衆議院

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第13号 平成21年5月27日(水曜日)

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平成二十一年五月二十七日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 岸田 文雄君

   理事 櫻田 義孝君 理事 中野 正志君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      あかま二郎君    井脇ノブ子君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      川条 志嘉君    木挽  司君

      高村 正彦君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    平  将明君

      谷畑  孝君    中野  清君

      林  幹雄君    原田 憲治君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      武藤 容治君    安井潤一郎君

      太田 和美君    北神 圭朗君

      後藤  斎君    近藤 洋介君

      下条 みつ君    田村 謙治君

      牧  義夫君    三谷 光男君

      高木美智代君    吉井 英勝君

    …………………………………

   議員           高村 正彦君

   議員           額賀福志郎君

   議員           中野 正志君

   議員           梶山 弘志君

   議員           加藤 勝信君

   議員           寺田  稔君

   議員           谷口 隆義君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石黒 憲彦君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    長谷川榮一君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     井脇ノブ子君

  新藤 義孝君     あかま二郎君

  橋本  岳君     原田 憲治君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     新藤 義孝君

  井脇ノブ子君     清水清一朗君

  原田 憲治君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

五月二十五日

 中小業者の経営を守ることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第二五八三号)

 中小業者の仕事確保など暮らしと経営を守ることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二六四九号)

同月二十七日

 中小業者の仕事確保など暮らしと経営を守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七五〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第二七五一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二七五二号)

 コンビニ加盟店に対する不公正な取引を解決することに関する請願(金田誠一君紹介)(第二八四〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 中小企業者及び中堅事業者等に対する資金供給の円滑化を図るための株式会社商工組合中央金庫法等の一部を改正する法律案(高村正彦君外六名提出、衆法第二四号)


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     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 高村正彦君外六名提出、中小企業者及び中堅事業者等に対する資金供給の円滑化を図るための株式会社商工組合中央金庫法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省大臣官房審議官石黒憲彦君及び中小企業庁長官長谷川榮一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、中小企業の経営にとっての金融機関の役割というものについてまず伺いたいと思います。

 非常時の資金供給が重要なことは言うまでもありませんが、恒常的な資金調達を支える金融機関の存在なしにはやはり成り立たないと思うんです。民間金融機関の中小企業向け融資は大幅に減らされてきて、一九九八年の金融危機のときには貸し渋り、貸しはがしが横行しましたが、このときに中小企業の資金繰りを支えたのが、民間金融機関の貸し出しが減った分を特別保証とか政府系金融機関で補うことで危機を乗り越えることができたと思うんですが、最初に、これは中小企業庁長官に伺っておきます。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました平成十年あるいは十一年、今お話がございましたように、当時としては大変な金融危機というふうにあえて申し上げますが、中小企業の皆さんが資金の調達に大変御苦労されまして、国会も御決断いただいて、それ以前に比べますと異例な措置をとったのはおっしゃるとおりでございます。

 今お話がございましたように、政策金融機関、信用供与機関というものが大変重要な役割を果たした。私どもも、果たしていただきたいということで、当時、国会にも御理解、御了解をいただいて、そして予算も含めてさまざまな御決断をいただいたというのはおっしゃるとおりでございます。

 概して申し上げますと、経済状況が比較的順調なときには、民間金融の中小企業向け融資残高というのも、総じて申し上げれば伸びは正、すなわちプラスでございますが、景況が厳しくなりますと逆ということで、政策金融機関の出番が出てくるわけでございます。

 ただ、三点ほどちょっと申し上げなければいけませんが、まず第一に、今お話がございました信用保証、これは、貸出機関は民間の金融機関でございます。そういう意味で、民間の金融機関の機能というものを保証ということでいわばバックアップしながら、民間の金融機関というのがまるっきり引っ込むというわけではないというのが一つ。

 それから二つ目に、中小企業の皆さんがある種御利用しやすいといいますか、なじんでいるという点もあるかもしれませんけれども、総じて約二百五十兆円の残高がある中で、今なお民間金融機関の方から、保証なしの、いわゆるプロパー貸しというもので、おおむね八割、まだ御利用いただいているという現実がある。

 それから三番目に、当時は、中小企業でも比較的規模の大きい中小企業の方が資金の狭隘感が大変強かった。そしてそのときには、いわゆるBISの計算式に当たりまして信用保証協会の保証がつきましたものの、その算定の扱いにつきまして、今御指摘されたいわゆる危機時の途中からこれは改善をしたというようなことがございました。

 そういう意味で、今回と前回と、さまざまな違いあるいは違わない要素、それから、今回は前回の教訓を踏まえて対処をしているということにつきましては、よく子細に見なければいけない点もあるということを申し上げておきたいと思います。

吉井委員 次に、提案者の方に伺いますけれども、前回のこの委員会でも紹介しましたが、与謝野大臣が三月の予算委員会で、政策金融機関も不要だとか、いろいろそういう考え方があったんだけれども、これは間違いであったというふうに答弁されたことも紹介しました。

 中小企業者等への資金供給の円滑化のためには、今は、やはり商工中金を政策金融として位置づけ直して、むしろ強化を図る、このことが大事ではないかと思うんですが、お考えを伺っておきます。

梶山議員 政策金融改革の議論の中で、商工中金につきましては、政策目的の貸し付けを行う日本政策金融公庫との役割分担を明確にした上で、民間金融機関並みのフルバンキング機能を持たせて、完全民営化を進めつつ中小企業の利便性を向上させる方針が決定をされました。

 商工中金はこの方針を踏まえて、中小企業に対する事業承継支援、コンサルティングなどのサービスの拡充や新たな貸し付けメニューの創設に既に取り組みつつあり、顧客拡大にも力を入れているところであります。

 商工中金を主要取引金融機関としている中小企業等の数は約二万一千四百社ということでありますが、当面、足元の危機に対しまして量的補完で迅速に対処するとともに、中小企業向けのフルバンキングサービスを充実させていくことが中小企業への資金供給の円滑化につながるものと考えているところであります。

吉井委員 危機対応業務というのは、災害発生や経済金融秩序の混乱等の危機が起こった際に、資金繰りの円滑化を図るための仕組みとして、日本政策金融公庫の業務の特例として規定されていますね。主務大臣が危機認定した場合には、日本政策公庫からリスク補完を受けて指定金融機関が危機対応業務に当たるということになっておりますが、現在、指定機関は商工中金と政策投資銀行の二つだと思いますが、これも、この点の確認だけですから、長官に一言お答えいただきます。簡潔でいいですよ。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、現時点では、法律上指定されました二機関だけでございますけれども、あと民間の金融機関、なるべく多くあられた方が中小企業の皆さんの便宜にも資しますので、私ども、いろいろな形で照会、いわゆるお尋ねする、あるいはどうですかということでお話ししておりまして、民間金融機関の中には、反応について、多少温かいといいますか、前向きのあれもあるかもしれません。あるいは大変慎重なところもございます。

 したがいまして、今後ふえる可能性はないのかと言われれば、それはあり得るということも付言させていただきます。

吉井委員 要するに、商工中金と政策投資銀行はみなし指定金融機関とされて、危機対応業務を担うということが法定されているわけですね。

 民間金融機関は手を挙げれば今おっしゃったように指定するということですが、現状はどこも手を挙げていないわけです。なぜ手を挙げないのかといったら、やはり民間金融機関というのは危機対応業務をやりたがらないんですね。民営化に固執しながら、国策として商工中金に危機対応業務を担わせるというのはやはりおかしいと思うんですね。

 これは提案者に伺っておくんですけれども、この点では、行革推進法第六条、商工中金及び日本政策投資銀行は完全民営化するものということにやはり縛られ過ぎて、本来、国策として政策金融を強化する、商工中金を政策金融の要として位置づけて強化するということをやらなきゃいけないときだと思うんですが、なかなか皆さんのお考えではそうはなっていないのではないか。

 中小企業の資金供給の円滑化と言うのであれば、二〇〇七年十月に信用補完制度に責任共有名目で強行した部分保証の撤回とか、緊急保証制度の対象を、指定業種方式から、ネガティブなものを除く全業種に拡大するなど、法律改正しなくてもできるわけですから、やはりそういうところへこそ力を入れるべきだと思うんですが、これは提案者の方に伺っておきます。

中野(正)議員 商工中金は中小企業向け金融の円滑化を使命とするものでありまして、専ら政策金融を担う日本政策金融公庫と役割分担をしつつ、民営化を進めながら、先ほど梶山提案者からも答弁ありましたように、中小企業向けのフルバンキング機能を充実させていくこととしております。

 同時に、商工中金がいざというときに危機対応業務を担う、これは政策金融改革の中でしっかりと位置づけられておりますし、ちなみに、行革推進法の第四条四項に書かれておりますし、また商工中金法の附帯決議でも、その五項目目でその充実が要請をされております。今回の改正は、この危機対応業務を十全に実施していくための措置であることを御理解いただきたいと存じます。

 これらはいずれも中小企業金融の円滑化という商工中金の使命に照らして必要不可欠の機能であって、何ら矛盾をするものではないと私たちは考えておるところであります。

 以上です。

吉井委員 やはり行革推進法第六条をきちんと外して本格的に考えていかないと、この矛盾を解決することはできない、このことを申し上げて、本日は質問を終わりたいと思います。

東委員長 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日は、貴重な質問の機会をいただき、委員長、理事の皆様に感謝を申し上げたいと思います。

 このたびの商工中金法の改正、そして産業革新機構にかかわる新しい制度の法改正は、議員立法で提案をされておるわけであります。私は、これは閣法で出すべき筋合いのものであろうという指摘も十分わかるわけですが、議員立法という形で、ある意味で政治の判断で出されたということ自体は、これはこれで一つの考え方だろうと思いますし、与党におかれて判断されたということを多としたいと思うわけであります。

 ですから、そうだとすると、この質疑の場では、ぜひ御答弁者におかれましては政治家としての判断も示していただきたいものだな、そしてこの議論を通じて、議員立法でありますから、この審議を通じながら、よりよいものにつくっていくという姿勢もぜひ見せていただきたい、私どももそのような姿勢で質疑に臨んでいるということをまず冒頭申し上げたい、このように思うわけであります。

 まず、法案提出者にお伺いしたいわけでありますが、世界的に現在大変な不況に直面しているわけでありまして、とりわけ、いわゆる金融仲介機能というものが相当に傷んでいると認識をしております。我が国も例外ではないわけでありまして、こうした流れの中で、商工中金へいわゆる危機対応準備金を創設するということは、資本増強であります。そして、この産業革新機構への政府保証制度、出資というものを円滑に進めるための政府保証をつけるという制度も、こうした金融仲介機能が傷んでいるものへの対応策だというふうに認識しております。

 そこでお伺いしたいのですけれども、金融機関というのは必要なところに資金を出すという機能があるわけでありますけれども、いっときまでは、世界じゅう資金があり余ってしまって、資金があり余ってあり余って、どこに流れていいかわからない。穀物に流れ、原油に流れとあり余っていた資金だったわけですけれども、今や完全に資金ショートしておって、本当に資本が重要になっている。資金が重要になっている状況の中で、金融機関が本来の金融機能を回復するまで一体何年かかるんだろう、どのように認識されているでしょうか。政府は日本経済全治三年というふうにおっしゃっていますけれども、しからば、三年後には、民間金融機関によるいわゆる貸し渋りや貸しはがしといった言葉はこの日本国からはなくなると考えてよろしいのかどうか、どのように認識しているか、お答えいただけますか。

梶山議員 お答えいたします。

 昨年来の国際的な金融不安とこれに伴う景況悪化によりまして我が国経済は大変厳しいものとなっているのは、皆さん、認識を同じくしているところだと思います。

 こうした中で、与党・政府は、金融システムに加えて、我が国経済また社会が底割れするリスクを回避する観点から、経済危機対策において、数次にわたって資金繰り対策の強化を決定したところであります。この経済危機対策におきましては、先ほど委員からお話ありましたように、二〇〇八年度から三年以内、すなわち二〇一〇年度までに経済状況を好転させることを、政府と同様に目的としているわけであります。

 今回の法的措置はまさにこの対策を実施するためのものでありまして、今後の経済金融情勢が不透明である中で、企業が安心して経済活動を続けられるよう、当面の間は公的資金が前に出て、我が国企業の資金繰りを支えていく、量的補完によって支えていくことが必要と考えております。

近藤(洋)委員 今、梶山先生お答えいただいたように、大変な状況だから、当面の間、公的なものが前に出て行く必要があるからこういう政策をとっているんです、こういう話でありましたが、お答えにもあったように、すなわち、では三年後に、四年後に貸し渋り、貸しはがしがなくなりますか、こういったものはどうでしょうかということに対してはなかなか明確にはお答えいただけなかったと思うんですね。

 私、何でこんなことを聞いたかというと、要は、百年に一度の危機といいますけれども、これは期間が五年、三年過ぎれば簡単に回復するものではなくて、金融というものがやはり根本的に機能を再構築しないと、単純に景気が回復したから金融が生き返る、要するに、本来の金融仲介機能というか、必要なところにお金が流れるという仕組みはなかなか容易にできないと私は思っておるんですよ。何となれば、要するに、アメリカ型の証券化商品、すべてのものにお金をつけるような、ああいった金融システムをつくってしまったわけですから、人を見てお金を貸すとかそういった伝統的な金融というものをきちっと確保するということは容易じゃないと私は認識しておるんです。

 そこでお伺いしたいんですが、こういう観点から、私は、仮に、よしんば景気が多少回復しても、メガバンクが日本に三つある、地銀もある程度集約されて、これだけ集約された形になっている、信金、信組とそれぞれあるわけですけれども、しかしながら、公的金融機関、とりわけ直貸しをする公的金融機関の存在意義というのは明らかに高まる。少なくともこの数年間続けてきた自由化の流れとは明らかに、パラダイムというか方向感が変わったんじゃないか、政策が変わったんじゃないか、時流が変わったんじゃないか、このように認識すべきかと思いますけれども、法案提出者の認識はいかがでしょうか。

中野(正)議員 お答え申し上げます。

 政策金融改革は、先ほどもちょっと触れましたように、公的金融の役割を整理して、平時には、中小・小規模企業を視野に、あるいは海外資源獲得、産業競争力の強化等の観点に限定しつつ、危機のときには、状況に応じたセーフティーネット金融を提供することとしたものであります。

 現在は、お話がありましたように、国際金融不安に端を発するまさに危機時でありますから、公的金融が全力を挙げて我が国経済を支えることが重要であると思います。

 こうした観点から、政府・与党は、昨年来、保証、融資合わせて三十兆円規模の中小企業金融対策、四兆円規模の中堅・大企業金融対策に取り組んできており、今回の対策で、それぞれ、四十七兆円、二十四兆円規模に拡大することを決定いたしております。

 中でも、商工中金などの力をかりて政策金融を実施する危機対応業務は、今こそ力を入れて実施すべきときであります。御存じのとおり、商工中金は〇・五五兆円、政策投資銀行は一・二兆円の実績を上げておりますけれども、今回の経済危機対策では十三・三兆円規模に拡大することにいたしております。

 ちなみに、それぞれ商工中金の支店があるところには商工中金の会というお客さんの会がありますけれども、それぞれのお客さんの中でも、今までの都銀だ地銀だというより、民営化される商工中金で自分はメーンバンクとしてつき合っていきたいものだ、むしろその方が自分の企業にとってはいいと考えられる中小企業者も、このごろ、もしかして先生のお地元でもそうでありますし、私の仙台なんかでは殊のほか出てまいってきておりますことも付言をいたしておきます。

近藤(洋)委員 中野先生、そうだとすると、要するに確認でございますけれども、公的な金融機関の役割とか存在意義というのは、これからの日本経済の立て直し、危機対応としては重要だ、これはもうみんな認識しているところなんです。ただ、これからの日本経済の立て直しについても、存在意義はやはり高まっているという認識で中野先生はよろしいんでしょうか。いかがでしょうか。

中野(正)議員 よく民業圧迫とか、あるいは官業肥大といった批判が出てこないように私たちはしなければならないと思っておりますけれども、やはり平時において、公的金融が無制限に融資を拡大するということではなくして、創業だ、あるいは経営革新だ、あるいは環境・エネルギー関連だ、そういった政策目的の貸し付けに集中するということは大変理にかなったあり方だと私は思っております。

近藤(洋)委員 そこでお伺いしたいんですが、委員長のお許しを得て資料配付をさせていただいておりますが、この資料の一枚目、商工中金の財務基盤についてという資料をごらんいただければと思うんです。

 この資料にもございますとおり、今回の措置として、危機対応準備金一千五百億円を新たに積むといいますか、創設をするということでございます。商工中金の財務基盤は、平成二十年九月三十日時点は、民間出資約一千億円余り、政府出資四千億円余り、剰余金一千六百億円余りだったわけですが、これが新しい法律に変わって、民間株式、政府株式がそれぞれ一千百億円程度ずつ、そして特別準備金四千億円等々、このような形に変わっているわけであります。これに危機対応準備金が積まれた、こういうことであります。

 ここで、まず、事実関係なので中小企業庁長官にお伺いしたいんですが、今回政府が拠出する一千五百億円の危機対応準備金、また特別準備金の四千八億円のうち三千三十八億円は政府出資のお金ですね。ですから、これはある意味で国の、国民の財産であります。九百七十億円は剰余金でありますから、商工中金がさまざまな経営努力等々で稼いだというか、ためたお金だから、やや置くにしても、少なくとも特別準備金のうちの政府出資金の三千億円を足した部分、このお金は商工中金の完全民営化後は国庫に戻されるものなのか。要するに、国民にお返しいただけるものなのか、それともそのまま積まれておくものなのか、お答えいただけますでしょうか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のお尋ねにつきましては、まず物事の出発点は商工中金の使命でございまして、先ほど先生方から御答弁がございましたように、中小企業金融の円滑な実施の確保というのが、まずは発想の原点でございます。

 したがいまして、今お話がございました特別準備金の取り扱いにつきましても、商工中金が、与えられた使命を十分に行う上で財務基盤が十分に確保されているかどうかということの検証が必要でございまして、この検証の実施及びそれに基づいた判断は商工中金が主体的にするべきものであるというふうに考えております。

 危機対応準備金につきましても、今回お願いしているわけでございますので一応認められたという前提で御答弁申し上げますけれども、危機対応準備金につきましては、危機対応貸し付けに対応するための資本増強でございます。したがいまして、この危機対応貸し付けというのは民営化後にもなおずれ込む。と申しますのは、危機対応貸し付けで仮に期限五年ということで御融資をしても、さらに借りかえ、現実的にはこういった需要等々ございますので、そういう意味で、この危機対応貸し付けというものが民営化後にも続くということが十分考えられるわけでございます。

 そういう意味で、与えられます危機対応貸し付けを十全に行うために必要な準備金である以上、民営化後におきましても、危機対応業務を行っている限りは、商工中金がみずから判断をいたしまして、特にこれはティア1に位置づけられるべきお金でございますので、返還するかどうかということを適切に判断すべきものだというふうに考えております。

 なお、十全にこの辺の財務基盤ができたというような判断が適切かどうかということにつきましては、商工中金の判断を尊重しながら、国の拠出のお金でございますので、私どもも十分その点は御相談といいますか調整をしながら、商工中金がしっかりとした判断を自分でできるということを確保してまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 長官の御答弁によると、要するに、商工中金が判断をして、また自分で判断ができるような環境を整えなきゃいけない。そうすると、今は自分で判断できないのかな、こう思うんですけれども、自分で判断ができる環境を整えて自分で判断をしてもらうという御答弁でございましたね。

 ちょっと伺いたいんですが、では、民営化後の商工中金が自分で判断をして準備金を返還したいといった場合、全額でなくても、一部でもいいとは思うんですが、資本増強を新たに別の手段でしていくという判断をして返還したいといった場合は、政府は拒否をすることができるのでしょうか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 やはりその場合の判断の一番大事なことは、商工中金に与えられた使命、すなわち中小企業への資金の円滑な融通、それと危機対応貸し付けというものが、与えられた職責を商工中金が果たして十分にされているかどうかという点がポイントでございます。

 そういった観点から、商工中金の判断が、立派な機関でございますので不合理な判断をするというふうには私は思っておりませんけれども、政府がお金を出し、そして一般的な監督権を有しておりますので、商工中金の判断を尊重しつつ、おかしいというようなことがないように確保していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 長官、ちょっと済みません、よくわからなかった。

 要するに、拒否はできないということなんですか。どういうことなんですか。返すときは受け取れるんですか。

長谷川政府参考人 重ねてのお尋ねですので申し上げますが、拒否というお言葉を先生がお使いになりましたので、私どもは日本語でいう拒否というような状況が現出するとは思っておりません。拒否というのは、双方の意思が相当違っていて、あなたの判断が違うというのでノーと言う場合を拒否だというふうに私は理解しております。

 そういうことが起こらないように、かつその前提として使命を十分果たせるように、私どもは今の現行法では一般的な監督権が与えられておりますので、使命をしっかり果たしてくれと。その上で、商工中金がなお返還するという判断が、財務の基盤が十分に確保されて使命を果たせるということであれば、それはあり得ることだというふうに思っております。

近藤(洋)委員 何でこんなことを確認したかというと、要するに、商工中金の基本的な位置づけにかかわる問題ですから、あえて確認をしたんです。

 要は、やはり極めて商工中金というのは、御答弁にもあったように、民営化後も中小企業金融の中核を担う、これは法律にも書いているわけですから、中核を担うわけであり、かつ中小企業金融というのは、やはり経済政策の一つの根幹というか大事な部分なんですね。したがって、政府の意思というのを非常に受ける金融機関であるのが商工中金なんですよね。

 要は、それにもかかわらず一〇〇%株を放出するというふうに政府はいまだに言っているので、あえて申し上げたいと思うんですが、基本的に、一〇〇%株を売却した完全民営化後に、まず資本の大部分を占める準備金を返還するというのは、本来、経営の安定上も考えにくいことは事実です。

 だけれども、これは一方で、普通の経営であれば、大手の銀行がそうであるように、いや、中堅銀行もそうであるように、政府の出資金というのはできる限り返上しようというのが民間企業の当然の行動でもあるんですね。したがって、各大手金融機関なり中堅金融機関も、政府の資本注入というのをできるだけ、それは優先株であっても、早く返済しよう、早く返済しよう、このように行動するわけです。とりわけ準備金についてはこうした性格があるわけですから、できるだけくびきから解き放たれようと思って返還したいと思うのも、これは経営の思いとしては出てくるのが想定されるわけであります。

 なぜなら、この危機対応準備金が積まれている以上、それに相応した、比較的それに対応した、採算性のとれない危機対応業務からなかなか足抜けできないという状況にもなるからなんですね。要は、景気が回復した局面でも、どうしても厳しい融資を引き受けざるを得ないということになるから、商工中金経営陣は、本来、株主のことを考えて、経営のことを考えたら、この準備金を返上したい、こういうふうにくるわけですけれども、これが、今の御答弁のように、あうんの呼吸でなかなかしにくい環境にあることが完全民営化後でも明らかになっているわけです。

 だとすると、いわゆる完全民営化後の商工中金にあって、危機対応業務と経営というのは、やはり民間経営というのはどうしても二律背反するものが出てくると考えるわけですが、ここは、法案提出者、どのように整理をされておるのですか。

谷口(隆)議員 近藤先生のお尋ねでありますが、先ほどおっしゃった、長谷川長官の方からもお答えをいたしましたが、危機対応準備金は、民間でも公的資金を注入したところがあるわけです。それで、本来なら、資本に注入するというのが一般的であります。政投銀ではそういう形にしているわけですね。ところが、ダイリューションといいますか、五三%余りを民間株主が持っておるということでございますので、そのような希薄化を避けるという意味で、今回、危機対応準備金というものを設けたわけであります。

 そういう意味では、やはり民営化する場合には政府株を売却いたしますから、売却をして政府の出資分を回収するというのは一般的であります。危機対応準備金も、商工中金がしっかりと財政基盤が整った段階で、国庫に返還をしていただくというようなことは、そういう意味では整合的な考え方だと思うわけです。

 それで、今おっしゃったような、商工中金は公的な役割を担っております、先生のおっしゃるように。また、一方で、完全民営化を目指して、収益性をまた図っていかなければならない、高い収益性を得なければならない、こういうバランスを考えていかなきゃいかぬということは、先生のおっしゃるとおりであります。そういうこともございまして、法案の附則の第三条におきまして、今後の業務の状況等を見きわめた上で、検討を行って、必要な措置を講ずるというようなものを入れておるわけでございます。

近藤(洋)委員 先生御答弁のとおり、バランスが重要だ、そして、必要な措置を講ずることをしておるんだ、こういう話でありますが、そういうことであれば、ぜひまた改めてここの場でお伺いしたいんです。

 そこで、同じような完全民営化議論について、政投銀、政策投資銀行についても法改正が今議員立法で提案されて、財務金融委員会で審議をされています。こちらについては、やはり同じように、政策金融の意義、必要性にかんがみて、政府出資を一部残す方向で与野党間で修正の議論が進んでいるやに仄聞をしております。これはある意味では当然の帰結であって、まさにバランスでありますから、そのバランスをとるということから考えても、政府出資をある程度残すというのは一つの知恵なんだろう、私はこう思うんですね。

 ぜひお伺いしたいのですが、とりわけ中小企業のための金融機関として、商工中金というのは、業務がある程度枠がはめられており、かつ、株主も、基本的には中小企業者と関係者ということで株主制限も受けているわけですよね。ですから、極めて政策的な色彩の強い金融機関である。民営化企業のよさも経営の効率性も取り入れながら、かつ政府の政策の意思決定もある程度円滑に反映させるという意味においては、準備金というものが政府の出資であるけれども、これは返しても返さなくても、それは基本的には商工中金の意思で決まるものですね。だけれども、株は、売るか売らぬかは政府が決めることができるわけですから、持ち続けるというのは政府の意思で決めることができる。

 こういうものをやはり一部残すということは、バランスということからかんがみても、私は決しておかしな話ではない、いやむしろ、この時期においては残すということをきちんと明確にした方が、この時点において正しいのではないか、このように思うのですが、法案提出者、いかがでしょうか。

谷口(隆)議員 お答えをさせていただきます。

 商工中金は、今回完全民営化、もう既に民営化の手続に入っております。その段階で、既に、経営の自由度を高めるということ、例えば、預金は限定されておりましたけれども、この預金の受け入れについての制約も大分自由度が増しておりますし、員外貸し付けだとか組合員に対する一定程度の規制がありましたけれども、これも取り払われて、こういう観点では非常に経営の自由度が増しておるわけであります。

 そういう意味で、完全民営化の利益を享受しているという意味においては、この中小企業金融を旨とする商工中金は、私は政投銀が今どんな状況になっておるか聞いておりませんが、若干政投銀と異なるのではないかというように思っておりまして、我々は、完全民営化をやるべきということで、今させていただいておるわけであります。

寺田(稔)議員 今の御答弁に若干の補足をさせていただきます。

 御承知のとおり、今回の政策金融改革、この中小企業金融を担う分野として、日本政策金融公庫、これはかつての中小企業金融公庫あるいは環衛公庫、農林漁業金融公庫もございます、この部分と商工中金、この両者で担っていこうということであることは御高承のとおりです。

 商中については、この完全民営化という流れの中でフルバンキング機能を強化していく。しかも、既に過半数の民間株主がおられます。したがって、民間の公募増資の形で民間から資金調達をする、増資を行うということも可能になってくる。しかも、専ら政策金融を担う日本政策金融公庫、これの存在もあるわけでございます。したがって、政投銀と一律に論ずることはできないものと思料しております。

 商中については、先ほど梶山提出者からお答えしたとおり、中小企業の二万一千四百社を超える顧客がいるというふうな中で、足元の危機に対して量的補完でもって対応するとともに、中小企業向けフルバンキングをさらに充実させていくことが、中小企業の資金供給の円滑化と、そして利便性の向上につながるものと考えております。

近藤(洋)委員 私は、別に商工中金のフルバンキング機能を否定するつもりもないですし、どんどん機能を拡充されたらいい、こう思っているんです。

 ただ、言わんとしていることは、業務もある程度、中小企業金融の根幹の事業をやってもらうということで法律で明記されている金融機関であり、株主も中小企業関係者に限定されている金融機関ですよね。かつ、これだけ実態的には危機対応準備金というものをずっと積まれ続けている金融機関ですよね。この金融機関が政府と連携をしてより機能を発揮するためには、三分の一でも二五%でも構いませんが、私は、政府出資を残すということをきちっと明確にした方がはっきりしてわかりやすい。なぜ、完全に一〇〇%株を売ることにそこまでこだわりになられるのか。

 私は、これは政府のメンツという話じゃないと思うんですね。これは別に、政策というのは時として変わっていくわけでありますから。この民営化を議論したときには、我々も賛成をいたしました。我々も賛成したんですよ。あのときには、やはりこういったサブプライム問題だとか、ここまで金融が傷んでいるとか、こういった問題は想定していなかったわけです。だけれども、ふたをあけたらこんな状況になっていたということが明らかになったわけですから、ここはそういった道を残すということを、それこそ政治の、だから議員立法で出されたんじゃないんですか。政府の閣法だったら、なかなかこれは容易じゃないですよ。だから議員立法で出されたんだと私は解釈しているんですね。ですからこの議論をさせていただきたい。

 民営化の予算なりフルバンクのこと、これまで与党の先生方が議論されてきたこと、我々がこの経産委員会で議論してきたことを何も全面否定するわけじゃないんです。道を残していこうじゃないかと。そして、そのことが商工中金の経営の現場にとっても逆にプラスになる、私はこう思っているから主張をしているわけであります。

 再度伺う前に、中小企業庁長官、こういう中途半端な状況が続いて、果たして、私が商工中金の現場の職員なり経営陣、中間管理職だったら、あっ、政投銀は政府が三分の一残ったな、商工中金は、仮に今の議員立法のまま通ったとしても、いずれ政府出資が残るのかな、その道が六割、七割ぐらい高いんじゃないかな、こういうふうに思いますね、はっきり申し上げて。だって、ただでさえ準備金も残っているわけだし、これはどう見ても、逆に政府出資が最終的には残るんじゃないかなと疑心暗鬼に私は思う。

 ですから、こういった中途半端な立法が逆に起きた場合、商工中金の現場なり、民営化、政府は現在そういう立場でしょうから、仮に完全民営化を進めるというのであれば、この三年間、具体的にどういう民営化プロセスを組むタイムテーブルをつくられているのか、それとも完全に凍結されるのか。凍結した結果、私は、現場に対する大変な逆の意味でのマイナスの影響があるかと思いますが、それらについて中小企業庁長官はどのように認識しているのか、お答えください。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、商工中金のガバナンスについてでございますが、これは商工中金に限ったことじゃないわけでございますけれども、公的機関のガバナンスというのは、私ども、国会から権限を許されて、法律をいただいて監督をできるというやり方、それから、今御指摘ございましたように、政府が株式を持って、株主として意思決定に参画するというやり方、いろいろあると思います。

 商工中金も今は株式会社でございますので、株主の方が御自分で意思決定をされて、そしてそれを政府として、こういう言葉がいいかどうかわかりませんけれども、本来の使命からしていささかどうかなというときに申し上げる、あるいは極端な場合は監督権となると思います。したがいまして、中小企業のために中小企業の方が株主になる、株主は中小企業の方に限定するというのは、現行法及びこれまでの審議からしても、基本的にはそういう理解だと思います。

 したがいまして、株主である中小企業の方が一次的に御自分で御自分たちのガバナンスをした上で、それで政府が、あるいは国がそこにどういうような関与をするかというやり方も十分あるんだと思っています。

 現実論に戻しますと、今は制度的には株式の売却というのは行っても違法じゃないわけでございますけれども、こういうような厳しい業況でございますし、今、政府株式を売ることが甚だ困難だということで、当面はとまるんだと思っております。そして、今御指摘ございましたように、いろいろな状況の変化があるだろうということでございますので、今回、提出者の先生方から御提案いただいて、御審議いただいておりますこの法案の附則の第三条に、先ほど御紹介ございました「検討」という条文があるわけでございます。

 現場職員はどうかということでございますけれども、現場職員は、民営化として、その方向にあることを前提に、さまざまな機能の拡充、自由化ということを、先ほど御答弁がございましたようなことを進めております。それでもなお、経済の情勢が変わりますので、いろいろと大変な局面は現場の方にはあるんだと思いますけれども、そこは、商工中金の職員は中小企業のためにしっかり仕事をするという高い使命意識を持っておりますので、そういった困難は乗り越えて、国会等々からお許しをいただいた範囲で使命を十全に果たすということで対処しているものだと承知しております。

近藤(洋)委員 長官はそういうふうに答えざるを得ない、こういうふうに思いますので、別にそれ以上の答えをもう望みませんが、私は大変混乱をすると思いますね。片っ方で、同じ政府系金融機関で二つに対応が分かれるというのは、それぞれの金融機関の性格は違うというのは承知した上で、やはり現場ではそういうふうには受けとめないということは指摘をしておきたいと思います。

 また、きょうはまだまだ議論が深まるところでしょうから、与党の先生におかれましては、政府出資を残すという道をこの場で、この時点で明確にするということは、私は、前に進めるという意味で、これは決して後退ではなくて、前に進める、新しい時代に対応したんだということであるという観点から、ぜひ引き続き与野党間での協議を進めていただきたいということを申し上げたい、このように思います。

 次に、産業革新機構についてお伺いをしたいと思うんですが、本法案では、新たに政府保証枠、補正予算で八千億円、金融機関から株式会社産業革新機構が借り入れる場合に政府保証をつけるということが盛り込まれておるわけであります。

 このスキームですけれども、前回の改正案、政府提出法案の際には、どちらかというと、産業革新機構が出資するのはベンチャー支援、新たなイノベーションを起こすということの創設でありましたけれども、しかしながら、今回の政府出資の保証枠八千億円というのは、この経産省の説明資料にもこう書いているんですね。収益が悪化する中、技術、事業の選択と集中を迫られている、これを放置しておくと、これまで蓄積していた技術、ノウハウが散逸するおそれがあると。要するに、こういった技術の選択と集中を応援するためにこの八千億円という大きな枠をつくった、こう書いているんですね。

 すなわち、事業再構築の支援は、今度は、経営が悪化した企業の救済策だ、こういう色彩が非常に色濃くなったと考えますが、法案提出者、いかがですか、こういう認識でよろしいですか。

梶山議員 産業革新機構は、当初から、三つの類型に対して投資するものと想定をして国会でも審議をされてきております。一つ目が事業化の初期段階、ベンチャーのようなものでありますけれども、二番目が事業の成長段階、そして三番目が事業の再編段階ということで、この三つの類型で想定をしてきておりまして、すべての事例に当てはまるわけではありませんけれども、一番目の事例に関しましては、金額としては大体数億円程度、二番目の類型に対しましては数十億円程度、三番目の類型に対しましては大体数百億円程度の規模が予想されるのではないかと思っております。

 このうち、第三番目の類型の大型の案件が出てくる可能性が増大をしてくることに今回の改正は対応するものでありまして、この第三番目の類型で、例えば水市場において、大企業等に埋もれていた膜技術、水処理装置や水道事業の経営ノウハウなどを切り出して、統合して新会社をつくるような前向きな事業再編型事業ということで考えておりまして、機構の趣旨を変えるものではないものと思っております。

 また、産業革新機構が支援決定に当たって従うべき支援基準として、投資対象になる企業等の事業活動に将来性があり、新たな付加価値の創出につながること、そして二つ目として、投資決定後、一定期間後に取得した株式等の売却による資金回収が見込めること、三番目として、投資事業全体として長期的な収益性が確保されること等が想定をされておりまして、機構が経営の悪化した企業の救済を行うことにはならないものと思っております。

近藤(洋)委員 そうすると、この新しい政府保証の枠組みは、本来退出すべき事業であるとか企業を温存するための制度ではないということでよろしいですか。

谷口(隆)議員 おっしゃるとおりであります。

 これは、先ほど梶山提案者がおっしゃったように、企業や大学などに分散した技術を集約する新事業に対する成長資金として供給するものでありまして、後ろ向きの資金でいいますと例えば政投銀だとか、もっと抜本的にやらなきゃいかぬものは企業再生支援機構だとか、そういう立て分けをいたしますと、今回の産業革新機構は、非常に優秀な技術を持った将来性のある企業、長期的に収益が認められるというようなところに投資をするということであります。

近藤(洋)委員 そうであればいいな、こう思うわけでありますけれども、ここの経産省の文言にも、何となくにじみ出ているんですよね。放置しておくと技術、ノウハウが散ってしまうと、非常に微妙な表現なんですけれどもね。もちろん前向きではあるんですけれども、このままだと企業全体が、まあ難しいんです。ある総合企業がありました、幾つかのいい技術はあります、だめな技術もあります、だけれども、だめな技術でもB社とくっつければよくなりますと。それはある意味では、本来なら沈み行く総合会社を切り分けることで救うという結果になるわけで、表向きはAとBの会社の技術を組み合わせることで新たなイノベーションという形で看板はできるんだけれども、実は結果としては、本体の総合会社を救うということになるわけですよね。ですから、線引きというか、将来性とは何ぞやとかいうものが非常にこれはなかなか難しいな、こう思うわけであります。

 そこで、お伺いしたいんですが、この出資の具体的な判定はだれがするのか。革新機構の革新委員会でというふうに聞いていますが、それでよいのか。あともう一点、この決定の最終責任者ですね。株式会社革新機構の社長さんなのか、それとも経済産業大臣なのか、所管大臣なのか。最終責任者、決定者はだれがやり、そして最終責任はだれが負うのか、法案提出者、お答えいただけますでしょうか。

加藤(勝)議員 もともと、産業革新機構は既にあるものが前提でありますから、私どもの認識を申し上げたいと思います。

 まず、産業革新機構が支援決定を行うに当たって従うべき支援基準は経済産業大臣が定める。そして、その支援基準につきまして、投資対象となる事業について、社会的ニーズに対応していること、その市場に成長性が見込まれること、事業形態の革新が認められること、また機構の業務期間全体について収益を確保する、こういったことが現段階で想定されているところでありますが、そうした基準に沿って、個別の支援対象の最終的な決定は、産業革新機構の代表取締役や社外取締役が構成員となる産業革新委員会が行うこと、こういうふうにされているわけであります。

 しかし、そこに全くお任せということではないわけでありまして、経済産業省として、個別の案件についても、これは必要に応じ意見を述べるにとどまるということになると思いますが、ただ、全体として、機構がオープンイノベーションを推進するための組織として置かれているわけで、その政策目的をきちんと発揮していただけるように、その監督責任あるいは個々の政策の説明責任というものは経済産業省が負うもの、こういうふうに認識をしております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 具体的な選定は産業革新機構の中の革新委員会である、最終責任も、基本的には、認識としては革新機構だけれども、説明責任等々は経済産業省も負う、こういう御認識であるということでございますね。

 そこでなんですが、経産省にお伺いしたいんですけれども、こちらにも書いているとおり、まさにこの八千億円、我々は、二千億円では果たしてどうかということを、もっと多くやってもいい、やるべきだという主張もしてまいりました。ただ、今回のこの制度というのは、やはり明らかに、これだけ企業業績が急速に悪化しているわけだから、事業再編が非常に起きてくる、したがって、日本の技術をきちんと守らなきゃいけない、日本の産業の競争力をきちんと維持しなければいけない、そのためにもよい事業再編をしなければいけないということで八千億円という大きな枠をとったわけですよね。

 そうだとすると、私は、最終責任はやはり経済産業大臣だ、こう思うんですね。ここをきちんと、最終責任は、所管大臣でもいいんですが、航空業界だったら国土交通大臣、海運だったら同じ国土交通大臣が所管大臣だと思うんですけれども、一般の産業であれば経済産業大臣。産業の競争力を維持ないしは強化するという目的であるとするなら、やはりここは明確に、最終責任は閣僚がとる。

 そして、その上で、さて経済産業省の関与についてなんですが、もっと経済産業省が深くかかわった方がいい、いろいろ微に入り細に入り現場を認識しているのは、経済産業省もかかわっているんだから、積極的にかかわれという意見もあるし、一方で、いや、もう一切経産省はかかわらずにプロ集団に任せた方がいい、最終責任は閣僚が負う、だけれども、事業の選定等については完全にプロ集団に任せた方がいい、どちらか明確にした方がいいというそれぞれの意見があるわけであります。

 何でこんなことを言うかというと、かつての産業再生機構のときに、この線引きが不明確な点がございました。ある案件をめぐって、産業再生委員会というか機構と経済産業省本省との意思の疎通が違って、再建をめぐって意見が違ったということが報道されたこともございました。こういうこともえてして起こりやすいので、ここは明確なルールをきちんとつくっておいた方がいいのではないかという指摘もありますが、経済産業省はどのように認識されていますか。

石黒政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、機構の運営につきましては、まず、専門家の知見を活用することが重要だというふうに認識をいたしております。そういう意味で、個別の支援対象の決定につきましては、今、加藤議員の方から御説明がございましたが、専門性、客観性、中立性が担保されるよう、技術、経営、法務、会計といったような専門家によって構成されます産業革新委員会が行うというのがまず一義的な整理でございます。

 ただし、産業革新機構は、単純に営利事業を行うというものではございませんで、オープンイノベーションの推進という産業政策の実施を担っております。法律上も、経済産業大臣は、個別の支援対象の決定について、必要に応じ産業政策の観点から意見を述べることができるとされております。投資額の大きな再編のようなケースにおきましては、特に産業政策的な意義の評価というものにつきましては、重く評価されるべきものというふうに考えております。

 ただし、これに加えて、ビジネスとして本当にうまくいくのかどうかといったような判断は、別途、どぶにお金を捨てないという意味では重要でございますので、そこは専門家にいろいろとチェックをしていただくということでございます。

 その上で、事後的にも、経済産業省は、機構の業務の実績について政策評価を行いますし、取締役の選解任を通じまして、機構の業務の収益性を確保しつつ、機構がオープンイノベーションの推進という政策目的を実現するべく監督責任と説明責任を果たしてまいりたい、かように思っております。

近藤(洋)委員 大変ここは難しい問題であります。私も、どれがいい解なのかというのは正直わからぬわけでありますが、ただ、はっきりしているのは、最終責任はやはり閣僚が負うということを実は明確にした方がいいと思うんですね。その上で、どういう手だてをとるかということだろうと思うのであります。

 最後の質問でありますけれども、この事業再編、再生に当たっては、基本的には、やはり大きな企業が対象になろうかと思います。その場合の経営に対する責任というか、モラルハザードを防ぐためにどのような措置を講ずるか、講じたらいいか、現在与党法案提出者はお考えなのか、お伺いしたいと思います。

 というのも、アメリカでさまざまな金融機関に対する救済策が行われました。これは出資でなくて融資です。ところが、融資にもかかわらず、大手金融機関の巨額な退職金に化けてしまったということで、大変な問題になっているわけですね。今回は出資ですから、さらに一歩踏み込むわけであります。

 ですから、そうした部分のきちっとしたけじめ等々、日本人の美風に照らせば、アメリカ人のようなと言うと大変問題がありますけれども、かの国のようなことは起こらない、日本の経営者はそういうことはないと信じたいわけでありますけれども、しかしながら、この点についてどのような対策を与党法案提出者としてお考えなのか、最後に伺って、質問を終えたいと思います。

寺田(稔)議員 お答えをいたします。

 この産業革新機構は、まさにオープンイノベーションを担う、新たな付加価値の創出に対する支援の取り組みのスキームであることは委員御高承のとおりでございます。したがって、その支援対象というのは、前向きな事業再編を行う、新たな事業を行う企業あるいはその集合体であり、債権放棄を求めるようなものではないため、当機構として経営責任を問うというふうなことは想定されないわけであります。

 ただし、この機構が投資を行う際には、投資先企業の適切な経営が図れるように、株主として、他の民間出資者とともに積極的に経営に関与してまいる所存でございます。

近藤(洋)委員 時間ですので、終わります。

東委員長 これにて近藤洋介君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三分散会


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