衆議院

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第8号 平成19年4月18日(水曜日)

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平成十九年四月十八日(水曜日)

    午前九時十五分開議

 出席委員

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 宮腰 光寛君

   理事 後藤  斎君 理事 近藤 洋介君

   理事 赤羽 一嘉君

      小此木八郎君    小野 次郎君

      岡部 英明君    鍵田忠兵衛君

      川条 志嘉君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    清水清一朗君

      鈴木 馨祐君    平  将明君

      谷川 弥一君    寺田  稔君

      土井 真樹君    丹羽 秀樹君

      野田  毅君    橋本  岳君

      平口  洋君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    増原 義剛君

      武藤 容治君    森  英介君

      安井潤一郎君    山本 明彦君

      吉川 貴盛君    大畠 章宏君

      太田 和美君    川端 達夫君

      北神 圭朗君    郡  和子君

      田村 謙治君    細野 豪志君

      三谷 光男君    森本 哲生君

      柚木 道義君    高木美智代君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   財務副大臣        田中 和徳君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 正徳君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          中江 公人君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            谷口 博文君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 津曲 俊英君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    石毛 博行君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    加藤 文彦君

   参考人

   (電気事業連合会会長)  勝俣 恒久君

   参考人

   (東京電力株式会社常務取締役原子力・立地本部長) 武黒 一郎君

   参考人

   (北陸電力株式会社取締役社長)          永原  功君

   参考人

   (北陸電力株式会社取締役副社長)         松波 孝之君

   参考人

   (関西電力株式会社取締役社長)          森  詳介君

   参考人

   (関西電力株式会社執行役員土木建築室長)     橋本 徳昭君

   参考人

   (株式会社日立製作所取締役会長)         庄山 悦彦君

   参考人

   (株式会社日立製作所執行役常務)         丸   彰君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     鈴木 馨祐君

  近藤三津枝君     安井潤一郎君

  佐藤ゆかり君     鍵田忠兵衛君

  武田 良太君     寺田  稔君

  鷲尾英一郎君     郡  和子君

同日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     佐藤ゆかり君

  鈴木 馨祐君     平口  洋君

  寺田  稔君     武田 良太君

  安井潤一郎君     小野 次郎君

  郡  和子君     田村 謙治君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     近藤三津枝君

  平口  洋君     片山さつき君

  田村 謙治君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  森本 哲生君     鷲尾英一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 株式会社商工組合中央金庫法案(内閣提出第三九号)

 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件


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     ――――◇―――――

上田委員長 これより会議を開きます。

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件について調査を進めます。

 本日は、参考人として、電気事業連合会会長勝俣恒久君、東京電力株式会社常務取締役原子力・立地本部長武黒一郎君、北陸電力株式会社取締役社長永原功君、北陸電力株式会社取締役副社長松波孝之君、関西電力株式会社取締役社長森詳介君、関西電力株式会社執行役員土木建築室長橋本徳昭君、株式会社日立製作所取締役会長庄山悦彦君、株式会社日立製作所執行役常務丸彰君、以上八名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。よろしくお願いをいたします。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 この際、勝俣参考人から発言を求められておりますので、これを許します。勝俣参考人。

勝俣参考人 電気事業連合会会長の勝俣でございます。

 このたびのデータ改ざんや必要な手続の不備などの問題につきまして、先生方、関係御当局、立地地域、そして広く社会の皆様に大変御心配と御迷惑をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げます。とりわけ、業界の中で率先して範を示すべき東京電力において不適切な事例が多数確認されましたことは、まことにじくじたる思いでございます。重ねて深くおわび申し上げます。

 本日は、電力各社から経済産業省に対して、三月三十日に提出いたしました総点検の結果と、四月六日に提出いたしました再発防止策の概要などについて御説明申し上げます。

 お手元の資料の二ページをごらんください。

 昨年秋に水力発電所などでの改ざんが相次いで明らかになったことから、甘利経済産業大臣の、事実を隠さず徹底的な洗い出しを行い、世界で一番安全で安心な原子力立国を目指すという方針のもと、原子力安全・保安院より電力各社に対しまして、すべての発電設備について総点検を行うよう指示がありました。

 電力各社は、計器、コンピュータープログラムの調査を初め、検査記録や点検記録の調査、工事の仕様書、実施記録の調査を実施したほか、現役社員はもとより、既に退職した社員、協力会社やメーカーなど、延べ七万人以上にも及ぶ規模で聞き取り調査などを徹底して行いました。

 三月三十日には、こうした調査結果を取りまとめ、電気事業連合会として経済産業大臣に対し、そして、電力各社より原子力安全・保安院に対し、それぞれ御報告をいたしました。また、四月六日には電力各社から再発防止策を提出いたしております。

 三ページにございますように、各社から御報告いたしました事案を集約すると三百九事案あり、それを件数に換算いたしますと、全体としては約一万件と計算されます。

 これは、例えば、同一意図による不正処理を繰り返したり継続したりした場合には、対象発電ユニット数や検査回数を掛け合わせるなどの考え方をとりまして、一例を挙げれば、同じ種類の不適切な取り扱いが十回の検査で続いた場合は、それを十件とするというような数え方で件数をカウントしたもので、各社によって精粗はあるものの、原子力約四百六十件、火力約千二百件、水力約九千件程度となっております。水力は、例えばダム下流の放流注意の看板設置の無届けのものなど、そういった簡易なものが含まれており、数が多くなっております。

 四ページに、水力発電所と火力発電所での事例を挙げております。

 水力においては、ダム、水路、発電機などに関する法定の工事計画届け出をしなかった事例や、例えば漏水などの記録、データを改ざんするなどの事例があり、火力においても、法定の溶接事業者検査を実施しなかった事例や、各種の記録、報告データの改ざんなどの事例がありました。

 五ページには、特に原子力について、重大性による分類を試みた結果を示しております。

 資料中に分類基準の一例が示してございますが、各社の分類の仕方は若干異なります。最も重大なA区分は、「法令かつ保安規定に抵触し、かつ設備の健全性が損なわれていたもの」とあり、点検の結果、ここに該当するものが六事案七件ありました。

 なお、A区分は設備の健全性が損なわれていたという定義ではありますが、このたびの評価事案が必ずしも設備の健全性を損ねているものではなく、北陸電力、東京電力の事案は、その重大性にかんがみてA区分といたしたものでございます。

 六ページには、調査の結果、原子力で明らかになった事例を示しております。

 それらは、一、予期せぬ臨界が生じた制御棒の引き抜け、二、原子炉停止操作中あるいは起動操作中に原子炉が自動停止した、いわゆるスクラムの報告義務違反、さらには、三、国の検査における偽装、不正行為などの事案であります。

 このように、原子力を中心に、重大な事象を含む多数の隠ぺい等がありましたことは、本来、社会安全に最も留意すべき立場にある電気事業者として、深く反省する次第でございます。とりわけ、原子力の制御棒引き抜けによる予期せぬ臨界の問題につきましては、多大なる御心配をおかけしてしまいました。

 制御棒の引き抜けについては、軽微なものから臨界状態に達したものまで多数の事例がありました。

 最も古い制御棒の引き抜けは、一九七八年十一月に東京電力福島第一・三号機で発生した事象ですが、当時、当該案件をきちんと情報公開、情報共有していれば、その後の問題発生が防げたかもしれず、結果として広く皆様に御心配と御不安を与えてしまったことは、まことに遺憾のきわみでございます。

 七ページには、志賀一号機の制御棒の引き抜け事象を示しております。炉心に差し込まれているべき制御棒が、操作ミスにより逆方向へ過大な圧力がかかったことから、想定外に引き抜け、原子炉の一部が局所的に臨界状態となったものであります。

 この志賀一号機の主原因につきましては、設備のふぐあいによるものではなく、操作ミスによるものと判断しております。しかしながら、ヒューマンエラーを防止するために、関係者の連携不足、チェック体制の不備など、運転管理にかかわる注意喚起やダブルチェックによる改善を図ることといたしております。また、設備面についても、メーカーと協力しながら早急に検討を進めるということであります。

 八ページをごらんください。

 原子炉停止中の制御棒の引き抜けによる臨界につきましては、予期せぬ形で生じた重大な問題でありますが、原子炉の自己制御性と呼ばれる性質、すなわち、燃料温度などが上昇すると出力上昇が自然に抑制される性質が働いて、定格出力に比べて十分に低い水準で終息し、設備事故、人身事故、さらには周辺へ影響が及ぶような事態には至りませんでした。

 しかしながら、このような事象が生じたことを隠ぺいし、立地地域を初め広く社会の皆様方に大変な御心配をおかけいたしましたことは、まことに申しわけないことでございます。ここに重ねておわびを申し上げます。

 九ページをごらんください。

 電気事業者といたしましては、二〇〇二年、平成十四年の東京電力における原子力不祥事などを契機といたしまして、これまでも各種の対策に鋭意取り組んでまいり、こうした取り組みについては、いまだ道半ばとはいえ、相応の改善をいたしていると考えておりました。しかしながら、このたびの点検において、過去のものとはいえ、社会不安に結びつくような数多くの重大な問題が見出されたことにつきましては、まさに本来打つべき対策が十分な状態に至っていなかったためであると、深く反省する次第でございます。

 十ページに入ります。

 電力業界といたしましては、各社の社長で構成する信頼回復委員会で、再発防止策について徹底的な議論をいたしております。これを受けて、電力各社は、これまでやってきたことの足らざる点を深掘りし、それぞれに具体的な対策を固めて、四月六日に原子力安全・保安院に提出いたしました。

 電力各社が報告した各種の対策を勘案して、今後、徹底した再発防止と、安全文化の再構築と定着を図るために、以下の点を重点に対策を講じてまいる所存でございます。

 第一に、企業倫理、コンプライアンスを再徹底するために、電気事業連合会行動指針の見直しや、特に各社、協力会社などの幹部、管理職への徹底した研修、教育を行うこと。

 十一ページに入ります。

 第二に、メーカー、協力会社を含めた、発電所で働く人々のすべてによる風通しのよいコミュニケーションを促進すること、そして、不正、不備を隠すことなく自発的に言い出すことができ、それを積極的に受けとめて改善する仕組みを確立すること。

 第三に、品質保証面での電力間、関係会社間の情報共有に努めること。特に原子力部門については、原子力施設情報公開ライブラリー、通称ニューシアと呼んでおりますが、これを活用した一層の情報共有を進め、隠す隠さないを判断する余地がなくなる公開の仕組みを徹底すること。

 またあわせて、電力各社が内部監査の強化なども行います。

 失われた信頼は一朝一夕に回復することはできませんが、私どもの事業活動の基盤である信頼の回復に向けて、トップが率先し、電気事業に携わる従業員の一人一人が、もう後がないという強い覚悟を持って、業界を挙げて再発防止対策を着実に実践してまいります。

 先生方におかれましては、引き続き御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

上田委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。

宮腰委員 自由民主党の宮腰でございます。

 ただいま、発電設備等における過去のデータ改ざん等の問題につきまして、電事連の勝俣会長から、参考人を代表して御報告をいただきました。

 今回、とりわけ原子力に関する不適切な事案が数多く発覚をしたということでございますけれども、原子力に対する不信、これは、事故やトラブルそれ自体よりも、その情報を隠ぺいしたことによって拡大すると言っても過言ではありません。電気事業者は、どれほど不都合な真実であっても正確に公表することが、結果的には、受ける傷が浅く済み、早期の信頼回復につながるということを肝に銘じるべきであります。

 地球温暖化とエネルギー需要の急激な高まりという地球規模、人類規模の難題が迫っている中で、この二つの課題を早期に解決し得る技術は、原子力以外には考えられない。原子力発電は今後とも着実に推進すべきであるという基本的立場で、参考人の皆様方に質問をいたします。

 まず、今回の総点検についてであります。

 今回の総点検は、昨年秋以降、平成十五年の電力不正問題以前のデータ改ざんが次々に発覚したことを受けて、甘利大臣が、事実を隠さず出すように指示したものであります。

 そのねらいは四つ。第一に、過去にさかのぼって不正を清算すること。第二に、不正を許さない仕組みを構築すること。第三に、事故やトラブルの情報を共有し再発防止に生かすこと。そして第四に、電力会社の体質を改善すること。この四つのねらいの中には、過去との決別宣言をせよとの大臣の強い意思が込められていると考えております。

 地域のトップ企業の集合体であります電事連として、今回の総点検は、甘利大臣の指示のとおり、過去との決別宣言になっていると胸を張って言えるのかどうか。また、法令に基づく適正な処分がなされることについてはどうお考えなのか、勝俣会長からまずお答えいただきたいと思います。

勝俣参考人 お答えいたします。

 私ども電気事業者は、この四カ月間、まさに総力を挙げて、考えられるありとあらゆる調査方法をもって調査いたしてまいりました。その結果といたしまして、相当と申しますか、大変いろいろなものが出てまいりました。正直、私は、もうやり尽くしたということを申し上げたい、期待したいところでございます。

 しかしながら、やはり原子力というのは、数十年の歴史を持ち、大変多種多様な工程等々ございます。そうしたことから、すべて全くこれからないということは、大変申しわけございませんが、断言しかねるのが今の実情と思っております。大事なことは、仮に出てきたときに、隠すことなく、徹底的に調査して公表し、再発防止対策を講ずる、こういった仕組みをきちっとすること、このようなことで考えておりますので、よろしく御理解を賜ればと思います。

 なお、処分につきましては、国が判断されることであり、出される処分については、私どもとしては真摯に受けとめる考えでございます。

 以上でございます。

宮腰委員 次に、原子力発電所における不適切な事案についてお伺いをいたしたいと思います。

 今回の原子力発電所における総点検におきましては、制御棒引き抜け事案が四電力で合計十件発生しております。そのうち、昭和五十三年十一月の東京電力福島第一・三号機と平成十一年六月の北陸電力志賀一号機では、原子炉が臨界状態に至っていたと報告されております。しかも、この二件は、運転日誌などを改ざんし、かつ、国に報告がなされなかった、いわゆる改ざん、隠ぺいという、特に重大な事案であります。

 私の地元であります北陸電力の永原社長にも参考人として御出席いただいておりますけれども、この臨界事故の内容と発生の原因及びその安全性についてどのように考えておいでになるのか、伺いたいと思います。

永原参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、当社は、平成十一年の六月、志賀一号機の定期点検工事の中で、手順のミスによりまして制御棒三本引き抜けるという臨界事故を起こしておりまして、当時、記録を残すことなく、発電所の方でこれを隠したものでありますが、以来今日まで八年間、当社としても見つけることができず、まことに申しわけなく思っております。

 今般の調査の中で判明いたしましたが、直ちに国の方へも報告し、あるいは、石川県、地元志賀町等の自治体にも御報告申し上げたところでございますけれども、本当に申しわけない事態が引き起こったというふうに受けとめております。本当に申しわけございませんでした。

 今、先生から、どういった事故であったのかということでございますが、概要は、先ほど電気事業連合会の方からお届けしたペーパーもございますけれども、制御棒駆動装置の工事をしておりまして、その機能の確認試験をしておりました。その際に、弁の操作を誤って、その結果、制御棒の上下の水圧の差が生じて制御棒が抜けたものというふうに判断しております。三本抜けて、弁の操作を誤ったというのに気づくために十五分ぐらいかかっておりまして、十五分間の間臨界状態が出現したということでございます。

 そして、この臨界事故の安全性についての御質問がございましたけれども、これにつきましては、当時の、環境へ与えた影響を発電所の周囲のモニタリングポストで観測しているところでは、異常値は、異常値というか有意な差が出ておりませんので、環境への放射能の漏れはなかったものというふうに考えておりますし、また、当時、原子炉では六名の作業員が仕事に従事しておりましたけれども、これも放射能を浴びるというようなことは確認しておりませんで、異常がなかったというふうに判断しております。また、燃料棒等の損傷につきましても、これには異常がないということを確認しております。

 以上でございます。

宮腰委員 記録が残っていなかったということでございますが、事故を八年間も発見できなかった理由、これはどうしてなのか。あるいは、事故を見過ごした経営の責任、さらには地域の信頼回復といったことについてどう考えておいでになるのか、伺いたいと思います。

永原参考人 八年前に臨界事故が起こって、当時これを経営層が発見できなかった、見つけられなかったというのは事実でございますが、以後八年間の間見つけることができませんでした。実は、四年ほど前にも一度、東電さんの問題があって、当社でも調査委員会をつくって調べたことがありますが、その際にも、私も委員の一人として参加したんですが、見つけることはできませんでした。

 八年間の間見つけられなかったというか、経営としては隠しておったことになりますが、本当に申しわけないことであるというふうに存じております。

 今回、地元の志賀町を中心といたしまして、本来長年にわたって当社を信頼していただいていたというふうに私は思っておりますけれども、本当に信頼していた地元の皆さんを裏切るような行為になりまして、本当に申しわけないというふうに思っております。

 この信頼回復の道は遠く険しいというふうに存じておりますが、これも今後は、四月六日に提出いたしました根本的な再発防止対策、私は、この対策の基本は、原子力は安全が大事で、安全を何よりも優先するんだという考え方を社員一同徹底すること、それから、法令遵守なり地元との安全協定は守るということを徹底していくことが基本だと思っておりますが、二十一項目から成る再発防止対策を出しました。これを今後は着実に実施して定着させていく、そういう中で、地元の皆さんのまた信頼を得ていきたい。特に今後は、地元志賀町の皆さんと、地域と一緒になった原子力事業の運営というものに努めてまいりたい、かように考えております。

宮腰委員 私も、永原社長の誠実なお人柄は御信頼申し上げておりますが、ぜひ、不退転の決意で、安全、安心を何よりも優先していただいて、北陸電力の安定供給に引き続き努めていただきたいということを申し上げておきたいと存じます。

 次に、東京電力の件でありますけれども、臨界一件を含む制御棒引き抜け事案七件、これに加えまして、昭和六十三年から平成二年にかけまして、福島第二・四号機で制御棒駆動機構が破損をいたしました。この際に、工事計画の届け出をせず、さらに、使用前検査を受けることなく予備品への取りかえ工事を行った事案がありました。このケースにおきましては、その後でありますが、破損した制御棒駆動機構と同一の製造番号を持つものを製作いたしまして無届けで使用したという、いわばさらに悪質な行為が加わる結果となっております。

 この事案における最大の問題点は、破損したものと同一の製造番号を持つものを製作するためには、プラントメーカー側の直接的な協力なくしては不可能であるという点にあります。つまり、東京電力が指示をし、メーカーである日立製作所も直接的に関与していたのではないかと考えますが、勝俣社長から事実関係とその背景をお伺いいたしたいと思います。

勝俣参考人 福島第二・四号機の制御棒駆動機構の事案につきましては、昭和六十三年の第一回定期検査において、制御棒駆動機構一体にふぐあいが発生いたしました。そこで、当社は、日立さんと協議の上、予備品の制御棒駆動機構への取りかえを実施いたしました。その際、当社は定期検査工程への影響を懸念し、必要な工事計画の届け出、使用前検査を受検せずに取りかえを行ったものであります。

 また、第二回定期検査前、平成元年でございますが、これに実施した予備品の使用前検査において、当社は、日立さんと協議の上、使用中であった予備品の制御棒駆動機構と同一仕様、同一製造番号の代替品を製作し、検査を受検いたしました。

 さらに、平成二年の第二回定期検査において、当社は、第一回定期検査における取りかえ工事を隠ぺいするため、ふぐあいの発生した制御棒駆動機構と同じ製造番号のものの製作を日立さんに依頼し、工事計画の届け出、使用前検査を受検せず取りかえを行ったものであります。

 一連の不正の動機、背景については、第一回定期検査で定期検査工程を優先してしまったこと、第二回定期検査においては、不正を隠すためにさらに不正が重ねられたものであります。

 これらの不正につきましては、法令遵守意識が希薄で、技術的に問題なければよいと判断したものであり、さらに、本来、設備の品質保証に責任を有する電力会社がメーカーに対しこのような不正の相談や依頼をしていたということは、弁解の余地がない重大な問題であり、深く反省いたして、再発防止対策を徹底してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

宮腰委員 ちょっと時間が迫ってまいりましたので、日立さんに一点だけ。

 改ざんや隠ぺいをしない仕組み、あるいはさせない仕組み、これはプラントメーカーから電力会社へという事故報告のルートに加えまして、メーカーから電力会社を通さない別ルートでの情報公開が必要なのではないかというふうに考えます。

 今回の事案の当事者として、日立庄山会長さん、どう考えておいでになりますか。

庄山参考人 御回答申し上げます。

 今時点において、〇二年以降の体制になりましてからは、随分このようなことは、その昔何でやったんだろうなと今思っているぐらいでございまして、電力会社さんの方でほとんど全部報告はされますし、私どももいろいろな問題があれば必ず報告するようにいたしておりますし、かなり変わってきたなというふうに思っております。

 したがいまして、私ども、今まで技術を通じて社会に貢献するというのが私どもの会社の趣旨でございましたし、顧客第一主義というのを言っておりました。しかし今後、やはり社会理念に合わせ、コンプライアンス上のことまで含めて、お客様第一主義というのは間違いでありまして、たとえお客様の御要望であっても悪いことはやっちゃいけないということで徹底を図ってまいります。

 やはり従来どおり、電力会社さんにおきましてのいろいろな問題は電力会社さんを介して御報告することで私どもは今後ともやってまいりますし、場合によっては、コンプライアンス上いろいろな問題につきましては、私ども、社内の弁護士さんとか、あるいは取締役さんにも直接上がるような道もつくりましたので、ぜひそういうことで、場合によっては直接ということもあろうかと思いますが、ほとんどのものは電力会社さんを介してやることでよろしいんじゃないかというふうに思っております。

 以上、お答えといたします。

宮腰委員 しない仕組み、させない仕組みということで、電力業界とプラントメーカーの間でもっと詰めて考えることがやはり必要なのではないか、再検討をお願いしたいと思っております。

 最後に、水力発電所の問題でありますけれども、関西電力さんにおいでをいただきました。

 水力事案に関しては安全上の問題はまずないと思われますけれども、石油、石炭、ガス、ウラン燃料など、金で買えるエネルギー資源とは違いまして、発電に利用する水は金では買えない公の財産であります。超過取水あるいはデータ改ざんが常態化をしていたということにつきましては、地域の共有財産である水資源を長期にわたり私物化していたことになるのではないか。少なくとも、水は自分たち電力会社のものという意識が根っこにあったのではないかと疑わざるを得ません。

 水は果たしてだれのものなのか、森社長からこのことにつきましてお答えをいただきたいと思います。

森参考人 お答えいたします。

 まず最初に、今回の発電設備の総点検で不適切な事象が多数発生したことを大変重く受けとめており、反省いたしております。深くおわび申し上げます。今後は、私が先頭に立ちまして、再発防止対策を徹底することによって、二度とこのようなことを起こさないように取り組んでまいりたいと思っております。

 先生から、水はだれのものかという御質問がございましたが、私は、河川の水は公水、つまり国民の皆様、とりわけ地元の皆様の生活に密接に密着した貴重な資源というふうに思っております。

 このような水を発電水利権として許可いただいているものでありますけれども、これを不適切に利用したということは本当に申しわけなく思っております。今後は、河川管理者の御指導を賜りながら、適切に利用させていただくということに心がけていきたいと思います。

 私からは以上でございます。

宮腰委員 水力発電事業を行うに当たりましては、原子力の場合と同様に、立地地域との共生を図っていくということが極めて大事だというふうに思っております。自然環境の保全あるいは観光への積極的な活用など、今後水力立地地域との共生をどう進めていかれるのか、森社長から改めて伺いたいと思います。

森参考人 水力立地地域との共生の問題でございますが、当社は、地域との共生につきましては、地域に根差した企業といたしまして、お客様や地域の社会の皆様とともに生きて、ともに発展するということを目指して取り組んでおります。これは当社の事業活動の根幹であるというふうに思っております。

 とりわけ、水力発電はその地域の水系に設備を設けさせていただいておりまして、地域の皆様と一体になって初めて運転が維持できるというふうに考えております。これまでも、地域の行事に参加させてもらうなど、地域の一員として皆様の御要望を受けとめながら取り組んできたつもりでございますが、今後もその思いを忘れずにしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

 また、自然環境の保全の取り組みとか観光への積極的な活用など、この件につきましても、地域のお話を伺いながら、我々として出せる知恵は出して、可能な範囲において今後とも協力させていただきたいというふうに思っております。

 私からは以上でございます。

宮腰委員 今ほどの御答弁を忘れずに、地域と共生をしていくという気持ちで引き続きやっていただきたいということを御要望申し上げ、終わります。

上田委員長 次に、岡部英明君。

岡部委員 おはようございます。自由民主党の岡部英明でございます。

 今、宮腰先生の方からもお話がございましたが、今回の一連の報告の中で何よりも一番重要であるということは、データの改ざん、隠ぺいが継続的に行われていたということだと思います。隠ぺい、まさに小さな事故が大きな事故を防ぐという可能性をなくしているということでは非常に大きな問題だというふうに私認識しているところでございます。

 その中で、甘利大臣が昨年の十一月に指示を行い、今回の総点検となったわけでございます。三月末を期限として徹底的に今回調査されたというふうに思っておるわけではございますが、二〇〇二年に東電の不正がございました。そして、そのときになぜ今回のいろいろな一連のデータの改ざん、隠ぺいが報告されなかったのか。その中で、果たして今回、再度このような形で報告の指示を求められて、すべてを出し切った、うみを出し切ったと言えるのかどうか。そのことについて電事連の会長の方から御見解をお伺いしたいと思います。

勝俣参考人 お答え申し上げます。

 まず、なぜ二〇〇二年のときに出し尽くさなかったのか、この問題でございますが、私ども、その際、原子力の定期検査報告等々と、ある程度、かなり突っ込んだ調査をいたしました。しかしながら、若干範囲が狭かったということが一点。それからもう一つは、当時、私どもの会社で申し上げますと、会長、社長以下が辞任し、そして全号機とまるというような、非常にある意味で凍った状況にあったと思います。そうした中で、今回のアンケート調査でもって、その当時なかなか言い出すのは難しかった、こんな御意見もございます。同時に、私の反省事項としては、もっともっとそのときに出るような仕掛け、仕組みを本来つくっておくべきであったと今の時点では反省しておりますが、そうしたことを含めて、対象が狭かったことと言いづらかったというこの二つがありましてなかなか出し尽くせなかった、こういうことで考えております。

 今回、これは私どもだけではなくて全社挙げてですが、データ、書類等の調査を広範囲に行うとともに、社員、OB、メーカーさん、協力企業さん等々七万人に上るヒアリングを実施する、あるいは、グループ討議といった格好で、そのとき何かあったんじゃないかとか、そんなような格好の議論等々を重ねまして、今回いろいろな事例が出てきたということでございます。

 ただ、問題は、全部出尽くしたかと言われますと、これはなかなかつらいところでございまして、長年の歴史を持っており、またいろいろな工程、いろいろな方々が働いた原子力でございますので。肝心なことは、出てきたときにはすぐさま調査し、公表し、原因対策をつくって防止対策を講ずる、こういうことでございますので、よろしく御理解のほどお願い申し上げます。

岡部委員 確かに、今回の報告につきましては評価するところもあるのだろうというふうに思っています。七万人に及ぶ意見の徴収、そして、古いデータは、戦前のものもこの一万件の中には入っているというふうに聞いております。

 ぜひお伺いしたいのは、なぜそのようなデータの改ざん、隠ぺいが行われていったか。いろいろチェック機能があるかと思うんですが、安全文化という意味で、意識の中で何が足りなかったのか、そして、今でももしかするとあるかもしれないという御発言が今ちょっとあったわけでございますが、まだ足りないところがあるのかどうか、ぜひお伺いしたいと思います。

勝俣参考人 こうしたことが行われた背景、原因には、いろいろな要素が複合的に絡み合っていたのかと思います。一つは、安全には問題ないんだから、むしろ行政当局とか自治体に説明しないでうまく省いちゃった方が早いとか、あるいは、安定供給というか需給上の工程をきちっと早くやった方がいいとか、あるいは、何か問題が出たときにその職場だけで処理しちゃって上まで上げていかない風土というものがあったとか、そんな要因がいろいろ絡み合って出てきた問題だと思っております。

 そうしたことにつきまして、私ども、二〇〇二年の不祥事にかんがみまして、コンプライアンスの遵守、情報公開の徹底、あるいは職場風土の改善等々、力を尽くしてまいりました。これは私どもに限らず各社同じだと思いますが、そうした方向でやってきて、おかげさまで昨今は非常に数少ない、出たのも、ちょっとまさに過って出たというような、そういうことでございます。

 ただ、私の申し上げているのは、過去までさかのぼったときにそうした問題が発見されることは絶対ないということはなかなか言えない、こういうことでございますので、御理解のほどよろしくどうぞ。

岡部委員 わかりました。二〇〇三年十月より原子力については大きな隠ぺいがなかったというふうに御報告を受けておりますので、ぜひ今後も安全についての取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 そして、今回の中で幾つか、やはり原子力については大変重要なことだというふうに思っています。現在、CO2や環境等の問題、また原子力のエネルギー源での優位性と申しますか、原子力の安全性が大変高まっているわけでございます。その中で、今回の報告、また、隠ぺい等が、今後の原子力行政の発展が阻害されるようなことがあってはならない、そのためにも、隠ぺいがないような、そんな体質をつくっていただきたいと思うわけでございます。

 その中で、北陸電力さんの志賀原発についてのお伺いをしたいというふうに思っています。

 いろいろ新聞を読みますと、マニュアルが不手際だったというような報道も一部ありましたし、また手順書に不備があったとか、また手順書が守られていなかったとか、その点について、どのように責任を感じられているのか、どのような事故の原因であったのか、お聞かせ願いたいというふうに思います。

永原参考人 志賀一号機の臨界事故につきまして、当時、作業の手順書がきちっとしていなかった、あるいは手順書をちゃんと遵守しながら仕事をしなかった、そういったことをいろいろ言われておりますけれども、当社の調査といたしましては、当時の作業手順書が、きちっと行われておれば臨界事故にはならなかったというふうに判断しております。そういう意味では、本当に、臨界事故に至ってしまっていることは何とも申しわけないという気持ちでございますし、何で現場の方の作業がきちっと行われていないのかということについては本当にるる反省すべき点があるはずでございます。

 作業手順書につきましては、今申し上げましたように、きちっとそれを遵守して行われれば臨界事故は起きなかったというふうに申し上げましたけれども、しかし、その手前の、弁のあけ閉めとか、あけておく弁を閉じてあったとか、あるいは流量の調節弁の圧力を調節しておくとか、そういう重要な部分について明確な、ここが大事ですよというようなものを当時はしていなかったことが原因の一つだというふうに思っております。

 それから、作業が、原子炉格納容器の下の制御棒を駆動させていたわけでありますが、弁操作も。一方、弁の操作とか制御棒の操作は中央制御室という場所とは離れた場所でやっております、この連携がうまくいっていなかったこともわかっております。本当に残念なことですが、統一指揮する指揮官とか、だれが責任者なんだということもあいまいな状況で行われてしまったことがこのような申しわけない事故になったんだというふうに反省をいたしております。

 現在では、そのようなことがないように、手順書にはちゃんと、あらかじめ弁をあけておけよ、あるいはこの仕事はだれが隊長でやるんだということは決まっておりますけれども、残念ながら八年前当時にはそういう残念な事故等もございます。

 以上でございます。

岡部委員 ありがとうございます。

 ヒューマンエラーというわけではないんでしょうが、人間のやることでございますので、やはりヒューマンエラーを前提としたシステムづくりというものを、マニュアルに頼ることなく、今後も整備していただきたいなと思うわけでございます。

 そして、今回の志賀での事故につきまして、北陸電力さんのトップの方は、本社の方は知らなかった、現場で行われたというふうな話を聞いております。もしそうであるならば、なぜ現場の方で隠ぺいをしなくてはいけない、そんな雰囲気があったのか。現在と当時では雰囲気が、原子力を取り巻く環境が大分違うんだろうというふうに思うわけでございます。

 また、新聞報道によりますと、発生した当時、二号機の増設の地元の了解を受ける二カ月前であった、そういう中での隠ぺいだったというふうにも聞いております。そういうことも影響するのかなというふうに思うわけですが、なぜ現場の方で、そのように本社に知らせることなく隠ぺいが行われる雰囲気があったのか、ぜひ御見解をいただきたいと思います。

永原参考人 平成十一年の六月のこの臨界事故につきまして、事故の起こる四日前に、実は、定期検査中に非常用ディーゼルという発電機の故障が見つかりまして、この四日間、物すごく忙殺されておったということが判明しております。そういうことで、作業は、所員が大変無理にやっているという状況も実はございました。

 それから、今先生が御指摘のように、二カ月後の予定として志賀二号機が着工するというスケジュールがわかっておりました。当然、地元との合意形成上、仮にこれがはっきりしてくると、志賀二号機の着工は繰り延べというか御破算というか、そういうのも感じておったかと思います。

 そういった前後の事情は、所長に対してあるわけでございますけれども、私、この件を振り返ってみまして、やはり当時の社内全体の、経営層と発電所現場の技術陣の責任者との間の風通しの悪さと申しますか、経営体質にいささか問題があったんだろうと。問題が発生したときに、所長が上にこういうことが起こりましたということを素直に報告できないという雰囲気があったのではないかということが残念であります。

 その結果、社内調査の結果、あるいは今回、私どもは、社内で調べましたといっても、なかなか、これは本当かということもございますので、社外の弁護士さんから成るチームをつくって調査もしてもらいました。この両方の結果は一致しておりますけれども、こういう大きなことが、発電所の現場で所長以下の判断で、臨界事故を外部に報告しないでおこうということが決められたということで、本店の方あるいは本店上層部、当時、経営層は全く知らなかったというのが実態でございます。

 以上でございます。

岡部委員 想像しますに、現場の方では、やはりこの事故を発表することによって大きな影響があるんだろうというふうに考えていた。アメリカの航空事故などでは、免責を前提にいろいろな報告、調査をされるということを聞いております。原子力の安全につきましては、マスコミも、また世間も大変厳しい目を向けられている。その中で、余り過剰でありますと、どうしても隠ぺいが起こってしまう、私は、そういう懸念もあるんだろうと。

 そういう意味では、今後、安全文化を進める上で、やはり、許すことはもちろん許されないわけではございますが、それにつきまして、もっと原子力を取り巻く環境を含めて、物が言えるような、そういう制度づくりといいますか、そういうものをつくっていかなくては、これは原子力の今後の発展を損なうことになるのではないかなというふうに思う一人でございます。

 そして、志賀原発につきまして、日立製作所の方に聞きたいわけでございますが、先ほど、マニュアルについてはきちんとできていたがまだ多少足りないところがあったということでございました。そしてまた、検査中、メーカー側も一緒に立ち会っていたということでございました。その中で、そのときの事故について知り得たのか、知っていたのか、その点についてお伺いしたいというふうに思います。

庄山参考人 志賀の臨界事故の件につきましては、私どもも、作業員を派遣している立場におきまして、このようなことが起きたことを非常に遺憾に思っております。

 ただいまの御質問でございますけれども、先ほど電事連の会長あるいは永原参考人からもお話ございましたが、私どもの反省は、やはりだれが指揮をきちっとし、そして、その指揮のもとで私どもの作業員は動いたわけでございますけれども、そのプロセスあるいは徹底度合い、あるいは事前のスケジュール相談、これにおいて、私どもがもっと積極的に参画していればよかったかなというふうに思っております。

 そして、この事実を私どもは知っていたかどうかということでございますけれども、これにつきましては、実は、当時おりました私どもの作業員は知らされていなかったということのようでございまして、相当前のことではございますけれども、私自身も、先日、その当時現地におりました人間に直接会いまして、いろいろ確認いたしましたけれども、特に、結局臨界のような状態があったかどうかというようなことは、極端に言いますと、先日の、三月十四日ぐらいまでは知らなかったということのようでございます。

 そういうことなんでございますが、しかし、私どもメーカーとして、やはり電力さんにいろいろな形で、私どもができるだけの支援、サポートをするのは当然のことでございますので、今後、内部のコミュニケーションをよくしてやるように、さらに徹底を図ります。現状におきましては、そういう問題は〇二年以降かなり改善されているとは思うんでありますけれども、念には念を入れて、さらに徹底を図りたい。

 以上でございます。

岡部委員 ありがとうございます。

 志賀原発以外にも、昭和五十三年の福島第一の三号機から始まって、東京電力さんの方ですね。十件制御棒の引き抜けに関連する事象が発生している。その中で、臨界に達したと思われるのが二つある。メーカーとして、ほかのメーカーも、東芝さん、日立さんで起こっているわけでございます。

 メーカーとして検査中立ち会っているということで、そういう情報をその間に知り得なかったのか、また、業界としてどういうふうに対応すべきだったとかいう考えがあるのか、また、今後どういうふうに取り組んでいくのか、その辺についてお伺いしたいというふうに思います。

庄山参考人 先ほど電事連会長から十件のお話がございましたけれども、実は私ども、臨界という事例は、ああいうことをやればこういうことが起きるということは、もちろん、ああいうプロセスの中の一つですから知っておりますけれども、あの事例は私どもは経験したことがなかったということでございます。

 それで、反省を含めまして、BWR関係の、電力さんとメーカーと入りましたBWR事業者協議会というのを既に設けてございまして、そこで、いわゆる運転上、まあ製造にまつわるところはそれぞれのメーカーで責任というのは非常にはっきりしておりますけれども、運転にまつわる、あるいは実際御使用になった上でいろいろなふぐあい点とか、こういうものについては意見交換をするような形にいたしましたので、今後は、こういうことは包み隠さずやろうというふうにどんどん持っていきたいと思います。

 それから、メーカーなどの例はちょっと事例が違ってございまして、そういうものも含めて今後意見交換をやって、より一層皆様方に安心、安全に使っていただけるようなものにしていきたい。

 以上でございます。

岡部委員 ありがとうございます。

 引き抜けにつきましても、福島第一・三号機、昭和五十三年にこのことが報告されていれば、その後の九件についてはなかったことでありますし、やはり情報を共有する、公開するということが安全については大切なのかなというふうに改めて思った次第でございます。電力会社の皆様、メーカーの皆様、今後、安全について、安全文化の醸造についてぜひ御尽力いただきますようお願いしまして、終わりにさせていただきます。

 ありがとうございます。

上田委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは、参考人の皆様、御足労いただきましてありがとうございます。

 まず、先ほど勝俣会長から今回の御報告の概要がなされたわけでございますが、一万件を超えるということで、過去にもさかのぼり、その中には、そちら側からは言いにくいかもしれませんが、軽微な事案もあり、相当深刻な、加えて、かつ悪質な事案もあった。その中で、先ほどAランクが六事案七件というような御報告も、それは電事連さんの認識だというふうには思いますが、そういうことをされている。

 ただ、これだけの徹底的なことを報告しながら、先ほど勝俣会長からは、正直これが完璧かどうかわからない、過去にさかのぼったりとか軽微な案件ということを言われた。それは本音の話かもしれませんが、しかし私、そこは、それであるならば、今回の御報告自体が評価に響くというふうに思うんです。というのは、徹底的にうみを出せと言われて、大臣が相当踏み込んだ指示を出し、そして皆さんも総がかりでやった、その中の報告がまだ完璧じゃないかもしれないと御報告の責任者が言われるということは、それでは話がどうなのかなということを正直に私は思います。

 そのことと絡むんですが、大昔の軽微な案件が出てくるかもしれないというようなことではなくて、A分類とかB分類のことについては、少なくともそれはこれからは出てこないというぐらいのことの宣言はされないと、大臣の指示というのが余りにも軽い話になってしまうのではないかと私は思うんです。大臣の指示に対して皆様方の受けとめ方という意味での評価が低い評価になってしまうのではないかと思うんです。

 この点について、どこまで年限を区切るかということはいろいろな議論があるかと思いますが、しかし、例えば二〇〇三年の十月以降のものは今回は出てこなかったわけですから、法改正以降の改ざんは今後出てこないということについては、どのように確信というか認識をされているのか、まず御確認をさせていただけますか。

勝俣参考人 やや誤解を生ずる私のお話であったかもしれませんけれども、正直、一言で言えば、人事を尽くして天命を待つと申しますか、徹底的にやったつもりです。

 したがって、ないということで断言できればそれにこしたことはないというのはまさに私の気持ちでございます。しかし、やはり人の記憶というようなものをたどる、例えば今回の場合でも、いろいろグループ討議等々をやりまして、それによっていろいろ触発されて出てきた、そうすると、それが出たことによって、ああ、それだったらこういうような、こんなことがあったななんというようなお話もありますので、正直、パーフェクトにないということはなかなかということでございます。まさにそんなところでございまして、全力を挙げたということはまことに、もう私、こればかりは断言できるということで考えております。

 それから、二〇〇三年以降、ほんのちょっとしたミスみたいな軽微なものはあるにせよ、当然ながら、重大なものは出ておりません。

 私どもの会社の例で申し上げれば、私ども、特に二〇〇二年からということでいたしているわけですが、やはり情報公開というのを非常に徹底して、年間一万二千件ぐらい今発表しております。そうしたことによって、それがある意味で非常に細部のところまでわたっての牽制にもなったりしております。それから、不適合なものは絶えず毎日、朝、いろいろ議論をするような仕組みもでき上がっておりますので、二〇〇二年以降については、まさに重大なものは全くないということは、私自身、東京電力として断言できるということで考えているところでございます。

 以上でございます。

赤羽委員 わかりました。二〇〇二年以降、そういったことは出てこないということがこの御報告でなされたというふうなこと、私はそれがあるべき姿だと思いますので、そうさせていただきたいと思います。

 次に、二〇〇二年のいわゆる東電不正問題のときにも総点検の指示が出た、そのときに、なぜ今回の、例えばAで分類されるような事案が出てこなかったのか。先ほど勝俣会長からは、対象範囲が狭かったとか、言いづらかった、報告するのが難しかったという現場の雰囲気があったという話がございました。

 私が聞くところによりますと、記録として残っているものしか要するに調査をしなかった、職員に対するヒアリングは行わなかったというような話も聞いておりますが、その辺がどうなのかということと、二〇〇二年の東電不正問題というのも電事連にとっては大変大きな事案であって、そのときに本当になぜ出なかったのかというのが、やはりこれは、我々も大変ショックでありました。

 一方で、電力会社というのは国民生活に欠かせない電気を供給する事業者だ、であるから、不祥事が明らかになっても不買運動が起こるわけではないしということで、どうしても甘さがあるのではないかというようなことを、やゆするようなことを言う人もおります。これは、変な話ですけれども、日本航空とかそういうナショナルブランドのところに対する批判としても常に行われることでありますが。

 こういったことについて、先ほどのお答えと重なってしまいますけれども、二〇〇二年のそのときに、なぜ、記録だけしかチェックしなかったのか、それが本当ならばですね、そういう狭い範囲の調査しかできなかったのかということについてお答えをいただければというふうに思います。

勝俣参考人 二〇〇二年のときは、いわばGE案件と申しますか、内部申告から話が始まりまして、言ってみれば、定期検査等々における不正ということが中心でございました。そうしたことを中心に、いろいろなものを調べていった。当然、その関係者等々につきましては、私どものヒアリング、あるいは弁護士さんのヒアリング等々もいたしました。ただ、広範囲にわたってのヒアリングというような格好では、今回のようなヒアリングは残念ながらとってなかったといったことも一つの要因であったかなと思います。

 それから、今回、いろいろ対比をつくって調べますと、データ関係、書類関係をチェックしただけでは見つからなかったけれども、どうもそのときにこういうことをやったといったようなことをベースにして、さらにメーカーさん等々もいろいろなところまで問い合わせして、それで見つけたような事案もございます。

 そうしたことで、前回がそれでは不徹底だったんじゃないかと言われると、大変申しわけないと言うしかないわけですけれども、その当時も、もう必死になって、言ってみれば、そのGE案件を中心に、一体どういうことであったのかといったことで調査したことも事実でございます。そのときに、何かおかしなことがあったら出してほしいということは、協力企業まで含めて、私自身、みずからお願いしたといったこともしたんですけれども、残念ながら、今のような形でいろいろな格好で出てくることがなかったということで、その点、大変申しわけないことであります。

 そうした反省に立ちまして、また、二〇〇二年から進めてきた、させない仕組み、しない風土とか、言ってみれば、コミュニケーションの活発化まで入れて、そうしたことで、だんだんそういうコンプライアンスを遵守して、この際言おうといったことでいろいろな案件が出てきたのだ、こういうことで理解しております。よろしく御理解のほどお願い申し上げます。

赤羽委員 次に、北陸電力の志賀原発一号機の臨界事故に関する件について質問させていただきたいと思います。

 今回、この件の事故隠しについては、やはり御報告の事案の中で最も重大なものと私は認識をしておるわけでございます。

 この件で、即発臨界だったとの報道もあります。私はちょっと専門家ではないので、即発臨界特有の危険性とはどういったことなのかということと、その危険性が今回この事案の中で現実のものとなった可能性があったのかどうか、先ほどちょっと似たような御質問があったかもしれませんが、繰り返し御答弁いただけますか。

永原参考人 お答えいたします。

 平成十一年の六月の志賀一号機の臨界事故につきまして、即発臨界を起こしておったのかどうかという点ですが、結論を申し上げますと、はっきりわかりません。したがいまして、私どもの事故報告書でも、これは、制御棒が抜けるスピード、状況がどうであったとか、八年前当時の事象がはっきりわからないがためにわからないということで申し上げておりますけれども、厳し目の条件を設定して、二ケース、シミュレーションを行っております。一つのケースでは、通常の臨界と申しますか、核分裂が静かに起こっていくというケースでございますし、もう一つのケースは、即発臨界が瞬間起きて、先ほどもありました軽水炉の自己制御性によってそれがおさまる、その後は静かな臨界が続くというケースでございます。

 そういったことで、この辺は原子炉の本当の専門家というか、高度専門技術を有していられる先生のところでも難しい分野のようでありますが、起きておったか起きていなかったかというのははっきりと断言できないというところかと思います。

 次に、この即発臨界が起こった場合に、何か危険なことがあったのか。これは、結論は、ございませんでした。と申しますのは、当然、即発臨界が起こって大きな影響が出るのは、燃料棒というか、燃料に与えるわけですけれども、私どもの燃料は何か破壊されたり損傷されたりということはございませんで、微細な傷も、もしあれば、原子炉の中に放射能がにじみ出るというかリークしていくわけで、そういうのもございませんし、その事故の後も、今度も再確認しておりますけれども、燃料には異常がないということを確認しておりますので、そういった危険なことがあった可能性はなかったというふうに感じております。

 以上でございます。

赤羽委員 ただ、危険な可能性がなかったとはいえ、今回のこの事故隠しについて、やはり看過できにくい問題だというふうに思っておりますし、そういった認識は北陸電力自身もあるというふうに思います。

 この件についての御報告を見させていただきますと、一つは、臨界事故発生原因として書かれてあるのは、電気保修課員と運転員との打ち合わせ不足というような報告がある。私は技術の現場を知っているわけじゃありませんけれども、原子力を扱うというのは、我々国民から見ると、大変センシティブな、非常に安全性を強く求められる現場である、こういう認識がある。その感覚からいくと、電気保修員と運転員との連携不足というのは、私は、余りにも初歩的な、連携がとれなかったということで済まされるような次元の話ではないのではないかというのが率直な感覚なんですね。

 先ほど、手順書は正しかったという御報告がありましたが、どうも全体の手順を理解している人が現場の中に一人もいなかったんじゃないか。そういうような状況の中でこのときの検査を開始しているということは、私みたいな素人が考えても極めて危ないことを放置されたのではないかというふうに考えるんですが、この点についての認識はどうだったのでしょうか。

永原参考人 お答えいたします。

 先ほども、手順書そのものは、その手順書がきちっと守られて作業が行われれば、臨界は起きなかったということを申し上げました。ただし、その手順書は、先ほども申し上げましたように、あらかじめあけておく弁を閉じておったとか、流量を調節する弁の調整をきちっと行っていなかった、その辺の重要なところを注意深くというか、注意書きと申しますか、しておればよかったのになということでは、改善の余地がある手順書であるというふうなことが一点。

 それと、今先生御指摘のように、中央制御室と原子炉格納容器の下の制御棒駆動装置のところとの、離れているところの統一指揮をする者が当時不明であった。形式上はというか、本来は当直長という職位の発電課の者が指揮をするはずでございましたけれども、その肝心の当直長に、きょうのこういう仕事を全部、こういう段取りでしますよというふうなことが、どうも八年前当時、この件で話が届いていないということが判明しまして、本当に残念なことがいっぱいございます。

 先生御指摘のように、原子力の仕事、安全にかかわる仕事で、一言で言うと、何でこんなずさんなことになっているのかと寒心にたえないというところでございますが、これは、でも、本当に実態はそのようだったようでございまして、これに、実際うちの社員がいて、あと日立さんの作業の方がいらして、この辺でも、本当にミスを起こした原因は幾つもあるんじゃないかというふうに、本当に残念な事故でございました。

 現在では、そのようなことはしないような手順書なり作業体制を組んでおりますが、本当にこの件は悔やんでも悔やみ切れない事故であったというふうに存じます。

赤羽委員 私も、本当に詳しくはわかりませんが、ぱっと聞いていて、やはり相当ずさんな、お粗末な話と言わざるを得ない、こう思うんです。

 メーカーの日立の方に聞きたいんですが、海外の事例なんかからも見ていて、弁の操作を間違うと制御棒が引き抜けるということは知っていたのではないでしょうか。その点、確認しておきます。

庄山参考人 この弁の操作につきましては、当然、動かすときには、どこのバルブを開いて、どれをどうやってということで操作することになっていますので、流量がゼロにならないままにやりますとこういうケースも起きるということはもちろん承知しておりました。先ほども申しましたように、私ども、事故の事例としては経験がなかったので、今にして思いますと、もっともっと強く、説明書にしても何にしても、線を引くとか太い字で書くとか、もう少し徹底を図っておけばよかったかなという反省でございます。

赤羽委員 何か、手順書の表示を変えるというような世界じゃないんじゃないかと私は思うんです。

 今回の北陸電力が初めて行う試験の手順書を日立さんから提案する際に、そういった注意書きというのが十分されたのかどうか。メーカーとしては正しいものを提案した、それをオペレーションする現場がふぐあいだったという話なんですが、技術支援を行うべきメーカーとして、責任というのはやはりあるのではないか。一体となってオペレーションしているのだろうと私は聞き及ぶんですが、その中で、メーカー側としての責任というのはどのように考えられているのか、この件についてお答えいただけますか。

庄山参考人 実際の現場の作業といいますのは、だれかやはり一人指揮官がおって、その方の確認で事々が進みませんと、電力さんの方がおられたりメーカーがおったりいたしますと、かえって混乱するわけでございます。

 今回の場合、前の作業、お仕事から次のところに移るときに、流量がゼロであるということの確認だけがされなかったために、今回の事故がいろいろ起きたわけでありまして、今現在、記録も必ずしもございませんのではっきりしませんが、恐らくそのときに、ゼロにならないのに指示を出されたのではないかと推察いたしておりまして、非常に不幸な、申しわけないことが起きたんじゃないかというふうに思っております。

赤羽委員 ぜひ当事者として、やはり国民の命にかかわることなんだという緊張感で、当然持たれていると思いますが、この件を契機に、改めてその認識を強く徹底していただきたいと申し上げたいと思います。

 引き続きまして、その報告書で、所長以下十四名が協議し、隠ぺいを決定したという報告があります。まさに組織ぐるみの改ざんが行われた、これはどういうことなのかなと。

 先ほど勝俣会長の御答弁にもありましたけれども、どうもいろいろ聞くと、要するに、彼らに徹底されていることは、一日の工程をストップすると七千万円のロスが出る、これは物すごく刷り込まれていたという情報があります。

 そして一方で、私の同僚で技術出身の国会議員の意見では、技術士というのは、高度に専門的な事柄というのは自分たちしかわからないんだ、わからないし、安全上も大したことがないんだから、これを一々本社に報告するのではなく、技術がわかった我々だけで処理しよう、こういったことがあったのではないかと。だから、そういったことが多分あったのかなと思うんですが、経営トップと原子力部門とのフランクな対話の実施が再発防止対策の中に、そちらからの報告にもあるというふうになっているわけですね。

 だから、この辺の組織ぐるみの隠ぺいがなぜ行われたのかということをもう一度御報告いただき、これが今まで出てこなかったというのも、私は本当に国民に対する裏切りではないかと正直思うんですが、この点も踏まえて、今回事故防止対策をとられておりますが、その点について十分な信頼回復ができるというふうに認識をされているのかということも含めて、御答弁いただけますか。

永原参考人 お答えいたします。

 八年前当時、発電所で所長を含めて十四名ほどで、事故を外部へ出さないというか、報告しないでおこうということを決めたのは事実でございます。十四人で決めたというよりは、みんなが、所長、どうするんですかと、じっと黙っていて所長が決めたというのが実態であろうというふうに推定はしております。

 これが本社の方に伝わらなかったのは、先生、何か専門家意識があって、本社へ言っても、自分たちで決めざるを得ぬというか、そういう雰囲気があったのかということでございますが、ある意味ではプライドというか、原子力はおれたちが一番よく知っているというプライドは持っていたと思います。

 そういう意味では、自分たちが判断、決断しなくちゃいけないという意識もあったんであろうということは推定いたしておりますけれども、しかし、原子力を推進していくには、例えば、口は悪いんですが、経営層の方も、発電所の方の技術陣に全部お任せしていく、そういうことはよくないというか間違っているのでありまして、私もよく言葉足らずで誤解を招くことがあるんですが、経営層と原子力技術陣とは一体となって推進していくというか、そういう気持ちが大事だろうというふうに思います。

 そのためには、経営層の方が現場技術陣とコミュニケーションをよくとるというか、風通しのよい組織をつくっていくことが大事なんだろうというふうに思っておりまして、そのように心がけて私自身はしておるつもりでありますし、今後、より強化していかなきゃいかぬというふうには思っております。

 あと、申し上げたいのは、この八年前当時、所長以下が何でこれを自分たちだけでそういう判断をして隠したんだろうねと。これは、本当に国民の皆さんに対しましては申しわけないという気持ちでいっぱいなんですが、先ほど、その四日前に非常用ディーゼルの故障があって、その対応で忙殺されておったという話と、その後に、二カ月後に志賀二号機の着工が予定されていて、その工程を確保したいというか、そんなのがあったよという話をしました。

 そういう前後の事情はございましたけれども、やはり先ほど申し上げましたように、風通しの悪い組織というものがあったんではないか、八年前当時は。そういうふうに思わざるを得ぬ。

 この件から私思いますのは、四日前の非常用ディーゼルで忙殺されておって、多分、この作業に携わっている人も物すごく疲れておったはずなんですね。したがって、こういうときは、工程を優先するなというか、ブレーキをかける役目を経営層が持つべきであったのになと。疲れをとってから仕事をすれば、先ほど随所にいかにもずさんな仕事をしているという、これは現実かもしれませんけれども、八年前当時といえども、こういう仕事にはならなかったんではないかというふうな思いで残念であります。

 そういったことで、いろいろな要因が重なって、前後の事情が重なっているという背景はございますけれども、本当に残念な臨界事故でございまして、国民の皆様には幾重にもおわびを申し上げたいという思いでございます。

赤羽委員 私、今回の各社の報告をばっと読ませていただいて、どうも、企業コンプライアンスの確立という報告がありますが、私はそれ以前の、率直に言って、企業コンプライアンスというのはもう少しきっちりしたものがあって、企業の精神というか指示が徹底しないと。

 しかし、この事案に関しては、当時のこの状況、今の北陸電力の話なんかを見ておりますと、会社の上から、工程至上主義みたいなものがやはり相当強かったんではないかなということ、これは私の感想というか想像ですけれども、そういうところから改めて企業コンプライアンスというのが出てくるんじゃないかと。まず改めるべきは経営トップのところなんじゃないかなということを、強く私から申し上げておきたいと思います。

 原子力安全について私感じるのは、うちの党の中でも、すごい専門家がいると、こんなに安全なものはないんだ、こう言うわけですね。一方では、あんなに危ないものはないんだと言うわけです。この原子力安全についての一般の国民の感覚と専門家の感覚か認識のギャップというのは物すごく大きい。

 それは、専門家の言い分の方が私は多分事実に基づいていることの方が多いと思うんですが、どうも、前回のうちの委員会のやりとりの中でもあったんですけれども、原子力発電所というのはもともと安全に設計している、安全につくられているということが大原則なんだから、現場でも、もともと安全なんだということが大前提で、だから、ちょっとしたミスでも、これは深刻な危険ではないんだということにどうしてもなりがちなのではないか。

 しかし、そういう事実はある一方で、人間がやることですから、やはりミスは起きるんだという前提での取り組みということがやはり大事なのではないかということが一つでありまして、そして、そのミスを、先ほどの質問者にもありましたけれども、関係者の中で共有することがすごく大事だと。信頼回復委員会ですか、各社の社長さんの協議会もあるようですけれども、これに加えて、今BWRとPWRごとにメーカーとの協議会があるというふうに聞いております。それぞれ東電さんと関電さんの社長さんが会長になっていると。

 恐らく、メーカー同士というのは、技術というのは会社の社秘であるから、そこの共有というのは非常に難しい部分もあるかと思うんですが、そういったことを乗り越えて、今の協議会なんかの場を使いながら、事故防止という観点での情報共有というものを、やはり少し具体的に踏み込んで進めていくべきではないかと思うんですが、その点について、勝俣会長と森社長から一言ずつ御見解をいただければと思います。

勝俣参考人 今先生御指摘の点でございますけれども、今回、制御棒引き抜けや誤挿入、こういった事例が複数明らかになったことでございます。

 そこで、東京電力などBWRを所有する電力各社は、メーカーとともに組織しているBWR事業者協議会内に本件の対応を検討するワーキンググループをつくりまして、これまで四回の検討を開催しております。そして、その時点までに確認されているBWR各社の制御棒引き抜けや誤挿入について情報共有を図る、こういうことをするとともに、各社協力して、原因調査と対策案の検討を今行っているところでございます。

 なお、それ以外に、全体的な情報共有というのは、原子力施設情報公開ライブラリー、通称ニューシアと呼んでいるところがございますが、種々いろいろなものが出てきたときにはそこで情報を共有するという施設もございまして、今後、それをさらに充実させていきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

森参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、電力やメーカーなどの関係者が情報を共有するということは、原子力発電所を安全、安定に運転するために非常に重要なことだというふうに認識しております。

 しかしながら、私ども、美浜三号機の事故が発生いたしましたときに、プラント運転に必要となる保守情報が共有できていなかったということが非常に重要な背景要因として浮かび上がってまいりました。そういうようなことから、事故再発防止対策の一環といたしまして、国内のPWRを保有しております五つの電力会社とプラントメーカー二社、これは三菱重工さんと三菱電機さんですけれども、が会員となりまして、PWR事業者連絡会というものを設置いたしまして、ここで共通案件に関する技術的な検討の実施と技術情報の共有化を図っております。

 具体的に申し上げますと、まずはトラブル等の水平展開等の共通案件に関する技術検討、設備の保全や改善事項等の情報の共有化、それから点検資機材とか予備品等の情報の共有化、さらには中長期工事計画の情報の共有化、こういうようなことを議題といたしまして、年に三、四回の頻度で議論を行っております。

 今後も引き続き情報交換を積極的に行いまして、原子力の安全、安定運転につなげていきたいというふうに考えております。

 私からは以上です。

赤羽委員 残念ながら時間が来ましたので、もう終わりにいたしますが、エネルギーの状況を考えますと、国産エネルギーの比率を上げなければいけないとか、また、環境問題について、やはり原子力が担う役割というのは当然大きくなっていく、そのことを踏まえて、エネルギー基本計画でも原子力立国化ということまでネーミングをして出したわけでございまして、ここに対する当事者としての説明責任というのはやはり大きいと思うんです。

 ですから、マスコミとか地方自治体、またあと教育の現場とか、もうこぞって、やはり相当のコストをかけて、正しい事実を伝える努力をするということをぜひしていただきたい。私たち国会議員の中でも相当情報ギャップがございまして、このことというのは決していいことではないと思いますので、それは事業者自身の責務として引き続き努力をしていただきたいということを強く申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介です。

 いろいろ質疑を聞いておりまして、私も感ずるところがございました。いずれにしろ、電力というのは我が国の社会、産業を支える基幹産業であって、また、戦後、現在の電力体制が発足して以来、各企業を見れば、それぞれの地域においても社会的な責任というのを担ってこられた、また現在も果たされている、こう思っております。また、そこで働いている方々もまじめで勤勉な企業人、社会人であろう、こう認識しております。

 そうであるからこそ、今回、総点検で明らかになったトラブル事案の中で、ごく一部とはいうものの、非常に悪質だなと思わざるを得ない隠ぺいが行われていた、法令違反と思われる事案が含まれていたということは非常に残念であります。

 国会は、立法府は制度や仕組みをつくるのが本来の我々の役割でありますから、本日は、限られた時間でございますけれども、私も、これまで質問されてこられた同僚議員と同様に、原子力発電事業を取り巻く環境について、構造的な問題を少しでも明らかにして、また今後の教訓、そして国会としての制度設計につなげていきたい、こういう思いで質問させていただきたいと思っております。

 こういう基本認識の中で、ぜひ、参考人の皆様におかれましては、率直かつ簡潔に御答弁をいただきますようお願いを申し上げたいと冒頭思います。

 まず最初に、各委員との重複を若干避けてまいりたいと思うのですが、どうしてもお伺いしたい点、幾つかございます。

 まず、北陸電力の永原社長に、一九九九年に起きた志賀原発一号機における制御棒脱落事故、それにかかわる事故隠しについてお伺いをしたい、こう思います。

 永原社長は、今までの御答弁でも、また記者会見でも、原子力部門と経営部門の間の溝、壁があったという御発言をされております。また、それは社長として、今回の事案を総括されて、そこを改善したい、こういう御判断でしょうから、ぜひ対策を練っていただきたい、そして実行していただきたい、会社のトップが一番状況がわかっているわけでありますから、していただきたい、こう思うわけです。

 ただ、私がここでお伺いしたいのは、社内のそういう壁の議論もさることながら、環境の話をお伺いしたいと思うんですが、社長は記者会見でも、またきょうの質疑でも、なぜ隠ぺいしたのかという要因の中に、当時計画していた原発二号機の着工に大きな影響が出ると現場としては考えたのではないか、こういうことを答えられております。

 そこで、改めて伺いますけれども、当時、一号機で事故が起きたわけでありますね。この事案が公表された場合に、実際に法規上では、二号機というのは違うプラントでありますから、違うプラントで、しかも聞くところによると、設計も物も違う。同じ機種であれば、確かに二号機にも影響がある、こういうことは素人でも想像つくのですが、違う機種である。この違う機種の着工に大きなおくれが出るということは、法規上、どういう規定が実際に存在したのか、簡潔にお答えいただきたいのです。

永原参考人 お答えいたします。

 八年前当時、志賀の発電所の現場の方でこれを隠しておったということについて、先生の方から、もしこれを公表しておれば法規上問題があったのかということでございますけれども、私は、これは法規上の問題はなかったものというふうに感じております。

 また、今ほど先生の方から、現場技術陣の方と経営層の方の仮に壁があるとすれば、それを取っ払うような努力をせよ、これを社長みずからやれということについては、私も、おっしゃるとおり、そういう方向で頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

近藤(洋)委員 法規上は問題がなかったというお話でございました。

 いわゆる地元との安全協定上も明文規定がない、これは法規の話ではございません、一種の紳士協定の世界でありますが、しかしながら、そこでも、もし一号機でこの事案を公表していたら、地元との安全協定上もこれは問題がなかったということでよろしいんでしょうか。もう一度、確認でございます。

永原参考人 申しわけございません。安全協定上、そういう決めがあったかどうか承知しておりません。ただし、二カ月後に予定しておる志賀二号機の着工、これにつきまして、二カ月前に事故がわかった場合に、地元合意形成上は当然、二号機の着工は延期と申しますか御破算というか、そういう事態になったであろうことは容易に想像できます。

近藤(洋)委員 これは大事な話なので、事前に社長、北陸電力さんの事務方の方にも確認をさせていただいているのですが、安全協定上の文言は、文言上は特に規定はない、こういうことでございました。ただ、今まさに社長が、社長も当時経営陣であられたかどうかわかりませんが、社内にいたお一人として、もし公表されたらそれは御破算になったと容易に想像できる、こういう話でございました。ここが私、疑問点なんですね。

 というのは、なぜそうなるのか。その数カ月後に同じくジェー・シー・オーの事故が起きております。これは、事故の性質は全く異なります。ジェー・シー・オーの事故と、重大度も重要度も、かつ事故の性質も全く異なるものでありますけれども、いずれにしろ異なるものでありますが、甘利大臣は記者会見で、仮に北陸電力が事件を公表したとしたら場合によっては防げた可能性もあるというような御発言をされていますが、私はちょっと認識が違いまして、これは、北陸電力が公表したとしても、ジェー・シー・オーの事故が防げたとは私は思えない。いずれにしても、これは、ればたらの話でありますが。

 ただ、いずれにしろ、当時、原子力を取り巻く環境で、ジェー・シー・オーで大きな事故があった、原子力施設については極めて注意をしなければいけない、これは電力業界も認識をされていた、こう思うんですね。さまざまな部分で、原子力にかかわる方々は、自分のプラントがいかがなものかというのはチェックしたはずであります。そういう状況の中で、注意を喚起した、そういう環境の中で、やはり原子力施設の安全はチェックしなきゃいかぬなという全体の空気の中で、あえてこれを隠したということは、やはり相当な着工におけるマイナス影響があるから、だからあの当時、にもかかわらず隠した、こう私は思うんですね。

 明文規定がなかったのにもかかわらず、現場が隠さざるを得ないという判断をした、一種恐怖感みたいなものがあったと思うんですね。これは私は、要するに、我が国は法治国家でありますから、法令違反がいかがか、コンプライアンスがどうだ、こういうことをこの場でも議論しております。そういう中で、明文規定もないのにもかかわらず、発表したら御破算になるという恐怖心が生まれるというのは一体どういうものなのか、ここの部分をきっちり解決しないと、同じようなことが仮にあったとしても、今度は、では同じことを公表したら志賀原発はまたとまるんですか、御破算になってしまう、そういう状況なんですか。

 社長、ここの部分をきっちり整理しなきゃいけないと思うんですが、北陸電力の社長としての御見解をお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。

永原参考人 まず、先ほど、安全協定上の明文の規定があるかというお尋ね、わからないと申し上げましたけれども、明文の規定はございませんということを確認しました。

 それから、私、先ほどの説明で、この事件が公表された場合、志賀二号機の二カ月後の着工がおくれるかあるいは御破算になるかというふうに申し上げましたけれども、御破算になるかというのはちょっと言い過ぎでございまして、もしお許しをいただければ訂正させていただきたいなというふうに思うのでございますけれども、当時、二カ月後の着工というのはおくれたであろうということは想像できるわけです。

 先生も御指摘のように、法文上の規定もないし安全協定上の明文もない、ないのにどうしてそうなるんだというところは、でも、この二号機をつくらせてください、着工させてほしいという当社の要望に対して、やはり地元の方は、そういう事故を起こしておるものは、危ないものは、ちゃんとできないものは着工を認めるわけにいかないという話が出てきてもしかるべきかというふうに存じまして、これが発電所の方に相当のプレッシャーであったのかというと、二カ月後に着工予定だ、そういうスケジュールをつくるのがまず工程優先になっているんではないか、私はそう思います。

 この件、だから、私、思うのは、発電所の所長以下が、事故が起こったときに公表しなかったというのは、第一義的には所長以下の責任ではございますけれども、やはり会社全体として反省しなくちゃいけないというふうに思うわけで、何で所長がそういう判断をしなくちゃいけなかったのかというあたりについては考えさせられるものがありますというところです。

近藤(洋)委員 今、永原社長から、考えさせられる部分があると。全くそうなんですね。工程優先のことについてはまた改めて伺います。

 そこで、ここはやはり電気事業連合会会長としてお伺いしたい、こう思うんですが、これは一北陸電力だけのケースではないですね。この問題は、電力会社というか、少なくとも原子力発電所を持つ電力会社すべて共通の問題だと思うんです。

 要は、事故、トラブル、これが発生したら大変なことになる、地元に対しての信頼感。ただ、まさに人身事故につながるような、こういう問題は確かに重要でありますが、しかし、作業の手順のミスはあった、これは確かにマニュアルミスはあった、しかし、人間だから間違いを起こすわけであります。そういうものを公表したら着工がおくれるということが、公表するというのは、法令に基づいて公表して報告をしたことが、それが果たして全然種類の違うものの着工をおくらせるほどの重大事なのか、こういうことは、私はいかがかと思うんですね。

 要は、操作ミスによるトラブル、しかもそれは発生後対処をしている。だけれども、公表したら、社運をかけて当時恐らく北陸電力さんはあのプロジェクトを進められたんだろうと推察されます、社運をかけて掲げたプロジェクトが大きくおくれるというような大事が発生するかもしれないと恐れる電力会社。この状況というのは、小さなトラブルがひょっとしたら運転停止になる、計画の延期になる、こう恐れざるを得ないという状況はちょっと異常ではないか、私はこう思うんです。

 これは、何も自治体が悪いと私は言うつもりはありません。自治体はやはり安全第一にしていただきたいという気持ち、思うのは当然であります。ただ、自治体としてはそうだとすると、自治体と国と電力会社の三者の中で、何か関係を整理する必要があるんではないか、こう思うんですね。法令上は、自治体は発電所をとめる権限はない、これは国が持っております。だけれども、県なり地元自治体は、道路使用許可、港湾使用許可、さまざまな実態的な権限は自治体が持っております。ですから、国からゴーが出ても、電力会社は動かせない、工事が進められない、実態の権限は自治体が持っている、こういう状況ですよね。電力会社は自治体と紳士協定というのを結んでいる、これも法令上はない。

 こういう環境を維持していくと、要するに、言い出したくても言い出せない、電力会社から見ると。ますます隠そうとするというマイナスのスパイラルの環境は、幾ら北陸電力さんが原子力部門と経営部門の風を一体化したところで改善するものではない、別の話だと思うんですね、根っこの話だと思うんです。

 この問題を改善すべき点があると思うんですが、勝俣会長、いかがお考えですか。

勝俣参考人 大変難しい問題でございますけれども、原子力の場合には、やはり社会的影響とか政治的な影響等々によっていろいろ動かされることはございます。ヒューマンエラーとはいえ、その内容次第でありますけれども、それが間違って大きく取り上げられ、騒がれるような場合には、やはり地元の方は心配する、こういうことに往々にしてなるわけでございます。そうしたこともございますので、我々としては、やはり立地町あるいは県、こうしたところの御意向というものは十二分に尊重するということが必要かと思います。

 例えば、私どもの福島県におきまして、例えばもう検査合格のサインが国として出ていても、私どもの不祥事の関係でございますので、ここは背景に私どもの悪さかげんがあったということがありましたけれども、なかなか県のオーケーが出ないといったこともございました。そうしたことをどういうふうに、今後、国と自治体の関係、そして電力会社の関係を合理的なものにしていくかというのは絶えず議論になります。

 原子力委員会の政策大綱の中でも、この自治体との関係をどうするかといった問題が取り上げられています。正直、答えはありません。ここはもうとにもかくにも、我々としては誠実にきちっとコンプライアンスを遵守して、安全、品質向上を図っていく、そこに信頼を持って立地関係もよくする、そして国との科学的、合理的な規制をきちっとしていただく、そういうことを、まだまだこれからいろいろと多々なすべきことがあるので、そういった方向に持っていくということであります。

 やはり、今のような、こうしたいろいろな事象が出ている中で、立地町等々を含めて、全部科学的、合理的なもので割り切ろうというのはなかなか無理があるのであって、そうしたことを我々としては十二分に考えつつ誠実に対応していくということが必要かなと思っております。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 今回問題を起こしたお立場から、制度論に踏み込めないということは重々承知して聞いております。ただ、あえて伺っているのは、やはり電気事業連合会会長として、また勝俣社長の責任として、先ほど来指摘をされている二〇〇二年のあの、まさに、恐らく東京電力の歴史始まって以来の事態になったと思うんですね、トップが引責辞任をするという事態。そして、それを受けて社長になられたのが勝俣社長であられる。そういう経緯も含めて、やはり根本的な部分をどうやって直していくんだという責任があるのではないかと思うので、伺っているのです。

 では、角度を変えますが、今の状況でいい、要するに、こういった自治体と電力会社と国との今の関係整理で万全だという認識はないということでよろしいですか。やはり改善すべき点があるんだという御認識は持っているということでよろしいでしょうか。

勝俣参考人 他電力さんの場合には、非常にそこがうまくいっている会社さんも多々あろうかと思っております。私どもの場合には、二〇〇二年のところで世に不祥事を起こしまして、いわば地元の信頼が失われた、そこを出発点にしているということでございまして、その関係は徐々に徐々によくなりつつあるのではないかと考えております。そういったことの積み重ねで、国、立地町あるいは立地県、そして私ども事業者との関係というのを円滑なものに構築していくということが今、東京電力の場合には特に必要であると思っておりまして、今で満足しているということではなく、そうしたことを積み重ねながら、その三者の関係を円滑なものにしていく。

 と同時に、そこに、例えば規制等々についても科学的、合理的なものにして、現場の人たちが非常なる負担感を感じないでモラル高く仕事をできる方向に持っていくというのが、私ども経営者の務めではないかということで、これもそう簡単に、一朝一夕に成るわけではございませんが、きちっとした努力をしていきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 これは東京電力さんの防止策でありますけれども、今回のこの防止策も、私も見させていただきましたが、これまでの防止策として、この四つの約束、平成十四年、要するに二〇〇二年のときの対応策等々、二〇〇二年の対応策も大変立派なことを書かれているわけです。しない風土、させない仕組み、このとおりやっていれば非常にいい。実際問題、二〇〇二年以降は起きておりませんという社長の御発言でありました。プラスして今回出たのが、まさにこの言い出す仕組みというのを加えた、こういうことであります。

 その言い出す仕組みというときにおいて、今申し上げたこの論点は極めて重要だから、やはりここの部分に踏み込まないと、言い出す仕組みにはならない。言葉は悪いですが、恐らくまだあるのだと思うんです、私は。そう思った方がいい。事の大小はともかくとして、何かのトラブル隠しはあると思った方がいい。

 なぜならば、残念ながら、北陸電力さんも東京電力さんも、今回の事案について、特に東京電力さんの、先ほど宮腰委員も指摘をされた、私は特に悪質だなと思うこの福島発電所におけるいわゆる機器取りかえ偽装問題、これなどは、やはりメーカーさんの通報で今回も明らかになっているんですね、三月の中旬以降に。あれだけ総点検をしてヒアリングもして、明らかにならなかったんですね、内部から。それはやはり外部から聞いて明らかになった、こういうことなわけですから、恐らくほかにもあるのだろう、こう思った方がいいと思うんです。

 だとすると、よっぽど言い出す仕組みのところを、幾ら社内でつくったところで、私は、できないんじゃないかと思った方がいいと思うんですね。

 今回は、嵐が吹いているから、とにかく頭を下げ、頭を下げでやり過ごす。恐らくやり過ごせばいいというふうに会長も社長も、ここにお見えの三社の社長はそんなことを思っているとは思いたくありませんので、ぜひそこの部分を改善しないと、この言い出す仕組みは、申しわけございませんが、絵にかいたもちでしかない、こう言わざるを得ないわけであります。幾ら東京電力社内がつくったところで、関西電力さん、北陸電力さんがつくったところで、言い出す状況にはならないのではないかということを申し上げたいわけであります。

 そこでお伺いしたいんですけれども、今回、大臣指示に従って、三百の事案、一万件を超える件数がすべて公表、大変多くのケースが公表されたわけですけれども、気になるのは、客観的にこの事案を評価する仕組みが整っているか、こういうことであります。AからD、その他までと五段階に分けて、今回、電力さんは評価をされました。一番重いもので六案件あった、こういうことでありますけれども、この六、Aランクは、法令、保安規定に抵触し、設備の健全性が損なわれたものとなっておりますが、一般にはどの程度これが深刻なのかというのは、地元の方々も私たち立地外の人間もわからないわけであります。

 報道だと、北陸電力さん、これは前回の委員会で私指摘をいたしましたけれども、NHKが水蒸気爆発かというような報道もされるわけですね。即発臨界、爆発かという報道も、可能性もありやという、これは大変なことだというふうに思うんですけれども、実際は違うということで、大臣も、違うから抗議する、こういうことで明確におっしゃっていただきましたが、いずれにしろ、何がどこまで大変なのかというのが仕分けできていない。この仕分けをしっかりしないと大変なことになる。今後も、言い出したところで、では一体だれが、どの程度のランクなのかというのをきっちり仕分けをする制度をつくらなきゃいけない、こう思うわけであります。

 そこで、勝俣会長にお伺いしたいんですが、まず一つ、残念ながら、今電力業界は、国民の方から、言い出す仕組みをつくっても、言い出しても、恐らく信用されていない、電力会社は信用されていない、こういう認識に立つべきだと思うんですが、その認識をお伺いしたい。残念ながら、世の中の空気は、電力会社が幾ら言い出してももう信用しないというのが今の直近の空気だと思いますが、率直にどう感じているか、こういうことと、言い出す、その仕分けですね。

 IAEA、国際原子力機関で定めた報告基準はINES基準というのがあるというふうに聞いております。だけれども、今回のトラブルはまさにその報告基準をずっと下回るものがたくさんあるわけでありますから、これを客観的に、例えば原子力安全委員会なりが、要するに、電事連が評価しても、申しわけないですが、私の個人的感想ですけれども、こういう評価ですと言っても、今や信用されない。

 ですから、第三者が、それも保安院ともかけ離れた部分で、例えば航空機なら航空機事故調査委員会があるように、ここは原子力安全委員会がきっちり整理をする、そこに報告をして、そこが重要度を整理する仕組みをつくるべきだと思うんです。それについてどうお考えか、伺いたいのです。

勝俣参考人 先生御指摘のように、私どもが評価をつくってお話ししてもなかなか信用されない、これはもう事実かと思います。

 そこで、今、原子力発電所のトラブルにつきましては、経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会にINES評価小委員会というのがございまして、国際的に共通な評価尺度を用いまして、レベルゼロからレベル7までの八段階に評価がされているわけでございます。これで、原子力発電所のトラブルについて国民の皆さんが、重大なものであるのか、あるいは大したものでないか、簡明かつ客観的に判断がいく一つの方法かと思っております。

 これらの取り組みにつきましては、さらに国民の皆様の理解を得るために、いろいろ工夫していく点があれば今後考えていった方がいいかなと。

 私ども特に思いますのは、一つは、何か起こったときに、そこを評価というよりも解説的に理解活動していただくようなことも大変大事かなということで、私どもの報告は報告として、それはこういうことですと解説的なものがあるといいなというのは時々、特に今回の場合においては感ずるところでございます。

 と同時に、私どもとメーカーさん等々いろいろ結集いたしまして、日本原子力技術協会というものができております。ここで、種々の問題、技術的なトラブル等々がございましたのも、そこのところでしっかりと集めてそれなりに評価していくということが、これから次第に充実していくということになろうかと思いますので、そこについては私どもこれからも力を入れていきたい。

 そんなことで、そこでの客観的な評価というものは大いに期待できるのではないかと思っておるところでございます。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 これは大事な話だと思うんですね。ここの部分は、確かに東京電力さんのホームページを見れば、さまざまな事案が報告されています。安全性に問題ありませんでしたというのが最後注釈がついておりますが、残念ながらそういう部分も、正直申し上げて、結局のところ、あれだけ大きな不祥事が起きながら今回まで言い出せなかったということは、外圧でしかなかなか公開できないのではないかという印象を持たれているわけであります。また実際、それもある意味で正しい部分もあるんだろうと思うんです。

 そうだとすると、やはり言い出す仕組み、それを客観的に評価してもらって、そして、言い出すことがプラスなんだという風土を国全体でもつくらなければいけないとなると、そういう客観評価基準、それは原子力安全委員会なりなんなりがつくる。私は個人的にはそれがいいと思いますが、そういうものに対して、やはりそこは電力業界としても、自分たちが言えば安全ですという意識も一種捨て去って、そういう部分にゆだねる。それは保安院でもないと思うんですね。新たなものにゆだねるという姿勢もあってもいいのかなという気がいたしますということであります。

 続いて、日立製作所の庄山会長に、お忙しいところいらしていただいておりますが、お伺いしたいと思います。

 まず、日立製作所さんにおける原子力発電事業の位置づけを簡潔にお答えいただけますでしょうか。

庄山参考人 お答えいたします。

 私どもにとりまして、原子力の事業というのはコア中のコアでございまして、今後とも、ぜひお客様に喜ばれるような製品づくりに邁進したいと思っております。

 と申しますのは、当然、御高承のとおりでございますが、環境の問題でありますとか、あるいはエネルギー全体を考えましたときに、エネルギー安保というようなことも考えましたときに、やはり原子力の重要性はありますし、そこへもってきて国際的にも、今全世界でこれが非常に大きく取り上げられているわけでございまして、そういう意味におきまして、私ども、今回このようないろいろと御迷惑をおかけしておりますが、これを乗り越えて頑張ってやっていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 我々経済産業委員会では、先般、日立製作所さん、日立事業所を視察させていただきました。その際にも庄山会長の御説明をいただいたわけでありますが、そのときに私の目についたのは、「打ち込め魂、仕事の上に」という看板があちこちに張ってある。これはすばらしい言葉だなと思いましたし、まさに重電部門というのは日立の魂みたいな部分なんだなというのを感じて帰ったわけであります。

 売上高は連結で大変大きな、連結で見れば日立さんは九兆円を超える会社でありますけれども、事業の大小ではなくて、コア中のコアということなんだろうと思うんです。だからこそ、今回のこの事案、若干残念だなと思うわけでありますが、福島発電所の制御棒機器の故障について、その事実の隠ぺいにおいて、コア中のコアのところでかかわっていた、こういうことであるので残念だ、こう思うわけであります。

 それは日立さんが何も法令に違反したわけではありませんが、ただ、確認したいんですけれども、当時、現場の判断で、これは東電の依頼に基づいたものとはいえ、現場としても、これは法令違反だという認識を持っていたのかどうか、これは法令違反ではなかったのかという意識を持っていたかどうか。そして、先ほども若干触れられましたが、なぜ日立さんほどのまじめな会社が法令違反だなと思うことにかかわってしまったのか、現在ならばそれはあるのか、あり得るのかというのをもう一度確認したいのです。

庄山参考人 ただいまの御質問でございますが、さっきの東京電力さんの件につきましては、先日も関係した者にも会ってまいりましたけれども、やはり、今ならばああいうことはきちっとしかるべきところに申し上げて対策をするということを言っておりましたので、言わんとしていることは、やはりそのころは、お客様と一緒になった一体感というのが変な意味の一体感になったのかなというふうに思っております。

 なお、あの件が見つかりましたのは、さっきの北陸電力さんの問題に端を発しまして、〇二年のときはアンケート調査的に、どちらかというと、何か隠していることはないかということを中心に調べたわけでございますが、今回、一連の北陸電力さんへの御迷惑をおかけした件を含めまして、実際の書類でかなり細かく見させたところ、今回の事例がことしの三月になりまして出ましたので、ああいうふうに申し上げたといういきさつでございます。

 しかし、いずれにしましても、その当時、当然、そういうことをやることは、法令違反に対しての認識が非常に甘かったということの反省でございまして、今はそういうことが起きないようにしているつもりですし、そうしなきゃいけないというふうに思っております。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 今は起きない、こういう話でありました。

 そこでお伺いしたいんですけれども、メーカーさんと電力会社さんの関係についてなんです。

 庄山会長は、御経歴によると、九九年に社長に御就任をされて、昨年会長にということでございます。大きな会社、どんな企業でもそうですが、社長就任時ないしは内定時に主な取引先なりにごあいさつに行く、こういうことは当然だと思うんです。恐縮でございますが、当時を振り返っていただいて、九九年社長ないしは昨年会長交代時に、恐らく東京電力さんにごあいさつに伺っていると思うんです。

 想像ですが、一番最初にごあいさつに伺っているのが東京電力さんだと思いますが、いかがでしょうか。

庄山参考人 お答えいたします。

 気持ちはそうかもしれませんが、ちょっと順番はどうであったか、覚えておりません。いろいろなお客様に私どもお世話になっておりますし、そういう意味で、いろいろな方々にごあいさつに回ったというふうに思っております。

近藤(洋)委員 ただ、恐らく一番最初にあいさつに行かなければいけないリスト、複数、これはここでこうだということではないですが、であろうと想像しますが。

 では、事実関係だけでありますが、日立製作所さんの中で最大の顧客は東京電力さんではないでしょうか、売り上げですね。

庄山参考人 私どものグループといたしましては、日産グループさんが最大でございます。それからNTTグループさんでございますとか、そういう形になっておりまして、東京電力さんの順番はちょっと今記憶は定かでございませんが、しかし、売り上げ規模ばかりがすべてではございませんで、いろいろな方、全部のお客様に私は同じ気持ちでございます。よろしくお願いいたします。

近藤(洋)委員 会長としてはそうだと思います。

 ただ、これは実態を申し上げれば、日立製作所さんは大変幅広い事業分野を手がけられていらっしゃいますが、庄山社長まで、歴代社長は重電部門の御出身でありました。これは事実だろうかと思います。

 また、重電三社、同じく東芝さんを振り返ってみても、最近はさまざま情報通信等々の社長さんが出られますが、基本的には重電部門の方が社長さんになられる。

 また、同じく重電、これは総合重機でありますが、三菱重工業、こちらもさまざまな仕事をやられていますが、基本的には造船ないしは重電、この部隊がトップを配置する。例えば、同じ分野で、名古屋航空機製作所の方々がなかなか社長にならなかったりとか、相模原がならなくてやはり長崎だと。

 だから、そういう部分も含めて、やはり重電というのは、今申し上げた、要するに、日立さん、東芝さん、重工さん、それぞれ大きな会社でさまざまやられていますけれども、そういう意味では、東京電力さんは大きなお客さんである、こういうことであるのは間違いなかろうかと思いますし、日立さんはないかもしれませんが。ある会社は、これはもう昔の話でありますが、社長交代のニュースを知るときに、銀行に聞くよりも東電さんに聞いた方が早い、こういう状況も十年前、これは常態化していたと私は記憶をしております。

 それだけ今も、ここは勝俣会長、ちょっと御通告がなくてあれなんですけれども、やはり電力会社というのは、要するに、我々素人から見ると、日立さんと東電さんの企業規模は、片や連結で九兆円、片や五兆円、こういうことで、企業規模で見れば同等といいますか、同じく経団連のそれぞれ副会長をやられてと、こうでありますが、少なくとも東京電力さんというのは、やはり最大の発注者であって、そして大変な影響力というか、言葉をかえれば、支配力を持っている。顧客以上のものを持っておって、東電さんに配慮しなきゃいけないという空気がやはりメーカー側には今も続いていると感ずるんですね。

 そこは、電力会社の力というのがあるものなんだという認識はお持ちでいらっしゃいますでしょうか。これは庄山さんに聞いても気の毒なので、勝俣さんにお伺いしたいと思います。

勝俣参考人 私ども、かつて一兆六千億とか七千億の投資をいたしていた時代もございますけれども、今は六千億とか五千億とか、いわば三分の一以下になっております。ということは、それだけ建設が少なくなっているということで、そうした意味合いにおいて、私どもの力というのは大変小さくなってきている。

 というか、逆に、私ども、関東一円すべての工場等々を含めましてお客様でございます。むしろ、日立様に私どもとしては、半導体の工場をよそに持っていかないで、日立や茂原につくってほしいとお願いするような機会が多々出てきている。完全に逆転しているんじゃないかと思って、私は庄山さんにいつも最敬礼しているところでございます。

近藤(洋)委員 それは、トップ同士ではそうなのかもしれませんが、ただ私は、実際には、発電所の現場ではやはり電力会社さんというのは強い。これは、大日立製作所ですらそうなわけですから、お客様より強い立場だと見ているわけで、いわんやほかの会社をやということは感ずるわけですね。

 原子力発電所の安全を考える上で、メーカーさんとイコールパートナーという関係がやはりどうしても必要なんだろう。それは、メーカーさんとイコールパートナーだということは、上下関係ではなくて、かつては混然一体で、ある意味では上下関係という部分もあったかもしれませんが、イコールパートナーという状況をきっちりつくらないと、なかなか原子力の運転の安全というのは保てないのではないか、こう思うわけであります。

 電力会社さんが、例えば北陸電力さんにしろ何にしろ、自分でやりますと言っても、大変失礼な言い方かもしれませんが、それは運転は上手かもしれませんが、整備はやはりできないわけであります。そうすると、例えば、今の制度のあり方も含めて、プラントメーカーの責任というのを制度上も明確にするということも必要ではないか。

 例えば、型式認証というのがいいかどうかは別にして、そういう部分も含めて規制の対象にメーカーさんがなる。でも、それは、ある程度コストをかけるということです。電力会社さんは、子会社にして安く上げよう、こういうことではなくて、ある程度コストをかけるということでもあり、メーカー側はその分だけお金を取るわけですから、規制の責任も受ける、こういうことでありますが、そういう仕分けというのも制度上も必要ではないか。意識の上でもそうだし、制度上も必要ではないか。そうでなければ、なかなか発電所の安全というのは保てない、こう思うのですが、勝俣会長、いかがでしょうか。

勝俣参考人 まず、先生御指摘のイコールパートナーということでございますが、これはパートナー以上に、私は発電所に行って言っているのが、きちっとメーカーさんや協力企業さんのお話をしっかりと聞けということを絶えず申しています。

 これは、どちらかといいますと、うちの社員が発注者として多少高みにいたのが正直偽らざるところでございますけれども、そこを二〇〇二年以降、もうとにかく徹底的に、メーカーさんとか協力企業は、状況によってはもっともっと仕事を知っている、実力がある、そういうことからも、謙虚に耳を傾けて意見を聞けということを、私は発電所に行くたびに絶えず言っているぐらいで、そのコミュニケーションも、まだ道半ばですが、だんだんよくなってきているとは思っております。

 そうしたことをベースに、いろいろな検査のあり方、それからメーカーさんとの関係というのもあるんですが、これにつきましては、今後、新しい検査制度のあり方が学者さんも入れた委員会等々でもいろいろ検討される、そうした中で、先生のようなお話も一つの考え方としてあり得るのかなと考えている次第でございます。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 せっかくの機会に、庄山会長にもお伺いしたいんです。

 やはりそれは、ある意味では行政の規制を受ける部分にもなろうかと思います、部分によっては。ただ、やはりイコールパートナーといいますか、そういう形で気概を持って行う。

 原子力発電事業については、それこそ、今まさに世界に飛び立とうという部分もあるわけでありまして、世界市場を見れば、型式認証のような形でプラントメーカーが責任を持つという部分も出てくるでしょうし、そういう意味で、そういった新しい関係を築いていくというお考えはありますでしょうか。

庄山参考人 本件につきましては、今までのいきさつ、あるいはその国情、それからいろいろなしきたり等々があろうかと思うんですが、いろいろなことをこの機会に検討して、よりもっと国民の皆さん方に安心していただけるような仕掛けがあればよろしいと思うんですが。ただ、大事なことは、責任が分散することによって、だれの責任なのかわからなくなるということのマイナス面もありますので、その辺は、やはり立場立場、あるいはやれる範囲内、責任のとれる範囲、こういうのを明確にして今後検討していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 それは企業の立場としてもぜひ御検討を、現場を一番知っているのは、役所ではなくて、やはりそれは、プラントを預かる現場であり、そしてそれを責任を持って運営しているのは企業、こういうことでありましょうから、そこはぜひ積極的に御提言なりお考えをいただくというのも責任の果たし方だろう、こう思うわけであります。

 また勝俣会長にお伺いしたいのですが、工程の部分ですね、工程重視に走り過ぎているのではないか、こういう指摘でございます。やはり電力の自由化という流れの中で、工程重視に走り過ぎているのではないかという指摘をずっと受け続けているわけであります。

 この部分について、やはり安全はただではないんだという認識のもと、ここは徹底的に、それこそ意識改革をしなければいけない部分だとは思うんですが、いまだにその工程重視の状況になっているのではないかという指摘を私も受けるんですが、いかがでしょうか。その現状の改善策について、どうされますか。具体的に何か策はありますでしょうか。

勝俣参考人 今回発表いたしました種々の不祥事、不適切な事例というのは、基本的には自由化以前に発生したものでございます。したがいまして、自由化という問題はそれほど影響していないと思っておりますが、むしろ、かつて非常に日本の経済成長が大きくて、需給上の問題等々を気にしたという観点はあったかと思います。そうしたことで、現時点では、むしろ急がば回れで、安全と品質をきちっとしていくことがまさに工程をスムーズにするものというような考え方で今進めているところでございます。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 時間が参りましたので、最後の質問にしたいと思いますが、いろいろ伺ってまいりましたが、いずれにしろ、今月末に経済産業省、そして国土交通省、法規に従って、国土交通省がいつになるかちょっとわかりませんが、少なくとも経済産業省は、今回の各電力会社さんの報告を受けて、どういう行政処分が必要なのかということも含めて判断をされるというふうに私は伺っております。行政処分、国土交通省も水力発電について厳しい措置も検討しているという部分も報道では聞いておりますが、この措置が出たことを受けて、個別の企業さんでは、役員報酬の返上であるとかいうことを既に発表された会社さんもあります。

 そこで、東京電力のというか電事連の勝俣会長と北陸の永原参考人にお伺いしたいんですが、この措置が出た後、責任の明確化という部分で、電事連の会長としての責任の明確化、東京電力さんとしては一定の役員報酬の減額ということは発表されております、電事連会長として、どういった責任の明確化を御検討されているのかということをお伺いしたい。また、北陸電力さんはたしか、間違っていたら恐縮ですが、まだ発表されていないと伺っております。

 いずれにしろ、どういう形で責任を明確化されるのか、御検討をされているのか否かも含めてお答えいただきたいと思います。

勝俣参考人 どのような行政措置がされるかまだ存じておりませんので、軽々に申し上げられませんが、私自身、今ここまで進めてきました安全、品質の向上、こうしたことで、しっかりと地道にやって、それで地元、立地地域の信頼を回復するということを行うことが私の責務であり、また、電事連会長として九電力と一致協力をいたしまして、安全・品質活動をきちっとなし遂げるということが私の責務と考えているところでございます。

 以上でございます。

永原参考人 当社の場合、ただいま社内的な処分につきましては検討している最中というふうに御理解賜ればありがたいと存じます。

 一連の事案に対しての経営責任でございますが、私自身は、やはり今再発防止対策をきちっと展開して、定着させて、二度とこのような事故とか事態を起こさないというふうに全力を傾注する、これを社員の先頭に立ってやりたい、こういうことで経営責任を全うしていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 責任をとって、引責をするというのも一つのとり方でしょうが、ただ、今、国会でこのように御発言をされたということはある意味で重いことでありまして、そうおっしゃった以上は、徹底的に体制を整えるという重い責任があるんだということだろうと思います。逆に、それが裏切られた場合は、まさに日本の原子力にとって胸突き八丁、今も胸突き八丁の状況にありますが、大変重要な局面を迎えるんだという責任を持っていただきたい。

 あわせて、とりわけ電事連勝俣会長におかれましては、東電の社長になられた経緯も含めまして、徹底的に過去との清算、それは安全関係に限らず、さまざまな意味での過去との清算という部分も必要なのではないかということも、そして、きょう指摘をさせていただいた制度づくりも含めて必要なのではないか、謝罪だけでは済まないという部分もあえて申し上げて、時間ですので、質問を終えたいと思います。

 以上でございます。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 今回の問題につきまして質問をさせていただきます。

 一連のこういったトラブルの問題につきまして、原発の立地自治体からは大変大きな怒りの声が上がっております。例えば、原発立地道県でつくっております原子力発電関係団体協議会が国に対して要請書を出しております。その中でも、

  このような不正や隠蔽の事案は、事業者の法令遵守、安全性確保の姿勢が厳しく問われる重大な問題であり、安全確保と地域住民の理解を大前提とする原子力発電所の基本認識を根底から覆し、自治体との信頼関係を大きく損なう、全く許しがたい事態であると言わざるを得ない。

  さらに、一元的に規制・監督権限を有する国の検査において、かかる不正がなされていたことは、国の安全規制そのものに対する信頼性をも根本から揺るがすものである。

ということでの厳しい指摘が上げられているわけであります。住民の皆さんの声は、こういった立地自治体の声として大きく反映をしていると言えると思います。

 そこで、この報告書、今回出されている報告の内容の妥当性という点で、何点かお伺いしたいと思っています。

 最初に、勝俣参考人に、東電の報告書に関連してお聞きしたいと思っております。特に、平成十四年の際、一連の問題、不祥事がありましたけれども、その際にも一番の大きな案件として挙げられておりました格納容器の漏えい率検査に関連して、お尋ねしたいと思っております。

 平成十四年の九月二十五日に福島第一の一号機における原子炉格納容器漏えい率の定期検査のデータ偽装が発覚をし、そのちょうど一カ月後の十月二十五日に保安院としてこの一号炉の一年間の運転停止命令という極めて重い行政処分を科したわけであります。その際、保安院は、原子炉の重要な安全機能を持つ機器で行われたこの偽装行為は、一連の自主点検記録改ざん以上に悪質だということでこの重い行政処分を科したわけであります。営業運転を行っている原子炉の運転を実質的に停止させる、日本の原子力史上初めての処分でありました。

 そこで、今回の報告、三月三十日付で出ております原子力発電設備の点検結果のところでも、この漏えい率検査については、「平成十四年度の総点検と今回の調査の比較」ということで表になっております。そこのところに、「平成十四年度の総点検」について、「対象期間」として、「漏えい率検査については直近の検査記録に限定。」となっております。この対象期間について、漏えい率検査が平成十四年のとき直近の検査記録に限定をされていたという根拠は何なのか、お示しいただけますか。

勝俣参考人 たしか、そのような指示が出ていたと思いますが、ちょっと定かでございませんので、武黒に回答させます。

武黒参考人 平成十四年の調査におきましては、種々の原子炉本体にかかわる設備、格納容器漏えい率検査にかかわる状況につきまして調査をするよう御指示がございまして、これに基づいて、本体につきましては昭和六十三年からの十四年間、その他設備につきましては至近の本格点検まで、それから、漏えい率検査につきましては御指摘の直近の検査記録についての調査を対象として行っております。

塩川委員 この報告書の表のところに、欄外に印をつけてありまして、そこでは具体的に、漏えい率検査に関する報告徴収については平成十四年九月三十日付、それから平成十四年十月二十四日付の保安院の発出文書に基づくとなっているわけです。

 この文書がどういった報告を求めているのかというのについて確認をしたいんですけれども、経産省保安院の報告徴収命令を出されているわけですけれども、この報告徴収命令については、直近というふうに記されているんでしょうか。

武黒参考人 ちょっと今手元に資料がございませんので、正確にお答えできません。

 漏えい率検査につきまして、検査の実施状況について、私どもとして、直近の検査記録に基づいて調査をしたというふうに考えております。

塩川委員 これは、報告の上でも極めて重大な点ですから確認をしているんですけれども、あなた方が出された報告書で、欄外に記載をされている、なぜ直近の検査記録に限定しているのか、その根拠として、保安院が出している二つの発出文書で対応したと出ているわけですよ。それを聞いているんです。

 私、確認をしました。九月三十日と十月二十四日付とこの東電の報告書でも書いてある保安院の発出文書というのは、福島第一、第二についての格納容器漏えい率検査に関する報告を求める、報告徴収命令ですね。十月二十四日付の方が、柏崎刈羽に対する漏えい率検査についての報告徴収命令なわけですよ。その中では、直近なんて書いてないんですよ。例えば十月二十四日付の柏崎刈羽の方を見ても、これは同じ書式ですけれども、全ユニットの原子炉格納容器漏えい率検査に関する項目ということで、その中に、当該ユニットの運転開始から直近の定期検査までの間における法定検査と自主点検の双方を含むと。法定検査だけじゃなくて自主点検の資料も全部出しなさいよと。直近じゃないんですよ。つまり、運転開始以後全部出せとなっているんですね。直近というのと事実と違うんじゃないですか。

武黒参考人 御指摘の点につきまして、確認をいたしますが、私自身の記憶では、過去にさかのぼった検査記録についての精査を行ったように記憶いたしております。

塩川委員 この点については、この報告書は間違いということでよろしいですね。

武黒参考人 ちょっと事実関係を再度確認した上で、明確にさせていただきたいと存じます。

塩川委員 直近と書いてあるのは間違いということはお認めになりますね。

武黒参考人 私の記憶で今申し上げましたので、確認させていただきたいと存じます。

塩川委員 勝俣参考人に伺います。

 これは、当時も、この格納容器漏えい率検査の問題が大きな焦点として議論されました。国会の参議院の経済産業委員会で参考人質疑がございまして、十月二十四日に柏崎刈羽に対する漏えい率検査についての報告徴収命令が出た直後の十月三十一日付で委員会がありました。

 その際に、この件についてのやりとりが議員との間にありまして、過去をさかのぼって、大丈夫なんですか、直近の方に向けては大丈夫なんですかというやりとりが議員との間にあった際に、勝俣参考人御自身がお答えになっているのが、これは議事録にもありますけれども、福島第一、第二、柏崎、これらの発電所が運転開始をいたしましてから合計二百十五回の定期検査を行っております、その点について、これは漏えい率検査のことですけれども、漏えい率検査について調査をいたしまして、現時点では不正のところは認められておりませんということで、要するに、全定期検査、全プラントやっていますよ、それで現時点では不正は認められておりませんと言っていますから、ここに記載している、今回の報告書で言っている、直近に限定しているというのは、このときの勝俣参考人のお答えとも反する、事実と違うものですね。そういうことでよろしいですか。

勝俣参考人 今の点も含めまして、先ほど武黒が申しましたとおり、改めて調べて御回答いたしたいと思います。

塩川委員 当時の国会での答弁の方が不正確だったというお考えですか。

勝俣参考人 大変申しわけございませんが、すべてが回答できるというような状況にないのは、まことに申しわけございません。

塩川委員 これは、今回明らかとなったいろいろな問題のある事案の中で、漏えい率検査の問題が一件出ているわけですね。

 それが、柏崎刈羽で一号機から三号機について、主蒸気隔離弁漏えい率検査におけるデータ処理の改ざんというのが案件として挙げられているわけであります。平成六年九月から平成十年十月まで検査記録を改ざんとあるわけです。格納容器漏えい率検査のデータ偽装については、調査期間が限定されていたとここには出ているんですけれども、平成四年で例の事件が問題になったわけですが、平成六年から十年にかけて、実際こういうのは起こっているわけです。

 ですから、当時、大問題として徹底究明が叫ばれていましたし、調査対象にも入っていたのに、データ改ざんを明らかにしなかったということになるわけです。知っていたのに隠ぺいしたんじゃないのか、それをごまかすために、「直近の検査記録に限定。」という記載にしたんじゃないのかという疑念が浮かぶわけですけれども、この点についてはっきりお答えいただけますか。

武黒参考人 ただいま御指摘のありましたものは、柏崎刈羽原子力発電所一―三号機で主蒸気隔離弁漏えい率検査にかかわる事案というふうに考えますが、この事案は、格納容器全体の漏えい率の性能にかかわる部分でありますが、個別に主蒸気隔離弁そのものの性能を漏えい率という点で確認するための検査でございまして、検査としては別に行っているものでございます。

 また、今回問題となりましたものは、格納容器漏えい率検査そのものの前段で行います、停止後の漏えい率を測定した時点におけるデータの改ざん、あるいはバルブの操作等の不正でございまして、主蒸気隔離弁の点検が終了した後に行っております漏えい率検査そのものではございませんので、全体としての取り扱いは異なっているものと思っております。

塩川委員 いや、定期検査の一項目である格納容器漏えい率検査の一連の手順の一つではありますよね。一連の手順の一つ。事前の準備の作業として、当然のことながら、最後には圧力をかけてという話になるわけですけれども、一連の手順の一つだということは、平成十四年の漏えい率検査についての東電の最終報告の中にも、「漏洩率検査の手順」として、事前の局部漏えい検査の実施とありますから、そういうことでよろしいですね。

武黒参考人 申し上げましたように、この検査は停止後に行っている検査で、格納容器全体の漏えい率に係る性能を行うための検査そのものではございませんで、その前段として、主蒸気隔離弁についての必要な点検、手入れを行うに際して行っている検査でございます。

 格納容器漏えい率検査は、定期検査の終盤におきまして、手入れが終わった後の状態を確認する全体的な検査でございまして、今回のこの検査は、時期それから目的等が異なっているものというふうに考えております。

塩川委員 漏えい率検査の手順の一項目なんですよ、それは報告書に書いてあるとおりですから。

 実際に、今回の東電報告書そのものにも、検査の成立性に問題があったということを言わざるを得ない中身であるわけで、そういったことを隠したんじゃないのか、それをごまかすために直近という表現になったんじゃないのかという点もあるわけですから、それも含めて、改めてきちんと報告をお願いしたいと思っています。改めて報告をお願いできますか。

勝俣参考人 今回の問題につきましては、全く隠した意図はなく出したものでございます。

 以上でございます。

塩川委員 報告をいただけますか。

勝俣参考人 報告という意図がちょっとわからないので、ちょっと失礼させて……(塩川委員「直近ということについてです」と呼ぶ)直近についての意味合いについての御説明はさせていただきたいと思います。

塩川委員 これで報告書の前提の問題が問われているわけですから、こういうことを放置しておけば国民の不信を招くだけですので、きちんと報告書を出し直していただきたいと思っております。

 次に、北陸電力の件につきまして、永原参考人にお聞きします。

 臨界事故隠しの根本原因分析の中で、「経営層の責任」ということで、「臨界事故隠しを防げなかったこと、その後八年間それを見つけ出すことができなかったこと」と書いてありますけれども、この間の報道でも明らかになっておりますように、臨界事故隠しの当時に所長代理としてかかわったとされる方が、現経営陣で常務としていらっしゃる。ですから、経営層に当時の臨界事故隠しにかかわった人物がいるということについて、この経営層の責任に何ら触れていないというのはどういうことなんでしょうか。

永原参考人 お答えいたします。

 志賀の臨界事故は八年前に起こりました。当時所長代理をしておった者が、現在、常務取締役をしているというのは事実でございます。

 八年前当時、現場の方でそういう事故を起こして、これを報告しないでおこうというような取り決めがあったわけですが、当時の経営層の方はそれを知らなかったということをまず整理しております。

 現在の経営層についても、常務になった者は、実は四年前に取締役になり、二年前に常務に昇進しているわけでございますけれども、かかる人物を登用してきたということについては、現在、経営陣の方の不明である、申しわけないという気持ちでいっぱいでございます。

塩川委員 八年間見つけ出すことができなかったことという「経営層の責任」とあるんですが、実際、見つけ出せないどころか、当事者は知っていたわけじゃないですか。そのことについて報告書に何ら書いてないというのが、これが、利用者の皆さん、地域の皆さんに対して誠実な対応なのかということが問われるんじゃないでしょうか。

 地元紙の報道で知ったんですが、臨界事故隠しに所長代理としてかかわったとされる現常務が、昨年十一月、下請業者を集めて開いたトラブル防止の総決起大会に出席をし、最近のトラブルの要因はほとんど人的なものだ、もう少し注意していたら防げたはずと訓示をしていたというんですね。地元の信頼を失いつつあるが、少しずつ積み上げていくしか信頼回復の道はないと参加者に訴えたというんですが、人的な要因でという、まさにその人自身がトラブルのことを隠していたということですから、こういった問題について、この常務に対する対応も含めて、経営層としての責任というのをどう明らかにするのか、改めてお答えいただけますか。

永原参考人 現在の常務、当時の所長代理、この時点では、八年前に起こした折に、所長以下かたく胸に秘めたわけで、それで本社の方も、当時の経営層もわからなかったわけです。四年前に調査した折も、調査の仕方が甘かったのか、発見できませんでした。

 今回わかったわけでありますが、現在常務の者から話を聞きましても、ずっと八年間胸の底に秘めておったものを、何かこう、臨界事故というものをなかなか思い出せなくて、制御棒が動いてこれが誤信号であったとか、八年前のことを繰り返して申しておるのが実情でございました。

 きょう現在は、当人は出社しておりませんけれども、当然、会社としては厳しい処置をしていかなくちゃいけないというふうに理解しておりますが、何分、常務取締役という立場でございますので、三月下旬の取締役会で原子力担当常務からは外しております。本人は辞意を漏らしておりますので、取締役を解任ということは、一応、株式会社としては株主総会まで待たなくちゃいけないので、その手前の方でしかるべき処置をするということになろうかと思います。会社がするのか、本人から申し出てくるのか、この辺の兼ね合いかというふうに存じます。

 以上でございます。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。

 ありがとうございました。

上田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、本委員会にて御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

上田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、株式会社商工組合中央金庫法案及び中小企業信用保険法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官鈴木正徳君、金融庁総務企画局総括審議官中江公人君、金融庁総務企画局審議官谷口博文君、金融庁総務企画局参事官山崎穰一君、総務省大臣官房総括審議官久保信保君、総務省大臣官房審議官津曲俊英君、中小企業庁長官石毛博行君及び中小企業庁次長加藤文彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 自由民主党の佐藤ゆかりでございます。

 本日は、議題であります株式会社商工組合中央金庫法案につきまして、それを中心に御質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 この株式会社商工中金法案ですけれども、これは、昨年に施行されました行革推進法に基づきまして、その金融改革の一環として打ち出されているものでございます。こうした行革に向けた政府の大きな流れの中で、ぜひともこの商工中金の法案についても、十分な審議の上、一つの改革の旗印として進めていただきたいと思います。

 しかしながらその一方で、やはり商工中金といいますのは、歴史も七十年、ことし七十一年目と伺っておりますけれども、長年そうした中小企業金融を担ってきた、非常に重要な役割のある金融機関というふうに認識もいたしております。そういう意味で、中小企業にとりまして、円滑な中小企業金融に支障の出ないような形で、円滑に株式会社化、そして最終的に完全民営化に向けて、その仕組みづくりというものをきちっと法案でつくり上げることが大事ではないかと思われます。

 そういう意味で、本日は少し、この商工中金法案に盛り込まれております財務面での仕組み等につきまして、お話を進めさせていただきたいと思います。

 まず、商工中金のこれまでの財務基盤についてですが、これからやはり財務基盤が盤石になって、完全民営化に向かっていくということが、そういう財務基盤の増強ということが一つのポイントになってくるのではないかと思います。自己資本比率も直近で八・〇一%ということで、商工中金は国際業務もやっているわけですので、新BIS規制でいいますと八%がぎりぎりのラインですから、八・〇一を少しでも下回りますと、通常の民間の金融機関であれば早期是正措置が発動されるような、そういう非常に危うい状況に現状はあるのだろうと思います。そうした中で、いかに財務基盤を強化していくかがポイントの一つではないかと思います。

 それで、自己資本比率について、まず関連の御質問をさせていただきたいと思います。

 申しましたように、現状としては、平成十八年三月期で自己資本比率は八・〇一%。これは、平成十四年ごろから比べますと、毎年少しずつではありますが、改善傾向にあるわけですが、国際業務を行うにはまだぎりぎりのラインであります。

 そうした中で、今後、株式会社化、さらにはその先の完全民営化を視野に入れます中で、商工中金としての今後の自己資本比率の改善に向けた自主的な、いわゆる政府出資に頼らない部分におけます自主的な改善策といいますか努力はどういうものをお考えか、お伺いしたいと思います。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、今、新しいBIS基準というのが導入されているわけですけれども、自己資本比率の増強というのは非常に重要であるというふうに思っております。

 この法案の中では、株式会社化後の商工中金につきまして、中小企業に対する円滑な金融機能を継続的に実現できるようにする、そういうことで、既存の政府出資のかなりの部分を、自己資本の計算上、中核的資本に算入される特別準備金、そういうものとして準備金化するための必要な規定を整備しております。

 こういうことによりまして、商工中金は、先ほど先生から御指摘がありましたような自己資本比率、現状八・〇一%でございますけれども、そういうレベルを維持できるようにする、さらにそれを改善する、そういう努力が必要だというふうに思っております。

 具体的に、この法案の中では、まず、今まで出資者等に限定をされておりました預金資格、そういうものを一般の者に拡大する、預金資格制限の撤廃、そういうことによって業務を拡大していく。それから、証券会社、信託会社、あるいは新規事業分野を開拓するようなベンチャー企業を支援する会社、そういう会社を子会社として保有できるようにする。あるいは、出資者について、従来は組合からだけということになっていたわけですけれども、その構成員まで拡大する、出資基盤の拡大。

 そういうような措置を講じるということになっておりまして、こうしたいろいろな措置と商工中金の経営努力とが相まって、自己資本比率の改善が徐々に図られていくというふうなことを期待しているところでございます。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 ぜひとも、自主的な努力の方も、預金の拡大も含めて、視野に入れていっていただきたいというふうに思います。

 次に、もう一つ財務基盤でお伺いしたいのは、不良債権比率の方でございますけれども、こちらの方は、データによりますと、商工中金の不良債権比率は昨年の三月末時点で四・八%というふうに伺っております。これは通常の地銀並みの水準ではないかとは思われますけれども、景気が悪化したり、あるいは危機的状況が突発したりしたときに、やはり不良債権分類が悪化することもありますので、そういう意味では、十全の対応というのが事前にできるものであれば、それにこしたことはないわけであります。

 こういう危機的な状況、または景気が悪化したときに不良債権比率が高まってしまい、その結果、自己資本比率を守らなければならないために信用収縮が起きるといったことが、思い起こしますと、一九九八年の金融危機のときにも、それからITバブル崩壊直後にもあったわけでありまして、特に中小企業の方々にとりましては、貸し渋り、貸しはがしの問題が絶えず懸念の中にあるわけであります。そういう中で、この不良債権比率を何とか下げる努力というのも必要ではないかと思います。

 そういう意味で、これから商工中金は、中小企業金融に軸足を置き続けるということで、リスク分散という観点では、大企業に融資を拡大するという方向性よりは、むしろ中小企業金融という役割の中で、その範疇の中でリスク分散を行っていくという努力が必要ではないかと思われるわけであります。この辺の、中小企業金融の中でのリスク分散はどうあるべきか、お答えいただきたいと思います。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、商工中金の不良債権比率でございますけれども、四・八%と、メガバンクの平均が一・七%、それから地方銀行は、六十四行の平均でございますが四・一%、そういうものを若干上回っているという感じにございます。

 御案内のとおり、商工中金は、中小企業団体、その構成員に対する金融の円滑化ということを行う金融機関でございますけれども、そういう中で、やはりほかの地方銀行等々と比べまして、セーフティーネット融資だとかそういう政策的な要請によりまして、セーフティーネット貸し付けと申しますとリスクが多少大きい融資になるわけでございますけれども、そういうものに非常に積極的に対応してきた。そういう結果、不良債権の比率の部分も多少高いということがあるんだろうと思っております。

 新しい商工中金でございますけれども、私ども、当然、これは引き続き中小企業団体などを主たる融資対象として、従来から、もちろん特定の業種とか特定の地域に偏ることなく融資をしてきているわけでございますけれども、より幅広い業種、幅広い地域、そういうところの中小企業団体及びその構成員に対して融資を行うということを考えております。もちろん、その中で、御指摘のリスク分散というものも常に念頭に置いて、商工中金全体として対応していく必要があるだろうというふうにも思っております。

 それから、加えまして最近では、貸付債権の証券化というような形でリスク資産を減少させるというような手法も導入しているわけでございますけれども、そういう新しい対応も進めていきたいというふうに思っております。

 それから、融資だけではなくて、多様な金融サービスを中小企業に提供することによって、そういう収益面の強化を図るとともに、リスクの抑制というものを考えていきたいというふうに思っております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、財務基盤についてお伺いしたいと思います。

 自己資本比率、不良債権比率とお伺いしましたが、もう一つ大事なのは、これは貸出金利に影響することですが、商工中金の商工債の格付の問題です。格付が低下してまいりますと、やはり貸出金利を引き上げざるを得ない状況になりかねず、中小企業の利用者の方々にも影響が出てくるのではないかと思われます。

 そこで、格付についてお伺いしたいと思います。

 実は、きょう、御了解をいただいて、配付資料として、お手元に日本格付研究所の報告を一枚紙でお配りさせていただいております。これは四月十三日にニュースリリースで公表されたばかりのものでありまして、商工中金の長期優先債の新規格付でダブルAプラスという、ある意味非常に優良な結果が得られているわけでございます。

 これがどのぐらい優良かといいますと、同じ日本格付研究所が格付をしています民間の地銀で調べてみましたが、例えば、非常に優良と言われております横浜銀行ですとダブルAフラットでございます。あるいは、私の地元の近く、名古屋ですが、名古屋銀行ですとAプラスというような状況で、やはり商工中金として、ダブルAプラスというのは、財務内容を見てみますと、政府出資金が入っている実態、政府出資が四千億円程度投入されているわけでありますけれども、そういった政府出資があっての格付ではないかというふうにも思われるわけであります。

 実際に、この配付資料の表のページの(3)のところ、下線が引いてございますけれども、ごらんいただきたいと思いますが、その報告によりますと、民営化後に関する議論というのをやはり引き続き注視していく。そして、裏面のところにも下線を引いてございますけれども、ティア1の資本に算入される出資、これは、政府出資が今後、特別準備金あるいは政府保有株式として、どういう形態でどのぐらい配分されていくかという議論にもつながってくるわけでありますが、このティア1資本に算入される出資や準備金の規模に注目している、そして、政府は政府出資のかなりの部分を準備金化するとの方針のため、民営化の影響は限定的という評価を日本格付研究所は出しております。それに基づいたダブルAプラスという結果が出ているのだろうと思います。

 そうしますと、やはり今後、この政府出資がどのような形態をとるかというのが格付上も一つのポイントになってくるわけであります。このあたり、政府出資がある結果、高い格付を得ているというふうに私は個人的な印象を受けるわけですが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

甘利国務大臣 現状、政府出資の四千億を加えて、自己資本比率はおっしゃるように八・〇一で、仮にこれがなかりせば三・五二、国内基準も満たさないということになります。でありますから、きちんと自己資本比率が満たされていて、今後ともそれが担保されるということが極めて大事であります。

 政府出資の四千億をどう組み込んでいくか。一千億を政府出資として当面残し、残りの部分をティア1資本勘定に組み入れていく、この大前提が揺らぐようなことがあれば、直ちに格付は下がると思いますし、商工債も高い利率で発行しなければならない。それは貸出金利にはね返ってくる話でありますから、先生の御指摘は、まさに極めて重要な点だというふうに承知をいたしております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 結局のところは、利用者の中小企業にとりまして、どれだけ長期的に安定的な金融が低金利で提供できるか、そこのところはやはり株式会社後、民営化後も気を使わなければならないところではないかと思います。

 そういう意味で、格付がきちっと、そこそこのレーティングが受け取れるような盤石な財務体質になるまでの格付の問題、先ほどの自己資本比率の問題、不良債権比率の問題等いろいろ絡みますが、財務基盤がきちっと盤石になるまではそれなりの対応策が必要ではないかと思います。

 そこで、実は、一昨年のことですけれども、二階前経済産業大臣から、この商工中金の民営化に当たりまして、政府出資、今四千億あるわけでありますけれども、一案として、そのうちの三千億程度を特別準備金に回して、残り一千億程度を政府保有株式という形で、これは後々完全売却の対象になりますが、そのぐらいの案分で振り分けてはどうかというような御意見も挙がったようでございます。

 今後は、かなりの額を特別準備金に充てるというところまでは行革の附帯決議の方で出ているようではございますが、実際に、では、どのぐらいの額なのかというときに、まだ不透明感が漂うわけでありますけれども、この二階前大臣の額というのは一つの目安として考えてよろしいものなのかどうか、お伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 四千億のうちの一千億を政府保有株式、そして、これは民営化をして五年から七年かけて売却していくと。その際、つまり、中小企業団体、それから構成員がその株を保有するということですから、引き受ける側の体力にも関係しますから、十分な時間をいただきたいと思いますし、特別準備金は資本勘定に繰り入れていかないと、おっしゃるように、もうそもそもが成り立たないわけであります。

 でありますから、完全にこの三千億は特別準備金としてティア1勘定に入れる、これは明確に答弁をさせていただきます。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 今、甘利大臣から非常に心強い答弁を、明確な御答弁をいただきまして、大変ありがたく思います。

 また、この特別準備金は、結局最後は国庫に納付することになりますので、恐らく財務省側の御意見、御見解というのもたださなければならないのだろうということでお伺いさせていただきます。

 この政府出資の四千億に対して、実は商工中金は、今融資額が十八年三月期で九兆四千億円あるようでございます。その融資額のうち、変動金利による貸出残高が大体九千億円弱です。仮に財務基盤が悪化して、例えば貸出金利を上げざるを得ないような状況になってまいりますと、先ほどから申していますとおり、不良債権がふえるなどの懸念が上がってくるわけであります。

 そうしますと、結局のところ、政府出資の四千億円を、どの時点で、どのぐらいの案分で国庫に納付するのか。四千億円あるいはそれ以下のことでしかあり得ないわけでありますが、早期にそれを国庫に納付するのか。

 あるいは、これをやはり、甘利大臣おっしゃられましたように、政府の出資のより多くを特別準備金として据え置いて、むしろ財務基盤を盤石にする。要するに、盤石にしなければ、仮にこれだけの融資額が出ているわけですから、景気が悪いとき、あるいは何か危機対応のときに不良債権化もしかねないわけでありまして、万が一そのような事態になったときこそ、より一層多くの国民の税金が逆に投入される結果にもなりかねないというような事態も、技術的にはある程度考え得るわけであります。

 そこで、この政府出資の四千億を国庫にどれだけ返すのか。あるいは、それを早急に返してしまって、むしろ財務体質が盤石でなく、より多くの国民の税金が将来的に必要になるような状態があり得るのか、どちらのお考えでしょうか。田中副大臣にお伺いしたいと思います。

田中副大臣 佐藤委員の御指摘のとおり、新しい組織として平成二十年の十月に株式化してスタートしようというプランでございまして、今甘利大臣からもお話ありましたように、財政基盤を強固にするということは極めて重要なことだと思っております。

 そして、今お尋ねの点でございますけれども、特別準備金については、将来の国庫納付が予定されておりますけれども、当該の国庫納付は、商工中金の自己資本の充実の状況また財務内容の健全性が確保されるに至ったと認められる時点で、商工中金の自主的な判断に基づき行われる、このように私ども認識をしておるわけでございます。

 特に、委員が言われました、財務基盤が安定化するまでは商工中金が保持できるようにするべきだということでございますけれども、私どももそういうふうに措置されるもの、このように認識しておりますので、私も、政治家としても、全く委員のお尋ねに同感の意を答弁させていただきたいと思います。

佐藤(ゆ)委員 大変心強い御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 甘利大臣にも先ほど非常に明確な御答弁をいただき、あわせまして、田中財務副大臣からも非常に心強い御答弁をいただいたわけであります。ぜひとも、こういった方向性がきちっとこれからも維持されますように、できましたら、附帯決議か何か、そういった点の措置というものもお考えいただけないものかと思います。

 それから、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 政府出資ですけれども、残りの部分というのは政府保有株ということで、完全民営化までには完全売却をしなければならないものであります。そういう意味で、中小企業にとりましては、株式の売却がいつになるのか。いろいろ、どのぐらいの額で、どういうスケジュールになるかというのが、やはり一つの懸念でもありましょうし、あるいは、商工中金を支える団体の企業や中小企業に対して、買い取りを余儀なくされるような状況になりますと、額が額であるだけに、やはり一時的には大きな負担が及ぶというようなことにもなるのではないかと思います。

 このあたりは、商工中金のこれからの経営上の自主性というものを尊重しながら、やはり国民の税金である政府出資の使い方あるいは株式の売却の仕方については、やはり十全な判断が必要ではないかと思われます。この辺につきましても、国民的な議論を踏まえて、慎重な判断を必要とするのではないかと思いますけれども、御意見をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 商工中金は、今までもそうでありますが、これからも、中小企業金融として完全民営化後も生きていってもらわなきゃならないわけであります。いわばその縛りをかけるために、株主はそういう関係者でいていただかなきゃならぬ。しかしながら、一般に売り出せばすぐ市場消化はできるのでありましょうけれども、そういう引き受けの限定があります。

 もちろん、商工組合だけじゃなくて、その構成員にも幅を広げますけれども、十分な余裕を、時間的な猶予を持たせないと消化不良を起こしてしまうわけであります。売却は五年から七年という目安にはなっていますけれども、いずれにしても、運営全体に支障を来さないように十分に配慮しながら関係者に保有をしていただくということになろうと思っております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 株式の売却につきましても、大臣おっしゃられましたように、非常に慎重な措置が必要ではないかと思われます。

 最後に、資金調達の側面で、一つだけお伺いしたいんですが、商工債の発行と、これからは、やはり自助努力ということも含めまして、預金の拡大というのは先ほど石毛長官からも御答弁いただいたとおりであります。しかし、そうは申しましても、商工債の方は今七・八兆円発行して、預金の方は二・四兆円というような資金調達の内訳であると伺っております。

 全体として、現状、まだ商工債が資金調達の七五%近くを占めているわけでありますが、このあたり、やはり急激に資金調達に支障が出るようなことになって、結局貸出金利が上がってしまうことになりますと、不良債権がふえるというようなことにもなりかねません。

 そういう意味で、商工債の発行についても、現在の法案では民営化の後、その取り扱いについては特に記載がないかと理解をしておりますが、本法案が廃止になりますとその後どうなるのか。このままでありますと商工債が発行できないようなことにもなろうかと思いますが、この見通しについて、山本副大臣、お願いしたいと思います。

山本(幸)副大臣 御指摘のように、ただいま資金調達の八割近くを商工債でやっております。これが、完全民営化した後に、それなしにできるかと見通せれば別ですけれども、移行期までに最終的には決めますが、私どもとしては、商工債はそれ以降も必要になるんじゃないかと思っておりまして、何らかの手当てを考えたいと思っております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、この商工中金の法案ですけれども、株式会社化後、そしてさらに先の完全民営化後につきましても、中小企業金融という重要な役割を担っているということを踏まえまして、十全の御配慮をいただければと思います。最後に、そういった観点から、甘利大臣の御決意のほどをお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 商工中金は、政府系金融機関として、政府系とはいっても、今までもほぼ民間だ、政府出資がある以外はほぼ民間でやってきたんだと私は思います。他の金融機関、純粋民間金融機関が貸し渋りのときにも、純粋政府系と一緒になって中小企業にしっかり対応してくれていました。

 ここは、ただ貸すだけじゃなくて、経営指導と合わせて貸すという大変なノウハウを持っているわけですね。これから地域金融で大事なことは、リレーションシップバンキング、つまり、財務諸表だけじゃなくて、経営能力や将来性をしっかり見るという、そこの評価が大事になってくるわけでありますが、今までそれを、言ってみれば地でいっている金融機関であります。中小企業金融の範として、彼らの融資姿勢、それから彼らのノウハウ、それにぜひ他の地域金融機関も学んで、円滑な中小企業金融に資するようにしていただきたいというふうに思っております。

佐藤(ゆ)委員 大変心強い御答弁、ありがとうございました。これで質疑を終わらせていただきます。

上田委員長 次に、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男です。

 きょうは、株式会社商工中金法につきまして質問をさせていただきます。

 まず、商工中金の今の経営状況について尋ねさせていただきます。

 財務状況はどうでしょうか。利益は上がっているんでしょうか。自己資本比率は、あるいは不良債権比率は、先ほどお答えはありましたけれども、財投資金による政府引き受けは今どれぐらいあるんでしょうか。財投機関債の発行は今あるんでしょうか。財政資金は使われているんでしょうか。経済産業省、お答えをお願いいたします。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 商工中金の経営状況でございますけれども、まず利益ですけれども、不良債権処理などの影響を受けました一時期を除きまして、過去五十年以上にわたりまして一貫して利益は計上し続けております。

 それから、先ほどもちょっと議論になりました自己資本比率でございますけれども、平成十五年度あたりには七・七%だったものが、少しずつ上がっていって、平成十七年度末には、先ほど数字が出ましたように、八・〇一%、そういうレベルになっております。

 それから、不良債権の関係でございますけれども、先ほど申し上げましたように、セーフティーネット融資だとか危機対応融資、そういうものに適用するということで、同程度の地銀と比べますと多少高い水準の四・八%、地銀の場合は六十四行の平均で四・一%になっておるわけでございますけれども、そういうレベルに抑えるなど、おおむね健全な経営状況にあるのではないかというふうに思っております。

 それから、平成十八年度の財政融資資金についての商工債の新規引き受け、すなわち政府による商工債の引き受け、言いかえれば政府による商工中金への貸し付けの額でございますが、これはもうゼロになっております。

 それから、利子補給金等の財政資金の投入額は、平成十八年度としてはゼロになっているという状況でございます。

三谷委員 おおむねというよりも、確かに、利益こそ大きくはありませんけれども、大変健全だというふうに思います。優等生の部類に入ると思います。

 そして、続けて問わせていただきます。この商工中金につきまして、政府系金融機関、そして政策金融を行う金融機関として、先ほど大臣からは民間に近いというお言葉がありましたけれども、非常に大事な役割を担ってきたというふうに私は思いますが、この中小企業向け融資あるいは災害等の危機の際の対応など、これまで商工中金が果たしてきた役割を甘利経済産業大臣はどのように評価をされているのか、お考えを聞かせてください。

甘利国務大臣 厳密に言えば、民間金融機関ではありません。しかし、例えば中小公庫とか国金と比較すると、民間により近いわけでありますから、中間に位置するものだというふうに思っております。

 そして、今まで果たしてきた機能の評価でありますけれども、一言で言いますれば、最小の投資で最大の効果といいますか、政府のお金の投入額を最小で、最大の効果を極めて効率よく上げてきた政府系金融機関ではないかと。そこには、ただ政府の金を足し前して金融政策に資するというだけではなくて、やはり積み上げてきたノウハウを最大限生かしてきた。これは特に民間の地域金融機関にはしっかり身につけてもらいたいというふうな思いがあります。そういうノウハウがあって、最小の投資で最大の効果というような中小企業金融の役割を果たしてきたというふうに認識をしております。

三谷委員 まさに今大臣おっしゃられたように、私は本当に的を得た表現だと思うんですね、最小の投資で最大の効果を上げた、私も全くそのとおりだと思います。政府の投資からすると最大限の、先ほど私、優等生と言いましたけれども、そういう意味での最大の優等生であるというふうに思います。

 これは実感の話ですけれども、商工中金がおつき合いをされている相手、私も随分ほかの政府系金融機関のことでもヒアリングをいたしましたけれども、商工中金の取引先が一番、ある意味とてもありがたがっておられる、こういうことが言えるんじゃないでしょうか。

 そしてまた、確かに中小公庫あるいは国民公庫のように制度融資こそないですけれども、間違いなく言えることは、この中小企業向け金融の部分で、では、商工中金が貸し付けをしている相手先、もちろん全部とは言いませんけれども、信金、信組、あるいは地銀、それが補い得るのかというと、それは補い得ないというのが答えであるというふうに思います。

 そこで、話をかえさせていただきます。今も商工中金の民営化という話が出ましたけれども、商工中金の完全民営化につきまして議論をさせていただきたいと思います。

 行革推進法の中に、商工中金の完全民営化が定められております。まさにこの法案そのものが、今のこの株式会社商工中金法、政策金融改革推進本部、行革推進本部、それぞれに決定をされた政策金融改革の制度設計に従って、完全民営化される商工中金について、完全民営化までの移行期に係る商工中金のあり方を定めるための法案であります。行革推進法においても当然のことのように、既定のことのように、商工中金の完全民営化がこの中に規定をされています。

 行革推進法の随分長い議論が国会の中でもありましたけれども、私の知る限り、議事録も見ましたけれども、ほとんど、あるいは全く、商工中金の完全民営化について議論がなかったように記憶をしています。少なくとも国会の中ではなかったのではないでしょうか。完全民営化することが本当にいいことなのかどうなのか、私は今でも素朴に疑問に思っています。

 どこで、どういうふうにこの完全民営化という既定路線が決まったんでしょうか。そして、どうして商工中金を完全民営化するのがよかったのか、しなければならないというようなことになったのか、その経緯を含めて甘利大臣に御説明をいただきたい。甘利大臣なりのお考えを含めていただいても結構でございますので、お考えをお願いいたします。

甘利国務大臣 私は、本職につきます前に党の政調会長代理をやっておりました。商工中金のコストパフォーマンスを極めて高く評価しておりました。今、先生が御質問のような思いを持って行革関係者と大議論をしてまいりました。仮に、今法案が提出されていますが、この法案によって完全民営化された後に今までのような機能が果たせないということであるならば、私は反対しようと思いました。

 そこで、商工中金関係者と、今まで果たしてきた機能は極めて高く評価をしている、その機能が果たし得るような民営化の方策はということで、随分と私なりの議論はしてきたつもりであります。そこで、商工中金の方から、この仕組みであれば頑張り切れると思いますということであって、私は最終的に党の側においても賛成をしたわけであります。

 今まで、この法案が出る前の商工中金はどういう状態かといいますと、一つ、政府出資が入っています。この信用力があります。つまり、政府が後ろ盾になっているということで、商工中金債が極めて信用が高く市場に迎えられている。ですから、高い利づけをしなくても販売ができる。それは、資金調達コストがかからないということになっているわけであります。

 一方で、政府出資分、つまり四千億について配当をいたしておりません。これは、その分税金をいただいていると同じことであります。つまり、配当分の税金をいただき、信用を後ろ盾にしてもらって頑張っているわけであります。この政府出資が一千億になり、そして、やがてこれを売却していく、こういう中で市場の評価というものが下がってくると、いろいろ支障が出てくる。これがどうなんだろうかということを非常に注視しておりました。

 先ほど佐藤委員の方から、ダブルAプラスというかなり高い評価、しかし、これは前提があって、特別準備金がちゃんと確保されるかということによって変わり得るという話、市場の評価だと。これについては、私も答弁をしましたし、財務副大臣もしっかり答弁をしてもらったわけであります。

 そうしますと、商工中金関係者が申していますように、新しい体制になっても、今までの果たしてきた機能を果たし得ることの自信を持っているということでありますので、それならば大丈夫だろうというふうな思いに至ったわけであります。でありますから、ここで大事なことは、ちゃんと自己資本比率が確保されるための措置がきちんと確約されること、それをどう担保するかということが極めて大事だというふうに思っております。

 行革の精神からいいますと、行革の大前提は、政策的に大事なところについては政府系がやるけれども、一般的な貸し付けの量的補完については撤退するんだという大前提があります。完全民営化すれば、要するに何でもできるわけであります。商工中金は、何はばかることなく中小企業者のために自分の経験とノウハウをフル稼働していろいろなことができる、そういうところにも期待をしているというところであります。

三谷委員 大変丁寧なお答えをいただきまして、ありがとうございました。

 ただ、本当に、まさに今の大臣のお話の最後の、一番肝心な部分ですけれども、新しい体制になって商工中金の方々が自信を持っている。自信を持っているならばいいんですが、あるいは、後でもまた一つずつ質問をさせていただきますけれども、この中で書かれている完全民営化以降の話、金融債の話を初めといたしまして、あるいは、最も肝心なのは、先ほども大臣、最後に言われた、まさに必要な措置の部分も含めて、今の時点であいまいなところがたくさんあります。それで、新しい体制になって自信が持てるというのは、私はどうなのかなというふうに思います。

 その前に、もう一つ確認をさせていただきたいのですが、完全民営化、この定義を聞かせていただきたい。具体的にどういうことなのか、どういうことをこの場合の完全民営化というのか、行革事務局鈴木審議官、お願いします。

鈴木政府参考人 完全民営化の定義でございますけれども、完全民営化とは、会社法を設立の根拠とし、政府の出資がない株式会社とすることをいうということにしております。

 具体的には、行革推進法のときにも御議論を賜りまして、完全民営化とはどういうことだと、当時の国務大臣中馬大臣の方から、完全民営化とは、会社法を設立の根拠として政府の出資がない株式会社とすることをいうものでございます、したがいまして、個別設立根拠法は廃止することが基本であります、なお、政策上の必要により特に必要な場合には法律上何らかの手当てをすることまで妨げるものではない、このように認識しておりますという答弁をさせていただいております。

三谷委員 政府出資がない株式会社で、今根拠法のお話をされましたけれども、根拠法は撤廃をしなければいけないわけですね。

 先ほども大臣が言われた、必要な措置をきちんと法律で定めて位置づけるということは、これは、ここで言う完全民営化には全く支障はないですね。

鈴木政府参考人 支障ございません。

三谷委員 今のお答えで大変安心をいたしました。

 もう一つ、これは、ほかの方々もたくさん疑問に思っているところですけれども、よく出てくる、政府金融の貸付金についてのGDP比半減という話であります。

 行革推進法の中にも出てきます。政策金融の貸付金について、平成二十年度末までに、貸付残高、GDP比で十六年度末と比べて半減させる、これを目標として書かれています。たびたび出てきます。この制度改革の冒頭にも、基本的な考え方、まず一等最初にこのことが書かれています。GDP比で半減させる貸付残高の中に、この完全民営化される商工中金の貸付残高は含まれているんでしょうか。含まれているならば、廃止をされる公営企業金融公庫、形を変えての廃止、完全民営化されるこの商工中金と政策投資銀行、これだけでもう半分なんです。

 だから、疑いたくはないですが、よもや半減させるという目標を果たすための完全民営化ではないだろうとは思いますが、こういう目的の意味が全くわからない。何で、GDP比で半減させるという、法律の中にも制度設計の中にも一々書いてあるんですが、どういう意味があるんでしょうか、あるいは、どれほどの影響力を持った意味があるんでしょうか。大臣、教えてください。

鈴木政府参考人 ただいまの先生御指摘のGDP比半減の議論でございますけれども、実は、平成十四年の経済財政諮問会議におきまして、日本における政策金融のGDP比の割合が他の先進国と比べて高い、これが金融市場をゆがめる一因になっているのではないかというような議論もございました。そのような議論を踏まえまして、GDP比で半減をするということが平成十四年の経済財政諮問会議から提言をされております。

 こういうことを受けまして、平成十七年でございますけれども、経済財政諮問会議、また政府部内、党内でさまざまな議論が行われまして、今先生がおっしゃいました商工中金、政投銀、この民営化というのは、これは非常に大きい決断だと思っております、また、公営企業金融公庫を廃止して地方の機関に変える、これも非常に大きい決断だと考えておりますけれども、十六年度の分子には政投銀、商工中金、公営公庫も入れまして、もしこの法案が可決されましたならば、二十年度末は商工中金は政策金融からは切り離されることになりますので、分子からはなくなるというものでございます。

三谷委員 だれがどういうふうに決めたのかということもお尋ねしましたが、経済財政諮問会議で決まったというお答えですか。

鈴木政府参考人 具体的には、平成十七年十一月二十九日でございますけれども、政策金融改革、これは経済財政諮問会議で決定をされております。その後、平成十七年の十二月でございますが、行政改革の重要方針、これは閣議決定で決定をいたしまして、最終的には行政改革推進法に盛り込んだところでございます。

三谷委員 実は、今十七年に決定というその前からこの言葉はたびたび目標として使われておりまして、竹中前総務大臣の大変よく活用される言葉でもありますので、もうこれ以上は尋ねません。また大臣も、同じお尋ねをほかの方もきっとされているんだろうと思います。これ以上は尋ねません。

 もう一回、先ほどの完全民営化の議論に戻らせていただきます。

 経緯の説明というのは大臣からはございませんでしたけれども、私はこういうふうに理解をしています。この完全民営化、商工中金あるいは政投銀もそうでありますけれども、平成十七年、おととしのあの衆議院の総選挙の後から、まさに、郵政改革を掲げて与党が大勝をして、そして郵政民営化法案のあの審議、そして成立ということがありました。次は政策金融改革だ、郵政改革が財投資金の入り口改革ならば、今度は出口改革だということもあったんだろうと思います。そのときの十一月に政策金融改革の基本方針が出されて、その中で、この商工中金について、「所属団体中小企業向けのフルバンキング機能を行う機関として完全民営化する。」ここで完全民営化がはっきり盛り込まれました。相前後して、政府・与党合意もございます。

 ただ、もとは、私もよく覚えているんですけれども、あの小泉前総理の経済財政諮問会議での、大きな記事にもなりました、政府系金融機関を一つにという発言、大号令であります。もちろん、それは一つにはできるわけがない、それぞれの政府系金融機関、それぞれ性格が異なりますから。要は、中小公庫、国民公庫、統合できる四機関半、それを一つに統合して、公営公庫は形を変えて廃止、商工中金、政策投資銀行については民営化、それも、そのときはやりの、まさに郵貯、簡保と同じ完全民営化、そういう方向づけになったんだろうというふうに思います。

 そして、一言、これは、大臣も先ほどの御答弁からいたしますと、お立場のこともありますし、また、党の政調代理のときのお話も交えながら、大いに疑問に思われていたところもあったんだろうというふうに思います。だけれども、決して、この政投銀あるいは商工中金の完全民営化だけの話ではないですけれども、後でもまた政策金融全体のことも問わせていただきますけれども、やはり中身の見直しをきちんとやってもらいたいということを申し上げないわけにはいきません。

 統合して数が少なくなれば、多少はコストも下がります。だけれども、中身の見直しが一番大事なことだし、申し上げたいのは、そのときに、何が政策金融として、国のやるべきこととして必要なことなのか、見きわめながら、スクラップするものはスクラップをしなければいけない、あるいは不要な事業については見直しをかけなければいけない、あるいは廃止をしなければいけない、縮小をしなければいけない。

 どうやら、完全民営化の話もそうですし、また、廃止、統合といった話もそうですけれども、数合わせであるとか、何かその外形の形にこだわることが多くて、本当に中身の改革、見直しというものができているのかどうか、大いに疑問に思うところであります。

 そして、まさに先ほど大臣のお答えの中にございましたけれども、最後の完全民営化時点での必要な措置。もちろん、この制度設計の中でも、「新機関のイメージ」ということで、先ほども大臣おっしゃられたような、中小企業向けの金融をこれからやるんだ、今までの商工中金でも、中小企業団体及びその構成員に向けた、今までもそうですし、また、ここのイメージの中で書かれていることも同じことだから、同じことができるんだ。

 だけれども、あいまいな規定だと、この「新機関のイメージ」は。必要なことはあると思います、必要な措置はあると思います。私は誤解をしていましたのは、評価委員という存在はありますけれども、主務大臣である、主務大臣は経産大臣だけではありませんけれども、主務大臣が決められるものだと思っておりました。だから大臣からお答えをいただきたいと思っておったんですが、先ほどの大臣のお話からすると、ちょっと人ごとのように聞こえたのですが、まさに、必要な措置をとってください、こういうお尋ねであります。

甘利国務大臣 商工中金の完全民営化は何を意味するかというのは、先ほど行革当局からお答えがありました。これは、根拠法を一般法、つまり会社法とするということであります。そして、その規制は、銀行法等、一般の金融機関が受ける法律に基づいて規制監督を受けるということであります。それが土台ですね。設立の根拠、これを他の金融機関と共通なものにする、これをもって完全民営化であります。

 その上に、機能というのがあるわけですね。商工中金は今までのノウハウもフル稼働して引き続き中小企業の金融機能を担ってください、それをではどうやって担保するんだというのは、それはまた根拠法とは別な話なのでありまして、二階の部分であります。これをちゃんと担保するということが大事なので、それをちゃんと民営化に際しては措置していくということであります。

 それは、具体的に申し上げれば、国が保有している株を売却する際に、ここで実は、私が党にいますときに政府側と大議論をしたのであります。それは、中小企業金融ということを定義するのに、定款で書けばいいじゃないか、そんなことを言ったって、定款は未来永劫そのまま変えないでいけるんですか、定款を変えちゃったら終わりじゃないですかと。

 だから、完全民営化するという土台は、ちゃんとよその金融機関と一緒ですよ。目的を果たすための仕組みについては、当然、二階部分は新たにあっていいわけでありますから、だから、それは、株式は中小企業組合並びに構成員に限定して持ってもらうということをしなきゃならない、あるいは、各種債券発行ができるようにする、その各種というところに何を含ませるかということをしっかり議論していかなきゃいけないというふうに思っております。

 ですから、土台は共通でありますから、これは会社法に従ってよその金融機関と全部一緒ですから、完全民営化でございます。規制も、銀行法その他、他の金融機関が受けるような法律に従って受けるから、同じであります。民営化するときの目的をちゃんと縛っていかなきゃならない、そのための措置をするのは当然のことだと思っております。

三谷委員 まさに今大臣がおっしゃられました、それぞれの機能をどう担保していくか、ちょっと一つ一つ聞かせていただきます。

 先ほどの佐藤委員の問いの中にもございました、今の大臣のお話の中にもございました、まさに資金調達のあり方でありますけれども、完全民営化時の資金調達、「幅広い形態の債券発行」の中に、従来発行していた商工債、金融債の発行は含まれるのかどうか。そして、今の大臣のおっしゃり方からすると、それを一つずつ議論して決めていく。これは、だれが、どういう形で、あるいはどの機関ということでしょうか、だれが決めることになるんでしょうか。

甘利国務大臣 もう既に、法の中にちゃんと中小企業向けについての手当てをするということは書いてあるわけでありますから、これをこれから決めるということではありません。

 ただ、いろいろな債券の発行を可能にする、ここのところに商中債が入るのか入らないのか。これは私は、当然、少なくとも財政基盤がきちんと安定するまでは、これは発行させてもらわなければ安定的運営ができません。全部預金でやれといったって、預金はあしたすぐいきなりどんと集まるわけじゃありませんから。ですから、そういう信用に支障を来すようなことに至らないような措置はとれるというふうに私は理解しています。

三谷委員 ただ、五年から七年の間で、完全民営化、後でも聞きますけれども、株の売り方もちょっと難しいんですよ。難しいですが、今のお話からすれば可能だと。書かれていることというのは、書かれているわけですね、完全民営化以降のことも。他の金融機関の事業転換の例に倣い、幅広い形態の債券発行を行うわけですから、金融債を発行してもよいわけですよね。それを確認しておるのですけれども、いいわけですよね。

甘利国務大臣 そういうふうに理解しております。

石毛政府参考人 今大臣がお答えしたとおりでありますけれども、完全民営化後の商工中金の金融債の発行の部分でございますけれども、「政策金融改革に係る制度設計」の中で、まさに幅広い形態の債券発行などについて、安定的、効率的な、多様な資金調達基盤を確立するというものが決定されております。

 それを受けて、実際に完全民営化後の商工中金における商工債の発行、それは、今大臣が申し上げましたように、資金調達がそのとききちっとそれなしにできるのか、できないようであれば、当然そういったようなものも含めて発行できるということが必要になってくるのではないかというふうに思っております。

三谷委員 今のお話で安心をいたしました。金融債が発行できるかどうか。もちろん、これは先ほども大臣が御説明になられましたように、コスト高、完全民営化時には政府出資分は基本的になくなるわけですから、その分調達コストがかかりますので。それでも発行できる方がいい、大変大事なポイントになると思います。その点は安心をいたしました。

 続いて、特別準備金についてでありますけれども、「政府出資のかなりの部分を準備金化する。」というふうに記されています。今までのお話、御説明のように、財政基盤が整うまで、あるいは必要なだけをという書かれ方になっています。特別準備金があって、政府分の株式、もともとの民間出資分、こういう三階建てになっているものと思います。政府保有株式の割合、額はどれぐらいを見込んでいるのか、考えているのか、準備金はどれぐらいなのか、どう考えているのか、教えてください。

甘利国務大臣 現状で政府出資が四千億であります。それを、一千億が政府出資、三千億を特別準備金というふうに考えております。

三谷委員 大変明快なお答えをありがとうございました。

 そして、今も少し聞きましたけれども、政府出資の処分あるいは行き先についてでありますが、これは株のことだと思いますが、市場の動向を踏まえつつその処分を図り、施行からおおむね五年後から七年後を目途に全部処分ということになっています。

 先ほども申し上げましたように、政府保有株式の売却については、これは株主の制限もございます。だれにというのは、多分、民間の出資者、その構成員も含めてということなんだろうと思いますが、だれにということも含めて、あるいはどのように売るのか。値段のこともあると思います、上場ではありませんので。

 それともう一つ、まさに先ほどの特別準備金でありますけれども、これは完全民営化時、そのまま国庫に返納ということになるんでしょうか。

石毛政府参考人 ただいまの株式の処分の関係のお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、完全民営化までの移行期の商工中金の株主資格というのは、中小企業団体及びその構成員に限定をされております。したがいまして、その政府保有株式を売却する場合も、中小企業団体及びその構成員が売却先になるわけであります。

 その具体的な処分の方法ですけれども、先ほどもちょっと議論になりましたけれども、次のような点に配慮しながら、適切に決めていくという形になります。

 まず第一は、中小企業向け金融機関としての機能を維持するためにこういう制限を導入するわけですけれども、そういう機能をきっちり維持できるようにするということ。

 それから二つ目に、株主となる中小企業団体などの資金余力、そういうものが本当にあるのかどうか、いつどれだけ購入できるような、そういうスピードにあるのか、そういう点。

 それから三点目ですけれども、国民の貴重な財産であります商工中金の株式の価値の最大化ということで、株式市場の状況を見て、どれだけ、どういうスピードで売っていった方がいいのか、そういうことをよく考えながら、公平かつ適切な処分方法となるように検討をしていくという考えでございます。

 それからもう一点、価格についてのお尋ねがございました。

 具体的にどういうふうに価格を決めて売却していくかということで、今、特にこれといって確定をしているわけではありませんけれども、例えば次のような方法があるのではないかと思っております。

 参加資格を限定した一般競争入札を行って、その入札結果を参考に価格を決めた上で売却するような方法、それから、株式等評価委員会のような第三者組織で価格を決めた上で中小企業者などに直接売却するような方法、そういうような方法があろうかと思いますけれども、制度設計の中で、きちっとそういう新機関の株式の処分の方法については、中小企業団体及びその構成員のための金融機関としての事業基盤を確立するために十分配慮するんだということが記載されておりますので、私たちはそれに従って具体的な処分方法を決めていきたいというふうに考えております。

三谷委員 内容につきましてはよくわかりました。一般競争入札というかなり具体的なお話でもありますし。

 ただ、今のこの株の売却の話は、長官、自分たちでこういうふうに決めるんだというふうに私は聞こえたのですが、これはだれがどのように決めるんですか、それが一点。

 それと、特別準備金のお話がございませんでしたが。

石毛政府参考人 政府保有株ですから、財務当局と私どもが実態をよく見た上で決めていくという形になろうかと思います。

 それから、特別準備金について、済みません、どういった質問だったでしょうか。恐縮でございます。(三谷委員「特別準備金は完全民営化時に国庫に返納ということになるのか」と呼ぶ)特別準備金につきましては、もちろん、移行期において商工中金の財務基盤もきちっと維持をする、それで本来の商工中金としての金融機能をちゃんと果たせるようにする、そういう趣旨で設けております。したがいまして、完全民営化後においても、この機能をしっかり維持できるようにするというその性質は変わらないものだというふうに思っております。

 したがって、そういうものが維持できるようにするというのが目的でございますから、そういうものが維持できないというおそれがあるのであれば、それは引き続き、商工中金の側に特別準備金として維持するというのが基本だろうというふうに考えております。

 いずれにしても、この移行期においてどういうふうな形になるのか、しっかり見た上で決定をされるものというふうに理解をしております。

三谷委員 甘利大臣、今、石毛長官のおっしゃられた話というのは、多分この特別準備金の話も、財務当局との引っ張り合いというようなことに。決められていないでしょう、これは。決められていないでしょう。

 今の長官のお話からすると、必要なだけ、必要だったら返納しなくても残せるという言われ方ですよね。それは決まっているんですか。決められているんですか、必要だったら。必要というのはとても抽象的な、商工中金が必要だということならば、残せるんですか。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 今お答えしましたのは、移行期の間の法律でございますから、特別準備金の取り扱いそのものについて、どういう取り扱いをするのかということをこの法律の中で規定をしております。

 それで、追加的に申し上げましたのは、完全民営化の時点において、この商工中金の金融機能が引き続き維持されるような必要な措置をとるということが附則で書かれておりますけれども、その例として株主資格の制限ということが書かれておりますけれども、そういうものの中の必要な措置の一つとして、そういう特別準備金の維持というものが入ってくるであろうということをちょっと申し上げたわけでありまして、今御指摘のとおり、法律の中で明示的にそういうふうに書いてあるわけではないというのはそのとおりでございます。

三谷委員 この話は大変大事な話ですから、まさに必要な措置の中に盛り込まれればいいということですか。盛り込まれなければ、先ほどのようなお話にはならないわけですよね。

石毛政府参考人 その移行期を経て、完全民営化の時点で、商工中金の金融機能がそういうものなしに維持できるのかどうかというのをしっかり判断して、その中で必要だということになるのであれば、そういった措置を必ずとる必要がある、そういうことでございます。

三谷委員 石毛長官、商工中金にとってそれが必要であるかどうかなんというのは、大変抽象的な、だから、それはだれが決めるんですか。だれが判断するんですか、これを必要だと。

 商工中金の側からすれば、あるいはそれを応援する経産大臣あるいは経産省の担当課からすると、それは必要だ、なるべく残しなさい、たくさん残しなさい、こういう話になるわけじゃないですか。だから、その必要な措置を盛り込むように決めるのはだれなんでしょうか。

山本(幸)副大臣 これは主務大臣が決めるということになっております。評価委員の意見を聞いた上ですけれども、そういうふうになっています。

三谷委員 そのとおりですね。主務大臣が決める。だから、経産大臣が決めることになるんですよね。(山本(幸)副大臣「財務大臣……」と呼ぶ)ああ、全部でですか。商工中金の場合は……。

甘利国務大臣 特別準備金を置くということは主務大臣が決めるわけですね。これは、財務基盤をしっかりするために必要欠くべからざることなんです。これがなくなれば直ちに、それこそ自己資本比率でいって、国際金融はもちろんできないし、国内も、一千億が残るだけですから、一千億、民間の一千億ですから、かなり脆弱になりますから、格付はどんどん落ちるわけであります。調達金利はどんどん上がっていくということになるわけですから、これはなきゃならない、それで置くんです。

 これは別に、国庫に借りて返済するお金じゃないんですね、特別準備金ですから。これは自発的に、体力を毀損しないという中で国庫納付をしていくという性格のものだと私は思っております。ですから、自己資本比率を毀損しないという中で、該当するものについて、体力に見合って国庫に納付をしていくというふうに理解をしております。

三谷委員 わかりました。大変大事なところだと思います。この必要とされる措置のところで、先ほどの中小企業向けの金融を続ける、すなわち中小企業団体及びその構成員向けの金融機関としての機能を云々といっても、先ほどの部分があるのかないのか、必要なものとしてあるのかないのか、これもできるかできないかということでいったら大変大きな岐路になる話だというふうに思います。先ほどの大臣のお話で安心をいたしました。

 そして、危機対応のあり方でありますけれども、これは、移行期においてもあるいは完全民営化後においても、移行期は従前どおりの危機対応ができますね、完全民営化後においては、これはどうなるんでしょうか。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、移行期についてですけれども、今先生言われたとおり、危機対応体制における指定機関としての指定を受けたものと商工中金はみなされておりまして、そういう業務をきちっと行えるというふうになっております。

 それから、完全民営化後でございますけれども、制度設計の中で、完全民営化後も原則として指定機関であることを継続するものとするというふうにされておりまして、引き続き適切に危機対応業務を行えるものというふうに考えております。

三谷委員 それともう一つ大事なことなんですけれども、商工中金は新しい金融手法の開発普及をやってきました。売り掛け債権の流動化あるいはシンジケートローン、これは完全民営化後どうなるか。これは商工中金の方々のお話です、非常に中立的だから、Aという民間金融機関とBという民間金融機関は、確かに一緒にやるということになると仲がよくない、一緒になかなかなれない、ジョイントできない、商工中金がセンターに入るとシンジケートローンがとても組みやすい、こういうこともありますし、あるいは、地方公共団体CLOでありますとか、まさに、同じようにここで法律にかかっております在庫担保の話、先駆的にやってきました。

 今度は今までと逆の話ですけれども、私の認識は、今までは政府系金融機関だったから、そういう政策目的で進めようとしていることにも比較的先駆的に、これも優等生の話ですけれども、どんどん商工中金はやってくれた。だけれども、形の上では、先ほどの特別準備金のお話はあるんですけれども、あるいは必要な措置の話はあるんですけれども、外形上は会社法上の会社、株式会社であり、冒頭大臣もお話しになりました、ある意味では当たり前の、自由にできる金融機関になるわけです。

 こういうことをやってほしいということ、今までだったら、多分自発的でしょう、大臣おっしゃるように、半分民間に近い、政府出資の部分以外民間に近い、だけれども、政府系金融機関という位置づけで多分やってくれていたところもある。こういうものが、今までに引き続き、商工中金完全民営化後にやってくれるようなことになるんでしょうか。どうでしょうか。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来出ておりますように、商工中金の強みは何なのかということをよく考えますと、そういう先駆的な取り組みをすることによって、金融界においても高い評価を得ているんだろうと思います。御指摘の動産担保の融資についても、ほかの銀行に先駆けて取り組んできたということでございます。

 そういった中で、恐らく御質問は、完全民営化後において、そういうようなことを引き続き同じ程度でできるのかということだろうと思うわけであります。

 御案内のとおり、私ども、今回この法案の審議の中で、信用保険法というものの改正を提案させていただいております。その中で、政府系金融機関だけではなくて民間金融機関もそういう動産担保の融資について積極的に取り組めるよう、信用保証の制度の中に、従来の売り掛け債権の担保の融資についての信用保証を拡大して、動産担保まで含めてそういう信用保証の対象にするという形のものを提案しております。そういうものが整っていけば、商工中金の従来から持っております、一種のDNAといいますか、そういうような気質と合わさって、そういう信用保証の裏打ちも効果を持ってくるのではないかというふうに思っております。

三谷委員 時間がなくなってまいりました。最後にちょっと、経産省からするとお答えづらい話かもしれませんけれども、天下り問題についてお尋ねをいたします。

 これは両機関に共通する事項として定められています、政投銀と同様に。特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されることがないよう配慮というふうに記されています。今、現況というのは、商工中金の場合は、理事長は、多分、歴代ずっと経産省の御出身、副理事長は、今は元国税庁長官、大体財務省出身者、理事に経産省OBの方が一名、監事に財務省OBの方が一名、こういうのがほぼパターン化されています。これが、今後、特定官庁からの役員の選任というのはなくなるんでしょうか。

山本(幸)副大臣 移行期、つまり特殊会社化後でございますけれども、この場合の役員については、会社法の規定に基づいて、株主総会において選任されることになります。すなわち、株主である民間出資者によって、商工中金の経営を行うために必要な知識及び経験を有して、十分な社会的信用を有する者が選任されることとなると考えております。

 ただ、特に、代表取締役の選定については、新しい商工中金が中小企業団体及びその構成員に対する金融の円滑化を図ることを目的とする特殊会社であることを踏まえて、他の特殊会社と同様に主務大臣の認可を要するということになっております。その際には、御指摘のように、特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されることがないよう十分に配慮してまいる所存であります。

三谷委員 今のお話を聞きますと、大変有名無実のような気がしてなりません。それは残念ではありますけれども、時間が来ましたので質問を終わります。ありがとうございました。

上田委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神でございます。

 引き続き、株式会社商工組合中央金庫法案について質問いたしたいと思います。

 かなり論点がかぶる部分もございますが、特にこの問題は、この前の内閣委員会との合同審査においても、私も日本政策金融公庫について質問をさせていただいて議論もしましたが、要は、行政改革の視点と、中小企業に向けての政策金融の視点という間に大きな隔たりがあるんじゃないかというふうに思っております。

 今回の法案についても、法案及び完全民営化後の商工中金のあり方についても、ここにいる皆さんは多分大体同じ意見だというふうに思うんですが、それが、我々がずっと新聞とかで見ていた行政改革の流れと若干温度差があるんじゃないか、そういった意味で、行政改革事務局の審議官ともちょっと話をしながら進めていきたいと思います。

 まず、冒頭、行政改革事務局の皆さんも、小泉さん、竹中さんの改革につき合わされて、張本人たちは表舞台から立ち去った後、大変散らかった部屋を整理するのに大変な御苦労をされているというふうに思いますが、まず、この商工中金という、主に中小企業団体あるいはその構成員に向けてお金を貸すという極めて特殊な政策金融機関を民営化することについて、どういう意義を見出しているのか、お尋ねしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 商工中金につきましては、政策金融の分野においても簡素で効率的な政府を実現いたしまして、民間の主体性を高め、その活力を最大限に発揮していただくということを目的に、さまざまな議論が経済財政諮問会議等の場におきましてあったところでございます。

 その結論といたしまして、商工中金につきましては、民間金融機関と同様のフルバンキング機能を有する、また組合金融であるということなどから、必要な制度を講じた上で完全民営化することが十分できるという判断がなされまして、このような完全民営化という方針が決まったというふうに聞いております。

北神委員 その経緯というよりは意義ですね。要するに、フルバンキング機能があるとか組合金融だとか、そういうのはよくわかるんですが、あと、どういう経緯で意思決定をされてきたという話もありましたが、要するに、あえて民営化する意義は何なんですか。

鈴木政府参考人 二つの意味があろうかと思っております。実は、当時私は中小企業庁におりましたもので、中小企業からの意味合いもあろうかと思っております。

 まず、今の職の行政改革の立場から申し上げますと、民にできることはできるだけ民に、それから資金の流れを官から民にということで、やはり日本の政策金融の対GDP比は、他の国と比べますと、いろいろと事情は違うということは存じておりますけれども、それでも比率が高いということで、できるだけ資金を官から民に流すということの意味合いがあろうかと思っております。

 それからもう一つ、中小企業の立場とされましても、商工中金、七十年間いろいろとノウハウを培われてこられました。この商工中金、非常に中小企業にとって頼りになる存在でございますし、実は、決済機能を持っております政策金融機関は商工中金だけでございます。何かセーフティーネット等がございますと、まず活動していただくのは商工中金であったというふうに記憶をしております。

 また、先ほどの委員からの御指摘がございましたけれども、商工中金はさまざまなサービスを中小企業向けに提供されていらっしゃいます。そのようなサービスを今後より効率的に提供していく、これが政府系金融機関ですとやはりいろいろ規制がございます。例えば余裕資金の運用でも厳しい規制等がございます。ここはしっかりと制度を講じまして、また措置を講じまして、完全民営化機関としてより一層自由に活動していただき、より一層中小企業者のための金融になるようにしていただきたい、そのように考えております。

北神委員 官から民という話も、これは要するに、商工中金を民営化することによって官から民というだけで、普通、官から民というのは、公的セクターが撤退をして、それで、そこを民間が、より活力を持つために既存の民間の金融機関とかが入ってくるという意味だと思うんですよ。

 それもそうだし、後段に言われたことも、いろいろな、本当の意味で、さっき議論にあったそちらの定義上の完全民営化じゃなくて、普通、常識的に完全に民営化されたというような場合だったら、後段の話も、資金運用をもっとよくできるとか、効率よくできるとか、そういう話もあるかもしれませんが、これは物すごい制限を課すわけですよね。株主制限も課すし、今までの話を聞いていたら、資金調達も商工債を使えるようにできるだけするとか、政府出資という名前はなくなるけれども、名前を変えて特別準備金という方向に今議論を進めているということですので。

 ただ、冒頭、余り結論を申し上げるのもあれですので、それまでにして、もう一つお聞きしたいのは、ちょっと通告にはなかったんですが、これも事務局の方にお聞きしたいんですが、商工中金が完全民営化された後、これは政策金融機関として位置づけられるんですか。違うんですか、完全民間機関ということですね。今、違うというふうに激しく横に頭を振っていたのでそうだというふうに思います。では、もう結構です。

 そうしたら、今回の法案は、いわゆる完全民営化の前の移行期間の話でありますが、私がいろいろ地元で中小企業の団体とか経営者の皆さんと話していると、商工中金の皆さんもいろいろ説明はされていると思うんですが、ただ、やはり心配の声が上がっている。要は、商工中金からの今までの融資というのを受けられるのかどうかという話から、政策金融改革全体の話についてもやはり不安の声が上がっている。

 そこで、甘利大臣に御確認したいんですが、商工中金の民営化の話だけじゃなくて、国金あるいは中小公庫、これが今度、日本政策金融公庫に統合される。こういう一連の政策金融改革の流れ、これは、恐らく中小企業庁にとっては、自発的にこういう改革をしたんじゃなくて、受動的に、極端に言えば、ちょっとつき合わされた感があるというふうに思いますが、私が思うのは、これで、今までとってきた国の、日本政府の中小企業政策の基本方針というものが変わってきたんじゃないかというふうに思うんですが、これについてはいかがでしょうか。

    〔委員長退席、金子(善)委員長代理着席〕

甘利国務大臣 中小企業基本法には、御案内のとおり、第二節に「中小企業の経営基盤の強化」、そして、第四節に「資金の供給の円滑化及び自己資本の充実」という項目が書いてあるわけであります。こうした視点に沿って商工中金を民営化するということをいたしますと、本来、中小企業のための金融機関、民営化後も、中小企業のための金融機関という中小企業基本法の考え方、基本理念に沿って民営化をすると、そういう制約がかけられる。それを担保するために、株主制限等の各種の手だてが必要になる。

 ただ一方で、他の金融機関は、中だろうと大だろうとどこへでも貸せる。しかし、商工中金は、民間金融機関でありながら、ある制約がかけられる。だとするんだったら、自己資本の充実に関して、いきなり国の手を離れるんじゃなくて、ちゃんと出資金も一千億は残す、三千億は特別準備金として自己資本比率の充実に資するようにする。しかも、株式の売却は、体力の増強に見合って、引き受け手の消化度合いに見合ってするとか、あるいは国庫納付も体力に見合ってするとか、そういう制約をかける分に見合う対応をしながら、中小企業金融という性格は変えない、これは中小企業基本法の考え方に沿った民営化だと思っております。

 そもそも、官から民というのは、私なりに考えますのは、言ってみれば、官の経済規模というのは八十兆であります、民の経済規模というのは五百兆であります、五百兆を動かすことによってより活性化を図っていくということが日本のさらなる経済発展にとって大事であるという視点から行われているのではないかというふうに考えております。

北神委員 私の質問は、商工中金ももちろんそうなんですが、今までの中小企業向けの政策金融機関、国金、中小公庫、これが政策金融公庫というものに統合されて、多少、業務もいろいろ変化がある、もう一つは、商工中金というのが今度完全民営化される、この動きを、今までの中小企業庁がとってきた中小企業政策から大きな変化があるんじゃないかというふうに申し上げているんですけれども。大臣は、要は中小企業基本法に沿った、商工中金についてはそうなんだというお話だったんですが、それをもう一回具体的に。

甘利国務大臣 中小企業政策で大事なのは自立政策なんですね。中小企業補助金が多いとは私はちっとも思いません。規模はまだうんと小さいし、拡大しなきゃならない。しかし、要は、補助金漬けであっては絶対いけないのでありまして、自立するための補助金、自立するための中小企業政策なんですね。そこの視点に沿っていろいろと対応していかなければならない。

 日本政策金融公庫というものができます。それは、国がやらなければならない政策に沿って金融部門を新公庫に担当してもらう。民間にできるところは民間でできるだけカバーをしていく。今まで民間金融というのは、バブル時の不良債権処理にかなり警戒感をそれ以降持って、石橋をたたいても渡らない。実は、かなりリスクをとりながら、いろいろな商品を開発して、担保に依存しない金融をどんどん商品開発をしていかなきゃいけないんだというふうに思っております。

 商中の場合は、民間に近い政府系金融機関でありましたが、完全に政府系の後ろ盾があるという中ではなくて、自分で相当研究をしながら、従来であれば民間が飛び込んでいかないところ、そして、完全な政府系の金融機関がだめもとなんていう感覚で行きかねないところ、そこをちゃんと商売として成り立つように工夫をしながら乗り込んでいったという実績があるんだと思います。

 そういうノウハウを持った金融機関が民間市場に完全に参入してくるわけでありますから、従来の民間金融機関も相当、その競争に勝ち抜くために、新商品の開発とかリスクをとって乗り込んでいくとかということを努力しなければならないということになっていくんじゃないかというふうに思います。

 そこで、民間がきちんと、若干リスクがある部分についても、経験を積んでノウハウを積み上げて乗り込んでいくということになるのではないかということを私は期待しているわけであります。

北神委員 なかなか質問に答えてくれないんですけれども。

 要は、今までの国の中小企業政策というのは、よく言われるのは、三本柱がある。一つは金融である、もう一つは中小企業を集団化して、いわゆる組織化ですね、この法案にもかかわってくる、いわゆる中小企業を団体化する、三番目が指導とか検診だとか、そういうふうによく言われている。

 それで、今回の政策金融改革というのは、国金もそうだし、中小公庫も一般貸し付けというものを今度廃止する。これもいろいろ議論があって、この前も私も議論させてもらいましたが、いずれにせよ、そこは一般貸し付けというものから撤退をする。今度商工中金も、先ほどの話で、もう政策金融ではなくなって、いわゆる完全、これは難しいんですけれども、常識でいう完全な民間の金融機関ではないかもしれないけれども、政府の手からは多少離れていく、そこの姿はまだ見えていないんですけれども。

 そういう中で、一番目の柱である金融というものが、今まで力を入れてきて、中小企業政策の一つの大きな柱だったのが、今回の政策金融改革でそこが多少弱まってきたんじゃないか。それは、今までの、戦後の中小企業政策の根幹の一つがいつの間にか変更されてきているんじゃないか、そういうことをお尋ねしているんです。

甘利国務大臣 金融の面で中小企業政策を語るときに、組織化という点が基本法上規定されている。商工中金は、それをしっかり受けて、中小企業組合金融である、もちろんその構成員の。そういうところから、組織化を金融の面からバックアップするだけの機能がある、それが薄れてくるのではないかという御質問だと私はさっきから理解しているんです。

 民営化後も、そこの部分、つまり、中小企業の組織金融、それからその構成員金融という根幹は外していませんよということをさっきから申し上げているのでありまして、それは、中小企業基本法上、中小企業の力をつけていくための組織化論というところをないがしろにしているわけではありません。だから、民営化の中でもそういう考え方に沿って民営化が行われているということを申し上げたいというところであります。

北神委員 わかりました。組織化の部分についてお答えされていたんですね。

 それについても、これはちょっと考え方をお聞きしたいんですが、今までの商工中金を一つの手段として組織化を図ってきた、それは、簡単に言えば、団体の方に融資をしたり、構成員に融資をしたりしてきたと。これが、今度完全民営化されることによって、要するに、何らか、今までは政府の意向がもう少し反映できて、政府としてこういう方法でやってほしいとか、ここをもっと力を入れてほしいとか、あるいは、この地域はまだ組織化が足りないからやるべきだ、そういう意向が伝えられたのが、今後は、完全民営化されたら、それが薄れてくるんじゃないかというふうに推測をしているんですね。そこについてはどうですか。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣がまさに説明しましたとおり、商工中金が民営化されても、商工中金の持っている金融機能については、中小企業向けの金融機能の根幹について引き続き維持するという形で行っていくんだということを申し上げたわけです。したがいまして、今回の商工中金の組織変更によって、中小企業の組織化について大きな影響が出てくるというふうには私は認識しておりません。

 加えまして、組織化の関係でもう一点申し上げますと、商工中金のほかに中小企業基盤機構という機構がございますけれども、この機構において、高度化融資を中心として、組織化をした事業体を対象に融資を行うという制度は引き続き残して、その充実を図っていくという考え方でございます。

北神委員 完全民営化された後の商工中金が、引き続き組織に、団体に向けて業務を続けるというのはよくわかっているんですよ。でも、その場合は、恐らく自主的な判断である程度やるということですよね。余り政府がいろいろ、こうしろああしろと言わない。ただ、社会的にはそういう機能が引き続き存在し続けると。

 私がお聞きしたいのは、これは推測なんですけれども、今までは多分、中小企業庁さんが、例えば一番わかりやすい例は、地震があったときに、商工中金さんが窓口になって、そこで困っている中小零細企業の人たちを助けてやれという指示を出すわけですよね。それは危機対応として今後も恐らく残るというのはよくわかるんですよ。でも、危機対応だけじゃなくて、ふだんからの日常の融資とか、政策的な融資というものが、今後は中小企業庁の出る幕がなくなるんじゃないか、完全民営化後は。それについてどうでしょうか。

石毛政府参考人 先生は十分御承知で質問されている部分もあると思うんですけれども、まさに政策的金融の非常に重要な部分として、危機状況への対応というのがあるわけであります。それで、この部分については、先週も別の委員会で御議論させていただいたとおりであります。その部分に関して、まさに商工中金は、指定金融機関としてその機能を果たしていくという形になります。

 それ以外の部分につきまして、まさに中小企業向けの金融機関としての機能を維持するわけですから、その構成員、まさに株主の資格を制限して、中小企業向けの金融機能として果たせるように、そういう手だてをしようというのがこの考え方になっているわけであります。

北神委員 そうしたら、要するに、今までも余りなかったわけですね。中小企業庁が商工中金さんに向かって、例えばこの地域にもっと力を入れなさい、そういうので経営方針に影響してきたということは今まで余りないということですか。

石毛政府参考人 時代、時代で変遷はもちろんしてきているとは思いますけれども、直近の時点で見ますと、商工中金の場合は、まさに先生が御質問になられたような危機的対応、セーフティーネット貸し付けだとか、そういうような政府の、いわば必要なコストを負担して行うような、そういう形のものは十分果たしているわけでございますけれども、それ以外のものについて、私どもの方からこういう政策金融という形でやっているものは少ないかと思っております。

北神委員 少ないという話だったんですけれども、そういうものがあったのだったら、完全民営化後はもうそれができなくなるわけですよね、一応、論理的には。そういうことだと思うんですよ。だから、そういった意味では、組織化という部分が、今までの中小企業庁がとってきた政策からやや後退しているんじゃないかと私は思うんですね。

 もう一つは、さっき大臣が言われた組織化の部分の前に金融プロパーの部分、これについて政策金融全体を見ると、国金は今度教育の関係で所得制限というものを下げる、中小公庫の方は一般貸し付けを廃止する。商工中金さんがこれで民営化されるということは、貸出額でいえば、一番直近の数字でいえば九兆四千億円ぐらいの貸し出しというものが完全に民営化されて、政府の手を離れていく。こういった意味では、政策金融としての貸出額というのは相当削減されるわけですよ。

 そういった意味でも、組織化もそうだし、金融、この二つの大きな戦後の中小企業政策の根幹、柱である二本がやや後退してきているんじゃないかというふうに私は思うんですね。これについてはどうでしょうか。

甘利国務大臣 政府系が一般からフェードアウトしていく、そこに民間がフェードインせずに、埋まらずに空白ができちゃうというのであれば、これは重大なことだと思うんです。ただそれが、民間側からすると、自分たちができるところを政府が出張ってきている、社会主義国じゃないんだから、我々の庭先まで出張ってくれるなという意見は従来からあったわけですね。それならば、出張っていたところを少しずつ引いていきますよと、一般貸し付けのところは。

 そこでちゃんと民間が出張ってくるということであろうと思っておりますし、そこはしかし、もし全く出てこなくて空白ができちゃったというようなことがあれば、そこはちゃんと考えなきゃいけないというふうに思っておりますが、向こうからは押し圧力があるけれども、こっちが押し返しているので返ってこないというふうにまず理解をして、この改革が進んできたんだというふうに思っております。

北神委員 今の説明はよくわかるんです。政策金融が撤退した部分について民間金融機関が入ってきたらいい、入ってこないんだったらそれ相応の手だてをしないといけない。そのための移行期間だという部分もあると思います。ただ、いずれにせよ、いわゆる政策金融としては後退をしていることは確かなんですよ。

 これは資料の一枚目、下の方にありますが、中小企業基本法に書いてある中小企業政策の根幹の一つである資金の供給の円滑化、第二十三条、ここに書いてあるのが、「国は、中小企業に対する資金の供給の円滑化を図るため、政府関係金融機関の機能の強化、信用補完事業の充実、」云々「に対する適正な融資の指導その他の必要な施策を講ずるものとする。」つまり、政府関係金融機関の機能の強化というものが中小企業基本法の基本政策の一つとして挙げられているわけですよ。

 でも、今大臣がおっしゃっていることを私は否定はしないんですよ、そういう考え方はあると思うんです。いずれにせよ、それがいいにせよ、悪いにせよ、今まで中小企業基本法で、平成十一年に改正されたと思いますが、これはその基本政策から変更があるということですよね。

甘利国務大臣 中小企業政策が大事で、それに政府がきちっとコミットをし、そして、それに見合った施策が具体的に進んでいるか否かということなんですけれども、直接に政府系が貸し付けるというのと、政府系が先導して、中小企業金融の弱さをカバーするような商品開発をして、それを民間に伝授していく、これも一つの中小企業政策だと思うんです。ほうっておけば民間は、保証人なしの融資とか、あるいは不動産担保なしの融資なんというのはなかなか入ってきません。

 しかし、そういう商品を先導して政府系がつくって、実際ちゃんとうまくいきますよ、あるいは、これにもうちょっと工夫を加えるとあなた方でもできるんじゃないですかという商品提示をしていく、それを民間に伝授していくということも政策金融の一つだと思うんです。

 ですから、生で直接貸すのが民間に入れかわったから後退したという見方よりも、商品の質を変えていって、それを民間ができるような手当てをしていくというのも中小企業金融の政策の一つではないかというふうに理解をしております。

北神委員 なかなか上手に言われたと思いますが、これは資金の供給の円滑化ですよね。だから、おっしゃっていることは、いわゆる融資の仕方とか、あるいはノウハウを伝授するとか、あるいは多分証券化業務とか、こういったもので質的に、いわゆる直接お金を貸すんじゃなくて、こういった方法によってより円滑にしていくという話なんですが、でも、この条文は、事務方の皆さんに聞きたいんですが、資金の供給の円滑化というのは、やはり直接お金を貸すという話じゃないんですかね。

石毛政府参考人 今まさに御質問の中で証券化業務ということもおっしゃったわけですけれども、証券化業務も立派な、貸付債権を証券化することによってより円滑な資金を供給する、そういう目的、主体としてのリスクを、別の、リスクをより大きくとれる者、そういう者に移転をすることによって資金供給を円滑にしていく。

 それから、商工中金が直接大きくやっているわけではありませんけれども、保証業務、そういうものもあわせてここで資金の円滑化というふうに考えるべきであって、直接の貸し付けだけを指しているということでは必ずしもないんだろうというふうに思います。

北神委員 質的に変わってきたという理解でいいのであればそれでいいんですが、要は、余り改革という名のもとでいろいろ流されずに、やはり中小企業政策というのは今までどういう方針でやってきたのか、そういうことをしっかり踏まえて、むしろ、こういうものを盾に、去年もあるいはおととし闘ってもらいたいぐらいだったと思うんですよ、これは法律ですからね。要するに、こういう強化をする方向でいっているんだと。

 今言われた融資の仕方とか証券化業務とか、こういうのは別に悪いことではないんですが、私が思うには、この十兆円以上の貸し出しが政策金融として削減する分を補うほどの効果は、正直、ないと思っているんですね。

 例えば、証券化業務だって、別にやればいいと思うんですが、日本の今の市場では、東京都もこの前やったと思いますが、八年間ぐらいやったのかな、でも、結局、物すごい優良な中堅の企業だけが応募をしてきて、ほとんどの中小零細企業というのは、何が何かわからないし、幾ら証券化といっても、結局、最後は借りている企業の信用の問題ですよね。

 だから、そういった意味で、まだ日本の市場の厚みとか金融技術の発展度合いとかを見ると、これが、政策金融が撤退した分を補って、この基本法に書いてあるような、いわゆる政府関係金融機関の機能の強化という方向ではないというふうに私は思うんですが、これは水かけ論になるのでこれでもういいんですけれども、その辺のやはり根本的な議論が余りなされてきていないんじゃないかというふうに私は思うので、指摘をしたまでであります。

 次に質問したいのは、こうした中で、私は決して完全に民営化すべきだ、いわゆる野放しにして好きなようにやれと言うつもりは全くなくて、今までの委員の皆さんの質問のとおり、やはり引き続き商工中金には中小企業向けに頑張ってほしいというふうに思っております。

 そういう意味では、昨年の四月十九日に、衆議院行政改革に関する特別委員会において、行革推進法の附帯決議において「商工組合中央金庫について、」「完全民営化後も中小企業向け金融機関であることを確保するよう制度的に措置すること。」というふうにあります。

 これを受けて、昨年六月末には、いわゆる制度設計ですね、これも資料に載せていますが、この中では「中小企業団体及びその構成員向けの金融機関としての機能を維持するため、株主資格の制限その他必要な制度を措置する。」というふうにあります。そしてまた、「資金運用の在り方」という中では「融資については、中小企業団体及びその構成員を業務の主たる対象とする。」というふうに明記をされている。

 これはこれで結構なことだというふうに思うんですが、附帯決議の表現をかりれば、完全民営化後、商工中金が中小企業向け金融機関であり続けるためにも、株主制限の話はここに書いてありますが、「その他」というふうにありますので、それ以外どういうことを考えておられるのか、まず行政改革事務局にお聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 今委員から御指摘ございました制度的担保でございますけれども、これは、商工中金が完全民営化後も中小企業団体及びその構成員向けの金融機能を維持するため、法律上の措置を含めて必要な措置を講ずることになるというふうに私ども考えております。

 ただ、その具体的な内容につきましては、やはりその移行期間といいますか、平成二十年十月以降、完全民営化するまでの間に、新たな商工中金の状況を十分考慮した上で検討を行うことが必要かと考えておりまして、この株主資格の制限はもう例示的に出ておりますけれども、そのほかについて何が必要かということは、今後の状況を十分見て検討していくものというふうに考えております。

北神委員 それと同じ質問を大臣にお聞きしようと思ったんですが、おられないので、どうですか、山本副大臣。

山本(幸)副大臣 原則的にはただいま答弁したとおりでありますが、考えられ得るのは、貸付先ですね、あるいは債券発行の問題、そういうものが入り得るというふうに考えております。

北神委員 これも審議官にお聞きしたいんですが、この場合、恐らく何らかの法律でその制度をつくっていかないといけないですよね。今、これから移行期間の間に検討するという話もあったし、副大臣から、具体的には資金調達のやり方とか、そういう具体的な話が出ましたが、いずれにせよ、完全民営化後も何らかの、多分、会社法、銀行法の特別法みたいなものをつくっていかないといけないと思うんですが、その点についていかがですか。

鈴木政府参考人 これは例示でございまして、まだどういうような形態になるのか、これは今後検討すべきものと考えておりますけれども、例えば株主の資格制限、これをどういうものでかけているかというのを調べてみますと、例えば、現在、日刊新聞の発行をする日刊新聞社、これについては株主の制限がかかっておりますが、これは日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律、この法律がございます。それから、そのほかにも一般放送事業者ですね。放送事業者の方々につきましても、放送法で、一定の場合に、外国人等の株主名簿への記載の請求を拒否することができるということで、ある意味で株主制限をかけておりますが、これは放送法でかかっております。

 今後、どのようなことが本当に必要なのかを十分検討して、それにふさわしい措置を検討ということになろうかと思っております。

北神委員 その場合、さっき言った完全民営化の定義ですね、会社法にその根拠を置くと。これは変わってくる可能性はあるんでしょうか。

鈴木政府参考人 先ほどの完全民営化の定義、会社法に基づき設立され、政府の出資がないものというあの定義は変わりません。

 私ども、先ほど申し上げました前例等も踏まえまして、これは、会社法の所管は法務省でございます、また内閣法制局とも相談を行いましたけれども、両者とも、合理的な理由がある場合には、当該理由に見合った株主資格の制限等を立法的に講ずることは可能だという見解をいただいておりまして、このように、制限をかけることと完全民営化というものは相反しないものというふうに考えております。

北神委員 株主制限についてはそういう見解がよくわかったんですが、さっき言った資金調達の方法とかそういった、あるいは政府出資という形じゃないけれども、その一つの可能性としては、特別準備金というものを入れていく、そして資本として位置づける、こういったことも完全民営化には反しないんですか。

    〔金子(善)委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木政府参考人 最初に、資金調達の点についてお答え申し上げたいと思います。

 委員から御指摘ございましたのは、金融債の発行に関してということかと思っておりますが、例えば、民間銀行におきましても、長期信用銀行が普通銀行に転換をした場合等につきましては、金融債の発行を転換後も五年ないし十年発行を認めているような例もございます。また、これは金融当局との御相談になろうかと考えております。

 それから、特別の準備金のことでございますけれども、これは、今、私どもから御答弁申し上げることができますのは、特別の準備金を設けました趣旨とか目的、また移行期の商工中金の財務状況を踏まえて、その段階で適切に対処、判断をするということで、どのような制度また担保が必要になってくるのか、それはまたその当時に考えることというふうに考えております。

 私ども、特別の準備金を今回御提案申し上げておりますのは、特別の準備金があるからといって、これは完全民営化に反するというものではなくて、むしろ完全民営化を行うためには特別の準備金が必要だというふうに考えて御提案申し上げたところでございます。

 したがいまして、移行期間中の商工中金の財務状況を十分踏まえまして、その時点で適切に検討していくということになろうかと思います。

北神委員 完全民営化の定義というのは、さっき三谷委員とのやりとりで聞いていたんですが、これは、政府出資がないということが一つの定義の理由でしたよね。

 政府出資と特別準備金というのは、実質はどう違うのか。要するに、政府出資がなくなったら民営化だ、ただ、それは、金額は減るのかもしれないけれども、形を変えて特別準備金になる、それでも民間会社として位置づけられるんですか。

鈴木政府参考人 まず、完全民営化の定義は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、やはり、特別の準備金と政府出資というものは、議決権を有するか有しないかということで、全く違う性格のものというふうに考えております。

 やはり出資の形ですと、先生御案内のとおり、株主総会で、政府代表が座って、そこで議決権を行使するわけでございます。特別の準備金があるからといって議決権は行使できないわけでございますので、私ども、特別の準備金と出資金は全く違うものというふうに考えております。

北神委員 わかりました。

 これは前の質問に戻っちゃうんですけれども、要するに、政府出資というのはやはり政府が議決権を持っているわけですよね。だから、商工中金の組織化政策に対しては、政府出資の方がやはりそれなりの意向を反映させることができるわけですよね。これは、完全民営化して、特別準備金になるのかどうかわかりませんが、政府出資というものを撤退させちゃうと、基本的にはそういう意向を反映させることができなくなる、指導とかいろいろ、内々はできるかもしれないけれども。

 そういう意味では、やはり私、さっきの話を蒸し返すと、組織化という部分はちょっと弱くなってきている、後退しているんじゃないかというふうに思うんですね。これは、もう答えはいいですが、そういうところを、ちゃんと基本のところからやはり議論していかないといけないというふうに思います。

 次は、株主資格の制限について、具体的にどういう内容になってくるのかということをお聞きしたいと思います。というのは、中小企業向けの金融機関であり続けるために資格制限をするわけですが、これは、具体的にどういうふうに想定しているのかどうか、内容ですね。

石毛政府参考人 株主資格の制限ですけれども、今までも随分議論が出ていますように、商工中金は、これまで所属団体を中小企業団体に限定するという形で中小企業金融機関として機能してきたわけでございますけれども、この法案の中で、商工中金の株式会社化後も、中小企業団体などでない者が株主として参画することによって収益が過度に重視されて、中小企業団体及びその構成員の金融の円滑化に支障を来すことがないように、株主資格を中小企業団体及びその構成員に限定するという形にしております。

 まず、そういうふうにお答えさせていただきます。

北神委員 では、中小企業向けの金融機関というのは、要するに過半数を、いわゆる組合の人たちあるいはその構成員に株主として位置づけるということですか。いわゆる議決権の過半数をそういった人たちに持たす、そういう意味ですか。

石毛政府参考人 過半数ということではなくて、すべて中小企業団体及びその構成員に限定をする、そういうことでございます。

北神委員 全員ということですね。わかりました。

 そうしたら、これはもう、要するに協同組織との違いがだんだんわからなくなるんですが、そういうことであるならば、それはそれで、中小企業向けの機能というものを維持できるのであれば私はいいと思うんです。

 あまのじゃく的な質問になってしまいますが、一方で、彼らがいわゆる融資の対象になるわけですよね、その構成員あるいは組合の団体ですね。この人たちが、いわば融資を受ける立場にあると同時に金融機関の経営を決定する株主でもある。それは、利益相反あるいはモラルハザードというものは生じないのか。つまり、簡単に言えば、商工中金を食い物にして、逆に、さっき余り利益追求をしないように株主制限をするという話がありましたが、逆に、利益なんかもう全く関係ない、自分たちが短期的に融資をもらえるように食いつぶすような、そういった方向に行くおそれもあるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

石毛政府参考人 今御指摘になられた、株主と融資対象が同一グループ、中小企業者、それからその団体という形になってくると、利益相反、モラルハザードが起こるんじゃないかという御指摘だと思います。

 今度、こういう形で新しい商工中金になるに際しまして、そういう御懸念のようなことが起こらないように、金融機関としての業務の健全かつ適切な運営を確保する、そういう観点から、そもそも銀行法が適用されるほかの金融機関と同様に、まずその厳格な情報開示を義務づける、大口融資についての制限をする、それから特定関係者との取引制限をするというような規制などを講ずることによって、そういう利益相反が生じないように、そういうふうに考えております。

北神委員 できるだけそこは、株主制限することはいいことだと思うんですが、そういうモラルハザードが生じない規制というものをしっかり入れるようにお願いをしたいというふうに思います。

 あとは、先ほども議論に上がった資本の問題、資金調達の問題に移りたいと思うんですが、これは、大臣とか中小企業庁のお立場はさっきの議論で大体よくわかったので、むしろ行政改革事務局として本当にそれでいいのか。

 かなり今までの議論の中で踏み込んだ話もあったというふうに思うんです。例えば特別準備金の話で、完全民営化後の話なんですが、あるいはその前の移行期の問題、移行期の中で、大体三千億円ぐらいだ、政府出資を一千億円ぐらいにするという話ですが、これはこれでいいんでしょうか。

鈴木政府参考人 先ほど御答弁ございました三千億、一千億、私ども、今、経済産業省の見通しとされて、そういう見通しまた御決意というのは理解できるところでございますけれども、いずれにしても、デューデリジェンスを行いませんと、正確にはどれだけ本当に必要か、それ以上必要かもしれません、それ以下かもしれません、ただ、見通しとしてはそういう見通しだというふうに承っておきたいと思っております。

 それからもう一つ、では、完全民営化時点において特別準備金の取り扱いはどうかということもございました。

 これは先ほど御答弁申し上げましたように、この特別の準備金は、今回、移行期におきまして、利益準備金、資本準備金が枯渇した場合において初めて欠損補てんに充てることができるとか、財務内容の健全性が確保されるときに商工中金の御判断で自主的に国庫納付できるとか、また、商工中金が万が一清算をするときには国庫納付とかいうような規定がございます。そのような趣旨を踏まえまして、かつ、やはり移行期の商工中金の財務状況を十分検討いたしまして、その時点で適切に判断をされ、また必要な制度は必要な制度として措置をしていくということかと思います。

 それから、金融債につきましては先ほど御答弁申し上げましたので、省かせていただきます。

北神委員 特別準備金について、移行期間に国庫納付の規定が入っていますよね。今、政府出資が四千億強あるというふうに思うのですが、そのうち三千億にするにせよ、いずれにせよ、要するに、健全とみなされるレベルに資本の充実度合いが達成をしたら国庫納付することが可能であるという、どうせ多分財務省が入れろと言って入れたんだと思うんですが、でも、こんなことをやっていると、そんなにたくさん納付することはできないかもしれないけれども、移行期間の五年、七年の間に政府出資が目減りするということもあり得るんですかね。これはどなたでも結構ですけれども。

 要するに、特別準備金について、国庫納付をすることが可能だ。その意味合いを見ると、要は、ある程度健全な資本になってきたら不必要な部分は納付しなさいという意味だと思うんですよね。でも、そんなことを移行期間にして、完全民営化後のことを考えると、それはどのぐらいの納付かによると思うんですが、余りそこで納付しちゃうと、完全民営化後、また出せというのも大変な話だと思うので、そこをどういうふうにお考えでしょうか。

石毛政府参考人 特別準備金に関して、確かに、この移行期の期間中に制度上はそういうふうな規定が設けられております。ただ、今るる、ずっと議論がございましたように、この特別準備金は商工中金の財務基盤の非常に強固な部分を形成する部分でございますので、今の時点で、そういうふうなことが可能であるというような見通しがあるわけではないわけであります。

 ただ、制度上、もし、商工中金の業況が物すごくよくなってそういうようなことが可能になれば、それは返す可能性があるという意味で制度的に書かれているものであるというふうに認識をしてございます。

 そういうことでございます。

北神委員 大臣におかれましては、ぜひ、余りプレッシャーをかけて、納付しろ納付しろというようなことにならないようにお願いをしたいというふうに思います。

 それと、もう一回審議官にお尋ねしたいんですが、資本の話、特別準備金の話、資金調達の話、株主制限の話、私はこれはこれでいいと思うんですよ。ただ、心配しているのは、行政改革事務局あるいは渡辺大臣が、やはり違うんだ、もっといわゆる民間金融機関らしく、余りそんな、いろいろ政府が関与するようなことは許すべきでないというふうに思っておられるかもしれない、それはわからないですけれども。それが心配で、きょうわざわざ出てきていただいたんです。

 今までのいろいろな議論を聞いて、要は、行政改革事務局も認めていることは、さっきの制度設計の文書にもありますように、やはり商工中金というのは中小企業向け金融機関として完全民営化後も存続をするんだと。これはもう皆さんも納得されていると思うんですよ。

 となれば、それは、ある意味では、民間金融機関としてもう勝手にやりなさい、余り政府は関与できませんよというのはかなりむごい話だと思うんですよね。つまり、自分の仕事を、手足を縛っておいて、あとは自力で頑張りなさいというようなもので、中小企業団体にしか融資できない、あるいはその構成員にしか融資できない、しかもこの団体というのはだんだん少なくなってきている、ほかのいろいろな民間金融機関もこういう中小企業の分野にも乗り込んできている。

 そういった中で、それにしか特化することはできませんよと縛りをかけておきながら、資本とかあるいは金融債、資金調達の面で余り優遇しませんよというのは、私は非常にひどい話だというふうに思いますので、そこを皆さんが理解されているかどうかというのをちょっとお聞きしたいと思う。

 今の私の話についてどのように考えているか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 今委員から御指摘ございました制度設計、これは、行政改革推進本部、本部長は総理でございます、そこで決定をさせていただいたものでございます。これはもう全閣僚の賛同を得たところでございます。また、今回の法案、これも閣議決定をしたものでございます。

 あわせまして、委員が御懸念のところは、運用面のところ、考え方のところかと思います。また、この法律上出てこないような考え方のところかと思います。

 これにつきましては、行政改革推進本部のもとに行政減量・効率化有識者会議という会議が設置されておりまして、そこの会議で、商工中金の完全民営化に向かってのさまざまな制度、それからプロセスについて検証をしていただくという、これは意見具申機関でございますけれども、そのような機関がございます。

 ここの場におきまして、中小企業庁の方々にも来ていただきまして、このような考え方をすべてお話しいただきまして、特別準備金にしても、それから金融債にしても、資金調達にしても、株主資格の制限についてもいろいろとお話しいただきまして、この有識者会議の方々もこれを了とするということで御了解を、御了解いただくというとまた御了解の機関でないもので、御賛同をいただいているところでございます。

 私ども、これまで、丁寧に丁寧に中小企業庁の方からもいろいろと御説明をいただきまして進めてきてまいりまして、きょう私が御答弁申し上げていることは、それらの議論を踏まえたものであるというものでございます。

北神委員 大臣もぜひその何とか会議に、中小企業の意見も言えるという話ですから、資本の面とか資金調達の面、この辺をぜひともどんどん言っていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 結局、最後の姿は、私が一番理想と思うのは、特別準備金が入って、商工債もちゃんと資金調達としてできて、株主制限もできている、そういった姿ですが、これはいろいろなテクニカルな定義で、いや、それでもこれは完全民営化なんだというふうに言われるかもしれませんが、普通に考えたらかなり変形をされた姿だと言わざるを得ない。それはもう、私はいいと思うんですよ。

 というのは、そもそも、この話というのは、小泉さんとか竹中さんの改革の旗印とか言っているけれども、非常に無理な話をしてきて、その中で、結局、現実的に考えると、落ちつきどころは余り今の姿と変わらないと正直私は思うんですよ、本当に。特別準備金を入れたり、商工債を引き続き使える、株主制限もして協同組織とほとんど実質は変わらないようにする。そういったことを一年以上もかけて、役人の皆さんの膨大なエネルギーと費用をかけ、国会の膨大なエネルギーと費用をかけ、今度、商工中金さんもほかのところも看板のかけかえをしてお金を使って、組織改編のための事務経費も使って、こんなことをして本当に何をしてきているのかなと私は正直思うんです。

 大臣に最後に、感想として、この民営化騒ぎについて、正直どう思われますか、政治家として。こんなことをやっていていいんですかね、時間を費やして。

甘利国務大臣 商工中金だけではなくて、政府系金融機関全体の大きな改革が行われたわけであります。もちろん我々は、この改革が民間経済にも資する、中小企業政策にも資すると思ってここに立っているわけでありますので、所期の目的がきちんと達成できるようにしっかりとフォローしていきたいというふうに思っております。

北神委員 よろしくお願いします。

 以上でございます。

上田委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 大臣、長時間お疲れさまです。大臣が元気ないので、中小企業も元気がなくなっては困るので、元気よく最後三十分、よろしくお願いします。

 大臣、きょうは、商工中金法の改正もさることながら、それに入る前に、ちょっと幾つか基本的な中小企業政策、特に金融というものは、その政策の中において、いわゆる経済の血液というふうに言われながらも、中小企業の経営者から見れば、借りたいときに本当に貸してもらえるかどうかという部分と、貸し手側からいえば幾つかのハードルもあってという、それの上手なバランス、それを円滑化するということも、大きく十九年度の税制改革や予算案の取りまとめの中でもそういうことをうたいながら、今回の法案改正ということになっているというふうに理解しています。

 大臣、そもそも論で大変恐縮なんですが、さきの本会議でも、いわゆる中小企業の我が国経済社会への位置づけということで、事業者数でいえば、大臣もよくお答えになりますように、四百三十万事業所を超え、九〇%以上の会社が中小企業である。なおかつ、働く方も八割が中小企業にお勤めになっているということで、当然、我が国経済社会には欠かせない存在だということは、大臣も本会議でも御答弁をいただいていますし、この委員会でも何度となくその話をお聞きしています。

 大臣、そもそも中小企業基本法、きょうは総務省と金融庁にも来ていただいていますが、私、〇・六%、十八年度より十九年度予算がふえ、一千六百億を少し上回ったということで、努力をなさったあかしは若干あるものの、もっと何か中小企業の政策に生かすようなものはないかということで、いろいろこの中小企業基本法の、例えば「目的」が一条にあり、「定義」が二条にあり、三条に「基本理念」ということがあり、四条に「国の責務」、特にこの「国の責務」では、国は、三条の基本理念にのっとり、中小企業に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すると。その「基本方針」を五条に規定し、六条に「地方公共団体の責務」ということで、「地方公共団体は、基本理念」、これは三条の基本理念ですが、「にのつとり、中小企業に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」というふうなことがあるんですが、いろいろお話を聞いていますと、本当にこの責務が、基本法にあるように、それぞれの役割分担が果たして果たされているのかなという思いが若干いたします。

 特に、今回、いろいろな政府系金融機関の統合であるとかも含めて、中小企業にかかわる基本法以外の法体系が、特に金融支援というところでは、若干本数がいずれ制度的には減って、まとまった形で金融支援という、現行では法律だけでも、この金融支援というものは七本の法体系から成っています。経営革新、経営基盤強化という部分では、ものづくり基盤強化、技術高度化に関する法律も含めて十三本の法体系。あわせて、さきの地域資源活性化法のときにも議論になりました、その役割を地域で担う商工会や商工会議所に対する規定も含めて、その他ということで五項目、これは組織法的なものでありますが、ございます。

 全部で現行では二十五本の基本法以外の法体系から成っているということを考えてみても、やはりこれは、商工中金法自体が昭和十一年からの満七十歳を数えた法律、これはいろいろなものが節目になって、この間の総務委員会では統計法というのを審議しましたが、それも、施行以来初めて、六十年ぶりに法体系を整備したということでありますから、これはやはり、いろいろ基本に返って、中小企業金融とはどんな位置づけであるとか、例えば政府系金融機関、そのうちの、現行では商工中金もどのような位置づけかということを少し掘り下げながらお話を伺いたいんです。

 大臣、改めてお聞きをしますが、今のような法体系や経済的な位置づけを、中小企業に、大臣は、中小企業基本法の基本理念もそうなんですが、今どのような位置づけをし、それをどんな形でこれから中小企業を育成していくという基本的なお考えなのか、まずお聞きをしたいと思います。

甘利国務大臣 先生が冒頭おっしゃいましたように、シェアでいえば、雇用でも圧倒的ですし、事業者数でいえば、ほとんど、九九・七%が中小企業であります。

 ただ、それだけじゃなくて、大企業は広くあまねく全国に散らばってはいませんけれども、中小企業は、業種の差はあれ、広く全地域に分布しているわけでありますから、地域経済、地域雇用を支えるという大事な役割があるわけであります。

 それにも増して大事なのは、日本の中小企業の技術力といいますか発想力といいますか、そしてその品質のすばらしさ、つまり、不良品比率の低さ等々クオリティーの高さが日本の大企業を支えている。どんなに優秀な大企業であろうとも、日本の優秀な中小企業の後ろ盾がなければ成り立たないというふうに思っておりますし、中小企業の新しい発想を大企業とコラボレートして、新商品や新製品がデビューしたり技術革新を担ったり、いろいろな要素を日本の中小企業は持っていると思います。これなしに日本経済はあり得ないというふうに思っております。

後藤(斎)委員 そういう中で、中小企業庁にはちょっと後ほどお尋ねをしますが、先ほど中小企業基本法の六条で「地方公共団体の責務」というところを読ませていただきました。そして、どの程度、中小企業を中心とした商工関係費が地方自治体にあるかといいますと、これはいろいろな数字が入っているということは後ほどお尋ねをしたいんですが、地方財政白書の決算ベースでいいますと、地方公共団体は、地域における商工業の振興とその経営の近代化等を図るため、中小企業の指導育成、企業誘致、消費流通対策等さまざまな施策を有している。これらの施策に要する経費は、商工費の決算額は、これは十七年度決算でありますが、四兆六千二百六十億。ただし、前年に比べて五・七%減少という形になっています。このうちの一番大きな費目が貸付金という費目でありまして、それが、先ほどの四兆六千二百六十億のうちの七四%ほどに貸付金がなっているということであります。

 総務省にお尋ねをしますが、この地方自治体における商工費の貸付金、これは、今話したのが〇五年ということになりますが、〇五年と、その五年前、二〇〇〇年、そして九五年の貸付金並びに商工費の推移の数字を端的にお答えいただきたいのと、あわせて、この貸付金というものはどういうふうな内容になっているのか、簡潔に御答弁をお願いします。

津曲政府参考人 地方公共団体の普通会計決算において、商工費は、平成七年度が五兆六千六百二十二億円、平成十二年度が五兆四千二百七十七億円、それから平成十七年度が四兆六千二百六十億円となっております。

 また、商工費のうち貸付金につきましては、平成七年度が三兆九千七百二十四億円、平成十二年度が四兆三百十七億円、平成十七年度が三兆四千四百三十六億円となっております。

 それで、これらの貸し付けの形態でございますが、ヒアリングによりますと、各地方公共団体が、例えば信用保証協会などを通じて、それらが金融機関にまた預託して、それで、それぞれの目的ごとに融資しているものというふうに聞いています。

後藤(斎)委員 あわせて、お願いした質問表から若干飛んで、先ほどの基本法の六条の「地方公共団体の責務」というところにもありましたが、総務省としたら、今、信用保証協会への出資の部分もあるというお話でありましたが、この四兆六千億ほどのお金を、それだけの貸付金ということは多分ないと思うんですが、やはりこの中小企業基本法にあるように、国と連携をしながら施策の推進ということは、当然、自治というものを尊重するものの、どのように地方自治体が中小企業施策を推進するかという、やはり連携はなければいけないというふうに思うんです。

 総務省としたら、地方自治体に対して、商工業振興、特に中小企業対策の施策の充実という観点から、どのような観点で指導助言しているんでしょうか。

 私は、基本的には、さっきの地域資源活性化法の附帯決議にありますように、市町村レベルにこれから相談窓口等も設置をして、地域の中小事業者に利用しやすい形で施策が講じられるようにという、その体制整備についても附帯決議をつけさせていただいたところでもありますが、やはりもっと国と地方自治体が中小企業施策の充実という観点で連携すべきではないかというふうに思っております。総務省はどのような御見解でしょうか。

久保政府参考人 御指摘のように、経済産業省では、地域の中小企業の知恵、やる気、これを生かすということによって地域の活性化を図り、民間事業者の活力による自立型の産業構造を強化していくための法案、これを今国会に提出をされております。

 私ども、甘利大臣そして菅大臣がお話し合いになり、総務省としても、経済産業省に連携をして、いろいろな方策を講じていこうということにいたしております。

 その中で御紹介をいたしますと、例えば、ベンチャー企業などに出資等を行います都道府県や政令指定都市の取り組みを支援するベンチャーファンド形成事業、これによりまして、地域の中小企業の事業展開を支援する。原資となります部分について起債を起こす、そのときに利子の五〇%を特別交付税で措置をするといったような事業でございます。

 さらに、本年度から、これはもう御案内いただいていると思いますが、中小企業による地域資源を活用した事業展開への支援でありますとか、地場産品の発掘あるいはブランド化、そういったことに取り組もうという独自のプロジェクトをみずから考え、前向きに取り組む地方公共団体に対しまして、地方交付税などによって支援をしていくという頑張る地方応援プログラム、これを四月からスタートさせたところでございます。

後藤(斎)委員 今お話をお聞きしたものは、確かにプログラム的にはなっているんですが、四兆六千億積み上げてなるのかなというと、そうではないというふうな部分も私自身は感じる次第であります。

 あわせて、大臣、金融というのは、当然、先ほども冒頭申し上げたように、借りたい経営者が、それは設備投資など運転資金は別としても、貸したいというか金融機関から借りて御商売をなさるというもので、もともと金融ということは、多分お金を融通するということからいろいろきているのかなと思うんですが、ただ、実態、いろいろお話を聞くと、なかなか借りたくても借りられない、いわゆる貸し渋りみたいなことは現実としてあるという話はたくさんの方からまだまだお聞きをします。

 ただ、この数年間の中で、徐々にその比率が低くなっているという話もあるんです。これは数字で結構なんですが、幾つか、いろいろな数字があってちょっと混乱をしている部分もありますが、今、現行で中小企業向け融資というものが、通常の銀行といわゆる政府系金融機関というふうな比率に大きく分けて結構ですが、昨年、そして五年前の〇二年、十年前の九七年というふうな形で、どのように推移をしているか、簡潔で結構ですからお答えいただけますか。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業向けの貸付残高の推移ですけれども、十年前の十二月の時点ではトータルで三百五十四兆円、それから五年前で二百七十九兆円、直近時点では多分これよりもうちょっと下がっておると思いますけれども、二百五十数兆円だと思いますが、そういう中で、政府系の金融機関の融資残高は、いわゆる三機関ですけれども、十年前で二十七兆九千億円、五年前で二十七兆三千億円、それから直近時点で二十三兆円、そういう数字になっております。

後藤(斎)委員 やはり、この五年刻みで比較することが正しいかどうかは別としても、少なくとも中小企業向け融資残、貸出残というものは減っているという理解であります。

 これは、個別のミクロの経営者の方からお聞きをしても、多分二つの要因で減っているというお話を聞きます。一つは、設備投資をするような経営環境にまだ十分なっていない。要するに、景況感はまだ実感できないので、まだ大きな資金投資をしたくないという経営者の意思。もう一つは、そうはいっても、今、人件費をかなり、この十年間、中小企業の経営者も、人を減らし、みずからの報酬も減らし、もう行き着くところまで行くと、新たな設備投資をしないという選択とあわせて、金利を少しでも減らしたいということでもう借り入れはしないという、逆説的に言えば、自己資本を高めることになるかもしれませんが、多分その二つの要因だというふうにお聞きをしています。

 その中で、中小企業向け、特に政府系金融機関は、ほぼ横ばいとは言えませんが、全体の一般の民間金融機関に比べれば、その貸出残の減少額というものは、先ほど長官から御答弁いただいたように少ない数字になっています。

 一方で、もう一つの大きな要因は、これもよく言われることでありますが、民間の金融機関が中小企業に対して、みずからの自己資本比率やそういうことも考えながら、やはり非常に貸し出しを渋っているという一つの実態もある。それは、裏返しをすれば、金融庁が対応されている検査マニュアルが厳し過ぎるというふうな指摘もございます。

 もう一つの部分は、あわせて言えば、金融庁をおやめになって、地方の金融機関に、いわゆる天下りという言葉が適切かどうか知りませんが、再就職をなさっている役員の方も最近特にふえているというお話を地域に行くとお聞きします。

 金融庁にお尋ねをしますが、先ほど中小企業庁長官からお答えをいただいたように、貸付残高が減少しているという中で、確かに、中小企業編ということで特別マニュアルにもありますが、もっと中小企業育成に配慮した対応をやはりしていかないと、実際、非常にありていに言えば、金融庁の方を地方の金融機関が見て、なかなか中小企業の方に顔を見せないというふうなことであってはいけないと思うんです。

 検査マニュアルのこの中小企業編というのは、私が見る限り、非常に正しい方向性が出ていると思うんですが、それがやはり現場の方に徹底されていないんではないかなと。これは、検査をする方、そしてそれを受ける地方金融の経営者、現場の方も含めてなんですが、中小企業育成という観点について銀行検査というのをどのように今位置づけておられるでしょうか。

谷口政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生お触れになりましたように、金融検査におきましては、金融検査マニュアルの別冊といたしまして、中小企業融資編というものを策定いたしております。これは、中小企業の経営実態に即した取り扱いが各金融機関においてなされているかということを検証するものでございます。

 この金融検査マニュアルの別冊でございますけれども、これは、今先生おっしゃいましたように、できるだけこれを債務者である中小企業の方々にも広くお知らせして、具体的な運用例などをお知らせしたいということで、私ども、実は、この周知徹底を図るべく、さまざまな機会を通じてやっております。例えば、「中小企業の皆さん! 金融検査マニュアル別冊 ご存知ですか?」こういったようなパンフレットをつくりまして、財務局を通じて、いろいろな会議などの場におきまして周知を図っているところでございます。

 私どもといたしましては、今後とも、中小企業融資編の周知徹底及び適切な運用を図って、中小企業の経営実態に的確に反映した適正な検査の実施に努めてまいりたいと考えております。

後藤(斎)委員 そうはいっても、これは金融庁がことしの一月十九日に、これは四半期ごとに対応なさっているそうなんですが、昨年十一月に実施した中小企業金融モニタリングの取りまとめ結果ということで、読ませていただきました。

 この中にも、今お答えをいただいたようなこと、これからこの金融検査マニュアル別冊の周知についてということでいろいろやっていくというお話でありますが、やはりそれぞれの金融機関や、中央会や、そういう関係者の方々の御意見であれば、「マニュアル別冊の内容が浸透してきているが、中小企業者へは、浸透しているとは思えない。」という意見も、たくさんかどうかは別としても、寄せられたというふうに明確に記述がされております。

 あわせて、やはり中小企業育成という観点からいえば、これもよく聞く話なんですが、短期運転資金で借りかえをしたいときに追加の担保を急に金融機関から言われたりということもまだまだたくさんあるというお話を聞いています。

 このモニタリングの取りまとめ結果の中にも、幾つか、例えば、新規融資の申し込みに当たっては担保、保証がないと融資が受けられない、担保不足を理由にプロパー融資については拒絶される、依然として担保、保証に依存した融資姿勢が見られるとか、例えば、運転資金申し込みについては審査で減額されるなど、融資姿勢は依然消極的であるとか、こういう意見がいろいろなところに記述をされていますが、これが実際の意見だなというふうにも思うんです。

 あわせて、「融資の際の説明態勢」というところで、融資条件、これは金利、返済期間ということらしいんですが、一方的に決定されることが多いほか、融資謝絶においても理由の説明がされないなど、説明不足と見られる事案があるというふうな記述もございます。

 今お答えをいただいたような部分は、もっと周知はしていただいて、これは金融機関の担当の方にもそういうふうな周知をしていただく、もっときちっと理解をしてもらう必要があると思うんですが、このような、まだ十分でないという点については、これは新しいのが来週くらいにできるらしいですけれども、この点についてはどのような御見解をお持ちですか。

山崎政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の、一月十九日に公表いたしました中小企業金融モニタリングにおきまして、さまざまな指摘がなされているのは十分承知してございます。金融庁といたしましては、中小企業に対する円滑な金融というのは、地域金融機関を初め、金融機関の最も重要な役割であるというふうに認識してございます。

 いろいろな御指摘を踏まえまして、今後とも、民間金融機関がみずからの責任と判断でリスクをとって中小企業の金融ニーズに一層適切に対応していくよう、十分努力していきたいというふうに考えてございます。

後藤(斎)委員 もう一点なんですが、それにも関連して、先ほどもちょっと御指摘をさせていただいた、いわゆる旧都市銀行や財務省、金融庁のOBの方が地方銀行や信金、信組に再就職をなさる。

 これが天下りと言うかどうか、定義は別として、人事院承認分で、これは信用金庫、地銀ということでありますが、十八年に信用金庫には十一人、そして各府省承認分ということで、地方銀行には一人、信用金庫には三人。何か少ないような感じもするんですが、「信用組合は非営利企業として再就職審査の対象外となっている。」というコメントの資料を人事院からいただいております。

 これは、先ほどもお話をしましたように、やはり審査をする際に、余りにも再就職をなさった方々が執行部にいるということで、自己防衛というよりも、中央の物差しでやはりはかってしまう嫌いがあるのかな。これは、関連するいろいろな団体の方にお聞きをすると、そんなような意見を持っている方もいらっしゃいます。

 金融庁としたら、もちろんそういうことがないようにしながら、こういう承認をなさったりしていると思うんですが、いわゆる、天下りと言えないんですが、再就職の実態について把握をなさっているのかどうか。そして、なさっていないのであれば、ぜひ全体像を一度きちっと把握していただきたいということと、あわせて、先ほども指摘をさせていただいたように、やはり過度に厳しい融資審査を行ってしまう嫌いが、旧都銀の皆さんや財務省や金融庁のOBの方が再就職なさって、そういう審査傾向になってしまっているんではないかなという疑念に対してはどのような御見解を持っているのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、再就職の状況についてでございますが、これは公務を離れた個人に関する情報でございまして、一般に、当局としてすべてを把握すべき立場にはございませんけれども、保存期間内の文書で確認できる限りにおきましては、金融庁を退職し、信用金庫及び信用組合に再就職した者はございません。先ほど先生がおっしゃった数字につきましては、恐らく、他省庁からの再就職の分ではないかと思います。

 それから、都市銀行等の職員の信用金庫、信用組合への再就職につきましては、あくまで民間企業間の問題でございますので、当局として基本的に関与すべき立場にはないということを御理解いただければと思います。

後藤(斎)委員 大臣、もう時間もありませんから、きょうはまとめにしますけれども、貸し渋り、貸しはがしがあるという実態は、その程度が、これは衆議院の調査室がおまとめになったもので、特に一千万円以下の資本金のところで、平成十八年にはまだ八・五%くらいの企業の方が貸し渋り、貸しはがしを受けているという意識をお持ちで、資本金がそれ以上のところよりも高い比率になっています。

 大臣、弱いところにそういうものがいって、それを実感で経営者の方が受けているということは、やはり見逃すべきではないと思いますし、検査の体制が、厳し過ぎると言ったら大変失礼な言い方かもしれませんが、もちろん法令に基づいて対応しているということは十分認識しながらも、やはり中小企業育成というものを視点に置いていただく必要があると思うんです。

 あわせて、貸し渋りや貸しはがしの全体の実態調査というもの、どういう要因なのかというのは、大臣、金融庁と連携をするかどうかは別として、やはり経産省として、中小企業施策の政府としての基本施策を推進するという役割を持った大臣として、やっていただく必要があると思うんですが、あわせて最後に御答弁をお願いします。

甘利国務大臣 金融に関するDIはかなり改善をしてきていると思いますが、特に小規模中小企業の分野においてはまだまだ難しい点があるという御指摘であります。

 私どもも、中小企業庁を通じて、現場の資金ニーズ、供給状況がどうなっているか、あるいは理不尽な対応を受けていないか、子細に調査をして、これは政府系を中心にですけれども、より適切な金融行政に導いていけるよう対処をしていく、あるいは、政府系を中心に、中小企業の実態に沿った新しい商品開発等々を先導していきたいというふうに思っておりますが、いずれにしても、現状把握にはしっかり努めたいと思っております。

後藤(斎)委員 以上で終わります。残余はまた来週以降対応させていただきますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

上田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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