衆議院

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第3号 平成23年11月30日(水曜日)

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平成二十三年十一月三十日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 吉田おさむ君

   理事 石関 貴史君 理事 近藤 洋介君

   理事 田嶋  要君 理事 中山 義活君

   理事 渡辺浩一郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 菅原 一秀君 理事 佐藤 茂樹君

      井戸まさえ君    大畠 章宏君

      加藤  学君    川口  博君

      川越 孝洋君   木村たけつか君

      北神 圭朗君    櫛渕 万里君

      桑原  功君    斉木 武志君

      柴橋 正直君    平  智之君

      高松 和夫君    中後  淳君

      花咲 宏基君    平山 泰朗君

      藤田 大助君    松岡 広隆君

      山崎  誠君    山本 剛正君

      渡辺 義彦君    遠藤 利明君

      近藤三津枝君    高市 早苗君

      橘 慶一郎君    丹羽 秀樹君

      西野あきら君    額賀福志郎君

      江田 康幸君    吉井 英勝君

      山内 康一君

    …………………………………

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)

   (原子力経済被害担当)  枝野 幸男君

   内閣官房副長官      齋藤  勁君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   経済産業大臣政務官    北神 圭朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 香川 剛広君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房政策評価審議官)       田中  敏君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局次長)      渡辺  格君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           角田  豊君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            佐々木伸彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        安藤 久佳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     深野 弘行君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    宮川  正君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  吉良 州司君     渡辺浩一郎君

同月二十一日

 辞任         補欠選任

  吉井 英勝君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  宮本 岳志君     吉井 英勝君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  吉井 英勝君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     吉井 英勝君

同月三十日

 辞任         補欠選任

  平  智之君     川越 孝洋君

  牧野 聖修君     桑原  功君

  谷畑  孝君     遠藤 利明君

  西村 康稔君     丹羽 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     平  智之君

  桑原  功君     牧野 聖修君

  遠藤 利明君     谷畑  孝君

  丹羽 秀樹君     西村 康稔君

同日

 理事吉良州司君同月十六日委員辞任につき、その補欠として渡辺浩一郎君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十一月二日

 業者婦人の実態調査を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第九八号)

 同(志位和夫君紹介)(第九九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇〇号)

 同(重野安正君紹介)(第一〇一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇二号)

 同(野田国義君紹介)(第一〇三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇五号)

 同(石川知裕君紹介)(第一五〇号)

 同(京野公子君紹介)(第一五一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五二号)

 原発からの撤退を求めることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第一〇六号)

 原発からの撤退を決断し、エネルギー政策の転換を求めることに関する請願(服部良一君紹介)(第一七八号)

同月二十九日

 業者婦人の実態調査を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第一九九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二八五号)

 同(松野頼久君紹介)(第二九九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五四号)

 同(鳩山邦夫君紹介)(第三五五号)

 原発からの撤退を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第二〇〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二六二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

吉田委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に渡辺浩一郎君を指名いたします。

     ――――◇―――――

吉田委員長 経済産業の基本施策に関する件並びに資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件について調査を進めます。

 本委員会は、去る十一月二十一日及び二十八日に、福井県及び新潟県において経済産業等の実情視察を行いましたので、その概要について御報告いたします。

 これらの視察は、東日本大震災の影響を受けて発生した福島第一原子力発電所事故を踏まえ、原子力発電施設の立地地域である福井県及び敦賀市並びに新潟県及び柏崎市、刈羽村からの意見の聴取及び原子力発電所の現場における安全対策の取り組みの実態把握等を目的として行われました。

 福井県におきましては、まず、敦賀市役所において、河瀬一治敦賀市長より、これまでの原子力発電所と基礎自治体の共存の歴史を踏まえた原子力発電の必要性、国の責任によるエネルギーベストミックスの早急な再構築、EPZ、防災対策を重点的に充実すべき地域の見直しに際し、その実効性確保のため避難道路を整備する必要性、電源立地交付金のあり方等について意見を聴取した後、雇用や地域経済への影響等について意見交換を行いました。

 続いて、福井県の満田誉副知事より、定期点検で停止中の原子力発電所の再稼働の前提として、国の責任で早急に新たな安全基準を策定する必要性、原子炉の高経年化対策の強化、日本海における津波対策のあり方等について意見を聴取した後、県の主張する安全基準の内容、ストレステストの意味、新たな対策の範囲(EPZ)の考え方等について意見交換を行いました。

 次に、日本原子力発電株式会社敦賀発電所において、非常時に備えた代替電源や炉心冷却機能の確保等の安全対策への取り組み状況及び敦賀発電所三、四号機の準備工事現場を視察した後、濱田康男取締役社長等より、事故を踏まえた安全性向上対策やストレステストへの対応状況、雇用確保の必要性等について説明を聴取し、新たな安全対策の具体的内容や地域の電力需給の見通し等について意見交換を行いました。

 次に、独立行政法人日本原子力研究開発機構敦賀本部において、高速増殖原型炉「もんじゅ」の原子炉建屋内を視察した後、鈴木篤之理事長等より、「もんじゅ」開発と高速増殖炉核燃料サイクルの意義、ナトリウム漏えい事故を踏まえた改造と運転再開の状況、安全対策等について説明を聴取し、「もんじゅ」の国際的な位置づけ、将来の見通し、コスト面での評価等について意見交換を行いました。

 続いて、関西電力株式会社美浜発電所において、高台への代替電源の設置や炉心冷却に必要な水源やポンプ確保等の安全対策への取り組み状況を視察した後、八木誠取締役社長等より、事故を踏まえた安全対策や電力不足の状況を踏まえた定期点検中の原子力発電所の再稼働に向けた取り組み等について説明を聴取し、関西地域での電力需給の見通し、地元経済に及ぼす影響等について意見交換を行いました。

 次に、新潟県におきましては、まず、東京電力柏崎刈羽原子力発電所において、非常時に備えた代替電源や防潮堤設置等の安全対策への取り組み等を視察した後、皷紀男取締役副社長等より、中越沖地震及び福島第一原子力発電所事故を踏まえた安全対策や発電所の作業体制等について説明を聴取し、定期検査中の原子力発電所の再稼働に向けた取り組み、耐震強化工事の現状と課題等について意見交換を行いました。

 また、刈羽村役場において、品田宏夫刈羽村長より、福島第一原子力発電所事故後の住民の考え方及び柏崎刈羽原子力発電所の意義、電力供給確保の重要性等について意見を聴取した後、電源立地交付金のあり方、国の責任で新たな安全基準を早急に策定する必要性等について意見交換を行いました。

 続いて、柏崎市役所において、会田洋柏崎市長より、福島第一原子力発電所事故に関する徹底的な事故調査・検証の必要性、早急な国による安全基準の見直し及びエネルギー政策の方向づけ等について意見を聴取した後、EPZの見直しに伴う避難道路確保等の課題、ストレステストの位置づけ、国の原子力事故検証委員会の技術専門家不在ではないかとの懸念等について意見交換を行いました。

 以上、時間の制約の中ではありましたが、可能な限り多くの現場を訪れ、つぶさに状況を把握するとともに、時間の許す限りで関係の首長等の意見聴取を行ってまいりました。なお、新潟県につきましては、残念ながら、日程の都合上、意見聴取の機会が持てませんでした。

 視察の結果、現場での安全性確保に向けた努力をおおむね確認することができたほか、各地方自治体から共通して、原発等をめぐる地域の経済、雇用の状況や政府にスピード感を持った対応を望む旨が示され、委員会として真摯に受けとめるべきものと痛感いたしました。

 全体を通じて、関係者と率直な意見交換ができ、有意義な調査となったことを付言し、あわせて関係の皆様に謝意を表し、報告といたします。

     ――――◇―――――

吉田委員長 引き続き、経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官香川剛広君、文部科学省大臣官房政策評価審議官田中敏君、文部科学省科学技術・学術政策局次長渡辺格君、農林水産省大臣官房審議官角田豊君、経済産業省通商政策局長佐々木伸彦君、資源エネルギー庁資源・燃料部長安藤久佳君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長深野弘行君及び中小企業庁次長宮川正君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎誠君。

山崎(誠)委員 おはようございます。民主党の山崎誠でございます。

 貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 私は、エネルギーの問題、再生可能エネルギーの利用拡大、そして原子力の問題について少し触れさせていただきたいと思います。

 もう言うまでもありません。福島第一原発事故を受けまして、エネルギーをこれからどうやって確保していくのか、その基本が今問われている。そして、私も傍聴させていただいておりますが、総合資源エネルギー調査会だとか、あるいはエネルギー・環境会議だとか、戦略をとにかく今練っている最中と認識をしています。

 そういう中で、今、私たちは利用可能な電力供給源として、原子力あるいは化石燃料、また再生可能エネルギー、その利用の方策をさまざま、メリット、デメリットもあります、総合的に議論をしなければいけない、そして、うまいエネルギーのベストミックス、これをつくっていかなければいけない大事な局面に来ていると思います。

 さまざま議論の途中であることは存じ上げておりますけれども、方向性について、大臣、今お考えがあれば、今までの議論を踏まえて、今後の展開も踏まえて、どのようなお考えをお持ちなのか、お聞きをしたいと思います。再生可能エネルギーについて特に焦点を当てて、例えば目標設定をどういうふうにお考えなのか、そのためにどんな施策を展開していくべきとお考えか、お聞かせください。お願いします。

枝野国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、エネルギーの全体構造については総合エネ調とかエネルギー・環境会議で議論をしているところでございますが、導入目標をどれぐらいにするかということは、そういったことの全体の広範な議論の中で、しかも透明性を持って議論を進めていくということになろうかと思っております。

 ただ、再生可能エネルギーということをとらえれば、この全体の戦略が固まらない段階でも、できるだけこれの導入を推進、拡大するということについては、現状の枠内においてもできることは最大限やろう。そして、将来の方向性についても、国内的な内需の喚起であったり、我が国の技術力の推進であったり、それが将来の海外展開などを含めても、これはできるだけ推進をしていくという姿勢が大事なのではないかというふうに思っております。

 御承知のとおり、固定価格買い取り制度がスタートいたしますが、それに加えて、立地規制の見直しや研究開発の支援など、現状の枠組みでできる政策を総動員してこの後押しを進めているところでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 今本当に、議論をしながら、そして実際に施策も打っていかなきゃいけない、そういう意味で大変難しいところだと思うんです。

 今お話がありました、さまざまな規制改革が必要であったり、研究開発の投資が必要であったり、あるいはこの後議論したいんですけれども、固定価格の買い取り制度のような新しい仕組み、これは社会全体を巻き込んだ大きな仕組みだと思うんですが、そういったものを動かしていかなければいけない。大事なのはやはりスピード感であって、今本当に日本をどう支えていくのか、その中で、例えば再生可能エネルギーも、これはエネルギー源としても産業の種としても非常に大事なところだと思うので、ぜひ議論をリードしていっていただきたい。

 私は、いろいろな会議が立ち上がって、いろいろな議論が並行して進んでいる中で、では、その全体のコーディネーション、どういう方向性で、どういう議論の、議論は自由にしながら、どういう帰着を求めていくのかというものは、やはり大臣に持っていただきたい、あるいは総理に持っていただきたいというふうに考えているところです。ぜひ、リーダーシップをしっかりと発揮していただきたいとお願いをいたします。

 それで、再生可能エネルギーの拡大の中で、固定価格の買い取り制度、通常国会で成立をした再生可能エネルギー促進法、これをベースにして制度設計、具体的な内容を今詰めているところとお聞きをしております。

 この法律自体は実は器だけであって、中身はこれから詰めていかなければいけない。その核になるのが、買い取り価格であったり、買い取り期間であったりということだと思います。この議論がまさにこれから始まって、来年の七月のスタートに向けて進んでいく、詳細が決まっていく。特に、今調達価格等の算定委員会というのができて、ここが価格あるいは期間を決定していく、そのための議論をしていただいて、提案をしていただく、提言をしていただくという流れと理解をしております。

 この委員会のこれからの議論が、再生可能エネルギーの促進、このスピードに実は大きく影響する大事な委員会であって、これを所管する経済産業大臣として、ここをうまくマネージしていただかなければいけないと考えています。

 この第三者機関を設置した意味というのは、例えば再生可能エネルギーの事業者が直接入るのではなくて、あるいは電力の需要側の当事者が入るのではなくて、第三者が第三者の立場でさまざまな意見を聞いて、そして判断をしていく、方向を示していくというところに大変重要な意味がある。

 そして、もう一つは、そもそもこの制度自体、再生可能エネルギーを推進するための制度でありまして、あくまでも、まず後押しをしていく、後ろをしっかりと支えていく、そういうベース、投資をうまく呼び込む制度としてこれを運用しなければいけないと考えています。

 五人という限られた委員ですので、それぞれが重要なポジションでこの委員会を構成していかなければいけない。さまざまな意見を今いただいている人選のようです。必ずしも再生可能エネルギーあるいは固定価格制度自体に肯定的でない方も入っているかもしれない。それは、個々に意見があります。ですから、その意見をうまく生かして、そして制度をうまく生かしていく、それが一番大事だと思うんです。

 そのあたり、今回の人選だとか、この制度自体をどうやって切り盛りしていこうとお考えなのか、経産大臣の御意見をお伺いいたします。

枝野国務大臣 調達価格等算定委員会の委員候補については国会の方に提示をさせていただいたところでございますが、この人選については、法律の第三十三条で、電気事業、経済等に関して専門的な知識と経験を有する者のうちから選任することとされております。

 この委員会自体が、国会において、民主、自民、公明三党の政調会長合意に基づく法案修正によって設置が決まったものでございまして、その合意文書には人選に当たり協力することが明記をされていたことから、この人選案の策定に当たってはただいまの三党に御推薦をお願いいたしまして、これを参考にして今回の五名の候補を選びまして国会の方に御承認のお願いをしているところでございます。

 いろいろな御意見はあろうかというふうに思いますし、いろいろな立場の方がおられますが、いずれにしても、この委員に御選任をいただいた上では、この法律の趣旨というものを踏まえた中で委員の皆さんにはそのお仕事をしていただくということになろうというふうに思っておりますし、また、その法の趣旨等については、委員を御決定いただければ、この法案の議論の経緯その他も、委員の皆さんにはしっかりとお読みいただけるような環境をつくったりして、御理解をいただくように努力したいと思います。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、この制度が生きるように、この委員会自体の運営、これは第三者機関ですから、あれこれ口を出す委員会ではないと思うんですが、そこをうまく推進、しっかりと後押しできるようにしていただきたいと思います。

 特に、この中の議論で、やはりエネルギー源の種別の対応だとか、あるいは設置状態だとか、あるいは規模だとか、そういったきめ細かな対応をしていただかないと、風力であれ、太陽光であれ、地熱であれ、それぞれ可能性のあるエネルギー源ですので、それをうまくフォローしていただきたい。

 それから、もう一つは、やはり公開の徹底をぜひお願いしたいと思います。ある意味利害が絡んだり、あるいは国民的な負担をお願いしなければいけないような非常に大事な議論になりますので、この公開の徹底、インターネットで公開するのがいいのか、議事録を公開するのがいいのか、それはいろいろな方法があると思いますが、ぜひ前向きに公開にも取り組んでいただきたいと思います。ぜひお願いをしておきますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、もう一つ、ちょっとテーマを変えまして。再生可能エネルギーの中でも、特に風力発電がやはりポテンシャルが大きくて、そしてこれから集中的にある意味投資をし、例えば立地などでも配慮をしていかなければいけないところだと私は思うんです。この風力発電、特に環境省のレポートなどを見ても、洋上の風力発電の可能性が大変ポテンシャルとして大きいと伺っています。この可能性について、政務官に御見解をお伺いしたいと思います。

北神大臣政務官 おはようございます。

 委員おっしゃるとおり、洋上風力というのは、我が国は海に囲まれていますから、そういった意味で地理的条件に合っているということだと思います。

 それで、二つありまして、着床式、直接突き刺さるやり方と浮き輪をつけてやる浮体型。後者の方は、どちらかというと海が深いところに適しているということです。

 前者の着床式につきましては、もう既に平成二十年度から、千葉県の銚子市沖、それから福岡県の北九州市沖で実証実験をやっております。後者の方は、まさに三次補正予算の中で、福島の復興の象徴として、世界で最先端あるいは一番規模の大きいものに向けて実証実験をやろうということでございます。

 大きく言えば研究開発ですが、やはり技術的な課題とか、コストが高いとか、いろいろそういった課題がございますので、そういう実証実験を通じて実用化に向けて力強く推進していきます。

 以上です。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 特に、洋上の浮体式の風力発電、例えばノルウェーのスタバンゲルというんですか、沖合にあるハイウインドという施設があります。この研究開発をやっている施設を見てきたんですけれども、やはり非常に技術的にも進んで、シミュレーションの技術、風の強さによってそれを制御するような技術、すばらしいものがありますので、ぜひ日本にもある技術を生かして伸ばしていっていただきたいと思います。

 時間がなくなってまいりました。最後の質問になってしまうかもしれません。

 原子力発電について、特に高経年化に対する考え方、これは日本の原発の未来を考えていく上でとても大事なテーマだと思います。老朽化していく、これをどういうふうに扱っていくのか、最後にお聞きをしたいんですが、これは原子力安全・保安院長、お願いします。

深野政府参考人 お答えをいたします。

 高経年化の対策でございますけれども、今、国内で、廃止措置中のものを除きまして、三十年を超える運転期間になっておりますものが全部で十九基ございます。こうしたものにつきまして、まず、運転開始から三十年を迎えます前に高経年化による劣化の状況を評価いたしまして、長期的な保守管理方針をその後十年ごとにきちんとつくる、それについて国が保安規定の一環として認可をする、そういうことをやっております。

 ただ、今回の事故もございましたので、今のところ、今回の事故と直接高経年化が関係しているということは私ども確認をしておりませんけれども、こういったことも含めて、きちんと高経年化対策について、専門家の意見も伺ってもう一度検討しようということで、昨日から意見聴取会を開いておりまして、そこで今後の高経年化対策についてのあり方についてもあわせて検討しているところでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 一言だけ。この問題、私もいろいろとお聞きをしていると、要するに、廃炉のタイミング、原発の寿命という考え方が実は定かでなくて、事業者が判断をして一応技術評価はしていく、それも十年ごとにやっていくという話になっております。どこでどういうふうにこのタイミングを見きわめていくのか、やはり私は議論が必要で、その技術評価の間で何か事故が起きるのではないか、そのタイミングだとか方法についてもぜひ検討を加えていただき、それが原発の我々が持っている可能性だということで考えていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

吉田委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自民党の菅原一秀でございます。

 盛りだくさんでございますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず、TPP交渉の進め方についてお尋ねをしたいと思います。

 我が党自民党政権時代から、自由貿易体制の推進については積極果敢に取り組んできたところであります。これまで、WTO、APEC、ASEANプラス3、6、そして今般のTPPに関しても、党内にいろいろな議論があります。しかし、FTAAPに向けてどういう道筋をつけていくのか、今後日本が歩むべき道のりをしっかり慎重に審議しながら私どもも方向性を出していきたい、こうとらえているところであります。したがって、非常に今重要な局面でありますゆえに、今の野田政権の進め方には非常に不安を抱いております。それゆえに、幾つかお尋ねをしていきたいと思っております。

 私も商社に勤めておりました。したがって、外国との交渉というものは、一番大事なことはやはり交渉力である、こういうふうに確信をいたしております。あらゆるルートを駆使して、いろいろな情報をキャッチする。そして、バイであっても、対面であっても、非対面であっても、しっかり発信をする。また、発信したことがどのように周りに伝播しているか、世論の動向はどうか、いろいろなことをとらえて、その方向がもし間違っている方向に行くとするならば、これは直ちに軌道修正をする。これが交渉の本旨ではないか、民間で勤め、また官民問わずこれが要諦ではないか、こんなふうに私は思っているところであります。

 昨今も、予算委員会でやりとりがありました。きょうお手元にお配りをしておりますアメリカのホワイトハウスのホームページ、けさも確認をしましたが、このとおりであります。すなわち、この下線の部分、「プライム・ミニスター・ノダズ・ステートメント」、そこから始まる文章、野田総理のステートメントでは、いわば物品及びサービスに関して自由貿易のテーブルにのせる、このことがきょうのホワイトハウスのホームページにもれっきとして出ているわけであります。この点について、予算委員会等でも質問があったわけでありますが、そもそもTPPに関するスタートの時点からつまずいているのが今の状況ではないか、こう考えております。

 この部分について、野田総理は、いわゆる基本的な方針、つまり去年の十一月、ちょうど一年前の基本的な方針と、アメリカ側がそこの部分をとらえていわばこういう文言になった、再三こういうような説明をしてきているわけなんですね。これから本格的な交渉に入ろうとしているときに、日本側の言っていることとアメリカ側の言っていることが違う。ボタンが一つずれて、このままずっと交渉に行くとするならば、まさにここにバイアスがかかって、アメリカ側のいいように交渉が進められかねない、私はこのように思っております。

 まさに、アメリカの報道官も、このホームページの文章は訂正しない、こう明言をしているわけですが、なぜ政府はこの点、修正、訂正を求めないのか。言った、言わないという話はおいておいて、このような状況の中でスタートすることについて何の懸念もないのか。この点、きょうは官房副長官にもお運びをいただいております、経産大臣、お答えをいただきたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘の件については、野田総理からは、オバマ大統領に対して、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入っていくということ、そして昨年十一月に決定された包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済連携を進めていくという趣旨の話をされたと承知をしておりますが、米国側の資料については、事務方から説明、訂正を求めたところ、日本側がこれまでに表明した基本方針や対外説明を踏まえ米側において解釈したものであるとのことであると承知をしております。

 今次、首脳会談での野田総理の発言そのものを引用しているわけではないことが確認されておりますので、改めて訂正まで求める必要はなく、御懸念のような事態にはならないというふうに思っております。

菅原委員 いや、交渉というのはスタートが大事で、訂正を求めた、向こう側の理解がこうだからこのままでいいんだということで終わってしまえば、日本、アメリカ以外の全世界に、日本はそういう感覚だ、認識だということを披瀝しているようなものなんですよ。だから、訂正を求めて、直さない。しかし、アメリカ側は、去年の十一月の包括的経済連携における基本的な方針に基づいての理解だからいいんだと。いわゆるセンシティブな品目について、十分に配慮をしつつということを総理は繰り返し言ってきたわけですよ。そこの部分が書いていないで、アメリカ側の大変都合のいい部分だけが公式に書かれている。おかしいなと思うんですよね。

 わずか七時間ですよ、衆参の予算委員会。国民的な議論をすると、あれだけ再三言った野田総理。十一月のAPECに間に合わそう、間に合わそうとして、わずか一日、衆参合わせてたった七時間の議論。これで、生煮えのままの途中過程を持っていって、APECでとうとうと堂々と自由貿易を推進するならいいんですよ。ところが、向こうに行ったら、今度は、民主党内の反対派に気を使ってかわかりませんが、いわゆるセンシティブな品目については十二分に配慮をすると。逆だと思いますよ。

 十二分に議論した上で堂々とAPECで持論を述べる、自由貿易を進めるんだ、FTAAPへの道はTPPしかないんだ、こう言ってはばからないのであればいざ知らず、生煮えのまま持っていって、向こうに行ったらば、党内の反対派に気を使って、センシティブな品目については十二分に配慮をする。国際公約をする場で、あるいは国際的な論議を交わす場でおたくのドメスティックな話を持ってくるなよというのが外国の率直な思いではないかな、こんなふうに思います。

 したがって、この点、多分話は平行線だと思いますから、あえてこれ以上申し上げません。違う切り口からお尋ねをしたい、こう思っております。まず、そういう意味では、タフネゴシエーターたる日本、政府にならなきゃいかぬ、このことに限らず強く申し上げておきたい、こう思っております。

 もう一つ資料をお配りさせていただいております。これは、日本テレビの報道番組に映し出された、APECに一日前に乗り込んだ枝野大臣そして事務方が、カークUSTR代表との会談に臨むための、いわばデモンストレーションというか下ごしらえの会議、そこを密着取材させている。そこでこの場面が全世界、ネットを含めると全世界ということになると思うんですが、全国民、全世界に流れてしまった。

 大臣、冒頭聞きますけれども、何でこのように重要な外交の場面の裏側を見せるような密着取材に応じたんですか。

枝野国務大臣 特にTPPをめぐる問題、これに付随する通商関係の問題については、従来からも国民の皆さんに対する説明や情報提供が不足しているという指摘を受けていたところでございまして、これに対しては、政府として一層の説明や情報提供に努めていくこととして従来から来ておりました。

 私自身、この件に限らず、メディアの皆さんは国民の皆さんにかわって情報を収集して、そして国民の皆さんの間における事実関係を共有していただくための大変重要な役割を担っていらっしゃるという立場でございますので、さまざまなメディアからの申し入れ等に対しては可能な限りで最大限お受けをするという姿勢でやってきておりまして、特に今般は、全体としての自由貿易に向けたさまざまなプロセスということについてお申し出がありましたので、最大限情報提供をするという観点から取材を受けることとしたものでございます。

 ただ、事務的な手順、手続上の問題で誤解を生じさせたことは事実でありまして、今後こうしたことのないように事務方に徹底するとともに、私としても注意をしてまいりたいと思っております。

菅原委員 事務的なことで誤解を生じたことについての、いわば謝罪といいましょうか釈明が今ありました。

 私は思うんですよ。ある意味では、これは日本外交の肝かもしれない。そこの経産省がつくったペーパーを、今、これだけ衆参、サイバーテロで大変な状況になっている。この状況の中で、大臣の手持ちの資料がまさに望遠カメラで映し出されるかもしれない、それくらいのことに全く配慮しないで、いわば通商政策や政府の考え、行動を国民にお知らせする義務がある、知らせたい、だからといって、このように丸腰で臨むということは、まさに日本外交の肝を全世界に知らしめる、日本の外交のまさに要諦を毀損する、機密漏えい問題にもなっていると私は思いますよ。どう思われますか、その点。

枝野国務大臣 いずれにしろ、テレビで放映された紙は、交渉といいますか、会談の場では全く使っていない資料でもございます。ただ、そうした資料が報道されたことで国民の皆さんに誤解等を生じたとすれば、そうしたことについては、誤解を生じる原因になった事務的、手続的な問題について、しっかりとこうしたことのないように徹底するよう既に指示をしているところでございますし、私自身も留意してまいりたいというふうに思っておりますが、外交交渉上不利になるというようなことにはならないというふうに思っております。

菅原委員 前段の部分は、詭弁というか、すりかえですよ。映し出された部分は交渉で言っていないからという理屈は通りません。

 つまり、総理がこれまで予算委員会で、「日本は、非関税措置を含め、全ての品目・分野を交渉の対象とする用意がある。」ということが、皆さんのお手元にお配りしている資料に書いてあるわけですね。これは下の部分にあえて一つ一つ見えやすいように書きました。総理はこのような部分について言っていない。しかし、APECの行われた夜の番組であったとしても、撮影はその事前、つまりAPECの始まる前の十一日に、枝野大臣が乗り込んで、いわば現地でそれを撮らせた。そこの部分が、ある意味では第三者にもう伝わり始めているときの話であります。

 つまり、そこを引用したかしないかは別として、このような外交の交渉というのは、アンダーテーブルで緻密に細かに進めていく、その上に果実があって、一瞬の日本の国益につながる、こういうものではないかなと思う中に、その過程部分が、幾らオープンに情報公開をしたいといっても、いわば国益を毀損するような可能性があるそうした密着取材に応じる、これは今後やはり気をつけてもらわなければいけないと思いますし、極めて重大な問題だと思います。

 国民はどう見ているんでしょうか。つまり、この部分が放映をされて、総理はこのようなことを言っていない、大臣も言っていない、手持ちのペーパーを見ていない、こういう説明を再三されています。しかし、このテレビを見た、この画像を見た、こ文章を読んだ国民、全世界の方々は、やはりこれに基づいて交渉を進めたと思うのが普通ではないでしょうか。つまり、これが一般化していることに非常に大きな責任を感じてもらわなきゃ困ると私は思うんです。

 そこで、また違う切り口から申し上げますと、先ほど言ったように、答弁をひもといてみますと、さまざまな可能性を想定した資料を事務方に用意させていたと枝野大臣が答弁している。ところが、実際には、映し出されたのはそこの一枚だけだった。つまり、その一枚以外にも、資料A、資料B、資料Cがあって、そこのうちのワンパートが映し出されたんだと説明をして、いろいろなものを用意させていた、こういうふうに答えているんですね。ところが、自分はその用意したメモを読み上げなかった、だからそう言っていない。読み上げたかどうかは別として、そのペーパーが頭に入っていて、それが自然に出たかもしれない。

 そこで確認をしたい。きょうは官房副長官がお見えでございますけれども、本当は官房長官にお聞きをしたいんですが、こういう場面にはお出にならないということで、齋藤副長官にお運びをいただいております。

 これは十一月二十二日の朝日新聞で、枝野大臣がAPECの閣僚会合に持参した資料は、すべての品目、分野を交渉の対象とする用意があるとした資料の一枚だけであって、ほかはないということで、藤村官房長官が枝野大臣に注意をした、こういう記事が出ております。これはどっちが本当なんですか。

齋藤内閣官房副長官 お答えさせていただきます。

 官房長官からはこういうふうに伺っております。関係者からの説明を通じまして、枝野大臣が、結論がわからない段階でさまざまな可能性を想定した資料を事務方に用意させておりました。しかし、同大臣のファイルにとじられていた資料は一種類であったという事実関係を把握されたということで官房長官は承知をしております。ということでございます。

菅原委員 政府内で事後的にいろいろ平仄をとったとすれば、そういう答弁になるんでしょう。ただ、いろいろな資料をそろえておったという経産大臣の答弁が予算委員会という場で、公の場で発信をされ、またその後、今おっしゃったように、結果的に一つであった。経産大臣、どっちなんですか。

枝野国務大臣 いろいろな資料を用意しろという指示をいたしまして、実際に私、複数の種類の紙を見ております、日本にいる時点で。ただ、あのときに私の手元で持っていた、まず大臣用ということでファイルがつくられるわけですが、そのファイルの中に入っていたのは一枚であったということであります。

菅原委員 そのファイルの紙というのが今配っているこの資料だとするならば、重ねて申し上げます。五つ目のポツ、「日本は、非関税措置を含め、全ての品目・分野を交渉の対象とする用意がある。交渉の中でしっかり議論していきたい。」こういうふうに経産省の用意したメモがあって、これに沿って発言をしていないと言っていますよね。では、どういう発言をされたんですか、カーク代表との会話。

 つまり、その次の日に、アメリカ側の報道は、すべての品目云々ということをホームページに載せる。アメリカはタフネゴシエーターの国でありますから、やや高目のボールをほうってくることはあるかもしれない。しかし、そのことにおののいて、党内の反対派を気遣って、センシティブな品目に配慮しつつということを総理が言いながら、その下ごしらえをする経産大臣、向こうのUSTR、通商代表部とのやりとりの中では、実際にはここに書いてあるようなやりとりがあったんじゃないですか。

枝野国務大臣 まず、先ほどから出ておりますセンシティブな品目に配慮しつつというのは、今回のAPEC前後のところで決めたものではありませんで、昨年閣議決定をしている我が国の包括的経済連携についての閣議決定内容でございます。今回のことでの、一連の中で出てきたものではございません。

 それから、私がカーク通商代表と話をする、これはテレビの資料、映像が映ったのは、カーク通商代表と会談をする相当前の段階で、別の他国の大臣との会談の準備のところの場面でございますが、いずれにしろ、これに先立ってか前後して、何しろ、野田総理が閣僚委員会でどう御判断をされて、そして記者会見でどういうふうに御発言になるかということが一番重要なことでございましたので、私はハワイに着きまして、着く飛行機の中でそういった一連のことがございましたので、野田総理の記者会見での発言のテープ起こししたものを事務方から受け取りまして、いわゆるTPPに関連する事項については、これは野田総理の記者会見に基づいて私の政治判断でやるので、資料その他はもう要らないという趣旨の、そういう言い方ではありませんが、趣旨のことを事務方にも伝えておりました。にもかかわらず、出国前に用意していた資料が残っていたということが若干御心配をおかけしている状況かなということでございますので、この資料は全く使っておりません。

 そして、カーク通商代表との会談の中身でございますが、これはそれこそお互いに内容について詳細に外に言わないということで会談を行っておりますので、詳細なことは申し上げられませんが、TPPについては、基本的に記者会見で総理がおっしゃられた内容、その線を超えることなく話をしたということであります。

菅原委員 一番冒頭の答弁の、センシティブな品目についての言い回しは去年の十一月の基本的な方針だから今に始まったことではない、そうおっしゃいました。ところが、野田総理なり大臣も先般の予算委員会の中では殊さら、センシティブな品目、品目と重ねて使っているわけですよ。

 さっき言ったように、順序が逆といいましょうか、つまり、よく議論した上で出発していったならばこんなことにならなかったし、わざわざ国際会議の場で日本の内側をさらすような発言をあえてしなくても、記者会見であったとしても、日本の記者に聞かれたとしても、それは必要ない、こう私は思うんです、交渉の進め方なり、世界に対する見せ方としては。

 だから、私はそこのところを大いに問題にしたいと思いますし、官邸でも、このような密着取材で日本外交の肝を世界に知らせるようなことがあったら、これは罷免物ですよ。私はそう思いますよ。この問題だからいいとか悪いではなく、国防に関すること、国家機密に関することで、もしこれがあのように望遠カメラで世界に同時発信されるようなことがあるとするならば、これはもう政権転覆ですよ。それくらいの問題だと私は思います。

 委員長、お願いをしたいんですが、民主党内でも議論があって、資料の提出が求められているそうでありますけれども、経産大臣が用意したとされる幾つかの資料、いわゆるメモですね、これの提出をお願いしたいのと、あわせて、局長、見ていますね、カーク通商代表と枝野大臣のやりとりの議事録、これはあるんですか、ないのか、それだけ。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 議事録は、内部でとったメモがございますが、報告につきましては、外交上のやりとりでもあり……(菅原委員「そんなことは聞いていないんだ。あるのかないのか」と呼ぶ)はい。内部でございます。

菅原委員 枝野大臣とカーク代表との会談の記録があるということであります。

 これは、今申し上げた前段のさまざまな、経産省がつくった、外務省がつくったメモと、今の会議録、ぜひ委員会に提出をしていただきたくお取り計らいをお願いします。もし、これが委員会にそぐわないという論議になるとするならば、せめて理事会で秘密裏に、秘密会という立場の中の理事会でお示しをいただくように、お手配をお願いいたします。

吉田委員長 理事会で協議をいたします。

菅原委員 官房副長官、これでお戻りいただいて結構でございます。

 別に、個人的に枝野大臣に他意も何もないんですが、いろいろな発言を聞いていると、やはり非常に物事が混乱してきた経緯があると思うんです。

 例えば、十一月八日の予算委員会で、三月十一日の翌日、三月十二日から十五日までの間に、福島第一原発一号機、三号機、二号機と爆発をして、広島原爆の熱量で換算すると、ウラン235の二十倍、セシウムでは百六十八倍になる大惨事になった今回の原発事故でありました。

 枝野大臣が官房長官時代、記者会見で、大変有名な言葉になってしまった悲しい現実がありますが、直ちに健康には影響がない、こう繰り返し発言をしてきた、このことに先般の予算委員会で我が党の委員から質問があった。

 それに対して、枝野大臣の答弁は、現在の事故の状況が一般論として直ちに影響がないと申し上げたのではなく、一年間飲み続ければ健康に被害を与えると定められた基準値を超えた放射性物質が検出されたものを一度か二度摂取をしても、それは直ちに健康に影響を及ぼすものではないと申し上げたんだと。

 これは開き直りじゃないですか。どうですか。

枝野国務大臣 三月十一日からの私の官房長官時代の記者会見については、それぞれその時点その時点における把握できている客観的状況に基づいて、国民の健康と安全を守るという観点から、正確かつ可能な限り詳細に発言をしたものでございまして、そのことについて、一個一個きちっと、当時の私の記者会見は官邸のホームページでも映像すべて公開されておりますので、それをチェックしていただければ何の問題もないということは確認していただけると思います。

菅原委員 一個ずつを取り上げてホームページを確認すれば何の問題もない。ところが、大いな問題があるわけなんですね。

 予算委員会で答弁したことはそのとおりだということだと私は認識しております。つまり、一般論としては言っていないんだ、限られた特定の状況で言ったんだ。これは逃げですよ。つまり、政府の公式な発表として毎回毎回発表した、たしか三十九回ぐらい記者会見をされているんだと思います。この中で、今言ったように、一年間飲み続ければ健康に被害が出るかもしれないが、それを一回二回飲んだとしても影響はないだろう、でもこれは一般論じゃないですよというふうにくくりつけて発表しているわけです。それをまた今も踏襲している。

 つまり、世の中には、直ちに健康に影響がないということが一般論化しているんです。一般論としてあなたが言っていなくても、世の中の国民はそうとってしまって一般論化している。この一般論化したことについて、マスコミもそのまま報道している。テレビも新聞もそう。それについて訂正を求めたことはありますか。ないでしょう、一度も。

枝野国務大臣 まず、三月十一日からの数週間は、私自身ほとんど新聞もテレビも見ておりません。どういう報道をなされていたのかということ自体は直接把握をしておりません。そういった余裕は全くありませんでした。

 その上で、これは私自身、今のような誤解を招くことのないように、一個一個の記者会見のときに、最大限、何についてどう申し上げているのかということはかなりきちっとお話をしてきているつもりでございます。

菅原委員 今もいみじくもおっしゃった言葉は、三月二十五日の当時の枝野大臣が官房長官時代に、大丈夫、安心という内容の発信はしていない、こう答弁をしているんですね。官房長官退任の日の記者会見でも、それぞれの場面で、その時点では誤解や不安を与える内容ではなかったと確信をしている、こういうふうに会見でおっしゃっている。

 でも、国民はどうとっていますか。それは官房長官時代のあなたの確信であって、国民にはそう映っていない。直ちに健康に影響はない、その言葉が一般論化してしまって、国民はそうとらえて、それに対して何ら訂正も何もしていない。

 一例を挙げるとするならば、三月十二日、十キロ、二十キロの地域の皆さんに甚大な影響を与えることにはならない、こう記者会見で言っています。三月十七日、浪江町の線量について、直ちに人体に影響を与えるような数字ではない、こう言っております。三月三十一日、前の日のIAEAによる飯舘村への避難勧告があったその翌日、直ちに避難地域を拡大することではない性質のものと思っている、こう言っているんです。つまり、IAEAの提言に対しても、今それは必要ないよと官房長官としておっしゃっている。これは官邸の考え方なんでしょう。

 しかし、現実には、その後の四月十一日、政府は避難指示区域の外側で放射線量が高い地域に対して計画的避難区域を設定して、その中には浪江町も飯舘村も入っているんですよ。わずか二週間前に言ったことを、しかもそれについて何ら訂正、謝罪していない。ここがおかしいんです。つまり、あのときこう言ったけれども、今回、これこれこういう事情で、科学的な知見に基づいてそこが指定されたということについては全く言及されずに、いとも簡単に指定地域を決めてしまっている。

 こういう一つ一つ、精緻に細かく、確かにあのときは異常な状態だったと思います。三・一一、これまで自民党が進めてきた原発、これも要因の一つである。この要因の一つの中に今回の事故はある。だから、今世界的に安全基準の高いものに進めよう、またエネルギー計画をどうしようということを国民的に議論しなければいけない。そこの責から我々は逃れられないということは今でも我々は認識をいたしております。だからこそ、こうした問題に関しては、国民にきめ細かにお知らせをするということが大事なんじゃないでしょうか。どうでしょうか。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、今回の原発事故は、事故自体も時間の経過につれて状況が悪化をしていきました。さらに、把握できる情報というのも、時間の経過とともにより詳細な情報がとれるようになっていきました。したがって、時間の経過とともにより詳細な情報を踏まえて、あるいは時間の経過に伴って生じた事態の悪化ということを踏まえて、当然のことながら対応は変化をしていきました。

 だからこそ、その途中のプロセスにおいては、私は意識をして、今起きている現象、今把握をできている状況からはどういうことです、ただ、今後のことについては、さらに悪化をする状況、可能性ということを十分に踏まえて発言をしてきたつもりでございます。

 ただ、トータルとして、特に、福島の被災者、被災地の皆さんは、それは私が何を言ったかということを超えて、情報自体が不足をして、そのことによって大変な御心配、御心痛をおかけした、このことについては一貫して大変申しわけないというふうに思っております。

菅原委員 そういうお答えでありましたが、もっと厳しい現実を我々はひもとかなければいけない。

 というのは、三月下旬に原子力安全委員会が、福島県の第一原発周辺の市町村に住む子供たち千名に調査をしたわけなんですね、いわゆる放射線量の被曝調査。先般発表されましたけれども、何と千人中四五%を超える子供たちが甲状腺に被害が出ている。こういう大変厳しい現実が出ているんですよ。つまり、あのときに、原発のいわゆる本拠地からまさにコンパスで同心円に描いて十キロだ、二十キロだとやっていた、ところが、この原発の放射性物質というのは風でどこに行くかわからない、結果的に北西部分に流れた。

 こうした状況の中で、一つ一つ状況を踏まえて発信をした、発表をしたとおっしゃったけれども、実際このように、子供たちの千人中四五%も甲状腺被曝をしているという現実。これが十年後、二十年後どうなるか。本当に痛ましい現実がある。だからこそ、こうしたときのいわば会見は極めて大事だ、このことをあえてここで申し上げなければいけないと思っております。この点、また今後もしっかり議論をさせていただきたい、こう思っています。

 次に、電源立地地域対策交付金の仕分けについてお尋ねをしたいと思います。

 過去三回、民主党政権で仕分けをやってきました。事業仕分けが過去三回、今回はなぜか提言型の政策仕分けというようにネーミングが変わったわけなんですけれども、もともと事業仕分けは、スタートしたときは、自民党時代のことを切り取って、これはいい、悪い、維持だ、反対だとやってきた。この提言型政策仕分けというのは、民主党政権の二年間を自分の政党でやる、こんなこっけいなものはないんですよ。だったらば、決算行政委員会で与野党でちょうちょうはっしやった方が、よっぽど国民にはわかりやすい。

 しかも、仕分けの元祖たる枝野大臣でありますから、いわばこの仕分けによって、法的拘束力もない、また、それに関して勧告や決議やそういったものもない、これは民主党の党のお金でやっているんですかね。どうなんですか、大臣。わかりますか、仕分け。

枝野国務大臣 自分たちの政権でやった政策を仕分けのような俎上の場で議論をして、場合によっては見直すということが問題であるとは私は全く思っておりません。

 日本に限らず、一般に、行政にさまざまな問題が生じることの一つの要因は、行政の無謬性という一つの神話だというふうに思っております。行政が行ったことには間違いがない、自分たちが過去にやったことには間違いがない、こういう前提で物事を進めた結果として、状況の変化や、あるいは新しい知見に基づく行政の方向性の転換ができない、そのことが積み重なっていろいろな問題を生じてきていると私は思っております。

 そうした意味からは、みずからが行った政策であっても、常に問題はなかったか、間違いはなかったかということをみずから省みるということ、いわゆる内部チェックを積極的に行うということは何よりも重要なことであると思っております。その上で、外部的に、例えば国会においてさまざまなチェックをしていただくということは、内部チェックがしっかりと行われていてより大きな効果を発揮するものだというふうに私は思っております。それで、今回はまさに行政の内部において行ったものであります。

菅原委員 だから、お尋ねは、サンシャインの会場を借りた経費は民主党が出しているんですか、政府、国民の税金でやっているんですか。

枝野国務大臣 これは行政の行動でありますから、行政経費を使っているものと承知しています。

菅原委員 行政刷新会議の会議だからということなんでしょうけれども、国民には、そこに法的拘束力もなく決議や勧告もできないものは、まさに絵にかいたもちにしか映らない。だから、国民の九割が今までの仕分けの提言が行政に反映されていない、六割が今回期待していないというデータが今出ているんですね、世論調査では。

 そういう中で、むしろ決算行政委員会できちっと拡大してやるべきではないか。現場を見ておったら、事務方、役所の説明が五分ぐらいで、その後に、なぜか財務当局ということで財務省が細かに論点をフレームアップして、そこに仕分け人が先ほどの論点だけどと言って、これは完全に財務省のいわば下請機関ですよ、この行政刷新会議というのは。このことを指摘しておきたいなと思います。

 そこで、具体的に申し上げます。

 十一月二十日の行政刷新会議ではこの立地交付金について、「福島第一原発の事故や今後の原発建設の遅延という状況を踏まえ、必要性を精査するとともに、事故対策や防災・安全対策を拡充する仕組みを検討すべき。」こういう提言が出ているんですね。

 これに対して、先般、吉田委員長の指導のもとで視察に行きました敦賀の河瀬市長からは、地域振興に活用するのが本来の姿、筋が違う、こういう反論があったわけなんですよ。これは、言うまでもなく、安全対策は国あるいは東電がやるべき事象であって、河瀬市長の言葉はむべなるかな、こういうふうに感じたわけです。

 そもそも、先ほどのような指摘が行政刷新会議の提言として出てきていること自体が、民主党が安全対策や立地自治体の心情に対して極めて無頓着、こういったことのあらわれなんじゃないかな、こう思います。

 この会議で本部長である野田総理は、今回の仕分けに関して、法的拘束力がないということに関しての指摘に対して、こう答えています。最大の拘束力は国民が見ていることだとしているわけなんですね。したがって、出てきた方向性は特に予算編成にしっかり反映をさせる、改めて各閣僚に指示していきたい、こう強調されました。

 枝野大臣、この立地交付金に対する提言、いわば仕分けの提言、これは安全対策に資するべきだ、こういうような提言があった。これに対して、立地自治体からは大反発が起きている。ところが、総理大臣野田さんは、仕分けの提言を予算あるいは政策に反映をさせる、閣僚に指示をしたいと。これは総理の指示に従うんですか。

枝野国務大臣 まず、仕分けについて法的拘束力がないということを繰り返しておっしゃられていますが、直接的な法的拘束力はございませんが、これは閣議決定だったと思いますが、それに基づいて設置をされた行政刷新会議という公的機関のもとで行われているものでありますので、私は、そういった意味では間接的に法的拘束力はあると思っております。

 実際に、行政刷新担当大臣を過去に経験して、今度は仕分けられる側の経済産業大臣になりまして、改めて認識をしておりますが、過去の仕分けで示されたことの大部分は、実際にそれに基づいて行政運営がなされているというふうに思っておりますし、現に、例えば経済産業省においてさまざまな新規政策や予算等について議論を検討する際にも、常に、こういったことをやったら仕分けで問題になるのではないか、つまり無駄だという指摘を受けないかということを相当強く意識をするという、相当大きな効果を生じていると思っております。

 その上で、当然のことながら内閣総理大臣の指示には従います。ただ、これは仕分けの結果でも、「事故対策や防災・安全対策を拡充する仕組みを検討すべき。その際、立地を受け入れた自治体にとっての使い勝手の良さに対しても配慮することが必要」というのが、いただいている提言の中身でございます。

 電源立地地域対策交付金については、従来のいわゆる事業仕分けの流れの中でも、周辺自治体の皆さんがより使いやすく、使途を限定せずに、自治体の独自の判断で使えるようにしていこうという大きな議論の流れの中でこうした提言がなされてきておりますし、議論の中であったかどうか正確に記憶をしておりませんが、安全対策そのものは、これは国の責任であって、国がしっかりと責任を持って安全対策を行った上で、自治体の皆さんがそれにさらに上乗せをする形で、さらにこうした観点からの使い道で使いたいということがあれば、それを使いやすくする、使えることを確認するという趣旨でございまして、そうした方向で既に事務方に作業を指示しているところであります。

菅原委員 法的拘束力がないという話、しかし間接的な拘束力はある。そういったらば、こういう議論だって全部間接的な拘束力があると思いますよ。そういう理解はしています。

 でも、政権交代した理由は何だったんですか。長い自民党のいろいろなひずみやゆがみがあったから、国民がそれをノーと言って交代した。ところが、交代した後、これは何ですか。

 つまり、あのときに鳩山さんは、財務省主導の予算編成のあり方を政治主導にしようと。だからこそ、去年、政治主導確立法案なるものを出してきた。つまり、総理と財務大臣と、そして国家戦略相、行政刷新担当相の四人で、ある意味では、大きな五年後、十年後の日本のフレームをつくってビジョンをつくり、そこに魂を入れて、そこでいわば虫の目で細かな事業をチェックする、そして鳥の目で日本あるいは世界を見る、この中で予算を編成しよう、こういう政治主導のいわば方向に持っていこうとした。

 ところが、その法案をみずから菅内閣で引っ込めちゃって、いわば大臣、副大臣をふやすだけの法律を出し直してきて、全く政治主導は後退して、結局は財務省の言いなりになっているわけです。これではやはり政治主導にならないですよ。これはあえて申し上げておきたい。

 今お話があったように、現場の自治体は、そこに住む方々、働く方々、目の前に何メーターのところに原発がある、その大変厳しい現実の中に、いろいろな苦労の中に、原発を立地し、そこに対する交付金を交付してきたわけであります。いわば、そこがあたかも箱物をつくっているんじゃないかというような、旧来の、古い、そこの部分だけ取り出したような仕分けの提言は、やはりパフォーマンスと言わざるを得ないと思います。

 電力の需給問題に入りたいと思います。

 十一月二十五日現在、国内の原発、運転している原子炉は十基であります。ところが、十一月一日政府が公表した今冬の電力需給対策によりますと、今冬の電力需給バランスについては、極めて不思議なんですよ、楽観的な見方を示しているんですね。本当にそうでしょうか。

 地域別に見ると、東日本では、被災地である東北電力管内では一月の予備率はマイナス三・四%、これに対して政府は、東京電力と北海道電力からの融通を最大限活用して供給力を確保するとしているわけですね。ところが、先般十一月の二十四日、Jパワーの磯子火力発電所で火災が発生しました。合計で百二十万キロワットの発電施設が停止をして、火事は鎮火したものの今なお再開できない状況にあります。

 来年一月の東京電力の供給予備率は六%。つまり、三百七万キロワットと設定をしておったんですけれども、磯子の火災で百二十万キロワットがそのままそっくり抜け落ちますと、結局この予備率というのは半分の三%台におっこちちゃうわけなんですね。これは、今までの経験則からすると、もし今冬が暖冬でなく厳冬になって厳しくなった場合に、この予備率マイナス三・四%の東北電力に融通する余力は全くなくなっちゃうんじゃないかな、こう考えられます。

 もっと厳しいのは西日本です。なぜならば、今十基しかない原発、この状況の中で、原発比率の五三%を超える関西電力、五〇%の九州電力、それぞれ来年の一月の予備率、余力に関しては、マイナス七・一%、九電がマイナス二・二%。こういう厳しい状況であるゆえに、関電の方では一〇%の節電、九電の方では五%の節電目標が設定をされている。こういう現状なわけであります。

 この状況で、脱原発依存という論議はあります。しかし、目の前の国民生活、日本の経済体制をしっかり支援する、支えていくという意味においては、今のこの電力供給に関して、政府、大臣がどういうお考えをお持ちなのか。つまり、定期点検で停止中の原発の再稼働について早急に対策をとるべきだ、こういうふうに考えているわけですが、どうも、今民主党政権を見ていますと、再稼働に関しては及び腰といいましょうか、そんなときに仕分けをやって、再稼働に関する議論を横道にそらせるようなことにもなっている。

 そういう意味では、今この電力需給をどう考えているか、ちょっとお示しください。

枝野国務大臣 この冬の電力需給見通しについて楽観的という御指摘をいただきましたが、例えば電力使用制限令は出さないで乗り切りたいということで見通しを示しておりますが、関西を初めとして節電への御協力については引き続き、この夏同様、強くお願いをするということの中で、そうした御協力を得ることを前提に乗り切ることができるということを示しているものでありまして、国民の皆さんに相当な御無理をお願いするということで大変恐縮に存じているところでございます。

 磯子の火災のことについては、事前に個別のそのことを取り上げた御通告がありませんでしたので、詳細にお答えはできませんが、そうしたことも含めた上で、現時点では、基本的な見通しについて変更する必要はないというふうに承知をしているところでございます。

 その上で、電力需給と再稼働の問題でありますが、安全性が確認をされ、なおかつ周辺住民の皆さんを初めとする国民の皆さんの安心に対する理解を得られれば再稼働をしたいということで、安全性のチェックについては、原子力安全・保安院を初めとして最大限のスピードで、しかし確実に安全性をチェックするような指示を出して、実際にその努力は進めているところでございます。

 ただ一方で、確かに、目の前の電力供給の確保というのは経済産業大臣として大変重要な責任だと思っておりますが、同時に、今回の福島の原子力発電所事故を見たときに、私自身が安全性について確信を持てない原子力発電所を再開することはできません。これについては、専門家の皆さんにしっかりと安全性をチェックしていただき、そのことを国民的議論の中で安心という観点から確認していただく、この議論をできるだけ急ぐということであります。

菅原委員 私自身がというお言葉がありました。私自身が安全かどうかの判断をする、それが再稼働の可否を判断するのは、従来の御答弁なり会見では、いわゆる七月から突如始まったストレステストということだと思います。

 ところが、御案内のとおり、いろいろな議論の中で、結局、現地、立地自治体の知事からも、機械的な計算だけでは不十分だ、福島の事故で個々の原発がどうなったのかが重要であって、ストレステストは無用ではないが判断材料にならない。

 さらには、意見聴取会というのが保安院の中にあって、ここでストレステストの結果にかかわるいろいろな意見を聴取する。この委員の中には、福島原発事故は審査指針に欠陥があった、これを改善しないでストレステストをやっても全く意味がない、あるいはストレステストの前に安全基準そのものを見直すべきだ、こういう意見が保安院の中の意見聴取会から出ている。

 このことに対して、大臣、もう時間がないから、最後、確認したいんですが、これまでの安全基準を見直す気があるのかどうか、新しい安全基準を設定する覚悟があるのかどうか。その上で、ストレステストの有用性、有効性というものが本当に担保されるのであるとするならば、私はそこで一つの判断基準になると思う。

 ところが、このような議論をまだ踏まえない中で、ストレステストが妥当であるかのような大臣の認識、政府の認識の中でこれを判断するということは、それこそ極めて危険ではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

枝野国務大臣 私も、あるいは政府全体としても、ストレステストだけで判断するという趣旨のことは申し上げたことはないと思っております。従来の安全チェックに加えてストレステストも行う。

 ただ、このストレステストというのは、マルかバツかという結論が出るものではございませんので、そのストレステストの結果も国民の皆さんにお示しをし、その国民の中にはもちろん専門家の皆さんも含めてお示しをし、そうしたことの中で、本当にこれで安全性が確認されているのかということのコンセンサスが得られるのかどうかということを最終的には政治判断するしかないと思っておりますが、今御指摘をいただいているような、例えばさまざまな専門家の皆さんから意見聴取会等で出てきている意見は、まさにストレステストを行い、そのストレステストに関連してさまざまな情報公開をし、それに対する意見聴取の機会を設けている中で出てきている意見でございますので、そうした意見も踏まえつつ、ストレステストも作業は進めながら、最終的にはそうした御意見も踏まえた中で判断をしていく、こういうプロセスになってまいります。

菅原委員 これで最後にしたいと思いますが、いろいろな議論がありました。今般の仕分けで、「もんじゅ」のことが取りざたされたわけであります。約一兆円近くかけてきた。しかし、今後、原発を仮に維持するにしても、脱原発依存の道を歩むにしても、私はそういう方向であるべきだと考えています。日本のエネルギー計画を今後どうあるべきかよく議論しなければいけない。

 その方向性であったとしても、この核燃料サイクルの中で出てくる廃棄物に関しては、今、フランスとイギリスに頼り切っている。この前も毎日新聞に出ておったのは、ロシアが我々が請け負いましょうかと言ったのにもかかわらず、当の事務方、役所の中でその提言をとどめてしまって、大臣には何も報告しない、これが今の原子力村の実態なんですよ。だから、原子力行政によからぬ余計な不安や不信感が募ってきているわけなんですね。

 これは、大臣、しかるべきところによく注意といいましょうか、喚起をしていただかないと、あの記事を読んでいますよね。こういう実態があるとするならば、やはりこれは改革を進めていかなければならない。

 あわせて、「もんじゅ」のところだけを切り取って、イエスかノーか、二十二億円の調整費の予算は来年に計上すべきではないと言った。しかし、今六ケ所村もなかなか難しい状況がある、東海村もなかなか難しい状況がある。しかし、これまでのように、核燃料サイクルの一環の中で、海外に頼っていてばかりでいいのか。これはもう、防衛もそう。やはりそういう意味では、日本はそろそろ自分の国でいろいろなことを自分で考え行動して、きちっと国民的な世論形成をした中で方向性を出していくという時代に入ってきたのではないか、こう思っておりますが、このことを最後に申し上げて、終わります。

吉田委員長 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 一般質疑の時間、ありがとうございます。十一時四分まで時間を守ってやってまいりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 そうはいいましても、万葉集を読んでから始めたいのでございまして、きょうは十一月の末日でございます。時雨の季節ということで、外はちょっと晴れておりますけれども、時雨で葉っぱがどんどん色がついてくるという歌を読ませていただきます。巻十、二千百九十六番。

  しぐれの雨間なくし降れば真木の葉も争ひかねて色づきにけり

 ありがとうございます。

 それでは、よろしくお願いいたします。

 きょうは、円高対策、それから原発の事態収束への努力、そしてクール・ジャパン、万葉集もクール・ジャパンだと私は思いますけれども、三点に分けて順次質問をさせていただきます。

 円高対策。今般の円高では、生産拠点を海外に移さざるを得ない、そういう動きがかなり加速しているように新聞報道等が出ておるわけであります。

 まずは、経済産業省さんの把握されているところで、最初の質問として伺います。

北神大臣政務官 おっしゃるとおり円高の問題がありますので、本年八月下旬に調査を行いました。そして、その調査によりますと、一ドル七十六円の為替レートが半年継続した場合には、約半数の大手製造業が生産工場や研究開発施設を海外に移転するというふうに回答をしております。その後もフォローアップをしておりますが、大体同じような傾向を示しております。

 問題は、この調査と現実がどうかということなんですが、実は、去年も八月の段階で円高調査をしております。このときには、一ドル八十五円の円高が半年以上継続した場合にどうなるかということだったんですが、約四割の大手製造業が生産工場、開発拠点を海外に移転する、約六割が海外生産を拡大するというふうに回答していました。それで、現実に一年後、実際にどうなったかというふうに調査をしましたら、そのように回答した大手製造業の三分の二が、実際にこの一年間のうちに海外生産を拡大していた、こういう結果が出ております。

 したがって、円高によって空洞化が進んでいるということは現実のものだというふうに考えております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 半数が今考えるというお話の中で、去年の実績でいうと、そう言った方の三分の二ぐらいは実際そうなっているということになると、二分の一掛ける三分の二ですから、三分の一ぐらいは可能性が出てくるというような、一つのデータとしての受けとめになるかと思います。やはりかなり深刻な状態が、それは八月時点の調査ですから、今十一月末ですから、もう三カ月、四カ月続いていると思わなければならないと思います。

 対策は急務でありますが、三次補正予算では、国内立地補助金五千億円程度ということで、かなり思い切った金額を予算に計上されたわけであります。今までは、低炭素型雇用創出産業向けとかイノベーション拠点立地支援というような形で、先端的あるいはこれから伸ばしていこうという分野にかなり絞り込んだ補助対象であったわけですが、今回はかなり拡大されるものというふうに理解しております。

 その内容を具体的に、またどのような効果を期待するかを伺います。

北神大臣政務官 おっしゃるとおり、対象が変わっておりまして、比較をすれば、今回の立地補助と従前の立地補助の違いは三点ございまして、一つは、当然金額ですね。今までは一千四百億円が、今回は五千億円ということになります。これは福島のチームを含めてということでございます。

 二つ目は、対象については、今までは低炭素分野に限っていたわけでございますが、今回は高付加価値の成長分野、これは低炭素ももちろん含まれますが、そのほかに、バイオとかライフイノベーションとか、こういうものも入る。あと、今回の震災を受けて、やはり供給網の中核的企業が大事だということで、代替がきかない部品、素材分野も含めております。

 三点目の違いですが、グループ化を行う連帯経営の中小企業について補助率の深掘りを実施する。単体では二分の一補助であるところを、グループ化した場合には三分の二補助ということでございます。

 あと、効果につきましては、今後の予想でありますが、投資誘発効果として予算額の三倍程度の設備投資の喚起を目指しているところでございます。

橘(慶)委員 今回はかなり対象の業種、業態が広がる、そしてまた中小企業がグループ化すれば三分の二というお話もございました。募集も始められたようでありますけれども、ぜひ、これはまた全国の経済産業局等を通じて浸透するように、よろしくお願いしたいと思います。

 この五千億円のうち一千七百億円については、特に福島対策ということで中で分けておられるわけであります。これは大変大事なことだと思うんですが、一面、一つの県で一千七百億というと、なかなか消化ということでは時間がかかるような気もするんですが、どういう対応をされるのか、確認をさせてください。

北神大臣政務官 おっしゃるとおり、五千億のうち福島に一千七百億円ということでございます。

 これにつきましては、相当な割合という御指摘なんですが、一つは、これは名前が、がんばろうふくしま産業復興企業立地支援事業ということで、当然、被災地すべて、みんな苦しい状況にあるんですが、なかんずく福島県は原発事故ということで非常に厳しい状況にある、したがって、最大限の力を注ぎたい、こういう考え方でございます。これは、単年度の補助事業ではなくて、原則五年間の基金事業としてやろう、そういう方向で、今、福島県と協議をしているところでございます。したがって、五年間の間に一千七百億円を使っていきたいということでございます。

 二つ目は、五年間という場合は、一年目の方が補助率が高い、二年目は三年目より高い、こういったことで、早期の企業立地あるいは計画的避難区域の解除地域への立地がより促進されるように、そういったところについては補助率をかさ上げしていく、できるだけ促進をしていくということでございます。

 三点目は、経済産業省の東北経済産業局の職員が福島県庁に常駐をして、企業回りをして、できるだけ企業誘致に取り組む。

 こういうことで、この一千七百億円を福島の復興のためにしっかりと、効率よく、最大限活用してまいりたいと思っています。

橘(慶)委員 せっかくのお金ですので、やはり執行が進むように、そして誘発効果もあるということですから、ぜひ円高対策も含めてよろしくお願いしたいと思うわけであります。

 先ほど政務官の方からも、サプライチェーン、そして部品、素材、そこに着目いただいたのは、自分の気持ちとしては大変ありがたいことだと思っております。日本の製造業の強みは部品、素材にあると私は思うわけであります。

 そこで、その部品、素材産業の前提になりますレアアース問題、これは昨年も非常に問題になったわけでありますが、供給不安はないのか、そのあたり、現状どうなっているのか、確認をさせてください。

枝野国務大臣 昨年は中国のレアアースの輸出停止問題が生じましたが、これは一たん解消しております。ただしかし、さらなる輸出枠の縮小、それから価格の高騰や内外価格差問題というのが顕著になってきておりまして、そういった意味では、関係業種はもとより、日本経済にとって憂慮すべき状況であると思っております。

 私自身、温家宝総理、それから陳徳銘商務部長、張平発展改革委員会の主任とそれぞれ会談する機会がございまして、それぞれに対して、この問題についての懸念を伝え、強く改善を求めてきているところでございます。

 一方で、こうした状況を踏まえて、レアアースの確保について抜本的な強化を図ってきております。

 昨年、JOGMEC法を改正いただきましたので、これに基づく出資が可能になりまして、本年三月、我が国企業が、オーストラリアのレアアース鉱山の権益を確保し、国内需要の三割強を確保いたしました。また、先月三十一日には、ベトナムのレアアース開発について、ドンパオ鉱山というところの共同開発、それから政府間の技術協力事業について合意をいたしました。これらの鉱山によって、日本のレアアース需要の五割近くを近い将来確保できる見込みであります。

 またさらに、インド、カザフスタンの鉱山開発プロジェクトをJOGMECを通じて支援しているところでございます。

 さらに、国内でできることとして、昨年度の補正予算で、代替材料や使用量削減のための技術開発、リサイクル、レアアースユーザー企業への設備補助、それから鉱山開発や権益確保のレアアース総合対策を実施いたしたところでございまして、研磨剤や自動車の排ガス触媒等、幾つかのサプライチェーンにおいて、レアアースを使わない、あるいは少なくするという供給源の多様化が実現できているところでございます。

 さらに、今回の三次補正においても、特にリスクが高いと言われていますジスプロシウム、これはハイブリッドの自動車などに使う磁石に用いるものでございますが、これの磁石の代替や使用量削減のための技術開発支援事業や、レアアースの鉱山権益に関する出資等の措置を講じたところでございまして、最大限の努力をさらに進めてまいります。

橘(慶)委員 御答弁ありがとうございます。

 ただ、現状を確認するという質問をしておることについては、供給不安ということの実態が今ないかどうかについては、後でもしわかればちょっとお答えを。あるいは、輸入量というのがどれくらい、去年も枠とかいろいろあったと思うんです、中国とは。そこで、今、供給不安という問題、そういうサプライチェーンの寸断というのがないかどうかということについては、大臣、一問の後でお答えいただければと思います。

 先に、今、JOGMECの話が出ました。鉱山の資産買収支援ということで出資ということが第三次補正予算に盛り込まれておりますが、このスキーム、内容について、これは安藤部長さんにお伺いいたします。

安藤政府参考人 お答えさせていただきます。

 今委員御指摘のとおり、三次補正予算におきましては、JOGMEC、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構でございますけれども、こちらに対します出資金として、八十億円をお認めいただいた次第でございます。

 JOGMECは、いただいた出資金を原資といたしまして、今大臣の御答弁にございましたように、具体的な鉱山のプロジェクトの資産の買収に対しまして出資をさせていただきたいと思っております。

 プロジェクトの対象といたしましては、まさに今御指摘のございましたように、緊急の対応が必要となる案件ということで、ジスプロシウム等を中心といたしました、特に重希土を念頭に置いたレアアースを中心といたした案件を想定させていただいています。例えば、ブラジルとか豪州、あるいはキルギス、カザフスタン等の中央アジアなどを想定させていただいております。

 具体的なプロジェクトにつきましては、影響もございますので、ちょっと控えさせていただければ幸いでございます。

橘(慶)委員 それでは、済みません、戻りまして、供給不安ということ、そういう企業における不安というものは今把握されている限り大体おさまっている、こういう認識でいいのかどうか、確認させてください。

枝野国務大臣 済みません。ちょっと詳細な数字等については、恐縮でございますが、後ほどお届けさせていただきたいと思います。

 ただ、実は、一番の問題は、供給量よりも、内外価格差と価格の高騰ということで、枠があっても実は使えないという声が非常に上がってきておりまして、そうした意味では、供給源の分散と、それから中国に対して特に内外価格差の問題について一番強く求めているところでございます。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 やはり、ソースを中国に絞るというよりは、あちこちにソースがあるわけですから、そういったものを開発いただく、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 EPAの話に移らせていただきます。

 やはり、円高対策の中では、他国と輸出において競争力を維持していきたい、為替相場で厳しくなった分は関税まで取られていては厳しいという声が非常に強く上がっております。特に、韓国とEUとのFTAが七月一日に暫定発効いたしまして、乗用車関税一〇%、あるいは液晶テレビ等の分野で我が国産業の言ってみれば競争力低下が懸念されているわけであります。

 そこで、日・EU間のEPA締結に向けてスコーピング作業に入っておられて、これもさらに加速する、こういうお話があるわけです。交渉の範囲を定めるということなんですけれども、まずスコーピング作業が終わらなければ交渉に入っていけないという筋書きだと思うんですが、この作業、大体いつごろ終えられるのか、めどを伺います。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、今、日・EU間でEPAに関する交渉の範囲を定めるスコーピング作業というのを随時実施しておりまして、これは日・EUの定期首脳会議でも、作業の迅速化、加速化で、最近のカンヌの日・EU首脳会議でも合意して、今鋭意取り組んでいるところでございます。特に時期的な、ここまでという目標は定めておりませんけれども、早期交渉開始を目指して、今取り組んでいるところでございます。

 以上でございます。

橘(慶)委員 ちょっと最後のところは残念だったわけです。外交の機密ということもありますけれども、時期的めどをつけずに頑張りますというよりは、これはまだ言えないということかもしれません。

 私は、やはりこれは、TPPもさることながら、あらゆる二国間のものは、日豪のEPAも含めて、積極的に進めていかなきゃいけない、逆にまた、TPPに問題が大きいとすれば、そこは時間がかかるわけですから、その間ほかの交渉がおくれるということでは何の意味もない、このように思うわけであります。ぜひ日・EUについては早急に進められて、そのことが経済界にとっても幸せなことじゃないかと思うわけであります。

 そこで、日・EU間のEPAを交渉していくとすれば、どういう課題が我が国の主要課題になるのか。そして、今、TPPの場合非常に問題になる農林水産業、これは日豪でも大きいとは思いますけれども、しかし、日・EUというと、何となく直観的には余り農林水産業というイメージがないんですけれども、この辺はどうであるのか。ここは、事前にいただいているのは北神政務官と農林水産省の角田審議官ということでお伺いしていますので、お二方から、どうぞお答えいただければと思います。

北神大臣政務官 お答えします。

 我々も、経済産業省として委員と同じような考え方を持っていまして、TPPに限らず、二国間も含めて、あらゆる自由貿易への改正に向けて努力すべきだ、早くすべきだというふうに思っています。

 それで、日・EU間においては、農林水産は後でお話がありますが、日本とEUの共通の課題としては、我々としては、当然、先ほど韓国との関係もおっしゃいましたが、EU側の自動車、家電等の関税撤廃、これが一つある。EU側の方は、我が国の非関税措置あるいは政府調達等への関心が示されている、こういう状況でございまして、早く交渉に入るよう、引き続きしっかり努力してまいりたいと思います。

角田政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省といたしましても、日・EU・EPAにつきましては積極的に推進することとしておりまして、現在、スコーピング作業に積極的に対応させていただいているところでございます。

 二〇一〇年のEUの対日輸出に占める農林水産品の割合は一五%ございます。また、EUからの農林水産品の主要輸入品目といたしましては、豚肉、製材加工材、ナチュラルチーズ等がございます。

 先生お尋ねの日・EU・EPAの農林水産業の懸案事項につきましては、交渉が開始されていない段階でございますので、具体的にお答えすることはちょっと困難でございますけれども、いずれにいたしましても、二国間のEPA交渉につきましては、昨年十一月の包括的経済連携に関する基本方針に基づきまして、センシティブ品目に対する配慮を行いつつ、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

橘(慶)委員 当然のことながら、米というものは対象にならない日・EUだと思います。

 TPPということについては、いろいろなもっと大きな外交的な視野の中の問題でもあると思うわけですが、経済産業大臣とされては、ぜひ、日・EUあるいは日豪、そういった個別に登りやすい山からしっかり登っていただいて、やはりTPPに余り足をとられることのないように、ぜひ個別の課題の解決には努めていただきたいということを申し添えておきたいと思います。

 製造業の強みは、先ほど申し上げた素材、部品関係、非常に日本の場合は強みだと思います。そこで、そういったものを担っているのは中小企業もあるわけでありまして、中小企業向けには戦略的基盤技術高度化支援事業、これは二十三年度、百五十億円、三次補正で五十億円積み増しまして、二十四年度も百三十三億円の要求をされているわけであります。私はこういうことが大事だと思うんですが、この事業の内容について確認をいたします。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 鋳造、鍛造、切削加工、メッキ等のものづくり基盤技術は、我が国製造業の国際競争力の源泉となっております。委員御指摘の基盤技術高度化支援事業、いわゆるサポイン事業と言っておりますけれども、これは中小企業におけるそうした基盤技術の研究開発を支援する重要な事業でございます。

 材料分野におきまして、大阪の企業の一例を御紹介させていただきたいと存じます。この企業は、本制度の支援を受けまして、京都大学の持っております特殊な技術を活用し、従来不可能であったカーボンナノチューブを高分子樹脂に溶け込ませた特殊な塗料を開発いたしました。この技術を金属の表面処理に活用いたしますと、従来の金属メッキの約三十倍の耐久性が可能となります。この結果、ダイヤモンドのようにかたくて衝撃や摩擦に強い工具、また、ねじなどの部品の製品化に成功いたしまして、十億を超える売り上げを達成することができました。

 このように、現在、中小企業は非常に頑張っておりますけれども、中小企業自身が、円高の厳しい状況の中で、新興国による技術面での激しい追い上げなど峻烈な競争にさらされておりまして、今後とも、我々としては、本事業を通じた基盤技術強化に全力で尽くしてまいりたい、かように考えておるところでございます。

橘(慶)委員 円高への対応というのは、為替相場という非常にまた難しい問題があると思います。であるとすれば、今ほどお話のあったような中小企業、そういったものづくり産業の技術力を伸ばすことを応援していただいて、そして、それをまた投資の補助金、立地補助金で応援していただいて、なおかつEPAをどんどん結んでいただいて、関税面でもよその国と対等に競争できるように、そういうビジョンでぜひ経済産業省さんには頑張っていただきたい、こう思うわけであります。

 福島第一原発の事態収束の問題についてお伺いをいたします。

 事態の収束に向けた道筋というものの進捗状況、これを毎月十七日に確実に毎月毎月更新いただいておる、私はこれは大変いいことだと思っております。そういうことで国民の皆さんに情報提供する、事態の掌握の進みぐあいも御紹介いただく。そして、せんだって吉田委員長とともに原子力発電所も見てきたわけですが、多くの方々が日夜働いておられる、よりいいものにしていく努力をされている、こういうことはやはり本当に敬意を表さなきゃいけない、このように思うわけであります。

 そこで、この福島第一原発、事態の掌握がどの程度できているのか、また、冷温停止とあわせて滞留水の保管、あるいは三、四号機の瓦れき撤去など、残された課題の状況、達成見込みについてお伺いいたします。

深野政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございました事故の収束に向けた道筋でございます。これにつきましては、年内を目途に、放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている状態を達成すべく、今全力を挙げて取り組んでいるところでございます。

 その中で大きくかぎになりますのが冷温停止状態ということでございまして、現状では、もう既に、原子炉内部の圧力容器の下部の温度や、あるいは格納容器の温度も百度を十分に下回っておりまして、そういう状況に近づいていると認識をしています。ただ、こういった状況が引き続ききちんと安定的に継続できるかどうかということが大事でございまして、これについての評価を今行っているところでございます。

 それから、原子炉の中の状況というのが、今の状況ですと、なかなか把握が困難な面がございます。こういったことについても、技術ワークショップというのを実はきょう午後開催することにしておりまして、そういったところでいろいろな衆知を集めて評価をしていきたい、そのように考えております。

 それから、水の関係でございます。これにつきましても、今、建屋の下に八万トン程度の水が、高レベルで汚染されたものが滞留してございますが、これについて、既に、浄化をした上で冷却に使うということでずっと進めてきておりまして、累計で十六万トンほど浄化を行っております。また、八万トンぐらい浄化済みのものが今タンクで保管ということになっておりまして、これについても、必要なタンクの量の確保に努めているところでございます。

 以上でございます。

橘(慶)委員 三、四号機の瓦れきの撤去の状況、これはあとどれくらいかかるというふうに見ておられますか。

深野政府参考人 瓦れきにつきましても、これは、建屋の上部にこれがございますと、燃料プールからの燃料取り出し、そういったことの支障になりますので、今、二年以内を目途に燃料プールからの燃料取り出しができるようにということで、既に着手をしているところでございます。

橘(慶)委員 きょうの午後から技術ワークショップをされるというお話も、今いただきました。大変、関係者の方々、日夜お取り組みに御礼を申し上げながらも、あってはならない事態ではあったと思いますが、こういったものの収束をさせていく、そしてそのためにいろいろと創意工夫していくということから、原発事故の防止とか、あるいは制御技術の確立と、ある意味で、我が国がまた、大変苦労はした中でも、何かそこから学ぶ、あるいは我が国の固有の強みということで確立ということになっていけば、それは一つの、少しはいい話じゃないかなと思うわけです。

 このあたり、どのようにお考えになっているか、松下副大臣の方からお願いします。

松下副大臣 お尋ねの件でございますけれども、政府の事故調査・検証委員会、それから保安院、これは有識者を踏まえた意見聴取会を開催しておりまして、現在、事故を踏まえた技術的知見の整理を行っています。これらの結果の中で新たな知見が得られましたら、その都度、各原子力発電所の安全対策に反映していく。原子力発電の安全性を世界最高水準まで高めるべく、原子力安全規制の見直しに取り組んでまいりたいと考えています。

 また、事態収束に向けてでございますけれども、プールに残されている使用済み燃料、それから原子力圧力容器からの燃料デブリ、残渣ですけれども、その取り出しなどの課題に対しまして、現在、原子力委員会の中に、東京電力福島第一原子力発電所における中長期措置検討部会をつくっておりまして、必要となる技術開発の内容について検討を行っています。

 具体的には、当面の技術課題として、建屋内にアクセスするための除染、それから格納容器内調査のための機器、センサー、遠隔操作等にかかわる技術開発等が必要とされておりまして、これらの技術開発を速やかに実施に移す、そのために、平成二十三年度の三次補正で必要な予算を計上しております。この中でしっかりと対応していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

橘(慶)委員 ぜひそういった取り組みの中から技術の確立をお願いしたいと思うわけであります。

 そして、今ほど安全基準ということの話も松下副大臣から少し出てきたわけですけれども、ちょうど原子力安全委員会の原子力施設等防災専門部会の防災指針検討ワーキンググループというところで、防災対策を重点的に充実すべき地域に関する考え方(案)というものが、十一月一日の第七回ワーキンググループ会合でも示されております。そこで、緊急時防護措置を準備する区域、新しいUPZと言われるこの区域はおおむね三十キロになるということが出てきているわけであります。

 これについては、せんだって刈羽村の村長さん、柏崎の市長さんも、ここはやはりちょっと申し上げておかなきゃいけないんですが、できるだけ説明をしてほしい、わかりやすく伝えてほしい、そうしないと首長さんはなかなか住民に伝えられないと。ここは、確かに永田町、霞が関の温度とは温度差があったようにも思っております。ぜひこれは、視察の結果そういうことがあったということについてはお伝えをさせていただきたいと思います。

 そしてあわせて、そういうUPZということになると、今までそういうことをしていなかった自治体で防災計画をつくる、あるいは関係資機材の準備を余儀なくされる、こういうことになってまいります。そこで、そういう今まで経験のない自治体においては、その経費というのはどうなるんだろうということで、大変、要するに情報がないものですから、わかっていないという部分があって、私は富山県ですけれども、富山県なんかもそういう問題では自治体から声が上がるわけであります。

 そこで、この自治体に対する国の支援措置についてここで御説明をいただきたい。松下副大臣と、文部科学省の部分もあるので、渡辺次長さん、お願いいたします。

松下副大臣 委員御指摘のとおりでございまして、このUPZの考え方が取りまとめられておりますので、これを受けて、地方自治体においても地域防災計画の見直しの検討が必要になってまいりまして、これをしなきゃいかぬということでございます。

 我が省におきましても、今後、防災資機材等に対するニーズが一層高まるということを想定しまして、平成二十四年度の予算でございますけれども、自治体向けの原子力防災に係る交付金を拡大して要求しております。この予算は、具体的には、地域防災計画の策定支援、防災訓練の強化、それから防護服や安定沃素剤等の防災資機材の拡充等、自治体の防災体制の強化に資するものということで、しっかりと進めていきたいと考えています。

渡辺政府参考人 御説明申し上げます。

 これまで文部科学省においては、地方公共団体の行う放射線モニタリング活動など、原子力防災に係る取り組みに対して支援を行ってきたところでございます。

 今先生御指摘のとおり、先般、原子力安全委員会において、これまで原子力発電所において約八キロから十キロとされておりましたいわゆるEPZにかえまして、緊急時防護対策を準備する区域として、新たに、おおむね三十キロのUPZを設定するという考え方が示されているところでございます。これを受けまして、今後、各地方自治体においても、防災計画の見直しを含む原子力防災体制の見直しが行われるものと考えております。

 このような地方自治体の取り組みを支援するため、文部科学省におきましては、平成二十四年度概算要求において、放射線等監視交付金の要求額を、本年度の予算額から約四十億円増の約九十億円ということで、要求を大幅に拡充してございまして、モニタリングポストの増設などの支援の強化を図っているところでございます。

 引き続き、原子力施設関係の地方公共団体ともしっかりと連携をしながら、我が国の原子力防災体制の強化に努めてまいりたいと思っているところでございます。

橘(慶)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 文部科学省さんは五十億円のものを九十億円、経済産業省さんの方は、二十六億円の二十三年の予算に対して、二十四年度要求は九十五億円と伺っております。これは答弁は結構ですが、枝野大臣、ぜひここはしっかりと確保していただきたいと思います。

 それでは、次に行きます。

 生活者や事業者等への損害賠償、仮払いということも大分進んでしまったと思うんですけれども、十一月十五日時点で一千三百四十二億円、住民、農林漁業者、中小企業者に払われております。ほぼ終わったということでいいのか、確認をいたします。あわせて、国による仮払い、これは私どもの提案に基づく法案も通っておりまして、国が仮払いをする部分もあるわけですが、この状況についてお伺いいたします。

糟谷政府参考人 まず、東京電力の仮払いでございます。

 東京電力は、九月の中旬ないし下旬から本賠償の方に移行をしておりまして、一部の項目を除きまして、仮払いの受け付けを終了しております。一部の項目と申しますのは、避難等区域圏内の農林業者の方々に対する営業損害、それから南相馬市の一部、これは警戒区域及び緊急避難準備区域外の方々の避難損害の仮払い。これを除きまして、基本的には本格賠償への移行を済ませております。

 他方で、昨日までで千三百六十五億円を仮払いしておりまして、この二週間の間に少し支払いはふえておりますので、完全に移行しておりませんが、ほぼ本格賠償の方に移行してきているということではそのとおりでございます。

田中政府参考人 国による仮払いにつきまして御説明を申し上げます。

 国による仮払いは、東電による本賠償がおくれるような場合、緊急の措置として簡易な算定方法で仮払金を支払うというものでございます。そのような観点から、現時点においては、観光業であって中小企業の方々が受けた風評被害を対象に、九月二十一日から受け付けを開始してございまして、九月二十六日には最初の請求書をいただいたところでございます。

 この国による仮払いは、十一月二十九日時点で四十四件の請求をいただいているところでございまして、近々、支払いの開始ができるというふうに考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、東京電力の本賠償と国の仮払いということで一日も早く被災者の方々の救済がなされるよう、全力で取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

橘(慶)委員 ぜひ、この四十四件の方もよろしくお願いしたいと思います。

 損害賠償に移行してきているわけですけれども、ちょっとここが、本払いの開始は、個人向けは九月十二日受け付け開始、法人向けは九月二十七日受け付け開始、十月五日本払いを開始しているわけですが、まだそんなに大きい金額ではなくて、住民で六百四十件、五億円、法人、事業者で二百三十九件、二百十三億円、計二百十八億円というのが十一月十五日時点であります。

 いよいよ年の瀬も迫ってまいります。お互い気持ちとしては、やはり年越しというところに対して、年の瀬までにはできる限り払ってほしいというのが普通の感覚ではないかと思います。この年の瀬に向けての進捗見込みをお伺いいたします。

松下副大臣 いよいよ師走に入ります。大変寒い中で御苦労をかけておるわけでございますので、全力を尽くしてやっていきたいと考えております。個人の請求につきましても約二万二千件、事業者も八千六百件ということで、これは全力を尽くしてやりたいと考えています。

 請求書類が複雑過ぎるということで、それも改善する、その手続等については、指導していくというチームを含めて、しっかり対応していきたいと考えておりますし、資金繰りにつきましても、おっしゃるとおりでございまして、概算払いをしっかりやっていきたいということで、資金繰りが困難な事業者の方に対して、しっかりと実態に即して応援していきたいと考えております。

橘(慶)委員 それはぜひ加速させていただきたいんですが、今お話をしたとおり、全体で一千五百六十億、まだ一千六百億円程度の支払い額なんですね。そのうち千二百億円は国が措置したわけであります。

 そこで、三次補正予算では、実は交付国債ということで、これは確かに、まさかのときの備えということで見せるのは大変大事なことだとも思いますが、私どもも予算を通していったわけですけれども、交付国債の発行枠は今まで二兆円だったものを三兆円積み増して五兆円にしたわけですね。考えてみたら、ちょっとそれは早かったんじゃないかなと。やはり予算の規律ということからすると、もう少しじっくりでもよかったのかなとちょっと反省もするわけですが、大臣の見解を伺います。

枝野国務大臣 御指摘のような視点も大事かなとは思う一方で、実際に東京電力の経営・財務調査委員会の報告では、四・五兆円ぐらいの賠償の規模の試算が出ているところでございます。これは、特に被災をされている、避難をされている皆さんの視点に立てば、間違っても、東京電力は金がないので支払いがおくれるみたいなことが危惧される状況をつくってはいけないということでございますので、この経営・財務調査委員会の試算の枠は超える用意をしておく。そして、東電にはできるだけ事務作業を迅速に行わせて、これは予算でございますので、できるだけ使わない方が一般的にはいいのが予算かもしれませんけれども、これはできるだけ早く、まさに必要な賠償を進めていくというのが必要な趣旨でございますので、そうした観点から、枠だけは確保させていただいたということでございます。

橘(慶)委員 それで、枝野大臣、一つだけ、これはどういうお答えもあり得ると思うので聞くわけですけれども、東京電力の株主というのは、この間、相場がかなり大変動しまして入れかわっております。昔買われた方で売られた方、そこで損を出して、株主責任をある意味でとられたといえばとられたという形もあるわけですが、逆にまた、非常に低価格で今株を取得された方もあって、ある意味でかなり投機的に、株の相場は当然のことですが、動いているものと思っております。

 その中で、この株主責任というものをそういう意味ではどういうふうに考えていくのか。今すぐということではないにしても、しかし、またそれでもうかるというのも変な話で、本当は余り芳しくないと思うんですけれども、このあたり、どうお考えになっているか。これは大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。

枝野国務大臣 なかなか、いろいろな要素の絡み合う難しい問題だと思っております。

 そうしたことの中で、原子力損害賠償支援機構法の中で、株主を含むステークホルダーに対し、「必要な協力を求めなければならない。」としていただいた上で、特別事業計画の中でも、株主に対しては、「当面の間、無配を継続することが、株主に対する協力要請」となっているところでございます。

 来年春に作成する総合特別事業計画では、いかなる可能性も排除しない幅広い選択肢の中から計画を作成するということにしておりますので、そうしたことの中で、株主に対する協力要請の内容についても、まずは、一義的には支援機構と東京電力において今後検討が進められるものと思っております。

 これは、今御指摘いただいたような視点も含めて、できるだけ幅広く国民の皆さんに御理解をいただけるような枠組みを検討し、また相談していかなければいけないだろうと思っております。

橘(慶)委員 残り五分となってまいりましたので、少しまとめてまいりたいと思います。

 一つ飛ばしまして、東西周波数の統一問題。これは、五十ヘルツ、六十ヘルツ、究極、私は統一した方がいいという考え方で、これは今同席されています中山委員が政務官のときにも大変お世話になった案件でもあります。

 その後、いろいろ勉強していきますと、戦後、実は九州地方で周波数統一を行った事例があるということに立ち至りましたので、それを踏まえて、この周波数統一についての見解を再度、経済産業省さんにお伺いしたいと思います。また、ぜひ調査研究は続けていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

糟谷政府参考人 東西の周波数統一についてのお尋ねでございます。

 九州地方で、昭和二十四年から三十五年にかけて、現在の金額で五百九十億円をかけて統一をしたということに基づく御指摘と存じます。

 周波数の統一については、もちろん統一できれば望ましいんですが、その反面、多額の費用と長い期間を要するという課題もあります。したがいまして、現在、経済産業省で、地域間連系線の増強に関するマスタープランの作成に向けて、全国の電力融通強化のあり方の検討を行っております。その中で、周波数の違いの問題についても、コストや実現可能性等を含めて検討を進めてまいりたいと考えております。

橘(慶)委員 やはり一国二制度がいいとは思えませんので、ぜひ頑張っていただきたい、このように思います。

 クール・ジャパンのところに入ります。これは、北神政務官と枝野大臣、二つか三つのお答えになるかと思いますが、二点目の質問から始めます。

 デザイン等のコンテンツ、ソフトというものを、もともとクール・ジャパンというのはかなりコンテンツ、ソフト中心だったわけですけれども、ハードのものづくりに体現をさせていく、そして、日本の食とか伝統工芸品とか、こういったものをもっともっと内外にアピールしていく、そういう意味でクール・ジャパンの推進は大変大事だと思っております。

 その中で、やはり若者や女性の感性を伝統工芸へと、今までどちらかというと、年期の入った、そして男性の方が中心のというところから、最近は大分変わってきていると思うんですが、これは、この間、答弁書でも、結構、若者、女性の伝統工芸への進出ということも主意書の答弁でいただいているわけですが、経済産業省さんとしての考え方と取り組みについてお伺いいたします。

北神大臣政務官 若者、女性の感性というのは大変重要だというふうに考えております。

 例えば、伝統工芸品、委員も非常に力強く取り組んでいただいておりますが、これについても、女性のデザイナーと連携をして、女性に使いやすい伝統工芸品の器をつくったり、こういった事業の支援をしております。例えば、軽いとか持ちやすいとか、あるいはデザイン的にかわいいとか、そういった視点で頑張っているところでございます。

 うちの役所もこの部署は若い女性が今頑張っておりますので、そういった点で、委員の御指摘のとおり、しっかり頑張っていきたいと思います。

橘(慶)委員 まずは、ありがとうございます。

 そしてもう一つ、このクール・ジャパンというものを包み込むような形でクリエーティブ産業課というようなことも考えておられるというのは聞いているわけですが、札幌あるいは金沢、いろいろなところで、東京はせんだっても、クリエーティブ東京ということでイベントを打っておられたわけですけれども、地方都市でも、そういう地場で、やはりものづくりを生かして若い世代に活躍の場を与えるということが大事じゃないかと思います。

 この点、クール・ジャパンの全国的な展開について見解をお伺いします。北神政務官にもう一回。

北神大臣政務官 クール・ジャパンの全国的展開ということですね。

 これはもう委員御案内のとおり、これまでも予算的に措置をしてきまして、クール・ジャパン戦略推進事業というものを立ち上げております。

 これについては、今まで、例えば伝統工芸品でいえば、繊維だけに力を入れたり、伝統工芸品だけに力を入れたり、分野別にやっていたわけですが、これは、業種を超えて、各国のマーケティングとかもしっかりして、そしてそれに取り組んでいただける企業を募集して、そういったところに支援をするということでございます。具体的には、伝統工芸品の地域産品分野については、例えば、米国とかフランスの富裕層に向けて、どういったものが望まれているのか、こういった調査もしながら、販路開拓というものに取り組んでいるところでございます。

 引き続き、この分野は大事な分野でございますので、強力に推進をしてまいりたいと思います。

橘(慶)委員 ぎりぎり間に合いました。最後に、枝野大臣にこのことについて頑張るという決意をお答えいただければ、ちょうど時間となるのかと思います。

 札幌ではコンテンツ特区をやったり、金沢ではそういうクリエーティブなイベントということで、いろいろ努力されているとも事務方からは聞いておりますので、そういうことも踏まえて、今後、こういう日本のクリエーティブ産業をどうしていくのか、最後に大臣からお答えいただいて終わります。

枝野国務大臣 本当に、このクール・ジャパン、クリエーティブ産業、私は、大臣にならせていただいて、各地、海外へ出させていただいて、私の思っていた以上に海外の多くの地域で、ジャパン・ブランドといいますか、日本のさまざまな価値に対する非常に高い評価と期待を受けていると実感をいたしております。

 そういう芽は日本じゅうにたくさんあると思うんですが、それを全体の戦略として世界に打っていくということをさらに強力に推進することで、私は、特に、もちろん東京もなんですが、そういった、例えば伝統工芸とかさまざまな日本の価値というのは地方にたくさんありますので、地域の活性化に向けても大きな柱になると思っております。

 さらにいろいろな知恵も出しながら努力をしてまいりたいと思いますが、よろしく御支援のほどをお願い申し上げます。

橘(慶)委員 終わります。ありがとうございました。

吉田委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、四十五分間時間をいただきましたので、しっかりと質問させていただきたいと思います。

 ことしは本当に、三月に東日本大震災が起こりまして、その影響もあって、どうしても我々、東京電力福島第一原発事故に関係したそういうテーマ、あるいはエネルギー政策、こういうものに重点を置いて質問もしてきましたし、また、そういう法律も議員立法でつくったり、あるいは閣法に対しても修正を議論してきたんですけれども、私はその上で、きょうは最初に、第三次補正予算と中小企業政策というものについて何点かお聞きをしたいと思っておるんです。

 というのは、やはり中小企業の活性化なくして日本の活性化というのはないというのが、私もそうですし、この委員会の委員の皆さんもそう考えておられると思いますので、これから何回かにわたって、またこういう機会がありましたらしていきたいと思いますけれども、中小企業にこの超円高の中でどう元気になっていただくのか、そういう視点もしっかりと我々は持っていきたいなというように思っております。

 まず一つは第三次補正でございますが、先週の二十一日に可決、成立をいたしました。私どももこの第三次補正については、とにかく早期に出してくれ、内容をいろいろ協議した上できちっとしたものを成立させて、早く執行しなければいけないということで、九月八日には、補正予算に対しての提言というものも我が党も出したところでございます。

 政府に申し入れした内容も、この第三次補正の中には我が党の主張も随所に反映をしていただいておりまして、きょう経済産業委員会でございますので、この所管では、特に中小企業の資金繰り支援、東日本大震災復興特別貸し付けと緊急保証等が大幅に拡充されて、六千百九十九億の予算が計上されている。さらに、先ほど橘委員からもありましたけれども、国内立地を促す補助金として約五千億、そのうち福島については千七百億円を重点配分する、そういうことについては我々は、我が党が強く主張していたことがきちっと反映されている、そういうことを高く評価したいと思っているんですね。

 要は、それでなくても我々の主張からすると大分おくれておりますから、これから大事なことは、成立した予算というものをスピード感を持って執行を急いでもらいたい、これが何よりも大事だと思っております。

 というのも、やはり状況というのはどんどん悪くなっておりまして、例えば十八日の朝日新聞なんかにはこういう見出しの記事が出ておりました。「原発余波 福島去る企業」、こういう見出しでございまして、「揺らぐ東北一の製造拠点」、そういうサブ見出しも出ているんです。要は、この内容を見ておりますと、福島県がその時点でつかんでいるだけでも、福島にあった有名な企業が既に三十社、福島県からもう撤退している、そういう状況なんですね。

 ですから、この千七百億円というものをいかに活用するかということ、先ほどありましたけれども、県も基金をつくって五年間ぐらいにわたって使っていこうという準備もされているようですから、そういう連携も必要になってくると思うんです。

 ですから、補正予算の施策をスピード感を持って執行を急いでもらいたいということとともに、先ほど申し上げました中小企業の資金繰り支援策であるとか企業の国内立地の推進ということについては、これは今の状況は来年度以降も継続する可能性が非常にあると思っております。ですから、補正予算に限らず、来年度予算でも継続して実施すべきであると私は考えておるんですけれども、経済産業省の見解を伺っておきたいと思います。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

枝野国務大臣 お認めをいただいた三次補正の執行についてはできるだけ早くということについては、さらに努力をしてまいりたいと思っております。実際に、全国の生産拠点の立地対象の国内立地推進事業については、既にきのうから公募開始をいたしました。

 それから、金融の方については、やはり関係の中小企業の皆さんに周知ができないと実際に活用していただけないということでございますので、政府系金融機関の窓口にとどまらず、特に中小企業を支援する士業、例えば税理士の先生方などは経営の実態などもよく御存じだったりしますので、そういったところを窓口に周知を図るなど、できるだけ広く周知をし、さらに執行を早くしていくという努力を進めてまいりたいと思います。

 その上で、まさに間断なく対策を講じていかなければなりませんので、来年度の当初予算についての概算要求はもとより、特に生産立地の拠点推進事業などについては、先ほど福島についてございましたが、基金方式で、来年度の年初冒頭も継続して、年度に関係なくできるだけ執行がしやすいような形での運用を進めていくことで、今の非常に厳しい状況にできるだけスムーズに対応できるよう、さらに努力をしてまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 今大臣からありましたように、経済産業省の方で第三次補正予算関連の広報資料というものをチラシという形でつくられたものを私どももいただいておりますけれども、こういうものも、最寄りの経済産業局にあるのはもちろんですが、各商工会議所とか商工会を含め中小企業関係団体にしっかりと配布されて、周知徹底して、活用していただくように努力をぜひお願いしたいと思うわけであります。

 二点目に、中小企業のこととともに、今、若者の雇用というのが非常に厳しいわけでございまして、そのことについて若干お尋ねをしたいと思うんです。

 一言で言うと、昨年よりは少しましになったといっても、超就職氷河期が続いております。文部科学省と厚労省がまとめた来春卒業予定の大学生の十月一日現在の就職内定率は、五九・九%にとどまっていた。過去最低だった昨年度に続く低水準となっている、そういうことでございます。

 私は、ぜひ政府として、また経済産業省としても、景気をよくして雇用を生み出すことに全力を挙げるとともに、具体的に、学生と企業のミスマッチ、求職と求人のずれの解消にやはりしっかりと力を注いでもらいたいと思うんですね。

 大企業志向が強い大学生というのは就職難にあえぐ一方で、いい人材が来てほしいと思っている中小企業には学生が集まらない。中小企業というのは、何とか募集したいと思っても、財政的に採用活動に投資する余力というのがなかなかなくて、人材確保で苦しんでいる、そういう状況がもう数年続いているわけでございます。

 私どもの党も、経済産業省が推進されてきた学生と中小企業の橋渡しをするドリームマッチプロジェクトを初め、学生と企業のミスマッチを解消する対策、そういうものを推進していくことについては非常に応援をしてまいりました。また、これからもやってまいりたいと思っているんですが、第三次補正予算では、今回、約二十五億円、中小企業人材の確保、育成、支援に予算を計上しているんですけれども、今申し上げましたドリームマッチプロジェクトを初め、学生と企業のミスマッチの解消に経済産業省として具体的にどういう支援策を、今回予算をつけて手を打たれていく予定なのか、そのことについてお尋ねをしたいと思います。

北神大臣政務官 佐藤委員御指摘のとおり、中小企業における、ある意味で人材不足というか人手不足は非常に深刻な状況で、一方で、若い人たちが、失業率というか、内定率も非常に低い水準で推移している中で、この需給のずれというものをやはり解消したい、大変重要な問題だというふうに考えております。

 政府としては、第三次補正予算において、二十五億円、この関係予算を計上しております。

 二つに分かれていまして、一つは、おっしゃる、ドリームマッチングというんですか、いわゆる現場研修を通じて中小企業と若手の人たちが交流をしてマッチングをするということが一つ。これは十億円計上しているところでございます。具体的に言えば、日当を学生さんに七千円渡して、企業側には三千五百円を指導料みたいな形でお渡しするということでございます。

 二つ目が、中小企業団体とその地域の大学とかが平時から交流をする。交流だけじゃなくて、マッチングだけじゃなくて、その後の採用、そしてその企業に定着をする、これを一気通貫にしっかりと支援する事業というものも十五億円計上しているところでございます。

 ちなみに、後者の方は、来年度の予算でも今五億円要求しているところでございまして、引き続き、中小企業に若い人たちがちゃんと就職できるように我々も応援をしてまいりたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤(茂)委員 今、北神政務官がおっしゃったように、二つ目の方は、特に地域の中小企業、やはり地域の中小企業団体、これが勧誘してきめ細かな地域ごとの対応という、大学と連携をとっての活動というのが非常にポイントになってくると思うので、そこは、予算をつけたから終わりということではなくて、やはり地域ごとに、この補正予算あるいは来年度予算にも計上されるということであるならば、具体的にどう進んでいくのかということをきめ細かく見ていただきたいな、そのように思うわけでございます。

 三点目に、中小企業関連でお尋ねをしたいのが、海外展開への支援の拡充策です。本来でしたら中小企業はとどまってもらいたいんですけれども、やむにやまれず海外市場に活路を見出そうと海外展開せざるを得ない、この超円高の中で、あるいは東日本大震災によるサプライチェーンの寸断とか大手企業の海外シフトなんかで行かざるを得ない、そういう中小企業も年々ふえております。

 例えば、数字だけ見ますと、日本政策金融公庫の海外展開向け融資の利用実績からしても、海外展開資金というのがこの日本政策金融公庫は活用されているんですけれども、この二〇一〇年度の実績というのは、その前の二〇〇九年度に比べて、件数ベースで四十二倍の二百五十二件、さらに、金額ベースで二十三・八倍の百十八・九億円まで拡大しております。

 さらに、ことしに入って四月から九月だけ見ても、昨年一年間に匹敵するだけの二百五十件。昨年が一年間で二百五十二件でしたから、半年間で二百五十件の活用が見られているんですね。さらに、額も百五十五・九億円ということで、昨年一年間の金額を上回るぐらいにこの海外展開資金というのは活用されている。要するに、昨年に比べてもう二倍のペースで拡大している、そういう状況があるわけであります。

 我々も、野党でありますけれども、中小企業関係団体の皆さんの税制要望とか、予算も含めた政策要望を聞いておりますと、各団体共通して、海外市場にやむを得ず活路を見出そうとしている、そういう中小企業の皆さんに対して何とか支援の手を打ってくれないのか、そういう要望が出てきていることが現実でございます。

 ただ、海外進出ということについては、中小企業の体力からしても、やはりリスクも伴うわけですね。ですから、まずやはり、資金力も乏しいそういう中小企業に対してどういう手を打ってあげられるのか、融資の面とか出資の面。さらには、ある団体が言っておりましたけれども、やはり税制面でも何らかの配慮というのはしていただけないのか、中小企業の海外展開とか、あるいは販売促進に係る費用の一定割合を税額控除するなども考えられないのか、そういう御意見もございました。

 やむにやまれず海外展開をせざるを得ない、そこに活路を見出そうとしている、そういう中小企業の支援を拡充する施策というのは、私は今この時点ではやはり必要になってくるんだろうと思っているんです。

 昨年の十月でしたけれども、政府の方で中小企業海外展開支援会議というものを設置されたというように伺っているんですけれども、中小企業の海外進出について、政府としてどういう支援策、また支援策の拡充というものを考えておられるのか、今の経済産業省の考え方をお聞きしておきたいと思います。

北神大臣政務官 中小企業の海外展開については、本年の六月に大綱というものを取りまとめまして、それに基づいて、今までどちらかというと海外の販路開拓の方に重点を置いていたんですが、それだけじゃなくて、おっしゃるような資金面を含めた総合的な支援策というものを実施したいというふうに考えております。

 具体的には、第三次補正予算を通じて、一つは、やはり資金力がないということで、出資によって経営基盤というものを強化する。二つ目は、海外に行っても、特に新興国においては、場合によっては中小企業の強みである技術が流出をしてしまうおそれがある、この技術流出防止をするための研究開発に支援をする、こういった施策も実施をしたいというふうに考えております。三点目は、商工中金等を含めた低利融資、こういった形で資金援助をするということでございます。

 技術流出防止の研究開発並びに出資の部分については、来年度の予算にも要求をしているところでございまして、補正だけじゃなくて、今後も引き続きこういった総合的な支援を推進してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 ぜひ、しっかりと地に足のついた海外展開ができるように、今言われたような三点も含めて、しっかりとした支援をお願いしたいと思います。

 もう一つ、中小企業について、今の政権の考え方でお聞きをしておきたいことがございます。それは事業承継税制の要件緩和ということでございます。

 来年度の税制改正では、今、経済産業省関連では、自動車課税をどうするのかということが最後の、最大の焦点になっております。これは別に来年度の税制改正でどうこうということじゃないんですけれども、中小企業の事業承継税制というのが、私どもが政権におりましたときに、二〇〇八年度に成立をさせて、二〇〇九年度からということだったんですが、もう早くやった方がいいということで、特別に二〇〇八年の十月一日から遡及適用した、そういう経緯があるんですね。

 ポイントは、五年間の事業継続などを条件に相続税の納税が猶予されるようになって、納税負担が大幅に軽減されて、中小企業の後継者不足に悩んでおられる経営者から非常に喜ばれている、そういう現状がございます。

 ただ、高く評価される一方で、我々が現場を回りますと、中小企業にとってさらに一層現実的で使いやすい、特に円滑な事業承継ができるような税制にさらに改善してもらえないのか、そういう声があるわけですね。

 具体的には、例えば、五年間の事業継続以外に、雇用八割継続要件というのがあるんですね。それを満たせなかった場合の納税猶予打ち切り基準を何とか見直して、雇用を維持している割合に応じて税額を納付する制度に見直してもらいたい、そういう御意見も強くございます。要は、雇用八割というものを条件にしておりますけれども、一%でも下回った場合には納税猶予税額を全額一括納付しなければいけない、そういうリスクを何とか低減させてもらえないのか、そういう意見がございます。

 もう一つは、中小企業の事業承継税制の場合に、結局その後継者が同族の親族でなければいけないというこの縛りを何とか緩めて、例えば取締役等の五年の経験で譲ってもらうことができる、そういうこともしてもらえないのか、そういう要件緩和の要望もよく聞くわけでございます。私は、この事業承継税制をさらに、冒頭申し上げましたように、現実的に使いやすい、そして円滑に事業承継ができる制度に改めていく努力というのは、やはり絶えずしていかなければいけないんだろう、そのように思うんです。

 経済産業省の方でも、中小企業政策審議会に企業力強化部会というものを設置されて、さまざまなテーマで、この事業引き継ぎということについてもそのうちの一つのテーマにして議論をされているというようにお聞きしているんですが、この事業承継税制について、円滑に行われるように、より一層の要件緩和を考えるべきではないかと私は思うんですが、経済産業大臣の見解を伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、事業承継税制は大変御活用いただいて、地域経済、中小企業政策という観点から大きな成果を上げているというふうに思っております。そして、御指摘のとおり、より使い勝手をよくするという観点での見直しは必要だと思っております。

 このうち、御指摘のあった雇用の八〇%維持要件については、税制改正の要望として、経済産業省として要望をしているところでございます。今後、税制調査会において御判断をされるということでございますので、経済産業省としては、できれば早期にこれを認めていただきたいという立場で今努力をしているところでございます。

 それから、親族以外の後継者にも広げる点については、具体的なニーズをさらにしっかりと把握した上で、制度の組み立てとしてそこが可能なのかどうか、ここはちょっと引き取らせていただいて、勉強させていただければというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 特に雇用の八〇%条件というのは、我々も議論して、そこまで緩和したときのその後の経済状況というのは大分変わってきておりまして、やはりリーマン・ショックもありまして、実際に中小企業の皆さんにその条件をそのまましゃくし定規にはめるというのが非常に難しい状況になってきているということもあるので、ぜひ、経済産業省、我々もしっかりと応援していきますので、税務当局に何とか認めていただくように努力を引き続きやってもらいたいな、そのように思います。

 中小企業の関連はこれぐらいにしまして、二点目にお伺いしたいのは、先月の十月の二十六日だったと思うんですけれども、当委員会で枝野大臣に質問をさせていただいて、この冬の節電対策、節電目標についてどうするんだという話をさせていただいて、今月中に何とかそういうことをはっきりさせたいと。結果的に、十一月一日に節電目標等を、特に関電管内あるいは九州電力管内について発表されたわけでございますが、そこは高く評価をしたいと思うんです。

 私は、この東日本大震災、特に東京電力福島第一原発事故の後、節電、省エネという意識は非常に高まっていると思うんですけれども、その高まりももう少しやはり質を変えていかないといけないんだろう、対策として。この夏は乗り切ったものの、これからもしばらく、やはりこのエネルギーの需給状況というのは予断を許さない状況が続く、そういう大前提に立って、電力不足に対応したそういう法律の見直しというものもやっていかないといけないんだろうというふうに思うんですね。

 その一つが、私は、いわゆる省エネ法、これは正式にはエネルギーの使用の合理化に関する法律という法律ですけれども、これは七〇年代の石油ショックをきっかけに制定されたんですけれども、要は、ポイントは何かというと、一年間のエネルギー使用量をいかに減らすかというところに非常に重きが置かれていたんですね。しかし、この夏の電力不足なんかの問題を教訓にすると、ピーク時の最大使用電力の削減、いわゆるピークカットといいますけれども、ここをいかに抑えていくのか、いかにこのピークカットを図るのか、こういうことが非常に大きなポイントにならざるを得ない、そういう時代にもう来ているんだろうと思うんです。

 私は、一年間のエネルギー使用量を減らすということではなくて、一日の中でもピーク時をいかに抑えていくのか、そういう観点での見直しというものもやはり今必要になってくるのではないのかと。例えば、やはり企業や家庭でのそういうピーク時の最大使用電力の抑制のための取り組みをしっかりと促していく、そういう方向に法改正というものをしていくべきではないのかなというふうに思うんですが、枝野経済産業大臣の見解を伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 ありがとうございます。

 まさに、今御指摘いただいたことは大変重要な視点であるというふうに思っておりまして、現在、総合資源エネルギー調査会の省エネルギー部会で検討をお願いしております。今の視点で、まさにピークカットをトータルとしての年間消費量を減らすということと並んで大きな目標として位置づける、そうした方向で、何とか来年一、二月には調査会の取りまとめを行っていただいて、この結果にもよりますけれども、来年の通常国会に可能ならば法案の御審議をお願いできないだろうかということを視野に入れた検討をいたしているところでございます。

 その一つがまさにピークカットの話で、もう一点は、省エネは非常に定着したいい言葉なので、これは否定するつもりはないんですが、実は、家庭内などにおける御努力、御協力をいただくということは、まさにエネルギーの効率を高める、使わない分、別に使えるエネルギーを生み出すという意味で、例えば御家庭の天井に太陽光パネルで発電をしていただくのと、あるいは家を魔法瓶化して効率を高めて消費量を少なくするということでは、ほかにそのエネルギーを使えるという意味では同じ効果があるわけでございます。

 家庭などの民生用あるいは業務用などで、断熱効果の高い、エネルギー効率の高いものに切りかえていくということをよりポジティブな位置づけをしていただいた上で、国土交通省とも連携したそうした取り組みを加速するため、これをもう一つの柱として議論を省エネ部会で進めておりますので、ぜひこの議論も御注目をいただきたいと思いますし、また、まとまりましたら御協力をよろしくお願い申し上げます。

佐藤(茂)委員 私は、この問題というのは、やはり家庭の協力というもの、また国民全体がそういう方向に協力してもらわないと、これは節電の要請もそうですけれども、なかなか成り立たない方向だと思うので、ぜひそういう議論は、なぜそういうことが大事なのかということも含めて、国民にわかりやすいような説明もやりながら、法改正の方向に持っていってもらいたいなというふうに思います。

 続いて、東京電力の福島第一原発事故の損害賠償について。

 先ほど橘委員も若干されましたけれども、私は問題意識としては、七月末から八月頭にかけまして、我々も、この福島第一原発事故を受けて、議員立法で仮払い法を提案させていただきました、成立いたしましたけれども。なおかつ、損害賠償の支援機構法案についても、今度は私どもが閣法に対して修正案を出して、修正案の提案者として答弁にも立って成立にかかわらせていただいたんですけれども、そのときにも、私も質問に立って、最後に、当時、菅総理含め海江田大臣なんかにも申し上げたのは、ともかく損害賠償というのはスピードが大事である、そういうことを申し上げました。

 具体的にどういうことを言ったのかというと、平成十一年にジェー・シー・オーの事故がございました。そこから最終的に、訴訟まで起きて、あのときは東京電力福島第一原発事故ほど被害者は多くなかったんですけれども、しかし、それでも訴訟が決着したのが十一年かかったんですね。平成二十二年までかかったんですよ。今回の東京電力の福島第一原発事故の被害者に同じようなことを時間かけてやっておったのではどうしようもない、だから速やかに損害賠償というものをやっていくような努力を政府としてやはりやっていくべきである、また、そういう枠組みというものをつくっていくべきであるということを申し上げて、当時の菅総理も、また関係閣僚の皆さんも、当然、私の意見はそのとおりだ、何とか手を打ちたい、そういうことで言われた覚えがございます。それから、今、もう三カ月以上たってきているわけですね。

 そこで、ぜひお聞きをしたいのは、先ほど橘委員のときにはみずから数字を、ちょっと前の時点のを言われておりました。緊急特別事業計画というのを十一月四日、政府としても認定されたんですけれども、そのときにも、「東電による対応」として「迅速かつ適切な賠償」、そういう言葉は一応言葉としてあるんですけれども、今私が物すごく危機意識として持っているのは、損害賠償の対応の実態は、しかし残念ながら極めておくれていて厳しい実態がある、そのように伺っております。

 例えば、対象となる個人と法人等があります。この緊急特別事業計画の中には、個人は六万三千六百五十八、法人等については七千六百十一と記載されております。合計、合わせると約七万ぐらいになると思うんですけれども、報道によると、これまでに請求書類が発送されてきたのは三分の一の約二万件ぐらいである、実際に賠償金を支払ったのは約千件ちょっと、そういう報道があるんですね。

 具体的にまず事実関係としてお聞きしておきたいのは、きょう、十一月三十日ですけれども、政府として損害賠償の請求と支払いの実態について数字の上でどのように把握されているのか、具体的に、個人、法人、そして合計の三つについて答弁をいただきたいと思います。

糟谷政府参考人 東京電力から、請求件数、支払いの状況については毎日報告を受けております。

 十一月二十九日、昨日の時点でございますが、本賠償については合計で約二百八十五億円の支払いを行っております。内訳でございますが、個人につきましては、二万一千九百三十四件の請求書をいただきまして、千二百五十六件、十一億七千五百七十八万円をお支払いしております。それから、法人、個人事業主の方でございますが、八千五百六十件の請求書をいただきまして、六百一件、二十六億七千七百十万円をお支払いしております。それから、団体を通していただいている部分については、八つの団体からいただいた二百四十六億百九十二万円分についてお支払いをしたところでございます。

 まだ、実際にお支払いをした件数は、個人でいきますと一割に満たないという状況で、非常におくれておるわけでございます。個人を例に挙げますと、お支払いしたのが全体の約六%ほど、これと別に、手続が終わっておりますが合意書をお送りしてそれの返送をお待ちしている方が一五%ほど、それから、手続は終わったんですがADRとか訴訟に行きたいという方が一割弱おられます。

 ただ、残りの七割ぐらいの方についてはまだ手続が終わっていないということでございまして、これは領収書類の確認などに非常に手間取っているということなんですが、もともと三週間を目途に書類の確認を行うというふうに東京電力は言っておりましたが、そのようになっていないことを私どもも非常に重く受けとめております。

 何とか、七千六百人の体制で請求書類の相談、受け付け、審査、合意書の発送などに当たっているということではございますけれども、これを迅速化できないかということ、それから、あわせまして、特に年末に向けて資金繰りの厳しい個人事業主の方などについては、概算払いによる早期支払いをするようにというふうに要請をいたしまして、十一月二十四日から東京電力は早期支払いの受け付けを開始したところでございます。

 御指摘のように、なかなかお約束したとおりになっていないというところを重く受けとめ、我々としても日々状況をフォローしながら適切に指導、要請を行ってまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 特に報道でも気になりましたのが、十一月十六日の産経新聞、前日の十五日に発覚したらしいんですけれども、農畜産業者への賠償金の年内支払いを東京電力が撤回した、そういう記事が出ておりました。

 記事によると、「東京電力福島第一原発事故で出荷制限などを受けた農畜産業者への賠償金支払いに、大幅な遅れが生じている実態が十五日、明らかになった。東電は同日まで」、同日ですから十一月十五日までの「請求分は年内に支払う」、そういうふうにしてきたが、「すでに受理した請求書類の審査に手間取っていることなどを理由に「難しくなった」と約束を撤回。被害農家側からは「これでは年を越せない」と悲鳴が上がっている。」そういう報道、これから記事は続くのですけれども。

 要は、年内支払いをこの日までに、受け付けまでに間に合わせたらやりますよと言っておきながら、支払いおくれの可能性に言及したとすれば、これは本当に被害者である農畜産業者の期待を全く裏切る行為であると言わざるを得ないと思うんです。そんなことを言われた被害者の農畜産業者というのは、当てが外れて、まさにここに言われているように、年を越せない、そういう業者も出てくるかもわかりません。

 政府として、この記事は当然もう掌握されていると思うんですけれども、事実関係を調べられたのかどうか。そして、事実とすれば東電に適切に指導すべきである、そのように思うんですが、政府としての見解を伺いたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘の件については、この報道に先立って国会でもお取り上げいただきましたので、直ちに東京電力から事情を聴取しました。そして、報道にありますとおり、報道に先立つ十一月十一日に、当初の約束である十一月中の支払いが困難であることを東京電力が宮城県の農協中央会に伝えたことを確認いたしました。

 したがいまして、これを受けて、私の方から資源エネルギー庁長官に指示をいたしまして、資源エネルギー庁長官から東京電力に対し、当初の約束の期限までに部分支払いの実施等を含め賠償金を支払うよう強く求めました。

 これを受けて、この報道の対象になっている宮城県農協中央会における二次請求分については、本日中に、つまり十一月、本日ですので、本日中に概算払いを含め賠償金の支払いを行う見通しになったという報告を受けておりますが、さらにこれを確認、チェックをしたいと思いますし、それ以外の農業関係団体に対しても遅滞なく支払いを行うよう、厳しく促してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 実は、記事になったので、今、的確に、枝野大臣の指示のもと、エネルギー庁長官も言われて、厳しく促すようなことになったと思うんですけれども、私はやはり、東京電力、七千九百人ですか、そういう体制でいろいろされていても、本当に肝心なところで、被災者に寄り添うような、また親身、親切なと言葉では言われているけれども、そういう対応になっていないというのが非常に残念な部分でございます。

 特に、この緊急特別事業計画を認定されて、その前提となっていた計画が認定されたので、八千九百億円の交付国債も投入される、そういうことになったんですから、当面の損害賠償費用の手当てというのはもう完全にできているんですね。あとは具体的に、被災者の皆さんの置かれている立場、心情に思いをはせて、本当に寄り添うように東電がきちっとした対応ができるかどうか、ここにかかっているわけです。

 我々もそのことを、野党ではありましたけれども、予算委員会を含め各委員会で、被害者目線の対応をしっかりやれと。

 例えば具体的に、今回、緊急特別事業計画にも反映されておりますけれども、弁護士や行政書士などの専門家で連携した支援体制の整備というのを我々も言ったのが、五人一組のチームでずっと回られるというような対応もされているのは評価したいと思うんです。さらに、当初百六十ページぐらいあった請求の説明書も、相当簡素化されるような努力をされているということも評価したいと思うんです。

 しかし、この事業計画の中で言われた、きれいな、最初見たら、もういっぱいそんなことばかり、反省の上に立って、「五つのお約束」と書いて、いっぱい書いてあるんです。しかし、現実に、その事業計画が認定された後の対応が、今、一つ例に出しましたけれども、農畜産業者に対してでも、事業計画で認定された内容、約束した内容と全く違う対応をされているということでは、これはもう計画自体が何の意味もないわけであります。

 ですから、福島県知事も先日、枝野大臣に直接同じようなことを申されたというようにお聞きしているんですけれども、ぜひ、今後ともより一層、損害賠償の迅速な支払いがきちっと東京電力によって行われるように、私は、枝野大臣にさらに鬼になっていただいて、東京電力に厳しく指導をしていただきたいと思うんですけれども、枝野大臣の所見を伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、若干モグラたたきのような状況になっているのは本当に遺憾に思っております。

 それで、特別事業計画の折に機構と東電の両方のトップで経営改革委員会をつくり、それから、東電の若手、中堅社員と機構の職員でワーキンググループをつくりました。これで、トップとそれから若手、できるだけ従来の文化、風土に染まっていない人たちの感覚でしっかりと内部的なモニタリングをする、おかしなことになっていないかどうかということを進める体制はつくりました。

 ただ、これは意識の問題ですので、率直に申し上げて簡単に変わるものではないと思っておりますので、こうしたチームからの報告、あるいは先ほど御指摘をいただきました訪問相談チームなどからの現場からの声、こうしたものをできるだけ幅広に情報を集めて、モグラたたきを繰り返していくことによって体質を変えていくということ、ここを厳しくやりながら、同時に、トップに対しては、今の経営改革委員会を通じて内部的な努力による意識の改革ということを進めるよう、さらに厳しくやってまいりたいというふうに思っております。

 また、さまざまな現場で起こっているトラブルといいますか不適切事例については、先生初め野党の皆様方を含めて、いろいろな情報が入りましたら率直に御指摘をいただきたいとお願いを申し上げます。

佐藤(茂)委員 そこで、余り東京電力の方をぼろくそばかり言っていると失礼になるかもわからないので、一つだけ割と改善されていく姿勢があらわれているのかなと思いますのが、精神的賠償について減額を先送りした、そういう事実がございます。

 東京電力は、十一月二十四日に、福島第一原発事故による被害者の精神的苦痛に対する賠償額を減らす方針を撤回されました。具体的に言うと、九月から来年二月分について月五万円に減額するとしていた賠償額を、月十万から十二万円だった八月分までと同額に維持する、そのように発表されたんですね。これは、今までは政府の原子力損害賠償紛争審査会の指針に基づいてそのままにやっていたんですけれども、東電が初めて指針より手厚い基準を示した、そういう事例なんです。

 私は、紛争審査会の指針というのは、最低限こうしなさいよ、そういうことを提示されていると思うので、ぜひ、こういう事例というものを、これからも東電は努力して、紛争審査会の基準よりも上の賠償をしっかりと払ってもらう、また、してもらう、そういうような方向というのは経済産業省として当然進めていくべきではないのかなというふうに思うんですが、東電のこの発表をどのように受けとめて評価されているのか、大臣か経済産業省の見解を伺いたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、紛争審査会の指針は、類型化をできるものについて類型的なある意味での最低限の線を示したものであって、東京電力のみずからの判断においてそれを超える賠償をするのは、まさに相当因果関係の範囲においては責任でありますので、しっかりやってほしいということを促してまいりました。そうした中で、今回の判断は、被害者の思いや実情を十分に考慮した上で自主的に一歩踏み込んだ改善をしたものと受けとめております。

 最終的には被害者の皆さんが御判断されることでありますが、少なくともこうした方向での努力については前向きに受けとめたいと思っておりますし、こうした努力をさらに進めるよう促してまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 我々は、やはり与野党の垣根を越えて、これからも被害者の救済というものを第一にした議論を当委員会でしていくことをお約束いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉田委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、東京電力の全面賠償の問題と、それから日本の核燃料サイクルの問題について質問をしたいと思います。

 最初に、大臣にまず確認しておきたいんですが、東電はことし五月十日に、原子力被害担当大臣であった海江田万里殿として、原賠法第十六条に基づく国の援助の枠組みを策定していただきたく、何とぞよろしくお願いしますという文書をまず出しました。

 これに対して、海江田大臣から、同日五月十日付で「確認事項」が示され、これは今お手元の資料のところにあるものですが、その六で、「全てのステークホルダーに協力を求め、とりわけ、金融機関から得られる協力の状況について政府に報告を行うこと。」としております。

 これに対して、東電の清水正孝社長は、翌五月十一日に海江田大臣あてに、「頂戴いたしました「確認事項」につきましては、了承させていただきます。」という文書を送ってきています。

 これらの経過については、当然のことながら枝野大臣はよく引き継ぎを受けられて承知しておられると思うんですが、まずこのことを確認しておきます。

枝野国務大臣 引き継ぎ以前の問題として、当時、内閣官房長官として、この確認事項の作成やそれに対する東京電力からの回答について、直接認識、把握をしております。

吉井委員 去る十月三日に、東京電力に関する経営・財務調査委員会が提出したいわゆる下河辺委員会報告、これを見ますと、ことし七月末時点における東電が金融機関に借り入れている残高は三兆八千五百億円となっている、震災後に実施された緊急融資一兆九千六百五十億円の借入金債務については、東電において約定に従った弁済を予定しているとしているわけです。

 十一月四日に、総理、当時はちょうど海外でしたから、代理と経産大臣名で特別事業計画の認定を東電に出しておられますが、銀行などの債権者に対しては、事故後も長期借入金について約定どおり弁済しているというふうになっているわけです。

 それでは、各メガバンクに対して、全部の銀行を言ったら大変ですから、メガバンクだけで結構ですから、幾ら支払っているのか、これを伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 東京電力は、ことしの四月から十月末までで切っておりますが、長期借入金について約一千七百億円の返済をしております。短期借入金について、約五千二百億円を借りかえたという報告を受けております。

 なお、個別の銀行ごとの返済額ということでは、個別取引に関する事項であるので回答は控えたいと思いますが、それらの累積といいますか、全体の足し算で今のような数字でございます。

吉井委員 それで、資料の一番下に載せておきましたが、この下河辺委員会報告では、東電が二〇一一年六月に全金融機関に対して送付した支援要請文書には、「貴社との取引において金利減免や債権放棄といった類の支援を、当社から要請することはないと申し添えます」という文章が記載されています。五月十一日に海江田大臣には要請すると言っていたんですね。そう答えていた東電が、六月には金融機関に要請しないという文書を出しているんですね。

 枝野大臣、東電は、国に出している文書と金融機関に出している文書で言っていることが正反対なんですよね。支援機構を通じての国の資金や債務保証なしには、もともと債務超過で破綻する企業なんですよ。本来、破綻処理されることになる企業がこういう対応をするということはおかしいんじゃないかと思うんですが、大臣の考えを聞いておきます。

枝野国務大臣 この東京電力が六月に出したとされる文書、融資の継続を要請するに当たって債権放棄や金利減免を要請することはないとした文書を送付したことは事実として確認しておりますが、あらかじめ事前に相談を受けたものでも、事後的に了承したものでもありません。政府としては、これに拘束されるものではないというふうに思っております。

吉井委員 政府として拘束されないのは当然のことなんですけれども、政府が東電に拘束されたら大変ですから。

 ただ、東電が政府に申し入れをするときには、応援してくださいというときには、金融機関に対しても協力を求める、それを報告しますねと言われて、報告しますとちゃんと言っているんですね、要請すると。ところが、一方、金融機関に対しては、「貴社との取引において金利減免や債権放棄といった類の支援を、当社から要請すること」はありませんと言っているんですね。まるであべこべのことなんですね。

 ですから、政府は拘束されないとして、こういうやり方はやはり東電としてはおかしいんじゃないんですか。

枝野国務大臣 来年の春を目途に、総合特別事業計画を策定するということになっております。この際に、いかなる可能性も排除しない幅広い選択肢の中から、金融機関との調整などを精力的に進めるよう伝えたところでございます。

 もちろん、賠償実施を円滑に行うための資金を確保するという観点で、東京電力から取引金融機関の与信の維持等を要請することの必要性については否定をいたしませんし、与信が継続されることの重要性ということも否定をいたしませんが、一方で、今申し上げたような趣旨で来年の特別事業計画を策定しますので、その特別事業計画の認定をするかどうかという判断の折には、私どもが拘束されるいわれのないこうした合意については関係なく判断をいたします。

吉井委員 では次に、東電は、これまでの九カ月余りの間に、被害者に対しては一体幾ら損害賠償金を支払ってきたのか、これを伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 十一月二十九日現在で、支払い実績は、仮払いと本賠償を合わせて約一千六百四十九億円でございます。

吉井委員 十一月十一日時点の取りまとめから比べてみても、六十億ぐらいしかふえていないんですね。

 それで、枝野大臣が官房長官のときに、五月十三日の閣議後の記者会見で、金融機関が福島第一原発事故以前の東電への融資の債権放棄をしなければ国民の理解は到底得られない、こういう会見もしておられます。経産大臣に就任した翌日の九月十三日の記者会見を見ますと、福島第一原発の損害賠償で東京電力が政府の資金支援を受ける場合には、取引銀行などの債権者や株主も一定の負担をすることが前提だと強調したというふうにされております。

 もともと、東京電力は莫大な賠償金を抱えているわけですね。それから、最大四十八兆円とも言われる除染費用がこれからかかるわけですね。これら巨額の債務を負っており、公的資金がなければ明らかに債務超過が見込まれる事実上の破綻企業です。本来、破綻処理だったら債権放棄を求める銀行に対しては、赤字決算を出していても、破綻状態であっても、一年以内に有証の方では一兆一千七百四十七億円返済するんだということを出していて、先ほどのお答えで、この間、長期債務で一千七百億円払っているというんですが、しかし被害者に対しては一方では千六百四十九億円しか払っていない、そのことをやはりきちんと見ておかなきゃいけないと思うんです。

 それで、直接、間接を含めて、放射能汚染にさらされ、生活の拠点も仕事も安全も奪われた原発被害者に対して、加害者意識を持っていない。いまだに全く補償していない人たちが、全国に非常にたくさんいらっしゃるじゃないですか。これは、自主的に放射能汚染を恐れて避難した人の経済的負担などを含めて非常に大きなものになるわけですが、大臣、やはり金融機関には債権放棄を求め、東電に対しては、直ちに被害者全員に速やかな全面賠償をしろ、余りにも遅過ぎる、このことをきちんとやり切っていくということが大臣として必要なことだと思いますが、伺っておきます。

枝野国務大臣 まず、私の官房長官当時の発言については、そういう趣旨に受け取られるかもしれませんが、正確な引用ではないというふうに思いますので、それは御指摘をしておきたいというふうに思います。

 その上で、例えばこの間も、いろいろな経営状況、さまざまなことを判断するのに加えて、ステークホルダーの責任として、短期借入金五千二百億円について返済ではなくて借りかえという対応を金融機関には求めて、しているということになろうかと思います。

 その上で、最終的な総合事業計画に当たっては、あらゆる選択肢を排除することなくということでやっていきたいと思いますが、まさに企業体としての継続性をしないと電力供給も廃炉も賠償もなかなか進んでいかないということの中での資金調達をいかにしていくのかという問題と、今御指摘をいただいたような視点ということをきちっと総合的に判断していく中で、国民的にも理解の得られるような総合事業計画になるよう促してまいりたいというふうに思っております。

 その中で、賠償がおくれているということについての御指摘は、この問題とはちょっと別次元で、賠償のための資金は、金融的に企業が回るという意味でも、それから国から機構を通じて出しているという意味でも、資金的な面で今おくれているというのではなくて事務作業がおくれているということと、やはりそれは、先ほど佐藤議員の御質問にもありましたとおり、それから今の御指摘もあったとおり、加害者としての当事者意識が欠如しているのではないかというところに私は起因すると思っております。

 この点については、さらに厳しく、より迅速な賠償が進むように、経済産業省としてでき得る最大限のことをしてまいりたいと思っております。

吉井委員 これは佐藤福島県知事を初めとするオール福島で、枝野大臣のところへも文書が届いていると思いますが、最初に、このオール福島で十月二十四日に公開質問書を東電に出したとき、その中でも、東電は加害者であるということを忘れているという指摘があります。それから、大臣のところに十一月二十四日に出された原子力損害賠償の完全実施の緊急要望の中でも、東電には当事者意識がないということが指摘されておりますが、全面賠償を速やかにさせていく上で、東京電力が当事者意識も加害者意識も持っていないというのではもう全然話が進みませんから、やはり私は、大臣の方から厳しくその点は東電に申し渡すといいますか、やってもらわないといけないと思うんです。

 それから、きょうはこの議論はやりませんけれども、破綻処理で公的管理に移して、将来の発送電分離などを含めた、地域独占と総括原価方式にあぐらをかいてきたその仕組みそのものを解体したとしても、公的管理というのは発電施設もみんな引き継ぐわけですから、供給の方は心配ないし、全面賠償については、破綻処理になった企業の株主それから債権者の方の必要な負担によって賠償資金というものを捻出するという道、あるいはGEのような欠陥商品を売り込んだところの製造物責任に基づく社会的責任しかとりあえず法律的には問うことができないわけですけれども、そういうことによって費用を捻出して全面賠償を速やかにやらせるということはできるわけですから、いつまでも東電という形態を残さないと何か解決しないかのようなことになるとおかしいということだけ申し上げて、次に、核燃サイクルの方に移りたいと思います。

 新橋の雑居ビルで、一九八五年から九四年までの間に、科学技術庁の原子力局長を務めた方を中心とするいわゆる通称島村研究会、これが開催されて、二〇〇八年にまとめられた報告書があり、私も読みました。この研究会での一九九〇年一月十九日の議論などを読んでいますと、既に二十一年前、ほとんど二十二年近く前に、ドイツのサイバードルフ再処理工場をとめたから、下手をすると高速増殖炉SNRも動かないまま終わるかもしれないと動燃の澤井定氏が語っておりますし、結局それは、その後、そのとおりになったんですね。

 既に廃止されたフランスのスーパーフェニックスでさえ、この二〇〇一年時点で、幾つかのトラブルが起こっていること、軽水炉に比べて発電コストが二・三倍ぐらい高くついている、高速増殖炉は、プルトニウムとナトリウムを扱う技術的困難性と放射能汚染、プルトニウム毒性だけでなくて、何よりも採算性の面でめどがつくかどうかということが既に問題になっていました。島村氏からは、動燃はメーカーのもうけにはならないが、メーカーの研究開発費を生み出しているので、国費投入がメーカーのメリットになっている、そういう解き明かしもありました。

 そして、ドイツの電力会社が使用済み燃料の再処理をフランスのコジェマやイギリスのBNFLに頼んでいるけれども、当然プルトニウムが戻ってくるから使わざるを得ない、それが高速増殖炉の行き詰まりで使えないという事態を示して、状況としては海外もよくないと発言をしております。

 なお、一九九一年の別の日の会合記録を見ますと、外務省の原子力課長が出て、国際交渉に当たった金子熊夫さんですが、原子力外交と核兵器拡散防止の中で、核軍縮による解体プルトニウムの扱いについて困難に直面しているということを明らかにして述べています。これは、島村会長からも、当時のイギリスでFBR、高速増殖炉をやめる、そのときに、再処理工場でプルトニウムをどんどんつくってどうするのかという問題があると。

 初めのころは、プルトニウムをアメリカが引き取ってくれた。これはまだ核軍縮の時代に入る前のことですから、核兵器用にプルトニウムが必要ですからどんどん買い取ってくれているわけですが、それも核軍縮の時代になると変わってくるわけですね。逆に、解体プルトニウムをどうするかという問題が出てきている。

 ですから、私は、二十一年前に既に高速増殖炉について、また再処理工場について、核燃サイクルのあり方そのものについて、こういう状態が認識されておったというのが、実は原子力分野に携わる人たちの現実じゃないかと思いますが、大臣の認識を伺っておきます。

枝野国務大臣 御指摘の島村委員会は、元原子力委員である島村氏が委員を退任後の一九八五年から九四年にかけて開催した私的な勉強会であるというふうに承知をしております。そこで議論をされた記録がテープ起こしのような形で文書化されているというふうに承知をしておりますが、これについては、今、改めて原子力政策全体の見直しを進めていく、「もんじゅ」についても検討していくということに当たっては、一つの資料としては意義あるものではないかというふうに思っております。

吉井委員 高速増殖炉がうまくいかないと、再処理工場を起動させることによって、プルトニウムが蓄積されるばかり。これは、国際的に日本が不信を食らうということになります。一方、再処理工場も行き詰まっているわけですから。ウランテストをしなければ解体工事費は大体三千億ぐらいで済んだものが、もう実験をやっちゃったために放射化されて、解体工事費が約五倍ぐらい高いものにつくようになっています。

 軽水炉の福島原発でさえ大変な事故で、ここへプルトニウムとナトリウムを扱う高速増殖炉「もんじゅ」なんかをやったら、全電源喪失に遭ったときには、ナトリウム冷却をしている、海水注入で機器冷却系を冷やすことはできないし、その前に、活断層の集中地帯の「もんじゅ」ですから、巨大地震に見舞われてプラントが破損すると、ナトリウムの爆発的火災という事態を九五年のときのように想定しなければならない。さらに、崩壊熱を自然冷却でやるといったって、その機器が壊れたらそのシステムそのものがうまくいかないわけです。

 「もんじゅ」開発は、これまで三十年間に「もんじゅ」関連だけで二兆二千億円使ってきて、六七年の動燃事業団以来の動燃事業団全体の経費を見たら、四兆円を超えるぐらい使ってきているんですね。

 ですから、さっき検討というお話がありましたけれども、核燃料サイクルはもう採算性も乗ってきませんからやめることを決断して、逆に、福島事故炉の処理とか廃炉処理とか、高レベル放射性廃棄物の短寿命・低レベルに転換する消滅処理の研究とか、除染技術の開発、内部被曝や低レベル長期被曝による健康障害、遺伝的影響と健康回復への医学的研究とか、新しい研究開発の分野に資金を回して、研究者にはモチベーションが必要ですから、モチベーションも上がるような取り組みをしていくことが大事だし、同時に、自然エネルギー、再生可能エネルギーと蓄電技術やマイクログリッド、スマートグリッドなど新しい技術の研究開発へと、今まで投じてきたものからしたらまだ全然額もわずかなものですから、私はやはりそういうところにこそ力を集中するべきだと思うんですが、最後にこのことを大臣に伺って質問を終わりたいと思います。

枝野国務大臣 これまで原子力に投じてきた研究開発等のお金に比して、新エネルギーとかエネルギーの効率化、省エネルギーなどについての研究投資というのは非常に微々たるものと言わざるを得ない、これはもう事実であると思っていますし、これについて大きくシフトをしていく必要があるということについては全く同感でございます。

 ただ、「もんじゅ」を初めとして、核燃料サイクルについてどうしていくのかというのは、まさにバックエンド、全体の構造の問題の中で議論をいたしませんと、一カ所、個別に取り上げてこれはいいとか悪いとかということをしても、結局は、全体としての核燃料をどうするのかということの中で、どこかにより大きな矛盾が生じてまいります。そうした全体の議論を今進めておりますので、そうしたことの中で、先生の御意見は一つの御意見としてしっかりと参考にさせていただきたいと思います。

吉井委員 では、時間が参りましたので終わりにしますが、軽水炉路線を進める限り、この矛盾から抜け出すことはできません。そのことだけ指摘して、質問を終わります。

吉田委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 きょうは、ジェトロについて質問をさせていただきたいと思います。

 ジェトロに関しては、行政刷新会議の事業仕分けでも議題になりまして、いろいろな厳しい指摘がありますが、私個人はジェトロの役割は重要だと思っておりますので、ジェトロの予算や人員を削れとはきょうは申しません。他方で、ふやせとも申しません。シフトが必要なんじゃないか。特に、海外事務所に関しては今のような配置で本当にいいんだろうか。

 今お手元に配らせていただいている、ジェトロの海外ネットワークの表などを見ていただきたいと思うんですけれども、今のような人員の配分、海外の展開でいいのか、その点、問題意識を持って質問をさせていただきたいと思います。

 特に、ジェトロ、先進国に関しては相当仕事が減ってきているというのが実情だと思います。民間の貿易関連のコンサルタントもたくさんあります。そういう意味では、下手すると民業圧迫のおそれもあります。それから、先進国であればちゃんと法律も規制もしっかりしていて、情報公開も進んでいて、不正も少ない、英語も通じる。そういう先進国では、ジェトロの仕事というのは昔に比べると相当減ってきているんじゃないかと思います。にもかかわらず、この海外ネットワークを見ると、アメリカだけでも、ニューヨーク、アトランタ、ヒューストン、シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、六カ所もあります。カナダにも二カ所あります。

 こういう先進国で、ジェトロがこれまでのようにたくさん事務所を持ってたくさんスタッフを配置する必要が本当にあるのかどうか、大臣の感想をお聞きします。

枝野国務大臣 御指摘のような問題意識は一応持っているようでございまして、平成十八年から二十二年の五カ年間で、フランクフルト、リスボン、ミュンヘン、リヨン、メルボルンという先進国五カ所を閉鎖して、バンガロール、サンクトペテルブルク、プノンペン、チェンナイ、武漢という新興国に事務所を新たに出すということの努力はしているところでございますが、新興国において、日本の中小企業に進出してほしいなどというニーズが非常にある一方で、さまざまな投資環境について、十分なサポートがないとなかなか投資できないという事情があるのは御指摘のとおりだと思っております。

 そうした意味では、特に中小企業などに対する海外投資、海外展開への後押しとして、ジェトロは非常に大きな意義をなしていると思いますので、こうした時代の情勢に応じて、より大きなシフトをしていく必要があるというふうに思っております。

 既に、ことし三月の中期目標でも、東アジアや新興国に重点化することとしておりますが、それをさらに促してまいりたいと思います。

山内委員 ぜひ、途上国、例えばアフリカはまだ事務所も多くないですし、アジア、中央アジア、ロシアの極東なんかにも必要があると思います。そういう法律がちゃんと執行されていない国、あるいは言葉もなかなか通じない、それから法治国家というよりも人治国家みたいなところで人脈が物を言うとか、あるいは日本政府の看板があることが重要な国というのは途上国、新興国ほど多いわけですから、先進国から一気に新興国へともっとシフトを進めていく必要があると思います。年に一つ二つつぶしていく、そういうスクラップではなくて、一気に減らしていく、こういったことも必要ではないかと思います。

 続きまして、次の質問ですけれども、ジェトロの事務所というのは、経済的な配慮以外の配慮も含めて設置の基準を考えるべきではないかと思います。

 例えば、最近できたプノンペン事務所、カンボジアの事務所というのは、鳩山総理のイニシアチブで、政治的配慮でできたということを聞いております。

 大分前、十年ぐらい前だったと思うんですけれども、パレスチナ自治政府はジェトロの事務所をつくってくれというような要望を出したと聞いたことがあります。恐らく、パレスチナに事務所をつくっても、そんなに日本から投資ががんがん行くとも思えませんし、貿易がふえるとも思えません。しかし、中東和平という国際政治において非常に重要な課題に日本政府として目に見える貢献をしているという意味では、経済的な、あるいは貿易的な配慮だけでいうとそれほど重要ではないパレスチナみたいな国であっても、事務所を設ける妥当性というのは十分あると思うんですね。

 経産省主導だと、どうしても目の前の貿易量とか経済的な関係だけで判断しがちだと思いますけれども、そこはオール・ジャパンで考えると、政治的に重要な地域、国であれば、これからの貿易をふやす、あるいは今の貿易量が少しふえるだけでもそれなりに意味がある国、そういうところがあると思うんです。

 そういう外交的な配慮、政治的な配慮でもっと新興国に事務所をふやしていくべきじゃないかと思うんですけれども、それについて経産省の考えをお聞きします。

松下副大臣 貿易額の順位等も含めて、大変貴重な資料と御意見をいただいております。ほとんど全く同じ、共有をしているという土俵に立っておりますので、そのことをまずお伝えしておきたい、そう思っています。

 御指摘のとおり、政治的配慮といいますか、外交上の相手国の首脳との話し合いの中で、カンボジアのプノンペン事務所は、フン・セン首相と鳩山総理との間の話で開設を合意いたしまして、二十二年の二月に開設いたしました。また、当時、鳩山総理がインドを訪問された際に、シン首相との間でも合意いたしまして、チェンナイ事務所を開設してほしいということで合意して、それは既に二十二年の四月に開設をしております。

 こういう貿易取引額とか日系企業の進出状況等とあわせて、中長期的な相手国市場の成長可能性なども勘案して、そして外交的ないろいろな配慮も含めて、二国間関係を強化していくということも含めて、しっかり取り組んでいくことが大事だな、そう思っています。

山内委員 松下副大臣の御意見は全くそのとおりだと思います。

 ちょっと感想をお聞きしたいんですけれども、今お配りした資料がございます。ジェトロの事務所の人数が多い事務所から十個挙げてみると、まあ上海、ニューヨークが多いのはよくわかります。貿易量も多いことですし、関係も強い。バンコクも北京もわかります。ところが、パリとかロンドンとか、日本にとって輸出、輸入ともにそれほど上位じゃない国にもかかわらず、やたらと人数が多い事務所がある。

 経産省の方からレクを受けたところ、経産省のキャリア官僚が出向しているポストというのは結構、ニューヨーク、パリとかサンフランシスコとか、何かおしゃれな国のおしゃれな事務所ほど経産省の官僚がいっぱい出向している。こういう状況は本当にいいのかなと。もしかしたら、貿易量でいうとジャカルタとかニューデリーとかはもっと重視してもいいかもしれません。パリ、ロンドン、昔はすごく日本にとって重要な国でしたけれども、数字で見てもだんだん比重が低下しているわけですし、そもそもロンドン、パリみたいな先進国だと、日本の政府が後押ししなくても民間企業はそれなりにやっていく余地はたくさんありますから。

 こういう配置についてどう思われるか、経産省の感想をお聞きします。

枝野国務大臣 御指摘の視点は、大変重要なことだと思っております。

 私は、経済産業省はきれいでおしゃれなところがメーンの仕事ではなくて、新興国、発展途上国の経済発展を支援しながら、我が国もそれに伴って国益をふやす、それから資源などをしっかり確保する、どちらかというと、おしゃれできれいではないところこそ経済産業省が頑張らなきゃならないところだというふうに思っております。

 例えば、パリとロンドンの両方にこんなに要るのかという話はあるのかなというふうに私も感想として思います。ただ一方で、例えばパリはやはりヨーロッパの一つの玄関、窓口で、先ほどクール・ジャパンのお話がございましたが、クール・ジャパンのような話を日本の中小企業が海外展開するような場合においての拠点窓口としては、私がここでパリなのかロンドンなのかと独断で決めるわけにはいきませんが、ヨーロッパに一つの窓口はそういった観点からはしっかりとしたものが必要なのではないか。

 ただ、全体の構造としては、今の御指摘は私もほぼ同感でございます。

山内委員 経産省ではなくて外務省の例ですけれども、外務省はアメリカに十五カ所領事館を持っています。オーストラリアにも六カ所拠点があります。人口二千二百万のオーストラリアに六カ所も大使館、領事館を置いている。明らかに、居心地のいい国ほど拠点がふえるという法則が霞が関にはあるようですので、ぜひ厳しい目で見ていただいて、日本の国益にとって必要な国にタイムリーに拠点をシフトしていけるようにしていただきたいというふうに思います。

 時間の関係で最後の質問になると思いますが、地域振興にジェトロがもっと役に立てるんじゃないかという視点で質問をさせていただきたいと思います。

 これから恐らくTPPの議論が本格化して、私どもの党はTPP賛成なんですけれども、それによって非常に多くの、特に地方の農業や漁業に従事している方が不安な思いをされているのは事実だと思いますが、そういう地域の農林水産業の支援のために、ジェトロはこれまで以上に重要な役割を果たせるのではないかと思います。

 例えば、石垣島。今、沖縄の離島はサトウキビの問題などで非常に不安を抱えているところが多いと思うんですけれども、石垣島は東京から見ると僻地なんですけれども、東アジアでいうと真ん中に位置する。上海、台北、すぐ近くです。沖縄の那覇空港経由でアジアの主要都市につながっている。石垣空港がもうすぐできますけれども、石垣の新空港は国際線ターミナルもできると聞いていますので、石垣島から見ると、台北、上海みたいな大消費地がすぐ近くにあるわけですから、実はうまくやればこれから可能性が非常に大きくなっていくと思うんですね。

 あるいは、北海道や日本海側。こういうところは、極東のロシアとか韓国にもっと売り込んでいくチャンスはたくさんあると思うんですけれども、そういうところの支援というのは、もっとジェトロでやれることがたくさんあるんじゃないか。那覇にも事務所があります。いっそのこと、首都圏の事務所で余り機能していないところをつぶして石垣事務所をつくってもいいぐらいだと思います。

 そういう地域振興に、ジェトロはこれからどういうふうにかかわっていけるのか、御意見を伺います。

松下副大臣 大変心強い御意見を承ったと思っております。

 今回のTPPを初めとしたこの経済連携の議論を通して、日本が抱えているさまざまな課題が浮かび上がってまいりました。

 特に、農業につきましては、おっしゃいますように、国内での消費ということだけではなくて、この優秀な製品そして作品、そしてすばらしい土地でつくっている、そういう農産品をしっかり海外に持っていくということの努力が組織として欠けていたのではないかということは指摘されております。

 今までの、農政を含めて国内の議論は、生産すること、生産者の立場に立ってつくる、それから国内での消費を考えていたところからやはり海外に展開していくということが非常に大事だと思っておりまして、それによって外資を稼いで農家の所得をふやしていくというのが大事だろうと思っています。

 その意味で、ジェトロの果たしていく役割はさらに一層大きくなっていくと思っていますし、農林水産省ともしっかりとここは連携しながら進めてまいりたいと考えております。

山内委員 これまで農林水産関係は農水省中心でやってきて、どっちかというと、補助金を出してつくるところまでは一生懸命やっていたんですけれども、売るところは非常に弱かったんじゃないかなと思います。

 そういった意味では、これから農業も産業ととらえてどうやって売り込んでいくか。特に海外、ジェトロは上海事務所だけで五十一人スタッフがおります。そこで、上海という大きな消費地が、日本の沖縄とか先生の御地元の鹿児島とか、すぐ近くなわけですから、東京に出すよりも、むしろ沖縄からだと上海や台北の方が全然近いはずですから、そういうところに、例えば乳製品なども含めてどうやって売り込んでいくか、そういう戦略を、農水省に任せているとどうしても補助金の方ばかりに行っちゃいますから、ビジネスとしてやっていける方向に、経産省、ジェトロでぜひ持っていっていただきたいと思います。

 ちょうど時間になりましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

吉田委員長 御苦労さまでございました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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