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第6号 平成14年4月3日(水曜日)

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平成十四年四月三日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 栗原 博久君
   理事 竹本 直一君 理事 中山 成彬君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 達増 拓也君
      伊藤信太郎君    小此木八郎君
      大村 秀章君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    阪上 善秀君
      下地 幹郎君    根本  匠君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      茂木 敏充君    保岡 興治君
      山本 明彦君    生方 幸夫君
      川端 達夫君    北橋 健治君
      後藤 茂之君    中山 義活君
      牧  義夫君    松原  仁君
      松本  龍君    山田 敏雅君
      山村  健君    漆原 良夫君
      福島  豊君    都築  譲君
      土田 龍司君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      西川太一郎君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   経済産業副大臣      大島 慶久君
   経済産業大臣政務官    下地 幹郎君
   経済産業大臣政務官    松 あきら君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局長
   )            鍋倉 真一君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 藤原 啓司君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (経済産業省産業技術環境
   局長)          日下 一正君
   政府参考人
   (国土交通省政策統括官) 丸山  博君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月三日
 辞任         補欠選任
  保岡 興治君     金子 恭之君
  松原  仁君     牧  義夫君
  土田 龍司君     都築  譲君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     保岡 興治君
  牧  義夫君     松原  仁君
  都築  譲君     土田 龍司君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省産業技術環境局長日下一正君、総務省総合通信基盤局長鍋倉真一君、財務省大臣官房審議官藤原啓司君、厚生労働省大臣官房審議官鶴田康則君、農林水産省総合食料局長西藤久三君及び国土交通省政策統括官丸山博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北橋健治君。
北橋委員 おはようございます。民主党ネクストキャビネットで経済産業省を担当しております北橋でございます。
 経済産業省は、いろいろなところでアイデアなり政策を立案するために日夜奮闘をされておられますが、私が最近耳にしたキーワードで非常に注目しておりますのは、戦略的通商政策という言葉でございます。
 今回の提案されました法案につきましては、ヨーロッパに続いてそれをシンガポールに広げるということで、これはいい方向であると思っております。これを機会にシンガポールとの間には自由貿易協定の締結という新しい局面に踏み出しておりますし、産業空洞化をめぐりまして、そもそも日本の通商政策と国内産業をどのようにして調和発展させていくかという問題につきまして、大きな時代の曲がり角に来ておるという認識でございます。そういった意味で、きょうは法案に対しまして時間をとっていただきまして、与野党の皆様方に感謝を申し上げたいと思っております。
 さて、今回の特定機器に関する適合性評価の法改正案につきまして、一点、私は、官から民へという切り口で、ぜひ今後検討をしていただきたいということについて質問をさせていただきたいと思っております。
 これまで、適合性の評価でありますとか基準・認証、特に安全性にかかわる問題になりますと、いわゆる公益法人のような性格で、しかも、幾つかのものを検査できるというよりは、一つ一つ、これは安全という観点からだと思いますけれども、きっちりしたルールのもとにやってきたと思うんですね。それは一定の政策的効果を上げていたと思うのでありますが、これからグローバルな体制になってまいりますと、そのコスト、スピード、あるいは、海外の評価機関も日本に入ってくると思いますので、国際的ないわゆる競争力というんでしょうか、信用度というんでしょうか、そういった点がこれから非常に重要になってくる。
 ということは、これまでの、ともすれば官業的な色彩の強いこの基準・認証の機関に対して、思い切った民間参入、民間活力の発揮ということがこれから非常に重要な政策方向であると思っておりますが、この点についてどういう見通しあるいは方針をお持ちか、お聞かせを願いたいと思います。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 小泉内閣でも、官から民へ、民ができることは民に任せるというのがその基本方針の一つでございます。委員御指摘のとおりでございます。ただ、従来は、例えば高圧ガスだとか火薬の施設であるとか原子力、こういった危険度の伴うものにつきましては、政府が直接認証する政府認証の仕組みをとっております。
 しかし、今後は、能力があり、あるいは公平中立な民間の第三者の認証機関を活用するという方向がいわば世界的な潮流になっているということも事実でございますので、私ども、そういった視点から、今回の相互承認法につきましても、こういった民間認証機関の参入というものを実は前提にいたしております。既に、欧州共同体向けの認証機関としては民間からの申請の動きも幾つかございますし、また、シンガポール向けの認証を行う機関にも民間の参入というものを期待いたしているところでございます。
 また、今回の承認法案の対象外につきましても、平成十一年に基準・認証制度等十一本に及ぶ法律改正を行いまして、試験検査等の業務を民間の認証機関が実施をできるというふうに改めていったところでございまして、こういった取り組みに伴いまして、一つの基準・認証制度に複数の機関の参入が可能になるという環境整備も進んでおりまして、今後とも民間の認証機関の参入が促進をされていくということを大いに私どもとしても期待をいたしております。
北橋委員 民間参入の方向を期待するということでございますが、これまで、例えば日米間におきましてもいろいろな貿易問題が話し合われましたが、アメリカに限らず、各国からは、非関税障壁のやり玉にいつも日本の基準・認証制度が上げられていたわけであります。
 そういうことで、これには非常に歴史がありまして、例えば安全性その他の法律もあって、長い歴史的な風土の中で、今度は外国からも参入することが予測されているわけですけれども、相当のスピードを上げて、省を挙げてそういった民間に参入する方向でかなり働きかけていかないと、なかなか短期間の間には育ってこないと思うんですね。
 現に、ヨーロッパとの間に一つのルールを定めたわけでありますけれども、それから、申請がされてまだ間もないということもありますが、昔の指定機関といいますか、公益法人というものがやはり主体になっていると思います。これから時間の経過とともにふえてくると思いますが、単に期待をされるという答弁にとどまらず、ここは相当踏み込んで、民間に参入を求めていくというぐらいの強いリーダーシップが求められてくるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
古屋副大臣 国際化に伴いまして、国際的にも通用する民間の認証機関を大いに育てていくべきではないか、こういった趣旨の質問だと思います。
 まず、歴史的に見まして、欧州あるいはアメリカは、基本的に、大体民間の認証機関が行うということが多いという歴史もございまして、特に最近は、欧州統合が契機となりまして、域内の安全規制を目的としたCEマークですね、家電製品とかいろいろ、よくCEと裏に書いてございますけれども、このマークによって民間の第三者の認証機関が活用をされております。
 こういう動きもありまして、今、欧米の認証機関は国際的に大きなビジネスを展開しておりまして、例えば、英国のロイド・レジスター社は、四千人雇用しておりまして六百億円だそうでありまして、ドイツのTUEV、テュフ、これは六千三百人で一千百億円の売り上げがあるということで、立派な認証機関として世界から認知をされているということでございます。こういったものに比べて、まだまだ日本は開きがあるというのは現実だと思います。
 したがいまして、我が国におきましても、基準・認証制度の適切なものについては、自己確認を基本とした制度に改めた上で、信用補完であるとか消費者保護の観点から、必要なものについて、公正中立な第三者機関による検査を義務づける方向で制度の見直しを進めてきた。これは、前の質問で私が答弁を申し上げましたように、平成十一年の法律の改正がその部分でございます。
 さらに、本件の相互承認法におきましては、国際的な指針、例えばISOだとかIECガイドを用いまして、審査・認証された我が国の認証の機関が、協定に基づき、欧州共同体やシンガポールに認められるということになっていくわけでございまして、これによりまして、国際的に認知された機関が当然育っていくことを期待いたしておりますし、また、私どもも、そういう方向で支援をしていきたいと思っております。今後、国境を越えた事業活動が可能になるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、経済産業省としては、こういった取り組みを通じまして、国際的に認知される、評価される認証機関の育成に努めてまいりたいというふうに考えております。
北橋委員 副大臣の御答弁の中に、ヨーロッパのビッグビジネスのお話に言及がございました。日本はそれに比べると、本当にこれからよちよち歩きでスタートする段階だと思っておりますので、ぜひともその方向で頑張っていただきたいと要望しておきたいと思っております。
 今回、電気通信機械関係の貿易がシンガポールとの間で相当拡大されることが期待されておりますが、あわせてFTA、自由貿易協定が締結をされました。今日までの政府の努力に敬意を表したいと思っております。
 その過程の中で、今後どのように広がっていくのかという問題と、もう一つ、たまたまこのシンガポールの場合は熱帯魚ぐらいで、余り農林水産省所管の物資の輸入というものが大きくなかった。そういった面での政治的摩擦というのが非常に小さかったという相手国であります。もちろん、石油化学関係に国内産業との摩擦も懸念されるものもありますけれども、それを大きくのみ込んでFTAを結んだわけであります。
 政府は、今まではWTOを軸としたマルチの、多国間の協議を重視されていたように私は思うのでありますが、ここに参りまして積極的にこのFTAの締結に向けて踏み出してこられております。今後どういうスケジュールでその自由貿易協定の締結を拡大されていくお考えか、方針をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 今委員御指摘のように、多国間の世界の自由貿易を促進するWTOという大きな土俵があります。しかし、最近の趨勢では、その大きな土俵のほかに、それを補完する意味での二国間のいわゆるFTAでございますとか、あるいは地域の経済の連携協定、こういうのがございます。
 日本の場合には、御指摘のような一つの方針の中で、世界のそういうFTAの趨勢から若干おくれをとっておりました。御承知のように、日本がシンガポールと結ぶまでは、お隣の中国と韓国、それから地域としては台湾、香港、それに日本というのが世界の中でそれを締結していない国であったわけであります。
 しかし、そういう中で私どもとしては、FTAに関しては、まずシンガポール、御指摘のようにセンシティブなところが余りないというような、そういうこともございましたけれども、シンガポールと結びまして、ことしの一月からそれがいよいよ本格化をした、こういうことでありまして、これは私は、二十一世紀の世界自由経済、自由貿易というものを見た場合には非常にいいことだ、そういうふうに認識しております。
 今後の進め方についてでありますけれども、昨年の秋に私がハノイのAEM・METIの会合に出ましたときに、経済連携強化のための専門家会合の設置に合意をいたしまして、十一月から検討に入りました。
 本年初めに、御承知のように、小泉総理が日ASEAN包括的経済連携構想を提案されたところでございまして、この専門家会合でもその具体化のための議論を今進めているところでございまして、今後、さらに検討を進めまして、この秋の日ASEAN経済大臣会合及び首脳会合に報告書を出そう、こういうことであります。
 一方、お隣の韓国との間では、アジア経済研究所と韓国対外経済政策研究所との間で行われた学術的研究及び昨年からことしにかけてまとめられました日韓FTAビジネスフォーラムの提言を受けまして、先月の首脳会談において日韓FTAに関する産官学の研究会の設置に合意をいたしまして、これも積極的に進めていこう、こういうふうに思っています。
 また、メキシコとの間でも、自由貿易協定がないということで我が国企業が欧米企業に比べて非常に不利になっています。例えば、メキシコとアメリカの間では、NAFTAというような一つの枠の中で特別な関係がある。そういう中で、日本から進出している多くの企業が非常に不利になっている、こういう状況がありまして、日本の進出企業からも非常に強い要望があります。
 それから、メキシコ政府自体も、日本との自由貿易協定を結ぼう、こういうことで大変な強い要望がございますので、昨年九月から両国合同での産官学研究会を今行っておりまして、我々としては、その実現も積極的にやっていかなければいけない。したがって、本年夏前ぐらいまでには、このメキシコとの間のことも、可能な限り早い時期に研究報告書を出して進めていきたい。
 その他、私のところに来られる各国のカウンターパートの経済産業担当大臣が、ASEANを含めて、例えばオーストラリアでもどこでも、ぜひやろうじゃないか、こういう申し出がありますので、そういったことも一つ一つ検討していかなきゃいけない、このように思っています。
北橋委員 このFTAを拡大の方向に向けて努力をしていきたい、そういうお話でございます。それは一つのポリシーであると思いますが、それを円滑に進めるためにどうしても解決していかなければならないのは国内問題だと思っております。
 外国に行かれて、ぜひそういう協定を結びましょうと外国の方が非常に積極的なのは、日本の国内市場の中で、関税が高かったりいろいろな非関税障壁があって、なかなかアクセスが難しい。もっと売り込めるはずだと期待をしている分野が大変大きいからこそ、日本に対して積極的に言われるのだろうと思うのですね。
 そうなりますと、国内産業の中で、競争力の比較的弱いところについては、当然いろいろなあつれきなり雇用問題なり、あるいは産業の縮小ということも懸念をされているわけでありまして、このFTAを推進するということの成否というのは、何よりもそういった国内産業の体質を強化する、そして雇用を守っていくということに的確に対応できるかどうかにかかっていると思うのです。
 そういった意味で、私は、セーフガードという問題を取り上げさせていただきたいと思っております。
 私は、たまたま政府がタオルのセーフガードについて間もなく結論を出されるからということで取り上げているのではございませんで、基本的に、例えば繊維産業というのは、輸入浸透率から見て、産品によりますけれども、物すごい輸入攻勢にさらされまして、事業所も縮小、閉鎖あるいは従業員も大変な数が減っているわけであります。
 今後、FTAを進めていくということは、繊維に限らず、いろいろな物資で、当然日本に、もっと貿易を大きくしたいというところがあるわけです。繊維と同じような状況は、私は出現し得る。ある意味では、一番最初に起こった日本の主力産業の繊維産業が、輸入の急増によってこれだけ大変な困難な状況にあるということは時代の先駆けであって、私は、大なり小なりこのような非常に厳しい局面に立たされていくと。したがって、FTAの拡大ということは、国内においては大変難しい問題を惹起していくだろう、それをどのようにして解決するかということだと思っております。
 そこで、まず私は、大臣の率直な御所見をお伺いしたいのですが、私は、何もすべての産業をすべて保護せよという立場ではありません。自由貿易の恩恵を受けている日本でありますから、それは非関税障壁なりそういったものを縮小、撤廃をして、できるだけ自由な環境を求めることだと思います。
 それにしましても、一九九〇年の時点で繊維製造業というのは百二十七万人あった。ところが、四割近くも減って、七十五万人に九九年の統計でなっている。従業者数で七十五万人まで減っている。四割減っています。事業所数にしても、九〇年で十三万事業所があったのが、今三分の一も減って八万五千事業所になっている。地域経済の打撃はすさまじいものがあります。これが日本の産業を所管されてきた経済産業省の行政の結果なんですね、この十年間の。まさに私は、失われた十年だと思うのですよ。
 こういう現状に対して、大臣として率直にどのような御所見をお持ちでしょうか。
平沼国務大臣 私も、昭和三十七年に大学を出まして、当時基幹産業でございました繊維産業に就職いたしまして、十一年間営業マンとして活動した経験があります。あのころの繊維産業というのは、まさに日本の経済の屋台骨を背負っている、こう言っても過言でないぐらい盛んでございました。しかし、今委員が具体的に数字をお示しになられたように、非常に厳しい状況になっていることは事実であります。
 例えば、生産量で繊維をとってみますと、一九八九年、百八十三万トンが、最近の二〇〇〇年では、四〇%減の百九万トンになっております。一方、輸入量というのは、八九年で八十八万トンでございましたのが、プラス九二%の百六十九万トン。輸入浸透率というのも、八九年は三五・六%でございましたけれども、これも二〇〇〇年には六四・六%。そして、従業員の数も四〇%減、百二十八万人から七十六万人になっております。それから、倒産件数というのも、今の厳しい状況の中で、二〇〇一年は年間一千四百三十五件の繊維関連企業が倒産して、史上最高になっている。こういう形で、非常に深刻でございます。
 これは、今御指摘のような一つの背景の中で、さらに生活の多様化だとかそういうような形で、我が国の消費者が、ある意味では価格を重視していることや、そして、お隣の中国の繊維産業、そこの技術水準の向上などを背景にしまして、繊維産業の生産拠点の海外移転、これは空洞化でございますけれども、加速をしており、これが今並べさせていただいた数字にそのまま反映をしている。こういう形でそれぞれの地場の繊維中小企業の経営に大変な影響を与えて、このことは非常に深刻に私どもは受けとめているところでございます。
 特に繊維産業というのは、全製造業の一割弱の七十六万人の雇用を擁しておりまして、また、これは、御承知のように、産地性というのが非常に強くて、雇用面でも地域経済を支えている重要な産業であります。
 繊維産業界におきましては、厳しい環境の中で、高付加価値化への特化、あるいは技術性を生かしやすい産業資材等非衣料分野の一層の開拓、あるいはクイックレスポンス等による多品種少量生産へのきめ細かな対策によりまして懸命に努力をされているところでございまして、私どもとしては、こういう厳しい状況の中で、その認識のもとに、繊維産業の前向きな努力に対して今後とも全力で応援をさせていただかなければならない、このような認識を持っています。
北橋委員 繊維業界も必死の自助努力をして、国際競争にさらされる中で頑張っているわけであります。その中で、注目されるリポートが、タオル業界の構造改善ビジョンという形で昨年の八月に公表されております。
 これを見ると、今大臣がおっしゃったように、付加価値の高い製品のマーケット開発なり、コストダウンのぎりぎりの努力をするという方向性を示されているんですが、その中で特に注目しているのは、仮にこのTSGが、繊維のセーフガードが発動されなかった場合に、事業所数はどこまで減るか、雇用者数はどこまで減るかという具体的な試算をされております。
 そして、発動をされて、時間を稼いで、その間に構造改善を思い切って進めた場合にはかなりの企業が残れるんですね。今の繊維産業、タオルもそうでありますけれども、ぎりぎりのところへ来ております。
 経済産業省の中には、付加価値の比較的低いものについては中国へという考えがひょっとしたらあるのかもしれませんけれども、今残ってきているのは、付加価値の高いものを求めて必死に頑張っている企業なんでありまして、そのぎりぎりのところで時間が必要なんですね、緊急の猶予が。
 私は、この構造改善ビジョンの中で、やはりこのTSGを発動して時間を稼げるか否かということが、この業界が本当に生き残れるか、あるいは、もう日本に機屋さんはいなくてもいいという、もうぎりぎりの選択のところに来ているんではないかと思うんですね。そういった意味で、大臣に率直にお伺いしたいと思うんです。
 この構造改善ビジョンに見られますように、業界は一生懸命やっています。政府もそれなりに応援していただいていると思いますけれども、やはりここは、これだけの輸入急増にさらされてくると、もうぎりぎりの、もう選択の余地がないわけですよ。時間が必要なんですね。全部つぶれてしまうのか、あるいは時間的猶予が必要なのか。
 そういった意味で、私は、このTSGの発動の有無により、国内産業がどういう状況になるかという試算は非常に重いものがあると思っているんですが、率直に評価をしていただけないんでしょうか。
古屋副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 委員御指摘のように、今タオル業界は大変厳しい状況でございまして、今御指摘もございましたように、タオル業界が、この危機を脱するために、いわゆる構造改革のビジョンというものを昨年発表しております。これは、業界だけではなくて、マスコミであるとかあるいは消費者代表、メディアを含めて、総合的な対策が盛り込まれております。
 要するに、少品種大量生産、いわば目方売りというものから脱却をして、一つの付加価値が高いものに転換をしていく、そして、多様な消費者のニーズに合致した商品を製造、販売できるような構造に変えていこうという大変意欲的な内容でございまして、私ども、これを大変評価しております。こういったビジョンに基づいて徹底的に取り組んでいただきたいし、また、私どもとしても、こういった前向きな改革というのはできるだけの支援をしていきたいというふうに思っております。
 また、このビジョンでも、「三年後のタオル業界の将来展望」として、セーフガードの有無あるいは構造改善の実施の有無で、それぞれ売上高であるとか利潤、事業所数、雇用者がどういうふうになるかという推計をしております。セーフガードが発動され、かつ構造改革が進められても、その事業所数、雇用者数が減少するという非常に厳しい予測を立てておりまして、これは、ある意味では業界がまなじりを決して取り組んでいこうというあらわれでもありますし、私ども、大変重く受けとめております。
 それで、この構造改革という計画をしっかり実施してさらに前進させていく、そのために私どもも、もちろん助成金等の支援はもとより、むしろソフトウエアというか、そういうノウハウ、いろいろなチャネルを紹介することによってこの危機を脱していくということが何よりも大切だと思っております。
 また、委員が御指摘になられましたセーフガードの発令はどうかということでございますが、今、もう御承知のように、二〇〇〇年までは一五%、この輸入量がふえました。しかし、二〇〇一年あるいは二〇〇二年はそのふえ方がやや鈍化している、あるいはふえる月と減る月があるということで、本当に輸入の急増があるのかどうかということをもうちょっとチェックをする必要があるということで、半年間その調査を延ばさせていただいているということが現状でございます。
北橋委員 輸入の増加の動向を見守ると言っておられますけれども、九九年の四万三千トンが、毎年五万一千、五万五千トンとふえてきているわけで、過去十年間のトレンドを見れば、輸入浸透度が急増している。
 その中で、十一項目の指標をもとにWTOのルールでセーフガードの可否を検討されていると思いますけれども、そこにおける従業員の数の激減、あるいは企業がどのような状況に追い込まれているかを見れば、TMBに持っていったときに、審査されてひょっとしたらという心配が、御懸念があるのかもしれませんけれども、私は、WTOの自由貿易協定の枠内でのルールに従って判定をしても、国内産業への被害、因果関係というのは明々白々だと思うんですね。
 私は、今回、自由貿易協定を進めるということは否定はしません、それは自由なことなんでありますが、これは経済産業省にセーフガードでヒアリングするときに私ども言われています、セーフガードは自由貿易体制の中でのルールなんだと。つまり、国内産業に構造調整を行う猶予を与えるための緊急避難的かつ一時的な措置としてWTO協定で認められる措置だ、いわば自由貿易体制をより進めていくための安全弁として機能するべきものだというのですね。
 私は、セーフガードというと何か後ろ向きな、自由貿易を否定するような意見の方がいらっしゃるけれども、そうではないと。業界の中では、こういうことを言う人がいますね、サッカーでゴールキーパーがいない試合をしているようなものだと。
 私はやはり、国内の産業の雇用の空洞化がどんどん進んでいく中で、自由貿易は結構です、やらねばならない、でも、同時に、輸入の増加によってここまで追い込まれた業種について何も手を施さない、そういう姿勢が世界じゅう一体どこにあるのですか。アメリカのようにアンチダンピングを乱用せいとは決して申しません。鉄鋼のように、輸入は減っているのにまたセーフガードなんというばかなことをやれとは言っていないのです。
 これはだれが見ても、WTOで認められたルールを今ここでやらなければ、もう我が国というのは、どんなに産業が輸入にやられてしまっても助けない、そういうことになってしまうのではないか。そういった意味では、私は、国内産業の被害の実態と輸入増のこのトレンドをしっかり見ていただいて適切な判断をすることは、自由貿易に決して逆行するものではないということを申し上げたいのです。
 大臣の御所見を聞いて、私の質問を終わります。
平沼国務大臣 おっしゃるように、セーフガードというのはWTOのルールの中で認められた一つの措置制度であります。したがって、これは、決して自由貿易を阻害したり世界の貿易を混乱に陥れる、御指摘のとおりそういうものではないと思っています。
 したがって、今のタオル、繊維に対するセーフガード、これに対しては、私どもは半年間延長をさせていただいて、去年の十月から推移を冷静に見守ってまいりました。その中で、一月は減少し、二月は若干上がる、そういう中で、昨年の十月からやってきた調査の中では、もう一段やはり調査を継続してやるべきだ、こういう判断の中で、繊維業界の皆様方の、タオル業界の皆様方の非常に厳しい状況、そして私のところに何回もお越しになられて、その今の現状もよくお聞きをしています。
 したがって、私どもとしては、今回、直近のデータ等を見て、さらに六カ月調査を継続させていただこう。もちろん、その中で、急増するようなことあるいはさらに打撃が大きくなるような事態が起これば、当然これは権利として行使できるわけでありますから、そういうことを含めて六カ月の延長、こういうことにさせていただいたところでございます。
北橋委員 時間が参ったわけでございますが、戦略的通商政策というのをこれから日本としても樹立する必要があると思うのです。それは、やはり自由貿易協定の拡大だろうと思います。
 しかし、同時に、輸入の急増に対して産業、雇用が重大な事態に至ったときには、セーフガードやアンチダンピングの措置も日本としてもやはりオプションとしてしっかり考えていかないと、我が国の雇用は十年、二十年で大変なことになる、その懸念を表明させていただいて、私の質問を終わります。
谷畑委員長 川端達夫君。
川端委員 大臣、よろしくお願いします。
 今回、我が国としては、シンガポールとの間でいわゆる包括的な自由貿易協定、事実上のFTAの第一号ということで、大きなターニングポイントを迎えたのかなと。北橋さんが御指摘のように、いろいろな課題がある中で、しかし日本が、WTOのもとでいわゆる自由貿易の枠組みをこれからどうつくっていくのか、大変大きなスタートラインに立ったんだというふうに思います。世界を見ましても、いわゆるEUの統合それからNAFTA、それぞれに大きな経済圏の中で自由貿易のもとに動き出した、一定の変化と成果があらわれてきていると私は思っております。
 そういう中で、先ほどの御答弁でも、メキシコとの関係あるいは韓国との関係でこれからそういうことを模索していこうということでありますが、FTAを見ますときに、アジアがやはり非常におくれている。中国、韓国、日本、香港、台湾、全部入っていない。あとは全部入っている。そういう中で、日本の通商政策、戦略として、アジアのいわゆるFTAというものを、どういうふうになっていくべきだと認識しておられるのか。
 私は、中国のWTO加盟を含めて、アジアの経済圏というのをどういうふうに構築するかというのが実は日本の経済にとっても最大の問題であり、そして中国がこのままいくとどんどんイニシアをとっていってしまう事態になりかねない。そういう部分で、現にAFTAもあるのですが、これはかなり実態は違う状況になっているというときに、日本がこれからこのフリー・トレード・エリアというものを、アジアの経済圏というものをどういう形に持っていくのか、イニシアをとろうとしておられるのか、まず、そのことを基本的な認識としてお伺いをしたい。
平沼国務大臣 御指摘のように、日本、この東アジアが世界の二国間あるいは地域連携、その中でおくれたことは事実でございます。その三つの国と二つの地域、その中で日本が、本年一月に突破口を開いたというか、シンガポールとのFTAを締結いたしました。私どもはこれが第一歩だと思っています。
 そういう中で、今ちょっと御指摘がありましたけれども、中国も向こう十年のうちにASEANの諸国と地域経済連携協定を結ぶ、そういうことを明確な国家方針として発表いたしました。日本も、小泉首相がASEAN諸国を歴訪いたしましたときに、ASEANを視野に入れて地域の経済の連携をやっていく、こういう大きな構想を出しました。
 私どもとしては、基本的な考え方は、やはりこのシンガポールとの第一号ということを一つの足がかりとして、ASEAN諸国ともこれから、それぞれの二国間・地域、こういったところに私どもは足を広げていかなければならないと思っています。
 そして同時に、今進行しております韓国、そして申し出があります台湾、そういったところともさらに検討を深めていきながら、最終的には、私は中国ともそういう一つの前提の中で大きな構想をしていく。
 それで、これから二十一世紀の経済というのは、空洞化という言葉が一方にはありますけれども、同時に、補完をしながら共存共栄で発展をしていく、私はこういう時代だと思っています。ですから、そういうことに資するための二国間の協定なりあるいは東アジアの地域の経済連携協定、こういったものを私は積極的に日本の方針として今後やっていかなければならない、それが一つの方向である、このように思っています。
川端委員 そういう中で、私は、全体の構想、最終的な姿と、それから、ある意味でのスケジュール的なものを日本はもう少し明確に打ち出さないと取り残されるのではないかという懸念を若干持っております。
 そういう中で、なぜシンガポールだったのか。そして、次に本当にどんどんいけるのかというときに、外務省の方や経済産業省の方にいろいろ聞くと、やはりそれはいろいろネックがあると。最大のネックは農業であると。農業のネックというのはどういうネックなんだというと、日本のハードルが高いと。まさにこれからの経済通商政策の中に、農業の分野を我が国の問題としてどうクリアするかということが、このフリー・トレード・エリアの中で実は我が国の抱えている一番大きな課題だと思うのですね。
 一方で、今北橋先生が質問されたような部分でもセーフガードの問題が起きてくる。繊維の問題では、MFAの時代から含めて、もう延々と、そういうことをきちっとやるべきじゃないかということをやってきて、なかなかというより全く発動もしてもらえないし、難しい、そのぎりぎりのところまでもいかないという中で、突然農産物だけすぽんと進んじゃうというと、このFTAの部分を含めて、実は農業の部分が一番大きな課題、国内的な難問として、実はトータルのデザインがかけないのではないかというふうに思っているんです。この問題をやり出すと、ちょっときょう時間がないので、その指摘だけ。
 これは本当に、日本がアジアの中でどうイニシアをとるかというときに、相当なビジョンを持たないとというときに、私は、一番大きなジャッジメントの一つだというふうに思っております。何か農業の部分に関してありますか。
平沼国務大臣 諸外国との経済の連携強化を進めるに当たりましては、我が国全体としての利益を考えて、聖域を設けず、あらゆる分野において私は基本的に検討を進めていかなければならないと思っています。
 こうした考えのもとで、国内のセンシティブな分野、今御指摘の農業、そういった分野についても、やはりその影響ということは十分配慮しなければならないと思いますけれども、当然のことで、検討の対象に私どもは含めていかなければならないと思っています。
 これはもうよく御承知だと思いますけれども、WTOの協定におきましても、自由貿易協定の締結に当たっては、特定のセクターを除外することは認められていない、こういうことでございますので、私どもとしては、そういう非常に厳しいものがありますけれども、やはり全体を勘案し、聖域を設けず、そして一方においては、しっかりとした配慮をしながら全体的に進めていく、こういうことではないかと思っています。
川端委員 そういう中で、時代の大きなターニングポイントを特に通商産業の政策において迎えたと思うんですが、日本は、今まで間違いなく貿易立国、技術立国ということで日本のまさに根幹を支えてきた国である。そういう中で、私はこれからも、いろいろ幅広にはなってきますけれども、日本の根幹を支える、経済の根幹を支えるのは、やはり貿易であり、技術であり、そしてその中心が製造業である。どう絵をかいても、日本は、金融で支えられる国であるとかサービスで支える国であるとかいうことにはならないというふうに思っております。
 しかし、現実を見ると、かつてそういう技術立国、貿易立国となったときに、どんどんつくろう、どんどん売ろう、どんどん輸出しようということで支えてきた。しかし、だんだんそのコストが高くなってきた。そうすると、今度はどんどん海外進出をしようと。これは当時の通産省もそれをリードされた。そして、ふと気がつけば、いわゆる空洞化ということで大変なことになってきているという状況にあるわけです。かつての日本の状況に中国が取ってかわって、世界の生産工場だと言われ出してきた。
 大臣も社会人の第一歩を繊維産業、紡績業でスタートをされた。橋本元総理も、同時に元通産大臣も、もともと紡績業でスタートをされた。綿貫議長も紡績業にサラリーマンの第一歩を刻んだ。日本を今動かす中心の政治家の皆さんがそれぞれ、当時、多分三十数年前だと思うんですが、就職するには紡績業に行かれた。当時は間違いなく日本の経済を支える基幹産業であったはずなんです。
 しかし、今紡績業そのものが日本では、多分、輸入浸透率そのものだけ見れば九割を超えて、日本でつくって売るということは成り立たない産業になってしまっている。しかし現実に、そういう部分で定番品を生産するということは日本の国際競争力としてはもうほとんどない状態になった。わずか三十年で、日本を支えた、世界のナンバーワンの生産量を誇った紡績がそうなった。
 しかし、今はまだ技術、紡績織機は間違いなく世界で一位です。そして、それを開発する、それを新たに改良する、そしてそれを設置してスタートするという開発力とノウハウは間違いなく世界で一位です。しかし、このままの状態であれば、ベースになる企業が成り立たなくなってきているというときに、だれが研究するんだ、だれがそのノウハウを継承するんだということが今深刻な事態になっているわけです。そういう部分で、タオルなんかも基本的にみんな同じなんですね。
 そうすると、やはり技術立国、貿易立国だというときに、生産のある種の部分のすみ分けは迫られてきているけれども、中国が、例えば今は織機の最新鋭のものを日本から持っていって据えつけて、日本人が動かしてスタートをした後で、山盛りいっぱいつくることはできるけれども、これを改良した新しいものについてはまだできない。
 しかし、これを続けていくと、かつての日本のように、二十年、三十年たったら、中国自体が新たなものをつくっていく力を持つ、要するに底辺を持ったわけです。日本は底辺なくして、今、上は残っているけれども、下がなくなったら上がなくなる。しかし、日本はこれを持たないと生きていけないということだと思うんですね。
 そういう意味で、それを支えている部分、日本がこれからも技術立国として、貿易立国としてやるというときの守るものと、それから分業していくものというのを、ある意味でそれなりにめり張りをつけないと、みんな自由に頑張れといったら全部死んでいくという状態になる。その部分で、極めて外交と通商の政策、戦略が重要になってきているんだというふうに思っております。
 そういう中で、時間が限られていますので、きょうは、その部分の中核はやはり人であり、技術である、そして技能である。私は、その人材の部分と、とりわけ技能ですね、物づくりの技能、技術は継承できるけれども、技能は本当に真剣にやらないと継承できない、このことについて若干お伺いをしたい。
 それで、四月に入りました。ことしから週休二日に学校がなる。このことに関して、何か円周率はおおむね三でいいとか、小数点以下二けた以下は計算しなくていいとかいう事態になったわけですね。そして今、現実にも深刻な理数の学力低下と言われている。技術立国として人がベースで支えるときに、事態はこういうふうに変わってきた。
 この学校の週休二日と深刻な理数の学力低下ということについて、大臣の御感想と、それから、これは政策として決定されて実行されたわけですから、閣僚の一人として、この問題にどういう認識をされ、発言等々どう行動されたのか、教えていただきたいと思います。
平沼国務大臣 確かに、製造業というのが今後とも日本経済の活力の源泉になる、それは私は御指摘のとおりだと思っています。そういう意味で、これから製造業は、さらに技術革新をして伸ばしていくような政策をとっていかなければならない、経済産業省としてもその辺に力点を置いて今一生懸命頑張っているところであります。
 今の教育体系の中で、ゆとりの教育、週休二日制、こういうことであります。これは長い間の議論の中で、ともすると競争試験制度のもとで暗記力だけを非常に評価する、そういう体制の中の弊害が七〇年代、八〇年代を通じて指摘をされ、その反省の上に立って、やはりゆとりを持って、そして、自分である程度考え、自分で自己啓発ができるような、そういう枠組みが必要だという形で、この週休二日制ですとかあるいはカリキュラムの簡素化、あるいは教科書も非常に簡単になった、こういうことが私は出てきたのじゃないかと思っています。
 私は、非常に憂えておりますのは、例えば、高校生を対象にして世界での数学の学力テストをやりますと、かつては日本の高校生が上位を占めた、こういうことなんですが、最近では、日本というのは十位にも入らなくて、アメリカですとか中国、韓国、こういったところが上位を占める。こういうことを考えると、今御指摘の、円周率はおおむね三、こういうことは私はいかがなものかと思っています。
 今小泉内閣で、このゆとりある教育という一つの方針が長年の積み上げの中で決定され、私もその閣議には参画をしておりました。私は、政治家個人として考えたところは、やはりここは少し行き過ぎのところがあるんじゃないだろうか。したがって、これはやはりこれからの状況を見ていかなきゃいけないですけれども、今の現状を見ると、そういったところをやはり是正しなければならない時期が来るんじゃないか、私はそんな感想を持っております。
 私自身、まだ結果が出ていることではありませんから、その責任についてということは私からは申し上げる立場にはないわけですけれども、率直な感想として、少し振れ過ぎているんじゃないか。今の現状を見ると、やはり基礎というものが大切ですから、その辺をしっかりと身につけさせる、そういう教育、それから、基本的には内容の濃い教育、こういうことをやはりしていかなければならないんじゃないか、そんな感想を持っています。
川端委員 ありがとうございました。
 大臣は、理数系というのは好きだったですか。ニュートンは、リンゴが木から落ちるのを見て不思議だなと思った。どうして落ちるんだろうと。要するに、不思議だなという疑問と好奇心。例えば、日本でも、なぜ春になると暖かくなって桜の花が咲くのか。当たり前だというけれども、不思議だと思ったら不思議なんですね。
 私は、自然科学というものは、自然の中のいろいろな出来事が、不思議だなあ、どうしてなんだろうというところから興味がわき、勉強しようということになる。ある部分、基礎的な学力、計算の方法とかいうのはもちろんベースにあるんですけれども、大体、有名な、天才と言われている人は学校の成績、みんな悪いんですよね。人材を育てるときに、今の教育が、いわゆる理数というのは、やはり物づくり、技能、自然科学というものは根幹にかかわる。
 私ちょっと聞いてみたら、今、高校に入ると、一年生の半ばか二年生から文系、理系と分かれるというんですね。そして、文系になると、自然科学とかそういうものをほとんど勉強せずに、受験も、国立大学は別にして、英語と国語とかいう科目だけの受験ということで、ほとんど高校のときも、受験を目指していればもう理数なんて、どうでもいいと言ったら語弊がありますけれども、さらっとやって、どうして選ぶかというと、高校二年で文系を選ぶか理系を選ぶかと言われたら、もともと好きでない理系は選ばない。算数も理科も余り、もう嫌いだ、おもしろくないと言って、受験も、そんなものしたくないから文系を選ぶという人が結構多いのではないか、私の想像ですけれども。
 そして、文系を選んで、英語と国語か何かで受験をして、大学に入って文系のコースを選んで、そして小学校の先生になろうと。そうすると、基礎的な部分を教えることは、もちろん算数も理科も小学校の先生は習いますけれども、先生になる人は、ほとんど理系じゃなくて文系ですよね、小学校の先生になられる方は、課程から見ても。
 そして、子供に教えるときに、多分、これは一つの想像ですけれども、余り関心がなく、好きではないのではないか、おもしろさを余り感じておられないのではないか。文学の、この本はおもしろいというのと同じ以上に、リンゴが木から落ちるのはもっと不思議だという人ではない人が多いのではないか。みずから自然科学、理数の世界の不思議さとおもしろさを知った人が子供たちに教えずに、おもしろくないなと思った人が教えて、どうして子供が、そういうことに関心を持つ人がふえるんだろうかということをずっと私は疑問に思っていた。
 そういう意味では、別に先生に責任があるわけではなくて、やはり教師のあり方という部分で、もっともっと、それこそゆとりができるということ、確かに暗記力の試験だけというのはよくないというのも事実ですから、そういうときに、教育という部分の中で、まして経済、産業を支える人材がみんな理数嫌いだったらもうどうしようもないわけですから、そういう部分では、私は、日本の経済の根幹にかかわっておられる、責任を持たれる大臣として、今、もうスタートするんですから、こういうゆとりの教育というときに、そういうこと、例えば、実際におやじが、あるいは近所のおじさんあるいは町工場が、こんなことでやっている、こんな不思議なことが、こんなおもしろくなるんだというふうなことには、現に経験した人がすばらしい教師であると思うんですよ、そういう部分では。
 そういうことに対して、どんどん積極的に経済産業省として提言をされ、実行されていくべきだというふうに私は思うんです。教育は文部科学省がやるものではなくてというふうに思いますが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 今、川端先生のお話を伺って、大変示唆に富んだお話だと思って聞かせていただきました。
 私も、もう一つの観点があると思っておりまして、幼児のときの教育というのは非常に大きな人間の方向を決定する、そういう意味があると思うのです。これは、だれも不思議と思わないことを不思議と思って、そして、そこから生み出された教育方法でスズキ・メソードというのがあって、これはバイオリンの天才教育で、それがすべての教育に敷衍をしているわけです。
 この鈴木先生という人は、名古屋に下宿をして、バイオリン青年であった。そこの下宿の子が、生まれて三歳ぐらいまで育つ間に完全な名古屋弁をしゃべる。年とって語学というのは、イントネーションまで含めてなかなか身につかない、これは不思議じゃないか。だれも不思議に思わないことを不思議だと思って、その子供にバイオリンを一生懸命教えたら完璧に覚えた。
 ですから、一方においては、日本では幼児のそういう力を、才能を引き伸ばす、そういう教育というのが私はあってもいいと思います。ですから、経済産業省としても、文部科学省の管轄ですけれども、そういった観点も取り入れて、いろいろ意見交換もしたいなと実は思っておりました。
 いわゆる経済産業を管轄する役所として、今御指摘の、そういう非常に知見を持っている、そして実績を持っている人たちが、例えば中学だとか高校に実際に来て、その体験に基づいて、そして、自分が本当に興味を持ってやったことですから、非常に授業も迫力があるし、生徒にとってわかりやすい、そういったことは私はどんどん取り入れていかなきゃいかぬと思っています。
 そういう意味では、インターンシップ制度というのも今稼働しておりまして、これも今、年間三万人ぐらいのそういう制度で、それぞれ学生が興味あるところに行ってインターンシップをやっています。それを、今大学ですけれども、もう少しレベルを下げて、そういうこともやはり産業政策としては考えていくべきではないか、そんなことを感想として持っています。
川端委員 ぜひとも、いろいろな部分で本当にいい子が育つようにしてほしいな。
 もう一つ、そういうときに、自分はそういうスキル、技能に非常にすぐれているということが世の中で評価され、誇らしいことであるという世の中でなくなってきているのではないか。最近、テレビ、新聞に技能オリンピックという字を見たことがない。去年、韓国で開かれているんですね。ちょっと成績を調べてみたんです。
 大臣、技能の日というのがあるのを御存じですか。技能の日というのがあるんです。十一月十日なんです。これはなぜ十一月十日かといいますと、昭和四十五年十一月に我が国でアジア地区初めての技能オリンピック国際大会が開催されて、それを記念して、開会式の行われた十一月十日を技能の日とし、この月を技能尊重月間とすることになったとあるんですね。
 体育の日というのは十月十日なんですね。昭和三十九年十月十日、東京オリンピックが開会されたから体育の日というんです。オリンピックといったら、テレビは本当にどんな選手でも取り上げて、彼の、彼女の苦労話からこうしてといって、アスリートとして評価される、これは一つのいいことですけれども。技能オリンピックというのは、このごろだれも聞いたことがない。
 そして、その成績を見ますと、一九六三年から一九七一年までに九回開かれて、六回、日本はメダル数第一位なんですよ。一九七一年の第一位を最後に、三十年前ですね、第一位からは転落した。そして、その直後の一九七七年から去年まで十三回開かれた中の十二回は、韓国が一位なんです。日本はよくて二位で、ひどかったのは八位とか、もうぼろぼろの状態である。そして、だれも取り上げない、極端に言えば、テレビとかで。
 それで、いろいろ調べてみたら、物づくりという日本の産業を支える一番中心の技能者の育成と技能オリンピックというのは、厚生労働省の所管である。しかし、彼らが働いている場所は、職場としては、まさに日本の経済を支える根幹の部分で頑張っている人が、去年韓国へ行くときに彼らは表敬訪問をして、総理大臣と坂口大臣に行ってきますと言って行かれた。別に、応援して、頑張ってくれと、あのパフォーマンス好きな小泉さんがそれをわっとされたわけでもないから、テレビには一秒も流れなかった。これが日本の技能者に対する実態なんですよ。
 私は、こんなことで、すぐれた技能者、これは若い人ですから、大田区や東大阪の神様みたいな人へいく途中に、そういう人が、目を輝かせてというか、本当にわくわくしながら頑張るという部分が世の中で評価されることがなくて技術立国なんということはあり得ないという状況ではないのかなというふうに思っています。
 済みません、もう時間が来て、隣でお待ちですからもう終わります。
 それで、極端に言えば、もう経済産業省でやるとおっしゃってもいい。あるいはもっと、共管というか、かかわって――これは、大企業に関しては、大企業は、君、選手にといったら、二年ほど職場から引っこ抜いてトレーニングしてということでないとメダルがとれないみたいなのはスポーツとよく似ているんですけれども、大企業が、もうこんなのいいやといってやめちゃった瞬間にメダルの数ががた減りになるとかいうなかなか悩ましい問題もあるんですが、実はいろいろな、もっとほかの分野を含めていっぱいあるんですね。
 実は、ドイツとかスイスとかフランスは、最近相当力を入れてきている。当然、大臣が現地に応援に行くというところまでやっている。余りにもその部分では日本は軽視しているのではないかということで、一内閣というか、内閣は選挙まで大臣をお続けになるという方針だそうですから、来年スイスでありますからぜひとも応援に行っていただきたいと思いますが、何か御所感だけお伺いして、終わりたいと思います。
平沼国務大臣 大変いい御指摘をいただいたと思います。
 日本が高度経済成長を進んでいくときには、この技能オリンピックというのは大変大きなニュースソースで、帰ってきても大歓迎があった。それが本当に、御指摘のように、いつの間にか廃れてしまった。これは、やはり物づくり、いわゆる産業立国としている日本としては非常に残念なことであります。
 二年置きに行われていて、再来年、私がなっているかどうかということは非常に微妙なことであります。しかし、そういう形で、やはり本当の関心を持ってそれをサポートするということはぜひやっていかなきゃいかぬと思っています。
川端委員 ありがとうございました。
 終わります。
谷畑委員長 山田敏雅君。
山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。
 きょうは、本案に関係いたします自由貿易協定について、我が国の通商、貿易あるいは経済政策の非常に重要な部分だと思いますので、この三十分間、この議論をさせていただきたいと思います。
 私は、今までの経緯をずっと見てまいりまして、自由貿易協定を我が国が進めることについては大変否定的です。これは余りうまくいかないんじゃないかなというふうに思います。
 先ほどから大臣の御所見をお伺いしておりますけれども、今まで大臣は、メキシコとかASEANとかいろいろなところへ行かれてこの交渉をやってこられたのですが、今後、我が国は自由貿易協定をどんどんやっていくのか、あるいはやれるのか。先ほどの答弁と違って、現実的に足元を見て、どうお考えなのか、ちょっと御意見をお願いいたします。
平沼国務大臣 先ほど来の答弁の中でも言わせていただいておりますけれども、世界の自由貿易体制をつくるということは非常に大切なことだと思っています。その大きな土俵というのは、私も何回も参画をさせていただきましたけれども、WTOという土俵だと思います。しかし、その大きな土俵のほかに、もう少しきめ細かくそういう連携をやっていく、こういうことがやはり世界の中では大きな流れに相なっています。
 その中で、先ほど来の繰り返しの答弁になりますけれども、三つの国と二つの地域、これは、東アジアに固まっている国だけがある意味では取り残されていた、こういうことであります。
 そうなりますと、世界の中でそれが常識になってきますと、補完をする意味で、日本という経済大国とぜひやりたいという国が現実にたくさんあるわけですね。その第一号がシンガポールであったわけでありまして、その他の動きの中では、お隣の韓国も、もう実際にやろうよという形で、最初は学者の段階、それから今度は経済界も入ってやる、そして今度は政府もそこに入ってやる、そういうことで非常に具体性を帯びてきました。
 それからメキシコは、先ほども答弁の中に入れさせていただきましたけれども、日本からたくさんの企業が進出をして、そこで現実に工場をつくって、その工場を稼働させて活動しています。そうなりますと、今度は、メキシコとアメリカのそういう地域の協定の枠から出てしまうと、その企業は、主にアメリカを相手に工場生産を行っていることになると、すごい差がついてくる。ですから、そういう現実的な欲求の中で、ぜひ日本の進出企業からもやってほしいという要求がある。それに対してメキシコも、やはり日本という国とぜひそういう形で進めていきたい、単なる日本企業があるからということじゃなくて、日本という経済大国とやっていきたい、こういうことがあるわけであります。
 私どもとしては、そういう世界の流れの中で、大きな土俵以外にやはりもう少しきめ細かにやる、そしてお互いに共存共栄でやっていく、そういう仕組みをつくっていくことは日本にとってもプラスだ、私はそういうふうに思っております。
 そういう中で、いろいろなセンシティブな問題がありますけれども、でき得る限りそれはこれから日本のいわゆる経済政策の中で柱としてやるべきだ、こういうことで、私どもは、アジアの地域の連携協定も、小泉総理がASEANに行ったときに表明をしました、そういう線に従ってやっていくべきだ、このように思っています。
山田(敏)委員 若干私の認識と違うんですが、例えば今、WTOの大きな枠組みの中でやって、自由貿易はきめ細かいんだという御意見、それから、総理が行ってASEANの中でこれを提案されたということです。
 ASEANの反応というのははっきりしているんですね。自由貿易協定というのは、先ほどおっしゃったように、どこかを除いてやりましょうというのは原則ないわけですから。農水産物も含めてすべてをやるということで初めて可能になる。ASEANの人たちは、日本と自由貿易協定をやるときに、農水産物だけを除外してやりましょうという意見はありませんと、これはいろいろな報道で聞いているんですけれどもね。
 そこで、今度シンガポールとの協定ができました。シンガポールはもともと、事実上、日本と大きな関税障壁はない。そして、農産物はほとんどない。この中で日本が新たに何かやったかということになると、例えば繊維製品の関税を撤廃しました、だけれども、繊維製品なんかは、シンガポールからはもともとそういうものはないと。私はきょう、シンガポールの件でやるわけですけれども、これは最初にできて、これが最後になるんじゃないかなという懸念を持っております。
 現実的に、今度のシンガポールとの自由貿易協定において、我が国にとってメリット、デメリットは一体何だったというふうに評価されておられますでしょうか。
大島副大臣 山田先生に私の方からお答えを申し上げたいと思います。
 先生御案内のとおり、本協定は、二国間の貿易や投資の自由化あるいはその円滑化、そういったことだけにとらわれているわけじゃございませんでして、極めて幅広い分野において二国間の経済連携を強化する、そういったことを目的といたしております。
 この協定を締結することによりまして、今先生もおっしゃいましたように、両国間の物品あるいはサービス、資本、人、情報、そういった移動が今以上に促進をされるであろうと私たちも期待をいたしております。そのことでさらには両国経済が一段と活性化をしていくだろう、こういうふうに期待をいたしているところでございます。
 さらに、本協定は、我が国最初の二国間の経済連携協定として、今後の我が国とアジア諸国との経済連携を深める意味で、まさにそのモデルケースといいますか、重要な土台となる、こういう認識を私どもはいたしておるところでございまして、今メリットの点を申し上げましたけれども、特に先生がおっしゃいます、格段、本協定がデメリットがあるというふうには我が省といたしまして考えてはおりません。
 けれども、今先生がいろいろな分野から御懸念をされているということを考えれば、デメリットが今後まさに生じないように十分留意をして取り組んでいかなければならないだろう、こういう認識を持っているところでございます。
山田(敏)委員 今おっしゃったように、デメリットは余りないんです。メリットも余りないんです。だからこれはできたのです。デメリットは、今おっしゃったように、考えても、ないんですよね。
 これは現実にできたわけですけれども、ちょっと視点を変えまして、今WTOというのは百四十四カ国が参加しているんですね。先進三十カ国で世界のGNPの九〇%ぐらいやっているわけですけれども、百四十四カ国になると、動きが非常に鈍い、交渉に時間がかかる、わけのわからない話が出てくる、そういうことでこの自由貿易協定というのは急速に、ここ二、三年の間に大きくなってきた。
 しかし、我が国の立場をよく考えてみると、EUは今後新たに十五カ国が入ります。そうすると、非常に大きな経済圏、自由貿易圏ですね。大臣がさっきおっしゃったように、非常に小さなものじゃないわけですね。NAFTAは、二〇〇五年までに三十四カ国に拡大しましょうということで、もう大変大きな経済圏ができます。
 それから、さっきおっしゃったように、ASEANについては、中国が十年以内に、真剣に、必ずASEANと一緒にやろうということで、アジアに大きな経済圏ができる。
 WTO一辺倒で日本がやってきたときに、もう二、三年の間に、気がついてみたら、この三十カ国の中で日本だけが孤立して、アメリカの経済圏、ヨーロッパの経済圏、それからアジアの経済圏から完全に孤立してしまったという状況が今できつつある、あるいは急速になっていると思います。
 過去二十年間、三十年間努力してやってきたこの日本が完全に孤立してきた、これはどういう原因でこういうふうになったんだと、まず過去の分析をしてみなきゃいけないと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
平沼国務大臣 日本と、それからあと二つの国と二つの地域、これが最後まで残った、このことは歴史的にはそのとおりだと思っています。
 その原因を考えますと、我が国は、やはりこれまでガットそれからWTOを中心とする多角的貿易体制から、当然のことながら十分な恩恵を受けてきたこともあって、二国間や地域間の取り組みである自由貿易協定について積極的な対応をとってこなかった、そのことが私は背景にあると思います。
 確かにWTOというのは、中国と台湾が今回参加をいたしまして、それまでは百四十二だったのが百四十四カ国になりました。私も、一昨年来、WTOのいろいろな会合に出ておりまして、今御指摘のように、NAFTAが大きくなる、今EUは十五カ国あって、さらに十五カ国がそれに加わる、そういう形で地域が大きくなってくる。それでは、そういった地域の方々が、じゃWTOというのは要らないよということではなくて、やはり多角的貿易の中でいろいろ大切な、投資ですとか環境ですとかアンチダンピングだとか、そういった項目については大きな枠をつくって、その中で世界の自由貿易体制を維持発展させていこう、こういう共通の目的が私はあると。
 一方においては、補完をする意味でそういうことが出てきているわけでありまして、私は、何も日本が今後孤立をするということはあり得ないと思っています。また、そういう孤立をするようないわゆる経済政策はとるべきではないと思っています。
 日本というのは、やはり世界第二位の経済大国であります。ですから、そういう中で、お隣の中国がいち早く、十年以内にASEANと地域の経済連携協定を結んでいこうよと。日本も同時に、小泉さんが行ってプロポーザルをし、それが例えば、タイのタクシン首相が来れば、私に会うと真っ先に、タイも非常に興味を持っている、やろうと。インドネシアもしかり。
 ですから、そういう中で私どもは、先ほどもちょっと触れましたけれども、中国を包含した形のWTOと、ほかに、このアジア地域のそういったものは当然構築でき、その中で日本は一定の主要な役割を果たしていく、そのことがいわゆる貿易立国、経済立国の日本にとって非常に資することになる。ですから、そういう観点で私どもは推進をすべきである、こういう考え方でやっているわけであります。
山田(敏)委員 自由貿易協定というのは、今大臣がおっしゃったことと私はちょっと違うと思うんですが、排他的な協定のことを自由貿易協定と。この域内で私たちは関税を撤廃しましょう、それからいろいろな制度を共通にしましょう、だけれども、それ以外の地域については違いますよ、関税をかけます、制度も違いますと。自由貿易協定そのものは排他的な協定なんですよ。だから、それに入らなかったら日本はいろいろなデメリットを受ける。
 例えば、さっきおっしゃった、メキシコで日本企業が投資するのに明らかに大きなダメージを受けて、競争できないという事態が起こるわけですね。そこで今、メキシコと二〇〇一年六月からいろいろ研究が始まったということでございます。
 農林水産省に来ていただいていますのでお伺いいたしますが、今まで、WTO一本でいく、自由貿易協定には反対だという立場がいろいろ出てきておりますけれども、このメキシコ、さらに韓国についても同じように水産物の問題があるわけですけれども、自由貿易協定をどういうふうにやっていくか。それについて明確な立場は、今まではそういうふうに出ているんですけれども、これからはどうなんでしょう。
西藤政府参考人 先生、我が国の農産物需給の状況については既に御案内のところだと思いますが、我が国は、世界最大の農産物の純輸入国に現在なっております。
 若干具体的な数字を申し上げますと、農産物の分野で三百三十六億ドルの純輸入。輸出から輸入を差し引いた、輸出はほとんどありませんので輸入でございます。他の国と比較しますと、第二位がドイツで百三十四億ドル。イギリスがたしか百二十七億ドルというような状況で、こういうふうに、我が国農水産物市場というのは、世界に最も開かれた市場に既になってきているというふうに思っております。
 また、そういう輸入増加に伴いまして、我が国の食料自給率、これはカロリーベースで見ますと、現在四〇%という状況でございますし、食料の基本であります穀物ということで見ると、そういう状況になっております。
 そういう状況の中で、私ども、先ほど来御論議がありますシンガポールとの経済連携協定においても、セクターとして農林水産分野を除外するという状況ではなくて、無税品目を協定の対象にすることによってWTO協定との整合性を確保しつつ、先ほど先生からもありましたけれども、円満な形で協定が結んでいかれたというふうに思っております。
 私ども、そういう状況の中で、自由貿易協定による農産物の関税撤廃、これは縮減というより撤廃でございますので、現在我が国が進めている構造改革、あるいは我が国が既に最大の純輸入国ということで、特定のところからの関税撤廃という形は、他の既存の輸出国との摩擦を必ず生ずる状況になるのではないか。
 そういう状況の中で、現在、WTO農業交渉自体は既に二年前から開始されておりまして、この間のカタールの合意で来年三月までにモダリティーの策定、次期閣僚会合に譲許表案の提出というような形で具体的に進んでおります。そういう状況の中で、私ども、WTOの交渉において透明性の高い方法で関税問題を扱っていくことが適切なんだろうと思っております。
 ただ、自由貿易協定に当たっては、シンガポールとの関係でも御説明しましたように、私どもとしては、シンガポール方式を採用するということで、他の経済連携分野、協力の分野での協力等々も念頭に置きながら、相手国の理解を得ながら、できることの対応をしていきたいというふうに思っております。
山田(敏)委員 私の質問に対する答えは、WTOでやっていくべきことであって、自由貿易協定で個別関税の撤廃は好ましくない、こういうことでよろしいですね。今のでわかりましたから、もういいです。
 それから、シンガポールについて、農産物についてセクターを除かなかったとおっしゃったのですが、二〇〇二年の三月二十三日の朝日新聞に、これは韓国との自由貿易協定についての記事なんですが、その中に、ことし一月に日本が結んだシンガポールとの自由貿易協定では、二千品目近くの農水産物が関税撤廃の対象から外された、こういうふうに書いてあります。今おっしゃったこととちょっと違うのですが、いかがですか。
西藤政府参考人 シンガポールとの関係で申し上げますと、既に無税譲許しているもの及び実行無税のものの品目を中心に対象にしたという状況でして、具体的に品目数で申し上げれば、農林水産分野、約二千二百七十ぐらいあると思いますが、そのうちの四百六十が無税譲許になっているというふうに思います。
 それと、シンガポールとの関係で、一部報道等で、農産物の扱いが非常に問題になったというような報道がございましたけれども、私ども、交渉において農産物の扱いが争点になったということはなかったと記憶をいたしております。
山田(敏)委員 それは、シンガポールは農産物がありませんので、ほとんどゼロですから話題にならないと思うのですが。
 もし大臣が、これから自由貿易協定をやろうと思ったら、この農林省の見解は、これはWTOでやらないと、関税を個々にやると大変不公平が起こる、じゃ反対であるということになりますので、これはなかなか、メキシコとの交渉、あるいは韓国は勉強を始めたということなんですが、お互いに非常に大きな障害が出てくる。
 そこで、アメリカやヨーロッパはどういうふうにやっているかというと、アメリカもカナダも農産物、各国、農産物の問題を抱えていない国は現実にないわけですね。これ、非常に柔軟に対応しているんですよね。日本にとって本当に戦略的な農産物は何なのか、それを決めて、そして十年間、期間を置いてもいいですね、いきなり全部をやれというわけではないから。
 例えば、メキシコとやる場合には、もうちょっと、今おっしゃったように、関税は不公平だからもうやめてくれと言うんじゃなくて、日本にとって戦略的な、自給率の問題等ありますので、それを持って、そして十年間の余裕を持ってやっていくと。
 こういうふうに、我が国の国家の統治能力というんですかね、こっちは違う、こっちは違うということをちゃんとリーズナブルな国の政策として持っていかないと、これが今までずっと十五年、二十年続いて、気がついてみたら、今申し上げましたように、本当に日本が自由貿易協定の中の枠から外れて、シンガポールとはできましたけれども、今後、メキシコとできる、それはちょっと今のやり方ではできそうにないなと。韓国もちょっと無理だ。ASEANはもう完全に拒否されていますから、これはだめだ。こういう個々の問題が出てきますので、ぜひ国家の統治能力、要するに総理大臣なり閣議なり、この自由貿易協定は経済産業省が国の重要な政策としてやるんだということであれば、農林省あるいは外務省との連携をちゃんとやっていただきたいと思います。
 時間があれですので、ちょっと外務省にお伺いしたいと思います。
 私の個人的なあれで恐縮なんですが、私は、通産省のときに外務省に出向して、ジュネーブで国際商品の国際条約をやったんですけれども、今シンガポールで交渉されたこと、それから今後やられる協定、必ず経済産業省と外務省が共管というか対等の立場で交渉されるんですね。これは御存じだと思います。
 現場でやるにはどういうふうにやるのかというと、例えば、経済産業省の専門の人間、それから外務省の人が隣に座って、どうですかと言いながらやるんですが、現実問題は、外務省は、何の知識と何の見解と何の方針があってやるのかというのがないと、非常に邪魔になるわけですよね。一々聞かなきゃいけない。あれっ、どこかへ行っちゃったから、僕は、その会議の中で進めるときに、これをやろうと思って最後に言おうと思ったら、外務省がいないといけないわけですよね。どこかへ行っちゃった。意見を聞いて、了解を得ていかなきゃいけないんです。了解を得るような見解と認識とそういう知識があるのかというと、ないわけですよね。
 一方、外国は、僕がやったのはアメリカの商務省とですが、商務省が出てくるだけなんですよ。だから、言ったら答える、非常に簡単ですよね。こっちは、言ったら、外務省に聞いてからやりましょう。言うか言わないかはわからない。大した見解がなかったら、いつまでも時間がかかっちゃって、非常に今の経済通商政策を阻害しているというふうに僕は認識しました。
 そこで、外務省、シンガポール協定のときにいかなる役目を果たされたのか、具体的にちょっと。
杉浦副大臣 山田先生、この関係はお詳しいわけですから先生に対してあれするのはまさに釈迦に説法ですし、御指摘の点は、私も政治家として外務省へ入っていろいろ感じておるところでございます。
 シンガポール自由貿易協定の締結については、これは通産省初め各省と協力してやったのですけれども、日本全体、政府全体として、これを一つのモメンタムにして、最初の協定ですから、FTAだけじゃなくて、そのほかのさまざまな広範な経済連携協定という形で結実させたわけなんですが、私は、明らかに日本政府全体としてかじを切ろうという意図は働いていたと思います。
 外務省は、おっしゃるとおり、言ってみますと調整役、コーディネーターでございますので、そのコーディネーターとしての能力は低いのではないかという御指摘は謙虚に承りますが、外務省も全力を尽くしてやったと思っております。
 もう平沼大臣からお話があったと思いますが、小泉総理は、過般の東南アジア歴訪、シンガポールで政策スピーチをやられました。そこでASEAN全体、ASEAN10プラス3、日米韓、そしてオーストラリア、ニュージーランドを含めた広範なコミュニティーの結成を目指そうという、これは五十年たってできるかどうかは別にして打ち出され、その国の間の経済連携協定を協議しようじゃないかという呼びかけをされまして、これはかなりいい反響を得ております。
 それで、日本政府の中には、既に事務方のレベルで小泉スピーチのあれに応じた対応する会議がもうできております。副大臣レベルで経済連携協定対応PTというのができまして、これは、通産、農林、外務、三人の副大臣、ほかの人は随時参加ということでもう二回やっております。韓国とのあれも大いに進めるべしというようなことで、総理に、ぜひ韓国とは進めてくださいということは申し上げたわけですが、政府全体としても動き始めていると言っていいと思います。
 さらに一言言わせていただければ、なぜ日本が乗りおくれたのか、これは、もう先生はお詳しいですから言うまでもないと思うんですけれども、日本の経済、戦後五十年、FTA、バイとかあるいは地域の必要性は余り経済界になかったということ。つまり、WTOの自由貿易の恩恵をこうむっておったというわけで必要としていなかった。
 もう一つは、東アジアの残っておる韓国、中国、台湾、これらの地域については、歴史的な事情もございますし、経済の力の差もあって、日本は断トツだったわけですね、だから、なかなか話にも乗ってもらえない実情がありました。
 農業問題はこれからも非常に大きい問題になると思います、締結するについては。さまざまな困難があってこられなかったわけですが、日韓がなぜ進んだかというのは、私、民間のフォーラムの話を聞きましたが、韓国側が終盤熱心になったと。
 つまり中国の台頭、それから中国がASEANの方を向いた、ASEAN10と始める。そうすると、韓国は、下手をすると取り残される。日本はシンガポールとやった、しかも経済連携協定の呼びかけをしたということで、韓国の経済界が、農業はまた別のようですが、前向きになったという事情があるようです。
 ですから、今度総理が行かれて、日韓の産官学の研究会ができましたが、これはかなり向こうは前向きに、最初は、そんなの話にならないと言っておられた空気が一変しているようですから進み始めると思います。私は、これから政府全体として、東アジア全体の経済連携に向けてさまざまな動きが出てくると思っております。
山田(敏)委員 ちょっとしつこく言って申しわけないんですけれども、その日韓の、今のお言葉を返すようであれなんですけれども、三月二十三日の朝日新聞、それから三月二十五日の読売新聞、それからやはり読売新聞で三月二十三日にあるんですけれども、両方に取材をされて、これはもう非常に根強い反対論というか慎重論がありますと、非常に大きな、気持ちはわかるけれども、現実にテーブルに座って交渉するときはと、そういう記事がございます。
 私、最後に申し上げたいのは、戻るんですけれども、今まで日本がやってきたことを、やはりこの問題は、先日、憲法調査会の国際関係の中の日本という中で議論いたしました。
 どういうことかといいますと、日本は一九五一年にサンフランシスコ講和条約で独立して、その二時間後に日米安保条約というのを結んだ。この枠組みの中で経済問題をやってきた。
 そしてEU、さらに十五カ国が加わって大きなものになる。アメリカは三十四カ国ですね。これは経済圏であると同時に、安全保障の面に大きな力を持っている。域内の安全保障、いろいろな制度、関税、法律が撤廃されて共通化されるわけですから、一つの国のようになっていくわけですね。これは非常に大きなもの。
 日本は、安全保障でアメリカの方をずっと向いていた。で、個別に中国とやろうという場合にも遠慮した。では、個別にどこかの国とやろうということをずっとやらなかったんじゃないかなと。要するに日米安保条約に頼り過ぎたということが議論されました。それを一言申し上げます。
 それで、今後なんですけれども、今のやり方をやると、私申し上げましたように、恐らくシンガポールが最初で最後になると思います。もし日本が今おっしゃったような中に、どこかに、自由貿易協定の中に入るという枠組みをつくるのであれば、まず国家としての統治能力ですね、今おっしゃったように、農林省とそれから経産省と柔軟に対応できる、要するに、うまく自由貿易協定の枠内でやることだと思うんですね。
 それか、もう全部この自由貿易協定をあきらめて、日本はWTOだけでいくんだ、域内自由貿易協定というのは非常に排他的な協定ですから世界はそういうふうにするべきではないと。要は、どっちかを決めてやらないと、日本の不利益というのはこれから非常に大きなものが出てくると思いますし、構想はいいんですけれども、幾ら構想を言っても、いざそのテーブルに着くと、これは何年たっても交渉できないということになると思います。
 大臣、最後に私の意見について御意見を。
平沼国務大臣 山田先生からの御意見、一つの大きな世界の枠組みというところから説き起こされて、それも一つのお考えだと思いますけれども。
 しかし、やはり経済というのは現実、実態面で動いていることがあります。ですから、確かにセンシティブな農業問題というのは日本はありますけれども、それは、日本も自助努力で構造改善を進めるとか、そういうことを同時にやりながら、そして、あくまでも話し合いの場ですから、韓国も現実には非常に今盛り上がってきております。そしてまたメキシコもそういう形です。
 ですから、そういう中で、現実に目を向けて、そして日本の経済力というものの背景の中で、私どもはそういう構想は必ずできる、またそういう方向でやっていかなきゃいけない、私はこういうふうに思っています。
山田(敏)委員 ありがとうございました。
谷畑委員長 生方幸夫君。
生方委員 民主党の生方でございます。
 今、協定の話はもう既に出尽くしたと思いますので、私はちょっと違った観点から大臣にお伺いしたいと思います。
 一応三月危機ということが言われておりまして、きょうはもう四月になりまして、三月危機をどうやら脱したようだと。三月に入って株の空売り規制等がございまして、株価が一応一万円台、一万一千円台を回復して、景気のいろいろな指数を見ても、二月までの数値とややちょっと違った感じの数値も出てきているような気もして、一部には、景気が反転をしつつあるのではないかというような見方もされておるんですけれども、大臣の率直な感想として、現在の景気をどのように見ているのか、最初、そこから聞きたいと思います。
平沼国務大臣 景気の現状につきましては、確かに一部では好転の兆しが出ていることは事実です。例えば、輸出だとか生産での下げがとまっている、こういった兆しが出て、これは明るい動きだと私ども思っています。それを一部受けて、もちろん空売り規制というのもあったと思いますけれども、株価の好転にそういうものがつながっている。
 しかし一方、まだ厳しい面が随分ありまして、産業立国のこの日本にとって、例えば設備投資の動向がまだ厳しい状況でありますし、それから、〇・二ポイント下がったとはいえ、やはり未曾有の高い失業率、こういったものがございます。
 したがいまして、デフレの状況というのは、まだこれはそこから脱却できていない、こういう認識を私は持っておりまして、このデフレ圧力というのが、ある意味では構造改革のいわゆる足を引っ張って景気を下押しする圧力になっているのじゃないかと思っています。
 景気の先行きについては、アメリカの景気の回復、それにつれてASEANの諸国も回復の兆しを見せてきておりまして、民需中心の回復に向けて緩やかに動き出す、こういう期待は私はできると思っています。
 しかし、絶対にここで、株価も上がったのだ、日銀の短観もいい、それから生産も輸出も下げどまった、だからいいということで絶対私は手を抜くべきじゃない。やはりここは、厳しいという認識で私どもはしっかりとした手を打っていかなきゃいけない。特に中小企業対策をやっておりますけれども、やはり経済の隅々まで資金が行き渡るような形で、これからセーフティーネット貸し付けあるいは保証、こういうようなものも手を抜かずに私どもはやっていかなきゃいけない、そんな総体的な認識を持っております。
生方委員 景気の認識をそう楽観してなく、厳しく見ているというのは私も全く同じなんですが、一、二月には、現在の予算では不十分である、補正予算を早い時期に組まなければいけないという論議がなされておりましたけれども、三月、こういう状態で、最近の新聞を見ても補正という言葉がほとんど出てこないわけですね。
 私は、九七年のあの橋本改革、財政改革のときのことを思い出しまして、あのときは、十一月にアジアの金融危機というのが起こって、そのさなかに予算を審議していて、予算審議のさなかに補正の論議が出てきて、結局、都合四回補正予算を組む。我々はそのとき、ツーレート・ツーリトルと、遅過ぎたし小出しにしたので、結局、多額のお金を使った割には景気対策の効果が上がらなかったという批判をしたわけです。
 今度のを見ても、三月の株価というのはかなり人為的につくられた株価であって、この先まだわかりませんが、必ず反動が来るのではないかというおそれがある。そのときになって、数値がまたそのときどういうふうに動くかわかりませんけれども、その数値を見て補正だというふうに仮に考えるとすると、また遅くなってしまうんじゃないか。
 せっかく今、予算が成立して予算が執行されたばかりですから、当然その成り行きというのを見なければいけないんですけれども、今大臣がおっしゃったように、まだまだ景気は楽観できる状況にはないわけで、やはり政府がまだ主導しなければいけない部分もあると思うんですね。
 その補正について今論議が、与党内では論議がされているのかもしれませんけれども、少なくとも新聞報道的には表に出ていないんですが、補正についてのお考え方、現時点でどのようにお考えになっているのかをお聞きします。
平沼国務大臣 これは、小泉首相も一貫して言っておられることですけれども、やはり厳しい景気に対応して一次補正、二次補正をやらせていただき、そして今、平成十四年度の予算の執行段階に入りました。したがって、これを確実に今執行して、そして、その予算に盛り込まれたいわゆる経済政策というものを着実に実行していく、このことに私は全力を注ぐ、こういうことで、今若干景気も上向いている、そういう中で、補正の話は今全く出てきておりませんけれども、その原点で私は万全を期していくことが必要だ、こう思っています。
生方委員 そうすると、現時点では、補正については具体的には考えていないということでよろしいわけですね。
 小泉内閣が誕生して一年間たって、構造改革なくして景気回復なしということを言い続けてきたわけですけれども、小泉さんがお考えになっている改革の方向が、私はややちょっと違うのではないかなと。これは鶏が先か卵が先かという論議になるんですけれども、供給サイドを強くすれば必然的に需要サイドも盛り上がってくるだろうという基本的な大きな考え方、私は、やはり需要サイドを強くすることが供給サイドを強くすることになるのではないかと。
 このデフレ状況の中で、企業はこの先、製品価格も下がっていく、何もかも下がっていくというふうに思えば、設備投資は当然盛り上がらないのは当たり前であって、GDPの六割を占める個人消費がこの先盛り上がっていくのであろう、やはりそういう見通しができて初めて企業の改革というのも進んでいくのではないか。どうも、企業改革の方が先行していて、需要サイドの改革というんですかね、需要サイドにもっと温めるような政策というのが、抜本的な政策というのがまだ打ち出されていないように感じているんですけれども、その辺は大臣はいかがお考えになりますか。
平沼国務大臣 先ほど、九七年の橋本内閣の状況、ツーリトル・ツーレート、こういう例を引き合いに出されてお話しになられました。橋本内閣から小渕内閣、森内閣という形で、相当補正予算を組んで大量の資金を投入してきてやってきた、その結果がなかなかはかばかしくない、それはいろいろな要因があったと思いますけれども、そういう現状の中で、小泉首相は、それは抜本的な構造改革をしなきゃいけない、その中には、不良債権の処理も抜本的にやらなきゃいかぬ、こういう形で、ある意味ではまなじりを決して取り組んでこられたと思っています。
 そういう中で、確かに個人の金融資産というのが一千四百四十兆もあり、そして、GDPの六〇%を占めているいわゆる個人消費に火がつかない、それは、やはり先行きが不透明であるというようなことと、また、国民がそういうことで安心感を持っていないというようなことが結びついていると思うわけです。
 ですから、今まで九七年以来繰り返してきたことじゃなくて、今は厳しいけれどもやるべきことをやろう、そういう形で進んできておりまして、その中で、やはり需要面をプッシュするために、今経済財政諮問会議、私もメンバーの一人ですけれども、六月までに取り組むべく、需要面も勘案した形でやるべきことという形で、税制改革というのが今真剣に論議が始まっています。
 ですから、そういう意味では、税制改革をすることによって、企業なり個人なりがやはり安心をして、金は天下の回りものですから、金が回るようなそういうインセンティブを与える、こういう形で今経済財政諮問会議で、税制を主体にこれから論議をして第一段階を六月に取りまとめよう、そういうものが今小泉改革の、ある意味では需要面に着目した一つの取り組みだ、こういうことだと思っています。
生方委員 二つぐらいしかもう方法はないわけで、減税措置をするのか、あるいは政府が需要をつくり出していくのかという二つしかないわけです。政府の需要ということに関して言うと、公共事業が全般的に国民から厳しい批判を浴びていて、公共事業にそれほど多額のお金をつぎ込めるような状況ではない。
 ただ私は、公共事業も、必要な公共事業と必要でない公共事業をやはり峻別せねばいかぬというふうに思っておりまして、経済産業省と関連するということで考えますと、私は、大きな需要をつくり出すという意味では、例えば共同溝をつくるというようなことをきっちりと打ち出していくというのが必要ではないかなと。
 もちろん、片方で減税措置をとって、買いやすいような需要の状況をつくっていくということと同時に、今のような時期ですから、電力会社に電柱を地中化しろというふうに言ってもなかなかそれは無理な話ですから、やはりこれは政府が主導で、都市部には少なくとも共同溝をつくって、そこへ電気とか上下水道とか電話線とかいうものを一括して埋めるというようなことをすればかなり需要がつくられる。
 これは東京都に限って言えば、もっと大きく、例えば山手線を地中化しちゃうとかいうようなことも含めて考えれば、地中化することによってその上の土地が売れるということもあるわけで、全部が全部投資で出ていってしまうというわけではなくて、上の土地を売った料金とその工事料金というのを差し引きして、あるいは都市の景観とか動きやすさみたいなもので勘案していくと、かなり大きな効果があるのではないか。
 実際、今多くの失業者の方がおられるわけですから、失業なさっている方に、雇用保険を払ったり、あるいは再教育をして新たな職についていただくということもこれは非常に大事ですけれども、それと同時に、やはり新たな仕事をつくってもらうという意味でも、それは単に仕事を探していてお金をもらうというよりも、何かしらの仕事をしてそれが社会に役立つという方が、より個人にとっても有益ですし、日本にとっても有益なんです。
 共同溝がいいのかどうかはそれは別として、共同溝的な、これはむだな公共事業ではないし、道路を何回も何回も掘り起こして工事をするそのリスクを考えれば、共同溝、どのぐらいの規模がいいのかは論議をしなきゃいけないんですけれども、そういうものをつくることによって、これはもっと大きく言えば、そこへ静脈系のパイプを通すことによって、家庭からのごみは全部そこを通して焼却場まで向かえばそれはそれでまた価値があるでしょうし、例えば宅配便なんかもそこを通してうちに行くようにするというような利用の仕方もできると思うのですね。
 それは、都市改造にもつながるし、物流の改革にもつながるし、将来の子供たちにとっても非常に有意義な社会資本として残るんじゃないかというふうに思うので、そういう大規模なものというのをこの際にやはり考えてみる必要があると思うんですが、いかがでございましょうか。
平沼国務大臣 私も先生と同じ意見でございまして、やはり公共事業というのは、今どっちかというと罪悪論みたいな形になっています。しかし、公共事業というのは、いい公共事業であれば、それが後世代にツケを残すだけじゃなくて、今おっしゃったように、立派なインフラと、そこから利便性が出て、そこから大きな経済効果が生まれてくる、こういったことは私は果敢にやればいいことだと思っています。
 例えば東京なんかの中心部では随分進みましたけれども、いわゆる電柱をなくして、そして電線を地下に埋設して、その中でそのほかの電話線等も一緒にやる共同溝、こういったことは将来に対してすばらしい設備を残すということにつながりますから、そういうことは、これからの公共事業を考えるときに、そういうことにプライオリティーを置いて積極的にやればいい、そういうふうに私は同じ考えを持っております。
生方委員 積極的にもっと大きなものも考えていただいて、東京だけではなくて、全部の都市、全部やることはないので、真ん中、中心市街地活性化なんということも政府は考えておるわけですから、そういうものの一環の中にも位置づけて、ぜひとも大規模な政策として打ち出していただければというふうに思います。
 それから、小泉さんがおっしゃっている企業改革の中で、強い企業はより強く、弱い企業は市場から退場していただくというのが大きな柱だと思うんですね。私は、企業が生き延びるか生き延びないかというのは、大きく言えば、やはり消費者の選択だと思うんですね。消費者が支持する企業はやはり生き延びることができるし、消費者の支持がなくなればこれは退場していただかざるを得ないという格好になると思うんですね。
 そこで、弱い企業が退場した後、今退場しつつあるから失業者がふえてしまうわけで、そこの受け皿というのがきちんとしてこなければいけないわけで、アメリカも同じような改革を八〇年代後半から九〇年代初めにしたときに、アメリカの場合は、受け皿になったのは主にサービス業なんですね。製造業からサービス業へ大きく人員が転換したのがスムーズにいったから、ある程度の失業者が多くならないで産業構造の転換ができた。日本の場合、残念ながらそこが余りうまくいっていないということ。
 もう一点重要な要素として、ベンチャー企業があると思うんですね。ベンチャーはそれほど大きな雇用を生むことはないですけれども、ベンチャーの経済効果というのは雇用効果よりも非常に大きなものがあると思うので、その場合、日本を考えますと、ベンチャー育成というのも、何年も前からやっているのはよくわかっているんですが、なかなか目ぼしいものが出てこない。もちろん、細かく見ていけば多種多様なベンチャーが出ているのはよくわかるんですけれども、全体的に見ると、ベンチャー企業の勢いというのが残念ながら経済を引っ張るようなところまでは行っていないので、その原因というのを大臣はどのように分析なさっているのかをちょっとお伺いしたいんですが。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 まず、委員御指摘のように、アメリカが八〇年代に見事な構造改革をなし得た、それは、労働をサービス分野にうまくシフトさせた、これはやはり、労働の流動性がある、いろいろそういったアメリカ特有の環境があったと思います。
 一方では、やはり新しい企業を創成させるということに力を注いだというのも事実でありまして、いわば、我々はベンチャー企業と言っておりますけれども、ベンチャー企業というよりはむしろスタートアップ企業というんですか、ベンチャーというのはある意味でリスクがかなり伴うという感覚がありますので、スタートアップを非常に熱心につくり上げた。また、世の中の空気も、むしろ会社を創業させるということが非常に社会的に評価をされるという空気をつくり上げていったというところがあります。
 一方、日本はどうかというと、やはり、今ベンチャー企業というのは重要であるということは認識をしておりますけれども、現実には今経済が厳しい中で、創業率よりも廃業率が上回っているという実情もありますし、また、もう一つは、やはりアメリカは、ベンチャーキャピタリストが相当投資をするんですね。それも、日本は投資絶対額だけをみても二十分の一ですけれども、むしろもっと問題なのは、初期段階というんですか、本当のスタートアップ段階への投資というのはほとんどないというのが実情で、もう大体うまく歯車が回りつつあって、例えば上場寸前に対してむしろぼっと投資する、こういうのに限られているわけですね。これではベンチャー企業というのを本当に育成していくことは難しい。
 あるいは、もう一つ、起業家精神が欠如している。これは私、学校教育とか、そういうことにもあろうかと思います。やはり大学教育の中で起業家の育成ということを徹底的に勉強してもらう、そういう環境の整備も必要だと思っております。
 そういうことがあってなかなか進んでいなかったというのが実情でございますけれども、今後は、やはりこのベンチャー企業、特に重点四分野と言われておりますITであるとか環境、ナノテク、バイオというのは、これはベンチャー企業あるいはスタートアップ企業が非常に入りやすい分野でございますので、こういったところを大いに推進していく必要があろうと思っております。
 そのために、新たに参入する場合の規制等々がありますので、こういったものはできるだけ緩和をして自由に参入できる環境をつくっていくということと、それから、立ち上げるときにはやはり資金が必要でございますので、例えば今までは、担保が必要ですよとか、あるいはかつて助成金で、五年以上の経験がないとお金が借りられないとか、これは改良されましたけれども、そういったようなことがある。
 この資金をどうやって確保していくか。これは、担保中心主義からやはり事業内容に着目した融資制度、現実に今、政府系金融機関が中心となって、あるいは民間も一部始めておりますが、そういった事業内容、あるいは会社の社長の能力というものを担保に融資をする、あるいは投資というものについても環境整備をしていく必要があります。
 それから、もう一つ大切なことが、これは昨年の臨時国会で総理が所信表明でも主張しておりましたけれども、やはり再挑戦できる社会をつくり上げていくということが大切だと思いますね。例えばアメリカでは、ベンチャー企業で一回失敗して再挑戦をした人の方にむしろ投資が行くんですね。なぜかというと、一回失敗をして、失敗による学習効果というのが非常に大きいということでございますので、やはりそういった環境づくりにも我々は取り組んでいく必要があろうと思います。
 終身雇用という、そして会社を途中でスピンアウトするのはむしろ何か悪であるというような雰囲気がかつてありました。しかし、最近は、企業に勤められている方も、有能な方がチャレンジをして新たに企業を立ち上げよう、そういう空気が醸成されつつありますので、私たちは、それをさらに加速して、新たな分野に挑戦をする人をつくり上げて、ひいては日本の経済の活性化あるいは雇用の促進につながるというふうに考えております。
生方委員 私は、前にはよくシリコンバレーに毎年行っておりまして、そこで、一年行くと大体新たな企業ができている。そのフォローが大体日本の新聞はございませんので、あれだけ話題になった企業がその後どうなったんだろうなというと、うまくいっている企業もあるし、当時報道されたのと全く内容を違えて生き延びている企業もある。もちろんなくなってしまう企業もたくさんあるんですが、そのダイナミズムがあるわけですね。
 シリコンバレーで何であれだけベンチャーがたくさん出てくるのか。もちろん一番最初にヒューレット・パッカードがあそこで立ち上がったわけですけれども、大きいのは、やはりスタンフォード大学という大学があって、あそこが人材を供給してベンチャーを立ち上げる。
 今おっしゃったように、失敗例がたくさんあるんですね。失敗例から学べるからその轍を踏まないで済むんですけれども、日本の場合は、失敗しちゃうとそれこそもう二度とチャレンジできないで、だめな人間という烙印を押されて、その貴重な失敗経験が次に生かされないで、ベンチャーはだめだだめだというマイナスの報道の方になっちゃうと思うんですね。
 だから、ぜひともそれは、再チャレンジできるというのが大事であるということと同時に、今おっしゃいましたように、初期投資がなかなかできない。これは金融機関とすれば当然の話であって、リスクが大き過ぎてなかなか初期投資ができない。
 アメリカはそこを何がカバーしているのかというと、個人投資家なんですね。自分たちがベンチャーを立ち上げて、上場するなりなんなりするなりで、ある程度の資金を回収したら、その資金をもとにまた自分たちでベンチャーを見つけてくるという、そのベンチャーのいわば育成者に対して、ベンチャーを起こそうとする人が一生懸命説明をして、これこれこうだからお金を出してくださいということでやっていくというのがある。
 日本は、制度的にはかなりもう今は整ってはきていると思うんですが、一番足りないのはその個人投資家の部分だと思うんですね。だから、そこを何とか育成できるような、これは税制措置も含めていろいろやっていかなければいけないと思うんです。
 私が言いたいのは、スタンフォード的な大学をどこへ求めるのかというのは、例えば慶応の藤沢キャンパスがそうであるのかもしれませんけれども、そういうところを政府がやはり意図的にある程度最初はやらないと、なかなかシリコンバレーまで一気にいくということは不可能ですから、これは本当は自然に育っていくのが一番いいんですけれども、そうも言っていられない部分もありますので、政府が何か措置をとるということ。
 もう一つは、初期投資の、個人投資家に対してのやはり投資しやすい環境というのをつくっていく必要があると思うんですけれども、その辺、大臣、いかがお考えでしょうか。
平沼国務大臣 御指摘のとおりです。
 もう一つの視点では、日本の場合には、倒産をしてしまうと、個人保証の分が非常に強くて、一説によると、もう仏壇と二十万円しか残らなくて、あと全部はがれてしまう、そうするともう二度と再起できない。アメリカのそういう制度では、車一台だとか住む家ですとか当面のお金、そのぐらいはやはり担保されるわけです。だから、そういったところも私は考えていかなきゃいかぬと思っています。
 スタンフォード大学の例を出されましたけれども、やはりシリコンバレーというのは、非常にそこが中心になっている。日本も産学官の連携というのは非常に必要だ、こういう観点で、これは例えば、地域の産業の活性化にもつながりますけれども、大学を中心としてそれぞれの地域の特性に合って経済を活性化していこうということで、これはもう御承知だと思いますが、地域の産業クラスター計画というのをやりました。例えば北海道ですと、北海道大学が中心となりまして、そこにベンチャーを含めた企業が集積をする。今、これは全国に十九カ所展開をしておりまして、大学数も百五十に相なりました。企業の数も三千を超える、こういう形になってきています。
 私は、きのう具体的にいろいろ事務方から報告を聞いたのですけれども、例えば山形大学なんかでは、新しいプラズマ、あるいは液晶を超えた次の世代の、みずから発光する平面なディスプレイ、そういうものを山形大学がいわゆる大学の技術として打ち立てた。それと地元に進出しているパイオニアという企業が結びついて、これがもう一歩のところまで来る、そういう例も実は出てきています。
 ですから、産業クラスターもその一つですし、あるいは、大学発ベンチャーを向こう五年間で一千社にすべきだ、今そういう計画でやっています。ですから、そういう中で、やはり大学をうまく活用しながらそれを産業に結びつけていく、このことが、アメリカが、七〇年代日本がひとり勝ちだ、そして、八〇年、九〇年にかけてやってきたことにつながっていくと思います。
 それから、新規産業を立ち上げるためには、さっき古屋副大臣から答弁がありましたけれども、しち面倒くさいことを言わなくて、有望なところにはきちっと開業資金を出す制度というものを、これは確立しましたけれども、やはりこういうことを広めていくことが私は必要だと思っています。
 もう一つ、税制の中で、やはり個人の投資家がベンチャーに投資しやすいような環境を整備するためには、それが失敗したときも税制で猶予を与えるとか、そういうインセンティブを与えることも総合的に取り組んでいかなきゃいけない。
 そんなことを含めて、経済産業省としましては、やはりベンチャーの育成というのは非常に大事なことですから、そういうことをこれからも、経済財政諮問会議の税制を論議する中でも私どもは積極的に発言をしていこう、こういうふうに思っています。
生方委員 大学のキャンパスのあり方なんかも少し変えた方がいいと思うんですね。アメリカの大学はやはり広々としているし、開かれた感じになっている。日本の場合はどうしても、広々とはしていないですからね。その辺も、これは文部省の方でしょうけれども、そういうことも要望いたしまして、これで質問を終わりにします。ありがとうございました。
谷畑委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
谷畑委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。達増拓也君。
達増委員 今回の法案に関連いたしまして、まず、スタンダード、標準政策について伺います。
 きょう、午前中も他の委員から出た質問でありますけれども、外国の認証機関がどんどん我が国に進出しているわけであります。一方で、我が国における適合性評価機関は公益法人が主体で、民間が弱い。民間の検査機関が伸びていくような政策的工夫が必要ではないかと思うわけであります。これについては、総論的な答えはいただきましたので、各論的な質問を、具体的な質問をさせていただきたいと思います。
 そもそも、今激しいグローバルスタンダードの争奪戦の時代でありまして、その中で我が国産業界が名誉ある地位を占めていくためには、すぐれた技術力が必要なのはもちろんですけれども、国際社会でその標準について多数を獲得する交渉力、ひいてはルール形成力、そういった総合的な力がないとグローバルスタンダード争奪戦に勝ち抜いていけないわけであります。そういう意味で、我が国における標準化体制の強化が非常に必要なんではないかと思うわけであります。
 特に、我が国の置かれた条件から考えますと、アジア太平洋地域の標準化機関との連携強化が非常に重要であると思います。また、我が国産業の特色からいって、中小企業の標準化に関する基盤の強化、そして、試験事業者の問題もあります。試験事業者を認定していく、その体制の強化、そういった点につきまして、政府の施策を伺いたいと思います。
日下政府参考人 WTOの貿易の技術的障害に関する協定、TBT協定と呼んでおりますが、その影響もございまして、アジア太平洋諸国におきましては、自国の規格に国際標準を導入していく流れが定着しつつあります。ともすれば、御指摘のように、欧州企業の声が反映されがちでありましたこの国際標準策定におきまして、我が国及びアジア太平洋諸国の意向が適切に反映される環境を整備していくことは大変重要であると考えております。
 昨年九月の日ASEAN大臣会合におきまして、ASEAN諸国とのネットワークの緊密化を目的とした基準認証協力プログラムを新たに日本から提案したところでございます。同プログラムを中心としまして、具体的には、アジア太平洋諸国との連携協力のもとで、国際規格共同開発、アジア太平洋諸国の国際標準化にかかわる人材育成、アジア諸国はやはり弱うございますので、この辺の人材育成などにつきまして協力をするなど、積極的に対応していきたいと考えております。
 また、中小企業の点、御指摘がございました。中小企業の技術的ノウハウや技術的情報に基づいたJISの制定を促進するために、経済産業省では、平成十二年度より、中小企業技術基盤強化促進標準化事業を実施しているところでございます。
 さらに、試験事業者認定制度は、製品の規格への適合性を確認するための試験を実施する事業者の能力を第三者であります認定機関が確認する制度でございます。試験結果の信頼性を確保するための手段として、大変重要であると認識しております。
 このため、経済産業省では、認定事業の強化という観点から、御指摘のように、評価技術力の向上のため、技能試験の開発でありましたり、試験結果の信頼性の評価手法の開発などの施策をもって、これらの事業が競争力を持って行われるように支援をしていっているところでございます。
達増委員 我が国の標準化体制の問題点の一つとして、いわゆる知的基盤の弱さというものが挙げられると思います。国際的に比較いたしまして、計量器の適正さ、あるいは微量物質の分析能力、そういった計量標準等の知的基盤、この点を強化していかなければならないと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
平沼国務大臣 計量標準等の知的基盤については、我が国はまだ必ずしも十分なレベルには達していない、このように認識をしております。しかし、今後、研究開発活動、事業活動を行っていく上で魅力ある環境を提供するためには、我が国としてみずから知的基盤整備に取り組んでいくことが重要である、このような認識を持っています。
 そのために、科学技術基本計画にもございますとおり、二〇一〇年をめどに世界最高水準を目指すべく、知的基盤整備のための施策を積極的に推進することといたしております。
 具体的には、独立行政法人であります産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構とも連携をしながら、先端技術開発に対応する超精密な長さ標準などの計量標準ですとか、適切な環境対策のために必要となる環境分析用の標準物質などの知的基盤を整備していく、こういう形で取り組んでいきたいと思っています。
達増委員 度量衡は国家の役割の基本でありますから、この点、力を入れていかなければならないと思います。
 さて、次に、電子化、IT化について伺いたいと思います。
 標準化体制を強化していくに当たっては、工業標準をつくっていくそのプロセスの電子化、IT化というのがかぎになると思います。国内における規格作成や公表プロセスの電子化はもちろんでありますけれども、ISO、IEC、そうした国際的な標準化プロセスについてもこの電子化を取り入れていくことが重要と考えますけれども、この点、いかがでしょうか。
日下政府参考人 先生御指摘のように、工業標準の策定に当たりましては、より多くの関係者の意見を反映するため、公開性、透明性を確保すると同時に、技術の進歩やマーケットの進展におくれないようにタイムリーかつ迅速に対応することが重要で、電子化は重要な課題でございます。
 また、ISO、IECなどの国際標準化機関におきましても、情報の共有や意思決定プロセスの電子化が進んでいるところでございまして、ここに有効に対応していくためには我が国における電子化が大変大切なところでございます。
 このため、経済産業省におきましては、国内におけるJIS作成・閲覧プロセスの電子化にあわせまして、国際規格案の国内審議、国際回答などの一連の国際標準化プロセスにおきましてもその電子化に取り組んできているところでございます。
 今年度からはこれらのシステムの運用を順次開始することとしておりまして、今後とも、このような電子化を通じて、より開かれた工業標準の策定に努めてまいりたいと考えております。
達増委員 いわゆるIT革命の成果というものは非常に効果的な分野だと思いますので、その点、力を入れるべきであることをさらに指摘したいと思います。
 次に、人、組織の問題について伺います。
 国際標準化プロセスの中で我が国産業界が名誉ある地位を占めていくためには、国内的な意見調整、集約、規格提案、さらにそれを外国の諸主体とすり合わせていく、交渉していく、そうした力が必要であり、国内的な専門家育成でありますとか体制づくりというものが非常に重要であると考えますが、この点、政府としてどのように取り組んでいくのでしょうか。
日下政府参考人 昨年九月の日本工業標準調査会より得ました標準化戦略の報告を受けまして、具体的には、我が国が優位にある技術の開発を促進することにより、その国際標準化を支援する制度、JIS規格を基礎とした国際標準提案を支援する制度など、我が国からの国際標準の提案を加速しているところでございます。
 その際、人の点というのは非常に大きなポイントでございます。この国際標準化プロセスに参加する国際標準化の専門家を育成するための研修制度、国際標準化活動に関するコンサルティング制度などもあわせて支援措置として充実してきているところでございます。
 これらの制度の実施の結果、国際標準案の提案件数は、平成十年度の約四十件から十二年度では約二倍の八十件となるなど、成果が出つつあるところでございます。今後とも、国際標準化に向けて積極的に対応してまいりたいと考えております。
達増委員 追いつき型の産業化から、先頭を切って、国際的なルール形成でも先頭に立っていくためにも、そうした体制整備、人材育成をさらに強化しなければならないと指摘したいと思います。
 さて、そういった国際的なしのぎを削る競争の側面のほかに、標準化には、高齢者や身体障害者に配慮した優しい標準をつくっていく、そうした観点も今重要になってきていると考えます。そのような優しい製品やサービスの発展のために標準化作業に消費者が参加していく、そういうことが重要であると思いますけれども、この標準化作業への消費者の参加について政府はどのように取り組んでいるでしょうか。
平沼国務大臣 御指摘のように、我が国の急速な高齢化等に伴いまして、高齢者及び障害者の自立した生活及び社会活動を促進するための製品や、高齢者、障害者の利用環境に配慮した標準化の推進は重要な課題だ、このように思っております。また、国際的に見ましても、高齢者、障害者に配慮した標準化の機運が高まってきているところでございます。
 昨年八月には、日本工業標準調査会に消費者代表者の方々に御参加をいただきました。そこで設置された消費者政策特別委員会より「標準化における消費者政策の在り方に関する提言書」、また昨年九月にも同調査会より標準化戦略の御報告をいただいたところでありまして、これらの報告に沿いまして標準化活動への消費者の参加を促進しているところでございます。
 また、国際標準化機構においても消費者政策委員会が設置されておりまして、消費者の観点に立った国際標準化活動が行われているところでありますけれども、我が国からも消費者代表者のそこへの参加を含めて、こういった御指摘の点に関する国際標準案も積極的に提案をさせていただいている、このようなことであります。
達増委員 では、ここからは日シ経済連携協定に関連し、通商政策、対外経済政策について伺っていきたいと思います。
 現在、小泉内閣のもとでの経済産業政策全体について、非常に弱いという問題意識を持っております。小泉総理というのは、今まで外務大臣、通産大臣の経験がないわけでありますけれども、外務大臣、通産大臣の経験のないまま総理になったのは村山総理以来初めてなんですね。内閣官房長官、副長官といった、外交、貿易、通商あるいは産業政策にかかわるほかの仕事もやっていませんし、また政調会長等そういう問題にかかわる党三役もやっていない。したがって、かなり体制をほかのところで強化、手当てしていかないと、日本国としての経済産業政策というものが非常に弱くなる。実際、今弱くなっている、そういう懸念をするわけであります。
 そういう中で、去年の十一月、経済産業省のもとで産業競争力戦略会議というのがスタートし、そういうのは絶対必要だと思っていたので、時宜を得たというか、もっと早くからやっていてもよかったと思うのですけれども、始まったことは評価したいと思います。
 その中にFTA戦略ということも課題の一つとして挙げられているようでありますけれども、このFTA戦略について、さらにこの戦略会議の中で時間をかけて議論する予定はあるのでしょうか。
松大臣政務官 私からお答えをさせていただきます。
 達増先生がおっしゃっているとおり、グローバリゼーションの進展下で、東アジアを初めといたしまして世界経済の相互依存度はますます深まっているというふうに私も考えます。通商戦略あるいは対外経済戦略のあり方につきましても、我が国経済のあり方と一体的に検討していく必要があると考えております。
 その認識のもとで、産業競争力戦略会議におきまして、国内経済の活性化戦略の一環といたしまして、FTA戦略について十分な検討を行うことといたしております。具体的には、次回の産業競争力戦略会議におきまして、FTA戦略を含む国際問題を議題とする予定でございます。
 一定の時間的制約はございますけれども、これまで産業競争力戦略会議におきましては、私も実は出席をさせていただいておりますけれども、各企業のトップの方に毎回プレゼンテーションもしていただいておりまして、官民で活発な議論がされているところでございますので、今回も十分な御議論をいただけると期待をいたしているところでございます。
達増委員 戦略会議のメンバーは私も見ましたけれども、ああいう人たちが直接小泉総理に物を言う機会をどんどんつくってもらった方がいいんじゃないかと思っているんですけれども。
 産業競争力戦略会議、次回会合で通商政策についても取り上げるということですけれども、全体として、やはり高コスト構造の是正の問題ですとかRアンドD政策とか、かなり通商、対外経済以外の部分にも時間をとられているようで、この際、通商や対外経済関係については別途そういう戦略会議を設けた方がいいんじゃないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
松大臣政務官 通商戦略あるいは対外経済政策について独立の戦略会議を設けよとの御指摘であるというふうに思います。
 御説明申し上げましたとおり、産業競争力戦略会議におきまして検討を進めているところでございます。これに加えて、経済財政諮問会議におきましても同様の問題提起をしているところでございます。
 先生御指摘の通商戦略あるいは対外経済政策が重要であるという点は私も全く同感でございますし、先生の先ほどおっしゃっておられましたこと、まさに私もうなずいていたところでございますけれども、当省といたしましては、このようなさまざまの既存の会議を活用しまして、政府全体として積極的に議論を進めてまいりたいと考えております。
達増委員 セーフガードの問題ですとか、またアメリカのアンチダンピングをめぐる問題ですとか、かなり通商政策、論点は多岐にわたると思うんですね。そういうのは伝統的にはもう非常にプロの世界、ガット以来のそういう貿易交渉のプロの世界という感じで、かなり国民から離れたところで今まで議論がされていたと思うんですけれども、今のように、国民生活に、仕事と暮らしに非常に影響を及ぼすようになっているこういう時代ですから、そういう専門的な議論と国民世論、国民意思の統合をうまく結ぶ、そういう国民的議論としての通商戦略を高めていくような工夫が必要であるということを指摘させていただきたいと思います。
 さて、通商白書などに出てくる言葉ですが、「重層的な通商政策」という言葉があります。「重層的な通商政策」というのが最近の日本政府の一つのスローガンのように使われておりますけれども、この重層というのは、確認したいのは、グローバル、リージョナル、バイラテラルという三層のことを重層的と言っているんでしょうか。全地球規模、WTOということですね、多角的、そういうWTOの場、そして地域、リージョナル、北米とかヨーロッパとかあるいは東アジア、東南アジアというものもあるんでしょう、あとは二国間、そういった三層でやるということだとすれば、その中に重点というのはあると思うんですね。
 日本の場合、まだまだリージョナルな、地域的な統合というのはヨーロッパ、アメリカに比べればまだまだでありますし、また二国間についても、ようやくおずおずとシンガポールとの間に初めて自由貿易協定を結ぶところに来た段階でありますから、そういう意味では、基本はあくまでグローバル、WTOという多角的なところが基本であって、ほかの二層というのはそれを補完するものというふうに理解してよろしいでしょうか。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 日本の経済は、WTOの恩恵を最大限に受けてきてここまで発展をいたしました。そういった観点からすると、重層的政策、確かにグローバル、リージョナル、バイラテラル、三つございますが、そういった観点からするとグローバル、すなわち多角的貿易体制の維持強化というのが我が国の基本方針であるというのは間違いないと思います。
 ただ、実際の経済を見たとき、あるいは双方の利害が一致するときなどは、例えばリージョナルあるいはバイラテラルの取り組みというものをしていくということもあるということでございます。
 したがって、今後もやはりWTOのルールづくりというものを積極的に進めていくということでありますけれども、一方では、そういう経済の実態、そして双方のニーズ等々を踏まえながら弾力的に、補完的に対応していくということでございます。
 もうちょっと具体的に申し上げますと、例えば食事でいうなら、フルコースメニュー、フルコースというのはもう基本的に変わりませんよと。しかし、その中には、例えばスープでも、冷たいスープが出るときも温かいスープが出るときもありますけれども、そういった弾力的な、補完的な変化はありますけれども、基本的にはフルコースをしていく、すなわち多角的自由貿易体制というものがその根幹にあるということでございます。
達増委員 十年前に出ました小沢一郎現自由党党首の「日本改造計画」という本の中で、いわゆる普通の国論の背景になる考え方を紹介しているんですが、日本というのは、もうほとんど全面的に、エネルギー、資源あるいは食料について海外に依存している。そういう中で、日本は、世界の安定とそして経済的繁栄がなければ日本というのは生きていけない、そういう通商の中でしか日本は生きていけないので、世界全体のそういう通商体制が発展することで一番メリットがあるのは日本だし、生き残りのためにも日本がまず率先してそういうグローバルな制度づくり、自由貿易のルールづくりを先頭に立ってやっていかなきゃならないんだということがございます。
 安全保障上の国際貢献と並んで、対外的に開かれた国民経済というのが普通の国の二大要素でありまして、その考え方は今の自由党の考え方にも連なっているところであります。
 そういうグローバルな体制を補完する中で、リージョナル、バイラテラルという自由貿易の取り組みがあるわけでありますけれども、去年の秋に韓国に行った際に、韓国の経済界の人たちと話をする機会があったのですけれども、日韓自由貿易協定、さらに進んで経済連携協定に対する期待が非常に高いのに驚きました。中には、もう日本と韓国を単一市場にしてしまおうという、戦前そうだったわけでありますけれども、そういう踏み込んだことを韓国側の方から言ってきまして非常に驚いたんですが、日韓の経済連携について政府はどのように考えますでしょうか。
下地大臣政務官 達増先生の御質問に答えさせていただきたいと思います。
 日韓の自由貿易協定構想につきましては、日本側からはアジア経済研究所と、韓国側からは韓国対外経済政策研究院との間で今学術的な研究が行われております。
 それから、昨年からことしにかけて、日韓FTAビジネスフォーラムにおいて提言を受けまして、先月、小泉総理が訪韓をしたときにも、両首脳間で日韓のFTAを議論するための産官学の研究会の設置が合意をされたところであります。
 本年一月に小泉総理がシンガポールを訪問した際に、日本とシンガポールの新時代経済連携協定の署名を行いましたが、シンガポールとのFTAをつくるときにも、今回と同じように、産学官から成る共同研究会を行って、それから今のような協定になっているわけであります。
 一九九九年の十二月に共同研究会の設置を合意して、二〇〇〇年三月には第一回目の共同検討会を行って、二年後の二〇〇二年に署名を行っている、そういう過程でありますので、今回も積極的に進めながら研究会の早い立ち上げをすることが大事じゃないか、そんなふうに思っております。
達増委員 そうした二国間の自由貿易協定、経済連携協定を考えますと、最後はアメリカとどうするかということになるんだと思います。
 我が国最大の貿易相手国、世界最大の市場であるアメリカ、ただ、農林水産業の問題がネックになっているわけでありますけれども、我が国農林水産業の保護ということで、通商政策において守勢に立つのは得策ではないと考えます。農林水産業の我が国生産高は全部合わせて十二兆円で、これはいざとなったら全額保証してでも、むしろアメリカ、さらには農業国でありますカナダやオーストラリア、そういったところとも自由貿易協定を結ぶことで得られる全体のメリットの方がはるかに大きい、ビジネスチャンス、可能性の方がはるかに大きいと考えます。
 この点、アメリカ、さらにカナダ、オーストラリアといったところに対しても自由貿易協定を我が国として積極的に提案していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
古屋副大臣 御指摘のありました米国、カナダあるいはオーストラリアとの経済連携の強化をどうかということでございますが、この三国に限らず、一般論として、経済連携の強化を検討するに当たりましては、やはり双方の産業界のニーズがどうなっているのか、あるいは経済実態というものをしっかりウオッチをして、それぞれ個別的に検討していくということになると思います。
 具体的には、例えばオーストラリアとの間では、両国の経済の関係を強化するために民間のケーススタディーが行われておりまして、昨年四月にその報告書が発表されております。恐らく、この報告書に従いまして、民間ベースでの議論が深まっていくものと思っております。
 また、カナダについても、昨年五月に、日本とカナダの経済界の皆さんが、包括的な連携のための枠組みの可能性の提言というものを行っているところでございます。
 また、米国との間では、昨年六月より始められましたいわゆる成長のための日米経済パートナーシップ、この枠組みというものがございますが、この枠組みの中でいろいろな議論がされているというふうに承知をいたしております。
 その経済連携について、政府が踏み込む形での対応というのは現時点ではなされていないというのが実情でございます。
達増委員 通商政策を考えるに当たって、どうしても日本の農林水産業の問題というのは避けて通れないのですが、ビジネスとしての一次産業とライフスタイルとしての一次産業を分けていく必要があるんだと思います。
 ビジネスとしての、世界に対して競争できる農業なら農業というのは、むしろ競争の中で育つものでありましょうし、また、かなりの部分問題になっているのは、兼業農家、事実的な収入は他から得ていて、収入の七分の一とか八分の一くらいが農業から得られている。
 しかし、ライフスタイルとして、やはり農業を中心とした一年というのがあって、また、私も農家の方から、田んぼの神様がいる、ちゃんと働いておかないと田んぼの神様に申しわけないとか、そういう発想の人たちをきちんと、そういうライフスタイルを認めるという意味では、所得補償の考え方も組み合わせてやっていきますと、さっき十二兆円と言いましたけれども、全部を全部補償する必要はないんだと思います。うまくやればほとんど補償しなくていいかもしれません。
 ですから、そこは前向きに考えて、むしろ、自由な貿易から得られるメリットということで、攻めの姿勢で考えていかなきゃならないと思うんですが、攻めの姿勢で考えていくに当たっては、まだまだいろいろ問題があります。
 そこで、国内の物流インフラの問題について政府参考人に質問をしたいと思うんです。
 国際ハブ港湾の整備ですとか、高速道路利用料金の低廉化、さらには、国際空港、国際港湾とスムーズに連結された利便性の高い道路ネットワークの構築、こういったことを進めて、国内の物流インフラが低コスト、高付加価値になっていかないと、幾ら外国との間で自由化を進めても、国内で不自由になってしまったのではしようがないと思うわけですが、この点、政府の取り組みはいかがでしょうか。
丸山政府参考人 ただいま、低コストかつ高付加価値的な物流インフラの整備につきましてお尋ねがございました。
 政府といたしましては、昨年七月に新総合物流施策大綱を閣議決定いたしまして、コストを含めて国際的に競争力のある水準の物流市場の構築等を目指しまして施策の展開を図っていくこととしておるところでございまして、現在、経済産業省を初めとします他省庁とも連携を密にいたしまして、その実現に努めておるところでございます。
 御指摘いただきました港湾、空港、道路等につきましては、我が国の経済活動を支える重要な物流インフラでありまして、これらを効率的に整備し、かつ、使いやすいものにしていくということが、先生御指摘のとおり、日本経済の国際競争力の維持向上のためにも重要な課題であると認識しております。
 このために、国土交通省といたしましては、中枢国際港湾を初めとしまして、大都市圏の拠点空港、それから高規格幹線道路等の基幹的なインフラを重点的に整備し、港湾輸出入手続のワンストップサービス化でございますとか、港湾の二十四時間フルオープン化などのソフトな対策も含めまして推進を図っております。
 また、国際空港、国際港湾へのアクセス道路の重点的な整備というものが非常に重要であるということから、自動車専用道路などのインターチェンジから十分以内にアクセスが可能な空港、港湾の割合を、諸外国に比べても遜色のない水準まで引き上げることを目指すなど、さまざまな施策を総合的に推進していきたいというふうに考えております。
達増委員 もう一つ、国内における不自由をなくしていかなければならないという点で、貿易に深い関係のある、直接かかわりのある通関手続について、これも政府参考人に質問をいたします。
 港における通関手続が煩雑では諸外国の港に荷を奪われてしまいます。簡素化や効率化のための政府の取り組みは今どうなっているのか。特に、通関の二十四時間対応、一日じゅういつでも対応できるという体制、この点はどうなっているんでしょうか。
藤原政府参考人 お答えを申し上げます。
 ただいま御指摘がございましたとおり、通関手続の簡素化、迅速化につきましては、私どもといたしましても重要な課題であると認識いたしております。
 このため、関税局・税関におきましては、増大しております輸出入通関業務を迅速かつ適正に処理するために、通関情報処理システムの導入、拡大など税関手続のIT化、それから、貨物の到着前に必要な審査を終了させる予備審査制の導入、それから、納税申告の前に貨物の引き取りができる簡易申告制度の導入などの措置を講じてきたところでございます。
 これらによりまして、現在、税関手続に要する時間でございますけれども、海上貨物につきましては平均いたしまして四・九時間、それから、航空貨物につきましては平均〇・六時間と大変短くなっているところでございます。
 今後とも、検査時間を大幅に短縮できますコンテナの大型エックス線検査装置の配備の推進、あるいはまた、先ほど申し上げました予備審査制、簡易申告制度の周知と利用促進などによりまして、通関手続の一層の簡素化、迅速化に努めてまいりたいと存じます。
 また、次に、二十四時間対応について御質問がございましたけれども、税関におきましては、執務時間外における通関需要の多い官署におきましては、必要な職員を常時配置いたしまして三百六十五日対応しておりますし、また、これ以外の官署につきましても、手続をしたいという要請がございましたら、臨時に必要な職員を手当ていたしまして対応しているところでございます。
 今後、港湾の二十四時間フルオープン化に関する労使間の合意が円滑に実施に移されまして、税関に対しまして執務時間外の通関手続を求める具体的な要請が多くなった場合には、これに対応する所要の体制整備を行ってまいりたいと考えております。
達増委員 今取り上げたような国内体制、そういう国際的な競争力のある国内の体制をつくっていくことが非常に重要で、そのためには、まさに総理のリーダーシップ、各省庁にかかわることでもありますし、また労使関係といったこともかかわりますので、本当にトップからのリーダーシップが重要な分野だと思います。これがうまくいきますと、例えば中国の問題についても、中国脅威論からむしろ可能性の問題へと、前向きに視野が広がるんだと思います。
 東アジアの経済発展は非常に目覚ましいものがありまして、八〇年代、アジア太平洋の時代とか言われていたころは、アメリカが先頭を走り、日本がその後、そして東アジアでは、日本が先頭で、NICSとかNIESとか言われました新興工業国、その後にASEAN、そして最後は中国とかベトナムがついていく、そういう雁行形態というモデルがあったわけですけれども、この間、台湾の経済人が来て、もう雁行モデルは時代おくれだ、もうほとんど水平貿易といいますか、分野によっては台湾とか、あるいはひょっとすると中国の方が進んでいるようなところもあると。そういった新しい状況が生まれ、数字的にも、今、中国、台湾、韓国の対日貿易額を合わせると、日米間の貿易総額に匹敵するところまで来ているわけです。
 そういう意味では、日米自由貿易協定に匹敵する可能性というものをいわば東アジア自由貿易協定というものが持っているのではないか。そういうのも視野に入れながら、WTOにも加盟した中国の貿易自由化を促していく、そういうことが重要と考えますけれども、いかがでしょうか。
下地大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。
 先生のおっしゃるように、日本と東アジアの経済はますます緊密化をしております。また、グローバル化が進展している中で、市場アクセスがしやすいような環境づくりをしていくということも非常に大事かなというふうに思っております。
 WTOを中心とした多角的貿易体制の維持強化に取り組み、そして、利害の共通する国や地域との間で機動的な取り組みが可能な二国間や地域的な協定を戦略的に活用していくという方針であります。
 今後、新ラウンド交渉のWTOの場における議論を進めていくとともに、東アジア諸国・地域との間において、幅広い分野で経済連携の強化について議論を行っていくことが課題と思っております。
達増委員 アジアの大陸と半島と列島、そこを人や物、資本が自由に行き来して発展していくというのは戦前の我々の先達が夢見た理想、当時は日本軍国主義の主導のもとにやろうとしたからだめだったわけですけれども、それを今、民主主義の原則と各国対等のパートナーシップのもとで実現できれば、この地域のためだけじゃなく、世界全体のためにもいいことなんだと思います。
 では、最後に大臣に伺います。
 そういった意味で、今後ますます対外経済政策と国内の競争政策を一体のものとして強化していかなければならないと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
平沼国務大臣 達増委員御指摘のとおりだと思っています。
 今は、国外に対して、賃金格差ですとか、あるいはそこに立地をしたら有利だというような形で、非常に企業立地が移転をする、そういう動きがあります。それがやはり空洞化という形で経済に大変大きな影響を与えています。
 先ほど来の御議論の中で、やはり高コスト構造の是正をする、それからまた、日本の場合には、そういった一歩先を行く国内経済対策をやる。例えばイノベーションを起こして、そして他が追随できないような技術を一歩先にやって、新規産業を創出して、そこに雇用を吸収して経済を活性化する、そういった国内経済対策というものもやはり同時にやっていって、そして、国外国内を一体となってやっていくということは御指摘のとおりであります。
 国外の経済対策については、シンガポールとはFTAの第一弾をやりましたけれども、これから、小泉総理が指摘をしましたように、ASEANとの経済の連携協定を含め、そういったことをやはり一体としてやっていくということが私は肝要なことだ、まさにおっしゃるとおりだ、このように思っています。
達増委員 終わります。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長楢崎憲安君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、最初に繊維セーフガードの問題、一言申し上げたいと思います。
 中国製タオルなどへの繊維セーフガード発動について、当面は発動を見送る一方、調査期限を十月まで半年間延ばすという方針を決められたとお聞きしております。この問題については、いろいろな方から、セーフガードを前向きに取り組むべきじゃないかという意見も出されております。
 先日の朝日新聞でも、アジア化繊産業連盟の前田会長なども、今は日本だけ特別な自主規制を続けている状態だ、キーパーなしでサッカーをしろと言われているようなものだ、政府は腰を引かずに堂々とセーフガードを発動すべきだ、このようなことをおっしゃられております。
 日本繊維産業連盟の常任委員で、経済産業省の産構審のセーフガードに係る小委員会の委員も務めていらっしゃる櫻井正樹さんなども、日本では一般に、繊維産業を国内では役割を終えた衰退産業であるかのように勘違いしている節がありますが、それは間違っています。繊維産業は、産業全般の発展にかかわる大変な技術を持った先端産業だ。電子工学ですとか医療や宇宙産業まで応用されるなど、繊維産業は多様な技術を生む苗床であり、基盤産業だ。ヨーロッパでもアメリカでも、繊維産業を衰退産業のように位置づけている国はない。私たちは、日本だけ特別に通商保護策をしてほしいと言っているのではありません。せめて欧米並みにやってほしい、このように求めている、こういう声なども出されております。
 私は、改めてこの繊維セーフガードの発動を求めるものであります。
 それとの関係でも、この繊維製品の問題に関しても、今回の日本・シンガポール自由貿易協定は重要な関連があるわけです。
 新聞などでも報じられていましたが、この自由貿易協定で、関税がゼロになる繊維製品は、インドネシアなど周辺国の安い製品をシンガポールで一部加工して、シンガポールの原産地証明をつけて日本に輸出するという、いわゆる迂回輸出がふえる懸念もあるんだ、両国は、日本とシンガポールは迂回輸出を防ぐ仕組みづくりでは合意したが、産地証明を厳格に行う仕組みなどが整備されないと、日本の繊維産業は深刻な打撃を受けかねない、こう指摘をしているわけです。
 この産地証明を厳格に行う仕組みというのがどのように整備されているのか、危惧はないのか、この点をまず最初にお伺いします。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 今度、いわゆる日本とシンガポールの経済連携協定を結びましたけれども、その際にほかの国から迂回をしてシンガポールから入ってくる場合があるんじゃないか、こういうときにはどうなるのかといった御趣旨の御質問だと思います。
 こういった第三国の産品がシンガポールを迂回して無税で我が国に輸入されるということが起こらないように、今般、第三章においても詳細な原産地規則というのも定めております。
 具体的に申し上げますと、輸出国内におきまして関税番号上の大幅な変更があることを要件とするいわゆる関税分類変更基準を原則的基準として採用をいたしております。ごく一部の品目を除いてこの原則を採用いたしております。したがいまして、シンガポール国内で実質的な加工が加えられた品目のみがシンガポールの原産品として認められるということになっております。この規定によりまして、いわゆる第三国からの迂回輸入につきまして無税で我が国に入るということを未然に防ぐということでございます。
塩川(鉄)委員 シンガポールという国は、歴史的にも今日においても中継貿易を中心として栄えている国でもあります。シンガポールからの輸出の中身を見ましても、シンガポール国内での製造にかかわる地場輸出と、中継するという形での再輸出、この割合が二対一、再輸出の割合が非常に高い国。こういう状況を見ましても、今回の自由貿易協定、最初にシンガポールと結ばれたというのは、そういう意味でも非常に大きな問題もある中身でもありますので、こういった迂回輸出に対する厳格な対応を強く求めていきたいと思います。
 それで、この日本・シンガポール自由貿易協定そのものが、日本が結んだ初めての自由貿易協定ということにもなります。この点では、海外に進出する日本の多国籍企業のあり方が問われてまいりますし、また同時に、日本国内におきましては、産業空洞化の問題でも重要な課題となってくるわけです。
 そこで、グローバリゼーションのもとで大きな影響を受けている全国の地場産業の現状を見ていきたい。具体的には、新潟県の燕市の事例を挙げてお聞きしたいと思っております。
 中小企業庁の出しております平成八年度の中小企業白書には、この燕、あわせて三条地域について、その概要を述べております。
 燕・三条地域は、江戸時代、農家において和くぎ製造が奨励されたことから金物生産が開始をされ、やがて専業のかじが誕生し、製造業集積の基礎が築かれた。その後、和くぎ、日本の大和くぎですね、和くぎが衰退すると、金物製造の基盤的技術を背景として、きせるとか銅器などの産地へと変化し、現在では金属洋食器、金属ハウスウエア、作業工具などの金属加工業の一大製造業集積となっている。円高と外国製品の台頭などで従来からの製品の生産が停滞する中、製品の高付加価値化や新分野進出の動きが見られる。
 そういう点では、産地の中でも大変努力をしている場所として、多くの方が評価をされておるところであります。森下正さんという明治大学の助教授も、この燕を指しまして、今日そして未来の燕産業を一言で言うならば、最新金属素材加工先進地域と言える、そういう意味での高い評価をされておられるわけです。
 そこで、平沼大臣にお伺いしますが、このような代表的な地場産業の産地としてのこの燕の役割をどのように受けとめていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 いわゆる産業の空洞化現象が起こっている中で、日本を代表する金属加工それからいわゆるハウスウエア、そういったところで大変な大きな技術力の集積と実績を持っている燕が厳しい状況になっているということは、私もよく存じております。燕市の代表の方々も私の部屋に何度もお越しになられまして、私もその実情をよく伺っているところであります。
 しかし、今塩川先生のお話にありましたように、燕市の皆さん方は、全体で、三条を含めて、非常に積極的に取り組んでおられまして、例えば高付加価値化という形で、従来の技術の上に、例えば小型家電製品、こういったものを新たにつくり出す、さらにはスポーツ用品にも、全く今までと違ったジャンルにも進出する、こういう形で大変努力をされておりまして、そういったことに関しましては、私どもも、やはり産業集積、そういったことの大切さで法律がございますので、そのもとで今までも、御承知のようにいろいろな側面的な支援をさせていただいています。
 そういった形で非常に努力をされておりますので、私は、この燕市の伝統と技術蓄積とそしてノウハウ、こういったものをやはり雲散霧消させるようなことは絶対あってはならない。やはりそこは本当に、皆さん方にも努力をしていただくけれども、我々としても最大限、いろいろな形でお手伝いをして、そして日本は何といっても物づくりなんですから、物づくりというその強みを生かして、燕のそういった金属加工あるいはハウスウエア、さらにはいろいろな作業用具、そういったものがさらに高度化をして、そして発展をするように私どももサポートをしなきゃいかぬ、このように思っております。
塩川(鉄)委員 大臣もおっしゃられましたように、伝統と技術、ノウハウ、産業を興していく、その土台となるものを雲散霧消させてはならない、こういう立場で考えたときに、今大変厳しい状況にあるというのは率直なところであります。
 配付をしました資料に、この燕市の金属製品の出荷額、折れ線グラフで紹介しましたが、九一年に千二百七十四億五千万円の金属製品の出荷額が、データのあります二〇〇〇年で見ますと七百六十二・八億円と、四割の減少ということになります。従事をされている従業者数もやはりこの十年間で三割減っているという状況になっています。
 このような急激な減少ですね、なぜこういった事態となっているのか、これをどのように調査をし分析されているのかをお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 先ほどもちょっと触れましたけれども、これはやはり日本の産業の空洞化ということに大きく起因していると思います。
 お隣の中国、ここは、いろいろな統計がありますけれども、賃金水準で見ますと、大きく乖離しているものは四十対一とか三十対一とか二十対一、まあ、地域によって違います。そういう賃金格差が非常に大きくある。
 そういう中で、ある意味の経済原則でいわゆる工場の移転等が行われ、それによってやはり日本で生産するものが少なくなり、それが売り上げに結びつき、さらに雇用の減少に結びついていると思っています。
 したがって、燕市、三条の皆さん方がそれから脱却するために本当に熱心に取り組んでおられますのは、やはり高付加価値化をして、新しい分野に進んで新たな競争力をつける、そういうことで努力をされておりまして、私どもも、その努力のためにはやはり力いっぱい応援をさせていただく、こういうことでやらせていただいています。
 また、その実態については、私どもから担当員を現地に派遣し、そして現地の皆様方と密接な連絡をとりながら、いろいろな御要望等を承る。そしてまた、将来に向かって我々としてはいろいろな形で側面的に支援をさせていただく。
 それから、先ほども触れましたけれども、私のところにも現地の方々が何度も来られておりまして、よく実情は把握をさせていただいています。そういった上に立って、私どももさらなる努力はさせていただかなければならない、このように思っています。
塩川(鉄)委員 中小企業庁の「全国の産地」、産地概況調査結果を見ましても、内需の不振や受注単価の低下、こういうどこにも共通するような問題とあわせて、やはり競合輸入品の増加というのが挙げられております。
 私、資料で紹介したいのが、中国からの金属ハウスウエア製品の輸入額、棒グラフになっているものですけれども、九一年のときにはわずか一億円だったものが、二〇〇一年には九十三億八千万円という形で急増をしております。こういった右肩上がりの輸入品の急増というのが大変大きくて、これは輸入全体に占める割合で見ましても、アメリカですとか東南アジアからも輸入がありますが、その中での中国の比重というのが、九九年は二九・三%でした。二〇〇〇年が三九・二%でした。二〇〇一年が四五・三%ですから、今大きく中国にウエートを移して、その中国の急増というのが大変この産地に大きな影響を与えているというのが現状であります。
 賃金格差が大きいという話もされましたけれども、私、これはこれでまたこの後で議論をしたいと思いますが、競合輸入品の増加の背景に日本側の要因もある、つまり、日本の大手スーパーの側の要求もあるんじゃないか、こんなふうに思うんですけれども、産地からのこういった訴えもあるというように聞いているんですが、この点はいかがでしょうか。
古屋副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 中国からの輸入が増大していることについて、スーパーマーケットの影響があるのではないかといった趣旨の御質問でよろしいわけですね。(塩川(鉄)委員「ええ、ダイエーですとかね」と呼ぶ)
 確かにそれは、大手スーパーも今大変な厳しい価格競争の中にありますので、少しでも安い製品をということで、そういったコストの削減あるいは流通の合理化、仕入れ値のできるだけ安いものを入れていこうという視点から、そういった中国からの輸入品が急増している。これは、今御指摘のありました金属製品に限らず、ほかの製品においてもそういうものが非常に顕著になっている。その結果として、日本のいわゆる物づくりのメーカーが大変厳しい状況になっている、結果として産業の空洞化にもつながっている、こういう認識でおります。
塩川(鉄)委員 この燕に事務局も置かれております日本金属ハウスウェアー工業組合、この役員の方にお聞きしましたところ、やはりバブル崩壊後の九二年以降に、大手スーパーの価格破壊、これと一体となっての輸入の急増がある。つまり、即三〇%のコストダウンを求められるとか、あるいは、三年でコスト半減といった劇的なコスト削減が求められて、納入業者の方が、国産では間に合わなくなって中国に走る、こういった形での大きな圧力があった。そのために、燕の現地の方では、下請業者に仕事が回らない、すそ枯れ現象が起こっているというふうにおっしゃっていました。日本経済のすそ野が今大変疲弊しているような状況にあるんだ、こういう実態というのをやはりリアルにとらえ、ふさわしい対策をとるということが求められていると思うのです。
 その上で、ことしの一月に燕の市長さんと市議会の代表の方が平沼大臣のところに陳情で伺ったということが新聞などでも大きく報道されて、現地では大変関心を持って受けとめていらっしゃいました。
 そこで、委員長、これを大臣、副大臣にお渡ししたいんですが。
谷畑委員長 はい、結構です。
塩川(鉄)委員 ここにも切々と現地の状況の訴えもあるわけで、ことしの一月のことでもありますので、大臣も御記憶のことだと思います。
 この燕市と燕市議会の陳情団の皆さんの訴えをどのように受けとめられたのかをまずお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えします。
 私は、先ほど来申し上げておりますように、確かに市長さん以下燕市の陳情団の皆様方にお目にかかりました。それで、今配っていただいた紙にいろいろ御要望がありましたけれども、そういった要望につきまして、私どもは担当課長を現地に派遣をいたしまして、地元の実情等について把握するためにしっかりとお話し合いをさせていただいた、こういう形でございまして、御陳情に来られたことは鮮明に記憶しておりますし、その中で、今列挙されていることも、私どもとしては問題意識を持ってお話し合いをさせていただいています。
塩川(鉄)委員 地元の新潟新聞に掲載された記事を大変印象深く読ませていただいたのですが、この陳情の場で平沼大臣はこのように述べられた。ドイツのゾーリンゲンのように、燕という無比のブランドを地元業界に打ち立ててもらい、経済産業省が側面から応援する仕組みをつくる必要がある、全力でサポートしたい、このように新聞記事でも紹介をされてありました。これはやはり燕の皆さん、非常に励まされたというふうにお聞きしております。
 その際、この燕市、燕市議会から出された陳情書、これを今お渡ししましたが、産業対策に関する陳情書、三ページ目のところからそれぞれ項目が挙げられています。「ステンレス鋼材の二重価格構造の解消について」という形での要望が第一項目であります。
 この要望書のところを読みますと、
  現在我国のステンレス鋼製造メーカーのステンレス鋼国内販売価格は、薄板(〇・五ミリメートル)トン当たり三十二万円であるのに対し中国の同業メーカーには同品質のステンレスが十五万円の半額以下で輸出され、販売されています。結果的にこれが日本国内製品に反映され中国製品との競合に耐えられない状況になっています。
つまり、日本のステンレス鋼メーカーが、日本の燕などの業者の皆さんには三十二万円なのに、中国でステンレス製品をつくっている業者に向けては半分以下の十五万円で納入している、こういう実態では競争の土台がもう失われているんじゃないかということが最初の要望の項目だったわけです。
 全体の製品コストの三割ぐらいをこのステンレスの鋼材が占めるというふうにお聞きしております。そういう点では、ここの材料費の面での日本と中国との内外価格差を是正してほしいという強い要望が出されていたわけです。
 この問題について、この間どのような調査をされ、またどのような対応をされたのかをお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 確かに、お越しになられたときに、そのことを強力におっしゃっておられました。
 このステンレス鋼板の価格問題につきましては、私どもとしては、陳情をいただいたことを踏まえまして、担当部局、これは鉄鋼課でございますけれども、国内ステンレスメーカーに対してその旨を伝えまして現状を聴取いたしました。この価格差というのは、一つは、中国の市況状況はもとより、供給するロットの違いですとか加工賃の違いですとか運賃の違い等種々の要素が少なからず作用している、こういうことでございました。
 しかし、いずれにしても、燕市の器物メーカーの方々が、中国からの安価な競争品の輸入の増加により御指摘のように厳しい事業環境にあることは、私どもも十分承知をしております。
 そこで、担当部局から国内ステンレス鋼板メーカーに対して、燕地区の器物メーカーとの共存共栄の精神に基づいて、ビジネスの専門家同士の間で十分話し合いを行う場を設けるように指示をいたしまして、今、日程等につき調整中である、こういうことでございます。
 これは非常に大きな問題でございますので、私どもとしては、さらにしっかりこのことはフォローしていかなきゃいけない、このように思っています。
塩川(鉄)委員 産地の皆さんとステンレス鋼のメーカーの方との話し合いの場を設けてほしい、そういう趣旨がこの陳情の中でもあった。それが具体化される方向というのは大変結構だと思うのです。その上で、やはり内外価格差の問題というのをもっとより掘り下げていく必要があるんじゃないかというふうに思っているわけです。
 お配りしましたこの陳情書、これは陳情の項目とあわせまして、六枚目ぐらいに、ステンレス材料の二重価格改善についての要望書というのも添えられています。
 これは、燕の皆さんが昨年の暮れに中国の現地に調査に行きまして、中国のステンレス製品のメーカーを幾つも訪ねて、そういう中でステンレス鋼材の価格差を調査されてこられた。これをもとにまとめられた要望書になっています。これを書かれているのが燕の市議会の議長さんの大山さんという方で、この方自身が燕を支えております会社の社長さんでもありまして、事情に大変詳しいものですから、そういった経験からのリポート、要望の中身になっているわけです。
 ここにもありますように、日本国内では三十二万円というものが、どうも中国の企業でいうと、十三万五千円ですとか十七万円ですとか十三万円という、こういったのを現場の担当者から話を聞いた、余りにも差が大き過ぎるんじゃないか、こういうことでの訴えだったわけですね。
 これは要望書の、もう一つめくっていただいて、表になっているのがあるのですが、最後のページですね。中国と日本国内の比較の項目になっていますけれども、ここの中に、内外価格差を生む要因となっているものを幾つか指摘しているわけです。
 その一つに、中国が行っている中国国内ステンレス用品メーカーへの税金等還付という形をとった輸出奨励の優遇策、こういうふうに、疑いが持たれるような措置が指摘をされております。これが事実だとすれば、中国のWTO加盟に伴い禁止された輸出補助金ともとれるような疑念にもつながるもので、この点については具体的にどのような調査をされたのかお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 今御指摘の点は、陳情に来られたとき確かにこの表も見させていただきまして、こういった問題についても省の中でよく調査をするようにという指示は出しております。
 中国のステンレス加工メーカーが政府から補助金を受けており、当該補助金が、輸出を行うことに基づいて交付されているなどの要件を満たせば、WTO補助金協定違反を追及する、あるいは相殺関税を課すことは私ども可能だと思っています。また、同メーカーが、中国政府からも特定性のある補助金を受けている場合にも、国内産業への著しい害等を立証すればWTO協定上の救済を受けることができます。または相殺関税を課すことが可能でございまして、今調査をしまして、そういうことの事実が明確になれば、私どもはそれに相応する対応はとらなければいけない、こう思っています。
塩川(鉄)委員 ぜひとも調査を踏まえて具体的な対応をお願いしたいと思うんです。
 それから、内外価格差にかかわって二つ目の問題を指摘したいのですが、つい先日出されました二〇〇二年版の不公正貿易白書、この中で、ステンレス鋼材メーカーの中国への輸出品に対して、中国側からアンチダンピング措置がかけられていると記されています。中国向けのステンレス冷延鋼板に対する中国当局のアンチダンピング措置が、新日鉄ですとか川崎製鉄や住友金属など大手鉄鋼メーカーに対して二〇〇〇年の十二月からアンチダンピング税が賦課されて、現在も継続中ということですけれども、この事実関係だけ確認したいと思うんですが。
平沼国務大臣 これちょっと、正確なことはすぐ調べまして御報告させていただきたいと思います。
塩川(鉄)委員 事実の確認だけですので。
 私が承知しているところでは、中国においては、工場出しの価格について、日本国内と輸出の場合との差がある、中国側は、中国に対する輸出が安くなっている、こういう中国側の認識を踏まえて、新日鉄に対しては二四%のアンチダンピング税、あるいは住友金属に対しては二六%のアンチダンピング税が課せられているわけです。つまり、これは中国側の判断ですけれども、中国側にすると、日本国内と中国に輸出されるものについては価格差がある、中国側の方が安くなっているということを指摘しているわけですね。
 つまり、国内の価格に比べて中国における価格が安いということになるのではないか。要するに、燕の皆さんがおっしゃっているような二重価格になっているんじゃないかということを一面で裏づけるような指摘ではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
平沼国務大臣 今御指摘の点は事実でございます。確かに、二〇〇〇年の十二月十八日に最終クロ決定の官製報告が出まして、新日本製鉄からナスステンレスまで九社と上記以外、こういった形で決定を見ていることは事実でございます。したがって、そういったことも踏まえて、私どもはこれからしっかりとした調査をしなければならない、このように思います。
塩川(鉄)委員 二重価格差の問題でもう一点、三点目を指摘したいんですが、燕市から、国内と中国との価格差の大きな要因として、多分陳情の際にも訴えのあったのがエキストラ価格と言われているものです。圧延手数料、要するに鋼材を薄く延ばす、この際にプレミアがつく、料金が高くなる、そういう価格の話ですけれども、この要望書の中でも、エキストラとは圧延手数料を意味していますが、これは三十年以上前の手動で行っていた当時からの制度価格で、今は全自動となり、二・〇ミリも〇・五ミリも以前ほど手数に大きな違いはない。問題は、中国への輸出にはエキストラの上乗せがない、このように指摘をされています。
 このエキストラ価格についてどのような調査をされたのかをお聞きしたいと思うんです。
平沼国務大臣 私が御陳情いただいたときの表のコピーがありますけれども、板厚エキストラ八万五千円、こういう形で出ております。これは、御指摘の点は確かにあると思いますけれども、もう一点は、日本の場合には非常に検査というものを厳重にやる、こういうことも一つの要素としてあるようなわけでありまして、そういったことも、御指摘の点も踏まえて、我々としてはよく調査をし、ここのところはしっかり対応しなければならないと思います。
塩川(鉄)委員 格差がないとはっきり言えるのかという問題なんですよね。いろいろなほかの要因もあるでしょう。しかし、こういったエキストラ価格について地元から具体的に指摘もされて、それについてのふさわしい回答というのをぜひともお願いしたいと思っております。
 先ほども紹介しました燕市の大山市議会議長さんは、自由主義経済の中だけれども、鉄鋼メーカーと業者とでは余りにも力の差があると。巨大な多国籍企業と中小企業の間にあるこういった圧倒的な経済格差を背景とした大手メーカーによる優越的な地位、この乱用に当たるようなことがあってはならないと思っております。
 燕の市長さんも、私大変印象深くお聞きしたのですが、燕は、これまでもだめになり、よくなり、だめになり、よくなりと繰り返してきた。いわば町全体が産業のベンチャーだ。新商品をつくるにも、自分たちでリスクを負ってやっている。そんな中、ステンレス鋼の価格が中国では日本の約半分で取引されているということだ。素材を提供しているのは、ほかのどこでもない日本の大手鉄鋼メーカーだ。これには非常に驚いています。今の燕を例えて言うと、跳び箱を跳ぶのにクッションとなるばねが壊れているような状態だ。地場産業としては、自分の体は自分で鍛えられるが、壊れているばねは国の責任で直してほしいと。
 燕のある業者の方は、中国との価格差が是正されれば、おれたちだって負けないと。以前は人件費の大きな格差でやむなしという思いもあったけれども、しかし、鋼材の材料の価格にこんな格差があったのでは同じ土俵で戦えないじゃないか、これが同じ土俵であれば我々は大いに戦うことができるんだ、このことを大変強調されておられたわけです。ぜひとも、こういった共通の土俵づくりに国が責任を負うべきだと思います。
 今申し上げましたように、二重価格に関する疑いということで、第一に中国側のアンチダンピング措置の問題もありますし、第二にエキストラ価格の問題もありますし、三つ目に中国側の輸出奨励策の疑いという三つの面を指摘したわけです。
 あわせて、模造品輸入による、模造品にかかわる被害も少なくないというふうに聞いております。これらについてきちんとした調査を求めたいのですが、財務省においでいただいておりますので、この模造品の輸入による被害の問題も含めて、こういった事態についてふさわしく調査、対応を求めたいのですが、いかがでしょうか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今の御質問、知的財産権の侵害物品の取り締まりの話かと思いますけれども、知的財産権を侵害するいわゆる知的財産権侵害物品につきましては、関税定率法の二十一条の第一項、第五項の規定に基づきまして、輸入してはならないということとされております。
 これに基づきまして、税関は水際におきまして取り締まりを行っているわけでございますけれども、その場合に、輸入されようとしている物品が知的財産権を侵害する物品かどうかを判断するためには、設定されている知的財産権の内容、あるいは、その真正品とにせものとの見分け方等につきましての情報が必要でございまして、このために、知的財産権の権利者からの輸入差しとめ申し立て、あるいは輸入差しとめ情報提供の制度がございます。
 税関におきましては、権利者の方々に対しまして、これらの制度の活用を呼びかけますとともに、税関の内部におきましても、職員に対する研修、情報のデータベース化などの施策の充実を図りまして、知的財産権侵害物品の効率的、効果的な水際での取り締まりに努めてまいりたいと考えております。
塩川(鉄)委員 公正取引委員会にお聞きします。
 こういった二重価格の疑いがある中で、不公正取引の問題として、公正取引委員会としてふさわしく調査、対応をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
楢崎政府参考人 お答えいたします。
 取引における価格等に差があることはよくあることでございますけれども、それがコストの差を反映したりあるいは地域の需給関係を反映しているというふうなものであるとすれば、それは独占禁止法上問題とはならないわけでございますけれども、競争制限的な行為によってそういった価格が形成されているということとすれば独占禁止法上問題になるということですので、独占禁止法に違反する疑いのある具体的な端緒に接した場合には、所要の調査を行いまして適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
塩川(鉄)委員 ぜひとも、この点での取り組みをお願いしたいと思います。
 あわせて最後に、燕の地場産業振興の支援策ということで、地元の要望その他の項目がありました。
 一つお聞きしたいのですが、地元から要望のあった地域新生コンソーシアム研究開発事業、この採択はどうなったのか。具体的に採択をされたのであれば、補助金が交付される時期、なるべく早くというのが現地の要望でもありますので、この点の対応もあわせてお聞きしたいと思います。
古屋副大臣 御質問の地域コンソーシアム事業、具体的には、地元から二件の要望でございまして、まず、平成十三年度の第一次補正の予算による事業として、即効型地域コンソーシアム研究事業を実施しておりまして、これにつきましては、三月十八日に採択案件を公表いたしております。
 燕市に関する案件としては、財団法人新潟県県央地域地場産業振興センターから、これは同じところからですけれども二件、今委員御指摘のように出ておりまして、そのうちの一件でございますが、マグネシウム合金板のプレス加工法による製品化技術の開発、これが採択をされております。もう一つの鍛造の方につきましては、技術シーズの熟度がまだ低いということから不採択になっております。
塩川(鉄)委員 実施の時期なんかはどうですか。
古屋副大臣 実施の時期につきましては、調べまして早急に御返事させていただきたいと思います。
塩川(鉄)委員 終わります。
谷畑委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 最初は、大臣に質問をいたします。
 外国との相互承認、規制緩和、そして検査認証ビジネスと安全性との両立についてということでお伺いします。
 昨年、二〇〇一年の第百五十一通常国会におきまして、特定機器相互承認法が制定されたときの国会議論を参考にしますと、規制緩和、検査認証ビジネスと安全性との両立という論点があると思われました。
 そこで、特定機器相互承認法に含まれる電気用品安全法では、製品の安全性の確保に関して、政府認可から自己認可、ビジネスとしての認証機関による確認に規制が緩和されました。外国との相互認証がEUそしてシンガポールと広がるにつれて、製品の検査認証を迅速に行うビジネスが台頭してくることが考えられます。
 また、相互承認を考える場合、外国と日本で安全性の確保の手法が異なることが指摘されます。EUと日本の場合、EUは包括的安全性能を認定し、日本は部品一つ一つの安全性能を保証するというものです。例えば、昨年私も申し上げましたが、テレビを例にとりますと、EUでは、でき上がったテレビの安全性を問題とし、日本は、テレビを構成する部品ごとの細かい安全性の確保に重点を置いています。
 適合性認証ですとか、認証の本来の趣旨である国民の生命、安全、財産の保護を第一義に考えますと、規制の緩和や認証ビジネスの台頭と矛盾なく両立させる必要性が問われておりますが、このことに関する政府の見解を聞かせてください。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 一般消費者の生命身体の安全等を守るために、製品に関する安全性の確保というのは、御指摘のとおり極めて重要であると思っています。
 経済産業省は、規制の合理化の一環として、平成十一年に、当省所管の基準・認証制度全般について、第三者認証化や自己確認への移行など事前規制の合理化を行ってまいりました。規制の合理化に当たりましては、第三者認証機関に対して政府の認定を行うとともに、製品の回収命令等の流通後の措置の充実を図ったところであります。
 また、法令違反に対する罰則も強化をいたしまして、事後措置を充実いたしまして、国民の安全確保に万全を期しているところでございます。
 今般、シンガポールとの相互承認を実施するに際しましても、今御指摘の欧州との相互承認と同様、一つは、相手国の国内で行われる適合性評価について、製品の技術基準や適合性評価機関の指定基準を我が国の法令に基づく基準とすることにいたしております。
 二番目は、指定された適合性評価機関に対しまして、相手国政府が所要の監督措置を講ずることができることにいたしております。
 三つ目といたしまして、相手国の国内での検査が不十分または不適切であった等の理由によって、安全でない製品が我が国国内に供給された場合には、我が国の法令に基づきましてセーフガード措置をとる権利が協定上担保されていること、こういったことから、私どもとしては、国民の安全性は十分確保されていると考えております。
 規制の合理化や、これを通じた民間活力の導入、相互承認の実施による輸出入の円滑化は、いずれも重要な政策課題だと思っております。あくまでも国民の安全確保に万全を期しつつ、それを推進することがその前提だ、このように思っております。
大島(令)委員 市場のグローバル化に伴いまして、現在、国際的に、ワン、ワン、ワン、ONE、一つという意味なんですが、そういう構想が推進されていると、MRAを推進する米国の方からの報告があります。
 企業にとりましては、製品を市場へ出す時間を短縮したり、手続をもっと明確にするとかコストを削減したい。そのためには、一つの規格で、一回の試験、一回の製品認証ということで、これからそういうことが進んでいくと思うわけなんですね。
 そういう観点から、私は先ほど、今の検査認証ビジネスが台頭する中で、一義的に国民の、本来の適合性認証ですとか、承認の本来の趣旨である安全性というものが両立し得るのかという観点で質問をさせていただいたわけなんですが、もう一度お答えいただけないでしょうか。
平沼国務大臣 先ほどの御答弁で申し上げましたように、やはり国民の安全、それを大前提として行っていることでございますので、我々としてはそういう大前提の中でやっておりますので、先ほどの御答弁どおりでございまして、私どもは、十分担保されている、こういうふうに思っています。
大島(令)委員 では次に、政府参考人に質問いたします。
 日本・シンガポール相互承認の対象品目について伺います。
 今回の対象品目を比べますと、シンガポールから輸入される品目は、通信端末機器や無線機器の分野において、個人ですぐに商品として使えるもの、いわゆる製品化されたものが目につきます。逆に、日本から輸出される品目は、企業や公共施設などで使う装置類が目につきます。これは電気製品関係についても同様の傾向が見られますけれども、政府はこの対象品目の違いをどのように見ているのかお伺いいたします。
日下政府参考人 お答え申し上げます。
 電気製品の関係について私どもの方からお答え申し上げたいと思います。
 電気製品分野の具体的な規制の対象品目につきましては、我が国の電気用品安全法は、電気用品の中で特に危険または障害の発生するおそれが多い特定電気用品を規制対象としております。一方、シンガポールの方の規制法におきましては、消費者が多用する家庭用電気製品が対象となっております。
 したがいまして、電気製品分野におきましては、日本の規制品目には比較的部品が多く、シンガポールの規制品目には製品が多いというのは、委員御指摘のとおりでございます。
 我が国においては、人体が直接製品に触れるものでございましたり、長時間連続で無監視状態で使用する、変圧器でございますとか配電盤でございますとか、こういうものを対象にしているというような形で、両国の安全規制の考え方の違いによるところで規制対象については違いがありますし、また、その背景として、日本からシンガポール側への輸出としては部品、コンポーネントの輸出が多く、シンガポール側からは組み立てられたものが多いという貿易実態の面もあろうかと思います。
大島(令)委員 そうしましたら、通信関係機器と電気製品関係の割合をどの程度と想定して今回の、日本からシンガポールへの輸出が二千九百億円、シンガポールから日本への二千二百億円としているのか、その内訳を聞かせてください。
日下政府参考人 電気通信機器と電気製品、両方でございますが、電気通信機器の日本側からの輸出額が三百四十億円、輸入額が百五十億円でございます。これは、相互承認の対象になる電気通信分野のシンガポールとの輸出額でございます。電気製品につきましては、日本からの輸出額が二千五百六十億円、輸入額が二千四十億円でございます。
大島(令)委員 事前にいただいた資料がここにございますけれども、一九九〇年から二〇〇〇年の貿易額、円ベースにおきますと、電気製品においては、日本からシンガポールへの割合が八八%、シンガポールから日本へは九四%でありまして、今後ますますこの傾向が強まったとき、電気製品は外国産が占め、日本の産業の空洞化に拍車がかかるのではないかということを懸念してこの対象品目の割合について質問しているわけなんです。
 産業の空洞化にならないということを経済産業省としてどのように根拠づけるのか、説明をしていただきたいと思います。
日下政府参考人 今般の相互承認の取り決めにつきましては、輸入国で必要とされる検査を輸出国で実施可能とすることによって輸出入双方の円滑化を図るものでございます。そういう面では、輸出がよりしやすくなるということでございますので、相互承認の取り決めを通じて我が国からシンガポールに輸出されている電気製品、これがシンガポールで現地生産化される動きを加速するということにはならなくて、輸出が円滑化されるという効果を持っているのではないかと思っております。そういう面で、一方的に我が国の産業空洞化につながるということにはならないのではないかと考えております。
 また、今回、対象品目の日・シンガポール間の貿易額の推移を見ましても、過去十年間、推移はございますが、いずれも我が国からの輸出超過となっており、同一の分野の中でいわゆる水平分業が進展しているところであろうかと思っております。
 このような相互承認の取り決めによりまして輸出が円滑化されるということで、結果的に我が国産業の競争力強化に資することを期待しているところでございます。
大島(令)委員 輸出がよりしやすくなるということは、組み立てられたものがたくさん日本に入る。法案の説明のときに、たしか、法律はここでつくるけれども、そのバランスは市場にゆだねるというふうに私は説明を受けたのですね。
 そうすると、資本主義経済の中で、よりしやすくなるということは、やはりしやすい方に重点が行くわけで、そうなると、やはりますます製品として組み立てられたものがシンガポールから日本にたくさん入り、日本の技術レベルの高い装置類ですとかそういうものが行くということで貿易のバランスが崩れるのではないかというふうに私は思ったわけなんです。
 ここに、過去、一九九〇年から二〇〇〇年の貿易額ははるかに日本の方が多いということで、十年間で三兆七千五百五十一億円、シンガポールから日本に入るものが二兆八百四十九億円ということでございますけれども、これは単なる数字でありまして、細かく品目別に見ますと、電気製品ですとか、その品目をつくっているそういう国内の産業があるわけです。
 皆さん政府の方は、貿易額という形で一面的にとらえても、その輸出している貿易品、通信機器と電気製品という分野に分けた場合、それぞれの産業が日本であるわけですので、私は、トータルではなく、やはりその品目を生産している企業が拠点を海外に移していきやすくなるのではないか、そういう懸念の上から質問もしているわけなんですね。
 政府参考人がそういうふうにおっしゃるんでしたら、一つの電気製品をつくるのにかかる時間と対価としての労働賃金が低いほどやはり安く製品化できると思うわけなんです、それで、関税がなくなるということになりますと。
 では、改めてもう一度聞きますけれども、日本とシンガポールの国民の一人当たりの国民所得というのはどちらの方が多いんでしょうか。
日下政府参考人 シンガポールの一人当たりGDP、近年大変シンガポールは成長してきていることもございまして、統計によって若干差異はありますが、大体日本と同程度でございます。
 また、シンガポールの輸出先は米国が一番でございまして、日本とシンガポールとの間だけで往復の貿易があるわけではございませんで、日本からシンガポールに輸出されて、組み込まれた製品が米国を初めとして各地に、つまり、日本の部品が組み込まれたものが各地に輸出されているというような貿易実態になっているのではなかろうかと思っております。
大島(令)委員 では、対象分野について質問をいたします。
 一九九八年十月、日本EU閣僚会議におきまして、一つ目は通信端末機器、二つ目、電気製品、三つ目、化学品、四つ目、医薬品の四分野を優先する目標が設定され、昨年四月四日、優先四分野の相互承認協定の署名が行われ、昨年の通常国会、EUとの法案の審議がここで行われたわけなんです。
 しかし、今回はシンガポールとの協定の中で、医薬品、化学品が入っておりません。その理由として、EUと協定の位置づけが違うということでございますが、どのように協定の位置づけが違うのかお伺いいたします。
鶴田政府参考人 諸外国との間の相互承認のための国際協定を締結するに当たりましては、互いの国の制度の技術的同等性が担保されるということが必要不可欠でございまして、医薬品につきましては、国民の健康に直接影響を及ぼすということから、とりわけ我が国の制度とか医薬品をつくる製造所の管理のやり方のチェック方法とか、こういった技術的同等性を慎重に検討する必要がある、そういうふうに考えております。
 こういった考え方に……
大島(令)委員 委員長、答弁が、私が質問してない次の質問に対しての答弁をしているんですよ。
谷畑委員長 ちょっとしっかりと質問を聞いて、的確な答弁をお願いします。
大島(令)委員 私は、EUとの協定の位置づけがどう違うのかということで、それを聞いた上で次の質問をするつもりでいるのです。ちょっとお粗末ですよ、これは。撤回してください。
谷畑委員長 ちゃんと、ではもう一度、鶴田審議官。
鶴田政府参考人 日本・ECの間では……(大島(令)委員「EUですね」と呼ぶ)EUの間では平成七年の……
大島(令)委員 済みません。EUと日シの協定の位置づけが違うというふうに聞いて、対象四品目が、日シでは医薬品、化学品が入っていない、EUと協定の位置づけがどう違うのかということを質問しているのです。その後の質問の答弁を今なさろうとしているから、ちょっと委員長に整理をお願いしたところなんです。
谷畑委員長 はい、わかりました。ちゃんと的確に答えてください。
 それでは、日下産業技術環境局長。
日下政府参考人 先生御指摘のように、欧州、EUとの協定におきましては、化学品でございましたり医薬品が含まれて、これのデータを活用するというところが入っていたわけでございます。
 シンガポールとの関係では、対象分野が電気通信機器と電気製品の二分野の相互承認ということで、協定そのものの中身が違う状況になっております。
大島(令)委員 位置づけというのは中身が違うという単純なことでございました。
 それでは、次の質問なんですが、医薬品では、その技術基準の同等性が検証されなかったので今回見送ったと聞いておりますけれども、技術基準の同等性というのは具体的にどのような中身なのかを聞かせてください。交渉の期間が短かったからということではなく、同等性ということで答弁をお願いします。
 二点目は、化学品については、産業界から要望がなかったため対象品目から外れたとありますけれども、もし、仮に要望があった場合、化学品分野での日本とシンガポールの同等性とはどのようなものか御説明ください。
鶴田政府参考人 どうも先ほどは済みませんでした。
 医薬品について、今の先生の質問についてお答えさせていただきます。
 前段については、先ほどお話ししましたように、医薬品につきましては、国民の健康に直接影響を及ぼすという観点から、我が国の薬事制度との制度の関係とか、または医薬品をつくっている製造所の管理の仕方のチェック方法とか、こういった技術的同等性を検討する必要があるというふうに考えておりまして、日本・EUの間では、平成七年の協議開始以来六年間をかけまして、この医薬品の製造所における製造管理、品質管理、これはいわゆるGMPと言っているわけなんですが、双方の関連する薬事制度や製造所への査察実施体制等の技術的事項につきまして、情報交換とか実際の、合同、一緒に査察するなどを通しまして、同等性を検討・評価して、その結果を踏まえて医薬品のGMPについての相互承認を行ったものでございます。
 他方、日本・シンガポールの間では、双方のGMPに関する制度につきまして、こういった技術的同等性の評価確認作業が今回の一年間の協議期間内に終了するに至らなかった、このため、相互承認の対象分野とはしなかったものでございます。
 なお、日本・シンガポール間では、今回の経済連携協定の署名に当たりまして、共同声明による医薬品のGMPに関する情報交換の協力を開始して、これらの協力活動を通じまして、引き続き双方の制度の技術的同等性について検討を行っていくこととしております。
 以上でございます。
古屋副大臣 工業用化学品分野についての御質問でございます。
 これは、今回シンガポールから要望がありませんでしたので、同等性の確認は行っておりません。委員御指摘のとおりでございます。
 今後もしその要望があった場合にはどうするかということでございますが、工業用化学品分野につきまして、いわゆる化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律というのがございまして、この法律に基づきまして化学物質の審査、規制を行っておりまして、一方、海外では、安全性評価データの相互受け入れに関しましては、OECDで定められた試験方法であるとか試験所の基準を踏まえて同等性の確認を行っているというのが実情でございまして、仮にもし今後要望があった場合には、こういった基準に照らしまして同等性の確認を行うということになるというふうに考えております。
大島(令)委員 では、政府参考人に伺いますけれども、一年間で確認できなかったということは、立入調査ですとか合同査察をEUのときと同じようにしなかったということでございますか。
鶴田政府参考人 同等性の具体的事項といたしましては、薬事制度全般、特にGMPの医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準というのが日本にはございまして、そのGMPの基準の具体的内容について、相互にどこが違っていて、どういったところがそのためには担保したらいいかとか、それから、今度は、実際の医薬品の製造する製造所におきまして、その製造管理、つくるときの管理がきちっと行われているかどうか。それから、でき上がったものの品質の管理、これをきちっと行っているかどうか。これは、政府機関、公的機関が査察を行うというのが通常でございまして、この査察のやり方ですね、頻度とか、それからどういったところをチェック項目にしているのか、問題があったときにはどういった対応を行っているのか、こういった査察のやり方、実施の方法。
 それから、もう一つ大事なことは、査察官の質がちゃんと教育訓練等で担保されているかどうか、その技術的な同等性を相互に確認するということが必要でございまして、そのところが一年間では合意が、一致が見られなかった、一致するところまで至らなかったということでございます。
大島(令)委員 それでは、医薬品とか化学品につきましては、締結した後に法改正が必要になると聞いておりますが、私どもの把握しないところでこういう申し出があったときには、今後国会でやはりしていくのかという質問が一点。
 先ほど来不安に思いますのは、EUとでは通信機器、電気製品、医薬品、化学品ができた。シンガポールとにおいては、通信機器、電気製品という二分野だけですね。その中の理由として、やはり安全性、品質管理、査察官の質とかいうことがあるわけですので、そういう意味で、アジアをべっ視するわけではございませんけれども、客観的に見ると大丈夫なんだろうか、そういうことが推察されるので質問をさせていただいたわけなんです。
 その件に関してはどうでしょうか。
日下政府参考人 お答え申し上げます。
 医薬品とか化学品などについて、その後、検討が進んだ場合にどういう扱いになるかということでございます。
 データの受け入れでございますから、先ほどから説明がありますように、国内法的な手当ては要らないのでございますが、協定そのものによって行われる話でございますので、別途国会の方で御審議をいただいておりますシンガポールとの協定そのものの方につきまして、そういうものを対象にするという改定が内容によっては必要になってこようかと思います。
 いずれにしましても、制度の考え方としては、日本国内の法令に適合していることを担保するような考え方になっておりますので、決して相手の国の国内での規制の内容の影響を日本国内での実施の際に受けるわけではございません。しかしながら、相手国との協力でございますので、相手国がしっかりした制度を持っているかどうかにつきましては、先ほどから御説明しているように、しっかり確かめ担保をしていくこととしているところでございます。
大島(令)委員 もう一つ政府参考人に質問いたしますが、電気製品の技術基準の国際規格への統一ということに関して質問をいたします。
 現在の国際電気標準会議、IEC会長に東芝技術顧問の高柳氏が就任しておりまして、国際規格への日本の対応のおくれに危惧を抱いていると報道されております。高柳会長は、IECの課題と目標ということで、標準化の統一と認証の世界システムの構築の必要性を述べておられるわけです。
 今回の特定機器相互承認法改正案は、EUに加え、シンガポールも対象に含めるものですが、こうした各国間での相互承認の先に、一国で電気製品の適合性が認められれば国際的に通用するシステムづくりが急がれていると会長は言われているわけなんですね。
 特に、市場のグローバル化や製品のライフサイクルの短さの影響が著しい通信機器におきましては、相互承認の動きをアメリカは推進しており、この分野でも国際的な認証体制の確立が必要になっていると言っておられるわけです。
 そこで質問でございますけれども、電気製品関係のJIS規格を国際電気標準会議、IECの国際規格へ合わせていくことについて政府はどう考えているのか、お願いいたします。
日下政府参考人 先生御指摘のように、世界的な流れとしましては、基準そのものを同一のものにしていこうというハーモナイゼーションの動きと、それぞれの基準はそのまま、当面残したままで相互承認を現場で進めていこうという二つの流れがあるわけでございます。
 WTOの貿易の技術的障害に関する協定、TBT協定が平成七年に発効したわけでございます。それで、国家規格は国際標準への整合化を図っていこうということが国際的にうたわれているところでございまして、JISにつきましても集中的に国際整合化を進めてきたところでございます。この結果、JIS全体の国際標準との整合化率は九割を超えているところでございます。電気製品関係の八百件のJISにつきましても、対応する国際標準でありますIECとの整合化を図ったところでございます。
 他方、電気関係につきましては、電圧でございましたり周波数でございましたり、各国の実態が違うところもございますので、そういう違いを踏まえながら整合性を図っていくということで、高柳会長とも全面的に協力をして国際的な規格づくりを進めていきたいと考えているところでございます。
大島(令)委員 外国に行ったときに電気製品を使って非常に困る問題が、まだ整合化されていない残りの一割、電圧とか周波数の問題、こういう問題に関しましても、今両方で使える電気製品もあるわけなんですけれども、ぜひ経済産業省として、新しい商品開発という面でもこういうことをクリアしていただく施策をお願いしたいと思います。
 次の質問に入ります。
 貿易のあり方について副大臣にお尋ねいたしますが、シンガポールと貿易のバランスが崩れたときにどのように対応するのか。貿易に関しては市場にゆだねるということを聞いておりまして、その言葉がすごく脳裏に強いものですからお伺いしているわけなんです。
 例えば、ガットやWTOのような国際協定や国際機関では、紛争処理手続が明確にされております。特にWTOではネガティブコンセンサス方式といいまして、紛争が起きたときに一国でも支持があれば決定されるという方式です。今後ますます二国間の自由貿易協定、FTAが進んでいく中で、紛争は想定されているのか。また想定されている場合、どのように解決、処理していく仕組みになっているのか聞かせていただきたいということが一点でございます。
 二点目は、NAFTA参加国でありますメキシコ、カナダ、そして、先ほど達増議員の質問でもお答えしていましたけれども、オーストラリア、スイス、スイスはEUに加盟しておりませんが、これらの国と日本のFTAの検討状況と、分野ごとで課題になったこと、向こうからアタックされてきたということを聞いておりますので、そのあたりのことをお伺いいたします。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 今般協定を結びましたこの経済連携協定は、相互の国の利害が一致するということで提携をしたわけでございまして、今後これによって双方の貿易は促進をしていくということを私らも望んでおりますし、またそうなっていくと思います。
 ただ、万が一、委員御指摘のように、何らかの紛争が生じた場合の対策はどうなっているのかということでございますけれども、これは、二十一章に紛争の回避及び解決に関する規定というものを設けております。
 紛争が起きた場合は、やはり友好的に協議、話し合いでまず解決するというのが第一義的だと思いますが、そういった協議に関しても多面的な協議規定というのを設けております。
 その上で、この協議でうまく解決できない場合についても想定をいたしまして、いわゆる仲裁裁判によりまして最終的な解決が得られるように、委員御指摘のWTOの協定と同じような手続の規定というものを設けさせていただいております。したがって、こういった協定により紛争の解決はできるものと思っております。
 それからもう一点、今委員の御指摘がございました、メキシコであるとかあるいはカナダ、オーストラリア、スイス、FTAについてどうなのかということでございます。
 まず、メキシコでございますけれども、これは自由貿易協定がないということで、例えばアメリカとメキシコはNAFTAに入っておりますし、また今度はEUとも協定をしたということで、日本の企業そのものが貿易で非常に不利益になっているという現状がございます。そういったことも含めて、昨年九月から、日本とメキシコ両国間で産官学の研究会で実は検討を進めさせていただいております。
 また、オーストラリアと日本との間では、これはあくまでも民間でのケーススタディーというものが行われて、昨年四月にその報告書が出されたところでございます。
 また、カナダについても同様に、日本とカナダ両国で、お互いの経済界の皆さん方が、両国間の包括的な連携ができるのかどうかというようなことで、その可能性の検討に今入っているというふうに聞いております。
 また、スイスは、二〇〇〇年四月の日本・スイス経済協議の際に、我が国との自由貿易協定に関する関心が示されたということでございます。
 以上でございます。
大島(令)委員 今の御答弁を伺いますと、オーストラリアとカナダは民間レベルでそういう話し合いをしているということでございますが、結果的には、この協定というのは、やはり民間からのそういう要請があって、国としてこういう法的手当てをする、そういうふうな形でEU、そして今回のシンガポールとの法案ということになってきたと理解してよろしいわけなんですか。
古屋副大臣 そのとおりでございます。
 あくまでも両国間の経済の実態、こういうものを踏まえて、双方の利害が一致する場合には自由貿易協定を結んでいくという基本的なスタンスでございます。
大島(令)委員 貿易というのは日本の外交通商政策で非常に大事なものだと思っているわけなんですが、今の御答弁から、民間からという言葉がありましたので、非常にその点、心配をしておりますけれども。
 最後の質問に入ります。
 大臣にお伺いします。FTAの国内産業への影響に対する政府の対応について伺います。
 FTA締結は、関税撤廃とかサービス、投資、相互承認等の分野で、連携によって貿易拡大効果と、経済連携による技術革新と効率化を促し、長期的には経済力を向上させる一面も持っているというふうに考えることもできます。しかし、海外製品が関税なしで流入することは、国内産業への影響は避けられないと私は思っております。
 今回のシンガポールとの協定では、農林水産品の輸出が非常に少ないため余り論議にならず、協定締結に至らなかったようですが、これから多くの国とFTA締結することになると、化学製品、農林水産品の関税撤廃、市場開放が拡大してくると思うわけなんですが、これらの二国間の自由貿易協定、この締結に伴う国内産業の打撃というものもまた一方で緩和する必要性があると思うわけなんです。
 外国企業との競争の中で淘汰される企業を想定して、新たな産業の創出ですとか、グローバル社会に対応した人材育成や職業訓練などの施策について、政府として何か考えていることがあれば聞かせていただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 確かに、FTAを進めていくに当たって御指摘の点は私はあると思います。そのためにも、私どもは、開業や創業促進に向けたチャレンジをする人を応援する環境整備、これは国内の体制を整えるためにやる必要があると思っています。
 そのために、第一には、新しい事業を行おうとする人たちがやはり最大限能力を発揮できるように、規制緩和というものを徹底してやっていくことが必要だ、有形無形の参入障壁を取り払っていくことが必要だと思っています。
 それから第二に、そういった形で新たないわゆる活力を生み出すためには、新たな事業を起こす人たちに対して必要である資材ですとか、あるいは人材、技術、こういったことがやはり円滑に供給されることが必要です。資金も含めて必要だと思っています。
 ですから、このためには、少し具体的に言いますと、平成十一年から実施している創業塾における創業者のための支援、こういったこと、それからもう一つは、この秋の臨時国会で成立をさせていただきました、新たに事業を始める方々に、土地や何かの担保ではなくて、事業計画に着目をして、そして、業を起こす、起業をする人たちに対して力を与えていこう、これは本人保証も第三者保証も無担保でやっていこう、こういう制度をつくりました。
 また、大学には技術が集積されていますから、そういった大学に集積されているそういう技術に対して、TLO、こういうものを活用しながら、ベンチャーが起こしやすい、そういう状況をつくっていく。産学官の連携、こういった形でイノベーションを起こしていくということも必要だと思っております。
 そういったことを通じて国内体制というものを整備する、そのことにやはり力を入れていかなきゃいかぬ、このように思っています。
大島(令)委員 私は、質問の一つの人材というのは、今までの私たちが受けた大学の教育ではなく、もうすごいテンポで変わる中で、大学のいろいろな科も変わらなければいけない、これは文部科学省の分野になると思いますけれども、そういうところで、横の省との連携をとってやはり進めていく必要があると思っているわけです。
 最後にそういうことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
谷畑委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、竹本直一君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び宇田川芳雄君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである。
 一 本法の施行により我が国とシンガポール間の貿易の促進が期待されるが、同時に輸入の増大による国内産業への影響を緩和するため、政府は構造改革を進めながら、新規産業・市 場の創出、人材の育成等適切な施策を講ずること。
 二 近年の二国間あるいは地域間における自由貿易協定の締結に向けた国際的動向にかんがみ、政府は、経済連携協定が今後ともWTOの多国間主義と整合的でありこれを補完するものとなるよう努めながら、その締結の拡大に向けての取組みを進めること。
 三 適正な競争原理の下で、認証に係るコストの低減、認証サービスの質的充実等利用者の利便性の向上を図るため、認証業務への一層の民間参入を促進するとともに、国際的にも信頼される認証機関の育成に努めること。
以上であります。
 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 以上です。(拍手)
谷畑委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
谷畑委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、平沼経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
谷畑委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十一分散会


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