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第8号 平成14年4月10日(水曜日)

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平成十四年四月十日(水曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 竹本 直一君
   理事 中山 成彬君 理事 鈴木 康友君
   理事 田中 慶秋君 理事 河上 覃雄君
   理事 達増 拓也君
      伊藤信太郎君    小此木八郎君
      大村 秀章君    梶山 弘志君
      左藤  章君    阪上 善秀君
      下地 幹郎君    谷本 龍哉君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      松野 博一君    茂木 敏充君
      保岡 興治君    生方 幸夫君
      川端 達夫君    北橋 健治君
      後藤 茂之君    中山 義活君
      松原  仁君    松本  龍君
      山田 敏雅君    山村  健君
      漆原 良夫君    斉藤 鉄夫君
      福島  豊君    都築  譲君
      土田 龍司君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    矢島 恒夫君
      大島 令子君    西川太一郎君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   経済産業副大臣      大島 慶久君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   経済産業大臣政務官    下地 幹郎君
   経済産業大臣政務官    松 あきら君
   政府特別補佐人
   (公正取引委員会委員長) 根來 泰周君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局次長)        松川 忠晴君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           玉井日出夫君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           清水  潔君
   政府参考人
   (文化庁長官官房審議官) 丸山 剛司君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           桑田  始君
   政府参考人
   (特許庁長官)      及川 耕造君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十日
 辞任         補欠選任
  根本  匠君     左藤  章君
  山本 明彦君     松野 博一君
  福島  豊君     斉藤 鉄夫君
  土田 龍司君     都築  譲君
  大森  猛君     矢島 恒夫君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     根本  匠君
  松野 博一君     谷本 龍哉君
  斉藤 鉄夫君     福島  豊君
  都築  譲君     土田 龍司君
  矢島 恒夫君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  谷本 龍哉君     山本 明彦君
    ―――――――――――――
四月九日
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)
同月八日
 中小企業対策など国民本位の景気回復に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一三八九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)(参議院送付)
 弁理士法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)(参議院送付)
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、特許法等の一部を改正する法律案及び内閣提出、参議院送付、弁理士法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省大臣官房審議官桑田始君、特許庁長官及川耕造君、司法制度改革推進本部事務局次長松川忠晴君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、文部科学省大臣官房審議官玉井日出夫君、文部科学省大臣官房審議官清水潔君及び文化庁長官官房審議官丸山剛司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本龍君。
松本(龍)委員 おはようございます。
 早朝から、平沼大臣初め経済産業省の皆様、御苦労さまです。また、とりわけ谷畑委員長におかれましては、古い友人として、この経済産業委員会の委員長という大任を果たされていることを、心からうれしく思いますし、敬意を表したいと思っております。
 本法に入ります前に、冒頭、平沼大臣に対しまして、今の政治のありよう、さらに経済の基本的な認識について、二点ばかりお伺いをしたいというふうに思っております。
 私も、年末年始、いろいろな方々とお会いをしました。とりわけ年始は、新年のあいさつを我々はするわけですけれども、ことしぐらい何か新年のあいさつがしにくい年はなかったというふうに思います。例えば、おととしは、二〇〇〇年問題、Y2K問題をクリアしてよかったですね、去年は、二十一世紀、希望に満ちた年をお迎えでございますねとか言えました。
 しかし、昨年の九月十一日のアメリカの同時多発テロ以来、暗い世相が続いている、景気も芳しくない、そんな中で、ことしの正月のあいさつは大変苦慮しました。暗い話はできないし、さりとて明るい話題もない。そういう状況の中で、皆様方も同様に思われた。まさに経済を担当する皆様方には、景気の先行きが見えないなど言えませんから、なかなか苦労されたというふうに思います。
 商店街の皆さん、あるいは中小企業の皆さんと年末年始話をしながら、この国会、一月二十一日に迎えました。ほとんどの委員の皆さんは、雇用対策をしっかりやろうという思い、あるいは失業、リストラの対策をしっかりやろうという思い、景気の回復をしっかりやろうという思いでこの一月の国会に臨まれたと思います。それから二カ月半、今日までたちました。三月の中ごろは、異例の、二週間早い桜の花が咲いて、もうそれも散ってツツジの時期になろうとしております。
 そういった中で、国民は何を思っているか。リストラされる、あるいは失業の目に遭う、雇用が脅かされる、そういう中で国民は職探しをしています。この間ある人と話をしたのですけれども、国民は必死になって職探しをしている、国会は必死になってあら探しをしているという話をされました。まさにこの人が言った、国民は職探しをしているのに国会はあら探しをしている、このことは、おもしろい話ではなくて、しっかり受けとめていかなければならないというふうに思っております。
 政治不信はもう頂点にあると私は思っています。頂点どころか青天井と言っていいくらい高揚しているというふうに思っております。そこで、我々の責任は大きい。まさにさまざまな問題が今日まで出てきておりますけれども、個別の話に触れるともう質問時間全部満杯になりますのでやめさせていただきます。
 そこで、私は大臣に、今の政治の状況、二年ほど前に大臣とは、倫理選挙の特別委員会で、政治資金規正法、個人に対する企業・団体献金の廃止に関して議論を闘わせていただきました。そういう意味では、政治とお金に関する問題、政治家のあるべき姿というものがおわかりになると思います。そういう意味で、この政治状況は、閣僚の一人として、他人事では済まされない、まさに責任を持ってこの問題に対処していかなければならないと思っております。
 冒頭、その問題に対して所見をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 委員御指摘のように、国会が始まりまして二カ月半余たったわけでありますけれども、非常に政治にかかわった問題ですけれども、政治の本質と外れたところで不祥事が続いておりまして、そういう意味で国会が混乱している、それは事実でございまして、本当に遺憾なことだ、私はこういうふうに思っております。
 その中でも、議員各位の御協力をいただいて平成十四年度の予算が成立をしたところであります。そういう混乱の中でも、今の経済の現状を見て、国民の皆様方に対して、予算だけは通そう、こういう皆様方の思いで、戦後で五番目に早い成立になったわけです。したがって、私は、内閣の一員として、この平成十四年度の予算の着実な執行、それによって今閉塞状況のこの経済に活力を与える、そのために全力をこれから尽くしていかなきゃいかぬ、そういう思いでございます。
 今、松本先生が御指摘になられまして、二年ほど前でございましたでしょうか、政治資金の問題で、議員立法の中で、私がその責任者として先生と議論を闘わさせていただきました。そういう中で、政治資金にかかわる問題も今回大きくクローズアップされたところでございまして、この問題についても、今の現状の中でやはりもう一度しっかり議論をしていかなきゃいけない。そして、ある意味では、本当に塗炭の苦しみにいらっしゃる中小企業の皆様方を初めとして国民の皆様方に、やはり政治が責任を持っておこたえをしていかなきゃいけない、このように思っております。
松本(龍)委員 今の状況は、同じ政治家として本当に私は情けなく思っております。不正はただしていかなければならない、また、政治家が身を律するためにさまざまな追及をしていかなければならない、そういうことは片方でやらなければなりませんけれども、今、塗炭の苦しみにあると言われましたけれども、そういう実態を見きわめて努力をしていかなければならないということを私自身も思っているところであります。
 ただ、この今の状況は、構造的な不況、あるいは今までの不況と若干様相が違っているというふうに思っております。一つには、町づくりの問題。町は、私の町も都心にあるわけですけれども、都心でも高齢化が進んで、都心の空洞化が進み、学校の統廃合が行われている。ある地域に行きますと、私は博多の町ですから、福岡ですから、ほかの都市より元気だというふうに言われておりますけれども、ほかのところに行きますと、例えば、大型店が出店をして商店街が疲弊をしていく、その後、今度大型店までなくなって町全体が疲弊をしてくる、こういう状況があります。
 さらに、この間、川端議員も技能オリンピックの話をされたと思いますけれども、物づくりの問題です。物づくりの問題は、彼らはデフレスパイラルというのをもう肌身で感じています。普通の仕事がないという不況に加えて、しかしながら、今まで身につけていなかったインターネットをささくれ立った手でしっかり夜勉強しながら、情報を交換している、あるいは顧客を見つけようとしている。
 それともう一つ、私が物づくりの点で一番思うのは、今までは、職人というのは、いいものをつくろう、いいものをつくろうという思いがありました。それでこの二、三十年間やってきたわけですけれども、バブルの崩壊前後から、いいものをつくろうといういわゆる職人かたぎが崩壊をするようなニーズが出てきた。つまり、受注先の方から、コストを半分にしなさい、寿命も半分でいいですよと。寿命半分、コスト半分というと、今までの職人かたぎというかアイデンティティーが崩壊をしてしまうわけです。そういった自分自身が今までやってきた世界をなげうってでも新しく生きていかなければならない、こういう二重三重の苦しみがあることも御存じだと思います。
 ベンチャー企業もそうであります。ベンチャーも、実は八五年から九〇年の間に起業率と廃業率が、開廃率が逆転をした。これはまさに、先進国の日本にとってこのことが不幸だったと思います。景気のいいときには業を起こすのが普通でありますけれども、景気が絶好調のときに、まさに開廃率が逆転をした。
 つまり、これは何でかというと、土地が高騰する、そういう意味ではオフィスビルもなかなか借りられない。そういう中で、新規産業をもくろむ人たちがなかなか思うようにならない。あるいは、浮かれてさまざまな、安易にお金が手に入るものに行ってしまう。そういった中でいわゆる新規のビジネスみたいなのに熱がそがれてきた。そして、バブルが崩壊した後はスポンサーもいない、あるいは、さまざまな経済的な不況の中で巻き返しができない、こういう二重三重の不況があることを御存じだと思います。
 昔、シューマッハーという人が「スモール・イズ・ビューティフル」という本を書きました。その後に彼は「宴のあとの経済学」という本を書きました。まさに今、長いうたげの後の後始末をやらなければならない、やっている状況だと思います。
 そういった中で、中小企業の人たちは、決してうたげの中で酒も飲んでいないしごちそうにもあずかっていない。あずかっていない人たちが、今のうたげの、行儀の悪かった人たちの後始末をしている、そういう状況がある。そういった中でまた政治不信がある。こういう、物すごく何か今、経済も政治も大きな不信の中にあるという状況で今回の国会を迎えているわけです。
 もう一度改めて、そういう状況であるという認識を踏まえて決意をお願いしたいと思います。
平沼国務大臣 現況の景気というのは、先生御指摘のとおりだと思っています。
 それで、直近の景気のデータというのは、輸出でございますとか生産、これの下げどまり、そのような現象が若干見られている。そしてさらに、言ってみれば、株価等も一万一千円台で落ちつきを見せている。ですから、一面、楽観論みたいなのが出てきていることは事実ですけれども、私ども経済産業省といたしましては、絶対に楽観をしてはいけない。幾つかの指標はよくなっているけれども、やはり、ここでさらに危機感を持ってやっていかなきゃいけない。
 そのためには、今、開業率、廃業率のお話が出ました。今、日本での開業率、開業数というのは、二百万人の人たちが新たに業を起こしたいと思っているにもかかわらず、実際は十八万にとどまっております。そして、直近の数字では、残念なことながら、廃業者がその倍の三十六万、こういう異常な数字も出てきています。
 ですから、そういう意欲のある、新しく業を起こそうとする、そういう起業を志している人たちに対して、やはり経済政策としてしっかりとした援助をしていかなければならない。そういう意味で、昨年の秋に、新たに開業する、そのためのインセンティブを与える法律もつくっていただきました。
 したがって、今足元をしっかりと固めて、そして、いかに新市場を創出するか、さらには雇用を創出するか、こういったところに力点を置いてやっていくことが一つ重要なことだと思います。
 また、日本の経済の骨格を支えてくだすっている、数の上では九九・七%、雇用では七二%を受け持っていただいている中小企業の皆様方、特に潜在力とやる気のある中小企業の皆様方にはしっかりとサポートする意味で、セーフティーネット貸し付け、セーフティーネット保証、これも充実をさせていただいていますけれども、そういうこともしっかりと手当てをさせていただいて、この日本の経済の活性化、そして物づくりのことにも御言及になられましたけれども、私は、日本の得意芸はやはり物づくりに原点があると思います。
 そういう意味で、コストは半分でいい、そして寿命も半分でいい、こういうことはあってはならない、そう思っておりますから、やはり、日本のクラフトマン精神といいますか、職人魂を喚起するような、そういった力強い政策もあわせてやっていかなきゃいけない、私はこんなふうに思っております。
松本(龍)委員 町づくり、物づくり、人づくり、大変重要な課題だと思いますので、よろしく取り組んでいただきたいと思います。
 それでは本法に入らせていただきます。特に、私は弁理士法の改正を担当しておりますので、これに特化をして御質問したいと思います。
 私はこの法律を読ませていただきました。平沼大臣、及川特許庁長官、私はどちらも尊敬をしておりますけれども、この法律を読んで、どうもすとんと落ちない。手を打って、ああ、これはいい法律だと私はなかなか思えない。後ほど述べますけれども、どうも妥協の産物のような気がしてならないんです。普通ですと私、物わかりのいい方ですから、これはいいというふうに思うんですけれども、どうもいろいろな意図が見え隠れしているのが現状であります。
 私は、弁理士会の方々とも実は余り話をしていません。特許庁のレクも十分ぐらいしか受けていません。そういう意味では、自分自身で考えて質問させていただいていることを御理解いただきたいと思います。
 小泉総理は、三月二十日、知的財産戦略会議の初会合で、知的財産の創出、保護と活用は、経済活性化を実現するための重要なポイントであり、まさに国家戦略として取り組むべき課題だというふうに言われています。しかし、この改正法の中には、その経済の活性化と国家戦略というのがなかなか見えてきません。
 さらにもう二点つけ加えさせていただきますと、ユーザーの利便性、ユーザーの負担等々もなかなか解消されるようには思えませんし、さらに、何よりも、この国家戦略というのは、まさにスピードであります。スピード感が全く見えてこないというのが実情であります。このこともまた後で述べますけれども。
 しかしながら、一致した認識は、知的財産権に精通した専門家をたくさんつくっていかなければならない、つまり、人的インフラの整備が急務であると思います。そういう意味では、法廷技術に明るい弁理士、あるいは専門的知見を有する弁護士がふえていくことが重要だと思いますけれども、そのための方策をどのようにされているか、まずお聞きをしたいと思います。
大島副大臣 松本先生に私の方からお答えを申し上げたいと思います。
 先生が申されるように、知的財産分野における人的インフラ、この整備の急務というのは全くその御指摘のとおり、私どももそう認識をいたしております。
 それで、少し現状を述べさせていただきますと、この知的財産関連の侵害訴訟の件数でございますけれども、この十年間で二倍、倍増いたしております。これは、平成三年の三百十一件から平成十二年の実績で六百十件でございますから、まさに……(松本(龍)委員「簡単にでいいですから」と呼ぶ)簡単にやります、はい。
 そういった意味では、弁護士の数もこういったことに精通した方が三百人から四百人ぐらいしかいないということで、これはもう先生の言われたとおりでございます。
 今回の法改正では、そういった意味では、一定の能力担保措置を講ずることにより、弁護士が訴訟代理人となっている事件に限り、弁理士に訴訟代理権を付与するということを規定いたしております。
 そして一方では、現在議論されている法科大学院制度におきまして、社会的なニーズの高い知的財産分野をカリキュラムとして盛り込み、即戦力として活躍できる知的財産専門の弁護士の養成がなされることが期待をされております。
 そういったことを補完するという意味でも、今回のこういう弁理士の養成あるいは充実ということは、さらに今後の必要な課題だというふうに思っております。
松本(龍)委員 今ちょっとびっくりしたのですけれども、即戦力という言葉を法科大学院制度の話でされました。法科大学院制度、スケジュールはどうなっているんでしょうか、開校から第一回の卒業生ということでいえば。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 法科大学院につきましては、司法制度改革審議会意見、それから、それを踏まえて本年三月十九日に策定されました司法制度改革推進計画において、平成十六年四月からの学生受け入れが開始となるよう所要の措置を講ずるというようなスケジュールにのっとりまして今準備を進めているところでございます。
松本(龍)委員 平成十六年四月ですよ、今、即戦力とおっしゃったけれども。平成十六年四月から開校して、五年かかるとして二十一年、それから実務経験をしても三、四年かかるでしょう。十年ですよ。今から十年ですよ。十年先の話じゃないんです。つまり、これから五年先の話をしないとだめなんです。だから、スピードと冒頭言いましたけれども、スピードが要るんです。ですから、この五年間をどうしようかと。
 確かに、法科大学院生がその先の即戦力になるのはわかりますけれども、今我々の喫緊の課題は、この五年をどうしようということなんですよね。したがって、私は、それは手ぬるいと。したがって、弁理士の方からしっかり有為な人材を供給していただくというのが今一番大きな課題だろうというふうに思っております。
 アメリカでヤング・レポートが公表されたのは一九八五年です。今からもう十七年前になります。
 この間、新聞記事が出ていましたけれども、知財重視政策への転換による産業再生の先例は一九八〇年代のレーガン政権時代の米国にある。つまりこれから、米国の特許庁の大増員、あるいは特許訴訟を担当する控訴裁判所を創設したり、知財重視派の判事を登用してきた。日本の戦略会議では、今後三年間に各省庁が取り組む具体的な行動計画を盛り込んだ知的戦略大綱を年内に策定をする。米国では改革の成果が出るまでに十年以上かかったが、これから改革が始まる日本はもっとスピードを速める必要がある、このように述べられています。
 しかも、この訴訟というのは、ミノルタとハネウェルの訴訟で二百億円ミノルタが払ったというふうに、まさに企業の命運を左右する現場なんですよ。そこで、その法科大学院を卒業した人たちが今の状況の中で即戦力として果たしてやっていけるかというと、私はそうではないというふうに思います。
 そういう意味で、知的創造サイクル、研究開発、権利化、活用、利益、さらにまたその利益をもとに研究開発をしていく、そのサイクルをつくっていかなければならない。私はスピードが必要だと思いますけれども、その点、平沼大臣、どうお考えでしょうか。
平沼国務大臣 私は、御指摘のとおりだと思っています。
 やはりアメリカでは、今ヤング・レポートのお話をされましたけれども、七〇年代、そして八〇年代の前半にかけて日本がひとり勝ちだ、こういうような状況の中で、国家的に戦略を起こして、プロパテント政策、こういうことに積極的に取り組んで、特に研究開発、イノベーション、それから知的財産の保護、こういったことを総合的にやって九〇年代の結実を見た、私はこう思っています。
 ですから日本も、今委員からいろいろ御指摘で、もっとスピードを上げてやれ、こういう御指摘ですけれども、私どももスピードを上げてやる。そういう一環の中で、法科大学院の院生が育つまでの間は、やはりできるだけのスピードを持って、専門的な知識を持っている弁理士の先生方にも参画をしていただいて、そしてこれから知的財産戦略をやっていく、私どもは、その主要な役割を果たしていただかなければいけない、こういう思いで今法律をお願いさせていただいております。
松本(龍)委員 冒頭、失われた十年と言いますけれども、先ほどのお話では、失われた二十年になりかねない。そういう意味では、これから五年の戦略ということを考えていきながら、このプロパテント政策ということに臨んでいただきたいというふうに思っています。
 そこで伺いますけれども、なぜ、共同出廷を原則として単独出廷を例外にしたのですか。
及川政府参考人 御承知のように、最近の知的財産権の訴訟におきましては、審理の充実、迅速化という要請から、審理内容も大きく変容いたしております。この内容の変化に対応いたしまして、訴訟代理人にも、従前にも増して幅広い知識と迅速な訴訟の対応能力が必要だというふうになっております。
 こうした状況を背景といたしまして、弁護士と弁理士の方々が、おのおの専門的な知見を相互に活用していただきながら、連携して訴訟に対応することによりまして、審理の充実、審理期間の短縮を図るという制度の趣旨が達成されるのではないかということで、今回、本法案におきまして、弁理士の方の出廷形態につきましては、弁護士との共同出廷を原則として法案を構成させていただいたわけでございます。
 しかしながら、裁判所が相当と認める場合につきましては、弁理士の単独出廷を認めるべきものというふうに行っているところでございます。
松本(龍)委員 弁護士法の三条と七十二条でいろいろ規制があるということはわかるんです。ただ、やはりこの規制を取っ払ってやるくらいの気合いがないとスピードが追いつかない。
 ですから、私は、むしろ単独出廷を原則として、例外として共同出廷とむしろ逆転をさせて、そして一歩踏み込んで、逆に言うと、そこで何か問題が起こって何か弊害があればそこで問題を解決していく、走りながら問題を解決していく、そのくらいの気合いがあった方がいいと思うんですけれども、その辺をどう思われますか。
及川政府参考人 本件につきましては、私ども検討に当たりましてさまざまな議論を尽くしてきたところでございますけれども、単独出廷につきましては、やはり大きな趣旨が、専門的知識を相互に連携させて行うというところにございますので、もし単独の場合には、やはり裁判所の訴訟指揮権を重視すべきであろうという考えに立っております。
 したがいまして、裁判官の裁量によりまして個別具体的に判断させていただくことになろうかと思っておりますけれども、まさに先生がおっしゃいますように、弁理士の専門的な技術性が活用できます場合や、あるいは補佐人や訴訟代理人の経験を通じて、当該弁理士の方に訴訟遂行能力が十分に備わっているというふうに御判断いただいた場合には単独出廷が認められていくのではないかというふうに思っているところでございます。
松本(龍)委員 弁護士法の七十二条をこのまま、いわゆる独占をし続けるということが妥当かどうかはもう喫緊の課題で、ニーズがいろいろ多様化している、さらに国際競争力という状況の中で勝っていかなければならない、そういう状況を勘案したときに、私はもっと一歩踏み込むべきだと思っています。
 しかも、弁理士は補佐人として八十年の歴史を持っています。そして、審決取り消し訴訟の代理人として六十年の歴史を持っています。ですから、今後ではなくて、そういう今までの経験をやはりしっかり見ていただいて実績を評価していただきたい、そういうことを申し上げておきたいというふうに思っております。
 それと、研修と試験制度ですけれども、これはおおよそどのくらいの費用になるのか。また、四十五時間ということを言われていますけれども、これはシリーズで、つまり連続して四十五時間なのか、ちょっとお尋ねをします。
及川政府参考人 コストにつきましては今後の検討でございますので、今の段階でいかほどというのはちょっと申し上げられないところでございますが、当然のことながら、極力少ない負担を目指すべきだというふうに思っております。
 それから、研修時間四十五時間、最低ということでガイドライン的に提示をさせていただいているところでございますけれども、そのあり方等につきましては、今後弁理士会の方ともよく御相談をさせていただきながら、最も受けやすい形が、地域的、そしておっしゃいましたように、弁理士の方の負担を考えながら、どういう形がいいのか、連続がいいのか、あるいは期間を区切った方がいいのか等々を考えながら構築をしてまいりたいというふうに考えております。
松本(龍)委員 仮に四十五時間ということが連続であれば、昼休みを挟んで一日大体五時間ですよね。そして、五時間ということは九日間、土日がありますから、論文まで入れると半月仕事です。つまり、半月仕事ということは、第一線で活躍をされている弁理士はなかなか、研修を受けるのも難しいし、試験を受けるのも難しい。やる気がある人ほど難しい。さらに、自分の案件を抱えているわけですよ。案件を抱えながらの研修ですからさらに負担がふえていく。そういったこともきめ細かく配慮をして、研修あるいは試験の実態を点検していただきたいというふうに思います。
 さらに、財政的な支援もお願いをしたいというふうに思います。
 それと、私、今まで補佐人としての実績があります。補佐人としての実績なんかは研修の段階でカウントされるというか、今までの実績がその研修でカウントされるのかということもちょっとお聞きをしたいのですけれども。
及川政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、おっしゃるように、連日、毎日ということになりますと、現にお仕事をお持ちの方々でございますから大変な負担になると存じます。
 したがいまして、現在、モデル的に私どもが考えておりますのは、例えば夕方とかなんとかを使いながらも、時間が外れたときに、例えば一日三時間、週二日とか、そして二カ月間ぐらいかけてやるといったようなのがモデルとしてはいいのではないかというようなことを考えておりますけれども、御事情、いろいろあろうかと思います。それを勘案しながら最終的に考えていきたいというふうに思っております。
 それから、補佐人としての確かに長い経験という点はございますが、多くの経験は、具体的な代理権を得た後、先ほど申し上げたような形でそれはまさに発揮される面もあろうかと思いますが、試験につきましては公正性が必要でございますので、それはカウントせずに、むしろ、まさに研修を受ける順番等におきまして、長い経験をお持ちの補佐人の方から順次研修を受けるというのも一つの考え方ではないか、かように考えております。
松本(龍)委員 今、柔軟に考えるというふうにおっしゃいました。それは前向きに考えていただきたいと思います。
 さらに、弁理士ゼロ県ということが達成をされて、地域偏在をなくそうと弁理士会の皆さんも努力をされている。まさにそういう状況の中で、試験地が東京、大阪、名古屋で行われることになって、逆にその偏在が強化されるということもありますので、試験地の問題も、研修地の問題も含めて検討していただきたいなとあわせて申し上げておきたいと思います。
 私は、この改正案、ユーザーのためになるのかということが一番疑問であります。ユーザーの負担はどうなりましょうか。
及川政府参考人 ユーザーの方につきましては、当然のことながら、お二人に、共同受任ということになりますのでふえるのではないかというような御懸念があることは承知をいたしております。
 ただ、従来から、補佐人としてよく弁護士の方と御一緒されているということもございますし、また、他方、訴訟にかかる費用というものが審理の充実、迅速化等の便益に見合うものであれば、ユーザーの厳しい御判断の中でそれなりに適正な形で進められていくのではないかというふうに思っております。
 また、今後、より多くの弁理士の方が参入することによりまして、むしろ競争原理が適切に働くことによりまして、ユーザー、弁理士双方にとって適正な水準に落ちついていくことを期待したいと思いますし、そのように考えていきたいというふうに思っております。
松本(龍)委員 適切な水準というのはわかるんですよ。ただ、多分、弁理士さんは大きな企業に対して、弁理士費用を上げてくださいということはなかなか言いにくい。ですから、恐らくこれは、中小企業とかベンチャービジネスの方々の費用負担は結構大きくなってくると思うんです。
 まして、研修、試験制度があって、半月間拘束されるわけですよね。しかも、受講費用も払わなければならない。受講費用を払って、ある程度仕事を削減しながら研修、試験を受ける。そういった中で、この費用は、コストパフォーマンスでいえば、まさにユーザーの方に行かざるを得ぬのですよ。これを我々が我慢して、代理人になった、地位が向上したからこれはこれで受けとめようということじゃなくて、その費用は最終的にユーザーに行くわけですよ。そこのところはやはり考えていただきたい。
 ですから、ユーザー等の話の中で、適切な水準になるというのは、経済原理でいえばそうではなくて、まさにその費用負担はユーザーに行くということだけは私は言えるというふうに思っております。
 もう時間が参りましたので、最後に大臣にお伺いをしたいと思います。
 冒頭、この法律がすとんと落ちないと言いました。研修、試験があって、多大な労力と費用を使って資格を得た、しかし単独出廷はできませんよと。これが私は一番納得ができないんです。ですから、そこまでやるなら、もっと高度な担保能力措置を図ってもいいから単独出廷の道を開くべきだ。ですから、これ、中途半端が私はそこだと思うんです。しかも、スピードが大事だと。先ほど言ったように、十五年以上アメリカにおくれをとっている状況の中で、この五年間が勝負という意気込みでやるべきだと思います。
 私は、弁護士にも弁理士にもくみしていません。そういう意味では、お互いが競争原理の中で競い合う、その中で国際競争力に見合う戦力ができてくる。そして、国際社会の中で初めて知的財産国家が実現できるというふうに確信をしております。そういった意味で、最後に大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘の点は非常に重要なポイントを含んでいるものだと思っています。今の日本のこの知的財産、そういったものを戦略的にやっていくためには、御指摘の点も踏まえて、私どもはそういうことも盛り込んでやらなきゃいかぬと思っております。
松本(龍)委員 弁護士が訴訟代理人になっている事件に限るという、まさに受任事件の限定、これも私は、将来というよりも、もう近い将来に、走りながら考えていくとさっき言いましたけれども、やめていかなければならない、解除していかなければならないと思っています。
 参議院先議のこの法案であります。民主党も賛成ということでこの法案は通りました。私も、いろいろ問題はありますけれども、採決の折は腰を少し浮かしながら賛成という立場で臨みたいというふうに思っております。ありがとうございました。
谷畑委員長 山村健君。
山村委員 おはようございます。
 先輩の松本議員に続きまして、私の場合は、どちらかといえば、今回の特許法、弁理士法の改正の中の特許を中心とした案件の方で質問に立たせていただきたいと思います。
 先ほども後ろで同僚の議員とも話をしていたのですけれども、この手の法案の場合、質問がどうしても重なってしまうよなというようなところはあるんですけれども、法律という文言にしてしまいますと、これはもう本当にどこをどう切ってもという形にはなるんですが、今回のこの特許法の問題、そしてまた弁理士法の問題というのは、まさに、経済産業省といいますか、日本の産業界がこれから先どのような、いわゆる政治主導のもとに日本という国を導いていくのかということで非常に大きな意味を持っていると思うんです。
 そこで、まず冒頭にお伺いしたいのですけれども、特許といいますと、私はどちらかといえば今まで文系の人間という形で来ておりました関係で、同じような知的所有権の中でも、これは工業、いわゆる理数系の範疇に入るものだな、我々の生活には関係ないよと。その昔は、エジソンの伝記を読んでは何か発明でもすればというふうな、小学生当時ですか、そういうような夢を持ったこともあったのですけれども、中学、高校と進むにしたがって自分の適性がどちらにあるのかというようなことを考えたときに、そしてまた社会に出たときに、文系の人間にとってみては、工業のいわゆる知的所有権、特許というものには縁のないものだというふうに今まで思っていたわけです。
 ただ、今までは、イベントといいますか、コミュニケーション関係、広告も含めて、そういう業種についておったときに常にぶつかったのが、これは経済産業省というより、日本の縦割りの行政の中で、どちらかといえば当時の文部省管轄になるのか文化庁になるのか、いわゆる著作権という問題に出会ったわけです。
 そして今回の改正案の中に、今まで特許というものは物に対してという概念が、いわゆるコンピューターのプログラムであったりとか形のないものに対してまでカバーしようというような考え方に基づいて今回改正されているわけなんですが。
 そこで、大きな問題として、その前提として大臣にお伺いしたいのですが、いわゆる特許を含む、また著作権を含む知的財産権というものは具体的にはどういうものを指しているのかというようなことを、ちょっと冒頭に定義づけを含めてお伺いしたいのです。
平沼国務大臣 まず、我が国の知的財産に関する行政組織の対応についてからお話をさせていただきたいと思っておりますけれども、基本的な法目的の相違を踏まえて編成されていると思っております。
 産業の発展に寄与することを目的とする特許法は我々産業省が管轄をしておりまして、また、文化の発展に寄与することを目的とする著作権法というのは御承知のように文部科学省がそれぞれ所管をしている、行政的にはこういう色分けになっております。
 諸外国の例を見てみますと、英国は特許庁が著作権法も所管をしている、こういった例がありますけれども、英国以外、米国、フランス、中国等、特許法と著作権法を日本と同じように異なる組織で所管している例も少なくないところであります。
 ですから、そういう形で、言ってみればこの特許法というのは産業の発展に寄与する、そういう目的があり、著作権というのは文化の発展、こういうことでございまして、私どもはそういう一つの考え方で行政上も分けてそれぞれ対応している、こういうことに相なっております。
山村委員 非常に簡潔明瞭に、単純に切り分けしていただいたわけなんですけれども、そこでもう一点、ではこういう場合はどうなるのかというような、そんな細かい質問をすると非常にまた申しわけないんですけれども。
 いわゆる商業デザイン、商業美術と言われる、ロゴマークであったりとかキャラクターのトレードマークであったりとかというようなものというのは、意匠デザイン等々あるんですが、これはどうなるのかなと思うんですが、いかがですか。
及川政府参考人 意匠法、商標法につきましては、私ども特許庁が所管をさせていただいておりまして、いわゆる工業所有権の範疇に入るわけでございます。
山村委員 そうしましたら、ついでにと言ってはおかしいのですが、これは私にとっては非常に、時のタイミングといいますか、民間でいたときに、もう二年早くこういう概念があればなと思った事例がございました。
 ビジネスモデルというのが最近マスコミ等々いろいろにぎわせているんですけれども、そのビジネスモデルというのは、ではどちらのどういう概念に当てはまるのかということをお伺いしたいのですが。
及川政府参考人 ビジネスモデルにも、率直に申していろいろなモデルがあろうかと思います。
 私どもが特許法の観点から現在特許を付与しておりますのが、いわゆるビジネス方法の発明というふうに言っておりますけれども、その多くはコンピューター技術を利用いたしましたソフトウエア関連の発明ということで整理をさせているところでございます。
山村委員 なぜくどいように同じような細かいことを聞いていくかと申しますと、本当に今回いろいろな方面で、小泉改革、それこそ構造改革なくして成長なしという言葉にあらわされるように、ついこの間まで、三月の末までは、いわゆる財政構造改革がイコール小泉総理がおっしゃってみえた構造改革というふうに多くの人は受け取られたと思うんですけれども、私は、それは与党の人間ではございませんが、昨年のちょうど四月、総裁選挙に出られたときに、当時の小泉候補者がこの構造改革という言葉を使われたときには、我々民主党の若手議員は特に、今まで我々が訴え続けてきた政策じゃないか、言葉は悪いですけれども、パクリじゃないかというようなやじを飛ばしたように、まさしくそういう理念というところでは一致しているんじゃないかなというふうに思っていたわけなんです。
 その中に、その財政構造改革というものも含めて、いわゆる経済のシステムも構造改革、教育のシステムも構造改革、過去、明治維新以降百三十年にわたって続いてきた政治を含んだ社会の制度自体が、ITという問題もございますけれども、大きく転換点を迎えている。そういう意味合いで、従来の価値観ではだめですよということを当時の、当時のと言っても今も現役でございますが、小泉総理は訴えられたんじゃないかなと。それが多くの国民にも響いて、昨年の四月、本当に新しい形で、従来にないような形の総理大臣が誕生したというふうに、一年前を振り返って、私は、そういう自分自身の判断も間違っていなかったなと思うんです。
 それが、まず最初に片づけなければならないというのが不良債権の問題ということで、どうしてもそちらの方面だけがクローズアップされてきたというふうに思うんですが、今回の国会のいろいろな、かつてといいますか昔から、特にいわゆる永田町の人にとってみると当たり前のことの領域として受け取っていたというようなことが、今やもうあちこちで不祥事という形で、これは政党を問わずという形で言わせていただいていいと思うんですが、噴き出している。まさに永田町の常識と世間の常識が本当に百八十度違うという、それも含めて、ある意味の構造改革というのを迫られているんだと思うんです。
 そんな中で、先般私質問に立たせていただいたときにも、本来ならば、予算案を含めて、景気対策というものに対してもっと踏み込んだ議論をすべき場が国会の場にあって、これからの日本をどうしていくんだということをもっとこの議場の中で議論を重ねていくということが、恐らく国民が国会議員に、国会という場所に一番求めていたことだと思うんです。
 ある意味、私自身、個人的にといいますか、多くの仲間の議員、これもまた与野党を問わずだと思うんですけれども、ワイドショー的な政治の劇場じゃないよと、本来政治家がやるべきこと、行政に対してどういう注文をつけていくのかはっきりさせていくというのが、この二カ月半にわたっての唯一の、唯一のといいますか、本当に心残りの一つでもあるわけなんです。
 やっとここへ来て前向きなといいますか、こういう場をいただいて議論ができるなと。私も、担当法案という形で特許法そして弁理士法の改革というようなこの分野、いわゆる経済の構造改革についてということで質問に立たせていただくチャンスを得たわけなんです。非常に前置きが長くなってしまいましたが。
 経済、いわゆる産業構造を変えていくという意味合いからして、これは総理の方にもいわゆる経済構造改革、政府におきましても経済構造改革における位置づけということで、昨年の三月に、いわゆるe―Japan重点計画の中で電子商取引等の促進、そして具体的な施策としては知的財産権の適正な保護及び利用、そして特許法の見直しというようなことが経済産業省の管轄の中でうたわれているわけなんですが、それにのっとって今回の改正案というのも出てきております。
 そして今、日本の産業界を見回してみますと、いわゆる製造業の空洞化といいますか、多くの人が、特にこれは大臣にとっても頭の痛い問題だと思うんですが、いろいろそれは、中小企業対策であったりとか雇用対策であったりとかという問題にかかわってくるわけなんですが、はっきり申しまして、中国十三億人という人口のもと、いわゆる中国に対しての製造業の流出というのは、これは防ぎようがないなと、結論から言ってしまいますとね。
 日本のようにこれだけ給与水準を高くしてしまって今さら下げるわけにもいかないし、では、かといって中国から、中国を初めとしていわゆる後進国の皆さんをどんどん労働者として国内に引っ張ってくるということもまずできないだろうし、そういう中からいわゆる知的財産権という概念が出てきて、これが日本のある一つの生きる道といいますか、世界を引っ張っていく糧にしなければということで急がれていることだと思うんです。
 そんな中で、非常に私、自分の言葉が長くなってしまうんですけれども、明治維新以降からの今までのシステム、我々の周りを見回して、今、時代の転換点に来ているということをあえて例えさせていただきますと、明治維新以降百数十年にわたって中央集権国家のもと、いわゆる知識を持っている人間が国のリーダーになっていく。
 当時、明治維新をなし遂げた先輩方、そしてまた戦後の廃墟の中から復興されてきたフロンティアといいますかパイオニア精神を持った先駆者たちというのを除いては、一たんでき上がってしまった構造を、いわゆる知識をキャッチアップしてきたというのが日本の近代化であり、そして、いろいろ言われているいわゆる学歴社会といいますか、知識さえ吸収できれば優秀な人間だということで、いい大学に入り、いい社会に出ていって、しかもその社会の中でリーダーになっていったという現実だと思うんですけれども、従来型の物差しが通用しないという現状に直面しまして、これからは知識吸収型より知恵をいかに発揮できるか、知識から知恵への転換点に来ているというふうに認識しているんです。
 そういうときに、産業界に戻れば、言葉遊びじゃないんですけれども、やはり知的財産権といいますか、創造力あってのこれからの産業の発展だというふうに思うわけなんですよね。そのときに、従来のシステムである、工業所有権は経産省、文化的な部分は文部省という大きな切り分けの中で、そのままの行政のシステムではまずやっていけないんじゃないか。
 と申しますのは、先ほどいろいろケースを挙げて質問させていただいたのですけれども、例えば、ではデジタルでつくったコンピューターグラフィックスはどうなるのと。ブラウン管に映してみればしっかりとしたアートといいますか絵になっているんですけれども、じゃあ、それは一体何なのといったら、それこそ、今はフロッピーディスクはありませんけれども、いわゆるCDでやったり、メディア、いわゆる媒体の中にはもうプラスとマイナスしか、どれだけ顕微鏡で拡大しても、置いていないわけなんです。
 それが、コンピューターという機械を通して映し、しかも大きなモニターに映せば壁一面がアートになってしまうというような状況になったときには、物として見たらもう本当に点々、早い話、デジタルの世界ですから点々というのが並んでいるだけ、でも目に見えるものは立派な絵である、そして動画であるというような形になってきている。
 では一方、工業的な特許におさまる部分、どうしてもコンピューターのいわゆるソフトというものに関しては、これはあくまでも特許権じゃないのと。それも顕微鏡で拡大してみると、アートの部分と同じように点々々と並んでいるだけ。それをどう切り分けるのかという問題に自分でも気がついたわけです。
 しかも、今度はメディアを介さずに、IT環境といいますか、インターネットでつながれば、要するに、スペインで、アメリカで、中南米で、コンピューターグラフィックスをつくりましたよ、ネット上に、自分のホームページに掲げましたよと。それをアメリカでも、それこそ南極でも、通信環境にあるところであれば、引き出したらもう瞬時に同じものが世界じゅうどこにいても受け取れるという環境になってしまったわけです。
 だから、アメリカの有名なデザイナーが、イタリアの有名なデザイナーが、ことしのラインはこういうファッションになりますよ、色はこうですよとやったときに、今までですと何カ月もかかって日本へ伝わってきたものが、もう瞬時にして地球の裏っ側に伝わる時代になってしまった。
 そういう概念からいいますと、日本国内はもとよりなんですが、特許法にしろ、弁理士法というのはどうしても国内法になるんでしょうが、特許権といいますか、知的財産権の問題というのは、これはもうIT社会とは切っても切れない国際問題であり、いわゆる国際法という概念のもとに構築しないと、日本の中で、これは経済産業省の管轄だから、文化庁だから、音楽の部分はJASRACという団体があるからというふうなことを言っていたのでは、まさに、それが産業として育っていくかと言われたときに、恐らく後追い後追い、それで世界はどうなっているのという、周りを見てキャッチアップ型というふうな今までどおりの政策立案といいますか、制度を追っていたのでは、ますます、先ほど言われた失われた十年が二十年にもなり三十年にもなりというふうになっていくように思うんです。
 そういう観点から、本当に私、自分自身がしゃべり過ぎて申しわけないんですけれども、いわゆるそういう知的財産権というものを一元化するというようなお気持ちといいますか、それをまた産業興しといいますか、創造的に展開していくために、省庁再編してからまだ一年余りですけれども、そういうお気持ちというのはないんでしょうかということをお伺いしたいのです。
平沼国務大臣 非常に重要な御指摘がたくさん入っていたと思っています。
 したがいまして、今インターネット社会になり、御指摘のように、今まで想定していなかった、そういう著作権に属するものでございますとか、あるいは特許権に属するもの、商標権に属するもの、意匠権に属するもの、こういうものが瞬時に飛び交って、その権利関係というものが非常にわかりにくく複雑になっている、そういうことは事実であります。
 一元化のお話でございますけれども、先ほどの御答弁で申し上げたように、諸外国の例を見ても、特許権と著作権を別々にやっているところが少なくないわけですが、また、一つのところでまとめてやっている国もあります。
 そこで、今御指摘のような問題点に対処するために、経済産業省を初めとします知的財産制度関係省庁は、こういった多様化する知的財産関連の課題に対応するために、昨年の八月ですけれども、連絡会議をまずつくらせていただいて、関係省庁間で緊密な連絡と連携を行っているわけであります。こういった連携によりまして、知的財産関連の諸施策の有機的な連携は十分図られる、私どもは今こういう認識であります。
 さらに、きょうも夕刻開かれますけれども、小泉総理のいわゆる方針の中にも入っております、これからは知的財産というものをしっかりと保護、発展させていかなきゃいけないという形で、知的財産の戦略会議というものが立ち上がり、ここは関係省庁が全部入り、総理のもとでそれぞれ、今御指摘のような問題点について議論をし、方向性を出していく。もちろん、学識経験者、産業界の代表、そういった方々の御意見も反映をしてやる。
 ですから、本当に今まさに、そういう二十一世紀、ITの時代を迎え、御指摘の点がたくさん出てまいりますから、まず第一段階はそういう連絡会議の中でしっかりとこなす、それと同時に戦略会議の方でも、今御提言のことも踏まえて、私どもは緊急に、失われた十年と言っておりますけれども、それが十五年、二十年にならないように、緊急に、迅速にやっていかなきゃいけない、こういうふうに思っています。
山村委員 その知的財産戦略会議というようなものをつくっていただいて、これからそれを主に、柱として迅速につくっていただくということなんですが、まさに、知的財産といいますか、先ほども申しましたように、知識をいわゆるキャッチアップしていく社会から、知恵としていかに自分を表現していくか。
 きのうもある友人と話をしておったのですけれども、神戸の、いわゆる兵庫県の大地震のときの話になりまして、そのときに、今まで学んできたいわゆる生活、社会というようなルール、どれだけ知っていてもああいう事態になったときには役に立たないんだと。それこそ本能的に、水はどっちにあるんだ、どっちが安全だというようなことの中でパニックを起こさないように動いていく、本当にそれは生きる原点というものになると思うんです。それが知識と知恵の違いかなと。
 我々も、学校時代に学んできたことというのは、やはり先生から、学校生活、四月に入学しました、これからみんなと仲よくしましょうね、先生の話はよく聞きましょうね、もう知らず知らずに受動的に、社会はこうだから、社会のルールはこうだから、君たちは卒業したらこうなっていくんだからというような形で上から教えられてきた。いつの間にか、社会に出ても、研修期間が三カ月ですよとか、その会社に自分を、個性を合わせていくというような受動的な人間が多く育ってしまったというのが今日の教育の場、きょうは文科省の委員会ではないので詳しくは言いませんけれども。
 それがやはり、この四月から週休二日制、いわゆるゆとり型の教育というようなことになるんですけれども、伸び伸びと子供が、自然に触れて、痛いと感じるのか甘いと感じるのかというような、知識じゃなく知恵として本当に吸収して、それをみんなに伝えたいから、技術として、じゃ、ブラジルにいる子供に伝えてあげよう、日本の春にはこんなきれいな花が咲くんだよ、これはこんなにおいがするんだよというようなことを伝えられる、メディアとしてそのITを活用していくというような方向でいかないと、初めにまず人間ありき、そして技術があるというような社会というのは、これは恐らく教育現場でどれだけ訴えても、それこそ五十年、百年のスパンになると思うんです。
 でも、産業界においてはきょうあすの話ですので、迅速にという中で、特にこの経産省におかれましては、社会を引っ張っていくということで急いでいただきたいなと思う次第なんです。
 それに関連しますと、では知的財産権というものをどのように扱っていくのかというときに、ちょっと特許法とは離れて、私の担当ではないわけですけれども、弁理士法という問題が非常に大きなウエートを占めてくると思うんです。
 先ほど松本議員の方からもありましたけれども、今すぐ何千人の弁護士さんをふやしなさい、弁理士さんをふやしなさいといったところで、まだまだルールとして明確にもなっていない、それは法律はありますけれども。社会情勢に照らし合わせてみたときに、これはどうなっているんだ、これはどうなっているんだということで、特に日本の場合、特許に関して、いわゆる工業所有権に関しては非常にある意味、工業化社会であったということも含めまして、そのルールというのはできていたと思うんです。
 ただ、著作権という問題に関して言えば、コンピューターもソフトがなければただの粗大ごみでしかないわけですよね。そのコンピューターソフトの開発というのは、またこれ、ドッグイヤー、マウスイヤーと言われるように、時間が非常に速いわけです。それをぱっと出したときにいかに広がるかというようなことで、開発者がせっかく何十年、何時間とかけて苦労しながらつくったものがあっという間に流れてしまう。一刻も早く知恵の社会、知恵の社会のリーダーが本当に報われる社会というふうにしなければ、恐らく日本からの流出というのはこれからもどんどんどんどん進んでいくと思うんです。
 そういう観点から、一番手っ取り早いのは弁理士の数をいかにふやすか、そして、そういう問題を国民に啓発していくかというふうに思うんです。
 今回の法案というのは、これは一歩前進したとは思うんですけれども、先ほどもそういう質問があったわけですが、弁理士そして弁護士という職種がある、その資格制度は当然あるわけなんですけれども、弁護士に関しては、ロースクールを含めて、これからどんどん、訴訟社会に日本もなっていくからふやしていかなきゃねとなるんですが、著作権に関して一番詳しいのは恐らく弁理士という業界の資格者だと私は思うんですが、いかに弁理士をこれからふやしていく方策といいますか、そういうのはお持ちなんでしょうかということを質問させていただきたいんです。
及川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、弁理士の方の量的拡大というのは私どもの非常に大きな課題であろうかと思っております。
 弁理士制度そのものにつきましては、おかげさまで平成十二年に弁理士法の全面的な改正を行っていただきました。これによりまして、試験制度の簡素合理化でございますとか他の資格を持っている方の一部試験免除等の内容の新試験制度というものを導入することができることになりまして、本年の五月、ちょうどもう来月でございますけれども、この新制度のもとで新しい試験ができるということで、恐らく従前に増して相当数の合格者が出てくるのではないか、これを定着させて拡大をさせていきたいというふうに思っているところでございます。
 この増大していただきます弁理士の方たちによりまして、他方で増大いたしますまさに知的財産の専門サービスというものの中核として担っていただければと、かように考えている次第でございます。
山村委員 まず、一刻も早く弁理士の充実といいますか、いわゆる権限というものも含めて、特許、著作権、著作権は登録だけでいいわけなんですけれども、そのインプットもアウトプットもスムーズになるような、町の専門家といいますか、そういうシステムを確立していただきたいというふうに思うんです。
 今度は、肝心のシステムはできて、弁理士という存在、サービスも充実してきたとすると、ちょうど現実といいますか、今現在の、きょうの場合は特許だけでいいわけなんですが、いわゆる年間の特許の日本の取得数というのは、過去も含めて、ここ三年でも五年でもいいんですが、データがある限り、どういう傾向を示しているのかお伺いしたいんですが。
及川政府参考人 特許の付与につきましては、年間でばらつきがございます。毎年約四十万件以上の出願がございますけれども、付与につきましては、九八年が十四万一千五百件弱でございます。九九年が十五万強、二〇〇〇年は少し落ちておりまして十二万六千弱、こんな推移をいたしております。
山村委員 二〇〇〇年が十二万に、三万件減ったというのは、何か要因というのはあるわけなんですか。
及川政府参考人 基本的には、審査の結果、やはりいわゆる特許の資格がなかったという、そういう結果だろうと存じますけれども、私どもといたしましても、二〇〇〇年当時から、いわゆる進歩性というものが一つの特許性の判断でございますけれども、その要件についてはそれなりに厳しい運用を行っております。これは、さまざまな御意見等をいただく中で、審査の質を上げるべきであるというような御意見もございまして、進歩性の判断を厳しくしたというのも影響しているかと思っております。
山村委員 そうしますと、その進歩性を判断するにはいわゆる審査官というような存在があると思うんですけれども、私もそちらの専門家じゃないんですけれども、一般論として、聞くところによりますと、特許は、出願してから許可がおりるまで非常に時間がかかるというようなことを聞いております。それもまたドッグイヤー、マウスイヤーという今日の社会環境に合わせたときに、今、特許庁自体は何人ぐらいのスタッフで、平均でいいんですけれども、出願から認定するまでの一件当たりの時間といいますか、それもあわせてお答えいただきたいんですが。
及川政府参考人 特許を審査しております私どもの審査官は千百名弱でございますけれども、他方、審査期間につきましては、御指摘のとおりでございまして、いわゆるファーストアクションと申しますか、審査請求をいただきましてから最初の出願人の方に御返事をする期間でございますが、日本は二十一カ月でございます。アメリカが大変早くて十四カ月という点がございます。他方、ヨーロッパは大体日本と同じというような状況でございます。
山村委員 きょうは、文化庁の審議官の方にもお越しいただきまして、著作権と対比した形ということもお伺いしたいんですけれども、著作権の数、そして現在の登録件数といいますか、そういうのをちょっと数字でお答えいただきたいんですが。
丸山政府参考人 先生御案内のように、著作権というのは、いわゆる美術とか音楽とか、日々至るところで大量に発生している、権利を生むためには、審査、登録といういわゆる特許と同じような手続を必要としないという点が本質的に違うものでございます。したがいまして、私たちでは、世の中に著作権が幾つ、著作物が幾つあるかということは、制度の本質からいって把握できない状況でございます。
山村委員 それゆえに、知的財産権というような問題、本当に二十一世紀の根幹としてその辺の定義づけというのもやっていただきたいんです。
 といいますのも、我々もう日常当たり前のように使っているインターネット、もともとは、ネットスケープ社といいますか、開発者が無料で配信したから一気に広まって、その後にマイクロソフト社が別のプログラムをまた同じように広げていった。それが、では一件当たり一円にしたとしても、その開発者にしてみたら莫大な利益を本来は得ていたと思うんですけれども、それを有料にしてしまったら、今日のように一気に広がっていかなかったという現実もあると思うんです。
 今、著作権の問題に関して言えば、音楽、いわゆるこれから売り出そうとしている人たちは勝手に自分でもうホームページに自分のつくった曲を流してしまって、気に入った人はダウンロードしてくださいというような形で、従来の出版方式といいますか販売方式ともまた違った状態になってきている。
 そういうことも含めて考えますと、技術的にできるのかどうかということはわからないんですけれども、せっかくデジタルのデータであるのなら、特に著作権の問題に関して言いますと、一番頭と最後、最近我々、こういうものがありますと、ワープロで打っていると、いわゆるヘッダーとフッターというようなものを課金制度と結びつけて、いわゆるデジタルマネーで、一回ダウンロードしたら幾ら、しかも、それは作曲者がだれ、作詞者がだれというようなことを、今度は本当にネット上の商取引としまして課金して、要するにデジタルマネーでどんどん口座がふえていくというようなシステムというのも、これは産業としてぜひ研究開発、いわゆる産学官の共同研究も含めてやっていただければと思うんです。
 私自身がしゃべっている時間が非常に長くて肝心の質問の時間が短くなってしまって恐縮なんですが、いずれにいたしても、特許といいますか知的財産というもの、今日のIT社会の中で、登録審査にも時間がかかるわけなんですけれども、せっかく電子政府だ、電子商取引だという方向に行っているわけですので、ホームページでいわゆる現在のデータベースを掲げていただいて、いわゆる町の弁理士さんが、こういう先例がある、どうのこうのというものをいち早く、それこそ検索という作業でできてしまって、こんなアイデアが出たんだけれども、こんなものをつくったんだけれどもどうだと相談に来た時点で、それだったらということですぐその場で答えが出せる。じゃ、これはおもしろいから出願してみようよというようなことを踏まえまして、総合的な社会制度として、一刻も早く、先ほどの知的財産戦略会議ですか、経済産業省が主導するような形で、スキームといいますか、研究課題を含めてつくっていただければと思うんですけれども。
 そして、その後、知的財産権の流通ということも含めまして、これは国際的なものにもかかわると思うんですが、ぜひとも具体的な方法、そしてまた国民に対しての知的財産というものの啓発ということに対して、最後に大臣の方から御答弁を、これからの問題で結構なんですが、お願いしたいんです。
平沼国務大臣 後半の部分は大島副大臣からお答えをさせていただきたいと思います。
 そういう、既に蓄積されているものが特許性があるかどうかという形で利用できる、そういうデータベースはどういうことになっているか、こういうことでございますけれども、特許の審査では、特許文献データベースですとか、それ以外のデータベース、それから国内外の主要な商用データベース、そういうものを活用して先行技術調査を行う必要があることは御指摘のとおりでございます。
 そのために、特許庁といたしましては、国内外の特許文献に対して所要の検索キーを付与しております。審査官に使いやすい特許文献データベースを構築しておりまして、そういう対応をひとつさせていただいています。
 また、情報通信、バイオなどの技術進歩の著しい分野においては、学術論文や雑誌、図書に掲載された文献を検索する必要性もあることから、特許庁独自でデータベースの整備を図るとともに、国内外の主要なそういう商用データベース、こういうことを整理しておりまして、こういうものも幅広く御利用いただく、そういう体制を組んでいかなければいかぬと思っています。
大島副大臣 流通の具体策についてという先生のお尋ねだと思いますので御説明申し上げます。
 特許の提供・導入の仲介を行う特許流通アドバイザーの派遣、これは平成十三年度で九十九名の実績がございます。それから、インターネットを通じて提供いたします特許流通データベースの整備、これは十三年度実績で開放特許の登録件数は約四万四千件でありまして、一日当たりのアクセス件数は約四千件でございます。
 さらに、人材の育成を行う目的で、研修事業といたしまして、十三年度の実績は、基礎研修修了者数が五百二十一名、実務研修修了者数は百二十一名の実績でございまして、そういった研修及び国際特許流通セミナーの開催なども行っているところでございます。
 こうした事業を通じまして、過去五年間に千四百二十件の特許の流通が行われているところでございまして、皆様方から高い評価を受けている、こういう認識をいたしております。
 そして、今後でございますけれども、特許流通アドバイザー等の人的ネットワークのさらなる強化を図っていこう、そして、特許流通の活性化もさらに深めていこう、そして、研修事業の内容の充実化だとか、特許流通を担う人材の育成にもさらに力を入れてまいりたい、こんなふうに思っております。
山村委員 時間になりましたので、本当にこれからの知的財産権、今の流通も含めて、もっと国民への啓発ということも含めまして、専門家である、アドバイザーもそうですけれども、弁理士の業務拡大といいますか、権限というのをこれからもまた考えていただければと思います。
 本日は、どうもありがとうございました。
谷畑委員長 後藤茂之君。
後藤(茂)委員 後藤茂之です。
 大臣、連日よろしくお願い申し上げます。
 きょうは、いろいろな論点があるわけですけれども、ネットワーク社会のもとにおけるさまざまな知的財産権の問題はちょっと後回しにしまして、まず最初に、産業競争力強化の観点から少し御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 我が国産業の産業競争力強化のためには、技術開発をどんどん推進して技術力を向上させる、そして製品・サービスの高付加価値化を行うということが非常に重要でありまして、今、先端技術分野においてはヨーロッパやアメリカと大変な競争をしております。
 一方で、技術が成熟している時代や産業においては、単にその技術力ということだけではなくて、ブランド、デザインなどの無形資産の価値を高める、そのことによって収益の源泉にしていくということも非常に重要だと思います。
 知的財産制度は、そうした両面、すなわち、技術の問題についても、ブランドやデザインやノウハウなど、企業のあらゆる側面での無形の価値の収益をしっかりと保護する、そして、我が国の競争力の維持と強化につなげるために非常に重要な基盤であるというふうに思っております。企業における戦略的活用と、それを支える政府における基盤整備のための努力が急務であると思いますし、これはまさに国家戦略として取り組むべき課題だというふうに思っております。
 一方で、先ほどから話が出ておりますけれども、知的財産権については、例えば工業所有権については特許庁だ、半導体回路配置利用権については経済産業省だ、あるいは著作権については文化庁だ、不正競争防止については経済産業省と公正取引委員会だ、苗の問題については農水省だというように所管がばらばらで、政府として戦略的に取り組む受け皿が十分にできていないのではないか、そういう問題点もあるわけです。そうした中で、先ほども話は出ましたけれども、本年二月に開催された知的財産戦略会議というのは非常に期待が大きい、非常に大きな任務を担っているというふうに思っております。
 そこで、大臣に伺いますけれども、知的財産戦略会議は、今後どのようなタイムスケジュールで、どんな範囲を視野に置いた検討を行っていくつもりなのか、今後の見通しについて、大臣のお立場で見通しを伺いたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘の知的財産戦略会議でございますけれども、これは小泉総理のもとで開催することに相なりました。
 これは、御指摘のように、産業競争力の強化あるいは経済活性化の観点から活発な議論を行いまして、きょうも実は夕刻から予定をされておりまして、今後のスケジュールについてまず申し上げますと、本日の第二回の会合を含んで四回の会合を開催する予定です。それで、六月中をめどに知的財産戦略大綱を取りまとめる運びになっております。
 知的財産戦略というのは、御指摘いただきましたように、司法制度、それから科学技術政策、通商政策等の分野と今は相関連するものであるために、やはり政府横断的な検討体制によりまして幅広い観点から検討を行うことが重要だ、こういうふうに思っております。また、国としては、知的財産を戦略的に保護し、活用する、そういうことをしていくためには、政府だけではなくて、大学や企業における戦略的な取り組みも当然のことながら重要でございます。
 この知的財産戦略会議におきましては、私ども関係閣僚に加えまして、大学や企業のトップの方々にも入っていただき、さらに知的財産専門家の有識者にも幅広く御参加をいただいているところでありまして、大所高所から議論を進めていただく予定になっています。したがって、こういう貴重な機会でございますので、具体的な検討の視野の範囲については、そこで議論の輪が広がって、結果的にいい方向に決まることを私どもは望んでおりまして、初めからこうこうこうということで枠をはめる必要はないと。
 ですから、そういう中で、今いろいろな側面から御指摘いただいたそういう問題をすべて包括的に含んで、そして、六月に向かって大綱をまとめて、しっかりしたものをつくっていく、こういう方向で取り組む予定でございます。
後藤(茂)委員 ぜひ平沼大臣に積極的に発言をしていただきまして、知的財産戦略会議の成果が、できる限り具体的で前向きになるようにお願いをしたいと思います。
 ちょっとアメリカの例の話をさせていただきたいと思います。
 アメリカでは、一九七〇年代の終わりから八〇年代にかけて、日本がジャパン・アズ・ナンバーワンでちょうど浮かれているころでありますけれども、製造業の国際競争力が低下してきたという大変な危機感から、国を挙げて、産業競争力強化政策という観点からプロパテント政策を推し進めました。
 米国のプロパテント政策には三つの流れがあったと言われていますけれども、一つは、七八年のメダー委員会を出発点とする連邦巡回控訴裁判所の設置など、これは司法省や裁判所の動き。それから二番目には、七九年のカーター大統領の教書を出発点とした特許法関係のさまざまな動き、特許庁を中心に。それから三番目は、ヤング・レポートを出発点とする知的財産政策と通商政策のリンケージを行う、USTRなどを中心とした動きがあったわけです。
 私は、実を言うと、こういう国家戦略は、アメリカの今の経済の復活について大変大きな意義を持っていたというふうに思っておりますけれども、こうしたプロパテント政策に対する大臣の御評価を伺いたいと思います。
大島副大臣 私からお答えを申し上げたいと存じます。
 先生が今おっしゃいましたように、アメリカにおきましては、七〇年代後半から八〇年代にかけまして、産業競争力の低下への懸念が非常に高まってまいった時期でございますが、国を挙げて産業競争力の強化に取り組み、その一環として、特許裁判所の創設あるいはバイ・ドール法の制定、さらにはガット・TRIPsを初めとする対外交渉の強化による国外での知的財産権の保護の充実などのいわゆるプロパテント政策を実施してまいりましたことは事実でございます。その政策は、九〇年代のアメリカの産業競争力の復活、強化に大きく貢献をしたと認識いたしております。
 経済産業省といたしましても、プロパテント政策は、我が国の国際競争の強化を図り、経済の活性化を進める上で極めて重要な柱の一つであると考えておりまして、先生の御意見と同感でございます。
後藤(茂)委員 こうしたアメリカの国家戦略性とか機動的な対応というのは、私は日本の参考になると思います。今、そういう御意見でありますから、ぜひ推進をしていただきたいというふうに思います。
 しかし、知的財産戦略会議というのはいろいろな提言をするということにはもちろん重要な役割を果たすでしょうが、それを本当に具体的に政府として実行していくためには、言いっ放しでは困るので、そういう意味では、それを推進するための政府としてのきちんとした受け皿が必要なのではないかと私は思います。
 ITについては、IT本部を政府の中につくったりしておりますけれども、そういう意味での、政府の中に積極的に対応が図れるような体制をつくるべきなのではないかというふうに思いますが、御意見を伺います。
平沼国務大臣 IT本部という、そういう例をお示しいただきました。私もIT戦略会議においては副本部長としてやらせていただいて、そして、IT戦略会議で数々の御提言を出していただいたことを一つにまとめてそれを実行する、こういう形で、例えばブロードバンド一つとっても、二〇〇五年までにはアメリカに追いついて追い越そう、そういう一つの目標の中で、実際にそういう提言が戦略会議で出た。
 それを受けて、戦略本部は具体的に着手をして、例えば、一つの例ですけれども、昨年の一月にはADSLはわずか一万八千しかなかったのが、今の段階で二百万を超えて、大体三十万か四十万ずつ伸びていって、ことしは最終的には九百万を超えるんじゃないか、最終目標が三千万ですから、そういった実効が上がっています。
 したがいまして、IT本部のような常設の特別な機関を設置する必要性については、やはりこれから検討して、そしてそのフォローアップのあり方、これは当然考えなければならないと思いますので、そういう形で、私はフォローアップ機関というのは絶対に必要だと思っています。
後藤(茂)委員 次に、我が国企業の特許出願の状況についてはさまざまな問題が指摘されております。
 例を少し挙げてみると、一つ、我が国の特許取得活動が非常に国内重視となっていて、欧米企業が重要技術については日米欧での出願を積極的に行っていることと比較して考えてみると、我が国においてはどうも戦略的な出願が十分なされていないのではないか。一つ、改良特許が我が国の場合七割以上を占めていて、日本企業自体が目指している基本特許は少ないんじゃないか。一つ、分野別に見ると、電子部品分野では米国とそこそこ拮抗していますけれども、IT、バイオ、化学分野とかについては米欧に大きなおくれをとっている。そういういろいろな問題点が指摘されております。
 我が国においても、知的財産を核とした企業戦略がしっかりと確立できるように、国際化という観点からもしっかりとした基盤整備を行うことが必要だろうと思います。もう今のところでも、例えば、先端技術分野における早期審査をするようにしろとか、あるいは戦略的取得促進のためのガイドラインをつくる、それと、税務、財務上の支援をしろとか、あるいは職務発明制度の相当の対価についての争いにきちんと予見可能性を高めろだとか、あるいは営業秘密の保護強化を図るために不正競争防止法の強化をしろだとか、いろいろ具体的な指摘も今なされております。
 そういうことを一つ一つ早く的確にやっていくということだと思いますけれども、個々具体的な問題は時間がありませんのでおいておくとして、知的財産を核とした企業戦略のための基盤整備についての基本的な考え方を伺いたいと思います。
及川政府参考人 幾つかの御指摘をいただいたと存じます。
 おっしゃるような点を踏まえまして、私ども、例えば御指摘の中核的な技術開発等につきましては、出願人の御要請に応じて優先的な審査の体制をそれなりに整えるとか、あるいは今御指摘のありました企業の知財支援等に関しましても、何ができるかといった点のガイドラインの策定等を考えたい、かように考えておりまして、まさに戦略会議、あるいは私どもも省内に検討会を設けておりますけれども、そういうところで網羅的、体系的に議論を深めたい、かように考えている次第でございます。
後藤(茂)委員 たくさんお話ししたいことがあるので、次々に話が行ってしまいますけれども。
 大学についてはTLOの制度が構築されてはいますけれども、知的財産の出願件数というのはアメリカと比較しても非常に少なくなっています。その結果として、民間に対する技術移転が円滑に行われていないということが非常に大きな問題だというふうに思っております。アメリカやヨーロッパの状況などを見てみますと、大学が知的財産戦略のかなめとして非常にワークしているという認識があるわけであります。
 そこで、まず大変基本的なことでありますけれども、この知的財産権分野における大学の戦略性について大臣から基本的認識を伺いたいと思います。
平沼国務大臣 我が国経済の活性化を図るためには、大学で生まれた技術シーズを民間へ円滑に移転して新規産業の創出につなげることが重要だと思っています。そのため、大学が戦略的に特許を取得しまして、それを活用することが必要であると認識しておりますけれども、我が国大学の特許出願件数は、二〇〇〇年には五百七十七件、米国の約十分の一の水準にとどまっています。技術移転機関のライセンス件数も、二〇〇〇年度百七件、これに至っては米国の三十三分の一、こういうことでございます。
 このため、大学における戦略的な特許取得と技術移転を支援する観点から、特許庁といたしましても、大学の研究者を対象に、工業所有権制度の戦略的活用が可能となるよう工業所有権セミナーを開催しておりまして、平成十三年度は九十四回の実績をつけさせていただきました。
 さらに、大学は、組織的に特許出願や特許管理ができる体制を整備することが言うまでもなく必要であることから、大学へ知財管理の専門家、これは知財管理アドバイザーといっておりますけれども、これを派遣する事業を平成十四年度から実施することにしております。
 これに加えて、今御指摘の、大学からの技術移転を促進するために、TLOへ特許流通アドバイザーを派遣する等の特許流通促進事業を展開してきております。TLOでは、二十六機関を既に承認をいたしまして、特許流通アドバイザーは、平成十三年度の実績で三十三名、こういうことになっております。
 したがいまして、御指摘の点は非常に重要な点でございまして、特許庁としましては、こうした支援策を通じまして、大学におきまして戦略的な特許取得、活用のための体制の整備、意識の向上を期待し、我々も支援をしていきたい、このように思っています。
後藤(茂)委員 経済産業省としてそういう具体的なことをやるということは必要なことだと思いますし、どんどん推進していただきたいと思います。
 基本的に言えば、大学の経営のあり方だとか、担当している関係者の問題意識をどうやって改革するかということが重要なんでありまして、そういう意味で、大臣としては、そういう問題意識から、内閣全体としてどういうふうに大学を動かしていくかという点について、やはりしっかりとした発言をしていただきたいなというふうに思っております。
 それでは、少し産業の空洞化の問題について、特許権等にかかわる問題として伺いたいと思います。
 現在、中国との間で産業空洞化が非常に大きな問題となっております。もちろん日本は、これまでASEAN諸国にどんどん出ていったわけでありますけれども、ASEAN諸国と比べてみると、中国というのは、人的能力の面においても、彼らのキャッチアップに対する強い意欲という点から見ても、非常にこれまでのASEANの、ちょっと語弊があるかもしれませんが、ASEANの諸国と比べてみれば、模倣力という点においては格段に違いがあるというふうに思います。これまでの我が国の中国への進出というのは、そういう意味では、技術移転という観点から見ると、余りにも戦略がなさ過ぎたのではないかというふうに思います。基本的には企業の問題だと私は思います。
 しかし、各企業によるコア技術のしっかりとした管理の問題だとか、あるいはブラックボックス化するとか、技術供与戦略をしっかり確立するだとか、そういうことがまず基本になるというふうに思います。そのために政府として何ができるというふうに考えておられるのかお伺いします。
下地大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。
 今先生から御指摘いただきましたように、我が国の生産技術、ノウハウがアジアの国々に流出をしている、そのことで技術の優位性が損なわれているという懸念は、本当に多くの皆さんから委員会の中でもいただいております。
 おっしゃいましたように、一義的には、やはり企業みずから営業秘密等の知的財産の社内管理強化に取り組むというのが不可欠ではないかというふうに思っております。
 しかし、国としても、平沼大臣を中心とします経済産業大臣主宰の産業競争力戦略会議、総理大臣主宰の知的財産戦略会議においてもこの問題は取り上げられておりまして、我が国として企業に戦略的なガイドラインを策定する必要もあるのではないか、そういうふうな見解に立って検討をしているところであります。
 そしてもう一つは、先ほど中国の話が出ましたけれども、一例を申し上げさせていただきますと、技術輸出入管理条例において、ライセンシーが、中国の企業が契約に定める技術目標を達成できることをライセンサーが、日本企業が保証することを求める条項が存在する、これは国際的商慣行から見ても不合理である。そういうふうなものがある場合には、国として積極的にそのことを、途上国の皆さんに改善を要望していくということをやっていきたいというふうに思っております。
後藤(茂)委員 どういうふうにかかわれるかということは結構難しい問題だと思いますから、今後引き続き十分検討していかなければいけないし、我々も一緒に知恵を出していかなければいかぬというふうに思っております。
 それからもう一つ、オートバイだとか家電製品だとか電動工具だとかベアリング、実を言うとそこいらじゅうに中国の模倣品が激増しておりまして、最近では第三国へどんどん向こうが輸出しておりまして、我が国の企業の被害というのは一兆円を超えているというふうに言われております。
 そういう中で、バイ、マルチの場を通じてきちんと規律を強化する、あるいは産業界横断的な専門の取り組み体制の整備をするだとか、そして、まさにきょう問題になっている知的財産権侵害製品に対する水際作戦、そういったものを徹底的にやる必要があるだろうというふうに思っておりますが、大臣にその点についての決意を伺いたいと思うのです。
大島副大臣 今先生おっしゃいますように、我が国の企業の製品が模倣されて、アジアを中心とした地域へどんどん流出している、これは大変深刻な問題でございますし、また抜本的なそういった対応策が求められていることはそのとおりでございます。
 経済産業省におきましては、昨年の十月、産業競争力と知的財産を考える研究会、こういった会を設置いたしまして、模倣品被害への対応策について精力的に検討をしてまいったところでございます。昨年の十二月には、そういったことに向けての対応強化に関する特別提言を、これも先生御案内のとおりでございますけれども、まとめられました。
 具体的には、権利侵害が発生している地域に対しては、二国間交渉の場を通じて模倣品の取り締まり強化を引き続き要請するとともに、中国も台湾もWTOに加盟をいたしてまいりましたし、そういったこともありまして、WTOの法令レビュー等を活用してそういった問題にも取り組んでまいりたい、是正を求めてまいりたい、こんなふうに思っております。と同時に、途上国に対する人的育成協力等の支援を引き続き進めてまいりたい、こんなふうに思っております。
 さらに、官民一体となったこういった模倣品対策の強化を図る、こういったことも必要でございますので、本年の四月に設立が予定されております国際知的財産保護フォーラムと連携して、侵害が発生している地域へのミッションの派遣等も考えているところでございます。
 そして、従来より水際における取り締まりをしてまいったところでございますけれども、今後とも関係省庁と一層の連携を図りながら、その適正な執行に努めてまいりたいと思っているところでございます。
後藤(茂)委員 次に、知的財産権にかかわる司法上の問題について少しお伺いをしたいと思います。
 現在、司法上の問題、裁判上の問題についてはさまざまな問題点が言われております。これもちょっと羅列的に申し上げますと、一つ、知的財産権の侵害訴訟を早期に解決するために、日本企業がアメリカで訴訟を選択する場合が出てきている。一つ、アメリカは、迅速に各国に先駆けた判決をどんどんすることによって国際的な理論構成をリードして、結果として事実上の世界標準をつくる結果になっている。一つ、我が国は知財専門家の数が少ないために十分に対応が図れないというふうな問題意識があるなどなど、いろいろな指摘があります。これだけではないと思います。発明者にとっても使いやすい制度であって、当事者から信頼される司法制度を構築する必要があるんだろうと思います。
 関係者の裁判への信頼をより高めて、紛争をできる限り早期に解決する、そういう観点から、技術的素養を持って、特許法などの法律知識あるいは国際的な事情に詳しい裁判官を集めた知的財産裁判所の開設を図るなど、知財関係訴訟への対応強化についていろいろ考えていく必要があると思いますけれども、その施策についての考え方を法務省に伺いたいと思います。
下村大臣政務官 委員御指摘のとおりでございまして、知的財産権関係訴訟事件への総合的な対応強化の方策につきましては、司法制度改革推進計画に基づき、東京、大阪両地方裁判所の知的財産権専門部を実質的に知的財産裁判所として機能させるという見地から、制度的において、知的財産権関係訴訟事件の東京、大阪両地方裁判所への専属管轄化や、いわゆる専門委員制度を導入するなどの手当てを講ずることを検討しております。
 また裁判所におかれても、東京、大阪両地方裁判所の専門部に専門性を備えた裁判官や技術専門家である裁判所調査官を集中的に投入することによって、裁判所の専門的処理体制をより強化することなどの措置を講じておられると承知しております。
 これらの措置を通じまして、知的財産権関係訴訟への対応強化が総合的に図られるものと期待しております。
後藤(茂)委員 将来的には知的財産裁判所のようなものをつくっていくということが必要だろうというふうに私は思いますけれども、しかし、今おっしゃったように、ともかく、今ある専門部について、専門の裁判管轄権を早く確立させてそういう仕組みをつくるということについては、これは一刻も早くやっていただくようにお願いをしたいと思います。
 それから、裁判のこと以外にも、例えばADRの制度というのは、非公開審理なので営業機密等の確保が可能であったり、あるいは匿名性が確保される、そういうメリットもありますし、今後、知的財産紛争が大幅に増加するということが予想されるときには、これは非常に大きな期待ができると思います。
 同じ話になるでしょうからもう伺いませんが、司法制度改革の意見書の中にこの話も十分書いてあると思うので、その点についてしっかり取り組んでいただくようにお願いをしたいと思います。
 次に、特許侵害訴訟と特許無効審判の関係について伺いたいと思います。
 特許法には、特許侵害訴訟について、特例として訴訟手続の停止の規定等もあります。しかし、平成十二年の四月の最高裁判決におきまして、無効理由が明らかであって、無効とされることが確実に予見される場合には、権利の乱用を認めて特許侵害訴訟の主張を認めないことができる旨の判決が出ております。
 そうしたことも踏まえながら、特許侵害訴訟と特許無効審判の関係について、どのように今後検討をしていくのか、法務省の見解を伺いたいと思います。
下村大臣政務官 特許侵害訴訟と特許無効審判との関係をどう考えるかについてでございますけれども、御指摘の最高裁判決を受けまして、議論のあるところと承知しておりますけれども、この問題については、訴訟手続と行政手続の関係に関する問題でもあり、法務省としては、民事訴訟法及び行政事件訴訟法を所管する立場から、適切な制度のあり方について検討してまいりたいと考えております。
後藤(茂)委員 法務省のお立場から見ると大変難しい大きな問題であることもよくわかりますけれども、今までずっと話してきた流れの中で御理解いただいておると思いますけれども、経済産業省、特許庁とも十分連絡をとりながら、それなりに早い道筋をつけていっていただきたいというふうに思います。
 それから、弁理士、弁護士など知財専門家の育成を図ることは日本にとって急務の課題でありまして、先ほどからいろいろ皆さんがおっしゃっているとおりだと思います。二〇〇四年にロースクールが設立されるということで、それに向けて現在準備が進んでおりますけれども、知財に強い法曹あるいはビジネスマンを養成するということは、これは日本にとって非常に重要な課題であると思います。
 そこで伺いますけれども、例えば、複雑化、国際化している経済社会において、知的財産法に精通した人材の育成を可能とするような、知財法などの専門科目の教育を重視したロースクールなどの設立について弾力的に認めるべきと考えますけれども、見解を伺いたいと思います。
松川政府参考人 知的財産法に精通した人材育成の観点からの弾力的なロースクールの設立についてのお尋ねでございます。
 今後、国民生活のさまざまな場面におきまして、法曹に対する需要がますます多様化、高度化することが予想される中で、二十一世紀の司法を支えるにふさわしい法曹を養成するためには、知的財産権に関する分野を初めといたしまして、社会の新しいニーズにこたえる高度の専門的教育を行うことが重要となると考えております。
 各大学におかれましても、そのような先端的、専門的分野につきまして、法科大学院における教育の充実について積極的な検討がなされているものと承知しております。
 司法制度改革推進本部の事務局といたしましても、各大学が、その創意工夫によりまして、委員御指摘のような社会のニーズに合った法科大学院を目指して独自性、多様性を十分に発揮できますよう、法科大学院の枠組みにつきまして所要の検討を進めているところでございます。
後藤(茂)委員 弁理士の訴訟代理権の問題について、先ほど他の委員からも話がありましたけれども、私からも一つだけお伺いし、御意見を申し上げたいと思います。
 弁理士に訴訟代理権が付与されておりますけれども、その対象は、工業所有権とか特定不正競争防止ということで、特定侵害訴訟に限られております。また、共同受任に限られているというような制約があるわけであります。
 隣接の法律専門職種の有する専門性をこれから活用していくということは、日本の裁判の効率化と専門化に対応する姿勢として非常に重要になるというふうに思います。こうした観点から、今後、今言った二つの特定侵害訴訟の問題と共同受任の問題と弁理士の訴訟代理について、その範囲の見直しを図ることを検討すべきだと思いますが、法務省の見解を伺いたいと思います。
下村大臣政務官 今回の弁理士法改正による弁理士に対する訴訟代理権の付与は、司法制度改革審議会意見を踏まえたものでございまして、委員御指摘のような制限が付されておりますけれども、これにより、弁護士と弁理士の専門的知見の相互活用を図り、審理の充実、迅速化の要請にこたえることができるものと思われます。
 委員御指摘の、弁理士が訴訟代理人となることのできる事件の範囲を拡大するかどうか、また、弁理士に単独受任、単独出廷を認めるかどうかという点につきましては、今後、新しい制度の運用状況や新しい制度のもとでの弁護士、弁理士の活動状況などの実情を十分見きわめた上で関係省庁とともに検討してまいりたいと考えております。
後藤(茂)委員 ネットワーク社会における課題が丸々残ってしまいましたが、知識や情報が付加価値の源泉となる新しい経済社会システムを発展させるためには、それにふさわしい制度を早急につくっていく必要があるわけであります。
 情報の受発信が全く自由であって、情報の複製や加工が非常に簡単であって、そして、それが国境を越えたグローバルな情報交換として簡単にネットワーク化される、こういうネットワーク社会であります。そういうネットワーク社会における知的財産制度のあり方について、大臣としての基本的な認識を伺いたいというふうに思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 情報通信技術の進展に伴いまして、情報の交換がこれまでにない規模、密度、範囲で行われて、経済社会のネットワーク化、デジタル化が急速に現在進展をしているところでございます。
 若干例を申し上げますと、インターネット利用者というのは、平成八年に一千百五十五万人でしたけれども、十二年には四千七百万人になる、そういう形でどんどん伸びてきております。
 こうした情報通信技術の発展というのは、経済活動において情報コストを低減させる効果を有するとともに、取引の形態でございますとか事業形態などの転換によりまして、多様なビジネスの可能性を提供するものでありまして、それが新たな産業の創出や育成の源泉となり得るものだと思っています。
 さらに、ITの活用を通じた新規産業の創出と産業の効率化によりまして、経済構造の高度化と国際競争力の強化、ひいてはそれらを通じた持続的な経済成長と雇用の拡大、これが達成されることを私どもは期待しています。
 もう一方、ネットワーク上を流通するデジタル情報というのは、御指摘のように、極めて容易かつ低コストで複製が可能でございまして、国境を越えたグローバルな流通が行われることから、ネットワーク上の情報財については、より強力な保護が要請をされているところであります。
 こういった知識や情報が付加価値の源泉となる新しい経済社会システムの発展に向け、これにふさわしい知的財産制度を早急に確立することが喫緊の課題だ、私どもはこういうふうに思っております。
 既に、平成十二年十一月に成立したいわゆるIT基本法を受けまして、御承知のように、五年以内に世界最先端のIT国家を目指すe―Japan戦略が策定されておりまして、昨年三月には、この青写真とも申せますe―Japan重点計画が公表されているところでございます。私どもとしては、その着実な実施を図ってまいりたいと思っております。
 それに加えて、国境を越えた情報流通に係る管轄権の問題への対応とか、情報の権利者、制作者、流通事業者のすべての関係者が正当な報酬を得ることによりまして、より情報が円滑に流通できるような、そういう環境整備を鋭意進めていかなければならない、このように思っております。
後藤(茂)委員 最後に一問だけ伺いますが、国境を容易に越えて事業活動が行えるネットワーク社会においては、我が国の知的財産権侵害行為の全部または一部が海外で実施されて国内で侵害が生じている場合、あるいは逆に、海外にいろいろな形で侵害が生じている場合、日本の法律上、そもそも違法とするのかとか、あるいはその裁判管轄をどうするかとか、執行の問題をどうするかとか、非常に重要な問題がすっぽり残っていると思います。
 そうしたことについて、早急に日本としての立場をはっきりさせて、今後、国際的ルールの形成に向けてどのように貢献していくのか、そのことについて最後に伺いたいと思います。
及川政府参考人 御指摘の問題の重要性は私どもも認識をさせていただいているところでございまして、産構審等でも、早急に取り組むべき課題であるとの御指摘をいただいているところでございます。したがいまして、当省といたしましても、さまざまな研究を行いつつ、具体的な対応方針の検討を進めたいと思っております。
 なお、特にこの問題につきましては、国境を越えた問題につきましては、現在、ハーグの国際私法会議でございますとかWIPOでも議論が行われております。商標権につきましては、昨年、WIPOによりまして共同勧告が出されるなどの一連の成果も上がってきております。
 こうした国際議論の場におきまして、実効のある保護が確保されるよう、御指摘の国際的な紛争処理ルールの整備に向けまして私どもも積極的に貢献してまいりたい、かように考えております。
後藤(茂)委員 終わります。
谷畑委員長 中山義活君。
中山(義)委員 おはようございます。
 前回の弁理士法の一部改正から、そのときはまだ弁護士さんとの話し合い、折り合いがなかなかうまくつかなくて、弁理士さんが訴訟代理権を獲得するまでに至らなかったわけですが、今回これに踏み切りまして、共同受任とはいいながら訴訟代理人の道を開いていただいた、これは大変弁理士さんにとっても一歩前進をしたのじゃないかと思います。
 今後は、裁判の専門性、技術的な形からいっても、やはり弁理士さんにもっともっと活躍してもらう、それは単独受任しかないのではないか、このように思うわけですが、多くの意見、そしてまた答弁によっても、より積極的な感じを受けましたので、今後ともひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
 また、戦略会議の意向が、大体三年ぐらいでこれからの日本の知的財産権を活用した経済発展に道筋をつける、このように言っておりますが、外国の場合、特にアメリカのヤング・レポートや何かが大変謙虚に描かれておりまして、そして、やる気というものがすごく見えていたわけですね。
 そこで、私どもはアメリカをよく調べてみますと、各省庁が争い合って早くこの戦略を練っていこうという気持ちがあったそうでございますが、いかんせん、小泉さんの方で三年という話がありましたけれども、もっと経済産業省が中心になって、これを一年ぐらいでやっていこうという意欲はないんでしょうかね。その辺が私は一番心配なことなんです。
 過去に、私どもいろいろな質問しましたが、その中に、この「はばたけ 知的冒険者たち」、私これはかなり参考になると思いまして、これは、民主党版ヤング・レポートと称しておりまして、多くの方にお読みいただいているんです。弁護士さんや弁理士さんもこれを読んで、いや、さすが民主党だ、こう言われているわけですから、どうかお読みになって、少しでも早く戦略を練っていただきたい、このように思うわけです。どちらかといいますと、小泉さんの今までのやってきたことは、かけ声倒れだという話も若干あるわけですね。
 なぜかといいますと、このまま、今の経済状況を見ておりまして、例えば、不良債権の回収をする、構造改革をする、その次は、例えば銀行が元気になったと。しかし、融資をどんどんして企業がまた元気になって、大量生産、大量消費、そういう社会なのかどうか、それも極めて不透明なわけですね。本当に銀行はよくなったけれども、じゃ銀行が融資する場所があるのか、または、融資して、それが設備投資をどんどんしてくれるのかというようなことは、必ずしもそうでないと思うんですね。
 よく野村総研なんかがやっているのは、バランスシート不況だと言っていて、今までのバランスシートが狂っていて、どうしても銀行に返済をどんどんしちゃっていると。だから、銀行にお金ができても大企業は融資を受けないだろうと、こんな話も出ているわけですよ。
 そこで、これからの世の中は何が必要かということだと思うんですね。
 先ほどジャパン・アズ・ナンバーワンという話が出ましたが、むしろジャパン・アズ・オンリー・ワン、日本独自の生き方が大切だというふうに私は思うんですね。これは企業でもそうなんです。中小企業なんて特にそうですね。自分の店がオンリーワンの店になることが大事なんですね。または、オンリーワンのものをつくることが大事なんです。よそのうちでは絶対まねのできない、よそのサービスとうちのサービスは全然違う、技術も違う。それから、商標であるとか、しにせですね、店の名前だとか、そういうネーミングからして全然よそと違う。そういうあらゆる個性というものがこれからの世の中すごく大事だと思うんです。
 そういう面では、小泉改革の次に来る新しい世の中というのは、今までみたいに本当にどんどん物をつくって売れる時代なのかどうか。それと同時に、何を考えて今回の戦略会議をやっているのか、この辺をちょっとお示しいただきたいと思います。
平沼国務大臣 今、中山先生のお話の中にも大分網羅されたことだと思いますけれども、私は、やはりこれからは知恵の創造と保護というものを通じて産業の高付加価値化を進めなければならない。言ってみれば知的創造、そういうものが循環をして、そのサイクルでどんどん創出される。
 ですから、今日本が置かれている立場というのは、これはもう先生よく御承知のように、空洞化という問題があり、他国から追い上げられている。その中で、今ユニークさとかそういう表現をお使いになられましたけれども、一歩先を行くそういう知的な、やはり知を最優先してそれを生かしていく、私は、そういう構造をつくっていかなきゃいけない。
 したがって、この知的財産戦略会議というのも、日本のそういう知的社会をつくっていくために、いかにそこにインセンティブを与えて、知の創造をして、それをプラスにして、そして今までの、我々が追い求めてきた大量生産、大量消費というような状況じゃなくて、知を中心として、そして知がしっかり保護をされその持ち味を発揮する、やはりそういうコンセプトのこれからの日本経済社会をつくっていく、そのことを目指すのが知的財産戦略会議。そして、これはちょっと三年じゃ長い、こういうお話でありました。
 これは、先ほどの御答弁にも申し上げましたように、六月までに大筋、大綱を決めます。そして、私ども経済産業省も非常に責任を持っておりますので、関係者と協力をしながら、なるべく早くそういうものを実現するために目指していきたい、こういうふうに思っています。
中山(義)委員 今の戦略会議にぜひ、これ、今度お持ちしますので、参考にしていただきたいというふうに思います。
 それと同時に、今、知的財産という話の中で、知恵とかそういう話がありましたね。これから皆さんが、中小企業を一生懸命育てていこう、または中小企業に支援しよう、こういうときに、やはり知恵みたいなものにももうちょっと融資の対象を考えていただきたいと思うんです。
 私の地元は、浅草の観音様がありまして、近くに商店街があります。そのときに、日光江戸村の会長が見えまして、こういうことを言ったのですね。あなた、あしたから、全部男はちょんまげ結いなさい、女の人は全部黄八丈を着て商売しなさい、そこは地域の個性からいってすぐにでも商売になりますよ、そういう話をして役所からお金借りるんだよ、これが新しい時代だ、こういう話だった。
 私たちは、特許というものは非常に技術的なものではありますけれども、それ以外に知恵というものはもう社会にいろいろあると思うんですね。ですから、経済産業省がこれからお金を融資したり商店街に出すときも、やはり知恵を出させることが大事なんですね。つまりビジネスプランですよね。そういうものに対して融資をしていくということがすごく大事だと私は思うんですが、そういう知恵の時代の中で、新しい経済産業省の支援の仕方といいますか、そういうようなものもこれからぜひ考えていただきたい。
 知恵の世界がどういうものであるか。私はこれから、いろいろな意味で、一つ一つの例を申し上げて、言うまでもないんですけれども、本当に一戸一戸の店でも、例えばスープの味なんかも、これも、よく職人さんは、あのスープの味を盗むんだと言いますね。あそこの店のスープの味を盗むと。つまり、そこには企業秘密というものがあると思うんです。
 町でやっているいろいろなしにせの商売や何かでも、実はこれが企業秘密なんですね。非常によそとは違うものをやっているわけで、今後とも、そういう商店とか新しい商売に対して、そういうところに目を向けて融資をやっていただきたい。売掛金のそれも結構なんですが、何か、もっとおもしろい知恵を出せ、おもしろいアイデアを持ってこい、そこに融資をしようじゃないかという考え方をひとつ持っていただきたいと思うんです。
 それからもう一つは、その知恵の社会というものはどういうものであるか。学校教育というものの中にどのように、新しい特許または今回の弁理士法一部改正の中でいろいろ論議されたことをもっと教育の中でやっていただきたいという気がするんですね。
 私、よく小学生にお話しするんですけれども、鉛筆というのは、昔できた当時は丸かったんだ、しかし、置くところころ転がっちゃうからこれを六角に削ったんだ、これが実用新案というんだよとか、そうやって、子供たちとの対話の中で、発明とか発見がどういうものであるか、新しいことを考えることはどういうことであるか。例えば、教育の中でも、昔我々がつくった糸巻き戦車だとかなんだとか、ああいう技術の中にも新しいいろいろなアイデアがあるわけです。
 そういう面で、きょうは文部科学省の方から来ていただいているんですね。ちょっと学校教育の中で、こういうような、発明であるとか発見であるとか、または、新しい知的財産を活用した社会というものがどういうものであるか、または、大量生産、大量廃棄はもう終わって新しい社会が来ているということを教育でどうやって子供たちにインセンティブを引いてそういう勉強をさせるか、その辺は、何かありますか。
玉井政府参考人 お答えを申し上げます。
 まず、著作権や特許権等のいわゆる知的財産権というところにひとつ目を向けますと、文化や産業の進展に伴いまして大変重要になってきているという認識がございまして、したがって、学校教育においてもその指導を行うことはそもそも重要だとまずは考えております。
 現在どのようになっているかでございますけれども、いわゆる著作権等の知的所有権につきましては、中学校の技術・家庭科や高等学校の公民科等において取り上げるということになっておりまして、具体的には、著作権などの知的所有権は、文学や音楽、美術作品などの著作物あるいはデザイン、発明などの知的活動による成果などに認められる権利であること、そして、そういうものは大変尊重されねばならない。例えば、書籍やコンピューターソフトなどを無断にコピーすることが著作権の侵害になること、それから、国際社会においてもこういう知的所有権というものが大変重要であり、その保護について検討がなされている、こういったことを指導することとなっているわけでございます。
 また、学校教育全体を通じて、できるだけ体験的な学習をふやしていこうということで、いわば基礎、基本を確実に身につけながら、同時に、みずから学び、みずから考える力を養うというのが新しい学習指導要領の基本的なねらいでございますので、小中高を通じて、さまざまな体験を行い、また実感を伴いながらいろいろな活動、例えば、みずから実験をしてみる、みずからいろいろなことを調べてみる、その中で、単に受け身ではなくて、そして発信するようなそういう教育をやっていきたい、かように考えているところでございます。
中山(義)委員 きょうは弁理士の皆さんもお見えなんですが、学校教育の中で、今、総合学習なんてやっていますね。弁理士さんなんかをお呼びして、特許というものはどういうものであるか、それから発明というものはどういうものであるか、どういうところから知恵が生まれてくるのか、そういうことも講師として呼んでやってくださいよ。そういう勉強も大切で、子供のうちから発明だとか発見に対してすごく興味を持つことが大事だと思うんですね。その辺ぜひお願いをしたい。
 今、子供たちの中で案外わからないと思いますよ、いろいろなことが。だから伝記を通じて、エジソンだとかフォードだとかそういう人たちが、どういう知恵で大きなものを編み出してきたか、こういうことが教育の中で一番大事じゃないですか。
 日本の子供たちに欠けているところは、発明をするというのはどういう意味だか、自分で考えるんですよ。教わるんじゃないんです。自分で考える。自分で考えることはどういうことなのか、そういうことをもっと、伝記だとか何かを通すと同時に、発明をしようとしている研究の現場とか、そういうところに連れていってくださいよ。それじゃなきゃ、週休二日になんかして、子供はどんどん頭がおかしくなっちゃいますよ。本当に勉強できるところへちゃんと連れていって、子供たちが本当に体験的に何かつくろうと意欲を持たせるように考えてください。
 もう一回ちょっと答弁してください。
玉井政府参考人 大変貴重な御指摘をいただいた、かように思っております。
 学校教育は、これまで、どちらかというと教師が教えるということが中心でございました。これは今後とも必要でございますけれども、同時に、学校教育の中に、さまざまな社会の知恵、そして、社会でいろいろな活動をされている方々のいろいろな知見なり、あるいは実際の今までの経験というものが生かされていることが大変重要であろうと思っております。
 そういう意味で、社会人の方々に学校教育にいろいろな形で入っていただく仕組みを整えているところでございまして、御指摘の総合的な学習の時間も、これは教師だけではなかなかやりにくいところがございますので、ぜひ社会を挙げてまた応援をしていただきたい、私どももそういう方向で努力をしていきたいと思っております。
中山(義)委員 御意見をちょっと申し上げておきたいんですが、要するに、一九六〇年代後半から七〇年代、アメリカの例えばトランジスタラジオを分解して日本がもっといいものをつくっちゃう、しかも値段は安い、大量でつくれる、品質もいい、こういう時代があったわけですね。ある総理大臣が、何か、トランジスタのセールスマンだなんて言われた時代があった。そのくらい物まねがうまかったわけですよ。そういう先人の努力ということも大事なんですよ。だけれども、今、学校教育の中でもう一つ大事なのは、知的な物を創造していくということだと思うんです。
 そこで、経済戦略会議でやっているような中で、恐らく経済産業省もお考えだと思うんですが、創造サイクルというのをしっかり教えていただきたいんです。知的財産を創造する、そこがまず一つ大事ですね。それから、発明したものは保護を受られる、大事ですね。それをまねした人は訴えられる。そして、その技術や発明が、商品や、または日本の経済産業に大変プラスになるということをしっかり教えてもらいたいんですよ。そういう意識はありますか。知的創造サイクルなんというのは、ここにいろいろ出ているんですけれども、文部省の方に少しそういう頭がないと日本の国はだめですよ、次代を担うのは子供なんですから。
 もう一度、ここで、やると言って帰ってください。
玉井政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げたとおり、学校教育に、教科書の上の知識だけではなくて、実際、社会の中で生きていく上で、それに働く力を子供たちに身につけるものだという基本的な考え方に今立っておりまして、したがって、今おっしゃったことも含めて、子供たちに、できるだけ体験し実感する、そういう教育を努力していきたい、かように思っております。
中山(義)委員 大臣、ひとつ、社会的に、いわゆる弁理士さんの存在とかそういうものがまだよくわかっていないと思うんですね。発明をしてそういうものが世の中にどれだけプラスになっていくか、または、今の時代が、本当にこういう知的財産権というものがすごく大事な時代になってきているということが、幾ら国会の中で小泉さんがやっていても、国民の間にまだ浸透していないと思うんですよ。みんなが知恵を絞って何かをやっていこう、だから、各中小企業でも、ただ物をつくれば売れるという時代じゃないんだ、何か知恵を絞れ、よそと違う物をつくっていけ、そういうような問いかけがやはり経済産業省からもっとあっていいと思うんですね。
 それは、知的財産権というものはどういうものであるかにつながっていくわけですから、その辺、どうですかね、もうちょっと広報を通じて、テレビなりなんなりを通じて、発明の勧めとか、または新しい物を発見する勧めとか、または、ちょっとしたアイデアでこんなものができるという実用新案特許の問題であるとか、こういうことをわかりやすくもっと説明されないと、幾ら戦略会議をやっていても国民に伝わっていないような気がするんですが、その辺、大臣どうでしょうか。
平沼国務大臣 今、中山先生の質疑を拝聴しておりまして、非常にすばらしい観点から質疑をされていたなと思っています。
 私も、小学校から中学、高校にかけて、例えば弁護士さんはどういう働きをしているのかとか、あるいは弁理士さんはどういう働きをしているのか、そういうのを教育の現場で教わった記憶は、少なくとも私の時代にはなかったわけです。ですから、そういったことを理解させて、そういう問題意識を持つということは非常に必要だと思います。
 経済産業政策の中にもそういうことに取り組めと、本当にそれは必要なことだと私は思っておりまして、これは委員御承知のように、たしか四月十八日だったと思いますけれども、発明の日、こういうことになっておりまして、全国に発明協会があって、その中で行事をし、催し物をして、そして発明を奨励して、そういう意欲を喚起する、こういうことはあるわけですけれども、しかしそれを、おっしゃるように、小さいときから物を創造したりそういった意識を持たせるということは非常に必要ですし、私どもとしても、これは経済産業政策の中で、そういうことにも力点を置いていろいろ工夫をしてみたい、このように思います。
中山(義)委員 私ども、何か発明しようとか発見しようとか、やはりすごく大事なことでございまして、選挙一つやるにしても、こういうふうにやったら自分の名前が売れるんじゃないかとか、何かこういうのも一つの知恵で、そこは知恵と知恵との闘いになってきて、やはり知恵のある者が勝つ、そういう時代だと思うんです。今までは、お金があったり、ただ大量に後援会をうんとつくれば勝つというようではないと思うんですよ。やはりいい政策を発表しながら、いろいろな知恵を絞って、お金のかからない選挙運動をやるというのが我々のモットーでございますので、そこが知恵だと思うんですね。ですから、我々は、大企業がお金に任せて何かやるというところを、逆に中小企業は知恵や工夫でやっていくと思うんです。
 ですから、私どもは、今回の知的財産とかこういうものに基本法みたいなものを設けて、基本法をしっかりしたものをつくって、もっと国民に、我が国は知的財産というものをこれだけ大切にしているという基本法をやはりアピールしてもらいたいと思うんですね。
 今までは広報であるとかそういうものを通じてそれはいろいろやれるかもしれない。だけれども、我が国は、これから知的財産というものをもう全面的にやっていくんだ、だから、こういう新しい基本法をつくって、この中にはこういうものが盛り込まれているというようなそういう試みはいかがでしょうか。
平沼国務大臣 総理主宰でありますIT戦略会議、それにはIT基本法というのが存在をしています。ですから、この知的財産というのも非常に大きな問題であります。したがいまして、知的財産戦略会議の中の議論を通じながら、私は、そういう方向性も当然出てくるんじゃないか、私の認識ではそれだけこれは大切な問題だと思っております。
中山(義)委員 あと、テレビで最近よく出てきて、私どももいろいろな人から聞かれるんですが、青色発光ダイオードの問題とか、それからパチスロの、何かやって七十億円取られたとか取られないとか書いてあって、そういうことが何なのか一般の人はよくわからなくて質問されるわけですね。いや、あれは人のまねして、勝手にまねしちゃって訴えられたんだよと言うんですけれども、実態がよくわからないということが現実でございまして、やはりこういう、さっきの創造サイクルというものがしっかりわかっていないんですね、一般の人が。
 要するに、まず、知的財産を生み出すという、ここにも非常に大事な要素がある。しかし、それをつくったら、今度は、知的財産には保護があるんだ、保護されるんだ、これを主体に商売ができるんだ、その最後に、訴訟というものがあるわけですね。この訴訟というのはすごく大きいわけですよ。今言ったように、訴訟で敗訴すれば七十億取られるわけですから。
 これは、人の権利を勝手に侵害したということにすごく大きな罰則が与えられているということなんですが、今まで日本では、四千万、五千万が普通だった。ところが最近になってこういう大きなものが出てきて、胃腸薬がどうのこうのと、三十億なんてこの間もちょっと前にありましたけれども、まだまだ国民の間にそういうものが浸透していない。だから、人のアイデアを盗むのも平気だ、人の考えたことをまねしてやったり、そんなことを平気でやっているわけですよ。
 私どもの地域でも、看板や何かでも、せっかく浅草らしいしにせのいいものをつくっても、それをまねしてみたり。今、手ぬぐいなんかをハンドメードでつくっているんですが、それを今度、あるところがプリントしちゃってばあっと売っていたわけですよ。どうしたらいいかと相談に来たときがありました。でも、その人は、自分で文句を言いに行って、結局はけんか腰でやってそれをやめさせましたけれども。本来これは裁判にかかるような問題なんだよというようなことも初めてそのときにその人に教えたら、へえ、これで裁判できるのなんという、まだそういう認識があります。
 ですから、いかにこれからプロパテント政策をやっていくか。こういうことに関しては、そういう細々と、また、日本の隅々までわかっていない、または、教育の分野からいろいろ啓蒙していって、先ほど言ったように、弁護士さんと弁理士さんの区別もつかない人がほとんどなんですから。だから、そういう面でもしっかりとしたプロパテント政策、これはこういうものだということをしっかり示していただきたいと思うわけですが、そういう面で今回の改正はかなり前進をしたというふうに私は見ております。
 しかしながら、裁判のスピードとかそういうものから見て、弁理士さんの問題についても、弁護士さんが訴訟代理人になったとき共同で受任するというのじゃなくて、本来は、一番技術的にも、その制度やまたはそういう知的財産権の本質を知っている弁理士さんが活躍できるような場をつくっていただきたい。
 それから、弁理士さんも教育の場で、今度学校へも行って、発明とか発見とかはどういうものだ、しかしそれにはこういう手続が要る、そして、人のやったことをまねするとこうやって罰則を受けるんだよ、だから、こうやって新しいものを生み出すということは、自分の大きな仕事となるし、お金にもなるし、そういう面で、夢を大きく子供たちにも植えつけられるように、ぜひそういう交流も含めていただきたい、こう思うわけです。
 またもう一つは、士業というのがありまして、この垣根がなかなか厳しいところがありますので、やはり経済産業省が間に入って、今後、弁護士さんと弁理士さんの間をうまく協調してやっていくとか、いろいろやっていただきたい、このように思います。
 きょう、実は古屋副大臣に質問しようと思ったのですが、きょう出張なんですね。実は、一緒にWIPOに行きましてやってきたわけですよ。随分いろいろなお話を私どもしてきて、向こうからもなかなかおもしろい回答ももらったんですが、実感として、国際的な立場に立った知的財産権の訴訟のあり方とか、または、裁判をやっていたって、結局裁判費用ばかりかかってもうからないというか、結果的には、裁判費用が高くなっちゃったと。だから、裁判外の調停とかいろいろなものがありまして、その辺についても細かく経済産業省に仕切っていただきたい、このように申し上げまして、私の質問を終わります。
谷畑委員長 達増拓也君。
達増委員 まず、弁理士法改正案の方から質問をいたします。
 今回の法改正で、弁理士会が研修、試験を行って、特定侵害訴訟代理業務の付記を受ける弁理士さんが誕生することになるわけでありますけれども、これらのことを広く周知していかなければなりません。
 まず、弁理士会の業務がそのように拡大していくということ、そして、特定侵害訴訟代理業務の付記を受ける弁理士、この弁理士さんはその付記がある、そういった情報を提供していくことが非常に重要になると考えますが、この点、いかがでしょうか。
下地大臣政務官 達増先生の御質問にお答えをさせていただきます。
 特定侵害訴訟代理業務を行うためには、弁理士は、特定侵害訴訟代理業務試験に合格をしなければなりません。合格をした後、弁理士登録簿に合格した旨の記載を加えることになるわけです。これは付記登録を行う必要があるわけであります。
 付記登録が行われた場合には、官報によって広く公示をされること、そして日本弁理士会も、ユーザーの個別照会に応じて情報を提供すること、さらにまた、インターネットを通じて公表することも検討しているようであります。
 また、平成十二年の改正によりまして弁理士の広告規制が撤廃されました。訴訟代理権の有無についてもユーザーへの積極的なPRが可能になりましたので、ユーザーの利便性をより高めるものと期待をしております。
達増委員 今、答弁の最後にあった、ユーザーの利便性ということが一番重要だと思いますので、政府の方もそこを踏まえた対応をしていかなければならないと指摘したいと思います。
 次に、特定侵害訴訟代理業務試験に合格するためには研修の修了が前提となっておりますけれども、先ほどほかの委員からの指摘もありましたけれども、この研修、時間がかなりとられるわけでありまして、実際、実務についている弁理士がその研修を受けていくのはなかなか負担が大きいわけであります。一方、今までも、特許等に関する侵害訴訟の補佐人ということはあったわけでありまして、補佐人として法廷での経験をかなり積んでいる弁理士さんもいるわけであります。
 したがいまして、そういう補佐人経験ということを考慮して、その研修内容、合格を認めるまでの段階でその補佐人経験というものについて考慮すべきではないかと考えますが、この点はいかがでしょう。
及川政府参考人 御指摘のとおり、この補佐人の経験というものにつきましては、私ども、法律作成の過程で議論は確かにいたさせていただいたところでございます。
 ただ、この業務試験でございますけれども、訴訟代理人となるのに必要な学識と実務能力に関します研修を修了した弁理士の方に対して、学識、実務能力があるかどうかを判定するために行われます。試験の目的がこれまで制限されておりました訴訟代理業務権限の付与でございますので、補佐人経験をお持ちの弁理士の方に対しても、公正かつ平等な観点から試験を行わなければならないと思っております。
 ただ、その補佐人の経験の考慮という点も当然必要だと思っておりまして、例えば、研修受講の際の優先順位の判断材料といった点は考慮する必要があるのではないかということで、今後検討させていただければというふうに思っております。
達増委員 補佐人経験についての考慮は当然必要ということで、今後考慮するという答弁でありました。この試験や研修の中身については政令以下で定められるわけでありますから、その点、きちんと対応すべきということを指摘したいと思います。
 さて、著作権の問題についても先ほどから取り上げられておりました。著作権についてはまだ、弁理士の仲裁代理業務、侵害訴訟補佐人、さらには代理人業務といったことについては認められていないわけでありますけれども、やはり将来、この著作権に関する分野へも弁理士の業務を拡大していくことが必要ではないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
下地大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。
 弁理士が訴訟代理人として関与できるのは、特許権等の侵害訴訟のみであります。知的財産権の一つであります著作権は、先生おっしゃるとおり含まれておりません。
 そのことは、弁理士がこれまで工業所有権を専門としていたことや、著作権に関する業務が、二年前の法改正の際に、紛争性のない契約代理に限り認められ、著作権の関連業務を始めて間もないこともありますし、現時点では、理系の弁理士志望者に対して著作権法という法律系の必修科目をさらに追加することは、今ユーザーが望んでおります弁理士の拡大にかんがみますと必ずしも適切ではないというふうな理由でそうなっているわけであります。
 訴訟代理権の範囲を著作権に拡充するに当たっては、弁理士人口の今後の増加、そして、弁理士の著作権関連契約への関与を通じた経験、能力の向上に加え、著作権等に係る紛争への弁理士の関与についてのユーザーニーズを考慮して検討をしてまいりたいと思っております。
達増委員 著作権業務への拡大を否定する趣旨の答弁ではなく、むしろ、人口増、経験、能力の向上、ユーザーニーズ等を踏まえて前向きに検討していくという趣旨の答弁だったと思います。
 平成十二年度改正で著作権関連業務が弁理士に認められるようになったというのは、やはり著作権と工業所有権との垣根がだんだん低くなってきている、相互乗り入れのような形で共通した問題があって、また、著作権について詳しい弁理士もこれからどんどん出てくるでありましょうから、そういったことを踏まえた法のあり方というものをさらに検討していかなければならないと思います。
 次は、例外的単独出廷の件であります。
 特定侵害訴訟代理人として弁理士が出廷する場合は、基本的に弁護士とともに出廷ということで、単独出廷は例外的に規定される形の改正案となっております。ただ、この例外的単独出廷というものを厳格に判断いたしますと、実質的に補佐人であったときと、補佐人として出廷するのとほとんど相違がなくなると思うわけであります。
 法廷の中身の問題として、専門技術的な問題の取り扱いが中心で、民法一般論ですとか民事訴訟法の特殊な論点ですとか、そういう、弁護士じゃないと対応できない、あるいは弁護士に向いているような中身が主要な争点となるのではなく、発明品や問題となっている技術の中身、まさに弁理士の業務の中に入ってくるようなものが争いになっている、論点になっているような場合には、むしろこれは単独出廷というものを積極的に認めていくような形が望ましいと考えるんですけれども、この点、いかがでしょうか。
大島副大臣 お答えをさせていただきます。
 先生御案内のとおり、近年の知的財産権訴訟におきましては、裁判所の審理内容が大きく変化をいたしております。そういった観点では、民事訴訟に関する幅広い知識と迅速な訴訟対応能力が要求をされる、きょうも他の議員からもいろいろ議論のあったところでございます。
 そして本法案では、弁理士の出廷形態については、弁護士との共同出廷を原則としつつ、裁判所が相当と認める場合に限り弁理士の単独出廷を認めるべきと規定をいたしているところでございます。
 この単独出廷を認めるか否かは、最終的には裁判所の訴訟指揮権に基づき、その裁量により個別具体的に判断される事項ではございますけれども、例えば、御指摘のように、弁理士の専門技術性が活用できる場合においては、先生が申されるような単独出廷が認められることは十分あり得る、我々はそういう想定をいたしております。
達増委員 前向きな答弁だったと思います。やはり裁判所が単独出廷が相当と認める場合、そういう相当である場合というのはかなりあるんだと思います。今回の法改正が実のあるものになるためには、裁判所の臨機応変あるいは柔軟な判断というのが重要になってくるとは思いますけれども、ぜひそこは積極的な運用が望ましいと重ねて指摘したいと思います。
 さて、次は地方の弁理士さんの問題であります。
 現在、地方の弁理士さんの数は非常に少ないわけでありまして、ゼロというのはようやくなくなってきたようでありますけれども、まだ一人しかいないとか、一人か二人という都道府県がかなりある。また、東北でいえば仙台がある宮城県ですとか、中国地方であれば広島県でありますとか、地域の中核になるような都道府県でも結構、十人とか二十人とか少ない数なわけであります。
 地方からの経済構造改革、地域から新産業、ニュービジネスをどんどん起こしていこうという産業構造改革の観点に立ちますと、やはり地方において、良質でかつ素早い弁理士業務のサービスを受けられることが非常に重要でありまして、そういう意味で、地方の弁理士さんをふやしていくことというのは望ましいことなんだと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
大島副大臣 先生御指摘のとおり、弁理士の地域的な分布を見ておりますと、大体弁理士の九割以上が東京とか大阪に集中をいたしております。おっしゃるとおりでございます。地域企業に対して十分な知的財産専門サービスが提供されていないという御指摘を受けていることは、我々も十分承知をいたしております。
 このために、平成十二年弁理士法改正におきましては、規制改革による競争促進、また国民へのサービス向上の観点から、弁理士事務所の法人化を解禁いたしました。あわせて、従来は弁理士会則で制限されておりました支所の設置も解禁されたところでございます。
 これによりまして、現在までに十四の特許業務法人が開設されるとともに、六十六の弁理士事務所の支所が開設され、懸案でありました弁理士ゼロ県の問題が解消されてきております。けれども、数が少ないということは否めない事実でございます。
 また、弁理士人口の拡大を目指した新弁理士試験制度も本年の五月から実施をする予定にいたしております。弁理士の地域偏在の状況は、弁理士人口の増大とも相まって、今後とも改善されていくものと期待をいたしておりますし、私どもも力をそういったところに注いでまいりたいと思っております。
達増委員 政府は、産業クラスター計画と知的クラスター計画を一体的なものとして、産業構造改革と知的創造立国を一体のものとしてやっているわけでありますが、その中において、弁理士サービスへのアクセスというのは必要不可欠のものだと思いますので、そういう大きい施策の中で、ぜひ地方で弁理士さんが活躍できる場を広げていっていただきたいと思います。
 さて、次は、特許法改正案についての質問に移りたいと思います。
 今回の法改正で、プログラム等が、特許法上、第二条第三項一号にあります「物」に含まれることになりました。ただ、フロッピーディスクやCDといった媒体を伴わないプログラムというものは昔からあったわけでありまして、九〇年代の前半など、まだネットといえばインターネットよりパソコン通信が主流だった時代には、パソコン通信につなげば、まずやることというのがネット上でやりとりされているシェアウエアとかフリーウエアを入手するということだったわけであります。シェアウエアというのは有料なソフトでありまして、フリーウエアというのは無償で開放されているそういうソフトウエア。そこにはビジネスの論理とは異なる独自の文化と自主的なルールがあったわけであります。
 積極的に自分のつくった、考えたソフトを公開し、いろいろなところをほかの人にいじってもらいながらよりよいソフトに仕上げていく。先ほどもほかの委員からの質問で、インターネットホームページ、ブラウザーがただで配られたという話がありましたけれども、そういう、ただで公開、それをみんなでいじって改良する中で、商品としても非常に売れる、価値のある商品が開発されるというようなこともあったわけであります。
 今回、改正によりまして、そういう媒体を伴わない純粋なプログラム、ネット上のプログラムというものが明示的に特許法の対象となるわけでありますけれども、政府として、そういうフリーウエア文化、シェアウエア文化というものについては、どのように考えて取り組んでいくんでしょうか。
及川政府参考人 先生の御指摘の典型的な例は、ウィンドウズの対極にありますリナックスのようなものかと存じます。五年前ではほとんど活用されておりませんでしたけれども、サーバー用のOSとして、二〇〇〇年には、国内でも一割、それから世界ではもう既に四分の一のシェアを持つまでになっているというふうに思っております。
 こういうソフトウエアの開発者がどういう流通方法を選択するかというのはその意図によると思っておりまして、開発したソフトウエアを広く普及させ世界的な標準にしたいと思います場合には、むしろ対価をとらないような場合が間々あるのではないかと思います。
 したがいまして、今回のソフトウエアの特許法によります保護みたいなものにつきましては、経済的なインセンティブの付与を通じまして産業発達に寄与するものということで考えておりまして、まさにウィンドウズに対してリナックスがありますように、これによってソフトウエアの独占化が進むとか競争がなくなってしまうというようなことはないのではないかというふうに思っております。引き続き、フリーウエアとかシェアウエアの流通形態というのは、リナックスにまさに代表されますように、それなりの大きな流れは形成していくのではないか、かように考えております。
達増委員 工業所有権という言葉にありますように、今のところの特許などの知的財産権秩序というのは、近代工業化社会のそういう制度、論理の上に成り立っているわけであります。これは、今の市場経済にIT社会のそういう新しい動きを活用していくに当たっては、まずは、そういう既存の枠組みに当てはめて制度化していくことが必要なんでありましょうけれども、ただ、ネット社会、IT革命というものには、そういった工業化社会を超えたポスト工業化社会、高度情報通信社会、そういったものへの、一種、文明の転換にも匹敵するような新しい可能性も含まれているわけで、そこをどう大事にしながら今の市場経済原理の中に生かしていくかということ。ですから、そういう工業化社会の論理じゃないものも内在されているということは常に念頭に置いて施策をしていかなければならないということを指摘したいと思います。
 さて、そういう意味で、ネットの上での新しいものはいろいろなものがあるわけでありますけれども、今回の法改正では、商標やサービスマークについて、それが電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たり、その映像面に標章を表示して役務を提供する行為が含まれるということになるわけであります。
 ネット上の商標やサービスマークといいますと、従来の商標やサービスマークというものは動かない静止画像、当然なんでありますけれども、ネット上でのオンラインサービスなどにつける商標やサービスマークは動くものが可能なわけですね。既に、バナー広告というのは動くようなものが出てきているわけですけれども、静止した状態がない、動き続ける商標とかサービスマークというものが出てき得るわけでありますけれども、これも今回の法律の対象になるんでしょうか。
及川政府参考人 御指摘のとおり、パソコンの画面上での商標は、大きさを変化させたりあるいは回転させたりして表示するようなケースも確かに多く見受けられるかと存じます。
 このようなサイバースペースの利点を生かした動きのある商標の表示の仕方でございましても、他人の商品やサービスと区別するための標識、マークとして取引者、需要者によって認識されるものでございますれば、商標やサービスマークの使用に含まれるというふうに思っております。
達増委員 そういう新しいもの、創造的なものがきちっと認められるような解釈、運用をしていかなければならないと思います。
 さて次に、今の特許等をめぐる幾つかの問題について質問をしていきたいと思いますけれども、審査期間の問題であります。
 これは、毎年四十万件というような単位で特許等が出願されてきて、質的にも、内容が複雑化、高度化している。一方では、競争の激化によって、できるだけ早く特許等の権利を受けたいというニーズもあるわけであります。
 そういう中で、意匠については、いわゆるファーストアクション期間が二十二カ月から九カ月に短縮、商標については、二十二カ月から十一カ月に短縮している一方で、特許、実用新案については、まだ二十一カ月、平均十二カ月に持っていきたいという目標がなかなか達成されていない現状なわけでありますけれども、これにいかに対処をしていくのでしょうか。
松大臣政務官 達増先生にお答えをさせていただきます。
 先生おっしゃるとおり、一九九八年に特許庁は、当時十九カ月でありました一次審査期間を、二〇〇〇年を目途に平均十二カ月に自主目標を示しました。
 しかし、残念ながら、先生おっしゃるように、ちなみに、二〇〇〇年は二十一カ月でございますけれども、近年の知的財産の重要性に対する意識の高まり、あるいは創造的な技術開発の進展を背景といたしまして、当初予想していた以上に審査請求件数あるいは国際特許出願件数が増加をしております。
 具体的な数字を挙げますと、審査件数につきましては、九八年と二〇〇〇年を比較してみますと、二十万八千件でありましたものが二十六万二千件と五万件以上もふえているわけでございます。また、国際特許出願件数につきましては、これは先行技術文献を調査しまして、報告書を作成して出さなきゃいけないんですね。そういうこともございます。九八年と二〇〇〇年を比較してみますと、六千件からこれも九千四百四十七件に増加をしているところでございます。
 また、技術の高度化、複雑化によりまして、個々の出願に対する審査の負担が増した結果、一件当たりの審査時間が、この十年ほどで二百十三分から三百十分になったんですね。この自主目標は、残念ながら達成できなかったというわけでございます。
 今日、こうした審査負担の増大は、我が国のみならず、主要先進国におきましても共通する課題でございます。欧米の特許庁においても、同様に審査期間が長期化をされております。
 こうした中、欧米の特許庁は、九〇年代後半以降、所要の審査官の確保と予算の拡充を図りまして、審査の促進に取り組んでおります。
 ちなみに申しますと、審査件数は、日本は二十六万二千、米国は二十九万なんですけれども、審査官の人数は、日本は千八十八人、アメリカは三千百四十三人、一人当たりの件数、日本は百八十八件、アメリカは七十九件なんですね。
 我が国といたしましても、一層の審査の的確性の確保と迅速な権利設定に向けて、外部能力の活用、所要の審査官の確保等の総合的な取り組みを進めてまいる所存でございます。
達増委員 年間四十万件くらいの出願規模になってきているわけですけれども、その結果、特許権等付与されたものの蓄積、先行技術文献情報という形で蓄積されるわけですけれども、今、約四千七百万件という単位の特許情報等が蓄積されている。
 これは、本当に国民共通の財産だと思うんですね。一部専門家のためのものだけではなく、何か新しい事業を起こそうとしている人でありますとか、あるいはおよそ発明というものに関心のあるすべての国民共通の財産だと思うんですが、何しろ膨大な情報量でありますから、うっかりすると死蔵されてしまうことになりかねない。この先行技術文献情報を効果的、積極的に活用することが非常に重要と思うんですが、この点、どういう施策をとっているんでしょうか。
松大臣政務官 お答えをさせていただきます。
 私も、先生のおっしゃるとおり、先行技術文献情報は国民共通の財産であるというふうに認識をしております。
 特許庁では、先行技術文献情報といたしまして、工業所有権情報をより簡便に利用できますように、一九九九年三月から、特許電子図書館のサービスを特許庁ホームページ上で開始をいたしました。
 この特許電子図書館では、明治以降発行されました特許、実用新案、意匠、商標の公報類に基づく、先生もおっしゃるように約四千七百万件の情報、これを無料で検索することが可能でありまして、専門家から初心者まで幅広く利用していただけますように多様なサービスを展開しております。ちなみに、二〇〇一年七月、検索回数は月に二百万件ございました。スタートのときは月百万件でしたので、二倍にふえたというところでございます。
 さらに、より高度な検索サービスを提供する民間事業者に対しましては、特許庁の保有する電子化された工業所有権関連情報をコピー代のみの実費で提供することによりまして、多様な特許情報サービスの展開を図っているところでございます。
 これらのサービスによりまして、出願人が技術開発動向や出願動向を把握することが可能となりまして、重複研究の排除など、先行技術文献情報の効果的、積極的な活用が図られているところでございます。
達増委員 先ほど中山委員も雄弁にかつ情熱的に指摘していたところでありますが、発明というものの大切さを国民全体でもっと共有していかなければならない、発明というものに対する国民的な評価をもっと高めていかなければならない。
 アメリカのワシントンDCにありますスミソニアンの博物館群の中で、アメリカの国立歴史博物館というのがあるんですが、あそこは半分が発明の展示なんですね。エジソンとかフォードとかそういった発明関係の展示が半分で、自分の国の歴史の半分は発明の歴史だという。それはそういう経緯もあるんでしょうが、やはり国家として発明というもの、技術とかそういう知的なものを本当に国の中心として大切にしていかなければという国家意思が感じられるわけであります。
 我が国でも、政府として、やはりそのくらいの気合いで発明の重要性をもっとアピールすべきと考えますが、この点いかがでしょうか。
平沼国務大臣 日本も非常にいい発明が私はあったと思います。それが意外に国として認められていない、また検証されていない、そういう状況が確かに存在していると私は思います。例えば、自動織機というものをやった豊田自動織機の豊田という発明家、あるいは、たしかテレビなんかも、実は高柳博士というのが世界に先駆けて発明をした、こういう事例がある。それが、国として教育の場でも余り取り上げられていないようなそういう気がしています。
 ただ、発明ということは非常に大切だという意識で、私どもとしては、四月十八日というのを発明の日と位置づけて、コンクールあるいは表彰式、そういったことをやりまして啓蒙運動に努めています。ですから、さらに、今御指摘になられた点は、私は、文部科学省とも連携をとりながら、そういう教育の場、あるいは国民がそういうことを認識する場を設けて、やはり意欲をかき立てる、そういうことは必要だと思っています。
達増委員 最後に、質問を終えるに当たりまして、政治における知的なものの尊重ということも非常に大事なんだと思います。
 森内閣でITをやっていこうというときに、森総理は曲がりなりにもITは大事だということを身をもって示すためにパソコンの練習などをしていましたが、やはり小泉総理も、知的創造立国というくらいですから、知的なものが大事だということを何か身をもって示していただきたい。自分が発明する必要はないし、できないかもしれないんですが、そうしたものを愛好する。オペラとかコンサートももちろんそれはいいんですけれども、もっと何かそういう知的なものを国のトップから愛好して、大事にしていくんだと。
 政治学者には、日本の政治というのは逆に反知性主義というのが蔓延していて、どうもそういう知性をないがしろにしたり知的なものを疎んじたりする傾向が日本政治にあると指摘され、うそがまかり通ったり事実が隠されたり、そういう知的誠実さが政治に決定的に欠けているという指摘もあるので、そこはやはり政治のトップから、政府の方から直していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 六番目でございますので大分質問が重なる部分もありますけれども、社民党として質問をしていきたいと思います。
 まず、大臣に知的財産戦略会議に関してお尋ねいたします。
 政府は、去る三月二十日、総理主宰によります知的財産戦略会議を立ち上げ、検討項目としまして、世界最高水準の知的財産創造、知的財産を核とした企業経営の支援といった抽象的な文言が並ぶ中でございますけれども、六月下旬を目途に、今後三年間で関係省庁が取り組むべき具体的な行動計画を盛り込んだ知的財産戦略大綱を策定するとしております。平沼大臣もこのメンバーに参画しているということでございますけれども。六月下旬を目途にということでございますが、あと四回ほどの会合でどの程度の議論の蓄積と集約が可能であるか、少し疑問に思っております。
 我が国の知的財産は、先ほど来ほかの委員の方がおっしゃっていましたけれども、特許等の工業所有権、不正競争防止法は経済産業省、著作権は文部科学省、種苗法は農林水産省といったように行政が縦割りに分断されておりまして、機動的な政策の発動におくれをとるという面が指摘されております。知的財産戦略の決定に当たっては、このような省庁間の縦割りを超えた総合的な議論への取り組みが必要であると私は思っております。
 総花的な施策の羅列ではなくて、知的財産を各政策上どのように位置づけていくのか、これらの知的財産の戦略的な保護、活用に向けて立法、司法、行政、外交、企業、教育、大学等の各分野が果たすべき役割は何であるかということを、具体的でわかりやすいグランドデザインを国民に提示して、知的財産の重要性についてメッセージ性の高い戦略を内外に示すことが重要であると思っております。この件に関して大臣の見解を伺わせてください。
平沼国務大臣 知的財産というのは、アメリカのいわゆるプロパテント政策の成果を見るまでもなく、非常に重要なことだと私は思っています。そういう中で知的財産戦略会議が立ち上がりました。実はきょう夕刻、第二回目がございまして、そして六月の下旬まで計四回開く、こういう形であります。
 そこで、四回だけで具体的なことがまとまるか、こういうお話ですけれども、先ほど御指摘がございました、それぞれに省庁に分かれている、ですから関係省庁が一堂に会し、そしてここには、学識経験者でございますとか民間の企業の代表者でございますとかあるいは知的財産の専門家、こういった方々が入って効率よくやってまいりますので、私どもといたしましては、大綱を幅広くまとめることは可能だと思っております。
 そして、この四回の会合の中におきまして、方向性というものもはっきりして、その具体化ということも私は明確になってくると思っています。そういう意味で、私どもとしては、私もメンバーですから、これに積極的に参画をし、委員会で、御指摘の点も踏まえて発言をし行動していきたいと思っております。
 御指摘の、縦割りの弊害をなくす、こういうことは非常に肝要でございまして、先ほどの御答弁で申し上げましたけれども、実はもう省庁間の連絡会議を設けておりまして、そういった問題についても各省庁で話し合いをしながら、いかにこれがスムーズに進むか、こういう形で既に取り組んでいるところでございまして、戦略会議とも連携をとりながら、私どもとしては、成果が上がるように最大限の努力を傾注していきたいと思っております。
大島(令)委員 きょう朝からこの委員会が開かれておりますけれども、それでは、大臣は、この夏に策定される大綱の中で弁理士をどのように位置づけてこの国家戦略に活用していくのか、その基本的な考えを、感想でも結構でございますけれども、聞かせてください。
平沼国務大臣 今までの質疑の中でもそのところは出ていたと思いますけれども、知的財産、こういうものを戦略的に保護し、守り、そしてそれを活用していく、こういうことにおいてはやはりどうしても弁理士さんの力が必要である、そういう形で実はこの法改正のお願いをしておりまして、そういう意味では、今後、この知的財産戦略を進めていくに当たっては、弁理士さんの存在というのは非常に大きなものであり、私どもはその活躍を心から期待をしているところであります。
大島(令)委員 大臣が、弁理士さんの活躍は大きいと言われましても、やはり文章ですとか大綱の中身に具体的なものがない限りこの委員会でのやりとりに終わってしまいますが、そのあたりのところは大臣はどのように発言されていくおつもりでしょうか。
平沼国務大臣 今回お願いしている法改正によって弁理士さんも積極的に参画をしていただく、そういった重要性をやはり戦略会議の場で、既に委員の方々は御認識のことだと思いますけれども、私としては、その辺はしっかりと強調していきたいと思っています。
大島(令)委員 次の質問に移ります。
 特許の場合、審査期間の長期化と未処理件数の増大をどのように分析して今後の対応を考えていくのかという点に関して、特許庁長官にお伺いしたいと思います。
 特許等の知的財産権は、単にこれを権利として取得することが目的ではなく、これを戦略的に保護、活用して初めて地域経済の活性化、産業の国際競争力強化に貢献できるわけでございます。その一例として、知的財産権をてこに、中小・ベンチャー企業の戦略的支援も行うことができると思います。しかし、今日に至っても、特許、実用新案で二十一カ月という期間を要するなど、平均一年を目指す特許庁の自主目標はまだ達成されておりません。
 政府は、審査期間の長期化、未処理件数の増大という現状をどのように認識して、その要因をどのように分析しているのか、さらに、この件に関して、今後どのような取り組みを行っていくのか、お伺いしたいと思います。
及川政府参考人 審査期間の長期化と審査待ちの案件数が確かに増加をいたしております。
 一つは、これは長期的なトレンドでもあろうかと思いますし、また、日本のみならず国際的にそうでございますけれども、パテントエクスプロージョンと言われますように、世界的な出願の急増状況が見られるわけでございます。これは特に国際的なまさに情報化時代を反映いたしていると思いますけれども、各国に出願をするというのが大変増加をいたしております。
 加えて、情報化等におきます技術革新そのものもふえておりますし、ビジネス方法の特許といったような新しい分野も出てきておりまして、こういったものが、出願あるいは審査請求件数の急増の背景にあるのではないかというふうに思っているところでございます。
 したがいまして、私どものところでも、例えば出願件数等々がそもそもふえているのに加えまして、一出願当たりの請求項数と申しますけれども、いわゆる発明項目自体が、従来一つか二つでございましたのが、五年間で五割近くふえるというような状況にもなっております。
 こういうことで、先行技術を調査すべき文献数も新たに二百六十五万件程度増加し、データベースに加えなければなければならないというような状況にございまして、こういった点が、大変申しわけないことに、なかなか審査のスピードアップができないという状況になっているのではないかと思います。
 さはさりながら、先生御指摘のとおり、技術革新の速い時代でもございますし、大学、ベンチャー・中小企業の方たち、あるいは大企業におかれましても、早急な実施を必要とされるニーズがあろうかと思います。したがいまして、こういった方々に対しましては、早期審査制度というものを設けまして、大学、中小・ベンチャーの方には無条件でこれを御利用いただくということをいたさせていただいております。その場合には、一年以内に審査を終了するという形を目標にいたしているところでございます。
大島(令)委員 特許とか実用新案、今企業とか弁理士会の方で必要とされているのは、ソフトウエアですとかバイオテクノロジーの分野で非常に求められている現状ということを聞いております。
 非常に具体的に身近な例としまして、なぜそういうスピード性が要求されるのかといいますと、ここに私はハンドクリームを持ってきました。昔、こういうものというのは、歯磨きもそうなんですが、金属のチューブに入っていまして、ここのキャップも非常に小さかったわけなんですね。これはプラスチックのチューブで、キャップも非常に大きいわけなんです。そうすると使いやすいですよね。キャップも外しやすい。そして、こういうふうに立てることもできます。
 こういうアイデアが早く実用新案、特許として認められて、広く国民に分かち合うということがこの特許の目的であると私は思っているわけです。それが、出願してから長期間かかるというのは、せっかく発明した人にとっては、なかなかそういういいところを国民に分かち合うことができないと思います。そういう意味で、もう少しスピード性を持って出願から許可まで進めていただきたいと思うわけです。
 秋田県鷹巣町にウェルフェアテクノハウスという施設がありまして、これは経済産業省NEDOの医療福祉技術開発事業の委託事業としてあるわけなんですが、そこに行ったときに、医療福祉器具としまして、体の不自由な方が普通のスプーンですと食事をしにくいから、少し持つところを曲げたものが開発されていました。私は、その鷹巣町の方に、これは国の委託事業であって国の税金を使っている、ここで開発された特許とか実用新案は早く製品化して国民全体がその享受を受けることが目的である、たまたま鷹巣町の福祉の進んだ町に所在しているけれども、そういうことが必要ではないかということを、その町の議長さんとお話をしたわけなんです。
 ですから、先ほど来、いろいろな委員の方がスピーディーにということを申し上げましたけれども、私も、やはり特許というものは、製品化をして市場に出回る、これがひいては経済の活性化ということにもつながるわけでございますので、そういう意味でも、特許庁としても、早く、一年以内にできるように努力をしていただきたいと思っております。それに対して具体的な何か方策は考えていらっしゃるのでしょうか。
及川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、製品化する場合、早急に特許等の権利を得たいというお気持ちはごもっともだと思います。それで、先ほど申し上げましたように、早期審査制度というのを導入いたしまして、ぜひ御利用いただきたいと思っております。
 ただ、先生、ちょっと御理解を賜りたいと存じますのは、一つの特許ではなかなか製品になりませんので、製品にする場合には数百の特許が通常必要でございます。したがいまして、審査請求期間というのをつけておりますのも、実は、製品化するまでに他の特許あるいは技術開発等を待って行うというケースもございますので、そういう場合には必ずしも出願即審査請求ということにはならない事情もございます。
 ただ、いずれにいたしましても、審査請求があった場合には、おっしゃるとおり、直ちに権利が付与されるということが必要だと思いますので、私ども、特に急ぐもの、あるいは中小企業の方たちのために早期審査制度というものを行っているところでございまして、ぜひそのPR等周知徹底を今後も図ってまいりたいと思っておるところでございます。
大島(令)委員 そうすると長官、この商品の場合だと幾つぐらいの特許があると思いますか。
及川政府参考人 申しわけございません。ちょっとすぐにはわかりませんけれども、多分一つではないと思います。
大島(令)委員 では、次の質問に移らせていただきます。
 知的財産の資産としての評価方法や資金調達方法の多様化についてどのような取り組みを行っているのかお伺いしたいと思います。
大島副大臣 最近、大企業におきましては、いわゆる保有特許の資産としての有効活用に対するニーズが非常に高まってきております。御指摘のように、知的財産を活用した資金調達の方法の多様化が確実に求められている、こういう認識をいたしております。
 そこで、資金調達の手段といたしましては、特許の譲渡やライセンス契約等の特許流通がございますが、経済産業省といたしましては、流通市場の整備を図る観点から、特許流通アドバイザーの派遣、また流通可能な特許データベースの整備等の事業を実施いたしまして、過去五年間に千四百二十件の特許流通の実績を上げているところでございます。
 そして、知的財産を担保といたしました融資につきましては、経済産業省は、平成七年度より、特許権等の知的財産権を担保とする融資制度を日本政策投資銀行に設けておりまして、実績は百八十八件、金額は百六億円の実績でございます。
 さらに、経済産業省といたしまして、産業競争力と知的財産を考える研究会におきまして、今申し上げましたような特許権の証券化を取り上げ、これから検討を進めてまいっているところでございます。
 さらに、知的財産の資産としての評価でございますけれども、こういった知的財産の流通が我が国よりも随分進んでおりますアメリカにおいてすら、一般的手法がなかなか確立できておりません。個々の知的財産の特質に応じまして市場において決められているのが現状であると申し上げたいと存じます。
 今後でございますけれども、特許流通市場のさらなる整備や知的財産権担保融資の定着、あるいは特許権の証券化スキームの構築についての検討などをさらに進めてまいりたい、このように考えております。
大島(令)委員 今の御答弁ですと、政府系金融機関、日本政策投資銀行で百八十八件、百六億円ということでございますけれども、少ないなという印象を持ちました。
 中小・ベンチャー企業が保有している特許等の知的財産を担保とする融資制度、やはり資金力がベンチャー企業はないわけですから、この知的財産を担保として資金調達を可能とすることがまたこの知的財産を活用することに道を開く手段であると私は思っているわけです。
 もう少し具体的に、では、民間の金融機関等において、これを担保に整備をしていくというような方向は考えられておりませんでしょうか。
及川政府参考人 御指摘の点は非常に現在注目を浴びている点だろうと思います。そして多くの方がこれにトライをしておられると思います。
 民間金融の中でも、もちろん特許権等を一つの質権あるいは資産として評価する動きはございますけれども、例えば、最近で有名でございますのは、小室哲哉さんが御自分のあれをもって一つの債券でございましたかを発行したというようなお話がございますし、海外では有名なロック歌手が同じようなことをしたというのもございます。
 言ってみれば、こういう形で新しい一つの資金還流の仕組みというのができていくのではないかというふうに思っておりまして、我々としてもそういったものをぜひ支援して、本格的なマーケットができればいいというふうに思っているところでございます。
大島(令)委員 では、次の質問に移ります。
 こうした知的財産分野に専門性を有する弁護士、弁理士を育成するためには、大学の法学教育における知的財産関連法講義の積極的な導入ですとか、司法制度改革のもとで導入される法科大学院、先ほどから皆さん質問されておりますけれども、ロースクール等の法曹教育・研修機関における知的財産教育の拡充と強化、そして法曹資格を目指す理科系の学生にも受験のしやすい、教育面も含めた総合的な施策の展開が必要だと思いますけれども、この件に関しての考えを聞かせてください。
及川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、知財に関します法務サービスの充実ですとか、あるいは法務サービスを提供する方の拡充というのが大変喫緊の課題であると存じます。特に、御指摘の、理科系御出身の技術に詳しい法曹の専門家が多数輩出されることもまた求められているのではないかと思います。
 現在、御案内のとおり、司法制度改革の一環として、御指摘の法科大学院の設置等新法曹養成制度の整備に関しまして、中教審や司法制度改革推進本部において検討が進められております。また当省でも、産業競争力と知的財産を考える研究会におきまして、産業競争力強化の観点からこの問題についても検討をさせていただいているところでございます。
 当省といたしましては、各法科大学院が適切に社会のニーズを把握し、自主的な創意工夫のもとにカリキュラムや教材といったものを作成することによりまして、知的財産制度の分野で戦力として活躍できる弁護士の方、理科系の御出身の弁護士等も含め養成されることが重要ではないかというふうに思っております。
 引き続き、研究会等におきます議論を踏まえまして、関係のところに積極的な働きかけを行っていきたいというふうに思っております。
大島(令)委員 今回の法改正で、訴訟代理人の当面の法的需要ということで、この資料にございますけれども、平成十七年に約千人規模の弁理士さんの方の能力の担保措置がされるというふうになっているわけです。平成十六年からロースクールが学生の受け入れ開始をされまして、最初の修了者が短縮型二年で平成十八年ということで、非常に遅いわけなんですね。
 そういうことで、この改正弁理士法が今国会で通りましても、また次の改正ということに関してはどのように考えているのか、見解を聞かせていただきたいと思います。
及川政府参考人 御指摘のとおり、ロースクールの御出身の方が現実に社会的にお出になるまでにはまだ大分時間がございますけれども、まさにそういった点を踏まえまして、今回の弁理士法の改正等によりまして、弁護士、弁理士連携をして、そして訴訟の迅速、的確化を図るということで法案をお願いいたしているところでございます。
大島(令)委員 では、大臣に質問いたします。
 弁理士の守秘に関することについてでございます。
 現在は、弁理士は守秘義務のみが規定されておりまして、弁護士法のように権利として規定されておりません。そのために、その反射として、弁理士作成文書について、その保持者の秘匿特権に争いが生じているということでございます。弁理士の依頼者との交信文書等について、依頼者に秘匿特権を認めないと、アメリカでの訴訟上、日本企業の保存する社内文書の証拠開示義務を明確に免れることができず不利益が生じているということでございます。
 これに対してどのような対策を考えているのか。国際的な知的財産権をめぐる動向を踏まえて、この弁理士の守秘に関する事項について、権利に関して明確にするということを、弁理士会の方からの要望を受けての御質問とさせていただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 米国では、民事訴訟での証拠開示におきまして、弁護士等の代理人と依頼者との間の通信文書の開示を依頼者側が拒絶できるという守秘特権が判例法上認められているわけであります。
 その趣旨は、依頼者が不利な事実も含めてすべての事実を安心して代理人に明らかにすることができるようにする、そういう点にあります。
 米国において、日本の弁理士と依頼者である日本企業にこの守秘特権を認めなかった判例が過去にございまして、そのために日本企業の利益を害するという指摘がなされたということは私どもも承知をしています。
 しかしながら、最近、これは二〇〇〇年のことでございますけれども、マサチューセッツ州の連邦地方裁判所において、弁護士と同等の守秘義務を弁理士に認めている日本の改正民事訴訟法の規定等を理由といたしまして、日本の弁理士と依頼者間の通信に守秘特権が認められる決定がなされて判例が変更された、そういう事例がございます。
 基本的には、この問題というのは、米国の裁判所の判例法に関する問題でありますけれども、米国の裁判所において上記の判例を今後定着させるために、今回の法改正によって弁理士に訴訟代理権が付与されるということは非常に大きな意味を持つ、このように思っています。
大島(令)委員 私は、今度の改正はまだまだ今の社会の中で十分ではないとは思っておりますけれども、その一歩ということで、きょう、私ども社民党も賛成の立場からの質問をさせていただきました。
 時間が参りましたので、大臣におかれましては、ぜひ、国家戦略としてこの知的財産というのを、日本がこれから世界に向けて保護し、やはり経済活動のために有効に活用していこうという、小泉総理、今までの歴代の内閣ではなかった新しい戦略でございますので、ぜひきょうの委員会の意見を十分お聞きいただきまして、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
谷畑委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
谷畑委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 まず、特許法に関連して、法案に即して何点か伺っておきたいと思います。
 まず、提案理由で、審査の効率化ということを大臣は述べられましたけれども、この審査の効率化とは、直接的には、出願に当たって、先行技術文献情報を発明の詳細な説明の中に記載するということを義務づけたことと、最近の出願の増加に対応して、審査官の増員が進まないために、IPCC、財団法人工業所有権協力センターにアウトソーシングする量をふやすということを指して述べられたでしょうか。この点をまずお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 今、大変出願が多くなっておりまして、それを迅速かつ的確に審査を行うには人員的な面も非常に重要な要素だと思っておりまして、この迅速かつ的確というのは特許行政の基本的な使命だと思っております。
 こうした基本的な使命を担う特許審査官の定員というのは、九八年度が一千七十八人、そして、微増でございますけれども、二〇〇二年度には一千百五人、こういうふうに推移しております。ですから、内容も高度化、複雑化する、そして、審査官の負担は増大していることは事実でございます。
 したがいまして、一定の審査官数を確保して、そして欧米特許庁より高い審査効率を維持しても、ここ二年、審査待ちの案件が急増しているのが現状でございまして、迅速かつ的確な審査に支障が出るというようなおそれが出ております。こうした課題というのは主要先進国共通のものでございまして、欧米特許庁は、九〇年代後半以降、所要の審査官の確保と予算の拡充を図りまして審査の促進に取り組んでいるところでございます。
 我が国といたしましては、審査の的確性を確保しつつ迅速に権利設定を行うため、微増ですけれども、これから審査官の数もふやしていかなきゃいかぬし、今御指摘の外部能力の活用、そういったことも含めて総合的に私どもとしては考えていく、このように思っております。
大森委員 今の質問は、提案理由にあった効率化とはどういう意味かということで、その一つがIPCCへのアウトソーシングというお答えがあったわけなんですが、審査の効率化という点から厳密な先行技術文献情報を書き込ませるということが、これは出願人の負担軽減ということと矛盾するんじゃないかということが一つ。
 それからもう一つ、改正案の条文では、出願時に知っている文献という程度であればよいということであれば、これは審査の効率化には本当に役立つだろうかという率直な疑問があるわけですが、そこで、先行技術文献情報を書き込ませる記載義務という規定を置く目的は一体どこにあるのかということをお聞きしたいと思います。
大島副大臣 お答えをいたします。
 発明とは、通常、過去になされた先行技術の知見を基礎といたしまして新たな技術を創造するものでございまして、審査で行う発明の進歩性の判断は、過去の先行技術と当該発明とを比較して行われるものでございます。このため、どのような先行技術が存在するかを把握することは、審査に際して極めて重要な要素というふうに考えております。
 先行技術が記載された文献につきましての情報は、通常、出願人自身が最もよく把握しているものであることから、出願人自身に対し出願書類に記載を求める本制度の導入は、迅速かつ的確な審査に大きく寄与するものと考えております。
 また、出願する人にとりましても、これまで以上に先行技術を意識してより注意深く出願書類を作成することとなるため、出願自体の厳選が進み、より強い特許権を生み出すという効果も期待をいたしているところでございます。
大森委員 ちょっと質問の趣旨と異なる答弁になっているようなんですが。
 要するに、出願人の負担軽減に本当になるのかという点と、審査の効率化ということとの関係でいえば、知っている文献を書き込むという程度であれば本当に役立つかという点で、素朴な、率直な疑問なんですが、その回答にはなっていないような感じがいたします。
 次に、もう一つの、IPCCに対するアウトソーシングの問題ですが、私、今回の質疑に当たって急遽、無理を言いまして、錦糸町のIPCCの方に行ってまいりました。こういうすてきなパンフレットも出しておられます。急にお願いした計画ではありましたけれども大変丁寧に対応していただいて、また、そこの関係者の皆さんが非常に大変な中で努力されている状況もよくわかった次第であります。
 そこで最初に、IPCCの全従業員数、そのうち、先行技術調査及び分類の付与を行っている人数がどのくらいか、また、サーチャーのうち、企業からの在籍出向と出身企業を既に退職した者とを分けるとどのような状況になるか、お答えをいただきたいと思います。
及川政府参考人 平成十四年四月五日時点でのIPCCの職員数は、全体で約千百九十人でございます。
 そして、業務の分類でございますけれども、大きく、分類付与とサーチとございます。これに携わっている数は千七十名でございますけれども、その業務量の比率につきましては、一つの人間が同じことをやる場合が多うございますので、負担を勘案して案分をいたしますと、大体六、四でサーチ並びに分類付与かなというふうに思っております。
 それから、御指摘の出向職員、直接雇用職員の分類でございますけれども、四月現在、全サーチャー数は千七十人でございまして、企業からの出向をいただいている方が約六百五十人、民間企業からの出向を経てIPCCに直接雇用されている職員数は四百二十人でございます。
大森委員 私も、率直に、六百五十人が大企業等から出向しているということを聞いて本当にびっくりしたわけなんですが、そこで、IPCCが関係企業各位にあてた「先行技術調査及び分類付与のための専門技術者の候補者推薦のお願い」、こういう文書があります。この中では、「専門技術者の推薦にあたりましては、現に企業において勤務中の方で、かつ財団への出向期間が一定期間(望ましくは三年以上)確保できる方であることにご留意ください。」と書いてあるわけですね。
 今、在籍出向と退職者の振り分けを伺いましたけれども、IPCCのホームページを見ると、採用当初は全員が企業に籍を置いたままサーチ業務に携わっているというわけですね。企業から出向したサーチャーは、この文書にもありますけれども、「出願書類を精読し国際特許分類を付与するとともに、」とあるわけですね。出願された発明の内容がまだ公開されていない段階でこれを見ることができるということですね。先行技術調査は、「審査の対象となる特許出願について、その技術的特徴を理解した後、」サーチリポートを作成することになっているということですね。これでは、企業に帰属しているサーチャーに秘密保持が本当に可能だろうか、これも非常に率直な疑問でありますけれども、これはいかがでしょうか。
及川政府参考人 御指摘の点は、平成二年に制定された工業所有権に関する手続等の特例に関する法律によりましてこの外注がスタートいたしたわけでございますけれども、その際、本法におきまして、指定調査機関に対しては、IPCCでございますけれども、同法の三十九条の規定によりまして、役職員及び過去に指定調査機関の役職員であった者に対しましては、特許庁の職員と同等の守秘義務を法的に課しているわけでございます。
 したがいまして、現在、指定調査機関として審査業務の外注を受けておりますIPCCの役職員につきましては、特許庁職員と全く同等の法的な守秘義務が課せられているわけでございまして、そういう点で秘密保持は十分に確保されているのではないかというふうに思っております。
大森委員 その特例法のことは伺っておりますけれども。
 ただ、この場合、精読玩味等々するわけですね。ですから、出願書類を持ち出さないとかいうようなことにとどまらない、そういう外形的な規律だけではだめじゃないかということが一つ言えると思うんです。サーチャーの頭脳の中にそういうものが記録されるということになっていて、それが出身企業の発明との関係で、利用すると言ったらあれですが、利用されないとは限らない。そういう保証がどう担保されるのか、重ねてお聞きしたいと思うんですが。
及川政府参考人 おっしゃるとおりでございまして、私ども、法律上の措置により一番大きな担保はなされていると思っておりますけれども、さらなる秘密保持体制の強化というため、運用上も種々の対策を講じるよう指導しておりまして、例えば、公開前の書類にアクセスした者についてはすべて記録するシステムをとっております。それから、御指摘のように、IPCCと出向契約を企業の間で結んでいるわけでございますけれども、その協定書におきまして、出向元企業の秘密保持に関する協力規定、そして、万一の場合にはちゃんとした損害賠償を負うという規定も設けているところでございます。
 なお、物理的には、通信手段について、メール、ファクス等の外部への発信は厳しく制限しておりますし、インターネットのアクセスも制限をいたしておりまして、そういう点で、物理的また規約的に相当の秘密保持の万全性を期しているのではないか、かように考えております。
大森委員 メールを打つまでもなく自分の頭脳に入っているわけですから、そういう点、やはり大変重大な点だと思うんですね。
 そこで、IPCCのサーチャーを出身企業別に見ますと、今月の一日現在で多い順に見ますと、富士通が八十六人、日本電気が六十八人、東芝が五十一人、日立が四十三人、沖電気が三十八人、これがベストファイブ、五社ですね。この五社は出願数の多い上位二十社に全部入っているわけですね。これらを含めて全部で百六十七社、すべてこれは大企業でありますけれども、これが出向させているわけですね。
 このサーチャーの処遇については、企業の定年まで出向、出向期間中はリファンド、協力見返り金として年六百万円を企業に支払うとなっていますね。定年以降は一年ごとの直接雇用契約で、年俸六百五十万円プラス交通費プラス住宅手当、こうなっております。こうした実態を見ると、幾つかやはり問題点が出てくると思うんです。
 一つは、社員を出向させている企業は、分類付与の作業を考えると、その業界の最先端の技術情報に常にアプローチできるんじゃないか。別の言い方をすれば、他社の特許情報を早い時期に合法的に見ることができる。これは、見ることができることは事実だと思うんですね。こういう点からはどうなんでしょうか。
及川政府参考人 おっしゃるとおり、見ることは分類の際できると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、それに関しましては、まさに厳しい守秘義務を、法的にも、またさまざまな規約あるいは物理的な措置等によって講じているということで措置されているのではないかというふうに思っております。
大森委員 今明らかにしましたように、出願の多い企業が数十人の規模で出向させるということで、国の経費で先行技術調査をやっているようなものだと思うんですね。そういう意味で、これは技術面におけるある意味の官民癒着と言えるんじゃないかと思います。
 これらの企業は今一連の大規模なリストラをやっていて、その受け皿にもこれはなっているわけですね。富士通の場合、ことし四月現在八十六人出向、さかのぼると、昨年は四十九人、その前は三十九人、その前は三十四人、その前は二十四人、こうなっております。それから日本電気は、六十八人、五十一人、四十六人、三十六人、三十七人。東芝は、五十一、三十五、二十九、二十四、十八、こうなっているわけですね。
 今指摘した上位五社に対して、サーチに協力する見返りに、この五年間どのぐらいの金額が払われているでしょうか。
及川政府参考人 御指摘のとおり、上位五社、どちらかというと電機系の会社が多いわけでございますが、ITの需要、特許審査のニーズが大変多うございますので、どうしてもそちらの方の方々においでいただくことが多いようでございます。
 五年分の詳細な金額というのは、実は日割り計算等をしなければなりませんので、恐縮でございます、作業が膨大でございますのですべての詳細を持ち合わせておりません。先生から資料請求いただきました平成十三年度でよろしければ申し上げさせていただきたいと思います。
 平成十三年度は一位が日本電気でございましたけれども、日本電気が二・六億、富士通が二・二億、東芝が約一・八億、日立が一・一億、沖電気工業が一・三億でございます。
大森委員 十四年の四月一日現在で、私どもの試算でしますと、この五社で、合計年間十三億九千八百万円、約十四億円。そして今の十三年度でいいますと、総額で幾らになりますか、やはり十億近くなっておるわけですね。
 そこで、こういう巨額のお金が支払われるという関係が明らかになったわけなんですけれども、これは、今申し上げたように事実上効果的なリストラ対応策にもなっているわけですね。特にこれで問題なのが、出向者を出していない企業は、出向者を出している他社の社員に特許情報がのぞかれ放題になってしまうんじゃないか、こういう心配も当然あると思うんですね。
 さらに、出向者を出している企業には、外資系企業は、ごく一部ありますけれどもほとんど入っていない。こういう事態が広がれば経済摩擦の新たなきっかけの要因にもなりかねないんじゃないかという強い心配があるんですが、これはいかがでしょうか。
及川政府参考人 私ども決して、外資系の企業であるから排除するようなことをIPCCにお願いしているつもりは全くございませんでして、むしろ現時点、確かに、こういう経済状況でございますので、かつてに比べますと、おいでいただくのはそれなりに楽だという面もございますけれども、いかんせんやはり、非常に活発な技術開発の分野等におきましてはむしろなかなか出しにくいという、すぐれた技術者の方たちの綱引きみたいな面もございまして、そういう点で、むしろIPCCの方々は、何とかすぐれた方たちにおいでいただきたいということで、毎年かなりの日数を割いて会社めぐりをしているということを伺っているところでございます。
 いずれにいたしましても、意識的に企業によって人数に差をつけたものではございません。
大森委員 特許庁は、発明者に対して排他的な権利を与える、そういう意味では非常に厳粛な業務を行うところではあるわけなんですが、秘密の保持という点で、一般の公務員の守秘義務が定められているのに、さらに特許法上、二百条で秘密を漏らした罪が規定されている。一般公務員よりも重い守秘義務にある特許庁の仕事を安易に外注に出すことに、今申し上げたような理由で私は非常に疑問を感ずるわけですね。
 そこで、冒頭、大臣の御答弁にもありましたけれども、審査官の増員ということがやはり基本的に必要じゃないかということで、先ほど大臣の御答弁では、千七十八人から千百五人ですか、ごく微増という御返事がありましたけれども、同じ機関に今、日米欧三極と言われておりますけれども、欧州そして米国の審査官の増員の状況、これはどのようになっているでしょうか。
及川政府参考人 我が国の審査官数は先ほど大臣が申し上げたとおりでございますが、アメリカにつきましては、一九九八年度が二千五百九十四人、九九年度は二千九百四十人、二〇〇〇年度が三千百四十三人でございます。それから、欧州特許庁につきましては、九八年度が二千二百十六人、九九年度二千五百八人、二〇〇〇年度が二千七百六十七人というふうに承知しております。
大森委員 いずれにしろ、前回の特許法の改正のときにも我が党の質問の中で明らかになったように、欧州及び米に対して、一人当たりの処理件数、これが大体日本は二・五倍から三倍だということで、当時の長官も、また大臣も、審査官の増員に極力努力をすると。その結果が、欧州あるいはアメリカが数百人から一千人近くこの期間に伸ばしているのに、日本の場合はごく微増ということで、二・五倍から三倍という当時の格差がむしろ一層広がる、こういうことになっているわけですね。
 IPCCにアウトソーシングして既に十年以上経過したわけですけれども、この工業所有権制度の将来を本当に真剣に考えるんだったら、最大のネックとして皆さんが言われる定員法を金科玉条にするんじゃなくて、審査官の定員を大幅に増員するということを今改めて真剣に検討すべきじゃないかと思います。今年度だけでもIPCCに対して百七十億円の特許庁の予算が組まれているわけなんですが、こういう経費の使い方を再検討すれば、審査官の増員、これは工夫してできないことはないと思いますが、この点は大臣、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 今委員御指摘のように、厳しい定員法と行政改革の中でそれがかかわっております。微増ということを申し上げましたけれども、そういう中で最大限の努力をして、今の審査官の皆様方の御苦労を思ってふやしてきているところであります。
 一方、そういう形でアウトソーシング、これは今るる御議論がありましたけれども、やはりその秘匿性、そういうものをぴっちり担保しながら、そこに本当に秘密が守られる、こういうことをしっかりと守っていきながら、私どもとしては、今置かれた中ででき得る限りのことはしていきたい、こう思っております。
大森委員 知財戦略として、これを国家戦略としてやっていくということと、大企業からの大勢の、数百名の出向でこういうのを補うということに大きな落差があるんじゃないかと私は思うんです。
 この審査官の増員の必要性について別の角度からちょっとお聞きをしたいんですが、二〇〇一年版の特許行政年次報告によりますと、比較ができる一九九七年から二〇〇〇年を見まして、特徴は、出願件数及び審査請求は大幅に増加しているが、審査官の定員は微増だと。ファーストアクションの件数は減少傾向で、審査官一人当たりのファーストアクション件数も、九七年が二百十六件、九八年がちょっとふえて二百三十件、以後、百九十六、百七十七件、昨年は百七十九件と減少傾向にあるわけですね。サーチ、分類を外注に出すということが行われているんだったら件数はふえて当然じゃないかと思うわけなんですが、これはいかがですか。
及川政府参考人 まず、審査件数がマクロとして御指摘のとおり猛烈にふえていると同時に、中身につきましてもかなり高度化、複合化いたしております。例えば、審査すべき一出願当たりの請求項数自体が、過去五年間で約五・〇から七・二に五〇%近く増加しておりますし、それから、先行技術調査すべき文献数等も、この五年で新たに二百六十五万件、これは日本の文献のみで増加をしているような状況でございます。したがいまして、こういったデータベースをサーチしなければなりませんので、どうしても審査負担が増加せざるを得ません。
 また、審査官の業務は一次審査だけではございませんでして、一次審査後の出願人への応答・処分等がございますし、それから、昨今の非常に大きな特徴は、国際調査及び国際予備審査、あるいは拒絶査定不服審判におきます前置審査等が非常に増加をいたしてきておりまして、特に国際出願につきましては、過去五年で三・四倍という大きな増加になっております。
 この国際出願につきましては、海外にこれを送ることになりますので、非常に大きな負荷が審査官にかかってきておりまして、そういう点もございまして外注をさせていただいておりますけれども、どうしても審査官一人当たりの件数というのはそれほどふえることができない、むしろ減少ぎみにならざるを得ないという点を御理解いただきたいと思います。
 もし外注に出さないということになりますと、これは、ここ十年等におきます項数の増や、まさに国際出願の急増等を背景といたしますと、大幅に減少していたのではないかというのが私どもの感覚でございます。
大森委員 今御答弁があったように、だからこそそういう、量的な拡大だけじゃなくて、専門化、高度化あるいは国際化、新しい技術分野の拡大という面もあって、それは逆に、国が責任を持てる専門の審査官の拡充ということが本当に必要になってくるんじゃないかと思うんですね。
 そういう意味で、これは定員法ということじゃなくて、発明にかかわるあるいは特許にかかわる今の新しい状況に見合った責任ある審査官の定員の拡大、資質の向上に国は本当に積極的に取り組むべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。
 時間の関係がありますので次に移ります。
 最初に述べました先行技術文献情報の記載の問題でありますけれども、これは、スタッフを大勢抱えた大企業にとってはそれほどの負担ではないかもしれませんけれども、中小企業あるいは個人の発明家にとっては決して軽い負担ではないと思うんですね。これまで中小企業に対しては、審査請求料は軽減の措置をとっておりますけれども、情報の格差、こういう点での対応はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
及川政府参考人 本件に関しましては、昨年十二月に産構審の知財部会の報告書が出されておりまして、中小・ベンチャー、個人発明家等の方々に過度な負担を招かないよう、きめ細かな対応が必要である、こういうふうにされております。本制度導入に際しましても、中小・ベンチャー等への配慮は当然必要と考えております。
 したがいまして、本制度におきましては、開示すべき先行技術文献情報は、出願時に出願人の方が既に知っているもので結構であるということにしておりまして、新たな調査負担を強いるものではございません。また、先行技術文献情報が開示されていない場合には、直ちに特許出願等を拒絶せず、まず審査官から開示をお願いする通知が発せられるわけでございます。
 さらには、現在でも既に先行技術文献情報をそれなりに十分開示していただいている中小企業の方も相当ございますので、このような出願人にとってすぐに新たな負担というものは生じないのではないかというふうに思っております。
 なお、御案内のとおり、発明協会から全国の知的所有権センターに特許電子図書館情報検索指導アドバイザーというものを派遣しておりまして、中小・ベンチャー等に対しましては、検索方法の無料相談でございますとか訪問指導等のサポートも行っているところでございます。
大森委員 それとの関係で、いわゆる電子図書館、IPDL、これの関係の利用状況でありますけれども、中小企業あるいは個人の利用状況というのは何か把握されていますか。
及川政府参考人 アクセスは、一カ月に約二百万件を超える大変多くのアクセスをいただいているところでございますけれども、どういう方がアクセスしているかまでは、申しわけございませんが、わかりません。
 ただ、中小企業の方がIPDLを容易に利用できるようにするために、ホームページにおきまして初心者向けの検索サービスが提供できるようにしておりますし、それから、簡易なキーワード検索が可能なような形にもいたしておりますし、また、ヘルプデスクへの相談等のサービスが提供されているわけでございます。
 それから、今申し上げました発明協会を通じて全国五十五カ所に検索アドバイザーを配置しておりまして、中小企業の方々に御助言、指導ができればということで実施をさせていただいているところでございます。
大森委員 IPDLについては、これは私ども、この短い期間の調査の中でも、随分使い勝手が悪いとか、ある弁理士の方は、欧州の特許庁を通じて日本のそういう先行技術なんかを調べるというような声まであったわけですね。
 そこで、ぜひこれはお調べいただきたいと思うんですが、二百万通もあってなかなかというお話もありますけれども、使用実態、そして、中小業者や個人が本当に活用できるよう、ぜひこれは調査などをしていただきたいということ。
 あわせて、弁理士の方からいろいろ要望も出された中で一点だけ申し上げておきたいんですが、今回、訴訟代理権が付与される、そのために、信頼性の高い能力担保措置として、民事訴訟実務に関する研修及びその効果を判定するための試験が行われるということになるわけなんですが、その際に、希望する弁理士への便宜性など、これはよく配慮したものにしてほしいという要望など非常に強いものがありました。この二点、最後にお答えを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
及川政府参考人 IPDLにつきましては、本当に一年で一気に倍増するようなアクセスをいただいておりまして、サーバー容量等もふやしているのでございますけれども、確かにアクセスが遅いというふうな御批判、十分私どもそれなりに認識しております。御指摘等を踏まえて、改善すべき点、極力努力をしてまいりたいというふうに思っております。
 それから、IPDL自体につきましては、利用者のニーズを調査ということでございましたけれども、ニーズはもちろん調査をさせていただきますけれども、どういう方が使っているかというのはなかなか困難でございますので、可能な範囲でさせていただければというふうに思う次第でございます。
大森委員 弁理士の方は。
及川政府参考人 失礼いたしました。
 研修につきましては、この委員会でも先ほど来いろいろな御要望あるいは問題点の指摘をいただいております。これからさまざまな課題を整理いたしまして、実施予定をしております弁理士会とよく相談をさせていただきまして適切に行ってまいりたいというふうに思います。
大森委員 終わります。
谷畑委員長 竹本直一君。
竹本委員 自民党の竹本直一でございます。
 きょうは、午前中から野党の先生方からすばらしい御意見と御質問がありましたので、改めて私が言うこともないと思うんですけれども、どうしてもこれは言っておきたいということも含めまして、二、三絞って質問をさせていただきたいと思います。
 今、アメリカ社会を見ておりますと、ビジネスエグゼクティブというのは、基本的に、技術を履修して、そして経営、MBAですね、あるいはロースクールを出た法学士、こういう人が一番企業のトップに立っているように私は見ておりまして、日本のこれからの社会もいずれこうなるのかなという感じを私は持っております。
 そういうことを前提として物を考えますときに、今回、改正が提案されております特許法、弁理士法、ともに知財社会をどのようにつくりながら、諸外国のこういった面での先進性、あるいは開発途上国ではあっても強力な戦略でもって進んでくる国に対してどのように対応するかということが迫られているのではないかな、このように思うわけでございます。
 アメリカの場合は、レーガン政権の一九八〇年代に、プロパテント政策、産業競争力委員会をつくりまして、そこであの有名なヤング・レポートというのが出されました。IT、バイオ、知識、知恵、こういったものを中心にバイ・ドール法あるいは特許の事業化を推進してきたわけでございますけれども、それが後にブッシュ政権に至り、クリントン政権になって大きく花を開いて繁栄の十年を築いた、こういう感じがいたすわけであります。
 こういった国と競争していかなきゃいけないということを考えますと、アメリカの場合は、パテントアトーニー、特許弁護士が一万八千人ぐらいいるということでございますけれども、日本の場合はそれに相当する者が、弁理士だけかどうかはちょっと別といたしまして、弁理士が四千五、六百人ぐらいでありまして、そのうち弁護士の資格と両方持っているのが三百人、さらに基礎的に技術出身の方がたった三十人しかいない、こういう話を聞いておりますといささか首筋が寒くなるような感じがするわけであります。
 そこで、これから日本の経済社会を諸外国との競争の中でどう生き抜かせていくかということを考えますと、どうしてもこの知財部門の強化を図っていかなきゃいけない。
 他方、後門のトラとも言えるのが中国でありまして、御承知のように大変な空洞化が進んでおるわけでございまして、製造業の海外現地法人数は十年前の三倍になっておりますし、アジア現地法人からの逆輸入額は十年前の六倍になっておる。しかも、地方と比べますと、賃金は向こうは日本の三十分の一だ。こういうことを考えますと、とてもコストだけで見たら太刀打ちできないような大きい後門のトラがいるわけであります。
 我が日本は、先進国のパテントを買い、あるいはそれをある意味ではまねながら物をきっちりと生産し、いい物を国際社会に輸出することによって生き延びてきました。しかし、その同じことを今中国がどんどんやっているわけであります。
 その中で、必ずしもこういった知的財産が守られていないということを考えますと、それこそ知的財産戦略というものを国家の生き残りのための基本戦略として打ち出していかなきゃいけないというふうに思うわけでありまして、かつて、戦後が終わったと言われるころに、池田内閣が、所得倍増計画を立てて日本の内需を拡大し、そして先進国の仲間入りをする端緒をつくってくれました。
 そういう時代の大きい変わり目に日本の生き残り策をつくるのがこの知財戦略ではないかなというふうに思いまして、いずれ総理と呼ばれる日が来るであろうと私は思っております平沼経済産業大臣に、ぜひその辺の大きいビジョンをまずお答えいただきたいなと思っております。
 以上、お願いします。
平沼国務大臣 非常に重要な御指摘を私いただいたと思っております。私のことは重要だということは申しておりませんけれども、非常に重要な御指摘をいただいた、こう思っています。
 日本は、七〇年から八〇年にかけてひとり勝ち、こういうようなことで非常に経済的繁栄を謳歌しました。そこで若干手を抜いた嫌いがあり、バブルに浮かれて、今非常に厳しい状況になっていることは事実だと思います。
 その当時、三つ子の赤字を抱えて呻吟をしていたアメリカが、今委員御指摘のように、やはり戦略的に、特にプロパテント政策というようなものを綿密に練り上げて、レーガン、ブッシュ、クリントンと、三代にわたってそれを結実させていった。このことは、私どもはやはりしっかりと我々の経済政策、国家戦略でとらえなければならない視点だと思っています。
 そういう中で、ある意味では遅きに失した感が御指摘によってはあると思うんですけれども、私どもとしては、特にこれから日本のこういう知財というものをしっかりと伸ばし、しっかりと担保し、これをもとに活力を伸ばしていかなきゃいかぬという形で、総理の主導のもとにいわゆる戦略会議が立ち上がったわけであります。
 したがいまして、そういう意味では、アメリカのいわゆる専門家と言われていますパテントアトーニーのお話もなさいましたけれども、そういうやはり核となる人材を積極的に育成していかなきゃいけない。そういう意味で今回、その知財戦略の一環の中に弁理士の方々にも入っていただいて布石をさせていただいたところであります。
 空洞化のお話もなさいましたけれども、御指摘のように、確かにここ五年間で三〇%、いわゆる工場移転が行われておりますし、一九九〇年からの統計ですと、この十年間で、当時は海外移転率というのは六%台であったものが一五%近くに高まっている。その中で、じゃ、日本は何をやっていかなきゃいけないかといったら、やはりこの知財戦略、それからイノベーション、そういったことで、一歩先を行くという戦略で日本のやはり競争力を高めていく、産業のいわゆる競争力を強化していく、こういうことが必要だと思います。
 そういう意味で、やはりイノベーションを起こし、新規産業を、企業を起こしていく、そういうインセンティブを与えるということが必要で、昨年の秋の臨時国会で御同意をいただきましたけれども、新しく業を立ち上げるために、土地担保なんというのは要らない、いわゆる事業計画で、本人保証も第三者保証もない、そういう形で、意欲を持っている人たちはどんどん業を起こしていっていただこう。
 それから、日本は、総合的な産業力というのは、国際評価では、技術を含めて二位でありますけれども、産業を総合した競争力でいくと十七位というような形で、ちょっと前までは全部一位だったわけですけれども、そういうていたらくになっています。
 そこで、この十年間は、どちらかというと、日本は物まねだなんという形で、やはりアプリケーションよりも基礎研究に重きを置いてずっとこの十年やってきました。私は決して基礎研究を否定するわけじゃないですけれども、その結果、いい種が今育ってきているわけです。
 例えば、ナノテクノロジーの分野でも、あるいはIT関連、バイオ、そういうものが育ってきていますから、そういったところにやはり活力を与えるために、実践的な技術開発、こういったことをやるためには、もうこれは委員よく御承知のように、基礎研究をやって、それが実用化に結びつくまでの間に、死の谷と言われています、ここを少しインセンティブを与えて押し上げると、それがいわゆる浮上していく。今こういうところの技術というのはたくさんありますから、そういう意味では、経済産業省としても、やはり空洞化を防ぎ、国際競争力をつけて、二十一世紀の日本の経済を安定成長に結びつけるために、むしろアプリケーションに重きを置いた技術革新を起こしていこう、こういう戦略も立てさせていただいています。
 いずれにいたしましても、そういうことを総合的にやりながら、空洞化を防ぎ、そしてこれからますます必要である知的財産、その戦略をしっかりと立て、その中で有能な人材も育成して、私どもはやはり世界に貢献をしていかなきゃいけない、このように思っています。
竹本委員 大臣の御意見にもありましたように、まさにあと一押しでできるものは、どんどん政府としては責任を持って後押ししなきゃいけない。
 小泉内閣、総理は一生懸命やっていただいておりますけれども、私は、三十兆円という枠にとらわれず、こここそ少し財政投資をすればばっと花開くというようなものがあれば、そこはプラスアルファで財政投資をしてもいいんじゃないか、こういうことをあちこちで言っている人間でございまして、まさに頂門の一針、一針(ひとはり)ということが非常に大事だろうというふうに思っておるわけでございます。
 さて、ただいまの大臣のお話にありましたこの戦略でございますけれども、今、政府では知的財産戦略会議をもとに知的財産基本法をつくろう、こういう動きがあるわけでございます。諸外国の例を見ましても、とにかく時間を争うものでございます。したがいまして、きょう大島副大臣、お越しでございます。ぜひ政府の具体的な今後の目標、計画を簡単に御説明お願いいたしたいと思います。
大島副大臣 お答えをいたします。
 知的財産戦略会議におきましても、複数の委員から基本法の問題提起がございます。平沼大臣もその有力メンバーの一人でございます。産業競争力強化等の観点から議論に参加をいただいております。知的財産基本法についても、積極的に議論に参画してまいる所存でございます。
 そして、我が国におきましては、国際的に通用する知的財産専門家の育成が急務であることは御指摘のとおりでございますので、知的財産基本法について議論をする際には、その点も含めて議論すべきであると考えております。
竹本委員 ぜひ精力的にまとめていただきたいと思うわけであります。
 さて、この知的財産戦略を、基本的に成功か不成功か、その結果を決めるのはやはり人材であります。言うまでもないことであります。
 我が国は、中国との競争において、あの三十分の一という低賃金が非常に脅威に言われております。確かにそうでございますけれども、あるアメリカの経済評論家に言わせると、そうじゃないと。日本が恐れるべきは、上海、北京にいるIT技術者、数千人と言われるすごい技術者、これこそ日本は恐れるべきだという話を直接聞いたことがあるのでございますが、私もそんな感じがするわけであります。
 そのために、先ほど言いました五千人に足らない弁理士ではとても対抗できませんので、人材を育成しなきゃいけない。折しも政府の方では、弁護士の数が今二万人足らずでございますけれども、アメリカは百万人いるというふうに思います。アメリカのように訴訟の多い社会がいいと私は思わない。しかしながら、今の弁護士の数じゃとても無理だということもまた言えることであります。
 したがいまして、弁護士をふやすと同時に、その中でも技術に明るい弁護士をふやさなきゃいけない。そういう構想のもとに、今度ロースクールを、法科大学院をつくって、そこで有能な弁護士を、技術系も含めて伸ばそうというわけでございますけれども、私は、司法試験の、余りにも細かい暗記科目に徹底したそういった試験よりも、本当に法的思考の深くできる、しかも技術の理解のある、そういう、言ってみれば技術弁護士をもっともっと育ててほしいなという気がいたしております。
 そういう意味で、きょう法務省お越しでございますけれども、これはまとめは内閣であり、また教育ということになりますと文部科学省でございますが、法務省の方では弁護士の管理をやっておられるわけでございますから、ぜひともその辺の見通し、心づもりをお聞かせいただきたいと思います。
寺田政府参考人 ただいま御指摘いただきましたとおり、法律と技術の双方の分野に詳しい、そういう知的財産権にも非常に見識のある法律家の養成を図ることは、この知的財産権が国家戦略という位置づけを与えられている以上、非常に重要な課題だというふうに私どもも認識をいたしております。
 ただいま御指摘のありました司法制度改革でございますが、現在、審議会の意見に基づきまして作業中でございます。この審議会の意見におきましても、「二十一世紀の法曹には、経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ者を幅広く受け入れていくことが必要である。」このような指摘がございまして、法学部以外の学部の学生を、これも御指摘のありました法科大学院に入学させる手だてを検討すべきである、こういうことが強調されているわけでございます。現在、その制度設計につきましては、内閣に置かれました推進本部で具体的な検討が進められているところでございます。
 私どもも必要な意見を本部に対して申し上げているところでございますが、先ほど申しました見地から、多様性を確保するということで、これら技術系の方の確保というものを、この法科大学院の基準、第三者評価基準と申しておりますけれども、その基準でも示していこうというような議論が行われているわけでございます。
 私ども、先ほど申しました基本的な立場もございますので、この検討が鋭意進むように最大限努力をしてまいりたい、このように思っております。
竹本委員 ぜひ頑張っていただきたい。
 特に技術系の人をこういう法曹に導こうとしますと、入学の時点で改めてそこで法律の試験をするということは非常にナンセンスだと思います。それぞれの技術の、経済でもいいですけれども、それぞれの分野の成績でもって、御専門のところでテストをして、入って三年間で法的な知識を植えつける、そのようにしませんと広く人材を集められないということも十分注意をして仕組みをつくっていただきたい、そのように思うわけでございます。
 少し時間がありますので、実は、弁理士会というのがございますけれども、弁理士会の会長さんにでも来ていただいて御質問しようと思ったんですが、きょうは政府に対する質問ということでそれはまかりならないということでございますので、むしろお答えは経済産業省の特許庁長官にお願いいたしたいと思いますが、およそ士法という、弁護士、税理士、皆そうでございますけれども、私はやはり資質の確保ということが非常に大事だと思うわけであります。
 今回、訴訟代理権が条件つきとはいえ弁理士に与えられたわけでございます。その次は著作権も工業所有権に加えて対象にしたいという意欲を持っておられるという話は聞いておりますけれども、それを扱う弁理士が、資質のしっかりした、社会的信用の持てる者でないと、社会はこの弁理士を相手にしないというふうに思うわけであります。
 そういう意味において、この弁理士の資質の向上、資質の確保ということに対して、役所の方ではどのような方針で臨まれるつもりか。訴訟代理権等を与えるについては、それなりのいろいろなテスト等をやられると思いますけれども、その辺の腹づもりをお聞かせいただければと思います。
及川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、知財制度の人的インフラともいうべき弁理士の方々には最新の知識や情報を獲得するための継続的な自己研さん、そして資質の向上が必要ではないかというふうに思っております。
 基本的には自己研さんであろうかと思いますけれども、これを支援するために、日本弁理士会が、会員であります弁理士の方々に対しまして、今御指摘のございました著作権法でございますとか不正競争防止法に関する実務研修やテーマ別の会員研修等を実施されているというふうに伺っております。
 また、特許庁といたしましても、平成十三年度から既に、附属機関でございます工業所有権研修所におきまして、従来は特許庁職員を対象に実施しておりました先端技術の研修ですとか審判官の研修等を弁理士の方々にも積極的に開放して、その資質の向上の支援に役立てていただければというふうに思っているところでございます。
 今後とも、この資質の向上につきましては、弁理士会と連携を十分とらせていただきまして積極的に対応してまいりたいというふうに思っております。
竹本委員 ぜひ、きっちりとした指導をお願いいたしたいと思います。
 コンサルタント業というのがございますけれども、世界的に見てコンサルタントは二つの流れがあるように思います。イギリスのように、非常に小人数で、そのかわりすばらしい才能を持った社会的に信用のある人たちばかりで占めている王立コンサルタント協会というのがあるんですけれども、千人か二千人足らずのメンバーだったとたしか記憶いたしております。日本の場合は技術士会というのがそれに相当するのかどうかわかりませんけれども、聞きましたら四万六千人ぐらい。そうしますと、設計をいたしますとフィーが全然違う。例えば中東の建設市場でやりますと、全然、もう十倍ぐらいのフィーをイギリスのコンサルタントは取れるわけであります。日本の技術士会の技術士だからといって設計をいたしましても、全然お金が取れないという話がございます。
 それと同じように、例えば、知的財産に関しては間違いない、特許に関しては間違いない人たちばかりだという信用を国内的のみならず世界的に受けるようになれば、弁理士の資格ということが非常に重要視され、それを基軸として日本の知的財産戦略は成功の道を歩むということになるわけでございます。
 そういう意味におきまして、時々私は思うんですけれども、弁理士という名前がいいのか、技術弁護士とか何かそういう名前でもつけた方がよりきっちりとした人々の理解を得られるのではないかなというふうに思いますし、午前中の質問に出ておりましたように、中山先生だと思いますけれども、ぜひ、この弁理士の存在というものを学校教育の中で位置づけていただきたい。
 学校の中で、弁護士という名前は聞いているけれども弁理士は知らないというのがほとんどでありますから、そういう小学校、中学校のところに、社会の知的財産を守るためにこういう職業があるんだということをぜひ教えるようなところにも配慮をしていただきまして、知的財産戦略を成功に導いていただきたいと思います。
 以上であります。終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 河上覃雄君。
河上委員 今回の弁理士法改正では、侵害訴訟の代理人となるための能力担保措置として弁理士会が研修を行うこととなっておりますが、この研修の効果を上げるために、特許庁は、講師の派遣などにつきましての支援をどのようにお考えでしょうか。
及川政府参考人 御指摘の、研修の具体的な運用方法でございますけれども、特許庁に、学識経験者や裁判官、弁護士等の方にお願いをいたしまして、能力担保措置のワーキンググループというのを設置いたしましてここで議論をさせていただきました。そして、受講した弁理士の方が実際の訴訟で十分な能力を発揮するためには、訴訟実務を中心とした研修内容とするべきだというふうに指摘をいただいております。
 したがいまして、御指摘の研修の講師としては、その実務に精通した方、具体的には、裁判官でいらっしゃいますとか、特に知財部門の裁判官の方、あるいは知財専門の弁護士の方が適切ではないかというふうに御提言をいただいているところでございます。
 したがいまして、今後、この実施主体であります日本弁理士会がその研修の具体化を進めていくに当たりましては、当省といたしましても、申し上げました提言に沿った形で裁判所、弁護士会等に研修講師の派遣の要請を行っていきたいというふうに思っているところでございます。
河上委員 きょうは法務省にもおいでいただいておりますので、ただいまの点につきまして、裁判所や弁護士会、司法研修所等いろいろあると思いますが、この機関に対しまして講師の派遣要請をした場合、法務省としてはどのような対応をお願いできますか。
寺田政府参考人 この弁理士法の改正は、御承知のとおり、司法制度改革の一環としても行われているわけでございます。この司法制度改革は、裁判所、弁護士会、法務省一致して支えて推進してまいりたい、こういう所存でございます。
 具体的に、講師の派遣等が弁理士会からございました場合には、裁判所、具体的には司法研修所になろうかと思いますが、あるいは弁護士会それぞれが適切に対応していただけるものと私どもは期待しているわけでございます。また、そのような要請が法務省にございました場合には、もちろんその趣旨をそれぞれの部署に伝える、このように考えております。
河上委員 ぜひとも、新しい改正でこのような訴訟代理権の一部が付与されるわけでございますので、どうぞしっかりお取り組みいただきたいことをお願いしておきたいと思います。
 次に、弁理士会は、現在、工業所有権の講座を開設する大学に講師を派遣なさっているそうでございまして、ちなみに、私立大学に比べまして、国公立の大学で講座を開設する方が少ない、こういう現状にあるということもお伺いをいたしました。とても大事なことであると私は思っているわけでございますが、知的財産権の基盤である人材の供給は、すそ野を広げていくということは非常に大切なことでございまして、戦略上も私は重要である、このように考えております。
 そこで、これから理工系大学あるいは理工系学部がある大学におきましては、工業所有権など知的財産権を必須科目にして単位を取得していただくということをきちっと位置づけて環境整備等を図る必要があるのではないのか、この考え方に対する御所見をいただきたいと思います。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、我が国が活力ある社会を維持する、そういう意味で、創造性や起業家精神に富んだ人材の養成という観点は、私どもとしても非常に重要なことであるというふうに考えておるところでございます。そういう意味で、私どもは、昨年六月、まさに実践的な技術者人材、起業家人材の育成を目指したビジネス講座を開設するように、目標をすべての大学理工学部にということでお示ししたところであります。
 私どもの国立大学の理工系学部の状況で申し上げますと、今、理工系学部を置く全六十大学のうち九割近くの大学がビジネス関係の講座が開設されております。内容は、それぞれの分野と経営あるいは起業というもののかかわり、その場合の実際の事例のほかに、知的所有権に関する科目も含まれるのでございます。例えば、物質開発戦略論ということで、新製品開発に研究者、企業が必要とする物の考え方、研究開発体制、あるいは知的所有権と経営というような事柄について扱うなど、技術開発と工業所有権、あるいはベンチャーと特許権等々の工夫が行われておりますが、国立の理工系学部を置く大学においては、今六割の開設にとどまっているというのが昨年度の状況でございます。
 各大学が、何を必要とし、どのようなカリキュラムで行うかは、各大学の判断と責任において決定することでありますけれども、私どもといたしましても、理工系学部の教育において、ビジネス関係の講座の中で工業所有権を初めとする知的財産権の理解を図ることは、起業マインドの育成、あるいは研究成果の活用のほか、さまざまな場面で重要である、まさに先生御指摘のとおりでございます。
 今後、なお一層重要になるというふうな観点で、少なくとも、すべての国立大学理工系学部においてはこのような科目が開設されるよう、予算面も含めて、各大学の積極的な取り組みを支援してまいりたい、かように考えております。
河上委員 ぜひとも、国公立大学の方の進捗状況、しっかりと押さえていただきたいと思いますし、必須科目、あるいはそのような単位取得等まで御検討をぜひともお願い申し上げたいと思っております。
 そこで、特許の方に移らせていただきますが、大臣には、最初に、知的財産権のこれまでのことにつきましての御認識をお尋ね申し上げたいと思っております。
 午前午後を通じましていろいろと御議論をいただきました。多岐にわたる御議論が展開をされました。前向きの話が多かったように思っておりますが、では、今までは一体どうだったんだろうか、これも押さえておく必要がある、私はそう思っております。
 特許庁は、平成九年四月に、二十一世紀を知的創造の時代と位置づけまして、知的創造サイクルの構築というものを提唱いたしました。これによりまして、平成十年、十一年の特許法等の改正によりまして、審査請求件数あるいは国際出願、さらに出願件数等は大幅に増加をいたしました。一定の成果をおさめてきたと言えると考えます。
 そこで、特許庁は、さらにそれを促進するために平成十年に、平成十二年を目途に、すべての出願について一次審査期間を平均十二カ月とする、かなりハードルの高い自主目標をお掲げになりました。しかし、平成十二年現在、特許、旧実用新案では二十一カ月間かかっておりますし、意匠では九カ月、商標では十一カ月、相変わらずまだまだ道は遠いわけでございまして、特許については未処理件数が依然として増加傾向にある、このような状況でございます。
 発明が複雑化し高度化する中で、審査期間の長期化問題というのは外国からも指摘を受けております。権利付与の早期実現というものは非常に大きな課題だと思っておりますが、この自主目標は事実上困難でございますが、最も大切なのは、いろいろな議論がございましたが、審査期間の短縮、これは知的財産権の大きな課題の一つと考えております。
 大臣は、この自主目標達成ができなかった理由はどこにあるとお考えか、また、どう取り組んでいけば自主目標が達成できるとお考えなのか、御所見を賜りたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 委員御指摘のように、平成十年、特許庁として、平成十二年を目標に一次審査期間を平均十二カ月にしよう、こういう目標を立てました。いろいろ努力をしてきたところでございますけれども、近年、知的財産の重要性に対する認識の高まり、それが背景にございまして、さらには、創造的な技術開発でございますとか、それの進展、これも加速されてまいりました。
 そして、大変申しわけないことでございますけれども、私どもが当初予想した以上に、審査請求件数でございますとか国際特許出願件数が非常に大きく増加をいたしました。さらに、技術の高度化、複雑化によりまして、それまで、例えば平成九年を例にとりますと、審査時間が二百六十分であったものが、これが二年後の平成十一年に三百十分にもなるというようなことが起こってまいりました。こうした審査の負担の増大というのは非常に大きなものでございまして、この傾向は我が国だけの傾向じゃございませんで、今申し上げたような背景で世界各国でもやはり同様のことが起こっております。
 さはさりながら、私どもとしても、いわゆる戦略会議を立ち上げて、これを国の重点としてやってまいりますので、第一次目標は達成できませんでしたけれども、しかし、審査の的確性と迅速性、そして一日も早い権利設定、これをしなければなりませんので、適正な審査官の確保と、それから先ほど来御議論が出ておりますけれども、いわゆる外部能力の活用、こういったことを組み合わせて私どもは目標を達成していかなきゃいけない、こういうふうに思っているところでございます。
河上委員 ありがとうございました。よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次に、特許法三十五条の職務発明についてお尋ねを申し上げたいと思っております。
 実は、二〇〇〇年十一月十六日、この問題等で画期的な判決が出ました。それは、東京地裁がオリンパス光学工業の訴訟につきまして判決を下したわけでございますが、その理由といたしまして、会社側が一方的に定めた規則に拘束される理由はないとした上で、特許法の趣旨からすれば、報奨金額などが発明の対価に満たなければ、発明者は不足額を要求できるという趣旨でございました。昨今、青色発光ダイオードの訴訟等もございますけれども、このオリンパスの訴訟は、会社側から発明した元社員に二十一万円の報奨金を支払ったわけでございますが、受けた元社員は、正当な額ではないとして、二億円の支払いを求めて提訴した判決であるわけでございます。
 このような実態を見ますと、発明意欲や研究意欲はなかなか起きないんだろうなという感想を持ちますし、発明者が正当に評価されないのでは新たな発明も特許も生まれません。これでは、知的人材である研究者が海外に流出してしまうということもうなずけるわけでございます。
 だからといって、こうした企業ばかりではない。例えば、制御機器メーカーのオムロンでは、九九年四月に、業績に貢献した特許を取得した社員に対しては最高一億円のボーナスを導入するということを決めたそうでございますし、また、環境関連製品のメーカーでは、社員が考案いたしました特許並びに実用新案が業績に貢献をしたと判定するならば、年間粗利益の一%をその社員に渡す、こういうこともなくはないわけでございまして、いろいろ多岐にわたっているなというのが実感でございます。
 そこで、特許法の三十五条の職務発明に係る相当の対価を初め、この三十五条全般にわたりまして、適正な取り扱いというものを検討するお考えはありますか、ありませんか。
及川政府参考人 御指摘のとおり、職務発明をめぐる問題については大変いろいろな御議論が現在なされているところでございます。
 特許法三十五条第一項では、職務発明につきましては、原則として特許権等は従業者に帰属し、企業の方は無償の通常実施権を有する。ただし、その場合、勤務規則などの定めによりまして、特許権等を企業に承継させる場合には、従業者には相当の対価を請求する権利がある、こういうふうになっているわけでございます。
 これらの規定につきましては、企業者それから従業者それぞれのバランスをいろいろ考慮してできている条文でございまして、いずれにしろ、当然、発明に対するインセンティブを高め、結果として我が国企業の産業競争力を高めるための規定ではございます。また、この相当の対価というのは、対等の立場にあるとは言いがたい従業者と企業との間の関係を調整する側面も有しているわけでございます。
 いずれにいたしましても、現在さまざまな御議論がございますので、我が国企業におきます報奨金制度の整備状況でございますとか、欧米におきます発明成果をめぐる従業者と企業の間の法律関係の十分な実態把握、それから、現在、特に従業者の方たちの御意見というのが必ずしもはっきり統計的に明らかになっておりませんので、数千人規模のアンケートを私どもで実施させていただいておりまして、これらの結果を踏まえまして、御指摘の、望ましい職務発明制度のあり方について検討させていただければというふうに思っております。
河上委員 長官は、三十五条の中身を御説明いただきました。まさに私はそれを指摘しているわけでございますが。
 東京地裁の二〇〇〇年十一月の判決というのはその意味でも非常に重いわけでございまして、全く裏腹の関係にあるわけでございまして、個別的な事情等を勘案しながらということも十分理解するところでございますが、ぜひとも、さらに積極的な御検討をお願い申し上げたいと思っております。
 それから、もう一つ特許につきまして、従来、特許については、出願から審査請求までの期間、七年間であったものが平成十三年十月の改正で三年以内になりました。我が国は先願主義をとっていることから、この間、とりあえず企業防衛的な観点から出願や審査請求をしているというのが実態であるように考えます。大企業ほどその傾向が顕著であるということも聞いておるわけでございます。ちなみに、ヨーロッパは日本と同様の先願主義をとっておりますが、期間は二年間となっております。
 このような玉石混交の審査請求構造を是正するための方策について御見解をいただきたいと思います。
及川政府参考人 御指摘のとおり、我が国の出願動向を見ますと、市場の規模あるいは研究開発の投資額から見ますと、確かに出願数、審査請求件数が多いのではないかと思います。その反面、残念ながら、特許になる率、それから外国に対する出願化の比率というのは欧米に比べて低いという特徴を持っているかと存じます。こうした傾向というものが、企業におきます重複的な研究開発投資ですとか、必ずしも効果が大きくない特許出願につながらなければよいがというふうに思っております。
 こうした観点から、御審議いただいております特許法等の改正案におきまして、ぜひ今回、先行技術文献の開示制度の導入を行わせていただきたいと思っているところでございまして、こういう中で、いわゆる玉石混交と言われます石の部分というのが排除されて、強い特許として出願をしていただければというふうに思っている次第でございます。
河上委員 あと、つい先日出ました証券化の話についてお尋ねを申し上げようと思いましたが、ただいま紙が入りまして、終了ということでございます。延長させてはいけませんのでこれで終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 特許法等の一部を改正する法律案、弁理士法の一部を改正する法律案に関連して、三問お尋ねをしてみたいと思います。
 我が国の競争力を強化し、現在の厳しい経済情勢から抜け出すということは大変重要であり、そのためには知的財産権をてこにするという政策は極めて重要であることは、与野党問わず、政府、議会を問わず、共通の認識であるというふうに私は思います。知的財産という概念には、特許のほかにも、商標権、いわゆるブランドを保護する、それから意匠権、デザインを保護する、こういうものがあるわけであります。
 特にブランドにつきましては、その価値というものは経営戦略上極めて重要であることは言をまたないわけでありまして、ブランド志向という言葉があるように、ある種の信頼というものを意味するわけでございます。ところが、残念ながら我が国の企業のブランドというものが世界的に余り評価をされていないという事実を私はまず指摘をして質問に入りたいと思うのであります。
 実は、アメリカで発表されているアドマイアードカンパニーというんですかね、称賛をされる、褒められるというか、そういう期待を込めて見られている企業、毎年世界で七つほどアメリカ以外の企業が入っておりまして、その中に日本のトヨタを筆頭に、ホンダ、ソニー、この三社が入っております。それ以外についでに言うと、ネッスルがスイスの代表で入っているし、ノキアがフィンランドの代表で入っているし、もう一社、ブリティッシュ・ペトロリアムでしたか、どこかが入っているんですね。だから日本は、アメリカ人二億人に、トヨタ、ホンダ、ソニーは知られているんだけれども、残念ながらそれ以外の企業は余り知られていないということは言えるわけであります。
 それから、アメリカのインターブランド社という会社が毎年発表しております魅力のあるブランド、世界のブランドランキングというのがあるんです。そのトップテンの中には残念ながら日本の企業は入っておりません。トヨタが十四位、ソニーが二十位にとどまっているにすぎないのであります。
 今、このブランドというものに私どもが重きを置くならば、もっともっと、いかにしてブランド価値というものを国策として高めていくか、企業の努力はもちろん一生懸命されているわけでありますが、それをバックアップする、そういうブランドの保護をするいわゆる商標法のあり方が問われるわけでありまして、今回の特許法の改正とあわせて、商標法も、社会のIT化でありますとかそういう状況を踏まえて変えなければならないし、変えられるものだ、こういうふうに思っておりますが、特許庁におかれましては、これにつきましてどういうふうに考えておられるか、長官に伺いたい、こう思います。
及川政府参考人 西川先生御指摘のとおりでございまして、商標はまさに信用を代弁するものでございますので、その保護というのは、企業トータルを保護するのに値するようなものではないかというふうに思っております。
 商標制度は、まさに、商品や役務に使用されます標識の保護を通じましてビジネス上の信用を維持し、商品やサービスの需要者の利益を保護するということが目的でございます。したがいまして、現実世界のビジネスに用いられます商標と同様に、サイバースペース上において用いられます商標についても同等の保護を図らなければいかぬというふうに思っているわけでございます。
 しかしながら、現在の商標法でございますと、条文の規定が、何らかの有体物に付して使用される商標を念頭に置いておりますので、ネットワークを利用した事業活動に必ずしも対応できていないのではないかという懸念がございます。
 このため、今回の商標法の改正で、パソコンで稼働させるとパソコン画面上に商標が表示されるソフトウエアをインターネットを通じて販売いたしましたり、パソコン画面上に商標を表示しながらインターネットを通じて役務を提供するような場合などについても、これに使用されます商標につきましても商標法による保護が及ぶということを明確にしたものでございます。
 今回の改正によりまして、ネットワーク上での事業環境を支える制度整備が促進されまして、今後爆発的に増大すると思われます電子商取引の健全な発達に寄与することを期待しているところでございます。
西川(太)委員 あと二問、個別的なことを伺って、最後に大臣に総括的な御意見を承る形で質問させていただきます。
 知的財産権には、プロパテントという言葉で代表されるように、単に特許だけではない、今申し上げましたブランドでありますとかデザインでありますとかノウハウでありますとか、そういうようなものが育てられ、保護されていくということが大事であるということは言うまでもありません。そうした知的財産権すべてを見通して、見渡して、そしてそれをより広い視野から保護育成していくという政策が必要だろう、こういうふうに思うわけでありますが、これについての特許庁の姿勢を承りたいと思います。
及川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、知的財産権、まさに最近、いわゆる工業所有権から知的財産権とか、そういう形での御議論が一般的になってきたわけでございます。
 情報化社会になりまして、今、商標のところで申し上げましたように、インターネットの中でさまざまな情報が飛び交う中で、ソフトウエア自体も取引させられるというような時代になってまいりました。こういう大変便利な時代でございますけれども、同時に、情報財でございますので、大変模倣されやすい時代でございます。
 そういう観点から、挙げてその保護の強化を知的財産一般について図るというのが私どもの基本的なコンセプトでございまして、そういう点では、著作権法の方も別途その手当てを既にされているところでございまして、今回、特許法、商標法等におきまして、この知的財産権の保護を情報化時代において図るということを目的として改正をさせていただければと思っている次第でございます。
西川(太)委員 知的財産権はまさに財産として流通することが活用の前提になっているわけでございまして、これは極めて大事なことであります。そういう意味で、知的財産権の流通を活性化させ、知的財産流通市場というものを仮に想定して、そういうものを拡大させるということ、これは大事なことだろうというふうに思います。
 特に中小企業にとって、契約に係る専門的知識を有する専門家のサポートというのは不可欠ですね。大きな組織を持っているわけじゃないし、知的な人材を多数用意しているわけでもありません。そういう意味では、社外における専門家である特許の、特に知的財産の専門家である弁理士の先生方の活躍というもの、またこういう先生方の力というものを容易に身近に使えるということは大変重要なことだろうというふうに思うわけであります。
 平成十二年の新たな弁理士法制度によって、弁理士の先生方が著作権も含めた知的財産にかかわるライセンス契約の代理人になることができるように業務の大幅な拡大がされて、近ごろこれが施行された、こういうふうに聞いて喜んでおるわけであります。
 知的財産流通の担い手、またはそれをサポートする専門家としての弁理士の方々の役割に対する期待、これが極めて大きいと思うのでございますけれども、この弁理士をこれからどういうふうに、この制度をしっかり育てていくかということは特許庁の大きな役割だろうというふうに思います。
 物まねをする国とか言われて、にせものがあって――時間があるから余計なことを言うんじゃないんですが、昔、上野のアメ横へ行くと、メード・イン・USAと書いてあって、買ってくるんですよ、みんな。どこがUSAなんだ、これはにせものなんですね。昔ですよ、昔。これはUSAと読むからいけないんだ、メード・イン・ウサと読むんだ、こういううそみたいな話が実際あったんですよ。
 しかし今や、どこ行っても、しっかりしたブランドのものが日本に入っている、同時に、日本は、日本のブランドを世界に売っていく、こういう時代になっているわけでありまして、弁理士さんというのは、そういう意味では中小企業も育てて、特許というもので知的財産、ブランド、デザイン、そういうもので日本の経済をしっかり支える、こういう人たちを保護する法律が今回改正されるわけでありまして、大臣にこれについての御見解を承りたい、こう思っております。
平沼国務大臣 今、西川先生が平成十二年の弁理士法の改正のことまで言及されて言われました。やはり弁理士の先生方が、御指摘のように特に中小企業、あるいはこれからの知的な経済社会をつくっていくために有力なサポート役として機能をしていただくということは非常に重要なことでありまして、今回の法改正も、その趣旨にのっとって、さらにそれを一段進めよう、こういう形でやらせていただいたわけであります。そういう意味で、きょう、先生の御質疑の中で、特許権だけではなくて、商標ですとかデザインですとかブランド、そういったものは大切だというのはそのとおりであります。
 私も、ベトナムに出張したときに、ホンダのオートバイが物すごく走っているので、これだけすごく走っているなとじっと見たら、間にGが入っておりまして、HONGDAというブランドがありまして、これは日本のお隣の大国から大量に入っている。そういう意味では、ブランドというものも守るということは非常に大切です。
 ですから、そういう意味で、今回もいわゆる知的財産の戦略会議を立ち上げさせていただいて、そういう中で、日本が知的な財産というものを保護しながら日本の経済を活性化していく、そして守るべきそういう権利というものは守っていく、そしてまた、諸外国に対してもそういったものの重要性を訴えていく、そういう形で、私どもは知的財産の戦略というものを御指摘のようにしっかりとしていかなきゃいけない。それは、特許でございますとか著作権以外にも、御指摘のような広範な範囲にわたって我々は万全を期していかなきゃいけない、そこに二十一世紀の日本の経済発展のかぎがある、そういうふうに思っておりまして、私どもとしては、これから一生懸命やらせていただきたいと思っています。
西川(太)委員 享保年間に、我が国の教育機関は、藩校から寺子屋に至るまで三千を超えたんですね。そして、ドーア先生の研究によると、そのころの識字率は、スコットランド、プロイセンと並んで日本の識字率は高かった、そういう知的な伝統を持っている我が国。もう米と石灰石と野菜ぐらいしか自力で供給できない。人間の知能、それが我が国の財産。これを、物まね大国から独創的なブランド、製品、特許、こういうものがしっかり守れる日本、これに生まれ変わってきてもう何年もたつわけであります。
 高橋是清さんが特許庁を起こしたその精神を我々は受け継いで、知的財産権で世界を救っていく日本、こういう国にならなきゃいけないなと、こう思っております。その期待を込めて、私はこの法案に賛成をするつもりで質問をさせていただきました。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより両案に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、内閣提出、参議院送付、特許法等の一部を改正する法律案について採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
谷畑委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、竹本直一君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び宇田川芳雄君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まずは案文を朗読いたします。
    特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 近年の特許等出願件数の急増及び国際出願の増加にかんがみ、先端技術分野における審査能力の一層の向上や先行技術調査に係る民間活力の積極的援用を含め、審査期間の更なる短縮を図り、特許権等の迅速かつ的確な権利付与に努めること。
 二 人材の流動化と能力主義の導入が進むなかで、職務発明に係る知的財産の適正な取扱いや、成果に見合った研究者の適正な処遇による我が国への「知恵」の集積の促進等について、所要の検討を行うこと。
 三 近年の営業秘密の漏えいや不正使用、アジア地域における模倣品被害の拡大等にかんがみ、我が国における研究開発や知的創造活動の成果について、その適切かつ実効性のある保護のあり方、我が国産業の国際競争力強化に資する戦略的な活用のあり方等に係る必要な施策の検討に早急に取り組むこと。
以上であります。
 附帯決議の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
谷畑委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
谷畑委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 次に、内閣提出、参議院送付、弁理士法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
谷畑委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、竹本直一君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び宇田川芳雄君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    弁理士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 弁理士に対する訴訟代理権付与に伴う研修及び試験のあり方については、研修の修了基準や試験の細目等について、その実施状況にかんがみ不断に見直しを行うとともに、その実施について、弁理士の更なる地域偏在を助長することのないよう配慮すること。
 二 弁理士の先端技術分野に係るバックグラウンドを充実し、国際的な業務展開能力を涵養するため、弁理士の業務研修のあり方等、弁理士の専門性向上に係る必要な施策について検討を進め、弁理士の資質の向上を図ること。
 三 弁理士の知的財産関連訴訟への関与のあり方については、特定侵害訴訟における弁理士の単独出廷について、弁護士との共同出廷の原則を踏まえつつ、その柔軟な運用に配意がなされることを期待するとともに、利用者のニーズを十分に踏まえ、将来的に弁理士の専門的知見の訴訟審理へのより的確な反映がなされるよう、弁理士の単独受任と弁護士法との関係等を含めて、広範な論議を進めること。
 四 近年、知的財産権紛争が急速に国際化している状況にかんがみ、弁理士の訴訟代理権が国際的な整合性を確保できるよう更に検討を進めるとともに、国際的に通用する知的財産専門の人材の育成に努めること。
以上であります。
 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
谷畑委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
谷畑委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、両附帯決議について平沼経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 ただいま決議されました両法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、両法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
谷畑委員長 次に、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。
    ―――――――――――――
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
片山国務大臣 ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる独占禁止法については、平成九年の一部改正法の附則第五条において、政府は、法施行後五年経過後に、事業支配力の過度集中を防止する観点から、設立等が禁止される持ち株会社の範囲、大規模会社の株式保有総額の制限の対象となる株式の範囲等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされております。
 また、政府は、昨年三月末に閣議決定した規制改革推進三カ年計画において、現行の持ち株会社規制、大規模会社の株式保有総額制限等について検討し、平成十三年度中に結論を得て、平成十四年度中に所要の措置を講ずることとしております。
 今回は、これらの閣議決定等を踏まえ、会社の株式保有の制限に関する規定の改正を行うべく、また、これにあわせて書類の送達規定等についての規定の整備及び法人等に対する罰金の上限額の引き上げを行うため、ここにこの法律案を提出した次第であります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、大規模会社の株式保有総額の制限に係る規定を廃止することとしております。
 第二に、現行の持ち株会社規制を、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等を禁止する規制に改めることとしております。
 第三に、金融会社による他の国内の会社の議決権保有制限の対象範囲を縮減することとしております。
 第四に、書類の送達について、外国における送達規定である民事訴訟法第百八条の規定を新たに準用する等、書類の送達規定等についての規定の整備を行うこととしております。
 第五に、私的独占、不当な取引制限等の違反について、法人等に対する罰金の上限額を五億円に引き上げることとしております。
 なお、これらの改正は、一部を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
谷畑委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十八分散会


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