衆議院

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第15号 平成14年5月17日(金曜日)

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平成十四年五月十七日(金曜日)
    午前九時十五分開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 栗原 博久君
   理事 竹本 直一君 理事 中山 成彬君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 達増 拓也君
      伊藤信太郎君    小此木八郎君
      大村 秀章君    梶山 弘志君
      阪上 善秀君    根本  匠君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      茂木 敏充君    保岡 興治君
      山本 明彦君    生方 幸夫君
      川端 達夫君    北橋 健治君
      後藤 茂之君    今野  東君
      中山 義活君    松原  仁君
      山田 敏雅君    山村  健君
      漆原 良夫君    福島  豊君
      土田 龍司君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      西川太一郎君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   議員           甘利  明君
   議員           伊藤 達也君
   議員           亀井 善之君
   議員           細田 博之君
   議員           河合 正智君
   議員           斉藤 鉄夫君
   議員           小池百合子君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁長官) 河野 博文君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  松本  龍君     今野  東君
同日
 辞任         補欠選任
  今野  東君     松本  龍君
    ―――――――――――――
五月十日
 使用済自動車の再資源化等に関する法律案(内閣提出第八六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 エネルギー政策基本法案(亀井善之君外六名提出、第百五十三回国会衆法第六号)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 第百五十三回国会、亀井善之君外六名提出、エネルギー政策基本法案を議題といたします。
 お諮りいたします。
 本案につきましては、第百五十三回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
 エネルギー政策基本法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
谷畑委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る二十一日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、政府参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁長官河野博文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山村健君。
山村委員 おはようございます。山村です。
 厳しくやれというやじも飛びましたが、厳しくといいましても、私は本来人がよ過ぎるものですから、優しく、論理的なお話ができればなと思うんですが。
 まず、本案の立案に当たって、そもそも、すべての法律案といいますか、新しく立法しようとするときには、そのときの社会的な背景、そして国際的な状況、そして市民意識といいますか、いろいろな要素がバックボーンとしてあると思うんです。
 今回、議員立法という形で上げられた提出者の皆さんにまずお伺いしたいのが、現状認識という意味で、経済状況、そして国際状況、国内の政治状況もあるんですが、そして市民社会というような今日のあり方、それと、やはり環境というものを基軸とした新しいトレンドの中で、どのような社会認識のもとにこの立法を進められたのかということをまずお伺いしたいのです。
甘利議員 エネルギーの情勢というのは、一見落ちついて平穏に推移をしているというふうに感じられますけれども、実は一皮めくると、これは不安定要素が物すごくあるわけでございます。
 例えば石油でいいますと、日本はほぼ一〇〇%輸入でございますし、そして、一次エネルギーに占める比率は、現時点でも五二%でございます。調達をしてくる先が、中東が主でありますが、一極集中をすると、何かあったときに非常に危険であるということで分散を試みましたし、あるいは、もちろん石油依存度というのも、かつては七十数%あったと記憶しておりますが、省エネあるいはエネルギー源の多様化ということで低減を図りました。しかしながら、現状では、中東依存度はかつての六八からまた八七まで上がってきていて、脆弱な体質になっているわけでございます。
 一方で、環境問題が昨今非常に大きな地球的課題になっております。COP3で日本がCO2の削減の約束をしましたときにはある前提がございまして、それは御案内のとおり、これから二〇一〇年までに新規の原発を大体二十基ぐらい新増設できるのではないか、そうするとどのくらいはじけるなと。最新の原発というのは、石炭火力に置きかえますと、二基でCO2一%の削減効果ぐらいがあります。そういう皮算用をして、じゃ、これくらいの、六パーという数字をオーケーという方向が出たんですけれども、実は、現状認識が非常に甘かった。結局、十基からせいぜい十三基が目いっぱいであろうと。そうすると、それ以外のエネルギー調達を他の火力でしてくることになるとCO2の約束が果たせないではないかと。
 いろいろな要素が水面下にあるわけでございまして、何となくこのままでうまくいくと思われるけれども、実はそうではないということがだんだんはっきりしてきたわけでございまして、現在、中期長期に抱えている課題の整合性をとって、どういうふうに計画的、戦略的にエネルギー政策を進めていくかということを考えてこの法案を策定するに至ったということでございます。
山村委員 せっかくですので、副大臣の方に同じようなことを聞きたいんですけれども、副大臣としてのエネルギー戦略というのはいかがなものか。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 委員の御指摘は、今エネルギーをめぐる世界の状況あるいは国内の状況がどうなのか、あるいはこういった法案を立案するに当たっての基本的な考え方という趣旨の質問だと思います。
 今、甘利委員の方からお答えをされたことに私は尽きると思うんですが、ちょっと視点を変えまして、では、国際環境というのはどういう状況なのか。これを見ますと、世界各国が経済発展をするためには、エネルギー政策、エネルギーの確保というのは不可分でございまして、一方では、世界的には非常に今人口が急増をしております。特に途上国を中心に急増しておりますし、また、そういった国も急激な経済発展をしているという状況がありまして、さらなるエネルギーの需要というのが見込まれるわけでございます。
 一方では、今、甘利委員の方からも指摘がありましたように、どうしても化石エネルギーというのは有限資源でもございますし、中東にその分布が偏っている、そしてまた、中東には政治的な不安定性というものもあるわけでございまして、こういった懸念材料がございます。
 また、九〇年代になりますと、いわゆるエネルギーの上流から下流までのグローバルな競争というものが、これは共産圏を含めてでございますけれども、実際に発生をいたしております。
 また、もう委員も御承知のように、今般、地球温暖化大綱を私ども策定させていただきましたけれども、九〇年代に入りましては、環境問題、特にその中の地球温暖化問題に対する対策というものがもう避けて通れなくなっている、こういった状況がございます。
 一方、国内問題で見てみましても、歴史的にひもといてみても、我が国が初めて官営八幡製鉄をつくりまして、これは百年余り前でございますが、いよいよそういった大規模な生産をして、それには大変なエネルギー消費を伴います。そして、御承知のように、日本は官主導で急速な経済発展をしたということでございます。
 第二次世界大戦を経て、急速な経済発展にはエネルギーの確保というものが不可欠でございまして、むしろ経済政策を中心にエネルギー政策というのを考えてきた。その結果、環境問題にも大きな悪影響を及ぼしました。
 そして、やはり我々が忘れてならないのは、第一次、第二次オイルショックということ。これによって省エネというものを私どもしっかりと身につけることができたということでございます。
 ただ、そこを、そういった需要あるいは供給の両面において、私どもはしっかり踏まえておかなければいけないのは、やはり国民一人一人のエネルギーに対する意識というものをしっかり高揚していただくということだと思います。特に、地球温暖化大綱におきましても、環境と経済の両立、そしてもう一方では、国民一人一人の意識改革が必要なんだという趣旨の記述もございました。私どもは、やはりそこが大変重要な視点ではないかなというふうに考えております。
 そして、こういった環境の中で、エネルギー政策には三つの柱があると思っております。まず、安定的な供給をするということでありまして、もう一つは、環境に優しい、二点目でございます。そして三番目は効率化。この三つの、一見すると相矛盾するような政策をいかにバランスよく取り入れることによってエネルギー政策を実現していくか、これが非常に重要ではないかな、こういう認識でおります。
山村委員 まさに問題点といいますか、その現状認識、そこの立脚の上にということでは、私どもの方も非常に近いところにはあるんですけれども、ただ、今回、エネルギー政策基本法案というような形で基本政策、そして副大臣の方からも、今まさに、その戦略的な意味合いも含めて現状認識の中で御答弁をいただいたわけなんですけれども。
 ただ一点、私ども民主党と、法案を提出された与党側の皆さんとの違いというのを若干感じるところといいますと、まさに、先ほど副大臣おっしゃられたように、今までのエネルギー政策は経済を基軸とした、経済政策を基軸とした中でエネルギーの需要はどれだけ必要なんだという予測のもとに原子力発電所を、環境問題というのも踏まえた上で二十基、現状はそれが十基、十三基というような予想に対して手当てをしていこうと。その基軸というのは、やはり経済というものが原点にあるように思うんです。
 すべて政策というものは、現状認識プラスその基点があり、基軸がある。基軸の部分は経済政策というのはわかるんですが、その基点というのをどちらに置いてみえるのかなということをお伺いしたいんですが、これもまた提出者の皆さんと副大臣、それぞれお答えいただきたいのです。
亀井(善)議員 今、提出者並びに副大臣からもいろいろ御説明がありました。やはりそれぞれその都度、総合資源エネルギー調査会で、その時代の要請にこたえまして、経済状況にこたえましていろいろ、高度成長の時期におきましては低廉あるいは安定供給、こういう視点から、また、石油危機のときには供給最優先、こういうことであるとか、あるいは今日、市場原理の問題、あるいは環境保全の問題ですとかエネルギーの需給安定、こういう、いろいろとその都度報告が出ておるわけであります。
 これらのバランスということが必要なわけでありまして、ばらばらにいろいろなものが出ておるわけでありますが、これを、個別のものでなしに、やはり一つの報告として調査会から出ておるわけでありまして、これを基本戦略として、基本計画として決定することが必要なことではなかろうか。
 こういう意味合いにおきまして、今回、基本戦略目標、こういうものを法律として明確にするというのが本法律案の考え方であるわけでありまして、ぜひひとつ、そのような視点に立っているということを御認識いただきたいと思います。
古屋副大臣 この法案の基点をどこに置くか、これはあくまでも議員立法でございますので、私の方は、基本的な考え方という視点に立って答弁をさせていただきたいと思います。
 エネルギー政策を立案するに当たっては、国民の各界各層に大きな影響がある問題でございますので、やはりそういった皆様方の間の理解と議論が私は絶対必要だと思っております。
 したがって、今度の法案が作成される過程においても、あらゆる場を通じまして、そういった意見を聞きながら法案の中に反映をされているのではないか、私はそういうふうに考えております。
 実際に国民各界各層の意見を聞くという視点に立った場合に、私どもには総合資源エネルギー調査会というのがございまして、ここに部会がございますけれども、ここの部会も、ちなみにメンバーを見てみましても、例えば飯田先生のような風力発電のスペシャリスト、こういった先生もございますし、また評論家の木元先生、それから労働組合代表で連合の副会長妻木さんとか、あるいは市民活動家の皆様方にも入っていただいております。例えば、核クリエーターの中村さんとか、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の三村さん等々、幅広い、産業界だけではなくて、やはり生活者の視点に立った意見を述べていただけるような方々も人選に加えまして、総合的な見地から我々はエネルギー政策を推進していく、こういう立場でおります。
山村委員 予想外に、生活者の基点というような言葉が政府の側から出たということはどういうことなのかなというようにも思うんですけれども、まさにそれは私どもがずっと言い続けてきた、単純な構図としてあえて言わせていただきますなら、政府・与党側はどうしても権力を持ってみえますから、上の方、お上の方からおろしてくる、いわゆる官主導であり、政治主導でありといいますか、権力のある上から物を言っている。
 我々野党といいますか、特に私どものような一市民から出てきた人間にとりましては、NPOだ何だを含めまして市民のサイドから、まさしく、民主党として言い続けてきたのは、納税者の立場から、勤労者、労働者、そして生活者基点というような形で、国民の皆さんからよく、自民党も民主党も言っていることは、政策としては同じようなことじゃないかと言われるんですけれども、その基点となる立脚点といいますか、基点が違いますよというような御説明をさせていただいているわけですけれども。
 今副大臣の方からも生活者基点というような言葉をいただいたこと、小泉改革、まさに同じなんですけれども、言葉は非常に近いんですけれども、やっている中身がなかなか、この一年、そこまで近づいていただけなかったというようなことも非常に私自身痛感しているところなんです。
 今回のこのエネルギー政策基本法案というのは、小泉内閣が誕生してから後、まさしく昨年の百五十三国会から始まっておるわけなんですが、これは、経済産業政策の中のいわゆる小泉改革の一つとして考えさせていただいていいのかどうか、まず、その辺のことをお伺いしたいんですが、いかがですか。
細田議員 小泉構造改革ですね、きょう付の官邸のホームページを見ると、十一ページにわたってもうさまざまな懸案事項が書いてございます。
 しかし私は、構造改革の基本は、官と民との役割分担、規制緩和をするということ、それから、官における経費が余りにも大きいことから、国家公務員も地方公務員も特殊法人も含めて、ここに使う税金の額をいかに減らせるかということが一つの大きな柱だと思っておりますが、そのほかに、教育、福祉、環境等がございます。
 エネルギー問題に関連していえば、世界的には今やはり石油危機に近いんじゃないか。中東問題があるぞということがございまして、エネルギーについて、消費の方も合理化しなければならないし、供給源の方も考えていかなきゃならないという状況にある。
 それから、CO2問題にも対応するためにエネルギー問題は非常に重要である、そういった位置づけもあると思いますが、このところはエネルギー問題が大きな焦点になっておりませんでしたので大きな課題として取り上げられておりませんが、二十一世紀の非常に大きな課題であるので、今のうちに基本法をきちっとつくって方針を固めていかなきゃならない、これがいわば構造改革の一環であると思っております。
山村委員 構造改革の一環ということ、そして現状の認識の中にも、今まさにその中東問題というのが、危機管理といいますか、まだそこまで浮上していないから、今基本法をつくっておいたらいいんじゃないかというような御答弁ではあるわけなんですが。
 関連した質問になるわけですが、きょうは政府の方から副大臣に御出席いただいているので、副大臣に関連してお伺いしたいのです。
 余分なことかもわかりません。平時のときに予想される危機に対して考えるということからいたしますと、他省庁といいますか、すべて政府にとっては関係あると思うんですけれども、有事の立法とこのエネルギーの基本法というのと、優先順位としては、個人的な見解で結構でございます、どちらを優先されて考えた方がいいとお考えなんでしょうか。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 政府としては、いずれも極めて重要な問題でございまして、ある意味では危機管理という観点からも共通をいたしておりまして、それを甲乙つけるということはできないと思いますが、いずれにしても、両方とも極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。
山村委員 まさにおっしゃるとおりなんですけれども、どちらかといえば、現実的な問題としましては、それは両方とも必要な法案かとは思うんですけれども、経産省副大臣という立場でございましたら、現実的には、中東がそういう状況でもございます、できましたら、こちらのエネルギーの基本政策ということを早急に政府の方としても検討していただければなと思うんです。
 それで、今回の法案に戻ります。
 本法案の十二条四項の中に、生活者基点という言葉で先ほど御答弁いただいたんですけれども、どうも閣議決定のみで公表してしまうというような文言がございます。特に、今回の法案は議員立法という基点で進められてこられたことですので、なおさらのこと、やはり国民の意思をそのまま負うということであるならば、国会の承認ということを優先して付加したらいかがなものかと思うんですが、どうですか、提出者の皆さん。
甘利議員 生活者の視点というお話がまずありましたが、第一条の目的の中に、経済社会ということのみならず、国民生活の安定向上ということを第一項目めでうたっております。
 そして、閣議決定でいいのかと。基本計画というのは、この政策基本法の中の哲学と言われる政策目標があります。環境と、それからセキュリティーと、そして経済合理性、この視点の中で、中長期をにらんで基本計画をつくるということでございます。
 その際に、経済産業大臣が総合エネ調に諮るわけですね。そこの中には、メンバーも大変に幅広く参加をいただいているというお話が政府からありました。あわせて、関係する行政機関の長の意見を聞くということも入っているわけでございます。これは、環境大臣もあれば国土交通大臣もあれば、このエネルギー基本計画にかかわる大臣の意見を聞くということになっておりまして、それで、あわせて閣議決定を行うということになっております。
 なお、この基本計画、大体十年ぐらいを見通して定性的に方向性を示すということになりますけれども、それを具体的な施策として落とし込んでいるのが、年次ごとに講じた施策、エネルギー白書とでもいうんでしょうか、それは報告をするわけですね。
 国会承認という議論は、御意見を述べられる方、何人かいらっしゃいます。ただ、基本法の中における基本計画というのは、他の基本法にも共通していることでございまして、恐らく基本法の中に基本計画が位置づけられているのは十近くあると思うんですけれども、どれ一つも国会承認という段取りまではとっておりません。
 そういう、この種の基本法、言ってみればその分野における憲法をつくるときには、他との整合性ということも考えなくちゃいけないと思いまして、そこで、こういう書き方で十分その使命を果たすのではないかというふうに考えております。
山村委員 まさに言わんとしていることは理解できるんですけれども、昨今の政治状況、そしてまた、今、中東問題という短期的な問題もございました。特に、外務省というような、他省庁ではございますが、外務省のいわゆる官僚の皆さんというか現地の大使の皆さんが中東の状況の報告をされて、外務大臣を通じて内閣に上がって、そこで断を下されるということに対して、私どもはもちろん、国民の皆さんというのは一番信頼していないと思うんですよ。それを一言で世間では、政治不信というような言葉でうたわれているとは思うんです。
 政治も行政も一緒だと思うんです。であるなら、情報公開という観点も含めまして、今回、この議員立法をせっかくつくるのであれば、市民社会の台頭ということも含めまして、もう少し情報が公になるような形で国会での議論というのをなおさら進めていただきたいな、これは提案として次に進ませていただきます。
 今回の基本計画に向けて、同じように国民の参加といいますか地方の参加というような文言も書いてございます。では、具体的にどのように、その枠組みといいますか、地方の意見や国民の意見、今までの審議会等々のものだけじゃなく、この法案に関して参画させるのか、具体的にお答えいただきたいのです。
斉藤(鉄)議員 山村委員御指摘の点は、非常に重要な点だと思います。国民や地方公共団体の長の意見を十分に聞く、基本計画を策定するに当たって十分に聞くということが非常に重要でございます。
 ただ、具体的なその方法については、政府に具体的な方法を詳しく検討してもらうということでございますが、考えられますのは、例えば広くパブリックコメントを求める、その期間も十分置くでありますとか、また、法律の中に、この基本計画を定めるに当たって総合資源エネルギー調査会の意見を聞くということがございますので、その調査会を、例えば地方公聴会等を細かに開いて国民の皆さんの意見を聞いていく、それを基本計画に反映していくということも考えられるかと思います。
山村委員 まさに、パブリックコメントであり、識者の意見を聞く、そして地方の公聴会、今までとってこられた段取りそのままだと思うんですよ。
 このエネルギー政策で、今回私が一番問題にしたいのが住民投票の扱い。全国各地で、それは原子力発電所というものをテーマにした形で、反対側、賛成側、それぞれいろいろな住民投票条例をつくられてやっていますが、原発に関してで結構でございますが、その住民投票の扱いといいますか取り計らいというのはどのように考えてみえるのか。いかがですか。
甘利議員 このエネルギー政策基本法は、住民投票に関しまして、結論からいいますと、一切言及をしておりません。やるべしともやらずべしとも、一切言及をしていないということでございます。
 個人的に、法律がどうこうということでなくて、住民投票と国全体の政策ということを考えますと、オール・ジャパンの課題というのは一地域で完結をいたしません。住民投票というのは、その地域で完結をする。その地域で責任を持てることについて住民の意思を、全住民の意思を集結するということは当然あってしかるべきだと思いますけれども、全国民がかかわる問題を一地域の住民投票で決するということについては、私はなじむものではないという個人的な思いはございます。
山村委員 その辺の住民投票についてはもっと突っ込んだ議論をさせていただきたいところでもあるんですけれども、生活者基点ということであるのならば、やはり政府といいますか、電気事業者も含めて、ここにつくる計画があるよというときには、一地域の問題じゃなく、その地域の人の意見というのは当然入れるべきではないかと思うんです。
 時間も参りましたので次の質問の項目に移らせていただきます。
 今回の計画、中長期の基本計画という形で進められていると思うんですけれども、先ほどの答弁にもございました。中東問題を初めとして短期的な問題、そして国際状況ということを考えたときに、現状のIT社会、スピードが非常に速うございます。
 その中で、やはりその時宜に応じた基本計画の見直し、五年というように書いてございますが、もう少し短期的な見直しというのを考えていた方がいいんじゃないか。具体的には、二年とか三年とかというスパンでエネルギー政策というのは見直し項目に入れていただいた方がいいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
亀井(善)議員 今委員御指摘のとおり、国際情勢の問題であるとか、あるいはエネルギー価格の変動、あるいはまた地球温暖化の問題、エネルギーを取り巻く状況というのは時間とともに大変変化をするものでありまして、エネルギーの需給に関する基本的な計画も、このような変化に対応した見直しというのは当然必要なことではなかろうかと思います。
 しかし、一方、エネルギーの関連施設、これを計画する、準備をする、これは相当の期間がまた必要なことでもあるわけであります。そういう視点から、頻繁に基本的な計画の見直しをするということにつきましては限界もあるわけでもあります。それは、法の十二条五項のところに「少なくとも五年」、こういうことを明記しておるわけでありまして、エネルギー基本計画の検討、必要があると認めるときはこれを変更することが、これは少なくとも五年ごとにと、こういう規定を設けておるわけでありまして、原案は、五年以内の検討を排除しているわけではございませんので、ぜひ、いろいろ御意見があれば、貴重な御意見として私どもは承っていかなければならない、このように考えております。
山村委員 時間が参りましたものですからこれで私の質問は終わらせていただきますけれども、資源エネルギー庁の河野長官には、電源三法と原発立地ということも含めて御質問させていただきたかったんですけれども。
 いずれにいたしても、この基本法案の趣旨にもございます。そして、きょう御答弁いただいた生活者基点という言葉もございます。エネルギー政策というのは、住民参加といいますか、国民の意見をもっともっと幅広く聞いていただきまして、この法案というのをまた進めさせていただければと思う次第です。どうもありがとうございました。
谷畑委員長 山田敏雅君。
山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。
 エネルギー基本法、たびたび説明を受けまして、私も何回も読んだのですが、なかなか腑に落ちないというか理解できないところがございまして、特にこの言葉が、例えば安定供給の確保とか環境への適合、市場原理の活用、こういう言葉は今までさんざん総合資源エネルギー調査会で議論してやってきたことですね。エネルギー基本計画についても、これは、需給見通しをずっとやってきて、それに基づいてエネルギー庁は政策をやってきたわけですね。
 そこで、ちょっとエネ庁長官にお聞きしたいんですが、これをお読みになって、私が今言ったように、これは全く新しい言葉とかそういうことは出てこないんですね。今までやってこられたことが書いてあるわけですけれども、今のお気持ちを、私は非常に、エネ庁長官、何かばかにされたような、今までやってきたことを否定されたような、気分がよくないと思うんですけれども、お気持ちをちょっとお聞かせください。
河野政府参考人 資源エネルギー庁といいますか、経済産業省総合資源エネルギー調査会の御意見を拝聴しながら、長期エネルギー需給見通しをたびたび改定しながら策定をしてまいりました。これを基礎として総合的なエネルギー政策を実施してきたという意識でございます。
 若干淵源をさかのぼりますけれども、長期エネルギー需給見通しは、一九六〇年代の半ばに、消費が急増する、そして石炭から石油へエネルギー転換が起こりつつあるという状況の中で策定が開始されまして、その後、昨年の七月が最後の改定でございまして、十二回改定をされたという歴史を持ちます。
 この長期エネルギー需給見通しと、その策定の背景になります政策提言を基礎としてさまざまな政策を実施してきた結果、そういったこともありまして、例えば、石油についていえば、オイルショック後、七七%の依存率から五二%まで依存度が下がったというような効果もありますし、これに対応して原子力あるいは天然ガスのウエートが高まったという効果もあるわけであります。
 そういう意味で、この政策の整合性、長期エネルギー需給見通しの価値は大きかったというふうに思っておりますが、同時に、これは総合資源エネルギー調査会報告書という形で、経済産業大臣に答申という位置づけで受け取ってまいりました。
 今回のエネルギー政策基本法では、総合資源エネルギー調査会の御意見を伺う、さらには、エネルギー基本計画の閣議決定を政府に義務づけるという新しい仕組みを提言されているというふうに承知しております。これを通じまして、政府一体となった施策が各省の協力も得て総合的に推進できる体制になるというのが私の理解でございます。
山田(敏)委員 この計画では、今おっしゃった閣議決定するということなんですけれども、結局、経済産業大臣がこの責任に当たるということなので、そんなに本質的に今おっしゃったような違いは私はないと思うのです。お気持ちを聞かせてくださいと言ったのにおっしゃらなかったのであれなんですけれども。
 私は、エネルギー基本法のポイントは国の責務だと思うのですけれども、では、今まで国の責務というのはどういうふうに果たされたかと、エネルギー政策を通じて。これはよく理解なさってこの法案をつくられたと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。例えば事例をもってちょっと説明していただけますか。
甘利議員 先ほどの質問で資エ庁長官に、今まで資源エネルギー庁がきちんとやってきたではないか、そのことが、当たり前に当たり前のことが書いてある、これについてどういう感想があるのかとおっしゃいましたのですけれども、非常に重要なことで使命をエネルギー政策で果たしてこられた、そのことを政策基本法ということで明定をしたということで、感謝をしていただいているのではないかというふうに思います。
 今まで政府がやってきたことが至らなかったということを言うつもりはないのでございまして、それぞれ時代の変化、今、石炭から石油へ、流体革命以降というお話がありましたけれども、それぞれの場面で対応は迅速にされてきたと思うのです。
 このエネルギー政策基本法というのは、それぞれ大事なことをどういう関係で位置づけるか、今まで大事だと言われてきたことを全体的に体系的に、理念、哲学としてまとめるとこういうふうになるという考え方でつくったつもりでございます。
 それぞれ時代によって、安定供給が第一という時代はありました。あるいは、環境が何よりも優先をするという社会情勢がつくられたときもありました。あるいは規制改革、規制緩和万能で、とにかく安くしろという声が一番大きくなった時期、それぞれあると思いますけれども、そういう、社会が要請する、あるいは国際社会が要請する課題と、日本のエネルギー需給政策を戦略的に組み立てるバックボーン、哲学というのはこういうふうな組み立てになりますよというつもりでやったわけでございまして、今までエネルギーを所管する役所がちっとも使命を果たしてこなかったということを言うつもりは毛頭ございません。
山田(敏)委員 私の質問は、今までとこの基本法が出た後と具体的にどういうふうに変わるのか。今まで、総合エネルギー調査会で需給見通し、それに基づく政策をやってきたわけですけれども、政策についてこの国の責務ということが非常にあいまいだった、あるいは、エネルギー戦略というのは余りなかったわけですけれども、あったとしてもですね。
 例えば、プルサーマルについて新潟県の刈羽村の住民投票がございました。わずかの差でこのプルサーマルを住民が反対と。日本のエネルギー政策の根本をなす原子力政策、廃棄物の再利用、これがなければ日本のこれから先のエネルギー政策は非常に大きな問題にぶち当たる。この一番肝心なときにこの国の責務というのはいかがであったのか、それについてお聞きしたかったのですけれども、お答えいただけますか。
河野政府参考人 まず、政府としてやってまいりましたことについて御説明させていただきます。
 刈羽村で住民投票という動きになりました。それ以前からプルサーマルの必要性について、私どもとしては精いっぱい地元の皆さんの御理解を得るべく努力をしてきたつもりではございますけれども、御案内のように、住民投票ということになりました。住民投票に際しても、私どもからも申し入れをさせていただき、さまざまな意見が現地において交わされるような機会を設けていただきまして、私どももそれに参画をいたしました。
 しかし、残念なことに、先生御指摘のような結果になりまして、その反省も踏まえまして、さらに、政府全体としてこの問題にむしろより一層前面に立って対応し得るように、官房副長官主宰のプルサーマル連絡協議会をつくり、そして現地の皆さんへの理解を求める、あるいは国民の皆さん全体への理解を求める活動をさらに繰り広げているところでございます。
山田(敏)委員 今の御答弁では、本当に住民投票を国としてどういうふうに責任を持ってやったかという分析というか、反省が全然なかったと思うのですけれども。
 このときは住民集会が開かれて、東京電力及びエネ庁長官がこのプルサーマルについて説明会をやったのですね。これをもって具体的に、言葉はともかく、何をやったかということになると、政府としては、国としてこの住民集会に出かけていって説明をしました、プルサーマルは大丈夫です、こう言うのですね。しかし、よく考えてみたら、こんなことで、反対している住民の方があれを聞いたからではきょうから賛成しようか、そんなのあるわけがないんですね。
 本当に国が重要であると考えるならば、この刈羽村というのはわずか一千世帯足らずですから、本当に反対している方はわずか百世帯とか二百世帯ですね。大臣、副大臣、政務官、全部で五人政治家がいるわけですから、一軒一軒訪ねていって、本当に国のエネルギー政策の根幹をなすものだから正しく理解してくれ、こういうことがあってもよかったのではないかとこの経済産業委員会で私は言ったのですけれどもね。それで初めて住民の方は、いかに国の政策にとってプルサーマルは大事かと少しは理解することがあると。
 私、この問題をひとつ見ていて、エネルギー庁は説明会に行かれました。しかし最後は、これは東京電力の問題です、東京電力がやるんだから、というところがちらちら見えたわけですね。説明会に行って説明して帰ってきた、もうそれで終わりました、こういうことですから。これは一つの例です。まだたくさんある。
 例えばアラビア石油はどうだったか。向こうが要求していることを、二千億円あればやりますと。しかし、政府としてはやらなかった。今、石油公団の問題が出てきましたが、自主開発というのをやるために一兆五千億円のお金をどぶに捨てたわけですね。毎年三千億円使っていた。では、この二千億円、例えばあれは二十年近くだったと思います。毎年百億円払っていけば日本が自主開発をするよりはるかに安くついた、これは国の判断ですよね。ところが最後は、あれはアラビア石油の問題だから、国は重要だと思うけれども、ということが行われた。
 私がきょうお聞きしたいのは、このエネルギー基本法ができて、もっとはっきりしているのは原子力発電所の問題ですけれども、これからは、エネルギー政策というよりは環境・エネルギー政策ですね。環境・エネルギー政策というのは、市場原理、それから企業に任せるということはもう不可能なんですね。京都議定書で、二十ありますと。実際には十ぐらいしかできない。あるいはもっと現実的に言うと、もう数基しかできない。それでは、国の責務としてこれはできるのか、この新しい基本計画で。その辺をちょっとお伺いしたいんです。
甘利議員 基本法の中に三本の柱がございます。三本の柱の位置づけにつきまして、環境が大事、そしてセキュリティーが同列で大事、そしてその幅の中で経済合理性を追求するということで、若干の三つの位置づけが変化がございます。正三角形というよりは、どちらかというと二等辺三角形型だと思います。
 そして、エネルギーセキュリティーをどう図るかといいますと、いろいろな方法がありますけれども、その一つに、エネルギーの自給率を高めるということも当然ございます。では、国産エネルギーは何だ。太陽光、風力、地熱、いろいろありますけれども、準国産として原子力があるのではないだろうか。ましてプルサーマルということになりますと、再利用という観点ですから、循環型社会という視点からも議論ができるのではないだろうか。
 私は、原子力政策というのは非常に大事だと思っております。ただし、安全性についての不信感を来す事故がたくさんありましたから、それに対してきちんと対応策をとりましたということをしっかり国民に理解をしていただくということ。それから、原子力政策、なかんずくプルサーマルに関して、どういう状態なのか、どういうイメージで燃料を使っていくかということがなかなか一般的には理解しづらいんだと思います。
 例えが適当かどうか、木を燃やして炭ができる、その炭をそのまま捨てちゃうのか、炭をまさに燃料として再利用をするのか、そういうできるだけわかりやすい例えで国民に理解をしてもらう必要があると思います。
 エネルギーのセキュリティーという視点からも、供給が途絶えたとしても、原子力というのは少なくとも一年間新規燃料補てんをしなくてそのまま稼働するわけでありますし、まして使用済み燃料を再利用するという形態ができますと、エネルギー安全保障の観点からも非常に日本は選択肢がふえるということになる。そういうことが類推されるような哲学が書いてあるというふうに理解をしております。
山田(敏)委員 御意見はよくわかったんですけれども、私の質問は、今まで原子力政策についてやってきたら、京都議定書のときは、二十、新規のができますと。今は十三、十、そして現実的に見るともう数基しかできない。今おっしゃったとおり、非常に重要である、国の基本計画に入りました、国の責務が書いてあります、では、今までとどこがどういうふうに違うようになるんですかという御質問なんです。
甘利議員 エネルギー政策基本法は、理念法、哲学法でございます。エネルギー政策の哲学の中に、これこれが大事だということがきちっと初めて法律で明定をされたということでございます。行政の政策として大事ですと訴えていくのと、基本法として、こういう視点が大事ということを法律として定めているのと、かなりの違いは出てくると思います。
 もちろん、政策基本法の中に、具体的に、原子力を推進しましょうとか、プルサーマルを推進しましょうということは書いてございません。それぞれ、セキュリティー、環境、経済合理性、そういうことと、それの二等辺三角形の位置づけ等々から、戦略的に何が大事かということが検討できるのではないかというふうに思っております。
山田(敏)委員 国の責務ということをもう少し明確に、これができる、例えば地方公共団体が反対した場合、それでも原子力発電はやるのか、そういうことを少し具体的に考えた方がいいんじゃないかと私は思います。
 せっかく小池さんがお見えになっているのでちょっとお聞きしたいんですけれども、石油の中東依存度が今我が国は八七%になったんですけれども、これはどういう原因でなったとお考えになりますか。
小池議員 基本的に相対的なものでございますから、アジア等々の部分が減ったということに、それに逆の形で八七%、これは過去最高の比率ではないかと思います。これはやはり、石油の安定供給であるとか相手方との信頼感とか、あとは市場価格の問題といった、ある種、経済原理に基づいた結果かというふうに思っております。
山田(敏)委員 私もそう思うんですけれども、結局、中東原油は安くてすぐに手に入る、ややこしいことはない、幾らでも買えると。要するに、今から二十五年前の石油ショックが起こったときの状況と、今、世界の石油のマーケットが全く変わってしまったんですね、OPECが支配していた市場と。今、自由に幾らでも安いところからすぐ買える。その結果、中東が一番安くて買いやすかった、どんどんやっていったら八七%になっちゃった、こういうことだと思うんです。今まで、資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会でやってきた日本のエネルギーのセキュリティーとか、そういうのがあったんですけれども、そんなものは無視しちゃってどんどんやっていった、こういうことだと思うんです。
 では、一体、このエネルギー基本法、またその責務に戻るんですけれども、セキュリティーとしてはこうだ、中東は買いやすくて安いし簡単に入る、だけれども、ちょっと無理して南米から買ってください、そういうことは、先ほどからの御説明で、ただ理念だからそんなのは何にもないんだとおっしゃるんでしょうか、ちょっと。
細田議員 オイルショック後の日本のエネルギー源を見ますと、やはり基本的に中東依存は下げていこうという努力の跡は十分うかがえるわけでございます。つまり、石油自身への依存度が七七%から五二%に下がったことがまず第一でございますし、石炭は非中東が一〇〇%、そして天然ガス輸入はこの間に三倍にふえておりますが、中東依存度は二〇%で非中東が八〇%、そして原子力発電の比率が上がったということを総合的に勘案しますと、中東依存度というのは現時点で、エネルギー全体で見ると五割弱であると思います。
 ただ、おっしゃるように、オイルショック後に原油価格が下がったために、またアジアの需給といいますか、経済発展のためにインドネシアや中国からの輸入が減ったという事情で一時的に今中東依存度が高いんですが、我が国としては、エネルギー安全保障の見地から、カスピ海周辺とか、サハリンあるいはロシアその他アジア地域からの開発輸入をふやしていかなきゃいけないと思いますので、そういった政策は、当然エネルギー安定、この今回の基本法の精神の中で生かしていかなきゃならないと思っております。
山田(敏)委員 最後の質問なんですけれども、京都議定書でございます。
 もう間もなく批准ということなんですけれども、まさに環境・エネルギー政策の根幹をなすことなんですけれども、各界から、この京都議定書の実現性というのは非常に乏しいと。
 特に我が国の今の状況を見ますと、産業部門、民生部門で省エネルギーをやりましょうといろいろな大綱を出されたわけですけれども、これが実現するためのまず大きな問題は、さっきおっしゃったように、原子力発電所がもう既に実現性が非常に乏しくなってきた、これによって大きく削減量が狂ってきた。
 もう一つは、産業部門がもう既に省エネルギーをやり尽くしているという状況で、エネルギーの需要が少しずつふえているときにそれをさらに七%減らす。産業界の方が本音を言えば、これは実現不可能だ、そんなことができるわけないと。
 それから、民生部門について細かく、例えばシャワーを何分短くするととか細かく書いてあるわけです。それを国民に言ったら、きょうから国民がみんな、シャワーを三分やっていたけれども二分半にしようとか、非常に実現性の乏しいことが述べてあるわけですね。このままこういうことを批准してやっていくと、排出権取引で日本はお金を払えばいい、こういうことになってしまうんですね。
 ちょっと試算があるんですけれども、カーボン、トン当たり百ドルとすると、大体一兆円なんです。もうちょっと余裕を持って四百ドルとすると四兆円。これをソ連とか、特に日本は、国民の負担、ひいてはこれは産業界の負担になるわけですけれども、毎年払っていく、こういうシナリオが今はっきり見えてくるわけですね。
 そこで、このエネルギー基本法なんですけれども、最も重要な部分は、先ほど申し上げましたように、環境ということについては国の戦略、責務が非常に重要で、かつ非常に強いものでないと何も起こらないんですよね、今いろいろなことを申し上げましたけれども。
 今回の京都議定書の問題は、特に民生部門、特に運輸部門が非常に伸びが、三十何%伸びているということであれば、我が国は一兆円以上のお金を毎年払うのであれば、約一千億円ぐらいあれば電気自動車の普及、電気自動車は今完成した技術ですから、モーターとバッテリーだけで、しかもモーターとバッテリーは世界で最高の技術が日本はあるわけですね。これを日本で普及すれば、世界に先駆けて新しい量産技術を確保できる。
 私は先日、三洋電機に行ってきたんですけれども、量産化によって明らかにニッケル水素というバッテリーは下がる、今の十分の一か二十分の一になるということを言っていましたので、こういう、今まで、自動車業界に任せていたら、燃料電池というような複雑な技術を、十年後できるかもしれない、できないかもしれないとやっていたら、いつまでたってもできない。では、これはだれがやるか。まさに国の責務だというふうに思います。
 もし簡単でございましたら、皆さん、御意見をお聞かせいただければと思いますが、どうぞ。
斉藤(鉄)議員 京都議定書につきましては、これは国会が国会の決議までして、ある意味では先頭に立って我々国会議員がこれを批准しようというように国民に訴えかけたものでございますので、国会としては、これは責任を持って我々は遂行しなくてはいけない、そういう立場にあると思っております。
 その中で、この地球温暖化問題はまさしくエネルギー問題であって、その問題を解決する基本的な理念をこの基本法に書いてある、私はこのように理解しております。
山田(敏)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 中山義活君。
中山(義)委員 おはようございます。
 きょうは与党の方からこうやって提案者が集まって、しっかり我々に説明しようと思っているんでしょうが、その意欲が、ぱっとこっちを見ますと、与党の諸君が少ないじゃないですか。やはり与党全体でこれをしっかりやって、日本のエネルギーの需給状況といいますか、そういうものをしっかり保っていこうという意欲がまず与党から見られないということは非常に残念だ、このように思うわけでございます。
 もう既にエネルギーの問題については個別法ができているわけですね。個別法と今回のこの新しい法案との関係、何か重複したところもありますし、余りにも法律をしっかり表に出してくると、何か日本は計画経済みたいな、もっと本来は自由に経済をやっているものが、一生懸命効率を重んじ、または企業の倫理に基づいてやっていくというところがあるわけですが、ここまで、こうあるべきだと、あるべき論を展開しているわけですが、その辺は、個別法とこの法律との関係、それと今度の理念について、再度お示しをいただきたいと思います。
斉藤(鉄)議員 エネルギーに関連して、これまでいろいろな個別法がございました。先日も議論していただきました新エネルギー促進法、また省エネ法等々でございます。
 これらの一つ一つの個別法は、ある意味では、その時点時点での時代の要請に合ってつくったものなんですけれども、トータルとして見ますと、それぞれ相矛盾するところもございます。そういうところを、もっと包括的な、全体を一つのエネルギー戦略にのっとって方向づけていこうというのが今回のエネルギー政策基本法の基本的な考え方で、そこに三つの基本的な哲学を置いているというものでございます。
中山(義)委員 今の御答弁ですが、安定供給と、それから経済効率、自由競争の中でコストを下げていく、それと環境を保全していく、この三つはもともとトリレンマで、どこかに重点を置けばどこかがだめになる。または、自由競争なら自由競争に重点を置いてしまいますと、どうしても効率のいい安いエネルギーを使おうとするわけですね。それは必ず環境とぶつかってくるわけですよ。
 また、安定供給という問題については、国がある程度計画的にやっていかないと、なかなか安定供給はできないわけですね。例えば二十基の原発であれば、本来は国が責任を持って絶対やっていくというところが、今の立地法や何かを見ていても大変コストがかかるわけですね。三つがもともと相矛盾するものだというふうに、もともとあったわけですね。
 今回の法律では、その矛盾というものをどういうふうに調整をしているのか、今の答弁ではちょっとわからないんですが、もう一度。
斉藤(鉄)議員 この法律の中で、三つの哲学の関係をこうあるべきだというふうには、また、相矛盾したときにこういうふうに調整すべきだという具体的なことは書いてございません。この三つを、それぞれの時代に応じた重みづけというのも必要になってくると思いますので、その時点において基本計画という形でその中に落とし込んでいく、こういう形でこの中に規定しております。
中山(義)委員 今、割かし大まかなくくりでやっていきますと、例えば石油が枯渇すると予測されるときとか、枯渇するおそれがあるときとか、そういう個別でやっていくと、やはり有事法制みたいに、なかなか今回の法律の中では答弁できないと思うんですね。
 ですから、私たちがちょっと今聞くのは、一つのあれに限定して、例えば石油についてお聞きいたしますが、石油に対しての戦略というものは、もともと、第一次石油ショック、第二次石油ショック、この石油ショックがあることによって、そのときにいろいろ石油政策があったと思うんですが、やはり経済でも、経済が悪いときにこそ、じゃ、効率のいい生産とは何かとか、需給サイド、またはいろいろなサイドからいろいろな提案が出てくるわけです。
 この石油についての今までの経緯を見ていますと、今、中東依存が高まっているとさっきお話が出ました。もう一つは、七十数%から石油依存度が五一%に下がった。これから天然ガスにかえていって、今後、石油というものはどんどん減っていくと予測するのか、または、石油というものはこれからも一番日本では重要なエネルギーとして考えているのか、この辺はいかがなんですか。
河野政府参考人 政府の立場から見方を御説明させていただきます。
 総合資源エネルギー調査会は、昨年の七月に長期エネルギー需給見通しを発表させていただきました。これは、二〇一〇年までの需要面、供給面の見通し、あるいはその背景となるべき政策を述べたものでございます。
 その中で、石油について申し上げますと、二〇一〇年の段階でもやはり四五%程度、したがって、かなり半分に近いぐらいの一次エネルギー供給の中でのウエートを占めるというふうに見通しておりまして、やはり石油は非常に重要な資源だというふうに思っております。
中山(義)委員 例えば、個別に石油の問題について考えてみると、中東依存をなくす、そのためにはどうしたらいいか。これは、一つは、ほかのところから石油を輸入するという方法と、もう一つは、天然ガスにかえていくという視点がありますね。
 将来は、今LNGでやっていますが、パイプラインという方法もあるということで、今のこの理念の中では、石化エネルギーの中でもっとより環境に優しいエネルギーとすると、そういう面からも石油よりも天然ガスがいい、しかもパイプラインということでやれれば今の中東依存からもかえていける。こういう視点から見ると、そういうような天然ガスなんかに対して大きな戦略とか、パイプラインのすごいプロジェクトとか、そういうものは考えているんですか。
河野政府参考人 今回、御議論の対象になっておりますこの法案でも、安定供給という側面と環境との調和という側面が大きな方針として示されているわけでございますが、天然ガスの活用は、先生おっしゃるように、その二つの面に合致するわけでございます。
 例えばサハリンでございますが、幸いなことに、かなり大規模な石油及びガス田について、昨年暮れの段階で商業化宣言が行われました。今後、商業生産に入る段階になりますが、そこではまず、実は石油が案外埋蔵量が多かったものですから石油を産出し、しかしそう遠くない将来に、天然ガスも産出をして日本に提供したいという関係者の意向でございます。
 その手段として、いわゆるサハリン1というプロジェクトについて申しますと、パイプラインが検討対象になっておりまして、現在、日本側の企業がつくりました調査会社とメジャーが協力をして、このパイプラインのフィージビリティースタディーをやっております。この結果を私ども見守りたいと思いますし、また、政府として、環境整備に必要なことがあればやってまいりたい、こう思っているところでございます。
中山(義)委員 この法律の中には、今言った環境を守るという視点と安定供給、こういうことから考えれば、当然、天然ガスというのは具体的に上がって、それに対して全力を尽くしていく、そういうものが見えていいと思うんですけれども、どうも今回、衆法でして、いろいろ石油や天然ガスを扱っている方たちが考える閣法であったら、もうちょっと具体的だったのかなとも思うんです。
 副大臣、どうでしょうか、今度は、衆法で出てまいりましたけれども、本来こういう具体的なところまでもしお答えするとすれば、閣法で、もっと具体的な背景があって、今言ったように天然ガスみたいなものが頭にあったら、例えば安定供給と環境を両方うまくやっていくためにはどうしても天然ガスが必要だというような形から、役所が、専門家が考える、それぞれ個別の法律と一緒に合体したような、わかりやすい具体的なものの方がいいんじゃないかと思うんですが、なぜ閣法で出なかったんでしょうか、副大臣。
古屋副大臣 今般提出をされております衆法は、あくまでも基本的な計画というものを策定する、こういう作業でございます。
 私は、いわばこの法案は日本のエネルギー政策のある意味でバイブルになるものだというふうに認識をいたしておりまして、私ども政府側としては、その基本政策をしっかり具体的に裏打ちをしていく、その作業が私どもの役割だというふうに考えております。具体的な、個別的な政策、そして予算を含めて、そういうものをしっかり私どもとしては対応していきたいというふうに考えております。
中山(義)委員 あと、先ほどから出ている国の責務なんですが、日本の場合は、石油は外国に依存している、または天然ガスもそうですね。原子力発電を除いては外国に依存しているとなると、国の責務の中にやはり外交的な努力というのがあると思うんですね。
 私は、例えば石油公団の問題でも堀内私案というのがありましたが、あれを見ていますと、遊園地の、遊園地といっては失礼ですね、富士急ハイランドの経営と石油公団の経営とは根本的に違うところがあると思うんです。それは、外交という大変大きな問題があったり、外国に依存しているわけですね。これは単なる道路公団のいわゆる民営化なんかとは根本的に違うと思うんですね。
 そこでお尋ねしますが、今後、その外交努力の中で幾つかあると思います。一つは、まず交渉権を、例えば石油を掘る場合の交渉権、こういう問題については、国の責務というのがありましたけれども、今後ともこれは国がやるべきなんでしょうか、それとも事業者がやはりその国へ行ってやるべきなんでしょうか、その辺はいかがなんですか。
河野政府参考人 さまざまなケースがありまして、御案内のようにアラビア石油のケース、これは契約の当事者はアラビア石油という民間の企業でございましたけれども、やはりサウジとの関係、そして、先方が求めてまいります事柄、あるいはクウェートの関係、こういった点で、アラビア石油という企業の交渉といわば並行して、また密接に連携をとりながら、政府が頻繁に協議を繰り返したという経緯がございます。
 そういう意味では、産油国との関係は極めて重要でございますから、個々の事業者が採掘権を獲得するための交渉当事者であることは間違いありませんけれども、それに対して政府としてどういうバックアップができるか。産油国との間では、政府をある意味では代表して資源政策の当事者がよく話し合いを進める必要があると思っております。これも、産油国側の事情にもよりますので、すべてということではないかもしれませんが、基本的に私はそういうふうに考えております。
中山(義)委員 先ほどアラ石の話が出ましたので、ちょっと例にとりますが、二千億円で鉄道を敷いてくれという話がありました。これは当然、国に要求されたんだと思うんです。
 アラビア石油はアラビア石油で、自分たちの産出している油の質とかいろいろなことがあって、まあいろいろなことを考えたと思うんですけれども、国としても、出ている油の質であるとか、または埋蔵量であるとか、今後の問題として国は考えたわけですよね。それで、二千億は高過ぎると、これでやめたんだと思うんですが、私らがあのときに前々の大臣に言ったのは、二千億円をここに一遍に積むわけじゃないわけですよ、毎年百億円でも積んでいって、二十年ぐらいかけて鉄道を敷いていく、それは、サウジアラビアと日本の関係をしっかり保つために有効ではありませんかと。それは、サウジアラビアと日本の関係によって、アラ石だけじゃなくて、ほかの油田も開発できるチャンスができるんじゃないかと。
 そういう面での外交努力というのは、単純にそこで自主開発した石油を掘るだけじゃなくて、インフラのサービスとか、今言った鉄道のサービスとか、何らかの国と国との関係を保つということがやはり大事だと思うんですね。
 それは、一つは国の責務、いわゆる外交努力、または何がその国に足りないのか。例えばサウジアラビアだったら、国民の四五%が十五歳以下だとか、非常に人口爆発が起きて若いと。だったら、それに対するどういう施策をしたら友好が保てるか、そういうことが安定供給につながるんじゃないかと思うんですが、国の責務として、今後その安定供給に対して何をしたらいいのか、この辺はどういう見解がありますでしょうか。
河野政府参考人 サウジアラビアの例でもそうでございます。確かに鉄道の要望というものがあったわけでございますけれども、さらには、今先生がおっしゃったような、やはり若年層が多いということもあって雇用機会の創出が非常に国にとって重要である、したがって、日本からの投資を促進してほしいという希望も強いものがございました。これに対しては、国として、特に国と国との関係、協力関係としては重要な要素であり、また、国が果たす役割も大きい分野でしたので、私どもとしては、精いっぱいそうした投資機会の創出に役立つような政策パッケージを提案した、そういう経緯がございます。
 おっしゃるように、私どもは、投資を日本から産油国に持っていく、そしてまた、できることならば、例えば海水淡水化のように社会インフラにつながるような分野についてもそういった協力ができる、これは望ましいことだと思っていますので、そういった分野で政府として最大限の協力関係を築く、これが必要なことだと思っております。
中山(義)委員 今回、アフガンで戦争があって、日本はどうもイスラム諸国がわからないんじゃないかと。我々もなかなかわからないので、そういう本を買っていろいろ読んでみますと、イスラム諸国、意外に合理性のある国民だということも大分私どももわかってまいりましたので、商売の相手としては案外取り組みやすい、このようにも思ったわけですね。
 そういう面で、やはり今後の外交努力というのは、今言った、一つは、そうやって友好を深める。もう一つは、東アジアの今後の経済の進展によってどういうことが起きてくるか、そういう予測もしておかなきゃいけないと思うんですね。東アジアは、御存じのように、中国が毎年一〇%もGNP、GDPが伸びていったらどういうことになるか。当然、輸出国から輸入国になった中国であるとか、周りの諸国も、恐らくそういうような状況を起こしているわけですね。これによってどういうような石油の状況が起きるかということは予測をされているのかどうか。その辺ちょっとどうでしょうか。
河野政府参考人 これは、私どももそうでございますが、国際機関なども、アジアの諸国の経済発展に伴って石油消費量が相当速いスピードでふえていくだろうと。他方、いわゆるアジアの産油国と言われました中国はもう準輸入国でございますし、インドネシアについても輸出余力は非常に乏しくなってきているということですので、アジア全体として中東の石油に依存する度合いがかなり高まるであろうというふうに予測をいたしております。
 そういった中で、このアジアがエネルギーセキュリティーを全体としてどうやって確保していくかということは非常に重要なことでございまして、現時点では、IEAメンバーとして一定レベル以上の石油備蓄を持つのは日本と韓国にとどまっておりますけれども、例えば、こういった備蓄の努力をアジア全体としてしていくというようなことは大きな課題ではないかなと思っております。
中山(義)委員 今備蓄の話が出ましたのでちょっとお聞きいたしますけれども、韓国はかなり、今お話しのように、六十七日分ぐらいは備蓄をしているわけですね。しかし、中国が二十日分、タイが三十六日、シンガポールが四十四日、マレーシアが余りない、それからインドネシアが二十から二十五日ぐらい、それからフィリピンが四十日、台湾が六十日、インドは十五日から三十五日だというんですね。日本は、当然のように、百六十六日備蓄しています。
 ですから、これも、我が国だけが備蓄を完璧にやった、隣の国もやったというだけではセキュリティーができないということで、この辺も外交努力だと思うんですが、この辺はどのように今アジア全体に日本の国が働きかけてやっているのか。
 または、この備蓄というのも恐らく技術があると思うんですよね。こういう問題についても、日本が先頭に立ってそういう技術を、技術協力といいますか、そういう技術によって外国との外交を保っていく、こういう部分についてはいかがなんでしょうか。
河野政府参考人 アジアのこういった諸国に対しましては、例えば、平成十二年の十月に、日ASEAN経済大臣会合、いわゆるAEM・METIの会合がございました。こういった場でも、ASEAN諸国の石油備蓄体制強化に向けた取り組みを私どもとして支援する用意があるということで、専門家派遣を通じた技術協力などの用意がある旨を表明する、こういったさまざまな機会をとらえて呼びかけをし、また協力のオファーをしております。そういった協力をすることが、おっしゃるようにアジア全体のエネルギーセキュリティーを高めると思いますので、引き続き努力をしていきたいというふうに思っております。
中山(義)委員 引き続きと言うけれども、いろいろな話し合いによってどの程度効果が上がったのか。今まで、例えば韓国は六十七日間備蓄していますが、実は日本が交渉する前は三十日間しかなかった、しかし、我が国がこれを主導的にやったんだ、こういうことですか。
河野政府参考人 日本の石油備蓄政策が少なからず韓国の石油備蓄政策に影響を与えたことは間違いないと思いますが、もちろん、韓国が自主的に政策として採用した方針であります。しかし、私どもの備蓄のあり方などを韓国として大いに勉強されたことは間違いないと思っています。
中山(義)委員 大体石油のことは情勢はわかったんですが、一つ、この衆法の中に、石油について、自主開発は絶対むだだと考えているか。または、いや、むだではない、これをやることによって、よその国との協力関係がやはり必要だからお互いに開発することが大事だとか、または、いや、これはもう市場から買った方が絶対安いんだ、石油というものは。そっちに重点を置くべきだ、このようにお考えになっているのか。これは大切な問題なんで、今後の、いわゆる石油公団なんかも民営化するときに、やはり一つの方向が出ると思うんですね、そういうことがはっきり出れば。もう自主開発はやらない、こうならば天然ガスに全部その重点を持っていくんだと。その辺はいかがなんでしょうか。
細田議員 御存じのように、日本は石油の大輸入国であります。日本は世界一かと思いますと、そうではなくて、アメリカの輸入が非常に大きくなっているんですが、それも、隣国であるカナダとかメキシコ、それからちょっと海を隔てたベネズエラとか、そういうところからたくさん買っておって、中東依存度などは、サウジから買っておる程度でございますので。
 やはり日本の原油輸入、しかもその依存度という点を考えると、世界において非常に特徴があるわけでございますとともに、この大消費国である我が国が世界における石油の探鉱開発に貢献しないということは、全くこれは一種のサボりであって、適正な資金を負担し、そして適正な技術を負担して開発を進めなければ、使うばかりで、どこかから安いものが入ってくるならそれだけで輸入しよう、こういうのは全くのただ乗り論であると私は思いますし、ずっと戦後、石油公団を中心に探鉱開発を進めてきたのもそこにあると。
 ただし、なかなか当たりませんので、当たらなかったものが大赤字を抱えるとか、いろいろなことがありますが、しかし、国際的な約束で探鉱してきたものも開発してきたものも多いわけでございますから、やはりこれからは、自主開発というかどうかとか、和製メジャーをつくるというかどうかというような、言葉の問題はいろいろあろうかと思いますが、消費国としての責務、それから産油国あるいは産油国としてこれから開発を希望する諸国に対する協力というのは、今中山委員がおっしゃったように非常に大切な我が国の責務であると考えております。
中山(義)委員 過去を振り返ってみますと、石油ショックの恐れから安定供給ということに一番重点を置いた。だから、石油公団がそういうような自主開発をする、それが大変な大事な仕事だということで、どんどんどんどん会社を八十ぐらいつくっていって、そこが赤字を生んできたという過去のまずい例もあるわけですね。
 しかし、じゃ自主開発は必要ないのかというと、今お話しのように、自主開発はやはり必要だということであれば、その自主開発と、それから、いわゆる石油のコストを下げようという、自由市場の中で買うというのは、今度の法律の中では、やはり三つの柱の二つですね、そこのところは。これはどういうふうに今後考えていくのか。
 これは、この後に出てくる石油公団の問題とも関連しているんですね。非常に大きな問題なんですよ。その中で、いわゆる自民党の議員の諸公が、または与党の諸公が何を考えているのか、ちょっとお披瀝をいただきたい。
細田議員 かつて、七〇年代、六〇年代に自主開発をしようというときは、自分で探鉱開発をやれば、そして株を持ち、権利を持てば、非常に有利に石油が調達できるんじゃないか、安く調達できるんじゃないかというふうに思って政策を進めた時期がございますけれども、その後のオイルショックとかOPECの活動とかによりまして、石油価格は、御存じのように多少の価格差はありますけれども、そこの価格そのものには大きな差がない取引が一般的で、これはオイルのメジャーがばっこして非常に強力であった時代から、今は産油国中心の時代に変わっておるわけですから、そこの価格的有利さということはこだわることなく、むしろ輸入ルートとしての安定化と、それから先ほど申しました大消費国としての責任、それから、世界的には資金が枯渇をして探鉱開発がなかなか進みませんので、そこに対する供給をすることによって、結果として石油、原油の供給がふえて世界経済に貢献する、ひいては発展途上国にも貢献するという考え方で取り組むべきではないかと思います。
中山(義)委員 今のお話で、こういうことでしょうか。要するに、自主開発、これはコストがかかり過ぎる。過去に石油公団のやってきたことについても、千に三つだとか、非常にむだがあったわけですよ。しかも、相当な赤字をつくってきて、国民の負担も大きくなった。しかしながら、自主開発はやはりやらないとまずいというような意見が一つと、もう一つ、今の話の中でこういう意見があったと思うんですが、いわゆるインフラ整備であるとか、その国に共同開発だとかなんとかで協力していこう、そういうような意味合いの言葉だと思うんですね。それともう一つは、市場から買う。
 ですから、どっちに偏ってもこれは非常にまずいといいますか、何かこの石油の問題というのは、非常にセキュリティーを生みながら安いコストで買うというのは、できる限り、千に三つのものを幾ら掘ってもだめなので、むしろ経済協力であるとかインフラの協力であるとか、そういうところでその国と友好関係を保つ、そしてできるだけ石油は安いところで買っていくというような方がいいんじゃないかと思うんですが、そういう感覚でよろしいんですか。この法案の中では、いわゆるセキュリティーとコストの問題というのはそういうふうにとらえていいんですか。
細田議員 私自身はいささか違いまして、それは、結果として安いかどうかではなくて、石油の、原油の供給がふえることが人類にとっても必要だ。需給によって価格は決まりますから、安くなる場合もあるし、高くなる場合もある。しかし、絶対的不足を起こしてはいけないので、そのことに我が国も貢献すべきであって、それは、リスクはどの世界じゅうの探鉱開発企業も負っているわけですから、その負い方において、できるだけ消費国として責任を果たすべきだ。
 したがって、価格ありきということじゃなくて、やはり供給を安定化させるための努力はみんながしなきゃならない、その結果が価格であるにすぎないと思っているわけです。
中山(義)委員 法律の理念は、やはり効率というのも書いてあるわけですね、自由競争の中で。じゃないと、計画経済みたいになっちゃいますからね。あの書いてあるのが、国が関与する、関与するといろいろ書いてあると、何か計画的な経済をつくるみたいな、やはり日本の国というのは自由主義経済ですから、自由に取引をして値段を安くしていく、そういう側面がなきゃいけないと思うんです。
 ただ、私は、アメリカを見てみますと、アメリカは世界第二の産油国でしょう。しかし、ほとんど輸入をして、輸出は何か法律でも禁止されているような話まで聞いているわけですね。しかも、石炭もため込んでいる。というようなことで、エネルギーに関しては、相当神経質な、または相当大きなプロジェクトで、または相当な国家の責任としてやっていると思うんですよ。
 私は、今回の、国の責務と書いてありますが、原発にしても石油にしても、国の責務を明確にうたったのであれば、ここは絶対責任を持つというような的確なそういう言葉が欲しいと思うんです。
 ですから、私どもは、国会承認にして、あのアラ石みたいに、閣議決定した、しかし後で、いや、あれはやはり民間だから知らないよということじゃ困るので、国会承認にしてくれというところは、そこまで国が責任を持つべきじゃないか、このくらいの、セキュリティーというよりも国家の戦略と申しますか、そういうものはしっかりこの文言にもうちょっと強く入れてもらいたいと思いますが、甘利さん、ちょっとその辺。
甘利議員 自由主義市場経済のもとでは、原則論としては、政府が関与しない、市場の原理に任せるというのが原則論であります。ただ、エネルギーのように、安定供給が図られない場合には国民生活や経済社会が破壊される非常に重要な問題について、どこまで政府が関与するか、これは国と民間とのコンビネーションだと思うのであります。
 国会承認の議論は、私どもも随分行いました。結局、そこまでがちんがちんにすべきか、あるいは、もうちょっとソフトな関係で官民のコンビネーションをとるべきかという議論でございますけれども、国会に年次計画を報告する、そして、それに基づいて委員会でも、例えばこの委員会でも、一般質疑の場で自由に議論をしていただくわけでありますから、間合いのとり方としては、いい関係かなというふうに思いまして、今の状態で提出をさせていただいた次第でございます。
中山(義)委員 終わりますが、最後に、いわゆる京都議定書の問題でも、やはり国が本当にやるべきことというのをもっと明確にやっていただきたい。それでないと、京都議定書、これは批准した後大変なことになると思うんですね。自然エネルギーは全部、じゃ電力会社に任せて、民間の取引でやってくれといったって、そうはいかない部分がある。
 今言った千に三つしか出てこない石油はどうするのか、そういう面も含めまして、国の責務、これは一応はっきりしていただいて、国会承認をしてもらいたい、このように一応求めまして、私からの質問を終わります。
田中(慶)委員 委員長。
谷畑委員長 田中理事。
田中(慶)委員 この今のような状態では審議できないから、休憩してください。速記をとめてください。
谷畑委員長 そうしたら、速記をとめていただいて。
    〔速記中止〕
谷畑委員長 速記を起こして。
 それでは、ただいまより審議を再開したいと思います。達増拓也君。
達増委員 エネルギーの基本政策に関する議論は、我が国の中はもちろんでありますけれども、国際的にも世界的にも今盛んに行われていると考えます。それは、ソ連という巨大な資源エネルギー大国が自由主義、資本主義体制に移行しつつある。旧ソ連圏の東欧、中欧諸国も同様であります。
 そういう中で、旧ソ連圏諸国と西ヨーロッパ諸国がエネルギーに関する協力の議論を重ね、エネルギー憲章をつくり、そこにアメリカ、カナダでありますとか我が国などが参加をいたしまして、エネルギー憲章に関する条約というものに約五十カ国が既に署名を済ませております。我が国も既に署名は済ませておりますが、国会の承認はまだでありまして、今国会、政府の方からはこの条約への承認を求めてきているわけですけれども、まだ国会、衆議院議院運営委員会の方でまだいわゆるつるしがかかった状態になっている、そういう状況であります。
 このエネルギー憲章に関する条約でありますが、エネルギーの基本政策に関し、いろいろ野心的な定めをしているわけであります。例えば第三条、「国際市場」と題しまして、「締約国は、エネルギー原料及びエネルギー産品について、商業的条件による国際市場への進出を促進するよう及び開放されたかつ競争的な市場を全般的に発展させるよう努力する。」という、市場原理を全面的に発展させる、そういう規定を設けております。
 また第六条では、「競争」と題しまして、エネルギー分野における経済活動に関し、競争確保、反競争的行為に共同で対処するための法令を有し、または実施することを確保するなど、市場原理を活用したエネルギー政策の各国の国内における発展、そして国際的な協力の推進、そういうことを規定しているわけであります。
 今回提案のこのエネルギー政策基本法案においても、第四条のところで「市場原理の活用」という規定がなされているわけでありますけれども、文言を読んでみますと、市場原理の活用という題が括弧でついている割には、自由化等の経済構造改革については云々、そしてまた、規制緩和等の施策が推進されなければならないということで、今、小泉内閣のもとで経済構造改革ですとか規制緩和ですとか、我が国が直面する喫緊の課題ということで取り組んでいるということの影響も受けているのでしょうが、どうも狭い、目の前のそういう構造改革とか規制緩和のことばかりが強調されていて、もっと国際的に広く各国が協力しながら推進していこうという、市場原理の活用という大きいテーマが定められているという感じがどうもしないわけであります。
 せっかく我が国も署名しているエネルギー憲章に関する条約というものもあるわけですから、もう少し、さっき申し上げたような第三条、第六条にあるような大きい規定ぶりにした方がいいと考えますけれども、この点、いかがでしょうか。
甘利議員 私、エネルギー憲章のことはそんなに詳しくないのでございますけれども、先生は御専門だと思いますが、この条約では、旧ソ連及び中東欧諸国において市場原理に基づく法整備を行うことを通じて、エネルギー原料、産品の貿易の自由化及びエネルギー分野における投資の保護、促進を図ることを目的とするとされているわけでございます。
 このために、条約上、競争的な市場を発展させるための努力であるとか競争における障害を緩和するための努力といったような規定が盛り込まれておるわけでありまして、翻って我が国の場合は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律というのが御案内のとおりございまして、これらに基づきまして、その趣旨がもう既に現在でも確保されているんだというふうに理解をしているところでございます、大きく言えば。エネルギー政策基本法、今御指摘の第四条も、この趣旨を踏まえてお話のとおりのことが記述してあるわけでございます、まあ、狭い広いという議論はありますけれども。
 ですから、もう既に環境が大まかにはあって、そしてさらに基本法で明定しているというふうに理解をしていただきたいと思います。
達増委員 実は、ことし三月、ハンガリーのブダペストで自由主義インターナショナルの世界大会がございまして、自由主義インターナショナルというのは世界の自由党が参加する団体でありまして、我が国からは我が自由党が小沢党首以下参加いたしまして、そこで主なテーマになったのは、旧社会主義国から市場経済体制へ移行しつつある移行国と呼ばれる国々の経済発展と、そしてあと民主化の問題だったのですね。
 その議論を聞いておりますと、旧社会主義体制の過剰な規制がなかなか経済の発展を阻害している。これは実は、我が国日本も、世界最大最強の社会主義国は実は日本である、社会主義体制と呼んでもいいくらい官僚主導の体制が全国、産業各分野、津々浦々まで浸透している、そういう日本が直面している構造問題と、実は旧社会主義諸国の移行国の直面する問題、非常に共通するものがあると思ったわけです。
 ちなみに、民主化ということで政治体制の移行についても、今旧社会主義諸国で最大の問題になっている政治課題は、汚職、政治と金の問題でありまして、これについても日本が直面する課題とぴったりだったものですから、恥ずかしいやらうれしいやら、非常に参考になると思って帰ってきたのですけれども。
 話をこのエネルギー政策に戻しますと、そういう意味で、このエネルギー憲章に関する条約というのは、もともと旧ソ連圏諸国をどう国際社会に取り込むかというところから問題意識はスタートしているのですが、我が国にも非常に参考になるので、取り入れられるところは積極的に取り入れた方がいいと思うわけです。
 次に質問しますが、このエネルギー憲章に関する条約のそういう市場原理の活用の目玉は、投資の促進なんですね。投資の開放、促進。それで条約の第九条には、投資のための資本市場の利用を推進する、そういう施策を設ける。第十条には、投資を促進するためさまざまな規定が書かれているのですけれども、この御提案いただいているエネルギー基本法の第四条の一項に、「規制緩和等の施策が推進されなければならない。」と書いてあるわけですが、この「施策」の中に、そういう投資の推進でありますとか投資への開放、そして資本市場の利用、こういった施策も含まれるのでありましょうか。
甘利議員 お話しのエネルギー憲章に関する条約では、締約国間でのエネルギー分野の資本交流を図るべく、第九条において、他国の投資家に対して、自国内の資本市場の利用につき、自国もしくはその他の国の投資家と同等の条件を与えるよう努めることというふうにされています。また、十条では、他国の投資家が投資を行う上で良好な投資環境を醸成する努力を行うこと、これが規定をされているわけでございます。
 御指摘をいただきましたエネルギー政策基本法四条一項におきましても、お話のとおり、事業者の自主性及び創造性が十分に発揮され、エネルギー需要者の利益が十分に確保されることを旨としての市場原理の活用をうたっておるわけでございまして、エネルギー憲章条約の当該規定のような施策も当然含まれるものというふうに考えております。
達増委員 次に、第四条第二項について質問をいたします。
 これは、このエネルギー政策基本法案の中で最大の問題と私が考えているところなんですけれども、このエネルギー政策基本法の趣旨として、エネルギー政策には三つの基本原則がある。それは、安定供給の確保、環境への適合、市場原理の活用である、趣旨説明のときにもそういう説明だったと思いますが。であれば、この三つの基本原則というのは、完全横並び、単純に併記するような形が望ましいと思うわけであります。
 したがって、環境や安定供給のためにはこの市場原理を二の次にするという趣旨のこの第四条第二項ですね、前項施策の推進、この市場原理の活用という施策の推進に当たっては、前二条、安定供給、環境、その政策目的が損なわれないよう十分配慮されなければならない、この第二項は不要だと思うんです。必ずしも安定供給と環境と、そしてこの市場原理というのは二律背反ではないと思います。
 例えば、ついこの前この委員会で審議し、衆議院で賛成ということで議決した新エネルギー法についても、あれは市場原理というものを生かして環境を守っていく、温暖化ガスを減らしていく、そういう工夫の法案でありました。そういう意味では、安定供給や環境のためにこそ市場原理を進めていかないとという側面もありましょうし、三つの基本原則のうちのこの市場原理のところにだけほかの二つを損ねないようにとあえて規定する必要はないと考えるんですが、この点いかがでしょうか。
甘利議員 エネルギー政策基本法の一番大事なところは三つの政策目標でございまして、これが日本のエネルギー戦略の哲学でございます。
 この三つとも大事であることは間違いございません。エネルギーセキュリティー、エネルギー安全保障、これをないがしろにしていいと言う人は一人もいませんし、また、COP3以降、非常に地球環境ということは全世界の国民にとって片時も忘れてはならないことであるということも確認をされている、あるいはされつつあるものでありますし、そして、できるだけ市場原理を使って低廉なエネルギーをというのは、反対する人は一人もおりません。
 三つとも大事なんでありますけれども、この三つの関係を最後まで突き詰めたときに、どっちに比重を置くかということになろうかと思います。セキュリティーの関係で、例えば、供給がいっとき途絶えてもそれはやむを得ないと思うのか、それと経済原則、いっとき価格が高騰してもやむを得ないということを同列として取り扱うか。地球環境保全ということと、それからエネルギーのセキュリティーということは、やはり何にも増して大事であるということで、それを犠牲にして経済合理性というのを追求するということではなくて、それを視野にしっかりと置いた上で、できるだけ規制改革をし、経済合理性で低廉なエネルギーを調達していくという関係にあるというふうに私どもは確信をしたということで、そういう書き方をさせていただいた次第であります。
 それぞれ政策目的を追求していく場合に、お互いの政策目的間のバッティングといいますか矛盾というのが出ますから、それをどう整理するかということになろうかと思います。
達増委員 相互の政策目的を損なわないというのは、お互いさまなところもあって、環境の保全ということについても、それにこだわる余りに余りに非効率になってはいけない。環境への適合という政策目標についても、市場原理の活用を著しく損ねてはならないということもあるんだと思います。
 エネルギー憲章に関する条約にも、地球環境問題等環境問題は非常に大事で尊重しなきゃならない、関連条約は尊重しなきゃならないけれども、そこはあくまで経済合理性というものと両立する形でというような規定がございます。
 この問題、また繰り返し戻ってまいりますけれども、ちょっと先に進みます。
 法案の第一条のところ、法律の目的で、エネルギーの供給に関する施策について云々とあるんですね。なぜ単純にエネルギーに関する施策としないのかという疑問がわくわけでありまして、思えばこの法案の中で、エネルギーのとかエネルギーについてとやればいいのではないかと思うところが、ことごとく、エネルギーの供給はとか、エネルギーの供給についてとか、常に、の供給というのがエネルギーにくっついているわけであります。
 今まで資源エネルギー庁が長期エネルギー需給見通しをつくって、役所が中心になってエネルギー需給のそういう見通しを立てたり計画を立てたりということがあったんだと思いますけれども、エネルギー政策基本法を定めてやっていく場合は、そういう役所による需給コントロール、市場コントロールということを超えた政策形成、エネルギー全般に関する基本政策ということを前に出していくべきだと思いまして、そういう意味では、の需給というのは要らないんじゃないかと思うんですが、この点いかがでしょう。
甘利議員 結論から言いますと、読んでわかるようにきちんと絞り込んだといいますか、エネルギーに関するというと、いろいろなことが考えられる。住宅の断熱効果を上げるというのもエネルギーにかかわることでありましょうし、幅が広過ぎてちょっと政策目的がぼけてしまうのではないか。需要と供給にかかわる施策である、それに関して、基本理念はこうであり、基本哲学はこうであるということを明定したものでございます。
達増委員 第二条について質問いたします。
 第二条は安定供給に関する規定でありますけれども、もうちょっと端的に決める方がいいんじゃないかと思いまして、いろいろ、どういう意味で使われているのか確認したい言葉があるんですが、まず、「エネルギー輸送体制の整備」という言葉がございます。この「エネルギー輸送体制の整備」というのはどういう意味があるのかなと。
 いろいろな意味が入っていそうなんですが、エネルギーフォーラムという雑誌の二月号で、自民党エネルギー総合政策小委員会事務局長をやっておられる加納時男参議院議員がこの点についてインタビューに答えて、次のように話していらっしゃいます。
 このインタビューする側が、このエネルギー政策基本法には国防や外交という観点が足りないんじゃないかということを言って、この「エネルギー輸送体制の整備」ということには、ペルシャ湾からのシーレーンの確保を意味するのですかとインタビュー側が聞いて、加納参議院議員が、「それも、私の念頭には入っております。」というふうに答えているんですね。また、加納参議院議員は、その後、「内閣法制局は、」「集団的自衛権の行使は否定されると言っていますが、私は、そうだろうかという疑問があります。」とか「私個人としては、集団的自衛権を認めるためにも憲法は改正すべきだと思っています。」とか、そういう発言もしていらっしゃいます。
 エネルギー政策基本法ということで、これは広く国全体のエネルギーに関する基本政策でありましょうから、外交の話は、先ほど同僚議員からも発言がありました、恐らく、国防、安全保障、国防という意味での安全保障についてもこの法案が視野に入れている可能性はあるんだと思います。
 そこで、質問なんですけれども、ここの「エネルギー輸送体制の整備」ということには、このペルシャ湾からのシーレーンの確保、これは多分、海上自衛隊の船でいざというときは守る、あるいは平時から守れる体制をつくるとか、関係国ともそういう協力をするとか、そういう意味もこれは含まれるんでしょうか。
細田議員 第二条は「エネルギー輸送体制の整備」と書いてあるわけでございまして、さまざまな、国の内外におけるエネルギーの輸送体制を整備すべき事態があり得ることは想定していると思いますが、具体論として、どういうことが発生するか、それに対してどういう対応をするかということは、それぞれの個別の法律の規定にまたよっていかなければなりませんので、概念としては入りますが、ここに書いてありますことは、エネルギーの需給にいろいろな影響を及ぼすような輸送体制を整備すべきであるという観点で書いてあるにすぎませんので、各論においては、またこれからの具体論に応じて議論すべきことだと思っております。
 概念としてどうかと言われれば、そういったことも含まれるだろうなと。つまり、例えば、どこかでシーレーンが非常に阻害されるということが起これば、我が国のエネルギー需給に深刻な事態が発生するわけですから、いろいろな意味で対応しなければならないだろうと思いますが、それは他の国内法と整合性をとりながらとるべき措置であろうと思っております。
達増委員 今の質問にも関連しますが、この第二条には、エネルギーに関する危機管理体制の整備という文言も入っています。このエネルギーに関する危機管理体制の整備を今の御答弁から考えますと、エネルギー輸送体制の整備にも絡んで、いろいろな非常事態も念頭に置いた体制を政府に義務づけるような趣旨の条項だと思うんですけれども、もしそうであるのであれば、今いわゆる有事法制の法案が特別委員会で審議中でありますけれども、非常事態対処法制一般の整備は必要だと思います。その一環として、エネルギー政策基本法の中に別途条項を設けて、そこで政府がエネルギーに関する非常事態における体制の基本方針の策定をすべきと、きちんと書いておくことが必要だと考えます。
 有事法制特別委員会に関連しますと、実は今自由党は政府案に対する対案を準備中でありまして、新聞などで骨子ができたと報道されておりますが、二十日過ぎぐらいにはきちんとした法案として提出できる見込みですが、その中で、ああいう武力攻撃事態に限らず、およそあらゆる非常事態に対して内閣がきちんと基本方針を策定しておくべきだというものが入っております。
 したがって、シーレーンの確保とか、そういう国防、安全保障、狭義の安全保障の分野にもかかわっていくようなことでありますから、漠然と規定するのでなくて、ちゃんと政府が基本方針を策定して中身を詰めるんだ、こういうことも規定しておくべきと考えるんですが、いかがでしょうか。
斉藤(鉄)議員 事態対処法の中にも、指定公共機関として、電気・ガス等公共的な色彩の強い機関という形でエネルギー関係機関が規定されておりますが、私も政府一体として考えるべき問題だと思っておりまして、今後の事態特の審議を見きわめていきたい、このように思っております。
達増委員 今の議論に関連してもう一つ確認しますが、第二条には、「エネルギーの分野における安全保障」という言葉もあります。これも軍事的なものも関係する言葉なんでしょうか。
斉藤(鉄)議員 ここでの安全保障というのは、第一義的には、直接的には、中東諸国の過度の依存をなくすであるとか、供給が中断をした場合、その被害を最小限にとどめるというふうな概念でございますけれども、その延長線上に軍事的な側面も当然入ってくると思います。
達増委員 次に、同じ第二条について、そういういろいろなものが盛り込まれている第二条でありますけれども、安定供給の確保ということでいえば、もう少し端的に、例えば次のように規定するのも一案だと思います。
 すなわち、国民の生活と福祉を確保するために、必要なエネルギー供給の確保が国の責務であるというふうに、つまり、生活と福祉の確保のためのエネルギー供給の確保ということですね。まさにこういうことであれば、暮らしが脅かされるくらいにまでこの安定供給確保の原則を棚上げして市場原理を導入しろとかいう話にはならないわけでありまして、はっきり国民の生活と福祉を確保するための安定供給という位置づけにすれば、むちゃな市場原理の導入ということは当然防がれると思うんですね。
 同時に、ある程度の不便は甘受というニュアンスもこれは入ると思うんですけれども、安定供給という言葉は、拡大させていくと、絶対停電のない電力サービスとか、百年に一回も停電がないとか、例えばそこまで極端な安定供給を目指せば、そのために市場原理が犠牲にされてしまうようでは、これはよくないと思うわけです。
 いろいろな考え方があって、IT社会、パソコンなどを発展させるには、もちろんそういう、ほとんど絶対停電がないような電力供給というのは大事ですが、日常生活ではそうでもないところもある。だからそこは、電力供給体制を区別して値段も変える。値段は高いけれどもより非常に安定した電力と、時々停電するかもしれないけれども安い電力とか、いろいろなそういう工夫があり得るんだと思います。
 したがって、もとに戻りますけれども、安定供給の確保ということについて、もう少し端的に、国民の生活と福祉を確保するためのエネルギー供給の確保なんだ、そこに国の責務があるんだというふうに規定すべきと考えるんですが、これはいかがでしょうか。
斉藤(鉄)議員 気持ち的には達増委員と全く同じ気持ちでございますが、安定供給と同じ重要さで環境への適合性ということも我々のせております。この安定供給性、環境適合性、その後に国の責務という形を持ってきて、この二つが、先ほど甘利議員から二等辺三角形という言葉がありましたけれども、国の責務として最大限配慮して政策を立てるんだという構造になっております。
達増委員 先ほど同僚議員から、この法案にあるエネルギー基本計画、第十二条に規定されているエネルギー基本計画、これについて国会承認を義務づけるべきじゃないかという意見がありました。
 私は、この原案のままであれば、確かにほかにいろいろな基本計画があるわけで、それと同様の扱いが適当だと思うんですけれども、エネルギー政策基本法として定めていかなければならないのは、基本計画というよりむしろ基本政策というような、より高度な大戦略だと思うんですね。
 この第十二条のところには、「エネルギーの需給に関する基本的な計画」ということで、今までも資源エネルギー庁がやっていたような、そういう計画みたいな文言が使われているんですけれども、もっと大きい大戦略として、私がさっきから言っているように、三つの原則、安定供給、環境、市場原理という三つの原則は基本的に三者横並びであって、その間のバランスを中長期的にどうやっていくか、そういう大戦略を決めるのが必要。そうなると、それは基本計画というよりは基本政策という一段高いものとなるべきでありまして、この十二条の「エネルギーの需給に関する基本的な計画」というものは、エネルギーに関する基本政策というふうに改める方がいいと思うんですが、この点いかがでしょう。
甘利議員 基本計画は、いわゆる三原則にのっとって十年単位を見越して立てるわけでございます。この際に、総合的かつ計画的に講ずべき施策を定めるということでございまして、より幅広い概念の政策というよりも、具体的概念に近いものでございますから、基本計画というふうにさせていただいた次第でございます。
 先生御指摘のとおり、ほかの基本法の規定も基本計画となっておりまして、ただ横並びという意味ではありませんけれども、より具体的な施策という視点から計画とさせていただいた次第でございます。
達増委員 時間ですので、終わります。
谷畑委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 エネルギー政策基本法案について提出者にお聞きします。
 まず最初に、今回の法案と、自民党のエネルギー総合政策小委員会の「エネルギー総合政策・七つの提言」との関係についてでありますが、この「エネルギー総合政策・七つの提言」を踏まえて今回の法案ができてきたと理解をしておりますが、それでよろしいでしょうか。
甘利議員 この基本法は、もとをただしますと、もう二年間くらいにわたりまして、中長期を見通したエネルギー政策はどうあるべきかという議論を党内あるいは与党内でずっとやってまいりました。その中で議論されて、大事な視点というものをおっしゃったような七つの提言ということにまとめさせていただきまして、それがバックボーンになっていると。それがすべてとは申しませんけれども、主要な後ろ盾になって基本法の必要性という議論につながっていったということは、そのとおりでございます。
塩川(鉄)委員 この提言の結びにも、七つの提言を実現するための第一歩として、エネルギー政策基本法案を提案するとありますから、今甘利議員のおっしゃったとおりの方向だということだと思います。
 そこで、続けてお聞きしますが、この七つの提言の中には、「化石燃料の効率的利用」ですとか、「新エネルギーの育成強化」とともに、「原子力発電・原子燃料サイクルの着実な推進」というのが挙げられております。ここには原子力発電やプルサーマルの国策としての推進、原子燃料サイクルの推進が強調されています。今回の法案も、この提言の内容を実現する第一歩ということで理解してよろしいんでしょうか。
甘利議員 読んでいただければわかりますとおり、政策基本法の中には具体的に原子力をどうするとかプルサーマルをどうするということは書いてございません。基本哲学、環境、セキュリティー、そして経済合理性、言ってみれば、正三角形よりも二等辺三角形、若干の二等辺三角形であると申し上げましたけれども、この三角形の最大公約数を求めていくというのが戦略でございます。そういう視点から、私どもは、原子力というのは重要な役割を果たすと思っております。
 ただ、いろいろな意見もございまして、それを読んで、原子力を推進する法であると読まれる方と、原子力がこれでは後退してしまうと読まれる方と、いろいろな方がいらっしゃいますが、私どもは、その三原則を推進していくのに原子力は重要な役割を果たしていってもらえるだろうというふうに思っております。
塩川(鉄)委員 この小委員会の委員長でもあります甘利議員に重ねてお聞きしますが、エネルギーフォーラムの二〇〇〇年の十二月号に甘利議員へのインタビューが紹介をされておりました。ここで編集者の方から、「エネルギー基本法での原子力の位置づけはどうなりますか。」という問いに対して、甘利議員は、「原子力施設の立地地域に説明する時に、この施設は国は無関係ですよといったら、だれが責任を持ってくれるのか、という話になりますよね。」「そこで、国はこれらの原子力関連施設をエネルギーの憲法」、これはエネルギー政策基本法のことで、甘利議員がおっしゃっていることですけれども、「の中にちゃんと位置づけてるんですよということで、」「信頼性を増すということになります。」「国がきちっと後ろ盾になってるということを示すためにも、国が核燃料サイクル全般について責任を確固として果たします、ということを示すためにもエネルギー基本法の制定は欠かせない」と述べておられますが、甘利議員のこのお立場は今も変わりのないものでしょうか。
甘利議員 エネルギーフォーラム初めいろいろなところに、エネルギー関係のパネリストとしてあるいは講師として引っ張り出されます。その時々、かなり強調する面があることは事実でございますけれども、基本的に原子力政策というのが日本のエネルギー政策の中で非常に重要な位置を占めている、今後も占めていくという思いは変わりございません。
塩川(鉄)委員 この法案との関係での原子力発電など推進という、これがどういう関係になるかということで重ねてお聞きしたいと思うんですが、この法案の中でも一番大事なところ、哲学ということで、この三つの政策目標の関連についてお述べになっていらっしゃいました。安定供給と環境適合と、この二つに十分配慮した上での市場原理の活用、この関係は二等辺三角形ということで御紹介いただいていますけれども、なぜこのような位置づけをするのかということについて改めてお聞きしたいと思います。
甘利議員 三本の柱がございまして、それぞれはだれも恐らく異論がないんだと思います。環境が大事、そうですねと、セキュリティー大事、そうですねと、市場原理大事、そうですねと、それがどうしたのという話になってしまうわけでございまして、それをどういう位置づけで推進をしていくか。
 基本は、三つの枠の中の最大公約数をいかに探るかということでございますけれども、最終ぎりぎりの場面になったときにどういう位置づけがあるか。それはやはり、市場の原理と環境あるいはセキュリティー、完璧に同列に置くということは、これは戦略的政策とはなり得ないというふうに考えておりまして、三つとも大事なんでありますけれども、半歩だけ環境とセキュリティーを前に出す。その両政策目標をしっかりと視野に置いて、できるだけ規制緩和、市場原理を活用して低廉に供給をしていくという考え方でございます。
塩川(鉄)委員 この三つの政策目標につきましては、七〇年代、八〇年代、九〇年代を通じて、その三者についての扱いの強弱が時代時代であったわけです。コストの強調をされるときもありましたでしょうし、安定供給の面、また、環境保全、それは時代時代の対応ということでのそういった配慮もあったんだろうということが政府の立場として推測されるわけですけれども、今回、こういう形で、半歩という言い方をされましたけれども、前に出すというこの三者の関係というのを、今回は法律という形で固定化をする。そうしますと、二十一世紀の未来永劫までこういった固定化をするというふうにお考えになっているということでよろしいでしょうか。
甘利議員 たとえそれが基本法といえども、百年間不変であるとまでは申しません。当然、その時代時代によって、時代の要請に従って、基本法といえども修正が加えられるという余地は当然あり得ることでございます。
 ただし、今先生がおっしゃいましたように、時代時代によって、その三つの要素の強調、過度の、過度と言っていいぐらいの強調がされた時期がいろいろありました。オイルショックのときには、価格を言うよりも、環境なんという話はそう出てきませんでしたけれども、とにかく量を押さえることが大事であるということで、金額を説くことはともかく、とにかく確保せよということがたっと進みました。
 あるいは、規制緩和のラッシュのときには、とにかく、例えばアメリカにあるように、若干安定的な供給が無視されて規制改革を進めようといったことがあって、停電大事故が起きて、その後遺症を今も引きずっているという状況がありますし、あるいは環境ということが高らかに叫ばれますと、コストを無視してもとにかく新エネルギーは強制的にもう電力会社が買い取れという議論が相当大きくなってきたりとか、いろいろあるわけでございます。
 時代時代に、大事なことはわかりますけれども、その強弱のぶれ方が非常に大きいということで、少なくともこれから十年二十年を見通して、その三つの柱は恐らく変わらぬだろう、そして三つの微妙な関係というのも、恐らく十年二十年、あるいはもうちょっと先まで見通して変わらぬだろうという思いで、とにかく基本政策がぶれないということを大事につくらせていただいた次第でございます。
 未来永劫、永久に修正をすることを排除しているということではございません。
塩川(鉄)委員 少なくとも十年二十年というスパンでは、この基本政策、この三者の関係というのを念頭に置いての法案づくりということだと思います。
 そこで、私はやはり、この安定供給と環境保全、これが半歩だけ前に出すといったこの扱いにつきまして、いろいろなエネルギー政策をめぐる議論を聞きますと、原子力発電推進という立場を示すものじゃないかということをお聞きしますし、私自身もそうではないかなというふうに思うところですけれども、この原子力発電推進という考えがここにあらわれているんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
甘利議員 厳密にこの基本法に書いてあることを読みますと、基本政策目標として何が大事だということが書いてあるわけでございまして、それをどう読むかということでございます。
 三つの政策目標を達成するのにすぐれているエネルギーが原子力と理解するのか、いや、そうじゃないと理解するのか、それはおのおのの理解の仕方で差はあると思います。ですから、同じ法律を読みながら、一方では原子力推進法だとおっしゃる方があったり、一方では、そうじゃない、原子力をむしろ抑えてしまうんじゃないかというようなことをおっしゃる。同じ法律でありながら、全く別な見方をされる御意見が出るわけでございまして、それは、この三つの政策目標をどう読むかで、これは原子力推進法だとおっしゃる方は、恐らくこの三つの政策目標、つまり環境とセキュリティーと、そして経済合理性、これから見ると原子力だとおっしゃるんだったら、原子力はそんなにすばらしい政策なんですということを御理解いただいていることじゃないでしょうか。
塩川(鉄)委員 いろいろな立場ということでありましたけれども、エネルギー総合政策小委員会の事務局長の加納時男参議院議員が、日刊工業新聞、昨年の十月二十六日付で、今回この法案をめぐっての議論の中で、「特に注意すべきは供給の安定性と環境適合性をベースに置いた上での市場開放、競争原理導入という点です。」二等辺三角形の関係のことに触れた上で、「これが一番大事で、ここに原子力発電が重要なポイントになります。」と述べておられます。いろいろな立場というのではなくて、この法案をつくってこられた事務局長の加納議員自身が原子力発電が一番のポイントと述べていらっしゃる、ここに一番のそれこそポイントがあるんじゃないでしょうか。
甘利議員 私どもは、この三基本哲学、政策目標、これに原子力は大いに貢献をしてくれるというふうに信じております。
 ただ、読んでいただいてお気づきになると思いますけれども、どこの項目にも、新エネということは書いてありましても原子力ということは書いてないんです。けしからぬとおっしゃる方もいます。何で新エネというのは具体的に書いてあって原子力というのは具体的に書いてないんだ、けしからぬ、だからこれは、新エネごり押し原子力抑制法じゃないかということをおっしゃる方もいます。事実私も怒られました。
 しかし、私どもは、政策目標、これは皆さんが当然賛成してくださることですよね。地球環境が大事、反対される方はいません。エネルギーセキュリティー、いや、時々エネルギー供給が途絶えてもいいよ、さっきの輪番停電みたいな話と、本格的に供給が途絶えてしまって、申しわけないですけれども、経済社会も国民生活も一時ストップしますけれどもごめんなさいと言って政府の責任が果たせません。これが大事だというのは万民が認めるところでございます。
 そうした点を視野に置いて、できるだけ市場原理を活用して、低廉に、高いよりは安い方がいいに決まっていますから、エネルギーを調達していく、供給していく、これが大事だ、そこが書いてあるのでございまして、それを達成するためにどういう選択肢が有効かということにつながっていくのでございまして、これは原子力だとおっしゃる方は、大変に原子力をその政策目標達成に評価をしてくだすっているんだというふうに思いますけれども。
塩川(鉄)委員 法案をつくった立場の方の考えとして加納議員を御紹介したまでのことで、加納議員自身がこの三者の関係について、原子力発電が一番のポイントだと述べられた。では、これは間違いだということなんですか。
甘利議員 ですから、私どもは、それを達成するのに原子力は非常に有効だと思っているのでございます。
 ただし、原子力はこうでありますとそこに書いてないんですね。基本的な政策目標が書いてあって、それを達成するのに私どもは原子力は有効な手だてであるというふうに信頼をしているのであります。
塩川(鉄)委員 安定供給と環境適合は半歩だけ前へ出す、下がったところでこの市場原理の活用というのがあるということですけれども、この点でも、自民党の「エネルギー総合政策・七つの提言」の中でも、「自由化の進展によっては、需要の見通しが不透明となり、リードタイムが長く、投資規模が巨大で、初期資本コストの高い原子力発電は、投資リスクが大きいため、その選択を企業が逡巡するおそれがある。」だからこういった二等辺三角形の立場で、これが十年二十年基本政策としてぶれないようにする、そういう意図というのも、私やはり原子力発電推進という立場の法案として透けて見えると率直に思うわけです。
 その上で、資源エネルギー庁に聞きます。
 この自民党の「原子力発電・原子燃料サイクルの着実な推進」という提言は、政府の政策と矛盾するものでしょうか。
河野政府参考人 先生が今御指摘になりました点は、「エネルギー総合政策・七つの提言」の中で、核燃料サイクル、原子燃料サイクルの着実な推進という部分だろうかと思いますが、原子力発電を、そのエネルギー供給あるいは価格の安定性、さらには発電過程においてCO2を発生しないという環境適合性の観点から、我が国の基幹エネルギーとして導入を積極的に私どもは進めているわけでございますので、また同時に、核燃料サイクルの確立あるいはプルサーマルの実施、これも実現に向けて努力をしているという状況にございますので、そういった基本的な認識について一致をしているというふうに思っております。
塩川(鉄)委員 続けてエネルギー庁にお聞きしますが、昨年七月発表の総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通しでは、二〇一〇年度での原子力発電の設備容量についてどのような見通しを示しているのか、原発の増設の見通しということでお聞きします。
河野政府参考人 この長期エネルギー需給見通しで予測をしております供給サイドをブレークダウンしてまいりますと、二〇一〇年度までに、この時点から見ましてですけれども、原子力発電所を十基ないし十三基、新増設することが必要だという内容になるわけでございます。
塩川(鉄)委員 こういった政府の政策を前提にしての基本法案になるわけですけれども、そこで、提出者にお聞きしますが、今回のこの基本法案では、このような原発増設の見通しを、当然のことながら踏まえていくということになるものでしょうか。
甘利議員 このエネルギー政策基本法は、基本計画を策定いたします。
 基本計画は、三原則に沿って、十年程度を見通して、どちらかといえば定性的な施策の打ち出し方をいたします。それに基づいて、年次ベースで具体的な施策を政府が講じているわけでございまして、三政策目標に沿って具体的な定性的計画を、十年長期を見通して立てる、そして、それを年次ごとに具体的に政策化していくということでございます。
塩川(鉄)委員 提出者甘利議員御自身のお立場は、原子力発電推進ということで伺っておりますし、そういう思いの込められた法案だと私は率直に思うわけです。
 その上で、この法案では、国会の関与がどうなっていくのか、この点を確認したいと思います。
甘利議員 基本計画を策定する際は、経済産業大臣が、関係する行政の長、つまり関係する大臣でございますが、その大臣と協議をし、あわせて総合資源エネルギー調査会の意見を聞いて策定をする、そしてそれを閣議決定するということでございますし、それに基づいて施される年次ごとの施策、エネルギー白書とでもいうのでしょうか、それは国会に報告をされるわけでございます。
 当然、基本計画も、策定されるごとに発表されるわけでありますし、それらに関してそれぞれの委員会、あるいはこの経済産業委員会、あるいは環境委員会、あるいは国土交通委員会で議論がなされるわけでございますから、そうした点を通じて国会の関与、関係というのは当然あるわけでございます。
塩川(鉄)委員 これまでの議論を聞いておりましても、例えば長期需給見通しが基本計画という形に、その基本計画が閣議決定をされるということですけれども、いわばこれは政府内の手続の変更ということでもありまして、私、総合資源エネルギー調査会の決定がいわばオーソライズされる、従来の、政府の策定するエネルギー基本計画を実施する権限を根拠づけるものにつながるだけではないかと思うんです。
 私、この点で大事なのは、日弁連などでも提案がされておりますけれども、このエネルギー政策の立案過程における民主化、透明化を図ることがやはり大事でありますし、少なくとも、基本計画を国会の議決事項とするといったような内容を持つエネルギー政策基本法をつくるべきだ、この点を率直に思いますけれども、いかがでしょうか。
甘利議員 およそ基本法と名のつくものが、我が国には恐らく十五、六あると思います。例えば環境基本法でありますとか、科学技術基本法でありますとか、ものづくり基盤技術振興基本法でありますとか、それ以外、循環型社会基本法とか、基本法というのは、正確に数えたことはありませんが、十五、六あります。
 それで、その基本法の中に、基本計画というのが大体みんな位置づけられております。基本計画の位置づけ方というのは、エネルギー政策基本法をつくりますときに、他の基本法の取り扱い、位置づけをしっかりと学習いたしまして、それに倣って構成をいたしました。
 そして、エネルギー政策基本法の場合には、基本計画を関係する行政の長と相談することになっておりまして、これは、ほかの基本法が基本計画をつくるときにはない事項でございます。通常でありますと、経済産業大臣は、その公的諮問機関である総合資源エネルギー調査会の意見を聞いて計画を決定し、閣議に諮るということになると思いますが、それに加えまして、関係する行政の長の意見を聞く、つまり環境大臣であるとか、関係するいろいろな大臣の意見を聞くということをプラスいたしておりますから、ほかの基本計画よりはさらに手順を踏んでいるというふうに考える次第でございます。
塩川(鉄)委員 先ほども紹介しました自民党のエネルギー総合政策小委員会のこの文書の中でも、今回、基本法案を提案する理由として、エネルギー問題については「国民的レベルでの議論が充分に行われているとは言い難い。」こういうふうに触れられていらっしゃるわけです。(甘利議員「何の資料にですか」と呼ぶ)この小委員会の提言とあわせて、基本法案の制定要綱がありますね。その提案理由のところに、エネルギー問題については「国民的レベルでの議論が充分に行われているとは言い難い。」こういうことで述べられている。
 私は、やはりこういう立場を本当に酌み取るのであれば、国会の議決も踏まえて、国民の意思の反映、民意の反映という点での努力こそが求められていると思うんです。そこで今問われているのが、国民の原子力に対する評価をどう政治が受けとめるかということだと思うんです。
 経済産業省の外郭団体でありますエネルギー・情報工学研究会議のまとめた世論調査、これは八九年以降、二年三年に一回、継続的に世論調査を行っているところですけれども、そこでは、原発建設を推進すべきだと考える人は今二五%、前回九八年の調査より五ポイント減って過去最低を記録したと記しています。廃止すべきだと考えている人が二九%、現状を維持すべきだという人が三四%。
 原発建設推進の国民の声が二五%に対して、現状維持あるいは廃止という方向を求める方が六三%、過半数に上るというときに、原発推進が透けて見えるような法案を出されてくるのは、民意と逆の方向ではないかというのは率直に思うわけです。
 その上で、やはりこの間の住民投票の問題です。
 九六年八月、新潟県巻町の住民投票で、原発立地反対が多数になりました。昨年の五月、新潟県刈羽村の住民投票で、プルサーマルの反対が多数になりました。昨年十一月の三重県海山町の住民投票では、原発誘致の反対が多数となりました。
 この間、三度にわたって原子力をめぐる住民投票が行われたわけです。これらの住民投票の結果について、率直にどう考えておられるのか、提出者のお立場でお答えいただきたいと思います。
甘利議員 エネルギー政策基本法と住民投票の関係でございますが、政策基本法は、結論から申し上げますと、先ほどもお話をいたしましたように、住民投票に対して一切言及はいたしておりません。イエスともノーとも、一切言っておりません。それは、エネルギー政策基本法が、これをあるべしとかあらざるべしとか言う立場にないわけでございまして、いいとも悪いとも、一切言及をしておりません。
 ただ、どう思うかということでございますから、個人的な見解を申し述べさせていただきますと、住民投票というのは、その地域内で完結をする懸案事項、それについては住民が意思を決定する、これは当然あり得べきことだというふうに思います。ただ、安全保障であるとかエネルギーというのはオール・ジャパンの問題でございます。日本全体、一億二千万全国民がじかにかかわる問題でございます。それを、一地域の決定としてオール・ジャパンの問題をどうするということについては、私は若干趣旨が違うのではないかなというふうに、どう思うかとおっしゃられれば、個人的にはそう思います。
塩川(鉄)委員 住民の皆さんが、みずからの命や健康の問題、あるいは生活をめぐって原子力発電の立地、誘致などについて率直な意見を述べ、みずから判断を求めていくというのはある意味で当然のことで、それが本来、地方公共団体の政策に反映されるべきだと考えます。
 今回の法案で、地方公共団体の責務として、国の施策に準じて施策を講じるという規定が入ったということが、今の政府の原子力発電推進の政策の中でこういった住民の率直な要求が抑え込まれることになるんじゃないか、そのことを強く懸念するものであります。このことを指摘して質問を終わります。
谷畑委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 先ほども速記がとまりましたけれども、与党の皆さん、自分たちがこの法案出しておきながら、この議場は、本当は与党の席はみんないすが埋まるんじゃないですか。ですから、提出者の皆さん、この法案、皆さん、あなたたちだけが成立させたくて、ほかの与党の皆さんは提出させたくないんですよ。そういうことを私はまず言いたい、この委員会の席を見まして。そう思いませんか。
 河合議員、提出者の一人として、この委員会の与党の皆さんの、この法案に対する熱意の低さ、まず、この件に関して答えてください。(発言する者あり)だって与党が出しているんだもん、この法案。私たちは出していない。
河合議員 大島委員の御質問、まことにもっともであると思います。
大島(令)委員 そんなに、ごもっともということで、熱意がないならまず撤回していただきたい。ということで、質問に入ります。(発言する者あり)しようがないですよね、もう出されてきているわけですから。しないわけにはいきません。
 まず、自民党の伊藤達也議員に質問します。
 この法案、大体法律というのは定義がありますけれども、エネルギーの定義がありません。示してください。
伊藤(達)議員 先ほどから議論になっておりますように、この法律は、エネルギー政策の基本的な方針、それをもとに、今後のエネルギー政策全体の基本的な考え方というものを打ち出していく法律であります。
 私たちが考えているエネルギーでございますが、先ほどから議論が出ておりますように、一つは化石燃料、これは、石油でありますとか石炭でありますとか天然ガスであります。そして、新エネルギー、これは、この中にも書かれておりますように、新エネルギーの大切さということをうたっております。風力、太陽光、地熱、水力、そして原子力だというふうに考えております。
大島(令)委員 わかりました。
 では、河合議員に質問をさせていただきます。
 第四条に「市場原理の活用」ということが書かれておりますけれども、四条を読み上げます。「エネルギー市場の自由化等のエネルギーの需給に関する経済構造改革については、事業者の自主性及び創造性が十分に発揮され、エネルギー需要者の利益が十分に確保されることを旨として、規制緩和等の施策が推進されなければならない。」としております。つまり、エネルギーも市場原理を活用しようということですね。
 ところが、第四条の二項では「前項の施策の推進に当たっては、国民生活の安定向上並びに国民経済の維持及び発展並びに地域及び地球の環境の保全のため、前二条」、つまり第二条の「安定供給の確保」、第三条では「環境への適合」、「の政策目的が損なわれないよう十分配慮されなければならない。」としております。
 この条文、読んだとおりならば、電力の自由化よりも供給の安定性の方が優先するということになりますが、そういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
河合議員 大島先生御指摘のように、この「市場原理の活用」を定めました第四条でございますけれども、市場原理の活用を一言で申し上げますと、競争原理が発揮されるようにする、そのことによりましてコストの低減を図るということでございます。
 しかし、今委員御指摘、お読みいただきましたように、第二項におきまして、そうではあるけれども、一方でエネルギーの特徴を考えますと、安定供給の確保とか環境への適合ということは欠かせない。したがって、そのことを十分配慮しつつ、ここでは「前二条の政策目的が損なわれないよう十分配慮されなければならない。」と規定しているところでございまして、これらを損なうことのないように十分注意を払いながら、市場原理を活用してコストの低減を図るという趣旨であると考えております。
大島(令)委員 もう一度河合議員に質問します。
 電力の自由化と供給の安定性は同格と考えてよろしいんでしょうか。
河合議員 同格ということかということでございますが、私は、この条文を素直に読みますと、前提として、前二条の政策目的が損なわれないように配慮されなければならない、こう規定していると考えます。
大島(令)委員 もうちょっとわかりやすく答弁していただけませんか。
甘利議員 環境とセキュリティー、そして市場原理の関係は、先ほど来、正三角形というよりは若干二等辺三角形というふうに申し上げました。
 例えばRPS法というのが本委員会で議論をされた法でありますけれども、これは、市場原理と環境というものを全く同等に考えた場合に、果たしてああいう個別法が整合性がとれるのであろうかと。環境を経済合理性よりもほんの少しだけ前へ出させた、かといって市場原理は無視したわけではない。これ、環境だけ押していきますと、新エネについて、高値であろうと何であろうと強制的に買い取りなさいと……(大島(令)委員「委員長、質問に対して答えていただきたいんですけれども」と呼ぶ)今申し上げているところです。これは、先生がおっしゃった基本にかかわることでございますから。
 そうすると、コストを無視して買えということになります。しかし、競争原理を使いながら、しかし若干高値でも引き取れるようにということで、あの法案ができているわけでございます。
 電力につきましても、完全に供給が遮断されてもそれは時としていたし方がない、というふうには国民はとってくれないと思います。安いのはいいんだけれども、しかし、供給遮断があってしかるべしということではないんだと思います。
 ですから、規制緩和と安定供給の関係は、今電力とおっしゃいましたけれども、アメリカでいうカリフォルニアとPJMの関係だと思います。PJMは系統をうまく生かして、そして……(大島(令)委員「委員長」と呼ぶ)ちょっと待ってください……
大島(令)委員 私は、いいですか、電力の自由化と供給の安定性は同格かということに関して、シンプルな条文ですから、それに関してだけ聞いているんです。時間がないわけですから。
甘利議員 ですから、セキュリティーと環境は半歩前に出ております。
大島(令)委員 河合議員に質問します。
 今、私は電力の自由化ということを言いました。同じ提出者の甘利議員は、電力の自由化ということを安いというふうに言われました。自由化を進めるということは電力料金が安くなるというふうに私は理解しまして以後質問を進めさせていただきたいと思います。
 今のお話を聞きますと、供給の安定性が、まあエネルギー安全保障、第一位に来るということで、自由化というのはその次ということでございますか。
河合議員 これは第四条、先生がお読みになったところでございますけれども、市場原理、したがって、規制緩和して、自由化してコストの低減を図るということを書かれているところでございます。しかし、この第四条の第二項におきまして、「前二条の政策目的が損なわれないよう」、すなわち、「安定供給の確保」に関する第二条と、第三条に書かれております「環境への適合」の政策目的が損なわれないように十分配慮されなければいけない。
 したがって、先ほど私が前提と申し上げましたのは、市場原理の活用の前提として安定供給の確保、しかし、それだけではなくて環境への適合を書いている、このように私は読んでおります。
大島(令)委員 こだわって質問します。
 私は、安定供給と自由化が、調和を持って進めるならばともかく、順位があるならば、この二項をカットしていただきたいと思うわけなんです。いかがでしょうか。
 河合議員に質問しております。
河合議員 お答えをさせていただきます。
 先生も環境問題にずっと取り組んでおいででございました。その立場からしますと、私も同じように取り組んできた一人でございますが、環境への適合も同じように削り取るということは、私は適当ではない、このように思います。むしろ、環境への適合と、そして安定供給の確保ということを前提として、そしてコスト低減を図っていくために市場原理、競争原理を導入していく、このように読むのが素直ではないかと考えております。
大島(令)委員 電力の自由化が進みまして、特定規模電気事業者が電力を一部小売できるようになりまして、経済産業省のビルも、ダイヤモンドパワーですか、そこから購入していると聞いております。電力の自由化などによって規制を緩和し、エネルギーのコストを下げることも、供給の安定と同じように私は重要な政策の目的のはずだと思っております。
 先ほど来、甘利議員の答弁ですと、一位にエネルギーセキュリティー、次が環境、三位……(甘利議員「そうじゃなくて同列です、環境とセキュリティーは」と呼ぶ)同列で――いや、私が言っているのは、ここで……(甘利議員「二等辺三角形。同列です」と呼ぶ)電力の自由化ということに関して聞いているんです。ですから、なぜ、供給の安定性の方が電力の自由化よりも政策的な優先順位が高くなるのか、この理由を説明していただきたいんです。
 私は、河合議員にお尋ねしております。
河合議員 これはまさに、市場経済を導入する場合のまことに悩ましい課題ではあると思いますけれども、そして、先生のお立場からしますと、むしろ、今の御質問というのは大変な御関心がある課題だと思いますけれども。
 しかし、カリフォルニアの例をとりますと、コストの低減を図るために競争原理を導入しましたけれども、ああいう事態が起きまして、大変なパニックを起こし、住民に大変な被害を及ぼしたのみならず、アメリカのエネルギー政策の見直しにまで影響を与えているという現実から考えますと、やはりこの三つの、二条、三条、四条の置き方というのは、私はこれが一つの哲学的な回答ではないかなと考えております。
大島(令)委員 アメリカのカリフォルニアでのことは、私も先般の一般質問で取り上げましたけれども、経済産業省は自由化によってではないという何か見解を出しております。今手元にないものですから私も御説明できません。なかなか、議論というか見解が違いますので、次の質問に移らせていただきます。
 同じく河合議員に質問したいと思います。
 では、三条の環境への適合性について。
 環境問題は地球温暖化だけではないことはもちろん御承知だと思います。先ほど来、地球温暖化防止大綱、CO2削減、こればかり言っておりますが、私は、環境問題というのは、視点を変えれば、原子力の利用によって、原子力事故の防止や長期にわたる、原発は放射性廃棄物、これの環境からの隔離の必要性など、原子力が引き起こす放射能の環境負荷についても同様に取り上げ検討されるべきだと考えておりますが、この面での環境という問題に関してはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
河合議員 この問題も大島先生のずっと取り組んでこられた課題でございますので、私も軽々に論ずることもできないと思っておりますが、しかし、現代文明が今落ち込んでしまったジレンマ、それは先生御指摘の地球環境が破壊されている、そしてもう一つは、しかし、経済発展はしなければいけないという要請がある。しかし、それを進めると、資源エネルギーが枯渇して危機を迎えるというこの矛盾をどのように解決するかということにつきまして、広く地球的な規模で取り組んでまいりまして、リオの地球サミット、九二年にございました。
 持続可能な発展というテーマで取り組んでおります世界の中で、やはり日本のエネルギー政策としましては、ベストミックスの政策を選択している。その中で、先生のエネルギー資源としての原子力に対する利用の光の部分と、しかし影の部分、その安全性、危険性の部分につきましては、もう最大限の安全性を確保しながら政府は取り組んでいる、このように私は認識しております。
大島(令)委員 この第三条に盛り込まれた地域環境の保全ということがございますけれども、この法案が与党協議された中で、河合議員の御党、公明党の主張により書き込まれたと聞いておりますが、この地域環境というのは何を想定しているのか、御説明をお願いいたします。
河合議員 エネルギー政策は、私は第一義的には、先ほども甘利先生がお答えになっておりましたように、国家のエネルギーセキュリティーとして従来取り組んでこられたところでございますけれども、しかし、この地球環境問題というのは、先ほどのリオ・サミットの提起でありますように、国境を超えた課題でございます。
 したがいまして、地球温暖化の問題というのは、まさに国境を超えた地球的な規模のテーマに取り組んでいる課題でございますが、しかし、日本国内でどのようにエネルギー政策を立案していくか、そしてまた、それは日本国内のそれぞれの各地域でどのように対応していくかということについてこのような定義の使い分けをしている、このように理解しております。
大島(令)委員 この地域というのは、日本のある地域ということを指すんでしょうか。
斉藤(鉄)議員 御指定の河合議員ではございませんが、同じ公明党の斉藤でございますので、答えさせていただきます。
 ここで地域環境と申し上げましたのは、我々は、限定的な、例えば公害問題、こういうものを引き起こさないように配慮しなければならない。全体的な地球環境と限定的な地域環境、こういう意味でここに取り上げました。
大島(令)委員 では、河合議員に質問します。
 先般の新エネ法が審議されまして、当委員会で可決されたところですが、御承知のように、自然エネルギーの利用が明記されているわけです。
 そこで、この法案は決して自然エネルギーを否定するものではないと思いますが、この件に関して、提案者として見解をお願いします。
河合議員 全くおっしゃるとおりでございます。奨励するくらいであると斉藤議員も申しております。
大島(令)委員 自然エネルギーを促進するということであれば、やはり第四条の二項を削除してもいいと思うんですね。
 というのは、こだわりますけれども、電力の自由化の問題と供給の安定性、例えば自然エネルギーというのは、導入のときにはコストが高くなるわけですよね。原子力のように、もう何十年もやっていると、いや、私は実際コストは高いと思っているんですが、資源エネルギー庁はコストが安いと言っているわけなんですけれども、自然エネルギーをきちんと進めるということであれば、要らないんじゃないですか、四条の二項は。
河合議員 まさに斉藤議員も私も、公明党は環境の党公明党を目指しておりまして、自然エネルギーの導入につきましては、党の重点政策の中に書き込んでいるくらいの課題でございまして、そのためにもこの第三条につきましては欠かすことができないということで、この法案にむしろ我が党も強力にお願いして書き込んだ経緯でございます。
斉藤(鉄)議員 この市場競争性の中の第二項に、市場競争性よりも環境適合性、また安定供給性に重点を置くということは、念頭には自然エネルギーに重点を置くということが入っておりまして、むしろ第二項がある方が自然エネルギーの促進につながると我々は思っております。
大島(令)委員 私が申し上げたいのは、原発の事故というのは、環境に対する負荷も非常に多いわけなんですね。放射能、これに対しては、例えばジェー・シー・オーの事故でも、治療方法が解明されていないわけで、大内さんですか、お亡くなりになりました。
 二〇〇〇年度は、国に報告されただけでも六十七件の原発の事故がありまして、二〇〇一年度は五十四件ありました。その中には、皆様にも記憶の新しい浜岡原発の破断事故、そして青森県六ケ所村のプールでは漏水が起こっていて、いまだに原因が解明されていない。
 例えば、放射能というのは私は怖いと思っておりますけれども、被曝労働者も、私も浜岡原発の圧力容器のおかまの下に入ってきましたけれども、何重にも防護服を着て、そして、はかるくんというのをつけまして、〇・〇三ミリシーベルト被曝したわけなんですが、長期間そこで作業ができないわけです。ですから、何千人も労働者がいる。その中で、中部電力の正規の社員は少なく、本当に下請の方々が多い。何千人もの人が交代で、三分とか五分とか十分とか、交代で仕事をしながら原発を稼働しているという実態があるわけなんです。
 一たん放射能に被曝したら、私たちは死を待つしかない。現代医療の中では、具体的に、例えば盲腸ですとかそういう病気でしたら、結核でも、薬が開発されて治りますけれども、私たちの手に負えない被害があるわけです。
 自然界に対しても、放射能が漏れる、旧ソ連ですか、あのチェルノブイリの事故でも、時間がたって地球の上を放射能が飛んでまいりました。そういう意味では、環境環境といいまして、今皆さんが念頭にある環境は、京都議定書、二酸化炭素ということでございますけれども、私は、放射能、これと原発というのは、必ず事故が起きればセットになるわけです。
 原発も、この前から言っていますけれども、マンションの中にトイレがない、そういう状態でございまして、河合議員も六ケ所村に行ったことがあると思うんですが、結局、プルサーマルを始めたというのも、使用済み燃料、プルトニウムが一%できるわけなんですけれども、これとウランを一緒にして軽水炉でもう一度燃やそう。
 これに対して、プルトニウムというのは、日本は第二次世界大戦で負けまして、アメリカから悪の枢軸国ということで、ドイツ、イタリア、日本はプルトニウムを持ったらいけない、プルトニウムは原子爆弾の原料になるということで、核査察も受けるわけなんですよね。そういう中で日本は管理されているわけなんです。
 しかし、原発が五十二基もあれば、プルトニウムが生産されるわけなんですね。そういうところから考えれば、私は、この原発というのは非常に、日本人、世界の人たちが生きていて、果たして人間が管理できるものなんだろうかという疑問を持っているわけなんです。
 この法案を読みますと、総合資源エネルギー調査会のメンバーには原子力関係の人が何人も委員としておりますし、あと、地方公共団体の責務としまして、やはり国の政策に従わなければならない、こういう文言も入っているわけなんです。非常に中央集権的な法律です。例えば、憲法では国民主権をうたっております。そういうことも無視しているような法律だと思うわけです。
 先ほど来の他の委員の答弁に対して、甘利議員は、国の政策は地方自治体が余りとやかく言うものではない、国が決めるんだ、エネルギーというような根幹にかかわる政策はそうだと言いますけれども、私たち一人一人国民が、この放射能、原発によって事故が起きたときに影響を受けるわけですから、私は、国が決めたことを自治体に強制的に責務としてやらせるというこの法律はおかしいと思っているわけなんです。そういうことも含めて、河合議員の考えを聞かせていただきたいと思います。
河合議員 確かに第六条で、先生のおっしゃった条文がございます。しかし、この書きぶりはほかの基本法でもとっている書き方でございまして、しかしこれは、一つは、エネルギー政策は国の政策であるという前提に立ちまして、しかし、最も住民に近いところにある地方自治体の協力なくしてこのエネルギー政策というのは達成できるものではございません。したがって、こういう第六条の書き方になっていると承知しております。
 その前に、放射能汚染に対するとらえ方につきましては、これは大島先生と全く私も同感でございます。
大島(令)委員 では、河合議員に質問いたしますけれども、第六条、地方自治体に国のエネルギー政策に協力する責務を課しておりますけれども、今後、自治体の主張は通らなくなるんでしょうか。もしプルサーマルに反対した自治体が、現に反対を表明している自治体があるわけなんですけれども、このように反対したとき、責務に反することになるのかどうか、河合議員の考えを聞かせていただきたいと思います。
河合議員 これは、国のエネルギー政策に準じて施策を講ずるとともに、その区域の実情に応じた施策を策定しというふうに書かれているところでございまして、先生の御懸念のように、一方的に、中央集権的に地方に押しつけるというものではない書きぶりになっていると私は承知しております。
大島(令)委員 質問時間が終わりましたので、最後に、今のことでございますけれども、では、今後、原発立地地域の住民の皆様が住民投票を進めていく中で、国はそれに対して妨害をしないということでいいんですか。例えば、刈羽村の場合は、平沼大臣が、妨害ということではないですけれども、上級官庁の大臣が平沼ビラというものをまいたりしているんです。こういうこともありますので、私はこのことをきっちりと聞いておきたいわけなんです。
河合議員 住民投票のあり方、そして住民投票の位置づけ、これは、いわゆる国の憲法を中心とする法体系の中で整合性を持って考えていかなければいけない問題だと私は思いますけれども、しかし、住民投票の結果というのは非常に重く受けとめていくべきであると考えております。
大島(令)委員 ありがとうございました。
谷畑委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十四分散会


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