衆議院

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第4号 平成16年11月5日(金曜日)

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平成十六年十一月五日(金曜日)

    午前九時四十五分開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      遠藤 利明君    北川 知克君

      小杉  隆君    佐藤 信二君

      坂本 剛二君    菅  義偉君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      谷畑  孝君    寺田  稔君

      中西 一善君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    平田 耕一君

      望月 義夫君    森  英介君

      山口 泰明君    山本 明彦君

      市村浩一郎君    大出  彰君

      大畠 章宏君    奥田  建君

      海江田万里君    梶原 康弘君

      近藤 洋介君    島田  久君

      高山 智司君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    橋本 清仁君

      松崎 公昭君    村井 宗明君

      山田 正彦君    若井 康彦君

      渡辺  周君    江田 康幸君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣        上田  勇君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      常田 享詳君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   経済産業副大臣      保坂 三蔵君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  宮野 甚一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  林   肇君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中富 道隆君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           樋口 修資君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         長谷川真一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大石  明君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           高橋 直人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房国際部長)          内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           町田 勝弘君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            北村 俊昭君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          中嶋  誠君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  遠藤 利明君     田中 和徳君

  嘉数 知賢君     鈴木 淳司君

  竹本 直一君     寺田  稔君

  望月 義夫君     葉梨 康弘君

  大畠 章宏君     島田  久君

  奥田  建君     大出  彰君

  菊田まきこ君     若井 康彦君

  渡辺  周君     山田 正彦君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     馳   浩君

  田中 和徳君     遠藤 利明君

  寺田  稔君     竹本 直一君

  葉梨 康弘君     望月 義夫君

  大出  彰君     奥田  建君

  島田  久君     市村浩一郎君

  山田 正彦君     渡辺  周君

  若井 康彦君     橋本 清仁君

同日

 辞任         補欠選任

  馳   浩君     嘉数 知賢君

  市村浩一郎君     大畠 章宏君

  橋本 清仁君     菊田まきこ君

    ―――――――――――――

十一月四日

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(仙谷由人君外十六名提出、衆法第四号)

 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案(内閣提出第一六号)

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律案(内閣提出第一五号)

 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ち、去る十月二十九日の委員会において、私の発言の中に、次回の委員会開催に関し、的確さを欠く部分があったことを遺憾と存じます。

 今後は、一層円滑な運営に努めてまいる所存です。よろしくお願いを申し上げます。

     ――――◇―――――

河上委員長 内閣提出、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官宮野甚一君、内閣官房内閣参事官林肇君、法務省入国管理局長三浦正晴君、外務省大臣官房審議官中富道隆君、財務省大臣官房審議官青山幸恭君、文部科学省大臣官房審議官樋口修資君、厚生労働省大臣官房総括審議官長谷川真一君、厚生労働省職業安定局次長大石明君、農林水産省大臣官房審議官高橋直人君、農林水産省大臣官房国際部長内藤邦男君、農林水産省生産局畜産部長町田勝弘君、経済産業省通商政策局長北村俊昭君及び経済産業省貿易経済協力局長中嶋誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木康友君。

鈴木(康)委員 おはようございます。民主党の鈴木康友です。

 それでは、これから順次御質問させていただきたいと思いますが、きょうは多くの政府参考人の皆さんにお越しをいただきました。実は、このFTA、EPA、あるいは広く日本のこうした経済外交に関しては、それだけいろいろな省庁にまたがる、あるいは日本全体に非常に大きくかかわる問題であるというふうに認識をしております。これから恐らく日本がこうしたEPAというものをアジアの諸国とも積極的に進めていく中で、今回のこのメキシコとのEPAの交渉が妥結をしたということは、非常に大きな意味を持つものであろうと思うんです。

 まず、今回、シンガポールに続きましてメキシコとEPAを締結することになったわけでありますが、なぜメキシコかという点であります。

 恐らく、これはもう皆さんも御承知だと思いますが、いろいろ産業界からの要望が非常に強かったわけであります。メキシコという国は、ASEAN十カ国と同程度の経済規模を持つ非常に大きな経済大国でありますし、日本とのかかわりが非常に深い、日本からたくさんの企業も現地に行っておりますし、また非常に通商上の結びつきも強い国でありました。

 しかし、御承知のとおり、メキシコがNAFTAへ加盟し、あるいはEUとEPA、FTAを締結するという中で、日本がその中で蚊帳の外になっていく、その中で非常に日本だけがハンディを負った通商を行わなきゃいけない。貿易転換効果と専門的には言いますけれども、これによって四千億ぐらいの経済的なロスが発生をしたと言われています。

 あるいは、それまでアメリカあるいは広く北米、南米への足がかりとしてメキシコにはたくさんの日本企業が進出をしていたわけでありますが、例えば二〇〇一年にはアルプス電気、カシオ、二〇〇二年にはキヤノン、二〇〇三年にはTDK、ケンウッドといった法人が撤退をしたり、あるいはたくさんの工場も閉鎖をされるという非常に大きな損失をこうむった。

 こういうものを打開するためには、どうしてもメキシコとやはりEPAの条約を締結して、アメリカや欧州と同じような条件のもとに経済活動を行わなきゃいけないという非常に強い要請があった。これが恐らくメキシコに行った一番の理由だと思います。

 そうした意味では、今回のEPAの締結によりましてそうした懸念が解消される方向に向かうということは、大きな意義だと思います。別に、このメキシコとのEPAの交渉の意義というのは、結果的に、シンガポールとは違いまして、農業分野等々を含めた広い意味での交渉が妥結をしたという、これも日本が初めてこうした分野に一歩足を踏み出したということでありまして、いろいろな角度から、今回のこのメキシコとのEPA条約の締結というものに意義があると思うんですね。

 その点につきまして、まず中川大臣から御所見をお伺いしたいというふうに思います。

中川国務大臣 おはようございます。

 今、鈴木委員御指摘のように、日本は貿易立国でございますから、あるいはまた外国との経済関係を強化することによって我が国がある意味では成り立っているわけでございます。

 そういう中で、ウルグアイ・ラウンド交渉、今から十数年前のときに、一時期、非常にウルグアイ・ラウンド交渉が中座した時期がございまして、そのときにNAFTAを初めFTA、二国間の経済関係強化というものがばあっと進んでいったわけであります。たしかNAFTAができたのは九四年だというふうに記憶しておりますけれども、日本はWTO中心で来たわけでございます。当時のガットですね、ガット・ウルグアイ・ラウンド体制で来たわけでありますが、その間に、世界じゅうで、EUとかメルコスールとかあるいはNAFTAとか、そういう地域あるいはまた二国間の経済連携がどんどん進んでいった。

 他方、日本とメキシコというのは昔から非常に関係がよかったんですけれども、マキラドーラという制度が廃止され、その結果、今鈴木委員御指摘のように、あそこに進出していた企業が、逆にFTAを結ばないことによるハンディキャップによって、競争力が維持できなくて撤退せざるを得ない、あるいは撤退しなくても非常に厳しい状況に置かれているということになって、今御指摘のように、経済産業省の数字によると四千億円の経済利益の損失あるいは雇用の問題等々が出てきた。そこで、シンガポールとは二年前からスタートしておりますけれども、日本としても二国間の経済連携、これはガット二十四条あるいはサービス協定五条でこのようなものが認められているわけでございますが、日本としても、はっきり言っておくればせながらやっていかなければならない。

 そのときに、なぜメキシコを選んだのかということでありますが、今委員御指摘のように、メキシコは一億人の国民、そして一人頭GDPが約六千ドルで、世界で十番目の貿易大国でございますし、OECDにも加盟しているいわゆる先進経済国家でもあります。

 そして、メキシコ自身がFTAというものを非常に大事というか積極的に取り組んでおりまして、現在まだ日本は国会の承認をいただいておりませんけれども、現時点で四十二カ国、EUの二十五を含めまして四十二カ国、あるいはNAFTAということで、十字路戦略ということをよくメキシコの人は言うんですが、メキシコは南北アメリカの中心あるいは太平洋と大西洋の真ん中にいるんだ、こういうことでFTAというものに積極的に取り組んでいく。その上で、メキシコの方からも日本に対する期待が非常に強かったわけでございまして、二年前に小泉総理とフォックス大統領との間で、FTA、EPAを結ぶために作業を進めましょうということでスタートをしたわけであります。

 ちなみに、貿易立国日本でありますけれども、私がメキシコに個人的にも非常にやらなければいけないと思った幾つかの理由があります。

 ちょっとこれはセンチメンタルな話になるかもしれませんけれども、明治の初めに日本が解決しなければならない最大の外交案件というのは、治外法権と関税自主権の喪失という問題があったわけでありますが、一八八八年に日本が最初に平等条約を結んだというか結んでくれた国がメキシコであったということもあって、新たな日本の貿易立国としての二十一世紀のスタートを、もちろんシンガポールはありましたけれども、今御指摘のようなシンガポールの事情もありまして、本格的な、物だけではなくて投資、人、サービス、あらゆる面での包括経済連携という意味で、メキシコというものがお互いにとってプラスになる、ウイン・ウインの関係になる、太平洋を挟んだ両経済貿易大国が特別の関係を持つということは、日本、メキシコのみならず世界の自由貿易にも貢献していくというふうに小泉総理が判断をされて交渉を開始したということでございます。

鈴木(康)委員 今、大臣からるるメキシコとの、この交渉に関する思いも含めてお話をいただきました。これはそれだけ大臣にとっても思いが深い交渉だったのではないかというふうに思います。

 私は、今回のこの締結によりまして、恐らく日本が欧米並みの、同等の条件でこれから通商ができる、あるいは一兆円と言われる政府調達市場に参入をすることが可能になる、あるいはメキシコへ投資するにしてもきっちり投資が保護される等々、非常に大きな成果が得られたのではないかと思うんですね。ただ、私は、今回の一番の意義というのは、やはり農業分野も含めた総合的なEPAの交渉であったということであります。これがこれからの日本の通商政策に大きな影響を与えてくるのではないかというふうに考える次第であります。

 今回の交渉の妥結の中で、実は、大臣も今御指摘の、二国間の、バイのFTAやEPAと別に、WTOという全体の通商のルールをつくる場がある。そこで、ガットの二十四条の中で一応こうした二国間のFTA、EPAの締結というのは認められているわけでありますが、そこには一定のルールがあるわけであります。それは、実質上すべての貿易について関税その他の制限的な通商規則を廃止するというものでありまして、これに抵触をしない限り認められているわけでありまして、この実質上すべての貿易ということの概念でありますが、通常、これは貿易量の九〇%以上というふうに認識をされていることは、御承知のとおりだろうと思います。

 今回のメキシコと日本の関係を見ていきますと、メキシコから日本へは九八%の量の関税が撤廃をされるということでありますが、逆に、日本からメキシコは八七%であります。全貿易量からすると九六%でWTOルールをおおむねクリアしているわけでありますが、私は、やはり日本が九〇%を切っているというのは、これはちょっと、何というか情けないなという気がしてならないんですが、その点、大臣はどのように御認識をされているか、お伺いしたいと思います。

中川国務大臣 今、鈴木委員御指摘のように、WTO協定二十四条にFTAという項目があって、二国間経済連携ですか、ちょっと正確なことは忘れましたが、御指摘のように、実質上すべての貿易について、こうあります。ただ、それしか書いてないわけですね。

 したがって、今委員御指摘のような、例えば九〇%だとか、貿易セクター、一つの分類をまとめて外しちゃいけないとか、それから無期限に延ばしちゃいけないとか、幾つかのルールみたいなものがありますが、実質上すべてが九〇%というのは、たしかEUのFTAなりを結ぶときの基準であって、これを日本としても尊重をしよう、そしてシンガポールのときでも、今メキシコのときでもそういう認識でやってきたわけであります。

 実際に、ではどうなんだというと、今御指摘のように、トータルとして、あるいは日本からメキシコへは九六とか九八ですが、メキシコから日本へにつきましては九〇を切っているじゃないかということで、これは二十四条に関してどうなんだということになりますと、デファクトとして、一つの目安としてそういうことがある。もちろん、我々もそれを頭に入れて交渉してきたわけでありまして、そういう意味で申し上げると、トータルとして九六ですかの貿易量が自由化されたということにつきましては、私は二十四条の趣旨に反していないというふうに思っております。

 そしてまた、さらに今後これによって貿易がそれぞれのセクターでふえていけば、またさらにその八七が九〇になり九十幾つになりということもあると思いますので、片道、日本へのメキシコからの輸出だけがたまたま九〇を少し切ったということだけで、これがEPA、FTA、そしてそれが根拠にしておりますガット二十四条にかんがみて、EPAとは言えないんじゃないかとか、不完全ではないかというふうには判断すべきものではないというふうに考えております。

鈴木(康)委員 私は、今回の交渉の中で、ある程度メキシコは譲歩したんじゃないかと思うんですね。

 というのは、これは私の考えかもしれませんが、日本にとっては、今、現時点のいろいろな経済的なロスを回復しなきゃいけないという切実な欲求があったわけでありますが、メキシコにしてみたら、じゃ、今回のこのEPAの条約でどれだけ現時点でメリットがあるかといったら、将来的に日本のマーケットにどんどん貿易量をふやしていくという将来的なメリットはあっても、現時点でどちらがメリットが大きいかというと、明らかに私は日本の方が多いと思うんですね。

 そういう意味で、私は、今回、いろいろなタフな交渉もされたと思いますが、メキシコにある一定の譲歩があったのではないかな、そんな気がしてならないわけですね。

 ですから、やはりこれからもしアジアのいろいろな諸国とこういう交渉をやっていくという場合には、本当に今回のメキシコのようにいくかどうか。今回のメキシコの場合でも、一年四カ月にわたっていろいろな形で交渉をされてきた。その経過は私も見てきたわけでありますが、いろいろな大臣が交渉に当たられた。外務大臣、あるいは中川大臣もそうですけれども、経済産業大臣それから農水大臣、時には官邸も入って、この交渉に総力を挙げて当たったということでありますが、この交渉の過程で、何度か決裂の危機もあったりしながら、それを乗り越えて今回のところまでこぎつけたわけです。

 次に、この一年四カ月の交渉に当たって、一体だれがこれをまとめてきたのか、あるいはリードをしてきたのか、その点についてお伺いしたいと思います。一応、こうした交渉の首席代表という立場にあった、きょうは外務省からも来ていただいているので、まず外務省にお伺いしたいと思います。

中富政府参考人 メキシコとの交渉におきましては、官邸のリーダーシップのもと、中川経済産業大臣、川口外務大臣、亀井農水大臣など関係閣僚が緊密に連携して対応しており、まさに政府一体となって取り組んでまいりました。事務レベルにおきましても、山崎日・メキシコ経済連携協定交渉政府代表を首席代表といたしまして、内閣官房、外務省、経済産業省、農水省、財務省、その他の関係するすべての省庁が緊密に連携と調整を図りながら、まさに政府一体として交渉に臨んできたところでございます。

鈴木(康)委員 私は、本来なら外務省さんがきちっとリーダー役を果たすべき立場にあるんだろうと思うんですが、どうもそうではなかったような気がしてならないんですね。

 今、官邸のお話も出ました。きょうは内閣官房の方も来ていただいているので、官房として今回どういう立場でこの案件におかかわりになったか、御答弁いただきたいと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 経済連携交渉を円滑に進めますためには、関係する省庁間での緊密な協力連携関係が極めて重要でございます。内閣官房といたしましては、このような観点から、経済連携促進関係閣僚会議あるいは経済連携促進関係省庁連絡会議などの開催を通じまして、政府が一体となって進めるための対応をとってまいった次第でございます。

 また、先ほど御指摘がございましたとおり、内閣官房からも、昨年の十一月、内閣官房副長官補ほかがメキシコを訪問いたしまして、メキシコ政府関係者と意見交換を実施したという経緯がございます。

鈴木(康)委員 今、総合調整機能としての経済連携促進関係閣僚会議、事務レベルの経済連携促進関係省庁連絡会議というものを設けて緊密な連携をとったと言っておりますが、具体的にこれらの会議がどういう役割を果たしてきたのか、御答弁いただきたいと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のような経済連携促進関係閣僚会議あるいは事務レベルでの経済連携促進関係省庁連絡会議におきまして、その時点での経済連携交渉の状況等を確認し、政府一体として取り組むための必要な連絡調整を行ったということでございます。

鈴木(康)委員 この閣僚会議に意思決定をする権限はあったんでしょうか。どうですか。

林政府参考人 経済連携促進関係閣僚会議は、閣議におきます了解に基づきまして、政府の取り組み体制を一層強化して、政府一体となった取り組みを行うために設置されたものでございまして、内閣総理大臣が主宰いたしまして、そのもとで経済産業大臣や外務大臣、農林水産大臣、その他関係の閣僚の皆様が御出席するというたぐいの会議でございますので、そこで、最も高いレベルで経済連携促進に関する意見交換、調整等が行われた次第でございます。

鈴木(康)委員 私、事前にこのそれぞれの会議の役割づけについてお伺いしたときは、あくまでこれは情報交換の場であって、意思決定の場ではないというふうな御回答をいただいていたわけでありますね。

 私は、こういう閣僚が調整機能を果たす会議があるのであれば、もっとこういうところに大きな権限を持たすべきじゃないかなというふうに思うんです。こういう会議に御出席をされていたり、この間、いろいろな交渉に当たられていた中川大臣から率直に、いろいろな閣僚間のそごとか省庁間のそご、こういったものがなかったかどうか、お伺いしたいと思います。

中川国務大臣 まず、こういう包括的な経済連携を結ぶということは、さっきもちょっと申し上げましたが、お互いにプラスになるからやろうねということでありますが、と同時に、いわゆるウイン・ウインの関係を築くためには、それと表裏一体のものとしてお互いに痛みも分け合おうねということとセットだということは、私はこれをやる上での基本的な考え方だろうと思っております。

 そういう中で、先ほどメキシコが譲ったんじゃないかというお話は、少なくともトータルとしては、私は、メキシコにとってももちろん満足のできるものでありますし、日本にとっても、トータル、満足のできるものでありました。

 日本にとってみると、農産物、農林水産大臣が大変御苦労されておりまして、もっと言いますと、私事で恐縮でありますが、私の地元の特産物であるカボチャとかアスパラガスは、大変私としてはじくじたるものがございましたけれども、御地元の御理解もいただきまして、自由化もしたわけでございます。経済産業省におきましても、極めて大事な産業について譲歩をしなければならないということを、関係者の皆様に大変苦渋の御判断をいただきながら、そういうこともさせていただいたわけでございます。

 そういう交渉に当たって、内部でいろいろと調整なり、場合によっては議論というのはあった、私はこれはもうはっきり申し上げたいと思いますし、これは何も日本だけではなくて、聞くところによると、メキシコ側でも相当、内部で工業界、農業界、工業界の中でもそれぞれの分野、いろいろあったやに聞いておりますから、それはある意味では当然のことだろうというふうに思います。

 例えば、アメリカのUSTRなんという、通商の代表が全部の通商をやりますけれども、これも国内で調整するときには、けんけんがくがく、業界を含めて、あるいは上院、下院の議員を含めて議論をやった上で、ファストトラックに基づいてWTO交渉なんかをやっているわけでございます。

 したがいまして、今となっては、私は去年の九月から、その前は党の農林水産の方の貿易の責任者をやっておりましたけれども、実際に最終段階、その前に、山崎代表を先頭として各省の次官級がずっと議論をし、その上で交渉に臨んできておりますし、それを前提として我々三大臣が総理の指示のもとで、まとめろという御指示をいただいてやっております。

 特に、十月の初めの、向こうから外務大臣それから経済大臣が来られた、例の二日間徹夜をした二泊三日の交渉は、本当に今となっては、非常にある意味では迫真の交渉であり、いい思い出として残っているわけでありますけれども、その交渉を振り返ってみましても、私と農林大臣がけんかしたとか外務大臣が無理に調整をしたとか、そういうことは全くございませんでした。よく連絡をとり合いながら、向こうも途中から外務大臣が入ってこられまして、二対三でやったわけでありますけれども、そういう意味では、あれは引き続き交渉という結果になりましたけれども、あれ一つを振り返ってみましても、決して、一部マスコミで、各省の連携がとれていないとかばらばらだとか、そういうことはなかった。

 むしろ、お互いに、特に農水大臣が大変御苦労されましたし、経済産業省も、正確な表現かどうかわかりませんが、それをバックアップするとか、あるいはまた農水大臣にもバックアップしていただくとか、外務大臣にも全体としていろいろとバックアップしていただいたということで、総理に逐一報告をしながら、三大臣あるいは政府代表、そして各省は、財務省も含めまして力を合わせてやったということでございますので、交渉内容ですから余り赤裸々に御報告することはできませんけれども、結論として言えば、一致結束して最終段階に向かっていったという私は非常にいい思い出を持っているということでございます。

鈴木(康)委員 今回の交渉は結果としてうまくいったから、大臣が、いろいろな過程、御苦労もあったけれどもよかったという、この結論で締めくくれると私は思うんですね。結果がよければ途中の過程はいいじゃないかということでありますが、これが逆に決裂していたら、やはり日本の、ばらばらに交渉に当たったこととか、いろいろなそごの問題、これは非常に大きく逆にクローズアップされていたんだろうと思うんです。

 私は、先ほど大臣が、メキシコが譲歩したとは思えないよと言うんですが、どう考えても私はメキシコの一定の譲歩があったんじゃないかと思わざるを得ないわけでありますが、それは見解の相違として置いておくとしても、これからアジアのいろいろな国とこうしたタフな交渉をやっていくといったときに、今回は、特に問題となったのは農業部門でありまして、農業部門だけでいいんですが、これは今度フィリピンあるいはタイなんかとやると、今度は人の問題がここに入ってくるから当然厚労部門も入ってきますし、非常に多岐にわたる分野が参加をする。

 そうしたところで、先ほど大臣が言ったようにウイン・ウインで、どこかでやはり譲歩もしながら国益にかなうものをかち取っていかなきゃいけないときに、やはり日本として、では何をとりに行くんだ、どこを譲歩するんだということも含めて、きちっとした優先順位をつけたり、あるいはそれに基づいていろいろな国内の調整もしていかなきゃいけないといったときに、今の体制で本当にこれがやっていけるんだろうかなという気がしてならないんですね。

 やはり私は、こうした経済外交というのはこれから非常に大事になっていくということを考えれば、専門の経済外交の担当大臣あるいはそうした部局を置くべきだと思いますし、また国会にも私は経済外交の委員会をつくってほしいと思うんですね。

 今回も、今この経済産業委員会でやっていますが、外務委員会でも条約についての審議をしました。あるいは、本来であれば農水でもこれはやらなきゃいけないわけですね。いずれ、人の問題が来れば厚生労働委員会が入ってきたり、多岐にわたっていくわけでありまして、私は、そういうものを集約した経済外交特別委員会というものもつくって、きちっと国会の関与というものをもっと積極的にしていけるような体制をつくる必要があると思うんですが、その辺、ちょっと大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 確かに、シンガポールのときは、先ほどお話があったように、農林水産物というと、ランだとか熱帯魚だとかということで、余り食料の観点から、観賞用熱帯魚を食べたことがある人とか観賞用のランを食べたことがある人は余り聞いたことがございませんので、そういう意味で、シンガポールは、それでも交渉自体、国内的にも大変だった、あるいは交渉も大変だったんですが、今度メキシコが、いよいよ農産物、水産物が入ってきて大きなメーンテーマの一つになったわけであります。

 今後、ASEAN三カ国あるいはASEAN全体、そして韓国とやる。これはつまり、このEPAというのは二国間ですから、二国間で合意すればいいわけですから、定型というものは多分ないんだろう。さっきのガット二十四条とかサービス協定五条ぐらいが国際的な共通のルールであって、あとはお互いに痛みを伴いながらのウイン・ウインでやっていけばいいんだろうと思います。

 メキシコについて言えば、ちょっと繰り返しになりますけれども、実は私も亀井農水大臣のことを非常に配慮しながら交渉いたしましたし、亀井農水大臣も経済産業省のことをよく考えてやっていただいた、川口外務大臣も両省のことをよく配慮しながらやっていただいた。つまり、それぞれのプレーヤーのことも頭に入れながら交渉ができたからこそ、決してばらばらではなくて、十月のときも一緒にやりましたし、その後のバンコクのAPECのときも外務大臣と一緒にやりましたし、三月のテレビ会合の最後の詰めのときも一緒にやりましたし、形式的にもそれから実質的にもばらばらではなかった、だからよかったというふうに思っております。

 今後、政府の中に、今度は人の問題とか治安の問題とかいろいろまた新たな分野が出てきますので、そうするとますます所管もふえる、場合によっては参加する担当大臣もふえるから一本にまとめた方がいいじゃないかという議論はもちろんありますが、国会の御議論については、そちら、国会側の御判断にお任せするといたしまして、私は、一本にまとめてすっとできるのであればそれも選択肢だと思いますけれども、ただ一本にまとめればいいというものでもないんだろう。

 要するに、鈴木委員も、その方が国益にとっていいんだろう、両国にとっていいんだろうという観点からの御質問だと思います。アメリカのUSTRというのは実は議会がつくった組織でございますから、だから上院は、条約締結権があるにもかかわらず、ファストトラックあるいはTPAでもって、何年何月まではおまえたちに交渉をすべて任せるよ、そして結果を持ってこい、オール・オア・ナッシングで判断するよということでありますから、あれも国内調整が相当大変なことをやっているわけであります。

 したがって、国内調整がきちっとできて、そして政府としてきちっと交渉ができる、シンガポールでもメキシコでも、結果的にはそういういい結果になったというふうに私自身は考えておりますので、今、まず一本化ありきということで議論を進めるかどうかということについては、最終的にはこれは総理大臣がお決めになることでございますけれども、私としては、みんなで協力してやっていけば、ASEANも大分交渉がいわゆる煮詰まってきている、お互いの問題点あるいは共有できる点が浮き彫りになってきつつあるということで、交渉自体が進んできておりますので、今すぐそういう一人の大臣に全部を任せた方がいいのかどうかということについては、最終的には総理の御判断だろうと思っております。

鈴木(康)委員 私は、大臣から今御答弁をいただきましたけれども、やはり交渉窓口、きちっと責任を持って、国内は国内でそれは調整することは必要ですけれども、一手に交渉窓口になる担当大臣というのが総理のもとで必要なんだろうというふうに思うんですね。国会の方はもちろんこちらの問題なんですけれども、どうしても私は、やはり今の状況を見ていますと、こうしたものを一括して扱う特別委員会か何かをつくる必要があるなということを痛切に感じています。

 ちょっと時間がなくなってまいりました。

 今回の交渉の中で、やはり農業部門というのは非常に大きな、ある意味で交渉の中でのキーポイントだったわけでありますが、今度の条約の中で、実はセーフガードの条項が入っているわけですね。これが今後発動されるかどうかということでありますが、メキシコが日本に対してセーフガードを発動するというのは余り想定しにくいのですが、想定されるとすれば、日本側が何らかの急激な貿易量の増加によって不利益をこうむってセーフガードを発動するという可能性があるのではないか、特に農業部門に多くそれが想定をされるだろうと。

 ことしの三月の農業新聞の社説にも、「輸入急増による被害に対応する二国間セーフガード措置が盛り込まれたが、すぐさま対応できるような監視体制とあわせて万全の国内対策を準備しておく責任が政府にはある。」というような論調もありますが、これからの貿易量の増大に対して一つの懸念があるわけであります。

 そこで、きょうは農水省からも参考人で来ていただいているので、その辺の懸念あるいは可能性について御答弁をいただきたいというふうに思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 このEPA協定におきましては、農産物の各品目の国内農畜産業における重要性などを勘案いたしまして、必要に応じて関税撤廃の例外とする、あるいは経過期間を設定するなど、国内農畜産業への影響を極力回避し得る内容となっております。

 関税の引き下げそれから撤廃による農畜産物の輸入の増加を見通すためには、当然、為替レートの動向、それから他の国からの輸入動向なども勘案しなければならないわけでございます。それで、個別品目の具体的な輸入増加量を見通すことは困難でありますけれども、先ほど申し上げましたような例外的な扱い、それから経過期間の設定、こういった措置によりまして、国内農畜産業への影響が極力回避し得るような内容となっているわけでございます。

 なお、メキシコからの産品の輸入が急増した場合に備えまして、委員御指摘のように、国内産業への重大な損害を防止または救済するため、協定に則しまして、関税暫定措置法改正法案におきまして、関税の段階的引き下げの停止、または、MFNレートを超えない関税引き上げを行うことができる二国間セーフガード措置が規定されております。

 当該措置に則しまして、措置の適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(康)委員 私は、安易にセーフガードが発動されないようにということを強く申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、今度、外国人の問題についてお伺いをしたいと思います。

 これは具体的な事例でお話を申し上げたいと思うんですが、これからアジアとEPA交渉をしていくと、当然アジアのそうした労働者の受け入れの問題も発生をする。恐らく、日本が今後を考えれば、こうした外国人の労働者の人たちというのがふえることはあっても減ることはないというふうに思うんです。としますと、やはり国内の中でしっかりとその受け入れ体制というのもこれから準備しておく必要があるのではないかと思うんです。

 実は、私が生まれ育った浜松というのは定住外国人がたくさんおりまして、浜松のような都市が全国に何カ所かあるんですね。そこの都市が集まって、今、外国人集住都市会議というものを持って、具体的にいろいろな制度上の問題を抱えていることをお互いに議論し合って、それをいろいろな形で国に提言をしています。

 例えば厚生労働省関係では、いわゆる外国人の保険の問題ですね。今、健康保険と年金とセット加入でないと認められないということで、いずれ外国に帰る、そうした外国人の方にとってみたら、これは分けてほしいというのが非常に切望されることでありまして、あるいは外国人向けの医療保険制度もつくってほしい、いろいろな具体的な提案をしています。

 あるいは文部科学関係では、今、そうした外国人の子弟の不就学の問題、就学をしないという問題ですね、これが非常に大きな問題になっていまして、それに関するいろいろな要望が出ている。

 あるいは法務省関係では、外国人の登録に関する、あるいは出入国管理に関するいろいろな提言がなされています。

 こうした具体的な提言、これをやってほしいということがこうした都市から要望されているんですが、どうも国の動きが非常に鈍いということを伺っているわけであります。

 そこで、きょうは厚生労働省、文部科学省、法務省からも来ていただいていますので、具体的に今その提言があったことに対してどういう形で改善に向けて進んでいるのか、御答弁をいただきたいと思います。

大石政府参考人 二〇〇一年そして二〇〇四年と、浜松宣言そして豊田宣言という形で、実際に外国人の方が大勢住んでおられる市や町の皆さん方の御提言ということで、私どもとしても重く受けとめなければいけないものというふうに考えております。

 今の御指摘のございました点につきまして、例えば厚生労働省、二〇〇一年の浜松宣言で、業務請負が多いなどの雇用形態の実態に即して外国人の労働環境を改善しなさい、こういった提言もいただいております。こうした点につきましても、私どもといたしましても、ことしの八月に、従来も指針があったんですが、外国人労働者に関する、そうした点を踏まえた指針の改正なども行っております。

 その他、社会保険の問題もございまして、これにつきまして、ちょっと私の直接の担当ではございませんけれども、担当部局から伺っているところでは、社会保険への加入の促進について非常に熱心な勧誘行為を行うというようなことを聞いております。

 いずれにいたしましても、御提言いただいた内容について、私どもとしても真摯に対応しているところでございます。(鈴木(康)委員「前向きにやっているわけね」と呼ぶ)はい。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましても、外国人集住都市会議の提言等も踏まえながら、従来から、外国人の児童生徒に対する教育の充実を図ってきているところでございます。

 具体的には、外国人児童生徒につきましては、公立の義務教育諸学校へ就学を希望される場合には無償で受け入れまして、日本人と同一の教育を受ける機会を保障しているわけでございます。外国人のお子さん方が日本の学校に適応することを支援するために、私ども、日本語指導のための教員を加配、いわゆる増員をさせていただいたり、あるいは母語のわかる指導協力者を派遣させていただいたり、あるいは日本語指導のための指導方法の開発、JSLプログラムの開発等々をやらせていただいておりまして、こういった施策に取り組んでいるところでございますが、豊田宣言でも言及されておりますとおり、さらなる指導体制の充実、あるいは不就学のお子さんがまだおられるということ、こういった問題への対応ということを今後取り組むべき課題ということで私どもも認識しているところでございまして、この不就学の問題につきましても、来年度に必要な予算要求をいたしまして、この実態把握と要因分析等を行いまして、不就学問題へ対応していきたい、あるいは日本語指導についてもさらなる体制の充実に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 浜松宣言や豊田宣言におきましては、外国人も日本人の住民と同じ住民であるという基本認識のもとに、外国人登録に係る諸制度を抜本的に見直してほしいという趣旨の御要望、御提言があることは承知しております。

 私どもといたしましても、この要望に係る、例えば出国通知の迅速化でございますとか、居住実態が確認されていない外国人の方の登録原票の回収などにつきましては、今後とも要望に沿えるよう努めたいと考えておるところでございます。

鈴木(康)委員 最初にこの浜松宣言が出されたのは二〇〇一年、それからもう三年たっているんですね。今回、豊田宣言が出されたときも、浜松市の北脇市長は、非常に国の動きが鈍い、結局浜松宣言と同じことをまた豊田宣言に盛り込まなきゃいけないということを言っているんですね。これから、では、こんな状態で本当に外国人の人を受け入れられるんだろうか。現場の自治体は、それはもう喫緊の課題としていろんな対策を立てていますよ。いろんな動きもある。ところが、非常に国の動きが鈍いということを指摘しているわけであります。北脇市長がこうしたばらばらの省庁間の問題を非常に問題意識として持っていまして、この定住外国人に対する省庁間の政策をめぐるいろんな調整をする専門の組織をつくってほしいということを痛切に切望されています。

 私は、これから外国人の方がふえていくことを考えたら、やはりもっと国の動きをスピーディーにしてほしいし、制度改正ももっと活発にやっていただきたいと思いますし、また、省庁間のいろんなそごがあるとすれば、そうした調整機能を持った組織を早急につくるということも含めて、強くそのことをお願い申し上げまして、時間でございますので、質問を終わらせていただきたいと思います。

河上委員長 細野豪志君。

細野委員 おはようございます。(発言する者あり)

河上委員長 与党の御出席の御手配をよろしくお願いいたします。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河上委員長 速記を起こしてください。

 細野豪志君。

細野委員 おはようございます。民主党の細野でございますが、よろしくお願いいたします。

 EPAの本題に入る前に、幾つか中川大臣にお伺いしたいことがございますので、よろしくお願いします。

 一昨日、私は、新潟の中越地震の現地に行ってまいりました。現地の様子というのは、テレビなどでも報道されていますし、皆さんごらんをいただいていると思いますけれども、いわゆる救助であるとか避難という段階から、これから復興支援へ徐々に全体として向かっていくなということを感じております。

 そこで、これから重要になってまいりますのは特に財政的な支援でございまして、そのことについて改めて中川大臣のお考えを聞きたいというふうに思っています。各委員会でそれぞれ補正予算について我々聞いておるんですが、その大臣の中では、実は一番前向きに答弁していただいているのは中川大臣でございまして、十月二十七日ですか、経済産業委員会で私どもの海江田委員に対して前向きにやりたいという御答弁がございました。

 実は、財政的な支援が今求められているのは中越地震だけではございませんで、私の地元の静岡県なんかも、台風二十二号、二十三号で大きな被害を受けました。そのときに、例えばごみの処理であるとか救援支援であるとか被災者支援であるとか、そういうものを一つ一つ役所の側といろいろと話をしたときに一つ必ず問題になるのは、これが基準に該当するかどうかという、基準が確かにこれはラインとしてあるんですね。これは当然だと思います。ただ、もう一つ必ず直接的にはおっしゃらないまでも出てくるのが、実は予算の制約というものでございまして、そこが制約要因になって、行政というのは当然さじかげんというものがありますので、そこでなかなか予算の支援ができないというようなことがもう現実に私は出てきているというふうに思っています。

 補正予算について、今国会でできるものであればそれにこしたことはない、そういう答弁をいただいているんですが、どうでしょうか、大臣、もう少し前向きに内閣の中でぜひこれに働きかけていただけないですか。現場で補助金であるとかいろんな支援法などを扱っている役場のそれぞれの担当の方からすると、予算の制約があるのか、それとももう既についているのかで、これは私は大きく違うというのを実感しています。ぜひ前向きな御答弁をいただきたいと思います。

中川国務大臣 ことしは、台風そして強風、大雨、そして新潟中越地方では、きのうもまたお一人亡くなられたということで、まだ災害が現在続いているというふうに私ども思っております。

 そういう中で、一刻も早い地震からの、今まさにまだ余震というには大きい地震が続発しているわけでありますし、それから、例の天然ダムというのですか、その危険性もあるわけであります。そしてまた、経済産業省の所管といたしましては、いわゆるライフライン、ガス、電気、道路もまだまだ復旧しておりません。それから、物資の提供あるいは中小企業等企業の復興対策、やれるものを万全を期してやっております。

 委員の御指摘の例えば激甚災害も、きょうの閣議でやっと台風十八号の激甚災害指定が行われたということで、これも時間がかかっているわけでありますが、それと財政的な措置、予算ということであります。

 以前も申し上げましたが、復旧のためにできるだけ早く万全の対策をとるというのは、これはもう財政当局、財務省であっても同じ考えだろうというふうに思っております。特に、あの地域は豪雪寒冷地帯でございますから、冬に向けて、生活活動、経済活動、大変だと思います。私のところも寒冷地帯でございますので、不自由な生活については実感としてわかるわけであります。また、私のところは十勝沖地震の頻発地帯でもございますので、一月に大地震に襲われたことも私自身体験をしております。

 ですから、政府としては、例えば、地方管轄の国道を国直轄で復旧するとか、あるいは天然ダムの危険防止対策を国が直轄でやるとか、それから概算払いでもってやれるものはどんどんやっていっていいですよというようなことも言っておりますが、補正予算についてできるだけ早く、たまたま今、国会中でありますから、今、財務大臣は補正予算を組みますと。組みますと言うこと自体、災害であるがゆえの財務大臣の御判断だろうと思いますけれども、通常国会のできるだけ早い時期にというふうに財務大臣はおっしゃっておりますが、私としては、作業に時間がかかるということは、私どものところの災害の対策を見ていても時間がかかることはわかるわけでありますので、それはそれとして、できるだけ早く作業を進めていただいて、そして予算としてできるだけ早く国会に提出をして御審議をいただいて、成立がされて施行されるということを多分被災地の皆さん方も切望しているんだろう、そしてまた国としてもそれが役割だろうと私は思っておりますので、できることならできるだけ早くということを申し上げているわけであります。事務的な作業、あるいはまたいろいろな要件、ルール、法律等々あると思いますから、それをできるだけ早くやってもらいたい。

 おまえの気持ちはどうなんだということだったので、来年の通常国会冒頭なんということではなくて、できることならできるだけ早く国会での御了解をいただいた対策をとっていきたいという私の希望といいましょうか、率直な気持ちを申し上げているところでございます。

細野委員 財務大臣が、財務的な、財政規律という観点から、とにかくもう予算で措置できなくなったらそのときは補正だというのは、これはわからないではないんですね。

 ただ、ここはやはり政治の場所でございますし、中川大臣は内閣の中でも政治的な決断力がおありな方だと思いますので、補正予算というのは臨時で何か起こったときに組むのが補正予算であって、今までの組み方がおかしいので、こういうときこそやはり補正予算なんですよね。ですから、ぜひこれは前向きに内閣の中で働きかけていただきたいということを、前向きに御答弁いただきましたので信頼をしておりますが、お願いをしたいというふうに思います。

 次に、海洋権益について二、三質問をしたいと思います。

 これも同じく、二十七日のこの経済産業委員会の中で、中川大臣から日中の係争水域について御発言がございました。今まで日本の主張というのは、二百海里の線はあるんだけれども中間線からこっち側が一つの日本としてはエリアなんだというニュアンスに私は受け取っておったのが、経済産業大臣がおっしゃるには、係争水域というのは日本から二百海里、つまり中間線から西側に向けての部分も含めて、ここが係争水域なんだというお話をされました。そこを再確認したい。

 もう一つ、その中間線から西側、二百海里の部分、そこでもう既に中国側はかなりの開発をしている、これはもう周知の事実であります。そうしますと、係争中の水域においてそういう活動をしているという意味においては、まさに海洋法七十四条、八十三条に違反をした行為である、海洋法違反であるということをこれはとりもなおさずあらわすと思うんですが、この見解について改めて確認をしたいと思います。

中川国務大臣 私が前回、当委員会一般質疑で御答弁を申し上げたのは、そういう御趣旨でございます。

 日本が二百海里の中間線で主張しているというか認定しているラインというのは、前にも申し上げましたが、本来、日本から二百海里が排他的経済水域だということ、これがまず第一原則であって、他方、中国からも引くと当然重なり合うので、その重なり合った水域をお互いに半分ずつしましょうということで中間線にしているんだ。これは、中国の存在を、あるいは中国の海洋法条約に基づく主張を配慮して中間線にしているんだという前提がございます。

 他方、中国は、日本の二百海里というものをそもそも認めない、したがって中間線を認めない、自分たちは、自分の大陸から二百海里を黙って引いて、そして大陸棚を自然延長していくと沖縄のすぐ手前の沖縄トラフのところまで行くんだから、そもそも中間線を認めない、つまり日本の主張を認めない、ある意味では日本の物理的な存在というものを認めない。それじゃ話にならないでしょうと。

 したがって、中国側が、この前、二十五日の会議でも、では、日本側が文句をつけている中間線と我々の権利である沖縄トラフとの間を係争水域にしましょうと先方が言うものですから、いやいや、係争水域というのであれば、日本の主張している二百海里までのところが係争水域ですよということを、十月二十五日、薮中アジア局長、我が省の小平エネ庁長官から主張したわけであります。

 したがって、係争水域があるとするならば、日本としては二百海里まで、あるいは向こう側は沖縄トラフまで、こういうことになるわけであります。

 他方、海洋法条約の七十四条、八十三条では、お互いに意見が違うときにはとにかく最後まで話し合いなさいというとてもいい規定なんですけれども、では、話し合ってどうなんだというところが全然書いていないというのがちょっとこの条約の、我々としてはその先のルールが書いていないということになるわけでありますが、今おっしゃられたように、では、西側についてはどうなんだというと、中国は、他方、認めていないけれども日本側の中間線に配慮して前に出ていないんだ、こういう主張なんですね。したがいまして、春暁も前に出ていないんだ、あくまでも、日本が勝手に主張しているとはいえ、中間線の内側でやっているんだから日本には関係ないでしょうと。あるいは、私どもが言っております、丸々日本側にあるところに鉱区を設定したという情報がありますけれども、これもどうなんだと言ったら、いや、そんなところで作業はしておりません、したがって、認めていないけれども日本の中間線の中では作業をしておりません、こういう主張であります。

 だから、万が一、係争区域の議論は議論として、現実に日本の中間線の中で先方が資源開発なり資源探査なりをしているということがはっきりとわかれば、だから、そうじゃなければ情報をくれということを言っているんですけれども情報をくれないわけでありますが、そういうことでないという前提であれば、とりあえず向こう側のいろいろな平湖等の海洋開発についても、日本としては、七十四条、八十三条の係争水域だから話し合いをしましょう以前の問題として、日本側でもやっていないんだから係争水域にはならないでしょうという実際の行動と同じレベルとして、今の段階では、向こう側でやっているものについては問題にするレベルになっていない。

 これが、それでいいんだということでは決してございませんけれども、向こう側が日本の側でやっていないと言っている以上は、日本も向こう側について何らかの行動を起こすということには現段階ではなっていないというふうに理解をしております。

細野委員 再確認、しつこいようで恐縮なんですが、中川大臣は、中間線から西側の海域において、中国が春暁等の開発をしていることに関しては海洋法違反だという認識を持っておられるということでいいですね。海洋法違反かどうか、中国の行為についてお答えください。

中川国務大臣 日本が主張しているのは中間線ですから、中間線の向こう側で何をしようと御自由です。しかし、向こう側が日本の中間線より内側で権利を主張し、そして実際に何らかの行動を起こすのであれば、これは日本としても、日本の主張が崩れるわけでありますから、係争水域になりますね。

 その場合の係争水域というのは、向こうは中間線から沖縄トラフだと言っておりますけれども、そうじゃなくて、向こうが沖縄トラフと言うのであれば、日本は日本の主張する中間線、これはもう実は上海のぎりぎりまで行っちゃうんですけれども、そこまでが係争水域になりますというふうに私は頭の整理をしております。

細野委員 今の中川大臣の頭の整理によると、係争水域の中において開発をしている中国の行為は、これは海洋法違反で、やめてくれと言わないかぬですね。中間線を、日本側だけではなくて向こう側も係争区域なのであれば、まさにこの七十四条と八十三条に基づいて、そこの開発を、春暁を初め開発しているところを一たんストップしてくれとこれは言わないかぬですよね。

 そこで問題になるのは外務省の姿勢でございますが、先月二十五日、この協議が行われているんですが、私の知るところでは、外務省が、係争水域が二百海里同士のこの西側にも広がっているんだということをまともに初めて交渉したのが今回ではないかという印象を私は持っています。それは、違えば違うで結構なんですが、おっしゃっていただければ結構なんですが。

 では、ここが係争区域だということをおっしゃるのであれば、海洋法に基づいて、中国の行為が海洋法違反であるということ、まず一つ。その上で、中間線より向こう側の係争区域においても開発はストップしてくれ、これはきちっとおっしゃったのかどうか、そこまで言わないと整合性のある議論にならないんですね。これは、外務副大臣にお答えいただきたいと思います。

逢沢副大臣 二十五日に開催をされました東シナ海に関する日中協議についてでありますけれども、我が国は、境界の画定を考えるべき水域は両国の二百海里までの水域が重なり合う部分である、したがって、そのような水域において衡平な解決を達成するための境界画定は中間線によるべきであるという考え方を改めて示したわけであります。

 これに対して、中国側は、係争水域については、中間線以東から沖縄トラフの間の水域であるという従来からの主張を繰り返し、大陸棚に関する自然延長論をさらに展開したわけでありまして、日本が主張するいわゆる中間線による境界画定は認められないということを改めて表明したというふうに承知をいたしております。

 我が国の考え方としては、いわゆる中間線、この考え方は、関連規定、国際判例、リビア、マルタの例、その他幾つかあるわけでありますけれども、そういった例、また学説等を踏まえれば、中間線をもとに画定すべきであるという主張に自信を持っているわけでございます。

 では、日本が主張する中間線の西側、東側、つまり、西側は中国側、東側は日本側ということになるわけでございますけれども、もちろん、日本が中間線を主張している以上、仮にその中間線の東側、日本側で中国が何かをするということになれば、これは黙っていられないという立場に立つわけでございます。(細野委員「西側も」と呼ぶ)西側につきまして、旧来から申し上げているわけでありますが、平湖油田、これは中間線から西側に存在をしている、中間線から少し距離がある西側というのが物理的事実ということでございます。

 日本は中間線を主張しているわけでありますので、その主張にのっとって答弁をさせていただくとすれば、中間線の仮に東側において、我が国の主権的権利その他の権利を行使する立場が日本側にあるわけでありますから、そこに抵触をするとすれば発言をしなくてはならないわけでありますけれども、西側について中国側が行う調査あるいは開発、それは日本は中間線を主張している以上、とりわけ日本の立場に影響を与えるものではないというふうに整理をいたしております。

細野委員 今、明らかに経済産業大臣と外務省の答弁が違うんですよね。七十四条の中で係争水域に当たるわけですよね。係争水域において、具体的に井戸を掘っているわけですよね。「最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う。」これの規定に中国は反していないと。外務省、それで本当にいいんですか。係争水域と言っている意味がないですよ。これは条約の解釈なので、外務省にちょっともう一度お答えいただきたいと思います。反していないということでよろしいんですか、中間線から西側ですね。

逢沢副大臣 春暁の開発につきましては、大変な問題意識を持っております。

 それは、つまり中間線に隣接をしている地域でありまして、中川大臣初め我が国の責任ある立場の方々も、中間線を地下構造においてまたがっている危険性、可能性、そのことが蓋然的には十分受け取れる、こういうことであります。したがって、十分な調査結果を示しなさいということをたび重ねて中国側に申し上げてきているわけでありますが、残念ながら、それが実現をしていないという状況が続いているわけであります。

細野委員 短目にお願いします。

中川国務大臣 短く申し上げますが、要するに、事の発端は、東シナ海、特に春暁がここ一年ぐらい大きな問題になりましたが、やはり境界画定をしないとこの問題がはっきりしない。春暁というのは、今副大臣おっしゃったように、どうも我々の判断、状況、いろいろな証拠を見ると日本の中に入っている、したがって、排他的権利を侵害している、だからきちっとデータをよこしなさい、こう言い続けているわけですが、この議論はひょっとすると向こう側の理屈に乗った議論になりかねやすいんですよ。

 日本の中間線は認めていない、沖縄トラフまでだ、でも、おれたちは中間線は越えていないんだから文句はないだろうというのが向こうの理屈なんです。いや、春暁は違うよ、こういう話で、そして、いや、日本は沖縄トラフを認めないよと言ったら、では、係争水域はトラフと中間線の間なんだなと向こうが言うから、いやいや、係争水域を言うのであれば、トラフから日本の二百海里までだと。こういう議論になりますから、段階が違うわけで、今は、中間線を日本が主張し、中間線の内側に入ってきていない以上は、日本としても、向こう側で何をしようと、今外務副大臣が言うように、中間線の向こう側、つまり日本の主張の向こう側だから文句言う必要ありませんね。

 万が一入ってきたら、我々としてはこれは大問題にします、それは。向こう側は、いやいや、中間線は認めていないんだ、でも入ってきていないから文句ないでしょう、こういう理屈で、若干やりとりが、次の段階の話と今我々が問題にしている話と区別して考えないと、まさに中国側の主張に乗ってしまいますので、その辺、御理解いただきたいと思います。

細野委員 何か日本と中国の交渉を見ていますと、私の例えがいいかどうかは別にして、ちょっと聞いていただきたいのですが、子供二人が何かお菓子の取り合いをしていて、お菓子が十個ある、中国は、十個全部よこせと言っているわけですよね。日本は、半分半分がいいかなと思って、五個だけくれと言ったら、いや五個もやるかと言われて、二個も三個もまたとられて、今、その五個がとれるかとれないか、これはぎりぎりの線に来ている、そんな状況に私には見えるんですね。

 日本として主張すべきところはきちっと主張する、そういう意味において、係争水域がこの中間線全体なんだということを言ったのは、私は大きな意味があると思います。それに基づいて外務省がきちっと整合性のある主張をしていただければ、これからの日本の交渉というのは変わってくるはずなんですね。

 ちょっとしつこいようなんですけれども確認したいんですが、係争水域と言っているのは、海洋法の七十四条上の係争水域、争っている水域という理解でいいんですね、外務副大臣。よろしいわけですね。(逢沢副大臣「はい」と呼ぶ)では、その係争水域の中において中国が井戸を掘ったのは、ここに言う「最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う。」行為に違反をしていると本当に思わないんですか。係争水域で開発しているんですよ、解決を危うくしていませんか。

 これは解釈をきちっと、大臣言われるとおり、今までの中間線の議論なら向こう側でやっているということでいいという話なんですよ。ただ、中間線ではなくて係争水域を両サイドに広げるのであれば、そこでやった行為に関してもこれは違反なんだという主張をきちっとしないと、整合性がないんですよ。

 逢沢副大臣にちょっとお答えいただきたいんですが、七十四条の係争水域が中間線を越えて西側に広がるのであれば、そこの行為も含めて問題にする、そういう必要性は本当にないのか、お答えをいただきたいと思います。

逢沢副大臣 あくまで我が国といたしましては、国連海洋法条約七十四条また八十三条にのっとって、そして関連の規定、また幾つかの判例が示されている経緯もございます、また学説もある、そういうものを総合的に判断して、いわゆる衡平に解決をする。そういうことからすれば、やはり中間線だ、その主張に自信を持って今までもやってまいりましたし、これからもその主張を徹底的に展開をするわけであります。

 しかし、先ほど中川経産大臣がおっしゃられたように、中国はもうそれを絶対認めない、話にならないんだ、あくまで沖縄トラフだということを言えばその前提は崩れてしまうといえば、確かにそれはそのとおりであります。しかし、我が国の主張はやはり衡平な解決、それは中間線、そういう立場に立って今までもやってきたし、これからもやっていく。そして成果を出していかなくてはならないというふうに考えているわけでありまして、そういう意味では、中間線の東側に中国が何か具体的な調査を行う、あるいはまた仮に開発等ということがあれば、明らかにこれは国連海洋法条約違反、つまり、中間線を主張している日本の立場からすればそのことは明らかになってくるということを改めて申し上げておきたいと思います。

細野委員 やはり交渉というのは条件を同じにしないとなかなかうまくいかないと思うんですよね。日本の場合は、例えば海上保安庁の行動も中間線まで、海洋調査も中間線より向こうへは行っていません。それと比較をすると、中国側はもう井戸を中間線より西側で掘っている上に、東側にもさまざまな調査をしているわけですよね。ですから、整合性のある議論をするのであれば、中間線より西側に向かっても日本は何らかのアクションを起こすか、もしくは、そこがもう実際に掘られて手をつけられないのであれば、東側で試掘をするか、どっちかなんですよ。少なくともどっちかのアクションをとらない限り、交渉が平等な条件でなされない。ここの部分に関してはまずアクションが求められると私は思いますよ。経済産業大臣にお伺いします。

中川国務大臣 私もおっしゃるとおりだと思います。したがいまして、ですから、中国の理屈のとおりに言うと、現在日本は、御承知のとおり、中間線の内側で資源探査、物理探査をやっておりますし、数十年前から民間企業が鉱区設定の申請をしております。中国側の主張が本気であれば、それについて文句を言うべきなんです。おれたちの排他的大陸棚及び経済水域だろうと。おれたちは沖縄トラフまで持っているのに、日本が資源探査をやったり鉱区設定をするのは中国の権利を侵害しているだろうと文句をつけるべきなのに、つけていない。そして、現実に、向こうの主張によると、中間線の内側に入ってきていませんと、認めていないけれども、入ってきていないだろう、だから文句はないだろうと。これが向こうの理屈なんですね。言っていることが、私は、若干おかしいんだろうと。矛盾しているというか、私には理解できないことを向こうは言っているわけであります。

 したがいまして、特にこの春暁という日本にまたがっているという蓋然性が高いものについてはっきりするためにも、おっしゃったように交渉ですから、スタートラインを同じにしなければいけませんから、七月から物理探査もやっておりますし、鉱区設定がもう三十数年間ほったらかしにされている状況ですから、そういうことも頭に入れていろいろなことをこれからやっていかなければ日本の国益は損なわれてしまうというふうに考えておりますので、今後、いろいろな判断がこれから必要になってくると思います。(発言する者あり)

細野委員 今いろいろな声がこっちからも上がっていますが、やはり今までにこだわることは必ずしも私はいい結果をもたらさないと思います。中間線の主張にこだわって結局押されてきたという現実もそうですし、事前通告制度自体もそうだと思うんですよね。ですから、もうきょうはEPAの話があるのでこれぐらいにしますけれども、ぜひ外務省の方には、今までの主張とこれからの主張というのをある部分で分けて考えて、ではこれから日本としてはどういう主張をしていってどういうアクションを起こすのかということを、立派な大臣もいらっしゃるので、相談をしながら決めていただきたいなというふうに思います。

 それでは、こればかりをやっているとちょっと皆さんに怒られてしまいますので、EPAの議論に入りたいと思います。

 メキシコとのEPAですが、先ほど経済産業大臣の方からは、なぜ日本とメキシコで結んだのかということについて、非常に熱意を持った、そういう御説明がございました。外務省の方も何度もそのことについて説明をしていただいてはいるんですが、ちょっと私の中でまだ頭が整理ができていないんですね。なぜ日本が、いろいろな国がある中でメキシコとEPAを結んだのか、メキシコと関係を結んだのかということについて、簡潔に外務省の見解を副大臣にお伺いしたいと思います。

逢沢副大臣 外務省の見解をということでありますが、これはもう政府全体の見解であり判断というふうに御理解をぜひいただきたいと思います。中川大臣を初め関係閣僚から累次お話を申し上げているとおりでありまして、メキシコは、御承知のようにGDP第十位、大きな経済を有する国でありまして、私も大変不勉強でございましたが、その経済規模はASEAN十カ国の規模にほぼ匹敵をする。ああ、そんなにメキシコというのは大きな国だったのかなと改めて認識をいたしたわけでありますが、そのメキシコとEPAを結ぶということが我が国の国益に十二分に資するということは簡単に御理解がいただけるというふうに思いますし、メキシコはNAFTA、そしてEUとの協定、また中南米諸国を初め多くの国と経済連携協定を持っているわけであります。米州市場等々を念頭に大きな橋頭堡を築くことができるということも、大変大きなメリットというふうに申し上げたいと思います。

 そして、恐らくこの委員会でもさんざん議論をいただいたと思いますけれども、ここ五年あるいは十年、日本からメキシコへの輸出が目に見えて減少してきた、そういう事実がございます。その背景には、NAFTAの存在、そしてメキシコが幾つかの国とEPA等々を結んできた。つまり、日本が本来得ることのできるメリットが、目に見える形で失われてきたということに十二分に着目をしてまいったわけでございます。日本企業は、さまざまな面で、メキシコがEPA、FTAを結んでいる欧米企業等に比べて、明らかに競争上不利な立場に置かれてきた、それを何としても解消していかなくてはならない、それもメキシコとEPAを結んだ大きな理由の一つであるということも改めて申し上げておきたいと思います。

細野委員 主に三点御説明いただいたのかなというふうに思います。最後の点、企業の中から、メキシコと結んでほしい、今、日本が簡単に言うと損をしているので、ちゃんとそこの枠組みに入って貿易をさせてくれ、取引をさせてくれという要望が多かった部分についてはよくわかります。

 ただ、前の二つ、例えば経済規模が大きいということでいえば、中国という巨大な市場もあり、例えばアメリカ自身なんていうのは世界最大の市場でもあるわけですよね。そういう国々との関係をどう考えるのか。また、いろいろな答弁の中で、米州市場への橋げたという表現がありますが、確かにNAFTAというのは大きな市場ではあるけれども、例えばEU、そこも市場統合しているわけですよね。では、そこの橋げたは本当に要らないのか。

 これからこのFTAを考えるときに、例えばEUとのFTAというのはどう考えるのか、米州市場の本体ともいうべきアメリカとのFTAをどう考えるのか。中国とは既にいろいろ連携を始めているようですが、この辺の展望、これは非常に難しい判断だと思うんですが、見解をお伺いしたいと思います。

逢沢副大臣 恐らく、今、世界にはさまざまな形のEPAあるいはFTAが二百ばかり存在をしている、あるいはできたという状況であります。

 日本は、シンガポール、そしてこのたびのメキシコ、EPAの世界では後発組と言ってもいいかもしれません。そして現状は、御承知のように、タイ、マレーシア、フィリピン等々、あるいは韓国もそうでありますけれども、協議を進めているという状況で、これは、いわゆる東アジア経済圏、アジア・コミュニティー、そのことを念頭に置いたFTA交渉、そして、ASEAN全体ともその交渉はいずれ視野に入ってくるということも申し上げておきたいと思います。

 さあ、そこで、では、世界第一位の経済大国アメリカとやったらどうだ、あるいは、アメリカの経済規模に匹敵する、あるいは場合によってはそれ以上大きくなるでしょうか、EUと直接やればどうか、そういった議論も確かにあるのは承知をいたしております。

 ただ、日米を考えてみますと、アメリカは世界第一位の経済大国、そして日本は第二位。恐らく、その経済規模を合算いたしますと、世界全体のGDPの約四五、六%ぐらいになってくるんでしょう。あるいは、EUも入れれば、本当に七割あるいは八割以上、こういう規模になってくる。では、WTOとのいわゆる整合性というものは一体どういうふうに考えるのか。

 あるいは、日米が仮にそういうことを結んだとして、その他の地域あるいは国、途上国との関係、そういうものを総合的に考えるバランス感覚というものはやはり必要であろうかと思いますし、また、日米間の経済の活性化、あるいは共通の利益をいかに拡大していくか、確保していくか、さまざまなチャンネルが既にワークをしている。とりわけ農業の問題を念頭に置けば、必ずしも易しいという問題ではないという現実にも着目をする必要があろうかというふうに思います。

 シンガポールでまず経験を積み、そして農林水産の難しい問題を抱えるメキシコとの間で、私は、ちょっと実感を申し上げさせていただくとすれば、よくこれができ上がったなという思いを持つわけでありますが、大変貴重な経験をこの交渉の過程においても我が国は得ることができた、それをさらに第三弾、四弾に生かしてまいりたい、そのように承知をしております。

細野委員 逢沢副大臣がおっしゃるとおり、日米また日・EUでFTAを結べば、実質的にWTOというのは空洞化して、果たしてそんなものが必要なのかという議論にもなりかねないので、そこは私も懸念をします。

 ただ、シンガポールと結んで、メキシコと結んで、ここまでは一番結びやすいところ、そしてビジネス上の要請の大きいところ、この二つはある程度、それなりに整合性のある議論ができたんだろうと思うんですね。ただ、これから、では、WTOで何をやるのか、FTAはどこと結ぶのか、どういう基準でFTAの締結国を選んでいくのかということについては、そろそろ日本としての方向性を出した方が、基準を出した方がいいと思うんですよね。

 その考え方をぜひ外務副大臣の方から、どういうことを目的に、何を基準にFTAの締結国、EPAの締結国を選ぶのかということを御答弁いただきたいと思います。

逢沢副大臣 細野先生に御指摘をいただいた点は、まことに重要な、大切な点であると思います。つまり、どういう理念あるいは考え方、将来構想、ビジョンを持ってFTA、EPAを考え、推進をしていくのか、国策上大変重要な課題であるというふうに私も認識をいたしております。

 そこで、では、これからどういう考え方が大切なのかということでありますが、先ほど申し上げましたように、今、タイでありますとかフィリピン、マレーシア等々とFTA、EPAをぜひ結ぼう。FTAという関税に着目をした狭い範囲というよりも、もっと質的に、投資も観光も人の移動も、あるいは教育も、そういう包括的な、総合的な質の高い経済連携というものが、少し時間はかかろうともやはり意味がある。また、お互いのウイン・ウインの関係をより大きく拡大ができる、確保できる、そういう意味では、少し時間がかかっても、手間がかかっても、包括的なEPA、これを推進する必要があるのではないか、私はそういう立場に立っているわけであります。

 東アジア諸国との経済連携、このアジアのコミュニティー、とりわけ東アジアの経済コミュニティーを確立していく。しかし、これはNAFTAに対抗する、あるいはEUに対抗する閉鎖的なものであってはならない。やはりそこは透明性が求められるし、質の高いFTAが東アジアで縦横無尽に結ばれる、そして、それが全体としてアジアの所得の向上やあるいは技術力を増していく、そういうことに資する。それに日本は、やはりアジアの一員として、またアジアのリーダー国として、ある種のリーダーシップを発揮する。そのことを前提に、去年の年末、いわゆるASEAN特別首脳会合というのを東京で開きました。ASEANの首脳が全員域外で集まったのは、恐らく初めての経験であったと思いますが、そういうことを念頭に置きながら、アジアを大切にしていく、アジアを念頭に置いたEPAを積極的に推進をしてまいりたいと考えておりますので、ぜひ御理解と御支援を賜りますようにお願いも申し上げたいと思います。

細野委員 時間もちょっと少なくなってきたものですから、私の考え方を簡単に申し上げますと、FTAとEPAというのはやはり違うものだと認識した方がいいと思うんですね。

 アジアというのは、確かに一つのキーワードだと思います。そのときに大切なことは、日本はいろいろな制度、すぐれた制度を持っているわけですよね。今回、独禁法も改正をしますが、競争政策なんかもこれからより先進的なものにしていきたいと思っていますし、いろいろな標準化政策というものでいえば、日本のJISなんかも結構すぐれた制度だと思うんですね。検疫であるとか原産地表示みたいなものも割としっかりやっておる。こういうものも含めて、日本の制度を海外にきちっと伝えることができる、ハーモナイズするのに、日本の制度を前向きに出すことができる分野においては、大いにこのEPAというのは可能性があるというふうに私は思うんですね。

 これをまず一つの基準にして、もう一つは、今、逢沢副大臣がおっしゃったとおり、WTO全体に資する形でのこのEPAというのを結んでいただきたいな、そんなふうに思っておりますので、見解をお伺いしてよかったなというふうに思っています。

 時間があと十分ほどでございますので、ちょっと気になることを一つ確認をしたいと思います。

 これも、済みません、外務副大臣になって恐縮なんですが、メキシコの原産地証明、これが条約上の義務になっているんですが、一番私どもが懸念をしておりますのは、第三国からの迂回輸入のようなものが入ってこないかということを一番懸念をしておるんです。

 原産地証明はメキシコ政府が出すと聞いています。ただ、原産地証明というのは数が結構多くて、日墨だけでも数万件あるそうですね。これを、本当にメキシコはきちっと原産地証明をとってくれるのかどうか、迂回輸入がされないのかどうかということについて、外務省としては自信を持ってこれは大丈夫ということを言えるかどうか、まずこの点をお伺いしたいと思います。

逢沢副大臣 原産地証明をきちんと確保する、そしてその実行体制を確認する、非常に大事なことであると思います。

 今、細野先生御指摘のように、メキシコ国内の原産地証明書の発給におきましては、これはメキシコの経済省が実施をするという取り決めにさせていただいております。御承知のように、メキシコはこれまで複数の国々と自由貿易協定を締結してまいりました。これらの締結の実施のために、御指摘の原産地証明書の発給手続を整備してきた実績をメキシコ政府当局は持っておられます。メキシコ国内の原産地証明書の発給の方法につきましても、原産地証明書が円滑に発給されるよう、現在、所要の国内手続等の整備をメキシコ側として鋭意進めておられるというふうに理解をいたしております。

 確かに、いろいろな、例えば迂回輸入の可能性、心配、そういうものも指摘がされているわけでありますけれども、例えば、メキシコの原産地証明書に疑問、疑義がある場合、メキシコの政府や輸出者、生産者に情報提供を求めたり、我が国の、日本の税関当局がメキシコ生産施設の確認に立ち会う等、比較の上におきましても、シンガポールとの間でさきに結びましたEPAの原産地証明確認よりもさらに厳格な、しっかりとした二国間約束をさせていただいているということもあわせて御報告申し上げておきます。

細野委員 今副大臣がおっしゃったのは四十四条の一の(c)で、疑いがある場合はメキシコまで行って調べられるという規定が確かにあるんですよね。ただ、そんなことは今まで日本は一回もやったことが恐らくないと思うんですよ。これは本当に税関ができますか。そういう体制が整えられているのかどうか、これは確認をしたいと思います、政府委員で結構ですが、副大臣が答えていただけるのであれば。

保坂副大臣 実務的なことですので、私どもの方からお答えいたします。

 お話しのとおり、四十四条二項で、疑義があった場合は、NAFTAの場合は相手国の輸出業者、そこへ直接税関が行くようになっておりますが、私どもの方の規定は、まずは政府が相手方に情報提供を求める、その次のステップとして、それが事実かどうかを今度は相手の業者に確かめる、そして、その次のスリーステップとして、相手の、我々のカウンターパートに一緒に立ち会ってもらって入っていく、こういうような仕組みになっておりますので、協議の事項、そこまで至らないということだと思うんですよね。完全に政府の担保に近い形でこれらの問題が起きないようなシステムになっていると考えております。

細野委員 確かに、条約なんで相手を信頼するというのは前提なんですけれども、食の安全に関しては私は性善説に立っちゃいかぬと思いますよ。

 例えば、私が懸念をしていますのは、これは太いのを私なりに一生懸命読んでみたんですが、例えば原産地というのは難しいんですよね。例えば、うちの地元なんかはウナギの産地なんですが、実はずっとウナギを育てているわけじゃなくて、稚魚は中国で育てて、それを稚魚のままどんぶらこどんぶらこと運んできて、日本に送ってきて、三島で育てれば、三島の水がきれいなんで三島産ということになっているんですが、これは原産地証明はどうなんだという問題があるんですね。

 具体的に、今回のEPAでも、例えば種は海外から入ってきて、そして国内で植える場合は原産地で、メキシコでいいと。そこまでは何となくわかるんですが、例えば苗を日本に持ってきて育てて日本に輸出した場合に、これも原産地でいいという形になっているんですよね。それも含めて相当これは問題がある。

 税関として、これは農水省のマターだそうですが、そこまできちっとチェックをする体制をぜひ整えていただきたい、性善説に立たずに。これをぜひお願いしたいと思います。御答弁をお願いします。

保坂副大臣 細かいことは農水の方からお答えいただきますが、お話しのとおりでございます。農産品、非常に難しいところがある。しかし、比率等につきましては、農産品はなかなか、確かに、我々が食べているマグロがボストン沖かメキシコ湾かわからないのと同じでございまして、なかなか迂回で来た場合はわかりにくい。

 しかし、問題は、工業品なんかで見られますように、現実に税関が相手の国の業者のところへ行って確認するというようなシステムになっていますから、そこまでやりますと、例えば日本のメーカーなどは、入ってこられたら、えらい迷惑で、スパイ行為と疑われることがあるわけですから、お互いにそこは協定をしながらやっていく。省令に近い直接的な協定を今検討しているところでございます。

細野委員 私は、そこの分野は国際的な枠組みをつくった方がいいと思います。どういうものが原産地としてきちっとした形で認められるのか。それをぜひ、これからも多分EPAを結ぶときはこういう原産地証明を求めるんでしょうから、それは一つ一つ積み重ねていくとして、そういう国際的な枠組みをぜひつくることに経済産業大臣としても交渉の前提に立っていただきたいと思いますし、特に外務省にそのことをお願いして、私ども、これは賛成でございますので、今後の取り組みとしてお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河上委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山でございます。

 きょうは、私、民主党でも今三人目の質問者ということで、結構大きい話は皆さんされましたので、細部に神は宿るといいますか、結構細かいことを聞いていきたいと思います。ですけれども、大臣、細かいことを詰めることがやはりこういう交渉事では大事だと思いますので、その観点からお願いいたします。

 まず、今回の日・メキシコの前に、メキシコは、随分いろいろな国とFTA交渉をしているみたいですけれども、大体どのぐらいの国と交渉していますか。これは担当の方で結構ですけれども、FTAをどれぐらい結んでいるか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 国の数でいいますと四十二カ国になろうかと思います。もちろん、EUという大きな地域とやっておりますので、そういうふうに数えると別の数え方があるかもしれませんけれども、結んでいる国の数ということでいえば、メキシコが世界で一、二位を争うFTA大国でございます。

高山委員 メキシコはFTA大国だということですけれども、メキシコがFTAを結んでいる大きなところである例えばNAFTAあるいはEU、こういったところでの原産地証明のやり方、ルールというのは一体どういうふうになっているのか。NAFTAの場合はどうだ、EUの場合はどうだということを教えてください。

保坂副大臣 先ほどもお答えいたしましたが、NAFTAとEUそれから日本の場合、日本は、どちらかというとEUに近い形で、政府間がまず前面に出るということになっていますが、NAFTAの場合は、完全に業者と相手の国の税関が直接やるような形になっております。アメリカは、そういう形で、できるだけ民民の形を尊重するという形をとってまいりましたが、私どもの方といたしましては、メキシコとの経済連携協定に関しましては、完全に政府と政府の間に入って、そして、税関が立ち会いながら、疑義についても極力少なくしていく、友好の上に、信義の上に基づくお互いの特恵産品の交流から発展的に経済関係を樹立していく、こういう方向でございます。

高山委員 それでは、原産地証明はこうだというふうに一応決めてはおりますけれども、これは必ず、初めはにこにこして握手をして、フォックス大統領と小泉さんが握手をしてよかったよかったとか、日本からも輸出がふえていいとかいうことですけれども、必ず、トラブルになったときに、では、どういうふうに解決するのか。また、その原産地証明でメード・イン・ジャパンと書いてあるけれども本当は違う国なんじゃないかとか、これは当然疑いになると思うんですけれども、その紛争の解決方法というのは、それぞれNAFTAだったりEUだったり、メキシコが結んでいる相手とはどういうことで結ばれているんでしょうか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれの自由貿易協定では、協定に関して紛争が起きた場合の手続を定めております。いろいろなパターンがございますけれども、NAFTAの例を申し上げますと、まず、相手国に対して二国間の協議を要請いたします。それの協議で解決できないということになった場合には、NAFTAの三カ国、すなわちアメリカ、カナダ、メキシコの三カ国の閣僚によって構成される自由貿易委員会という名前がついておりますけれども、この委員会による調停を行います。この調停でも解決ができないという場合には、最後に五人の法律の専門家によるパネルを設置いたしましてこの裁定を仰ぐ。そういう意味では、協議、調停、パネルによる裁定という三段階の紛争解決手続を予定しているところでございます。

 EUにつきましては、EUは御案内のように大変幅広い共同体でございますので、EUの中でのさまざまな取り決めに関する紛争につきましては、基本的には欧州裁判所による司法手続によって解決をするというのが基本でございます。

 AFTAにつきましても、基本的には、今申し上げたような、まずは二国間の協議、それで解決できない場合には調停、和解、さらに解決できない場合には専門家によるパネルによる裁定といったことが規定されております。

 今回のメキシコと我が国の協定に関しましても基本的には同じような仕掛けでございまして、まずは二国間協議を要請する、これで解決できない場合には、この両国間とさらに第三国から選出する三名の仲裁人で構成する仲裁裁判所を設置いたしまして、そこで裁定をするという仕掛けになってございます。

高山委員 今、紛争解決の方法を聞いたんですけれども、これはちょっと一つ疑問なのは、先ほどからも出ていますけれども、WTOとFTAが今随分いろいろな国で結んでいますね。その重畳適用関係といいますか、WTOの審判手続が優先するのか、それともFTAの今の審判手続が優先するのか。これは、WTOというのは、何というか、裁判手続で物事を決めていくという非常に画期的なものですから、これはどっちが優先するのか。あるいは、このFTAで、今、裁判所といいますか仲裁所で決めたことで全く拘束されなかった場合、さらにWTOに提訴していいのか、こういった問題が起きると思うんですけれども、ちょっとそこを整理して教えていただければと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、WTOの紛争解決手続、それからこの協定による二国間の紛争処理ルール、それぞれございます。基本的にこの二つの関係につきましては、WTOの紛争処理手続は、当然のことですけれども、WTOの協定に関する紛争。ただ、このWTO協定は大変幅が広いものでございますから、大変大きな範囲にわたっての紛争についてWTOの紛争処理手続にゆだねることになると思いますけれども、他方、日・メキシコのEPAによる固有の紛争、例えば、具体的な例を申し上げますと、今回この協定によりまして二国間で関税を撤廃するということが特定の分野で広範に起こるわけでございます。その分野で撤廃をされたはずの関税について紛争が起こるといった場合は、これは日墨固有の紛争でございますので、この協定の手続に従いまして紛争処理手続を行うといった、いわばデマケを行うということになっております。

高山委員 そうしますと、今回の場合、FTAの紛争手続の中で解決ができなかった場合には、WTOにはもう提訴できないというようなことなんでございましょうか。ちょっとその確認だけお願いします。

北村政府参考人 先ほど申しましたデマーケーションに従って、日墨固有のものだということで日墨の協定に従って紛争処理をして、それで仮に日本が不満だということになった場合に、再度WTOに行くということはできない仕組みになっております。

高山委員 ちょっと細かい話ばかりして恐縮だったんですけれども、何でこういうことを聞きますかというと、結局、日本からメキシコに何かを輸出する、多分工業製品ですとか自動車が多いと思うんですけれども、これは必ず原産地証明をつけるんだということが今回の法案ですけれども、どこまで日本でつくればメード・イン・ジャパンなのかというのは、随分難しい問題だと思うんですよね。

 今、国際的に非常に分業が進んでいて、エンジンはほかでつくってきた、でも組み立ては日本の工場でやったからメード・イン・ジャパンなんだ、こういう問題が起きてくると思いますけれども、これに関しまして、どこまでつくればその国の製品というふうに認めるかというのを、今回の日・メキシコの場合はどのように定めていますか。

北村政府参考人 お答えを申し上げます。

 やや細かな話になりますので、時間をいただきます。

 物の産品、生産の種類によりまして、原産地規則は中身が違っております。例えば鉱産物、鉄鉱石とかそういった鉱産物あるいは農産品につきましては、完全生産品要件ということで、その国で完全に生産される産品というのを原産品とするということになっております。

 それから、いわゆる加工製品、鉄鋼製品あるいはコンピューター、テレビ、半導体、そういったほとんどの機械器具、加工製品につきましては、関税番号変更要件という形で原産地を決めるというふうになっております。これは非常に伝統的な原産地規則、世界的にほぼ確立をされてきた原産地規則でございまして、その製品が最後に組み立てられて関税番号が確定したところで、その地域を原産地とするということでございます。

 他方、最近になって用いられ始めました付加価値基準というものがございます。これは特定の産品についてこの協定で用いておりまして、乗用車、化学製品、こういったものについて、その産品の付加価値が、例えば乗用車でありますと六五%以上が日本あるいはメキシコの産品でつくったものには日本の原産地とする、そういった規定になっております。

 他方、衣類につきましては、やや特殊な何段階もの加工工程がございますので、それに着目した特別の作業工程要件といったもので厳密に区別をするということになっています。

 以上でございます。

高山委員 細かい話で済みませんでした。しかし、このFTA、日・メキシコを結ぶはるか前に、アメリカとカナダでFTAを初め結んだときに、ホンダの自動車の事件があったと思うんです。そのときに、現地調達率というんでしょうかね、それが問題になって、カナダのホンダの工場でつくられた車をアメリカに輸出しようとしたら、これは現地調達率が何%を切っているからカナダ製品ではないんだと、そういうような話。これは随分昔です。

 ホンダ事件は一九九一年なんですけれども、それで、アメリカの税関当局が、現地調達率が低いじゃないかということでいって、ホンダの方は、いや、解釈が違うんだということでもめたことがあるんですけれども、今回は現地調達の仕組みというのは、現地調達率がどうだこうだということは、日・メキシコの場合にはまず用いられているんでしょうか。

平田大臣政務官 当協定で、域内原産割合基準は、品目、業種ごとに交渉されております。そして附属書四に個別に記載されておりまして、大体おおよそ五、六〇%台ということで協定を結んでおります。

高山委員 今、おおよそ五、六〇%ということでしたけれども、このホンダ事件の場合は、アメリカの税関当局は、五〇%を切っているじゃないかという言い方をしていて、ホンダの方は、いやいや、自分たちの計算方法では六〇%を十分超えているんだと、こんなような議論になって、割かし細かいところですごいもめるんですよ。その反省があって、十年もたって、その後NAFTAになってきていると思うんですけれども、この原産地の規則を決める際に、現地調達率の決め方というんですか、これは統一したルールがまずできて、変わったのか変わっていないのかということを伺いたいと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御質問、もしかすると私、間違えて理解しているかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたように、この協定では、例えば日本の原産地については、製品ごとに、先ほど申しました分類に従って、どういう考え方、どういう数え方で原産地を決めるかということを決めておりますので、それぞれに従って、例えば今自動車の例を先生がおっしゃっておられましたけれども、乗用車であれば、六五%を日本からメキシコに輸出をされる段階で、その付加価値が六五%以上のものが日本でつくられている、一部メキシコの産品を日本に輸入をして部品に組み込むという場合も認められますけれども、その場合は六五%をクリアしているということで日本から原産地証明を出しますので、そうしますと、日本原産の乗用車であるということで無税の扱いを受ける、そういった仕組みになっております。

高山委員 ちょっと細かい話を聞き過ぎましたので、ちょっと今度は大臣に伺いたいんですけれども、今の原産地の付加価値、何%つけていたらメード・イン・ジャパンだとか、そういう話がありました。これは一般的な話なんですけれども、日本は非常に、加工して輸出するという国ですから、そうすると、原産地を証明するのが、六五%よりは、例えば五〇%とかあるいは三〇%とか、下げた方が有利だと思うんですけれども、それはどのようにお考えでしょうか。

中川国務大臣 まず、原産地表示というのは、この場合は二国間ですけれども、WTOでも非常に大きな問題に原産地表示の問題はなっておりますが、委員、大変お詳しくて、専門の通政局長との議論をいろいろ聞かせていただいておりましたが、これは、低ければ低いほどいいというふうに一概に言えるのかどうかということは、なかなか言えないのかなと。

 例えば自動車を例にとると、自動車は日本が強い部分ですから、日本の非常にいい自動車を輸出する、あるいは場合によっては、向こうで投資をして向こうでつくって、NAFTA等々あるいは南米に輸出をするというメリットも、メキシコ側にも実はあるわけでございます。ですから、原産地規則を厳しくすればするほど不利で、原産地比率を低くすればするほど有利かというのは、私は、それぞれでメリット、デメリットが出てくるんだろうと思いますので、一概には言えない、まさにそこはお互い自分のメリットのために交渉をしていく、その結果が先ほどから御議論いただいているような結果になったというふうに理解をしております。

高山委員 大臣、ありがとうございます。まさに自分のメリットのために交渉していくということだと思うんですけれども、では、ちょっと話が複雑になってきますので、自動車だけに限って伺いますけれども、NAFTAの中で自動車の輸出をする場合は、これは原産地で付加価値は何%以上とか、そういうのはどういうふうに決まっていますか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 今手元にありませんので、記憶でお答え申し上げます。六五%だったと思います。

高山委員 今のは違うんですよ。NAFTAの中では五〇%というふうに決まっています。それで、ちなみにあと、EUとメキシコでは六〇%以上だというふうに決まっているそうです。

 ちなみに、これは、私、きのうから経済産業省の担当の方にいろいろ質問したんですけれども、結構皆さんわからないということでいろいろ調べていただいた結果でございますので、本当に御苦労をかけたんですけれども、一つ指摘しておきたいのは、この何%とかというのはすごい重要だと思うので、これは交渉担当者の方だけではなくて、そういう数字を頭に入れた上で閣僚の方とかも交渉された方がいいんじゃないのかなというふうには思っております。

 それで、NAFTAの方では五〇%以上の付加価値で取引できる、日本・メキシコでは六五%以上ということだと、やはりNAFTA内の方が車の取引はやりやすくなる気がするんですけれども、大臣はそれはいかがお考えでしょうか。(北村政府参考人「補足をさせていただきます」と呼ぶ)

河上委員長 補足。では、北村局長、補足してください。

北村政府参考人 今、正確に資料を確認いたしましたところ、NAFTAの中で、自動車につきましては六二・五%でございました。

中川国務大臣 自動車に限ってという前提でお話をしますと、実は自動車は、日本から輸出する場合と、それから、向こうに工場をつくって、昔のマキラドーラみたいなものを改めてこのFTA、EPAで利用してやっていく場合と二つあって、そういう意味で、自動車メーカーが、メキシコ・マーケットのみならず、当然、北米市場あるいは南米市場その他を考えて企業としての経営戦略を立てていると思います。そういう中で、NAFTAと日墨の間で違うということであれば、例えばですけれども、極端に違うのであれば、では輸出した方がいいのか、現地で工場をつくった方がいいのかと。

 これは、大型バスを除いて全部最終的にはオープンにするんですね、輸出は。ですから、大型バスを除いてほとんど、六五%をクリアしていれば自動車は数年後に輸出できることになりますし、他方、私、自動車業界の方々とのお話を聞いていると、もちろん輸出もしたいんだけれども、現地に工場をつくって、そこを生産拠点にしてNAFTA、南米その他にメキシコから輸出したい。これはメキシコにとっても非常にハッピーになる話でございますから、そういうこともありますので、その辺も含めて、今回、交渉を通じてお互い、あるいはまた日本の各メーカーのいろいろな考え方というものを勉強させていただいたということでございます。

 答えになっていなくて済みません。

高山委員 ちょっと時間がなくなっちゃいまして、足早に行きたいと思うんですけれども、まず、この原産地証明のことです。

 日本は、FTAをシンガポールと結んで、次にメキシコと結んで、二個目ですよね。シンガポールのときは原産地証明のことというのは余り話題にならなかったような気がするんですけれども、結構そこの原産地証明をどうするかということでもめたり、何か話題になったんでしょうか。

 あるいは、今回、メキシコとのときにこの原産地証明の規則が新たについたわけですけれども、その方法をどうするかということでこうなったわけですけれども、これは、何かメキシコの側から強い要望でもあったんでしょうか、それとも、日本の側からこういうふうにした方がいいという提案があったんでしょうか。それはどちらなんでしょうか、交渉の経緯ですけれども。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 日本、メキシコ、それぞれの関心から原産地規則について議論がございました。

 ただ、先ほど先生がおっしゃっておられたシンガポール、日本はシンガポールが前例でございます。他方、メキシコは、NAFTAを初め、FTA大国と申し上げましたけれども、大変数多くのFTAを持って、その中でも原産地規則については、ある意味ではさまざまな経験をしてきている。その意味では、私ども、最初に結びましたシンガポールは非常に関税が低い国でございます。もともとほとんど関税がない国でございます。

 そういった国と結んだ原産地規則についての我々の経験と豊富な経験を持っているメキシコとでは、関心の違いは多少あったと思いますけれども、基本的にはきちんとした原産地規則をつくらなきゃいけないということで、議論をした結果、先ほど申し上げたような結果になったということでございます。

高山委員 ちょっと今のお答えだと、どっちから話が来たのかというのがさっぱりあれだったんですけれども、私が新聞等から仄聞するに、メキシコはどちらかというと、日本から自動車とかがどんどん入ってきてしまう、メキシコから今度自動車を輸出されるということはまだ随分、結構先の話なんだろうなというふうに思うんですよ。それで、まずやはり原産地証明をきちんとしてくださいねというのは、もちろん、先ほど同僚議員から質問がありましたように、食の安全とかでいえば日本もあると思うんですけれども、この工業品で何%自社製品じゃなきゃ困るだとか、あるいは自動車だけじゃなくて繊維、中国から迂回して繊維が入ってくるんじゃないかとか、そういう問題があるので、これはメキシコ側からの要求だったような気がするんですよね。

 それを考えてみると、向こうから要求されたことで、別に日本にしてみればそんなに、しっかりしたものと言うとちょっと語弊があるんですけれども、日本はどちらかというと強い立場で交渉できたんじゃないのかなというふうに私は思いました。

 そこでもう一個、話はちょっと変わるんですけれども、紛争解決手続の方のこともこの日・メキシコのことで伺いたいんですけれども、先ほど、日・メキシコの方式では、向こうの経済産業省と、こちらも国で、それを商工会議所に委託ですか、してやるんだと。それに引きかえ、NAFTAでは何か自己申告の方法をとっているということでしたけれども、これは、どうして今回、NAFTA方式にしないで、国と国という方式で日本とメキシコは結んだんですか。

中川国務大臣 シンガポールは商工会議所ということですが、メキシコ側から国を窓口にしてということで、日本としては、商工会議所、実績もあるし、シンガポールの例もあるしということを主張した時期もありましたけれども、国が責任を持って指定機関をやるということでやったわけでございます。そういう意味でいうと、シンガポールのときよりも、ある意味では、とりあえず窓口としては国同士ということで厳しくなっているというふうには思っております。

 そういう意味で、日本は民が窓口でもいいじゃないですかというふうに提案をしましたが、メキシコの方から国同士でやってもらいたいというふうに言った。他方、NAFTAの方は、自己申告ではありますけれども、万が一疑義が生じたときはいきなり国がどんといくというやり方、結局、それはお互い交渉、それぞれだというふうに理解をしております。

高山委員 いや、これはさらっと聞くと同じような感じがするんですけれども、これは国の、今回は商工会議所ですが、仮に日本も国だとして、国がこれはメード・イン・ジャパンですよと証明している、メキシコの方もちゃんと証明している、それで疑義が生じた場合、そこに問い合わせをして確認をするというのと、メキシコ人として、あれはメード・イン・ジャパンじゃないかもしれないなと思って企業まで調べに行くのだと、これはかなり、自分で調べに行く、いきなり企業に問い合わせる方が大変だと思うんですよね、メキシコとしては。だから、メキシコとして、NAFTA方式でやって随分もう懲りちゃった、アメリカから入ってくるのを自分で調べたりだとか、あるいは逆に直接企業とやりとりするのは面倒くさいし、だから、国に間に入ってもらってやった方がしっかりと原産地の基準をコントロールできるんじゃないか、そういうふうに考えたんじゃないんでしょうか。

中川国務大臣 いや、そうだと思います。

 というのは、ですから、お互い国が窓口になって、ある意味じゃ国の責任においてきちっとしたところに任せることができるということですから、国が窓口である、商工会議所とはいえ国が指定しているわけですから、国同士で問い合わせをやるということはお互いにプラスになる。メキシコは、当時でいうと三十三番目の交渉をやっている国ですから、その辺の経験も多分あったんだろうと思っています。

高山委員 楽な方といいますか、お互いにいいということでしたけれども、日本から確認しなきゃいけないのは、例えば農産物とかそういうものだと思うんですよね。向こうが確認しなきゃいけないのは、電子デバイスだとかあるいは車とかそういうもので、これは日本としてみれば、むしろNAFTA方式をとった方が輸出が楽だったんじゃないですか、大企業が多いわけですし。

 それで、メキシコにしてみれば、一々一々調べてこっちで立証してというのが大変ですから、NAFTA方式にはもう懲りている。それで、やはり、今度日本とやるときは、余りFTAの経験のない国だから、国にそういう責任をおっつけちゃった方が交渉が楽だな、そのようにメキシコは考えたんじゃないのかなと私は思ったんですけれども、ちょっと大臣の所見を伺いたいと思います。

中川国務大臣 いや、別に、日本が二番目の交渉をやっている素人の国だから、おれたちはプロだから、あなた方は素人だ、そういう交渉ではなかったというふうに私は思っております。

 それから、今、農産物と自動車、電子デバイスみたいな例を、二つの極端な例を挙げて日本側、メキシコ側と言いましたけれども、細かいところはもちろん違いますけれども、とにかく、原産地証明制度、国がお互い窓口になってということは、どんな場合であっても、例えば、メキシコから入ってくるものの中には中小企業のものもありますし、日本から輸出するものも中小企業のものもあるわけでございますから、そういう意味で、国がきちっと窓口になっているということになったということは、どっちにとってプラスかマイナスかということではなくて、それはそれでお互いに、万が一何か疑義が起こったときにそれを解決する手段としても、お互いに私は文字どおりプラスになるものだというふうに理解をしております。

高山委員 ちょっともう時間が来たようですから。

 私がきょうちょっと伺いたかったのはもう一個ありまして、これから日本はどんどんいろいろな国とFTAを結んでいくと思うんですけれども、その際、やはり、アメリカのNAFTAのやり方を見ていますと、アメリカという国はやはり自分のことしかすごい考えていないんですけれども、そういう基準づくりや何やらが非常にうまいんですよ。

 日本も、今回のメキシコとの交渉やら何やらをてことして、自分にとにかく有利な原産地証明だったり、自国の産業に有利な基準をどんどんつくっていって、それをアジアの、今度、大アジアFTAというんでしょうか、そういうところとやるときにやってもいいんじゃないかなと思ったものですから、その第一弾として、シンガポールそしてメキシコとやるときに、割かしこの原産地規則、何%日本でつくったとかという細かい話なんですけれども、こういうところがなおざりにされているのではないかという危惧を非常に持ちまして、私としては、国益を重視して日本のために頑張るとかいう話もいいんですけれども、やはり細かいところをどんどん詰めていただきたい。

 それで、やはり、小泉改革の悪いところで、かけ声はすごくいいんですけれども、細かい部分になってくると、全然今までと変わっていなかったり、相手の言いなりだったりとかということが多いので、そこをぜひ、現場の細かい意見をどんどん入れるような交渉をしていただきたい。そのためにも、もともと通商産業省という省でしたので、とにかく、中川大臣、中心となって頑張っていただければと思います。

 質問は終わります。

河上委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 最近、メキシコから牛肉がどんどん入ってきておりまして、この原産地証明の問題、食の安全の問題等について、私の方から質問させていただきたいと思っております。

 今、アメリカとメキシコとの間というのは、まさに、牛がメキシコから今でも九十万頭ぐらい自由にアメリカに出入りして、しかも無税、ノータックス。食肉も、今までメキシコは輸入国であった、アメリカから十八万トンも輸入しておった。いわゆる輸出国ではない。そういったメキシコなんですが、アメリカとメキシコの中に、牛と肉そして肉骨粉が自由に行き来しておって、いわゆるEUのBSEのリスク評価、それは今、レベルでいって何段階にあられるか、これは農水副大臣から答えられるのかな。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

常田副大臣 メキシコにおけるBSEの評価は、レベルIIIというふうに承知しております。

山田委員 EUのリスク評価がレベルIIIというと、アメリカとカナダと同じレベル、いわゆるBSEの汚染度。その中で、メキシコは、私の調査では、SRM、いわゆる危険部位の除去はしていない。実際そうかどうか、わかる範囲で結構ですから、厚生労働副大臣でもいいし、お答えいただきたい。

西副大臣 お答え申し上げます。

 メキシコのようなBSEの非発生国であっても、万が一BSEが発生した際の混乱を避けるために、我が国が指定している脳、脊髄などの特定危険部位につきましては、輸入を自粛するように業者を指導しているところでございます。

山田委員 私の質問に答えていただきたい。私の言っているのは、SRM、いわゆる危険部位の除去、これをメキシコはやっているかやっていないか。私の調査ではやっていない、それについて、知らないというなら知らないで結構、それをお答えいただきたい。

西副大臣 危険部位の除去はやっていないというふうに承知しております。

山田委員 では、メキシコはBSEの検査はやっているのか。私はアメリカにBSEの調査に行ってきましたが、アメリカは三千五百万頭いて二万頭ちょっとしか検査していない、しかも、リスク牛じゃなくて健康な牛の検査をやっている。私は、ペン次官にBSEが出ないような検査しかしていないじゃないかとかみついてきましたが、そういう状況で、メキシコのBSEの検査状況、これを端的にお話しいただきたい。

    〔高木(陽)委員長代理退席、委員長着席〕

常田副大臣 お答えを申し上げます。

 メキシコでは、BSEの発生状況を確認する目的で、一九九六年からBSEの検査を実施しております。

 具体的には、動物衛生についての国際機関であるOIE、国際獣疫事務局の定める基準に従って、神経症状牛並びに歩行困難牛などを中心に年間四百頭、それから、本年一月からは、BSE検査を強化するという目的で、この十月までに約一千三百頭を検査しております。なお、その上でBSEの感染牛は確認しておりません。

 以上でございます。

山田委員 まさに、年間四百頭しか検査していない。その検査の結果はBSEは出ていないということなんですが、アメリカですら二万頭検査している。ということは、メキシコにおいてはBSEの検査が事実上ほとんどなされていない、そう思っていいんじゃないか、そう思いますが、メキシコから韓国に牛肉が入ってきている。韓国に、アメリカからの牛肉がメキシコ経由で入ってきたという事実があった。韓国はたしか輸入を中止している、あるいは再開したかもしれない、その事実について御承知かどうか。

常田副大臣 本年七月、メキシコから韓国へ輸入された牛肉に米国産牛肉が混入していたという問題でありますが、このことにつきましては、メキシコから輸入される牛肉等について、全件現物検査を実施するなど、検査体制を強化しているというふうに承知しております。

 また、在日メキシコ大使館に対して、このような問題が発生したことについて我が方の懸念も伝えておりますし、日本向け輸出にかかわる問題が発生しないよう、適切な対応を要請しているところであります。これまで、動物検疫所において、輸入検査において、このような問題は我が国においては発生しておりません。

山田委員 韓国において、事実そのようなことがあった。実際に、私も、日本の輸入の検疫というのがいかにいいかげんなものか。五%のモニタリング検査をしていると言っているけれども、五%という意味は、これは輸入される二十回に一回しか検査していない。しかし、韓国のことがあって、今検査を始めたということなので、それはそれでモニタリング検査でもよろしいか、そう思います。

 では、ちょっと私が皆さん方にお配りした資料を見ていただきたい。

 この中に「牛肉の国別輸入量」という資料があるはずです。この中に、平成十五年は、メキシコから日本に入ってきたのは〇・二トンしかなかった。ところが、ことし六百一トン入っている、これは一月から八月までの間。急激に、今までいわゆる輸入国だったメキシコが日本に輸出してきている。しかも、危険部位の除去もしていない。しかも、内臓も入っている。内臓が入っていることについては、厚生労働大臣はいかがか。

西副大臣 SRMの部位は入っておりません。

山田委員 SRMの部位は入れていない、自粛するようにという話は聞いています。しかし、ほかの内臓は入っているのか。例えば、SRMでも、回腸部分はだめだけれども、それ以外の腸の部分はいいとなっている。そういったものは入っているのか入っていないのか、わからなければそれでいい。

西副大臣 現在、その資料については手持ちがございませんので、後日、またお知らせ申し上げます。

山田委員 それは、私も質問通告していなかったので申しわけないんですが、ただ、私が調べて皆さん方にお配りした中に、輸入証明書、これは、二〇〇四年の八月十四日、最近といえば最近なんですが、メキシコから日本が牛肉を輸入したものです。

 その中に、ショートプレート、マーカーをつけているから、ショートプレートというのが入っています。このショートプレートというのは、いわゆる吉野家カットとも呼ばれているもので、牛のばらのいわゆる内臓に近い部分、腹膜とそのばらの一番下の部分、アメリカではほとんど捨てている部分、これが、ショートプレートカット、吉野家カットと呼ばれているんですが、それがこの中に入っている、ショートプレート。

 そして、私がお配りした資料を見ていただきたい。

 これは、平成四年の十月二十三日の日経新聞。「なか卯にまだ残ってた 米産牛肉でカルビ丼」。その中をよく読んでいただきたい。この中に「これにメキシコ産や豪州産をブレンドする考え。」そうあります。

 そうしますと、あれから、アメリカの牛肉輸入禁止になってはや一年たとうとしている中で、いまだにまだ残っていたというのは、私個人としては信じられない。これは、当然、米国から迂回して、そして、メキシコからいわゆる牛丼用のショートプレート、牛肉が入ってきているんじゃないのか、そういう疑いを強く持っている。

 質問通告しておったが、どこの商社が輸入したか、教えていただきたい。

常田副大臣 先ほどお話がありましたように、本年八月までに六百一トン輸入されているが、それがどこの商社から輸入されているかということでありますが、これらのことについては、二〇〇四年一月から八月までに、十五の業者が輸入しているところであります。ただ、個々の輸入業者の名称を明らかにすることにつきましては、当事者の営業上の権利、また競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがありますので、適当ではないと考えております。

 しかしながら、メキシコ産牛肉の輸入業者の今申し上げた十五業者の了解が得られれば、委員に御報告することはやぶさかではない。そのような業者の方の了解をとるように努めて、御連絡をするようにしたいと思っております。

山田委員 私は、必ず業者の名前も明らかにしていただきたいと言っている。しかも、肉骨粉のときにも、いわゆる肉骨粉の輸入業者について明らかにしてほしいと言って、なかなか明らかにしなかった。しかし、すべて明らかにした。これは、国民の食の健康、いわゆる食の安全に関する大事な問題である。これについて、必ず委員会にその調査結果を報告していただきたい。後日、理事会で諮っていただきたいと思います。

河上委員長 後日、理事会で協議いたします。

山田委員 次に、この八月十四日の輸出証明書なんですが、確かに、この中には、メキシコで生まれて育った牛だという政府の証明書がついています。ああ、皆さん方にお配りした中にないかもしれない、それは申しわけないが。もう一ページあったんだけれども。政府の証明書がついている。しかし、この政府の証明書、これは実際本当なのかどうか。これは、一片の証明書というのは、簡単に判こを押せば、サインをすればそれで証明になる。しかし、これを信じて、いわゆる危険部位の除去もしていないメキシコの牛肉がどんどん入ってくることについて、我々は安心でおられるのか。ひとつ、その辺について、厚生労働副大臣にお聞きしたい。

西副大臣 メキシコ産のお話でございますが、メキシコ産の牛肉を含めて、我が国へ輸入されている牛肉の安全性の確保につきましては、輸入時に、検疫所において輸出国政府が発行する衛生証明書の内容をまずこちらの方で確認をしております。そして、必要に応じまして衛生検査を実施しているというところが現状でございます。

山田委員 こういういわゆる輸出証明書を確認して、確かにこれは原産地メキシコとなっているから大丈夫だなと。そして、検査の肉を、一応、メキシコ産の肉と書いてあるかどうか調べている、検査している。こちらの港湾でやっている。それだけの話であって、実際に向こうが、いわゆるBSEの肉骨粉のときもあったんですが、原産地証明というのは実にいいかげんである。各国それほど重視していない、これは。それに対して何らかの担保をしなければいけない。

 そのために、今回、条約の中で、いわゆる輸出、これは確認をすることができるとなっています。確認をすることができると。ところが、その確認をどうやってするのか。簡単に、端的に、外務副大臣、答えていただきたい。

逢沢副大臣 メキシコの原産地証明書に一定のある種の疑義がある場合にどのようにするか、こういうことでありますが、メキシコとの間で結びましたEPA、その協定の第四十四条の一(c)におきまして、メキシコの原産地証明書に疑義がある場合には、日本として、我が国として、メキシコ政府当局に対し、生産施設における情報収集を要求ができる、また、これに立ち会うことができることを認めているわけであります。

 さらに、本協定において、真正な原産地証明書を発給することがメキシコ政府当局の義務であるということが、当然のことでありますが明らかにされておりまして、我が国よりメキシコ政府に対して、みずからが発給した原産地証明書の信憑性を裏づける情報の提供を求める。さらに、情報収集の現場には必ず我が国税関当局の立ち会いも認められるといったようなことを、協定上、明確にさせていただいております。

山田委員 日本が北海道でホタテガイをEUに輸出するとしたら、オホーツク海に面した二つの工場で、しかも、とれたところの海水の質の検査から処理工場の処理の仕方、いわゆる手袋まですべて規制どおり、そして、向こうから検疫官が来て、初めて輸出できる。牛肉もアメリカに輸出する場合は同じ。ところが、日本はそれをほとんどというくらい全くしていない。

 私は、ことしの夏、アメリカのブロッコリー農場へ行ってみた。今、アメリカからどんどんブロッコリーが入ってきているけれども、それについて、EUでは必ず、どういう農薬を使ったか、どういう土質か、その質の検査までしょっちゅう調べに来ている。台湾からも来ている、アジアから。ところが、日本からは一度も来たことはありませんと。これが実態なんです。

 そうすると、このメキシコ産の、どこかアメリカから迂回したかもしれないそういう牛肉について、いわゆるハイリスク国からの輸入牛肉について、単に、向こうから情報を収集することができる、立ち会うことができる、そう言っていますが、現地に行って調査するということはできるのかできないのかお聞きしたい、外務副大臣。

逢沢副大臣 今御指摘のように、情報収集を要求できる、そして、これに立ち会うことができるということでありますが、情報収集の現場には必ず我が国の、つまり日本側の税関当局も立ち会うことができる、そのことも明記をいたしているわけであります。

山田委員 外務省はけしからぬ。いわゆるそういう条約ではだめだ、これは。

 私の取り寄せた四十四条のこの日本の訳文は、「訪問を通じて、」。英文では、スルー ア ビジット バイ ガバメンタル オーソリティーとある。いわゆるビジット、訪問だけになっている。これは調査じゃない。本来ならば、私が調べていたら、こういった場合はオーディット、いわゆる監査としなければいけない。これをなぜやらなかったのか。副大臣、答えていただきたい。

逢沢副大臣 情報を求めることができる、そして、立ち会うことができる。その立ち会いというのは、情報収集の現場に我が国の税関当局の人間が立ち会える、こういうことがこの協定の中で明記をされているわけであります。その言葉の問題がございます。収集した情報が英語で当該税関当局に提供がされる、そのことも、きちんと条約上、確認がされているわけであります。

山田委員 立ち会いができるというだけで、実際に、監査、調査、リサーチ、オーディット、そういったこともできない、ただビジットでしかすぎない。そんなことで原産地の表示を大臣は本当に、中川大臣、これで担保できると思われるかどうか。

中川国務大臣 条文上は、今、外務副大臣がお答えしたとおりでございますが、やはり、特に食品の安全に関しての山田委員の御質問を前提にして申し上げれば、この協定に基づいてトレーサビリティー、これを日本がやっていかなければいけないというときには、当然、ビジットをしたときには、単なるいわゆる訪問ではございませんので、きちっとした目的を持って、そしてまた、きちっとした成果を上げるために、英語で言うビジットにしなければ、これは私の政治的な発言になりますけれども、私は、委員御指摘のような国民の食の安全に対する信頼性というものにこたえられないと思いますので、当然、ビジットする以上は、そういう目的を果たすためにやるべきだというふうに思っております。

山田委員 大臣も、食の安全についてはやらなきゃいけないということは認められているようだけれども、そのビジットで、オーディット、監査でもなくビジットでいいというのは絶対におかしい、これは。だから、ぜひ、私も時間がなくなってきたので、関係省庁あわせて、食の安全の問題、これは検討していただきたい。

 それから、豚肉の問題、これは非常にこれから大変なんですが、中川大臣、平成十年、豚の自給率はどうだったか、現在はどうか。もう時間がないので、簡単に。

中川国務大臣 平成十年度が自給率が六〇%、平成十五年が五三%、これは農水省の食料需給表に基づく数字でございます。

山田委員 ことし、いわゆる自給率が五三%かな。この六年間で、かつて六割あった自給率が大幅に下がっています、これは大臣も御承知のとおり。たった六年間で豚肉の自給率がこれだけ下がって、しかもメキシコから豚肉が入ってくるとしたら、関税率、私が皆さんにお配りした豚肉の関税制度、差額関税制度、今度の条約でこれを維持することができた。しかしながら、これでいくと、四百九円九十銭より安く輸入の豚肉は入ってこないことになっている。ところが、輸入の豚肉で今消費の半分近くを占めているのに、今平均、すそ物でもみんな、悪いものでも四百九円九十銭以下では入ってこないことになっている。それが実際には、現在、豚肉の相場はキロ三百八十円。去年の今ごろは、三百六十円切っておった、心配した。それで、どんどん養豚農家はやめていっている。

 ところが、実際に今回この関税制度そのものが、なかなか差額関税制度が機能していない。私が調べてみたところ、いろいろな輸入商社、それから、それをどんどん、ブローカーといいますか、五社も十社も中に入りながら、この業界の中においては。

 最後に、去年、南日本ハム、南日本畜産でしたか、摘発されましたが、それくらいこの差額関税制度ですら徹底されていない中で、今回この条約によって従価税が半分に下げられる、そして八万トンまで入れられるとなると、私がメキシコの養豚の資料というかメキシコの豚肉産業の概要というのを調べてみましたら、アメリカの資本がメキシコの砂漠に行って、メキシコ人を使ってどんどん養豚をし、そしてそれを日本に入れようとしている。そうなれば、アメリカから日本に入ってくる関税よりもメキシコから入れた方が安いわけですから、さらにアメリカ資本が急速にメキシコで豚を飼い、そして豚をパッカーして日本に輸出してくるということが考えられる。八万トンといったら、日本の豚肉の輸入量のいわゆる一割を占める。そうなると、ますます大変なことになって、いわゆる日本の自給率はさらに下がっていく。

 私の持ち時間がなくなってまいりましたが、そういう意味では、今回、EPA、FTAの問題は、ぜひ食の安全と国の食料の自給率、この問題をしっかりと考えてやっていただきたい、そう申し上げて、私の方で、農水部門からの今回の条約及び原産地表示についての質問を終わらせていただきます。

河上委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 日墨協定の原産地証明書法案について質問をいたします。

 最初に、日本とメキシコとの経済的な関係についてですけれども、大臣は、通商条約、百年以上前にさかのぼっての話をされましたけれども、そこまでさかのぼらなくても、この十年、二十年、日本とメキシコとの経済関係について最初にお聞きしたいと思っております。

 経済産業省の方からいただいた資料などを見ていますと、経済パートナーとしてのメキシコの重要性を指摘して、経済的つながりも深く、マキラ制度を活用して多数の日本企業が進出、北米への輸出基地として極めて重要な意義がある、このように紹介をしているわけです。

 そこで、ここで指摘をしているマキラ制度、あと最近では、分野別生産促進措置、プロセックとか言われるものがあるそうですけれども、こういう制度がどういうものかについて説明をしていただけるでしょうか。日本企業にとってのメリット、デメリットはどのようなものがあるのかということを担当の方からお願いしたいと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、マキラドーラ制度でございますけれども、この制度は一九六〇年代に創設をされまして、内容といたしましては、最終的に輸出をするということを前提としまして、それに必要な原材料、部品などを保税、無税で一次輸入して、その地区で組み立て加工を行うという制度であります。ちなみに、マキラドーラというのはスペイン語で組み立て工場という意味だそうでございまして、そこで組み立てを行ってそれを輸出する、そういう制度でございます。

 メキシコにそういう地域、特定の制度ができましたので、この制度のメリットを利用しまして、日本の製造業を中心として多くの企業がこの制度を利用して、北米市場、すなわち、メキシコからアメリカ、カナダに、さらには中南米、そういったところにアクセスがしやすくなる、その場合の競争力が強くなるということで、この制度を使いたいということが日本の企業がメキシコに進出をした理由の一つでございました。制度ができてから、日本から進出をした企業は約三百社強でございます。

 ただ、今先生御指摘がございましたように、NAFTAができまして、アメリカ、カナダ、メキシコの協定交渉の過程で、二〇〇〇年になりまして、アメリカ向け、カナダ向けの輸出については、ただいま申し上げたマキラドーラ制度を適用ができなくなりました。これは、アメリカあるいはカナダとの交渉の結果、メキシコが有利になるという制度について、アメリカ、カナダとの交渉の結果、それはやめようということで、その部分については適用ができなくなりましたけれども、そのかわり、代替措置としましてメキシコ政府が導入をいたしましたのが、先ほどお話がありましたプロセックという制度でございます。

 これは、特定の業種、約二十業種でございますけれども、特定の業種を指定いたしまして、その業種が必要とする部品、原材料等を輸入する場合には、物によって違いがありますけれども、ゼロ%、三%、五%という三種類の関税でございますけれども、こういった低い優遇された関税で部品、原材料等を輸入することができるという制度に変わっております。

 ただ、この制度は、先ほど冒頭申し上げましたマキラドーラ制度と異なりまして、運用が、例えば、対象になる品目等が政令で決められるということで、実際、頻繁に、かつ突然行われるというようなことがございまして、いわゆる制度的な信頼感、安定性に欠けるところがございました。そういったことに対して、既に進出をした日系の企業から、この制度のもとでは不安がある、そういった声が寄せられたところでございます。

 今回の協定では、十年以内にはほとんどの関税が撤廃をされるということでございますので、日本からメキシコに既に進出をした企業あるいはこれから進出をする企業については、製造に必要な原材料あるいは部品等を安定的に、また優遇された関税、最終的にはほとんどゼロになるわけですけれども、こういった優遇された税で日本から調達することが可能となるということで、ある意味では、マキラドーラが当初持っていました機能といったものを、この協定によって機能としては果たしていくことができるのかなというふうに考えております。

塩川委員 そうしますと、マキラドーラの制度でのさまざまなメリットが廃止をされる、代替措置のプロセックをつくったんだけれども安定性に欠ける、そういう中でのFTAの交渉になっていくということは、FTA交渉のきっかけの一つがマキラドーラ制度の廃止にあったということが言えるわけですね。確認まで。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 現実に、進出をいたしました日本企業からそういった声が、不安の声があったということがございますし、先ほど来申し上げておりますメキシコがNAFTAあるいはEUとの関係で日本企業が不利になっている、そういったこととの相対的な関係も含めまして、日本の競争力という観点からこの協定の交渉に取り組んだものというふうに承知をいたしております。

塩川委員 FTA交渉に入る前から経団連からは要望が出されておりました。九九年の四月に日墨自由貿易協定のわが国産業界への影響に関する報告書というのが出されております。九九年四月ですね。

 ここの中でも、「マキラドーラ制度の変更に伴う新たな制度づくりがメキシコ政府内で進められているが、」つまりマキラの廃止とプロセックなどの代替措置の話ですけれども、「エレクトロニクスや自動車の部品関税がすべてゼロとなることは考えられず、協定による関税撤廃は一定の効果を持つ」というふうに、FTAに期待をかけるということがここでも表明をされているわけです。

 つまり、今回の協定というのは、もともとメキシコに進出をしている電気・電子機器業界、自動車業界、その要求が大きなきっかけとなってということは言えるわけですね。

北村政府参考人 お答えいたします。

 一つの大きなきっかけが、既に進出をした企業が、制度の不安定性のもと、あるいはメキシコが結びましたNAFTAあるいはEUとのFTAによって不利な状況に置かれているといったことはもちろんですけれども、日本から直接輸出をするという、メキシコは御案内のように世界で十番目の経済的な規模を持っております。そういう意味では、日本からやはり、例えば自動車、電子・電気機械等々について日本から輸出をする、その場合に、NAFTAの中あるいはEUからそういったものを輸入する場合には関税がゼロになる、ところが、日本から輸出する場合には、平均しますと大体一六%だったと思いますけれども、そういった関税がかかってくる。そういう意味では、輸出という側面におきましても不利な条件になった、そういったことも大きな要因であったと承知をいたしております。

塩川委員 電気・電子機器業界、自動車業界の要求がきっかけの一つとなっているという話でした。

 九九年の九月に、ジェトロの方で、事務局でまとめた報告書もありまして、日墨経済関係緊密化委員会報告というのがあるんですけれども、ここの中でも、「日墨FTAで見込まれる効果」として、NAFTA向け保税加工制度の実質廃止の相殺効果がある。マキラドーラ制度がなくなるのに対してFTAができることが、その損得の相殺効果がありますよというように指摘をして、プロセックなどは、マキラドーラ変更のデメリットを緩和する効果を持つが、全く同じだけのメリットを受けられるわけではなく、FTAによる関税撤廃のメリットは大きいと。

 そういう意味では、経団連の報告書も含めて、特定の産業業界として現地に深く関与しているから当たり前のことですけれども、そういう要求が出されてFTA交渉につながっているということが非常に見てとれると思います。

 私は、そういった業界の利益の他方で、先ほど山田委員の指摘にもありましたけれども、農業分野で大きな障害、打撃を受けるのは、やはりこれは問題だと思っております。協定をまとめるために農産物の関税を引き下げて、実際に輸入実績のない品目の牛肉とか鶏肉とかオレンジ生果まで輸入枠を設定しているわけです。

 FTA、EPA交渉で、これによってどういう影響が出るかという影響の調査といいますか試算というのは、例えば工業製品では行ってきているわけです。NAFTA実施前の日本のシェアがその後も維持された場合を仮定するとという話で、よく逸失利益四千億円という話が出されます。これは、多くの人が、四千億円か、大きな数字だなというふうに受けとめておるわけですけれども、では、工業製品の影響についての試算はあるんですが、この農業分野の損益についての計量的な試算というのは行われているんだろうか。この点はどうでしょうか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 全体として、数字として正確なものを私自身確認をした記憶がございません。

 ただ、実際問題として、この協定、政府としてこの協定の議論を始める段階で、先ほど来御議論がありましたように、政府全体としてこの協定にどう取り組むか、その場合の日本としていわば攻めるもの、また逆に日本として守るもの、そういったことを総合的に国益の観点から考えていこうということでこの交渉をやったわけでございますので、当然、その場合に、今御指摘ありました農業、農産品分野につきましても、そういった面での慎重な議論、交渉の過程でのさまざまな全体の中での意見の調整といったことは十分行ってこられたというふうに承知をいたしております。

塩川委員 農業分野の影響の計量的な試算はないんですよ。

 例えば、四千億円、工業分野の影響というのは、こちらの経済関係強化のための日墨共同研究会報告書に欄外で書いてあるわけですけれども、農業分野についての計量的な試算というのはどこにも出てこないんですよね。

 先日、外務委員会の審議の際に、我が党の赤嶺議員が外務省の担当者に聞きましたら、日墨間の共同の研究を行っているけれども、農産物はセンシティブな分野でもあって、関税引き下げの効果についての試算はないと述べているわけなんです。

 農業分野にどんな影響が出るのか、計量的な試算すら行っていないという中で、これでは余りにもバランスに欠けるんじゃないか、こういう交渉でいいのかということが問われていると思うんです。

 その上で、経団連が二〇〇一年の十月に出した意見書、「日墨自由貿易協定の早期締結を改めて求める」という意見書にこういうふうに述べています。「日本国内の一部産業を保護するために、日墨自由貿易協定の交渉が先延ばしになり、ビジネス上のハンディキャップを負うことは一部産業のために大多数の産業が犠牲になることを意味し、国益上も問題が多い。」こういう言い方をして、いわば、食料自給率の向上を掲げる政府の施策の中で、実際には食料自給率も低下をしているのに、さらに農業を切り捨てるかのような立場を表明しているわけです。

 こういうのは、当然のことながら、政府のとるべき立場ではないと思いますが、中川大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 私、去年の九月以前に党の方でこの問題に取り組んでおりまして、そのときに、日墨FTAについて随分、農林水産関係の党の会議で議論をいたしました。そのときに、私がその調査会長として常に申し上げていたのは、農業が工業の犠牲になるとか工業が農業の犠牲になっているとか、そういう議論というのは前進的ではないから、とにかく、全体としてプラスになるかならないのかと。先ほど申し上げましたように、ウイン・ウインというものがあると同時に、痛み分けという部分もセットで議論をしていかないと前に進んでいきませんねということで、何十回と議論をいたし、そして、参加議員もそういう共通認識のもとで議論をしたというふうに私は理解をしております。

 したがいまして、先ほど、工業について四千億円という推定、これは私どものところでも随分議論いたしまして、当時は党の立場でしたから、それは本当なのというような議論も随分したのでありますけれども、他方、工業製品でも痛みを伴う分野も実はあるわけでございますし、そういう中で、農林水産物対鉱工業品みたいな、単純な図式というとおかしいんですけれども、対立的な図式じゃなく議論をしていかなければなりませんねということを常に申し上げ、そして党の中でやってきたわけであります。

 したがいまして、豚肉、最後、いわゆるセンシティブだと言われている豚肉とか牛肉とか鶏肉とかオレンジ関係とか、こういうものにつきましても、亀井農水大臣が、業界団体等々、関係方面と十分話を詰めた上で、ぎりぎりのところでこういう形になって、今条約そのものについては別のところで御審議をいただいているわけであります。

 担当ではございませんけれども、政府全体として、セーフガードのルールもございますし、それから、いろいろな日本の食糧安全保障、あるいはまた大事な産業分野としての位置づけというものは政府全体で十分認識をしておりますので、確かに試算は私も承知をしておりません、一次産品に関する試算はしておりませんけれども、きちっと国内的な体制の強化、あるいはまた、先ほどもちょっと山田委員の御議論に出ましたけれども、メキシコの豚肉生産というのは、アメリカの大企業的なところがどんと複数来て、大半が日本向けに豚肉を輸出し、実は、メキシコ全体としては、豚肉は輸入しているんだというような現状も聞いたことがございます。

 他方、日本としても、これからは農産物についてはいいものを世界じゅうに供給をしていく努力をさらに強めていこうということも視野に入れておりますので、これによりまして農業が犠牲になる、工業の犠牲になったとかなるということを前提にして交渉をしてきたつもりはございませんし、今後もそういう観点で、政府として、どういうふうにこれからなっていくのかということも、我々としても見守っていかなければならないというふうに思っています。

塩川委員 そうはいいましても、工業製品についての試算がありながら、農業分野には試算がないわけですから、そういう点でのバランスを失している。本来、総合的に取り組むべき問題だと思います。

 その上で、やはり、これは一橋大学石川教授なども、日経新聞で紹介していましたが、FTAの経済的損得を生産サイドの視点のみからはかることは問題だという言い方をして、生産者に加えて消費者の厚生や税収なども含んだ総合的な指標ではかられるべきものだと。先ほどの山田委員の指摘もあるような、BSEなどのような食の安全の問題もあるわけですから、そういった総合的な観点で対応することが必要だと。こういう主張にも耳を傾けるべきだということは指摘をしておきたいと思います。

 続いて、投資ルールの問題について、何点かお聞きしたいと思います。

 パフォーマンス要求の禁止というのが入っております。日墨のEPAでは、第六十五条に、輸出要求、現地調達要求、技術移転要求等の特定措置の履行要求禁止を定めております。

 これは、先ほども紹介しましたジェトロの九九年九月の報告の中でこういうふうに述べているんですが、「メキシコには依然として国内自動車産業保護を目的とした規制措置がある。完成車の輸入は現地で生産するメーカーのみに許可され、また、外貨バランス義務、国産化率規制などが規定されている」自動車令というのがあるそうですけれども、「この規制により、メキシコに完成車を輸入できる日系メーカーは、現地生産を行う二社に限られるなど、輸入規制の側面も持つ。」このように指摘をしております。

 そこでお聞きしたいんですが、このパフォーマンス要求禁止条項に則して、自動車分野でメキシコ側にどのような譲歩を日本から求めたのか、この点をお聞きしたいと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘ありましたメキシコにおける自動車産業、日本から進出をいたしました自動車に対しての現地調達要求、すなわちローカルコンテンツ要求でございますけれども、これは二〇〇三年末をもって廃止をされております。

 そういう意味では、パフォーマンス要求について、現在、実際の現地の日本進出企業の事業活動の障害となる大きなものは既になくなっているわけですけれども、今後、投資というのは非常に長いビジネスでございますので、安定的にそういった投資環境を築き上げるという観点から、日本としては、この協定交渉の中で、いわゆるローカルコンテンツ要求、既に廃止をされたものですけれども、ローカルコンテンツ要求を含めまして、いわゆるパフォーマンス要求について、四つの類型に分けてこれを禁止するということを明確に定めております。

 四つのカテゴリーと申し上げましたのは、第一に輸出要求、一定割合を輸出しろという要求でございます。第二に、今、既に廃止をされたと申し上げたローカルコンテンツ、部品の現地調達割合を何パーセント以上にしろという要求でございます。三番目に技術移転要求、これこれの技術を移転しろという、そういったものでございます。さらに、役員、上級役員という定義でありますけれども、上級役員の特定の国籍を要求する。メキシコに即して考えますと、メキシコ人を企業のボードメンバーに加えろ、そういった要求でございます。こういった四つのカテゴリーについて、この要求をすることを禁止するということが原則として定められております。

 そういう意味では、安定的な投資環境の整備が確保されたというふうに考えております。

塩川委員 そこで、メキシコの場合には、二〇〇三年に自動車令が廃止をされたということで、こういった障害がなくなっているという話でした。今後、アジアとの交渉が始まります。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、このアジアとのFTA交渉では、こういった相手国の産業政策を含めた、そういう状況を踏まえて、日本政府として何を要求していくのかということが鋭く問われてくると思うんですね。

 経済産業省の資料でも、メキシコとのFTA、EPAは守りのFTAだったけれども、アジアとは今度は攻めなんだと。それは、それだけ歴史的にも関与も深いですし、日本企業の現地進出、輸出入を含めて、深い関与のある地域だからだと思います。経産省の資料でも、アジアでのFTAのねらいとして、東アジアワイドでの最適調達、生産、物流、販売を模索するというふうに指摘をしています。

 このアジアとのFTA交渉の中で、日本側はアジア各国に対してどういうふうな制度改正を求めていくのか。特に、きのうからですか、マレーシアとの交渉が始まりました。マレーシア側の関心の一つに、自動車や鉄鋼などの国内産業の育成、保護があります。こういう産業政策の変更を求めていくようになるのか。構造改革ということをよくうたわれるものですから、相手国の産業政策の転換を求める、こういう交渉を行うようになるのか、その点をぜひお聞きしたいと思っています。

中川国務大臣 今、韓国それからASEAN三カ国、それからASEAN全体についても来年の四月から交渉を始めようということで決められたわけでありますし、その他にも考えている。例えば、インドなんかとは研究会を始めましょうということになっております。

 今やっておりますASEAN三カ国について絞って申し上げますと、やはり一言で言えば、さっき申し上げたウイン・ウイン、そして裏腹としての痛みを分かち合うということでありますが、例えば、今御指摘のように、ASEANという一つの経済圏というものをASEAN諸国は極めて強く意識をしておりますから、そういう意味で、単に二国間でこういうものを輸出すればいいでしょうだけではなくて、向こうとしては、発展途上の国と発展した日本という関係においては、自分たちのところに必要な製品が欲しいと同時に、ASEANなりほかの国に対して、日本の技術あるいはまた投資を一つのステップとしてさらに経済段階を上げていきたいという気持ちというか要求があり、我々もそれについては基本的に協力をしていくことが、文字どおりウイン・ウインの関係の大きなポイントになるんだろうというふうに思っております。

 もちろん、我々としても、投資によるメリットとかそれからまた製品の輸出のメリットとか、その他いっぱいありますけれども、そういう意味で、今御質問のように、相手国の制度を変えていく、例えばルールの透明性でありますとかあるいはいろいろなセクターの透明性とか、そういうものも含めて、変えていくということが結局はあなたの国にとってもプラスになりますよということを交渉の中で申し上げながら、必要に応じては、何も日本のためにルールを改正するというだけではなくて、相手国のためにもプラスになるという前提でそういうことをやっていくことは、私は、EPAを結んでいく上で大事なポイントだろうというふうに考えております。

塩川委員 時間が参りまして、終わりますが、マレーシアにおいては、国内産業育成のために、国産車、これを大いに産業政策と位置づけております。今、経団連の代表団がマレーシアを訪問したという記事もありました。奥田会長に対してアブドラ首相が、日本とマレーシアの協定は先進国と発展途上国の協定の手本にしたい、このように述べておられた。その際に、直ちに全面的な自由化を進めることが難しいことはわかってほしいということも述べておられます。

 私どもも、二国間交渉による自由貿易協定、FTAやEPAは、お互いの条件をよく考慮して進めるならば、経済関係を深めることができると考えております。同時に、それがバランスを欠くようなことがあれば、これがかえってそれぞれの国の国民経済、国民生活に支障を生じるものになる。こういう点でも、今回の協定そのものに我々は問題があると思っております。この法案そのものは、手続法でもあり、反対するものではありませんが、今後の交渉に当たって基本を貫くことを重ねて述べまして、質問を終わります。

河上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河上委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

河上委員長 次に、内閣提出、アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。中川経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川国務大臣 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 世界有数の貿易大国である我が国にとって、国際ルールに基づく自由貿易の確保は極めて重要な課題であります。しかしながら、米国企業にダンピング輸入企業に対する被害額の三倍賠償請求を認めるアメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法は、二〇〇〇年にWTO協定違反が確定したにもかかわらず、同法に基づき、我が国企業が多額の賠償を求められて訴えられる事態に至っております。

 かかる事態を踏まえ、同法に基づき提訴された我が国企業が、その訴訟によってこうむった損害の回復を請求すること等を可能とすべく、今般、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、千九百十六年の反不当廉売法に基づく訴訟の被告として賠償義務を負った我が国企業等は、原告米国企業等に対し、当該訴訟によりこうむった損害等の回復を請求することができることとしております。

 第二に、千九百十六年の反不当廉売法に基づく我が国企業等に対する訴えについて外国裁判所が下した確定判決は、我が国においてその効力を有しないこととしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び要旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。

河上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十七分散会


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