衆議院

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第8号 平成16年11月19日(金曜日)

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平成十六年十一月十九日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      遠藤 利明君    嘉数 知賢君

      北川 知克君    佐藤 信二君

      坂本 剛二君    菅  義偉君

      竹本 直一君    谷畑  孝君

      中西 一善君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    平田 耕一君

      望月 義夫君    森  英介君

      山口 泰明君    山本 明彦君

      大畠 章宏君    奥田  建君

      海江田万里君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    近藤 洋介君

      高山 智司君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    松崎 公昭君

      村井 宗明君    渡辺  周君

      江田 康幸君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   議員           梶原 康弘君

   議員           近藤 洋介君

   議員           計屋 圭宏君

   議員           村井 宗明君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   経済産業副大臣      保坂 三蔵君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   衆議院法制局第三部長   夜久  仁君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      伊東 章二君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   山木 康孝君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        楢崎 憲安君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  武智 健二君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          中嶋  誠君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 峰久 幸義君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           中島 正弘君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(仙谷由人君外十六名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案並びに仙谷由人君外十六名提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長伊東章二君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長山木康孝君、公正取引委員会事務総局審査局長楢崎憲安君、総務省自治行政局長武智健二君、経済産業省貿易経済協力局長中嶋誠君、国土交通省大臣官房長峰久幸義君及び国土交通省大臣官房審議官中島正弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西銘恒三郎君。

西銘委員 おはようございます。自由民主党の西銘恒三郎です。

 私は、社会全体、世の中といいますか、これを理解しようというときに、経済の本に最初に出てきますけれども、政府があって、企業があって、家計がある、こういう構造の中で世の中をなるべく現実に即して理解しようと努めておりますが、最近は、家計のところを消費者というふうに置きかえて、政府も企業も消費者の側面がありますから、そういうふうに社会、世の中を理解しようと努めております。

 きょうは独禁法改正の質疑を行いますけれども、独禁法が改正される過程で我が国の経済社会の構造がどのようにして変わってきたのかな、その辺の変遷のところから政府の方に質問を展開してみたいと思います。

 まず、我が国は、明治の時代に四十五年、そして大正が十四年ですか、そして昭和の時代に入って昭和二十年、終戦を迎えるわけでありますけれども、明治、大正、昭和と約八十年近い時間が流れてまいりますが、昭和の一つの大きな終戦直後の、我が国の経済が再スタートをしていく、そういう昭和二十二年にこの独占禁止法が制定をされております。経済の民主化といいますか、明治、大正、昭和前半に続いてきた我が国経済が、大きな大戦を経て再スタートをしていく。そういう中で、昭和二十二年にこの独占禁止法というのが制定をされて、二十二年の制定で、引き続いて二十年代、二十四年、二十八年に改正を見ておりますけれども、この改正は、ある意味では独禁法スタートの時期ととらえていいかと思います。

 明治、大正、昭和前半の時代から戦後の、大変な時代を経て戦後がスタートしていくわけですけれども、竹島委員長、我が国の戦後の独禁法のスタート時期、これまでの我が国の経済社会の構造がどういう形に変わってきて、こういう独禁法という法律が導入されていったのか、その辺の我が国経済社会の構造についてわかりやすく認識を伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 御質問が終戦から短い期間というふうに限定して申し上げますと、この法律は、まさにGHQの指示のもとに昭和二十二年につくられた法律である。したがいまして、競争という言葉も日本にはそんなに昔からあった言葉ではない、たしか福沢諭吉が発明した日本語であるということを聞いたことがありますが、そういったときに、まさに競争法、独占禁止法という固有名詞でありますが、競争法というものがGHQの指示のもとに入ったということですから、そういう意味では大変革命的といいますか革新的な法律であった、誕生の経緯から。

 その目的は、財閥等に見られるような経済力集中排除、よって経済の民主化ということが大きな眼目としてあったと思いますが、いずれにしても、日本の経済取引の慣行からすれば極めて異質なものが昭和二十二年に突然導入されたというものだと思っております。

西銘委員 社会全体を見るときに一つの側面といいますか、自由という概念と規制という相対立するような二つの概念で見ますと、自由が行き過ぎると、放縦といいますかやりたい放題といいますか、そういう方向に流れていく。規制が強まり過ぎて行き過ぎますと、ある意味抑圧された社会といいますか、そういう方向に流れていく。そうしますと、自由と規制というものをバランスさせる概念というのは、私は活力かな、活力という概念で自由と規制のバランスをとっていく社会の方が望ましいのかなと思っております。

 公正取引委員会、独禁法という法律は、自由という流れの方向にあると思いますか、規制という流れの方向、どちらの側だと竹島委員長は認識されますか。

竹島政府特別補佐人 それは自由の流れであると思います。個々の事業者の創意工夫、公正なルールのもとでの競争ということによってまさに今御指摘の活力も生まれて、それは当該事業者のためだけではなくて、ひいては業界、さらには消費者、日本経済のまさに競争力につながっていくということでございますので、基本は自由ということだと思います。

西銘委員 たまたま、明治の前の江戸時代の二百六十年の歴史の中でも、享保の改革とかあるいは寛政の改革とか天保の改革とか、二百六十年の中に五十年から六十年ぐらいの間隔でこういう改革の時代があるみたいでありますが、どうも終わってその後に出てくる言葉が、期せずしてといいますか、質素倹約という言葉が出てくるようであります。こういう流れの中で、明治、大正、昭和と経て、大変な大戦の後の、戦後の我が国経済のスタートをする中で、独禁法がより自由な社会という方向で流れていくのと合致する中で出てきたものと思います。

 さて、私は、昭和の五十年代前半に学生生活を東京で送っておりますが、そのころは専ら体育会の、柔道に専念してばかりいた男でありますけれども、私の脳裏に、昭和五十年代、独禁法改正という言葉が非常に強く印象に残り、焼きついております。昭和五十年代の独禁法改正は、昭和二十二年に独禁法が制定をされて、二十四年、二十八年の改正は草創期というふうに、スタートという時期にとらえますと、ちょうど三十年ぐらい経過してきたころに独禁法の改正、昭和五十年代、学生生活をする中で非常に印象深く残っております。

 戦後の我が国経済がスタートをして三十年たったころ、昭和五十年の独禁法の改正を迎えるわけですけれども、戦後経済がスタートして三十年経過する中で、独禁法の五十年代の改正とこの背景にある我が国の経済社会の構造の変化といいますか、その辺は、戦後経済のスタートという流れで、竹島委員長、どういうふうに経済社会の構造が変わってきて五十年代の独禁法改正が出てきたのか、御認識を伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 終戦後から昭和三十年代ないしは四十年代初めまでのいわゆる日本経済の高度経済成長時代というものがあったわけですが、それは別な見方をすると、官と民がまさに共同でいろんなことをやってきた。例えば、ある業種において過剰設備が発生すれば官主導のもとにその設備廃棄をやるというようなことでやってきたわけでございまして、そういう意味では、その時代は、独占禁止法から見ると冬の時代というふうに言われているわけでございます。

 ところが、日本経済も高度成長が終わりまして、いわゆる安定成長に変わるというのが昭和四十年代、五十年代、そのころなわけですが、そのときやはりオイルショックという大きな問題が起きた。それから、ニクソン・ショックによって三百六十円というものがなくなって、いずれフロートしていくという、為替変動制に移行するという大変大きな変革が四十年代の終わりにあったわけでございます。それが日本経済の安定成長のとば口でもあった。そのころに、やはり一方で、企業における系列化の問題、それから管理価格といいますか価格カルテル的な行動、同調値上げ、それに対する消費者の強い関心が出てくるというようなことがあったと思います。

 そこで、独占禁止法、昭和五十二年でございますが、その改正で、それまでは刑罰だけであったわけでございますけれども、やはり行政処分の実効性を上げなければ絵にかいたもちになるということで、課徴金という金銭的不利益を行政処分として課すという手法を入れて、やはりルールに基づいたこと、カルテルとか談合とかいう一番経済に対して社会的な悪影響の大きいものについてはきちんと取り締まらなきゃいかぬ、こういう考え方が出てきたんだろう。

 しかしながら、その当時はまだ、今振り返ってそういうことを申し上げられますが、その当時はまだまだそうではないという御意見も根強くあり、激しい議論が行われた結果、五十二年の改正が実施された。その中身は、今申し上げましたように、課徴金の導入であり、それから独占的状態に対する規定の整備であり、それから大規模会社及び金融会社による株式所有の制限、罰金の引き上げというようなことが五十二年の改正で行われたということでございます。

西銘委員 独禁法がスタートをしまして、二十四年、二十八年の改正に引き続きますと、五十二年の改正は独禁法の改正の中でも非常に大きなポイント、罰金だけでは不十分といいますか、行政処分という形で出てきたのでありますけれども、この背景に狂乱物価、物価が非常に高騰していく中で、高い価格でのカルテル、あるいは企業が自由に、自由放任にやっていくとそういう流れになっていく。五十年代の改正が一つの大きな改正だと思いますが、今般の、さらに昭和五十二年の改正からしますと約三十年近くたったことになります。

 いわゆる情報化時代、あるいは知的財産立国の時代、あるいは地球規模のグローバリゼーションの時代、昭和五十二年の改正の時点から今般、三十年近くたって今度の改正が出ているのでありますが、独禁法の改正という歴史の中で見ますと、スタートの時点について、五十二年のが大改正、今回は五十二年に匹敵する大改正ではないというふうに感じられるんです。しかし、時代は非常に速くて、世界規模のグローバリゼーション、あるいは知的財産立国、あるいは特許法等でも迅速化の流れに対応していかなければならないという法改正がされていく、そういう経済社会構造が、五十年代から比べるとさらにスピードアップをして変わってきている。

 今回の独禁法の改正はもっと大きな改正になろうかという声も聞こえるんですけれども、委員長としましては、どうですか、昭和五十二年の独禁法改正と比べると、今般の改正はある程度、比較しますと小さい改正という認識でよろしいですか、お伺いします。

竹島政府特別補佐人 五十二年の改正と比べて大きいか小さいかというのはなかなかお答えしにくいことでございますけれども、五十二年は、いずれにしても、課徴金という全く新しい行政処分を導入したという意味で、非常に画期的なことであったということは間違いございません。それに比べると、今回は引き上げでございますので、それ相応のものであるというふうにも申し上げていいのかと思います。

 ただ、今回は、従来の課徴金に比べてかなりの幅の引き上げでもありますし、加えまして、やはり相変わらずなくならないカルテル、談合行為というものを的確に摘発をして、そういうものを払拭するようにしていかなきゃならぬという意味では、課徴金減免制度というものを入れさせていただいて、摘発率の向上に何とか結びつけていきたい。

 それから、適正手続の要請もございますので、犯則調査権限という権限も新たに入れたいという意味において、要するにルール、せっかく基本法と言われているにもかかわらずそれが守られていないということが一つや二つではなくあるという状態に対して、今の時代は企業の活性化でありますとか技術革新とか創意工夫ということが非常に大事なことで、そういうことがなくなりまして、カルテルや談合で既得権がそのまま安易に維持されるという経済体質では、日本の経済自体がこれから成長をしていけない、そういう状況になっていることはもう皆様方も共通の認識になっているわけですが、そういうことを見ますと、やはり今申し上げたように、ルールをきちんと守っていただくような手だて、守らない者についてはきちんとした摘発をし、しかるべき処分をするという考え方をさらに徹底すべきであるという意味では、今回の改正は、そういう基本的問題意識で提案されているというふうに御理解いただきたいと思います。

西銘委員 今回の改正についての質疑に入る前に、一点だけ。

 最近争われておりますヤマト運輸と郵政公社、そしてコンビニを取り巻く状況について、あくまでも一般論としてでありますけれども、ヤマトが独禁法違反という形で郵政公社を訴えている。司法の場で議論をされておりますので、公取委に独禁法違反かどうかというような尋ね方はしませんが、ヤマトが郵政公社とコンビニの提携を独禁法として訴えている。独禁法のどこが問題でこういう司法の場で争われているのか。一般論として、国民に、消費者にわかりやすい形で御説明願えませんか。

山木政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の訴訟でございますが、ヤマト運輸側の主張に沿って整理をいたしますと、おおむね二点でございます。

 一つは、郵政公社がローソンに対しまして、郵便局舎の余裕スペースを近隣相場を著しく下回る相場で店舗用として貸し付けている、そういう不当な利益を与えているのではないか。それから、ローソンの店舗に集荷を行うに際しまして、通常は集荷料を取っているわけでございますけれども、その集荷料を免除する、そういう不当な利益を与えているのではないか。そういう、一つは賃料相場を相当下回る不当な利益、それから集荷料の免除という利益を与えることによって、郵政公社がローソンに対しましてローソンと取引するように誘引をしているというのが一点でございます。

 もう一点は、郵政公社の料金体系でございますけれども、ヤマトの宅急便の料金を最低でも四十円、それから最大では二千二百二十円という、ヤマトの運送料金からそれだけ下回る料金を設定しているということで、後者の点については不当な廉売ではないかということで、ヤマトが郵政公社の行為を独占禁止法違反としてその行為の差しとめを求めているということでございます。

西銘委員 もう少し突っ込みたいんですけれども、もう司法の場に移っておりますので、これ以上の質疑は展開いたしません。

 さて、カルテルや入札の談合事件等、報道が後を絶ちませんけれども、これらの談合やカルテルを防止するための抑止力強化という意味で、今回の改正で課徴金の引き上げがポイントの一つになっております。経済界からはこの課徴金の引き上げに対して、景気が低迷しているこういう時期にどうだろうか、強い反発があったようでありますが、この経済界の強い反発に対してどのように説明責任を果たしたのか、また同時に、消費者である国民にとって、このカルテルや談合のもたらす悪影響といいますか、それをわかりやすく御説明していただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 御指摘のとおり、経済界から、収益がそんなに上がっていないのに課徴金を二倍程度に引き上げるというのはとんでもないというようなお話が多々あったわけでございます。

 しかしながら、私どもは、これはあくまでも違法行為に対してどういう実効力のある措置を持つかということでございまして、基本的に、景気は全体に回復しているとは言われておりますが、景気のよしあしだとか、企業の収益が多い、少ないとかいうこととは直接は関係ない話である。

 要するに、現在持っている課徴金の水準とか、その他のいわゆる抑止力では十分でないからこそ、談合、カルテルがやまない。談合、カルテルがやまなければ、これはなかなか目には見えませんけれども、そこから買う事業者、さらには最終消費者が、そうでない場合に比べて高いものを買わされている。公共工事の場合は税金がその分むだ遣いされているということになりまして、要するに日本の国の中における資源の適正配分、適正利用になっていないということでございまして、そういう意味で莫大なる経済的損失がある。それを維持したままでは経済はなかなか効率化しないということ等をるる申し上げまして、やはり抑止力として効き目のある課徴金の水準でなければだめだということを、本当に口酸っぱく申し上げてきたわけです。

 具体的には、昨年の十一月とことしの六月に、二回にわたりまして、公正取引委員会の今回の改正の内容につきましてパブリックコメントを求めました。約二百近い意見がそれぞれ文書によって、理論的な反論もございましたし実情を訴えるものもございましたけれども、ございました。そういう形で国民の皆様との対話をしてまいりましたし、経済界とか消費者団体、それから法曹界、労働団体等々ともフェース・ツー・フェースで会合も複数回持っておりまして、そういう議論を尽くした上で今回提案させていただいているということでございます。

 いずれにしても、申し上げたいのは、サイレントマジョリティーと言われる消費者一般が、カルテルとか談合によって大変な経済的損害を受けているんですよということをやはり事業者はきちんと認識してもらわなければいけないし、国民もそういう認識を持っていただかないと、競争法というものについての認識が変わりませんし、形だけというようなことになったのでは法律を持っている意味がないというふうに思っておるところでございます。

西銘委員 一般論としては、消費者社会、企業も政府も消費者の部分ありますけれども、消費者はなかなかカルテルや入札談合の不利益がわかりにくいという側面があろうかと思いますので、機会があるごとにそういう消費者、国民への悪影響、損失の点を大いにPRしていただきたいと思います。

 さて、グローバリゼーション、地球が小さくなって本当に経済が国際化をしているこの二十一世紀でありますが、大規模な国際カルテルが存在して我が国の企業も摘発をされているようでありますが、これらの実情と公取委の対策についてはどうなっておりますか。御説明を願いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 グローバリゼーションのもとで国際カルテルというものも大分行われているということでございますが、これに対して我が国が的確に対処できないというのが今回の改正の一つの動機にもなっておるわけでございます。

 日本の企業もこれだけ大きくなりまして、いろいろな業種がございますが、アメリカやEUにおきまして、国際カルテルをやったということで摘発をされている。これらも、大体の場合はいわゆるリーニエンシープログラムということで、カルテルをやっていた企業のだれかが当局に自首していった、それによって事件が解明されて、日本の企業もそれに入っておったということで、アメリカにおいては罰金、ヨーロッパにおいては制裁金というものを、かなりの大きな額を科せられている。

 アメリカにつきましては、アメリカは基本的にこういうものを公表しませんので、我々が完全に把握しているわけじゃありませんが、最近十年ぐらいを見ましても、日本の企業がかかわったとされるものが、公取が把握しているものだけで十一件ある。ヨーロッパにおきましても十数件ある。ヨーロッパはもっと短い期間でございますが、そういうことでございます。

西銘委員 いわゆる措置減免制度、この制度を私聞いておりまして浮かんだ言葉が、司法取引のような、司法取引という言葉そのものに価値判断は与えませんけれども、ややマイナスのイメージはあるんですが、与えないとして、ニュートラルとして、私は司法取引のような印象を受けましたが、この措置減免制度は、経済界から制度の悪用を心配する声もあったようでありますが、政府案はどのように対処をしておりますか。

竹島政府特別補佐人 課徴金減免制度、リーニエンシープログラムというものですが、これは確かに司法取引という制度を持っているアメリカにおいて考え出されたものではございますが、司法取引とは違うものだと。

 どこが違うかと申しますと、被疑者になってから、特定の情報を司法当局に提供することによって自分の罪を軽くしてもらうという取引がまさに司法取引でございますが、このリーニエンシープログラムというのはそうではなくて、今回の改正、我々が御提案申し上げているものもそうでございますが、あらかじめ一定の要件をちゃんと世の中に公表しておりまして、例えば一番目であるとか、誠実にその情報を提供して協力するとか、カルテル、談合の首謀者ではないとか、そういったものに該当した場合には一〇〇%免じますということをあらかじめきちんとさせてあるわけでございます。それに合致した者については、裁量的ではなくて非裁量的にそれを適用するというのがリーニエンシーでございます。

 要するに、容疑者がわからないときにどうやって発見するかというためのプログラムである。容疑者になってから司法取引をするというものとは全く違うわけでございます。したがって、司法取引がないヨーロッパの国においてもこれが導入されているというものでございます。

 それで、その次の御質問の、これを悪用するのではないか。確かに、今までカルテル、談合を一緒にやってきたのが、何か抜け駆けしてどうかするのではないか、相手を誹謗することになるのではないかという御心配は確かにありました。

 その点につきましては、この改正法の七条の二の第十二項に書いてありますとおり、虚偽であったり、それから自分が首謀者で、みんなをいわば強要してやった、それからだれかやめていきたいというのにだめだと言って離脱を許さないというような首謀者的地位にある者については、これはリーニエンシープログラムを申請する資格はないということになっておりまして、それらのことについて、やはり、申請があったときに公正取引委員会としては、その報告とか資料の真実性について十分に裏づけもとって吟味するということが必要でございまして、自分のことは棚に上げて他の企業のことをただ言ってくるというのは、これはリーニエンシープログラムではないということでございます。

西銘委員 社会は、自由と規制、そのバランスさせる言葉として活力、この両側面を見て、自由ばかりでもいけないし、規制が必要なところは必要だと思います。

 もう一点質問をしたかったのでありますが、時間が来たようでございますので、これで私の質疑を終了いたします。ありがとうございました。

河上委員長 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は独禁法の改正案の審議ということで、今臨時国会がスタートいたしましてすぐに閣法として提出をされ、その後民主党案も提出をされ、ようやく今週から質疑に入ることができました。この問題は本当に重要な問題でありますので、しっかり審議をしていかなければいけないんですが、審議とともに、早期に成立するということも重要な問題でありますので、このことをまず最初に冒頭申し上げたいと思います。

 その上で、この独禁法の改正、これまでも何度もなされてまいりましたけれども、平成十四年の改正時におきまして、当衆議院の経済産業委員会、このときに附帯決議がなされております。御存じの方も多いと思いますけれども、「独占禁止法違反行為に対する抑止力の強化の観点から、課徴金、刑事罰や公正取引委員会の調査権限の在り方を含めた違反行為に対する措置体系全体について早急に見直すこと。」このような立法府の意思に基づきまして、公取の方も、この二年間さまざまな形で議論を重ねて、ようやくこの改正案を提出してきた。

 それとともに、我が党も、前回の委員会でも同僚の江田議員が質問させていただきましたけれども、この改正案の策定に当たりまして、公明党としてもプロジェクトチームをつくりまして、都合二十回、討議を重ねてまいりました。経団連を初めとする経済界の皆様方だとかさまざまな当事者の意見を聞きますと、多様な意見があるな、これを感じております。

 そういった中で一つの改正案をまとめていくという、これはこれで本当に大変なことであったなと思いますが、政府の方で、今回のこの改正案、措置体系や審判手続につきまして、まさに抜本的に見直す形で法案を練り上げた、このように私どもは認識をしておりますけれども、それだけに、こうした抜本的な見直しを行う目的は国民の前に十分に明らかにしていかなければいけない。

 これまでも、国会で議論をされても、なかなか当事者に伝わっていない。この委員会の中ではしっかりと議論が重ねられて、なるほどそうなのかと。議事録等、公報等でも公表される中で、ところが、携わる人たちにとってみればまさに死活問題であるからこそ、そのなぜという問題、どのようなという問題、それぞれしっかりと認識をさせていかなければいけないと思います。そういった意味で、今回の目的についても、多くの国民の皆様の前に十分に明らかにしていただいた方がよいかと思うんですね。

 そこで、まず最初にお伺いをしたいと思いますが、大企業が行う組織的な反競争行為であるカルテル、入札談合等の根絶をするために、今回の独禁法改正、今までどこが限界だったのか、今回の法改正でどういう方策でこれを解決していこうとしているのか、まず最初にその政府の考え方をお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 大企業、中小企業を含めまして、独禁法違反事件が絶えないという現実がございます。それではいけないというのがまず基本的問題意識でございます。

 そのために、では現状ではどうしてだめなんだということでございますけれども、これは、一言で言いますと、やり得になっておるということが言われておるわけでございます。そのやり得ということである限り、行政処分であれ司法処分であれ、きちんとした制裁がなければやり得というものは直らない。したがって、課徴金の率を上げる必要がある。

 前回の委員会でもございましたけれども、日本の現実は、一企業、大企業であって三千七百万いくかいかないか、中小企業の場合には数百万いくかいかないかというのが現実に課せられている課徴金でございます。一方、過去の違反事例についてどの程度の不当利得があったかということになりますと、平均で一六・五%、その金額はそれぞれのケースでもちろん違いますけれども、今申し上げたような課徴金の額に比べると、それを大いに上回るケースが多々あるわけです。したがって、課徴金の率を上げる必要があるというのが一つでございます。

 それからもう一つは、それは公正取引委員会がしっかりしていればもっと摘発できるんじゃないかという御指摘もいただきますけれども、これは、言いわけをするわけではございませんけれども、まず、証拠それから正確な証言、これが得られませんとどうしようもないわけでございます。ところが、脱税なんかも大変でございますが、これは、きちんとした帳簿というものがあって、それをごまかせばわかるようなことになっていまして、そう言うと国税当局はそうじゃないとおっしゃるかもしれませんが、証券取引等監視委員会にしましても、インサイダー取引があったかどうかというものについては物証が得やすいし、きちんとした報告が当局に対してあるというものでございまして、それが虚偽かどうかという判定なんですが、この独禁法違反事件についてはそういうものが全くないわけでございまして、ただ落札率が高いとか、どこかの情報でそういう情報が流れるとかいうようなことでございまして、結局は、我々としては大変摘発しにくいことで、これは何も日本に限らず、どこでもそう。

 したがって、やはりこれは、リーニエンシーというものを入れて、結局、正しい情報が当局に入って、それによって違法行為をきちんと摘発して取り締まる。そういう仕組みを入れれば、二次的に、カルテルをやろうと思ってもそのメンバー同士で疑心暗鬼が起きる、いつだれがリーニエンシーを使って公取に言っていくかもしれない、そういうことになってまいりますと、カルテルというのが結びにくくなる、談合というものもしにくくなる、こういう二次的な効果もあります。したがって、こういう手段で、両方をこの際与えていただきたい。

 それから、加えて、大事なことですけれども、適正手続上もいろいろ指摘をいただいておりますことでございますが、調査の仕方として、犯則調査権限というものを持って、場合によっては検察当局と合同できちんとやりたい。今は任意調査でございますから、経験の豊富な企業においては、弁護士の指導よろしきを得て、黙っていればいいんだ、こういうことになっておりますので、それでは問題の解明にならないということで、犯則調査権限もいただきたい、こういうことでございます。

高木(陽)委員 今、公取委員長の方からのお話で、公取がもっとしっかりしていれば、しかしながら、現実は、やろうと思ってもなかなかできない現状がある、犯則調査権限を初めそういった権限を与えていただく、まさにそのとおりだと思うんです。この問題については後ほどの質問に移したいと思うんです。

 もう一つ、冒頭に委員長の答弁にありました、やり得、これを何とかしなければいけない、そんな意味から、課徴金を引き上げていくという。これについて、不当利得相当額以上の金銭を徴収して違反行為の防止を図るということで今回は考えて、それを防止していこうと。これまで課徴金の性格というのは、不当利益を剥奪していく、それにすぎなかったけれども、今回の改正でこれを制裁に変更する、そういうような考え方だと思うんですけれども、そうであるのであれば、刑事罰と課徴金との二重処罰の問題、これが生じるという意見、これは特に経済界の方から多いわけですね。

 そこで、まず、課徴金の法的性格は、これまで単なる不当利得の剥奪であったのか、それが今回どう変わったのか、これを伺いたいと思います。

 そして、法的性格が変わったとしても、今回の法案で調整規定が導入され、罰金の半分を課徴金から減額することで二重処罰の問題を解消するということでしょうけれども、経済界から、これはいろいろとヒアリングもしてまいりましたけれども、調整が不十分である、そういった意見もあります。これに対しまして、政府としてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 今回の改正で法理論的に一番問題になった点を御質問いただいたわけでございますけれども、従来、課徴金につきましては、不当利得の剥奪であるという説明も申し上げてまいりましたし、それが世の中の認識になっているということは率直に認めますけれども、これは、そのときそのときの議論がどういう問題意識で行われているかによって変わってくるわけでございます。課徴金というのは刑事罰と同じなのかという問題意識で質問をされたり説明を申し上げているときには、それは違います、不当利得の剥奪といいますか、その分を国庫に納付していただくにとどまるものであってというような御説明をしてきたということは、事実でございます。

 今回、我々の整理は、不当利得相当額以上の金銭をいただくという仕組みを明らかにさせていただきたい、そうすると行政上の制裁という機能がより強まるということは間違いございませんし、私どもも、そういうふうに行政上の制裁であるという御説明をしてまいりました。

 しかしながら、その法的性格は何かということについては、これは、不当利得の剥奪というのは法的性格ということではなくて、課徴金というものは、そもそも独占禁止法違反行為を防止するために行政庁たる公正取引委員会が違反事業者等に対しまして金銭的不利益を課すというものである。要するに、行政目的のために金銭的不利益を課す、その手段として課徴金がある、これが法的性格であるという点では、今も後も変わらない、見直しによってもその点は何ら変わらない、こういうことでございます。

 それから二点目、二重処罰の議論があって、罰金と課徴金の間で調整をしておるではないか、それは二分の一にしておるじゃないか、これについて、根拠がはっきりしないとか中途半端であるとかいう御指摘があるというお話でございました。

 確かにございましたし、今でもあるのかと思っていますが、私どもは、これはあくまでも、行政処分たる課徴金と、それから罰金を含む刑事罰というのは、趣旨、目的が違う、したがって、これは併科されても憲法三十九条の禁止する二重処罰に当たらないというふうに解釈しておりますし、その解釈は、何も公正取引委員会の独断のことではなくて、私どもはいろいろな法律学者等々の意見も聞いておりますが、世の中の多数説であるというふうに認識しております。

 さはさりながら、では、幾ら課徴金が上がっても、それはそういうことなのかという議論があろうかと思います。

 その点に関しても、今回お願いしているぐらいの課徴金では実質的にも二重処罰の問題ではないというふうに私は思っていますが、この改正案を練り上げていく過程において、やはり二重処罰に留意すべきであるという御議論も多々ございました。そこで、この二分の一調整規定というのは、純粋法律論としてこれがなければならぬものであるとは認識しておりませんが、まさに政策的判断として、調整規定を設けるのが適当であろうということで設けさせていただいております。

 そのときに、何で二分の一なんだ、何で全額ではないのかという議論も多々いたしました。

 全額でない理由は、全額にしてしまえば、刑事告発というのは、違反事件の中でも悪質重大である、繰り返しやっている、けしからぬということでもって告発をするわけで、その結果、有罪になって罰金がかかる。その罰金を丸々課徴金から引いてしまったのでは、その企業が負うトータルの経済的不利益は同じなのでございまして、そういう、悪質重大であろうが、そうじゃない、課徴金どまりであろうが、経済的不利益は同じということであったら、刑罰と課徴金というものを二つ置いているという制度のもとで、それは不合理ではないか、何のための罰金であるんだ、こういう問題が出てまいりますので、全額は控除できない、すべきではない。

 では、何で二分の一なのかということについては、三分の一でも四分の一でもなく二分の一かというのは、先ほど申し上げましたようなことで、我々としては、強いて理由を申し上げますと、刑事罰といっても、懲罰機能だけではなくて、こういう罪を犯してはいけませんよという予防効果があるというふうに言われています。二つの機能を持っていると言われています。予防効果という意味では、課徴金が、行政上の措置ではありますけれども、抑止力として、違反をしてくれるなという意味で持っているものであるという意味で、予防効果という意味では共通する面があるので、そういうことに理論的な根拠を求めまして、その分は二分の一と考えるのが適当であろうということで、二分の一にさせていただいているということでございます。

高木(陽)委員 法律というのは本当に難しいものだなと思いながらも、法理論の中で整合性を持たせなければいけない。その一方で、これは、素朴な思いとして見れば、独禁法違反、いわゆる法律を違反する、いわゆる悪いことをするわけですね。それで、それなりのものも取られてしまう。経済界が反対するというのは、それだけ被害をこうむってしまうと思うから反対をしていると思うんですが、その一方で、独禁法を違反しなければいいわけで、ごく当たり前にちゃんとした経済活動をしていけば、それはないわけですから。

 そういった意味では、大切なのは、当事者のいろいろな思い、かなり、課徴金を引き上げられるときついな、当事者のそういう思いはあるんですが、もともとの大前提というのは法律を違反しないということですから、そういった観点、ごく当たり前な国民の感覚として持っているもの、そういう意味では、今回の課徴金の引き上げの部分というのは理解できるものではないかなというふうに私自身は思っております。

 その上で、課徴金の減免制度、これも、今までアメリカだとかEU等で、刑事罰、行政措置等で減免ということをやってまいりまして、OECDも推奨している、そういう世界的な流れの中で今回この減免制度の導入があったと思うんですが、一方、経済界からも、これはすぐ容認、しかしながら、違反事業者は共同で申告し、かつ、何社でも限定なく申請することを認めるべきだとする意見も。経済界というのはいろいろなことを考えるなと思うんですが、民主党案では申請者数の限定はないようでありますけれども、他方、政府案で、対象事業者数を三社に限定、かつ、単独での申請しか認めない、このようにしております。まず、政府の方にその趣旨をお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 人数を三社に限定している趣旨でございますが、これは、課徴金というのは、違反行為を犯した事業者に対しては一律にかけるべきものということでございます。したがって、その例外というものは当然限定されるべきであるということでございまして、リーニエンシーというのは、まさにその例外として設けさせていただいている。特に、イの一番に、当局が知らないうちに情報をもたらした者については一〇〇%というのが一番みそになっているわけでございまして、二番目、三番目の者についてはもっと御褒美はちっちゃくなるというところがこの制度のみそでございます。

 そういうことで、我々としては、一社だけでは情報が確実かどうか、真実かどうかというのは判定しにくいので、我々の実務経験からいって、三社が認められれば、それ相応の、我々にとって証拠をきちんと収集するに値するようなことができるだろうということでさせていただいている。

 いろいろ経済界との議論でも、我々、その他との議論でもございまして、何もそういうことをする必要はないじゃないか、欧米ではもっと認めているじゃないかという御議論もありましたけれども、私どもとしては、やはり、特に立入調査した後、何か言ってくればどんどん認めるということでは、違法行為を働くときもおててつないで談合、カルテルをやって、ばれちゃったということになったら、またおててつないで公正取引委員会に来ればまけてくれるというのでは、これはどういうものかと思っておりまして、そういうわけにはいかないというふうに考えているわけでございます。

高木(陽)委員 続いて、先ほど、その目的の部分でもいろいろとお話がありました犯則調査権限、特に、中小企業または消費者、高いものを買わされることによって実質的な被害をこうむる、悪質重大なカルテル行為などについて、刑事告発をもっと積極的に行うべきである、しかしながら公取としてはなかなか権限もないんですという先ほどのお話の中で、今回の改正案、新たに犯則調査権限を導入するという内容が盛り込まれておりまして、その点では大いに評価できると思うんです。

 他方で、新たな犯則調査と従来の行政調査との区別ですね。どのような透明性、いわゆるそれだけの権限を持ってしまうわけですから、この透明性を確保するつもりかどうか、ここも大きな問題となると思います。その点について御見解を伺いたいと思います。

伊東政府参考人 お答えいたします。

 犯則調査権限と従来の行政調査権限との区別の透明性の確保が必要ではないかという御指摘でございますけれども、私どももその方向で考えておるところでございます。

 今回、犯則調査権限を導入することといたしました理由の一つは、もちろん証拠収集能力の強化ということもございますけれども、一方で、現在、行政調査権限で調査をして、それで行政処分をする、さらに、そういう権限で集めた証拠に基づきまして告発もするというような点につきまして、令状主義の逸脱ではないか、適正手続の観点から問題ではないかというような御指摘もございまして犯則調査権限を導入することとしたわけでございます。そういう趣旨から、犯則調査部門と行政調査部門を明確に分けまして、かつ、両者間で情報が遮断されるような組織体制を設けることを予定しているところでございまして、具体的には、公正取引委員会事務総局組織令の改正等によりまして組織分離等を行い、明確にファイアウオールを設けることを考えているところでございます。

高木(陽)委員 続きまして、今、IT時代になりましてスピード化、経済というのもすごくスピード化されている中で、そんな状況を踏まえると、勧告制度を廃止して、弁明の機会を付与した上で排除措置命令、これを出すことによりまして必要に応じて違反行為を差しとめることができるようにする、これはこれで評価できると思うんですね。

 その上で、他方、複雑化する経済構造、市場構造を踏まえた法的判断を下すのに、審判手続を経ないで排除措置命令を出すのは問題ではないか、こんな批判もあるようでありますけれども、この点については、公取の方はどのようにお考えでしょうか。

竹島政府特別補佐人 この勧告という独禁法の仕組みというのが極めてユニークなんですね、我が国においては。いずれは行政処分というものが行われる、そのいわば前の手段として勧告というものが、いかにも横文字を縦に直したということがうかがわれるようなものなんですが、実態はどうかと申しますと、それは、独禁法違反行為を働いているかもしれないというぐらいで、軽い気持ちで企業に対して勧告をしているわけじゃ全然ないわけでございまして、きちんとした証拠を調べ、その適用条文をきちんと念査した上で、あなたはクロですよということで勧告もしておるわけでございます。

 その審判が後先になることによって事業者側、被審人側が不利益をこうむるのではないかという御心配かと思いますが、そういうことは全くございません。事前にきちんと、事前手続を新たに設けまして、今みたいに突然勧告するんじゃなくて、命令を出すときには必ず事前に話をし、相手の言い分も聞いた上で命令を出します。それに不服がある場合は審判をきちんとやりますということでございまして、何ら、はしょったり、向こうの防御権を今と比べて制限するとかいうようなことは、毛頭踏まえておりません。

高木(陽)委員 独禁法というのは、ある意味でいうと性善説に立っているのかなと。段階を踏みながらやっていく、もちろんその方がいいと思うんですけれども、大切なのは、被害をこうむっている人の側ですね。加害者の側というのは、人間がやっている、また、法人という形の中でさまざまな経済活動をしていく。ミスはあるでしょう、人間社会ですから。しかしながら、意図的にやっているものに対してはやはり毅然とやっていく、こういった考え方というのがしっかりとしていかないと、やはりモラルハザードを起こしてしまう。そういった意味では、今回の改正の中で、そこら辺のところもしっかりと配慮されているというふうに認識もしております。

 さらに、大手スーパーなどで納入業者がいじめられている、そういう優越的な地位の乱用について公取というのは最近積極的に取り組んでいるようでありますけれども、こうした取り組みを一層強化するには、流通実態に即して、百貨店業の特殊指定を見直して、優越的地位の乱用の実態を詳細に調査しまして、早急に改定すべきだと思います。これについてどうか。また、特殊指定の運用強化への取り組み姿勢についてもあわせて確認をしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 今お話にございましたとおり、私ども、実態調査、書面調査を今かけておりまして、大規模小売業者、それから納入業者に対しての書面調査でございますが、それを踏まえて、あるべき新しい大規模小売業者に係る特殊指定というものを考えてまいりたい、今年度中にそれを制定したい、その過程において世の中の御意見も十分にお聞きした上で決めたい、こういうふうに思っております。

 それができますと、今あります百貨店業の特殊指定というのは古いものでございまして、今のいろいろな多様化している大規模小売業者の業態にも合っていませんし、違反行為の類型としても足りないものがある、協賛金の扱いというのが不透明であるとかいうようなこともございますので、やはりそういう違法行為の類型もきちんと見直すというようなことで、新しい特殊指定ができますと、もっと迅速に処理できますし、各大規模小売業者にせよ納入業者にせよ、そういうものを御認識いただいて、まさにもっとまともな商取引が行われることになっていくだろうというふうに思っております。

高木(陽)委員 バブルが崩壊してもう十年以上たちまして、景気がずっと低迷している。数字的には上がったり下がったりしながらも、現場の実態というのはなかなか苦しい。特にそれを感じているのは中小企業であると思います。

 私たち公明党としても、中小企業の対策というのを重視しながら、さまざまな提言を行ってまいりました。今回の政府案も、我が党の提案、いろいろと受け入れていただいたというふうにも認識しておりますけれども、中小企業に不当な不利益を与える不公正な取引、これについて、排除措置命令に違反してさらに中小企業いじめを行ったような場合について、罰金の上限額、これを百倍に引き上げる。格段にこの措置が強化されている。

 ここで、もう時間も参りますので、最後に民主党にお伺いしたいと思います。衆法の提案者ですね。

 この中小企業に不当な不利益を与える不公正な取引方法について、何らかの措置強化が盛り込まれていないように思うんですね。いろいろと条文を読ませていただきました。ただ、本会議の海江田先生の御答弁にはそこら辺のところも盛り込まれていたようでありますけれども、条文の中にはそのようなところがない。これは一体どうなっているのか、また、その趣旨をお伺いしたいと思います。

近藤(洋)議員 お答えします。

 まず、高木先生御指摘の、政府案にある排除措置命令、政府案については強化しているけれども、民主党案にはないではないかという御指摘でございますけれども、政府案は、先生御存じのとおり、排除措置命令を格上げしたのは、審判手続全体を見直す中で罰金刑を引き上げたということでございます。

 私ども民主党案は、課徴金を行政制裁金に改めるという、そちらの改正にすべてを注ぎまして、政府案の審判手続はある意味で乱暴な措置である、拙速であると判断をいたしまして、白紙に戻して、もう一度時間をかけて議論をしようという形になっております。したがいまして、排除措置命令違反に対しての罰金強化というのは、我々の案には盛り込まれていないということでございます。

 その一方で、同時に、先生御指摘のとおり、不当廉売等の不公正な取引を規制するための効果的な措置をつくるということは、私ども民主党としても極めて大切な話だと考えております。

 このため、不公正な取引方法を抑止する効果的な手段につきまして、基本的には、その不公正な取引方法の構成要件は何なのか、これを精査するのが極めて大変な作業にはなるわけですけれども、しかし、早急にやらなければいけない。構成要件を明確にした上で、私どもとしては、行政制裁金の適用の範囲にすること、こちらもかなり中身で詰めております。

 また同時に、不公正な取引方法を行ったこと自体に刑事罰を科すことも含めて速やかに検討すべき課題であると考えておりまして、附則の方に、二年以内の見直し規定の中に盛り込ませていただいているところでございます。

高木(陽)委員 今御答弁ありましたように、やはり中小企業の問題を含めまして、考え方としては同じ部分であるなと思うんですね。

 ただ、やはり法律でございますから、ここら辺のところはきちっと条文の中に盛り込むという作業も必要ではなかったのかな、このように私自身は考えておりますし、また、今後、質疑等々が繰り返される中で、こういった点も明確にしながら、早期に成立をしていただきたいということを要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河上委員長 次に、中山義活君。

中山(義)委員 今回、公正取引委員会の方で独禁法にかかわる新しい法律を改正しようという意気込み、私たちはこれを感じているんですが、ただ、この規制改革及び競争政策イニシアチブ、アメリカとの協議の中に、今までも構造協議、それから日米包括協議、そしてこの日米の、日米というよりはアメリカの年次改革要望書、この中に全く皆さんが考えているのと同じようなことが入っているんですよ。

 ブッシュ大統領が日本に来たときも、彼はコンペティションという言葉をはっきり言ったんですね。つまり、市場を開放して競争させろと。アメリカから日本にどんどん入っていくぞ、だから市場を開放しろと。こういうような要求が常にアメリカとの間にいろいろあったわけですよ。ですから、今回の法律改正にまたアメリカの年次改革要望書をそのとおりやっているんじゃないか、私たちはそう思うところもあるんです。

 今まで見ていますと、日本の法律改正は全部アメリカのいわゆる年次改革要望書、これが一年おくれぐらいで日本で法律化されているんですよ。大店法もしかり、BIS規制もしかり、それから、いわゆる司法改革や商法改正、みんなそうですよ。みんな年次改革に入っている。つまり、日米の関係が大事なことはわかりますが、すべてアメリカの言いなりになっているというような印象があったのではまずいと思うんですね。

 今回の法律案を改正しようという意欲は、もちろん日本の公取にあって、もっと商売を正常化させていこう、競争力を高めよう、これならわかるんです。アメリカの言いなりになって、市場を広げろ、もっと競争の枠を広げていけ、どんなところでも、例えば建築だとか何とかそういうものに入札するときには開放しろ、こういうような話も含まれていると思うんですが、一九一六のADをこの間やりましたね。それに対する日本の制裁の法律案をつくりました。これについても、日米ということを考えたときに、いつも日本が押されている、この印象はぬぐえないようなそういう状況なんですが、外務省とそれから下町の副大臣保坂さんにそれぞれ聞きたいと思うんです。

河井大臣政務官 外務大臣政務官の河井克行です。北米を担当いたしておりますので、お答えをさせていただきたいと存じます。

 まず、圧力じゃないかという先生の御指摘なんですが、少し日米間の具体的なやりとりについて説明をいたしたいと思います。

 二〇〇一年の六月ですから、ブッシュ政権の一期目の政権発足した直後、小泉・ブッシュ会談、アメリカのキャンプ・デービッドの首脳会談が行われた席で、今先生御指摘の、成長のための日米経済パートナーシップ、英語で言えば、ジャパン・US・エコノミック・パートナーシップ・フォー・グロースということなんですけれども、それが立ち上がりました。その中に、少し長くなりますが、日米規制改革及び競争政策イニシアチブというものが始まりました。

 その中で、日本の独占禁止法についても米国より提言がなされました。独占禁止法違反の抑制と公正取引委員会の執行力を強化してほしい、そういうふうな提言がなされたことは事実でございます。ただ、これは圧力というよりも、日本国政府も同じような問題意識を持っておりまして、むしろ日本国政府が主体的に行ってきた独占禁止法体系の一連の見直しの一環として今こういうふうな事態に至っているということでありまして、一方的な圧力ということでは必ずしもないと思っています。

 逆に、日本の方も随分厳しいことをアメリカ政府に対して申し入れております。一つだけ例を挙げさせていただきますと、WTOの協定違反が確定したアメリカのダンピング防止法、これを速やかに廃止してほしいということも強く要請をして、実はことしの六月に、それを初めて廃止するということについてアメリカ政府が公式に表明したということもございますので、一方的な圧力ということではなくて、お互いに対話をしながら日米両国の経済がもっと大きくなっていく、そういう見地から話し合いを行っていると認識をいたしております。

保坂副大臣 おはようございます。御答弁申し上げます。

 経済産業省といたしましては、ただいま外務省から経緯の御報告がございましたが、規制緩和あるいは競争政策の拡充、これこそ経済活性化の基本である、このように認識をいたしまして、市場競争を軸とする産業政策というものを幅広い視点のもとから展開してまいりました。

 その結果、例えば、電気事業やあるいはまたガス事業のような公益分野に関しましても、小売の部分自由化や、あるいは送電線や導管網の開放を義務づけるということによりまして新規事業者の参入を促進したり、あるいは、構造改革特区を活用いたしまして、地元の自治体のいろいろな御提言を生かすことによって規制緩和を推進することなどをやってきたところでございます。

 しかし、お話しのとおり、これは私ども政府としては、長い間の積み重ねでこのような方向性をたどってきたわけでございまして、平成十三年度の骨太の方針、あるいはまた十四年度の規制緩和の閣議決定等々、一つ一つ積み上げてきた。もとより、アメリカのように、競争政策の歴史の長い国、あるいはまた、一方では、違う視点から御意見を持っているEU等々との対話を重ねてまいりましたし、また、具体的な事例につきましては参考にさせていただきまして、私どもとしては、是々非々で一つの結論を出したわけでございまして、決してアメリカの言いなりになって政策を決定したというわけではないことを御説明させていただきたいと存じます。

中山(義)委員 今ちょっとどきっとするような話があったのですが、その中に電線を開放するというような話がありました。

 これはこの間から言っているように、皆さんの党の自民党の亀井さんという方、静かじゃない亀井さんですよ、うるさい亀井さん、うるさい亀井さんがこの間大演説していましたけれども、日本の電力も外資にねらわれているんだよ、イギリスを見ろ、電力会社は外国の資本が入っちゃってどうしようもないじゃないか。市場を開放するということは、日本の国はとんでもないことになりかねないということですね。

 その辺は、やはりこれから、日米のパートナーシップは結構ですが、何でも言いなりになる。例えばBSEだって見てくださいよ。日本は、全頭検査、危険部位は全部取り除く、だから牛肉は安全だ、こうしていたんですよ。それが、アメリカ流の、アメリカ・スタンダードをとったらどうしますか。二十カ月以内の牛は検査しない。こんなことじゃ、牛の安全が守られるかどうか、これだって心配なわけですね。ですから、日米のパートナーシップはいいとしても、やはりそこには、日本の確固たる国益や、そして中小企業を守るという視点がないと困るんです。

 BIS規制もそうです。八%、外国と伍してやるプレーヤーはいいですよ、八%で。中小企業まで四%のBIS規制を持ち込んできた。これが中小企業にお金が回らない一つの理由だと思いますよ。しかも、銀行には優越的な地位がある。あんたのところは連帯保証しろとか担保出せ、みんなやっているわけですよ。

 だから、保坂先生にお願いしたいんですが、下町ですからね。彼らの優越的な地位、銀行の。ここに名前を書いて判押しなさいよ、お金出すから。よく見たら連帯保証と書いてあるんですよ。連帯保証の恐ろしさというのは、借りた人と全く義務が一緒なわけですね。第二債務者なわけですよ。でもそういうことが、やはりどうしても判こを押さざるを得ないというのは、お金を借りたいという一心。つまり、お金が回っていないからますます銀行が優越的な地位を持つ。それで、貸す方に連帯保証を要求したり、約定書なんて後ろ側に書いてあるのを見ますと、さらにすごいことが書いてあるんです。いつでも担保を上げるのは法によらずやりますよ、保証人はふやしますよ、金利は我々が自分たちの裁量でふやす、これは法的なものはないんだというようなことまで書いてある。約定書というのがある。

 これなんか完全な優越的地位なんですが、優越的な地位を使って銀行というところが庶民の中小企業者と取引をしているということは事実だと思うんですが、ここは委員長、ちょっとこの銀行と中小企業の関係だけでも、疑いがあるなら疑いがあると言ってくれますかね、ここではっきり。

竹島政府特別補佐人 何の前提もなく疑いがあると申し上げるわけにはいきませんが、契約をして、ある期間この金利でいきますよというふうな契約があった場合に、途中で一方的に、借り手の同意もなく銀行が改定をしちゃうというふうなケースであれば、それは優越的地位、しかも、その銀行に金融取引を全く依存しているというふうな場合には独禁法上の問題が出てまいりますけれども、あくまでも契約でございますので、一概には申し上げられません。

中山(義)委員 いや、これは、一概に申し上げられないと、ケース・バイ・ケースじゃないんですよ。僕が言ってるのは、銀行は中小企業に対して優越的な地位にあるということを言っているんですよ。だから、おかしなことが起きているんですよ。四%の自己資本率、銀行がこれを守るために一番いいのは何ですか。お金を貸さないことと、国債を買うことでしょう。単純なことなんですよ。

 だから、私たちは、そういう中小企業を守るという視点がなくなって、この公正取引委員会のやっている法律をただ厳しくするだけでは、アメリカに言われて、アメリカの大企業を日本に招き入れる、そんなことを一生懸命まさか公正取引委員会がやっているんじゃないでしょうね、こういう質問をしているんです。

 保坂先生、今私の言っている意味わかりますよね、中小企業者がこれだけ地元で困っているわけですから。その辺の感想をちょっと述べてください。

保坂副大臣 お答えいたします。

 中小企業城下町出身の中山先生の御質問、よく理解できます。

 冒頭で私の方で申し上げました電力の自由化などの問題につきましても、カリフォルニアの電力不足だとかエンロンの破綻など、大きな勉強する課題がございました。したがいまして、唯々諾々として、ただ取引の自由を確保しているだけではございません。なかんずく、中小企業にしわ寄せが来るような経済取引の自由というのは、これは真に健全な市場の自由化ではない、このように私どもは考えております。

 そして、特にお話がございましたように、大企業等の優越的な地位の乱用などはもってのほかでございまして、このあたりにつきましては、当省といたしましては、公正取引委員会と協力いたしまして、独禁法は十二分に活用していく、あるいはまた、例えば過日決めていただきました下請代金支払遅延等防止法、こういうものを活用して、現にそのような不正な取引を片っ方で、真の市場の競争政策を担保している部分を否定するその部分は積極的に排除していくべきだと考えております。

中山(義)委員 そこで、委員長、先ほどから私が言っているのは、アメリカの言われたままにやったのではないということでございますから、その決意をもう一回ここで述べていただきたい。日本には九九・七%中小企業があるということを考えて言ってくださいよ。

竹島政府特別補佐人 アメリカのお話と中小企業のお話、どう結びつくのかちょっとわかりませんが、これは私ども……(発言する者あり)アメリカから云々というお話が出ておりますけれども、これは時系列で申し上げてもおわかりいただけると思うんですけれども、今回の改正というのは、もう平成十三年六月から政府としてはアクションを起こしているわけでございますし、それから、平成十四年には、まさに当委員会における附帯決議もあって、措置体系の見直しをせよという御趣旨の附帯決議もいただいているということであって、アメリカから日米協議なり、EUとの間の向こうからの提案というのは確かにあります。これは平成十五年になってからの話でございまして、平成三年当時は確かにアメリカからの圧力があって課徴金を上げたということはございますけれども、今回はそういうことじゃないということはぜひ御理解いただきたいと思います。

 それから、中小企業については、これは当然公正な取引条件というものが確保されなきゃいけませんから、先ほど副大臣からもお話がございましたように、我々としては、下請法もございますし、それから最近は、大規模小売業者による納入業者いじめと言われるようなものについては毅然として対応しているつもりでございますし、これからもそういうことでございまして、中小企業は中小企業としての、当然その事業が適正に行われるように、その環境について独禁法上問題があったことについては厳正に対処してまいるつもりでございます。

中山(義)委員 よくわかりました。

 今いろいろお話ありました。中小企業は何でこれに関係あるのかと言ったけれども、これから独禁法の中でも、私的独占であるとかカルテルであるとか、それ以外に不当な取引とか、やはり本当に、何としても中小企業が自分で値段を安くしようと思ったって、入ってくる原価がそれ以上安くできないわけですから、安くできないわけがあるわけですね。それで戦ったときに、安い方が善であるというような意識がいわば全般的にアメリカ流で流れてきて、それを受け入れるな、こういうことを言っているんですよ。

 それにはそれの日本の文化や伝統があって商店街というのは形成されて、地域社会で地元の商店街がいろいろなものを売っている。この売っている人たちは、商売をやって売っているだけじゃないんです。地域社会で消防団をやったり防災団をやったり、お祭りの青年部をやったり、婦人部の人たちは地域でコミュニティーを持ってコーラスをやったり、いろいろな文化団体もやっているんですよ。もしこういう商店街がなくなってしまうようなそういう政策だったら、今度のこの法律改正は大変ですよということを警告したいために私は言ったんです。その辺の理解をしっかりしてくださいね。お願いいたします。

 私は、今この質問の前にも、いろいろな御商売の一つ一つを一応見てまいりました。ただ、その中で、わかりやすいものから皆さんに例として出して申し上げたいというふうに思っているわけです。

 例えば、商店街で電気屋さんがありますね。だんだんだんだん小売の電気屋さんがなくなっていると思いませんか、小規模なもの。その電気屋さんは、修理をやったり、売った商品の保証をしたり、または、そのついでに家に行ったときに、お年寄りがいたら、最近はデジタル家電が多いから、使い方が悪かったらこういうふうにやるんですよとか、テレビでみんなよそのうちじゃ入っているのに、うちで入らないチャンネルがある、これはケーブルで、自治体から来ているんじゃありませんかとか、いろいろ専門知識を渡して、それで地域社会が成り立っているわけですよ。

 ということは、地域の、修理もしてくれたり、いろいろメンテもしてくれる電気屋さんがいなくなると困るわけですね。つまり、商店街がシャッター通りになって、そういう人たちがだんだんいなくなる、そういう現実があるわけです。でも、我々は、メーカーから来て、それに利益を乗せて売っているわけですから、正常にやっている場合には、そこは残っていかなきゃいけないわけですよ。だけれどもそれが残れない現実があるということは、いいことなのか悪いことなのか。ただ安ければいいのか、世の中の商品というのは安ければ国民のためになっているのか。委員長、その辺どうですか、哲学を聞かせてください。

竹島政府特別補佐人 不当廉売というものがいけないと思っております。法律でもそれは禁止をされているところでございますが、それぞれの企業なり事業者において創意工夫をする、コスト削減をする、そういうことによって安くするというのが一番望ましいことで、それを促すためには、適正な競争が行われていなければそういう経済社会にはならないということだと思っております。

中山(義)委員 そうすると、今まで法律で罰せられなかった、例えばいわゆる法的な罰則、それと、例えば課徴金がかけられていなかった、こういうのは、今まで公取は全部見過ごしてきた、別にそれは違反ではないと思っているんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 不当廉売につきましては、罰則も課徴金の対象にもなっておりません。しかしながら、不当廉売の問題は、こういう大変厳しい競争、かつデフレになって価格競争が非常に厳しくなって、ダンピングに対する取り締まりをきちんと強化してくれというお話は何回も伺っていますので、私どもは、確かにそれはそうだな、個別にそれはきちんと対応しているつもりでございます。

中山(義)委員 では、すべて実情は把握しているということですね。実情を把握した、そういう資料とかそういうものは、全部まとめてどなたかが、こういうことがいけないんだ、これは許されるんだけれどもこれはいけないとかと、全部もう仕分けして判断してあるんですか。

竹島政府特別補佐人 私どもは、特に不当廉売が問題視されている業界に対しましては実態調査をかけまして、それに基づいて指導もしていますし、それから、不当廉売について物の考え方も世の中にも公にしております。ですから、全部じゃなくて、特に、例えば電器の話でありますとかお酒の話でありますとか、そういう不当廉売がよく指摘される業種については、今申し上げたようなことをしております。

中山(義)委員 では、幾つか申し上げますが、例えば、このビラを見まして、これが現実に不当廉売かどうか、または不当表示であるのかわかりませんけれども、二八%という今値引きがしてあります。この値引きの対象になっている商品というのは、例えば二八%というのが、メーカーでこれは一万円と決めたものでしょう。それの二八%といえば、二八%というのは確かに値引きをされているわけですね。

 ところが、メーカーでは一万円ぐらいと思っているんだけれども、初めからここに、一万一千円と逆に高くなっていた、または、逆に九千円と安くなっていた、こういうことについて、不当廉売とかいっても皆さんの方の基準がないと、大体、書いてある上代が今自由なわけですよ、オープン価格といって。普通は、やはり国民の皆さんにこの値段というのは幾らだという基準があって安い、高いが判断できるんでしょう。初めからこの基準をなくしちゃっているんです。

 こういうことは、だって、廉売も何も値段をわからなくしているわけですよ。国民を惑わすことにならないですか。どうですか、これは。

山木政府参考人 家電製品につきましては、最近メーカー希望小売価格というものがつけられることが少なくなってまいりました。いわゆるオープン化というふうな言い方をいたしておりますけれども、ただ、それを、メーカー希望小売価格をつけるかどうかということにつきましては、それ自体はメーカー側の価格政策の判断でございますので、公正取引委員会がそれをつけろとかなくせとかと言うような立場にないわけでございます。一般的には、メーカー希望小売価格のあるなしについては、今お答えしたようなことでございます。

 ただ、先生御指摘のような広告の中で、メーカー希望小売価格が例えば十万円だ、真実はそうでありますけれども、メーカー希望小売価格が十二万円、うそを書きまして、その値引き幅を過大に見せる、安さを強調するといった問題になりますと、不当な表示ということになりますので、私どもとしてこれまで事件として取り上げたものもございますし、指導もしているところでございます。

 そういうことで、インチキな表示、不当な表示についてはしっかり対応をしていきたいということでございます。

中山(義)委員 そうすると、これは不当廉売じゃなくて不当表示になるわけですか、形としては。

 つまり、値段がわからない、初めから。この値段を、一万円のものを一万二千円だ、それを八千円にするから四千円値引きした、こういうのは不当表示なんですね。不当廉売ではないんですね。

山木政府参考人 そこの表示が本当に安いということでありましたら、不当表示ではございませんけれども、本当は安くはないんだけれども、安さを過大に表示しているということになりますと、不当な表示ということになります。

 それから、不当廉売の問題につきましては個別に判断しないといかぬわけでありますが、幾らで仕入れがなされておるか、仕入れコストが幾らかということが極めて重要でございますので、広告から不当廉売かどうかということを今直ちに判断することは難しいということでございます。

中山(義)委員 昔、売上税というのがあって、一物一価が原則なのに一物二価、三価になる、税金を入れると。そういうことがありまして、これは、そうなると、今言った値段がはっきりしないというのは、何を基準にして国民が買うのか。こういうオープン価格というのは、一応基準価格というのを出さない限りは、国民は値段が安いか高いかもわからないんじゃないですか。それの二八%引きだとか二八%ポイントをつけるといっても、何を根拠に国民が買っているんでしょうか。だからこれは、公正な取引というよりも、わからないわけですね。

 仮に、どこどこで売っているものを三割引きするとかと書いてあったとしますね。それは実際あるかと思って行った。行ったら、実はここに、チラシの掲載商品はチラシ作成時の在庫にて掲載しておりますので、この掲載してあるものが店舗によっては既に売り切れの場合もございますと書いてあるわけです。ただし書きが書いてある。言いわけがちっちゃく書いてあるんです、こうやって。

 こういうのは、では、不当表示と言えるんですか。これは法律違反とか全然そういうのないんですか。

山木政府参考人 例えば、数に非常に制限があるのにもかかわらず、行ったら実際の数には制限があるけれども無制限に、廉売をして顧客を誘引するといった、いわば商品をおとりとして使うような場合は、やはり先ほど申し上げたような不当な表示の一つの類型になることはございます。現実におとり広告といった形で問題にした例もございます。

 ただ、今ちょっと、先生の御指摘のものが具体的にどうかということについては、詳細に個別に調べなければいけないかと思っております。

中山(義)委員 さっきも委員長の話で、個別のあれがないのに何も言えないという話をさっきしましたね。だけれども、こういう資料というのはもう幾らでもあるわけですよ。やはり皆さんが本当に調査をしているのかどうか、我々も疑わしいわけですね。

 前にも、大畠先生初めずっといろいろな人がシリーズでこれを質問してきたんだけれども、次の委員会のときにあれどうしたと言うと、いや、行こうと思ったときにはもうセールが終わっていたとか、そういう話なんです、いつも。だから結局、これもやり得というか、結局は皆さんが一番問題にしているやり得なんですよ。何でもやり得なんです。

 だけれども、これを取り締まらない限りこういうことはなくならないわけですね。どうしたら取り締まれるんですか。どうしたら取り締まれるんですか。

山木政府参考人 私ども、決して放置しているわけではございませんで、具体的には、昨年の十一月、ヤマダ電機につきましては、いろいろ表示の問題点等の指摘もございますので、警告という措置をとらせていただいたわけでございます。

 いろいろ、昨今も問題の指摘がございますので、迅速、厳正を旨に対応していきたいと考えております。

中山(義)委員 警告とか、それから告発とか、こういうのはたしか公取さんしかできないんだよね。告発を、例えばこれに対抗する業者が、こういうことをしている、おかしいと裁判所に訴えたり何かすることは、対立している業者ではできないんですね。それをちょっと……。

伊東政府参考人 その告発が刑事告発ということでございますと、現在、不公正な取引方法につきましては刑事罰の対象になっておりませんので、告発という問題は起きてこないかと思います。

 確かに、カルテル等につきましては、これは公正取引委員会の告発をもって論ずるということになって、いわゆる専属告発ということになっておるところでございます。

中山(義)委員 ということは、やはり公取さんしかできないんですよ。

 何が抑止力なんですか、これをやるための。これはもう本当にやり得になっちゃって、今言った、公取以外、告発することができない。しかも、抑止力がないんですよね、何にも。

 では、どうやってこれをなくすようにしているんですか。そういう理念はないんですか。なくさなくてもいいやと思っているんですか。その辺、ちょっと言ってください。

伊東政府参考人 先ほどの答弁にちょっと補足させていただきますが、公取だけしか告発できないという、それがその違反行為を差しとめるという趣旨でございますと、もちろん私ども公正取引委員会もそういう排除措置等を講じますが、一方で、不公正な取引方法によりまして被害を受ける、あるいは受けるおそれがある者は、裁判所に差しとめ請求の訴えを提起することができるということにもなっているわけでございまして、必ずしも公取だけということではございません。補足させていただきます。

中山(義)委員 法律をそれで改正していけば、もっといい方法があるということがあるわけですよね。刑事罰、今ちょっとぽろっと出ましたけれども、刑事罰がないから。だから、刑事罰があれば告発することができるわけですね、まず。

 それから、もう一つの抑止力は、やはり罰金をかけられるということじゃないですか、課徴金。

 だから、こういうことに対してどういう認識を持っているのか、お聞かせください。今まで全然なくなっていないんで、やり得なんですから。そろそろ、こうしたら絶対できるというのを、まず公取の、それから民主党案でどうやってこれを考えているのか、責任を持って言ってください。

竹島政府特別補佐人 不当廉売につきましては、不公正な取引方法の一つとして罰則の対象にできないか、課徴金の対象にできないかというお話がございまして、我々も検討しました。前にも御答弁申し上げていますが、法律的な問題があります、構成要件の明確化というハードルが非常に高いものがありますと。そこで、今回は残念ながら刑罰とか課徴金の対象にはできておりませんで、これは引き続き検討させていただきますと。

 しかしながら、今回の改正では、不当廉売、優越的地位の乱用、そういうことをやって、やめなさいと言ったにもかかわらず同じことを繰り返した場合には罰金がかかるようなことは今でもありまして、それが、企業に対して、今三百万円以下でしかないものを三億円に、百倍に上げるという規定をしておりますので、同じことを繰り返す場合には積極的に告発をして、やめさせていきたいと思っております。

近藤(洋)議員 中山議員にお答えいたします。

 不当廉売行為や優越的地位の乱用等の不公正な取引方法は、委員御指摘のとおり、我が国の雇用の約八割、先ほど、企業数では九九・七%、そして貴重な技術、雇用を支える中小企業に致命的な不利益を与えていると私ども認識しております。大変大事な問題だと考えておるところでございます。

 こういう大変な問題にもかかわらず、現在、不当廉売や差別対価について、過去二十年間を見ても一件の審決もないという状況にあり、この問題について厳正に対処しなければならないとして、私ども民主党としては議論を進めてきたところでございます。

 具体的には、行政制裁金の適用範囲を排除型の私的独占にも広げていくことや、複数回にわたって注意や勧告を受けるような累犯的行為に対する行政制裁金の導入について、議論を進めてまいりました。内部では、行政制裁金の率を大体何%でいいのではないかというところまで参りましたけれども、政府案が提出されるという状況の中で、私ども民主党案としては、残念ながら、きょうのこの時点では法律という形にはなりませんでしたが、委員御指摘のとおり、刑事罰の対象にすることも含めまして抜本的に見直してまいりたい、二年以内の見直し規定の中に進めてまいりたい。また同時に、二年以内と待たずに、委員が先ほど御指摘されました不当景品類及び不当表示防止法、すなわち景品表示法、先ほどのチラシの件でございますが、このあり方も含めて見直さなければいけないと考えているところでございます。

 なお、先ほど政府の答弁を聞いていて奇異に思ったのですが、委員が御指摘をされましたアメリカの圧力ではないかということでございますけれども、明らかに日米構造協議の中で、独占禁止法が過去においてアメリカの意向を受けて刑罰を引き上げてきたというのは、これは歴史的な事実でありまして、そういったことを踏まえてきたので、現在のような、やや、やり得な、ゆがんだ独占禁止法になってしまっているという歴史認識を私ども民主党は持っているところでございます。

中山(義)委員 いや、本当に私たち、地域の商店街がおかしくなっていくものは、これはドン・キホーテの例、皆さんの方で調べ上げたものですが、平成九年では百億円しか売っていなかった、それが平成十六年では二千億円売っているんですよ。地域にどんどんどんどんできて、これは、どこが逆に売り上げを失って、こちらの売り上げに吸収されているかといえば、地域の商店街なんですね、みんな。

 そういう面で公正な、不公正でなければいいですよ。だけれども、今言ったような、何回も安売りをかけて、それも何か、非常に不当な広告や何かでつい行ってしまうとか、そういうものをつくったり、不当な廉売をしてここまで上がってきたということは、皆さんの調査でもある程度出ているんですね。出ているんです。

 この仕組みをちょっと申し上げましょうか。つまり、優越的な地位を利用して、仕入れ業者をいろいろ搾取しているというか、いじめているというか、そういうことをしているんですよ。

 例えば、こんなのがあるんですね。販売協力金なんというのがあるんですね。これはヤマダ電機さんですが、平成十五年では、売上高は九千三百九十一億三千七百万円、営業利益が百三十三億六千六百万円。それで、販売協力金というのが十八億六千五百万円、仕入れ割引が八十四億八百万円。

 もっとわかりやすい例を申し上げましょうか。コジマ電機さんの場合、四千七百六十一億五千六百万円で、実は営業利益が赤字なんです。七十四億四千六百万円の赤字なんです。ところが、販売協力金が、これは協賛金ですね、百十六億七千七百万円。差し引き、これはちゃんと利益が出る仕組みなんですね。

 というのは、いいですか、日本がアメリカにこれをやったら、一九一六のADに完全にひっかかるわけですよ。ダンピングですね、間違いなく。ダンピングでしょう、小売屋さんに卸す金額よりも安く売って赤字が出ているんですから、間違いなく。だけれども、結果的には黒字が出る。この仕組みでやられたら、真っ当に商売している人はかないません、はっきり言って。かないません。こういう仕組みを皆さんの方で許していたらば、地域社会、壊れますよ。三位一体だなんと言って、地域にいろいろ分権して、地方に何とか強くなってもらいたい、頑張ってもらいたい、こう言っているけれども、まるでうそですよ。地域社会をぶっ壊そうとしている。地域社会は、やはりさっきから言っているように、商店街の中には町会長さんもいたり、婦人部長さんもいたり、防災団、消防団、みんないるんですよ。我々だって、そういうところへ行けば、いろいろ選挙活動するとそういうことがよくわかるんです。だからこそ、地域の商店街を守ってくれ、シャッター通りにならないようにしてくれ、こういう話なんじゃないですか。

 だけれども、これ、こんな仕組みを残しておいていいんですか。赤字なのに黒字になる。つまり、この協賛金というのは、優越的な地位というものを利用して中小企業またはメーカーやなんかに圧力をかけて、例えば、ヘルパーをよこせ、おまえのところの従業員を連れてきて、おまえらが売れ、こういうことを言っているんだそうですよ。そうしたら人件費がかからないじゃないですか。我々がそんなことを言えますか、一般の小さな小売屋さんが。こういうことをやっているんですよ、現実に。

 だからこそ我々は、今、民主党案の中のように、課徴金や多少は刑事罰が必要なのではないか。刑事罰というものがあれば、外部からでも告発できるわけですよ、あの店はおかしいと。ところが、今は、我々がこうやって大きな声を出しているのは、公取にお願いしないとできないから、公取さんが告発しないとできないんですよ。だから、我々は中小企業の立場に立って言っているんです。自民党の先生方だって、みんなそうですよ。中小企業を支えに選挙に出られている方ばかりで、みんなそうだとうなずいていますよ。

 だから、皆さんにも正しい答えをいただきたい。それには、二年後にですよ、二年後に見直ししたら課徴金とこのいわゆる刑事罰を入れると言うのか、それとも、今回、我々がもし修正案で、ここは課徴金を入れる、刑事罰も入れる、こう言ったらば、どういうふうなお答えをしますか。その決意、ちょっとお答えください。

竹島政府特別補佐人 中山先生の御議論、この委員会でも前からいろいろと御指摘をいただいていますし、今回の法律改正でもその点は大変大きなテーマになったわけでございます。

 再三の御答弁で恐縮ですが、我々としても、それは真剣に罰金の対象、刑罰の対象にならぬか、課徴金の対象にならぬかということを検討したわけでございますが、端的に申し上げまして、法的構成要件の明確化という問題がございまして、ほかのカルテル、談合のように、個別の事情をしんしゃくするまでもない、これは違法で罰金だというものとは違うわけでございます、不公正な取引方法というものが。もう一概に、ぼんとそういうことで当てはめるわけには、機械的にはだめで、個別に見なきゃいかぬ、したがって構成要件の明確化が必要である、これをどうするのかという問題がまだ答えが出ていないということで、二年間かけて、この法律が成立した後、勉強させていただきたいということでございます。

 その間、何もしないのかと。そうじゃございませんで、ぜひここは御理解いただきたいんですが、我々としては、大規模小売業者について、態様も変わってきているし、先生御指摘のように、協賛金とか従業員の派遣とかいうことが、相手が納得してやっているんだったら、事前に決められてやっているのは構いませんけれども、そうじゃない、事後的に、協賛金を出せとか、従業員をどこどこに派遣せよ、その旅費は全部おまえ持ちだというようなことというのは、そのために安くなっているというものが何ら評価されるべきものではありません。したがって、これについては、こういうことをやれば違法ですよということが明らかになるような、大規模小売業者にかかわるその優越的地位の乱用の特殊指定をさせていただきたい。それによって迅速に処理しますし、現に、もうこのところ四件、警告ではなくて、法律に基づく排除勧告というものを出させていただいているというのはぜひ御理解をいただきたいと思います。

中山(義)委員 今、排除勧告したというんですが、例えば、入札やなんかでおかしなことをやれば、これはもう排除勧告されれば、入札指名停止とかなんかやられればもうすごい大きな打撃ですよね。だけれども、この場合は、それをやっても全然懲りないところに問題がある。(発言する者あり)そう。だから、その抑止力をつけるために、やはりここははっきり言って、もう二年後には、しっかり研究して、当然、課徴金や刑事罰は必要だ、せめて課徴金だけはかけます、二年ぐらい勉強したら必ずそれを、そういうものをつくり上げますとここで言ってくださいよ。私も、言ってくれなきゃ地元に帰れないですよ。

竹島政府特別補佐人 そこは、法律の基本にかかわるところがございますので、十分に検討させていただきます。

 まず刑罰がかかって、後に課徴金というのがこの法制度の筋でございます。したがって、刑事罰にもならないものを課徴金でいきなり、課徴金という不利益を科するということについては制約がございますけれども、いずれにしても、大事なテーマでございますので、きちんと議論をさせていただきたいと思います。

中山(義)委員 今の言葉は、はっきりそういう決意を述べたというふうに私はとっております。

 きょうは、保坂先生もお越しになっていて、地元では本当に中小企業が苦しいわけですね。ですから、私も声を大きくして、失礼はわかっているんですが、強い口調で言っているので、ひとつ、また中小企業を守るために、九九・七%が中小企業であるということを認識いただいて、やはり不公正な取引というのはまずい、常に優越的な地位にある大企業であるとか銀行であるとか、こういうものが庶民をいじめたときには、公取が許さないぞ、こらと言えるくらいの委員長になってもらいたい。

 終わります。

河上委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 それでは、引き続きまして、民主党の持ち時間内で質問をさせていただきます民主党の渡辺でございます。

 ちょっと、この独占禁止法の法案の審議に入る前にお尋ねをしたかったんですが、官房長官がお見えになるのが十一時半以降ということでございますので、官房長官が見え次第、また改めて、後、お尋ねをしたいとは思います。

 まず最初に、きょうは経済産業の副大臣がお見えでございます。これは外為法に関連して、北朝鮮の先般の日朝実務者協議が終わりまして、帰ってこられました。政府のデリゲーション、薮中局長初め帰ってこられて、証拠として、物証として持って帰られたものが今精査をされ、鑑定されているという中で、例えば、横田さんの写真が、きのうきょう、ずっと報じられておりますけれども、実は撮った写真がどこであるとか、あるいは、幾つぐらいのときで、こういう写真だ、中でも、その三枚の写真の中で一枚は、どうも太陽の角度から見て影の出ぐあいがおかしいじゃないかと。これは、どうも捏造されたというか、後から合成されたものである。これはよく為政者が使う手でございまして、かつて私も、そうした写真のトリックなんという本を読みますと、過去の時代から為政者が、いる人を消してしまったり、あるいは合成することでみずからのカリスマ性を高めたり、史実を曲げるということは常套手段として使われてきた手段でございます。

 こうしたことで内外の世論、日本国内の世論は高まってきているわけでありますけれども、先般来、私どもも、この北朝鮮に対する経済制裁の法案を日本として用意すべきだ、私も、提出者の一人としてやはりかつて答弁に立ったことがございますが、当然、今、国の、国会の内外でいろいろな声が高まっています。与党内でも、これは経済制裁を発動すべしじゃないかということが議論をされていることはもう御承知のとおりと思いますけれども、経済産業省として、外為法を所管する官庁として、この経済制裁ということに対してどのような今お考えを持っているか。

 後ほど、官房長官が来られればこの点についても政府の見解をお尋ねしたいと思いますし、当然のことながら、省内でこうした経済制裁発動に向けての発動手順とか、あるいは実施体制、その効果ということはシミュレーションをされているのではないかな、あるいは、もうその準備に入っているのではないかなというふうに思いますけれども、その点はどうお考えですか。

保坂副大臣 後ほど官房長官が参りますのでまた御答弁申し上げますが、御指摘のとおり、今来の日朝の実務者協議、いろいろ内外で御評価の異なるところもございます。しかし、現実的には、交渉はまだ継続中でございまして、経済産業省といたしましては、本年二月に議員立法で改正していただきました外為法、これは、現に我が国の平和と安全の維持のために必要があるときには輸出入等に対する規制を行うことができると明確に記されております。その精神を生かすべく、そういう機会も私はあり得ると思っておりますが、あくまでも、慎重にやることは、今交渉の過程であるということから、まず経済制裁先にありきでは、やはり交渉としては必ずしも好ましい方向に行くとは限らない、このような見方をしております。

 ただ、先生も、議員立法のときには大変御尽力をいただきまして、そういう強いバックアップを、声を受けて、私たちは処してまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 後半の質問で私が申し上げたのは、外為法の発動に向けての発動手順であるとか、やった場合の効果というのはシミュレーションをされていますか、その点について御答弁をいただけなかったので、再度、御答弁をいただきたいと思います。

 それから、慎重であるべきだということは小泉総理もおっしゃっていますけれども、交渉中である、しかし、対話と圧力といって、実際問題として、あの国は、日本という国は、最後まで、伝家の宝刀といいますか、スペードのエースは切ってこない。つまり、先ほどやり得という言葉が頻繁に出てまいりましたけれども、つまり、あの国はここまでやられても怒らない国なんだ、彼らはその手順すら考えてないのではないだろうか。一部では脅しを言っているけれども、もっと言ってしまえば、絶交だと言いながら裏で何か仕送りを送っているみたいな、何か、どこまで本当に本気なのだろうかという、姿勢が見えない。

 やはりそこを、私は、交渉中であるというならば、交渉をしていく上で、いや、本当に交渉をおかしくしてしまったらあの国だって本気になってくるぞという姿勢を見せることは、国家として当然のこと、まさに平和と安全、まさに国民の安全を考えた場合に、ここまでされておいて、我が国は、いまだに慎重であるべきだ、慎重であるべきだと繰り返している。

 その点について再度御認識を伺いたいと思いますし、今経済産業省の中で、発動した場合には、どのような手順なのか、あるいはどういうふうな効果があらわれるのか、その点については何らかの検討はされているんですか。その点、答弁がございませんでしたので、お尋ねします。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

中嶋(誠)政府参考人 先ほど副大臣が御答弁申し上げましたように、いわゆる経済制裁というのは、対話と圧力の基本方針のもとで可能な一つの手段であるというふうに考えておりますけれども、直ちに経済制裁ありきということではないと思っております。

 ただ、当然ながら、貿易管理当局といたしまして、日ごろから、我が国と北朝鮮との間の輸出入動向については十分関心を持って見守っているところでございまして、今後、北朝鮮が諸懸案について事態を悪化させるなど必要と判断される場合には、状況をよく見きわめながら、外務省などにおいて、政府全体として適切な対応ぶりについて検討、判断を行うことになるというふうに考えております。

渡辺(周)委員 ということは、まだしていないということで理解してよろしいんでしょうか。それから、先ほどせっかく副大臣手を挙げていただきましたので、お考えがありましたら、どうぞ。

保坂副大臣 ただいま局長の方から御答弁申し上げましたが、現実的には検討はしておりません。

渡辺(周)委員 それは、ぜひ検討を始めていただきたい。もちろん、省内で、どのような形でどう議論しているかということを詳細に述べろとは申しません。ただ、そうなったときにはいかなる効果があらわれるかということは、当然のことながら検討されて、何らかの形で、それは他省庁ともすり合わせして、どういう局面になるだろうかということは、当然これはやっておくべきだと思います。

 また、当然そうでなければならないということは、うなずいていらっしゃいますけれども、そのようにお考えでしょうから、ぜひそこは大臣とも協議をしていただいて、特に大臣は、いつぞやの答弁の中で、そのような可能性についても示唆をされておりました。かつて拉致議連の会長も務められていた方でございますので、それはぜひ省内で議論していただきたい、始めていただきたいなというふうに思います。

 この問題、もっとやりたいのですが、また機会を改めまして、別の委員会も含めまして、質問をしたいと思いますが、後ほど官房長官が見えたら、この持ち時間の最後でも御見解を伺いたいと思っております。

 独占禁止法のこの提出されました法律案につきまして、質問をさせていただきたいと思います。

 十七日の委員会でも、各委員から質問がございました。そしてまた、きょうも先ほど来から質問が繰り返されておりました。どうしても、法律の、いろいろ政府案、民主党案の違いについて、同じような質問が繰り返されてしまうわけでございますが、その中で最初に、これはちょっと国の方に聞きたいんですけれども、昭和五十二年以来の大きな改定がされるわけでございまして、行政上の措置として現行の課徴金制度が導入されて以来、社会的公正を確保するというふうに言われながら、違反行為を繰り返す事業者というものは少なくないわけでございます。それはもう皆さん御認識のとおりであります。

 例えば、カルテルそして談合、特に談合ということについて、本音で言えば、いろいろな方とお話をします。例えば業者さんたちとお話をしますと、これはある意味では、ちょんちょん括弧でいう日本型システムであると。日本型のシステムの中で、それぞれが仕事を発注する、調達をできる平等性のもとで、それぞれが仕事を受注して、何といいますか、それなりの、ちゃんとシステムの中で共存していけるんだというようなことを言う方もいます。もっと言えば、必要悪であるというような言い方をされる方々も、もちろんこれは私のみならず皆さん方も、実はそういう声をどこかで聞いているのではないのかなというふうに思いますけれども、どこかそこに、我が国の中で、例えば自由で公正なといいながらも、自由に本当に競争を進めてしまったら、力のあるところ、大きいところは、どんどん大きくなって、そしてまた大きな仕事を受注できる。自由が過ぎると、今度は逆に公正でなくなるんじゃないか、その結果の不公正が生まれてくるというようなことも指摘する方もいるわけでございます。

 そうした中で、日本のシステムの中で、今どうやって、法律を改正していくだけでなく、ここでやはり事業者の意識でありますとか、もっと言いますと、例えば地方の官庁が公共調達をする上において、どうしても、例えばですが、予算を、決められた額がある。この予算というものを年度内に適正にといいますか、できるだけ予算額に沿った形で執行しなきゃいけない。そうしますと、できるだけ決まった希望価格といいましょうか、この価格というところで、近いところで落としてもらわないと、一億円で出す仕事が半分ぐらいで仕事をされてしまうと、これは、役所側といいますか、発注者側を経験した方から聞いた言葉ですが、例えば、安かろう悪かろうということがまず一つ起きてくる。それから、予算が、決まった額を適正に執行できない。適正というのはどういう意味かといいますと、限られた予算を消化することができない。

 となると、ある程度、これぐらいでやってもらいたいなというところで落としてもらわないと、予算が消化し切れないと、翌年度のが、単年度主義ですから、地方のいろいろな査定の中でこれはやはり減額されるわけですよ、予算カットされる。そんなにたくさん要らなかったじゃないかということになるから、もうできるだけ決められた額内で、これは事業執行もしてもらいたい。

 ということの考え方が根底にあると、正直いって、発注者側も、どこか決められたところで、この辺で落札をしてほしいなと。そうすると、この仕事ができるのはどことどことどこと、今回はどこでやればというようなことが、これは長年の慣習の中ででき上がっちゃっているんですよ、地方の官庁なんか行きますと。そうしますと、一概に談合は、そうはいっても、言われるほど悪なのかということを言う、本来ならば、公正さを守るべき発注者側の中に、何といいますか、容認をしているような気配もあるわけでございます。

 そうしますと、この法律のみならず、今まで積み重ねてきた日本型の、まさにちょんちょん括弧でいうシステム、その意識、これは発注者側も含めまして、実際発注者側にそういうふうな意識があるから官製談合というものが起きるわけであります。当然、これは官製でなかったら談合というのは起き得ないわけでありまして、この点を考えたときに、公正取引委員会としては、この法律案のみならず、この今の日本型の社会風土をどうしていくかということについて、どのようなお考えを持って法律を出されたのか。

 また、改めて民主党にも、そういう現実があると、もしかして知らない、あるいは知っているよというお立場で皆さん方いらっしゃると思いますので、ぜひその辺について、だからこそこういう法律を出したと、その背景にあるお考えとか理念とか哲学、それを双方に伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 今、先生具体的な、特に地方自治体に関係づけられてお話がございました。そういう実態があるということは、私も、長年役人をやってきておりますから、聞いたことがございます。

 問題は、やはり、その日本型というものが、この独禁法が目指す世界とは別なものであるということだと思うんです。今までそういう形でもって使い分けられていたという面があるわけですが、私は、それをやはり、表と裏は一致させていただきたい、建前と実態は一致させていただきたいという思いでこういうことをお願いしているわけでございます。

 今の話は、予算執行の問題であるとか、おっしゃるように、仮に一億のものが七千万で済んだら、三千万は、今の予算制度でも流用ということはできますから、そうであればもっと延長すればいいわけでございますので、幾らでも財政資金の効率的な利用というのはあるわけでございまして、それを、そういうものだと、昔からそういうふうにやってきたんだと、よってもって官製談合になるんだというのでは、これは我が国の進歩はないと思います。

渡辺(周)委員 もちろんなんですよ、我が国の進歩は。ただしかし、それが現実としてあるということは、長年お役人を経験された中で、ある。

 その点について、だからこそ、その事業者団体とか地方の官庁も含めて、今、確かに入札のいろんな取り組みをされています。入札改革をされているところ、実際、取り組んでいるところもたくさんあります。それも百も承知でございます。ですから、だからこそ、そういうところに対してでも、公正取引委員会はもっとこれは啓発といいましょうか、意識を変えていくということにも取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 ごめんなさい、民主党の答弁の前にちょっとあれしましたけれども、もし民主党の答弁の後で何かございましたら。

    〔高木(陽)委員長代理退席、委員長着席〕

村井(宗)議員 渡辺周議員の質問にお答えします。

 民主党は、今回抜本的な対策の法案を提出しました。今、渡辺周議員がおっしゃられたような問題意識を持って、自由で公正な経済社会をつくる、市場の番人にふさわしい組織、法体系を整えなければならない。私たちはそういうふうに考えました。今の、従来のゆがんだ法体系を改めなければならない。民主党は、措置体系の考え方を全面的に変更することを提案いたします。

 従来の課徴金制度、これは不当利得の剥奪を論拠としていました。だから、個々の事件の重大性、悪質性に対応できない硬直的な制度でした。だから、違反行為に対する抑止力が不十分だったんです。私たち民主党は、本法案において、違反行為に対する抑止力を強化するため、事件の重大性、悪質性などや違反事業者による自主申告、そして違反事業者の法令遵守体制の整備などに応じて、それを課徴または減免する柔軟な制度をつくります。

 したがって、従来の課徴金の制度を、違反行為を抑止する観点から抜本的に改めるとともに、不当利得の剥奪を超えた行政上の制裁としての性格を持つものであることをその名称においても明確化する観点から、課徴金の名称を行政制裁金に改める、そういった法改正を提案いたします。

竹島政府特別補佐人 官製談合に関しましては、せっかく議員立法で官製談合防止法が制定されまして、昨年の一月から施行されております。我々はそれをもう最大限活用させていただきたい。そのためにも、今回お願い申し上げております課徴金減免制度とか犯則調査権限というものをぜひいただきたい。その上で、官製談合についてはもう厳正に摘発をしてまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 とにかく、かつてから、公正取引委員会は市場の番人だと言われながら、ときにはやゆされて、ほえない番犬だと言われるような不名誉な言われ方も過去されてきたわけでございます。

 その点について、ちょっとこの後また質問しますけれども、今官房長官がお見えでございますので、官房長官が到着される前に、今経済産業副大臣からも御答弁をいただきました。いわゆる日朝の実務者協議、この結果を受けて経済制裁を検討すべき、あるいは発動することはいかなるものかというような声が国会内外でも高まっている。与党の中でももちろんそうでありますし、超党派の議連の中でもそういう声が上がっている。また、拉致被害者の家族会を含めて、各界から上がっているわけでございます。

 なかなか官房長官にこうして御質問させていただいて、御答弁いただく機会がないので、この機会に質問をさせていただきます。

 経済産業省では、省内では、外為法発動、この経済制裁発動に向けての手順であるとか、実施体制、あるいはその効果についてはまだ検討されていないというようなことを先ほど御答弁されましたけれども、政府として、もちろんこれから持ち帰られたさまざまな物証を鑑定して、その後どうするかとか政府内で協議をされることになると思いますけれども、やはり今後、北朝鮮と対話を続けて、それでも対話を続けていくという中で、この経済制裁という二つの法律が用意されている中で、官房長官、どうお考えなのか。今回の結果を受けまして、御答弁いただきたいと思います。

細田国務大臣 この問題につきましては、国会におかれまして、与野党非常に大多数の賛成をもって法改正が行われたわけでございます。そして、その効果として、非常にこれは圧力効果があるというふうに認識しておるわけでございます。

 そして、何よりも、日朝の交渉におきましては、拉致の問題、そしてまた安否未確認の方も含めての問題、それから核問題ということで、その他ございますけれども、非常に大きな問題について協議を行っているわけでございまして、このたびの調査結果、今持ち帰っておりますが、相当膨大な資料が提供されております。しかし、問題の核心に本当に触れているかどうか、今の段階ではいささか疑念なしとしないわけでございます。

 もうちょっと精査をいたしまして、また政府としての今後の方針を決めてまいりたいと思っておりますので、この制裁措置の発動というところまでの考えは今ございませんけれども、これは、最も効果的な、対話と圧力という考え方に何がベストかということで、問題は日朝のこの問題を解決するということでございますので、そういった観点で取り組んでいきたいと思っております。

渡辺(周)委員 それならば、ぜひ、各省庁、特に、先ほど経済産業省はまだ検討していないということですので、これは別に、先ほど申し上げたんですが、どういうふうにして、どういう結果が出そう、だから今こういう詳細な検討結果を見せろとか、あるいは検討結果を途中報告せよと、まだそこまでもちろん進んでいませんし、我々も、これはある意味では機密を要する部分に当たるかもしれませんので、その辺は配慮しながら見守っていきたいと思いますけれども、そういう意味では、どういう、与党の中では五段階の、特に自民党の中では五段階の経済制裁の段階がある、その効果やいかにということも検討されていますが、これは各省の中でも、せめて、やはり机上でシミュレーションしておくべきじゃないでしょうか。その点はどうなんですか。それを指示されるお考えはありますか、そういう形で指示を出すと。

細田国務大臣 与党側で、特に自民党の中でそういう議論が相当詰めて行われていることは承知しております。

 政府の中におきましては、まず交渉を行いまして、そして外交上の成果を得ていかなきゃならないということを第一目的にしておりますから、今の段階で、そこまで、何段階でどうしたらどうなるだろうというような議論を指示はしておりませんけれども、そういった議員立法で提示された、議員の皆様の中で、あるいは与党、野党の中でそういった議論が行われることは、我々としても貴重な御議論だと思っております。

渡辺(周)委員 きょうは本題はこれじゃございませんので、もう時間がなくなってしまいますけれども、ぜひ、官房長官に、もし、伝家の宝刀、スペードのエースを抜いた場合、切った場合、どうなるであろうか、それはやっておくべきだと思うんです。だからこそ、抜いたときの後のことを考えて、やはり持っていなかったらば、それは、もうちょっとしてから、そのときになって考えるではなく、ときには、私は、外交交渉の中で、やったらこういうことになりますよと。おたくから輸入をしている、輸出をしている、あるいはおたくの国に送金をされている部分がどれぐらいある、万景峰号で届け出を受けて運んでいるものがこれぐらいある、それぐらいの物資が例えば北朝鮮国内に入らなくなる。第三国経由で金を送金する、あるいは輸出入において北朝鮮からの輸入をとめた場合に、こういうふうな打撃を受けますよということは、これは我々も、かつてその法案を審議するときに出しましたけれども、そういう事例を挙げながら、日本と北朝鮮の貿易額、輸入額と輸出額を、過去さかのぼってわかる限り調べます、いかなることになるだろうかということもデータとして示しながら議論をいたしましたので、これは政府としてもぜひ着手をしていただきたいと思いますが、最後に一言伺って、また独禁法の質問に戻りたいと思います。いかがですか、官房長官。

細田国務大臣 貴重な御意見でございますので、与党、野党の御議論を承ってまいりたいと思います。

渡辺(周)委員 それではまた、質問が途中になりましたので、またもとに戻ります。

 先ほど来、この法案の中で、与党案と民主党案の違いについて私も随分勉強させていただきました。そんな中で、措置減免制度についてお尋ねをいたしますけれども、つまり、初めてこの制度が日本の法体系の中で盛り込まれます。そうしますと、先ほど竹島委員長もお話ありましたけれども、あるところが抜け駆けをして、何だと。あそこだって今までいい思いしてきたくせに、今回になって急に手を挙げて、実はこういうわけでございます、我が社はこういうことをやっておりますということが、まさに先ほど来、日本的システムという話をしているんですけれども、果たしてその実質的な効果が欧米で言われているほど上がるのであろうかということが、一つ疑問として残ります。

 それから、この制度において、当然、措置減免制度をどのようにして受け入れるかということもあると思うんです。例えば、公取に来られた、ある窓口の方に会って話をして、調書といいましょうか、いろいろな一連のことを事実を述べた、それがある程度調書として上がった時点で受け付けたというのか、それとも、あるいはメールか何かで送った場合もあると思います、あるいは手紙にして内容証明で送る場合もあると思うんですね。例えば、そういうものによって、順番を考えれば、だれが一番であったか次であったかということで、当然時間差が生じてきますし、もう一つ言えば、早く言ったことがいいのか、それとも内容の、コンテンツといいますか、中身が非常に重大な証拠である、決め手となった、言えば、とどのつまりとどめを刺したという中身の重きをもってある程度判断することもあるんじゃないだろうかというふうに思いますけれども、何せ、こういう制度の導入というのは我々ちょっとイメージしづらいものですから、その点について政府と民主党、どのようなイメージを持っていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 一番目の者をどういう基準で一番目と判定するか等々、詳しいことはいずれ公正取引委員会の規則を定めますので、その中で関係者の意見も十分に聞きながら定めていきたいと思っておりますが、肝心なことは、早い者が優先されるということでございまして、何もない情報じゃ、これはもちろん意味がないわけでございますが、全部そろえてこれだと決め手になるようなものを持ってくるというのは大事ですけれども、それもさることながら、より大事なのは、早さでございます。それで、それ以降きちんと当局に対して誠実に協力をするということが大事なところでございます。

計屋議員 お答えいたします。

 この措置減免制度は、ある意味では内部告発ということにつながるわけでございますけれども、この件については、政府案においても違反行為に係る事実の申告による課徴金の減免制度を導入しようとしているが、本法案はそれに加えて、違反事業者の法令厳守体制の整備や、入札談合等関与行為に係る事実の申告により最大五〇%まで行政制裁金の減額を行うこととし、事業者が違反行為をやめた後のコンプライアンスの取り組みを正当に評価することにより、事業者自身による違反行為の再発防止を図ることと、また、立証が困難な官製談合に関する情報及び証拠の収集を容認することにより、官製談合に対する抑止力の強化に資することを目的とするものであります。

 具体的には、調査開始日前に、単独で、最初に違反行為に係る事実の申告を行った者には行政制裁金を免除し、二番目に行った者には行政制裁金を五〇%減額する措置であります。

 二つ目は、調査開始日前の公正取引委員会規則で定める期日以後において、法令の規定を遵守するための政令で定める基準に適合する管理体制を有している者には、行政制裁金を最大三〇%減額する措置であります。

 また、第三番目として、調査開始日以後の公正取引委員会規則で定める期日までに、単独、官の談合の違反行為及び当該違反行為に関する入札談合等の関与行為に係る事実の申告を行った者に対し、行政制裁金の二〇%を減額するという措置と規定したわけでございます。

 そしてまた、政令で定める基準の具体的な内容としては、代表取締役が従業員等を法令遵守の取り組みに参加させるために積極的に関与していること。二つ目は、法令を遵守するために必要な業務を担当する組織等が設けられていること。三つ目は、従業員等が法令を遵守するための行動基準を作成され、その内容が従業員等に周知されていること。四番目は、法令違反に関与した者、また行動基準に違反した者に対する懲戒処分等の措置を定めた規定が整備されていること。五つ目としては、従業員に対する研修等の違反行為の再発防止等が継続的に講じられているということでございます。

 また、先ほど渡辺議員の、この官製談合で、必要悪だというような話もございましたけれども……(渡辺(周)委員「いや、私がそう言っているんじゃないんですよ、そういうことを言う方がいるということです」と呼ぶ)言う方もいるということでございますけれども、独禁法というのは悪いことをする人を懲らしめよう、そういう制度でございますので、やはり底辺で働く人にしわ寄せが来るということが言えるわけなんですよ。

 ですから、そういうことから考えてまいりますと、私どもは、例えば談合におきましても、例えば電気の工事、あるいはさらには警備業という人を派遣するとか、あるいはビルメンテナンス業界でいう管理という人を派遣するという、そういったような部分においては、これはそういった競争、公正かつ競争をさせるということにおいても、やはり最低ラインというのを設けて、そういう弱いところにしわ寄せが行かないように考えていかなきゃいけないというふうに考えております。

 ですから、こういう中小企業に対するコンプライアンスということについてもしっかりと私どもは措置をとっていきたい、こういうふうに考えております。

渡辺(周)委員 先ほど来、いろいろな質問の中で出てきます、まさに今回の法律は、これは政府案も民主党案もそうですが、措置減免制度、この制度が一つ大きな、画期的な点でございます。

 その中で、民主党にお尋ねしたいんですけれども、この行政制裁金、課徴金を民主党案では行政制裁金とするという中で、減免調査官という方を新たに登用していくというようなことがございますけれども、ちょっとイメージを教えていただけますでしょうかね。行政制裁金減免調査官、これは非常にわかりにくいといいましょうか、何となく理解されない部分もあると思いますので、その点についてわかりやすく。どうぞ簡潔に、時間がないので。

近藤(洋)議員 お答えいたします。

 行政制裁金減免調査官は、措置減免制度をある意味客観的な立場で判断できる、イメージでわかりやすく言いますと、アメリカにおける独立行政調査官のような、審査官というんでしょうか、のようなイメージであります。ただし、公正取引委員会の中の職員ではございます。具体的には、裁判官の経験者、法曹経験者のような方を想定しておりまして、公正取引委員会の職員ではあるけれども、半ば独立して公取内の減免状況についてチェックをするということでございます。

渡辺(周)委員 ぜひそういう制度の中で、まさに法律の専門家がちゃんと調べて、そういう制度が本当に導入されれば、本当にまさに公正になるのではないのかなというふうに思います。

 時間がなくなってしまいました。用意した質問が全部できませんので、ちょっと公正取引委員会に公正取引委員会というものについて実は御質問をしたいのでありますが、これは一つ公正取引委員会を象徴する出来事として残念なことがございます。

 それは、質問の通告にはございませんが、ことし、例のプロ野球の参入をめぐっていろいろごたごたしました。今はちょっと、西武であるとかダイエーであるとか、身売りするとか株を売却するとかという話の方に行っておりますけれども、元公取の委員長だった根来コミッショナーが、野球界最高の権限を付与されていながら、ああした中で、新規参入を希望する企業が球団を持ちたいといって参入をしようとした、ところが、そこにいる、ずっと今までいた長老たちの一言二言によって、なかなか参入というものが認められなかった。つまり、チャンスすら与えられなかったではないかという中で、このコミッショナーという職は一体何だと。コミッショナーという方の前歴を調べたら、実は、公正取引委員会の委員長であったということだったんですね。

 これは、あの一連の中で随分お気の毒な目に遭いました。私もあそこのプロ野球機構へ行って、仙谷政調会長たちとお目にかかってお話ししたんですけれども、言いたいことの半分も言えなかったのか、余り御関心がなかったのかわかりませんけれども。

 そうしますと、公正取引委員会の委員長ですら、実は、こういう聖域とされてきた先ほど来の日本型システムの中では、できないじゃないか。つまり、公取とは一体何だろうかというようなことを、残念ながら、やはりマイナスのイメージを伝えてしまったんですね、大勢の今まで関心がなかった方に、今回の野球の一連の騒動を通して。

 そんな中で、公取として、今回のこの野球界一連のことについてどのような御関心を、まずそういう聖域があったんです、聖域が。それは今いろいろなことを法律の中で議論している、だから、こうしなきゃいけないと言うけれども、公取の委員長ですら手を出せなかったようなことが、実はああいう大きな社会があったということが、聖域とされている社会があったということは、実は、今回明るみに出て、大分、今、中の改革をしようということでいろいろ出てきていますけれども、まだまだこうした部分が残っているんですね。例えば、地方の公共調達の部分だけじゃなくて、あるいは企業のやっている経済活動のみならずですね。

 その点については、委員長、どういう御感想を持っておられるか、あるいは公取として何か取り組まれてどういう関心を持たれたのか、最後にお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 私はあくまでも公正取引委員会の委員長でございまして、コミッショナーとは、もちろんコミッショナーはコミッショナーの権限で仕事をしておられるわけでございまして、全く関係はないわけでございますが、今回のプロ野球の今御指摘の問題について我々として関心を持っておりましたのは、新規参入の問題でございます。

 プロ野球でございますから、当然数を制限する。十二球団なら十二球団、十球団なら十球団に制限される、それで、かつ資格を審査される。これは当然のことでございますが、その当然の資格審査を超えて、説明のつかない、要するに、正当な理由なく新規参入の条件を加味するというようなことがあれば、これは独禁法上も問題になり得るという問題意識で見ておりました。

 具体的には、六十億円、三十億円などというのは、そういう我々の注意を引く問題であったわけでございます。その後、機構の方で自主的に改正をされまして、お金の趣旨も額も変えられたということでございます。

 その後、御案内のようなことになっておりますので、私どもとして、今プロ野球について独禁法上これが問題だということを、きょう現在は思っておりません。

渡辺(周)委員 時間が参りましたので、この話はもうちょっとしたらもうちょっとおもしろかったんじゃないかなと思いますけれども、でも、こういうことが実は日本社会の非常に一つの象徴的な出来事としてあったということは、これはやはり大きな教訓といいましょうか、一つの露見した現実だったと思います。ですから、関係ないなどと言わないで、さまざまな分野においてやはりこういう問題があるということ、この法律の審議を進めていく上ではこれは一つ重要な示唆だったと思いますので、その点についても、ぜひ公取としても毅然とした態度あるいは重大な関心を持ってアンテナを高くしていただいて、今後、法律の審議とあわせて活動されていかれますようにお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河上委員長 次に、奥田建君。

奥田委員 民主党の奥田でございます。

 独占禁止法改正、二十五年ぶりだというお話で、大改正だということを皆さんおっしゃっています。ただ、私は、この出てきた改正を見ていると、その前の独禁法の適用除外をがばっと除いたそのときの方が、もしかしたら大胆な決断じゃなかったのかなということを思いながら、この法案の改正を見ております。

 大きな骨子として、皆さんおっしゃっているように、課徴金の強化、減免制度、そして犯則調査権、審判手続の見直しというものがありますけれども、私の方は、今回扱われなかった、ちょっとここで、本当は問題意識があったんだけれども改正の中で抜け落ちてしまったんじゃないか、あるいは法律が違うということもあるかもしれません、そういった点についてお尋ねをしたいと思います。

 その前に、官房長官がお忙しいということで、ちょっと質問の順番を変えて、官房長官に先にお尋ねしたいと思います。

 私の前の前、渡辺周議員の前に中山義活先生が、不当廉売、今、電気屋さんであるとかあるいは酒屋さんといった中で、仕入れ価格より安い値段で販売している、あるいは優越的地位を使って協力業者に協力金を出させたり、あるいは労務提供してもらっている、それは幾つか公正取引委員会の方でも勧告ということはされているんですけれども、なかなかそれが抑止力がない、同じことが繰り返されている、そういったお話がありまして、公正取引委員長の竹島さんの方からも、刑罰があれば課徴金という形のことを考えられるとおっしゃいましたよね。刑罰がないから課徴金がかけられないんだということもおっしゃっていました。

 私どもとしても、そこのところを何としても抑止力を持たせたい。あるいは、これは継続的な不正取引の部分が不当廉売ですけれども、今度はとんでもない大きな金額のものに対して一発勝負でダンピングということも行われている。これに罰金をかけろとは言いませんけれども、これを排除することもなかなか法のもとではできない。ここの部分は、やはり、いろいろな社会が回っている、中山議員の言葉をかりれば、不当廉売なんかは町の商店街を淘汰していく、そしてコミュニティーが失われていく。また、ダンピングなんかでいえば、粗悪な品物ができたり、安全を確保できなかったり、あるいは協力業者の方々に不当に無理を強いることになっていく。そんなことは確かめなくたってすぐに推測できることです。

 独禁法の中で何とかしてこの部分に抑止力を持たせたい、不当廉売とダンピング、指摘はされてもとめられない、このことについて官房長官のお答えを聞かせていただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 済みません、先ほど官房長官がおられなかったと思いますので。

 まず、刑事罰がなければ課徴金はできないということを引用されましたけれども、それはそういうことなんです。

 問題は、優越的地位の乱用にせよ不当廉売にせよ、これを刑事罰の対象にできるかという問題が非常に大きな問題としてあるわけで、その理屈は課徴金の対象にできるかということと共通するわけでございますが、これはカルテルや入札談合のように、先ほども申し上げましたけれども、言ってみると、個別事情をしんしゃくすることなく違法だと言っていいものと、そうじゃなくて、不当廉売とか優越的地位はそうはいかない。十把一からげにはいかないわけでございまして、そうすると、構成要件というものをどう明確化するかという問題がありまして、これがなかなか答えが見出せないというのが現状でございます。

 したがって、今回の改正では見送らざるを得なかった。引き続き、向こう二年間かけて抜本問題を検討するということになっておりますので、その中で今の問題は検討させていただきたい、今答えが見えているわけではございません。

細田国務大臣 奥田議員がおっしゃるような実態がどんどん進みまして、社会的に大きな問題がふえていることは事実でございます。

 私も閣僚になる前にも、いわゆる商工部会といいますか、経済産業部会等の議員としての活動の中で、非常に差別的対価があって、大きな問屋さんには小売価格よりも安いような、例えばビールのようなものが供給されている、これじゃ酒屋さんがやっていけないじゃないか。家電にしてもそうですが、そういういろいろな問題があって、一言で流通革命と言ってしまえばそれまでだし、従来の公正取引委員会の感覚だと、いや、安ければ国民経済的にいいんだから、プラスなんだから、まあいいじゃないですか、つり上げるようなことはいけないけれども、というような感覚では、もうとてもだめだぞと。特に、このデフレ時代の過当競争時代において適正な競争が行われるように、特に不当廉売、優越的地位の乱用等、もっとしっかりやるべきだという議論をさんざん私どももやってきました。まさに、そういう問題意識を持って、公正取引委員会も大分対応の態度とか中身も変わってきたとは思います。

 そこで、刑事罰あるいは罰則の面におきましては、社会の実態がどんどん変化しておりますので、こういうものは実は指定ということで類型を設けて、その中で次々に対応するような格好になっておりますので、法律的にどうも罪刑法定主義その他の観点から難しいんだ。つまり、類型を次々に実態に応じて追いかけるという仕組みと、それから法的な罰則を担保するということが、法律的に見ると相矛盾したような側面があるものですから、非常にそこが法律的には難しいという側面があるわけです。

 それが今委員長が答弁したことではあろうと思うんですが、それだけで今の社会的問題が足りるのかという問題もございますので、公正取引委員会も、先ほど委員長が答弁しましたように、いろいろな側面から検討する必要があって、問題点を整理すべきである。これは独禁法始まって以来の大問題でございますけれども、私どももそういう問題意識でこの問題をとらえてまいりたいと思っております。

奥田委員 ありがとうございます。

 あと、お帰りいただいてもいいですけれども、きのうもニュースで多く流れておりました三位一体、もう一年おくれちゃっているから一体じゃなくなっているとは思いますけれども、閣議決定をして地方にお渡ししたバトン、地方から返されたものをぜひ真摯に受けとめ、まあそう言ってはいただいていますけれども、ぜひ結果で頑張ったなと言われるものを残していただきたい。来年度の予算の案まで時間がありませんので、早くお帰りいただくかわりに、そこの部分をぜひしっかりやっていただくことをお願いしまして、細田官房長官への質問を終わります。ありがとうございます。

 本題に戻ります。

 先ほど独禁法の歴史を語った方もいらっしゃいました。私の知っている感覚で言えば、戦後の民主的な経済をつくり上げるためにできた法律だと聞いています。これは独禁法が云々ではなくて、しかし、でき上がった今の社会は、一言で言えば官製社会というものができ上がってしまった。

 そういうところを一つの問題意識として、私の方では公共調達、独禁法のいろいろな扱う範囲が広いなというのも、今回改めて公正取引委員会の仕事を見させていただいて、本当に幅広い、そして日々刻々と経済やビジネス、仕事のやり方が変わっていく中で、常に新しいやり方、法のすき間を縫ったようなもの、あるいは完全に法に違反しているようなもの、なかなか判断しがたいものが多くあるということもわかりましたけれども、今回は公共調達、官がかかわってくる部分をまず最初に尋ねていきたいと思います。

 一番大きいのは、官製談合防止法、あるいは入札適正化法といったものも近年出ております。まず最初に、アウトラインとして、公共調達、この規模というのはどのくらいのものなのかお尋ねしたいと思います。

伊東政府参考人 お答えいたします。

 公共調達全般ということになりますと、公共工事だけでなく、さまざまな物品、役務の購入を含むために、公正取引委員会がその規模につきまして正確な数字をお示しすることは難しいわけでございますけれども、まず、国及び公団の官公需の総実績額ということで見ますと、平成十五年度は十兆五千億円ということでございます。

 次に、地方自治体につきましては、歳出内訳で見てまいりますと、平成十四年度の場合、都道府県でございますと、義務的経費を除いたものが約二十七兆円、市町村につきましては、同じく義務的経費を除いたものが二十八兆円ということになっております。

 以上でございます。

奥田委員 それだけの、公共調達という部分だけでも大きなものがある。多分契約件数にすれば何十万件という契約が一年の間に行われているのだと思います。そして、今お聞きしたお話を大体まとめると六十五・五兆、単純な足し算でいいのかわかりませんけれども、そういった数字になってくる。今、公正取引委員会も問題意識を大きく持っているものの中に、官製談合というものがございます。そして、いろいろと資料を求めましたら、やはり公正取引委員会も公共調達について問題意識を持っていらっしゃる。

 昨年の資料では、「公共調達についての視点」、副題として「入札談合防止の観点から」、こういった資料が出てまいります。これはことしの方かと思いますけれども、「公共調達における競争性の徹底を目指して」、これは去年ですね、去年の末です、失礼しました。こういった資料が出てまいります。

 こういったところでいろいろなことが書かれておりますけれども、最初に出てくるのが、問題意識として、「いわゆる「天の声」による談合が少なくない。」これは公正取引委員会さんの資料ですよ、あるいは「現行の公共調達の制度・運用は、談合を招きやすいものとなっている。」これはどちらの資料にも一番はしりのところに出てきて、そこからいろいろな現状や考え方、あるいはこれから取り組んだらどうだということが出てきている。

 まず、今、ここの資料の中からでも結構ですから、この公共調達について、公正取引委員会さんとして、どのような問題意識でどのような改善に取り組もうとしているのか、そのことをお聞かせください。

伊東政府参考人 公共調達の問題につきましては、公正取引委員会としまして、昨年六月から公共調達と競争政策に関する研究会を開催いたしまして、その報告を十一月に報告書として取りまとめたところでございます。

 この研究会は、公共調達においても民間における調達と同様に、より安くよりよい調達、すなわち最も価値の高い調達が行われることが必要であるとの基本的な考え方に基づきまして、公共調達におきます一層競争的な環境の実現を図るために、公共調達の入札契約方法等の改善のための方策について検討を行ったものでございます。そういうものも含めまして、競争政策の観点から、公共調達の問題についても取り組んでおるということでございます。

奥田委員 官製談合の防止法も、まだできて間もないわけです。そして、公正取引委員会も、今お話ししたように、公共調達について間違いなく問題意識を持っていらっしゃる。でも、前回の質問の中でも、それが適用されて罰則を受けたのは二件だというようなお話もありました。なかなか、どんな仕事も、はっきりと証明するということが難しい中での仕事ではありますけれども、やはり問題意識がありながら、本気になって取り組んでいるのかと言われてもおかしくない数字でもあるかというふうに思います。

 きょうの質問は、公共調達を言いますけれども、私は、公正取引委員会さんの仕事は、ある意味一つの契約や仕事が終わってから後、後ろから追っかけて摘発していく、証明していくという仕事だと思います。それももちろん大事なことですけれども、やはり制度運用に問題があるのであれば、この制度運用を変えていってそういうことが起こり得ないようにするという努力がどれだけ行われているんだろうか。それは公取さんの仕事じゃないとおっしゃるかもしれないけれども、公取さんが一番よく見ているところだと思います。入り口で未然防止ということができれば、それにこしたことはないわけであります。

 公取さんの方に、いろいろな全国の、あるいは各省庁の談合やいろいろな不祥事がないようにするための指名や調達の工夫、あるいは現状を教えてくださいと言いましたけれども、各省庁が独自にやっていることだから各省庁に聞いてくれと。それじゃやはり根本解決ができない。

 きょうは、そういう契約が一番多い国土交通省さんに足を運んでもらって、国土交通省さんの取り組みを聞かせていただきたいと思います。

 国土交通省さんも、入札契約の適正化に関する検討委員会、これも入札の適正化法の後かな、その前後かな、そのくらいからできている委員会だと思いますけれども、立派な資料を持っていらっしゃいます。国交省さんの中での公共調達での不正行為防止のための取り組み、このことを教えていただきたいと思います。

中島(正)政府参考人 公共工事のマーケットでは、大変残念なことではありますけれども、談合でありますとか贈収賄、一括下請、いわゆる丸投げでありますとか、近年特にふえておると思いますけれどもダンピングのようないろいろな問題が起こっておりまして、このためにさまざまなことを、大きく分けますと、不良、不適格な業者を排除するためのチェックみたいなことを強くやる、そういう側面と、あとは、入札契約制度そのものを透明性、公平性、競争性というような観点から不正が起こりにくいようにしていく、さらには、何かあったときのペナルティーを強化するというようなことを中心にやってまいりました。

 特に、平成六年度から一般競争を導入しまして、その後、入札監視委員会の設置でありますとか電子入札とかいろいろなことをやってきましたが、とりわけ平成十三年から、今先生御指摘のありましたように入札契約法という枠組みができまして、これですべての公共発注者に共通した義務を課して、それを毎年総務省、財務省の御協力もいただいて調査して、それを公表して、いけないところをまたさらにお願いをするというようなことをずっと枠組みとしてやっております。

 今回の独禁法の議論の中でも、やはり今言われた入り口の問題、入札契約制度そのものもまだまだ改善する余地が多いのではないかという御指摘が多々ありました。そういう御意見も拝聴しながら、方向感としては、やはり価格の競争はもちろん大事なんだけれども、価格に加えて品質とか技術力というようなもので業者さんを評価するというところの技術をもうちょっと磨くといいますか、そういう方向ではないかと思っておりますが、入札契約制度をめぐるさまざまな取り組みについて、引き続き各方面の御意見をいただきながら取り組んでまいらなければならない、このように思っております。

奥田委員 今また国土交通省さんにお聞きしたいんですけれども、そういった新しい取り組みの中で、透明性の確保という中の一つに、第三者から成る入札監視委員会等の機関の設置に取り組むということも書かれております。

 そして、これは今始まって何年か、二年か三年かたっていることだと思います。全国に広まっているかというと、まだ少しずつ、一歩ずつの段階かと思いますけれども、国の方ではこういった機関ができている。ちょっとこの機関、入札を監視する第三者機関、この構成あるいは規模、活動内容といったものを、国土交通省さんの答えられるところで聞かせていただきたいと思います。

中島(正)政府参考人 第三者機関の活用というのは、これは厳密な意味での義務づけではありませんが、入契法の中で指針というのをつくりまして、なるべく活用してほしいということをお願いしております。

 それで、国の機関はそれなりに整備、国の機関は実は発注する機関がたくさんございまして、まれにしか発注しない機関もありますので、構成員のうち何割という言い方は必ずしも適当ではありませんが、相当の工事をやっているような国交省とか農水省とかというところは、設置をしていると思います。

 そのほかに、県、指定市も大体一〇〇%設置をして活用していただいております。市町村が実はなかなか設置をしておりませんで、まだ活用、設置の割合は一割に満たないというような残念な状況にあると思いますが、私どもでは、ランダムに入札監視委員会の方で指定していただいて、選んでいただいて、その入札業者さんの選定プロセスを御説明して御審査いただくとか、あるいは特別な新しい入札契約制度に取り組みましたときにそのプロセスについて審査していただくとか、いろいろなことで、それぞれの活用はそれぞれの発注者に任せておりますけれども、活用していただいておると思っているところであります。市町村でどうやっていくかというのが今後の課題かと思っております。

奥田委員 一応、平成十三年三月の閣議決定資料の中でこの第三者機関の設置ということを書いてあると思います。

 私は、やはり何人くらいの組織が、どのくらいのものを、範囲をカバーして、どんな活動をやっている、それは本当に有効なのかどうかということまでお聞きしたいんですけれども、これは公正取引委員会さんの方では、今各省庁にあるとか言っていましたけれども、そういったところは、監視とかあるいは情報交換とか、そういったことはしておりませんか。

伊東政府参考人 私どもも、地方公共団体の入札制度の実態あるいは改革の動き等の把握には努めておりますけれども、全体的な、概括的な把握に現在のところとどまっておりまして、個々具体的な内容までは承知しておらないところでございます。

奥田委員 ぜひこういう発想が、悪い発想ではありませんし、余り大きいものにしなくてもいいと思いますし、各省庁ごとにつくらなくても、省庁横断になると第三者機関じゃないといかぬといって、公正取引委員会の兄弟みたいな機関がまた出てくるのかもしれませんけれども、効率よく、大きくチェックをできるという機関ができればすばらしいなということを主観として思います。

 あと、いろいろな入札の形、形態の工夫がされています。私も大分長いことお世話になった建設業界ですので、電子入札であるとか、あるいは先ほどお話のあった総合評価方式、公募、VE、プロポーザル、そういったいろいろな入札方法があることは存じております。それも昔の話ですから、今はマネジメント技術活用、ちょっと僕らも、言葉を聞いてもどんな入札なのかわからないような形態のも出ているかと思います。

 いろいろな試みをしておりながら、どれがやはりこういう談合防止あるいは情報漏えいの防止に役に立つのかなということを今まだ試行錯誤しているような感じで、どれが有効かなかなか言えない。例えば総合評価なんかは、物件数だけ見ても大きく伸びているので、価格だけで物を決めるんじゃないという中で効果を上げているんですけれども、やはり審査するのに時間と手間が大きくかかるというようなデメリットを持っているかと思います。

 私自身は、建設業の中で、いろいろと図面をもらいながら、数字をはじいて見積もり、積算をするというような仕事も、短い間ですけれどもやっておりました。ある意味、結構膨大な仕事量になっていきます。建築工事と土木工事でまた性質は変わってきますけれども、図面だけどかっといただいて、そして、一週間後にちゃんと出せと言われると、大変なプレッシャーでもありますけれども、おまんま食べるためには頑張らなならぬと。きのうも質問通告してから、そういえば、あのころは一生懸命見積もりして、入札に持っていってもらって、何割バッターとかいって、十回やって一回仕事に結びつけばいい方やったかな、そういった記憶があります。もちろん、これは民間の特命受注が入っての数字ですから、こういう入札物件にかかわるとすれば、二十件に一件ぐらいが何とか当たりになるというか、仕事が成功するといったようなことかもしれません。

 ただ、私の方では、ここで、入札制度に予定価格、そういったもの、予算があって予定価格があるんでしょうけれども、行政の方で使うのは上限価格というものがあります。この上限価格というのはどういう意味を持っていて、どのくらいの信頼性があるのかなということも思っています。

 というのは、私は行政の方で余りそういった積算をしている姿を見たことがない。あるいは、設計はもう今はアウトソーシングの時代なんでしょう。外でやっているにしても、値入れは自分でやっているかもしれないけれども、積算とかそういうことを本当にやっているのか。やってもいないのに予定価格があって、幾らのうちでやってくださいというのも変な話です。ちょっとこの予定価格あるいは省庁での見積もり、積算の体制といったものについてお聞かせいただきたいと思います。国土交通省さん、お願いします。

峰久政府参考人 予定価格は、もちろん取引の実例などに基づきまして工事の標準的な価格として設定して、契約金額を決定する際の上限となるということでございます。その際、適正な品質確保のために必要な労務費とか資材費、機械損料及び諸経費等を工種ごとに積み上げて、標準的な価格を算定しております。その際の労務費あるいは資材費等の単価については、実態調査を行って決定しております。これは先生よく御案内のとおりでございます。そういう形で適正な予定価格の算出に努めております。

 その際に、実際上、そういう設計あるいは予定価格の積算、そういうところについて具体的にちゃんとやっているのかという御指摘でございますが、直轄の方におきましては、設計につきましては、おっしゃいましたように、もちろん、工事の目的物に定められる性能、コンクリートのこれだけの強度がなければいけないとか、橋の橋脚間はどのぐらい長さがなきゃいかぬとか、そういうふうな基本的なところの性能については発注者が自分で判断しておりますけれども、図面の作成とかあるいは材料の数量計算、こういうところの補助的な用務については、民間活用という形でアウトソーシングしております。

 それから、積算の方でございますけれども、これは微妙な問題がもちろんございます。そういう中で、細分化された工種ごとに、今はもうシステム化がされておりますが、積算システムへ数量を入れ込む、そういうところについて、そういうような入力などの補助的なところについては、業務委託という形で外の人に来ていただきながら、定員事情も厳しいものですから来ていただいて、業務委託を活用しておりますが、実際の価格の設定自体は、いろいろなものを積み上げたり諸経費をかけたりしながら発注者みずからが行っているということでございます。

 具体的には、直轄の工事ですと、地方へ行くと予定価格自体がオープンになっているようなところもございますので、いろいろな外部委託のやり方なんかもあるかもしれませんが、我々のところでは、大体、今地方で、建設のところでいいますと二万人ぐらいいますけれども、そのうち一〇%ぐらいはそういうふうな積算関係のことをやっておりますし、さらに三割ぐらいは外部の方の用務委託という形でお願いしている次第です。

奥田委員 余り人前でやる仕事ではないですから、二万人のうちの一〇%ぐらいがかかわっているということで、少し安心いたしました。

 ところが、総務省さんにも来ていただいています、今度、では地方自治体が行ったときにはどうなるんでしょうか。総務省さん、来ていただいていますね。――地方自治体の実態の中で、やはり大きな自治体はこの公共調達の監視体制、あるいはどういった指導をしているか。そして、今言った、こういった技術職がいない地方自治体というのも結構あるんです。そんな中をどうやってカバーしているのか。都道府県が助けているのか、あるいは省庁の方でいろいろな補佐をしていただいているのか。ちょっとそういったことも含めて、地方自治体におけるこういった予定価格、自分たちの予算を使っていくときの仕事の値段が一体どれだけなんだろうということをどうはじいているのか、教えていただきたいと思います。

武智政府参考人 お答えをいたします。

 地方公共団体において公共工事の入札契約の適正化ということについてでございますけれども、先ほど来言及されておりますいわゆる入札契約適正化法というのが平成十三年四月から施行されておりまして、この法律、そしてこの法律に基づいて閣議決定された適正化指針の周知徹底を行っているということでございまして、具体的に申し上げますと、入札契約に関する情報の公表、それから入札監視委員会の第三者機関によるチェック体制の強化など、透明性の確保や公正な競争の促進を求める通知を国土交通省と連名で各地方公共団体に発出をしてきたところでございます。

 さらに、その中身になるわけでございますけれども、先ほど来国土交通省の方からも御説明がありますとおり、地方公共団体別に見てみますと、都道府県、指定都市においてはほぼ取り組みというのが進んでおるわけでありますが、市町村、特に小規模な団体において取り組みがおくれているというところが見られますので、例えば、入札・契約に係る情報公表マニュアルや、また、今の質問とはちょっと離れるかもしれませんが、先ほども話題になりました入札監視委員会第三者機関の運営ガイドラインなどというものを発出し、具体的に指導しているところであります。

 それで、特に小規模な市町村におきましては、例えば、第三者機関という面では、監査委員の活用とか、そういうようなこともやり、また、確かにいろいろスタッフがそろっていないところは、各地、ほかのところとの協力関係なども具体的に指導させていただいているところであります。

奥田委員 もうお昼過ぎましたし、質問時間もわずかですので、全部はしょって、最後の一問だけにさせていただきたいと思います。

 不当廉売の話は最初にさせていただきました。ただ、ダンピングというのは、大きな、例えば何千万、何億、時には何十億、そういった仕事を、いろいろな、そこにかかるまでに苦労してまじめにやってきた人たちを、十も二十も入札に入っているような人たちを全部押しのけて、何の理由もない、だれかにやりたくないとか実績をつくりたいということもあるでしょう、さまざまな理由はありますけれども、そんな中で不当な値段を入れて、そして最低価格で落札させようとする。

 会計法の中に自動最低価格落札という項目があって、自治法の中で最低制限価格というものをつくっている自治体もいます。ところが、それを設けていなかったら、一円でも安い方が入る。それは権利になっちゃう。だれが見たって、証明しなくたって、こんなの理屈があるはずないというものでも、仕事、結果をかち取っていってしまうということがあります。

 会計法も少しおかしいか、あるいは、そこのところをもっと柔軟に、各省庁の取り決めや地方自治法の中でやっていけばいいと思うんですけれども、先ほども言いました、自治体も財政難だから、安ければいいという考え方もあるかもしれません。しかし、どこかに線を引かないと、とんでもないものが、安かろう悪かろうになっちゃう。あるいは、僕らのかかわってきた建設関係だと、人の命にかかわってくる。安全管理ができない。あるいは、さっき言った、一緒に仕事をやっていくいろいろな業者の方々にツケが回ってくる。そういったことが当然にあります。

 ちょっと例でいえば、長崎市で印刷機がやはり一円入札。これは九八年。二千九百万円相当、二十九台ですから、百万円掛ける二十九で二千九百万円相当、これが一円入札。これは有効と判断されました。消耗品で元を取るというそうですけれども、やはり今度は消耗品の調達までチェックしなきゃいけないんじゃないでしょうか。

 そして、久留米市の方でも、やはり同じような印刷機が十二台、これは八百八十八円と、縁起を担いでそんな数字で落札されています。こんなもの、パーセンテージでいったら物の値段じゃない、何とかそこに食い込みたいという理由しかありません。

 あるいは、ごみの委託収集で、トン当たり一円入札というのがありました。これはそんな値段でできるわけがないということで、町の方が入札を無効にして、町が自分でやらなきゃしようがないなといって、町が取り組んでいる。

 岡山市の方では、八千万円相当の下水道工事が一円で入札されました。これは、低価格調査という中で、聞き取りの中で、余りにもダンピングが多いのに市が対処しないから当てつけでやったというようなことを言って、指名停止を食らっちゃったということがあります。

 県のホームページをつくる、そんな仕事で第三セクターが一円入札をしました。これは、半分公共が関与している、そんな第三セクターが一円入札とは何事かということで、辞退をしていただいたということです。

 川崎市の駅前ビル清掃、再開発ビルですから、かなり大きいものなんだと思います。警備と清掃業務で一円入札がありました。これも、委託業務や物品調達には最低制限価格を設けられないというような会計法のおかしな決まりによって、その一円入札が有効になる。契約更改のときにはもうこんなことは絶対にさせないようにしてくれということを、審議会の方なんかでも問題になりましたけれども、こんなおかしなことがまかり通ってしまう。

 やはりこれは、まじめにやっている者たちがばかを見る。ぜひ、ここのところにも何か抑止力をいただきたい。罰金をかけろとかは言いませんよ。そういうのは無効だ、おかしいじゃないか、そんな判断基準を自分たちも、公正取引委員会も持って、そして、地方にもそういった物差しが使えるようにしてあげていただきたいと思います。

 答弁をお願いします。

竹島政府特別補佐人 御指摘のとおりでございまして、私どもからすると甚だ遺憾な事例が幾つかあって、それが発注機関によって是とされているということがございます。

 今の一円入札、一万円入札、ありますが、これは地方自治体における周知徹底がいっていないのかどうかわかりませんが、低入札価格調査というのがあるわけですが、これは公共工事だけじゃなくて、物品の調達、役務の調達についても低入札価格調査制度というのは適用されているわけですが、そのことをやっていないところがあるわけでございます。

 一円で入札した者に対して、これでちゃんとできるのかと、いや、ちゃんとやりますと言えばオーケーというのでは、私どもの立場からすれば低入札価格制度ではございませんので、そこはきちんと低入札価格調査制度をやっていただきたい。

 私どもも、そういう事例に当たったときにはきちんとしたことをやっていきたい。今までも警告もしておりますけれども、なかなか警告だけでは実効が上がらぬという御指摘もいただいていますけれども、実態はそういうところにございますので、せっかくつくったルールでございますから、関係の発注機関はそういうことをきちっと励行するということがまず必要ではないかというふうに思っております。

奥田委員 委員長の方も、さきの答弁の中で、ダンピングの問題もたくさん報告されているんだということを言っていただきました。

 入札契約の適正化に関するこの法律ができてから、どんどんこんなものがまかり通ってきている。低価格調査の件数も調べていただきたいです。三年間で三倍ぐらいになっていると思います、地方も国も。デフレの中で、みんな仕事が欲しくてしようがない、何とかきょう一日あるいはこの一月を乗り切りたい、そんなだけの理由で、中身のないそういったものが政府調達の中に入ってくるということを、何とか常識の線だけは守っていただきたい、そのための方策をお願いしまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

河上委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十四日水曜日午後一時理事会、午後一時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十七分散会


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