衆議院

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第7号 平成18年12月6日(水曜日)

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平成十八年十二月六日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 中山 泰秀君

   理事 宮腰 光寛君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 赤羽 一嘉君

      安次富 修君    阿部 俊子君

      赤池 誠章君    赤澤 亮正君

      猪口 邦子君    小此木八郎君

      小野 次郎君    岡部 英明君

      片山さつき君    川条 志嘉君

      近藤三津枝君    清水清一朗君

      篠田 陽介君    田中 良生君

      平  将明君    武田 良太君

      谷川 弥一君    土井 真樹君

      丹羽 秀樹君    野田  毅君

      橋本  岳君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    増原 義剛君

      武藤 容治君    森  英介君

      安井潤一郎君    山本 明彦君

      吉川 貴盛君    大畠 章宏君

      太田 和美君    川端 達夫君

      北神 圭朗君    細野 豪志君

      三谷 光男君    森本 哲生君

      柚木 道義君    鷲尾英一郎君

      高木美智代君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房中心市街地活性化担当室次長)   井上  究君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   舟橋 和幸君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山田  務君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策評価審議官)       中野 雅之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           鳥生  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           原口 和夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       松井 英生君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          鈴木 隆史君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          小島 康壽君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          肥塚 雅博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    石毛 博行君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局技術安全部長)      松本 和良君

   政府参考人

   (国土交通省航空局飛行場部長)          小野 芳清君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月六日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     猪口 邦子君

  佐藤ゆかり君     安井潤一郎君

  牧原 秀樹君     田中 良生君

  川端 達夫君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     阿部 俊子君

  田中 良生君     牧原 秀樹君

  安井潤一郎君     赤澤 亮正君

  森本 哲生君     川端 達夫君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     赤池 誠章君

  赤澤 亮正君     篠田 陽介君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     二階 俊博君

  篠田 陽介君     小野 次郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     安次富 修君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     坂本 剛二君

    ―――――――――――――

十二月五日

 原子力発電等に関する請願(近藤基彦君紹介)(第八八八号)

同月六日

 原子力発電等に関する請願(細田博之君紹介)(第一〇五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

上田委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長近藤駿介君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣府大臣官房中心市街地活性化担当室次長井上究君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長舟橋和幸君、公正取引委員会事務総局審査局長山田務君、金融庁総務企画局参事官山崎穰一君、外務省大臣官房審議官佐渡島志郎君、厚生労働省大臣官房政策評価審議官中野雅之君、厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君、厚生労働省大臣官房審議官白石順一君、厚生労働省労働基準局労災補償部長石井淳子君、厚生労働省職業安定局次長鳥生隆君、農林水産省大臣官房参事官原口和夫君、経済産業省大臣官房商務流通審議官松井英生君、経済産業省経済産業政策局長鈴木隆史君、経済産業省産業技術環境局長小島康壽君、経済産業省商務情報政策局長肥塚雅博君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、中小企業庁長官石毛博行君、国土交通省自動車交通局技術安全部長松本和良君及び国土交通省航空局飛行場部長小野芳清君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井真樹君。

土井(真)委員 おはようございます。自由民主党の土井真樹でございます。

 本委員会での質問は初めてでございますので、ひとつよろしくお願いを申します。

 きょうは、経済産業の基本施策に関する件ということで質問をさせていただきます。

 我が国の経済政策についての課題ということで、今現在、少子高齢化とか人口減少、あるいは原油等エネルギーの制約、そして国際競争の激化など早急に対応する必要がある、そういう課題がある中で、ことし七月に経済成長戦略大綱及びその工程表が政府の方から発表されております。さらに、九月の安倍総理の所信表明演説の中でも、成長なくして日本の将来なしということで、経済成長を非常に重要視しておられます。そして、その中で、革新的なイノベーションによる経済成長戦略を目指すというふうにもおっしゃっております。

 その今の内閣の基本的な考えの中で、経済成長政策として六つの重点政策を掲げておられます。この六つ、成長の起爆剤となる技術革新等のイノベーションの加速化、アジア等海外の活力、ダイナミズムの取り込み、ITとサービス産業の革新、地域中小企業の活性化、人財立国の実現、安全、安心社会の構築など経済社会基盤の整備、資源・エネルギー政策の戦略的展開、この六つを重点項目として挙げられております。

 私も、これらそれぞれについて非常に興味があって、お聞きしたいことがたくさんございますが、限られた時間でございますので、そのうちの一点の重点政策、技術革新等イノベーションの加速化という点についてお聞きしたいと思います。

 我が国は、科学技術創造立国として平成八年から科学技術基本計画というものを策定して、科学技術の創造を今進めておるわけでございますが、第一期においては、平成八年から十二年までは十七兆円、それから、第二期科学技術基本計画では、平成十三年から十七年までに二十四兆円、そして、本年度から第三期に入るんですけれども、これらの研究開発費、非常に多額な資金を投入して毎年増加しているんですけれども、これらの研究開発投資が果たしてきちんと我が国の付加価値を創出してきているのかということについて資料をいただきましたところ、総務省の統計局、科学技術研究調査報告と経産省の工業統計表を比較した表をいただきました。

 この表を見ますと、確かに研究開発費は毎年上がってきている、右肩上がりで毎年増加してきている。確かに量的には力を入れてやってきているわけですが、今度はそれに伴って付加価値がきちんと創出されているかという付加価値の推移を見ますと、ここ十年、十五年ぐらいは、実は横ばいないしは右肩下がりで低下しているわけでございます。

 このような統計を見ますと、果たして研究開発がきちんと我が国の付加価値創造に効果的、戦略的に使われているのかということで、この研究開発の効果というか、質を高めることが重要であるというふうに考えておるんですけれども、今までこの第一期、第二期の基本計画の結果を見て、我が国の研究開発の現状について今現在どう評価されているか、具体的にお聞きしたいと思います。

小島政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの御質問は、イノベーションの原動力である研究開発が現状どう評価されるかということでございますが、まず、御指摘のように、政府研究開発投資はもとより、我が国の研究開発の七割を占める民間部門の研究開発も、全体として質、量ともに活性化していくということが重要でございます。

 今御指摘にありましたように、八〇年代以降、研究開発投資は増加基調で来ておりますけれども、特に九〇年代に入って、そこから創出される付加価値というのは増大しておらない、あるいは日米を比較しても、研究開発投資に対する企業の営業収益というのも必ずしも高くないというのが現状でございます。

 そういう必ずしも付加価値に結びついていない研究開発投資の原因はどこかということを分析しておりますと、一つは、研究開発をしても、その成果を生かす、市場に出す事業戦略が欠如していたり、あるいは市場ニーズを的確に把握した研究開発ができていないという問題、それから、特に最先端の技術では、異分野の技術の融合や、あるいは科学、基礎原理までさかのぼった研究開発が必要であるわけでございますが、そういうものが必ずしもできていない。さらには、研究開発をしても、それを市場に至らしめるところで制度的な障害がある、そういった問題があるかと思われます。

土井(真)委員 今、現状での幾つかの問題点をいろいろお聞きいたしました。

 それぞれ、事業戦略とか市場ニーズとか異分野との交流とか、あわせていろいろな問題があるかと思うんですけれども、いろいろな政策をとっておると思います、産学官等の共同の研究開発等をやっておられると思いますが、これらの現状評価を踏まえて、今後どのような考え方で、この巨額な我が国の研究開発を進めていくお考えなのか、より詳しく大臣にお聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 土井先生御指摘のとおり、安倍内閣のスローガンは、成長なくして日本の未来なし、そして、その成長の具体的なキーワードとして、オープンとイノベーションであります。

 オープンは、日本の経済国境を低くして、成長の中核たるアジアのエネルギー、成長を日本のものとするということでありますし、イノベーションは、技術革新でありますけれども、狭義でいえば技術革新、広義でいえば制度設計等の刷新、社会刷新というふうになるのでありましょうか。その狭義のイノベーションについて、研究開発投資が五カ年二十五兆円というプランができているわけであります。

 先ほど小島局長から、どうも投下予算に見合った成果がいま一つという答弁がありました。これは、市場が要求するものを供給させていない、つまり、研究成果で製品や商品はできたんだけれども、それと市場のニーズがマッチしていないという点もあるという話だったと思います。

 産学連携あるいは産学官連携の中で、技術から商品や製品をつくる、そこまではうまくいっているけれども、市場とつながっていない、つまり、産学官連携と市場をつなげるというマーケティングの発想が足りなかったのではないか。そこへ横ぐしをしっかり刺していくということがイノベーション・スーパーハイウェイ構想の核になっているわけであります。

 同時に、イノベーションというのは、既存技術の延長線上には、えてしてないものであるということがよく指摘をされています。つまり、原理原則、基礎に立ち返ったところから技術革新というのは発出されるものだ、今ある技術の改良型ではイノベーションという飛躍的な展開にはならないということが指摘されますので、基礎、原理原則に立ち返るという発想を持って市場とつなげていく。この研究開発成果を市場化する際に制約があるのであるならば、それを排除していく、除去していくという作業が必要だというふうに思っております。

土井(真)委員 今、大臣のお話の中に、イノベーション・スーパーハイウェイ構想ということで、横ぐしを刺して研究と市場をつなげていくというお話をお聞きしました。

 その研究開発と産学官を連携していく、言葉では連携していくということで今お話ありますけれども、具体的に産学官を連携していく、まずこれを効果的、戦略的に進めていく上で、考えとしてはイノベーション・スーパーハイウェイ構想とあるわけですけれども、具体的にそれを実行していく、やっていく受け皿として、NEDOそして産業技術総合研究所等いろいろ研究開発機関がございますが、これらの機関と今おっしゃられた構想の関係、どういうふうに位置づけて展開されていくのか、そこのところをお聞かせ願えますでしょうか。

小島政府参考人 ただいま大臣が申し上げました、産学官の研究開発に横ぐしを刺して研究と市場の間を結びつけるスーパーハイウェイ構想の担い手として、我が経済産業省とそれからNEDO、産総研があるわけでございますが、それぞれ役割分担をするということでございます。

 まず、経済産業省は、総合的な司令塔として将来的な技術の戦略マップを提示し、また革新的、先導的な研究開発プロジェクトをリードし、また産学連携の仕組みづくりをし、あるいは、先ほど挙げられました市場に至るまでの制度的な諸課題の解決をする、こういったことを行います。

 それから他方、産総研は、研究開発の先導的な推進役として、さまざまな異分野の研究者、四千人以上いる研究所でございますけれども、そこでは、まさしく先導的な研究開発を行うとともに、大学あるいは産総研で行っている基礎研究と企業が行っている製品化研究の橋渡しをする、そういう橋渡し研究をする、あるいはイノベーション人材の育成をする、そういう研究開発の現場での先導役を担う。

 また、NEDOは、産学官連携の推進役として、産学官連携の研究開発プロジェクトに資金を提供したりあるいはプロジェクトフォーメーションをするということで、経済産業省、産総研、NEDOが、それぞれの立場で産学官連携あるいは産産連携のつなぎ役としてイノベーションのハブとしての役割を分担しながら展開していく所存でございます。

土井(真)委員 今、役割分担しながらそれぞれの機関が研究開発を先ほど言った横ぐしを刺した形で進めていくということで、基本的な考え方と展開の仕方は今理解させていただいたんですけれども、同時に、具体的な科学技術の世界ですので、いろいろな分野、具体的な分野で、いろいろな新技術、新製品等の開発研究をしていると思うんです。特に、こういうイノベーションという新しい産業を創出していくような革新的な研究開発、その取り組みについて、今度は具体的に、重点的にでもいいですけれども、どのような分野で行っているか、お聞かせ願えますでしょうか。

小島政府参考人 先ほど出ました本年七月に策定されました経済成長戦略大綱でも、新産業の創出やあるいは異分野の技術を融合する、そして新しい革新的な技術、製品につながる研究開発を重点的に行うということになっております。

 今御質問の具体的な例といたしましては、一つは、例えば手術中にがん細胞の位置や動きを正確に判断しながら最小限の切除手術で治療を行う医療機器を開発するがん対策先進医療技術開発というのがございますが、これは画像処理技術と精密駆動技術等を技術融合させて行う技術開発でございますし、また、自律的に外部環境を認識、判断、学習できる知能化技術を持ったロボットを機械技術と情報処理技術を融合させて行う次世代の知能ロボットの開発ですとか、さらに、新世代の自動車向け電池の開発ですとか、それから、ハイテク製品に不可欠なレアメタルの代替材料をナノテクノロジーによる微細構造制御技術を活用して開発する希少金属代替材料開発、こういった革新的な研究開発プロジェクトを実施する予定でございます。

土井(真)委員 今、革新的研究開発の具体的な幾つかの事例を聞かせていただきました。恐らく、これからも取り組まなきゃいけない分野、新しい分野、新しい製品がまだまだあるかと思います。それらについても、先ほどお話ありましたオープンに、こういう分野がもっと必要だとかいう声をぜひともいろいろ取り入れて、その革新的技術にどんどん取り組んでいっていただきたいというふうに思います。

 そのような研究、国のような機関とかあるいは大会社とか、大会社の持つ研究機関と同時に、我が国は技術を開発する発明家とか技術者というのは非常にたくさんございまして、中小企業とかベンチャー企業とか、そういうようなところにも本当にたくさんいらっしゃいます。私も、仕事柄いろいろな経営者に会ったりしまして、そんな中で本当に新しい商品を一生懸命開発している方々がいらっしゃる。

 中小企業の中には、本当に革新的な研究開発だけでなく、もっと実用的な開発にも取り組んでいらっしゃる。そういう実用化に近い技術もこれから支援していく、技術開発分野として支援していく必要があると思うんですけれども、特に先ほど申し上げた中小企業とかベンチャー企業などの技術というのは、なかなか日の目を見ていくことが少ない、すぐ埋もれてしまう。そういう技術も、中には本当にすばらしいなと思うような技術がございます。

 このようななかなか日の目を見ない有望な技術を発掘、あるいは世に出して製品化していく、そのようなことをしていく政策というものは具体的に何かございますでしょうか。

小島政府参考人 先生御指摘のとおり、イノベーションを促進するためには、幅広い技術を実用化して市場に出していくということが必要でございまして、経済産業省でも、地域やあるいは中小・ベンチャー企業の中に埋もれている非常に有望な技術シーズを広く発掘して、それを実用化につなげて市場に出すという施策を従来から展開しているところでございます。

 例えば、中小・ベンチャー企業が行う技術の実用化を、地方の大学ですとか地方の公設試あるいは産総研と連携することによって、それを製品に結びつけ、それを市場に送り出すという産業クラスター計画というのを五年前から実施しております。平成十三年度から十七年度までの第一期の五年間で、これまで約一千四百億円の予算を投入して、その結果、約四万件の新事業を創出するということが見込まれています。また、NEDOにおいても、そういう中小・ベンチャー企業に対する技術の実用化開発支援というのを行っておりまして、そういう意味で、地域あるいは中小・ベンチャー企業の技術シーズを実用化につなげるということを今後とも推進してまいりたいと思います。

土井(真)委員 よくわかりました。それでは、ぜひともそういう研究開発にはこれからも力を入れていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 以上でございます。きょうはどうもありがとうございました。

上田委員長 次に、川条志嘉君。

川条委員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 今特別国会から、地元大阪の経済の活性化に取り組みたいと、経済産業委員会に加えていただきました。まず、所属委員会の異動に際し御配慮くださいました諸先生方に感謝申し上げます。また、本日は、一般質疑の質問時間をいただきましたことにお礼を申し上げます。

 本日は、六月に取りまとめられました経済成長戦略大綱を柱とし、地元の市民の皆様方や中小企業や団体からの声を大臣や諸先生方、官僚の皆様方にお伝えし、御意見をお伺いしたいと思っております。

 まず最初に、経済成長戦略大綱についてですが、二階前経済産業大臣のときに取りまとめられ、改革の先には明るい未来が見えるという二十一世紀型の成長の姿として、私は大きな期待を寄せております。アジアの産業の中継基地という日本の位置づけをもとに、日本とアジアの成長という国際産業戦略、それから地域活性化戦略を車の両輪として、人、物、金、知恵、わざという横断的な五分野でのイノベーションを核とし、平均実質GDP、年率二・二%の成長を目指すというものであると聞いております。この経済成長戦略大綱で重要なのは、経済産業省と他省庁との多くのコラボレーションの姿が提唱されていることであり、これこそ改革の名に資するものであると思っております。

 小泉内閣から安倍内閣にかわって既に二カ月以上経過しているわけですが、甘利大臣の経済成長戦略大綱に対する思いというものを改めてお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 まず、ようこそ経済産業委員会にお越しをいただきました。心から御活躍を御期待申し上げます。

 安倍内閣のスローガンは、先ほど申し上げましたが、成長なくして日本の未来なしであります。成長を図っていかないと、いろいろな問題が解決できない。しかし、制約要因がたくさんあります。

 まず、人口減少社会は労働力の減少も意味するわけであります。あるいは、国、地方合わせて八百兆円とも言われている巨額の財政赤字、これも放置はできないわけであります。経済成長していかなければこの債務残高の減少はかなわないわけでありますから、こうした中で成長を続けていく。そして、さらに国際競争は激化をしているわけであります。あるいは、格差社会の是正も言われている。いろいろな制約要因や課題に立ち向かう、あるいは解決していくために、経済成長は大事だということであります。

 ことしの七月に政府・与党で経済成長戦略大綱を策定いたしました。私は、この策定に当たって党の政調会長代理をいたしておりまして、この取りまとめ役、責任者の一人でありましたから、政府・与党が一体となってつくり上げたこの成長戦略をしっかり軌道に乗せていく責務を、今度は閣内で担っているわけでございます。

 いろいろな手だてがありますけれども、具体的には、現在税制改正のさなかでありますけれども、減価償却制度の抜本的見直し、これは四十年ぶりの大改正を目指しておるわけであります。こうしたものを通じた成長力の強化、あるいは、地域中小企業の活性化のための政策、六省連携体制、コラボレーションの体制をスタートさせたわけでありますが、こうした我が省並びに関係各省と連携をして、総合的にこの地域対策、中小企業対策を行っていこうというふうにも考えております。新しい改革を大いに前進させて、経済成長、日本の活性化に資するようにしたいと思っております。

川条委員 ありがとうございます。

 経済成長戦略大綱への思い、大臣の思いをしっかりと承りました。本当に頼もしく思い、またこれからも一生懸命、私もその経済成長戦略大綱が実現されるように頑張っていきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いします。

 次に、具体的な地域活性化戦略、広報についてお尋ねいたします。

 我が選挙区は、ものづくりブランドで有名な東大阪市のすぐ隣、大阪市阿倍野区、平野区、東住吉区でございます。産業界、商工会議所などが協力し合って、昨年度から、秋に年に一度、こういった産業交流フェアというものを地元で開催しております。ここでは、平野・東住吉ブランドの普及、確立に努めているわけです。

 地場産業から、油圧機器やレース用バイクの部品とか金型、へら絞りなど、多様多種な業種があって、ものづくりは平野は伝統的に非常に盛んな地域なんですが、悔しいけれども、世の中の認知度は東大阪に比べてかなり低いんです。「モノ作り中小企業三百社」に入っている東大阪の企業の最大のライバル企業が平野区にもあるんですが、こちらの方は「三百社」には入っていないという状況です。

 ところで、額に汗して頑張る中小企業者というのは、意欲の向上と新たな行動を後押ししてもらうことを非常にうれしく思っているという現状があります。「元気なモノ作り中小企業三百社」あるいは「がんばる商店街七十七選」などは、予算など制度上の支援策ではありませんでしたが、大きな勇気を与えた新しいやり方として評価できると私は思います。そして、今後も広く中小事業者の方々に対する応援メッセージをいろいろな方法で継続すべきだと考えております。

 中小事業者に勇気と希望を与えるという観点から、大臣は、中小企業者に対する広報、情報提供戦略をどのように進められるおつもりでしょうか、決意のほどをお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 ただいま川条先生御指摘のとおり、日本全国各地、至るところに中小企業がありますが、その中小企業の中には、目を見張るような技術を持っている、あるいはノウハウを持っている、経営資源があるというところが随分たくさんあります。御自身でも気がついていらっしゃらないところもあるのでありますし、御自身は誇りを持っていらっしゃるけれども、その技術力のすばらしさ、製品力のすばらしさが全国的に認知はされていない、それゆえ、いいんだけれども意外と売れないというようなことはかなりあると思います。

 全国の中小企業者に勇気を与える上からも、あるいは当事者の誇りとモチベーションを高めるという上からも、前大臣の当時に、この四月でありますけれども、「明日の日本を支える元気なモノ作り中小企業三百社」というのを選定いたしました。平野区の中小企業がどうして入っていないのか、ちょっと私も知りませんけれども、前任者によく聞いていただきたいんですが、私の選挙区のもありませんでした。隣の旧選挙区の会社、私の友達の会社が一社ありました。それは確かにすばらしい技術を持っている会社であります。

 そして、三百社を選定いたしましたら、三百社の方からいろいろ反応がありました。選んでもらったおかげで資金調達する際に金融機関の見る目が違ってきたよ、そういう面で何か楽になったとか、取引先の評価がさらに上がったよとか、周りから敬意を払われるようになったとか、いい反応がいっぱい来ていますし、何よりも従業員のモチベーションが上がったことはとてもありがたいことだという反応がありました。これは、期待はしていましたけれども、期待を超える反応で、二階大臣、よくやっていただいたというふうに思っております。

 さらに、御指摘のとおり、商店街に関しましても、「がんばる商店街七十七選」というのを取りまとめたわけであります。選定された商店街の方々がやはり自信と意欲を高める、特に、その頑張っている中小企業も、頑張っている商店街も、後継者がかなり意欲を示してくれているというところがあるんですけれども、商店街なども、後を継いでいく二世の方が非常に勇気を持ったとか、いろいろいい反応が返ってきていまして、次なる飛躍のためのエネルギーになったというふうに考えております。

 これからも、この種のプレーアップといいますか、PRといいますか、これはいろいろと策を考えて、よし、あの中に次はうちも入るぞというエネルギーに、選に漏れた方もなっていただけるように、この種の広報宣伝に手を尽くしていきたいというふうに思っております。

川条委員 ありがとうございました。

 さて、ここからは経済成長戦略大綱の中のイノベーションについて、各論をお聞きしたいと思います。

 まず、がん対策について伺います。

 私は厚生労働委員会にも所属しておりまして、六月にがん対策基本法が成立しました。がんは一に予防、二に早期診断、早期治療、こう言われております。十一月号の経済産業ジャーナルで、二階前大臣のときですが、がん対策に貢献する医療機器に関する懇談会が開かれたとありました。医療機器関連三十二・九億円のがん対策予算の獲得に取り組んでおられるとのことで、内訳は、インテリジェント手術機器研究開発プロジェクト八億円、分子イメージング機器研究開発プロジェクト十三・二億円、次世代DDS型悪性腫瘍治療システム十一・七億円、こういうことだと私はこれを読んで知りました。

 これに加えて、私は、がん対策のさらなる推進のためには、治験や薬事法審査の迅速化など、開発された先進的な医療機器が医療現場に迅速に普及されていく必要があると思います。そして、そのための経産省の取り組みを教えていただきたい。それから、薬事審査の迅速化のための取り組みについても厚生労働省にお伺いしたいと思います。

肥塚政府参考人 今、先生御指摘のとおり、がん対策の推進のためには、早期発見、早期治療を可能にするための先進的な医療機器が医療現場に迅速に普及していくことが重要だというふうに考えております。

 これも御指摘のとおりで、医療機器を製造、販売する際に薬事法の承認を受ける必要がございますけれども、新規性の高い医療機器の場合には、審査の前例がないということから、開発した企業が審査の前に審査内容を見通し準備するということが容易ではございません。したがいまして、結果として審査に時間を要する要因の一つになっているということでございます。

 このため、私どもでは、厚生労働省と協力しまして、平成十七年度から、審査の対象となる項目、それは例えば安全性とか有効性とか品質でございますけれども、そういう項目を明らかにするためのガイドラインの策定を進めています。これは、開発の効率化と同時に、審査の迅速化に資するというためでございますけれども、今年度は、手術システム、人工心臓システムなど、五つの具体的な機器について、工学、医学などの専門家による委員会において検討を進めていただいております。

 私どもとしては、これからも厚生労働省と協力して、ガイドラインを策定する対象機器を拡大するといったようなことを初めとしまして、先進的な医療機器を迅速に現場に届けるための努力を続けていきたいというふうに考えております。

黒川政府参考人 御説明申し上げます。

 厚生労働省といたしましては、有効で安全な医療機器をより早く医療現場に届けるため、承認審査に当たる医薬品医療機器総合機構と連携いたしまして、審査体制の整備など、審査の迅速化のための取り組みを行ってきております。

 具体的には、審査担当者の増員等の審査体制の整備、申請企業を対象とした講習会の実施、医薬品医療機器総合機構における申請企業からの事前相談の実施などによりまして、審査期間の短縮に取り組んできているところでございます。

 ちなみに、新医療機器の審査側審査期間の中央値については、平成十六年度の十二・七カ月から、平成十七年度は七・七カ月に短縮したところでございます。

 さらに、平成十七年度より、最先端の技術を用いた医療機器の開発を促進し、あわせて承認審査の円滑化を図るため、経済産業省と連携いたしまして、評価の留意点などを取りまとめた次世代医療機器評価指標ガイドラインの作成を進めているところでございます。

 今後とも、これらの対応を通じて安全性確保を図りつつ、医療機器の審査の迅速化を進めてまいりたいと考えております。

川条委員 ありがとうございました。

 ところで、製造業の就業者数は、九二年の約千六百万人を頭に年々減少を続けて、二〇〇五年、千百万人になりました。これは、景気の悪化に加えて、消費社会の中でものづくりが暮らしから遠ざかって敬遠される傾向ができ上がってきたことも無関係ではないと思われます。けれども、産業力強化のためには、ものづくり人材の質的、量的な充実が不可欠だと思うんです。そして、ものづくり人材育成のためには、小中学校という早い段階で、地域、企業、学校が連携して取り組んでいくことが必要だと思います。

 例えば、先ほど述べました平野区の産業交流フェアでは、小中学校とものづくり企業とのコラボレーションが行われておりました。小中学生からペン立てのアイデアをデッサンで募集しまして、地元の木材加工業者や金属加工業者がそのアイデアをもとに製品をつくり上げて、産業フェアで展示、表彰を行っておりました。

 これらの製造現場の見学や職場体験も行っていて、こういうことこそ、未来のものづくり人材育成に大きな貢献をすることが予想されます。このような学校教育におけるものづくりの取り組みについて、規模と概況を教えていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 ものづくりの後継者を育成するためには、先生おっしゃるとおり、早い段階におきましてものづくりのおもしろみを伝え、若者のものづくりへの関心を高める教育が非常に重要であるというふうに考えております。

 経済産業省におきましては、小中学校におきまして、ものづくりのおもしろさを体系的に体験、理解できるようにするため、民間主体の経験やアイデアを生かしました地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクトというものを推進しているところでございます。現在、全国二十九プロジェクト、約三百校、約三万五千人の生徒を対象に、産学連携によりますキャリア教育が展開されるように支援を行っているところでございます。このような支援が多様な職業観の熟成につながっていくというふうに考えております。

 また、地元企業の技術者等を外部講師としまして小学校に派遣をいたしまして、ものづくりに密着した科学技術への関心を高める理科授業づくりへの支援を行うために、理科実験教育プロジェクトというものも検討しているところでございます。

 経済産業省といたしましては、関係省庁と引き続き連携を図りつつ、先生おっしゃるとおり、小中学生のものづくりへの関心を高める取り組みを今後とも推進していきたいというふうに考えております。

川条委員 ありがとうございました。

 最後に、我が国の地域活性化と観光立国構想の観点からお尋ねしたいと思います。

 我が国の主要な空港ターミナルビルでは、現在、開発途上国一村一品キャンペーンの一環として、開発途上国の工芸品等の紹介を行っていると聞いております。地域活性化の観点から、地場産業などを紹介するスペースをこれと同様に空港ターミナルビルに設けることもアイデアとして考えられますが、このためには、国土交通省さんの御支援、御協力が不可欠でございます。この取り組みに向けての国土交通省さんのスタンスをお伺いしたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、経済産業省から依頼を受けまして、ことしの春以降、羽田空港、伊丹空港など七空港で開発途上国の一村一品キャンペーンに積極的に協力させていただいております。

 そもそも空港は地域の顔と我々も認識しております。地場産業の紹介による地域活性化や観光振興などの観点から、開発途上国一村一品キャンペーンと同様の取り組みを行うということは非常に意義があると我々も考えております。

 空港ターミナルビル、御承知のとおり、民間事業者によって運営されております。また、物理的なスペースの制約などもございますけれども、関係省庁などから具体的な協力依頼がございましたら、国土交通省としても、空港ターミナルビル事業者などに対しまして協力を依頼するなど、積極的に対応してまいりたいと考えております。

川条委員 ありがとうございました。

 国土交通省さんの御支援、御協力がいただけるということで、非常に心強く思っております。

 質疑時間が終了いたしましたという紙が回ってまいりました。ここで経済産業省さんの御支援、御協力もお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

上田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 質問に入る前に、委員長に申し上げたい、聞いていただきたい点がございます。これは最近の当委員会所属議員の規律についてであります。

 十一月二十九日の経済産業委員会、与党提出、そして我々民主党も提出いたしましたが、官製談合防止法案の採決におきまして、自民党所属の片山さつき委員、そして佐藤ゆかり委員が、新聞報道によりますと、無断で欠席をし、自民党内で先ごろ処分を受けたと報じられております。

 先ほど開かれました理事懇談会の席上で、自民党の理事の方に事の次第の説明を求めましたところ、委員の差しかえ手続等は適正に行われており、委員会運営上は支障はなかったという御説明を受けました。したがいまして、その意味では、正しい意味での無断欠席ではないというふうな認識ではおりますが、さはさりながら、党のこととはいえ、自民党内で処分を受けたということであります。

 いずれにしろ、前回の委員会でも、残念ながら、委員の定足数が足らずに審議が中断されるということもございました。これは何も党云々ということでなく、我々民主党委員も心に期さなければならない点ではございますが、こうした委員の規律について、委員会全体として、やはり私も理事の一人として緊張感欠ける部分もあったのかもしれないと反省しているところでございますが、委員長より注意を喚起していただきたいと思うわけですが、委員長、いかがでしょうか。

上田委員長 今、近藤委員から御指摘がございました点についてですが、近藤委員の方からもお話がありましたように、委員の交代の手続につきましては、他の場合と同様、通常のもので行われていたものというふうに認識をいたしております。

 また、今御指摘いただいた定足数の問題については、先日の委員会でそうした事態が起きたということは事実でありまして、審議の充実のためにも、引き続き委員の皆様方にも御出席方、御協力をお願いしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

近藤(洋)委員 片山委員におきましてはさきの内閣で経済産業政務官もお務めになられた、また、佐藤委員においてもこの委員会でたびたび質問をされ、質疑をされた委員であります。手続は踏んだとはいえ、このような処分をされ、この委員会を離れられたということは大変残念であるということは申し上げたいと思います。

 質問に移ります。

 本日は、通商関係を中心にお伺いしたいと思いますが、日本とオーストラリアのEPA交渉について伺いたいと思います。

 日豪間のEPA交渉につきましては、今月四日までに両国政府間の共同研究報告書がまとめられ、そして昨日、我が国において関係閣僚会議が開催され、意見が交わされたと伺っております。日豪間のEPAをめぐっては、経済連携交渉については、その規模の大きさに加えて、後ほどお伺いしますが、農業分野を中心に、従来の交渉と比べて大変障害も大きいと私も認識しております。この交渉が最近になって非常に急ピッチで進んでおるという印象を受けるわけですが、その背景には、エネルギー、とりわけ資源確保に関する国際関係の変化というのもあろうかと思っております。

 そこで、まず最初に経済産業大臣に、日本とオーストラリアでEPA、いわゆるFTA、EPAを締結するメリット、その意義について、エネルギー戦略の観点を中心にお伺いしたいのです。

甘利国務大臣 日本と豪州とのEPA交渉でありますけれども、日豪間のEPAの意義、先生御指摘のとおり、資源、エネルギーの安定供給の確保、それから、今後の東アジア地域における政治や経済関係の面で、我が国にとっては戦略的パートナーとなり得るという重要な相手国であります。

 今、資源、エネルギーの観点からというお話がありました。日本が輸入している鉄鉱石であるとか石炭の六割前後はオーストラリアからであります。近年、天然ガスの供給が将来にわたって安定的に確保できるかということで、いろいろと不安定要因がございます。これからその面でもオーストラリアは開発が期待をされているというところでありますから、農業問題等センシティブ品目という取り扱い、これは慎重に行われなければならないことは重々承知をしておりますが、その上で、資源の安定供給の点では極めて重要なパートナーになり得るというふうに思っております。

近藤(洋)委員 私も甘利大臣とその点については認識を同じくするものでございます。資源確保についての国家主義というかナショナリズムが非常に高まる中で、やはりオーストラリアという国は日本と同じような価値観を持てる国であろう、言葉が適当かどうかは別にして、共通言語が話せる資源国であろう、こう思っているわけであります。その意味では同じ認識に立つわけであります。

 その日豪間のEPA交渉でありますけれども、十三日から始まる東アジア首脳会議に向けて、報道によりますと、日豪両国間での首脳会議で交渉開始が合意されるというふうに承っておりますが、では、具体的にいつから交渉を始めて、そしていつまでにこの交渉を締結するというスケジュールで臨まれるのか、そのスケジュールについて、外務省、政務官がお見えですので、伺いたいと思います。

松島大臣政務官 まず初めに、私、当委員会は私にとりまして古巣でございまして、一回生当時からずっと所属させていただき、さらに近藤委員には、いつも非常に的を射たすばらしい質問ぶりに感動しておりました。仲のいい委員会だったと認識しております。近藤委員もFTAについてしっかりと推進していくべきだということを主張されていること、敬服しております。

 今の御質問につきましてですが、十三日から始まります東アジア首脳会議、いわゆるASEANプラス6の会議において、日本から安倍総理が出かけられる、そしてまた、もちろんオーストラリアもハワード首相が来られる、その場で交渉開始への合意をというところまでおっしゃったんですけれども、そこまではまだ公には言っていない段階で、委員が先に進めておっしゃった次第でございます。きのうの朝、関係閣僚会議がございまして、その後、塩崎官房長官が発表いたしましたのは、この閣僚会議の結果を安倍総理と相談して、この東アジア・サミットで、オーストラリアも来る機会に議論ができないかということも含めて相談するという段階でございます。

 そして、もちろん、期待としては、これから先は安倍総理の意向によるものでございますが、無事にフィリピンで日豪首脳会談がなされた場合に、来年から交渉を開始する。ただ、来年の早いうちにというだけで、いつスタートが、キックオフがいつということはまだすぐ決められるものではなく、そしてまた、交渉のおしりの方に当たりましては、これはまさに近藤委員が言われておりましたように、農業という問題を抱えている、いわゆるセンシティブ品目、小麦とか牛肉、砂糖、乳製品、そういったものがございますので、これについては、双方、非常に厳しいハードな交渉となっていくと思いますので、交渉のスケジュール、おしりを切っている問題ではございません。

近藤(洋)委員 松島政務官におかれましては、議員になられる前は朝日新聞のジャーナリストであられましたし、私も実は日経時代に同じ通産記者クラブで、大先輩で活躍をされておる、尊敬しているわけでありますが、やはり当局になられると、奥歯に物が挟まったような、ただ、精いっぱい御答弁いただいたと思います。

 要するに、お話とすると、来年の早いうちに交渉は始めるけれども、おしりについては決まっていません、こういうことですね。ですから、そんたくするに、一月、二月はいろいろ立て込んでいるでしょうから、少なくとも三月ぐらいから始まるのかなというふうに、その笑顔で、大体三月ぐらいから交渉が始まるんだろう、こう思うわけであります。

 いずれにしろ、この交渉が始まるということで、その土台となる共同研究報告書、これについて、これまで政府間で非常に厳しい交渉が行われてきた。そこで、もう一度、外務省、政務官にお伺いしたいんですが、この共同研究報告書、交渉の土台となる報告書でありますが、これが四日には固まったということであるわけで、それで閣僚会議が行われたわけですけれども、なぜ公表されていないのか。非常に大事な文書だと思うんです。これが関係閣僚会議まで行われたこの時点で公表されていない理由はなぜか、そしていつ公表されるのか。

 具体的には、やはり両国の首脳会談が行われる日ないしはその前、当日には公表されるべきものだと私は思うわけですが、なぜ公表されないのか、そして公表するならばいつ公表されるのか、お答えいただきたい。

松島大臣政務官 おっしゃるとおり、つくられたせっかくの研究の結果は速やかに公表されるのが理想だと思います。ところが、日本の側はいつ公表してもいいんですけれども、オーストラリアの方が、オーストラリアの外交貿易省がまだハワード首相にうまく話をしていない、その結果、勝手にしゃべってもらっては困る、そういう段階でございます。もちろん、日豪首脳会談がなされる可能性がある今度の東アジア・サミットに総理が出発するまでには、ましてやその会合が開かれる前には、当然それぞれの国において公表されるべきものだと考えております。

 そしてまた、この交渉は、もう委員も御承知のように、昨年の十一月にスタートして、ことしまとまってきた。その過程におきまして、もちろん最初はいろいろな相違がありましたけれども、日本側といたしましては、先ほど出たような、特に農業分野のいわゆるセンシティブな、交渉の難しい分野については、随分日本側からオーストラリアに対して事情を説明し、委員も御地元がお米どころで、またおいしいお肉を供給していらっしゃるところでございますが、日本各地の生産者のそういういろいろな思いも相手側に伝えて、それを盛り込んだ報告書になっていると私は認識しております。

 その過程を通じて、オーストラリアの方も日本にはそういう分野があるということを認識し、その中で、例えば交渉といっても突っぱねるだけでなくて、交渉を始めた、最初はきちっと広い窓口で交渉を始めるけれども、品目ごとにはいわゆる再協議とかあるいは除外とか、そういうことも最終的には起こり得るようなことが期待できるような形で日本は頑張ってこの共同研究を進めて、その内容に盛り込んでいる次第でございます。

近藤(洋)委員 今、政務官の方から、首脳会議の前にはやはり公表されるべきものだという御発言がございました。全くそうでありまして、私は何も交渉事の細かな文書を逐一公表しろと言うつもりは全くないんです。ただ、この文書だけは極めて重要でありまして、この文書をやはりきちんと公表して、そして本来であれば、こういった文書に基づいて、経済産業委員会なら経済産業委員会、農林水産委員会なら農林水産委員会、国会においても議論すべきである。できることであれば、そういった外交交渉が行われた後どのようなことを発言されたのかというのを含めて、やはり国会において議論すべきである。

 我々国会は、例えば甘利大臣が外遊される、交渉される、私も野党の理事の役割をいただいておりますが、何も国会に何でもかんでも縛りつけようということは考えておりません。しかしながら、終わった後は、きっちりその結果について報告を求め、やはり議論をしなきゃいけない。こういった国会終盤の時期でもございますから、本来ならこの文書をもとに審議をしたかったな、こう思うわけであります。大変関心の深い分野でありますから。

 そこで、農林副大臣に大変お忙しいところを来ていただいておりますが、先ほど御答弁にも、甘利大臣からも政務官からもお話があったように、農林水産品については大変影響が甚大であると。これは農林水産省が試算をしております。日豪の経済連携は大変に大きなメリットがありますが、一方で、農林水産省が試算した数字は、極めて衝撃的な数字であります。

 すなわち、関税を撤廃するとどれだけ影響があるかということであります。これは本当かなと思うんですが、撤廃をしますと、小麦はほぼ九九%生産額が減少する、これは壊滅ということでございますね、そして牛肉については五六%減少する、こういう数字を出しておりますが、これは大変大きな数字なんです。改めて関税撤廃の影響とこの数字を確認しておきたいんですが、副大臣、お答えをいただけますか。

山本(拓)副大臣 今ほど委員御指摘のとおり、農水省といたしまして、EPAが実行に移された場合の被害というか影響というものは、先般取りまとめまして公表したところでございます。それを正確に申し上げますと、一定の前提のもとでありますが、小麦、砂糖、乳製品、牛肉といわゆる四品目に限定をいたした場合に、小麦は九九%、砂糖は一〇〇%、乳製品は四四%、牛肉は五六%、それぞれ国内生産が減少するという結果になっております。

近藤(洋)委員 大変衝撃的な数字なわけですね。さらに言えば、農林水産省の御説明によると、関連産業も含むともっと大変なことになる、こういう数字を、これは政府が出しているわけですね。

 その上でお伺いしたいのですが、それだけの影響力があるという片っ方の政府の部局が言う中で、この非公表の共同研究報告書の内容の一部について、政府側の文章なり報道を類推しますと、報告書には、交渉はあらゆる品目と課題を取り上げるというふうに書きながらも、先ほど政務官の御答弁に一部ありましたけれども、段階的な削減ではなく、除外や再協議も含め、すべての選択肢があると記載されておりますというふうに報道されています。これは事実かどうかというのをこの場で確認したいということ。

 さらに、事実とすると、この意味するところは、農業分野については除外するという意味なのか。これは、あらゆる分野を取り上げますよと書いているけれども、農業分野も例外じゃないというふうに言いながらも、片っ方で、除外や再協議も含め、すべての選択肢があると。これは非常にわかりにくいんですね。これは、要するに農業分野を除外するという意味なのかどうなのか、また、農業分野以外でも除外する項目があるのかどうか。まず外務省にお伺いしたいんです。

松島大臣政務官 私も先ほど触れましたけれども、除外とか継続協議というのは最初からあり得るものではございません。交渉は包括的に、さらにWTOの全体の枠組みにも適合する形で、すべてについて真剣にそれぞれの主張をぶつけ合います。でも、どこかにまとまらない点があったからといって、十年、二十年引き延ばすという問題ではなくて、万が一のときには、そういう穴が、ほころびがあることもあり得るということだけであって、それは、最初から除外や継続協議等そういうことを書き込んだものとは全く質が異なると思っております。

 もう一つ、農業以外に、私、片仮名を使うのは嫌いなんですけれども、いわゆるセンシティブ品目、交渉困難なというのは、工業製品の中でも一部、これは例えばの話でございますけれども、今までにもそういう分野とされてきたそういう品目には、皮革関連などは、これまでのいろいろな国との交渉の中にあってきたのは事実でございます。これをオーストラリアに当てはめるかどうかは、直接には言及を今できることではございませんが。

近藤(洋)委員 同じ質問を農林副大臣にお伺いしたいんですが、農業分野を外すという意思表明ではないんですか、ないしは、政府はこの土俵の上でどういう交渉に臨むんですか。

山本(拓)副大臣 御案内のとおり、共同研究の取りまとめの過程で、オーストラリアと日本の間で再協議、除外というものを、要するにだめなものはだめよ、お互いそれは認めるよという合意はいたしております。

 私どもといたしまして、先ほど申し上げました四品目については確かに影響が大きいですが、影響のないものについてはウエルカムのところもあります。

 例えばの話でありますが、今エタノール関係の農産物でしたら、何ぼ輸入してもウエルカムということでもございますし、やはり政府として六百万キロの目標数値を出しておりますので、オーストラリアであるならば、収穫量の高いサトウキビというものならば、日本では到底賄えませんので、先ほど委員御指摘のように、エネルギー問題という観点からすれば、今度、農業分野で自然環境のもとでの輸入項目として、私どもとして可能性はあると。

 いわゆる農業、農産物そのものを全部除外するというのではなしに、国内で影響のない新たなものがあれば別に構わぬのではないかなという選択肢も含めて、いわゆる今回のオーストラリアとの交渉に当たっては全部を除外するという立場ではございません。

近藤(洋)委員 ちょっと副大臣、御答弁はいただけなかったんですけれども、要は、この四分野については、日本国政府は除外すべきだということでこれから臨むんですか、こういうことを伺っているんです。

山本(拓)副大臣 だから、先ほども申し上げましたように、日本にだめなものはだめということは、オーストラリア政府にも認めてくださいねという事前の共同の取りまとめの中では合意を得ておりますので、当然そのように理解していただいて結構だと思っております。

近藤(洋)委員 ニュアンスがやはり若干違うような気がするんですね。

 私は、これは本当は農林委員会でやるべきものを、ただ通商のマターなのであえて経済産業委員会で取り上げさせていただいておりますけれども。私は、日本という国は自由貿易の果実を得ている国ですから、FTAは基本的に推進すべきだ、こういう立場に立ちます。

 一方、ただ、ちょっと矛盾を感じるのは、小泉政権というのは、今は安倍政権になりましたけれども、農業は輸出競争力がある産業だというふうに総理も施政方針演説で言っているわけですよね、輸出しますと。小泉総理も言っているし、安倍さんもおっしゃっている。輸出プロジェクトということをおっしゃっていますよね。その一方で、この農業分野についてはやはり守る、四分野については守る。要するに、関税障壁はやはりあった方がいいというのが農林水産省の今のお立場。守るべきものは守る、こうおっしゃるわけですよね。そこはちょっと、非常にちぐはぐ感を感じるんですよね。

 私たちというか民主党は、むしろ、WTOで認められているその直接支払いのような形で、農家の所得をちゃんと補償して、その上で関税の障壁は下げて、関税の障壁が仮に下がったとしても、農家の所得はちゃんと守る。こういう形にすることで、そうした自由貿易の果実を得る。これはWTOにおいて認められている政策でありますから、そういう形にすることで日本の工業製品の輸出も守ることができる、こういうことを主張させていただいております。

 そこのちぐはぐ感が、小泉政権及び安倍政権は、輸出だと片っ方でおだてておきながら、片っ方で守って、どっちがどっちか農家の方はわからないんじゃないか、こう思うんですね。だから、非常にわかりにくい。片っ方で、自由貿易は重要で、土台は両方できると言いながらも、不透明な形でどんどんどんどん進めていくということで、農家の方に対して非常に不透明感を高めるだけじゃないんですか。いかがですか、副大臣。

山本(拓)副大臣 基本的に、輸出する場合に、例えば日本に四百七十万ヘクタールの農地がありますが、国民が三食みんな食ってくれていたら問題ないんですけれども、需要がなくなりましたので、その分を、例えば、日本国民一億二千万でありますが、世界に比べれば、六十億の人口の中で日本と同じ所得層の者が約五億九千万おるわけであります。そういう中で、日本の食という評価を得て、全世界で二万五千レストランが繁盛している、そこにニーズがあるという中で、そこの需要拡大を図ろうということでの輸出拡大をいたしているところであります。

 現に、もう水産物で北海道のホタテなんかは、同じ日本の価格の中で、アメリカとか中国でも、同じ中国でもベンツを乗り回している人も結構おりますので、その人たちも結構買っていただいているということで、北朝鮮は除きますけれども、それ以外の所得の高いところにはどんどん買っていただこうという戦略のもとで需要拡大を行っているところであります。

 そしてもう一つは、直接所得補償の話でありますが、直接払いについては、御案内のとおり、日本におきましても、中山間地とか、今度の新たなる担い手育成において一部品目別横断でやりますけれども、民主党さんがおっしゃっているような今の現状のままで全部やろうといたしますと、大変な金額になりますし、非常に効率が悪く、それが単年度ならとにかく、永続的に考えますと、今の財政再建を始めて、国民の理解は到底得られないという我々の判断から、今の現状の姿でやらせていただいているということであります。

近藤(洋)委員 この辺は見解の相違ですから、また別の機会にと思うわけでありますが、いずれにしろ、私は、こういう不透明な形で交渉をずるずる進めることが、結果として、日本の農業なり、また将来有望な産業である農業を衰退させる道につながりかねないという懸念を持っているということだけは申し上げたいと思います。

 時間が迫ってまいりましたので、ちょっと最後、税制改正についてお伺いしたいんですが、今回の税制改正、とりあえず法人税関連については、減価償却制度を見直して全額を償却するという制度に改めると聞いております。これ自体は私は賛成すべきものでありますが、これによる減税額ですね、国税、地方税、それぞれ大体どれぐらいになるのかという効果を、数字を、大臣、お伺いしたいんです。

甘利国務大臣 減価償却制度の抜本改正、四十年ぶりにやりますが、これは国際的なイコールフィッティング、競争相手と同じようにするために必要だと思っております。

 経済産業省等六省で要望しております減価償却制度の見直し案の減収見込み額でありますけれども、当省の行った試算でありますと、初年度において、国税約四千八百億円、地方税約二千五百億、合計七千三百億と見込んでおります。ただし、国、地方の法人課税については、損金になる総額というのは変わらないわけでありますから、償却期間全体を見れば減税とはならないということでございます。

近藤(洋)委員 一点指摘をしたいのは、やはりこれは地方税も結構大きいんですね。私の地元の米沢市でも数億円規模になるというふうに試算しているんですが、国税のことはいざ知らず、地方税については、トータルではそうなわけですが、単年度的にはきいてくる。これだけ地方の税源がなくなっている時期に、非常にこれはボディーブローのようにきいてくるわけです。制度として私は全額償却賛成なんですが、ただ、地方における影響もこれは考えなきゃいけないのではないか、この点だけ指摘をしておきたい。

 あと、大臣、時間が迫っているのでお伺いしたいんですが、法人所得税制について、先ごろ経団連の御手洗会長が、来年度以降の課題としながらも、四〇%近くある法人税を一〇%ぐらい下げた方がいいんじゃないか、こういう御発言をしております。こういった法人所得課税の引き下げについて、大臣の御見解をお伺いしたいんです。

甘利国務大臣 まず、最初、前段の御質問である地方税に関することですが、なかなかここは要求をしておりますが苦戦をしておりまして、その点に関しては、近藤先生にとっては御要求どおりの流れに沿っているのではないかと思っています。

 ただ、実は、古い設備をいつまでも置いておくと、結局、古い設備からは税金は余り上がってこないんですね。常に新しいものに、つまり課税評価額が高いものが常に入っていった方が地方もいいですよ、そういうものがどんどんふえていく、課税対象がふえていく、しかも課税価額が高いものがいつも入ってくるという方が、実は税金は入るんですよということを訴えたいわけであります。

 それから、後段の御質問であります法人実効税率の引き下げ。

 国際競争の中で、日本とほぼ同等なのはドイツとアメリカと言われています。ほかの国はもっと低い。アジア諸国はもっとはるかに低い。ドイツも、たしかもう決まっているはずですが、一〇%ポイント法人税を下げます。ですから、法人税、実効税率が下がった方がいいか悪いかと言われれば、当然、所管大臣として低い方がいいに決まっているんであります。

 それで、どれくらい低い方がいいか。競争相手と戦え得る条件を確保してほしいというところが思いであります。もちろん中小企業への配慮、あるいは従業員への利益の還元等々、消費喚起に資するようなものも日ごろの私からの発言で主張はしておりますが、法人税についてだけ申し上げれば、そういうことでございます。

近藤(洋)委員 時間が来たので、ここは指摘だけにしたいと思いますが、大臣も後半おっしゃっていただきましたが、むしろ法人税全体の課税を引き下げる必要はないと私は思っているんです、全体についてはですね。それは、その対象となるのはやはり大企業だけだということ、そして、法人税の引き下げが設備投資には直結しないというのは、経済学的にもある意味、証明されている部分もございます。

 むしろ、今、給料を払えば課税所得が下がるわけですから、法人税を払わなくていいわけでありまして、今急に大企業を中心に景気がよくなったから、税を払いたくないということでの、そういう思いはあるとは言いませんけれども、法人税引き下げ論というのは簡単にくみしない方がいい。むしろ、いかに給与を払わせるか、そして所得を引き上げるかということを考える方が必要であって、その辺についてはちょっと私どもは考え方が違う。

 今、答弁者からもそうだという御答弁ありましたけれども、ぜひ民主党に来ていただいて、私どもこういった研究をこれから進めてまいりますから、法人税を全部が全部下げればいいというのは、これは、ある意味で景気回復にとっても必ずプラスではないといいますか、日本経済の底力を上げないということだけを指摘申し上げまして、時間が来ましたので、質問を終えたいと思います。

上田委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 当経済産業委員会においては初質問でございます。尊敬する先輩委員の後で大変また緊張もしておりますが、きょう、こういった機会をいただきましたことを、まず冒頭本当に感謝を申し上げたいと思います。そして、委員長、大臣、副大臣、政務官初め、本日初質問ということでありますが、どうぞ皆さんよろしくお願いをいたします。

 まず、私は、エネルギー問題について、幾つか具体的にテーマを絞って前半お伺いしたいと思うんです。

 先月、十一月十五、十六日のAPECの閣僚会議においても、複数の国の首脳からエネルギー問題の重要性を指摘する発言があって、代替エネルギーや、あるいは新技術の開発の重要性、省エネルギー、クリーンエネルギーの研究開発の必要について御発言があったと伺っておりますし、また、甘利経産大臣からも、エネルギー安全保障で、石油高騰も踏まえ、省エネ技術あるいは知見の提供、さらには石油代替エネルギーの開発、普及、促進等、我が国の具体的取り組みを紹介されたとも伺っております。

 安倍総理からも、そういった点について、エネルギー安全保障は大変重要な問題で、国内エネルギー源を持たない我が国としては、エネルギー効率の向上、環境保全等において世界でも有数の進んだ技術を有しており、各国、地域と積極的に協力していく用意がある旨を述べられたと。

 こういった背景を踏まえながら、以下、具体的な質問に移らせていただきたいと思います。

 まず、温暖化対策といたしまして、クリーンエネルギー車の開発、普及支援についてお伺いをいたします。

 資料をきょう皆様にお配りさせていただいておりまして、一ページ目あるいは二ページ目等をごらんいただければと思うんですが、クリーンエネルギー車としては、自動車メーカーで電気自動車やハイブリッド車、天然ガス自動車、ディーゼル代替LPG自動車、メタノール自動車等を製造開発もされておるわけですが、これらの取り組みは、当然、地球温暖化対策にもつながることであり、政府としても積極的に支援すべきだと考えます。

 大臣にぜひお伺いをしたいんですが、資料の二ページ目に、電気自動車に対する普及促進策、クリーンエネルギー自動車への導入促進対策補助金であったり、さらには低公害車に係る特例措置等、こちらに説明してある資料をつけております。参考として、一枚目のペーパーですが、これは私が六月六日に衆議院の決算行政監視委員会で質問をさせていただいた資料でございます。こちらも参考にしていただければと思うんですが。

 今後、こうしたクリーンエネルギー車の開発支援や普及啓発などに政府が努めるべきであると今申し上げましたが、中でも、平成十八年度末に適用期限切れと伺っております自動車取得税の軽減措置の延長、これをさらに延長することによって、さらなる開発支援、さらには普及啓発に努めるべきだと私は考えますし、ちなみに、自動車税の方の軽減措置は、既に昨年延長されているというふうにも伺っております。

 そこで、ちょっとこの一の資料に若干私の質疑、これは前経産大臣である二階大臣に質問した際のやりとりで、下線のところをちょっと皆さんお目通しいただければと思うんですが、二階大臣は、こういった税制、さらには技術開発、こういった問題については、経産省のほかの予算を削ってでもこのことに投入して前向きに取り組むというようなことを明確に答弁されておるわけですね。

 さらに、ちょっときょう資料には間に合いませんでしたが、昨日の日経新聞の朝刊、一面トップには、「車の燃費二割改善義務 世界で最も基準厳しく 二〇一五年度期限に」ということで、「経産・国交省方針」というような報道もなされておるわけです。

 こういったことを踏まえて大臣にぜひお答えいただきたいと思いますが、こういったクリーンエネルギー車の開発支援、普及啓発のための自動車取得税の軽減措置延長について、ぜひ大臣の明確なる御決意をお伺いいたしたいと思います。

甘利国務大臣 輸送機器の環境対応、いわゆるグリーン化については、京都議定書の履行の上からも非常に大事になっているわけであります。

 今の御指摘の電気自動車あるいはハイブリッド自動車、天然ガス自動車、これらの低公害車の普及は、今、二十八万台にまだとどまっておりまして、我が国の自動車の総保有台数が七千五百万台でありますから、これに占める割合はもう一%にも満たないという状況であります。

 税制改正要望というのは我が省と税当局との攻防戦になるわけでありますが、かなり厳しい要求を突きつけられております。しかしながら、現状を見ますと、国策上、まだ相当後押しをしていかなければならないのではないか。ハイブリッド車につきましても、恐らく、そうでない同種の車との価格差というのは数十万はあるんじゃないかと思います。数十万をユーザーに環境貢献というだけで乗り越えてくれと言うにはちょっとインセンティブが弱いかなと思っておりますから、もう少し普及するまでは、こうした制度は存続すべきであるというふうに思っておりまして、軽減措置の延長を強く要望してまいっている今最中でございます。

    〔委員長退席、赤羽委員長代理着席〕

柚木委員 大臣から、こうした延長の重要性については十分御認識をいただいているというような御答弁をいただいたと思います。ぜひ形にしていただく取り組みをお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 今、クリーンエネルギー車の税制について申し上げましたが、具体的なそういった技術の中身について、今注目されているものとして、パーム油を自動車燃料に変えていく技術、こういったものがあるわけでございますが、資料三をごらんいただければと思います。

 これは、上下ありますので、下の方をごらんいただきますと、バイオディーゼル燃料の普及形態ということで、原料の中に、バイオマスであったり、菜種であったり、パーム等とあるわけですが、このパーム油にかかわる自動車燃料化する技術、これが大変今注目を集めているところでございまして、現在、国内自動車メーカーと石油精製会社が協力をして、マレーシアでとれるパームヤシの油であるパーム油、これを自動車ディーゼル燃料の代替燃料として開発をしていて、大変注目を集めている。聞くところによると、今月、NHKの番組でも特集番組が放映されるというふうに聞いております。

 こういったバイオディーゼル燃料は、ここに精製過程がありますが、軽油に混合する際、三つの方法があるわけです。一つはそのまま投入する方法、ここには書いてありませんが。その他、ここに書いてありますメタノールを加えてできたFAMEを軽油にまぜる方法であったり、そして水素を加えた水素化分解による燃料を軽油にまぜる方法、この二段目の方でございます。最後に今御説明を申し上げました水素化分解技術、これは、この資料、左下に特徴、あるいは、右へ理想的導入形態とありますが、ごらんいただきますとおわかりになられると思いますが、酸化安定性であったりCO2低減量などでも特にすぐれておるわけでございます。

 先ほど、冒頭、APECでの甘利大臣やあるいは安倍総理の発言を御紹介もさせていただきましたが、こういった水素化分解というこの新技術、この新技術を国の内外に広げていくことは、CO2削減に取り組む我が国の姿勢をまさに世界に示すと同時に、実際の削減効果も大いに期待できるものと考えますが、経産省の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

望月政府参考人 お答えいたします。

 パーム油は、今先生御指摘のとおり、粘度が若干高いために、自動車用燃料として利用するためには、もともと化学処理を行う必要がございます。水素化分解技術は、この化学処理を行って、ディーゼル燃料を製造するための最新の技術ということで注目されているわけでございますし、おっしゃったように、石油会社等において基礎的な研究が進められているものであります。

 この技術によって製造されましたバイオディーゼル燃料というものは、従来の製造方法と異なりまして、酸化することがないということなど、すぐれた特性を持つものでありまして、経済産業省といたしましても、有望な技術の一つと強く認識をしているところでございます。

 こうしたことから、現在、国からの補助金も活用しまして、独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構、NEDOにおきまして、マレーシアにおけるこの技術を活用したバイオディーゼル燃料製造実証事業というものを日本の石油会社に委託いたしまして、事前調査を実施しているところでございます。

 今後、こうした事前調査の結果を踏まえまして、当該技術の海外での普及の支援等々について検討していきたいということを前向きに考えているところでございます。

柚木委員 望月長官、ありがとうございます。今後、調査の上、普及に前向きに努めていくということで、実際に取り組んでいる国内の自動車メーカーであったり、あるいは石油精製会社も大変力強い御答弁をいただけたと思います。

 今、パーム油について御質問を申し上げたんですが、一方、資料の次の四ページ目をごらんいただければと思うんですが、確かに、そういったバイオ燃料はCO2削減に一定の効果が認められるわけです。ただ、このサルファーフリーのデータを見ていただくと、軽油の石油精製にさらに力を入れて、硫黄分ゼロの軽油、つまりこのサルファーフリーのことですね、こちらの方も同時に普及させディーゼル車を普及したらという意見も一方ではあるというふうに承知をしております。

 実際に、ヨーロッパなどでは、ディーゼル車が環境によいという考えも根強くあるということで普及もしているようですが、今後、国内におけるディーゼル自動車の普及促進に関して、これについて経産省としての見解をお伺いしたいと思います。

高木大臣政務官 ディーゼル乗用車にはガソリン乗用車と比べまして二割程度燃費がいいという大きな利点がありますが、排ガス性能に劣るということから、日本の乗用車市場から今ほぼ撤退をしているということもございます。新車販売で〇・一%未満というのが近年です。

 一方、最近開発されましたクリーンディーゼル技術によりまして、排ガスのクリーン化と低燃費の両立が実現したことから、日本の乗用車市場におきましてもクリーンディーゼル乗用車の普及への期待が高まっております。

 したがいまして、クリーンディーゼル乗用車は、自動車の燃費向上や運輸部門の二酸化炭素排出削減に有効であるというただいまの委員御指摘のとおり、経済産業省といたしましては、その普及拡大に向けました検討を今後行っていく所存でございます。必要であると思っております。

柚木委員 ありがとうございます。大変前向きな御答弁をいただきまして、こちらの方も大変重要な取り組みだと思いますので、先ほどのパーム油の燃料開発同様に、先ほどいただきました御答弁のとおり、ぜひとも前向きな取り組みをお願いしたいと思います。

 続きまして、資料を先ほどの三ページ目にちょっとお戻りいただければと思います。

 先ほど下の方の説明をしたわけですが、今度は上側の方をごらんいただきたいと思います。

 バイオエタノールの方の普及形態でございまして、この普及形態、ごらんいただきますと、原料にサトウキビ、トウモロコシ、そして草・木材のセルロースというふうにあるわけですが、実は、サトウキビ、トウモロコシ、こういった食材を原料とするものは、例えばブラジルのサトウキビであったり、アメリカのトウモロコシなども、いずれも農民政策的な側面が強いことに加えまして、食料との競合という課題も出てくるわけでございます。しかし、この三番目のセルロースのような廃材利用であればそういった問題は起こってこないということで、こうしたセルロースエタノールの技術開発でございますね、このコスト低減のための研究補助などを政府として積極的に推進していくべきと私は考えるわけでございますが、これについて経産省としての見解をお聞かせいただけますでしょうか。

    〔赤羽委員長代理退席、委員長着席〕

高木大臣政務官 輸送用バイオエタノール燃料の導入につきましては、運輸部門の燃料多様化及び地球温暖化対策の観点から有効であると考えます。中でも、廃木材そして間伐材等の木質系原料から製造されるバイオエタノールの利用は、未利用資源を活用したり、ただいま御指摘ありましたとおり、食料問題との競合を回避するという観点から、非常に重要であると考えております。

 しかしながら、この木質系バイオエタノールは、現時点では、製造コストが高いといった課題がございます。このため、製造コスト削減のための技術開発や実証事業を重点的に推進しております。具体的には、委員の御地元でいらっしゃるかと思いますが、岡山県の真庭市におきまして、製材所から発生する廃材を原料として、遺伝子組み換えを行った酵母を利用して効率的にバイオエタノールを製造する技術の実証事業をただいま支援しております。

 今後とも、関係各省の連携のもと、木質系バイオエタノールの利用促進に積極的に取り組んでまいります。私、一個人といたしましても、そうしたセルロース系のバイオエタノール燃料、大変大事であると認識をしている一人でございます。

柚木委員 ありがとうございます。

 大変に心のこもった御答弁、前向きな御答弁もいただきましてありがとうございます。私の地元の真庭市の例、三井造船さんの取り組みでありますが、そういった点にまで丁寧に触れていただきまして本当にありがとうございます。ぜひともそういった取り組み、お願いをしたいと思います。

 続きまして、資料の六ページをごらんいただきたいと思います。

 少し質問の内容がかわりますが、これは資料の方には石油精製高度機能融合技術開発と大変長い専門的な言葉が書いてあるわけですが、いわゆるコンビナートルネッサンス事業というものでございまして、このRING3事業の概要について説明がなされております。

 御案内のとおり、全国のコンビナートの競争力の強化策としてこのRING事業が始まったわけですが、ここにもございますように、この右下、私の地元の水島コンビナートも含めて、設備の高度統合運営が進められておりまして、実は私も実際に何度か、石油精製あるいは石化企業の設備の視察にお伺いをさせていただきました。

 今回、RING3がまだ始まったばかりではあるんですが、やはりこの四年間の事業の間に今後のこのRING事業をさらに進化させていくことは大変重要だと考えますし、そこでお伺いしたいのが、これは経産省単体での取り組みを超えた、例えば自治体であったり、さらには他の省庁との連携というものも大変に重要になってくると考えます。

 例えば、千葉県の事例なども私も伺っておりますし、さらには港湾整備、さらには陸路、高速道とのアクセス等、そういったインフラ整備などを考える場合には国交省との連携というのも大変重要であると思われますが、こうした自治体あるいは他の省庁との連携の視点について、経産省としてはどのようにお考えであるか、御答弁いただけますでしょうか。

望月政府参考人 御指摘のコンビナートの高度統合事業、RING事業でございますけれども、コンビナートの競争力強化とかあるいは環境負荷の低減という観点から、石油精製と石油化学などの関係企業の連携をしていくということでございますし、それは具体的には、副生物の、副生して発生してまいりますさまざまなガスなどについての相互の有効利用、あるいは熱などにつきましての有効利用を図っていくということでございまして、基本的には共同技術開発を通じまして推進していく取り組みでございます。

 こうした取り組みを進めてまいるにつきましては、企業間の連携、具体的な事業の連携が行われますものですから、防災とか環境とか保安などの規制当局との連携もまた必要になってくるということでございます。

 このため、私ども経済産業省といたしましても、コンビナートを構成する各社と地方行政も含めました行政との連携強化に率先して取り組んでいるところでございます。例えば、ことしの七月には、水島コンビナートなどにおきましても、各企業に加えまして、私どもの出先の局、あるいは岡山県倉敷市の産業政策や環境保安などを担当する幹部で構成いたします懇談会を開催いたしまして、この先行きについての具体的な方策についての協議をしているところでございます。

 こういった取り組みをさらに一層取り進めますことによりまして、日本における重要なコンビナートについて、国際的にも通用する競争力を持ったコンビナートとしてこれからも生きていくという体制をつくっていきたいというふうに考えているところでございます。

柚木委員 ありがとうございます。

 地元のことまで触れていただきまして、大変丁寧な御答弁をいただいたわけですが、今後は、まさにアジア等の国際競争の中で、RINGエリア間の連携ぐらいまで視野に入れた大変幅広い取り組みというものが必要になってこようかと思いますし、こういった取り組みに企業側からの評価も大変高いと伺っておりまして、経産省としてのさらなる他省庁、自治体との連携、ぜひともお願いをして、次の質問に入りたいと思います。

 今、どちらかといえばハードの整備について御質問をさせていただいたわけですが、当然、同時に、ソフトといいますか、人の整備、これについても重要であることは御承知のとおりでございます。〇七年問題と言われる問題があります。今後五年間で、団塊の世代の方々が、七百万人ぐらいが徐々に退職をされていく、そういった中で、ものづくり現場における技能継承、これは大変喫緊の課題と思われるわけでございます。

 そうした中、経産省の進める産学連携製造中核人材育成事業、これは大変意欲的な取り組みだと私自身も承知をしております。実は、私の地元の水島コンビナートエリアでもそういった取り組みが進められており、経産省さんがまとめられたこのパンフレットの中にも御紹介をいただいておりますが、そういった取り組みが少しでも、もう〇七年問題ですから、来年ですから、前倒しの事業化ということが必要ではないかということを実際に私も現場の方から伺っておるわけでございます。

 こうした産学連携製造中核人材育成事業について、経済産業省としての取り組み状況や今後の見通しなどについて、これはぜひ大臣から御答弁をいただきたいと思います。

甘利国務大臣 ものづくりというのは日本の競争力の源泉であります。そこには、新技術の開発ももちろん大切な要素ではありますけれども、委員御指摘のとおり、現場の技術者、ものづくりを支えてきた技術者の技能をどう次世代に伝承していくかということは同様に大切なことであります。

 二〇〇七年問題あるいは団塊の世代退職問題が、日本の産業競争力やGDPの向上にどうマイナス要因に働くかということが随分危惧されていますけれども、こういう人たちの持っている優秀な技能あるいはノウハウを後継者にきちんと伝承させていくということを官民挙げて取り組んでいく、産学官挙げて取り組んでいくということが、御指摘のように極めて大事であります。

 我が省といたしましては、これまでに全国で四十六事業、この種の、ものづくり現場の中核となる人材を育成するカリキュラムの開発を支援する、これを全国で四十六事業実施をしているわけであります。

 御指摘のとおり、水島地域では、コンビナートのオペレーターであるとか安全管理等を行う技術人材を育成するために、岡山大学やあるいは地域の中小企業等が連携をして、平成十七年度からカリキュラム開発を三カ年計画で実施中であります。この事業は、地元からも極めて大きな期待が寄せられておりまして、開発されたカリキュラムを用いた地元企業対象の研修を早期に開始してほしいという要請が、御指摘のようにございます。これを踏まえまして、予定を一年前倒しして研修を開講できるよう、カリキュラム開発を加速化しているところでございます。さらに、周辺のコンビナート地域におきましても、当該事業で開発をされた人材育成カリキュラムが活用されるよう普及を図ってまいるつもりでございます。

 今後とも、全国の事業の進捗状況を見つつ、それぞれのニーズを踏まえまして、我が国の製造業を支える中核人材の育成をきめ細かく支援してまいります。

柚木委員 大臣から、一年前倒ししての取り組みを行っていく、加速化していくという御答弁をいただきまして、本当に心強い思いが今しておるわけでございます。

 この水島の事業というのは、先ほどRINGプロジェクトの質問をいたしましたが、こういった成功が下地になって、大変ある意味では先進的な取り組みが今なされようとしているということで、しかも〇七年問題が来年から始まる中で、二十年度からの事業化を十九年度に前倒ししての実施ということで御答弁をいただきましたから、ぜひこうした流れを全国的に加速していただきますことをお願い申し上げまして、次の質問に入りたいと思います。

 今、産学連携の人材育成についてお伺いしたわけですが、今度は産官学連携の支援における特許の申請にかかわる手数料減免についてお伺いをしたいと思います。

 先ほど、冒頭も、APECの中での甘利大臣の御発言を紹介もさせていただきましたが、この中で大臣は、知財分野への取り組み強化にもたしか触れられていらっしゃったと思います。現在、国立大学法人による特許の申請などに係る特許料の減免が、期限が切れてしまうわけでございますが、これは、特許料がさまざま含めると数十万円かかる現状であり、何とか減免を継続してもらえないか、そういった知財担当者の声を私も伺っております。

 そこで、経済産業省として、こうした知財を推進する立場から、何らかの具体的な支援策はないものかということをお伺いしたいと思うんですが、御答弁をお願いいたします。

高木大臣政務官 平成十二年より、大学の研究成果が円滑に産業界へ移転されるよう、産業技術力強化法に基づきまして、大学に対して、三年目までの特許料及び審査請求料、三年目は特許料のみでございますが、審査請求料を半額とする減額措置が講じられております。

 御指摘の国立大学の免除措置につきましては、平成十六年の国立大学の独立行政法人化に伴い、特許料等の支払いが新たに必要となるという特別な事情にかんがみて、本年度までの経過措置として講じられているものでございます。今後、この経過措置が終了した後、国立大学法人も、やはりこれは、私立大学や公立大学と同様に、産業技術力強化法に基づく半額の減額措置の適用を受けることが可能でございます。

 経済産業省としましては、経過措置終了後の措置について周知徹底を図るとともに、実態に即した具体的支援策につきましては、今後十分検討を進めてまいりたいと考えております。

柚木委員 具体的な支援策について今御答弁をいただきました。周知徹底についても今触れていただきました。ぜひとも、そういった取り組みを今後も推進をお願いしたいと思います。

 続きまして、ちょっと質問ががらっと変わるんですが、内閣府の方にお伺いをしたいと思います。まちづくり三法改正に伴っての中心市街地活性化計画についての質問でございます。

 実は、合併市町村については、旧市町村ごとにそういった計画策定ができないかという要望、私の地元である倉敷市もそうなんですが、三つの市が一つになって、今駅前の開発というのが当然進められているんですが、旧市の市街地の活性化計画、これもそれぞれのいわゆる旧市が策定できないかということを今検討しているというふうな話も伺っているわけです。

 そこで、別に倉敷の事例がということではないんですが、全国にこういった事例は多くあると思います。合併後の市町村につき、合併以前の旧市町村域についても中心市街地計画が策定できないものかということをお伺いしたいと思うんですが、御答弁いただけますでしょうか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 この六月にまちづくり三法を改正していただきまして、新しい枠組みのもとで新たな中心市街地活性化に取り組んでいるところでございますが、この九月末に、それにかかわります基本計画をつくるための基本方針、基本指針というものを公表させていただきました。その中で、一市町村内において複数の中心市街地をつくれないものかという先生の御指摘の点について明確にお答えをさせていただいております。

 御指摘のとおり、合併等の過去の経緯、歴史的な経緯がある場合、このような地域もしくは政令都市等の相当程度大きな都市規模を有している地域、ここについては、地域の実情により中心市街地とすべき地域を複数考えることができるというふうに方針を定めさせていただいております。

 当然、この場合に、通常の一市町村一基本計画というものの認定基準が変わるわけではございませんが、こういうものを満たしていただければ、そういう分割した中心市街地、複数の中心市街地ということも実行できるように制度を運営させていただいております。

柚木委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただきましたように、幾つかのそういった要件を満たせばということではございましたが、複数の地域についても策定可能であるという御答弁をいただいたと思います。これは、まさに合併後、いわゆる旧市が、その一番中心以外の旧市が、商店街がシャッター通りになってしまったり、いろいろな問題があって、何とかそれを地域の皆さんが一体となって活性化させようという取り組みがあるわけでございまして、今の御答弁、そういった意味では、そういった皆さんに大変勇気づけられる御答弁であったと思います。ぜひとも、そういった取り組みをお願いしておいて、次の質問に入りたいと思います。

 実は、またがらっと変わって、外国人労働力の問題について、私、先日の外務委員会の方でも質問をさせていただいたわけでございます。実は、実際にこの委員会でも議論なされておりますEPAの中で、日本とフィリピンとの間での経済協定が結ばれることで、外国人看護師やあるいは外国人介護福祉士が我が国で働くことになるというふうなことを承知しているわけですが、これは、労働力受け入れというのが、ただ受け入れればいいというわけではなくて、当然そこには、我々日本人と同じように、例えば社会保険の問題であったり、さらには、外国人の方でありますから、住居の問題、教育の問題、そういった環境の整備等、受け皿整備が大変重要になってくるというふうに考えております。

 そこで、このフィリピンとの経済協定の中でのことについてお伺いするわけですが、こういった外国人労働者の、今回は看護師と介護福祉士で、二年間で四百と六百で計千人の方の受け入れを予定しているというふうに聞いておりますが、こういった方々への医療保険や雇用保険について、これは厚生労働省になろうかと思いますが、加入に向けての取り組みをどういった形で行っていくのか、それについて御答弁をいただけますでしょうか。

白石政府参考人 まず、医療保険のお尋ねにつきましてお答え申し上げます。

 御案内のように、本邦において就労いたします外国人労働者、日本人と同様でございまして、健康保険の適用事業所において常用的使用関係がある場合には被保険者でございますので、国籍にかかわりなく健康保険が適用ということでございます。これが原則でございまして、外国人労働者についてやはり適用漏れがないようにということに関しましては、届け出の指導というのを事業主に対して行っておりますが、特に外国人労働者の方が多い事業所につきまして重点的な調査をしております。それから、外国人労働者向けのパンフレットを七カ国語分つくっておりまして、これを事業主に配って啓発に努めているということであります。

 今回の協定に基づきまして、フィリピン国籍の看護師、介護福祉士の方が入られるわけでございますが、これも全く同様に適用の対象ということになるわけでございます。

柚木委員 この問題というのは、当然、今申し上げましたフィリピンの方から入ってこられる看護師、介護福祉士だけの問題ではないわけであります。現状として起こっているさまざまな問題、今御答弁いただきましたように、適用漏れがないように、来年の通常国会では雇用対策法の改正も予定をされているというふうに聞いておりますし、今回、このフィリピンからの受け入れの受け皿になる国際厚生事業団、JICWELSだったと思いますが、ここがそういった機能を担っていくのかなというふうに私としては認識をしているわけですが、そういったチェックというものもしっかりと行っていただきながら、今の取り組みをぜひともお願いをしてまいりたいと思います。

 続きまして、同じく海外から来られる方にとっては大変重要な問題であります年金の問題ですが、これは、もともといらっしゃった国とそして我が国に来てから、こういったそれぞれの国での二重加入の問題があると承知をしております。

 こういった問題を防ぐために、例えば、今回フィリピンから二年間で千人を予定しているわけですが、ドイツやイギリス、それからアメリカもたしかそうだったと思いますが、そういった社会保障協定を結ぶ考えが、これは外務省になるんでしょうか、おありかどうかについて御答弁をいただけますでしょうか。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたドイツ、英国、米国、韓国、既に締結を終わっております。それから、先般来国会の方でも、フランス、ベルギー、カナダと、新たに署名について御承認をいただいております。今御指摘のフィリピンでございますけれども、実は、先方から、協定締結に向けて協議ができないだろうかというお話はいただいております。

 私ども、まだこのほかに幾つか、詳しく申し上げますと、いろいろと締結の交渉の下準備をしているような国、チェコ、スペインだとか、あるいは現に交渉中の国もございます、オーストラリアとオランダでございますけれども。それから、作業部会を設けて、いろいろなこれからの研究その他をどうしようかというようなことを研究しているところもございます。フィリピンにつきましては、そのほかにイタリアだとかアイルランドとか、幾つかの国からもお申し込みを受けているというグループに属しております。

 今後、そういうところから交渉を逐次始めていくということでございますが、きょうこの時点で、では具体的にいついつから始めましょうというところまではまだちょっと到達をしておりません。

 ちなみに、委員の御参考までに申し上げますと、私ども、一応ある程度の基準を立てておりまして、お互いの国の社会保障制度のもとでの保険料の負担の大きさだとか、あるいは私どもの目から見れば、むしろ邦人の方々の数だとか企業の進出の状況、あるいは企業界からの具体的な御要望が多いかどうかとか、あるいは二国間関係、それから社会保障の制度がいろいろと違いますと、技術的に難しくなってまいります。そういうことをにらみながら次のことを決めていくということでございますが、いずれにしても、フィリピンの方からも、やりませんかというお話はいただいておりますので、そこを踏まえながら具体的には日程を、今後の、将来の課題になりますけれども、決めていく、こういうことになろうかと存じます。

柚木委員 それぞれの国々の事例を踏まえながら、そして今幾つかの基準についてお触れいただきましたが、ぜひ相互というか互恵的な、お互いがやはり、来ていただいた方にも、そしてこちらから行った方に対しても、そういった二重加入の問題についてはきっちりと取り組んでいくということでお願いしたいと思います。

 時間がなくなってまいりましたので、質問もそろそろ切り上げたいと思うんですが、先ほど人材の活用について大臣からも大変前向きなお答えをいただいたわけですが、これは外国の方々の活用についても同様であるというふうに私は考えるわけでございます。

 そこで、今フィリピンからの受け入れのことをお尋ねしたんですが、フィリピンはもとより、例えばアジア地域からのそういった留学生を、産学連携を活用して、人材活用の観点から支援する、そういった具体的なスキームといいますか考えがあるかどうか、これを経産省の方からお答えをいただきたいと思います。

甘利国務大臣 アジア人財資金といいますか、仮称でありますけれども、人材交流を進めるということで予算要求をしているところでありますが、従来から留学生を受け入れるという枠、制度はもちろんありますが、アジアの優秀な人材はどこへ向かうかというと、今アメリカにみんな行っちゃうんですね。

 日本は、いろいろな人材を受け入れる窓口はもちろんあけますけれども、基本的に高付加価値経済を目指さないと日本は競争に勝てないんです、人件費が高いと。高いことは私はいいことだと思いますよ、生活レベルを高くすることですから。これからももっと賃金が上がっていかなきゃいけないのであります。ただ、そのためには競争に勝たなきゃいけませんから、高付加価値経済にしていかなきゃならない。優秀な人材を日本に引っ張ってくる。

 そして、なぜ日本から逃げているかというと、留学した後の受け皿がきちんとできていないんですね。それをちゃんと、日本に優秀な人材を引っ張ってきて、もちろん、その人材が母国と日本とのかけ橋になっていただくということも大事ですし、それから日本の成長に資する人材になってもらうということも大事なのでありまして、その受け皿たる仕組みを連携でできるようにしなきゃならない、これがアジア人財資金の目指すところだというふうに考えております。

柚木委員 今、受け皿整備が大変重要だという御答弁をいただきました。外国人労働の受け入れの問題というのは、当然、ただただ企業のコストダウンや競争力強化になればよいという問題ではないということは、先ほどの大臣の御答弁の意味にも含まれていたと思います。今後の日本人全体の労働形態あるいは産業形態にも直結する問題でありまして、今回のEPA、これを二国間の信頼関係構築から、将来的には、例えば東アジア共同体といったような広範な連携までつなげていく視点も大変重要だと思います。

 そのためにも、ぜひ、日本に来た外国の方が、日本に来てよかったと思っていただけるようなそういった施策、つまり受け皿整備、大臣おっしゃっていただきました、そういった視点を忘れることのない、これは各省庁間の連携も含めてお願いをして、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

上田委員長 次に、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。

 きょうもまた四十分、一般質疑で質問の時間をいただきました。心から感謝を申し上げます。

 きょうは、まず最初に、エネルギー政策、中でも資源確保についての政府の取り組みについてお尋ねをさせていただきます。

 サハリン1、サハリン2、アザデガン、資源確保のための三大プロジェクトと言われたものがここに来て大きく後退をいたしました。一方で、新・国家エネルギー戦略の中で打ち出されている、原油については、自主開発比率を二〇三〇年までに取引量ベースで四〇%とすることを目指す、あるいは天然ガスについても自主開発比率を大幅に高めるという明確な目標がございます。前回の一般質疑の中で、近藤委員とのやりとりの中で甘利大臣が、資源確保が大事だ、国が積極的にコミットしていくことが重要だと率直な発言をされました。

 そこで、改めてお聞きをいたします。この目標に向けての政府の具体的な取り組みについてお伺いをしたいと思います。

 国の資源開発へのコミットあるいは施策を今後具体的にどのようにしていくのか、目標の実現に向けて進んでいくのかをお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 御案内のとおり、新・国家エネルギー戦略におきまして、二〇三〇年を目途に石油の自主開発比率を四〇パーに引き上げていく、現在は一五パーであります。この目標に向かってありとあらゆる努力を続けるということになります。

 もちろん、資源国との二国間のいろいろなレベルの交渉もありますし、いわゆる資源外交でありますが、そうした問題に加えて、GCCとのFTAに見られますように、あるいは先ほど来御質問がありました、オーストラリアとのEPA交渉に向けての環境整備ということの大きなメリットは、資源の安定供給ということにもあるわけでございます。そうした政府挙げての取り組み、官民協力しての取り組みによって、資源小国たる日本の資源の安定供給に資するような手を打っていく。

 あわせて、いわゆる機構と呼んでおりますけれども、正確に言いますと石油天然ガス・金属鉱物資源機構というものでありますが、ここがプロジェクトに民間と共同出資をするわけであります。現在の出資比率は五〇%、五〇対五〇で出資をしますが、この出資比率を七五パーまで引き上げていこうということを関係省庁と折衝中でございます。そして、なおかつ、加えて、民間の主導に過度に介入をしていかないように、ふやす分につきましては議決権のない出資分ということで、権限は従来どおり一対一ということで、量だけふやしていってリスク対応をしていこうというような施策を今関係省庁と協議中でございます。

 そうした総合的な取り組みによりまして、新・国家エネルギー戦略に掲げております自主開発比率四〇%を目指していきたいと思っております。

三谷委員 今大臣がおっしゃられた、もちろんEPA、あるいは先般もお答えがございました開発企業への政府の出資比率を五〇%から七〇%に高めていく、こういうことは非常に大事なことだと思います。あるいはODAの戦略的な活用等々もあろうかと思います。

 ただ、もう一突っ込み、ここはさせていただきたいんですけれども、前回のまさに近藤委員との一般質疑の中で、国が積極的にコミットしていくことが大事だ、石油公団廃止の経緯のことまで言及をされまして、大臣はお話しになられました。私も全く同感のところがございます。確かに石油公団はめちゃくちゃな経営で、出直し的な改革は必要だったと思いますけれども、資源開発にやはり国が積極的にかかわるという政策までは放棄をすべきではなかったというふうに思います。

 しかし、あの石油公団の廃止、大臣おっしゃられましたけれども、まあ、廃止といっても正確には資源機構の形で残りましたけれども、廃止とあえて申し上げます。あの廃止の流れで、確かに抗しがたい流れではあったと思います。だけれども、この資源確保ということにつきましては、今もそうですけれども、あくまで民間企業の主導のもとで国がサポートをする、これが基本的な姿勢で、この基本的な姿勢は変わっていないというふうに思います。

 また片方で、先ほども申し上げましたけれども、サハリン1、サハリン2、アザデガンにつきましては、これも大臣、先般わざわざ説明をされました。決して終わったわけではありませんけれども、大きく後退したことは否めないことだと思います。また、その後退した事情もわかります。

 また、こうした三大プロジェクト以外にも有望な日本絡みの開発プロジェクトはございます。カスピ海周辺のACGでありますとかカシャガン、あるいは天然ガスではオーストラリアのイクシス等がございます。また、ある意味、これらは既にもう枠組みがある程度決まっている、ある程度でき上がったものと言ってもいいかもしれません。むしろ、私が申し上げたいのは、そこから先の話がまた大事なのではなかろうかということを思います。

 資源開発の種はまだまだたくさんございまして、今考えられているものでも、リビアもございますし、あるいはアフリカの至るところでもございます。あるいはカナダもございます。特に東シベリア、東シベリアは、まだ確かなことこそわかりませんけれども、多分、きっとサハリンどころではない、先々我が国の資源確保にとっては大変重要な開発プロジェクトになるというふうに思います。

 一方で、これも先般大臣が御指摘をされました、資源開発の、ロシアは今はプーチンのもとで政府管理体制を非常に強めております。ならば、なおのこと、例えばこの東シベリアの開発について、その交渉においても、またリスクをとるということにおいても国がかなり前面に出ていかなければならないんじゃないかというふうに思います。二十年先、三十年先を見越して、我が国のエネルギー戦略の、とりわけこの資源確保戦略をきちんと描いて、布石をきちんと打たなければならないと思いますし、また大臣もそのように思われているというふうに思います。

 ここは一つの転換点だというふうに思います。また、まさに来年度に向けまして、資源確保のための政府の支援をどうしていくのか、その指針を資源確保指針としてお取りまとめになられようとしておられます。大臣の、まさに先般も大変率直な、国が積極的にコミットしなきゃいけないというお話もございました。しっかりとこの資源確保の指針、いわば戦略と言ってもいいかもしれません。どういう指針を描こうとされているのか、一端でも結構でございます、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

甘利国務大臣 日本国政府自身が事業主体として資源開発を行っていくというスキームではありませんが、民間が出ようとすることを前後左右から支えていくという政策が大事だと思いますし、日本政府がきちんとその事業にかんでいるということが相手政府に伝わることによってその事業の信頼性が増し、推進力が増していく。でありますから、資源機構の出資であるとかJBICの融資であるとか、あるいはNEXIの保険であるとか、民間事業者が出ようとしていくことに一緒にいわばパートナーとして国がしっかり支えていく、そういう姿勢が大事だと思います。

 あわせて、資源外交というのはいかに安定的にその関係を推移させていくかだと思います。今、資源開発で非常に厳しい局面に立っているのは、いろいろ政治的あるいは安全保障的なリスクを抱えてなかなか進まないということもありますし、あるいはその国自身が、最近の傾向でありますけれども、資源の国家管理、囲い込みということを始めております。そこに対してどう国が当初の契約をきちんと履行させるか、後ろ盾になるか。資源外交としての外交交渉もあろうかと思います。そういった二国間関係やあるいはEPA等を通じた経済関係を構築することによって、安定的な開発と供給が図られるように、これからも全力を上げていきたいというふうに思っております。

三谷委員 ありがとうございました。

 では、質問の中身を変えます。続きまして、これは私、大変興味、関心がございまして、どうしても聞かせていただきたい高速増殖炉、FBRサイクルの実用化に向けた取り組みについてお尋ねをいたします。

 FBRサイクルは、長期的なエネルギーの安定供給を考える上で、私は大変大事、また大事だというふうに位置づけられてもおります。クリーンな原子力という意味でも大変大事な技術だというふうに思います。時間はかかりますけれども、何とか実現をしたい、そういう重要な技術だというふうに考えています。

 にもかかわらず、そのまま申し上げますけれども、ちょっとここまで置き去りにされていた感を私は持っております。片方で、核燃料サイクル、プルサーマルの推進においては非常に強力な取り組みがなされてきたのに比べまして、もちろん実用化が見えている見えていないということはありますけれども、ここまで置き去りにされてきた、そういう感がございます。やっとことし、実用化に向けて踏み出されたなというふうに思います。

 まず先に、本格的なFBRサイクル実用化に向けての取り組みがどうしてこんなに遅くなったのか、教えていただきたいと思いますし、また、「もんじゅ」の再開に向けた今の状況を教えていただきたいと思います。

望月政府参考人 お答えいたします。

 高速増殖炉の開発は、核燃料サイクルの究極の姿につながるものだろうと思います。端的に申し上げれば、最後に残ります廃棄物を極小化していくという観点からも、高速増殖炉はこんなに有益なものはないということで一生懸命やってきたわけでございます。

 さまざまな経緯があって、逆風の中、中断せざるを得なかった部分等々ございましたけれども、今日、例えば米国も高速増殖炉の開発に復帰をしたいと。その間、技術の中断があったということで、むしろ米国自身がやろうとするときも、諸外国、具体的に言えば日本とフランスしかないと思いますけれども、ところに協力を求めてきているという観点からも、日本がこの逆風の中で、大変つらい、細々とではありますけれども、技術開発を続けてきたという経緯の実証があろうかと思います。

 そういった中で、「もんじゅ」につきましては、現在、過去の設計上の問題等々につきましての事故、トラブルを乗り越えた上での改良作業を今はやっているところでございまして、二〇〇八年には試運転をし、運転を再開していこうということへ向けて、さまざまな作業が行われているところでございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 続いて、FBRサイクルの実用化に向けた具体的な内容について教えていただきたいと思います。

 二〇五〇年、商用炉、実用炉については、これはまだまだ見えない話だというふうに思いますけれども、二〇二五年をめどといたします実証炉の実現については、ある程度の道筋は、なかなかお答えづらいかもしれませんけれども、見えているんじゃないかというふうに思います。お答えしていただけるところだけでも結構です。

 また、七月から、経産省も含めました五者協議も既に始まっております。あるいは、投資として、この実証炉実現に向けて、ざっくりでも結構でございます、幾らぐらいかかる見通しなのか。実証炉の実現に向けて、またその具体的な道筋について、その内容をわかる範囲内で、言える範囲内で教えていただきたいと思います。

望月政府参考人 FBRのサイクルにつきましては、今年の五月に政府が策定をいたしました新・国家エネルギー戦略におきまして、今委員御指摘のように、二〇二五年までの実証炉の実現、それから二〇五〇年より前に商業炉の開発を目指すということを述べているわけでございます。

 この実現のために、まず実証炉の実現に向けた研究開発に取り組んでいるというところでございまして、具体的には、高速増殖炉サイクル実用化研究開発というものを、文部科学省との共同プロジェクトといたしまして、新たに来年度予算要求に盛り込んだところでございます。文部科学省が九十五億、私どもが四十億という予算要求をしているところでございます。これらによりまして、二〇一五年ごろまでに高速増殖炉サイクルの実用化像を提示するということを目指しまして、研究開発のさらなる本格化、加速化を図ってまいるということでございます。

 この実用化研究開発が終了した後は、速やかに実証段階に移行することが重要だということでございますので、このため、研究開発の終了を待つことなく、今から実証段階に向けた課題の検討を進めていくということが必要だということでございまして、そのため、本年度から、研究開発を担当する文部科学省、日本原子力研究開発機構、それから実証炉を担当する経済産業省、ユーザーである電気事業者、製造を担当するメーカー、以上関係五者による協議の場を設置いたしまして検討を開始したというところでございます。

 今後とも、文部科学省を初めとする関係者との連携のもと、高速増殖炉サイクルの早期実用化に向けて全力で取り組みたいということでございます。

 費用の点につきましては、先々のことにつきましては、この実用化像が提示されるということになって初めて計算ができるところがあると思いますけれども、とりあえず本年度予算要求のところから五カ年間ぐらいで二千五百億ぐらいの費用を見込んで像を描きたいというふうに考えているところでございます。

 大体、以上でございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 速やかに実証炉の建設というお話もございましたように、ぜひとも二〇二五年よりも前にこの実証炉ができることを、祈ってはいけませんけれども、本当に期待をしております。

 また、前年度まで経産分はゼロだったものが四十億ついているわけですから、まさに大きく踏み出した話だというふうに思います。

 次に、ちょっと、これもどうしても言わせていただかなければいけない質問を一つさせていただきます。

 電源開発促進対策特別会計に直入をされております電源開発促進税が、来年度から、まさにこの特会改革によりまして一般会計に繰り入れられます。事実上、一般財源化されることについてお尋ねをいたします。

 去年の十月に、これは私にとりましても、当選をして、この経済産業委員会で初めての質問がまさにこの質問でございました。この電源開発特会を取り上げて、電促税を一般財源化する考えはないかとお尋ねをいたしました。小平前資源エネルギー庁長官は、電源開発促進税は、設けられたときから完全な目的税だからと、これにしか使えないんだということを強調されました。また、資源エネルギー庁の方々は、レクのことも含めて、何度もこれは質問でも取り上げておることもありまして、全部予定のある金だ、もし本当に余ったお金なら、それは明確な目的税だから納税者に返すのが筋だということを言い続けてもこられました。

 これはこれでまたもっともな話だと実は思っておるところもあるんですが、電源開発促進税はまさに目的税です。来年度から事実上一般財源化されることについて、どのように説明をされるのか。長官、お願いいたします。

望月政府参考人 お答えいたします。

 電源開発促進税は、電源開発等に要する費用に充てるために課されている税であるということは変わりはございません。現在の制度では、この税が電源特会の立地対策及び利用対策に充当されているということでございます。

 これまで、電源特会については、実は多額の不用、剰余金の発生あるいは過大な予算などの指摘がなされてきたわけでございまして、その中で、行政改革推進法において、電源開発促進税が電源特会に直入されている構造を平成十九年度に見直すということになっているわけでございます。

 具体的には、電促税が電源開発等に要する費用に充てられるために課されている税であるということを踏まえながら、まず税収を一般会計に入れ、一般会計から必要額を特別会計に繰り入れる仕組みとするということでございます。これによりまして、特別会計において財政需要が増大するまでの間、一般会計において財政資金の活用を図るという仕組みにするわけでございます。

 エネルギー情勢がますます厳しくなる中で、原子力発電所及び核燃料サイクル施設の立地、あるいは今申し上げた高速増殖炉などの技術開発に伴って、将来、財政需要が増大してくるということが見込まれるわけでございますので、こうした財政需要が生じた暁には、今申し上げました一般会計で活用された資金の分も含めまして、特別会計において必要な予算を確保するということでございます。

 他の委員会で、財政当局の御答弁の中でも、その分については、私どもとしては戻していただけるというような前提でこの必要資金を確保していきたいということでございます。

三谷委員 戻していただくということは結構なんですけれども、それは、一般会計に繰り入れられるとなかなか簡単には戻るものではないというふうには思います。

 しかし、これ、あと時間があるようですので、もう問いません、もう言いっ放しにいたします。

 私も、この電源特会、質問の中でも、この委員会以外でも取り上げさせていただきました。周辺地域整備資金など、本当に使う当てがあるのかと疑いたくなるようなそういう積立金については厳しくとってきたところもありますけれども、もとをただせば、エネ庁の方々がおっしゃるとおり、電源立地促進やあるいは発電促進のための目的税でありますので、本当にこれらの目的のために必要なことはちゃんと使わなければならないというふうに私も思います。特に、ばらまきよりも、長期的な電力の安定供給に資するような、そういう必要な投資には、一般財源化されてもしっかり使わなければならないと思いますので、先ほどのように、ぜひとも取り戻してください。お願いします。

 最後になりますけれども、もう一問質問をさせていただきます。話がかわって、被害が続出をしておりますマルチ商法の違法勧誘についてお尋ねをしたいと思います。

 特定商取引の一類型と申しますか、いわゆるマルチ商法でございます。もちろん、商品先物でありますとか悪質リフォーム業者、これは、苦情件数は十六万件とかというような規模でありますので、訪問販売でも悪質な違法勧誘は絶えないわけですけれども、ここではマルチ商法を取り上げさせていただきます。

 国民生活センターでまとめたマルチ商法をめぐる相談件数ですけれども、この五年間で、一口に言えば二万件というところでほぼ高どまりをしております。マルチ商法をめぐる相談件数、ことしもまた、十一月二十一日現在で既に一万二百六十二件、増加した去年の二〇〇五年度と全く同水準の相談件数であります。

 それ以上に、国民生活センターの方々にお話を聞きますと、内容の方がかなり、より悪質化をしております。特に、今ふえておりますのは、実は、先般も貸金業法改正がございましたけれども、このときにも議論がございました、若者、学生を標的にしたものが非常にふえている。それも、必ずもうかると言葉巧みに勧誘をして、消費者金融で借金をさせて高額な契約金をだまし取る、こういう手口が激増し、また続出をしております。

 そこで、お尋ねをいたしますのは、この行政処分、法執行。内容を聞きますと、もうほとんど黒の話ばかりでありますけれども、対応は十分に行われているんでしょうか。これを経済産業省に聞かせてください。

松井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、いわゆるマルチ商法とされます連鎖販売取引につきましては、特定商取引に関する法律の規律を受けることになっております。特定商取引法におきましては、書面交付の義務づけ、取引の公正や購買者の利益を害する行為の禁止など、事業者の行為についての規制と、いわゆるクーリングオフや中途解約におきます損害賠償額の制限等の民事ルールを規定しているところでございます。

 違法な勧誘を行うなど、特定商取引法に違反する事業者に対しましては、業務停止命令を初めといたします行政処分を行い、厳正に対処をしております。特に、先生御指摘のように、最近マルチに関する問題が多発しております関係で、我々といたしましても、法執行をより厳正に行うべきだということで、最近、体制を強化してより厳正に対処する、こういう姿勢で臨んでおります。

 また、こうした悪質な事業者によります消費者被害を未然に防止しなくてはいけないということで、各種の啓発資料や、いわゆるマルチあるいは訪問販売でこういうような問題があるんですよというようなビデオを作成いたしまして、学校教育やあるいは各地の消費生活センターで御活用をいただいておりまして、なるべく事前にこのような問題を防止して被害に遭わないための情報提供を現在やっております。

 今後ともこの情報提供をより一層やっていきたい、こういうふうに考えております。

三谷委員 厳正に対処というふうに審議官はおっしゃられましたけれども、厳正に対処をしてください。

 体制を強化して、増員をしてということがありましたけれども、お尋ねをいたします。何人でやっておられるんでしょうか。本省消費経済対策課、地方局、経産局も合わせてお答えをください。

松井政府参考人 お答えいたします。

 特定商取引法の執行職員数についてお尋ねでございましたけれども、本省におきましては、消費経済部の消費経済政策課及び消費経済対策課で行っておりまして、二十名の体制で行っております。そのほか、地方にございます各経済産業局で、全部合わせまして六十七名で法執行を行っておりまして、合計、経済産業省八十七名の体制で本法律の執行を行っております。

三谷委員 もちろん、もうよくわかっていらっしゃると思いますけれども、本省、経産局合わせて八十七名では、とてもじゃないですけれども、対処ができない。中の方々ももちろんそう思っていらっしゃるでしょうし、実際のところは、では、法執行のお話も先ほど出ましたけれども、多分、マルチでいえばトップテンのところがせいぜい捕まえられているにすぎない。

 でも、苦情件数は毎年二万件でございます。中身を見ましても、このマルチの場合はほとんど、実際に国民生活センターのホームページに事例が六つほど載っておりますけれども、中を見ていただければわかりますけれども、経済対策課の方がこれは全部黒だと言うぐらい、中身は多分ほとんど、事例を聞いてみますと、現行法でも黒の話なんだと思います。

 また、片方で都道府県に権限移譲をする、だけれども、なかなかこれもうまく、東京とかはある程度やっていただいているようですけれども、ほとんどの都道府県で、捕まえて法執行していただくところまでなかなかいかないというような現状もございます。

 これはひとつ、さらに体制を強化して、また、人を減らさないといけないときに、大臣、なかなか大変ではありましょうけれども、ちょっといろいろなことを考えていただいて、体制強化という意味では、マルチはまさに特定商取引の六類型の中の一つにすぎないわけでありまして、先ほども申し上げましたように、訪問販売ということになりますと、これはけたがまた一つ違いまして、苦情件数は十六万件。どうやってこれで対処をするのか。捕まえるなと言っている話と同じような話になろうかと思いますので、ぜひともこの体制強化、工夫も必要だと思います。あるいは、都道府県にしっかりハッパをかけてお願いをしなければいけないことでもありますので、大臣、ちょっと一言。

松井政府参考人 最初に私の方から御説明させていただきます。

 経済産業省におきましては、平成十三年に、特定商取引法の執行を専門的に行います消費経済対策課を新設して、法執行の一層の強化を図ったところでございます。近年は、行政処分の内容も、業務改善指示のみならず、業務停止命令を積極的に発動するなど、一生懸命厳正な法執行を推進しております。さらに、経済産業省におきましては、都道府県による法執行を促進するため、地方の経済産業局と都道府県との連絡会議や研修の場などを通じまして、マルチ商法等特定商取引に係る違法勧誘についての情報交換や法執行業務のノウハウの共有化を図るなど、執行体制の強化に努めております。

 今後とも、消費者保護の観点から、都道府県との連携を一層強化するなど執行体制の強化に努め、悪質な事業者に対しては厳正に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。

甘利国務大臣 行政改革下の制約された人員でありますけれども、地方自治体あるいは都道府県の消費生活センターあるいは国民生活センター等と連携をとりながら、効果的に実を上げていきたいと思っております。

三谷委員 確かに、体制強化といっても、人員大幅増というようなことで、これはなかなか容易なことではないと思います。むしろ、だからこそ、ここで提起をいたしますけれども、このマルチ商法の場合ですと、特定商取引法、おととし法改正がなされ、若干ではありますけれども、行為規制も強化をされました。だけれども、率直に申し上げますと、まだまだこの行為規制は甘いと言わざるを得ません。

 実は、御承知のとおり、金融商品取引法のときにも、商品先物のことも含めてさまざまな行為規制の議論がございました。私は、不招請勧誘を禁止すべきだということをしっかり主張いたしましたけれども、現に、例えば、〇五年、去年、外国為替証拠金取引、これは、電話、訪問勧誘が禁止をされました。これは、まさに国民生活センターの相談件数は激減をしております。もう一目瞭然の話です。

 もちろん、特定商取引法は、不招請勧誘ということになるとなかなか、六類型の中でも訪問販売等々もございますので、非常にまた簡単にいかない難しい問題もあろうかと思いますが、ただ、せめて、今大変不明確な再勧誘の禁止、非常にあいまいな規定になっているのじゃないかと思いますけれども、せめてそこまでは、あるいは、ほかにも行為規制で強化をしなければいけないところはあると思いますが、その行為規制の改正について、審議官、どういうお考えを持っておられますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生の御指摘は、再勧誘の禁止という御指摘でございますけれども、訪問販売につきましては、迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘することを禁止行為としております。また、連鎖販売取引、いわゆるマルチにつきましても、連鎖販売取引契約を締結しない旨の意思表示をしている者に対し、当該連鎖販売契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘することを禁止行為としております。悪質な再勧誘につきましては、これらの規定を厳格に適用して、悪質な勧誘行為に対する法執行に尽力してまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、訪問販売等をめぐります消費者トラブルというのは年々いろいろな形でふえてきております。したがいまして、状況を踏まえながら、どのような対応が適切であるか、常に検討をしていきたい、こういうふうに考えております。

三谷委員 質問を終わらせていただきますけれども、今まさに審議官が説明をされたところが甘い、行為規制として甘いというふうに私は思います。またこの問題を取り上げさせていただきます。

 質問を終わります。ありがとうございました。

上田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

上田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 私の持ち時間は四十分でありますが、質問をさせていただきます。

 午前中のトップバッターの自民党の議員の方からも、大変期待感を持っておられます甘利大臣に、率直なお話を含めていろいろと伺いたいと考えているところであります。

 きょうは、ものづくりを中心とする中小企業の現状について、それから、最近またさまざまな形で課題となってもきておりますが家電品の大型店と小売店との関係、そして最後には原子力エネルギー政策という、地域からもいろいろと御意見をいただきながら、質問をさせていただきますが、その三点についてお伺いをいたします。

 まず最初に、これは地元の中小企業団体中央会というところの中小企業白書でございますが、ここの冒頭に、「中小企業の多くが、依然として一進一退の足踏み状態の中で、景気回復を実感できないまま今日にいたっています。今後も内外の諸情勢の不透明感等、懸念材料もあり楽観できない状況にあります。」という景感が、中小企業団体中央会の会長の発刊に当たってという言葉の中にも出ておりまして、政府の、現在の景気状況は好転してきているという認識と、地域の中小企業の実感とは異なるのではないかという意見も強く寄せられているところであります。

 また、同じように、要請書をいただいておりますが、中小企業の活力強化のための税制改正の実現ですとか、もちろんこの中には以前からあります事業承継税制の創設ですとか、それから、中小・小規模企業対策予算の十分かつ安定的な確保ですとか、これは例年いただいているものでありますが。まちづくりの推進と地域産業の振興、さらに、中小企業の経営実態を無視した労働諸制度の見直しについては反対するですとか、中小企業における企業年金制度の充実強化、あるいは、二〇一一年度までの基礎的財政収支の均衡は、経済成長による税収増と歳出削減で実現をという要請ですとか、実効性ある総合的な少子化対策の早急な実施をという地域の方の課題を含めての御意見もいただいているところであります。

 そこで、大臣に冒頭にお伺いしたいのは、私自身、ものづくりの世界で仕事をしてきた経験もありますし、大臣も同じようにものづくりの世界で仕事をした御経験があると伺っておりますが、最近は、物をつくるということを大事にするよりも、とにかく安ければいいということで、商品とか製品の安全性というものが何となく忘れられているような感じすらするこの社会情勢もありまして、そういうことからいろいろな事件も起きているのじゃないかという感じすらいたします。

 特に、五年半前に小泉総理が提唱されましたいわゆる小泉改革というものによって、何か競争、競争、とにかく競争なんだ、すべては競争なんだという、それが余りにも社会に行き渡り過ぎていまして、いわゆる行き過ぎた市場競争原理主義が全国各地、地域の方にまで及んでおりまして、こういうことによって、正直者とかあるいはきちょうめん、そういう基本的な日本人のモラルを構成してきた感性というのがどこか社会の片隅に追いやられて、とにかくもうかればいいんだという風潮が競争社会の中でつくられて、過日もパロマのガス湯沸かし器の事故もありました、さまざまな事件や事故も多発していますが、私はそこら辺が非常に残念なんです。

 私は、経済産業大臣というのは一つの顔はものづくり大臣であるという認識を持っておりますが、現在の地域経済を支えている中小企業の実態あるいは現状について、どう認識しておられるのか、また中小企業の皆さんからも、毎回私は申し上げているんですが、イタリアと同じように、日本の国はまさに中小企業を大事にする国、言ってみますと中小企業大国を目指す、そういう経済産業省としてのメッセージもいただきたいという声もあるわけでありますけれども、大臣の御認識を含めて、御見解を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 大畠先生御指摘のとおり、日本の発展は中小企業があったからだと私は信じて疑いません。

 今、世界じゅうの国が日本の何をねらっているかというと、優秀な中小企業を自国の企業としたいという、その標的とされているんです。シャープがどんなに優秀であろうと、トヨタがどんなに優秀であろうと、関連する中小企業、中堅企業、優秀な中小企業群があります。これがなければ世界を席巻する製品はできないのでありまして、日本の中小企業の優秀性に支えられて大企業の優秀性がある、このことは、この委員会のメンバーで異論を唱えられる人は一人もいらっしゃらないと思います。その中小企業がいわゆる競争原理の中で本来の強みというものを失いかけているのではないかという御懸念だと思います。

 競争は、市場の原理でありますからいいとして、単なる価格競争だけに陥ってしまってはいけない。製品の性能の競争あるいは安全性の競争、トータルとしての製品の競争力をつけるということに企業経営者は思いをはせていただかないといけないということでございまして、ともすれば競争を部分的にとらえてその風潮に流されてしまうことは、警鐘を鳴らすべきことだと思っております。

 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律というものを本年四月に成立していただきました。この法律等に基づきまして、安全面に関する技術の高度化も含めて、研究開発に対する支援、人材育成など、政府としては取り組んでまいるわけでございます。

 あわせて、「元気なモノ作り中小企業三百社」をことしの四月に刊行させていただいたところであります。こういうあらゆる面で範となるような優秀な中小企業が頑張っている、それが全国の中小企業のモチベーションを引き上げる、勇気を鼓舞することになればというふうに思っておりますし、価格面の競争だけではない、品質や安全性の競争について、我が省としてしっかり取り組んでいきたいと思っております。

大畠委員 基本的な認識は私も大臣と同じでありますが、今お話があったような形に現実推移しているかというと、どうもそうじゃなくて、私も大手電機メーカーで仕事をした人間でありますが、そのメーカーを支えている中小企業群といいますかがあるんですが、そこら辺から悲鳴が上がってきているんですね。

 大手の方も大変なんですが、そこで、下請といいますか関連企業の方に単価の切り下げがかなり強烈なものがありまして、これはもう全国各地だと思うんですけれども、結局、単価をかなり下げられていくと下請の企業の体力も弱ってきて、長年といいますか、戦後六十一年培った、いわゆるものづくりの中小企業あるいは小規模企業の継承というものさえ難しくなってきている。だから、今大臣がおっしゃったように製品の価格の競争が激しいんですが、その部品を供給する企業体の体力が非常に弱ってきている。

 これは多分、私は、自動車産業も同じことが言えると思うんです。建設業とかさまざまありますが、よく言われる、元請といいますか受注元は何とか乗り切れるんですが、それを実際にこなしている企業のところの収益が非常に悪くなっている。このところで、限界を超えた単価の切り下げについては何らかの手を打ってほしいという強い要求が出ているわけでありますが、これについて、これは中小企業庁でしょうか、現在の対応策についてお伺いしたいと思います。

山本(幸)副大臣 私どもも先生と同じような問題意識で、そういうことがないようにやらなきゃいかぬということで、この点はかなり中小企業庁において熱心に取り組んでおると認識しております。

 御承知のように、取引単価に関連するものとして、中小企業振興法の基準で、取引数量とか労務費、市価の動向等を勘案した合理的な算定方式でやりなさいというふうになっているわけでありますし、また、独禁法を受けまして、下請代金支払遅延等防止法において、著しく低い代金の額を一方的に押しつけることを禁じているわけであります。

 それを実現するために、中小企業庁におきましては、大企業とそれから中小企業双方に対して講習会、セミナーを開催しておるところでございます。昨年度、八十数回開いておりますし、また、十一月を下請取引適正化推進月間と題しまして、公取と協力いたしまして、十一月では五十数回開いているということであります。

 きちっと本当に周知できるのかということでやっているわけでありますが、例えば、親事業者というのは全国で大体八万件ぐらいあると言われているんですが、これを公取と私どもで半々に分けまして、二年間でワンラウンドするように、確実に親事業者には、二年間たてばちゃんとそういう話が伝わっているというように、そして、その親会社につながる下請事業者、大体平均して五十社ぐらいをそれに加えて講習会をやって、二年間でワンラウンドはちゃんとするというような体制でやっております。

 例えば、平成十七年度、昨年度は約十四万件、親事業者が二万件で下請が十二万件の書面調査を実施いたしております。その結果、発注書面の記載事項の不備等比較的軽微な違反のおそれがあるものが約四千二百ございましたけれども、その親事業者に警告書を発出いたしております。また、下請代金の減額、支払い遅延等の疑義がある約千六百の親事業者に対しましては、立入検査を実際にやりまして、うち約千二百の親事業者に改善指導を行ったところでございます。

 そういう意味で、かなり徹底して、そういう講習会等を開いてこの問題についてはやっていきたいと思いますし、万一、優越的地位を濫用したことがあれば厳正に対処していきたいと思います。申告で上がってくるのは年に二十数件ぐらいしかないんですけれども、もしあれば知らせていただければ、しっかりと対応していきたいと思います。

大畠委員 今お話をいただきましたが、これは非常に難しい話で、申告すると多分その企業にはもう仕事が行かなくなると思いますよ、何でそういうのを言ったんだといって。だから、ここのところは非常に難しいんです。なかなか正直に言えないので、そこら辺は、今御指摘いただきましたけれども、ぜひ大いにそういうところに入っていただいて、実態があれば改善させる、申告があったから云々じゃなくて。

 というのは、私が心配しているのは、当面、経済がよくなっても、そのうち日本では部品メーカーというのはいなくなっちゃうんじゃないか、下請が。そうしたら、どんなに大きいところが残ったって、今度は海外から部品を供給せざるを得なくなるという話になると、非常に脆弱なものづくり国になるんですね。最近、金融金融という話で、金融も大事なんですが、やはり日本の国は物をつくって初めて経済が成り立っているんです。だから、そこのところをしっかりと押さえていただかないといけないんじゃないかということで私は申し上げているわけであります。

 次の質問ですが、中小企業の非常に困っている課題の一つに、融資のときの保証人の問題があるんですね。

 これは、私も毎回申し上げているんですが、連帯保証人なんという制度はやめた方がいい。連帯保証人になる人なんか、今、正直言っていませんし、いるとしても、兄貴ならばというか、親戚だからといって無理やりやっているんですよ。それで、万が一のときは根こそぎ持っていかれちゃうんですから。何か私はそこら辺からして、金融中心といいますか、強くなり過ぎているんじゃないかと。

 もともと、大手銀行に十二兆円もつぎ込んで金融の危機を救ったわけですよね。平成十八年三月までに半分の六兆円を返したというんですが、今のお話を聞いていると、大手銀行で三兆円黒字になるというんですね。だから、余りにも今度は金融機関が言ってみるともうけ過ぎているんじゃないか。それに比べて、中小企業がかなり危機的状況にあるということでは、この連帯保証人制度というのを私はもうやめるべきだと思いますね、金利の方でリスクはお互いにカバーするとして。

 このことについて、金融庁が来ておられましたら、御見解をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 連帯保証について、廃止すべきとの声が強いというような御指摘でございますけれども、金融庁といたしましては、金融機関が顧客と保証契約を締結する場合には、まず保証契約の内容等について適切かつ十分な説明を行うことが必要であるというふうに考えてございまして、金融機関に対し、その説明責任の的確な履行を求めているところでございます。

 今後とも、金融機関が保証の徴求について適切な業務運営を行っているか等につきましては、厳正に検査監督してまいりたいと考えてございます。

大畠委員 多分皆さんも、何を言っているんだかさっぱりわからなかったと思うんですが、正直言って、今のお話は何かよくわかりませんね。よくわからないように答弁するのが優秀な官僚の一つの秘訣という話も聞きますが、そればかりやっていたのでは、委員会の意味がございません。

 私は、連帯保証人制度については、世界にも類がない。お金を借りるときに、大畠さん、保証人になってくださいと。個人保証的なものは、それは入ります。ところが、もう一人だれかいませんかと。そう言ったって、なってくれますか。(発言する者あり)そうでしょう。今は、連帯保証人になる人は少ない。だから、かみさんになってもらったり、あるいは親戚の兄貴になってもらったり、大変な苦労をしています。そうなって、万が一のときにはそっちまでがばっといきますから。

 だから、私は、余りにも金融中心の日本の構造になっているんじゃないか、ものづくりが日本のベースだったんですから。金融も、ものづくりを支援し、小さな企業を支援して、その小さな企業が成り立っているから、学校に通う子供たちとか近所で買い物をするお父さん、お母さんがいたり、それが全部地域社会の経済を支えているんですよね。金融が支え、金融も大事なんだけれども、やはり原点は、物をつくったり、そこで活動する人を支援するという意味で金融があるわけですから、その原点はぜひ踏まえて、金融庁も今お話しのように、それが象徴なんですよね、よくわからないような答弁が現状なんです。

 ですから、次回質問するときまでにもうちょっとわかりやすい答弁を準備してきてください。これはやっても、多分こんにゃく問答になっちゃいますからあれですが、改めて私の部屋の方にちょっと説明に来ていただいて、少しやりましょう。

 それから、三番目でありますが、まちづくり三法の改正が行われました。今、中心市街地の空洞化の問題、先ほどもお話がありましたけれども、大型店の出店によって中心市街地の小売店経営が成り立たなくなっているという訴えもここに来ています。これは全国各地だと思うんですが。それから、大型店が撤退したときに、地域社会は今度は非常に困ってしまう。大型店が出店して撤退せざるを得ないときには、何らかのまちづくりに対する責任を課すべきじゃないかという御意見もいただいておりまして、中心市街地の地主対策ですとか空き店舗対策、これはずっと言われている話でありますし、撤退するときの大型店に対するまちづくりに対する責任を課すべきじゃないかという指摘もありますが、この件についての御見解を伺います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省といたしましては、大型店が、まちづくりに対する責任の一環として、撤退に際しまして、地域社会への早期の情報提供などしっかり対応していくことが望ましいというふうに考えており、こうした取り組みを促しているところでございます。

 その結果、例えば、日本チェーンストア協会では、ことしの六月に、まちづくりへの貢献に関するガイドラインを策定したところでございます。このガイドラインにおきましては、退店時の早期情報提供、パート従業員の再就職の相談、それから後継テナントの手当てなどに適切に対応することが盛り込まれており、大型店の自主的な取り組みが進みつつございます。

 経済産業省といたしましては、このようなガイドラインの策定を、他の小売業界団体、例えばショッピングセンター協会ですとか百貨店協会等々に引き続き指導をいたしまして、大型店がまちづくりに対する責任をみずから果たしていくように促してまいりたいと思っております。

大畠委員 このことについても、これも全国各地で同じような現象が起きておりまして、大型店に対しても、もうけるだけもうけて、もうからなくなったらもう引き揚げればいいんだという、そういうことでは、私は、商業者としてのモラル、要するにこれももうけ主義がベースにあるんですよね。もうからなくなったらやめる。民間企業というのはそれが当たり前だけれども、しかし、余りにも大きな影響を与え過ぎていますからね、この大型小売業というのは。したがって、やはりそれなりの、日本国の一つの、構成する企業の責任として、やはり撤退して近隣に大変な影響を与える場合には、何らかのまちづくりに対する責務を負うということを、今、御指摘ありましたが、そういうことをさらに徹底していただきたいということを要請しておきたいと思います。

 次に、いわゆる小売店と量販店とのさまざまな関係がございますが、公正取引委員長がいろいろ決断をいただいて、家電のガイドラインというものを六月二十九日に公表していただきました。「家庭用電気製品の流通においては、近年、小売市場における家電量販店の成長が目覚しく、メーカーの家電量販店への販売依存度が高まる傾向にある中で、大手の家電量販店間の激しい低価格競争により、地域家電小売店の事業活動に与える影響が深刻化している。」という公正取引委員会の認識がこのベースにあるわけでありますけれども、私もそのように見ております。

 そこで、ガイドラインはできたんだけれども、不当廉売がまだまだ続いている。それから、差別対価についても不十分なのではないかという声が出ております。今、小売店の方からも、調査してほしいという要請が公正取引委員会の方に幾つか出ていると思いますので、どのくらいのお訴えが来ているのか。そして、差別対価の基準があいまいだという指摘もございます。

 派遣販売員とか応援員とか商品説明員、研修員、いろいろな呼び名でメーカーに対して販売員の派遣を強制しているわけでありますが、メーカーの方からも、事実、非常に困っているという声も裏の方から聞こえてきています。こういう実態に対して、公正取引委員会としてどのような対策をしておるのか。

 さらに、平成十六年九月に取引価格の実態について調査をされましたけれども、その報告書によると、平均六%程度、いわゆる量販店と小売店、メーカー系列の家電の小売店の取引価格の差は六%程度だと報告書に書いてあるんですが、実際は二〇%から三〇%にもなっているじゃないかという声を聞いております。改めてこの問題については調査すべきじゃないかという指摘も受けていますが、これら三点についてあわせてお伺いしたいと思います。

山田政府参考人 御指摘いただきましたように、家電の流通における不当廉売とか差別対価の問題につきましては、先般、ガイドラインを定めまして、その中で、どういう行為が独占禁止法上問題になるか、考え方を明らかにしたところでございますが、このガイドラインの制定後、申告件数は増加している状況にあります。

 私どもとしましては、この問題につきまして、迅速かつ厳正に対処するという方針で臨んでいるところでございまして、今たくさん出ております申告につきましてもこういう方針で対処していきたいと考えているところでございます。

大畠委員 たくさんじゃなくて、何件ぐらい申告があるのかということを、きのう私は調べておいてくれと言ったはずなんですが、もう一度答弁してください。

山田政府参考人 大変申しわけございませんけれども、私ども、申告の情報につきましては、この家電の問題を問わず、具体的な内容についてはいつも控えさせていただいていますので、よろしくお願いします。

大畠委員 私の手元にこういうのがあるんです。これは十月五日付で公正取引委員会が発行した通知書。「平成十八年九月一日に書面で報告を受けた」何々、これは黒塗りにしてありますけれども、「件について下記のとおり処理したので、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」「の規定に基づき通知します。」「調査の結果、これまでの情報では、現段階で独占禁止法上の問題とすることは困難ですので、措置は採りませんでした。 なお、関連する情報が更にありましたら、お寄せください。」

 こういう形で片づけられちゃったんだけれども、私は、公正取引委員会に随分肩入れしていまして、かつて四百人ぐらいしかいませんでしたね、三百人だったかな。十年かかって、今、八百人体制になって、非常によくやっていただいています。さらに、できればこういう申告に対してはもっとまじめな通知書でやってもらわないと、訴えても、こういう話では困るじゃないかということになっちゃう。

 私のところにもこうやっていろいろなチラシが、こういう実態なんですよと。これはよく新聞広告にあるものですが、これを見ると、何かよくわからないんですよね。テレビだと「四〇%ポイント進呈 最大」とか、あるいはDVDレコーダーも「三五%ポイント進呈 最大」と、一体幾らで売っているのかもわからなくなってきて、結局私は、このところにも、なぜこんなことを言うかというと、一番最初の話だけれども、ものづくり、物をつくっている人をもっと大事にしてもらいたい。

 オープンプライスというのは何だかわからないんだよね、オープンプライス。お客さんが求める価格だという。では、つくった人のことはどうしてくれるんだ。原材料費があって、加工賃があって、諸経費があって、それで製品構成があるわけですね。私は、これは公正取引委員会じゃなくて経済産業省の方かなと思うんですが、オープンプライスという発想もいいんですよ。消費者が求めやすい価格を、低価格で供給しようというのはわかるけれども、では、これをつくった人の、ものづくりというのはどうなっちゃったんだ。台湾から持ってきても、中国から持ってきても、オーストラリアから、もう何でもいいですよ、製品を売ればいい。でも、日本のものづくりというもののモラルも、こんなふうにお客さんの言い値で売っちゃうんだという話になってくると、モラルすら私は壊れてくるんじゃないかと。

 もうちょっと公正取引委員会も、そういう大型店と小売店とのいろいろなせめぎ合いもあります。しかし、今のお話のような形では、何か実直さがない。本当は公正取引委員長をお呼びしようと思ったら、ほかの委員会に出ていますので出られませんと言うので、それでかわって全権大使で来ていただいたんだけれども、今の答弁では、さっぱり私は公正取引委員会の誠意が感じられません。さらにこれも、後日、私の部屋に来ていただいて、またこの件もしっかりと話をしたいと思います。

 実態に即して、これは本当に深刻な状況になっておりますので、せっかくですから、ガイドラインというものをつくりましたけれども、これに基づいて実際にやっているのかやっていないのか、調査するのかしないのか、そのことをちょっと今念頭にあることを答えてください。

山田政府参考人 先般公表いたしましたガイドラインにおきましても、申告に対しまして、私ども、迅速に処理するとか、その調査方法について明らかにしているところでございますので、それに基づいて、厳正かつ迅速に処理していきたいと考えております。

大畠委員 舟橋取引部長もきょうおいでになっていますね。取引部長の方からも、この件についてどういうふうに考えているのか、突然ですが、今念頭にあることを正直にちょっと言っていいんじゃないですか。

舟橋政府参考人 先生、冒頭に三点御指摘ございまして、それが具体的な問題かなと思います。一つがヘルパーの問題。それからもう一つが仕入れ価格で格差がある問題、私ども差別対価というふうに呼んでおりますけれども、この二点について、私からちょっとお話しさせていただければと思います。

 まず最初に、ヘルパーの方ですけれども、これは、私ども何度か調査をやっておりまして、十六年九月の調査報告書によりますと、この一年で、こういう家電量販店のヘルパー、総数で三十三万四千人、そういう人数の人が出ていっておりまして、やはり大手の家電量販店に出る比率が高い、そういう指摘もしているわけです。これについての問題は二つございまして、一つは、メーカーに対して大手の家電量販店が強要する、それについてどう考えるか、独禁法上の問題。それからもう一つが、次の問題と関係してきますけれども、そういったのが差別対価なり差別的な取り扱いになるんじゃないか、こういうことだと思います。

 最初のヘルパー派遣の強要、これは、本当に大きな会社でもなかなか断れない、そういう状況にあるようでございますけれども、メーカーとして。これについては、昨年五月に、私ども、「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」、簡略化して大規模小売業告示と呼んでおりますけれども、こういう規範を定めまして、大規模小売業者が納入業者に対して、これはメーカーも入りますけれども、ヘルパーを派遣させるということは、あらかじめそういった納入業者の同意を得ている場合、そういった場合を除いて原則として禁止をするということでございまして、私どもとしても、家電量販店から一方的なそういう強要、そういうことがないよう、いろいろ実態調査もしておりますし、仮にあれば、審査局長が申し上げたように、独禁法を発動して摘発をしていく、取り締まりをしていく、それはかたい決心でございます。

 それから、二つ目の差別取り扱いにつきましてでございますけれども、これについても、有力な事業者が同じ商品について、合理的な理由なく、片や非常にこんな値段で、片やこうだ、そういうことによって差別を受ける小売の方の競争機能、これが直接かつ大きな影響を与えるという場合には、それは公正な競争という観点から非常に重要な問題だと思っておりますので、そういったことのないよう、これについても、いろいろ判断基準は難しゅうございますけれども、これは、先生御指摘の家電ガイドラインの中に一項目設けてつくっておりますので、そういったことをきちんと踏まえて対応していきたい、そういうふうに考えております。

大畠委員 少しわかりやすくなってきました。今お話がありましたように、やはり実態をぜひ調べてほしいという声があります。訴えたから云々だけじゃなくて、ガイドラインをつくった、それをちゃんと守っているのかどうかも、ルールをつくるのも公取の仕事でしょうけれども、それが実際に守られているのかどうかもきちっと調査して、守らせるのも公取の仕事ですから、うなずいておられますね、ぜひそれはやっておいてください。

 最後に、あと四分になりましたが、原子力エネルギー問題について、きょうは近藤原子力委員長に来ていただいておりますのでお伺いします。また、これは甘利大臣にも関係するので、甘利大臣にもお伺いしますが、安倍内閣において、核武装、日本も核武装を検討すべきだという話が現閣僚から相次いで発言されておりまして、安倍総理も、議論ぐらいはいいじゃないかという容認する発言を繰り返しているのが現状です。

 しかし、これは、エネルギー政策からすると、日本のエネルギー政策の根幹を揺るがす事態に入っているんです。持たず、つくらず、持ち込ませずという非核三原則があるから、国際的にも原子力の平和利用として再処理が認められているんですね、使用済み燃料。ところが、これを検討し始めたら、この基盤が崩れちゃうんです。私は、これは、原子力委員長としてやはり公式に発言していただくことが大事だと思いますし、また甘利大臣にも、経済産業大臣として、またエネルギー大臣としての御見解を伺っておくことが必要だと思いますので、このお二人からそれぞれお伺いしたいと思います。

近藤参考人 我が国は、御指摘のように非核三原則を堅持し、原子力基本法にのっとりまして、原子力の研究、開発及び利用を厳に平和利用に限って、平和の目的に限って推進してきております。

 これを踏まえて、我が国を含む非核兵器国に対して核兵器を製造しない等の義務を課している核兵器不拡散条約、NPT、これに加入いたしまして、そのもとで、国際原子力機関、IAEAと包括的保障措置協定及び追加議定書を締結して、核物質が平和の目的以外に転用されないことを適時に探知する保障措置を受け入れ、これを前提として可能になりますところの濃縮ウランとか天然ウランとか、その他原子力資機材の輸入を行い、これを使って原子力発電や再処理活動を行ってきているわけでございます。

 IAEAは、二〇〇三年に、我が国の多くの施設、中には核物質を用いない、いわゆる非原子力施設への立ち入りも含めて査察活動を行いまして、我が国においては、保障措置下に置かれた核物質の平和目的以外の活動への転用とか、それから未申告の核物質及び原子力活動の存在を示す兆候は認められないという評価をいたしまして、二〇〇四年からは、したがって、この査察の回数を減らすことができるような、そういう統合保障措置という活動を我が国に適用するということを決めて、そのように行われているところでございます。

 原子力委員会といたしましては、我が国の原子力政策に関する基本方針として尊重する旨、先年閣議決定いただきました原子力政策大綱に従いまして、そこに書いてあることでございますが、今後とも非核三原則を堅持しつつ、原子力の研究、開発及び利用を厳に平和の目的に限って推進するとともに、この基本姿勢を国際社会に強く訴え、発信し、さらに、核不拡散体制の維持、強化に向けた国際的取り組みにも積極的に貢献し、あるいは参加していくというふうにして取り組んでいく所存でございます。

甘利国務大臣 非核三原則は国是でありますし、歴代内閣によって累次この表明がなされている。安倍内閣においてもこれは変わらない、堅持をしていくということでございますし、先ほど原子力委員長から答弁がありましたとおり、日本が非核保有国の中で唯一核燃料サイクル、フルサイクルで認められているというのは、平和利用に徹しますということを宣言して、それをしっかり検証されているからでありまして、これを揺るがすようなことがあってはならないと思っております。

大畠委員 ぜひ、今原子力委員長と大臣からお話がありましたが、閣議の中でエネルギー大臣として、いかがなものか、それを始めたら日本のエネルギー政策そのものが揺らいでしまうということをきちっと言っていただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、今、日本においてもトップの企業であり、自動車産業において世界のトップにも躍り出ようと言われているトヨタ自動車に関して、その下請構造の問題点などについて何点か指摘をさせていただきたいと思っております。

 この間、自動車のリコールが急増しているということがよく取り上げられております。自動車の欠陥というのは、走る車ですから、命に直結をするものであり、深刻な事態につながりかねない大問題であります。過去三年間のリコールの台数の推移を見ても、〇四年度、おととしが過去最高七百五十六万台、昨年度というのは過去最高のおととしに次ぐ水準で五百六十六万台、今年度も三百九十八万台ということで、大変高い水準で推移をしているわけであります。

 そこで、トヨタのリコールも急増していると言われておりますが、トヨタのリコール対象台数の推移について国土交通省からお答えいただきたいんですけれども、二〇〇一年度以降のトヨタのリコール対象台数の推移についてお示しください。

松本政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇一年度からのトヨタ自動車のリコール対象台数でございますけれども、二〇〇一年度が五万台、二〇〇二年度が五十万台、二〇〇三年度が九十三万台、二〇〇四年度が百八十九万台、二〇〇五年度が百九十三万台となっておりまして、本年度は十一月末までで百三十万台となってございます。

塩川委員 資料を配付させていただきましたけれども、上のグラフが今国土交通省で示してもらったリコールの届け出の対象台数で、ここ数年間急速に増加をしております。今年度も非常にたくさんの台数が出ておるわけです。下のグラフが、これは日経ビジネスで掲載されていたものですが、最大市場のアメリカにおいてもリコールが急増しているということで、もとはカラーで、白黒ですとちょっと見づらいんですが、左側がリコール台数で右側が販売台数ですから、〇五年の数字ではリコールの台数が販売台数を上回るという事態になっております。これは、国内の販売とリコールの台数においても同じようなことが言えるということにもなっております。

 〇一年以降、リコールとなったふぐあいというのが人身事故にまでつながっているのは、トヨタ、日産、ホンダと言われる三大メーカーの中ではトヨタだけということも言われておりまして、その点でも安全の問題が問われてまいります。ことしの七月に国土交通省もトヨタに対して業務改善指示を出したということも大きく取り上げられました。

 リコールがどういう原因で起きるのかというのを、原因別で分類したのを国土交通省も調べておりまして、全体的には、今、開発、設計段階に起因するリコールが多いということが言われております。ですから、開発、設計段階が七割で、それから生産、製造段階が三割というのが今のおおよその傾向だということが言われております。その点で、トヨタはどうかという問題があります。

 これは、週刊東洋経済が過去五年間ぐらいのトヨタのリコールの件数を全部国土交通省のホームページから拾って原因別に整理をしましたら、開発、設計段階と生産の段階が、全体は七対三なんですけれども、トヨタの場合は五対五で、生産、製造現場に起因をするリコールが多いという傾向が出ているということが紹介をされておりました。

 これは十一月十五日付の日本経済新聞でも、「きしむ品質」という特集記事の中で、「ここ三年のトヨタのリコールの原因は、半分は製造段階の問題による。」という点では、製造、生産段階における問題というのをトヨタの場合には特に懸念をする状況にあるのではないかと思っています。ですから、日本経済新聞の記事でも、その後に続いて、「半分は製造段階の問題による。その主因とされるのがラインを構成する人材の変容だ。」生産ラインにおける人材の変容、変化、ここに問題があるという指摘になっております。

 私、この間トヨタの本社にも伺いましたし、また、下請関連メーカーの現地での調査も行ってまいりました。そういう中でお話を聞いた中でも、トヨタ本体そのものが、今、正社員が六万五千人、それに対して非正規、臨時が一万九千人と言われています。ですから、二割強が非正規となっております。これは当然事務方の数字も入っているでしょうけれども、生産現場では期間工、期間従業員というふうに言われていますが、それも一万人ということで、非常に高い水準になっているというのが今の状況だと思います。トヨタ本体に非正規がたくさん入っているという面とともに、トヨタの下請の企業に非正規が大変ふえているというのがあわせて実態としてあるんだと思います。

 よく言われますように、自動車の完成品、完成車メーカーが手を加えるのは一割二割で、実際の製造コストの七割八割ぐらいは部品メーカーが担っているわけです。ですから、生産、製造現場のふぐあいということになりますと、完成車メーカーの組み立てのラインで起こると同時に、部品に起因をするようなふぐあいというのが実際に多いわけです。ですから、下請の仕事が品質に直結をしているということが自動車の場合には特に言えることだと思います。

 そこで、今の下請の実態がどうなっているのかということについて、資料で二枚ほど新聞記事をつけさせていただきました。特に末端のレベルで違法行為が続いているという記事であります。二枚目に紹介しているのが新聞記事で、「トヨタ系が労災隠し」、トヨタの部品メーカーのトヨタ車体精工、そこにおいて偽装請負を背景にした労災隠しが行われていたという報道があります。愛知の労働局がトヨタ車体精工を是正指導も行っている。ここの高浜工場においては、派遣、請負などの非正規が半分以上だと言われております。

 三枚目の新聞記事は、「トヨタ関連二十三社違法雇用」ということで、これはベトナム人の技能実習生についての記事ですけれども、ここでも、ベトナム人技能実習生に最低賃金や時間外の割り増し賃金を払わない、豊田の労働基準監督署から是正勧告が行われているという実態が挙げられています。

 あと、新聞記事はつけておりませんけれども、当委員会でも私も取り上げました、トヨタのグループ企業のジェイテクトの子会社の光洋シーリングテクノにおいても偽装請負、違法派遣が行われていたという問題が現場の労働者から告発をされるという事態もありました。

 ですから、紹介しましたように、外国人労働者を含みます非正規、派遣ですとか請負ですとか期間工など、この非正規雇用の拡大というのが下請の部品メーカーでも進んでおり、そこに違法行為もまかり通っている事態があります。

 さきに紹介したトヨタ車体精工などでは、この偽装請負にかかわっていた請負会社が廃業するという時点で、その後、多くはトヨタ車体精工が直接雇用するような道につながったわけですけれども、しかし、告発をした労働者そのものは雇用から排除をされるような事態があるわけですから、こういう点については現場でも問題になっているわけで、厚生労働省としても是正に努めるべきであります。

 さらに、中外と言われます、トヨタの車の防音材をつくっている会社があるんですけれども、これもトヨタの協力会社でつくる協豊会のメンバー企業でもあります。ここで、今よく問題になっている、外国人労働者の非正規雇用の実態が問題となっております。中外の三好工場というところで請負会社が入っていて、その請負会社が、外国人労働者、日系ブラジル人の方を雇用し、送っていたわけです。それ自身が偽装請負、違法派遣ということで現場としては告発がされているものです。

 そういう中で、コストが厳しいものですから、個々の労働者を請負会社が雇用するのではなくて、一人一人の労働者を個人事業主扱いにするという形で、社会保険への加入などを逃れるという形での違法行為が行われていたということが現場で問題になっていました。健康保険も厚生年金も、あるいは労災、雇用保険、こういうものに加入させずに働かせていたという問題がありました。

 こういう問題について、現場から不当労働行為の是正を求める声が上がっておりますけれども、厚生労働省としては、現状をどのように把握をしておられますか。

中野政府参考人 御指摘の労使紛争につきましては、団体交渉を求めてきた者が個人請負であるということを理由に会社側が団体交渉に応じないことにつきまして、本年十月四日付で愛知県労働委員会に対しまして不当労働行為の救済命令の申し立てがありまして、現在審査中であると承知しております。

 労働組合法上の労働者性等の本件申し立ての争点と考えられる点につきましては、愛知県労働委員会が今後適切に判断するものと考えております。

 なお、一般論で申し上げれば、雇用契約によって使用される者のみならず、請負契約等によって労働に従事する者でありましても、使用従属の関係に立ち、その指揮監督のもとに労務に服し、その対価として報酬を受け、これによって生活する者と実態上判断されるものについては、労働組合法上の労働者に該当すると考えております。

塩川委員 個人事業主という扱いで、請負契約だといいますけれども、実際には、その会社のもとで、タイムレコーダーで労働時間の管理なんかも行われていたと言われていますから、実態は労働者だということは明らかで、この点での是正、労働組合として認めて、団交、交渉に応ぜよというのは当然の要求でもあります。

 あわせて、この一人請負という形をとった偽装請負というのが今広がっているということも指摘をされております。これは、東京労働局などでも、偽装請負の類型、パターン化をした一つの事例として、一人請負型の偽装請負の問題なども指摘をしています。

 その点について少し紹介もしていただきながら、こういった一人請負型の偽装請負の是正に対しても全力を挙げるべきだと思いますが、厚生労働省としてお答えください。

鳥生政府参考人 お答え申し上げます。

 一人請負と称しておりましても、就労等の実態から労働者性が認められる場合には使用者にほかならないということでございまして、この場合において、当該使用者がさらに他の事業主から業務を請け負い、労働者を他の事業主の指揮命令を受けて業務に従事させるといったケースは、労働者派遣法違反のいわゆる偽装請負に該当するものと考えております。

 偽装請負につきましては、その防止、解消を図るために一層取り組みを強化いたしまして、本年九月四日に、偽装請負の解消に向けた当面の取り組みについて都道府県労働局長へ通達を発出したところでございまして、引き続き監督指導の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

塩川委員 監督指導をしっかりやっていただきたいと思っています。

 当委員会の委員派遣で、ことしの七月にトヨタ自動車九州の宮田工場を見学させていただきました。社長初め幹部の方とも懇談をさせていただきましたけれども、工場そのものはレクサスのような高級車をつくっているラインでありまして、そこでもリコールがあったということもございました。その質疑の中で、会社そのものは七千人の従業員で、そのうち派遣、請負などの非正規が二千二百人を占めるということでしたから、三割の比重であります。

 そこで、トヨタ自動車九州の社長さんとのやりとりでも、こちらから、正規と非正規の職場での配置はどうなっていますかという聞き方をしたんですね。そうしましたら、正社員と派遣と請負、この三者の役割分担を整理しているところだ、要するに適材適所ということなんでしょうけれども、その上で、完全請負については試行錯誤をしていると。つまり、実態は完全な業務請負になっていないということを半ば表明をされているような言い方をされていたわけです。

 例えば、先ほど紹介した中外の三好工場の工場長なども、本当の請負を目指したいという言い方をしているように、実態が業務請負になっていない、実態が違法派遣、偽装請負となっているようなことをはしなくも認めざるを得ないようなお話が出ました。こういった点でも、無法の一掃に全力を挙げるべきであります。

 そこで、大臣に伺いますが、今ここで紹介をしましたように、トヨタ本体そのものに派遣や請負と言われる、間接雇用という形ではほとんど入っていないというのは私も聞いてまいりました。しかし、その下請には、今急速に非正規雇用、派遣、請負を含めて拡大をしているというのが実態だと思います。ですから、非熟練の、非正規の労働者の職場における拡大というのがリコールなどの製品の品質にも深刻な影響を与えているんじゃないのか、このことが懸念をされるわけです。

 これは、おととし参議院の調査会の場で、我が党の井上議員に対して、経済産業省の答弁として、派遣はものづくりの強さが出ないという言い方をしているわけですね。非正規、短期雇用という点ではものづくりの強さが出ないという答弁だったわけですけれども、大臣としても、派遣のような非正規雇用ではものづくりの強さが出ないんじゃないのか、私は率直にそう思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

甘利国務大臣 アメリカも、調べてみますと、ものづくりの中核人材というのは長期の雇用者なんですね。日本も、技能の中核的人材あるいはその伝承者、ものづくり現場の中核人材はやはり長期雇用の中ではぐくまれていくのだろうと思います。

 リコールと非正規の関係、トヨタと他の自動車メーカーの非正規の比率とリコールの比率というのを、ちょっと私、比較してみたことがないものですから、一概にそれが直結しているかどうかは即答できないのでありますが、ただ、正規、非正規も、それぞれ企業側が抱える、あるいは働き手の方がそういう形態で働きたいという、それぞれのニーズがあることは否定できないと思っております。

 グローバル化が進む中で、競争が激化してくると、製品のライフサイクルが短くなる、あるいは生産変動の見通しがつきづらくなるというときに、ある意味、生産のフレキシビリティーを図っていくために、一時的に、ある時期、非正規雇用を活用していくということは、一定の合理性はあると思います。

 ただ、私はほかでも申しておるのでありますけれども、ただ安直に低廉な労働力を求めるということだけで非正規を拡大するということに関しては、仮にそういう考え方があるとするならば、製造業の競争力強化あるいは働く人々の福祉の両面から適切ではないというふうに考えております。

 やはり、ものづくりの強さはどこにあるか、それぞれ企業がしっかり検証していく中で長期雇用ということを考えてもらいたいというふうに思っています。

塩川委員 低廉な労働力ということで非正規を求めるというのは問題だという点は、本当にそのとおりだと思います。

 しかし、実態はどうかという問題があるわけですね。もちろん、フレキシビリティーというお話がありまして、現場では生産調整という形で一定の非正規の雇用というのはあるのかもしれませんけれども、しかし、今現場で、特に下請などで起こっているのは、いわば中核的な、ものづくりの中心になる、それも常用雇用に近いような形での労働者が非正規、請負形態になっているというところに問題があるんじゃないでしょうか。

 ですから、ここは、例えば先ほども紹介した光洋シーリングテクノというような会社でも、オイルシールをつくっている工程では、大体生産現場の半分ぐらいは非正規の方なんですよ。こういう方が五年とか八年とか勤めているわけですね。ですから、どちらかというと、新しい新人の正社員の人よりも非正規の請負の人の方が技術が上で、その人に教えてもらって新人が学ぶなんという事態も起こっているわけで、これはやはり当然問題になってくるんじゃないのか。

 先ほどのトヨタ自動車九州でも、役員の方との懇談の中で、社員の方のモチベーションはどうですかという質問をこちらの委員の方がされた際にも、正社員はもちろんこちらが責任を負うけれども、派遣会社あるいは請負会社の社員についてのモチベーションの維持が課題だということを言っておりました。

 やはり、短期雇用という形というのがモチベーションの維持という点でも問題が起こり、その上でさらに、実態は短期雇用ではなくて、実質的には常用雇用を代替するような長期雇用に派遣、請負が使われているという事態というのは、ものづくりの強さが出ない大きな要因となるんじゃないでしょうか。改めて、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 いい物ができないような事態になれば、当然その会社は衰退をしていくわけであります。優秀な企業であればあるほど、そういう場面に遭遇したときには危機感を持って、人材の育成はどうあるべきか、競争力の源泉たるものづくりの現場の技術の維持はどうあるべきか、当然、企業経営者としては考えていく話だと思います。

 このフレキシビリティーと中核的な人材の技術力の維持、伝承ということをどううまくコンビネーションをしていくか、経営判断が問われていくところだと思っております。

塩川委員 コンビネーションといいましても、本来中核的であるべき人材を非正規にせざるを得ないような環境のもとにある。それというのは、元請、下請との関係の中で、単価のコストダウンの要請というのが実際には長期的な人材の確保を困難にするような事態を生んでいるのではないか。今みたいな違法行為がまかり通っているというのも、末端のところでそういう事態が広がっているという点で、やはりこの間の下請単価の切り下げのような事態というのがそういう原因につながっているんじゃないのか、このことが改めて問われているんだと思うんです。

 その点で、大臣に御存じかどうかお聞きしたいんですけれども、トヨタに行きました際に、トヨタの中で元請が下請に対して下請通信簿というのをつくっているという話を聞きまして、つまり、トヨタ本体が一次の取引先に対してそういうものを示し、一次が二次、二次が三次、三次が四次という形のものがあるんですね。

 そこでは、元請が取引先の評価表のようなものをつくって、経営、品質、納期、コスト、こういう四つぐらいの課題について目標を示して、それに対して半年とか一年で達成状況を評価して、それぞれランクづけをするというようなことがあって、問題があれば改善指導を入れるという形で、実際には、職場において一連の下請通信簿というのが行われている。トヨタの役員の方も、そういう言い方では表現しませんでしたけれども、期待値制度というような言い方で、この取引先の評価表の存在というのは否定をされませんでした。

 こういうトヨタ通信簿と言われているようなものがあるということは、御存じでしょうか。

甘利国務大臣 間もなく自動車生産世界一になるであろうトヨタは、あらゆる面で非常に厳しい経営方針であるということは承知をいたしております。しかし、今おっしゃった通信簿が具体的にどのようなものであるかということまでは承知をしておりません。

塩川委員 資料の四枚目に示しましたが、自動車産業、同附属品製造業における規模別の賃金格差ですけれども、一九九〇年、千人以上を一〇〇とした場合に、それ以下の従業員数の賃金がどうなっていくのか。これを見ていただけばわかりますように、バブルのはじけるぐらいまでは若干格差が縮小していますけれども、その後は大きく拡大をして、二〇〇四年の数字を見ていただいてわかるように、その格差というのは大変大きくなっています。

 その背景に、下にあります、これは中小企業庁の調査ですけれども、下請受注単価推移ということで、これは前年同期比の平均ですから、要するに、バブルのころは一〇〇・六とか一〇〇・〇があったにしても、それ以降は毎年のように単価が削減をされていく。これが現場における低賃金や労働者の労働条件の悪化、また結果としての違法行為につながるような事態につながっているんじゃないでしょうか。

 ですから、トヨタが示しているような下請通信簿のようなやり方でコストダウンを継続的に要求するというのが、職場における、下請中小企業における違法行為をまかり通らせていく、同時に、非正規雇用を拡大させる、労働条件の悪化を生み出す原因になっていると率直に思いますけれども、大臣の御認識をぜひ伺います。

甘利国務大臣 半導体に象徴されますように、新しいものが開発されて、世にデビューをしたときにつけた価格、それがずっと維持できるかというと、実はそうではないわけでありまして、技術革新、量産体制、あるいは高効率生産、そういうもの、初年度と五年後も全く変わらないということはない。下請中小企業、部品企業といえども生産性向上に最善の努力を果たすわけでありますから、そういう部分は見込んで発注価格に恐らくなるんだろうと思います。

 ただ、法外なコストダウンについては、下請関連法を通じて私からも適正に対処するようにという要請、指示はいたしております。

塩川委員 示したような違法行為が行われている、末端においてそういう実態にあるということをどう改善するのかといった際に、ふさわしくやはり、この労働者の労働条件の悪化を防ぐような、改善につながるような単価の改善というのが求められているわけであります。

 資料の最後につけましたように、自動車産業全体の収益そのものも大きくふえているわけです。二〇〇五年で三兆円ですけれども、その経常利益のうち二兆円がトヨタですから、トヨタが圧倒的な大もうけを上げているわけです。ですから、そういった大もうけをやはり還元すべきだ、下請企業への還元、それがひいては下請の労働者にも還元をされる、そういうことこそ今は求められていると思います。

 その点で、下請振興法の振興基準におきましても、対価の決定方法の改善ということで、取引対価においては合理的な算定方式に基づいて決定をする、そういう中には労務費も当然入るわけであります。この労務費には、当たり前のことですけれども、労働者の社会保険の加入、その費用も含まれての労務費だということで掲げられていると思いますが、確認させてもらえますか。

石毛政府参考人 御指摘のとおり、労務費の中にはそういった社会保険的な費用も含まれているというふうに理解をしております。

塩川委員 大臣、最後に伺いますけれども、今言った社会保険の加入を含めて、労務費が適正に単価に反映をされるといった指導が今求められているわけです。ですから、元請、トヨタが一次、一次が二次、二次が三次と下押しをするようなコストダウン要請の中で、労働者の社会保険の未加入がまかり通るような、違法行為がまかり通るような事態を是正するという立場で、この下請振興基準に基づいた指導というのを、頂点のトヨタを初めとしてきちんとやっていただきたい。その点をお答えください。

甘利国務大臣 今の景気の回復を確かなものにするためには、高い利益を上げている大企業から、つまり企業から家計への所得の移転、そして下請中小企業に対する適正な利潤の配分、それが消費を喚起するということは、私は諮問会議等でも発言をしているところであります。タイムラグがあって、景気が回復する際には労働分配率が一時的に悪化するということも経済学者から言われているところでありますが、この景気を確かなものにするために、そして中小企業が引き続き優秀な部品、製品を供給していくためにも、適切な指導をしてまいりたいというふうに思っております。

塩川委員 従業員給与全体はここ数年連続的に後退をしているわけであります。そういう点でも、必要な法制度などを活用してこの是正を図るという点で政府が全力を挙げるべきだということを申し述べて、質問を終わります。

上田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十二分散会


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