衆議院

メインへスキップ



第4号 平成21年3月27日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十一年三月二十七日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 岸田 文雄君

   理事 櫻田 義孝君 理事 中野 正志君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      あかま二郎君    近江屋信広君

      岡部 英明君    川条 志嘉君

      木挽  司君    高村 正彦君

      近藤三津枝君    清水清一朗君

      新藤 義孝君    平  将明君

      谷畑  孝君    土井 真樹君

      冨岡  勉君    中野  清君

      橋本  岳君    林  幹雄君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      武藤 容治君    山本 明彦君

      太田 和美君    北神 圭朗君

      後藤  斎君    近藤 洋介君

      下条 みつ君    田村 謙治君

      牧  義夫君    三谷 光男君

      高木美智代君    吉井 英勝君

    …………………………………

   参考人

   (全国中小企業団体中央会会長)          佐伯 昭雄君

   参考人

   (草野グローバルフロンティア株式会社代表取締役) 草野 豊己君

   参考人

   (東京大学大学院経済学研究科教授)        藤本 隆宏君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     冨岡  勉君

  佐藤ゆかり君     あかま二郎君

  安井潤一郎君     近江屋信広君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     佐藤ゆかり君

  近江屋信広君     安井潤一郎君

  冨岡  勉君     片山さつき君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 我が国における産業活動の革新等を図るための産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国における産業活動の革新等を図るための産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、参考人として、全国中小企業団体中央会会長佐伯昭雄君、草野グローバルフロンティア株式会社代表取締役草野豊己君、東京大学大学院経済学研究科教授藤本隆宏君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず佐伯参考人にお願いいたします。

佐伯参考人 中小企業団体中央会の佐伯でございます。

 きょう、この席で発表する機会を得まして、本当にありがとうございます。

 まず、私からは、中小企業の現在の状況とその課題、それから産業活力活性化法に関する二、三の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、中小企業の現状ということを御認識いただきたいということで、若干お話をさせていただきたいというふうに思います。

 私ども全国の中央会といいますのは、全国四百二十万社の中小企業の約七割が協同組合を組織して、約三百万社の協同組合の組織の中で活動している組織でございます。その中でいろいろな調査もやっております。

 それで、最近、二十三日ですから月曜日に、我々は独自にずっと中小企業の景況調査をやっているんですけれども、これは政府でもどこでも同じですけれども、いろいろな資料の中でDI指数が物すごい悪くなっている。それが一月以降、極端に悪くなってきているというのが現状でございます。

 そういう中で、やはり、同じ悪い悪いといっても、まだら模様でありまして、一番最初に悪く来たのが製造業です。もちろん、自動車、半導体、そういうことを含めて製造業が来て、それから運輸とか原材料価格の高騰とか、今百貨店あたりまでどんどんと影響が伸びてきているというふうな状況でございます。

 また、地方ごとに格差もかなりあると思います。今まで一番よかったのは、去年の今、車でよかったのは愛知県ですけれども、今愛知県が逆に一番悪いというふうな感じがあります。逆に、東北でいえば、東北の秋田とか青森とか、あるいは北海道、四国とか、もともと、悪いところはそんなにないということはないですけれども、やはり実感としての落差感は愛知などよりは少ないのかもしれませんけれども、現実の苦しさは同じだと思います。そういうことで、非常に地域差もありながら、我々中小企業は一生懸命頑張っているというのが現状でございます。

 まとめて言いますと、仕事量が現在足りないんです、中小企業。それと、資金も足りないんです。それで、原材料は高くなっているという二重苦、三重苦というふうな中で、仕事量が一番欲しい。それを確保するということが、中小企業の活性化、ひいては我々日本の経済の活力ということを引っ張っていく、牽引になるんじゃないかというふうに思いながら、何とかして雇用を守りたいというふうに思いながらも、やはり仕事は欲しい。お金は仕事が入れば何とかなるんですけれども、現実には資金の不足ということを、前向きの資金じゃなくて後向きの資金という意味で必要になってくるわけです。そうなると、銀行というのは、前向きには出しますけれども、後向きになかなか出せなくなっちゃう。一番欲しいところに金が行かないということで、中小企業が大変苦労している。

 それから、地方の格差もいっぱいございますので、この辺は、私の同じ県の中野先生が今目の前にいらっしゃいますけれども、宮城県は余り評判がよくないものですから、そういう意味で、先生が一生懸命頑張っているというところでございます。

 そういう中で、私の一つの持論は、中小企業、確かにお金もない、大変なんですけれども、時間はあるんです。こういうときこそ、私は技術開発をやるべきではないかと。日本の中小企業は捨てたものじゃないです、いろいろな技術を持っているんです。ぴかりと光るものを持っているので、それをぜひ、日本の将来の発展につなげるためにも、技術開発に力を入れる、その助成をしていただきたい。そうすれば、今困っている中小企業も、受注という仕事量もふえます、研究開発も含めて。それから、それが実れば、それは一〇〇%みんな実るとは限りませんけれども、何年か先には、必ず技術力も残るし、あるいはいい製品ができる。そういうことで、ぜひそういうふうなところの助成ということを、研究開発費、考えていただければというふうに思っております。

 もうちょっとこまい話になりますけれども、最近、農商工連携というのがいっぱい取り上げられています。これはもう非常に有用なことで、これから進めなければならないと私も思っているんですけれども、その中で、補助金が、こまい話になりますけれども、三分の二が補助金で、三分の一は自己負担なんです。例えば三千万の研究開発をやりますというと、一千万は自己負担しなさいと。これは、普通のときだったらいいですよ、それは。今みたいな緊急事態のときに、本当に金が大変、仕事がないときに、一千万を出して研究をやりたいんだけれども、できない。そうじゃなくて、私は全額助成すべきだと。それは財務省の論理からいうと、そんなことはないじゃないか、自分の方が何%か出しなさい。

 私は、全額ただでもらって云々、知らぬふりだというんじゃなくて、成功報酬にしたらいいんじゃないかと。それは全部が成功するとは限らないにしても、ロイヤリティーで売り上げが上がったら、それで三分の一は何年か先に、製品が実用化された後でそれも返せるというふうなことでもいいんじゃないか。とりあえず今は何かやらなきゃだめなんです。遊んでいてもしようがないので、何らかの行動を起こすべきだ、その行動を起こせるように政府としての政策の実現といいますか、そこら辺をやっていただきたいなというふうに思います。

 それで、そういう中で、ものづくりについては、今に藤本先生もおっしゃるかもしれませんけれども、人材育成がやはり私は一番大切だと思う。物だけつくるんじゃなくて、人をつくらなきゃものづくりにならないというふうなことでございますので、ぜひ、これは二次補正で予算が通ったことで私は感謝を申し上げているんですけれども、ものづくりの人材育成の資金が二次補正でもう通って、スタートを始めるということで、人材育成、本当にこれから我々もこれを活用して、本当のものづくり、先ほど言った研究開発と同時に、ものづくりもちゃんとできますよということで、日本の将来の役に立ちたいというふうに思います。

 ちょっと余計な話ですけれども、人材育成の中で、会社でものづくりのいろいろな、設計とか検査とかハンダづけとか、そういうことのものづくりも必要だけれども、私は、金融機関の人材育成も非常に必要ではないかと思っております。ちょっとまた議題から外れるかもしれませんけれども。

 というのは、金融機関の目ききがないと、せっかくの企業を助けられないんです。物がわからないと融資していいかどうかもわからないから、面倒くさいから、ではやめましょうとなると、本当の技術力の向上に役に立たないということで。私は、金融機関というのはやはり公的な存在ですから、それなりの目ききがあって、極端に言えば、もっと太っ腹の支店長がいて、だあっとやればもっといいんじゃないかというふうなことを思っていますけれども、これはちょっと余計なことになるかもしれません。

 それで、要するに、地域経済の活性化ということについて、今回の法案について若干申し上げさせていただきたいと思います。

 やはり、企業も人間と同じで、時々風邪を引いたり病気になったりということはあると思います。現在はかなり重病な病気にみんなかかっているわけですけれども、その中でも、例えば、ある何かの病気になって、そこを取れば健康体になるというふうなことであれば、そういう中で、再生支援協議会みたいなところが総合病院の役をして、多少の痛みは伴うけれども、お互いに、銀行も会社も債権者もみんな多少なるにしても、がんを取って再生して、新しい企業として世の中に、あるいは地域の活性化に役に立つというふうなことでは非常にいいんじゃないかというふうに私は思っております。

 今までの事業再生ビジネスというのは大企業向けですけれども、今回、中小企業ということの視点でぜひやっていってもらいたい。

 例えば、再生支援協議会の強みというのは、債務処理においては、リスケジュール、貸し付け条件の変更とかその他ですけれども、それから債権放棄とか。中小・小規模は金融機関に対して非常に弱い立場にありますからなかなか言えないんですけれども、その間に入って、第三者機関としての調整役を果たすというようなことではいいんじゃないかというふうなことであります。会計士や税理士の専門家の方もいらっしゃるという意味では、協議会の役割というのは非常に大きい。

 ただし、先ほども申し上げましたように、地方格差が若干あります。ですから、例えば宮城県においても、産業振興機構というのがちゃんとありますけれども、やはりまだまだ専門家の数なり確保が十分でないという地方がきっとあるんじゃないかというふうに思います。

 いずれにせよ、法律論的には第二会社の方式とかいろいろあろうと思いますけれども、要するに、いいところを伸ばしていきましょうと。悪いところは多少手術で切り取る必要もあるかもしれませんけれども、いいところを残して再生することが結局は地方の活性化になるし、我が国の産業にも役に立つというふうな趣旨ということと私は理解をしているところでございます。

 活力の再生特別措置法という名前でございますので、産業活力を再生するという意味で、ぜひ中小企業にとって非常に有用なものであるようなことを期待して、私の最初の意見の発表とさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

東委員長 ありがとうございました。

 次に、草野参考人にお願いいたします。

草野参考人 皆さん、おはようございます。

 実は、私、ついせんだって、三月五日になりますが、企業年金連合会から呼ばれまして、企業年金連合会で今回の危機の本質を説明してきたばかりでございます。きょうは、今世界で何が起こっているのか、この危機の本質は何かというのを、私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 お手元にレジュメと補足資料を御用意させていただきましたが、私は、実は、この草野グローバルフロンティアを創業する以前は長く外資系の金融機関に勤めておりまして、外資系金融機関でマネジメント、経営陣の一角を務めておりました。私が勤務しておりました当時から今回の問題を私はずっと感じておりまして、この会社を創業したときに真っ先に、今回の危機の本質は何かというレポートを書かせていただきました。

 お手元の補足資料の一ページ目、これは、毎日新聞社の週刊エコノミストに、二〇〇六年の三月、ちょうど三年前に、今回の危機の本質を、警鐘を鳴らさせていただきました。ここはわずか二ページの文章ではございますが、この中に、今回の問題となった住宅ローン担保証券、さらにはクレジット・デフォルト・スワップという特殊な商品、さらにはCDO、債務担保証券、さらにはCDSを集めてきた合成CDOという複雑な金融商品があって、これが大変なことになるんだということを実は三年前から指摘させていただいておりました。

 その後も、事あるごとに、果たして世界の大手の金融機関はちゃんとリスク管理ができているんだろうか、このレポートを書かせていただいたのが、この後の深まる依存関係、さらに、世界の金融危機はこれから本格化する、さらに、今回の問題になっているCDS、クレジット・デフォルト・スワップという、クレジットデリバティブですが、これが大変なことになるんだよということを書かせていただきました。

 そして、これらのことをまとめて、昨年の九月に「日本経済を襲うエキゾチック金融危機」という本を出版させていただきまして、今回の金融の大津波が日本経済を襲って、日本経済は大変なことになるのではないかという本を書かせていただきました。そして、十月に、いよいよこれからは金融危機が本格化するんだというレポートを書かせていただきました。

 内容はごらんいただけたらいいと思いますが、実は、私がこれまでずっと指摘していたとおりの展開になっている。やはり、我々、この問題をちゃんと理解するには、この問題の本質を理解していただかなければいけないということでお話をさせていただきます。

 まず、レジュメの方を見ていただきまして、一ページ目でございますが、ここに書いておりますのが市場規模でございます。これは二〇〇六年の市場規模でございまして、どうしてこれまでこういった危機を市場関係者は理解することができなかったのかというところから始めたいと思います。

 実は、この左側にありますような三層構造を皆さんはお考えになっていたと思います。株式や債券、あるいは現金といった金融市場、これは世界で、二〇〇六年当時で百六十六兆ドルあります。その上にその約三分の一の世界の経済がある、これは世界の名目GDPでございますが。そして、その上に世界経済の十分の一の日本経済が乗っかっている。こういう三層の構造を見ておられたと思います。サブプライムの問題が表面化しましても、実は、金融市場、世界経済、日本経済、どこを見渡しても何の異変もなかったわけです。ですから皆さんは気づくことができなかったということです。

 ところが、我々が金融市場と思っていたその下に、もっと大きな金融市場があったということでございます。私は、この従来からの金融市場というのは、非常に仕組みも簡単でございますし、中身もわかりやすいものですから、プレーンバニラ金融という呼び方をつけました。そして、その下にある複雑で難解な金融市場にエキゾチック金融という言葉をつけさせていただきました。

 その中身ですが、次のページをごらんいただきますように、店頭デリバティブでございます。通常、先物とかオプションは証券取引所を経由して取引をしますが、これであれば、金融当局はちゃんと監視することができます。この店頭と申しますのは、金融機関が取引所を通さずに相対取引をするというデリバティブでございます。当然のことながら、デリバティブの対象は、金利、為替、商品、コモディティーですね、さらに株式、一番下にクレジットとありますが、こういったものが対象になる。

 この市場が、二〇〇一年にはわずか百兆ドルであったものが、二〇〇七年には何と六百兆ドルです。六百兆ドルと申しますと、一ドル百円に換算すると、何と六京円という巨大な市場になってしまったということでございます。

 今回の危機は、まさにここで起こっている危機なんです。今まで起こっていた危機は、先ほどから皆さんにお見せしているプレーンバニラ金融で起こっていた危機ですが、今回は、このエキゾチック金融で起こった初めての危機なんです。ですから、私は、二十一世紀型危機だというふうなお話をさせていただきます。

 この証券化商品の中で最も簡単な例を持ってきました。これがサブプライムを中心とする住宅ローン担保証券です。ここにありますように、数千人分のサブプライムローンをかき集めてきまして、これを原資産とします。そしてこれを、ここにありますように、トリプルAからエクイティーまで五つのカップに切り分けてしまいます。このいろいろ分けたものの上の部分を、またあちらこちらから集めてきまして六つに切り分けます。下の二つを、またあちらこちらから集めてきて六つに切り分ける。さらに、一番下の真ん中の二つを集めてきて六つに切り分ける。そして、この切り分けたものを次々と転売して、今これが世界じゅうに散らばっている、こういうことでございます。これは一番簡単な例でございます。もっともっと複雑なものがいっぱいあるということでございます。今回は、ここで起こっている事象です。

 例えば、こういったものをプレーンバニラ金融の社債とか国債の感覚で見ていたことが間違いです。右側にありますように、こういった商品はデフォルト条項がついていまして、原資産が一定水準未満に格下げされると解体しなければならない、あるいは資産の清算が起こるということです。今、世界の金融機関が巨額の損失を出しているのは、実はこういった商品だということをおわかりいただければと思います。

 こういった証券化商品を金融機関のバランスシートから切り離さない限りはこの金融危機は解決できないということで、昨年の秋に、七千億ドルもの資金を用意して不良債権を買い取るという動きがアメリカで起こったわけでございますが、残念なことに一円たりとも証券化商品を買い取ることができませんでした。

 理由は二つあります。一つは、余りにも複雑だということです。この商品は原資産が全部違います。切り分け方も全部違います。そこで使っているデリバティブも全部違う。一つとして同じ商品がありません。そんなものを一体幾らで引き取ったらいいのかがわからない。これが一つ。

 もう一つ。アメリカ当局は、この証券化商品を買い取る以前に、金融機関の自己資本が毀損している、そこに資本を投入せざるを得なくなってしまったということでございます。アメリカからの報告によりますと、七千億ドル用意したうちのもう既に千六百億ドル程度しか残っていないというふうに聞いております。

 そこで考え出したのが、今週月曜日に不良債権の買い取りの仕組みが発表されたわけでございます。そういう状況で発表された。株式市場はこれを好感して、ニューヨーク・ダウも全部上がりましたが、実は、この仕組みが発表されたときに、昨年ノーベル経済学賞をとられましたポール・クルーグマン教授が、この仕組みを見て失望感どころか絶望感を感じたとおっしゃっています。私も、絶望感とまでいきませんが、残念ながらこの仕組みでは今回の問題は解決できないんだろうと思います。

 次のページを見ていただきますと、それがおわかりいただけると思います。

 これを見ていただきますと、例えば、民間投資家が百億ドル出します、それの同額を、政府が百億ドル出す、そして千二百億ドルものお金を民間の金融機関から借りてくるというんです。その借りたお金に対してアメリカ連邦預金保険公社が保証をつけるということです。これは、皆さん、この前からどれだけか批判してきたヘッジファンドあるいはレバレッジの仕組みと全く同じなんです。わずか百億ドルを投資したら千四百億ドルの不良資産を買い取ることができるという魔法の方法だということでございますが、だからこそ多分うまくいかないだろうと私は思っております。一方で、右側は証券化商品の買い取りですが、これもこの仕組みではなかなか難しいだろうなと思っております。

 さらに問題なのは、今回のこの不良資産の買い取りで、五千億ドルから一兆ドル買い取るというふうに発表しておりますが、昨年の十月時点で、国際通貨基金、IMFは、金融機関が抱える不良債権額は二十兆ドルという推定値を出しております。二十兆ドル出しているのに五千億ドルから一兆ドルで解決できるわけがない。これが、先ほど私が申しましたポール・クルーグマン教授なんかもおっしゃっていることだと思います。私も全く同感でございます。そういうことで、残念なことにこの金融危機はまだまだ解決していないというのが私の考えでございます。

 そうなってくると、世界の投資家あるいは世界の金融機関は、どんどんとリスクを低減させるという方向に走ってしまう。一番わかりやすいのがここでございます。外国人投資家の対日投資動向でございますが、ごらんいただけますように、昨年の夏場以降から、ずっと日本からお金を引き揚げていっているということがおわかりいただけると思います。二〇〇六年には二十二兆円もの投資をしておりました、株式、債券を含めて。これが二〇〇七年に二十五兆円に膨らんで、昨年は何と十兆円のお金が出ていきました。差し引きでいきますと三十五兆円減ったということですね。どんどんリスクマネーが引き揚がっている。

 もう一つ大きなポイントは、次のページです。

 在日外銀の日本における総資産が強烈に落ちてしまっているということでございます。この三年間のピークで見ると、二〇〇七年の二月に約六十兆円の資産を抱えていました。リスクマネーを供給していたわけです。これが、何とことしの一月には三十八兆円ですから、二十兆円もの資産圧縮が起こったということです。要するに、これまで日本経済、日本の金融を支えてきた海外のリスクマネーが、どんどん今逃げ出してしまっているという現状でございます。

 なぜこれほどまでに海外の人たちは日本に対して非常に厳しく見ているのかということでございますが、次のページをごらんください。これは私の推定値ではございません、国際通貨基金、IMFの経済見通しでございます。

 実は、IMFはことしの一月に経済見通しを修正いたしましたが、何と二カ月後のこの三月に再び下方修正いたしました。世界経済を見ていただきますと、ことしの一月に世界経済はわずか〇・五%。これは新興国を含めてございますが、わずか〇・五%しか成長しないと。それが三月にはマイナス〇・五です。新興国を含めて世界経済はことしマイナス成長になるということです。

 特に先進国です。みんなマイナスです。特に、この一月から三月の数字を見ていて、私はもう唖然としてしまいましたが、IMFは、日本経済は一月マイナス二・六と言ったのに、マイナス五・八だということです。日本経済に対しては非常に厳しい目を向けているということでございます。

 これが、ことし、二〇〇九年の予想でございますが、来年の予想も相当厳しいです。

 次のページに二〇一〇年の経済予測を出しておりますが、新興国経済は復活するだろうということで世界経済は二・五%ですが、ごらんいただけますように、アメリカはわずか〇・二%、EUが〇・一%、日本はマイナス〇・二です。要するに、ことし、経済がどんと落ち込んで、来年もさらに低迷するということを実はIMFが見ているということでございます。その先進国の中で最も厳しい見方をしているのが日本経済ということでございます。少なくとも、ここ数年間支えてきた貿易で稼ぐ、輸出で稼ぐという成長の方程式が崩れてしまったとIMFは見ているのではないかと思います。

 私は、昨年サブプライムローンが表面化して以降、我々が得た教訓は少なくとも一つあります。それはブラックスワンでございます。補足資料の一番最後に、私がことし一月のエコノミストのコラムを書かせていただきましたが、そこのを持ってまいりました。

 御存じのように、ハクチョウというのは羽が白いというのが鳥類学者の常識でございました。ところが、オーストラリアで黒い羽のハクチョウが見つかったことによって鳥類学者の常識が全部崩れてしまった。ブラックスワンの出現によって常識が崩れたということでございます。このエピソードをもとに、ナシーム・ニコラス・タレブという認識学者がブラックスワン理論というのを出しました。ブラックスワンとは、従来の確率論、認識、経験からでは予想できない現象が起こるということでございます。実際、ここ半年の動きを見ていますと、まさにブラックスワンでございます。

 私は、ここに書いておりますように、従来は散発的に発生していた異常値が、昨年は世界多発的に発生した、しかし、ことしも従来からの確率論、認識、経験からは予想すらできない現象が連鎖的に発生する可能性が高いと思っております。そういった意味では、いつまたブラックスワンが起こるかわからない、こういう認識を我々は絶対持つ必要があろうかと思います。

 そういう意味では、最後に私は提言させていただきますが、どうかこのブラックスワンの出現に慌てないように、いかにセーフティーネットを構築するか、これが今我々に求められていることではないかということを最後の締めくくりとして、私の意見を述べさせていただきました。

 ありがとうございました。(拍手)

東委員長 ありがとうございました。

 最後に、藤本参考人にお願いいたします。

藤本参考人 東京大学の藤本と申します。

 私は、若いころは民間におりましたが、現在は大学で学者をやっておりますけれども、大体週に一遍、どこかの工場を見ているような、そういった人間でございます。ちなみに国会議事堂は生まれて初めてやってまいりましたので、よろしくお願いいたします。

 お手元に資料がございます。私はやはり学者ですのでいろいろごちゃごちゃとたくさん、これをまともにやると一時間かかりますので、かいつまんでお話を申し上げたいというふうに思います。

 まず、現在の状況について私の考えていることを申し上げますと、今とにかく大変なことが起こっていると今までの参考人の方々がおっしゃるとおりでございますが、あえて我々の立場からすると、その次に何が来るかというところを今から見ておく必要があるのではないかというふうに、特に現場を見ている人間から見るとそういうふうな感じがいたします。

 日本人の人が、住民がよい暮らしをしていくには、日本に進化をする強い現場を残していくということ、これ以外にはないわけですね。経済学的にはこれ以外にないわけであります。そのためには、今の不況の先に来るもの、これを今から見ておく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 では、それは何かといいますと、大変なことが起こっているということはそのとおりなんですけれども、長い目で見たときに、意外に常識的なところに戻ってくるんじゃないか。それは、よく言われます比較優位に基づく国際分業、これは教科書にずっと書いてあるんです。教科書に書いてあるんだけれども、なったためしがないことなわけですが、どうやらそちらの方向に大きな流れが来る。

 確かに、今、一つ間違うとまた保護貿易の、一九三〇年代の再来になりかねないところですけれども、ここは私は何とか乗り越えていくんじゃないかと思っております。その先にあるのは意外に常識的な、つまり、それぞれの国が得意なもので勝負する、こういうことになってくるんじゃないか。とすれば、もう一回、今、我々は一体何が得意なのか、どういう現場を日本に残してどういう現場を海外に持っていくべきなのかということを考えるべき、そういう時期に来ているんじゃないかというふうに考えるわけであります。

 その点から考えますと、我々は、今までは生産で比較優位、つまり、どんな製品をつくるべきか、どういう工場を日本に残すべきかということをさんざん考えてきた。そして、中国脅威論もありまして、いや、全部中国に行っちゃうんじゃないかという話もありましたが、結果として見てみると、ついこの間まで十兆円近い貿易黒字が出るほどの現場が日本に残っていたわけであります。

 これをずっと見ていきますと、今後、この不況の後、何が残っていくのかということ、あるいは何を日本に残すべきかと考える場合、私は、単に生産のことだけ見ていては多分だめで、日本によい設計を残していくということ、よい設計現場を残していくこと、これがまず先にあるべきじゃないかというふうに考えております。よい設計現場が残れば、それに基づいて、よい生産現場もおのずと残ってまいります。逆に、設計のよい現場のない生産現場がいかにもろいかということはこの二十年我々は見てきているわけですね。ですから、設計というのを一つのキーワードに我々は考えていくべきじゃないか。そうなれば、当然、よい設計をする、そして新しい設計をするとイノベーションということになりますので、今回のいわゆる産業革新という話になってまいるわけであります。

 私は、内閣府の方で、ものづくり技術のいわゆるプロジェクトチームの方で大分いろいろと議論させていただいておりましたが、見ていまして、若干苦言的なことを申し上げるとすると、確かに科学技術基本計画、大変なお金が投入されているわけですけれども、ちょっとこのお金が大規模プロジェクトに偏り過ぎている、それから固有技術、何とか技術という固有の技術に少し偏り過ぎている、それから設備の助成、設備を買ってきたらお金をつけるよ、これに偏り過ぎているというふうに私は思っております。

 先ほど佐伯会長のお話にもありましたけれども、確かにこういった箱物にお金をつけるのも大事ではありますが、そんなたくさんのお金が要るわけじゃありませんから、このお金を少しでも人の方に流していただきたい、人材育成、特に先生をたくさん養成する必要があると私は思います。

 今はたくさん設備があります。中小企業に行かれるとおわかりと思いますけれども、結構皆さんいい機械を持っているんですね。その機械の周りが在庫の山なわけであります。あるいは、せっかくいい機械を持っていても、いいビジネスに結びつけていない。つまり、流れができていない。この流れを日本全国につくっていく、各地方によい流れをつくっていくということ、これは付加価値の流れでありますけれども。

 これができるのは、ロボットにできるわけじゃありません、人間にしかできません。ですから、よい流れをつくる、改善をする先生ですね。実は、これができる人が今は大企業で団塊世代を中心にうなるほどいるんです。この方々が今ぶらぶらしていて、下手すると中国、韓国へ行って教えている。この人たちに日本で教えてもらうような形に持っていく、これが非常に重要じゃないかと私は思っております。

 ですから、人の方に少しお金をつけていただきたいなと思っております。それをやりませんと、私は学者なのでちょっと口が悪いんですが、設備の離れ小島とかあるいは先端技術の離れ小島が日本じゅうに散らばっている、このような状態に見えるわけであります。つないでいく必要があるわけですね。つなぐのは人間しかいないということ、これを申し上げたいわけであります。

 それから、新産業待望論というのは当然こういうときにあります。何かまた、ナノテク、バイオ、こういったもので大きな産業が出てくるといいねという、希望としてはわかるんですが、これは何年かかるんですかという話でございます。それよりもはるかに経済学的に言って大事なことは、既存の産業によい現場を残すということであります。この方がはるかに大きな効果が出る。ですから、もちろん百年の計として新しい産業をつくっていくことは大事なことでございますけれども、それだけやっていてもこれは産業育成にならないというふうに私は思っています。

 産業というのは現場の集まりであります。よい現場がなければよい産業というのはあり得ない。そして、よい現場がなければよい生活もあり得ない。我々日本人が飯を食っている、あるいは日本住民が飯を食っているのは、実は企業でも資本でもありませんね。現場で飯を食っているわけであります。ですから、よい現場を残すということですね。これをみんなで支援していく、産官学みんなで支援していくということが必要ではないかと思っております。

 二ページ目に参ります。

 そこで、では今回の不況はどうなのかという話でございますが、この辺はちょっと学者の話ですのでごく簡単にしておきますが、御承知のように、アメリカという国は移民の国であります。移民を即戦力で使うことで二百年やってきてああいう世界一の国になったわけです。したがって、そういう国の成り立ちからいって、分業とか標準化とかモジュラー化とか、こういうのを得意とする。これを二百年やってきた国です。このやり方とぴったり合う製品が、例えばパソコンのような製品、インターネットのような製品でありまして、これはいわゆる組み合わせ型とかモジュラー型と言われる製品なんですね。これが、九〇年代、デジタル技術が出てきたことによって、つまりアメリカは世紀末になってようやく彼らの社会的なことにぴったりの技術を手にしたわけです。これで一気に復活したわけですね。

 日本は逆に、成り立ちが違います。しょっている歴史はどっちかというと人が足りない中で高度成長ということでありましたから、長期雇用、長期取引の中でツーカーの関係、あうんの呼吸、つまりチームワークとか多能工とか、そういったいわゆる大部屋で、チームワークで、設計もやります、生産もやります、販売もやります、これでやってきた国でありますから、得意わざが違います。どっちかというとすり合わせ型の製品を得意として、自動車なんてまさにそれだったわけですね、それが日本の八〇年代を強くしたわけであります。

 九〇年代、逆転が起こったのは、アメリカが得意な技術が出てきた。これが最大限生かされたのがいわゆる金融であり、軍事であり、それから情報サービスだったわけであります。ですから、一時期、アメリカの人はちょっと調子に乗って、これは未来永劫、絶対の優位性であるというようなことを錯覚したような議論があったわけですが、それがこの十年間で一つずつつぶれていった。要するに、情報サービス、ネットワークの崩壊ですね。それから軍事に関しても、対テロ戦も思うようにはいかないということがわかってきた。そして最後に残ったのは金融だったわけですけれども、この金融のバブルも崩壊していったわけです。ですから、当然アメリカはまだこういうものに対して相対的な優位性を持っておりますけれども、絶対的なものじゃないということがわかってきた。これがこの十年間の教訓。

 とすれば、これからどうなっていくかというのを考えるときに、この不況の後、来るのは、意外に常識的な世界に戻る。つまり、それぞれの国が強みを持っている、その強みを生かして物をつくって、そしてお互いに貿易をする、これは二百年前から言われていることなんですけれども、実はなったためしがなかったようなこと、これに来るんではないか。ですから、私は、二十一世紀というのは意外に常識的な世紀ではないか、つまり、地道なことをやっていくしかない世紀じゃないかなというふうに思っておるわけであります。

 その辺は下の絵を見ていただくとわかりますように、これは現場の開発の生産性ですけれども、日本は負けたことがございません。実は、これは低いほどいいんですけれども、日本はむしろ差を広げておりますね。つまり、株価がどうのこうのという話は一方にあるんですけれども、その裏側にある裏の競争力、この部分は日本はまだまだ強いんですね。したがって、ここが毀損しないようにしていくということ、これが一番大事じゃないかと私は思っているんです。

 それから次に、三枚目に行きますが、金融バブルが崩壊したために、言ってみれば、先ほどこれは草野さんの方からお話がありましたように、バブル誘発需要が出てきた。最初は住宅だったんですけれども、おつりが出てきまして、おつりで高級車を買う、アメリカの人はいわば分不相応の消費をしてしまったわけです。これに実は日本の得意わざが重なっちゃったんですね。このために、日本からどんどん輸出がふえて、大体GDP一〇%だった日本の輸出が一五%までいっちゃったんですね。この五%がバブル誘発分であります。これがつぶれちゃったということですから、今のようなことが起こるわけであります。ですから、強かったがゆえに苦労しているというふうに考えた方がいいと思います。

 ただ、強みの源泉はまだ変わっていないと私は思います。やはり、すり合わせ型のものは日本が強いというこの現状は多分変わっていないんじゃないかと思うんです。ですから、下の絵にかきましたけれども、自動車の方を見ますと、バブル分だけちょっとオーバーヒートしたんですね。それが今つぶれましたけれども、全体としての実需は、確実に今、七千万台を超えて伸びていく形になります。

 ですから、バブルが崩壊した後、実需は伸びます。この実需をだれがとっていくのかというふうに考えたとき、依然としてだれが、何が強いのかということをやはり考えていく必要がある。日本に強いものを残し、そうでないものはもう思い切って外へ出していく、こういった国際分業という、教科書に書いてあるんですけれども、なったためしがないことですね、これは二十一世紀に本当になってくるかもしれないという、これを考えていきたいと思います。

 そして、四ページにすぐ行きますけれども、したがって、世界不況の次に来るものをもうそろそろ考えておいた方がいいということになるわけです。

 今、私申し上げましたけれども、確かに投機経済のグローバル化に対してはブレーキがかかりますけれども、実需経済のグローバル化は一つの流れだと私は思っております。ですから、その流れ、つまり貿易の拡大、貿易の自由化という流れが、長い目で見て、二十一世紀、まだまだ不況を超えて続くとすれば、やはり比較優位で国際分業という形が常識的な落ちつきどころであります。

 ただし、非常に細かいところで、例えば車であれば、ドアの内側の鉄は韓国から来る、外側の鉄は韓国に出ていく、これぐらいの、野球じゃないですけれども、まさにもう紙一重のところの勝負を今やっておりますから、当然、その辺もよく考えた上での貿易論を考える必要があるわけであります。

 幸いなことにというか、困ったことにというか、二十一世紀は制約も非常に厳しくなる、エネルギーにしても環境にしても安全にしても、制約が厳しい中で設計しなきゃいけない時代になります。これは実は、一人一人の設計者から見たら非常にピンチなんですけれども、産業から見たらチャンスであります。こういうのは日本は得意なんです。要するに、チームワーク、大部屋で難しい連立方程式を解く、こういうものをやってきた人たちは強いんですね。

 ですから、そこを考えると、この先、まず現場力を確実に確保していくということ、これが崩れたらおしまいでありますから、ここをやること。そして、相性のよい製品に集中すること。これが、今のところでいうと、すり合わせ型、つくり込み型の製品。そして、それを踏まえて、私は設計立国ということを考えていくべきだと思っております。

 技術立国という言い方もできますが、技術で勝負したいのはどこの国も同じなんですね。我々は、何をやりたいかじゃなくて、何で勝てるかを考えなきゃいけない。そのとき、やはり我々は勝てる設計で勝負する、こういう国でつくっていても、難しい、面倒くさい設計はみんな日本に任せろと、世界じゅうから言ってもらえるような形に持ち込めればこっちのものだというふうに私は思っております。

 次のページです。五ページ、六ページは能書きですので飛ばします。

 要は、先ほどから申し上げている、すり合わせ型という設計のやり方があるわけであります。これが、自動車はそう、パソコンは違います。だからパソコンは日本に残れない、でも自動車は日本に残れる、こういうような一つ一つ、現場の形はもはや産業分類じゃわかりません。一個一個手にとって、現場、現物で確認して、これは日本に残せる、これは残せないという確認をしながらいく必要があるということなんですね。

 七ページにありますが、これは実は経産省さんと一緒に調査してみました。何となくなんですけれども、やはり、すり合わせ度が高い製品ほど日本は輸出比率が高いです。この傾向は、私は不況の後も変わらないと思います。ですから、この辺を見切った上で、日本にどういう現場を残すかを本当に真剣に考える必要がある。

 それから、もう一つ言えることは、企業に関しても、この下にありますけれども、今、右往左往している企業と、能力構築にもう踏み出している企業の差が出てきております。落っこちるときは一緒なんですね。落っこちるときはみんな一緒ですけれども、落っこちながら何を考えているかで、五年後の差が物すごい出ます。できれば日本の企業に、黄色い方ですね、要するに能力構築企業の方に残ってもらいたいと思っておりますが、残念ながら両方あります。

 次の八ページに、一応、その二つの企業を分かつものを書きました。ちょっと細かいのでやめておきますが。

 要は、国内拠点をしっかり守ること。そして、いいものをつくっても、大体、本社が下手な売り方をしますので、本社をもうちょっと強くしてくれということ。そして、「適財適所」のグローバル化をちゃんとやって、出すものはちゃんと出す。日本に何でも残すんじゃなくて、出すものは出して、残すものは残す、このめり張りですね。

 そして、地球環境問題も含めて、複雑化していく中で、複雑な設計から逃げないということです。複雑設計は日本に持ってこい、逆にこう言えるようなものになってくれば、日本に設計大国、設計立国という、地味なんですけれども、物すごい地味ですけれども、これで日本人は食っていけるというビジョンが見えるんじゃないかと私は思います。

 九ページを見ていただきたいと思いますが、これは実際の組み立て生産性の数字ですけれども、これを見ていただいてもわかりますように、小さいほどこれはいいんですよ、ですから、当然、生産性は日本はどんどんよくなっているんです。ほかの国も追っかけてきております。でも、日本はまだまだリードしているんですね。

 つまり、表の競争力は下の絵のように上がったり下がったりもします。犬のしっぽみたいに振れます。ただ、現場力の方は地道に上がっていくものであります。ですから、絶対にここががたがたになっちゃいけない。だから、犬がしっぽを振るのはいいんですが、しっぽが犬を振るような状態に絶対しちゃいけないということだと思います。

 十ページに、あるしぶとい自動車工場、これは神奈川県の工場ですけれども、ごらんください。

 要するに、会社はピンチだけれども現場はチャンスだというふうに言っている、社長も現場も言っているという会社が残れる会社であります。社長が今は受注確保、資金繰りで走り回っておりますけれども、これだけやっている会社がだめになっていっちゃうわけですね。会社は残ったけれども、現場は荒廃。その会社に、次の景気回復時における復元力がもうないわけであります。これは、いかに日本によい現場を残していくかということをやはり考える必要があると思います。済みません、ちょっと長くなりましたが。

 最後に、人づくり、ものづくりの話。

 これは佐伯さんのお話にもありましたけれども、やはり人材育成のところで、特に、先生をたくさんつくっていくということをやる。今、少し暇な人がふえてきておりますから、この人たちを暇にしておきますとどんどん中国、韓国へ行っちゃいますので、この人たちを先生として再生する。これは実は我々やっております。十一ページにありますが、三カ月ほどかけて、平均五十七歳ぐらいの人たちを集めて、これは現場の神様、この人たちは自分の現場でしか教えないと言っているんです。その人たちに三カ月教えて、師範学校をやりますと、スーパーマーケットでも教えられる人になります。

 要するに、こうやって業種を超えてものづくり知識をどんどん広げていく、日本全体によい流れをつくっていく。これは人しかできません。これはロボットにはできません。ですから、ここのところにぜひお金を少しつけていただきたい。

 つまり、大企業はまず師範学校をつくっていただきたい。それから、そういう先生を育てるという方向に少しお金を使ってほしい。お金がなければ、そこを支援していただきたいと思います。それから、中小企業の方々も、機械を買ってくるだけじゃなくて、機械を動かす人たちを、助っ人を呼んでくる。授業料は、今、一日呼ぶと大体十万から三十万です。今、中小企業はこのお金もないんです。十万がないんだったら、このお金は県がつけてあげる、中小企業庁がつけてあげる、これをぜひやっていただければ流れができてまいります。今必要なのは箱じゃなくて流れなんですね。こういうふうに私は思っております。

 大学にも、もちろんやることがいっぱいあるというふうに思っております。十二ページにそういった絵をかいてみました。実際、こういったスクールをやっておりますけれども、チームで楽しく改善する、そして、ほかの業種でも教えられる人材をつくる。三日もこうした人たちが教えると、三十項目ぐらいの改善をやります。こういう人たちを役立てていただきたい。

 最後に申し上げますけれども、実例で言いますと、ついこの間ですが、滋賀県の段ボール屋さん、中小企業ですけれども、改善に来てくれないかという話がありました。今、私のところにインストラクターが五十数人います。平均五十七歳の人たちです、大企業出身の神様みたいですね。

 今、この人たちはチームで動けるんですよ。だれか行きませんかと言うと、三人ぐらい手を挙げた。名前を言いますと、キヤノンとゼロックスと、それから日産の人。キヤノンとゼロックスの人が組んで仕事するなんてあり得ないことなわけですけれども、できるわけです、これは現場でありますと。それで、ほいほい行くわけです。じゃ、行こうかと行ってきて、僕は楽しくやってきてねと言いますので、昼間は改善、夜カラオケと。これで楽しくやって、すいすいと三十項目、改善をして帰ってきました。

 こういう人たちを、やれる人は山ほどいます。今、皆さん、怖がってやっていないんですよ。だから、この人たちを何とか活性化して、今その辺でごろごろいる草むしりしている人たち、この人たちにもう一回戻ってきていただいて、日本の流れづくり、活性化に貢献していただきたい、そういうふうに思っております。

 済みません、長くなりました。(拍手)

東委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤容治君。

武藤委員 おはようございます。

 三人の参考人の方、大変厳しい情勢の中、きょうはわざわざ衆議院の経済産業委員会においでいただきまして心から感謝を申し上げ、そしてまた、大変示唆に富んだ、すばらしいお話を各界からいただきましたことに心から感謝を申し上げます。

 また、佐伯参考人におかれましては、きのうも、自民党の政務調査会中小企業調査会がありまして、専務理事さんから緊急要望ということでいろいろ知見にあふれた御指摘もいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 申しおくれました、武藤容治、自由民主党岐阜県第三選挙区支部でございます。

 きょうは産活法の参考人招致ということで、この産活法も、十一年にできて、今度三回目の改正になります。昨年大変な資源高騰がありまして、そういう資源の有効利用をしようという形での、その背景のもとに今度の改正だというふうに思っております。

 これから審議に入るわけですが、十月以降来たリーマンの話がございまして、さっき佐伯先生からも、冗談じゃない中小企業の現状というのをお聞きしました。私も実は零細企業でございまして、そういう形で酒屋と建築材料を別の会社でやっていますけれども、むちゃむちゃ厳しい状態でございます。

 これも、正直に申し上げて、背景からちょっとだけお話しすれば、バブルがはじけた後、ほとんどの中小企業というのは、私の持論ですけれども、皆さん厳しいなりに、それなりにずっと、少なくとも維持してきた。もちろん、給与を下げたり、あるいはいろいろみんな叱咤激励して、会社がつぶれるよりは残った方がいいだろうということでリストラもやり、ここまで生き抜いてきたというのが実際ではないかと思うんです。それで今度の金融危機ですから、これはもう本当に、全く仕事がなくなったという中で、どうやって生きていったらいいのかというのが現実のところだと思います。

 緊急保証もありますけれども、確かに、実績的には相当ふえております。第一次補正から第二次補正になって、今度も枠を拡大して対応してきておりますけれども、三月、年度末、この様子を見ながら、ますます我々としては、本当の今の日本の力を残さなきゃいけない、その中心は中小企業であると私は思って今やってきておりますので、きょうの三人の先生方のいろいろなお話というのは、そういう意味では、また大変参考にさせていただけたと思っております。

 それで、時間も二十分しかありませんので、せっかくですから皆様方の御意見、当然また深掘りをしていきたいと思います。

 ただ、分野がそれぞれ大分違うかなと思いますけれども、藤本参考人にちょっとお尋ねしたいんですが、私と同じ年でございまして、別にそれでお願いするわけじゃありませんけれども。

 現場が大事だという意味では、先生の本からも、いろいろ読ませていただきました。今のお話ですと、とにかく人、これが大事ですよ、おっしゃるとおりだと思います。ですから、産活法とちょっと離れて御質問させていただきますけれども、私どもの岐阜の中でも、ものづくりの拠点として、トヨタさんの下請もあるし航空宇宙産業もあるしということで、大変それぞれ頑張っている方がいらっしゃいます。先生のおっしゃるように、まさに人の流れがそういうところは今実際できているところだと思います。

 ところが、その知見というものがなかなか横展開できない。これが今の中小企業のまた一つ抱えることだと思います。商工会議所とかいろいろな団体はあるんですけれども、なぜかそこの横の展開というのが極めて、カラオケをやっていてもなかなかそこはできないのかなというふうに思いますので、先生からそういう御指摘がもしあれば、またお伺いしたいことと思います。

 それから、同じ質問で佐伯参考人にもお尋ねしたいんですけれども、東北で大変すばらしい会社をずっと今までやってこられておりますけれども、その辺の人という問題についてもうちょっと深掘りをして、団体の今の会長のお立場として、要するに、その団体の中でそういう知見をお披露目いただくようにぜひ私としてはお願いをしたいんですけれども、その辺に対するお答えをお願いしたいと思います。

藤本参考人 手短にお話しいたします。

 いろいろ地方を回っておりますけれども、確かに、割と仲が悪い地方が多いという感じがいたします。結構細かいことで、あそこの町とはやりたくないとか、そういう話をいろいろやっていまして、なかなかまとまらない。

 それから、かなり力のある地域に限って、固有技術で勝負、私はメッキじゃ負けないとか溶接じゃ負けないとかというおやじさんがたくさんいるところは、だからほうっておいてくれという引きこもり型の方に行きがちなんですね。これを何とかしなきゃいけない。

 うまくいっている地域を一つ申し上げると、私は、多分米沢は割とうまくいっているなと思っているんですけれども、あそこを見ていますと、まとまり方が、さっき言った流れづくりの技術なんですね。ですから、みんなでとにかくただ在庫を減らして、よい流れをつくって、もうちょっとうまく商売をやろうよという、そこのところはみんな一緒ですね。こういうみんなで一緒に乗れる技術でもってネットワークをつくって、ですから、固有技術になりますと、すぐ、おれがおれがになっちゃいますので。むしろ、そういったまとまりやすい技術でまとまって、そこに大体三賢人とかいう人がいまして、中小企業のおやじさんたちにも、周りで尊敬されていますね。

 それから、あそこにある大企業、NECさんがありますけれども、ここがやはり尊敬されている。それから、そこに山形大の工学部、これが非常にいい動き方をしている。あそこは仲よくやれている。山形全体はどうかわかりませんけれども、米沢はうまくいっている。上杉かということがありますけれども。

 そういったことを見ていくと、実は、今言ったような、ここはなかなかよくやっているなという地域が少ないと思います。岐阜はうまくいっているんじゃないかと私は思いたいですが。どうしても、おれがおれがな人が多いんですね。

 ですから、やはりまとめるところのお祭り男的な人が必要でありますし、この人たちは、固有技術にいかないで、みんなで使える汎用管理流れ技術、要するに、ものづくり技術とはそういうものであるわけですね。今の科学技術基本計画にも、やはりそこは、基本的には、よい流れをつくる技術という、汎用技術だと思うんですね、ここでまとまっていく。まとまれるところでまとまっていくということをやっている地域の中に、実際に割とまとまりのいいところがあるような気がします。今のところ、残念ながら、まとまりのいい地域は少ないような気がしております。

佐伯参考人 今、武藤先生から、団体の中での人材の育成というふうな御質問がありました。

 我々、団体といいますと、中小企業団体中央会という組織があります。各県に団体がある、その傘下に組合が三万二千くらいある、その中にまた企業があって、三百万社くらいになるんですけれども。

 まず、各県の組合の中の、いろいろな意味で支援、あるいは指導というとちょっと言葉があれですけれども、そういうために、中央会として指導員が横にいます。予算もついているんですけれども、もうちょっと指導員をふやすべきじゃないかなと思うんですが、予算の関係もあるんです。

 それともう一つは、組合士というのがあるんです、協同組合の中の組合資格。組合士という試験がありまして、各団体の職員が、自分らも勉強して、組合の運営をどうしたらいいのかということのための資格を取る。全国の組合士会というのもございます。そういう団体を網羅しまして、団体として人材をみんなで育成していく、団体の中の人材も育成しなきゃならない、それの傘下の企業の人材の育成もこれから支援をしていかなきゃならないというふうに思っています。

 特に、さっきちょっと申し上げたんですが、二次補正で通りました中企庁のものづくり人材育成、中央会関係でも三年間で七十二億円くらい、かなりの金額なので、これを通して人材を育成する。それは、団体の中が、指導といいますか、中心になって動きながら、そういう、みんなで人材を育成して、ものづくり、先ほど先生おっしゃったように設計も含めて、高度なものづくりから、実際の流れのものから、いろいろな意味での、かなりの広い何かアイテムがあったような気がしますので、そんなふうなことを、団体の中でも人材の育成ということを強化していきたいと思うので、よろしくお願いいたします。

武藤委員 ありがとうございます。

 人づくり、ものづくり、本当に大事な日本の原動力だと思いますので、団塊の世代の方が、ぼちぼち、そういう意味でフル活用できるように、また別の角度で、我々としても頑張っていかなきゃと思っております。

 そういうものの、つくるということで考えて、もう一つだけお話を伺いたいんですけれども、今現状として、先ほど、佐伯先生でしたかあるいはまた藤本先生かもわかりませんが、日本の中で、中小企業ですばらしい技術をお持ちの方がいらっしゃる、また、技術を持っていて、新しく開発をする方もいらっしゃいます。ところが、設備、これをたくさんつくりたいんだよねといっても、おっしゃるとおり、今この厳しい状態の中でなかなかお金が回っていない。そういうときに、今の制度の中では、NEDOさんとか、いろいろな意味で技術を拾っていただく体制もありますけれども、なかなかこれがハードルが高いというのが、要するに、やはり要件がいろいろありますので、使いづらいところがあると私は思っています。

 こんなことも、ぜひそういう意味では、この産活もありますけれども、やはりそういう埋もれた芽をフルに出させてやるような、そんなようなことが必要でないかと思っておりますけれども、これは佐伯参考人にお聞きした方がいいでしょうか。

佐伯参考人 今の武藤先生の御意見、私ども、本当に賛成なんです。というのは、NEDOとか何か大きな組織がありまして、先ほども藤本先生がおっしゃったように、かなり大企業向けなんですね。予算が大きくて、何億つきました、こんなに研究開発に国はやった。ところが、中小企業にはほとんど立ち入れないというような、もう固まっている分野があるんですね。ちょっとわからないんですけれども、中小企業が手を挙げてももう入れない、既に決まっている、何億というのはあなたたちにはできないでしょうというような感じがしないわけではないんです。余りNEDOの悪口を言うわけじゃないんですけれども。

 ですから、中小企業にもっと金が渡ってちゃんと研究、本当に真水として我々が動けるような研究開発のことをやっていただきたいなというふうなこと、これはできるはずだと思う。

 それからもう一つ、中小企業がいい技術を持っていますよという、経産省がおととしからものづくり三百社というのを選んだんです。不肖私どもの会社も最初に選ばれたんですけれども、現在九百社くらいまであります。すばらしい技術をみんな持っているはずなんです。それは、国がちゃんと審査をしてお墨つきを与えているところなので、そこに対する技術開発の補助とか、あるいはそこがつくった製品を国が積極的にまず使ってみるというふうなことをやっていただければなというふうに思います。

 それから、三百社以外にも、NEDOではないんですが、地域のコンソーシアムとかあるいは産学連携で中小企業がいろいろな開発をした製品があります。そういう製品も、中小企業はまだ販路が弱かったりなんかするんですね、ですからまず国が買っていただくと、お墨つきがありますし、ほかも買いやすくなります。ぜひ、そこら辺まで含めて御援助いただければなというふうに思います。

 ありがとうございました。

武藤委員 今の御質問は、藤本参考人にもお話を伺わなきゃいけないと思っております。

 さっき、科学技術予算の計画二十五兆、これは実際ありますけれども、なかなか実行されておりません。この厳しい状況の中でということもありますけれども。ただ、現実的に言って、百年に一度、私は余り好きじゃない言葉ですけれども、このピンチをチャンスに変えるとなると、まさにものづくりの原点である技術、科学技術をやはり今はもう原点としてやらざるを得ない状態である。iPSにしても、再生医療、医学関係はそうでしょうし、そういう意味でいろいろな環境関係の資源も埋もれております。

 さっき藤本先生は、人にぜひ投入をということでございますけれども、それは経済産業省だけでなくて、厚生労働省、文科省も含めてやはり縦断的に我々としては対処していかなきゃいけない論点だと思いますので、技術でいえば、今の科学技術についてもまた藤本参考人の御意見も補足でお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

藤本参考人 おっしゃるように、どうやって流れをつくっていくかというのは難しいところがございまして、くっつけるよといってもなかなかくっつかないところがございます。

 ですから、やはりまず取っかかりですね。人の話でもそうですけれども、例えば、私は溶接のプロだと言ってくると、みんな怖がって寄ってこないんですね。何でも相談に乗ってあげるよ、改善、何でもやってあげるよ、いい商売しましょう、そういう形で入っていって、実は私は溶接もできるんですよという形で入っていくと、非常にうまくいくケースが多いような気がしております。

 ですから、そういった意味で、今三百社のお話がありましたけれども、いい技術を持っているんですね。私も何社も見ておりますけれども。ほとんどの会社は売り方が下手ですね。何でそんな値段で売っているのよという話が多いわけでございます。ですから、その辺のアドバイスをしてあげられる人がちょっとでもいれば、これは随分違ってくるんじゃないかと思っております。

 ですから、技術と技術をいきなりすり合わせてもなかなかくっつきませんので、うまくくっつける技術を持った人、そういった人をまずインストラクターにして、そういう人たちが日本全国を走り回る。そういう人たちはどうやっても自分の技術は持っていますから、どっちにしても。おのずと技術の話になるんですが、いきなり最初に技術が生の感じで出てきますと、ここはお互いになかなかくっつかないというところがあるんじゃないかというふうに思っております。

 それから、フロントランナー政策というのがございますけれども、要するに、今までの、一番遅い人のしりをおいこらで押していくといういわゆる護送船団ではなくて、一番早い人をもっと走らせる。これでやっていきますと、一番早い人は何が邪魔かということ、何が足りないかということが一番わかっている人ですから、そういう人たちにもっと走っていただくために、あなたは何が足りないの、何が邪魔なのというふうにこちらから聞くと、どんどん出てきますね。そこをどんどんつぶしてあげるようなことをしていきますと、おのずとよい流れができてくるということがあるんじゃないかと思っております。

 だから、遅い人を何とか救うのは社会政策なんですけれども、産業政策はそうじゃないと思います。産業政策は、やはり一番早い人を走らせないと、国体で勝ててもオリンピックじゃ勝てない、こういうことになっているんじゃないかと思っております。

武藤委員 ありがとうございます。

 人それから技術、本当にそういうもので、我々としては、さっきも言いましたけれどもピンチをチャンスに変えるように、ぜひこれは与野党問わず、我々は皆さんから負託を受けた責任を果たすべきだというふうに思っております。

 今回の産活の中で、いわゆるオープンイノベーションへの支援というのがいろいろな形で入っております。そういう形の中で、今NEDOの話もしましたけれども、本当に技術を支援するさまざまな取り組みのやり方があると思いますので、そんなことをぜひやりたいと思っております。中に、いわゆる新聞では公的スキームの一般企業への投資という形でも出ておりますけれども、草野参考人にもぜひその辺の公的スキーム、いわゆる会社の救済をするという例の形ですね、そういうものに対しての、お金には大変御見識がありますものですから、今これから相当まだまだ厳しいですよということでございますけれども、草野さんからもありました例のブラックスワンじゃないですけれども、要するに、やはり我々としても、今は常識をちょっと超えた対処が、見方が必要なのかなと思っております。

 経産省の方というのは大変御見識が高いのであれなんですけれども、やはり枠を超えた、そういうような見方というのも我々政治家の役目ではないかと思いますが、草野参考人からも、世界のいろいろな御見識を見ながら、特にこの今の金融、サブプライムの問題というのはまだこれからも続く話の中で、日本はこれからどうしていったらいいのかというところの御指摘をひとつお願いできればと思います。

草野参考人 先ほど私がお話しさせてもらいましたときに、在日外銀の総資産が一気に減っているというお話をさせてもらいました。さらに、外国人投資家が、昨年一年間だけで、債券を含めて対日投資では十兆円のマイナスになっているというお話をさせていただきました。

 少なくともこれまで、日本の金融システム、金融市場というのは、海外がリスクをとってくれていたというふうに考えていいと思います。言ってみれば、リスクマネーを海外の投資家あるいは在日外銀が提供してくれていたんだということだと思います。それがどんどんどんどん引き揚げていっているということです。

 例えば、在日外銀の総資産がピーク時から二十兆円減っているということは、その分だけだれかが埋めなければいけないということですね。そうなると、当然のことながら、日本の銀行がそこを埋め合わせしなければいけない。そうすると、彼らがそこを埋めるとなれば、どこかから引き揚げてこなければいけない。結果的に、やはり中小企業にすべてのしわ寄せが行ってしまうということになるのではないかと思います。

 一方、株式の観点もそうですが、これだけ外国人投資家が日本株を売ってくるということは、だれかがかわりに買ってあげないといけないということになるわけですね。ついこの前までは、日本企業が敵対的買収にさらされるんじゃないかというような話をしておりましたが、今やそういったファンド勢も、自分が買った株をどこかに引き取ってくださいという話に変わってきているわけですね。そうすると、少なくとも、証券あるいは金融の世界で、海外に頼っていたリスクマネーをだれかが肩がわりしていかないことには、最終的には間違いなく中小零細企業にしわ寄せが行ってしまうということになろうかと思います。私はそれが一番心配です。

 実は、海外はもう既にその手を着々と打とうとしております。少なくとも、世界的に金融が今収縮する中で、やはり自国で残さなければいけない、そういった業種あるいは企業は、私は絶対的に守ることが肝心ではないかなと思っております。

 そういう意味では、先ほど私申しましたが、大手企業は何とかして自力で再生できる道はあるかもしれませんが、いかにこの日本の中小零細企業を守っていくか。ここを守らないと、次に、まあ何年か後には今回の危機を克服してまた再び成長の時代を迎えると思いますが、そのときに打って出る原動力となるのが、多分、技術力を持った日本の中小企業、零細企業ではなかろうかと思いますので、そこをやはり徹底的にセーフティーネットで守ってあげる、それが我々が考えなければいけないことではないかなと思います。

武藤委員 本当に元気になる皆様それぞれの御指摘に心から感謝を申し上げます。

 さまざまな形で今の中小企業を支える、それが、今の中小企業再生協議会にしても、今度の緊急保証にしても、やはり今の状況というのは常識ではできるだけ判断をせずに、大局的な皆さんの御見識をいただきながら、我々としてもしっかり頑張って後押しをしますので、今後とも、皆様、また御指導をひとつ心からお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

東委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、大変お忙しい中、私どもの急遽のお願いにもかかわらず快く応じていただきまして、また、先ほど来、すぐれた御卓見、そしてまた的確な御指摘をいただきまして、深く感銘をしております。いらしていただいて本当によかったなというふうに思っております。

 私は東京比例区でございまして、地元は江東区でございます。江東、荒川、墨田といいますと、中小企業が大変多くありまして、日本一社長の数が多い、そういった地域でございます。そこからも多くの悲鳴をいただいておりまして、そういう中から緊急保証制度等々を提案もさせていただき、今、大きな反響をいただいているところでございます。

 しかし、本日、この産活法の審議の前にということでお話を伺いまして、この産活法ももう少しいろいろ、その先を見通して、これをまとめた時点は昨年の時点でございましたので、もう一段バージョンアップをした内容がさらに必要だなという率直な実感を受けております。

 そこで、まず草野参考人にお伺いしたいのですが、先ほどお話の中で、ブラックスワンの出現に慌てず、セーフティーネットをしっかりと整備するというお話をいただきました。このセーフティーネットのあり方につきまして少しお話を伺いたいのです。

 もちろん、この産活法もその一つでございます。しかし、私、今実感しておりますのは、現下、特に中堅・大手企業の資金繰りが三月末は何とかいきました、しかし、その先、決算が発表された後に五月危機、こういったことも今飛び交っておりまして、懸念されております。中でも、中堅企業の資金繰りについて、サポートしてくれるところがない、ここは穴があいているという指摘を受けております。

 銀行側からは、当然、危機対応業務につきましても、すべての業種を対象に、金融危機のみならず災害とか原材料高とかさまざまな危機にも対応しなきゃいけない、そういう不安、言いわけのような声も聞こえてまいりますし、政投銀は大企業、また、当然、民間金融機関が中堅企業のところは担わなければいけないと思っております。まず、そういう網をしっかり整備しながら、後はそこを、さまざまな状況に応じてどう対応していくか、こういう流れではないかと思っているのですが、今後の資金繰りを円滑に行うための方策につきまして、お考えを伺いたいと思います。

草野参考人 高木先生のおっしゃること、そのとおりだと私は思います。

 基本的に、例えばここ半年ぐらいで上場企業で倒産しているケースを見ると、ほとんどが資金繰り倒産なんですね。要するに、最高益から一転して破綻というようなことが起こっているわけでございまして、これはやはり、先ほどから何度も私申し上げておりますが、リスクをとるという、リスクマネーを海外に依存し過ぎたのではないかと私は思っております。当然のことながら、日本の金融機関も一生懸命リスクをとろうとしているわけですが、例えば海外の投資家やあるいは在日外銀に比べると、そこまではリスクをとっていなかったということになろうかと思います。

 ですから、そういう意味では、基本的にやはりファイナンスの面、ここをしっかりとしてあげるということが肝要ではないかなと思います。

 それから、もう一つ私が心配しているのは、ここに来まして、それぞれ企業が自分の会社の存続を守るために、一生懸命リストラクチャリングをやっている。そのことによって、若い人材がどんどんどんどん会社を離れていっているということになろうかと思います。

 私なんかも考えることは、今、私の頭の中には、今回の危機の後にどうなるのかということです。これが何年続くかわかりません。例えば、ニューヨーク大学のヌリエル・ルビニという教授は、今回の景気後退は三年間は必ず続くだろうとおっしゃっています。V字形回復なんてとんでもない、U字形もとんでもない、L字形だと。先ほどのIMFもそうですが、ことしどかんと落ちて、来年底ばっていくということですね。

 私が海外からいろいろな話を聞いていると、もしかしたら、オバマ政権の第一期、この四年間は辛抱しなけりゃいけないのじゃないかとみんなが思い始めているということだそうです。そうなってくると、当然のことながら、海外の連中は日本株も買ってくれないし、あるいは在日外銀もリスクはとってくれませんから、ここは、いかに徹底的にまずファイナンスの面で応援してあげるかということではないかと思います。

 さらに、先ほど申しましたように、今我々が考えるのは、今回の危機が去った後、間違いなく世界はよくなると思いますが、そのときに日本が一番に出ていけるような体制づくりを今のうちにやっておかなきゃいけない。それは、先ほどから諸先生方がおっしゃっているように、ファイナンスの面だけじゃなくて人材の面でも今からしっかりと準備をしておく、そこへしっかりと投資をしていく、これがやはり我々肝要ではないかなと思います。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 ただいま、資金繰り、ファイナンスというお話もございました。

 そこで、今回の産活法の仕組みの中におきまして、こうした企業に対して大臣が認定をする、その認定を受けた企業でございますが、資金調達の円滑化を図るために、政投銀等の指定金融機関がこの法律に基づいて出資による支援を行う、こういう形になっておりまして、また、そこで損失が発生した場合補てんを行うという内容ですが、この措置も一年限りの時限措置という法律の内容でございます。それで足りるのかどうか。また、損失補てん枠につきましても、低利融資分を含めて最大で一兆五千億円という内容でございます。これで果たして足りるのか。そしてまた、認定企業の認定、対象企業のあり方、これについてどのようにお考えになられるのか。これを、佐伯会長、また藤本参考人にお伺いしたいと思います。

佐伯参考人 今先生おっしゃられたように、これからそういう、何兆円の金で足りるのかとか、いろいろなことがあると思う。

 それからもう一つは、再生をするための一つの問題は、へまをするとモラルハザードになる可能性がある。本来なら助けてちゃんと再生をすべきところ以外の、世の中というのはいろいろな、確率的には非常に悪い人間もいるかもしれませんので、そういう人がこれを悪用することになると困るなというふうに私は思っているんです。

 ただ、何としてでもいいところは救う。みんなで、いいも悪いも一緒に沈んでしまうようなことだけはしないで、地域の活性化のためにも、いいところは残して生き残っていくというのが一つの方法かなと。そういう意味で、やはり金融の支援というのがどうしても必要なんです。これは、各地方のそれぞれの金融機関なりあるいは政府系金融機関なり、それとの協調が、お金の問題も含めて、実際問題としてはかなり必要なんだろう、私はそう思っております。

藤本参考人 この分野は私は専門じゃないので余り大きなことは言えないんですけれども、地方でいろいろ見ていますと、先ほどお話ございました、目きき的な動きをしている地方の金融機関もあるような気がします。

 これは名前を申し上げていいのかどうかわかりませんが、例えば鹿児島銀行、農業生産法人の方にどんどんお金を入れていますけれども、彼らはノウハウを持っていまして、彼らが融資したところはうまくいっているというふうなことを聞いております。

 それから、先ほど言った改善活動を専門的に行う企業が出てきておりますが、やはりなかなか資金的に苦しいんですね。ただ、こういうところには、横浜信金が、神奈川県にあるカイゼン・マイスターという会社ですけれども、この会社に資金供給をする、いわゆる出資をする、こういった形の動きが出てきております。

 ですから、そういった目きき的な金融機関は探せばたくさんいらっしゃると思うんですね。それを発掘して、横展開をしていくというような形で、やはりまず現場、今までどちらかといえば、土地があればお金を貸すとかこんな話で、これだったらだれでもできるという話なんですけれども、現場力を見抜くというのはなかなか、金融機関の方々では鍛錬が必要だと思うんです。そこのところができる人たちをぜひふやしていただきたいなというふうに思っております。

 というのは、仮に会社がつぶれても、現場は残ることが多いわけですね。例えば、言いませんけれども、先般、大田区のある花形金型メーカーが倒産いたしましたが、実は、私の学生が二人、この会社に就職が決まっておりました。一人は、やはりやめておこう、つまり、会社の将来がどうかなというのでやめておこうと。もう一人は、会社は倒産したけれども私はこの現場が好きだということで残る、二十二歳でこの決定をするのは大変なことでありますけれども、しております。

 つまり、現場が残れば、そこがまた再生していく。そこまで見切った形での金融支援をぜひまず金融機関の方にしていただいて、その先に、そこでこぼれる部分についていろいろな形の公的な支援をしていただくという形で、やはり金融機関の方々のまさに目きき能力、これを何とか高めていく方法も同時並行的に、今緊急的にはとにかくまず資金繰りでありますけれども、より長期的には、そういったところをもう一回見直していただきたいなというふうに私は思っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 先ほど来、現場力というお話がございました。佐伯会長も、今回のこういう危機の間に技術開発をしっかりすべきであると。また、藤本参考人からも、こういう中で現場力を崩さない、ここをしっかりと維持する、むしろそこでインストラクター等を投入しながら改善を行っていくべきだ、こういうお話がございました。

 やはりこの間にも、技術開発、科学技術費をどこまで振り分けていくかとか、また経産省としてこういう予算をどう確保していくかとか、こうしたことが必要なわけです。先ほど、L字形、今もどすんと落ちて、ここから本当に低迷した時代が長く続きそうだ、どこまで続くのか、こういうお声がある中にありまして、例えば中小企業の三百社、私もそれにかかわった一人でございますけれども、こうした内容を、国が使ってみるとか、むしろこういうところの試作品とか、こういったことをしっかりやるべきだ、こういうお話がございました。

 こうした内容につきまして、佐伯会長、もしまた補足することがあられれば、また藤本参考人から、もっと国の政策としてこういうことをやってはどうかと御提案をいただけるようでしたら、お話をいただきたいと思います。

佐伯参考人 今先生から力強い御発言がありました。私も、技術開発に本当に携わっておりますので、もちろん、好きでやっているよということもありますけれども、開発をしないと、私の会社の中も、開発なければ成長なしという、小泉さんの言葉じゃないですけれども、ちょっとまねたそういう標語を張ってあるんです。開発がなければ会社の成長はありませんよということで、やはり現場の力も必要だし、設計力も、そういう意味で、日本の中小企業、先生も御存じのとおり、結構いい技術を持っているはずなんです。

 ですから、それを何とか、ちょっと手を引き上げてもらうだけでかなりの数の中小企業が生き延びるというふうな、今、本当の政策のうまみがあるといいますか、実現性のある時代だと思いますので、ひとつ今後ともよろしくお願いいたします。

藤本参考人 今、世界じゅうである種の我慢比べになっていると思うんですね。あるいは、素潜り競争じゃないですけれども、要するに皆沈んでしまったわけですね。プールの下に皆沈んでいる。この状態は皆苦しいわけですけれども、このまま沈んだままのところ、時が来ればそこから勢いよく跳び上がってくるところ、跳躍力、復元力のあるところの差が、今はわからないんですけれども、これがだんだんわかってくるんだと思うんですね。ですから、そうやって我慢をしている、技術力、人材力あるいは現場力を蓄えながら残しているところ、そこを目きき的に、集中的にある意味では助けていくということ、これが次の跳躍につながっていくんじゃないかなというふうに私は思っております。

 その意味で、例えば、内需拡大という話がございますけれども、今、環境関係の投資にどんとつけようじゃないかという話があると思いますけれども、できるだけ難しいものにチャレンジするような方向、特に、やはり環境問題というのはずっと続いておりますから、さはさりながらこれは問題だよという形で、難しい課題を世界じゅうでやりましょうと。ですから、これは世界に働きかけて、みんなで、環境問題というのはどんどん進んでいくのであるから、難しい設計をひるまずやっていかなきゃいけないんだと。

 そういったものに内需拡大の資金をつけていくということをやっていくと、これはやや調子のいい話ですけれども、単に内需を拡大するだけではなくて、それが将来の日本の競争力につながっていく。つまり、実は、こういう難しいものになると日本は強いわけでありますから、どさくさ紛れに、内需拡大をしながら、将来の国際競争力の改善と一石二鳥でやっていくというようなことをやっていただきたいと思っております。

 もう一つ、いざというときの復元力ということですけれども、いざとなれば、今出ていってしまった人がまた戻ってきます。戻ってくるときに、いかにスムーズに職場に戻ってこられるか。やはり今切られちゃった人は、もうだまされぬぞといって戻ってくるわけですよ。この人たちをいかに縁をつなぎとめていくかというときに、例えば、私ら、今厚労省さんと一緒になってジョブカードというのをつくっているのがありますけれども、あれの使い方をもっと工夫していただきたいと思っているんですね。

 つまり、あれは、これから入ってくる人に訓練するときの道具として考えられているんですけれども、今問題なのは出ていく人ですから、出ていく人に、やはり全員残すわけにいきませんから、でもどうしても縁を残したい人たちに、申しわけない、しかしこのジョブカードに丸をつけて、通信簿ですよ、あなたはこの職場で仕事ができる人だというところに丸をつけてもらって、班長さんの判こを押してもらって、悪いけれどもこれを持って出ていってくれと。何かのしをつけて出ていけみたいな話だけれども、今度戻ってくるときにこれを持ってきてくれたら、つまりパスポートであるから、悪いようにはしない。こういう形で縁をつないでいくというようなことをやっていくだけでも、次の回復期に、戻ってくる人たちがそのまま即現場に入って即戦力で動いてくれる。

 ここまで考えておく必要があるんじゃないかと思って、例えばジョブカードなんというのは、出ていく人たちにパスポートとして渡していく。これは今やっておかないと、もう間に合わないんですね。ぜひこれをお願いしたいなというふうに私は思っております。運用の問題であります。

高木(美)委員 大変貴重な御提言をいただきまして、ありがとうございました。さすが、つなぐことのプロでいらっしゃるなと思った次第でございます。

 ただいまも、これから難しい問題にできるだけ挑戦をした方がいいという御提言もありました。また、技術開発をさらにやるべきだというお話もいただきました。一瞬私も、私の先輩の斉藤議員が今環境大臣でいらっしゃいますので、やはりCO2削減の厳しい中期目標をしっかりと立てて、そこに向かってまず日本が挑戦するということがあえて大事なのかなということを深く感じた次第でございます。

 もうお時間も迫ってまいりますので、最後に草野参考人にお伺いしたいのですが、今後、日本はどのような経緯をたどって、どのような回復の道筋をたどっていくのか、また、その途中にどういうことが考えられるのか、それに対する対応も含めまして、お考えを伺わせていただきたいと思います。

草野参考人 今、この三月に株価が若干上昇しておりまして、マーケットでは、これですべて危機が去ったのではないかという楽観的な雰囲気が広がっているんですが、私は、もう少しやはり危機感を持つべきではないかなと思っております。

 私は長年海外投資家動向を見ておりますが、実は、外国人投資家が日本株を本格的に買い出したというのは一九八〇年のことなんですね。その前に一体に何があったかといいますと、二度のオイルショックがあったということです。その二度のオイルショックを果敢に乗り切って、世界の中でいち早く回復の道筋をつけた日本を、外国人たちは積極的に買い出したということなんです。

 ですから、私は、今回もそのような道のりをすべきではないかと思います。もちろん、海外の状況は、まだまだしばらく困難な状況が続きます。先ほどブラックスワンというお話をしましたが、何が起こるかわからない、我々が今まで考えてきた常識では考えられないことが起こるかもしれませんが、しかし、それをちゃんと克服できるのは我が国日本ではないかなと思っております。もう一度、七〇年代のあの二度のオイルショックを勝ち抜いて、立ち直って、そして経済を再生したというその底力を、今回の危機の中でも必ず見せつけなければいけない、世界に向かって見せつけなければいけないと思います。

 そういう意味では、この危機の後に一体日本はどの方向を向いていくのかという大きな目標を今は立てるべきではないかなと思います。先ほどからも中小企業のお話がいっぱい出ておりますが、そういう大きな目標ができれば、当然のことながら、みんなはそれに向かって発進できるということですから、それをやはり国が打ち出してこなければいけないのではないかなと思います。

 日本には、先ほどからお話ありますように、技術力も人材力もあります。そういった意味では、大きな力を私は持っていると思います。自信さえ持って、その道のりさえちゃんと明確に出せば、オイルショックから立ち直った日本をもう一度再生できるように、そんな動きをこれから間違いなくとって、そして世界をリードできるんではないかなと思います。

高木(美)委員 大変力強いメッセージをいただきまして、ありがとうございます。

 私も、今こうして議員として選ばれている身といたしまして、国のまた次の大きな飛躍を目指して全力で働いてまいりますことをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。

東委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 きょうは、質疑を含めて、本当にすばらしいお話を各参考人の皆さんにいただきまして、ありがとうございます。いろいろなお聞きしたいことがありますので、答えも簡潔にお願いできればというふうに思います。

 最初に草野先生に一つお聞きしたいのは、先ほども、経済、金融がいつ回復するのかわからない。そして、先ほどの資料にもIMFの数字があって、日本が非常に悪い。これはたしか、簡単に、多分、輸出依存の経済が、今後、日本にとって世界の情勢が不利になるからというのをちょっと触れたと思うんですが、それも含めて、いつ回復するかわからないというお話ですけれども、いろいろ百年に一度の景気不況だというふうに言われながら、意外と、例えば自動車産業とか一番打撃を受けているような人たちと話しても、割と、ことし後半ぐらいに底を打つんじゃないか、そしてそこから回復のスピード感は緩やかだろうというようなことも現場から聞こえてくるので、その辺はどうお考えなのかというのを草野先生にお聞きしたいと思います。

草野参考人 最近、アメリカの経済指標もそうですが、我々はごまかされている部分が随分あるんです。

 なぜかと申しますと、例えばアメリカの住宅の数字が出ましたが、二月の数字は一月よりプラスになっているということで、みんなこれで住宅はよくなるんだと思っているんですが、しかし、前年同月比で見ると四五%だとか、そういう数字なんですね。大きな数字です。要するに、どかんと落ちて、わずか上がっているだけなんです。例えば、株価でもそうです。シティの株価が三倍になったと大騒ぎしていますが、わずか一ドルの株が三ドルになっただけなんですよ。そこをやはり我々はしっかりと見ていかなければいけないと思います。

 それで、先ほど自動車の話がありましたが、私は、残念なことに、しばらく回復はないと思っているんです。

 なぜかといいますと、ここ数年間がやはり異常だったと思わなきゃいけないと思うんですよ。先ほど私が申しましたようなあんなスキームで金融が動いていたわけですから、そういう意味では、非常に金融のバブルが起こっていたわけですね。アメリカでは、本来は家を買えない人までが家を買って、車を買えない人までが車を買って、これは全部借金なんです。何でそんなことができたかというと、ああいったスキームで、安易な貸し出しが可能だったということですね。例えば、ファンド勢もそうですよ。ヘッジファンドもあるいは買収ファンドも、もとのお金の何倍ものお金を借りて投資する、それが今全部崩れているということですね。

 ですから、逆に言えば、この数年間の事態がやはり異常だった。だから、そこが回復するのはやはり非常に難しいと私は思います。これが一点。

 それから、どうしてIMFが日本経済をあれほどまでに厳しく見ているかといいますと、先ほどおっしゃいましたように、日本はやはり輸出依存だ、世界が同時不況になれば日本の影響は大きいと見ているのが一つあります。

 もう一つは、私が考えているのは、日本の経済のシステムだと思っているんです。すべてを日本でやってしまっているということなんですね。部品から材料から製品まですべて一貫生産していますから、製品が売れなくなったら全部がだめになってしまうということなんです。

 例えば、パソコンを例にしますと、日本からいろいろな部品を韓国や台湾に輸出する、あるいは半導体製造装置を輸出する。彼らはそれを利用してパソコンの部品をつくる。それを中国に輸出して、中国がそれを組み立ててアメリカに売る。そうすると、製品が落ちれば、それぞれ各国はそこの部分だけが影響を受けるわけですね。

 ところが、日本は、材料から製品までをすべてやってしまっていますから、全部が打撃を受ける。そういう国際分業体制の中に入っていないということをIMFは指摘しているんです。ですから、今回でもそうです。自動車がだめになれば全部がだめになってくる。そういう影響がやはり出ているんではないかなと思います。

 だから、そういう意味では、世界はまだ分業体制の中でいっているので比較的影響は軽微ですが、日本の影響が一番大きいというのは、そういうところに原因があるんではないかなと思いますね。

北神委員 ありがとうございます。

 アメリカの経済がやはりまだ見通しが不透明だ、そして、そういう中で、日本というのは国際分業体制がまだ確立されていない、あるいは輸出依存で来ている、そういう話を伺って、見通しがなかなか立たないという厳しい状況だというふうに思います。

 その中で、大きく分けたら、政治としては、経済対策として、一つは、会長がおっしゃっていた資金繰りを含めて、止血対策ですね。今血が流れているから、そこをとめないといけない。もう一つは、さはさりながら、皆さん一様におっしゃっている、不況が終わった後に、ちゃんと日本として今一番強いところを強化する。この二本立てでやらないといけない。余り無駄な政策に税金を使うよりは、こういったところに極力限定すべきだというふうに思っております。

 そういう中で、中小の資金繰りで一つお聞きしたいのは、緊急信用保証あるいは公的金融。我々、何か割と同じように扱って、緊急保証枠は二十兆円に拡大した、公的金融の方は十兆円に拡大している。私もこの前質問させてもらったんですが、信用保証の方はみんな結構利用している。枠からいえば、三分の一以上既にもう使い果たされている。一方で、公的金融の方は、これは枠との比較が果たして適当かどうかというのはいろいろな議論がありますが、割といろいろな声が上がっていて、公的金融の方は余り伸びていない。枠十兆円でいえば、まだ十分の一以上しか使われていない。

 こういうので、中小企業の現場の声として、やはり日本政策金融公庫というのは使い勝手が悪いとか、あるいは行革、民営化の中でちょっと遠い存在になってしまったとか、そういう御意見があるかどうか、ちょっと会長の方に伺いたいと思います。

佐伯参考人 今、北神先生おっしゃったような資金繰りというのは中小企業にとって死活の問題、これは当然のことでございます。

 保証が今、最初のものを合わせますと三十兆だと枠を言っているんですけれども、これは真水ではないんですね。枠がそれだけ、二十兆円ありますよ、つくりますと。実際二十兆円出すわけじゃないんですけれども、保証協会が保証しなければ借りられないんです。今どんどんふえているとはいうものの、ちょっとこれは私の個人的な意見ですけれども、二次補正の二十兆円、もしかしたら使い切れないんじゃないかと思う。貸さないんですもの、保証協会が。あるいは銀行が、そんなに返す能力もないのに保証しませんよと言えば、使えないだろうというふうな感じもします。

 ですから、一つは、いろいろな食物でもさじかげんというのがありますね。塩をちょっと入れるか砂糖を入れるか、それでうまくなるかうまくならないか。例えが悪いんですけれども、今は保証協会が、県によって違うんですけれども、かなり塩をいっぱい入れて、しょっぱくて食べられないくらいの味になっているんじゃないか。私は、もうちょっとさじかげんを甘くすべきではないか、それでかなりの企業が救われることがあるんではないか。

 というのは、一つは、不良債権比率といいますか、小渕総理のときのあれも、九%くらいになりましたか、何かありました、何十兆円。そうすると、大騒ぎするんですね、八%だ、九%だ、一〇%。ところが、考えてみれば、残りの九割はそれで助かっているんです。試験でいえば、九十点とったら大変な優、マル優ですよ。それを、ちょっと不良債権が八%だ、九%、多いから、あるいはあの協会は不良率が多い、こっちは少ない、あるいはそれにびびっちゃって余り貸さない。これは中野先生の前だから余り私は言いませんけれども。宮城県の話も、このごろ大分よくなったんです。

 ですから、やはり、やればできることは、さじかげんなり考え方で大分違うんじゃないかなというふうに思っています。

 それから、もう一つ。簡単に言います。政府保証の方の緊急対応が使われないのはどうなのかということについてはちょっとなぜだかよくわかりませんけれども、私は、国民金融公庫、昔の国金は非常に評判はよかったし、零細企業にとっては物すごい価値があったと思うんです。ですから、今もそのまま残ればどうってことはないんですけれども、多分、名前がちょっと大きくなり過ぎ、国金というと行きやすかったのが、政策金融公庫となっちゃって、ちょっと名前で入りにくくなったのかなというふうな感じは持っていますけれども、現実には、昔の国金といいますか国民金融公庫の時代を受け継いで、物すごくいい、しかもスピーディーな組織だ、中小企業にとってはありがたい組織だと私は思っています。

北神委員 ありがとうございます。

 信用保証制度の枠だけじゃなくて、やはり使い勝手がよくならないといけない、これは皆さん一様におっしゃっていることですし、政策金融公庫ですか、これは余り変わらない、名前の話がありましたけれども、そんなに何か使い勝手が悪くなったという気はされないというお話だったと思います。ありがとうございます。

 次に、藤本先生にお聞きしたいのは、この不景気が終わって割と常識的な世界に戻る、草野先生が、今まで異常だった、だから、それが終わって、これから常識的な国際分業の世界に入っていくという話であります。先ほど非常に力強い話を草野先生からいただいて、国のあるべき姿という話ですが、これも非常に壮大なテーマですが、経済だけじゃなくて、私なんかは、やはり世界の中の日本である。日本が二千年の歴史の中で、割と、島国であるけれども時々非常に大胆に国を開いた、大化の改新から、戦国時代も一種そうですし、明治維新、戦後と。そのときに日本人の最高の実力というものが発揮できて、いい意味での世界との緊張感があるし、みずからの国に対する誇りみたいなものも出てくる。これが、日露戦争とかバブル経済で勝ってしまってちょっと緩んでしまうと、おごり高ぶったりしたりする。そして、そこで世界にちょっとたたかれて、逆に萎縮してしゅんとしてしまう、今そういう時期にあるというふうに思います。

 そういう、世界に雄飛をしなければならない。中小企業も例外ではないし、国際分業体制の中にいかに中小企業をこれから、やはり系列というのは限界が来ている。これは、我々も下請いじめをやるなとか言うけれども、とても景気が異常な時期で、よかったときも下請というのはなかなか、お金がそっちに回らなかったというのが現状です。

 ですから、そういう中で、藤本先生のおっしゃる人材育成が大事なんだと思います。師範学校をやって中小企業にも伝達すると。先生のおっしゃるものづくり、設計立国とおっしゃいますが、それは要するに、お客さんが何を欲しているのか、何がお客さんにとって付加価値であるかということを情報として持って、それを物やサービスに落とし込んで、その物やサービスを今度は市場に売り出す、これ全体のことをおっしゃっているというふうに論文とかで拝見させてもらっているんです。これは、まさに中小企業が今弱い、人材が足りない。特に世界の市場ですね。情報がない、人脈がない、どこから始めたらいいかわからない。

 その中で、確かに今、経済産業省が三月ぐらいから海外の販路の拡大ということをやり出して、地域の経済産業局が、中小企業で海外に興味があるところに、ジェトロとか中小機構とかを使ってできるだけノウハウを伝える。その中に、さっき先生がおっしゃった、民間のOBも活用する。これは方向性として非常にいいと思うんですが、もっと民間のOBが積極的に最初から最後まで、というのは、最初のものづくりの設計の話の中で、お客さんのニーズというものをよくわからないといけない。ということは、中国とかインドネシアとかベトナムの企業とかマーケットのどういうニーズが必要かは、やはり民間のメーカーとか大企業のメーカーとか商社のOBで、そこで十年、二十年仕事をされた方が一番よくわかっている。ジェトロとかそういうところが余り表に出るよりは、そういった人たちが直接中小企業に伝えるべきだというふうに思うんですが、その点についてのお考え、そして、おっしゃっていた師範学校のスキームの中でそういうこともできるのかどうかというのをお聞きしたいと思います。

藤本参考人 おっしゃるとおりでありまして、設計というふうに申し上げましたが、設計というと、何か技術開発センターでこもって設計をやっている人だけのことを思い起こしがちなんですけれども、そうじゃないわけですね。設計というのはあらゆる人工物が絡むわけでありまして、売り場の設計をやるのも設計であります。ビジネスモデルの設計もあります。そして、工程の設計、現場の設計、製品の設計、あらゆるところに設計がございます。今おっしゃったのは、いわゆる販路の設計ですね。実は、シュンペーターという人が昔これを言っておりますけれども、今言ったのは全部、新設計、彼は新結合と言いましたけれども、新しい設計を行って革新を行うということであると。

 そして、おっしゃるように、よい設計というのを決めるのはお客さんです。技術屋さんが勝手に決めて、おれの設計はいいぞと言ったってだめなんですね。それでやって、何か過剰設計でやられているものがいっぱいあるわけであります。設計はお客が決めるわけであります。

 ですから、お客さんが、例えば日本がすり合わせ設計が得意だとすれば、やはりすり合わせが違うな、おれは一〇%高くてもこれを買うよと一言言ってくれれば、これはブランドが成立して、日本のものが海外で売れます。そのためには、まず、いいものがわかるお客さんを海外にどんどんふやしていく努力をしなければいけない。ただ、漫画とかアニメーションはそれができている。自動車もある程度それができている。オーディオでは失敗した。あるいは携帯でも失敗している。あるんですね。

 ですから、まず向こうに、日本のいいものをわかってもらうお客さんを広げていく、これも実は設計活動なんですね。とにかく、形があろうがなかろうが、サービスであろうが製造業だろうが構わない。要するに、よい設計、よい流れで世界じゅうのお客さんを喜ばせるという体制をつくっていくために、おっしゃるように、人材は技術者だけじゃないんですね。

 今おっしゃった中には商社の人も入るでしょう。何がしか新しい設計を考えられる人たちをどんどんどんどん中小企業の、今まさに、特に資金繰りと受注確保で社長さんの頭はいっぱいでありますから、その間、現場がお留守になりますね。ここのところを補ってくれる人を助っ人として呼んでくる。この助っ人を呼んできた授業料はお国が払いましょうという、こういったものを含めて、つまり、技術というのを狭く見ないで、大きく見ていく必要がある。

 そう見ますと、実は農業も全部入ってきます。この間、熊本であるサミットに出てきましたけれども、これに例えば財務局、農政局、経産局、みんな来ていました。要するに、もうそういうことを言っている場合じゃないわけですね。農業でも今、打って出るものがいっぱいあります。今ニンジンをつくって海外にどんどん輸出している農業生産法人もあります。例えば、熊本であれば水が一億トンばかり余っていますが、中国に水を輸出したらどうだと。彼らは水が本当に足りませんからね。あるいは、林業でもまだ勝負できる。つまり、今までもう勝負できないと思われていたものが、全部、設計を変えていけば勝負できるようになりますね。そういうところに人を、自由自在に業種を超えて動かせるようにする。

 例えば、先ほど言いました、熊本銀行の頭取さんがやってこられて、うちは農業生産法人にお金をつけようと思っている、ただ、どうも経営者が足りない、今、例えばトヨタとかああいうところに熊本の人がいっぱいいるけれども、あの人たちを連れて来れないか、紹介してくれないかという話がありまして、私が実は一人紹介しました。トヨタ系の改善のマイスターと言われる人が今鹿児島銀行に行って、多分その人は農業生産法人の支援をしようとしている。つまり、完全に業種の壁を越えて人が動くようになってきている。ですから、設計というのはそういうことじゃないかと私は思うんですね。

 ですから、先生がおっしゃるようなところも含めて、よい設計、よい流れでお客様を喜ばせる、これだけであります。これができる人材は日本全体に今寝ておりますから、この人たちを発掘して、そして先生として復活していただく。三日働いて四日釣りをして暮らせればいいんですね。三日間先生をやっていただいたら四日釣りをして暮らすというのが、私はいい六十代の仕事だと思っております。七日間釣りをして暮らす人と五日間こき使われる人に今分かれておりますけれども、実はその真ん中に六十代にとってのよい暮らしがある、しかもその人たちが日本を変えていけるというふうに私は思っております。

北神委員 もう時間ですので終わりたいと思いますが、本当にいい話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。

 本当に民間のOBは地域にもたくさんいるんですね。我々も支援をいただいたりするんですが、みんな本当に日本のためを思っているし、元気もありますので、そういった方をぜひ活用して、日本の経済の復活のために我々も頑張っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

東委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは、三人の参考人の皆様には、大変お忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございます。

 最初に、草野参考人の方にお聞きしたいと思います。

 きょうの資料でもエキゾチック金融の問題、これもあらかじめ大変興味深く読ませていただきましたが、実は、予算委員会に来ていただいた水野和夫さんにしても、あるいは神谷秀樹さんにしても、きょうの草野参考人のお話と非常に共通する部分も多いなと思いながら聞かせていただきました。

 私、最初に伺っておきたいんですが、やはり自動車にしても住宅にしても、実際には二〇〇七年の春ごろから、サブプライムを組んでのローンが次々と問題を起こしてきたということはわかっていたわけです。その中で、巨大複合金融機関の、バンク・オブ・アメリカにしてもシティにしても、サブプライムエクスポージャーの分とかサブプライムの関連損失とか、それからファンド向けの業務であるプライムブローカーの保有している額についてでも、これらはまだ姿の見える範囲で問題のある部分だと思うんですが、CDSの方になりますと、全くの金融の地雷という、どこでどうはじけてしまうかわからないという非常に危険な要素を持っていると思うんです。

 この世界の巨大複合金融機関の今日の状況といいますか危険ぶりといいますか、これについて最初に伺いたいと思います。

草野参考人 どこまでが危険なのかが実はだれもがわからないというのが今の現状だと思うんですね。

 なぜそうなっているかといいますと、例えばアメリカの銀行ですが、つい先日、ガイトナー財務長官が、今から金融機関の健全性のチェックに入ると言っているんですよ。ということは、何もつかんでいないということです。

 私は、この健全性チェック、ストレスチェックもちょっと甘いんではないか、その内容を見まして。だれがチェックするかということが書いてありまして、それは銀行がみずからチェックしろ、その結果を財務省に報告して、財務省がチェックするということになっているんです。御存じのように、日本の九〇年代というのは、徹底的に健全性チェックをやったんじゃないでしょうか。

 そういった意味で、何かアメリカが非常に進んでいるかに思えますが、私は、九〇年代の比じゃないと思いますよ。相当おくれていると思います。何が早いかというと、一点だけです。危機の進行度が早いということです。この危機の進行度が早いのは、先ほどから私が申しますように、エキゾチック金融危機とプレーンバニラ金融危機の違いなんです。

 先日、オバマ大統領が就任演説で、九〇年代の日本を参考にして、今ここでやらなければ九〇年代の日本のように失われた十年になると言いましたが、私は、九〇年代の日本と比較しているようでは、オバマ政権の危機感は足らないと思っています。我々、九〇年代はラッキーだったんです。今のアメリカと比べて、九〇年代の日本の危機は非常にラッキーでしたと私は思っています。

 まず一つは、当時日本は、今もそうですが、個人は貯蓄をいっぱい持っていたんです。アメリカは借金だらけなんです。これが違います。

 日本は債権国でした。ですから、幾ら赤字国債を発行しても、国内で全部消化できました。アメリカは債務国ですから、海外に頼らざるを得ないですね。

 それから三つ目は、日本の場合は、企業が債務の当事者だったわけです。今回、アメリカは個人なんです。特にサブプライムローンなんというのは、何百万人いるかわからないという個人が対象になっているわけですね。

 さらに、最後は、先ほどから何回も言っていますが、日本の金融危機は、不動産融資をベースとした、ある意味簡単な金融の不良債権なんです。

 今回は、こういったデリバティブやあるいは証券化商品が絡んでいますから、今までだれも経験したことがないんです。我々日本は、過去のいろいろな経験から、十年はかかったかもしれませんが、克服できたんです。ところが、アメリカは九〇年代の日本より相当深刻な状況にあるんではないかと私は思っているんです。

 今のこの時点で、アメリカの金融機関がどれだけ損失を抱えているのかをだれもがわからないというところが問題じゃないかと思います。これは全体像を言うしかありません。全体像しか言えません。

 実は、去年の十月にイングランド銀行が、どのぐらいの損失を抱えているのかという推定値を出しています。この推定値の中には日本とアジアは入っていません。アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、これだけです。これで、イングランド銀行は、何と二兆八千億ドルの損失を抱えているということを言っているんです。ところが、みずほ証券さんのクレジットアナリストが、アメリカの保守的な財務をやっているところを基準にして査定をし直したら倍になると言っているんですよ。

 ということは、今、アメリカの金融機関で四兆ドルの損失を抱えている、ヨーロッパの金融機関で二兆ドルの損失を抱えているというのが、我々、外人たちとしゃべっていると常識になっていますから、そういった意味では、非常に危険性が高いと思います。

 なぜ政策当局がわからないかというと、今回の危機がそういった証券化商品ですから、値がつけられない、幾らなのかわからない。さらに、ここへ来て経済が悪化していることによって、新たな不良債権も発生してきているわけですね。企業向け融資とか不動産向け融資とか出てきている。さらに大きいのは、こういった企業が簿外の資産を持っているということなんです。これが把握できていません。バランスシート上であれば何とか見に行けますが、簿外の子会社がどれだけ持っているのかというのはだれもがわかっていない。そういった意味では、当局もわからないというのが本音じゃないでしょうか。

吉井委員 本当に、私もそういう状況なんだろうと思っているんです。

 問題は、要するに、LCFIにしてもそうですし、それからアメリカの自動車などを中心とした商品にしても、だれがファイナンスしてきたかという問題があるんですね。

 日本の輸出産業の場合、随分黒字を生み出しました。その黒字分が日本の国内で税で還元されるなりほかの形で、雇用の安定で還元されるなりしておれば、内需がしっかりしていって、この不況の中でもまだ立ち直っていくという点では力になったと思うんです。その点では、この黒字分もそうだし、この間の超低金利政策によって、円キャリートレードなどで日本自身がサブプライムを初めとするリスク商品へ流れる金をファイナンスしてきたという部分がかなりあるんじゃないかと思いますが、この点についてのお考えを伺います。

草野参考人 基本的に、意図したわけではなかったと思うんですね。

 ただ、今のアメリカはゼロ金利になりましたが、今回FRBが金利を下げる前には、五%以上の金利があったわけです。日本はゼロ金利ですから、その金利差に注目して、金利差をとりにいこうとするのは当然の流れだと思います。ですから、そういう意味では、場合によっては、日本がゼロ金利政策あるいは量的金融緩和策をちょっと続け過ぎたかな、それはあろうかと思います。その結果として出てしまった。

 だから、ここのところをFRBの前のグリーンスパン議長あたりが、当時、アメリカがこれだけ金利を上げているのに長期金利が上がらない、これはほかの国からお金がいっぱい入ってきたんだ、こういうことを言っているわけですが、彼は、なぞだ、なぞだと言っていますが、その一因であったかもしれません。しかし、それは、我々日本が意図してやったわけではないと思うんですね。それを今になって、何か日本が意図したようなことを言われるのは筋違いだろうと私は思っております。

 しかしながら、結果的には、今おっしゃっているように、そういった流動性が非常に供給されていたことは事実であって、家でもそうですね、本来持てない人が持ってしまったんです。車でも、買えない人が買えたんです。あんた、こんなに大きな家を買うのならいい車を買いなさい、こんな家に住むんだったら株を買いなさいと、どんどん買っていったわけですね。これは全部借金なんですよ。私は、はっきり言って、ここの数年間というのは、クレジットバブルだという言い方をしていますが、借金消費と借金投資に支えられていた、そういうふうに理解しています。

吉井委員 輸出による黒字分なんかが本来はもっと国内で還元されて内需を支える力になっているということが、今日の危機の時代を早く乗り切る上でも必要であったというふうに思っております。

 次に、佐伯参考人にお伺いしたいんです。

 私、佐伯さんの御本なども読ませていただいておりまして、東北大学の電通研の方で勉強されたりとか、私も若いころ、集積回路をつくっていく時代のころは、あの研究所に小野寺先生がいらっしゃって、直流スパッタリングで金属薄膜とか、絶縁薄膜だったらRFスパッタリングとか、随分先生のところへお訪ねして教えを請うたりしたこともあっただけに、大変、技術の分野の同志の思いで、きょうはお話を聞かせていただいておったんです。ただ、本当はそのお話を伺うと、とても一時間や二時間では尽きませんので、きょうは、全中の会長としてのお考えを伺っておきたいんです。

 書いていらっしゃったものにもあるんですが、中小企業の研究開発とか技術開発の支援など、やはり政策経費の面での予算を拡充することについての御意見とか、それから、述べてもいらっしゃるんですが、責任共有制度になってから一般保証の方で保証承諾が落ちて、中小企業にとっては随分資金繰りが大変になっているということについての御意見なども読ませていただきましたけれども、最初に、この点についてのお考えというもの、御意見を伺いたいと思います。

佐伯参考人 今、先生がおっしゃったように、中小企業のいろいろな意味の資金繰り、特に大企業、銀行としても本音を言えば、中小企業にちまちまと貸すよりも、上場しているところにどんと一発やった方が楽だろうと思います。

 でも、それでは日本は救えないと私は思うんですね。日本全体の今後のことを考えれば、やはり中小企業を今生かさないと、結局は大企業もだめになるんじゃないかというふうに私は思っております。

 特に、中小企業に国が今いろいろな施策で、二次補正なり、さらに今後のことも含めて非常に期待はしておるわけですけれども、全国中央会の会長として、いろいろな予算をやって、いいなと思っても実際は大企業に行っちゃうということを一つ懸念しているところです。

 それは、運用の面があると思います。中小企業に行くように、何らかの歯どめといいますか、うまいことが、わかるようなことがあるだろうと思いますので、我々としても、知恵を出しながら一緒に努力してぜひいいものを開発していきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

吉井委員 あわせて、全中の方から、ことし三月の十一日にも要望書を出していらっしゃいますけれども、この中で、公共事業の前倒し並びに追加を早急にお願いしたいということで出しておられることと、それから官公需法を踏まえて地域中小企業の受注機会の確保に十分配慮してもらいたいと。

 実は、これはこの間も国会でも取り上げたんですけれども、国の方でも、効率化ということで、要するにシステム設計から、そのシステムに応じた機器を入れて、システムの消耗品まで大きいところが入ってきてどんととってしまって、なかなか、官公需の分離分割発注どころか、逆の方向へ行ってしまっている、官公需法がおろそかにされているということを取り上げました。

 国からいきますと、国の出先さらに地方へと進んでいくと、実のところ、不況の中で中小企業は今一番仕事が大変というときに逆の道に行ってしまいますから、この点についてのお考え、そして、あわせて中小企業の雇用安定助成金についてのお考えについて伺いたいと思います。

佐伯参考人 今おっしゃったように、官公需の需要というのは中小企業に非常に大切なことでございます。

 ただ、我々全国中央会でも、官公需適格組合を推進していただきたいということをずっと要望しているわけで、我々が努力をしてちゃんとした適格組合をつくっていって、そこを活用していただく。ただ、いろいろな問題があるんですね、自由競争の価格が安いところへいくところがあるとか。ただ、やはりせっかくまとまって官公需適格組合というのがあるものですから、そこをぜひ活用していただきたいなというふうに思います。

 それから、予算の前倒しという点につきましては、私ども申し上げているのは、ちょうど端境期になるんですね、四月から六月というのは。ですから、そこら辺で、我々が見ていると、予算は成立しても実際動くのが七、八月になって、それをぜひ前倒ししながら、切れ目のない支援策をお願いしたいというようなことでございます。

吉井委員 次に、藤本参考人にお伺いしたいと思います。

 構想力とか設計力、おっしゃったことは私も大事なところだというふうに思っておるんですが、同時に、この設計力というものがやはりものづくりの技術の力と現場でうまく結びつかないと、私は、かつて、高速増殖炉「もんじゅ」の温度計のさや管のところでナトリウム漏れを起こしたとき、あれを随分調べたことがあるんですけれども、実際のさや管をつくっていたのは、大田区の町工場のたくみのわざなんですね。

 ところが、設計者の方は大学を出てきた技術屋さんで、最近ですとCADシステムだとか、大体それでできたらうまいことできるという発想があるんですね。しかし、実際には、経験を通して、そんなことをやったら、水の流体の中であれ液体金属の中であれ、振動が生じると。そのときにテーパーをどれぐらい切るかとか、これはやはり実際に現場で物をつくっている人の感覚からするとわかるわけですね。

 それがさっぱりわからないまま、あれは東芝だったと思いますが、技術屋さんが現場へ行って、何としてもこれをやれと。現場の方は、自分の実際に使っている技術からして、それじゃ必ず事故を起こすと随分主張したのに、結局、大企業の力でといいますか、力で押し切ってしまっているんですね。その結果として、高速増殖炉「もんじゅ」の事故を引き起こしてしまいました。

 そういう点では、現場の技術の力というものを、どれだけこの不況の中でもきちんと維持し、そして発展させるか。これは構想力、設計力も大事なんですけれども、同時にそれと結びついた現場の力を残さないと、私はこの間、大田区の方で技術屋さんと、実際ものづくりをやっている方と話していましたら、土曜、日曜、二日と続いただけで、月曜日に最初に機械を回したとき、ミクロン台のオーダーの誤差、なれてくるとわかるんだけれども、二、三日休んだだけで狂ってくると。それぐらいやはり現場はすごい力を持っているんですね。

 ですから、私は、どんな不況のときでも一定の仕事量を回して、仕事をしないと技術は、新しい技術者も育たないし、現に技術を持っている人もうまくいかない。そういう点で、設計力とあわせた現場の力というものをどう発展させるかということについて、藤本参考人の御意見を伺います。

藤本参考人 全くおっしゃるとおりだと思います。技術的なバックグラウンドをお持ちの御発言だと思います。

 我々は実は今、ものづくり経営研究センターというのをやっておりますが、我々がものづくりと言っているのは、まさに物を削るというものが当然入ってまいります。我々は情報転写と言いますが、設計情報をつくり出すということ、そしてそれを転写して、流れをつくってお客様に届けて、お客さんが喜んで何ぼと。これが全部入らなければものづくりではないから、逆に言うと、販売は当然ものづくりの一部である、こういう考え方で今我々は大学の方で研究を進めております。

 全くおっしゃるとおりでございまして、実は、この間、失敗学の畑村先生とお話をして、大分お酒も飲んだんですけれども、あの方も技術屋の出身ですけれども、君、やはり物にさわってなきゃ実際設計はできないよと。私も全くそのとおりだと思います。

 ですから、先ほど言いましたように、設計というのは現場の設計も全部入りますので、一気通貫で、よい設計をしたら一気にそこからお客さんまでつないでいくということ、これができる現場が大事だというのは、全くおっしゃるとおりだというふうに思います。ですから、その意味で、物をつくるということと設計をするということは一体である。実際にそういうふうにやれている現場もありますね。

 私はこういう立場ですので、もちろん企業という単位でも見ますけれども、私にとって大事なのは、資本というよりはむしろ現場なんですね。ですから、名前をちょっと言っていいかどうかわかりませんが、例えば日立が今大変だよと。でも、日立の大みかに行くと、あそこは、設計から現場からお客さんとのコミュニケーションまで、一つの建物の中で全部終わっている、あそこはいいねと。あるいは、NECさんはわからないけれども、NEC米沢は十年間で八倍の生産性にしている、これもやはりいいねと。ソニーさんも、安曇野はいいねと。我々は、現場単位で見ていくんですね。

 現場単位で見ていくと、ありゃというところもありますけれども、ここはいいねというところがある。そこをずっと突き詰めていくと、中小企業の十人の現場も一万人の会社の十人の現場も、現場というところまでおりていけばかなり共通したものがあると思っておりまして、その中で、よい会社かどうかということとは別に、よい現場であるかどうかということの目ききをやはりいろいろな人がしていかなきゃいけない。株が下がったから現場もだめなんでしょうという言い方を、現場を見ない人が言っているんですね。これは絶対やめていただきたいと思っておりまして、そういうふうに見ていくと、まさにおっしゃるように、物にさわりながら設計していくということが大事。

 そうしますと、実は、では、うちの会社はマザー工場があるよと社長さんはみんなおっしゃるんですが、私がちょっと心配なのは、今、地方のマザー工場をずっと回っていますと、立派に動いているマザー工場と、既に空っぽのマザー工場があります。ゆゆしき問題であります。空っぽのマザー工場というのは、まさにおっしゃるように、もう設計者がさわる物がなくなっちゃっている、こうなったら、設計がへたるのは時間の問題であります。

 ですから、日本にまさに設計を残すということは、実は、大量生産するかどうかは別として、少なくとも初期生産をやるようなマザー工場を日本にきっちり残していくということではないかと思っております。

 今我々はマザー工場の比較調査を始めておりますが、相当心配しております。本当に、社長は言っているけれども、もうないよというマザー工場がたくさんございます。これがおっしゃった御懸念の部分ではないかと思いますし、私もそこを何とかいろいろな形で支援していただきたい。つまり、工程の設計も設計でありますから、そういった、物にさわる設計、この場をできるだけ日本にたくさん残していただきたいと思っております。

吉井委員 ありがとうございました。終わります。

東委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、極めて率直かつ貴重な御意見をお述べいただきまして、大変参考になりました。まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る四月一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.