衆議院

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第3号 平成18年3月8日(水曜日)

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平成十八年三月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 石田 祝稔君

   理事 今井  宏君 理事 平田 耕一君

   理事 増原 義剛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 近藤 洋介君 理事 達増 拓也君

   理事 桝屋 敬悟君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      片山さつき君    北川 知克君

      近藤三津枝君    清水清一朗君

      塩谷  立君    平  将明君

      長崎幸太郎君    野田  毅君

      橋本  岳君    早川 忠孝君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      松島みどり君    武藤 容治君

      望月 義夫君    森  英介君

      山本 明彦君    大畠 章宏君

      吉良 州司君    北橋 健治君

      後藤  斎君    佐々木隆博君

      野田 佳彦君    松原  仁君

      三谷 光男君    高木 陽介君

      塩川 鉄也君    武田 良太君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   経済産業副大臣      西野あきら君

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       迎  陽一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           松本隆太郎君

   政府参考人

   (特許庁長官)      中嶋  誠君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    野澤 隆寛君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月六日

 辞任         補欠選任

  川端 達夫君     野田 佳彦君

    ―――――――――――――

三月七日

 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案(内閣提出第六号)

 民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法及び輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法を廃止する法律案(内閣提出第八号)

 工業再配置促進法を廃止する法律案(内閣提出第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案(内閣提出第六号)

 民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法及び輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法を廃止する法律案(内閣提出第八号)

 工業再配置促進法を廃止する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省大臣官房商務流通審議官迎陽一君、経済産業省大臣官房審議官松本隆太郎君、特許庁長官中嶋誠君及び特許庁総務部長野澤隆寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。達増拓也君。

達増委員 独立行政法人工業所有権情報・研修館法改正案でございます。この独立行政法人、いわゆる独法でありますけれども、いろいろ調べていましたら、東京財団というところが毎月出している「日本人のちから」という定期刊行物に、水野清さん、海部内閣で総務庁長官を務め、橋本龍太郎総理大臣のときに総理大臣補佐官兼行政改革会議事務局長ということで、この独立行政法人という制度の導入の道をつくった水野清さんの文章が載っていました。

 そこで書いてあることは、平成八年の一月に、橋本首相が施政方針演説で一人の首切りもやらないで行政改革をやるという話をした、困っていたところ、水野清さんが、いい手がある、イギリスのサッチャーさんがつくったエージェンシーという制度を使おうという話を聞いて、それで、このエージェンシーを視察に行こうと。平成八年の夏にイギリスに見学に行って、そこでイギリス・エージェンシー制を学んで、平成十三年四月に日本の独立行政法人制度ができるということでありました。

 平成八年にこの水野さんはイギリスに行かれたそうなんですけれども、平成九年には武藤総務庁長官がイギリスに行って、やはりエージェンシー制について調査をしてきています。平成九年、同じ年には野党の方でも、当時、新進党の青年局でイギリスに視察に行きまして、上田勇団長で、私達増が事務局を務めていたんですけれども、そのときに例の政務官制度のことも勉強してきたんです。また、ブレア首相と当時保守党ヘイグ党首の党首討論というものもそのとき勉強し、また、同時にこのエージェンシー制についても勉強して帰ってまいりました。

 政務官、副大臣制度や党首討論については、平成十一年の例の国会審議活性化及び政治主導の政策決定システムの法律でまず実現し、ただ、このエージェンシー制については、その後橋本内閣で準備が進んで、先ほど申し上げましたように平成十三年に成立するわけでありますけれども、どうも本来のイギリスでやっていたエージェンシー制からちょっとずれてきているようなところがあるんじゃないかなという心配をしながら、私も国会の議論に参加をしておりました。

 この点は水野清さんも、独法について見直しがされているけれども、日本貿易振興機構や宇宙航空研究開発機構のように大変重要な国家政策を担っているところや予算をふやす必要があるところもあり、そういったところを今の独立行政法人の改革の方向でやっていくのはどうか、どうも玉石混交になっているんじゃないかという指摘をしています。

 もともとエージェンシー制は、政府の中にある国民向けのサービス部局を政府の外にエージェンシーということで切り出して、そしてコストダウンとサービスの向上を図るというところに眼目がありました。したがいまして、日本で既に政府機関、役所の中にはない特殊法人のようなものをどんどん独立行政法人化していったわけですが、ああいうのはちょっと本来のイギリスでやっていたエージェンシー制とは趣旨が違うのではないかと思うわけであります。

 さて、今回のこの工業所有権情報・研修館でありますけれども、これはまさに政府の中にあって国民向けのサービスをしていた、もともと農商務省特許局図書館であったそういう特許情報、工業所有権情報に関する閲覧サービス、情報提供サービス、そして特許庁総務課がやっていたいろいろな相談窓口業務、そして特許庁研修所がやっていた研修業務、そういった国の機関が、役所がやっていた業務、国民向けの業務、ただ、研修業務についてはちょっとこれは後で議論しますが、いま一つ国民向けとは言えなかったと思うんですけれども、基本は国民向けの役所のサービスを独立させてエージェンシーにするという点では、イギリスの本来のエージェンシー制の方向にはかなっているとは思います。

 そういうこともありますので、イギリス・エージェンシー制と比較しながらいろいろ見ていきたいと思うんですけれども、イギリス・エージェンシーの特徴は、大胆な人事を行いまして、民間の経営感覚あふれる人、そういう人をエージェンシーのトップに持ってきまして、そして思い切ったマネジメントでコストダウンとサービス向上を図っていく。

 その点、この情報・研修館の理事長ですけれども、経営感覚ある民間人という観点で選んでいかなくてよいのかどうかをまず質問したいと思います。

二階国務大臣 今達増議員の御質問を伺いながら、当時、行政改革、国会改革等御一緒に取り組んだことを思い起こしながらお伺いをしておりました。

 独立行政法人情報・研修館の理事長は、独立行政法人通則法上、主務大臣が任命することになっており、情報・研修館の現理事長は平成十六年十一月に任命しております。

 そこで、現在の理事長についてでありますが、東京工業大学の教授や大学が有する技術移転をするための機関の長を長く経験するなど、知的財産についての高度な知識と経験を有する方として当時任命されたものと承知をいたしております。

 同理事長は、民間企業を経営した経験こそありませんが、着任以来、特許電子図書館の機能の向上や研修の充実など実績を上げております。競争的契約の拡大あるいは調達面におきましても立派に指導力を発揮していると聞いております。

 したがって、今達増議員から御指摘がありましたが、重要なことは、あくまでも法人の長として、この法人の機能また目的達成のために適材であるかどうかということを見きわめて任命することが大事であって、ただいまのような御指摘も、今後において参考にさせていただきたいと思います。

達増委員 役所が理事長を選ぶ仕組みでありますと、どうしても、過去いろんな審議会で一緒にやったことがあるとか、そういう役所の中のつき合いの中から、人脈の中から選ぶことになってしまいがちになるんじゃないかと思うんですが、このイギリスのエージェンシーの場合ですと、広く公募をしまして、我と思わん人は名乗りを上げてくれということで、そのトップの募集をして、そこから選んでいくということが行われているんですけれども、この理事長の公募ということは考えていないでしょうか。

二階国務大臣 衆議院の選挙、参議院の選挙におきましても、近ごろいずれの党も公募ということが大変はやってまいりまして、公募が適当であるかどうかということは私の立場からは今言及いたしませんが、多少私も経験を持っております。

 公募がいいかどうか、それは、この際は別に置いておきまして、ただいまのようなことも広く念頭に入れて考えていかなくてはなりませんが、ただいまお話しのように、イギリスの制度はこうだ、このイギリスの制度と似通っているところもあるが、ちょっと外れているところもあるが、これはどうかと言うんですが、イギリスはイギリスであって、我々は我々で考えていく。

 昨日もイギリスのエネルギー担当大臣が私のところへ参りまして、日本のエネルギー政策、日本の省エネルギーあるいは環境問題、これをイギリスは学びたい、そして、一緒にこれから研究制度をつくっていこう、とりあえずは局長クラスの協議をしようということで合意に至ったわけであります。我々は何でもイギリスから学ぶのではなくて、イギリスに教えてあげなきゃいかぬこともあるわけですから、そこは、ただいまのような御意見もよく頭に入れて、特許行政というものは極めて大事なものでありますから、スピーディーに物事を処理していく、そして、民間の経営感覚ということも取り入れてやっていくということは大事だと思います。

 ですから、オープンに、できるだけ幅広く人材を得るようにという御提言であろうと思いますので、そうしたことを念頭に入れて、今後も配慮してまいりたいと思います。

達増委員 平成九年の武藤総務庁長官のイギリスを視察したときの報告によりますと、エージェンシーというものは、「あくまで公務部門の一部であり、組織(コンスティテューション)に関わる変革ではなく、管理(マネジメント)に関する変革である」ということを書いてあるんですね。

 つまり、やはり、単なる組織いじりであるとか公務員の非公務員化であるとか、ただ制度をいじればいいというものではなく、実質的にマネジメント、行政学ではマネジメントは管理と訳されますけれども、経営学ではマネジメントというのは経営でありまして、そういうマネジメント、経営ということがそのエージェンシーで発展していくというところ、これは、イギリスだからそうしているというよりも、それまで役所の中にあった組織を外に出して独立させていく主眼ではないかと思うわけです。

 そういう意味で、トップの人事もそうなんですけれども、管理職についても、現状、情報・研修館の管理職は経済産業省、特許庁、役所からの出向者で占められているわけですけれども、この管理職の部分も経営感覚ある民間人を登用していくということでなくていいんでしょうか。

西野副大臣 お答えいたします。

 達増先生には、十年近く前このエージェンシー制度に取り組みをされましたこと、私もそばにおりまして、今回のこの法案につきましての思いもひとしおであろう、このように思っておるところでございます。

 先生お示しの、管理、マネジメントの問題に触れられたわけでございまして、まさにそのとおりだろうというふうに思っておりますが、我が国で今まさに行おうとする非公務員化というこの問題につきましては、特に管理職をお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、管理職は事務の遂行、あわせて、それらを管理する両面の役割があろうかと思いますから、それにまさに適当な人材、言いかえれば、適材適所という言葉がございますが、そういう考えでその人事に充てるべきではないのかなというふうにも一般論としては思うわけであります。

 今回のこの非公務員化になる、これを機にいたしまして、当然ながら、業務の見直しやら、お示しがありましたコストダウンの問題とか、あるいはそれに伴う事業内容のさらなる充実、そういう効率化を図るためにも、いわばこれまでと違う観点で物事を見直していく必要があるのかなというふうに思っております。

 例えば、その具体的な手法につきましても、当然ながら今後検討をしなければならぬというふうに思っておりますが、例えば、外部からのコンサルティングを定期的に実施するとか、そういう手法も講じながらいくことが、これはまた一つの案ではなかろうかというふうに思います。先生のこの御指摘の点でございますが、民間において経営経験をお持ちの方々を管理職クラスに採用するということも、これは視野に入れて十分検討をしていかなければならぬというふうにも思うわけでございます。

 したがいまして、そうした観点から、今回の情報・研修館におきましても、今申し上げた、民間の方も、あるいは経験のある公務員経験者も、適材適所という意味で広く求めていくべきだというふうに思っております。

達増委員 その辺、はっきりしないわけであります。五年間、独立行政法人としてやってきているわけでありますけれども、この五年間に、今までのようなやり方で、独立行政法人として求められるコストダウンやサービス向上ということがちゃんと進んできたのかどうか、まずそこが問われなければならないと思いますので、政府に質問したいと思います。

中嶋政府参考人 お尋ねのその情報・研修館における取り組みでございますけれども、独立行政法人化された以降、独法の持ちます機動性あるいは柔軟性といった特徴を最大限生かしてコストダウンとかサービスの向上に努めているというふうに思っております。

 例示を二、三挙げさせていただきますと、例えば、特許流通事業というのがございます。そのために、実際には特許流通アドバイザーというのを派遣するのでありますが、その報酬を、従来は年俸制でございましたけれども、独法になりまして、成約の実績に基づく成功報酬制に今切りかえるといったような形でコストダウンを図っております。

 それから、サービスの向上面におきまして、例えば、従来、特許庁時代ですと、この公報閲覧事業における閲覧室の閲覧時間は、夕方は五時まででございましたけれども、それを五時四十五分まで延長するとか、あるいはコピー代金の支払い、これにつきましても、独法になった後いろいろ検討いたしまして、プリペイドカード方式を導入するとか、いろいろ便宜を図っております。それから、相談事業における回答の待ち時間も、計画上はもともと三日以内、つまり、メールとか手紙でお問い合わせいただいてから三日以内ということになっておりましたけれども、実際には、もう原則翌日すべて返すということでやっております。最後に、公開特許の英文抄録も大変重要な事業なんでございますけれども、これも、つくったあと、その品質とかコストの両面から外部の専門機関にチェックをさせるといったようなことをしております。

 今後とも、さらにコストダウンとかサービスの向上につきまして、具体的に成果を上げるよう、不断の取り組みを実現できるかどうかよく注視をして指導してまいりたいと思っております。

達増委員 今、答弁の中に特許流通事業のお話が出てきましたけれども、この特許流通業務については、実は、平成十七年十二月、経済産業省の「独立行政法人工業所有権情報・研修館の組織・業務全般の見直しについて」という文書の中で、見直すべきというふうにされているんですね。「特許流通業務については、我が国に特許を対象とする自立的な民間市場が整備されることを支援することを目的とし、それまでの間過渡的に施策展開を行うものである」云々。

 この特許流通業務というものは、確かに、あればあるだけ、やればやるだけ、それなりの成果は出るんでしょうけれども、税金を投入してどこまでやるかということについては、かなりそこは厳しく慎重にやっていかないと、独立行政法人にして柔軟にいろいろできるからということで、かえってコストアップしてしまう危険性、コストアップといいますか、国の予算をそこで使ってしまう危険性、そういうこともあると思うんですけれども、この特許流通業務の見直しという点との関係でどうなんでしょう。

中嶋政府参考人 お尋ねの特許流通促進事業でございますけれども、これは、大企業の休眠特許とかあるいは大学の持っている未利用の特許、これをむしろ中小企業とかベンチャーに橋渡しをするということでもともと、平成九年、特許庁時代から始まったわけでございます。それで、平成十三年に独法化した以降、引き続きこの情報・研修館の大事な事業の一つとして関係者への啓発を中心にやってまいりました。ある意味でその成果が上がっているとは思います。すなわち、事業開始以来、累計で七千百八十五件のライセンスの契約が締結されているということでございますので、そういう意味では着実に成果が上がっていると思っております。

 ただ、他方で、御指摘がございましたように、昨年、この情報・研修館の組織、業務の見直しを行った際に、この特許流通促進事業については自立的な民間市場の整備のための過渡的な事業ということで位置づけて、今後はむしろ、民間市場の育成に重点を置いた施策を展開するようにというような結論になっております。

 したがいまして、来年度、平成十八年度から始まります第二期の中期目標期間におきましては、特許流通アドバイザー等の派遣事業つきましては、むしろ、民間市場の育成に応じて、徐々に民間事業者や地方公共団体の方に継承していくという方向で実施したいと思っております。私の記憶でございますと、実際のこういった橋渡しをしております民間事業者がたしか六十、七十ございますので、そういう方々にもっと活発にそういった市場化への取り組みをしていただくということかと存じます。

 そういう方向に向かいまして、引き続き情報・研修館の事業が寄与するように見守ってまいりたいと思っております。

達増委員 もう一つ気になる事業が研修事業であります。

 もともと特許庁研修所ということで、特許の審査官、そういう特許庁の内部の職員を研修するものが独立行政法人化ということで外に切り出された形になっているわけですけれども、冒頭言ったように、イギリスで発達したエージェンシー制度は、国民向けのサービスを役所の中から外に出すことでよりよくしていくというものですから、そのルーツからいって、この研修機能というのは本当に独立行政法人になじむのかなという疑問を持つわけであります。

 さらに、独立行政法人化したことで、柔軟性があるということで、外部の人材に対する研修、企業の特許、知財関係の担当とか、あとは大学の知財関係者とか、外部の人たちにも研修ができるということなんですけれども、これもうっかりしますと金食い虫になる危険性がある。独立行政法人、コストダウン、サービス向上が目的なんですが、うっかりするとどんどん事業を拡大してしまって予算がかえってたくさん必要になってしまうという危険性がこの研修事業についてもあると思うんですが、いかがでしょうか。

中嶋政府参考人 研修事業についてのお尋ねでございますけれども、二つあると思います。

 一つは、特許庁の審査官なり審判官なり、職員向けの研修ということでございまして、これは、私ども特許庁にとっても大変重要な研修でございます。これにつきましては、特許庁本体でやらなくても、この独法で実施できるということにしておりますけれども、具体的には、毎年特許庁から提示をいたします研修計画に基づいて実施をしておりますし、実際の講師も特許庁の審査官、審判官を活用するといったようなことで、内容的には問題はないと思っております。当然ながら、実際にその研修を経て審査官に任命するかどうかとかいうことは庁内で、最終的には長官が責任を持って判断しているわけでございます。

 もう一つの研修は、民間向けでございまして、これは、典型的に言いますと、例えば今、特許の審査の前に先行技術のサーチという仕事がございます。これは文献検索でございまして、民間でも知識、経験があれば、民でできるものは民ということで、民間にお願いできるのではないかということでアウトソースを進めております。そういった民間でサーチに従事していただく方々向けの研修といったものもこの独法でやっております。

 それから、お尋ねの中に、余りこういう民間向けの研修を拡大し過ぎると肥大化するのではないかと、おっしゃるとおりだと思います。したがいまして、例えば地方公共団体であるとか、ほかのところでできるような研修はもちろんそちらの方にお任せをして、あくまでもこの情報・研修館としてやることが強く求められるというものに限定をいたしまして、これからもこの研修事業をやっていきたいというふうに思っております。

 それから、なお、費用の点につきましても、民間向けの場合には実費を徴収するとかいう工夫もしてまいりたいと思っております。

達増委員 独立行政法人制度、行政改革の一環であって、もともと官のスリム化というところが原点であるわけですから、事業が拡大していくようなことについては、そこは特に慎重になるべきということを指摘したいと思います。

 では次に、今回の法改正の中心であります非公務員化について伺います。

 イギリス特許庁は、実は特許庁全体がエージェンシーということになっております。しかし一方で、そこで働く人は公務員であるということで、実は、これはまた武藤長官の平成九年の視察の報告でありますけれども、当時イギリスに四十八万人公務員がいて、四十八万人の全国家公務員数の約四分の三に当たる三十八万六千人がエージェンシーで働いている。実はエージェンシー、イコール非公務員化ということではなく、イギリスの場合、むしろ国家公務員としてエージェンシーで働いている人が三十八万六千人もいたわけですね。

 先ほど言ったように、組織にかかわる変革というより管理に関する変革ということで、トップマネジメントの部分に民間人を登用したり、私もイギリスに行ったときにそういう例を聞きました。公募で採用された民間の経営感覚あふれる、経験豊かな、手腕のある人がトップになって成功した例を実際教わってきたんですけれども、そういうトップマネジメントの部分は民間的なものをどんどん取り入れるんですが、むしろ現場で働く人たちは公務員のまま。それぞれの専門性ですとか経験ですとか、そういったものを生かしてやるのがイギリス型のエージェンシー制だったわけですね。

 今回、政府は、行革本部の決定で、非公務員化ということを一斉に行う、その中でこの情報・研修館でも非公務員化となるわけですけれども、この情報・研修館について、あえて非公務員化するメリットが一体何なのかということをまず政府に伺いたいと思います。

中嶋政府参考人 御指摘の特許庁に関係する業務の中身でございますけれども、確かに、特許庁の本体業務であります出願についての審査、審判とかそういったものは、各国とも政府が責任を持って直接処理をするということかと存じます。それに対しまして、この情報・研修館の事業というのは、いわばそれを支援する周辺の業務でございまして、先ほど来出ております相談業務とか研修業務でございます。

 そうしますと、それを今回非公務員型に移行するメリットでございますけれども、例示を挙げますと、例えば、人事面あるいは勤務の形態の面が挙げられると思います。

 確かに、従来、相談業務の内容が特許の具体的な実務にも非常に密接に関連するということで、審査、審判の経験を有する特許庁の職員が出向の形で対応してまいりました。ただ、これから仮にそういう者が対応する場合であっても、例えば、その勤務時間を弾力的に設定いたしまして、場合によってはウイークデーももっと夜遅くまでやるとか、あるいは土曜日も対応するとか考えられます。特に、この相談業務とか閲覧をされる方は大部分、七、八割方が中小企業の方なものですから、そういったことも考えられると思います。

 それからまた、雇用の、人事の採用の面につきましても、従来は公務員型ということで、いわゆる公務員試験を受かった方ということになっていたわけですけれども、これからはそういう面も弾力的に対応ができます。

 したがいまして、今後、この研修館が例えば情報システム関係の仕事をするといったような場合に、そういう分野の外部の専門人材を採用する、あるいは特許の電子図書館についてのこういったシステムについて、開発とか改良とかにつきましてそういった方々も活用する、それが可能になる、そういったメリットが考えられると思っております。

達増委員 そうしますと、この情報・研修館の場合、この法案で非公務員化をするということになっているんですけれども、そのイメージとしては、一気にもう外部からどっと人を採用して、今、職員はほぼ全員出向者、特許庁や経済産業省から職員が行っているわけですけれども、現在のそういうあり方を根本的に改めて、もう公務員じゃない外部の人をどんどん採用して、そういう人たちでこの情報・研修館をやっていくようになるのか、それとも、大宗は、ほとんどはやはり出向者が勤務して、ただ、いろいろ今答弁にあった情報システム関係とか一部、公務員試験を受けていないような人でも働けるようにするというのか、その辺はどうなんでしょう。

中嶋政府参考人 今御指摘がございましたように、公務員型の時代、過去五年間でございますけれども、これはもともと、そもそも人事面で採用の制約がございましたし、それから沿革からして、特許庁の一部を切り出したということもありまして、特許庁職員がそれぞれ持っている経験や専門的な知識を生かしながら、出向の形で対応してきたわけでございます。

 もちろん、その間にありましても、いわゆる非正規職員といいますか、いろいろ情報の検索をお手伝いする担当の人とか、そういう非正規職員の形では既に民間の方も採用しております。

 さて、これから仮に、仮にといいますか、非公務員型に移行した後でございますけれども、現実問題として、直ちに特許庁からの出向者をどんどん減らしていって民間人をどんどん採用するというのは、内容的にもそれから実際上も難しいし適当ではないと思っております。やはり、先ほどからお話をしている相談の事業の中身とか研修の中身が特許庁の本体業務と非常に密接に関係しておりますので、まさにその点にこの独法の存在意義もあるわけでございますから、その大宗はやはり特許庁の職員との人事交流の中で対応していくのではないかというふうに思っております。

 ただ、今後は、非公務員型の独法になれば、そのメリットを生かすという観点から、即戦力になる外部の専門家がいらっしゃれば、そういう方を先ほど例示を挙げましたような分野で登用ができないかという方向で前向きに検討していくように情報・研修館には指導していきたいというふうに思っております。

達増委員 そうしますと、これからも出向者がほとんどである、ほとんどの職員は特許庁からの出向者で占められることになるということだと思うんですけれども、二つポイントがありまして、まず、専門性の点で、まさにその審査、審判の経験のある人、そういった業務の経験のある人が働くことが意義があるんだと思いますけれども、そういった人たちが非公務員化されることで問題はないんでしょうか。

西野副大臣 先生今御指摘をされましたこの移行をされました情報・研修館の業務というものは、当然ながら、特許庁と深い、密接な関係があるわけでございます。ですから、審査、審判業務のいわゆる特許制度に関しまして、当然ながら、職員も高い知識経験が必要だという点は全く同じだというふうに思っております。

 したがって、今まで公務員型であったものが今回は移行をいたしますなら、当然ながら、移行されましても専門的な知識、そういうものを有しておるわけであります。ただ、今回の情報・研修館の業務というものは、利用者にやはり便宜を供与し、かつまた特許庁が本来行います業務を、ある意味では補完するという立場にあるのかなというふうに思います。したがって、審査とか審判を行います業務とはおのずとその性格というものは異なってくるというふうに思っております。

 が、異なりますけれども、今までの性格やあるいはその立場というものを認識いたしながら非公務員型の独法として行っていくわけでございますから、当然ながら、そんなに非公務員化をされたからといって支障を来すというふうにはとても考えられないところであります。

達増委員 もう一つ心配なのは信頼性であります。これは、特許関係のいろいろな秘密もある、そういう世界であるでしょうし、また、国際条約に基づいた存在であるということもあるんですね。

 この情報・研修館というのは、工業所有権保護等に関するパリ条約、あるいは特許協力条約、またユネスコ条約など、特許関係、工業所有権関係の情報を各国がきちんと保管して閲覧できるようにしておかなければならない、そういう条約に基づく存在でもあるわけでして、非公務員化によってそういう国際的なものも含めた信頼性ということが損なわれることはないんでしょうか。

中嶋政府参考人 今の御指摘は、内外の信頼を引き続き維持できるかという点だと思います。

 せっかく五年間、ユーザーからの評価も結構高い評価を受けている中で、今回、非公務員化した場合にも、従来にも増して内外の信頼を維持していかなきゃならないというのは御指摘のとおりだと思います。

 まず、ユーザー、つまり国内の実際に御相談にお見えになったりする方との関係なんですが、これは、仮に非公務員になった場合でも、罰則の適用上、いわゆる公務員とみなすというのがもともとあるんですが、特に、この情報・研修館は、企業なり出願人の出願上の秘密にかかわる場合があるものでございますから、その点につきましては、一般の公務員よりも重い、私ども特許庁職員と同じような秘密保持義務が課されております。違反をいたしますと、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金というような罰則で厳しく担保されているというのが一点でございます。

 それから、もう一つ御指摘がございました海外との関係でございますけれども、確かに、この情報・研修館は、工業所有権の保護等に関するパリ条約というのがございまして、その中に、各国が中央資料館を置く必要がある、あるいは、特許協力条約というのがございまして、各国が特許審査に必要な最小限の資料の収集、提供を相互にやらなければならないという規定がございまして、その位置づけをこの情報・研修館が担っております。

 ただ、ここで言っている資料の提供の中身はすべて公開情報でございますので、そういう意味では、海外への提供につきまして、特に守秘義務を必要とするものではございません。

 ただ、いずれにいたしましても、今回、非公務員化するに際しましては、内外の関係者に十分説明を行って、理解を得て、いささかなりともその信頼が損なわれないように十分注意してまいるつもりでございます。

達増委員 先ほどの答弁の中で、特許流通事業で、一種出来高払いみたいな仕組みを導入ということがあったんですけれども、イギリスの特許庁では、これは特許庁本体の話ですけれども、業績の上がったチームにボーナスを出すというような、そういうユニークな給与体系をやっていたそうなんですけれども、そういった、給与体系の柔軟化ということは今後やっていくんでしょうか。

中嶋政府参考人 お尋ねの処遇の点でございますけれども、従来あるいは今後も、この情報・研修館は、実際にそこに携わる職員の方々というのは、特許庁との人事交流を中心に、非常に密接な関係を有するということだと存じます。したがいまして、非公務員型の独立行政法人に移行した後も、現在の給与水準自体を変更していくというのはなかなか困難であるとは思います。

 ただ、他方で、非公務員型の特長を生かすという観点からは、実際の業務の評価を的確に行って、それぞれの職員の勤務、成果ぶりを処遇に反映させていくということも検討する必要があるんではないかと考えております。

 したがいまして、具体的には、業務評価の試行を行いまして、その結果を踏まえて、業績を賞与に反映させる方式なども含めて、そういった点も視野に入れながら、今後、情報・研修館において検討が進められるということを期待したいと思っております。

達増委員 今回、法改正はするんですけれども、この名前、工業所有権情報・研修館という名前についてはそのままなんですね。国民に対するサービス向上という観点から、もう少し覚えやすい、親しみやすい名前にしてもいいんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

中嶋政府参考人 名称についてのお尋ねでございますけれども、確かに、平成十三年に独立行政法人工業所有権総合情報館という形で発足をした後、平成十六年十月に、特許電子図書館業務、それと人材育成業務を追加した際も、これは現在の名称でございますけれども、工業所有権情報・研修館という形で、かなりかた目の名称になっておりまして、今日に至っております。

 ただ、この名称につきましては、この情報・研修館が長い間、先ほどのパリ条約の中央資料館という位置づけであったこと、あるいは業務の内容をより具体的に、対外的に的確に示すという必要があったものと考えられます。これまでも、時折、図書館のような響きがあり過ぎるんではないかといった御指摘もないわけではございませんけれども、法律あるいは条約上に設置根拠を有する法人の名称としては適当なものと思っております。

 ただ、例えば英語表記につきましては、これは発足時に名称の英訳をしまして、その頭文字を使ったNCIPIとあるんですが、これも大変とても、私自身も一度聞いても覚えられないような長い略称でございまして、なかなか一般の方に親しんでいただけるかどうかにつきましては、日本語の名称も海外向けの名称も、いろいろ検討の余地があるんではないかと思っております。

 そういう意味では、御指摘にありましたように、親しみやすさの観点からも、あるいは、ユーザーの方々に覚えていただきやすいような愛称といったようなものを考えることも有効であろうかと思いますし、あるいは、英語につきましても、何かもっと短くて覚えやすいような略称を考えられないかとか、いろいろな角度から情報・研修館に呼びかけて検討してまいりたいと思っております。

達増委員 政府の行政改革推進本部は、官から民へというわかりやすいスローガンでやるわけですけれども、実際にはなかなか、そういう官の官たるゆえん、そして、民の原理、民の論理というものをどれだけ行政サービスに入れていくかというところについては、そう簡単に、一方方向にばあっとやればいいわけじゃないという話が、今までの答弁でわかるんだと思います。

 イギリスの場合、特許庁本体もエージェンシー化しているわけで、公務員としての職員のステータスは残しつつ、エージェンシーとしての柔軟で、サービスが向上していくような、そういう国民サービス提供ということをしているわけですけれども、日本の場合、特許庁本体の独法化ということについてはどう考えますでしょうか。

二階国務大臣 特許権等の産業財産権制度は、産業の発達を目的としており、産業技術政策などと一体となって我が国の産業の競争力を強化するものであるため、経済産業省の一部として、こうした政策と一体的に制度を計画、または企画立案して実施することが必要であり、私は、今の制度が効果的であると考えております。

 また、産業財産権行政の性質を見ましても、第一に、二十年にも及ぶ独占権の付与を行う、強力かつ排他的な行政が特徴であります。第二に、特許庁の行う審判は準司法的制度であります。次に、公正中立性が不可欠であり、高度な技術的、法律的な専門性に加えて、特に公正中立ということが重要でありますことから、国がみずから実施することが必要と考えており、特許庁を独立行政法人とすることは適当でないと考えております。

 今、諸外国の状況を見ましても、ほとんどの国がみずからそれぞれの産業財産権を、行政として主たる任務を持っておる産業政策を担当する省が担っておることは御案内のとおりであります。

達増委員 時間ですので、終わります。

石田委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 大臣、大変御苦労さまでございます。本論に入る前に、二点、大臣にお尋ねをしたいと思います。

 一点目は、きのう、東シナ海のガス油田の問題で局長級会合が、一応いろいろな案はあったというお話は報道等で聞いておりますが、まだ平行線だという意識であります。

 あわせて、先週の五日の日に中国で新たな五カ年計画が公表、決定をされました。大臣が、二月二十二日に中国に行かれた中で、この局長級会談の促進も含めていろいろな御努力をされていることは十分承知をしております。

 ただ、大臣の御認識も同じだと思いますが、今中国はすさまじい勢いで、食料でいえば世界の胃袋となって、あわせて資源やエネルギーでいえば世界の輸入大国、生産大国になっております。五カ年後、二〇一〇年の目標でいえば、国内総生産もアメリカ、日本に次いで世界三番目になろうとするという計画を立て、あわせて年平均の成長率でいえば七・五%という、日本のまさに高度成長時代を超えるような勢いの計画を持って、野心的と言ったらしかられるかもしれませんが、かなり高い目標設定をしております。

 きょう議論をする知的財産の問題も含めて、特に中国では、いわゆる海賊版の問題も含めて、いろいろな意味で、まだ通常のビジネス行為になっていない点もたくさんございます。

 大臣、二点、新たに決定をされた中国の五カ年計画の御評価と、昨日一応終わってまた近いうちに再開をされると言われている東シナ海のガス油田の問題について、五カ年計画の評価とガス油田の日中局長間協議の今後の見通しについて、冒頭お尋ねをしたいと思います。

二階国務大臣 まず、開催中の全人代におきまして温家宝首相が御発言をされました中国の五カ年計画でありますが、これはあくまでも中国の五カ年計画であって、私の立場で論評を加えるべきものではないと思っております。

 しかし、まず、せっかくの後藤議員からの御質問でありますし、感想を述べろと言われれば、やはり、九%以上の高度成長がずっと続いておる中で、今御質問にもありましたとおり、今後の世界の食料という面からも、あるいは世界のエネルギーということを考えても、もう一つ、身近にアジアという範疇で考えても、中国のほとんど二けたのラインをうかがうような成長が今後何年も続いていくというとどこかにひずみが出てくることは、これは日本の経験でも明らかであるわけでありますから、ここで成長率を七・五%程度にということをお述べになったことは大変見識だというふうに思っておりますが、これは、冒頭申し上げましたように、中国の政策でありますから、私どもの方から、それが高いとか低いとか、それに対して特に我々の側から意見を加えるべきものではないと思っております。

 ただ、今の日中の東シナ海の問題をめぐっての協議でありますが、簡単に申し上げますが、最初十六年から始まったこの交渉が中断されておった、そういう状況の中で私は経済産業省を担当することになったわけであります。その中断の状況の中で、どうこれをテーブルに着かせることができるか、これが大きな課題でありました。あらゆる対応を重ねてきた結果、先般、温家宝総理までこの交渉に言及されて、ようやく第四回目の公式協議がなされたわけであります。

 結果は、これから次の第五回目の会合に入っていくわけでありますから、私は、このような種類の国際協議というのは、出会ってその日にすぐ解決するというふうな問題ではなくて、領土、領海の問題もある、歴史的な問題もある、あらゆる日中間の問題がこの協議のテーブルにも凝縮されておるわけでありますから、一朝一夕に、例えば一日で物事を解決するというふうなもの、テーブルに並べられているペーパーをずっとお互いによくここで読み合わせしてそれで結論を出すというふうな種類のものでないことは、委員も十分御理解いただいているものと思います。

 私は、何としても、第五回目の正式協議を今度は東京で、しかも近い将来、極めて近い将来にこの協議がなされるということで、一たん第四回目の協議を打ち切って日本の政府代表は帰国をしたところでありますが、まだまだ外務省も含めて詳細にお話は聞いておりませんが、これからまだまだ山坂があると思いますが、あくまでも粘り強く対応をしてまいりたい。

 そして、相手のあることでありますから、こちらだけのペースで慌ててばたばたするというよりも、やはりここは、相手の言い分も見きわめて、こちらとしても腹を決めて交渉に臨むということが大事でありますが、交渉は、一応四回目の交渉は終わりましたが、これから五回目にかけて、きょうからその下準備は始まる、始まっている、このように理解しております。

 全力を尽くして、国益を考え、対応することにしたいと思っております。

後藤(斎)委員 今大臣が最後に御発言いただいたように、ぜひ、粘り強く、国益を守る観点から、大臣のリーダーシップで、我々の希望からいえば早期に見通しが立つようにお願いをしたいと思います。

 次に、大臣、この委員会でも何度か大臣からも御説明がございました新経済成長戦略についてであります。

 これはまさに、今冒頭にお尋ねをした中国の問題を含めた国際産業戦略のあり方、あわせて地域産業戦略のあり方、これをマクロ経済、ミクロ経済の観点から積み上げをして三月中には中間取りまとめをするということで、繰り返し大臣からも御発言をいただきました。

 しかし、今成長率論が、大臣もメンバーになっております経済財政諮問会議の中で、これは報道等でありますから、大臣が中でどういう御発言をなさっておるか十分承知していないので、改めてお尋ねをしたいと思うんですが、いわゆる、新聞的に言えば、消費税引き上げを小幅にしたい竹中総務大臣、中川自民党政調会長は名目成長率を高目に見ている、谷垣財務大臣や与謝野経済財政・金融担当大臣は名目成長率を控え目にするというふうなことと、日銀の量的緩和であるとか、いろいろな部分は成長率を何%にするかということで御議論があるようであります。

 成長率というのは、大臣、言うまでもなく、やはりミクロ経済の部分の積み上げと、マクロ経済学でそれをどういうふうに持っていくかという、その二つが相まって対応されるものだと思いますし、今御議論を経済産業省の中でされていると思いますが、この新経済成長戦略の中でも、いろいろな基本的考えを積み上げをしながらやっております。

 従来の経済産業省のスタンスでいえば、もっと御発言をぜひ大臣していただいて、数字がひとり歩きするんではなくて、日本としてきちっとした成長戦略を、産業育成の観点からも地域経済の観点からも、こうするんだという強い発言を大臣ぜひしていただいて、国民の皆さんにも目に見えるような形に大臣として対応していただきたいという思いが私は、どうも民間委員の先生方の御議論の方がメディア的には何か集中して発言が報道されているような感じもするので、あえて、先ほどの国際戦略の部分も含めて、お尋ねをしたいと思います。

二階国務大臣 御指摘のとおりでありますが、実は今、新聞紙上等でも、日銀の問題をめぐっても大変、どういう発言の根拠が今後の総裁選挙にどういうふうに響くかとか、非常にマスコミ的にはおもしろおかしく言われるわけでありますが、私は、今御案内のとおり、新経済成長戦略というものを打ち立てようとしております。そこでは、やがて三月の下旬に中間取りまとめ、そして五月中には国民の皆さんに公表できるようにしたい。したがって、それまでの一定の成案を得た段階で各党にも御相談を申し上げたいと思っております。それは、できるだけ広く多くの皆さんの共感をいただき、一緒にやろうという機運を盛り上げていかなければ、ただ単にこの新経済成長戦略なるものを発表しただけでは、これは従来のやり方とほとんど変わりはない。

 私は、今日、日本経済がようやく明るさが見えてきた、そういう発言をしてもだれもかみついてこられることはない。よく言われることは、大企業はいいが中小企業はまだまだではないか、大都市はいいけれども小さい地方はまだまだ困窮しているではないかという御意見はあるわけでありますが、それでも、おおむね成長の方へ明るい兆しが見えてきたというところまで進んでまいりました。

 先般も御紹介申し上げましたが、ロンドン・エコノミストのビル・エモットさんの日はまた上る、こういうことに触発といいますか背中を押される形で、ただいま経済産業省も、内向きの議論ではなくて、これから明るい方向へ国民の皆さんとともに手を携えて進んでいこうではないかということを呼びかけようというのが新経済成長戦略であります。

 そのときに、今成長率を何%ぐらいにするということを私があの場で発言をいたしますと、その発言とこの新経済成長戦略との数字は一致していなくてはならぬわけでありまして、当然一致してマスコミもとらえるでありましょう。そこから、そのことに対して、高いとか低いとか、賛成だとか賛成でないとかという議論が沸騰してくるわけであります。

 私は、あくまでも新経済成長戦略なるものは、先ほど後藤議員からも御指摘のあったように、現在の経済の状況、将来かくあるべきだ、そして、日本がこれから頑張ればこの辺まではいけるだろうということを十分見きわめた上で成長率を何%ぐらいに置くということを打ち出して、それを皆さんと御一緒に目標に向かって進んでいけるというふうな、具体的な実のある経済政策を打ち立てたいと考えておりますので、今はこの議論の真ん中に挟まって、そして、新経済成長戦略なるものの策定のできるだけ、邪魔になると言うと言葉は適当でないんですが、一番わかりやすい言葉で言うと、そういうことにならないように発言を意識的に控えておるということでありますが、今度新経済成長戦略を発表すると同時に、これはただの戦略だけではなくて、本当に議会の皆様の御協力、各党の御協力をいただきながら、今の日本はこれでいいのかということで問いかけてまいりたいと思っております。

 それこそ野心的に取り組んでいきますから、御協力をお願いしたいと思います。

後藤(斎)委員 三月という一つの中間取りまとめの節目があります。ぜひ、大臣がおっしゃられたように、野心的で、なおかつ地域や中小企業の皆さんにも夢が持てるような、そんな形の中間取りまとめであっていただけるように、この分野についてもリーダーシップを、すべてそうなんですが、リーダーシップをとっていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

二階国務大臣 先ほど達増議員の御質問にもありましたし、後藤議員の御発言にもありましたが、知的財産権の問題で、中国とのことで、中国の担当大臣と先般話し合ってきたことの中で、知的財産権の問題について中国も積極的に取り組んでもらいたいという私の発言に対して、中国側は、中国にとっても極めて大事なことと思っておる、したがって、中国の法律に違反する者を摘発するために全国に五十カ所の摘発本部を設けることにして、徹底的に対応することになっておる、今後、日中協力の上において、にせものブランドとかそうしたものに対しても十分対応していく、こういうお話があったことをつけ加えて御報告しておきたいと思います。

後藤(斎)委員 大臣、ありがとうございます。

 続きまして、時間もだんだんなくなってきましたので、本論に入りたいと思います。

 今回、今達増議員からもいろいろ御質問がありました。私も、この独立行政法人工業所有権情報・研修館という言葉が一回でなかなか覚えられずに、研修館、研修館というふうに言っておったんですが、先ほど来政府側からもいろいろな御説明がございました。そして大臣からも、特許制度の中でも大変重要な役割だというふうに御発言がありました。

 改めてお聞きをしたいんですが、この情報・研修館は日本の特許制度全体の中でまずどんな位置づけになっているのか、端的にお尋ねをしたいと思います。

中嶋政府参考人 日本の特許制度あるいは特許行政における位置づけでございますけれども、特許庁本体は、国が責任を持って行うべき審査、審判の事務あるいはその企画立案というのを担当しております。

 他方で、この情報・研修館は、そういった特許の出願人などの産業財産権制度のユーザーに対しまして、その活動の基盤となるような特許関係の情報の提供あるいは研修といったような総合的なサービスを提供する任務を担っているというふうにお考えいただければよろしいかと思います。

後藤(斎)委員 今のようなお話だと思うんですが、改めて、経済産業省として昨年の十二月に閣議の決定の前にいろいろな御議論をした中で、研修館の組織・業務全般の見直しについてという、基本認識から始まるペーパーがございます。この中で、見直しという部分は、先ほど来御議論がある、いろいろなユーザーに即した任務・役割の明確化であるとか、情報収集・公開業務の強化と見直しであるとか、いろいろ指摘がございます。

 あわせて、この見直しペーパーの最後の方に、これは一部達増議員の質問、御指摘ともかぶる部分もありますが、要するに、見直しに当たってのメリットを、非公務員型にした場合、人事面を中心とした制度の自由度の高さという部分がまず指摘をされております。そして、課題が幾つかございます。その中に、今お話がありましたように、特許庁の審査、審判等との密接関連性に対する影響の問題、国民等の信頼に対する影響の問題、国際的信頼に対する影響の問題という三点が大きく指摘をされています。

 まさにこういう指摘がありながら、あえて非公務員化するのはどうかという、いろいろな御議論もあったというふうに聞いております。そして、この三つの大きな影響の問題点が課題だというふうに思っていますが、あわせて、残る一つの、経済産業省が所管をする製品評価技術基盤機構というものは引き続き公務員のままであります。これもいろいろ見させていただくと、一部研究開発にかかわるような部門も正直言ってございます。

 なぜこの情報・研修館を非公務員化し、製品評価技術基盤機構を引き続き公務員の身分のままで独法化しているのか、その対比についてお尋ねをしたいと思います。

松本政府参考人 今御質問のありました独立行政法人製品評価技術基盤機構でございますが、これは、バイオテクノロジーそれから化学物質安全管理などの広範な四つの分野につきまして、技術的な法規制の執行や貴重な微生物資源、安全性に係る技術情報の収集、提供等を行い、工業製品等の品質向上や安全性の確保等を図っているものでございます。

 それで、なぜ公務員型を維持したかというのは、基本的に二つ理由がございまして、一つは、本機構については、国の政策的な必要性の観点から、強制力を持って実施される立入検査や、検査、審査等の業務を広範な対象に対して行う法人であるということでございます。それから二番目に、貴重な微生物資源の提供に関しまして、我が国を代表する機関として諸外国政府と直接交渉し、相手国政府機関と覚書を結んでおり、国を代表する者として相手国との信頼を維持する上でも公務員の身分を有することが望ましいと考えられたことによるものでございます。

後藤(斎)委員 今の御発言のように、安全性に関する部分は、立入検査も含めですが、公務員の身分の方が望ましいというのは、全体の、総務省からいただいた行政改革推進本部の決定の概要にもございます。

 ただ、今のバイオテクノロジーだけの問題でいえば、農林水産省が所管をしておりました農業生物資源研究所というのは新しく非公務員化になって、ここはまさに、ゲノム、生物も含めた、若干この分野とダブるかもしれませんが、バイオテクノロジーの分野も含めております。

 ですから、この製品評価技術基盤機構の問題をどうこうというよりも、この機構自体も、その研究開発の分野と、立入検査や強制力を執行しなければいけない、いわゆる公務員型の部分が混在をしているということを私はあえて言いたいということであります。

 先ほどもお話がありましたように、特許庁と密接にかかわっているこの情報・研修館を、課題を経済産業省としてあえて指摘をしておきながら、非公務員化にするという理由をもう一度お答え願えますでしょうか。

中嶋政府参考人 この情報・研修館につきましては、確かに特許制度あるいは特許行政の中で大変大事な役割を担っていただいております。出願人に対しまして、特許情報の提供とかあるいは相談業務、さらに一定の範囲の研修事業といったようなことをやっておりますし、特に情報提供とか相談業務ということにつきましては、国民にあまねく公平にサービスを提供するという観点からは高い公益性もある、原則無償といったようなことだと思います。

 ただ、そのようなサービスを具体的に提供する際の形態といたしまして、中小企業を中心に、よりユーザーのニーズに対応して的確、柔軟に行うためには、非公務員型に移行することも十分検討に値するのではないかというような御指摘を昨年からいただいたわけでございます。

 具体的には、先ほども達増委員の問いのときにお答え申し上げましたように、より柔軟な勤務の形態とか、あるいは人事面での柔軟性といったようなことを生かすことによって、出願人の方々に対しても、ほかの中小企業関係の団体ともタイアップしながらより的確にサービスが提供できるのではないかというような観点でございます。

 したがいまして、そういった観点も含めて、昨年末に、経済産業省の独立行政法人評価委員会においてさまざまな御審議をいただいた結果として、今回非公務員化をする、ただし、その業務の遂行について内外の信頼を損なわないように、さまざまな形で秘密保持義務の担保、罰則も含めて、そういった担保などの手当てもするという結論に至ったものでございます。

後藤(斎)委員 今のようなお答えしかできないのかなと思うのですが、先ほどの三つの点について、国民、国の中から、外からの信頼性、あわせて特許庁自体の審査、審判等との密接性という点の課題がまだ私は残っていると思います。

 この行革という一つの目標自体は私も正しいと思うのですが、非公務員化するという一つの方向性に余りにも一律に対応し過ぎているのかなと。私は、特許庁と同じだけの罰則の義務を課せば信頼性が十分担保できるとも思えませんし、ただ、あえて踏み出す必要もあるのかなというふうにも思います。

 仮に、もし国の中から、国民から、海外から信頼性を得られない、あわせて国民の中からも、厳格な中立性、公平性を担保できない、企業の方からもそうだというふうに言われたときには、公務員型の方がベターであればそちらの方に独法の性格自体を戻すのでしょうか。

中嶋政府参考人 この情報・研修館事業につきましては、設立以来五年たちまして、今、第一期の経過期間が今年度で終了いたします。来年度以降の第二期につきまして、既に経済産業省の方から中期目標を提示しておりまして、それに基づきまして、近いうちに情報・研修館の方から第二期の具体的な中期計画が出てまいると思います。

 その中期計画のみならず、当然ながら、毎年度の事業の遂行につきましても、私どもが十分日ごろから注視をし監督する立場にあるわけでございます。そういう意味で、今後の情報・研修館の業務遂行につきましては、十分経済産業省として責任を持ってフォローしていき、よもや内外の信頼の損なうことがないように万全を期するつもりでございます。

後藤(斎)委員 ぜひそうであってほしいと思いますし、そうでなければこの非公務員化をする意味は全くありませんので、その信頼性が失われた時点でぜひ柔軟にその問題にこたえていくことも行政の対応だというふうに思いますので、答えは要りませんので、御要望だけ申し上げておきたいと思います。

 そして、今、最後にお話しいただいたこの情報・研修館の平成十七年度の計画というものをホームページで抜粋させて見させていただきました。これに、いろいろな目標設定も含めたとるべき措置というものもございます。

 そして、これが、今お話ありましたように、要するに、この法律が通れば四月一日以降非公務員化ということで、新たな事業や、事業自体の整理統合ということも、当然効率化、スリム化ということで対応なさっていくというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。

中嶋政府参考人 御指摘がございましたように、従来も、それから今後とも、この情報・研修館の業務遂行に当たりまして、組織面でできるだけ肥大化しない、スリムにということ、それから、中期目標などを踏まえながら、できるだけ効率的にということかと思います。

 そういう意味で、例えば一例を挙げますと、業務経費につきましても、これからの次期中期目標でございますけれども、毎年度、平均いたしまして前年度比で四%程度削減をする。これは、ほかの類似の独立行政法人を大きく上回る効率化目標でございます。

 それからまた、収益事業の実施に当たりましても、これは、基本は情報提供とか相談事業というのは無償ということではございますけれども、研修などにつきまして、対民間との場合に実費を徴収するとかいうようなことも含めまして、そういった面でもいろいろ、本来の行政目的を損なわない範囲で対応していくということかと存じます。

 そういう意味で、さまざまな点におきまして、より効率的に、効果的に業務の遂行ができるように引き続き注視をし、指導していきたいと思っております。

後藤(斎)委員 先ほども触れさせていただきました、昨年十二月に経済産業省として御議論なさった今後の組織や業務の見直しについてというペーパーの中に、契約手法についてもいろいろ工夫をしていくという指摘がございます。

 今、情報・研修館が委託をされている、取引をされている上位十社というのが評価の中にございますが、財団法人日本特許情報機構、これが約四十四億円の委託料で、特許電子図書館における工業所有権情報提供サービス等ということで取引をなさっております。二番目が発明協会で、特許流通促進委託事業等ということで約二十九億円。三番が東芝ファイナンス株式会社で、特許電子図書館用閲覧機器の賃貸借料の支払いということで二億二千万ほど。以下、いろいろな会社が列挙されておって、順番は、過去四年ほどを見させていただくと若干変化しておりますが、この特許情報機構であるとか発明協会さんであるとか東芝ファイナンスさんであるとか、この辺の取引先とは現在どんな取引、入札方法で契約をなさっているんでしょうか。

野澤政府参考人 情報・研修館の日本特許情報機構に対する特許電子図書館の運用等の契約あるいは発明協会に対しましての特許流通促進事業の契約、これは随意契約によっております。

後藤(斎)委員 随意契約で四十四億とか二十九億というのはかなり大きい金額だなというふうに思いますが、どんな会社が日本全体でこういう仕組み、ソフトがつくれるのかちょっとわかりませんが、これからはこの随意契約を変えるおつもりはあるんでしょうか。

野澤政府参考人 現在の随意契約、特許情報機構に対します随意契約によって外注していることにつきましては、この特許電子図書館のシステムの開発自体がこの機構によって行われてきたために、その運用についても、システムに十分な知見を有しているこの機構が最も適切であるというような理由に基づいているところでございます。

 それから、特許流通アドバイザーの派遣などの特許流通促進事業、これを発明協会に随意契約により委託をしていることにつきましても、発明協会が四十七都道府県に各支部を有して、全国的な事業展開能力を有しているということに加えまして、地域の知財事情に詳しく、アドバイザーを十分に管理するあるいは監督する能力を備えているというようなことで、それが理由となっているところでございます。

 今後についてでございますけれども、昨年末の組織・業務の見直しという中で、可能な限り随意契約にかえて競争的手法による契約とすること、また、随意契約とする場合には、その客観性を確保するために透明性を高めるということが求められているところでございます。

 したがいまして、御指摘のように、これから始まります次期の中期目標期間内におきましては、このような指摘を踏まえまして、情報・研修館の業務全般について、可能な限り競争的手法による契約を行うということとともに、引き続き契約によらざるを得ないこういった委託等については、透明性を高めるように情報・研修館を指導してまいりたいというふうに思っております。

後藤(斎)委員 この日本特許情報機構も、後ほど同僚議員からももっと詳しい問題提起があると思いますが、百五人の事務局の方がいらっしゃって、ほとんどが特許庁ないしこの情報・研修館からの委託費で賄われております。これは、今お答えをいただいたように国民の皆さんから疑義がないようにという点は、ぜひ私の立場からも、来年度の計画をつくるときにはその点について御配慮をいただきたいと思います。

 もう時間も迫ってきましたのでもう一点だけ、大臣、特許特別会計。

 今、特別会計のいろいろな議論をされております。私はきょう、いろいろな意味で、この情報・研修館が日本の特許制度の中でどんな位置づけかというところから始めて、いろいろな議論をさせていただきました。そして、特許庁の支援部隊なんだというお話もございました。

 そして、この特許特別会計の予算の内訳を見ると、全体の特別会計の総収入が、出願料や特許料、登録料で一千百八十六億円ほどございます。そして、特許庁本体への人件費が平成十七年度で予算額で二百九十九億円、審査審判関係経費ということで三百二十五億円、機械化経費ということで二百七十億円ほど、情報・研修館運営費交付金ということで百二十九億円。まさにこの特別会計、特許庁の組織と一体にこの特別会計が使われております。ある意味では、審査請求料であるとか特許料であるとか登録料であるとかというのは特許そのものでありますから、この間、十二月に閣議決定された部分でも、業務効率の向上、民間委託の拡大を図るという前提条件をつけながら、特許特別会計はとりあえず維持をするということになっているというふうに認識しています。

 そういう意味で、冒頭もお聞きをした新経済成長戦略の中でのこの特許制度の位置づけであるとか、そして、先ほども特許庁長官にお話をさせていただいた、非公務員化というものがあえてスタートをした中で、国内外からの信頼性が得られないとか、中立・公平性でないとかいういろいろな問題点が起こったときには、やはりこの予算の執行からも一体的にされているという現実、これからもそういう中で運営をしていく、組織管理をしていくという前提で、私は、柔軟に組織の問題というのは考えていくべきだと思うんですが、大臣、その点について、新経済成長戦略の中での特許のあり方も含めて、最後ですので、まとめてお尋ねをしたいと思います。

二階国務大臣 御指摘のとおり、この特許制度の円滑な推進というのは、我が国経済にとっては大変重要な位置づけがあると思っております。

 したがいまして、今後において、特許の迅速化、効率化は、我が国の企業、特に研究開発の分野の効率化、それから、重複して研究をして、ようやくでき上がったころには、それはもう既に他の特許権者が存在するというふうなことのないように、そうした面でも努力をしていかなくてはなりませんし、知的財産の保護という面では、国際的な面でもこれは十分配慮していかなきゃいけない。したがいまして、新経済成長戦略の中では重要な要素だと考えております。したがって、今御指摘の点、透明性、柔軟性を加えてはどうかということでありますが、それはもっともなことだと思っております。

 経済産業省として、先ほど申し上げましたように、三月中に中間取りまとめを行いたいと思っておりますが、その際、ただいま御議論のありましたようなことなども念頭に入れて、特許制度、しかもこれのスピードアップを図っていく。そして、一般の民間の皆さんにも御協力を願えるところはどんどんと、外注してやれる部分は外注して対応していくなど考えて、特許が経済社会の発展のために、後ろをついて歩くようなことではなくて、もっと先駆的に物事を考えて対応できるように、経済産業省挙げてこの問題に取り組んでまいりたいと思っております。

後藤(斎)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。

 当経済産業委員会では、このたび二度目の質問をさせていただくことになります。まだふなれで、大変ぶしつけな質問もあるかもしれませんが、どうかお許しをいただきたく存じます。

 きょうは、独立行政法人工業所有権情報・研修館、その改正の法案の審議でございますけれども、この独法工業所有権情報・研修館、知的財産立国を掲げる我が国の国家戦略の実現のために大変大きな役割を担っております。まさに、知財立国の実現は我が国の国家戦略であります。そのために必要な知的財産をどう生み出すか、またどう守っていくか、どう生かしていくか。そのために特許庁やあるいはこの情報・研修館の果たす役割は大変大きなものがあると思っています。

 しかし、その一方で、今のこの大変厳しい財政状況の中で、特別会計の無駄遣いが指摘をされています。例外を設けずにゼロベースで徹底的に見直しをかけるということが言われています。

 もっとも、三十一あります特別会計の中でも、まさにこの特許庁に係ります、またこの情報・研修館に係ります特許特別会計、私はある意味最も健全な特別会計だと思っていたのですが、しかし先般、私も特例公債の法案の際に代表質問をさせていただきまして、財務大臣の答弁の中にも、わざわざ、発足当初にさかのぼって徹底的にメスを入れる、ゼロベースで徹底的に見直しをかけていく、こういう答弁がございました。

 ゼロベースで見直しをかける限りは、厳しい目で予算の一つ一つを見ていかなければならない。まず何よりも、この特許特別会計からの運営交付金でまさにこの独法情報・研修館のほとんどの事業費が使われている。全部と言ってもいいかもしれません。本当に必要な予算が有効に使われているのかどうか、しっかりと見ていかなければならないと思っています。

 特に、「勧告の方向性」の中にもポイントとして強く書かれていることがございます。「各業務の合理化及び競争的手法による契約の推進による委託費の縮減」。最大のポイントとして、一番強くまさにこの情報・研修館のことで書かれております。特にここに注意をしながら質問を進めさせていただきます。

 まず、この独立行政法人情報・研修館、業務の運営、その効率化ということでは、まさに中期目標を私も資料としていただいています。大変いいことが書かれています。運営交付金を充当して行う業務につきましては、「一般管理費について毎年度平均で前年度比三%以上の効率化」中略「業務経費について期間中平均で前年度比四%程度の効率化」。大変結構なことだと思っています。

 実際に、平成十七年度あるいは平成十八年度、予算要求のものも含めますと、そのほとんどのものが効率化をされて、業務内容別に見ますとほとんどマイナス。ここに書かれているように三%以上、四%以上の効率化、縮減が図られている。これは大変結構なことだと思っています。

 ただし、これをちょっと見方を変えますと、一つ一つの業務の内容、予算の額、そしてその仕事は本当に、今使われている、あるいは要求されている予算が必要なのか、あるいはその仕事そのものは必要なのか。あるいは、必要だとしても、もっと効率的なやり方があるんじゃないか。こういう観点から見ると、幾つかの疑問な点がございます。

 先ほど後藤委員からも少し契約方法のことでもお尋ねがございました。私も同様にお尋ねをさせていただきます。

 まず、この独立行政法人情報・研修館の予算規模は、平成十七年度で百三十億七千四百万円、このうち運営費交付金は百二十九億。ちなみに平成十八年度は、少し減って百二十八億五千三百万円となっています。

 平成十七年度において、先ほども指摘がありました社団法人発明協会、そして財団法人日本特許情報機構、通称JAPIOですけれども、この二つに業務を外注されています。委託をしているという言い方の方がいいのかもしれません。契約額で、平成十七年度、社団法人発明協会に合計で二十九億三千万円、財団法人日本特許情報機構に合計で七十四億四千万円。この二つの団体だけで、情報・研修館の予算規模は約百三十億円、二団体だけで、足し合わせますと百三億七千万円。全体の内訳の中に占める割合ですけれども、この二つの団体への外注だけで八割です。八〇%。

 独立行政法人だとしても、当たり前の法人の姿で見直せば、これは、その構造という意味では、余りにもいびつな構造と考えざるを得ないわけです。

 次に、中身ですけれども、財団法人JAPIO、契約の内訳ですけれども、一、特許流通促進事業、特許流通データベースの整備等九・六億。二つ目が、情報普及事業、特許電子図書館(IPDL)サービスの運用等六十四億九千万円です。

 このIPDLサービスですが、先ほども特許庁総務部長からもお答えがございました。インターネットによる特許情報の公開として、平成十六年十月に、知的財産権関係の研修とあわせて、この情報・研修館に業務が追加をされました。

 特許庁本体は極力審判あるいは審査に特化をしていく。あるいはほかのことでも、先行技術調査の外注拡大、これも、実施機関が一社だったものが三社に、三社だったものが次は四社になるというお話を聞いています。大変いいことだと思っています。このIPDLサービスの移管そのものも、私は結構なことだと思います。

 ただし、いただけないのは、この業務について、実際、私が思うのは、この情報・研修館、もうほとんど単なるトンネル機関にすぎないんじゃないかというふうに思います。移管することはいいとしても、何もこの独法を通過させる意味合いというのは私はほとんどないと思います。事業内訳の中でも、同じ工業所有権情報普及業務六十八億七千三百万円、そのほとんどが外注されている内容です。

 むしろ、情報・研修館では何をやっているんでしょうか、丸投げではないかと思うんですけれども、まずそのことをお答えください。

野澤政府参考人 お尋ねの特許電子図書館の業務でございますけれども、これは確かに、工業所有権情報・研修館から日本特許情報機構に、請負ということで、運用を任せております。それは随意契約によっておるわけでございます。

 そもそも、特許電子図書館、これについての経緯ということがございまして、これは実は、先ほどもお触れになりましたように、特許庁が平成十一年に開発をいたしたものでございますけれども、その際は、特許庁が保有いたします特殊なデータを取り扱うということが必要になった関係で、そのデータの取り扱いができる技術能力を持っていたのが日本特許情報機構のみであったわけでございます。そこで、特許庁は、JAPIOに対しまして、この特許電子図書館の開発を、請負として開発してもらったという経緯がございます。

 そういたしますと、この開発を行いましたJAPIOというものが、特許電子図書館に関して、大変システム全般について知見を有して、その高度な運用を行う能力を持っておるわけでございます。この後、先ほど御指摘のとおり、特許電子図書館は特許庁から工業所有権情報・研修館にその業務が移管されたわけでございますけれども、その工業所有権情報・研修館において、引き続き、やはり運用にノウハウを持っておるJAPIOにその運用を請け負わせているということが続いておるわけでございます。

 この情報・研修館が特許電子図書館等の業務を請け負わせるに当たりまして何をやっているかということでございますけれども、これは、丸投げということではなくて、例えばでございますけれども、国際的な特許の技術分類の体系変更というようなものが一つの例としてあります。こういった国際的な特許の技術分類の体系変更というものに応じまして、特許電子図書館でどのようなデータの仕様で行っていくかというようなことについて企画をしたりとかあるいは決定をする、そして、そのデータの仕様をJAPIOに請け負わせて、それが適切にデータの仕様どおり行われるかを管理している、そういう技術的な管理をしているということをこの情報・研修館が行う必要がございます。

 したがいまして、この特許電子図書館等の事業というのは、あくまでも情報・研修館が責任を持って実施をしている事業でありまして、JAPIO、すなわち日本特許情報機構というのは、その指示に従って運用を請け負うという立場にあるわけでございます。

 このような特許電子図書館等の業務、企画の管理というのは、先ほど申しましたように、当初特許庁が行っていたところでございますけれども、情報・研修館はユーザーに近い立場にあるということで、ユーザーのニーズをより把握して、きめ細かくシステムの改善を図っていくということができるという判断のもとで、十六年十月に移管をしたものでございます。

 そういった経緯もあわせて考えますと、今後とも、この特許電子図書館等の事業につきましては情報・研修館が責任を持って担っていく、そして、その仕様等に基づく運用をJAPIOがそれに従って行っていくということが適当であるというふうに考えております。

三谷委員 随分難しい理屈を並べ立てられまして、何が何だかわからない話になってしまいましたけれども。要は、企画の管理というようなことで必要なんだということがおっしゃりたいのだと思いますけれども、とても納得のいく話ではないのです。

 ただ、むしろ大事な方の話ですけれども、ではまず、なぜJAPIOかというところで、一つは、ここが開発をしたんだということがございました。別に、開発をしても、効率的に、あるいは競争的な手法を用いてそれを推進して委託を進める、そう勧告に書いてあるわけですから、努力をしようと思ったら、私は、JAPIO以外にもこの仕事はできると思うんです。

 運用、運用とここには書かれていますし、今、総務部長もおっしゃられました。運用ですけれども、もうちょっと具体的に、この仕事の中身は何ですか。中身は何ですか。

野澤政府参考人 お尋ねのところで、まず、JAPIOしかなぜ開発できなかったという御質問があったかと思いますので、まず、そちらの方からお答えを申し上げたいと思いますけれども……(三谷委員「いや、開発はいいんですよ」と呼ぶ)はい。

 それで、このJAPIOは開発を……(三谷委員「いや、運用の中身」と呼ぶ)

石田委員長 三谷君、ちょっと委員長の指示を受けてしゃべってください。

野澤政府参考人 それで、その運用でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、このデータの仕様というものが国際的な特許分類の変更などによって変わってくることがございます。そういった国際的な分類の変更などというものを把握して、それに基づいてどのようなデータ仕様を行わなければならないのかという判断を行って、具体的にデータの仕様を決めるというのが情報・研修館の役割でございます。

 それに基づいて今度は発注がされるわけでございまして、その発注の指示に従って、JAPIOがこの特許電子図書館の所要のデータの入力、あるいはデータの整備ということをやるということでございます。

三谷委員 では、質問の言い方をかえましょう。

 JAPIOしかできませんか。今も入力というお答えがありました。私もある程度中身を知っているんです。JAPIOしかできませんか。お答えください。

野澤政府参考人 このシステムは、先ほど申し上げましたとおり、JAPIOが開発して現に運用いたしております。それで、このシステムによって、特許の先行技術のデータというものを大変広く提供しているということでございます。御指摘にありましたように、それは大変、先行技術の調査というものが広く民間で行われますと、研究開発に先立って重複的な研究が省けるとか、いろいろなメリットが出てまいります。非常に重要なものであるというふうに認識をしております。

 そこで、現にそれが動いております。それで、JAPIOしかできないのかということでございますけれども、それでは、新しい発注先といいますかに、それを見出して、このシステムを任せていくということになりますと、現に動いている一方で、新しいシステムについての構築ということを行っていく必要がございます。

 すなわち、こちらの現在動いているシステム、これは非常にすぐれているシステムだというふうに評価しておるわけでございますけれども、それと同時並行で、また新たに開発をさせ、仮に開発できるものがいるとした場合でも、開発をさせ、ある期間を経てようやく立ち上がるという意味で、やはりそこは二重投資が出てくるという問題がございます。

 それから、仮にそこで新しいシステムが動き始めたとしても、今動いていて非常に利便性が高く、機能、特性が高いシステムを果たして上回るか、さらには、やはり初期の段階においての問題点が発生してユーザーに迷惑をかけるようなリスクはないかというような問題がございます。

 そういった意味で、現在のシステムというものが現在あるわけでございますので、そして、それを習熟して、情報・研修館からのいろいろな仕様の変更に応じて対応できるというのは現にそれを運用しているJAPIOでございますので、そういった事情を御勘案いただきたいというふうに思います。

三谷委員 これはきっと、もちろん、システムを開発したところがその運用もやるということはよくあることです。しかし、実際にこの勧告のポイントの中にも書かれています「競争的手法による契約の推進による委託費の縮減」。では、これはどうお考えになられているんでしょうか。この後、発明協会のこともお尋ねをいたしますけれども、どう考えられているんでしょうか。やらないんですか。競争的な手法の推進ということではやらないんですか。

野澤政府参考人 競争的手法の導入に可能な限りかえていくということがうたわれております。それと同時に、随意契約によらざるを得ない場合、この場合については、その理由というものについてよく説明をするというようなことで、客観性、透明性を保ちなさいという御指摘もあわせていただいておるわけでございまして、それに従って対応してまいりたいというふうに思っております。

三谷委員 それでは、もう一つの方に移らせていただきます。

 今度は社団法人発明協会でございますが、これも二つありますが、片方だけにします。

 一つ、特許流通促進事業、特許流通アドバイザーの派遣等二十八億一千万円ですけれども、私は、開放特許が中小企業、ベンチャー企業に有効に活用されることは大変大事なことだと思っています、必要だと思っています。特許流通に係る専門的な知識を持った人材、冒頭にも、知財立国は我が国の国家戦略だというお話も申し上げました。しかし、限られた予算の中で三十億近くかけてこの流通アドバイザーの派遣を行う必要が本当にあるのかどうか、まずこれをお尋ねいたします。

中嶋政府参考人 お尋ねの特許流通促進事業でございますけれども、これはもともと、大企業とか大学などが有します未利用特許あるいは休眠特許といったようなものを中小企業、ベンチャーに橋渡しをしていこうということが目的で、特許庁自身の事業として平成九年にスタートいたしました。

 平成十三年にこの情報・研修館が発足以降は、こちらの方の事業として啓発普及をやった結果、今まで累計で七千百八十五件、これはことしの一月末現在の数字でございますが、七千百八十五件のライセンス契約などが締結されるという形で、ある意味で着実に成果が上がってきていると思っております。

 ただ、昨年行われました情報・研修館の組織、業務の全体的な見直しというプロセスの中で、この特許流通促進事業につきましては、自立的な民間市場の整備のための過渡的な事業として位置づけて、今後は、むしろ民間での、こういった技術の取引業者といいますか、そういう民間市場あるいは業者の育成に重点を置いた施策を展開するようにという結論になってまいりました。

 したがいまして、十八年度から始まります第二期の中期目標期間では、この特許流通アドバイザーなどの派遣事業につきましては、民間市場の育成に応じて徐々に情報・研修館から民間に移行していく、民間事業者あるいは地方公共団体等に継承していくという方向でございます。

 ちなみに、現在の、約二十八億というお話がございましたけれども、具体的な中身は、今申し上げましたように、特許流通アドバイザーの派遣だけではございませんで、例えば、特許流通促進のセミナー、これは十七年度で全国三十カ所でございます、あるいは特許ビジネス市を開催するとか、あるいは、もともと休眠特許を出す意思がある方、企業のデータベースをつくる、ここに今、二千五百八十名、件数でいいますと五万七千八十三件が登録されているんですが、そういったものをつくって世の中にオープンにするとか、あるいは、そういった未利用特許の活用の事例集、そういうのをつくっていくとか、さまざまなことをやっております。あるいは、先ほどの知的財産の取引業者、民間の業者のデータベースをつくる、これは現在六十八社でございますけれども、こういった形でさまざまなことをやってきております。

 ですから、平成九年度、初年度はアドバイザーも十四人しかいなかったのが、今は百十五名になっておりますし、派遣、成約の件数も、初年度、九年度は六件だったのが、十七年度は一月末時点で既に千七百二十四件と、そういう意味で、確かにいろいろな成果は上げていると思います。

 ただ、確かに、委員の御指摘にございましたように、この事業につきましては、先ほど申し上げたように今見直しの方向でございまして、具体的には、平成十八年度予算におきまして、合理化、つまり一部の事業の廃止も含めて見直しを行った結果、約七億円を削減するということでございます。

 今後とも、そういった大きな方向で見直しの努力をする中で、むしろ、民間のこういった技術取引のマーケットといいますか、企業といいますか産業が育成されてくるということを期待しているわけでございます。

三谷委員 過渡的ということをおっしゃいました、また、民間業者をこれから育成していく。大変結構なことだ思います。そう言っていただきたかったところがございます。また、中期目標にも書かれているように、徐々に減らしていくと。

 だけれども、一つ指摘をさせていただくのは、実は、確かに徐々には減っているんですよ。十四年度三十四億円ちょっと強ですね。二年目の十五年度、三十四億円ちょっと弱ですね。十六年度、去年です、二十九億二千万円。ことしは、先ほどお話ししましたように二十八億。それを七億減すんだと。私は、もっともっと減してもいい話だと思っています。

 それは、まさに、喫緊の課題ということでは、ずっと特許庁の方々はおっしゃっておられますよ、世界最高レベルの迅速的確な特許審査の実現をしなきゃいけないんだと。待ち時間を一三年までに十一カ月に短縮して最終的にゼロにする、もっと言ったら、国際競争力でいって最高の特許システムをつくるんだと。大きなものをここの予算に、私は、もう七億とは言わず、もっと必要なところに振り分けて、縮減を図るところは縮減をかけて、必要なところにつけていくということが必要なんじゃないかと思います。

 あわせて、もう一回戻りますけれども、これもさっきのJAPIOの話と一緒ですけれども、これまでの話も含めて、あるいは、次も七億減しますよということですけれども、また同じように、十四年から十五年も十六年も、あるいは十七年も、多分十八年もでしょうが、社団法人発明協会への外注ですよね。随意契約とおっしゃいました。これも同じ話を聞きますが、なぜ発明協会じゃなければいけないんでしょうか。ここにしかいないんですか。お答えください。

野澤政府参考人 発明協会でございますけれども、これは四十七の都道府県に各支部を持っておるというところでございまして、まさに知的財産に関する活動、これを長きにわたって行ってきたわけでございます。そういう意味では、全国の広い範囲において知的財産に関する知見を有しているという性格を持っております。

 それに加えまして、発明協会、このアドバイザーというものは、各地方に百十五名派遣をいたしております。大学のTLOでありますとか地方公共団体とか、そういうところに派遣をしておるわけでございますけれども、それらの方々が先ほど長官が申し上げましたような成果を生み出してきておるわけです。そういった方々の管理運営というものを行っていく上で、全国的な支部を持って、そして各地域で活動をされているアドバイザーの管理を適切に行っていただくことができる、そういう団体ということで見渡した場合に、この発明協会というものがやはり適当であるということで、発明協会を選んでいるというところでございます。

三谷委員 今お尋ねした趣旨というのは、先ほど特許庁長官がお答えになられました、民間業者の育成というお話がございました。まさに先行技術調査もそうですけれども、最初は一社であった、それが、テクノリサーチを初め三社になった。来年は四社にされるということです。それはもうわかっているんです、だれでも、どこでもできるものじゃないと。ある意味、それは育成をされてきたんだと思うんです。これも同じ話だと私は先ほどの長官のお答えを受け取ったのですが、それは違うんですか。

中嶋政府参考人 この情報・研修館の行っている事業というのが特許行政において非常に重要だというのは、端的に言えば三つの分野だと思うんですね。

 一つは、まさにいろいろな情報提供とか公報の閲覧とか、そういった情報を提供するということがあります。同時に、今お話があった、例えば民間でのサーチのアウトソースをやるときの、そのサーチをやる人の人材を育成していくとか、そういった意味での研修業務というのが、もともとあった特許庁の審査・審判官の研修に加えて最近あるとか、それからもう一つ、三番目に挙げるとすれば、これは電子図書館事業なんかにも関係するんですけれども、民間の方が、企業が出願する前に、もっと事前にそのサーチをしておけば、結果として、特許に出願したけれども特許が得られない、今、この歩どまりの率といいますか特許の査定率が日本は五割を切っておりまして、大変低いんですけれども、これがある意味では、結果としては、もう既に先に特許を取っている人がいるとか、あるいは、そもそも特許に値しないということになってしまっているわけですから、研究開発投資の無駄になっている。それから、さらにある意味では深刻かもしれませんが、漫然と技術情報を世間の目にさらしているだけということにもなりかねないわけであります。

 そういった意味で、この電子図書館の事業なども含めまして、民間の人が情報に十分的確に、迅速にアクセスできるようにといったようなことが必要でございます。

 要するに、こういったことにつきまして、特許庁に関係する、あるいは行政に関係する周辺の支援業務でございますので、独立行政法人、それが非公務員型とはいえ、とにかくそこがきっちり責任を持って、ユーザーに御迷惑がかからないように遂行をしていただきたい。

 そのときに、さらに、その業務を遂行する際に、具体的な業務の実施を情報・研修館から外にまた請け負わせる、あるいは委託とかいろいろな形があり得ると思いますが、その際も、そこで請け負う機関が本当にそれを、本来の目的達成のために十分責任を持って、かつ一番効率よく実施できるところということが必要になるのは、これは当然でございます。

 そういう意味で、先ほどから御議論になっておりますような電子図書館の事業でございますとか、あるいは特許技術アドバイザーの事業は、これは言ってみれば、特許なり知的財産の創造と保護と活用というこのサイクルを本当に回していこうという意味でも大変重要な事業でございますけれども、これが全国的に展開するには一体どういう団体にそれを請け負わせるのが適当かといったようなことで、具体的な請負先が選定されていくものだと思っております。

 その具体的な手法として、ある場合には、それが随意契約によらざるを得ない場合があるとすれば、それはそれで十分その透明性を持ってやる必要があるし、また、ある場合に、それは部分的かもしれませんけれども、例えば提案公募型の形にするとか部分的な一般競争入札とか、そういったさまざまな工夫をして、競争的手法とか手続の透明性をより徹底しろというのが全体の方向性であるというふうに認識しております。

三谷委員 もう時間が余りございませんのでこれ以上申し上げませんが、要するに、申し上げたいことは、先行技術調査のように、むしろこっちの話の方が、特別な専門的な知見がその請け負っていただく会社にも必要なんですから、こっちの方が難しい話だと思うんですけれども、そこでは一社のものが、何度も申し上げますけれども、三社に、四社にされて、だけれども、最初に申し上げたように、この二つで全体の事業規模の中の八割ですよ、八割を占めていて、それも、発足当初から変わっていないんです。JAPIOの名前こそ発足時には上の方にありませんけれども、後は、ずっと十四年から、十四年だけ東芝がありますけれども、一番、二番ですよ。それが、勧告の中にも書かれているように、競争的手法がどこにあるのか、そういう努力を本当にされているのかということを問わせていただいているんです。

 今指摘をさせていただきました、まさに社団法人発明協会そして財団法人日本特許情報機構、最後に申し上げたいのは、この八割の契約額を占める二つの公益法人、いずれもこの特許庁に係る天下り法人なんです。それぞれ、発明協会は、経済産業省、特許庁総務課、再就職者の数は十一人、役員では専務理事に特許庁の総務部の会計課長経験者がつかれています。JAPIOの方も同様に、経済産業省、特許庁特許情報課、再就職者の数は十四人、役員には六人おつきになられています。それぞれ、専務理事に特許庁の審判部長、常任理事に元通産省の環境立地局長、通産省の元大使、特許庁総務部会計課長、特許庁の特許技監、元通産事務次官、ずらっと六人の方がJAPIOには役員としてつかれています。

 要するに、こういう特許庁のOBが役員として天下っている公益法人がその外注先で、お手盛りにならないかということを今までもるるお話をさせていただいたんです。

 時間がありませんので、最後に大臣にお尋ねをいたします。

 社団法人発明協会、日本特許情報機構、もう一つだけ言わせていただきますと、実は、発明協会、年間収入九十二億七千万円。その中で補助金の額を洗い直してみますと、一般会計から一・九六億円、特許特別会計から九・三五億円。独立行政法人、先ほどの話ですけれども、情報・研修館からの発注と合わせて四十・六一億円、収入の四四%になります。

 実は、補助金の額、先般も予備的調査で、各天下り団体への補助金額、それぞれへの補助金額、洗い出されたんですけれども、まさに眠っておりますのが、もとをただせば、先ほどの情報・研修館からの外注、運営交付金、特許特会から出されているお金です。こういうものはその中には出ておりません。これを足し合わせると膨大な額になるんです。

 大臣、お尋ねをいたします。

 経済産業省、天下りをされている役職員がおられる天下り団体数三百九十一団体、役職員数は千五百四十七名、役員の数だけで九百十五名、先ほど申し上げました天下り団体、公益法人への補助金九千九十一億円です。十七年度の経済産業省の一般会計の予算額は八千百七十五億円です。それより多いんですよ。さっき私が申し上げたことは、独法を通しているものを含めますと、この九千九十一億円よりももっと多くなる。わからない。先ほどの情報・研修館を経由した話もそうですけれども、もとをただせば、特許特会から出ている運営交付金です、これは税金ではありませんけれども、出願料です。

 最後ですけれども、経済産業省とあえて申し上げます、中央省庁全部ですけれども、官僚、あるいは官僚に限らず職員の方々の天下り、特にこうした外注先、発注先、委託先法人への天下り、あってはならないことだと思うのですけれども、その改善につきまして、経済産業大臣のお考えを聞かせてください。

二階国務大臣 一口に天下りと言いますが、それぞれいろいろな事情があろうと思います。退職する職員の経験や能力、またそれを受け入れる企業あるいは団体等が、それぞれお互いに要件が合致する場合に実現しているということであろうと思いますが、その結果が今議員御指摘のような数字に上っておるということに対して、これはこれで検討してみる必要はあると思います。

 ただし、御指摘は御指摘として承っておきますが、そこに不正があるかどうかということ、公平性が失われてはいないか、そういう視点でこの問題を考えていかなくてはならないと思いますが、一方、公務員の皆さんの将来というもの、今、若いうちに退職をされるわけでありますから、その後の生活という問題についても、これは経済産業省だけではなくて政府全体で考えていかなきゃいけない、そういう時期に来ているのではないかという意見をしばしば伺います。

 我々もこの問題に対して真剣に耳を傾けてみたいと思っておりますが、私ども経済産業省の中で、特許行政に関する面で、我々は不正があるとは伺っておりません。もしそういうことがあった場合には厳正に対応していくことをここで約束しておきます。

三谷委員 時間が超過してしまいました。

 検討というお話でございましたけれども、あえて私も改善と申し上げましたのは、公務員制度改革との絡みがあることは重々承知をしております、その意味でも改善という言葉を使わせていただきましたけれども、その改善に向けて、ぜひとも突っ込んだ御検討をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは冒頭、今社会的な大問題となっております中古家電問題について何点か質問させていただきます。

 連日のようにテレビや新聞でもこの問題が取り上げられて、リサイクル業者の方がこれを機に廃業を決意せざるを得ない、こういう事態も生まれておりますし、電子楽器などのビンテージ愛好家の方から、日本の文化をごみにしていいのか、こういう怒りの声も寄せられているときであります。

 その点で何点か聞かせていただきますが、そもそも、この中古品の扱いについて、電気用品安全法の法制度のスキームの中でどうなっているのか、この問題ですけれども、ここにお持ちしました電気用品安全法の関係法令集、この前身であります電気用品取締法関係法令集、この中に中古品の扱いについての記述というのはあるのでしょうか、ないのでしょうか。

迎政府参考人 そうした法令集におきまして中古家電製品に関する記載はございません。

 しかしながら、そもそも法律におきまして、二条一項の電気用品の定義におきましても、中古品を除くというふうな規定はございませんで、この定義からして、当然、電気用品と書いておるものには中古品が含まれるというふうな解釈が、これは、電気用品取締法の時代から確立をしていることは明らかであるということでございます。

塩川委員 解釈できるのであれば法令集に書いておけばいいのに、一言も書いていないわけです。ですから、後づけの話だということはここを見ても明らかで、中古用品の扱いというのは、そもそもこの法制度の想定の外のものだったということだと思うのです。

 そこで、重ねてお尋ねしますが、経済産業省は、昨年一部のリサイクル業者に、PSEマークのない中古家電が売れなくなればどうなるかという影響調査、アンケートの調査を実施したとお聞きをしています。結果として、とにかく三月三十一日まで周知徹底に努めるということを経済産業省内部で確認をしたということなんですが、このアンケートについて、対象としたリサイクル店はどこなのか、それから、このアンケート調査を依頼した日時は、日付はいつなのか、この点をお答えください。

迎政府参考人 お尋ねの調査でございますけれども、この調査は、電気用品安全法の猶予期間がことしの三月三十一日に終了いたします、今や半年を切った時点において、中古家電製品についてのお問い合わせなんかもあることから、中古家電の販売事業者に対しまして、制度の周知も兼ねまして、対応の状況を調査することといたしたものでございます。

 対象といたしましては、これは電話帳等に、中古家電を売っておられる方、一万二千店ぐらい載っております、これの中から、店舗を多くお持ちの、例えばハードオフですとかあるいは生活創庫といったような各お店に伺う。それから、中小の単一の店舗のリサイクル店を含めて、総数として千店を数え上げまして、これらに対して十一月九日付で調査を発送して御回答いただいて、実情の把握と周知に努めたということでございます。

塩川委員 千店ということですけれども、重ねてお伺いします。

 ハードオフとそれから生活創庫、この二つの大手のリサイクルの業者ですけれども、そこで何店舗ぐらいのアンケートを行ったのか。それから、残りの二百については、私は、これは家電製品協会を通じて紹介してもらったというふうに承知していますけれども、そういうことでよろしいのでしょうか。

迎政府参考人 今先生が数字をお挙げになりましたように、大手のハードオフ、生活創庫で八百店、それから、二百店については電話帳の中から抽出をして調査票をお送りしたということでございます。

塩川委員 電話帳云々と言いましたけれども、その委託窓口としていたのが家電製品協会にかかわる団体だったんじゃありませんか。

迎政府参考人 ちょっとそこは定かではありませんけれども、何かその調査を実施するに当たっていろいろ助力を得たというふうなことはあるかもしれません。

塩川委員 家電リサイクル法を所管する担当の方からその点は確認をさせてもらいましたけれども、千店のリサイクル業者の調査といっても、そのうちの八百というのは、ハードオフ、生活創庫という大手のリサイクル業者です。残りの二百社についても、これは家電製品協会、つまり、大手の業界団体、家電メーカーに連なる傘下のリサイクル店なんです。

 ですから、十一月九日時点で、家電メーカー系列のリサイクル店、あるいはその大手のリサイクル店には、四月からは中古家電は販売できなくなりますよということは少なくとも伝わってはいたわけですね。なぜほかの業者には二月だったのか。十一月の初めの時点でアンケートということを通じて周知を図るという目的もあるということをおっしゃいました。なぜほかの業者の人には三カ月も後のことしの二月に入ってからだったんですか。

迎政府参考人 まず、周知活動は、いろいろな形で、パンフレットですとか講習会ですとかやってきたわけでございます。それで、中古家電の販売店については必ずしも十分に行き届いてはいないのではないかというふうな懸念もございましたので調査を我々やったわけですけれども、調査票をお送りする際には、旧法に基づくマークを表示した電気用品は四月から販売できなくなります、こういうふうにお書きして、その調査票にも明示をしてお送りしたわけです。

 結果的には、それは、例えば一万二千全部にやるべきではなかったかというふうな御意見もあるかもしれませんけれども、今回こういうふうな調査をやったことがその中古家電の販売店の間でいろいろ認識が広まっていったという意味においては、私どもがやったその周知調査というのはそれなりの効果を果たした、周知の効果を果たしたというふうに思っております。

塩川委員 大手家電メーカー傘下のリサイクル業者と大手のリサイクル業者には、少なくとも十一月の初めでどういう状況になるかというのは伝わっていたかもしれないけれども、それ以外の圧倒的多数のリサイクルの業者の皆さんは知らなかったんですよ。三カ月も後の二月になってからやっと文書で通知をするということなんです。

 そもそも、それが周知徹底の、結果としてそうなったんだと言うけれども、期限はいつですか、三月三十一日ですよ。それまでにどうしたらいいのかということで皆さん大問題になっているんじゃないですか。その点で、五年間の猶予期間があったのにもかかわらず周知徹底をしてこなかったという経済産業省の責任が問われるわけです。

 そこで、お手元の配付資料の三枚目ですけれども、これは、九九年の電気用品安全法の改正に基づいて、経済産業省の部内資料として、流通経過措置期間、つまり、猶予期間の扱いについてどういうふうに、なぜ五年とか七年とか十年なのかという理由も添えた表になっているわけですけれども、いわば、この流通経過措置期間、猶予期間というのが在庫の処分の期間ということだというのはこの法令集の中を見ても明らかです。

 ごらんいただきたいのが、「電気用品名」でいきますと六番の「電熱器具」のところで「五年」とあります、真ん中のところですけれども。そこのところに、「理由」の欄にちょっと書いてありますが、「平成七年時百十七品目の乙種電気用品移行に際し、旧表示電気用品について一律五年の流通経過措置を見たところ、表示については今回は更なる全面改正となり、全製品に影響が及ぶ」ということにこの九九年改正でなったものですから、「このため、最低でも五年を担保することが販売店における財産保護の観点から不可欠と考えられ、特例を適用しないものにあっては前回同様一律五年とすることとした。」ということで、いわば、五年のこの猶予期間というのが在庫を処分する期間ということですよね。ですから、販売店における財産保護の観点から、財産としてある商品の処分のために五年という猶予期間を設けているわけなんです。

 今お話ししましたように、中古の家電販売の事業者の皆さんは、大手であっても十一月の初めの時点、大半の方は二月になってから初めて事態を知ったという中で、この財産保護の観点というのはどこにいっちゃったんですか。中古のリサイクル販売業者には財産権保護が必要ないと経済産業省はお考えなのか。

迎政府参考人 ここで言っております財産権の保護云々ということ、在庫というお話でございますけれども、それは、大変その流通在庫の期間が長くて、法律の施行前に在庫されたものが売れるまでに非常に長期間要するような商品があるわけでございまして、そういったものについての財産権の保護というふうなことであると理解されるわけでございまして、今先生が御指摘になられたのは、その周知が御存じだったか御存じでなかったか、あるいは私どもの周知が十分だったか十分でなかったかという議論はさておきまして、法施行後に官報に公示されて、制度が決まった以降に買われたものについての財産権の保護云々というのとは、これは違うものであるというふうに私は理解できると思います。

塩川委員 在庫の問題について、本来、五年前に知っていれば、当然のことながら皆さんは対応されているわけですよ。それは、製造メーカーや、またはその販売店について言えば、当然そういう皆さんはこういう周知の中で対応されてこられているわけです。しかし、中古の家電業者はそうじゃないんです。だからこそ、今になってどうしようと大変悩んでおられるわけです。ですから、二階大臣に、前回もお尋ねしましたけれども、重ねてのお尋ねですけれども、こういう現状に対してふさわしい対応をとる必要があるんじゃないのかと率直に思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

西野副大臣 御案内のとおり、この経過措置につきましては、いよいよ一カ月を切ったということで最終の段階に入ってきたわけでございます。それに向けまして今日まで周知活動を展開しておりましたけれども、さらに最後のこの残りました期間にわたりまして、まだ必ずしも徹底した周知でないという御指摘もこれあり、また、その他の問い合わせ等々もございますから、さらに新聞広告、さらには携帯電話による広告を行ったり、ビラの配布等を行うなり、あるいは経産省のホームページのQアンドAに丁寧に対応するなどありとあらゆる方法を講じて、残りました期間に対して、いわゆる総動員をかけて周知徹底に最後の期間全力を挙げていきたいというふうに思っておるところでございます。

 これは、御案内のとおり、人のいわば安全にかかわる重要な問題であること、そのことは先生もよく御理解がいただいておるというふうに思いますだけに、そういう意味で、ゆめゆめおろそかにできないという観点から、国民の皆さんや中古品を扱われます業者に対しましても一層の御理解をいただけるように最後の努力を行っていきたい、このように思っております。

塩川委員 大臣にあてて署名もたくさん今寄せられているそうであります。大臣からも一言お願いいたします。

二階国務大臣 先般も塩川議員からの御質問もあり、私も、この段階でいかにすればいいかということも考えてみました。

 しかし、御承知のように、五年間の経過措置の中であと一カ月を切っておる今日、今いきなり何かルールを変えるとかやり方を変えるということは、もう既に五年間のことを周知徹底した上で対応してこられた業者もおられるわけでありますから、私どもは、今、西野副大臣が御答弁申し上げたとおり、残された期間いかほどのことがやれるか、全力を尽くして、この期間に、今御説明申し上げたような観点で積極的に対応して、そしてゴールを迎えた段階で、改めてまた今後の対策等について関係の皆さんの御意見等も伺い、対応してまいりたいと思っております。

 私は、今、塩川議員はこの委細の資料をお持ちでありますが、いかなる経緯でこの法案が審議されたのかということも一応調べてみましたが、衆議院で採決されたのは、平成十一年六月十五日でございます。参議院では、平成十一年八月二日に採決されたというふうに記録されております。

 そして、これは御承知のとおり、基準・認証制度改正の一括法として処理されております。したがって、どの政党がどのような御意見、どの国会議員がどのような御意見を当時述べておられたかということをつぶさに調べてみましたが、残念ながら、一括法でございますので、当法案に対する特別の審議が行われていなかった。

 そして、今、五年間の経過でありますから、当時の大臣もおいでにならなければ、局長以下関係者も、当時その職にいた者はいないわけでありまして、しかし、これは役所としての行政の継続性から、我々は十分責任を痛感すると同時に最後の努力を傾けてみたい。先般も申し上げましたが、川を渡っている最中ですから、ここで馬を乗りかえたりUターンをするわけにはいかない。ですから、最後の期間がわずかでございますが、精いっぱい頑張るこの経済産業省の姿を見とっていただきたい。

塩川委員 ふさわしい対応を改めてとることを求めます。

 情報・研修館法について、二点伺います。

 これは、経済産業省が特許特別会計の改革に当たりまして、この特許庁は国みずからが責任を持って行うべきだということをみずから述べておられます。

 それとの関係で、この資料の一枚目にありますように、特許庁職員の審査官、審判官になるに当たっての研修の不可欠の要素として、この情報・研修館における所定の研修課程の修了というのが挙げられているわけです。

 そこで、一点お尋ねしますけれども、審査官、審判官に必須の研修業務をなぜ国みずからが責任を持って行わないのか。これは言い方をかえれば、非公務員型にするメリットというのは何なのかということが一点。

 もう一つ、資料の二枚目にありますように、海外の、欧米特許庁との比較を見ても、左側にあります公報閲覧事業や審査・審判資料提供事業、条約に基づいて、アメリカそしてヨーロッパにおいてはいずれも特許庁として国、非公務員型でやっているところはありません。このような条約に基づく業務を非公務員型でやるというメリットというのはどこにあるのか、この点を伺います。

中嶋政府参考人 今の二点お尋ねでございますけれども、最初の方の特許庁の審査官、審判官に対する研修でございますが、確かに、出願に対しての審査、審判業務、それ自体は各国とも国がみずから直接責任を持って行う、これは私人に対する財産権の新たな設定ということだと思います。

 他方で、その審査、審判に携わる者の研修でございますけれども、これにつきましては、実際この情報・研修館で行いましても、特許庁の方から中期目標に基づいて毎年具体的な研修計画を示しまして、これに基づいて実施をしております。それから、実際その講師に当たる者も、特許庁の審査官や審判官を活用する。その研修が終わった後、それぞれの者を実際特許庁の審査官、審判官に任用するかどうかというのは、もちろん、当然ながら最終的に特許庁長官が責任を持って判断するということでございますので、その研修自体を情報・研修館において実施することについて特段の問題はないというふうに思っております。

 それから、二点目の海外との関係でございますけれども、確かに、今情報・研修館の行っております業務のほとんどのものは、海外では特許庁なりが直接やっている場合が多いと存じます。

 ただ、その具体的な中身として、相談業務とか情報提供、閲覧業務あるいは研修の業務というのは、性格上、特許庁のコアの部分とは別に、それを日本におきますこういった独立行政法人の形で行うということであっても、決して内外の信頼性を損なうようなものではないというふうに判断をいたしております。

 もちろん、具体的な秘密保持義務についての罰則とか、さまざまな工夫をしております。そういう形で、五年前に独立行政法人に移行した後も十分説明をし、内外からの理解は得られていると思っております。

 もちろん、今後とも内外の信頼が損なわれることのないように十分よく説明をし、万全を期してまいりたいというふうに思っております。

塩川委員 情報・研修館の非公務員型への変更というのが職員研修の面でも特段の問題はないと言うけれども、メリットの話としては何も語られていないわけですね。そういう点でも、私は、中核となるような業務に携わるそういう人材について非公務員の形態で行うということ自身に問題が生じはしないか、国際的な条約に基づく業務においても非公務員型でやるなんというのは日本だけということになった場合について、我が国特許行政の国際的信頼性の喪失につながるものではないかと強く懸念を述べて、質問を終わります。

    〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕

桝屋委員長代理 次に、牧原秀樹君。

牧原委員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 私は、日本国及びニューヨーク州の弁護士として、これまで日米の知的所有権に関する法律実務、そして紛争を経験したことがございます。そして、そういう経験を通じまして、知的所有権あるいは工業所有権と言われるものの戦略性、特に国際的な戦略性の重要性について痛感をいたしてまいりました。

 本日は、独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部改正について質問の機会をいただきましたが、主として、日本としての未来を見据えた知的所有権戦略の観点から質問をさせていただきます。

 まず、本件改正のもとになっておりますのは、昨年十二月付の経済産業省「独立行政法人工業所有権情報・研修館の組織・業務全般の見直しについて」と言われる文書でございます。ここでは、情報・研修館は「知的財産立国の実現に資することを目的とする法人である。」とされております。

 この情報・研修館に関する本一部改正が、知的財産立国の実現ということにどのように資するのか。すなわち、知的財産立国を目指すというこの目標から、流れからいうと、どのように位置づけられるのか、この点について御回答ください。

片山大臣政務官 御指摘の点でございますが、情報・研修館につきましては、委員御承知のとおり、特許の出願人などの知的財産制度のユーザーに対して、その活動の基盤となる特許情報の提供や研修などの総合的なサービスを提供する任務を担っております。

 今般の法改正は、情報・研修館を、業務運営の面でより柔軟性の高い非公務員型の独立行政法人に移行させるというのが趣旨でございますが、これによりまして、業務の効率性や機動性を一層高め、知的財産制度のユーザーに対するサービスの一層の向上を図ることとしております。

 このような知的財産に関するサービスの向上を通じまして、ユーザーの活動を支援し、知財推進計画二〇〇五にもうたわれておりますが、「知的財産を核として、我が国の経済社会の発展を目指す。」という、この知的財産立国の実現に一層貢献してまいる所存でございます。

牧原委員 知的財産推進計画の二〇〇五年というものがございます。ここでは、知的財産立国と言われるものの、具体的には四つ掲げられておりますが、このうちの三つ目には、「経済的に見れば、二十一世紀は、技術力の競争が主となり、技術競争に勝ち残った国だけが経済的繁栄を享受することができる。このため、知的財産を核として、我が国の経済社会の発展を目指す。」このようにうたわれております。この主張はもっともだと思います。

 参考の、お配りしております表一をごらんください。これは技術貿易に関する資料でございます。技術貿易というのは、上に書いてありますが、いわゆる特許や実用新案、技術上のノウハウ等の所有権、知的財産権というのはこれをそのまま利用する以外に権利譲渡や実施許諾、ライセンスですね、こういう形で国際的に取引がされている、こういうものを技術貿易と言われ、こういうものが、知的所有権がどのぐらいその国に資しているかということの一つの指標になるわけです。

 この最初の一は、これは貿易額で見たものでございます。これを見ますと、アメリカが圧倒的に今はずっと勝っている、そして日本は微増が続いているという状況です。これは総務省と日銀で若干データが違うのですが、日銀に基づきますと、これは上が輸出、下が輸入でございますから、ほとんど微増の状況でやや輸出が超過になっている、こういう状況にあるわけでございます。

 続きまして、表二をごらんください。表二というのは、今申し上げた額で見たときの内訳を示した図でございます。これは、平成十五年度で見ますと、十五年度だけではなくその前からずっと、日本というのは自動車工業が圧勝しております。これは、つまり貿易額で見たとき、輸出輸入で比べたときも、自動車のみが圧勝している。そして、ほかはほぼ収支とんとんであります。

 三をごらんください。これは今見た輸出輸入の両方で見た収支でございます。この収支で見ても、自動車が圧勝、八五・三一です、二番目の医薬品工業でも三・七三という状況、私たちが日ごろ得意だと思っているはずの情報通信機械工業におきましては、ようやく平成十五年に〇・九六のプラスが出ておりまして、それまではずっとマイナスの状況が続いている、そういうわけでございます。つまり、ここまで見たところでは、自動車が圧勝、そしてほかは思ったほどではなく、いわゆる技術貿易だけで見ると知的財産立国と言えるほどではないということが言えます。

 資料四をごらんください。資料四の図表四、右下の図をごらんください。これは技術輸出額に占める親子会社取引比率です。つまり、ここの比率というのは、日本から海外に対して技術貿易が輸出、プラスになっていると見られるもののうち、実は日本の親会社と海外にある子会社間の、いわば同志の、同じ仲間の中の取引の比率です。全産業で七割、そして、私が先ほど御指摘をした、圧勝していると思われている自動車で実は九割近くが親子会社のものにすぎないということがあります。

 これは私、アメリカで弁護士をしていたときに、随分と日本の企業がアメリカ側に来ている。特に自動車産業は、貿易摩擦を避けるために現地に生産を移しています、それに伴って多数の部品メーカーも海外に来ている、そして、その間でこの技術貿易が行われているにすぎない、そういうことです。

 つまり、これらの統計を見ますと、日本は知的財産立国という状況を掲げ、私たちも何となくこのIPというのは私たちの将来を支えてくれるものである、今勝っているんだ、そういう現状認識を持っていたはずですけれども、決して国際競争に勝っていると言えないのではないかというふうに思いますが、経済産業省は、このような現状をどのように認識し、そして今後どのようにしていきたい、そういう決意がおありなのでしょうか。

中嶋政府参考人 まず、現状認識につきましては、基本的には、今牧原委員のおっしゃったとおりだと思っております。つまり、全体として見れば、確かに、平成五年度以降、日本は技術貿易収支で黒字に転じておりますけれども、それが主として自動車産業を中心にするものが多くて、情報通信分野を初め多くの分野でいまだ赤字になっているというのが実態でございます。

 技術貿易は、特許権とかあるいは技術指導などを通じて国際間の取引をした結果生ずるものでございますけれども、日本が技術立国あるいは知財立国としてさらにこの技術貿易収支を安定的に黒字を拡大していくためには、日本の企業が幅広い産業分野におきまして海外をリードする研究開発の成果をまず生み出す、と同時に、それを他社の不正な利用から守るためにそれを迅速に権利化して保護する、それによって、内外において確実にその権利を活用していくということが重要であると考えております。

 したがいまして、まず特許庁みずからといたしましては、我が国産業の国際競争力の強化、ひいては技術貿易収支の向上に資するために、日本の企業の国内での特許権を初めとする権利取得の迅速化に努めるとともに、日本の産業界に対しましては、海外においてもより積極的に権利を取得するよう啓発に努めてまいりたいと思っております。

 具体的には、ことしになりましてから、経済産業大臣を本部長といたします特許審査迅速化・効率化推進本部というのを立ち上げましてそこで行動計画を決めました。この中には、政府みずからが実施すべき点と、産業界にも企業の知的財産戦略を真に考えていくという観点から、グローバル出願をふやすような点も含めまして、協力といいますか呼びかけを行っていくこととしております。そういう形を通じまして、官民のそれぞれの立場から、日本の技術貿易収支の安定的な黒字拡大に努めていくのが重要だというふうに思っております。

牧原委員 ありがとうございました。

 さて、実は日本がこのように、私たちが思っているほど知的所有権分野で勝利をおさめていないということについては幾つか原因があると私自身思っております。そして、今御指摘にもなりました、そのうちの一つが特許審査の迅速性の問題です。

 資料五をごらんください。これは左側が、特許審査処理の推移ということで、二〇〇四年度から審査請求件数が激増しています。その結果として、これを早めるというのは長年日本の大きな課題であり、オンライン化等を通じて効率化を相当図ってきたと思いますけれども、実際の、この右側、順番待ち期間を見ると、二〇〇〇年度からずっと微増し続けております。

 審査順番待ち期間、黒い方ですけれども、つまり二十六カ月、二年強も審査順番を待たされる。アメリカは二十カ月ですから、ここに大きな差が出てきます。そして、最終審査期間もアメリカと比べるとさらに長いわけですから、合計で見ると十カ月長いということになる。技術というものは非常に日進月歩なものですから、これだけのおくれがあると、やはり企業として本当に日本に出すことが得策かどうか、こういうことは考えていかざるを得ないわけでございます。

 私は、情報・研修館というもの、今回非公務員化されますけれども、このような状況の改善について、その情報を提供する機能等を通じて迅速化に一定の役割を果たすことができると思っておりますけれども、この点についていかがお考えでしょうか。

中嶋政府参考人 今委員の御指摘ございましたように、審査待ちの期間を短縮するとか、あるいはいわば在庫の件数を、滞貨を減らしていくというのは、実は日米欧三極の特許庁共通の課題でございます。特に日本は、世界一の出願大国ということから、かねてから、件数を多く処理すると同時に、少しでも審査待ち期間を短縮していこうということで全力を挙げております。

 特に、日本におきましての先進的な取り組みは、例えば、先行技術の文献検索、いわゆるサーチ業務でございますけれども、これはしかるべき能力のある方であれば民間でもこなしていただけるのではないかということで、このサーチ業務についてかねてから民間へのアウトソーシングを進めております。

 今委員の御指摘にございましたように、この情報・研修館の業務の中に、そういった民間でサーチ業務に携わる方向けの研修業務というのがございます。したがって、例えば、そういった研修業務を通じて民間でのサーチ能力の向上にさらに努める。今現在、三つの機関で約千四百名ぐらいの方がサーチに従事しておられますけれども、私どもとしては、そういったサーチャーの方の人数がもっとふえる、あるいは受け皿になる機関ももっとふえるということを期待しているところでございます。

 さらにもう一つ例示を挙げれば、民間の方があらかじめ十分サーチをしておけば、無駄な研究開発の重複とか、あるいは、漫然と特許を出願することによって十八カ月たつと出願公表されてしまう、結果として単なる技術情報の垂れ流しになってしまうということも避けることができます。

 そういった意味で、情報・研修館におきましては、一方では特許庁の審査官、審判官自身の育成、研修も行っておりますけれども、同時に、民間のサーチ能力、つまり、民間の方が審査官と同じような情報にアクセスできて、少しでも事前にサーチができるように、そういう意味で、先ほどの電子図書館機能も含めまして、民間への情報の提供あるいはサーチ能力の向上のための研修といったような仕事もございます。そういったようなことを通じまして、御指摘の、日本の特許制度全体のより効率化、迅速化に貢献できる面があると思っております。

    〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕

牧原委員 ぜひお願いします。この法律が通って、そして効力が生じた後、このグラフが右下がりになって、日本はアメリカとヨーロッパと比べると随分よくなった、そういう成果を誇れるように、ぜひよろしくお願いいたします。

 そしてもう一つですが、先ほどの、国際的な競争分野になると知的所有権分野に対して弱いという背景には、私自身、日本で特許等々にかかわっていたときに、知的所有権、財産権分野において、企業側に、あるいは、企業だけでなく一般的に国際センスの欠如ないし不足があるのではないかということを思っております。

 表六をごらんください。現在、特許については、WIPOを利用する特許協力条約、いわゆるPCTと言われるものに基づくグローバル出願というものができます。それだけではなくて、外国にも同時出願というものが行えるわけです。こういうグローバル出願をどの程度出願しているかという比率を示した表ですけれども、これを見ると、日本は二〇%しかない。そして、米国は四四%、欧州は六〇%あるということになっております。

 このような、我が国がPCTの利用率あるいは国際出願の比率が欧米と比較して著しく低いという状況については、これはどのようにお考えでしょうか。

中嶋政府参考人 委員の御指摘くださいましたように、日本の特許の出願構造は、残念ながら依然として日本の国内どまりのものが多いのが実情でございます。欧米の四〇%、六〇%に比べてかなり見劣りがいたします。

 もちろん、最近、日本の企業がアメリカ向けあるいは中国向けに海外出願がふえる傾向にございますけれども、やはりどうしても国内ライバル企業からの防衛とかあるいは牽制といったようなことを意識して、国内のみの出願が依然として多いというのが実情でございます。

 これからますます日本の企業がグローバル化する中で、模倣品対策も含めて、いざというときには、当然海外でも、特許を初め知的財産権を取得しておくということが基本でございますので、あるいは特許制度の本来の性格として、出願して十八カ月たつと必ず出願公表されてしまうということから、技術流出防止という観点からも海外における出願比率を高めるということがぜひとも必要であると思っております。

 そういう意味で、先ほども申しました、大臣を本部長といたします行動計画を決めた本部におきまして、グローバル出願の割合につきましては、当面、我が国産業界全体で今の二割ぐらいからまず三割ぐらいに引き上げる、将来的にはさらに引き上げることが期待されるわけでございますけれども、現在、大手の出願企業や産業界を中心に広く呼びかけを行い、意見交換を行っているところでございます。

牧原委員 今御説明いただきましたが、こういう国際的なことにつきまして、特に中小企業は、どんなよい技術があってもグローバル出願を思い至るということはなかなかないというのが、私の弁護士時代の経験でございます。

 こういう知的所有権分野におけるグローバルなアドバイス、こういうものをぜひ、せっかくこの情報・研修館があるわけですから、果たしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

中嶋政府参考人 御指摘のように、この情報・研修館に期待される役割といたしまして、日本の国内における出願活動を円滑に行うということも当然でございますけれども、これだけ日本の企業の活動がグローバル化しておりますので、海外における知的財産権の取得あるいはその活用についてのノウハウといったような面についても、貢献ができないかということが当然期待されるわけでございます。

 実際どういう情報が必要かといえば、当然ながら、アジアを含めて海外の知的財産制度の実情、運用も含めてそういった実情、あるいは、先ほどお話があったPCTを初めとする海外の出願の制度、それから、具体的にアジアなどにおきます模倣品対策の現状などにつきましては、そういった点につきましてもこの情報・研修館の相談業務の一環として対応していきたい。その際に、特許庁自身におきます国際関係部局と連携をとるのは当然でございますけれども、さらに、海外の知的財産事情に詳しいジェトロなどの機関との連携も含めまして、グローバルな分野につきましても日本の産業界に適切なアドバイスができるように情報・研修館を指導してまいりたいと思っております。

牧原委員 今ジェトロというお言葉あるいは模倣品対策というお言葉もありましたが、私は、もう一つ、やはり日本の知的所有権の国際戦略を考えたときに絶対見逃してはならないのは、今御指摘になった海外における模倣品だと思います。

 ベトナムに行きますと、ホンダというバイクが山のように走っています。それはもう日本から行かれた方はすぐお気づきだと思います。恐らくあの中で本物はほとんどない。中国に行けば、街角のあちこちに日本物の、特にアニメなんかですけれども、ビデオのにせものが出回っているということです。

 平成十六年二月に、特許庁が模倣品被害の経済的影響に関する分析調査報告書というものをお出しになっております。ここで、中国、台湾、韓国、タイ、この四カ国における被害の状況を計算しております。この四カ国で被害額は、利益ベースで一兆百五十三億円、売り上げベースで約十八兆とされております。ただでさえ日本国内で増税というようなことまで今話題になっているわけですが、財政再建も問題です。この一兆百五十三億円分の利益、あるいは売り上げベースで十八兆円、これはもう日本にとって多大な損失です。こういうものを見逃していいはずがないです。ただ、現在の状況というのは、例えば、WTOにおいてはTRIPsと言われるような条約、あるいは、特許であればパリ、著作権であればベルヌといった国際条約がありますが、こういう他国がちゃんとやらないというところまでなかなか手が及ばないというのが現状です。

 今御指摘になりましたが、ジェトロを通じた指導や取り締まりの協力、あるいは民間が自主的な努力を行っているというのも私は存じ上げておりますけれども、この情報・研修館の機能を考えて、こういう国際的な侵害に対する一定の役割というものを果たすことも考えられるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

中嶋政府参考人 おっしゃるように、現在、海外における模倣品対策につきましては、さまざまなところで取り組みが行われております。もちろん、政府みずからがそれぞれの関係する国とのバイの協議の場でいろいろ改善を要望していくということは当然でございますけれども、日本の産業界との関係では、私どもの経済産業省の予算の中で、民間企業の侵害されている実態調査について、政府の予算で、ある場合には取り上げて実施をするとか、あるいは、各国の取り締まりに当たる、審査に当たる現地の職員の皆様方の能力アップのための研修を日本で行う、あるいは現地に専門家を派遣して行うとか、今御指摘があったジェトロにおいていろいろな現地日系企業の相談セミナーに応ずるとか、さまざまな対応がとられております。

 したがいまして、情報・研修館におきましても、この重要な業務の一環が相談とか情報提供業務でございますから、今申し上げたようなさまざまな模倣品対策に関連します情報提供をし、それぞれの方の実情に応じて、どういう形でどういう制度を利用するのがいいのか、あるいはさらにどういうところと協力をしていくのがいいのか、そういった情報を十分的確に対応して、国内における知的財産の保護のみならず、海外における日本企業の知的財産の保護、活用にも貢献できるように、今後十分指導してまいりたいというふうに思っております。

牧原委員 ありがとうございます。

 以上、私がお聞きしたいということは終わりますが、最後に一言述べさせていただきたいと思います。

 私自身、任期つき採用ということで民間から官僚を経験いたしました。政府の皆様がいかに一生懸命働いているかということはよく理解をしております。しかしながら、とかく組織とか地位とかそういうものが優先されてしまう、そのために、日本にとって何がいいのか、あるいは日本の未来にとって何がいいのか、そういう視点を失いがちなのではないかということをたびたび感じます。

 例えば、特別会計や既存の枠組み、こういうものをまず優先して、それの中でやるんだということをやる余りに、今やっていることよりも、日本にとって、あるいは我が国の未来にとってもっとよいことはないのだろうか、そういう問題意識が失われがちなのではないかという実感がございます。

 情報・研修館というのは、これは、単に非公務員化して民の流れをやったという実績を残す、そういうためだけでは、私はいけないんだろうというふうに思っております。

 うまくすれば、既存の人事体系から切り離されて、そして、そこで働く人は、この知的所有権という分野に人生や夢をかけようという専門性やあるいは熱意のある人たちの集団として、日本のこの知的所有権という分野のいわばシンクタンク、すべての政策の発信、そういうものになり得るのではないかというふうに私自身は夢を描いております。

 あるいは、今、日本の知的所有権、著作権と特許等々が分離されているという状況にございます。これも、日本が知的財産立国といいながら、例えば条約交渉に行くと、違う省の人たちがばらばらに、相談することなく出ているということも多々あるわけです。

 情報・研修館という名前には、どこにも知的所有権が著作権だけは別ですよということは書いてありません。ですから、こういう問題を解消することにも資することができるのではないか、私はそういうふうに思っております。

 そして、そういうことが進んでいけば、世界じゅうで知的所有権の分野を目指そうという人がここに視察に訪れたり、あるいは、世界のこの分野の専門家に対してここで働いているということが一種のステータスとなるような、そういう未来、そういう夢、そういうものを描いた上で今後情報・研修館は活動を行ってほしい、そういうふうに思います。そのことが、この一部改正の真のこの国のためになるそういう改正ではないか、私はそのように思っています。

 以上です。

石田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

     ――――◇―――――

石田委員長 次に、内閣提出、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案、民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法及び輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法を廃止する法律案、工業再配置促進法を廃止する法律案の各案を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。二階経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案

 民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法及び輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法を廃止する法律案

 工業再配置促進法を廃止する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

二階国務大臣 初めに、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 我が国が得意とするものつくりの競争力の源泉は、鋳造、プレス加工、メッキ等のものつくりの基盤となる技術について、極めて高度な技術力を持った中小企業が存在することであります。これらの技術力を有する中小企業が消費者のニーズをとらえた大企業等と密接に連携協力して製品開発や生産を行っていることが、今日の我が国産業の発展の源泉であります。

 しかし、近年、国際競争が激しくなったこと等に伴い、従来の固定的な系列取引が大きく変化し、ものつくり中小企業において、製品開発等における大企業との連携協力の関係が弱まり、目指すべき技術開発の方向性を見定めることが困難となりつつあります。このことが中小企業の経営の課題となっています。こうした中で、今後とも我が国経済が健全に成長発展を続けるためには、中小企業のものつくり基盤技術の高度化に向けた取り組みを強力に支援し、我が国経済の強みであるものつくりの国際競争力の徹底的な強化と新たな事業の創出を図ることが喫緊の課題であります。

 同時に、このような我が国の特色を生かしたものつくりの基盤の強化は、アジア諸国等との適切な国際分業体制を実現し、我が国にふさわしい国際貢献の道を開くことにもつながるものと考えております。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、特定のものつくり基盤技術を指定し、各技術につき、その技術を活用して最終製品を製造する大企業等のニーズを十分に整理し、中小企業が目指すべき研究開発の方向性を取りまとめた指針を策定いたします。

 第二に、この指針に基づいて中小企業が作成する研究開発計画を個別に経済産業大臣が認定し、中小企業信用保険法の特例、特許料等の負担軽減措置等の支援措置を講ずることとしております。

 続きまして、民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法及び輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法を廃止する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法及び輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法は、民間事業者の能力を活用しつつ、産業基盤施設の整備等を促進することによって、内需振興による国民経済の健全な発展や輸入拡大等による国際経済交流の促進を図ることを目的として、それぞれ、昭和六十一年及び平成四年に制定されました。

 制定後、今日に至るまでの間に、両法に基づく支援措置により産業基盤施設の整備は着実に進捗し、地域経済における投資拡大や雇用創出がもたらされるとともに、輸入拡大等を通じて国際経済交流の活性化が図られてきており、両法に基づく支援措置の役割はほぼ達成されたと言うことができます。このため、法律に定められた廃止期限である平成十八年五月二十九日をもって両法を廃止することとし、本法律案を提案した次第であります。

 最後に、工業再配置促進法を廃止する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 工業再配置促進法は、過度に工業が集積している地域から工業の集積の程度が低い地域への工場の移転を推進する措置を講ずることにより、工業の再配置を促進し、もって国土の均衡ある発展に資することを目的として、昭和四十七年に制定されました。工業再配置促進法等に基づく工業再配置政策については、例えば、昭和四十五年には約三対二であった移転促進地域と誘導地域の工業出荷額の比率が、平成十二年には約一対三に逆転するなど、これまでに一定の成果を上げてきております。加えて、近年、企業が海外も含めて工場の立地場所を選ぶようになる中、国内で工業の再配置を促進する政策の必要性は低下しております。

 本法律案は、こうした情勢の変化を踏まえ、工業再配置促進法を廃止するものであります。

 以上が、これら法律案の提案理由及びその要旨でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願いを申し上げます。

石田委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 内閣提出、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案審査のため、来る十四日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十四日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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