衆議院

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第7号 平成23年4月27日(水曜日)

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平成二十三年四月二十七日(水曜日)

    午後零時三十二分開議

 出席委員

   委員長 田中けいしゅう君

   理事 石関 貴史君 理事 楠田 大蔵君

   理事 後藤  斎君 理事 近藤 洋介君

   理事 谷畑  孝君 理事 西村 康稔君

   理事 佐藤 茂樹君

      緒方林太郎君    金森  正君

      川口  博君    川島智太郎君

      木村たけつか君    櫛渕 万里君

      熊田 篤嗣君    斉木 武志君

      斎藤やすのり君    柴橋 正直君

      白石 洋一君    杉本かずみ君

      菅川  洋君    田嶋  要君

      平  智之君    高松 和夫君

      中山 義活君    橋本  勉君

      花咲 宏基君    山本 剛正君

      吉田おさむ君    梶山 弘志君

      近藤三津枝君    齋藤  健君

      高市 早苗君    橘 慶一郎君

      西野あきら君    額賀福志郎君

      望月 義夫君    稲津  久君

      吉井 英勝君    山内 康一君

      園田 博之君

    …………………………………

   経済産業大臣       海江田万里君

   経済産業大臣政務官    田嶋  要君

   経済産業大臣政務官    中山 義活君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            遠藤 俊英君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井内 摂男君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          安達 健祐君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     寺坂 信昭君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    高原 一郎君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            伊藤  仁君

   参考人

   (株式会社サクラクレパス代表取締役社長)     西村 貞一君

   参考人

   (東京大学大学院経済学研究科准教授)       大橋  弘君

   参考人

   (野村ホールディングス株式会社常務執行役員)   永井 智亮君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十七日

 辞任         補欠選任

  池田 元久君     金森  正君

  斉木 武志君     菅川  洋君

  橘 慶一郎君     吉野 正芳君

  西野あきら君     齋藤  健君

同日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     池田 元久君

  菅川  洋君     斉木 武志君

  齋藤  健君     西野あきら君

  吉野 正芳君     橘 慶一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する西村康稔君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。

 本日は、原案及び修正案審査のため、参考人として、株式会社サクラクレパス代表取締役社長西村貞一君、東京大学大学院経済学研究科准教授大橋弘君及び野村ホールディングス株式会社常務執行役員永井智亮君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、大変御多用のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度挙手で委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず西村参考人にお願いいたします。

西村参考人 大阪商工会議所で副会頭を務めております西村と申します。

 まず、大阪、関西における中小企業の景況と今回の震災の影響についてお話をいたします。

 東日本大震災の直接、間接の影響が大阪、関西にも及びつつございまして、特に上半期の景気へのダメージは避けられないものと考えております。とにかく、業種や規模を問わず、代替部品の調達難や原発問題に伴う風評被害に悩む声が聞こえております。また、春の旅行シーズンや新製品投入時期にもかかわらず、幅広い分野での消費低迷も懸念されております。

 こうした状況では、各企業は、なかなか先が見通せず、経営計画の抜本的な見直しが避けられない状況にあると存じます。もっとも、会員企業からは、被災地の代替生産を海外に逃がさず、何とか西日本が肩がわりできないかとの声も聞いておりまして、震災の直接被害を受けていない大阪、関西初め西日本で国全体を支えていかなければならないと改めて感じているところでございます。

 さて、本題に入りますが、中小企業経営者の高齢化が進展しているのは御存じのとおりでございます。もちろん、次の世代へバトンタッチをする場合、親族内での事業承継がまだまだ多数であるのですが、親族内で後継者を見つけることができず、従業員の中にも適任者がいなくて、ずるずると時間を費やしてしまい、結局は廃業せざるを得なくなるケースが少なくないと存じます。

 大阪商工会議所では、平成二十二年度に事業承継についての専門相談窓口を開設し、年間五十件ほどの相談をお受けいたしました。相談に来られた企業の四分の三は後継者が決定しておりましたが、残りの四分の一は、後継者が未定である、あるいは不在であるといった企業でございました。こうした企業のうちの何社かが、最終的に後継者を見つけることができずに廃業せざるを得なくなるのではと懸念いたしております。

 もちろん、時代のニーズに合わず市場から退場せざるを得ない場合は仕方がないのですが、そうでないケースもございます。平成二十一年に国の委託を受けて事業承継に関する調査をいたしました。その中で、事業を承継する上での悩みを中小企業経営者に聞いたところ、後継者が未熟で経営を任せられないが三割、後継者が見つからないが三割で、つまり、六割の中小企業経営者が、適切な後継者が見つけられないことが一番の悩みであると答えたという結果が出てまいりました。バトンを渡す者を探すということは、多くの中小企業にとって非常に悩ましいことであろうと考えております。

 我が国の高度成長期に創業し、これまで日本経済の基盤をしっかりと支えてきた中小企業が、今ちょうど世代交代期を迎えております。その中小企業が、事業承継の場面でバトンを渡す者がいないために経営を続けられなくなるということは、従業員の雇用や経営のための資産が失われ、地域経済にとって大きなマイナスであろうと考えております。

 他方、このような厳しい状況の中にありましても、意欲のある中小企業は、自社の経営基盤を拡大強化するため積極的な事業展開を行っております。その中には、自社の独力ではなく、他社を引き継ぐ形で新分野や他地域へ進出したいというニーズを持った企業もございます。

 後ほど御紹介させていただく大阪商工会議所のMアンドA支援事業におきましても、そのようなニーズ、御相談が継続的に相談窓口に寄せられております。もっとも、こうした新しい事業展開を考えている企業と後継者のいない悩みを持つ中小企業がうまく出会う機会は、まだまだ少ないものと考えております。

 先ほど申し上げました事業承継についての専門相談窓口に、以前、親族も従業員も承継しないので企業を引き取ってくれる先を探してほしいとの相談がございました。従業員十数名の個人事業でありましたが、まだまだ可能性があると考え、後ほど御紹介いたしますが、大阪商工会議所が運営しておりますMアンドA支援事業を活用して相手を探しているところでございます。

 これは、事業の引き継ぎに向けての支援が順調に推移している例でございますが、我々のような事業の引き継ぎを手助けするような支援機関がないと、結局は廃業という選択肢を選ぶしかなくなってしまうと思っております。

 中小企業の事業の引き継ぎは、規模が小さくても可能性のある企業については積極的に支援を行い、価値のある企業を廃業に追い込まないようにすることに意義があると考えております。

 先ほどから申し上げております事業承継の専門の窓口相談では、スムーズな事業承継が行われるように、つまり、事業承継をきっかけに経営がおかしくならないように、親族内承継や従業員による事業承継に加えて、取引先による事業の承継や一般的なMアンドAなどについての相談をお受けして、相談内容の課題整理と簡単なアドバイスを行っております。

 さらに、突っ込んだ支援が必要な企業に対しては、大阪商工会議所のMアンドA事業につないだり、他の中小企業支援機関とも連携して、できる限りの橋渡しを行っております。

 後継者問題を抱える企業の情報というのは、会社内でも公になっていないケースがほとんどでございます。そのため、表面にあらわれていない対象企業の掘り起こしには極めて慎重かつ丁寧な取り組みが求められております。また、事業承継というのは、経営者にとって日常的マネジメント分野ではございませんので、橋渡しの初期段階から常にきめ細かなサポートも必要でございまして、これらに対する政策的支援というものが不可欠であると考えております。

 ここで、大阪商工会議所が行っております中小企業のMアンドA支援事業を簡単に御紹介させていただきたく存じます。

 大阪商工会議所では、平成九年四月に、公的機関としては全国で初めて中小企業の友好的なMアンドAを支援する、企業名匿名方式による非公開企業のMアンドA市場を創設いたしました。

 この事業の概要でございますが、大阪商工会議所がMアンドAに関する常設の相談窓口を構え、商工会議所の担当者が秘密厳守で企業からの初期相談に対応した後、正式申し込みがあれば本事業で提携しているMアンドA仲介機関の審査につなぎます。仲介機関の実務家が企業の実態などを把握した上で、MアンドAがうまくいく見込みがありそうと判断して審査に通りますと、その企業の仲介実務を行う担当業者が決まり、以後はその担当業者が企業評価や買い手候補先の探索、マッチング、交渉に関するアドバイスなど、もろもろの実務を行い、成約に結びつけていくというものでございます。

 提携しているMアンドA仲介機関は、金融機関やMアンドA専門会社などで、現在は七社と提携して運営いたしております。

 MアンドA支援事業の実績でございますが、平成九年四月の事業開始以来、後継者難などを理由として、会社や事業の譲渡を希望する企業からの申し込みが累計で百八十四社、一方で、既存事業の拡大や新規事業展開などの目的により、譲り受けを希望する企業からの買いニーズ登録が三百五十九社あり、それらの中からこれまでに累計二十七件の成約が誕生いたしております。

 成約した企業の経営者からは、後継者難で悩んでいたが、よい相手に会社をそのまま引き継いでもらうことができてよかった、取引先や従業員に迷惑をかけずに済んだと大変喜ばれており、また、会社や事業を引き継いだ側の企業からも、自社の事業を効率的に拡大発展することができたといった声が寄せられております。

 大阪商工会議所では、今御紹介させていただきましたような取り組みを十年以上にわたって行ってまいりましたが、会社や事業の引き継ぎに関する中小企業の潜在ニーズはかなり多いと認識しており、それらの広範なニーズに的確に対応し切れていないというのが実情でございます。

 そのような中、今回、事業引き継ぎに関する取り組みを国が全国に展開していかれるということは、事業を引き継いでほしい企業、事業を引き継ぎたい企業の双方にとって力強い支援になるのではないかと考えております。既に中小企業のMアンドA仲介を行っている民間企業などの取り組みとも連携し、相互の資源を有効に活用し合いながら、より効果的な支援が実施されますことを期待しております。

 また、このたびの法改正では、事業引き継ぎの支援体制を整備することに加えて、信用保険法の特例などの金融支援措置、許認可の承継円滑化など、事業を引き継ぐ側にとって有用な措置が盛り込まれているという点が高く評価できます。これらの総合的な取り組みにより、少しでも多くの中小企業が廃業や倒産といった最悪の事態を免れて、雇用や技術など地域の貴重な財産が維持、確保されることを切に願っている次第でございます。

 私の発言は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、大橋参考人にお願いいたします。

大橋参考人 このたび、このような場で発表させていただく機会を賜りまして、まことにありがとうございます。東京大学経済学部の大橋と申します。産業経済という分野を専門としております。

 いただきました貴重な時間を使いまして、今回の法律の改正案で取り上げられている論点のうち、産業再編にかかわるものを中心に、日ごろ愚考しておるところを述べさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、要点から申し上げたいと思います。

 産業再編、とりわけ企業合併は、競争政策と呼ばれる分野の領域でございます。この競争政策においては、消費者のデメリットとなるような企業合併は承認しないという形で運用がなされております。しかし、この競争政策の運用は、ややもすると消費者のメリットを近視眼的に評価する傾向があるのではないか、長い目で見たときの消費者のメリットを考慮していないのではないかという批判は昔からなされておりました。

 具体的に申し上げますと、企業合併によって価格が低下するかどうかといったような側面は、よく精査して合併を評価しているというふうに思われますが、例えば合併することによる企業側のメリット、あるいは、企業側のメリットから生まれる研究開発の意欲、イノベーションの恩恵や国内における生産拠点の確保といった長期的な視点が実質的に欠落している可能性があるのではないか、そのような批判がこれまでなされてきたのではないかと思います。

 もっとも、こうした長期的なメリットを考慮しないことの弊害というものは、これまで余り顕在化しておらなかったのではないかと思います。しかし、静かな形で確実に我が国における企業体力や経済力を奪ってきたのではないかとも他方で思っております。そして、リーマン・ショックに続く経済低迷を経て、この長期的な観点を考慮しないことの弊害というものがいよいよ看過できなくなってきたというのが、我が国の足元の状況ではないかと思います。産業再編や企業合併に対してバランスを取り戻すためには、合併規制に産業政策的な観点を取り込んでいくことが一つ重要な課題ではないかと思っております。

 後ほど御紹介しますが、企業合併規制については、我が国のみならず、海外、例えば米国においても、その運用に変化の兆しが出ていると言われております。我が国においても、世界的な流れの中でこうした問題を考えていくいい機会ではないかというふうに考えております。

 競争政策や企業合併についての規制について、我が国における変遷を時間軸の中で概観してみたいと思います。

 産業再編という言葉が今日のように大きく世論を騒がせた時期が、実は半世紀前の六〇年代にございました。当時、我が国は、IMFやガットへ加盟したことから、関税や為替規制などの保護障壁を撤廃する必要が生じました。しかし、保護障壁を撤廃すれば、海外企業との激しい競争に直面することになる。そして、海外企業と伍していくためには、合併や再編を進めて企業規模を大きくすべきだというような主張が出てまいりました。こうした合併を推進するのが産業政策と呼ばれるものでございます。

 他方で、規模が大きくなると企業は価格を引き上げたり製品の品質をあえて落としたりするんじゃないか、だから規模を拡大するような合併というのは社会的に認めるべきではないのではないかという意見がございました。これが競争政策的な考え方ということになります。

 鉄鋼や製紙産業における大型合併では、この産業政策と競争政策とが当時鋭く対立いたしました。なお、六〇年代当時、多くの経済学者が、つまり、私から見ると上司のそのまた上司に当たるわけですけれども、そうした大先輩の経済学者は競争政策を後押しするというような活動をなさっていたものというふうに思います。

 六〇年代においては、競争政策を推し進めて競争を促進し、価格の低下を促しても、海外に事業展開するような企業はいまだ少なく、国内における生産拠点はきちんと確保されておりました。しかし、その後、我が国の経済環境は大きく変化いたしました。一つの大きな変化は、一九八五年のプラザ合意とその後のたび重なる円高の影響だと思われます。今や日本の企業の多くが海外展開を推し進め、例えば電機産業においては、ほとんどの日系企業が海外のどこかに現地法人を持っているのではないかと思います。また、輸送技術も非常に発達し、さまざまな商品が海外から安価で簡単に輸入できるようになりました。

 こうした中で、国内産業を育てるという視点を持たずに、短期的な消費者のメリット、つまり合併によって価格が下がるかどうかというような視点のみで産業再編にアプローチすると、ひょっとすると、海外から安価な商品を輸入した方が、国内企業から同じ商品を調達するよりも効率的だから、我が国の企業は国内で供給してもらわなくてもいいのではないか、極端には、国内に産業がなくなっても構わないという結論になる点を非常に危惧しております。

 短期的な消費者メリットは引き続き重要であるとしても、それが長期的に我が国の産業を空洞化してしまうとするならば、大問題でございます。企業合併の規制について、長期的な観点である研究開発やイノベーションの努力、あるいは経済のグローバル化の影響などの産業育成的あるいは競争政策的な観点を踏まえつつ、短期的な消費者メリットも目配りするような運用が待ったなしで必要とされているのではないかと思います。

 なお、競争政策は、もともと企業規模が大きいことを問題視するような先入観があったように思います。六〇年代の私の大先輩の経済学者もそのようなお考えでしたし、この観点は今でも重要な論点として生き続けているというふうに思います。他方、この半世紀の間における経済のグローバル化で、企業規模が大きいことにはよい側面もあるのではないかという認識も芽生えてきたのではないかと思います。

 多国籍企業の登場、あるいは、今回の東日本大震災でくしくも明らかになってしまいましたが、グローバルなサプライネットワークが存在するということ、そうした仕組みを通じて、世界じゅうに商品を供給できるような規模を持つということがブランドを認知させ、よい製品をより安く消費者に提供できる源になっている点が認識されたようにも思います。

 つまり、企業規模が大きいことが競争を制限すると必ずしも言えない事例が少しずつ出てきているようにも思われます。逆に、産業構造によっては、企業規模がないとグローバルな競争に打ち負けてしまうような事態も想定され得るような状況になっているのではないかと思います。

 ちなみに、こうした問題意識は、決して我が国だけのものではないように思います。例えば、アメリカのオバマ政権における競争政策の運用を例に考えてみたいと思います。

 オバマ民主党政権が誕生した当時、ビジネスや財界に対して冷たい、あるいはアンチビジネスの政権ではないかと言われ、競争政策もかなりアンチビジネスの色彩が強くなったというふうに言われておりました。実際に、我が国の関係ですと、国際航空についての事象で、太平洋路線におけるアライアンスにおいて、異なる航空会社が業務提携をする際に、それをカルテルの適用除外とするということについてかなり厳しい審査がなされたというふうに伺っております。

 ところが、リーマン・ショック後、オバマ政権において競争政策の運用が少しずつ変わってきているという指摘が、メディアを通じてですけれどもございます。現在、アメリカ最大の通信会社であるAT&Tと業界第三位の会社との合併がアメリカで話題になっておりますけれども、この合併について、リーマン・ショック以前と比較して、合併に対して好意的な判断を下すのではないかというふうに言われております。つまり、アメリカにおいても、産業再編に関して、競争政策におけるやや狭い消費者メリットの考え方から一歩踏み出すような兆しも見られているように思われます。

 まとめますと、産業再編あるいは企業合併については産業政策の領域として考えられており、今後もそうあるべきだろうと思います。他方で、現状の企業合併に対する規制は、消費者メリットの中でも短期的で一過性の強い観点からの審査になっている点にやや問題があるのではないかと思います。東日本震災後、我が国の限られた人的、物的資源を有効に活用する観点がますます求められている中で、こうした短期的な、やや狭い消費者メリットだけではなくて、それも踏まえつつ、イノベーションや国内の生産拠点を守るといった産業育成的あるいは産業政策的な観点も消費者のメリットとして、長期的な観点から非常に重要なものというふうに考えるときが来たのではないかと思います。産業再編や企業合併において、競争政策と産業政策が対立するというような観点ではなくて、お互いが協働していく、そしてその中で産業再編に新しい位置づけを見出していくということが非常に重要ではないかと考えております。

 御清聴いただきありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、永井参考人にお願いいたします。

永井参考人 野村証券とその親会社であります野村ホールディングスの常務をしております永井と申します。

 本日は、産活法の法案審議に当たりまして、所感を述べさせていただく機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。

 所感の前に、三月十一日の震災についてまず一言述べさせていただきたく存じます。

 直接、間接的に被害を受けられた多くの方々、企業に対してお見舞いを申し上げる次第でございます。

 弊社も東北各県に支店がございます。幸い社員にはけが等はございませんでしたけれども、家族が被災された方は何人かおられました。証券取引所は開いておりまして、お客様へのサービスを私どもも提供し続けることができました。ただし、いわき支店につきましては、支店が入っておりますモールが閉鎖されたということで、支店を閉めて、郡山に統合をいたしました。盛岡あるいは仙台、福島、郡山のお客様で、現在も連絡がとれていないお客様は多数いらっしゃいます。郵便物等が避難所にも回送されているようでございますけれども、口座をお持ちの我々のお客様をいかにフォローしていくかということが我々の課題だというふうに思っておりまして、今後も続けてまいりたいと思っております。

 計画停電につきましては、一部支店が停電にも遭いましたけれども、お客様に対しては、電話でコールセンターを通じてお受けすることができましたし、市場の仲介機能を果たすことができたと考えております。

 ぜひとも、政治のリーダーシップのもとで、新たな希望の持てる政策の実現をお願いしたいと存じます。

 さて、MアンドA、先ほど西村さんないしは大橋先生からもお話がございましたけれども、株式、債券市場を御利用いただいている投資家の皆様と企業の皆様すべてが私どものお客様になっております。

 日本関連の合併あるいは買収でございますが、統計的に見ますと、二〇〇七年が最近ではピークでございまして、二千七百七十五件ございました。二〇〇八年以降は、金融危機等もございまして少し減少しておりますが、昨年、千七百七件という形で推移しております。

 クロスボーダーの再編につきましては、外国企業が日本の会社を買うあるいは買収するというふうな話でございますが、これは二〇一〇年で百四十三件という形で、昨年比五件ぐらいの増加にとどまっておりますけれども、外国企業のうち、アジアの企業が六十九件という形で五割を占め、さらに中国が三十七件を占めております。アメリカの企業が三十五件でございますので、既に、アメリカの企業が日本の企業を買うというようなものよりも、中国からの投資の方がまさっているという状況でございます。これは韓国についても同じような傾向だと思われます。

 一方、日本企業による対外的な買収、MアンドAは、昨年、三百七十一件でございまして、アジア企業に対するものが百三十九件でございました。これは増加傾向にございます。日本からアジアの企業への連携というのがますます活発になってきているということでございます。

 本年に入りましても、例えば、具体名で申し上げた方がわかりやすいと思いますので、キリンホールディングスさんが中国の華潤グループと清涼飲料の事業を行う、あるいは、NECが中国のレノボと、コンピューターですね、パソコン事業を合弁で展開されるといったような、日本と中国を代表するような企業の連携の動きも出てきております。ですから、円高は悪いことばかりでございませんで、日本企業による海外強化のための攻めの経営というものを真剣に考えていらっしゃる会社もあるということでございます。

 弊社の場合の例を申し上げますと、二〇〇八年のいわゆるリーマン・ショックのときに、倒れたリーマン・ブラザーズの会社の社員を、特にアジア、それから欧州、中東の部分について受け入れまして、海外で働くチームをここで一気に拡大させた経験もございます。現在二万七千人ぐらいおりますけれども、インドには、システム開発あるいは事務作業をするのに三千人ぐらい私どもで雇っているのが現状でございます。会社を買ったということではなくて、人だけを受け入れたという手法でございます。

 MアンドAの世界では、このような工夫次第で、会社を買い取って合併する、子会社化する、あるいは一部だけ出資するというような形を含めまして、さまざまな形態が考えられます。

 グローバルに展開し、グローバルで競争できるような会社に私どもも尽力したいと考えておりまして、我が国産業の国際競争力の強化のために何が必要かということについては、身をもって体験しているつもりでございます。

 昨年の日本関連のMアンドAにつきましては、私どもも、件数でいいますと百十四件にかかわらせていただきました。金額では五百五十億ドル相当、四兆五千億円ぐらいにはなろうかと思いますが、日本で行われておりますものの四割近くは関与させていただいたということでございます。

 ただ、世界の市場で見ますと、弊社は十三位という位置づけでございまして、世界の中の五%程度に関与させていただいているだけで、実をいいますと、アメリカの大手が三社で六割近くを占めているというのが実態でございます。一位の会社は我々の十倍ぐらいの規模の金額を扱っておりますので、その違いがまだまだというところだと考えております。

 改正産活法でございますけれども、新成長戦略で指摘されました産業再編を促進するために、幾つかの重要な措置が盛り込まれております。

 第一には、公正取引委員会との協議の制度でございます。第二が、会社法の特例を設けるというものでございます。第三が、長期金融の支援の充実という点でございます。融資の分野につきましては、私ども証券会社でございまして、関連の貸金業を営む会社もありますけれども、今回、貸し金については、この制度に直接携わる立場ではございませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 具体的に申し上げますと、この制度は、実現されることが非常に有益だと考えております。

 まず、産業を所管する省庁と公正取引委員会の協議というものが導入されますと、世界での競争の実態を踏まえた形で、国際競争力の強化のための再編というものの議論がなされやすいのではないか。産業界の期待もここについては非常に大きいものがございます。

 それと、会社法の特例の問題でございますが、これについては、制度自体はやや複雑でございますが、要は現金を用意するかわりに自分の会社の株式を対価として相手に渡していく、それで株式を取得する、こういう制度を導入してはどうか、こういう話でございます。これは導入はもう既になされておりますが、現実には余り実行されていないのは、手続面でいろいろな問題があるため、これを簡素化していただけるということでございます。また、海外子会社化、完全な子会社を持つ、一〇〇%子会社化を実現するために、対象となる会社の株主総会の手続等も、非常に複雑なものが現在実行されておりますので、これを省略できるような形というのも再編の迅速化という点からは非常に評価されるものだと思っております。

 自分の会社の株式をもって相手方の株を手に入れるというのは国際的には非常に一般的でございまして、九九年のボーダフォンがマンネスマンというところを買収した、あるいは二〇〇六年にミッタルというところがアルセロールという、鉄鋼関係では非常に大きな買収が行われたりもしておりますし、昨年も、クラフトが、アメリカの会社ですけれども、イギリスのキャドバリーという食品業者を買収するというのも、すべて自分の会社の株を、取得する相手方に渡すことによって行われているということでございます。

 我が国の産業は非常に厳しいグローバルな競争にさらされておりますが、それから取り残されることがないように、これが今回の改正の意図だと私は理解しております。

 従来、エレクトロニクスを中心に、我が国の経済を牽引してきた企業もありますけれども、韓国、台湾から、あるいはアジアの諸国から非常に激しい追い上げに遭っておりますし、自動車産業も、国際競争力のある日本の会社も、アジア諸国の追い上げ、あるいは電気自動車による劇的な変化にさらされているのが現状でございます。

 日本市場自体が、一億人の人口の中である程度の大きさを持っておりますので、国内だけで十分だという人もいらっしゃいますけれども、国内のみで戦う企業の成長には限界があろうかと思います。

 国際競争力の強化のためには、想像を絶するスピードで世界の市場は動いております、中国、東南アジアだけではなく、中東、あるいは南米、アフリカも所得水準が今非常に上昇しておりますし、急激に需要あるいはマーケットが拡大していることを知ることだと思います。アメリカあるいは欧州の市場だけを念頭に置いた競争政策というものでは成り立たないという事態になっているので、企業が再編を通しながら、企業への投資なども使って、競争相手をいかに攻略するかということを考えなければならないというふうに思います。

 巨額の資金が研究開発投資ですとか生産拠点づくりにも必要でございます。世界がこうした規模の追求をいかにやっているか、日本の製薬会社がアメリカの会社に対して敵対的なTOBといいますか公開買い付けを行っている例もありますけれども、まだまだこれは例外的なものでありますし、それをうまく日本の制度を使ってできるように後押ししていく必要も出てくるというふうに思っております。

 日本の企業は、よい技術を持っています。労働者の質も高い、品質も高い。これを生かすためには、ある程度の規模の確保というものが必要でございます。会社法のやや硬直的な株主権保護の徹底というものが、場合によっては妨げになるとするならば非常に残念なことでございまして、世界の他の国の法制がよりフレキシブルな制度を提供している中では、競争のイコールフッティングというものが確保できるものを用意していただければと思う次第でございます。

 ただ、少数株主といいますか、パーセントの少ない株式を持っていらっしゃる株主を保護することの重要性ですとか法的な安定性を犠牲にするというつもりは私は全くございません。多数決による一定の解決は、事後的に救済が図られていくという部分はある程度やむを得ないと思います。

 現在、裁判所のいろいろな解決例、裁判所が株価を決めるということが果たしていいかという議論もございますけれども、会社が提示した価格よりも高い価格を裁判所が決定している例も多々見られておりますし、株価の決定機関としての一定の役割を裁判所が果たし、積み重ねが出ますと、一定のガイドラインを示すということにもなっておると思います。事前の規制がすべて正しいわけではなく、終わってから、あるいは事後の解決策というものも、ある程度合理性のあるものだと思っております。

 最後に、我が国産業の国際競争力の強化あるいは我が国経済の復興というものは、産活法の改正だけで実現できるわけではございませんが、企業が、震災を契機に、特に海外シフトをしなければならない事態も多いかと存じます、事態は非常に深刻で、重要な課題を抱えていると思いますので、日本企業が利用しやすい制度を、できましたら工夫してお認めいただけるということが期待されておりますので、何とぞ御理解いただければと存じます。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川口博君。

川口(博)委員 民主党の川口博と申します。

 まず、今回の東日本大震災でお亡くなりになられた皆様、そして被災に遭われた数多くの方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

 ただいまは、西村社長さん、大橋先生、永井常務、貴重な御意見、そして有益な情報に心から感謝を申し上げます。

 実は、私の出身は秋田です。鉱山の町でした。そこの町長を五期務めさせていただきました。大変な状況だったんですが、その一つの要因は一九八五年のプラザ合意です。そのプラザ合意で、一ドル二百四十円が百二十円になり、いっとき八十円を切るまで急激な円高になりました。残念ながら、その影響で、鉱山はあらん限りの努力をしたんですが、合理化、そして閉山へと追い込まれてしまいました。そこで我々は、ない物ねだりをしないで、ないものといえば雇用とか税収の落ち込みですから、あるものを使って、それで努力しようじゃないかと。結局、鉱山の技術がありましたので、山の鉱石じゃなくて工業製品から回収しようじゃないかと。これに活路を見出したわけであります。

 つい先般、アメリカのファスト・カンパニーというビジネス誌の会社がありますが、これが成熟社会の世界の革新的な企業を五十社発表しました。名前を言って大変失礼ですが、一位がアップル社でした。二位がツイッター、三位がフェイスブック。日本企業では日産自動車がトップで四位に入っていました。これは電気自動車が高く評価されたそうです。ちなみに、インテルが十九位、アマゾンは二十七位、IBMは二十九位でした。

 私のふるさとの小さい製錬所が、実は十四番目に入りました。これは、ベースメタルだけじゃなくて、レアメタル、特にレアアースの回収技術が非常に上手にできたということが評価されておったわけであります。結局、地方が自主自立の気概を持って元気であれば国も発展するという考え方で取り組んできました。

 そこで、西村社長に一つお伺いさせてください。

 社長は、阪神大震災で大変な御苦労をなさったと伺っております。今回の東日本大震災にアドバイスすることがたくさんあろうかと思います。一点突破じゃないですが、廃業の話も先ほど伺いました、一番困るのは仕事をやめるという、働く場所がなくなってしまうわけですから、民間人の発想で何か一つ挙げるとすれば、どういうアドバイスがありますか。

西村参考人 中小企業の震災の影響ということでございますが、それは、特に今回は非常に大きなものがございました。大阪商工会議所が震災直後に実施いたしましたアンケートでも、四社に三社が、自社に直接、間接の被害、影響が出ていると回答するなど、震災の影響は在阪企業にも大きく及んでおります。

 また、私どもも、幸い被害は受けませんでしたが、原料、材料を調達するのに非常に苦労いたしました。そのために、一時生産を縮小するというようなこともございました。その場合、やはりグローバルに大きく調達先を探さなきゃいけないという形で、では、どこでどういうものがあるのかなかなかわからない、特に中小企業はその辺のネットワークが小そうございましたので、その辺のネットワークが、どういうものが世界にあるんだね、こういうものがあるんです、同じものがどこどこにあるんですというのがわかるような体制というのが、支援としては企業を継続するという意味で非常にありがたいのではないかなというふうに思っております。

 それからもう一点は、これはスピリットの問題だと思うんですね。やはり何くそ、何としてももう一回やるぞという経営者の意識、気持ち、そして従業員が一体となるというその気持ちが、基本的には企業を再生する大きなもとではないかな、かように感じております。

 以上でございます。

川口(博)委員 ありがとうございました。

 それでは、東大の大橋先生に伺わせていただきます。

 今回の震災で、サプライチェーンが分断され、図らずも日本の産業における東北の重要性が浮き彫りになりました。先ほど西村社長の方からも、東北全体、国全体を西日本で支えていかなきゃならない、そういうお話もありました。これは、日本の国のみならず、例えばアメリカの経済にも大きな影響が出ています。いわゆる世界の経済に大きな影響が出るほど、日本のものづくりの技術というのは高かったということですね。これは、我々はもっと自信を持たなきゃならないと思っています。

 そこで、このサプライチェーンをどのように再構築するのかが大変重要になってきておりますが、そうした観点で、業界の再編について御意見を伺いたいと思います。

大橋参考人 先ほどの川口先生の十四位の製錬所のお話を大変興味深く伺いました。

 御質問の件でございますけれども、御指摘のように、グローバルなサプライチェーンが、本来、インフラのようなものですから、見えないで着実に仕事をなしていただけるのがよかったんですが、思わぬ形で浮き彫りになってしまった。それで、一番懸念しなければならないのは、ほかの海外の企業がこうした我が国の強みの部分に攻め入ってくるというか、ピンポイントでターゲットを絞って、何とかサプライチェーンの一部をはぎ取ってこようというような動きが出てくるんじゃないかということを非常に懸念しております。

 そのためにまず第一にしなければならないのは、もちろんサプライチェーンの復旧ということは言うまでもないことでございますけれども、これはそれぞれの産業の事情に応じるとは思いますが、そこにもう一つプラスアルファの、何らかの、復旧を超えたような、復興の視点に近いような、そういうふうなものを、日本の企業の、先ほど西村参考人からスピリットとございましたけれども、そういうふうなところで、もう一段、日本がサプライチェーンに付加価値をつけるような取り組みをぜひともしていただきたいなと思って、心から応援しているところでございます。

 以上、なかなか難しい御質問で、ピンポイントでお答えになっているかわかりませんけれども、お答えにかえさせていただきたいと思います。

川口(博)委員 私、先ほどリサイクル、レアアースの話をしました。例えば、ベンチャー企業、中小企業を含めて、ネオジムとかジスプロシウムという大変いい物質をリサイクルする技術はあるんですが、それを時代が求める、成熟社会が求める省エネ製品とか工業製品にまだうまく有機的な重層的な結合ができていないと思います。そういう意味では、中小企業もしくはベンチャー企業が、リサイクルという観点だけでも時代が最も必要としているものに食い込むようなチャンスはまだあると思っています。

 そこで、私も、先般、宮古、それから田老の方へ視察に行ってきましたが、大変な瓦れきの山でした。もちろん、ほっぽっておけばただのごみになるんですが、ある意味では、仕分けをし分別をすれば宝の山に変わると思います。

 その宝の山に変える方法として、例えば日本にはいろいろリサイクルポートを含めて、秋田は家電とか車とか工業製品のリサイクルが得意です。また、山形の酒田港は、ある意味ではコンクリートとかアスファルトとか、そういうリサイクルが得意です。同じリサイクルポートで、新潟の姫川の方は、木材とかプラスチックとか、そういうリサイクルが得意です。

 そういう意味では、今回、そのリサイクル、適正な処理など、これを新たな産業興し、地域おこしに結びつけるような、一定の役割を日本海側も果たせるんじゃないのかなと思っていますが、先生、この点についてはいかがでしょうか。

大橋参考人 まさに、川口先生おっしゃられる点は、今回非常に勉強させていただいたような感じでございます。

 そもそも、プラザ合意後、閉山された製錬所がレアアースの回収で立ち直ったということで、まさにここから学ぶべき経験は何かということを、今回の東日本大震災の瓦れきからの収集、一見、皆さん、それを取り除くのが大変だ大変だというようなことをおっしゃられているみたいですけれども、それを何とか別の方法で付加価値をつけるという観点からすると、おっしゃられる点は非常に参考になるところかと思います。

 ありがとうございます。

川口(博)委員 永井常務にお伺いいたします。

 この法律案では、企業の再編手続を簡素化する仕組みが組み込まれております。

 例えば非鉄金属の鉱山、僕は製錬所が立地する町の出身と先ほど申し上げました、まさに世界の経済とローカルの経済が同時性を持って進んでおる、これを実感させていただきました。海外の資源メジャーが巨大化し寡占化して、輸入鉱石の買い入れ条件がどんどん悪くなるのに対し、小坂の製錬は規模の追求ではなく原料を鉱石からリサイクルに転換することで耐えました。これは貴重な例外であろうと思います。

 法律案には完全子会社化手続の簡素化が盛り込まれてはおりますが、このほかにも手続の簡素化や迅速化を通して企業が本来の生産活動に力が発揮できるようなことがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

永井参考人 今回の出されております法案自体は、計画が承認されるということが前提になっているものでございます。したがいまして、経営資源をどう再活用するか、あるいは経営資源をどう有益に使うかということを、一定の計画を出して、それが承認されるという形になっておりますので、これが国内の産業の方々からすると、もしかしたら負担になるということはあるかと思います。

 しかしながら、そのために、株主、さまざまなステークホルダーの人たちの利害が調整できるのであれば、これはどんどんやっていただける。そしてまた、計画がどのように実行されているのかということについても、一定のフォローが、モニターがされていくということが今回のみそだと思っております。

 したがいまして、その過程の中でも、経済産業省等関係当局の御尽力も、あるいはさまざまなアイデアをインプットなりアドバイスなりも加えながらやっていただけると、先ほど来お話が出ています中小企業、あるいは規模を追求されていない地方の会社の場合でもできるのではないかと思います。

 今の会社法等は、どうしても、すべからく、会社について規制を前提として考えてありますので、それぞれの立場あるいはニーズに従って工夫できるようなものがこういった形で計画、承認、あるいはモニターということを通じてなされることが、ある意味では非常に有意義なのではないかというふうに思っております。

川口(博)委員 ありがとうございました。

田中委員長 以上で川口博君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷畑孝君。

谷畑委員 自由民主党の谷畑孝でございます。

 きょうは、お忙しい中、このようにして我々の委員会に参考人として御出席いただきました西村社長、大橋先生、永井常務、本当に心より感謝を申し上げたい、このように思います。また、貴重な意見、ありがとうございました。

 まず、西村参考人、大橋参考人、永井参考人に質問をしたいと思います。

 韓国では、一九九八年の通貨危機を契機にして、国内における産業再編を強力に推し進めたわけです。もちろん、国内では大変なデモがあったり、韓国国内でも混乱をしたり、若干、いろいろしましたけれども、しかし強力な政治主導でそれを仕上げてきた。そして、その中で、自由貿易協定等を含めて日本よりも先に行きまして、今日では、半導体でもそうですし、自動車でもそういう勢いで、日本の有力な産業を超えていくという非常に力強い経済成長を行っておるわけです。

 ところが、日本は一九九〇年代にバブルがはじけてから、失われた二十年ということで、その間幾つか、経済成長を少しやってはまただめになったりして、繰り返しながら来たわけであります。その中で物すごい閉塞感、そんな感じがしてならないんですね。

 これは、政治の指導力が悪いのか、あるいは日本の官僚制度が疲弊して、経済を推し進めていくという機敏な政策がとれていないのか、あるいはまた、企業側も企業側で、どんどんサラリーマン社長になったり、オーナー社長が少なくなったりして、強力なる指導性というものが弱いのか。一体どういう理由なのか。我々自身も、こうして議員をさせていただきながら、非常に反省と苦悩というのか、本当に悩ましい、苦悩を持つわけです。

 それで、また今回、こういう東日本の大震災ということで、我々自身も何とはなしに意気消沈するというのか、そんな空気があると思うのですけれども、何か所見というのか、いい意見がありましたら、西村参考人、大橋参考人、永井参考人に少しずつお話を聞きたいと思います。よろしくお願いします。

西村参考人 西村でございます。

 非常に難しい質問でございまして、それがわかっているならもう既にやっているだろうということになりますが、やはり基本は、まず私申し上げましたように、何くそという気持ちが一番大切なんじゃないかなというように感じております。

 もう一点は、やはり円高、デフレ。こういう状況を打破していかないと、企業マインドも前向きに進まないのではないかなというように感じております。

 まだほかにいろいろあると思うんですけれども、とりあえず、私の感じている点を二点だけ申し上げました。よろしくお願いします。

大橋参考人 大橋でございます。

 私、アカデミックというか、学問の人間でございますので、なかなか実務の方を存じ上げていないところがございますけれども、学問に身を置いている者としてどういうふうに見えるかというところだけ、ちょっとだけお話しさせていただきたいと思います。

 思えば、産業政策という言葉があるんですけれども、この言葉というのは、そもそも旧通商産業省の政策でございまして、当時、日本が高度成長するときにいろいろな政策を打ってきた、そのものを総称して呼んでいる名称だと思います。それで、これは世界にもアカデミックな観点からも非常に注目を浴びて、さまざまな形で分析を、我々、同僚を含めてやってきたところでございます。

 ただ、そうした中で、一部の我々の同僚から、政府も失敗するだろう、その政府の失敗というものをどう考えるかということについて非常に重大な提起がアカデミック的に出されて、それに対してなかなかいい回答が用意できなかったということが、全体として、産業政策という言葉が我が国においてはなえてしまった一因なのかなとアカデミックの側からは思います。

 そうした中で、今回、韓国の事例であるとかブラジルの事例であるとか、さまざまな形でステートキャピタリズムみたいなものが出てきたときに、我々アカデミックとしても、それをどう考えていかなきゃいけないのかというのが実は非常に喫緊の課題でございまして、今回、改めてその問題の重要性を御指摘いただいたところかと思います。

永井参考人 難しい質問でございますけれども、私が感じましたのは、今回の会社法の制度なども、株式を譲っていただけるのに対して何を渡していくのか、それを自分の会社の株を渡すですとか、あるいは現金で渡すにしても、その手法についてはさまざまな工夫を、特に法曹界の人を中心に考えてこられて、今回使われていますのが全部取得条項つき種類株式、名前を聞いただけだと何を意味しているのかわからないものでございますけれども、これはもともとは、一〇〇%減資をするときに、既に出回っている株式を違う株式にして減らしていくために考え出された、新しい会社法でできた制度でございます。これを使いまして、既に多数の方に持たれている株式を違うものにかえて、しかもそれを現金にするというのを、工夫をさまざまに考えているわけです。

 ですから、ある意味では迂遠な方法あるいは迂回路を通じているということでございますが、そこには、税制の問題ですとか、いろいろな制度をいかにうまく利用してやっていくかという工夫が見られているわけです。

 特に、アメリカのロースクール、法科大学院などでは、こういったことを、コーポレートタックスとか私企業再編というような授業がもうありまして、そこでみんな、かんかんがくがく、けんけんごうごう議論しながら、どういう制度にすればいいのかというのを所与の条件の中で工夫していくというのを、学生のころ、あるいは、職業大学院ですから職業に直結する形で議論をしている。

 こういったことが日本で行われているのかといいますと、私もアメリカにいた経験がございますけれども、それを学校の中で先生を含めて議論しながら、それが実際の実務にも使われていく。こういったイノベーションに対するエネルギーが非常にある。しかも、それは、中国の学生もいれば、韓国の学生もいれば、最近、日本から留学生は非常に少なくなっているというふうに言われますけれども、アメリカの学校に集まって、それがイノベーションをつくり出していく。こういうものが日本にもないと、ブレークスルーするような、技術革新もそうですけれども、法制度の面についてもなかなか議論がしにくいというのを私は感じております。

 したがいまして、所与の条件の中でもいろいろな工夫をして、それが抜け道をつくるということになってはいけませんけれども、いろいろな形でイノベーションができる素地というものを日本も何とか整備していただければ、こういうふうに思う次第でございます。

谷畑委員 どうも本当にありがとうございました。

 次に、今回の産活法の本質でありますけれども、国際競争を高めていくためには、企業の再編、結合、合併ということをしっかりと位置づけをして、そしてそれを促進させていこう、こういうことだろうと思うんですね。この間、過去四回法改正をしながら今回に至ってきているということでありますから。

 そこで、大橋先生、永井先生に一言ずつお聞きしたいんですが、その合併をするために、過去の大型合併の中で、昨年などは、電炉メーカーの共英製鋼だとか東京鐵鋼などは、一年四カ月協議しながら、結局は結論は出ないし断念という、こういうことが往々にあったわけですよね。住友金属だとか新日鉄の合併ということもこれからあるわけですね。

 その中で、協議ということになって、公取と協議ということの中で、主務大臣が国際競争とかを含めてしっかりとした意見を述べて、それで少し審査をスピードアップしたり、公取自身も国際競争ということを考慮するというのが法案の趣旨だと思うんだけれども、しかし、何といったって、公取は公取として、独立機関でもありますし、それなりに消費者の立場、あるいは公平な競争という立場もあると思います。ここらの折り合いというのが非常に難しいと思うんです。

 しかし、この法案で効果があるのかないのか、我々自由民主党も、そういう意味で、修正を少し加えて、さらに審査をスピードアップしていこうということを今しておるんですけれども、意見がありましたらぜひ一言ずつお願いしたいと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 この法律の改正案の、今先生が御指摘された点の一番重要な点というのは、企業結合の規制に関して、専管というか、専属の主体はどこかというと、やはり公正取引委員会が専属して行うというところは非常に重要な点だと思います。なぜならば、やはり企業結合というのは、国際競争力もありますけれども、ほかにいろいろな側面があって、そういうものを勘案して、ある意味専門的な知識を持って判断しなければならないという部分も非常にあるところだと思います。

 冒頭でも申し上げましたけれども、そこの部分が、やや短期的な視点、あるいは競争政策などでも価格にちょっと重きが置かれ過ぎてしまっているかなというところで、今回、そこの専門知識の部分は残しながら、産業育成であるとか国際競争力であるとか、そういうふうな観点も、公取にその情報をフィードしながら、今までの視点にはない視点を組み込んで審査していく。

 ただ、決定するのは公正取引委員会であるというところの、その筋が守られている限りにおいては、私は大きな間違いというのは生じないのではないかなというふうに考えているところでございます。

谷畑委員 もう一問だけ質問したいので、ちょっと永井先生、失礼します。

 そうしたら、基本的にはそれで大いに前へ進むという意見だったと思います。

 それで、西村参考人にもう一つだけ質問したいんですけれども、事業承継というのは私は非常に大事だと思うんです。中小企業の親方というのは苦労してきたものだから、息子にはしっかりと学力をつけて公務員にならせるか一流企業にという、そんなことで、黒字でありながら廃業することが結構あるんですよ。だから、これはせっかくの財産ですから、ぜひ引き継ぎができるようにしていただきたい。

 そこで、百八十四社であって、三百五十九社は希望があって、二十七を引き継ぎさせたというのは、非常に不動産の選別から見たら確率が高いなと思って喜んでおります。

 一言だけ。結合させるコツがあると思うんですよ、非常に難しいコツが。それを一つだけお願いします。

西村参考人 やはり結合させるには専門知識が必要ですから、専門知識の方と全体をコーディネートするコーディネーター、専門知識を持っている、税法とかそういうことを御存じの方がコーディネートできるとは限りませんので、そこはチームを組んでいろいろコーディネートしてあげる、そして専門知識を取り入れるというような形が非常に有効だ、かように考えております。

 実際、大阪商工会議所でも、二名のチームでまずお話を聞く、専門家とコーディネーターというような形で相談事業を行っております。

 以上でございます。

谷畑委員 どうもありがとうございました。

田中委員長 谷畑孝君の質疑は以上で終了いたしました。

 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは本当にお忙しい中、西村参考人、大橋参考人、永井参考人、当委員会に御出席いただきまして、そして産活法の改正について非常に示唆に富む貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。またこの後審議をいたしますので、参考人の御意見を法案審査に生かしてまいりたいと思います。

 それで、私、最初にお聞きしようと思っていたのを、今、谷畑さんがぱっと最後に質問されたので非常にやりにくいんですけれども。

 今回の法案は、産業再編の、組織再編を推進する、それをツーステップローンで支援もしていきましょうというのが一つ、もう一つはベンチャー企業や地域の中小企業支援という、この二本柱になっています。

 まず、西村参考人の方にぜひお聞きをしたいのは、事業承継の制度を何とか改善してくれというのは長年の中小企業の悲願だったと思うんですね。私どもが政権にいましたときに、事業承継税制を物すごく大きく拡充しまして、これは今回の法案ではないんですけれども、親族に非常に引き継ぎやすくした。このことを現場で見ておられて、そういうところが拡充されてどんな感じを受けておられるのかということが一つ。

 もう一つは、今、谷畑委員からもありましたけれども、大阪商工会議所さんで非常に先駆的な取り組みをされていて、平成九年からMアンドAの支援事業をされて、平成二十二年には事業承継の専門相談窓口をされているんですけれども、ぜひこれは今の経産省なんかにもノウハウを教えてやってほしいなと思いながら私は聞いておったんです。

 というのは、これからこの法律に基づいて事業引き継ぎ支援センターというのが、まずは全国七、八カ所、最終的には、この前、中小企業庁長官は四十七都道府県に置きたいんだという話だったんですが、そのときに、やはりきちっとした情報を蓄積するというのが非常に大事だというのと、もう一つは、きちっとマッチングさせる目ききがしっかりとできる、そういう人をしっかりと育てていくということが私は非常に大事じゃないかなと思うんですが、こういうものについて大阪商工会議所さんとしてどのように今までされてきたのか、西村参考人にまずお聞きしたいと思います。

西村参考人 事業引き継ぎ支援センターの実効性を高めるということでございますが、先ほど少し申し上げましたように、事業承継の専門相談窓口では、事業承継につきましては、中小企業の方々に、税制、会計などの知識のある専門家とゼネラリストとしてのコーディネーター、このお二人のペアで必ずお話を聞くということをしております。それがまず基本的なものではないかな、一人の人にすべてのことを求めるのは非常に無理があるのではないかな、そういう意味のチームを組むべきだというように感じております。

 それから、もう一つ注意しなきゃいけないのは、やはり、これは先ほども申しましたけれども、公にできない、会社の中でも非常にシークレットな部分でございますので、そういう意味での守秘義務ということが非常に大切なのではないかな、かように考えております。ただ、余りにも守秘義務を重視しますと、今度は掘り起こしがなかなかできないということでのジレンマも少しございますが、その辺は守秘義務が大事なんじゃないかと思います。

 そして、今度、支援センターができますれば、各地でできれば、今、大阪の企業さんが中心で、東京の方も申し込まれて、東京の企業さんが大阪の企業を買収されたということもございますが、非常にレアケースでございますので、やはりもっと全国広く、売りたい企業の、内容は別にしても、こういう事業があるんだよ、こういう業種があるんだよということがわかる、もしくは、買いたい人が、大阪ではなくても福岡にあるじゃないかというような形で見つかる、そういう大きな情報の交換ができるということがより多くのマッチングが成功する大きなポイントではないか、かように感じております。今回の施策につきましては、全国レベルというのでは非常にありがたいなというように考えております。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 私も、今参考人がおっしゃったように、今回、全国でどうネットワークを張っていって、引き継ぎたい人、引き継がせてもらう人、そういうところをしっかりとうまくマッチングできるかというのがこれから大事な課題ではないかなという感じはいたしております。

 それで、次に大橋参考人にお聞きをしたいのは、参考人は、きょうお話しいただいた以外で、七〇年の八幡製鉄と富士製鉄の研究をずっとされているというように認識しているんですけれども、七〇年のときには、日本の合併史上で審判審決に至った数少ない事例がこのときに残っているんですね。今回、時あたかも新日鉄さんと住金さんの話が浮上してきているんです。

 先ほども十分お話しいただきましたけれども、短い目で見た消費者のメリット、さらには長い目でのメリットということ。さらには、日経新聞に載せられている、競争制限効果と効率性効果ということも論文の中で言われているんですけれども、時代の変わり方というのも、当時の、七〇年代とは相当大きく変わってきて、合併をどう見るかという価値観、産業を取り巻くグローバルな状況も変わってきていると思うんです。

 どういうところに重点を置いて合併というものをしっかりと判断していけばいいとお考えになっているのか、ぜひ大橋参考人の御意見を伺いたいと思います。

大橋参考人 実際の審査はいろいろなことをごらんになると思いますけれども、当時の、七〇年代のお話と今と何が一番大きな違いかというふうに考えてみますと、やはり経済のグローバル化ということ、一言で言うとそこが大きく違う。

 今、企業がどんどん海外へかなり容易に進出することが可能になったりとか、あるいは、もう既に海外に事業所を持っている場合は、生産の比率をある意味かなり迅速にコントロールできるというふうなところがございます。そういう意味で、一言で申し上げると、必ずしも輸入品がなくても、国内の企業というのは、海外の資材価格とかを見ながら国内のことも考えているという視点が非常に重要なのかなというふうに思います。

 また、私の論文について言及していただきまして、本当にありがとうございます。

佐藤(茂)委員 最後に永井参考人にお聞きしたいんです。

 参考人は、経団連の法規委員会の競争法部会のメンバーでもいらっしゃるので、ぜひお聞きしたいのは、先ほど谷畑委員も言われましたけれども、今回、所管大臣と公正取引委員会が協議ができるということになりました。しかし、企業合併の最終判断を下す、その専権事項は公正取引委員会がお持ちなんですね。今、公取の方も、合併審査基準の見直しということをずっと昨年からかけて、パブリックコメントはもう終わったという段階でございます。

 経団連の中で議論されていて、特にいろいろと産業界から御意見のありました事前相談、この制度について、今までもいろいろな方が文章で書かれたりしているのを見ているんですけれども、永井参考人としての、事前相談というものの問題点、さらに、どうあるべきかということについて、御意見を賜れればありがたいと思います。

永井参考人 おっしゃるとおり、平成十九年のガイドラインの改正で、欧米や何かと規制自体はほぼ同じものになったというふうに理解しております。

 しかし、日本独特の事前相談制度というものがございまして、これが迅速な判断といいますか、予見性がないという点で、審査にどのぐらいの時間がかかるのかということがわからない。あるいは、会社としては、一応発表をしまして、投資家の皆様にも適切な判断を、提供したいわけですけれども、いつ、どのような形でというものがお示しできない。こういう点が、我々会社側として利用する場合に、不透明なところといいますか、一番利用しにくいところだというふうに理解しております。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 以上で終わります。

田中委員長 佐藤茂樹君の質疑は以上で終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、三人の参考人の皆さんには、大変お忙しいところ、ありがとうございます。

 私、最初に大橋参考人にお伺いしておきたいと思うんです。

 今も出ておりました一九七〇年の八幡、富士の合併、今回、ことし二月三日だったと思いますが、新日鉄と住金の、二〇一二年の十月に企業合併をすべく検討開始ということが公表されましたけれども、国内では、こうして鉄鋼分野でも本当に数社体制、その数もうんと、一か二に近いぐらいの体制に進んでいく。一方、西オーストラリアの鉄鉱資源会社二社の合併には反対だということも言ってきたわけですね。

 そうすると、国内では合併、海外で合併をやられると困りますからそれは反対だというのは、これはいわばダブルスタンダードということになってくるかと思うんです。こういうあり方といいますか姿勢というものは果たしていいのだろうかということが問われるかと思うんですが、お考えを伺っておきたいと思います。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、実態問題としてでございますけれども、海外の鉄鉱石のメーカーの合併というものが我が国にどういうふうな影響を与えるかということを考えてみますと、やはり、鉄鉱石というのは比較的価格がじかにはね返ってくるものですから、そういう意味で言うと、鉄鋼メーカーとしては、買う価格というのがかなり高くなってしまうということで、恐らく一般的に反対だというふうなことをおっしゃっているんだと思います。

 他方で、鉄鉱石というのは、なかなかそれにかえる代替のものがないものでございますから、鉄をつくるというと鉄鉱石以外に使いようがないという意味で、そこの部分、ボトルを閉められちゃうと、我が国の鉄鋼メーカーは非常に厳しい。そうすると、一つの方向性として、やはりある程度のバイイングパワーをつけなきゃいけないというような方向での、一般的な経済原則の流れとしてあるのかなと思います。

 そういう意味で、日本の鉄鋼の需要家の立場で考えてみると、やはり上流の企業に対しては合併はしてほしくないと思いますし、他方で、もし合併が起こってしまった場合には、なるべくその規模を生かして生産効率性を高めていくような努力も企業としてはしていかなきゃいけないというところもあるのかもしれないと想像しております。

 以上でございます。

吉井委員 合併しても、合併することによって価格が安くなって消費者メリットというふうには必ずしもならないということは、先生の本なんかも勉強させていただいて思っているんです。

 今の問題は、要するに、自動車などで見ますと、国際的には数社体制にだんだん収れんしていっていますね。多国籍企業の時代ですから、数社もうんと小さくても十分やっていける。そして数社で競争する。しかし、そうなると、そこに使う鉄はどこの鉄鋼会社と契約するかによって変わってくるということでたたかれるから、今度はその上流側の資源株式会社については合併は反対だと。そういうダブルスタンダードが出てくるというのは何とも変なものだと思うんです。

 そこで改めて、私は今度は大橋参考人と永井参考人にお伺いしておきたいんですが、この問題というのは、さっきもおっしゃった産業政策の面と独禁政策の面と金融政策にかかわる面、これが今非常に深くかかわってきている時代じゃないかと思うんです。

 製造業の企業間の協力、提携に始まって、あるときは合併、企業結合という形、それは独禁政策と産業政策の中でも考え得る世界かと思うんですが、同時に、今日のように異常な投機マネーが動くと、その結果として正常な産業活動が脅かされてくる。そして、それがさっと引き揚げてしまうとまた大変な思いをさせられる。これは西村参考人ももうリーマン・ショック以後随分御苦労いただいたと思うんです。

 やはりそういう点で、国際的にはトービン・タックスの話とかいろいろありますけれども、産業政策、独禁政策とともに、金融政策というものについてもきちんとした考え方を持って臨まないとなかなか大変になってくるんじゃないかと思うんですが、これは大橋参考人と永井参考人に御意見を伺っておきたいと思います。

大橋参考人 金融のことにつきましては、もしかすると永井参考人の方がお詳しいかもしれませんが、私も、鋼材価格とか資源価格の投機の問題というのは非常に注視して見なきゃいけない問題だと考えております。

 他方、規模のお話がちょっとございましたけれども、一つ長期的な点という意味で重要なのが、我が国の鉄鋼メーカーを考えてみると、多くの高炉というのはもう四十年、五十年使い古しているものが非常にある。他方、今どんどん鉄工所ができている中国あるいはインドというところは、新しい高性能のものが出てきている。

 それで、こういうところとどうやって渡り合っていくのかという際に、やはりある程度の、設備の更新はもちろんのことですけれども、その設備をリプレースしていく、あるいはそれに対して新たなRアンドDを行っていくというところの体力がなかなか現在の規模では難しいんじゃないかというところも一つ論点としてあろうかなと思います。

 以上でございます。

永井参考人 金融政策ということは非常に難しいテーマでございますが、従来、都市銀行が十数行ありましたのが、現在ではメガですと三行というような形で言われております。これが利用者の利便性にとっては果たしてどうなのかという議論も一部でなされていることも承知しておりますけれども、国際的な競争力を持たないと、もう既にボーダーレスな世界の経済の動きの中では、海外の同業者と競争することは非常に難しくなっております。

 ツービッグ・ツーフェールみたいな、逆の意味での大き過ぎてつぶせないという議論も一部には起こっております。大きいことがいいわけではありませんが、ある程度の規模を確保して、預金者の保護も図りながら、しかも融資の余力も非常に持って、それぞれの国がそれぞれの国の産業発展、育成のために尽くしているということですので、金融政策の面でも、今回の東北地方なんかも、場合によってはいろいろな地方銀行を含めた再編の動きもあるように聞いております。

 したがいまして、いかにお客様である中小企業を初めとしたところに融資を的確にできるかという点を考えますと、ある程度の規模を追求することもお許しいただければと考えております。

吉井委員 規模とともに、やはり投機マネーの規制というのをきちっとやっておかないと、本来の、投資をしてリターンを得て企業を成長させた時代と、今のように金を転がして産業を混乱させるという時代は違いますから。

 最後に、私、西村参考人に伺っておきたいと思うんです。

 電力などは文字どおり地域独占、関西だったら関西電力で、私はそこから電気を買っているわけですけれども、今回の原発事故というのは、地域独占でやってきたところで一つ大きな事故をやったら、エネルギー供給が満たされなくなる。アメリカなどは送配電分離ですから、発電だけの会社は別に幾つもあって、送電だけの会社というふうになっていますけれども。

 やはりこういう企業結合を考える場合に、まさに中小企業の存在がそうだと思うんですけれども、同時にリスク分散をどう図っていくのかということは、うんと考えておかないと、将来の日本の経済と地域産業にとってもこれは深刻な問題を生み出すんじゃないかと思いますが、お考えを伺って終わりにしたいと思います。

西村参考人 先生の御質問はリスク分散をどう考えるのかということだと思っておりますが、中小企業にとりましては、今回のような大きなことでリスクを考えて、最初からリスク分散で、例えば工場を二カ所持っておくということの非効率性と、やはりトレードオフの関係にあるというように思っております。残念ながら、中小企業ではなかなかそういう分散はできないなというような感じでございます。

 ある程度大事なのは、特に情報システムなどはやはりそれなりのリスク分散をして、地域的な分散もきっちりしておかないと、今は情報化社会ですから物も動かなくなるけれども、それ以上のことは、何か公的な支援があれば話は別ですが、非常に難しいなというように感じております。

 以上でございます。

吉井委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

田中委員長 以上で吉井君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 きょうは貴重な御意見を大変ありがとうございました。

 最初に、西村参考人に質問させていただきたいと思います。事業継承についての質問です。

 今回、東日本大震災でいろいろ企業が大打撃を受けて、恐らく、あちらの被災地の企業の中には、工場の施設はもうだめになってしまった、だけれども人はいる、ノウハウはある、人材もいる。だけれども、例えば経営者の方の年齢を考えると、もう一回やり直すのはなかなか難しい、だからだれかに事業を譲りたい、そういうニーズは非常に多いんじゃないかなと思うんです。

 そういった意味で、被災地において、例えば事業承継を非常にスムーズに進めるためにどういう支援が必要か。あるいは、この法案は全国一律ですけれども、例えば被災地特別扱いをして何らかの措置をするとすれば、どういった措置が効果的でしょうか。

西村参考人 被災地だから特別ということにつきましては、ちょっと今のところでは想像がつかないという形だと思います。通常のようにこういう支援センターを立ち上げていただければ、情報がおのずから集まってくるのではないかというぐあいに思っておりますが、被災地だから特別にということについては、少しわかりかねます。申しわけございません。

山内委員 ちょっと難しい質問で、大変失礼しました。

 それでは、同じように被災地の再建、復興ということに関して、西村参考人と大橋参考人、お二人にお尋ねしたいと思います。

 工場の再建とか、あるいは被災地の復興に向けて新しく企業の投資を呼び込みたいというところがあろうかと思います。経済団体からは、被災地を特区にしようみたいな、いろいろな意見が出されております。場合によっては、インベスト東北キャンペーンみたいなことを経産省が大々的にやってもいいんじゃないかと思います。

 そういった意味で、どういった優遇措置があれば、東北の被災地の企業の復興、工場の再開、あるいは、それこそ新規の投資を復興した後の工業団地とかに呼び込んでいくことができるでしょうか。お三方にお尋ねしたいと思います。

西村参考人 西村でございます。

 今のところでは、急には思いつきませんので、ちょっとわからないということで終わらせていただきたいと思います。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 我が国でも、これまで、震災前になかなか前に進まなかったようなことがございます。グリーンイノベーション、ライフイノベーションとか、いろいろな形で事業をするに当たっても、規制とかいろいろなしがらみで物事が進まなかった。そういうものを、ぜひこれを機に、復興の何らかの礎の一つとして使うような施策があればいいなというふうに考えております。

 具体的にはなかなか申し上げるのは難しいので、ここのあたりで。よろしくお願いします。

永井参考人 金融関係に携わっている者からしますと、例えばファンドというような形で、私どもも東日本復興支援債券ファンドというようなものを販売させていただいたりもしていまして、投資家の皆様から五百億に上るお金を預からせていただいております。その投資先が、国債でありますとか地方債でありますとか、そういったものになっていこうかと思います。

 また、東北関係の企業の社債あるいは債券に対して投資をしていくんだということで、多くの方々、投資家からは支援をしたいという形でお金が集まっているということがございますので、今回のような大震災の復興のためのファンドというような形でお金を集めることは比較的容易なのではないかと思います。できるだけ早くそこに政府の何らかの援助もお願いできればということで、お願いしたいと思います。

山内委員 ありがとうございます。

 それと、先ほど大橋参考人からですか、海外に企業がシフトしていく、生産の拠点をシフトしていく、それをとめなくてはいけないというような御意見があったと思うんですけれども、何をやったら企業の海外シフトというか被災地の生産をよそに奪われてしまうのをとめることができるでしょうか。簡単に御意見を承れればと思います。

大橋参考人 思いまするに、現在被害を受けている工場等の復旧がまず第一だろうというふうに思います。

 そこで、多分、それぞれの企業の方が物すごい人を投入して、今何とか懸命に、この夏あるいは秋口に向けて非常に御努力されていると思いますので、まずそこの部分を見守りつつ、今後打つべき手を打っていくというようなことになるのではないかというふうに思います。

 なかなか難しい御質問で、済みません。

山内委員 事前に通告していないのでなかなか答えにくいかもしれませんが、もう一度西村参考人に、御経験から教えていただければと思います。

 事業を引き継ぐとなると、やはり事業を買い取るお金がある人または組織、そして同時に、運営するノウハウのある人または組織、お金とノウハウと両方ある人が引き継がないとなかなか難しいのかもしれませんが、両方持ち合わせている人というのは意外といないんじゃないかと思います。

 例えば、経営だけやる人あるいはお金だけ出す人、そういうものをうまく組み合わせる仕組みみたいなものが、それは本当は証券会社なんかがやっていることかもしれませんが、それを地域のレベルでつくっていくということが必要ではないかなと思うんですけれども、そういうものを例えば商工会議所などで試したことはあるんでしょうか。

西村参考人 基本的に、私も企業買収をしたこともございますが、マネジメントは、海外でもそうなんですけれども、やはり現地の方、もしくはその買収した企業そのものが持っているということが第一だと思うんですね。そして、どちらかといえば、買う方はお金を用意して、その企業を手に入れて、そしてその後のマネジメントは買われた方が一生懸命やる。そこで足らない部分は我々が見ていてサポートしていくという形で実際は企業買収というのが進んでおるのではないかなというように思います。

 したがいまして、特別にファンドがどうのこうのというほどではなくて、通常の、やはり金融機関がそれなりの評価をしてお金は貸していただけるものではないかなというような感じがしております。今回、少し金利の安いファンドが用意されるということを聞いておりますので、非常にありがたい、やりやすくなったなとは感じておりますけれども、地方で特別にどうのこうのというほどではないのかな、また、それはちょっとなかなかしんどい事業ではないかなと感じております。

 以上であります。

山内委員 では、時間が参りましたので、以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 参考人の皆さんには、貴重な御意見をお述べいただきましたこと、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。

 また、参考人の皆さんの今後ますますの御活躍と御発展をお祈り申し上げて、ごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、お諮りいたします。

 原案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官遠藤俊英君、経済産業省大臣官房審議官井内摂男君、経済産業省経済産業政策局長安達健祐君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長寺坂信昭君、中小企業庁長官高原一郎君及び中小企業庁事業環境部長伊藤仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより政府及び修正案提出者に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健でございます。

 初めて経済産業委員会で質問する機会をちょうだいいたしました。ありがとうございます。ぜひ充実した議論をしたいと思っていますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず初めに、今議題となっております産業活力再生法の改正案につきまして、公正取引委員会の方に幾つかお伺いをさせていただけたらと思います。

 この法案の趣旨には、我が国の産業再編を促していくという大変重大なねらいがあろうかと思っておりますけれども、その法案の是非を議論するためには、また、我が党からも修正案が出ておりますけれども、その修正案を議論していくためには、企業結合規制をめぐっての世界の潮流といいますか、今どういう時代に我々はいるのかということをきちんと把握しておく必要があろうかと思います。

 例えば、お隣の韓国で大変大規模な再編が行われているのは皆さんもう御案内のとおりでありますが、韓国では、九七年のアジア通貨危機の際に産業再編が大きく加速をいたしました。このような再編が行われたちょうどそのときには、当時、韓国では、産業の合理化または国際競争力強化のための企業結合については、韓国の公正取引法の企業結合規制からの適用除外になっていたというふうに私は伺っております。

 金融危機、通貨危機に対処するために、当時の公正取引法の適用除外を設けてまで大胆に再編を進めたということであります。この適用除外は九九年には廃止となりましたが、したがって、これを単純に私は日本にも適用すべきだということを申し上げているわけではないわけでありますが、韓国では、九九年に適用除外をやめたときに、企業結合以外によっては達成することが困難な効率性増大効果、つまり企業結合によってしか達成できない効率性、そういうものが競争制限による弊害よりも大きい場合は公正取引法が適用されないということが定められているわけであります。つまり、効率性が増大する効果と競争が制限される弊害を比較考量いたしまして、国民に役に立つ方の結果を選択できる仕組みができているわけであります。さらに、韓国では、この審査をするに当たっての基準で、雇用の創出ですとか地域経済の発展ということも考慮をするようになっているわけであります。こういう国と、我々、我が国の産業は競争しているわけであります。

 また、これも釈迦に説法かもしれませんが、ドイツやフランスの競争政策について見てまいりますと、ドイツにおきましては、競争当局が決定をしたその決定結果につきましても、連邦経済技術大臣が産業政策とか社会全体の利益等の観点から覆す権限を有しているわけであります。また、フランスも同様に、競争当局が一度決定をいたしましても、経済財政産業大臣が、ドイツと同じように産業政策や社会全体の利益等の観点からその決定を覆す権限を持っているわけであります。

 また、アメリカにおきましても、最近変化がございまして、アメリカでは市場シェア一辺倒、機械的に市場シェアを指標にするということから、むしろ効率性の向上、つまり、企業が結合することによる規模のメリットですとか、技術力の向上、イノベーションの促進、そういったような国際競争上の競争力の強化というプラスの効果に国民経済が大変大きな利益を得るということがだんだんと認識をされてきまして、米国でも、シェアという機械的な指標によらずに競争制限的効果を判断する方向性を打ち出しているということであります。

 つまり、一言で総括をいたしますと、競争法制そのものが国際競争にさらされているということではなかろうかと私は思います。企業結合の審査に当たって国際競争を考慮するなんというレベルではなくて、最初から、世界で国際競争を日本の企業が戦っていける、そういう観点をむしろ中心に据えて日本の競争政策も考えていかないと、お隣ではもっと激しくやってきているわけでありますから、結局、我が国の国民経済にいい影響が出ない、場合によっては悪い影響が出るということにもなりかねないということでありまして、他国の競争政策を十二分に把握をしながら、国際競争に劣後しないように、我が国の競争法制も果断に手を打っていかなければいけないのではないか、我々はそういう時代を迎えているのではないかと私は痛切に感じているところであります。

 この点につきまして、竹島公取委員長、どのような認識をお持ちか、お伺いできたらと思います。

竹島政府特別補佐人 大変高い次元というか広い視野からの御質問でございますが、これは、それぞれの国における歴史と非常に関係があって、産業政策と競争政策についての位置づけ、役割分担は国によって違うと思うんです。

 日本は、齋藤委員も御案内のように、かつての旧通産省が、行政が介入して、いわば混合経済として日本経済を引っ張っていく。そのためには、独禁法が必要な場合には適用除外カルテルも認める、こういう形で産業政策がまずありまして、競争政策はその邪魔にならぬ程度にしておくべきだ、こういう歴史を持った我が国と、アメリカのように、そうじゃない、独占の弊害というのは非常に大きいから、一時は大変厳しい企業分割まで命じて財閥を分けた、そういう激しい競争政策を導入した国もある。

 そういうことでございまして、私は、長い歴史、日本の独禁法は昭和二十二年にできておりますので六十年以上たっていますが、長い間冬の時代だったと思っている。ところが、何年か正確にはわかりませんが、十年、二十年、世の中変わっているし、霞が関の中における独禁法の位置づけの認識も変わってきていると私は思っております。例えば談合はよくないとかいうことは、今当然のことになっていると思います。かつては、カルテルについても、カルテル必要悪、これは違法かもしれないけれどもやむを得ないんだ、業界がお互い生きていくためにはカルテルは必要悪であるということが公言された時代もある。

 そういったことが、本当に日本の国際競争力なり企業なり消費者のためになるのか。答えはノーである。今、齋藤委員がいろいろおっしゃっている厳しい日本の経済情勢でございますが、この点について私は答えは変わらない。要するに、競争なくして成長なしだと思っています。競争したくない、だけれども成長できるというのは、これは私はうそだと思います。

 したがって、日本の企業にとって国際競争力が大事である、産業にとってそうである、私もそれはわかっておりますが、ただただ大きくなる、そのときに効率性という説明も一応つく、よってもって認めるべきであるというその議論は、もうちょっと深める必要がある。

 先ほど齋藤委員御自身がおっしゃったように、韓国の場合も、効率性については評価する、それが競争を阻害することによるデメリットを上回れば、それはそれでいいじゃないかと。しかし、その効率性というのは、その企業結合をしなければ得られない効率性ということになってくる。そこにありますように、ほかの手だてがあるじゃないかと。

 この間のオーストラリアにおけるBHPビリトンとリオ・ティントの場合もそうですが、彼らは、西オーストラリアにおける鉄鉱石の開発、輸送を合理化するんだ、お互いそれぞれ持っている港というのは別々じゃまずいので一緒に使えるようにするんだ、効率性が上がる、一兆円も上がるんだ、こういうことを言っていました。しかしながら、我々の主張は、そういうことはお互いに鉄道を売ったり買ったり、または、港湾の共同利用協定を結べばできるじゃないか、何も企業結合しなければできないものではありませんねと。そういうことでございまして、どの国も、韓国においても、確かに期限を切って国際競争力優先の政策をとったことはありますが、それであっても、今言った限定つきなのでございます。

 したがって、私が御理解を賜りたいのは、要するに公正な競争というのは本当に大事なんだ。これは、何も消費者だけじゃなくて、その企業にとっても、その業界にとっても大事なんだ。似た者同士が一緒になって、そこでシェアは余り言ってくれるなということになりますと、何が起きるかというと、似た者同士ですから一足す一が二にならないわけです。分析してみますと、一足す一が二以上にならないと意味がないと思うんですけれども、実際は二になるのは少ない。

 特に似た者同士が一緒になって何が起きるかというと、原料が上がりました、それじゃ国内の自分たちの製品の価格を上げましょうということが、より容易になる。それで、それに伴うコストはどうかというと、ユーザーなり消費者が払う。それでもって外国で仮に安く物を売ってということになると、そういう企業結合は本当に評価していいのかというふうに私は思っております。

 したがって、国際競争力は大事ですけれども、本当の意味で国際競争力なり産業の活性化になるような企業結合という話が来てほしい。我々がそれをつくることはできません、あくまでも受け身でございますから。そういう大義名分が、説明がつきそうなものを持ってこられて、これを認めてくれと言われても、そうすることはよくないのではないかというふうに思っています。

 でも、くれぐれも、そういう発想に対して否定的だというふうにお考えいただくと困る。何もシェア一辺倒じゃございません、要は、企業結合によって、あるマーケットにおける競争が実質的に制限されるかどうかだ、この一点に尽きる。これは、アメリカでもヨーロッパでもみんなそうです。

 そのときにシェアをどう見るかというのは、言ってみればテクニカルな話でございまして、シェアがどうでなくても、実質的に制限するかしないかということは、それで大きくなっても必ず輸入とか何か競争相手がいる、または、自分が価格を上げようと思ったら代替品が出てくるということが説明がつけば、当然、競争に対して悪影響がないということになるわけでございまして、これは認められるわけでございます。そういう意味で公正で自由な競争が大事だということを言っておりますことについて、ぜひ御理解をいただければと思います。

田中委員長 公取委員長、できるだけ答弁は短くしてください。

齋藤(健)委員 委員長の御指摘のとおりで、もう少し短くしていただければと思います。

 具体的に二、三お伺いしたいと思います。

 どの国も公正な競争が大事ではないなんて思っている国は一つもないと思います。その上で、今や価値観が変わってきていて、国際競争で勝ち抜くという視点が重みを増してきたということを私は伺っているわけであります。まず、その視点があるのかないのか。今のお話では、後で議事録を精査してみないとわからなかったんですが、いずれにしても、相手が変わってきているというのは間違いのない事実であろうかと思います。

 そして、今委員長がおっしゃった、アメリカは非常に厳しく律してきたというお話がありましたけれども、そのアメリカも時代認識の中で変わってきているということであります。

 私がお尋ねをしたいのは、先ほど少しお話ししましたけれども、アメリカは、企業結合による規模の経済のメリット、すなわち、生産性がそれによって上がったり、あるいはイノベーションが向上したり、一番大事な国際競争力がそれによって強化をされるというプラスの効果を前向きに評価するということが今行われつつあるわけであります、あのアメリカにおいてさえ。そして、実際に、先ほども申し上げましたように、市場シェアだけではなくて、機械的によらずに、きっちりと競争制限的効果を判断するという方向を明確にアメリカでさえも打ち出してきているということなんです。

 今、委員長のところでは企業結合審査に関する運用指針の改定を進められているということでございますけれども、現行の指針では、この企業結合による効率性の向上につきましては、輸入、参入、それから隣接市場からの圧力などと並ぶ、単なる一つの要素として記載されているだけであります。

 近年これだけ国際競争が激しくなり、あのアメリカでさえも考えを変えつつある中で、今、効率化も加味しますという程度の審査指針で本当に十分なんでしょうか。むしろ、国内シェアによって競争制限性を判断するのではなくて、シェアが高くなっても研究開発やイノベーションを推進できる企業結合については積極的に認めていくというぐらいのメッセージを、国際競争を激しくしているわけですから、打ち出せないのかということについて、お伺いをしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 委員もお読みいただいているかもしれませんが、企業結合に関するガイドラインというのは、四年前にも大改正を我々なりにさせていただいて、その中で効率性についてちょっと触れている程度とおっしゃいますが、国際的な整合性というのは一方の議論として大変ありまして、これは、カルテルだけじゃなくて企業結合についても国際的整合性をとろうじゃないかということで具体的に議論を競争当局間でしております。どういう手続、どういう審査基準でやるかということはいろいろ議論されている。

 我々も先進国の一員として、そんな、ほかの国と比べられて恥ずかしいことをやろうなんて思っていませんから、今のガイドラインは、内容においても国際的なものであるというふうに自負をしております。したがって、効率性についてもちゃんと考えます。

 ただ、EUにおいて言われているように、効率性が被害を大幅に上回るからこれでよしという事例は、EU自身も言っているように、ガイドラインには書いてあるけれども、それでもってパスしたケースというのは極めて少ない。私は聞いておりません。

 そういう実態があるので、効率性というのは、その企業結合をしなければ得られない効率性でございますので、おっしゃいました研究開発は企業結合をしなかったらできないものじゃありませんから、その意味ではハードルが高いわけでございます。

齋藤(健)委員 諸外国と比べて恥ずかしいことはしていない、当たり前の話で、勝つようにやってほしいということを言っているわけであります。

 そして、今おっしゃいましたように、技術開発、イノベーションということについても、当然、企業結合によってどれだけイノベーションが拡大するかということを私は申し上げているのであって、企業結合しなくても得られるものまで認めろなんということを申し上げているつもりは全然ありません。

 二つ目の御質問ですけれども、これはちょっと私の興味に近い話なんですけれども、韓国のように、この審査に当たって雇用ですとか地域経済への配慮、韓国の場合は、先ほどお話し申し上げましたように審査基準の中で考慮するようになっているわけでありますけれども、我が国でも企業結合審査基準において、こういう雇用の創出とか地域経済の発展といった我が国経済のプラスとなる要素も現在において考慮されているのか、それは企業結合審査に関する運用指針の中できちんと位置づけられているのかどうか。もし位置づけられていなければ、韓国と戦っているわけでありますから、明記をするというのも一案ではないかと思いますが、委員長の御見解を伺いたい。手短にお願いいたします。

竹島政府特別補佐人 雇用、地域振興というところまで目配りをせよというのは、私は、それは競争当局でなくなってしまうと思います。それは政府全体なりなんなりで考えるべきことであって、競争当局というのは、独立性を持ってまさに競争法を所管する役所ということでございまして、総合官庁じゃございません。今おっしゃった視点は、国民経済的には大事でございましょうけれども、公正取引委員会が配慮すべきことではない、競争法の世界でテークケアすべきことではないというふうに思います。

齋藤(健)委員 私は、それは見解が明らかに違いまして、考慮要素として考慮もしないのかということを申し上げているのであって、しかも、お隣の競争当局がそれをやっているということでありますので、私が何もとんちんかんなことを言っているとは思わないわけでありますが、今の御答弁は重く受けとめさせていただきたいと思います。

 次に、企業結合事例の公表のあり方について御質問させていただきたいと思います。

 企業結合の準備を企業が進めるに当たりましては、今、それが円滑に進められるようにということで事前相談制度がございます。昨年六月に公表されました資料によりますと、平成二十一年度に独禁法上の問題について、容認した企業結合案件は二十四件ということでありまして、そのうち事例として公表されているのは、わずか八件ということであります。二十四件のうち八件であります。

 なぜすべて公表されないのでしょうか。

竹島政府特別補佐人 以前に比べると随分ふやしてきているつもりです。意図的にふやしております。それは、説明責任の問題もございますし、予測可能性の問題もあるので、ふやした。

 ただ、どうして全部じゃないのかと。これから変えますけれども、どうして今までそうじゃないのかというのは、事前相談というのは、企業がこの話は内々にしておいてほしいというのが事前相談の基本でございます。その中で、我々は、これはほかの企業にとって参考になったり、独禁法のことを勉強している弁護士にとっても勉強になるから、事例として出させてほしい、固有名詞はわからないようにして出させてほしいということで出しているというのが実情でございます。

 これからは事前相談をやめますので、少なくとも第二次審査へ行ったものは全部公表いたします。それから、第一次審査もなるべく公表します。そういう方針に変えたいと思っています。

齋藤(健)委員 その方針は大変多としたいと思いますが、事前相談の事例を研究することによって、企業側にとりましても予見可能性が高まるということでもありますし、あるいは公正取引委員会の審査におきましても効率性が高まるという、双方にとって公表というのはメリットがあろうかと思います。

 したがいまして、過去五年間、事前相談でオーケーを出したケースにつきまして、昨年は二十四件のうち八件ということであったわけでありますが、今、委員長は企業がやめてくれと言われるケースもあるとおっしゃいましたので、それまで公表しろと言うつもりはありませんが、企業がやめてくれと言わなかったケースにつきましては、過去五年間、公表してもいいのではないかと思いますが、御見解を賜りたいと思います。

竹島政府特別補佐人 さかのぼって今までの取り扱いを変えるということは一般的にはやらないことで、やはり、直すべきことは、これから先に向かって直すというのが普通ではないでしょうか。

 おっしゃるように、もう一回、それぞれ当たって、これは発表してもいいかということを企業に聞いて、過去五年さかのぼってやるということは、やろうと思ったらできないことはないと思いますが、さて、本当にそうなのか。今の開示では不十分で、大事なことがわかっていないというようなことではないと私は思っているものですから、参考になるものはまさに公表しているというふうに思っているものですから、全部五年間さかのぼって確かめるというのは、行政の場合はそういうふうに遡及してどうこうということは余りないというのが普通ではないかというふうに思っております。

齋藤(健)委員 申請する企業にとってもメリットがあり、公正取引委員会の審査においてもメリットがあるわけですね。そして、過去のものは一般的には余り公表しないということでありますが、両者にメリットがあって、それを公表したらみんなが喜ぶものであるわけでありますよね。公表したらいいんじゃないでしょうか。何かそれが特別の障害があるんでしょうか。しかも、企業がいいと言ったものだけ。公表したらこれからもっと効率性が高まると思いますが、どうして過去のものは公表できないんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 さかのぼることは絶対できないということを申し上げているわけではなくて、本当にそれが必要かということと、企業に一たんこういうふうにしましょうということになった五年前のものを、今になって、考え方が変わったから出すぞ、協力してくれということは、さてどうなのかなという心配があるということだけでございまして、それ以外のものではございません。

齋藤(健)委員 大した心配じゃないと思いますので、企業に聞いて、いいと言ったところは公表していただくよう、尊敬する竹島委員長ですので、リーダーシップを発揮していただけたらありがたいなと思います。

 この質問はこの辺にさせていただきますけれども、私が申し上げたいのは、この産業活力再生法におきましても、これからいろいろな案件が持ち込まれることになろうかと思います、きょう私が申し上げましたような、競争政策同士の国際競争が起こっているという認識をぜひしっかりと持っていただいた上で、この産業活力再生法の改正の運用に努めていただけるよう心からお願いを申し上げたいと思います。

 竹島委員長、本当にお忙しいところ、ありがとうございました。とりあえずこれで結構でございます。ありがとうございました。

 続きまして、東京電力による補償金支払いスキーム。

 今回の福島の原発事故で大変多くの方が被災をされました。今なお大変苦しんでおられる方が大勢おられますし、また、先が見通せないという不安がそれに加わって、本当に苦しい状態が続いていると思います。そんな中で、そういった方々への補償をどういうスキームで行っていくかというのが極めて重要な政治課題になってきていると私は思います。

 先日、二十三日だったと思いますが、日経新聞の報道におきまして、政府が検討中の福島の原発事故の被害者に対する救済手続といいますか、スキームというか、それが報じられておりました。もちろん、まだ検討中の案ですということだろうと思いますが、しかし、大変気になる点がございますので、その案そのものを、まだ検討中のものをここで議論しようなんという理不尽なことは、私も役人をやっていたので言いませんが、救済スキームを議論するに当たっての基本的な考え方、こういうものについてはこの国会の場できちんと議論させていただけたらと思っているところであります。

 というのは、はい、決まりましたというのでは国会の意思を全く反映できない。いわんや、震災対応は与野党が協力をしながらやっていこうという性格のものでありますので、この基本的なところについて、少し、海江田大臣、お忙しいと思いますが、ぜひ議論をさせていただけたらと思います。

 風評被害も含めて今回は救済をしていくということを政府は早い段階から表明をされておりまして、私はそれを大変高く評価をさせていただいているわけでありますが、しかし、事故の収束の見通しが大変不透明だということでありまして、こういう状況において、まだ不透明であるにもかかわらず、被害を確定するのは難しいにもかかわらず、この補償というものはやっていかなくちゃいけないわけであります。

 こういう状況においてはスムーズに迅速に補償が行われていくということが私は一番大事だと思っておりまして、そういう観点を一番大事にした制度設計になっていなければいけないのではないかと思いますが、まず、この基本的な考え方について大臣の御見解をいただけたらと思います。

海江田国務大臣 齋藤委員にお答えをいたします。

 二十三日の日経新聞の記事は本当にまだ決まっていないものでございますから、委員が先ほどお述べいただいた考え方というのは全く私も同感でありまして、委員がそういう立場に立って質問していただいているということを、まず御礼申し上げます。

 その上で、しかし、やはりこれは国会で議論しなければいけないということでございますので、私も、この経済産業委員会、衆議院と参議院、あるいは予算委員会などで幾つか述べさせていただきましたけれども、一つは、今の原子力損害賠償法がございますから、まずこれに基づいた考え方でございます。ここに規定してございますのは、もちろん三条ただし書きというのもございますけれども、基本的には、第一義的には東京電力がその責任を負うべきではないだろうか。

 他方、実際に被害に遭われた方々の賠償に対する考え方、あるいは、本当に賠償が必要なわけでございますから、そこに東京電力だけでは当然こたえることができないケースもあろうかと思います。そのときは、やはり国がしっかりと支援をしなければいけない、これが基本的な考え方でございます。

 なお、こうした原子力損害賠償法とは別に、賠償の紛争がございます。これは恐らくこれから出てくると思いますが、その紛争をきちっと審査するため、あるいは紛争が起きる手前のところで賠償についての考え方をあらわすということで、これは紛争の問題と申しますか、まず和解の案も出す、あるいはその前の段階でガイドラインを出すという審査会がございます、この審査会が、きょうは二十七日でございますが、たしか明日、第一次の考え方を出すということでございますので、まずこれをしっかりと見守っていきたいというふうに思っております。

齋藤(健)委員 大臣、私がお伺いをしたのは、この制度設計をするに当たりまして、一番大事だと思いますのは、スムーズに、迅速に補償が実行されるような、だれもが何のためらいもなくさっささっさと決まった基準に従って出していけるような仕組みにすることが今一番大事なんじゃないかということを申し上げて、その点について大臣はどうお考えになるのかということをお伺いしたので、大変恐縮ですが、もう一度お願いできたらと思います。

海江田国務大臣 再びお答えをいたします。

 損害の賠償をスムーズに行うためには、先ほどお話をしましたけれども、東京電力も納得のできる仕組みでなければならない。もちろん、東京電力だけが納得をするのではありませんで、国民各層、国会の皆様方もそうでありますけれども、そういう順番になろうかと思いますが、やはり、まず第一義的な責任のある東京電力もある程度納得のできるものでなければいけないと思っております。

齋藤(健)委員 実際の支払い業務を行うのは、まだ検討中だということなので、私もそれを詰めるつもりはありませんが、東京電力になる可能性が高いということだろうと思いますので、そう考えますと、今大臣がおっしゃった、払う人が納得をしていなければいろいろな支障が生じるというのは、確かにそうかなと今拝聴いたしましたが、私が今回のスキームをちょっと見せていただいて、別にこれを踏まえて議論をするつもりはありません、何度も言いますが考え方です、ちょっと気になる点があります。

 それは、東京電力が補償金を支払う上限というものが設定されていないところであります。東京電力が幾らまで責任を負うという、その上限を決めないと、つまり、幾らになるかわからないという状況を何年も放置するということを……。

 まだ決めてはいないですよね。それを決めたのか、決めていないのかだけお伺いしたいと思います。

海江田国務大臣 もちろん、まだ決めておりません。

齋藤(健)委員 これから被害を受けた方に補償金の支払いを行っていくのが国ではなくて東京電力だ、民間企業がやるということを考えますと、どう考えても、自分が支払うべき補償金の金額は一体幾らなんだということが決まらないと、どうしても現場は萎縮をしがちになるんじゃないでしょうか。

 だから、これだけの事故を起こしたわけですから、東京電力があらん限りの負担をするのは当然でありまして、大臣おっしゃったように、さっき一義的という言葉をお使いになったと思いますが、東京電力が死ぬほど苦労して負担をするのは当然だろうと思います。

 私は、だから負担の額を小さくしろということを言っているのではなくて、限度の金額は高くてもいいから、幾らということを、幾らまでが責任範囲だ、そこから先は国が面倒を見るんだということを決めないと、民間企業が支払いをしていくわけでありますから、現場でどうしても萎縮しがちに、あるいはびびりがちになるのではないか。その結果、被害者救済が滞りがちになってはいけないということを心配しているわけです。これが私の心配の第一であります。

 また、第二の心配は、マーケットや金融機関がこのスキームをどう見るかという点であります。

 この報道があって、私は、友人、知人のマーケット、金融関係者に少し意見を聞いてみました。恐らく大臣のところでもいろいろ情報収集をされていますので、ぜひ丹念にやっていただきたいと思うんですけれども、残念ながら懸念を有する見方が強うございました。

 一言で言って、まとめるのがいいかどうかわかりませんが、時間がありませんので、私の受けた印象を一言でまとめますと、総じて、東京電力が負担する賠償額の全体が見えずに長期的に財務体質が悪化し続けるのが見通せる一方、政府の支援はこの程度かというのが受けとめ方でありました。中には、原子力発電は政府を挙げて推進してきたのに、こんな逃げ腰の国の態度は許せないというお話もありました。賠償額全体が見通せなければ、資金の返済計画もつくることはできません。資金の返済計画も立てられない人に、お金を貸す人はいません。社債を買う人もいないということにもなりかねないわけであります。検討中なんですから、私はこれについて大臣に一々御質問はいたしませんが、ただ、今報道されたこの案だと、マーケット関係者はかなり懸念を有しているということでありますので、検討中の案のままではかなりの混乱も予想されるのではないかというのが二つ目の心配であります。

 そして、三つ目の指摘は、こういうことがありますので、原子力先進国アメリカでは、もう大臣御案内だと思いますが、プライス・アンダーソン法で原子力の損害賠償制度というものを定めているわけでありますが、そこではまず強制保険で支払いをする、その後、遡及保険で、さかのぼってお金を取るという制度があって、さらに、その二つの保険を超える損害が発生した場合には、大統領が提出する補償計画に基づいて連邦議会が完全賠償のために必要な措置を講じる。完全賠償という言葉を使っています。

 つまり、一定の限度を超える損害が発生した場合は、国と、しかも、大統領と連邦議会まで法律に書いてありまして、完全賠償するということで、要するに上限をきっちり決めているわけであります。上限を決めていない例が世界に全くないとは申し上げませんが、同じように原発先進国のフランス、イギリス、また、中国や韓国も限度を設定いたしております。

 こう考えてまいりますと、アメリカやフランスのように、金額を幾らにするかというのは、さっき申し上げたように、もうあらん限りのことはやってもらわなくちゃいけないわけですが、だから金額はともかくとしても幾らまで責任を事業者が持って、そこから先は国もしっかり出るんだ、アメリカの法律のように議会まで巻き込んで、そういうことを鮮明にした被害者救済のスキームが、現場の実際にお金を払う民間企業が後顧の憂いなくどんどん出せるという観点からも、あるいは金融市場に与える影響からも、好ましいのではないかと私は考えるわけでありますけれども、細かいスキームではなくて、この考え方について大臣の御見解を伺えたらと思います。

海江田国務大臣 今、委員から幾つかの論点がございました。主に三つだろうと思います。

 最後の問題は、原子力発電を担う事業主体が一体どこなのかということとも関係してこようかなと思っております。日本の国では、もちろん国策としての原子力発電ということはございましたけれども、それを担う事業主体が民間会社の東京電力なり各地の電力会社ということになっております。その姿からくる規定もございましょう。

 それから、二番目でございます、総額で幾らぐらいになるんだろうかということでございます。

 これは先ほどお話をいたしました。それから、委員の先ほどの発言の中にございました。私は、審査会ということを申し上げました。委員は、風評被害のことをおっしゃりました。こういったことについて、まず、あしたのガイドラインの発表があって、そして、七月中にというふうに私は聞いております、これはできるだけ前倒しをしていただかなければいけませんが。そういった審査会の中で、この審査会というのは、さっきもお話をしましたけれども、裁判の手前の和解までは責任を負うことになりますから、ここがどういうガイドラインを出してくるかということによって、実は金額自体がまだ定まらないということであります。

 一番目の点につきましては、私も大変気にしているところでございまして、三月は、東京電力のみならず、電力債の起債ができなかったということもございます。

 それから、私どものこうした国会での発言や閣議の後の閣僚の発言などによって、本当に株価がかなり下がったりいたしますので、ここはひとつ慎重な物の言い方をしなければいけないな、そして、それが与える影響の大きさというのは本当に大きなものがあるということをかみしめまして、私は職務に当たっておるつもりでございます。

齋藤(健)委員 大臣、丁寧な御答弁、本当にありがたいんですが、私が先ほどお伺いをいたしましたのは、アメリカやフランスのように、金額の多寡はともかくとして、とにかく事業者が幾らまで責任を持って、そこから先は国もしっかりと出ると。なぜなら、原子力発電所の設置の許可は経済産業省が出しているんですね。原発をつくっていいよという許可を出しているのは国なんですね。それに当たって事業者は膨大な資料を出して審査を受けて、ダブルチェックまで受けて、そういう意味では安全委員会もチェックをしているわけでありますが、国の許可を得てやっているわけでありますから、国も責任があるわけであります。

 そして、冒頭申し上げましたように、被災者への補償金の支払いがとにかくスムーズにいくようにするためには、民間企業に幾ら負担するかわからないという状態を続けさせておけば、これは東京電力がこれからどういう形で解決するかというのは別問題ですよ。私が言っているのは、はっきりさせないと滞る可能性があるのではないか、どんどんやろうという意識にはならないのではないかと。さらには、アメリカやフランスでもちゃんとそうしていますよということを踏まえて、この上限を設けるという考え方について、大臣は今の時点でどういうお考えを持っているのかというのを伺ったわけであります。

海江田国務大臣 お答えいたします。

 今の時点では、上限を設けるということは考えておりません。ただ、まだ確定したことではございません。

齋藤(健)委員 なぜ上限を設定しないんですか。

海江田国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたけれども、今、まずのっとらなければいけない法律が、原子力の損害賠償の法律でございます。

齋藤(健)委員 もう支払いを始めようとしているわけでありますから、そこのスキームを私は早急につくらなくてはいけないと思うんです。

 繰り返しお尋ねを申し上げますが、上限を設けない方がいいという大臣の御判断の根拠をわかりやすく教えていただきたいと思います。

海江田国務大臣 先ほども申し上げましたが、特に上限の関係でいいますと、株価の問題でありますとか債券の問題でありますとか、こういう市場に対する影響もあろうかと思います。

 しかし、他方、国が前面に出て負担をするということになりますと、国といいますけれども、最終的には国民が負担をすることになるわけでございますね。それは、やはり電気料金の問題にまず第一義的にはね返ってまいります。

 原子力は、これまで安全で安価なエネルギー源だということが言われておりました。今その安全性ということには大きな疑問符がついているわけでございますが、原子力がもうとまってしまっているのもたくさんございます。今、ただでさえも電気料金がかなり上がらざるを得ないという状況がございます。いろいろな試算がございますが、原油の値段も上がっているということもあります。そうなりますと、それにどれだけ国民がたえられるかということもございます。

 そういうことを総合的に考えながら、一つ一つ、きょう委員からお話があったことも、私はしっかりとこういう論点であるというふうに理解をいたしましたので、そういうことも踏まえてなるべく早くにこのスキームを定めていきたい、このように思っております。

齋藤(健)委員 重ねてお伺いをいたしますけれども、今の大臣の御答弁で、残念ながら決めない方がいいという積極的な理由がちょっとよくわからなかったんですね。

 というのは、何度も繰り返しになりますが、原子力先進国のアメリカやフランスでは決めている。そして、マーケットの関係者が、要するに額が決まらなければ返済計画すらつくれないわけだから、お金も貸せるかどうかわからないと。しかも、国がどこまで本当にやってくれるのかも不透明であるという状況の中で、現場でどんどんお金を補償しましょうというのは、なかなか滞りがちになるんじゃないかということで、はっきりとそこは線を引いた方がベターだと私は思うわけです。引かない方がいいということであれば、どうしてなんでしょうか。

海江田国務大臣 委員のお考えは承りましたので、これから本当にこのスキームをしっかりとしたものにするために、それは責任を持って出してまいります。そして、それが決まりましたところで、また国会でも御議論いただいて結構でございます。もちろん、そのつもりでおりますので。どうぞよろしく、いろいろな御意見をちょうだいしたいと思います。

齋藤(健)委員 時間がなくなってまいりましたが、国が負担するというのは財政の負担ということになるわけでありますが、例えば国が補償しなくても東京電力が補償する、それは結局電気料金になるわけです。だって、それ以外に収入がないわけですから。ということは、それも国民負担なんですよ。電気料金で負担するか、税で負担をするかという違いでありまして、いずれも国民が払うことにおいては変わりはないんです。

 国庫だけ大事にするということであってはならないと思いますので、どういう形で負担をするのが被害者の救済にとって一番スムーズにいくかという視点の方が、国庫を守るというよりも大事なんです。なぜなら、いずれにしても国民が負担しなくちゃいけないからです。

 電気料金で負担するということにした場合には、当然、東京電力の電気料金が上がります。当たり前です。そうすると、ほかの電力会社との料金格差というものが生じることになりますね。非常にいびつな形になります。そうすると、恐らく、私の働いていた経済産業省は、ほかの電力会社からも負担をさせようということになろうかと思いますが、事故を起こしていない電力会社から、何でその負担をどんどん上げなくちゃいけないかという議論も恐らくあろうかと思います。そして、東京電力以外の電力会社の料金が上がっていけば、今、大臣が産業空洞化を食いとめるために大変努力をしておりますが、それにさおを差すことになろうかと思います。

 ですから、そういうことをトータルで考えて、結局国民が負担するわけでありますから、どういうバランスでこの負担のスキームをつくっていくのが経済産業政策として最もいいのかということを冷静に考えていただいて、御決断を出していただき、その結論に基づいて議論ができることを楽しみにしております。

 きょうはありがとうございました。

田中委員長 齋藤健君の質問は以上で終了いたしました。

 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 もう一度産活法の質問をさせていただく機会をいただきました。

 あっという間に桜が散って新緑ということであります。午後三時ということで、審議も折り返して、五時までであります。

 万葉集を一首詠ませていただきますが、きょうは、海に夕日が、そこに立派な雲がありまして、そして、きょうの月夜はきれいだろうなという、中大兄皇子という人の歌でありますけれども、万葉集、巻一、十五番。

  海神(わたつみ)の豊旗雲に入日さし今夜(こよひ)の月夜(つくよ)あきらけくこそ

 どうもありがとうございます。(拍手)

 さて、答弁の方もさわやかに、明らかに、明快にお願いしたいと思います。

 最初に、東日本大震災の影響と対応についてということで四つぐらい聞かせていただいて、産活法を順番に逐条でまたお伺いをしていきたいと思います。端的にお伺いしてまいります。

 まず最初に、せんだってはサプライチェーンのお話をさせていただいて、大臣から、つながったというお話がありましたけれども、ただ、そのつながった線はまだ細い、もっともっと太いものにしないといけないということでありますが、もう一つの問題は、つくっても売れないと困る、風評被害であります。外国に対する風評被害。

 そこで、日本製品の安全性のPRを、大臣も週末もいろいろな形で、中国、韓国、いろいろ進めてこられました。これからこの連休の後半、五月と、各大臣さん方もいろいろな場面で海外に出られる、そんなこともあると思います。これはやはりみんなが手分けして、日本の製品は安全ですよ、こういう問題なんですよというPRをすることは非常に大事じゃないか、そういうことを内閣の中で呼びかけられたらいかがかという御質問です。

海江田国務大臣 橘委員の和歌に私は漢詩でと思っておりましたけれども、ただ、時間がございませんので。

 今の、世界に風評被害のもの、科学的な知見に基づかない、いろいろな形での輸入の規制もありますので、今委員御指摘のように、週末には中国と韓国の貿易担当大臣にその旨お話をいたしました。その前に、OECDのグリアという事務総長がお見えになりましたので、これもお話をいたしました。それから、きょう実は、クウェートの大使がお見えになりまして、もう御案内かと思いますが、クウェートの皆様方は、五百万バレルですか、これは二十年前の湾岸戦争に日本が力を尽くしてくれた御礼だということで、その五百万バレルの原油の、書状でございますが、それでやってきました。その折にも、クウェートの皆さんにもお伝えくださいとお話をいたしました。

 これは内閣全部を挙げての任務でございますので、また改めて、閣議の後の懇談などでもそういうことを私から発言をしておきたいと思っております。

    〔委員長退席、楠田委員長代理着席〕

橘(慶)委員 お願いいたします。お一人お一人が影響力があるでしょうから、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、日本製品、メード・イン・ジャパンというのは、もともと、特に高度成長の後はすばらしい製品の代名詞のようなものでありまして、それが書いてあるだけでも非常に評価が高かった時期もあるわけであります。ただ、今改めてメード・イン・ジャパンということを、私たち自身が、日本の中でも日本製品というものをある意味で大事にして、そしてまたそういうものをどんどん買っていくということも大事じゃないか。

 そんなことを思いますときに、私どもの自由民主党の中で、女性局の催しだったんですけれども、女性の方々が、生活の実感の中からいろいろなことを国の政策に提案をしてくださいということを、小池総務会長の発案で、ウーマノミクスという形で政策提言を募ったわけであります。

 非常に細かい資料でお配りしておりますが、こういう形で五つばかり入選作品があったんです。その中の一点に、鹿児島県の白男川雅子さんという方のお話としまして、「日本製の製品に分かりやすい表示を」、こういう提案があったわけであります。この方は、どちらかというとお年を召された方々にでもわかりやすく日本製ということが書いてあると、よし、これを買おうという気持ちにもなるんじゃないか、こういうお話で始まっているわけです。今こういう新たな大震災後の局面ということで、風評被害がいろいろある中で、でもやはり日本製品をみんなで大事にしていく。これは食品関係では、農林水産省さんは結構、日本の和牛とか日本の牛乳とか、こういうことをやっているわけです。

 経産省さんの関係では、例えば眼鏡のフレームとか繊維製品、あるいはお布団とか、こういうようなもので、それぞれの業界で幾つか取り組んでおられる事例も事前に聞かせていただいたんですが、省としてのこういうことについてのお考えをここで聞いておきたいと思います。

田嶋大臣政務官 お答えいたします。

 御党女性局の取り組みも拝見をさせていただきました。ありがとうございます。

 実は、被災後に二度、クール・ジャパンの会合も開かせていただいておりまして、こういう大変な事態の後に、まさに日本をこれからどう発信していくかということで、議論の焦点の一つが、やはり発信力がまだまだ足りない、もっと強化していこうじゃないかということです。もちろん今風評被害ということがございますので、そこはやはり正確な情報を発信していくこととセットでございますけれども、委員御指摘のとおり、ジャパンというか日本というか、それをもっと前面に出していくということが大事だという共通認識がございます。

 きょう御指摘も賜りました一部業界、布団とか絹とか、取り組みはされてございますが、きょういただきました御指摘も参考にしながら、もっと前面に出していく。まさにこういった大惨事の後だからこそ、ある意味、世界じゅうでジャパンに対する認識も高まっているのも事実でありますし、もっと応援していこうという空気も出てきているわけですから、そこに乗じてというわけじゃないんですけれども、やはり応援もしっかりいただきながらアピールをしていく、発信を高めていこうと、考えていきたいというふうに思っております。

橘(慶)委員 クール・ジャパンの方へ受けとめていただきまして、ありがとうございます。私も、一応、万葉集はクール・ジャパンだと思って詠んでおりますので、そういう文化があって、そこにいろいろなものづくりがあって、それがすばらしいということになれば、最後は、やはり日本の製品、ハード、ソフトともに日本をPRしていくということで、このクール・ジャパンの取り組みについては今いろいろと検討もされているそうでありますので、一般質問等でまたお伺いしたいと思います。

 次に、夏場の電力需要対策ということで、せんだっても谷畑議員からもお話ししているわけですけれども、きょう午前中、朝早くに、ちょっとLED電球の話も聞いたんですが、今我が国のシェアが大体一割を超えてきているそうであります。そして、その効率といいますか、白熱球がどうしても一番熱を出しちゃうものですから、かかった電力に比べて明るさという意味では効率が悪いんですが、このLED電球、だんだん蛍光灯を抜くような勢いで、言ってみれば、一番効率のいいナトリウム球あたりのところまで持っていく努力を今一生懸命メーカーさんもされている。これもまた日本のすばらしい技術だと思います。

 やはりそういったものを普及させていくことによって電力消費を抑えていくということで、いろいろな方法でこれから夏場に向けての対策は大事なんですが、ぜひ節電製品の普及をもう一段力強く後押しをとお願いしたいわけですが、いかがでしょうか。

中山大臣政務官 今、LEDの話が出まして、まさにそのとおりだというふうに思います。

 ただ、今、暖房を切りまして、ちょうどいい陽気になったので、節電ということを皆さんが忘れ出しちゃうということも大変大きな問題なので、テレビ等でLEDの活用がどれだけ節電になるかということも具体的に示して、国民全体がライフスタイルを変えていくような方向がすごく必要で、やはり政策としてもインセンティブを引く方向を考えていかなきゃならない。これからそのインセンティブが引けるような普及の方法をいろいろ考えてみたいと思っております。

橘(慶)委員 きょうのお話を聞いていますと、家庭では今まで使っている電球を大事に大事にお使いになる方がいっぱいいらっしゃいますので、そういうような中ではまだまだ、五割、六割ぐらいは昔の効率の電球がついているという話もありますし、それからまた、ホテルや地下鉄の駅や、そういった二十四時間電気を使うようなところもあります。いろいろなところでぜひまたお互いに頑張っていかなきゃいけないことじゃないか、このように思います。

 震災関係の話でもう一つだけここで聞かせていただきたいんですが、例の五十ヘルツ、六十ヘルツの、周波数が一国二制度になっているという問題であります。

 いろいろなことがあるということも伺っております。しかし、やはりこれは世界の中では特異な事例でありまして、いつまでも難しい、難しいと言っていても、それではいつまでたっても同じ問題が起こるんじゃないか。

 日本の、みんなの電力会社がみんなで融通できるというのは、それは確かに周波数変換装置の部分も大事です、これは補正予算にも組んでありました。しかし、今回の補正予算を見ていますと、各省庁が調査物も含めていろいろな震災対策を打たれている中で、経産省さんも、この予算の中で、少しでもいいから、こういう五十ヘルツ、六十ヘルツということも考え始められたらいかがかと思うのですが、いかがでしょうか。

中山大臣政務官 ただいまは変換システムや何かで対応しているわけでございますが、統一という問題についても幾つかの障害がございます。例えば、今まで使ってきた工場のモーターとか、そういうものまで今度は六十から五十に変わったとか、日本全国でいろいろな問題が起こり得ると思うんですね。

 しかしながら、今、委員のおっしゃったとおり、やはり一国で二制度というのはおかしいので、それに向けて取り組んでいく姿勢は必要だと思います。私どもも、経済産業省で絶対にこれは将来的にそうなるように全力を尽くすべきだというふうに思います。どんな障害があってもいずれはやるべきだというふうに思っております。

橘(慶)委員 そのように力強く言っていただくと、もう一押しだけしておきたいんですが、そういうことを予算の中に、額は小さくてもいいから一項目落とすとか、あるいは第二次補正でもいいんですが、明確にそういう御意思をお持ちなら、やはりそういうメッセージを世の中に対して出していただきたいと思いますが、もう一回、いかがでしょうか。

中山大臣政務官 将来にとって大事なことなので、一億円という予算をつけて、研究開発に向かって進んでいきたいと思います。

橘(慶)委員 ちょっと意外な御答弁だったんですが、それをぜひ活字にしていただきたいな、そのように思います。

 それでは、いよいよ産活法の残ったところを順番に質問に入らせていただきたいと思います。

 まずは、中小企業関係のいろいろな新しい施策のところから始めてまいります。

 法第二十四条におきまして、中小企業基盤整備機構が、企業が自社開発した新商品の生産設備への投資に係る社債、借り入れに債務保証する業務が追加されたわけであります。この新しい業務において期待される効果、あるいは、大体どれくらいの保証を一つの企業に対して、あるいは総額でしようとしているのか、この規模を伺います。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 ベンチャー企業等の成長企業が、大規模な設備投資により急拡大するグローバル市場へ打って出るためには、投資資金のみならず多額の資金調達が必要というふうに考えてございます。

 しかしながら、これまで安定した事業実績がないベンチャー企業にとっては、金融機関からの借り入れなどの資金調達は極めて困難でございまして、リスクを補てんする債務保証制度が極めて有効と考えております。

 本制度の創設によって、グリーン分野とかライフサイエンス分野などの伸び盛りのベンチャー企業が大規模な設備投資を行い、グローバル市場に出て成長していくことを効果として期待してございます。

 具体的な保証規模につきましては、今後、制度の周知徹底をきちっと図ることによりまして、年間百億円程度、今後五年間で五百億円以上の融資について債務保証を行うことを想定してございます。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 続きまして、今度は法の第三十一条へ飛びます。

 これは、今回、事業の承継ということで、事業を受け継ぐ企業が、承継された企業がお持ちであったいろいろな許認可、要するに役所からのいろいろなことをすることの許可、認可、そういったものを、そのまま地位を承継することができる、こういうことを予定されているわけであります。そして、どのようなものを特定許認可ということで特に新しい申請をせずに承継できるかということについては、「中小企業経営資源活用の円滑化に特に資するものとして政令で定めるもの」という形で規定をされているわけであります。

 そこで、特定許認可ということで、申請なしで受け継ぐものについてどのようなものを想定されているのか、ここで確認をしておきたいと思います。

田嶋大臣政務官 お答えを申し上げます。

 現在はまだ調整中でございますが、関係省庁と調整しているものの具体例としましては、旅館営業の許可、これは厚生労働省と、そして一般建設業の許可、国土交通省と、あるいは一般貨物自動車運送事業の許可、これも国土交通省と、こういった事例でございます。

橘(慶)委員 そこで、このスキームなんですが、ワンストップサービスにしようというようなことがありまして、県知事さんの方で、こういった承継をしようという方々に対して計画を認定するに際して、先に県知事が、その許認可を所管する、例えば今のお話であれば国土交通省であったり厚生労働省であったり、そういったところに、行政庁に協議をして同意を得ておくということにされていて、一見、確かにワンストップになるような感じもするんですが、結局、この手続というのは結構、県知事さんといろいろなお役所と、また行ったり来たりということを考えますと、本当にこれで便利になるんだろうか。あるいは、県知事さんが行政庁と協議をする際には、結局、企業にまた、どんなことなんですかという問い合わせをしなきゃいけないんじゃないかと、この辺は本当にどう、よりスマートになるかというところがもうひとつ腑に落ちなかったんですが、ここで考え方を聞かせてください。

田嶋大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員今おっしゃっていただきましたワンストップということでございますが、これはまさに、行政に対して、国民が何か行政サービスを受けようとするときに、これはこっちだけれどもそれはそっちとかいって、あっちやこっちにたらい回しされるのをやめることをワンストップというんだろうと思います。

 そういう意味では、従来ですと、そういった許認可等の承継に関しまして、県にも行き、あるいはそれぞれの許認可を出す役所にも手続をしていた、そこの部分を、計画認定を行う都道府県知事で一手に引き受けるということでございますので、そのバックヤードは、県とそれぞれの行政府の間のやりとりはもちろんあるということになりますが、住民サービスあるいは中小企業の経営者の観点からすれば、はるかに簡素化されるというふうに考えてございます。

 以上です。

橘(慶)委員 お気持ちは理解いたしましたので、いわゆるバックヤードのところで時間がかかったりして申請者が戸惑うとか、あるいはそこで何か細かいことが何回も何回もやりとりがあって、実質余り変わらないねということにならないように、ここは今おっしゃった精神で運用の方をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、法四十一条。これが例の認定支援機関、各地域では、中小企業再生支援協議会ということで、これはこの法律がつくられてからずっと運用されてきているものでありまして、今回そこに事業引き継ぎセンターというものをまたさらに付加していくことになるわけです。

 ここで改めまして、中小企業再生支援協議会、産業活性化法ができまして、これまでの活動の中でどんな成果が上がっているというふうに御認識であるか、ここで一度、振り返りの意味も込めて御答弁をいただきたいと思います。

田嶋大臣政務官 御答弁申し上げます。

 これまでは再生支援ということでございます。今回、新たに加わるわけでございますが、これまでの実績といたしましては、全国で二万二千社から相談を受けてございますが、そのうち、実際の再生計画策定支援までいったケースがおよそ三千件でございます。

 以上です。

橘(慶)委員 そんな意味では、三千件の、言ってみれば過去のいろいろな問題で、債務等で悩んでいるところ、あるいは行き詰まっているところの解決に当たった、そういう効果が上がっているんだと思います。

 そこに今回、先ほどの参考人さん方のお話にもありました、なかなか後継者が見つからなくてというところについても、この後、事業継続性のあるものをまたうまくマッチングさせていくということでの事業引き継ぎセンターということになるわけです。そうなりますと、今まで再生協議会で取り組んできた、債務を後始末したり金融機関と交渉したりバランスシートをきれいにしたりということだけにとどまらない、もう少しいろいろな方も、スタッフも用意してということでセンターを立ち上げていかなきゃいけないんだろうと思います。

 これは予算措置の問題にはなりますが、どういうふうな形でそのセンターというものを運営されていくのか、お伺いします。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 事業の引き継ぎ支援に関しましては、先ほど参考人の西村社長もおっしゃっておられましたけれども、事業引き継ぎにつきまして、コーディネーターの方、それからさらに、事業引き継ぎに関します経験を有される税理士の方あるいは会計士の方といった専門家の方、あわせて国の予算で配置をさせていただくというふうに考えております。

 また、全国ベースでの協力も大変重要だということで、中小企業基盤整備機構の中に全国本部のようなものを置きまして、全国に存在する支援機関の間の情報交換の促進ですとか、専門的なアドバイスの実施あるいは支援人材の育成といったこと、さらには、廃業をお考えになる前に事業引き継ぎを考えていただくという意味でセミナーの開催などもさせていただきまして、総合的な支援体制を組んでいきたいと思っております。

 以上でございます。

橘(慶)委員 どうもありがとうございました。

 今までと違うのは、やはりコーディネーターというあたりがちょっと違ってくるのかなと、先ほどの西村参考人さんのお話も聞きながら思っているわけであります。

 恐らく秘密も守りながら、またお互いの気持ちというものを、呼吸も合わせながらと、練達の士ということだと思いますが、そういった方もうまく配置をしていただいて、ぜひ成果が上がるようにお願いをしたい。

 ということで、六番目の質問は飛ばさせていただきながら、続きまして、産業再編、法の最初の部分、大きな、大がかりな話の方を、順番に、せっかくの法案審議でありますから、また逐条的にお話を聞いていきたいと思います。

 まず、法第二条第四項に戻りまして、今まで支援対象となっておりました事業の再構築という中から「資本の相当程度の増加」という部分を除外されたわけであります。要は、事業の再構築をするときには、企業組織を変革したり、MアンドAあるいは分社化あるいは一緒に会社をつくる、いろいろなことがあるんでしょうけれども、どうやら今回のことでは、単なる増資みたいなものは外そう、こういうことを内閣の方で考えられたんだと思います。

 この辺の理由、どうしてそうなるのか教えてください。

田嶋大臣政務官 お答え申し上げます。

 この法律は、今回、四回目の法改正だというふうに思いますが、基本的には、その時代その時代の要請に基づいて、ここを支援するというところをねらい撃ちして支援をする。逆に言えば、役割を終えれば、もうそれを変えていくという精神でやらせていただいております。

 この「資本の相当程度の増加」をこれまで入れているというのは、従来、日本の国の企業が自己資本が不十分であったという認識に立ってございます。

 それがどのように今日までに変化をしたかという数字を申し上げますと、平成十年の自己資本比率が一九・二%に対しまして、平成二十一年、十一年後には三四・五%まで上がりました。欧米は、同じ数字で、三二・六%から三五・二%。すなわち、平成二十一年段階ではほぼ横に並んだということでございまして、従来言われていた、我が国の企業の自己資本比率が低いというところは、既にある程度、かなり目的は達成できたと考えているということでございます。

 以上です。

橘(慶)委員 今のお話でいけば、前回ちょっとバブルの後始末みたいな話をしておりましたが、言ってみればナショナルレベルといいますか、大企業レベルにおいては、大体そういった自己資本の欠損といいますか、あるいは逆に言うと債務過大といいますか、資産・債務過大と言った方がいいのかもしれませんが、そういう状況がおおむね解決をしてきた、それで新しいステージへ、こういうことになったんだなというふうに理解をいたしました。

 ただ、たまたま今お話を聞きながら思ったのは、東京電力さんなんかは今度どうなるのかなとちょっと要らぬことを思ったわけであります。

 それはさておきまして、法第二条第四項で支援対象とする事業革新、これはまた、今度はこういう新しいイノベーションを応援しましょうということであります。「商品及び役務を一体的に組み合わせて行う」、平たく言うと、経産省さんがシステム売り、システム売りといつも言っておられるものだと思っております。

 そこで、同じように、これを今日的に加えた理由、そしてシステム売りということで具体的にどのような業態を考えておられるのか、例示も含めてお答えをお願いしたいと思います。

田嶋大臣政務官 先ほどの御答弁と少し趣旨が重なるわけでございますが、そのときそのときの重要なところに支援をしていくという考え方に立てば、今よく言われるシステム売りというか、そういったところをこれから強化していきたいという思いのあらわれでございます。

 そういう意味では、事業革新の中でも、「商品及び役務を一体的に組み合わせて行う」というふうに規定をさせていただきまして、具体的には、よく言われる単品売り、我が国がこれまでやってきた単品売りではなくて、むしろ機器とサービスを組み合わせるという形を支援していこうということで、特徴的には、海外インフラ輸出でよく言われている、例えば水ビジネスなどのプラント製造に関しまして、プラント販売だけではなくて、その後のメンテも行うということも一つの例として挙げられるというふうに思います。

橘(慶)委員 そういうアフターメンテナンスまであわせて一つの商品として出していこう、こういうことであります。

 続きまして、済みません、入れるもの、出るもの、何か入れ出し入れ出しで申しわけないですが、次に、法第二条第九項では、今度は支援対象とする設備の方ですが、この設備につきまして、今回は、自分で行った研究開発の成果である新技術、要するに自分で開発した技術を利用したものだけに絞られたわけです。今までは単なる新規設備導入であっても支援対象になっていたんですが、今回からは自分で汗をかいて開発した技術ということに絞られたんですね。ここも当然今日的な理由があるわけでしょうけれども、これを確認しておきたいと思います。

田嶋大臣政務官 御答弁申し上げます。

 ここは、五十億円までの債務保証制度という意味では新規でございますが、新規の法改正の入れ方として限定をあえてさせていただいているということで、ベンチャーをしっかり応援したいという思いでございます。

 そういう意味では、自分で技術を開発している、そしてそれを新商品につなげている、そういうところの必要な設備投資を債務保証という形で応援しようと。意外とこの五十億円までの結構大きな額を調達するのが現時点では難しいというところがベンチャーの部分に関しての弱いところだという認識が出てまいりまして、今般こういうところをやらせていただくということで、従来あります保証協会の保証などは八千万円とか二億とか、もう全然けたが違いますから、こういう形で初めてやらせていただくということでございます。

橘(慶)委員 信用保証協会の二億とか八千万、また今回五億六千万という話もありますが、そういうオーダーとは違う、一けた違うオーダーのところでそういう支援をしていくということで、それは絞った形でやっていくと理解いたしました。

 続きまして、法第四条第一項で、新たに事業分野別指針というものを策定することになっております。これは、逐次いろいろな分野に広がってきている、そういう法改正が進んできたものでありますが、今回、特に、事業分野別指針ということで新たな分野を三つ掲げておられます。

 一つは、我が国は基本的には生産性は割合いい部分もあるんでしょうけれども、生産性の向上がやはりまだ足りない、必要な分野というのを一つ掲げておられます。二つ目には、国際シェアを拡大しなきゃいけない分野というものを掲げておられます。そして三つ目には、新需要開拓が必要な分野というものを掲げておられます。

 この一、二、三のそれぞれの分野について、具体的にはそれぞれどんな業種、どんな業態を考えておられるのか、ここで確認をさせていただきます。

田嶋大臣政務官 お答えを申し上げます。

 これは基本的に主務大臣が事業分野別の指針を出すわけでございまして、基本的な指針に加えての分野別の指針ということでございます。

 その場合の中身でございますが、一つちょっと確認なんですが、最初におっしゃっていただいた生産性向上は、これは新規に入ったものではございませんで、今既に入ってございます。具体的には、ゲームソフトウエア業などを対象にしてございます。

 今回は二つ加えさせていただいてございますが、一つは、国際シェア拡大というふうにおっしゃっていただいたでしょうか、これは基本的には、我が国の一社一社の規模がほかの国の同じ業種に比べて小さい場合ということで、そこの競争力を上げるために規模を大きくしていこう、いわゆる規模の経済ということでございますが、具体的には、鉄鋼業界、それから石油化学業界ということでございます。

 それから、もう一つ加わったものは、規模の経済に対して範囲の経済というふうに言われておるものでございます。これは、先ほどと重なりますけれども、いわゆるシステム売り、単品ではなくてシステム売りの部分に関しての分野別の指針ということで、先ほどと同じ、水ビジネスがその具体例だというふうに思っております。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 ちょっと私の方で勘違いをしていた部分もあって、訂正もいただいてありがとうございます。

 今のお話を聞けば前回の質疑ともつながっていくわけです。特に、先ほど銀行の話がちょっとありまして、昔は都市銀行というのも十三行あった時期があったわけで、そのほかに長信銀もあったわけですが、それがメガバンク三つということに集約されていった。そんなふうに考えていきますと、鉄鋼の世界、もちろん鉄鋼の世界も既に何回か集約はしているわけですが、日本の中でそれが二つとか三つとかそういうお話かな、石化にしてもそういうことになっていくのかな、そういうふうに理解はしたわけであります。それで、例の公取の規定ともみんな全体にリンクしていくんだな、そういうふうに理解をいたします。

 続きまして、第五条第六項というところで、事業再構築計画に求める競争確保の要件ということで、これは再構築はしてもちゃんと競争はありますよということを担保する部分ですが、その要件は、今までは業種という形になっておりました。これを今回、事業分野という形で、ちょっとこれは理解が違っていたら申しわけないですが、よりきめ細かく、何といいますか、範囲を狭く見られたような、逆に言うと、申請する側からすれば楽になったようにもお見受けするんですが、ここの趣旨、また今日的理由について確認をさせていただきます。

田嶋大臣政務官 お答え申し上げます。

 これは法第五条第六項でございますが、御指摘の競争確保の要件は第八号要件というものでございまして、おっしゃっていただきましたとおり、業種から事業分野というふうに表現が変わってございます。

 そのねらうところでございますが、これまでは水平的な統合のみのチェックでよかったということで、すなわち、計画認定を行う際に、水平的な統合が、まさに競争確保はできているかどうか、そのチェックを行うというハードルであった。しかし今後は、川下、川上、その垂直的な統合も対象に入れて、そして統合後の事業と同一分野の競争状況への影響を確認する、判断材料とするということでございますので、言い方としては、ハードルが上がったということでございます。申請する側からすると、縦横に競争状況がしっかり確保されているかを確認することになるということでございます。

橘(慶)委員 ちょっと確認ですが、そうすると、川下、川上というのは、今の場合でいうと、例えばシステムの設計からシステムのメンテナンスというような、そんなイメージでとらえておけばいいんでしょうか。

田嶋大臣政務官 垂直統合ということでございますので、製造、さらにそれを販売、流通、そういう市場への距離のことだろうというふうに私は理解をしております。

 今おっしゃっていただいたのはシステムの場合でございますが、あるいは製造業であれば、つくるところから販売までの一連のバリューチェーンと申しますか、そういうことではないかというふうに理解しております。

橘(慶)委員 そうすると、自動車でいえば販売までというようなことになるんだろうと思いました。

 先へ進ませていただいて、もう少し逐条的なところ、あとはツーステップローンということになりますので、もうちょっとおつき合いをいただくということで。

 法第二十一条の二、これは自社株対価の公開買い付けの場合の株主総会決議事項の特例というものであります。

 株価のかわりに株式交換比率ということで決議をすることもできるようになった、言ってみれば、お金じゃなくて株式でも云々ということではないかと思います。こういうものを設けられた趣旨をここで確認させていただきます。

田嶋大臣政務官 これは、どこの国でもやっているような話をようやくという感じもあるのでございますが、要するに、この自社株式を対価とする株式公開買い付けは、これまで株価ということでございましたけれども、実態上は、そうすると評価額をあらかじめ決定することができないということで、現行の会社法においては、自社株対価の公開買い付けを念頭に置いた手続が整備されておらず、事実上利用困難ということで、実質的に利用ゼロという話を聞いてございます。

 そういう意味で、今般の改正は、申請計画が計画認定をされた場合に関してのみでございますけれども、現行の手続にかえまして、特例的に、対象会社株式の価格のかわりに自社株との交換比率のみを決定することで足りるという特別な手続を措置するものでございます。そうすることによって、まさに現金を用意せずともできる株式交換、シェアスワップによるMアンドAがほかの国並みに進んでいってくれることを期待するものでございます。

 以上です。

橘(慶)委員 シェア、比率を決めるということですから、やはり何らかの評価をしなきゃいけないわけですけれども、そうすると、趣旨としては、株価を決めるよりは、比率、シェアを決めることの評価というのは、もう少し粗いものでもいいから楽ですよ、そういう意味なんですか。確認です。

田嶋大臣政務官 御答弁申し上げます。

 これは質問通告にない部分かなというふうに思いますが、これは相対評価、相対的なバリューさえわかればいい、比率ということでございますので。私、実際にそういうMアンドAをやったことがありますけれども、両方のバリュエーション、買う方も買われる方もバリュエーションは必ずやらなきゃいけないというふうに理解しております。

橘(慶)委員 教えていただいて、ありがとうございます。

 それで、ツーステップローンのところの制度、ここについては、いろいろな類似の制度も今、日本銀行さんを含めていろいろ立ち上げておられる分野でありますので、一応、この辺の制度の全体の切り分け、そして相対的にどういう効果が出てくるかということを、以下、幾つかの質問で確認をさせていただきたいと思います。

 日本政策金融公庫が新たに事業再構築等促進円滑化業務ということで、指定金融機関を通じたツーステップローン、二段階融資を行えることになります。制度の内容と効果について、まず確認をいたします。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 産業再編時には、中核的事業の強化と非中核的事業の事業転換もあわせて行うことが多くて、大規模な資金が必要となります。

 他方、大規模な再編の場合には、生産工程の見直しとか技術のすり合わせなど、資金回収が長期化することも考えられまして、長期資金の調達支援が非常に重要となってございます。

 日本政策金融公庫は、財政投融資資金によって、長期、低利の貸し付けが可能でございます。他方、民間金融機関の中には、再編に必要な融資について、審査能力や知見を有している金融機関が存在いたします。

 このため、今回の改正におきましては、日本政策金融公庫が、産業再編等を行う事業者へ融資を行う指定金融機関に対して、財政融資資金を原資とする長期、低利の貸し付けを行う二段階融資制度を設けたところでございます。

橘(慶)委員 そこで、まず、この二段階融資の対象となる措置、要するにどういう分野に、どういうことに対してツーステップローンが適用されるのかということ、これは政令で定める事項になっておりますので、その内容を確認いたします。

中山大臣政務官 もともと政策金融機関というのは民間の金融機関を補完するものだというふうに思うんですね。ツーステップローンは、できるだけ民間金融機関を引き出すための一つの道具だと。できるだけ安く貸して、安く民間金融機関からお金を貸すということでございますので。

 具体的には、単一の事業者による取り組みではなく、複数事業者が行う再編等の取り組みであって、かつ、我が国産業の国際競争力強化に真に資するものである計画について支援対象とする旨を政令において規定する予定でございます。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 そこで、今、政務官からもお話がありましたように、民と公といいますか、官といった方がいいんですか、そこのすみ分けがあると。そしてまた、恐らく協調融資のような形で引き出すということも含めて考えておられる。

 そこで、指定金融機関というふうに書いてあって、これについてはまたいろいろな要件があるわけです。ツーステップローンというのでは、さきにこの経産委員会で成立しております低炭素投資促進法で最初にそういうツーステップローンの仕組みが導入されたんですが、このときは日本政策投資銀行が指定金融機関となって、昨年の十二月に指定されているわけであります。

 多分、今のお話でいけば、ちょっとそういうイメージではない指定金融機関のイメージじゃないかなと思いますが、具体的にどういうイメージでとらえておられるのか、お願いいたします。

中山大臣政務官 私たちはよく金融庁とも話すんですが、できる限り、自己資本比率や何かも余りBIS規制にとらわれなく、もっと本当はお金を出して、世の中にお金が流れるということが基本的にすごく大事だと思うんですね。

 ですから、まずこの要件としては、銀行法にのっとった銀行であること、それがまず第一でございます。ですから、民間の金融機関を最大限活用しようという考え方でございます。第二は、金融機関が定める業務規程が産活法の基本方針に適合し、かつ業務を適正に遂行できるものであることです。業務従事者が融資業務を適正かつ確実に遂行できる知識及び経験を有していること。この三点を指定の要件といたしております。

橘(慶)委員 そういたしますと、政投銀というよりは、メガバンクとか、もしかしたらもう少し地銀上位行みたいなものも入るのかな、そんなふうに感じ取らせていただいたわけであります。

 そこで、このツーステップローンというのを似たような幾つかのローンと比べたいわけですけれども、一つは、長プラ、長期プライムの資金というのがございます。これに比べてどれくらい有利になるのか。数字的になかなか、数字でこうだというのはあれでしょうけれども、金利あるいは期間の面においてどれくらい有利になるんだろうか。

 そして、一千億円の長期資金を、言ってみればこの制度のために、まず公庫さんに導入していく、公庫さんがそれをまた指定金融機関に持っていく、そこで何倍かに膨らむんだろうと思うんですが、最終的に川下でどれくらいの資金の規模になるのか、この辺についてのお考えをお伺いします。

中山大臣政務官 私たちは、産活法では、合併したりいろいろなことをしたときに、本当はみなし資本ぐらい長く貸すということがいいと思うんですね。

 一般的に見ますと、民間でやっている十年物の金利を見た場合に、それと比較しますと、かなりうまく安くできる。〇・九で出しますから、大体一・四ぐらいで、しかも最長十五年ぐらいまで長く貸し出すことが大事だというふうに私たちは思っております。

    〔楠田委員長代理退席、委員長着席〕

橘(慶)委員 ちょっと聞き取りにくかったのですが、十五年とおっしゃいましたか、十年ですか。

中山大臣政務官 基本的には長ければ長いほどいいわけでございまして、我々もいろいろな観点からこれを見ておりますが、できるだけみなし資本に近い、できるだけ長く貸すということで、年数よりも長く貸すということが大事で、日銀のものでも何か何回も借りかえが認められているということで、ある程度融通はきくものだというふうに思います。

橘(慶)委員 そこで、日本銀行さんのお名前も今出していただいたわけですが、日本銀行さんも、実は、今の経済活性化といいますか、景気対策といいますか、そういうために総額三兆円規模で〇・一%で金融機関に提供する資金供給を始めておられまして、三月時点でこれが市場に二兆三千億円程度入ってきているわけであります。この資金と、どうやら期間的にも、資金の貸出期間とかそういうもので少し違いがあるように今の御答弁でもちょっとお伺いしましたけれども、具体的にどう切り分けられているのか、お伺いします。

中山大臣政務官 日銀は、三回ぐらい借りかえがあるものの、大変短い、一年ぐらいという期間でございます。

 先ほどから申し上げておりますように、私たちは、七年から十五年ぐらい、いわゆるみなし的な資本といいますか、じっくり研究開発や、または合併したその利益をうまく生かせるような方向で、時間を与えるということを趣旨にいたしております。

橘(慶)委員 そうすると、日銀さんのはごく短期ということ、そして、真ん中に普通の銀行さんの長プラの資金があって、その外に、もう少し長いものということで、みなし資本にもなり得るような、十年内外のそういう新しいツーステップローンができる、こういうことで整備が進むわけであります。

 そこで、この項の最後に金融庁さんに確認をさせていただくといいますか、見解をお伺いするということになるわけですが、実は、企業のお金を借りる意欲というのが余り高まらない中で、残念ながら、メガバンクあたりの預貸率というのはだんだんだんだん悪くなって、国債で運用している部分もかなり膨らんできている。これはこれでまた我が国のカントリーリスクということに思えてならない部分もあります。むしろ、預金者から集められたお金が市場でいろいろな新しい投資に、具体の新しい、言ってみれば設備投資といったものに投資資金が回っていくということが、成長ということからすればよろしいことかと思います。

 そこで、こういった措置をいろいろ用意していくということにおいて、金融機関の貸し出し態度や経営に与える影響というものを、金融庁さんとして、全体としてどのようにごらんになっているか、ここで最後に確認をさせていただきます。

遠藤政府参考人 お答えいたします。

 今回の制度で想定されておりますような大規模な事業再編などの資金需要は、その規模でありますとか、回収に非常に時間がかかるといった期間の観点から、民間金融機関がすべてのリスクを引き受ける、その需要にこたえるということがなかなか困難な事案ではないかなというふうに思っております。

 そういった事案について、政策金融機関に入っていただいて民業を補完していただくということで、民間金融機関の側からしますと、民間金融機関が対応できる新しい資金需要が創出されるということが期待されるのではないかなというふうに考えております。

 金融庁といたしましては、今回の東日本大震災という甚大な自然災害への対応を初めといたしまして、官と民が適切なリスク配分を行い、民間金融機関と政府系金融機関が協力しながら金融の円滑化に尽力していくことが重要ではないかなというふうに考えております。

 今回設けられた融資制度が、結果として、債務者の側からいいますと、債務者にとってニーズに合致した資金調達が実現しやすくなるのではないかなというふうに期待しているところでございます。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 やはりお金が、言ってみれば生き金としてぐるぐる民間経済の中を回っていく、そのことによって成長がなされるということを願うわけでありまして、ぜひこういうシステムを、もしこの法案ができれば立ち上がっていくわけでありますので、あと運用の方をまたよろしくお願いしたいと思います。

 そういうことで、一気呵成にやっておりますと、あと五分ぐらい、最後ポケットが出てまいりまして、最後に何とか、予定しておりました東日本の質問をもうちょっとできそうなことになりました。再来週の一般質問にしようかなと思ったんですが、時間があるので、あと二つだけ聞かせていただきたいと思います。

 一つは、ガソリン等燃料供給の問題があったわけでありまして、これは大臣もいろいろな形で大変尽力もいただいて、JR貨物での陸上輸送、やがては塩釜のオイルターミナルの復旧ということになりまして、海上輸送も入れながら進めていったわけであります。

 しかし、改めてこういう災害が起きてみますと、個々のSSの手前に、オイルターミナルということで、まずオイルをためておく場所があるわけですね。そういったものの配置、あるいはそれをどのような形でSSまで運んでいくかとか、まあローリーはローリーでもちろんいいわけですけれども、やはり大量に運ぶとなれば、船や鉄道というモードも大事であります。

 そういったロジスティクスの組み方ということは、やはりもう一度ここで将来に向けて考えていかなきゃいけないテーマではないかと思います。感想も含めて、現在お考えのところをお伺いしておきます。

海江田国務大臣 感想も含めてお話をさせていただきます。

 確かに、本当に今回の大震災、特に、東北に油を供給しておりました製油所、九つあるうち六つまでもが被災をいたしましたので、そのとき、どうしようかなということをいろいろ考えました。

 今委員御指摘のありました鉄道による輸送というもの。私が青年時代というか、新宿の近くに住んでおりまして、新宿の駅なんかには本当にタンクの車がたくさん来ていたわけでございますが、もうここ何十年、そういうものをほとんど見なかった。ところが、今回、そういう鉄道のタンクで運んだということ、これが被災地域に油を運ぶ上で一つの大きな役割を果たしたということもございます。

 それから、もちろん海のルートは大変大切でございまして、海のルートでいいますと、やはり塩釜が大変大きなダメージを受けたわけであります。あそこは油槽所というのがありますから、やはりこれも塩釜の油槽所が何とか回復するようになってから、もちろん回復するためには、国土交通省などのお力添えもいただきまして、いろいろな大変な努力が要ったわけでございますが、塩釜の油槽所が機能し始めたころから、やっと幾らか需給感に余裕が出てきたということでございます。

 改めて思いますのは、そうした海、それから陸。陸の中でも鉄道、それからトラック。トラックも、西からタンクローリーで随分、西の事業者の方には御無理を言いましたけれども、急遽タンクローリーを大量に出していただきまして、そして被災地に運んでいただきました。そういう総合的な油の供給の体制というものがやはり必要だなということをつくづく実感いたしました。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 塩釜の油槽所の、この日本海側には秋田や酒田にも油槽所があるわけで、そういったものが相互に融通できるようにするということになれば、この南北に長い日本列島で、やはり南北の軸だけではなくて、東西にはしごをかけるように、そういった物流ルートも必要なのかなと、こんなことを思います。

 最後になりました。済みません、寺坂院長さんにずっとお待ちをいただいて。

 これはもう少し深めた質問はまた別の機会にしなきゃいけないんですが、やはり、放射線の強度というのはなかなか今までなじみがなかったものですから、国民の皆さん方には非常に難しいテーマであった。しかも、ミリシーベルト・パー・アワーという、瞬間といいますか一時間の値と、今、新聞も大分よくなっていまして、累積値と、この累積値が年間ということですから、年間にすれば、例えば、一日二十四時間のうち起きている時間を十六時間とすれば、六千倍ぐらいしないとこの累積の値が見えてこない。そういったものを含めて今回の計画避難区域とかいろいろなものが決まってくる、言ってみれば、科学的にはこういうことになる。

 そしてまた、それぞれのモニタリングポスト、いろいろなところで数値を毎日毎日やっていまして、新聞では、毎日、下がった、下がったとあるんですけれども、具体的にどんなふうな傾向値で、グラフに書いたらなっているかなんということが意外と皆さんわかっていない。そういうものが見えてくると、だんだんだんだん、毎日毎日、指数関数的に減衰していくわけで、それが閾値を下回れば避難しなくてもいいというようなことも論理的には見えてくる。

 そういったことを何かもう少しわかりやすい形で、きょうちょっと齋藤議員からもありましたが、全体像というんですか、全体像がどうなれば落ちついていくのかということを、これは院のスタッフの方とも何回か議論はしているわけですが、そういったことをぜひお考えいただいたらいいんじゃないかなと思っていましたら、たまたま私の秘書さんがこのニュートンという雑誌を持ってきたんですけれども、御紹介しておきます。

 これの六十五、六ページに今私が言ったようなことが書いてありまして……

田中委員長 橘君、時間が参りましたので、簡潔にしてください。

橘(慶)委員 はい。

 そういったことも含めてまた質問しますが、きょうは、わかりやすい広報ということについてぜひここで聞いておきたい。これで終わらせていただきます。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のございましたモニタリング情報、あるいはプラントの情報、わかりやすく広報をしていくこと、情報提供していくこと、大変重要なことだと思ってございます。

 私どもは、記者会見の場合、資料、ポンチ絵とかあるいはグラフを使うとか、そういうさまざまな工夫は行ってございますけれども、ただいま御提案のありましたようなことも含めまして、関係省庁などとも協議しながら、わかりやすい情報提供に努めてまいりたいと考えてございます。

橘(慶)委員 どうもありがとうございました。

田中委員長 以上で橘慶一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 産活法の改正、通告に従いまして順次質問させていただきたいと思いますけれども、そこに入る前に福島の第一原発の事故について数点だけ聞かせていただきたいと思います。

 まず最初に、東京電力における賠償の財源についてです。

 先般、二十五日ですか、東京電力は、福島第一原発に伴う賠償金と多額の復旧費用を捻出するために役員報酬と社員の給与の削減を検討する、こういうことが発表されました。この報酬、給与の削減だけで五百四十億円ぐらいになるという報道もありますが、東電のこの賠償財源については、いろいろな議論もあるんでしょうけれども、これだけじゃないと。いわゆる固定資産ですとか流動資産等々、一体、東電全体でどのくらいの資産があるのか。これは裏返すと、賠償能力がどの程度あるかということになります。

 これも報道によりますと、東京電力の保有する株式は二百五十銘柄だと。二〇一〇年三月末の時価で三千億円程度あるんだということで、こうした保有株式や不動産などの固定資産を売却した上で賠償費用に充てるべきものではないか、このような意見もありますけれども、この点についてまずお伺いさせていただきたいと思います。

海江田国務大臣 お答えを申し上げます。

 東京電力の資産は、総額で約十二兆六千億円ということでございます。これは平成二十一年度末であります。この中で電気事業固定資産額が七兆九千億円、そのほか投資等資産が二・四兆円ということでございます。

 ただ、この中は、今、私は少し細かな資料をいただいているところであります。例えば、電気事業固定資産七兆九千億円ということを言いましたけれども、これは、もちろん、発電関係のサイトの土地でありますとか、発電機でありますとか、こういうものがあるのは当然でございますが、そのほかに、一等地などに電力館というんですか、そういうものがあったりしまして、いろいろな資産がまじっておりますので、本当に処分できるもの、処分できないものがございますので、こういうのを少し精査をしなければいけないと思っております。

稲津委員 これは先ほども質疑の中で少しあったと記憶しておりますけれども、賠償の枠組みの政府の原案では、東京電力の賠償を支援する機構を、他の電力会社も負担をして新設する方針が示されているというふうにも聞いております。一部報道では、四国電力が、将来の原発リスクに対する保険なら額次第で株主にも御理解をいただけるかもしれないけれども、東電を救済するためのスキームであれば、これは筋が違う、こう述べられたと。これは裏返すと、やはり国が救済するということを優先する、そういう意味があるというふうに私は理解しております。

 このスキームについてどういう検討状況にあるのか、それから、今の四国電力の話じゃないですけれども、そういう声にどのようにおこたえしていくのか、この点についても聞かせていただきたいと思います。

海江田国務大臣 このスキーム、仕組みでございますが、どういうものにするかということは、本当に今検討中であります。新聞に出ております中身も、それぞれ新聞によって若干違います。ですから、まだ確定をしたものではないということは確かでございまして、委員がおっしゃっている、特に四国電力がそれは筋違いじゃないだろうかというようなことを言ったという報道も、これは私も読みましたけれども、恐らくこれは、本当に確定したものではありませんから推量しているわけであります。

 実は、金融危機のときに、預金保険機構というのがございましたね。これは、まさに金融機関というのはネットワークで結ばれているわけでございますから、一つの金融機関が倒れると、それが瞬く間に伝播するということで、そうした金融機関が倒れるときには、まず預金保険機構というものが支援をしなければいけない。その預金保険の原資というのは、それぞれの金融機関が預金量に応じて一定の割合で保険料を払っているわけですから、そういうものが念頭にあったのかなというふうに推量をしております。

 ただ、預金保険と今回の原子力の事故の話は違う部分がかなりありますから、預金保険のことを念頭に置いてそういうものがつくられるということであれば、それに対して金融機関と違うんじゃないだろうかという感想が出てくるのも、そういう考え方もあろうかな、これは本当に印象でございますが、そういう印象を持っております。

稲津委員 スキームの構築に当たっては、関係者の方々の御意見を十分聞いていただくということを申し上げさせていただきたいと思います。

 それで、もう一点、これまでもさまざま議論されてきたのは、賠償の一時払いとか仮払いの話で、ここのところは、例えば今回の原発事故で移動を余儀なくされた方々、あるいは、これも前回質問させていただきましたけれども、農漁業者、中小零細企業の事業主の方々や会社そのものに対してどうするのか、ぜひそうしたらどうですかという御質問をさせていただきましたけれども、一方で地元自治体に対する賠償はどのようになっていくのか、実は大変関心のあるところでございまして、この点について現時点での大臣の御所見をいただきたいと思います。

海江田国務大臣 地元の自治体も、今本当に大変な難儀で、遠いところに避難所を設けて、その中で仮に住民に対するサービスを行っておる。あるいは、そういう住民に対するサービスをやる拠点が複数あるとかいうことで、大変な御苦労を強いられているところであります。

 その中で私が聞いておりますのは、今回の避難住民に対する仮払いに先立って、一自治体につき一千万円ぐらいでしたか、支払いがあったということであります。これがどういう性格のお金なのかということは、まだはっきりしておりません。

 まさに委員おっしゃるような、自治体が賠償を請求するというその内金なのか、それとも、まず自治体の方が前面に出て住民のために仕事をしていただかなければいけないわけですから、そうした賠償金の内金ではなしに、とにかく御迷惑をおかけしましたという形でお支払いしたものか、そこはちょっとまだ私も確認をしておりません。

 それから、自治体に対するそうした一時金の支払いについては、幾つかの自治体は、何を言っているんだ、そんなことじゃないだろうというような形で受け取りを拒否された自治体もあったというふうに聞いております。

 以上、御報告と申しますか、わかっておることをお伝え申し上げました。

稲津委員 ここは結構大事なところであると思うんです。

 というのは、例えば今回の一次補正の中に、一千二百億円ですか、地方交付税の増額というのが出てまいりました。これはこれとして、例えば、現段階でも八つの町村が、原発の影響ですぐに役場機能をほかに移さざるを得なかった状況にある。これがいつまで続くかわからない。そして、今度は原発がおさまってからの復興の問題もありますね。私は有珠山の噴火のことを思い出しておりまして、結果的に、地元の自治体がこの復興に多額の費用を要して、国からの財政支援もありましたけれども、財政状況は極端に悪くなっていきました。

 図らずも今回震災に遭って、そして津波で被害を受けて、なおかつこの原発の事故でさまざまな移転ですとか、言うならばダブルパンチ、トリプルパンチを受けているわけですね。ここを見ていくときには、当然、交付税で見ていくというのもあるでしょうけれども、もう一方では原発の賠償、補償をしていく、これは私は極めて大事なことだと思っていますので、機会があったらまた質疑させていただきますけれども、大臣、ここのところは、今御所見をいただきましたけれども、私の今お話し申し上げたこともぜひしっかり念頭に置いていただきたい、このことをお願いをさせていただきたいと思います。

 今度は、今後の電力供給の見通しについてお伺いしたいと思うんです。

 東京電力と東北電力の管内のことしの夏の最大使用電力の削減目標、これは家庭、企業とも一律前年比一五%減とかいろいろ出ていますけれども、当初は大口需要家二五%、小口二〇%、家庭が一五から二〇とか、こういうめどをつけてきたというふうに承知をしております。

 問題は、ことしの夏のピーク時に合わせて今こういうようなことになっているんですけれども、ちょっと早いかもしれませんけれども、例えば、ことしの夏のピーク時もそうなんだけれども、この状況の中で、来年は大丈夫なんですか、それ以降はどうなんですか、こういうことも非常に懸念されるわけでございまして、この辺に対する見通しというか考え方をお示しいただきたいと思います。

海江田国務大臣 ことしの夏の需給ギャップにつきましては、ピーク時でおよそ千五百万キロワットで、東京電力はその後およそ五百万キロワットぐらい上積みということで、私どもから、さらなる上積みはできないだろうかということで、その最後の上積みのところを今精査しているところでございます。

 その意味では、まだまだ節電も必要でございますから、これは各企業には協力をお願いいたしますし、それから、特に家庭などでもこれまで本当に大変な節電をやっていただきましたけれども、これは引き続きお願いをするということでございます。

 その上で、今先生から御指摘のありました、中長期的な観点はどうなんだろうかということは、原発が起動できなければ供給不足というものは続くわけでございますから、まず考えられることは、火力発電所の復旧あるいは新設をする。もちろん、火力の場合は、新しくつくるのならば、環境に対する負荷のできるだけ小さい新型のものを採用しなければいけないということは言うまでもありません。あと、火力発電所の中で、しばらく休んでおりました発電所の立ち上げをいたしまして供給をしていく。

 それから、中長期的でございますから、もう少し中長期的ということで言わせていただきますと、やはり太陽光でありますとか海上の風力発電でありますとか、再生可能なエネルギーも高めていかなければいけない、そのように考えております。

稲津委員 丁寧にお答えいただいてありがたく思っています。

 問題は、火力のところをどういう形で増強していくかということ。復旧させるものもありますけれども、新設というのはしばらく時間がかかりますね。ですから、ここをどういうふうに考えていくのかというのは非常に難しい問題だと思うんです。ただ、いずれにしましても、火力で増強していかざるを得ないだろう。

 先ほどの委員会の中でも、大臣の方からも、十四基の原発の新設についてはどうかということで、これは見直さざるを得ないだろうという御答弁をなされました。そういうことも踏まえて、ここはできるだけ早期にこういうスキームを考えていただきたいというふうに思っております。

 もう一つは、先ほどLEDのお話もございましたけれども、節電という考え方だけではなくて、本当に日本の国民が、我々が、電気に対する考え方、あるいはライフスタイルそのものもこの機会に大いに見直すというか、考え方をもう一度見詰めてみる必要があるんじゃないかなと思うんですね。そういうこともぜひ考えていきたいと思っていますし、機会があれば大臣からもそのような発信をしていただければと思います。

 以上、まだお聞きしたいんですけれども、きょうは、本題が産活法の改正でございますので、こちらに移らせていただきたいと思います。

 まず最初に、産業再生の円滑化について、国内産業の再編と国際競争力確保のためのビジョンというテーマでお伺いをさせていただきたいと思います。

 政府の新成長戦略、それから産業構造ビジョンにおいて、我が国では国内産業が過当競争状態にあるために民主導で産業再生を目指す、こういう趣旨で今回の改正があるというふうに認識をしております。法改正によって企業の統合再編を進めていくことで日本の企業の国際競争力を高めていくんだ、こういうことなんですけれども、政府はこの国内産業の再編にどのようなビジョンを持っているのかということ、これは繰り返しの質問になるかもしれませんけれども、また、国際競争力を確保するためにどのような産業の姿を目指しているのか、この点についての見解をお伺いさせていただきたいと思います。

海江田国務大臣 政府は、新成長戦略、これは昨年の六月、それから一昨年の十二月ですか、逐次これの充実に努めてきたところでありますが、私は、この三月十一日の東日本大震災の影響というのもこれから考えていかなければいけないというふうに思っております。

 ただ、そうした難しさというのはこれまでになかったことで、その難しさを抱えながら前に向かって進んでいかなければいけないわけでございますが、世界の情勢を見た場合、先ほどの当委員会の質疑でもございましたけれども、規模の確保と申しますか、国際競争力を持っていくためには、研究開発費も昔と比べものにならないくらい多額の資金が必要である、あるいは設備投資につきましても多額の資金が必要になってくるということで、規模の確保ということがかなり重要なテーマになってこようかと思います。この規模の確保というものを前面に押し出していって、その中で、先ほどもお話がございました、高品質、単品物売りから機器とサービスの組み合わせというような形に転換をしていかなければいけないというふうに思っております。

稲津委員 その上でお聞かせいただきたいのは、協議の義務づけで産業再編が迅速化するかどうかということです。

 それでは、現行法ではどのような問題があるのか。これまでは、主務大臣、公正取引委員会は、それぞれ必要があれば意見を述べることができるという一方通行のみの規定だったというふうに認識しておりますけれども、意見を述べるに至る基準とか意見を述べた場合の効果などは明確ではなくて、制度の実効性が不十分である、このように指摘をされてきたというふうに思っております。

 今回、協議になったことでいわゆる双方向になった、このことによって企業合併の審査が迅速化されるんだ、こういう話がありますけれども、そもそも、独占禁止法に基づく企業合併の審査というのは公正取引委員会の専権事項で、主務大臣にこの協議を義務づけることでこれまで合併手続の迅速化を阻害してきた何が解消されて、どう迅速化につながるのか、これは議論をされておりますけれども、改めて確認の上でお伺いをさせていただきたいと思います。

田嶋大臣政務官 委員御指摘のとおり、これまでは一方通行ということで意見を申すのみ、それで必要ならばということでございますが、今後は義務づけをされるということで双方向になったということでございます。

 申し上げるまでもなく、産活法の認定でも、適正な競争確保ということの確認が必要だと先ほど申し上げたところでございますが、同様に、これは独禁法の企業結合審査においても、国際的な市場動向や技術開発動向を踏まえることが必要になってきている。

 そういうわけで、今回、協議という形にさせていただいて、主務大臣から公正取引委員会への情報提供は充実をし、かつ、公正取引委員会がグローバル市場の動向等をより円滑に把握しやすくなるというふうに考えてございます。

 ちなみに、協議は一度限りとかそういうことではございませんので、何度も協議ができるということでございます。

 そうすることによって、産業政策と競争政策の連携がより強化をされるであろうということでございますので、結果として再編は迅速化されるという期待をいたしてございます。

稲津委員 これまでは主務大臣が一方的に意見を述べるだけで回答を得ることができなかったものが、今回この協議を義務づけることで書面による回答を得ることができるようになったということです。主務大臣と公正取引委員会の両者の連携が強化される、こういうことをこれまでも一貫して答弁されているというように思っております。

 それで伺いたいのは、今度はこの書面による回答というものは公表されるものかどうかということです。一般に公表されずとも、少なくとも合併手続を行っている企業には公表されるものだと思っておりますけれども、この点についても確認の上でお聞かせいただきたいと思います。

田嶋大臣政務官 お答え申し上げます。

 公正取引委員会からの回答でございますが、産活法の認定に際して、主務大臣の判断に影響を与えるというふうに考えますので、まず、申請事業者に対して開示することが適当であるというふうに考えてございます。さらに、将来そういった合併を考えたりする他の事業者、第三者でございますが、にとっての予見可能性を高めるという観点から、企業機密にはもちろん最大限の配慮をしながら適切な範囲での対外的な公表を想定いたしております。

稲津委員 ありがとうございました。

 次は、公正取引委員会の審査についてということでお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、公正取引委員会にお伺いしたいのは、今回のこの産活法改正による協議の制度の導入、これが合併審査においていかなる変化をもたらすのかということを伺いたいと思います。それから、もう一点あわせてお伺いさせていただきたいのは、今回のこの法改正が審査の迅速化に寄与するものだという認識に公正取引委員会も立っているのか、この点についてもお答えいただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 二点御質問いただきました。

 今回の協議の導入が審査にどういう影響を与えるか。これは、結論的には、それによって審査が曲げられることはないと思っています。我々は、あくまでも、いろいろな情報をいただくのにやぶさかでありませんが、判断は独立していたしますので、そういう意味で審査が変わるということは基本的にはないというふうに思っています。

 要するに、こういう状況になって、国際競争力を強化するために経産省の方でもいろいろお考えになる、その一つがこれだと。それについて、我々は、基本的には、総論的には、当然そういうことは理解いたしますけれども、前にも申し上げましたように、独禁法の適用、この企業結合が独禁法に違反するかしないかというのはすぐれて公取が決めることでございまして、他の役所とか他の意見を聞き入れて、何か交渉して、その結果、答えを導き出す、そういうプロセスはなじまないというふうに思っています。

 したがって、協議といっても、そういう意味の協議なのでございまして、最初に産活法の立場から経産大臣が、これは競争にも影響する、それについての考え方はこういうことでございます、その根拠はこういうことでございますということを公正取引委員会に持ってこられると思っています。それは我々もちゃんと勉強させていただいて、必要に応じて追加して何かいただくものがあればいただくということでございますが、それから先、誤解をいただいたら困るのは、それで黒か白かについて、経産省は白といい、こちらは黒というときに、何か協議をして答えを出す話ではないということは間違えないでいただきたい。

 それで、こちらとしては、審査に入ったら、審査をいかに早めるか。その出た答えは当事会社に文書をもって当然お示しするわけですが、そのとき経産大臣にも、これはこういうことでございますというその文書をお渡しするということでございまして、そういう意味で、迅速化に資するかどうかというのは、公正取引委員会の審査が迅速に進むかどうかということが一つのファクターになります。

 それというのは、やはり企業側もちゃんとした準備をしていただきませんと、必要な資料も用意できないで時間がかかったら当然長くなるということでございまして、だんだんなれてきているとは思いますけれども、そういう意味で、我々は、なるべく迅速に手続を終えるようにしようという努力はしています。

 端的には、事前相談はやめます、これからは届け出をしていただければ、三十日たったら問題になりそうなものは第二次審査に入ります、資料を調えていただいたら、それから九十日たったら答えを出します、こういうことになっていますので、今までのように事前相談の間でもって、双方合意のもとで一カ月も二カ月も半年もかかりましたというようなことはなくなりますから、そのスピード、要するに三十日、九十日というのは、これは国際的に見て決して遅いものじゃない。日本は遅い方じゃございません。

 そういうことで、大きな合併であればあるほど、アメリカにもヨーロッパにも中国にも審査を求めなきゃいかぬわけでございますので、そういうことも考えた場合に、我々は決して迷惑になるようなことはするつもりはありませんし、むしろ早くするということで努力をして、それが外国にも影響を与えるようにしていきたい、こう思っています。

稲津委員 同じことを経産省からも御答弁いただきたいと思うんです。

田嶋大臣政務官 お答え申し上げます。

 公取委の企業結合の審査権限の専管制ということは大前提に置きまして申し上げますが、今までは一方通行の意見ということでございましたけれども、今後は協議、それも何度でもできるという前提に立てば、やはり主務大臣の方から公取に対するいろいろな技術開発動向等の情報の提供が格段にふえるということが想定されますので、当然、迅速性には寄与できるのではないかというふうに期待をいたしております。

 もちろん、先ほどもございましたけれども、審査の、最大三十日ですか、そして二次審査がその後という、その期間に影響を与えるということではございませんが、むしろ、情報提供がしっかりとなされるということで、それ以外の部分に関しましての迅速性が高まるのではないかというふうに期待しております。

稲津委員 迅速化ということについて御答弁をいただいて、なるほどということで私も理解をしておるんですけれども、これは公正取引委員会にもう一点だけお聞かせいただきたいと思います。

 今も御答弁ありましたけれども、手続をより簡素化と言ったらちょっとおかしいかもしれませんけれども、いずれにしても、透明性の高い審査基準をきちんとしていく中で、審査の迅速化ということでそういう人員体制になっているかどうかということをお示しいただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 二十三年度予算で公正取引委員会の定員は全部で七百九十九名、その中で、今御指摘の企業結合審査に携わる者は、二名増員が認められまして三十七名ということでございます。これで何とか対応しているというのが現状でございますが、やはりこれからも、大変厳しい定員事情なんですけれども、毎年毎年定員をふやすという努力をさせていただきたい。

 あわせて、今も既に民間から弁護士に任期つきで来ていただいたり、それから、これは経済分析が非常に大事な分野でございますので、いわゆるエコノミストに来てもらって、そういうことで質的にも強化してということを今努力しておりますけれども、これからもやっていきたいと思っています。

稲津委員 今、調査官三十七名という御答弁をいただいたんですけれども、いずれにしても、今回の改正で一番のポイントは、やはり迅速化というところを期待している声も大きいと思いますので、ぜひそういう方向で検討していただきたいと思います。

 次に、中小企業の再生支援協議会におけるいわゆる事業の引き継ぎの支援業務について伺っていきたいと思います。

 まず、中小企業の事業承継の実態について伺いたいと思います。

 これも先ほど来いろいろ質疑がありましたけれども、いわゆる団塊の世代が六十五歳を迎えるという二〇一二年問題、それから高度経済成長期に創業した多数の中小企業の経営者がいよいよ世代交代を迎えるという時期に当たりまして、いわゆる企業の後継者問題というのは大変深刻な問題だというふうに思っております。こういった現状における中小企業の事業承継の問題をどのように認識されているのかということを最初にお伺いさせていただきたいと思います。

高原政府参考人 中小企業の事業引き継ぎの実態に関する認識を申し上げます。

 少子高齢化に基づく人口減少ですとか、公共事業の減少、そしてグローバル競争力の強化、それから先ほどから御指摘がございます後継者不足といったことで、中小企業の経営の事業引き継ぎというのは極めて困難な状況にあるという認識でございます。

 年間二十七万社ほどの中小企業の方が廃業されておられますけれども、この中には、ほかの意欲ある中小企業に事業を引き継いでもらえれば、廃業が回避されて、その地域の技術や雇用を守ることができたといった案件も多かったのではないかというふうに認識をいたしております。

 これまで、国としてもいろいろな支援策は講じてまいりましたけれども、事業引き継ぎを希望する企業の情報の流通が十分できていないとか、資金調達が困難でありますとか、それから仲介業者の方々もおられるんですけれども、結構料金が高かったりして中小企業の方々にはなかなか御利用になれないといったようなさまざまな困難な状況があるというふうに認識いたしております。

 以上でございます。

稲津委員 現状、課題についてお伺いをしました。

 では、それをどう解決していこうかということで、事業引き継ぎ支援センターの位置づけということをお伺いしたいと思っております。

 中小企業の事業承継対策というのは、第百六十九回国会で中小企業経営承継円滑化法が成立をされたというふうに伺っていますけれども、相続税の納税猶予制度の創設ですとか親族内の承継のケースを中心とした事業承継策が進行してきた。

 一方で、近年、少子化ですとか厳しい経営環境などを背景にしまして、経営者の親族が事業を承継できない例もふえてきているというふうに承知をしております。最終的には、後継者が見つからないから廃業に至る会社もあるというふうに思っております。

 そういった意味で、今回の法改正は、後継者が見つからない企業を想定した事業承継対策として一定の評価を出してもいいじゃないだろうかな、私はこう思っております。

 そこでお伺いしたいのは、今回の事業引き継ぎセンターの役割ですけれども、いわゆる民間で行っているMアンドAの仲介と比べて何が違うのかということ、それからセンターの位置づけ、この点についてお示しいただければと思います。

中山大臣政務官 今委員からも、こういう制度ができて、それは評価しているというお話でございました。

 実は、私、中小企業の相談をずっとやっていまして、相談に来たときに貸借対照表とか全部見せてもらわなきゃならないんですよね。それで、借金の状況なんかを聞きますと、抵抗がありまして、聞いているうちに、後から後から借金が出てきて、えっ、まだあったのという感じで、なかなかお話をしてくれない。これは相当な専門家が対応しなきゃならないということでございまして、息子さんとか兄弟とか、そういうところだったらまだいいんですが、他人に引き継いでもらうということは大変なことでございまして、産活法では都道府県に再生支援協議会を、継承するのを支援する機関にするわけですが、当然お金も要ると思うんです。いろいろな相談ができないと、その人材をつくっていくのが大変だということがまずあります。ですから、会計士さんとか税理士さんとかいろいろな方を充てて、とりあえず相談をしてもらうということだというふうに思います。

 本当にこれは意外に大変な事業になるし、実はみんなが悩んでいることなんです。どこかに継承してもらいたい。これは雇用を生むし、地域の活性化を生むし、実は大変な事業でございますので、我々も力を入れてやっていきたい、そういうプロをなるべく送りたいというふうに思っております。

稲津委員 企業、会社の経営実態というのは、確かに、御答弁いただいたように、表の部分と、実際に中身を詰めていきましょうといったときに、違う借金があったり、かなりいろいろなことをしてきます。そのことは、後でまた少し聞かせていただきたいと思います。

 コストの問題をちょっと聞かせていただきたいと思います。中小企業のMアンドAにおけるコストの問題ということで聞かせていただきたいと思います。

 今後、事業の引き継ぎを行っていく上で、現状、民間等で行われている中小企業のMアンドAにおける課題を見ていくことが、より効率性とか実効性を持たせる意味では大事ではないかなと私は思っています。

 民間による仲介業者とか、それから、商工会議所でも同じような事業をやっておりますが、今御答弁がございましたけれども、実効性を伴っているかというと、さまざまな問題をはらんでいて、そうでないというのも現状かなと思っています。

 例えば、東京商工会議所のMアンドAの関係でいうと、数字が若干違っているかもしれませんけれども、二〇〇九年度、例えば売り手企業、買い手企業、さまざまな御相談があって、最終的に合意したのはわずかに一件だったというような話もありました。やはりこのハードルが高いというのが実感です。

 理由は何なのかということなんですけれども、その一つとして、この成功報酬が非常に高いんじゃないかなということがあると思います。これは、専門機関とか金融機関で行った場合も同じような状況だと思うんです。それからもう一つは、経営者の多くがプレーイングマネジャーというんですか、そういう状況にある。もう仕事に非常に追われていて、気がついたら後継問題が一番最後の問題になってしまっているということ。

 このMアンドAにおけるコストの問題、それから理解の促進が進んでいないという現状があるだろうということで、こうした民間での取り組みにおける課題をどう考えているのかということをお聞きしたい。それから、今回の政府の事業引き継ぎセンターを通して事業引き継ぎを行った場合、この高い仲介手数料によって合併、買収等々が進まない状況は解消されるのか、この点についてお伺いさせていただきたいと思います。

中山大臣政務官 今のお話のとおりでございまして、ターンアラウンドというようなことをやっている会社に頼みますと、顧問になられて、自分の企業の全体を示さなきゃならないし、何から何まで全部明らかにしないとなかなかやってもらえない。これはなかなか度胸の要ることでございまして、今のお話のとおり、相談だけは役所が守秘義務を課して絶対外へはばらさないというようなことがまず第一と、じっくり相談に乗ってあげるということが大事で、それはやはり無料でやるべきだというふうに私は考えております。

 企業もそういうことをやっている会社に頼みますと、顧問になってくれますけれども、かなり高額になることは事実です。私の友人にもそういう会社をやっておる方がいまして、やはり相当取らないと。そこに張りついて、そういう承継をどううまくやっていくか、または、自分の会社がどこへくっついたら一番うまくいくかとか、それから認可の問題で、自分のところでは今のやっている企業は認可されていますが、新たに例えば旅館業をやったときに相手の会社がその認可をとるのも大変だとか、建設業やなんかでもみんなそういう問題があるわけです。ですから、しょっぱなは無料で相談をする。その後に、税理士とか会計士とか、または金融機関、こういうものも行政側がちゃんとそこへ置いて相談に乗らないと絶対うまくいきません。

 これは経験上で申し上げているので、本当に税理士、銀行、役所の人間の三つが張りつく、こういう形でやっていく必要があるというふうに思いますので、私たちも、これは企業をつぶさないためにも全力を尽くしていきたいと思います。

稲津委員 最初のところはその手数料がかからないということで、その後についてはいろいろ段階があると思うんですが、ぜひ実効性を高めていただきたいというふうに思います。

 次は、先ほど触れていただいたことなんですけれども、企業情報に関する課題ということを議論させていただきたいと思います。

 中小企業のMアンドAにおいては、一社ごとに事業内容とか業績が大きく異なっているということで、売り買いに際しては指標となる標準的企業が存在しないという問題も指摘されているところでございます。特に、中小企業のMアンドAにおける特徴としては、大企業と違って、上場していない企業が多くて、中小企業がその当事者になっているところから、個々の詳しい企業情報が公開されていないという現実もあると思います。

 こうした事情から、この中小企業のMアンドAにおいては情報の偏在ということも起こりやすい。それから、先ほどのお話のとおり、売り手側、買い手側も、限られた情報の中ですから、そこから意図した企業を見つけなきゃいけない。もっと困るのは、契約後に契約者が行動を変えるという、一種のモラルハザードみたいなものが起きてしまうと困る。例えば、先ほどのように隠れ借金が次々出てきたとか。

 いずれにしても、こういった問題に今回のこの事業引き継ぎ支援がどのように対応していこうと考えているのかということ、正確な企業情報を提供して、それをもとに手続を進めていく必要があると思いますけれども、この点についての御見解をいただければと思います。

中山大臣政務官 実は、大田区なんかに行きますと、外国の企業は、このすばらしい金型を持った会社を買い取りたいとか、そういう気持ちも随分あるんですね。ですけれども、できるだけ国内に産業を残していきたいということで、地元と地元で合併をさせれば一番いいわけで、そういう仲立ちをまずやるということが大事だと思うんです。

 ただし、社長がお年を召して、そろそろやめたい、やめてどこかに売りたいけれども、せっかくこの今の、売ってそのまま社長がどこかへいなくなっちゃう、それは無責任じゃないかとか、そういうようなことも聞くんですね。

 ですから、やはりここはお見合いをしっかりさせて、本当に日本の、ある意味では大企業と中小企業というのもあり得ると思うんですね。この金型はどうしても大企業で活用できるということがあれば、ある程度いい企業に買ってもらうためにそのことをしっかりやっていくということで、委員のおっしゃるとおり、企業情報をしっかり持って相談を受けないと、ただどこかで継承してもらいたいといって相談に来られても、それをくっつける情報がなければ何も進まないわけでございまして、そういうものを欲しがっているという情報も必要だ。

 または、水平だけじゃなくて垂直ですね、例えば、私の方で靴屋さんがあるんですが、製造していて、利益を上げるために小売部門を持ちたい、ちょっと紹介してくれないかと私のところにありまして、たまたまそれはうまくいくような結果になりましたけれども、やはり相当な量を持っていないとできない。

 これは、これから役所に課された大きな課題になると思うし、真剣にやらないと、どんどん中小企業はなくなってしまう。これは、ここで今言ったような企業の情報をしっかり集めてくる、そういうことが大事だと思います。

稲津委員 時間が参りましたので終わりますけれども、もう少し質問を予定しておりましたが、途中で終わってしまいまして非常に残念ですけれども、いずれにしましても、中小企業などの事業承継については、これまでの支援策というのは、例えば相続税の軽減措置とかそういったことが中心だったと思うんですけれども、もちろん、経営者の子供に継がせるということを前提にしたものが多かったと思います。しかし、後継者難が進む現況を考えていきますと、廃業の危機に直面している中で、今回の事業引き継ぎ支援事業の位置づけというのは、私はある意味大きいウエートを占めていると思います。

 以上、論点を少し整理して質問させていただきましたが、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 稲津久君の質疑は以上で終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、きょうは、法案の第二条四項二号でシステム輸出ということを新たに法支援対象としていることについて伺いたいと思います。

 これまでシステム輸出で原発のトップセールスの問題を何度も取り上げてまいりました。中止すべきだということを言ってきたんです。

 実は、この間、四月十三日の日に、東京電力の清水正孝社長、昨日予算委員会に来てもらっていますが、事故の原因はあくまで未曾有の大津波だったと発信しております。これは日経ビジネスの一番新しいのにもそのことが紹介されております。

 そこで伺っておきたいのは、仮に津波で内部電源が失われたとしても、外部電源が生きていれば事故はもともと起きなかったんです。炉心溶融にまでは行っていないんです、機器冷却系が働きますから。ところが、夜の森線の第二十七号、この鉄塔が一基倒壊して、そして全電源喪失、炉心溶融という事態に至ったものなんです。最初に伺っておきますが、この鉄塔というのは津波の及んでいない場所にあったと思うんですが、どうですか。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 夜の森線そのものに関しましては、津波の及んでいない地域のものと思ってございます。夜の森線の鉄塔に関しましては、第一発電所の五号機、六号機に関する受電関係の鉄塔というふうに理解をしてございます。

吉井委員 五号機、六号機の外部電源なんですが、しかし同時に、これは内部で融通し合うことになっておりますから、一号機から四号機については、今度は発電所内の受電設備の損傷などで受電できなくなったんですね。

 それは地震によるものだということが御報告としてありましたけれども、そもそも、清水さんは何か未曾有の大津波で炉心溶融にまで至ったかのように言っているんですけれども、それは一つあるんですよ、しかしそれだけじゃないんですよ。津波で仮に内部電源が破壊されておっても、今お話があったのは、東京電力提供の航空写真で見たってはっきりしているんですよ。どこが壊れたのか。鉄塔倒壊場所は津波とは全然違うところなんです。つまり、地震で倒壊したんですよ。そのために外部電源がとれなくなって、炉心溶融になったんです。もちろん、外部電源がだめでも、内部電源がいけたら大丈夫なんですけれどもね。ですから、そういう問題だということをきちんととらえておくことが大事だと思うんです。

 大臣にも確認しておきたいんですけれども、この鉄塔は地震によって壊れたものであって、内部電源が、健全でなきゃいけないんですけれども、仮に津波でやられたとしても、地震で鉄塔が倒れるようなことのない、鉄塔がきちんと耐震構造でやられておったならば、外部電源が失われる、そして炉心溶融という今日のような事態にはならなかった、このことは大臣も考えられますね。

海江田国務大臣 外部電源の重要性というのは改めて指摘するまでもないことでありますが、三月三十日以降、三次にわたって各電力会社に指示をしたところで、特に鉄塔の問題もしっかりと、しかも、単一の系統だけでなしに複数の系統で引っ張ってくるようにということは指示をいたしました。

吉井委員 それで、世界一だと言ってきたシステムが壊れたわけなんですが、私、実は東京電力については相当考えてもらわなきゃいけないと思うんですよ。

 今度のシステム輸出で言われている、国際原子力開発株式会社ですか、ここの社長には武黒一郎さんがなっていらっしゃるわけですね。この方は、実は、二〇〇七年十二月には柏崎刈羽原発周辺の活断層について隠ぺいしてきたと、この活断層問題の隠ぺいを新潟県庁へ行って謝罪をしている方なんですよ。これは写真が出ていますけれども、頭を下げて謝っている写真が。これは今度の日経ビジネスに紹介されております。

 見ておりますと、勝俣さんも、副社長のときに謝り、責任をとったのかと思ったら社長に昇格し、また謝って、今度会長になってまた謝る。謝るたびに、謝る角度は、頭を下げる角度は大分深くなっていっているんですよ。しかし、そのたびに偉くなっているんですよ。そして、情報がちゃんと公開されずにいっているというのは、今の地域独占と総括原価によって築かれているこのあり方というものは、やはり根本的に見直していかなきゃいけないときだと思うんです。

 そうした中で、世界一安全だと言ってきたシステムがとにかく壊れたんですから、午前中の連合審査のときに、玄葉大臣は、二〇三〇年までに原発を新規に十四基増設することはあり得ない、現実的ではないと答弁されました。原発輸出も同じようにこれを見直していくのか、海江田大臣に伺います。

海江田国務大臣 先ほども同じ質問がありましたが、これまで、このプラントシステムの輸出の中で、原子力発電システムを世界に対してセールスをしていく際は、世界一安全な原子力発電ということで売ってきたわけであります。それが今や受け入れられないような状況になってくるということでございますから、これはやはり、まず、再び世界一安心な原子力発電、安全な原子力発電ということに最大の努力を傾注するのが順番だ、このように思っております。

吉井委員 何か一生懸命、世界一にして、それからまだ引き続きトップセールスをやろうというお考えのようですが、それはとんでもないことだということ。アセスメントの問題なんかはせんだってやりましたので、もうこの問題はここでおいておきます。

 次に、産活法十三条です。同一業種に属する複数の事業者の計画に独禁法上の問題になる行為が含まれる可能性がある場合、事業所管大臣と公取委との調整規定を設けておりますが、この規定を設けた目的は、大臣、何ですか。

海江田国務大臣 先ほどのことも、私が言ったことを勝手に後から解釈をして決めつけないでいただきたいというふうに思います。そのことだけはお伝えをしておきます。今、私の頭の中にあるのは、本当に、この原発の事故を一日も早く収束させて、そして安全性をしっかりと確保するということだけでございますので。

 それから、今お話がございました、協議がその数を減らすことに目的があるのかということでございますが、これは数を減らすということに目的があるのではなく、やはり日本の企業がしっかりと海外で競争力を持っていかなければいけない、その競争力を持っていく際には規模の問題も出てくるだろうということでございますので、その規模を持つための、規模の効果というものを生み出すために、今回のこの協議、あるいは法律の改正を考えておるということでございます。

吉井委員 見直すの一言だけ言うてくれはったらいいんで、あとは、ぐちゃぐちゃはいいんですけれども。

 竹島委員長に伺いますが、公取委が産活法の目的に拘束されるのではないかということが懸念されますが、竹島さん、どうですか。

竹島政府特別補佐人 協議規定が設けられて、いろいろな考え方なり資料なりをいただくことになると思いますが、これはあくまでも協議でございまして、縛られるということにはならない、あくまでも、企業結合審査については、独禁法に照らして違法か違法でないかということに尽きると思っております。

吉井委員 私は、そもそも産活法にこのような規定を入れるべきじゃないと思うんです。

 次に伺いますが、グローバル市場でのBHPビリトン統合問題がありましたが、二、三社で世界市場を支配する資源メジャーがあらわれようとした問題です。国際的な独禁政策をどうするのかということが今問われていると思います。

 この問題の経緯と公取委としての対応について、竹島委員長に説明をもらいたいと思います。

竹島政府特別補佐人 オーストラリアとイギリスの両方に上場している資源大手、BHPビリトンとリオ・ティントという会社がございまして、これらは一たん、TOBでBHPビリトンがリオ・ティントを買収するという話が参りました。ところが、その後、リーマン・ショックが起きまして、その話はやめになりました。

 ところが、次の年になりまして、今度は、BHPによるTOBじゃなくて、オーストラリアの鉄鉱石というのは大体西オーストラリアに集中的にあるわけでございますが、その西オーストラリアにおける鉄鉱石のジョイントベンチャーをつくる、要するに共同生産会社をつくる、あくまでも販売は別々にやる、こういう形に変わって提案されました。

 一回目は日本に対して報告もなかったんですが、いろいろなことを働きかけまして、これは日本の独禁法の適用対象であるということを主張したことも影響したと思っておりますけれども、二回目は事前相談に参りました。

 それで、我々は、韓国、ドイツ・カルテル庁、EUの競争当局、それからオーストラリアの競争当局、これらと意見交換をしまして、共同でその審査に当たりました。

 事実上、日本が一番最初ですが、これは競争を制限するということになりまして、日本の独禁法上認められないと、あくまでも外国の会社同士の企業結合なんですけれども、そういう見解を示しました。続いて、韓国の公正取引委員会も同じような結論を出しまして、それで当事会社はそれを取りやめた、そのジョイントベンチャーの話はなしになりました。そういうことでございます。

吉井委員 今のお話のように、BHPビリトンの統合問題については一応現時点ではとまっているわけですけれども、国際カルテルや多国籍企業の世界市場支配に対する独禁法の執行力と公正取引委員会の役割や機能が一層重要になっていると思うんです。

 今や、世界的に多国籍企業がますます巨大化しているし、それだけでなく、数十カ国をまたにかける国際的生産ネットワークを形成し、既に世界生産の大体三分の一を多国籍企業が占めるというところまで来ております。そうすると、BHPビリトンの問題でも明らかになったように、巨大な資源メジャーが一国の枠を超えて市場を支配するという事態が現実のものになってきているわけですね。

 これはやはり、日本一国だけじゃなしに、国際的にルールをきちんと、国際会議を、大臣会合などを持って、国際的な独占禁止と公正取引の仕組みをつくるということをやらなかったら、今はもう深刻な事態になってきているというのが現実ではありませんか。

海江田国務大臣 今回の震災を契機に、やはりエネルギー安全保障という考え方も必要だろうというふうに思っております。

吉井委員 いや、エネルギーの安全保障だけの問題じゃなくて、私が今言っていますのは、国際カルテルや多国籍企業の世界支配の時代になってきているんですよ、こういうときに国際的な独禁政策をどうするのか、公正取引をどう実現していくのか。このことについて、これは国内だけだったら公取で頑張ってもらうわけですよ。しかし、国際的にどうするのかということについては、これは大臣会合等を持って国際的にきちんとルールをつくるとか、公正取引に反するようなことは許さないという仕組みをつくるとか、これは大臣としてやはり考えていかなきゃいけないんじゃないですか。ちょっと頭をエネルギーから切りかえてもらって。

海江田国務大臣 もちろん、国内的な競争の公平性ということは、国際的な社会においても当然守られなければいけないというふうに思っております。

吉井委員 私は、グローバル市場と多国籍企業、独占企業集団に対する規制のあり方が今本格的に問われなきゃいけないときだと思うんです。多国籍企業、独占企業への生産と資本の集中、集積が極限まで進んできております。一国の市場のみならず、数カ国でわずか一社が特定分野を独占する状況というのは余りにも異常だと思うんです。

 独禁法は、企業分割による市場競争の回復という手段しか持っていないと思うんですが、巨大な多国籍企業への民主的規制と、そして生産手段についても、公正な競争が妨げられるようなやり方をどのように規制していくのか、公正な取引や競争を確保するのかということについて考えていかなきゃいけないと思うんです。

 大分時間が迫ってきたようですから、これは竹島委員長にも考え方を聞いておきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 御指摘の国際的なグローバル企業のことでございますが、合併であれば、やはりそれが競争を制限するというような場合は影響を受けるそれぞれの国の独禁当局がそれに対して待ったをかけるということに今なっておりまして、そういう法の執行に対しては、少なくともアメリカ、ヨーロッパ、日本はちゃんとしたことをやっているというふうに理解しております。

 しかしながら、そうじゃなくて自然と、非常にすばらしい技術なりを持っている、端的に言えば、知的財産権をバックに、名前を挙げるとわかりやすいと思いますが、例えばインテルとか、かつてのマイクロソフトとかグーグルとか、こういったものは、合併じゃなくて、合併もしておりますが、本来は自分の商品なりサービスでもって大きくなっているわけです。

 これ自体は別に推奨されるべきことかもしれません、消費者の支持を得たわけですから。しかしながら、我々が世界共通にウオッチしていますのは、そういう大きな市場支配的地位を持った企業の支配力を維持するないしは強化する、裏返して言えば、それに対して対抗するようなものが出てきたらそれを排除する、新規参入を排除したりライバルをけ落とすというようなことをやっている、こういったものは取り締まっておりますし、公正取引委員会もそういうものに対してはちゃんとやっています。

 したがって、そういう形でバランスがとれるんじゃないか。世界じゅうに一本の独禁法がないのでございまして、そういう市場支配的地位の濫用という規制で対応するということだと思います。

吉井委員 産業構造ビジョン二〇一〇では、「日系企業は同一産業内にプレイヤーが多数存在。」と指摘して、産活法資料でも、国内企業が国内予選で消耗と。韓国を例に挙げて、政府の強い関与のもと、産業の大集約を実施としているんですが、半導体は三社を二社へ、石油化学は四社を三社へ、自動車は四社を一社へ、鉄道車両は三社を一社へ韓国では集約したと紹介しているんです。これは何か、何社ぐらいが適当という考えを持って考えているんですか。これは大臣に伺っておきましょう。

海江田国務大臣 今委員から例示のありましたのは、あくまでも韓国がそうなりましたよということでありまして、私どもでは、今それぞれの業界について何社が適正だなどと思ったことはございません。

吉井委員 時間がちょうど来たようですからやめますが、大きければ大きいほどいいということじゃないんですよ。これは三月四日の競争政策研究センター国際シンポジウムでの小田切さんの指摘などもありますが、消費者厚生を低下させた可能性が強い、産業構造ビジョンで言う中長期での競争力強化に貢献したかどうかも疑問だと。やはり小さくても互いに切磋琢磨することが非常に大事なことなんです。

 そのことを申し上げて、時間が参りましたので質問を終わります。

田中委員長 吉井英勝君の質疑は以上で終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 産活法に関する質問で事前に通告しておりましたものに関しては、実はほかの委員からもう既に質問があって、非常に丁寧に御答弁いただきましたので、事前通告していたもののうちの産活法の部分は省かせていただきます。

 ちょっと産活法から外れますが、被災地の復興に関して質問をさせていただきたいと思います。

 今回の東日本大震災の被災地というのは車社会だと思います。地方で、公共の交通機関が余り発達していないところなのは間違いないと思います。神戸の大震災の際には、被災者の方も、車がなくてもある程度、タクシーとか電車とかバスで事足りたかもしれませんが、今回の津波の被災地を見ていると、公共の交通機関が余り発達していなくて、しかも被害に遭っている自動車というのが非常に多いようにお見受けします。

 そういった意味では、今後の復興、生活の再建に向けて、車の支援。これまでも、エコカー減税はまだ続いていると思いますし、エコカー補助金、前にやっていました。例えば、このエコカー補助金とかエコカー減税を被災地の被災者の方限定でもう一回やるとか、さらに拡張するとか、そういった措置というのは考えられないんでしょうか。

海江田国務大臣 このエコカー補助金は、委員も御高承のとおり、やはり景気の活性化と申しますか、そして同時に、それがひいては地球環境に対する負荷が少ない車をということで設けられたものであります。

 今このエコカー補助金を復活させる、特に被災地に限ってということよりも、私は、今般手当てを講じております自動車重量税の還付でありますとか、新たに取得する自動車にかかる自動車取得税などの車体課税の免税措置を講ずるということの方が効果があるのではないだろうかと。差し当たって、すぐ車が欲しいという方に対するニーズにこたえることができるのではないだろうかと考えております。

山内委員 ぜひそれも、既にある法案、税制にプラスアルファで、もし御検討いただければと思います。

 次の質問に移ります。

 節電ということでいろいろな方法が提案されておりますが、我慢と節約だけで乗り切るというよりは、ライフスタイルを見直したりして節電をやっていくということが必要だと思います。

 テレビのニュースを見ていると、石原都知事もサマータイムの導入ということを提案されていました。サマータイムに関しては賛否両論あるのは承知しておりますし、実際、地方で、北海道などで試してみて定着しなかったというような前例もあるようですけれども、中長期的に見たときには、ことしは、いきなりは無理にしても、来年以降、サマータイムというのも考えていいんじゃないかなと思うんですね。私も一回、海外にいたときにサマータイムというのを経験したことがあるんですけれども、そんなに混乱もないですし。

 ことしは無理かもしれませんが、いろいろ調査研究をしたりとかして、来年ぐらいから始める。節電が必要なのはここ一、二年ということではありませんで、これからずっと未来永劫、節電していく必要があると思いますので、それも一つの手として考えてみる価値はあるんじゃないかと思いますが、政府内でそういった検討というのは改めてなされているんでしょうか。

田嶋大臣政務官 お答えを申し上げます。

 一番最近、政府内では官房長官が記者会見で答弁してございますが、従来から、欧米先進国でも導入している国が大変多いということ、そしてまた省エネ効果もあるというような指摘もある一方で、今回大変重要なことはピークの電力使用量を減らすということであれば、一時間ピークがずれるだけではないかという指摘もこれあり、あるいは、システム移行コストが大変膨大であるというような指摘は従来からあるわけでございます。

 委員御指摘のとおり、ことしの夏ということはもう論外であろうというふうに思っておりますけれども、中長期的には、こういったメリット、デメリット、さまざまな指摘がある中で、検討する可能性としてはもちろんあるというふうに私は認識いたしております。

山内委員 過去に試してみたサマータイムというのは、特定の一部の自治体でやるとどうしてもうまくいかないかもしれませんが、全国的にやると実は意外とすんなりいくんじゃないかなと自分も一回経験してみて思うので、ぜひ研究だけでもやっていただければなと思います。

 続きまして、電力の、特に夏場の電力需給ギャップをどう埋めるか、サマータイムのほかにもいろいろな方法が提案されております。先ほど参考人の意見陳述でも東京大学の大橋先生がおっしゃっていましたが、これまでいろいろなしがらみとかがあってできなかった新しいことをやるには、こういうきっかけというのはいいんじゃないかと。むしろ、震災後の復旧、チャンスと言うと失礼かもしれませんが、この機に、これまでできなかったような思い切った措置を取り入れていくというのが必要ではないかと思います。

 ひたすら我慢と節約に走るよりも、もっと市場のメカニズムを電力の分野でも生かせば解決できる部分もあるんじゃないかと思います。例えば、最大使用電力の枠を大口の需要家同士で取引する市場をつくっていくといったような案も民間から提案されております。CO2の排出権みたいなマーケットをつくることによって、経済的なインセンティブ、市場のメカニズムを使って消費を抑制していくということができるのではないかと思います。そういった検討とか、そういった意見についてのお考えをお聞きします。

田嶋大臣政務官 御答弁申し上げます。

 夏の電力需要ということで、需要側、供給側ともにいろいろな汗をかかなきゃいけないのは申すまでもございません。そういう中で、供給側も少しでも供給量をふやせるように努力をしておるわけでございますが、それだけでは需給ギャップが埋まらないということで、供給側もさまざまな努力、それは一社一社、一軒一軒ということもございますけれども、やはり連携をしながら努力をしていくということが大事であるというふうに考えてございます。

 そういう意味では、委員は、市場メカニズムということで、いわゆるCO2の話と似たような話を御提言されております。恐らく、今日の時点では検討はしていないということになろうかと思いますけれども、可能性としては研究する価値はあるのかなというふうには個人的に思っておるところでございます。

 それ以前に、個々の事業者の取り組み以上に、複数の事業者の一体的な取り組み、あるいは、同業者がみんなで相談をして、例えば夏季休業を順番にずらして取得する、非常に原始的といえば原始的だと思いますけれども、こういった取り組みも非常に効果がありますし、これまで取り組んでいなかったがゆえに、ライフスタイルを見直す、あるいは企業全体としての活動のあり方を見直すということで、効果を期待したいというふうに思っております。

山内委員 もう既にいろいろな取り組みがなされておりますが、できることはすべてやるということが大事だと思います。もう既に一部で始まっていますが、企業の自家発電の設備で発電量をふやして、余った電力を売りやすくする、そういうことも必要だと思いますので、この機にぜひ電力の自由化ということをもう一度考えていくべきではないかと思います。

 これはもし大臣にお答えいただければお考えをお聞きしたいんですが、ずっと前から、発電と送電の分離ということは何度も議論になってきました。それについて大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

海江田国務大臣 そういう意見があることは承知をしております。これから、まずは原子力の問題、そしてこの夏の電力の需給ギャップを埋めるということを、本当にこれは喫緊の課題でございますから、やっていかなければならない。そして、原子力の災害に対する賠償もやっていかなければいけないということでございますが、そういった将来的な課題もあるということは理解をしているつもりでございます。

山内委員 電力関係でいうと、エネルギー対策特別会計という特会がありますが、そこに周辺地域整備勘定という勘定があるようです。そこに大体一千二百億円ぐらいの積立金というか余剰金みたいなものがあると聞きます。こういう積立金を、今回、福島原発の周辺で被災した被災者の方とか、あるいは被災した企業の支援に充てるということは考えられないんでしょうか。

海江田国務大臣 実は、これは私も考えてみました。御案内だろうと思いますけれども、これは二つございまして、積立金と、それからもう一つ、毎年毎年自治体に配る交付金がございます。

 交付金の方は、従来でしたら六月からですけれども、これを四月から直ちにしっかりと自治体に配るようにということは指示をいたしまして、今、そのような段階に入っております。

 それから、もう一つございますのが積立金でございます。この積立金は積み立ての目的がございまして、これは発電施設の設置の促進及び運転の円滑化にのっとって積み立てた、こういう趣旨がございますので、今の法律では、そういう形で取り崩して補償に回すということは禁じられております。

 ですから、御提案の、積立金を取り崩して補償の一部にということを行うためには、何らかの立法的な手当てが必要でございます。

山内委員 ぜひ立法も含めて御検討いただければと思います。

 では、ちょっと早いですが、以上で質問を終わります。

田中委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案に反対討論を行います。

 一九九九年に制定された産活法は、ROE、すなわち株主資本利益率の向上を最優先とする大企業の事業再構築、リストラ、人減らしを支援してきました。その結果、この十年間で、大企業が内部留保を八十七兆円もため込んだ一方で、雇用者報酬は二十六兆円も減少しています。

 政権交代直後の二〇〇九年十二月に取りまとめられた新成長戦略では、二〇〇〇年代以降の構造改革により、選ばれた企業のみに富が集中し、中小企業の廃業は増加、実感のない成長と需要の低迷が続き、ワーキングプアに代表される格差拡大も社会問題化し、国全体の成長力を低下させることになったと指摘しています。

 企業の競争力を向上させることが国の成長につながらないのであれば、産活法は根本的に見直されるべきです。

 反対理由の第一は、本法案がこうした基本認識に逆行して、新成長戦略や産業構造ビジョン二〇一〇に基づき、グローバル市場に勝ち残り、企業競争力を強化するためのさらなる産業再編や巨大合併を促進するものだからです。

 第二は、本法案がインフラ・システム輸出を新たに支援の対象とし、その目玉として原発の海外売り込みを加速させようとしていることです。

 地球温暖化対策の必要性について国際的に議論が高まる中、民主党政権は、原発を二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーだと位置づけ、国内での十四基新増設とプルサーマル計画の強行など、原発依存を強めてきました。

 いまだ原発から出る放射性廃棄物の処理方法すら決まらず、さらに史上最悪の福島第一原発事故の発生から一カ月半以上たってなお収束の兆しさえ見せない中、原発の海外売り込みなど、全くもって無責任です。

 第三は、公正取引委員会の企業結合審査に際し、事業所管大臣との事前協議を義務づけていることです。

 これは、独立行政委員会である公正取引委員会の権限に実質上制限を加え、独占禁止政策を産業政策に従属させかねないものです。

 一方、その公取委自身が企業結合審査基準を大幅に緩和しようとしていることも重大です。グローバル市場で勝つための巨大合併を容認し、国内市場がたとえ独占状態になったとしても考慮しないというものであるなら、消費者利益にも、国民経済の健全な発展にも反するものだと言わざるを得ません。

 なお、自民党提出の修正案は、公取委と事業所管大臣の事前協議の一層の迅速化を求めるものであり、賛成できません。

 以上、討論といたします。

田中委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、西村康稔君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十七分散会


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