衆議院

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第19号 平成17年6月14日(火曜日)

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平成十七年六月十四日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      遠藤 利明君    嘉数 知賢君

      北川 知克君    小杉  隆君

      佐藤 信二君    菅  義偉君

      竹本 直一君    武田 良太君

      谷畑  孝君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    平田 耕一君

      望月 義夫君    森  英介君

      山口 泰明君    山本 明彦君

      大畠 章宏君    奥田  建君

      海江田万里君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    近藤 洋介君

      佐藤 公治君    高山 智司君

      中山 義活君    計屋 圭宏君

      村井 宗明君    渡辺  周君

      江田 康幸君    吉井 英勝君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   参考人

   (社団法人日本経済団体連合会環境安全委員会共同委員長)          山本 一元君

   参考人

   (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)  石谷  久君

   参考人

   (株式会社住環境計画研究所代表取締役)      中上 英俊君

   参考人

   (気候ネットワーク代表)

   (弁護士)        浅岡 美恵君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十四日

 辞任         補欠選任

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

    ―――――――――――――

六月十三日

 中小業者への経営支援に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二四八二号)

 同(志位和夫君紹介)(第二四八三号)

同月十四日

 循環型社会でごみ減量化を目指すことに関する請願(石井郁子君紹介)(第三〇二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)


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     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、参考人として、社団法人日本経済団体連合会環境安全委員会共同委員長山本一元君、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授石谷久君、株式会社住環境計画研究所代表取締役中上英俊君、気候ネットワーク代表・弁護士浅岡美恵君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず山本参考人にお願いいたします。

山本参考人 旭化成の山本でございます。

 私は、現在、日本経団連で環境安全委員会の共同委員長を務めております。本日は、産業界の立場から、地球温暖化問題に関する産業界の自主的な取り組みの状況や基本的な考え方を御紹介しながら、今回の省エネ法改正につきまして若干の意見を陳述させていただきます。

 二月十六日に京都議定書が発効し、我が国は、温室効果ガスの排出量を一九九〇年度比で六%削減しなければならないという重い約束を達成することが義務となりました。

 申し上げるまでもなく、地球温暖化問題は、化石燃料に依存した経済社会のシステムを転換しなければならないという重い課題を背負っておりますから、我々がこれから未来永劫に対応していかなければならない長期的で、かつ地球規模の問題でございます。この問題に対応するためには、国民一人一人、政府、地方自治体、企業など、あらゆる主体がみずからの問題としてとらえ、それぞれの自覚と責任とを持って行動を続けていくことが何よりも重要であると考えております。

 このような考え方から、日本経団連では、一九九二年の地球サミットに先駆けまして経団連地球環境憲章を、また、一九九六年には経団連環境アピールというものを策定しております。さらに、これらを受ける形で、京都議定書に先立つ一九九七年に経団連自主行動計画を開始し、二〇一〇年度に産業部門及びエネルギー転換部門からのCO2排出量を一九九〇年度レベル以下に抑制するよう努力するという統一目標を掲げ、社会に対しみずからコミットし、行動しているところで、大きな成果を上げているところでございます。

 この自主行動計画には現在三十四業種が参加しておりまして、我が国の産業部門及びエネルギー転換部門の排出量の約八割強、日本全体の排出量の約四五%をカバーするに至っております。二〇〇三年度のフォローアップ実績を昨年公表しておりますが、これによりますと、自主行動計画に参画した業種全体のCO2排出量は、九〇年度比で〇・六%の削減となっており、ここ四年連続で九〇年度比を下回り、目標達成をしております。

 なお、二〇〇三年度実績には、皆様御承知のように、原子力発電所の停止が大きく影響しておりますが、これを考慮いたしますと、実質的には三・八%の削減を達成した計算になっております。

 産業界といたしましては、最も効率的な手法で環境と経済の両立を図っていくためには、事業の実態や将来の展望をみずからの責任で判断できる、企業自身が自主的な取り組みを強化していくことが最善かつ不可欠であると認識しておりまして、今後とも、透明性や信頼性を一層向上させながら、自主行動計画を着実に達成することで我が国の温暖化対策に貢献してまいりたいと考えております。

 また、透明性や信頼性の向上という点では、社会に対する情報公開が重要でございます。そこで、日本経団連では、環境問題に対する企業の取り組みを積極的に情報公開していこうということで、昨年一月に環境報告書の三年間倍増計画を宣言いたしまして、会員企業各社に呼びかけを行っているところでございます。今や、環境問題に対する企業の取り組み姿勢は投資家などによる企業評価につながっておりまして、それが企業の環境への取り組みに拍車をかけるという環境が生まれつつあるとも言えます。

 このように、企業サイドでは、環境問題に対しまして、その達成のため、みずから行動し、結果を公表することを取り組みの基本姿勢としております。今般政府が取りまとめました京都議定書目標達成計画でも、日本経団連の自主行動計画は産業・エネルギー転換部門における対策の中心的な役割を果たすものとされておりまして、我々といたしましても、自主的な計画であるがゆえの責任の重大さを改めて認識しているところでございます。

 さて、企業の環境への取り組みや日本経団連の自主行動計画の成果を一層充実させるためにも、産業界では、目標設定、行動、評価、改善といういわゆるPDCAサイクルを不断に継続しております。

 例えば、経団連自主行動計画でも、中立な立場の有識者から成る第三者評価委員会を設置して、毎年フォローアップ結果の評価を行い、指摘された事項は次年度の計画において改善を図ることとしております。また、公正な評価を行うためには、できる限り定量的なデータを用いていただくことが欠かせません。京都議定書の目標達成に向けてすべての当事者が行動を起こしていくことが不可欠となった現在、このPDCAサイクルをさまざまな分野で行っていくことが必要でございます。

 その意味におきまして、今回の省エネ法改正によって計画策定や報告などに関してカバー率を高めていくことは、適切な措置であろうと考えております。また、産業部門に比して九〇年度比でCO2排出量の増加が著しい民生、運輸部門の取り組みを強化していくことも急務となっております。今回の省エネ法改正では、住宅、建築物に関する対象の拡大、また運輸部門への対策の強化が図られておりますが、これらにつきましても重要な改正であろうと考えております。

 産業界といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、自主的な行動や情報開示が最も効果的であると考えておりますが、経団連の行動計画に参加していない業種やまだ自主的な取り組みが十分でない部分もございます。また、情報の統一性を図るという観点からも、法律による一定の義務を課すことは、温暖化対策を進める上で有用であろうと考えております。

 今後、政省令など具体的な取り扱いが規定されていくものと思いますが、その際、自主的な取り組みと規制による対策の費用対効果の関係を踏まえながら、自主的な取り組みでカバーできない部分を規制により重点的に改善していくという原則で対応していただきたいと考えておる次第でございます。

 繰り返しになりますが、産業界といたしましては、みずからの取り組みを一層強めることによって温暖化対策に貢献してまいりたいと考えております。また、これまで取り組みがおくれていた民生や運輸部門に対しましても、よりすぐれた省エネ製品やサービスを充実したり、物流を合理化したり、あるいは従業員の家庭での省エネを支援するといった取り組みを通じて貢献してまいる所存でございます。

 環境と経済の両立を目指して、国や地方自治体、関係諸団体との連携も深めながら行動してまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしく御理解賜るようお願いいたします。

 私からの意見陳述は以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 次に、石谷参考人にお願いいたします。

石谷参考人 慶應義塾大学の石谷と申します。

 私は、九二年のIPCC、気候変動にかかわる政府間パネルにおきまして、エネルギー消費といいますか、エネルギー供給サイドのCO2削減策を基本にしまして、いろいろ検討を進めてまいりました。また、総合資源エネ調の省エネ基準部会において、省エネ法の実施にかかわる作業にかかわってまいりましたので、その観点から今回の省エネ法改正に関する意見を述べさせていただきます。

 まず、CO2削減における省エネの位置づけについて述べさせていただきます。

 CO2削減策は、現在の化石燃料中心のエネルギー供給体制を考えるときは極めて困難でありますが、過去十年以上、IPCCなどでも議論されてまいりました。その手段として、供給側としては、まず省エネ、高効率化、次いで燃料の低炭素化、さらに生物固定、すなわち吸収源の拡大とそのエネルギー源としての利用、さらに、排ガスからのCO2の回収、固定、最終的にはゼロ排出エネルギー、すなわち原子力あるいは再生可能資源への転換が挙げられております。

 需要面でも、機器の効率化、その利用、運用の効率化、最終的にはサービスレベルを低下しての需要抑制といった、いわゆる我慢といった対応が候補とされておりますが、いずれにしましても、省エネは、枯渇性エネルギー資源の保存、エネルギー安全保障の改善などのメリットもあります。技術的な開発要素も多々ございますが、既に存在するシステム、技術で実現可能で、その普及促進で間接的、即効的効果が期待できます。これらの点では、新エネの開発、推進とは対称的な、短期的対策として適当と考えられております。このような経済性といわゆるノーリグレットという意味で、抵抗も少ない対策と位置づけられるかと思います。

 このための省エネの実施手段といたしましては、いわゆる技術開発、次に需要を抑えるための総量規制などの政策手段、あるいは炭素税などの経済的手段が考えられます。しかしながら、省エネは消費者への経済性インパクトが少なく、経済的手法では産業の方が深刻な影響を受け、なかなか最終消費の省エネに至らない点が指摘されます。他方で、総量規制はわかりやすいのですが、その配分とかキャップのかけ方が問題となります。大幅削減に至りますと、最終的には規制とか利便性制限も必要かもしれませんが、その前にやれることを進めるというのが望ましいと考えます。

 そういった観点から、現在の省エネ法は、消費者相手にはまだその事前段階で、情報提供が中心となっておりますが、事業者には緩い規制的手法を既に発動したものと理解しております。

 次に、省エネの特性と課題ですが、お手元の資料にありますように、メリットが多い反面で課題も多々ございます。

 具体的には、本来経済性があるために、自然体、BAUでは既にかなり進められて、残りの余地が少ない。すなわち、落ち穂拾いという側面が強く、広くその可能性を見つけて丹念に積み上げる必要がございます。一般に効果があっても量的にはわずかであり、単一の手段で得られるポテンシャルというのはそれほど多くございません。

 次に、民生におけるエネルギーコスト、すなわち、一般消費者の最終消費やサービス生産対象の業務部門におけるエネルギーコストの比率は極めて低い反面で、エネルギー消費によって得られる満足度あるいは付加価値は極めて大きいのが普通でございます。逆に、これをあきらめた場合の損失が大きいために、価格弾力性が低く、節約の経済的インセンティブがわきにくいものとなります。これは、さらなる省エネ努力、情報収集、具体的な投資、その他の意欲をそぐことになりますので、積極的な情報提供、改善指導などが不可欠です。

 他方で、産業部門は、経済性の追求が必要で、かつ省エネの絶対量が大きいことから、経済性のある省エネはかなり進んでおります。そのための組織的な取り組みや情報、知識の収集にも努力し、それでも足りなければESCOなどの支援も得られます。要するに、経済性がインセンティブになって省エネはかなり自動的に進みます。問題は、初期投資ですとか確実な情報の取得ということになりますが、これも省エネ政策の範囲で既に支援促進されております。

 自発的にしろ強制的にしろ、規制が厳しくなりますと、最終的には省エネも経済性の成り立たない領域に入ってまいります。この際には、省エネを離れてCDMなどの経済的手段を動員することになりますが、そこでも省エネ技術が生きるようなCDMの可能性が今議論されております。特に対象となる途上国は、ノーリグレットで経済性もある省エネを最初に始めたいと希望している様子でございます。余談ながら、CDMの問題の一つには、省エネが経済性があるために追加性の証明が厳しく、CDM対象になりにくいという点が挙げられております。

 以上、要するに、省エネはCO2削減に向けての最初のステップであり、悔いの残らない範囲で極力進めるべきものと考えております。また、特に対応の鈍い民生部門を対象とすることから、情報提供なども効果を持つと信じられます。他方で、最終消費者の選択基準というのは客観的に評価しにくい部分がございますので、教育面、精神面の推進も必要でございます。省エネの経済的効果は限られておりますが、しっかりとその効果を捕捉して、少しでも効果があれば推進する必要があろうというふうに考えております。

 次に、省エネ法改正についてでございますが、こういった観点から省エネ法を見てまいりますと、まず、特性によって企業と一般消費者を区別しております。つまり、民生は価格弾力性が低いために経済性が働きにくく、現時点では直接規制もかけにくいので、基本的には供給側に規制をかけております。その代表でありますトップランナーは、これまでも有効に働いてきて、世界的にも広く認められております。技術開発、商品動向にも一つの流れをつくったと評価されているかと思います。今回はこれに加えて消費者への情報提供に踏み込みましたが、これは、時間がかかって即効性に欠けても、極めて重要な項目と考えております。

 また、改正の一つの特徴は、民生とともにエネルギー消費増の大きな運輸部門を対象としたことにございます。これは運輸業という企業活動における省エネ促進でして、使用機器である大型車の効率向上、稼働率向上などの効率改善の手段もあり、これは一般の工場等の合理化と同じと見られますが、他の業種とは異なり、一歩進んで荷主まで持っていった点が評価されるかと思います。

 これは、荷主にとって提供されるサービス、つまり一般製品の質まで規制することに等しいわけですが、一般消費者に対してはせいぜい省エネ表示など情報提供が限界で、製品については消費者の選択に任せざるを得ません。運輸サービスの場合には、購買相手が事業者ということで規制対象にできる点をついたものと考えられます。

 一般に、同一機能の製品についてはトップランナーが定義できますが、運輸業に限らずサービス生産においては、エネルギー消費そのものがサービスの質にかかわり、効率はなかなか定義できず、トップランナーも、定義、規制、促進するという考えが適用困難なケースが多々ございます。

 他方で、人件費などの経済性、利便性から、エネルギー消費の多いサービスを要請されると顧客本位にならざるを得ません。こういった難しい条件における実質的な省エネ推進のための妥協策として、直接購入事業者側への対応等で現実的な方法で改善を図ろうという考え方と見られます。

 その他、熱電合計のエネルギー管理と対象の拡大、住宅、建築の対象拡大は、いずれも対象漏れを減少させることを図ったもので、まさに落ち穂拾いの対応であると同時に、省エネの推進をすそ野までより広げるのに効果的と考えられます。

 最後に、消費者への省エネ情報提供は、消費者の自主的削減努力への支援で、教育効果も期待いたします。

 最後に、今後のステップでございますが、最終的にはむだを省くという対策から我慢への移行ということも余儀なくされるでありましょうが、まずむだを省くことから始めることが重要と考えております。

 注意しなければならないのは、六%の削減でも、分野によってはかなり大きな影響を受けます。特に、今後、附属書I国の不平等な国際競争の中で製品競争力を維持するためには、一律に製造業に削減義務を課することが困難であり、最終的には、やはり一般消費に至る過程で削減せざるを得ません。そのためにも、省エネは最初にやるべきこと、かつまた重要なステップと考えております。

 当面、六%の削減というのもかなりきついわけでございますが、これも必ずしも不可能とは考えておりません。問題は、この後長期的に必要とされる数十%に及ぶ本格的削減であり、この場合には省エネのみならずエネルギー転換を考えた抜本的解決が必要ですが、その場合にもやはり省エネは当然の前提条件と言えますので、そういった意味で省エネ法は極めて重要と考えております。

 以上、甚だ一般的な意見でございますが、今回の省エネ法改正にかかわる意見を申し上げました。どうもありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 次に、中上参考人にお願いいたします。

中上参考人 住環境計画研究所の中上でございます。

 きょうお招きにあずかりましたのは、私が経済産業省の総合エネ調の省エネ部会の部会長代理をやっているというような経緯からかと存じております。私自身は、大学を出ましてすぐこの研究所をつくりまして三十二年になりますけれども、一貫して民生部門のエネルギーの需要解析をやってまいりました。そういった意味では、二度ほど参議院の方ではお邪魔したことがあるんですが、私、きょう衆議院は初めてでございますので、多少雰囲気が違うので面食らっております。

 きょうは二点ほど、省エネ法の改正の効果及び民生部門についての私の考え、それから全般的な意見について、手短に陳述させていただきたいと思います。

 まず、省エネ法の改正についてでございますけれども、皆様方にお配りしてあるメモの中に「向上」、これは変換ミスでございまして、「工場」、ファクトリーの方でございまして、対象となる工場、事業場が拡大されたわけでございますけれども、これはやはり網を広げるという意味で当然効果が期待されるわけでありますし、大いに評価したいと思っております。さらに、今回は大規模な修繕といったものも含まれるということでございますから、かなり大きな効果を私自身も期待したいなと思っております。

 これまでは事業場だけでございましたけれども、今回は一般の住宅もこれに加えられたということ、まだ二千平米以上でございますので、一般の個人住宅は入っておりませんけれども、これも住宅という分野に初めて踏み込んだということで、大きく評価したいと思います。

 住宅の新築はともかく、修繕、模様がえというのはなかなかあるようでないわけでございますけれども、私自身は、高度成長期に建ちました多くの公団住宅がそろそろ建てかえといいますか模様がえ時期に入ってまいりますので、一般ではなかなかモデルが示しにくいと思いますので、できればこういった公的な団体で新しいモデル提示をしていただいて、修繕、改善による省エネ効果というものを、一定のものを示していただければさらに民間に波及するんじゃないかと思って、期待したいと思っております。

 今後望みたいことは二つほどございまして、一つは、いつもそうでございますけれども、決まった後、どういうふうに効果があったのかというのはなかなかはっきりわからないわけでございます。やはり、これがわからないとやっている方もなかなか力が入りませんので、できれば効果を適切に下せるような仕組みというのもあわせてお考えいただきたいと思います。

 それから、住宅にありましては、これは今回の改正ではございませんが、次世代基準というのが、今新しい基準があるわけでございます。一九九九年から施行されているわけでございますけれども、適応率が低いということを伺っております。将来的には、やはり欧米のように、こういった基準は、建て主の努力義務といったふうな現在のとらえ方ではなくて、何らかの規制的な方向に組みかえるべきではないかと私自身は思っておりますけれども、これはやはり今後の住宅の省エネの切り札でございますから、切り札をいつ切るか。本当はもう切っておかなきゃいけないのかもしれませんが、京都以降もございますから、それを勘案しながら、切り札をいつ切るかということを含めて、ぜひ検討していただきたいと思っております。

 次に、民生部門の省エネ対策でございますが、山本参考人さんの方からも、民生部門がふえている、あるいはそこだけではなくて至るところで民生部門がふえているというふうに、何か悪者にされておるようでございますけれども、なぜふえているのかという理由を本当はきちっと踏まえた上で評価していただかないと、ふえるとすべて悪いというんじゃ、いかにもという気がいたします。

 なぜそんなことを申しますかといいますと、家庭部門のエネルギー需要というのは、実は世帯当たりでは、最近はややとまりかかっております。ただ、中身を詳しく見てみますと、家電製品等に係るものがどんどんふえておりまして、これは、御承知のように、大型家電、テレビの大型化であるとか、多機能化とか、それから、もう家電ではなくて個電商品と言われるように、国際的に見ましても、我が国の家庭ほど多くの家電製品を持っている家庭はないようでございます。そういった複雑な面がございますけれども、ただ、それでも欧米先進諸国と比べてみますと、気候の差とか文化の差とか習慣の差はございますが、欧州の半分強ぐらい、それから、アメリカやカナダに至っては三倍ぐらい。だから、欧州が二倍ぐらいでアメリカが三倍ぐらい、ざっくり言ってそういう感じでございまして、我が国の家庭用のエネルギー消費は決して多くない。

 よくよく中身を見ますと、これは当然差があるわけでございますけれども、一番大きいのは暖房用でございまして、これは暖房用に至ると、気候の差を幾ら勘案しても開きがあり過ぎる、五分の一とか六分の一と言える程度でございます。ということは、今後この暖房需要がいま少しふえる可能性は決して否定できない。となると、先ほどの話とつながってまいりますけれども、住宅構造の省エネ化というのは、今後の増加を打ち消す意味でも早目に早目に手を打っておかないと、私の経験からしましても、実験しましても、建ててしまった後では非常にコスト高になりまして、割が合いません。だから、建てる段階でやっておかなきゃいけないんだなというふうに思っております。

 それから、確かにこの分野、規制になじみにくい分野でございますけれども、何度も申し上げますが、トップランナー基準や住宅の省エネ化というのは、やはり規制に十分値するものだと私は思っております。

 それから、少しニュアンスが違いますけれども、小杉先生なんかとも御一緒して勉強会をさせていただいたりしましたが、サマータイムの導入ということですね。これについて、なかなか、私も十五年間この問題に携わっておりまして、省エネ論をそのたびにやり返しておりまして、反対派の御意見だけが取り上げられて、大体賛成派は悪者にされるものですから、みんなから袋だたきにあっております。大抵のことはおかげさまで答弁できるようになりましたけれども、この問題、直接効果もさることながら、欧米に調査に参りましたときには、二回切りかえるということによって、やはりアナウンス効果といいますか、なぜサマータイムをやっているのか。諸外国すべて、最初は省エネルギーでございます。一番最初、古くは戦争、戦時下でありますけれども、その後は、二度のオイルショック以降、各国で導入されたのはすべて省エネでございます。

 もちろん、ライフスタイルを変えるという意味もございますけれども、いま一度、やはりこの問題についてもぜひ後押しをしていただきたい。ただ、向かいの官邸の主の方がなかなか賛成なさらないというふうに聞いておりますので、難しいかもしれませんが、ぜひ廃案にしないで、引き続き御審議をお願いしたいと思っております。

 それから、業務部門でございますけれども、これは、今家庭部門では申し上げませんでしたが、まことに遺憾なことに、我が国には消費構造を明らかにした統計がないんですね、データベースがないんです。こういう国は、先進国では残念ながら我が国だけだ。京都議定書から離脱したアメリカですら、二度のオイルショックの後には、詳細なセンサス、国勢調査を実施しておりまして、経年的に統計をとっております。

 消費構造がかなり詳しくわかるものですから、逆に言うと、そういうデータがないと今後の省エネの本当の具体策が打てないはずでございまして、民生部門といって一括してとらえて、家庭はある意味でレベルがそろっておりますけれども、業務部門というのは、おそば屋さんがあり、こういうビルがあり、国会があり、ホテルがあり、病院があるんですから、一律に論ずることが難しいことはもう一目瞭然でございますけれども、いかんせんそういうデータがないということはいまだに残念なことでございます。

 業務部門のエネルギー需要の増加というのは、これはもう釈迦に説法でございますけれども、就業構造が変われば、すなわち二次産業から三次産業、一次産業から三次産業へシフトすれば、当然この部門のエネルギー需要は増加するわけでありまして、一律に増加したから悪いというのはいかがなものかというふうにときどき申しているわけでございます。

 この部門では、ほかの同業者との差別化を強調する形で、建築物を、奢侈化といいますか、見ばえをよくするという傾向はやはりなしとしないわけで、私も建築の出身ですから内心じくじたるものがございますけれども、したがって、そこを勢い、エネルギーの力で強引に制御してしまうということになりかねないわけであります。これが業態別にいろいろな形でもってあらわれるわけですから、事は簡単じゃない。

 今回の法の改正でもこの分野に一歩踏み込んだことになっておりますけれども、これではまだ建築側、すなわち建てる側への、エンジニアリング面での視点からの省エネでございますけれども、できればクライアント、使い手から見てこれが省エネビルだというのがわかりやすいような、マル適マークと言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、そういう、ビルが省エネであるということを入居者にわかりやすいようにする。入っている人も我々は省エネビルに入っているんだということが外に向かって訴えられるような、そういうシステム、これはラベリングと申しますけれども、欧米ではやはりこういうことがございますので、こんなことも御検討されてはどうかと思います。

 最後でございますけれども、京都議定書は難産の末に発効したわけでございますけれども、私自身の個人的な感触では、目標達成計画ができたことで、何かあたかも京都議定書は達成可能だという雰囲気になってしまったような気がしなくもありません。これは決して簡単ではございませんで、極めて難しいと私はいつもいろいろなところで申し上げております。その意味からも、皆様方のお力を十分に発揮していただいて、何とかこれが達成できる方向に国民の意識を変えていただきたいと思います。欧米の会議に出てまいりましたけれども、日本の省エネは進んでいるということで常に注目の的でございますけれども、いや、制度はできたけれども、本当にうまくいっているかなとなりますと、疑問なしとしませんので、ぜひお願いしたいと思っております。

 京都議定書は、もうこれは釈迦に説法でございますけれども、ほんの一歩にすぎないわけでございまして、イギリスやドイツは、二〇五〇年に五〇%、七〇%カットという信じられないような数字を出しておりますが、私は、長期的には決して不可能ではない、短期的には極めて難しいんですが、長期的には今からやれば十分間に合うと思っております。しかし、そのためには、これまでのライフスタイルとか社会構造、産業構造を根本的に見直さなきゃいけないということも十分念頭に置いておかなきゃいけないんじゃないかなと思っておりますので、そういう意味からも、ぜひ先生方の御協力をお願いしたいと思っております。

 以上で私の発言を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 次に、浅岡参考人にお願いいたします。

浅岡参考人 私は、気候ネットワークと申します市民のNGOの代表をしておりますが、この団体は、京都議定書の採択に向けまして市民が取り組みましたものを延長いたしまして、国際交渉あるいは国内のこうした温暖化政策、また各地の地域におきます温暖化の取り組みにかかわっております。そうした観点から申し上げたいと思います。

 まず最初に、温暖化の最近の顕著な状況といたしまして、もう一般の市民もこれは気候がおかしいと気づくようになってきておるわけでありますが、科学者たちも、彼らの予測を超えたスピードで進行しているというふうに、将来をさらに懸念する声が上がっております。そうした中で、この議定書の目標達成を日本といたしまして確実にいたすことはもとよりでありますけれども、先ほど中上先生からのお話もありましたように、将来の長期的な削減はやむなきところでありますので、そうした今後の交渉に日本がよりよい形で積極的に関与いたしますためにも、この目標達成はしっかりやらなければいけないと思っております。

 そうした観点から見ますと、私の方のレジュメで提出いたしましたように、京都議定書目標達成計画の達成度を評価いたしましたところ、法的に担保措置のあるのは省エネ法のトップランナーの一四%程度でありまして、あとは基準のみとか自主的取り組みに期待をしたものであります。これは、二〇〇七年の見直しをまつまでもなく、やはりこれまで議論されておりますような環境税、炭素税でありますとか、事業者との協定、あるいは国内の排出量取引といったものも真剣に考えなければいけないと痛感するところであります。

 本日は、時間も限られておりますので、省エネ法に関する部分につきまして申し上げたいと思いますが、まず、評価の中の法的に担保されておりますと評価できますトップランナーに関する部分、機器による省エネの部分であります。これは最も確実性の高い取り組みであり、今後とも進めていただきたいと思うところでありますが、問題といたしましては、対象の機器を速やかに追加的に指定をしていくことであろうかと思います。

 例えば、テレビにおきましては、地上波からデジタル化へ進む、あるいはアナログが終了するということで、緊急に機器の入れかえが進むと思いますし、また、大変大型化の広告宣伝もなされておるところでありますが、ようやく、きのうでしたか、プラズマテレビと液晶テレビについて指定をすることになったように聞いております。それから、DVDレコーダーなども今回ようやく入ったということでありますし、複写機ですと、複合機でありますとかデジタル機はまだ規制されておりません。このように、新しい機器というものが規制がおくれております。

 また、先ほど業務に関する部分の取り組みのおくれが指摘されておりましたが、業務用の機器については何ら指定がありません。業務用エアコンなど相当機数もう出ておると思いますので、今後とも対応いただきたいと思います。

 自動車につきましても、これは大型化が進んでおりまして、全体として排出が増加することになるかと思いますので、機種ごとあるいは重量別ということだけではなく、メーカー全体としての燃費規制というようなことも、今回トップランナーとしてお考えいただく余地があろうかと思います。

 こうした消費者、あるいは事業者もある意味で消費者でありますけれども、そうした機器の最終購入者に対して、選択のために、よりわかりやすく情報を提供いただくということは非常に重要であります。これは、住宅につきましても同じことが言えると思います。そういう意味で、ラベル化の議論はこれから急速に進展させなければいけないと私たちも思っておりますけれども、今回の改正で努力目標、一般消費者に対する情報提供の努力目標にとどまっております。これは、ぜひとも早急に義務化を御検討いただきたいと思います。地方自治体におきましては、東京都あるいは京都市におきましては、条例でこれを義務化し、今施行に入ったところであります。

 工場につきましてですが、熱と電気を合計して対象事業所を基準化するという点につきましては、大変結構なことだと思って、賛成をしたいと思います。

 実際の排出の内訳を見ますと、私のきょうの資料の五ページのところに大口の排出事業所、例えば上位二百社の事業所で日本全体の四七%を占めるような実情も明らかになっておりますけれども、その他一万三千社におきまして数%のシェアを持っております。これも、その他六百万の中小事業所、あるいは一億人余の国民のシェア率から見ますと、はるかに効率的な対策もとれるわけでありますので、ぜひともこれは進めていただきたいと思うところであります。

 この事業所につきまして、これまで省エネ法の改正等なされまして、大変しっかりした仕組みが、形はできております。ただ、罰則等の担保もあるわけでありますけれども、判断基準が大変あいまいでありまして、また、行政権限の発動には、著しく不十分である場合という非常に不明確な書き方になっております。工場ごとにエネルギー消費原単位年一%の改善をめどとする、これは大変立派な目標設定だと思うのですけれども、それが現実にはフォローアップされていないといいますか、これまでその検証がなされた、あるいはそれの著しく不十分だと思う業種も相当私はあるように思いますけれども、それに対して指示、命令等がなされた、公表がなされたということもなく、罰金等の発動がされたこともないわけであります。

 これは、せっかくつくられた制度でありますので、しっかり執行していただく。そのためには、この目標ももう少し具体化することも御検討いただくことが必要かと思います。業種ごとのデータしか私どもには把握できませんので、九〇年から二〇〇三年まで、また二〇一〇年までの見通しにつきまして、どの程度効率改善、あるいは改悪になっている状況かにつきましては、四ページに一応わかるところを書いておきましたので、御参考にしていただければと思います。

 こうした状況を私ども検証してまいりますときに、やはりまだ透明性が非常に不十分であると思います。ぜひとも、こうした省エネ法での報告いただいている情報等、あるいは今回の推進法の改正で提供される情報等につきまして、国民と共有して、国民一体となって取り組みを推進するというふうに活用することを希望いたします。

 運輸につきまして加えていただいたことは大変適切であろうと思いますが、ここにおきましても、判断基準をもう少し具体化することが実効性の確保のためには必要ではないかと思います。また、特に判断基準におきまして、輸送量当たりのエネルギー消費の基準というものが必要なのではないかと思います。

 荷主の関係を加えることも大変適切だと思いますが、これを実質的に活用いたしますために、また、とりわけ最近のチェーン店等、コンビニエンスストア等の対応のためには、まだまだこうした実態に即した指定の仕方、あるいは解釈の仕方というものが必要な状況も伝え聞いているところであります。

 建築物、住宅につきましては、先ほど中上先生からの御指摘もありましたように、私どももこれがこれから大変重要なところだと思います。この点なくして民生の業務も家庭もしっかりした改善はなされませんし、これは、国民生活あるいは日本全体のある意味質的な豊かさの改善といいましょうか、生活の質の改善にも非常に重要な部門であろうかと思います。

 二千平方メートルという基準は、皆様、これは東京においては非常になじまれるのかもしれませんが、私が今住んでおります京都のようなところにおきますと、大変大き過ぎるという実感があります。これをもっと狭めていただく、あるいは、自治体の条例による上乗せ、横出し等についても認めていただくことが現場に即するのではないかと思いますし、やはりこれは工場に対するエネルギー政策と同様で、非常に行政の裁量に係る規定になっておりますので、そうではなく、建築基準化を図るということに速やかに取り組んでいただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、この省エネ法といいますのは日本のCO2排出削減のために大変重要な規定でありますし、私どもも、事業者の皆様の御努力もよくよく理解もし、評価もし、また不十分な点については指摘もしていく。そのためには、十分な情報を共有しつつ取り組んでまいりたい、消費者にもそうした消費行動による温暖化対策への実践ということを訴えてまいりたいと思っているところでございます。

 以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。櫻田義孝君。

櫻田委員 おはようございます。自由民主党の櫻田義孝でございます。

 本日は、朝の早いところから参考人の皆様にはおいでいただきまして、本当にありがとうございます。

 京都議定書の目標達成のために必ず我々がやらねばならないという責任があるわけでありますが、私自身は、環境と経済発展の両立を図る、両立を推進するという立場から、環境税には明確に反対の立場をとっているわけでありますが、国際競争がかつてないほど激しくなっている中、薄型テレビですとかプラズマですとか、パソコンなどは東南アジア勢から激しい追い上げを受けているというのが現在の状況ではないかと思っております。こんな中、日本のみが効果の、根拠性の薄い付加価値的な大増税を行うことについては、我が国経済に与える影響が極めて大きいということで、反対をしていることでございます。

 こんな中、さまざまな形で提言を受けておりますが、業界の自主努力というものを第一に考えて政府として対応すべきではないかというふうに考えております。こういった意味から、今回の省エネ法の改正の企業努力というものを後押しするという意味では、大変有意義、価値のある法案ではないかと思っております。

 そこで質問に入りますが、今回の改正で規制強化のポイントとなっております熱、電気区分の廃止、運送業界の省エネ対策の新規導入、住宅、建築物規制の対象拡大について、本改正案の内容を見まして、実際にはどの程度の具体的な効果と期待ができるのか、これについてお伺いしたいと思います。また、立法化後、運用上留意すべき点は何なのか、この辺につきまして、それぞれ四名の参考人の方々に御意見を承りたいと思います。

山本参考人 それでは、熱、電気の管理を一本化してエネルギー管理一本に持っていこうということなんでございますが、これでいわゆる非常に小さな工場その他にも規制の網がかかってくるということになろうかと思います。その意味で、現在いろいろなことをやっておりますカバー率が七割から八割ぐらいに上がってくるということがある。

 それと、今回の改正には重要なことがもう一つ記載してあるわけでございますが、それによっていわゆる人材の育成、熱管理士、電気管理士と別々に分かれたものを一本化していくということ。これは両方資格を持っているのは、たしか八万人おる中で三千人ぐらいじゃないかと思うんです、ばらばらで。そういった意味では、熱と電気を両方有効に使わなきゃいかぬという人材育成面、それから今後に向けた問題としては、非常にいいだろうというふうに思っているわけです。

 それからもう一つは、産業界といたしましては必ずしもこれにはすべてが賛成ということではございませんでした、正直申しまして。しかし、経団連としてうたっております情報の透明性開示を積極的にやっていかなきゃいかぬという意味では、ぜひこの法案は受けていくべきだということでございまして、情報開示をすることによって自己啓発をさらに進めていくということが二番目のメリットになるだろうと思います。

 それから三番目といたしましては、それによって、最初いろいろなシステムでいろいろなことをやりかえて省エネを達成しましても、最終的にはやはり設備をリニューアルしたり新しいものにかえたりということが必要になってくると思いますが、これは小企業で行う場合に何らかの支援のシステムが要るのかなと私個人としては思っております。

 それから、あと留意すべきところは、登録機関がそれを査定するということになるわけでございますが、ここは登録機関の中立性と信頼性というのをぜひ保てるような形で持っていきませんと、やはりエネルギー、省エネそのものがその企業一つ一つの競争力になっているという場合がありますから、ここは十分御配慮をいただきたいというふうに思います。

 まず最初の点について私からは以上で、それで、また後で、運輸、住宅の問題については意見を申し述べたいと思います。

石谷参考人 ただいまの山本参考人の御意見に重複するところもございますが、簡単に申し上げさせていただきます。

 省エネ法、対象は、トップランナーにしろ工場、事業所にしろ住宅にしろ、だんだんすそ野に広がっておりますので、数がふえる割にはやはりだんだん規模が小さくなってまいります。それに反して手間だけはどんどん広がっていく。したがいまして、今まで大きいところから押さえておりましたから非常に大きな効果が期待できますが、だんだんその効果は小さくなってまいります。

 他方で、すそ野に意識とかあるいは知識が広がるということは非常に重要でございまして、そういった意味の期待が非常に大きいのではないかというふうに考えております。数量的にはなかなかまだ把握できておりませんので、これからこれを把握することが非常に重要かと思います。先ほど中上参考人の御意見にもありましたように、なかなかその効果を定量的に把握する手段がございませんが、今回、こういう対象で数値を調べるということが非常に有効ではないかと思っております。

 それから、最終的にやはりまだ落ちこぼれがございますので、こういったところについてはやはりなかなか規制ではかけにくく、自主行動的な、いわゆるグリーン化ですとかこういった動きがございますけれども、こういったことでまず意識を上げ、その上でまた数量把握ということが重要ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

中上参考人 私も住宅の部分に限って申し上げれば、具体的に今回、規模が二千平米以上の住宅が対象になりましたけれども、修繕、改築、新築を含めてとなりますと、正確な数字は私きょうは把握しておりませんので、また関係の事務の方にお伺いしてでもお答えしていただきたいと思います。

 二つほど申し上げたいのは、一つは、今、石谷さんからお話がございましたように、ホームランばかり打って点をとろうというのはもう無理でして、高校野球をやらなきゃいけない。だから、ヒットと盗塁で稼がなきゃいけない。だけれども、いまだにどうもホームランで点がとれるというふうに誤解されている向きがありそうな気がいたします。

 そういう意味では、七、八割のカバー率ということは、これはエネルギー消費量で七、八割でございますけれども、事業場でいけば一%、二%というオーダーに、以下ぐらいかもしれません。だから、圧倒的にまだ中小企業が多いわけです。ということは、やはり、量はカバーするけれども、意識とすると非常に少ない企業だけでこれを賄ってしまう。ですから、意識を高める意味では、全部規制にしてしまうかどうかは別にして、中小零細企業の方々にも、これに参加している、試合に参加しているというような形での何らかのインセンティブはないかなというふうに私自身は思っております。

 それから、そういうことを通じまして、結果として、これも山本参考人の方からお話がございましたけれども、従業員にそういう意識をトランスファーする。従業員ということは、すなわち家庭の行動、子供さんの行動にまで影響を与える、こういう実験をやられている企業もあるように聞いております。ですから、事業場でやるということは、翻ってみれば、お父さんを通じて子供さんにということにもつながりますから、今、エネルギー量で七、八割だけれども、事業場の数でもっと広げるとそういう効果も波及的にはあるんじゃないかと思っておりますので、まだまだ、全く手がないわけではないというふうに思っております。

 以上です。

浅岡参考人 山本参考人から透明性を高めていきたいと言われることを大変私はうれしく思ってお聞きいたしましたが、情報開示につきましてはこの法律ではほとんど規定がございませんで、情報公開法及び先般成立いたしました地球温暖化対策推進法による排出量の把握、公表制度ではないかと思います。

 これの運用におきまして、私どものこれまでの情報公開の経験におきますと、エネルギー消費量、CO2の排出量を企業秘密と考えられる事業者、事業所の方々が、特に大規模事業者、鉄鋼、セメント、石油精製等、一部の化学業界等にございます。これは法律家の観点からいいますと、これらがいわゆる法律で保護される企業秘密に当たるとは通常考えられませんので、今後の運用に期待をしたいと思います。

 大規模な事業者につきましては既に十年余の定期報告の実績がございまして、経済産業省におきましてはそのエネルギー効率の改善度についても把握をしておられるわけでありますので、著しく不十分と考えられるところと数字上は見えるところにつきまして、それを指導なさらないとすればどのような理由があるのかについては、説明を国民になさる必要があるのではないか。そうした法の執行をこれから期待したいと思います。

 また、中小事業者についてどうするかにつきましては、私も今京都府京都市の条例づくりに参画をする中で、今後、自治体との連携というもの、あるいは地域の事業所、住民との連携というのは大変重要ではないかと思います。事業所を、京都市におきましては、例えばチェーン店等につきましても、同じ系列のところは全部合わせて対象にするというようなことをいたしました。こうした条例による横出しといいましょうか上乗せといいましょうか、そうしたものに国におかれましても寛容に対応していただければと思います。

 表示につきましては、大変重要でありますので、その信頼性の確保という点には、これも今後御留意いただきたいと思っております。

櫻田委員 山本参考人にちょっとお伺いしたいのですけれども、運送業界の省エネ対策に新規に導入するということで、これは画期的なことであり、前進させなくちゃならないと思うんですが、実は、私も昔、ちょっと前まで運送業者をやっていた。自分で経営者とオーナーだったんですけれども、中小企業で、赤字でやめちゃったんですけれども、日本の運送業界というのは中小企業が非常に多いんですよね。

 それで、業界の立場といいますか、業界に携わる人間として、経済界から見ますと省エネ対策というのは基本的に、負担感というものはどの程度あるのか、余りないのかどうなのか、その辺のところの見解をちょっとお伺いしたい。これは、違反してはならないことはもちろんでありますが、負担感が余り大きいような場合は我々もいろいろなことを考える必要があるのではないかなというふうに考えております。

 それと、中上参考人、建築屋さんということで、昔私もまた同業なものですから、建築の面積ですね、二千平米というこの面積についてはどの程度の感触を持っているか。この規模ですと、これをもうちょっと拡大、あるいはもうちょっと面積の低い部分まで拡大すべきであるとかという見解も、ちょっとその辺のことを聞かせていただければありがたいなと思っています。

山本参考人 先生御指摘のように、今、運送というのは、本当に孫請あたりに流れていきまして非常にわかりにくい。ただし、荷主と運送業者がこれを一緒にやろうということで、これは省庁の枠を超えて、初めて経済産業省と国土交通省とでいろいろなお話し合いが進みまして、これが緒につきました。ようやく緒についたということ、これで各企業がいろいろなことをやってみますと、我々の荷物がどこに行っているかというのをまず把握する必要がある。今はコンピューターの時代ですから、これをしっかりと把握する場合に、システム化するときに約三年間ぐらい時間を要するんですね。ただし、私はこれは確実に減っていくと思います。

 一つは、我々としてまず考えなければいけないことは、輸送エネルギーの原単位ですね。これをどれぐらい小さくするかというのを真剣に考えるようになってきております。もう一つは輸送距離の短縮ですね。これにはスワップするとかいろいろなことが行われます。こういったものもやりやすいようにしてこなきゃいかぬ。それから、保管の倉庫だとかいろいろなインフラを整備していかないとそれができないんだということに今ぶち当たっております。これが一つ一つ解決していきますから、やがて数年後にはきちっとした形で出てきて、恐らく相当な効果を上げていくだろうというふうに思います。これは全くございませんでした、正直言いまして。ただ、運ぶものによって一つ一つが違ってきますから、一律に規制することはできないというふうに思います。

 それから、もう一つ考えなければいけないのは、今、荷主とそれから運送業者ということの問題があるわけでございますが、数年前まで非常にもてはやされたいわゆるジャスト・イン・タイムのサプライ・チェーン・マネジメントですね、ここのシステムに、我々は相当ユーザーさんといろいろなことをやりましてこれに持っていったわけですが、これもある意味では少し見直しが必要になってくるというふうなことが起こってくるかと思います。この仕組みを変えるというのも、きょう、あすのようにはなかなかまいりませんから、ここらをどういうふうに、ユーザーにもそれから運送業者にもメーカーにもよくて、本当にいいのがあるかどうかわかりませんが、少しずつ我慢しながら、そして省エネというのを実現していくという努力をみんなが払わなきゃいかぬだろうというふうに思っております。

 それからもう一つ、これはやがて出てくるだろうと思いますから、トップランナー方式ということで、運送関係について業務用というのは今のような形でやりましたが、やはり個人の車というのも非常に多いわけでございますが、車の省エネというのはかなり進んでいるわけでございますね。ところが、だんだん車が大きくなってきておりまして、この省エネ部分を打ち消しているというのが実情じゃないかと思います。

 やがてはここで民生の部分に対してどういうふうな手を打っていくかというところが重要になってくると思うんですが、これは国民の価値観だとかそれから美意識だとかいうふうなものをやはり見直していかないと、大きな車というのはダサいとか、こういう省エネの車は格好いいとか。例えば、オスカーを受賞する俳優たちがエコカーに乗ってきましたよね、ああいうふうなものというのがやはり大衆にアピールするときには必要なんじゃないかというふうに私は思っております。

中上参考人 今の山本さんのお話で、私は車にもラベリングを入れるべきだと言って、一時期大分議論をしたことがございましたけれども、燃費の悪い車のナンバーを真っ赤っ赤にしてしまう、一番燃費のいいのはグリーンにすると。そうすると、一番グリーンになるのは多分軽自動車になるわけですね。真っ赤っ赤のものが格好悪いというふうにするにはそういう手もあるんじゃないかと。金がかかると言われたので、いや、ナンバープレートはどの車もつけなきゃいけないからいいんじゃないかと申し上げたんですが、車の業界の方から余り色よい反応がございませんでした。余談でございます。

 今、建築の面積のお話でございましたけれども、これは浅岡先生からもお話がございましたが、二千平米以上の住宅というとやはり規模が大きいかなと。本当は小さい、住宅というのは一戸一戸の単位でございますから、一軒一軒にすべきだと思いますが、今まで全く手がつけられなかったところにとりあえず二千から入った。なぜ二千かというと、工場、事業場が二千ぐらいが一つの区切りだったものですから、多分そこから入ったんだと思います。

 それより以上に、集合住宅というのは、戸建て住宅に比べると、暖房から見ればもうずっと省エネでございますから、そういうところもあわせて評価しておかなきゃいけない。これは、規制というと言葉は悪く聞こえますけれども、これも浅岡先生からお話がございましたが、快適性が上がるんですね。抜群に快適性が上がる。これはなかなか数字ではあらわしにくいわけです。

 昨年も、経済産業省の外郭団体からの委託研究で、省エネ化をした住宅の評価をやってみたわけでございますけれども、機器より何より、断熱材を入れて二重ガラスの窓をつけたというだけでもう圧倒的に寒さが和らいだ、ほとんど暖房が要らない住戸も出てきたというようなこともありまして、この快適性が上がるというところを本当は評価しなきゃいけないんですが、数字にならないので難しいと思います。

 したがいまして、お答えの方は、いずれ住宅一戸一戸にこういう規制といいますか制度が設けられることを私は期待しております。

櫻田委員 時間がなくなりましたけれども、山本参考人にお伺いしたいのですけれども、トップランナー方式という、現状十八品目でありますが、これをさらに拡大していこうという考えもあると思うんですが、これについてはいかがでしょう。もっとどんどん拡大していった方がいいかどうか、その辺の見解を伺いたいと思います。

山本参考人 節操なく拡大するということは、必ずしもいいことじゃないだろうと思います。

 と申しますのは、今、いわゆるトップランナー方式というのは、日本の産業界というのはどちらかというと、ハウ・ツー・メーク、いかにしてつくるかというものについては非常に進んでおります。例えば、ケミカルの世界でいいますと触媒の開発、それから鉄鋼や何かでいえばそれぞれプロセスを改良して進んでいるんですが、このトップランナー方式というのは、ホワット・ツー・メーク、何をつくるか、そのときにきちっとしたターゲットを省エネに置けば、いろいろなものが出てくる。したがって、トップランナーがある基準をつくって、そこにみんな行けと言ったら、これは行くんですね。

 と申しますのは、トップランナーというのは、どちらかといったら長期にわたるようなものじゃありませんし、いわゆる改良、改善というのを重ねることによって到達できるものですから、かつて企業がやりましたTQC、これのPDCAを待つというところは非常に的確ですから、これは出ていくだろう、達成するだろうと思います。

 特に、今一番大きな家庭で使う省エネといたしましては、いわゆる電力が、ヒートポンプを使ったエコキュートだとか、ガスだったら潜熱を利用したものだとか、いわゆる給湯部分というのが非常に大きいんですね。それから、冷蔵庫その他につきましても、いわゆる二分の一・二分の一作戦なんというのをいろいろなところでおやりになっておりますが、容量を二倍にしてエネルギー消費量を二分の一にする、結局、容量当たりに換算すると四分の一になるというふうなものは既に達成しておられます。

 しかし、これは、やはり一般大衆を考えますと、いいものができたからあしたから買いかえるという、携帯電話のような形になりませんですね。したがって、ある程度のリードタイムを持って、どういうふうな時期にどういうふうなものが要るという具体的な目標を各業界がつくっておられますから、そこにもってみんなが一致団結して努力していくということが非常にいいことだと私は思います。

 ルームエアコンにしましても、八年前のもう四〇%、約二分の一ぐらいのエネルギー消費量になっておりますし、それから、いわゆるブラウン管テレビ、エアコン、冷蔵庫というものを液晶テレビだとかなんとかというふうにみんなかえていけば、試算といたしましては三十三万トンぐらいの炭酸ガスがいわゆる節約できるということも出ておりますから、こういったものを積み重ねていって、これは非常に小さい積み重ね、先ほど石谷先生おっしゃいましたように、落ち穂拾いのようなものになるかもわかりませんから、意識を持たせる意味では努力していくべきだというふうに思っております。

櫻田委員 ありがとうございます。

 これで終わりといたします。

河上委員長 次に、梶原康弘君。

梶原委員 民主党の梶原康弘でございます。

 きょうは、大変お忙しいところ、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。質問をさせていただきたいと思います。

 まず、京都議定書の問題、これは四人の先生方から手短に、簡潔にお答えいただきたいと思います。ことし二月に京都議定書が発効したわけでありますけれども、この議定書について、最大の排出国であるアメリカあるいは急成長の中国が批准をしていないとか、途上国の問題とかいろいろ指摘されるわけであります。また、日本がその目標達成のためにはこれから一四%近い削減をしていかなくちゃいけない、大変難しいのではないかということも言われているわけです。

 ただ、国民の八〇%が温暖化について関心を持っている、また、これまで日本というのは経済的な繁栄を享受してきた、議長国でもある、そういった大きな責任を負っているのではないか。まさしく国際公約というふうに思っているわけですが、ただ、その一四%削減ということ、現実には大変厳しいのではないかという点から、いまだに国論が二分されている。省庁間の対立のようなことも言われているわけでありまして、その達成に向けてどうお考えなのか、簡単にそれぞれの先生方から御発言をお願いしたいと思います。

山本参考人 産業界といたしましては、いわゆる最もその業界に適するような指標を選んで自主行動計画をさらに続けていくということでございます。もう既にいろいろなところを達成している、何%おれのところはやると言って、目標に向かって努力されたところがございますが、その努力を、そのバーをさらに高くしてこれに挑戦していく。むしろ、我々として一番懸念しておりますのは、今、日本のエネルギー供給構造が実に脆弱だということなんです。産業界はこれを自覚しております。したがって、単なる、今まで達成したからいいという問題じゃなくて、二〇一二年以降の問題まで含めていろいろな取り組みを進めておりますし、京都議定書はその第一歩にすぎないという自覚を持っている経営者もまた従業員も非常に多いということをまず申し上げておきます。

 それからもう一つは、いろいろそれが実行できるのか、まず、これはやってみなければわかりません。おっしゃるように非常に困難な問題を持ちますが、今重要なのは、国民全部を引き込んでこれを進めていくということじゃなかろうかと思います。単に産業界が努力しただけではこれはいかないというふうな気がしております。その意味で、産業界の果たす役割というのは、四五%ぐらいもう排出量を出しているわけですから、ここでまださらに進めるということでございますが、透明性を確保する、その点を第三者に評価していただくということ。特に、CSRというのが今だんだん流行になってきておりまして、それを社会的責任の一環として打ち込んでやっていくという機運にございます。

 それでも、国全体としてはどうも達成できないんじゃないかという懸念もございます。だから、ここを何とか担保する必要があるということで、我々といたしましては、CDM、京都メカニズムの活用を今盛んに政府にも、それから省庁にもお願いしているわけでございます。この一番いい方法というのは、クリーン・ディベロプメント・メカニズムを活用することだ、これは担保としてとっておきたい、いわゆる目標達成が危うくなったときに、可能性もありますから、そのときの担保としてとっておきたい、このように思っている次第でございます。これは後で出てくるかと思いますが、非常に困難な問題もございます。先生方に非常に御努力いただかなきゃいかぬところでございます。よろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

石谷参考人 ただいまの御意見と重複いたしますが、やはり一四%というのは非常に難しい、困難な目標だと思いますが、やはり日本としては、まずそれを達成しないとこれ以降発言力がなくなりますので、そういった意味でも非常に重要かと思います。

 国の計画その他でもやはりいろいろと検討されておりますが、私、たまたま自主行動計画のフォローアップの一端を請け負っておりまして、そこから見ますと、企業としては非常に苦労して下げておられる。一部企業、必ずしも達成できないところがございますが、これはそれぞれの理由がございまして、その意味で、全体としては、CDMも含めて企業の枠内では達成できると私は期待しております。

 ただ、全体としてやはりマイナス六%を今から達成するのは困難ではないかという感触がございますので、今お話がありましたCDMが非常に重要な課題になる。

 ただ、CDMはスタートしたばかりで、遅々として進んでおりませんが、これからあと四年間でございますか、その間に経験を積んで、少しずつ成立していくのではないかというふうに期待しております。そのためにもいろいろと御支援、御理解をお願いしたいと思います。

中上参考人 一四%削減ということでございますけれども、実は六%がCDMであるとか森林吸収だとかということでマスキングされまして、実際は八%程度かと思いますが、それは現時点でありまして、これからまだ五年、六年あるわけですから、五年、六年ゼロ成長したという前提でトータル一四%。

 もし、本当に一四%、例えばやろうとすると、これは七分の一ですから、私はよく申し上げるんですが、一週間に一回すべて活動をとめるということです。先生方も全部一日寝ていていただくと一緒、全く何もしない。飲み食いもしなければ、トイレにも行かない。これが一四%です。部分的にはできそうに思いますけれども、全国でそれをやるということはそのぐらいのオーダーになって、いかに大変かということですね。

 ですから、総力戦でかかるべきだ、規制をもっと強化すべきだと私は申し上げ続けてきたんですが、なかなかそこまで盛り上がらなかったというのが現状ではないかと思います。実は、笛吹けど踊らずじゃないか。

 そういう意味で、私、コメントで申し上げましたけれども、目標達成計画ができましたと言った途端に、新聞論調もどんどんトーンダウンして上がってこない、マスコミも取り上げないということですから、国民一般、何となくできた気になっているんじゃないか、それを私は危惧するわけでございまして、何とかその辺をプロモートしていただきたいと思います。

 それから、自主行動計画でございますけれども、私も流通業の座長をやっておりまして、何年かずっとフォローアップをやらせていただきましたけれども、実は流通業というのは複雑でございまして、成長している部分とやや停滞している部分とありまして、成長する産業は全部当然ふえるわけですね。ふえるとだめだという論調ですから、その業界は業態がふえればふえるほど、どうしてもふえてしまう。

 そういう意味では、やはり全体の枠組みの中で評価することにしておいてあげないと、例えば、電子情報産業は非常に活況を呈している、そうするとその産業はどうしてもエネルギー消費がふえてしまうものですから、部門に、産業別に評価するというのは、そういうところを十分勘案しなきゃならない、当たり前でありますけれども。

 ただし、四、五年おつき合いしてまいりまして、認識が高まったことだけは確かです。当初は、そういうことを言うとしかられますけれども、エネルギーの単位すら、リッターとキロリッターがごっちゃになったりするような、そのぐらい混乱していたような状態でございます。今はもうそんなことは全くありませんし、非常に業界全体も意識が高まってまいりましたから、それなりの効果は出てくると思いますので、やはりこういったことを積み重ねることによって次のステップ、次のステップへとランクを上げていけば、長期的にはできると思いますけれども、短期的には、私は何度も申し上げますが、極めて難しい目標だなというふうに感じております。

浅岡参考人 目標達成計画におきましては、国内での削減は九〇年比マイナス〇・五%でありますし、エネルギー起源のCO2はプラスで〇・六%ということに今日ではなっております。結局、その内訳をどうするか、内部の配分をどうするかということが、私のきょうのレジュメの後ろの方に、その部門別の割り振りも図表をつけておきましたので、ごらんいただきたいと思いますが、産業部門につきまして、やはり目標が九〇年比ゼロなんですね。経団連自主行動計画の目標は、これは早急に見直す必要があると思います。

 省エネ法の年一%効率改善という点からいきましても、これはどのように達成するのかという、省エネ法自身の評価にもかかってくるのではないかと思いますし、先ほど電力の排出係数がふえたからということがありましたけれども、電力も経団連の自主行動計画の中に入っているわけでありますので、結局、そういう言いわけをしていくと、この経団連自主行動計画自身への信頼性も乏しくなるのではないかと思います。

 CDMを事業者の方がみずからの技術や資金を投じて取り組まれることは、私は途上国にとりましてもいい面が多大にあると思いますが、やはり国内の産業構造の転換、あるいは成長産業等いろいろある中で、どう削減しなければいけないかというのを考えますと、EUで今年一月から開始いたしまして、カナダやノルウェーともリンクされるということになっております国内での排出量、あるいは域内での排出量取引制度というものは、事業者の皆様の経済のプラスマイナスも含めた上で、フレキシブルな削減の調整策として、なかなか今後伸びていく、そのように進んでいくのではないかと思います。日本におきましても、CDMだけではなくて、早くそうした事業者の皆様の準備が必要なのではないかと思います。

 それから、国民がみんな協力しなければいけないというのはまさにそのとおりでありまして、私どもも消費者団体等に、消費者への呼びかけとして、一緒にそうしたエネルギーの効率のいい機器を購入することを呼びかけているわけでありますが、先ほど山本参考人から、中小の事業者も設備を入れかえるについてはお金がかかるから支援が欲しいということがございましたが、家計はもっとそうでありまして、高効率の給湯器等はやはり現状で三倍ぐらいするわけですね。それを若干の支援策でもとても追いつかない、ほとんど充たらないという状況でありますから、やはりそれはそうした仕組みを、一方で税というようなものも使って、より国民が選択しやすいインセンティブを考えていくのか、そのほか表示も考えるのかということもあわせて、これは国民の参加といいましょうか、推進も得られると思っております。

梶原委員 ありがとうございました。

 続いて、石谷参考人にお伺いしたいと思うんですが、先生は自動車の省エネといいますか権威でいらっしゃるわけですが、クリーンディーゼル車について伺いたいと思うんです。

 EUではかなり普及していると聞いておりますが、日本では全くしていない。この普及について、日本国内で取り組む必要があるのかどうか、まずその辺のところについてお伺いしたいと思います。

石谷参考人 クリーンディーゼルとほかの、特に日本の場合にはハイブリッド自動車がよく議論になっております。いずれも走行条件によって随分燃費が変わってまいりまして、我々、例えば都市部でどういう走行をするかというのは大体パターンがわかっておりますが、これで見ますと、明らかにガソリンハイブリッド車の方が効果が大きい。

 高速走行に入りますとハイブリッド車の効果というのは薄れてまいりますので、ディーゼルエンジンの方が効率が高い分だけ一般的に高いと言われておりまして、特にドイツは高速走行が基本になっております。そういったところで、ドイツ側では、あるいはフランスもそうですけれども、自動車メーカーもディーゼルに力を入れているということで、ヨーロッパではディーゼルが主流になってきたのは御指摘のとおりだと思います。

 ただ、日本ですとか、あるいはアジアの非常に人口稠密な地域というのは、町中では自動車が非常に混雑しておりまして、ここを見ますと、必ずしも、ディーゼル車がガソリンハイブリッドに比べて効果があるかどうかというのは議論のあるところでございます。ただ、一般のガソリン車とディーゼル車を比較すれば、これは明らかにディーゼル車がよくなっております。

 ですから、どこのところで使うかというところに本来でしたら重点を置いて考えるべきでございますが、やはり基本になるのは価格とそれから効果の問題でございます。ディーゼル車の場合に一等問題になりますのは、やはり排ガス規制でございまして、これの将来のポスト新長期でございますか、ここに対して価格がどのくらい、あるいは技術的に可能かどうかというのが極めて今議論になっております。そこで価格が上がることになりますと、ガソリンハイブリッド車の方があるいは効果的ではないかという問題もございまして、その辺が、日本の自動車メーカーが技術は持っていてもなかなか日本の国内にディーゼル車を投入できない原因になっているかと思います。一度投入しますと、これは何十年か続きませんと自動車会社としては維持ができない。

 日本でいいますと、例えば北海道みたいなところは、もしエミッションの基準が低くなれば、ヨーロッパと一緒でかなり有効でございますが、その辺も含めて考えていただかないと、なかなかこの議論は決着がつかないのではないかと思っております。

 以上でございます。

梶原委員 時間が余りありませんのであれなんですが、次に、環境税のことについてお伺いをしたいと思います。

 国民の八割の人が関心を持っている、こういう時期にこそ、税の問題とかお金の使い方を大胆に転換していくべきではないかなというふうにも思っているわけです。また、環境税については、今の道路特定財源を環境目的に振り向けていくという議論もあるわけでありますが、そのことについて、環境税の問題について、山本参考人そして石谷参考人、簡単にお願いしたいと思います。

山本参考人 環境税につきましては、現在では、効果それから負担論、その他をいろいろ勘案いたしましても、これは経団連としては絶対反対だということでございます。それからまた、税として特殊財源にすべきかどうか。今、いろいろな財源がございますが、源泉課税なんですね、ほとんどが。これは大変なことになるというふうに思います。取りやすいところから取るということにしかならないというふうに思っておりますから、これは断固反対してまいります。

 それで、そういったところからもうちょっと冷静に考える。それから今、一兆二千五百億ぐらい、いわゆる環境対策としてお金が使われているわけですが、民間がやりますように、これをはっきりとプラン・ドゥー・チェック・アクションを回すということが行われているかということはないんです。この結果をどうぞ出していただきたいというふうに私どもは主張しているわけです。

 それから、ヨーロッパの例が盛んに引き合いに出されますが、向こうの国は、ほとんどが二〇%近くの消費税を取っているんです。それで財源をどこに求めるか。いわゆる効果、それから財源論、負担論から見て疑問だと言いましたけれども、ヨーロッパとしては、環境税を取って、それを環境対策に使っているというケースはほとんどございません。福祉財源になっている。このあたりをよく勘案してやっていかなきゃならぬだろう、税についてはそういうふうに申し上げておきます。

石谷参考人 簡潔に申し上げます。

 個人的には、環境税というのは経済原則を反映するということで非常に望ましいものだと思いますが、現実には、複雑な税体系のために、CO2の排出量と負担が比例しないという現実がございます。その上で中途半端な環境税が入りますと、これは必ずしもCO2に比例した負担にならない。したがいまして、そこまで整理していただけば、これは、本来の意味の環境税であれば機能するのではないかと思います。

 ただ、日本の場合には、先ほどからお話がありますように、企業が非常に影響を受けますので、これが、国際的な横並びの税負担ですとか、こういったことを補正しないで入りますと、いわゆる炭素リークが生じる可能性が非常に強いと思います。その上で、やはりこういったことも考えた上で環境税を考えていただきませんと、結果としてはCO2削減がむしろ逆転する可能性もある。そういったような問題点がいろいろございますので、課題をよく整理した上で御検討いただきたいと思います。

 以上でございます。

梶原委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

高木(陽)委員長代理 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 きょうは、参考人の先生方、貴重な御意見をいただき、大変にありがとうございました。今後の審議の参考にさせていただきたいと思っております。

 二月十六日に京都議定書が発効されたわけでございますが、この京都議定書は、地球温暖化を食いとめる唯一の国際的な取り決めでありまして、我々は、京都議定書にいろいろな課題、問題はあるとしても、この歴史的な議定書の発効を温暖化防止への重要な一歩としなければならないと思っております。

 私は、地球温暖化問題の本質というのは、世界全体の温暖化ガスをどのようにして有効に削減していくかということにあると考えております。地球温暖化問題について、世界全体の排出量を実質的に削減していく上で何が本質か、また、いかなる視点からどのような取り組みが必要なのか、我が国はどのような方針で臨むべきか、本日は、こういった観点から、参考人の先生方に質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、私も京都議定書目標達成計画の評価と、いろいろ大きな議論になっています環境税の導入について御質問をしようと思いましたが、先ほどの先生の御質問でお答えいただきましたので、これについてはまずは割愛させていただきます。

 質問でございますけれども、京都メカニズム、技術移転の仕組みの充実について、きょうはいろいろな先生方がいらっしゃいますので、お聞きしていきたい。これは石谷先生にお聞きしたいと思っております。

 世界全体の排出削減をいかに有効に進めるかが重要な課題であるというのは先ほど申し上げたとおりでございますが、京都議定書が削減義務を課している国というのは、アメリカが議定書を離脱する中で、世界全体の排出量の三分の一にしかすぎないという問題がございます。今世紀末には、途上国の排出量が世界の四分の三にも達するという見通しもあるわけでございます。

 現在の京都議定書には、途上国に技術や資金の移転を進める京都メカニズムがございますね。しかしながら、この運用が硬直的で、途上国にとって魅力的なものとなっていない、また、途上国の持続的な発展や増大するエネルギー需要の問題などを解決する省エネプロジェクトがやりにくい仕組みであると聞いております。

 現在のこの京都メカニズムの運用について、どのように評価され、考えられているか、また将来はどのように充実していくべきであるか、そのことについてお伺いしたいと思います。

石谷参考人 お答えさせていただきます。

 京都議定書につきましては、今御指摘のあるとおり、CDMの運用規則といいますか、いわば憲法ができて、それ以上の細目がないところでスタートしてしまったというふうに私は理解しております。

 今、CDM理事会で、一つ一つプロジェクトベースで検討しておりますので、話を聞きますと、CDM理事会というのは非常に弱体で、重労働のところで、大量の審査をしている。こういう体制そのものがもう既に破綻というか不十分ではないかと思いますが、そうはいっても、一つずつ積み重ねてやっているようでございまして、経験も積んでおりますので、逐次改善されていくとは思います。

 ただ問題は、先ほどもちょっと申し上げましたように、途上国にとってどういうメリットがあるかということでございまして、必ずしも途上国がCO2削減をする義務はないところに先進国の技術が移転していきましても、途上国にとっては余りプラスにならない。むしろ、省エネですとか、いわゆるペイバックのあるものを推進したいというところに、これはいわゆる追加性のところでひっかかってまいります。

 ですから、そういった意味で、枠組みを新たに検討すべき必要があるのではないかと思いますが、現時点ではこれは間に合いませんので、少しでもアディショナリティーというところを弾力的に理解して、そして途上国もメリットになるようなものを持ってまいりますとCDMが進んでいくかと思います。この傾向は少しずつ進んでいるようでございまして、今後、途上国もメリットがあり、先進国側も技術移転をする、その意味でも省エネの技術というのは非常に有効かと思っております。

 今後の、京都以降につきましてはいろいろな議論がございますが、やはり京都の経験というのは非常に重要でございまして、そういった意味で、京都の議定書というのは、スタートポイントとしては非常に効果があったと思っておりますが、やはり問題点もいろいろ出てまいりました。最大の問題点は、やはり今御指摘のとおりの米国と、それから途上国、特に中国、インドが参加しないまま今の形が進むことが適当かどうかということです。

 これに関しましては、御承知と思いますが、産業構造審議会の環境部会の下で、将来枠組み検討専門委員会というのを私担当いたしまして、報告書が出ておりますので、今後どういう形であり得るかという問題提起でございますけれども、いろいろな可能性を論じております。詳細についてはそれをごらんいただければと思いますので、それでよろしいでしょうか。

江田委員 今申されましたように、私も、CDM、京都メカニズムというのは今後非常に重要な課題だと思っております。そういう中で、こちらとしてもやりやすい、やはり途上国がそういうような新たな省エネプロジェクトというものがやりやすい仕組みにしていくことが必要だと思っております。今後の新たな枠組みに向けた議論に期待したいと思っているんですが、今ちょうど先生がおっしゃられましたもう一つの問題は、アメリカが参加するためのアプローチでございます。

 詳細は先ほど参考にと言われましたが、あえて質問をしたいわけでございますけれども、現在の京都議定書の枠組みには、最大の排出国であるアメリカが離脱しているのに加えて、第二位の中国は、条約の批准はしているけれども削減義務は課されていないわけでございます。このような中で、世界全体の排出削減をいかに有効に進めるかということが、ポスト京都議定書の新たな枠組みづくりが重要であるかと思っております。

 米国、中国、インドといった排出大国の参加をどのように確保していくか。今先生が参考にしていただきたいとおっしゃられましたけれども、この場で、今後のアプローチについて、その考えをお聞きしたいわけでございます。複層的なアプローチというのを先生は産構審の将来枠組み検討委員会の委員長として十分に論議されてきておりますので、そこのところを明示していただきたいと思います。

石谷参考人 簡潔に申し上げますと、やはり国連方式ではなかなかきついのではないかという意見もございます。やはり交渉の場で、アメリカあるいは途上国が抜けて人ごとのような形で進んでも、まとまるものがまとまらない。

 一つの考え方は、やはり主要排出国が集まってじっくりと議論をする。そうはいっても、なかなかアメリカが参加するようには思えませんので、まずやはり途上国にどうやってこちら側の削減の枠組みの中に入ってもらうか。それが結局、CDMをいかに魅力あるものにするかという話で、基本的な考え方は、日本とヨーロッパは、そういう意味では今非常に似た立場におります。

 もう一つ問題になっておりますのは、やはり不平等な競争ということでございまして、これにつきましては、いわゆる産業のトップランナーといった感じのベースラインをつくって、これをCDMの形で持ち込みますと、省エネがCDMの形で途上国に入る。こういったようなことで途上国に魅力を与えて、そして、その上でアメリカにやはり抜き差しならない形に持っていくというのが一つの考え方ではないか、私どもはそう信じております。

 以上でございます。

江田委員 私も、アメリカをどうやって参加させるかということについては、今回の京都議定書の枠組みに参加した先進国と途上国の双方が、やはり京都メカニズムのような仕組みを使いながら環境によくて経済効率を高める多くのプロジェクトに取り組むことができれば、アメリカもそういった流れに乗りおくれてはならないというような機運が盛り上がって、国際的な枠組みへの参加の意欲が高まるのではないか。こういうところがアメリカを今後参加させる非常に重要な論点ではないかと思っておりましたので、先生から今同様の御意見が出ましたので、確認できました。

 次に、経団連の山本参考人にお伺いいたしますが、今回の省エネ法の改正におきましても、産業部門における温室効果ガスの削減対策の中心となっているのは、経団連の自主行動計画でございます。その対策効果に大きな期待が寄せられているわけでございますけれども、今後の経団連の自主行動計画の実効性について、先ほども参考人のお話の中にあったかと思いますが、自主行動計画の実効性についてはどのように正確に認識されておられるか、そのことをお伺いしたいと思います。

山本参考人 これは、やはり透明性を高めて、情報公開というのを非常に積極的にやらなきゃいかぬだろうと思います。

 それから、今もう既に、トップランナーの機器にしましても、メーカーが幾ら言ってもだめでございます。要は、消費者の選択にかかるわけでございます。メーカーを生かすも殺すも、消費者に主権が移っている。今度の愛知万博も、国、企業がやった万博で初めて消費者の参加というのを呼びかけられましたね。これは私は画期的なことだと思っております。消費者が参画することによって全然見方が変わってくるというふうに思います。

 だから、そこだけにいわゆる産業側が依存していいかといいますと、産業側は、あらゆる困難を乗り越えても、やはりエネルギーというものの供給についてしっかりした責任を負わなければいけないと思います。短期的な問題ではなくて中期的な問題、例えば原子力でも、先ほど、二〇〇三年にとまったらこれぐらいの影響がありましたと申し上げましたが、一%原子力の稼働率が上がりましたら〇・二%炭酸ガスが減るんですね。その実態を踏まえて、やはり安全性の確保は重要でございますが、こういった骨太のものにも我々としては困難を乗り越えてやっていかないと、この国は危ないと思います。

 それから、CDMその他の話が出ておりますが、今の日本の省エネ技術を、開発途上国じゃありません、欧米に渡しただけで、二〇%炭酸ガスは削減できるんです。今度の京都議定書で世界の目標としておりますのは、五・二%の削減なんです。そのCDMその他が機能していない。いわゆる国連のルールの大改正をやらなきゃいけませんし、それから、ホスト国、中国なんかに行きましたら、なかなかクレジットをとってくるのを認めないんですね。これはプライドがあります。

 したがって、今までのCDMのやり方ではなくて、例えばODAを使うとか、それから、いわゆる炭素基金でどういうふうな援助をしていくかだとか、こういう相当フレキシブルな仕組みをとっていきませんとこれは実現しないというふうに思っております。

 よろしゅうございますでしょうか。

江田委員 ありがとうございました。

 今、幅広い御意見が出ましたけれども、経団連の自主行動計画の実効性に大いに期待するわけでございます。と同時に、今もおっしゃられましたように、やはり供給側の責任をしっかりと果たす。その中においても、原子力の問題も出ました。CDMの課題も出ました。私も、やはりそういう広い範囲において、真摯にこの削減について実行可能なことを、議論を深めていかなくちゃいけない、そこが非常に大事だと思っております。

 時間が来ますので、最後の質問になると思いますけれども、先ほども出ました消費者に主権が移っているということでございますけれども、国民の意識改革について最後にお聞きしたいと思っております。

 これは、中上参考人と浅岡参考人にお聞きしたいと思っているんですが、我が国のエネルギー使用の約三割を占める民生部門のエネルギー使用量は確実に増加し続けておりまして、二〇〇二年度のエネルギー使用量は、九〇年度と比べまして約三五%も増加しているという状況でございます。

 民生部門において省エネルギーの取り組みを進めるためには、国民一人一人が自分の問題として取り組むことが不可欠であります。省エネルギーや環境についての意識を一層高めて、自発的に取り組みを進める環境を整えることが最重要課題ではないかと私は思っております。

 しかし、これまでの政府の取り組みは、私は全く不十分という気がいたします。それは、地球温暖化問題の重要性については最近の議論から国民にわかってもらったとしても、具体的に国民一人一人が何をしたらいいのかということでございまして、ここが国民はわかりにくいわけでありますよね。我々一人一人が生活の中でわかるような目安を示すべきではないか、私はこのように思います。

 今後、国民に対してどのように意識喚起を行っていくべきか、実効性のある対策についてどのようにお考えか、中上参考人と浅岡参考人にお伺いしたいと思います。

    〔高木(陽)委員長代理退席、委員長着席〕

中上参考人 消費者をどう変えていくかということは非常に難しい問題でございます。

 ただ、私の経験で、私自身も大変成功したと思っているのは、待機時消費電力というのがございまして、これは、私が発表しましたときはほとんどだれも目を向けてくれなかったんですが、たまたまそのとき計測しましたら、一家、年間一万円ぐらい待機時消費電力に使っているというデータを出しましたら、一気に消費者が目を向けてくれました。産業界は、何だ、こんな一ワット、二ワットのことをどうして目くじらを立てるんだ、それこそ、さっきじゃありませんが、もっとホームランを打つ打者がいるだろうと言うので、いや、ヒットじゃなきゃだめだと言ったんです。ところが、消費者が一斉に声を上げたものですから、これは、世界でも唯一日本だけが、産業界が自主規制で待機時消費電力を減らすという宣言をしまして、もう確実に減っているわけですね。

 だから、消費者の力というのは、まさにサイレントマジョリティーですが、これが一たん目を覚ますと物すごい力になる。だから、ここをどうするかというのは非常に問題だと思います。

 別な調査で申し上げますと、これは当時の経済企画庁の調査でございましたけれども、省エネルギー意識、環境意識の高い家とそうでない一般の家と、同じぐらいの住宅レベルそれから家族構造で比べますと、何と一六%もエネルギー消費が違うわけですね。一六%、先ほどの例でいけば六分の一ですから、六日に一回片一方は寝ていなきゃいけないという状況になるわけですから、意識というのはいかに大きいか。これは一朝一夕に変わりませんから、そのためにも、まず最初は規制でもいいから取っかかりを見せなきゃいけない、これが長期的には非常に有効な政策だと私は思っております。

 では、そういう意味で、今、情報をどう適切に伝えるかというのは二つぐらいございまして、一つはエコショップという、先生御存じだろうと思いますが、量販店で省エネルギー商品をいっぱい売ると表彰されるという制度でございます。これはみんな得をするわけでありまして、消費者は、比べて効率の悪いものは安いものですからついそっちを買ってしまうんですが、年間の電力消費量を積み重ねて、五年、六年となりますと、その商品は一見高いけれどもそういう省エネ商品を買った方がトータルで得なんですね。ところが、目先の財布に響くものですから、つい安い方を買ってしまう。逆に、販売店からいくと、高い商品を売った方が利幅が大きいわけですから、それを売るともうかるということで積極的に省エネ商品を勧めてもらう。トータルで消費者も得をする、それで炭酸ガスも減るというわけですから、これは非常にうまい仕掛けだと思いますが、例えばそういう方法であるとか。

 それから、今回、新たに大口の、大手のエネルギー供給者、事業者に対して、消費者に適切な情報を伝えるようなことを後押しするというようなことが経産省の方でも決められておりますし、ホームエネルギーマネジメントシステムといいまして、デジタル化が今後進んでまいりますと、テレビの情報に今度はオンラインでエネルギー情報を出して、実際に数字を見せる、あるいは比較して見せると非常に効果が出るということが我々の実験でも確かめられておりますから、将来的には、そういう技術が普及してくればまだまだ可能性はあるのではないかと思っております。

浅岡参考人 消費者といいますか家庭についてのお尋ねだと思いますので、それについて申し上げます。

 家庭からの排出は、一億二千万人で一三%ほどでありますし、自動車、マイカーは六%ほどで、全部合わせて二〇%ないわけであります。三五%ふえているというお話でございましたが、私のレジュメの最後のところに、電力排出係数の増加と家庭の全体の排出量の増加とのかなりパラレルな関係を図示しておきました。ふえているかなりの部分がここ数年の電力排出係数の悪化にあると思いますが、これは、原発がとまっただけではありませんで、石炭火力発電所が大変ふえている、そして、天然ガスへの燃料転換が進んでいないというふうなこと、稼働率が高まっていないというようなことにかかっておりまして、これらは消費者としてはいかんともしがたい部分であります。そういう部分が一三%のうち八%ほどあるわけであります。この点はよく御理解いただきたいと思います。

 そういう中で、消費者が効率のいい機器を選んでいくということが重要であることは言うまでもないわけですが、一番大きな外枠であります建物というのは、本当にこれは大きな要素であります。エアコンなどは、そこの建物の効率に係る要素の方が大きいと言えます。こうした関係も、本日、お手元のレジュメの最後のページに、家庭での排出のそれぞれの構造というものを図示いたしましたので、参考にしていただきたいと思いますけれども、建物は、建築基準化しますと、我々が家を建てますときに、そういうものだと思って設計もし、建てるわけですね。そういう意味で、組み込むことによって実質みんながかえってやりやすくなる。トータルな金額は決まっておりましても、どう配分するかであります。

 表示につきましては、電気料金も含めたトータルの金額を、いかに経済的であるかということを示す、そういう表示の仕方を私どももつくりまして、ポスターなどで一生懸命啓発をしております。

 基本的には、電力、ガス、水道及びガソリンの値段を安くする、それは、単に小まめに消すだけではなくて、そうした機械や建物選びであるということを申し上げております。

江田委員 ありがとうございました。

 時間が参りました。参考人の先生方、きょうは、貴重な御意見、ありがとうございました。終わります。

河上委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。四人の参考人の皆さんには、大変お忙しいところ、本日はありがとうございます。

 私は、最初に、山本参考人と浅岡参考人に伺いたいと思いますが、地球温暖化防止というのは、これは人類の将来にかかわってくる問題でありますし、中でも、温室効果ガスであるCO2の地球的規模での総排出量規制というのは、死活的に緊急課題と言うべきものになっているというふうに思うわけです。

 私も技術屋出身ですから、技術屋的発想からいくと、CO2の固定化技術だとかあるいはエネルギー転換効率とか発電効率をどう上げるかとか、あるいは、化学工場にしても発電所にしても、大量の熱を捨ててしまっておりますから、多流体サイクルをつくることによって、低い温度域では、コストの問題はあるんですが、例えば水銀タービンであるとかあるいはアンモニアタービンとか、現実には低い温度領域での、海洋温度差発電など、アンモニアタービンですが、そういうふうなことを通じて、廃熱を限りなくゼロにすることとか、限りなく低い温度領域に至るまで電気転換するとか他の形にする、それを追求するというのは、技術屋的発想としては非常に関心を持っているところなんです。

 しかし、大事なことは、技術が確立するまで目標達成をあいまいにするという発想になってしまうと、これは地球温暖化にとってはさらに深刻な事態を生み出す、ここが問題だと思うんです。

 そこで、最初に両参考人に、まず、CO2総排出量を部門別、大口企業別に具体的に削減するという取り組みが大事だと思うんですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

山本参考人 今、経団連傘下企業の中では、各業界がどれぐらいの目標を定めてCO2を削減するかということに取り組んでおります。これは、多分達成できるというふうに確信をしております。

 そのときに非常に重要なのは、結局CO2を減らすというのはどういうことをすればいいかといったら、エネルギー源をかえるか、イノベーションの誘発を待つか、使用量を減らすか、幾ら考えても三つしかないんですね。だから、その三つをすべてやらなきゃいかぬ。しかも、それが短、中、長期に分けて、きのう、ITERの日本誘致というので総決起大会がございましたが、これは百年後の問題かもわかりません。しかし、それもやっていかなきゃならぬのですね。

 それから、短、中、長期に分けてこれをやっていかなければならない。トップランナー方式というのはまさに短期の問題ですね。これをまず分けて、みんな一緒くたにしないで取り組む必要がある。原子力その他の問題というのは中期の問題かもわからない。次のエネルギーが見つかるまで、何かでつながなきゃいかぬ問題かもわかりませんが、ここをはっきりしてかかる必要がある。

 それから二番目には、世界的な空間の広がりを持っている。EUとアメリカに日本の技術をやっただけで一〇%減るよと言いましたけれども、依然として日本の技術はなかなか中国に出ていかない、これが実態でございますね。それで、参加するメカニズム、仕組みというのをできるだけ考えて、そして国際規模でこれを減らしていくという努力をしていかなきゃならぬだろう。

 そのためには、今環境先進国であります日本が、二〇一三年以降も環境先進国であり続ける、そのためには、やはりRアンドDの投資をし、設備を更新し、世界にこれ見たかというぐらいのものに持っていかなきゃならぬというふうに我々は考えております。

 ただ一つ。そのときにやりますのは、個別には一つ一つが非常によくても、日本の町のように、中上先生がいらっしゃる日本の町のように、一つ一つはよくても、総合の誤謬というのがありまして、町としては実に醜いというふうなことがありますから、ここだけはよく注意しておく必要があるだろうと思います。

 先ほど、ホームランバッターというのがありましたが、ジャイアンツもホームランバッターばかり集めても、弱いですからね。たまにはバントしてつないでいかなきゃならぬということがありますから、これをよくわきまえて取り組んでいくべきだというふうに思っております。

浅岡参考人 今後、長い将来にわたりまして地球規模で大幅な排出削減をせざるを得ないことは、詳しくは繰り返しません、申し上げませんが、御案内のとおりであります。京都議定書は、総量として、先進国から数値目標を決めて削減しようというプログラムでありますが、このスキームをなくすることは、目標達成にはあり得ない、脱温暖化への取り組みにはあり得ないことでありますので、こうした京都議定書というものが、京都という名を冠しまして世界に今後長い年月発信し続けるということは、日本の外交上も極めて大きなメリットをもたらすだろうと思っています。

 そうした観点から、日本の国内での削減の実効性を上げるという点も重要だとなるわけでありまして、そのときに大規模排出事業者、今回、省エネ法で対象になりますような、日本全体の排出量の五四%を占める部分、それはそれでしっかりやっていただく。その大半が経団連自主行動計画にカバーされていると言われるわけでありますが、カバーされない領域が一〇%ぐらいありますが、そこの、経団連の自主行動計画が総量の削減目標を出しているのではないところの業種がたくさんあるわけですね。これらはやはり経団連として改めていかれないと、全体の目標達成にはならない、地球規模での削減にもつながらないと思います。

 特に産業界は、日本の省エネ技術は大変高いんだ、こう言われるのですが、これまで中央環境審議会でずっと議論してまいりましたように、国際比較をするというのは、生産量等をどうお金にかえるのかという点で、為替レートでやりますと、何年の為替を使うのかで随分違ってくるわけであります。特に、きのうからまた円が安くなっているというのは、そういうことを反映するわけでありまして、購買力平価で比較をいたしますと、アメリカ、ヨーロッパ、日本と比べましたときに、産業の効率がいいわけではない、むしろよくないという結果は、もう既に公表されている資料で明らかです。運輸と民生、特に家庭の部分は大変少ないんですけれども、それはある意味で、日本の貧しさを反映しているという点も我々はちゃんと見なければいけないと思います。

 以上、我々も、家庭あるいは中小事業者で、全体の四五%ぐらいでしょうか、中小事業者と家庭と合わせて、交通も含めてですけれども、それはかなり細やかな施策を地域レベルで、自治体も協力しながら、消費者も関与しながらやるというふうに思っております。

吉井委員 次に、山本参考人に重ねて伺いますが、省エネ法による指定工場の報告義務がありますね。この点では、CO2の排出量と削減目標に比べて、本来、達成率はどうであったかというと、公開していきますと企業の取り組みの実績が明らかになりますから、達成すれば世論の支持を企業も受ける、これは大きなメリットですよね。達成率が悪ければ、これは国民的批判を浴びるということに、批判にさらされますから。しかし、そのことが、私は七〇年代の公害のひどかった時代に堺泉北コンビナートの方でかかわってまいりましたが、あのとき、やはり総量規制というものを掲げて、なかなか産業界の抵抗は強かったわけですが、しかし、結局、前進につながっていったという経験を私たちは持っているわけですね。

 山本参考人の御出身の旭化成の十三の事業所でしたかね、国への報告書の中では、電気使用量も燃料等の使用量も、報告書は出していらっしゃいますね。報告書は出ているんですが、数値の部分は国民的には公開されていないんですね。これは黒塗りという非公開の状態なんです。つまり、幾らCO2を排出しているのか、排出量が減っているのかふえているのかわからない、こういうことになりますから、先ほどせっかく、透明性を高める、情報公開を進める、これが大事だというお話でしたから、やはり、山本さんのところの企業だけじゃなしに、大口排出の企業がCO2の排出量に関する、エネルギー使用量と消費に伴う炭酸ガスの排出量の形でどれぐらいなのか、これを公表していくということが、この対策を進めていく上でまず第一歩になると思うんですが、お考えを伺いたいと思います。

山本参考人 ちょっと先生に誤解がございますが、きょう、二〇〇四年度の私どもの環境報告書を持ってきておりますから、これをごらんになってください。差し上げます。

 それはCO2の排出量を出しております。というのは、どのエネルギーを幾ら使ったら幾らという換算数値がございますから、エネルギー使用量から簡単にCO2は算出できる、これは随分前からやっております。特に私どもは、フロン三ガス、酸化二窒素ですね、それの問題がございましたから、もう九〇年度比五〇%以下ぐらいに抑えているわけですが、今後もそれは努力していくつもりでございまして、情報開示というのはそういうことから進んでいくと思います。

 それから、いわゆる国際的に何が一番炭酸ガスを減らす尺度になるか、やはり原単位なんですね。鉄一トンつくるのに、どういう鉄を一トンつくるのに幾らの炭酸ガスを使ったか。為替も変動しますし、いろいろなものが変動しますが、国内の管理指標としていろいろのものは使いましても、国際的には、やはりセメント一トンつくるのにエネルギーを何ぼ使ったのかというふうな形をはっきり明示する。原単位が比べられるんです。そういうふうなものじゃなくて、勝手な指標を持ってきて議論を始めたら、これはなかなか収拾がつかなくなります。

 我々はあくまでも原単位というのを基本にしながら、それで事を進めていく。海外とのいろいろな問題も、原単位というものをまず基本にしてこれを進めていっている次第でございます。

 よろしゅうございますか。

吉井委員 重ねて伺っておきますが、旭化成ではこれでやっているんだと。私、経団連の方として、各企業がすべて、具体的に目標値と、幾ら排出しているか、これをきちっきちっと公開して、部門別、企業別に公開することが非常に大事だと思うんです。そのことを団体として進めていかれることについて、一点お聞きしておきたい。

 あわせて、鉄鋼連盟は、我が国の温暖化対策の目標がCO2排出量の総量であることから、原単位を目標とするよりもエネルギー削減量を目標とする方が社会一般の方々にも理解しやすいと判断したためにエネルギー消費量を指標としたということですが、だから、原単位でというよりも総量として幾ら排出しているのか、総量として幾ら削減をしていくのか、これをやはり示すということが大事だと思うんですが、この二点、伺います。

山本参考人 おっしゃるようにエネルギー総量がわかれば、現在どういうふうな形で流れていくかといいますと、石油からガスの方に今転換しております。それから、最もCO2の排出量の多い石炭はふえてきております。そういったことから、どのエネルギーを幾ら使ったということになりますと、これは、簡単に炭酸ガスは出てきますから、公表するときにどちらをとるか、どちらが管理しやすいか。何度も申し上げておりますが、それはそれぞれの業態、企業、それのあり方によって決めればいいというふうなことで言っておりますから、大衆、一般消費者や世間に語りかける場合にどちらがいいかということをそれぞれの企業は選択なさるだろうと思います。この点、申し上げておきます。

 よろしゅうございますでしょうか。

吉井委員 もう一点、これを企業全体としてのお立場で臨めるかどうか。

山本参考人 今、経団連自主行動計画に参加しておられる千三百社強ございますが、その中で、やはり金融機関とかサービス業とか不動産だとかいうところは、正直申しましてCO2削減というのは、余り出しておられぬということもあるんでしょうが関心はございませんが、主要のメーカーは非常に関心を持っておりまして、炭酸ガスの排出量は恐らくみんな出しておられると思います、特に資本金百億以上の大きな会社は。と思いますが、これは、私はまだはっきり確認しておりませんけれども、何社か見た限りでは、みんな正確に出しておられます。

吉井委員 次に、浅岡参考人に伺いたいと思います。

 気候ネットワークで省エネ法に基づく各企業の報告書の分析をしておられますが、省エネ法を改正して、それが国民に見える形で公開されるということに進んでいかないと、CO2総排出量規制で京都議定書を実現するということにはなかなか道が遠い、できないと。そういう点では、非開示にされている報告書からこれまで読み取ってこられた特徴というものをお聞かせいただきたいと思います。

浅岡参考人 ただいま山本参考人から、企業といいましょうか事業者別には環境報告書で開示しているというお話がございましたが、私どもが重要だと考えておりますのは、事業所別であります。省エネ法の対象は、事業所別に排出量及びエネルギー効率を定期報告をいただいているわけであります。

 こうした情報について、今回、効率は横に置きまして、エネルギー消費量の種別の開示請求をいたしましたけれども、大規模排出事業者の特に鉄鋼、セメント、石油精製及び化学の一部につきましては、大どころの業界はほぼ高いレベルで開示はいただけませんでして、黒塗りでございます。これが、透明性を高める、国民の理解を得るというときには、やはり事業所ベースで出されること。

 また、エネルギーの消費効率を経団連の基準としておられるところはそれなりのメリットをお感じだからだと思いますが、あわせて、排出量も、目標に合わせられてエネルギー効率を選んでいるところも、大変ややこしい補正をいたしましてそれを目標値にしているのが経団連自主行動計画の実情であります。

 それぞれの事業者にやりやすい形でというのは、それはそれで一つありますでしょうけれども、それとともに、やはり統一的、共通のルールに基づいてデータを我々が共有するということから、すべて公平、公正なあるべき対策の情報基盤が得られるのではないかと思っております。

吉井委員 あわせて浅岡参考人に伺っておきたいんですが、先ほどもお話がありましたけれども、技術開発などで、原単位の削減ですね。これが、原単位で削減することはいいと思うんですが、しかし、逆に生産量をふやしますと、あるいは掛け算の方の世界になりますから総排出量としては増加をするということも当然出てくるわけで、ですから、生産量の多寡にかかわらず原単位で減らすということにとどまらないで、総排出量で削減する、やはりこちらが重要なことではないかと思うんです。これが一点です。

 そして、先ほど、環境税については福祉目的とか一般財源化的なものへの不満から反対というお話がありましたけれども、伺っていますと、例えばそれは、再生可能エネルギーへの誘導的なものとか税が目的税的であったり、あるいはCO2抑制という形での規制的な役割を果たす、つまり規制と誘導の両面で役割を果たすものであれば、環境税ということも、あるいは山本参考人も必ずしもそれは反対ということではないのかなという感じはいたしましたけれども、いずれにしても、政府の目標達成計画で京都議定書での目標達成ができるのかという問題があるわけですね。どのように達成できるものにしていくかということで、気候ネットの方でもさまざまなことをお考えと思うんですが、その点について、二つの点から伺いたいと思います。

浅岡参考人 原単位目標もそれはそれで重要な指標だと思いますが、排出削減が大きな課題でありますので、それぞれの事業者で総量として削減するということは目標として当然必要だと思います。

 ただ、事業者の事業形態あるいは産業構造の転換等におきまして生産量がふえていくことがある意味で必要な業種も出てくることもあるかと思います。それを原単位の改善でカバーし切れない場合もあるかもしれません。私は、そういったものに対しては、排出枠にいたしまして、総量で各事業者のあるいは事業所単位でキャップを設定いたしまして、補完的に排出量取引制度を設けるという中で、そうした経済の変化にも対応しつつ新しい産業の推進にも役立っていくというふうにする仕組みがEUでとられましたのは、そういうことがあったからではないかと思いますし、新しい技術の方向性を、芽を摘まないためにもそれはいいことではないかというふうに思います。

 それから、税につきましては、基本的に、脱温暖化に対しましては、そうしたことに責任を持つところがそれなりの税という形で責任を持つという汚染者負担原則を大きな背景にいたしながら政策的な考慮を加えていくということに、社会システムが変わる前に経済システムが大きく転換するということがやはり重要でありますので、そうしたことの有用性は石谷先生もお認めになられるところであります。

 あとは具体的な制度設計でありますが、日本の中には今さまざまな税が加わっておりますので、それらを全部がらがらぽんにして一遍にやろうという大改革ができるというのは、一つの改革であります。中改革的には、今の道路特定財源にどこまでがらがらぽん的な見直しができるのかということでありますが、この点を御主張になられる先生方がいらっしゃるわけでありますけれども、そうした先生にはぜひともそうした方向で強く尽力いただきたいと思うわけであります。

 ただ、それを待っているまで何もしないかということにつきましては、それは温暖化対策として非常に不十分なところを残すというのが、これまでの、京都会議以降七年を経過した反省でございますので、やはりそうした考え方に国民も事業者もなじんでいく。そしてまた、どうしても必要な財源を、特に優先的に配分すべき財源をそうした中で獲得していくということに、一種、財源効果も含めまして考えるということは、私は十分にあり得ることだと思います。

 ヨーロッパは、ある意味で、そうした基盤がある上に、税収中立型で汚染者負担の発想をより明確にする、ある意味で税収を取らないことを目的とする炭素税という形で行われたわけですけれども、それがやはり、すべての環境政策の進展といいましょうか、そうしたこと、あるいは税制の基盤の違いという面もあるのではないかと思います。

吉井委員 不公平になってはいけませんので、規制と誘導の両面でだったらお考えなのかなということを申しましたので、一言だけ伺って、時間が来ましたので終わりたいと思います。

河上委員長 時間が過ぎておりますので、簡潔にお答えください。

山本参考人 先生がおっしゃるように、原単位でやった場合にはフル生産したら下がるじゃないか、そのとおりでございます。それに対して、省庁の壁を越えてと言っておりますが、企業もコンビナートごとにいろいろなまだやるべきところが残っております、いかにしてフル生産に持っていくか、こういうことが考えられますから。

 それからもう一つ、一番、国民大衆に非常にこれをわかりやすくするためには、炭酸ガスというのを可視化しなきゃいかぬのですね。可視化して国民大衆がわかるようにしなきゃいかぬ。公害の問題をおっしゃいましたけれども、公害は排出者側の問題で片づくんです。それから、炭酸ガスは加害者であり被害者である、ここをよく理解して物事を進めていきませんと、大変なことになるだろうというふうに思っております。

 以上で終わります。

河上委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十一分散会


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