衆議院

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第16号 平成14年5月21日(火曜日)

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平成十四年五月二十一日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 栗原 博久君
   理事 竹本 直一君 理事 中山 成彬君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 達増 拓也君
      伊藤信太郎君    小此木八郎君
      大村 秀章君    梶山 弘志君
      阪上 善秀君    新藤 義孝君
      根本  匠君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      保岡 興治君    山本 明彦君
      生方 幸夫君    大島  敦君
      鎌田さゆり君    北橋 健治君
      後藤 茂之君    今野  東君
      松原  仁君    松本  龍君
      山谷えり子君    漆原 良夫君
      福島  豊君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      西川太一郎君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   参考人
   (経済団体連合会資源・エ
   ネルギー対策委員会委員長
   )
   (三菱マテリアル株式会社
   代表取締役会長)     秋元 勇巳君
   参考人
   (日本経済新聞社論説委員
   兼編集委員)       永岡 文庸君
   参考人
   (構想日本代表)     加藤 秀樹君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十一日
 辞任         補欠選任
  茂木 敏充君     新藤 義孝君
  山田 敏雅君     今野  東君
  山村  健君     大島  敦君
同日
 辞任         補欠選任
  新藤 義孝君     茂木 敏充君
  大島  敦君     山村  健君
  今野  東君     鎌田さゆり君
同日
 辞任         補欠選任
  鎌田さゆり君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  山谷えり子君     山田 敏雅君
    ―――――――――――――
五月二十一日
 中小企業・国民本位の景気回復に関する請願(大森猛君紹介)(第三一八一号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三一八二号)
 中小企業対策など国民本位の景気回復に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三一八三号)
 同(石井郁子君紹介)(第三一八四号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三一八五号)
 同(大幡基夫君紹介)(第三一八六号)
 同(大森猛君紹介)(第三一八七号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三一八八号)
 同(児玉健次君紹介)(第三一八九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 エネルギー政策基本法案(亀井善之君外六名提出、第百五十三回国会衆法第六号)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 第百五十三回国会、亀井善之君外六名提出、エネルギー政策基本法案を議題といたします。
 本日は、参考人として、経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会委員長・三菱マテリアル株式会社代表取締役会長秋元勇巳君、日本経済新聞社論説委員兼編集委員永岡文庸君、構想日本代表加藤秀樹君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず秋元参考人にお願いいたします。
秋元参考人 御紹介いただきました秋元でございます。本日はお招きをいただきまして、大変ありがとうございました。
 実は、私、先ほど御紹介ありましたように、経団連の資源・エネルギー対策委員会の委員長を二年ちょっと前に拝命をいたしました。一昨年からいろいろと勉強をいたしまして、十回以上にわたりましてこの委員会を開きまして、いろいろのエネルギー分野の専門の方々にお話を伺って、いろいろとまとめてきたところでございますけれども、印象といたしまして、個別的には皆様非常に熱心にその目的のためにやっておられるわけでありますけれども、向いている方向が若干、少しずつみんな違うというところがありまして、このままでいきますと、やはり一種の合成の誤謬といいますか、そういったようなことが起こるのではないかというような心配が出てまいりました。
 そういうことで、昨年の初めごろから五月にかけまして鋭意討議をいたしまして、経団連としての「エネルギー政策の重要課題に関する見解」という見解書をまとめまして、昨年の五月に発表をいたしました。この見解書を持ちまして関係の皆様にも御説明に上がったところでございます。
 その中身でありますけれども、ここに参考資料でつけてございますので、これを全部お話をする時間はございませんので、後ほどごらんをいただければというふうに思います。
 基本的な考え方として、エネルギーの基本政策に三つのEというのがある。エナジー・セキュリティーとエンバイロンメント・プロテクションとエコノミック・グロース、この三つがある。この三つを達成しなければいけないわけでありますが、その達成に向けては、まず、供給量と品質を加味した安定供給の確保に最大限に配慮をしつつ、環境、経済との調和を目指した長期的な総合戦略を策定していくことが必要だ、この点を政府に求めたいというのが私どもの見解の骨子でございました。
 基本法でもこの三点を挙げておられます。ただ、三つ目が、このエコノミック・グロースではなくて市場原理の活用というふうになっているわけでございますけれども、これは当然、経済成長のために必要な有力な一手段でございますので、そういう意味では、この三つの要素の達成が必要であるというような文脈には大筋において変わりはないというふうに私は思っているわけであります。
 ただ、私どもの認識では、三つの要素というのは、同じ平面上に存在しているのではなくて、いわば一種の階層構造をなしているというふうに考えているわけであります。我々の文明社会がここまで発展することができましたのも、私どもが潤沢にエネルギーあるいは情報あるいはマテリアルを駆使して文明社会をつくっていったからでございまして、いわばエネルギーは文明社会の血液と言ってもいい、インフラストラクチャーと言ってもいいものであろうというふうに思っているわけであります。
 そういう意味で、やはりエネルギー資源の安定的な供給の確保というのがこの安全保障上の最重要問題でありまして、そのためには、エネルギーの自給率の向上であるとか、さらにはエネルギー源の多様化というようなことを図っていかなければいけないというふうに思うわけであります。
 いろいろなエネルギーのオプションがあるわけでありますけれども、そのエネルギーのオプションを、資源的な制約がどのくらいあるのかということ、それから、それが安全保障の面でどれだけ強力であるかというようなこと、それから、量的にどれだけの供給能力があるか、さらには、安定性といいますか品質、これがどれくらいあるかという、この四つの側面からおのおののエネルギーを十分に評価をして、それを得るために必要な国際情勢であるとか経済状況であるとか、そういうものも勘案しながら安定供給に資するエネルギーを柔軟に選択していくということが必要であろうというふうに思うわけでございます。
 さて、こういう形で供給体制を考えてまいりますと、その上で、最重要課題として浮かび上がってきますのは二つ目のE、地球環境、地球温暖化問題への対応でございます。
 先ほど資源的制約というふうに申し上げましたけれども、この資源的制約は、資源がなくなるという枯渇性ということだけではございませんで、資源を使うことによって環境にどういう影響を及ぼすかという、その環境性というのが非常に大きなファクターとして上がってきているというふうに考えるわけでありまして、この地球環境問題への対応というのは、我が国にとって最重要課題であるというふうに認識をしております。
 そういうことで、当面、供給面におきましては、例えば原子力のように炭酸ガスを排出しないエネルギーを拡大していく、さらには、天然ガスであるとかバイオであるように、炭素を含むエネルギーでも、なるべく炭酸ガスの排出量の少ないエネルギーへの転換を図るというのが供給面で考えることであろうと思います。
 需要面の方では、化石燃料を我々は非常にふんだんに使っているわけでございますから、これをさらに効率的に使っていくということを基本とすべきであろうというふうに考えております。その中で、特に最近、炭酸ガス排出量の伸びの大きい民生、運輸部門の効率的な利用への知恵を出すということが非常に重要な問題であろうというふうに思っております。
 その上で、中長期的な課題といたしましては、新しいエネルギーの開発など革新的な技術開発に取り組んでいくということが非常に大事でありまして、もちろん太陽、風力もございますけれども、将来にわたっては、水素エネルギーをどうしていくか、核融合をどうしていくかというところまで視野が広がっていくべきであろうというふうに考えているわけでございます。
 このような転換を図って技術開発を進めていくということをするためにも、健全な経済状態にあるということが必須なことでございまして、その意味で、経済合理性を追求していくということは避けて通れない問題でございます。
 そういうことで、我が国産業の競争力を強化して経済の活性化に資するためには、産業活動の制約やコストアップの要因になっている制度を見直して、規制改革の推進を通じ、高コスト構造の是正を図っていくことが必要であるというふうに考えるわけでございます。
 こういうことで、三つ要素を挙げますと、やはりこの三つのEの課題につきましては互いに矛盾する側面があることは否めません。その中で、相互のバランスをとるということが非常に肝要なのでありますけれども、やはり、緊急対応時はもとよりでございますし、経済社会が持続可能な発展を遂げていくためにはエネルギーの安定供給が何といっても大前提となるというふうに思います。
 昨年の米国のカリフォルニア州での経験もございますし、比較的余りニュースには載りませんでしたけれども、東部の方でも、結構電気が足りなくて、電圧を少し下げたり、あるいは契約でとめられるところはとめたりというような形で、やはりかなり需要面に影響が出たというようなこともございますけれども、我が国ではさらにこの上に資源的な制約などの状況がございます。
 さらに、我が国では非常に高度の、例えば半導体産業というようなものがございまして、こういうところで使っているエネルギーというのは、非常に質の高いエネルギーじゃないといけないわけであります。ほんの数千分の一停電をしたというようなことでもそれが製品をすべてオシャカにしてしまうというようなことがあったり、あるいは周波数が狂ったり電圧が下がったりというのはもってのほかというような、そういう非常に品質の高いエネルギーが必要な部分がございます。いわゆる高度医療の分野でもまさにそのとおりでございます。
 また、一方では、家庭を暖房していくというような意味で、余り、大して質の必要のない部分というのもあるわけでございますから、そういう、エネルギーの質に応じて、それに応じた供給源を考えバランスをとっていくということは、非常に必要なことではないかというふうに考えているわけでございます。
 そういうことで、エネルギーの供給量と品質を満たすための投資が長期的に確保されるような見通しを、仕組みを十分に検討しながら、高コスト構造の是正や競争環境の整備を進めていく必要があろうというふうに考えております。
 そういうことで、これをエネルギー別に見てみますと、まず化石燃料でございますけれども、供給面でいきますと、やはり、バランスのとれた供給の確保を進めていくということになりますと、天然ガスは、石油に比べますと地球上の偏在性が少のうございますし、炭素の量もエネルギーに対して低いというような面がございます。
 さらには、バイオから出てくるエネルギーというのがございますけれども、これは、我々、太陽エネルギー、風力ということで、太陽のエネルギーを使おうと一生懸命努力しておりますけれども、やはり何億年もかけて太陽のエネルギーをうまく利用するという知恵においては植物にかなうものはないわけでありまして、この植物の知恵を最大限に利用していくということが、我々にとってはやはり非常に重要な問題であろうというふうに考えているわけであります。
 また、さらに燃料のクリーン化というのも必要になってまいりますし、需要面でいきますと、省エネ型の都市づくり、交通システムをさらに整備をしていくというようなことが必要になってまいります。コージェネレーションであるとかマイクロガスタービン、燃料電池というようなものを導入していくというような、エネルギー効率利用の促進というものも必要になってくるのではないかというふうに思います。
 次に、原子力エネルギーでございますけれども、この原子力エネルギーは、やはり安定供給の要請にこたえる非常に貴重な準国産エネルギーであろうというふうに思っております。発電段階でNOx、SOx、炭酸ガスを出さない、クリーンエネルギーであるというのはもちろんでございますけれども、安全の確保はもちろん大前提でございますけれども、今我々が温暖化問題に対応しようとしますと、やはりこれが最も現実的なオプションであるということは否めない事実であります。原子炉一基で炭酸ガスの依存度を〇・数%押し下げる力があるわけでありますし、原子炉が運転をしておりますと、原子炉は三年間燃料が炉の中に入っておりますし、その製造工程の時間も含めますと、備蓄効果としては五年ぐらいの備蓄効果がございます。ちょっと供給が途絶してもとまらないというような意味がございます。
 それから、石油ショックの時代、我々トイレットペーパーを買いに走ったりした時代があったわけでありますが、あれから我々が比較的短時間に脱却できたといいますのは、あの時期に日本とフランスが非常に急速に原子力の建設が進みまして、そのために石油依存度をぐっと下げることができたということ、これが非常に大きな影響があったという、既に実績があるわけであります。
 こういうことを踏まえて、原子力エネルギーについてはきちっとした対応をしていく。さらに、プルサーマル、高速炉に向けた燃料サイクルの推進というのが必須の問題であろうと思います。
 新エネルギーでございますが、これは、太陽光、風力は枯渇することのない未利用の国産エネルギーでございますけれども、何としても、エネルギー密度が低うございますし、やはり稼働率の面で余り高いことが望めないということがあります。そういうことで、基幹電力にはなかなか無理だということがありますが、ニッチで使いますと非常に強力な電力源になります。我々としては、このようなありとあらゆる非化石電力源をもうとにかく総動員をして使っていくということがぜひとも必要であろうというふうに思っているわけでございます。
 こういうことを考えました上で、昨年の五月に出したわけでありますが、昨年の五月の見解後いろいろな問題が起こりました。その後の情勢を考えてみますと、あの後起こった問題として、米国の同時多発テロ、パレスチナ情勢がございました。エネルギー安定供給への懸念が極めてクローズアップされました。中東依存度が一〇%程度のアメリカがシーレーンの確保に血眼になっているという状況の中で、日本は八〇%を超える中東石油依存度を持っているわけでございますので、この問題については、さらに非常に真剣に考えていく必要があろうかというふうに思っております。
 また、総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会におきましては、自由化の第二弾という論議が始まったわけでございますけれども、当然のことながら、こういう情勢を踏まえまして、自由化とエネルギーの安定供給、環境保全、この二つのバランスをどうとるかということについて非常に厳しい議論があるというふうに伺っているわけでございます。
 こういうところの中で、自給率では日本にはるかにまさるようなアメリカのエネルギー政策が、総合政策として、日本に先行をするということが起こってまいりました。ブッシュ政権がエネルギー政策を最優先課題と位置づけまして、二〇〇一年の五月に国家エネルギー政策というのを発表したわけでございます。こういう面でアメリカは一歩先を行っていたわけでございますが、その内容については、時間がございませんので、ここでは割愛をさせていただきます。
 温暖化につきましても、既に、省エネ法の改正とか再生可能エネルギーの証書とか、いろいろな制度が出てきてもいます。こういう制度が出てきますと、これがやはりふえてまいります。こういう制度をやはり全体の戦略として総括していく基本法のようなものがさらに必要になった状況ではないかというふうに考えております。
 また、京都議定書批准に向けた国内手続が進んでいるわけでございますけれども、これを批准するということは、我々にとっては容易ならぬ課題を背負うことになるわけでありまして、これを克服していくためにも、非常に強力な総合エネルギー政策が必要になってくるというふうに思います。
 さらに、ITERの問題なども今クローズアップされておりますけれども、これはまた大きなポテンシャルを持つ未来の新エネルギーであるというふうに思います。
 そういうことで、五月以降の情勢は、私ども経団連が五月に提案をいたしました意義をさらに深める、さらに強める効果はあっても薄めるという方向ではないというふうに認識をしております。
 そういうことで、今回、エネルギー基本法、この理念において、私どもの考え方と認識が一致をしておりまして、このようないわゆるエネルギーにおける憲法というようなものの制定をぜひともお願いをしたいというふうにお願いをいたしまして、意見陳述を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、永岡参考人にお願いいたします。
永岡参考人 日経新聞の永岡です。私は、産業とか中小企業、流通、企業経営とエネルギーをカバーしている論説委員です。
 論説は、御存じのように、二十名前後の論説委員で何回も議論して、その結果書くんですけれども、商業捕鯨だとか外国人移民とか、真っ向から対立して結論がまとまらないケースも多々あるんですけれども、その場合は書かないとか、両論併記をやると余りパンチがない、何を言っているかわからないということであれなんですが、事エネルギーに関しては、日経の社論としては、原子力は必要である、もちろんその安全面の努力ということを前提にするということなんですけれども。あるいは京都議定書も批准すべきだ、この辺については余り異論がないんですが、私は多少、エネルギー政策については、余り日経の中はそんな異論はないんですけれども、きょうはちょっと編集委員ということで、かなり自由な意見を言わせてもらいたいと思います。
 私の立場は、日本の一番コアコンピタンスというんですか、日本の宝というのはやはり製造業であると。製造業なりその支えている中小企業とか、そういうところの競争力回復というのが、私は一番自分で主張している立場なんです。それプラス雇用とかいろいろな面で、流通・サービス業、そういったところが活性化するというのがポイントなんですけれども、その辺で見て、電力とかガスとか高速道路代だとか水道代とか、やはりインフラコストが高い。今、空洞化とか、いろいろな意味で日本の高コストが言われているときに、そこの是正が最優先じゃないかというスタンスできょうお話ししたいと思います。
 それで、エネルギー政策基本法案ですけれども、これは私は一回も社説でも書いていないんですけれども、他社を見ても一紙ぐらいですか、書いているのは。私も慌てて今回、もう一回日経のテレコムを調べたら、去年一年からことしにかけて二回、二本ぐらいしか記事がないんですね。何か最初は、電力自由化に慎重にというような十行ぐらいの記事でしか出ていなくて、その後は何かまあ、ようやく国会もエネルギー政策全体を考えるようになったという、一面の企画の中で二行ぐらい書いてあった。
 まあ、これは議員立法ということで別にばかにしているわけじゃなくて、非常に結構なのに何でこれを取り上げないのかなということは思って、まあ自分のことでもあるんですけれども、多少関心を持ったのは去年の十一月ごろですかね。経営破綻したエンロンの、エンロン・ジャパンというようなところですね。あるいはNGOの方が、NGOの方はこれは原発推進法案だと。エンロン・ジャパンの人は、何か日経に来て、これは自由化をつぶす電力自由化阻止法案なので、なぜこれに反対しないんだということを言うんですけれども、どう見ても余りそういうふうな法案じゃないなと。法律の文面だけを見ていますと、何に反対するのか、何に賛成するのかというのがよくわからない。
 このエネルギー政策基本法全体の私の印象としては、行政を監視するというんですか、エネルギー全体についてやはり国会が考える、それで大枠をかけると。かつての通産と業界がやっていたエネルギーの需給見通しとかについて、やはり国会も、それは非常に重要なんで、個別じゃなくて監視をするんだ、あるいは、国会の中でそういう全体のことを考えるんだということでは、私も非常に敬意というんですか、ここのところは非常に評価すべきなんですが、さっきの、論評するとなると非常に難しい。
 こういうことを言っていいのかどうかわかりませんけれども、提案者が加納さんなんで、加納さんはよく、朝までテレビで原子力賛成の論客なんで、多分そういったところの危機感というんですか、このまま電力自由化論議をやると位置づけがはっきりしないというようなことで、多少そういう、原子力問題について国会でもいろいろな自由化論議でもちゃんと議論してほしい、これは電事連の会長の南さんも同じ意見なんですけれども、そういったことだろうということで、あえてちょっと深読みをしながらあれなんですけれども。
 私の最大の疑問点というか、唯一の疑問点なんですけれども、やはり四条ですか、市場原理の活用は、安定供給と環境への適合を配慮するというんですか、おとついですか、ここの委員会で、あえて言えばその二つが優先するんだ、こういう議論だったんですが、私は、今の日本の産業の現状とか空洞化、中国の台頭とか韓国の躍進だとかいろいろ言う中で、やはり市場原理を活用するというか、自由化競争政策というんですか、競争を導入してやはりコストを下げていくということの方が今最優先じゃないかと。三つは並行してやれないということはあるんですが、優先順位とすれば、私は、やはり日本の産業や流通やそういったところに対してインフラコストを下げる、そのためには競争政策をより推進していくことが必要だ。
 この四月ですか、東京電力が平均七%値下げして、特にガスとか新規参入業者とぶつかっている業務用電力については一五から二〇%という値下げになって、私、これは非常に朗報というんですか喝采をしたんです。例えば、ここからはなかなか明らかにしないんですが、イトーヨーカ堂とかセブンイレブンのグループとなると大体年間七百億ぐらいの電気料金を払っているわけですね。トヨタ自動車で一千億円とか。トヨタは大口なんでもともと割引というのか、自由化されているところなんではっきりわかりませんけれども、そういったコンビニなんかでやはり一〇とか下がると非常に、干天の慈雨というんですか、そういう現状なんですね。だから、そういったところで、今後も競争政策を実施していくという意味では、やはり自由化を促進してほしい。
 この辺は電力業界も、この前の会議で、小売の全面自由化を受け入れることで検討を始めるということで、今電力業界も別に、自由化はやはり時代の流れだ、もう部分自由化でルビコン川を渡ったんだ、かつての総括原価とかそういうことはないんだということで、十電力というか九電力、濃淡はあるんですが、自由化に向けては、企業格差はありますけれども、進んでいる。
 ということで、余り、安定供給と環境への適合をどんと前面に出して、そして市場原理、これは恐らく規制緩和とか競争政策のことだと思うんですが、それを後にするということを法律で固定していいのかなと。やはりいろいろ時代によって順序は変わるわけですね。例えば、今の時点で、安定供給と環境と市場原理、もし三つのうち二つ選べといったらそういうことを私は選ぶと思うのですが、そういうふうにかなり変わるわけですから、そんなに固定してやっていいものかどうか。このバランス、先ほど秋元参考人がおっしゃられましたけれども、バランスは大事なんですが、今の経済の認識ではどうなんだろうかと。
 私も、企業担当なんで、時々、アメリカのコンサルティング会社のトップの方に聞いているんですが、今の企業戦略で、最新の企業戦略というのは豹変することだと言うんですね。余りにも世の中の変化が激しいので、変わったときには対応できるような選択肢を常に持つというのが最新の今の世界的な経営戦略なわけですね。
 もう、波が激しいとか、グローバル化で激しいとか、そのときに、余り固定的なものをやると、電力の安定供給はもちろん大事ということはあるんですけれども、例えば新規参入とかあるいは外資の投資、そこに物すごく制限があるんじゃないか。まさに、変な、例えばエンロンみたいな、これは電力側の言い分なんですが、ああいう銭もうけのところは入ってきてほしくない、ちゃんと公益事業という認識を持つところだけでやってほしいというその気持ちはわかるんですが、いろいろな形のプレーヤーが参加して、今、日本人だけではなかなか日本を活性化できない。やはり流通でも、ウォルマート、カルフールとか、いろいろな外資を呼び込んで雇用をふやしていくとか、そういう投資の中に、何か市場原理は後よと、こういうのはちょっといかがなものかなという感じは印象として持ちました。
 あと、レジュメは、これは皆さんが多分勉強なさったのと同じ勉強なんですが、むしろ、自由化について、やはり私が最大の懸念をしたのは、原子力の問題をどうするか。
 自由化をやっていきますと、きのうも新聞にありましたけれども、大阪ガスが、百万キロワット級のガス火力で八百億ぐらいで済むわけですが、原子力は一基やはり四千億ぐらいかかる、これは全く競争力がなくなっていくので。あるいは、高レベルの放射性廃棄物をどうするかとか、六ケ所村のあれをどうするかということについては、やはりそれは国の役割分担というんですか、そういうことをむしろこの委員会とか法律の中で議論してほしい。
 そういう意味では、そういう透明性ができたということにおいて、一点の疑問点はありますけれども、この法案についての評価はしています。
 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 ありがとうございました。
 次に、加藤参考人にお願いいたします。
加藤参考人 構想日本という非営利のシンクタンクを主宰しております加藤秀樹でございます。よろしくお願いいたします。
 私が主宰しております構想日本では、エネルギーの研究者を中心にして、一年半ほど前から、エネルギー戦略について考えようという勉強を続けてまいりました。エネルギー戦略、レジュメの表紙をめくっていただきまして、一ページ目に「構想日本「エネルギー戦略会議」の提言」というのがあります。
 大変大げさな名前をつけた会議なんですが、なぜあえてこんな大げさな名前をつけたかと申しますと、どうも今までの日本にはエネルギー戦略というものがなかったのではないか。現在の経済産業省、あるいはかつての通産省がつくった一本の需給見通しがあって、その中で石油代替という、これも非常に単純で明快ではあるわけですけれども、政策があり、これが七〇年代からずっと続けられてきた。
 それで、先ほど秋元参考人のお話の中にありましたけれども、石油に対する依存度が下がって、今原子力はかなり高いわけでありますけれども、エネルギー自体が多様化してきたこと、これは大変いいことだと思いますし、かなりの程度成功してきた、あるいはうまくいってきた部分もあるわけですけれども、今の時点で、引き続きこういうことでいいのかということについて、これはエネルギーの専門家の間で非常に大きい疑問があります。
 そこで、あえてこの戦略ということについてよく考えてみようということでやってきました。そして、昨年の末に大まかな提言を行いました。
 そこで、戦略ということの必要性ですけれども、まず、エネルギーというのはいろいろな、これはエネルギー源を輸入に頼っているということもあって、未来の不確実性を明確に織り込んだものじゃないといけない。
 それから二番目に、空間枠と時間枠。空間枠といいますのは、例えば日本の中だけで考えていいのか、日本だけなのか、あるいはアジアを一つの枠として考えるのか、さらには、世界はもう一つのものだという前提を中心にして考えていくのかということです。時間枠といいますのは、十年、二十年、三十年、どういう時限で考えるのか、あるいはそれ以上なのかということ。
 それから三番目に、選択肢をどういうふうに提示して評価するのか、そこに選択肢が日本の場合には今まであったのかという、この三つが主な視点であります。
 そこで、考えなければならない要素として、これは大体共通しております。この法案の中でも、あるいは法案の提案理由説明の際の、昨年の十二月ですか、甘利議員の説明の中にもありました。三つの要素としては、安定供給と環境、それから市場の活用、自由化ということだと思います。この三つについては、我々の議論の中でもほぼ同じ要素で考えておりました。ただ、その安定供給と環境と市場活力というものについて、変化への対応という点がこの法案の中でどうも不十分ではないのかなという感じがしております。
 これについては、平成十三年の四月の自民党の七つの提言というのがありますが、これは自民党の石油等資源・エネルギー対策調査会に大変おもしろい表現がありました。情緒的、硬直的でなく、科学的、柔軟な発想で対応していく必要があるということがあります。これは非常にいい指摘であります。
 そんなことを念頭に置いて議論していきましたけれども、そこで一つの手法を使いました。それが、先ほどのレジュメの二ページ目にありますシナリオ・プランニングという手法であります。シナリオ・プランニングというのは、最初はたしかシェルが使って将来のビジネス戦略を考えていった手法であると思います。これは、シェルも石油のエネルギーの供給会社でありますから、不確定な要素にどう対応していくかというのが非常にクリティカルな問題であった、そこから出てきた手法であると思います。
 シナリオ・プランニングというのは、八ページ目に簡単な図を、これだけではわかりにくいんですが、御参考までにつけておきました。ごく簡単に申し上げますと、一つのシナリオをあらかじめ決めて描いておくということではなくて、考えられるさまざまな事柄を想定して、その中でどういう異なるシナリオがあり得るのか、それで、そのあり得るさまざまなシナリオに対して常に柔軟な対応ができるようにあらかじめ心構え、それを我々は戦略と称したわけですけれども、それを考えておこう、そのための手法だと言えると思います。
 そこで、次に、そのようなシナリオ・プランニングという手法で議論をしたわけですけれども、今申し上げましたような柔軟な対応あるいは戦略的に対応できるかどうかということを考えますと、次に大事になってきますのは、二つあります。一つは、必要な情報をどれだけ関係者の間で共有できるかということです。もう一つは、それに基づいたオープンでフェアな議論がどこまでできるか。オープンでフェアな議論といいますのは、これはいろいろなニュアンスがあり得ると思います。
 抽象的になりますけれども、ある、一度決めたからこれでいかざるを得ない、あるいは既存の利害関係があるからこれからはなかなか出ることはできないなということではなくて、先ほどの柔軟なということと重なるわけですけれども、さまざまな可能性がある上で国民の利益あるいは国益というものを考えた場合に、常に謙虚でオープンな議論ができるかどうかというこの二点であります。
 その二点を考えた場合に、この法案なりあるいは現在のエネルギー政策に関する意思決定の仕方というのが、果たして適切なものであるのかどうなのか、あるいは何が欠けているのかということが次の問題になってくると思います。
 そのような観点からこの今回の法案を見てみますと、「目的」のところに、長期的、総合的かつ計画的な政策推進のための基本法制定と書いてありますが、このこと自体は大変に結構なことだと思います。
 先ほども少し申し上げましたけれども、そこで問題になってきますのは、具体的なこの「目的」のところはまさにそのとおりであると思いますし、そういう意味での基本法の制定というのは必要であると思うんですけれども、そのときのこの基本法の枠の中における意思決定の仕方がどうなるのかというのが次の問題になると思います。
 これは、この基本法案が世の中に出てくる少し前の時点で我々のこの研究会というのは大体議論を終えていたわけですけれども、そこで何人かの専門家の議論をまとめたものが、レジュメでいきますと二ページから三ページにかけてまとめております。
 そこで問題になりましたのは、これも先ほどのことと少し重複いたしますけれども、現在の政策決定に関する意思決定のプロセスであります。これも最初に申し上げましたけれども、これまではどうしても、石油代替、それから、一つの需給見通しということの中で、その延長線上で政策が決められてきたのではないか。これは、ややきつい言い方をいたしますと、一つの虚構で、必ずしも現実を冷静かつ謙虚に認めた上での議論でない部分が多い。ですから、そこを、あくまでも現実がどうなっているかということをよく見て考えないと、この戦略性というのがどうしても出てこないのではないかということです。
 やや抽象的な議論をしておりますが、これに関しては、例えば幾つかその例が挙げられると思います。構想日本の議論自体は、特別、これはいいんだとか、あるいはこれは悪いんだとか、先ほど最初に三つの要素を挙げました、環境問題あるいは市場メカニズムの活用あるいは安定供給、どれも必要な要素ですし、あらかじめこれが一番大事だということを決めているわけではありません。
 また、原子力政策についても、それは必要なものだという認識ですが、例えば核燃料サイクルの問題については、原子力は必要である、あるいは核燃料サイクルというものも考えないといけないという前提の上で、しかしなおかつ、そのリサイクル政策について、例えば、具体的には、六ケ所村での施設の建設、あるいは間もなくテストを始めようということが、今まで申し上げてきましたような、現実を素直に受けとめて、それに対して、将来どういう不確定要素があるのか、それに対してどう対応しないといけないかということについて、謙虚に、オープンに議論した上で対応しているかというと、そこが欠けているのではないか。今まで大体こういうことをやってきたからちょっと変えるわけにはいかないんじゃないか、あるいは、かなり今までの政策について固まった利害があるから、それはもう今さら崩せないという部分が非常に大きいのではないかということであります。
 これについてはさまざまな議論があると思いますけれども、今後対応していくに当たっては、やはり情報をどれだけきちっと十分にオープンにしていくか。これは官庁の側からすると、あるいは政府の側からすると情報の公開ということでありますし、国民全体の目から見ると情報の共有ということになると思いますし、その上でどれだけオープンな議論をできるかというところが大事になってくると思います。
 そのためには、私自身、やや個人的なことになりますけれども、霞が関で二十年余り過ごしてきた人間ですし、官庁での仕事ぶり、決定に関して、さまざまないい面、悪い面、両方あると思います。あると思いますけれども、今申し上げましたような、情報をきちっと世の中に出して、それに対してオープンな議論をしていく、それをやろうとしていくと、かつて決めたことを大幅に変えないといけないというような種類の対応に対しては大変に弱い、なかなかできない。そこはまさに政治主導であり、国会での議論というのは非常に大事になってくると思います。
 この点について、私は、法案そのものについてよりも、この点について今は戦略性を考えないといけないんだ、そのためには従来の議論をかなり大幅に根幹から変えないといけない部分もたくさんあるんだ、だからこそその点については大いに国会の中で議論をしていただきたい、これが私のきょうここで申し上げたいことの最大のことであります。
 そういう目で見ますと、この法案には幾つかの問題点が見えざるを得ないということではないか。
 最初に、自民党の七つの提言の中に、情緒的、硬直的でなくて、科学的、柔軟な発想でと。大変にいいわけですけれども、どうも、現在の経済産業省での議論あるいは審議会での議論というのは、まさにこの情緒的、硬直的であって、科学的、柔軟ではないというふうに見ざるを得ないと思います。
 法案についてでありますが、足りない部分ということについて幾つか項目だけ申し上げたいと思います。
 一つは、情報の公開ということについての十分な言及がないということです。それから、オープンかつフェアな議論、あるいは決め込みではなくて柔軟な対応ということに関しては、基本計画についてのところに、現在さまざまな政府の長期計画の見直しが指摘されているときに、ややこれはおくれて出てきたスタイルではないのかなと。計画そのものは必要、あるいは戦略というものは必要なわけですけれども、一つは、国会での議論に十分な記述が行われていない、閣議で決めるということだけだということと、もう一つは、五年というのはやはり今のような時代においてはかなり長いんじゃないか。具体的にはそんなところであります。
 基本法の性格自体は、もともと、基本的な考え方をそこで述べて、こういう考え方でやろうという法律ですから、どうしても抽象的なものになります。それ自体はそういう性格のものだと思いますけれども、抽象的で、雑な言い方ですけれども、何とでもとれる、何とでも解釈して運用できる余地が大きいだけに、この委員会での議論で、ここはこういうふうに今後運用すべきだ、運用に先ほど申し上げました戦略性がきちっと盛り込んでいけるような議論をお願いしたいと思います。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本明彦君。
山本(明)委員 自由民主党の山本明彦です。
 きょうは、三人の参考人の皆さん方、大変お忙しい中を私どもの委員会に参考人として御出席いただきまして、本当にありがとうございます。
 今、三人の参考人の方々のお話をお伺いしておりまして、特に秋元参考人のお話をお伺いして、エネルギー政策基本法というのは本当に大事なものだということを逆に実感として感じさせていただきましたし、このエネルギー問題というのは、当たり前ではありますけれども、私ども国民にとりまして、まさに日常必ずだれでも接しておるわけでありまして、先ほど医療の話もありましたし、産業界の話もありました。まさに生殺与奪を握られておる、それがエネルギーの供給かな、そんな感じをしてお伺いをしておったところであります。
 その大事なエネルギー問題が、今までは、その時々に応じて、個別の法案で対応されてきたわけでありますけれども、今回初めて、長期的に、そして総合的に、基本法というものが今提案をされておるわけであります。そうした意味で、提案者にも敬意を表するわけであります。
 そんなことで、最初に秋元参考人にお伺いをしたいというふうに思います。
 先ほど三つのEというお話がございました。この三つのEの三番目のエコノミック・グロースと、法案で言っています自由化というんですか、それは多少違うけれども似たようなところだという話がありました。ほかの二つは一緒という話がありました。
 この三つの、安定供給と環境と自由化の三角形でありますけれども、提案者の意図というんですか、先日も委員会でいろいろ質問があって、話があって、提案者の答弁を聞いておったんですけれども、提案者の意図というのは、この三つの三角形が、安定供給と環境が二等辺で少し長い、規制緩和、自由化というのがちょっと短い、そういう形の二等辺三角形で、この二つが半歩前へ出ておる、自由化、規制緩和がちょっと後ろへ下がっている、こんなイメージの三つの要素だ、こういう答弁をしておりました。
 秋元参考人は、安定供給が一番だ、こういう話を先ほどされたというふうに私も感じております。私自身も、アメリカの例をお話しされておりましたけれども、まさに国民にとりましては、瞬間瞬間なくてはならないこのエネルギーが、少しの間でも供給されないということは、これは絶対あってはならないことでありますから、私は、個人的にはやはり安定供給というのが一番辺が長い三角形でなければいけないのかなと思っておりますけれども、先ほど、その安定供給が一番と言われた秋元参考人として、今、提案者の考える二等辺三角形、環境と安定供給が並んでおる、自由化がちょっと少ないということについて、逆に、産業界でいいますと、自由化というのは供給側と需要側と両方あるわけでありますから、そういった意味では、産業にとって、日本のインフラは、電力も含めて、高速道路も含めて大変高いというようなイメージもあると思いますので、そんなことも含めて、今の提案者の感ずる二等辺三角形についての御感想を、御意見をちょっとお伺いしたいというふうに思います。
秋元参考人 お答えさせていただきます。
 その三つの大きさといいますかウエートというお話でございますけれども、私どもは、やはり今までの我々が享受している文明社会の一番大きなポイントというのは、エネルギーで労働力を置きかえてきたということだと思います。ですから今、平均的な日本人は、もし人間の力でエネルギーをはかりますと、六百人ぐらいの奴隷を使っている、そのくらいのエネルギーを使っている。十九世紀の奴隷制度が、解放されて、二十世紀、これだけの文明社会になれましたのも、むしろそういうエネルギーを使えるような状況ができたので、結局世界がこういうところまで発展をできたということがありまして、やはりエネルギーの安定供給というのは、そういった意味でも非常に大事なポイントだろうというふうに思っているわけでございます。
 去年のカリフォルニアその他でも、私どももアメリカに企業がございまして、大分いろいろな影響を受けました。自由化というようなことで善意で進んだ話であったわけでありますけれども、結果的には、私ども、隣にある州の工場でもエネルギーを手に入れるようなことがほとんど不可能になってきまして、大変値段が高くなって、会社の収益にも非常な影響を及ぼす。あそこにいる民衆も非常に大変な苦労をしたというようなことがあります。こういう文明社会において、本当に、一瞬でもエネルギーを途切らすということは想像もできないような大きな問題を引き起こすということがあるというふうに思っております。
 その上で、やはりエネルギーをたくさん使うということで環境問題が起こってきたわけでありますので、環境問題は、エネルギー政策を進めていく上で常に両方一緒に考えていかなければいけないという問題であることは、私はそれはそのとおりであるというふうに思います。環境問題は、エネルギーをたくさん使わなければ起こらなかったことでありますので、階層的には、エネルギー問題がベースになって、その上に環境問題というふうに乗っかるわけでありますけれども、この二つについてかなり重要なウエートがある、それを支えていくのはやはり経済の活性化であるというふうに思います。
 先ほどから、自由化あるいは市場性、市場原理というふうなお話がございました。今、経済のエコノミック・グロースを支えていく上で、これが一番の有力な選択肢であるということについては私も異論がないわけでありますけれども、どうもこのごろの話ですと、そのエコノミック・グロースイコール経済性、市場原理である、そんなような感じの議論があるのは少しおかしいのではないかな。
 しかも、その市場原理という言葉が、どっちかというとやや原理主義的に、弱肉強食の自由化までも容認することが自由化であるんだというような形の、一回自由化を始めたらとにかくとめどなくしてしまうというのが自由化であるというような、そういう一種のドグマといいますか、自由化そのものが目的になってしまったというところがやはり問題であろうというふうに思っていまして、私は、あくまでも目的は、人間社会が、すべての人たちが文明生活をエンジョイできるエコノミック・グロースであって、その手段の一つとして自由化がある。
 今、その自由化の必要性というのは非常に叫ばれてはおりますけれども、そういう意味で、先ほど申し上げた二つのベーシックなものを進めていくための一つの手段としてやはり考えるべきであって、もしあえてこれを三角形、私は、同じ平面にないから三角形はかけないと思うんですけれども、かくとしますと、やはり二等辺といいますか、その二つとはウエートを違えて考えるべきであろうというふうに私は考えております。
山本(明)委員 十分しか時間がないものですからあと一、二分しかないということで、なかなか質問も的確にできないわけで申しわけありません。あとちょっとの時間だけいただきまして、秋元参考人にお伺いしたいと思います。
 原発が、二十基が十三基しかできない、なかなか目標どおりいかないということで、安定供給もちょっとそういった、環境の面も含めて、問題があると思うんですけれども、その中で私が興味がありますのは天然ガスなんですね。中東依存度も少ないし、二酸化炭素の発生も少ないし、石炭並みに安価だということでありまして、その天然ガスが、シベリアからのパイプライン、サハリンからですかね、パイプライン等も含めて今計画があるようですけれども、産業界で今どんな対応をしてみえるか、簡単にちょっとお知らせいただきたいと思います。
秋元参考人 特にシベリアといいますか、サハリンあたりからの天然ガスを日本へ持っていこうということについては、かなり活発に産業界の中で検討を進めております。やはりヨーロッパに比べますと、日本だけがパイプラインの面で非常におくれているわけでございますね。
 日本で使っている天然ガスはほとんど一〇〇%LNGと言ってよろしいわけでございまして、LNGで持ってくるというのももちろん一つの手段ではあるわけですけれども、いずれ日本の国内をエネルギーのネットワークで囲っていくといいますか、そういう形のシステムにしていくという必要性はあるというふうに思っているわけであります。
 ただ、これには非常に大きなインフラのコストがかかるわけでございますので、現在の日本の資力をもってしてもそう簡単にいく話ではない。ただ、長期的に、これこそ長期の戦略を立てまして、やはりいずれそのエネルギーのネットワークを、日本の中に国際的な枠組みをつくっていく、この視野の検討は入れるべきではないか。
 もう一つこれには先がありまして、天然ガスだけではなくて、将来、水素のエネルギーになっていくといたしますと、やはりガスの究極の目的は炭素をゼロにすることですから、コールから始めまして最後は水素なんですね。その水素エネルギーもそのネットワークの中で使えるような新しいネットワークを日本の中で構築していく。
 これは、ヨーロッパで、今あるネットワークをそのまま水素エネルギーに切りかえようと思っても、材質その他ですぐはできないのでございますけれども、日本は、おくれたのがある意味では一つのチャンスでもあるわけでございますので、これからつくるときには、そういう新しい、新エネルギーに対応できるようなネットワークにまで視野を広げた開発をやっていくべきではないかということで我々は議論をしております。
 ただ、これは将来非常に大きな努力も要することでございますので、ぜひともまた国の御指導をいただきたいというふうに思っているわけでございます。
山本(明)委員 時間が参りました。まだまだ質問もしたいわけでありますけれども、産業界におかれましても、省エネも、世界で一番省エネの達成率が高いのが日本でありますし、二酸化炭素の発生を抑えておるのも、日本が一番発生を抑えておる、こういう大変御努力をいただいておりますので、これからも、エネルギーの一番ない、もとのない日本でありますから、しっかりと御尽力をいただきまして日本の産業の発展にお尽くしをいただきたい、そんなお願いをいたしまして終わらせていただきます。ありがとうございました。
谷畑委員長 田中慶秋君。
田中(慶)委員 民主党の田中でございます。
 秋元、永岡、加藤参考人の先生方には、大変お忙しいところ、エネルギー基本法に対する御意見を賜る機会をいただきましたことに御礼申し上げたいと存じます。
 最初に秋元参考人にお聞きしたいわけでありますけれども、秋元参考人は、産業界の立場から先ほど、エネルギーの安定供給、あるいはまた環境の問題、それから経済合理性の問題等々を述べられたわけでありますが、私は、今日、戦後の日本がこれだけ産業や国民生活を含めて発展してきたのは、エネルギーというものが大変大きく寄与されたのではないか、このように思っておるわけであります。
 そういう中で、二十一世紀を迎えて、今改めて、特に環境問題が大きくクローズアップをされております。京都議定書の問題等々を含めながら、特にこの環境問題の中で大きく解決をしなければいけないのは、産業部門における自主規制といいますか、自主行動によって削減する問題、あるいは民生部門においては省エネの問題、運輸部門においては低公害車の問題等々が言われておりますけれども、現実問題として、エネルギーなくしてこの環境問題を達成することはできない、私はそう思っております。
 その中で、トライアングルじゃありませんけれども、安定供給、環境問題、合理性の問題等々を考えて、二十一世紀、特に視点として、この三つともパラにして大切だと思いますけれども、秋元参考人は、もしこれから先行的に将来に向かって考えるならば、三つの中でどれを一番大切にしなければいけないか、ちょっとお聞きしたいと思います。
秋元参考人 お答えさせていただきます。
 先ほど申し上げましたように、この三つのポイントにつきましては、一種の階層構造になっておりまして、親ガメがあって、その次に中ガメがあって、それで子ガメがあるという格好でございます。親ガメは、やはりエネルギーがきちっと使える世の中にすることであるというふうに私は思っておりまして、その意味で、やはり供給構造をまず最もベースに持ってくるべきだと思います。
 その供給構造を確立する上で、当然地球環境に問題が出てきますので、地球環境問題を解決しながら安定供給構造をつくっていく。それをつくっていくためには経済活動が必須でありますので、そのために必要ないろいろな開発あるいは技術をやっていくためには、やはりそういう市場原理などを利用して経済を活性化する必要がある、そういう形になっているというふうに思っておりまして、この三つの中でやはり一番大事なのは、特に日本の場合には国産資源がほとんどございません、したがって、国内で調達できる資源というのを十分に持つということが非常に大事なことだと思います。
 もちろん、太陽エネルギー、風力エネルギー、これは完全に国でとれるわけでありますが、一方で原子力は、もともとはウランは外から買ってくるわけでございますけれども、一回燃やした燃料の中には九九%天然ウラン、プルトニウムが残っておりまして、これを繰り返し使うことによって、これは国産資源として日本の国内でほぼ何回も使っていくことができる。少なくとも二十一世紀の間の原子力を、この燃料サイクルを十分に確立していけば、その意味での国産の資源としていくことができるということでございまして、こういう分野の開発というのはやはり一番重要なところではないかなというふうに思っております。
 その上で、やはり今の石油その他の化石エネルギーも必要でありますので、その中では、中東依存度なりなんなり、今非常に弱点のある部分について何とかそれを補強しながら、多様性のある供給構造へ持っていくということがやはり大事なことであろうというふうに思っております。
田中(慶)委員 今、秋元参考人の方から、将来のエネルギー、特に原子力の問題を指摘されているわけでありますが、環境問題、京都議定書の問題等々を考えたときに、この議定書の基本となる部分には、原子力エネルギー、十三基の問題がありますけれども、現状を考えたときに、十年、十五年で十三基できるなんというようなことは基本的に今難しいんじゃないか。少なくとも半分以下、あるいは一基、二基、こんなところが現実問題として、可能性を信じるならばそんなところじゃないか、こんな環境にあるわけでありますけれども、そうなると、この環境問題なり、あるいは今エネルギーの基本的な自給の問題なり等々を考えたときに、バランスが崩れる、将来の見通しが立たない。
 まして今、京都議定書、国際的な協定をしようというときに、おのずとそういう将来の不安な材料を抱えながら、エネルギー問題の解決をしないまま、これを単なる議定書として調印したならば、私は、将来とも、日本という国の社会的な、世界的な信頼性というものにも影響するのではないか。強いて言うならば、そのことがこれからの貿易あるいは国際協力やいろいろなところに波及しやせぬかという、こんな心配もしておりますけれども、いかがでございましょうか。
秋元参考人 京都議定書につきましては、現在批准の方向でいろいろと検討されているというふうに私も拝察をしておりますけれども、京都議定書の問題点は、やはり一番基本的なところでは、一九九〇年をベースにしたということでございます。
 その結果、一九九〇年は日本は石油ショックをやった後でして、一生懸命省エネルギーをやりまして、世界で一番炭酸ガスの放出率の少ない状況をつくりました。したがって今、現在炭酸ガスの放出率を比べてみますと、日本に対してヨーロッパは二倍同じエネルギーを使うのに出しておりますし、アメリカは三倍出しているわけであります。
 そういうところをベースにして、そこから何%引こうというようなことでありまして、これは例えば、百メートルを十秒で走る選手が九秒に下げるということと、百メートルを二十秒で走る選手がそれを十八秒に下げる、どっちがよいかといったら、これはやはり、もう頭のところに来ている日本がそれを一秒下げるというのは、これはよそに比べてももう何倍も大変な努力が必要だというようなことであります。
 そういうような状況で今京都議定書の議論が進められているわけでありますけれども、それほど大変なことを引き受ける状況にあるんだということについて、残念ながら、日本の国内での世論といいますか、国民的関心が高くないわけであります。
 しかも、こういういわばちょっとヨーロッパのトリックのような、一九九〇年ベースという議論で始まった京都議定書でありますので、アメリカはいち早くやはりそういうヨーロッパのトリックを見抜きまして、自分独自の方策をつくるというような形で新しい計画を始めました。周辺の開発途上国も、余りにも国際的な競争の駆け引きに満ちた京都議定書的な案につきましては、やはり今のままでは入れないというような状況で、どこも入らない状況が今進んでいます。
 その中で、日本だけがあえて今批准をする意義というのについては、私は若干疑問を呈さざるを得ないというところがございまして、少なくとも、やはりアメリカあるいは周辺の開発途上国が一緒になって炭酸ガスの放出を減らしていこうということに努力をするような枠組みをまずつくるということが大事なことだと思っております。地球の温暖化は一瞬もゆるがせにできない大事でございますけれども、その問題を解決するためには、やはり今の状況のままでやっていくということについては、私は若干疑問を呈さざるを得ないというふうに思っております。
田中(慶)委員 永岡参考人にお聞きしますけれども、エネルギーの基本法がないまま今日まで戦後五十数年間来た日本の国民生活も産業界も、あらゆるところでそれぞれ今日の発展を見たわけでありますけれども、こういう中で今、基本法を議論しております。
 私は、やはりこれからのエネルギー政策というのは、官を中心としてというよりは、国民すなわち民を中心とした発想でこの基本法が制定されなければいけない、こんなふうに認識しておりますけれども、この辺についての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
永岡参考人 おっしゃるとおりなんですが、やはり国の役割もあると思うんですね。社会的規制みたいなところはやはり国の、国会なり、そういう役割はありますし。
 安定供給というふうな書き方をしていますけれども、エネルギー安全保障ということについて、これは恐らく日米同盟を基軸として、そこのところはかなり安定的に入ってきますと。その中で、私の意見は、だからこそ、もっと国内においては規制緩和を徹底的にできるんじゃないかなと。
 オイルショックみたいなときとか、その後もいろいろあるんですが、何かそういう、むしろ、エネルギー安全保障において日米、あるいは中国をどうするかとか、そういう環境問題というのは、民間でやることもあれなんですが、やはりその辺はかなり国の役割というのも随分あるというふうに、だから、国と民間の役割とそれぞれあるんじゃないかということで、それが答えです。
田中(慶)委員 加藤参考人にお聞きしたいと思いますが、今回の基本法の中には、国民あるいは国、地方の役割等々を含めながら、情報公開ということに少なくとも私どもは積極的に取り組んでいきたい、このように考えているところであります。
 また、これらについて、それぞれの分野、特に、先ほど来、エネルギーというものが、日本の時には安全保障の役割もするでしょうし、あるいはこのエネルギーの革命というのは、私は、日本の新たな二十一世紀の産業革命の大きな柱になっていかなければいけないんだろうと思っているわけであります。
 それは、省エネとかそういうこともありますけれども、電気自動車の問題やら燃料の問題等々を含めて考えてきたときに、こういう新しい一つの取り組みがこれから長期的に出てくるだろう。アメリカあるいは中国が、今、京都議定書に調印をしていない。そういうときに、新しい角度でこのエネルギーの問題を検討されることによって、私は新たな日本の活性化ということを見出すことができると思いますけれども、これらについて、今日まで、構想日本ということでエネルギー戦略を考えられてきた加藤参考人でありますけれども、この辺はどのようにお考えになっていますか。
加藤参考人 冒頭、委員から、情報公開というお言葉がありました。その点については、先ほど私が述べましたことの繰り返しになりますけれども、どういう意思決定のプロセスを経るかというのが非常に大事なところになってくると思います。
 ですから、環境の問題にしても安定供給にしても、あるいは市場の活力を使っていくということについても、これは先ほどから、二等辺三角形というようなお話もありました。それぞれの要素を勘案しないといけない。それぞれの要素をどの程度どう勘案するか。そのことについての、そのときそのときでの不確定要素があるわけですから、そういうものについてどれだけ情報を我々全体が共有して、それをオープンに議論した上で、その都度、まさに適時適切に、そのときにベストのチョイスをできるかという体制、そのための意思決定をできるかどうかということが最も大事なところであると思います。
 そこのところが、これも先ほどの繰り返しになりますけれども、現在のエネルギー政策の決定に関して十分な体制がとれていない。この意思決定プロセスについての柔軟な仕組みをつくるということが、今委員のお話しになられた中で一番大事なところになるのではないかと考えております。
田中(慶)委員 終わります。
谷畑委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 三人の参考人の皆様、大変御苦労さまでございます。
 最初の予定では公明党の河上先生の時間でございましたが、都合で差しかえていただきまして、一番最後に質問する小会派の保守党が上の方に上がってまいりまして大変恐縮でございますが、お許しをいただきたいと思います。
 ところで、まず秋元参考人にお尋ねをさせていただきますが、地球温暖化問題、今ちょうど向こう側の委員会室で、環境委員会できょう採決があるわけであります。
 私ども、経団連のお考えは重々承知でありますけれども、先ほどもお話がございましたように、アンブレラ諸国のうち、きょう現在、アメリカは、私もアーミテージさんにお目にかかってきたりアメリカの議会筋に働きかけてまいりましたけれども、非常にかたいですね。今のまま京都議定書の批准に戻ってもらうということは不可能だという判断をいたしております。
 それから、オーストラリアが難色を示し、カナダが同じくであり、ロシアもだめである、こういうことになりますと、我が国が五%、EUが一四%、およそ二〇%が参加をして、中国、インドのような大変な人口を抱えているところが参加をしない。これは、乾いたぞうきんを絞って水を出そうとするようなものだと私は前にも申し上げたのですが。
 こういう状況の中で、私どもとしては、さはさりながら、それはそれとしても、やはりエネルギー資源をほとんど海外に依存している我が国としては、このエネルギー基本法をきちっと確立して、国民の皆さんにもエネルギーについて深い認識を持っていただく、そういうことから与党としてはこれを提案しているわけでありますが、先ほどこれについて、賛成だ、こういう明快な御議論をいただきました。
 そこで、その中で一つだけ私が伺いたいのは、ブルネイに去年の暮れ行ってまいりましたが、率直に言って、今まで日本が一番の、今でもそうですが、大お得意さんであるわけでございます。しかし今度、ブルネイの王室の方々が中国外交に非常に熱心になられるという情報に接しました。中国の影を感じるわけであります。先ほどの永岡先生の国際競争力、いわゆる産業の空洞化の問題に関しても、中国のエネルギー政策というものを無視するわけにいかないわけであります。
 そこで、私は、海外の、ブルネイのような、または中東のようなところとの資源外交というものをいかに確保していくべきか、このことについての戦略をしっかり経団連もお持ちになっているだろうと思うのでありますが、これについて伺わせていただきたい、こう思います。
秋元参考人 お答えをさせていただきます。
 資源外交の必要性についての御質問でございます。私も、最近、どうもこのエネルギー議論の中からいわゆるセキュリティー論が少し抜け落ちましたり、あるいは、特に資源セキュリティーというような問題についての議論がないことを非常に心配しております。
 先生御指摘のとおりでございまして、中国は既にもう油の輸入国になってまいりました。これからあれだけのスピードで伸びていくわけでありますので、日本が今まで手をつけていたところすべてにいろいろな形で影響を及ぼしてくることは間違いないわけであります。
 ただ、現在日本が手に入れているところは、ポイントポイントを押さえているにすぎません。いわゆる全体のセキュリティーから見れば非常に脆弱でありまして、この分野はさらに多様化していく必要があろうかというふうに思っております。
 それからさらに、既にあるものだけではなくて、海外資源の探査といいますか、これも今海外でいろいろ進んでいるわけでありまして、そういうようなものにやはりある程度の時期から日本が参画をして、その権益を確保してやっていくというような、アクティビティーといいますか、これもちょっと日本はここのところおくれているわけでありますけれども、これをさらに強めていきまして、今後の、特に石油資源あるいは天然ガス資源につきましては、こういうような問題で、後ほど、ある国からの途絶が日本の全部のエネルギーに対して物すごい影響を及ぼしたというようなことがないような形でやっていくべきであろうというふうに思って努力をしているところでございます。
西川(太)委員 永岡先生に一問伺いたいのでありますけれども、新エネルギーの供給というのが大変大事であることは言うまでもないのでありますけれども、しかし、依然としてまだ一の単位のパーセンテージしか全体のエネルギーの中で占めていないわけでありまして、先ほどもお話の中に、国際競争力の確保、産業の空洞化からいかに日本を救うかということが我が国産業政策の大きな中心であるという御議論に大賛成であります。
 そういう観点から、電力の自由化等で安いエネルギーコストを求めていくという動きの中で、どうしても、先ほど秋元参考人からもたびたびお話がありますとおり、原子力政策というのは、将来は別として、現時点では私どもやはり大切な政策である、こう思っているわけでありますが、この点について、新エネに依存していくよりも、原子力政策をもう少し安全性に配慮して合理化していくという考え方、いかがでございましょうか。
 先ほど、最後に具体的な例を挙げてガスとのコストの比較のことに触れられましたけれども、現時点で、現在すぐ間に合うという意味では、私は原子力政策というものをやはりしっかり守っていくべきだと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
永岡参考人 その辺は全く異存なくて、炭素税とか、むしろいろいろな税制などの中で原子力の競争力をもう一回見直し、あるいは今業界から出ていますけれども、送電線の託送料にその原子力の料金を乗っけたらどうだということも含めてこういう原子力の経済性を議論する中で、いろいろ支援することがあるんじゃないか。
 新エネルギーについては、私は、燃料電池とかそういうのはかなり速いと思うんですね。自動車メーカーは、恐らく三年後ぐらいに家庭用のを出してくると思うんですね。今は分散型といってもなかなか、アンチ新エネなんですけれども、モーソン、ディーゼルとか何かであれなんですが、それもやはり、風力も、そういうところもやる必要はあるし、今の技術開発力でかなり変わってくるのではないかというような感じがしていますので、それも大事ということで返事にしたいと思います。
西川(太)委員 もう時間が三分を切ってしまいましたが、加藤先生に最後にお尋ねをします。
 同じように、この新エネを、いかに競争力とそれから供給量をふやしていくか、こういう戦略については、先生の主宰のボードはどんなふうなお考えをお持ちなのか。短い時間で恐縮でございますが、ポイントだけ御教示願えればと思います。
加藤参考人 必ずしも具体的な議論は行ってはおりませんが、これも先ほど申し上げたことの繰り返しになってしまうのですけれども、やはり環境、あるいは市場の観点、あるいは安定供給、どの観点から見ても、まずは、エネルギーの供給源を多様化するということは非常に大事なことだと思います。
 そこで、その技術面、あるいは消費者が何を選べるかという両方の面から、多様にする面でも、まずは、やはりオープンな議論ができる、あるいは、どういうエネルギー源であればどの程度のコストがかかるのかとか、立地に関してどういう条件が必要であるのかというような情報が共有されること、これがまずベースにあるんだと思います。
 ですから、そのことについての政府の責任はまず大変に大きいということと、その上で、必要な、ある種のエコノミックインセンティブというのでしょうか、これも必要に応じて考えていかないといけないということだと考えております、抽象的ではありますが。
西川(太)委員 終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 達増拓也君。
達増委員 まず、秋元参考人に伺いたいと思います。
 安定供給の重要性ということについてでありますけれども、先ほどの意見陳述の中で、高度なものをつくったり、ビジネスをやったりしているところは非常に質の高いエネルギー、電気が必要、しかし、家庭であれば暖房程度のエネルギーがあればいいということをおっしゃいました。
 そうしてみると、安定供給という意味は需要者側によって違ってくるのかなと思うんですね。生活に必要最小限な供給さえあればいいというレベルから、非常に高品質のエネルギー供給が必要という、安定供給といってもそういうニーズによって、需要者側によっていろいろ違いがある、こういう理解でよろしいでしょうか。
秋元参考人 私も、エネルギーにはおすしと同じで、松、竹、梅があっていいんじゃないかというふうにいつも言っているんですけれども、家庭で使いますエネルギーでも、例えば、今はほとんどの家庭にコンピューターがございます。ですから、変に停電をされますと、せっかく今入れたものがさっと消えちゃうとか、いろいろな被害を受けますので、家庭で使うから質が悪くていいというふうには必ずしも言えないんですけれども、例えば、おふろを沸かす、家の暖房に使うエネルギー、これは別にそんな高級なエネルギーでなくてもいい。
 そういう意味では、私は、今の太陽エネルギーも、風力エネルギーも、原子力もみんな必要だと思っていますのは、例えば家の屋根にソーラーのセルを張って太陽の熱を入れまして、これはむしろ、家の中の暖房であるとか、おふろであるとか、そういうような質の余り高くなくてもいいようなエネルギーに使う、あるいはコミュニティーの中でそういうものに使っていく。いわゆる系統電力として配られる電力については、これはきちっと、少なくとも停電もない、電圧降下もない、周波数も変わらない電力であるというようなことを、これはやはり電力会社に担保していただくような部分をつくる。そういうことでやっていきますと、今まで風力、いろいろな新エネルギーも、それぞれにすみ分けてそこで力を発揮する部分というのが出てくるわけでございます。
 そういう形で、もうありとあらゆる非化石エネルギーを総動員してやっていかないと、今度の京都議定書のような問題をクリアしようとしますと、とてもやっていけないんだというふうに思っているわけでございます。
達増委員 永岡参考人に伺いますけれども、やはり安定供給の問題です。
 市場原理との比較で、安定供給の方が優先だという議論があるわけですけれども、先ほど永岡参考人は、むしろ、今の日本にとっては市場原理の活用こそ最優先ではないかというふうにおっしゃられました。その点、安定供給の方が優先だという考え方への反論があれば伺いたいのですけれども。
永岡参考人 私、去年、アメリカのカリフォルニア州だとかワシントンとかにエネルギーで取材に行って、向こうの消費者団体とか州政府とかに取材をしてきたんですけれども、安定供給というのは、恐らく停電とか、あるいは料金がああいう状況になって数倍になるとか、カリフォルニアの場合も、いろいろ新聞とか見ていますと、むしろ停電よりも、やはり価格が上昇したということがみんな頭にきたり、あるいは州政府が破綻した電力会社の面倒を見て、税収が一兆円近い損をしたとかいうことになっているんですが、では、日本でそういう事態がどういうときに起きるのかなというのはよくわからないんですね。
 むしろ競争をして、いろいろな新規参入者も入れた上で供給力をふやしていくということの方が優先順位があって、今はやはり、そもそもの自由化のスタート地点である過剰設備をみんな抱えておられたですね、ピーク電力に合わせて設備投資。これは世界的に同じで、これは米国と比べる必要もないんですが、アジアの韓国でも中国でも、やはりそういう競争政策を通じてむしろ供給力をふやしていくというようなことなので、私は、競争政策は余り安定供給と対立概念じゃないんじゃないかというふうに感じますけれども。
達増委員 加藤参考人にも同じテーマで伺います。
 エネルギーの安定供給の重要性を強調する意見、また安定供給と市場原理は両立が難しい、二律背反だというふうにとらえる意見、そういう意見があるわけですけれども、これについてどう考えますでしょうか。
加藤参考人 安定供給、いろいろなニュアンスがその言葉の中にはあるんだと思います。
 狭く解釈いたしますと、質、量ともに、日常的な経済活動あるいは生活において、まさに安定的な供給体制が整っているかどうかということでしょうけれども、もう少し広く解釈いたしますと、これはよく、エネルギー安全保障という言葉が使われます。やはり国家がエネルギーについて考えるときには、このセキュリティーという観点も必要になるんだと思います。その場合に、次はそのセキュリティー、一体何が脅威なのかという、本当はそういう議論になってくるんだと思います。
 これも、シーレーンとかなんとか、そこまでいきますと広くなり過ぎるわけですけれども、とりあえずある程度限定的にしますと、一つは長期的な脅威、これは資源枯渇論みたいなものがあります。これは割合、世界エネルギー会議などのデータを見ても大きくない。そう考えてみますと、短期的な市場リスクということになります。
 そこに限定いたしますと、今度は市場の動向をどの程度きちんと把握しておるかとか、あるいはそれに対する柔軟な対応ができるか、意思決定ができるかということに結局は帰着するのではないかと思いますし、その一つとして、自由化というのは、結局自由化によって、例えば技術であれ消費者サイドの選択肢であれふやすことですから、広い意味では、多様性をもたらすということにおいて、必ずしも自由化ということが安定的な供給に反対するということではなくて、まさに自由化によって広い意味での安全保障あるいは安定供給が促進される面も大いにあると考えております。
達増委員 加藤参考人に続けて伺いますけれども、その意思決定というテーマで、参考人の意見陳述の主題も戦略的な意思決定ができるようになるべきだということだったと思いますが、そういう意味で、現在のエネルギーに関する意思決定プロセスの問題点、情報公開ですとか審議会、またNPOの参加など、それなりに改善も若干見られるところではありましょうけれども、まだどこが不十分というふうに考えますでしょうか。
加藤参考人 今、達増委員おっしゃられたように、確かに審議会等での議論も含めて随分改善されてきたと思います。
 ただ、これも、いろいろな審議会があるわけですけれども、エネルギーに関して見ますと総合資源エネルギー調査会というのがあるわけですが、ここでの議論あるいはその参加者たちについてのヒアリングを通して聞きますと、やはりまだまだ参加者、例えばNPOの代表なんかも含めて参加している割には、結局そこで発言が十分生かされていない、聞きおいたというケースが多いようですし、必ずしも十分に判断の中に生かされてはいないし、またその前の問題として、例えばそこで出されてくるさまざまなデータについての根拠が示されていないというところが問題なのではないかと思います。
 それからもう一つは、いわゆる役所の意思決定の縦割りというのがあります。これは、縦割り自体は組織がある限りいたし方ないものでありますけれども、それでは、縦割りがあるということを前提にして、エネルギー戦略のような重要な意思決定をどうするかというのが次の問題になってくるんだと思います。
 例えば、これは例えばの話ですけれども、エネルギーにかかわる本当の戦略的なレベルでの議論をする場合には、一つの省庁を離れて内閣全体として意思決定するような仕組みをつくるということも考えられますし、また、日常的な議論においても本当にオープンな議論を徹底してやろうとするのであれば、審議会のメンバー設定のプロセス自体をオープンにするようなこと。
 あるいは、現在のような形だけのパブリックコメントではなくて、これはまあどういう名前かは別にして、シャドーキャビネットという言葉がありますけれども、シャドーコミッティーというようなものを、これはオフィシャルにつくれるような仕組みをつくって、本来の審議会、コミッティーと、それに対するシャドーコミッティーというものの議論を全くフェアに闘わせて、それをオープンにしていくというようなことも考えられるのではないかと思っております。
達増委員 もう一つ加藤参考人に伺いますけれども、原子力発電の問題がこのエネルギー基本法の審議に絡んで一つ重要な論点としてあるんですけれども、より戦略的な意思決定プロセスという観点から、原子力政策がどうあるべきかという点について伺いたいと思います。
加藤参考人 原子力そのものの我が国のエネルギーに対する貢献は非常に大きいと思いますが、二つ問題があるのだと思います。
 一つは、今後、新規の発電所をどうするかということです。原子力は、性格上、設備投資に非常にコストがかかります。ですから、減価償却の負担が大きいものについては今後市場でちゃんと太刀打ちできるのかという問題です。
 それから二番目に、核燃料の処理、リサイクルの問題だと思います。これは、先ほども少し六ケ所村の例を申しましたけれども、技術的な意味での運転管理の問題よりさらに深いところですね、リサイクル政策全体についてきちっとしたやはり議論が行われていない。
 例えばコストが、日本の場合には建設コスト自体が、例えばイギリスと比べますと四倍に近くなってくる。あるいは運転コストは、OECDで定められている最高の、これも三倍を超えているとかいろいろな問題があるわけですね。
 そういうことについて、まだ正面から議論が行われないままに六ケ所村での運転がもう間近に迫っている。その迫っている、これを一度スタートするとなかなかもうもとには戻れないわけですけれども、そういうことについての情報の公開と、これは先ほどの話と重複いたしますけれども、オープンな議論というのが行われていないわけですから、今まで幾らコストをかけたかということも非常に大事な問題ではありますけれども、それをある程度民主主義にかかるコストだと思い切った上で議論することが大事だと思います。
 地方と企業とそれから国、いわば三方一両損でも仕方ない、今まで国策民営でやってきたわけですから、そのコストをだれかが少しずつ分けて負担せざるを得ないんだ、国民全体が負担せざるを得ないんだというところまで思いきわめて議論をするというところが欠けている、そこが一番大事なところだと考えております。
達増委員 時間ですので終わります。参考人の皆さん、ありがとうございました。
谷畑委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 今回の基本政策の法案が、とりわけこの間の国内外の電力自由化のさまざまな動きと加えて、一方では九〇年代、とりわけ九五年の「もんじゅ」事故あるいはジェー・シー・オーの臨界事故と、こういう事故の相次ぐ中で、原子力政策への不信とか原発への批判とかこういう高まりが、こういう二つの動きがその背景にあることは明らかであると思うんですが、そういう中で今回の法案、既にかなり議論も集中いたしましたが、三つの要素、安定供給、環境適合、そして市場原理、これは二等辺三角形とか、いろいろな形でのお話もありました。
 この評価について、今回、これについて優先順位を決めるというのが一つの大きなポイントになっておりますけれども、この評価をお聞きしようとも思いましたけれども、かなりもう質問も集中しておりますので、切り口を変えて、しかし考えてみれば、優劣を別にすれば、安定供給、環境適合、あるいは市場原理というのは、従来の日本のエネルギー政策の前提でもあったと思うんですね。
 では、これまでの日本のエネルギー政策は、この三つの要素はどういう関係だったのか、これをどう見るかということと、今回の法案によってそれがどう変えられていくのか、どのようにその点をごらんになっているか、まず三人の参考人の方にそれぞれお聞きをしたいと思います。
秋元参考人 それでは、従来のエネルギー政策と、今回の新しく基本法になりましたときにどう変わっていくのかということについて、私ども、この基本法のこれからの運営方針について詳しく勉強させていただいたわけではございませんので、そのあたりにつきましては、やはりいろいろ今後御議論をいただいた上でというふうに考えますけれども。
 現在までは、特に原子力につきましては、三十年前に原子力基本法というのが制定をされまして、その中で民主、自主、公開というような基本原則ができまして、あのときは超党派の三百数十人の先生方の議員立法であの方針が出てきたということでありまして、それがベースになって、日本の北海道から九州まで、ありとあらゆるところに原子炉が建って、今のこの地球温暖化の問題に対してもかなりの抵抗力をつけられるような、また今後、石油ショックが起きても、これがすぐには前のような形で厳しい影響を受けないで済むような、そういう形になってきたというふうに思っているわけでございますけれども、やはりこれは、エネルギーの中での原子力にについての基本法だけでございました。
 エネルギーについては、さらに、通産がやっておられました各五年ごとのエネルギーの見通しの政策がございましたけれども、これも、今のような全体のエネルギー戦略を見渡した上での戦略というところまではいっておらずに、いわば、現時点の状況を踏まえて、今度五年がどうなるかというようなことでの見通しがかなりの中心になっていて、そこにある程度の計画が乗ってきたところだというふうに思っております。
 今回の基本法の大もとのところは、これはやはり日本全体のエネルギーの問題につきまして、これが一つのいわば憲法になりまして、これを中心にして新しく日本としてのエネルギー戦略というのを打ち立てていく。そのエネルギー戦略の枠の中で、あらゆるいろいろなエネルギー政策が整合性を持って行われていくという形になるというふうに思っておりまして、議論も、今までのように一省庁の中での議論ではなくて、今後は、各省庁が全部一緒になりまして議論を交わした上で最後の案が出てくるというふうに承っておりますし、そういう面でも、大変、これができ上がることによって一段ステップが上がったというふうな評価ができるのではないかというふうに思っているわけでございます。
永岡参考人 これまではもう明らかに安定供給ですね。安全保障を含めて、脱中東、脱石油というところがメーンポリシーで、それは環境にも使えると。その中で環境のベストミックスにも原子力はなる。だからこそ原子力の位置づけは多かったんですが、やはり三年前ですか、分科会ができて自由化が始まって以来、当時通産省ががらりと、競争政策、構造改革ということで、そちらに転換している。そちらが今恐らく役所の方は優先順位が高いんじゃないかと。私は民間をカバーしていますので、むしろそこをずっと追求したものですから、今は賛成しています、その自由化には。
加藤参考人 両参考人のお話の中にもありましたけれども、これまでについては、一つの需給曲線があって、それから石油代替という非常に大きい方針があって、その枠の中で、その範囲を超えない限りにおいてということで、環境問題あるいは自由化に対する対応というのを考えていこうということにすぎなかったと思います。ですから、そういう意味では、戦略あるいはエネルギー政策というものがあったかどうかということ自体もちょっと疑問なんじゃないかなと私は考えております。
 先ほどの繰り返しになりますけれども、エネルギーのような国の戦略の根幹にかかわることについては、一つの道筋を決め込むのではなくて、不確定要素を考えて、幾つかのあり得るシナリオを考えて、それに対して柔軟に対応できるかどうかというところが非常に大事になってくるんだと思います。これも繰り返しになりますけれども、そのための意思決定の仕方というのは、非常に大事になってくるということだと考えております。
大森委員 今もお話がありましたけれども、戦後、個々のエネルギー、課題別のエネルギーの政策はあっても、総合的なエネルギー政策はあるいはなかったかもしれないというような御意見もありましたが、私は、日本のエネルギー政策、石油危機以来の安定供給ということが中心になって、経済成長を前提にして需要予測を立てて、それに基づいて供給計画を立てていくというようなのが中心になったところに一つの大きな欠陥がやはりあるんじゃないかと思います。
 その点で、今回の法案との関係でもお話のありました地球温暖化、これは人類史的なそれこそ最大の問題と。私は、地球の生命維持装置という形で呼んでおりますけれども、京都議定書などもその大きな一環でもあるわけなんですが、そういう地球生命維持装置の中心的な問題として考える場合に、やはりエネルギーの低減、それ自体をエネルギー政策の中心に据えなくてはならない。今回の法案ではそういう視点がやはり欠けているんじゃないかと思いますが、この点、それぞれの参考人にお聞きしたいと思います。
秋元参考人 エネルギーの問題でありますが、今地球が抱えている危機というのは、エネルギーの危機ではなくて、エネルギーを取り出すために必要な資源の危機だというふうに思っているわけなんです。というのは、エネルギーそのものは重さも何もないわけでありまして、地球に太陽からふんだんにやってくるわけですね。それがまた宇宙に放散されていくということで、そのエネルギーバランスから比べますと、今の文明社会が使っているエネルギーというのはほんの一かけらにすぎない。
 ただ、エネルギーを取り出すために我々はたくさんの化石エネルギーを燃やしたり、いろいろな形でもって資源をむだ遣いしながらエネルギーを出してきた。いわばふんだんに使ってエネルギーを出してきたというここに問題があって、結局、地球は恐らく何億年もかけてためた化石エネルギーを百年ぐらいでばっと使ってしまおうというのでバランスが崩れた。
 このバランスを戻すということが非常に大事なことであって、したがって、省エネルギーというのは、エネルギーの効率を高めるということがまず主体になりまして、その上で、その上に乗っかって、出てきている資源の量といいますか、例えば石油の量、石炭の量、そういうものについての必要な物資の量を減らしていくという、この二つの組み合わせということであろうと思うんです。
 やはり、つめに火をともしてエネルギーを使わないようにしようという国民運動をやるというのは、必ずしもこれはエネルギーの課題ではなくて、快適な生活に必要不可欠な、むだはいけませんけれども、エネルギーは確保しながら、その中で、それに使われる物資の量を最低限に抑えていくという戦略が一番望まれるのではないかというふうに思っております。
 その意味では、原子力はほかの化石燃料に比べますと、恐らくエネルギーの効率が百万倍高いわけでございますので、百万分の一のものの使用でそれだけのエネルギーが出せるという意味で、今後の対策の中でやはり中心的地位を占めざるを得ないのではないかというふうに思っておるわけであります。
永岡参考人 地球温暖化については、この法案では相当触れていますし、省エネとかその辺についても私は触れているという認識なんです。
加藤参考人 この法案自体は、エネルギー基本法案というタイトルですから、その範囲において、環境問題にも一通りのことは触れているのではないかなというのが私の印象であります。
 ですから、あとは具体的なレベルでどうするかということと、それから、実際の運営をしていく上でのエネルギー担当省庁あるいは環境担当の省庁、環境もエネルギーも全部にかかわってくるわけですから、その間のバランスをどうとっていくかということになるんだと考えております。
大森委員 時間が少なくなってまいりましたけれども、この法案については、当然各方面からいろいろな意見が出されていまして、若干の切り抜きも私はお借りしてきたわけなんですが、「安定供給を最優先」とか、見出しだけ読みますと、電力の「自由化に一定歯止め」とか「既得権益保護は許されない」とか、いろいろありますが、一つだけ紹介をしますと、これは日経ビジネスでありますが、「電力自由化阻止法案のお通り」ということで見出しがあり、中には、「「電力自由化に牽制球を投げる」ところに主眼がある。」あるいは、「同法案が電力自由化抑制に大きく舵を切った」という評価とか、さらに、「既得権益層によるお手盛り法律といって、これほど露骨に典型的なのも珍しい。」とまで、厳しい批判といいますか論評を行っておりますけれども、秋元参考人は、こういう指摘についてはどのようにお考えになるでしょうか。
秋元参考人 人さまざまですので、いろいろと行動を起こしますと、必ずそれに対して勘ぐりというのが出てくるというのもやむを得ないところかというふうに思いますが、私は、この基本法というのを素直に読みますと、やはりこの日本にとって今一番大事な基本的なエネルギー戦略を国として持つ、国益をきちっと確保できるような戦略を持つということの精神に基づいて書かれているというふうに思っておりまして、個々の揚げ足取りについて余り気を使うことはないのではないかというふうに思っているわけでございます。
大森委員 意思決定の過程における透明化という点で加藤参考人からもお話がありました。エネルギー政策基本法案、対案も拝見して、その中で、広く国民の意見を聴取する旨、新たにつけ加えるというようなことも拝見をいたしました。
 そして、このエネルギー基本政策の関係では、先行して日弁連が既に二〇〇〇年に、エネルギー政策の転換を求める決議という形で出して、この中でも、これはいろいろ盛り込んでおりますけれども、一つは、政策の立案過程における民主化、透明化を図り、エネルギー政策基本法を制定すべきだ、こういう提案で、その中では、現状では政策決定過程が民主的なものになっていないということで、少なくとも基本計画を国会の議決事項とすること等を内容とすべきではないかということがこの中で言われております。
 国会の関与について加藤参考人に御意見をお聞きして、終わりたいと思います。
加藤参考人 これも先ほどの繰り返しになりますけれども、エネルギーの問題といいますのは、これはまさに国の基盤にかかわることだと思います。でありますがゆえに、戦略性というのが必要になるわけです。
 その際に、私は、一つの官庁で物事を決めるということが常に問題があるということを申しているわけでは全くないんですけれども、しかし、今までの経緯から見ますと、結果的には、決めたことがなかなか変えられない。あるいは、決めて長年たって、一つの方針をずっと実行していきますと、そこにもう固まった利害関係が出てくる。それを打ち破ることが官庁のサイドからだと非常に難しい。そこに政治の出番、政治の役割、政治こそがそれを変えるための議論をしていく力があると考えております。それがまさに国会の議論だと考えております。
大森委員 終わります。
谷畑委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 お三方の参考人の皆様におきましては、お忙しいところ、意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 私は、まず加藤参考人にお伺いしたいと思います。
 議員立法という民意の反映ともとれる形をこの法案はとりながらも、法案の第十二条では、エネルギー基本計画について書かれております。大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の意見を聞いて基本計画を作成しなければならないということでございます。
 私は、結局エネルギーというのは、先ほど来、消費するところは民生、運輸、産業という幅広い国民生活、多くの国民の人たちが利用するにもかかわらず、経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の意見を聞いて、閣議決定を経て基本計画を定めなければいけない。結局は、経済産業省という一つの官庁、官主導ではないかというふうに思っております。このことに対しての御意見を聞かせていただきたいと思います。
加藤参考人 これまた先ほどの繰り返しになりますが、私は、すべてに関して官庁が物事を決めること自体が問題だということではないと思いますが、ただ、結果的にエネルギーについては、過去五十年間、やはり非常にかたい、リジッドな前提のもとでリジッドな政策がとられてきた。それは私は、結局、国益あるいは国民の利益ということを考えると非常にマイナスなのではないか。ですから、そこのところを、意思決定の仕組みなりあるいは意思決定がもっとオープンにできるような情報公開のあり方というのが問われているということだと思います。
大島(令)委員 では、もう一点加藤参考人にお伺いしたいと思います。原子力政策でございますけれども、今後どうあるべきかということでございます。
 原発は、一たび事故が起きますと、その被害は非常に甚大でありますし、深いと思っております。また、青森県六ケ所村におきましての再処理工場の建設費一つをとってみましても、当初は七千億円くらいを想定しておりましたが、二〇〇五年の稼働のときの試算ですと約二兆一千四百億円と、建設費のコストが膨らんでおります。この六ケ所村の建設費に関しましては、電気事業連合会がそれぞれお金を出して建設を進めているわけですが、うまくいかない場合は不良資産化するということも報道されているわけなんですね。
 そういう意味におきまして、今後、原子力政策が、このプルサーマルを中心とした、まあ六ケ所村がうまくいかなければ日本の原子力政策は私は破綻すると思っているわけなんですが、ましてやこの膨大な二兆一千四百億円と膨らんだ建設費というのは、言いかえれば、私たち利用者に電気料金のはね上がりという形で返ってくるわけでございまして、そういう観点から、今後の原発に関してどのような政策が求められるのか、御意見を聞かせていただきたいと思います。
加藤参考人 原子力全体については、これは先ほど来繰り返されております三つの観点から、ある程度のレベルは維持していくべきではないかと思っております。
 ただ、これも先ほどの繰り返しになりますけれども、新規の原子力発電所というのは、これは莫大な設備投資がかかるということで、今後自由化が進んでいきますとなかなか市場で太刀打ちできないんじゃないか、これは考えないといけない。
 それから二番目に、今委員御指摘の核燃料の処理、リサイクルの話があります。これについて、東京大学工学部の山地教授、この方は我々の研究会の主要メンバーでもありました、が述べていることを少し引用いたしますと、「そもそも、原子炉では連鎖反応の維持のため原子炉内に常に臨界量以上の核燃料を保持しておく必要がある。そのため、原子炉に装荷した燃料を全て燃やし尽くすことは原理的に不可能である。」ということです。したがって、再処理、リサイクルというこの技術の確立というのが、原子力開発の当初から当然のように追求されてきたということです。
 ただ、そこで、核燃料サイクルのことを今度考え始めますと、核燃料サイクルといいますのは、燃料の連鎖であるとともに経済性の連鎖であり、リスクの連鎖であり、責任のリサイクルだ、こういう非常に的確な言葉で言いあらわされているわけですけれども、この経済性の連鎖であり、リスクの連鎖であり、責任の連鎖であるというところについて、六ケ所村の実際の実験、操業がスタートいたしますと、その連鎖の中に入ってしまう。ですから、これが常に、リサイクルをどんどんやっていくこと自体が悪いということではなくて、きちんとした議論をほとんどせずに、今までもう二兆円もかけたからなかなか引き返すことはできないなというところの硬直性が一番問題だと思いますし、実際に、まさにこの連鎖の中に入ってしまうとさらにコストがかかるわけですし、さらにリスクが出てくる、そこをどうするのか。
 ですから、少し、一つだけ具体的な御提案を申し上げるとすると、とりあえず六ケ所村で実際に運転することは一たんストップすべきではないか。一たんストップした上で、ただ、数十年後には、さらにリサイクル燃料を有効に活用する技術が確立されている可能性もかなり出てくるわけですから、それから、原子力発電をやっている限りこのリサイクルをどうするかという問題はついて回るわけですから、いわゆる中間貯蔵、とりあえず、とにかく塩漬けにして置いておこうではないか。何もそう急いでそれを燃料化して使っていく必要はないわけですから、ある種の時間稼ぎですね、時間稼ぎをして、その間に技術の確立、あるいはきちんとした議論をしてどうするかということを、例えば二〇一〇年をめどに結論を出していく、そういうことを考えるべきではないかと思っております。
大島(令)委員 ありがとうございました。
 それでは、秋元参考人にお伺いします。
 先ほど、原子力は安定供給の面から、そして準国産のエネルギーで非常にすばらしいという御意見でございました。
 そこで、今私は、加藤参考人から、リスクの連鎖、責任の連鎖という見解を伺いました。まず、エネルギー源に対する安全性について秋元参考人はどのように考えているのか。私がお願いしたいエネルギー源というのは、原油、ウラン、そして自然エネルギーがあるわけなんですが、この各エネルギー源に対して安全性というのはどうあるべきかということに関して御意見を聞かせていただきたいと思います。
秋元参考人 お答えさせていただきます。
 あらゆるエネルギーはそれなりにリスクを持っているわけでございます。エネルギーというのは力でありますから、その力を使おうとすれば、その力を使うことによってリスクというのは出てくる、力が大きければ大きいほどリスクが大きい、これは当然のことであります。
 その中で、確かに原子力というのは、ほかの、先ほども申し上げましたように、化石エネルギーに比べまして、エネルギー密度では百万倍のエネルギー密度を持っております。したがって、原子炉を運転するときに、非常に注意を持って安全に運転をしていかなければいけないということは事実でございます。
 では、現実に今まで原子力を運転し、それから石油、石炭、いろいろな形のオプションのエネルギーを運転しておりますけれども、そういうエネルギーを運転したところで、どれだけのリスクがあり、どれだけの社会的な影響があったかというようなことを冷静にいろいろ評価をしてみますと、やはり原子力は、確かに新聞の上をにぎわすようなかなり大きな問題がございました。チェルノブイルが一番大きな問題ですし、日本でもジェー・シー・オーがございました。
 ただ、そういう死者の数を全部入れましても、例えば、石炭を掘るに当たりましては、もうあのチェルノブイルが起こったすぐ直後に、あそこの、何でしたか、東欧で何十人という人間が死ぬような落盤事故がございましたし、一つのエネルギーを確保するために必要な犠牲者の数でいきますと、原子力は圧倒的に少ないんです。
 その安全性の面でも非常に、しかもその安全性というのは年々と向上をしてきているということがございます。そういうことがなければ、今、例えばアメリカとかドイツとか、いろいろなところで原子力がこれだけの貢献をしているわけはないわけであります。
 現実に、ここ、余りよく知られていないことなのでありますけれども、一九九〇年から二〇〇〇年までの間に、アメリカで原子力による発電の量は三割ふえております。アメリカは、古い原子炉をある程度閉めているわけでありますけれども、それだけ原子力の発電量がふえているということであります。
 ドイツは、原子力は危ない危ないといって閉めるという、グリーンの方々が非常に強力に言って、そういうコンセンサス法案をつくったわけでありますが、そのドイツでも十年の間に一〇%原子力の発電の量がふえているんです。
 そういうことは、やはりそういう社会で原子力が安全に運転をされて、それだけの社会に貢献をしているということでありまして、やはり原子力が持っている危険を、エネルギーの強さ、それに対してのポテンシャル、危険のポテンシャルというものに関して、我々原子力をやる者については、常に十分な注意を持って、最大限のあれをしてやっていかなければいけないわけでありますけれども、それが強いからそういうものは使えないんだという話になりますと、これはもうまさに何もインパクトのないようなエネルギー源をただ並べて使うということになってしまうわけでして、これは地球環境問題を解決することにもなりませんし、これから新しい経済成長を遂げることもできないということになるわけでありまして、やはり私にとって今一番大事なことは、原子力が持っている光と影といいますか、そういったものを十分公平に御認識をいただくことであろうというふうに思っております。
 最近、フランスの環境学者あたりも、いわゆる原子力の持っているリスクを公平に分析した上で、これからの環境問題にとってやはり原子力が非常に重要なオプションであるというような本を出しておりまして、今私どもも一生懸命それの和訳などをやっておりますけれども、ぜひともまた、もしあれでしたら先生にもお送りさせていただきますので、読んでいただければ大変ありがたいというふうに思います。
大島(令)委員 時間がございませんので、今の御意見に関しましては、私は――先ほど秋元参考人も、ウランを燃やすと大体一%のプルトニウムが出ると。プルトニウムはやはり核兵器の原料になるわけで、日本の場合、先回も言いましたけれども、悪の枢軸国といいまして、第二次世界大戦で負けたときに、イタリア、ドイツ、日本は核兵器を持ってはならないということで、アメリカ、まあ国際機関ですけれども、核査察が入っております。
 そういう意味で、結果としてプルトニウム、このプルトニウムに関しましても、MOX燃料ということに関してデータ改ざんということで、なかなか進んでいない。刈羽村でも、住民が勉強しまして、住民の反対投票では、七割の人がプルトニウムを利用したMOX燃料反対ということもございますので、少し御意見が違うかなということを感じました。
 永岡参考人にお伺いしたいと思います。
 永岡参考人は、市場原理の活用ということを非常に重要だというふうに述べられていると思うんですが、この法案の四条では、市場原理の活用を述べながらも、安定供給、環境保全という政策目的が損なわれないよう十分な配慮をとなっておりまして、安定供給と環境の保全よりも市場原理の活用の方が下のランクにあるような条文の書き方となっております。
 きょう私、気がついたんですが、秋元参考人も永岡参考人も、実は総合資源エネルギー調査会の委員でございますよね。この法案が通ったときに基本計画を考えるお立場にありますので、お二方がそれぞれ意見が違うということは非常にいいことだと思うわけなんです。
 誤解のないようにお願いしたいのは、私はこの法案に反対の立場をとっております。しかしながら、今の委員会、国会の勢力からすると、ひょっとして通ってしまうのではないかという危機感もございますので、永岡参考人におきましては、市場原理の活用ということに関してどのようにこの法案の中で受けとめていらっしゃるのか、御意見を最後にお伺いして終わりにしたいと思います。
永岡参考人 私も、ガスの何か分科会みたいなものに一回出て、何か業界同士が対立したものですから、それから一回も出ていないんですけれども、その程度のエネルギー総合調査会や何かの専門委員です。
 それと、やはり民主導とか市場主導型ということはもう大きな流れで、電力業界はどうあれ、彼らもマーケットに上場しているわけですから、彼らの経営そのものがもう既に市場原理に、市場至上視というか、市場に律せられている。
 今回の場合、冒頭の陳述でしましたけれども、多少抵抗があるというぐらいで、この法案全体が何か対立法案かどうかというのはよく見えないところがあるのですけれども、むしろ今は、今の九電力というのですか、国内九電力の今の地域独占から変わろうとしている中で、それを変えるときに効率的なのは、むしろ新規参入なり競争なりあるいは分散型電源という技術の競争だとか、そういうことがむしろ九電力の過剰設備の解消にもつながるんじゃないか。彼らはその過剰設備をマーケットで売るとか資産をスピンオフしていくとかということで変わるんじゃないかということで、むしろ市場が律することによってより効率的な、より安定的な供給ができるんじゃないかというのが私の意見で、それはずっと一貫しています。
 以上です。
大島(令)委員 どうもありがとうございました。
谷畑委員長 河上覃雄君。
河上委員 公明党の河上でございます。最後の十分でございますので、お疲れでございましょうが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 秋元参考人にお伺いいたしますが、経団連では自主行動計画など、地球温暖化を初めといたしまして、エネルギーをめぐる諸課題の解決についていろいろとお取り組みをなさっていると認識をいたしております。
 エネルギー政策基本法の第十条では、法制上、財政上または金融上の措置について定めておりますが、経団連におきます温暖化対策への取り組みなどをサポートする上で、政府に期待する措置としてどのようなものをお考えか、まずこの点について御見解を賜りたいと思います。
秋元参考人 経団連といたしまして、特に温暖化対策で自主行動計画というのを推進させていただいておりまして、三年目に入りまして、おかげさまで何とか所期の目的を達成いたしまして、炭酸ガスの発生量の増加をほとんどゼロに抑えるというような効果をやっております。今度の地球温暖化に対する対策でも、一応の御評価を政府でもいただきまして、これを中心に据えて、まず最初の半分を走ってみようじゃないかというような形でやらせていただいております。
 それから、私どもとしては、これはもうまさに各業界が自主的にやっていることでございますので、その自主的にやっている枠組みというのをぜひとも崩さずに、尊重していただきたい。業界の中で、おのおのの業界でいろいろとやはり事情がございます。ですから、出てくるデータが必ずしも同じ単元でそろってこないだとか、時間があれだとかというような問題は当然出てくるわけでありますが、それはそれなりに業界の中で最も効率的な運営をしようということのあらわれでございますので、そのあたりを御寛恕いただきまして、しかも、今度、第三者評価も進めていこうというようなことでやっておりますので、ぜひとも温かく見守っていただきたいと思っております。
 その上でやはり政府に一番お願いいたしたいことは、例えば民生、運輸の面で我々がやっておりましたいろいろな政策が表に出ていくところで、例えば交通渋滞は相変わらず解消しない、したがって、一生懸命燃料効率のいい車をつくってもそれが余り効果が出てこないというような問題。あるいは、コジェネをやっていくためにいろいろな規制がありまして、これは各省庁ごとにあるわけでございまして、一つのコジェネというプロジェクトをつくっていくためにはいろいろなところでひっかかりが出てくる。
 今度、都市再生計画というものができまして、そういうところが、ひとつまとまってやろうというような形で大変いい方向に進んでいるわけでございますけれども、そういう意味でのいわゆる規制の枠といいますか、今までの壁を取り除くということについてぜひとも御協力をいただきたい。
 それから三つ目には、先ほどの原子力でございますけれども、きょうのお話を伺いましても、やはり原子力に対しましてはいろいろな誤解が非常に大きく出ております。
 先ほどのプルトニウムの問題にしましても、プルトニウムと言うと途端に兵器というふうに短絡してしまうというようなところがございまして、このあたりはやはり、結局プルトニウム自体は、エネルギーを出させたらこれほど強力な元素はないわけでありまして、兵器に回さずにこれをエネルギーに回していくということが我々の施策の中心になってくるということでありまして、今プルサーマルは、一番原子力を嫌っているドイツあたりでも平気でやっている技術なのであります。
 そういうところが、日本の国の中でいろいろ誤解を受けているということについては、やはり国も含めたもっと広いいわゆる広報対策といいますか、皆様にわかっていただけるための努力というのが必要だと思いますし、それから、特に地方に対してのいろいろな働きかけというのも、国も一体になってやっていただく部分がぜひともあって、我々も努力いたしますけれども、ひとつぜひとも御協力をいただければありがたいというふうに思っているわけでございます。
河上委員 ありがとうございました。
 永岡参考人にお伺いをいたしたいと思います。
 カリフォルニアの電力危機は自由化の推進が原因で、安易な自由化は慎むべきだという見方がある一方で、自由化の制度設計さえ間違わなければ、自由化を進めても安定的な供給を損なうものではないという見解もございます。
 そこで、カリフォルニアの例などを踏まえた場合に、自由化と安定供給の両立を図ることは可能なのかどうか、御見解をお伺いしたいと思います。
永岡参考人 カリフォルニアでは、カリフォルニア州の公益事業委員会も、自由化したからこんなことになっちゃったとか相当頭にはきていますけれども、カリフォルニアを除いていけば、ああいうふうな仕組みにしないような自由化にしよう、いいチャンスだったと。カリフォルニアの人も、日本もこれから自由化をやるからいい制度設計をしてくれと。
 カリフォルニアのことは、多分皆さんも勉強なさっていて、いろいろな要因があると思うのですけれども、これはもう世界じゅう、むしろ私は、自由化という言葉じゃなくて、あれは電力会社のリストラクチャリング、収益構造を変えるという、そっちの方じゃないかと。むしろ彼らは、欲にくらんだというんじゃないのですけれども、資産を持つより、送電線とか発電所を持つよりも小売でいった方がもうかると、何かそういうようなのがもともと彼らのスタートラインだったかなという、その中でいろいろ設計があったと思うのですけれども、そういう声も随分聞こえたんです。
 だから、むしろ日本の場合も、規制撤廃というような感じでは私は見ていないのですけれども、むしろ電力会社が、今まで総括原価の中で積み重ね過ぎたいろいろな余剰設備をリストラクチャリングするという意味においていえば、やはりアメリカのを参考事例にしながら、マーケットのああいうつくり方じゃない、あれは全量を全部強制プール制にして大失敗したわけですけれども、あるいは送電線の投資をどうするかとか、そういったことをむしろ分科会なんかで議論する中でいい設計、日本の制度はつくれるんじゃないかというふうに思っています。
河上委員 最後になりますが、加藤参考人にお尋ねをしたいと思います。
 エネルギーにつきましては、温暖化には原子力が必要不可欠であるという主張が産業界を中心にある一方で、原子力をやめて新エネルギーでエネルギー需要を賄うべきである、こういう主張があるなど、さまざまでございます。
 そこで、こうしたさまざまな主張がある中で、国民のコンセンサスを得つつ国家戦略を構築する、これはなかなか難しい仕事になると思いますが、参考人はどのようにお考えでしょうか。
加藤参考人 これも先ほど来申し上げていることの繰り返しになってしまいますけれども、例えば原子力については、まず感情的に原子力ははなからだめだという議論では済まないのは当然のことであると思いますし、安定供給、環境、市場メカニズムの活用、すべての面から見て、やはりエネルギー源が多様であるということの重要性というのはまずあるんだと思います。
 そういうことを含めて、今やはり大事なのは、その一方で、今までも、政策決定に関して、これも原子力を例にとりますと、石油代替あるいは政府が出してくる需要見通し、それに基づいた非常にリジッドな政策がとられてきたというところに問題があるんだと思います。
 ですから、そこの意思決定の仕組みを見直していく、これは、今回の基本法案のこの委員会における議論、あるいは基本法案が成立した場合にそれをどう運用していくか、私はそこに大いに期待しております。
 この法案自体も、いろいろ問題を指摘し始めますと切りがないことではあるわけですけれども、それは常に世の中そんなものですから、さらにいい法案にしていただくことも大事ですけれども、それができた際に、この法案自体は基本法案ですから、それに基づいて具体的な政策決定に関して、今までのようなリジッドなやり方ではなくて、国会の議論、私が先ほど来申し上げていますのは、オープンな議論というのはそういうことですし、国会での議論を軸にして進めていっていただきたいなと考えております。
河上委員 ありがとうございました。終わります。
谷畑委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十一分散会


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