衆議院

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第8号 平成20年4月18日(金曜日)

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平成二十年四月十八日(金曜日)

    午前十時四十分開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 鈴木 俊一君

   理事 谷本 龍哉君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 吉川 貴盛君 理事 大島  敦君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 忠彦君    上野賢一郎君

      江崎洋一郎君    小野 次郎君

      岡部 英明君    片山さつき君

      川条 志嘉君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    清水清一朗君

      柴山 昌彦君    平  将明君

      谷畑  孝君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    冨岡  勉君

      丹羽 秀樹君    橋本  岳君

      平口  洋君    藤井 勇治君

      武藤 容治君    安井潤一郎君

      吉野 正芳君    太田 和美君

      北神 圭朗君    後藤  斎君

      近藤 洋介君    下条 みつ君

      田村 謙治君    牧  義夫君

      高木美智代君    吉井 英勝君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   経済産業副大臣      中野 正志君

   経済産業大臣政務官    山本 香苗君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房統計委員会担当室長)       中島 隆信君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   藤岡 文七君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   齋藤  潤君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長)   大脇 広樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         近藤 賢二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           瀬戸比呂志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           鈴木 英夫君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          石田  徹君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            細野 哲弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      西山 英彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     薦田 康久君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           川本正一郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 谷津龍太郎君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     冨岡  勉君

  牧原 秀樹君     とかしきなおみ君

  安井潤一郎君     上野賢一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     小野 次郎君

  とかしきなおみ君   平口  洋君

  冨岡  勉君     片山さつき君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     安井潤一郎君

  平口  洋君     牧原 秀樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)

 揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房統計委員会担当室長中島隆信君、内閣府政策統括官藤岡文七君、内閣府政策統括官齋藤潤君、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長大脇広樹君、経済産業省大臣官房総括審議官近藤賢二君、経済産業省大臣官房審議官瀬戸比呂志君、経済産業省大臣官房審議官鈴木英夫君、経済産業省産業技術環境局長石田徹君、経済産業省製造産業局長細野哲弘君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長西山英彦君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長薦田康久君、国土交通省大臣官房審議官川本正一郎君及び環境省大臣官房審議官谷津龍太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北神圭朗君。

北神委員 おはようございます。民主党の北神圭朗でございます。

 大臣、毎度おなじみの質問者で、きょうも後藤さんと近藤さんの露払いを務めさせていただきます。大臣側から見ると、四頭か五頭ぐらいしかいない回転木馬がぐるぐる回っているような感じであると思いますが、せっかくの機会でございますので、一時間お時間をいただきましたので、きょうは経済全体の話をさせていただきたいと思います。

 サブプライムローンの問題とかで、これから景気が非常に悪化してくるという予想がされております。これはいろいろな意見はあると思いますが、私はかなり悪化してくるというふうに思います。

 そういう中で、民主党も自民党さんも、それぞれ各党、緊急経済対策とかそういうものを打ち出しております。これも、やめろとは言わないんですが、やはり本質的な問題解決にはならないというふうに思っております。つなぎ的なものとか下支え的なものにすぎないというふうに思っておりますので、やはり、日本の経済をよくするための根本的な構造改革というものをしなければならないというふうに思っております。

 それで、資料の一ページ目をごらんいただければ、今回、戦後最長の景気拡大ということで、大体二〇〇二年度から二〇〇六年度ぐらいまでがその期間だというふうに言われておりますが、一ページ目の下の方の「GDP構成項目の伸び」というところをごらんいただければ、今までの、経済成長といいながら、かなり偏っていた経済成長だったということもわかりますし、これからサブプライムローン等の影響を受けて景気が悪くなる中で、今後どういうことが課題になっているのかということも自然とわかるというふうに思います。

 点線がたくさんあってなかなか見えにくいんですが、二〇〇二年度から二〇〇六年度まででいきますと、一番上、伸び率が一番高いのがやはり海外への輸出であります。そして二番目に、普通の線で丸い点があるところは、これは輸入の部分ですが、その次に、二〇〇二年度からぐっと伸び率が上がっているのが企業の設備投資。基本的に、景気の拡大は輸出そして企業の設備投資によって牽引されたということがわかると思います。

 その下の方に、非常に太い線は、全体の国内総生産ですが、四角い箱の線が、非常に低い伸び率で推移しているのが、これが個人消費であります。さらにその下の点線、この期間にわたってプラス・マイナス・ゼロぐらいの伸び率で推移しているのが、これが民間住宅であります。一番下が、これは公共投資の部分であります。ですから、おのずと、やはり個人消費と住宅、この部分の活性化が必要だ、これが非常に大きな課題だ。

 当然、GDPの六割弱を占めている個人消費というのは一番大きな課題なんですが、これは恐らく、私の今の考えでは労働市場の改革というものが非常に大事だ。ただ、これは正社員の既得権益みたいなところにもメスを入れなければならない、大変政治的には微妙な部分を抱えておりますので、これについては、もっと勉強してからここでまた私も議論をしていきたいと思います。

 きょうは、おとつい、太田委員も大臣と議論させていただいた住宅の部分について、御意見を伺いたいと思います。

 経済産業省というのは、最後にもお尋ねしたいと思いますが、経済、産業という両方を見ていく、つまり、非常に広い範囲の所管を担っている役所であります。どうしても非常に広い分野にまたがった行政をしなければならない、そういうところに非常に困難があるというふうに思います。きょうは、公正取引委員会の委員長、国土交通省の皆さんにも来ていただいて、これは福田総理が就任前から唱えてこられていた二百年住宅ビジョンについて、お尋ねをしたいと思います。

 これは法案がまだ出されていないということでありますので、若干、表面の部分だけお聞きしたいと思います。さっきのGDPの推移を見ても、住宅というのは非常に大事な部分で、私は、福田総理の政策の中では、これは正直、方向性として非常にすばらしいものだというふうに思っております。我々も、細部についてはいろいろな異論もあるかもしれませんが、こういう部分についてはぜひ頑張っていただきたいと思いますので、まず、その二百年住宅ビジョンの具体的な内容について、どういうことをされるのかということを簡単にお聞きしたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の住宅につきましては、新築をされましてから大体三十年ぐらいで取り壊されるという状況にございまして、欧米各国のいわゆる住宅の寿命に比べますと非常に短いという現状にございます。いわば、つくっては壊すというような状況にあったわけでございますが、この二百年住宅の構想は、こういった状況を転換いたしまして、いいものをつくってより大事に使おう、いわば、ストック型社会への転換を図ろうという施策でございます。

 具体的には、一定以上の性能、耐久性でありますとか、耐震性あるいはライフスタイルやライフサイクルが変わったときの可変性といった、そういった性能を備えた住宅をつくっていただく、さらに、それをしっかりとメンテナンスしていただく、その上で、そういった中古住宅を流通市場に流し、それが高い評価を受ける、そういった仕組みをつくっていこうというものでありまして、これによりまして、住宅の解体によります廃棄物を削減する、あるいは建てかえコストの削減によります国民負担を軽減するといったような効果を期待しているものでございます。

 先生もお話しございましたが、そういった構想の具体化を図るために、今国会に長期優良住宅の普及の促進に関する法律案という法案を提出いたしているところでございます。この法案におきましては、今申し上げました、耐久性、耐震性、可変性といった性能を備えた長期優良住宅の建築について、建築と維持保全の計画をつくっていただいて、それを市町村、都道府県が認定する、それに対していろいろ応援をしていくといった仕組みを中核にいたしております。

 また、二十年度予算におきましても、これに関連をいたしまして、長期優良住宅を先導できるようなモデル事業について助成をする事業でありますとか、あるいは住宅の記録をちゃんと整備してこれを保存しておくというためのシステムの設計、さらには長期優良住宅をつくった場合の税制上の恩典といったような施策を盛り込んでいるところでございます。

北神委員 ありがとうございます。

 長期優良住宅というものをこれからつくっていく、それが二百年ぐらいもつような堅牢なものとしてつくっていかなければならない、その認定をするのが市町村とか都道府県ということであると思います。

 各国のやり方を見ていても、多分、今回の日本の特徴は、結局役所に認定をしてもらうということにあるというふうに思います。去年も建築基準法の関係で住宅不況というものが起こりましたし、余り官僚的にこれをやると非常に効率が悪くなったり、お尋ねしたいのは、さらに言えば、単に堅牢な二百年もつ家をつくるだけじゃだめだと思うんですね。やはり、周囲の環境に合ったような、ちゃんと景観というものを踏まえたような、そういうものをつくっていかないといけない。

 都心の中でも、マンションについては割と中古マンションの流通が盛んに行われていますが、やはり、そこで買う人たちの話を聞くと、非常に周囲の環境がいい、環境がいいというのは自然環境だけじゃなくて、町並みがきれいだとかそういう点を踏まえて買っているというところがございますので、私が心配するのは、市町村とか都道府県の役所、これはもういっぱいいっぱいだと思います。彼らも気の毒だと思います、全部こういう仕事、責任をある意味では押しつけられて。

 そういう中で、ただ事務的に審査をするのではなくて、やはりある程度デザイン的な観点とか都市計画的な、美観とかそういうものもちゃんと考慮に入れた視点というものが非常に大事になってくるというふうに思います。役人でやるのであれば、そういう役人を育成するとか研修をするとか、そういうことはお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおり、長期優良住宅、これは長い期間にわたって使用されるということを想定いたしております。そうなりますと、当然、その住宅は町並みの一部を形成していくということになろうかと思っておりまして、周囲の建築物等々との調和はもちろんのこと、町並みあるいは地域環境というものと調和していかなきゃいかぬというふうに考えております。

 まさにそういった意味で、まちづくり、地域づくりを担っておる市町村、都道府県で住宅の認定をしていただきたいなというふうに思っております。

 その際には、今お話ございました、単体としてしっかりしたつくりになっているかどうかということだけではなくて、例えば、住環境に関しますいろいろな規制でありますとか誘導措置を各公共団体で設けております。こういったものについてある程度合致しているかどうか、それで良好な住環境が確保されるような格好になるのかどうかといったようなことについても認定の要件にしていきたいと思っておりまして、それがまた、逆に言いますと、その住宅の価値というものを上げていくようになるのではないかと思っております。

 また、建築確認部局だけではなくて、認定の際にはまちづくりの担当部局とも十分連携をとりまして、今申し上げたような措置というものがしっかり行われるように指導してまいりたいというふうに考えております。

北神委員 認定する役所にいろいろ指導されるということですが、これも形式的なものになりかねない部分もありますので、また、実際に認定をされる人たちの研修とかそういったことも一つの案じゃないかというふうに思っておりますので、これについては、実際の法案が出てきたらまた議論させていただきたいと思います。

 要するに、これはある意味では、日本の中古市場、流通市場というものがなかなか今厚みがない中で、欧米でしたら、役所がやるんじゃなくて専門の住宅調査機関とか、あるいは金融機関、こういうところが住宅というものを調査して、そしてそこで、民民の関係の中で、これは耐震性がどうなのかとか違法性があるのかどうかとか、そういう認定をしているというふうに思います。

 ここがやはり日本の場合はどうしても行政に頼らざるを得ないところがあるというふうに思いますが、今申し上げた金融機関についても、欧米の場合でしたら、住宅ローンについて、人的保証ではなくて、その住宅が当然百年もつぐらいのものであったら、担保価値みたいなものもあるし、流通価値みたいなものも出てくる。

 サブプライムローンの問題で、ちょっとこういう発想も批判があるかもしれませんが、でも、あれは金融政策の問題であって次元が違う話ですので、本来の融資のあり方として、日本の場合は基本的に人的保証で住宅ローンをやっている。言ってみれば、地震か何かで倒壊をしたりしたらすべて消費者に責任を負わされるような、そういった仕組みになってしまっているんです。

 金融機関の住宅ローンのあり方も、人的保証じゃなくて住宅そのものに、せっかく二百年もつ住宅をつくるのであれば、そして、これから流通市場というものも開拓していくのであれば、そういった観点も踏まえて、そこに担保価値を見出して、そこで融資できるような仕組みをつくって、その際に、当然銀行としては貸し出しをするわけですから、本当にこの住宅の担保価値というのはどこまであるのかという調査もしていかなければならない。

 そういう、むしろ民間にある程度、徐々にゆだねていくような政策をとっていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおり、住宅の建設購入資金に対する融資というものにつきましては、人的保証、無制限に返済責任を負うというやり方が今普通でございます。

 これは、住宅の担保価値にのみ着目をして、それ以外に返済責任を遡及させない、いわゆるノンリコースローンという格好にしていくことにつきましては、現状では恐らく、住宅の価格自体が経年によりまして大幅に低下をする、したがって価値がどんどん落ちていくという状況にあるということが一番大きな問題なのではないかなというふうに思っております。

 仮に、今の状況のもとでノンリコースローンを提供するということになると、恐らく、融資の範囲を大幅に縮減するとか金利が大幅に上がるといった格好で金融機関はやっていくんだというようなことになってしまうんだと思います。

 ただ一方で、私ども考えておりますこの長期優良住宅、長い期間使用できる住宅というものが普及してまいりますと、当然、価値がそれほど大きく下がらないということがありまして、それによって今御指摘のようなローンのあり方というのもある程度変わってくるのではないかなという期待をしているところでございます。

 このため、私どもとしては、この長期優良住宅の資産価値の評価でありますとか予測手法などを確立するように、関係データの蓄積をやっていきたいなというふうに思っております。また、住宅価格の経年変化の法則性というあたりも少し検証いたしまして、民間の金融機関によるローンのあり方が変わるような条件整備というものに努めてまいりたい、このように考えております。

北神委員 住宅だけじゃなくて、日本のほかの中古市場を見ていても、新品から中古になる途端に価値が下がるという部分もあるけれども、まさに皆さんがやられている二百年住宅ビジョンというのはそうならないようにすることが目的なので、そういうことを目指す中で、融資のあり方、住宅ローンのあり方というものもやはり見直していかないといけない。

 今いろいろデータの蓄積とかされているというふうに言われておりますが、これは金融庁とかあるいは銀行業界、今、住宅ローンは民営化されたんですよね、だから、民間の金融機関といろいろ相談をしないといけないということだと思いますので、むしろそっちの方に誘導していくような政策をとるべきだというふうに思っておりますので、ぜひそこをよろしくお願いしたいと思います。

 あともう一つ、住宅の建築基準。これは昨年建築基準を非常に厳しくしたという部分でいろいろ混乱もありましたが、しかし、この住宅二百年計画をやるのであれば、やはりここのところをいじらないと、恐らく、なかなかそういう二百年ももつような住宅をつくるインセンティブが出てこないというふうに思っております。

 例えば、特にマンションなんかが一番大事な部分だというふうに思うんですが、現行の基準であれば、地震が起きても倒壊しない、そういう基準になっている。これは恐らく、人命を尊重するというか、人命さえ守れればいいというような発想でこういう基準になっているというふうに思うんですが、中古住宅流通市場をつくっていくのであれば、それだけじゃやはりちょっと緩過ぎるということになってしまうんですね。震災後もちゃんと住宅として利用できるというふうにしていかないと、地震のことを考えると百年、二百年はなかなかもたないということであります。

 ですから、今、建築基準法の関係でいろいろな混乱が非常に起きている中でこういうことも考えているのか。そして、考えているときに、今の混乱とどうやって明確に説明を区分していかれるのか。その点についてお聞きしたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘のとおり、建築基準法、これは生命財産等の保護を図るための最低基準ということで設けられておりまして、震度五強程度の中規模の地震に対してはほとんど損傷が出ない、震度六強から震度七程度のまれにしか発生しないような大規模地震に対しては、人命にかかわるような倒壊等の被害を生じないという基準にいたしております。

 一方で、私ども考えている長期優良住宅ということになりますと、当然、日本は地震国でございますから、地震があってもそのまま使い続けられるような格好にしなきゃいかぬということで、補修等をすればそのまま使用できるような格好の基準を設けたいというふうに考えておりまして、その具体的な中身についてはまだ検討を進めておるところでございます。

 一方で、そういった中身につきましては、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づきます住宅性能の表示制度というものがございまして、ここでは、他の耐久性やその他の項目と同様に、耐震性につきましても性能等級というものを設けております。性能等級の一、二、三というような等級がございまして、これをもとにしまして耐震性能というものを図るという仕組みにしたいというふうに思っております。

 今、現場の混乱のお話がございまして、昨年の建築基準法改正の施行によりまして、非常に現場の混乱があって着工等が落ち込んだことは大変申しわけなく思っておりますが、今回の認定等につきましては、今申し上げました性能表示制度という下敷きがございます。これをもとにしていろいろな基準というものをつくっていきたいと思っておりまして、その意味で、公共団体の現場でどういったものがそれに当たるのかということで混乱が起きることがないような格好で、しっかりと措置をしたいというふうに思っております。

北神委員 建築基準法そのものを厳しくするということはないんですね。性能表示の方でやっていくということでよろしいんですか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 現在でも、実は、新耐震基準といいます先ほど申し上げました耐震基準を満たしていない住宅というのが全住宅の四分の一ぐらいあるということでございまして、私ども、まずその改修を図っていかなきゃいかぬという状況にございます。

 そうした中で、基準自体をまた上げますと、その基準を満たさない住宅・建築物が大幅にふえるということもございます。まずは、しっかり長もちするような住宅については、先ほど申し上げたような基準を適用していくというやり方で進めるのが適切なんじゃないかなというふうに考えております。

北神委員 住宅性能基準というのは、恐らくこれもまた行政の方で認定することになっているんですね。それでよろしいですか。

川本政府参考人 性能表示につきましては、性能評価機関というものが法律上指定をされておりまして、民間機関がそれを審査いたしましてお墨つきを与える、そういう仕組みになっております。

北神委員 わかりました。

 次に質問したいのは、分譲マンションについて、長期期間にわたって修繕、改善みたいなものが必要になってくる。この辺についても、住んでいる人がそういう意識を持っているかどうか。これはなかなか普通は持たないと思うんですね、余りそういう政策的な観点で生活しているわけじゃないので。

 この辺の修繕、維持というものが図られなければ、当然、長い間の中で住宅の価値というものはどんどん落ちていく。こういう部分で政策的に誘導をしなければならないというふうに思いますが、この点についてどういう対策を考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

川本政府参考人 お話しのように、分譲マンションは現在五百三十万戸弱という数字になっておりまして、居住者は一千三百万人ということでございます。こういったついの住みかになっておる住宅につきまして、このストックを適切に修繕していく、ちゃんと使っていくというのは非常に重要な課題だというふうに思っております。実際に、各管理組合での管理等に当たって、合意形成等の問題等もありまして、しっかりとした修繕計画がつくられて積立金が設定されていないという例も多々ございます。

 こういったものにつきましては、私ども、例えば計画の策定や積立金について定めます管理規約の標準モデルをつくってこの普及を図るといったようなこと、あるいはマンションの管理についての標準指針をつくって、その標準指針に基づいて管理をしてくださいというような格好で管理組合の参考資料をつくっていくというようなやり方、あるいは修繕履歴に関する情報や個別のマンションの管理情報というものをネットに載せまして閲覧できるようにする、マンションみらいネットと呼んでおりますが、こういったシステムをつくる。あるいは、管理組合等に対するいろいろな啓蒙策といったようなことを行っているところでございます。

 今回の長期優良住宅について申し上げますと、当然、マンションも対象になるわけでございます。この長期優良住宅の認定というものを考えますときには、長期修繕計画の策定でありますとか、積立金をちゃんと取るようにするとか、こういったことは当然要件にしたいというふうに思っております。

北神委員 長期優良住宅について修繕の計画というものを認定する。これは行政で認定することになって、二百年も転々流通するわけですから、その情報というのはどうやって管理をされることになっているんですか。

川本政府参考人 御指摘のとおり、長期優良住宅については、世代を超えて使用されるということを想定いたしておりますから、これは、マンションに限らず、その住宅についていろいろな人がお住まいになるということになろうかと思っています。

 そういたしますと、つくったときどういうつくり方をしたかという記録、それからどういう時期にどういう点検をしたのかという点検の記録、さらにはメンテナンスの記録、こういったものをしっかり保存するということが次の世代、次の世帯に安心して住んでいただくということのためには重要になると思っておりまして、先ほど申し上げました、今回御提案しております法律案の中では、記録の作成、保存というものを義務づけるということをいたしておるわけでございまして、そういった記録がついた格好で住宅が流通する、そういうことで市場での評価も高めていくということにしたいというふうに考えております。

北神委員 では、それまでの修繕、維持管理、この履歴というものを保存しないといけない。これは住んでいる方に保存義務があるということなんですかね。

 要するに、これは、私らもいろいろな家電製品とか買ったりして、いろいろな書類とか持っていたり携帯電話の書類を持っていたりするけれども、こんなものは大体捨てたり、なくしたりするんですよね。世代を超えて住宅をどんどんどんどん引き継いでいったり、あるいは売っていったりする中で、果たしてそんな保存をするのかねと。つまり、このスキームが果たして本当にワークするのかどうかというのが心配なんですが、これについてどうでしょうか。

川本政府参考人 御指摘のとおり、基本的には家をつくった方、家に住んでおられる方の保存ということになろうかと思いますが、データの保存ということを考えますと、その方に全部お願いをしていくということだけではなかなかうまく運営ができないんじゃないかなというふうに思っております。

 したがいまして、この記録の保存につきましては、第三者機関に預けていただくといったような仕組みにしたいと思っておりまして、これは法律の中の施行条例なんかでそういった方向を決めていきたいというふうに思っております。

北神委員 そういうことをしないと、なかなかみんな、紛失したりする可能性は非常に高いというふうに思います。あるいは仲介業者にそういう保存義務を持たせるとか、そういういろいろなあり方があるというふうに思いますので、ぜひそこを検討していただきたいというふうに思います。

 あともう一点お聞きしたいのは、賃貸について、中古流通市場を整備する中で入退去が円滑に行われるようにしていかないといけない。なかなか日本の場合、いろいろな法的な環境の中でこれが余り円滑でない難しい部分があるというふうに思いますが、この点について法的な整備というものはする予定なんでしょうか。

川本政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の賃貸住宅のストック、持ち家に比べますと非常にストックの水準が低いということもございまして、今回の長期優良住宅のビジョンの中身が具体化していく中で賃貸住宅の質も上がっていくということを期待いたしておりますが、その中では、先生御指摘のような、入退去、管理面での手当てというものも必要になってくるというふうに思っております。契約の更新の問題でありますとか、あるいは家をお出になるときの原状回復の費用負担の問題でありますとか、そういった観点からいろいろなトラブルが起きているというのが現状でございます。

 私どもも、一般的には、賃貸借契約のモデルになるようなガイドラインや、それから賃貸住宅の標準契約書といったようなものもつくっておりますし、原状回復についてもこういったやり方にするんだというような指針みたいなものもお示しをいたしているところでございまして、基本的には、こういった取り組みを通じて、入居者に対する情報開示というものに努めてまいりまして、透明性の高い賃貸住宅市場というのをつくっていくのが一番大事なのかなと思っております。

 その上で、法的にどういう手当てができるのか、またすべきであるかということにつきましては、これまでのいろいろな取り組みの状況等を見ながら、これからもう少し検討してみたいなというふうに思っております。

北神委員 わかりませんけれども、恐らくこの賃貸住宅というものがこれからもっと伸びていく可能性がある、特にこういう政策を打つ中で。ですから、そういうところも早急に検討していただきたいというふうに思っております。

 住宅についてはもう質問を終わらせていただきますが、最後に大臣に、今の一連の議論を聞いていて、当然、まだ法案は出ておりませんし、この委員会でも審議はされないというふうに思います。多分、国土交通委員会で審議をされる。

 ただ、さっきの一番冒頭のGDPの項目別の推移を見ても、経済産業省としては、この住宅というものを当然発展させていかないといけない、経済政策の重要項目としても大事に推進をしていかなければならないというふうに思います。そういう面で、国土交通省との調整もいろいろあるというふうに思いますが、やはり、これも経済政策として強力に推進すべきだというふうに思います。

 一方で、この前、太田委員との議論の中でも、新築、今までみたいにつくっては壊して、つくっては壊す。これは家電製品でも、私も、例えばウォークマンみたいなものでも、すぐ、二年ぐらいたつと壊れる。これによって、ある意味では、メーカー側としては回転が速くて非常に商売としてはいい部分もあるかもしれませんが、住宅というのはちょっと違う。これは生活の拠点であり、ただただいわゆる商品として見るんじゃなくて、そういった視点もやはり大事かなというふうに思っております。

 大臣にその決意をお聞きしたいんですが、これは通告にはなかったんですが、私は今の話を聞いていて、結局、政策でできる部分と、そして消費者の意識の問題とあると思うんです。

 今まで何となく、これは私も歴史的な検証をしたことはないんですが、住宅というのは新しい、さらじゃないといけない、新築じゃないといけないと。それが一種、みんな社会に出て一つの人生の目的のようになってきたという部分がありますし、今度、伊勢神宮の遷宮二十年のあれがありますが、やはり日本の文化として、割と建てかえをする、常に新しくしていきたいというようなものもあるんじゃないか、そういう議論をする方もいて、なかなか消費者の方も意識が、中古住宅というのは何かちゅうちょしてしまう、やはり新しいところに住みたいな、そういう意識の部分もあるというふうに思います。

 これは恐らく変わっていくようなものだと私は思いますが、その点も踏まえて、この住宅二百年ビジョンですか、今後、これをぜひ強力に推進していただきたいと思いますが、大臣にその決意をお聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 私、昔、ロンドン郊外に住んでおります友人を訪ねていったことがあります。そうしましたら、その近所でおじさんが塀にペンキを塗っているんですね。友人に、近所でペンキを塗っているおじさんがいたけれども、ああいう人を雇ってみんなやっているのかねと言ったら、いや、多分そこのうちの御主人だ、大体、日曜日には庭の手入れか家の手入れをほとんどしていると。

 要は、まめに手入れをして、買ったときよりも売ったときの方が価格が高くなるようにするという話を聞きましてちょっと軽いカルチャーショックを受けまして、住んで使った後の方が価格が高くなるということはどういうことなんだろうかという思いをしたことがあります。

 この二百年住宅構想というのは、ある種のパラダイムシフトの提言だと思うんですね。住宅というのは、消耗品という発想から伝承していくものという、住宅に対するとらえ方を少し変えていかなきゃいけないという部分がある。ただし一方で、では住宅産業というのはどうなっちゃうのと。だれも新しい家をつくらないとしたら、経済的にいえば、我が省からいえば、住宅が支えているGDP部分というのはどうなるんだという話があるわけであります。

 ただし、五百年、千年建てかえないわけではないですし、日本全土の住宅が入れかわっていくには相当な経済効果もありますし、一方、いい状態で保存していくためにメンテナンスの経済効果も当然出てくるであろうと思いますし、資源を大切に使うということで資源節約、それから廃棄物の減量という政策にも合致をしてくるわけであります。

 長寿命化するに従って部材をどう長い間保持していくか、共通化していくか、あるいは長寿命化していくか、そういう課題もあわせて住宅政策としてとらえていくということで経済と環境とを両立させる、それから、消耗品という感覚から大切に手入れをして子々孫々と伝えていくもの、そこに文化ということも加味してくるんだろうと思いますし、これは単なる住宅政策を超えた総合的な政策であり得るというふうに我々もとらえております。

北神委員 新築をつくりたがる業者もおられると思います。きのう国土交通省の皆さんとお話をしていたら、割と業界も、基本的にこの方向性で合意をしているという話も聞きましたし、設備関係の業者が多少難色を示しているかもしれませんけれども、やはり設備の方はどんどん新しいものをつくりたいというのがありますから。

 ですけれども、住宅業界を見ていても、やはり、リフォームが今物すごい利益を上げていたりそういう流れもありますので、こっちの方に進めた方が経済効果も恐らく出てくるんじゃないかというふうに私は思っているところでございますので、ぜひ大臣も、そういう業界を抱えている部分がありますから、そこの説得も兼ねてひとつよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、今、住宅の需要、経済政策としての住宅対策を質問させていただきましたが、もう一つ課題としてやはり中小企業の問題がある。そして、中小企業についても、この経済産業委員会でも何遍もいろいろな法案が出てきて議論をしてきたけれども、恐らく、私が思うには、金融の部分をやはり充実させていかないといけないということと税制の部分、さらには、公正取引委員会の優越的地位の濫用とか、俗に言う下請いじめみたいなものが非常に横行している、こういうところをやっていかないといけない。

 公正取引委員会の話というのは、地味というかなかなかわかりにくい部分もあって、どうしても、金融の信用保証をするとか税制をまけるとかそっちの方に議論が流れやすいんですが、やはり、この十数年間の経済改革というのは基本的に自由化の流れで、今ちょっとした反動が昨年の参議院選挙からあるかもしれませんが、基本的な流れというのは自由化であり規制緩和である。

 ただ、今までの問題というのは、自由化はするけれども、事後規制のところが非常に緩かった。要するに、自由化というのは、ルールをつくって、ルールを多分今までの日本の行政よりも緻密なものにして、そしてそこで企業とか消費者がそのルールに基づいて公正な取引をしてもらうということであると思うんです。

 どうしても、ルールがなかなか未整備だとか、ルールがあっても、それを監視して、問題があったときに摘発をして罰則をかける、こういったところが非常に緩い。公正取引委員会だけじゃなくて、労働基準監督局とか証券取引等監視委員会、こういったところはみんな自由化に応じて事後規制を強化しなければならないのに、小さな政府という議論に惑わされてしまってそこがなかなかできていない。

 そういう中で、中小企業というのは、私が地元に戻っても、非常に下請いじめがあって搾られてしまっている、そこを何とかしてほしい、そういう声が地元からわき起こっておりますし、皆さんもそれを聞いているというふうに思いますので、公正取引委員会の機能の強化というものを図っていかなければならないというふうに私は思います。

 その一つで、今国会に提出する予定であります、独禁法の改正というものが予定されているというふうに思いますが、この内容を、簡単にで結構ですので、どういうことを想定されているのかお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 実はもう法案は国会に提出をされておりますので、ぜひ御審議いただいて、この国会で成立をさせていただきたいと思います。

 その中身でございますけれども、柱は大きく二つございまして、一つは、課徴金と排除措置命令の関係でございますが、課徴金の適用範囲の拡大をさせていただきたい。

 具体的には、排除型私的独占、それから今御指摘のありました優越的地位の濫用、不当表示、さらには、不公正な取引方法のうち不当廉売、差別対価、共同の取引拒絶、それから再販売価格の拘束、これらの規定に違反した場合には、今まではただやめなさいということでございましたが、これからは課徴金の対象にしますということで、ぜひそのようにさせていただきたい。

 特に、今御指摘のような、経済情勢が悪化の方向のリスクを抱えておって、その中で大変シビアな下請との取引関係でありますとか優越的地位の濫用ということがあるわけでございまして、私ども、それに非常に積極的に取り組んでいるつもりでございますが、ただやめなさいでは不十分であるというお話が国会でも大変ございまして、それを受けて、せっかくのこの課徴金の導入ということを御提案させていただいているわけなので、時宜にかなった御審議をぜひお願いしたいと思います。

 それから、もう一つのポイントは企業結合の関係でございますが、これは経産省さんからも非常に積極的な御意見をいただきまして、我々も、やはり国際的な整合性を企業結合の場合にはしっかりと考えなければいけないということ、それから無駄なコストを、企業結合に係る事務的なコストを企業側にかけることもないということで、国際的な整合性と、それから必要なものをいただくということで、企業結合に当たっての審査基準をかなり大幅にガイドラインにおいて見直しをいたしました。

 それから、その中で、内外無差別ということを徹底しなきゃいかぬということで、国内の企業と比べて、外国の企業が合併する場合、例えば日本の企業と合併するような場合、必ずしも従来の基準というのはそれが内外無差別でなかったものですから、これからはきちっと内外無差別にしますと。

 それから、企業結合の形態として、ただ単に、合併というのは、合併合併といいますが、実際は合併という形をとるのは非常に今や少なくなってまいりまして、株式を取得するという形によって企業結合を果たすというのが多くなってまいりました。

 その株式取得型の企業結合について、従来、日本は事後の届け出でよろしいということになっておりまして、これは欧米は事前だということになっておりますので、日本も株式取得以外は全部事前なのでございますけれども、株式取得だけ事後でいいということになったのを、これも国際的整合性の観点から事前にするということを盛り込んでございます。

 ぜひ御審議をいただきたいと思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 法案の中で、罰則を強化する部分とか、この辺は我々も、民主党もかなり強力にこの数年間主張してまいりましたし、非常にいいことだというふうに思いますが、恐らくその法案の一部がまだいろいろ議論があるところがあると思います。審判の部分だと思いますが、だから、これはきょうは申し上げませんが、それについても多分これから議論をしないといけないというふうに思っております。

 それで、強化をされる、課徴金の適用範囲の拡大の話があって、これによって中小企業がより公正な市場の中で商売ができる、つまり大企業とかその辺に不当な扱いを受けないということが実現できる部分もあるというふうに思いますが、きょう、私、資料で皆さんにぜひ、委員長初め公正取引委員会の皆さんはもう重々御承知だと思いますが、私が懸念しているのは、この改正についてはそれで結構だというふうに思うんですが、罰則を法律上強化するだけではとても今の問題には対処できない。

 それは、公正取引委員会の監視機能の体制、一言で言えば人員の部分ですが、これは各国と比較しても非常に少ない。不当廉売とか、不当表示とか、優越的地位の濫用というのは当然そんな大っぴらに企業がやるわけではないので、一種非常に強い監視機能を持たないといけないし、手足がたくさんいないといけない、優秀な、有能な手足がたくさんいて情報収集をしたりしないといけない、むしろそれを積極的にやらなければとても追いつかないというふうに思っております。

 資料の三ページを見ていただきますと、日本、米国、EUの競争当局の比較をしております。

 職員数を見ていただければ、日本が七百六十五人います。そして、米国の方は二つに分かれておりまして、これが千九百。二千人弱ということでありますが、注の一にございますように、これだけじゃないんですね。各州の司法当局も競争法の執行というものを行っている。ですから、実際は多分もっと人数がいるというふうに思います。

 EUの方を見ますと、これは統合されたEUの競争当局でございますが、七百三十七人で、日本と余り変わりがないように見えますが、その右にありますように、EUだけじゃなくて、ドイツとかフランスとかイギリス、ここでまた競争当局の人員がいるわけですね。

 そして、端的にわかるのが一番下の部分で、職員一人当たりの事件処理件数。これは何かあたかも特許庁の審査のあれを思い出すんですが、日本は〇・一二三とほかの国に比べても非常に多い。フランスはちょっと多いんですが、基本的には日本は職員一人当たり、かなりいろいろな仕事を負わされてしまっているという部分がございます。

 もっとわかりやすく言えば、次のページ、四ページを開いていただくと、これは一般の方からの情報、優越的濫用があるとか、これは不当表示だとか、そういう相談件数の推移を見ますと、十八年度なんか見ると非常にふえてきている。そして、独禁法、景品表示法、両方合わすと七千件ぐらい来ていて、非常にふえている。

 それだけじゃなくて、これはある意味では受動的な情報の収集でありまして、何か問題があって苦情みたいな話が舞い込んだらそれで対応するということですが、本来、公正取引委員会というのは、一番下の、独禁法の四十五条四項に職権探知というものがあって、積極的に情報収集をしていくことが可能なわけですよね。ただ、恐らく、ここまで手が余り回っていない。だから、自分たちで能動的に、不当廉売が行われているんじゃないかとか、そういう調査までには至っていないというのが今の現状であります。

 私がこの問題に具体的に関心を持ったのは、地元の酒屋さんの不当廉売の問題がありまして、これは多分皆さんの地元でもよく聞く話だと思います。

 このときに、私は京都ですので近畿中国四国事務所に問い合わせると、結局、不当廉売について実際に担当している職員の数は四人ぐらいしかいない。これは大分前の話で正確じゃないかもしれませんが、四、五人ぐらいしかいない、不当廉売だけですね。

 酒屋さんだけじゃないですね、いろいろな不当廉売の問題があって、近畿、中国、四国、この全域にわたって、四、五人でどうやって本格的な情報収集能力を発揮できるのかというふうに愕然とした記憶があります。まさに、この資料にもありますように、「近畿中国四国事務所への相談件数」というのが独禁法、下請法、景品表示法とそれぞれありまして、十八年度は五千五百件ぐらいまでになっている。

 そうしたら、では体制の方はどうなっているかというと、その下の丸にございますが、実際、情報収集、例えば相談を受ける人とか、あるいはまれに行われているであろう職権探知をする方というのは、この体制の中の取引課と下請課、五人、六人。そして、その下に審査課が四つぐらいありますが、これが全部で二十人ぐらいしかいない。

 この審査課は、当然、情報収集だけじゃなくて、実際に問題の対象になるような案件について審査をしなければならないわけですから、実際十一人か十二人ぐらいで情報収集を近畿全体、四国全体、そして中国地方全体でやっているというのは、極めて不十分な体制だというふうに私は思っております。

 ですから、法律の改定も大いに結構だというふうに私は思いますが、現実に考えると、やはり人員の体制というものを強化しなければならないというふうに思っております。

 委員長、この認識は正しいんですか。それとも、もう十分この人員で円滑にやっていますよということなのか。その点、委員長の御意見を伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 御指摘のように、私ども、数も質もマンパワーを公正取引委員会において上げたいと思っていまして、そのためにはやはり定員の増加というのはどうしても必要だということで、大変厳しい定員の査定がずっと続いておりますが、その中では例外的に純増官庁ということでございまして、二十年度予算で、七百六十五という数字がありますが、三十人ぐらいふえまして、私どもの委員会、委員長以下五名おりますが、入れますとちょうど八百名になるということで、それなりの理解というか、相当の理解はいただいてここまで来ているなと思っております。

 御指摘のように、地方組織は大阪が一番大きいわけですが、それでも四十名いない。ただ、中国、四国はそれぞれ支所がございますから、四国と中国全部を今この四十名弱でやっているわけじゃなくて、支所が広島と高松にございますので、いわゆる近畿がこれでカバーしているということでございますが、それにしてもこの程度。

 ましてや名古屋以下はもっとちっちゃいわけでございますので、そういうところにはこれからも、特に不当廉売とか下請とか景品表示法のケースでローカルな問題はそれぞれの事務所で対応していくということが合理的でございますので、いろいろ制約はございますが努力をしていきたいと思っております。

北神委員 ぜひお願いしたいというふうに思います。

 というのは、まさに中小企業というのは、地方が今疲弊をしておりますので、こういった地方の部署の体制を強化していかなければならない。

 純増官庁という話がありましたが、大臣にお願いしたいのは、国務大臣として、内閣として、ただ行政改革といって全部一律に減らすとか、そういう発想じゃない、これから自由化の中で事後規制を担う官庁というのはむしろ人員をふやさないといけない、そういうところはやはりめり張りをつけていかなければならないというふうに思っておりますので、ぜひ大臣の方もそういう意識で、ただもう一律に、役人的に減らすのではなくて、めり張りをつけていただきたいというふうに強く要望をしたいというふうに思っております。

 これは、中小企業にとって、そして単に税金をばらまくとか、そういう話ではないので、一番大事な、これからの自由主義経済をちゃんと公正な透明なものにするために最も大事な部分だと思いますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 時間がもうございませんので、もっといろいろ公正取引委員会の竹島委員長にもお尋ねしたかったんですが、それを割愛させていただいて、大臣に最後、この前、官房長の松永官房長とお話をする機会がありまして、そのときに彼が、経済産業省というのは国家の国富を増強するのが使命なんだということを力強く言われていたのに私は非常に感銘を受けたわけであります。

 この前の農商工連携の法案とか、どうしても今、非常に細かい、それが無意味だとは全然言いませんが、そういう細かいものばかりが出てきていて、それはそれなりにやらなければならないことだというふうに思いますが、大きな経済産業戦略というものがなかなか我々も見えてこない、やはりそういうところが非常に大事だというふうに思っております。

 さっき申し上げたように、経済産業戦略といってもほとんど、きょうの議論だけでも国土交通省にもかかわりますし、住宅ローンの話を入れれば金融庁にもかかわる、そして公正取引委員会にもかかわってくる。こういったことも、しかしながらすべてやはり、経済産業を強化する、中小企業を強化する、最後には国家の国富というものを増強するという目的につながっていく話であります。

 私は、権限が少ないから大変ですねというふうに率直に官房長に申し上げたら、いや、権限が少ない方がいいんだ、いろいろなしがらみからちょっと離れた立場で、自由に物が見えて物事を決めることができるというふうに言われているんです。

 シンクタンク的な機能として、そういう自由な立場でいろいろ政策を練るのも結構ですが、政権与党というのは実行力が勝負だというふうに思いますので、そういうことだけじゃなくてもっと、今まで、特に知的財産のときにも私も提言をさせていただきましたが、経済産業戦略の全体、各省庁横断的な部署というものをつくっていかないといけない。たしか森総理のときに一回、産業戦略会議みたいなものをつくったというふうに思いますが、そういう観点もやはり必要なんじゃないか。

 そういうところも含めて、経済産業大臣として、これから大変景気が悪くなる中で、いよいよ本格的な経済産業戦略も、本当にもう手おくれだと思いますけれども、八〇年代から米国とかイギリスとかはずっとやってきて、彼らの成長の結果というのは、あのときにちゃんと国家としての戦略を策定して実行したからだというふうに思うんですが、その点についてぜひ大臣の決意のほどを伺いたいと思います。よろしくお願いします。

甘利国務大臣 私が大臣に就任をしましたときの就任のあいさつというか幹部職員に対する訓辞が、我が省こそ国富を増大する役所である、許認可権限はほとんど手放し、予算もそう多くはない、しかし、我々には知恵がある、ホモサピエンスの最高の力である知恵を結集して国富をふやすことができる役所であることに誇りを持とうというのが私の就任の演説でありました。

 この委員会でも、金が出ると知恵が引っ込むという安井委員からのお話がありまして、大変興味深く聞かせていただきました。ある省のOBの政治家の話を聞きますと、補助金を出しているところほどうまくいかないのが悩みですという話を聞いたこともあります。やはり、知恵を最大限発揮して、政策でもって国を豊かにしていく、そういうことを忘れてはならないと思いますし、それが我が省の責務だと思っております。

 国全体のグランドデザインは経済財政諮問会議が描かなければいけないわけでありますが、そこでも私自身も民間議員といろいろ議論を交わしまして、考え方を展開しているところであります。

 経済産業省のよって立つ使命をしっかりと認識しつつ、経済産業政策を推進していきたいと思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 全体の省庁横断的な部分、知恵を生かすという話がありました。知恵をやはり各省庁に、リーダーシップを発揮して動かさないといけないので経済財政諮問会議というお話がありましたが、これも経済産業省の設置法の第四条二号に書いてありますが、私、経済財政諮問会議、いろいろな不満もありまして、またそれについては議論をしたいというふうに思います。

 ぜひそこで最大限の指導力を発揮して、おっしゃった、国富を増大する仕事に邁進していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

東委員長 北神圭朗君の質疑は終わりました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 大臣、連日お疲れさまでございます。体調も御回復をしたようで。

 大臣、冒頭ちょっと、質問通告していないんですが、せんだって、内閣府が国民の意識調査をした結果が公表されました。その中で、この間議論をした食料の問題では、昨年は一三%の人が悪い方向に向かっているというふうにお答えになられ、ことしは四一%まで増大をしたと。きょう中心にお尋ねをする資源、エネルギーについても、昨年は一八・七%の方が悪い方向に向かっているというふうにお答えになっていますが、ことしは二五・四%というふうなことで、この資源、エネルギーは、過去では二割を上回ったことはほとんどないというふうなお答えになっています。

 その中で、この委員会でも繰り返しお尋ねをした、要するに国産で賄える資源、エネルギーをこれからどういうふうにふやしていくかというふうなことで、いろいろな部分で大臣が資源外交も含めて御努力されていることは十分承知をしておりますが、まず大臣、国民の皆さん方の意識調査、資源、エネルギーの分野でも悪い方向に向かっているというふうにお答えになられる方、お考えになっている方が非常にふえたということについてはどのような御評価をなさるでしょうか。

甘利国務大臣 ここ数年で、資源、エネルギーに対する市場の考え方というのが全く変わってきているんだと思います。つまり、以前は、資源、エネルギーは買ってあげるというスタンス、それが今や、売ってやるというふうに変わりつつある。そして、資源国の資源の国家管理化が随分進んできている、純粋市場原理で動かなくなりつつあるというところが、国民が不安を感じてきているところだと思っております。

 そこで、自主エネルギー比率を上げるということ、これは純粋自主エネルギーでいうと恐らく四%ぐらいしかない、原子力をそれに準ずる自主エネルギーとカウントしても一八%ぐらいでしょうか。

 でありますから、調達し得る自主エネルギーを拡大する、これは太陽光であり風力でありバイオ。私は、日本の技術からすると、太陽光とバイオというのは、これから力を入れていく余地はうんとあると思います。それから、原子力につきましては、まさに風雪の中、それに耐えて推進をしてきたということが今実っているわけでありますから、より安全、より環境負荷の少ない、より高性能なものを引き続き開発していくということが重要であるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、資源、エネルギーは国民生活、国民経済のよって立つ基盤でありますから、その安定供給を含めたいわゆる安全保障には万全を期していきたいと思っております。

後藤(斎)委員 ありがとうございます。

 この意識調査を私もじっくり読みましたのは初めてなんですが、国の政策への民意の反映度合いというのが、七五%の方が反映されていないということ。これは、この委員会の、例えば中小企業政策であったにしても、エネルギー政策であったにしても、もちろん、いろいろなパーツで個人個人の思いと全体の政策というのは合致しない点もあると思いますが、これはある意味では、私たち政治という立場にいる人間にとっても、いや、これはちょっとまずいなというふうに私自身はとらまえています。

 そんな中で、Jパワーの株の買い増しの中止勧告というのが十六日に出て、許諾をどうするかというのは二十五日に決めていくということのようであります。

 確かに、この外為法という法律の枠組みでまず判断をするというのを大臣も繰り返しお答えになってきましたし、この中で、国の安全保障であるとか公の秩序の妨げにならないようにすることであるとかという二十七条の部分に、この株の積み増しについては、これに当たってよくないということで答申が出て、大臣もいろいろなコメントをなさっています。

 これを考えるときに、私も、この判断はある意味では非常に正しい部分があると思うんですが、それでは、この問題だけに限らず、いずれ違った部分も、例えば違う外資の方がというのは当然想定をされますし、やはりそのときに、外国企業と国内企業、では国内ファンドはどうなのかといういろいろな問題もそれ以降指摘をされましたし、多分、議論の過程でもそういう部分は出たと思います。

 やはり、内外差別するという部分もベースに置きながら、この二十七条の部分がきちっとこれからも担保がされるかどうかというのは、いろいろ工夫をしていかなければいけないというふうにも思いますし、さらには、電気事業法もそういう観点から、以前も大臣に御指摘をさせていただいたように、どこまでを外の資本というか外国の方の資本にゆだねるのかどうかという議論も、やはり事業法としてもしていかなきゃいけない。

 さらには、新株の部分については、民営化以降、Jパワー自体も実際の株が、買う方も少ない。要すれば、私なんかは株について全然素人なんですが、普通、例えば、大臣はなかなか直接お買いになることができないかもしれませんが、国民の皆さん方が、この二十七条に規定してあるようなことをたくさんの方が思い、そしてJパワーに投資をし、海外に非常に積極的に電力開発の事業もなさっている会社ですから、そういうものを育てていこうと。

 そういうことを通じて国内の金融資産を、本当に〇・何%が入れば株というのは全体も底上げになるし、企業の価値という点でいえば、やはりこれだけメディアに露出をし、Jパワー自体も今株価が非常に安くなっているという話で、はっきり言って、これは個人の企業にとってもそんなにいいことではないと思うんですね。ですから、そういうことをもろもろ含めて、やはりこれからも、この勧告は勧告として、政府ももちろんそれを受け入れ、対応をしていくわけです、中止勧告を出したわけですけれども。

 でも、残された課題というものもあって、先ほど御指摘をされた、そういう中でこれからどういうエネルギーの安定供給、先ほど大臣がお答えになっていただいたようなことを達成するかという中で考えていただく必要があると思うんですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 電源開発という会社を外為法上の対象にしてあるということは、もう御承知のとおり、大間のプルサーマル原発をこれからつくる、それから四島をつなぐ送電幹線を持っている、あるいは周波数変更設備の三割を持っている、ですから電力の融通をする際に極めて重要な役割をする、あるいはプルトニウムを平和的に利用していく国策としての枠組みも組み込んである。

 そういうことに不安が生じるということは避けなくちゃならないわけでありますから、こうした会社は、ある種、ファンドからしてみると、ポートフォリオ的に投資対象とするというのはどんどんやられて結構なんだと思いますが、経営に参入をして中身を変えさせるということについては相当慎重にならなければならないんだと思います。

 ただ、御指摘のとおり、外為法というのは確かにおっしゃるように内外差別です。国内から同じことが出てきた場合、外為法としては防ぎ切れない仕組みはおっしゃるとおりです。

 では、なぜ外為法でその対象とし、個別の法律によらないんだと言われれば、国内の投資家はリスクを冒してまでそういう行動はとらないという前提に立っているわけですね。つまり、停電の危険がある、自分も送電を受けている会社であるのに、自分の会社に停電の被害が及ぶことを前提としてそうなるかもしれない危険を冒すはずはないという前提に立っているんだと思うんです。事実、そういう例は今まで一度も出てきていないんです。

 ただし、では仮にむちゃくちゃな国内の投資ファンドがあったらどうするんだというお問い合わせだと思うんですが、国内的には企業があらゆるケースを想定して必要なガードをちゃんとするというのが基本なんでありますけれども、そんなケースが出てくることに対して危険が高まってきたらどうなのと。そういう場合、立法措置が必要であるかどうかは、結論からいえば、幅広い見地から検討していくということでしか今は答弁ができないのであります。

 一応、外為法自身の構成が、国内投資からそういうことが発生する、つまり、自分にも被害が及ぶ、あるいはステークホルダー全体の評価が物すごく下がるということを犠牲にしてまでそういう行動には出ないということが前提になっているんだと思うんですね。ですから、内外差別になっているわけでありまして、それでもという場合はどうするんだということについては、これから幅広く検討をしていくということまでだと思っています。

後藤(斎)委員 大臣のおっしゃるとおりの部分だと思うんですが、大臣が以前言われたことは多分二つあって、海外からも幅広く投資をふやしていかなきゃいけないということで投資倍増計画というのもおつくりになっています。ですから、そこのバランスをどうするかということと、その根幹にあるエネルギーの安定供給をどうするか。例えば、フランスなんかは今でも政府株を電力会社に入れ込んで、ガードという表現は適切でないかもしれませんが、きちっとした対応をしている。ですから、いろいろな角度からまたぜひ御検討をしていただきたいというのを要望しておきたいと思います。

 空気と水と太陽の熱というのはだれでもが自由にという部分が、今は若干変化をしていますが、そういう中で、私は、ついせんだって、日本の太陽電池生産がトップを陥落という記事を見て非常に愕然としました。これはもちろん企業の問題とそして制度の問題、多分二つあるのかなということを感じました。

 我が国がこれから再生可能、要するに自国産でという部分では、この間、特許の話、知的財産の話もしましたが、日本が技術力を高め、競争力を持ちながら豊かな国になっていく、豊かな生活をするという部分では技術をもっと変革しなければいけないという、ある意味ではそれに向けての第一ステージか二ステージに入ったのかなという感じもするんです。

 太陽光発電の累積導入量ですけれども、ドイツに抜かれた。それも、四年前にドイツが固定価格の買い取り制を本格的に導入したという制度の部分が、ドイツの家庭や企業に、太陽光の発電をしても二十年間で投資をしたらペイするよ、十年間はランニングコストがかかるけれどもそれ以降は基本的にはプラスになっていくよというきちっとした周知をしながら導入したということがいろいろな報道にあります。

 これから確かにRPS法はあるんですが、あれは量だけの話であって、価格の部分に踏み込んでいない。そして、三月に出た長期エネルギーの需給見通しの中でも、「家庭の姿」というところで、これから二十年後の、例えば太陽光パネルの普及というものが現在の三十二万から十倍のストック、三百二十万まで増大をする、新築の住宅の七割に導入みたいな記述もございますが、全体の絵というものが、国内需要がどうなっていくよということがないわけですね。

 ですから、首位を陥落した会社もこれから何をしようとしているかと、原材料のシリコンの部分の手当てが十二分にいかなかったということも一方であるようでありましたし、それに向けては逆に技術開発をもっと強化しなきゃいけないというインセンティブが働いて、原料のコストを下げていく、なおかつ変換率も向上するということを、今必死に研究開発をしている。

 それが成功していけば、また国際市場というのは年率で四〇%ぐらいずつ拡大をしている太陽光パネルの市場ですから、そういう部分で、国内で導入をする量的なものが、これがどうなっていくのかというのが前提にあって、それをベースに海外にも攻めていくという考え方がないと、このまま首位陥落をし続ける分野では決してないというふうに思うので、その点について、これからどんな形でやられるのか、長官で結構ですから、お考えになっているか、御見解をお尋ねしたいと思います。

望月政府参考人 御指摘の太陽光発電についての、まず生産の部分と国内における市場の拡大の部分というのは、実はフェーズが分かれているんだろうと思います。

 御指摘ありましたように、首位陥落という話は、見出しとしてはそういうことなんでございますけれども、国別生産量でいえば日本はまだ世界一を維持している、まあ、肉薄されているわけですからそう威張っても始まらないんですけれども。

 問題は、最大の肉薄されている原因は、先生御指摘の特定の会社がシリコンの調達に大失敗をして、それで生産シェアが激減をしたということを聞いているわけでございまして、私は、技術という観点からあるいは競争力という観点から、日本の企業がリードしていたところがそれほど劣悪になっているというふうには思っておりませんし、当該企業も今大設備投資を推進中でございますから、恐らくは、やはり産業の中における主力としての日本企業の地位というのは、これからも重要な地位を占め続けるというふうに思っております。

 他方、先生御指摘の、先般私どもが出しました、日本における太陽光発電の可能性という観点から申しますと、確かに、そこで御提示いたしました、家庭においても十倍の規模になるということは、数字としては非常に意欲的な数字と受けとられていると思います。

 では、実際にどうやったらこういうふうになっていくのかということについては、我々は、現在の政策、つまり技術開発支援であるとかあるいはRPS法であるとか、そういうことだけでこれが簡単に達成できるというふうに思っているわけでもないわけでございますので、その点について、これから、まさにこの出した需要見通しをある意味で政策的に後押ししていくためにも、現在、資源エネルギー調査会の新エネルギー部会というのを頻繁に開いて、できるだけ速やかに政策の強化を図っていくということが必要だろうと思います。

 政策の中身は、やはりある種の規制とある種の振興策というものを今以上にそれぞれやっていく必要があるということを、とりあえず現時点では申し上げるということでございます。

後藤(斎)委員 今長官がお答えになっていただいたように、〇五年から住宅に対するソーラーの補助金がカットされた。これは工務店の方々からも非常に、昔はそういうのを設置してもよかったのになという部分がありますし、まずやはり何らかのインセンティブをスタートのときには働かせていかないと、先ほど長官がお答えいただいたように、ソーラーのパネルの値段が例えば半分とか十分の一になればもっと当然導入しやすいのが当たり前ですが、それにはまだ五年、十年、そのくらいのオーダーがかかる可能性もあるということで、ぜひその点については上手にバランスをとって普及が促進できるようにお願いをしたいと思います。

 大臣、もう一つ。大体河川はどこにでも流れていまして、日本はその中でも急峻だということで、ある意味では水力発電というのは非常に古典的なエネルギー源になっていたことがありました。特に大規模ダムということではなくて中小の河川、水力をどう生かすかというのは、太陽光と並んで水力発電が分散型のエネルギー源としてどういう形で確立がされていくかということに私は非常に関心を持っていますし、以前お尋ねをした中で、経産省の方で開発ポテンシャルのある中小規模水力の実態調査もしていただいて、大規模に比較して経済性が悪い立地点が多いということのようでありますが、それはある意味では当然のことかもしれません。

 そんな中で、大臣、例えば今NEDOとか、合併した市町村であれば合併特例債があるということで、上手にそういう基金を使うと、例えば二百五十キロワットくらいの能力の中小水力発電を設置する、設備土木工事が二億円かかるとしても、実際そのうちの六割くらいは地元の業者に土木、電気事業が落ち、一億二千万くらいの仕事が発生するわけです。

 今、国の設置が二分の一、裏負担を例えば地方交付税の措置をするという形にいろいろ計算をしていくと、例えば、この二百五十キロワットというのが、二十四時間三百六十五日基本的に水量が変わらなければ、二百十九万キロワットというのが一年間に発電でき、そして大体十円で例えば売却ないしは自治体の公共施設での電力支出のコスト削減ということで二千百九十万というお金が、設備投資の分では当然かかるんですが、要するに、それ以降はプラスの収入ないしはコスト減が図れる。

 やはり当然これは地球温暖化対策へのメリットということにも象徴的なスタイルとして、絵姿として出てきますし、全国の自治体でも、少しずつではありますが、そういうふうな導入をする自治体がふえています。それをやはり国全体として、こういう地球温暖化、そして今、自治体経営が非常に大変な中で、温暖化対策とうまく連動した形で対応を促進するという視点も私は必要ではないかなというふうに思うんですが、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 見解だけ申し上げます。

 日本には再生可能エネルギーという言葉と新エネルギーという言葉と二つありますが、海外では我々が新エネルギーと呼んでいるのは全部再生可能エネルギーに組み込まれていて、その再生可能エネルギーの主要部門を占めているのが水力発電であります。

 水力発電も、大規模なものについては、大きなダムをつくって云々ということで環境に与える影響等を懸念する声があって、なかなかそう幾つも、大規模に一斉にというぐあいにはいかない。そうすると、そういう影響が軽微な、あるいは全く与えないということで中小の水力が従来より以上に提案されているんだと思っております。

 また、規模が小さいですから数をたくさんつくらなければならないわけでありますが、コスト面を初めとした幾つかの課題があるわけであります。中小水力開発費補助金等によって、有望開発地点の調査から建設に至る支援を行っているわけでありますが、これから、小規模でいえば、農業用水を活用した発電とか箇所数は結構カウントできるんだと思いますし、それを、数をたくさん合わせるとそこそこばかにならない大きさになっていくという意味で、ある程度有望視されるのではないかと思っております。

後藤(斎)委員 時間もなくなってきたんですが、いわゆる国内に眠る都市鉱山ということが今よく言われています。ただし、これは、金にしてもレアメタルにしても、パソコンであるとか携帯電話を回収する、要するにリサイクルする仕組みをどうつくっていくかということが多分一番の大きな課題だと思っています。

 大臣は、冒頭も触れさせていただいたように、資源外交ということで、要するに、外から持ってくる原材料、いろいろなお話をなさって、契約をし、安定的に輸入するというルート、それと今あるものをどう有効に使うか。この都市鉱山、トータルすると家電では二十兆円の鉱山になるというふうなことの分析もされておりますし、それを本当に生かすか殺すかは、これからのまた制度づくりだというふうに思っています。

 携帯電話も、一台しか私は持っていませんが、今使っているものも含めれば、日本全体でも一億五千万台ある。ただし、回収率となると、二〇〇〇年に一千三百万台を超えていた回収率が、一昨年はその半分以下の六百七、八十万台だというお話も聞いています。

 大臣、資源有効利用促進法という法律が平成十二年に制定をされていると思うんですが、こういう分野に、例えばパソコンは指定省資源化製品であるとか指定再利用促進製品であるとかいう規定はございますが、携帯電話みたいなものというのは現時点では指定はされておりません。

 もちろんこれは消費者の皆さん方に御協力をいただかないと、完全に制度だけつくってもできない部分はあると思うんですが、やはり眠っているものを生かすということの啓発、これはまさにエネルギー、資源を国内でというそのベースに一番合致をする考え方だと私は思うんですが、その点について、最後に大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、日本はバージン資源でいうと資源小国でありますけれども、リサイクルという切り口でいいますと資源大国と言われているわけであります。

 今携帯電話が例に出ましたけれども、例えば携帯電話から金を取り出す。通常の金鉱山でいうと一トンの鉱石から取り出せる金は五グラム、しかし携帯電話は一トンから取り出せる金は四百グラムでありますから、大変な確率になるわけであります。

 ただ、御指摘のとおり、回収台数が減ってきております。セキュリティーの問題とか、あるいは自分の思い出が入っているとか、大事なメールが入っているからと。それは、技術的には取り出して保存することは幾らでも可能なわけでありますから、国民に、有効な資源だから再利用することが日本の政策運営の上で、あるいは経済運営の上で、国民生活の上で大事なんですよ、あるいは環境政策の上でも大事なんですよということを啓蒙していく必要があろうかと思います。

 これは、政策段階それから販売段階等でしっかり連携をしまして、回収運動を展開し、リサイクルという意識を広く国民全般に意識づけていくことが大事だというふうに思っております。

後藤(斎)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

東委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 一般質疑の機会をいただきまして、委員長、理事の皆様に感謝を申し上げます。

 すべての政策、意思決定というものに共通していることだと思うんですけれども、調査なくして政策なしであろうかと思うんですね。正確な現状の分析をきちんとして、そして加えて過去の反省に立脚してこそ、正しい政策そして判断ができるんだろう、こう思います。

 失われた十年、十数年と言われてきたわけですが、そのきっかけとなったバブル生成から崩壊にかけたいわゆる経済失政の原因は何だというふうに、せんじ詰めて言えば、その最大の要因は、私は当時の政策当局が、例えば銀行の不良債権の実情について、また経済の実態について判断を見誤った、このことにあるんだろうと思うんですね。そういう思いから本日、一般質疑の機会をいただきましたので、まず最初に、あらゆる経済政策、産業政策の基礎となる経済分析のあり方、その信頼性、そしてその体制について政府の考え方を伺っていきたい、こう思います。

 まず最初にお伺いしたいのは、我が国の経済の体温だとか実態を把握する代表的な指標であります四半期国内総生産、GDPの速報値、いわゆる通称QEと呼ばれているものについてでございます。

 このQEの数値というのは、発表された途端に新聞、テレビにも大変大きく報道されますし、速報は世界じゅうを駆け回ります。そして、市場にも大変大きな影響を与えます。内外の市場関係者、政策決定者、政府関係者も含めて、最も注目をする経済指標であります。

 ところが、このQE、最初に発表される速報値というのがあるわけですが、その速報値と数カ月後に公表される修正値というものが著しく異なるケースが少なくありません。

 委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますが、一枚目の資料に、最近のいわゆる四半期GDP、QEにおける速報値と、いわゆる直近値といいますか修正値の乖離状況というのを表につけさせていただいております。名目GDP、太線で丸をつけさせていただいておりますけれども、例えばこれは二〇〇七年の第二・四半期のQEであります。ちょっと字が小さくて恐縮ですが、一次速報値は一・一%増でありますけれども、三月十二日に公表された速報値では、発表当時は一・一%増だったのに、確定値ではないですが、直近値ではマイナス二・〇%になっているんですね。第三・四半期で見ても、速報値で一・四%増だったのに、この三月に公表されたものでは〇・二%の増、こういうふうになっております。

 大変大きな、これは誤差の範囲と言うには違うのではないか。プラスになっていたものが、例えば第二・四半期ではマイナスに名目GDPでなっているんですね。私、名目のことをあえて言うのは、名目というのが最も実感に近いものですからあえてこの数字を申し上げると、プラスがマイナスになっている、こういうことであります。

 なぜこのような事態になるのか、まず内閣府、お答えいただけますか。

大脇政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のQEの公表に当たりましては、その時点で得られる可能な限り新しくまた正確な基礎統計を反映させているということが一点、それから季節調整につきましても、毎期公表するごとに掛け直しているということが二点目でございます。この結果、過去に公表した四半期の計数につきましても改定をさせていただいております。

 先生御指摘の、平成十九年四―六月期の名目GDP、季節調整済みの前期比年率でございますけれども、当初の公表値、これは十九年八月に公表されましたが、そのときはプラス一・一であったものが、直近時点、ことしの三月の公表時におきましてはマイナス二・〇%というふうになっております。

 これにつきましては、十九年四―六月期の二次QE、これは十九年の九月に公表いたしておりますけれども、ここの時点におきまして、重要な基礎統計でございます四半期別の法人企業統計調査というものを取り込んで推計をし直しましたところ、名目の成長率がプラスからマイナスの〇・七%になりまして、その後また、直近のQEにおきましては季節調整を掛け直したということで、さらにマイナスの〇・七からマイナスの二・〇%に改定をしたということでございます。

近藤(洋)委員 ですから、季節調整をしてこうなったということでしょうけれども、それにしても、ではもう一度重ねて伺います。

 プラスのものがマイナスになるというのは、調整であるとか、また例えば法人企業統計が加わったとか、そういうシステムの通常の説明では説明がつかないんじゃないか、こう思うんですね。

 事実、部長、これは海外のメディアからも、メディアというか例えばフィナンシャル・タイムズであるとかそういった主要経済紙からは、日本の政府統計は信用できない、こういう指摘を受けているわけです。内外から批判を受けているわけですね。これは政府の、まさに内閣府、旧経済企画庁の精鋭が集まってつくった計算式に基づいて出している数値ですね。

 かつ、一枚めくっていただきますと、一次QEと二次QE、資料を見ていただきますと、確かに大変多くの統計を使っております。これだけの統計を使っており、さらに加えて、法人企業統計調査であるとか、新しく加わるもの、二次QEで使うものといいますか修正値でさらに加えるものというので足させていただいていますけれども、そうはいっても、一次QEでこれだけ多くの政府が調べた統計を使っておるわけですね。

 何でこういう状態になるのか。やはり、可能な限り政府としてはこの乖離を防ぐように、少なくとも一次速報値で正確を期すような状況に努力すべきだと思いますけれども、もう一度お答えいただけますか、部長。

大脇政府参考人 お答えいたします。

 QEの推計に当たりましては、平成十四年に新たな推計手法を導入するなど、常に改善に努めております。

 この結果、新手法導入後の期間で見ますと、計数の改定幅というものは、平均的には主要国と遜色のない水準になっているというふうに認識をいたしております。

 御指摘の海外メディア等の御批判につきましても十分承知をいたしておりまして、統計の信頼性を高めるべく、今後とも基礎統計のさらなる充実を当局としても働きかけつつ、みずから推計手法の改善に努めるとともに、改定要因の分析の実施、公表などにつきまして情報発信に努めてまいりたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 そういう御答弁でいいとは思うんですが、ただ、私はもっと真剣にこの問題を見るべきだと思うんですよ。政府の信頼性の問題だと思うんですね。私は、内閣府の役人の方々が能力が不足しているということを言うつもりはありません。一生懸命やられているんでしょう。

 次のページを見ていただきますと、主要国における国民経済統計計算担当職員数が出ておりますが、各国、例えばカナダで二百八十人、フランスで百十五名、イギリスで二百四十名、日本は五十二名しかいないんですね。先ほど公正取引委員会の人員の話もありましたけれども、よくこの人員でやっていると、それはそれで日々の活動については敬意を払いますが、しかし、だからといって、精度が低いという言いわけには全くならない。かつ、この人員の中で頑張っているというのであれば、やはり統計そのものに問題があるんじゃないか、統計のとり方に問題があるんじゃないか、こういう論点にもなるわけです。

 これは、経済産業省も他人の話ではないですね。なぜならば、経済産業省の統計も大変多く使われています。鉱工業生産指数を初め多くの経済産業省の統計も使われています。農林水産省の統計も使われています。日銀の統計も使われています。いわゆる政府の統計の能力が問われているんだろう、こう思うんですね。

 例えば、ここでちょっとあえて問題にしたいのは家計調査なんですね。国内総生産の約六割を占める消費、この六割を占める部分について、代表的な調査は家計調査だ、こういう話でありました。その家計調査が一体どういうものなんだろうかということで総務省に聞いてみたらば、サンプル数はわずか八千である、こういうわけですね。GDPの六割を占めるものをわずか八千のサンプル数で、果たして日本の消費動向がどこまでわかるんだろうかとも思うわけです。

 そうだとすると、この統計のとり方、ありようというのはもう一度、もちろん、総務省の方々も現場では一生懸命、何とかサンプルを集めようということで収集しているのはよくわかりますけれども、根本的に質の向上というのを、例えば今例としては、六割を占める家計、消費を計算するのにわずかサンプル八千のものに頼っている。もちろん、ほかにもいろいろな計算式を使っている、ほかの補完の数値も使っているという説明は内閣府から伺いましたけれども、しかし主たるものはわずか八千のサンプルだというのだとすると、それは統計の精度を上げるために相当真剣に政府として努力をすべきだろう、こう思うんです。

 これだけの各種の統計があり、各省ばらばらにそれぞれやっているけれども、その連携をとって質を高めることを大至急すべきだと思いますけれども、政府はいかがでしょうか。これは責任は内閣府でしょうか。

中島政府参考人 お答えいたします。

 まさに今おっしゃったように、日本の今の統計というのは、個々の省庁では一生懸命統計をとってそれなりに頑張っているわけですけれども、全体として見たときに、QEにしろ何にしろ、信頼の置けるいい数値がなかなか出てこなかったりする場合がある、そこが最大の問題でありまして、統計という国民にとって必要欠くべからざる情報というものを正確に提供するという任務を担うべく、昨年の五月に統計法が全面改正されまして、公的統計整備の司令塔機関、つまりばらばらになっているものを全体として見て、体系的に整備していくという使命を帯びた統計委員会が、内閣府に昨年の十月に設置されたということでございます。

 現在、統計委員会におきまして、公的統計整備の総合的な調整を担当する総務大臣から諮問を受けまして、公的統計の整備に関する基本計画をつくるということで、統計委員会でその作成作業にかかっています。この審議の中で、先生が御質問されたGDP統計のよりよい方向へ向けての改善ということも、加工統計と一次統計との相互連関性を高めるという観点から今集中的な審議を行っておりまして、ことしの年末を目途に答申をするということで鋭意努力をしているということでございます。

近藤(洋)委員 やろうということはいいことなんですけれども、年末に答申をして、これで実行ということですよね。だから、非常に遅いんだと思うんですね。既に、この問題は前からいろいろ、QEが本当にどこまで正しいんだという統計の問題が指摘をされていたわけですし、これからまた質問しますけれども、今まさに経済実態がどうなっているんだということをきちんと分析する必要がある。その中において、今経済の潮目が変わろうとしているときに、本当に日本の経済がどうなっているんだというときに、基礎統計が、足元がふらついていると、これはどうなんだ、こういうことだと思うんですね。冒頭言ったように、経済実態をきちんと把握することが政策の大原則なんです。ここは本当に国家としてのインフラだと思いますので、大至急やっていただきたいということを申し上げたいと思います。

 あわせて、QEが経済の体温を調べるわけですけれども、もう一つ大事な経済指標というか経済分析が月例経済報告であります。

 この月例経済報告、資料の三枚目の下段のところに昨年九月以来の月例経済報告の基調判断の文言を記載しております。昨年九月は「景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、回復している。」と回復ということを言ってことしの一月まで、十二月にはずっと続いているから「このところ」が取れて、「一部に弱さがみられるものの、回復している。」ということで、一月、二月、こういうことでありました。

 いわゆる月例文学と言われる文学的表現で、ちょっとの言葉で政府がどういう景気認識かということを示す文言なわけですけれども、その文言が二月に変わりました。「景気は、このところ回復が緩やかになっている。」こういうことであります。これをもって政府の景気判断は二月に一年三カ月ぶりにマイナスに修正した、こういうことでありますね。三月はさらに、「景気回復は、このところ足踏み状態にある。」と。

 「回復が緩やか」から「足踏み状態」、どっちがどうなのかよくわかりませんが、内閣府に聞くと、これはさらに弱くしたのです、こういう解説であります。解説を聞かないとなかなか判断がわからないんですが、二回連続での下方修正、こういうことでありました。景気回復は足踏み状態、こういうことですね。よくわからないんですが、いずれにしろ、二カ月連続下方修正。

 そこで、甘利大臣にお伺いしたいんですが、当経済産業委員会では、少なくとも昨年の夏の選挙以来、昨年九月、十月の臨時国会でも、例えば建築基準法の拙速なる施行の問題もあり、地域の経済も大変危機的状況にあるんじゃないか、中小企業も大変問題があるんじゃないか、またサブプライム問題もまだ、七月、八月、出てきたところであります。原油高の話もありました。こういうところをとらえて、果たして景気は大丈夫なんだろうかという議論をずっとさせていただきました。甘利大臣も、大変危機感を持ちながらの御答弁だったかと思います。

 そういう中での認識に立って、大臣、月例経済報告は、そうはいっても、私たちが大丈夫か大丈夫かと議論していた九、十、十一、十二と全く同じ判断で、ようやく二月に下方修正しているわけですが、二月に下方修正したという判断、二月に弱くなった、潮目が変わったという判断は、私は個人的にはちょっと遅いんじゃないか、こう思うんですね。甘利経済産業大臣は、閣僚として、政治家としての皮膚感覚として、二月の下方修正というのはちょっと遅いんじゃないかという感覚をお持ちになりませんか。いかがですか。

甘利国務大臣 我々政治家は、数字にあらわれるデータと、選挙区に帰ったりあるいは地域に出向いていって受ける肌感覚との乖離にいつも悩んでいるわけであります。我々の直観が本当に正しいのか、しかし数字は客観的なものでありますから、そこの乖離というのはどこにあるのかというのをいつも思うわけであります。

 経済産業大臣としては、より正確なデータを収集する、大臣としての外へ向けての発言は、それに沿っていかなければならないというふうに思っております。

 一方で、消費というとマインドとつきますから、余り深刻な話だけ出ていくと、深刻な話がさらに深刻な事態を呼び込むという部分がありますから、表現がなかなか難しいんだと思います。

 でありますから、先ほどの月例の基調判断なんというのは、これは専門家が読むと、ああ、こういう意味をしているなと。しかし、一般の人が読むと、どこが変わったのかよくわからぬという、非常にマニアックな表現になっているわけであります。

 私自身は、消費がGDPの六割でありますから、これをもっと子細に分析して、それにピンポイントの対策が打てるようにすべきだというのは、ずっと前から言ってきたところなんです。消費形態でも、今でいえば、ネットを通じた消費はどうなっているか。恐らく、その辺の正確なデータの把握というのは余りないんじゃないかと思うんですけれども、シェアに見合ってその分析は詳細にすべきだ、そして景気対策をするならば、そこにピンポイントで届くようなきめ細かな対策をすべきだというのは、ずっと前から主張してきておりまして、今後の課題というのは、消費の分析をもっときめ細かにやるというのが課題の一つではないかと思っております。

近藤(洋)委員 大臣おっしゃるとおりだと思うんですね。そこの消費の分析は重要なので、先ほどの統計の議論の中でも、少なくとも全体の統計を見直すのは一年なりなんなりかかるかもしれぬけれども、そういった消費動向がわかるような手だては、まさに経済産業省は現場を持っているわけですから、大臣、ぜひ、こういう手法があるんじゃないかということを指示されて、精度を上げていただきたい、こう思うわけです。

 ただ、私は、常に景気は気からだからという部分もあるし、余り感情で言ってはいかぬというのもわかりますし、大概もうかっている人は声を出して言わないわけであります、困っている人は大きい声で言うけれども、こういうのもよくわかります。ただ、そういったことを踏まえた上でも、この一ページ目のQEをごらんいただくとわかるんですが、既に第二・四半期で、政府は、速報値ベースで年率一・一%増だと言ったけれども、直近値では実はマイナス二%だった、こういう数字が出ているわけですね。実態的にも第二・四半期で失速しているわけですね。これが明らかになった。これは数字ですね、全く数字なんです。正しい数字なわけです。第三・四半期でも一・四%年率増だと速報値で発表したけれども、実際は〇・二になっているんですね。だから、月例の判断はやはり遅いんじゃないかというのは、この四半期調査でもわかるような気がするんですよ。

 私は、どうもこの月例経済報告というのは、何か基本的には、下方修正するのが常に遅いんじゃないかという感覚でずっと見ております。

 なぜかといいますと、そこに何か、政治的な意図とまでは言いませんが、政府内のある部局の、例えば財政当局の意図というものも感じるんですよ。やはり、悪い、悪い、こういうのを余り素直に言ってしまうと、では景気対策を打たなきゃいかぬ。そうすると財政出動だ、そうすると困るな、こういう部局が政府の中にあるわけですね。例えば財政部局であります。例えばですね。そういうものは困る。

 だから、これはやはり、本当に冷静な分析が月例で行われているんだろうかというのを常に感じる。今回の局面もそうでありますが、どうでしょうか。過去においてでも結構です。現在そして過去において、経済分析、月例経済報告について、財政当局によって判断を修正されたことがあったかと私は思いますが、内閣府、いかがですか。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 毎月の月例経済報告におきましては、我が国の景気の現状につきまして、各種の統計あるいは企業や関係省庁など関係者からのヒアリングの結果などをもとに、これを分析いたしまして、そして検討した上で総合的な判断を行っているところでございます。

 その際、私どもとして特に注意したいと思っておりますのは、先生御指摘のように、景気判断におくれがないようにということでございまして、そういうことがないように注意を払っているところでございます。

 そうした景気判断の検討過程におきましては、関係省庁から、データ等に基づきまして、さまざまな景気に対する見方が示されることもございます。しかし、こうした見方も、実体経済の動きをより的確に判断する上で有用だ、あるいは参考になるというものであるとすれば、それは参考にいたしますけれども、私どもは、中立的な客観的な立場から景気判断を行っているということでございます。

近藤(洋)委員 あったんですよね、私はそう思うんですよ。あったと御答弁できないのはわかりますけれども、私は、過去においてそういう部分もあったんではないかと思います。

 もちろん、意見としてと、それぞれ経済官庁がそれぞれの知見の中で意見を言うという形だったとしても、今この表現はいかがかという局面も、現在はどうかは私はわかりません、過去においてはそういう部分もあったのではないか。ある意味では、旧経済企画庁が判断するときに、やはり財務省の意向も色濃く反映されたときがあったと私は推察されます。なぜなら、経済企画庁の官房長は大蔵省から来られていたこともあったわけで、そういう人的な支配も受けていたときがあったわけですから。

 それだからといってどうというわけではありませんし、もちろんその中での、官庁エコノミストとしての旧経企庁の方々が必死の闘いをされてきたという歴史、その闘いの歴史だったんではないか、私はこういうふうに思います。

 月例経済報告以上に、意図的につくられたとしか思えない政府の経済分析がございます。それは、資料の四にある政府経済見通しであります。

 資料の四をごらんいただきたいんですが、平成九年度から二十年度までの名目成長率の経済見通しが左の欄、右側には実績であります。これを見ていただきますと、ほとんど、ごく一部を除いて、政府見通しを実績値の方が下回っているわけですね。例えば平成十年などは、二・四%経済見通しを立てておきながら、実績にはマイナス一・九%になっております。プラスがマイナスに転じていますね。平成十一年度は経済見通し〇・五%プラス成長がマイナス〇・七%に実績はなっております。ほとんどが下回り、かつプラスがマイナスになっている年もございます。

 ちょっときつい言い方かもしれませんけれども、それなりにエコノミストの方々が作成にかかわってつくられたもので、あえて、なぜこのような悲惨な結果になるのか、内閣府、お答えいただけますか。

藤岡政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、名目値の経済見通しでございます。

 最近数年間を見ますと、例えば十七年度一・三が実績一・一、また十八年度の当初の見通しが二・〇で一・六ということで、十九年度はまだ実績は出ておりません。実績見込みベースで、先生おっしゃいますように、二・〇を〇・八に改定させていただいているという状況でございます。

 この直近の理由でございますが、特に直近につきましては、基本的に経済見通しは大きな三つの前提がございます。原油価格、為替レート、それから世界経済の動向。これはやはり、我が国を見通しするためには与件となりますので、それについては、見通しのところできちっと事前にデータを公表させていただいておりますが、この見通し、それぞれ、〇・二、〇・四、十七年度、十八年度下がってまいりましたのは、まさに原油価格の動向が非常に高騰した時期で、原油価格が高騰した結果、その価格の上昇分をなかなか国内に転嫁できなかった、逆に言えば所得が海外に流れてしまったという状況がございます。そういう状況が主で、基本的に名目値が下がってきた。

 そのほかの理由といたしましては、例えば十七年度の場合ですと、円安が極めて進行してございます。海外の物価高、同じくそれを国内の価格に転嫁できない、そうすると所得が海外に流れてしまう、名目値が下がるという状況でございます。そういう状況の中で、十七年度、十八年度に何が起こったかと申しますと、実質値は当初の見通しよりいずれも高いものに推移してございます。二%台を達成いたしてございます。

 そういう経済現象が起こってございまして、申し上げたいのは、やはり名目値と申しますのは、海外のそういう原油価格あるいは為替レートの要因によって大きく左右されるということでございます。

 ちなみに十九年度でございますが、これは二・二から〇・八ということでございます。これは、先ほど先生おっしゃいましたように、改正建築基準法の影響が非常に大きくございまして、大体〇・六ぐらいございますが、それに加えまして、やはり原油価格のさらなる高騰という状況がございます。

 ただ、それに加えまして、最近ございますのは、私ども、これは反省しなきゃいけないんですが、企業の好調な状況が賃金に十分反映してきていないんじゃないかという実体経済。これは、私ども率直に言って、想像よりも反映していないなという状況がございますが、いずれにしても、申し上げたいのは、こういう名目値の動向と申しますのは、やはり海外の状況等に非常に大きく左右されますので、その点、幅を持って御理解いただければというふうに思っております。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 確かに、それなりの理由の御説明はされましたけれども、それにしても、これだけ見通しを実態が下回っているというのは、これは要するにこういうことなんじゃないですか。政府の意気込みを示されている数値が経済見通しだと言った方がまだわかりやすいと思うんですよ、ある意味で。本当にこれは、経済分析に基づいて出しているものではなくて、政府の意気込み数値だと。意気込み数値、願望数値だというふうにするならばわかりますよ。だから下回るんですよ。

 そしてもっと言うと、これは意気込みだから、もしこれを実態に合わせたら、その分財政措置をしなきゃいけない。財政当局が納得しないわけですよ。だから、年末にこの数字を確定させて、まず名目はこうで、この意気込みなんですよという。

 これは、政府経済見通しじゃなくて、政府意気込み見通しに変えられたらどうかと思うんですけれども、どうですか。そういう側面があるんじゃないんですか。

藤岡政府参考人 委員おっしゃいますように、まさに政府経済見通しは、政府の、二十年度ですと二十年度の政策を前提に見通しておるものでございますので、そういうものとしてデータを見通しているという性格はございます。

近藤(洋)委員 要は、税収見込みを立てたいがゆえのつくられた数字なんじゃないんですかということを聞いているんですよね。そういう側面もあるということでよろしいのか。

藤岡政府参考人 我々担当部局といたしましては、まさに政府の政策努力といいますか、予算も前提といたしまして、その中でどういう経済の姿が描けるかということを国民に正確にお示しするというポジションで、この見通しをさせていただいておるということでございます。

近藤(洋)委員 甘利大臣、では伺いますけれども、現在のこの時点で、二十年度の見通しは二・一%と言っていますが、今二・一%、これは可能なんですか。大田経済財政担当大臣も一月の所信表明演説で、大変な危機感だという話をされているんですよ。三つの危機のこともおっしゃられている。これは政府の方針として話されている。にもかかわらず、この二・一%は達成可能なのかどうか、こういうことです。これだとするならば、正確を期すのであれば、修正をしなきゃいけないんじゃないでしょうか。甘利大臣、二・一%、これは閣僚として可能とお思いでございますか。

甘利国務大臣 非常に厳しいと思います。

近藤(洋)委員 率直に御答弁いただき、ありがとうございました。そういうことだと思うんです。それが真摯な対応だと思うんですね。

 私、一連の経済分析のことに随分時間を使わせていただいて質問させていただいたんですが、QEにしろ月例にしろ政府経済見通しにしろ、これはまさに、戦前の軍部の大本営発表なんだろうと思うんですよ。連戦連勝だと伝える。局地戦では連戦です、勝ちました、勝ちました、勝ちました、こういうふうに発表するわけです。成長しています、成長していますと。だけれども実際には、負けている、負けている、負けている。そして、甘い願望を言うわけですね、大本営は。必ず勝てる、局地戦でも勝っているし、必ず勝てると言って、実際には大敗している、こういうことなんですよね。これは非常に大事なんです。ある意味で経済戦争ですから。

 そういう中で、冒頭申し上げたように、結局不良債権問題だって同じだったわけですよ。大した不良債権じゃないよとずっと財務省は発表していたんです、一九九〇年代の前半ですね。銀行の不良債権などは十数兆円しかありませんという発表でありました。すぐ終わりますという話でした。気がついたら、二十兆円、三十兆円とどんどんどんどん膨れ上がりました。いや、もう終わった、もう終わった、もう終わったといいながら十何年間続いてきた。同じことをやってきているわけですね。

 これは非常に大事な話なんです。経済分析というのはやはり基本であって、こういうことで願望をずっと続けていくということは、私は、結果として誤るんだろう。このことはやはり歴史に学ぶべきなんだろう、こうも思うんですね。

 大臣、非常に厳しいという御認識に立つのであれば、経済産業省というのは、今、経済を冠に抱く唯一の役所ですよ。経済企画庁はなくなったんですから。内閣府になってしまったんですから。経済を冠に抱く唯一の役所だとするならば、まさにこのマクロ経済について、この大本営発表は改めろ、そして必要あらば修正をするんだというようなことも含めて、経済政策を組みかえるんだというところに立脚しないといけないんじゃないか。そういう働きかけをぜひすべきじゃないか。修正を働きかけて、経済成長見通しを修正して、そしてそのための政策は何なんだ、税収が減るんだったらば、ではどうやるんだということを真摯に政府として出すということも必要なんじゃないか、こう思うんですが、甘利大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 当初見通していた下振れ要因、これはある程度は見越したと思うんでありますが、例えば原油がここまで高くなるとか、サブプライムがこれほどの規模で世界経済の下振れリスクを拡大させるとか、あるいは円高がここまで進んでくる、想定の範囲を恐らく超えている部分があるんだと思います。

 そこで、しっかりと経済成長、立てた目標に向かって経済運営をしていくために対策を適宜適切に打っていくというのは我が省の仕事の一つでありますが、同時に、財政再建と経済成長を両立させるという課題も抱えているわけであります。

 かつて、需要追加型の景気対策が一時的にはききましたけれども、結局抜本策にはならなかった。それは、もちろん、今もおっしゃった、不良債権問題をもとからきちっと絶つということができていないのに追加をしていったから、一時的な効果しかなかったということがあろうと思います。

 構造的に経済成長路線に持っていくために何が必要かということで、規制改革も大胆に行われてきたし、いろいろな特区構想も進められたし、それから省庁間をまたいでの施策も進めてきたわけであります。

 財政追加型でないという縛りの中で知恵を出しているものでありますから、なかなか即効性というものがないのでありますけれども、構造改革型で中長期にきいてくるような策をできるだけ前倒しして取り組んでいきたいと思います。

 総理からの指示を受けては、例えば中小企業の経営体質を生産性向上型に変えていくような、ITの抜本的な導入を初めとする施策を極力前倒しでやっていくということで今は対応しているところであります。

近藤(洋)委員 今、潮目が変わりつつある局面なんだろうとも思うんですね。日銀総裁になられた白川日銀総裁はまさに、一九二九年というか一九三〇年来の世界恐慌の局面だという御発言も危機感を持っています。これは世界的な話ですから。日本はまだそこの傷は浅いわけでありますけれども、世界的にはそういう大変な状況になっているという中での経済分析、非常に大事なんだろうと思うんですね。

 ローマのことわざで、大抵の人は見たいと思う事実しか見ない、そうだと思います。卑近な例ですが、私も最近ちょっと体重がふえていますから、体重計に乗りたくないわけです。やはり、見たいと思う事実しか見ない。それはもう当然ですけれども、やはり、経済が非常に複雑になってグローバル化しているからこそ、きちんとした経済分析、冷静な分析というのは必要ですし、私は、きょう旧経済企画庁、内閣府の幹部の方にも来ていただきましたけれども、ぜひ頑張っていただきたいと思います、旧経企庁のエコノミストの方々も。官庁エコノミストというのは重要だと思います。これまで、日本のさまざまなエコノミストを見てもやはり、宮崎さんにしろ歴代エコノミスト、立派なエコノミストというのは官庁エコノミストだったと思うんです。

 ですから、大臣、今政府の中で本当に立派な官庁エコノミストが育っているとは思いますけれども、そういう集団を、先ほども言ったように、分析部隊ですけれども人員的にも少ないわけで、やはり分析をきちっとできる人からエコノミストを育てるということも大事でしょうし、そういったインフラを整えながら、そして潮目が変わったということをきちっと堂々と、あえて言います、財政当局に抗して言えるようなエコノミスト集団をつくるということも、これは経済担当大臣としてのお仕事だ、こう思いますので、ちょっと加えさせていただきたいと思います。

 さて、話題をかえて、電源開発、Jパワーに対する外資系投資ファンドの株式取得問題についてお伺いしたいと思います。

 額賀財務大臣と甘利経済産業大臣は、ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンドに対して、株式の買い増しについての中止を勧告いたしました。同僚議員も質問をしておりますが、この点、甘利大臣、政府が、七百六十件を超える案件の中でこれは初めての発動、唯一の発動であった、こういうことでありますけれども、公の秩序を守るという言葉の意味も含めて、この判断の理由を改めて簡潔に御説明いただけますか。

甘利国務大臣 御指摘のように、外為法の対象案件は七百六十三件ございました。そのうちの七百六十二件は三十日以内に許可をしておりますし、そのうちの九五%は二週間以内に許可を出しております。七百六十三分の一件、極めて特殊な事例だということであります。でありますから、日本が閉鎖的だという一部メディアの指摘は、全く当たらないわけであります。

 中止勧告をした理由というのは、大きく分けて三点ございます。

 まず第一点が、大間の原子力発電所の建設により、この施設が我が国の核燃料サイクルのかなめとなり、それを担う電力であるからであります。再処理されるプルトニウムのうちの四分の一、二五%を大間の原発が引き受けるわけであります。世界じゅうからプルトニウムの平和利用ということが厳しく指摘をされているわけでありまして、非核保有国でこうした再処理を認められている唯一の国であるということは、できたものをちゃんと処理するプランを持っているわけであります。でありますから、原子力の平和利用という世界の安全について我々がコミットしていることを保証してくれる施設でありますから、これが期待どおりに稼働できないというようなことになったら、これは国の安全上、世界の安全上の問題と指摘をされるわけであります。

 あわせて、同社が保有をします送変電設備の運営を通じて全国の電力ネットワークを維持する役割があります。日本の四島、北海道、本州、四国、九州を結ぶ幹線網を唯一電源開発が持っております。そして、昨年を思い出していただければ、まさに電力の需給が極めてタイトになってきまして、我が省も暑い日にすべて空調を切りまして、三十度を超える中で仕事をしました。そこまでやって何とかつじつまを合わせたわけでありますが、その際に融通をいろいろしてもらいました。各電力会社からの融通、それから周波数帯が違うところも、施設をフル稼働して西から東への融通もしたわけであります。そういうところの三〇%もここが持っているわけでありますから、それに万が一にも支障を来すようなことがあったら大変なわけであります。

 そして、全国の電源の一部を担う卸電気事業者としての役割があります。電源開発は、経営努力によってできるだけ低廉な料金で電力を卸す、それが我々全国民の消費電力を低廉に抑えることに貢献をしているわけでありますから、そういったもろもろの重要な機能を担っているわけであります。これが万が一にも支障を来すようなことになれば、まさに公共の安全、秩序にかかわる大問題になってしまうわけであります。

 TCIに仮に株式の追加取得を認めた、そうすると、政府がお墨つきを与えるということになるわけであります。そうしますと、株主権の行使を通じまして、大間の原発の建設、運営への悪影響だとか、あるいは将来的な基幹設備に対する設備投資、それから修繕費、これが削減される心配はないか、発行会社の財務体質の毀損を生じるおそれがないか、そういうおそれがあると判断をしたから中止勧告を行ったものであります。

近藤(洋)委員 丁寧に御答弁いただき、ありがとうございます。

 この問題は大変大きく報道されておるわけですが、過去においてもどうなるんだということで注目を集めてきたわけでありますけれども、大臣、ちょっと確認なんですが、経済財政諮問会議で民間委員からこの件について具体的に発言をされ、そしてそれに対して議論をされたことは事実としてございますか。

甘利国務大臣 この件は、答弁をぜひ控えさせていただきたいと思います。

近藤(洋)委員 議事録を私も見たんですが、答弁を控えたいということは、推察をしたいと思いますが、議事録では載っていないですね。議事要旨にはこの件は、私も見ましたけれども、載っておりません。

 これは政府委員でも結構ですが、なぜあえてこういうふうな形になったんですか。お答えいただけますか。

藤岡政府参考人 お答え申し上げます。

 経済財政諮問会議でございますが、政策決定プロセスの透明性を高めることは重要だということにかんがみまして、諮問会議におきましては、会議終了後直ちに記者会見で審議の内容等を大田大臣の方から現在公表しておりますし、また、議事の様子を詳細に記載した議事要旨を速やかに公表することなどにより、会議の透明性の確保に努めているところでございます。

 個別の議論については、既に公表されている以上のことについてはお答えしかねますが、一般論といたしまして、議事要旨の作成に当たりまして、短期間で公表されますと、例えば議員の間におきます自由な意見交換が妨げられたり、また市場に混乱が生じて国民生活に悪影響を生じるなど、我が国の利益に支障を及ぼすおそれがある内容については非公開扱いとすることといたしてございます。

近藤(洋)委員 大臣、私はこういうことだと思うんですよ。国家安全保障にかかわる話であるのだから短期間での公表は差し控えたという、きちんとした御説明をした上でお認めになられたらいいかと思うんです。

 ポイントは、こういう大事な、関心を集めているテーマですから、それは民間委員の方がどなたか発言をされることはあるでしょう、意見を求めることもあるでしょう。しかし、それに対して議事を公開できないというのはこういう理由で、意見はあったけれども、まさに国家安全保障上の問題で判断をしている、まさに国家機密の大事な話でありますから公開はできない、それであれば、私は十分説明がつく話なんだろうと思うんですね。ぜひ、そういう対応を今後していただきたいと思います。大臣、あえてこれは答弁を求めません。ぜひ、そういう対応が正しいと思います。

 私は、今回政府の下された判断は正しい、大臣の御説明のとおりだと思います。そのとおりなんです。公の秩序で規制は必要だ、そして、TCIという会社については残念ながらその任に当たらずという判断をされた、それ以上でもそれ以下でもない、こういうことなんだろうと思うんですね。

 ですから、正しい判断をされたんですから、その途中においても、これは国家安全保障上の問題なんだから、事実としてはあったけれども公開はできないというのは国家として当然なんだろう、こう思いますので、ぜひきちんとした正しい対応をしていただきたい、こう思います。

 なお、私が思うのは、全く大臣のおっしゃるとおりでありまして、基本的には、各電力の結節点の会社であり、かつ、やはり核燃料サイクル、原子力という点が最大のポイントなんだろう、こう思うわけですね。これについて、いや日本の市場の開放性云々といろいろな議論をされる方もいらっしゃいます。私の身近な近親者でも、何でだめなんだという方がいます。しかし、私は、これは明らかに政府の判断が正しい、こう思うわけですが、大臣、問題なのは、そもそもJパワーを完全民営化する必要があったのか、こういうことなんですね。この政策判断がいかがだったのか、こういうことだと思うんです。

 そもそもJパワーは、株式会社化して、資本市場から少なくともこれまではほとんど資金を調達していないんです。公開したときはともかくとして、その後、市場から調達していないんですよ。一体何のために株式会社にしたのか。今のところメリットは見えないわけですね。何かメリットがあったのか、具体的にお答えいただきたいんです。

甘利国務大臣 それだけ大事な会社ならなぜ民営化したというのは、確かに各方面から私にいただく御意見であります。

 当時、私も党でこの民営化論議にかなりかかわってきたのでありますけれども、行革論議の一環として特殊法人改革の議論が非常に吹き荒れていました。要するに、国の資源を投入するんだから効率経営をいかにするかというのが課題だという中で、民営化論議が先ほどの行革の一環として動いたわけであります。

 それで、民営化をしていく際に、電源開発は随分と経営効率を上げる努力をしたのは事実でありました。党に社長が来られたときに、もっとスリム化した体制でこれを維持できるようにしなきゃならないということで、たしか二千人くらいは人員削減をしたのではないかと思います。その結果、卸電力料金というものを随分下げることができた。これは、国民にそっくり還元をされているわけであります。

 それから、電気事業者は株をそれぞれみんな持っている、これも放出せよというプレッシャーがかかったわけであります。私自身はそのときに、当時今の立場ではありませんので、本当にそこまでして安定株主対策は大丈夫なんだろうかという思いが少しあったのは事実であります。

 ただ、既存電力会社からの支配もある程度解いてあげて経営の自由度を上げるという議論になりましたので、保有株をどんどん放出していった、いわゆる持ち合いをなくしていったということになっていった。でありますから、電源開発としてより自由に電気事業者と対に話ができるということには資するようになったんだと思います。

 ただ、こういう事態を想定して、個々の民間企業がしているような防衛策について、より子細に検討するということができないままに民営化論議だけが先行してきたというところはあるかもわかりません。

近藤(洋)委員 大臣、私は、御答弁では、少なくとも民営化した企業のガバナンスというか経営の規律においては一定の効果はあったけれども、ただ資本市場という意味ではほとんど余り効果はなかった、少なくとも現時点ではなかった、こういうことだったと思うんですよね。これから大間の発電等々での資本調達というのはあるかもしれませんが、本当に民営化する必要、少なくとも上場をする必要があったのかという点については、私は、いかがだったか、こう思うんですね。

 また、大臣も一部お認めになられたように、電力会社九各社が持っていた株の放出であります。

 資料の六に「特殊法人等の整理合理化について」という平成九年の閣議決定の資料を出させていただいています。この四に下線を引いていますが、電源開発株式会社について、五年間程度の条件を置いた後に民営化する、その場合、九電力による株式の売却等の措置を講ずる、こう書いていますね。これは、もう信じられない、ある意味で大変なことを書いているなと私は思うんですね。

 民間企業の持っている株を閣議決定で放出させる。これは一体何でできるんだ。行政指導なのか。いわゆる行政指導なんでしょうね。決定権は関係ないわけですけれども、閣議決定で電力会社にやらせたわけですね。電力会社がぜひ売りたいですから閣議に書いてくださいということでは絶対にないわけでありますから、これは行政指導でさせたということだと思うんです。

 大臣も、その当時としては自分としてもいろいろな考えが、果たしてこれでよかったのかどうかという部分の御答弁がございました。私は、この判断は結果的にやはり間違いだったんだろうと総括すべきだと思うんですね。

 当時、電力九社の株を政府が三分の二、電力各社に三分の一持たせていたのを全部売却させた背景には、当時のエネルギー政策の根っこに電力再編の考え方があったんだろうと私は思うんです。

 発電部門、送電部門をある意味で分離しようという考え方も議論されていた。これは事実だと思うんですね。その発電会社、送電会社に九電力を再編し直す、その中において、電源開発をまさに発電会社として育てることで発送電分離の一つの旗幟としよう、そういう思いもあったんだろうと思うんですね。それは、事実としてそういう議論もあって、そういう背景の中で九電力の株式を売らせたんじゃないか、こう私は思います。

 大臣、どうですか。当時のそういう考え方は間違っていたんだ、その考え方はやはり間違っていて、今そういう考えは全くなくて、かつ、あえて言えば、原子力発電所を持つ企業に対しては政府は一定の関与をするものなんだということを明確に宣言することが、日本の透明性という意味でも正しいのだと私は思うんです。

 そういうことをはっきりさせることが、過去の政策は間違っていて、間違っていてというか、そういうことも考えて売却をさせたんだけれども、今はやはり、あれから十年たって政策の軸足が変わったんだ、環境も変わって軸足が変わったんだ、ややもすると、原子力については今やもっと、当時よりも国がかかわるようにならなければいけない状況になっているんだという宣言をされれば、今回のTCIに対する措置についてもっと明確になるんだろうと私は思うんです。

 原子力というのはそういうものなんだ、政府はそういう立場で今いるんだということを宣言することが日本の透明性なんだろう、こう思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 アンバンドリング論が盛んなときに、私は、発送配電を分離したら原子力立地はまず進まないということを強く主張した一人であります。相当長いリードタイムを持って、回収に時間がかかり、地元の理解を得て、いろいろなことを組み合わせていかなければならないし、需要が見込めないと設備投資は大きなものができないのであります。それをぶつ切りにしてしまったら、短期回収型の投資に全部行ってしまって、原発をやろうという人なんか出ませんよということを大分強く言いました。そういう点で、アンバンドリング政策に疑問を強く呈した一人であります。

 今回の事案が出まして、原子力、それから公益事業に頼る電力というものが外為法の対象下にあるということは、さらに広く知れ渡ったと思います。ただし、先ほど来御質問が出ていますように、外為法は内外差別でありますから、国内からそういう動きが出たらということには答えられないわけでありまして、国内から出ないということを前提になされているわけであります。

 そこで、外為法対象事業者は、その目的を達成するための対策、安定株主対策等は、現状下においては自身の判断で適宜適切にやっていただきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 時間が来たのでやめますが、この件は大事なので、また機会があれば質問させていただきたいと思います。

 大臣も先ほど同僚議員の質問に答えられましたが、私は、電気事業法の世界の中で何ができるのか、外為法の世界でどう整理するのかというようなことも含めて、やはり早急に検討を進めるべきなんだろう、こう思います。

 私は、開国論者なんですよ。何も、海外の投資を要らないなんというつもりは全くなくて、開国論者ですし、世界じゅうから質のよいお金を国に集めなきゃいけない、こう思っています。円高だからチャンスだ、こう前回も質問させていただきました。ただ、無責任な開国論者ではありませんで、やはり国家というものが存在する以上、資本の論理だけですべてが許されるわけでもないわけでありまして、いたずらに資本の論理だけを振りかざすのは、これは開国論者ではなくて無政府主義者だろう、こういうふうに思うわけであります。

 したがって、大事なのは、投資家にとってどこまでが許されて、どこまでができるんだということを政府がきちんと国家の意思として示すことであって、それだけなんだろう、ここが大事なんだろうと思いますので、今回のことを機に、エネルギー、電力についてはこういう線引きなんですよ、その上でぜひ、いいお金はいらっしゃい、こういうことなんだろうと思います。

 TCIという会社も、報道によると含み損百二十八億円を抱えているようですから、なかなか引くに引けないでしょうから、いろいろなことをやってこられるでしょう。ぜひそういう意味では、毅然と国家としての主張を展開していただきたいことを申し上げて、質問を終えたいと思います。

東委員長 これにて近藤洋介君の質疑は終わりました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは、地球温暖化対策の問題を伺っていきたいと思います。

 IPCCの第四次評価報告書、AR4や、スターン報告、気候変動の経済学、これらに基づいて、大体、ヨーロッパ諸国では気候変動に対する共通した理念があるように思います。それは、気候システムの温暖化の原因は、人為的起源によるCO2排出量の増加によることは疑う余地がないということと、それから、世界的規模での対策は今すぐ必要だ、今対策をとることによるコストの方が対策をとらずに将来必要となるコストより少ないと。

 本当に総排出量規制をしないと、やはり人類社会とか経済産業、自然環境、生態系にとっても取り返しのつかない不可逆的な危機を迎えるという認識は共通してあるというところが大事な点だと思っているんです。

 そこで、大臣に伺っておきたいことは、工業化以前から二度C以内の上昇に抑えるためにCO2の総排出量を削減する、そのために本気で対策をとらねばならないという、そういうお考えをお持ちか、そういう立場に立っておられるか、そこを伺います。

甘利国務大臣 地球温暖化防止問題は待ったなしの世界的課題だと思っております。

 日本ももちろんその努力をすること、それから、世界じゅうの主要国に仲間に入ってもらうための努力をすること、両方とも大事だと思っております。

吉井委員 環境省の方に伺っておきます。

 COP13で、AR4のシナリオの中で、シナリオは幾つかあるわけですが、バリでは、ローエストシナリオズという表現で、大体二度C以内という厳しいものを基本に考えていたのではないかと思いますが、伺います。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 バリでの京都議定書に関します特別作業委員会の結論文書に、多分、御関連の部分の記述が盛り込まれている、こう思っております。

 この結論文書の中では、特別作業部会としては、IPCCの第四次評価報告書の中で最も低い水準を達成するためには、附属書1国、これは先進国でございますけれども、全体として排出を各自可能な手段で二〇二〇年までに九〇年比で二五から四〇%という幅で削減することが必要であることを認識したという記述が盛り込まれているわけでございます。

 したがいまして、特に二度Cという温度に触れた記述が盛り込まれているわけではございませんし、この表現につきましても、最も低い水準を達成するためには二五から四〇%という幅での削減が必要だということを認識したというのがバリにおけます事実関係でございます。

吉井委員 ですから、その幅というのは、基本にあるのは、工業化以前に比較して二度C以内に抑えようというその発想の中からシナリオを描いて、それでこういう表現になっているわけです。

 では、逆に、環境省に伺っておきたいのは、日本はその他の高いシナリオの方をとれと主張したものではないと思いますが、どうですか。

谷津政府参考人 お答えいたします。

 日本といたしましては、先ほど御説明申し上げましたような特別作業部会の合意文書にコンセンサスとして参加しているところでございます。

吉井委員 甘利大臣に伺っておきたいのは、COP13の今の結論文書にかかわるところ。IPCCが決定した最低の安定化レベルを達成するために、二〇二〇年の排出量を九〇年比で二五から四〇%削減する必要があると示していることを認識した、認知したというところ、この表現について、日本政府として反対したものではない、賛成をしたものだというふうに理解していいですね。

甘利国務大臣 御指摘の今の数字は、IPCCの報告書における一定のシナリオに基づいた場合の先進国全体としての削減する必要がある幅について言及をしたものの一つであるわけであります。

 先進国の各国の目標については、国連における将来枠組みの交渉プロセスの中で議論されていくものでありまして、今後、交渉を通じて目標が設定されていくものと考えております。

 これは、たしか、京都議定書に基づくアドホック・ワーキンググループ、AWG、いわゆる議定書AWGですね。京都議定書に参加した国だけの方でして、もう一つ、条約AWGという、加盟国すべて、つまりここが大事で、新しい枠組みをつくる際には、一部の国だけじゃなくて、先進国でいえばアメリカ、途上国でいえば中国、インド、主要排出国が入っている枠組みで合意をしていくということが大事なことでありまして、ここでの、少人数グループの方の議定書AWGについて、二〇二〇年までに二五パーから四〇パー削減する必要があると指摘していることを認識する、レコグナイズとされているわけでありまして、要するに、先進各国がIPCCの特定シナリオに沿って削減することを合意としたものではないということは、各国の認識になっていると思います。

 努力をしないとかするとかいう議論ではなくて、事実関係だけを申し上げるとそういうことでありまして、日本としては、より多くの国が参加している条約AWG、つまり、加盟国すべての参加によるもので質のいいレベルの目標を設定していくことに努力をすべきだと思っております。

吉井委員 日本は両方とも参加しているわけですよ。おっしゃったように、議定書AWGにはアメリカは入っていないわけですね。条約の方の分ですから、アメリカが入っているのは。

 それで、しかし日本政府としては議定書AWGのこのものについては、これは賛成していますねということの確認をしているんです。賛成するということは、同時に、いや、片方だけ責任を負うが、こっちは賛成したけれども責任をとらないよという意味じゃないですから。賛成するということは、賛成した各国は国際的に共同して取り組んでいくということについても責任を持って対応するということが大事ですから、この文書は賛成していますねということをお聞きしたんです。

甘利国務大臣 ですから、先ほど申し上げていますように、そういう指摘があったと認識しているということであります。つまり、京都議定書のグループでいろいろなことをどんどん先決めしてしまって、残りのチームが振り払われちゃったら何の意味もないんですね。

 大事なことは、主要排出国が全部参加して、共通だが差異ある枠組みというのを決めて、全員参加で努力をしなければ、京都議定書グループというのは排出量の三割しかないし、将来は二割のシェアしか占めない。二割のものが一切出さない、息もしないとしたとしたって、ほかが何もしなければ、地球全体としては全く意味をなさないということをしっかり認識する必要がある。ですから、議定書グループは新しい枠組みがうまくいくように最大の努力をする必要があるんだと思います。

吉井委員 みんなが参加して努力しよう、議定書の方ですね。それはそれでいいんですよ。別に私はそれにけちをつけているんじゃないんですよ。それは大事なんです。

 同時に、先進各国は先進各国として、お互いに認識したことについては、それを進めるために努力をしていくということは、国際的な決定文書に賛成をした以上、それは責任を持って取り組むというのは、だから、先進国としての取り組みをうんと前進させるということが大事だという考え方が重要だということを申し上げておきたいと思うんです。

 次に、幕張でG20、ここでは大臣も発言しておられますし、またバンコクでのCOP・AWGで日本は主張してきましたが、セクター別アプローチですね。

 私は、原単位での効率化という話はよくお聞きするんですが、その場合、排出総量を幾らに規制をするのか、それに合わせて原単位でどれだけ効率化を図るのか。

 原単位をよくすること自体は、これは当然の話ですから別にそうだと思うんですが、原単位は下げたんだけれども全体として実は経済量がふえたとか、それで総量がふえてしまったら何もなりません。ですから、総量を抑制する、それに合わせたセクター別原単位を幾らにするか。これが出てこないと、世界の削減目標を達成するということはなかなか大変なことでありますから、その点で、大臣、排出量の規制の方についてどういうお考えかを伺いたいと思います。

甘利国務大臣 総量目標と原単位改善との関係、これは、全くイコールでないにしても、アプローチとして極めて有効だと思うんですね。

 日本として、総量目標はどうで、そのアプローチはどうする、これは、いろいろ世界が参加しやすい環境をつくっていく中で一つのタイミングがあろうかと思います。

 セクトラルアプローチの優秀性というのは、現にある最高の技術を投入するとこれくらいの効率改善につながる、その原単位改善掛ける生産量で数字がぴたっと全部出てくるわけでありますから。

 そうしますと、最新の原単位改善技術を基準とすると、ベンチマーキングにすると、削減余地がどれくらいあるかということも全部はかれる。そこの最新の技術を投入したものに近づけていくのに、ここはどういう技術を投入すればここまで近づける、ここはこういうところの技術でそこまで行けるということが全部はかれるわけなんですね。

 ですから、ベンチマークについて言えば、利用可能な最新の省エネ技術というのを基準にすべきだというふうに私自身は思っていますし、これはベスト・アベーラブル・テクノロジーという表現でしょうか、極めてわかりやすいやり方であります。

 いずれにしても、公平公正な基準点というのをつくらないと、だれが本当に努力しているのか、だれが努力をしたふりをしているのか、これがわからなくなってしまうわけでありますから、日本のセクトラルアプローチというのは、いろいろなアプローチ手法に対しても有力な基準づくりのツールになり得るというふうに思っています。

吉井委員 国際会議でもこの資料を示して説明しておられるんですけれども、要するに、国内の排出総量とセクター別アプローチの原単位の数値目標を考えて、この数値目標というのは、この間、大島さんへの答弁の中では、セクター別に平均値をとって、それを大体基準値にしてということですけれども、それを積み上げていったときに国内でもオーバーしてしまったらこれは解決できないし、ここにもありますように、国内の削減量と、国際的にこれをトータルしてきちんとこれだけ削減しましょうというのに合わなかったら、実はこれは、この間御説明を伺っておりましたら、レクを受けていましたら、要するに原単位をどうするかということなんですね。

 そうすると、やはりセクター別にここまでに抑えなきゃいけないよというキャップがあって、それに見合う原単位目標というものを決めていかなかったら、上を見ないで積み上げだけやっておったらはみ出してしまってということで、結局CO2の排出量抑制につながってきませんから、それをどのようなやり方でやっていこうとお考えなのか、大臣のお考えを伺いたいと思うんです。

甘利国務大臣 まだこれから、日本の方式で世界統一されたわけではありませんので、幾つかのアプローチの中に、セクトラルアプローチというのは、どのアプローチに関してもこれは基準づくりとして使えるものだと私自身が思っているんですね。

 この間の答弁でセクター別に平均値を求めてという言い方をしましたけれども、これは後で考えてみたら余り正確ではないなと。今の技術で到達できる効率改善がやはり基準点になるんですね。その基準点からして、この国のこの産業部門、鉄鋼なら鉄鋼部門は原単位がこれくらいだ、今の最新の技術を用いるとここまで下げられる、その幅が削減ポテンシャルである。それを実現するための技術はこれとこれとこれで、まあ移転するような資金スキームを組まれると思いますが、それでいって積み上げていく。

 国別総量目標というのをいつ、どういう形で設定するかというのは、これはタイミングの問題とか、いろいろ各国の思惑もあるし、どういうアプローチで到達できるかという手法も開発していかなきゃならない中で設定されていくと思います。

 仮に総量目標が決まったとすると、そのアプローチでどこまでいけるか、削減できるかというのは、総量から、そういうアプローチを使っていけば、削減ポテンシャルがあるから、ポテンシャルは積み上げられるわけですね。残った部分について、ではどういう手法を使うか。それは、いろいろこれから手法の、ツールの工夫というのは出てくると思います。

 途上国からしてみれば、CDMというのは一体どこへ行っちゃうのさという話がありますし、あるいは、ではキャップ・アンド・トレードというのはどう組み合わせるんだという議論も当然EUからは出てくるでありましょうし、そのキャップ・アンド・トレードだって、基準点をきちっと決めていくためには、セクトラルアプローチのベスト・アベーラブル・テクノロジーというかプラクティスというのか、それが基準点として入ってくるでしょうし、これはいろいろなところに使える物差しになっていくというふうに私は期待しているんですけれども。

吉井委員 ここでちょっと政府参考人に伺っておきたいんですが、IEAの二〇〇五年のセクター別CO2排出量の国際比較というのを届けていただきました。この表を、一番問題になる電力、鉄鋼を中心に見ていきますと、二〇〇五年度に、いただいた九カ国について見ると、電力によるCO2排出量の少ない方からいうと、ブラジル、フランス、カナダ、イギリス、ドイツ。ドイツが二億九千三百三十万トンですが、日本はその次の六番目で、ドイツより大体一億トン多くて、三億八千九百万トン。あとは、インドに、特に極端な中国、アメリカ。アメリカが一番たくさん出しているわけです。

 鉄鋼の面で見たら、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ、ブラジル、アメリカ、インドときて、インドが七番目ですが、七千四百四十万トン、二酸化炭素換算ですね。日本は八番目で、七千六百四十万トン。残るは中国だけ。

 九カ国の中で日本は二酸化炭素の排出量は極端に多いんですね、もともとセクター別に見て。この事実を政府参考人に確認しておきたいと思います。

石田政府参考人 ただいま先生御指摘になられましたこの数字について、まさにIEAの統計でそのようにセクター別に出ております。

吉井委員 ですから、セクター別アプローチにしても、日本は、電力、鉄鋼、特にこのセクターは国際的に見て物すごく排出量が多いわけです。

 だから、地球環境、本当に温暖化を抑えていこう、工業化以前に比べて基本的には大体二度C以内に抑える、そういうことを考えたときに、特にやはりこのセクター別にもキャップを、総量をどこまで抑えるのかということを考えて、それに見合う技術をどう開発していくのか。

 例えば鉄鋼でいったら、生産量を下げるのか、それとも生産システムを変えていくのか。炭素の貯留とか、あるいは炭素の固定化技術の開発に取り組んでいくのか、あるいは鉄鋼にかわる素材というものの開発に取り組んでいくのかとか、やはり、まずセクター別の総量を、ここまで下げますという総量を決めて、これに見合う原単位、それを実現するために何をやっていくのかという発想に立たなかったら、これはなかなか二酸化炭素の排出抑制ということにはつながってこないと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

甘利国務大臣 量は、たくさん生産するところは出るに決まっているのであって、要は、原単位なんですね、一トンの粗鋼を生産するのにどのくらいCO2が出るか。

 このIEAの報告も正確さを欠いている点があって、例えば、コークスを自前で生産するのに出る排出量も加えているところと、それはどこかよそでやってもらってでき上がったものだけ持ってきて、CO2はコークス分についてはゼロカウントでやるところとを一緒に比較されたら、これはたまらないことなんですね。しかも、日本の鉄鋼の場合は廃熱利用で電力を起こしていますから、それまでカウントをちゃんとしないと正確な数値にならないわけなんですね。そういうのをきちっとやりますと、日本はきょうの時点でも世界一の効率であります。

 生産を物理的に縮めるというようなことをすれば、雇用は失われてしまうわけでありますし、経済は失速するわけでありますから、経済と環境を両立させなきゃならない。ですから、技術革新をいかに投入していくかということが課題になります。日本でいえば、コークスを還元剤に使わない、水素を使って、これで還元して水にしちゃう、圧倒的に下げるという技術もこれから開発をしていきますので。

吉井委員 大事なことは、私も別に生産量を下げろと言っているんじゃないんですよ、要するに、排出量を下げる、それに見合った原単位というものを、目標を決めて、それに見合った技術の開発をどうするのか、それをやらなかったらうまくいきませんよということを言っているんです。

 次に、電力の方で見ておきますと、電力の排出量というのは、電事連のデータによりますと、九〇年度で二億七千五百万トンでしたけれども、二〇〇六年度で三億六千五百万トン、九〇年比でいいますと三二・七%、概略三三%ふえているんですね。

 二〇〇七年度は幾らでしたかと言ったら、二〇〇七年度の炭素換算はまだ出ないということで、火力とか水力とかこの表を持ってこられたから、二〇〇六年度も同じものをと言ったら、二〇〇六年度はまだ来ないんですけれども。

 ただ、二〇〇六年度のものについては、発電電力量、それから三分の一は原発だということでもともとずっと言ってきておられますから、それでカウントすると約三千億キロワット時なんですが、二〇〇七年度の原子力の方は約二千五百億キロワット時ということですから、五百億キロワット時落ちているわけですね。

 これは何かというと、柏崎刈羽や志賀原発の停止によるものですから、仮にそれに見合うものとして、全部、石炭火力になっていないということはわかるんですが、資料を持ってきてくれないからカウントのしようがないものですから。

 それで、原発が仮に火力に置きかわったとすると、二〇〇六年度に比べて七年度はCO2で約一一%増加したということになってくるんですが、この点について、既に、経産省の方でCO2が前年に比べて幾らふえたのか、何%ふえたのかわかっておられたらお聞かせいただきたいし、基本的には、柏崎刈羽原発の七基すべてや志賀原発の停止などの代替に石炭火力を使ったことによるCO2の増加だと私は思うんですが、伺っておきます。

西山政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇七年度の温室効果ガスの排出量につきましては、現在集計中でございます。いましばらく時間がかかります。

 他方、二〇〇七年度における電力分野の二酸化炭素排出量、これは増加すると私ども見ておりまして、その要因といたしましては、電力需要の増加、第二に、渇水による水力発電の発電電力量の減少、第三に、おっしゃいました新潟県中越沖地震の影響を受けた柏崎刈羽原発が全台で運転停止しているということによります原子力設備利用率の低下でございます。

吉井委員 いや、原子力がどんと五百億キロワット時ほど下がっているわけですが、一番大きいんですよ。それは原発の方でとまったからなんです。

 次に、原発は地球環境に優しいとか、資源エネルギー庁の方はよく広告も出しておられて、ANAに乗ると、二面、二ページにわたる広告を出したりとかしておられるわけですが、それだけクリーンでというお話なんですが、そこで、資源エネルギー庁の方に伺っておきたいのは、チェルノブイリでの死亡者と、それから現在も白血病に苦しんでいる方の数、放射能汚染地域の面積というのはどれぐらいなのか、伺っておきます。

薦田政府参考人 お答えいたします。

 チェルノブイリの原子力発電所の事故というのは一九八六年にあったわけでございます。

 まず、この死者数でございます。IAEAの方では正確な数は特定をできないと言っておりますけれども、この上で、二〇〇五年九月にIAEAにおいて開催されましたチェルノブイリ・フォーラム国際会議の報告書におきましては、この緊急対応時で亡くなった方、これが二十八名であるとか、あるいは、さらにこの方が、一九八七年から二〇〇四年までに十九名が死亡した、あるいは、そのほか、甲状腺のがんでお子様が亡くなっておられまして、これまで、二〇〇六年四月に公表されました概要におきますと、これが約十五名に達するといったようなことが記載されておるところでございます。

 また、甲状腺のがんにつきましては、現在のところ、この二〇〇五年九月の報告書によりますと、約四千名以上の方が甲状腺がんにかかったということが記載をされているところでございます。

 また、汚染をされているところということでございますけれども、現在、許可なく立ち入ることのできない制限地域というものが設けられておりまして、IAEAからの情報によりますと、発生後から現在まで、おおむね半径三十キロの範囲が制限地域とされているというふうに承知をしております。

吉井委員 チェルノブイリの結果というのは、今の御報告にもあったように、IAEAとかWHOなどの八つの国連機関とロシア政府などの専門家によるフォーラムで、今おっしゃったように、がんになって亡くなった人の予測値で三千九百四十人とか、今四千人を超えるとおっしゃいましたか、確認された死者で五十六人とか、それから、汚染地域は一千キロ離れたスウェーデンにも及び、汚染地域と指定された百三十七の汚染面積は二万三千平方キロメートルとか、今日も非常に深刻な事態がある。

 ですから、原発が事故でとまってしまうと、火力に代替するとふえてしまうという、そういう問題もあるんですが、甘利大臣、最後に伺っておきたいのは、日本はG7とかCOP13やCOP・AWGなどで地球温暖化対策として原発推進というのをかなり主張してきておりますが、それは、原発推進が温暖化対策だというのは決定文書に入ったのかどうか伺います。(甘利国務大臣「何の文書ですか」と呼ぶ)G7とかCOP13での決定文書とか、あるいはCOPアドホック・ワーキンググループで集まったときのコミュニケとか、そういう中で、いろいろなところで原発推進を温暖化対策と言ってこられたけれども、それが決定文書に入っていますかということです。

西山政府参考人 ちょっと私も全貌をわかっておりませんけれども、必ずしも原子力についてそういう決定文書に入ったということは認識しておりません。

吉井委員 時間が参りましたから、また改めて省エネ法などのときに議論をしたいと思いますが、政府がよく言ってきた温暖化対策のために原発推進というのは、これは事故をやると物すごい二酸化炭素の排出量を伴うものになるし、クリーンだということについては、放射能汚染の問題を考えたときに、そういうクリーンなものではないということを重ねて申し上げまして、時間が参りましたので、終わります。

東委員長 これにて吉井英勝君の質疑は終わりました。

     ――――◇―――――

東委員長 次に、内閣提出、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案及び揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。甘利経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案

 揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

甘利国務大臣 まず、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 我が国は、京都議定書の目標を確実に達成するとともに、中長期的にも温室効果ガスの排出量を削減することが求められております。温室効果ガスの約九割はエネルギー起源の二酸化炭素であり、一層の地球温暖化対策の推進のため、省エネルギー対策の強化が求められております。

 また、エネルギー資源の大部分を海外に依存している我が国において、最近のエネルギー価格の国際的な高騰に対応するため、国民経済全体としてさらなる燃料資源の有効利用を図り、国民経済の負担増を緩和することが求められております。

 特に近年のエネルギー消費傾向を見ますと、業務、家庭といった民生部門においてエネルギー使用量が大幅に増加しております。こうした状況を踏まえ、これまで重点的に省エネルギーを進めてきた産業部門の工場だけでなく、民生部門においてもエネルギーの使用の合理化を一層進める必要があることから、本法律案を提案した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、工場、事業場に係る省エネルギー対策の強化であります。これまで一定規模以上の大規模な工場に対しエネルギー管理の義務を課していましたが、改正により事業者単位のエネルギー管理を義務づけることとしております。これにより、業務部門に多く見られる中小規模の事業場を数多く設置する事業者を新たに義務の対象に加えるとともに、産業部門を含め、事業者の経営判断に基づく効果的な省エネルギーの取り組みを推進してまいります。

 第二に、住宅・建築物に係る省エネルギー対策の強化であります。これまで大規模な住宅・建築物の建築主等に対し省エネルギー措置の届け出義務を課していましたが、改正により措置が著しく不十分である場合の所管行政庁による指示、公表に加え命令を導入するとともに、一定の中小規模の住宅・建築物についても届け出義務の対象とすることとしております。また、一定戸数以上の住宅を建築する事業者が住宅の省エネルギー性能の向上を相当程度行う必要がある場合に国土交通大臣が勧告、公表、命令を行う等の措置を新たに定めるとともに、販売事業者等に対して建築物の省エネルギー性能の表示等を促す規定を整備することとしております。

 続きまして、揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 揮発油、軽油、灯油といった国民生活との関連が深い燃料については、消費者保護等の観点から、揮発油等品質確保法に基づき、適正な品質規格を定め、生産業者等に対し、販売または消費しようとする揮発油等が規格に適合していることの確認を義務づけるなどにより、国民の安全、安心の確保を図ってきたところであります。

 近年、地球温暖化の防止に向けて、二酸化炭素の排出抑制に寄与すると考えられるバイオ燃料の導入促進が重要な課題となっており、各地において石油製品にバイオ燃料を混和する取り組みが進められようとしております。しかしながら、それらが不適切に行われた場合、かえって大気環境を悪化させるおそれがあるほか、自動車の部材に悪影響を及ぼし、ひいては火災事故を引き起こすおそれもあります。

 このため、引き続き、燃料に係る国民の安全、安心を確保し、バイオ燃料の利用拡大の基盤を確立すべく、揮発油等の石油製品にバイオ燃料を混和する場合についても、揮発油等品質確保法による規制の対象とするための措置を講ずる必要があることから、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、揮発油や軽油にバイオ燃料を混和する事業者に対し、適切な混和を行い得る設備の有無や違反歴の有無等を要件とした登録を義務づけることとしております。

 第二に、こうした事業者に対し、生産した揮発油や軽油を販売または消費しようとするときに、その品質が規格に適合していることを確認する義務を課すこととしております。

 以上が、両法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

東委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

東委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る二十三日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十一分散会


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