衆議院

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第12号 平成25年5月17日(金曜日)

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平成二十五年五月十七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 石原 宏高君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 近藤 洋介君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    越智 隆雄君

      大野敬太郎君    大見  正君

      勝俣 孝明君    佐々木 紀君

      白石  徹君    平  将明君

      武村 展英君    辻  清人君

      冨樫 博之君    根本 幸典君

      福田 達夫君    細田 健一君

      宮崎 謙介君    宮崎 政久君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      吉川 貴盛君    大島  敦君

      岸本 周平君    古本伸一郎君

      馬淵 澄夫君    木下 智彦君

      重徳 和彦君    丸山 穂高君

      國重  徹君    井坂 信彦君

      三谷 英弘君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   国務大臣         稲田 朋美君

   内閣府副大臣       寺田  稔君

   財務副大臣        小渕 優子君

   経済産業副大臣      菅原 一秀君

   内閣府大臣政務官     亀岡 偉民君

   財務大臣政務官      竹内  譲君

   経済産業大臣政務官    平  将明君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  由木 文彦君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    菅久 修一君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     大野敬太郎君

  枝野 幸男君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     越智 隆雄君

  古本伸一郎君     枝野 幸男君

    ―――――――――――――

五月十七日

 株式会社海外需要開拓支援機構法案(内閣提出第三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官由木文彦君及び消費者庁審議官菅久修一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田達夫君。

福田(達)委員 おはようございます。

 まず、委員長初め理事の皆様に、このような総理出席という大変な質問の場を与えていただきましたことに、お礼を申し上げます。

 また、総理、十五分という時間でありますけれども、総理の十五分というのは大変に重い。これは、総理に十五分でいいからというふうに言ってきた方々をお断りしてきた立場としてはよくわかっております。その立場でしっかりと総理からお気持ちを伺えればというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 この消費税の転嫁法案、大分審議が進んでおります。話を伺っておりましても、論点というものは大分出そろったかというふうに思っております。その中で総理の御出席をいただいているということで、ぜひこの場では総理に対して、消費税というものをどういうふうにお考えになっているのか。

 消費税、税というものは、政府もしくは政治と国民を結ぶ大切なものであります。そして、この扱い方を誤れば、政府もしくは政治は信頼を失ってしまう。しかし、しっかりとそれに対して国民目線で応えていけば、国民はしっかりと政治のこと、政府のこと、そしてそのリーダーのことを信用してくれる、そう思っております。

 この国会、もしくはそこを中心とする政治というもの、今から考えれば半年前のきのう、衆議院が解散されました。はや半年、まだ半年。この半年で何が変わったか。まず、日本の国の中の雰囲気が随分変わりました。また、海外から見る目も相当変わっているというふうに聞いています。これはもちろん、総理が主導されているアベノミクスまたは外交政策が本当に計画的にばしばしと決まっていく、そのことに対する国民の信頼感、安心感というものがあると思います。

 しかし、私は、総理がことし一月に所信表明をされました、このことに実は国民はもっと目を注いでいるのではないかというふうに思っています。

 所信表明というのは、私が申すまでもなく、これまでどうしても、政府、行政に対して政権の一般的な方向性というものを示す、そういう方向性が強かったと思います。

 今回の所信表明演説におきまして、総理は、もちろんそのことも念頭に置きながら、国民に対して話しかけた。国民一人一人とともにこの国を強くする、強い経済をつくり、強い日本をつくっていく、そのことを大きな声で国民にお届けになりました。そして、一人一人の国民に目線を注ぎ、この日本の国の政治は国民のためにあるんだ、そのことをしっかりと国民の心に刻みつけたと思っています。

 実は私、この所信表明を聞きながら、我々の席はちょうど総理をこの角度に仰ぎ見る角度でありますけれども、非常に胸が熱くなりました。これまでの所信表明、大変いいものもありましたけれども、これほどに国民に対して真っ正面から向かい合っている、そういう所信表明というのはなかったと思います。

 先ほど申し上げましたとおり、政治というものは国民の側にある、そしてその政治を引っ張る指導者が自分たちのために仕事をしている、その実感を持っていただいて初めて、税という負担も求める、しかしその先に国民に対して利益をしっかりとお届けする、その議論ができると思っています。

 この消費税の転嫁法案は、あくまでも消費税の税率引き上げに至る一里塚でありますけれども、ぜひ、この消費税を引き上げるというところまでの大きな範囲を見据え、その先にある国民の生活ということも視野に入れた総理の心意気もしくは御所見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま、福田達夫委員から御質問をいただきました。

 私の父も官房長官としておじい様にお仕えして、私も福田康夫官房長官のもとで官房副長官として大変厳しい御指導をいただいた者として、大変感慨深いものがあるわけでございますが、まさに税とは政治そのものと言ってもいいと思うわけでございます。まさに税こそ、我々政治家がしっかりと、なぜ必要かということを真摯に国民にわかりやすく説明していかなければいけない、その義務を負っている、このように思います。

 どんなに意欲を持っていても、病気や加齢によって思いどおりにならないことがあるわけでございます。そのためにこそセーフティーネットがある、社会保障の仕組みがあるわけでございますが、少子高齢化が進む中において、安定財源を確保して、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立していくことが必要であります。

 今般の一体改革による消費税率引き上げは、こうした問題意識のもと、増大する社会保障の持続性と安心の確保、国の信認性維持のために行うものであります。消費税率の引き上げを初めとする今回の一体改革を着実に実施することによって、国民の暮らしの安心を取り戻すとともに、日本経済の再生などとあわせて、強い日本をつくり、私たちの次の、またその次の世代に立派な国日本を残していきたい、こう考えているところでございます。

福田(達)委員 ありがとうございました。

 総理に、今この段階で税という負担を背負ってしまう方々のみならず、その先の子々孫々までの安心を考えた、その視野の中での消費税の話だというお話を伺いまして、本当に安心いたしました。

 今現在、我々を含みます現役世代、税率が引き上げになるというこの段階においての我々の消費税に対する、もしくは引き上げに対する負担感を下げるには、まず、政府に対する国民の信頼という必要条件の上に、経済の成長という十分条件が乗ってくる必要がやはりあると思っております。

 補正予算に加えまして、一昨日、平成二十五年度の予算が成立いたしました。これによって第二の矢が力強く弓につがえられたというふうに思っております。

 また、これまでは、第一の矢、第二の矢につきましては、大方の方は期待感というものが非常に強かった。しかし一方で、円安による輸入インフレなどで、ある種の懸念というものも同時にあったかもしれないけれども、この第二の矢がしっかりと射込まれることによりまして、その方々に対してもしっかりと成長の実感というものが伝わっていく、そういうふうに思っております。

 また、きょうの日経新聞に載っておりました経済成長の見通し、一三年度、一四年度と続けて、もちろんでこぼこはございますけれども、二%成長が予測されている。そういう中で、四月に成長戦略第一弾、そして本日、成長戦略の第二弾が発表されるということで、国民が、今までは期待感であったものがしっかりと実感につながっていく、そういう計画性のある、切れ目のない政策をやっていただいていると思います。

 ただ、ちょっとここで少し考えなければいけないのは、先ほど、一三年度、一四年度は二%成長を続けるであろうという予測がありましたけれども、実はこの二十年間、失われた二十年というふうに言われておりましたが、この間でも景気の回復局面はあった。特に小泉総理の間に、しばらくの間、長い間の回復局面があったわけですけれども、この景気回復局面は、好況というか実感のないという形容詞をつけて語られました。

 私も、今回、選挙戦を初めて戦わせていただく中、その中の一つの項目は、地域を強くする、地域の経済の再活性化、そういうことを申し上げました。ただ、考えてみますと、このことは大分長い間語られているのかなと思います。

 また、先ほど申し上げました景気の実感、全体としては日本の成長は伸びているけれども、その実感がなかなか景況感として伝わってこなかった。このギャップは何なんだろうか。このことをあわせて考えると、やはり、私は、中小企業及び小規模事業者、こちらに対する目線というか目配りというものが必要なのかなというふうに思っています。

 我が国の国民の六割から七割は中小企業及び小規模事業者、その企業に生活の礎があります。ただ、日銀の短観等を見ましても、景気回復局面においても、大企業の製造業、非製造業は好況感を得ていても、中小企業の製造業はぎりぎり、非製造業に至っては好況感を全く得ていない。このギャップにしっかりと目を当てて、日を当てていかなければ、日本全体の成長というものが、国民全体そしてまさに一人一人の生活に対しての目配りというか、安心感につながらないのかなというふうに思っています。

 マクロ経済においては、次元の違うマクロ経済を打ち出していただいた総理であります。マクロ経済を一人一人の生活に直結する中小企業につなげていただくよう、次元の違う中小企業政策等をぜひ打ち出していただきたい、もしくはその目配りがあるということを皆さんにお伝えしていただきたいと思っております。

 この転嫁法案を丁寧にこれだけやっていること自身が実は中小企業に対する目配りだと思っておりますけれども、その辺について明確に御説明をいただければと思います。では、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 中小企業、小規模事業者こそ、我が国の経済を支えている土台と言ってもいいと思います。

 よく誤解があるんですが、自民党は大企業寄り、これは全くの誤解であることは皆さんがよく御承知のとおりだ。私たちを地域で支えていただいているのは、まさに中小企業、小規模事業者なんですね。ですから、恐らく皆さんは、地元に帰られてずっと地元を歩くときに、接する相手は大企業ではないと思いますよ。その一〇〇%は、皆さん大体、中小企業、小規模事業者なんだろう、こう思うわけであります。

 これまでも、多様な中小企業、小規模事業者に対してきめ細かな対応を図るため、全国各地の中小企業、小規模事業者の生の声を伺ってきました。皆さんもそうだと思います。先日も私は、大田区の町工場で開催された“ちいさな企業”成長本部に出席し、中小企業、小規模事業者の実情や要望を私自身がじかに伺っております。

 こうした生の声を受けて、平成二十四年度補正予算と平成二十五年度当初予算において、大規模かつ切れ目のない中小企業、小規模事業者対策を講じております。

 例えば、民主党政権の仕分けによって予算計上が見送られたものづくり補助金を復活させ、一万社のものづくり中小企業、小規模事業者の試作開発、設備投資などを支援しております。そして、約八千二百まで拡大した、全国津々浦々の税理士、弁護士等の認定支援機関がきめ細かく経営改善計画策定を支援しております。

 今後とも、中小企業、小規模事業者の生の声をきめ細かく伺いながら施策を進めていきたいと思いますし、こういう皆さんに景気の回復を実感していただいて初めて、我々の政策はうまくいっていると言える状況になってくるんだろう、このように思っております。

菅原副大臣 福田委員のお地元の群馬・高崎を初め、全国の四百二十万社は中小企業、このうち小規模事業者が八七%であります。

 御指摘のとおり、その中小・小規模事業者に対していかにきめ細かな施策をやるかが今後の真の成長の糧になる、このように捉えておりまして、今総理からもお話がありましたような、生の声を聞いて、それを、今般の補正予算、過去最大の、経産省、中小企業庁といたしましても、一兆二千億のうち半分の五千四百億円を中小・小規模事業者対策としてとらせていただきました。

 今お話があったものづくり補助金の復活、また八千二百に及ぶ認定支援機関における経営改善計画支援、これも四百五億円とらせていただきました。そして、中小企業、小規模事業者のさまざまな施策に対してワンストップで、いろいろな施策を国として、政府として、地域においてサービスを受けやすくする、こういった例えば手続の簡素化といったものも取り組んでいきたいと思います。

 いずれにしましても、福田委員の御指摘の中小・小規模事業者に対するきめ細かな対策によって、それが製造業であろうが非製造業であろうが、日本の成長のプラットホームになるように努めていきたいと思っております。

福田(達)委員 ありがとうございました。

 多分、地方にいてなかなかこれまで成長の実感がなかった方々も、これからに対して非常に強い期待を持ったと思います。

 最後になりました。時間がなくなってまいりました。稲田大臣にお尋ねいたします。

 今まで話してきましたとおり、とにかく成長の実感を得ていただかなければ国民の安心はない、将来への安心感がなければ、やはり政治に対する支持もなかなか得られない。そういう中で、今大切なのは、総理が主導されています経済をいかに元気にするかでありますけれども、この問題は難しくて、消費税を適切に転嫁しなければいけないという、ある意味自由な競争を阻害してしまうようなことと、一方で、公正かつ自由な競争というものを両立しなければいけない、非常に難しいかじ取りを今大臣は担っていらっしゃると思います。

 ぜひ、大臣の思っていらっしゃる経済社会のあり方、そういう世界観というものについて一言いただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。

富田委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力願います。

稲田国務大臣 ありがとうございます。

 公正取引委員会の使命は、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法を禁止することによって、自由かつ公正な競争を確保することであると思います。

 委員御指摘のとおり、自由な競争は必要ですけれども、一方で、不公正な取引は制限することによって社会正義の実現をしていかなければならないと考えております。

福田(達)委員 ありがとうございました。

富田委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、安倍総理に入っていただいての充実した法案審議にしていかなければならないと思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 この消費税の転嫁対策特別措置法案に関しましては、これまで、政府との間で、また参考人も迎えて質疑を重ねてきた中で、議論は相当深まってきたものと考えております。そこで、本日は、私として、また公明党として重要と考える事項について、改めて安倍総理並びに関係大臣の御見解をお伺いしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、安倍総理の政治的なリーダーシップ、いわゆるアベノミクスにより、我が国の経済は息を吹き返し始めたように感じます。しかしその一方で、その恩恵が、私の地元でもございますけれども、我が国経済を担う中小企業、そして国民の一人一人にまでまだ行き渡っているわけではないと感じております。そうした経済状況下における消費税の引き上げがまたもや景気の腰折れを招くのではないか、そうした心配をする向きも多いわけでございます。景気の先行きを心配する消費者はもちろんのこと、税率引き上げ分の転嫁ができるかどうか、我が国経済を担う中小企業の皆さんはそのことを不安に思っているわけであります。

 そこで、政府・与党としては、今回提案されている転嫁対策特別措置法案を中心とする転嫁対策により、中小事業者に対する転嫁対策に万全を期す、そのことについて改めて総理の決意をお伺いさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 消費税率の引き上げに際して、多くの中小企業者の方々から、消費税の価格転嫁について不安の声が寄せられているわけであります。

 中小企業を含めた事業者の方々が転嫁しやすい環境を整備することは、重要な課題でございます。このため、本法案では、消費税の転嫁拒否等の行為をより効果的かつ迅速に取り締まる観点から、公正取引委員会だけでなく、中小企業庁や事業を所管する大臣にも調査や指導を行う権限を付与するなど、これまでにないさまざまな措置を盛り込んでいます。

 本法案の内容を含めて、政府一丸となって実効性のある強力な転嫁対策を実施していく考えでございます。

江田(康)委員 引き続き、消費税引き上げの意義と国民への広報の必要性についてお伺いさせていただきます。

 今般の社会保障・税一体改革は、消費税率引き上げを通じて、国民の皆様に広く御負担いただくことで社会保障の財源を確保して、持続可能なものとするとともに充実させるといったことを目的としております。その引き上げの時期については、名目、実質の経済成長率、物価動向、種々の経済指標を確認して、経済状況を総合的に勘案して判断することとしているわけであります。

 アベノミクスの効果によって景気が回復へ向かっていると言われる一方で、先ほど申しましたように、中小企業からはいまだ効果を実感できないとの声もあります。また、国民からは、消費税引き上げ時期についてはいまだ疑問であるとの議論もありました。さらに、中小企業を代表する参考人の皆様からは、価格に増税分を転嫁しやすくする対策としても消費税引き上げの意義、必要性を広く国民に知らしめる必要があるという要望が強かったわけであります。

 事業者が消費税を円滑かつ適正に転嫁するためには、消費者である国民の増税に対する十分な理解が必要不可欠でございます。したがいまして、消費税の引き上げの趣旨、消費税の円滑かつ適正な転嫁について、国民各位に広く御理解をいただくように、日本全国の隅々まで知れ渡るように、これまでにない規模の徹底した広報に取り組む必要があると考えます。

 政府として、どのような内容で、またどのような時期に、どのような方法で万全の広報を行っていくか、総理に御見解をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 今般の一体改革による消費税率の引き上げは、増大する社会保障費に対応するため、その持続性と安心の確保、そして国の信認の維持のために行うものであります。税率引き上げによる増収分は、全額社会保障財源化し、国民に還元することとしております。こうしたことについて、広く国民の皆様に御理解をいただきたいと考えています。

 また、消費税の円滑かつ適正な転嫁のためには、消費者や事業者の方々に転嫁等に関する理解を深めていただくことが非常に重要であります。

 このため、消費者の方々に対しては、消費税率引き上げの趣旨、意義や、価格への転嫁を通じて最終的に消費者に負担していただくことが予定されているという消費税の性格について、引き続き、さまざまな機会を捉えて丁寧に御説明していきたいと考えています。

 事業者の方々については、本法案成立後、法案の内容を含めた転嫁対策等について、パンフレットや業界向け等の説明会を開催するなど、徹底した周知広報を行ってまいります。

江田(康)委員 こういう万全の広報をしっかりとやっていただくことが、まず第一であると思います。消費税の転嫁をしっかりとしたものにするためには国民の理解が第一でございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、監視、相談体制の整備が重要だということを指摘させていただきたいんですが、運用面が大事でございます。

 本法案では、消費税を円滑かつ適正に転嫁しやすい環境を整備するために、相談窓口の設置、また専門知識を持った調査員の配置を行うこととしておりますけれども、これまでの導入時また引き上げ時にはなかった画期的な内容になっております。

 しかし、議論の中では、一般的に価格交渉力が弱い中小企業の皆さんにとっては、書面もしくは相談窓口へ訴えると、仮にこの情報が漏れるとその時点で取引を失ってしまう、そういうような懸念を初めとして、実態の把握はなかなか困難をきわめるのではないかと私は思います。

 よって、本法案における各省庁への転嫁拒否行為の取り締まり権限の付与を通じて、中小零細企業が消費税を転嫁できるように政府を挙げて取り組んでいくことは重要でございますけれども、これを実効性あるものにするためには、やはり今までにない定期的な、大規模な書面調査の実施による違反行為の情報収集、また事業者に対するワンストップでのきめ細かい相談体制の構築、これらによって転嫁拒否行為を監視するとともに、事業者の保護にもしっかりと細心の注意を払ってきめ細かな対応をしていく、そういう万全の体制が必要不可欠であると思っております。

 こうした取り組みに対して、政府としてどのような体制で万全の対応をしていこうとされているのか、具体的に、国民にわかりやすく、中小企業の皆様に示していただきたい。よろしくお願いを申し上げます。

稲田国務大臣 委員御指摘のとおり、消費税の意義、そしてまた転嫁対策にしっかり取り組むということが重要であると認識をいたしております。

 本法案では、転嫁拒否等の行為を迅速かつ効果的に取り締まるため、公正取引委員会、中小企業庁のほか、事業を所管する各省庁にも調査、指導等に関する権限を付与いたしております。

 このほか、これまでに例を見ない規模の書面調査を実施したり、各省庁のみならず、地方自治体に相談窓口を設けたりすることによって、積極的な情報の収集及びきめ細かな相談対応を行うことといたしております。

 政府といたしましては、これらにより、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のため、万全を期することにいたしております。

江田(康)委員 引き続いて、転嫁を阻害する表示の是正について、これは総理に伺っておきたいと思います。

 本法案では、消費税分を値引きする等の宣伝や広告が禁止されることになります。消費者の立場からすれば、価格が上がらないことは歓迎すべきという意見もございます。しかし、繰り返しになりますけれども、消費税は最終的に消費者に負担していただくものですから、特定の事業者が負担せざるを得なくなるような事態が起きてはならないわけであります。

 一方で、値引き等の広告、宣伝等は、企業にとって重要な事業活動の手段であります。これに対してどこまで制限を課してよいのか、そうした議論もございました。

 本法案にかかわる審議において、こうした議論が活発に行われて、禁止される広告、宣伝の表現等々が明確化されていったことは非常によかったと思っております。しかし、私としては、この議論の中で、ともすれば規制の本質的な意義が忘れられているのではないか、そのような心配もしております。

 そこで、消費税の円滑かつ適正な転嫁を図る上で、事業者の企業活動を制限してまでも今回のような表示規制を行うことがなぜ必要なのか、その点について、総理から改めてお伺いをさせていただきたい。

安倍内閣総理大臣 第八条の規定は、消費税の負担について、消費者の誤認を防ぎ、納入業者の買いたたきや周辺の小売業者の転嫁が困難になることを防止するため、消費税分を値引く等の表示を禁止するものでありまして、このような広告、宣伝を禁止することにより、消費税の円滑かつ適正な転嫁に資するものであると考えます。

 なお、本法案第八条の規定は、あくまで消費税分を値引きする等の宣伝や広告を禁止するものであり、事業者の企業努力による価格設定自体を制限するものではございません。

江田(康)委員 明確な答弁、ありがとうございます。

 最後になりますけれども、中小企業の支援策についてお伺いをさせていただいて、終わりたいと思うんです。

 このたびの消費税引き上げは、一年半という短い期間に二回も引き上げをしていくことになります。もしも、来年四月からの引き上げ時に中小零細企業が消費税を円滑に転嫁できなければ、再来年における再度の引き上げにも影響が及ぶことになることは容易に予想されます。

 転嫁対策を通じた中小企業施策の充実は必要不可欠、そう言わざるを得ません。消費税引き上げに当たって、日本の屋台骨である中小零細企業をどのように守っていくのか、どのような中小零細企業対策を講じていくのか、見解をお伺いいたします。

 また、中小零細企業とともに最も懸念されるのは、低所得者の皆様でもあります。軽減税率の導入など、低所得者対策が必要不可欠である、この点、公明党はかねてから強く主張してまいったところでございますけれども、改めて、総理の基本的な考えをお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 中小企業、小規模事業者は、日本経済の足腰を強くし、地域の経済と雇用を支える重要な存在と認識しております。

 消費税の引き上げに当たっては、中小企業、小規模事業者が消費税を価格に転嫁しやすい環境を整備するため、本法案に基づき、政府一丸となって実効性のある強力な転嫁対策を講じてまいります。

 また、多様な中小企業、小規模事業者に対してきめ細かな対応を図るため、全国各地の中小企業、小規模事業者の生の声を伺ってまいりました。先ほども申し上げましたが、先日も大田区の町工場で開催された“ちいさな企業”成長本部に出席し、中小企業、小規模事業者の実情や要望を私自身が直接伺っているところでございます。

 こうした生の声を受けて、平成二十四年度補正予算と平成二十五年度当初予算において、大規模かつ切れ目のない中小企業、小規模事業者対策を講じているところでございます。

 今後とも、中小企業、小規模事業者の生の声を生かし、きめ細かな対策を講じてまいりたいと思います。

 また、消費税率引き上げに当たっての低所得者対策については、税制抜本改革法において、給付つき税額控除と複数税率がともに検討課題とされ、消費税率八%段階からいずれかの施策の実現までの間の暫定的、臨時的な措置として、簡素な給付措置を実施することとされております。

 本年二月の三党合意において、引き続き協議を行うとされているところでありまして、与党間及び三党間での議論を踏まえながら、法律の規定に沿って検討してまいりたいと思います。

江田(康)委員 きょうは、総理から貴重な答弁をいただきました。政府一丸となって、万全の体制で臨んでいただきますようによろしくお願いを申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介であります。

 質問の機会をいただき、感謝申し上げます。

 総理には、経済財政政策の基本的な考え方また運営方針を、せっかくの機会ですからお伺いしたいと思います。

 早速質問に入りたいと思います。

 委員長のお許しを得て、資料を配付させていただいております。一ページ目をごらんいただければと思うんです。

 まず、最近の長期金利の上昇についてお伺いをしたいと思います。

 このグラフは、十年物国債の新発債の金利、これは長期金利の指標となるものでありますけれども、この金利の推移のグラフであります。御案内のとおり、四月四日から急上昇しているわけでありますが、特にここのところ大変上昇した。昨日の終わり値は〇・八四でありますけれども、一時期〇・九%、一年一カ月ぶりの大変高い水準となりました。

 まず、総理、こうした四月に入ってからの急上昇の要因は一体何だと受けとめていらっしゃるのか。また、長期金利が急上昇するということは、私は日本経済にとって大変大きなマイナスの影響が出てくると懸念するわけでありますが、総理御自身はどのようにお考えでしょうか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 本年頭に〇・八%台前半であった長期金利は、その後、徐々に低下してまいりましたが、四月四日の金融政策決定会合後、翌五日には一時〇・三一五%まで低下し、史上最低金利を更新した後、〇・六二〇%まで急上昇したことや、先週金曜日以来、円安の進行や株価の上昇とあわせて、三日間で〇・六%から〇・八五%程度まで急速に上昇したことは承知しておりますが、それらの動きについてコメントすることは、市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論としてお尋ねの点にお答えするとすれば、仮に、財政の持続可能性への信頼が失われることなどの理由により国債価格が急速に下落し、金利が高騰するようなことがあれば、企業の資金調達を妨げ、景気回復の足かせとなる、住宅ローンの返済増などを通じて国民の負担増となる、そして国債の利払い費の増加により財政収支が悪化するなど、経済財政、国民生活に大きな影響が及ぶと考えられます。

 政府としては、そのような事態を決して招くことがないよう、国債の安定的な消化が確保されるような国債管理政策にも努めるとともに、政府、日本銀行の共同声明にあるとおり、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進し、市場の信認を確保していくこととしております。

 なお、お尋ねの国債の利払い費については、財務省が本年三月に予算委員会へ提出した「平成二十五年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」において、二十六年度以降長期金利が一%上昇した場合、国債費は二十六年度で一兆円、二十七年度までに二・四兆円増加すると試算しているところでございます。

近藤(洋)委員 次に質問しようと思うものについても御丁寧にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 まさに、短期のことにコメントしないというのはそのとおりでありますが、金利が急上昇するということは、もう既に住宅ローン金利も上がっておりますし、生活に大変大きな影響を与える、中小企業の方にとっても資金繰りに苦労する、こういうことであります。緩やかな上昇は、それはそれで結構なことであります、期待ということでありますから。ただ、金利の急上昇は基本的には百害あって一利なしだと私は思いますし、総理も、大変大きな影響があるということをお答えいただきました。

 また、特に心配なのは、国債の利払い費の増大であります。総理がお答えいただいたように、政府においても、一%上昇しただけで、二十六年度一年間で財政負担が一兆円ふえる。その翌年度になるとさらに雪だるま式にふえる、こういうことであります。

 今、総理はこういうふうにきちんとお答えいただいたんですけれども、きのうのこの法案の連合審査の場において、私は、麻生副総理・財務大臣の答弁に驚きました。

 我が同僚の古本議員の質問は、現在のマーケット、さまざまな指標があるけれども、何に最初に目が行きますかという質問でございました。株価だ、そして為替だ、こういうお答えでした。甘利経済再生担当大臣にも同様の質問をしました。株価、為替、そしてあわせて、甘利先生は経済産業政策にお詳しいので、原油ともお答えになりました。誰も金利、長期金利とお答えにならなかった。

 これに驚いた古本議員は、藤井裕久財務大臣から、かつて我々民主党政権下で、今どうなっているかと聞かれて答えなければいけないのは少なくとも長期金利だ、これを頭をたたき込んでおけと教わったという話をされた。そのことを麻生副総理に申し上げたところ、藤井先生は古い政治家だから長期金利なんでしょうかな、こうお答えになったわけであります。

 まさに日本の今の状況において、金利の動向というのは、非常に神経質にならなければいけない。ところが、仮にも財務大臣が、金利に対して関心を持つのは古い政治家だと答弁されたこの感覚、私は非常に副総理・財務大臣としては麻痺していると思いますが、今のお話を聞いて、総理、どのように受けとめになりますか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 私自身、財務大臣そして甘利担当大臣の発言について承知をしておりません。

 まさに、今申し上げましたように、経済の動向の上において、株価そして為替、両指数とも重要な指数であります。当然、累積の債務がございますから、先ほど、三番目の問題として、国債の利払い費がふえていくというリスクについてお話をさせていただきました。

 財務大臣もそのことはいつも話をしておられるわけでございますし、御承知のように、財務大臣のところにも私のところにも一日の指標がリアルタイムで出るわけでございますから、十年物の国債の金利の動向については当然注視をしてまいるわけでございます。

 いずれにせよ、我々は、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、そして民間企業の投資を喚起する成長戦略、この三本の矢によって、健全な経済成長、景気回復を目指していきたい、デフレ脱却を目指していきたいと考えているところでございます。

近藤(洋)委員 総理、私は、ここの感覚は非常に大事だと思うんですね。

 というのは、アベノミクス、すなわち、黒田日銀総裁率いる日本銀行が、大胆なというよりも異次元の金融緩和策に取り組まれた。これが大変マーケットに、株式にも、また為替にも影響を与えて、株式相場は大変高騰している、期待感も膨らんでいる、成功だ成功だと政府を挙げておっしゃっている。政府だけじゃなくて、私は新聞記者をやっておりましたけれども、新聞社も過去の主張をまたがらっと変えて、礼賛の嵐であります。驚くばかりであります。

 しかし、この長期金利の動向というのは、実は、アベノミクスの副作用でもあるというか、誤算だったとも思えるんですね。すなわち、日銀が流通市場の七割の買い取りをする、このことによって長期金利を下げたいと黒田さんは当初思っていたけれども、あに図らんや、余りにも多くの買い取りをしてしまったがために流動性がなくなってしまって、結果として、ちょっとしたことで金利がはね上がるというリスクを抱えてしまった。だからこんなに急騰するんですよ。

 実は、アベノミクスの落とし穴がここの金利の急騰にあるという認識、きちんとその認識を、少なくとも財務大臣・副総理は相当慎重に持っていただかなきゃいかぬ。私は、総理はさまざまなことをやらなきゃいかぬから、一々全部に目くばせせいとは言いません。しかし、財務大臣はこのことに相当神経を払わなきゃいけないのにあのような答弁をしているという、この感覚のずれに私は驚愕したし、恐らく財務官僚たちはもっと恐れたんじゃないでしょうか。このことを申し上げたいと思います。

 さて、総理、そこで、財政健全化についてお伺いしたいと思います。

 プライマリーバランスを半減するという目標、資料二ページ目をごらんください。

 民主党政権下で策定した、プライマリーバランス、二〇一五年度までに対GDP比を二〇一〇年度から半減するという目標でございますが、この目標は安倍政権も引き継がれている、国際公約としても引き継がれていると認識しておりますが、いかがかということと、総理自身は、この目標を維持しているということであれば当然達成可能とお考えかと思いますが、この目標を達成可能とお考えですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 国、地方のプライマリーバランスについて、二〇一五年度までに、二〇一〇年度比、赤字の対GDP比を半減、そして二〇二〇年度までに黒字化との財政健全化目標を現政権として閣議決定しております。

 こうした目標の実現を目指し、まずはデフレからの脱却と経済の再生を図るため、三本の矢を一体として実行し、経済を成長させることを通じて税収を増加させていきます。

 同時に、今年度予算については、財政健全化目標を踏まえ、国債発行をできる限り抑制することとし、税収が公債金を上回る状況を回復したところであります。

 今後とも、無駄の撲滅など、歳出の効率化に不断に取り組むとともに、消費税率の引き上げを含む社会保障・税一体改革を着実に推進し、中長期的に持続可能な財政構造の実現を図っていきます。

 今後、経済財政諮問会議において、財政健全化と経済再生との双方を実現するための道筋について検討を進めることとしております。こうした検討を踏まえて、年央の骨太方針において、経済再生の道筋とあわせ、各歳出分野の取り組みなど、財政健全化の基本的方向を示していきます。

 こうした検討状況を踏まえつつ、財政健全化目標を実現するための中期財政計画の具体化の検討を進めております。こうした取り組みを通じて、財政健全化目標の実現を目指してまいります。

近藤(洋)委員 プログラム、これからの手順のことは御丁寧に御答弁いただきました。

 私がお伺いしたいのは、二〇一五年、プライマリーバランス半減という政府方針は、現時点で政府は引き継いでいるのかいないのかということをまずお伺いしたいんです。どうですか。

安倍内閣総理大臣 今お答えいたしましたように、二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比を二〇一五年度までに半減、そして二〇二〇年度までに黒字化との財政健全化目標を、現政権として閣議決定いたしております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 現政権で閣議決定されている、そしてそのことは引き継がれているということだと思います。具体的な道筋等々については、骨太方針そして財政健全化計画等々をこれから年央に向けて今議論している、こういう御答弁でございました。

 そこで、経済財政諮問会議の場において議論されている、こういうことでございましたが、資料の三枚目をごらんいただければと思います。

 ことしの四月二十二日月曜日に行われた第九回経済財政諮問会議の要旨を抜粋したものでございます。

 ここの議事録で、菅議員、これは菅内閣官房長官でございますが、「二〇一五年のプライマリーバランスの半減は、現実的に二年である。この提案は、骨太のときに、もう一度きちんと考えるという理解でよいのか。私どもは約束しているが。」と言って、高橋議員が云々答えた後、菅議員が、「余り固定化しないで、もう少し様子を見ていってはどうか。」こういう発言をされているんですね。

 このことは、すなわち、二〇一五年半減というものを余り固定化しないでもう少し様子を見よう、したがってこの目標を骨太の方針も含めて先送りしよう、こういうふうに少なくとも世間は見てとっております。

 総理、これは官房長官の御発言でございますから、大変重たいと思っておるんですが、現政権で閣議決定したものを見直して、この二〇一五年という期限を先送りするという方向で今政府内で御検討されているんでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど答弁をさせていただきましたように、二〇一五年度までに、二〇一〇年度比、赤字の対GDP比を半減していく、そして二〇二〇年に黒字化していくという目標には変わりがないわけでございまして、財政再建に向けた意思とプランを明確にしていくことは極めて重要であり、引き続き諮問会議において議論を深め、骨太方針において財政健全化目標を掲げてまいりたいと思います。

 なお、今御指摘の菅官房長官の発言は、有識者議員に対して、三本の矢による経済再生の取り組みとの関係で、財政健全化を進めていくことが政策的に可能かという趣旨で、専門的な知見からのコメントを求めたものであると認識しています。

 いずれにせよ、諮問会議において財政健全化と経済再生の双方を実現するための道筋について検討を進め、骨太方針においてその成果をお示ししてまいります。

近藤(洋)委員 誤解を受けかねない発言だったと思うんです。いずれにしろ、骨太方針なりでしっかりしたものを出すという総理のお話でございました。

 それでは、まず、骨太方針であり中期財政計画なわけでありますが、その土台となるいわゆる試算があるわけです。中長期試算というものでございます。これは内閣府においてつくるわけでございます。

 私どもも、政権を担当しているときに成長戦略をつくってまいりました。成長戦略をつくるのとほぼ同時期に、中期財政フレーム、中期、長期の財政計画、これも策定いたしました。その前提となったのが中長期試算というものでございます。この試算があって計画ができて、それと同時に成長戦略ができる。何となれば、ある程度財政的な裏づけがない成長戦略は絵に描いた餅だからであります。

 我々民主党政権下では、私は当時経産政務官としてその策定にかかわりましたが、まさに同時進行でやってまいりましたし、試算は新成長戦略なり財政計画ができる前に出してまいりました。

 さて、総理、この中長期試算でありますけれども、いつ出されるのか。年央にということでございましたから、少なくとも七月前、六月中にこの中長期試算は出されてしかるべきだと思いますが、どのような状況でしょうか。

安倍内閣総理大臣 政府としては、今後、経済財政諮問会議において、財政健全化と経済再生の双方を実現するための道筋について検討を進めていくこととしております。こうした検討を踏まえて、年央の骨太方針において、経済再生の道筋とあわせ、各歳出分野の取り組みなど、財政健全化の基本的方向を示していく考えでございます。

 こうした検討状況も踏まえつつ、財政健全化目標を実現するための中期財政計画の具体化の検討を進めます。

 経済財政の中長期的な試算と展望については、これらを踏まえ、骨太方針からそう長いタイムラグなくお示しすることとしております。よって、御指摘は当たらないと思いますが、いずれにせよ、長期金利の急激な上昇を招くことのないように、引き続き、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進し、市場の信認を確保していきたいと考えております。

近藤(洋)委員 総理、市場の信認を確保したいなら、きちんきちんと仕事を進める必要があると思うんですね。

 もう一度伺います。

 年央に出すということですから、骨太方針はサミット前の六月と聞いております、それから余り間を置かずに、少なくとも六月中には中長期の試算を出されて、新成長戦略を大体最終的に取りまとめる。きょうも第二弾が出る。五月雨式に出すというのも、安倍政権ならではのなかなか知恵のあるやり方だなと思いますが、それはある意味で、とろとろ出すことで進んでいるという印象を与えるという意味で、知恵のあると申し上げているんです。

 きちんと最終的にまとめる、七月、すなわち参議院選挙までに。参議院選挙の前までに中長期試算を出し、財政計画を出すというのが市場の信認を得る第一歩だと思いますが、総理大臣、そこはいかがですか。参議院選挙前までに試算を出し、そして中長期計画を出し、新成長戦略を出すというきちんとしたスケジュールをこの場ではっきりさせるべきだと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは別に、選挙の前に出す出さないということではなくて、もちろん、来るべき選挙においては、安倍政権における経済政策の是非を問うという意味において、実績と、これから我々がどのように経済を成長させていくか、同時に財政を再建させていくかということについて御説明していくことは当然でございます。

 一方、今、それぞれについて、中期財政計画と骨太の方針について、どのように検討し、どのようにまとめていくかというお話をさせていただきました。これが基本方針でございますので、そういう中におきまして鋭意検討を進めていきたい、このように思っております。

近藤(洋)委員 総理、そうしてきちんと工程を明らかにしないで、難しい問題を選挙後に先送りするということがあるから、マーケットの信認を得られないんですよ。そういうこともきちんと踏まえなきゃいかぬと思います。

 さて、総理、お伺いしたいと思います。

 内閣官房参与という職掌がございます。きょうは別に、飯島勲さんについてお伺いするつもりはございません。あえて申し上げます。浜田宏一さんも含めての話でございます。

 まず、この内閣官房参与というのは非常勤の国家公務員であります。総理の御意見番であるというのが総務官室の御説明でございました。総理は、この内閣官房参与は政府の一員である、総理の御指名の非常勤国家公務員、職員でありますから、政府の一員であるという認識はございますか。

安倍内閣総理大臣 内閣官房参与は、内閣総理大臣の諮問に答え、意見を述べることを任務として内閣官房に置かれる非常勤の国家公務員であり、一般職であり、政府の職員として勤務していただいていると認識しております。

近藤(洋)委員 そうですね、政府の一職員、かつ政府の一員なんです。しかも、それは、総理に対してまさに直接助言する、先ほど、総理の五分間は貴重だという話がありましたが、まさに貴重な時間を割いて総理に意見する、大事な政府の一員であります。

 その政府の一員だから、これはきのうも伺いましたけれども、例えば、浜田宏一さんにもきちんとした手当が支払われ、飯島さんもそうでありますけれども、四月までの間、二百五十万円を超える公費が支払われています。これは旅費も含めてでございます。

 僕は当然だと思います。官邸にも部屋があると聞きました。大事な仕事をしているんですから当然です。私はこのことは、それだけの国費が支払われ、官邸にも部屋を持ち、そして秘書もいる、当然だと思います、重要な職掌ですから。

 その政府の一員である重要な職掌の浜田参与の御発言なのですが、資料をごらんください。

 消費税、一年先延ばしが私の提案、こう言われております。これは週刊朝日の記事でありますが、週刊朝日だけではありません、ほかの報道機関にも何度もおっしゃっています。浜田さんだけではありません、総理の古くからの御友人であり、かつ参与でもある本田参与も同様の趣旨を発言されています。

 竹中平蔵さん、総理との関係はわかりませんが、少なくとも政府の重要な役職をされている議員でありますが、この方も消費税先送り派です。総理の周りにいる方は皆、消費税先送りを主張され、公言されています。竹中平蔵さんは政府の職員ではありませんが、浜田参与は重要な政府の職員であります。こういった方が先送りを発言されている。

 総理、総理は秋に決めるとおっしゃっていますけれども、十月に決めるとかいろいろなことをおっしゃっていますけれども、こういった方々の発言に相当左右されているんじゃないかと周りの方は見ていますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 消費税につきましては、先ほども申し上げましたように、伸びていく社会保障費に対応するために、社会保障をしっかりと持続性のある安心したものにするために、あるいはまた国の信認を確保するために引き上げを行っていくものでございます。

 同時に、消費税率の引き上げについては、民間企業の契約の実態など、国民生活等への影響を考えて、引き上げの半年前に、本年秋でありますが、附則第十八条にのっとって、名目及び実質の成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案して判断していくわけでございます。

 その後においても、経済財政状況の激変等が生じた場合には適切な対応を行っていくわけでございます。

 今、私がお話をさせていただいたことは浜田参与も本田参与も承知でありますが、そうした中において、さまざまな経済分析について私がいろいろなお話を伺う、これは当然なんだろうと思いますし、お二人とも知見を持った方々であります。

 さまざまな方の意見を総合的に勘案しながら、指標を見ながら、適切に判断していきたいと考えております。

近藤(洋)委員 総理、いろいろな方の意見を聞くのは結構です。それは当然です。ただ、総理の周りにいらっしゃる方々は全部先送り派だというこの事実、そして、その人方が官邸に籍を持っている、重要な政府の一員であるというこの事実を申し上げているわけです。だからこそ、総理はむしろ、秋とかふわふわしたことを言わずに、果断に決断すべきだと思うんです。

 きのう、QEも発表されました。大変すばらしい成長率です。四―六のQEが発表されるのは八月二十一日ごろと聞いています。その時期にはもう材料は出そろっているんです。

 だったら、秋とか十月とか言わずに、大体、秋というのも不明確でありますが、少なくとも九月中に決断する、それぐらいのことはきちんと姿勢として示さないと、先送りするのではないかという市場の懸念は払拭できないと思います。総理、いかがですか、判断の時期を早めるべきじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 まさに経済は生き物であって、例えば昨年の七―九は、民主党政権時代ですが、マイナス三・五%だった。

 ですから、経済がまさに腰折れをして景気が底割れしてはいけないということで、我々は、大型の補正予算を組んで、そしてデフレマインドを払拭させていく。次元の違うものをやらなければいけない、こう私が言い出したのでありますが、まさにそれに応えて異次元の金融緩和をやっていただいて、大きく今マインドが変わろうとしているわけであります。

 消費税については、今私がるる説明してきたとおりでございますが、なぜ消費税を上げるかといえば、これは税収をふやすためでございます。ですから、しっかりと税収がふえていき、社会保障費、あるいは国の信認、こういう目的にかなうものかどうかということをやはりちゃんと的確に判断していきたい、こう考えているところでございます。

近藤(洋)委員 なぜそんなにおびえるんですか。私はよくわかりません。政府のきちんとした姿勢がないから、市場が非常に反応しやすくなっているんですよ。非常に臆病だなと思います。

 ある方が、黒田日銀総裁とかけて山本五十六連合艦隊司令長官と解く、こう言いました。その心は、出口が見えない、もって二年、こういうことであります。

 まさに異次元の金融緩和をされました。そして、この国は大変大きなリスクを背負いました。日本銀行がもしかしたら資本を毀損して債務超過という事態になるのかどうかわかりませんが、そういう大きなリスクも今、実はアベノミクスの裏側で、異次元ですから、背負っているということもあるわけであります。

 ぜひ、政府は逃げずに、消費税増税の判断を早目にきちんとすべきであるということを申し上げて、時間ですので、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 場所柄でしょうか、近藤委員のお力でございましょうか、何やら予算委員会のような様相を呈しておりますけれども、経済産業委員会で法案の審議ということでございますので、法案に関して御質問させていただきたいと思います。

 まず、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案についてということでございます。特に、私、本委員会でも、また本会議でもいろいろ御質問させていただきました。議論は大体出てきていると思いますけれども、私自身は、八条の関係、特に消費税還元セールの広告の禁止に関しまして非常に危惧するところでございますので、本日も、時間をいただきまして、この点に関しまして御質問させていただきます。

 まず、今回の消費税還元セールの広告の禁止に関しましては、かなり政府側の答弁がぶれているんじゃないかという報道や、また我々野党もそのように認識している次第なんですけれども、五月八日に政府の方で、「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方」という形で、統一見解を出されました。

 この「考え方」につきまして、森大臣から、経産委員会の答弁で、これまでの答弁の言い方をわかりやすく修正したものだという御答弁がございました。わかりやすく言い直したということは、同じ内容のものを別の言い方をした、そういう認識でよいのでしょうか。解釈の中身は変えていないということでよろしいでしょうか。改めてお伺いしたいと思います。

亀岡大臣政務官 今委員の御指摘された「考え方」の文書は、これまでの本委員会での審議を踏まえ、政府部内で、本法案第八条の規定で禁止される表示についての考え方を整理し直したものでありまして、これを踏まえて、従前の消費者庁による答弁の言い方をわかりやすく修正したものであります。(発言する者あり)

丸山委員 明確だというお話もありましたが、全くもって明確ではない、どちらともとれるような言い方をされているんじゃないかと、恐らく今お聞きになった方は思うと思います。

 特に、具体的な言いぶり、表現の可否についてお伺いしたいんですが、森大臣の五月十日の御答弁によりますと、いずれにせよ、消費税という文言を用いている場合には禁止されるというお答えがございました。

 消費税という言葉が入っていても、転嫁の阻害とは関係ない、きちんと転嫁されている形の表現であれば問題ないんでしょうか。つまり、政府提出法案の状態では、消費税という言葉が入っていれば一律に規制されるのか、それとも、例えば、消費税適正転嫁済み値下げセールだとか、消費税適正転嫁済み三%値下げセール、転嫁済み税等価分値下げセールといった形での表現というのは、消費税という言葉は入っていますが、問題ないという認識でよろしいんでしょうか。どのようにお答えになりますか。

亀岡大臣政務官 本法案第八条の規定は、消費税分を値引きする等の宣伝や広告を禁止するものでありまして、消費税という言葉が使用されているものであっても、第八条各号に当たる、消費税分を値引きする等の宣伝や広告に当たらない場合には、禁止されるものではありません。

 今御指摘になったように、例えば、消費税適正転嫁済み値下げセール、もう転嫁済みということで、それと関係なく値下げしますよということであれば問題ないと思いますし、例えば、消費税適正転嫁済み税等価格値下げセールということになりますと、これは問題が出るというふうに考えられると思います。

丸山委員 皆さん今お聞きになってお思いになったと思うのですが、非常にややこしく複雑で、まさしく……(発言する者あり)いや、どういう表現かというのは民間の方がお決めになるので、そういうことが出てくる可能性もある。

 森大臣の御答弁では、いずれにせよ、消費税という文言を用いている場合には禁止するとおっしゃったんですよ。でも、今のお話だと、消費税が入っても可能性があるということでございます。

 また、今回、民主党さんや与党さんの方で修正案を出されるというお話を伺っています。

 もし、今回の修正で、消費税等の関連を明示しているものという文言を法文に追加する場合、このときに、政府提出法案では規制されるはずであった表現から、今回、もしこの文言がつくということであれば、消費税の関連を明示していないものは除くという法解釈になるということでよろしいんでしょうか。

 つまり、具体的には、消費税という単語自体が入っていても、関連性が明示されていなければ規制にならないという解釈でよろしいですね。

亀岡大臣政務官 政府といたしましては、仮定の修正を前提とした御質問にお答えすることは差し控えたいと思います。

丸山委員 この後、もし修正して、要は、一文字一文字厳格に決まっている法文を変えるということは、意味や中身がもちろん変わるということでございます。

 この委員会でも、さんざんこの八条で規制される表現について議論してきました。そして、それを受けて、統一見解という形で政府側で出されたところでございます。森大臣のお言葉では、統一見解を変えることはありません、最終責任者は森大臣ですという御答弁でございました。

 法文が変わるのであれば、もちろん統一見解の認識も変わるのじゃないかという懸念がありますし、これだけ八条で規制されている表現についてこの委員会で議論を行った中で、もしその部分に変更があるのならば、詳細を審議しなければならないのが筋だと思うんですけれども、それに関しまして、仮定の話でわかりませんという御答弁では、では、今までの委員会は何だったんだというふうになりかねないんじゃないでしょうか。

 そういった意味で、法文や、いずれにしろ消費税という文言を用いている場合には禁止されるという統一見解というのは、現時点の政府提案を出されている政府として、森大臣のお話はそうでしたが、それは変わらないという認識でよろしいのかどうか、もう一度お答えください。

亀岡大臣政務官 今委員会で議論をいただいている仮定の話でありまして、仮定の中で、修正というものにお答えすることはできませんので、同じ答弁で申しわけありませんが、差し控えさせていただきます。

丸山委員 今のお答えを聞いても、非常に矛盾に満ちた、何のためのこの委員会審査だったのか、また、表現もこれから変わりようがある、何とでも規制できるという怪しげな、解釈によっては何とでもできてしまうような法案ではないかというふうに危惧しております。

 そして次に、広告規制と買いたたきの是正についての因果関係やデータのお話について伺いたいと思います。

 先日の連合審査会でも馬淵委員から御質問がありました。政府・与党でのヒアリングをもって決められたという御答弁がございましたが、前回、消費税増税時の検証データや、政府内で検討された、そういった形のものがないということでございます。

 これまでの委員会と、先ほども申し上げた十六日の、きのうの連合審査会でもあったように、本当に検証されたデータや、また、ヒアリング以外で、政府・与党ではなく、政府内でそういった旨の検討の場というのはなかったのかどうか、もう一度お答えください。

亀岡大臣政務官 小売事業者が本法案第八条で禁止される表示をすることによって、納入業者に対する買いたたきが行われることを懸念する声や、消費税の引き上げを見越し、中小企業者が小売業者から消費税分の値引きを求められているとの声、また、地域の商店街の方々が追従を余儀なくされ、消費税相当税額分を値引きせざるを得なくなり、円滑な転嫁が行えなくなることを懸念する声も聞かれるところであります。

 本法案第八条に規定される表示を禁止することは、消費者に消費税の負担について誤認を与えないようにするとともに、納入業者が消費税の転嫁を適正に行い、また、地域の商店街の方々が消費者に消費税を適正に転嫁できる環境を整備することに資するものであると考えており、これらは必ずしも具体的な数字等であらわされるものではないと思っております。

 本法案の目的である消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するに当たって必要な措置であると考えておりまして、民間の個人的なデータというものはありません。

丸山委員 総理、今お聞きになったように、前回の消費税増税時にも、どういった状況であったかという検証もなされていない。また、今のお話でしたら、ここの表現も変わる可能性があるということでございます。

 消費税の上がるタイミング、もし仮に上がるということであれば、来年の四月のタイミングでのこの法案の施行という形になってくるんですけれども、消費税が上がるとどうしても、買いだめの反動という形で、消費者心理が冷え込んでいく、経済が冷え込みかねないという、アベノミクスにとっても問題が生じてくる状況も十分に考えられると思います。そうした中で、こういった民間の自由な商行為や広告表現といったアイデアを萎縮せざるを得ないようなこんな法案を出すのはいかがなものかと我々は考えます。

 広告をする場合でも、実際に買いたたいていない取引もあって、買いたたいているものももちろんあるかもしれません、広告自体の取引に関する因果関係が薄い中で、また、過剰かつ曖昧な規制で、因果関係も不明確な、このような法案が、さんざんこの委員会で、私自身も指摘してきましたけれども、提出されていること自体が大きな問題じゃないかというふうに考えております。

 小手先の修正、統一見解を出されただけじゃなくて、ここは広告規制自体を落とすべきではないかと考えるんですが、総理大臣の見解としてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 本法案の第八条の規定は、あくまで消費税分を値引きする等の広告や宣伝を禁止するものでありまして、事業者の企業努力による価格設定自体を制限するものではありません。

 また、本規定は、消費税の負担について、消費者の誤認を防ぎ、納入業者の買いたたきや周辺の小売業者の転嫁が困難になることを防止するための、消費税分を値引く等の表示を禁止するものであり、このような広告、宣伝を禁止することにより、買いたたき等の未然防止にも資するものと考えている次第でございます。

 いずれにせよ、納入業者等々から転嫁できないのではないかという強い不安の声も寄せられていることも事実であり、適当なものだ、このように考えております。

丸山委員 卸の方から小売業者に対してそういった不安の声があるというのは、もちろんわかっております。

 ただ、どうしても、そうした中で、広告規制という手段と消費税の価格転嫁の円滑化という目的の因果関係の問題だとか、また、そもそも政府が望むような結果が恐らく出ないというのがもう見えていまして、三%値下げセールはオーケーだと言ってしまっているんですからね、そういった意味では、ざる法のような、もうこんな無駄な時間や資源を割くような、人員、予算を割くようなことはやめて、実際の、今総理がおっしゃった、買いたたきのチェックの部分の強化にやはりそういった資源を充てるべきだというふうに考えます。

 しかも、もう政府の方で、こういったセールがあるときには不正取引がある可能性があるということを認識しているということでございますので、そのセールがなされた場合には重点的にチェックをすればいい話で、何も広告を規制することではない。むしろそのチェックの方に力を注いでいただくのが一番必要なことではないかというふうに考えるんですが、総理の見解はいかがでしょうか。

亀岡大臣政務官 今、第八条の規定についていろいろいただきました。

 消費税の負担について、消費者の誤認を防ぎ、納入業者の買いたたきや周辺の小売業者の転嫁が困難になることを防止するために、消費税分を値引く等の表示を禁止するためのものであり、景品表示法上では規制できない表示についても規制するものであります。

 ですから、本法案は、第三条で消費税の転嫁拒否等の行為を禁止する規定を設けるなど、本法案に規定された数々の施策が一体となって、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するために必要かつ十分な措置を設けるものと思っておりまして、措置と消費税の転嫁の円滑化という目的がしっかりとかみ合っておるというふうに考えております。

丸山委員 時間が来ましたので最後にしますけれども、総理に、しっかりこの問題、景気の腰折れを招きかねない問題でございますので、最後、御決意をお伺いして私の質問を終わろうと思います。

安倍内閣総理大臣 消費税を引き上げるかどうかについては、まさに、これは種々の指標等を勘案した上において適切に判断していきたい、その上において、この消費税の円滑な実施、円滑な転嫁がなされるように努力をしていきたい、このように思っております。

丸山委員 以上で質問を終わります。

富田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 きょうは、今まで十八時間ぐらい審議をしてきた最終日ということなんですけれども、特に本法案の八条を、やはり皆さん相当いろいろなことを言われていると思うんです。私、全体的に考えて、この法案は実効性がやはりないんじゃないかなとどうしても思ってしまうんですね。

 なぜならば、やはり、今までの政府の答弁を聞いていても、一貫性がなかったことは事実だと私は思っています。

 それから、それぞれの委員の方々がいろいろバラエティーに富んだ質問をされました。その際に、いろいろな形で御答弁をいただいたんですけれども、いろいろな委員の方々も指摘されておりますけれども、一貫性がやはりなかったんですね。

 そんな中で、例えば数百名の転嫁調査官を置いたとしても、世間の商行為というのは、物を売らんとしたときにどういうことを考えて売っているか。やはり、皆さん、世間一般の方々は、何とか物を売らんという意欲で、いろいろなアイデア、想像してやってくると思うんです。それは、恐らく、ここの中の委員の方々がいろいろな質問をされました、いろいろなモデルケースの質問がありましたけれども、そんなものじゃないと私は思っているんですね。もっといろいろなことがある。

 先ほど、丸山委員も話をしていましたけれども、どうして細かくこういうことを聞くかというと、稲田大臣もおっしゃられていましたけれども、消費者の誤認を招くようなおそれがあるようなものはやはりだめだということだと思うんですね。

 ただ、消費者の誤認を招くというよりも、まず最初に、今までの委員会の中で、政府の方々の答弁自体が誤認を招くようなものなんじゃないかなというふうに私は思っているんです。この法案自体も、うまくちゃんとやらないと誤認を招いてしまうというふうに考えておりまして、その中で、やはりその一番大きなものというのは、このガイドラインをしっかりと整備していくことだと思うんですね。

 これは、私、あえて総理に聞かせていただきたいんですけれども、これから先、ガイドラインができてくる、しっかりとしたものができて、国民の皆さんの誤認を招かないようなガイドラインができるという勝算はあるんですか、あるとしたらその理由は何なのかということを、しっかりと理由も付してお話しいただければと思います。

稲田国務大臣 委員が、御自身の商社マンとしての経験を生かして、一回目の質疑のときだったでしょうか、御自身が物を買ってもらいたいがために、その相手方の取引先の課長とかの好きな飲料を調査して、それを先に買って置いておかなきゃいけないんだという、すごく印象的なお話をなさいました。

 また、委員は、やはり消費税というのは国民広くが負担しなきゃいけないものであって、消費税をいただきませんなんということをセールの文言でやること自体が公序良俗に反していて、こんな条文はなくても違法なんだということもおっしゃって、大変私は印象深かったんです。

 しかし、私は、消費税の二度にわたる増税時において消費税の転嫁ができなくなる、そういう事態を防ぐために、あえてこの法案をつくることによって、抑止的な効果もあるでしょうし、国民全体に消費税の意義、そして転嫁はしていかなきゃいけないんだということを知らしめる意義があるというふうに認識いたしております。

木下委員 総理にも、今、稲田大臣のお言葉がありましたけれども、その裏打ちとして一言お願いしたいんですけれども。

安倍内閣総理大臣 今、大臣から答弁させていただきましたように、全ての国民の皆様に、消費税について、いわば伸びていく社会保障費、子育て対策も入っておりますが、そうした社会保障費に対してしっかりと対応していく、財政上の持続性を確保していく、また国の信認においても必要だ、これは全ての国民によってみんなで支えていこうということでお願いをしていくわけでございますから、だからこそ転嫁しないという考え方自体が間違っているということでございます。

 それを法律的に担保していこうということでございますし、また、法律的に担保していくということを通して、国民の皆様に、これはみんなで支えていくものですよということを御理解していただきたい、このように思います。

木下委員 ありがとうございます。

 稲田大臣、先ほどお話しいただきましたけれども、消費税は最終需要家である国民がやはり負担するんだということを明確にぼんと言ってもらう、これは重ねてやはり言うべきだと思っていて、そこが一番大きな問題というかポイントだと思っているんですね。

 ただ、やはり、今回の法案を見ていったら、先ほど私が一番最初に話しましたけれども、どうしても誤認を招く可能性が相当大きい。これをしっかりやらないと、ガイドラインも含めてしっかりとつくっていかないと、これは……(発言する者あり)そうなんです。事業者が萎縮しちゃうんですね、これをやったらだめなんじゃないかと。

 これをやっていると、今まで総理が言われている、三本目の成長戦略じゃなくてもう統制経済になってしまうんじゃないかと思っておりまして、その点はいかがでしょうか、総理。

稲田国務大臣 この法案で、例えば、対象となる特定事業者、二条で規定をしております。また、三条で、禁止されているものが何であるかということもきちんと規定をいたしております。今問題になっております八条についても、政府の統一見解を出しております。

 そして、おっしゃるように、またこの上にガイドラインで明確にすることはこの法律の執行の実効性を担保する上で非常に重要だと思っておりますし、その上で、やはりこの法律をつくることは意義があると思っております。

木下委員 ガイドラインがやはり重要なんだと思うんです。ここはやはり勝算がないとだめだと思っていまして、そもそも、もう今まで二十時間近くの審議をしている中で、ガイドラインの骨子も含めて明確じゃないということがあったので、この審議がここまで長引いたんだと私は思っているんです。

 ちょっと話がかわります。

 この八条の話は皆さんもたくさん話をされているので、もう一つ、これは私が今までも話をしていたところなんですけれども、三条の話。先ほど丸山議員からもありましたけれども、買いたたきの話ですね。これは、中小企業、小規模事業者をいじめるようなことがあってはならない、そのための措置だというふうに書いてあるんですけれども、その趣旨はすごくいい。例えば、今もおっしゃられていましたけれども、法案の趣旨がわかっていないんじゃないかと。いや、私はわかっているつもりです。

 その上で質問させていただきたいんですけれども、私は逆に、この条項の中に書いてあることでは全く実効性がないんじゃないかと思うんです。なぜならば、今まで私が経験してきた中でも、例えば、大規模小売事業者と、それから物をそこに納める納入業者側、その間で交渉されるとき、どんなことが起こっているかということなんです。

 これは、ちょっと時間がないので、はしょってお話しさせていただきますけれども、普通で考えたら、これで消費税が上がったら、僕らもう物を売れぬようになるというふうに言われ、どんどん売り上げが下がってしまう可能性がある、だから、今まで上がった分を何とかのんでくれへんか、そのかわり、今まで千個買っていたものを千三十個買ってあげるからというふうな話が出てくるんですね。

 そうなったときに、それが中小企業であったり小規模事業者をいじめることに当たるのかというと、これを判断することは私はできないと思うんですね。

 それは、前回の私の質問の中でもありましたけれども、ちょっと例えは悪いんですけれども、セクハラを受けたというふうにいったときに、受けた側の人が、これはセクハラだと思って通報するか、それとも、いや、セクハラじゃない、これは愛情表現だと思ったか、その違いと同じようなもので、この法案の中では、卸売業者の方が通報することによってチェックが入るというふうになっているんです。

 もう一つ言うと、これが普通のパターン、私が商品を納入する側であった場合、こう言うんですよ。逆に、大規模小売業者が言うわけじゃなくて、納入する側が普通は言うんです。このまま継続して商売を続けたいから、今までと同じ価格で出します、そのかわり、たくさん売ってもらって、たくさん買ってくださいというふうに言ったときに、それは、先ほど言ったものと契約書上は全く同じ状態の契約書になるんですね。

 これを取り締まるというふうなことは相当難しいと私は思っていて、その点を考えても、ここの中で取り締まりをするというふうに言っても実効性は相当乏しいんじゃないかなと私は思っているんです。その点はいかがお考えでしょうか。

稲田国務大臣 委員からさまざまな場合分けをして質問をいただいております。そして、前回も今回も、これはまさしくセクハラと同じような問題なんだと。きょう初めて委員のおっしゃっている意味の一端がわかりました。どうしてセクハラと一緒だとおっしゃっているかが何となくわかってきたんですけれども、確かに、セクハラなのか、それとも、合意でというか、別にセクハラと感じていないかというのは、非常に主観的なものもあるし、そして、それを状況の中で判断するというのは非常に難しいんだということが、この場合においてもあるんだということを委員が御指摘になっているんだと思います。

 その上で、だとしても、セクハラかどうかは判断しにくいとしても、やはりセクハラは違法なんです。それと同じように、この法律で認定しにくい場合があったとしても、買いたたきや減額などを取り締まる、そして違法なものとすることには意味があるというふうに思っております。

木下委員 そうなんですよ。そうなんですけれども、私が言っているのは、それを誤認を招く可能性のあるような法案で裁くのではなく、ちゃんと最終需要家がまず最初に消費税は負担するんだ、事業者は消費税をちゃんと納入するんだということを明確に言うことから始まるべきだと私は思っていて、それが基本なんです。

 なのに、この法案は、そういうふうなことをぼんと最初に言っているのではなくて、いやいや、後ほどできるガイドラインでちゃんと網羅性を持って誤認を招かないようにすると言ってきたんです。

 でも、考えてください。ここの委員の人たち、皆さん、十八時間審議してきたんです。この十八時間、いろいろな意見があったじゃないですか。それを考えたら、やはりそれだけ疑義を生じることがたくさんあったということなんですね。これが世の中に出たら、もっと疑義が生じると言わざるを得ないというふうに私は思っております。

 その辺はいかがでしょうか。

稲田国務大臣 委員が、消費税は国民が広く負担をしなきゃいけないんだ、そして、それを広く知らせるということがこの法律の前提であって、非常に重要なことであって、それを払わなくていいというようなセールをするのは公序良俗違反なんだということをおっしゃった。私は、まさしくその正義感に共感をいたします。

 その上で、やはりこの法案は私は必要だというふうに認識をいたしておりますし、この委員会の中でさまざまな議論がなされました。それをきちんとガイドラインの中にも反映してまいりたいと思っております。

木下委員 まさしくそういう方向性がしっかりと示されていれば、私はいいと思うんです。

 ただ、先ほどもちょっと後ろからありましたけれども、議論する必要はないじゃないかというのではなく、これらの議論を通してそういう方向性がしっかりと示されていく、そのためにこの委員会はあると私は思っておりますので、今までの私どもの意見も踏まえて、本当にあるべき姿というのをいま一度考えていただければと思います。

 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 先ほど、いみじくも木下委員がおっしゃったとおり、十八時間、国会の委員会の場で審議を行ってまいりました。

 もともと、この消費税の転嫁の法案に関して、その趣旨というものは理解できないわけではないけれども、実は、この十八時間の議論を経て、議論して考えれば考えるほど、その実効性に疑問符をつけざるを得ないということに、私の中で本当に傾いているわけでございます。

 その内容につきまして、総理への質問等々を含めて、これから質問してまいりたいと思います。

 今回の消費税の円滑転嫁法案に関しては、大きく三つの柱がございます。

 法案の柱の一つは、いわゆる買いたたきの防止。この法律におきましては、消費税増税分をメーカーや卸に押しつけてはならないということを規定しております。

 しかしながら、実は、消費税分をそのまま負担してほしいから、その分、仕入れ値を安くしてほしい、こういうふうに直接依頼した場合には、もちろん規制の対象になるわけでありますけれども、同じ値段じゃないと売れないから同じ値段で納入してくれというふうに言われたら、事実上、適用されないんですね。

 だから、そういう意味では、今の経済状況を前提に考えると、果たしてどこまで実効性があるのかということに対して大きな疑問を持たざるを得ないというのが一点。

 そして、この法案の二つ目の柱というのは、いわゆる広告規制。何度も何度も議論をいたしましたけれども、この議論、審議の過程で政府内において混乱が生じまして、統一的な見解というのがまとめられるに至りましたけれども、結局、出てきた内容は、大山鳴動してネズミ一匹。消費税という文言を含まなければ基本的に規制することはできないというような結論に至っているかと思います。

 そもそも、価格を据え置くということ自体は、消費税が増税されたって、これはもちろん自由なわけですから、どういうふうに表現していくか。消費税ということを使わなくて、単に三%値引きセールもしくは価格据え置きセールということを言ったって規制できないということであれば、これはほぼざる法と言っても過言ではないわけです。

 総理は、今までの審議の過程、全てその場にいらっしゃったわけではありませんから、どこまで御存じかわかりませんけれども、実は、参考人への質疑、招致して意見を伺ったときも、その参考人の口から、事実上効果がありませんということを正面から認めるような見解すら出てきてしまっているわけです。

 そういういわゆる円滑転嫁法案について、総理にお伺いいたします。

 この法案に、具体的に何人の人を雇って、予算として幾ら投じることになっているかということについて御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今般の消費税率の引き上げに際し、中小企業者を中心に、消費税の価格への転嫁に懸念が示されていることは事実でありまして、転嫁しやすい環境の整備は重要な課題であります。

 その際、立場の弱い中小事業者は、みずから違反行為を申し出にくいという実態があることから、大規模な書面調査を行うなど、政府の側から積極的に情報の収集を行うなどの取り組みが必要であります。

 こうしたことから、転嫁対策を執行するために、公正取引委員会及び中小企業庁で新たに約六百人の人員を手当てし、このための予算として、平成二十五年度予算では約十二億円を計上しております。

 このほか、相談体制の整備等のための予算も計上しており、政府としては、これらの予算や人員を最大限に活用して実効性ある転嫁対策を実施していきたいと考えております。

三谷委員 今、六百人を採用、そしてその人件費として十二億円というふうにお答えいただきましたけれども、実はこの十二億円というのは、この平成二十五年度に雇うとしても、これは九月ないしは十月に雇っていく、そのための人件費というわけですから、年間でいくとその倍かかっていくということになります。そして、その啓発等々を含めて、本件の全体に対して三十億円、四十億円というのが、この法案を通した後にこの施策のために使われていく費用であります。

 具体的に総理にお伺いいたします。

 これだけの費用を投じた分だけの効果が得られる、そういった経済効果を見込んでいらっしゃるのでしょうか。

稲田国務大臣 私は、この法案は、この法案を通すことによって幾らの経済効果が出る、そういう法案ではないのではないかというふうに思っております。

 消費税をきちんと転嫁していく、そしてそれによって、不公正な取引だとか不当な取引が行われるということはやはり防がなければなりません。

 そういう意味において、金額だけではかれるものではないし、ただ、国の予算を使って取り締まりをするわけですから、実効性のあるものにはしていかなければならないと思っています。

三谷委員 経済効果と伺った趣旨は、先ほど申し上げたとおり、実効性がないというような観点、実効的なものにしていかなければいけないというそのお題目は理解しているんです。しかしながら、今の法律のたてつけによりますと、事実上これは規制できないところがありますから、では、本当にお金をかけた分だけそういった効果が得られるんですかという観点からの質問でございました。

 その点に関してはもうお答えはいただきませんけれども、そういった三十億円、四十億円のお金を使っていく。これは一年度ですから、次の年、次の年、三年半この予算を使っていくということになりますから、総額でもちろん百億円以上のお金を使っていく形になりますけれども、そういったことで本当に効果が得られるのか、疑問なしといたしません。

 そして、今回のいわゆる広告規制の問題については、自由な経済活動というのを大幅に広告という観点から制約するという意味ですから、先ほど、まさにこれも木下委員がおっしゃったことですけれども、統制経済というものにもつながっていくと言っても過言ではないということであります。

 基本的には、自由な商売を認めていくことによって民間の創意工夫が発揮されていくわけでありますから、前回、消費税が増税された際の消費税還元セールというものを行ったことによって物すごく売り上げが上がったということもあるわけですから、そういった自由を認めないことで本当にこの国の経済というのは回っていくのかということを非常に心配せざるを得ません。

 そして、次の質問に移ります。

 さらに三つ目のポイントですけれども、この法案によって、一時的にではありますけれども、外税方式というものが復活いたします。もちろん、一つの商品について、それが内税なのか外税なのかということについての区別は明瞭でなければならないというような規定はあります。

 それは仮に、こっちのAというお店、こっちのBというお店で、こっちが外税でこっちが内税、それぞれが明瞭であったとしても、どっちが高いか、どっちが安いかということを判断することは事実上難しいという形になるわけですから、消費者に混乱を生じさせることは明らかだと思うんですけれども、内税と外税が同時に混在することによって消費者に混乱を生じさせるとは思わないでしょうか。

竹内大臣政務官 お答え申し上げます。

 価格表示のあり方を検討するに当たりましては、消費者からの視点と事業者からの視点、両面からの検討が必要と考えております。

 今般の法案では、消費税率の引き上げ前後の期間におきまして、消費税の円滑な転嫁の確保や、事業者による値札の張りかえなどの事務負担への配慮の観点から、消費者に誤認されないための対策を講じていれば税込み価格を表示しなくてもよいとするとともに、消費者にも配慮する観点から、事業者は、できるだけ速やかに、税込み価格を表示するよう努めるとしているところでございます。

 政府といたしましては、今般の法案に盛り込まれた総額表示の特例に伴う消費者の混乱をできるだけ防止するために、事業者など関係者の御意見を聴取した上で、今後、作成するガイドラインにおきまして、消費者に誤解を生じさせにくい値札表記の具体例などを明らかにするとともに、事業者及び消費者への広報活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

三谷委員 そもそもこの法律の目的は何かというふうなことを考えると、もちろん消費税の転嫁を確保するというところでございますけれども、その消費税の転嫁を確保することによって中小企業というものをしっかりと保護していく、立場の弱い者、事業者が消費税増税分を押しつけられるような事態は避けるということにあるわけですから、そういう意味では、この法案というのは中小企業対策ということでよろしいでしょうか。

稲田国務大臣 もちろん、優越的な地位を利用して、中小事業者が不当な値引きですとか、消費税を転嫁できないというところを防ぐということでございますので、中小事業者を保護するという意味もあるし、やはり私は、きちんと転嫁をしていく、取引の公正さを担保することによって社会正義を実現するという意味もあろうかと思います。

三谷委員 もちろんその意味もあるんですけれども、中小企業対策という、立場の弱い人をしっかりと救っていくというような観点はあるわけですから、中小企業対策ということを言ってもおかしくないと思っております。

 先ほども申し上げたとおり、この法案による実効性というのは極めて薄いわけですから、これだけの人員を割きまして、これだけの税金を投入して、そして市場にこれだけの混乱を生じさせる可能性があるというようなことをやってまでこの法案を通すということは、はっきり言えば、参議院選挙に向けての、中小企業対策をしっかりやっていますよというようなアリバイづくりにしか見えないわけです。今の日本には、そういう無駄な選挙対策のために費やすような予算、これをやっているような余裕はないはずなんです。

 だからこそ、伺います。

 せっかく今の景気、いわゆるアベノミクスと言われて、御本人は言わないでしょうけれども、一般には言われておりますけれども、好景気が来ているわけです。景気が上がっている中で、では、労働者の給与が十分に上がる前に消費税の増税を行って、それをしっかりと価格へと転嫁するということになれば、当然ながら確実に物価が上がって、消費は落ち込んでしまうということになるわけじゃないですか。

 だからこそ、何が一番中小企業というものを苦しめることになるかといったら、消費税の転嫁を図らないということではなくて、消費税の増税を行うことによって一番中小企業を苦しめるということになるんじゃないでしょうか。総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 基本的に、中小企業の方々、そこで働いている方々もまさにセーフティーネットを必要としているわけでございまして、皆さん、年金あるいは医療制度の中でこれをセーフティーネットとして仕事をしておられるわけでございまして、まさにこの根本をしっかりと持続可能なものにしていくための消費税の増税であるわけでございます。

 他方、今委員が御懸念を示されたとおり、景気がいわば非常に悪化していくというような状況の中においては、消費税を上げていくということによってさらに景気が悪化し、そしてデフレが悪化していくということになれば、これは当然附則十八条があるわけでございますから、その中において判断していくということでございます。

 いずれにせよ、さまざまな経済指標を勘案しながら適切に判断していきたいと思っております。

三谷委員 そもそも消費税の増税の目的というのは、しっかりと税収を確保していくというところに主眼が置かれていたかと思っております。

 そういった観点を含めても、先日、党首討論が行われた際にも、みんなの党の渡辺喜美代表が述べておりました。安倍政権には長期政権の予感すらする、ただ、政策で重要なのは、そのかじ取りを間違ってしまったら短命で終わってしまう、そういうふうな懸念を示しておりました。その一つが、この消費税の増税の問題だというふうに理解をしております。

 今せっかくアベノミクスの期待感というものから好景気が訪れているわけですから、しっかりとこの景気を持続させていくということに注力していただきたいというふうに思うわけです。単なる消費税の転嫁を円滑に行うため、中小企業対策というアリバイづくりの政策を進めることにきゅうきゅうとなるべきなのか、せっかくこういうふうに訪れた好景気を犠牲にして消費税の増税を進めてしまってよいのかということを改めて立ちどまって検討していただきたいということをお願いさせていただきまして、私の質問とかえさせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 消費税転嫁法案について質問をいたします。

 中小企業は消費税の価格転嫁が困難だという現状認識について、総理にまずお尋ねしたいと思います。

 資料でも配付いたしましたが、本法案の参考人質疑におきまして、日本商工会議所の大和田達郎参考人、茨城県の石岡商工会議所の会頭でございますが、配付資料でこのような中小企業の価格転嫁の状況が厳しいという声を紹介しておられました。

 これで、読み上げるのが、「取引先から消費税の転嫁が認められない事例」、つまりBツーBの関係ですね。事業者間の話ですけれども、「取引上の立場が強い取引先から、納入額の引き下げ圧力がある。(卸売業) 公共工事では見た目では五%消費税額を上乗せできるが、実態は見積もり原価をその分圧縮していることから価格転嫁ができていない。(建設業) 見積もり段階で税抜き金額で提出したが、最終的な支払い時点で見積金額を税込み金額とされた。請求書等の表面上は価格転嫁ができたように見えるが、実質的にはできていない。(製造業)」。

 こういう声を挙げて、要するに、消費税が事業者間の取引で価格が転嫁できていない、強い立場の親事業者や大手の小売業者との関係で下請中小企業、納入業者が価格転嫁が困難となっているということを紹介しておられました。

 総理にお尋ねしますが、こういった事業者間の取引において、消費税を価格転嫁できていないというのが実態であります。この点は、総理も同じ認識でしょうか。

安倍内閣総理大臣 消費税の引き上げに際して、取引上立場の弱い中小零細企業者や下請事業者が消費税を転嫁しやすい環境を整備していくことは重要な課題であると認識をしております。

 このため、本法案では、消費税の転嫁拒否等の行為に対して、公正取引委員会だけでなく、中小企業庁や事業を所管する大臣にも調査や指導を行う権限を付与しており、政府一丸となって実効性のある強力な転嫁対策を実施してまいる所存でございます。

 また、立場の弱い中小事業者はみずから違反行為を申し出にくいという現実にも十分に配慮していかなければならないわけでございまして、大規模な書面調査を行うなど、政府の側から積極的に情報収集を行うなどにより、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保に努めてまいりたい。

 つまり、政府としては、中小零細企業の皆さん、小規模事業者の皆さんは、大変転嫁がしにくい、いわば商行為の中において弱い立場にあるということを十分に認識しながら、この法案によって、転嫁が適切に、円滑に行えるようにしていきたい、このように考えております。

塩川委員 事業者間の取引においても転嫁がしにくい、困難な現状があるという御認識でよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 事業者間によって、優越的な地位にある事業者とそうでない事業者という関係において、そういうことが生じる。ですから、そういうことが生じないようにするために、この法律を今皆様にお願いしているということでございます。

塩川委員 立場の強い事業者によって立場の弱い事業者が消費税の価格転嫁ができないという事態があるということでの御答弁がありました。

 中小四団体の実態調査でも、価格転嫁が極めて難しいという声が多数だと言っておられます。価格転嫁できない事業者はどうするのかといえば、結果として、納税をしなくちゃいけない納税義務者の事業者とすると、事業者が身銭を切って納税せざるを得ないという状況があります。これが大企業と下請中小企業の取引実態においてどのようにあらわれてくるかということについてお聞きしたいんです。

 二〇一二年十二月二十九日付の朝日新聞に、トヨタ自動車の事例が紹介されておりました。トヨタは半年ごとに下請から買う部品の価格を見直している。要求する値下げ幅は、その半年前よりも最大一・五%。しかし、超円高を背景に二〇一一年十月からは円高協力の名目でさらに一・五%の追加値下げを要求していた。つまり、通常、半年に一回のコストダウン要求があって、一・五%、一・五%といく。加えて、超円高のときには、あわせてその半年ごとに一・五%の上乗せという形でのコストダウン要請というのが行われていたということであります。

 こういうような、トヨタによる一律で一方的な単価の引き下げが重層的下請構造のもとで中小零細事業者にも押しつけられる。そういう点で、中小零細事業者にとって深刻な事態が生じている、そういう認識というのはお持ちでしょうか。

安倍内閣総理大臣 確かに、大企業とその下請業者という関係においては、いわば大企業が納入業者に対して相当強い立場に立っているのは事実なんだろう、このように思う次第でございますが、同時に、いわば製造業においては、そうした周辺の納入業者がしっかりと高い技術水準を持って継続的、安定的に部品を納入していくということも、それはいわば企業にとっての信用につながっていくわけでございます。

 そういう中において、正しくこの消費税においても転嫁されていくということを、これは産業界全体においてしっかりと認識していただくことが大切だろうと思いますし、私も、消費税を実施する上においては、経済界、産業界にこれはしっかりとお願いしますというのは、つまりそれを、例えば納入業者にこれをのみ込んでくれというようなことはやめていただきたいということについては申し上げていきたいな、このように思っているところでございます。

塩川委員 継続的、安定的な取引関係というのが、そういう意味では下請事業者にとってメリットがあるという側面はあると思います。同時に、やはり取引ですから、そういう下請事業者に適正なもうけが保障されているのかというところが問われてくるわけで、今回のように、超円高のときに一律のコストダウン要求に加えて円高協力金という形でのコストダウン要求が行われているということが、実態としてそういう適正な利潤を保障するものとなっているのかということになります。

 トヨタ自動車の二〇一三年三月期の連結決算が発表されました。営業利益は前年前期の三・七倍の一兆三千二百億円。うち、円安効果だけで利益は一千五百億円押し上げられたということです。為替レートの対ドルを八十三円で設定していたということですね。また、二〇一四年三月期の見通しは、営業利益一兆八千億円を見込んでいる。うち、円安効果だけで利益押し上げは四千億円に上る。為替レートの対ドルは九十円で設定をしているということですから、この先のレートによってはさらに上乗せされるのではないかという報道もあります。

 先ほどの二〇一二年十二月二十九日付の朝日報道では、円安が進んだために円高協力分の一・五%の追加引き下げを取りやめたということが報道されていますが、さらなる円安効果もあって収益を大幅に改善したトヨタですから、円安効果による利益が下請に還元されているのかということをいっても、そういう話は聞いたことがありません。

 円高のときは負担を下請に押しつけて、円安のときはその利益を下請に還元しないようなやり方、これでいいのか。これが下請取引の実態なのではないかということを言わざるを得ません。

 地元の愛知におきまして、愛知県労働組合総連合、愛労連が、二〇一二年二月に中小企業アンケートをトヨタの下請が集積している西三河地域で行いました。その中で出ている声としては、単価の切り下げは当たり前のように行われている、断ると仕事がなくなるとおどされる、この手法に問題はないのでしょうか、アンチ・トヨタにならざるを得ない、こういう声や、大手企業は下請企業の内部事情を知る必要がある、話し合いの場を設けて、特に単価の改善をしてくださいと。

 いわば協議することもなく、一方的に単価切り下げが押しつけられている実態、これは重層的下請構造ですから、二次、三次、四次、五次、六次とあるわけです。そういった中でこういう事態が生まれています。

 この間でも、三・一一の大震災でサプライチェーンの寸断、このときにコストダウン要求が行われる。タイの洪水がありました、そこでもコストダウン要求が行われる。超円高ですと、コストダウン要求が行われる。今回の消費税増税も、それもコストとみなして単価の引き下げを要請されることになるのではないかという危惧の声があり、現場では既にそういう動きがあるという話も出ています。

 稲田大臣、お尋ねしますけれども、こういうように、大震災とかタイの洪水とか円高などを口実とした単価引き下げと一体に、親事業者が消費税の転嫁を拒否するような場合に、この法案というのは有効に機能するんでしょうか。

稲田国務大臣 まさに、今委員がるる御指摘されたような優越的な地位を濫用して、そして、買いたたきですとか減額ということがこの消費税の増税のときにも集中して起こるだろうということで本法案を策定し、御指摘のような、第一次下請、二次下請、三次下請のようなそれぞれの取引段階における各中小零細事業者が本法案の保護の対象になると考えております。

塩川委員 実際に、現場でいえば、こういった事態が起こっている。

 この委員会での参考人質疑で、舟田参考人が、消費税の転嫁を拒否するから単価を引き下げてくれと言うはずがないわけで、そうしないと売れないからとか、いろいろな理由で仕入れ値の引き下げを下請業者に対して要請することになる、不当な買いたたきなのか自由な価格交渉なのかの判断が非常に難しいということを言っているわけです。

 もちろん、体制として強化しますという話ですけれども、しかし、三年間の臨時の職員であっても、なかなか買いたたきを見定めるというのは、技量も要るし、時間もかかるし、そういった際に、臨時職員を幾らふやしても、実際に機能し得ないのではないかということが問題となっているわけであります。

 トヨタ系列の場合は、半年に一回のコストダウン要請が行われて、実際に下請との間でやりとりが行われるということがありますけれども、私が直接愛知でお話を聞いた、これは五次、六次ぐらいに当たると思うんですけれども、縫製業の事業者の方は、つまり、自動車のシートとかのカバー、そういうものをつくっているわけですけれども、縫製でも、ストップウオッチを持った親会社が来る。何センチ縫うのに何秒かかると計測していく。車のシートは立体縫製なので縫い方も難しいが、向こうが見るのは、簡単な直線縫いでも立体縫製の部分でも、同じように縫った長さと時間しか評価しない。三カ月たってなれてくると、単価一枚四百三十円だったのが、百二十円に引き下げられる。トヨタは年二回単価引き下げ要請を行っているということですが、末端では、三カ月ごと、年四回コストダウン要請が行われることになる。

 総理にお尋ねしますが、こういったトヨタのような重層的下請構造のもとで、トップダウンのコストダウン要請が行われている現状では、下請事業者が消費税を転嫁するということが実態としても困難だと思いますけれども、総理の認識はいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 恐らく、重層的な構造であるとすると、例えば私がトヨタにお願いしますよと言っても、この重層的な構造の中においてそれは実現されないのではないかという御指摘も含まれているんだろう、このように思うわけでございます。

 まずは、我々、消費税を上げるという判断において、転嫁しやすい経済状況にしていくということも極めて重要な点でございます。いわば非常に経済の状況が悪くて、デフレがずっと続いていく中において、転嫁をしようとしてもできない中において、デフレがさらに深刻化していくという危険性があるわけでございますが、そうはならないような経済状況をまずつくっていくという中において、今委員のおっしゃった問題意識も含めて、いわば一番上にいる大企業、そしてその次、一次、二次、三次、四次、五次、こういう下請構造になっているということにも鑑み、いわば協力会全体でしっかりと転嫁が図られるように協力も要請していきたいし、そのためにこの法律をしっかりと活用していきたい、こう考えているところでございます。

塩川委員 下請代金法というのは、三億円、一千万円と親下関係で切っていますから、こういうものでは対応できないというのが実態であります。そういう点でも、現状は、消費税の価格転嫁も困難という事態が生まれている。

 一方で、大企業の場合には、輸出戻し税という形で、輸出については消費税分について輸出事業者に返すという仕組みがある。総理が冒頭言いましたように、事業者間の取引で下請企業が消費税の価格転嫁ができないということを認められたわけで、そうなると、下請中小企業が身銭を切って払った消費税分までも大企業が還付を受けるという仕組みになってしまう、こういうのは極めて理不尽だ。

 こういった消費税そのものを中止すべきだということを私は申し上げて、時間が参りましたので終わります。

富田委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 この際、本案に対し、塩谷立君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。近藤洋介君。

    ―――――――――――――

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 本修正案は、委員会における質疑等を踏まえ、平成二十六年四月一日以後における自己の供給する商品または役務の取引について事業者が禁止されることとなる表示に関し、これらの表示のうち、取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部または一部を対価の額から減ずる旨の表示にあっては、消費税との関連を明示しているものに限られること等その範囲の明確化を図るものでございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 私は、日本維新の会を代表して、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案に反対の立場で討論を行います。

 本法案は、経済産業委員会において合計して約十八時間の審議がされましたが、審議を重ねれば重ねるほど、法案自体の欠陥が浮き彫りになってきました。

 本法案八条の消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置の具体例についての質疑において、消費者庁審議官の答弁内容が質疑の経過とともに変化しました。これに対しまして、五月八日に政府公式見解が示されましたが、その内容に関する質疑での担当大臣の答弁が著しく曖昧でありました。

 また、有識者からも本法案に関する問題点が数多く指摘されております。参考人質疑においては、与党側要求の参考人ですら、法案に賛成の態度は示しつつも、その実効性を疑問視する発言が多くありました。

 さらに、中小企業、小規模事業者保護の観点から、大規模小売店などへの商品納入に関する価格交渉を行うに当たり、消費税相当分の値下げを強いるような行為を禁止としていますが、この納入業者として大規模の納入業者は対象となっておらず、本法案だけでは、大規模小売店が規制を嫌い、大規模の納入業者との取引を優先する結果が考えられ、むしろ中小企業、小規模事業者が取引の機会を失ってしまう可能性があるのです。

 一方、極めて専門性の高い転嫁拒否等に係る業務を行うため新規配置、増員される予定の転嫁対策調査官の大半は三年余りの有期雇用ですが、この人員が問題なく業務を遂行できるのか極めて疑問が残ります。

 消費税を負担することは、最終需要家となる国民の義務です。また、事業者からきちんと徴税すれば問題はないのです。それらの考え方はそもそも本法案で規定するようなものではなく、消費税の基本的な考え方として明確に国民に示してこなかったこと自体が問題なのです。著しく曖昧かつ未整備で、問題点解決のめどの立たない本法案には到底賛成できるはずもなく、その内容自体も、安倍総理の掲げる三本目の矢である成長戦略とは全く正反対であります。

 これら多くの問題点からも、本法案に強く反対の意を示し、私の討論を終わります。(拍手)

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 消費税の円滑転嫁法案及び同修正案に対して、みんなの党として、反対の立場で討論を行います。

 経済産業委員会内を初めとする一連の質疑において明らかになったことは、この法律にはほとんど実効性が認められないということでした。

 法案の柱の一つは、買いたたきの禁止。この法律では、消費税増税分をメーカーや卸に押しつけてはならないとされているものの、消費税分を負担してほしいから、その分仕入れ値を安くしてほしいと直接的に求めない限り、基本的に適用はありません。

 また、法案の二つ目の柱は、広告規制。審議の過程で政府に混乱が生じ、統一的な見解がまとめられるに至りましたけれども、結局、その内容は、消費税という文言を含まなければ、基本的に規制なし。そもそも価格の据え置きは自由に行えることとも相まって、ほぼざる法になってしまっています。

 これだけ意味のないことを行っていくために、何と、六百人を採用して、年間三十億円、四十億円を投じることになるわけで、これは壮大な無駄と言わざるを得ません。実際、この法律によってどのくらいの効果が得られるか、政府としても把握できておりません。

 その上、この法案によって一時的に外税方式が復活いたします。一つの商品について価格表示が税込みか否かの区別が明瞭であっても、二つの商品の値段を比べる場合に、一方が内税で一方が外税となると、値段の比較が大変になり、消費者に混乱を生じさせることは明らかです。

 そもそも、この法律の目的は何かといえば、しっかりと消費税の転嫁を確保して、不当に弱い立場の事業者が消費税増税分を押しつけられるような事態を避ける、つまりは中小企業対策です。

 先ほど述べたように、その効果は極めて薄いわけですから、これだけの人員を割いて、これだけの税金を投入していくのは、結局、参院選に向けて中小企業対策を行ったというアリバイづくりを行うものにしかすぎません。今の日本には、そんな選挙対策のために費やす無駄な予算はないはずです。

 労働者の給与が十分に上がる前に消費税の増税を行うとすれば、それをしっかりと価格へ転嫁すれば、当然ですけれども、確実に物価が上がり、消費が落ち込んでしまいます。このことによって、中小企業がいよいよ苦しむことは明らかです。

 本当に中小企業の利益を考えるということであれば、消費を落ち込ませないことを最優先にするべきであって、増税に基づいた値上げなどをさせない方がよいに決まっているわけであります。

 自由経済を犠牲にしてまで、中小企業へのアリバイづくりのための小手先の政策を進めるのにきゅうきゅうとするべきではありません。せっかく訪れた好景気を犠牲にして消費税の増税そのものをしてしまってよいのかということを、改めて立ちどまって検討していただくことをお願いいたしまして、私の反対討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、いわゆる消費税転嫁確保法案に対する反対討論を行います。

 消費税の転嫁問題は、増税後に起こり得る懸念ではありません。消費税導入から二十四年間たった今なお、零細な事業者ほど、消費税を価格に転嫁できず、身銭を切った納税を迫られているのです。

 政府は、消費税は消費者が負担する仕組みだと説明していますが、中小企業、零細業者も負担させられているというのが実態です。国税分のみに限っても、年間三千億円を超える消費税の新規滞納が発生していることが、転嫁困難な実態の一端を示しています。

 消費税を転嫁できていなくても、赤字事業者であったとしても、納税を迫るのが消費税です。まさに営業破壊税ともいうべき消費税の増税は、地域経済も国民生活も底なしの泥沼に突き落とすものだということを最初に指摘し、以下、法案への反対理由を述べます。

 反対理由の第一は、本法案が消費税の大増税を前提としているからです。

 消費税の増税を強行すれば、雇用の七割を支える中小零細業者の営業は破壊されます。貧困と格差を拡大し、内需を一層冷え込ませることにもなります。デフレ不況からの脱却を言うのであれば、消費税の増税をきっぱりやめるべきです。

 第二は、消費税の転嫁を阻害する最大の要因である、大企業と中小企業の圧倒的な力の差を背景とした下請いじめ構造を何ら改善するものでないからです。

 本法案により是正されるのは、消費税分の価格への転嫁を拒否したという形式的、表面的な事例にすぎません。しかし、実際の事業者間取引では、消費税分も含めたコストダウン要請が、重層的な下請構造の下位に行くほど苛烈に押しつけられているのです。この構造そのものにメスを入れることなしでは、かえって下請いじめを潜在化、巧妙化させることにもなりかねません。

 第三は、下請いじめ構造の是正がないままで、消費税還元セール等の宣伝、広告を禁止するという筋違いの規制を行っているからです。

 景品表示法のガイドラインにより、消費税分値引き等の宣伝は既に禁止されています。実際に、消費税ゼロセールなどの宣伝に対し、公正取引委員会が改善指導を行ってきました。

 本法案は、これら現行制度の執行状況について、何ら評価や検証も行わないままで、屋上屋を架すような新たな規制を講じるものです。無責任な対応だと言わざるを得ません。

 自民、公明、民主三党提出の修正案については、これら法案の問題点を改善するものではないため、賛成できません。

 以上、反対討論といたします。(拍手)

富田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、塩谷立君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、塩谷立君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。江田康幸君。

江田(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)

  政府は、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保し、立場の弱い事業者が不利益を被ることのないよう、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 消費税増税分を適正に価格に転嫁できる環境を整えるため、関係事業者への定期的な大規模調査を行うとともに、立場の弱い事業者等のための相談窓口を全国に整備すること等により、転嫁の実態を正確に把握し、違反行為に対しては迅速かつ効果的に取り締まること。

 二 転嫁状況の検査等消費税の転嫁対策を実効あるものにするために体制の一層の強化を図る必要があることから、公正取引委員会及び中小企業庁においても、高度な専門知識を有する者の登用を積極的に進めることとし、質量ともに充実した体制を長期にわたって確保するため所要の定員増を図るとともに、関係省庁間の緊密な連携体制を確立すること。

 三 本法第八条の表示の規制については、公正かつ自由な競争、事業者の創意の発揮等の事業活動を阻害することなく、かつ本条の一義的趣旨が消費者に消費税が転嫁されていないような誤認を生じさせることの防止であることに鑑み、「消費税」や「増税」等の表現が用いられるなど消費税率引上げとの関連が客観的に明らかであり、かつ当該表示が消費者の負担がない又は軽減されていると一般消費者に誤認される恐れがあると認められるものに限り禁止することとし、関係者に無用な混乱を招くことのないよう、具体的かつ分かりやすいガイドラインを可及的速やかに策定・公表すること。

 四 消費税の価格転嫁を円滑かつ適正に実施するとともに事業者の事務負担を軽減するため、価格表示方法の在り方については、外税方式の採用も含め様々な意見があることを踏まえ、事業者の取組実態及び消費者の利便を総合的に勘案しつつ、引き続き、その在り方を検討すること。

 五 事業者が消費税を価格に適正に転嫁すべきという、本法の趣旨及び内容を事業者に周知徹底するとともに、消費者に対しても社会保障の安定財源の確保という今次の消費税率引上げの趣旨、転嫁を通じて消費者に負担を求めるという消費税の性格及び価格表示の特例の内容等について、国が丁寧な広報活動を行い、国民の認識と理解を深めるよう努めること。

 六 消費税増税による影響が広く我が国経済に及ぶ懸念があることに鑑み、税率引上げ前後の経済状況を注視しつつ、消費の落込み等に起因する中小事業者の経営悪化に対しては、必要かつ十分な経営支援を講じるとともに、景気への影響を極力緩和する観点から、最も影響が懸念される住宅の取得等について、平成二十五年度税制改正で講じた住宅ローン減税等の実施と併せ適切な給付措置を早急に講じるほか、低所得者に配慮する観点から、消費税率八パーセントへの引上げ時における簡素な給付措置の導入を早急に具体化すること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、稲田国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。稲田国務大臣。

稲田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

富田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

富田委員長 次回は、来る二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十八分散会


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