衆議院

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第15号 平成16年5月14日(金曜日)

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平成十六年五月十四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 今井  宏君 理事 江渡 聡徳君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 康友君

   理事 田中 慶秋君 理事 吉田  治君

      今村 雅弘君    遠藤 利明君

      小野 晋也君    小島 敏男君

      小杉  隆君    河野 太郎君

      谷  公一君    西銘恒三郎君

      平井 卓也君    藤井 孝男君

      松島みどり君    宮路 和明君

      梶原 康弘君    菊田まきこ君

      近藤 洋介君    高山 智司君

      樽井 良和君    辻   惠君

      中津川博郷君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    村井 宗明君

      村越 祐民君    渡辺  周君

      江田 康幸君    河上 覃雄君

      塩川 鉄也君    坂本 哲志君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   参考人

   (株式会社産業再生機構代表取締役社長)   斉藤  惇君

   参考人

   (事業再生研究機構代表理事)

   (弁護士)   多比羅 誠君

   参考人

   (東京都中小企業再生支援協議会副会長)   井上 裕之君

   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君

    ―――――――――――――

五月十二日

 容器包装リサイクル法の改正に関する請願(石田祝稔君紹介)(第二一六三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 経済産業の基本施策に関する件(産業再生の進捗状況等)


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件、特に産業再生の進捗状況等について調査を進めます。

 本日は、参考人として、株式会社産業再生機構代表取締役社長斉藤惇君、事業再生研究機構代表理事・弁護士多比羅誠君、東京都中小企業再生支援協議会副会長井上裕之君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず斉藤参考人にお願いいたします。

斉藤参考人 斉藤でございます。

 本日は、このような委員会に私どもの現況報告をさせていただく機会をいただきましたこと、大変厚く御礼申し上げたいと思います。

 時間の制限もありますので、お手元の資料を使いながら、私どもの一年間の取り組み状況と実績についてお話をさせていただきたいと思います。

 我が機構が目指しますのは個々の事業の再生でありまして、あえて申し上げますと、企業ではなくて事業再生を実現するということが業務運営の基本となっております。

 資料の一ページにその仕事の流れが書いてありますけれども、事業再生が可能かどうかの判断というのは、機構法及び定めがあります支援基準に基づきまして行いますけれども、数値基準等々いろいろな基準の中で、最も厳しく、かつ、私どもが最も重視しておりますのは、機構が買い取りました債権や出資の結果保有いたします資産、これが三年以内に売却等をしなければならないわけですが、果たして、それができるかどうかという基準であります。

 この三年以内のエグジット基準というものに従って再生の可能性を判断するということは、必然的に、市場の目から見た再生の可能性でその事業を評価するということになろうかと思います。機構に持ち込まれるような企業は、上場企業であっても市場の利用者としての意識は薄い、おしかりがあるかもしれませんが、そういうふうに我々は思います。三年以内のエグジットを可能にするということは、そうした企業をマーケットに受けられるようにつくりかえるという作業であるというふうに認識しております。

 私どもは、事業再生のプロフェッショナル集団として、市場へのかけ橋となろう、そのためのベストエフォートを続けているということであります。

 次に、民業の補完という意味から、資本の効率性の徹底というお話をさせていただきたいと思います。

 我が国の企業の中にも、当然、資本の効率性を徹底して、厳しい国際競争の中ですばらしい実績を上げておられる企業はたくさんあります。しかしながら、我が国の企業の中でそうした企業の比率というのは、残念ながら必ずしも高くありません。資本の効率性などほとんど考えたことがないというような企業も数多く存在しているということが現実であります。世界は今や、資本の効率性を徹底的に追求していくという厳しい競争を展開しているというふうに我々は認識しております。我が国の経済がそうした国際競争の中で伍していくためには、どうしても資本の効率性という考え方を企業経営に導入しなければならないというふうに思います。

 一方で、金融界の方から見ますと、担保主義、メーンバンク制といったものに固執しました銀行も、資本の効率性という面からの企業統治というものは行ってきておりません。一たんその事業が窮境に陥ると、再生を忘れて回収競争に入るというようなのが現状であります。

 私ども産業再生機構は、資本の効率性を徹底的に追求した事業再生を行っておりまして、今や世界共通の言語である資本の効率性についての考え方の我が国への導入に少しでもお役に立てればというふうに思っております。

 次に、官との調整という点についてお話しさせていただきたいと思います。

 民間に資本、資金が不足しているときに官がこれを提供し、経済を発展させることは、合理的でもありますし、必要なことであろうと思っております。例えば、戦後、官業による民業の補完が我が国経済の今日の発展に貢献したことはだれも否めないと思います。しかしながら、民業が自律的に発展を遂げた段階に至ってもなお官業が同様の活動を続けている場合には、官業がよほど資本の論理に基づいて動かない限り、かえって民業発展の阻害要因になることがあると思います。

 事業再生に関して言えば、ある事業の立ち上げや前向きに展開する局面では、官業は民業の補完としてよく機能しておりますけれども、一たん、後退、撤退あるいは再生の局面になりますと、官業は資本の論理では本来動かないために、両者の調整がつかなくなり、迅速な解決が困難になる傾向がございます。

 私ども産業再生機構は、官民両方の面を持ち合わせております機関で、官業と民業が協力し合って再生を進める枠を提示することが役割であると考えております。

 実績について御報告いたします。

 支援決定は、二ページにありますように、これまで十三件、一つ一つの案件がユニークであり、思い入れがあります。どうしても新聞、テレビは、取引所一部上場企業であるとか会社の規模が大きいとかいうものに注目されがちでありますけれども、機構としては、どんな案件であっても同じように全力で取り組んでおります。地方の案件は東京の新聞では注目度が低いわけですけれども、その地域の方々にとっては非常に重要であり、また、地方の交通機関、百貨店等の再生は全国共通の問題であり、機構の再生モデルの提示という機能からしても重要であると認識しております。

 数が少ないとの批判があることも承知しておりますけれども、他方、事業再生の専門家は非常なペースで案件を出しているという評価をしていただいております。

 産業再生機構の仕組みは、事業者、金融機関の案件持ち込みがあって初めて働くという申請主義であります。また、再生機構の役割は民業の補完であるということを我々は肝に銘じております。したがいまして、我々といたしましては、持ち込まれた案件をしっかりとした内容に仕上げることに全力を尽くすということであります。

 事業再生に果たす役割について一言申し上げます。

 私ども産業再生機構、ただいまプロフェッショナルが百五十名ぐらいで、全スタッフで百八十九名ぐらいでございますが、日本じゅうの再生案件を全部扱うというのはおよそ不可能であります。できるだけ多様な事業再生のモデルを提示することが私ども産業再生機構の役割であるというふうに考えております。例えば、九州の熊本の九州産交というバス会社の再生に取り組みましたけれども、多くの各地の自治体からの問い合わせをいただいております。

 事業再生専門家の育成について申し上げます。

 我が国における事業再生の問題といたしまして、専門家の不足というものが指摘されております。この長期にわたる不況のかなり大きな原因が、私はこういう人材が日本にいなかったということであろうかと思います。事業再生の専門家を育てるということも、私ども産業再生機構の役割であると考えております。

 私どもは、これまで、支援決定に至らなかった案件や現在進行中の案件も含めまして、実は百件近い案件に取り組んできております。外に出ましたのは十三件でありますけれども、現在も百件近い案件に取り組んでおります。この間、機構の職員が経験を積んだことはもちろん言うまでもありませんけれども、同時に、機構からアウトソーシングを受けました弁護士さんあるいは会計士あるいは企業コンサルタント等の事業再生に関する専門家というのは膨大な数に上っておりまして、人材の育成という意味でも既にかなりの貢献ができているのではないかと自負しております。

 次に、事業再生市場の創出あるいは拡大についてお話しさせていただきます。

 我が国の事業再生市場を創出すること、拡大することも私どもの使命であると思っております。幸い、今やすべてのメガバンクが再生専門の子会社や専門部署を有しております。地域の銀行におきましても、企業支援部門等の組織を持つところが急速にふえてきております。また、証券会社等、銀行以外にも事業再生に力を入れるところも出てきております。機構の設立と活動がこうした動きに刺激をしているとすれば、大変うれしく思います。

 次に、産業再生に果たす役割についてお話しさせていただきたいと思います。

 産業再生というと、国家による産業政策という観点から議論されることが多いと思います。もともと産業再生、再編とは、民間ベースで自律的に起こるものであるはずであろうかと思います。しかしながら、そのためには、企業や事業の再生や買収が経済合理性に従って円滑に行われるメカニズムが経済の中に仕組まれていないといけないというふうに思います。

 産業再生機構は、我が国の事業再生の仕組みの中で抜け落ちています私的再生と法的再生のよいところを、両者の溝を埋めるという機能を持っているということであります。

 お手元の資料の最後のページ、この色刷りのところでありますが、この図は、御案内のとおり、右側が、下へ行きますと債権者の間の調整の必要性が大きくなる、また左の方を見ますと、下へ行くほど窮境のレベルが高いということであります。一番下にありますのがいわゆる法的再生であります。

 法的再生の一つの特徴は、取引先等の営業債権が毀損するということであります。これに対しまして、上の、緑が濃いほど自律再生に近いわけでありますが、金利減免等々から始まりまして、私的整理ガイドライン、この法的再生と私的整理ガイドラインまでの間が、実は日本の社会制度、法的制度ではぽっかりあいているわけでありまして、そこに書いてありますように、営業債権者、いわゆるメーカーさん等々、納品者等への弁済による事業価値の維持が産業再生機構法ではできる。なおかつ、我々は、中立公平で迅速な債権者間の調整ができる、準裁判所的な行動がとれるようになっております。これが、現在の日本の構造であります。

 我々の仕組みは、取引先に迷惑をかけずに事業価値を維持するという私的再生の長所と、債権者間の調整を迅速に図るという法的再生の長所、両方を持ち合わせているということであります。産業再編を促進するには、こうした事業再生のメカニズムが必要でありますし、アメリカでは、御案内のとおり、ここが、チャプターイレブンということに関する運用の積み重ねがこの機能を果たしております。

 産業再生機構が一つの促進剤となって、我が国の事業再生に関するこれらの制度運用が整備されることを私どもは期待しております。

 今後の課題について申し上げます。

 以上申し上げました産業再生機構の機能を発揮いたしまして、役割を果たすべく、全力で、愚直に努力を重ねていくことが私どもの最大の課題であると思います。

 案件の持ち込みにつきましては、昨年五月の機構発足から夏ごろまでの間は、私どもがさまざまなバックグラウンドの人々の集まりであった、そういう組織であったことや、法律があるだけでありまして、実際の作業標準が全くない状態でありました。したがいまして、しばらくの間、相当に試行錯誤をしていたということは事実であります。この間、案件を持ち込まれました金融機関等の方々には、そうした意味で御迷惑をおかけした部分があるということは事実でございます。

 その後、具体的な案件が幾つか出てまいりまして、いろいろな作業の標準的な考え方も御説明できるようになりましたし、さらには、金子大臣の御尽力もいただきまして、金融機関の方々との意思疎通も十分に図ることができまして、発足当初の問題は現在、一掃できたと考えております。その結果、昨年冬からことしの春にかけまして、案件の持ち込み、金融機関との共同作業ともに順調になっております。

 今後とも、利用者である金融機関や事業者の方々の御意見を十分に踏まえまして、他方、守るべきところは頑固に守って、努力を続けていきたいと思っております。

 我々は、御指摘がありますように、決して、銀行の救済機関であるということは絶対に意識するつもりもありませんし、事業会社の延命機関であるということも絶対にあってはならないというふうな認識を持ちながら作業を行っております。

 最後に、機構がなくなった後についての提言をしておきたいと思います。

 これは、誤解なきように申しますが、機構がもっと存続しなければならないとか、そういうことを言っているものではありませんで、先ほど申しました、この真ん中の薄いグリーンのところを何とか日本の社会の中に先生方によってつくっていただかないと、産業再生機構がなくなりますと、ここのところが日本の構造からぽっかり欠けるということであります。

 機構法に定められました買い取りの期限は、来年の三月末であります。案件の持ち込みから買い取り決定に要します時間は、大体六カ月近くかかります。新たな案件を持ち込んでいただけるのは秋ごろまでだろう、こういうふうに思います。その後は、産業再生機構を事業再生の道具としては使えなくなるということであります。

 先ほど申し上げましたような、事業再生メカニズムにおきます私的再生と法的再生の間をつなぐ役割というものは、経済にとっては不可欠かと思います。これは、欧米では全部これがそろっているわけでありまして、残念ながら、日本には十分にはそろっていないということであります。したがって、この部分は、私的再生や法的再生の制度面、運用面の改善によってカバーする必要がある。私どもといたしましては、実際にこのすき間をつないだものとして、いろいろな制度や運用について、今後建設的な御提言ができればと思っております。

 簡単でございますけれども、御報告にかえさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、多比羅参考人にお願いいたします。

多比羅参考人 ただいま御紹介にあずかりました多比羅でございます。

 本日は、こういう機会を与えられたこと、大変ありがたく、感謝申し上げるところでございます。

 私は、弁護士でございます。そして、仕事の中心は、事業再生や倒産処理を中心にやっております。会社更生の管財人とか民事再生における会社側の代理人とか監督員等々、倒産事件の現場で働いておりますので、事業再生につきまして、現場での体験に基づいて、日ごろ感じていることをお話し申し上げたいというふうに思っております。私の話は、既に皆様のお手元に、私の方でまとめたものがお配りされているかと思います。これに沿ってお話し申し上げたいというふうに思います。

 最初に、最近の事業再生の課題と産業再生機構についてです。

 現在、従来の倒産法制が全面的に見直しされつつあります。既に民事再生法が制定され、平成十二年から施行されました。次いで、会社更生法の全面的な改正が行われ、昨年から施行されました。一連の倒産法制の大改革によりまして、事業再生及び倒産処理を大変効率的に行うことができるようになりましたことを、大変感謝申し上げるところでございます。

 現在、破産法につきまして全面的に改正する改正破産法案が衆議院において審議中でございますが、この改正破産法案は、現場の者から見まして、手続の迅速化、合理化を図っており、公正さを確保する内容でございます。ぜひ早期に成立していただき、早期に施行できるようにしていただきたいというふうに思っております。

 最近の事業再生の課題は、いかに事業を毀損させずに、かつ早期に再生させるかであります。会社更生や民事再生の申し立てをした場合、仕入れ先や下請等の商取引債権者は、約定の弁済を受けることができなくなることから、債権回収の手続をとり、また取引停止ないし取引条件の変更等の措置を求めることが多く、それまでの事業状態を維持することが困難となり、事業継続に支障を来すことが少なくありません。

 他方、多くの場合、総債権額に占める割合は、金融機関の債権が商取引債権の額よりも圧倒的に多く、商取引債権につきまして減免させずに金融債権のみの減免によって再建計画を立てる方が、事業を毀損せず、再建のスピードも速く、結果的には金融機関の債権者にもプラスになっております。

 私が申し立て代理人をいたしましたスキー場やゴルフ場につきましての民事再生手続におきまして、申し立て前に商取引債権を弁済して、債権者を大口の金融機関債権者に絞って申し立てした結果、事業継続にほとんど支障を来さず、スキー場については三カ月余り、ゴルフ場については四カ月余りで再生計画が成立しております。

 また、中小企業のメーカーの民事再生においても、本来、弁済禁止ではありますが、裁判所の許可を得て三百万以下の商取引債権を弁済したところ、取引先の約九五%と従来どおりの取引を継続できて、事業をほとんど毀損させずに再生計画が成立いたしました。

 また、最近の会社更生の事例では、三百万以下あるいは五百万以下の商取引債権、中には一千万以下の商取引債権を裁判所の許可を得て弁済することがあります。これは、商取引債権者になるべく影響を与えずに行おうという実務の工夫でございます。

 商取引債権を弁済することによって会社全体の継続、企業価値を維持でき、これを弁済禁止にしている場合に比べて、金融機関の債権者に対する弁済率も高められるのであれば、商取引債権の弁済を認めてよいだろうというふうに思います。

 先ほども御説明ありましたが、産業再生機構の仕組みというのは、金融機関等の債権のみを対象にしており、企業の仕入れ先や得意先との取引には影響を直接与えずに事業再生を行うことから、スピーディーに対応でき、事業価値を毀損する可能性も低くなっております。事業価値の毀損をより少なくすること、それから早期の再生を図るということ、これが時代の要請でございますので、その時代の要請に合ったスキームだと評価できるだろうというふうに思います。

 次に、事業再生と債権放棄についてですが、過剰生産設備の解消というのが景気の回復には重要であって、多過ぎる企業を減らすべきだという考え方があります。例えば、債権放棄を受け、雇用を減らして身軽になった再建企業が安売りを始めたら、きちんと債務を弁済し雇用を維持しながら何とか健全経営をしてきた企業はたまらない、だめな企業というのは市場から退場すべきだという意見であります。

 破綻に瀕した企業をすべて市場から退場させ、破産手続によって解体処理するのが妥当でございましょうか。破綻に瀕した企業とはいえ、全事業の中には収益力を有する事業部門ないし収益力を回復できる事業部門を有するところがあります。そのような企業については、全事業を廃止し、従業員全員を解雇して解体、清算をするということではなく、収益力を見込める事業部門については存続させ、それに必要な従業員の雇用を確保するということが、債権者にとっても、従業員にとっても、取引先にとってもプラスでございます。社会的にその方が有用だろうというふうに思います。

 現在の事業再生は、事業の再生を図ることによって雇用を維持し、債権者への弁済をより多くし取引先への影響をより少なくすることを目的としているわけでございまして、決して企業そのものを再生させようということを目的にはしておりません。そして、債務超過のままでは資金の調達あるいは信用の供与を受けることができず、事業の再生というのはなかなか困難でございます。事業の再生の成果が上がっても、既存の債権者にそのまままず返済されて、新規に資金や信用を供与した者に対する配分というのがなかなかなされず、おくれてしまうからでございます。

 早期に事業価値に見合う債務額に減ずること、つまり、債権放棄することによって事業価値の劣化を防ぐことが、債権者にとっても債務者企業にとってもプラスということになるわけでございます。

 しかし、債権放棄すればどの事業も再生できるかというと、そういうわけではございません。収益力に欠ける、あるいは収益力の回復が見込めないような事業や資金力に欠ける企業については、債権放棄や資金供与をいたしましても、単に企業の延命になるだけで、事業の再生はできません。また、再建の見込みを持てる事業につきましても、債権放棄等による財務リストラだけではなく、事業リストラを実施するということが重要でございます。

 次に、事業再生と経営者の交代についてですが、会社更生では、経営者の交代が行われ、裁判所が選んだ管財人が事業の経営を行います。民事再生では、原則として、債務者会社が事業の経営を行うことから、従来の経営者がそのまま経営を続けるということも可能であります。

 もっとも、法的手続を申し立てしたか否かにかかわらず、事業再生の際に、経営者に法律的な責任がある場合、あるいは従業員や債権者から不信感を持たれているような場合、あるいは引き続き経営を続けていくことについて債権者の理解が得られにくいような場合には、これは経営者を交代すべきであることは当然でございます。

 しかし、事業再生の際に、常に経営者は退陣すべきかというと、そういうものではないというふうに思います。再建のために経営者に送り込まれて間もなく、経営破綻についても責任がなく、かつ有能な人物であるというような場合には、それから、あるいは中小企業等がそうなんですが、なかなかその人にかわり得る人材がいないというような場合には、そのまま経営を続けることがあってもよいのかというふうに思います。

 しかし、事業再生というのは、先ほども申し上げましたとおり、企業そのもの、法人そのものを再生させることに主眼を置くものではなく、また、思い切った財務リストラ、事業リストラを行わなければとても達成できるものではございませんので、過去のしがらみを断つために、人材が得られるならば経営者は交代する方がいいだろうというふうに感じております。

 次に、事業再生と経営者の個人保証のことでございますが、事業再生における経営者責任を考える場合に、経営者の個人保証の問題を切り離して考えるべきではないだろうというふうに思います。

 金融機関は、融資の際、個人保証を求め過ぎる嫌いがあるかというふうに思います。本来、企業の収益力や企業の物的担保価値に基づいて融資すべきであり、経営者の個人保証は不要なはずです。しかし、従来、金融機関は、中小企業に対する融資の際、中には、上場会社に対する融資の際にも経営者の個人保証を求めておりました。

 自分の会社を一代で大企業にしたある有名なオーナー経営者はこう語っております。私は、五十歳まで銀行に会社の借金の際の個人保証をとられていた、中小企業の経営者はだれでも、会社がつぶれれば身ぐるみはがされるという恐怖感を持っていると。これでは、経営者に対して、早期に事業再生に着手すべきであるという説得もむなしいものになってしまいます。会社を事業再生で助け、自分は破産を選ぶという経営者はいないからであります。

 経営する会社を事業再生する場合に、たとえその手法が民事再生や会社更生のような法的手続であれ、私的整理の場合であれ、経営者など個人である保証人につきまして、破産したと仮定した場合の破産弁済額か、あるいは個人の債務額に応じた一定の金額を分割して支払う弁済計画を認め、個人の経済生活の再建を容易にする手続を立法すべきではないかというふうに思います。

 経営する会社について事業再生の手続をとった場合に、保証人の保証債務を軽減する制度を立法するならば、保証人となっている経営者は、自分と企業を再建させるために、手おくれになる前の段階で、早期に事業再生の手続を行うことになるだろうというふうに思うわけでございます。

 次に、産業再生機構の役割でございますが、事業再生につきましては、基本的には民間主体で進むのが望ましいというふうに思います。

 産業再生機構は、期間を限って、政府の関与により事業再生を促すために設置されたものでございますから、あくまでも民間の自律的な再生を補完するものでございます。したがって、産業再生機構は、民間では難しい分野を中心に行っていただきたいというふうに思います。

 第一に、従来、債権放棄に協力しにくいとされていた公的機関、政府系金融機関その他の公的な機関がありますが、そういう公的機関が債権者として関与する場合、あるいは債務者企業が公的機関や例えば第三セクターその他の公的色彩を帯びた法人であるような場合には、なかなか民間の力だけでは再生について困難なことが多いものですから、そういう分野も手がけていただきたい。

 第二に、地方の案件や中堅、中小企業の案件というのは、現在のところ、民間だけではまだ不十分だというふうに思います。もっとも、産業再生機構は、活動の期間が制限されていることや規模的にも無限ではなく限度があるということから、これらの案件について、個別に具体的に直接取り組むというのではなく、各地にあります中小企業再生支援協議会、あるいは地方にあります中小企業再生ファンドと組んだり、これらの組織を指導したりすることならば可能ではないかというふうに考えております。

 三番目に、なかなか難しい問題ではございますが、業界の再編につながるように、業界と協力しながら事業再生に取り組むということ、これはなかなか民間ではできないことなものですから、こういう分野もぜひ取り組んでいただけたらというふうに期待しているところでございます。

 なお、産業再生機構は、十兆円の政府保証を受けて業務を行うなど公的側面もございますし、また国民に対する一定の説明責任もあるだろう。その点で、次の点を十分御考慮願いたいというふうに思います。

 一つは、プロラタ弁済でございます。既に実施しているとのことでございますが、法的手続に準じて、弁済は平等、公平を貫いていただくということをお願いしたいと思います。

 次に、成立した再建計画の公表ですが、これも実行中かと思いますが、成立した再建計画のうち、企業秘密とか事業継続に支障を来さない範囲で、弁済率とか、逆に言いますと債権放棄率、あるいは何年間の弁済計画かなどの再建計画の骨子についても公表していただきたいというふうに思います。

 三番目には、手続の透明性の確保でございますが、手続の透明性確保のために、事案に応じ、特定調停とか会社更生、民事再生等の裁判所の手続も利用してよいのではないかというふうに感じております。

 最後には、モニタリングの結果の公表ですが、再建計画が成立した会社について、定期的に、例えば六カ月ごととか三カ月ごとに、業績や計画の達成度との対比というのも公表願いたいというふうに思っております。

 以上が、本日お話し申し上げたいと思っていたところでございます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

根本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、井上参考人にお願いいたします。

井上参考人 東京都再生支援協議会の副会長をいたしております井上でございます。

 私は、東京商工会議所の中小企業担当の副会頭をいたしております。本日は、このような機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、早速でございますが、中小企業再生支援協議会の現状等につきまして御説明をさせていただきます。

 バブル崩壊以降、日本経済はデフレが進行し、大変厳しい状態が続いております。このような状況下、日本経済の活力を回復させるためには地域経済の立て直しが不可欠であり、そのためには、地域経済を担っている中小企業の再生が極めて重要であります。このような役割を担って全国に設立されたのが中小企業再生支援協議会であります。

 最近になって、ようやく株価も上昇し、日本経済には明るい兆しが見え始めてきたとはいうものの、一方で、鋼材等原材料費の上昇による仕入れ価格の上昇を販売価格に転嫁できず、また新たな苦しみが始まりつつある中小企業も多く、中小企業にとっては引き続き厳しい状況が続いており、中小企業再生支援協議会の役割はさらに重要になってきておると考えております。

 中小企業再生支援協議会は、全国の商工会議所等認定機関の支援のもと、中小企業の再生に関する経験の豊富な常駐専門家により運営されております。既に全国で四十七都道府県に順次設置をされまして、平成十六年の五月十日現在では、三千五百八十五社からの相談に応じている状況であります。そのうち、三百十二社については再生計画の策定支援に取り組んでおり、既に百三十七社の再生計画が完了をいたしております。東京の協議会では、百三十社からの相談に応じ、そのうち三十四社について再生計画の策定支援に取り組みました。八社につきましては再生計画が完了をいたしております。

 ここで申し上げておきたいことは、再生計画策定完了とは、単に計画が完了したということではなく、その計画に基づく金融機関の支援もまとまっているという点でございます。実は、この金融機関調整というのが中小企業再生支援協議会の重要な役割の一つであります。

 さて、ここで、中小企業再生支援協議会の特徴について、三点、御説明をさせていただきます。

 まず一つ目は、守秘義務という点でございます。

 中小企業の場合、その事業基盤も弱いケースが多く、企業名が公表された場合、今後の事業の存続に支障を来すような事態となってしまうことを懸念している経営者が極めて多いということが現状であります。その点、中小企業再生支援協議会の場合には、再生計画がまとまり金融機関の支援取りつけが完了した場合でも企業名が公表されないという点が、経営者には大きな安心感につながっているということであります。

 二つ目は、中小企業再生支援協議会は公正中立な立場の第三者機関であるという点でございます。すなわち、債権者、債務者のどちらの立場にも立たず、公正中立な立場からさまざまなアドバイスや提案を行うということであります。提案を受け入れるか否かの判断は、あくまで当事者、すなわち企業と金融機関が行うということであります。

 この点は、何か無責任で、中小企業には冷たいように思われるかもしれませんが、現実には極めて適切に機能をいたしております。それは、中小企業再生支援協議会が親身になって徹底的に経営者の相談に乗り、さまざまな客観的アドバイスを実施しているからにほかならないからであります。現実に、全国で相談件数が増加し続けているのが何よりの証明かというふうに思います。

 一方、公正中立な立場という点は、金融機関サイドにとっても大きな安心感を与えているようであります。実際、再生計画策定作業は、企業、金融機関、再生支援協議会、そしてアドバイザーたちが一体となって進めているわけですから、透明感もあり、債務者、債権者双方に安心感を与えるようであります。

 三つ目の点といたしまして、中小企業診断士の存在、すなわち事業自体の改善提案、指導を行うという点でございます。

 金融機関といたしましては、どうしても事業のことがわからないというのが現状であります。例えば、工場の生産性を上げるためには具体的にどのようにすればよいのか等々、このような問題を解決するのが中小企業診断士の役目であるというふうに考えます。

 以上、要約いたしますと、中小企業再生支援協議会は、企業側にとっては、秘密保持が確保され、かつ公正中立な立場から金融機関対応等に関するアドバイスがもらえ、さらに事業の専門家から事業に関するさまざまな改善提案をしてもらえ、最終的には金融機関調整までしてくれるという機関であり、一方、金融機関側にとっては、公正中立な立場から企業の実態分析、事業分析等を実施し、報告してもらえ、さらに企業再生に関する新しい手法等についてアドバイスをしてもらえ、最終的には複数の金融機関調整までしてくれる機関であるということであります。

 何か、メリットばかり申し上げているようでありますけれども、企業側、金融機関側双方からの相談が増加し続けている現状は、そのあかし、もしくは、そのように期待されているというあかしでありましょう。

 ここで、全国協議会の完了案件の事例をパターン化して御紹介させていただきたいというふうに思います。

 まず、企業再生に当たって、基本的な考え方として、主に負債の圧縮を中心としたBSの再生である財政面の再生と、利益及びそれに基づくキャッシュフローの改善に伴うPLの再生である事業面の再生という二本柱があります。いかに一時的に財務面をきれいに改善したとしても、将来的に企業が存続していくためには利益を生み出す核となる事業が必要であり、そのための本格的な手当てが必要なのであります。つまり、中小企業の再生においては、事業面の再生に重点を置くことが真の中小企業の再生支援であると言っても過言ではないと思います。

 この事業再生という切り口から見れば、完了案件の約半数が製品別や取引先別の管理会計の手法を導入し、収益構造の具体的な分析を行うことで経営資源を集中する部門を明確にした上、売り上げ増加のためのきめ細かな提案と収益性の向上のための具体的処方せんを示しているパターンであります。特に、この事業面の改善提案は、リレーションバンキングの具体的取り組みの支援として、金融機関の補完機能を果たす意味で、協議会の役目として今後も極めて重要であると考えます。また、事業面の再生の出口として、MアンドA、営業譲渡や会社分割など、多様な手法を活用しているケースもあります。

 それでは、ここで、事業面の再生をポイントにした東京都の協議会における二つの具体的事例に即して御説明をさせていただきます。

 まず一つ目に、地場の土木事業を営む中小企業の例であります。

 この会社は、大手ゼネコンの下請体質からの脱却を目指して努力を重ねてきたわけでありますが、道半ばで大手ゼネコンの破綻に遭遇し、自力再生が危ぶまれる事態となった企業であります。

 再生計画の中では、利益率の低い下請から利益率の高い小口工事へのシフトを行うとともに、経費削減等徹底的なコスト削減を図ることで収益アップさせることといたしました。

 このポイントは、協議会が取引金融機関を集め、協議会のアドバイザーが実施した企業分析結果と事業分析結果を報告し、さらに、経営責任として私財提供等を実施させることを説明した上で金融支援を要請したという点であります。結果として、商工中金、中小企業金融公庫の政府系金融機関の積極的支援表明が呼び水となりまして、無事、新規資金調達を含め、金融支援が固まったという案件でございます。

 次に、金属加工を営む中小企業の例でございます。

 このケースでは、社長が長年の自分のやり方に絶対の自信があり、メーンバンクからの指導にも耳を傾けず、結果として、なかなか収益が上がらず、じり貧状態であったという案件でございます。

 協議会としては、何度も社長と話をし、やっとのことで中小企業診断士との面談セットにこぎつけました。そして、診断士が現場に何度も足を運び、工場の非効率部門の指摘をするにとどまらず、管理会計を導入し、取引先別、製品別の採算分析等を実施し、徹底的に社長、工場長との話し合いを実施したことにより、社長も大きく目覚め、結果として、大幅に収益改善が図られることになったケースであります。

 要約すれば、事業面の改善、すなわち自助努力という側面を、金融機関にかわって協議会が指導、実施したということであります。

 次に、車の両輪とも言える財務面の再生という切り口から見てみますと、現状、複数の金融機関の協調によるリスケジュール案件が中心となっております。しかし、単なるリスケジュールではなく、政府系金融機関による特別融資や信用保証協会の資金繰りの円滑化借りかえ保証制度等、公的金融支援ツールを有効に活用しているのが特徴かと思います。また、RCCやサービサーによる債権放棄とセットで地域金融機関と政府系金融機関が肩がわりした案件等、抜本的な財務面の再生に取り組んだ事例もあります。

 さて、財務面の再生の手段として債権放棄が代表的な道具として挙げられますが、これには、金融機関による直接の債権放棄のみならず、先ほど御説明いたしましたように、RCC、サービサー、再生ファンド等による間接的な債権放棄があります。現状、協議会での事例として、後者、すなわちRCC等による間接的な債権放棄案件が中心であります。私的整理ガイドラインを活用した金融機関による直接の債権放棄案件も現在進行していると聞いております。

 また、債権放棄に準じる財務面の再生手段として、DES、債務の株式化があります。これにつきましては、従来、中小企業には活用できない手法と思われがちでしたが、そんなことはなく、中小企業でも十分活用できる手法であり、実際に、協議会においても、償還条件つき無議決権の種類株を活用したDESを実施する予定もあると聞いております。また、先般の金融検査マニュアル・中小企業融資編でありますが、そこでも認められましたDDS、資本的劣後ローンも財務面の再生手段として大いに期待されているところであります。

 先般、東京都の協議会におきまして、DDSの第一号を実施いたしたところでございます。そこで、その事例を説明させていただきます。金属加工の中小企業の例でございます。

 この案件は、本業はしっかりしておりますが、過去の負債が大きく、早期の債務超過の解消と過剰債務の圧縮を必要としているというケースでありました。経過としては、協議会アドバイザーチームと再生計画を策定している経過で、商工中金より初めてDDS対応を検討したいとの提案がありました。協議会としても、実現に向け動いた次第であります。

 具体的には、アドバイザーである公認会計士分析により実質自己資本の把握、同じくアドバイザーである中小企業診断士指導分析に基づく事業計画を踏まえ、DDSを織り込んだ計画書を仕上げ、最終段階として、アドバイザーである弁護士により、合理的かつ実現可能性の高い計画であり、またDDSという支援も相当性があり、妥当であるとの意見もいただきました。実現までこぎつけたという案件であります。その結果、企業の債務者区分も無事にアップいたしました。

 このDDSという手法は、企業の正確な資産価値の把握と合理的かつ実現可能性の高い再生計画に基づき実施される必要があり、その意味では、中小企業再生支援協議会の果たす役割は極めて大きいものと認識しております。このDDSについては商工中金が積極的に協力していただいた案件ですが、これに限らず、全国の協議会案件に関して、政府系金融機関の積極的な御支援が協議会にとって大きな力となっており、大変に感謝をいたしておるところであります。

 さて、いろいろと申し上げてまいりましたが、最後に、少し違った側面から協議会について申し上げたいと思います。

 それは、中小企業の再生は、とりもなおさず、地域金融機関の再生にも直結し、ひいては、地域経済の活力を取り戻すことにもつながるという点でございます。

 現在、地域金融機関は、取引先企業の再生に向け、さまざまな取り組みを開始されている段階ですが、再生は決して一人のプロによって実現できるものではありません。弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士ほか、多くの人たちの力をかり、企業と金融機関が一体となって初めて実現できるものであります。

 したがって、今後、さらに中小企業再生支援協議会が果たす役割は極めて重要なものになると確信をいたしております。協議会は、引き続き、企業からの相談には親身になって対応することを心がけ、企業にとってベストの再生プランを提案し、一社でも多くの中小企業の再生と、一人でも多くの雇用が守られるよう努めることが最大の役割であると認識しております。二年目に入り、相談案件も着実に増加傾向にあり、人員の増強等、予算面の御配慮もいただいておりますが、今後、さらに相談案件及び再生計画策定支援案件が増加することも予想されますので、その際には、さらなる予算面での御配慮をいただければというふうに思います。

 私ども東京都中小企業再生支援協議会においては、東京商工会議所を初め、地域の各方面から総力を挙げてバックアップをしていただいておりますが、全国各協議会においても、同じように地域を挙げてバックアップをしていただいております。今後とも、関係各方面の多くの皆様方のさらなる御支援をいただきながら、できる限り多くの中小企業の皆様方のお役に立つように、日々努力してまいりたいと存じております。

 以上、私からの発言をさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

根本委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷委員 それでは、自由民主党を代表いたしまして、御質問させていただきたいと思います。

 御三人の方々、それぞれの立場で、正面から企業再生、事業再生、産業再生に取り組まれていることを踏まえまして、大変貴重な御意見を数々いただきまして、ありがとうございました。できる限り御三人の方のお話を踏まえて御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、斉藤社長に何問かお尋ねをしたいと思います。

 産業再生機構が昨年の五月八日に業務を開始してから一年がたちます。お話にもございましたように、産業再生、事業再生というのは、本来は民間によって自律的に行われることが望ましいと私自身も思っております。したがいまして、産業再生機構の活動に当たっては、民間の英知や活力を最大限に活用する、あるいは機構の活動を通じて事業再生ビジネスの発展を図る、また、単なる企業の延命を図るということではなくて、事業分野の再編も視野に入れた再生を行うということが肝要かと思うんです。

 最初に、これまでの再生支援への取り組みを総括といいますか、総体的に評価して、いわば優、良、可とか、あるいは何点かとか、そういう、我々素人にわかりやすいような何か表現で、どういうふうにこの一年の取り組みを評価といいますか、受けとめておられるのかということをお尋ねしたいと思います。

斉藤参考人 お答えいたします。

 なかなか、自分で自分を採点するというのは難しいというか、僣越なことでございまして、国民、先生方に結果あるいはプロセスを採点していただくのではないかと思いますが、答案用紙は結構いっぱい書いた、白紙ではないということであります。

 御指摘のとおり、本来は、産業再生あるいは事業再生というのは民間ベースでやるべきだと思います。しかしながら、事実は、日本には、民間ベースだけでは解けない仕組みがこの国にはあるということであります。したがって、この十数年間、デフレが解けないままで来たということも事実であろうかと思います。

 一番問題は、先ほどから御指摘が関係者から出ておりましたけれども、例えば公的な支援金、長い歴史に、公的なお金が一産業に投入されていったまま、もはや企業、産業は利益も収益も生まれないままに、ただ存続しているという状況がありました。これはやはり、抜本的に金融支援を公的機関からもお願いしなければならない、こういうのは産業再生機構法のもとで初めてできたことであります。具体的には、民都の問題ですとか、そういうのが出ております。

 それから、民間ベースで、例えばメーン行と非メーン行の調整、当事者同士が自分で調整するというのは、言うはやすくてなかなか現実は難しゅうございます。一メーンに対して四十、五十の非メーン、あるいは場合によっては百ぐらいの非メーンがありまして、その非メーン行に対して債権放棄という形を求めるということは、当然銀行の責任者も大変な責任感が預金者等々にあるわけでありまして、よほどの合理的な理由、あるいは中立機関によるジャッジがない限り調整ができない。したがって、メーン行がそのままメーン寄せを受けながら、だらだらもう収益の出ない企業に資金を貸し続けてきた、こういうことが今日の不況の原因になっております。

 我々は、このところへ入り込みまして、中立性と我々が持っております説明の合理性でもって債権放棄等々ができたというようなこともあります。人の育成もできておると思いますし、それなりに、機構法によって求められております目的は満たしつつあるのではないか、私としてはそういうふうに思っております。

谷委員 ありがとうございました。

 先ほど冒頭の社長のお話でもあったんですが、何も、上場企業だけを世間は注目するけれどもというようなあれがあったかと思いますが、ただ、確かにこの前まで、産業再生というよりも、機構は小粒でローカルな企業の再生にすぎないといった辛口の批判が時々聞かれたことも事実かと思うんです。そうした中で、この二月にあのカネボウの支援を決めたわけでございますが、カネボウの化粧品事業の事業価値といいますか、企業価値を三千八百億円と見込んで、カネボウの百四十億円を除く三千六百六十億円、出資八百六十億円、貸し付け二千八百億円と決めたわけでございますが、ただ、本体の支援のスキームがまだ固まってない状況にございます。それらはいつぐらいに固まり、さて支援額はどうなるのかということが、天下のカネボウといいますか、皆さんが大変注目されているところでございますが、その点についてお伺いをしたいと思います。

斉藤参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、カネボウにつきましては、三月十日に支援決定を行いまして、先般、五月七日に化粧品部門の営業譲渡が完了いたしました。新会社の立ち上げを完了したということでございます。他の部門につきましては、現在、資産内容や事業内容を精査しておりまして、その数字をベースにいたしまして計画の策定を急いでいるところでございます。

 化粧品以外の部門の再生計画の策定は、五月中旬を目途に行うと申し上げてまいりましたけれども、何せいろいろやってみますと、全国に広く散らばっている問題ですとか、海外にもかなり大きな施設、特に繊維の施設がありまして、これの査定等々にちょっと時間がかかっておりまして、今のところ、最初の五月中旬という目標が若干おくれぎみであると申し上げざるを得ないかと思います。

谷委員 五月中旬というのが若干おくれるということで、そういうふうに理解させていただいてよろしいわけですか。(斉藤参考人「はい」と呼ぶ)はい、わかりました。

 さて、産業再生機構の活動期間でございますが、その活動期間は限られている。債権の買い取りは二年間、その処分を含め全体で五年間という期間である。それで、全体の支援枠は予算の方で十兆円というふうになっているところでございますが、今年度どれぐらい、これもなかなかお答えにくいところがあるかと思いますが、ただ、予算で十兆円ということは対外的に明らかにしている。では、どの程度活用されるのかという目安といいますか、そういうものをお伺いしたいと思います。

斉藤参考人 お答えいたします。

 機構の基本的な役割は、先ほど申しましたように、事業再生のモデルの提示と民業の補完であると考えております。数や案件の規模というのはどうしてもジャーナリスティックにも注目が当たるところではありますけれども、これは御案内のとおり、我々の方でコントロールができない。要するに、メーン銀行と事業会社が決定されて私どもの方へ持ってこられる、あるいは持ってこられないという制度になっておりますものですから、先生の御質問の、今年度の見込み額はいかがかということに対しまして、数字とかそういうことでお答えすることができないのは非常に残念でございますが、制度がそうなっておりますので、私としましては、持ち込まれた案件についてはとにかく精いっぱいやらせていただきたいと。

 先ほど申しましたように、昨年は、最初の方は、やはり標準等々がなかったというようなこともありまして、作業のペースは必ずしも速くありませんでしたけれども、半ばよりだんだんスピードが上がってきております。かなりの案件の処理を積み重ねました結果、銀行さんや産業界との信頼関係も増してきておりまして、職員のスキル、ノウハウも相当向上してきたと思っておりますので、我々としては、相当のスピードで業務をできるという状況になっているということだけを申し上げて、お答えにさせていただきたいと思います。

谷委員 余り数字だけを求めるのもあれかと思いますので、今度は、質問を変えて、三人の方にお尋ねをしたいと思います。

 整理回収機構、RCCと、そして産業再生機構、加えて都道府県ごとにあります中小企業再生支援協議会、これら三つはそれぞれ、一見、ある意味では競合するようですが、それぞれの設立の趣旨、目的がやや異なっており、役割分担は一応整理されているかと思うんです。ただ、三人の方々のように、企業再生、産業再生の第一線に現実に携わっておられる皆様方から見て、現実の動きといいますか、現実の機能というのか、現実の働き、そういう目から見ると、この整理回収機構、RCCと産業再生機構、そして都道府県中小企業再生支援協議会というのは、うまく三者がそれぞれ、仕組みをつくったときのように、うまく役割分担をして機能しているというふうに見られているのか、全般的な評価と、あるいは、ややこういう点が問題があるというようなことがあれば、それぞれお伺いしたいと思います。

斉藤参考人 それでは、私の方から最初に御報告させていただきます。

 まず、RCCでございますが、御案内のとおり、預金保険機構を両方とも株主とする兄弟会社でありますので、実務レベルでかなり頻繁に連絡をとり合っております。実は、個別案件でもお互いに情報交換をし合いながら同じ案件を一緒にやろうというような動きも出てきております。

 また、中小企業再生支援協議会とも、全国やブロックレベルの連絡会におきまして機構の活用についてお願いをさせていただいておりますし、具体的に幾つかの県の協議会とは案件ベースで連携を行っております。例えば、支援協議会に相談があった案件を協議会の方から再生機構に持ち込まれたというようなケースも幾つか現実にはあります。まだ支援決定には至っておりませんけれども、鋭意我々一緒にやらせていただいております。また、協議会を通じて機構に相談があって、案件としてはちゃんと支援に至らなくとも、我々の方からいろいろ技術のアドバイスをするというようなケースはかなり多岐にわたっております。

 かなり我々はいろいろな面で御協力できているのではないかと思いますが、先生の御質問のそれぞれの役割ということになりますと、我々、一つは、やはりちょっと規模が大きいような案件あるいはちょっと複雑な案件ですとか、一つの特徴、我々の場合、エクイティーを、株を投入することが一応できるようになっております。この辺はRCCさんとはちょっと違いますので、そういう特徴を生かしながらお互いに緊密に連絡をとっていこうということをやっております。

多比羅参考人 私は、それぞれの機関と内部的に接触があるわけではなく、外部で、遠くで見ているだけなものですから、その関係については新聞等で知っている限りでございます。

 したがって、私の方から見ている限りでは大きな問題があるかどうかというのはわからないところでございますが、今斉藤社長のお話にも出ておりましたけれども、それぞれの機関がやはり公的な側面を持っているということもありますので、それぞれの持っているノウハウ、それから今までの抱えている事例等について、それぞれの機関で担当していくべきだろう。

 したがって、もう少しそれぞれのノウハウの提供ができるように協力関係を強めていって、特に産業再生機構の場合には期間が限られているということもあって、その後を見据えた上で、ぜひ蓄積されたノウハウが両方に行き渡るように、定期的な協議、連絡はとり合っていっていただければというふうに思っております。

 以上です。

井上参考人 先ほどお話がございましたRCCとの関係でございますけれども、一つこのRCCと我々協議会との違いというものは、我々は、先ほど申し上げましたように、第三者的な立場に立って、いろいろと守秘義務というものを持って行動いたしております。企業を買い取るということは一切ないわけでございまして、あくまでもアレンジをして再生をさせるというのが仕事でございます。

 そういった点で、RCCの方から逆に我々の方に、協議会が再生計画を協力してもらえないかというようなことで案件が持ち込まれるというケースはございました。協議会が再生計画の策定を支援して、政府系の金融機関等の協力も得ながらRCCを卒業させたというような事例もございます。そういった点では、RCCとのコミュニケートといいますか、非常にいろいろと関連を持ちながらやっておるということでございます。

 ただ、産業再生機構の場合でございますけれども、今斉藤社長からいろいろとお話がございました、各地方ではいろいろと提携をしながらというお話がございましたが、ちょっと私どもで聞いておるのでは、最近余りそういう事例がないということでございます。一番問題なのは、守秘義務ということが、どうしても産業再生機構の場合にはオープンになってしまうというようなこともございまして、我々の方からなかなかそういう案件を上げられないというようなケースもあるかなというふうにも思います。

 ともかく、我々協議会の方は公正中立、守秘義務、そして金融の調整等、要するに基本的な仕組み及びそういうものを親身になってアレンジをするということで実行しておるのが現況でございます。

 以上でございます。

谷委員 それでは、また戻るかもわかりませんが、斉藤社長に引き続きもう一問お尋ねをしたいと思います。

 多比羅弁護士のお話の中で、一番最後の方に要望といいますか、産業再生機構に対して、債権放棄率、弁済計画の年数などの再建計画の骨子の公表、あるいは再建計画が成立した会社の定期的な業績、計画の達成度の公表など幾つかの要望があって、ちょっと私も勉強不足で、どこまでが現実にされているのかというのをきちんと押さえているわけではないんですが、多比羅弁護士の要望についての社長の御意見といいますか、あるいは機構としての考えといいますか、取り組みを、今後の取り組みも含めてお伺いしたいと思います。

斉藤参考人 先ほどから多比羅先生あるいは井上先生から御指摘のあるポイントでありまして、実は一番悩ましい問題でございます。

 私どもは、できるだけ情報を公開しながらやるように機構法ができております。しかし、その情報を余り公開しますと、先ほどからお話が出ておりますように、銀行さんも事業会社も、だから産業再生機構には行きたくないんだというふうに実はなっているのが現状でございます。

 支援決定時に、我々は、法律によって求められているんですけれども、事業再生計画の概要を公表するということが義務づけられているといいますか、一応透明性の確保に努めている、当然、金融機関に対しましては非常に細かい事業再生計画書を渡します。しかし、これを一般に公開するかというと、これは我々はやっておりませんが、何らかの通路を通ってそれが流れ出ることも否定できないのではないかというふうに思います。

 支援対象企業の中には、先ほどのお話のように、かなり中小企業あるいは非上場企業が含まれておりまして、この方々は特に、どこもそうなんですが、企業の実態が外へ出るということを非常に嫌われます。これは、当然、その企業のあるいは事業の事業戦略にも影響してまいりますし、競争相手はそれを入手してその弱点をつこうというような戦略にも出るわけでありまして、公表の程度が、どの程度の公表というのが機構への持ち込みに余り制限にならないかと常に我々は考えております。

 しかしながら、一方では、透明性の確保ということも、これは当然国民のお金を使わせていただいているわけでありますので、求められているということで、試行錯誤しながらということで、両方の問題を解きつつやっているというのが現状でございます。

谷委員 それでは、多比羅弁護士にお尋ねしたいと思います。

 お話の中で、会社が法的整理などの手続に入った際に個人の保証制度を軽減する制度の創設という話があったわけでございます。個人がやり直せる、失敗してももう一回チャレンジできる、そういう仕組みをつくるということは大変大事なことだと私自身も思っているわけでございますが、じゃ、具体的にどういうような仕組みになるのか。きょう配付していただいている資料の三ページの下の方になるかと思うんですが、弁護士の私見といいますか、提言といいますか、提案といいますか、もう少しお聞かせ願えればというふうに思います。

多比羅参考人 個人の再生につきましては、実は、既に民事再生法という法律ができておりまして、この民事再生法というのは非常に対象を幅広くしております。当然、企業が中心ということにはなりますけれども、特に、できたきっかけというのは、かつてありました和議法を廃止して新たに設けられた再建の手続なんですが、民事再生法というのは、最近、一部上場の大会社も利用されているようになりましたけれども、中小企業を当初念頭に置いてつくろうということで進んできたわけですが、必ずしも中小企業及び企業を対象とした再建の手続ではなくて、これは個人についても行うことができる、個人についても再建のために利用できる手続でございます。

 ただ、なかなか重装備な手続なものですから、企業には向いておりますけれども、純粋の個人にはなかなか難しい手続ということから、民事再生法の中に、もう少し消費者破産に対応できるような形での、小規模の負債額を負った層に対する再建の手続として個人再生の手続というのも設けられているんですが、従来は、個人再生の手続というのは簡略版でございまして、債務総額が三千万ということでございました。

 また今回、破産法の改正をきっかけに、そこの部分の範囲を拡大していこうという民事再生法の改正案も現在審議されているところでございますが、ふえてみても五千万を限度とするということなものですから、中小企業の経営者が個人保証している額というのはそれよりも大幅にふえるものですから、言うならば、民事再生法を使えば、現在でも、法律をつくらなくても、ちゃんと個人について経済生活の再建をしていくことは可能なんですが、なかなかその手続は個人では難しいものですから、簡単に言うならば、保証債務を負っているケースにつきましては、個人再生の手続と同じように、割合簡略に再建ができるようにしていっていただきたいなと。

 ですから、個人保証を負っている方について、会社が再建の手続をとった場合には、ちょうど個人再生の手続に準じた手続が設けられればいいな。割合、個人再生の手続というのは簡単に再建ができる仕組みでつくっておりますので、それに準じた形で、保証人が会社とともに再生の手続をとった場合には特別扱いしていただければというふうに思っておる、ごく簡単に言うと、そういうことでございます。

 しかも、弁済する中身というのは、その人が仮に破産した場合に払う金額か、あるいは一定の金額を、どういう負債についてはどの程度の支払いをしなさいという一定額を決めておいて、そのどちらか多い方、少なくとも破産した場合よりも多い弁済を、そのかわり何年間かの分割で認めるということによって、破産せずに比較的容易に経済生活の再建ができるという仕組みにしていただけたらというふうには思っております。

 現在のところ、全くないというわけではないんですが、今の民事再生法を個人で使うのはなかなか困難である、個人再生に準じた手続ができればありがたいというふうに思っているところでございます。

谷委員 では、井上副会頭にお尋ねしたいと思います。

 中小企業再生支援協議会は、お話にもございましたが、企業の経営改善計画の作成支援ということは可能でございますが、金融機関に支援を義務づける権限を有しているわけではない。そこで、企業再生に必要な資金供給手段が確保されていない、そのために、都道府県、自治体によっては独自の、たしか単独の資金確保もあるというふうにも聞いておりますけれども、そういったことといいますか、資金供給について簡単にお考えをお伺いしたいと思います。

井上参考人 資金の問題でございますけれども、御承知のように、再生支援協議会というのは資本金を持った株式会社でない、再生機構とは違うわけでございまして、企業の買い取りとかそういうことは一切できないということになるわけで、その資金をどこからどうあっせんしていくかということになろうかと思います。

 そういった点では、まず一番は、再生ファンドといいますか、例えば中小企業事業団等が起こした再生ファンドがございます。それから、先ほどのお話がございました、地域で起こしたファンドがございます。そういうところに資金的な面ではゆだねるということになろうかと思います。

 それから、あくまでも中立的な立場に立っておりますので、再生には、すべて企業を買い取るということばかりではないわけでして、金融機関との調整をいかにするかということに主眼を我々としては置いておるわけでございまして、資金がなければそういうファンドにお願いする、サービサーにお願いする、場合によってはRCCと協力をするというような形をとらざるを得ないということだと思います。

 以上でございます。

谷委員 では、以上で、時間が参りましたので質問を終えたいと思います。

 三人の方の御健勝をお祈りしたいと思います。

根本委員長 次に、中山義活君。

中山(義)委員 どうもおはようございます。

 私ども、産業再生機構をつくるとき、その前にたまたま、青木建設がつぶれたけれどもダイエーはつぶれない、これはどういう基準があるのか。または最近でも、りそなはつぶれないけれども足利銀行はということがある。どういうふうにして企業の生き死にを行政機関であるとか国が決めていくんだ、おかしいじゃありませんかと。この自由主義経済の中で、自分たちで再生すべきである、もし再生できないときは自分たちで考えてやるべきである、これが私どもの考えたことだったわけですが、私たちは条件つきで産業再生機構を認めたんです。

 それは、中小企業も救ってくれる、こういうことなんですね。でかいからつぶさない、でかいところをつぶすと影響力が大きい、中小企業はばたばたいってもいいんだ、こういうようなところも若干私はかいま見えたので、産業再生機構をつくる上において初めは反対しておりましたが、中小企業に目を向けてくれるのであれば賛成いたしましょうということでございます。中小企業再生支援協議会なんかをつくってもらって中小企業にも光を当てていこう、こういうことで我々は再生事業を、要するに国や行政がかかわることに対して賛成をしてきたわけでございます。

 そういうことを御理解いただきまして、私もずっとこの委員会にいますので、ずっと歴史をたどりながら皆さんにお話をしていきたい、または質問をしていきたいというふうに思うんです。

 中小企業の場合には、まず個人保証というものがあります。さらには、最近は連帯保証、この連帯保証も極めて、ある意味では人権さえ無視したような法律だと思うんですね。私たちは、銀行が大企業に対してまたは中小企業に対してやっていることが全く違う、弱いところはつぶす、しかし強いところには債権放棄をするということでは困るよ、こういう話をずっとしてきたわけでございますが、今、一番大きな問題として、銀行の不良債権というのはどのくらいあるのか。私どももよくわからないんですが、例えば中小企業が債権をいろいろ銀行に交渉すると、銀行さんはなかなか答えが返ってこないんです。支店長がいやもうちょっと時間をくれと言っていますといって、出先の者が言う。さらに、支店長は何と言うかといったら、本店決裁ですと。ちっとも話がつかない。今の銀行はそのくらいだらしないと思うんですね。

 ですから、中小企業が銀行と交渉するときになかなか答えが出ない。これは二カ月、三カ月おくれると、本当に厳しい中小企業はそれだけで倒れちゃうんですね。まず銀行がしっかりしてくれなきゃいけないというふうに思うんですね、中小企業を助けるためには。再生支援のためには、まず銀行が、本当に何をやってきて、今どういうことをしているのか、実態がわからなきゃいけないというふうに思うんですね。

 私はこのバブルのことも、銀行がどんなことをしたかの総括がやはりないんですよね。あるときは、土地があれば幾らだって金を貸す、土地をそこがお持ちなら貸す、それで土地を買えばまたさらに金を貸す、社債を発行すれば幾らでも金を貸して株を買わせる。一九八〇年代の初めから、ずっとこうやって日本の国は大きな成長をしてきたわけですよ。

 私は、知的財産権のときにも言ったんですが、会社や何かのイノベーションだとか知的財産をつくっていくとか、そういう努力をしなくても土地があればどんどんお金が来る、社債を発行してもお金が来る、銀行が出すから。これだったら、企業はどんどん強くなりますわね。だけれども実態は、イノベーションがなかったからバブルが崩壊したんだというふうに思うんですね。

 そういう面で、私どもがまず産業再生機構に申し上げたいのは、この生き死にの基準、この人たちは本当に努力したのかどうかという、しっかりこの企業が再生する能力があるのかどうか、また、企業本体が、この事業が、多くのイノベーションのインフラである知的財産であるとかそういうものをうんと持っているのかどうか、知的財産も、これは今言ったように財産ですから、会計上もどの程度あるのか、将来性があるのか、こういう基準があって、恐らくそれではこの企業を私たちが御協力しましょうということになるんでしょうが、その基準をひとつ示していただきたい。

斉藤参考人 我々の作業の一つの考え方を御紹介したいと思いますが、持ち込まれました企業の財務状況をまず調べます。企業が持っておりますいわゆるコア事業とノンコア事業、先生今も御指摘のとおり、従来、銀行は、その資産が利益あるいはキャッシュフローを生む、生まないにかかわらず、担保主義でお金を貸してきたわけであります。それが膨らんで、実際は金利も配当も払えないのに資産だけが存在するという形のバランスシートを持ってきた。しかし、それがデフレとともに、実はそのバリューがどんどん落ちているにもかかわらず、またその査定もあいまいにしてきた。こういうことが日本の経済の構造であったわけであります。

 我々は、まずコアとノンコアに資産を分けまして、ノンコアは、極論いたしますと数年以内にもう消却してしまう、売り払ってしまう、そのためにできるだけマーケットに近い値段、できたらマーケットの値段そのもので評価をする。ここはかなり銀行や事業会社から抵抗がありますけれども、ここは我々は強行しております。

 コアにつきましては、先ほどから話がありますように、三年以内にその事業会社をエグジットしなきゃいけませんので、キャッシュフローがちゃんと生まれて、借りている金利あるいは元本が返せるか、あるいは配当が払えるかというところを計算いたしまして、三年後には姿が全部レントゲンで先生方に見えるわけでありまして、失敗して国民の負担にかかったじゃないかということがないように努力しております。

 したがって、その支援するかしないかという基準は、経済合理性と申しますか、そういうキャッシュフローがちゃんと生まれるかどうか、ここをベースに考えてやらせていただいております。

中山(義)委員 過去にダイエーをつぶすかつぶさないか、これによって株価はどう動くか、もうこんなことは経済で予測がつきますね。それによって、ぱっと政府が助けるというふうに決めた。株はどうなりますか。そんなことでもうけている人だってうんといるわけですよ。だから、私は、やはり政府がやるときにはそれなりの責任があると。

 ですから、先ほど社長がお話しになったように、すべてガラス張りにするんだ、しっかりとしたものを出して、株価に間違いがあったり、国が支援するから株がばっと上がった、こんなことでは困る、そういう意味合いだというふうに思いますね。それはクリアにしていくということだと思います。

 それからもう一つ、不良債権の質なんですが、やはり一九八〇年代から九〇年代にかけて土地に幾らでもお金を貸した事実は、今お認めになりましたよね。ですから、銀行が、不良債権というのは持っている土地だったと思うんですね。どうしようもないものがあるわけですよ。これが実は一千億円だった、ところが実際はもう二百億円だと。どうしますか、これ。これを残しておいて、いずれ上がるんですか、上がりませんよね。しかも、この土地はもう既に不良債権として手当てをして、引当金がある。だとしたら、二百億円で売っちゃえば、それは終わるわけですね。

 先ほど井上参考人からもお話がありましたとおり、サービサー法という法律がありますね。今までだったら、それを売れば税金で免除されない、贈与したということになる。ところが、サービサー法ができてから、それができる。となれば、持っている土地を思い切ってどんどん処分していく方法が私はいいと思うんですね。

 そこに幾つか方法があると思うんです。競売、これは買いたたかれますね。私は最近ちょっとよく腑に落ちないんですが、すごく安くなっちゃう。もっとインターネットとか何か使ってオークションにした方がいいんじゃないですか。本当に土地を欲しい人というのがいるかもしれません。私の近くでも、本当に土地が欲しい、あそこが売りに出ているんだけれども、このくらいで買いたいという人がいるんですよ。だけれども、そこはもう競売になっていて、全然、その半額ぐらいなんです。銀行というところでも、最後は競売にしちゃう。冷たいことをやるんですよ。だけれども、もうちょっとオークションにさせたり任意売却をさせた方がいいと思うんですね。任意売却をして、その分銀行に返してもらって、あとはサービサーに持っていって手数料だけで終わらせれば、かなりの企業が救われていくんですよ、中小企業なんかでも。

 この点について、私は、不良債権というのは土地だと思う。処分する場合に今みたいな手法がとられる方がいいんじゃありませんか。何のためにサービサー法をつくったというか、その辺もう一度認識していただいて、土地をどんどん償却していく。そのための方法論として産業再生機構はどういうことを行っているか、それから中小企業再生支援協議会はどういうことを行っているか、サービサー法をどこに活用しているか。これはあえて、私は徳政令みたいな形で、平成の徳政令だと思っているんですが、この辺、どうやって扱っているでしょうか。

斉藤参考人 御指摘のとおりでございまして、ほとんどの不良債権の後ろは不動産でございます。不動産の値上がりを予定して、そこへ貸し込みをやった、しかしそれが、先ほど申しますように、事業価値を生まない不動産になってしまっているということであります。

 例えば、我々も三井鉱山さんを支援いたしました。何百万平米の土地が九州と北海道にあります。今先生がおっしゃいましたとおり、私ども、数千億と彼らが計上しておりました評価を数百億、本当に向こうがびっくりするような値段で現実に査定をいたしました。その値段で今売却すべく、いろいろなところと交渉中であります。

 小さいケースでは、先般のダイア建設というのを支援いたしましたときに、持っておりました不動産は、アイディーユーという会社を使いまして、まさしくインターネットを通しましてオークションをやりまして売却いたしましたら、我々の査定価格よりもちょっと高く売ることができました。

 いろいろなことを考えながら、御指摘のとおり売却していきたいと思いますし、御指摘のとおり、九州なんかでも、余り高く評価していたために新しい産業が入ってこなかったということで、県知事さんから大変高く評価していただいたんですが、低く評価したために、この土地を買って商売をしてもうかるという、新しい産業がようやくやってこれるという感謝もいただいております。御報告させていただきます。

井上参考人 再生計画を進める基準といいますか、これは、もうどうにもならなくなって、経営者自身も再建する意欲がないというような、何とか借金だけ返せばいいんだというような感じでは、再生計画というのは成り立たないわけでして、あくまでも経営者の要するに再生意欲があるかないかということであるし、その会社の中身自身が、キャッシュフローでも将来的に利益が出るかどうかということが、まず一つの基準になるわけですよね。ですから、すべての企業を救えといっても、それは成り立たないというふうに私どもは考えております。

 そういった点では、経営者とのコミュニケーションをよくし、その内容を調べるということにある程度の時間がかかっておるということもあろうかと思うんですけれども、ともかく金融機関との調整や何かをしながら再建計画を立てるのが我々の仕事であるというふうに思っておるわけです。

 先ほどからお話が出ております、金融機関が担保を、それも非常に安くなってしまった、バブルの当時に高く担保をとって金を貸し出したということについて、そういうようなケースも確かにございます。そういったときには、やはり貸し手責任ということがあるわけですから、金融機関にも厳しくそういう点での交渉はする。逆に、そういうものをどういうふうにして高く売却するか、単なる安易な方向に流れるということじゃなくて、何とか任意売却で高く売る、我々としてはそういうような仕組みはつくっております。

 そういった点で、ともかく負担をいかに軽くするかということは我々の仕事だろう、そうでないと再生というのはできないわけですから、一つそういうような仕組みで考えて進めております。

 以上でございます。

中山(義)委員 多比羅参考人にお聞きしたいんですが、最近よく、自己責任という言葉がはやっていますね。海外へ行って、たまたま今回みたいな事件があった、これは自己責任、自分の責任。

 銀行と借りた側とを考えたときに、銀行さんは、おたくはいい場所にあって、道路広いから三十億貸しましょうと。それで、借りて、大きなビルを建てなさいと、二十階建ての。建てたら、そこに、テナントも当銀行が全部お世話します、御商売もうまくいったらこの三十億は全部あなたのものですよ、こういった提案型融資。これは、いろいろなことで、銀行に押しつけられて金を借りた。うまくディベロッパーとも話をしちゃって、建築会社とも話をしちゃって、銀行がどんどん進めちゃったと。

 これは、自己責任という言葉で、借りた方に責任がある、こういうふうに言われるんですが、この責任は私は五分五分だと思うんですよ、本来は。本来、五分五分だと思うんです。その有利子負債によって商売がうまくいかなくなっているところが随分あるわけです。自分の一階でやっている商売はうまくいっているんですよ。ところが、銀行に三十億無理やりに貸し付けられたことによって、それで苦しくなって、倒産するか夜逃げするか、そういうような状況になっている。

 これは、先生として、自己責任が全部借りた方にあるのか、借り手責任なのか貸し手責任なのか、この辺、ちょっと見解をお願いします。

多比羅参考人 今のようなケースが確かに現実、多々見受けられます。そのときに、自己責任、自己責任というのはそれぞれ自分の判断に基づいて責任を負うことですから、当然、これにつきましては、私は、御指摘のとおり、借りた側にも、また貸し手、そういう価値が生み出せないにもかかわらず貸した、両方に責任があることで、どちらか一方だけということではやはりないだろうというふうに思って、再建の仕事をしているとき、現場においてはそんなふうな理解で進めているところでございます。

 以上です。

中山(義)委員 そこで、井上参考人、やはりこういうように、ある程度五分五分のあれがあるんですね。だから、見解としては、確かに借り手責任がある、貸し手責任もあるんです。やはり私たちは、サービサーを利用するときに、もともと例えば三十億のものが実は五億とかそのくらいになっている、こういうときに、どうせ引当金を積んでいるんだから、銀行にそれを任意売却させるようにしむける仕事というのは、中小企業再生支援協議会にできるんですか、あるんですか。

井上参考人 しむける努力はできるということでございまして、これを我々が強制するということは不可能だというふうに思います。

 以上です。

中山(義)委員 ここが再生のかぎなんです、実は。

 要するに、銀行さんが、債権放棄というよりも、これは税法上も合法的なわけですよ。銀行は、それで、税法上も贈与とならなくていいわけですから、そのためにサービサー法をつくったわけですね。この法律をうまく活用していけば、常に、借りている側も、任意売却によって、残った債権、先ほど言った担保がない債権についてはサービサーに送っていく。ただし、もちろん手数料を払ってのことですが、そういう手法が考えられるわけですね。

 これは決して本当に借りた金を払わないというんじゃなくて、やはり貸した側にも責任があるんだから銀行さんも楽になろうよと、どうせそんな土地を持っていたってしようがないんですから。三十億の価値ないんですよ。実際は五億か三億だというぐらいの感覚だったらば、それを五億か三億で返済させて、返してもらった方がよっぽど銀行にとってはいいことだと思うんですね。これをやらないと次に行かれない。

 確かに、リスケも大事です。返済期間を、五年を十年に延ばす、十年を二十年に延ばす、こういうことも大事だと思うんですね。同時に、やはり持っている不良債権、これを、三十億、もうデフレの時代は上がっていかないんですよ。例えば、マンションを買っても、昔はマンションを買うと、そのマンションは一億で買ったらこれは上がっていく、前提でしたね。だから、マンションというのは買った方がいい。ところが、今は上がっていかないんですから、今は賃貸で借りた方がマンションなんかいいに決まっているんですよ。財産になったって、それは減っていくんですから、逆に。だとすれば、銀行だって減っていくわけですよ。

 だから、これを任意売却して、そんなおどかして競売なんかにしないで、オークションでやって、少しでも高く売ってもらって、銀行だって返済してもらった方がいいわけですね。この辺の手法をぜひ中小企業再生支援協議会にも取り入れていただきたいと思うんですが、いかがですか。

井上参考人 おっしゃることは事実でございまして、そういう手法というものはぜひとも取り入れて金融機関との交渉はさせていただきたいということと、あと、DDSとかDESの方向づけということも積極的にやらせていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

中山(義)委員 もっとも、うちの国には金融庁というとんでもない役所がありまして、よくないんだ、これが。我々も金融庁に対しては徹底して闘うつもりでいますがね。何でも不良債権だ何だと、どんどん不良債権を回収しろとやってきたわけですよ。そのくせ、銀行はその決断がつかない、わからない。すぐ支店長が決裁できない、これは本店決裁だと。今言ったようなサービサーの仕事も、我々はしょっちゅう行くわけですよ。私は直接、政治家だから行くとまずいので行きませんが、銀行さんに早くしてあげてくださいと言っても、決断がつかない。なぜでしょうかね。私は、銀行の体質が余りにもだらしないと思うんですね。普通の企業だったらつぶれていますよ、二カ月も三カ月もそうやって。相当銀行が損をしているんですよ、本当は。銀行が損をしていること自身がわかっていないんですね。土地は下がっているんですから、上がらないんですから。だったら早く売却した方がいいに決まっている。

 その売却の値段も、いわゆる競売ではなくて、できる限り任売にするという方がいいに決まっている。しかも、オークションでやれば、欲しい人がその土地を買うんです。こういう手法をしっかりやってくださいよ。私はそう思うんですが、これを、いわゆる再生機構の方ではどういうふうに考えていますか。この手法をしっかりやってもらいたいと思うんです。

斉藤参考人 実は、既に機構の支援のスキームの中にそれは入っておりまして、先生のサービサー法のあれを機構法でもこれは使えますと、贈与税から税控除ができるようにしてありますので、これも十分、銀行側も我々も意識して、再生計画の中には当然この税の調整も計画に入れながらやります。

 我々が先ほど申しましたように、特にノンコアのところは、銀行さんに、売ってくださいと実は最初から申し上げているんです。我々の値段が非常に低い、そういう値段は嫌だとおっしゃれば、では、自分の値段でどうぞお売りくださいということも実はやっております。だけれども、実は、売れなくて、結局は我々のところへ持ち込まれているというのが現状でございます。

 でも、先生の御指摘はもっともだと思いますし、私は、これをある程度力としてプッシュアウトするのは会計基準だと思います。会計基準の開示の義務化、これを厳格にすることによって、市場から乖離した値段で評価したまま、だらだらとバランスシートに載せるということはあり得ないと思いますので、そういうプッシュの力も必要ではないかというふうに思います。

中山(義)委員 これをプッシュする法律というのがまず一つ確かに必要なんですが、もう既にいろいろな法律、平成の徳政令的なものはうんとあるわけですよ。

 先ほど民事再生法の話も出ましたし、いろいろな意味で、やはり銀行さんが発想がちょっと貧困過ぎるんですね。さっきから、売るんだったら、今、インターネットがあるんですから、どんどんオークションで出してくださいよ。そういう面では、今、車の中古なんかでもオークションで出しているところは結構売れていて、あんな変なふうに売るよりも値段がつくんです、欲しい人が買うんですから。競売というのは、欲しくない人に何か売りつけるようなところがあって、しかも、RCCや再生機構で受けるというのでは、またむだなものをしょっちゃって、それを今度また売らなきゃいけないわけですよ。二度手間なわけですね。

 私は、そういう面で、新しい法律をつくったら、その法律を活用していくということが一つだと思うし、それは税金上銀行だって得するんですから、ちゃんと銀行を説得してもらって、やはり銀行とけんかしてもいけないと思うんですね。それで、銀行と話し合いをつけるということが大事なんですが、そこで、中小企業の方なんですが、中小企業も同じような問題があるんです。

 やはり銀行に対して説得をするのはだれかということなんです。さっき、銀行に対してこういうふうにやってくださいとは言うけれども、それ以上できないというお話がありましたが、やはり銀行を説得しなきゃだめなんですよ。任意売却にしてもらう場合でも、銀行がなかなか放さない。だけれども、一億円というけれどもそれは本当は二千万円ですよと言っても、わからない。だれがそれを判断するのかというと、判断する人までいない。いや、これが支店長だ、本店長だとやって、なかなか出てこない。

 これは、何かある意味では、こういう法律案をつくって、私たちはここまでやってきたんですから、一生懸命これから私たちも中小企業再生支援協議会をバックアップしたいと思うんですが、もうちょっと銀行に強く働きかけるようにしていただければ、世の中変わってくると思うんですよ。その辺はいかがですかね。

井上参考人 本当に意を強くして、これからも金融機関に対して強く交渉をさせていただきたいというふうに思います。

 協議会といたしましても、精いっぱいの仕事はいたしておりまして、鑑定の評価とかそういうものもほかに頼みながら、その土地の今の現在時価というものがどうであるかということをもとにして、金融機関との価格の交渉といいますか、評価の交渉というものをさせていただいておるのが現状でございます。

 やはり、中小企業でも、少しでもその負債を少なくするためにも、我々がやらなきゃならない仕事だというふうに思っておりますので、よろしく御理解いただきたいと思います。

中山(義)委員 今の参考人のお話、私ども大変うれしい話でございまして、中小企業の人たちは、まず相談に行く前に、とにかく、自分が借りているのが女房にばれちゃ嫌だとか、家庭内の問題でもあるんですね。中小企業者が井上参考人のところへ行ったときには、本当に、真摯に相談に乗ってあげるだけでも、自殺したり夜逃げというのはなくなるわけですよ。

 よく私たちは、借りた金は返すなと、もう一回よく聞いてくださいよ、借りた金で返すなと言っているんですよと私は言うんです。借りた金で返すな、つまり、どんどん高い金利のものを借りていって、多重債務者になっていっちゃうんだ。それで最後は夜逃げですよ。うっかりすると自殺ですよ。そこに問題があるわけですね。

 ですから、私は、中小企業の悩みというのをまず聞いてやって、ぜひ井上参考人にお願いしたいのは、中小企業再生支援協議会というところは門前払いはしないと、中小企業の悩みを聞いてやる。本当にいろいろな方法論があるということをまず聞いてもらってほしいんですね。

 よく、弁護士さんは自己破産と勧めるようでございますが、やはり私たちが望んでいるのは再生でありますから、再生するためにはどうしたらいいか、民事再生法があったり、個人版もあるわけです。何とか人間が再生して、もう一回社会に出て頑張れという、やはりエールを送る場所だと思うんですが、多比羅参考人の立場として、法を扱う立場として、何も怖くないと思うんですよ。借りたお金というのは返さないと罪になるんですか。借りたお金、返さないと罪になるんですか。返さないこと自身は罪にならないですよね。もっと強く生きろ、いろいろな法律があるから、何とか再生して、あなたは日本人として日本の国のために頑張ってくれと、こう言うことが大事なんですね。再生の本旨というのはそういうところにあるんです。みんなが初めからあきらめちゃって、夜逃げしようとか自殺しようなんて、こんな気持ちにさせないことが再生事業で一番大事なんです。

 私は、きょう、お三人の皆さんが大変お忙しいのに来てくれて、こういうふうに国会でいろいろ私たちの話を聞いてくれる、大変ありがたいことだと思うんです。私がお願いしたいのは、日本人がもう一回立ち直って頑張ろう、この気持ちをつくっていただくことが大事でございまして、三万人も自殺するなんという国は異常ですよ。イラクだってそんなに人が死んでいますか。死んでいないですよ、そんなに人は。自殺で三万人以上死ぬなんということは異常な事態なんです。みんなが再生をあきらめて、夜逃げしたりする、ここに問題があるわけですよ。

 ですから、私は、井上参考人にお願いしたいのは、まず中小企業が大変つらい立場で来たときに、相談に乗ってやって、こうしてこうしてこうやれば大丈夫ですよと。それから、例えばサラ金や何かから借りたって、別に命までとられないんですよ、本当は。ちゃんと理屈で説明してあげれば、もう既に高い金利で払ったものは取り返すことさえできるわけですから、その辺の説明を中小企業にもっとやってもらいたい、こう思うんですが、多比羅参考人と井上参考人、それぞれこの辺の決意をお願いして、何とか日本の中小企業の再生に我々はかけていきたい、こう思っていますので、お願いします。

多比羅参考人 今御指摘のとおりでございまして、確かに現在、破産の件数が年間二十万件を超えているんですけれども、我々は決して破産を望んで勧めているわけではなく、個人についてもやはり再生していく、個人再生の法律もできていますので、それを中心に、再建が基本だというふうに思ってやっております。

 御指摘のとおりでございますし、これからもそういう方向で進めていきたいというふうに思っております。

 ありがとうございます。

井上参考人 決意のほどを証明せよということでございまして、事実、私ども再生支援協議会は、本当の中小企業の味方であるということで、今ちょっとお話がありましたけれども、門前払いといいますか、そういうようなことは一切いたしておりません、ただ事務の手違いというのはあるのかもしれませんけれども。

 東京の場合ですと、東京二十三区に東商の支部がございまして、そこに地域の方がちょっと来られるのかもしれません。ただし、これはやはり守秘義務といいますか、秘密を守らないといけないということもございまして、その支部で取り扱うな、本部の方で必ず回せというふうに言っております。本部に回ってきたものについては、すべて細かく状況等を確認して指導するという形をとっておりまして、今のような、自殺に追い込むようなことを絶対にさせないようにしなきゃいけないというのが我々の仕事であろうというふうに思っております。

 そういった点で、今後とも、多重債務者という問題も先ほどお話が出ておりましたけれども、そういう場合には、どういうふうにして解消させていくのかということもあろうかと思いますけれども、やはり、そういうものに追い込まないようにしていかなきゃいけない。

 また、逆に言えば、そういう悪徳金融業者というものをいかにはびこらさないでいただくかというのも、これは政治の先生方に考えていただきたいことだというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

中山(義)委員 御三人の皆さんの本当に真摯な姿勢に私どもは本当に感謝を申し上げますが、これから本当に日本を立ち直らせるためには、再生しようというこの意気込みがまず大事でございまして、そういう精神をつくるということと、絶対あきらめないということだと思うんですね。特に中小企業があきらめて夜逃げする、自殺する、絶対こんなことのないように、来たら励ましていただきたいし、絶対に生きる道はあると思うんですよ。それをしっかり御指導いただきたい。

 それから、斉藤参考人には、やはり日本の企業が知的財産とかイノベーションとか新しい意欲を持って立ち直っていくように、むだなものは全部そぎ落としていくという一つを、よく銀行としっかり話し合って、銀行も怠けるなと。店長決裁だとかなんとかじゃなくて、本当に携わっておる者がどんどん決断できるようにしていただいて、日本の企業を再生していただきたいと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

根本委員長 河上覃雄君。

河上委員 公明党の河上覃雄と申します。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 本当にきょうは御苦労さまでございます。斉藤参考人は昨日も参議院の方にお出ましをいたしたと伺っております。五月雨的になってしまうと思いますが、何点か質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 初めに、産業再生機構及び中小企業再生支援協議会がスタートしてちょうど一年を超えたところでございまして、先ほどもあったと思いますが、斉藤参考人は再生機構の果たしてきたこの間の役割、また井上参考人には中小企業再生支援協議会の役割、多比羅参考人には両方含めまして、ぜひとも一年たちました御感想と、ある意味での評価並びに改善すべき点等がございましたら、その点をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

斉藤参考人 御案内のように、この一年間で十三件、一応、支援決定をいたしておりますけれども、それぞれのケースのやり方はかなり違います。

 中には、民事再生の法的な再生と私どもの再生手法を組み合わせてやった。これは、基本的には、今のところ法的な再生は一般商事債権が傷むといいますか、弁済されないというところがありますが、我々の場合は一般商事債権を対象にしないといいますか、弁済で救済されますので、これを両方組み合わせることによって、傷みやすい、大阪の中堅の電気屋さんを支援、救済したというケースもあります。あるいは、九州産交バスのように、バス事業そのものを運輸、いわゆるトラック事業と一般バスの事業に分割し、なおかつ熊本県あるいは熊本市の支援をいただくべくハードネゴをやりまして、一応支援体制ができて、今日、事業がうまく回り始めているというようなケースもありまして、こういうケースは全国の自治体にも大変参考にさせていただきつつあります。そういう意味で、私どもの一つの大きな使命であります支援のモデルを見せる、つくり上げるということにおいては、かなりのケースを御紹介できているのではないかというふうに思います。

 なおかつ、人材の育成というのが非常に重要だと思いますけれども、私ども百数十名のプロフェッショナル、ほとんどこれは欧米においても訓練を受けて実務についてきた連中が多いのでございますが、彼らがある意味でのリーダになりながら教育をし、また、外部の事業を委託しておりますので、弁護士先生方あるいは会計士あるいはビジネスコンサルタント等々との具体的な再建計画の詰めということによって人が育っていっているということでございます。数年、あと四年で会社は解散いたしますので、この人たちはまた市場に戻っていくというふうに思いますし、彼らの活躍も期待されるというふうに思います。

 ほかに多々ありますけれども、産業再生機構といたしましては、この一年間を振り返りますと、モデルの確立、人の育成、こういうことにおいてかなり成功してきているのではないかというふうに思います。

井上参考人 この一年間の取り組みに対する評価でございますけれども、中小企業経営者の相談に対しては、親身に対応するというようなこともございます。守秘義務を守る、公正中立な立場でアドバイスをするといったいろいろな面で、大いに役立っておるというふうに思っておるわけでございます。

 それが証拠には、相談件数というのは非常にふえてきておる。全国で三千件から三千を超える相談件数が出ておるわけでございまして、これは一年目で、それも後半になってどんどんとふえてきておるのが現状でございます。東京も、今、完了案件が八件ということを申し上げましたけれども、現状、四人の体制でございまして、このたび十六年度で予算が増加されまして六人体制ということに相なるわけですけれども、現状では、その人数でもういっぱいというような状況でございます。

 我々としては、むしろ、これがもっとふえたら一体どうしたらいいのかなというような状況でございまして、その指導者たちも、大体毎日十時から十一時ぐらいまで時間をかけてやっておるのが現状でございます。一度、その状況等も見ていただければなというふうに思うくらいでございまして、この評価がどんどんと上がってくるに従って、また、再生協議会の現況、再生協議会が中小企業の再生に役立っているということが企業の皆さん方に御理解をいただけるに従って、どんどんと相談件数はふえてくるだろうというふうに思います。

 そういった点では、先生方にもよくそういうことを御理解いただきながら見守っていただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

多比羅参考人 一年たちまして、この一年の実績を上げられたことによりまして、非常に事業再生ということが正面から大きく取り上げられ、評価されるようになった、その効果は非常に大きいものだろう。そのおかげで、なかなか事業再生に進まなかった企業についてもそういう機運を巻き起こしましたし、かつ、そういう分野が必要なんだということで、その分野のいろいろな事業も、ビジネスも起こりましたし、そういう人材も育ちつつあるということで、事業再生における面では非常に効果があった、全体を通じて効果があった。

 それからまた、とかく従来は法的手続が中心で、かつ、法的手続をとらない分野においてはなかなか透明性に欠けるところがあったのですが、きちっとした機関が関与するということで、その点においても手続や透明性がかつて以上に保てるようになった。そのために、いろいろな要望として、先ほども申し上げたようなことも、お願い、要望としてできるようになったという点で評価しております。

 以上です。

河上委員 ありがとうございました。

 そこで、斉藤参考人にお尋ねをいたしますが、四月から五月にかけまして、新聞紙上で、一年を迎えたということもありまして、かなりいろいろな記事が出ている。私も心配いたしましたが、四月の十九日には関係者がお集まりになって御協議をなさった、こういうことで、大丈夫なのかなとも思います。もちろん、再生機構というものが、問題企業を選別いたしまして強制的に案件を持ち込ませる権限のないことは、先ほどの話も踏まえて十分認識をいたしておりますが、しかし、この一年間の推移を見ますと、結果として金融機関から持ち込まれた案件は少ない、こう私は正直思っております。

 こうした背景の一つとして、銀行は使い勝手が悪い、あるいは大幅な債権放棄を嫌っている、こうして金融機関と再生機構との意識ギャップがあるということが大分この間あったわけでございますが、率直に、斉藤参考人にこの点についての御見解をお聞かせいただきたいと思っております。

斉藤参考人 御指摘のとおり、四月の十九日に、金融機関のみならず財界の、ここにいらっしゃいます井上さんも出ていただいたんですが、金子大臣主催で情報交換会を大幅にやりました。その前にも、金融機関だけお願いしまして、我々がどういうふうな考えでどういう支援をやるかというような御説明をやりました。銀行さんはかなりそこで理解をしていただきまして、持ち込み案件は加速しております。

 ただ、御指摘のとおり、さっきからも話題がありますが、我々はかなりしっかりした再生計画を立てます。あいまいな再生計画で何とか一年、二年いけそうだというような案件でなくて、もうだめなところは捨てましょうと。捨てるということは、銀行さんが貸しておられたお金の価値がもうありませんので放棄してくださいということをはっきり言います。

 この査定は、銀行さんから見ると厳しいとおっしゃいます。それはなぜかというと、我々は、先ほどから申しますように、三年以内にエグジットしなきゃいけない。エグジットが成功するということは、そのときに株価が上がっているとか企業価値が上がっていて、債権のリファイナンスがやりやすいという状況になっていなければいけないわけでありまして、そのためには、入り口で我々の査定が甘くなっていると、結果的には国民負担になってしまうわけであります。したがって、我々は、国民のお金を使う以上はあいまいな査定はできない。しかし、結果的にはそのことが日本の産業そのものの本格的な再生になるということを信じて、銀行さんとお話をしております。

 銀行さんは、もちろんゴーイングコンサーンで、十年、二十年のつき合いを企業さんとやっていくので、そのうちに解消すればいいという感覚もあります。我々は、そんな査定ではできないという問題もあります。

 それから、我々の場合は、やはり企業名やかなり内容を公開するということが義務づけられておりまして、これがやはり事業会社さんから見ると持っていきにくい。銀行さんが、では行きましょうとおっしゃっても、事業会社さんが今度は、いや、おれは産業再生機構には行きたくない、こういうケースもあると銀行さんの説明を聞いております。

 そういう問題はありますけれども、基本は、先ほど申しますように、やはり日本の問題は、資本の効率性、地球上、資本の効率性の競争に入っているんだと思います、どの国も。中国もロシアもアメリカもイギリスも、どこも資本の効率性の戦いに入っている。その中で、日本の経営だけが資本の効率性、経済合理性をネグレクトした経営あるいは資金の貸し出しをやっていたのでは、徐々にこの国の国力が落ちていくと我々は思っておりまして、何としてでもここは、痛みを伴ってでも資本の効率性を上げなければならないというふうに思っております。

 このことが、銀行さんの理解や抵抗、なかなか難しい問題を起こしていることは事実でありますが、余り我々は妥協してはいけないんだというふうに思っております。

河上委員 ありがとうございました。いろいろとまだ微妙な関係で推移していくのかなとも思います。

 そこで、もう一つ、発足当初の、例えばわかりやすく株価で比べますと、現在、経済情勢というのは大分変化している。株価の上昇、景気の回復基調にもある、こういう実情にあります。この点が一点と、また、来年三月までに金融機関においても不良債権を半減させるという一つの方針がある。こうした経済の回復の要素、それから今申し上げた不良債権処理のある意味での加速化、こういう要因が片方にあって、この一年間、今金融機関との意思ギャップの話をさせていただきましたが、これらはこの間に変化をしていくか、どう変化をしていくかというふうに斉藤参考人はお考えでしょうか。

斉藤参考人 やはり、銀行さんの持ち込みの背景に、どのくらい実際引き当てをおやりになっているか、十分引き当てをおやりになっていて、なおかつ非常に難しい複雑な案件、あるいはメーンと非メーンが多岐にわたるような場合は、多分持ち込んでいただいているんだろうと思います。

 それから、引き当ては十分やったけれども、意外と簡単に解消できる、自分たちでできるというものは、これは機構へ行かなくても、自分たちの機能あるいは自分がつくった子会社を使ってやればいいというふうにして、どんどん進んでいるんだろうと思います。

 御指摘のとおり、金融庁の検査との関係が、非常に実は銀行の持ち込みとの関係はあります。それは引き当ての査定ということだろうと思います。株がここで上がってきたということは、どのくらい株を今銀行さんがお持ちかはちょっとあれですけれども、やはり引き当て力はついている、銀行さんのバランスシートは、左側は膨らんだということだろうと思います。

 我々は、銀行さんとお話しするときに、これこそいいチャンスだ、今上がった株の力を使って、思い切って今までできなかった資産放棄、債権放棄をやって再生しましょうというお話をしております。これは銀行さんも御理解できておりまして、そうしようということでございます。

 ただ、我々は銀行さんの裏が見えませんので、つくじり回すわけにもいきませんし、一般論としては、だんだん持ち込みが、大きな問題が何か解けてきているように我々も拝見しておりまして、随分不良債権の処理は進んできているのではないかなと、感じではそういうふうに感じております。

河上委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 先ほど、再生機構の役割というのは、いろいろなケースをさまざまな形で示せた、それから人材の将来供給もできている、こういうお話をいただきましたが、私も、つい先日、足利銀行からの要請を受けて再生機構が鬼怒川温泉の旅館とホテルの再生に温泉再生ファンドを設立いたしまして、持ち株方式で複数の旅館とホテルを傘下におさめながら、一体としての支援という形が進んでいる、このような報道を目にして大変喜んでおります。傍ら、最近では企業再生事業にも積極的にお取り組みのRCCも、実績としても着実に上がっているそうでございますが、この案件についてやれることがあるなら貢献したい、こういう奥野社長のコメントが載っている新聞も拝見をいたしました。

 先ほどどなたかのお尋ねの中にも、中小企業再生支援協議会も含めて、RCC、それから再生機構とというお話があったやに聞いておりましたが、協力の意思を明らかにしたRCC等も入れば、非常にいいスタイルではないかと思っているわけでございまして、再生機構がみずからファンドをつくりまして複数の企業の再生を同時に目指すという観点も初めてであると思いますし、地域再生モデルのケースとして大いに期待するものでございます。ぜひ積極的に、前向きに、かつ着実に、大胆にお取り組みをいただきたいと私も思いますが、斉藤参考人の御決意を賜れればと思います。

斉藤参考人 御指摘のように、地方の案件につきまして、RCCさん等々と、あるいは中小企業支援協議会との協力は、先ほど申しますように、かなりしっかりやってきております。特に、今回、奥野先生がRCCの社長になられたわけで、多くの弁護士先生、再生への弁護士先生を送り出していらっしゃる方なものですから、私どもの方にもそういう方々が一緒にいらっしゃいまして、コミュニケーションは非常にできるようになろうかと思います。ますますRCCあるいは中小企業支援協議会とはいろいろ協力させていただきたいと思っております。

 足利のケースにつきましては、現実には企業再生支援機関連携推進協議会というのが、四月二十六日に第一回が開かれまして、これはRCCさんも、政投銀行や中小企業支援協議会も県も栃木銀行等々も全部お入りになっているわけですが、ここに私どもも参加させていただいておりますし、財務局や経済産業局、県主催の足利銀行問題を話し合う協議会等々にも参加いたしております。さらに努力したいと思います。

 ファンドのお話がありましたけれども、まだこれは、実は新聞報道が随分先走っていろいろなことを報道いたしておりますので、今いろいろ企画中ではありますけれども、ここでポイントだけ、一つだけ誤解がないように申し上げたいのは、産業再生機構法上、ファンドというものを先につくって、そこへお金を集めておいて、そこから投資をしていくといいますか、支援をしていくという形は不可能でございます。やり方としては、一件一件、温泉なら温泉さんの支援対象たるべきかというのを我々が査定いたしまして、可能性があるというところが、個別の旅館が、余りばらばらになってもしようがありませんので、経営管理上ある程度グルーピング化して見ていこうか、こういう感覚で、ファンドという名前をつけていいかどうか本当のところはわかりませんが、新しい手法を何とか開発しようと思っております。

河上委員 ぜひよろしく積極的なお取り組みをお願い申し上げたいと思います。

 それから、もう一つ、人材の件でございますが、先ほどのお話を聞きますと、大丈夫だと、さりとて、これからまた案件もたくさん持ち込まれると大変なことになるのではないのか。銀行の負担を軽くすれば支援案件はふえるでしょうし、再生機構の企業再生のリスクは高くなるという宿命を負った再生事業にとって、資産査定や技術力、将来を見きわめる目ききという観点、これは極めて重要な要素ですね。そして、法律上もしっかりと査定をしなくちゃならない、こういう側面もあるわけでございまして、また加えて言えば、短期間で事業再生を進めるわけでございますから、やや、再生機構にとって、それにかかわる人材の確保は大丈夫なのか、十分なのか、こういう懸念もするわけでございますが、もう一度その点につきましてお答えください。

斉藤参考人 御指摘のとおり、我々が求めます人材のレベルは非常に高うございます。会計、企業会計、財務会計、税、それから法律、破産法のみならずいろいろな法律、それから事業そのもののターンアラウンド、事業計画そのものができる人、こういう能力のある人の集団、一カ所にこれを集めているというところに非常に意味があるんですけれども。

 御案内だと思いますが、平均年齢三十七歳ぐらいでございまして、日本の一流大学を出た後、ほとんど全員アメリカのビジネススクールを出て、十年、二十年、欧米を中心に働いたような人たちが中心になっております。変な話ですけれども、彼らのレベルが高いということから、彼らの所得なんというのは入る前は数倍でありまして、それを放棄して、何としてでも、自分たちの力が国の役に立つならば、三年、五年、一回やってみよう、こういう志で働いている連中であります。

 こういう人たちは、実はほとんど毎日応募してきております、今でも。私は働きたいと、なぜ働きたいんだ、いや、自分の技術や能力を三年、五年国のために使ってみたい、それが役に立つならば所得とかそういうのをいとわない、こういう人材が多うございまして、大企業さんのすばらしいポジションにいる連中が、そのポストを捨てて我々のところへ、ほとんど毎日飛び込んできているという現状でございます。

 大丈夫だと思います。

河上委員 大丈夫だとはっきりとおっしゃっていただきましたから、安心をいたしました。

 井上参考人に、ちょっと一点、二点お尋ねを申し上げたいと思いますが、両方一緒に御質問申し上げたいと思います。

 東京都の支援協議会では、デット・デット・スワップといった新しい手法にも取り組んでいるようでございまして、そうした新たな手法の活用なども含めまして、中小企業再生支援に当たってどういったことが最も重要かという点についてが一点と、支援協議会における再生支援の判断基準は、規模ではなくて、他にはない強みを持っているかどうか、あるいは、町工場のように見えても実は特殊な技術を持っているなど、再生後の成長に重点を置いていらっしゃると聞き及んでおりますが、今後、中小企業の再生支援をさらに積極的に進めるためにどのような点に力を入れようとお考えなのか。

 この二点についてお尋ねをいたします。

井上参考人 DESの問題が出ておりますけれども、今、DDSを使用した手法で一つ案件を抱えておりまして、完了案件になりましたのが、これは商工中金が中心になって、逆に金融機関からの提案でそれが進めることができたということでございますけれども、もちろんこういうものについては、検査マニュアルが、中小企業編が出たということからそういう手法が取り入れられることになったというふうに思っております。

 この再生にはリスケジュールも必要でございますし、DDS、DES、それから債権放棄、会社分割、営業譲渡、特別清算等があるわけでございまして、そういうような手法というものを大いに使いながら再生をさせていくということは、我々の仕事だというふうに思っております。

 それから、やはり、先ほどもちょっとお話を出したのですけれども、ともかく経営者の再生意欲というものがどれだけあるかということでございまして、それによってまずは第一の判断をする。それから、事業の内容、技術的な面をどういうふうにどれだけ持っておるか、時によっては特許だとか知的所有権の問題もございます。そういったものを加味しながら、そしてキャッシュフローにおいて将来的に収支が成り立つかどうかというものをチェックしながら事を進めるわけでありまして、やはり相談に来られたものがすべて応じられるということではないわけです。

 ただ、やはり日本の雇用を創出しているのは中小企業であります。従業員約三千万近くを抱えておるわけでございまして、何としてもそれの雇用を確保していくためには、今ここまで追い込まれた中小企業というのを何とか再生させていかなきゃいけない。そして、バブルでもって過剰債務を抱えた、そういうものをどのようにして継続させていくか。要するに、リスケだとかDESとか、そういう手法を講じながら次のステップに再生させていくということを我々としてはしなきゃいけないという使命感を持ってやっておるところでございます。

 以上でございます。

河上委員 時間が参ってしまいまして、多比羅参考人には会社更生法や民事再生法の観点からお尋ねをしたいと思いましたが、失礼をいたします。本当に、きょうは、おいでいただきましたことを感謝申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

根本委員長 塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。きょうは、三人の参考人の方から貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 私は、最初に井上参考人に、地域経済の景況、中小企業の現状につきまして何点かお伺いしたいと思っております。

 井上参考人のお話にもありましたように、今は鋼材などの原材料価格、これの高騰問題が大変深刻になっているということが言われております。経済産業省としても、今、大手企業に対して取引先への中小企業に配慮を求める通達を出したそうであります。やはり原料高に伴う不利益というのが中小企業に一方的に押しつけられないようにしてもらいたい、こういう旨で出された措置だということです。原材料高騰問題というのが中小企業に今どのような影響を与えているのか、実感されていることでお話しいただければと思っております。

井上参考人 冒頭ちょっとお話を申し上げましたけれども、中小企業の現況というのは今非常に厳しい現況にあるということでございますけれども、それは、一つには、確かに原材料の値上がり、これはもう大変なものでございまして、例えば、建築業界ですと五万円のものが十万円になる、倍近くに値上がりをしているというような、仕入れる材料の高騰というのは非常に大変な状況になってきております。

 一方、大手の方は、先ほど斉藤社長からもお話が出ておりましたけれども、資本の効率化ということから、利益をいかにして上げるか、そして、各大手企業が増収増益というような形で今景況感が回復してきておるわけですけれども、では、その下請の中小企業にそれが回ってきているかというと、いまだそういう状況は出ておりません。むしろ逆に、コストダウンを相変わらず要求してきている。場合によっては二〇%近いもの、これは年々のことでございますけれども、そういう強い要求が出てきている。

 これは、今、日本がアメリカ的な仕組みといいますか、グローバルな時代を迎えて、どこからでも仕入れをできるよというような形、アメリカ経営的なものが取り入れられてきたということで、これは時代の流れでしようがないかもしれませんけれども、やはり、日本の島国においては、共存共栄ということをもう少し大企業が考えてもらいたいことではあるというふうに思っております。

 そういった点で、材料の値上がり分については、少なくとも大企業が受け入れをしてもらうということでない限りにおいて、また、この再生の事項というものが、仕事がふえるのではないかということを私は懸念をいたしております。

 それから、金融問題では金利が逆に上がってきておるわけでございまして、特に、自己資本比率の低いところについては、当然金利を上げてくれという要望が強くなってきております。そういった点では、今、中小企業はますます厳しい環境にあるということをお伝えさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

塩川委員 一方でコストダウンの要請、他方では原材料の高騰という中で、大変苦境の中にある中小企業にとってみても、公正取引をきちっと行わせるという点での行政の役割も大変大きいと思っております。

 あわせて、金融情勢のお話もございました。全般的には、ひところに比べれば、貸し渋り、貸しはがしや金利の引き上げという要請そのものは落ちついたというふうに言われていますけれども、また同時に、今の金融庁の金融行政のもとで、地銀レベルの再編ということが随分言われております。

 そういう地銀レベルなどにおいて、お聞きしますと、一方で、貸し渋り、貸しはがしですとか、金利の引き上げの要求がかなり強まっているという声というのも聞くんですが、東京ということですと、なかなかどうなのかよくわからないんですけれども、そういう中小企業の資金繰りに当たって、地銀を初めとした金融機関からの要請がどんなふうになっているのか、お聞きになっているところでお聞かせいただければなと思っております。

井上参考人 地銀の再編というようなことは、今そういうリレーションバンクの強化ということでどんどんと行われておるわけですけれども、それはそれなりに、ある程度、現状、貸しはがしとか貸し渋りとか、そういう状況はそれほど出ておらないというふうに思います。もちろん、あるわけですけれども、すべてがそうじゃない。かつてのような非常に悪い時代とは変わってきたということでございます。

 それと同時に、セーフティーネット、これが今きいておりまして、一番我々心配しておるのは、このセーフティーネットのきいている間はいいけれども、これが返済期になってきたとき、借りかえ保証とかそういうものが返済期になってきたときに、これがもっと大きな問題になるのではないか。そのときに、金融機関がそれを受け入れてくれるかどうかということが今は心配の種でございます。

 以上でございます。

塩川委員 私どもも、借りかえ保証制度を提案した者として、セーフティーネットをきちんと対応してもらいたいと率直に思います。

 あわせて、一方では、金融庁などがつくってきた金融検査マニュアル別冊の中小企業融資編、これは井上参考人が、日刊工業新聞でしたか、何かコメントされていたのを私も拝見しましたけれども、たしか日刊工業新聞では、「中小企業向けのマニュアル別冊に関しては中途半端。中小企業経営者の力量や技術力に対する評価が全くなく、実情を見ていないと言わざるを得ない。検査官により判断が違うのも問題。」こういうことをおっしゃられておりました。その辺の内容について少しお聞かせいただければなと思っております。

井上参考人 その記事を出したときはまだ中途の段階だったというふうに思います。最終的に決まりましたのは、DDSを採用、デット・デット・スワップを認められたということでございまして、そういうことによってランクアップができるという仕組みがつくられたというのは、私は、金融庁としてはそれだけのことをよくやってくれたのではないかというふうに思っております。

 あと、銀行の目ききの問題、技術評価。要するに、日本は、どちらかというと物づくり産業で日本を支えておるわけでございまして、その技術に対する評価、また知的所有権だとかそういうものに対する評価がどこまでできるかということに問題がある。もっともっとそういう目ききを養成してもらうということが大事だというふうに思うわけですけれども、まだまだそういう点では、むしろ体質改善の方に事が進んでしまって、そういう補充がなかなかでき得ていないということがあるのではないか。ただ、これを性急にお願いしてもなかなかできるわけじゃないわけでして、やはり我々としては、声を大にしながら、それを一歩一歩前進してもらって、やはり我々中小企業の技術評価というものをもっともっと大事にしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 斉藤参考人にお伺いいたします。

 今、地域経済を考えたときに、特に足利銀行の破綻、国有化での、栃木県の経済というのも大変心配をしておるところであります。現場に行きましても、今、これから起こることを待つ段階で、息を潜めているような、そんな雰囲気というのも感じるわけですけれども、そういう中で、特に温泉地を多数抱える栃木県ですから、この温泉地の再生について、先ほどもありました温泉再生ファンドについての期待と不安というのを随分お聞きするわけです。

 そういう中で、特に観光地、温泉地というのはどうしても、旅館やホテルというのが装置が大きいものですから、借入金も大変多いという中で、特に今回みたいに足銀の破綻のいきさつを見ても、私も納得がいかないわけですけれども、国がつぶしたんじゃないかという思いなんかも、地元の方もたくさんいらっしゃる中で、そういう中で、温泉街が苦況に追い込まれるような状況というのを今どうしたらいいのかと、皆さん大変声を上げておられるところであるわけです。

 そこで、温泉再生ファンドについても、機構と足銀が県内温泉地に特化した温泉再生ファンドとファンド運用などを行う業務支援会社を設立して再生を支援する方針を固めた、支援先は最終的に三十社前後となる見通しという報道がありました。先ほどのお話でも、このファンドの話については報道が先走りをしているということで、今企画中だと。機構法上は、ファンドをつくってお金を集めて支援するというやり方は不可能で、また、経営の管理上、グループ化をして取り組むということはあり得るんだということでしたけれども、もう少し、その辺で、加えてお話しいただけることがあればお話しいただければと思っております。

斉藤参考人 まず、新聞報道に近いことを一生懸命考えているということは申し上げられると思います。今の段階では、先生御案内のとおり、支援決定を行って業者名を公表するというまでには、まだ事業再生計画の内容が決まっていないということでございます。

 ポイントは、温泉ファンドという名前が非常に走るのでございますが、この言葉はもともと外国にあった。外国で、不況に陥ったホテルなどを再生する方法として、多くの投資家からお金を集めてファンドをつくって、そしてホテルの所有者があらわれて、それとオペレーションをやる人とを別に分けてやった、それで再生がうまくいったというケースが外国にあります。外国のホテルの再生の仕方はほとんどそうであります。

 これとちょっと混同が行われているのでありますが、我々はやはり産業再生機構法というルールの中でやらざるを得ませんので、御案内のとおり、機構法は、はっきりうたっているのは、銀行と事業会社、温泉、ホテルならホテルでいいんですが、そこが自分の再生計画を我々のところに持ち込んでこられて、我々はそれを受けて、果たしてそのホテルの再生ができるかどうかを査定する、可能性がある場合には支援をするという法的なルールがあります。したがって、そういう形は崩せないということであります。したがって、一軒一軒の旅館の再生可能性を厳密に判断した上で支援決定の可否を決定する、このプロセスがまずあるということですね。

 その上で、多分、ある地域の複数の旅館をやらないと、かなり不公平性の問題もあります。ある旅館は支援されたのに隣の旅館は支援されないといろいろ問題があろうと思いますが、この辺は貸し出しておられる銀行さんの査定をベースにして、どこを対象にするかというような問題は、これは銀行さんが持ち込まれるということでないと、私どもの方から、ここをします、しませんということにはなりません。あくまでも銀行さんと温泉さんが我々の方へ来られるということですが、これを個別ごとに一軒一軒支援していたのでは効率が悪うございますので、経営管理上、一つのグループ管理といいますか、そういうことをしたい。お客さんから見た場合、銀行がそうは言っても、特性をなくしたのではまたおもしろくないでしょうから、ここもなかなか難しいんですけれども、個々の旅館の独自性はむしろ高めなきゃいけない、経営は一体として行うということを今考えております。

 それから、オペレーション、いわゆるシェフの方がおられて、おかみさんがおられてというオペレーションがありますが、こちらも、可能な部分は一体としようかと。例えばどういうことかというと、では、どこかの駅からその温泉まで、バスでお客さんを迎えに行く、あるいは、東京都まで今バスを出していらっしゃいますが、あれを共同で運用しようだとか、そういうオペレーションの一体化できるところは一体のところへ集めてしまおうか、こういう効率性を入れて再生ができないかというようなことをいろいろ考えているところであります。

 いずれにいたしましても、銀行や事業者、あるいはいろいろな関係者の方々とよく協議しながら、厳しい競争の中で事業再生の実が上がるようなスキームを考えたいと思っております。なかなか、私ども、これは実は栃木だけの話ではなくて、九州もどこからも、おれのところ何とかならぬかという話が来ておりまして、一つモデルを成功させれば、先ほどのお話ではありませんが、どこにでも適用できるのではないかと思って、何とか成功したいと思っております。

塩川委員 観光業界の業界紙でも、この機構の、特に栃木、鬼怒川などの実例についてどう取り組むのかというのは大分注目をしているということが紹介されておりました。そういう中でも、やはり地域経済、特にこういう観光地などにおいては、それぞれの旅館やホテルの魅力という意味で、独自性が発揮されなくちゃいけない。それ自身が全体としての魅力の一つとして生きてくるでしょうし、同時に企業としての再生を図るという、まずその両面という点での当然の御苦労があるわけです。

 そういう点で、斉藤参考人に重ねてお伺いしますが、産業再生機構の法案の審議の中でも、経営者の首をすげかえるという問題がありました。当然ながら、大手企業などについては、公的資金が入るものについて、ふさわしく責任をとってもらうということはあるでしょう。同時に、中小企業の場合については、それはやはり、地域や業態などと密接に結びついているという点で、モラルハザードになるのは当然のことながらあってはならないことだと思いますけれども、当然、そこで一定の兼ね合いということがあるのかなと思っております。

 調べましたら、去年の機構の法案の審議の際に、民主党の松野議員の質問に対して谷垣大臣が、経営者の責任の追及について、一般論としては、再生するときには責任をとるのが普通だと。同時に、しにせでなかなかうまくいっていないところがあって、しかし、ではその経営を引き受けるといっても、その地域の名のあるあの人が中心に座っておいてくれないとできないということがやはりある、結局、個別の判断になる、こういうふうにおっしゃられておりますけれども、こういう立場で対応されるんだと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

斉藤参考人 御指摘のとおりでございまして、一般論といたしましては、事業の再生を目的とします以上、現在の経営者の能力が非常に高くて、事業の再生にとっては不可欠であるというような場合には、窮境に至った原因に対する責任の程度というのももちろん勘案せざるを得ませんけれども、したがいまして、大体は、社長職の場合は社長職は引いていただくということが普通になろうと思います。ただし、何らかの形で事業再生には携わっていただく。現実には、例えば社長職をやめていただいて専務になっていただくとか、代表権のない会長になって残っていただくとかいうケースがあります。

 ただし、多額の債権放棄を一応金融機関に求めておりますので、当然この負担を負います金融機関の納得性というのも必要であります。金融機関が強硬に主張して、やはり経営責任を追及すべきだといった場合には、我々それをネグレクトすることができないということもあろうかとは思います。また、私財提供等々も含めて経営者責任をしっかり追及することは、これは基本ではあると思います。今までもそういう私財提供もやっていただいております。政府保証の資金を使って事業再生を支援する私どもといたしましては、こうした再生支援における原則的な考え方は基準にしている。

 ただ、先生今御指摘のとおり、あるいは谷垣大臣の、当時の大臣のお答えのとおり、そうはいってもこの方がおられないとうまく経営再生ができないんだという場合に、社長でそのまま残っていただくというのは、どうしても、これは窮境に至った大半の原因は社長が持っておられたわけでありまして、そこはやはり形としてはとっていただく。そして、国民のお金が入るわけですから、やはりそこは国民も納得しなければいけないんだろうと思いますので、そこのあんばいを考えながらやるということでございます。

塩川委員 鬼怒川のあります藤原町というところでは、観光産業に従事する方が全体の七割、八割ということですから、まさに地域として一体再生を願うという声が大変強い。そういう意味で、地域の、現場の声をぜひともよく酌み取っていただいての取り組みというものをお願いしたいと思います。

 そこで、あわせて、足利銀行が経営再建に当たってRCCとの提携を強めるということも、きのうのNHKでしたか、報道されておりました。足利銀行は、不良債権の処理を進める上で大きな課題となっている融資先企業の経営立て直しについて、企業の再生で実績のあるRCCの協力を得て取り組むことになりましたという報道なんですが、これは斉藤参考人、多比羅参考人、井上参考人、それぞれお伺いしたいと思うんですが、このRCCの企業再生業務を率直にどういうふうに評価されておられるのか、別に点数はつけなくても結構ですから、率直に感じていることをお聞かせください。

斉藤参考人 実は、RCCさんがどういうふうな再生をきちっとやっていらっしゃるかというのは、情報は余り外には出ていなくて、何件やったとかそういうのはあるんですけれども、では、どういうふうにやったんだとか、債権放棄をさせたのかさせなかったのかとか、情報は実は公開されない。逆に言うと、そこが持ち込む方にとっては魅力というふうな面もあろうかと思います。

 ただ、技術的には、我々はRCCとは先ほど申しますように協力し合っていこうと思っておりますし、実は本日、余り詳しいことは申し上げられませんが、現実に、栃木県地区のケースで具体的に協力体制に入っているものがあります。

多比羅参考人 RCCの役割ですが、RCCは、確かにいろいろな関係でそれだけ債権を大量に抱えている、また、ある企業から見れば大口の債権者であるという立場から考えると、現在行われている再建、事業の再生に取り組むというのは、これは必要であろう。特に、不良化しつつある債権を取得しているわけですから、それを少しでも価値を高めて、それで回収をよくするというためには、その会社を再生していく必要がある。

 そのために、確かに現実を見ても、いろいろ、会社更生の申し立てをする、あるいは民事再生の申し立てをする、あるいはスポンサーも見つけてくるというようなことは、今後も行われていっていいのではないかというふうに思っております。

井上参考人 RCCの評価という御質問ですけれども、私どもとしては、その評価をすることができないと申し上げた方が正直でいいのではないかなというふうに思います。

 ただ、RCC自身も企業再生ということに取り組んでおられるわけでして、逆に協議会と協力して再生をさせるというようなケースが出てきておるわけでございます。逆に、いろいろの金融機関との折衝だとか、そういうのを我々がさせていただいて、それでRCCを卒業させるというようなことが起こっておりまして、ともかく企業を再生させるということを中心にやはり努力をしておられるというふうには思います。

 以上です。

塩川委員 とにかく金融機関からごそっと移されてそのうち落ち穂拾いみたいにいいところだけ拾う、そういうことではやはり実際の地域経済にとってみてもかえってマイナスになるのではないかという思いが率直にするわけです。そういう意味でも、我々、しっかりとそうならない段階での支援策というのに大いに取り組まなくちゃいけないと思っているところです。

 それで、温泉街、観光地、機構に随分問い合わせがあったということ、お話がありました。やはり地域性がありますから、そこに集積をしているわけで、やはり一体再生ということについての強い要望もありますし、また、そうでなければ本当の意味での再生が図れないんだろうなというふうに思うわけです。

 ですから、五十軒、百軒の温泉旅館があったときに、それにやはり五つとか十、灯が消えたら全体が暗くなってしまう、観光地としての魅力が半減をするんだ。これは現場の方の声ですし、実際に足を運ぶ方にしてみても、その温泉街の魅力が損なわれるものという思いが大変強くあるわけですね。

 そういう点で、例えばゴルフ場みたいなところは、今個別の再建ということで、今経営、一番抱えているのはサーベラスとか大手の投資会社になっていますけれども、効率性という点でそういう話になっているのかもしれませんが、単純にそういった効率性だけでいった場合に、温泉街の再生というのはうまくいくんだろうか。

 ですから、私、この点でお三方にぜひお伺いしたいのは、こういう観光地ですとか温泉街のような地域性のあるそういう集積をしているところで、やはり一方でなかなか困難を抱えている、その際の一体再生を図れるようないい知恵といいますか、工夫といいますか、何かそんなこと、今までの御経験などでお持ちのことがありましたら、ぜひ御紹介いただければと思っております。

斉藤参考人 私ども、かなり全国の成功しておられる温泉を実は回って、どういうふうにして成功なさっているか、実にすばらしい成功をなさっている温泉があるんですね。その温泉なんかの、例えば、社員の教育制度などがすばらしいとか、そういう徹底した制度をやっておられるとか、例えば、賄いの方々のお子様を二十四時間面倒を見るような施設を横につくってやられるので、そういうお子様を持たれた女性の方が賄いでいろいろ一生懸命お入りになってお働きになるとか、物すごく工夫していらっしゃるんですね。あるいは、値段をずっと下げてそれでもいけるようにやるとか。

 鬼怒川地区の一つの特徴は、グループで団体旅行が来るという予想で、大きなファシリティーがたくさんできているということです。ところが、世の中は、グループ旅行というのが、会社の社員旅行も、もう若者がそういうものに価値を求めない、あるいは、簡保関係のそういうグループ旅行も今回からもうなくなっていくということで、グループ旅行がなくなってきているわけですね。それなのに何百人を入れるというファシリティーが存在している。ここをどうやって再生するかというのは、本当に生易しい問題ではないのでございますが、何か特性をつけられないかというふうに現場の方々と一生懸命今考えているというところでございます。

多比羅参考人 私自身は直接地域ぐるみの再生にかかわったことというのはないんですが、非常に難しいだろうと。と申しますのは、再建できるかどうかというのは、やはり個々の企業の持っている力をそれぞれ判断して行うものですから、そこの地区に関与する企業をまとめてというのはなかなか難しい。やはり、それぞれ個別の企業の持っている特色、収益力、抱えている負債その他から考えていくということになるので、難しいとは思うんですが、そうはいっても、収益力を回復させる意味で、共通するコスト削減ですとか、その地区の特色をどうつくっていくか、これは共通できるだろうと思いますので、そういう大きな特色、それからコスト削減に向けての事業の共同化、そちらの側面では可能だろうというふうに思っています。比較的小規模の会社というのは、またそれぞれの特色、個性があったりするものですから、必要だろうとは思うんですが、なかなか難しいというのが率直な、もし担当するとしたらなかなか難しい問題だなというのが日ごろやっている上での感想でございます。

 以上です。

井上参考人 我々としては、よい考え方はなかなか浮かばないわけですけれども、やはり経営者の個性ということがあると思います。顔が違うように、いろいろとやり方はみんな違うわけでして、一まとめの温泉街を何とか栄えさせたいということは事実ですけれども、やはりその中で生き残れる人と、どうしても衰退するというのは、これはもうやむを得ないことではないのかな。

 できるだけ何とか一緒に再生させたいということは事実ですけれども、それに手をかすということはできるでしょうけれども、我々の手ですべてそれを再生できるかどうかというのは、大変な大きな問題だろうというふうに思います。

 以上です。

塩川委員 現場の方では、宿泊施設としてはかなり過大になっている、だから、もう一部のところは日帰りの観光施設に切りかえて、そういう形で日帰りの客も招く、そういうことによって宿泊の施設については絞り込んでいく、そういう形での知恵の出し方なんかもいろいろあるんだというのも聞きました。

 そういう意味でも、ぜひ現場の声にも大きく耳を傾けていただいて取り組まれることを願いまして、終わりにいたします。

 きょうはありがとうございました。

根本委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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