衆議院

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第9号 平成21年4月22日(水曜日)

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平成二十一年四月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 岸田 文雄君

   理事 櫻田 義孝君 理事 中野 正志君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      飯島 夕雁君    遠藤 宣彦君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      鍵田忠兵衛君    片山さつき君

      川条 志嘉君    木挽  司君

      高村 正彦君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    清水清一朗君

      新藤 義孝君    平  将明君

      谷畑  孝君    土井 真樹君

      中野  清君    林   潤君

      林  幹雄君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    松本 洋平君

      安井潤一郎君    山本 明彦君

      山本ともひろ君    若宮 健嗣君

      太田 和美君    北神 圭朗君

      後藤  斎君    近藤 洋介君

      下条 みつ君    田村 謙治君

      牧  義夫君    三谷 光男君

      高木美智代君    古屋 範子君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   経済産業大臣政務官    谷合 正明君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 堀田  繁君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      舟橋 和幸君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   中島 秀夫君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山本 和史君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            河野 正道君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 久保田誠之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 團藤 丈士君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       寺坂 信昭君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           森川 正之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           木村 雅昭君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          近藤 賢二君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            羽藤 秀雄君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            横尾 英博君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            数井  寛君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     山本ともひろ君

  橋本  岳君     飯島 夕雁君

  牧原 秀樹君     林   潤君

  武藤 容治君     鍵田忠兵衛君

  高木美智代君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     若宮 健嗣君

  鍵田忠兵衛君     松本 洋平君

  林   潤君     牧原 秀樹君

  山本ともひろ君    片山さつき君

  古屋 範子君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 洋平君     遠藤 宣彦君

  若宮 健嗣君     橋本  岳君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 宣彦君     武藤 容治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官堀田繁君、公正取引委員会事務総局経済取引局長舟橋和幸君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長中島秀夫君、公正取引委員会事務総局審査局長山本和史君、金融庁総務企画局審議官河野正道君、総務省大臣官房審議官久保田誠之君、法務省大臣官房審議官團藤丈士君、経済産業省大臣官房商務流通審議官寺坂信昭君、経済産業省大臣官房審議官森川正之君、経済産業省大臣官房審議官木村雅昭君、経済産業省商務情報政策局長近藤賢二君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長羽藤秀雄君、中小企業庁事業環境部長横尾英博君及び中小企業庁経営支援部長数井寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 おはようございます。自民党の牧原秀樹でございます。

 きょうは、この大変大切な独禁法の改正につきまして質問の機会をいただきまして、感謝を申し上げます。

 今回の独禁法の改正には、納付命令のあて先の問題だとか企業結合の規制の問題だとか、あるいは差しとめ請求における文書提出命令の特則の導入だとか、いろいろな重要な点が多々含まれておりますけれども、私の質問は、中でも私自身が一番重要だと考えます不公正な取引方法に対する課徴金の導入、ここに絞って質問をさせていただきたいと思います。

 お手元に資料がお配りされておると思いますが、これは、資料一、二、三とも、いわゆる個人経営の事業所、卸売や小売業などのそれぞれの全体の数の推移、そして、特にその中でもこうした独禁法の改正について大変要望も高い、そして数も実際に減少している三つの業界についての資料でございます。

 資料一、二は、まず個人経営の事業所数ということで、卸売と小売業を合わせたもの、これは百四十万、昭和五十七年にあったものが、平成十九年では六十万ぐらいに落ち込んでいる、つまり半分以下、そして個人経営の事業所数、これは小売業だけでいうと百三十万だったものが六十万以下、これも半分以下に落ち込んでしまっているわけでございます。

 また、資料二は、ガソリンスタンドと酒のいわゆる販売小売ですね。ガソリンスタンド、昭和五十七年には一万二千弱あったものが平成十六年には五千に落ち込んでいる、これも半分弱、そして酒の小売も九万、五十七年にあったものが、これは平成十九年には三万強ですから三分の一に落ち込んでしまっているわけであります。

 資料三は、これはLPガスの販売事業者数でございまして、これは若干ちょっと長目にとってありますが、五十三年には四万だったものが平成十八年には二万ぐらいになってきて、大体半分ぐらいにこれもなってしまっているということでございます。

 昭和五十年代ぐらいからずっと引き続いているということですから、いろいろな理由があるんだと思うんです。例えば、消費者の変化ですとか社会環境の変化、それから、若者の新しいこういう職業につきたいという思考の変化によって後継ぎがなかなか難しいとか、そんないろいろな理由があると思います。でも、やはり聞こえてくるのは、一部非常に不当な安売りが行われていたりすることによる絶対的な競争条件の違いによる圧迫ではないかということが言われているわけでございます。

 私は、盆踊りとか夏祭りとかが大変好きで、地元のほとんど全部に顔を出して、実際自分でやらせていただいていますけれども、こういうときに、そういう地域の活動を支えていただいているというのは、やはりこうしたずっと地元の地域を支えていただいている個人商店であったりするわけであります。

 私は、埼玉の大宮、与野というところが地元なんですけれども、どんどんこうしたところが今なくなっていまして、中には、お祭り自体が廃止になって、子供たちのそうした楽しみが奪われているという地区もあります。つまり、こうした地域社会を支える土台というものが崩れつつあるのも事実だと思います。

 この点について、先ほど申し上げたとおり、いろいろな社会的な変化はある、これはしようがないけれども、やはり不当な安売りで自分たちのずっと家業としていた商売が成り立たなくなるのはたまらない、こういう悲鳴のような声が大変聞こえてくるわけでございます。

 したがって、実は、この独禁法の改正、特に不公正な取引方法への課徴金の導入というのは、おととし自民党の中では大変な議論があって、これは、確かに不公正な取引方法というのは、いわゆるカルテルなどと違って事前の違法性の認識が非常に低くて、結果論としてアウトになる場合が多いから、こうした不公正な取引方法には慎重であるという意見がずっと公取の方からは出されていたんです。それを、私たちの中の議論では、やはりこうしたところにも課徴金を導入して、そして、不当な安売りによりこうした個人の、地域の皆様の土台が崩れるということを防ごうという熱い熱い思いでここを通して、そして去年、実はこの法改正は提出をされていたわけであります。

 最初の質問は、関係者にとっては悲願でもあった、そして私たちにとっても非常に熱い思い入れがあったこの独占禁止法の改正法案が、去年は結局審議が一分もなされず、結果的に廃案になったんです。これは、一体なぜだったんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 私どもも、平成十七年の独禁法改正、そのときに附帯決議、附則において宿題をいただいておりまして、それは期限内に果たしたつもりでございます。

 昨年の通常国会に独禁法の再改正案を提案させていただいたんですが、これは、率直に申し上げまして、国会の方でその取り扱いをお決めになったわけで、私にとってはこれでようやく三度目の正直で本日審議入りになったということでございます。

牧原委員 ありがとうございます。

 これも、やはり私も一国会議員として大変反省もしなきゃいけないなと思うんですけれども、去年の国会というのは大変荒れていまして、いろいろなところで審議拒否がなされ、そして法案が詰まっているという理由で独禁法が後回しになっていったということもあろうかと思います。また、選挙が近くて臨時国会が動かなかったということもあると思います。

 私たちは、こうした一つ一つの法案を、私たち自身の論理だけで通さないということがあってはいけない、そういうふうに……(発言する者あり)

東委員長 御静粛にお願いします。

牧原委員 次に、一部の不公正取引方法に絞ったという理由についてお聞きします。

 今申し上げましたように、独禁法というのは、単に自由競争を確保するということのみならず、経済政策的な意味、例えば経済のあり方に影響を与えるわけでありますし、また社会政策的な意味もあります。これは、今申し上げたように、例えば個人商店なり地域社会というのをどういうふうに守っていくかという視点であります。

 また、国際経済的な意味もあります。御承知のとおり、日本の独禁法の運用とアメリカやあるいはヨーロッパなどの独禁法の運用は随分違っていて、特に課徴金の賦課なんというところには随分と金額的な差異もあるわけであります。

 今回、そうしたいろいろな視野に立って、この不公正な取引方法に対する課徴金の導入というものがなされて、これは非常に重要であると考えますけれども、この不公正な取引方法というのは法の第二条九項に規定されており、それを受けて不公正な取引方法と言われて、公取が一般指定によって十六項目の取引方法を指定しているわけであります。

 今回の法改正では、この不公正な取引方法の十六項目のうち、五つだけについて課徴金を賦課するということをしているわけですが、この五つに絞ったという理由についてお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 牧原委員もお触れいただきましたように、従来は、公正取引委員会は、この不公正な取引方法にまで課徴金を導入することについては慎重でなければならない、その大きな理由は、正常な取引と違法な取引の線引きが非常に難しい。

 特に、不公正な取引方法というのは、カルテルや談合と違いまして、いわゆる専門用語で当然違法と言っていますが、情状酌量する余地なし、カルテル、談合をやれば即違法であるというふうに観念されているものとは違いまして、公正な競争を阻害するおそれがあるような場合に、それよりもっと深刻なことにならないようにするために予防的に規制をする、そもそもこういう趣旨なものですから、これに金銭的不利益処分たる課徴金までかけていいのか、かける場合には明確な基準がなければ事業者を混乱させる、こういうことから慎重な判断が必要だということを申し上げてまいりました。

 先生がお触れになりましたように、欧米ではこういうものについては、課徴金とか制裁金とかはもちろんのこと、そもそも競争当局が介入しないというのが基本的なことでございまして、事件としてそもそも取り上げられないというのが現実でございます。そういう意味で、別に欧米がそうだから日本でも同じようにするということではございませんが、事の性格からいって、そういう際どいといいますか微妙な点を持っているということでございます。

 ところが、平成十七年の独禁法改正のときに衆参で大いに議論がなされまして、牧原委員御指摘のように、最後には附帯決議で、不当廉売、優越的地位の濫用、この二つが特に取り上げられまして、これに課徴金を導入すべきであるという御趣旨が示されました。

 その後、私どもは、内閣府の基本問題懇談会という専門家二十名から成る懇談会で御議論いただきまして、一つ、優越的地位については、これは明々白々だろう、課徴金の対象にしてもいい。何となれば、その関係を利用して不当利得を完全に手に入れる、例えば、ただで従業員を働かせるとか、協賛金を黙って持ってこさせるとかいうことで、明らかに具体的に不当利得というものがその事業者の中に入っているということにもなりますし、公正な競争をする上での基盤を毀損するということだから、理屈の上からも、課徴金を導入することはいいだろう。

 しかしながら、それ以外の、不当廉売でありますとか差別対価とかございますが、これらの不公正な取引方法というのは、言ってみると私的独占に至る手前の予防的な措置ということなので、これについてはやはり慎重でなきゃいけない。しかしながら、違法性の基準を明確にできるのであれば、それは政策的な判断として課徴金の導入ということもあり得るだろう、こういう整理がなされました。

 私どもは、それを受けまして、国会において御要望の強かった不当廉売について要件を明確化いたしました。現状の一般指定における不当廉売の要件の中で構成要件を明確にするということで、関係方面とも相談しまして明確にしました。それから、差別対価、再販売価格の規制につきましても、これは同じようなたぐいのことだろうということで、この四つについては、構成要件を明確化した上で課徴金の対象にした、そういうことでございます。

 基本的に、不公正な取引方法全部に課徴金をかけるべきだという考え方には実は立っていない、やるべき政策的必要性とか、それから構成要件の明確化ができるというものにいわば絞って、今回提案させていただいているところでございます。

牧原委員 今委員長がおっしゃられたとおりで、確かに、この不公正な取引方法へは、そもそも課徴金導入反対論というのが非常に強くて、多分、法理論的に言うとその理由も納得できるものでもありますから、今回絞ってということは、当座の判断としてはあり得るのかなと思います。

 ただ、一点、これは本会議でも質問が出されておりましたけれども、いわゆる景表法の不当表示のところがあります。これは、不公正な取引方法では欺瞞的顧客誘引という形で受けているわけでありますが、例えば、私の地元の埼玉では、去年、LPガスという業界において、ある大手の事業者に対して不当表示の注意というのが初めて出されました。

 LPガスに限ったことではないんですが、いわゆる大手やあるいは格安業者が、うちが地域で一番安いんだとか、下手すると日本で一番安いんだというビラを大量にまいて、あるいは、値段はもう上げませんよというような言い方をして顧客を奪ってしまって、その後にすっかり自分たちが独占を享受して値段を上げていくというようなやり方というのがあり得るわけでございまして、こうした場合には、被害が実際起こってしまう、つまり、顧客がとられてしまったり、あるいはその店がつぶれてしまったら、これは取り返しがつかないという点では、先ほどの五つの類型と何ら変わらないものだと思います。

 この不当表示について今回は見送られたという理由は、先日の本会議では、消費者庁の創設とあわせて、総合的に被害救済とあわせて検討するというお話がありましたけれども、改めて、今後の具体的な検討予定、こうしたことについてお聞きしたいと思います。

堀田政府参考人 お答えいたします。

 課徴金制度は、事業者に対して国庫への金銭納付を命じるということのみでございまして、違反行為を抑止する効果はございますけれども、被害をこうむった消費者の直接的な救済につながるものではございません。

 こうしたことから、今回の消費者庁の設置に際しましては、景品表示法の不当表示に関する課徴金制度の導入は見送りまして、今後、被害者救済制度を総合的に検討する際にあわせて検討するということにしたところでございます。

 また、消費者庁関連三法案の衆議院におきます審議の結果、被害者救済制度につきましては、消費者庁関連三法の施行後三年を目途として、多数の消費者に被害を生じさせる者の不当な利益を剥奪し、被害者を救済するための制度について検討を加えて、必要な措置を講ずるという旨の規定が附則に盛り込まれたところでございます。

 現在、内閣府では、消費者庁の創設に先立ちまして、関連する国内外の諸制度の調査研究に着手しているところでございまして、消費者庁ではこれらを踏まえて検討されるものと考えております。

牧原委員 この点は、新しい法制度の改正と絡んでしまったという面もありますが、とにかく、一日一日、こうした被害を受けていて、そして不当表示が原因じゃないかと苦しんでいる方がいらっしゃるわけですから、何となく、私たちの時の流れではなくて、そうした人々の必死さということに合わせて急いでいただきたいと思います。

 今回のこの課徴金の導入を含めた一連の規制については、一番のポイントは、私は実効性だと思います。つまり、この課徴金導入によって、今までだめだった、取り締まれなかったところが本当に取り締まれるようになる、あるいは、抑止効果があって不公正な取引方法がなくなるということが一番重要でありますが、その観点から幾つか、ちょっと技術的な質問をさせていただきます。

 まず、新しく導入された五つの類型について、課徴金賦課に至るには、四つは繰り返しというものが要件とされていて、そして優越的地位の濫用だけは継続というものが要件になっております。本来、このような不公正な取引方法で打撃を受ける、特に中小零細企業の事業者の皆様からすれば、繰り返しや継続を要件としていては間に合わないという声が多いんです。

 この要件づけについて、まず、なぜこのような要件がつけられたのか、お伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 先ほどちょっと申し上げましたように、構成要件なり違法性基準の明確化ということが必要でございまして、そういう観点から、継続してとか繰り返してとかということが条件として加えられているということなんですが、ただ、牧原委員御存じのとおり、今問題になっている優越的地位の濫用にしても不当廉売にしても、既に現行の独禁法で、該当すればこれは違法行為でございますから、したがって、現実に我々も排除措置命令を出しているわけでございまして、それに至らないものについては、警告なり注意なりを多数やっているわけでございます。

 その結果何が起きているかというと、大体はやめているわけでございます。やめているなり是正をしているということでございまして、課徴金がなくてもそれなりにはワークしている。しかしながら、御意見の中に、確信犯的な事業者がいて排除措置命令だけでは不十分だ、課徴金をかけなさい、こういうことでございますので、そういう判断をさせていただいて、しかしながら、条件はある程度厳しくしましたと。

 そうでないと、そもそも独禁法が守るべきものはまともな競争、まともな能率競争というものをきちんと促すということが法律のそもそもの目的、その結果として、消費者なり需要家なりがよりよいものをより安く手に入れることができる、こういうことが基本的な使命でございますので、そうしますと、ただただ安いということで即違法とかいうような議論になりますと、結局はそういういい意味の能率競争を阻害する、結局みんな同じ値段でやっていればいいんだねと。それで、護送船団じゃございませんが、生産性の低いところに合わせた価格しか提供できないということになってしまっては、これはまさに元も子もないわけでございます。

 そういう意味で、私どもは事業者の健全な創意工夫、それから健全な能率競争を促す、そういう意味で、安いことは悪いことではない、むしろ、一般的には安いことはいいことだ、こういう観点でやっているわけでございます。

 その中でも、まさに不当なものについては、これはまともな競争自体を危うくするではないかということで、取り締まり、かつ、今度課徴金を導入して、そういうものについてはもっと厳しい制裁を加えよう、こういうことでございます。

牧原委員 趣旨は大変よくわかりました。今おっしゃった点もありますし、一番重要なのは、私は、やり得を許さないということだと思います。

 とにかく、昔駐車違反というのがあって、駐車違反だとわかっているんだけれども、一回線を引かれて、その段階で行けばある意味無罪放免、二回目でやると、それが初めて何か黄色いのが科せられて駐車違反になるので、大体みんな一回線を引かれたら移動するということがあって、違法駐車が全然なくならなかったわけです。それを一回でアウトにしたら、途端に町じゅうに違法駐車がなくなったということがあります。今回の繰り返し、継続要件なんというのは、実はそういうふうに作用する危険性も非常にありますので、ここはぜひ注意していただきたいと思います。

 そして、繰り返しや継続の意味でありますけれども、これは法律上も規定がちゃんと書いてあるわけですが、あえてお聞きをします。

 今、例えばおっしゃられたように、排除命令が出るような場合というのは、相当悪質な事例でありまして、その前の注意というのが一番多いわけであります。この注意というものについては、例えば注意を受けて、また繰り返したというような場合には、これは繰り返しという要件に当たるんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 答えは、当たりません、注意では。

 命令を受けていなければ、十年以内に二回目の命令という場合に課徴金の対象になるということでございます。

牧原委員 そこは法律に書いてあるんですけれども、私、ここは多分、多くの人々の感覚と違和感が若干あるのかなという気がします。

 やはり、注意を受けているという事例でも、その現場の人からすると相当悪質なことであって、そして公取の方にわざわざ大変な証拠書類を持っていって、そしてようやく出してもらったのが注意という状況でありまして、それを幾ら繰り返しても、なかなか、やり得になってしまうという事例があるとするとこれは問題だなと思いますので、ぜひ今後の検討要件としていただきたいと思いますし、それから、注意というのが今実務上は口頭で、下手すると電話だけで、あなた、今回公取から注意が出ましたからねというので終わってしまうんです。やはり、この注意をもっと重い、受けた方がうわっと思うような注意にしていただきたい。

 これによって、私は、大分、この排除命令を受けたら課徴金だという今のこの方向性を補うものとして、注意を受けて、非常に重いものだという感覚になりますので、この点だけは、ちょっと実務上の問題として、公取の運用としてお願いしたいと思います。

 それから次に、課徴金の金額という点です。

 今回の法改正においての課徴金の金額、百分の幾つという形でそれぞれの類型で決まっているんですが、この点について根拠をお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 不公正な取引方法について課徴金を新たに導入するものについて、どういう考え方で三%なり一%なり決めているのかということでございますが、これは何か一定の算定式があるわけじゃもちろんございません。

 そこで、不当利得みたいなものに非常に直接的に関係するということであれば、それなりに、その不当利得というものを過去の事件に照らして計算して、前回も平均でカルテル、談合の場合は一六・五%ぐらい不当利得があったという推計を私ども十七年改正のときにいたしておりますが、しかしながら、そうじゃないような場合もたくさんあるわけでございまして、なかなか、一つの算定式に当てはめれば答えが出てきますということじゃないところは難しいところなんですが。

 私どもは、現行の一番重い一〇%、カルテル、談合でございますが、基準算定率一〇%というものから、一定のマトリックスが今でき上がっているわけです。そういう体系の中で、今回新たに課徴金の対象にする不当廉売等、また優越的地位の濫用はどの程度であればいいかというのを、まず一つ考えております。

 それからもう一つは、それぞれできるだけデータを集めまして、過去の事例の違反事業者の売上高営業利益率というようなものも一応調べています。ただ、これには当然限界があると思っています。サンプル数の問題だとか、ばらつきとかいろいろございます。ただ、平均は二・七%というものが出ておりますので、こういうものも参考にして三%という数字にさせていただいているわけでございます。

 そういうことでございまして、若干抽象的、総合的判断といえばそうなんでございますが、これは、我が国の課徴金というものが、そういう条件を満たせば義務的にかけなければならない、裁量的にかけるわけにいかない、課すことができるじゃなくて納付命令を出さなければならないということになっていますので、したがって、極端な話、オーバーランしてはまずい。

 優越的地位の濫用についてたった一%かというお話もお聞きしますけれども、一%も考えてみると、一千億円の取引というのは大手の小売業者の場合はあるわけでございまして、それを一%といっても、これはもう百億円でございますから、一律にかけなけりゃならぬものについて非常に厳しい、もう懲罰的な課徴金ということになってもまずいというようなことで、少し保守的というか謙抑的にもなっているということもございまして、それらを勘案して新しい算定率を設定させていただいております。

牧原委員 初期導入段階での考えはわかりましたが、多分今のお話だと、裁量性を入れるということとあわせて多少幅を持たせれば、私は、より効果があるんじゃないかなと思いますので、その辺もちょっと検討、我々もしていかなきゃいけないですが、お願いをしたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」という要件について、これは実は大議論があった要件でございまして、これは入れると。特にこれは差別対価と不当廉売に入っているんですけれども、実際に他の事業者の事業活動が困難になってしまったという客観的状況が見え始めてから適用できるんだみたいな議論があって、そうだとすると、あらかじめ、ある一定の人たちは死に体になっても構わないみたいな要件じゃないかという批判が随分あるんです。

 ここについては、実際の運用が始まってから、先ほど既に、繰り返し、継続という要件があるわけですから、それに加えて、この「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」を、客観的な状況を要件としてしまうと、本当に悲惨な状況になってからじゃないと課徴金を課せられないということになりますので、ここはちょっと要検討をしていただきたいと思います。

 それから、最後、では、これをお聞きします。

 不当廉売においては、総販売原価を著しく下回るかどうかということが基準になっていると私は理解しているんですけれども、この基準の範囲について、これが非常に不明確であるということが、実際の公取の運用において実務的な取り締まりを困難にしているという面があると思います。裁判の判例も割れてしまっているところであります。

 この点について、今回の課徴金導入を機にぜひ明確化を図っていただきたいというふうに思いますが、この見解についてお聞きします。

竹島政府特別補佐人 二点御指摘があったんですが、「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」というのは、そういう事態が起きるまでは手を出さないのかと。そうじゃございません。これは、その蓋然性があれば当然処分をするわけでございます。

 なぜこういう、他の事業者の事業活動を困難にするおそれということを書いてあるかと申しますと、不当廉売の場合でも、ほかの場合でも同じですが、町のちっちゃいお店屋さんが原価割れ販売をやった、そういったものを独禁法で取り締まるということはいたしておりません。それは、要するに、周りに対するインパクトがごく限られている。

 そうじゃなくて、不当廉売をやっている事業者がそれなりに大きな事業者で、その結果として周辺の商圏に大きな影響が出る、その結果、被害を受ける事業者もいて、まともな能率競争が期待できない、こういった場合を取り締まりの対象にしているわけでございまして、その場合は、おそれといっても、現に事態が発生することをまつまでもなく、蓋然性があれば処分をするということでございます。

 それから、不当廉売の基準が明確ではないという御指摘、これは関係の方々からも時々伺うことがあるんですが、私どもはそう思っていないんです。

 要するに、小売の場合は典型ですが、これは端的に、著しく原価を下回るというのは、仕入れ原価を下回るか、それをある程度の期間をやったかということでございまして、ただ、仕入れ原価は、名目の仕入れ原価じゃなくて、リベートをもらっているとかいう場合には、リベートを勘案して実質的な仕入れ原価までだったら、これは不当廉売だ、こういうことで運用させていただいていまして、その線引きは、私はもう明確になっているというふうに思っています。

 したがって、たくさん言ってきても注意にしかならないじゃないかというのは、私どもを信用していただかなきゃしようがないんですが、それは注意に相当する程度のものであると。私どもも悪質なものについてはきちっと法的措置を講じているわけでございまして、そういうものの数は少ないですけれども、圧倒的に多い注意というものは、まあ私どもの目から見るとその程度が相当なケースである、こういうことでございます。

牧原委員 ありがとうございました。

 今回の法改正、非常に期待が大きいので、公取の人員の見直しということも遠慮なくおっしゃっていただいて、有効に生きるようにしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

東委員長 これにて牧原秀樹君の質疑は終わりました。

 次に、平将明君。

平委員 自由民主党の平将明です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 本日は独占禁止法改正法案についてということでありますけれども、その前に、せっかくの機会ですので、ちょっと一つだけ政府にお伺いをしたいことがございますので、そちらを御質問させていただきたいと思うんです。

 中小企業金融の公的金融の部分でありますけれども、二〇〇八年の一次補正、二次補正で信用保証協会の保証とセーフティーネット貸し付けの制度ができました。私の選挙区は大田区でありまして、中小企業が大変集積をしている場所でありますけれども、二月、三月の事故率、デフォルトを見ると、想定よりもかなり低くおさまっていて、この公的金融、中小企業の金融政策がきいているというふうに実感をしているところであります。

 ただ、自民党の部会等でもいろいろ質問をさせていただいて、ちょっといまだに一つ理解ができていないものがありますので教えていただきたいと思うんですが、緊急保証の二十兆というのは大変今貸し出しがスムーズにいっていて、三月末にはもう半分ぐらい消化をしている。片や、セーフティーネット貸し付けといった方がなかなか伸びていないということと、地元や企業の方から聞いても、使いにくい、なかなかお金が出ないという話を聞きます。

 信用保証協会の方のスキームはというお話をこの間尋ねさせていただきましたけれども、大体事故率が八%で、そのうち二割を回収する。ですから、ざっくり六%ぐらい財政措置をしていれば、デフォルト八%ぐらいまでだったらカバーをしてどんどん貸し出しをできるということだと思うんです。

 セーフティーネット貸し付けの方は政府系金融機関が行うと思うんですけれども、どんどん貸せというのはいいんだけれども、では事故が起きたときはどうするのか、その辺はどう手当てをするのか。その辺の仕組みがよくわからないものですから、ちょっとその辺だけ最初に一つ確認をさせてください。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の十月より、先生御指摘のセーフティーネット貸し付けを行っております。

 日本政策金融公庫におきましてやってございますが、今般の経済危機対策におきましても、この事業規模をさらに三兆円ふやしまして、総額十二兆円の枠ということにしてございます。

 これに対する政府の支援ということでございますが、今御指摘のありましたとおり、貸し倒れリスクあるいは金利の引き下げに備えまして、政府からの出資金ということで手当てをしてございます。これは、二十年度の補正予算で約一千億円、今回、二十一年度の補正予算でさらに追加で二千億円ぐらいということで、今調整を財政当局と行ってございます。

 加えまして、実は、このセーフティーネット貸し付けの原資でございますが、これは調達コストが低い財政融資資金ということを活用してございます。

 したがいまして、単純に市場から調達した場合と、仮定の計算でございますが、これを比較しますと、大体二千億円を超えるコスト削減効果がある。これも一種の政府の支援ということで考え得ると思っております。

 先ほど先生御指摘がございました、セーフティーネット貸し付けが余り出ていないのではないかというのがございましたが、先週末までに約一兆七千億円の利用になっておりまして、特に年が明けて、この二月には前年比二・八倍、三月は三・七倍と、大幅な伸びをしてございます。

 引き続き、中小企業の資金繰り支援には万全を期してまいりたいと考えてございます。

平委員 地元でいろいろ、皆さんもそうだと思うんですけれども、説明をしなきゃいけなくて、それで、信用保証協会に行ったけれども借りられなかった、どういう仕組みになっているんだというと、それは事故率八%以上、もっとそれ以上のリスクがあるところにはやはり貸せないようになっていますよということを言っているんです。

 そのセーフティーネット貸し付け、今、その財政措置と、あと、いわゆる資金調達コストが安いから実質その分面倒を見ていることになっているんだという話だと思いますけれども、保証協会は大体八%ぐらいだと。そうすると、実際、セーフティーネット貸し付けの方はどのぐらいのリスクがとれる、大体、おおむね同じぐらいのリスクのところへ出せるのかというところはどうなんですか。

 例えば、利息を補給するというのは、貸すか貸さないかのところの基準は一緒だと思うんですね。それで、貸した後に利息を補給してあげるということですね。セーフティーネット貸し付けは、今までお金が調達できないところに貸してあげるわけだから、ふだんのところよりもリスクの高いところに貸してあげなければいけない。

 今お話を聞くと、大体総額で五千億ぐらい面倒を見てあげると。そうすると、十二兆の枠で、デフォルト、セーフティーネット保証の方は八%ぐらいまでリスクがとれるとしたら、セーフティーネット貸し付けの方はちょっと少なくて六パーぐらいのリスクはとれるのかと。

 その辺はざっくりどうなんでしょうか。わかる範囲で結構です。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 信用保証協会が主に対象としております比較的小さ目の企業で無担保でございますので、それと同様の計算を仮に、したがいまして、旧国民金融公庫国民事業本部で無担保、無保証人貸し付けで考えますと、これは全くの仮定の計算でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、いわば信用コストを国が面倒を見ているということで、大体、運転資金で約八年間の貸し付けだということで考えますと、やはり九%前後ぐらいの信用リスクを見ているという格好になってございます。

平委員 ありがとうございました。

 事故率八から九を見るということは民間の金融機関ではあり得ない話でありますので、かなりの高いリスクを国がとってやるということだと思いますし、そういう説明を我々もさせていただきたいと思います。

 これからセーフティーネット貸し付けがどんどんふえていくんだろうと思いますけれども、引き続きよく注意深く見ていきたいと思っております。

 それでは、本題の独占禁止法改正法案につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 牧原議員と事前の打ち合わせをしていなかったので、ほとんどダブっておりますので、きょうはせっかく竹島委員長がおいででございますから、私自身も中小企業の経営をしておりましたので、中小企業の心の叫びをちょっと聞いていただきたいなというふうに思います。

 本当に、我々ビジネスをやっていて、中小企業というのはこんなものなのかなと愕然としましたけれども、私は、大田市場というところで青果の仲卸をしていました。野菜と果物の問屋ですね。それで、五つぐらいの市場にその仲卸があって、大手の量販店というところとは大体お取引をしていました。たまたま、うちのおやじがそういう会社をやっていたので、やらざるを得ないということでやっておりましたけれども、幾つかいろいろな事例がありますが、ちょっとそういうのをお話しさせていただいてから質問に入りたいと思います。

 例えば、具体的な話で恐縮ですが、野菜の相場というのは毎日変わるんですね。しかしながら、特売のチラシというのは、何週間も前に刷って家庭に入れておくんですね。そうすると、よくあるのは、ホウレンソウ九十八円で特売をしますと。しかし、その日の相場は幾らかというと、その日の朝の競りが終わるまでだれもわからないわけです。しかも、野菜の相場というのは非常に大きく変動しますから、大変リスクが大きいんですが、そういったリスクを量販店はとらないんですね。それは、全部仕入れ先になっている中小企業が負う。それが一つある。

 そういった中で、例えば、その日は若干相場が高くて、ホウレンソウが二百円しましたと。二百円しても、これは九十八円の特売だから九十八円で売るわけですね。これは信義として当然ですね。そうすると、そこで問屋と小売店の関係がどうなるのか。

 良心的な量販店は、では、これで百円の差額がありますから、問屋さんと我々スーパーで半分ずつ持ちましょうというのが良心的なスーパーです。ちょっとえぐいところになると、九十八円で売るんだから、九十八円で二百円のものをくれ、よこせというのが、でも、まあ、こういうところが多いんじゃないかなと思います。一番ひどいところはどうなるかというと、九十八円で売るんだから、七十円ぐらいでもらわないとうちの利益が出ないんだから、七十円でよこせという話になるんですね。これはもう日常茶飯事であります。

 結局、私は思いましたけれども、よく一時、があっと伸びていた量販店がありました。エブリデー・ロープライスというスローガンを掲げていたんだけれども、体質の悪いところは、さっき言ったような、原価を割ってさらに利益を出す要求をしてくる。そうすると、実は、エブリデー・ロープライスの仕組みをつくるということに一生懸命やっているんじゃなくて、ただただ、問屋を殺して値引きをさせて、エブリデー・ロープライスを維持していただけだ。

 そうすると、どういうことが起きているかというと、その量販店がどんどんどんどん伸びているときは問屋もつき合うんですけれども、売り上げが落ちた瞬間、もうだれも相手にしなくなって凋落をしてくる、そういうことがあります。ですから、こういうことを放置しておくと、実際にふたをあけてみたらその量販店は何のノウハウもなかったということになるんだと思います。

 あと、私が経験したことは、私の取引先は大手量販店ですから、一時期、パ・リーグのプロ野球のチームなんかいっぱい持っているんですね。これがまた強かったりして優勝とかするとえらい目に遭うということで、優勝セールという名のもとに、何百万の協賛金、大幅な仕入れの値引きというのを要求されるわけです。ですから、私なんかは、パ・リーグの優勝決定戦なんか、負けろ負けろと祈りながら本当に真剣に観戦をしていた覚えがあります。こういうのも日常茶飯事であります。

 あともう一つ、こういう事例があります。

 バックマージンという仕組みがあって、例えば、売上高から何%バックマージンを下さい、そのバックマージンは販売の促進費であったりセンターフィーであったりします。しかしながら、これがある日突然、例えば今三%のバックマージンだったのが、来月から八%にしてくださいというのが来るんですね。

 そうすると、我々の業界でいうと、平均的な粗利益率は一〇%ですから、一〇%から八%のバックマージンというのは経済的にあり得ない。そんなことじゃとてもじゃないけれども商売になりませんと言うと、それじゃ売価に乗せていただければ結構ですからという話をスーパー側はするんですが、それが売価に乗ることはないんですね。乗っけて値段を出すと、いやいや、こんな値段じゃ買えないよ、では、よそからとるからいいよということで、実際に転嫁ができないわけであります。こういうことは、もう本当に日常茶飯事であります。

 スーツも全部取引先の関係で買わされる、クリスマスケーキも一つあれば足りるのに私は二十個ぐらい買わされる、そういうようなのが日常茶飯事あるわけです。基本的には、商売は自助自立ですし、契約は自由でなければいけないし、やはりそういう競争はしっかりやらなければいけないと思いますが、しかしながら、助けてくれとは言わないけれども、せめて公正な商売をさせてほしいというのが本音だと思います。

 こういう一つ一つのことを、私も実際に中小企業の社長をやっているときは、公取に駆け込もうとまでは思わなかったんです。やはり公取というのは、普通の人から見るとすごくハードルが高いし、国会議員の知り合いもいませんでしたので、ほとんど泣き寝入りをするか、どこかで見切りをつけて、ただただやめていくというのが実態だと思います。

 こういうことを放置していると、先ほども言いましたけれども、流通業自体が値引きを簡単にさせられる、だめなら次の業者に乗りかえるということを繰り返した結果、恒常的に安く売る仕組みというものが実はできていなかったということも起きますし、例えば今商店街の活性化という話がありますけれども、商店街の八百屋さんがどんなに頑張ったって、先ほど言った、二百円のホウレンソウを、こちらの流通が九十八円で特売するからといって七十円で買ったら、この八百屋さんとスーパーはどう考えてもフェアな競争はできないわけであります。そこにも本質的な問題があると思います。

 もう一つは、消費者の立場に立つと、こういう事例がありました。

 毎年、何日の日は何とかの日と大手流通店がやっていますね。そういうときには非常に強烈なチラシを入れます。そうすると、先ほども言ったように、野菜の相場は非常に波を打ちますから、品薄になると価格がばんとふえます。しかしながら、そういう何とかの日というのをスーパーが決めると、そのスーパーは、やはり確実にその値段で必要な数量を消費者に提供しなければいけない。業者の方は、欠品をすると大変なペナルティーを受ける。しかも、仕入れ価格よりも安い値段で仕入れさせる。そうすると、例えばホウレンソウならホウレンソウを、大田市場にあるホウレンソウをかき集めるわけですね、大変なペナルティーをとられるから。しかも、大損をしながら売っているんです。

 そうすると、どういうことが起きるかというと、大田市場の中のホウレンソウが、ある量販店の何とかの市とか何とかの日で全部なくなるから、残ったホウレンソウで競売しますから、みんな高いものを買わされる。そうすると、その業者の優越的地位を濫用して、そのスーパーは何にも腹が痛まないんだけれども、実はその周辺、大田市場なんかは関東全域ですから、その他大勢のところは、そのせいで高いものを買わされる羽目になるということだと思います。

 それで、質問に入ってまいりたいと思いますが、そういうような観点からいくと、今回の課徴金制度の見直しで優越的地位の濫用というのが入ったことは本当に意味のあることだと私は思います。そういった意味では、日本経済全体や消費者保護の観点からも、やはり全体的に体質を変えていかなければいけない。ただただ、仕入れ価格を無理くり力関係によってディスカウントさせればいいんだという発想から切りかわってもらわなければいけない。そのためには、強い動機づけが必要だと思います。

 そういった中で、課徴金を新たに優越的地位の濫用などに入れるということは、私はやはり必要なことだろうというふうに思いますが、そんな中で、先ほども牧原議員からも質問がありましたけれども、では、この課徴金の率で本当にいいのかどうか。もともとある現行法の課徴金の比率と、改正法で新たに入った課徴金には差があるわけですけれども、その差の理由、また算定についてお伺いをしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 優越的地位の濫用については一%になっていますが、先ほど私、牧原委員のときに、一千億円の場合には百億円と間違って言ったようで、失礼しました、十億円でございます。

 一%を決めるときにいろいろ考えましたのは、このところ、大規模小売業者の納入業者いじめというようなことを、今先生がおっしゃったようなケースを我々も大変深刻な事態だと思っていまして、そういったことに積極的に取り組んできているわけでございます。そういうケースで、大規模小売事業者がどのぐらい取引先に対して、協賛金であるとか、セールがあるから背広を買いなさいとか、いろいろな形、それから値引きをしなさいとか、それがどのぐらいあったかというのをやりましたところ、約一%だという数字がたまたま出てきたということでございまして、見かけ上一%は低いじゃないかというのは、私もそう思います。

 ただ、やはり相手との取引額ということで、これは大規模小売業者の場合は大勢の納入業者がいるわけでございまして、優越的地位の相手方というのが大勢いて、その取引額がまずベースになりますので、一%といっても本当にノミナルな数字ではないわけでございます。

 今申し上げましたような過去の実績からくる推計値、それから、仮に一%でやってみて効果がないということになりましたら、将来見直しをさせていただきたいと思っております。

平委員 先ほど、新たな課徴金の対象となる行為を拡大した、諸外国ではこういう行為まではなかなか課徴金はかけていないんだというお話がありましたけれども、私、今の議論を聞いてちょっと思い出したんですが、EUのどこかの国だと思いましたけれども、原価を割って納入をするといったことに対して何か制限があるような法律があったように思います。それを調べて、また委員長と議論させていただきたいと思います。

 先ほどの事例によれば、二百円のものを百円だということでありますので、やはりちょっと一%じゃないんじゃないのという意識が強くあります。またそれも議論させていただければと思います。

 大事なのは、やはり公正な商売をしなきゃいけないんだ。公正な商売をしないと、一時的によくてもいずれ衰退をしていくんだ。私も仲卸の社長を十年やっていましたけれども、私が社長になってすぐのときはすごい勢いだったのが、みんなだめになりましたね。悪くなったのは、みんな体質が悪いところがだめになったということですから、これは強烈なインセンティブというか動機を与えるためには、もうちょっと課徴金を強くする必要があるんだろうというふうに思っております。これはとりあえずということでしょうから、さらに議論させていただきたいと思います。

 次に、公取の役割は、排除措置命令でも足りないから、課徴金をかけてまともな競争を担保して消費者の利益を守るんだということだと思いますけれども、私が実際に公取に相談に行こうと思わなかった部分というのは、やはりハードルが高いというのもありますし、実際にそれをやるときは本当に腹をくくったときだと思います。

 では、来月からバックマージンを五%上げろといって、そんなののめないよと思っても、売り上げの三割ぐらいあるとやはりのまざるを得ないですね、従業員もいますし経費も賄わなきゃいけないということで。そういったときに、例えば中小企業が申告をした。これはかなりの覚悟を強いられますし、よっぽど腹に据えかねて、これはもうやめる覚悟でやるわけですね。それで、清水の舞台から飛びおりるつもりで公取に行った。そうしたら、公取の方も、これはおかしな話だということで排除命令を出してくれた。

 でも、排除命令というのはこれから先ですよね。今まで我慢をして我慢をして、さんざん損をさせられて、実質それで資本を食いつぶしたり私財を食いつぶしていて、もういいや、こんな取引はやめるんだといって腹をくくってやった。しかも、それはおかしな行為だというふうにお上が認定をしてくれた。にもかかわらず、それはここから先と言われたって、大抵の場合はもう取引をやらないんですから、だから、ここから先なくなったって、別にそれは申告をしようというインセンティブには全くならないわけですね。

 では、今まで損した分を何とかしてくれという話になると思いますが、そうすると、もうこれは公取の範囲ではないですね。公取の範囲ではないので民事で勝手にやってください、そのかわり、排除命令が出ているから、それは証拠としてやって有利ですよと。

 ただ、ここで問題は、大きな取引であれば、では弁護士を使って金を取り戻そうということになりますけれども、流通業者なんていうのはみんな中小ですね。中小の大集合体が支えている中で、では実際、排除命令を受けました、それの審決を持って民事に訴えようという例えば中小企業がどれだけいるのかというと、実際そこまでやるところはほとんどいないんだと思うんですよ。ということは、もっと言えば、言うメリットがないんですね。中小企業の社長は、すっきりしてよかったねというだけの話なんです。

 ですから、これは公取のテリトリーの外だというならまさにそのとおりだけれども、本当にさっき言った公正なビジネスの環境をつくろうとするとこれだけじゃ足りないということになりますので、これは公取の方に聞いてもしようがないので、我々議員の方で問題提起としてさせていただきたいと思います。

 続きまして、今回の法改正に課徴金の減免制度の拡充というのがあります。共同申請、同一企業グループの複数の事業者による共同申請を認める。要は、カルテルをやっていた、入札談合をやっていたといったときに、それを許してあげるよというのを同一企業グループまで認めようという制度であります。

 ここでちょっとお伺いしたいのは、例えば、談合をやっていました、これは悪いことだからといって、だれかが最初にこんなことをしていましたと言うと、その人の罪を免除しましょう、もしくは軽くしましょうという仕組みだと思いますが、もう一歩進んで、とにかく時代に合わないんだけれども実際にまだやっている業界というのは、水面下でいっぱいあると思うんですね。

 水面下でいっぱいあって、要は、一緒にやってきた仲間、悪いことをやっているといえども仲間ですね、その人たちを出し抜いて、自分だけが先に行くと得をする。これは悪だから、別に内部告発することは決して非難されることではないし、逆に褒められることだと思いますけれども、日本人のメンタリティーからいくと若干違和感もあるんだと思います。

 そういったところで、談合グループ自体が話し合いをして、みんなで改心をして、もうこういうことはやめようとみんなで申し入れをしたといったときは、何か救われるような方策というものはないんでしょうか。みんなで心を入れかえたといったときはどうしたらいいのか。

竹島政府特別補佐人 それは、長いことやっていたらもう救いようがないんですが、違反行為開始から二年以内で、かつ公取が立ち入りをする場合には、その一カ月前までに違法行為をやめていれば、本来の課徴金の二割引きにしますという、早く足を洗いなさいというものは十七年の改正で入れているわけです。

 ただ、先生の最初の、リーニエンシー、課徴金減免制度を談合仲間みんなで話し合って申請しよう、これはとんでもない話でございまして、それは、本来違反行為者に課徴金をかけなきゃならぬ、例外的に、事前に単独で、いろいろな不都合もあるかもしれないのを自分のリスクをとって、それでやはりこれは正しくないと思って出てきた人を優遇しようということでございまして、やるときもやめるときも談合だというのは、これは本来かけるべきものをかけないということで、何のためにそもそもこの課徴金制度があるのかということになりますので、その考え方はとれない。

 ただ、今回、一部共同申請を認めていますのは、親子、要するにグループ会社の場合は、グループ会社が二人いて両方カルテルに入っているというケースも現にあるわけでございます。そういう場合は、こちらに入ってくる情報も同じような情報しか入ってこない。プラスアルファの付加価値のある情報は入ってまいりません。

 それから、そういうグループ会社が先に来ちゃって、今、先着三名様のところにもう二人来ちゃった、それに一番、二番をつけました、あと一つしか残っていませんということになりますと、これはやはりちょっと本来の課徴金減免制度の趣旨も十分生かされないなと。

 この点は、欧米は、その場合は共同申請、グループ会社内の共同申請は認めていますので、国際的なカルテルなんかの場合はそこがないと、日本へ行ったら親しかだめだとかということになるとまずいので、そこは認めておりますが、そうじゃない赤の他人の企業同士で談合を一緒にやめました、カルテルをやめましたから、ついては課徴金をただにしてくださいというわけにはいかない、こういうことでございます。

平委員 よくわかりました。

 先ほどもるる申し上げましたけれども、経済をよくするためにはやはり公正な取引をしっかりやらなきゃいけない。それと、そういう公正な取引を定着させるためには、やはり強い動機づけが必要なんだろうと思います。それが今回の法改正だと思います。課徴金の比率などはまだちょっと私は異論がありますけれども、ぜひ進めていかなければいけないと思います。

 最近何か、何でも規制強化という空気があって、何となく社会主義みたいな空気があって、やはりこれはある程度バランスは当然とっていかなければいけないですけれども、また、中小企業も何でも助ければいいということではないし、何でも助けてくれるということではなくて、公正な取引、どう考えてもおかしいだろうというところはちゃんと是正をする、身近にそういう仕組みがあるということが大事だと思います。

 政治の世界も、閣僚になるとき、最近は身体検査というのがあって、それでアウトだとアウトなんですね。そうすると、やはり日ごろからちゃんとしてなきゃいかぬということで体質が変わっていくんでしょうけれども、まあ全然違う話ですが、済みません。

 そういうことで、ぜひ、これからもいろいろ、特に中小企業の議論については、公取、独占禁止法の運用強化が、やはり中小企業にとって大変重要な法律でありますので、引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

東委員長 これにて平将明君の質疑は終わりました。

 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 私は、まず、独禁法の法改正の質問に当たります前に、日立アプライアンス株式会社に対します排除命令が二十日の日に下されました。冷蔵庫のリサイクル材の使用を過大に表示していたということで、景品表示法違反と聞いております。

 まず、その経緯と概要につきましてお伺いいたします。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 日立アプライアンス株式会社が、電気冷蔵庫を取引先販売業者を通じて一般消費者に販売するに際しまして、当該商品のカタログ、ウエブサイト等におきまして、当該商品に使用した断熱材の原材料に廃棄された電気冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用し、また当該樹脂を使用することにより、断熱材の製造工程において二酸化炭素の排出量を約四八%削減しているかのように示す表示をしておりました。

 しかしながら、実際には、断熱材の原材料にリサイクルした樹脂はほとんど使用されておらず、また断熱材の製造工程における二酸化炭素の排出量の削減率は約四八%を大きく下回るものでありました。

 このため、公正取引委員会は、平成二十一年四月二十日、かかる行為が景品表示法第四条に違反する不当表示として、排除命令を行ったところでございます。

 以上でございます。

高木(美)委員 この排除命令ですが、この間の販売台数は、マスコミ報道では十五万台とか十六万台とか言われておりますし、その間、多くのカタログが配布されたり、またポスター、そしてまた新聞広告等の掲載も、このマイナス四八%ということで行われたと聞いております。

 こういう販売台数等をどのように掌握していらっしゃるのか、また、こういうカタログ、ポスターの回収とか、そういうところまで関与していらっしゃるのかどうか、お伺いいたします。

中島政府参考人 お答えいたします。

 販売台数につきましては、本件表示の対象となる電気冷蔵庫は全部で九つの型があります。平成二十年九月以降順次発売されまして、本年三月末までで、全型式を合わせまして約十五万台が販売されていると聞いております。

 本件の公正取引委員会の排除命令におきましては、一般消費者の誤認の排除の措置及びこのような不当表示の再発防止策の実施並びに今後このような不当表示を行わないことを命じておりますが、一般消費者の誤認排除の措置につきましては、通常、関係人による新聞公示の方法により行われております。現在、この新聞公示等の方法につきましては、日立アプライアンスにおいて検討が進められているところでございます。

 なお、違反と認定された表示が行われているカタログ、ポスターにつきましては、日立アプライアンスにおいて現在回収をしているものと承知しております。

高木(美)委員 この内容なんですが、日立アプライアンス株式会社は、内部の意思疎通が欠けていたとかいろいろな理由をおっしゃっているようですが、いずれにしても、CO2削減に貢献していこう、協力しようという消費者を欺いたことになるという事実は重く受けとめていただかなければいけないと思っております。

 そこで、公取にお伺いしたいのは、排除命令は当然、調査、確認作業をきちんと経て出される結論であると承知しておりますけれども、これは春の買いかえ時期も大きく越えました。それが十五万台という数になって、しかも量販店に行きますと、明らかに省エネ大賞という金色の大きな看板とか、今お買い得なのは、一位、二位、三位、これですとかというような、大体、誘導するような表示が目につきます。

 恐らく、消費者の方はそういうものを一つ参考にしながら求められるという事実もあるかと思うのですが、私は、むしろそういう場合に、排除命令までいかなくても、まず迅速に注意をする、もしくは警告を与える、そしてその上で排除命令等を確定するというような、こういうスピード感のある対応というのも、新たな手法といたしましても必要ではないかと思います。

 特に、これから、省エネ家電志向を高めていきたいときでもありますし、環境配慮の商品につきましては一層よく注視していただきたいという思いがございます。見解をお伺いいたします。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 景品表示法の規定に違反する不当表示に対しましては、今、先生御承知のとおり、消費者被害を最小限にとどめるために迅速に是正の指導等を講じていく必要があるというのは、私どもも承知しております。しかしながら、他方で、一般消費者への影響が大きいと判断される事案につきましては、排除命令によります厳正な法的措置も必要であると考えているところでございます。

 本件におきましては、調査の過程で、当方から日立アプライアンスに対しまして不当な表示であるとの指摘をしたところ、日立アプライアンスはウエブサイトの表示を既に改めております。また、一般論で恐縮でございますけれども、他の不当表示事案におきましては、調査の過程で、当方からの不当表示の指摘を受けまして、自主的に商品の回収あるいは返金を行った事業者もあるところでございます。

 公正取引委員会としては、今後とも、個別事案ごとにどのような対応をとるかにつきまして、適切に判断を行ってまいりたいと思っております。

 また、商品の省エネ性能の程度、あるいは環境に対する配慮がなされた商品か否かは、現在の状況におきまして、一般消費者の商品選択の重要な要素の一つであると認識しておりますので、公正取引委員会としましても、省エネ、エコに係る不当表示に対しましては、消費者の信頼を裏切るものとして、今後とも厳正に対処してまいりたいと考えております。

高木(美)委員 それでは、注意、警告等を行わずとも、むしろ調査に入った段階で事業者の大半はそれに対して対応している、このように理解してよろしいのでしょうか。うなずいていらっしゃいますので、そのように受けとめさせていただきます。

 そこで、もう一つ、きょうは谷合政務官にもお越しいただきましたのでお願いなんですが、環境立国というこの切り札が、不況を乗り切っていく我が国の、特に経済を成長させていく大事なポイントであるわけです。そういう意味では、このようなエコとは言いがたい製品とか、そしてまた、エコといって御自分たちの表示をされていますけれども、果たしてそれが本当に適正なのかどうか。こうした評価制度をぜひとも、環境省、経産省そして総務省はエコポイントの導入等も今いろいろ検討されているとも伺っておりますが、公取もぜひ力を合わせていただきまして、このような評価制度をきちんと確立していただければと思います。このことは、主張をさせていただき、終わらせていただきたいと思いますが、ぜひ御検討をお願いいたします。

 そこで、本日、谷合政務官にお越しいただきましたのは、今、エコポイントの導入、そしてまた手法につきまして多くの問い合わせをいただいております。きのう、おとといあたりから一気に、さまざま、五月十五日からという報道がなされ、当然これは、四月十日、経済危機対策が発表された後に買い控えという行動が一斉に始まったということに対して、まだ補正予算案も成立をしていない段階ではございますが、異例の対応としてしてくださったものと承知をしております。

 このエコポイントの導入時期、そしてまた手法につきまして、その具体のポイントを谷合政務官にお伺いいたします。

谷合大臣政務官 今委員の御指摘のとおり、このエコポイント制度につきましては、温暖化対策、また経済活性化を図っていく、そして地デジテレビの普及ということを目的にした取り組みであります。一部に見られる家電の買い控えによる実体経済への影響というものを最小限にするために、可能な限り早期の実施が重要と考えております。

 このために、補正予算の国会成立を条件に、五月十五日以降に購入された製品を対象にできるよう準備することとしたところです。

 五月十五日以降に、統一省エネラベル四つ星以上のエアコン、冷蔵庫、地上デジタル放送対応テレビを購入された方には、補正予算の成立後、エコポイントを付与することとします。その際には、保証書、領収書、そしてリサイクルを伴う場合にはリサイクル券が必要となります。したがいまして、消費者の皆様におかれましては、これらを確実に受領、保管していただきたいと考えております。また、販売店の皆様にもこれに御協力いただきたいと思っております。

 付与するエコポイントでありますけれども、エアコン、冷蔵庫は価格の五%分程度、地デジ対応テレビは価格の一〇%分程度、さらに、対象家電商品の購入に合わせ、同種の古い家電をリサイクルした場合は、リサイクル料金相当分程度のエコポイントを付与することを予定しています。

 エコポイントを使用する際でありますけれども、現在、幅広い商品、サービスと交換することができるように検討中でございます。

高木(美)委員 きのう我が党内でも論議が出ておりましたが、やはりこうした内容につきまして、政府広報を使うなり新聞広告、またテレビCM等々を含めまして、周知徹底を早くお願いしたいと思います。

 このエコポイントを使う期間も限られていると思います。一応私は一年と承知しておりますけれども、その点、それでよろしいのでしょうか。

谷合大臣政務官 これは補正予算でありますので、基本的に一年、来年の三月三十一日ということであります。想定しておりますのは、当然それ以上の買いかえ分の台数を予定しておりまして、二年分ぐらいに相当する期間を考えているということはありますが、しかしながら、これは補正予算でありますので、一年間の予算であります。引き続き来年度以降も続けるように検討しているというところでございます。

高木(美)委員 それでは、期限もあることですので、まずは一年ということで、皆様にぜひとも周知徹底をお願いしたいと思います。

 こういうことは、大変細かい話なんですが、国民の皆様にしてみますと、いい政策であっても、自分は知らなかった、こうなりますと、せっかく買うんだったら町の電気屋さんで予約して五月十五日以降にしたのにとか、こういうことが逆に政策に対する批判につながっていくということも間々、私どもも多く経験をしていることでございますので、ぜひとも、この周知徹底につきまして、総力を挙げてお願いしたいと思います。

 もう一つお願いなんですが、このグリーン家電を、経産省は、また三省共管ですが、約三千万台ぐらい普及したい、こういう希望をお持ちとも伺いました。そうしますと、CO2削減効果が、今はまだ本当にあらあらで、一応十年間で数千万トンとかという話なんですけれども、できるだけこの試算をきちんとお出しいただきまして、京都議定書目標の中の〇・何%になるかわかりませんが、具体にそういう話までできますように準備をしていただければありがたいと思います。環境からもう一つ、日本の経済の活性化という、経産省、また谷合政務官、ぜひともリーダーシップを発揮して頑張っていただきますようにお願いを申し上げます。

 これで経産省の質問は終わりますので、政務官、どうぞ御退席くださって結構でございます。ありがとうございました。

 それでは、独禁法の改正につきまして質問をさせていただきます。といいましても、一番伺いたいポイントのところは、お二人の議員の方から既に終わっております。私は付随しての話になるかと思います。

 いずれにしましても、この独禁法は、公明党もこの改正につきましては、独禁法調査検討委員会を立ち上げまして検討を行ってまいりました。経済の憲法とも言われ、企業間の競争を促し、また市場の活性化を図り、健全な発展を図るということが目的と承知しております。今回の改正は、ちょうどこうした折柄、中小企業の経営環境の改善そしてまた消費者保護に資する、このことが大きく見ていかなければならないポイントであると私は思っております。その観点から質問をさせていただきたいと思います。

 ただいまも既に質問にございましたが、竹島委員長に再度、課徴金の対象範囲を大幅に拡大した理由と目指す効果につきまして、竹島委員長の御決意、思いも含めまして、お伺いをさせていただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 課徴金制度は昭和五十二年に導入されたわけですが、それはやはり端的に、建設談合とか価格カルテルとかいうものが、その前にあったオイルショックで非常に物価が上がった、そこに価格カルテルがあるのではないかというような議論を背景に、そういったものに限って課徴金を入れましょうということでスタートしてきたわけですが、今や、世界を見渡して、やはりどの国も競争法違反行為に対しては金銭的不利益処分というものを課しているということでございます。

 やはり大きく残っております分野が排除型私的独占という、固有名詞を挙げて恐縮ですが、例えばマイクロソフトとかインテルとか、日本の場合も、市場支配的な地位にある事業者、NTT東西というようなところがそういうことになるわけですが、こういうところが、市場支配的地位なり自分の地位をより強固にする、またはライバルなりが伸びてきそうだったら、さらには新規参入がありそうだったら、それをボイコットする、排除するというためにいろいろな手段を講ずる。例えば、リベートを出すとか、自分のお客さんには値引きをするとか、または拘束条件で、自分のライバルとは取引するなとかいう条件でなければ自分のものは納めないよというようなことがありまして、こういったものを排除型私的独占と我々言っておりますが、これについては今、課徴金の対象じゃないわけです。

 しかしながら、大企業が絡むがゆえに、やはりそうじゃない場合に比べてはるかに国民生活なり経済に対する影響が大きいわけでございまして、ヨーロッパにおいても、市場支配的地位の濫用として、こういった大企業の単独行動については大きな制裁金が課されているわけです。やはり日本においても、同じような問題意識で、今回、排除型私的独占にまず課徴金を導入しますというのが一点。

 それからもう一点は、先ほど来ございます不当廉売とか優越的地位の濫用という、中小事業者が被害者になる不公正な取引方法について、ただやめなさいだけでは効果がないではないか、課徴金をかけなさい、そういう御意思が前回の法律改正のときに附帯決議で書かれているわけでございまして、その宿題に対する答えをお出しした。

 不当廉売だけじゃなくて、差別対価であるとか再販売価格の維持とか取引拒絶とか、要するに価格に影響するようなものはそれと同じようなものとして扱うべきだという整理をいたしまして、要件も明確化した上、課徴金の対象にする。

 それから、優越的地位の濫用はそもそも、日本でも非常にこの問題があちこちで発生して残念なのでございますが、先ほどの平委員のお話の中にもるる具体的な話がございました。私どもも、そういったケースのときに泣き寝入りをしないでいただきたい、我々は匿名でちゃんとやりますから。だから、何か取引先に漏れるのではないかとか親にそのまま筒抜けになるのではないかというようなことを心配されずに、ぜひ公取に情報をもたらしていただきたい。そういったものについては、買いたたきに該当する場合もありますし、優越的地位の濫用ということできちっと対応する場合も多々あると思いますので、そういうものに、より抑止力が強まるように課徴金を新たに導入するということでございます。

 もう少し加えますと、カルテルや談合の場合に、いわば幹事社という、幹事をやって主導的役割を負う、そういう者がいるがゆえに長続きするということもあったり、その者がいわば差配をしているということでございますので、こういった事業者については、通常の課徴金の五割増しにするというようなことで抑止力を強めたいということでございます。

高木(美)委員 今、委員長から、匿名でも通報を受け付けるというお話もございました。

 私は、少し質問の趣旨が変わるのですが、一番最後の、いわゆる申告のあり方を検討してほしいという質問のところを今申し上げさせていただきたいのですが、今お話があった優越的地位の濫用ですね。そうとはわかっていても、競争が激しくて、やはり横の連携をとりながら、同じような事業者間で、ではそこでガイドラインがつくれるか。とてもつくれる状況にない業種もあります。かといって、公取の方に自分が申告をしたということがもし匿名であってもわかれば、自分が抱えている従業員は、何百人も一斉に路頭に迷ってしまう。

 先ほど平委員からも、まさに通報するときは我が身がどうなってもいいときだ、そういう話がありましたが、私もそういう事例に遭遇をいたしました。

 その方は、匿名で二回、メールで公取に送っております。ただ、それを具体事例として調査するに当たっては、当然のことながら、いつ、どのような案件で、どういう処遇を受けたのかとか、そういう事例をきちんと説明しなければいけないとは思うのですが、そこは、やはり事業者というのはいろいろ考えていることもありますので、こういう調査の仕方で入ってもらえれば大丈夫だという、そこまで書いて送ったようでございます。しかしながら、やはりそれに対する動きはなかった。

 結局、そこの会社は、畳みまして、大きな会社に合併といいますか、ほとんど身売りのような形で廃業となりました。しかし、その事業者たちの奮闘によりまして、従業員の雇用も守られ、会社名はなくなったけれども、また自分たちの処遇は、恐らくこれから冷遇されるかもしれないけれども、この時世で守れたということが、自分たちにとってはもういい、そういうふうに思う、そしてまた、これからいいチャンスが来たら再起したいと思っている、こういう話を先日も聞いたばかりでございます。

 今回、改正の中に、職員等の秘密保持義務違反に係る罰則の引き上げ、これを十万円から百万円以下に上げられたというふうにありますけれども、みんなやはり不安があるわけです。匿名であっても、言ったら自分の業種が恐らく察せられる場合もきっとあるだろう、しかも親会社の方が察してしまう場合もあるだろうと、いろいろなことを考えながらやっているわけです。

 この罰則も引き上げになったということは、私は、これはそういう事例があったからそうなったのか、それとも、通報すれば、個人名を明かせば、むしろそこですべてに知れ渡ってしまう、そういう風説は全くうそなのかどうなのか、そこの一番肝心なところを委員長にお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 守秘義務違反の罰則の件でございますが、具体的な事例があったわけじゃなくて、これは、国家公務員法の守秘義務の罰則が上がったものですから、それよりもいわば厳しく公取の職員についてはやっていますので、そこの平仄をとるというか、バランスを取り戻すために上げているわけでございます。

高木(美)委員 それでは、先ほど委員長からお話がありましたとおり、匿名でそのように申告をしたとしても、しっかりと受けとめ、そしてまたしかるべき調査等を行ってくださる、このように確認をさせていただいてよろしいでしょうか。

竹島政府特別補佐人 そのとおりでございます。

 それから、高木委員もおっしゃいましたが、公取に言っていっても後の祭りだ、もとに戻らないという御批判もいただきましたが、そういう場合がないとは言えませんけれども、私どもが大規模小売業者の納入業者いじめ対策を厳しくやっているがゆえに、それは後の祭りじゃなくて、おかげさまでよくなりましたという話もよく聞いていますし、ほかの大規模小売業者がそれを見ていて、やはりやめようということもありますので、決して後の祭りじゃございません。

 かつ、匿名性はちゃんと保持して、親なり関係者なりに不都合な情報が漏れないように我々はやっていますので、そこは、匿名でもいいんですから、匿名でばれると言われると、ちょっとそれ以上は困るんですが、ぜひ利用していただきたいと思います。

高木(美)委員 大変心強い委員長の御決意を伺いました。ぜひとも、そのような委員長のお取り組み、そしてまた公取の皆さんのお取り組みを私もしっかりと話をさせていただきたい、広めてまいりたいと思っております。

 そこで、最後に、審判制度ですが、今年度は見直しということで、平成二十年度中という昨年の改正案が、二十一年度中というふうに今回変わって提出をされているわけです。

 私は、これは各党、そしてまたそれぞれの団体、またそれぞれの恐らく個人によりましても、議員のお一人お一人におきましても、さまざま御意見が異なるところかと思っております。よく言われることは、公取が審判を行う現行制度には、検事と裁判官を兼ねている、公平性、中立性の面から問題点があるのではないか、こういう御指摘があります。企業が直接裁判所に訴えられる仕組みにすべきだ、こういう御意見があることも承知しております。

 ただ、私個人の懸念といたしまして、そうしたときに、果たして、専門性のある事案、ただいま竹島委員長からいろいろお話を伺っているだけでも、やはり今までの本当に長い歴史、また事案の積み上げ、恐らくそれがあられるのだと思います。そういう事案すべてが訴訟になじむのか。

 恐らく、その判断を下すに当たっては、現下の経済情勢、それから企業の最新の手法、そしてまた国際的な企業がどのような手法を持っていてというような国際的な見識があってこそできることではないかと思っております。これをぱっと移したときに、少し期間を置く、猶予期間を設けるにいたしましても、裁判所にそれだけのスキルがあるのかどうかといえば、疑問があると言わざるを得ないというのが私の率直な実感でございます。

 現在も、審決に不服があれば高裁に訴えることができる、このようにされているのではないかとも思います。公取はこのことに対しましてどのような案をお持ちなのか、そのお考えを伺わせていただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 審判制度の見直しは、まさにこの数年、大変重い課題としてございまして、かつて公正取引委員会は、審判制度は、三者構成で、裁判に準じた極めて手厚い不服審査の手続である、そこにおいて十分に議論を尽くして、その上で不服があれば、お話しのように、さらに東京高裁、最後は高裁に行けるわけだから、特別、適正手続上問題だとかいうこともないではないか、むしろ、専門性なり弾力性なりということが審判制度によって確保できるんだから、それは有用な手続であって、独立行政委員会たる公正取引委員会が持つべき機能である、こういうことを、六十年に及ぶ歴史の中でずっと申し上げてきたわけでございます。

 ところが、時代は変わり、十七年改正のときに、顕著な議論として、今御指摘の、検事役と判事役を一人で二役やるのはおかしいとかいうような御議論が出てまいりまして、審判制度を廃止すべきであるという御意見の方々もおられますし、いや、逆に、審判制度で特に問題はない、あるとすれば、事後審判、不服型の審判制度になったのを、もとに戻して事前審判にして、適正手続をより遵守するべきであるという御議論もありますし、それから、より実務的に、事柄によって振り分けをしてはどうか。カルテル、談合というのは、その違反事実があったかどうかで勝負が決まるんだから、これは、裁判所にいきなり直接行っても十分に裁けるのではないか。

 しかしながら、企業結合とか私的独占とかいうことになると、どういう取引分野で物事を考えるべきか。端的に言うと、日本国内で考えていいのか、東アジア、さらには世界のマーケットで考えるべきものなのかどうかとか、それから、競争を制限したというけれども、本当にどういう面で制限したことになるのかとか、いろいろな議論がございまして、特に最近は、事柄が複雑になったり国際化しているために、一つの流れとして、経済学的な素養を持って判断する、ただ機械的に条文を当てはめるということじゃなくて、実態的に、本当に経済の競争に悪影響を与えたのかどうかというようなことまでよく議論しなきゃならぬということになってきているわけです。

 そうしますと、やはりそういった事項については公正取引委員会の審判に残しておいた方が弾力的、かつ、いろいろ条件的に協議をするのがしやすいだろう。裁判所に行った場合は、あくまでも公正取引委員会が出した行政処分に対して取り消しをしてくれという、イエスかノーかの判断を裁判所にお願いするということでございますので、第三の道ということは考えられないわけで、それよりも、こうすればいいですよ、問題点はここにあるから、これさえやめてくれればいいですよというようなことは、裁判所に行った場合はそういうことがなかなかしにくいということで、振り分け方式がいいんじゃないかというような考え方、いろいろございます。

 ございますが、今現在、これはまさに私どもの立場は白紙でございまして、これから、この附則に書いてありますとおり、いろいろな御意見、それから裁判所との関係、実務が本当に回るのかというようなことも含めて総合的に検討して、恐れ入りますが、来年また御検討をいただきたいと考えております。

高木(美)委員 最後に、不服審査型審判方式、今の方式によって、その成果と検証が公平に公正に行われなければいけないのではないかと思っております。公取がやっていらっしゃる今の審判制度でどういう不都合が今まで現実にあったのかどうなのか、ここのところが公正に、きちんとオープンにされなければ正しい判断というのはできないのではないかな、私はこのように思っております。

 公取の持っていらっしゃる高いスキルをぜひとも、今、企業がそれぞれ伸びるために、また中小企業と弱者を守りながら適正な競争ができますように、しっかりと使っていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

東委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 きょうは、直接の担当ではありませんが、二階大臣にもお越しをいただいています。お忙しい中、ありがとうございます。

 冒頭、二点、法案に直接関係しない部分かもしれませんが、ちょっとお聞きをしたいと思います。

 一点目は、今回の独占禁止法の改正の部分も含め、改めて全体像を見せていただいたんですが、やはり公正公平な取引の促進ということで、当然今回の改正はある意味では是とするんですが、非常になかなかわかりにくい点があるというのを、冒頭、まず私の思いを披瀝させていただきたいと思います。

 そんな中で、私は、今、経済危機が叫ばれて、そして新規事業をする方たちがもっとそれぞれの分野に参入しやすい形をどうとるべきかということで、この委員会でも過去何度となく、廃業率よりも開業率、開業する新規事業の方々が開業しやすい、起業しやすい仕組みを、金融や情報や、またやる気の部分も含めて、経産省全体でもサポートすべきだというお話をしてきました。

 改めて、このところの将来の社会保障の不安という問題や、なかなか金融でも、数年前よりも、信用保証枠の拡大も含めて、個人や新しい方々が借りやすい仕組みになってきたものの、まだまだそれは十分ではないということと、あわせて、若い方々が将来に対して、本当に自分が会社を起こして、社長になってもっともうけてみよう、社会に貢献しようというふうな意欲が、やはりマインドの部分でも非常に弱くなっているというのが非常に気がかりであります。

 ぜひ、そんな部分で、経済再生にはやはり新しい企業を起こす人たちがこれからもっとふえる施策をまず展開していくべきだというふうに考えていますが、経産省はどのようにお取り組みになるのか、冒頭、お尋ねをしたいと思います。

森川政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、新しい事業に挑戦する人、若い人を含めまして、こういった方を増加させるということは、我が国経済の活性化にとって極めて重要でございます。

 これも御指摘のとおり、八〇年代以降、開業率が廃業率を下回るという現象が残念ながら続いております。こうした中で、政府といたしましては、創業を志す方を対象とした研修事業といたしまして、全国の商工会、商工会議所によります創業塾を実施しております。これは、延べ七万七千人が受講しております。それから、創業二年以内の方に対して、無担保、無保証人で融資できる、日本政策金融公庫によります新創業融資制度を実施しております。また、個人投資家からの資金調達を円滑にするためのエンジェル税制を創設、また拡充してまいっております。こういったことで、各種の開業促進策を講じております。

 また、今年度からは、大学、大学院における起業家教育を量的にも質的にも向上させるために、大学・大学院起業家教育推進ネットワークというものを設立いたしまして、教授法の向上、起業家による実践的な講義の拡大などに取り組むことといたしております。

 経済産業省といたしましては、今後とも、さらなる起業の促進のために努力してまいりたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 今お答えをいただいたように、いろいろな施策をやっているのは十分承知をしておりますが、やはり今一番大切なことは、個人はこれから雇用不安や所得が伸びない、ボーナスも減っていくという中で、将来の売り上げが本当にそれぞれの業の中でプラスとなっていくかどうかということは、むしろ非常に抑制的になっているという状況であることは当然なことなんです。やはり、そうではない、新しい産業、特にせんだっての知財の部分でも若干お話をさせていただいたように、いろいろな特許はあるものの、それを新しく業を起こす方や中小企業の方々が使っていく、使いやすくするという施策も重要だと思うので、特に、お金がなければできないという状況はある意味では当たり前なのかもしれませんが、それを克服する努力をこれからもなお一層省内でも御検討なさって、情報発信をしていただきたいというふうに思います。

 大臣にきょうおいでいただいたのは、特許の分野、先週、特許庁も、太陽電池の特許は世界でも有数で、ヨーロッパやアメリカやアジアでも積極的に特許出願しているというものが出たものの、一方で、今までドイツの企業に次いで太陽電池の売り上げがあった日本のシャープも、二位から四位に順位が落ちてしまって、むしろ今は技術開発よりも量産だということで、今、補助金も含めて、特に平成二十一年度からは、国内で太陽光発電、太陽電池の普及が大きく伸びることになっています。

 そんな中で、日本の会社の国際競争力が低いまま太陽電池、太陽光発電の内需拡大の部分が進んでいけば、大臣が繰り返しこの委員会でもお話をされているように、国内の企業の生産した太陽パネルを使うのではなくて、円高や国際競争力が強まったドイツや中国の会社からむしろ輸入をして使っていくという個人や企業というものも当然出てくると思うんですね。それでは、これからの経済成長の大きな核となるというふうに大臣も繰り返し発言されておられるこの太陽光の量産という商業化の部分が、本末転倒とは言いませんけれども、むしろ予想外の展開になってしまうということを想定しながら対応しなければいけない。

 特に、私の地元で、NEDOさんが出資をして、稚内と、太陽光の実証発電の実験を今やっております。これももう第二フェーズにはなっていますけれども、来年度、ですから二十二年度中にシステムを構築して、それを評価してということで、最終的な方針や手引書の作成というのはもっとおくれることになっています。

 そこも前倒しをして、やはりスピード感を持ってやっていかないと、五年後に見てみたら、海外の太陽光パネルが日本じゅうの屋根に張りつけられていたということではやはりだめなんで、大臣、海外の企業も日本市場に照準を合わせて、虎視たんたんというよりも積極的にセールスの展開をしているということでありますので、ぜひスピード感を持って、いろいろな実験、研究もやっていただく。そしてその実用化を、できるだけ国内のメーカーが日本の需要を賄っていけるような、やはりそういうふうなもの、これから、輸出が主体というよりも、輸入をどう防ぎとめてまた輸出に転じていくかという、二つの命題を解決していかなきゃいけないと思いますが、大臣、ぜひ強い決意のほどをお伺いしたいというふうに思います。

二階国務大臣 議員のお地元でも、北杜市でございますか、太陽光発電について大変御熱心に御協力をいただいていることにまず感謝を申し上げたいと思います。

 御案内のように、太陽光発電は、宇宙用として最初は開発されたものでありますが、オイルショックを契機にしまして、我が国が民生用として利用すべく研究開発プロジェクトを立ち上げて以来、約三十年にわたって日本が磨き上げてきました世界に誇るべき技術であります。

 それが今、議員から御指摘のように、おくれをとってしまってはいけない、こういうことであります。我々は常に、世界でトップクラスだということを誇るのは簡単でありますが、その誇っておる間に他の国々が虎視たんたんとこの日本の地位を脅かす、そういう状況に相なっておるわけでありますから、相当の緊張感を持ってこれからこの世界のトップレベルを維持していかなくてはならない。いわんや、今議員が御指摘になりましたとおり、これらのことに関して、だんだんと定着するようになってきたときにはみんな海外からの輸入品であったというふうな、そんな笑い話にもならないようなことになってはいけない、重々心して対応したいと思っております。

 今、私どもの産業戦略におきましては、短期的には太陽光発電システム価格を半額程度の水準にする、中長期的には、世界シェアについては二〇二〇年には三分の一超まで引き上げる、このことを目標としておるわけでありますが、今御指摘のように、他の国々におきましても、このことに大変熱心に取り組んでおられます。

 我々は、そういう国々の開発状況等も十分念頭に入れて、今後、国内、海外双方での展開を通じて、太陽光発電の国際競争力において人後に落ちない、この強化に向けて官民を挙げて積極的に取り組んでいきたいと思っておりますので、ぜひ応援をお願いしておきたいと思います。

後藤(斎)委員 大臣がお答えいただいたように、大きな目標を設けて対応していただくのは当然なんですが、為替が例えば円高ユーロ安みたいな形で振れると、その努力というのが一瞬にして、変な話、二割、三割は当たり前みたいな、後でちょっと触れますが、そういうことになってしまう。

 それ以上に研究開発に予算を投入する、それを前倒しで実証して実用化していくという繰り返しの作業でない限り、当然、メード・イン・ジャパンだけを抱え込むというわけにはいきませんから、そういう中での、あらゆる予算、また人的、そして官民挙げての取り組みをぜひこれからもお願いしたいというふうに思います。

 それでは、本論の方に入りたいと思います。

 私は、この独禁法の問題、冒頭もちょっと触れさせていただいたように、はっきり言って、私の能力がないのかどうかわかりませんけれども、非常にわかりにくいというのがまず私の思いであります。

 そんな中で、公取も、独禁法の運営とか摘発をやっておるだけではなくて、例えば、ちょうど二年前になりますが、農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針というのを作成して、公表されております。これをしてから警告件数が減ったというお話を、きのうのレクのときにもお聞きしています。

 これを読むと、ある意味では非常にわかりやすいんですね。それぞれの物や産業別にこういうガイドラインを今までもつくられているようでありますが、その方針というものをつくっていただいた方が、委員長、わかりやすくしないと、後で最後に触れますけれども、運用をすべて公取の審査部の方でやっているというのは余り好ましくないのかなというふうに思っています。

 ただ、私が思っているのは、この農業協同組合の独禁法上の指針というのを、かなり問題意識も含めて書いてあるんですが、実際、本当に現場で営業している農協の方、組合員の方も含めて、知ってこれをやっているのかどうかというのも若干気になるんです。やはり周知もしながら今まで研修会等やっているようなんですが、この問題意識を継続的に現場の例えば営業の方、そして組合員の方もわかりやすいように、なお一層この指針というものも対応を考えていただきたいと思います。

 この二点について、まず冒頭、どのように今後活用していくのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 確かに独禁法はわかりにくいというふうに言われておりまして、これはそうなんですが、ただ、それを厳正に執行していかなきゃならぬという立場にあるわけでございます。したがって、違反事実に接した場合には厳正にやっておりますが、もう一方で、予防的というか、厳正に執行する以上は、事業者に対して、どういうことをすれば独禁法違反になるのかというのをわかってもらわなきゃ困るわけで、要するに透明性ということが大事だと思います。

 そういう意味で、我々は、何も捕まえるだけが仕事だと思っていませんで、独禁法をいかに実際の取引において生かしていただけるかということが最終の目標でございますので、問題のありそうなことについては、この農協ガイドラインに限らず、いろいろなガイドラインをつくっていまして、こういった具体的なケースに触れながら、こういうケースはやはり違反のおそれがありますよということで、なるべくわかりやすいものを示してございます。

 不当廉売もそうでございますし、大規模小売業者の納入業者いじめというものもそうでございます。いろいろございまして、これからも、つくった以上は関係方面によく周知をする、農協の場合も十の都市で説明会をやっておりますが、それのみならず、農水省とも協力をして、その系統におけるコンプライアンスの研修の中の一部にしていただくというようなことも含めて、これから、せっかくつくったガイドラインが普及するように、引き続き努力してまいりたいと思います。

後藤(斎)委員 委員長、非常に基本的なことで恐縮なんですが、今回新たに課徴金の対象になる排除型私的独占というのは、私、これは幾ら読んでもなかなかわかりにくいんですが、例えばどのようなケースを想定して、なぜこの課徴金の対象に入れなければいけないのかということも含めて、簡潔で結構ですから、ちょっと教えてください。

竹島政府特別補佐人 端的に申しますと、例えばマイクロソフトのOSというのは極めて市場支配的地位が高いわけですね。八割以上、九割ぐらいのものが、パソコンをつくるメーカーはそれを買わなければいけない。そうすると、その強い商品をてこに、もう一つ、メディアプレーヤーというそうでもないものを自分が開発しました、これを一緒に買わせる、抱き合わせ的なことを、そうでなければOSそのものも売らぬぞ、こういうことが現に起きたわけでございます。

 それから、インテルなんかの場合は、ライバルがいるわけですが、日本におけるライバルのシェアが上がってくると、これは困ったということで、自分の九〇%ぐらいの高いシェアを維持するために、自分から一〇〇%買うなり九〇%買った場合にはリベートをやる、そのかわり、そうじゃない場合はやらぬ。こうなりますと、買うパソコンメーカーは従わざるを得ない。こういった行為が排除型私的独占。その手段は、略奪的に価格を下げる場合もある、極めて恣意的に、リベートを戦略的に渡すというようなこともある、それから拘束条件をつけるということもある、いろいろな手段がございますが、そういったことです。

 そういったことは、グローバル化とともにいろいろな業界が寡占化しているわけでございまして、大きいことが即悪いとは思っていませんが、大きいがゆえに悪いことをしがちでございますので、そこをチェックするのが排除型私的独占。

 わざわざ排除型と申していますのは、一方で支配型というのがあって、自分の子会社じゃないんだけれども、垂直的に支配しちゃう、それで自分の思った値段で売らせるとか、思ったところに売って、ここには売るなとか、そういうことで、完全に自分の手足のようにコントロールする私的独占もございます。これは既に課徴金の対象になっております。

後藤(斎)委員 委員長、わかりました。大体、おおよそ、おぼろげながらに理解できました。

 あとは、先ほども議論がありました不当廉売の話なんですが、今よく言われているのは、量販店で、これは公開の情報になっているから構わないと思うんですが、例えばヤマダ電機さんなんかが、〇五年の市場占有率というのは量販店売り上げの大体一八・五%ぐらい、現在、昨年なんかは二八%くらい、一〇%ふやした。これはいろいろ統合したりということもありますが、家電量販店の上位五社くらいで占める割合というのがかなり急速に上がっています。

 コジマさんもヤマダさんもそうですけれども、ほかが一円でも安かったらそこまで下げますよというのを非常にメーンのキーワードにしながら売っていますけれども、それは消費者から見れば非常にいいんですが、それが不当かどうかというのは、後でちょっとどういう定義かお聞きをします。

 例えば、一週間くらい前も、牛どんのすき家さんがまた五十円引きをすると。それはオーストラリア牛を使っているから、ほかの例えば吉野家さんよりも安くできるんだよと。これも、サラリーマン、今は女性の方も牛どんを食べられますけれども、二百円前半で食べられれば消費者にとってみたら非常にハッピーだということで、それを否定するものではありません。

 不当かどうかというのは、やはりそれぞれの業態によって、消費者から見れば安い方がいいし、企業間の競争から見れば、こいつ、市場から撤退するまでやっつけちゃうぞということで不当かどうかという判断をするんでしょう。これも、やはりもう少しわかりやすいガイドラインというか基準というもので、例えばヤマダ電機さんの例ですとか、すき家さんもそうですが、いや、普通の商行為なんですよと思っても、定食屋をやっている地元の方から見れば、いや、あんな安いのには到底対抗できないよ、通常の電気屋さんをやっている個人商店から見れば、いや、あんなのができちゃったから大変だよというふうに、その業の中にいれば、あれは不当だと普通思うはずなんですよね。

 この後、PBの問題について次に触れますけれども、委員長、どこでガイドラインを、不当かどうかというのを引くのか。あるのであれば、やはりその線というかガイドラインはもっとわかりやすくしていかなきゃいけないと思うんですけれども、その点について、牛どんと家電量販店の例を踏まえながら、ちょっと教えてください。

竹島政府特別補佐人 不当廉売についてのガイドライン、昭和五十九年にもお示しして、その中で書いてあることでございますけれども、まず一つは、供給に要する費用を著しく下回る対価で売っているかどうかということ、それから継続してやっているかどうか、それから他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるかというようなことが書いてあるわけです。

 ですから、端的に申しますと、それなりの事業規模がある、売り上げがそれなりの規模があるのが、全くコスト割れ、要するに、端的な話、小売業の場合は仕入れ原価割れ。

 ある期間というのは、具体的に一週間なのか一カ月なのか、それは個々具体的、かつ、毎日じゃなくても毎週末必ずやるというようなものが継続してに該当し得るわけでございますが、それがやはり相当程度、一回ぐらいだったらこれは大した悪影響はないはずなので、相当程度やる。それはそれぞれの業界において、やはり異常かどうかという判断を実はこちらの行政サイドでせざるを得ませんが、いずれにしても、単発じゃだめだ、継続性が必要だ。

 それから、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれというのは、一回それで打ちのめしておいて、後で上げるぞというようなことをたまに、多分まれですけれども、公言してやる人もいるわけで、まさにこういったケースは悪質だということなんですね。

 したがって、それで他の事業者がやめてしまってから上げられたのでは、これは本当に消費者の利益もかなえられませんので、そういう不当廉売はきちんと取り締まるし、今度の場合は課徴金の対象にしましょう、こういうことでございます。

 ですから、基本的に、安いものは即アウトという考え方はとっておりません。安いものは、むしろ一般的にはそれは消費者に歓迎されることなので、余計な行政介入はしないというのが基本的な立場でございます。

後藤(斎)委員 委員長、もっと言えば、よく小売酒販と量販酒販のケースもあります。私の友人も地元で何軒か小売酒販をやっている方がいるんですけれども、セールのときだったら、量販酒販から買った方が卸から買うよりもやはり安い。結構公取も、酒販の部分ではそういう話で警告をしたりということは事例としてありますが、酒販ができて、だから、原価の部分も当然いろいろな内部情報をとりながら、原価割れしていないかみたいな、今、委員長がお答えいただいたのを調査していると思うんですけれども、それもやはり五十九年の不当廉売に関する考え方がベースになって、それぞれの年次で改定はしているようであります。

 私もこれを読ませていただきましたけれども、大体わかるんですよ。ただ、どういうケースが、今言ったような象徴的なケースというのがあるわけじゃないですか、それぞれの業界の中で。業界の中にいれば、やはりおかしいよというのはあると思うんですよ。定食屋さんから見れば、これだけ安い、二百円台の飯が食べられるなんてことはやはり五十九年当時なかったはずなんです。ですから、お酒とか家電もそうですけれども、安い方がいいという消費者の部分の利益を守っていただくのは当然なんですけれども、そうじゃなくて、やはりわかりやすい運用を、委員長、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 それに関連をするんですが、PBブランドというのが今あるじゃないですか。大きなスーパーさんが直接メーカーさんと契約をして、卸コストを削減して安くしている。

 これも、私もよくコンビニでカップラーメンを買うときには、ナショナルブランドのメーカーよりも三十円くらい安いので、どうしてもそっちの方を買ってしまう非常に貧乏臭い性癖があるんですけれども、やはりそれも、普通のナショナルブランドしか売れないようなところから見れば、何か違うのかなというふうに思って、これは企業努力の部分も当然あるので、多分、公取は直接どうこうじゃないんです。

 何が言いたいかといえば、やはりこれからの事業者の方、これは大企業、東証に上場しているような企業では独禁法の専門家というのをかなり、七割くらいが配置をして、企業自体も、独禁法の運用とかその改正について、非常にウオッチをしながら、関心を持っているというふうな統計も見せていただきました。

 でも、中小の場合は、例えば地元のスーパーさんであるとか、地元で何か食品をつくっているところは、そんなのは別に余り関係なくて、さっきもお話があったように、でもそれを言ったら、何か公取って怖いよな、何か言って逆に事情聴取に来られたらおれたち困っちゃうなと多分思っているはずなんですよ、うそじゃなくて。私もそういうのを聞いたことがあります。

 やはりそういう中で、私は、先ほども高木さんがお話をした日立の冷蔵庫というのは、変な話、省エネ大賞をとっていて、十五万台、三百億くらいの売り上げがあったというふうなことでありますけれども、これもある意味では警告、排除勧告だけをしたというので、ペナルティーも罰金も罰則もない。多分、省エネ大賞の受賞を返したということだけでは、確かに今の景表法の中には罰則規定はないんですけれども、新聞に出ただけで社会的制裁を受けたということはあるにしても、やはり関連法の部分でのレベルが、ある意味では悪いことをして、省エネだ、有機素材を使っているみたいな形で、それをPRしながら売っていたというのは、何もその罰金も罰則もないというのはどう見てもやはり片手落ちだと思うんです。

 これはぜひ、これから消費者庁に行くのかどうかは別としても、やはり公取の中でも引き続き、課徴金の対象に入れるかどうかも含めて、きちっとした対応をしていただきたいと思うんですけれども、その点について、委員長、いかがですか。

竹島政府特別補佐人 不当表示についても課徴金の対象にすべしというのは前回の改正法のときに御議論がございまして、私どもは、それはそうだなということで、実は、去年お出しをした独禁法並びに景表法の改正法案の中には、不当表示も課徴金の対象にするということで進めさせていただきました。

 したがって、公取の立場はそれでよしということでございますが、今、消費者庁設置法を国会で御審議中だと思いますけれども、そちらに移管されることになりましたので、したがって、ペナルティーをどうするかも、それから被害者救済をどうするかも含めて、消費者庁の方でもう少し横断的に、総合的に見直しをされる、そういう方針でいらっしゃるというふうに聞いておりますので、そちらで議論が続くことを期待しております。

後藤(斎)委員 今までの経緯というものもありますので、委員長、先ほどの農協の活動の指針もそうなんですが、やはり各省に対して、いろいろ指針をつくって、勧告というか、こういうふうにしてほしいよねというのはこれからも言えるわけですから、私、ぜひそれはやっていただきたい。

 あわせて、最後になりますけれども、不当廉売の規定も含めて、運用基準、その判断基準というのをやはり明確にすべきだと思うんです。それがない限りは、常に公取が、本当は委員長のように、職員の方も非常にそれぞれの業をサポートする。何も別に、捕まえて、何か悪いことをしたならげんこつくれるのがお仕事じゃないはずなんです。ですから、運用判断基準というものを明確に、わかりやすく、事前に方針をガイドラインで示しておくということがやはり必要だと思うので、それについて、ぜひこれからも積極的にやっていただけるようにお願いをしたいんですが、簡潔で結構ですから、最後に御答弁をお願いします。

竹島政府特別補佐人 御指摘も踏まえて、これからも引き続き努力してまいりたいと思います。

後藤(斎)委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

東委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 きょうは、独禁法の改正について質問したいと思いますが、この独禁法というのは、私も個人的にそうですし、民主党も、特に中小企業の立場からいえば、もちろん、余り規制を過度に強化する必要はないと思いますが、やはり事前の規制と事後の規制というものを峻別して、事前の規制を緩和するのであれば、事後の規制をある程度強化しないといけない。そうしなければ、健全な競争というよりは、基本的には強い者勝ちの、非常に乱れた市場になってしまう。この数年の中小企業、特に下請業者というのはそういう目に遭ってきたというふうに思っております。

 ですから、そういう意味では、今回、課徴金を引き上げる、対象を広げる、その点については、我々も方向性としては賛成でありますが、この問題は、やはり運用の方にあるというふうに思っております。

 特に下請の場合は、場合によっては、公正取引委員会に情報を漏らすとか告げ口をすると後で仕返しをされるということで萎縮してしまう。実際、私も、地元の中小企業の社長さんとかと話をすると、とても公正取引委員会に真実を語ることはできない、余りにも後の仕打ちが怖い、そういう声がよく聞こえてきます。

 そういう中で、やはり公正取引委員会の役割の一つとして、私の資料の中の、資料三番がございますが、優越的地位濫用の特別法として下請代金支払遅延等防止法という下請に関する法律がございますが、その中の第九条に、公正取引委員会というのは、親事業者もしくはその下請事業者に対して、その取引の実態を報告させるということができる、そして、その報告に基づいていろいろ対応をしていくということがありますが、やはりこれが大事だと思うんですね。

 受け身で、向こうからいろいろな情報が上がるのを待つんじゃなくて、公正取引委員会が積極的に情報をとりに行く、その方が、特に下請業者にとっては、ある意味では、ある程度、情報を公正取引委員会に出すことをやむを得ない状況に追い込むというのは変ですけれども、そういう状況に置いた方が、より情報はとりやすいというふうに思っております。

 そういう中で、下請あるいは親事業者に対して報告をさせるというのは、これは資料の一にございますが、基本的には書面調査というものをやっておられるというふうに思います。

 この書面調査、まず親事業者に対する書面調査の方ですが、ここに、一番上の方ですが、資料は平成十六年度から平成二十年度まで数字を掲げております。実際に親事業者に書面調査を発送した、そしてその回収率、実際回答を得た率が、平成十六年度が七六・六%、十七年度が七六・五、十八年度が八一・五、十九年度が八五・九、二十年度が八九・一と、少しずつ上がっているんですが、もう一回資料の三に戻りますと、法律上は、第十一条に、この報告を含めて報告をしない場合、あるいは虚偽の報告をした場合は五十万円以下の罰金に処すると。つまり、罰則がついているんですね。こういうことを考えると、やはり基本的に一〇〇%回答を得ないといけないと私は思っておるんです。

 これは中小企業庁も、実は、この第九条の二項に中小企業庁長官も同じ権限を持っているんですが、中小企業庁に至ったら、これは資料の二の一番上の方を見ると、親事業者向けは、平成十七年度六五・六%、年を追っていくに従って、六七・一、七〇・五、これは数字を後で聞いたんですが、平成二十年度は七〇・五%ということで、中小企業庁になるとさらに成績が悪い。

 これはやはり一〇〇%を目指すというか、特に公正取引委員会はある程度怖い役所じゃないといけないというふうに思いますので、それは、ちゃんと情報を得るために一〇〇%回収すべきだと思いますが、まず、なぜこういうことになっているのか、お聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕

中島政府参考人 お答えします。

 親事業者向けの書面調査は、委員御案内のとおり、業種、資本金の規模等を勘案しつつ、年度ごとに、下請取引を行っていると想定される調査対象事業者を私どもの方で抽出いたしまして、調査書を送付しているところでございます。

 ただし、これらの事業者の中には、下請法の適用対象となる下請取引を実際には行っていない、つまり、下請法上の親事業者に該当しないという正当な理由があることなどによりまして回答しない事業者もおることから、回答率が一〇〇%となっていないものと理解しております。

北神委員 済みません、もう一度、それは正当な理由で回答しないということですね。ちょっともう一回、その正当な理由というのはどういう理由かというのを教えていただけますか。

中島政府参考人 先ほど先生が引用されました九条、罰則の十一条の規定は、親事業者に対して我々が報告をお願いしているわけでございます。したがいまして、親事業者でなければ答える義務はないということになります。

 他方で、我々の方から送るときには、こういう業種によって親事業者、下請取引をしているだろうということで、あるいは昨年まではしていたということで送っておることでございますけれども、経済情勢の変動あるいは企業取引の変動で下請取引をもはや行わないようになった企業等の変動もございますので、そういう意味で、もはや親事業者でなくなった、下請取引をしていない事業者につきましては、親事業者でないわけですから、第九条の報告の義務がかからない。そういう意味で、正当な理由により回答しなかったと申し上げたことでございます。

北神委員 今の話でいけば、親事業者に対する書面調査をしていて、発送する、その中で、親事業者だと思っていた、あるいは従来そうであった、それが、事情の変更とかあるいは勘違いで親事業者じゃなかったからその回収を得ていない、そういう理屈でいいんですね。

 今一番近い、直近の数字でいけば、平成二十年度は八九・一%、つまり、一〇・九%は親事業者じゃないから回答していないという理解でいいんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 そういうものもあるでしょうし、サボっているところもあるでしょうし、無視しているところもあり得るわけでございまして、私どもは、親事業者に発出して、来ない場合には、やはり督促をするとかいうこともやっているわけです。

 罰則は最後の手段だと思っていますので考えていませんけれども、そういう形で、なるべく八九が一〇〇になるように努力をしているわけでございまして、そんなに低い回答率でもない、九割いっていれば立派なものだとも思います。

北神委員 真実の声を聞かせていただきました。私も、恐らくそうだというふうに思っておったんですね。だから、やはりそれをはっきり言っていただかなければならない。

 私は、別にそれを責めるつもりはなくて、前回も委員長といろいろ議論したときに、やはり人員が非常に少ない中で一生懸命やっているという認識ですから。そういうことで、サボっているとまでは私も言いませんが、やはりなかなか対応し切れていないというのが真実のところだというふうに思っております。

 あと、罰則についても触れられました。しかし、サボっている部分はどうかわかりませんが、ちゃんと発送して無視をされた。最後の手段とおっしゃいますが、そこはやはり厳しくやらないと、むしろ、無視する中には、やましいからあえて回答しないところもある。回答しなかったら何にも公取が言ってこない。そうしたら、毎回そういうふうに対応していたらいいじゃないか。これはやはり許すべきじゃないというふうに私は思っておりますが、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 まさに正論だと思います。ただ、現実問題は、我々は、督促するなり、そういうところには出かけていって調査するなりということを現にやっているわけでございます。

 それでも言うことを聞かないというのは、まず日本には少ないだろうと思うんですが、そういう努力をした上で、と申しますのは、五十万円の罰金をかけてくれといって告発しましても、これは現実問題、なかなか世の中は動かないと思いますので、それよりも、実際協力をさせるという努力の方が現実的かなと思っております。

北神委員 その辺は硬軟織りまぜて対応していただければと思いますが、やはりちゃんと回収できるように努力をしてもらいたいというふうに思っております。

 あと、先ほど申し上げたように、これは公正取引委員会だけじゃなくて中小企業庁の方も書面調査というのをやっている、回答率はさらに低くなっている。

 そして、これは資料の三の第二項に行けば、確かに、公正取引委員会の第一項の部分は、最初に書いてありますように、「公正取引委員会は、」「取引を公正ならしめるため必要があると認めるときは、」こういう報告を求めることができるとありますが、中小企業庁の方は、「下請事業者の利益を保護するため特に必要があると認めるとき」と、そういう意味では少し役割が少ないような書き方になっておるんです。

 私が申し上げたいのは、公正取引委員会が非常に少ない人員でやっている中、これはまさに中小企業、特に下請の中小企業にとっては生きるか死ぬかの問題でもありますので、やはり中小企業庁におかれても、それ相応の責任感と使命感を持って対応していただきたい。しかし、そういう中で、回収率が非常におぼつかないというふうに思います。

 これについて、どういう理由でこの回収率がこんなに低いのか、教えていただきたいと思います。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、公正取引委員会と同様に書面調査を親事業者に対して行っております。この未報告の事業者の中には、先ほども御答弁ございましたとおり、現に下請取引を行っていないケース、あるいは合併、倒産等でもう事業者が消滅しているというケースもあろうかと思います。

 加えまして、委員長からもございましたとおり、いわば未提出、サボっているという事業者もございます。ここに対しては、公正取引委員会同様、書面による督促状を発送いたしまして、さらに、それでもだめな場合には、一定の資本金を有する親事業者に対しては電話による督促ということで、回収率上昇に努力をしております。

 私ども、平成十七年度以降、先生も御紹介になりましたが、回収率が順次上がってきておりますが、二十年度につきましては、親事業者への調査数を大幅に拡充いたしまして、五割増しぐらいにふやした関係で、十九年度と同じような回収になっております。引き続き、回答率を上げるべく頑張っていきたいと思っております。

北神委員 公正取引委員会の場合は人員の問題があるというふうに思っています。以前はその人員体制についても議論しましたので、きょうは詳しくはしませんが、中小企業庁は取引課というところがやっておられると思いますが、やはり督促とか電話までしないといけない、そういうのになかなか手が回らないとか、そういった状況はあるんでしょうか。これは通告はないんですけれども、申しわけないですが。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども本庁には取引課という課がございますが、各経済産業局におきまして、各ブロックごとにこの下請代金法を担当する課はございます。

 したがいまして、電話等の催促は各ブロックの中小企業課等の担当課でやってございますので、本庁及びブロックで対応しているということでございます。

北神委員 では、人員は別に問題ない、基本的にそういう認識でいいんですね。

横尾政府参考人 下請代金の検査官につきましては、過去五年間で、全体で定員四十五から今六十六までふやしてございますが、引き続き、人員体制の拡充は頑張っていきたいと思います。

北神委員 今、親事業者の話をさせてもらいましたが、次に、下請事業者についても同じように書面調査を行っている。

 これは、資料の一に行きますと、公正取引委員会の方ですが、さらに回収率が低くなっている。平成十六年は三三・八、それで、年を追うごとに、三一・八、三八・一、三九と頑張っているように見えたんですけれども、二十年度になると急に八・二%に、これは異常に下がってしまう。

 中小企業庁の方を見ると、これは資料の二ですけれども、十七年度が三四・四、二七・四、三二・一、一番最新の数字が、ここに書いてありませんが、二八・一ということでございます。

 二十年度、これはちょっと異常値というか、どうしたのかな、何か特別の理由があるのか、それを聞きたいというふうに思いますが、それと同時に、この回収率の低さについての認識を伺いたいと思います。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 下請事業者向けの書面調査は、親事業者から提出されました下請事業者名簿から発送先の下請事業者を抽出して、送付させていただいているところでございます。

 また、下請事業者向けの書面調査は回答を義務づけているものではありませんので、親事業者向けの書面調査よりも回答率が低くなっておりますが、これは、下請事業者に任意の協力を求めるという調査の趣旨から見て、やむを得ないものではないかと考えております。

 今先生お話がありました、二十年度の数値が異常に低いのではないかということでございます。これは私どもも正確な分析というものはまだしておりませんけれども、一つ考えられますのは、もちろん、現下の経済情勢ということがあるかと思います。

 また、他方、若干技術的な理由なんですけれども、十九年度までは、下請事業者向けの調査書面におきましては何も書いていなかったんですが、ことしから、違反行為がない場合には返答していただかなくて結構ですという注をつけさせていただきました。

 それは、十九年度までの下請調査票を回収させていただきますと、違反行為なしというのも少なからずあったものですから、そういうことで、今回、二十年度におきましては、違反行為の認められない下請事業者につきましては、書面を送付しなくてもいいということを注でつけたことはございます。

 ただ、これが三九%から八%への減少にどれだけ寄与しているかというのは、また今後少し分析してみないとわからないところでございます。

 以上でございます。

北神委員 これは、ここでちょっと提案というか、私もそんな物すごく考えたわけじゃないんですけれども、まず、下請事業者に対する調査、これは皆さんが、下請いじめというか不公正な取引を行っていることを調査する上で、例えば親事業者と下請事業者と、何らかの違いはあるんでしょうか。どっちも大事、あるいは、やはり親事業者の方から情報をとった方が非常に重要だとか、皆さんの認識の上で何かその辺の区別があるのかどうか、お聞きしたいと思います。

中島政府参考人 親事業者に対する書面調査票につきましては、基本的には、親事業者にあなたは違反していますかと聞くわけでございますので、これはなかなか、正直なところが出てくるかというのはいろいろと御議論があることと思いますが、先ほど申し上げましたように、親事業者に対する書面調査の一つの大きな目的は、親事業者が行っている下請取引、下請事業者の名簿をいただくということでございます。そのいただいた下請事業者の名簿の中から、私どもの方で下請事業者に対して書面調査をさせていただくということで、そういう意味では、親事業者に対する書面調査の目的の大きな一つは、下請事業者のリストをいただくということでございます。

 他方、下請事業者に対しましては、先ほど先生が冒頭おっしゃいましたように、親事業者の自分に対する下請取引の違反行為を申告せいということでございますので、これはなかなか、継続的な取引、しかも、大きな親事業者と小さな中小事業者、下請取引事業者で、どこまでそれを正直に公正取引委員会に報告していただけるかということについては、私どももそこは心配しているところでございます。

 したがいまして、親事業者の方には第九条で義務として報告をしていただく、下請事業者の方にも、もちろん、先生が冒頭おっしゃいましたように、義務として報告を徴するという政策的なやり方もあろうかと思いますけれども、やはりこれも、下請事業者の方からすると、親の悪いことを公取に報告する、それだけでもちゅうちょされるのに、この報告が強制される、義務づけられるといいますと、本当に下請事業者の真実の結果、声が私どもに伝えられるか、返ってくるかという懸念もございます。したがいまして、下請事業者につきましては、九条による回答の義務づけをしておりません。

 ただ、一方で、下請事業者につきましては、公正取引の、あらゆる機会に直接あるいは間接にお話ししまして、下請事業者の申告あるいは書面調査による回答によりまして、その下請事業者が公正取引委員会に情報を供与した、提供したということが特定されないように、私どもとしていろいろな配慮をしておるということで、下請事業者の御協力を得て、情報提供を任意にしてもらうように努力をしているところでございます。

北神委員 これは提案なんですけれども、多分、親事業者というのは、違反をしていた場合、真実を語るインセンティブが働かない、自分がやられちゃうと。一方で、下請事業者は、自分がひどい目に遭っていますから、本当は言いたい、本当は何とかしてほしい。ただ、後で仕返しが怖いという中で、これはぜひちょっと、もう検討しているのかもしれないですけれども、私が思うのは、むしろ下請事業者に義務づけた方が、要するに、彼らはもうやられているんだ、別におれは告げ口しているんじゃない、公正取引委員会が罰則をもって絶対に真実を回答しなさいと言っているんだから書かざるを得ないんだ。これは、役所の仕事の中でも、そういう仕事のやり方はありますよね。要するに、あえて倒される、そういう考え方もあるんじゃないですか。

 要するに、下請事業者は今任意ですから、自由意思に任せると、別に隠すことができた、回答しなくてもよかったのに、あえて違反行為というものを指摘した、これはけしからぬという話になって仕返しされたり、そういう話になる。しかし、これが法律上、公正取引委員会が、これは義務だ、絶対しないと罰金もつける、そういう話になると、下請事業者にとってある意味では口実を、真実を語る大義名分を与えるというか、そういう発想もあるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。これは委員長、どうですか。

竹島政府特別補佐人 そういう考え方もあると思いますが、現実に、下請事業者に対してそういう手法をとっても、どうでしょう、守れるのかな、法律にそう書いてはみたものの、現実は全然そのとおり動かない。それに違反したのを一々罰金だといってかけていくということは、これは現実的じゃないので、結局、絵にかいたもちになるんじゃないかということでございます。

 おもしろいアイデアだと思いますが、初めて伺いまして、下請の関係団体からもそうしてくれという声は残念ながらございませんので、私は、やはり現実的に情報がとれる仕組みというのが何より大事なんじゃないかと思います。

北神委員 私もちょっといろいろ現場の声も聞いていこうというふうに思いますが、ひとつ検討していただきたいと思います。

 罰金、義務づける話以前の問題として、先ほど取引部長からお話がありましたけれども、平成二十年度の数字が落ちた一つの技術的な理由として、違反がなかった場合には回答しなくてもよい、そういうこと、これもやぶ蛇じゃないかな。違反しなかった場合には回答しなくていい、そういうときに、下請の人たちの心理からいえば、そこまで書かれて真実を出すことは、非常に親事業者に対して裏切り行為のようにとらえられちゃう、そういうこともあり得ると思うんですよね。

 これは、私も実際にそういう声を聞いたことではないので、勝手に推測しているわけでありますから、ぜひそこは現場の声も聞いていただいて、ひとつ検討をしていただきたいというふうに思いますし、私もそういうことをしていきたいというふうに思っております。

 次の質問に移りますが、今、書面調査の回収をされた、その中で、実際に疑わしい案件と疑わしくない案件と大別できると思いますが、その疑わしい案件については、皆さんしっかりと調査を進めているのかどうか、それをお聞きしたいというふうに思います。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、親事業者向けの書面調査で得られた情報の中で、明らかに下請法に違反する疑いがあると認められる事案につきましては、すべて調査を進めているところでございます。

 他方、今御議論ありました、下請事業者からの書面調査により得られた情報、あるいは下請事業者からの申告もございますが、その情報の中で下請法に違反する疑いがあると思われる事案につきましては、まず当該情報を提供してきた下請事業者に接触するなどいたしまして、当該下請事業者が公正取引委員会が調査を行うことを望んでいるか、あるいは、調査を行っても当該下請事業者の立場に影響がないか等を勘案いたしまして、下請事業者の立場に慎重に配慮しつつ、調査を進めているところでございます。

北神委員 これは中小企業庁さんも同じ権限があると思いますが、中小企業庁の方はどうでしょうか。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、親事業者からの回答の調査票で、下請代金法違反のおそれがあるという場合には、そのすべての事案について対処をしてございます。

 具体的には、代金の減額、支払い遅延のおそれ等がある親事業者に対しましては、立入検査を行いまして、その後、それに基づきまして改善指導を行う、さらには、重大な法令違反があれば、公正取引委員会に対して措置請求を行うといった対応をしてございます。

 他方、発注書面の記載事項の不備など、比較的軽微な違反のおそれという場合には、警告文書を発出して、注意喚起を促すという対応をしてございます。

北神委員 これは皆さん、全部やっているというふうに言うんだったら、そのまま私どもは受けとめるしかないと思います。

 実際、資料の一からいえば、一番下の表がありますね、「下請法違反被疑事件の処理状況」、書面調査、左二つ目の箱のところに新規着手件数、これは要は、書面調査を返してもらって、ちょっと疑わしい、そして実際に調査に着手する件数ですが、それをずっと見ていくと、大体二千件後半、三千件ぐらいで推移をしているというふうに思います。

 これはなかなか計算の仕方が難しいと思うんですが、親事業者、下請事業者のうち、より数の多い親事業者の書面調査の件数からいえば、割合からいえば、勝手に計算をしたんですが、大体一〇%台、一〇%とか一二%とか、多いときは一七%ぐらいまでいっている。一割ぐらいだ。要するに、回答を得た数の中で、そのぐらいは、一割ぐらいは着手をしているという計算であります。

 これが高いか低いかというのは、これは私も正直わかりませんが、ぜひ中小企業庁も一緒に連携をして、疑わしい話があったらちゃんと厳格に対応していただきたいということをお願いしたいというふうに思います。

 こういう細かい質問をしてきていますが、これは決して何か批判をするとかそういうことじゃなくて、公正取引委員会の状況が非常に苦しい状況だということをみんな認識しているというふうに私は思いますので、そういうことを我々も議員として認識をして、今行革で人員削減をしている中で、やはり皆さんの置かれている特殊な状況というものを認識しないといけない、そういう趣旨で質問させていただいているということでございます。

 だから、公正取引委員会は人員をどんどんふやしているということですが、中小企業庁というのも当然、特に下請関係ではしっかりと連携をして、中小企業を守るためにも頑張っていただかなければならないというふうに思っております。

 ただ、中小企業庁だけではなくて、役所の中でいろいろな業法を所管している役所がある。そういう役所との連携というものはどうなっているのか。

 例えば通信とか運輸とか、それぞれ違う役所で業法を持っている。やはりそういうところは、なかなか公正取引委員会とか中小企業庁が得られない情報というものも本当は持っているはずだというふうに思っておりますし、建設業とか製造業なんかは下請関係が複雑で重層的でなかなか把握しにくい部分もありますけれども、こういったところは当然それぞれの業法を所管する役所の協力というものがやはり非常に大事だというふうに思っておりますが、この点について連携はどうなっているのか、お聞きしたいと思います。

    〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会は、中小企業庁のほか、下請法上、親事業者または下請事業者の営む事業を所管し、これらの事業者に対する調査権限を有する各省庁、並びに、建設業法上、当委員会に措置請求する権限を有する国土交通省とは定期的に連絡会議を開催しておりまして、下請取引の適正化に向けて意見交換を行ってきているところでございます。

 これに加えまして、昨年八月に策定されました安心実現のための緊急総合対策に基づきまして、新たに下請保護情報ネットワークを創設いたしまして、労働基準監督署等が下請違反の疑いのある情報に接した場合には、厚生労働省を通じて、公正取引委員会、中企庁に通報いただくとの運用を昨年十二月に開始したところでございます。

 また、御指摘の中企庁の措置請求の実績につきましては、下請法第六条に基づく中小企業庁長官からの措置請求が平成二十年度に四件ございました。公正取引委員会は、これを受けまして、この四件いずれにつきましても、親事業者に対し勧告をしたところでございます。

 公正取引委員会といたしましては、今後とも、これら関係省庁との連絡会議の開催、それから今申し上げました下請保護情報ネットワークの一層の充実を通じまして、各省との連携を密にしていきたいというふうに考えております。

北神委員 私の資料の四にもありますが、下請取引の公正化に関する関係省庁連絡会議、こういうことをやって密に連絡をされている、そういう話でございました。

 特に、私が思うのは、国土交通省との連携が本当は大事だ。というのは、下請はやはり建設業というのが非常に多いというふうに思うんですよ。実際そういう現場を歩いていると、そういう下請をある程度、いじめるつもりはないのかもしれないけれども、非常に厳しく価格を値下げしたり、そういったことをしている事例が多い。しかしながら、私が聞いた感じでは、建設業法に基づく、要するに、国土交通省がそういう実態を公正取引委員会あるいは中小企業庁に訴えることは今まで全くなかった、ゼロだと。

 これは果たして本当にまじめに連携をしているのかどうか。その点についてどのような認識か、お聞きしたいと思います。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生が申されましたように、国土交通省からの措置請求の案件は今のところございません。

 ただ、先ほど申し上げました関係省庁等連絡会議に加えまして、建設業法関係につきましては、別途、毎年国土交通省と公取とバイで連絡会議を行って、情報はいただいております。ただ、措置請求に関する限りは今までございません。

北神委員 国土交通省の立場からいえば、彼らは彼らで建設業界の非常に厳しい状況というものをわかっておりますから、なかなか公正な取引という立場に立って行動を起こしにくい部分もあるというふうに思いますが、そこはやはり連携をできるだけ強くして、建設業なんかは特にこの下請関係はいろいろ問題があると思いますので、ひとつ力を入れていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 あともう一つ、金融庁が抜けているんですね。金融というのは、三井住友銀行でしたっけ、公正取引委員会が一回取り上げたというふうに思いますが、金融関係も実は、下請ではないかもしれないけれども、要するに、優越的地位の濫用ですか、これはなかなか、立場としては最も強い立場にある。当然、融資、お金を貸しているわけですからね。そういうところで、ここにメスを入れるということは非常に大事だというふうに思っておりますが、残念ながら、この関係省庁連絡会議を見ると金融庁が入っていないので、この点どうなのかな、連携をどう考えているのか、お聞きしたいと思います。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の三井住友銀行に関する件でございますけれども、公正取引委員会は、平成十七年の十二月に、三井住友銀行が取引上の地位が同行に対して劣っている融資先事業者に対しまして金利スワップの購入を余儀なくさせているという行為について、独占禁止法が禁止いたします優越的地位の濫用に当たるということで排除勧告を行いました。また、同行が勧告を応諾しましたことから、勧告審決を行ったところでございます。

 今先生の、金融庁との連携ということに関してでございますけれども、この事件は、公正取引委員会が独占禁止法違反事件ということで調査を進めたものでございますけれども、公正取引委員会が法的措置をとりましたことを踏まえて、金融庁におきましては、同じく、同年十二月に、三井住友銀行に対して銀行法に基づく報告を求め、翌年の十八年四月には、同法に基づいて同行に対して業務停止命令を含む行政処分が行われたものと承知しております。

北神委員 済みません、ちょっと大臣とおじぎをしている間に一番大事なところを聞けなかったかもしれませんが、金融庁と連携が大事だということで、三井住友の案件はよくわかりました。

 ただ、その三井住友銀行の話も、金利スワップの商品を、融資をしている相手先にその優越的地位を濫用して買わせたという話だというふうに思いますが、こういう案件について、当然、金融庁としてもこれは厳しく取り締まらないといけないというふうに思います。

 今度は金融庁にぜひお聞きしたいと思いますが、やはり積極的に公正取引委員会にそういう情報をどんどん上げるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、このような事案が発生しました場合には、公正取引委員会におきまして必要な判断をされるということになりますけれども、私ども、まず一番重要であると考えておりますのは、こういった事案が発生する前に、銀行ないしはその他の金融機関につきまして未然防止の体制をつくる、そしてその内容について末端の行員まですべて周知をするということが極めて重要であると考えております。

 まず、私どもでできることとしまして、監督上の監督指針というものがございますけれども、この中に、公正取引委員会の出されました調査報告書やガイドラインの内容を引用した上で、これを遵守する体制ができているかということを監督上の留意点として挙げまして、常日ごろからフォローしております。

 また、個別事案につきましては、もちろん必要に応じて情報交換等はさせていただく用意はございますけれども、当然、法令の解釈の判断に当たりましては公正取引委員会がお決めになることと考えております。

北神委員 ぜひ情報をどんどん出すべきだと思いますし、今おっしゃったように、未然防止策ももちろん大事ですが、これもやはり流れとしては、そういう事前の規制というよりは事後の規制ということで今ずっと政治は来ているというふうに思いますので、そこはむしろ公正取引委員会に、事後的にどうやってこれを取り締まるのか、そのときの情報というものがやはり大事だ、そういう認識をぜひ持っていただきたいというふうに思います。

 もう一回公正取引委員会に移りますと、金融庁と連携をしているというふうにおっしゃっていたと思うんですが、私の資料の四ページの連絡会議に入れたらどうですか。

 これは下請だからか。わかりました。

 優越的地位の濫用については、こういう関係連絡会議みたいなものはやっているんでしょうか。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の事案等あるいは実態につきまして、必要に応じ関係省庁と情報の交換はしておりますけれども、今下請で開いておりますような定期的な各省庁の連絡会議は行っておりません。

北神委員 竹島委員長も、恐らく金融庁にいろいろお知り合いが多いというふうに思います。金融庁だけじゃなくて各省庁の連携、こういう連絡会議とかいろいろやっているけれども、私が想像するに、本当に機能するのはなかなか難しいというふうに思っております。

 というのは、各役所は、はっきり言えば、こんなの知ったことじゃない、公取の話でつき合わされて面倒くさいな、こういう姿勢がやはりどうしても役所の中で出てくる。そういう中で事務方も大変な苦労をされていると思います。

 こういう点について、委員長の見解をちょっと伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 具体的な事件処理に当たりましては、中小企業庁との連携はちょっと特別な関係ですが、一般的には公正取引委員会自身が努力する、やはりつかさはつかさで仕事をしないといけないんだろう。政策的なマターであれば調整とか協議とかというのはあるにしても、事件物はやはり一〇〇%近く公正取引委員会が自分で発掘し、自分で処理するということであるべきだろうと思っております。

北神委員 そのとおりだと思いますね。ただ、要は、人員体制をこれからつくっていく中で、過渡的な対応として連携をせざるを得ない、そういう状況だと思いますので、そこはしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 あともう一つ、金融庁の関係で、銀行が優越的地位の濫用をしやすい立場にあるということで、さっき三井住友銀行の件で、いわゆるお金を貸している相手企業に自分たちの商品を売りつける、こういう場合の優越的地位の濫用もありますが、私が最近思うのは、この前、保険の商品で窓販という規制緩和が行われました。つまり、今まで基本的には、生命保険なんかは生保レディーみたいな人たちが売り歩いていた。あるいは、損保だったら代理店が商品を売っていた。これを、銀行が窓口になって保険の商品を扱うことが許されるようになった。これは規制緩和の一環として行われたことでございます。

 この中で、当然、融資先の方に保険商品を売るというような優越的地位の濫用の事例もあると思いますが、一方で、保険会社との関係で、銀行がたくさんの保険商品を扱う非常に巨大な販売先になるわけですよね。そういう中で、ここも一つ、銀行が保険会社に対して優越的地位の濫用を行使する場合が出てきやすいというふうに思っております。

 ここは恐らく金融庁も保険会社の方から相当いろいろな話も聞いているというふうに思いますが、ずっと注視をしている、モニタリングをされているというふうに伺っております。

 規制緩和をしてから一年半ぐらいたつと思いますが、今どんな状況か、教えていただければと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今委員から御指摘いただきましたような懸念がございますので、私どもとしまして、日々この状況をフォローしておるわけでございます。

 委員御案内のとおり、平成十九年十二月のいわゆる銀行等の保険商品の窓販につきましての全面解禁に当たりましては、その時点において、それ以前に手当てをいたしました、いろいろな圧力を用いた募集などの弊害を防止するための措置の有効性につきまして検証を行いまして、問題がないということで全面解禁が認められたということでございます。

 その後の状況につきましては、私ども、モニタリングを行っておりますけれども、現時点において、状況が変化したという認識は持っておりません。これはまだ必ずしも比較可能なデータがすべてあるわけではございませんが、行政処分の事例なども全面解禁後ございませんので、状況に変化はないという認識でございます。

北神委員 あと、公正取引委員会もやはりこの窓販というものにちょっと注目して調査をしているのかどうか、お聞きしたいと思います。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今先生御指摘のような分野におきまして具体的な問題があるような事実に接した場合には、適切な対処法をとってまいりたいと思っております。

北神委員 特にこの窓販というのは、こういう事例が生じやすい話だというふうに思います。ですから、公正取引委員会は金融のそういう話は余り情報が入っていないかもしれませんが、やはりここはひとつ注目していただいて、保険商品を窓販でやる場合、保険会社と銀行の関係、そして銀行と貸出先の企業の関係で余り不公正な取引が行われていないかどうか、そこをしっかり見ていただきたいというふうに思っております。

 あともう一つ、次の質問に移りますと、法案の中で、これも皆さんがおっしゃっているように、課徴金の算定率の問題がございます。

 これは、十七年の独禁法改正のときに、私的独占なんかについては不当利得の水準が一六・五%に上ると公表しております。

 今回、課徴金の算定率を見ると、私の考えでいけば、例えば私的独占によって一六・五%も不当に利得を得るのであれば、少なくともその一六・五%の分は摘発したときには返してもらうというのが課徴金の最低限の発想だというふうに思うんですが、一六・五%じゃなくて一〇%とより低い水準にとどめている理由は何なのか、教えていただきたいと思います。

 これは全体として、アメリカやヨーロッパの中でも課徴金の算定率というのが低いという話がありますが、より具体的な厳密な議論でいえばやはり不当利得の率というものが根拠だと思いますので、その点、委員長のお考えを聞きたいと思います。

竹島政府特別補佐人 先ほども御答弁申し上げましたが、これは何も不当利得に基づいて計算しなきゃならぬというものじゃないわけで、要するに、独禁法違反事件が起こらないような、そういう気持ちにさせないためにはどのぐらいの算定率であるべきか、そういう設問なんですね。したがって、低ければ上げる、それで、ある水準で違反が減れば抑止力はある、こういうことになろうかと思っております。

 アメリカ、ヨーロッパと比べて確かに低い、低いんですが、その絶対水準の差だけではなくて、実際に抑止力、要するに違反状態がどうなっているかということで、その国における競争法の定着というものは見るべきだというふうに、抽象的ですけれども、思っております。

 そういう前置きを申し上げた上で、どうして一〇%かというのは、これは本当は、正直私はもっと上げたかったわけなんですが、これは法律事項でございまして、従来六%だったものでございます。私どもは倍以上にしていただきたいということを考えたわけですが、その根拠として、実際に我々が扱った事件から不当利得というものを、数十のケースがございますからそれで計算したら、確かに平均値は一六・五%というものが出たわけです。同時に、八%以上でやると九割方は全部カバーされる。いわば正規分布みたいになりますから、非常に不当利得の大きいものもあれば全然小さいものがある、分布しているわけです、まあきれいな正規分布じゃございませんけれども。それで、九割以上は八%は不当利得がある。

 それを下回ったのでは、これは義務的な課徴金でございますから必ずかけるわけでございます。だから、それを上回るということで一〇%という説明をさせていただいていますけれども、本来、そういったものに縛られるべきものではないと私は思っていまして、日本にふさわしい、あるべき課徴金の算定率というものがあってしかるべきだ、それは、法律の執行状況とか世の中の考え方とか、そういったことを踏まえて見直されていくべきものだろうというふうに思っております。

北神委員 抑止力があればいいというお考えだと思います。私なんかはどうしても、やはり得た利益をそのまま没収されちゃう、もっと言えばそれ以上の、アメリカなんかは、たしか不当利得の二倍以下の罰金額というような、そういう設定をしていると思いますが、要は、やはり制裁的な色彩もある程度ないといけないなと。つまり、違反が発覚しても、もうけたお金は少しでも残るということだったら余り抑止力はないという意味では、やはりこの不当利得というのは少なくとも一つの目安ではあるというふうに思います。

 いずれにせよ、これからこの法律を改正して、実際どこまで抑止力があるのかどうか、それを見きわめていかないといけないというふうに思います。

 次の質問ですが、人員体制の問題に戻りますが、公正取引委員会の中で、これは特許庁というのもよくこういう手法でやっておりますが、期限つき任用による専門人材の登用をされている。期限つきで一時的に採用する。これは、例えばエコノミストとか弁護士とか公認会計士とか、そういった方々を入れている。この現状についてお聞きしたいというふうに思います。

竹島政府特別補佐人 公取におきまして、定員の増加が大変厳しい中で例外的に純増官庁なんですが、審査部門を中心に、過去五年間で百五十二名の増加となっておりまして、平成二十年度末において七百九十五人ということになっております。それから、二十一年度予算で三十九名の増員が認められているということでございます。

 他方、やはり専門職ということで、御指摘のありましたようなエコノミストとか弁護士とか、こういった人材も必要でございまして、これらは任期つき職員として採用しているんですけれども、現在、弁護士が十五名、エコノミストが五名おります。これは待遇、処遇面でなかなか難しいところがあるんですけれども、できるだけふやしていきたいというふうに思っております。

北神委員 これは当然、人員の純増官庁という話もあって、ある意味では特別扱いをしている部分もあるというふうに思いますが、一方で、こういう、一種、中途採用的な方法で人員を拡充することもやらないといけない。特に、公正取引委員会、これからさらに強力に機能するのであれば、やはりそういう弁護士とか公認会計士とか、そういった専門家が求められる。そういう意味では、おっしゃるように、これはふやさないといけないというふうに思います。

 その中で、この任期つきというのは、要は、五年ぐらいしたらやめてまたもとの職に戻るとか、そういうことになると思うんですが、これは、五年間やって、公正取引委員会としてもこの人材はなかなかいいな、その本人も公正取引委員会に残って仕事をしたいな、そういう両方の合意があれば正規の職員にする、そういう道はあるんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 それはございます。現にそういう方がいらっしゃいます。

北神委員 そういうことだったら、ぜひこの任期つきの部分をどんどん採用していって、人員を拡充していけばいいというふうに思っております。

 また、多分処遇の面で、弁護士とかだったら、給料が安い、仕事は魅力があっても生活水準が下がってしまう、そういう面があると思いますが、この点は、現段階で何かそういう配慮はされているんですか。

竹島政府特別補佐人 一般公務員よりは有利に扱われるように任期つきは職員の給与の格付がなされています。

 ただ、法律事務所で働いているときと比べると下がる。それにしても、私ども、これはアメリカのまねをするわけじゃありませんが、やはり独禁法も、これを扱う弁護士がふえるということは大変いいことでございます。そのためには、公正取引委員会というところへ来て二年でも三年でもやってみるというのは大変貴重な経験で、そういう形で、いい意味の緊張感が法曹界との間で出てくる、連携が出てくる、そういう意味で私は歓迎をしていまして、そのぐらいの投資をしても公正取引委員会に二、三年来ませんかということを申し上げているわけであります。

北神委員 まさに審判制度の問題も、一種、公取の中で審判制度でやるべきか、あるいは普通の裁判所でやるべきかという話の中で、筋論からいって裁判所の方がいいという議論もあるけれども、実態として、そういう経済取引に詳しい弁護士が少ないとか裁判官が少ないとか、そういう人材不足の問題もありますので、ぜひそういう観点からも、そういう人材を育てていって、公取委を強化するのみならず、今後そういう体制にも持っていけるような準備をされたら非常にいいと私も思います。

 もう時間もそろそろ来ましたので、もう一つだけ質問をしたいというふうに思います。

 きょうは基本的に中小企業の問題で下請関係の議論をしてきましたが、ここについては、私は、やはり不公正な取引というものがかなり横行している、制度設計の考え方からいってもそこはきちっとやっていかなければならないというふうに思っております。

 ただ、一方で、大企業、特に国際社会を相手にしている、世界の中で勝負をしなければいけない大企業、こういった企業について独禁法というものを余りにも厳格に適用すると、場合によっては、国の産業力、競争力というものが低下するおそれがあるというふうに思っております。

 これは非常に難しい議論であるかもしれませんが、特に、私の資料の一番最後のページだと思いますが、資料の六ページですか、ここに、製鉄業界ですね、鉄鋼メーカーの数字があって、これはちょっと年を入れるのを忘れたんですが、左の箱が一九九五年のときの世界の主要鉄鋼メーカーの生産量の割合が書いてあります。右の方が二〇〇八年ですね。

 一九九五年、十数年前までは新日本製鉄が世界でも一位だった。ところが、十年たつと、今度はアルセロール・ミタル、これは要するに企業合併、それも世界的な企業合併で、粗鋼生産量がもう断トツに高いような水準になっている。新日本製鉄の下に中国の鉄鋼メーカーが四社も入ってきている。

 こういう中で、要するに、世界的にはこういう、今はちょっと円高になっていますからそういうおそれはないかもしれませんが、申し上げたいのは、これらの外国の企業は、国内で割と独禁法を緩やかに適用する、中国なんかは独禁法という概念が余りないのかもしれませんが、そういった中で、どんどんどんどん巨大な鉄鋼メーカーをつくってきている。それが席巻をして、場合によっては日本の鉄鋼メーカーも買収をされる、そういった危機があった時代もついこの間まであったというふうに思っております。

 ですから、質問としては、独禁法上、国内の企業同士はなかなか、こういう規模であれば合併はできないかもしれないけれども、一方で、海外の企業から買収されてしまう、合併されてしまう。こういうことは、法律上、矛盾とまでは言いませんが、これは経済産業大臣の話にも及ぶと思いますが、産業戦略としてはまずいんじゃないかなというふうに思いますが、この点について、まず委員長の見解を伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 企業結合審査、要するに合併の審査について、何か物差しを二つ持っているのかというふうにも聞こえる今お話だったんですが、そういうことはございません。

 要するに、具体的には、商品は違いますが、一般的には、日本の市場に影響のあるような企業結合であれば、当然、まず公正取引委員会の視野に入る。いわば結婚に例えますと、その結婚が国際結婚であるのか国内の法人同士なのか、これも全く、それによって何か扱いが違うわけでは全くございません。

 ただ、外国に買われるような場合には、外国が日本に初めてそれで出てくるというふうな場合は、言ってみると、国内の競争者がふえるという面があるわけで、一方、日本にいる者同士が一緒になるというものとは、日本のマーケットに対するインパクトが違うわけでございますから、そういう意味で、答えが違ってくることはあり得ます。しかし、扱いが、一方は甘く、一方は厳しいということは一切ありません。

 私自身も、確かにそのアルセロール・ミタルという、こういうでかいものがよくヨーロッパなりアメリカの独禁当局を通ったなとそのときは思いました。でも、調べてみたら、シェアはそんなに高くないですね。かつ、ヨーロッパにおいてもアメリカにおいても、これをパスするときには、いわゆる問題解消措置というもので、しかるべきものは処分する、売る、手放すという条件をつけられてパスしている。ですから、向こうが、これは向こう側の肩を持つわけじゃありませんが、アルセロール・ミタルに対しては特別甘い審査をして通したということでは決してないというふうに思います。

 日本も全く同じでございまして、決して、そこでもって何か差をつけるとか、あることに対してフェーバーを与えるとか、そういう考え方はとっておりません。

北神委員 公正取引委員会としては、多分そういうお立場だと思います。

 私は、アルセロール・ミタルの話を今初めて伺いましたが、てっきり、やはり外国はその辺、戦略的にやっているんじゃないかなというふうに思っていました。要は、アルセロール・ミタルの場合は世界的な合併ですが、例えばアメリカの中で、強い日本の新日本製鉄に対抗できるような鉄鋼メーカーをつくらないといけない。そこはもうある程度、国内の合併についてもちょっと柔軟に対応しようじゃないか、そういう発想があるんじゃないかなというふうに思っておったんですが、その点、そういうことを調査して、外国がどうしているのか、これは産業戦略の問題だと思います。

 最後に大臣に、この点についてどういうお考えを持っているのか、お聞きしたいと思います。

二階国務大臣 基本的には竹島委員長から御答弁のあったとおりでありますが、今議員御指摘のようなことについて、経済産業省としては、十分ウィングを広げて、配慮をしてまいらなくてはならない課題だと思っております。

 したがいまして、国際的な整合性の観点から、アメリカ、EUと同様の基準へと我々は見直しを図ってきたところでありますが、今後、海外の企業合併等について、幅広く情報を収集すると同時に、調査分析等を行ってまいりまして、国内のそうした企業の皆さんの、不安感を持って経営に携わっておるというふうなことに対しては、我々は情報を共有して対応していきたいと思っております。

北神委員 もう時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

東委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。

 午前中に引き続き、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 まず、そもそも、昨年も提出をされて審議未了、廃案になったわけでありますけれども、その法案と今回審議をしております法案について比較をしてみました際に、若干の差異があるわけでありまして、その違いにつきまして、五点取り上げて質問をさせていただきます。

 一点目は、私の本会議の代表質問でも質問させていただきましたし、先ほど後藤委員からも質問ありましたが、不当景品類及び不当表示防止法がまさに今回の改正案から外れている、課徴金制度の導入が不当表示に関しては見送られているということであります。先ほども御答弁ありましたし、本会議におきましても、まさに消費者庁の設置がある、それに伴って消費者庁に移管をした後、「被害者救済制度の総合的な検討を実施する際にあわせて違反行為の抑止力強化策を検討することが適当であると考えた」というふうに答弁をいただいておりますけれども、今後の具体的なスケジュール、検討するというのは、その言葉だけですといつまでも先延ばしになるような気がするんですけれども、具体的なスケジュールというようなイメージはおありでいらっしゃいますでしょうか。

堀田政府参考人 お答えいたします。

 消費者庁関連法案の衆議院におけます審議の結果、被害者救済制度については、消費者庁関連三法の施行後三年を目途として、多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益を剥奪し、被害者を救済するための制度について検討を加え、必要な措置を講ずるものとする、そういった旨の規定が附則に盛り込まれたところでございます。

 現在、内閣府では、消費者庁の設置に先立ちまして、関連する国内外の諸制度の調査研究に着手しているところでございます。消費者庁ができましたら、これらの研究結果を踏まえながら検討されるものと考えております。

田村(謙)委員 消費者庁が設置をされて、他の分野とともに総合的な検討を三年間で加えるということは、もちろんさまざまな整合性というのはわかりますけれども、せっかく、昨年の時点におきましては、この不当表示に関しても課徴金制度を導入するということを一たんお決めになったわけですよね。

 ですので、角度を変えまして、今回、不当表示に関して課徴金制度を導入して、その後、確かに消費者庁ができました、監督官庁はかわるんでしょうけれども、ただ、その制度は導入をして、その後総合的な見直しに三年間もかかるわけですから、結局、三年間の中で実際それをどうしていくかというのはまた別途考えるということにした方が、まさに消費者に対して、さまざまな抑制効果などを考えますと、よりいいのではないかという考えもあると思うんです。

 要は、不当表示に関して課徴金制度を、昨年の法律と同様に今回導入した場合に、どのような支障が生じるということなんでしょうか。

堀田政府参考人 課徴金制度自体は、事業者に対しまして国庫への金銭納付を命じるのみでございまして、違反行為を抑止する効果はございますけれども、被害をこうむった、直接的な救済手段というものではございません。

 こういうことから、今回の消費者庁設置に際しては、同法の課徴金の導入を見送って、被害者救済制度を総合的に検討する際にあわせて検討するということになっております。

田村(謙)委員 結局、いろいろ並べて、ごまかす答弁になっていると思うんですね。

 あえて今のお答えを、言葉じりをとらえますと、この課徴金制度の抑止効果というのは大したものではないと。私は、被害者の救済というのは、そういう意味では私の質問の言葉遣いがちょっと悪かったのかもしれませんけれども、要するに被害者を生まない、そういう抑止効果は大なり小なりあるわけですよね。その抑止効果だけで、それは大したことないから、結局三年間見送ってもいいんだというように聞こえますけれども、そういうことなんでしょうか。

堀田政府参考人 昨年度検討されました消費者行政推進基本計画等においても、消費者の救済というもの、あるいは収益の剥奪を図るといった視点が極めて重要であるという御意見がさまざまに出されたと聞いております。

田村(謙)委員 多分平行線になると思いますので、もうこれについては質問はいたしません。

 繰り返しになりますけれども、当然さまざまな、消費者庁というものができて、ほかの分野との整合性というのはもちろん大事だとは思いますが、そもそも、昨年は導入するというものを一たん撤回しなければいけないほどの支障があるのかなというのは、私は疑問に思っているところであります。

 さて、昨年の法律と今回の法案の違いの二点目でありますけれども、不当な取引制限等の罪に対する懲役刑を、三年以下になっていたものを五年以下に、三年から五年に引き上げているわけでありますけれども、その理由を教えてください。

竹島政府特別補佐人 昨年の法律改正には盛り込むことができませんでしたが、かねてから公正取引委員会としましては、この刑事罰について引き上げたいと思っておりました。

 幸いといいますか、結果として、昨年、審議未了、廃案になったわけでございますが、その後、引き続いて法務省等と御相談をさせていただきまして、一つは、外国において、アメリカも、最近ですが、十年に引き上げている、イギリスも五年である。日本の場合も、もう既に現行の上限三年という懲役刑が出されているというようなこともございまして、それならばよかろうということになりまして、五年への引き上げということになりましたので、今回の改正案に盛り込ませていただきました。

田村(謙)委員 今、委員長の方から、かねて引き上げたいというふうにお考えになっていらっしゃったと。そうしますと、昨年は引き上げようと思いながら、結局法案には盛り込めなかった具体的な理由というのは何だったんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 これは、罰則についての一つの体系といいますか、ピラミッドというかシステムがありまして、経済犯について、私は率直に、日本の経済犯についてのペナルティーは軽過ぎると思っておるんですけれども、現実はそうなっているわけでございまして、そういう場合、横並びで見た場合にどうだ、こういう議論というのが絶えずあるわけでございます。

 そういうこともございまして、昨年お出しした改正法案には盛り込むことができませんでしたけれども、その後の協議で、よかろうということになったわけでございます。

田村(謙)委員 ありがとうございます。

 私も委員長と同じように、まさに日本の制裁の度合いというのは軽過ぎるというふうに思っているわけでありますけれども、今回、そういった環境が整ってというか、反対が少なくなって、五年に引き上げることができたということでありました。その五年というのは、軽くはない、十分だというふうにお考えでいらっしゃいますか。

竹島政府特別補佐人 これは、犯則調査をやりまして、悪質、重大だということで刑事告発をするわけで、それを受けた検察官がどう判断して起訴し、それで裁判官がどう判断するかにすべてかかっていますが、私は、徐々にではありますが、司法当局の経済犯罪に対するペナルティー、少なくとも独禁法違反事件に対するペナルティーについては厳しくなってきたなという感じを持っておりますので、上限が五年に引き上げられましたら、それなりの懲役刑が出てくるだろうと期待しております。

 それというのは、大変大きい。今までは、残念ながら一度も実刑が下されていないわけでございます。すべて執行猶予つきなものですから、私はそれはいかがなものかと個人的に思っておりまして、五年に引き上げられれば重要な意味が出てくるのではないかというふうに思っております。

田村(謙)委員 そうしますと、今のお答えというのは、そもそも、司法当局が出す判決の制裁というのが、やはり欧米諸国の比較だけではないでしょうけれども、軽かった、それが徐々に重くなってきた、五年に引き上げると重くなってきて、そうすると、いずれはさらに引き上げる必要性も出てくるかもしれないというニュアンスも入っていらっしゃるんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 それはそうしょっちゅう変えるものではないと思いますが、私は、これで相当の効果が上がるだろうというふうに思っております。

田村(謙)委員 わかりました。委員長の期待どおりに、司法当局がさらに法律に合わせた判断を下すようになるように、私も期待をしたいと思っております。

 さて、昨年の法案と今回の法案の違いの三点目でありますけれども、企業結合規制につきまして、昨年の改正案では、届け出の基準を、被買収会社が会社及び子会社の国内売上高の合計額二十億円超の場合としておりましたのを、今回の改正案では、二十億円超ではなくて五十億円超に変更していらっしゃいますけれども、その二十億円から五十億円に基準を引き上げた理由を教えてください。

竹島政府特別補佐人 今回の改正で届け出基準をかなり大幅に見直しておりまして、従来は総資産なんかも見ておったんですが、今回は国内売上高に一本化しました。それで、買う方は国内売上高二百億円超ということにしました。買われる方が、今御指摘の二十億円超で御提案申し上げましたが、その後、いろいろと調べてみますと、外国と比べて二十億円超ではちょっと小さ過ぎる、結局は、それだけのものを届け出させたって、全部オーケーになってしまうだけじゃないか、そういう余計なものまで届け出させる必要はないではないか。その考え方は我々もともと持っておりまして、どの辺だったらそういう無駄な届け出をなくすることができるかということを考えて二十億円というものにしたのでございますが、その後の精査で、外国は平均すると日本円にして五十億円超というようなところが相場だなということがわかりました。

 一方で、ICNという国際組織があるのでございますが、そこでも企業結合についての届け出基準については議論しておりますが、なるべく簡素化する、簡明にするというようなことが言われておりまして、そういった状況にかんがみまして、改めて考えて五十億円ということにさせていただきました。

田村(謙)委員 今、外国の相場が日本円だと大体五十億円程度とおっしゃっておられましたけれども、外国といってもいろいろな国があるわけでありますが、主要国について、もし大体の金額が、今お手元に持っていらっしゃいましたら、もともと明確には通告はしていませんので、手元にないということでしたらあきらめますけれども、もしあったら教えていただけませんか。

竹島政府特別補佐人 ばらつきはございますけれども、これは為替レートはございますが、フランスは、五千万ユーロでございますので、七十億円強ということになろうと思います。イタリアは六十九億円、四千五百万ユーロでございます。それから、カナダが、七千万カナダ・ドルですから、七十億円ぐらいでございます。それから、中国が最近それを設定いたしまして、六十億円というふうなことでございます。六十億円とかそういう数字よりは区切りのいい数字がいいだろうと思いまして、五十億円にさせていただきました。

田村(謙)委員 今、確かに為替レートによって変わってくるわけでありますけれども、フランスやイタリアが大体五千万ユーロ、レートによって変わるわけですが、今のレートですと七十億円ぐらいというような、カナダも大体それぐらいだというお話を伺いました。

 先ほど委員長が触れていらっしゃいました国際競争ネットワーク、ICNの年次総会報告におきましても、届け出基準に関する報告書というものを出してありまして、その文書にも、問題のない企業結合に関する届け出件数を減少させる、そういうことによって競争上の問題を引き起こす企業結合の届け出が全体に占める割合をふやすこと、そしてまた企業に不必要な負担をさせないというようなことが当然書いてあって、それに従ったということですので、二十から五十に上げるというのは、企業に不必要な負担をさせないという意味でいいことだと思うんです。それはまさにそういう観点から、あるいは、どの程度の事務量かわかりませんけれども、委員会の方の事務量を減らすという観点でも、もっと上げられるなら上げてもよかったんじゃないかという観点からお伺いします。

 今、どの程度の思いでおっしゃったのかわかりませんけれども、例えば七十でも八十でも区切りはいいと思います。まさに二十から五十に上げたわけでありまして、五十の次は百じゃないと区切りが悪いということはまさかおっしゃるわけじゃないと思うんです。そういった意味では、まさに不必要な負担をさせないという観点からすると、もうちょっと上げてもよかったんじゃないかなと考えるんですが、いかがでしょう。

竹島政府特別補佐人 その辺は、ある程度余裕を見るというのが、これはかつかつどころか取りこぼしがあったのではまずいので、若干のり代はつけさせていただきたい。

 それから、実際上できるかどうかわかりませんが、これは法律で、五十億円超で政令で定めるということになっておりますので、もし世の中が物価水準なんかが大幅に変わった場合には、政令で、五十億円ではなくて、もっと大きな額でするということは法律上はできるということになっております。

田村(謙)委員 ぜひそこは、企業に不必要な負担をさせない、あるいは余計な届け出書をふやさないという観点からも、今委員長がおっしゃったような方向で考えていただきたいので、もしわかったらなんですけれども、今私が引用させていただきました国際競争ネットワーク、まさに届け出の中で、競争上の問題を引き起こす企業結合の届け出が全体に占める割合をふやすことと書いてあるわけです。諸外国を最近精査なさっていると。諸外国においてその割合というのがどの程度かというのは比較をなさったことはあるかないか、教えてください。

竹島政府特別補佐人 これはございません。

田村(謙)委員 ぜひそこは、諸外国がどうなっているか御確認をいただいて、日本が例えば五十だった場合はどうなのかとか、どの程度シミュレーションできるのかわかりませんけれども、そういったところもさらに精査をしていただいた上で、政省令においてはより金額を上げるとか、区切りのいい七十、八十とか、そういったことも今後御検討いただきたいなということをお願い申し上げます。

 さて、昨年の法律案との違いの四点目でありますけれども、損害賠償請求訴訟におきまして、公正取引委員会に対して意見を求める求意見制度というんですか、それを、公正取引委員会に対して「意見を求めなければならない。」というふうに義務づけていたものを、「意見を求めることができる。」というふうに変えていらっしゃいますけれども、その変更の理由を教えてください。

竹島政府特別補佐人 現行では、独禁法二十五条に基づく損害賠償請求が起こされた場合には、裁判所は遅滞なく公正取引委員会に意見を求めなければならないというふうに規定されている。ところが、現実はどうなっているかと申しますと、全部が全部とは申しませんが、和解が行われたり取り下げが行われたり、それから裁判所が独自に判断されて、損害額は幾らだということを決めたりということが行われているわけで、遅滞なく意見を求めなければならないという制度、これはちょっと余計な規制ではないのかということでございます。必要があると思えば、また思ったときに、遅滞なくじゃなくて、思ったときに、必要に応じて裁判所が公取に意見を求めることができるで十分ではないか、要らぬ求めをしなくても済む、こういうことでございますので、そういう趣旨でございます。

田村(謙)委員 趣旨は十分に理解できますし、それでいいと思うんですけれども、要は、昨年はそのようにしなかったのは何でなんでしょうか。

舟橋政府参考人 昨年三月十一日に提出させていただいたわけでございますけれども、その後、一年ほどございまして、いろいろ細かいところについても精査をいたしたということで、この八十四条については、先ほど委員長から申し上げましたように、義務的から任意的なものにするのが適当ではないか、そういうふうに結論を得た、そういう次第でございます。

田村(謙)委員 裏返して、今おっしゃったことは、結局、昨年の法案をお出しになった時点では精査していないことがまだあった、精査漏れだったという、委員長はうなずいていらっしゃいますので、それを責めてもしようがないわけでありますけれども、そうしますと、今回の法案については、もうすべて十分に精査をしているということなんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 できるだけのことはしているつもりでございますが、もっとやらせていただきたいこともあるんですが、できないというものも含めて、引き続き努力をしていきたいと思います。

田村(謙)委員 済みません。具体的にこれが精査していないというふうに、細かい点について私が知っているわけではありませんので、念押しで質問させていただきました。もちろん、委員長の日ごろの御努力というのは、私も、財務省、大蔵省の偉い人の後輩としても日ごろから大変尊敬を申し上げておりますので、ちょっと聞いてみただけでございます。

 さて、最後に、昨年の法案との違い、恐らくこれはほかの委員も後で、近藤委員初め質問すると思いますけれども、審判手続について、私も本会議場でお伺いをいたしました、若干はやはり触れさせていただきたいと思います。

 本会議場での代表質問でも申し上げたように、昨年の法案では「平成二十年度中に」検討するというふうにあったわけでありまして、確かにその法案は廃案になったわけでありますけれども、本法案では「平成二十一年度中に」と、単に二十を二十一に書きかえただけで終わっているということであります。その理由については、御答弁は、「政府といたしましては、審判制度の見直しを含む改正法案を提出すべく検討してまいりましたが、公正取引委員会の専門性をどのように発揮させるかなど、なお多くの論点があり、さらに検討を深める必要があると判断したものであります。」というお答えになっているわけです。

 これは、審判制度に限らず、あらゆる分野のあらゆる政策について、単語を幾つか入れかえると、要は、先送りをする理由そのままですね。何も、論点がたくさんあるというのは、別に、いろいろな政策、よくあることでありまして当たり前ですけれども、あるものについてどうするかというのは、平行線になった場合には結局、えいやと決めるという話であって、決して、一つの論点について必ず一つの結論に収れんをするというわけではないわけであります。

 さらに検討を深めるというのは、結局何も検討していないのじゃないかなというふうに思わざるを得ないんですけれども、その点についてはいかがでいらっしゃいますでしょうか。

竹島政府特別補佐人 審判制度についてはもうこの三年ぐらい前から実は大変議論をしていますが、残念ながら、現状維持といいますか、事前審判へ戻すべきであるという意見、それから全く逆で、廃止すべきである、直接裁判所に行けるようにすべきであるというような、それから中間的に、事柄によって分けるのが実務的にも意味があるんではないか、こういうことで意見が並立しているわけでございます。

 ある意味では論点が出ているといえば出ていると私は思いますが、残念ながら、この政府案をまとめる段階において、各政党、民主党は廃止というふうにお考えだということはもちろん存じ上げていますが、自民党、公明党さん、その他の党においてもそれぞれ御意見がございまして、これでいこうというふうに実は絞り切れなかったという現状でございます。

 いずれかのタイミングでこれは決断しなきゃいけないというふうに思っておりますが、残念ながら、今回にはそれが間に合わなかったということでございます。

田村(謙)委員 与党の中で意見が対立して、意見がいろいろあるというお答え、その現状は私も十分に存じ上げておりますけれども、まさに担当省庁、この場合は公正取引委員会がこういう方向でいこうというふうにもし委員会の中で内々にお決めになったとしたならば、それはほかの省庁でも、まさに根回しで省庁の中で内々に方針を決めて、与党の自民党、公明党さんの幹部を説得、さまざまな根回しをして、それによって方向性を決めていくということは、まさにその手腕が霞が関で最も高いと言われていらっしゃいます竹島委員長の場合には、昔からずっとやっていらっしゃることだと思うんですけれども、結局、それは委員会の中で決まっていらっしゃらないということなのか。ですから、人によっては、結局組織防衛なんじゃないかと。また裂き状態というか、与党が決まらないのをいいことに、現状維持を続けていく。

 我々民主党が政権をとった場合には、まさに審判制度を廃止するわけで、その組織というのはその分だけなくなる、なくなるというか、相当縮小することになると思いますけれども、そういうことを避けるためにもやはり組織防衛をしているんじゃないかといううがった見方、私が思っているというより、うがった見方はあります。その点については、委員長、いかがでいらっしゃいますか。

竹島政府特別補佐人 うがつどころか、正々堂々と、独立行政委員会たる公正取引委員会は審判手続を持つべきである、これは大事な機能であるというのが、独禁法学者の中にも行政法学者の中にも連綿とこの数十年いらっしゃって、現に、今も有志の経済法学者から、審判制度はちゃんと維持すべきであるという意見書というんでしょうか、そういうのが取りまとめられている、そういうことでございまして、審判制度は公取が維持すべきであるというのが伝統的な考え方でございます。

 さはさりながら、現実にこれだけ御議論をいただいていまして、経済界それから政府部内の意見も一致しているわけじゃございません。各党の御意見もそういうことで一致していないということでございますので、もう少しお時間をいただかなきゃいけない。

 ただ、いずれ決断はしなきゃいけない。そのときに、メリット、デメリットをよく考えた上で、現実にワークするようなシステムにしなければ、ただ理念で物事を考えていても世の中そのとおりにならない。そういう人材がいるのか、そういう手続があるのか、関連する法制はそれと極めて整合的なのかというようなことも考えた上で、外国がないから日本もない、そういうこととか、本来一人二役はおかしいというだけで考えていいのか。もちろん、適正手続ということ、企業側の利益をきちっと保護するということは大事でございますが、それは審判を廃止しなければできないのか、そういうことも含めて、やはりぎりぎりの議論をもう一回しないといけないのかな。

 何となく、今までは、それぞれの言ったことにいわばこだわって、自分の意見はこうですよということで、なかなかいざ決めましょうという雰囲気になっていないというのが現状だと思っております。

田村(謙)委員 恐らくこれについてはさらに近藤委員も議論するだろうと思いますので、私はこれでやめますけれども、まさに本年度中ということであります。解散・総選挙で我々民主党が政権をとった際には、もう方向は決まっておりますので、まさに今年度中にその方針を打ち出すということであります。もちろん、民主党が政権をとった場合に来年度からすぐ廃止をするということはないわけでありますけれども、それに向かって進めていくということは既に我々は宣言をしておりますので、ぜひとも、委員長は内々にそういったことも検討を進めておいていただきたいというのは、内々にお願いをさせていただきます。

 さて、別のことをお伺いさせていただきます。

 課徴金の範囲でありますけれども、課徴金の適用範囲に、私的独占のうちこれまで課徴金が適用されていなかった排除型私的独占、そして不公正な取引方法のうち価格に影響する不当廉売、差別対価、共同取引拒絶、再販売価格や優越的地位の濫用が追加されたということは、競争環境の確保やエンフォースメントの強化として評価できるというふうに私も思っております。

 これまでの公正取引委員会の法的措置の状況を見ました際に、入札談合ですとか価格カルテルに対する排除措置に比べて、例えば私的独占については、過去五年間を見ましても、平成十六年度に二件、その後は、四年飛んで平成二十年度に一件と非常に少なかったわけでありますけれども、今回その分野に課徴金を適用することによりまして、それはすなわち監視、摘発を強化するということなんでありましょうか。

竹島政府特別補佐人 排除型私的独占に対する監視強化は、もう既に厳しくやってきているつもりです。ただ、それは排除措置命令で終わる。件数は、確かに最近はそうかもしれませんが、もう少しさかのぼるともっとやっているわけでございまして、カルテル、談合よりは数が少ないというのは事件の性格上当然だと思いますが、既にこれはやってきたわけです。

 やってきていて、排除措置命令だけでは、やはりカルテル、談合と比べてバランスが悪い、どうしてこれについては課徴金がかからないんだと。EUの場合には、市場支配的地位の濫用というものについては制裁金がかかる、アメリカのシャーマン法二条も罰金がかかるということになっているにもかかわらず、どうして日本の場合はかからないんだ、その一点を見てもおかしいということがわかるわけで、したがって、課徴金の対象にする、こういうことでございます。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 今までも十分に監視をしていらっしゃるということでありますけれども、ただ、今回の法改正によって抑止力を強化するということも当然大事なわけであります。実際に法執行を厳正にやっていくということも大変重要なわけでありまして、現在の公正取引委員会の体制の約八百人というのは必ずしも十分ではないのではないかなというふうに思うんですけれども、現状についてはどのように評価し、あるいは体制強化について長官はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

河村国務大臣 御指摘のように、今般の改正法案で、排除型私的独占とか不当廉売、優越的地位の濫用といった違反行為についても新たに課徴金の対象とされる、こういうことも踏まえていかなきゃなりません。

 政府としても、この独占禁止法違反行為に対してより一層厳正な対応が要るということで、引き続いて公正取引委員会の所要の執行体制を強化すること、これは私も大事だと思っております。

 八百人体制、これで十分とは思っておりません。今、この人員の増強等も、特に審査部門について要望いたしておるところでございまして、引き続いてその強化に努めてまいりたい、このように考えております。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

田村(謙)委員 年々増員を少しずつしていらっしゃるというのは私も承知をしておりますけれども、今までの増員というのは、昨年、一昨年と委員会の方から要求をなさって、そもそも、それは十分であったとお考えですか、まだまだ全然足りないというふうにお考えでいらっしゃるか、もしお考えがあったらお願いします。

竹島政府特別補佐人 正直なところまだ足りないと思っていますので、毎年増員をお願いして、毎年査定を受けて、しかし純増で認められているということでございます。

田村(謙)委員 今まさに公務員全体の定数というのを非常に抑制している、そういう中での増員が大変だというのは、もちろん一般論としてはよくわかる話であります。

 長官はそういう意味では要求側でいらっしゃるわけでありますが、最終的にこの人員にというのは、ふだんかかわることはないでしょうけれども、最終的には首相でいらっしゃるわけでありまして、まさにその一番身近にいらっしゃる長官というのは、単純に要求側で、なかなか認められないんだと言うだけでは済まないお立場なんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そこは公正取引委員会に限りませんけれども、まさに事後的な規制というか、さまざまな市場監視を強めていくというのは、金融の方もそうですし、独禁法についてもそうなわけであります。そういった分野について、やはり人員というのをより一層手厚くしていく。それは公務員全体でいうと、かなりめり張りをさらにつけていくのは大変重要な課題だというふうに思うわけでありまして、単に要求側ではなくて、まさに首相の女房役である官房長官として、その点の御決意を一言だけお願いできればと思いますが、いかがでしょう。

河村国務大臣 田村議員も、今の公務員のあり方等いろいろおわかりのとおりでありますが、この部門はやはり強化すべき部門だと思います。また、司法の方からもいろいろな要請も来ております。

 私どもは、この問題については一応要求側には立つのでありますが、全体の調整役でございますから、公正取引委員会の強化ということについては、やはりめり張りをつける、しっかり力を入れる部門だということはこれからも強調してまいりたい、このように考えております。

田村(謙)委員 ぜひ人員について、我々民主党が政権をとれば相当ドラスチックに変えなきゃいけないなと思っていますけれども、現政権下におきましても、全体的に霞が関においては人が足りないというのはそうだろうと思います。部署によって忙しさというのは全然違うわけでありまして、精査した場合には、余剰人員ではありませんけれども、相当余裕を持って仕事をしている人というのは各省庁いるわけでありますので、ぜひそこは、厳しくめり張りをつけていただきたいということをお願い申し上げます。ですので、この公正取引委員会については、一人でも多くなるようにぜひ頑張っていただきたいなというふうにお願いを申し上げます。

 さて、近年、企業のコンプライアンス意識の高まりもあって、独占禁止法遵守ということが重要視されているという中にありまして、入札談合や価格カルテルにつきましては独禁法違反だということは十分認識されているんだろう、そしてまた、多くの事件が処理をされてきましたので、具体的にどのような行為が違反なのかというのはかなり浸透してきているんじゃないかなというふうに思っております。

 一方で、私的独占については、これまで独占禁止法の違反というふうになった事例が比較的少ない、そしてまた不当廉売等につきましては、違法となる行為の線引きが必ずしも明確でないということもありまして、予見可能性という観点からは、企業活動がまさに萎縮をしてしまうという危険性もあるのではないかというふうに思うのです。もちろん課徴金、そういう措置を強化するのも大事なのですが、その一方で、まさに企業活動が萎縮しないように事業者に向けたガイドラインの整備といったものも必要なんではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 御指摘のとおりでございまして、排除型私的独占については新たなガイドラインをつくりたいと思っています。これはほかのガイドラインの場合と同じでございますが、私どもが原案をつくりまして、パブリックコメントにかけて御意見をいただいて、最終的なものにまとめていく。改正法を認めていただければ、それの執行に十分間に合うように前広に新しいガイドラインをお示ししていきたいと思います。

 それから、不公正な取引方法につきましても、今回、一部のものが、不当廉売、優越的地位の濫用等は課徴金の対象になりました。したがって、現行の一般指定というものはそれを踏まえて改正をしなければなりませんので、それに伴う関係のガイドラインも見直していきたいと思っております。

田村(謙)委員 ぜひ、事業者に対して親切な質の高いガイドラインをつくっていただきますようにお願いをいたします。

 さて、課徴金の算定におきまして、主導的事業者への五割増し制度、課徴金減免制度の拡充といった法的措置の機動性の確保ですとか、事業者の態様に応じたきめ細かい課徴金の運用を可能とするということは評価できると思います。

 しかしながら、前回の独禁法改正によって課徴金制度を拡充した際に、従来の課徴金の趣旨でありました不当利得の剥奪に加えまして、行政上の制裁という位置づけも付与されているわけでありまして、今回、さらに課徴金の算定率の上昇及び対象範囲の拡充を図るということでありますと、ますます行政制裁という意味合いを増していくことになるというふうに考えます。

 そうなりますと、課徴金と罰金の併科の調整規定はあるわけですけれども、国際カルテル事案への対処などを念頭に置いて、課徴金と罰金のより明確な関係整理をするといったような、今後、国際的な制度との調和ということも検討すべきなんじゃないかという意見もありますけれども、その点についてはいかがでいらっしゃいますでしょうか。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

竹島政府特別補佐人 金銭的不利益処分に当たって、刑事罰でいくべきか行政制裁金でいくべきかという議論がよくあって、日本は両方あるじゃないか、二重処罰の議論はどうなっているんだ、こういう御議論があったわけですが、私は、この数年の議論を経て、憲法が禁止している二重処罰ということには、行政制裁と刑事制裁が二つあってもこれは矛盾しない、二重処罰には当たらない、こういう見解が多数意見だというふうに思っています。それは、例えば内閣府の基本問題懇談会を、平成十七年度の法律改正の後、附則に基づいてつくらせていただきましたが、そこでもそういう議論として整理されております。

 したがって、前回はたまたま、罰金の半分を課徴金と調整するということ、政策的判断として調整規定を置きましたけれども、将来的というか、そもそも論としましては、そういう調整は本当は必要ないんだろうと思っております。行政制裁金は行政制裁金、刑事罰は刑事罰、それぞれの目的なり趣旨が違いますから、それをきちんと適用していくということが大事なのではないかというふうに今は思っています。

 外国では、アメリカは刑事罰オンリー、EUは行政制裁金オンリーではないか。EUにおいては、当然のことながら、加盟国においては刑事罰もあり得るわけで、個人に対する刑事罰が残っているわけですが。最近の動きを見てみますと、外国でも、やはり刑事罰は必要だな、企業から課徴金だけ、制裁金だけ取ればいいというものではない、やはりやった重役なりなんなりを、要するに個人の刑事処罰をやらないと、なかなか抑止力としては完成しないという感じになってきている。したがって、オーストラリアにしてもほかの国にしても、刑事罰をむしろ導入していこうという動きがあるわけでございます。

 日本は、そういう意味では、いっとき批判を受けましたけれども、両方あるということは、ある意味ではいい国といいますか進んでいるというふうに思っていますので、私は、これからはそれぞれをきちっと使っていく、抑止力がそれぞれ足りなかったらそれを強化する、そういうふうに考えていくべきだと思っております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 私も個人的には、併科する、両方あるというのはいいことだと思っています。国際的にも進んでいるという考え方もあるというのは私は初めて知りましたけれども、国際的に制度で先駆けるというのは、そういった意味では日本の場合は大変珍しいことでありますので、ぜひそういった思いを持ちながら今後も取り組んでいただきたいと思います。

 さて、時間もかなりなくなってまいりましたけれども、下請法との関係について、時間の許す限り質問させていただきます。

 優越的地位の濫用が課徴金対象となるということで、一定の抑止効果は期待できるわけでありますけれども、経済情勢がやはり悪化している、そういった要因も重なりまして、いわゆる下請企業の厳しい環境というのはなかなか改善しないだろうというふうに考えています。

 まずは現状を確認させていただきたいんですけれども、この五年間での下請法に基づく勧告の件数を教えてください。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 下請法に基づく勧告の件数は、過去五年、平成十六年度から平成二十年度末までの五年間で、合計五十三件でございます。

田村(謙)委員 ありがとうございます。

 その五十三件というのは、実績としてどのように評価をなさいますか。その数字に対する御評価がもしあったら教えてください。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 午前の審議でも御議論がありましたけれども、私ども、下請事業者、親事業者、両方に書面を毎年送付いたしまして、数多くの情報をいただいております。その中で、毎年、例えば二十年度でいきますと十五件、十九年度十三件の勧告、公表案件でございます。他方で、勧告までに至らない警告の件数が二千件以上ございます。

 したがいまして、勧告自体は、これを公表し、下請法の法律に基づいた措置として親企業に必要な措置をお願いし、またこれを公表するということで、下請法上では一番重い措置でございます。

 他方、下請法は下請事業者の利益の迅速な保護ということを目的としておりますので、例えば支払い遅延とか割引困難の手形とかいう下請法の違反行為につきましては、警告によって是正指導ということによって、迅速な下請事業者の保護を図れると思っております。

 したがいまして、下請事業者に重大な不利益を与えることとなる、多くは、あらかじめ定めた下請代金の減額の事件につきましては、その規模の大きいものについて勧告、公表として、これを法律上の措置としてとらせていただいております。

 そういう意味で、下請事業者の保護という観点からいたしますと、昨年度十五件という数字が、必ずしも多くはありませんが、私どもとしては少ないとも思っておりません。他方で、警告等も含めました上で、親事業者から下請事業者に返還されました金額は、二十年度は三十億近くにふえておりますので、その意味でも、下請法上の勧告それから警告、あわせて効果があったものと認識しております。

田村(謙)委員 御丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 続きまして、本会議での私の代表質問で、「公正取引委員会は、中小企業に不当な不利益を与える不公正な取引方法に適切に対応するため、不公正な取引方法に係る経済産業省との協力スキームを構築し、連携して違反被疑行為の情報収集等について協力を行っております。」という御答弁をいただいたんですけれども、具体的にどのような成果が上がっているか、教えてください。

竹島政府特別補佐人 平成二十年の三月に公表させていただきました経産省との協力スキームで、不当廉売とか優越的地位の濫用等の不公正な取引方法についての情報収集で協力する、それから、必要に応じて違反被疑行為の審査にも協力をしていただくというスキームができました。

 それに基づくものは、平成二十年度において経産省から八件、それから本年度は、まだ始まったばかりですが、四件の情報提供を受けております。

 ちなみに、職員の協力でございますが、経済産業省の職員を公正取引委員会に併任になっていただいているんですけれども、本年四月一日現在で十八名、そのうち二名は出向、十六名は併任ということで、職員の方々にもそういう形で協力していただいているということでございます。

田村(謙)委員 最後の質問になると思いますけれども、やはり本会議場でも質問をしたことでありますが、独禁法で課徴金対象となる優越的地位の濫用が下請法では勧告のままでありまして、下請法に基づく勧告に親事業者、大企業者が従った場合には、独禁法第二十条による法的措置が適用されないということであります。本会議では、その施行状況を勘案して、今後、必要な対応を検討してまいりたいと考えておりますという御答弁をいただいておりますけれども、本来は、今回の独禁法の改正法と同時に下請法を改正すべきではなかったんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 下請法は、独禁法が親で下請法が子という関係にございまして、独禁法のまさに優越的地位の濫用の下請版が下請法であるというふうに位置づけられておりますが、その子法の制定されている趣旨は、多くの下請法違反事件をある意味では定型的に迅速に処理するということでございまして、その権限は勧告なんでございますね。命令ではないわけでございまして、勧告ということになっております。

 幸い、今まではその勧告に皆さん従っているわけで、従わない者はまだ出ておりませんで、したがって、先ほども御答弁の中にありましたが、減額分が三十億円になっているということでございます。

 下請法を改正するというのは、十六年にある意味では大きな改正をして、それまでは製造業と修理業だけだったものを今度はサービス業も下請法の対象にするという大きな改正をして今日に至っておりますが、そういう意味で、勧告制度を変えるというのはなかなか難しいのかな、そうなったら独禁法に戻って、独禁法を適用するということにせざるを得ないのかなと思っています。

 優越的地位の濫用を今度お認めいただければ課徴金の対象になるわけでございまして、似たようなケース、一〇〇%オーバーラップはいたしませんけれども、下請法がだめな場合に独禁法を適用して課徴金をかける。ただ、原状回復命令は無理だと思いますけれども、そういうことになっていくわけでございまして、両々相まって、きちっと親事業者のコンプライアンスを求めていきたいと思っております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 時間が終わりましたので、質問を終わります。

東委員長 これにて田村謙治君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日、独占禁止法の改正案について質疑の機会をいただきまして、委員長初め理事の皆様に感謝を申し上げます。

 私、初当選以来、経済産業委員会に所属をさせていただいておるわけでありますが、ことしで議席を預かって六年目となるんですが、前回の独禁法改正の議論、二〇〇四年、平成十六年の国会、そして十七年の国会で独禁法の改正を議論いたしました。

 当時は、十六時間二十分の質疑時間、こういうことでありましたが、当時の与党の筆頭理事が河村官房長官であられました。きょうは、官房長官にお忙しい中御出席をいただいておりますけれども、当時与党の理事として議論を一緒にさせていただきまして、また、さまざまな御指導もいただいた河村当時筆頭理事を前に、こうして再び独禁法の質疑ができるということは感慨深いものがあります。

 早速質問に入りたいと思うわけですが、論点についてはさまざまな論点があるので、多少趣を変えて最初のお話を伺いたいと思っておるんです。今回の改正では、我々民主党が前回の法改正の折、かねてから主張してまいりました不公正な取引について、課徴金の対象にすべきだということを我々民主党も強く主張してきたわけでありますが、この中身が今改正案に入っているということは非常に評価したい、こう思うわけであります。

 その不公正な取引の中に、再販売価格の拘束、これも課徴金の対象になった、こういうことでありますが、この再販制度についてまず最初にお伺いしたいと思うんです。

 今回は、再販売価格の拘束が課徴金の対象になったということでありますけれども、独占禁止法上は、この再販の例外、適用除外になっているものが幾つかございます。すなわち、新聞、書籍、レコード、CDであります。

 この再販売価格の適用除外については、過去において公正取引委員会は何度か見直しの検討を行っております。その都度果敢に挑戦してはなかなか実現できなかったという歴史があるわけでありますが、まず第一に、竹島委員長に基本的な認識をお伺いしたいんですが、この再販売価格の指定を禁止している独禁法の適用除外について、本来は公正な取引環境をつくるという独占禁止法、経済憲法の視点にかんがみれば、廃止すべきだという基本的な認識に、現在委員長、変化はございませんか。

竹島政府特別補佐人 おっしゃるとおりでございまして、私のみならず、私の先輩の委員長時代も含めて、公正取引委員会はこの再販売についての適用除外規定は好ましくない、こういうものはないのが本来の姿であるというのが歴代の公取の考え方でございます。

近藤(洋)委員 そういう歴代の考え方は現在も変わらないという中において、今回法改正には盛り込まなかったわけでありますが、今後の独禁法改正について問題意識を持っているとすれば、大きな課題であるという認識については、委員長、変化はありませんか。

竹島政府特別補佐人 御指摘のとおり、大きな問題であるとは思っていますが、現実問題として、この廃止が、どう申し上げましょうか、具体的には新聞社、出版社等々の関係業界の方々、それから政治的にもそれが現実性があるのかということについては、私は率直にそういうふうには今なっていないんじゃないのかと。

 外国において、こういうことは、新聞について認められているところは、少なくとも先進国においては、ドイツが最近どうなっているのかちょっとあれですが、昔に戻ったかもしれませんが、そのほかの国は、新聞についての再販というものは認められていないわけでありまして、そういう意味からいっても極めて特異な存在でありますが、これはもう日本国内における議論が廃止すべきだということになるかならないか。前回、平成十三年のときは、基本的にはおかしいけれども、国民の同意が得られないという理由でその議論を打ち切っている、そういう事情があるわけでございます。

近藤(洋)委員 私は、書籍については、一定の文化を守る等々の理由というのはあろうかなという認識に立つ者であります。

 しかし一方で、もはや音楽レコード、CDというのは、現実の流通のことにかんがみても果たしてどうなのか、実態的な取引にかんがみても大いに疑問のあるところでもありましょうし、そして、恐らく委員長おっしゃいました、政治的にも国民的にもその議論がまだ煮詰まっていないというか理解が広がっていないというところにおいては、新聞の話なのかと思いますが、私は、きょう、ちょっとこれからその新聞についてお伺いしたい、こう思うわけであります。

 私は、個人的な話で恐縮ですが、新聞界出身、界出身というとちょっと語弊がありますが、たかだか十一年でありましたけれども、新聞社にお世話になった人間であります。

 日本国にジャーナリズムというのは非常に大事だ、健全なジャーナリストが育たなければいけないという思いは人一倍強く持つ者であります。そういう基本的な認識に立つ上でも、しかし、他方でこの再販制度の適用除外というのが、果たして健全な新聞というか社会の公器としての新聞というものに必ずしも直結しないのではないか、特に最近の状況において、必ずしも再販があるから新聞が守られるというのが素直に国民の皆様の理解を得られるかどうか、ここは落ちついて考えるべきではないかと思う一人であります。

 その上で、ちょっとお伺いしたいんですが、法務省、日刊新聞法という法律がございます。委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますが、この一ページ目の下段のところでありますが、日刊新聞法という法律です。わずか四条のつつましやかな法律でありますが、これは、要は第一条の目的規定がすべてでありまして、日刊新聞について、株式会社形態をとる新聞社について、株式を第三者に譲渡することを制限する法律であります。基本的には、禁止をし、かつ事業に関係のある者に限定するという法律であります。

 この法律によって、現在株主制限している新聞社というのは何社あるのか、少なくとも大手新聞ではどのような状況になっているのか、所管官庁が法務省ということですので、法務省、お答えいただけますか。

團藤政府参考人 お答え申し上げます。

 全国にございます新聞社のうち、一体何社がこの日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律に基づきます株式の譲渡制限をしているかということにつきましては、私どもも詳細を把握しておりませんため、お答えをすることは困難でございます。

 また、委員から大手新聞社というお話がございまして、何をもって大手新聞社というかというのも非常に線引きが難しいところでございますが、私どもにとりまして身近なところで、法務省の記者クラブに記者を常駐させております全国紙五紙を含みます六紙ございます、これらにつきまして調べてみましたところ、このうち四紙の新聞社が委員御指摘の日刊新聞法に基づきます株式の譲渡制限をしているものと承知してございます。(近藤(洋)委員「どことどことどこですか」と呼ぶ)

 具体的には、読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞、それと、東京新聞を発行しております中日新聞社でございます。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 この日刊新聞法は商法の特例なんですね。商法の特例で極めて珍しい法律なんですが、特に珍しいのは、事業にかかわりのある者のみに認める、こういうことなんです。

 調べてみましたらば、この規制ができたそもそもは戦前の話でありました。法律ができたのは昭和二十六年と伺っております。

 戦前に、当時、これはまさに戦時下、当局による集中規制といいましょうか、報道規制を当局がかけたい、そういう状況の中で、全国あまたある新聞をある程度集中的に管理したい、そういう軍部を中心とする当時の政府の思いがあった。また、新聞社も、小さな会社が多かったですから、外部に資本が流出することを恐れたという、両者の思いが相まって、いわゆる戦前の規制の中でこの特別な株主譲渡規制というのができ上がった、こういうふうに分析されております。

 そして、戦後は軍部のそういう思いは消えましたけれども、第三者に株が流れることを恐れた新聞社側は、資本自由化という当時の流れがあったにもかかわらず、この法案を、物の本によると、さまざまな論文等によると、議員立法を大手新聞社が働きかけてつくった、こういうことであります。昭和二十六年の話であります。

 さて、お伺いしたいんですが、当時の理由は私もそれなりに理解できる。まさに社会の公器として報道の自由を守るということから、報道機関としての新聞社に株主の制限をかけた、第三者に流出することを防いだというわけでありますが、現在は、報道機関はあまたあるわけであります。放送局、さらにはインターネット、雑誌社と、それぞれの報道機関がある中で、新聞の経営だけが、株主だけが制限される、すなわち、外部からのチェックを受けないというその合理的な法律の理由について、法務省、お答えください。

團藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この日刊新聞法でございますが、先ほど議員からも御紹介ございましたように、法律第二百十二号として昭和二十六年に制定されたものでございます。

 その経緯は、御紹介にございましたように、議員立法によってされたものでございます。

 私どもの方で把握しております限りにおきましては、ちょうどこの昭和二十六年の七月一日に施行されます改正商法におきまして、それまで一般の株式会社に認められておりました定款による株式譲渡制限、これが認められないということに改正されるということに伴いまして議員立法が行われたというふうに私どもは承知しているところでございます。

 当時の国会におきます提案者の御答弁を拝見いたしますと、提案理由につきましては、日刊新聞の高度の公共性にかんがみ、報道の性格と各新聞紙の特質を確保するためであるとされておると承知しておるところでございます。

 このような趣旨からいたしますと、私どもが何ゆえ所管しているかと申しますと、専ら商法、会社法の特則を定めている、特例を定めているということで私ども法務省の所管となっておるわけでございますが、提案者によって示されました提案理由からいたしますれば、少なくとも日刊新聞を発行する株式会社につきまして、定款をもって株式の譲り受け人を事業に関係のある者に限ること等を許容するということには一定の合理性があるのではないかと考えておる次第でございます。

近藤(洋)委員 では、その一定の合理性の中身を教えてください。新聞社だけが保護される一定の合理性の一定の中身、放送局や出版社やさまざまなメディアがある中で、新聞だけの株が制限される、その一定の中身を教えてください。

團藤政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、私ども、メディア関係全般を所掌しているわけではございませんので、なかなかそこのところは難しゅうございますが、先ほど御答弁申し上げました提案者の提案理由、これが日刊新聞の高度の公共性にかんがみて報道の性格と各新聞紙の特質を確保しようというものだというふうに理解してございます。

 それは、少なくとも新聞に関する限りにおきましては、現在におきましても一定の合理性があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。

近藤(洋)委員 私も新聞の社会的な公共性は全く否定しません、全くそれは否定しないわけであります。

 ただ、伺いたいのは、それぞれ皆社会的な公共性を持っているわけでして、放送局もしかりであります。新聞だけが、そこの一定の度合いが、私ははてさて何なのだろうかと。議員立法された提案者は恐らくもう御存命でないでしょうから、いらっしゃるかもしれませんが、当局に聞いているわけでありますけれども。

 ちょっとここで角度を変えて、日本のメディア産業というのは、これは新聞も含めて大変大きな広い産業なわけですけれども、大体どれぐらいで、新聞はそのうちどれぐらいなのか。事実関係だけお答えいただけますでしょうか。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘のコンテンツ産業でございますけれども、今新聞につきましては約二・三兆円、二兆三千億円でございます。テレビが三兆八千億円などございまして、コンテンツ産業全体で申し上げますと、市場規模は約十四兆円、こういうことでございます。

近藤(洋)委員 大変大きな産業なんですね。

 そこでお伺いしたいんですが、この十四兆円のうち、放送関連産業では約三・八兆円あるわけですね。大手新聞社がこの放送局のうちいわゆるキー局の大株主であり、実質的には人事権も含めて新聞社が支配をしていると言ってもいい。地方に戻りますと、地方新聞社がその地方のテレビ局を実質的に、大株主であり、支配しているところが多い。

 このように、新聞と放送局、そして放送局はまたさまざまなコンテンツ産業というかメディア産業を率いているわけでありますけれども、その大もとの新聞社がさてこういう株主制限をかけられている。

 このことは、新聞というかメディア産業の自由な競争であるとか、さらには健全な発展、外部資本を受け入れて健全に発展する、そういう観点からも、私は一つの大きな阻害要因になっているのではないかという懸念を持つんですが、これは担当の総務省にお伺いします。いかがでしょうか。

久保田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘の、新聞社がテレビ局の株主となっている例が多く存在をしているということにつきましては、我が国の放送局の草創期におきまして、最初に免許されましたのは昭和二十六年でございましたけれども、報道に知見を有する主体として、新聞社が大きな役割を当時果たしてきたという歴史的な経緯があるものと認識をしております。

 他方、委員から御指摘のとおり、テレビなどの放送分野におきましては、コンテンツ産業の中核をなす事業分野としまして、今後とも発展が期待されるところでございます。

 放送事業者の中には、みずからの経営判断によって上場を果たしまして、株式市場という厳しい外部チェックのもとで経営に努めている事業者も出ているところでございます。テレビを放送しております民間放送事業者は全国で百二十七社ございますが、そのうちの八社が既に上場しております。

 また、総務省といたしましても、昨年の放送法改正におきまして認定放送持ち株会社制度を導入するなど、放送事業者にとっての経営の選択肢の拡大を図ってきているところでございます。

 各放送事業者が適切な経営を行いまして、コンテンツ産業の中核として発展していくことを期待しているものでございます。

近藤(洋)委員 総務省としてはそういう御答弁になるんでしょう。

 私はここで、公正取引委員会竹島委員長にお伺いしたいんですけれども、こうした経営の面からもある意味で保護をされて、販売の面からも法的に保護をされて、果たしてこれで、この十四兆円という大きなコンテンツ産業の、実質的には大きな中核になっている新聞業というのが、こういう形で過剰に保護をされていて、これはやはり、公正な市場取引という観点から見ても、ちょっと過剰な保護になり過ぎているのではないか。

 私は、もう二度と戻るのは不可能だと思いますけれども、もう一度生まれ変わったなら新聞記者になりたいと思うぐらいジャーナリズムが好きな人間であります。健全なジャーナリズムになってもらいたいという人間であります。だからこそ、あえて聞いているわけであります。

 そういう過剰な状況の中で、その意味では、本当に健全な産業ができるんだろうか、こう懸念するわけですけれども、公正な市場取引という観点から、今の日刊新聞法の保護も含めて、過剰な保護規制になってはいないかというこの点について、公取委員長の見解はいかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 個人としてならともかく、公正取引委員会の委員長として日刊新聞法についての評価をするというのは、これはちょっとしにくいわけでございます。日刊新聞法については、今御説明があったようなことでございます。これは、競争法よりも、むしろ新聞を含めたメディアの事業基盤、事業環境をどうするのかというまさに政治の問題であるはずでございまして、私からはそこはコメントしにくいわけです。

 一つ、余りうれしくない記憶としては、数年前に、再販制度どころか、日刊新聞法どころか、公正取引委員会のいわば規則にすぎない新聞の特殊指定というものを廃止しようといたしましたけれども、そのときは国会においても、各党の皆さんは、今のままでよろしいんだということでございまして、廃止はまかりならぬと。公正取引委員会の権限だけでできる話ではあるんですけれども、そういう議論がありまして、矛をおさめているというわけでございまして、ましてや、それよりももっと基盤をなす日刊新聞法とかいうことになりますと、これはまさに政治家の先生方が御議論をされるべきテーマだと思います。

近藤(洋)委員 ただ一方で、委員長、これだけ大きなメディア産業という、世界に目を転ずれば、これは大変なメディアの再編が行われて、そして、資本力の競争が行われているわけですよ。そういう状況の中で、日本だけがこれが置いてきぼりになっている、こういう側面もあるわけですし、そして、麻生内閣はコンテンツが好きだとおっしゃっているわけで、それを発信しよう、こういうことも内閣の柱に掲げているわけだから、産業政策上もどうか、こういうことでも聞いているわけであります。

 あわせて、では官房長官、そこでお伺いしたいわけですけれども、文部科学大臣もお務めになられた大臣でありますから、このいわゆる日刊新聞法も含めた、そして、独禁法の再販の問題も含めた新聞のありようについて、やはりここは、大公取委員長をしてもなかなか、それは政治の話で難しゅうございますと言わしめている話でありますから、これは官房長官がどういうふうにお答えになるのか。内閣を代表して、この問題について、問題意識を持っているのかどうかだけでもお答えいただけますでしょうか。

河村国務大臣 前回の改正のときも、私もこの委員会で近藤先生に大変お世話になって、論陣を張っていただいて、また、改正に大変御努力をいただいたこと、感謝しております。くしくも、こういうことで今度は答弁側に立っておりますが、今御指摘のこの点については、あの当時、私も、再販制度に対する超党派の議連あるいは与党の議連、いろいろな角度でいろいろな議論をしたことを覚えております。

 竹島委員長からも答弁がありましたけれども、これの適用除外といいますか、新聞を含む著作物の再販制度、私は、あのときは、文部大臣経験者として文化の面から、今この時期であろうかという議論をしたのでありますが、今なお国民的な合意ができていることなのかどうなのかということがやはり一つ大きな課題だというふうに思っております。

 先ほど来答弁の中にもありましたが、新聞の持つ高度な公共性、これは近藤先生もお認めになっておるわけであります。今度、産業政策としていかがなものか、こういう視点もなければならぬ、こういうことでございますが、当時の要請、そのときの歴史的な経緯、これを今踏まえながら、これからどういうふうな形で社会的な認識が醸成されるか。政府としては、それをある程度見ながら、その醸成ができた時点であれば適切に対応しなきゃならぬ、このようには考えておりますが、今もってそのことが醸成されているかどうか。これは、議員立法で当時、特に日刊新聞法ができたことでありますから、もし改正ということになれば、議員立法でこれをおやりになることにもなるだろう。

 そういうことも踏まえて、これはやはり竹島委員長も今答弁されておりましたが、極めて立法府の中でもいろいろな議論のあるところだと。ある意味では、立法府の中での議論を踏まえて、そうした世論が醸成できれば、委員長としては前向きに取り組みたいという意向のようでございますが、まずは、いわゆる立法府、我々政治家の方の世論の醸成が必要ではないか。私も、内閣の一員としてはそのように、また担当大臣としてもそのように考えておるわけであります。

近藤(洋)委員 あえてこの問題を大事な独禁法の改正の議論のときに出したのは、このメディアに対する問題というのは、外部でどういう発言をしても一切取り上げられないわけですね。それはそうです、新聞メディアに都合の悪いことは報じないということですから、世の中で抹殺されるわけですね。しかし、議会で発言をすれば議事録に残るわけですから。

 そして、もっと言うと、やはり私は、くどいようですけれども、健全なジャーナリズムは残ってもらいたい、そのためには健全な経営にならなければいけない。残念ながら今、新聞界は、この未曾有の不景気の中で大変な状況になっているわけですね。これは景気が悪いということもあるんですが、新聞経営という点でも、もうそろそろ壁にぶち当たっているんだ、こういうことだと思っているわけです。

 ですから、この規制に守られ、また日刊新聞法という、あえて言います、外部からのチェックがきかないということは、ある意味緩い経営をされているという批判もあるわけでありまして、そういう部分について、やはり新聞社の経営自体も、内部の方々が危機感を持っていらっしゃるわけであって、体質というものを本当に見直す時期なんじゃないか。こういう問題意識だけは、ぜひ政府におかれましても持っていただきたいものだな、議員立法だからと逃げるのではなくて、やはり健全なメディアをつくるということは非常に大事なことだ、このようにも思うんです。

 それはある意味で、ちょっと口幅ったい言い方ですけれども、国家として立派なメディアを持つということは、何も国家の言うままにつくメディアじゃないんですよ。情報発信ができる強い報道機関を持つということは、これはこれでやはり国にとって重要なことだ、このようにも思うわけでありますから、あえて申し上げているわけであります。

 では、本題といいますか、法案の中身に戻ってまいりますが、先ほど来、午前中からも議論がありました。この不公正な取引について課徴金が課されたわけであります。排除型私的独占は当該売上高の六%、優越的地位の濫用を除く不公正な取引については三%、優越的地位の濫用は一%と最も課徴金の水準が低いわけですが、なぜここが一番低いのか、改めてお答えいただけますでしょうか。

竹島政府特別補佐人 これは我々が立件した事例で、協賛金であるとか不当な値引き等によって、どのぐらい大規模小売業者が納入業者との取引においていわば不当な利益を得たかというふうなものを調べましたところ、当該取引額、大手小売業者の売上高じゃなくて、納入業者との取引額の合計を分母にしますと、一%ぐらいだという推計がありました。

 一%はちょっと、いかにも小さいなという感じはいたしましたけれども、よくよく考えてみれば、その取引額が一千億の場合は十億円にもなるわけでございまして、決して抑止力、金銭的不利益処分として、そう小さいと言えるものでもないなという判断をいたしまして、一%にさせていただきました。

 これからは、これはやってみなきゃわかりませんけれども、これではだめじゃないか、不十分ではないかということに仮に将来なれば、またそれは、ほかのものもそうでございますけれども、見直しをさせていただくということだと思います。

近藤(洋)委員 先ほども委員長お答えになったように、別にこれ、正しい算定式があるわけではないと。サンプル数をやられていると。ある程度の、サンプルについても限界があるんだということはお認めになられているわけですよね。最初だから少し保守的に入れます、こういうことなんだろうと思うわけであります。

 ただ、公取の事務方に事前に伺いましたら、例えば優越的地位の濫用で、近年では最も悪質な例だったなと私が思うのは、三井住友銀行による抱き合わせ融資というんでしょうか、これは公正取引委員会が摘発をされた事案であります。大変幅広く、中小企業に対して金融先物商品を購入させていた、中小企業が本当に貸しはがしで、借りたいという中で、当該銀行が押しつけ販売をしたという事例でありました。

 これは、私は、被害に遭った方々も何件か聞きましたけれども、大変多くの事業者が被害に遭ったということにもなっておりますし、この例などは、実はそのサンプルの中には入っていないわけですね。ですから、私は、一%という合理的な理由は結論的にはないと思うんです。本当の合理的な理由というのはないんだろうと。一定の指標みたいなものはあるにしろ、算式はないと思う。

 そこで、官房長官にもあえてお伺いしたいんですが、この新たに入れられた不公正な取引に対する課徴金水準ですが、余りころころ課徴金の水準を変えるということはいいことだとは思いません。ころころ変えることがいいことだとは思いませんが、しかし、柔軟に、運用結果を見て見直すという考え方で、官房長官も同じ認識だということでよろしいんでしょうか。お答えください。

河村国務大臣 課徴金算定率の推移は、昭和五十二年に導入されて以来、平成三年、十七年と引き上げがされておるところでございます。

 今御指摘のような、違反行為の効果的な抑止のために見直しが必要だ、こうなれば、これは柔軟に対応していく。したがって、所要の見直しの検討というのは当然行われるべきだ、私も考え方は同じでございます。

近藤(洋)委員 ぜひそういう姿勢で見ていただきたいなと思うわけであります。

 また、この排除型私的独占、これは、排除型私的独占といっても、なかなかイメージがわかなくてということで、先ほど来御答弁がありましたけれども、やはり事業者の方々から見ると、どういうケースが何に相当するんだ、どこまでやったらば独禁法違反になるんだ、こういうガイドライン、現在はないわけであります。

 私は、これは前広に、先ほども委員長、制定してという御答弁でしたが、やはり具体的に、いつ示されるのか。もう既に委員長、去年、この改正案は出しているわけですよ。ですから、本当はこの委員会審議でガイドラインを添付されたっていいぐらいなんです、一年間やっているわけですから。本来、この委員会審議で、こういうのがガイドラインですよというのを我々に示した上で、審議に臨んでもいいぐらいだと思うわけですが、いつ示されるんですか、お答えください。

竹島政府特別補佐人 もう既に事務当局においてはガイドラインの原案作成に取りかかっておりまして、年内にはお示しを、これは法律を通していただいて、実はいつ施行するか、来年の一月なのか四月なのか、まだ決めておりませんけれども、十分前広にということは、年内には原案をお示ししてということにしなければいけないと思っております。

近藤(洋)委員 ちょっと委員長、仕事の早い竹島委員長の割には遅いんじゃないか、こう思うんですよね。去年にはもう、これはやると決めているわけですから、だから、今取りかかっていますというのはややおかしい話で、事務的にはもうでき上がっていていいわけですよ。

 ですから、本来なら原案が衆議院に示されてもいいぐらいであるし、ガイドラインというものをこの審議に示されてもいいし、百歩譲って、参議院が通った瞬間に出されて、パブコメを受けて、そして事業者の方と幾つかキャッチボールをしてつくるというのが、これが丁寧なやり方じゃないか。罰則が科されるわけですから、ある程度こういうものなんだということがやはり知られないといけないんだろうと思うんです。

 ぜひ、事業者の意見を反映という観点からも、年内というのはちょっと遅いなという気がするので、重ねて御答弁をいただけませんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 事務方の作業はそれなりに進んでおりますので、できるだけ早く、事業者の御意見が十分に反映されるような物理的時間をとって、パブリックコメントに付します。そういうことで、皆さん方に事前にわかっていただいた上で、法律を施行したいと思っております。

 具体的に何月と、今ちょっと相談するいとまもありませんのでお答えしにくいんですが、いずれにしてもできるだけ早くやらせていただきたい。年内といったって、年内ぎりぎりにお示しするんではないという意味で、努力させていただきます。

近藤(洋)委員 ぜひよろしくお願いいたします。これは、まじめな話、やはり罰則が科されるものであるわけですから、多く、わからなければいけないということだろうと思うんですね。

 また、今回、刑罰が懲役三年刑から五年、こうなったわけであります。この五年になったということは一つの大変大きな効果を生むわけでありまして、刑法の二十五条でありますか、五年の判決になると、要は、実態的には、五年の判決が出た場合は執行猶予がつかなくなるというわけであります。無条件につかなくなる。

 まず、お伺いしたいんですけれども、これまでの独禁法違反の事案で、執行猶予がつかなかった実刑が下ったケースというのは、これまでさまざまな談合事件等々あったかと思いますが、なかったと記憶をしますが、いかがか。

 そうだとすると、五年になったということは、執行猶予つきがない、実刑が出るという意味においては、大変な抑止力という意味では強いものの効果があると思いますが、公正取引委員会の御見解、お答えいただけますでしょうか。

舟橋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、実刑判決の有無でございますが、平成以降で十二件の刑事事件がございますけれども、すべて執行猶予つきということでございます。

 それから、今度、三年を五年に引き上げるということの効果でございますけれども、基本的には、これは他の経済法令とか諸外国の状況を見て、現在三年を五年にしたということで、今後そういう抑止力が高まってくるというのは一般的にあろうと思いますし、委員御指摘のように、刑法二十五条の関係というのも当然響いてくると思います。それから五年になりますと、公訴時効の方も変わってきますので、そういう影響がいろいろ出てくるんだろうというふうに思っております。

近藤(洋)委員 その意味では、今回の改正というのは、抑止という意味でも大変大きなものを持つ。逆に言えば、公正取引委員会の公正性がより求められる、こういうことになろうかと思うわけですけれども。

 委員長、お伺いしたいんですけれども、課徴金の話、課徴金の対象も拡大されました、今回の改正で。また主導的役割については五割増しという形にもなりました。より公正な取引をしなければいけないという観点から、こういった範囲が広がっていったわけであります。

 また、リーニエンシー制度、課徴金減免制度の拡充といいますか、これも盛り込まれました。

 こうなると、先ほどもちょっと議論に出たようでありますけれども、私は、この課徴金そのものが、きちっと決まった数字をそのまま課すというよりは、ある程度幅を持ったものになっている、幅を持ったものに変化するわけでありますね、変化する。そうだとすると、決まった不当利得の剥奪、これは六%にしろ、三%にしろ、一%にしろ、例えば一〇%にしろ、それぞれ不当利得の剥奪ということで計算式、一定の計算なりで出されてきているのが課徴金なわけですけれども、これはいろいろ五割増しになったり減免されたりと。

 こうなると、そもそもこの不当利得の剥奪という性質から随分変わって、制裁、この課徴金を課すというものが制裁なんだ、利得の剥奪から制裁だというふうに、私は、明らかにこれは性質が変わってきたんだろう。この改正を経てさらに変わってきたのではないか、制裁色が強くなった、こう思いますが、制裁色が強くなったという認識はお持ちかどうか。だとすると、制裁金と改める方が正しいと思うわけですが、どうか。この二点についてお答えいただけますでしょうか。

竹島政府特別補佐人 課徴金の対象範囲が拡大している、また、同じ違反行為に対して課徴金の算定率が上がる、またはその加算があるということは、御指摘のとおり、これは制裁性が強まっているということでございます。また、それを意図して改正をお願いしているというようなことでございます。

 ネーミングを課徴金から制裁金に変えるかどうか。それよりも中身かなと。

 私は、制裁金といっても非常に幅があると思って、EUのような制裁金というのは、まさにこれは裁量性を十分に持った制裁金でございまして、そういうものから、今の現行の日本の課徴金、これはもう言ってみると行政制裁金的だ。しかし、一律必ずかけるというような、そういう制約がありますので裁量性にも欠けていますけれども、ある場合には割り増しをする、ある場合には割引をするというようなことが入っていまして、覊束裁量まではいきませんけれども、まあそれなりの、行政制裁金と言われても、ぎりぎり一番弱いところの行政制裁金かなと私は思っております。

 ですから、中身が徐々に強い方に向かっていくというのが時代の流れなのかなというふうには思っておりますが、今現在、この段階でネーミングを変えるまでもないのかなと思っております。

近藤(洋)委員 徐々にでも制約色が強くなってきたなという印象、だからそういうことはあるということで、委員長の御認識でございますよね。

 私はただ、名は体をあらわすじゃないですけれども、やはり実が重要だ、こう思っていまして、制裁金だ、制裁なんだという観点に立てば、さまざまな制裁金の設定というのができるんだろう、このように思うんですね。

 不当利得の剥奪というのは、だんだんだんだん難しくなってきている、その算出根拠自体が。ですから、その算出根拠自体もだんだんもたなくなっているのではないかという気が、これだけ幅が広がってきますと思うわけであります。

 ですから、柔軟な対応ということも含めて一つあり得るのではないかと思うのですが、これは、内閣官房長官、制裁金というものに今後変えていくという考え方についてはいかがでしょうか。

河村国務大臣 確かに御指摘いただいた面がありますが、制裁金ということをどういうふうにとらえるかということがあろうと思います。

 これは今、先ほど竹島委員長も答弁しておられますが、課徴金が、行政庁が違反行為に対して金銭的不利益を課す、この行政上の措置としてあるわけでありまして、今回、この改正によって、主導的役割を担った事業者に対して課徴金を割り増す規定を設けるということによって、課徴金の性格は変わるとは私は思っておりません。

 ただ、既にEU等、欧州、欧米等についてはそういう色合いが非常に強くなってきている、こういう面もありますが、今、日本における課徴金のあり方は、十七年当時の性格をそのまま引き継いでおるわけでありまして、この方向でいくという形で、今後さらに制裁的な意味合いを持たせなきゃいかぬという状況に、委員御指摘のようなことにさらに強めていくという方向であれば、これは課徴金制度そのものの考え方を広げていくといいますか、考え方を変えるということでありますから、その点についてはやはり検討をしなきゃいけない課題ではないか、私はそのように理解しております。

近藤(洋)委員 いずれにしろ、私どもとすると、やはり制裁色が強くなっているなという認識なので、そこはきちんと明らかにした方がいいのではないかという問題意識を持っていることだけ申し上げたいと思います。

 さて、いずれにしろ、今回の改正案が通りますと、強い公正取引委員会になるわけであります。市場の番人として公取が強い権限を持ち、またそれに対して抑止力を持った措置を持つ、権限を持つということは私は否定するものではありません。とりわけ、我々も、民主党としても、下請いじめだとか、中小企業に対する措置、別に中小企業だから守るというわけではなくて、不公正な取引について、やはり市場の番人として公取が機能することは極めて重要だ、こう思うわけでありますが、強い公取であると同時に、やはり公正な取引委員会でなければならない、こう思うわけであります。

 その観点から、ぜひ審判制度の問題についてお伺いしたい。

 審判制度につきましては、配付資料の一枚目のところに、前回の、平成十七年の独禁法改正の附則十三条、そして今回の附則二十条、それぞれこの資料に書いておりますけれども、要は、既に十七年のときに、この法律の施行後二年以内に審判手続のあり方について検討を加え、所要の措置を講ずるものとすると法律で書いているわけですね。まず第一点。これが明記されている。前回改正、前回というか、すなわち昨年の提出時点でも、この審判制度については一年以内に見直して結論を出すものとする、こういうふうになっているわけです。今回、その一年が過ぎて、三度目の提出でまた一年以内に結論を出すものとすると。

 これを宿題に例えると、夏休みの宿題をやらないで、冬休みの宿題もやらないで、春休みの宿題もやらなかった、こういうことなんですね。法律に書いてあるわけですから、ちゃんと「所要の措置を講ずる」と。

 これは、一回ならばいざ知らず、委員長、三回目なんですね。二回の先送り、こういうことについては、やはり当局の責任者として反省を率直にすべきではないか、私はこう思うんですが、公取委員長、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 審判制度の見直しについて、調整案がつくれなかったという意味では、率直におわびを申し上げなきゃいけないと思います。なかなかこの法律改正というのは、TPOみたいなものが全部そろいませんとうまくいきませんで、調整案をつくろうと思ってもつくれない状況というものも客観的にあったりしているわけでございます。

 しかし、今度こそは、こういうことで審判制度以外はまとめさせていただきましたので、これが実際の独禁法の執行には一番大事なところでございますから、これをぜひやらせていただいて、審判については、もう論点はある意味では出ているといえば出ている。あとはどうそれを決断するかということかとも思います。

 もう一回、ぎりぎり、関係方面と、一年といいますか物理的には一年ございませんが、来年の通常国会に答えをお持ちできるように、真剣な調整をさせていただきたいと思います。

 そういう経緯になったことについてはおわび申し上げます。

近藤(洋)委員 我々は、民主党は考え方をまとめているわけです、審判制度については。民主党の考え方は、これは基本的には廃止すべきだ、こういうことで考えているわけですね。与党の中でいろいろな御意見があるというのは報道等で聞いております。

 いずれにしろ、政府・与党内でまとまらない。政府・与党内でまとまらぬものを我々は何ともしようがないわけでありまして、どのような修正をしようか話し合おうにも、政府・与党がまとまっていないのを我々がとやかくできない、こういう状況なんですね。ですから、ここは誤解なきように。

 我々民主党としては、独禁法の改正は重要だと思っておりますし、政府が提案してきている課徴金の拡大であるとか企業結合であるとか、特に課徴金については、中小企業の方々の悲鳴を聞いて、本当に重要だという思いがあるわけですけれども、ここがまとまらなかったからなかなか動かなかった、こういうことはあえて申し上げなきゃいかぬな、こう思うわけであります。

 配付資料の裏のページに、主要国競争法における手続の流れという表を記載させていただいております。いわゆる公取による審判が海外でどのようになっているか、こういうことでありますけれども、河村長官、要は、先ほど来お話が出ているように、私どもとすると、審判を公正取引委員会が持っているということは、検察官と裁判官が同じ役所にいるようなものだ、こういう問題意識を持っているわけであります。日本と同様な手続をとっている国は韓国だけであります。英国もやや似ているといえば似ていますが、基本的には違う。ヨーロッパ大陸型は違う。欧米流は若干いろいろありますけれども、基本的には日本独特の制度である、こういうことであります。

 また一点、やや専門的になりますけれども、審判制度については、もう前回の改正で事後審判に変わっているわけですね。事後審判に変わったということは、要するに強制執行力を持つ命令を下す形で、意思決定を行った公正取引委員会がまた自分で判断する。これはややおかしい話で、要するに不服審判型の行政不服審判を、不服がある者は裁判所に取り消し訴訟を求めるという、これは我が国においても普通に行政訴訟で行われていることですから。そういう形に切りかえるというのが普通なんですね。

 事後審判、要するに、前回の改正で大変強制力を持った公取にしてしまっている以上、こうなると、やはり審判というのは、これは公取に残すというのは容易じゃないんですね。なかなか難しいんだろう、こう思うんです。

 官房長官、担当閣僚として、少なくとも強制執行力を持つ命令を下す、公取はこういう形にしてしまっているわけですから。排除措置命令とか、そういうのができるようになってしまっているわけです。強制力を持つような形になっている現状において、現行の審判制度に大きな課題がある、問題を抱えている、現状の制度に問題があるという御認識はお持ちでしょうか。

河村国務大臣 現行の事後審判制度は、十九年六月、一昨年六月に独占禁止法基本問題懇談会の報告書が出ております。これには、この事後審判制度というのは、処分が早期にできる、これについての評価は受けておるわけでありますが、一方では、適正手続の確保の面で十分とは言えない、あるいは、不服審査を担う機関については第三者が必要である、また中立公正さに欠けるのではないか、こういう外観が生じるのではないかという指摘がございます。

 こういう問題点があるという認識は私も持っておるわけでございます。

近藤(洋)委員 今長官が御答弁いただいたように、おっしゃったような問題点があるんですね。

 竹島委員長、これは条文のとおり読みますと、基本的には、これは全面的に、「全面にわたって見直すものとし、」というこの条文は、「全面にわたって見直す」ということなんだから、今の制度のままで、全面にわたって見直すといってこれを二年もかけてやって、やはり問題が多いから見直しているわけでありまして、ある程度の見直しというか、これは現状維持というのは基本的にはないというのが普通の解釈だろう、こう思うんですね。

 竹島委員長、現状の審判制度をどうしても維持したいという強い意思でもお持ちなんですか。どうなんでしょうか。お答えいただけますか。

竹島政府特別補佐人 これはもう本当にいろいろな議論がありまして、私は一つ、先ほども御紹介いたしました、この六十年を超える歴史のある公正取引委員会で、独立行政委員会として審判機能を持つのは大変大事なんだ、こういう御議論がずっとあって、今現在もそれがあるわけでございます。

 内閣府の基本問題懇談会も基本的にはそういう考え方を踏まえて、事後を事前に戻せ、これが将来あるべき姿だ、ただ、事後は確かに効果があるから、当面十七年改正のままでいいではないか、こういう報告をまとめていただいた。これは基本的には審判制度維持の議論なわけです。

 近藤委員の民主党さんは、これは廃止だと言っておられる。経済界その他も廃止だということもありますし、いや、事柄によって分けた方が合理的だと言う方もいらっしゃる。

 したがって、私が現状維持に固執しているかというと、そういう立場ではありません。ですから全面にわたって見直すということを申し上げているわけで、いずれかのタイミングで決断をしなければならないんだろうと。ただ、そのときには理念先行型はお許しをいただきたい。

 やはり、日本は日本の裁判制度があり、裁判官がいらっしゃり、行政事件についての扱いがあるわけであって、それはアメリカやヨーロッパと同じようにいっているわけではないわけなんで、公取の不服だけ何か欧米流にしちゃって、それを支えるシステムが日本の場合は同じでないにもかかわらず、木に竹を接ぐようなことをしてもうまくいかない。

 だから、要は、企業側の適正手続、要するに被審人側の防御権をきちっと保護するということを踏まえて、かつ合理的で動くシステムはどういうことなのかということが私は一番肝心なことであって、一人二役というのは、一人二役の結果変なことが起きていれば別でございますけれども、そうじゃないわけでございまして、今までの審判で黒を白と言ったようなことは一度もない。外国に比べると裁判所に行って負けた件数は、日本の公取はもう極めて成績がいいわけでございまして、そんな間違った判断を、審判制度ゆえに、一人二役だからといってしてきたことでもないわけでございます。

 そういうことも含めて、やはりぎりぎりのといいますか、真剣な協議をさらにさせていただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 私が指摘をしたいのは、今回、やはり公取はどんどん強くなってくるわけです、いろんな権限を持つわけです、それは信頼をしているからなんですね。ぜひ市場の番人として機能していただきたい。だけれども、そのことと、審判制度を職員が抱えて持つことが、何も同一のものではない。むしろ、やはり番人は番人として摘発をするということの方が、受け手の人たちも納得感を持っていただけるんじゃないか、こういうことだと思うんです。

 体制面について、私も何も、いや、現在の裁判所がすべてすばらしいと言うつもりはありません。ただ、それはそういうことで体制をつくればいいわけでしょうし、先ほど来議論になっているように、例えばカルテル、談合の事実認定で公取の審判部でなければどうしてもできないなどというのは、これは委員長、やはりちょっと言い過ぎではないかな、こう思うんですね。うなずいていらっしゃいますが、それは裁判所ができることなんです。談合、カルテルのこんなことはやっているわけですから、裁判所だって刑事でやっているわけです。公取でなければできないなんということはない。もっと言うと、その形になれば、公取の審判部の人たちを裁判所の方に移管すればいいだけの話です、変な話、組織だけの話です。

 ですから私は、信頼性のある、実効のあることをやればいいんだろう、こう思いますし、くどいようですけれども、委員長、審判制度を維持しなきゃいかぬというのは、これは対外的には組織防衛としか思われないと思うんですよ。今のしかないという答えを最初から言ってしまいますと。

 ですから、基本的には、例えばカルテル、談合だとか、そういった部分については少なくとも現時点では移管できる。全面的に移せるかどうか、合併云々については、それは企業の合併については、これは果たして裁判が正しいかどうかは、裁判所で判断するかどうかはわからぬけれども、少なくともカルテル、談合等については裁判所に移管できるんだ、こういう立ち位置で臨むべきだ、こう思うんです。

 重ねて、全面的に廃止するかどうかは別にしても、少なくとも、これまで議論を四年間、三年間重ねてこられたわけですし、こうやって法案を提出しているわけですから、そして、こういう国政の議席配分状況、衆参の状況も勘案してこの法案を出しているわけですから、どこの立ち位置に立つのかぐらいはある程度御答弁で明確にすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 正直なところ、立ち位置を明確にできないのが今の状況でございまして、したがって、しかるべきタイミングでは決断をしなきゃいけないだろうというふうに思っているわけでございます。

 私は、どれかの案に固執しているわけじゃないし、審判制度を残すのは、何も公正取引委員会の組織防衛なんということじゃなくて、その方が企業側にとっても便利なんじゃないでしょうか。何でもかんでも裁判所に行くのが、本当にその方が都合がよろしいんですか。そういうことも含めて、やはりもう一回考えていただきたい。

 ただ、制度は、基本的な制度でございますから、使い勝手がいいとかということだけではやはりだめで、きちっと筋の通ったものでなければいけません。近藤委員もおっしゃっていたように、きちっと問題点は全部クリアにして、裁判所に仮に持っていくにしても、それは専門部をつくるとか、こういうふうにすれば問題点はなくなるじゃないか、そういうことまで含めた詳細設計をしませんと、基本的な変更でございますから、うまくいかないと思います。

 いずれにしても、恐れ入りますが、審判制度の見直しについて、この案だというようなことで今立ち位置を、私はむしろ決めない方がいいんだろうと思っております。

近藤(洋)委員 だとすると、では、いいでしょう、審判についてはそういうことで、現在そうだ、それぞれの考え方があると。ただ、くどいようですけれども、全面見直しというのは、やはり見直すということなんだろう、一歩なんだろう、このように受けとめていきたいと思います。

 ただ、この資料の二枚目に、実際に審判さらには審査のありようについて、何も海外と同様にする必要はないし、何か変なものを導入するだけが能だとは私も思いませんが、このように、調書なり供述調書の写しだとか、弁護士の立ち会い権だとかさまざまな、秘匿特権だとか、供述記録の方法であるとか、こうやってイギリス、フランス、ドイツ、比べてみますと、日本は相当厳しい。弁護士立ち会い権が認められないのは、これは刑事等の関係でそうなのかもしれませんけれども、ほかのものについてもすべてだめだめだめと、著しく取り調べられる側の方が不利になっている、これも厳然たる事実なわけですね。

 ですから、委員長、そこまでおっしゃるなら、こういった部分について、法律事項にされないのなら運用で、公正取引委員会の規則である程度見直すことができるんだとするなら、私は、公正取引委員会の現場の方々は大変苦労されているとは思いますが、ただ、いろいろお声を聞きますと、警察や検察の捜査と比べても相当粗雑だという指摘もあるわけでありまして、大変粗い捜査なんじゃないかという指摘も受けているわけですね。

 私は、企業側が言っていることがすべて正しいとは思いませんけれども、大変あるわけであって、こういった部分について、調査をされる側の権利をある程度認めるという運用もあっていいのではないかと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 欧米で認められているわけでございまして、日本でもこういう権利が認められるというのは理想的ではあると思います。

 しかしながら、この問題は、まさにこういう日本の手続全般、私は横並びでぜひ御議論をいただきたい。そこで、こういう審判制度というのはほかにもたくさんあるわけでございます、それから刑事手続もあるわけでございます、国税当局の査察もあるわけでございます、そういう手続できちっと横並びがとれていれば、私は素直に、そういうふうに立ち会いを認めるとかコピーを渡すということについてはやらせていただきたいと思いますが、公正取引委員会だけがこういうことをやるということになりますと、これはやはり法の執行のいわば秩序に影響がある話でありまして、日本の場合は、私から言わせれば、残念ながらここまで弁護士が信用されていないということだろうと思うんですね。

 欧米において認められているというのは、ただ黙っていて降ってきたわけじゃなくて、それなりの努力の上に努力があって彼らがかち取ったものでもあるわけで、そういうものをただぽんと日本に持ってきて、そのとおりいくのかというようなことも含めて、要は横断的にやはり御議論をいただきたい。独禁法よりも、むしろ司法制度とか審判制度とかいう横断的なテーマの中で答えを出していただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 竹島委員長の言うところも理解しないわけではないんですが、ただ、独占禁止法というのは、それこそ今回の法改正にも書いてあるとおり、国際間の当局との連携ということで、私は、ほかの、もちろん刑事事件でも、国際間の犯罪というのはそれはありますよ。ただ、独禁法の世界ほど、それは、国際間の入りまじった、まさに国際企業が相手であって、独禁法が相手にするのは、もちろん国内の企業もあるけれども、国際間の事案もこれからどんどん扱うわけですよね。企業間というのはもう国境を越えて行われているわけでありまして、今並べられた中で最も国際的なハーモナイズが求められている分野なんだろう、こう思うんです。

 ですから、ほかの最もドメスティックな部分がこうならないから、こっちはできませんよというのは、これまた勇猛果敢にチャレンジングされる竹島委員長率いる公正取引委員会とはやや似つかわしくないなと思うんです。それは、問題意識としてわかりますよ。要するに、国際間のものを扱うのがまず第一点、公正取引、独禁法の世界なんだというのが第一点。ですから、そういう部分でマイナスが出てくるんじゃないか、こういうことですよ。これはいかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 公正取引委員会が扱っている案件は圧倒的にドメスティックでございまして、国際事件というのは時々ある程度でございます。

 したがって、制度としてこういうものをみんな認めろ、法律で認めろということになりますと、私はやはり、わかりましたと言うのは非常に難しい。ただ、しゃくし定規にやることではなくて、運用面で、相手の立場も考えて、こちらの真相解明にも特に悪影響がないということであれば、何も機械的にそれを拒否する必要はないわけでございまして、その辺のところが、今も気をつけていますが、これからも配慮していきたいと思いますけれども、制度論として認めるという場合には、やはり横断的に御議論をいただきたいというふうに思います。

近藤(洋)委員 委員長、ちょっとお伺いしたいんですけれども、これは事務方でも結構なんですけれども、公正取引委員会そのものが、さまざまな事案ごとに開催されるんでしょうけれども、この議事録というのは、たしか一切公開をされないはずであります。一切公開されない形をとっている、こういうふうに私は認識しておるんですが、要旨という形でも公開されていない、こういうふうに認識しておりますが、なぜこのように完全非公開という形をとられているのか、その理由についてもお答えいただけますか。

舟橋政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会の合議の議事録の非公開でございますけれども、これは、情報公開法第五条に不開示情報という規定がございまして、ここに、国の機関の内部における審議等に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるもの、そういうことが情報公開法の五条に規定がある、その適用を受けている、そういうことでございます。

近藤(洋)委員 局長、要するに、要旨という形でも公開されていないんですよね。ちょっとそれだけ確認させてください。

舟橋政府参考人 要旨という形でも公開はしておりません。

近藤(洋)委員 要するに、公正取引委員会というのは、ある意味では圧倒的な力を持つ委員会であるし、市場の番人であるし、かつ、だれもチェックできないわけですよね、その判断について。最高裁まで争えば、それは最終的に司法が判断するわけですけれども、その行動についてはチェックできないわけですよ。議事録も公開されないわけです。

 ですから、私は議事録をこの場で公開しろと言っているわけじゃないんです、公開しろなんということを言っているつもりはありません。ではなくて、要するにそういう形で運営されている組織体なわけですから、ここは、官房長官、先ほど委員長からも、こういった審査の調書の写しだとか、こういう取り調べについての透明性というか、被疑者というか取り調べられる側の権利の確保等についても、ぜひ見ていただきたいということを申し上げましたが、私は、こういった公正取引委員会、どんどんその権限が拡大するのは認めますけれども、やはりよりその公正性というものを担保する、法律改正事項に今回なかったとすれば、運用面においてこういった公正性というのを担保することがより必要だと強く思うわけでありますけれども、官房長官、いかがお考えでしょうか。

河村国務大臣 公正取引委員会の議事録は、さっき答弁がありましたように、情報公開法の第五条でこのような形になっておりまして、その一部を除き公開されない、こうなっております。

 審判手続そのものについては、これは審判官、審査官、被審人の三面構造できちっとした形で慎重な審理が行われて、審判官の独立性、中立性を確保する観点からも、事件審査に関与した審査官は審判官に指定することができない、このようなことになっておりますし、その審判において、先ほどありましたように、最終的には司法審査あるいは裁判所、そういうところできちっとされるわけであります。審判において事実は審判廷に提出された証拠によって認定するということがきちっとされておりますから、こういうことから考えて、公正取引委員会の判断の公正さは担保されている、このように考えておるところでございます。

 ただ、いずれにしても、独占禁止法の制度設計上の中で、この制度設計、運用においては、法執行と実効性担保、これがきちっと、実効性が確保されなきゃいかぬ、これは非常に重要な課題である、こういう認識は絶えず持っておるわけであります。

近藤(洋)委員 長官、もう釈迦に説法でありますし、御理解もされている長官であられますから、あえて言いませんが、ただ、もう一回、現在の審判制度に戻れば、人事交流もされているわけで、審査官だった方が審判官になって、部下が、後輩たちが調べたものを黒と言えるのかというのは、やはり組織的にあるわけです。もう随分それは運用でファイアウオールもされているかもしれませんが、この問題意識だけは強く持って今後もこの議論に当たっていただきたいなということだけ申し上げて、時間でございますので、官房長官、どうぞ御退席ください。ありがとうございました。

 残りの時間、委員長、この法案の改正には、先ほど、扱っている案件のほとんどはドメスティックだと、こういうことでありましたが、しっかり条文には、国際間の公取当局と協力しなきゃいかぬということは書いてあるわけですよね。委員長もかなりその分野には力を入れてこられたという話も聞いております。わざわざ法律にも書き込んでの今回の競争政策当局との連携でありますが、この具体的な内容、また具体的なそのスケジュール、どんなことをこれからやられようとするのか、もしあればお答えいただきたい、こう思うんですが、よろしいでしょうか。

竹島政府特別補佐人 海外とのおつき合いでございますが、一つは、アメリカ、カナダ、EUとは、独占禁止協力協定を結んでおりまして、これは制度改正があればそれを説明するとか、重要な取扱事件があればこういうことをやっているとかいうようなことを紹介するとかという、意見交換はやっています。

 国際的な組織もございまして、ICNというのはその最たるもの、OECDの競争委員会というものもございまして、そういうところで、望ましい、推奨されるべき行動とかいうようなことをみんな議論しているわけですが、実務的には、アメリカ、EU、韓国等との間で、特にアメリカ、EUとの間で、具体的な事件について相談をするということがございます。

 ただし、秘密情報はお互いに交換はできません。企業にかかわる、自分はこういう証言をとっているとか、こういう証拠を押さえている、ほかの国に見せるというわけにはお互いいきません。いきませんけれども、国際カルテル事件のような場合に立ち入りをします。そういうときにはやはり日程調整をするとか、それから、合併のような場合には、やはりお互いの秘密に属さない範囲で、いや、これは市場の確定はどういうふうに考えるべきだ、自分のところはこう考える、あなたのところはどうだというようなことについてのいわばディスカッションというのは非常に重要なわけで、問題がある場合に、では、どういう問題解消措置があり得るかというようなことをオプションを示し合うということがあり得るわけで、そういったことはもう既に一部やっています。相手次第でございますが、やっております。

 今回は、それを事実上やるというのでも構わないのかもしれませんが、きちんと法律に根拠を持って、相互主義とか、いろいろ、目的外使用は禁ずるとか、そういう条件が整ったときにやりますということで、事実上、やるということのきちっとしたお墨つきを法律上いただきたい、こういう趣旨でございますので、これに基づいて、これからも引き続き、国際カルテルとか国際的な企業結合についての関係国との協議ということについては積極的にやっていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ積極的に進めていただきたい、このように思うわけであります。

 国際的な企業のカルテル、事業規模が広がればそういった独禁法上の問題も出てくるわけでしょうし、また、日本企業が実際にEUで摘発を受けるということも、海外では受けている、こういうこともあるわけであります。一方で、ある意味では、当局間で情報を交換して、こういう状況になればやはり摘発をされてしまうんだということを日本の企業側にもきちんと指導するというか、要するにちゃんと知らしめるというんでしょうか、こういうことが違反行為だということを知らしめるということも重要でありましょうし、脱法行為を摘発するという観点からも重要でありましょうし、法律で明確に位置づけをなされたということでありましょうから、今後も進めていただきたい、このように思うわけであります。

 独禁法については、民主党の独禁法・競争政策プロジェクトチームというものがございまして、自民党の独禁調ほど格式の高いものではありませんが、私もそこの座長を務めさせていただいております。経済憲法という意味で、やはりこの法律、非常に大事な法律だと思っております。

 今回の改正については、一番大事な審判制度というのが抜けたというのは、やはり二期連続で宿題をしなかったというのはこれは非常に残念でありますが、課徴金を不公正な取引について入れたという、大変大きな一歩を踏み出された、その点については大変高く評価をし、かつ、問題は、先ほど来与党の議員の先生も同様の趣旨の話をされておりましたけれども、実際にどのように運用されるのかということが極めて大事だと。

 時間が参ったので質問はもう終えますけれども、中小企業の方々の声をきちんと酌み取るような体制整備、ぜひ、中小企業庁とも連携をされてその体制を整えていただきたいということを強く申し上げ、時間ですので質問を終わります。

 ありがとうございました。

東委員長 これにて近藤洋介君の質疑は終了いたしました。

 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 独占禁止法について何点か質問をさせてください。なかなか難しい法律で、自分もなじみがないものですから。

 先ほど竹島委員長が、公正取引委員会について、いろいろな諸外国の仕組みがあって、日本にそのまま移植はできないというお話をされていたかと思うんですけれども、戦後、占領政策の中でつくられた委員会、例えば、国家公安委員会とか、人事院は昔は人事委員会、そして公正取引委員会とあって、多分一番機能しているのが竹島委員長の公正取引委員会だと思っておりまして、ほかの委員会、例えば人事院については、国家公務員法ですか、一番最初の国家公務員法のままでしっかりと行政が行われていれば、僕は公務員制度改革は多分必要なかったと思っているんです。その中には、しっかりと、ポストがあいたら公募しろということが規定されていたりして。

 そうしますと、竹島委員長の公正取引委員会が、戦後の仕組みの中で一番成功した委員会だと思っているものですから、その点につきまして、日本的なところというのがもしもあるとすれば教えていただければありがたいなと思うんです。

竹島政府特別補佐人 先ほど私が木に竹を接ぐのはと申し上げたのは、弁護士秘匿特権とか、それから供述のときの弁護士立ち会いとかその供述調書の写しを渡す、それについて申し上げたわけでございまして、それ以外のことを一般論として申し上げたつもりはございません。

 今の御質問は、まさに公正取引委員会というのは、そういう意味では、日本には極めて異質なものを戦後GHQによってつくらされたというものでございまして、そのときはまさに全く異質のものが日本の経済社会というかに持ってこられた、こういうものでございます。

 六十年以上の歴史が、できたのは昭和二十二年でございますから、もう六十二年たっているわけでございますけれども、いろいろ変遷がありましたけれども、おかげさまで何とか、お褒めにあずかって恐縮でございますけれども、頑張らせていただいているということでございます。

    〔委員長退席、梶山委員長代理着席〕

大島(敦)委員 繰り返しになるんですけれども、例えば、昔の、人事院のその前の形の人事委員会あるいは国家公務員法については大分骨抜きになってしまって今の姿があって、官僚機構に大分取り込まれてしまったかなと思っております。国家公安委員会も警察庁の一番最上階にある委員会でして、周りが皆さん囲まれておりますから、なかなか独立性の発揮というのが難しいところもあるのかなと思うんですよ。

 そういうところというのは、役所の皆さんは非常に仕事をするのがお上手ですから、委員会の皆さんに仕事をさせた気にするのが非常にうまいものですから、何となく仕事をしている気になって取り込まれてしまうということかなとは思うんですけれども、公正取引委員会は独立した機関としてしっかりと機能されて、委員長おっしゃるとおり、今を迎えているのかなと思っております。

 その中で、例えばカルテルとか談合というのはなかなか減らないかなとは思うんです。

 まず、どうしてカルテルとか談合が起きるのかなと自分も考えてみますと、人間的な信頼関係がないとカルテルとか談合というのは難しいと思うんですよ。もう一つは、業界秩序をつかさどるオーナー、一番の会社がいないとなかなか難しいのかなと思っているんです。

 ですから、戦後の日本の経済秩序の中で、まずは終身雇用制というのがあって、会社に対するロイヤリティーが極めて高くて、会社も何か不始末があったとしてもしっかり救ってくれるというところがあったものですから、カルテルとか談合を生みやすい土壌があったのかなと自分は考えているんです。

 その点につきまして、質問通告はしていないんですけれども、多分委員長も同じお考えだと思いますので、まずは、どうしてカルテルとか談合が減らなかったのか、あるいはそういう風土があったからこれまでなかなか減らなかったのかについての御所見を伺えれば幸いです。

竹島政府特別補佐人 独禁法がなかなか定着しなかったと言われている大きな理由は、事業を営む方々が独禁法違反について罪悪感が薄かったということだと思います。

 それで、どうして罪悪感が薄かったかというと、乏しきを憂えず等しからざるを憂うという精神で、お互い助け合いだ、きょうだけのつき合いじゃないじゃないかということで、どこかの企業が競争に負けてつぶれるんだったらかわいそうだから談合をやって仕事を与えよう、次はではあなただ、こういうことで、みんなに仕事を与えるということはいいことである、そういう考え方があったと思います。

 そういうものに対して、独禁法の考え方というのは全く衝突する考え方でございます。

 昭和の時代には産業界にもカルテル必要悪説というのがございまして、困ったときにはカルテルということでやってきたわけでございまして、そこに役所までかんでやってきたというのが日本の歴史でございますけれども、やはりそういうモデルはもう時代おくれであるということにようやくなってきたのかなと。それでもなかなかそのDNAは一世代ぐらいでは変わらないのかなという気もいたしていますので、日本の場合になかなか定着しなかったのはそういうことだと思います。

大島(敦)委員 今、役所も絡んでという話がございまして、確かにそういうこともあったのかなとは思うんですけれども、世代が一世代変わると大分変わってくると思うんですね。

 前の改正のときに、リーニエンシーというんですか、最初に悪いことをしているよと届ければおとがめの方は大分軽くなるという制度を導入したときには、恐らくこんなにたくさん出てくるとは想定していなかったのかなと思うんです。それだけ世代が変わって、会社に対する距離感というのが遠くなってきているのかなとも思うんですよ。

 ですから、今後カルテルとかあるいは談合というのも、今までとは違った形で、徐々には少なくなってくるという希望的観測も持っていたりもするんですけれども、その点について、今回、難しい言葉で言うリーニエンシーですか、うまく機能したことについての委員長の御所見について伺わせてください。

竹島政府特別補佐人 お話のとおり、予想以上の申請が出てまいりまして、もう施行して三年以上たつわけですけれども、二百数十件にもなっていると思います。それはもう大変な数でございまして、うれしい誤算でございました。

 どうしてそうなったかということは、これは私の推測でございますが、一つは、独禁法が強化改正されて、課徴金というものが上げられて、これはちょっとばかにならぬことになりかねないということで、捕まれば捕まったときの話さというわけにはいかなくなってきたなと。

 それからもう一つは、会社法なり何やいろいろなものが改正されて、いわゆるコンプライアンス、企業のコンプライアンスをめぐる法制なり、それに関する世間の目が厳しくなってきている。株主総会における株主の主張というものも厳しくなってきている。

 無作為で言うと、リーニエンシー申請すれば課徴金を減免してもらえたのに、しなかったことによって余計な課徴金を払ったということについて株主代表訴訟にでも遭うという可能性は出てきている。

 そういったことが全部作用しまして、やはり社内で見つかった場合には、これは社長の判断で出した方がいい、そういうところが出てきた、こういうことだと思っておりまして、私は大変結構なことだというふうに思っております。

大島(敦)委員 カルテルあるいは談合があって、これはリーニエンシーということが機能して、多くのこういう案件、事件が表に出て、大分少なくなってきているとは思うんです。

 課徴金は行政処分ですから、課徴金は刑罰とは違いますから、刑事罰ではなくて、今回の不公正な取引については課徴金という形なんですけれども、組織人として考えると、課徴金は会社がお金を払ってくれるものですから、ありがたいといえばありがたいわけです。

 例えば、よく言われているような優越的地位の濫用ですか、優越的地位の濫用も、会社側が、購入担当、購買の担当とかあるいは店舗の店長に対して、業績を上げろという圧力をずっとかけ続けるわけですよ。そうすると、サラリーマンとしてその課長なり部長なりは、追い詰められた結果、取引先の業者さんに対して優越的な地位の濫用をしていろいろなことを要求するということだと思うんです。

 それがわかったときに、課徴金ということで多くの金額が、先ほど委員長は、売上規模としては一千億円の会社もありますから、一%だとしても十億円というお話をされていました。それもあるかもしれないんですけれども、だんだんこの辺は、自分が考えるには、サラリーマン個人に着目した方が、例えば、この優越的地位の濫用については大分おさまってくるかなという仕組みが考えられないかな、今後の話なんですけれども。

 要は、一番サラリーマンにとって嫌なのは、しょっぴかれてしまうことなんですよ。取り調べに遭って一週間、二週間、三週間、家に帰れない状態、こういう状態を絶対避けたいと思うんです。今のその課徴金だと、会社が払ってくれて、会社側から見ればおまえはよくやったと、その身分を保障してあげたりもすると、助長されてしまうわけですよ。

 だから、二つ。一つには、会社の中での、委員長がおっしゃっていた、コンプライアンスというんですか法律を守る、こういうことをした人は会社では雇えないという姿勢が一つ。もう一つは、刑事罰が難しければ名前を公開するとか、一定のその人個人に着目する抑止の仕方も考えられないのかなとは思うんですけれども、その点について、お考えがあれば伺わせてください。

竹島政府特別補佐人 先生の発想は、我々も、カルテル、談合についてはそうあるべきだと。会社だけ罰していてもだめで、よって、先ほど出ていました懲役刑の上限三年を五年に上げるというのは、まさに、それが一番きくと思っているからそうしているわけです。

 しかし、その対象は当然違法と言われるカルテル、談合であって、不公正な取引方法にそういう厳しい制裁手段を導入するというのは、やはりちょっとバランスがよくないんではないでしょうか。その社員よりも、やはりそれを命じている、協賛金を取ってこいとか、特売日には半値で納めさせろとかいうことを命令している者こそ罰せられるべきであって、それに従っている社員をまず罰するというのは、私はちょっと厳し過ぎると思いますので、やはりカルテル、談合がまず核だということでやらせていただいているわけでございます。

大島(敦)委員 委員長の立場も私もよくわかるんです。ただ、優越的地位の濫用というのが、その要件として決めるのが難しいと思う。ですから、これから、こういう場合には優越的地位の濫用だということを明らかにして、細かく規定していただくというのが一つだと思うんです。

 もう一つは、とはいっても、なかなか減らないケースが非常に多いのかなということも想定されていまして、特に、優越的地位の濫用でも、大きな会社同士もあると思うし、大きな量販店と本当に小さな会社もあるわけです。例えばホームセンターで、農家の方が、ちょうどこれからはガーデニングの季節ですから、花の苗とかあるいはナスとかそういう野菜の苗を出したときに、口頭の約束だけで、ある日突然、売れないから価格が下げられてしまうというケースもありますから、ちゃんとした大きな組織と組織の関係と、大きな組織と本当に個人との関係というのがありますから、その点についても、今後、そのことを加味しながら優越的地位の濫用の定義づけをしていただければなと思いますので、その点についてお願いをいたします。

竹島政府特別補佐人 そういう御指摘の点も踏まえて検討させていただきます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 先ほどの、個人に着目したというのは、自分がこれまでほかの委員会で、たまたま役所の方が地方支分部局でほかの目的で使われて、それを共同でお返しするという事案が時々あるわけなんですよ。課長は幾ら、係長は幾ら、連帯責任として、例えば三千万とか五千万とか一億の金額を返す。でも、私は、それは今の時代には合わないなと思っているんです。共同で返すということは、だれも責任をとらないということですから。わかっている飲食の部分があったら、そのわかっている部分だけでも上限をつけるべきじゃないのかな、ある程度個人に責任を負わせるというのが必要かなと思っている。

 ただ、その点については、カルテルとか談合と違って、まだまだ、ようやく課徴金制度が始まって、これから制度として成熟していくという過程になれば、そこまで求めるのは委員長のおっしゃるとおりだと思うので、ただ、そういうような考え方もあるということを御理解していただければなと、一つには思います。

 もう一つ、たびたび議論が出ている審判制度、裁判所にするというお話があるんですけれども、経済団体は裁判所にしなくちゃいけないという話をしているんですけれども、この点についても、多分今までの審判の速度があると思うんです。私も、今から二十数年前、海外駐在したときに、当時のドイツ人の顧問弁護士と話していたときに、いや、日本だと裁判は長い、経済的なこういう裁判については、多少間違っていても早い方がいいんだ、次の手が打てるからということをおっしゃっていたのを今でも覚えています。そうすると、経済的な審判というのはできるだけ早いというのも必要なのかな。ですから、裁判にこれから移って、その裁判が長くかかったりすると、これは本当に姿としては正しいかどうかというのがあると思うんです。

 ですから、今の審判についてもできるだけ早く結論を出すということで御尽力されておると思うんですけれども、その点について、委員長のお考えを聞かせていただければありがたいんですけれども。

竹島政府特別補佐人 審判にどのぐらい時間がかかるかでございますけれども、これは事件によって、複雑な事件であればもう数年かかっているものもありますが、基本的には二年以内で結論を出す、なるべく早く出すということでやっているわけでございます。

 裁判がどのぐらいかかるか。裁判の方も、昔は長かったんですが、最近は二年を目途にやるというのが、たしか裁判迅速化法みたいな法律がもう成立していると思いますけれども、あちらもスピーディーにやるということに努力しておられるということでございますので、そういう意味で、どちらが早いかはよくわかりません。よくわかりませんが、少なくとも、公取に審判手続に来て、やはり何か無駄な時間を過ごしたとか損したということなのかな、そうじゃないんじゃないかなと思って、そうだという人もいらっしゃるのかもしれませんが、それだったらずっと最後まで行くはずですね、高裁、最高裁と。そうじゃなくて、やはり途中でやめちゃうという方も大勢いらっしゃるわけでございます。

 そういう意味では、審判手続を経るという今の制度が企業側に本当に損害を与えているのかということになると、議論があるのではないかというふうにも思っております。

大島(敦)委員 審判制度の場合なんですけれども、会社の経営者としては、自分の任期中に結論が出てほしくないというところも多分あると思うんです。

 会社の経営者にとって一番嫌な日というのは株主総会の日で、私も株主総会の想定問答集をつくったことがあるんですけれども、その日だけが一番嫌なんです。その日だけが面と向かって嫌なことを言われて、ほかはずっと、皆さん、ごまをすってくれるものですから、非常に安定した生活なわけなんですよ。

 会社の経営者としては、株主総会で追及を受けて、この間カルテルで捕まったんじゃないか、談合で捕まったんじゃないかといったときに、経営者の答弁としては、いや、株主さん、そんなことはないんですよ、見解の違いなので今争っているんですよと言った方がうまくそれは切り抜けられる。

 審判制度の場合だと、長くなるおそれがあるわけですよね。裁判の場合ですと、裁判所ですから、今委員長が言った二年以内にやる。裁判官がいついつやるということになってきます。そうすると、審判官の方と弁護士の力関係と、裁判官と弁護士の力関係があって、ひょっとしたら、裁判官の方が強いとすれば適時に終わっていくから、意外と早いケースもあるのかなというのが一つ。

 もう一つは、今後もしも審判ではなくて裁判にした場合には、これは専門家の方が必要だと思うんですよ。こういう独占禁止法についてよくわからない、あるいは経験のない裁判官の方が一から勉強されるよりも、決まったところの法廷で、しっかりとわかっていらっしゃる、経験を積まれた方がスピーディーに事案を処理していく方がいいかなと思います。

 その点について、今後、委員長としてはフリーハンドで、政治が決めていただければいいという立場だとは思うんですけれども、裁判にした場合の仕組みについても多分一工夫必要かなと自分は思うんですけれども、その点について、委員長の御所見があれば、伺わせてください。

竹島政府特別補佐人 私の意見というよりも、裁判所ルートを開いた場合には、もちろん、どこか、具体的には東京地裁に独禁法の専門部を設けるというようなことが必要だという御意見は、複数の方からも出ております。

 それから、その場合には、公正取引委員会における手続、今も命令を下す場合には事前手続で説明をしておりますが、それを少し手厚くして、何か誤解とか若干の修正でもって済むような話であれば、まずは裁判所に行くことがないようにしなさいとか、そういう話も出ております。

 これらは、基本的な見直しの方向を決めた上で、ではA案ならどうなんだ、B案ならどうなんだで、そのときの詳細設計にかかわってくる話だと思っております。

大島(敦)委員 もう一つは、今回の改正は、先ほど近藤委員からも質問があったんですけれども、国際的な事案についても取り組んでいかれるということだと思うんです。その前の北神委員からも鉄鋼業の再編の話とかがあったかと思うんですけれども、やはり今後は国際的な事案について取り組んでいくのも一つかな。

 今は、去年とは違って金融が大分混乱をしているものですから、大きな資源を扱っている会社ごと、特定の資源で寡占的な市場が形成されるような合併の事案というのはなかなか出てこなくはなっているんですけれども、今後、場合によっては出てくることもあるのかな。

 ですから、こういう点についても、我が国としては、資源を確保する立場から国際的な協調をもって当たるということが必要かなと思うんですけれども、その点についての御所見を伺わせてください。

竹島政府特別補佐人 具体的には、昨年、BHPビリトンがリオ・ティントを買収するという話がございまして、これが実は日本に事前届け出がなされませんでした。

 なされないのは、株式取得の場合は事後報告でいい、しかも、その事後報告の対象にもなっていないというのがあちら側の見解でございまして、したがって、日本にはタイミング的にもう、事後であっても報告する必要があるかどうか、その必要はないのではないかという考え方を向こうがとりまして、ほかの国には事前届け出をしたわけですが、日本には持ってきませんでした。

 それではいかぬということで、いきなり独禁法を適用するということで、正式審査扱いをいたしましていろいろな全く新しいことをやったわけですが、十一月だったと思いますけれども、経済情勢の急変からそれを取りやめるということで、道半ばでこの話は終わってしまいました。

 これからも、国際的な企業結合の国際カルテルもあると思います。したがって、企業結合については、今回の届け出基準が、株式についても事後報告から事前届け出に変えましたし、届け出の基準につきましても大体国際的な整合性をとったつもりでございますので、そういったことについては、外国企業も日本の公正取引委員会に企業結合の申請はしやすくなった、また、ちゃんとしてくるだろう、こういうことになりました。

 企業結合もそういうことでございますし、カルテル事件については、当然、リーニエンシーに基づいてもう既に国際カルテル事件の申請もありますから、これからもそれはきちんとやっていきたいと思っております。

大島(敦)委員 今度は非常に狭いテーマなんですけれども、リーニエンシー、課徴金の減免申請の対象事業者数を三社から五社に今回拡大されているので、その点、どうして三から五に拡大したのかについて教えていただければ幸いでございます。

竹島政府特別補佐人 今は先着三名ということでございますが、五名にふやしました。これは、やはりリーニエンシー申請をすることによって、公正取引委員会にもっと有効な、優良な情報をいただきたい、こういう趣旨であります。

 ただ、五名といっても、我々が立入検査した後は三名に限る、こういうことでありまして、我々にとって価値のある情報をもう少しいただいてもいいだろう、それでリーニエンシー、課徴金減免制度を利用する意欲がもっとふえるだろう、こういうことで、三を五にふやさせていただきました。

大島(敦)委員 終わります。ありがとうございました。

梶山委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 定足数は足りていますか。足りてへんかったら、僕は質問すると国会法違反になってしまうから、ちょっと見てください。

梶山委員長代理 今、確認をしています。

    〔梶山委員長代理退席、委員長着席〕

東委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

東委員長 速記を起こしてください。

 それでは、質疑を続行いたします。吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、家電量販店によるメーカーとの不公正取引の問題が、地域で電気製品の小売を行いながら、製品安全の確保とかメンテナンスとか、随分役割を果たしてきた中小企業の皆さんを圧迫してきたという問題、これまでから取り上げてまいりましたけれども、その問題はまた別な機会に考えておりますので、きょうは、ガラス製品分野について伺いたいと思います。

 公取の方に最初に伺います。

 日本のガラス業界というのは、シェアで見ますと、旭硝子が大体四一%、日本板硝子が三一%、セントラル硝子が一八%で、板ガラス業界というのは、事実上独占状態にあるのが現実ではないかと思うんですが、その状況について最初に伺います。

舟橋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、集中度を見ますと、三社で一〇〇%ということでございますので、高度な寡占業種という認識でございます。

吉井委員 この三社が一斉に卸売価格を引き上げると、ガラスの値段がどんと高騰するんですね。

 セントラル硝子が中小企業者に卸売価格を示した文書というのを私は手に入れて見ましたけれども、二〇〇四年に一〇%アップ、二〇〇五年に八%アップ、二〇〇六年に一五%アップ、二〇〇八年は一月に、一五%から二〇%アップの文書を渡して、改めて昨年九月、再度一五%アップの値上げを文書では通知したんですが、実は口頭では、六割から八割の値上げを通告してきたという問題がありました。

 このやり方には二つの問題があるんですね。一つは、従来、自営業でやっているガラス製品を取り扱っている会社に本社から販売していたものを、本社が系列の販売子会社をつくって、そこへは、中小企業に回す場合、直販の場合と同じ価格で卸して、その販売子会社を通じていないと従来の中小企業へは回ってこない。だから、その分、つまりマージンをかけた高いものを売りつけられる。こういう形がとられている。これは全国を見ても、どの地域も全部一律ということではないにしても、あるわけです。

 これは、正常な、公正な取引とは言えないんじゃないか、優越的、独占的地位を背景にした一方的値上げの押しつけというのはやはり問題があるんじゃないかと思うんですが、これについての考えを伺っておきます。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げさせていただければと思いますけれども、一般論として申し上げれば、今御指摘のように、事業者が、幾つかの地域なり特定の地域において、従来の組織形態なり販売形態を見直して販売子会社をつくる、そして、従来はその会社が直接需要者と取引していたという販売形態を改めまして、子会社を通じて販売するという取引形態を採用することとしたとしても、基本的には、そのこと自体で独占禁止法上問題となるものではございません。

 ただ、もう一つの点として、先生がおっしゃっていた価格を引き上げているという点でございますけれども、これは、需給なり、その価格の引き上げの背景に、今先生がおっしゃったような非常に高度寡占であるとかそういったことで、例えば価格カルテルが行われているとかそういう話であれば別でございますけれども、そういった価格の交渉自体がまた、それ自体で優越的地位の濫用とかいうことに直ちになるものではございません。

吉井委員 実際には、例えばセントラル硝子の北海道株式会社から北海道地域の方たちは買わざるを得ないわけですね。大阪や九州のセントラルの支社の方から直営で買うという場合とは違って、輸送費その他かかるから高くなるわけです。しかし、そこからしか買いようがないわけですね。

 さっきもおっしゃったように、ガラス業界が寡占状態なんです。そういう中でこれがやられてくると、これは地域的支配力も強く、そして寡占という状態の中では、優越的で独占的、そういう立場にある者が、自分の販売子会社をつくって、別会社をつくって、そこを経由しないと事実上手に入らない仕組みをつくってしまうと、かつて直接買ったよりも高くなるわけですね。それはやはり不公正なやり方ではないかということをきちんと見なきゃいけないと思うんです。もう一度お答えください。

山本政府参考人 ただいまの繰り返しになって恐縮でございますけれども、今先生おっしゃったように、従来の販売形態を見直して販売子会社経由で販売するということ自体、そういった取引をメーカーなり供給業者が採用するということ自体が直ちに独占禁止法で問題となることはないと思います。

吉井委員 どうも理解が、不十分にしかしておられないようだけれども、販売子会社経由で買う場合と本社から直接買う場合で価格に差ができるんです。それは問題ではないかということを言っていますので、これは、どうも十分理解できないようであれば、後ほどきちんと調べてもらいたいと思います。

 もう一つが、大手ユーザーである大和ハウス、積水ハウスなどハウスメーカー、あるいは竹中とか大林とか鹿島とかゼネコン系には超安値で、中小企業の業者の皆さんが仕入れをするときの価格の大体六割から七割の値引き販売が行われている、大手の方が安く買えるというふうに業界では言われております。

 そういうふうになってくると、中小企業の場合は、大手企業に対する競争力、同じように競争しようといったって、そもそも最初のところで差別対価があるわけですから、公正取引にはならないという事態に追い込まれるわけですね。やはりこういうやり方というのは差別対価で不公正な取引に当たるのではないかと思うんですが、どうですか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として考え方を申し上げさせていただきますが、例えば、市場におきまして有力なメーカーが、特定の商品の価格について合理的な理由なく差別的な取り扱いをして、差別を受ける相手方の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすということによって公正な競争秩序に悪影響を与えるといった場合には、独占禁止法上問題となるものでございます。

 ただ、取引数量の多寡ですとか配送条件の相違、そういったものを反映して取引価格に差異があるということは日常の取引で通常見られることでございまして、取引価格や取引条件に差異が設けられているとしても、それが取引数量の相違なり正当なコスト差等に基づくものである場合には、独占禁止法上問題となるものではございません。

吉井委員 現実に、そういう形で差別対価というのが生まれて、中小のところは経営が苦しい状況に追い込まれているというのが実態なんです。

 さらに見ていくと、中小企業は高い値段を押しつけられて、製品に仕上げてそれをさらに販売するというときに、伊藤忠など大手商社の子会社の方が大量に安く買って下請に安くつくらせることによってやってくると、結局、大手商社系の子会社に仕事をとられてしまって倒産に追い込まれるとか、そういう形が現にできているわけなんです。

 だから、さっきから言っておられるお話を聞いていますと、やはり実際に現実をきちんと調査してきちんと対応するということをやらなかったら、公取自身が信頼を失うことになるから、私は、この点ではきちんと調査して対応されるかどうかをこの機会に伺っておきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 独禁法に違反するかどうかということは、国会審議では一般論でしかお答えできないので、歯がゆく思っておられると思うんですが、我々も、具体的なケースでなければ、こういう話がありましたよぐらいの話では、これはちょっと調査に入るわけにはいかないわけなんです。

 そこで、もしも関係の方々でそういう、これはおかしいぞということを思っておられるのなら、公正取引委員会に申告という制度がありますので、そういう制度を使いなさいといういわばアドバイスを吉井先生の方からしていただければと思います。

 我々も、不公正な取引方法で、優越的地位の濫用だとかそれから差別対価とかということについては目を光らせております。だけれども、それはすべて、今までよりも割が悪くなった人を保護するためにやっているわけじゃないわけで、能率競争に負けた人を救うために公取がやっているわけじゃないわけなんです。要するに、そこに不当性があるかとか、正常な取引に比べて何か異常なものがあるかとかいうことでございまして、流通形態を変えたとか物流のシステムを変えたとかいうことがいわば効率性に基づくものであれば、それは当然いいことでありまして、それに対して独禁法をもって介入するということはすべきじゃないわけであります。

 ですから、我々は、そこは具体的に見てみませんと、先ほどのお話も、直接買った方が販売子会社よりも安いというのは、これは普通はない話。よほどの大手の買い手でなければ、直接買った方が安いなんということはないわけで、場所が仮に北海道だとすれば、北海道の販売子会社を通して買うのが直接買うよりも非常に高いというようになったら、その買い手は大変なお客さんで、本社から直接売ってあげる。では、どうして今まで直接できたのかというのがあれなんですが、それは、条件が変わったら、そこはちゃんと交渉なさればいいと思うんですね、どうして子会社に切りかわったら高くなるんだ、量は同じじゃないかと。そういう交渉をやはりしていただかなければ困るので、それでも不当に理不尽なことの場合にはぜひ言ってきていただきたい、そういうスタンスでございます。

吉井委員 そんな話、わかった上で言っているんですよね。

 それで、問題は、公取の姿勢が問われてくるんです。そのことをやはりきちんとやらないと、私が例示した話というのは、具体的な話になりますとまたちゃんと個別にやりますけれども、そこをきちんと姿勢を正さないと不信を食らうということを言っているんです。

 次に、日本共産党は、コンビニフランチャイズ問題について十年前からずっと国会で取り上げてきました。二〇〇七年六月には、コンビニオーナーが売れ残り弁当の値引き販売をして廃棄しなくても済むよう努力すると、本部の方から、廃棄処分にしろ、ロスチャージを払え、言うことを聞かないと契約解除だ、違約金をもらうぞとおどされている実態を紹介して、調査、改善を求めました。

 公取が最近、セブンイレブン本部に調査に入ったということが明らかになっておりますが、食品の無駄な廃棄で本部の利益を引き上げるというこの商法は、エコ時代の社会のあり方としても、倫理の問題としても重大な問題だというふうに考えているものです。

 きょう伺っておきたいのは、セブンイレブンの本部がオーナー経営のコンビニ店を倒産に追い込んだ例を見ておきたいと思うんです。

 二〇〇一年二月に脱サラしてオープンされた、上野駅から百メートル近くのところにあった、もともと店のオーナーの被害例なんですけれども、この人は、二〇〇六年に入って、ちょうど上野駅前の知り合いの方から、駅前ビルがあいたよ、そちらへ移ってはどうかと紹介されて、早速本部に相談したんですよ。本部に相談したら、本部は、同じ系列コンビニを百メートル以内に設置するのはだめだと、出店を認められなかった。

 ところが、本部の方は、この条件のいいビルにきっちり目をつけて、ほかの人を入れてコンビニを出店させた。しかも、本部は、ドミナントについては本部の権利だと言い放って、近くに系列コンビニがあると相乗効果が出てくるんだなどとうそぶいているという状態で、この結果、既存のコンビニは売り上げが三分の二に落ち込んで倒産しました。それも、本部に、もう店をやっていけへんから閉めたいと言ったら、十五年間の契約期間中なので、中途解約なら違約金を出せとハゲタカのような要求を突きつけられるということで、そのために、七カ月間損失を負担し続けて、直営店が引き継いでくれるまで負担を払い続けた。

 今、この本部のやり方というのは多くのコンビニ経営者の間に知れ渡って、多くのオーナーの皆さんが、いつ自分がやられるかということで大変不安に駆られております。それは何もセブンイレブンだけじゃなくて、ローソンでもファミリーマートでも皆同じように不安を訴えられております。

 アメリカのアイオワ州では、こういうドミナント問題についてはちゃんと規制の法的仕掛けをつくったりしておりますが、やはりそういうことをやって、そして、コンビニオーナーの皆さんなどの経営が、本部との関係で、圧倒的に優越的な地位にある本部とそしてオーナーという関係にありますから、きちんとこういう問題については正していくという立場でいかなきゃいけないと思うんですが、とりあえず、まず、優越的地位の濫用というものには当たりますね、これは。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会は、委員御案内のとおり、フランチャイズチェーン本部と加盟者の取引におきまして、どのような行為が独占禁止法上問題となるかにつきまして具体的に明らかにすることにより、本部によります独占禁止法違反行為の未然防止を図る観点から、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」、いわゆるフランチャイズガイドラインを策定しているところでございます。

 個別の事案についてお答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げれば、今委員御指摘のとおり、本部が既存の店舗の周辺に新たに出店を行うというような場合には、既存店の売り上げに影響が生ずることは考え得るところでございます。

 この点につきまして、今申し上げましたフランチャイズガイドラインにおきましては、加盟する際に、あるいは加盟募集の際に、本部から加盟希望者に対し、このような出店計画がある等の開示があるかどうか、あるいは、ガイドラインの文章をちょっと引用させていただきますと、加盟募集に当たり、「加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無」についても開示しなければいけないということが書かれています。

 これにつきまして、開示していない場合には、不当に顧客を誘引するということでございまして、独占禁止法で禁止されている欺瞞的顧客誘引に該当する可能性があるとガイドラインでは明らかであります。

 一方で、先生御指摘のとおり、今本部がこのような加盟店の、自分で出すということそれ自体が優越的地位の濫用の行為に当たるとは直ちに考えることはできないと考えております。

 以上でございます。

吉井委員 あなたのところの出していらっしゃるガイドラインで、ちゃんとこれは優越的地位の濫用の中に入っております。

 それで、コンビニ本部は、百メートル以内には出店を認めないとドミナント制を言いながら、自分は、競争する他のコンビニを打ち負かすためには、一定地域への集中出店というのをやっております。同じ自分の店でもアルバイトの時給を八百二十円から一割アップの九百円にしてみたり、従業員の引き抜きとか、かなりすさまじいことをやって地域シェア一位をとるというのがコンビニ本部の経営戦略でもあるとして、そういうことでオーナーの方たちを長時間家族労働に追い込んでいったりしているものですから、実際には、コンビニオーナーのところでは、健康破壊とか家庭崩壊とか、それから夫婦離別や自殺、心中に追い込まれる現実などが今出ております。実際、そういうことをきちんと実態把握しているのかというのを一つ伺っておきたい。

 それから、時間が近づいていますが、日本共産党は二〇〇〇年十一月に、「コンビニ・フランチャイズ業界の健全な発展のために、加盟店の地位・権利の確立を」とする提案を行っておりますが、この提案とコンビニ経営者の皆さんの運動でガイドラインが改定されるなど一定の前進はありました。中小小売商業振興法では、一応、本部に対してオーナーに書面交付と説明を定めるなど、二十七年前の取りまとめ以降若干の前進はありますが、結局は、フランチャイズ取引適正化法のような法律で法的根拠を持ってきちんと指導する、そういうことが一方では必要なのではないか。

 こういうことをきちんと調査することについては公取、そして、そういう法的根拠を持って新しく体制を整備して臨むということについては経産省の考え方というものを伺っておきます。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、実態把握の重要性については、公正取引委員会としても認識しているところであります。

 直近では、御案内のとおり、経産省におきまして、昨年、フランチャイズチェーンにおける本部と加盟店との取引に係る調査を実施したところでございますので、先般、公正取引委員会は、経産省との間で会議を持ちまして、情報交換を行ってまいったところでございます。

 今後とも、必要に応じ、実態の調査をしていきたいと考えております。

寺坂政府参考人 御指摘がございました適正化法案に関しまして、共産党さんの方から以前に御提案があったということは承知をしてございます。

 さまざまな角度からの議論が必要な事項が含まれているというふうに考えておるところでございますが、経済産業省といたしましては、現行法の厳正な運用、それから業界でもさまざまな自主的な取り組みを強化しているところでございまして、そういったことによりまして、トラブルの防止、解決にしっかりと取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

吉井委員 きょうは、二つの例を挙げさせていただきました。一〇〇%寡占状態のガラス業界の問題、それからコンビニフランチャイズ店の本部とオーナーの関係ですね。これらについては、圧倒的に力のある者と弱い者との関係です。それは、取引の公正ということだけじゃなしに、それ自身が社会の公正にもかかわる問題ですから、竹島さん、これは本当にきちんと厳しく対応するということで臨んでいただきたい、このことを申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。

東委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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