衆議院

メインへスキップ



第10号 平成21年4月24日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十一年四月二十四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 岸田 文雄君

   理事 櫻田 義孝君 理事 中野 正志君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      片山さつき君    木挽  司君

      高村 正彦君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    清水清一朗君

      新藤 義孝君    平  将明君

      谷畑  孝君    土井 真樹君

      中野  清君    西本 勝子君

      橋本  岳君    林  幹雄君

      平口  洋君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    宮下 一郎君

      武藤 容治君    安井潤一郎君

      山本 明彦君    太田 和美君

      北神 圭朗君    後藤  斎君

      近藤 洋介君    下条 みつ君

      田村 謙治君    牧  義夫君

      三谷 光男君    高木美智代君

      古屋 範子君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      舟橋 和幸君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   中島 秀夫君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山本 和史君

   参考人

   (一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)     村上 政博君

   参考人

   (日本弁護士連合会独占禁止法改正問題ワーキンググループ委員)       出井 直樹君

   参考人

   (社団法人日本経済団体連合会経済法規委員会競争法部会長代行)       齋藤 憲道君

   参考人

   (全国電機商業組合連合会会長代行)        北原 國人君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     西本 勝子君

  牧原 秀樹君     平口  洋君

  山本 明彦君     宮下 一郎君

  高木美智代君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     川条 志嘉君

  平口  洋君     牧原 秀樹君

  宮下 一郎君     山本 明彦君

  古屋 範子君     高木美智代君

    ―――――――――――――

四月二十三日

 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(内閣提出第五五号)

 石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、参考人として、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授村上政博君、日本弁護士連合会独占禁止法改正問題ワーキンググループ委員出井直樹君、社団法人日本経済団体連合会経済法規委員会競争法部会長代行齋藤憲道君、全国電機商業組合連合会会長代行北原國人君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず村上参考人にお願いいたします。

村上参考人 一橋大学の村上でございます。

 本日は、このような貴重な機会を与えていただき、まことにありがとうございます。独占禁止法を専門に研究している者として、率直に私の意見を申し上げたいと考えております。

 まず、基本的な認識でございますが、御承知のとおり、国際的には競争法のハーモナイゼーションが進み、現在では、先進国市場を中心に、競争法のルールが国際的な共通事業活動ルールとなっております。現実には日本企業も、そのような市場において競争ルールに従って事業活動を行っております。

 その意味で、独占禁止法も、実体ルール、手続法ともに世界の共通ルールに合わせていくことが、日本経済、さらには世界経済の発展に貢献するものと確信しております。中でも、本日議論の対象になります課徴金制度のあり方、行政手続につきましては、欧州の制度が、同じ大陸法体系である日本にとって参考になると考えております。

 このような観点から、私は、今回の改正法案に基本的に賛成であります。

 本日意見を述べたい具体的な論点は四点になります。第一に、企業結合規制の届け出制度、第二に、課徴金の対象違反行為の拡大であります。次いで、第三に、裁量型課徴金を導入するべきこと、第四に、審判制度を廃止することであります。

 まず、企業結合規制につきましては、今日では世界各国とも、重大な企業結合については届け出を事前に出させて、速やかに審査、判断を行うという法制を採用しております。届け出のための売上高基準及び企業集団概念は、ともに今日では主要先進国が採用しているものであります。

 このような届け出制度の整備によって、日本市場に悪影響を及ぼすおそれのある外国企業同士の企業結合についても、外国会社から届け出を受けて規制することを可能にするものであります。いわば、今回の改正はむしろこの点では遅過ぎた法改正と言えるものであって、一刻も早い施行が望まれる事項と考えております。

 第二に、国際的に見ますと、競争ルール全般にわたって、行政制裁金によってそのルールの実効性を確保していくことが世界の潮流となっております。日本の課徴金制度は、行政上の制裁である、すなわち行政制裁金であると位置づけられます。そこで、今回のように排除型私的独占、優越的地位の濫用などへ課徴金を課して実効性を確保することは、国際的な法制やその動向と合致していることになります。

 今回の改正法案は、カルテル規制を強化するとともに、排除型私的独占を新たに課徴金の対象行為とすることによって、新規参入阻害行為などへの規制を強化し、市場における競争を一層促進させるものであります。他方、優越的地位の濫用や不当廉売などを新たに課徴金の対象行為とすることによって、中小企業の保護も強化するものとなっております。そのようにして、全体として独占禁止法上の各規制のバランスをとったものであると評価されます。

 さらに、効率的かつ迅速な法執行を行うために、排除型私的独占に対する算定率を六%、優越的地位の濫用に対する算定率を一%などとしております。この点についても、これから課徴金を賦課するという現時点においては、妥当な相場観に立つものではないかと考えております。

 次に、第三の論点について申し上げます。

 ただ、現行の課徴金制度には大きな問題点がございます。現行課徴金は、一定の算定率を乗じて算定した課徴金額を義務的に違反事業者に課さなければならないものであります。幾らの課徴金を課すか、課徴金を課すか否かについて、公正取引委員会には一切裁量権はございません。このような課徴金制度は、比較法的には、日本にしか存在しないと言える行政制裁金制度であります。

 国際水準の制裁金制度というものは、違反事業者の前年度売上額の一〇%程度を上限とした上で、違反行為の悪質度、重大度に応じて適正な課徴金額を決定するというものであります。制裁金である以上、ある程度まで競争当局が裁量権を持つことは当然であるとし、当該事案の重大性、違法度に即した適正な課徴金額を決定させようというものになります。

 今回の改正で、日本で初めて排除型私的独占を課徴金の対象行為といたしました。しかし、排除型私的独占は、独占禁止法違反で問題となる実にさまざまな行為を含むものであります。正当な行為と不当な行為の見きわめも容易にできるものではありません。そこで、現行課徴金のように一律に六%の算定率を乗じることによって本当に適正な課徴金額を算定できるのかについては疑問があります。

 そのため、今回の法改正が実現しますと、国際標準の上限方式の裁量型課徴金を導入することが緊急の課題になると考えております。具体的には、今回の改正法案を前提として、関連商品売上高二〇%程度を上限とする裁量型課徴金を創設することを真剣に検討するべきであると考えております。

 やはり制裁金であるという本質にかんがみますと、違反行為との関係で均衡を欠くとか過大な制裁金額であるというような印象を与えるような、そういう高額な課徴金を課すことは避けるような法制とするべきであります。

 また、公正取引委員会は、ことし二月に、日本音楽著作権協会、以下、JASRACと申しますけれども、その音楽著作権の使用料の包括徴収の方法が独占禁止法の排除型私的独占に該当するとして排除措置命令を下しております。このような法的評価が極めて微妙な事例については課徴金を課さないという選択肢も認めるべきであります。

 現実にも、EU競争法の課徴金でも、それまでルールが明らかになっていない行為に対して初めて措置をとる場合には、課徴金までは課さないという形の実務が行われております。

 したがいまして、制裁のレベルは、当面、現行改正法程度にとどめた上で、第一に、公正取引委員会が積極的に事件に取り組んでいくためにも、第二に、事業者に過大な負担を負わせないためにも、本改正後に上限方式の裁量型課徴金を導入することが望ましいと考えている次第であります。

 最後の論点について申し上げます。

 私は、審判制度は廃止して、直接裁判所に提訴するようにすべきであると考えております。

 行政審判というものは、第一審の裁判所と同様な慎重な手続を採用せざるを得ないため、審決まで通常二年、三年、その程度の期間はかかるという欠点がございます。さらに、公正取引委員会が検事役と裁判官役、その両方を兼ねるものであるために、本質的に公正さを欠く側面があります。

 その上、国際的な状況を見ますと、今日では、競争法を有する国というのは百カ国を超えます。ただ、事前行政審判制度がとられているのは、アメリカにおける連邦取引委員会のもとでの行政審判しかございません。その上、アメリカを見ても、違反事件処理手続の主たるものは、司法省が民事裁判や刑事裁判を求めて裁判所に提訴する手続であります。そのため、行政審判というのは二、三件しか係属しておらず、余り使われない手続となっております。そういう意味で、たとえ審判官の独立性が保障されている米国であっても、事前行政審判の評価は低いと言わざるを得ないものになっております。

 他方、日本を含む大陸法系の諸国では、行政庁が告知、聴聞を経て行政処分を下し、不服のある者は裁判所に取り消し訴訟を提起するという手続が基本的な行政手続であります。この取り消し訴訟方式が欧州連合それからEU加盟各国、アジア諸国、中南米諸国で採用されており、この手続が競争法違反についての国際標準的な行政手続となります。

 この取り消し訴訟方式のもとで行政聴聞制度を整備し、東京地裁に専属管轄を付与すると、独占禁止法違反を処理するための理想的な行政手続になると考えております。現実には、事前聴聞手続を整備していくと、行政審判とそれほど変わらない事前手続を実現できます。

 これが、欧州における事前行政聴聞手続となります。この手続では、競争当局が事前通知をする時点で、違反事実などを裏づける証拠をすべて相手方に開示します。その上で、相手方に書面で、さらには必要に応じて口頭で、反論の機会を与えることにします。

 さらには、EU競争法と同様に、聴聞官制度を創設することも考えられます。この場合、聴聞官は口頭の聴聞手続を主宰するとともに、聴聞の結果を公正取引委員会に報告することになります。公正取引委員会は、その報告を受けて最終的に命令を決定することになりますが、そこでの違反事実などの内容については、正式審決と同様に、詳しく記載することもできるわけです。繰り返しますが、このような行政聴聞手続を充実させていきますと、取り消し訴訟方式のもとでも審判と変わらないような事前手続を実施できるということになります。

 前回の独占禁止法改正では、違反行為を早期に排除し競争状態を早期に回復させるために、事前審判制を廃止しました。その理由としては、入札談合においては、違反事業者が指名停止時期を先送りするために審判手続を濫用するので、それを防ぐことが強調されました。しかしながら、違反行為を早期に排除して競争状態を早期に回復させる必要があることは、入札談合に限らず、私的独占の禁止、不公正な取引方法の禁止など、ほかの規制についても同じであります。

 先ほど言いましたJASRACの行為のような法律的な評価が難しい行為につきましては、事前行政審判のもとでは審判手続に何年もかけないと執行段階には入れず、競争状態の回復はかなりおくれることになります。法律上は、それに対処するため、東京高裁による緊急停止命令が設けられていますが、たとえどれほど優秀な裁判所であっても、法的判断が微妙で社会的な影響が大きい事件では、緊急停止命令をそう簡単に出すわけにもいかず、結果的に命令がなされないことも多くなると考えられます。

 それから、当然、このような違反行為を早期に排除する必要があるということは、不当廉売に該当する行為について法的措置をとろうとする場合についても同じであります。この点からも、取り消し訴訟方式がすぐれていると評価されるものであります。

 私は、このほかに、現在、事後審判と取り消し訴訟のいずれかを命令の名あて人が選択できるという選択制が選択肢として残っていると聞いております。これは、基本的には私の言う取り消し訴訟方式と本質的な差はない案であると理解しております。しかし、同一違反行為については同一確定を目標とするというのが大陸法系における基本的な制度設計となります。すなわち、同一カルテル事件の名あて人十名のうち、五名は公正取引委員会に事後審判を請求し、五名は取り消し訴訟を裁判所に提起するというような事態が発生し、同一行為について異なる法的結論が出ることを助長するような手続をとることは避けるべきであると考えております。その点から、やはり裁判所に直接提起する方式に一本化すべきであるというふうに考えております。

 結論となりますが、内閣府基本問題懇談会では、私もその一員ではありましたが、事前審判、事後審判を問わず、とにかく行政審判を残すべきであるという立場をとる者が多数派でありました。しかし、今日では、本日お話ししましたような議論の結果、むしろ社会的には取り消し訴訟方式をとる者が多数派であると考えられます。行政審判を廃止すべきことは諸外国の法制やその運用からも裏づけられるのであって、恒久的な行政手続として、速やかに、直接裁判所に提訴する取り消し訴訟型に移行すべきであると考えている次第であります。

 以上、私の考えを述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

東委員長 ありがとうございました。

 次に、出井参考人にお願いいたします。

出井参考人 おはようございます。日本弁護士連合会の出井直樹でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、こういう機会を設けていただきまして、ありがとうございます。

 村上参考人から、今回の改正案それから独禁法全般についてかなり包括的なお話がございました。私は、日ごろ、企業あるいは消費者を代理して独禁法関係の実務を扱う弁護士の立場から、実務家の立場から、数点に絞ってお話を申し上げたいと思います。お配りしてありますレジュメに基本的に従ってお話しいたします。

 まず、独禁法についての考え方でございますが、ここを最初に押さえておきたいと思います。

 市場における事業者、これは中小事業者を当然含むわけでございますが、事業者の公正かつ自由な競争を促進し、それによって一般消費者の利益を確保することを目的とする、これが法律に書いてある独禁法の目的でございます。

 ここを押さえた上で、一九九〇年代以降ということになりますが、行政規制による競争政策、産業政策から、我が国は一般経済法、これは独占禁止法を経済憲法と言われておりますけれども、これを中心とする一般経済法による事後規制による競争政策へ大きく転換しているというふうに認識しております。したがって、独占禁止法の役割というのは、戦後長いスパンを見ますと、ここ十年あるいは十五年で大きく社会における地位、重要性を増しているという認識でございます。すなわち大きな独禁法へというのが基本的な認識です。

 私ども弁護士あるいは日本弁護士連合会といたしましても、そのような独禁法の役割を増す、それによって事業者あるいは消費者の利益に資するということについては基本的に賛成をしております。大きな独禁法、独禁法の執行力を強化するということは、これは追求すべき目的であるというふうに考えております。

 一方、そのように大きな独禁法、強い独禁法ということになりますと、やはり手続の適正、独禁法執行過程あるいは事実認定の過程における手続の適正ということを十分に考えていかなければいけない、このバランスである、これが私どもの基本的な認識でございます。

 今回提案されております独占禁止法改正案につきましては、先ほど村上参考人からお話がございましたように、課徴金の対象となる違反行為の拡大、これは私どもは規制対象を法律で明確にした上でということを申し上げておりましたが、それもかなりの程度取り入れられておりますし、それから、これも私どもが申し上げていたことですが、文書提出命令の特則の導入、それによって独禁法の執行力を強化するという側面がございますので、そのような導入がなされていること、そういうことで、部分的にではありますけれども、独禁法の執行の強化がなされている、また、国際標準に合わせて株式取得を事前届け出制とするなど、そのような措置もなされておりますので、全体的には評価できるものであるというふうに考えております。

 以下は、そのような評価、一般的な評価を前提にしまして、幾つか問題点を指摘したいと思います。今回の改正法自体についての問題点もございますし、また次の改正に向けた問題点の指摘もございます。

 第一点は、審判制度の見直しについてでございます。この点は、先ほど村上参考人がかなり詳しくお話しになりましたので、私の方は簡単に済ませたいと思います。

 基本的な認識としましては、村上参考人のお示しになった認識と共通でございます。摘発者である公正取引委員会がその判断の適否についてもう一度審判という形で判断をする、その後裁判所に持っていくといいましても、東京高等裁判所になってしまう。

 それから、裁判所で公正取引委員会の事実認定がなかなか覆りにくい証拠法則が独禁法上とられております。公正取引委員会の事実認定で実質的な証拠があると認められるものについては、裁判所はその判断に拘束されるという、一般の行政訴訟にはない特異なシステムがとられておりまして、私どもはやはりそこは一般の行政訴訟と同じような仕組みにすべきであるというふうに考えております。ということで、この点につきましては、先ほどの村上参考人と意見はほぼ同じです。

 ただ一点、若干違うのは、私どもは、いきなり現在の公正取引委員会の審判を全部なくして、それで取り消し訴訟一本にするということには、もしかしたらそこは慎重に考えなければいけないかもしれないということで、選択制というものを一つの案として出しております。すなわち、処分を受けた人が審判にも持っていけるし、取り消し訴訟にも、裁判所にも持っていける、どちらかを選べる、オプションを広げるということを提言しております。

 これに対しては、先ほど御指摘ありましたように、同一事件についてばらばらの判断が出たらどうするのかという問題があります。ただ、これは、こういう事件に限らず、裁判所でも違う裁判所に係属するときはそういう問題が起こりますし、最終的には最高裁判所で統一がされる、そういう仕組みになっておりますので、これは本質的な欠陥ではないというふうに考えております。

 ただ、問題は、取り消し訴訟と審判と両方になりますと、人的リソースの点で果たしてそれは効率的なのかどうかという問題の指摘もありまして、そのあたりを踏まえて、今後一年間ですか、審判制度をどうするのかということは国会でも検討をいただくことになりますし、私どももそのあたりはよく考えてみたいと思っております。

 以上が、審判制の見直しについて、これは次の改正に向けたお話でございます。

 次の問題ですけれども、適正手続の保障がまだ十分ではないのではないかということでございます。四点ほど、制度の面について指摘しております。

 第一は、公正取引委員会が事件について収集した証拠、これは他の事業者の営業秘密を除くことになりますが、そういう証拠をすべての被疑者、被審人に開示していただくということ、そういう制度を導入すべきであると考えております。これは、国際的にもそれがスタンダードになっていると思いますので、それに合わせていただきたいということです。

 第二、弁護士との相談内容の秘密性の確保。これは、弁護士守秘特権という、特権というのは余りいい言葉ではございませんが、やはり企業の方々が弁護士に相談することをちゅうちょさせるような、そういうシステムは基本的にまずいのではないか。特に、国際的には弁護士の守秘特権というのはスタンダードになっておりまして、日本でこれが破られてしまうと、外国でもやはり一たん出てしまったものはもう特権がないというふうにされておりますので、外国での守秘特権も全部一律に破られてしまうという非常な不都合が生じております。このあたりは早急に手当てをしていただくことが、国際的にも喫緊の課題かと思います。

 第三、調査、事情聴取への弁護士立ち会い権の確保。これも手続適正の観点から御検討いただきたいと思っております。

 第四ですけれども、今回の法律案に利害関係人による審判の事件記録謄写、閲覧等の制限の規定がございます。要件としては第三者の利益を害するおそれという要件で、これを制限するという規定が入っておりますが、これにつきましては、やはり民事訴訟法と同一の要件、すなわち個人の生活上の秘密や営業秘密が記載されている場合に限るという規定にすべきではなかったかと思っておりまして、そこらあたりは今後法改正、あるいは、少なくとも運用につきましてはそのような運用をお願いしたいというふうに考えております。

 以上が制度問題ですけれども、もう一つ、これは法改正自体、法律自体の問題ではございませんが、やはり公正取引委員会での調査手続、さらに審判制度が存続する場合には審判手続、これも審判官だけではなく、そこの部門の事務局に法曹資格者を入れていただく。これはいろいろな機会にお願いしていることですけれども、やはり準司法手続ですので、そこは法曹資格者を登用していただくということをお考えいただければと思っております。

 最後でございますが、これまで公正取引委員会、すなわち行政を通じた独禁法執行ということを私も申し上げてまいりました。村上参考人からもそういうお話がございました。ただ、もう一つ考えていただきたいのは、行政による法執行だけではなく、私人による法執行ということも両輪のもう一つの輪として考えていただきたいということでございます。公正取引委員会等の行政によるエンフォースメントと、民事訴訟を通じた私人によるエンフォースメントの両輪の強化が必要である、これも大きな独禁法の一つの側面でございます。

 具体的には、独占禁止法二十四条、差しとめ請求権がございますが、この対象を拡大していただく、それから、要件をもう少し差しとめが認められやすい要件に変えていただくということが必要であるということを申し上げているところです。

 それから、二番目ですけれども、独占禁止法違反の損害賠償請求訴訟を行いやすくするための措置を御検討いただきたいということで、消費者団体訴訟の導入であるとか、損害額推定規定の検討を、これまで意見を述べてきたところでございます。ただ、この点につきましては、別のところで議論されている消費者庁の設置法の関係で今後検討されるということでございますので、そちらの方の御検討にゆだねることになるかと思います。

 最後に、これは独占禁止法関係の訴訟のことを問題にしているわけですが、独占禁止法に関係する訴訟というのは、別に独禁法上の訴訟だけではありません。一般の不法行為あるいは契約違反の訴訟でも、独占禁止法違反が問題になることは多々あります。したがって、民事訴訟一般をやりやすくする方策というのを考えていただきたいということでございます。

 具体的には、提訴手数料の見直しですとか、文書提出命令、今回、独禁法について手当てがなされましたけれども、文書提出命令のルールを民事訴訟一般について考え直す必要があるのではないか。さらに、損害賠償制度一般についても御検討いただく必要があるのではないかということです。

 今、幾つか述べましたけれども、そういう総合的な施策を、今後、大きな独禁法かつ手続の適正を確保した独禁法ということを国の大きな政策として、今後立法でもお考えいただければと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

東委員長 ありがとうございました。

 次に、齋藤参考人にお願いいたします。

齋藤参考人 おはようございます。日本経団連の競争法部会長代行を務めております齋藤憲道です。

 本日は、このような意見陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 私からは、独占禁止法改正案につきまして、経団連の考え方を述べさせていただきます。

 初めに、今回、国会に提出されております政府の独禁法改正案につきましては、経団連としては基本的に賛成であるということを申し上げておきます。今回の法案には、課徴金の対象範囲の拡大や刑事罰強化などが盛り込まれております。これらを含めて、経団連として異論はございません。

 しかし、今後、法律を実際に運用されるに当たってお願いしたいこと、それからさらに、今回の法案に十分に盛り込まれていない事項について、今後の検討をお願いしたい点がございますので、ここで述べさせていただきます。

 第一は、法律の運用基準の明確化のお願いです。

 今回の改正が実現しますと、これまで課徴金の対象ではなかった排除型私的独占を初め、不当廉売、差別対価、共同の取引拒絶、それから再販売価格の拘束、優越的地位の濫用などの不公正な取引方法に対しても課徴金が新たに課されます。

 ところが、これらの行為は、日常のビジネスの中で、どこまでが適法で、どこからが違法になるのかという境界が必ずしも明らかというわけではありません。

 改正法案の関係条文を見ましても、正当な理由がないのに、あるいは不当に、さらには正常な商慣行に照らして不当になどと規定されておりまして、どの一線を超えたら違法になるのかがよくわかりません。

 独禁法違反を犯して課徴金を課されることになれば、公共入札の指名停止や株主代表訴訟などが問題として付随的に発生します。本当に今重要なことであります。

 もちろん、悪質な行為は何としても排除しなければなりません。ただ、適法と違法の境界線がよく見えないために、真っ当な事業活動が無用に萎縮したり、取引がいたずらに混乱することにならないよう、ガイドラインなどで構成要件を明確にしていただきたいと思います。どのような行為が課徴金の対象になるのか、現場で実務を行っているだれもがわかるようにしていただきたいのです。

 予測可能性や法的安定性を確保することは、健全な市場を形成するための必要条件であります。

 第二に、今回の法案で具体的に取り上げられていない審判制度の見直しと審査の適正化のお願いであります。

 まず、審判制度の見直しにつきましては、現行の公正取引委員会の審判制度を廃止し、公正取引委員会の処分に対する不服申し立てを、直接、地方裁判所に対して行うようにすることが必要であると考えております。

 現在の審査、審判の手続は、まず、公正取引委員会が、カルテルなどの独禁法違反の疑いのある企業を調査し、違反していると判断すると、排除措置命令や課徴金納付命令などの処分を下します。

 その処分に納得のできない企業は、公正取引委員会の中にある審判手続で、公取の判断に対する不服を申し立てることになります。

 この仕組みは、いわば検事と裁判官とを同じ公正取引委員会が兼ねる状態で、著しく不公平かつ中立性を欠いております。

 国内の他の行政審判を見ても、処分をする主体と不服審判をする主体が全く同一である機関はほかにありません。外国にもこのような制度はありません。海外の企業の方から、これが日本で活動することをちゅうちょする要因の一つになると聞くこともあります。

 そこで、私どもでは、公正取引委員会の審判制度を廃止し、不服申し立てについては、取り消し訴訟として、直接、地方裁判所に訴える制度にすべきだと考えております。

 この点について、政府の法案の附則に、「審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成二十一年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」と規定されております。

 ぜひとも、審判制度を廃止するという私どもの考えをお酌みいただき、早期に、この方向での法改正を検討され、実現されるようにお願いいたします。

 もう一つは、国際水準にかなう新たな審査制度の構築です。

 現在の公正取引委員会の審査では、欧米では当たり前になっている、審査を受ける側の基本的な権利が認められておりません。

 例えば、自己負罪拒否特権というのがあります。これは、自己に不利益な供述を強要されない権利のことで、日本国憲法第三十八条に規定があります。ただ、これは刑事事件の場合だけだそうで、独禁法違反のような行政事件についてこれを保障する規定はないということです。

 公正取引委員会の取り調べは、通常、任意で行われます。しかし、任意の調査であることが明らかにされていない、あるいは、取り調べが公取の密室の中で長時間にわたる、さらには、弁護士の同席は認められないなどのために、防御権を行使できないという体験談を幾つも聞きます。

 その上、取り調べを受けた者は、そこで作成された供述調書のコピーを持ち帰って確認することもできません。

 現在、警察における犯罪者の取り調べですら、可視化が進められています。まして、任意の手続において許されるべきではないと思います。

 日米欧の競争法当局による取り調べを経験した企業が、欧米の弁護士から、日本では適正手続、デュープロセスが確保されていないと知って驚いた、どのように弁護すればいいか迷っているということを言われております。

 欧米で当たり前とされている程度の適正手続の確保をお願いいたします。

 以上、法律の運用基準の明確化、それから審判制度の抜本的な見直し、適正手続の確保の三つを申し上げました。ぜひ、具体的に進展いたしますようにお願いいたします。

 以上で私からの説明を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

東委員長 ありがとうございました。

 最後に、北原参考人にお願いいたします。

北原参考人 おはようございます。

 私は、ただいま紹介をいただきましたように、全国の家電販売店、中小の家電販売店の二万三千の組合員の組織を持ちます全国電機商業組合連合会の会長代行の北原でございます。今回、こうした席での私どもの陳述をさせていただけることを大変感謝申し上げるところであります。

 私どもは、今回の独占禁止法の改正については基本的に賛成をさせていただきます。ただし、私どもの幾つかの経験の中から、運用に際しては、現実をまず直視していただいて、そして迅速な、適正な処理をお願いしたいということを申し添えさせていただきたいと思います。

 私どもは小さなものの組織でありますので、ちょっと現実に即し過ぎるかもしれませんけれども、まず家電流通業界の実態を御理解いただきたいというふうに思って、お手元に差し上げた資料のような状況で私どもの電機業界というのは推移をしてきた、こういうことであります。

 最近の量販店の台頭は、物すごい勢いで市場を席巻しております。そのはざまにあって、私どもの地域店が大変な苦境の中で商売をしているというのは、この数字に出ているとおりでございます。組合員の推移を見ましても、平成七年から十九年、この間に六千二百店余の店が閉めております。したがって、地域のインフラ等も考えながら、小回りのきく地域店の存在が危うい状態になってきているのも、この表でご覧のとおりでございます。

 なお、流通チャンネルの状況を申し上げますと、量販店またはカメラ業界からの量販店を含めて市場のほぼ六二%、これは二〇〇七年の数字でございまして、最近の数字はもっと強いものになってきているわけであります。

 そういう中で、地域で生業としてやっているような地域店を含めて、私たちは、二〇一一年の地デジの移行に関する役割、量販店でできない地域店の役割、それから高齢化社会が進んできております。この高齢化社会に対応するのに、地域の電気店の役割は大きいだろう。また、地域のインフラとも言えるような活動をしているのも地域店の存在であります。こうした店がなくなるような寡占化が進んでいるということを、まず皆さんに御理解をちょうだいしたなというふうに思います。

 そうした中で、今の市場の価格というのは、余りにも量販店と地域店の格差が大きいということでございます。このことについて、私どもはいろいろの生き残り策を組織としてはやっておりますけれども、皆さんの資料の中にもありますような「漂流する地域店 量販店FCは救えるか」、これはある雑誌の広告でありますけれども、こういうようなことが現実の姿として、量販店の中に吸収されたり、ほかのルートからの仕入れルートで、地域店の存在が全く怪しげな状況になっているのが現状でございます。

 そうした中で、家電ガイドラインというのを、十八年の六月二十九日、公正取引委員会さんが出していただきました。その資料も皆さんのお手元にあると思いますけれども、家電ガイドラインというのは、酒の業界それからガソリンの業界に次いで三番目に、家電業界の現況を憂えるというか、不当な競争がなされているという中で、地域店の存在すら危ないということで、公正取引委員会さんがこうしたガイドラインを発付されたわけであります。

 それに対しては、その当時私どもは、大変ありがたい策であり、地域店の生き残りをかける守りになるかなというような思いでおりましたけれども、ここにもありますように、家電製品の流通においては、「近年、小売市場における家電量販店の成長が目覚しく、メーカーの家電量販店への販売依存度が高まる傾向にある中で、大手の家電量販店間の激しい低価格競争により、地域家電小売店の事業活動に与える影響が深刻化している。」、この文言で、私どもは、これに基づいて申告活動を行ってきたわけであります。

 その申告活動の内容については、皆さんのお手元に資料があると思いますけれども、十八年度が百五十八件、十九年度が四百二十七件、二十年度は千二百三十四件、こうした公正取引委員会から注意を受けた実態が出ておりますけれども、私どもは、それに対する申告で、この程度の注意で終わるのかなということが一番の問題でございます。

 というのは、私どもは、せっかくいいガイドラインを出していただいても、実行、それを適用してもらわなければ生きた法律にならないであろう。今回も、課徴金制度等を踏まえたいろいろの改善策をされて、基本的に賛成でありますけれども、私どもの業界のこのガイドラインに対する申告ですが、本当に適正に運用されているのかという疑いを持っている、不満を持っているところでありますので、今後、こうした新しい法に基づくものの運用をしっかりとやっていただきたいというのが、私どもが今これを述べている一番の問題であります。

 不当廉売に関する運用で、要望がございます。

 私どもは二十年度は二万数千件の申告をしておりますけれども、十九年度の回答は、まことに寂しい回答が公正取引委員会で出ております。実態に即さないような回答をいただいておるというのが実態でございます。それに対しては大変に不満です。

 それというのは、注意をしたというような文書で返ってきているわけであります。疑いがあるので注意しましたということですが、その注意の仕方は口頭である。文書でなくて、口頭で行っている。何回同じことをやっても、それは注意で、口頭で終わっている。これはやはり、罪を犯した者を厳罰に処する、そういう公正取引委員会の本来の姿勢があらわれていない。せっかく地域店が、価格競争で大変な市況になって、不当差別対価があるという申告をしているのに、それを取り上げていただいていない。そして、実際には、調査も聞き取り調査であって、表面的な価格のみが表へ出て、本当の実態の価格の調査がされていないということに私どもは不満を持っているわけであります。

 そして、何回か注意をすれば、当然それに対してはその上の警告であるとか排除命令というものが出るべきだというふうに私どもは思っておりますけれども、現実にはそれが運用されていない、そういうことに対する不満がある。どんな法でも、運用する公正取引委員会さんが厳格にその法の運用をしていただかなければ、形だけのものに終わってしまう、そしていい法律も生かされない、こういうことに私どもは不満を覚えているところであります。

 さて、今、公正取引委員会に申告をしても、この市場というのは価格が動いております。非常にスピードの速い業界であります。生鮮食料品と同じような価格体系かと思われるくらい速いスピードで動いておりますので、これに対する公正取引委員会さんのこのガイドラインができたときの説明は、二カ月以内に必ず結論、申告書に返答するということでございましたけれども、三カ月、長期に至っては半年後でなければ返答が来ない、こういうような現状であります。

 いろいろな事情はあるでしょうけれども、非常に、功をなさない、時間がたち過ぎている。今、家電製品は、一週間で価格がどんどん下がったり、どんどん変化をしております。それを六カ月たって回答をいただいても、やった業者はやり得というようなことで、業界は、血で血を洗うような競争をしている。

 そのはざまにあって、大手と言われる日本の家電メーカーが、家電製品でほとんどのメーカーが赤字になっております。これは、地域店はメーカーの思うままの価格、量販店は毎週商談会が開かれ、そのたびに、卸価格はないにも等しい、メーカー同士の競争のもとで強要された、強要されたと言うと語弊があるかもしれませんけれども、競争場裏の中でどんどん安くなっている、地域店はそうした商談すらできない、メーカーの決められた価格で買っている、そこに格差が出てきてしまうわけであります。

 私どものような業界は、耐久消費財でありながら、野菜と同じような市況の価格になっている。この実態を公取さんにぜひ調べていただきたい、聞き取りでなくて現実を調べていただきたいということをきょうの機会にお願いしておきます。ということは、今度の改正の法ができても、立派なのができても、運用や活用や思い切った踏み込みをしない限り法が生きてこないということを、私はきょうの機会にぜひお訴えをしておきたいというふうに思います。

 なお、差別対価について先ほど少しく申し上げましたけれども、この差別対価というのは、私どもは、基本的には卸価格というものがあるわけであります。そして、今回二万件からの申告をしている中で、公取さんは、メーカーの、卸だけの表面的な価格しか聞いていないわけであります。したがって、これには差別対価はないというような報告をいただいているわけであります。現実を調べない、ここに、ある面、一生懸命申告をしている組合員からは、これは何のガイドラインなのよという声が聞かれるわけであります。

 どうか、量販店それからメーカーの調査をしていただきたい。聞き取りであるならばメーカーは何も問題のない答弁をされるけれども、そういう実態がない。

 皆さん方のお手元に資料として差し上げてある価格調査分析の結果でありますけれども、これについてちょっと説明をさせていただきます。

 これは量販ごとに調査をした中の抜粋でございますので御理解をいただきたいと思いますけれども、一番下の欄のブルーの色のかかっている逆ざやの問題であります。

 逆ざやというのは、地域店の卸価格で売ったら量販店の小売より高くなるという数字であります。私どもの仕入れの価格が、量販店が広告で出している価格、小売されている価格よりかも高い、量販店が五万で売るものを地域店は五万五千で仕入れている、六万で仕入れているという現実のものであります。したがって、これでは商売にならないわけであります。

 もっと言えば、逆ざやは出なくても、卸と小売ととんとんならこの表の数字に出てきません。そういう考え方をしますと、半分以上の商品が、地域店は量販店と入り口の価格で対抗ができない、こういう状況になっているわけであります。

 その実態を幾ら訴えても不当差別対価なしというような返答をいただいていることに地域の電気店はいたたまれなくなって、先ほど申し上げたこういう組織に入って、本来自営業でしっかりやらなきゃいけないものが、最近は量販店のFCというような形またはVCというような形で、量販店から仕入れた方が正規のメーカーから仕入れるより安い。この現実を一つ見ても、いかに差別対価が大きいかということを公取の皆さんに調べていただきたいというのが私どもの思いであります。

 優越的地位の濫用があるかないかは別にして、全くかけ離れた価格で商売をされる。電気製品は、今、新製品が出た次の週から、卸値はないに等しい価格で商談が進んでいるのが実態であります。どうか、一度公取さんは、メーカーに対し、量販店に対し調査をしていただきたい。聞き取りでなくて、本当の意味の立入調査をしていただいたら実態がおわかりいただけるというふうに思っております。

 時間の都合もありますので、公取さんは、量販店と地域店の平均的な価格差は一四・七%から三%の事実開きがありますということを書かれておりますけれども、これは大きな数字のあやであります。

 今、ポイント政策というのが量販店ではやっておりますけれども、ポイントとは何ぞやといったら、これはまさしく、公正取引委員会さんは値引きであるという法解釈をされております。私どもは、ポイントというのはおまけであるというふうに理解をしておったところでありますし、そういう性質のものではないでしょうか。多額なポイントがどんどんつけられることによって、消費者は、必要以上の高いお金を払って、後は拘束された金でその企業から買わなければならないようなポイント政策になっている。このたび出たエコ・アクション・ポイントはそれに似たような誤解を受けやすい状況にもなっておるというのが、今の家電業界のポイント政策であります。

 どうか、この省エネポイント政策もうまく活用して、景気浮揚になったり、または消費者のプラスになったり、エコの推進ができれば私ども業界としては大変ありがたいわけでありますけれども、ある意味では、そのエコポイントすら、量販店の大きな二〇、三〇というようなポイントが出てくれば五%のエコポイントは影が薄くなる、そういうことを心配している私どもでございますので、その辺も御理解をいただければ大変ありがたいと思います。

 最後に、この価格格差、今、実態の仕入れ価格との差もしかりでありますけれども、いま一つ大きなのは、派遣員というヘルパーでございます。メーカーが量販店に出しているヘルパーは、想像を絶する数が出ておるわけであります。毎週土日は当たり前であります。これは、優越的地位濫用に基づいたところの、公正取引委員会さんからあるメーカーには排除、注意文書が出ました。

 ところが、その反面、出た後で、またまた、これはメーカーが使ってくれと言っているんだ、メーカーが商売を伸ばすために使ってくれと言うから、私どもは優越的地位の濫用じゃない、メーカーがもうかるためにやっているんだというような、そんな反論すら出てきているようなこの家電業界でございます。

 これはまさしく、皆さん方のところに資料が行っていると思いますけれども、百貨店法に基づくところの運用の、「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」の中で、「納入業者の従業員等の不当使用等」ということが出ております。これには、「自己等の業務に従事させるため、納入業者の従業員等を派遣させ、又は自己等が雇用する従業員等の人件費を負担させることを原則として禁止。」しているというこの項目であります。

 この原則として禁止しているものを、百貨店の例えば化粧品売り場のようなところと同じような感覚で家電業界に派遣を認めていること自体がおかしい、私はこういうふうに思いますので、この辺についても公取さんにいろいろな面で研究をいただきたいということであります。

 というのは、デパートへ出てくるところの化粧品会社等は、実際には自分の売り場が決まっているわけであります。そこで自分のブランド品を売るわけでありますけれども、家電の場合は、ずらっと並んだ中で、例えばパナソニック、シャープが出ていっても、自分の商品の説明だけではないんです。よその商品も、聞かれればそれを説明して売っているのが現状であります。まさしく量販店のバイイングパワーにつながる、大きな仕入れ格差につながる要素を持っておりますが、今のところ、これは非常に計算が難しいということもあるでしょうけれども、公正取引委員会さんは現下の差別対価には見ておらないのが実態であります。こういうものも、難しくても禁止をするべきであって、それを対価の計算ができないからといって外すべきものではないというふうに僕は思っております。

 したがって、大型量販店が、優越的地位の濫用はなくても、商談の中で大きな力でメーカーさんにぶつかっていく。メーカーは、シェア競争の中でその言い分を聞かざるを得ない。毎週のように開かれる商談会がくせ者であります。

 こういうことを独禁法の中でいま一度見直していただくことができれば、私どもの小さな店が社会的に貢献をしていける場がなくならないように、ひとつ、法の適正な運用、そして適正な、迅速な処理を最後にくれぐれもお願いをする次第であります。

 どんないい法律でも、これを実行しなければ死んだものになってしまいます。私どもがガイドラインに大変な期待をかけているだけに、今、組合員からの大変な不満が起きて、組織すら危なくなるような状況にあります。量販店の寡占化はますます進んでいる。この寡占化でどうすることもできないかどうか知りませんけれども、私どもは、力がない者は負ければいい、そういう理論でなくて、これからの高齢化社会に地域で一生懸命やる電気店の存続のためにも、この法律の適用を厳正、迅速に行っていただくことをお願い申し上げまして、少しくきょうの議論とも外れているかもしれませんけれども、私どもの業界の実態をお訴え申し上げて、私の説明を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

東委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水清一朗君。

清水(清)委員 自由民主党の清水清一朗と申します。

 本日は、大変お忙しい中、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございます。

 時間の関係で早速始めさせていただきますけれども、私ども、既に御意見を開陳されたものに沿ったものが多いのでございます。つまり、重なっている部分が多いものでございますから、お答えの方もぜひ簡潔に、そして長くとも一分以内にお願いをさせていただきたいと思います。そしてまた、時間の関係上、全般的にお伺いすることはできません。少し小さなところ、細かいところ、そしてまた素人の思い入れのところもございますので、それはお許しをいただきたい、こう思っております。

 独禁法につきましては、沿革として、高いものを不当に買わされるという庶民の被害、そしてまた暴利をむさぼる悪徳商人に対する取り締まりというようなところから始まっておられる、つまりカルテルとかトラストとか談合とかということになりますけれども。最近は、優越的な地位を利用して不当に安く品物を納入させる、あるいは不当に安く労働力を提供させる、あるいはそのことによって競争相手を疲弊させることを目的にそれを行うというようなことが多くなってきたように思っております。

 この分野について今回の改正も沿っているのではないかと思っておるわけでございますが、これらの問題の中でやはり問題とすべきものは、弱者が得べかりし利益の損失をさせられる、あるいは搾取をさせられるということがあるのではないかと思っております。

 今、最大多数の最大幸福というようなことを考えますと、世の中に百の利益があるとして、その五十を削除してしまう。そのうちの四十を大規模店舗あるいは流通業者が得て、そしてあとの五を、あるいは十を小規模の店舗、その他を代表とする参加者の利益とする。五十については実は消費者の利益があるわけでございますけれども、これは余りカウントされません。

 社会全体としての利益を百から五十にしてしまう、しかし、これは是であるという考え方があるわけでありますね、消費者の利益が実現されるからということになるわけでございますけれども。

 こういう商業形態が是とされる、安売り、あるいは物が安く買える、こういったことが善であるのだ、そういう考え方につきまして、本当に率直な、簡単な御意見で結構なんでございますが、北原参考人から簡単にお願いを申し上げたいと思います。

 つまりは、利益を社会全体で享受すれば百あるかもしれない、それを五十にしてでも安く消費者に提供する、そのことによっていろいろな弊害が出る可能性があるけれども、それは是とするんだという考え方についてどうお考えになるか、お伺いしたいと思います。

北原参考人 私どもは、消費者に安く物が渡ることは結構なことであるというふうに基本的に思っております。ただ、私どもの業界の場合には、多少そこに、価格のほかに、アフターであるとかいろいろなものが乗ってくる要素がありますので、その範囲は御理解をいただきたいなというふうに思います。

 基本的には、量販店、量を売るところの価格と地域店の仕入れ価格が極端に違うということが、市場では、一生懸命やればやるほど、地域店というのは詐欺師みたいに思われるんですね。なぜ量販で五万で買えるのに地域店は七万で売るのよ、八万で売るのよ、こういう全く信用すらなくすような状況になっている。

 私どもは、どこまでも格差を縮めていただきたい。それによって消費者に物が安く行くことはいささかも問題がないと思っておりますので、競争ができない価格で、地域店が残ろうとしてもできない、これは大きな問題だろうという、不当差別対価に対しての提言をしているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 現在の独占行政につきまして、小規模事業者の方々の、近代の社会の変化に伴う状況、無力感といいますか、あるいは不平等、不公正感、先ほどお話があった、不満を抱いているというようなことがあるのかなと私ども思っております。酒小売あるいはたばこ、家電小売、ガソリンスタンド、このような方々の心の中はまさにそのような状況なのではなかろうかと思っております。

 私自身は、社会のフェアネスの実現、公正さを確保するためにも改革あるべし、こう思っておるわけでございますけれども、何が不当なのかということにつきまして、わかりやすいガイドラインが必要であるということのお話をお伺いしました。現在、ガイドラインもあるわけではございますけれども、しかし、それが信頼されているのかどうか、ちょっと私どもも心配になってまいりました。

 ガイドラインのあり方について、齋藤参考人と北原参考人に大体一分以内でぜひお願いしたいと思います。

齋藤参考人 齋藤でございます。

 ガイドラインは、末端までいろいろありますけれども、現場の者に理解できる形でできるだけ提示していただきたい、こう思います。これは、一般的にも皆そうです。

 産業構造が変わる過程でどうかというようなプロセスもあろうかと思います。これは、産業政策の方で手当てしていただくとして、やはり国民の生活、消費者の視点で見たときにどうかということに最後はなると思います。

 そのときに、日本の国内だけで事が完結するかというと、海外からもたくさん入ってくるわけであります。特に工業製品については関税率がほとんどゼロになっておりますので、そのあたりをどうするかという広い視点が必要かと思っております。

北原参考人 私どもは、先ほど申し上げましたように、ガイドラインは、家電業界向けのガイドラインをつくっていただいたというのが十八年でございますので、これに内容的には満足しているものの、ただ、運用の点で一つ御理解をいただきたい、こういうことであります。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 資料によりますと、不当廉売に関する措置の件数、平成十六年から平成二十一年四月の二十二日まで、実は、警告が十九件、排除措置命令が三件、注意についてはたくさんあるということでございますが、二十年度だけで三千六百五十五件。

 そして、先ほどお話がありましたように、注意については、注意をしましたという答えが文書で来る。そして、それは電話で、あるいは口頭で注意をしましたというようなことになってくるわけでございますけれども、私どもは、どうも不足、あるいは件数も少ないのではないかというぐあいに感じるところでございます。

 そして、申告が少ないのか、あるいは公正取引委員会の扱いが少ないのかについて、公正取引委員会の職員の定数の問題もあろうかと思います。この定数が十分なのかどうかということにつきまして、簡単にでございますけれども、北原参考人にお願いしたいと思います。

北原参考人 人数の問題はちょっと私どもにはよくわかりませんけれども、二十年度は二十万件の申告をいたしております。その結論は、まだ不当差別対価は一件も出ておりません。

 ということは、それだけ調査が難しいということもあると思いますので、私が先ほど申し上げたように、立入調査をやらない限り、表面的な価格だけの聞き取りでは真実はつかめないだろうということで、公取さんの奮起をお願いしたいところでございます。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 排除命令がなされても、その後、実は得べかりし利益、または既に喪失された財産の回復のために民事上の損害賠償に踏み込む例が少ないと聞いております。これは、つまりその時点で勝負がついてしまっていて、疲弊してしまっているために、改めて費用を負担して損害賠償を図る余力がなくなってしまっているというようなこともあるんではなかろうと思っておるところでございます。

 この損害賠償につきまして、審判の行われた時点で早期に、課徴金その他から事前に被害者の損害賠償に充てるという方策を考えることにつきましてはいかがでございましょうか、村上参考人にお願いしたいと思います。

 もう一回言いましょうか、ちょっと素人的なことで急に言った提案でございますので。

 審判が出た段階で、それから先に、損害賠償に踏み込むかどうかの問題があるということですね。その時点で実際にはもう余力を失ってしまっている被害者の方々が多いということになろうかと思うのですが、それから先に踏み込むに当たりまして、審判の出た時点で実は課徴金を財源として事前に手当てをするという方向を取り入れたらどうかということにつきまして、御意見をいただきたいと思います。

村上参考人 損害賠償請求をそういう不当廉売等に対してどの程度活用できるのかという質問だと受けとめまして、お答えさせていただきます。

 基本的に、損害賠償請求する場合には、まず、違反事実があるかないかというものの立証をしなければなりません。公正取引委員会が、例えば排除措置命令でも、もしくは、恐らく警告にしても、一定の処理をとった場合には、やはりその行為は違反であるという強い推定が働きます。したがって、その違反行為に基づいて得べかりし利益というか損害が発生した場合にはそれを裁判所に対して請求ができる、そういう関係になります。

 それで、今の質問は、それ以前にも実効的な措置がとれるか、そういう質問だと思いますが、そうすると、今度は、裁判所に取り消し訴訟を持っていく形になります。持っていく被害者の小売店が、違反があった、例えば独占禁止法に違反する不当廉売があったということを裁判所に向かって立証しなければならないのです。

 今までも、そういう訴訟、不当廉売に限らず、独占禁止法違反で損害賠償請求がなされた事件は何件もございます。ただ、原告側が勝つ確率はそれほど高くはないというのが実態です。

 それはなぜかというと、公正取引委員会が事件調査をして、立入検査して証拠を集めて、違反があるとして命令が出ている場合には、裁判所も認めますし、またその証拠を取り寄せて立証することもできますが、小売店が裁判所に行きまして、本当に大規模小売店が幾らで購入しているか、原価、コストを割っているか、そこを立証して、独占禁止法違反であるという立証がかなり困難であるので、実際の実務としてはそこが難しくなっているかというふうに考えております。大体そういう感じの関係になろうかと思います。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 公正取引委員会で審判が出た後であれば多少はということでございましょうけれども、なかなか手続的に難しいということだと思います。

 実は、ほかに聞きたいことがあったんですが、一つ割愛をさせていただきます。

 最後に、ちょっと時間的にかなりになると思いますので、一番最後の問題だけ先に聞かせていただきたいと思います。

 被害を受けた方々が申告するかどうかについて、相手方との取引関係が非常に親密であったり深いということがあって、あるいはその後、不利益な取り扱いを受ける可能性も否定できないというようなことから、泣き寝入りということも往々にしてあろうかと思います。また、手続が通常の小売店の方々にとっては非常に煩雑であるというようなことも隘路になっているのかなと思うところがあるわけでございます。

 そこで、素人の提案ではございますが、具体的にこういう提案があった場合にどうお考えになるかということでございます。

 実際の事例に際して、事態の調査、被害の実情、あるいは書類の作成等を代行するNPOのような組織、実は私ども、数年あるいは十年ぐらい前に、オランダに、小売業者あるいは小規模の仕事をされている方が廃業されるときに、その廃業の手続、清算からすべて、法律的なものについても代行する組織があるというので、調べに行きました。現実にございまして、当時、ユーロに統一するという状況の前の年でございましたから、各EUの国々が、商業的な条件を全部統一するということで、そういうものをなくすということで動いておったところでございます。

 私どもが調べたところによると、彼らは、実際にそういう仕事をして事業者の個人的負担をほとんど、債務もゼロにするような形で処理をされておりますけれども、しかし、収入は、報酬は国からの小切手だけでございました。彼らははっきり、公務員ではないんですよ、清水さん、こうおっしゃったんですが、何かおかしなところもございました。そしてまた、ドイツにはもっと手厚い措置をする組織がありますよ、こうおっしゃっておりました。

 現在も、実は名前を変えてNPOとして、企業の経営者のOBだとか弁護士さん、税理士さん、会計士さん、そういった方々を中心としたメンバーがあられて、実際に同じような仕事をされているようでございます。

 そういった例もありますので、日本におきましては、公正取引委員会のこの問題につきまして、今私が申し上げましたように、実態を調べるところから書類を作成して提出するまでを代行するというようなNPOの組織を推進することができたらどうか。そしてまた、その費用は、課徴金を今よりもすべて倍に上げて、そこの収入からこれを支払うというような組織を考えていくとしたら、皆様方お一人お一人、どんな評価をされるか、あるいは評価までいかないかもしれませんけれども、お考えを持たれるか、お一人一分以内でお願いをしたいと思います。

村上参考人 手短に答えます。

 その方策で具体的な案となるのは、むしろ事業者団体、例えば小売の組合とかそういうものに対して、差しどめの請求訴訟を認める形になるかと思います。それから、そのときには、先ほど弁護士連合会の代表の人からもありましたように、文書提出命令で証拠を集める機能を強くしなければ実際には働きません。

 それから、費用の点は、むしろ直接そういう団体に対して補助金を払うという方が妥当な施策になろうかと思います。

 以上でございます。

出井参考人 清水委員から、非常に貴重な御提言をいただいたと思います。

 実は、私ども日本弁護士連合会も、消費者の問題それから中小企業の問題は、社会のセーフティーネットという観点から非常に重視しておりまして、消費者につきましては、今般の消費者庁関係の措置である程度前進すると思います。もう一つは、やはり中小企業であると思います。

 中小企業につきましては、法テラスのような、そういうものができないかということで、これから弁護士会でも検討する予定でございます。その中で、今御提言のありましたような、NPO法人がいろいろな手続を代行する。この手続というのも、裁判もあるでしょうし、公正取引委員会への申告もあるでしょうし、あるいは裁判外紛争解決、ADRもあるかと思います。

 ということで、御提言いただいたものは非常に魅力のある案だと思っておりますので、私どもも可能な範囲でそこは検討をしてまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

齋藤参考人 私の今思いついたポイントは、流通段階がいろいろございます。そこでトータルした利益がだれに還元されるべきかとかいうような観点で検討されることになると思います。ケースがたくさんあると思いますが、いろいろな業界によって当事者が変わってくる、被害の額もどう認定していいかわからないというような業界もあろうかと思います。

 そうすると、広くは民事訴訟手続の中でどういうふうに位置づけるんだということを考えてこの問題を検討していかないと、大きな漏れ、それから矛盾が出てくるようになると思います。

北原参考人 基本的には、NPO法人等があれば、私は賛成でございます。

 ただ、今のところ、私どもの申告は、事務局が代行したり、その手伝いをしているところが各県ごとにありますので、そういう組織があればできれば活用をしていきたいというふうに思っております。

 それから、委員長、先ほどのことで一つだけ訂正をさせてください。私、二十万件と言いましたが、二万件の誤りでございます。資料の数字が正しゅうございますので、訂正をさせていただきます。

清水(清)委員 ありがとうございました。

 村上参考人それから出井参考人に今回の焦点であります審判制度のあり方について本当はお伺いするつもりでございましたが、時間がなくなってしまいまして、後の方に譲ります。

 本当にきょうはありがとうございました。

東委員長 これにて清水清一朗君の質疑は終了いたしました。

 参考人に申し上げますが、挙手の上、御発言をお願い申し上げます。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは、参考人の皆様方におかれましては、大変御多忙な中にもかかわりませず、御足労賜り、また貴重な御意見をお伺いさせていただきまして、大変ありがとうございます。

 時間が限られておりますが、質問させていただきたいと思います。

 まず、村上先生が冒頭、競争法は国際市場における共通事業活動ルールにするべきだと。まさに経済活動はグローバルでありますから、その土俵を統一化するというか、同じルールにしていくということは、それは我が国にとっても、また国際社会においてもあるべき姿だということは、私もそう思うわけでございます。

 そこで、まず最初に確認をしておきたいんですが、不公正取引方法に対する課徴金の中で、優越的地位の濫用行為に対する課徴金制度を設けて、当該行為に対する違反抑止力を高めようとするわけでありますけれども、このような行為に対して、現状、欧米では余り類似の規制がないというふうに伺っておりますが、この点に関して、冒頭申し上げました国際的整合性との観点から、規制手段の強化となる課徴金制度の導入についてどのような御見解なのか、お伺いできたらいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

村上参考人 お答え申し上げます。

 むしろ欧米では、優越的な地位の濫用という発想よりは、一般的な購買力の濫用という感じの発想で、規制するものは規制する。大きな量販店その他がいわゆる購買市場で大きな力を持っていて、その力を濫用するという一般的な原則について規制する形になっています。

 それともう一つ、今、世界的にはない規制というお話でしたが、そこは余り心配する必要はないので、競争法の中には、各国、その国独自の規制というのはそれぞれ持っております。そういう意味で、私は、日本において、独占禁止法上、優越的な地位の濫用を使うこと、それが存在することに特に問題はないと考えております。

 以上でございます。

赤羽委員 ありがとうございます。

 また、今回の法改正では、繰り返しになりますが、課徴金の対象範囲について大幅な拡大が図られるわけでございます。

 これは、先ほど北原参考人の陳述にもございましたように、私たち政治家も現場を歩いていることが多くて、さまざまな不公正な取引に対して、何らそれに対する運用というか措置が実効性が上がっていないと大変厳しいおしかりを受ける立場でございます。

 電機業界もそうかもしれませんが、特にお酒の世界でも、例えばビールなんかでも、商品自体のブレークダウンというのはできるわけで、その中の三分の二ぐらいが酒税というお酒の税金があって、そこの中であり得ない小売単価というものが存在する。そこで競争させられるということは、これは私は、商売上の努力の範囲を超えている、合理性のない話だということで、以前、この委員会でもいろいろ主張をしまして、ガイドラインというものが設けられたんですが、残念ながら、北原参考人の御発言どおり、ガイドラインはあっても摘発は、現実には注意はしても実効性が上がらない、こういったことが大半でありました。

 どう見ても不思議な話で、私も実家が小売のパン屋だったものですから、余りにも、こういったことを看過するということは、これはまさに不公正な、商売の努力という以前の話だというふうに考えているわけでございますが、今回、こういったものが対象となるということは、私は、正しい話、方向だというふうに思っております。

 先ほどの北原参考人の陳述に対しまして、齋藤参考人の立場からは、たまたま同じ業界でもありますし、メーカー側と小売店ということであると思いますが、どのような御見解にあるのか、率直にお述べいただければと思います。

齋藤参考人 きょうは私、経団連の競争法部会長代行で来ておりますので、業界全般の話をさせていただこうと思います。

 冒頭から申し上げていますが、やはり今回、不公正な取引方法にまで課徴金がかかるというのは、それはそういう必要性があるということでありましょうが、不当なとかいろいろ修飾語がついておりますので、現場の者が本当にそれを見てわかるということでないといけないと思っております。したがって、この法改正ができました暁には、かなり具体的なガイドラインが示されることを願っております。

 それから、公正取引委員会の運用が不十分ではないかというようなことが先ほどからるる出ておりますけれども、経団連としても、公正取引委員会の機能は、審判はやめてほしい、こう言っておりますけれども、その他の機能はむしろ充実していただきたいということを繰り返して申し上げております。

 選択と集中をすることによって、その機能が大幅にアップするということを願っております。

赤羽委員 いろいろな状況があって、個別具体の話をするわけじゃありませんけれども、よくあったお酒のときにも、大量に販売をする相手に対しては、いわゆるリベートというものを払うことによって卸価格よりも安いような現状が出るとか、そういった話なんですが、なかなかこれはわかりにくいんですね。

 リベートというもの自体が、正常な経済活動だとする側と、そうじゃないという側とあると思うんですが、それは恐らく、北原さんと齋藤さんの立場も違うし、見解も違うのではないかというふうに思います。別に否定しているわけじゃなくて、齋藤さんに今言っていただいたように、明確にするということは大事なんだけれども、その明確の仕方というのはやはりすごく難しさがあるな、と同時に、そこに歯がゆさが我々なんかはあるわけなんです。

 このことについて、出井参考人、消費者の側の立場に立ったというか、現場の立場に立って弁護士活動をされている中で、どのような感じで考えられるか、御意見を聞かせていただければと思います。

出井参考人 御指摘のとおり、なかなか難しいところであると思います。一方には、ガイドラインあるいは法律で明確にしてほしいということがございます。御指摘のとおり、不当にであるとか、正当な理由がないのにであるとか、それがなかなかわかりにくいという面がございます。

 ただ、一言コメント差し上げたいのは、では、それをどういうふうに明確化するのかということで、例えば、幾ら幾ら以上だったらどうというふうに書くと、今度は、では、それをクリアすればすべていいのかということになってしまいますので、ある程度は、そこは事実認定の幅というのは設けておかないと、逆に働きにくいものになってしまうように思います。

 私ども弁護士は、いろいろな立場で代理し、あるいは助言をするものですので、消費者の立場もありますし、事業者の立場もある。事業者の中でも、中小企業の立場もありますし、量販店あるいは大企業の立場もあるということでございますので、なかなか、一律に明確にせよといっても、具体的にどういうふうに明確にするのかということは、いろいろ難しい問題があるということだけ指摘させていただきたいと思います。

赤羽委員 次に、課徴金の算定率の水準についてであるわけでございます。

 課徴金の算定につきましては、事業者に違反行為を踏みとどまらせるに十分な水準となるべきだ。一罰百戒じゃありませんけれども、不公正なことをしたときには大変なことがあるというような効果がなければいけない、こう考えておるわけでございますが、また米国やEUにおけるカルテル実行企業等に対する欧米での罰金や制裁金の水準を見ても、我が国よりも相当な高水準になっているということは否定できないわけでございます。

 そういった観点から、これは先ほど村上先生は、最初として、現時点での始まりとしては妥当な相場観だという御意見だったと思いますが、この点について、他の三名の参考人の皆さん、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

 出井先生から、どうでしょうか。

出井参考人 課徴金の水準をどういうふうにすればいいのかということも、これもいろいろな考え方があると思いますが、今回提案されているものにつきましては、私どももこれは妥当なものであるというふうに考えております。

齋藤参考人 課徴金の制度につきましては、昭和五十二年に導入されたときに、経済上の利益を納付させるための行政上の措置だということで、行政罰ではないと言われております。それから、平成三年に算定率が引き上げられましたが、このときには、制裁等を目的とする刑事罰と明らかに異なる。それで平成十七年ですが、再引き上げが行われましたときには、不当利得相当額以上に金銭上の不利益を課す、課徴金の行政としての制裁性を強めたということが述べられておりまして、だんだんその制裁性というのが前面に出てきております。

 一定時期になりますと、やはり行政上の制裁ということをきちんと位置づけて、刑事罰との関係をどうするんだという制裁のあり方を整理するのが望ましいというのが経団連のスタンスであります。

北原参考人 課徴金については賛成するものでありますし、その課徴金を課するまでの活動が問題だろうということだけを申し添えさせていただきます。

赤羽委員 次に、先ほど村上先生の陳述で、これからの課題ということで、上限方式の裁量型課徴金の導入ということで、関連商品算定率二〇%を上限とする裁量型課徴金の創設というものを御提案されていたと思いますが、同じ御専門家の出井先生はどのように考えられますでしょうか。

出井参考人 課徴金の裁量制につきましては、これもいろいろなことを考えないといけないと思っております。

 今回、課徴金の対象が広がって、いろいろな多様な独禁法違反類型についても課徴金を課すということになりますので、先ほど村上参考人がおっしゃったように、ある程度、公正取引委員会に裁量の幅を持たせるという方向での考慮はやはりしなければいけないと思います。

 しかし、他方、公正取引委員会が課徴金の額を、いろいろな要素を勘案して、悪質性であるとか公正競争をどれだけ阻害するのかということを考えて課徴金の額をあんばいするということについては、果たしてそれでいいのかという問題もございます。

 そういうことをやりますと、公正取引委員会の迅速な処理に支障を来すのではないか等、いろいろな問題がございますので、直ちに村上先生がおっしゃったような裁量制がいいということは日弁連としては断言できないというふうに考えております。もう少し慎重に検討すべきであるという意見でございます。

赤羽委員 村上先生、今の点で、せっかくですから、御意見がございますれば、よろしくお願いします。

村上参考人 最初の点は、相場観と申しましたのは、何%がいいというのはなかなか難しい話になります。したがって、課徴金を課すことに決めましても、その後、違反が続いて、余り効果がないということになるならば、それは算定率を将来的に引き上げることを考えて、やはり違反抑止を図るべきである。

 そういう意味で、私は、現時点において、これから課徴金を課す段階にあるということについては、現行法案にある率が相場観として妥当なものであるかと申し上げたような感じになります。

 それで、その次の質問についてですが、今改正法案が出ていますので、その制裁レベルを上げるということは必要ないのですが、私はむしろ危惧していますのは、排除型私的独占も課徴金の対象行為になって、一律六%の金額になりますというのは、違反事件によっては、その企業の関連商品の金額に六%を掛けるわけですから、非常に大きな金額になる可能性があります。時として、その企業がつぶれていくようなそういう金額にもなり得る形になります。

 そうすると、それが妥当なのかという議論と、もう一つが、それを逆に心配して、公正取引委員会はそういう膨大な金額になる事件については事件に取り組むことなり法的措置をとるのをためらうことになって、積極的な事件審査を行うことのむしろ妨げになるのではないかというのを懸念しております。

 そういう意味で、この法案がもし通った後の話になりますが、裁量制を入れることはぜひとも検討を積極的にしてもらえればというふうに考えております。また、国際的にはそういうことが行われておりますということであります。

赤羽委員 ありがとうございます。

 それでは、審判制度の見直しについてちょっと質問を移らせていただきたいと思います。

 今回の改正法案の附則で、独占禁止法の審判制度の見直しについて言及がなされております。独占禁止法違反行為に対しまして、仮に審判制度を全廃する、先ほど村上先生、齋藤参考人からもお話がありました、全廃するということになり、直接訴訟制度を導入することとした場合、一方で訴訟費用がかさむなどの理由によって、中小企業など経営体力の余力の低い企業にとっては逆に訴訟を行う道を閉ざすことにならないかという懸念の声もあると承知しておりますが、この点に関して、村上先生と出井先生、御意見を賜れればと思います。

村上参考人 おっしゃるところ、その一つはそのとおりだと思います。中小企業にとっては、審判で争うのは経費が安く済むのに対して、訴訟で扱うと、その分、訴訟のコストがかかるのではないかという感じになります。

 ただ、先ほど申し上げましたように、不当廉売その他についても、むしろ審判を廃した方が実効性のある措置がとれ、早く執行が行われるという形で、そういう意味で早目の救済が実現するというか実施できるということになります。

 そういう意味では、確かにメリット、デメリットはあるのかと思われます。

出井参考人 審判を訴訟で争うときにコストがかかるのではないか、それは一般的にはそのとおりです。ただ、ここで恐らく問題になるのは、審判を受けた中小企業よりも、恐らく大企業の方が多いんだと思います。それが一点。

 それからもう一点は、私ども選択制ということを一つの案として出しておりまして、それは場合によっては、公正取引委員会の処分を、同じ公正取引委員会でもう少し簡易に争いたいという場合もあるのではないかということで選択制ということを提言していて、御指摘の点がまさに選択制の一つの理由であるということでございます。

 ただ、これは全体の中で考えないといけないので、そのことのためにリソースを二つに分けるのかという問題がございますので、そこは十分検討していかないといけない。

 それから三点目、訴訟を起こすのにコストがかかるというところは、これはこの問題に限らず、もっと一般的な問題でございますので、提訴手数料の低定額化を図る。特に、こういう行政庁の処分に対する取り消し訴訟についてはそのような措置を講ずるべきではないかというふうに弁護士会としては考えております。

 以上です。

赤羽委員 どうもありがとうございました。

 与えられた二十分が過ぎましたので、これで終わりにいたしますが、今回の法改正を終わりとせずに、今回の法改正をきっかけとして、今後もしっかりと立法府の立場でフォローしながら、また、公取の人員体制等々を我々の責任としてしっかりフォローしていきたいということをお約束申し上げまして、質問を終了させていただきます。

 大変にありがとうございました。

東委員長 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日は、参考人の皆様方に大変貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。早速、質問といいますか、御意見を承りたい、こう思うわけです。

 最初に、北原参考人にお伺いしたいのですけれども、家電の流通の実態、お話を承りました。私も、地元は山形県の方なんですけれども、町の電気屋さんが本当に日に日に、年を追うごとに数が減っているなという思いであります。酒屋さん、そして電気屋さん、郵便局も民営化でだんだんなくなりつつあるわけでありますけれども、まさにそういう意味では町を構成しているものがなくなってきている。

 その実態について、それでみんないいのかというと、やはり寂しい思いをしているわけでありまして、実際に高齢化社会の中で、量販店で買って修理してくれるかというと、そういうわけではなくて、やはり町の電気屋さんというのは、そういう意味においても、田舎というのは高齢化社会でありますから、思いとしては大事だ、そうはいいながらも、チラシを見て大きい電気屋に行っちゃうという、こういう実態なわけであります。

 そういう意味では、まさに理不尽な取引が、参考人の御意見を聞きながら思ったわけですが、実態的には理不尽なことが行われている。経済合理性の名のもとに、やはりそうはいってもこれは理不尽な取引実態なんだなという思いを強くしたところでございます。

 先ほどお話がございました、実際にこの独禁法の改正、基本的には賛成です、とりわけ、不当廉売等々、新しい課徴金の対象が広がったことについては賛成です、こういう御意見でございました。私ども民主党も、この不公正な取引について、不当廉売や優越的地位の濫用について課徴金を入れろということをかねてから主張してまいりましたので、ようやくここに来たかな、こう思うわけでありますが、その中で、一つ外されたものがありまして、いわゆる不当表示の世界であります。

 きょうは、参考人の資料の中にも、ちょっとチラシの配付をされておりますけれども、これはちょっと違う意味での、ポイントの話でございましたが、よくチラシを見ますと、何か、こういうチラシ物に、特別商品で、例えばテレビを一台先着何名に限り二万円とか、本当は二十万円するようなものをめちゃくちゃな値段で提示したりするチラシを見ますよね、値段の設定はともかく。何万円と書いているけれども、よく見ると、先着何名とか、小さな字で書いていたりする。本当に先着何名かよくわからぬけれども、行ってみるともう売り切れでした、こういうもので、だけれどもせっかく来ちゃったから、しかもみんな田舎ですから車ですから、わざわざ車で行ったんだから、ではちょろっと見てみようかと思って、ドライヤーかなんか、関係ない商品を買っちゃう。客寄せ物ですよね。

 こういった広告は、たしか欺瞞的取引というか不当表示の一部だ、こう思うわけでありますが、今回、課徴金の対象から外れました。私は、これは実態的には入れるべきではなかったのかなと。いろいろ役所側の理由では、消費者庁の問題もあって今回外しました、こういうことでありますけれども、私は、実態的には入れるべきではなかったのか、課徴金の対象にすべきではなかったのかな、こう思うわけでありますが、実際に御商売をされていて、この不当表示の問題についていかがお考えですか。御意見をいただければと思うんですが。

北原参考人 私どもの業界の中には、家電公正取引協議会というのが、公取さんから認可された団体でありまして、そこで二十四年ぶりにこの規約の改正を現在に合うものに、せんだって、二月に認可をいただきまして、運用を始めたところであります。

 その中に、自主基準として、そうしたものの違反にならないようなものを、業界としては正していこうというようなことで、いろいろの項目を盛っておりますので、最近のチラシにそういうものは少なくなっていると思います。ただ、それを罰するものがいま一つ弱いというのを私どもも強くしてもらえばいいことでありますけれども、今、家電業界の中では、それで自粛して、消費者に不信を抱かれないようなチラシにしようということで規約の改正をいたしましたので、今後はそういうものは減ってくると思います。

 ただ、規約の中ですので、法の運用というところになるといま一つ弱いものがありますので、その網をくぐったようなものが今後も出てくるたびに、内部でしっかりやっていこうという業界の申し合わせといいましょうか、正しいものにしていこうという努力を公取協の中でやっていこうというふうに思っております。

 ただ、問題は、今おっしゃったようなことは、大きな量販店の競争の中でお互いに裏をかくような表現が出てくることですが、その都度、モグラたたきではないんですが、そういうものを是正していこうという動きに量販の側もなっておるし、私どもの方でもそういう方向で進んでいくということを申し合わせているところであります。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 私は、町の電気屋さんたちは、こういったいいかげんな広告は極力少ないと思うんですね。なぜならば、そんなうそを言ったらすぐ、顔の見える商売を皆さんやられているわけですから、そんなことは基本的にはしない。やられるのは大手の量販店が大半なんだろう、こう思うわけであります。

 ぜひ、この点について、今後の課題ですが、不当表示について罰則、やはり課徴金の対象にするような動きというのも、これは問題意識に持っていきたいなと思うわけでありますし、北原参考人からございました、この注意が意味のあるようなものにしてほしいという御意見、全く切実なるものだなと思いますので、これはやはり国会としてもしっかり見ていかなきゃいかぬな、このように思うわけであります。

 続きまして、審判制度についてお伺いしていきたい、こう思うわけであります。

 先ほど出井参考人の方から、大きな独禁法で、公正であるのは賛成だけれども、適正な手続、こういうことだろうというお話をされていました。

 私どもも全くそういう同じ思いでありますが、ややもすると、独占禁止法をつかさどる公正取引委員会が本当に公正なのか、口の悪い人に言わせれば、不公正取引委員会じゃないか、また、権限を独占しているんじゃないかと。まさに独占禁止法をつかさどる公取が権限を独占している、その象徴とされているのがこの審判制度なんだろう、こういうふうに思い、私どもは審判制度は基本的に廃止ということを打ち出しているわけであります。

 そこで、お伺いしたいのですが、しかし、実際に実務的によく指摘をされるのは合併について。この合併については、裁判所で判断するのが本当にいいのか、そういった経済実態に即した判断が裁判所でできるのか、こういう指摘も受けているわけでございます。

 そこで、お伺いしますが、村上参考人、出井参考人、齋藤参考人、それぞれお三方にお伺いします。お三方の立場で、実際に、まず経済界を代表して齋藤参考人から順に伺いたいんですが、合併審査について裁判所でやるということで果たして大丈夫なのか、裁判所がそこまで適正な判断ができるのかということについて御意見を伺いたいと思います。

齋藤参考人 基本的には、全部裁判所に行くのが一番すっきりすると思っていますが、今おっしゃられたように、合併は、これは将来に向けてどうするかという判断が入りますので、その点については、産業政策的なところもあろうかと思っております。

 ただ、過去どうであったというところについては、これは裁判所が一番得意なところであろうと思っています。

出井参考人 簡単なお答えを申し上げますと、裁判所にはできます。これは、裁判所で、いろいろな事件が持ち込まれてくるわけですが、例えば特許の有効性の事件も持ち込まれます。では、裁判所ができないかというと、いろいろな調査官とかを使ってできるわけです。

 合併の問題につきましては、例えば関連市場をどういうふうに判断するのか、そのうちマーケットシェアがどうなのか、マーケットシェアをどうやって判断するのか、このあたりはかなり経済的な分析が必要になります。しかし、裁判所においても、調査官を活用したり、あるいは公正取引委員会から意見を求めたり、さらにはいろいろな経済学者等を鑑定証人として立てたり等で、審理は十分可能であるというふうに考えております。

 以上でございます。

村上参考人 まず、実態からお答えします。

 今、公正取引委員会の合併審査は、全部事前相談で行われております。そういう意味では、法的措置を検討する前の事前相談手続で行われ、そこで処理されているという意味で、今の質問のような事態が現実に起こることはあり得ない。

 それで、次が、法的手続をとった場合にどうなるかといいますと、合併では、時間の要素が非常に大事になります。そうすると、届け出をさせて、問題点があれば、公正取引委員会はそこで問題点を事前に通知します。

 問題点を事前に通知した後、どこまでの措置をとればその問題点が解消されるかというのを公正取引委員会と合併企業なり当事会社で話し合って、問題解消措置で、例えば一部の事業部門は譲るとかなんとか、話し合いがつけば、それが排除措置命令の内容になるということになりますので、正式な手続をとりましても、いわゆる告知、聴聞の問題点を指摘して、その後、公正取引委員会と協議をして措置内容を決めるという、そこで決着がつきますので、基本的には、裁判所まで行って合併の是非を争うということはあり得ないと思いますし、また、さっきも申しましたように、事前聴聞手続を充実させれば、それで十分に、正式事件になった場合でも対応できると考えております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 そこで、続いてお伺いしたいんですが、知財、知的財産などの場合は、専門の知財高裁というものを持っているわけですね。私ども民主党は、審判制度を廃止した上でのその次の世界について、やはり専門の、裁判所でやるにしても、専門の裁判所とは言いませんが、そういった部といいますか、そういったものをつくらないとなかなか、そうはいっても大変なのかなと。経済事案を専門に取り扱うような、そういったものも、それはこれから真剣に考えていかなければいけないのではないか、このように考えておるわけであります。

 そうした裁判所に移管することを前提にした司法の体制のあり方について、こういう体制をつくった方がいい、まさに東京と大阪に集約するとかいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、審判制度を司法にゆだねるということを前提にした上で、もちろん、日弁連さんは選択制ということを御主張されていますけれども、さはさりながら、現状のままでも十分だという御意見であればそれですし、現状の司法の体制でも十分だというのであれば結構ですし、廃止した場合のあるべき体制、何かお考えをお持ちであれば、組織的なアイデア等をお持ちであれば、お三方、村上、出井、齋藤参考人、お答えいただけますでしょうか。

村上参考人 独占禁止法は、非常に専門的な判断が要求される事件処理をしなければならないので、専門的な部署が必要であるというのはまさしくおっしゃるとおりだと思います。

 その対応としては、当然、私先ほど、東京地裁に専属管轄を持たせるのが一番わかりやすい、もしくは、東京地裁または大阪地裁のいずれかに専属管轄を持たせるという手もありますけれども、その辺で、まず、裁判所で提訴する場所を絞ることが大事かと思います。

 その次に、裁判所の中で、本来は専門部という形で、独占禁止法の専門部をつくる形が一番望ましくはありますが、残念ながら、独占禁止法違反事件件数というのはそんなに多くありません。そういう意味で、特許事件その他知財事件のような専門部までつくるほどの事件数があるかとなると、そこがなかなかうまくいかないかと思います。ただ、今でも、独占禁止法違反事件の差しとめ請求訴訟というのは裁判所に起こせる形になっています。

 それで、東京地裁にそういう訴訟が起こった場合には、東京地裁の商事部が訴訟を受け持つ形になっています。したがって、事実上、商事部が専門部として機能しておりますので、東京地裁が専属管轄権を持つことにすると、商事部が受け皿となって、事実上、専門部という形で機能すると思います。そういう意味では、そこのところはきちんと対応できるかと考えております。

出井参考人 裁判所の側の体制でございますが、日弁連としては、まだそこまでの検討はできておりません。ただ、村上参考人もおっしゃったように、やはり、管轄の面もそれから裁判所の中での部の面も、ある程度の集中はこれは考慮しなければならないのではないかというふうに考えております。

 それとともに、やはり調査官といいますか、特許の場合も調査官がいますけれども、専門的知識、経済的なバックグラウンドを持った方が裁判官を補佐する形でつく、そういう体制を組む必要があるのではないかというふうに思っております。

齋藤参考人 既に全国の地方裁判所や高等裁判所において、独禁法に関する私訴が提起されております。不当廉売や共同ボイコットといった不公正な取引方法に関する事案も取り扱われていると聞いております。和解など柔軟な解決もなされているということでありますので、基本的にはできるはずであると思いますが、案件等でやはりその処理能力がないということになれば、東京それから大阪とか大きなところに集中する。

 いずれにしても、高等裁判所は、東京高裁、今でもやっておるわけですから、これを地方に回すのがいいかどうかというのはちょっと判断できませんが、最高裁に聞いていただければと思いますが。

近藤(洋)委員 次に、北原参考人にお伺いしたいと思うんですが、冒頭のお話にもございましたように、なかなか、申告をしても注意で、その注意もどこまで効果があるのかというお話がございました。

 そのことは我々も委員会で質問するんですけれども、公正取引委員会の実態が伴っていないんじゃないかと。やはり、返ってくる答えは、人員が少ないんですと。この話なんですね。これについては、海外と比べても日本の公取が人員が少ないというのは明らかでありますので、それは全体の中でふやしていくようにということ、これは党派を超えて応援しているわけですけれども、公取頑張れということを言っているわけですが、ただ、一気にふえることはない。

 そこで、お伺いしたいのですけれども、下請法なり、中小企業庁と連携をしたらどうだということを今回の法改正の審議でも我々尽くしてまいりました。実際に、この独禁法、いわゆる不当廉売とか優越的地位の濫用について、中小企業庁の地方における、例えば経済産業局の部局であるとか、そういったものは、皆様方から見て駆け込み寺的に頼りになる存在になっているのかどうか。

 余り、中企庁に言っても、公取と一緒で、また人手が足りないなんということを、同じようなことを言っているのかどうか。いや、中企庁も窓口として機能していますよというのならそうですけれども、正直なところを、まあ、彼らも資金繰りの方ばかりで、資金繰りの話は一生懸命やるけれども、こっちの実際の御商売の問題についてはどこまで親身に相談に乗っていただいているのか、ちょっと我々よくわからぬものですから、公取とは別の中小企業庁は一体どういう対応をされているのか。

 感想だけでも結構ですから、どういうふうに中小企業庁を見ていらっしゃるのかということだけでも結構ですから、お答えいただけますでしょうか。

北原参考人 どうしても、そういうことでいきますと、石油とか酒とか電機業界、この三つの業界が大変であるということで、それぞれの意見を聞く場を持っていただきましたけれども、それより先には進んでおらないのが実態でございます。頼りになるかならないかは別としまして、その程度で終わっているのが現実であります。

 したがって、私ども、今、駆け込み寺はまさしく、公正取引委員会さんのガイドラインに基づくものを中心にやっておりますので、ほかの官庁へのそういうお願いは比較的やっていないというのが実情でありまして、経済産業省等にはその働きかけは別の意味でやっておりますけれども、この問題については、まさしく公取さんがその受け皿であるというふうに私どもは思っています。

 もし公取さんの人の問題があるなら、ふやしていただくことも、そのたび聞いておりますけれども、難しい経済合理性を含んだ不当、差別対価に立ち入っていただきたいことを、ぜひとも先生方にお力添えいただければありがたいと思います。

近藤(洋)委員 時間ですので、終わります。

 ありがとうございました。

東委員長 これにて近藤洋介君の質疑は終わりました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、三人の参考人の皆さんには、お忙しいところ、大変ありがとうございます。

 最初に、北原参考人にお伺いしたいと思うんです。

 かつて大規模小売店舗法廃止問題が出てきたときに、全国電機商業組合の会長さんにも各党を回っていただいて、私の党へも来ていただいて、お話も伺い、そして見解もお話をしたのを今思い出しているんですが、あのときに心配したとおりの事態が起こっているなということを、きょういただいた資料を見て、本当に痛切に思いました。

 以前は、例えば私が以前住んでいたところなんかには、ちょうど来ていらっしゃるナショナルのお店がありまして、そこで買った家電製品のメンテナンスもやってくれるし、屋内配線もやってもらうとか、日常的に、地域で信頼できるところでいろいろお世話をいただきました。そういう点では、系列のいい悪いは別にして、小売店で、ナショナルの店とかいろいろあったわけですね。

 これからは、消安法に基づいて……(発言する者あり)済みません。四人の参考人の方、どうもありがとうございます。

 これからは、消安法に基づいて、メンテナンスしながら長く安全に使ってもらうことで省資源へ進んでいくような、そういう時代になっていくと思うんです。そのときに、地域のネットワークとか小売店の皆さんの役割というのが非常に大事だと思うんです。

 そこで、北原参考人と齋藤参考人のお二人に伺っておきたいのは、北原さんの方には、公正な取引を実現することによってどう役割を果たしていくのかということについてのお考えを伺いたい。それから、齋藤参考人の方には、メーカーとして、これまでのようなかつてのネットワークを再構築して、それで家電を売って、小売店が経営基盤を安定させながら、同時に、メンテナンスその他、どうその地域での役割を果たせるようにしていくことができるのか。やはりそのことで、パナソニックの製品なんかにしてもメンテナンスをやってもらえるわけですね。そして、公正な取引を通じて、短期的利益の追求型から持続可能な発展へ向かう、そういう社会システムというものをどう実現していくべきか。こういうことについて、お二人から伺いたいと思います。

北原参考人 私どもは、おっしゃるように、地域でのインフラということもありますので、卑近な例で申し上げますと、今まで地域店というのは各地域にずっと根差しておりましたけれども、大型店、量販店の出店によって、地域によっては、全く寡占状態になってきている地域もございます。地方に行くと、大きなものが一つ出ると地域店は用はないよというような状態になってきますね。そうすると、町で何か祭事のときに、皆、地元の電気屋で放送施設を全部、手間を出し合ってやっていたのも、人足がもうそろわない、こういう状態になってきておるのが実態でございます。したがって、力のある人たちが集まって数の不足を補う、地域の祭事一つとってもそんなことが起きてきている現状でありまして、大変地域店がなくなってきている。

 まさしく大店法のときに、私どもはたまたまそのときに商工会議所の役もありましたので、商工会議所もまた商工会も挙げて反対をしたわけでありますけれども、それは過去のことであります。その結果、量販店の地方への出店が非常に多くて、御案内のとおり、商店街そのものも壊滅状態になってきているわけでありますけれども、私どもは、たまたまいいことに、その技術というものを売ることができる業界でありましたので、それで生き残りをかけていったわけであります。

 それが、先ほど言ったようなもろもろの価格の公正で、まず価格から入るのがお客さんの心情でありますので、それでどんどん減ってきている。本来の、地域での小回りのきいた、高齢者社会に向くものがなくなってきているということは、いろいろな背景の中で、これではいかぬということで、私どもは、組織を挙げて今、勉強会も当然しなければいけない、そして組織を生かして量販店のできないことをやらなきゃいけない、こういうことでやっておりますけれども、何としても価格の公正というのを。

 それから、メーカーさんの最近の状況であります。

 一部のメーカーはまだまだ努力はしておると思いますけれども、今までのような系列に基づく情報の伝達ということが非常になくなってきております。場合によっては、メーカーの卸の機能をやめていくような方向にありはしないかなということを危惧しているところであります。量販店で用が足りる、または量販店からまた卸をして、そこから買った方がメーカーから買うより安いというようなことが現実に起きていますので、この中では、メーカーはどんどん系列政策から手を引くんじゃないか。これは経済の成り立たない中でのことになってきますけれども、価格の矛盾からメーカーさんは手を引こうとしているというのが私どもの実感であります。

 全部のメーカーとは言いませんけれども、その方向に進んでいるような気がして、私どもは非常に、これは産業構造的な、今、メーカーはもうからなくなっているところもありますけれども、末端の流通から手を引きつつあるような感じさえしておるところでありますので、御質問いただいたことは、中心といいましょうか、それに触れているような御発言で、大変ありがとうございました。

齋藤参考人 経団連の齋藤でございます。

 全業界についての話になりますが、公正取引委員会それから中小企業庁等とも連携しまして、いろいろなセミナーとか研修会がございます、これを後援したり共催したりしているところであります。それから、企業行動憲章なども必要に応じて時々改定しておりますけれども、そういう部分を補強したり、注意喚起を促しているところです。

 これは業界はちょっとあれですが、他の国の方から、日本以外のどこの国でも評価されているのに、日本だけでなぜか売れない、売りにくいんだということを聞くことが時々ございます。これは特定の業界ということではございませんが、そういうことがございます。

 そのあたりもよく見た上で、日本のマーケットをどうしていくのだ、それから消費者の利益は何だということを考えていかないと、日本が世界から置いてきぼりになるというようなことになっては、本当の消費者の利益にはならないと思います。

吉井委員 日本の技術力等については、十分自信を持っていただいていると思いますし、外国と勝負しても十分やっていけるということで頑張っておられると思います。そういう例が若干あるにしても、大事なことは、持続的発展の可能な道をどう実現していくのかということで、やはり公正取引ということを考えるときにも、そこが大事な点ではないかというふうに思っております。

 実は、私も家電メーカーの営業を担当していた方から伺ったことがあるんです。メーカーの希望価格に対して、町の小売店には大体八割ぐらいの価格で卸して、値引きを一割しても一割マージンが入るぐらいに大体考えている、しかし、量販店の場合は、六五パーぐらいの価格で卸して、量販店は二五%値引きをしても、同じように一〇%利益が出るぐらいになっているから、とてもじゃないが、このやり方をしておったら小売店は大変でしょう、そういうふうなお話を伺ったこともあります。実際に、物によってその割合は前後するでしょうけれども。

 このやり方をやっていることについて、実は、昨年、公取の出した「家庭用電気製品の差別対価に係る申告事案の処理について」というのを見ておりますと、私、意外に思ったのは、独禁法十九条三項に違反する疑いがあるとは認められないというふうにして、本件調査を終了するというんですね。えっと思ったんです。それで、メーカーには、ガイドラインの趣旨に沿った価格設定に努めるよう要請すると注文をつけているんですね。それから、メーカーに、地域電気店が誤解しないようにちゃんと十分説明しなさいと。だから、メーカーには注文するんだけれども、一番問題を起こしている量販店に対しては言うべきことを言っていないんですね。こういうことでは、公取として役割を果たしていないことになるのではないか。

 先ほどもお話がありましたように、そもそも差別対価があり、それからキャンペーンセールだとかいってメーカーに人を出させる、そして徹底的に安くして、短期的にはよく売り上げを上げて本社はもうかるんでしょうけれども、しかし、それは結局、地域を疲弊させ、地域の小売店の皆さんの社会的機能も失わしめていく。こういう点では、大変な問題になってくるのではないかと思います。

 こういう点については、メーカーの営業担当の方も、量販店からめちゃめちゃな値引きを求められて苦しめられていると。だから、本当は、公取はメーカーに物を言うんじゃなくて、量販店に対してもっと公取が物を言わないと、メーカーも大変だろうし、それから小売店も大変だろうというふうに思うんです。

 齋藤参考人は、きょうは確かにメーカーの立場ではないのでお答えにくいかもしれませんが、お二人から、この点について伺っておきたいと思います。

齋藤参考人 特定の業界、特定の企業について申し上げる立場にございません。

北原参考人 おっしゃるとおりでして、私どもがガイドラインに基づいて一生懸命申告をやってきた結果が不当差別対価は終了するというような、十九年度という言葉は出ましたけれども、十九年度のものについてはということで、私どもは、二十年度は二万件近いものを申告しておりますので、これに対する答えはまた別だろうというふうに期待をしているところであります。

 けれども、十九年度はそういうことで、私どもは非常にガイドラインの信憑性を疑った次第であります。大変申しわけございませんが、公正取引委員会さん、何調べているのよということを申し上げたい。

 そして、実態と違う、このことをどこまでも、本当に調べる気があったら、一四・七%から三%の差というのは、これはまさしく地域店の中にもそのくらいの差があるんですね、メーカーの拡売策の中で。それにまだ上乗せしてそういうものがある。その一四・七というのは、末端の地域店から見たら三五%ぐらいの卸価格の差になっているはずでございます。

 したがって、それが日々刻々と変わりますので、地域店は全く、ひどいときには半値に近いような価格差が出ているというふうに思っておりますので、ぜひ、ガイドラインに基づいた、適正で迅速な、厳格な調査をお願いしたいというのは、こういう機会にお願いをするところであります。

 ありがとうございました。

吉井委員 この問題につきまして、私は大阪ですから、きょうも資料を出していただいておりますが、ヤマダ電機テックランド東大阪のように、昨年の四月から十二月の九カ月間だけで二十回独禁法違反に係る訴えを受け付けながら、ようやくことし三月九日に未然防止を図れと注意しただけ。注意しただけですから、相手は聞くわけない、繰り返す。

 ですから、一方では大規模小売店舗法を廃止してしまって、こういう大型量販店が出店するのも撤退するのも勝手だということにしておいて、実際には独禁法が実効あるものになっていない、機能していないということが、地域社会のこれからの持続的発展を可能なるものにしていくかどうかということで非常に大きな問題を持ってきているということを、お話を伺って改めて痛感した次第です。

 次に、齋藤参考人に、今度は経団連の立場でお伺いしておきたいと思うんです。

 経団連企業のカルテル、談合事件というのも結構多いですよね。トヨタや新日鉄など、会長を務められた企業などでも、新日鉄なども繰り返しカルテル、談合事件を起こしていて、一九九九年から二〇〇七年までの八年間で十件繰り返しておる。社会的責任の重い、役割の多いところでなぜ繰り返されるのか。本当だったら、責任に見合った、またブランドに見合った誇りもあって、こういうことは繰り返さない、普通の感覚ではそうだと思うんですが、なぜこうなっているのかを、今度は経団連の役員の立場でお聞かせいただきたいと思います。

齋藤参考人 お答えします。

 なぜ繰り返されるかというのは、それぞれの個々の事情もございますが、何をしているのかという御叱正だと受けとめまして、それについての取り組み等を紹介します。

 独禁法違反には、多くの制裁がございます。排除措置命令、課徴金、それから懲役、罰金がございます。それに、民事訴訟になりまして、差しとめ請求とか損害賠償等もあるわけです。そのほか官庁の入札の指名停止がございまして、営業停止、違約金の請求、それから個々の役員にとりましては株主代表訴訟も起こされる、こういう例もございます。

 こういうことなのですが、社内では役職員の処分がまずほとんど行われていると思いますし、取引先からの取引停止もございます。これは大きな経済的な制裁になってきます。

 どのような取り組みをしているかということでありますが、社内規定の整備それから社員教育、遵法の誓約書の提出とか、形だけと言われるかもしれませんが、一生懸命努めておるのが実態です。

 一方、では、それが全部隠ぺいされて、やみに隠れているじゃないかということですが、最近は公益通報者保護制度もございます。それから、独禁法のリーニエンシー制度もございまして、これは大きく効果を発揮しておるというふうに公取からも聞いているところです。

 あと、内部通報につきましては、結構社内にもホットラインを設けていまして、多くの会社がこのホットラインでまずその芽を摘むという努力を一生懸命しているところであります。

 何しろ一番大きいのは、やはりブランドイメージの低下、それから社会から締め出される、排斥される、これが一番大きいところです。やはり企業には信用が第一番でして、信用を失った企業というのは社会からも追放される、追放されても仕方がないんだということを肝に銘じていると思います。

 経団連としては、企業行動憲章とか実行の手引きをつくりまして、再三これを徹底しているところであります。

吉井委員 再三経団連としてやっていただいていると思うんですが、きょうも伝えられておりますように、焼却炉をめぐる談合で五社の敗訴が確定する。これは私も見ていてびっくりしたんですが、三菱重工とか川重とかタクマとか、焼却炉をめぐる談合というのを繰り返しやっていますね。もう何十年と言ってもいいぐらいやっていると思うんです。

 国際カルテルの場合の課徴金を受けた額を見てみると、例えばエルピーダメモリで八十四億円とか、それから東芝の場合がガス・油関係で百十八億円とか、それからソニーで六十一億円とか、三菱電機の百五十四億円とか、金額が本当に高いわけですね。

 日本国内で繰り返しているというのは、公取の課徴金が、国内では海外に比べてはるかに低い、あるいは、課徴金の減免制度があって、なかなか企業の方がきちんと対応しようとしないのかということが一つには考えられるんですが、この点についてのお考えを最後に伺って、時間になりましたので、終わりたいと思います。

齋藤参考人 先ほど申し上げましたが、今おっしゃられた企業の中にも、当社はリーニエンシー制度を適用します、したがって、当社と一緒にやるところは、御覚悟あれ、声をかけてきたところは本当に言いますよということで、それを実行されている企業もあるように伺っております。これは定着してきておりますので、摘発も一生懸命やっていただきたいですが、悪質なものはなくなってくるんじゃないかなと。

 といいますのは、先ほど株主代表訴訟がございました。これは、金額が課徴金とかははっきりしていますので、それをせしめた、あるいはそれを放置した役員の責任になってきますから、極めて損害賠償請求を起こしやすい、株主代表訴訟が起こるという仕掛けになっておりますので、このあたりを今から、なおかつ今まで以上に有効に利用していくことかなと思っています。

吉井委員 四人の参考人の皆さんには、大変ありがとうございました。質問を終わります。

東委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後零時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時二十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時二十一分開議

東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長舟橋和幸君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長中島秀夫君及び公正取引委員会事務総局審査局長山本和史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田和美さん。

太田(和)委員 民主党の太田和美でございます。

 一昨日に続き、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきたいと思います。

 一昨日の委員会でも同僚委員から御指摘がありましたが、今回の改正案は、審判制度の見直しについてまた一年間結論を先送りにしているなどの問題を抱えていますが、この間、我が党が一貫して主張してきました優越的地位の濫用など不公正な取引方法に対して課徴金を適用するなど一定の前進が図られており、それは率直に評価をしたいと思います。

 そこで、確認の意味でもう一度お伺いをさせていただきたいんですが、今回の改正において、なぜ優越的地位の濫用などに課徴金の範囲を拡大したのか、四年前の改正時には慎重というか煮え切らなかった、それなのになぜ今回転換に至ったのか、官房長官に理由をお尋ねしたいと思います。

河村国務大臣 お答えいたします。

 優越的地位の濫用を含む不公正な取引方法につきましては、カルテル、入札談合といった不当な取引制限等と比べて競争侵害の程度が低い、あるいは予防的な規制とこれまでされてきております。また一方、違法行為であることが明らかなカルテルとか入札談合、こういうものに比べますと、通常の事業活動かあるいは独禁法違反行為か、この判断がなかなか容易でないというふうなこともありました。課徴金の対象にしてしまうと事業活動を萎縮させるのではないか、こういう懸念があったわけであります。

 そういうことから、これまで、御指摘のように、この優越的地位の濫用の不公正な取引方法のあり方については慎重であったことは事実であります。

 しかし、平成十七年に成立をいたしました独占禁止法改正法における附則で、課徴金制度の見直し等が検討課題になっておりました。その際に、衆参両院での附帯決議におきましても、優越的地位の濫用等の不公正な取引方法に対する課徴金の導入は検討課題だということが明記をされてまいりました。

 そこで、独占禁止法基本問題懇談会の報告書、また関係各方面からの意見を踏まえて検討した結果、今般の改正法案では、不公正な取引方法を課徴金の対象とすることについて、先ほど申し上げたような懸念があった、懸念はやはり配慮をしながらも、優越的地位の濫用についても課徴金の対象にすべきであろう、こういう判断に立って提案をさせていただいた、こういう経緯でございます。

太田(和)委員 当時の竹島委員長の本委員会の御答弁からなんですが、多少長くなりますが、引用させていただきたいと思います。

 まず一つ目に、「カルテル、談合は即違法と簡単に申し上げればなるわけでございますが、優越的地位の乱用とか不当廉売というものは、これは一概に言い切れない面がございます。」そしてもう一つ、「法律にかくかくしかじかのものは罰するというふうに単純に書くのが難しい。」それから、「不当利得というものを優越的地位の乱用とか不当廉売の場合にどう観念したらいいのかという問題がございまして、これは割り切りだという考え方もあるかもしれませんが、そういう考え方ではとても法制度としてはなじまないという問題もございまして、どのぐらいの経済的な不利益を与えるべきかという合理的な算定方法というのがなかなか難しいという問題がございます。」そしてもう一つ、「私も、率直に申し上げまして、課徴金の対象にできれば公取としてはその方がいいと実は思っております。しかしながら、法律制度としてそういうものが、さっきるる申し上げましたようないろいろな問題点がございまして、それに対して解決策が今回の改正では見出せなかった」、このように御答弁をされております。

 昨今の経済状況や国会での附帯決議を理由にするのはよしとします。しかしながら、十七年改正当時は、定義が難しい、構成要件を法律に書くのが難しい、課徴金の合理的算定方法が難しい、そして法律制度として問題がある、要はこのようにおっしゃっておりました、そしてその解決策が見出せなかったと。

 今回は、当たり前のように構成要件を法律に書き込んで、課徴金の額も、それが高いとか低いとかは別にして、取引額の一%とされました。法律に構成要件を書くのが難しいとか、課徴金の算定方法とか、根本的な難題をクリアされました。法律に単純に書くのが難しいとおっしゃっていたのを、今回は書き込みました。そこには大きな飛躍があります。

 法案をつくる際にどういう解決策を見出したのか。法文上こういう工夫をしたから困難を乗り越えたとか、考え方をこういうふうに変えたから解決策が見つかったとか、あるいはもう割り切ってしまったのか、そういった点をちょっとお尋ねしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 従来から、優越的地位の濫用とか不当廉売を含む不公正な取引方法については、課徴金を入れるのは、今御紹介いただきましたようなもろもろの論点がございまして、これはカルテル、談合と同じようなわけにはいかないぞという議論がずっとあったわけでございます。

 ところが、当委員会でもたびたび御質問がありますように、優越的地位の濫用をもっと取り締まれとか、不当廉売とか差別対価について積極的にやりなさい、それも、ただやめなさいだけじゃだめです、課徴金をかけなさい、罰金をかけなさいという御議論があったわけでございます。

 平成十七年の改正時点では、結論的に申し上げますと、今回のように踏み込むことはできませんでした。やはり慎重だ、問題点はいろいろあるじゃないか、それを踏み越えてまでやることについては、正直、政府内部における法律のチェックを受ける立場に我々はあるわけですが、なかなかそういうテストに合格できなかったわけでございます。

 ところが、現に平成十七年の法律改正で附帯決議もつけていただくようなことで、その必要性についてはますます強くなってまいりました。そこで、私どもは、今回、優越的地位の濫用と不当廉売、これは二つ、代表的なものとして宿題になっておりますので、これにこたえるべく検討いたしました。

 一つは、従来は、一般指定ということで、公正取引委員会がどういう行為が違法であるかということを定めるということになっていまして、そのような定め方のものに金銭的制裁を加えられるのかというそもそも論が法律の形式としてありました。したがって、法律で書かなきゃいけない。法律で書くからにはそれなりに、構成要件の明確化ということをよく言われるんですが、どういうことをすればそれに該当するかはっきりしなければ、事業者にとってはたまったものじゃないということになります。

 そこで、継続してというような要件、それから、今までの一般指定で定められている、例えば不当廉売を例にとりますと、二種類書いてありますけれども、その前段だけに絞る、かつ、継続してということをちゃんと入れてあるということ。恐れ入ります、不当廉売の場合は、継続してはもともと入っているんですが、十年以内に二度目の場合に初めて課徴金をかけられる、そういうことにしてございますし、優越的地位の濫用の場合にも、継続してという要件を入れる。こういうことで、法律にその根拠を置くように、公正取引委の告示から法律に格上げしている。それから、法律に書けるように、構成要件の明確化として条件を付加するなり絞っている。

 こういうことで、政府部内の法制的なチェックも受けて、それでお示しをさせていただいているということでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 依然ちょっとよくわからないんですが、当時は、難しい難しい、問題があるというように連呼されていたわけでございますが、とにかく方針が変わったのでしょう。悪くなったならともかく、いい方に変わるのだからまあいいかなと、こちらも割り切るしかないと思いますが、十七年改正の際の答弁との落差を埋めるロジックについてはもう少し丁寧に御説明をしていただきたいと、要望だけさせていただきたいと思います。

 さて、竹島委員長は昨年、日経ビジネスオンラインのインタビューに答えております。インタビューには「優越的地位の乱用、絶対に許さない!」というすごいタイトルがついているわけでございますが、大変歯切れよくしゃべっておられて、頼もしいと思いました。

 その中で、大事なことを言われております。つまり、優越的地位の濫用、下請いじめの問題は、これは日本独特の風土の中で、仕事がなくなることを恐れる下請からはなかなか訴えにくい現状になっている。だから、一昨日の質問の中でも北神議員から質問があったと思いますが、公取や中小企業庁の書面調査は、むしろ下請業者に義務化した方がいいんじゃないかというような提案もあったと思います。

 下請法についても、親事業者などという法律用語が出てきます。耳で聞くと、オヤジ業者、オヤジ業者と、どこのおやじかなと思ったりもしたんですけれども、こういった法律用語で、親と子だから逆らえないというのがあると思います。まず、この家父長制的な法律用語から変えていった方がいいんじゃないかなという気もいたします。

 いずれにしろ、そういう実態の中で、公取として下請の保護のため強力に介入することは、私は絶対に必要なことだと思っております。しかし、中小零細企業の自立ということを展望した場合に、いつまでもそれでいいのかという思いもあります。

 竹島委員長もこのインタビューの中で、そうした段階から卒業して、成熟して、しっかりした契約社会が実現しないと長期的には困ります、このように述べられております。私も全く同感です。

 そのためと言ったらなんですが、そのために政府としてどういう戦略的な取り組みが必要なのか、お考えがあれば、官房長官と委員長の方にお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 インタビュー、結構長いのでございますが、結局は、やはり欧米と比べて日本独特の商取引をめぐる環境なり物の考え方があると言わざるを得ない。それはいい面もあるわけですけれども、競争当局の立場からすると困るという面も率直に言ってあります。

 典型的には、日本の場合は、口約束で取引がされるということが結構多い。下請法も、数年前に改正しましたのは、それまで製造業と修理業だけが対象だったわけでございますけれども、非製造業、例えば番組制作会社であるとかコンピューターのプログラムをやるとかその他運送とかいろいろあるわけでございますが、そういうサービス業も新たに対象に加えたわけです。その理由は、実態的には下請関係にありながら、口約束の話が非常に多くて、条件が後から決まるみたいなことが日常茶飯事である、それで弱い立場の者がいつも割を食う、こういうことが見られるわけです。

 こういうことというのは、欧米の場合は、ないことはないにしても、日本ほど社会的な問題にはなっていない。要するに、泣き寝入りとか理不尽なことに対して何も言わずに、長い取引だからしようがないというふうなことが、多くの人たちがそういうふうに思っているということはないわけなんですね。そこにまず基本的な違いが残念ながらある。

 これは昔から、日本の場合にはそういう関係、要するに強い者と弱い者の関係があって来ているわけですが、これが戦後六十年以上たっても基本的に変わらないというのは、これは私もよくわかりませんが、少なくとも、中小企業といえども、中小企業基本法がかつて改正されて、それまで保護される一辺倒だった立場が、やはり自立である、対等な立場で大企業との関係は持つべきである、そういう精神のもとに中小企業基本法はたしか改正されているはずなんでございます。まさにそういうことなので、一朝一夕にならないまでも、もう十年、二十年たてば、やはりそういうふうになっていただきたい。

 そのためには、下請だとか中小事業者とかいって、自分たちは弱いんだ弱いんだとばかり言って役所に駆け込むみたいなことをいつまでもやっていられるというのは、これは物事の根本的解決にならない、私は個人的にそう思っております。

 さはさりながら、現実はそういうことがあって、特に景気が悪くなりますと、どんどんどんどん、バイイングパワーの話も先日来出ておりますが、弱い立場の者が一種収奪的な目に遭っているということがありますので、下請法を厳正に執行するなり、それから、大規模小売業者の納入業者いじめに見られるように、そういう不当なことについてはきちっと優越的地位の濫用の規定を働かせる。こういうことを今力を入れてやっておるんですが、先々は、やはりきちっとした条件を契約で決めていただいて、それで、わからないものはわかる段階で補充するという当たり前のことをきちんとやっていただきたい。

 そうすると、中小事業者の場合も、それに反した場合にはおかしいということを言えるわけなんです。急ぐからもうこれでやってねなんてことがテレビや何かの番組制作の関係ではよくあるそうでございますが、つくり直しの経費が後で負担されるわけでもなく、もうただただこき使われて、それで正当な報酬がもらえない、こういうことがよく言われているんです。

 そういうことは、まず当事者同士が自覚を持っていただくということもあわせてありませんと、法律を適用するということはやっておりますけれども、それだけでは根本的に世の中はよくならない、そういう気持ちで、先ほど引用していただいたところは申し上げたわけでございます。

河村国務大臣 ただいま竹島委員長からも御答弁があったところでございますから、重複は避けたいと思いますけれども、委員長も述べられたように、どちらかというと欧米は、非常に契約社会、きちっとしている。それに比べて日本の場合には、いわゆる長年の商慣習であるとか、あるいは裁量もある。そのようなものがやはり中小企業と大企業の間にあって、適正な取引の場合においてそういう問題が起きる。そのよりどころとして独占禁止法、下請法というのが重要な役割を果たしておる。

 しかし、それだけでは十分でないということもあって、今回、優越的地位の濫用ということになれば、これは課徴金まで含めてしっかり中小企業を守る。もちろん、中小企業にも、しっかりした技術を持って大企業と対等にやれるところもありますけれども、大部分がそういう状況にある。そういう意味で、今回の改正の意味も含めて、政府全体として、中小企業が泣き寝入りをしない社会的な構造をつくっていく、このことが非常に大事でありますから、そういう意識を持ってこれからも政府としても取り組んでいかなきゃならぬ、今回のこの改正をもとにしてそういう意識をしっかり持つということが大事だ、このように考えております。

太田(和)委員 ありがとうございました。

 下請保護というのは絶対に必要なことだと思いますが、やはり長期的にも契約社会がこの日本にもしっかり定着するように、戦略的な取り組みをぜひとも、要望だけさせていただきたいと思います。

 厳しい状況の中で、下請いじめが急増しているというような現状でございますが、物が売れない、値上げできないという中で、下請から搾り取ろうという発想の企業がふえているのではないかなというふうに思っております。

 下請代金の減額事件における減額分の返還状況を見ても、平成二十年度は、四月から十二月までの統計ですが、返還額は二十六億円、十九年度の約十一億円から比べると倍以上になっております。三月末までカウントすると、ひょっとすると三倍ぐらいになってしまうのではないかなという感じもしているんです。

 そうした中で、今回の改正により課徴金の適用範囲が拡大されるわけでございますが、独禁法を補完する特別法である下請法の運用にどのような影響があるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 下請法の適用の場合は、まさに下請法を厳正に執行するということでございますが、例えば、下請法に基づいて、これは違反だということで公正取引委員会が当該事業者に、親に対して勧告を出しても応諾しないということが理論的にはあり得るわけで、そういった事業者に対しては、親法に戻って、独占禁止法の優越的地位の濫用の規定を適用して、それで要件にはまれば、今度は課徴金を払いなさい、こういうことになります。

 ただし、その場合は、下請法と違って、下請法は減額分を戻しなさい、返しなさいという勧告はできますが、優越的地位の濫用の場合は、これは課徴金で国がその一%相当を納めさせるということでございまして、被害を受けた下請業者には原状回復がなされない、そういう違いがございますけれども、今度、優越的地位の濫用に課徴金が新たに導入されるとなれば、回り回って下請いじめ的なことも親事業者はさらに注意をしてくれるんではないか、そういうふうに思っております。

太田(和)委員 独禁法は調査に時間がかかる、認定の手続も慎重に行う、不服があれば審判になり、これも時間がかかる。一方、下請法は、資本金という外形基準を定め、禁止行為を行った場合に機械的に処理していく、迅速に下請の保護を図ることができる、減額分の返還など下請の原状回復もできる。公取の説明だとそういうことなんですが、独禁法が一歩前に進むわけでございますから、下請法もこれまでの運用を総括して見直ししていく必要があるのではないかなというふうに私は思っております。

 平成十五年に下請法が改正され、法の対象となる取引に、ソフトウエア、映像コンテンツ、各種デザインなどの情報成果物作成委託、さらに運送やビルメンテナンス、各種サービスなど役務提供委託が追加されたわけでございますが、平成十五年改正以降の下請法の総括というのをしていただきたいと思います。お願いいたします。

竹島政府特別補佐人 御指摘のとおり、平成十五年の改正によりまして、役務提供委託及び情報成果物作成委託が新たに追加されました。あわせて、親事業者に対して勧告を行う際に企業名を公表するように、従来は勧告に従わなかったときに初めて公表ということだったんですが、そうではなくて、勧告に従った場合でも公表するというようなことに法律改正をさせていただいたわけでございます。

 その結果、何が起きているかと申しますと、一つは、特に非製造業、新たに対象になった分野におきましては、発注書面の交付率が大幅に改善しております。先ほど申し上げた口約束、口頭での発注ということが多かったものが、非常に減っています。

 例えば、平成十六年度では、書面を交付しないという口頭のものが約一五%ございましたが、平成十九年度の私どもの調査では、それが一%まで下がっていまして、大多数のものは発注書面を出すようになっているということが見えます。

 それから、下請法につきましては、国会の御示唆もいただきまして、一生懸命普及しなさい、下請法の存在自体知らない下請業者がたくさんいるんだ、こういうことでございますので、一生懸命、特に毎年十一月は決まった普及月間といたしまして力を入れているんですが、そういうときの講習会の参加希望者というのは、珍しいことに、こちらのキャパシティーを上回る応募があるというようなことが見られておりまして、事業者の関心が非常に高くなっている、そういうことが言えると思います。

 それから、御指摘いただきましたように、これはそういうことをねらってやっているわけじゃございませんが、結果として、減額分に対して、それをちゃんと戻しなさいという額が約三十億円になっているというようなことで、この金額もここのところふえてきております。そういうことで、下請法の改正を含めた、この数年の執行というのは、かなりの成果を上げているのかなと。

 ただ、まだまだ、知っていても使いたがらない人がたくさんいるということも事実でございますので、私どもは、中小企業庁とか商工会議所の御協力もいただきながら、匿名で全部処理しておりますから、遠慮せずに、ぜひ勇気を持って、情報があれば、いじめられたとか被害に遭ったということがあれば公正取引委員会に申告をなさるようにお願いをしているところでございます。

太田(和)委員 ありがとうございました。

 下請法附則第七条には、「この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と定めております。法律の施行日は平成十六年四月一日ですから、既に五年が過ぎております。

 また、本委員会では、十五年改正の際、「下請取引の公正及び下請事業者の利益の保護を一層促進する観点から、附則に定める五年後の見直し規定にかかわらず、情報成果物作成委託及び役務提供委託に係る本法の施行状況を踏まえ、検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。」という附帯決議を付しています。

 要するに、五年を待たずに検討を加えて、所要の措置をせよという決議だと思います。

 そこで、公取においてはどのような論点について今後、検討している論点があれば教えていただきたいんですが、お願いいたします。

竹島政府特別補佐人 法律には、最近というか大分前からかもしれませんが、必ず見直し規定というのが入ることになっておりまして、下請法についても見直し規定が入っているということでございまして、これは一般論ですが、必ずしも具体的な問題点があって見直し規定があるわけじゃないと思っております。

 下請法に関しては、率直に申し上げまして、今現在、下請法を改正しなければならぬという検討課題を私ども持っておりません。

 論点としては、今の資本金区分、例えば製造業の場合、三億円とかで資本金区分を切っている。まあ、一億円を超えるものと一億円未満のものだってやはり優越的地位の濫用が行われ得るじゃないか、そういうところは全部落ちちゃうじゃないかというようなことで、資本金区分をもっと細かくせよというような御議論もあることはあるんです。

 私どもはそれも検討しましたが、細かくすることのメリット、デメリット、これは、中小企業基本法の中小企業の分類をそのまま私ども使わせていただいているわけなんですけれども、それと違う下請法独自の資本金区分を設けるというのは、これはまた事業者に非常に混乱を及ぼすのじゃないか。

 あるところでは問題にならないけれども、下請法になったら、あなたは親ですよということになったのでは、親が中小企業金融に借りに行くというようなことになったのでは、何か非常にわかりにくいでしょう。今だって、自分が親かどうか、自分が下請かどうかわからないのに、下請法独自の資本金区分というのを設けることについて、私は、その結果、仮に、五%か六%、下請関係にあると思われるものが新たに網にかかるとしても、そのためのコストが非常に大きいし、煩雑性を考えても問題があるのではないかと思っています。そういう資本金区分の見直しを別にしますと、私は、法律を改正しなきゃならぬ具体的な問題点は今指摘されていないというふうに思っておりまして、私ども自身もそう思っています。

 ただ、やらなきゃならないのは、運用面をしっかりしなきゃいけない。今回の法案審議でも御指摘ありましたけれども、サボってこちらの照会に答えない。書面調査しているわけですが、答えてこない。これは善意の場合もあるかもしれないけれども、悪意で、もう公取には報告しないというものもあるかもしれない。そういうものがたび重なると、やはりそれを問題視して、どうしてあなたは回答しないんですかということもわざわざ今新たに特別調査ということでやったり、それから、フォローアップの方もやっています。

 確かに累犯もありますので、累犯の場合には、単なる従業員ではなくてトップを呼んできて、あなた、何回も何ですかということで、しっかり下請法を守るようにしなさいというようなこともやっておりまして、そういうことで工夫はしておりますけれども、下請法自体の改正は、先ほど申し上げましたように、今、具体的な改正のテーマを持っていないということでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 今委員長がおっしゃったとおり、下請法は、物品の製造委託などの場合には、資本金三億円超の事業者と資本金三億円以下の事業者の取引、そして資本金一千万円を超えて三億円以下の事業者と資本金一千万円以下の事業者の取引に適用される。したがって、資本金一億円の事業者と五千万円の事業者の取引や資本金一千万円以下の事業者同士の取引、つまり、資本金が同一区分にある事業者同士の取引には適用されないということがあると思います。

 自動車部品業界などでいうと、二次、三次、四次の部品メーカーが同じ中小企業のくくりになっていて、例えば、割引困難な手形を交付されても、下請代金を減額されても、下請法では救われないということになります。この経済状況の中で、そうした事例が今多発しているというお声も聞いております。中には、下請法はざる法ではないかと言うような方もいるぐらいです。

 そうした場合は、資本金の大小に関係のない優越的地位の濫用条項で救えるのかどうか。仮に公取から注意を受けても、注意は注意だし、下請法のような原状の回復はできない。だとするなら、下請法の適用基準について、もう少し現実に即した見直しというものも必要ではないかなというふうに私は思っております。例えば親事業者と下請事業者を定義する外形的要件について、資本金にとらわれない要件といったものをつけ加えるとかということです。

 韓国の下請法は日本の下請法を参考につくられたとも聞いておりますが、韓国では、中小事業者同士の取引を見る場合、年間売上高または従業員数で、元請事業者が下請の二倍以上ある場合の取引を規制の対象としているそうです。これはこれで、日本の基準と比べ、救われるケースもあれば、逆に救われなくなるケースもあると思います。一長一短かもしれませんが、しかし、現行の資本金の大小だけで要件を定めるのではなく、もう少し工夫したやり方で多くの取引をカバーできないのかなということの、きょうは問題提起だけさせていただきたいと思います。

 最後に、時間もなくなりましたので、下請法の施行状況についてお聞きします。

 下請法被疑事件のうち、どういう処理をされたのかというふうに見ますと、この三年間、勧告は十一件、十三件、十五件、警告が二千九百二十七、二千七百四十、二千九百二十九と、けた違いに多いです。

 法律に基づいて勧告を行うには、ある程度慎重に時間をかけて調査をする必要があるので、機動的に警告を打って対処しているという説明だったと思いますが、やはり、筋論で言えば、警告の割合を下げて、名前が公表される勧告がもう少しふえるようなやり方の方が、法運用の透明性が上がるのではないかなというふうに思います。

 この点について公取のお考えと、そして最後に、私は、この警告中心になっている背景には、検査体制が不十分だからではないかなという感じがしております。

 一昨日も議論になりましたが、公取の調査スタッフは、本局三十七名も含めて全国で六十四人。地方だけだと二十七人しかおりません。私の地元のある東北地方では、たった三名でカバーしております。もちろん中小企業庁、地方経済局の下請代金検査官もおりますが、本庁の二十六名を含めて計六十六人です。したがって、東北地方では、公取三人、中小企業庁三人、計六名でチェックをしています。きっちり調査して勧告に持っていく体制がこの人数では不十分ではないかなという気がします。

 二十一年度予算で十八名増員されたばかりですが、今後の検査体制の充実へ向けた官房長官の答弁もあわせてお聞きしまして、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 私から前半の方の御質問にお答えさせていただきます。

 勧告件数が少ないではないか、むしろ警告件数のシェアを減らして勧告件数を多くすべきではないかという御指摘でございます。

 私ども、まさに法律を厳正中立に適用しているつもりでございまして、特に減額なんというのは非常に被害が大きいわけで、これも一定額以上のものはちゃんと挙げて、大体のものは勧告をしているわけでございます。それに至らないようなものは警告で、その場合でも減額される場合も当然あるわけでございます。やはり、ハードルを下げるというよりも厳正にやるということの方が、私どもの公正取引委員会という立場からも、正しいやり方かなと思っております。

 いずれにしましても、実効性のある下請法の執行ということについては、これからも、御指摘を踏まえて努力してまいりたいと思っております。

河村国務大臣 御指摘の執行体制の強化の問題でございます。

 公務員定数抑制の方向ではございますけれども、独占禁止法あるいは下請法の厳正な運用が求められている、こういう必要なものについてはやはりきちっと対応しなきゃなりませんので、この執行体制の強化に努めたい、そのような認識でおるところでございます。

太田(和)委員 ありがとうございました。

東委員長 これにて太田和美さんの質疑は終了いたしました。

 次に、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 きょうは、いよいよ採決が、あと私と、二人を終えてやるということでございます。官房長官もおいででございますので、いろいろな意味で僕は公取の立場に立って、きょうは、御要請を含めてちょっと質問させていただきたいと思います。時間の範囲内でひとつよろしくお願いいたします。

 きょうも相当、もう今週を含めていろいろお話しいただいた中で、そもそも課徴金制度の効果というのは、最初に十七年度に導入されたときに、カルテルの摘発と違法状態の解消と違反行為防止を図る、これが、きょう、もう今週を含めて相当、委員長を含めてお聞きしております。

 その中で、実績の方は、十七年度以降相当上がってきて、二百六十何件上がってきているとか、三カ年で見ると、課徴金額は九十三億が十八年、十九年が百十三億、二十年が二百七十億、課徴金の金額は順当に上がってきている。そして、一件当たりの平均額の課徴金を見ますと、十八年度が五千九百万、十九年度が七千万、二十年度が三億一千万と、非常に大きく課徴金が出てきているということだと思います。それによって、二十年度も納付がそれだけ出てきている。

 一方、私は数字が好きなので、民間から独禁法違反ではないかと公取に寄せられた件数、これはおかしいんじゃないかと寄せられた件数ですね。これは、十七年が二千七百三十四件だった、十八年になったら五千二百五十件になった、十九年は七千三百、どんどん増加しているわけですよ。

 つまり、一方で課徴金制度の納付は非常に上がってはいるけれども、おいおい、これはちょっと、課徴金はいいんだけれども、公取へ、違反しているんじゃないの、そういう寄せられる件数が物すごい勢いで上がってきているんですね。

 私は、先ほど言いましたように、そもそも何でこの法律をするんだというところがポイントだと思うんですが、要するに、もう釈迦に説法です、そういう法律を入れることによって、今までも、いろいろカルテルとか、未然防止とか、それから違法行為のストップということなのにもかかわらず、こうやって金額は、納付率は、国庫に入るから、二百七十億と上がってきていますけれども、一方で、どうしてこれだけ、これは独禁法違反じゃないのという問い合わせが倍々ゲームのように上がってきているか。

 ここに僕は何かあるんじゃないかなという感じがしています、本当に効果があるのかなと。効果は一部で出ているけれども、もしかすると網が粗くなっているせいで、逆に、効果が本当に上がっているのかなという感じがちょっといたしております。

 まず、きょうは随分、今週、御発言が多く、私もお聞きさせていただきましたが、委員長の方からお答えをいただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 今委員御指摘の、これは独禁法違反ではないかという、我々は申告というものを奨励しているんですが、その件数をおっしゃったわけですが、これは先ほどの参考人のときにもありましたように、地方の電気屋さん、ガソリンスタンド、酒屋さん、これが不当廉売、差別対価ということで、物すごい勢いで申告をなさっているわけです。その数字のせいでございまして、カルテル、談合にかかわる申告がそういうふうにふえているわけではございません。

 むしろ、独禁法が一番悪質性が高いということで取り締まっておりますカルテル、談合については、十七年の改正で課徴金率も上げていただき、それから課徴金減免制度というものも入れていただいた結果、それから世の中一般のコンプライアンスをちゃんとやらないとまずいことになるという考え方の普及と相まちまして、私は、独禁法のいわば抑止効果、抑止力、これはそれなりにちゃんと頭に入れて商売をやらないとまずいなという意識が浸透してきているというふうに思っていまして、先ほどの申告の件数は、ちょっとこれは中身がそういうものの、不当廉売だよといって公取に持ってくる件数でございますので、その数字はそういうものとして御理解をいただきたいと思います。

下条委員 委員長、まさにその部分も僕はあると思うんですが、要は、なぜこういうことをやるかというと、生産者の立場もさることながら、消費者の立場もそうですし、不当廉売だけで、僕が言ったのは平成十九年ですから、七千三百四十五件というのは平成十九年、おととしの段階ですよね。それが上がってきているというのは、何かそこにまだまだちょっと、いろいろ御努力なさっていて、きょうも経済界の方もいらっしゃっていますけれども、やる側とやられる側の間の綱引きもあると僕は思うんです。

 そこで、今回の減免制度は、調査開始前の一番目の情報提供が一〇〇%免除、二番目が五〇パー、調査開始前の三番目と開始後で三〇パー免除、ただし刑事罰はありますと。この首謀者、つまり単独または共同で他者に圧力をかけた、他者に強要したり離脱することを妨害したりした場合の減免は対象外、持ち回りの幹事会社は減免対象になるとあります。

 ちょっとこれは単純にお聞きしたいんですが、首謀者の認定と持ち回りの認定というのは、例えば私が下条グループというのをやっていて、首謀者となってやったのか、いや、持ち回りでやったんだ、だから、申しわけない、課徴金減免させてくれというふうに持っていくことだってできると思うんですよ。それによって被害をこうむっている数がふえているんじゃないかという話も私の耳に来ていますが、これは委員長どう思いますか。この持ち回りの認定と首謀者の認定、これはレクで言っていませんが、どういう認定の違いをお考えになっていますか。

竹島政府特別補佐人 私は誤解してお伺いしたかもしれませんが、こういうことでございます。

 課徴金減免制度の中で欠格条項というのがあります。減免してきても、あなたはだめですよ、失格ですというものがあります。それは、非常に悪い、悪質なケースです。

 何かというと、談合をやろうじゃないかと言って、みんなをそれに引きずり込む。それで、やめたいという者がいれば、それはいろいろなことでおどしたりなんかしてやめさせない。そういう悪質な、まさに仕切り屋みたいなもの。これは幾ら、自分が独禁法違反やっておりました、ついては課徴金を一〇〇%免じてくださいと言ってきても、それは失格ですというものが一つあります。

 それから、今回、主導的地位にあるものについて五〇%割り増しということをお願いしておりますが、これは端的に言いますと、カルテルや談合の場合は、いわゆる幹事社というのが往々にしてあるわけでございまして、これは持ち回りの場合もあります、そうじゃない場合もありますが、いわば調整役みたいなものですね。指名を受けたら私のところに連絡しなさい、チャンピオンは私が連絡しますからというようなことで、世話役をやっている会社があります。一般的には幹事社というふうに言われますが。

 こういったものも、先ほどの課徴金減免制度の失格者ほど悪質でないにしても、こういう者がいるからなかなかカルテル、談合組織というのが解体しないわけでもありますので、そういう役回りに立ったら五割り増し取りますよ、こういうことにして、カルテルや談合という組織ができにくくしよう、こういうことでございます。したがって、そういった立場の人はリーニエンシー申請をしても、幹事社が課徴金減免制度をしても、これはオーケー、これは受け付けます、こういうふうにしております。

下条委員 私が何でそういう質問をしたかというと、私は、最初に申し上げたとおり、公取さんの立場に立っていろいろ話をしていきたいと思っているので。

 要は、首謀者という人は、実を言うと私は持ち回りの幹事だと言ってしまって、グループには、おまえ、持ち回りの幹事をしろと言えば、そこの認定するところが非常に薄くなってくる、そして課徴金が減免になるということがあり得るということを僕は申し上げたいんです。それが一つ。

 それからもう一つは、これは内閣府の独禁法基本問題懇談会の委員さんからも、今回の減免事業者数を三社まで認める必要が本当にあるのかという意見が出ていますね、委員長。

 それから一方で、海外の部門と比べた場合に、EUでは、一番目の申請者が三〇パーから五〇パーの減免になっている。二番目が二〇パーから三〇パー。率においては日本よりかなり悪い。米国では罰金ですけれども、一番目の申告者だけを減免する仕組みになっている。

 昨年六月に、全国各地で、独禁政策協力委員会議でも、十分な抑止効果を持つには課徴金を欧米並みに引き上げる必要があるんじゃないかという意見が出ていますよね。これは委員長の方がよく知っている。沖縄の人からも、課徴金減免制度について制度が悪用されている、これは留意してもらいたいという意見が出ている。これは議事録に残っています、そちらの方がよく知っている。

 私は何を言いたいかというと、そこなんですね。要は、小泉さんが十七年に改革した中で、改正で最高一〇%まで上がった。それ以降、本当は、このとき公取委員会では、一〇パーじゃなくて三倍程度、つまり六%から一八%くらいまでにしたかったというのが議事録には残っています。算定期間も三年じゃなくて四年にしたかったんだぞと。そうですよね。

 その三年据え置きで率最高一〇%については、今から五年前の、つまり平成十六年の十月六日の朝日新聞に、自民党の独禁法調査会長代行の柳澤議員の発言として、公取には二けた、反対派には総額抑制を示すことで同意を取りつけたという発言が出ているんです。だから、公取さんと、どうもこの財界さんをバックにする方々との間の調整で結局落ちついたというふうに出ているわけです、新聞に。これは、私は知りません。新聞には載っている。

 そこで、何が言いたいかというと、今回の改正というのは、委員長、本当はもうちょっと厳しくしたかったんじゃないですか。私は、何かそういう感じがするんですよ。というのは、例えば、例の、繰り返し悪いことをやったとか首謀者は確かに一〇パーから二〇パーにふやしましたね、過去十年以内について。それを厳しくした見返りに、会社を三社から五社にふやして、無理やり探し求めたような気もしてならないんです、僕は、今回の案が。

 というのは、アメリカなどは、御承知のとおり物すごく厳しくて、それに日本もやられているわけですよ、逆に。それで、公取さんのホームページにもこういうことが載っていますよ。減免を認めるとしても、ある程度限定する必要があります。三事業者からの報告があれば、事件の全体像を把握することに役立ち、事件の早期解明に資すると。なぜ、では今五社なんだと私は思っているんです。

 今申し上げたように、皆さんも、もう少し厳しくしましょうよと。海外はめちゃくちゃ厳しくなって、日本もやられている。その中で、なぜ公取さんは、御自身の、三社にするのがいいんじゃないかというのを今回五社にしてしまったのか。ここをまずお聞きしたいと思います、委員長。

竹島政府特別補佐人 アメリカは、おっしゃるように、このリーニエンシーは一社でございます。ところが、その後は司法取引でございますのでいろいろなことが行われていまして、日本の制度とちょっとそこは違うわけでございますけれども。ヨーロッパは、これは一社というふうに限られていませんで、EUの競争当局が知らないうちにちゃんと持ってくれば一〇〇%減免という道がありまして、それ以外であっても減免を受けるチャンスはあるということで、日本とそんなに違いません。

 それで、日本の場合は、最初は三名にいたしました。今回なぜ二つふやして五社にするのかということでございますが、これは、絶対五社にしなきゃならぬというものじゃないかもしれませんけれども、この二年間の宿題を受けての検討過程において、やはり立入調査前の情報というのは、たくさんとった方がもちろんいいと。そのためには若干ふやしてもいいんではないか、こういう御議論がありまして、ただし、公取が立ち入ってきてから、もうばれちゃってから、ああ、やっていましたと言ってきたって、それはだめだよということで、事前の申告については、今三社に限られていますけれども、それは五社ぐらいにしていいんじゃないかと。

 私どもも、確かにそれはそうだなと。それで、それを認めたからといって、本来課すべき課徴金がものすごく毀損するということもないというふうに判断いたしまして、三名を五名、ただし、それは立入検査前に限る、こういうことにさせていただいているわけでございます。

下条委員 ちょっと苦しい御答弁だと思いますけれども、私は委員長の立場で言っているんですよ。委員長たちのホームページで三社でいいと載っけているがどうですかと質問しただけで、私は、一番最初に言いましたけれども、皆さんは三社にしたいんじゃないかなということを言っているのであります。

 それで、大臣、何でこういう話を私はするかというと、平成十七年の改正時に、公取はカルテルの不当利得の推計値というのを出したんですよ。これは何かというと、それをやって不当利得がどのぐらいあったかと。それは、大体、平均パーセントで不当利得が一六・五%と出ているんです、一六・五パー。これは平成十七年です。公取さんの方がよく御存じだと思います。

 これは、過去のケース三十六件で不当利得を計算し直しますと、カルテルが約一二%もうかっている。入札談合は平均約一九%ですよね。ですから私は、今三社が五だとか何社だというんですけれども、要するにバーをもうちょっと上げないと、結果的には、減免者数はふやす、首謀者だけちょっと、ちょこちょこっとやる。やり得ですよね、一言で言っちゃえば。悪いことをやっても、結果的には不当利得の方が平均より高いわけですから、やった方が得になっちゃっている。

 そこで、これもいい話を竹島さんが言っているんですね。平成十六年の十一月十九日のこの委員会で委員長が言ったのは、「不当利得相当額以上の金銭をいただくという仕組みを明らかにさせていただきたい、そうすると行政上の制裁という機能がより強まるということは間違いございません」と発言しています。そうですよね、委員長。ですから、これは私が言ったわけじゃない、委員長が言っているんです。つまり、不当利得以上に出すためには、もうちょっと課徴金を出しなさいよというふうに公取は言っているわけです、大臣。

 そこで、最近の数字を見ると、米国などは課徴金が平成十七年で三十三億。一社当たりですね。十八年で二十六億。EUが二十三億で、十八年は五十九億。日本は四千七百万円で、十八年五千九百万円。よっぽど、ちょっとこれは違っているんじゃないか。これは数字ですよ、大臣。

 公取は、もうちょっと高くしろ、つまり不当利得ぐらいまでやりなさいと言っていて、一方で、今回の規制は、私、きのういらっしゃった方に申し上げたんですが、別に、めちゃくちゃ反対しているわけじゃなくて、もうちょっと色づけしたらいいんじゃないかと私は思っているんですよ。

 それで、例えば、EUのクルース委員、競争担当の委員が言っているのは、高額の制裁金の予測を可能にさせる、違反行為に対する効果を、抑止力を想像させられるので、制裁金制度は最もよく機能していると言っているわけですね。

 その一環として、日本企業も向こうへ出ていって、EUで、二年前の十一月にソニーが六十億円制裁を食らったとか、シャープが液晶で、アメリカで、去年の十一月に百二十億食らったりとか、それから、日立ディスプレイズも、ことし三月ですか、米国で食らっているわけです、三十億円とか。大臣。

 私は、確かに嫌な言い方ですけれども、これは余り言っちゃいけないけれども、密告制度ですよね。ところが密告制度、さっき言ったように苦情は非常にふえていますと。それは、不当廉売だけにおっしゃっていて、私はそれだけじゃないと思うんです。

 それから、現実に他国と比べて圧倒的な低さになっちゃっている。限定も、さっきも言いましたけれども、もう非常に、首謀者と持ち回り幹事会社、私がもし首謀者のあれで、同じように持ち株会社も、おまえもおまえもおれの持ち回りをやれというふうに言うこともできる。それによって、とりあえず、不当利益よりも低い段階でやってしまうことがふえている現状があるということなんですね。

 私は、もうきょう法律案は採決されますし、この後で、最終議論まで終えた段階で採決をこの人数の中でやることはわかっておりますが、大臣、今後の課題として、こういう現実問題、そして大臣の方も、いろいろ財界との関係もあると思います。きょうもおいでになっていらっしゃいましたけれども、その関係はあると思いますけれども、今後の課題としては、私は、この部分は非常に引き上げるべきだと思っているんです。引き上げるべきであると。そして、算定ももう少し延ばすべきであるし、それから、企業数ももうちょっと圧縮して、そのかわり首謀者をずばっとやる。大体、首謀者はみんな仕切っているんですよね、私はそう思います。そういう方向で持っていかれることを検討すべきじゃないかなという提案を大臣にさせていただきたい。いかがでございますか。

河村国務大臣 御指摘の点、私も、ヨーロッパなどで日本の企業が大変な課徴金を食らう。びっくりすると同時に、日本と比較して非常に違う。やはり、これは日本も、このようなケースでは、外国ではこういう目に遭うんだということは、もう大企業は皆ある程度承知しながらやっている。

 しかし、日本の場合には、これは低いんだと。日本では、こう言ってはあれですが、非常に巧妙にやれば、密室の中でやればやれるんだという風潮がまだあって、これは何としても断ち切りたいということから、この減免制度を少し広げたという今回の改正があるわけでございます。

 しかし、おっしゃるように、日本でこういう密告制度的なものが本当に風土に合うのかという議論もあったのでありますが、世界の趨勢がまさにそうだし、また、不当な利得を得させないという、これはもう世界的な商道徳としても当然のことでありますから、日本もその点については厳しくしていくということは私は考えるべきことであって、今回、五社に拡充することによって、有益な情報も得られるようにしながら摘発件数を増していく、またこれは厳しいものになっていくという方向を一つ示したと思います。

 あとは、課徴金の引き上げ問題がこれからの課題になってくる、こう思っております。そのことによって、この制度の抑止機能が高まることがあっても弱まることはないと考えておりますので、今回の五社に拡大をしながら、今御指摘の点も踏まえて、今後の検討課題として考えてまいりたい、このように思います。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

下条委員 ありがとうございます。

 大臣、私もちょっとだけアメリカにおりましたのですが、やはり物すごく厳しいですよね、罰がそれぞれ。例えば少年法を含めていろいろな罰が厳しくなっている。やはり日本もアメリカ的な資本主義を入れて、これをやったことが発展の原点になっていますけれども、罰というものはやはり厳しくして、ある意味で見せしめ的にやることによってほかの人が助かる、ひいては最終的には消費者が助かる。これはやはり、今おっしゃった引き上げの課題も検討課題としてぜひお含みおきいただきたいというふうに再度申し上げておきたいと思います。

 それから次は、きょうも随分出ましたけれども、下請への優越的地位の濫用についてであります。

 それで、昨年の六月に独禁政策協力委員会議で中部と四国の委員さんから、金融機関による優越的地位の濫用の法律違反行為をしっかりと規制してもらいたいというのが出ております。

 それで、補正を含めて、二十年度補正で緊急保証枠が二十兆円用意された。しかし、私のところに来る話をいろいろ聞いてみますと、ちょっと中身的に違ってきているなと思っています。確かに、私もここで何回も、二階大臣にも質問させていただいたり、いろいろ保証枠をやったり、それから与謝野さんにも質問をさせていただいておる中で、どうもちょっと違うというのは、大臣、こういうことなんですね。

 金融機関の優越的地位の濫用というのがちょっとうたわれてきています、最近。中身は何かというと、簡単に言うと、金融機関が貸し手の地位を利用して、今まで普通に、例えば山田商事さんに一億貸している、それを単純に、おまえ、保証枠に切りかえろ、保証つきじゃなきゃやらないよと言って、こっちを返済させて、もう一回借りかえさせている、これが多発しているという話であります。これは日経新聞にも、「中小企業 資金繰り正念場」で三月十一日に載りましたけれども、「保証付き融資で得た資金を保証無しの借り入れの返済に充てている企業もある」、これも日経が載っけています。

 つまり、保証枠をどんどんどんどん消化して、これは役立っているよといいながら、実際はどうでしょうか。そこの部分が本当に困っているところに使われているのかというと、今まで貸したところから、同じように、保証枠を使うように借りかえている。例えば、A社ならA社が保証枠なしでやっていたところを、おまえ、保証枠つけてくれよと言って、優越的にやっている。実際に保証枠を使わなきゃいけない中小零細のところには全然話が行っていなくて、貸し渋りが起きている、こういうことであります。

 それで、ついせんだっての四月二十日のNHKの「クローズアップ現代」も、特集で「“貸し渋り”は防げたか」というのが出ていました。銀行の中には自社の債権を回収する目的で保証を申し込む悪質なものも出てきているということであります。

 ちょっと前後して申しわけないんですけれども、平成十八年の六月に公取が発表した金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書によりますと、融資に関連した金融機関からの各種の要請に対して借り手企業の三割以上が断りにくい、これは公取さんが発表しています。そして、意思に反して金融機関からの要請に応じた借り手企業が六割、次回の融資が困難になるために六割以上がオーケーせざるを得なかったと。これは中小零細、大企業も全部入れての話ですから、中小零細にするともっと数字は悪くなると僕は思うんですね。

 そこで、実を言うと、大臣、御存じだと思いますけれども、公取では平成十六年の十二月にガイドラインというのを発表しました。それは、金融機関が借り手企業に対して、各種の要請について、取引上優越した地位にある金融機関が借り手企業に対して、融資に関する不利益な取引条件の設定、変更をする行為は、独占禁止法上問題となると明記しています、このガイドラインに明記している。

 それで、これはまた公取さんが調査した金融機関の結果が今出ています、ガイドラインについて。それによりますと、金融機関の四割がガイドラインの内容を知らない。また、知っていると答えた金融機関のうち、約半数が特に何も取り組みをしてない。(発言する者あり)そうなんです、先生。つまり、要するに、知らないのは四割で、知っている六割のうち半数は何も取り組んでいない。ということは、足すと、六割の半分ですから三割ですから、十社のうち七社以上が要するに取り組んでいないという結果なんですね、ガイドラインについて。それがひいてはリーマンの前から始まっている貸し渋りに、ずうっと底を流れているわけです。

 これは、私も二階さんに申し上げたら、保証枠はどんどん消化しているとありましたけれども、実際は消化している内容の問題なんです、大臣。

 そこで、私は、このガイドラインというのを、起きたことはしようがない、今後の話として、官房長官、周知徹底はどうしてもしていただきたいと思っているんですよ。例えば、金融機関に対する監督というのは金融庁ですし、それから中小零細の支援というのは中小企業庁、優越的地位の濫用を公取さんを含めた内閣府だけでやっているのは、ちょっとなかなか、いろいろあるので、これは所轄の大臣そして官房長官として、こういうことはちょっともう少し、ガイドラインをせっかく出しているんだから。

 大臣、結果的には、それによって多くの人たちが倒産しているわけです、そして貸し渋りに遭っている。だから、幾ら内閣をつかさどっている総理が、非常に消化されていて、いいんだとおっしゃっても、現実は自殺数がふえている。経済的理由で約二五%の人が自殺している、倒産がふえている、これの繰り返しはやはりここの部分だと思うんです、僕は。

 ですから、私は、これはいい機会だから、今まで起きたことはしようがない、これからの話としては、このガイドラインをぜひ所轄の大臣としては周知徹底していただいて、金融とそして経産と含めて旗を振っていただきたい、こう思っているんですが、これはいかがでございますか。

河村国務大臣 今回の百年に一度と言われるような金融経済危機に臨んで、あえて三十兆まで融資枠も保証枠もとった。しかし、現実に、とってあるといいながらも、本当に中小企業にそれがきちっと行き渡っているかどうか、貸し渋りが起きているのではないかという指摘がいまだある。それは、今御指摘のような点がその一因だというふうに私も考えます。そういう意味でも、今回のガイドラインが出ておるわけでありますから、それをやはり周知徹底するというのは非常に大事なことだ、私はこう思います。

 そういう点で、今後、公正取引委員会と金融庁との連携、この趣旨の徹底ということも大事だと思います。今御指摘もいただきましたので、公正取引委員会のこのガイドラインの周知も含めて、このガイドラインが適切に周知されるように努力をしたい、このように思います。

下条委員 ありがとうございます。

 本当に、恐らく大臣のようにお忙しい方のところには余り耳に入りにくいと思うんですけれども、そのためにこの委員会があると僕は思うんです。現実に、私の会館には本当に多くの方、中小零細の方が、実際は借りられない、中堅企業は借りかえさせられていると。これが本当に頻繁に、大臣の山口でも、私の尊敬すべき佐藤栄作先生の地元でございますし、いろいろな意味で私も好きなところではございますが、そこでも非常に多発していると私は思うんですよ。

 ですから、今のお答えを私もぜひ期待したいと思うし、私も最初に言いましたように、そちらの立場できょうは質問させていただいていると思っておりますので、ぜひ周知徹底していただくことによって、少しでも、もう一歩でつぶれなくて済む、路頭に迷うことのないような形で、お忘れないように官房長官の方ではお声かけしていただきたいというふうに思っています。

 それでは、きょうは時間が参りましたので、以上にさせていただきます。どうも御回答ありがとうございました。よろしくお願いします。

やまぎわ委員長代理 これにて下条みつ君の質問は終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 二〇〇五年改正で、施行後二年以内の見直しの規定に基づいて提出されてきた法案ですが、附則にある本年度中の審判手続の全面見直しは審判制度の廃止を含む内容であるので、少し見ておきたいというふうに思います。

 これは竹島委員長の方に最初に伺っておきますけれども、二〇〇五年改正の附則及び私たち日本共産党も含めた全会一致の附帯決議に基づいて、内閣官房長官のもとに、消費者、産業界、学者、法曹関係者など有識者、関係団体など国民各層の代表による独禁法基本問題懇談会がつくられました。同懇談会では、二〇〇五年七月から二〇〇七年六月二十六日まで三十五回にわたる検討を行い、その結果、本改正案のベースとなる改正事項についての結論を出して公表しましたね。

 すなわち、課徴金制度の算定率と対象範囲の拡大、課徴金と刑罰のいわゆる二重処罰問題、審判手続の公正さ、透明性の確保、審判事件記録の閲覧規定の整備、差しとめ訴訟の文書提出命令の制度の整備などです。そして、審判制度については、立法政策上とり得る三つの選択肢というのを検討して、その結果、まず地方裁判所への直接の取り消し訴訟方式を退けた上で、一つは、二〇〇五年改正の不服審査型審判制度を当面維持する。それから二つ目に、しかし恒久的制度とするには疑義があり、そもそも行政審判は、準司法的手続を採用して被処分者に十分主張、立証の機会を与えることにより適正手続を保障するとともに、紛争の専門的早期的解決を図ることが構想されているのであるから、入札談合事件の実効対策等の進捗を踏まえつつ、事前審査型審判方式を改めて採用すべきであると結論づけておりましたね。

 そして、公取も、この報告書の提言に沿った「独占禁止法の改正等の基本的考え方」というのを発表して、翌日、事務総長の会見で、報告書を尊重する、こういう経過であったと思うんですが、まず、この経過だけ確認しておきたいと思います。簡潔で結構ですから。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

竹島政府特別補佐人 吉井委員が今おっしゃったとおりの経緯でございます。

吉井委員 この報告書では、特に独禁法上の審判制度について、一つ、高度な専門性、それから審決の蓄積、三つ目に公取委員会の独立性の確保にとっての必要性、四つ目に取り消し訴訟に比べて審理対象の幅広さという、四つの理由から審判制度を意義づけておりますが、とりわけ、独立行政委員会としての公正取引委員会の独立性、中立性を担保している、このことを指摘しているというのがこの報告書に読み取れると思うんですが、これも竹島委員長に確認しておきます。

竹島政府特別補佐人 基本問題懇談会ではいろいろな御意見があって、きょうの参考人の方もそのメンバーでしたが、違う意見をお持ちだった。

 それで、報告書は、今、吉井委員がおっしゃるように、審判機能を公正取引委員会が持っているのは、公正取引委員会が独立行政委員会として存在する大きな理由である、こういう考え方も踏まえております。

吉井委員 きょうの参考人で来られた方というのは、少数派といいますか、その考えの方でありました。

 なお、この指摘は非常に大事な指摘だというふうに思うわけです。

 行政審判は、競争法の世界では今日では採用する国も少なく、日米にしか存在しない手続だという決めつけた見解もありますが、これは、形式のみを見て、制度の実質的な機能に着目しない不正確で誤解を招く評価だというなかなか的を射た指摘が、専門分野の雑誌である「公正取引」というので示されていると思うんです。これはもちろんよく御承知のところだと思いますが、委員長に確認しておきます。

竹島政府特別補佐人 私、「公正取引」のその論文は読んでおりませんが、そういう御意見もあろうかと思います。

 ただ、あくまでもその後の二年間の内閣府の基本問題懇談会の報告を受けて、私どもは昨年、独占禁止法及び景表法の改正案を国会に出したわけですが、したがって、その中では審判制度については見直しはないという内容でした。ただ、附則で、全面的に見直す、こういうことにさせていただいたわけですが、その後の国会の審議がずっとございまして今日に至っているということでございます。

吉井委員 官房長官、事前審判制の方向へということを含めて、いろいろ見直すにしても、審判制度はやはりきちんと守っていく、その方向を示していたと思うんですが、今回の法律というのは、言葉は全面見直しではありますが、審判制度についてのこれまでの議論と大分違う方向へ行こうとしているように思われますが、なぜ方向が変わったのかを伺っておきます。

河村国務大臣 審判制度の見直しにつきましては、さまざまな御意見をいただいております。廃止論もあるわけでありますし、現行の事後制度、それから事前への回帰、こういう御意見もあるわけで、今御指摘のように方向をがらっと大きく変えたということではなくて、このような論点もあるものでありますから、経済団体、法曹関係者、学識経験者、消費者団体、関係各方面の意見を今お伺いしながら、制度のあり方についてまだ結論を得ていないという段階でございます。

 宿題を先送りするな、こういう御指摘もいただいておるところでございまして、平成二十一年度中には、関係者の意見もさらに聞いて精力的に検討、調整を行って、関係者の納得の得られる案を提案したい、このように考えておるところであります。

吉井委員 独禁法基本問題懇談会の議論やまとめを見ていても、けさ参考人で来られた方の廃止という考え方などは少数派の方で、審判制度廃止を結局強く主張してきたのは、日本経団連が強く主張してきたわけですが、その違反や課徴金の実態というのを、お手元に配らせていただいております資料一の方をごらんいただきたいと思うんです。

 これを見ると、九一年以来の経団連役員企業は延べ四十二社なんですが、その中で二十四社、五七%、大体六割ですね、談合、カルテルにかかわってきておりますし、経済財政諮問会議に議員を出している企業を初めとして、新日鉄、パナソニック、日立、三菱重工など、繰り返し談合やカルテルにかかわっております。

 これはもともと公取の方からいただいた資料等を中心にして整理したものですが、公正取引委員会の方にきのう既にあらかじめお渡しをして、確認しておいてほしいと言っておきましたので、この内容が事実かどうかを確認しておきます。

竹島政府特別補佐人 事務総局の審査局の方でチェックをさせていただきましたが、一部間違っているところがありますけれども、企業名でありますとか事件名には間違いはございません。課徴金額の欄が主でございますが、一部間違いがございます。

吉井委員 一部、課徴金の額が少な目に出たり高目に出たりとか、それはあるにしても、これが現実の姿です。

 経団連の方は、審判制度を廃止せよとか法律や制度を変えよと言う前に、やはりこれだけ繰り返しているわけですから、みずからの違反や課徴金をかけられていることを反省して、姿勢を正す、みずから正すということが必要だと思うんですが、官房長官、また政府はこうした経済犯罪を是正させる、このことが第一ではないかと思うんですが、どうでしょうか。

河村国務大臣 今御指摘もございましたが、毎年多くの企業が入札談合あるいはカルテル、こういった独占禁止法違反行為をやり、また公正取引委員会から排除措置命令を受ける、あるいは課徴金納付命令を受ける。これは私は残念なことだというふうに思います。

 政府としても、こうした独占禁止法違反行為の根絶に向けて、特に企業におけるコンプライアンスの向上をしっかり進めてもらいたい、このように思いますし、このことは今取り組んでおる、こういうふうに思いますけれども、さらに、公正取引委員会も一層厳正な独占禁止法の執行が必要である、このように考えております。

吉井委員 審判制度を廃止せいと言うている人が、一番繰り返しやっているわけですよ。そこが問題なんです。

 それで、カルテルや談合での課徴金を支払うべき企業で、課徴金を減免されている実態を資料二の方に載せさせていただきました。この表の課徴金納付命令事業者数と減免適用事業者数を合わせると、要するにカルテル、談合をやっておったお仲間なんですね、仲間が大体何社ぐらいだったか。これで見ますと、左端に数字を打ってありますが、五社でやっておったというのが六番、十一番、十七番、二十四番、二十五番、二十八番、三十番。六番でいいますと、近畿地区における天然ガスエコ・ステーション建設工事の入札参加に係る談合問題ですね。これらのようにあります。四社でやったというのが七、十六、十八、二十一というふうに、あるいは三社でやっておったのもあれば、二社も、もう少し多いのもあります。例えば一番目の旧首都高速道路公団のトンネル換気設備工事入札をめぐる談合は、七社で談合して三社が減免なんですね。十二番目の大阪ガスが発注する中圧ガス導管工事の入札談合では、七社が談合して三社が減免なんですが、実は、企業を見ると、要するに二社を合わせて一グループが、グループで見れば減免ということになってくるわけですね。

 今でもカルテルや談合が見つかりそうになると課徴金逃れに制度が使われているという感じがありますが、三社までというのを五社までに、さらに、十二の例のように企業グループを一つとカウントすると、ほとんどすべての企業が、談合をやってもカルテルを組んでも無罪放免といいますか、自首して無罪放免というふうになってこようかと思うんです。

 そこで、官房長官に伺っておきたいのは、なぜ五社、グループに拡大するのかを伺います。

竹島政府特別補佐人 まず、考え方を私の方からお答えさせていただきたいんです。

 先ほどもありましたが、私ども、カルテル、談合は特にそうなんですが、これは密室で非常に巧妙に行われるということなものですから、なかなかいい証拠を手に入れるのが難しいという現実がございます。そのままにしておきますと、疑わしきは罰せずで、結局課徴金も何も取れないということになっちゃうわけなので、いかにきちんとした証拠を押さえるかということに各国は苦心しているわけですが、その中から編み出されたのがこの課徴金減免制度でございまして、この減免制度の枠をどの程度にするか、これは試行錯誤でといいますか、経験に基づいてやっていかなきゃしようがないと思うんですが、始めてから三年、三社でやってまいりました。

 しかしながら、先ほども出ました内閣府の基本問題懇談会等、それ以降の議論を踏まえて、もう少しふやしてもいいんじゃないか、これはやはり非常に効果があった、意外に効果があったという評価でございまして、それで、立入調査前には三社に限っていたのを五社にするのがいいんじゃないか、立入調査後、もう既に違反事実が当局にばれてから名乗り出た者に対して優遇することはない、こういうことで、今回、三を五にさせていただいたわけです。

 これからも、せっかくの課徴金の本旨がこの減免制度によって空洞化といいますか形骸化されないように工夫をしていきたいといいますか、制度を曲げるわけにいきませんけれども、そういうことについては、当局としても政策的な観点から関心を持って、どういうふうに利用されていくか、これからもよく見ていきたいと思っております。

河村国務大臣 ただいま公取委員長が答弁されたとおりでございまして、今回の改正に当たりまして、やはりカルテル、入札談合を効果的に摘発する必要がある、手口も非常に巧妙化している現状でありますから、この減免制度を活用して事件についての有益な情報を得るべきであろう、こういうことで五社にしていったわけでございます。

 特に、今、委員長からもありましたように、開始後の申請については三社までということで限定もいたしておりますし、これによって課徴金制度の抑止効果が弱まることはない、こうも考えておりまして、これによってさらに厳密に違反行為をきちっとした取り締まりができるように体制を強化する、こういう意味で今回このように拡大した、このように思っておるわけであります。

吉井委員 もう一度資料一に戻って見ていただくと、一番右端の欄に国際カルテルというのが出ておりますが、例えば三菱商事、二〇〇〇年一月には課徴金が百三十四億円ですね。これは国際カルテルの分です。課徴金を取られた金額ですね。それから、日立製作所も、国際カルテルの方では、ガス絶縁開閉装置は六十七億円ですね。それから、エルピーダメモリは八十四億円ですが、日立マクセルの方は十八億円を超えるもの。それから、次のページに参りまして、日立ディスプレイズで三十一億円。三菱重工が、これは国内の方ですね、きょう、三菱重工のごみ関係の判決がありましたけれども。全日本空輸が四十五億円。それから、東芝の方が国際カルテルで百十八億円。味の素が、これは二つ合わせると七十億円を超えるものになってきますが、ソニーが六十一億円とか、武田薬品が百二十億円とか、国際カルテルの課徴金は物すごく高いわけですね。つまり、誤りを犯す、経済犯罪を犯したときには罰も大きい。

 そういうことを考えることと、それから、ばれそうになるまではやっておいてというふうなやり方ですね。

 私は、官房長官はいらっしゃいませんでしたけれども、この間の委員会では板ガラスの問題を取り上げたんです。板ガラスなんかでも、国際カルテルで摘発されたのは、二〇〇七年十二月五日には、建設用板ガラスで日本板硝子が百八十二億円、それから昨年の十一月十二日には、自動車用板ガラスで旭硝子のイギリス子会社が百四十七億円、建設用板ガラスでは、日本板硝子が同じイギリスの子会社で四百八十一億円というふうに、やはり物すごいものを受けているんですよ。だから、金額の面で罰も厳しい。

 それから、ばれそうになってそれを名乗り出たら、例えば一番の首謀者がさっさと名乗り出たらその人は全額免除になるとか、やはりそういうあり方というのはリーニエンシー制度にそぐわないものではないかと思うんですが、官房長官、どうですか。

竹島政府特別補佐人 今、国際カルテルということで、日本企業がアメリカやEUから多額の制裁金なり罰金を命ぜられているという事例を出されました。

 確かに、欧米に比べて日本の課徴金水準は圧倒的に低いということは事実でございます。しかしながら、これは、各国においてどの程度の課徴金なり制裁金をかければ競争法というのが守られるのかということが一番大事なことでございまして、絶対水準を合わせるということが答えではないと私は思っています。

 したがって、日本においても、額は一けた、二けた違いますけれども、このように上げていくこと、また対象範囲を拡大することによって独禁法を守ろうという意識が高まる。高まらなかったらまた上げなきゃいけないということが将来あるかもしれませんが、そういうふうに物事を考えていく必要があるのかなと思っております。

 それから、リーニエンシーについては、これは国際カルテルになればなるほど、全部と言ってはなんですけれども、そう言っても過言でないぐらいリーニエンシーに基づいて解明をされているわけでございまして、非常に悪質な首謀者というような場合は先ほど申し上げたように失格するということもあり得ますが、幹事をやったぐらいでは、リーダー格の企業であっても名乗り出れば認められるというのがほかの国でも行われていることでございまして、これはその辺もよく考えて、悪用されないように。

 確かにそこを減免するのはコストですけれども、それによって大規模な事件が解明されることによってきれいになることのメリットの方がはるかに大きいということで各国ともやっているわけでございまして、日本でもそうだと私は思っております。

吉井委員 時間が参りましたので、質問を終わります。

東委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました独禁法一部改正案に反対の討論を行います。

 本改正案は、二〇〇五年改正独禁法の施行後二年以内に見直すとした附則に基づくものであります。改正案は、幾つかの点で評価できる改正が見られます。しかし、以下の問題点は重大であり、賛成することはできません。

 第一の問題は、附則にある本年度中の審判手続の全面見直しであります。

 これは審判制度の廃止を含むものとなっており、この間の見直しの経過及び内容からいって全く理解できないものであります。

 そもそも独禁法違反事件の行政処分に対する準司法的手続である審判制度は、独立行政委員会としての公正取引委員会の独立性、中立性を担保し、その権能、役割と密接に関係する法の根幹にかかわる制度であります。その存廃にかかる扱いは、極めて重大な問題であります。

 提案者である内閣官房長官のもとに、改正法の附則及び全会一致の附帯決議に基づき、二〇〇五年七月、消費者、産業界、学者、法曹関係者など国民各層の代表による独禁法基本問題懇談会が設置されました。本改正案のベースとなっている二〇〇七年六月の結論は、審判制度の維持であります。立法政策上とり得る三つの方式、選択肢を検討し、地裁への直接訴訟方式は明確に却下した上で、審判制度の維持を前提とした改革の提言であります。当時の公取委も、これを尊重すると基本的考え方を公表したのであります。

 それにもかかわらず、本改正案は、その結論を覆し、懇談会報告が否定した逆の方向に行こうとしております。

 審判廃止を一貫して最も強く要求してきたのは、日本経団連であります。しかし、その経団連傘下の日本を代表する巨大企業は、みずから、法令遵守をうたいながら、カルテル、談合を繰り返しております。それを裁く審判ルール、土俵の変更を迫る前に、まず、みずからの企業経営のあり方、企業倫理について真摯に正すことこそ、国民の理解を得る道であります。

 反対理由の第二の問題は、課徴金減免制度の拡充であります。

 カルテルはもともと数社による密室の謀議であるのに、これではカルテル参加企業のすべてが課徴金減免の恩恵にあずかることになりかねません。また、こうした拡充方向は制度創設の当時から経団連が要求してきたもので、みんなで渡れば怖くないということになりかねず、制度の趣旨を損なうものであり、賛成することはできません。

 以上申し述べて、討論といたします。

東委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、中野正志君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  最近の急激な経済情勢の変化に伴い、かつてなく中小企業者や下請事業者の利益が不当に害されるおそれが高まっていることにかんがみ、市場における公正な競争秩序を確保するため、政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 審判手続に係る規定については、本法附則において、全面にわたって見直すものとし、平成二十一年度中に行う検討の結果所要の措置を講ずることとされているが、検討の結果として、現行の審判制度を現状のまま存続することや、平成十七年改正以前の事前審判制度へ戻すことのないよう、審判制度の抜本的な制度変更を行うこと。

 二 公正取引委員会が行う審尋や任意の事情聴取等において、事業者側の十分な防御権の行使を可能とするため、諸外国の事例を参考にしつつ、代理人の選任・立会い・供述調書の写しの交付等について、我が国における刑事手続や他の行政手続との整合性を確保しつつ前向きに検討すること。

 三 不公正な取引方法に対しては、経済社会状況の変化を踏まえ、構成要件がより明確かつ具体的に示されるよう十分配慮しつつ、課徴金をはじめとする規制措置の積極的な運用を図ること。その際、下請関係を含め大企業者と中小企業者の間における公正な取引の確保及び中小企業者の利益保護に配慮すること。

 四 公正取引委員会事務総局の人員体制の一層の強化を図り、法曹資格者や経済学の分野において高度な専門知識を有する者等の登用を積極的に進めるとともに、公正取引委員会と関係省庁との緊密な連携体制を確立し、きめ細かく実態の把握に努めつつ、不当廉売や優越的地位の濫用等の問題行為を迅速かつ効果的に取り締まること。

 五 不公正な取引方法の差止請求における文書提出命令の特則については、事業者及び国民にその趣旨及び内容の周知徹底を図るとともに、民事訴訟を通じた救済の促進に資するため、当事者の負担軽減に向けた方策の検討を継続すること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、河村内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。河村内閣官房長官。

河村国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

東委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

東委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.