざるを得ない。そういうようなことだと、ただ緩和するというようなことだけでなくて、もう少しその返済そのものに時間的な余裕を与える、こういうようなことの対策が必要ではなかろうかという気がするわけであります。
 具体的には、例えば五千万借りていて二千万返したんだ、二千万これから返すというような場合に、やはりその二千万をただ返すということだけじゃなくて、それ相応の返済期限なり余裕期間というようなものを設けて、そして返済しやすい形に持っていく必要があるんじゃなかろうか、これがまず第一であります。
 それからいま一つは、これは構造的な問題ということになるわけでありますが、先ほど来申し上げている中小企業の資本不足、そういうようなものに対応する資本増強融資というようなものも必要だろう。大企業になりますと、エクイティーファイナンスというようなことで、大企業は自分の力で資本を調達することができるわけでありますが、中小企業はなかなかできないわけであります。それを、どうでございましょう、二十年、三十年ぐらいの期間で、超長期のローンということでそれに対する資本相当分の融資を実施する、そして、その借り入れというようなもの等については、これを負債性資本ということで一方で見ていくということによって中小企業の財務内容をしっかり見ていくというようなこと等が必要ではなかろうか、こういう気がしているわけであります。
 次に、金融行政にかかわる問題についてちょっとお話し申し上げたいというふうに思っています。
 御案内のように、従来は大蔵省というところが金融行政をつかさどっていたわけでありますが、それが財務省、金融庁ということに分かれた結果、中小企業金融ということについての政策の立案、審議するポストが実はなくなってしまったというふうに見ております。言うなれば、従来、大蔵省中小金融課というようなことでやっていたところが全くないわけでありまして、財務省は財務省としての仕事をしている。金融庁は金融庁として管理監督の仕事をしている。中小企業金融について政策的にどういうふうにしたらいいだろうということを検討する機関が行政の中でどこも出てこない、こういうような状況になっているわけであります。
 今、特に問題になっておりますのは、バーゼル委員会で新BIS基準というようなこと等が大きなテーマになっておりまして現在検討されているわけでありますが、そもそも、国際業務をやっているところに対する基準というものを我々のような国内だけでやっているところにそのまま持ってくるというようなこと等がどうなんだろうか、そのこと自体がいろいろな問題が発生することになるんじゃなかろうか。
 先般、バーゼルの方へ参りまして、そういう点について、バーゼル委員会としてのリスク試算の見方について、中小企業に対する融資というもののリスクは全く違うんだということを強く訴えてまいりました。同じ百億の融資でも、一件に百億融資するというのと、百件に、千件に百億を融資した場合のリスクはどうなんだろうか。小口分散機能というものを十分に訴えてまいりまして、そして新バーゼル基準についても十分検討していただきたいということを言ってきたわけであります。
 最後に、私ども信用金庫というようなものは、預金量からいいまして百兆円あるわけであります。貸出金も七十兆円あるわけであります。中小企業金融の重要性、そして特にその使命というようなものは非常に強いものだということを考えておるわけであります。
 昨年、信用金庫法制定五十周年記念を迎えたわけでありますが、そのときに、今申し上げた信用金庫の役割、そして信用金庫の使命というものを内外に宣揚して、私ども、これから一生懸命中小企業金融に徹していきますから、どうぞひとつそれを御理解くださいということを発表したわけであります。
 特に、私どもは、中小企業の発展なくして日本経済の発展はない、そして地域の発展なくしてこれまた日本経済の発展はない、この二つの観点から、中小企業そして地域に対して十分その機能を発揮していきたいというふうに考えております。
 特に地域につきましては、地域の中に住み、地域で仕事をし、地域でいろいろなことをやっている、そういうみんなが集まって、これはそれぞれが地域を発展させる使命があるんじゃないか、地域を発展させようという志があるんじゃないか、そういう志を持っている同志が結束をして地域の発展のために努力をしていこう。私ども信用金庫は、その中核となって、推進力となってそのお手伝いをさせていただきたい、こういうような考え方でいるわけでございます。
 とりあえずお話ししておきまして、何かまた御質問がございましたらどうぞお願いいたします。
 以上であります。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、鈴木参考人にお願いいたします。
鈴木参考人 初めにちょっとお断りしておきますけれども、今ちょっと歯を抜いておりましてお聞きづらい点があるかと思いますけれども、御容赦願いたいと思います。
 今御紹介いただきました、株式会社鈴木工機製作所の鈴木でございます。
 私どもは、大田区久が原におきまして、昭和十四年、ですからもう六十二年前でございますけれども、私の父が日本光学から独立いたしまして創業をしたという会社で、現在六十二年の歴史を持っておりますけれども、私は、父が昭和五十一年に他界いたしました後を継ぎまして、二代目として現在まで社長をやっております。
 現在のこの状況は、中小企業、我々にとって、私の二十六年間の経験の中でも一番厳しいなということを実際に感じております。今までのお話と違いまして、私、二十六年もやっておりますと、地域のこともいろいろやらされまして、現在商工会議所の大田支部の工業分科会長という立場に立たされております。大田区の中小企業、大体、何かテレビ等でも話題になりますと大田区へ行けというようなことで、不況だというと大田区へ来る。やれ糀谷の方が軒並みもう中小企業はなくなっているというような話が、一番先に出るのが大田区でございまして、その中の工業分科会長という大任を私は仰せつかっているわけでございますけれども、本当に皆さんのお話が切実な問題である。
 今、金融に関しては長野さんが、非常に私どもの訴えたいことを前もっておっしゃってくださったんですけれども、ダブってしまうかもわかりませんが、一応みんなで考え、こういうことを、時間がちょっと足りなかったのでなかなか代表した意見とはならないかもわかりませんが、レジュメに沿って御説明をさせていただきたいと思っております。
 私は、この機会に、日本の中小製造業の代表的集積地である大田区の製造業の現状と問題点、それから政策課題に関しまして意見を開陳させていただきたいと思います。
 御存じのように、大田区は典型的な中小企業が集積した地区であります。現在、減ったとはいえまだ五千軒以上の事業所が操業しております。どのぐらい減ったかといいますと、ピーク時、一九八三年には一万軒近い工場がございました。それが現在、この約二十年の間に半分に減ってしまっているというのが現状でございます。
 中小企業は、常に景気の荒波をまともに受けて、大手企業の生産の動向に左右されております。特に今回の不況は中でもとりわけ厳しく、昨年六月ごろからの大手電機メーカーの不況というのがよく新聞でも言われておりますけれども、大手電機メーカー自身の生産調整が始まり、大手の下請企業は受注の急減に見舞われました。これは過去にないことだと思います。それから、昨年の十一月以降、大手企業の設備投資の減少も加わり、中小企業の景況はさらに深刻化しております。
 東京商工会議所大田支部が会員を対象に昨年の十月に行った緊急アンケートの結果では、八割の回答企業が仕事量の減少に苦しんでいるという回答でございます。金も足りないけれども仕事の方がもっと足りないというのが現状だと思います。
 先ほど五千軒ぐらいの製造業があると申しましたけれども、分析してみますと、本当に、二十人以下の零細企業といいますか小さな会社が八五%、残りの一五%が二十人以上の中堅中小企業、会社をなしているのはわずか一五%しかないわけなんです。その一五%の中身を見ますと、数社の親会社を持った下請加工業と、また独自の商品を持った製造業、本当の製造業ですね、自社ブランドで立派に売っている製造業、それで中小企業でありながら日本でナンバーワン企業、その商品に関してはナンバーワン企業だと言われるところは何社もございます。
 そういうようなところであっても、今回のIT不況のせいですか、例えばプラスチックの成形機をつくるための温度計をやっているような日本トップメーカーでも受注が半減している。要するにプラスチックの機械が売れない。そのIT不況がすべてに、意外なところにまで波及していて、それが中小企業に最大のピンチを招かしている、こういうことではないかと思っております。
 また、独自の商品をつくっているところも、海外商品との競争ということで非常に苦労しておりますし、加工業の中でも、やはり最近はグローバルになりまして、例えば私どものお客さんでも、香港にお客さんがあるんですけれども、そこから見積もり依頼が来る。歯車をこれだけ、日本から何十万個供給してくれないかという話は来るんですけれども、実際に、例えば私どものお客様で見積もっていただいて、三十万個もあるから、まあ安いとは思うけれども、一個八円ぐらいは欲しいという見積もりが出てくるわけですね。それで香港に見積もってみますと、とんでもない、高いよと、香港でやると三円だというわけです。
 香港が三円で日本が八円、香港に比べればしようがないかなと我々も思ったところが、とんでもない、ドイツの見積もりで四円だと。日本はドイツの倍だというわけですね。何十万個とやる場合にはもうほとんど無人でやるわけですよ、二十四時間フル稼働で、オートローダーつけましてね。そういうものですら日本ではもう世界の価格に合わない。
 これは何がいけないかというのが僕らもよくわからないんですよね。要するに、機械の償却、まあすべてが高いんだろうと。人件費だけじゃないんだ、電気代から土地の税金から、要は、すべてが世界のレベルに比べて高いんだということがよくわかるわけです。要するに、人間がやるから高いということじゃないんですね、もう既に。ですからそこら辺が、海外に大手企業が海外戦略を持っていく最大の原因じゃないかなという気がするわけです。ですから、根本的なことを皆さんによく考えていただいて、その対策、日本全体としてどうしたらいいのかということを本当に考えていただきたい、このように思っております。
 また、特に零細企業の置かれている環境はまことに厳しい状況にあります。それは中小企業からのまた孫請という慣行ですから、中小企業に仕事がなければ下には仕事が流れないということですので、もうきょうあすの仕事がないんだ、どうしていると聞きますと、いやあ、もう三割だという。三割落ちたのかといったら、そうじゃない、三割しか仕事がないんだと、こういうのが現状でございまして、今でもちっともそれが改善に向かう気配は全然見えておりません。
 そういうことを踏まえた上で、こうした状況を打破する政策課題を、金融と経営支援ということで、皆さんの御意見をまとめたものをレジュメにも書いてございますので、それをちょっと読ませていただきます。
 金融面では、貸し渋り、貸しはがしの影響が優良な中小企業にまで及んでおり、何とか対策を講じてほしい。また、金融機関の中小企業向け融資は、量的にも安定的に確保していただき、企業の血液である資金が円滑に流れるようにしてほしい。
 一つ、平成十年の中小企業金融安定化特別保証制度は貸し渋り倒産の危機から救ってくれたが、その後の受注の伸び悩み、売り上げ停滞で利用者の返済が苦しくなっているのが現状である。返済条件変更には柔軟に応じてもらいたい。先ほど長野さんもおっしゃったとおりでございます。
 それからもう一つ、中小企業に対して円滑に資金が回っていないのは金融検査マニュアルに問題があるからではないか。大企業も中小企業も同じマニュアルで一律に判断されるのはおかしい。中小企業は長年培った信頼の中で商売を営んでいる。大企業と同じような厳しい審査が中小企業への貸し渋りを招いており、健全な中小企業への融資が滞っている。中小企業に配慮した規定を明確にしていただくなど、マニュアルの見直しを含め検討していただきたい。
 もう一つ、個人保証は貸し手のリスクヘッジの意味からやむを得ないのかもしれないが、我が国の場合、経営者は個人保証をしており、破産したときは中小企業経営者はすべての資産を失うことになる。万一の破綻時に備え、現在進められている破産法制の見直しを可及的速やかに進めてほしい。
 昨年十二月から取り扱いが開始されている売り掛け債権担保融資保証制度については、中小企業の短期の資金繰り調達に資する制度であり、迅速に普及することが望まれる。使い勝手が悪く、出足が鈍いと聞いています。関係機関も努力しているとは思いますが、この制度が普及するよう、より一層の工夫やPRなどを進めてもらいたい。
 それから、レジュメにはこれは書いてないんですけれども、追加いたしますと、中小企業の資本充実のための特別な融資を構築してほしい。
 これは先ほど長野さんからもおっしゃられたことの繰り返しになるわけですけれども、この間、ドイツからミッションの方が大田区へお見えになりました。そのときにお聞きした話ですと、ドイツあたりですと、そういう資本充実のために、十年据え置き、後十年で返済。要するに、先ほどおっしゃったように中小企業は資本力が足りない、株を発行して市場で集めるということもできない、したがって金融に頼らざるを得ない現状でございまして、やはりそれの返済がもう翌月から来るというのは非常に、一年据え置きとかそれでやっていくような簡単な仕事じゃないわけです、製造というのは。したがいまして、今機械一台買いますとやはり何千万する。それが一千万ぐらいまでの中小企業は非常に多いわけですから、自分の資本の中で機械一台も買えないような状態で営業をやっているわけですね。
 ですから、そういうための援助ということで、ドイツでは既にもうやっているよ、十年据え置きで、十年後から元利を返して、利息だけはもちろん払うわけですけれども、元利は十年後から十年ぐらいで返済する制度がもう既にあるというようなことをおっしゃっていましたので、日本でもそういうことをぜひ検討していただければ、このように思っております。
 それから、経営支援及び物づくり支援ということで申し上げたいと思います。
 中小企業の技術開発に向けた経営支援についてはもっと拡充強化してほしい。大田区にはオンリーワン企業と呼ばれる優良企業が多いが、独自技術の開発にはもっと国や東京都、区の資金援助が必要である。我が国にとって物づくりの技術が衰退していくことは大変大きな問題である。日本の製造業の基盤である技術や技能が失われることは国家的損失と認識していただきたい。そこで、技術開発に関する予算については相当な増額をお願いしたいということでございます。
 また、物づくり能力の衰退が激しい。若者が製造現場に魅力を感じないようだが、初等中等教育から物づくりの楽しさや重要性を教えていかないと、工業立国である日本はもたなくなる。
 熟練技能者はますます高齢化している。大田の製造業がすぐれているのは、熟練のわざと製造技術が融合しているからだ。熟練技能者を社会的にもっと評価してほしい、また、評価できるようなシステムを構築してほしい、このように私は思います。
 例えばドイツなんかですとマイスター制度という制度がございまして、要するに技能者、熟練者というのは一般国民からも尊敬される地位にあるわけなんですが、したがって若い人も、おれはマイスターで何を目指すよという若い子がいると聞いております。ところが、今なかなか日本では、私はこれでこういう技術をやっていこうという若い者が非常に減っている。要するに、初等中等からの教育の間に物づくりというものの楽しさを教えるということを今怠っているんじゃないかという気がいたしますので、ぜひもう小さいときから、物づくりがやはり国をつくっていくんだという観点で教育を支えていただきたい、このように思っております。
 以上、いろいろ申し上げましたが、一日も早く安定した経済となり仕事がふえることを望んでいるのが本音でございます。
 以上をもちまして、私の意見陳述とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどりさん。
松島委員 自由民主党の松島みどりでございます。よろしくお願いいたします。
 きょうは四人の参考人の皆様から本当に実のあるいろいろな御意見を伺いました。山ほど質問したいことがあるんですけれども、十分だけでございますので。
 今鈴木参考人の方から大田区の方の御説明がありまして、私は、東京で大田区の次に中小製造業の多い墨田区と、そして隣接する、これまた小企業の多い荒川区、この二つの区を地盤としているものですから身につまされるものがありました。とりわけ、仕事がないということ、もう月に五日ぐらいしか仕事がないとか、私もいろいろな金融政策のことを、金融、こういう制度があるからということを地元でアピールいたしましても、その前に仕事よこせよという話になる。失業率五・六%、今ちょっと下がっていますが、これがショックだといっても、これはサラリーマン、大企業型の失業率の数ですから、現実には失業状況に近い小企業の方がたくさんいらっしゃるということを本当につくづく思っております。
 そして、今のいろいろなお話の中で、伺いたいことは、非常に印象に残ったのが、まず港先生につきまして、雇用対策と創業支援の問題でございます。
 役所の方も雇用対策というと厚生労働省で、そしてこっちの方は何か中小企業庁でとか、経済産業というのはぶつ切りになっちゃっているわけですが、そういう形で、もう融資だけでなくて、イギリスみたいに年間幾ら、次を目指して頑張る場合、単に失業状態というのでなしに、それの中身によって渡すというのはいい制度だと思うんですけれども、都民銀行の加藤さんを初め、長野さんや鈴木さんからごらんになってどう思われるかというのが質問の一点です。
 もう一つ、二点目は、金融のあり方の中で、一つ、これも港先生が言われました。保証料率の話でございましたけれども、特に加藤さん、長野さんに伺いたいのは、相手によって金利そのものに差をつけるということを大幅に考えていけるかどうかということです。
 それから最後に、長野さんがおっしゃいました、資本の充実のための十年、十五年、二十年ローン、こういったものは、要請が鈴木さんからもございましたけれども、民間の金融機関でできるのか、あるいは政府がどういうバックアップをしなければできないのか、そのあたりを伺いたいと思います。
 ですから、質問は港さんを除く三人の方になります。
谷畑委員長 それでは、ちょっと挙手をお願い申し上げます。
 それでは、加藤参考人。
加藤参考人 先ほどの、保証料率、また金利の件で、企業さんによって差をつけていいのかどうかという御質問でございましょうが、我々ふだん日常業務でお客様と接している立場なんですが、政府系の信用保証協会さんの保証料は、これはやはり国がやっているということでしょう、低く抑えられているんですが、それよりもお客様の望んでいるのは、やはり融資してほしい、多少保証料は高くてもいいからこの場をしのぎたい、この月末をしのぎたいという声が非常に多うございます。
 ですから、これもやはり柔軟に、今まではこうだからというのでなく、やはり柔軟に対応するべきではないかと私は個人的には思います。
 以上です。
谷畑委員長 次に、長野参考人か鈴木参考人さん、今の松島みどりさんの質問に対してコメントがありましたら。
 中小企業によって金利に差をつけてというのが一つの提案であったわけですけれども、そういうことについてはどう思うかということでありますので、もしもよければ。
 それでは、鈴木参考人さん。
鈴木参考人 金利に差をつけろ、逆に今つけられているという状態じゃないかと思います。
 本来は、今自由競争ですから、皆さん、各銀行でそれぞれ勝手な金利をつけておられるんだとは思うんですけれども、中小企業のいいところと悪いところと比べますと、もうそこで歴然と、〇・何%の、割引にしろ借り入れにしろ金利差がついている、私はこのように思っておりますけれども。
谷畑委員長 ありがとうございました。
 松島みどり君。
松島委員 実際に金利はついているわけですけれども、それを加藤さんが言われるようにもっと大幅に、それから港先生が言われるようにもっと大幅につけてでも、商工ローンに駆け込むよりはましだというぎりぎりまで上げるかどうかという問題かなと思っております。
 さっき伺いました資本充実のための長いローン、これについて、あるいはどなたかありましたらお願いいたします。
長野参考人 松島先生から、中小企業の資本不足に対する対応策として超長期の、そういうような資金を私が供給したらどうかということについて、それは、民間の金融機関でそういうようなことができるのかということがございます。
 私の本当の発言からいうと、政府系金融機関と一緒になって民間金融機関がそういう超長期ローンというものをつくったらどうだと。意地の上からは民間でやりたい、こういうことを申し上げたいんですが。しかも、政府系金融機関が今こういう問題になっているから、必ずしもそれをバックアップしようということでは毛頭ないわけですが、その両方の意味合いを含めて、両方でひとついいものをつくり上げることができないだろうか。
 いろいろ難しい問題がございまして、住宅ローンについても同じようなことが出てくるわけでありますが、私どもはどちらかというと、やはり長期のローンということをやるについては、限度、限界、短期で割と集める、こちらで債券を発行するということは余りやっておりませんから、短期で集めて、そうすると長期で運用する場合にはおのずから限度、限界があるだろう。そうすると、政府系金融機関等と協調をして、どうでしょうか、三十年ローンぐらいのをぜひつくり上げたいというふうに思っております。よろしくどうぞ。
松島委員 どうもありがとうございます。
 政府系金融機関、今いろいろな議論がされていますけれども、官業が民業を圧迫するのではなく、補完し合って、そして中小企業が実際にやっていくためには、そういう形での生き残り方を私どもも提言していきたいなと思っております。
 最初にちょっと、要領が悪かったんですが、いろいろなことをまとめて質問させていただきました。
 創業者の支援というものの中で、これはどなたでも結構ですが、今実際に創業者支援というのが、まさに港先生が言われたように、何か超優良の、何かぴかぴかの技術志向の、そういうことだけ言われているけれども、そうじゃない、もうちょっとローテクも含めて、いろいろなレベルのものを含めて商売のこと、製造業だけじゃなくて必要だと思うんですけれども、このあたりについて、政府に望むこと、あるいは政策としてございましたら御発言をお願いします。
港参考人 創業支援についてでありますが、現在の失業保険の制度によりますと、創業すれば失業保険が打ち切られるわけですね。これがかなり起業を抑制的に作用していると思うんです。起業で成功しているのは、失業してかなり早い時点で創業するのが成功しているケースが多いわけでありまして、したがって、失業保険をもらえるだけもらってから起業しようというのはなかなか成功しないわけですから、起業しても失業保険給付を打ち切らないというのが一番簡単な方法である。もっと、さらに進めば、イギリス型のアローアンスを与えるという方向も考えられるのではないかというふうに思いますけれども。
松島委員 今おっしゃいました、確かに、起業されましても、創業してもすぐには一家が食っていけるだけのものがない、まだ持ち出しでという形態が多いわけですから、これは失業保険の見直しとして、私は厚生労働委員会にも属しておりますので、こちらで主張してまいりたいと思います。
 四人の先生方、どうもありがとうございました。
谷畑委員長 松原仁君。
松原委員 きょうは参考人の皆さん、本当にどうもありがとうございます。御質問をさせていただきたいと思っております。
 私も地元が大田区ということでございまして、本当に中小企業の町というか、そういったところで活動をしております。
 私自身は、中小企業問題を考える場合に、やはり中小企業の位置づけというのは、これは、国の国策というか、オピニオンリーダーである、経済における実はオピニオンをリードしていくのが中小企業の経営者の方々だろうというふうな認識を持っております。したがって、本質的な部分からいくと、日本の景気回復は中小企業経営者のメンタリティーを無視してはあり得ないだろうというふうに思っております。
 その一方において、先ほどから参考人の皆さんのいろいろなお話の中にありましたように、結果的に中小企業が、非常に恒常的金欠状況と言うと言葉は悪いですが、お金がない状況が続いている。これは、なぜそういうものが続いているかとするならば、それは、従来の日本の中小企業に対する税制にいろいろな問題点があったのではないか。法人税の高さというものが海外に比べて極めて高いわけでありまして、そういうふうなこと、また、相続税も極めて農業なんかに比べて特に製造業は高いというふうなこともある中において、結果として、中小企業にどんなに利益が上がってもなかなかお金がプールされなかったということが恒常的に中小企業の金欠という状況になってきたのではないかと思うんです。
 そういう中で、今金融の再編というものが行われておりますが、この金融の再編というのは大変にさまざまな問題をはらんでおります。例えば、その中でBIS規制の問題というものもあるわけでありますが、先ほど長野参考人がお話しになったんですかね、四%という、そういったことで、現実にそのことが、一方で公定歩合は下げても、実際には運用の部分では貸しはがしにつながるということになっていると思っております。
 そんな中で、鈴木参考人にお伺いをしたいわけでありますが、現実の地元の地域の中小企業の方々で、仕事を、現実に健全なる仕事、もちろん仕事量は減っておりますが、そうは言いながらも仕事としては回転をしていく、回っていく。しかしながら、日切れという表現を使っていいのかわかりませんが、新たにお金を借りることができないとか、借りているものを貸しはがしをされるとかいうことによって、健全な仕事をしていながらも廃業に追い込まれるというふうなケースがあるのかどうか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
鈴木参考人 具体的な例まではちょっと聞いておりませんけれども、現実に一番問題になっておりますのは、土地が下がっちゃった。土地の下落が要するに担保力を、借金の方が上回ってしまうというような結果を、逆転現象を起こしてしまいまして、結局、過去の、バブル時代は別といたしまして、例えば、せめて二十年前の時価ぐらいがあれば多分逆転しないで済むぐらいの借金しかなかったにもかかわらず、土地がそれのまた半分になっているというようなことで、結局、担保力不足というようなことで貸しはがしに遭って、売っても借金が返せないという、昔、二十年前でしたら十分返せたものが返せない。したがって、担保力も足りないからもっと追い担保を入れろ、また、入れない限り金を返せというようなことで、非常に苦境に立っているという方は何人かいらっしゃいます。
松原委員 非常に大事な部分だと思っておりまして、例えば新しく事業者が、企業が物事を行う場合に、インフレ傾向であれば、実業で若干赤字であっても、これは余り言うと邪道になりますが、赤字であっても、キャピタルゲインで赤字分は乗り越えられるという議論もある。逆に、デフレに入ってくると、実業が黒字であっても、キャピタルロスがあるから結果的に事業しづらい状況があるというふうなことも精神的にはあろうかと思っておりますが。
 鈴木参考人のお考えでは、やはり土地は今よりも少し上がらないと、上がる傾向と言った方がいいかもしれません、上がる傾向であるということは、中小企業の今の沈滞した厳しい状況に対してはプラスになるのではないかと思うんですが、率直な個人的な御印象でも結構です、おっしゃっていただきたいと思います。
鈴木参考人 私は、必ず、デフレをとめるにも、土地が多少右肩上がりになるであろうという気配、最低でももうこれ以上下がらないということがデフレをとめる一番最大の特効薬じゃないかと。自分のことを申し上げますと、私どもの工場のある敷地あたりも、バブルの最盛期は五百万と言われたわけですね。それが今、よくて百五十万以下だろうと。そうしますと、例えば担保力もそれ以下に下がってきてしまう。
 また、一番ひどいのは、路線価と逆転しちゃっている、時価の方が。そうしますと、例えば相続の場合は路線価で評価しますから、時価で売っても払えなくなっちゃうわけですね。それで、売るとまた譲渡税がかかるというようなことで、売っても地獄、そのままいても地獄というようなことで、結局物納せざるを得ないというような個人的な家庭の方も相当いらっしゃいます。
 したがいまして、もうちょっとやはり、僕は、少なくともバブルの以前ぐらいのレベルまで土地は上がるべきじゃないか、このように考えております。
松原委員 非常に納得のいく、そうだろうなというふうな議論でありました。
 次にお伺いしたいことは、私も地域でいろいろと話を聞いていて、先ほど金融の再編があるということを申し上げました。BIS規制があって貸しはがしをするということ。貸しはがしをするときに、特に今、鈴木参考人がおっしゃったように、土地の値段、担保が下がっているからということで貸しはがしを容赦なく行うこともあろうというふうに思っております。
 こういったものはそれ自体大変問題でありますが、同時に、金融の方の再編が行われて、信金、信組がおびただしく、今、大田区であれば、ある信金が廃業をした、そうすると、私のところにも話がいろいろとあるわけですが、結局、今までは健全なる中小企業としてその金融機関とおつき合いをしてきた、しかしながら新しいところ、具体名を挙げない方がいいと思うが、例えばAからBに移ったときに、Bに行ったらば、まま子扱いという表現を使っていいかわからぬけれども、けんもほろろだ、こういう話なんですね。
 それは、例えば、本当に命がけでもあすが厳しいというところ、これも何とかしなきゃいかぬのだけれども、そうじゃなくて、健全で、今までの金融機関とつき合っている限りにおいては、スリーAだという表現を使っていいかどうかは別にして、そういうところだったと。しかるに、現実こういうふうになるとまま子扱いだ、大変困っているんだ、こういうふうな話が寄せられることがしばしばあるわけであります。
 実際、一つのそういった金融機関が廃業になることによって健全なる中小企業が二千社ぐらいつぶれるだろうというふうな指摘もあるんですが、こういったことにつきまして、長野参考人、どんなお考えかをちょっとお伺いしたいと思います。
長野参考人 今いろいろなお話だったというふうに思っております。
 まず、金融機関が倒産をする、そうした場合に、現在の状況ではどこかのところに受け皿になってもらってそこへ移す。そうすると、そこでの資金調達は従来どおりできるかどうか、健全な企業であっても、そこへ行ったらもう借りることができないんじゃないか、こういう御指摘だったというふうに思っております。
 もとより、受けたところはなぜ受けたかということ、受けなくてもいいんだけれども、なぜ受けたかということの理由には、やはりそこでの取引が途絶えてはいけない、どこかが受け皿になってもらって、資金調達の支障のないようにということで受け皿になってもらう、これが目的なんですが、実際問題として、十年、二十年、三十年おつき合いいただいた先と、新しくわからない先、このことについてどうだろうかということになると、非常に苦労されることはあるのかな、幾ら努力をしても苦労することはあるんじゃなかろうかな、このことはそのように思っております。
 それから、健全な企業、こういう表現でございましたが、健全な企業というのは何をもって健全かということは、これはまた議論のあるところでありまして、御承知のように、例えば、今七割の企業は赤字である。赤字であったら健全性がないのか、こういうようなことよりもそれからが実は問題だろう。健全性とは何ぞやということが出てくるわけでありますけれども、そんなに健全なところはないというような状況の中で、今言ったようなお困りになることは多分あるだろうというふうに思います。
松原委員 私は、金融庁が主導している金融機関の数を減らすという政策自体が、結果的に減らす方向を目指しているということになるわけですが、私は、やはり地域金融機関というのは、支店の半径五百メートル以内、まさに、そこのおやじさんが、五人でやっている中小企業であれば、やっているその仕事場でプレスをしている姿が見える。そういうふうな人の実態をわかって、今おっしゃったように、何が健全じゃないのか、多少利益がなくたってそれは健全かもしれない、こういういろいろな物の考え方があるので、今みたいにどんどんと中小金融機関がつぶれる、つぶれてもしかるべきだというようなマニュアルの援用がされているように私は思うんですが、こういうのはどうかなと。私、本当に地域の中小企業にとっては大きなマイナスになると思うんですが、長野参考人、御意見いかがでしょうか。
長野参考人 私は、必ずしも現在の金融庁のやり方が、金融機関をつぶそう、数が多いよ、オーバーバンキングであるよ、だからどんどん少なくして、もう少し金融そのものの合理化、効率化を図ったらいいじゃないか、そこまでは私は思っておりません。そこまで考えたくないんです。
 ただ、先ほど来問題になっておりました金融検査マニュアルの妥当性、ちょうどこの間のデフレ対策におきまして、金融マニュアルについてどうなんだろうかという課題提示がされたわけであります。
 私も、先日金融庁の方といろいろ話をして、このたび金融検査マニュアルの見直しをしていく予定があるようでと言ったら、いや、見直しは絶対いたしませんといって否定されちゃったんですけれども、いずれにしても、その内容について、実例というようなものをつくり上げていこうじゃないかというようなことでいろいろな検討がされているということはありがたいことで、そういうような中において、金融機関、そして中小企業、それぞれが支障のないように、そういう形の金融検査マニュアルに持っていきたいというふうに思っております。
松原委員 先ほど、例えば安定化特別融資がありましたけれども、これの期間を長くしてほしいなんという声も随分と地域で上がっていると思うんですが、これを長くするというよりは、本来、経済は、さっきもどなたかがお話ししていましたが、不況というのは、大体今まではこれで回復するだろうというスパンがあった。今は、乗り越えて見えないと。さっき、土地の値段がインフレ傾向になればまた違うだろうという話がありました。私は、そういった意味ではこの辺を変える。しかし、変えると今度は貸さないんですよね、ランクが落ちるという話がありましたが。だから、その辺が非常に問題だろうというふうに思っております。
 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、今度は未来に向かっての話をしていきたいと思うんです。
 先ほどドイツの話を鈴木参考人が随分となさった。私は、空洞化は人件費の問題だけではないと思っております。例えば、ガソリン代だってあるだろうし、ガソリンがあれだけ税金があって、首都高が高いとか、土地税制が高いとか、それから電気代が高いとか、そういうふうなたくさんのいろいろなことがあるわけでありますが、こういうものをやはり解決していくということも一つは必要であります。それは、中小企業を取り囲むインフラというんですかね、その整備だろうというふうに思っております。
 しかし、同時に、やはり中小企業側も、生存するという根本的な、みずからのこぶしで立ち上がるという部分がなければ、やはり企業でありますから、これは話が進んでいかない、このように思うわけであります。
 そういった意味では、例えばドイツもさまざまな試みをしているだろうし、アメリカなんかでは、ここにいろいろな研究がありますが、シリコンバレーもやりましたが、ベン・フランクリン・パートナーシップとか、例えばトーマス・エジソン・プログラムとか、ピッツバーグは、それまでは鉄の町だったのが、全くバイオとかそういったもの中心の町に移っていった。
 その根本にあるのは、技術的にはやはり連帯、連動していない部分がある、しかし、綿々として連動している部分というのはまさに企業家精神だ、これだというふうな報告も、まあ詳しくはこれからまだいろいろと話を聞けると思うんですが、あるんですが、こういった部分の地域の皆さんの、今の部分は経営環境その他の問題ですが、今言ったような、地域としての何かそういったコミュニケーションとかあるのか、何かあるのか、この辺ちょっとお伺いしたいと思います。
谷畑委員長 鈴木参考人。簡潔に、ちょっと時間が迫っていますので。
鈴木参考人 現在、私ども工業分科会を中心といたしまして、ものづくり研究会というのを去年からやっております。一体、大田区にどういうものを、みんなで生き延びるためにどうしていったらいいのか、事業継承をどうしたらいいのか、いろいろな問題に関して手をつないで、大田区の活性化のためにどうしたらいいかということを検討する意味でものづくり研究会を開催して、二カ月に一遍ぐらいやっております。将来、それを何とか回答を出していきたいな、このように思っておりますが。
松原委員 どうもありがとうございました。
谷畑委員長 河上覃雄君。
河上委員 公明党の河上でございます。
 参考人の皆さんには、大変にありがとうございます。十分間でございますので、要を得て私も質問をいたします。よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 港参考人にお尋ねをしたいと思いますが、先生の文献を読ませていただきまして、IT革新を積極的に活用する、その方向性を私も共有できるわけでございますが、コスト面などさまざまな課題も多いわけでございまして、また国際競争力というものが激化する、中小企業は非常にその意味では、その点からいえば欠けているわけでございまして、しわ寄せがさらに一層進むのではないのか、こういう心配もあるわけでございます。
 そこで、IT革新時代に対応した中小企業の新しいビジネスモデルというのはどのようにあるべきなのか、先生の御所見と、さらに新製品、新技術の開発における産学官及び企業間のあり方について御所見を伺えればと思います。
港参考人 ITを中小企業の各経済活動に活用していくということは非常に重要でありますが、問題はITのハードウエアの導入ではないわけでありまして、今非常にIT機器の値段が低下しておりまして、その点では中小企業は余り困難性はないわけです。しかしながら、ITを導入してどういう効果があるかというと、これは即時性なんですね。すぐに情報が伝わるということです。
 そうすると、例えばBツーBにITを応用しようとすると、瞬時に商品の項目であるとか値段とかそういうものを入れかえるメンテナンスをやらなきゃだめなんですよね。ところが、中小企業でそういう自前でメンテナンスをやれるというところは非常に少ない。ここが、中小企業がなかなかITを活用し切れないところであります。
 したがって、ITのハードウエアの導入に対する支援というよりも、ITを使いこなす、情報リテラシーと申しますか、そういう能力を高めるような研修支援ということが非常に重要であるというふうに考えております。
 それから、もう一点のお尋ねは何でしたか。(河上委員「産学官」と呼ぶ)産学官でございますね。
 産学官でございますけれども、確かに、大学からベンチャーを創出しよう、こういう動きは非常に活発になっており、大学でも非常にそういう雰囲気が高まってきています。これは、この十年間で非常に大きな変化であると思うんですね。
 ところが、日本の場合、アメリカの場合は、大学の研究者は自前で研究費を稼いでこなければ研究費というのは実はないわけです。ところが、日本の大学の制度では、研究費は上から与えられるというか、一定の割合でいただけるわけでありまして、そうしますと、どうしても社会のニーズとかけ離れた、要するに学会で評価を受けるような研究に集中しがちでありまして、なかなか企業、とりわけ中小企業の技術的なニーズと大学の持っている技術資源とがミートしていない、こういうふうな問題があるわけであります。
 大学から技術的な移転をするためには、やはりこれからは、中小企業なり産業界のニーズに対応するような研究に対してより大きな研究費の支給が行われるとかそういうふうなことがない限りなかなか現実には難しい。実際にTLOをつくっている大学もありますけれども、それで現実に技術移転が行われたケースというのは、まあ二、三件、多くても数件程度というのが現状であって、この点を相当改善していく必要があると存じます。
河上委員 長野参考人にお尋ねをしたいと思います。
 金融庁の検査マニュアルの件でございますが、中小企業の特性を踏まえて、配慮事項が末端まで浸透していないという事実もあると思います。しかし、皆さん方の側の対応にもやや問題はなくはないという指摘もございますが、これらの問題につきまして、検査の実態やら、あるいはマニュアルの改善が必要ということならば、会長さんの、参考人の御意見をぜひ聞かせていただきたいと思います。
長野参考人 金融検査マニュアルの問題につきましては、かねがねその問題点について指摘させていただいてまいりました。本来、大企業に対するものと、我々、中小企業を対象としている金融機関に対する金融検査マニュアルが同じでいいかどうかということで、やはり中小企業金融機関に即した金融検査マニュアルというものがあってしかるべきだろうと。
 そうしましたところ、やはりダブルスタンダードといいますか、二つの尺度で同じ金融機関をはかるということはできないんだということでずうっと来ていたわけであります。しかも、なおかつ、中小企業の特性、そういうことについて十分配慮するようにということは金融検査マニュアルの中に、各所に書いてあるじゃないか、それを金融検査官がよく読んで、そのとおりやればいいんだということでありますが、金融検査官がなかなか、最近の検査官は経験が浅いというようなこと等がありまして、適切な検査ができていないというのが実態だというふうに思っております。
 ちょうど、これも先ほど申し上げました、今度のデフレ対策の中で、金融検査マニュアルについて問題点を、実例集をつくって一つ一つ検討していこうよと。我々も業界としてそういうことをいろいろ検討しております。それも、ただ単に、我々は我々、中小企業庁は中小企業庁でなく、できたら一緒に、ひざを突き合わせてその内容について検討していった方がいいんじゃないか、そういうふうに考えているわけであります。
河上委員 ありがとうございました。
 鈴木参考人にお尋ねをしたいと思いますが、先ほどいろいろと御意見をいただきましたので、いろいろなケースについても、お話をちょうだいいたしましてわかりました。私どもも、デフレ克服こそ経済政策の最優先の課題だと、そして中小企業向けのセーフティーネットに対しましても、対策を、提言等をまとめてやらせていただいておりますが、中小企業の中には、一時的な資金繰りがつかないために経営難に陥るところも多く、優秀な技術や能力を持ちながら、また、さらにやる気をお持ちでありながら中小企業が破綻するということは、我が国にとっても大変な損失であろう、こう認識をいたしております。
 貸し渋り等の話も先ほどの質問で出ましたから重複を避けますが、この際、まだ言い足りなかったことがございますれば、ぜひともお聞かせをいただきたいと思います。
鈴木参考人 私が思いますのは、せっかく東京都で、経営革新法に基づく技術革新を目指す中小企業のための申請受け付けというのがございまして、経営革新法に基づいてこれからやっていこうという中小企業には東京都が一応認証を与えるよという制度がせっかくあるんですけれども、ちゃんと表には書いてあるからしようがないといえばしようがないんですが、これは何も金融を借りやすくするためのものではないと、書いてはあるんですね。ところが、技術革新をしていくためにはどうしても設備投資が要る。ところが、それを銀行に持っていっても、いや、これは別に、それはわかるけれども、今の状況じゃ貸せないよといって、せっかくの技術革新が伸び悩んでいる会社が何社かございます。
 ですから、そういうのはせめて、せっかく認証をいただいたところには優先的な別枠の保証制度でもつくっていただくとか何かしていただかないと、せっかくの技術が滞ってしまうということもございますし、オンリーワン企業でありながら一月末に倒産してしまった会社もございます。これは、先ほどどなたかがお話しになった、取引銀行から倒産、合併によってほかの銀行に回された、新しいところへ行ったら手形も割ってくれないんだ、そのために結局月末の資金繰りがつかずに、オンリーワン企業のある会社がつぶれてしまったという現実がありますので、ぜひそこら辺は、そういうことのないように金融機関も対応していただければ助かるな、このように思っております。
河上委員 質疑時間が参りましたので、加藤参考人には、質問をしようと思っておったんですができませんでした。担保主義等から脱却して新しい制度が必要とおっしゃいましたが、この辺の御意見をぜひとも一遍拝聴したいと思っておりましたんですが、失礼をいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
谷畑委員長 達増拓也君。
達増委員 参考人の皆様、大変お疲れさまでございます。
 中小企業支援の政策、いろいろあるわけでありますけれども、広く町づくりの中で、これは主として商店が中心になりますけれども、中心市街地活性化ということをやって、古くからある商店街を中心にして、そこに、都市計画の発想でありますとか、あるいは、単にその商店街の人たちだけではなく、そこに住む住民ですとか、あとビジネスをやっているいろいろな関係とか、そういったところがみんな一緒になって町づくりを進めていこうという中心市街地活性化、平成十年に中心市街地活性化法ができて、自治体の基本計画ができて、そして町づくり機関などをそれぞれの地方で立ち上げたのが、大体去年あたりから本格的に動き始めているところです。
 中小企業支援としてどのようにそこを評価するかということを、これは港参考人、加藤参考人、そして長野参考人に、それぞれの観点から伺いたいと思います。
港参考人 中心市街地の活性化でありますけれども、これは大規模店舗法が外れたことからつくられた経緯があると思いますけれども、フランスとかに比べまして非常に日本は大規模店舗を、中心市街地にどんどん新しい店舗ができていくという状況、フランスの場合には、そういうことを非常に抑制をしております。それに対して日本の場合には非常にそれが甘かった。逆にそれが中小商業者を抑圧したということがあるわけです。
 ここで中心市街地活性化法ができたわけですけれども、しかしながら、依然としてそういう大規模店舗との直接的な競争というものにさらされているわけでありまして、これをどのような特色ある中心市街地にするか、そういうプランがやはりなかなか立てられない。タウンマネジャー制度等もありますけれども、なかなか優秀なタウンマネジャーがいない。特に、それぞれの地域の文化に密着したような個性のある商店街をつくっていくということがなかなかできていないわけでありまして、こういうところをもっと強化していく必要がある。そうしないと、第三セクターでつくったんだけれども破綻したというふうなケースも既にもうあらわれているわけでございます。
 したがいまして、私は、中心市街地活性化というのはこれから一定の役割を果たしていくと思いますけれども、より高度なコンサルティング機能とかそういうものをつけないと、全国画一的なものをつくってもなかなか成功しないのではないかというふうに考えております。
加藤参考人 今のお話なんですが、私は余り専門じゃないので的確なお答えかどうかわかりませんが、今のお話を聞いていますと、やはり地元の、その地域の活性化とかそういうのにおいては、我々地域金融機関、長野さんがおっしゃるような信用金庫さん、地域に密着した金融機関の役割は非常に大きいと思います。
 ですから、これは私の個人的な意見ですが、金融機関というのは、単に融資する、預金を受け入れる、それだけではなく、やはり地域の一緒のパートナーとしてこれからやっていかなければ存在価値はないんじゃないかというのは常々考えております。
 的確な答えかどうかわかりませんけれども、以上です。
長野参考人 中心市街地活性化法の問題、どういう観点でとらえるかということはいろいろあると思います。そのうちの一つとして商店街問題というものがあるわけであります。
 私ども、そこに中山義活先生がいらっしゃるわけでありますが、今問題になっておりますのは、中心の、広域型商店街でなくして近隣型、横丁の、昔からやっているそういうところが全部シャッター通りになっているわけであります。そういうようなところをどうするかということを、一つは商店街と、それから我々と一緒になって、そこに行政が入って、三者が協議してやる必要がある。
 ただ、一番大事なのは、商店街自体のこの皆さん方が、どういうような意識でどういうふうにやるかということを中心になってやっていただかないと、それこそ金だけの問題じゃないよということになるというふうに思いますので、そういうことについて非常に重要なことだというふうに思っております。
達増委員 次は、物づくり関係のことを伺います。まず、鈴木参考人にお答えいただいて、その後、港参考人という順番で伺いたいと思います。
 物づくり支援、既にいろいろありまして、大田区にも、あれは都がつくった立派なビル、その中に物づくり支援、経営支援も含めて、それからちょっとした研究室みたいなスペースもある、そういう支援があるわけですけれども、そういった物づくり支援の政策に対する評価について、鈴木参考人そして港参考人に伺いたいと思います。
鈴木参考人 大田区にはPiOという産業プラザというのができまして、その中に東京都のいろいろな試験設備等も入れて簡単に使えるように本当にやっていただいておりますので、非常にそれは皆さん有効に活用させていただいて喜んでおりますし、そういう面での支援というのはかなり大田区は恵まれている方かな、このように私は思っております。
 これ以上は、私も何を望むのかなということはあるんですけれども、今、現状では、望むのは、要するにどうやったら仕事がふえるのということばかりで、その他に対する不満というのは余り出てきておりません。
港参考人 物つくり支援というのは、基本的に、いかに技能者を養成して技能を継承していくかというふうな問題でありますけれども、一つは、先ほどから議論が出ておりますように、日本の場合には、技能労働者の社会的地位が余り高くないというふうな問題もあります。
 今までは、どちらかというと、量産的な商品をつくって海外に輸出していくというような形でありまして、技能集約的といいますか、そういう一品生産的なものが余り重要なウエートを占めてこなかったわけでありますけれども、しかし、ヨーロッパの中小企業なんかを見ていますと、工場がいわば工房というかスタジオのような感じでありまして、みんなが作業着ではなくてブルーか何かの白衣のようなものを着ているというような、そういう形で専門職としてやっている。
 やはりそういうふうな技能労働者に対する地位の引き上げ、あるいは経営者が自己の労働者に対する環境の改善、こういうふうなことをしないと、幾ら物づくりが大切だと言ってもこれはなかなか実現しない。実際の待遇あるいは環境というものをよくしていく必要があるんじゃないかというふうに思います。
達増委員 次は、いわゆる構造改革という考え方について伺いたいんですけれども、これは、まず鈴木参考人に伺って、その次は、金融面から見て長野参考人に伺いたいと思うんです。
 構造改革というのは何なのかということなんですが、経済財政白書、前まで経済白書と言って、去年の秋には経済財政白書という名前で出たんですけれども、その中に構造改革の定義のようなものがありまして、要は、効率の悪い部門から効率のいい部門に人やお金を移すこと、それが構造改革だと。それで、痛みは伴うかもしれないけれども、倒産とか失業とかということで、効率の悪いところから人やお金が吐き出させられれば、それが効率のいい方に移ってそれで日本経済は強くなるという考え方。この考え方がここ一年くらい政府のいろいろな政策を主導してきた格好になるとは思うんですけれども。
 一方では、それは余りに単純な考え方であって、効率的な部門というのは、もしあれば、別に痛みを与えなくても、もうけ話といいますか将来有望なところがあれば人やお金はそっちに行くのであって、そういかないということは、なかなかそれは、うまくいくか、現実的じゃないという意見もあるんです。その辺、現場の感覚あるいはお金を貸す側の感覚からして現状どうなっているかという意見、まず鈴木参考人に伺いたいと思います。
鈴木参考人 物づくりというのは一朝一夕に業種転換ができない。要するに、設備によってやれる仕事が決まっちゃうわけですね。ですから、やっている当事者は自分の設備でできる仕事を一生懸命探してはやっているわけですけれども、それがだんだんと――私が一番問題なのは、平成三年ごろにバブルが崩壊いたしまして、それから中小企業の設備投資が全く行われていない。したがいまして、機械がもう古くなってきちゃっているのが現実だと思うんです。
 ですから、今ですと、韓国とか台湾とかそちらの方が優秀な設備を政府の援助でどんどん新しいのにかえちゃっていて、日本の中小企業の方が設備面ではおくれてきちゃっている。したがって、もうそういうところは用なしだからつぶれてもいいんだよと言われると非常につらいところがあるんですが、長期不況によって、それがなかなかサイクルできなかったというところを何とか、皆さん、中小企業の方々全員が自分でも感じてはいるんですけれども、将来像と言われると皆さんが、私が会社に入るころはおやじの後を継げばいいんだ、継ぐのが当たり前だという雰囲気だったんですが、もう今は、おやじはおやじ、息子は息子、後はもうつながらなくてもいいよ、おれの代で終わるという方が非常に零細企業にとっては多くなっております。そんな感じを受けております。
長野参考人 先生のおっしゃる構造改革ということの意味がちょっと理解しかねるわけでありますが、こういうようなことでお答えしていいのかどうか。要するに、経済合理性ということに力点を置くか、社会政策、そういうところに力点を置いてどっちで考えていくか、そういうことからすると、私は両方だろうというふうに思います。
 ただ、私どもの立場からいいますと、例えば経済合理性、市場原理主義ということですべて物事を判断し律すると、これはえらいことになるんじゃなかろうかな。これは言うなれば、ここまで言うと言い過ぎかもしれませんが、アングロサクソン、アメリカンスタンダードということですべて考えられると、少なくとも中小企業あるいは中小企業金融というものについてはすこぶる危険であるというふうに思っております。
 以上です。
達増委員 加藤参考人に伺います。
 東京都民銀行さんのスモールビジネスローン、類似の商品を出す地方銀行あるいは第二地銀が結構出てきているんだと思うんです。私の地元の岩手の方でも、類似の商品を最近始めた第二地銀さんなんかもありまして、これは、今までの日本の銀行のスタイルを大きく変えて、大銀行が巨大な不良債権で、そういう巨大な会社向きの不良債権で四苦八苦している一方で、本当に経済を地域からあるいは中小企業から活性化していくためにこのビジネスモデルというのは非常に可能性があって、さらには金融業界、銀行業界の再編にまでつながり得るんじゃないかとも思うんですけれども、そういう可能性について御意見を伺いたいと思います。
加藤参考人 先生おっしゃられたように、当行が三年前にこの商品を出してから、今、地方の地方銀行さん、多くの銀行さんが取り扱いを始めました。都市銀行さんは、やられている銀行さんもありますし、やられていない銀行さんもあるんですが、小口のローンということで、非常に金額的には小さい金額なんですね。ですから、金額面で大手の都市銀行さんはなれていないというんですかね、ロットが違うよということなんでしょうか、まだ抵抗感があるからなかなかやられていないと。
 そうはいっても、地域の金融機関は、もう小さな、本当に二、三人の企業さんから、大きな、二十人、三十人、百人の企業さんまでお相手してお客様となっていただいているわけですから、そういうぜいたくは言っていられない。特に、当行においては、東京を地盤にしている銀行ということで都市銀行さんと競合している。そもそも中小企業さんを専門に資金難を解消するという目的でできた銀行ということで来ていますので、新たな発想ができたということだと思うんですね。
 ちょっと話は違うんですが、いろいろな銀行さんが破綻なり合併なり、そういう中でお客様が新たに融資が受けられないという話が先ほどございましたが、我々の部隊というのは、どっちかというと、新規のお客様しか原則的には表に出していないわけですね、七つの専門店舗でやっているんですが。そうしますと、本当に金融機関の合併だとか統廃合だとかありますと、そこの金融機関のお客様は殺到します。これは現実だと思うんです。
 そのお客様方は、先生方おっしゃるように、健全な企業なのかもしれないんです。ただ資金繰りがつかない。今までの担当者がいなくなった、今までのやり方と違う、新たな金融機関と取引しなきゃいけない、そのつらさは、長野参考人がおっしゃっていましたけれども、本当にあるんだと思います。その社長さんのつらさというのは、我々は本当にじかにわかります。ですから、我々の既存のお客さんについては都民銀行で処理しますけれども、新規のお客さんはどんどん来てください、何でも相談に乗りますというスタンスでやっています。
 ですから、これからこういうビジネススタイルというのは、ほかの銀行さんでも広まっていけばいいなというふうに我々は思っています。これがまだ確立していません。まだ探求の段階ですので、今後とも挑戦していって、日本じゅうに広がればなというふうには思っています。
達増委員 終わります。
谷畑委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。きょうは、いろいろと貴重な御意見を本当にありがとうございます。
 先ほど来、中小企業の位置づけについてそれぞれのお立場からお話があったわけでありますけれども、私ども日本共産党も、中小企業は日本経済の中で、出荷高、あるいはそれに従事する人の数の面でも圧倒的な比率を占める、そういう意味で日本経済の土台だという位置づけを持っております。その意味で、中小企業の発展なくして日本経済の発展はないという長野参考人の御意見には大賛成であるわけであります。
 そこで、まず最初に長野参考人にお聞きをしたいわけでありますけれども、きょうかなり意見も集中しておりますが、昨年一月以来、この一年間で五十を超える信用金庫、信用組合が破綻をするという状況があるわけで、私ども日本共産党も全国的な調査を行い、この一月に、その中での提言なんかも行ってきたわけなんですが、最近でいえば、船橋信用金庫が一月二十五日に破綻しまして、その直後に私、支店のある商店街をずっと回って皆さんの意見なども聞いてまいりました。
 本当に評判がいいわけですね。あんないい信金をなぜつぶすんだというような声が非常にたくさん、共通して語っておられました。おやじのおやじの代からずっと使わせてもらっているというような、本当に信頼を持って温かい目で見ておられる。地域金融機関として一つの典型を見た思いがいたしますけれども、この検査に当たっての状況も職員の方から伺いました。
 その中で、例えば、検査官が通常の倍ぐらい、十二、三名来て、開口一番、信用金庫などに正常先などあり得ないと言うことからまず検査が始まるような状況、あるいは机をばんばんたたく、高圧的、威圧的というような声も聞きました。これは全国的な調査でもこういう声は共通して伺ったわけであります。
 金融検査マニュアルを一律に適用するということについての御意見は既にお聞きをしておりますけれども、それに基づく実際の検査のあり方、検査の実態、状況、この点で全国的な状況などもし把握していらっしゃるのであればお聞きをしたいと思います。
長野参考人 先ほどもちょっと申し上げましたが、金融検査マニュアルに従って検査はしている、こういうことであります。ただ、金融検査マニュアルの内容自体が、果たしてあれで本当の中小企業の経営内容、実態が把握できるのかどうか、いろいろございます。
 さらに、金融検査官のやり方、あり方、こういうようなことでありますが、これは大変な怒りを我々感じているわけであります。無理もないのかなという同情する点はあるわけでありますけれども、早急にその金融機関の経営内容を把握しなくちゃいけないんだ、しかも、その把握する内容は自己資本比率が四%を維持できるかどうか、ただその一つだけだよ、こういうような感覚で検査をする。
 しかも、検査官の責任がどうも強く言われているようですね。もし、検査した後からだれかが検査して、前の検査官の検査は非常に甘かったということを言われると、よくある例でございますが、とんでもないと。したがって、この検査については絶対にほかの方、後から検査されても間違いのないようにということは、まあ、厳しくしておけば間違いがないだろう、こういうようなこと等になるのではないか、そういうことを非常に強く言われているようなので、先ほど来お話ししております、今度の金融検査マニュアルの実例の、要するに金融検査官のための解説書です。そういうものをつくる際には、いろいろ今の意見等を十分に入れて検討して、強く訴えていきたいというふうに思っております。
大森委員 よくわかりました。
 そこで、独自の地域金融機関にふさわしい検査マニュアルという点の必要性、あるいはその見地についてですが、これは四人の参考人の方にそれぞれお聞きをしたいわけなんですが、そういう地域金融機関にふさわしいような独自の基準が必要じゃないか。
 その際、私どもは、やはり中小企業を育成する観点、地域での貢献度、あるいは経営者の意欲とか技術開発力とか、そういうものがその基準に入らなくちゃならないという考えを持っておりますけれども、四人の参考人の方の、こういう地域金融機関にふさわしいような独自の基準を持つべきだという点についての御意見をお聞きしたいと思います。
谷畑委員長 それでは、港参考人からお願いします。
港参考人 現在の基準ということを別にしまして、地域金融機関と中小企業者というのはかなり関係がこれまで良好でありまして、融資に対しても、その経営者の性格であるとかあるいは事業の内容によって担保能力を超えてでも融資をする、こういうふうなことがよくあったわけですね。ところが、金融危機以降、非常にそういうふうな、いわば地域金融機関の支店長の裁量ということがだんだんきかなくなってきている、ここが一番大きな問題だと思うんですね。
 そこで、確かに、現在の金融危機の状況の中で、地域金融機関の経営の健全性を確保するという意味で自己資本比率というのは非常に重要であると思うんですけれども、そうした場合に、やはりリスクアセットの割合を小さくするということが重要でありまして、そのためには、先ほど申しましたように、信用保証制度を非常に大幅に拡充していく。そうすると、当然これはリスクアセットが十分の一になるわけですから、銀行の経営にとってもいいわけですね。
 しかしながら、当然これに使われる政策経費は限りがあるわけですから、先ほどから申しているように、そのリスクも、程度に応じた形のランクづけによる料率ということが望ましいのではないかというふうに考えております。
加藤参考人 今のお話ですけれども、やはり我々がふだんお客様と接している限りにおいては、大企業の皆様のマニュアルと中小零細、失礼な言い方ですが、小規模企業の皆様のマニュアルを同一にするというのは多少無理かなというのは常々感じております。
 これは、先ほどお話ししましたように、中小・小規模の皆様については、やはり代表者個人の方のウエートというのは非常に大きい。それを、上場会社とか大企業の皆様と同じような基準で査定するというのは非常につらいんじゃないかなというのは実感としてあります。
 以上です。
長野参考人 先ほど申し上げたとおりでありまして、よろしゅうございますか。
鈴木参考人 金融の細かいことはちょっと私よくわからないんですけれども、最近、大手都市銀行さんは、支店から支社化というんですか、何行かの支店を合併して法人関係は支社化にしていくというようなことがございまして、支店長決裁というのもかなり枠が狭められているというようなこともあって、なかなか中小企業としては都市銀行を非常に使いにくくなっているという現状だけ御報告させていただきます。
大森委員 四人の参考人の方のそうした意見については、私どもも責任を持って政府にもまた伝えていきたいと思います。
 次に、港参考人にお聞きをします。
 御意見の中で、経済再生のために冷却化した消費マインドを改善する必要があるということで、雇用の問題等を言われているわけでありますけれども、私ども、やはり冷え込んでいるこの需要を本当に喚起する上で思い切った対策が今必要ではないかという点で、例えば減税なども含めて需要喚起のための対策をとるべきだと要求をしておりますけれども、この冷却している消費マインドをどう打開していくかという点で、具体的な御提案などあればお聞かせいただきたいと思います。
港参考人 確かに、一九九七年の誤った景気判断に基づいて、消費税が三%から五%に引き上げられた。これは、かなり大きなデフレ圧力を加速させるという効果があったというふうに思います。そういう意味では、消費税の減税ということもかなり有効なものであるというふうには思いますけれども、しかしながら、現在の財政状況を考えてみますと、やはりここでまた減税をするということも非常に難しいわけですし、また、それを今度どの時点でまたもとに戻すのかというふうな問題もあろうかと思います。
 私は、非常に奇抜な案でまだ十分考慮をしていないのでちょっとちゅうちょするんですけれども、もし大胆なことをやるとすれば、消費税というのはある意味で毒なんですけれども、毒をもって毒を制するでありまして、この際、デフレスパイラルを打ち切るためには消費税を一〇%にする、倍にする。
 当然これは非常に強いデフレ圧力になるわけですから、そのかわり、今消費税が大体十一兆七千億円ぐらいだと思いますけれども、これは国民一人当たりに換算しますと十万円になるわけですね。だから、それを一〇〇%還元する。要するに、マイナスの人頭税のような形で十万円を一〇〇%還元するというふうにしますと、これは相当、要するに金融政策、通貨量の供給によってインフレ誘導をするということは非常に危険なんですね。これは一たん火がついたら消すのが大変で、また物すごく大きな犠牲を払わなきゃいけないわけですね。
 それを考えますと、消費税を五%引き上げて、それを一〇〇%還元するというふうにすれば、これは当然低所得者も同じように十万円もらえるわけですから、当然消費性向は高いわけですから、消費拡大効果があるわけでありまして、それで、景気が回復すれば打ち切るというようなかなり奇抜な案でございまして、余りアカデミックな人間が言うものでもないかもしれませんけれども、一つの大胆な考え方としては、そういうことも考えられるのではないかというふうに思うわけです。
大森委員 ちゅうちょされるにはちゅうちょされる理由もやはりあるんじゃないかと思うんですが。
 おっしゃるように、九七年消費税引き上げ、あのときは、私どもは医療保険の改悪と言っておりますけれども、加えて特別減税の廃止、九兆円負担増、あれが当時の日本の景気を大変な状況に追い込んでいった大きな引き金になった点は一致をするわけで、そういう点で需要喚起はやはり、私ども、国民の懐を温めるという立場が今必要じゃないかと思います。
 次に、都民銀行の加藤参考人に具体的な点をお聞きしたいんですが、SBローンについてのお話がありました。具体的な点で、例えば貸出規模、貸出期間の分布状況、それから担保の有無、それから、実績を見ますと、大体共通して、ほぼ申込件数に対して三分の一実行ということになっておりますけれども、それは何かそれこそ独自の物差しなどがあるかどうか、申し込んでも融資を受けられなかった主な理由はどういうものか。それから、返済がもう既に始まっているものがあるとすれば、事故率はどのぐらいなのか、ちょっと具体的な数字ですが、お聞きをしたいと思います。
加藤参考人 御質問でございますが、このスモールビジネスローンについて、お客様の規模は、本当に小規模の企業さんが多うございます。ですから、売り上げで年商二億以下のお客様が約八〇%を占めるという状況になっております。
 それから、期間ですが、当初、商品性を申し上げますと、五百万円の金額でございまして、期間六カ月で最初売りました。その後、皆様のアンケート調査、インタビュー、いろいろ常に実施しておるんですが、によって派生商品が四つ出ております。期間が今一番長いので一年という、短期の運転資金を中心にやらせていただいているという状況でございます。
 担保は一切とっておりません。これは、当初のコンセプトどおり、担保、保証はない方がいいというお客様の御要望がありましたので、それはとっておりません。
 それから、実行、融資できたお客様、二万一千件のうち七千五百件ということで約三分の一になっているんですが、当初、始めた当時はこんなにいかなかったんですね。最初は一〇%とか二〇%の状況でございました。その間に、どこの銀行もやっていなかった、前例がない事業でしたので、徐々に、お客様との話の中で、どういうところが審査のポイントになるかというのを蓄積しましてやっとここまで来たという状況ですので、皆様方から見ますと非常に割合が少ないとおっしゃられるかもしれませんが、我々は、やっとここまで持ってきたというのが実感でございます。
 それと、あと、事故率でございますが、二万一千件のうち、我々、当初商品設計においても事故率をある程度想定したんですが、具体的な数字はちょっと公表していないので御勘弁いただきたいんですが、想定の範囲内におさまっているという状況だけは申し上げることができると思います。よろしいですか。
大森委員 最後に、鈴木参考人にお聞きをしたいんですが、御意見の中で、貸し渋り、貸しはがしのお話がありました。今、それに加えて保証渋り、三渋りという話も聞いておりますが、その保証渋り、そういう実態についてもしつかんでおられることがあればお聞きをしたいと思います。
 もう一点、創業支援との関係でお話があった中小企業経営革新法あるいは中小企業創造法、これに基づいて一定の対策がとられているわけですけれども、お話があったように、融資あるいは保証等がきちんとそれとリンクされていない面があるんじゃないかという点、その点もう少しお話を伺えたらお聞きしたいと思います。
鈴木参考人 三年前の特別融資枠ですね、五千万ございまして、それが去年撤廃になって八千万にたしかふえたはずでございますが、最近、自分のところのリスクヘッジのためですか、例えば銀行を通じて枠内で申し込みをしても、例えば枠がまだ二千万以上余っているところへ二千万申し込んでも、やはりなかなか満額貸してくれないで、千五百万にしてくださいとか、それから、まあ絶対だめということもないようでございますけれども、範囲内でも額的に満額を貸さない、やはりリスクを少しでも減らそうという意向が見えるのかなというようなのは仲間ではよく話題になることでございます。
 それから、もう一つの経営革新法なんかに関しましては、こういう状況がなければいいのかもわかりませんけれども、こういう状況の中で、例えば一回でもその条件変更等をやったりした人、先に対してですね、前にやっているからそれが終わらない限り絶対追加融資はできないというのが厳然とございまして、それを返すために経営革新をして新事業に移管していこうというのを承諾いただいておきながら、それに対する、一回でもそういうような、例えばあの非常に苦しいときの条件変更を一回でもやっている先には、それが終わるまでは追加融資はそういうのがあってもやらない、こういうことを、それじゃいつまでたっても結局はそれに立ち向かっていけないということでございますので、そういうのがたとえあったとしても、その経営革新に関する限りは何とか別枠で融資をお願いしたいな、このように思っております。
大森委員 どうもありがとうございました。
谷畑委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。きょうは、四人の参考人の皆さん、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 まず、私は、鈴木参考人と港参考人に御質問したいと思います。
 三月十四日の朝日新聞を読ませていただきまして、これをもとに質問させていただきますので、よろしくお願いします。
 「金型技術流出、泣く町工場」ということで、製造業を支えてきた町工場でございます。
  「ものづくり日本」を縁の下で支えてきた金型業界が危機にひんしている。大手メーカーのアジア進出によってただでさえ仕事が減っているのに、メーカーや部品会社が業者に金型の技術データを提出させ、人件費の安い海外で丸ごと生産するケースが続出しているのだ。「このままでは日本の製造業自体が壊滅してしまう」。
  発注の条件に
  金型は工業製品を量産するときに欠かせない部品の型枠だ。業者は、簡略な製品図などから精巧で耐久性のある型を設計、製造する。最近は自動切削機などで型がほぼつくられるが、入力する加工データや設計図面は長年培われたノウハウで、いわば各業者の企業秘密だ。
工業立国・日本の根幹とも言える。小さな町工場がそれを支えてきた。
例えば、
  CDプレーヤーなどの金型をつくっている。メーカーが中国に進出した五年ほど前から、取引先の部品会社が、仕事を発注する条件として設計図面の提出を求めてきた。
また、
  爆発的な人気を呼んでいるゲーム機器。関東地方の業者は、半年かけて金型をつくった。
  完成後、メーカーはデータを出すよう言ってきた。断れば次の注文が来るかわからない。やむをえず承諾したが、その後、注文が来なくなった。アジアの業者が代わりにつくっていることを後で知った。「文句をいいたい。でも、大メーカーとけんかできない」
  東京都内の業者は数年前、韓国系の会社から携帯電話の金型を頼まれた。「韓国の業者はここまでできない。図面や加工データがほしい」といわれて渡したが、
ここでは、データ料として七百万円という報酬を受け取った。せめてこういう報酬があれば、次の設備投資などに回せる、国際競争にも持っていける、国は知的所有権のようなものを認めてほしいと訴えている。簡単に、これが報道記事でございます。
 そこで、鈴木参考人には、メーカーのデータを出せ、その後そのデータは外国に行って、生産の拠点は海外に行って空洞化していく、こういう理不尽な大企業の仕打ちを御自分の所属する商工会議所の中で御経験して泣いたりしているような企業さんがあるかどうか、また、そういう御経験などあれば御紹介いただきたい、また、読んだ感想も聞かせていただきたいと思います。
 港参考人に対しては、国に対してどのような保護規定を設けるべきかということを、お考えがあったら御意見とともにお聞かせいただきたいと思います。
鈴木参考人 今お読みいただいた記事は、ほぼ当たっております。
 私どもも、小さな工具をつくっているんですけれども、必ず承認図を出してくださいと言われるわけですね。向こうからは歯車のデータだけいただいたのを、全部私どもで設計して、その歯車の切れる工具の設計、製作をするわけですけれども、それに関して必ずその承認図をつけろと。承認図というのは、それができちゃうと、どこでも、極端に言えばライバルメーカーに行っても同じ歯形がつくれちゃうわけですね。ですから本当は出したくないんだけれども、それを要求する。そうすると、それが完全に次回にはライバルメーカーに行ったり、また、向こうの図面がうちへ来たり、そういうようなことが国内でも起こっております。
 今のお話のように、金型というのは本当に高度な技術が必要なんですけれども、インプットデータさえあれば、今はもう機械がよくて工具がいいですから、もう腕で仕事をしていないわけですね。機械と工具とデータさえあれば同じものがつくれちゃう。
 それで、今私が聞いた一番ひどいのは、最近だんだんインターネットが発達してきておりますので、その図面をインターネットで送れ、それをやられたらどうにも防ぎようがない、そういうような話はちょくちょく現実に聞いておりますので、これはえらいことだと。したがって、数年前までは高級な金型は日本でしかつくれないと言っていたのですけれども、本当に最近になりますと日本の精度と同じような金型が平気で海外でつくれる状況になっていることは事実でございます。
港参考人 確かに金型というのは日本の基盤産業でありまして、日本のこれまでの競争力を支えてきた産業であります。これは、今委員のおっしゃられたような問題とともに、もう一つは、やはり生産技術は非常に革新化が進んでおりまして、そういえば、金型メーカーの中でも非常に新しいベンチャーがありまして、ちょっと名前は今忘れましたけれども、初台のオペラシティの五十一階フロア丸ごと借り切って、そこで開発センターをつくっている、こういうふうな企業もあるわけでありまして、こういうふうな、非常に情報技術等を最大限に活用して、外国には出せないほどの短納期の仕事をやるというのも一つの生き残り策かなという感じがしております。
 今委員の指摘された点で一番重要なのは、今まで日本の中小企業に対する保護政策というか、取引の適正化というものは、物を中心につくってこられたわけですね。要するに、日本のハードウエアの生産を、取引をコントロールするということが中心であったわけですね。しかしながら、だんだんとその価値が、物から知識とかノウハウとか、こういうものに移ってきているわけですね。
 そうしますと、そういう知識とかノウハウをただ取りされるということは、これは決定的に大きなダメージになるわけですから、物から知識が中心になったときに、知識の企業間分業を活発にするということが、日本の産業を新しいシステムに転換するための一番決定的な条件だと思うのですね。そのために、そういう企業間取引における知的資産をどのように保護していくかということ、これが非常に重要であるわけですけれども、これは必ずしも政策としてまだ実現されていない。現行の下請代金支払遅延等防止法を見ましても、基本的には物の取引が中心であるわけであります。
 御指摘のように、もし知的資産に対する権利を主張したり、それに対する代金を、対価を要求したら次の仕事が来ないというふうなことも間々あるケースでございますので、やはりそういうふうなものを保護する、しかも匿名の告発が可能になるようなそういう制度が必要ではないかというふうに考えます。
大島(令)委員 ありがとうございました。
 次は、長野参考人にお伺いしたいと思います。
 昨年十一月一日の信金法制定五十周年の記念全国大会の折に、長野参考人は、地域に暮らし仕事をする人は、地域の繁栄、発展のために積極的に力を注ぐ使命があるとごあいさつされておりますよね。そして、信金は地域のリーダーであり、中核であるとも述べられていらっしゃいます。
 しかし、昨年だけでも、信金、信組の破綻数は四十六件あります。去年の週刊ダイヤモンドでは、信金、信組を破綻に追い込んだのは金融庁であるとこの雑誌で指摘されております。今まで話を聞きますと、やはりこれらの信金、信組は、地域をまさにはいずり回って繁栄と発展に寄与してきたというふうに私も理解しているわけなんです。今またペイオフの凍結解除を直前に迎えて、まさにこれで信金、信組にとどめを刺す政策を国はするのではないか。
 例えば地方自治体も、縁故債という形で、金利が安いわけですから、その自治体の中に信金、信組の本店があればそこから借りております。そこの縁故債は税金でございまして、では、このペイオフ凍結解除が始まったときにどのようにしていくんだということで、一定の自治体間での動きもあると思います。これに対して、今御傘下の信金、信組はどのような対応をしていらっしゃるのか。
 二点目の質問は、私は、何といっても金融機関は、本来ならば企業を育てるのが使命であると思っております。今のようにお金を貸さない、貸さないということは、企業が倒産をし、失業者が出、失業者が出れば収入がなくなる、物を買わない、ますますデフレスパイラルということになって悪循環であると思っているわけなんです。
 以上、貸さない金融機関ではなく、貸すための金融機関になるために、やはり国としてどういう施策を信金、信組にとっていったらいいのかという思いを語っていただけたらと思っております。
長野参考人 かねがね私どもは、金融機関としての経営の健全性を維持すべし、こういう強いことをいただいております。一方で、中小企業金融の円滑化をせよ、この二つの命題が私どもには与えられているわけであります。この二つのことを両立させるということになると、これは非常に難しい問題が出てくる。中小企業金融の円滑化、貸し渋り、貸しはがしですか、少なくとも他業界、業態についてはわかりませんが、我々業界について、貸し渋り、貸しはがし、一切ございません。できることであればお貸ししたいんだ。
 しかも、なおかつ、収益のことを言うわけじゃありませんが、我々の収益源というものは、お客様に使っていただいて、それからの、あちらでいば借入金利、私どもは貸出金利をちょうだいする、これが唯一無二の収入源でありますから、何とかして貸したい。だけれども、貸した途端にこれが不良債権化する、すぐ引き当てをしろ、そういうことになるといろいろな問題が出てくる。
 そこで、いろいろな問題が出てくるということの一つに、金融機関の健全性を何をもって見るかということが出てくるわけであって、例えば自己資本比率、そういうようなことだけで見るから云々ということになると、これはいろいろな問題が出てくるぞ、こういうようなことになっているわけであります。いずれにしても、その金融機関の経営の健全性ということと、それから中小企業金融の円滑化、この二つのことをする。
 それから、本当に申しわけない話ですが、倒産が出てまいりました。ただ、倒産の内容というようなものをぜひひとつごらんいただいて、ただ全部が同じような状況で倒産しているかということになると必ずしもそうではないわけで、本当にこういう状況の中で一生懸命中小企業に貸していて、何とかここを助けていきたい、何とか生き抜いていただきたい、それで貸した、それが焦げついた、こういうような状況で不良資産がふえた、そうすると、だめだよ、こういうことになって、これは問題になってくる、こういうようなことも十分あるんだということを御認識いただきたいというふうに思っております。
 とりあえず、以上です。
大島(令)委員 それでは、加藤参考人にお伺いします。
 審査を、数値に頼らずあくまで面談を重視ということで、ひざを突き合わせてじっくり話し合うというスタンスをとっていらっしゃるということでございます。そういう、ともに向き合う姿勢に定評があるとダイヤモンドに載っていた記憶があるのですけれども、これには、担保主義からビジネス主義ということで転換を図る。これに当たる職員には、やはり今までのマニュアルに沿って、単純に貸します、貸しませんということではなく、ビジネス主義ですから、職員に対して求められるものという要素が非常に私はあると思うんですが、その辺の職員の養成ですとか研修はどのようにしていらっしゃるのか、また、リスクに対する対応というのはどのようにしていらっしゃるのか、この二点をお伺いしたいと思います。
加藤参考人 御質問の趣旨でございますが、新しい審査システムを構築していこうということで今やっている最中でございますが、やっている我々の行員においても、既存は、今までは普通の、今までの担保主義と言われるんでしょうか、普通の支店の窓口でお客様を相手にしていたそういうメンバーが集まってやっているんですが、三年前に始めたときはマニュアルも何もなく、審査手法も何もない、お客様の申込書も何もわからないという状況から始めました。ですから、一社お客様がお見えになりますと、そのお客様とは約一時間ぐらい面談させていただいて、聞くことが本当に的確なのかどうなのかも、それすらわからないという状況から始めたわけなんですね。
 そういうのを題材にしてここまで来たんですが、行員の教育というのは、もう本当に実地訓練しかないなと。徐々に、最近ですが、マニュアル化してきたという状況でございます。ですから、余り大きな声で威張れるほどのことはまだできていないというのが現状でございます。
 あとリスク管理でございますが、これはどうしてもお客様と、審査手法の問題もあるんですが、実際には、ビジネス主義と我々言っているんですが、キャッシュフロー、実際のお客様の資金の動きを拝見させていただいています。この二カ月間、この三カ月間というのを実際に拝見させていただいて、決算書においては、カウンターを通して一時間ほどその事業の内容とか、数字だけではございません、事業の内容とか、先ほど金型の話がありましたけれども、どういう金型なのか、どういう方面に今後展開するんですかという、今までとは大分方法が違うと思うんですね。
 ですから、お客様に後ほどアンケートを必ずとっていただいて、どうでしたかという話を聞きますと、銀行の担当者とこれほど事業の話について話したことはなかったという感想が非常に多うございます。だから、融資を申し込みに来たというわけではなく、事業の話をしに来たという印象が非常に強い。それが我々、まあ本筋だなというように思っているんですね。現状、お客様が例えば十件来たとしますと、約三件のお客様は御相談でお見えになります。そういう状況でございます。
 リスク管理については、先ほどちょっと御質問ありまして、倒産した件数とかそこら辺はまだ想定の範囲内なんですが、この辺もまだまだ、まだおっかなびっくりやっている状況でございまして、もうちょっと新しい展開を考えなきゃいけないなということで今現在模索している最中でございます。よろしいですか。
大島(令)委員 どうもありがとうございました。
谷畑委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 私は、まず長野参考人、そして加藤参考人、港参考人、そして最後に四人の参考人という順番でお尋ねをさせていただきたいと存じます。
 まず、長野参考人にお伺いしたいのでありますが、先ほど、金融庁にいらっしゃってお話をされた際に、いわゆるマニュアルの見直しはしないよと金融庁はおっしゃったと、こういう話でありました。私、二月十二日に予算委員会でこの問題を取り上げまして、たまたまテレビ放送のあった日でありましたので、大変反応が、全国からいろいろなファクスやメールをいただきまして、中には自殺を思いとどまったなんという人まで出て、大変、そんなことだったんですが。
 というのは、その半月後に、「早急に取り組むべきデフレ対応策」、対策じゃなくて対応策というところが泣かせるところですけれども、そこで、貸し渋り問題について、「経営実態に応じた検査の運用確保」ということで、金融庁が検査官を、事前、検査の前、検査中、検査後、これに対していろいろな対応を上級職がきちっと管理するということが一つ。
 それから、マニュアルどおりやらせる、これは大事なんですね。中小企業基本法の八条に、赤字でも貸していいと書いてあるわけですから、それを今まで検査官が四の五の言って貸さなかったわけですけれども、それはマニュアルどおりやるということを監督する。検査官の監督官が出る、こういうこと。
 それから、モデルケースをいろいろつくって、こういうケースなら貸していいぞというような実態のものを、わかりやすい判定基準をつくる、こういうことでございますが、これで少しは貸し渋り、貸しはがしは改善されましょうか。長野参考人。
長野参考人 その対応策としての金融検査マニュアルの実例がどこまで内容的に効果が出てくるかということだろう、その内容いかんによっては大変プラスになるというふうに私は思っております。
西川(太)委員 ぜひそれは、金融機関側も、生き残りをかけて命がけの時期でありますから、このことについては私たちも応援しますから、金融庁に対して厳しく迫ってほしい、こういうふうに要望したいと思います。
 次に、加藤参考人にお尋ねするのでありますが、先ほど来ずっと御質問がありまして、私も経営者の端くれで、一番、一つだけ皆さんがお聞きになっていないことがあって、金利なんです。東京都民銀行の金利は、私が承知しているところでは、九%に手数料が四%加わって実質一三%ぐらいだと聞いておりますけれども、これは本当でしょうか。
加藤参考人 金利の件でございますが、スモールビジネスローンの金利は、表面金利九%ということでなっております。これは、金利ではないんですが、事務手数料ということで金額に応じていただいているのが現状でございます。
西川(太)委員 私は、大変重要なお仕事をしておられる、けちをつける気はないんですよ。誤解しないでください。大いにやってほしい。だけれども、金利もひとつこれから下げてもらうように、ぜひこれは、大変いろいろノウハウがあるでしょうけれども、要望しておきたいと思うんです。それは――お答えいただく、どうぞ。
加藤参考人 金利の件について、九%、多分お高いというふうに思われるんでしょうけれども、金額が五百万でございまして、一億とか二億とかいう金額でお貸し出しするのではなく、どちらかというと我々の固定費ぐらいというような状況で、一カ月にすると三万円ぐらいになっちゃうんですね。
 ですから、どうしても固定費がそのぐらいということで、お客様に、これも、金利も当初商品をつくるときにアンケートをとらせていただいたんですね。その中で、金利は銀行だから二けたはだめだよというアンケート調査が出まして、では、翌日回答するのならば何%が許容範囲ですかという結果で九%というふうに決めさせていただいたという状況でございます。
西川(太)委員 いや、だから、誤解のないように。私は、個別の銀行のビジネスのやり方についてとやかく言う気は毛頭ないんです。誤解しないでください。意地悪な質問をしているんじゃないんです。私は、八%の後半ぐらいまでは、そういうクイックレスポンスをしてくださるなら経営者として払える。私が経営者だったら払います、それは。だけれども、手数料の問題とかその辺、またひとつ、中小企業をかわいがってやってください、小規模企業ね。それを要望しておきます。
 ところで、港先生に伺うんですけれども、先生は、いわゆる貨幣量でやることは危険であると。これは、私も全くそうだと思うんです。
 税でやるということが一つ効果があるんじゃないかと思って私は思い切って伺うんですが、さっき先生、あれだけ大胆なことをおっしゃって、大変学者としてすばらしいと私は思いますが、例えば、不動産の譲渡益課税をゼロにしちゃった方が私は早いんじゃないかと思うんですよ。消費税を倍にするとかそんなことじゃなくてね。現在やっていることをやった方が早い。ということは、例えば十億の設備投資をしようとして土地を手当てすると、もうそこで一億持っていかれちゃうんですよ。ね、鈴木さんね。これは、最初から一割を損するような投資は経営者はしませんよね。私は、そういうことが大事じゃないかということが一つ。
 それからもう一つは、アメリカの、先ほど松原議員からもお尋ねありました。私も、ピッツバーグへ行ってきましたけれども、あそこは、カーネギー・メロン大学だとかピッツバーグ大学だとか、それからこの間は、MITだとかペンシルベニアへ行ってきたんですが、要するに、スタートアップ、インキュベーターに対して州政府が非常に手厚い努力をしてくれているんですね。
 先ほど先生が、日本の研究費は自分で稼いでこないからだめだ、こういう御指摘がありましたけれども、むしろ、私は、率直に言って日本の大学の体質に問題があるのであって、やはり公的な援助はベンチャーを育てるという意味で大事なんじゃないか。既存の手づくりベンチャーを大事にしろという先生の御説に私は大賛成であります。例えば神奈川県で大工の親方たちが、バリアフリー法施行後、手すりを一万五千本つけたとか、上がりがまちを何千カ所直したとか、そういうベンチャーは私は結構だと思うのです。
 だから、それはそれとして、新しいベンチャーを大学発でやるという政策は、日本の知的財産権をふやす意味でも大事なんじゃないか。大学の体質に問題があると思うのですが、この一点を伺って、もう時間ですから四人に伺うことはやめます。これで最後にさせていただきます。
港参考人 まず、譲渡益課税の減税ですけれども、これは非常に範囲が狭いということが言えると思います。それで、もう一つは、現在のように地価が下がっているときに多額の譲渡益を支払うケースというのはそれほど多いのかどうか、そのあたりも私はちょっと不明であります。
 いずれにしましても、やはりデフレスパイラルを断ち切るということのためには何らかの形で一定の物価を上げなきゃいけないわけですよね。それを通貨供給量で上げるのか税制で上げるのかということでありまして、減税によって取引を活発にするとかそういうようなことではございません。
 それともう一つ、インキュベーターの件でございますけれども、委員御指摘のように、アメリカの場合には大学が中心になっているわけですね。主要な大学は大抵インキュベーターを持っているわけです。だから、そこに入った企業というものは非常に技術の移転というものを受けやすい、そういうふうな点があると思います。それに対して、日本の場合、インキュベーターは各地でつくられておりますけれども、主として行政が主体でありまして、そこでそういうふうな高度な技術の移転のシステムというものができていない、だからインキュベーターをつくっても余り成功していないというのが現状であるわけですね。
 それが、なぜ日本の場合には大学がインキュベーターの担い手にならないのかということで、もちろん日本の場合には学校法人としてのいろいろな制約を受けているという点もあると思うのですね。しかも、日本の大学の先生は、先ほど申しましたように、やはり学会に目が向いていて、産業界に余り目が向いていないという、我々反省すべき点もあると思います。
 しかしながら、やはりこれからの創業支援の中でインキュベーターというのは非常に重要でありますから、これに大学が深くコミットできるような施策というものをお考えいただくことは非常に有効であるというふうに存じます。
西川(太)委員 最後に、鈴木参考人、せっかくでございますから、先ほどの私の申し上げました譲渡益に課税をするというのを見直すべきだ、これについていかがでございましょう。
鈴木参考人 先ほど私も、土地を上げるべきだという話もしましたし、税金の問題、やはり譲渡課税を見直していただいて、土地がとにかく動くということが大事だろうと思いますので、動きやすい税制をぜひ考えていただきたい、このように思っております。
西川(太)委員 終わります。どうもありがとうございました。
谷畑委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人の各位に一言お礼を申し上げます。
 貴重な御意見をいただきまして、本当にありがたく思っております。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 御退席をいただいて結構でございます。
     ――――◇―――――
谷畑委員長 次に、内閣提出、自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより趣旨の説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
    ―――――――――――――
 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
平沼国務大臣 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 刑法の賭博罪等の特例として法律に基づき実施されている競輪、オートレースは、これらの売り上げを通じた全国的な社会還元を行うとともに地方財政の健全化に寄与しており、高い社会的意義を有しているところであります。しかしながら、近年の景気低迷等により、競輪、オートレースの売上額は大きく減少し、施行者である地方自治体の事業収支も大幅に悪化しております。
 このような状況の中で、これらの事業が所期の法目的を達成していくためには、当該事業の構造改革が不可欠であり、各施行者の事業収支改善に向けた取り組みに資する所要の措置を講ずることが必要であります。
 かかる観点から、政府といたしましては、このたび、自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正するため、本法律案を提出した次第であります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、自転車競技法の一部改正であります。
 その改正の第一点は、施行者からの日本自転車振興会へ交付すべき交付金の交付率を定めた別表第一及び別表第二の売上額区分について、各別表制定当時からの消費者物価指数の上昇を基本として見直し、施行者の負担軽減を行うことであります。
 第二点は、事業の再建に取り組む赤字施行者等に対して、事業収支改善計画の作成等を条件として、交付金の支払いを最長三年分猶予することであります。
 第三点は、事業の再建に向けた努力にかかわらず収支が改善しない施行者が、専用場外車券売り場への転換または競輪、オートレース事業からの撤退を決断した場合、その必要となる費用に充てるため、猶予された交付金の交付義務の全部または一部を免除することであります。
 第四点は、現在、自転車競技会にのみ委託できることとなっている競輪関係事務のうち、車券発売、広報、警備等について、その委託先を拡大し、民間活力の導入を図ることであります。
 第五点は、日本自転車振興会の貸付業務について、昨年十二月に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画を踏まえた縮減を行うことであります。
 第六点は、のみ行為等の違法行為に対する罰則を強化することであります。
 第二に、小型自動車競走法の改正であります。
 その改正の第一点は、ただいま申し上げました自転車競技法の改正と同趣旨の改正を行うことであります。
 第二点は、場外車券売り場の設置等に関する規定を自転車競技法並みに明確化することであります。
 以上が、この法律案の提案理由及び要旨でございます。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようにお願いを申し上げます。
谷畑委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時九分散会


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