衆議院

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第16号 平成25年5月31日(金曜日)

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平成二十五年五月三十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 石原 宏高君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 近藤 洋介君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    今枝宗一郎君

      越智 隆雄君    大見  正君

      勝俣 孝明君    今野 智博君

      佐々木 紀君    白石  徹君

      平  将明君    武村 展英君

      津島  淳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      細田 健一君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      山田 美樹君    吉川 貴盛君

      枝野 幸男君    大島  敦君

      岸本 周平君    馬淵 澄夫君

      木下 智彦君    重徳 和彦君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      井坂 信彦君    三谷 英弘君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   経済産業副大臣      菅原 一秀君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   経済産業大臣政務官    平  将明君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 佐々木克樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           鬼澤 佳弘君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 熊谷  毅君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     豊永 厚志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           渡邊  宏君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 高原 一郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   梶原 成元君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     今野 智博君

  根本 幸典君     今枝宗一郎君

  福田 達夫君     野中  厚君

  山田 美樹君     津島  淳君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     根本 幸典君

  今野 智博君     佐々木 紀君

  津島  淳君     山田 美樹君

  野中  厚君     福田 達夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電気事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官佐々木克樹君、文部科学省大臣官房審議官鬼澤佳弘君、厚生労働省政策統括官熊谷毅君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官豊永厚志君、経済産業省大臣官房審議官渡邊宏君、資源エネルギー庁長官高原一郎君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君及び環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長梶原成元君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島(敦)委員 おはようございます。

 電気事業法の一部を改正する法律案につきまして、何点か確認をさせてください。

 まず、二〇〇〇年以降、電力の自由化を段階的に進めるなど、我が国においてはこれまでも電力システムに係る改革がなされてきたものと認識しております。小売自由化の範囲拡大ということで、二〇〇〇年の三月からは電力量の二六%が自由化され、あるいは二〇〇四年四月からは総電力量の四〇%が自由化され、足元では電力量の六五%が自由化されていると聞いております。

 今回のシステム改革はこれまでの改革とどこが違うのかについて、御説明をお願いいたします。

茂木国務大臣 委員御指摘のとおり、二〇〇〇年以降、電力の自由化を段階的に進め、電気料金が継続的に低下するなど、一定の成果を上げてきたわけでありますが、一方で、新規参入のシェア、こういったことで見てみますと、自由化された需要の約三・六%にとどまっておりまして、活発な競争が行われているとは言いがたい状態、改革としてはまだ弱いものだ、こんなふうに考えております。

 そういった中で、東日本大震災が発生し、原発事故が起こる、これを契機にいたしまして、従来の電力システムの抱えているさまざまな限界というのが明らかになったのではないかなと考えております。

 具体的に申し上げますと、まず一つは、電気料金の上昇圧力の中で競争の促進などにより電気料金を最大限抑制する、こういったことが極めて重要になっております。また、広域的な系統運用を拡大して発電所を全国レベルで活用する、こういったことが必要になっているんだと思います。さらには、電力会社や料金メニューを選びたい、こういった需要家のニーズにさまざまな選択肢で応えることが求められている。そして、需給の状況に応じてピークとピーク以外の料金に差をつける等の工夫によって需要抑制が必要になってきた、このように考えております。

 こういった課題に対応するため、今回の電力システムの改革は、これまでとは異なる抜本的な改革を、発電の部門から送配電、そして小売全体にわたって行うものであります。

 まず、広域系統運用を拡大して、全国レベルでの電力需給の安定化の仕組みをつくっていく。

 そして次に、法的な分離によりまして送配電部門の一層の中立化を図る。これによりまして、発電部門等々にも参入が相当促進されると考えております。

 また、料金の自由化によりまして、ピークとピーク以外の料金に差をつける等の工夫によって、需給の状況に応じた柔軟な需要抑制ができる仕組みにしていく。昨年も実証実験をやらせていただきましたが、例えば北九州で、ピーク時とピーク時以外の料金にかなりの差をつけた、こういう実験を行いましたら、ピーク時の需要は二割カットされまして、そして家計が支払う電気料も三割カットされたり、大きな効果が出ていると思っております。

 また、小売の全面自由化によりまして、電力会社やメニューを選びたいという需要家のニーズに多様な選択肢で応えられるということであります。

 言ってみますと、これまでも順次改革は進めてきました。しかし、全体を見通して、これまで六十年間地域独占でやってきた電力を根本から変えていく、こういう改革ではなかった。今回は、そういった大胆な改革をこの法案を中心に進めていきたい、このように考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 三月十一日の東日本大震災が起きてからの電力の復旧の事情を振り返ってみますと、鉄鋼業のメーカーに携わった私の経験からしますと、翌日には被災地以外のところはほぼ回復していたと思います。これは、いい仕事をしているなと。会社が一丸となって相当練度高く取り組まないと、翌日に電力が復旧をしていくということはなかなか難しいことだと思っています。特に、福島の原子力発電所が多くの被害を受ける中で、あれだけの復旧というのは相当練度高く行えたと思っています。

 もう一つは、完璧な仕事をしようと思うと、結構電力というのは、当たり前のごとく二十四時間三百六十五日、安定した電力が供給されているのは、地味なようなんですけれども、そこのバックヤードでは物すごく努力が積み重ねられていると思っています。

 今回の電力システム改革は、東日本大震災の発生を受けたものであるという声をよく聞いております。仮に東日本大震災がなかった場合、今回の法案提出はどうだったのかなと思うことがありまして、災害の発生にかかわらず、どのような電力システムがよいと考えているのか、基本的な認識をお聞かせください。

菅原副大臣 今お話がありましたように、また、先ほどの大臣からの答弁にもありましたように、電力料金をいかに安くしていくか、そしてまた安定供給するかということは、三・一一以前から議論がございましたし、また一定の取り組みをしてきたところであります。

 したがって、新規参入の促進、競争環境の整備を進めるということは三・一一の前も今も大きな課題でありまして、そうした中で、東日本大震災、あるいはそれに伴う原子力事故を契機として明らかとなった、従来の電力システムが抱えるさまざまな限界や課題に対処するということが今の大きな課題でありまして、そういう意味では一つの大きな契機となり、さらに、ここ二年三カ月、そのスピードをアップさせてきた、このように捉えております。

大島(敦)委員 今、副大臣がお答えいただいた安定供給と自由化で顧客サービスというのは、相反するとまでは言いませんけれども、安定供給というところは結構気づかない点が多くて、この安定供給をないがしろにしてまで自由化を進めていくと、まさかのときに応えられないということがあります。

 例えば、国土交通省の震災発災後の対応を見てみますと、国交省の中で、たまたまなんですけれども、本省の危機管理ルームで大臣と現地の局長以下がテレビ会議する光景を見たことがあります。なるほどなと思いました。用語が同じなんです。要は、お互いに現場を知っているということで、正しい判断ができるんです。メーカーだと、社長が、経営者が現場を知っているからこそ、労働災害の発生とか設備のメンテナンスということが俊敏に対応できるようになります。

 用語を統一するということが必要でして、送電と配電あるいは小売を分離した場合に、お互いの用語というのが一緒でないと、震災が発生したときに俊敏な対応が、三・一一のときのような対応ができるのかなというおそれもあるものですから、その点について御留意をいただきたいと思います。

 きょうは、内閣府からも参考人の方にお願いしておりまして、一点、質問をさせてください。

 南海トラフ巨大地震ということで、文科省の発表ですと、マグニチュード八から九クラス程度の地震は今後三十年間で六〇%から七〇%起きると伺っています。内閣府は、南海トラフ巨大地震の被害想定について先日発表されたかと思うんですけれども、もしも南海トラフの巨大地震が起きた場合に電力についてはどの程度被害を受けるのか、その点についてお聞かせください。

佐々木政府参考人 まず最初に、今お話がございました文科省発表の六〇から七〇につきましては、マグニチュード八以上ということでございまして、これから私が述べさせていただきますものは、マグニチュード九という最大クラスというものについての被害想定の数字でございます。

 電力に関しましては、約六千五百万軒のうち、最大で二千七百万軒が停電するというふうに考えております。東海三県、近畿三府県、それから四国、九州の二県で約九割が停電すると想定いたしております。

 この停電軒数の約九割は、発災に伴う需要側の被災及び発電設備の被災により需給バランスが不安定になることを主因として発生するものと考えておりまして、電力供給の切りかえ調整により、おおむね四日程度で復旧すると想定いたしております。

 また、電柱被害による停電は全体の一割程度ということでございまして、これは復旧に一、二週間程度を要するのではないかと想定しているところでございます。

大島(敦)委員 先ほど指摘した点については、電力会社が一丸となってこの間の震災には対応をいただいております。

 今後、東海、東南海、南海では巨大地震のおそれが高まっています。今回の電力のシステム改革、この巨大地震に備えるということも私は必要だと思っています。

 特に、先ほど内閣府からの御説明がありましたとおり、日本全国の六千五百万軒のうちの四一%が停電するということです。東北とは若干様相が違ってきます。そして、東北の場合には、結構沖合の方に震源がありましたけれども、南海トラフは陸に近いところですから、同じマグニチュード九、八であっても相当内陸部まで傷むと考えております。

 今回の東日本大震災発生直後の発電設備や送電設備などの迅速な災害復旧は、私は非常にすばらしかったと認識しております。法的分離を行うと現在の電力会社は分割されることになりますが、法的分離後においてもこれまでと同様に迅速な災害対応が行われるのか、その点についてお考えをお聞かせください。

高原政府参考人 まず、法的分離の前に、広域的な運営機関をつくります。これは、エリアを越えた大規模な融通ということがまず可能になると思います。

 その上で、御下問のとおり、法的分離を行った場合でございますけれども、送配電事業者の方と発電事業者の方々が協調して、そして電力供給、特に災害時におきましてもしっかりとした対応を行っていくということは極めて重要な課題だと思っております。そのために、ルールの策定などの対応を行わせていただきたいと思っております。

 具体的には、給電指令などを行います送配電事業者が発電事業者との間で協調して、災害時の対応、あるいはふだんの需給調整もそうでございますけれども、ルールを策定することを考えております。例えば、どういった設備を、発電所を一時的に危険なところをとめて、保守点検を行うか、修理を行うかといったことについても、国がしっかりとした関与をしながらルールを策定していきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

大島(敦)委員 今後、法律が成立した後において詳細設計が行われると考えておりまして、この点についても、今後起きる可能性が高いことが想定されておりますので、ぜひ深い御検討をお願いしたいと考えております。

 送配電部門の中立性を確保するために法的分離を行うものと認識しておりまして、法的分離の場合は、持ち株会社の下に送配電会社と発電会社がぶら下がるため、その送配電会社は同一グループ内の発電会社を優遇するのではないかという懸念があります。

 どのように送配電会社の中立性を確保するのか、その点についてお聞かせください。

高原政府参考人 法案の附則にございます改革プログラムにおきましては、発電事業者の方と小売事業者の方々が公平に送配電網を利用できるように、法的分離、すなわち一般電気事業者の送配電部門を別会社とするけれども会社間で資本関係を有することは排除されない方式を実施する前提で改革を進めることといたしております。

 その際、御指摘のとおり、送配電部門の一層の中立性を確保するためには、人事、予算などに係る行為規制が必要だと考えております。例えば、送配電会社と発電・小売会社との間の役員の兼職を禁止するとか、あるいは会計を独立させるなどの措置を講じることも必要だと考えております。また、他の発電・小売会社に比べてグループ内の発電・小売会社を優遇しないように行政がしっかりと監視をすること、これも必要だと考えております。

 以上でございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 これは国が関与すべき問題ではないと思うんですけれども、経営側が現場のことをよくわかっていることで、危機対応に際して俊敏に対応できると思っています。原子力発電所の運営につきましても、三次、四次の下請に任せるのではなくて、一体となって、同じ社員の身分で安全管理を行うことでスムーズな安全管理ができると思っておりますので、その点について若干述べさせてください。

 続きまして、法的分離は、これまで一貫体制で事業運営を行ってきた電力会社を分割する措置であるため、電気の安定供給が確保されないのではないかと懸念する声がございます。法的分離を行った後は誰が供給責任を負い、どのように電気の安定供給を確保するのか、その点について伺いたいと思います。

 これまでは電力会社が供給責任を持っていました。今後は送配電の会社がその責任を持つという話を伺っているんですけれども、本当にそれで、さっき言ったような震災への柔軟な対応ができるかどうか、今後の設計についてお考えを伺わせてください。

高原政府参考人 電気に関しては、何よりも安定供給、平常時も、そして災害時も、これが最も重要な課題であるということは強く認識をいたしております。

 まず、今回の仕組みを御説明申し上げますと、安定供給の義務を送配電事業者に課した上で、大きく三つの措置を講ずることといたしております。

 まず第一に、送配電事業者が日々の電力需給の状況を監視し、需給の調整を行うなど、高品質の電気の安定的な供給に責任を果たすという考え方を基本といたしております。

 第二に、送配電網の建設、保守が確実に行われるように、送配電部門は地域独占の事業会社になるわけでございますけれども、送配電部門につきましては、総括原価方式などによります料金制度によりまして投資回収を保証するなど、必要な措置を講じさせていただきたいというふうに思っております。

 三番目に、小売事業者の破綻といった事態にも備えて、最終的な供給保障サービスでございますとか、あるいは離島への安定供給についても、送配電事業者が責任を負う。

 それに加えまして、五年後や十年後に向けた発電所の建設につきましても、小売事業者の方に空売り規制、要するに供給力を手当てする義務を課すことで、小売事業者の要請に応じて発電所が建設される仕組みをつくるなど、所要の法制を整備させていただきます。

 いずれにいたしましても、災害時のことにつきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、送配電事業者と発電事業者の方々の連携をしっかりとするという仕組みを、安定供給ということを旨といたしまして、しっかりと整備させていただきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

大島(敦)委員 電力会社の資金調達を考えると、社債の発行がこれまでは多かったと思います。法的分離を行った場合には、電力会社の格付が低下するなど、資金調達に支障が生ずるのではないかと懸念する声もあります。

 それについてはどのように考えているのか、御答弁をお願いいたします。

糟谷政府参考人 格付会社による格付は、債務の返済能力について評価したものでございまして、会社の規模だけではなくて、収益力とか成長力の高さなどに基づいて判断をされるものでございます。

 ただ一方で、現在、原子力発電所が稼働停止をして代替燃料コストがふえ、収益が悪化している中で、電力会社の格付が引き下げられたり、もしくは引き下げに向けた検討が行われている状況でありまして、そういうことを受けて、御指摘のような資金調達について懸念をする声があるというふうに認識しております。

 他方で、今回の電力システム改革の法的分離による送配電部門の一層の中立性確保までの間には、相応の時間、五年から七年の時間がかかるわけでございます。その間に、安全性の確認された原子力発電所の再稼働ですとか、またはシェールガスの輸入など、燃料調達コストの低下といった環境変化によりまして、資金調達環境は現在よりも改善すると期待をしております。

 ただ、改革の各段階で十分検証しながら必要な措置を講じていくことが必要だと考えておりまして、言いかえれば、問題があるのに何もしないでそのまま確定的に進めることはしないということでございます。

 こうした考え方については市場関係者の方に十分説明をして、誤解や無用の不安を招かないように努めてまいりたいと考えておりますし、その上で、万が一、法的分離を実施する際に資金調達環境が改善していないという場合には、例えば、一般担保を含めた金融債務の取り扱いや行為規制に関しまして必要な経過措置等を講じるというふうなことを考えております。

大島(敦)委員 御答弁ありがとうございます。

 次に、核燃料サイクル政策と法的分離について質問をさせてください。

 核燃料サイクル政策の中核的な位置づけである日本原燃は、電力会社九社などが出資する株式会社です。法的分離を行った後は現在の電力会社が分割されることになりますが、日本原燃の株式は分割されたどの会社が引き継ぐのかについて、御答弁をお願いします。

糟谷政府参考人 現在、日本原燃の株式は、九電力会社と日本原電で全体の九一%の株式を保有しております。

 発送電分離後の日本原燃の株式についてのお尋ねでございますけれども、電力システム改革の面から、どの会社が承継するかということを制限することは現時点では想定しておりません。あくまで、株式の保有については一義的には株主の判断によるものであるというふうに考えてございます。

大島(敦)委員 日本原燃の株式をどの会社が引き継ぐにせよ、核燃料サイクル事業を民間企業に任せるという現在の姿は法的分離を行った後においても変わらないのかについて、御答弁をお願いします。

糟谷政府参考人 これまで我が国は、ウラン資源の有効利用ですとか、高レベル放射性廃棄物の減容、有害度の低減等の観点から、全量再処理をするという政策を基本方針としてきたわけでございまして、その際、核燃料サイクル施設の運営自体は民間事業者が行い、国は、適切な事業運営を確保すべく、制度の整備や規制の実施、また政策の方向性の決定といった役割を担ってきたわけでございます。

 今後とも、このような考え方のもと、これまでの経緯等も十分に考慮しまして、関係自治体や国際社会の理解を得ながら、使用済み燃料の適切な処理あるいは放射性廃棄物の最終処分といった課題の解決を目指しながら、核燃料サイクル政策に継続してしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

大島(敦)委員 我が党の今後の質問者の方がいろいろと伺うかもしれませんので、次に移りたいと思います。

 電力システム改革を行うことにより、今後、電気事業にさまざまな新規参入者があらわれることも想定されますが、例えば、潤沢な資金を有するアラブ系資本が我が国で発電設備を建設して発電事業を行うことも、需給が逼迫する現状においては必要だと思います。

 システム改革を行うことにより外資も参入しやすくなるという理解でよろしいでしょうか。

糟谷政府参考人 今回の電力システム改革でございますけれども、小売や発電の全面自由化に加えまして、法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を行うこととしておりますので、今後、外資系企業を含めて、新たに電気事業に参入しようとする事業者が増加することが見込まれるものと考えております。

大島(敦)委員 中近東の国、特にガスを産出する国は豊かな資金力がありますので、自分の国で産出するガスを安定的に供給したいと考えると、日本の国内にガスタービンの発電所を持つということは、発電所を一基つくったとしても一千億円、高いようですけれども、豊かな国においてはそんなに大きな投資ではありません。ですから、今後、多分そういうことが行われるのかなと思っています。

 仮に、我が国の電気事業に参入した外資が大規模な発電所を建設して一定の供給力を担うこととなった場合、勝手に退出されると、今度は逆に安定供給に支障を及ぼすことになると想定します。

 参入する一定規模以上の外資については、何らかの退出規制を課すなどの規制も逆に必要だと思うんですけれども、その点についてお答えください。

糟谷政府参考人 一般的に申し上げまして、巨額の投資を行って発電所を建設した後、その投資を回収するまでに理由もなく動かさなくなるということは、考えにくいものとは考えております。

 ただ、他方で、もし価格をつり上げるといったような目的で退出する、もしくは意図的に停止する、そういうことが起きそうな場合、今回の法律案におきましては、第三十一条におきまして、安定供給の確保に支障が生じるおそれがある場合には、広域的運営推進機関が発電所のたき増しを指示することができる、あるいは大臣からの供給命令が出せる、これは罰則担保でございます、そういうような仕組みを設けているところでございます。

 こういう制度を整備することによりまして、電気の安定供給をしっかりと確保してまいりたいというふうに考えております。

大島(敦)委員 最後に、厚生労働省の政府参考人の方に質問をさせてください。

 今回の電力のシステム改革に当たって、電力会社については、昭和二十七、八年ごろだと思いますけれども、大きな労働争議が行われて、そのことで、今、電力会社の従業員の皆さんにはスト規制がかかっています。

 これは、労働法とかを勉強すると、結構有名な事件でございまして、今回、聞いてみると、例えば、新電力、特定規模電気事業者、要は発電する方にはこういう規制はなく、一般的な労働法制の中で従業員の皆さんが働く。でも、一般電気事業者とか卸電気事業者だと、昭和二十八年に成立あるいは施行された電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律にのっとっております。当時の法律の附則の中に三年後の見直し規定がありまして、昭和三十一年に同法を存続させる旨の国会の議決を経て、今日に至っております。

 今の労使関係を見ていると、極めて良好な労使関係だと思っていて、今後、電力システムの改革の中で自由度を増していくわけですから、一般電気事業者には昭和二十八年の同法が適用されておるんですけれども、先ほど述べましたとおり、新電力等には適用されていない状態が続いております。

 ですから、今後どのような状態が適切であるか、その考え方について最後にお聞かせください。

熊谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 いわゆるスト規制法でございますけれども、一般の需要に応じ電気を供給する事業またはこれに電気を供給することを主たる目的とする事業である電気事業の事業主及び従事者に対しまして、争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生じさせる行為を禁止するなどを定めるものでございます。

 電気事業におきまして停電ストが行われた場合、国民経済及び国民生活に甚大な影響を及ぼすことから、一般の需要に応じ電気を供給する事業等につきましては、依然としてスト規制法の必要性はあるものと考えております。

 今後におきましては、一連の電力システム改革の進展等を見ながら、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

大島(敦)委員 現状ですと、ただいまの答弁が限界かなと思います。

 以上をもちまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

富田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介であります。

 質問の機会をいただき、委員長、ほかの皆さんに感謝いたします。

 本日は、大変重要な法案である電気事業法の改正案、いわゆる電力システム改革法案の質疑であります。

 電力の鬼と言われた松永安左エ門翁が、現在の電力体制を、当時、戦後の荒廃の中で築いたのが一九五一年、以来六十年ぶりの大改革の第一歩となる大変大きな法案であります。

 代表質問の際にも、私、申し上げましたけれども、電力システムはインフラの中のインフラであります。東日本大震災、福島原発の事故による大変大きな危機を経験して、我が国は、より柔軟でより強い電力システム、エネルギーシステムの再構築が迫られておる。こういう中で、旧政権下、民主党政権において、この改革の検討に着手した。委員でもある枝野幸男前大臣のときに本格的な検討に着手し、この改革の方向性については打ち出させていただいた、こう思っております。

 自民党政権に移り、茂木大臣におかれては、この考え方を受けとめて、恐らく、自民党内でも大変な御議論があったかと思います。民主党の中でもさまざまな意見がございました。想像するに、自民党の中でもけんけんがくがくいろいろな議論がある中で、この大方針の方向で法案を、意見をまとめられて、そして法案を提出されたということについて、大臣の御尽力にまずもって敬意を表したいと思います。

 この法案は、まさに二つの中身に分かれておるわけでございますが、本則では、大震災で経験した電源喪失、計画停電、大規模節電といったことを踏まえて、電力を融通し合う広域的運営機関の設置、そしてまた、当時は埋蔵電力という言葉を使いましたが、埋蔵という言葉がよかったのかどうかというのはありますが、いずれにしろ、自家発電の電源を積極的に活用するための制度等々の改正を打ち出しておる。この改正は、まさに現時点で極めて必要な改正でございます。

 そして、附則でありますが、二〇一八年から二〇二〇年をゴールに、料金の完全自由化、供給体制では発送電の分離までの改革工程、法案提出時期を定めております。こうしたプログラム規定を法律で定めるというのは私は余り聞いたことがなくて、税法の世界などではあるわけでありますが、こうしたことは非常に異例のことだろうと思います。

 しかし、電力システムという社会経済を支えるインフラの大改革をするんだという性質上、また、産業界や金融界にも大きな影響を与える電力会社の分割にかかわるという事柄の大きさを考えますと、改革のスタート時点からゴールまでのあらかたの道筋について予見可能性をきちんと示すという意味においては、やはりこの改革工程を法律で定める意味も大きいと思います。したがいまして、こういう中身の改革工程を示された法案に仕立て上げられた大臣の御尽力にこれまた敬意を表したいと思います。

 その上でこの質疑に立ちたいわけでありますが、とりわけ、改革の工程プログラムを記した附則十一条を中心に見解を伺ってまいりたいと思います。

 まず、茂木大臣にお伺いしたいのです。

 この改革の本来の目的は、先ほど大臣も御答弁をされました。私なりにも解釈すると、地域独占や総括原価方式による電気料金を抜本的に見直すことで、電力分野に競争を促して多くの参入を促し、そしてかつ投資を呼び込み、結果として電気料金を抑制しつつ柔軟な電力システムにつくりかえる、こういうことだろうと思います。

 その目的に沿っていきますと、最終ゴールというのは、送電会社の中立性の確保、すなわち発電と送電の分離という世界と、料金の完全自由化、総括原価方式も見直し、かついわゆる規制料金を撤廃するといった姿が最終ゴールの姿だろう、こう思うわけであります。

 この二つは、原則として、基本的には同時に達成されるべきものと認識をしておりますが、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 この電力システムの改革、民主党政権におきまして、枝野大臣を中心に鋭意検討を進めていただきました。そして、政権交代後、それを受ける形で、現政権におきまして閣議決定そして法案の提出、六十年ぶりの大改革ということでそれぞれさまざまな議論がある中で、きょう国会において委員会の審議をスタートすることができた。近藤理事にも、きょうに至りますまで、さまざまな形でこの法案の審議促進に御尽力いただきましたことに改めて心から敬意を表する次第であります。

 この法案の趣旨、なぜ附則に今後のことについて書き込んだか、先生のおっしゃったとおりであります。そして、法的分離の実施の時期、料金規制の完全撤廃は、改革の方針そして法案の附則においても、いずれも第三段階、二〇一八年から二〇二〇年をめどに実施する、こういうことにされているわけでありますが、私も、基本的には同時に行いたい、このように今考えております。

 ただし、小売電気事業者間の適正な競争関係が確保されていない場合などには料金規制撤廃の実施時期を見直すということにしてあるわけでありますが、その理由としては、例えば、競争が十分に行われない状況で電気料金の完全自由化ということになった場合に、既存の事業者が、交渉上、新規参入者に比べて優位な立場となって価格決定権を握るおそれがある。こうなりますと、本来やはり電力の安定供給と同時にできるだけ安価に供給していくという、この法案の趣旨から外れることになるのではないかな、こんなふうに思っております。

 料金規制の撤廃についてのみこのように実施時期の見直しの規定を置いたのは、送配電部門の法的分離は、政府として一定のルールの整備を行い、システム開発等々もあるわけでありますが、五年から七年後をめどに実施することが可能である、このように考えておりますが、料金規制の撤廃につきましては、競争がどれだけ進展するかということであって、政府のコントロールが必ずしも十分に及ばない、そういった部分もあるということから、実施時期については、基本的には同時という中でも、判断を要する事項である、そんなふうに考えております。

 なお、料金規制の撤廃時期を見直す場合につきましては、例えば、規制料金ではなく自由料金を選択している需要家の割合がどれくらいになっているか、また、供給者を切りかえる比率がどれくらいか、さらには、既存電力会社の供給区域外への供給量がどこまで進んでいるか、こういった進捗等を踏まえた検討を行いたいと思っております。

 いずれにしても、プログラムに書いてあること、これはできる限りその時期に沿って進めたいということでありまして、そういった意味において、法的分離の実施と規制料金の完全撤廃についても、理想的に申し上げれば同時に進むということが望ましいと考えております。

近藤(洋)委員 大変御丁寧に答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 この法文、委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますが、附則十一条の四項に、今大臣が御答弁いただいた、まさに規制料金については、四項の二行目からでありますが、「適正な競争関係が確保されていないことその他の事由により、」「使用者の利益を阻害するおそれがあると認められるときは、その実施の時期を見直すものとする。」こう規定されておる。

 その他の事由とはということについて、先ほど大臣から、自由化の割合であるとかさまざまなことを御答弁をいただきました。大臣からも、原則はやはり同時が望ましいんだ、ただしということで御答弁をいただきました。これは、法文の条文だけを見ますと、競争が確保されていないことその他の事由と、その他の事由というのが非常に幅広くて、見ようによっては、いろいろな理由をもって延ばすことができるのではないか、こうも受け取れてしまうわけであります。

 長官にちょっとお伺いしたいんですけれども、大臣がおっしゃったように、需要家の保護というのは確かに重要なことであります。しかし同時に、電力のシステム改革というのは世界各国がある意味でまだ悩みながら進めておって、イギリスのケース、アメリカのケース、それぞれのケースということで、必ずしも各国が成功ばかりしたわけではない、こういうことだろうと思っています。

 例えば、カリフォルニアの電力危機などを見ますと、この場合は、いろいろな要因がありますけれども、市場の動向を無視して小売価格を非常に規制して低く抑えた、その結果として、電源卸部門にしわ寄せが来て大規模な停電が起きてしまった、エンロンだけがもうけてしまって、その後は大規模停電が起きた、こう言われているわけですね。結果として需要家が不利益を得たというケースであった、これはいろいろな要因、分析がありますけれども、そうも受け取れるわけであります。要は、必要のない規制が残ることで競争上のゆがみが生じる、こういうことだろうと思います。

 やはり、今回の改革の眼目というのは、大きなゲームチェンジをすることだろうと思いますし、基本は、競争を促すことで強い仕組み、柔軟な仕組みをつくることだろうと思いますので、できる限りそこは、原則は同時であって、例外的なものが起きた場合においては見直すというところをもう少しより明確に示すべきかと思いますが、いかがでしょうか。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、委員御指摘の、適正な競争関係が確保されていないことその他の事由とあるけれども、その他の事由とは例えばどんなものなのかということでございます。

 これは、例えば大規模な災害が起こったり、あるいは国際紛争などによって供給ショックが起こるといったようなものが考えられます。いずれにいたしましても、電気の使用者の方々の利益を阻害するおそれがあるかということでございますけれども、そこは慎重に判断をしていきたいと思っております。

 まさに御指摘のとおり、自由化によってしっかりとした競争が行われているということ、これは非常に必要なことでございまして、カリフォルニア州で起こった停電は供給力の不足で起こったわけでございますけれども、これは、小売料金を凍結する規制を実施したために発電事業への投資が進まなかったという事情があるわけでございます。

 こうした教訓、ほかの国にも幾つかの教訓がございますので、私ども、そういう意味では、その教訓を全て勉強できる立場にございます。このカリフォルニアの件で申し上げますと、具体的には、需要家保護のために小売料金規制を一定期間維持するけれども、いわゆる上限の価格規制というものはやはり行うべきではないというふうに考えておりまして、現行制度と同様でございますけれども、認可による値上げは可能とするということで、発電事業者にとって必要なコスト上昇は価格に反映できる、そういう仕組みといたしております。

 競争を促すということが基本であるということについては、しっかりと、委員の御指摘も踏まえて、考えた仕組みになっているというふうに考えております。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 本件はここで終えますが、ここの部分、改革のゴールの姿というのはやはり大事だろうと思うわけであります。そこはきちっとピンどめをして、その上で、その他の事由が大規模災害云々ということであれば、そこは例外的なものなんですね。ですから、原則のところをより明確にする必要が法文上もあるんじゃないかということは強く指摘しておきたい、こう思います。

 次に、自由化後、システム改革後の原子力発電所のいわゆる廃炉コストについて、大臣に改めて伺ってまいりたいと思います。

 二十八日の本会議で、私は、原子力規制委員会の活断層の調査や、新安全基準がこれから定められ、それに基づいて原子力規制委員会が調査をしていくわけでありますが、その基準から外れた原子力発電所の廃炉問題についてお伺いしました。その際、大臣は、廃炉にすべきかの判断は民間事業者が行う、そしてまたその廃炉費用については現在の総括原価には含まれない、すなわち電気料金には反映されないといった御答弁をされました。

 確かに、三・一一以前の世界であれば、みずから設置した原子力発電所を処理するといういわゆる葬式、平たく言えば葬式はやはり事業者が判断すべきであろうし、またその葬式代についても電力会社がみずから積み立てていくというのはある意味筋だろう、こう思うわけであります。この理論は十分理解はできます。

 しかし、三・一一以降、安全基準、また地震に対する見方、見方というのは、ある意味では政策の判断が変わって、より厳しいものにしていこう、国の基準が、やはりここは政策判断が大きく変わったんだろう、こう思うわけであります。

 この大きく変わった時点において、前の判断基準、前の政策の考え方に基づいて認可を受けて建設された原子力発電所、三・一一を受けて大きく判断基準が変わった原子力発電所の処理について、廃炉判断は事業者ということは一つ当然だと思いますが、しかしながら、特に現行制度として料金として回収できなくなっているのだとすれば、やはりこのコストは、何らかの形で国のかかわりというのがあっていいのではないか。

 逆の言い方をすれば、発送電分離をされたときの発電会社が恐らくこのコストを当然負うのだろうと認識をいたします。発送電が分離された際、廃炉コストの負担は発電会社が負うんだろうと思いますが、規模の小さくなった発電会社に果たして廃炉費用が負担できるのかどうか、私は非常に疑問なのですが、大臣、改めて、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 先日は本会議で、近藤委員からこの点の御質問をいただきまして、私として、現行制度では誰が判断するのかとか、そういった観点からお答えを申し上げました。そして、恐らく、発送電分離後の廃炉に係る費用負担、現行制度でいきますと、御指摘のように発電会社が持つということになるんだと思います。

 あえて、私、申し上げると、この会計制度というのも、ある意味、原発神話というか、事故は起きない、こういう前提に立ってつくられた部分というのはあるのではないかな、そういう反省も必要だと思っております。

 例えば、現行の解体引当金制度でいいますと、原発の運転をすることができなければ引き当ては進まない、そこで必要な廃炉費用を確保できない、こういう問題が出てくる可能性も当然あるわけであります。また同時に、早期に運転終了となった場合には、十分な引き当てが完了しておらず、必要な廃炉費用を確保することができない、こういった課題も生まれてきた、このように認識をいたしております。

 議員の問題認識も踏まえた意味で、現行の会計制度等が妥当であるのかどうか、見直しも含めて早急な検討を行っていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 長官に伺いたいんですが、先ほどちょっと事前に申し上げたんですが、原発を全廃した場合、資産が大幅に減少して、六社が債務超過になるという経産省の試算が明らかになったという記事が、けさの読売新聞の経済面に出ております。

 これは、全廃になった場合という大変大胆な仮定に基づいておるわけでありますが、六社が債務超過になる、これまた、この結果についても極めて衝撃的な数字になっておるわけであります。この試算、経産省試算ということでありますが、事実ですか。

糟谷政府参考人 お尋ねの試算につきましては、求めに応じまして、これから申し上げるような数字を提出いたしたものでございます。

 まず、資産除去債務相当額を控除した原子力発電設備の簿価の額、核燃料の簿価の額、それから解体引当金の未引き当て額、つまり引き当て不足額、その三つをそれぞれ足し上げまして、それから、二十四年度末、つまりことしの三月末の純資産と比べて機械的に引き算をやりますと、お尋ねのような結果になるということであります。

 もちろん、これにはいろいろな仮定が入っております。すべてが損金になるという前提であります。核燃料の中には転売できるものもあると思いますし、それから、原子力発電設備の簿価の中に、全部一括損金に計上しなきゃいけないのかどうか、そういう判断もあろうかと思います。

 あくまで、公表されている会計の数値をもとに機械的に計算をしたものだというふうに理解をしております。

近藤(洋)委員 一つの機械的な数字ですから、ただ、ここの六社が、全廃した場合は債務超過になるというのは、原発の廃炉がいかに経営に大打撃を与えるかという一つのことが明らかになるということだと思うんですね。それはなおのこと、発送電が分離されると、先ほど申し上げたように、今は大きな会社で債務超過ですが、発電会社でそれを受けたら、そのマグニチュードはもっと大きくはねるということがこの試算でも明らかだ、こういうことだろうと思うんです。

 そこで、まさに廃炉になった場合、企業としての存続が危うくなるというケースが十分に想定される、これを想定しなければいけないわけであります。

 先ほど大臣にも御答弁いただきましたが、会計上、やはり一種の安全神話に基づいた現行の会計制度であった、こういうことでございました。

 これはちょっと事務方に確認をしていきたいんですが、例えば、敦賀に原発を持つ日本原電であります。これは今、規制委員会の調査で活断層ありという報告が上がった。最終的な判断は規制委員会はこれからでございますけれども、こういった報告が上がった以上、これを覆すことがどこまでできるか、そう容易ではないだろうなということは想像にかたくないわけであります。原電は、発送電分離におけるまさに発電会社でありますから、発送電が分離された後の廃炉リスクの状況をある意味先取りした姿になるんだろう、こう思うわけです。

 大臣から御答弁があったように、解体積立金の現行制度は、まさに原発が稼働していることを前提に積立金を積むという制度になっている。稼働していなければ積立金は積めない。現在ほとんど稼働していませんから、現在も積めていないわけですね、各原発、現電力会社は。積めていないはずなんです。

 しかも、もう一つ、四十年稼働を前提にこの制度はでき上がっている。だとすると、安全基準が変わって、場合によっては築二十年の原子力発電所も、もしかしたら活断層ありということで廃炉に追い込まれるかもしれない。四十年だったら積み立てが可能だったけれども、二十年であってだめになるかもしれない。こういうケースも今後出てくるわけであります。

 こういったことを受けて、例えば日本原電は、見かけ上黒字になっていますけれども、格付は、つい最近、二つ下げられてダブルBプラス。すなわち、投機的と格付をされておるわけであります。

 まず、事務的にお伺いしたいんですけれども、要は、こういった会計基準、いずれにしろ、現在も各電力会社では続いているということでよろしいわけですね。

糟谷政府参考人 現在の会計基準は、震災の前の会計基準と同じでございます。

 ただ、他方で、原子力発電所の安全基準、規制制度が見直されまして、バックフィットといったような新たな制度が入ったという面もございます。そういうことを受けて、先ほど大臣から御答弁がありましたように、何らかの見直しが必要かどうかということを検討していく必要があるだろうというふうに考えております。

近藤(洋)委員 もう一点。費用の問題と、もう一つは、分離後に廃炉コストをどのように回収するかということなんですね。電気料金には現行制度では反映されない、こういうことでありましたが、では、発電会社の廃炉コストというのはどのような形で回収されるのか。

 要するに、送配電部門の託送料という形で、広く薄くかけて回収することになるのか。そうでないと、危険だと言われた、廃炉にしなきゃいけない発電会社だけが負担するとすると、ここは競争上著しく不利になってしまうわけですね。だとすると、全国あまねく費用を負担するような形になるのか。それとも、電促税というものがございますが、税という形で負担する形になるのか。この辺の考え方の整理は現時点でついておるのでしょうか。

 これは、大臣でも事務方でもどちらでも結構でございます。

糟谷政府参考人 お尋ねの点につきましては、この法案の附則の十一条第五項第七号におきまして、エネルギー政策の変更その他のエネルギーをめぐる諸情勢の著しい変化に伴って特定の発電事業者等の競争条件が著しく悪化した場合において、これらの事業者の競争条件を改善するための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるというふうに規定をしております。

 この規定の趣旨は、例えば過去に行った多額の発電投資が政策の変更により回収不能となり、競争条件が著しく悪化した場合に、これを緩和するために、別途その必要性やその内容を検討した上で必要な政策的措置を講じるというものであります。

 具体的にどのような政策的措置を講じるかということについては、今後、コンセンサスを得ながら検討していく必要があるというふうに考えております。

近藤(洋)委員 これは、私はちょっと心配なんです。というのは、もうこの措置を考えなきゃいけない時期に来ているんだと思うんですね、相当。日本原電の話は、一原電だけの話じゃないんです。株主、取引先は電力九社ですから、日本原電がどういう形になるかということは、すなわち、ほかの電力会社がどのような状況になるかというのをある意味予見させる話になるからです。

 一社の問題じゃなくて九社の問題というか、発送電分離会社全体の問題になる。言葉はいいかどうかは別にして、廃炉ドミノと言うときついですけれども、いわゆる廃炉の問題をどうするかということが一社じゃなくて九社にかかわる、この話が既にもう間近に迫っている、こういうことなんです。急がなければいけないんだろうと思うんです。

 そこで、今、糟谷部長からお言葉のこの七項にこう書いてある。私も、この七項を配付資料の中に入れさせていただきました。まさに、原子力政策を初めとするその他のエネルギー政策をめぐる著しい変化に伴って特定の電気事業者等の競争条件が著しく悪化した場合において措置を講ずる、こう書いてあります。

 大臣、ぜひ頭に置いていただきたいと思うんですけれども、ここは悪化した場合でいいのかということなんです。というのは、要は、悪化したというのがわかってからでは遅いわけなんですね。もう既に廃炉を決めなきゃいけないという条件が決まった時点で措置を講じていたら遅いんです。事前にそのことを想定して制度的な手だてを打っていかないと間に合わない。

 何でかというと、企業というのはマーケットの中で生きているからなんです。株式上場会社であり、社債で調達し、そしてさまざまな金融取引をやっているから、事前にさまざまな手だてを打っていかないと、悪化したときに手を打ったって、もうアウトなんです。

 私は、昔、新聞記者をやっておりまして、一九九五年から九七年にかけてでございました。当時、日銀記者クラブというところにおりまして、金融問題を取材しておりました。私の担当は、今はなき日本長期信用銀行、日本興業銀行、日本債券信用銀行、いわゆる長信銀とあと大手都銀でございました。今はそれぞれの会社に引き継がれております。

 あのとき、九五年、私は長信銀を担当させていただいて、こう言ってはあれですけれども、日債銀が最初に潰れるのかなと我々は取材をしておりましたが、あに図らんや、日本長期信用銀行が破綻したんですね。それはまさにマーケットにさらされて一気に潰れていった、こういうことでありました。市場というのは非常に暴力的だなと思います。きのう、きょうの株価を見ても、非常に暴力的に動くわけであります。

 何を言いたいかというと、まさにこの原発の債務問題というのは、企業においての大変な不良債権問題になるわけであって、資金調達そのものにかかわってくる。こういう問題を早急に措置しなければいけないと大臣に御答弁いただきました。それはそのとおりなのですが、やはりここは条文上も、悪化したというのがわかるときではなくて、悪化するおそれがあるときに既に措置を打たなきゃいけない。そこはきちんとしなければ非常に心配だ、私はこう思うんです。この点、いかがですか。

富田委員長 近藤洋介委員、第七項とおっしゃいましたけれども、附則第十一条第五項の七号ですね。

近藤(洋)委員 済みません、第七号でございます。失礼しました。

茂木国務大臣 附則の第七号について御意見をいただきました。

 我々としては、この法案、附則も含めて相当な議論を行いまして、最善のものとして国会にお諮りをしてございます。国会の中でさまざまな議論が行われて、与野党でこれに対して御意見をいただくということは貴重なことだと思っております。

 ここで、我々は、競争条件が著しく悪化した場合、営む者の競争条件を改善するための措置をとるという形にしてあるわけでありますけれども、ここをどうするかということについて、例えば、何かが予見されるとかいうことになりますと、条件の設定によっては、すぐに、ちょっと悪くなりそうだから、この競争条件の改善をしなければいけないということになってしまわないか。

 いろいろな表現の仕方はあると思いますけれども、委員のおっしゃる趣旨は私はよくわかります。悪化してからでは遅い。ただ、そうはいっても、ちょっと何か兆候が出てきたらすぐに改善するということにはならない。そこの中で、どういう考え方が必要かということの検討は必要だと思っております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 大臣も金融にもお詳しく、金融担当大臣もおやりになられた方でございますから、さまざまな部分を御存じかと思いますが、今、銀行界のトップなり首脳と私なりにコンタクトをとると、このシステム改革法案は非常に注目されているわけであります。すなわち、原発がどうなるか。もちろん、再稼働について気にしている部分もありますが、それ以上にまた、原発の廃炉費用等々について非常に気にされているのを私も感じます。

 もちろん、銀行にとって借り手のことを心配するのは当たり前ではあります。しかし、電力というのは、社債市場も含めて、日本にとって大変大きな金融の一つの部分でもあるわけであって、そういうところから見ても、やはりこのシステム改革、まさに改革は大胆に、そしてスケジュールは現実的に、その現実的にという中で素早く対処する姿勢を示す必要がございますでしょうし、表現ぶり等々はいろいろあるかと思いますけれども、考え方は共有できたのではないかと思うわけであります。

 あと、あわせて、この点をちょっとエネルギー庁に。

 まさに会計制度の件は、今大臣の御発言もございましたけれども、大至急着手すべきだし、私はこれは法律改正は多分必要ないんだろうと思うんですね。政省令の世界ではないかと思うわけであります。大至急対応を打つべきだと思いますが、いかがですか。これは法律改正は必要ない話ですから。

糟谷政府参考人 まず、先ほどの私の答弁に誤解があったかどうか、ちょっと心配をしております。

 日本原電につきましては、日本原電株式会社においてみずからいろいろと調査を行っておりまして、まだ、活断層であるということについては、そうではないということの調査を行っておりますので、その個別の案件についてどうこうということを申し上げたものではないということをちょっとお断りさせてください。その上で、一般論として、附則の十一条第五項第七号に規定をされているということでございます。

 先ほども御答弁申し上げましたように、また先ほど大臣からも御答弁がありましたように、規制制度が変わったことに伴って、会計制度についても何らかの見直しが必要なのかどうか、その辺の検証を含めて考えていく必要があるというふうに考えております。

 その取り組みは、先ほど大臣からの御答弁もありましたように、早急にスタートさせたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 次に、中間の質問を飛ばさせていただいて、東京電力の再建問題についてお話ししたいと思うんです。

 東京電力は、現在、まさに日本の電力市場の約三割を超えるシェアを占める大会社でございます。電力システム改革のことを考えると、全体のマーケットの三割を占める東京電力の行方というもの、道筋が立たずには、ある意味で電力システム改革がきちんと進まない、こう思うからであります。

 この東電の事業再建計画、一つ前提がございました。柏崎原子力発電所の稼働ということでございました。計画では、この四月から稼働することを前提に計画を立てているわけでありますが、現時点において再開のめどは全く立っていない、さらに言うと、最近明らかになった汚水処理の問題も大きくなってきた、こういうことであります。

 五兆円の交付国債といいましょうか、資金枠の獲得、資本注入で何とか東京電力は企業体として維持しておるわけでありますけれども、何とかぎりぎり維持している状況ではないか、こう考えるわけであります。

 下河辺会長が官邸に行かれて、その際、安倍総理は、東京電力の再建について、国が一歩前に出ると発言したと伝えられております。

 茂木大臣、まず、東京電力が果たして現在の原賠法のスキームで本当にどこまで再建できるのか。民主党政権で原賠法のスキームをつくり、与野党で議論してできたスキームでありますから、責任の一端は我々も当然大変大きなものを持っているわけでありますが、その後に起きた事象、汚水の問題等々、またさらに東電の状況は悪化しているわけでございまして、非常に厳しい状況になっているのではないか。

 特に、福島の廃炉事業については、発送電分離が行われたときの東電発電会社が負債を負うわけでありますけれども、果たして本当にできるのか。分離した会社がこの大変巨額な廃炉事業を担うことができるのか。除染事業はどの会社が担うかわかりませんから、除染費用はどの事業会社が引き継ぐのかというのはいろいろ議論があろうかと思いますが、恐らく廃炉事業は今のスキームでいくと発電会社が負うんだろうと思います。

 きょうはちょっと廃炉についてお伺いしたいと思うんですが、これを負うのはもはや限界ではないか。汚水処理も恐らく廃炉事業に入りますから、汚水処理事業も発電会社が負うと仮定すると、これはちょっと民間会社の域を超えているのではないかと考えます。いかがでございますでしょうか。

茂木国務大臣 先日、下河辺会長そして東電の社外取締役の方々が官邸で総理とお会いしたとき、私も同席させていただきました。その場で総理の方から、国が前面に出るというお話をされたのは確かであります。

 これは、福島の一日も早い復興のためには、賠償、廃炉、生活再建の問題を全て事業者に押しつけるのではなくて、国もしっかりと前面に出て、果たすべき責任というものを果たしていかないといけない、こういう趣旨でおっしゃられたものだと思っております。

 廃炉のお話がありました。

 例えば、廃炉に係る研究開発につきましては、既に平成二十四年度の補正予算そして二十五年度の予算で、これは世界的にも経験したことのない、本当に大きな課題であります、研究開発であったり、さらにはモックアップ施設の建設であったり、これについては国が責任を持って行っていこうということで、国と東電のある意味の役割分担、国が前に出るべき部分、こういったものも決めております。

 また、例えば汚染水の問題。

 これは、民主党の馬淵議員初め多くの皆さんに御尽力をいただいてきた問題でありますが、このたび、やはりこれを解決するためには抜本的に阿武隈山系から流れてきます地下水をとめなければいけない、さまざまな検討を行う中で、昨日、東電の広瀬社長に対しまして、いわゆる凍土方式といいまして、敷地のある一定の場所に一メートル間隔ぐらいでパイプを埋め込みまして、そこを冷やすことによって土を凍らせてしまう、これによって地下水の流入を抑制する、いろいろな検討をしていただきましたが、この方法が最も完全に地下水をとめられ、しかも工期的にも一番早いということで、この方法を採用する方向で、ことしからフィージビリティーをスタートすることにいたしました。この費用につきましても、基本的には何らかの予算措置で国が支援できないか、そういうふうに考えているところであります。

 廃炉をめぐる問題につきましても、国がやるべき仕事はきちんとやる中で廃炉を進め、そして事故の収束を一日も早く進めていく、こういったことが必要だと考えております。

近藤(洋)委員 まさにその凍土方式等々も含めて、これはある意味で一つの大きな国家の威信をかけたプロジェクトなんだろう、こう思うわけであります。大臣の御答弁からも感ずることができるわけですが、やはりここは、国家の威信をかけたプロジェクトなんだという認識のもとで、適切な役割分担、しかし、そこは民間企業の限界というものも踏まえて適切な役割分担をお願いしておきたいと思いますし、国が前面に出るという安倍総理の発言は意味があったと受けとめたいと思います。

 今、廃炉の認識については伺いました。あわせて、やはり東電の全体の再建スキーム、機構法によるスキーム。これは、原発事故に対して、保険方式で電力九社も積み立てる、あわせて交付国債を入れる、こういうたてつけの中ででき上がったわけでありますが、この五兆円の交付国債も、報道等によりますと、さらに東京電力は六千億円以上の追加を申請すると報じられております。六千億円以上を追加申請しますと、累計でもう四兆円弱ということでありますから、残りあと一兆円しかない。五兆円の枠も残り一兆円です。

 正直言って、我々が政権与党時代に考えてきた時間軸が随分スピードアップしているなというか、もう少し五兆円も猶予があるのかなと思っておりましたが、さまざまな状況の中で、あと一兆円しかないという状況であります。

 機構法の見直し期限というのは、たしか設立後二年ということで、ことしの夏、秋。附則における見直し期限が来ております。原賠法自身も、実は去年の秋の見直し期限でございましたが、附則における見直し期限、諸般の事情で一年延期をいたしました。

 原賠法は、原子炉事故における国と事業者の責任の考え方を示したものであり、機構法は、ありていに言うと東電処理のためのスキームでありますけれども、この附則における見直し期限がこの秋に迫っております。私は、この機構法のスキームは、いずれにしろ、限界というんでしょうか、やはり修正が必要ではないかと考えます。

 あわせて、その問題意識とともに、具体的に政府において、現時点で、秋の国会にこれらの法案を提出される御用意があるのか、ないしは、現時点ではそこは明確でなく、いずれにしろ近い将来出されることで今準備をされているのか、お答えできる範囲で結構です、お答えいただけますか。

糟谷政府参考人 まず、原子力損害賠償法、原賠法は文部科学省の所管でございますので、それをお断りした上で申し上げます。

 両法につきましては、現在、福島の原子力事故の被害者の方々に対する賠償が進行中でございます。この賠償の状況、このあたりを見ながら、引き続きどのような対応を行うかということを検討しているところでございまして、現段階で、いつの段階に見直し法案を提出するということを決めているものではございません。

近藤(洋)委員 これは大変難しい制度であることは百も承知で伺っています。

 ただ、ここの部分をきちんきちんと前に進めていくということが、やはりシステム改革を進める上でも非常に大事だと考えておりますし、ここは言いっ放しになりますが、ぜひ大臣において検討を進めていただきたいと思います。

 また、その中で、国の関与ということ、廃炉における、また原子力リスクにおける国のかかわりということをもう一度整理していただきたい、こう思うわけであります。

 次に、核燃料サイクル事業について、先ほど大島議員からもこの件がございました。全量再処理の核燃料サイクル事業は堅持するという御答弁もいただきましたので、ここは大臣にぜひお伺いしたいのです。

 核燃料サイクル事業は民間会社が担うという趣旨の御答弁が先ほどございましたが、民間事業会社が担っているのは日本だけなんです。要は、米国は軍がやっております。フランスは、アレバを初めとする国営会社がやっております。プルトニウムを扱うという性質上、これを民間でやってきたというのは異例のことでございました。公設民営というか、国が環境を整備し、民間が事業会社を行う。

 これは、これまでのいわゆる護送船団的な電力システムであったから民間会社でも担えたけれども、発送電分離の後は、私は、この運営責任を民間会社と切り離すことというのは非常に難しいのではないかと考えますが、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 核燃料サイクル事業につきましては、委員も御案内のとおり、ウラン資源の有効利用、そして高レベル放射性廃棄物の減容、サイクルを回すことによりまして四分の一ぐらいに量が減るわけであります、それから有害度の軽減等々の観点から、使用済み燃料を再処理して回収されるプルトニウムを有効活用することを基本としてきておりまして、これからもこの政策については継続していきたいと思っております。

 同時に、三・一一以降、さまざまな状況が変わっております。そういった中で、先ほどは、会計制度のあり方につきましても検討していく必要があるのではないかなというお話をさせていただきました。

 さらにはまた、廃炉を進めるに当たっての国と東電の役割分担をどうしていくかということについても検討が必要である。国がやるべき部分はどこなのか。一日も早く廃炉を進め、一日も早く福島の皆さんにふだんの生活、もとの生活に戻っていただけるような状況をつくるということも必要であります。

 そして、エネルギーについて、エネルギーの安定供給、これをもう一回確保できるような状況をつくっていき、さらには、できる限り資源の調達コストも下げていく。

 さまざまな新しい要素もある中で、では、今後のサイクルを回す上での役割分担、これがどうあるべきか。今何らかを決めているわけではありません。基本的には今の枠組みの中でこれを回そうと考えておりますが、再検討が必要だ、もう一回検証することが必要な事項ではあると思っております。

近藤(洋)委員 そのとおりだと思います。

 私は、核燃料サイクル事業は進めるべきだという立場に立つ人間であります。野田政権も、原発の縮小、縮原発といいましょうか、こういう大方針を出してまいったわけでありますが、その中でも核燃料サイクル事業はきちんとやるということを野田政権下、民主党政権下でも示しました。やる以上は、やはりきちっとした枠組みをもう一度考え直さなきゃいかぬという問題意識を持っているものであります。

 次に、電力システムの改革というのは、ある意味でエネルギーのさまざまな分野を変えていくわけでありますが、特に、エネルギーの調達を変えていくということでも一つの影響を与えてくるんだろうと思います。

 委員長のお許しを得て、きょうは資料を三枚配らせていただいておりますけれども、原油というか、広い意味で原油、天然ガスといいますか、エネルギーの調達についてお伺いしたいと思うんです。

 資料の二枚目を見ていただきますと、原油について、中東依存度八三%、ホルムズ海峡を通るいわゆるホルムズ依存度は八〇%、天然ガスについてはここはぐっと下がるわけですが、原油については中東依存度、ホルムズ依存度が大変高いということであります。

 もう一ページめくっていただければと思います。ちょっと見にくいグラフで恐縮です。

 この中東依存度でありますけれども、七〇年代のオイルショックを経て、いっとき九一%だったものをぐっと下げてきた。しかし、御案内のとおり、八七年に六七・九%まで下がったものの、また再び中東依存度は上がり、八五%台までいっている。石油ショックのときと変わらないといいましょうか、それよりも若干高くなっているという状況であります。使用量は横ばいになっていますけれども、依存度は石油ショックを経ても変わらない。

 このホルムズ海峡をめぐって、民主党政権下でも非常に緊張感が高まった時期がございました。ここはやはり、ホルムズ海峡依存度というか、原油の中東依存度、広い意味でのエネルギーの中東依存度を下げるということは極めて重要だと考えますが、これに向けた戦略等について、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 おっしゃるとおり、今ホルムズ依存度というものが八割ということでありまして、あの地域の地政学的なリスクを考えたときに、この割合は極めて高いなと思っております。

 そして、今、原発の大半がとまる中で、九割までが火力発電に依存するという中で、いかに資源の多様化を図っていくか、そしてまた調達先の多角化を図っていくか、こういったことは極めて重要だ、そんなふうに考えておりまして、御指摘いただきましたように、石油と比べますと、まだ天然ガスの方がいわゆる資源の偏在性がないというところもありますし、また、市場価格につきましても、比較的天然ガスの方がさまざまな調達の方式も可能なんだろう、こんなふうに考えております。

 そういった中で、本年二月の日米の首脳会談、そして四月の日ロの首脳会談など、ハイレベルな働きかけを含めて、資源外交の積極的な展開を通じて資源国との関係をまず強化する、さらには、資源を実際に日本の企業なりが外に出ていって確保する、権益を確保するということが重要でありまして、そのためのリスクマネー、JOGMECによりますリスクマネーの供給を増強するということで、平成二十五年度の予算でも一千五百九十億円を計上してございます。

 さらには、我が国の周辺海域に存在する石油、天然ガス、さらにはメタンハイドレート、こういったものは、言ってみますと、出てきますと最も安定的な資源ということになるわけでありますから、この商業化に向けた技術的な課題、こういったことにも取り組みをしていきたい、そんなふうに思っております。

 メタンハイドレート等について、本当にできるのか、夢物語じゃないか、こういうお話もあるかと思うんですけれども、例えばシェールガスも十五年前、十年前に、あれだけのものが出るとは、あることはわかっていたけれども、技術的には掘れないんじゃないかな、こんなふうに言われておりました。

 私もゴールデンウイークに米国を訪問しまして、ちょうどピッツバーグのそばなんですが、マーセラスというシェールガスのサイトを実際に見てまいりました。北米四州にまたがっているんですけれども、二〇〇六年から生産が始まりましてまだ七年ですけれども、今七千万トン出るようになっています。毎年一千万トンずつふえている。日本のLNGの総輸入量が九千万トンですから、いかに大きいかというポテンシャルを感じたところであります。

 日本近海におけるさまざまな資源の開発も進めていきたい、そんなふうに考えているところであります。

近藤(洋)委員 ぜひ進めていただきたいと思います。

 また、シェールガスについても、今般、米国が一つのプロジェクトを認可した。非常に朗報だったと思いますし、引き続き残り二つについても取り組んでいただきたい、こう思うわけであります。

 このシェールガスの話で一つぜひ最後にお伺いしたいのは、シェールガス革命というのが出てくると石油化学産業は大きく構造が変わる、私はこう思っているんですね。何となれば、原油ベースのエチレンと非常に安いシェールガスの化学品というのが出てくる。端的に言うと、日本のエチレンセンター及び化学が対抗できるのかということになってくるかと思うんです。

 だとすると、この構造変化を逆手にとって、ある意味で、日本の素材化学産業が海外により出ていく、資源国に近いところに出ていく。例えば、この間、ロシアで新たな鉱区をまたインペックスがやるというすばらしい話が出てきましたけれども、かつてIJPCがあったわけでありますが、石油と化学というのはセットなわけです。

 そういうことを考えてみても、この素材産業、特に化学産業が、シェールガス革命で非常に競争が変わってくるところを踏まえて日本の企業を外に展開していく、その上で、ひいては資源国との関係も深める、こういうことを、まさにある意味で、民間企業だけではなくて、政府が音頭をとってさまざまに支援していくということが必要かと思います。

 この辺の化学産業の国際展開等について、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 政府として、六月に取りまとめを予定しております成長戦略の中で、海外の成長を取り込む国際展開戦略を一つの柱と位置づけております。

 実際に、石油化学の分野におきましても、我が国の資源獲得の動きに合わせて、中東以外の地域においても、我が国の企業が、ベネズエラであったりとかブルネイといった国々におきまして、現地のガスを原料とする石油化学事業を行っているところでありまして、政府としては、こういった民間企業の取り組みに対して、国際協力銀行の融資などによる支援を行っているところであります。

 恐らく、化学全体でいったときに、石化とファインケミカルはかなり違ってくると思います。私は、どちらかといいますと、ファインケミカルは国際的にも日本が競争力をかなり持てる部分でありまして、そのマザー工場であったりとかは国内に残しつつ、また分野によっては国際展開する、同じ化学の中でも、海外に出て実際に資源国でつくった方がいいものと、かなりファインになって、日本が独自の技術を生かしながら日本を中心につくっていくものに分かれていくんじゃないかな、こんなふうに思っています。

近藤(洋)委員 時間ですので、終わりたいと思いますが、商流審、申しわけございません、本来、電力の先物市場についてお伺いしたかったんです。またぜひ機会があればと思います。

 いずれにしろ、電力システム改革というのは、電力の先物市場の展開、さらには化学産業の展開、また異業種からの電力への参入、さまざまな、大きな、まさにビッグバンを起こすものなんだろうと思います。ですから、この改革は進めなければいけない。日本の産業構造を変えるためにも、いい意味で転換させ、進めなければいけない大きな改革だろうと思います。

 だからこそ、国会においても、きょうからスタートでございますけれども、しっかりした議論をさせていただくことをお願い申し上げて、質問を終えたいと思います。

富田委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、重要法案であります電気事業法の改正案並びに電力システム改革に関して、公明党の基本的な考え方を踏まえて、その根幹部分を中心に質問させていただきたいと思います。これまでの質問と若干重なる部分もあるかと思いますが、重要な論点でございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 エネルギーをめぐる情勢は、昨今大きく変化しております。新興国の経済成長などを背景としたエネルギー需要の高まりがあり、また、先ほども出ましたけれどもシェールガス革命、そして、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの拡大などが急速に進んでおります。

 その一方、我が国の足元では、東日本大震災以降、エネルギーの供給体制を中心に、いまだかつてない課題に直面しているところであります。政府におけるエネルギー政策の重要性は、ますます高まるばかりと思います。

 そのエネルギー政策の中でも最も重要な政策の一つが、電力システム改革であります。我が国で初めて電灯がともってから、およそ百二十年。低廉で安定的な電力の供給体制の確立は、国民生活はもちろん、製造業を中心とする我が国にとっては生命線であります。

 しかしながら、東日本大震災後、計画停電が行われ、電気の使用制限令が発動されるなど、世界で最も安定的であると言われた我が国の電力システムが抱えるさまざまな問題点が明らかになってまいりました。

 原子力比率の低下、そして燃料コストの上昇によって、電気料金もその上昇圧力の中にあります。今のままで放っておいては、国民や企業は、高くて不安定な電気を享受しなければならなくなるわけであります。

 数々の神話が崩壊した今、現在の電力システムは盤石ではないということを出発点にして電力システムの抜本的な改革に取り組むことが必要不可欠であります。

 四月二日に閣議決定されました電力システムに関する改革方針に明確にうたわれておりますように、まさに今般の電力システム改革の目的は、第一に、電気の安定供給を確保することであり、第二に、電気料金を最大限抑制することであり、そして第三に、電気の需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大することだと考えます。

 この三つの目的を達成するために、大臣が申されておりますように、広域系統運用の拡大、そして、小売及び発電の全面自由化、さらに、発送電分離による送配電部門の中立性の一層の確保、この三つを柱とする大胆な改革を行っていくものだと私は考えております。

 今回、我が公明党においても議論を重ね、この六十年ぶりの大改革の実現に全力で取り組むことを決定し、先日取りまとめた我が党の成長戦略にも盛り込んだところであります。

 そこで、大臣に改めてお伺いをいたします。

 電力システム改革の目的、そして政策の柱について、政府も同様のお考えであると思いますけれども、いかがでしょうか。大臣、よろしくお願いします。

茂木国務大臣 今回、電力システム改革の議論を進めるに当たりましては、江田先生初め公明党の先生方、また、赤羽副大臣にも加わっていただきまして、さまざまな議論を進める中で、まさに与党としてまとめてこの改革案をつくった、このように考えております。

 東日本大震災や新興国の台頭を中心とする世界的なエネルギー需要の増大など、激変する国際情勢の中、我が国は石油危機以来の新たなエネルギー制約に直面しているわけであります。

 このエネルギー制約の克服、そして、どうしてもコストを下げていかなければならない、それが電気料金にはね返ってきてしまう、こういったことを考えて、まず、安定的、そしてまた安価にエネルギー源を生産して、調達して、それが効率的に流通して、さらには、最終的にはさまざまな選択肢の中で消費者の方に選んでいただいて、スマートに消費する、我慢の省エネではなくてスマートな省エネをしていただく、こういったことが大きな鍵を握っていると考えております。

 電力システム改革は、新規参入の促進や競争環境の整備によって電力の低廉かつ安定的な供給を一層進めるものであり、エネルギー制約の克服に向けた、まさに改革の中心をなすものだ、このように考えております。

 そして、先ほど先生の方からも、まさにこの目的について、そして、三段階でこの改革について進めるということについて、丁寧に御説明をいただいたところでありますが、今回は、第一段階であります広域系統運用の拡大だけではなくて、二段階目の自由化の問題、そして、三段階目の発送電の分離そして送配電部門の一層の中立性の確保、こういった二〇二〇年までに行います全体の改革像、これもお示しすることによって、しっかり順序立てて大胆な改革を進めてまいりたい、このように考えております。

江田(康)委員 今、大臣から明確な答弁がございました。

 電力システムの抜本的な改革、その目的、政策の柱は明確でございます。その中で、まず、電力システム改革の第一の柱、広域系統運用の拡大について、幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。

 現行制度では、送配電網の整備計画の策定や電力需給の管理は、地域独占の電力会社の区域ごとに行うこととされております。このため、異なる電力会社の区域との間の連系線を増強したり、ほかの地域から電力の融通を受けたりすることは、それぞれの電力会社の判断に委ねられてきました。

 二〇一一年、東日本大震災が起こりました。特に、夏の電力需要に対する供給余力が低下しており、電力会社相互の電力の融通が円滑に行われるような仕組みを構築する必要性が非常に高まっております。

 こうした状況を踏まえて、この改正案では、全国大で電力需給の調整機能を強化するために、広域的運営推進機関を創設することとしたわけであります。

 安定供給を確保するという今回の改革の目的にも直結するように、電力需給の逼迫時の対応を整備することは極めて重要であります。

 電力需給が逼迫している緊急時において、この広域的運営推進機関と国の役割分担についてどのようになされるのか、お伺いします。緊急時に広域的運営推進機関が行う業務、そして国との役割分担を明らかにしていただきたい。

菅原副大臣 ただいま江田先生がおっしゃるように、これまではそれぞれの電力会社の判断によるところが大きかった。これを、大きな改革を進めまして、このたび創設をいたします広域的運営推進機関が行う業務の一つに、まず、需給逼迫時に個別の発電所への出力の増強、いわゆるたき増しの指示、あるいは既存の電力会社のエリアを越えた広域的な電力融通を指示することとなってございます。

 さらに、会員である各電気事業者に対する供給指示を出すことも可能とし、また、経済産業大臣は電気事業者に対する供給命令を発動することが可能となってございます。

 江田先生がおっしゃるように、国との役割分担につきましては、実務上、まず広域的運営推進機関が電気事業者に対しまして、電力融通をすべき、こうした指示を行って、仮に電気事業者がその指示に従わないなどの場合においては国による供給命令を発動することで安定供給につないでいきたい、このように考えております。

江田(康)委員 さらに、広域的運営推進機関の役割について関連してお伺いをいたします。

 東日本大震災後、原発の比率が低下していく中で、再生可能エネルギーの普及拡大が喫緊の課題であります。しかし、再生可能エネルギーの電源を送電網に接続することを電力会社に申請しても、系統の容量が不足しているというような理由でその接続を拒否されるという問題が多く起こっておるところであります。

 今回設立される広域的運営推進機関は、地域間の連系線や基幹系統などの送電インフラの増強、また、送電網への接続の受け付けなどについて、その中立性を含めて、具体的にどのような役割を果たしていくのか、さらには、それはこの法案上、どの規定に基づいて行おうとしているのか、お示しをいただきたい。

糟谷政府参考人 まず、広域的運営推進機関が行います地域間連系線などの送電インフラの増強のための計画の取りまとめでございますが、これは改正法第二十八条の四十第四号に基づいて行うこととされております。

 また、再生可能エネルギーなどの送電線への電源の接続でございますけれども、まず第一に、送電線への電源の接続に関するルールの作成について、二十八条の四十五第二号に基づいて行います。

 また、発電所を建設して送電線に接続する際の接続の受け付けですとか、新たに発電所を建設する事業者に対するどのような送電線が使えるのかといった情報提供、これは第二十八条の四十第七号に基づいて行うこととしております。

江田(康)委員 広域系統運用の拡大は大変重要でありまして、再生可能エネルギーの普及拡大において、連系線また基幹系統の整備をしっかりと進めなければ再生可能エネルギーの普及拡大に結びつかない、こういうところでございますので、その規定に基づく対応をしっかりと進めていただきますようによろしくお願い申し上げます。これは公明党としても強く主張してきたところでもございます。

 続きまして、電力システム改革の第二の柱である小売の自由化について幾つかお伺いをさせていただきます。

 本法案の附則にありますが、三年後の二〇一六年をめどに家庭まで含めた小売の参入自由化を実施する予定となっております。

 小売の自由化は、電力会社、料金メニュー、そして電源を選びたいという国民の皆さんのさまざまなニーズに応えることができる制度への大転換であります。他業種からの参入や、ディマンドレスポンスの活用を初めとする新しいサービスが生まれてくることになり、イノベーションの創出も期待されるわけであります。

 昨年九月の東京電力、ことしの五月の関西電力、九州電力の料金値上げを初めとして、電力各社の料金値上げ申請が相次いでおります。低廉で安定的な電気の供給は、国民生活はもちろん、製造業を中心とする我が国産業においては生命線であると言えます。燃料コストの増大などによって、電気料金の値上げ局面が今後も続いていく、そういうことが予想される中で、先ほど大臣に確認をいたしました改革の目的にもあるように、今般のこの電力システム改革は、電気料金の上昇の抑制に最大限資するものであると思います。

 こうした中で、小売の自由化を行って、総括原価方式による料金規制を撤廃してしまうと、一方では、電気料金が際限なく値上がりしてしまうかもしれないという声もあるわけであります。

 そこで、菅原副大臣にお伺いをいたします。

 自由化で電気料金が一気に上がってしまうようなことはないと思いますが、自由化後の電気料金の急激な値上がりを防ぐためにどのような対応をとられておるのか、お伺いをいたします。

菅原副大臣 御指摘がありますように、規制料金よりも安い電気料金での新規参入はあっても、高い料金での新規参入というのは一般的には考えられないんです。ところが、今先生がおっしゃったように、小売参入の自由化を進めるものの、仮に競争に不十分な場合が生じた場合には、市場で非常にシェアの高い電力会社が価格のつり上げなど不当な値上げをする可能性、リスクもございます。

 そのために、五年から七年後までの経過措置といたしまして、料金規制を残すことといたしておるわけでございまして、その間に、料金の全面自由化に向けた準備、環境を整えまして、競争環境が整った中で、そこを見きわめた上で料金規制の撤廃を行っていきたいと思っております。

 また、この料金規制を撤廃するまでの間も、三年後を目途といたしまして、小売参入の自由化で競争が強まるようにすること、そして、既存の電力会社も、規制料金は残すこと、自由な料金メニューもつくれるようにする、こういったアラカルトを含めることによって、経過措置の期間におきましても電気料金の抑制効果を働かせるように努めてまいります。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 続いて、さらにお伺いをさせていただきたいんですが、自由化によって、企業や都市部の消費者にとっては大きなメリットがあるかもしれませんけれども、地方、特に山間部や離島に住んでいる人たちにとっては、電気料金が値上がりするのではないかという懸念もあるわけであります。

 本法案の附則十一条第五項第八号に、離島における電気の使用者が離島以外の地域と同程度の料金により電気の供給を受けることができるようにするための措置を講ずるとされております。

 小売の自由化を進めるに当たって、山間部や離島などの特定の人が切り捨てられることのないように、具体的にどのような措置を講ずることを考えているのか、御答弁をいただきたいと思います。

菅原副大臣 大変重要な御指摘を賜りました。

 小売全面自由化の後も、離島や山間部も含めて、あまねく全ての国民が電気の供給を受けられる、その仕組みとすることは至上命題であります。

 今先生お話がありましたように、附則の十一条に、送配電の整備コストの高い山間部や過疎地などであっても送配電網が確実に維持され、公平に送配電網が利用できるように努めていく、そのために、送配電部門については総括原価方式等の料金制度により投資回収を保証するということを、必要な措置として講じると記されております。

 こうした中で、送配電網がつながっていない離島、これは御案内のとおり、離島でありますから発電のコストが当然高くなってしまうという実態がある中で、例えば需要家から補填金をいただくなどして、パラレルに、遜色ない料金体系となるように措置をしていきたいと思っております。

江田(康)委員 これからさらに進む電力システム改革の第三弾も含めて、送配電網を監督する送配電事業者に、地域独占、料金制度によって投資回収を保証していく、そういう中でこういうユニバーサルサービスが確保されるという明確な答弁だったと思います。

 さらに続けます。

 本法案の附則第十一条第五項第六号には、スマートメーターの導入を促進するための措置について検討することが盛り込まれております。これは公明党の強い主張でもございました。先ほど申し上げましたとおり、小売の自由化は、電力会社、料金メニュー、そして電源を選びたいという国民の皆さんのさまざまなニーズに応えることができる制度への大転換であります。

 この大転換を実現させるためには、家庭や中小企業を初めとする消費者がエネルギーの需要を無理なくコントロールするエネルギーマネジメントを行うことができる環境を整えていくことが重要であり、スマートメーターの導入は、その際、欠かせないものだと思います。しかし、残念ながら我が国ではまだまだスマートメーターの導入は進んでいない状況でありまして、今後しっかり取り組んでいくべきではないでしょうか。

 そこで、お伺いをさせていただきます。

 スマートメーターの導入には一定期間を要するものであります。三年後に予定されている小売参入の全面自由化の開始時点でスマートメーターが設置されていない需要家が、他電力会社への乗りかえやHEMSの設置の必要性からスマートメーターの設置を希望する場合には、どのように対応することとなっているのか、お伺いをさせていただきます。

糟谷政府参考人 御指摘いただきましたように、スマートメーター、非常に重要であるというふうに考えております。他方で、現在、各電力会社も、電気料金の審査の過程で、審査専門委員会などの場におきまして、スマートメーターの設置を希望する需要家には遅滞なく設置する、それに対応するという方針を表明しております。

 具体的には、例えば東京電力は、ことしの一月に改定しました総合特別事業計画の中で、お客様がスマートメーターの設置を希望する場合には個別にスマートメーター取りかえに対応するというふうに規定をしておりますし、四国電力も遅滞なく対応するというようなことを述べております。

 こういう動きを見ながら、先ほど御指摘がありましたような附則の十一条第五項第六号に基づいて、さらにそれを加速するためにどういう措置が必要か、どんな支援策が必要かといったことを検討してまいりたいというふうに考えております。

江田(康)委員 小売の自由化について、最後にもう一つお伺いをさせていただきます。

 新規参入の促進についてでございます。

 小売の自由化が効果を上げるためには、新規参入者が市場に参入しやすくなる制度設計が必要不可欠であることは論をまちません。既存の大きな電力会社に比べて、新規参入者は大きな電源を簡単に建設することはできないわけでありまして、こうした中、卸電力市場での電力の取引が活性化されれば、新規参入者は、卸電力市場から一定の電源を確保して、みずからの電源と組み合わせて、より多くの需要家を獲得できるようになるはずであります。

 これもまた公明党の強い主張でもございましたが、本法案の附則第十一条第五項第六号に、卸電力取引所における電気の取引量を増加させるための措置を講ずるとされておりますけれども、現時点で具体的にどのような方策を講ずるとされているのか、どの規定によるものか、お伺いをさせていただきます。

糟谷政府参考人 卸取引市場の活性化は、全国レベルで供給力を有効活用していく上でありますとか、発電事業者間の競争を促す上で、また新規参入者が供給力を調達しやすくする上で非常に大事であります。

 その観点から、第二弾、第三弾の改革を待たずに、この三月から既存の電力会社が余剰電力を卸電力取引所へ売電することとしておりまして、現在その状況についてモニタリングを行っております。この結果、それから今後の検討を踏まえまして、卸取引市場の活性策を講じてまいります。

 具体的には、現段階では、先渡し市場の活性化、これは商品の多様化とか取引時間の柔軟化といったことでありますが、そういったことですとか、一時間前市場の創設ですとか、卸電力市場に需要家が直接参加をして取引できるようなこと、こういったことについて、何が一番効果があるかということを検討し、進めてまいりたいというふうに考えております。

江田(康)委員 ぜひとも、必要最低限の供給予備力を超える電源の全量市場投入、こういうことが実現できるように、しっかりとこの取り組みを進めていただくことを強く要望しておきます。

 最後の時間になりつつございますが、茂木大臣にお伺いをさせていただきます。

 最後の三本目の柱である法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保、いわゆる発送電分離について、改めて確認をさせていただきたいと思います。

 広域的運営推進機関によって再生可能エネルギーの導入拡大に資するような業務が行われることは、確かに第一歩ではありますけれども、本来であれば送電網へのアクセスの中立性を確保していくことが必要不可欠であって、そういう意味では、電力システム改革の第三の柱である発送電分離を行わなければ完結はしないと思います。また、小売自由化の効果を最大限に生んでいくためにも、発送電分離は不可欠だと思います。

 私は、従来から申し上げておりますように、広域系統運用の拡大、そして小売の自由化、そして発送電分離を虫食いせずにしっかりとパッケージで進めていくこと、それも、必要に応じた見直しは当然としても、市場への参加を準備する事業者や、また、新しい料金メニューを選んでいく国民に対して、実施時期を明示していくことが非常に重要だと考えております。

 六十年ぶりの大改革でございます。これからも多くの困難が予想されると思います。発送電分離までの改革をやり遂げるための決意と具体的な道筋を茂木大臣にお伺いをさせていただきます。

茂木国務大臣 ありがとうございます。

 三段階でしっかりと改革を進めていく、広域系統運用の拡大から始まりまして、自由化を進め、最終的にはやはり発送電の分離、送配電部門の一層の中立化というものを図っていかないと新たな参入者もふえない、そして、需要家にとってもどんなメニューが広がってくるのかわからない、こういった意味から、今回は基本的には広域系統運用の法案でありますが、全体のスケジュール、二〇二〇年までにやるべきこと、こういったことをきちんと書き込んだつもりであります。当然、周到な準備をしながら着実に進めていかなければいけないと思っております。

 私は、日本人というのは、物事を決めたら確実にやり抜く力というのを持っているんだと思います。一九六〇年代、サンフランシスコの坂を上れなかった日本の車が、今は世界で最高の車と言われているわけであります。

 もちろん、過去と自然環境というのは変えることはできません。しかし、未来と社会システムは、使命感と多くの皆さんの共鳴感、これによって大きく変えることができる、こういった思いで改革に取り組んでいきたいと思っております。

江田(康)委員 この電力システムの改革、これは茂木大臣の並々ならぬ決意で引っ張っていかれるものと確信をしております。第三の柱である発送電分離までしっかりと実現をしていくよう、公明党も強力にこれを支えていく所存でございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 ちょっとだけ時間がございますので、関連質問で、最後の質問をさせていただきたいんですが、これも大変重要なことでございます。

 今回の電力システムの抜本的な改革によって、地域独占の電力会社、法律上の名前は一般電気事業者でございますけれども、この電力会社の資金調達環境も大きく変化すると予想されます。電力会社が必要な資金を調達できずに突然倒産するようなことになれば、企業や国民の生活にも大きな影響を与えるわけであります。大変重要な視点でありますけれども、電力会社が資金の調達に支障を来すことがないように適切な措置を講ずるとございますけれども、その点について、菅原副大臣に見解をお伺いして、終わりたいと思います。

菅原副大臣 江田委員の御指摘、懸念は一定程度あると思います。

 しかし、改革にはある程度の時間がございます。それまでの間に、安全性の確認をされた原発の再稼働、あるいは、先ほど来お話がありますように、シェールガスの輸入、こうした燃料の調達コストの低減等、環境の変化によりまして、電力会社の資金調達の環境は改善すると期待いたしております。

 しかし、それでもなお厳しい環境があるとするならば、今申し上げたような改革のそれぞれの段階での検証を十分にした上で、必要な措置を講じていくことが大事だと思っております。

 具体的には、金融市場関係者に対して十分な説明をした上で理解を得ることによって、誤解や無用の不安を招かないようにすることが第一でありまして、そして、万が一の場合には、発送電分離の際に資金調達環境が改善しない場合には、一般担保を含めた金融債務の取り扱いや行為規制に関して必要な経過措置を講じるとなっておりますので、こうしたことで努めていきたいと思っております。

江田(康)委員 電力システムの改革は、電気事業者の皆さんの理解を得て進めていくことが大変重要でございます。資金調達環境の整備の措置等についてしっかりと講じていただきますようによろしくお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 自由民主党の鈴木淳司であります。

 私自身、しばらくの間、野に下っておりましたので、久々にこの場に立つことができまして、非常に感慨深いものがございます。

 先ほどの、茂木大臣の大変すばらしい御決意に本当に感動いたしましたけれども、ともに議論ができて本当に幸せであります。

 我々は、御案内のとおり、衆議院議員は代議士と呼ばれます。代議でありますから、やはり国民にかわって、その多くの意見をしっかりとここで述べたいというふうに思いますし、ぜひいい議論ができればありがたいと思います。

 なお、大臣、きょうは参議院での質疑があるそうでありますから、時間になりましたらどうぞ御退席いただいて結構であります。あらかじめ申し添えておきたいと思います。

 まず、この電力システム改革法案でありますけれども、我が党内でも、推進、慎重、それぞれの立場から大変激しい議論を実はやってまいりました。さまざまな議論を経て、最終的には、党内で、電力システムに関する改革方針に対する決議というものを付した上で意見集約をして、それを受けた形で閣議決定がなされ、それが今回の法案提出につながっているわけであります。

 その点、我々も、党内でさまざまな議論があったにせよ、党としては改革を前に進めるという決断をしたわけでありますから、一歩踏み出した以上は、これは必ず成功させなければいけない。そんな思いの中で、このシステム改革を成功に導くために、なお確認すべき点を議論したいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回質問に立つに当たりまして、新聞各紙の社説というものを集めてみました。いわゆる地域独占、総括原価方式に基づく従来のシステムを否定的に取り上げる観点や、再生可能エネルギーの導入促進に、送配電の中立化、いわゆる発送電の分離は不可欠という立場であったり、あるいは電力需給の逼迫する今日においてこのたびの電力システム改革が本当に真の安定供給につながるのか、あるいは自由化をして本当に料金が下がるのか等々、こうした推進、慎重、それぞれ全く異なる立場からさまざまな論説が展開されておりました。

 私は、そのどちらも実は正しいのだろう、どちらもその面での真実だろうというふうに思います。すなわち、このたびの電力システム改革というものは、期待や懸念等、これらの要素が全て含まれている、そういうことを如実に実は物語っているんだろうというふうに思います。

 戦後の時代から今日まで、曲がりなりにも機能してきた従来のシステムを一旦崩して、それを切り分けて新しいシステムに移行するわけでありますから、その過程は決して平たんではないと思います。現時点であらかじめ想定され得る問題に加えて、恐らく、その先もさまざまな予期せぬ課題が多分生じると思います。

 しかしながら、とりあえずは、従来のシステムというものを、まずそれを打ち壊して、さっき述べたとおりに、次の段階に向かって一歩踏み出す決意をしたわけでありますから、必ずやこれを成功させなければいけない、やる以上はその課題に正面から向き合わざるを得ない、そんな思いでいることを、まず質問に先立って述べさせていただきたいと思います。

 さて、まず議論のスタートとして、従来の電力供給システムに対する評価というものを伺ってみたいと思います。

 従来の電力供給システム、いわゆる十社による地域独占と総括原価方式のもとでの一貫供給体制による供給責任がこれまで果たしてきた役割評価、そのシステムに内在する今日的課題、こうしたものについてどのように御認識であるのか、まず大臣の御認識をいただければありがたいです。

茂木国務大臣 まず、全体のこの改革につきまして鈴木委員の方からお話しいただきましたが、それぞれの政党には、よいところ、それから弱点もあるんだと思います。

 自民党のやはりいいところというのは、けんけんがくがくの議論がある。この電力システム改革もそうでありましたが、一つの方向性を決める、決まった後はそれに向けて一致団結できるところが自民党としての一つのすばらしさではないかな、私はこんなふうに思っております。

 そして、これは、まさに六十年来の大改革であります。さまざまな懸念、課題を乗り越えていかなきゃならない、我々もそう思っております。懸念があるから立ちどまってしまうということではなくて、懸念や課題は乗り越えるものだ、こういう基本的な認識が必要なのではないかなと思っております。

 もちろん、これまで地域独占体制のもとでやってきた日本の電力、これは例えば、停電の発生回数も少ない、そういった中で、設備も順調に拡大をしまして、特に高度成長期を初め、日本の経済の発展、そして国民生活の安定に大きな役割を果たしてきた、このことは間違いないと思っております。

 ただ、東日本大震災を契機といたしまして、やはり、これまでのシステムの持っているさまざまな課題、広域的な運用ができない、そして十分な競争環境が整わない、多くの課題が明らかになってきた。こういった課題を根本から解決するために待ったなしの改革だ、こういう思いで、今回、電力システムの改革を国会の方にお願いしているところであります。

鈴木(淳)委員 丁寧な御答弁、本当にありがとうございました。

 今回のシステム改革の議論の際に、よく、総括原価方式に守られたぬるま湯体質あるいは親方日の丸、こんなことが言われて、あたかも従来のシステムそのものが悪であったかのような、実はそういう意見もございました。しかし、私はそれは違うというふうに思うんですね。

 確かに、総括原価方式には、コストに一定の利益分が計上されますから、その嫌いがなかったわけではないかもしれません。しかし、独占供給体制のもとで、発電から供給に至るまで総括原価方式とセットでありますけれども、責任を持って良質な電気の供給をしてきたというのもこれは事実であろうと思います。また、総括原価方式による利潤そのものも、それがあればこそ計画的ないわゆる電源開発等がなされてきた。

 これまで電力各社が地域に対して責任を持って、発電や送配電その他さまざまな面で、公共インフラに従事する者としての責任感のもとで電力の安定供給に努めてきた現場の皆さんの御努力というものは、本当に高く評価をしなければいけないと思いますし、それによって今日までの安定供給は守られてきた、これは事実だと思うんですね。

 その上で、先ほど大臣がおっしゃった、今日的な課題がある、エリアを越えた供給だ、再生可能エネルギーの導入の拡大だ、競争政策の導入だ、こうした今日的な課題を加味した議論にぜひしていければなというふうに思います。

 さて、まず、法案でありますけれども、本システム改革の第一弾たる広域的運営推進機関の位置づけについてお尋ねをしたいと思います。

 全国規模での需給調整の機能の強化や、エリアを越えた広域的な電力系統の整備、連系線を活用した系統利用の拡大と再生エネルギーの導入拡大を狙いとして、今回、広域的運営推進機関を設立するとしています。

 システム改革の出発点として、まずは、この広域的運営推進機関がしっかりと、全国規模での電力系統の整備と需給調整、さらには再生エネルギー事業者との接続を容易にさせる役目を果たすことが求められるわけでありますけれども、従来の一般社団法人でありました送配電等業務支援機関にかえて認可法人たる広域的運営推進機関を設立するとした背景について、制度設計の基本をお示しいただいた上で、なお、需給逼迫時のたき増し指示等を行うことができる等の、ある面事実上の強制力を持ったこの組織が今後のシステム改革全体の推進の中で果たす役割について、改めて確認の意味でお示しをいただきたいと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 東日本大震災の経験を踏まえまして、電源の広域的な活用に必要な送配電のインフラの整備を進めることとともに、全国大で、これは緊急時だけではございません、平常時も含めてでございますけれども、需給調整機能を強化するために広域的運営推進機関を創設することといたしました。

 御指摘の、現行の電気事業法に基づきます送配電等業務支援機関、これは二〇〇四年に、電力系統利用協議会、これをESCJと呼んでおりますけれども、これはいわば当事者間の融通をあっせんする、個別の電力会社が行う託送供給の業務など、送配電業務の円滑な実施を支援することを目的に設立されている機関でございます。そもそも、広域系統の運用の拡大を図ることを任務とする機関ではございません。このため、ESCJは、地域をまたぐ電力融通のあっせんを行っておりますけれども、個別の発電所のたき増しの指示でございますとか、あるいは広域的な電力融通の指示、こういうことを出させていただく、そういう機能はありません。

 今回、広域的運営推進機関を設立させていただくことを考えております。この主な業務でございますけれども、まず、全国レベルで発電所の建設計画や需要の見通しなど、需給の状況を取りまとめること、地域間連系線などの広域的な送電インフラの増強のための計画を取りまとめること、そして、極めて重要でございますけれども、需給の逼迫時に、個別の発電所へのたき増し指示、あるいは広域的な電力融通の指示を行うということを業務の内容といたしております。

 以上でございます。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。

 それでは、ここで電気の特性と市場原理との関係性について少し考えてみたいと思います。

 私は以前、電力会社の給配電指令の現場というのを見たことがありますけれども、刻々と変化する需要や細やかな要請に対して、この系統の電気はこっちに流す、これはこちらへ流すとか、実は非常にデリケートな給配電指示をするわけですね。また、きょうも暑くなりましたけれども、朝一番に、例えば八時とか九時ですかね、経済活動が始まって一気に電力需要が高まるというときに、まず何をやるかというと、夜間に揚げておいた水を一気に落として出力を上げる。それから同時に、火力でも恐らく石炭、石油、LNG、みんな特性が違いますから、こうしたものをよく知る者が組み合わせをしながら適宜適切な形で需給調整をする、こういうことをやるわけですね。

 こうしたことは、やはりある面では、地域独占であり、一貫供給体制であり、それぞれの分野のプロが合わさって可能になったという調整のはずなんですね。これが今回、発電部門と配送電部門が切り離されて、あるいはさらに多様な電源が入ってくる。さまざまな特質を持った電源が入ってくる。こうしたものを瞬時に的確に組み合わせて、良質な電気の供給を提供し続けることが本当にできるのかという疑問は、実は私も少しはあります。また、仮にできても、それは極めて今以上に難しい難しい技術的な課題の中での給配電に多分ならざるを得ない、こう思うわけです。

 小規模の蓄電は除いて、電気は基本的にためておけません。しかも、需要の動向に応じて、まさに即時即応、微妙な供給調整が必要でありますから、これができないと、周波数も狂う、電圧も狂う、まさに電力の質の低下、場合によっては停電等のトラブルもある、こういうことなんですね。

 さらには、一定の供給力を持っていないと、再生可能エネルギーは非常に出力変動が大きいですから、このバックアップのためにも必要だ。また、今どんどん使っていますから、老朽化火力のトラブルの対応も必要でしょう。そうしたさまざまな問題があります。

 ところが、今回の電力システム改革の基本的な流れというのは、電力の供給そのものをある面でマーケットの原理に委ねる、こういうことであります。多様な電源の参入と競争原理による電力料金の抑制の実現を狙いとしている。これまでは、地域独占と総括原価方式の中で、供給責任によって、発電から給電までトータルに責任を持つということでカバーしてきた問題でありますけれども、今回のシステム改革で、発電、配送電、小売と切り分けられて、それぞれが市場原理の中での行動を求められる。

 とすると、各事業者の判断による個々最適というもの、その集合体が全体最適には必ずしもつながらないということもあり得ると思うんですね。こうした懸念に対して、今回の新たなシステム設計を提起した政府として、これを的確に誘導できる見通しやノウハウがあるのでしょうか。

 机上の論理と現実とは違う。理論上は正しいように見えても、実際にはなかなかそのように機能しないということもあると思う。電気は、果たして通常の商品のように市場のメカニズムに完全になじむものかどうか。電気はためておけないし、質の担保のためには一定の供給力の保持が必要でありますし、商品としては必ずしも市場になじみにくい部分、性格があるかもしれません。

 ところが、先ほど申し上げたように、今回のシステム改革では、マーケットに委ねることで多様な電源の参入と競争による電気料金の抑制が図られるとしているが、本当に可能でしょうか。こんなことの中で、以下、三点について質問をしたいと思います。

 まずは、電気料金の最大限の抑制であります。

 今システム改革の目的の一つは、電気料金の抑制であります。政府の説明によれば、原発比率の低下や燃料コストの増大という電気料金の上昇圧力の中にあっても、競争促進やメリットオーダーの徹底、ディマンドコントロール等を通じた発電投資が適正になされることによって電気料金を最大限に抑制するとなっていますけれども、果たして電気料金の抑制は可能でしょうか。

 先にシステム改革をなした欧米では、その目的とは離れて、必ずしも値下げにつながっていない、むしろ、かえって料金値上げになっているという例が見られますけれども、電気料金の抑制につながるという政府の見解、根拠をお尋ねします。

糟谷政府参考人 自由化とか電力システム改革を行いました海外の状況について申し上げますと、例えばドイツにおきましては、自由化後、税や賦課金を除きますと、電気料金の上昇率、それでも九八年から二〇一二年まで一〇%上昇しておりますけれども、物価上昇率がこの間二四%上昇しておりまして、それを下回る動きになっております。

 それから、アメリカでも、エネルギーミックスが似ている隣り合った州の間で比べますと、自由化を行ったオハイオ、ミシガンといった州の方が、自由化を行っていないインディアナ州、ケンタッキー州、ウィスコンシン州などよりも電気料金の上昇率が低くなっております。

 他方で、イギリスにおきましては、自由化後に一旦電気料金は低下したものの、参入の自由化と同時に料金規制を撤廃したために、競争が十分に行われずに、電気料金が上昇に転じました。

 そういう意味で、自由化なり送配電部門の中立化を行えば自動的に電気料金が下がるとは我々は決して思っておりません。あくまで、適切な制度設計、また制度の運用を行うことが必要であるというふうに考えております。

 ただ、我々が恵まれておりますのは、海外、欧米のいろいろな施行した経験、教訓がこの十年余りにわたってありますので、こういったところを参考にいたしまして、電気料金の最大限の抑制が図れるように努めてまいります。

鈴木(淳)委員 それでは次に、供給責任の明確化についてお尋ねをしたいと思います。

 今回の電力システム改革により、電力の自由化が進められる中で、安定供給の確保と良質な電気の供給責任は誰がどのように担うのでありましょうか。

 先ほど来申し上げているように、総括原価方式に基づく地域独占の電力会社による発電から送電、小売までの一貫体制であれば、それゆえの供給責任は明確でありました。それが、今回の改革の中で、電力の自由化、発送電分離が進められる中で、改めて個々それぞれの責任の明確化というものが求められると思います。

 今、社会で必要とされる電力の量と質をいかに確保するか。具体的には、供給量の確保と周波数や電圧の維持等をいかに担保するか。その観点から、発電事業者、送配電部門、小売事業者、それぞれが果たすべき役割をトータルな形において安価で良質な電力を供給するための制度設計として明確化する必要があると思いますが、それに対しての答弁をお願いします。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 電力の安定供給、これが最大のポイントであるということは、全く御指摘のとおりだと思います。

 その上で、制度について御説明申し上げさせていただきますと、本法案の附則にある改革プログラムでは、これは地域独占ということになります送配電事業者に安定供給義務を課した上で、大きく三つの措置を講じることといたしております。

 具体的には、まず、送配電事業者が日々の電力需給の状況を監視し、需給の調整を行うなど、高品質の電気の安定的な供給に責任を果たすという考え方、そして第二に、送配電網の建設、保守が確実に行われるように、送配電部門については、先ほど申し上げたとおり地域独占なわけでございますけれども、総括原価方式などによりまして、料金制度によりしっかりと投資回収を保証するなどの措置をとりたいと思っております。そして三番目に、小売事業者の破綻などといった事態にも備えた最終的な供給保障サービスでございますとか、あるいは離島の方々に対する安定供給につきましても送配電事業者が責任を負う、こういった柱立てになっております。

 それからまた、小売事業者でございますけれども、小売事業者は需要家の方々のニーズに応じていろいろな新しい料金メニューの提供ということが期待をされるわけでございますけれども、まず、ライセンス規制のもとで空売り規制、つまり、供給力の確保義務ということを課させていただくというふうに考えております。したがいまして、電気事業の実施に必要な供給力を確保した上で、逆に言うと、そうでなければ電気事業に参入ができないということになっております。

 発電事業者につきましても、ライセンス規制のもとでその参入を促しつつ、競争を促進することで安定的かつ低廉な電気の供給を実施することが期待をされるわけでございます。

 さらに、先ほど申し上げました広域的運営推進機関が電源のたき増しや地域を越えた融通の指示を行いまして、そのような緊急時におきましては、国が電気事業者や、あるいはそれ以外の自家発保有者に対しましても供給命令を行うことができる仕組みなどとしておりまして、そういった全体をあわせまして、安定供給というものをしっかりと実現していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

鈴木(淳)委員 それではもう一点、発電設備への投資の確保についてお尋ねします。

 安定供給の確保と継続には発電設備等に対する投資が継続的に行われなければなりませんけれども、規制や義務のない市場原理の中で、中長期にわたるリードタイムが必要で、しかも新規立地が困難である電源開発が本当に進むのかということであります。

 今、原発の稼働停止に伴うLNGの調達コストの著しい増大の中で、電力各社もなかなか厳しいところがあります。この先さらに原発の稼働停止が長引けば、さらに電力各社の信用力も低下しましょう。リードタイムが長い、地域の同意を得ることが極めて困難な新規の電源立地は、事業者にとっては必ずしも魅力的ではないと思われます。総括原価方式に裏打ちされた供給責任が撤廃された段階で、自由市場に依存した電源開発の行方は極めて不透明であるというふうに思います。

 しかしながら、多様な電源構成の確保や再生可能エネルギーの利用促進に対しても、それに伴う一定のバックアップ電源が必要なときに、インセンティブの不足や資金的裏づけの乏しさの中で、肝心の発電事業者が電源設備投資に積極的に踏み出さないという事態も考えられますけれども、発電設備への投資が鈍ることがないように、安定供給のための必要な融資等、一般電気事業者の資金調達にいかなる対策が講じられようとしているのか、お尋ねいたします。

糟谷政府参考人 発電所への投資の確保のために、まず、小売事業者に対しまして空売り規制、すなわち、供給力の確保義務を課すこととしております。これによって、小売事業者の要請に応じて、つまり、販売を拡大しようという小売事業者の要請に応じて発電所が建設される仕組みになるということでございます。

 万一、仮に小売事業者への規制だけでは将来的に発電所が不足すると考えられる場合には、今回の法案で設立をされます広域的運営推進機関が発電所建設者を募集する仕組みを設け、最終的には必ず発電所が建設される仕組みとし、確実に供給力を確保してまいりたいと考えております。

 また、資金調達についても、安定供給のために必要な資金調達が困難になることのないような必要な措置を着実に講じてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(淳)委員 時間が迫っておりますので、少し質問を飛ばします。

 このたびの電力システム改革が確実に成功をおさめるためには、本来ならば、制度改革の進行段階ごとに、丁寧な検証と確認作業が不可欠なはずであります。ところが、今回、ことし以降毎年提出されるプログラム法案でありますから、進んでいくシステム改革の作業工程は、その検証を行う前に次の段階に入っていくということになります。

 本来ならば、その段階ごとに、間違いなく所期の目的に向かっているかどうかということを当委員会も含めて確認しなければいけないと思うんですが、必要があればその時点でも修正も辞さない覚悟でいくべきような重要な作業工程と思いますけれども、これについてはどう認識され、途中段階での検証と確認の機会をどう担保しようとされているのか、お尋ねをしたいと思います。

糟谷政府参考人 御指摘のように、今回の電力システム改革は大きな事業体制の変革を伴うものでありますので、改革の各段階で十分に検証しながら必要な措置を講じていくことが重要と考えております。

 ただ一方で、改革を進めるに当たりまして、電力市場の既存の事業者の方、また新規に参入されようとする方にとりまして、システム開発を初め相応の時間をかけた準備作業が必要になることも事実であります。こうした準備を進める上では、各段階の改革のそれぞれの骨格が法律であらかじめ示されていることも必要であるというふうに考えております。

 例えば、第二段階の小売全面自由化の際に、新規参入を行おう、またはほかの地域に事業展開を新たにしようという事業者の方にとっては、中立公正な競争環境が制度的に担保されるのかどうか、この辺を見通せることが非常に大事であります。新規参入等を促すためには、第二段階の小売全面自由化の際に、法的分離による送配電部門の中立性確保策など、第三段階の改正の骨格が固まっていることが望ましいと考えております。

 では、どうやってその見直しを確保するかということでありますけれども、法律で改正の骨格を固める場合でも、あらかじめ想定される事態につきまして、法律の枠組みの中で仕組みをつくりまして、その中で定める規則等により、実施時期までに必要な措置を講じることができるようにするということが基本的にはできるものと考えておりまして、そのような対応を講じることによって、途中段階で十分な検証、確認、または必要な措置を確実に担保できるようにしてまいりたいと思っております。

鈴木(淳)委員 それでは最後に、菅原副大臣にお尋ねしたいと思います。

 今回は、従来の地域独占の供給体制から移行して、さまざまなプレーヤーが複雑に絡む中で、それでもなおかつ安価で良質な電力の安定供給を確保し続けていかなければならないとなりますけれども、戦後これまで続いてきた電力供給体制を根底からつくりかえていく、実はこれだけの大改革であると思いますし、また挑戦であると思います。

 電力供給は、何度も言いますが、国民生活や産業経済の基盤となる、最も根幹となる重要な社会インフラであるだけに、間違っても電力供給を危うくするような事態が生じてはなりません。

 今回のシステム改革が着実に所期の目的を達成していく、そうしなければならないわけでありますけれども、最後に、今回の改革を必ず成功させるという決意のほどを副大臣からお聞かせいただければありがたく思います。

菅原副大臣 鈴木委員からさまざまな御提言、御進言を賜りました。その上で、やはりこのシステム改革をしっかり進めていきたい、そう新たに感じたところでございます。

 安定供給と低廉な料金の制度設計、これがまず至上命題でありまして、そのためにも、この法案の附則におきまして、政府として、二〇二〇年までに実現すべき新たな電力システムの姿と改革の手順をパッケージでお示ししております。改革の手順につきましても、議論の中では近いうちなどというような意見もありましたが、ここはきちっと目標年次を明確に、明らかに、具体的に示した上で、実施スケジュール、そして法案提出時期を盛り込んだところでございます。

 最終段階である第三段階の法的分離につきましていろいろと御進言いただきましたけれども、例えばメーカーが新規事業を分社するケースなどとは異なりまして、発電と送配電が適切に連携できる仕組みを備えた形での実施が必要だと思っております。

 具体的には、送配電から発電所に指令を行うためのルールの整備に約一年、そしてシステムの設計に約一年、さらには実際のシステムの開発に三年から五年ということを考えますと、五年後の法的分離の実施ということになるわけでございまして、こうしたスケジュールをしっかりと進めながら、国民のために、需要家のために、そしてさまざまな事業者の状況も含めて、確たる電力供給が整うように進めていきたいと思っております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 何しろ六十年ぶりの大改革であります。さまざまな困難もあると思います。しかし、一つ一つ着実に取り組んでいく中で、ぜひとも成功に向けて持っていきたい、ともに頑張っていくことをお誓いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、大見正君。

大見委員 自由民主党の大見正でございます。

 通告に従いまして、以下、順次質問させていただきます。若干質問を多く用意しましたので、簡潔に進めてまいりたいと思います。

 東日本大震災と東京電力福島原発の極めて深刻な事故によりまして、従来の電力システムの抱えるさまざまな限界が明らかになったというふうに言えます。一方で、安価な、また安定した電力の供給というのは、国民生活と我が国の経済活動を支える基盤ということで非常に大事であります。そうした意味では、これまでのエネルギー政策を根本から見直していく必要があるということで、今回の電気事業法の一部を改正する法律案、実に六十年ぶりの大幅な改正となるということであります。

 これは、今回の災害の教訓等を生かして、再生可能エネルギーなどを取り入れた新しいエネルギー政策に大きく転換を図ることで、我が国がさらに成長していくことができる基盤をつくっていくということで大変重要だというふうに考えております。

 そこでまず、現在の電力供給システムの課題はどんなところにあって、その対応はどういうふうになっていくのか、また、自由化などの改革を通じて、どのような電力の将来像を描いて今回の改正を行うのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 東日本大震災あるいは原発の事故を契機に、従来の電力システムの抱えるさまざまな課題が明らかになったと考えております。

 具体的には、委員御指摘がございましたけれども、原子力への依存度が低下する中で、分散型電源でございますとか、あるいは再生可能エネルギーを初め、多様な電源の活用が不可避となったこと、そして、需要に応じて供給を積み上げる仕組みだけではなくて、スマートな消費によりまして需要抑制が必要となったこと、そして、三番目に、地域ごとに供給力を確保する仕組みではなくて、広域的な系統運用を拡大いたしまして、発電所を全国レベルで活用することが必要になった、そして、電気料金の上昇圧力の中で、競争の促進などにより、電気料金を最大限抑制することがさらに一層必要となった、最後に、電力会社や料金メニュー、発電の種類を選びたい、そういう需要家の方々のニーズに多様な選択肢で応えることが必要になったといったような課題があると考えております。

 こうした課題への対応策といたしまして、今般の送配電部門の一層の中立化など、電力システム改革によってさまざまな事業者の方々の参入や競争、そして全国レベルでの供給力の活用、需要家の方々の選択によるスマートな消費など、より柔軟なシステムにより、電力の低廉かつ安定的な供給を進めていくということが今回の改革の狙いと考えております。

 以上でございます。

大見委員 電力の自由化等を通じて、この事故を克服して、さまざまな、私はこういう電力が使いたい、ああいう電力が欲しい、こうした要望に応えられるような、そうした制度設計を行っていくという点で非常に大きなスケールを持った、また、時間もかかるのかもしれませんけれども、目標として掲げるにふさわしい電力改革の一歩が踏み出されたというふうに感じております。

 ただ一方で、電力供給の不安というのはまだ払拭されていない状況が続いているというのも事実であるかというふうに思います。

 資源エネルギー庁から以前ヒアリングでいただいた資料によりますと、例えばこの夏の電力需給見通しにつきましては、いずれの電力管内でも電力の安定供給に最低必要とされる予備率三%以上を確保できる見通しということで、これは、大飯三号機、四号機は稼働、老朽火力発電所は全て稼働、そういう条件の中での見通しをいただいておりますが、一方で、大規模な電源脱落等が発生した場合には電力需給が逼迫する可能性もあり、引き続き予断を許さない状況であるということで、老朽化した火力発電所を稼働し続ける限り、こうした電源脱落等の懸念というのは払拭できないというふうに感じるところであります。

 そうした状況の中で、しっかりと、多様な電源の確保、広域からの電力の融通あるいはディマンドレスポンスやピークカットなどの需給調整などがこれから必要になってくるということがこれまでの議論の中でもあったわけでありますけれども、今回の電力システムの改革、まずは、当面、需給逼迫の解消と同時に、こうした対策はどういうふうにやっていかれるのかということをお伺いしたいというふうに思います。

糟谷政府参考人 御質問いただきました三点、多様な電源の活用、広域からの電力融通、ディマンドレスポンスのそれぞれについてお答え申し上げます。

 まず、多様な電源の確保につきましては、発電に係る参入規制、料金規制を撤廃いたします。また、新規参入者の送配電網へのアクセスを容易にするための送配電部門の一層の中立化を行います。既存の電力会社の発電余力を卸電力取引所で売買するといった卸電力市場の活性化策を進め、新規に参入される方が販売できる電力を確保しやすくいたします。

 それから、広域的な電力融通につきましては、今回の法律により設立される広域的運営推進機関が、区域を越えた電気の供給を一層行いやすくするということをいたします。また、需給逼迫時には、個別の発電所へのたき増しの指示ですとか、区域を越えた広域的な電力融通の指示をいたします。

 それから、ディマンドレスポンスにつきましては、電気の小売事業への参入の自由化と料金の自由化に伴って、ディマンドレスポンスを促しやすい取り組みがしやすくなります。それから、節電分を市場で取引できるような仕組みを設けることによりまして、スマートな需要抑制を実現してまいりたいというふうに考えております。

大見委員 今のお話を供給側の電力事業者からの事情で見てみますと、これもヒアリングの中でいただいた資料でありますけれども、震災後の電源構成の変化ということでありますけれども、原発が長期にわたって停止をしている状況の中で、火力発電所の稼働率というのが約九割まで上昇しているというようなこと、あるいは、上昇する中、計画外の停止件数というのが非常に増加しており、中でも老朽火力については、二〇一二年度の計画外停止は震災前の二〇一〇年度に比べて一・七倍と急増しているというような状況、そしてまた、火力発電のたき増しによって燃料費が増加しており、このことは貿易赤字にもつながってくるということで、長期的に見ればまだまだ非常に不安定な状況、不安定な要素が続いておるというようなこと、あるいは、こうした燃料のコスト高は日本経済にとりましてもボディーブローのようにきいてくるというようなこともあると懸念しておるところであります。

 そうした綱渡りの状況の中で電力を供給しているということ、それから燃料の調達コストも、今後の円安等々を考えますと、あるいは経済の進捗等を考えますと、ますます増加をする可能性があるということがわかるのかなというふうに思います。

 こうした状況の抜本的な解決としては、需給逼迫の解消と電力の安定供給を行うということについては、そもそも論でいいますと、原子力発電所の再稼働によりましてベース電力の安定化を図ることが不可欠ではないかというふうに思っております。今回の改革というのは、その意味で、原発の役割というのをどのように位置づけておられるのか、御意見を伺いたいというふうに思います。

平大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、原発については、前政権で二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするという方針が出ましたが、これについてはゼロベースで見直しをするということでございます。

 そして、委員御承知のとおり、安全性については、独立した原子力規制委員会が専門的な判断からその新基準をつくり、そしてそれを満たさない限りは再稼働はない。一方で、新基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し、再稼働を進めていく。その際は、事業者任せにすることなく、政府も一緒になって、立地自治体や関係者の理解と協力を得るために最大限努力をしていくということでございます。

 委員の御質問は、今回のこの法案、改革で原発の役割をどう位置づけているかということでございますが、電事法は、電源については基本的にニュートラルの立場であります。多様な電源の確保ということが重要になってまいりますが、原発再稼働は先ほど申し上げたルールで粛々と進めていく、その一方で、電力システム改革も着実に進めていくということでございます。

大見委員 原発政策、今後の原発のあり方というのはこれからもう少し時間がたたないとわかってこないということでありますけれども、そうはいいながらも、この改革の工程を見ますと、第三段階、二〇二〇年の段階までにはいろいろな面の自由化が進むということが入ってくる、その中で、当然、新規事業者の参入ということも促される内容となっております。

 ただ、そういったときに、やはり、原発のあり方、電力がどういうふうに供給されてくるかということについては、新規事業者が参入をする場合に非常に考慮に入れなければいけない大きな要素ではないか。それが現在の段階では不確定なファクターとなっているというのは、やはりちょっと新規参入という点ではどうなのかなということがあるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、原発政策の意思決定と今回の電力システム改革の進捗、この時間的な整合性というのはどういうふうにとっていかれるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

平大臣政務官 確かに、委員御指摘の部分はあると思います。

 その一方で、既存の原発五十基の安全性を確認するだけでも恐らく、これは原子力規制委員会の判断でありますが、数年の期間が必要となると思います。また、固定価格買い取り制度が導入されて、今後どの程度再生可能エネルギーが伸びていくのか。また、石炭火力のさらなる高効率化に向けてさまざまなイノベーションが起きているわけでありますが、そうした実用化の日程も見ていかなければなりません。

 こういったことから、ある程度見きわめるのに時間がかかるということで、エネルギーのベストミックスについては十年以内という方針を出させていただいているところでございます。

 また、政府といたしましては、総合資源エネルギー調査会におきまして年内にエネルギーの基本計画を取りまとめる予定としておりまして、そちらでも方向性を出してまいりたいと考えております。

大見委員 今、大きな電力の開発については、イノベーションを待ったり、あるいは原発政策の見きわめに相当時間がかかるということでありますので、これはそのように見きわめながら、したがって、その点での新規参入というのは、大きなものはやはりないのかなというふうに感じるところであります。

 一方で、民間が行う投資のようなものは、もう少し参入というのはいろいろな分野でできるということもありますので、広域系統運用の質問は重複をしておりますのでちょっと飛ばさせていただいて、民間の技術や制度を使ったピークカットや節電、こうしたことの取り組みについて伺っていきたいというふうに思います。

 実は、きのうでありますけれども、当委員会の委員であります八木哲也委員のお取り計らいによりまして、八木委員の御地元の愛知県豊田市で行われております環境モデル都市の取り組みというのを視察させていただきました。

 太陽光発電やらPHVあるいは蓄電池、こうしたものを連結した取り組みでありますとか、また、実証実験に参加をされている御家庭の情報を結んで需給バランスを調整するディマンドレスポンスエネルギーマネジメントというようなものを導入して電力の地産地消を推進したり、あるいはHEMSの活用や、ディマンドレスポンスとポイント制度を組み合わせた取り組みなどを拝見して、消費者サイドでも、イノベーションの進展によりさまざまな取り組みの可能性というものを感じることができました。

 こうした取り組みのほかに、スマートメーターの活用による需要の抑制とインセンティブの導入など、さまざまな取り組みというのが必要になってくると思いますけれども、大きな電力、電源開発ということのほかに、こうした新しい技術の導入というのをどのように図っていくのか、あるいは、先ほど少し議論にもありましたけれども、自家発電などのいわゆる埋蔵電源や、特に期待されます蓄電池の活用、開発、こうしたものもどのように進めていくのかということについて伺いたいと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 ピークカットを進めるためには、電力使用量の見える化でありますとか、あるいはきめ細やかな電気料金のメニューの設定を可能とするスマートメーターの普及というものが極めて重要であると考えております。

 経済産業省では、スマートメーターの基本的な要件につきまして、メーカーや電力会社あるいは学識経験者の意見をお聞きしながら、基本的要件を取りまとめさせていただいたところでございますけれども、さらに、導入のコストの低減を図るため、スマートメーターの検定手数料の引き下げを昨年の七月に行ったところであります。

 ピークカットを促す料金のインセンティブにつきましては、昨年の夏からことしの夏にかけまして、東京電力、関西電力などの電力会社が、スマートメーターの導入を待たずとも対応可能な、夏の昼間の電気料金を高く設定いたしましたピーク料金メニューを導入いたしましたし、これからするところもございます。今後、スマートメーターを活用した、さらに新たな料金メニューの導入を促していきたいと思っております。

 また、自家発についても御質問がございました。需給逼迫時に、その供給力を活用するということが必要となる場合はあると思います。したがいまして、今回の法案におきましては、経済産業大臣による、一定規模以上の自家発の設置者の方々に対しまして供給の勧告をする制度を設けたところでございます。

 さらに、ピークカットという観点からは、蓄電池の活用は大変重要であると考えておりまして、当省では、定置用のリチウムイオン蓄電池導入支援事業としまして、二百十億円を計上いたしまして、中小企業を含む事業者の方々でございますとか家庭が、ピーク時に活用できる蓄電池を導入する際に三分の一の助成を行っているところであります。

 引き続き、こういった取り組みを積極的に進めさせていただきたいと思っております。

 以上でございます。

大見委員 豊田での事例の中で、節電を、我慢を強いてやるのではなくて、参加されているいろいろな実証実験の家庭の皆さん方が、ゲーム感覚で楽しみながら、そして、気がついてみたら、より節電、省エネを心がけるようになった、そういった言葉が非常に印象的でございました。

 その意味では、この電力システム改革を通じて、新しい電力の姿というのを豊田に見たのかなというような感じがしております。

 ぜひ、そうした社会の実現、これは一日も早く行っていただきたいというふうに思いますし、また、蓄電池等を活用した新しいところというのも、家庭だけではなくて、小さなものでありますけれども風力を使って、それを蓄電池に蓄えて、夜、街灯などで使うような仕組み、そうした小型のものもいろいろな面で使えるような可能性というのはあるのではないかというふうに思っておりますので、さまざまな分野でそうした取り組みを行うことによってピークをカットする仕組みを展開できるような後押し、これを政府の手によってもしっかりとお願いをさせていただければというふうに思っているところであります。

 再生可能エネルギーの割合というのがまだ少ないわけでありますけれども、これからそういった割合がふえてきたり、あるいは、小売の全面自由化などが行われて、なかなか難しいのかもしれませんけれども、新規参入する事業者がふえて、選択肢がいろいろとふえてくる、これはいいことだと思います。先ほどの質問にもありましたけれども、根本的には、やはり安定した電力が平常時でもしっかりと供給されなければいけないというところにあろうかなというふうに思います。

 非常に基本的なことでありますけれども、確認にもなりますけれども、発電事業者、送配電事業者、小売事業者の三者、それぞれが供給責任というものをしっかりと負って、これを行っていかなければいけないということであります。

 先ほど来の議論では、送配電事業者そしてまた小売事業者の責任ということについて、それぞれ、安定供給の三つの観点からの責任、あるいは空売り規制の責任等が述べられておりました。発電事業者についても、ライセンス制で責任を担保していくというような答弁もあったと承知をしておりますけれども、同じように高いレベルでの責任を負う必要もあろうかというふうに思っています。

 その点でどんなことをお考えになっているか、お伺いをさせていただければというふうに思います。

高原政府参考人 御指摘のとおり、電気の安定供給という目的は、発電事業者あるいは送配電事業者、小売事業者、それぞれの方々にしっかりと責任を果たしていただく、これが大前提だと思います。

 その上で、発電事業者の方々につきましては、ライセンス規制いたします、その過程であわせて参入が促進されていくわけでございます。競争を促進することでいろいろな発電会社が多くここに参入してくるということで、電力の安定供給というものをまた図りたいと思っております。

 送配電事業部門の中立化をしますと、いろいろな発電事業者の方々がこれまで以上に市場に入ってくることが容易になると思います。今まで自由化をいたしてきた分野もあるのでございますけれども、残念ながらそこに新たな発電事業者の方々が多く入ってくる状況にはなっておりません。今回の送配電部門の一層の中立化の中で、発電会社の方々が大きく参入してくるということを強く期待しているところでございます。

 以上でございます。

大見委員 新しい発電事業者がたくさん参入してくることを期待しているというような答弁でございました。

 先ほど鈴木委員の質問にもございましたけれども、そうした新規事業者がたくさん参入して、例えば再生可能エネルギーをセールスポイントにするような事業者がふえてくる、それ自体は非常にいいことだと私は思いますけれども、一方では、専門的な見地からいうと非常に大変な状況になるということも伺うところであります。

 電気事業連合会から、再生可能エネルギー導入の課題ということでヒアリングを行った、その資料によりますと、例えば、再生可能エネルギー、特に太陽光ですとか風力発電、こうした発電出力が気象状況に非常に左右されたり、あるいは時間帯であったり季節によっても大きく変動するような電力というのは、電力品質、これは電圧ですとか周波数、これを維持するのが非常に難しいというふうに伺いました。

 刻々と時間が変化する、あるいは状況が変化する中で、需要に合わせて瞬時に供給を一致させていかなければいけない、そうしたところがあること、あるいは、風力や太陽光などが大量導入をされると、需要の変動分に加えて風力や太陽光の出力変動分に対応するための火力発電等のさらなる調整が必要になってくるようなこと、これは豊田に視察に行ったときにもお話をいただいたんですけれども、天気になって、共働きの、昼間家庭に誰もいないお宅で一斉に太陽光発電がフル発電をし出すと、やはり電線にかかる負荷というのが非常にふえる、電圧調整の装置の設置ですとか、あるいは電柱の変圧器の増設等、こうしたことにも対応していかなくちゃいけないということで、技術的にはどれも対応可能ではあるというふうに伺ったわけであります。

 これまでは、電力会社が、発電部門と送配電部門の一貫体制の中で需給バランスですとか、あるいは周波数調整を瞬時に行っていたというのが実態だろうというふうに思います。それが、この自由化によりまして、今度は送配電事業者がこれを行うことになるわけでありますけれども、発電事業者と送配電事業者との連携が必要であることは変わらないということだと思います。むしろ、より広域で、そしてまた、いろいろな電力が入ってくるということもありますので、他業種と発電事業者との連携が求められてくるということが想像されるわけであります。

 したがいまして、これを一貫体制の中で行っているところから、非常にいろいろなところと協議をしたり、それから、どの電力をどのぐらい入れて、どの電力は余剰になってくるというようなこともやはり考えて取り組んでいく必要があるというふうに思っておりますけれども、そうした確実な調整のためにどういうことをこれから考えていかなければいけないのか、この点について伺いたいと思います。

糟谷政府参考人 これまでは、需給でありますとか周波数、電圧の調整は、一般電気事業者が専ら自社電源を使って需給バランスの調整を行ってきたわけであります。

 他方で、再生可能エネルギーを普及させなきゃいけない、こういう中で、いろいろと発電事業者が多様化していくということはもう待ったなしの状況であります。したがって、そういう状況にも対応できる、それでも安定供給ができるような仕組みに変えていかなきゃいけないということでございます。

 具体的には、安定供給を確保していくために、平時におきましては、送配電事業者が需給バランスを調整するために利用する電源を効率的かつ確実に調達できるように、市場を設けるということでありますとか、そうした電源に送配電事業者から給電指令を行ったり、万一のときの費用のやりとりを行うということのルールの整備などを行うことが必要だと思っております。

 また、小売事業者に対しまして空売り規制、供給力の確保義務を課すことで、中長期的には、小売事業者の要請に応じて必要な調整電源なども建設される仕組みを整備するということが必要であると思っておりまして、緊急時におきましても同様であります。電力の安定供給のために対処する仕組みやルールを整備するということが必要であります。

 今後の制度設計において、こうした仕組みをしっかりと構築してまいりたいと考えております。

大見委員 一方で、多様な電力が入ってまいりますと、例えば再生可能エネルギー等が大量に導入された場合などでありますけれども、天候ですとか曜日あるいは季節、こうした時間、時期に、ベース電力となります電力と太陽光発電等の電力との合計の発電量が需要を上回って電力が余ってくる可能性もあるのかなというふうに思います。

 これまでは、余剰電力を揚水発電等で吸収したり、太陽光、風力の出力を抑制するというような調整も行われていたわけでありますけれども、自由化になる以上、余り抑制というようなこと、あるいは一つの発電事業者にその負荷を負わせることもいかがなものかというような状況になってくるのではないかと思います。

 そういう意味では、本年二月に出されました電力システム改革専門委員会の報告書というのがございまして、その中で、需要の逼迫時ですとか、あるいは調整用の電力というのをスポット的にやりとりする市場の形成というものも必要ではないかというようなことがうたわれております。

 先ほどの議論にもありましたけれども、この点の新しい電力市場についてどのようなフレームを考えておられるのか、伺いたいと思います。

糟谷政府参考人 御質問の中で触れられました報告書、電力システム改革専門委員会の報告書の中では、一時間前市場を創設して、小売事業者などが、実際に電力が使用される直前まで市場を通じて供給力を確保できる仕組みを設けるということが書かれております。また、リアルタイム市場を創設して、法的分離後の系統運用者が需給調整等に用いる供給力を市場から調達できる仕組みとするということも提言をされております。

 先ほど御指摘にありました、余剰電力が生じた場合、これを取引することによって、余剰電力を用いて揚水発電などで電気をいわば貯蔵する、こういうことも行われることがこうした市場を通じて可能になってくるだろうというふうに考えておりまして、今後、詳細な制度設計を行ってまいりたいと思っております。

大見委員 これまで、どちらかというと、新規事業者が参入しやすいような状況はどういうものがあるかという観点も含めて質問をさせていただいておりました。大きな電力の見通しというのはまだないけれども、それぞれの技術革新の中で、家庭での取り組み、あるいは余った電力に対する対応というものも今お答えをいただいて、参入しても何とかなるんじゃないか、そういう点もやはり持っていただけるような形も同時に示していかないと、新規参入者、あるいは自由化のメリットというのが享受できないのではないかなというふうに考えております。

 その意味で、このシステム改革が実行に移される前の今の段階でも、さまざまな新規参入の予備軍がいるというふうに思っています。そういう新規参入の予備軍が、今回の電力システム改革を恐らくビジネスチャンスと捉えているのではないかというふうに思っていますけれども、その新規参入事業者の課題はどういうところにあるのか、あるいはそのビジネスチャンスと捉えている参入予備軍が実際どのくらいいるのかというようなこと、あるいはまたエネルギー産業の今後の将来像をどんなふうに経済産業省としては描いているのかということもあわせて、総括的でありますけれども、お伺いをさせていただきたいというふうに思います。

高原政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、小売市場における新規参入者のシェアは伸び悩んでおります。理由は、例えば発電所を建設する場合にも環境アセスメントで時間がかかる、それから広域系統運用のためのインフラや仕組みが不十分である、さらには送配電部門の中立性確保が不十分であるといったような課題があると思います。

 こういった課題に対応していくにつきましては、環境アセスメントの見直しに加えまして、電力システム改革で掲げておる政策項目の実現の必要性がどうしてもあると思っております。

 また、消費者の立場に立った新たな小売サービスというのがこれからたくさん出てくると思います。家庭の節電効果を電力会社の方に販売するビジネス、あるいは、委員が御視察になられたように、例えば電気自動車などと組み合わせた電気の販売、あるいは通信との組み合わせ、いろいろなビジネスチャンスがあると思います。

 今、電力市場というのは実に十数兆円の規模がございます。再生可能エネルギー、次世代自動車、あるいは省エネ家電の普及など、かかわりのある多くの分野でこれまでになかった産業や雇用が生まれていくというふうに考えている次第でございます。

 以上でございます。

大見委員 もう時間が参りましたので、簡潔に御要望等々だけさせていただいて終わりたいと思います。

 新しいエネルギー社会を築いていくためには、何よりも安定が大事だというふうに思います。これは、エネルギー政策が政権によって変わったり、調達先ですとかコストが政治や経済あるいは外交などで激変するようなことがあってはならないというふうに思っております。そのためには、何より、政治経済の安定と将来の社会を見据える確かな識見と、世界の国々ときちっと連携して、国際社会の秩序と安定に貢献できるような国づくり、これをまず行っていくことが根本的な問題としては不可欠ではないかというふうに思っております。

 この点について、御所見があれば、最後、一言いただいて、終わりたいと思います。

赤羽副大臣 一昨年の三・一一、東日本大震災以来、我が国はエネルギー制約に直面しているわけでございます。エネルギーはライフラインそのものでありますから、私は、安全第一で、かつ低廉で安定的なエネルギー供給ができるような体制をつくるというのは、これは政治体制いかんにかかわらず、基本中の基本だと考えております。

 しっかりとした中長期的なものをつくっていくように頑張っていきたいと思いますので、御指導のほどよろしくお願いします。

大見委員 終わります。

富田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十五分開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 自由民主党の宮崎政久です。

 本日は、今国会に提出される最重要の法案の一つであります電気事業法の一部を改正する法律案について質問の機会をいただきましたこと、委員長初め各会派理事の皆様に御礼を申し上げます。

 二年前の東日本大震災を一つの契機としまして、我が国のエネルギーシステムは大きな転換点を迎えている、長く続いた電力の供給体制を抜本的に見直す必要があることについては、国民の皆様の理解を得られているものと私は考えております。

 私がこの法案で最も留意すべきと考えているのは、電気の供給という、最も重要なライフラインとして、最も基礎的なインフラとして、いささかも国民にとって不利益を与えることがないようにしっかりと着実に電力システム改革を進めるべきである、この点であります。

 我が国における今後のエネルギー政策の重要法案、国会に提出をさせていただいて一カ月以上経過し、会期末まで一月を切っているという状況でございます。私は、与党の議員の一人といたしまして、与野党の議員が理念を共有できるこの法案、しっかりと協議をして、今国会において電力のシステム改革にしっかりと着手すべきである、こういう決意のもとで本日の質問をさせていただきたいと考えております。

 明治十九年に東京電燈から始まったのが、我が国の電気事業であります。戦後間もない昭和二十六年に、九電力会社の体制で電力会社が発電、送電一貫して行う、こういう体制から、実に六十年ぶりの歴史的な改正を今迎えようとしております。

 戦前から統合が進んで、ブロック別に発送電一貫体制で、独占的に電力を供給する形態の中で、一般電気事業者は、半ば公的な企業だからこそ、供給義務に対する強い責任感と高い職業意識を持って、我が国の戦後の経済成長を支えるインフラとしてその役割を担ってきたものと考えております。

 今般の六十年ぶりの電力のシステム改革によって、この独占的、非競争的、公的な電力システムが自由競争の市場に委ねられることになるわけです。ビジネスの論理で、もうかればいいし、もうからなければ撤退すればいい、こういうことになってしまっては意味がないわけです。安定供給という社会的な責任を、発電、送配電、小売、この電力供給に当たる全ての事業者に高いレベルで共有していただいてこの事業を進めてもらわないと困るわけです。

 自由化の促進によって、経済的な合理性を追求する余り、発電設備に対する投資が減退をしてしまって、可能な限り余分な設備を保有しない、こういう方向に向かうことは、自由化で先行する欧米においてもそういう事例が見られることで明らかであります。自由化を実施したカリフォルニアの例、これはいろいろな事情があったわけでありますが、電力会社の予備力が限られていたという状況下において、自由化後に大規模な停電を引き起こしたということもあるわけです。

 安定供給という、何よりも優先しなければならない、このシステム改革でも第一にうたわれている電力政策の柱、これを達成するために一定の予備力をしっかりと確保していく、この方策についてどのように考えているか、お考えをお聞きしたいと思っております。

菅原副大臣 宮崎委員おっしゃいますように、我が国の最も重要なインフラでありライフラインである電力、そしてその安定供給ということの御指摘をいただきました。そして、この長い歴史の中で、このたびの電力システム改革を行うに当たって、特に今、最後にお話のあった予備力、この重要性についてもお触れをいただいたわけであります。

 したがって、この電力システム改革を行った結果、電気の安定供給が逆に損なわれるというようなことがあってはならないということは当然のことでありまして、そのための万全の措置を講じた上で着実に改革を進めていくことが必要であると思っております。

 そのために、この法案附則の改革プログラムにおきまして、五年後や十年後に向けた発電所の建設について、小売事業者に空売り規制を課すこと、そしてまた、それによって小売事業者の要請に応じて発電所が建設をされる仕組みとすること、また、仮に小売事業者への規制だけでは将来的に発電所が不足をするということも考えられる場合には、広域的運営推進機関が発電所の建設者を募集する仕組みとなっておりますので、このことによりまして最終的に必ず発電所を建設する、こうした規定を盛り込んでいるところでございます。

 このような仕組みによって、宮崎委員がおっしゃったように、改革の後も一定の予備力を電気会社、事業者が確保する、そのような制度設計を担保してまいりたいと思っております。

 なお、需要を所与のものとして供給力を積み上げるだけではなく、ピークとピーク以外の料金に差をつける等の工夫によりまして需要を抑制することも重要でありまして、こうした措置によって安定供給に万全を期したいと思っております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 次に、自由化の話に進めさせていただきたいと思っております。

 自由化によってどういうメリットがあったのか、また自由化を進めることによって想定されている社会、こういうことについては午前中の質疑の中でもやりとりがされておりました。競争の進展に関しては、一部、部分自由化を進めていたことによってはまだ不十分であったというような政府の認識も示していただいておるところでありますので、そういう認識を前提に質問を少し先に進めさせていただきまして、自由化のメリットを享受するための消費者に向けての制度というところに質問を進めさせていただきたいと思います。

 消費者の皆さんが小売の全面自由化によるメリットを享受するためには、消費者に対して、新たな制度の内容であるとか事業者を切りかえるための具体的な方法、こういうものをしっかりと周知する必要があると考えております。

 欧米の自由化の先進事例を見ましても、自由化後の乗りかえ率などは国や地域によって大きな差が見られるということも午前中の質疑の中で御説明がございました。我が国における一部自由化後の新規の参入率はたしか三・六%程度であるというような御回答があったかと思います。自由化と競争による活発な企業活動が消費者利益につながる、こういう政府の見解からしましても、この乗りかえ率の向上のためにどのような啓発を考えているのか。

 また、自由化市場において、消費者の利益のためにも、電気事業者間の競争を促進することにより消費者の選択肢を確保していくことが極めて重要だというふうに思います。規模は小さくても多くの電力会社が市場に参入することが重要でありまして、ややもすると、市場原理だけに任せておくと、これらの新規、後発の小規模事業者ばかりが淘汰されるということも考えられないわけではないわけであります。

 政策的にこれらの小規模事業者の新規参入を促して、電力事業者としての成長を図っていくために、これまでの取り組みの政策評価も含めて、今後どのような競争の促進措置を講ずるのが適当であると考えているのか。消費者の側から見たもの、そしてまた選択肢となる企業の育成、異なる二つの観点から政府のお考えを聞きたいと思っております。

菅原副大臣 事業者側に相対する消費者側の立場に立った御質問だと思います。

 先ほどお話がありましたように、小売市場における新規参入のシェア、自由化は二〇〇〇年以降やってきておりますが、委員御指摘のとおり、今三・六%にとどまっているわけであります。そして、電力会社や料金メニュー、電源等を選びたいという多様な選択肢に応え、消費者が電力自由化によるメリットを享受するためには、消費者に対し、委員から御指摘があったように、新たな制度や電力会社を切りかえる具体的な方法について、徹底した広報、周知徹底することが必要であると考えております。

 また、電力の自由化によって、消費者には、お話がありましたように、電力選択の自由が確保されるとともに、同時に選択の責任も生じることになるわけでございまして、そのために、例えば電気事業者に対して電気料金等の供給条件を消費者に説明する義務を課すことなど、消費者が安心して電力選択を実施できる環境を整備することも重要であると考えております。

 こうしたことを盛り込んだ法案でありまして、さらには、消費者の選択肢を確保するためには、例えば卸電力取引所を活用した競争を促すことも重要であると思っております。このために、新規参入者も含めたさまざまな事業者による活発な競争の促進に向けまして、既にこの三月より、既存の電力会社が余剰電力を卸電力取引所へ売電することを決めておりまして、その状況についてモニタリングを行うことによって、この取引の活性化を進めていきたいと思います。

 なお、送配電部門の中立性の確保も競争環境の整備として必要不可欠でありまして、このようなさまざまな措置によりまして、消費者にメリットと安定感を担保していきたいと考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 次に、広域的運営推進機関について質問をさせていただきたいと思っております。

 この広域的運営推進機関には、現行の送配電等業務支援機関、ESCJでありますけれども、このESCJとは異なって、各電気事業者に電源のたき増しや区域を越えた電力融通を指示できる、こういう権限が与えられているほか、周波数変換設備や地域間連系線の増強、需給バランスの調整、供給計画の取りまとめなど、より大きな役割が与えられるということが法案上も明記をされております。このような役割ゆえに高い公益性が求められる、だからこそ認可法人として設立されることになる、午前中もこのような御説明がありました。

 そうなりますと、特定の事業者の利益に偏ることなく中立公正な運営が図られるため、組織づくりをするに当たってはさまざまに配慮が必要になろうかと思います。中立公正な組織運営ということであれば、広域的運営推進機関において、特にその財政基盤と組織の中における議決権、これをどのようにするのかという点についてお尋ねをしたいと思っております。

 つまり、会費を徴収するということが予定されているわけでありますが、小規模事業者に対して高額の会費を設定する、このようになりますと、加入が義務づけられていますので、小規模事業者に対する参入障壁ということにもなりかねないわけであります。

 また、議決権のあり方については、法案の第二十八条の三十八第一項で、各会員の議決権は、平等とすると定められておりますが、単純に一社一票のような形式的な平等でいいのか、実質的な平等のような観点も必要なのか。現行のESCJでは、有識者グループとか一般電気事業者グループと、グループごとに議決権が平等になるような工夫もされておると聞いております。

 この会費と議決権のあり方、組織の公平性、中立性を担保するという点から、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

糟谷政府参考人 まず、財政基盤でございますけれども、広域的運営推進機関は会員制の認可法人でありまして、御質問のように、運営費は会費によって賄うことが基本でございます。

 他方で、この会費のあり方でありますが、具体的な制度設計に当たって議論されることになるわけでありますが、広域的運営推進機関は、その業務を行うことによって我が国の電気の安定供給の確保を目的とする非常に公益性の高い機関でございます。したがって、その会費については、会員となる全ての電気事業者が直接負担するというよりも、送配電ネットワークを利用する者が広く負担する仕組みとするということが望ましいものと考えておりまして、このため、例えば、一般電気事業者は託送料金によって送配電ネットワークを利用する者から広くその会費を賄うといったことが考えられるのではないかと思っております。

 それから、次に、議決権であります。

 御指摘のように、法案第二十八条の三十八第一項において、議決権については平等であることが原則であるというふうに規定をしております。ただ、その上で、第三項におきまして、定款において別の定めがある場合には、この平等原則を適用しないということにしております。

 現在、ESCJにおきましても、一般電気事業者のグループ、卸・自家発のグループ、新電力のグループ、有識者のグループ、これがそれぞれ、一対一対一対一の議決権を保有することとなっておりまして、数に応じた形式的な平等性ではなく、実質的な公平性を確保することとされております。

 広域的運営推進機関におきましても、この会員となる電気事業者は、一般電気事業者のほか、卸電気事業者でありますとか特定規模電気事業者のような、立場の違う者が会員になるわけでありまして、御指摘のように、広域的運営推進機関の意思決定の実質的な公平性を確保するために、単に形式的に会員の議決権を平等にするというものではなくて、事業者の性格に着目して一定の傾斜をつけ、実質的な公平性を確保し、ガバナンスを保っていくということが必要であるというふうに考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 ここは、次の具体的な制度設計のときに非常に重要だと私は思っています。平等というのは価値的な概念なんですね。ですから、それを実質的に実効性あるものにしていくために、真に国民の利益になるようにこの法案を具現化していくということは非常に重要だと思っておりますので、この点については、またさまざまに議論もさせていただきたいというふうに考えております。

 次に、自己託送制度の見直しに話を進めたいと思います。

 私は、この自己託送制度の見直しは非常に評価できる改正だと考えております。自家発を保有する需要家が発電した電気を別の場所にある自社工場などで利用することに送配電網の利用を制度化するというわけでありますから、企業などが持つ自家発電の稼働率の向上も見込めて、自家発電導入のインセンティブにもなることは間違いないわけです。電力の供給体制自体も、大規模集中というところから小規模分散へ進んでいく。ピークカットとかリスク分散にもつながる。限られた資源の効率的な活用につながる。ぜひとも、これは積極的に実効性のある推進をしないといけないと思っております。

 お尋ねをしたいのは、今回の法案を見ますと、自己託送の対象は特定規模需要に応ずるものに限ると第二条一項十四号のハに規定されておって、これは五十キロワット以上ということになるわけでありまして、制度の利用者の範囲が限定されている。大胆に改革を進めるという方針からすると矛盾しているかのようにも受けとめられる点でありますので、この点、御説明いただきたいと思っています。

平大臣政務官 宮崎委員とは、八年前に、二〇〇五年、日本JCで、私は関東地区会長で、宮崎さんは沖縄会長ということで、いろいろな議論をさせていただきました。場所が変わってこういう質疑をさせていただくということは、大変感慨深く思っております。

 今御指摘をいただきました点でございますが、東日本大震災とそれに伴う需給逼迫を契機に、電気事業者以外の者が保有する発電設備の有効活用が喫緊の課題となっております。

 今般、送配電網を保有する一般電気事業者に対して自己託送に応ずる義務を課すことにより、自家発の有効利用を促すこととしたものであります。

 一方、今御指摘のとおりでございまして、今般の制度改正においては、特定規模需要以外の需要、つまり、家庭部門などの規制需要に応ずるための低圧配電線を利用する自己託送は対象外としております。特別高圧・高圧送電線を利用する自己託送のみを対象としています。

 しかしながら、できるところからしっかりやっていくということでございます。低圧配電線を利用する送配電利用ルールについては、三年後の二〇一六年をめどといたしまして実施をする小売参入自由化にあわせて整備をすることとしておりますが、これを待つのではなく、まずはできることからやる、特別高圧・高圧送電線を利用する自己託送を先行的に実施するものとしたものでございます。

 なお、低圧配電線を利用する送配電利用ルールが整備された場合には、当然、低圧配電線を利用した自己託送にもその対象範囲を拡大していきます。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 できるところから着手していく、大胆にシステム改革を進めていくということで、やはり、我々は、今この電力システム改革は待ったなしの状況に置かれているというふうに考えるべきだと思うんですね。

 ですから、今国会におけるこの法案の審議もしっかりと議論をした上でまず第一歩をしるすべきだと思うし、法案の中身としても、できるところからとにかく着手していくというような決意が、私は実はこういうところに見てとれるのではないかなというふうに思っておりまして、ぜひ、今後の国民の皆様への説明に当たっても、しっかりと前向きに大胆に取り組んでいるということを政府の方からも御説明いただきたいと思っております。

 また、時を重ねまして、私、平政務官とこの国会の場でこういう形で議論をさせていただくことができるというのは大変幸せなことであります。青年会議所にいたころから、私は沖縄の代表として地域の皆さんに支えていただいて活動していた、平政務官は東京、関東を代表する若者として活動されていた。

 そんなことも踏まえて、次に、実は、沖縄、離島に対する配慮ということについて、この法案についての議論を進めさせていただきたいと思っております。

 今後、電力システム改革を進めるに当たって、離島地域であるとか沖縄での電気の安定供給をしっかりと維持していく、この点についての確認をさせていただきたいと思っております。

 御承知のとおり、沖縄というのは、東西に一千キロ、南北に四百キロ、この広大な海域の中に離島が点在している、こういう県です。有人離島の数は三十九を数えておりまして、イメージとしては、沖縄本島の那覇市、これを東京に置きますと、西の端、最西端にある与那国島という島が四国・徳島県の場所にある、こんな位置関係に立っているのが我が沖縄であります。

 電力の系統でも、我が国で唯一、九電力会社と連系されていないという状況です。九電力が大規模で広域連系をされているのに対して、今、私たち沖縄県民が供給を受けている沖縄電力の体制というのは小規模単独系統という状況であります。

 本日は、委員長のお許しを得まして、お手元に資料をお配りさせていただいております。

 まず一枚目は、地図が出ておりますが、現在、沖縄では、沖縄の島々を十二の系統に分けて電力供給を行っております。広い海域に、先ほど言ったとおり、東西一千キロという範囲に点在しておりますので、沖縄本島から全部線をつないで供給できるというわけではなくて、それぞれに発電の施設を、ディーゼルとか、小さいものを含めて置きまして、十二系統に分かれて供給をしておるという状況です。

 二枚目を見ていただきますと、今度は島別の供給の状況でございます。

 黄色く塗っている島が十一個。この十一の島は、電気の供給契約数、需要家の数が二桁、中には一桁もあります。つまり、百件未満なんですね。契約先が一桁台というものも、オーハ島というのと新城島の下地、この二つはもう本当に一桁台の件数であります。

 三枚目を見ていただきます。これは、停電の話にちょっと触れたいと思って資料を用意させていただいております。

 沖縄は、もう台風の常襲地帯でありまして、台風が来ますとしばしば停電します。皆さんにとっては、恐らく停電というのは、何か子供のころ体験したなとか、そういう話かもしれません。しかし、私たちは、台風が来たら停電するというのは別に珍しいことでも何でもございません。一軒当たりの年間停電回数、平成二十三年、平成二十四年、二年続けて年間二、三回はもう停電している、こんな状況であります。

 昨年も、台風十七号という大型台風が襲来いたしまして、実に三十三万世帯以上、県内の半数に近い世帯が停電をした、こういう状態があるんですね。こういう状態であったとしても、早期の復旧と安定供給を行うための配慮が欠かせない、こういう事情がございます。

 プログラム規定によって、来年、再来年にも第二弾、第三弾の法案が国会に提出されるということになっておりますが、その際にも、このような沖縄や離島地域の事情、ほかの電力事業環境とは違いがあるということについて配慮いただきたいと思っております。政府のお考えを聞かせていただきたいと思っています。

平大臣政務官 お答え申し上げます。

 宮崎委員は、本当に理性的な態度で沖縄の主張をずっとされてこられたというふうに思いますが、その主張は本当に説得力のあるものだというふうに感じております。

 今御指摘の点でありますが、沖縄は他地域と電力系統が連系していないことから、広域系統運用が難しいということ、さらには、沖縄本島を含む三十八の島々に電力を供給していることといった地域固有の特殊性を有していると我々も認識をしております。これらの特殊性を踏まえて、制度を柔軟に検討していきたいと考えます。

 法案附則のプログラム規定において、三点を明記しております。

 一として、離島における電気の使用者が離島以外の地域と同程度の料金により電気の供給を受けることができるようにするための措置を講ずること。二として、離島における電気の安定供給を確保するための措置を講ずること。三として、沖縄地域における電気事業の特殊性を踏まえた措置を講ずることとしております。これらをしっかり明記しているということを申し上げたいと思います。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 今、平政務官から御指摘のありました、この附則にある三点、いわゆる沖縄地域におけるユニバーサルサービスであります。

 これは、先ほど御指摘を申し上げたような事実上の条件以外にも、実はさまざまに難しい課題があるということもぜひ御理解をいただきたいんです。

 つまり、簡単に言えばコストがかかるんですね。これを、送配電事業者が、補填金を活用するなど、エリア全体で、離島と離島以外で薄く広く負担し合うことで、離島に住んでいる皆さんに大きな負担がかからないようにするというのが制度の大前提だと思うんですね。

 ところが、沖縄は、この離島の占める割合というのが非常に高いんですね。先ほどの二枚目の資料の一番下のところに、契約口数、離島全体で九万五千二百九十件で、県全体では八十五万六百十九件あります。つまり、この離島がもう県域全体の一一%も占めちゃっている状況にあるんです。

 ですから、沖縄という地域で、この離島の負担を離島以外でカバーするというのがなかなか難しい。沖縄本島自体も、はっきり言えば若干大き目の離島みたいなものなんです。よく、政策の中で離島といったときには本島を除いて考えるんですけれども、そういう位置づけもあります。

 ですから、私は実は、先ほどの附則の十一条第五項に当たっては、しっかりとこの柱書きに忠実にやっていただきたい、つまり、政府は次の措置について検討を加えるに当たって、沖縄県の需要家、そして地元の事業者、こういう関係者の意見をしっかりと聞いていただく場を設けていただきたいと思っております。いかがでしょうか。

平大臣政務官 宮崎委員御指摘のとおりだと思います。今後、詳細な制度設計を行うに当たっては、さまざまな関係者から広く御意見を伺うことが重要だと考えております。

 今後の制度設計に当たっては、沖縄の特殊性についての事情をしっかり把握するためにも、沖縄の需要家や事業者等の御意見をお聞きすることなど、積極的に対応していきたいと思います。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 私が指摘をさせていただいた沖縄が抱える状況、厳しい自然条件に遭遇する、マーケットが消化できないような規模である、こういうことは、実は、発送電分離という競争環境整備策と電力の安定供給をいささかもゆるがせにできない、こういう命題を整合させるためのこれからの課題が実は端的にあらわれている事情だと思っています。真に国民のためになる電力システム改革を実現する、この理念のもとに、私も精いっぱい頑張ってまいりたいと思っております。

 その決意を申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 日本維新の会の重徳和彦です。

 安倍内閣きっての改革派大臣の茂木大臣にお時間を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 きょう、維新の枠で九十分いただいておりますので、その枠の中で、多少、私、延びるかもしれませんけれども、中で調整いたしますのでどうかお許しいただきたいと思います。

 さて、きょうのテーマですが、電力システム改革が社会を変えるのは間違いない、しかしながら、茂木大臣がおっしゃる、戦後六十年続いた地域独占体制を抜本的、歴史的に見直す、この大改革、これ以前に、比較的容易に、今の役所のをちょっといじるとか、縦割り行政をちょっと連携をとることでやれること、あるいはやるべきことというのは幾らでもあるんだということをお話ししてみたいと思います。

 きょう午前中に、私が生まれた豊田市を視察していただいた、そして八木先生の御指導をいただいておりました豊田市を視察いただきました大見正委員の御意見、全く私は同感でありまして、潜在する新規参入事業者の可能性を最大限引き出さなければ、電力システム改革の名に値しないのではないか。後ほどお話しいたしますけれども、大見先生の安城というのは日本のデンマークと言われておりまして、環境首都とも言われております、農業のバイオマスの可能性を非常に秘めた土地だと思っておりますし、同じ三河地域の選出議員として、大変誇りに思っておる地域でございます。

 そういう意味で、こういういろいろな地域の可能性を最大限引き出すために、今回の大きな大改革の前にやるべきことがいろいろあるんじゃないか。小泉元総理の郵政民営化の総選挙のときの言葉をかりれば、その程度の改革ができなくてどうやって日本を変えることができるのか、電力システム改革が進むのか、こういったようなテーマではなかろうかと思っております。

 前置きはそのぐらいにいたしまして、まず、私、四月三日にここの委員会におきまして質問をさせていただきました。街区間の電力融通の制限の解消についての質問の、そのときの議論のおさらいをまずさせていただきたいと思います。

 その少し前に、参考人として御意見をいただきました小宮山宏元東大総長の小宮山ハウス構想の実現についてでございます。

 小宮山ハウスで屋根の上に太陽光パネルを張ったり、燃料電池で発電した電気を、御本人、御自宅で使わない時間帯については近所の家にも融通する、シェアするということが今の法律上できないんじゃないか、こういうプレゼンテーションがございました。本当に電気事業法を改正しなくちゃいけないのかどうか、役所の皆さんとも一緒に検討いたしました。

 簡単に言うと、これはおさらいなんですけれども、現行法上、特定供給という制度がございます。この制度は、本来は、コンビナートの中のある工場に設置したソーラー発電による電気を、同じコンビナートの中の資本関係にある他の工場との間でシェアする、あるいはマンションの屋上に設置したソーラー発電を、マンションの中に住んでおられる方々と組合をつくって、その組合を構成する全戸でシェアする、こういう内輪向けの制度が特定供給だというふうに御説明がありました。

 ところが、この制度を前提に考えると、小宮山先生の構想を実現するには、小宮山さんのお宅と町内会の他の住民のお宅が組合をつくるか資本関係になければならない。資本関係なんかまずあり得ないわけですから、組合が必要だ。これは、経済産業大臣の御許可があればできるということなんですが、問題は、この要件が非常に厳しい。

 しかし、それは法律上厳しいわけではありません。この許可要件を示した経済産業省の規則があるんですけれども、つまり大臣許可の要件ですね。この規則の下に審査基準というのがあるんです。そこにどう書かれているか。

 「当該供給能力により当該需要の五割以上に応ずることが可能であり、かつ、一般電気事業者又は特定規模電気事業者から電気の供給を受けることにより当該需要に応ずることが可能である場合」。

 聞いているだけではわからないような文章ですけれども、要は、小宮山ハウスに町内会全体の総電力需要の五割以上の供給能力がない限り許可できない、これが経産省の、内部規定みたいなものですね、審査基準で定められている。

 長くなりましたけれども、この要件について、前回の長官の御答弁の中で、つい最近、一〇〇%を五〇%に引き下げたという規制緩和の御説明がありました。しかしながら、なぜ五〇%なのか。なぜ四〇、三〇、二〇、一〇じゃないのか。一〇に引き下げても、まだ、なぜ九%じゃだめなのかという話になってしまいますので、その比率を決めているうちは、この議論は延々と果てしなく続くのではなかろうかということでございます。

 それで、一〇%しか小宮山ハウスから供給できないとなった場合にも、必ずこれは東京電力さんなりからの残り九割分の電力を供給する契約をきちんと締結して安定的に電力を供給できる体制をつくることを条件に大臣が許可を出せばいいだけの話なんですから、たとえ九%でも、九一%はちゃんと契約して、それでも不安定だと判断すれば不許可だというふうにすればいいだけなんだから、やはりこれまた必要のない規定ではないかということでございます。

 午前中の大見委員の豊田市の事例も、電力を融通する、電力が余る、こういう状況の調整が必要だという御意見がありました。まさにそのとおりだと思います。

 大変僣越ながら、茂木大臣から前回、「御指摘は、大切なポイントだと思っております。しっかりと検討させていただきます。」と御答弁をいただきました。これにつきまして、どのように御検討いただいたのか伺いたいと思います。

 長くなりまして、済みません。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 特定供給は、委員御指摘のとおり、自家発あるいは自家消費に類する供給行為であるということから、料金規制や電気の品質の維持を求めることなく、需要の五〇%以上の自己電源保有を要件に、例外的に一般電気事業者以外の方々にも一般家庭を含む需要家への供給を認めているものでございます。

 御指摘いただいた後、いろいろ検討を加えました。実際に具体的なプロジェクトを研究中の、あるいは検討中の方々からいろいろなお話を伺いました。現行制度の枠の中で、自己電源比率につきまして、実質的な負担軽減につながる方策、これを検討してまいりました。

 具体的には、特定供給を検討する事業者の方々との協議も踏まえまして、例えば、みずから電源を保有しなくても、特定の電源との契約によって需要家への電力供給が確実であれば自己電源とみなす、あるいはまた、太陽光など自己電源の出力が不安定でも、蓄電池と組み合わせることによりまして一定量の自己電源とみなす、あるいはまた、燃料電池につきましては自己電源とするといったようなことを含めまして、自己電源についての考え方を明確化したガイドラインの作成に直ちに着手いたしております。可能な限りこれを速やかに実施したいと考えております。

 以上でございます。

重徳委員 すばらしい御答弁でした。昨夜、事務方から聞いた説明よりもさらに一段とブラッシュアップされた御答弁に感謝を申し上げます。さすが大臣のリーダーシップだと思っております。

 これなら、個人事業者が、小宮山先生というもうどえらい先生じゃなくても、普通の個人事業者の参入障壁が非常に低くなって、先般から維新の会それからみんなの党、きょう、いらっしゃいませんけれども、各委員が心配しております起業しづらい国日本の解消に向けた第一歩を、これは電力改革をきっかけに踏み出せるのではないか、僣越ながら、このように非常に高く評価をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、ちょっと気をよくして次の議題に入らせていただきます。

 きょうは、バイオマスについて議論をさせていただきたいと思います。

 私、長年一緒に行動してきた、私が青森県庁に赴任していたころからの民間人の知人や仲間も大勢いるんですが、そういう仲間がもう十数年前から、青森とか北日本の方を舞台にエネルギー立国あるいは立県ができないかという話をずっと議論してまいりました。

 それで、青森だけじゃないので、最近、開成という新潟県村上市の会社がメタン発酵施設に発電を導入したという話を聞きました。これは経産省の皆さんなら当然御承知のとおり、バイオガスのフィード・イン・タリフの認定第一号で、去年の十月からでしょうか、系統連系して送電が開始されたということでございます。

 ここのすばらしいところは、特定の企業を持ち出して大変、私もちょっと直接面識がない企業ですので、聞いた話では、ガスの取得後の消化液があるんですね、つまり液体が出る、これが大変高ミネラルの液肥で、これをまくと米の収量が一九%アップする、つまり、TPP対策にもなるのではないかというような話もございます。こういったバイオマスの副次的な作用も非常に多くございます。

 こういう企業がどんどん出てくるような社会づくりのためのシステム改革でなければならないんじゃないか、私はそう思います。ところが、問題は縦割り省庁の規制なんですよ。

 ことし四月の環境新聞という新聞の記事によりますと、この会社がメタン発酵施設にごみとか堆肥とかそういうものを集めるわけですが、この容量は一日当たり四・九トンなんですよ。四・九トンというと、五トンだから五千キログラムですから、大体、私の感覚では議員会館の四分割した部屋の一つぐらいじゃないかなと思うんですけれども、一日に集める容量は四・九トン。本当はもっと大きくできるというんです。ところが、本当はどれだけでもできるのになぜ四・九トンかというところに謎がございます。

 これはなぜそこに境目があるのでしょうか。環境省の方ならおわかりになると思うんですけれども、御答弁をお願いします。

梶原政府参考人 その事業者さんの方がなぜ四・九トンにされたかということ自体は私はよくわかりませんが、制度上、一日の処理量が五トンを超える一般廃棄物の処理場、これは今回の、先生が御指摘のバイオガス施設もごみ処理施設も同様でございますけれども、五トン以上の一般廃棄物処理施設を設置しようとする場合におきましては、廃棄物処理法に基づきまして、都道府県知事及び、場合によっては、権限がおりている場合は政令市の市長さんの許可を受ける必要があるとされております。

 一方、五トン以下の場合はそういったような許可を要しないということでございます。

重徳委員 皮肉を言うわけじゃないですけれども、今、県知事さんとか市長さんとおっしゃいましたけれども、その法律を所管している省庁はどちらですか。

梶原政府参考人 環境省でございます。

重徳委員 もう答えを言いますと、廃掃法による規定ですね。

 五トン以上だと、要は、皆さん御存じの議員会館の一室ぐらいのところにごみを集めたら、業として集めますので議員会館に集めることはないんですけれども、その後、燃やそうと、破砕というんですか、壊したり、それからメタンガスを出すために発酵させようとも、それはともかく、ごみを集めて業として何かをやる上では廃掃法上の五トン以上の許可が必要だということでございます。

 これも事前にちょっとお聞きしたところによりますと、さらに、これは焼却する場合にはもう一つ許可が必要になりますね。それはよろしいでしょうか。その焼却施設、集めたごみを燃やすときの許可。つまり、破砕とか発酵させるときには特段そのほかの許可は必要ないですけれども、それを燃やす場合には許可が必要ということですね。

梶原政府参考人 許可としては一本でございますけれども、許可要件のところ、許可が必要なものという形になりますと、先ほど言いました五トン以上という話と、あと、焼却炉の場合は火格子面積の大きさが許可要件で決まっております。

 済みません、ちょっとストレートにお答えしていることになるのかどうかわかりませんが、通常、一般廃棄物の処理を行う場合、業としての許可というものも別途必要になると思います。

重徳委員 それでは、燃やす方の許可はともかくとして、なぜ五トンか、その根拠はありますでしょうか。

梶原政府参考人 五トンにつきましては、ある一定の大きさのものを集めてきますと生活環境保全上の支障について懸念が生ずるということで、どこかで線を引かなくちゃいけない、その観点で、これまでの経験上、五トンということで整理をしているということでございます。

重徳委員 御経験というのは、生ごみを集めたら今までは燃やすだけですから、発酵させてメタンガスを出して発電に使うなどということは、恐らく、これまでの御経験上は想定されていなかったと思うんですね。ですから、この五トンで線を切るというのは、今回の電力システム改革においては必ずしも合理性があるとは私は考えません。

 こればかり言っていてもあれなのですが、では、五トンを超えると、ちょっと私、今聞き逃したかもしれません、許可が必要なのはわかりましたけれども、許可を得るために何が必要になってきますか。

梶原政府参考人 許可を取得するに当たりましては、施設の構造上の基準を満たすだけの施設であることが必要であるほか、そのときに、あわせて生活環境影響調査という調査をやっていただいて、実際のところ、例えば、その施設を設置することによりまして周辺の環境に与える影響、変化の程度、変化の及ぶ範囲、あるいはその影響の程度について書いた図書をあわせて出していただくことになってございます。

重徳委員 一言で言うと、環境アセスメントということでよろしいでしょうか。これは、全部まとめてアセスメントと呼ぶのでしょうか。今、構造上の基準、生活環境影響調査、それからいろいろな図書と言われましたが、これをまとめてアセスと呼んでよろしいのでしょうか。

梶原政府参考人 まず、構造基準に適合していただくというところについては、通常、アセスとは呼んでおりません。先ほど言いましたように、生活環境影響調査というものの図書を出していただくということの部分をアセスと呼んでおります。

 ちなみに、環境影響評価法というのは、別に法律がございます。これは、非常に大規模な施設について、事業者さんにいろいろな情報公開をしていただいて一般の方々に意見を聞くというシステムでございますけれども、この廃棄物処理法に基づきます生活環境影響調査につきましては、そういう図書を申請者の方に出していただいた後は、環境影響評価と違いまして、許可権者、知事が多うございますけれども、知事がその図書を公告縦覧の手続にかけまして意見を聞く、許認可権者側がそれを行うというシステムが大きな違いでございます。

重徳委員 わかりました。

 そうしますと、恐らく、事業をやろうとして、業として生ごみを集めて、その集めるということに入るまでにどのぐらいの期間とか労力、これは私の想像でいいますと、構造上の基準とアセスは違うとおっしゃいましたけれども、しかしながら、例えば、悪臭がするとか、粉じんが舞うとか、振動が起こるとか、構造上密閉しなきゃいけないとか、そういうことは当然いろいろ出てくると思うんです。

 仮に、安易に、議員会館の一室ぐらいの大きさの箱をつくって、ここにみんな捨てればいいよと思ったら、物すごく悪臭が出るからふたをしろとか、塀をつくれとか、水が浸透するとか、何かいろいろ言われて、それで断念に追い込まれるということもやはりアセスをやるとあるのではないですか。あるいは、やらなきゃいけないんだから金をもう何千万積めとか、そういうことは具体的にはございませんか。ちょっと自治体の話かもしれませんが。

梶原政府参考人 まず、どれぐらいの期間とどれぐらいの負担がかかるかということでございます。

 実は大規模なものをつくった事例というものが少のうございますので、私どもの持っている情報からちょっと申し上げますと、一つ、六十五トンぐらいの大きさの炉をつくった例がございます。この場合は、先ほど申し上げました生活環境影響調査、その調査に要した費用としましては大体五百万円ほどかかり、期間は一年半程度かかったと聞いております。

 ちなみに、この事業は、市町村の有する施設なんですが、PFIで民間の方に維持管理をしていただいて、事業費としては大体十九億円ぐらいの事業費のケースでございます。

重徳委員 ちょっと通告とは順不同になりつつありますけれども、私、打ち合わせでは、ちゃんと十トンの場合はどうだとか二十トンの場合はどうだとお聞きする予定だったのが、すっ飛ばしてしまって済みません。

 私の聞いている範囲では、電力、これは言葉がちょっと足りないかもしれませんが、百キロワットの施設をつくるために大体十トンのごみが必要である。つまり、二百キロワットのために二十トン。十トンということは議員会館の部屋二つ分、二十トンということは個人の部屋全部ぐらいですか、そういうことだと思うんです。

 それで、今十九億の例を出されましたが、その会館の部屋二つ分ぐらい、つまり十トンで二億五千万という数字を聞いております。それから、二十トンになると四億円という数字を、まあ一例ですからね、立地とかいろいろ条件が違うと思いますが、この相場観については違和感がありますか。

梶原政府参考人 私どもがつかんでおりますコスト感覚も大体同じようなものでございまして、先ほど申しましたように、数はそれほど大きいわけではありませんが、生ごみの処理能力一トン当たり、幅がありますけれども、大体一千万から六千万ぐらいの程度に入っておりまして、先ほど先生御指摘の二千五百万というのは、ちょうど真ん中ぐらいになります。十トンにいたしますと一億から六億ということでございますから、二・五億というのはその真ん中ぐらいの数字になると思います。

 また、先ほど先生がおっしゃられたように、一キロワットの電気を発電するときに、大体、その十分の一ぐらいの生ごみを使いますので、その点も先生のおっしゃるようなところが普通の相場だと思っております。

重徳委員 ありがとうございます。

 ほぼ相場観としては違和感がないと思うんですが、今、実は十トンで二億五千万と言いました。二十トンで四億と言いました。倍しないんですよね。つまり、当たり前ですけれども、スケールメリットが働くわけです。だけれども、当然、発電容量は二倍になるわけですから、回収できるわけです。だから、大きい方が回収できる、小さいと回収しづらい、当たり前のことですけれども。

 それにもかかわらず、今の廃掃法では、五トン以下じゃないと大変なアセスの手続がかかるよという規定になっているということを一つ指摘しておきたいと思います。

 そして、恐らく、アセスをかけたら、今はそれなりに体力のある会社がPFIでやられたという事例でしたので、五百万、一年半もったかもしれませんけれども、開業するまでに一年も二年も待たされて、追加が五百万で済むならまだしも、小規模事業者にとっては相対的にもう少し大きな負担になるケースも出てくるんじゃないか。これはもう勝手な推測ですけれども、全然ちゃんちゃらおかしいという話だったら御指摘いただきたいんですが。

梶原政府参考人 廃棄物を扱う場合、私ども、いろいろなところで、例えば役所の方でも、自治体の方でもつくりますし、国の方でもいろいろつくるということで、非常に、例えばごみの焼却施設でありますと下手したら十年はかかるとか、そういったような苦労もさせていただいております。

 したがいまして、非常に、迷惑施設という形で捉えられるものですから、そういった苦労というのはあるということでございます。これは大変な苦労だと思っております。

 ただ、片方で、そのときに、住民の方々に御理解を賜るという意味では、そういったような生活環境調査みたいなものがあった方が御説明しやすい、あるいは御理解を賜りやすいという面もあるということもございます。

重徳委員 真摯な御答弁、本当にありがとうございます。

 その辺の実情というか、それは私も全く知らないわけではないつもりでございますけれども、当然、迷惑施設ということであれば、住民の反対は大きいし、いろいろな影響が出ることもないよという説明をしていかなければ到底立地できない。これは時間がかかることもわかります。しかしながら、今回のテーマはごみ処理場ではなくてバイオマスの発電なんです。

 そうすると、さっきの小宮山ハウスほど住宅地にやれる話かどうかは別といたしまして、一体、生ごみバイオマス発電施設は、どこに立地すると民間事業者がどんどん参入できると思われますか。これはどなたがお答えになりますでしょうか。

梶原政府参考人 これは極めて私見ということになると思いますけれども、バイオマス発電の場合、どのバイオマスを原料にするかにもよると思いますけれども、例えば生ごみの場合は、都市部の真ん中にというのはなかなか難しゅうございます。

 特に、生ごみを持ってまいりますと、収集運搬の際、トラック等々を用いますけれども、できるだけ密閉型のものを持ってくるとはいえ、悪臭等がいたしますので、皆様方にはやはり嫌われるということがございます。そういうこともありますので、できれば、余り住宅街とかそういったようなところではないところでつくられる方がいいのではないかと思います。

 それと、バイオマス発電も含めまして、バイオマスの利用につきましては、関係省庁協力をして、バイオマスの促進計画というものをつくってございます。それに基づいて、二〇二〇年には生ごみ等バイオマスの利用を四割ぐらいに上げていくということで、農林省、経済産業省を初めとした関係省庁と協力しながら進めている次第でございます。

重徳委員 それから、もう一つ指摘しなければならないのは、生ごみですから、東京都のごみ収集というのは、燃えるごみ、生ごみ、全部一緒くただと思うんですね。だけれども、これは例えば私の実家がある豊田市では、物すごく細かく分別していて、金属ごみは、レアアースとか都市鉱山、そういうふうな言われ方をするんですが、そこまで分別をしているんです。

 豊田市というのは、八木先生が一番御存じですけれども、何をやっても、どうせ金持ち豊田市だからできるんだろうと言われるんですが、これはむしろ焼却炉とかいろいろなところに負担をかけない政策であります、住民に負担を強いているわけですから。豊田市の政策というのは、一概にそんな金任せの政策ばかりではないと前々から私は思っていたんです。

 一方で、東京はなぜそうか。これも大変失礼ながら、やはり移動する人たちが多いので、地域に根差したルールになかなか適応できないというか、東京にいると、何となくぽいぽいどこにでも捨てて、ずっと住んでいる方は別ですよ、ぽいぽい捨てる。(発言する者あり)そんなことないですか。失礼しました。済みません、ちょっと言葉が。申しわけありません。

 ですけれども、逆に言うと、やはり地域コミュニティーがしっかりしていなければ、そういう分別はしっかりできないということでございます。

 ですので、豊田に限らず、愛知県内はどこでも、やはりそれなりの田舎ですから、コミュニティーがしっかりしているんです。だから、コミュニティーのしっかりしている地方でこそ、この生ごみバイオマス発電というのは非常に可能性があるのではないかというふうに私は考えております。

 ちなみに、生ごみの処理の費用負担は、これも仄聞した話ばかりで確認を求めて恐縮なんですが、大体、ごみ収集車が焼却場に持っていくのが通常トン当たり一万円ぐらい。これは相場としていかがでしょうか。

梶原政府参考人 収集運搬という意味においては、収集運搬関係は、全国平均でトン当たり大体五千円ぐらいかかってございます。さらに焼却を入れますと一万円ぐらいかなとは思いますが、埋め立てを入れるともう少し高くなるのではないかと思っております。

 大変恐縮でございます。手元に今数字がないものですから、うろ覚えの数字で恐縮でございますが、そんなところではないかと思います。

重徳委員 唐突な質問で済みません。

 それでは、全然桁が違うということはないということで進めさせていただきます。

 そうすると、ごみを収集した工場で発電をする、これは今でもよくある話です。市がやっていたりします。その一方で、今議論している生ごみバイオマス発電というのは、一旦発酵させて、そのバイオガスを燃やして、それでタービンを回して発電ですから、当然、発電の方法は違うんです。しかしながら、地域住民からすれば、通常の角に、お父さんが朝出るときに持っていったり、その後、奥さんが追いかけるように持っていく、そして、それを収集運搬業者が運んで、その運び先がかわるだけだと思うんですね。

 これ以上のコストは、恐らく、行政とか市役所とかじゃなくて、参入しようとする民間事業者が負担することになるのではないかと私は思っておりますが、その違いはいかがでしょうか。生ごみ発電とバイオマス発電。

梶原政府参考人 収集運搬のところでございますけれども、こういったような廃棄物についての有効利用は、まず入り口で分けるということが、今先生がおっしゃられるように極めて重要でございますので、生活者でございます住民の方々の御協力が不可欠でございます。

 ただ、一点、ビジネスとして廃棄物の、バイオマスの有効利用をする場合は、一戸一戸の御家庭から出てくるものもぜひお願いしたいわけでございますけれども、まとめて出てくる場所もございます。例えばレストランでありますとか、食品工場でありますとか、そういったような食品廃棄物。そういったところからある程度の固まりのロットで出てまいりますので、ビジネスとしてはそういったようなことをするのがやはり成功していくのではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、収集運搬の部分につきましては、先ほども言いましたように、全国なべて、平均して五千円ぐらいかかっているところでございますので、ここの分については、市町村が収集の回数をふやすことなく他の方が持っていただけるというのは、市町村の負担の増にはなりませんので、ありがたい話にはなると思います。

重徳委員 ありがとうございます。

 それでは、参入しようとする事業者に話を移したいと思うんです。

 先ほどの話で、生ごみバイオマス発電に入ろうとする方が、例えば同じ百キロワットの容量で、初期投資は二・五億円、十トン、稼働率七〇%、こういう仮定を置いたときに、太陽光の場合は、百キロワットのときにどのぐらいの稼働率でどのぐらいの初期投資が必要でしょうか。

高原政府参考人 今、買い取り制度がございます。太陽光発電につきましては、買い取り価格は一キロワットアワー当たりで三十七・八円、買い取り期間は二十年でございます。これは二十五年度に新規参入された方でございます。

 太陽光発電につきましては、設備利用率は大体一二%と置かせていただきますと、今御下問の百キロワットというふうに想定をいたしました場合に、年間の売電収入は大体約四百万円というふうに考えるところでございます。

重徳委員 今お聞きしたのは次の答弁なんですけれども、初期投資がお幾らか、太陽光発電を百キロワットと想定したときの規模で考えると、太陽光発電、幾らぐらいの投資でできるか。

高原政府参考人 大変失礼いたしました。

 初期投資費用でございますけれども、バイオガスが百万円から六百万円ぐらい、それから太陽光が二十万円から四十万円ぐらい、これは両方ともキロワット当たりでございます。

 百キロワットの設備に換算いたしますと、バイオガスが約一億円から六億円、これは若干幅はあります。それから、太陽光ですと〇・二億円から〇・四億円、二千万円から四千万円といったようなことと想定されております。委員が言われた数字の感じと大体合っていると思います。

 以上でございます。

重徳委員 ありがとうございます。

 ですから、ごみが、ちょっと幅はありますけれども、私が聞いているある事業者によると二・五億円。

 それで、今長官が言われたことを先におさらいしますと、太陽光発電は、例えば三千万円で初期投資をしました、毎年四百万円返ってくるから、利息抜きで考えれば、大体七年から八年ぐらいで回収できるということだと思うんです。

 ごみ発電の方は、今、単価幾らで、何年で回収できる計算になりますか。

梶原政府参考人 先ほどのお話のように、百キロワットでございますと、大体、生ごみの処理量ですと、一日当たり十トンぐらいのものが必要になってまいります。そうなりますと、投資費用としては一億円から六億円程度のものになります。

 それで、今のペイバックということでございますけれども、現在、FIT法におきましては、一キロワットアワー当たり四十・九五円、買い取り期間二十年という形でさせていただいております。

 どれぐらいでペイするのかということにつきましては、ビジネスのパターンによりますが、例えば、処理料金を取って廃棄物処理業という形の側面も持っておいでの場合は、そういったような側面も持っておりますので、必ずしも一概にというわけにはいきませんが、そういったような形でコストを計算されて経営を考えておられると思います。

重徳委員 ありがとうございます。

 私もビジネスの専門家ではないので、ちょっとこれ以上わからない面もありますけれども、通常の感覚で考えて、きょうはちょっと生ごみの方に特化して考えたいので、大体、太陽光は七、八年でペイする、生ごみもそのくらいで仮にペイするとした場合にも、先ほどからこだわるようですけれども、規模感が、今の例でいうと、百キロワット、二・五億円で、収入が例えば三千万円だとした場合と、二百キロワットで、五億円に倍になるのではなくて四億円投資なんですけれども、収入が六千万円と毎年倍になる。当然ながら、大きくなければ元は取れない。

 そこで、足かせになるのがやはりアセスだなということに思いが至るわけでございまして、アセスは、立地だとか条件によっては大分差が出ますし、時間もかかります。四億円だと思っていたら、もう一年待たされて、もう一億円で五億円だ、こんなケースまであるかわかりませんけれども、参入できなくなりますよね。

 ですので、こういう話を有識者の方とすると、そんな無理に参入しない方がいいよ、原材料を提供するぐらいにしておいたらというふうに実際きのう言われたんです。私が参入しようとしているわけじゃありませんが、その人の身になれば、そういうことだというふうに言われてしまうのが現状であります。

 でも、今の日本に足りないのはチャレンジできる環境です。チャレンジできる環境ができてくれば、ある大学では、これはもうちょっと私も勉強しますけれども、バイオガス発酵スピードが三倍になる、そういう研究もあるんですよ。

 ですから、これは特区でも規制緩和でも、今度のアベノミクス三本目の矢だと思うんですけれども、五トンという基準を二十トン、三十トンまでバイオガス発電の場合は認める、こういうような規制緩和ができれば、今回の電力システム改革と相まって、非常にこれは功を奏すると思いますし、先ほど長官がお認めいただいた基準も、電力の融通、小宮山ハウス構想にもまた一段と近づくんじゃないか、このように考えます。

 これは政府参考人答弁より、このあたりは大臣にぜひ御答弁いただければと思うんですけれども、今回のアベノミクスの三本目の矢として、所管が違いますのであれですけれども、生ごみ収集の基準を五トンから大きくするというようなことが考えられないかどうかということをお尋ねしてみたいと思います。

 大臣はいつも、改革は大胆に、スケジュールは現実的にというふうにおっしゃいますが、こういうことは、やはり小規模事業者の方から見て現実的であるかどうかということが大事であって、役所が現実的かとか、電力会社にとって現実的かということではないと思うんですね。私もそんなにたくさん知りませんけれども、小規模事業者の皆さんにとっては、ある意味現実的過ぎて夢が持てない。小宮山先生ですとか、そういう社会的地位の高い方々が言えば、役所は、いや、○○先生が言うのならといって応じるんですけれども、地元の小さな規模の企業は潰していく。いわば官尊民卑の発想だと思いますけれども、こんな社会ではいけないと思います。

 ですから、大臣がいつも言われているように、日本社会の九割以上は中小事業者である。所信表明演説でも、産業の新陳代謝を積極的かつ戦略的に進めていく必要がある、国内高コスト構造を是正し、世界で企業が一番活動しやすい国を目指していきます、中小企業、小規模事業者の活力を最大限発揮する環境を整えていくことは重要です、中でも、中小企業の九割を占める小規模事業者は、地域経済の担い手として、そして最後に、電力システム改革が、戦後約六十年続いた地域独占体制を抜本的に見直す歴史的な大改革であります、ここまでお述べになっておられます。

 ぜひ本日の議論を踏まえて、まずはエネ庁の長官からの御答弁は本当に一〇〇%、一二〇%だと思いますが、環境省と今度はエネ庁との垣根を越える、あるいはさらに農水省にも関係してくると思います、森林ですとか、農村のふん尿とか、海産物とか、こういうことについて、茂木大臣、関係大臣との調整もあろうとは思いますが、ぜひともそのあたりの姿勢をお約束いただけないものでしょうか。お願いいたします。

茂木国務大臣 先日も、小規模企業の法案、この衆議院の方で可決をしていただきました。これからできるだけ小さな企業の声もしっかりと受けとめる、そして新しい事業に参入しようとする人を促進する、それを基本的に考えていきたいと思います。

 きょう初めて御提起いただきましたので、また関係省庁とも詰めてみたいと思います。

重徳委員 本当に真摯な御答弁をありがとうございました。

 本当にまた次なる改革に心から期待を申し上げたいと思いますので、私の質問、四十五分ぐらいになりましたけれども、以上で終わらせていただきます。

 まことにありがとうございました。

富田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。

 本日も、質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 時間が少し変則的になりまして、我が党の方からわがまま言いまして、申しわけございません。

 今回、電気事業法の一部を改正するということで、今までの大臣の御答弁を聞いていましたら、非常に意欲を持って、必ずこれをなし遂げるんだというお気持ちがひしひしと伝わってまいります。私ども日本維新の会といたしましても、これが我が国のため、そして国民のためになるのであれば、私たちも全力を傾けて一緒にやっていければなというふうに思っておりますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 きょうは、三問ほどお話をさせていただこうと思っております。ただ、ちょっと時間の問題もあって最後まで行くかどうか不安ではあるんですけれども、さっさとやらせていただきます。

 では、まず最初ですが、これはスマートメーターの導入についてということで、過去二回ほど私の方からも質問をさせていただいているんですけれども、実は、この法案について、衆議院の調査局経済産業調査室というところから皆さんの手元にもまとめられたものが配られているかと思うんですが、その中に書いてある問題点というのを読ませていただきまして、まさしく私がちょっと聞きたいと思っているところがもう本当にそのまま書いてあったので、ほぼそのまま読ませていただきます。

 電力システム改革の目的として、需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大するという旨が掲げられているが、今回の第一段階の改革では特に当該目的に向けた具体的な措置は見受けられず、第二、第三段階で検討すべき事項としてスマートメーターの導入を促進するための措置が掲げられているのみである。しかし、料金メニューやインセンティブの設定などにより需要家側が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させるディマンドレスポンスの実現については、電力の需給状況の改善が見込まれる将来的な措置としてよりも、なお電力需給の確保に不安が残る現在においてこそ、より有意義なものであると思われ、この普及促進を数年後の課題としてではなく、現時点で早急に取り組むべき国の施策として位置づけることが重要ではないかというふうに書いてあります。

 スマートメーター、今やろうとしているのでは、二〇二〇年代のできるだけ早いうちに全国に普及させたい、導入したいというお話だったんですが、今の内容を聞いていただいて、大臣の所見を述べていただければと思います。

茂木国務大臣 スマートメーターを初め、導入はすぐにでもしたいと思っているんです。全体のパッケージの中で大体どこまでできるか、こういったことを想定しながら改革のプランを書かせていただいているところであります。

 今回の電力システムの改革、幾つかの柱があるんですけれども、そこの中の一つは、今まで電力というと、需要は所与のもの、需要は変わらないんだ、その需要に合わせて供給を積み上げる、こういう発想だったのを変えたい、こういう思いを持っております。

 実際に、昨年も全国四カ所で実証実験を行いまして、ピーク時とオフピークで料金体系を変える、こういう実験を行いますと、例えば北九州では、ピーク時の需要が二割低下して、そして家計が支払う電気料金が三割低下する、こういう実証実験の結果も出ております。こういったことをしっかり進めていきたいと思っております。

 ただ、確かに進んでこなかったのはそうなんですよ。電力会社も、省エネ省エネといいながら、電力は商品ですから、余りそれを売らないようにするようなことはやってこなかった、こういう現実はあるのではないかなと思っております。

 経済産業省としては、電力会社に対してスマートメーターの導入加速化を促すとともに、電力各社による早期導入の環境整備として、例えば、スマートメーターの基本的要件の取りまとめや、スマートメーターの検定手数料の引き下げ、従来六百七十円だったのを半額近い三百七十円に、こういったこともやらせていただきました。

 さらには、自由化対象であるマンションに対しましては、電力会社以外の業者が一括受電して、各戸にスマートメーターを独自に設置することで、柔軟な料金メニューと組み合わせたエネルギーマネジメントをマンション単位の事業として進めることが可能となるようになっております。経産省としては、このようなマンションに対する支援策も、平成二十四年度の補正予算で百三十・五億円をとらせていただいております。

 現状までは進んでこなかった、これを一気に進めていきたい、そんなふうに思っておりますが、改革については段階を踏んでやっていきたいと思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 まさしくこの後に私が指摘させていただきたいと思う内容が一部含まれていて、それがうまくいけば明るい兆しも見えてくるのかなという感じがしております。

 ただ、今お話しいただきましたように、問題は、既存の電力会社が今まで普及の中心になってきたということがやはり大きいだろう。大臣もおっしゃられたように、電力というのは商品ですから、どんなに言っても、家庭が何とか電力量を抑えようというふうな工夫をするためのデバイスとしてスマートメーターはやはりなきゃいけない、ただ、心の中では、電力会社は、供給の仕方というのもあるんでしょうけれども、できればたくさん売りたいという発想で考えてしまうので、どうしても普及が進まない。

 今の感じでいいますと、前から研究はされていた。相当前から、下手するともう十年ぐらい前から研究されているような電力会社さんがあるんですけれども、導入に至っていないという部分では、非常に寂しい限り。そうしますと、やはり大臣がおっしゃられたように、マンションという単位よりも、日本全体で、何らかの形で政府から導入を補助できるような仕組みを考えていくべきじゃないかなというふうに思っております。

 それで、一つ問題があるかなと思っているのが、電力を扱う会社が、スマートメーター、センサリングして、その状況を電力会社に送るという形になるので、どうしても、今の電力会社もしくは新しく出てくる電力会社が、自分たちである程度規格化して、各戸につけていくというふうなことが発想されると思うんですけれども、むしろ、その他の一般の製造業企業といったところがスマートメーターの分野に入りやすくしてやるような仕組みも必要なんじゃないか。そうすれば、どんどん進んでいく可能性も私はあるかと思っているんです。

 これはなぜかというと、そうやってやると一つの産業化が期待できると思っておりまして、例えば、携帯電話なんかで今おサイフケータイとか、非接触ICのサービスがたくさんあります。あれを見ていても、一番最初に産業化していったのは何かというと、非接触ICの読み取りの機器メーカーが非常に多岐にわたってどんどん利益を出せるような形になっていって、後になってサービスがくっついてきた。

 いろいろなところでいろいろな端末が出ていて、今であると、タクシーであるとかコンビニであるとか、駅の改札もそうですし、ああいう形でいろいろなものが出てくる、それにうまくサービスがくっついていったという状況があるので、少し発想を転換してみて、そういった製造業が活躍できる場に政府として支援がもっと行き届いていくと、スマートメーターの導入はどんどん加速化するんじゃないかなというふうに一つ思っているんですけれども、その辺について御見解をいただければ。

茂木国務大臣 メーターの設置に対して支援をするか、メーターそのものをつくることに対して支援をするか、検討が必要だと思っておりますが、電力会社もメンタリティーというか考え方は変わってきていると思います。やはり三・一一、新たなエネルギー制約に直面する中で、やはりピークコントロールをきちんとしていかなくちゃいけない、こういうことを考えたときに、スマートメーターの必置、これは避けては通れない道だ、こんなふうに思っておりまして、例えば、東京電力の場合、二〇一八年までに約千七百万台、二〇二三年には全戸を対象に二千七百万台の配備を実現することを既に表明しております。

 そういった電力会社の取り組みもありますけれども、これから電力システム改革をやっていきますと、これは発電部門もそうなんですが、小売の部門にもどんどん新しい参入というのが出てまいります。そうなりますと、小売の部門でそういうことまで含めてやる業者が出てくる。私は、それも十分可能なのではないか、全体の動きを見ながら、さらなる加速策が必要だったらとっていきたいと思っています。

木下委員 非常に理解をしていただいて、ありがとうございます。

 もう一つ、スマートメーターの話なんですけれども、一番のスピードが上がらない理由は、さっきの、電力会社中心にやっているからということと、もう一つ理由として挙げられていることが、これも本当なのかなと私は思っているんですが、インターフェースの規格統一の問題があるというふうに以前にお聞かせいただきました。

 これは、皆さんはおわかりだと思いますけれども、基本的に電気というのは、どこから、誰から供給されても同じだ、同質のものだ、同質でなきゃいけないものだ、その同質でなきゃいけないものをセンサリングするということ、センサリングして、そこから得た情報を、電力会社であったり需要家の方に情報として提供していく、同質のものをセンサリングするという意味では、そんなに、大きなハードウエア的な規格統一ということに時間がかかるはずはないんじゃないかなと私は思っております。むしろそれよりも、そういったものだけしっかりしてしまって、ソフトウエアの部分で、こういうふうなことができるよというような、ソースコードみたいなものをしっかりとオープンにしてやることが私は重要なんじゃないかなと思っております。

 なぜならば、ソフトウエアの部分でこそいろいろなアイデアが出てくるんだというふうに思っております。大臣も先ほどおっしゃられていましたが、小売の業者がそういうこともやっていくんだといった場合に、一番工夫がされて、需要家、消費者が便利だなというふうに思って、この電力を買おうとか、こっちのサービスを受けようというふうな選択肢をつけていくためには何が必要かというと、ハードウエアよりもソフトウエアをオープン化して、そこの中でみんなが、いろいろな人間が頭を絞っていろいろなサービスを考え出すということが重要だと思っております。

 そういう意味では、なかなか規格が統一できないから、規格がちゃんとできないからおくれていますというのは、私は結構言いわけにしかなっていないんじゃないかと思っておりまして、まずやることは、ハードウエアでこういうふうなセンサリングをするんですよ、それから、中で、その情報はこういうものだから、あとは、ハンドリングの仕方等々については、ソフトウエア部分でいろいろなやり方をオープンにして工夫してくれというふうにやっていくのが、政府としてやっていくべきことなんじゃないかと私は思っておりますが、その点についてはいかがでしょうか。

糟谷政府参考人 まさにおっしゃいますように、スマートメーターがガラパゴス化して、お客様を囲い込む道具に使われないということが大事だと考えております。その意味で、仕様について国内外から広く意見募集を行うというようなこともやりまして、外部接続性について、国際規格化されたデータフォーマットを採用するといったようなことも進めております。

 それから、ソフトウエアを書きかえるということが改造に当たるのではないかという疑念もありました。もし改造に当たるということになりますと、また検定を受け直さなきゃいけないんじゃないか、そういう御心配もありましたので、一定の条件のもとに、ソフトウエアの書きかえが改造に当たらない、検定を受け直す必要がないということも明確にしたところであります。こういうソフト面、ハード面、両方の面でオープンな調達手続ができるようにということをさらに進めていく必要があるというふうに考えておりまして、一層取り組んでまいります。

木下委員 ぜひとも今の方向性で、うまく、いろいろな世の中の人のアイデアがちゃんと実現できるような形に進めていっていただければなと思いますので、よろしくお願いいたします。

 もう一つ、スマートメーターのお話をさせていただきます。

 私、ちょっとこのスマートメーターのお話を調べていたら、ことしの一月に関西電力さんから資料が、インターネットのページからダウンロードができるものを見つけまして、名前が「スマートメーターの原価算入について」という資料でございました。

 そこの中身をさっと見てみますと、何が書いてあるかというと、今後の三年間のスマートメーターの導入費用というのが算出されている。その導入費用が、毎年平均で百十五億円になるというふうに書いてありまして、その減価償却費であるとかシステム開発にかかわる委託費、それから通信費などの諸費を含めて、年平均で百六十一億円を原価という形で組み入れていきたいというようなことが書いてあるんですね。

 これは、総括原価方式の中で消費者にそのまま負担させる形になっていくんだと思うんですけれども、これが、試算すると、関西電力さんは毎年百二十万台から百七十万台ぐらい、向こう三年間です。その後、二〇二〇年まで、もう少し右肩上がりで普及が伸びていくというふうに考えると、この負担額は相当大きなものになるだろうというふうに考えております。

 しかも、今の時点で、三年間、計算すると、その増分の単価、一軒当たり約一万円だというふうに書いてあって、割としれっと資料が出されている。

 今、当然のことながら、原発がとまっている状態の中で、原油価格が高騰して、電気料金としては、どうしても御家庭に負担をかけなきゃいけない状況。その中にまたこういうものが入ってきたときには、その理由をもって、家庭がなかなかこれを受け入れないんじゃないかなというふうに思っております。

 その点について、一つは、先ほど私の方からもお話しさせていただいたように、政府がある程度主導的な立場に立って、補助、推進策ということを考えるべきだと思っております。その他、やはりこれはしっかり考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思っておりますので、その辺についてどう思われているかということを御答弁いただければと思います。

糟谷政府参考人 先生御指摘の、関西電力のスマートメーター、年平均百十五億円で導入したいというのは、確かに、関西電力がことしの一月十日付で電気料金の審査の専門委員会に提出された資料の中にある数字でございます。このときの単価が一台当たり一万七千円ということでありました。これを、料金の審査の過程で厳正に見直しまして、一万四千円というところまで減額査定を行ったところであります。

 ちなみに、普通の電力計、メーターも大体一台当たり六千円、電子計であれば一万円ぐらいかかります。

 関西電力のこの型式のものは、大体普通の電力計が十年ぐらいのところを二十年ぐらい使える、特にその間、ソフトウエアを入れかえたり、部分的な改修でより長い期間使える、そういう議論を外部の専門家も入ってやっていただいた結果、通常の一万円に比べると一万四千円ということで少し割高ではあるけれども、二十年ということを考えると合理的なものであろうということで、原価の中に織り込む形で認可をいたしたものでございます。

木下委員 非常に苦しいかなと。

 何を言っても、やはりそういうところで家庭に負担がかかるというのは、結構反発を食うことになるのかなと思っておりまして、そうはいいながら、政府からそういうふうなことを補助するといっても、結局は消費者の方々に税金という形で負担をかけてしまうことになるので、どっちがいいのかというお話だと思うんです。

 これは難しいところだと思うんですけれども、やはり一気に、先にスマートメーターの普及率をどんと上げていく、それによって自由化を進めていく起爆剤にするというのは、先ほど公明党の江田委員もおっしゃられていましたけれども、非常に重要なところなんだろうと思っております。

 これが全てではないとは思うんですけれども、やはりそういう形のいろいろなチョイスができる状態をつくってこそ、この電力システム改革が花開くんじゃないかというふうに思っておりますので、大臣、何とぞよろしくお願いいたします。できれば一言いただければと思います。

茂木国務大臣 考え方は二つあると思うんです。例えば、携帯電話、三十年前は弁当箱ぐらいあったんですね。それで二十万円ぐらいして、通話料だけでも私は月何十万かかっていましたよ。その当時から見ると、今は全く変わってきた。こういった世界はやはり技術進歩もあるんだと思います。

 考え方として、かなり今どうしてもコスト的に高いものを一遍に入れてしまうのか、もう少し、技術進歩の中で、簡易なもの、そしてまたシンプルなもの、低コストなものがどれくらい出てくるのか、こういうものも見ながら入れていくということも一つの考え方かなと。いずれにしても普及はさせなければいけない、こんなふうに思っています。

木下委員 ありがとうございます。

 まさしく、今の話を要約というのか意味合いをとると、私が先ほど言わせていただいたように、ハードウエア、センサリングの部分というのは比較的シンプルにつくれるだろう、ソフトウエア部分の自由度を高めてあげることによって、価格は落とせるし、技術の進歩にもついていくことができるというふうに考えていますので、そういった観点でぜひ進めていただければなと思います。

 時間が余りないので、次のお話をさせていただきます。

 電力自由化を二〇二〇年までにやっていくんだというふうにおっしゃられているんですけれども、そうなったときの電力のベストミックスというお話をお聞かせ願えればなと思います。

 詳しいことは次回に回しますけれども、二〇二〇年に自由化するんだとなったときに、そのときの理想的なベストミックス、例えば火力が何%ぐらい、水力が何%ぐらい、それから再生可能エネルギーが何%ぐらい、原子力はどうするかという部分は、今の時点でははっきりとお答えすることは難しいのかもしれませんけれども、全体的に考えたときに、大体どれぐらいの割合になっていることが理想だというふうに、大臣の感覚的なもので結構なので言っていただきたいなと思います。

茂木国務大臣 なかなか難しい質問なんですけれども、例えば、中長期的なエネルギー政策の方針となりますエネルギー基本計画、年内をめどに取りまとめるということになっておりますけれども、過去のエネルギー基本計画でも、エネルギーのミックスがどれくらいになると具体的な数字を挙げて出していることは少ないんです。余りそういったことはやっておりません。

 そして、委員御案内のとおり、ちょうど今、日本は新たなエネルギー制約に直面する中で、それぞれの数字の置き方が難しいということはあるんだと思うんですね。

 例えば、再生可能エネルギー、最大限の導入をしていきたい、こんなふうに思っておりまして、昨年の夏から固定価格買い取り制度を導入いたしました。これによりまして、大体一・五倍ぐらいにふえてきていますけれども、水力を除くと、結局、再生可能エネルギーの割合というのはまだ一%ちょっと、こういう段階であります。

 そして、これから石炭火力、私は技術的にも相当進んでいくんじゃないかなと思っていますけれども、今の例えば磯子レベルの高効率のものから、二〇二〇年代、二〇三〇年代になってきますと、最終的には蓄電池を組み合わせた相当高い技術のものが出てくるのではないかな。このコストと環境負荷の問題、こういったものもございます。

 さらには、原子力で申し上げますと、まさにこれは規制委員会において安全性を判断していただくということでありますけれども、その年限については、それも含めて規制委員会で決めることでありますが、これもある程度の年数はかかるんだと思います、どう考えても。

 さらに申し上げると、冒頭申し上げた、どれぐらい需要が落とせるか。実際には、実証実験でやりますと、ピーク時の需要を二割落とせるというものも出ておりますけれども、あくまで実証実験でありますから、これを進めたときにどれくらい落とせるか、こういったことも考えながら進めていきたい。

 電力システム改革については、二〇二〇年にやり切る、こういう思いでやっております。必ずしもこの二〇二〇年に合わせてベストミックスが決まるわけではありませんが、大体のタイミングでいいますと、その前後ぐらいになると、ある程度のベストミックスの姿が見えてくるのではないかなと思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 なぜこの話を聞くかというと、やはり、新規参入をする企業は何を考えてやるかというと、社会のニーズ、それから政府が何を考えているのかということをしっかり見きわめて、それに合った形で発電の仕方を見きわめて、一番そこにビジネスチャンスがあるだろうということで投資していくということが考えられると思っております。

 そういう意味では、非常にお答えがしづらい話なんですけれども、ある程度の指標、先ほどおっしゃられたように、ある程度、どこどこに対しては一生懸命やるべきだとか、そういうことだけでも高らかにうたっていただければ、恐らく参入する企業も、それに勇気づけられてやってくる企業も出てくるんじゃないかなと思いましたので、そういう質問をさせていただきました。

 時間になったんですけれども、実は、もう一つお話しさせていただきたかったのは、エネルギーの安全保障というお話だったんです。次回、詳しいことをお話しさせていただきたいなと思っているんです。

 これも実は、以前、大臣の方から御答弁いただいたんですけれども、例えばロシアであるとか韓国であるとか、海外から電力を輸入するとなったときにどういうふうになるのかというお話がありました。そのときにお答えいただいたのは、まだ、コスト競争力という部分では、我が国の中でやっているものも競争力はあると。託送料であるとか、それ以外の、カントリーリスク、そういった部分も含めて考えたら、まだまだ国内でやっていくということをおっしゃられていたんです。

 その後、私の方でいろいろと、輸入しようとしている会社はどういうことを考えているかということを聴取させていただいたら、比較的現実性が高いということもわかってまいりまして、発電に関する料金も安いですし、もう一つ、安全保障上の問題というのもクリアできる可能性が高いと思われるようなことも出てまいりましたので、その辺については次回詳しくお話しさせていただきます。

 ちょっと長くなりました。今回、ちょっと言いっ放しでまた終わりますが、ありがとうございました。

富田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 維新の会に与えられた時間の範囲内でお話しさせていただきたいと思いますので、通告させていただいた部分を少し、重なった部分等を特にはしょりながらお話しさせていただくことをお許しください。

 まず、先ほど木下委員よりお話がありました、ベストミックスについてお伺いしたいと思います。

 年内に新たなエネルギー基本計画をまとめられる御予定だということでございます。そこで、将来的な電源構成、つまりベストミックスを決めていくということだとお伺いしていたんですけれども、三月に行われたエネルギー調査会の総合部会では、大臣から、ベストミックスを決めることは必ずしもマンデートではない、必ずしも義務づけられたものではないという御発言があったということでございます。

 この真意につきまして、大臣の方からお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 これは、総合資源エネルギー調査会の会合に私も出席をしまして、私の方から基本的な考え方をお話しして議論をする中で、年内をめどに私としては一定の結論をまとめてほしいというお話をしたときに、委員の先生の方から、ベストミックスを決めることがマンデートですか、こういうお話をいただきましたので、必ずしもそれがマンデートということではありません、こういうことを申し上げました。

 今回、基本計画を進めるに当たっては、特に安定供給そしてコストの低減に重点を置いて、政策の軸、方向性を明確に示していただきたい、こういうお話を申し上げたところであります。

 今、新たなエネルギー制約に直面する中で、なかなか具体的にベストミックスを決めにくいというお話につきましては、木下先生の御質問にお答えしましたので、重複する部分は割愛させていただきたい、そんなふうに思っておりますが、エネルギー源によって、コスト、それからまた安定供給性、環境への負荷、それぞれ特徴は当然異なっておりまして、基本計画の検討に当たっては、できるだけそれぞれのエネルギー源ごとの特徴について明確にしていただきたい、こういうお話を申し上げました。

 決して、それぞれのエネルギーミックスについて、ここをこういう割合にしたいという議論をしてはいけないということではなくて、最終的にこういう数字で固めてくださいということが目的ではありません、こういう趣旨で申し上げました。

丸山委員 なぜこの件をお伺いしたいかといいますと、今回の電事法の改正の法律を調べていく中でも、またきょうの委員会審議の中でも、どうしても将来の、先ほどいみじくも大臣がおっしゃった軸というか方向性が見えてこないところが大きくて、特にベストミックスのお話もそうですし、将来的に我が国のエネルギー政策はどうあるのかということ自体がいまだ検討中で、果たしてこの電事法の改正の具体的な議論ができるのかなというのを、今の委員との御議論を聞いていても少しまだ疑問に思っているところなんです。

 そうしたところで本法案の議論をしなければならないという思いと、やはりその必要性に関しましては大臣の御答弁をずっと聞いていて感じるところではあるんですけれども、その政策的な整合性といいますか、方針がなかなかまだ定まり切っていない中で、まず一歩目の電事法の改正をやりたいというお考え、そのあたりの整合性について、政府の方でどのような御見解をお持ちなんでしょうか。

茂木国務大臣 野球でもサッカーでも、強いチームは、一定のホームランバッターだけがそろっていれば強いとも限らない、かといってピッチャーだけがよければいいわけでもない、さまざまな要素を持っているチームというのがあるんだと思います。その特徴を生かしていく。

 今やろうとしていることは、例えば、エネルギーの調達、生産で申し上げますと、まずは、エネルギー源を多様化していかなければいけない。極端に一つのことに頼るというのはやはり難しいんだと思います。できるだけ火力の比率は下げていく必要がある、こんなふうに思っていますし、また、コストを下げながら再生可能エネルギーをふやしていく必要がある。一方で、需要をどこまで落とせるか、それも我慢の省エネではなくてスマートな省エネがどこまでできるか、こういったことは考えていかなくちゃならない。

 そういったことを進めるためにも、送配電、真ん中にある部分の中立性を一層高める、こういうことが今必要な時期なのではないかな、私はそんなふうに考えております。

 最終的に、野球でいうと、どういうチームに仕上がるのかわかりません。しかし、言ってみると、打力も上げなきゃならない、そして守備力も上げなきゃならない、そして機動性も上げなきゃならない、そこの中で、ある程度かけて日本というチームのエネルギーの特徴というものを見出していきたい、こんなふうに思っております。

丸山委員 非常に難しいところであることは私も承知しているところですけれども、野球においても、もちろん打力も上げなければいけない、でも守備力も上げなければならないというのは国民一人一人がわかっているところでございます。しかし、やはり監督でいらっしゃる大臣ですから、監督としましては、できれば観客にも、特にチームのメンバーにはどういう方向を向くのかということを明確になるべく早い段階で示していただけると、我々としても、一国民としても、議員としても、何より経済産業委員会の委員としても議論しやすくなりますので、よろしくお願い申し上げます。

 もう一つ、私自身、旅行するのが大好きでございまして、他国の、特にアジアの国々等を回っておりますと、電力がかなり不安定な国が多うございまして、急に停電になったりするところもあって、そもそも電気が通っていなくて発電機を置いているところがあるとかという中で、我が国の電力の安定性といいますか、そういった部分は極めてやはり優秀なところがある。

 そうした中で、例えば、よく例で挙げられるんですけれども、自由化を行ったときにアメリカのカリフォルニア州で停電がよく起こるようになるとか、そういう話が出ている中で、今、日本の寡占状態、ある一定の寡占状態を保つことで実は電力の安定性が保たれているんじゃないかという議論がございます。

 そうした中で、民間でできることは民間で、なるべく競争の精神を持っていくということは非常に自由主義の中で大事なんですけれども、一方で、過当競争になるんじゃないかという危惧の声もあります。

 このあたりに関しまして、現在、政府としてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

糟谷政府参考人 日本の電力の品質、これまで非常に高いものが維持されてきたと思います。もちろん、その背景には、電力の現場で日々の役割を担われる一人一人の方の現場力それから技術力というものがあったと思います。これは引き続き大事にしながら、電力システム改革を進めていかなければいけないと思っております。

 その一方で、先ほどお話がありましたアメリカのカリフォルニアの停電でございますけれども、これはちゃんと理由があります。

 どういうことかと申し上げますと、需要が伸びて供給力が足りない中で、それにもかかわらず小売料金の凍結を行ったために必要な発電投資が行われなかった、つまり、発電投資をしても小売料金が上がらないものですから回収ができないということで、結果的に供給力が不足したという事情があります。

 これに対して、我が国においては、需要家保護のために小売料金の規制を一定期間維持することにはしておりますけれども、その間においても、上限価格を一律に規制するということではなくて、現行制度と同様、認可による値上げは可能とすることで、発電事業者にとってやむを得ないコスト上昇は価格に反映できる仕組みとするといったようなことを考えております。

 また、ニューヨーク州の停電、これも送配電事業者の間の連携不足とか、一つ一つに事情がございます。

 こういう過去のほかの国におけるいろいろな教訓を生かして、日本の電力システム改革に当たっては、詳細な設計を行い、こういう過ちを繰り返さないようにやってまいりたいというふうに考えております。

茂木国務大臣 簡単に申し上げます。

 今、アメリカの例については糟谷部長の方からお話をさせていただきましたが、これまで電力システム改革を進めているあらゆる国のケース、これにつきまして研究をさせていただきました。

 例えば、英国では、自由化と同時に料金規制を撤廃したことによりまして価格の上昇が生じました。したがいまして、この教訓として、競争が働くまで規制料金を残す、これは既存の電力会社についてでありますが、こういう制度にさせていただいております。

 また、ドイツでは、風力発電の導入拡大に対応する広域送電網の容量の不足が生じております。この教訓として、広域的な送電インフラの増強が進むような仕組み、こういうものも取り入れております。

 フランスでは、自由化後も規制料金の体系にとどまる需要家が多かった。この教訓として、需要家の自由な選択を妨げない制度とするように設計をしております。

 韓国では、供給力不足が適切に把握されなかった、このために輪番停電が起こったわけでありますが、この教訓として、複層的なチェックや適切な情報共有、こういったものが重要である。こういった海外での先進事例。

 実は、私、きのうもイギリスの電力の担当大臣とまた話をさせていただいたんですけれども、イギリスもまた、新たな電力システム改革をこれまでの経験も踏まえてやろうとしている。お互いにやはりベストプラクティスを共有しながら最もいいシステムをつくっていこう、こういう思いで取り組みをしたいと思っております。

丸山委員 ありがとうございます。しっかりやっていただきたいと思います。

 やはり電力の安定性というのは国民の関心が高い部分でもございますし、さらに、今少しお話のありました、電力料金が上がるのか下がるのか、どうなんだというところも、一番国民の中でも気になっている、すごく関心の高い部分の一つだと思います。

 そうした中で、現在、燃料価格も上昇しておりまして、電気料金も、この四月も上がりましたし、上昇傾向にございます。

 先ほどお話がありました、経済性を追求する中で発電設備への設備投資が減退した話だとか、将来的な電源不足を懸念するような声も上がっているところもある中で、果たして、今回の電力システム改革が電気料金にどのような影響を与えると政府として現時点でお考えなのか。電気料金は、価格は低下するのか高騰するのか、それはどのような理由や検証データからお考えなのか。現時点での政府の見解をお伺いできればと思います。

糟谷政府参考人 今回の電力システム改革におきましては、電気事業者間の競争の促進、また全国レベルで安い電源から順に使用すること、それからピーク需要を抑制することで発電所の投資を適正化すること、こういったことで発電コストの低減につなげ、料金を最大限抑制するということを期待しております。

 海外を見ますと、例えばドイツにおきましては、自由化後、電気料金が一旦低下し、その後上昇しましたが、この大きな要因は税でありますとか再生可能エネルギーの賦課金でありまして、こういう税とか賦課金を除きますと、自由化後の電気料金の上昇率は物価上昇率を下回っております。

 それから、アメリカにおきましても、エネルギーミックスが似ている隣接州を比べますと、自由化州の方が自由化されていない州よりも電気料金の上昇率は低く抑えられております。

 他方で、先ほど大臣からも御紹介がありましたが、イギリスの場合、参入の自由化と同時に料金規制を撤廃したために寡占化が進み、寡占化が進む中で電気料金が上昇に転じたというような事情もございます。

 すなわち、これは制度を適切にうまく仕組んでいかないといけない、設計をしていかなきゃいけないということでありまして、制度の設計、運用が適切になされれば電気料金は十分抑えられるものだというふうに考えておるところでございます。

丸山委員 国民の皆様の不安や、情報が欲しいというニーズにしっかり応えていただけるようお願い申し上げます。

 最後に、少し細かい点になりますが、お伺いしたい点がございますので、それを最後にしたいと思います。

 今回の改正法案で、電気事業法の第二十七条に、命令の下部に勧告規定を追加されているということでございますけれども、今回、どういった意味があってこの勧告規定を追加されたのか。さらに、命令がある中で、命令と勧告と、例えば節電要請もありますし、計画停電等もあると思いますけれども、そのあたりの政策的な優先順と申しますか、発動基準といいますか、そのあたりを政府としてどのようにデマケされているのかということをお伺いできればと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 電力需給の逼迫時の需要家の方々に対する電気の使用制限措置は、御案内のとおり、現行の電気事業法では罰則つきの使用制限命令しかございません。このため、一昨年でございますけれども、夏に使用制限命令を発動した場合に、需要家の方々が非常に罰則を恐れられて、使用制限命令以上の過度の節電を実施されてしまった、そういったような実態がございました。すなわち、需要家の方々に大変大きな負担が生じたということでございます。

 このため、罰則つきの命令のみならず、より緩やかな措置として、罰則のない勧告制度を創設することといたしました。需給逼迫の度合いを踏まえまして、命令そしてまた勧告を選択的に発動することによりまして、需要家の方々の負担を最小限に抑えつつ、安定供給の確保に万全を期すことを目的といたしております。

 以上でございます。

丸山委員 いずれにしましても、ことしの夏もまた電力の需給の逼迫の話が出てくる可能性もございます。やはりしっかりと政府の側が主導権を持ってリードしていただくことが何より重要だと思いますので、よろしくお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 みんなの党の井坂信彦です。

 本日は、電力自由化、電気事業法の改正案ということであります。

 震災の四カ月後に、みんなの党は電力自由化の工程表というものを発表いたしました。当時、私は、参議院の選挙に落ちて、次の衆議院の選挙に向けて浪人中でありましたが、これはいい工程表だというふうに思って、ビラに刷って、地元でたくさん配ったことを覚えています。

 当時、その電力自由化工程表というものを地元で配っておりますと、いろいろ詳しい方からも、いい案だけれども、ちょっと理想論過ぎるねということで、なかなかこれは現実化は難しいだろうと随分冷ややかに言われたことも、きのうのように思い出されます。

 それから二年たって、ようやく現実の法案審査ということで、前回の委員会で私が大臣に異次元の規制緩和が必要ではないかとお尋ねをいたしましたところ、大臣の方から、あえて電力自由化のことを答弁としてテーマに持ってこられまして、電力自由化こそが異次元の規制緩和の一つの例である、これが本当に多くの産業に直接効き目のある規制緩和なんだという答弁をいただいたところであります。

 私は、この法案は今国会中に衆参で審議を終えるべきだというふうに考えておりますし、そういう発言を続けてまいりました。国民経済のための改革に与党も野党もないというふうに思っております。中には、与野党あべこべだねというふうに言われたこともあります。普通は、野党は審議をおくらせて、与党は早く審議しましょうというのがこれまでのならわしではあったかもしれませんが、私は、法案ごとに是々非々で、これはとにかくスピードが大事だというふうに思っているわけであります。

 私自身、本日、そして来週も火、水、金と、この法案、無駄に議論をおくらせることなく、しっかりと審議をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 みんなの党のテーマは闘う改革ということになっております。スピード感ある踏み込んだ内容になるように、まず、以下数点、お尋ねをいたします。

 一点目は、法的分離の実施を困難にする新たな課題ということについてお伺いをいたします。

 事前の電力システム改革専門委員会などでも、発電部門と送電部門、どういう分け方をするのか。一番近いのは機能分離、これは例えれば同じ会社内の部門を分けるようなものです。そして、法的分離、別会社にする、でも親会社、子会社という資本関係は残す。そして、一番きっちりした分け方が所有権分離で、資本関係も断ち切って、親会社、子会社関係もなくす。こういう三段階がある中で、今回の法律では法的分離を原則とするということになっております。

 しかし一方で、法的分離の実施を困難にする新たな課題が生じた場合は機能分離を検討するという文章が附則に書き込まれているわけであります。私は、この安易な機能分離、改革の骨抜きは認めるべきではないという立場であります。

 そこで、お尋ねをいたします。

 法的分離の実施を困難にする新たな課題というのは、具体的にどのようなことを想定して、わざわざ附則に記載されたのか、お伺いをいたします。

糟谷政府参考人 お尋ねの、今回の法案の附則第十一条第二項の新たな課題でございますけれども、今後、法的分離に係る詳細な検討を行っていく上で、万が一、現時点では想定できない新たな課題に直面した場合にはという意味であります。現時点において具体的に想定しているものがあるわけではございません。

 したがって、附則の第十一条第二項に規定していることに従いまして、送配電部門の中立性を一層確保する方法について、法的分離を前提として電力システム改革を進めてまいるということでございます。

井坂委員 現時点では具体的に想定をしておらず、いわば今は想定もできないような想定外のことが起こったときのために、御丁寧に附則に書かれているということであります。

 であれば、一方の所有権分離ということについて、次はお伺いをしたいと思います。

 電力システム改革の専門委員会報告書の中でも、「中立性を実現する最もわかりやすい形態として所有権分離があり得るが、これについては改革の効果を見極め、それが不十分な場合の将来的検討課題とする。」ということが書かれております。

 私は、機能分離について、先ほどのような、現時点では想定していないけれども、全く想定外のことが起こったときのためにというぐらいのことで機能分離を附則に記述されるのであれば、同様に、この所有権分離に関しても、例えば、改革の効果が不十分な場合は所有権分離を検討すると書くべきではないかと思います。

 これについて、大臣の御答弁をお願いいたします。

茂木国務大臣 法的分離と所有権分離、正確に申し上げますと、法的分離とは、株式会社等のもとに送配電部門を子会社化することを求めるものでありますけれども、各会社及び株主の自主的な判断によって、資本関係を解消する、つまり所有権分離を選択することを妨げるものではありません。

 その上で、仮に、一気に送配電会社の所有権分離を行うとした場合、将来的課題と位置づけられた幾つかの原因はあるかと思うんですけれども、法的分離と異なりまして、一般担保社債の発行であったりとか連帯債務等の取り扱いについて、グループ一体としての資金調達を一定期間行えるような経過措置などを講じることができない。グループでなくなるわけですから、当然そういうことになります。そのため、電気の安定供給を確保するために必要な資金調達に支障が生ずるおそれがあります。このように、円滑な資金調達を確保する観点から、所有権分離ではなく、法的分離を採用することが適当であると考えたわけであります。

 同時に、現在の一般電気事業者の株主が保有する株式価値の毀損を考えた場合に、一般電気事業者やその株主が所有権分離に反対したにもかかわらずこれを行い、実際に当該株式価値の毀損が発生した場合、憲法第二十九条で保障されております財産権の侵害に当たる可能性、私はこれは否定できないと思います。

 例えば、みんなの党として、所有権分離が財産権を制限するに足る積極目的規制に当たることを裁判において果たして立証できるか、こういう検証をされた上で主張されているのかどうか、もしよろしかったらお聞かせください。

井坂委員 まず最初におっしゃった、所有権分離を現行の法律で別に禁止しているわけではない、これは当たり前の話でありまして、禁止していたら逆に大問題であるわけです。

 おっしゃるように、例えば、所有権分離を、国が最初の段階から、しかも株主が反対する中で強制して資本関係を分ける、株式価値を毀損させるということになれば、財産権の問題についていろいろ問題が出てくるということは私も理解をしております。

 ただ、私が本日申し上げておりますのは、一方で法律に、現状、想定もできないことについて機能分離もありですよというふうに書いておきながら、一方で、将来的な所有権分離については書かない、これがいかにも物足りないということなのであります。

 実際に法的分離から所有権分離に移るというのは、資本主義の普通の営みの中で当然あってしかるべき話でありますし、また一方でこの改革の委員会の中でも議論されているのに、本当に財産権の問題を、要は裁判沙汰にならないような範囲で、やはり所有権分離が分離の形としては一番すっきりしているんだということは事実であろうというふうに思うわけです。

 共同で資金の調達をするだとか、要は資本関係があるということは、やはりどこまで行っても、親会社、子会社セットで利益を、あるいは価値を最大化しようという方向に働くのは資本主義の世の中で疑うことのない事実でありますから、そういった資本関係があるよりは、ない方がより理想であるというふうに私は思っておりますので、法律の段階で、まさに機能分離に関して、そんなわずかなことに関してわざわざ書いているのであれば、なぜ所有権分離が書けないのですかということがお尋ねをした趣旨であります。

茂木国務大臣 基本的な分類として、機能分離と法的分離、さらにはその変形というか、さらに行った形としての所有権分離がある。大きく分けると二つの分類なんだと思います、三つの分類というよりも。

 そこの中で、基本は、先ほど申し上げたような理由によりまして、法的分離を行います。ただ、不測の事態があった場合にはということで書いてございます。そして、株主の意向等々によりまして、最終的に所有権分離に行くことは、この法案の中でも妨げられているわけではありません。

 ただ、先ほども申し上げましたように、では所有権分離を行います、こう書き込んだ場合に、先ほど申し上げたような形の積極目的規制に当たるということで、私は、裁判においても果たして立証責任を国としてきちんと果たし得るかというと大変疑問だと思います。そういったことからそういう書き方をしておりますが、それ自体が最終的な所有権分離を否定していることではない、このように御理解ください。

井坂委員 もう一点、改革の踏み込みということでお尋ねをしたいことがあります。それは、小売料金自由化の実施時期の見直しについてであります。

 電気の小売事業者間で適正な競争関係が確保されない場合は小売料金の全面自由化について実施時期を見直す、これまた附則に書いてあります。実際、午前中も議論があったところであります。もちろん、全く競争環境がないままに料金規制だけを撤廃すれば、まさに競争なき自由化ということで、料金を上げ放題というようなことも可能性としては考えられないわけではないわけであります。

 では、お尋ねをしたいのが、適正な競争関係が確保されていないとどの機関がどの時期に何を見て判断を下されるのか、実施時期をおくらせる場合はどのような手順で見直すのか、こういったことについて大枠のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 どのような状況になれば規制料金を解除するかについては、今後詳細な検討をしていくことになると思いますが、例えば、規制料金ではなくて自由料金を選択している需要家の割合がどれくらいになるか、また、供給者を切りかえた比率がどれくらいになるか、さらには既存の電力会社の供給区域外への供給量、こういったものも一つの要素になり得ると考えておりまして、小売業への参入の全面自由化を行う第二段階の法案を提出する際に、より具体的な基準をお示しできるように検討したいと考えております。

 この第二段階の法案を提出するのは経済産業省であります。そして、料金規制の撤廃の判断につきましては、その段階で新たな規制組織が行うかどうかも含めて検討してまいりたいと考えております。

井坂委員 この附則に関しても、実施時期の見直し、要はおくらせるという話でありますけれども、私は、やはり同時に、もう既に現実的と大臣がおっしゃるスケジュールでそもそも提出の時期それから実施のめどということが附則に書かれている中で、むしろ、小売事業者間でこの期間までに適正な競争関係を何としてもつくっていく、そういうプラスの方の附則も必要ではないかというふうに考えるところであります。

 引き続きまして、今度は原発の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 この附則の中で、午前中も議論がありましたが、原子力政策を初めとするエネルギー政策の変更などのエネルギー情勢の変化に伴い、競争条件が著しく悪化した事業者の競争条件を改善するための措置ということが書かれてあります。

 午前中の答弁でも、政策変更により原発の投資回収ができない場合などが対象である、ただ、どう改善していくのかは今後の検討だというようなやりとりがあったわけでありますが、要はこの話というのは、つまるところ、原発を抱える大手電力を競争条件で優遇あるいは救済する話ではないかと思います。

 この競争条件の改善ということについて、具体的にどのような方向性で考えておられるのか、お伺いをいたします。

平大臣政務官 お答え申し上げます。

 もうほとんど今委員がおっしゃったとおりで、午前と午後で答弁の内容が変わることはありません。

 御指摘のとおり、本法案の附則第十一条の第五項第七号において、原子力政策を初めとするエネルギー政策の変更その他のエネルギーをめぐる諸情勢の著しい変化に伴って、特定の小売事業者や発電事業者の競争条件が著しく悪化をした場合においては、これらの事業者の競争条件を改善するための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨を規定している。

 この規定の趣旨は、過去に多額の発電投資を行った、しかしながら政策の変更によって回収不能になった、その際、当然のことながら競争条件が著しく悪化いたしますので、これを緩和するため、別途その必要性や内容を検討した上で、必要な政策的な措置を講じるというものであります。

井坂委員 原子力政策が結局どうなるかによって、要は既存の大手電力会社の競争条件がどうなるかが今後大きく変わる可能性があるということであります。

 今回の電力自由化、電力システムの改革を行うに当たって、やはり避けて通れないのが、原子力政策をどうしていくのか。ここが決まらないので、結局こういう条文を入れざるを得ない、競争条件が悪くなるのかどうかわからない、悪くなったときのために入れる、でも、競争条件の改善というのを具体的にどうするのかというのは、そのときにならないとなかなか決まらないというような状況ではないかと思うわけです。

 そこで、原子力政策ということで、ちょっとけさのことなので午前中に追加で通告となってしまったことを御了解いただきたいのですが、けさの朝日新聞についてお伺いをいたします。

 一面に、「成長戦略に「原発活用」」、「再稼働の推進明記」、「原発依存社会を継続」と大きな見出しが躍っております。本文で、「安倍政権が六月にまとめる成長戦略の素案に「原発の活用」を盛り込み、原発再稼働に向けて「政府一丸となって最大限取り組む」と約束することがわかった。」という記事であります。

 一方で、半年前の自民党公約には、「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指します。」というふうにあるわけです。

 私から見れば、原発を積極的に活用する経済成長戦略というものにもしなるのであれば、これは原子力に依存しない経済構造という公約に真っ向から反するのではないかなというふうに思うわけであります。

 大臣に、成長戦略に原発の活用ということを盛り込むことについて、所見をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 毎日、新聞を見ていると、私も驚くことが非常にございます。いろいろ、誰がいつどこで決めたんだろうという記事がよく出ているんですけれども。

 成長戦略について申し上げますと、現在、六月のサミット前の取りまとめに向けて検討を加速しているところでありまして、まさに項目立て等々も進めておりますが、詳細はこれから詰めていくということになります。もちろん、エネルギーは活発な産業活動や豊かな国民生活の生命線でありまして、エネルギー制約克服とコスト低減にしっかりと取り組む、こういったことは重要でありまして、エネルギーの分野が一つの大きな柱になってくるということは間違いないと思っております。

 我々は、政権公約の中でも、これから三年間かけて再生可能エネルギーそして省エネルギーの最大限の導入を行っていく。電力システム改革もその一環でもあります。同時に、これから、再生可能エネルギー、こういったものが拡大していくということになりますと、太陽光、風力初め、どうしてもエネルギー源としての安定性に欠けるわけでありまして、蓄電池等々を活用することによってこれらの安定性を高めていくということが重要になってくると思います。

 恐らくコスト面の課題というのが大きくなってくるのではないかなと思っておりまして、今、キロワットアワー当たり、揚水発電でありますと二万三千円のものが、蓄電池で四万円ということですから、これをできるだけ早く揚水のレベルに下げていくということであります。

 そして、蓄電池の市場、これからかなり大きくなっていきます。今、小型のパソコン等々で使っておりまして、世界市場は大体一兆円でありますけれども、これから、御案内のとおり、一つは電力系統に使います、そしてもう一つは電気自動車、こういった分野を中心にして、恐らく二〇二〇年には市場が二十兆円になっていく。ここの中で、日本の技術、世界最高レベルにあるわけでありまして、世界シェアの半分ぐらいをとっていきたい、こんなことも考えております。

 これは一例でありますが、さまざまなエネルギーの分野について、これから、エネルギー制約を克服する、その克服をする中で、日本の技術の強さ、こういったものも磨いていければというふうに思っています。

 一九七〇年代、日本は二度のオイルショックを経験いたしました。これを克服する中で、日本の省エネの技術、そしてまた省エネの製品、世界に冠たるものができてきたわけでありまして、同じように、今回、新たなエネルギー制約を克服する中で、新たな技術、新たな市場、新たな事業というものを見出していきたいと考えております。

井坂委員 今、大臣から、主に自然エネルギー、それから蓄電ということについて大変熱い思いを伺ったわけでありますが、けさの新聞の記事の当否、あるいは先走りだったのかどうかは別にいたしまして、ちょっと再度同じことをお尋ねいたします。

 成長戦略に原発の活用を盛り込むということについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 成長戦略の策定につきましては、六月のサミット前には取りまとめを行っていきたい。ここの部分につきまして、今まだ、そういった取りまとめの段階ですから、つまびらかにすることはできない部分もございます。

 ただ、例えば、これから日本として、国際展開戦略の中で、一つは新興国戦略、こういったものを伸ばしていきたい、同時にインフラの輸出、こういったことも進めていきたい、さらにはクール・ジャパンの展開、こういったことも行っていきたいと思っております。

井坂委員 原発について、もう一つお尋ねを本日はいたします。福島第一原発の再稼働についてであります。

 大事故があった福島第一原発を再稼働かと耳を疑うのが普通の感覚ではないかと思うわけでありますが、しかし、現に一般利用者が負担する電気代の原価には福島第一原発の五号機と六号機の減価償却費が含まれており、電気代値上げの際に政府もそれを認めておられるわけであります。

 この理由として当時の料金算定の委員会が挙げておりますのが、福島第一原発の五号機と六号機は設備として健全である、そして東電も廃炉にするとは言っていない、当分は震災後の対応で再稼働できないが、未来永劫再稼働できないかどうかという判断はできないのでという理由で、政府が再稼働の可能性ありといわば判断したような形になっているわけであります。

 一方、現実はどうかといいますと、福島民報社の昨年十二月の県民意識調査では、県内にある原発は全て廃炉にすべきとの回答が七五・四%だったり、あるいは、県議会初めほぼ全ての市町村で、県内の原発を全て廃炉にすべきという意見書や決議が出されているような状況です。

 五年経過しても放射能の数値が高くて帰れないだろうという帰還困難区域が、先日、七市町村、二万五千人の広範囲にわたって改めて設定されたところでもあります。

 そこで、お尋ねをいたします。

 こういう状況であっても、原子力規制委員会が許可をして、そして地元の民意がゴーサインを出して、さらには放射能という物理的な面でもちゃんとそこで普通に通常操業ができるような状況になって、福島第一原発五号機、六号機が再稼働する可能性はあると大臣は本当にお考えなのかどうか、お伺いをしたいと思います。

茂木国務大臣 時々お答えしにくい質問を受けることがあるんですけれども、例えば原発事故の収束宣言を撤回しなさいと言われたりするんですが、前政権においてあの収束宣言はなされたものでありまして、言っていただくのでしたら、野田前総理に言っていただいた方がいいなと思ったりするときもあるんです。

 今回の東電の値上げ申請の認可につきましても、御案内のとおり、前政権において行われたものでありまして、福島第一原発の五号、六号機の料金原価算入に当たって電気料金審査専門委員会がどういう意見を言ったかということについてお答えしろということでしたらお答えしますし、それは結構なので、この五号機、六号機をどう考えるかということだけでいいということでしたら、後半の部分だけを……(井坂委員「後段の部分でお願いします」と呼ぶ)はい。

 原発の再稼働につきましては、法律的には改正原子炉等規制法に基づき、原子力規制委員会において原発の安全性の確認が行われることになっております。その前に、当然、安全性の確認について、それぞれの炉の設置者が、この安全性の確認をしてほしい、こういう申請を行い、その上で規制委員会の方で安全性の確認をする、そして規制委員会により安全性が確認されれば、事業者みずからの判断によって再稼働が可能となる、こういう法律上の仕組みとなっております。

 ただし、現実には、立地自治体等関係者の再稼働に向けた御理解、これは必要なんだと思っております。

 この点において、福島の原発について、原子炉設置者であります東京電力において、福島県であったり立地市町村も含めた地元の皆様のさまざまな要望、意見などを総合的に勘案しながら判断を行っていくべきものと考えております。

 ただ、現在の福島県の皆様の心情を考えると、他の原発と同列に考えることは難しいのではないかなと思っております。

井坂委員 事ほどさように、やはり原発の問題というのは、電力の自由化、システム改革を考える際に本当に大枠でしっかり方向性を決めてからでないと、今後制度設計を進める際にも、では、毀損部分はどうするのかとか、その回復手段はどうするのか、いろいろな問題が出てくる。この点について、本日は申し上げておきたいというふうに思います。

 ちょっと残りの時間が限られてまいりましたので、幾つか飛ばしてまいります。

 今後の詳細の制度設計についてお伺いをいたします。

 今後の詳細の制度設計は有識者の会議に委ねるというふうに伺っているところであります。ここで制度の中立性を確保するためにも、私は、この有識者会議と呼ばれるところに電気事業者が入ることについて、若干慎重に検討した方がよいのではないかと考えている立場であります。

 いわゆる現状の電気事業者、大手と、自由化したにもかかわらずこれまで参入が難しかった新規の電力会社、やはりいろいろな細かいルールについて参入障壁があったというふうに私は見ております。今後の詳細の制度設計、その有識者会議に、電気事業者はせめてオブザーバー参加にとどめるべきではないかと考えますが、御見解をお伺いいたします。

平大臣政務官 今の御質問にお答えをしたいと思います。

 広域的運営推進機関や小売の全面自由化などの論点については、委員指摘のとおり、今後、その詳細な制度設計を行っていくということでございます。

 電力システムにかかわる詳細制度設計という誤りが許されない検討を行っていく以上、検討に際しては、電気事業者の方々を含めた現場の声やさまざまな関係者の声を聞くことが必要であると思っております。

 他方、検討そのものの中立性、効率性、透明性も同時に確保する必要があるため、電気事業者を審議の場に入れるか否かについては、それらのことも踏まえて総合的に判断をしていきたい、そのように考えております。

井坂委員 大臣、あと三分だけ、よろしくお願いします。

 最後の質問であります。

 この新規参入を妨げるハードルをいかに下げるかということで、現状は、発電側と電気を使う側、需要側の需要に発電量もきちんと合わせていく追従方式という形で発電を行っているわけでありますが、同時に、新規の電力会社がそれをやる場合には、とにかく使う側に合わせて、ちょっとでもずれたら、多くつくり過ぎた場合には、余った電気はただで召し上げられて、少な過ぎた場合にはペナルティーとして物すごく高い電気を、不足分を買わされる、こういう仕組みになっておろうかと思います。

 三十分同時同量制と呼ばれておりますが、三十分同時同量制だけが悪いのではなくて、同時同量を求めるに加えて、大変、不平等条約とも言えるような、余ったらただで持っていかれて、足りなかったら高く買わされる。こういうあたりは何も、追従方式から計画値方式に変える第二段階を待たずに、現状でもすぐできるのではないかと思うわけです。そして、新規参入のハードルを一つ下げることに直結するのではないかと思います。

 この点について、最後に大臣にお伺いをして、終わりにしたいと思います。

茂木国務大臣 今般の電力システム改革におきましては、三年後をめどに、三十分計画値同時同量制度、こういうものを導入する。発電側は発電側で、これだけ出しますといった量を出す、そして売る方は、これだけ売りますといったら売る、こういう制度に移行していくということであります。

 委員の御指摘につきましては、本年二月に取りまとめられた電力システム改革専門委員会の報告書におきましても、計画値同時同量制度がスタートするまでの間、当面の措置として、同時同量制度について新制度を視野に入れた改善を可能なものから順次措置していくことも検討する必要があるとされているところでありまして、政府としても、この方向に沿って、今後見直しをしてまいりたいと考えております。

井坂委員 来週は、競争性をいかに高めていくかということについて質疑をさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 電気事業法改正案の審議に当たりまして、日本の電力供給の三分の一を担い、福島原発事故を起こしました東電のあり方が問われているわけであります。きょうは、その東電改革について質問をいたします。

 原発事故被害者への財物賠償が三月から始まりましたが、賠償額が低いなど、被害者から厳しい批判の声が上がっております。この財物賠償基準がどのような経緯でつくられたのかを確認したいと思います。

 最初に、文部科学省にお尋ねをいたします。

 原子力損害賠償紛争審査会が、中間指針第二次追補で財物価値の喪失または減少等の賠償基準を示したのが昨年三月十六日の第二十六回の会合です。その次の会合というのはいつになっているでしょうか。

鬼澤政府参考人 お答えいたします。

 原子力損害賠償紛争審査会の開催状況についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のとおり、平成二十四年の三月十六日に開催され、中間指針の第二次追補が決定されました第二十六回審査会の次の第二十七回審査会は、平成二十四年の八月三日に開催されてございます。

塩川委員 間が大きくあいております。

 資料をお配りいたしました。一枚目にありますように、左側が原子力損害賠償紛争審査会の会合の経緯ですけれども、二〇一二年の三月十六日に第二十六回の会合がありまして、中間指針第二次追補としての取りまとめ、その後、八月三日に第二十七回となっています。

 その間に賠償基準について議論していたのが、お隣の枠にあります原子力損害賠償円滑化会議であります。経産省が主導しておる会議であります。

 経産省、エネ庁の方にお尋ねします。

 昨年七月二十四日に東電が財物賠償の基準を示しましたが、この東電の財物賠償の基準というのはエネ庁が一緒につくったものだと思いますが、その点いかがですか。

高原政府参考人 経済産業省では、土地建物を含む財物の賠償基準につきまして、被害を受けられた自治体あるいは住民の方々の御意見や実情を伺いながら、それを東京電力の賠償基準に反映すべく、関係市町村などとの協議会を開催いたしました。協議会の開催の頻度につきましては、ここにお示しのとおりでございます。

 この協議を通じてできました建物の賠償基準等につきまして、例えば、公共用地の収用時と同程度の長期の耐用年数の設定でございますとか、築年数が相当程度経過した固定資産税評価額が低い建物につきまして、建築統計における福島県の直近の平均建築単価を用いることができるようにするなどといった工夫を行ったところでございます。

 これを踏まえまして、東京電力が昨年の七月二十四日に賠償基準を公表いたしました。さらに、基準公表後も、ことしの三月末まで、その詳細につきまして継続的に協議を重ねまして、幾つかの、御要望を踏まえた、可能な限りの改善を行っているというところでございます。

 以上でございます。

塩川委員 一緒になってつくった、地方の声も聞きながら東電の賠償基準に反映したということですけれども、年表のところにありますように、円滑化会議の第五回が四月の二十三日となっています。その会合の中でも、東電からの賠償基準の考え方が出されています。

 それについて議論する際に、エネ庁の担当者の発言が議事録にも紹介してありましたけれども、そこでは、それでは東京電力から説明をお願いしたいと思いますが、あらかじめ申し上げますと、東電の方から説明をいただく案は、私どもが各市町村を回った上で、できるだけその範囲で、問題点を尽くしたいといいますか、問題点の解決に資するようにということで、一緒に相談しながらつくったものということをまずあらかじめお断りしておきたいと思いますということで、いわば東電の財物賠償基準はエネ庁と一緒につくったということの経緯がここでも示されております。

 そういう点では、本来、紛争審査会の賠償指針に対して、実際には、この審査会のやりとりというのが蚊帳の外に置かれて、エネ庁と東電の方で取りまとめられたということがこの中でも見てとれるわけであります。

 こういった東電の財物賠償の基準について、固定資産税評価額などをもとに住宅の価値減少などを支払うこれまでの賠償では、住宅が損傷しているために帰還を断念して、別な場所に住宅を再建する費用と支払われる賠償額の差額が大きく、被災者や県市町村などからは、十分な救済とは言えないとして指針見直しを求める声が強く出ているところであります。

 大臣にお尋ねします。

 東電の財物賠償基準に対して、被害者の方からは、これでは家が建てられないという批判の声が上がっております。東電と一緒に財物賠償基準をつくった経産省の責任は大変重いと思うんですが、この点についてどのように受けとめておられますか。

茂木国務大臣 議事録のつくり方も工夫をしなければいけないというか、発言の仕方についても、単に東電任せにするわけではなくて、経済産業省としても責任を持って、東電を指導しながら賠償を加速していきたい、進めていきたい、こういうことが正しく表現できているかどうか、こういうことがまず大前提としてあると私は思っております。

 その上で、本年三月末に、東京電力によって、宅地や建物といった財物賠償の請求手続が開始されたところでありますけれども、その賠償基準については被害者の方々から、生活再建に不十分、こういう指摘もある、このように伺っております。

 今般の財物の賠償基準策定に当たっては、賠償金が被害者の方々の今後の生活再建に資するものとなるよう、国としても関係自治体とも密接に協議を重ねてきたところであります。

 特に、宅地の賠償につきましては、被害者の方に迅速な賠償を行うため、適正な取引価格とされている公示価格をもとに支払うこととしております。また、建物の賠償については、中間指針第二次追補では、同等の建物を取得できるような価格とすることに配慮する等、個別具体的な事情に応じて合理的に評価するものとされているものであります。これに従って、東京電力が実際に建物の賠償額を算定する際には、事故発生前の価値からの損失分を賠償する損害賠償の中で、できる限りの工夫を行っているところであります。

 ただ、難しいのは、個々人の方によって、同等の建物を取得できるような価格とするということに対してどう考えるかということは、それぞれあるんだと私は思います。また、どこに建てるかによっても同等の建物というのも変わってくる、こういったこともあるんだと思っておりまして、現在の賠償基準がこうした被害者の方々の実態を踏まえたものであるか改めて検討を行い、追加的な措置が必要であれば東京電力の賠償基準に反映させるなど、経済産業省としても対応してまいりたいと考えております。

塩川委員 被害者の実情を反映していないという厳しい声がある。そういう経緯がこの間あったわけで、今後においてしっかりと対応を求めるということを改めて要請するものですが、経緯とすれば、やはり東電の賠償基準に対して、エネ庁が一緒になってつくったということについて、やはり被害者の皆さん、あるいは避難している自治体の皆さんからも厳しい声が上がっているわけであります。

 例えば日弁連の意見書などでも、そもそも加害者である東京電力が賠償基準を定めるべきではない、こういう指摘もあるわけで、これに手をかしてきた、原発推進の責任が問われる経産省についても同様の指摘もあるわけであります。

 この間、朝日新聞の連載でも、浪江町の馬場有町長の話が紹介されておりました。東電とエネ庁の対応を批判して、まるで二人組の詐欺に遭ったようだということが報道として取り上げられておりました。東電が被災者の声を聞いてくれないと思っていたところにエネ庁が出てきた、救いの神だと思ったら住民の期待に真っ向から反する提案をしてきた、エネ庁に何を言っても賠償にはちっとも反映されません。

 こういう声があるということをやはりしっかりと受けとめていくことが必要だ。つまり、信用されていないということが今厳しく問われているわけであります。そういう点でも、財物賠償を含め、被害の全面賠償や生活再建にこそ全力を挙げるべきであります。

 そういう点で、この賠償の問題についても、原賠機構法に基づくスキームのあり方も問われてまいります。東電の特別事業計画があります。政府による資金援助や原発再稼働が織り込まれている特別事業計画です。

 経産省にお尋ねしますが、この原賠機構による東電への国の資金面の支援策というのはどのようになっているんでしょうか。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十三年の八月に成立をいたしました原子力損害賠償支援機構法に基づきまして、政府は原子力損害賠償支援機構、機構と言わせていただきますけれども、これまで総額で五兆円の交付国債を交付いたしております。また、本年度当初予算の予算総則におきまして、四兆円の政府保証枠を設定いたしております。

塩川委員 交付国債五兆円、政府保証枠四兆円ということで御答弁がありました。

 資料の二枚目に、「原子力損害賠償支援機構による賠償支援の実績」ということで、スキーム図が載っております。ここにあるとおりであります。

 しかしながら、二〇一二年の十一月七日に東京電力が「再生への経営方針」を出しておりますが、そこにおいては、交付国債五兆円では足りないということを言っている。東電はこの賠償に関してどのぐらいかかるとこのときに言っているんでしょうか。確認します。

高原政府参考人 ただいま委員が御指摘の、昨年の十一月七日でございますけれども、東京電力が発表いたしました「再生への経営方針」の中で、「被害者への賠償と高線量地域の除染費用を合計すると、原子力損害賠償支援機構法の仕組みによる交付国債の発行額五兆円を突破する可能性がある。さらに、低線量地域も含めた除染、中間貯蔵費用などについて、同程度の規模の費用が、今後、追加で必要となるとの見方もある。」と記載されておることは承知いたしております。

 これまで機構は、東京電力に対しまして約三・一兆円の資金交付の決定を行っております。五兆円の交付国債枠までには、なお一・九兆円の枠が残っているところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、東京電力が賠償などを適切に実施していけるように、政府としても適切な対応を検討していくことが必要であると考えております。

 以上でございます。

塩川委員 今読み上げていただいたところは、資料の三枚目でアンダーラインを引いたところでもあります。

 現行の交付国債五兆円に加えてさらに同規模ということですから、合計すると十兆円規模という話になってくるだろう。その下に、アンダーラインで、「一企業のみの努力では到底対応しきれない規模となる可能性が高い。」ということを述べているわけであります。

 次に、原発の再稼働の問題なんですが、特別事業計画でも、原発の再稼働の位置づけも書かれております。昨年の東電の電気料金の値上げ認可申請の際に、原発の稼働日を想定しておるわけですが、既にこの想定どおりいかなくなっている現状があると思うんです。その点を確認したいと思います。

高原政府参考人 総合特別事業計画におきまして、柏崎刈羽原子力発電所につきまして、今後、安全、安心を確保しつつ、地元の御理解をいただくことが大前提とされております。その上で、二〇一三年四月から順次再稼働すると仮定されております。

 以上でございます。

塩川委員 資料の四枚目に電気料金の値上げ認可申請会社の原子力発電所稼働織り込み状況の一覧を載せておきました。東京電力のところ、柏崎刈羽について、一号機が四月八日、七号機が五月十七日となっておりますが、この稼働の想定日自身がもう既に過ぎているということがこの表でも見ていただけると思います。

 原子力規制庁も、この運転再開に向けた安全審査については六カ月程度かかるとの見通しを示しているということを見ても、予定どおりにいかないだろうということが言えると思いますし、何よりも立地自治体の厳しい声があるわけであります。

 経産省にお尋ねします。

 この東電の特別事業計画そのものがもう行き詰まっている、破綻しているという現状にあると思うんですが、その点はいかがですか。

茂木国務大臣 電気料金の値上げの申請につきましては、単に原発の再稼働だけではなくて、それぞれ、最大限の経営コストの削減努力、それは燃料調達費の引き下げであったりさまざまなものを行っていく、その総合的な中で判断されるべきものだと私は思っておりまして、いつも先生と意見が合わないのは、私は、電力料金はできるだけ安くした方がいいと思うんですね。先生は何か、これを見ると、電力料金は高くなってもしようがないんだ、こういうことをいつもおっしゃるように聞こえるんですけれども、そういった総合的な努力の中でやっていくものだ、そのように考えております。

塩川委員 そういうふうに聞こえるならそら耳だと思いますけれども、後でまた御質問いたします。

 この特別事業計画について、実際にはもうそのとおりいかないという現状があるのは明らかであります。東電自身もそのことを認めているからこそ、資料の三枚目で紹介しました、昨年十一月七日の「再生への経営方針」でも述べているところで、この後段のところに、アンダーラインを引いたところですが、「ダイナミックな民間企業に早期に復帰する」、そのために「現行の賠償機構法の枠組みによる対応可能額を上回る巨額の財務リスクや廃炉費用の扱いについて、国による新たな支援の枠組みを早急に検討することを要請する。」ということですから、交付国債五兆円じゃもう足りません、何とかしてくださいというふうに、泣きついているというか開き直っているというか、私は思いますけれども、こういう現状にあるわけであります。

 そこで、ことしの四月の二十六日に、東電の経営陣が安倍総理を訪れました。その懇談の際には茂木大臣も同席をされていたと承知しております。その際に総理が、報道では、国が一歩前に出るという言い方をしておられましたけれども、これは何をやるということを表明されたということなんでしょうか。

茂木国務大臣 総理が、国が一歩前に出る、こういうことを下河辺会長を初め東電の社外役員の皆さんに申し上げたわけでありますが、福島の一日も早い復興のためには、事業者任せにするのではなくて、賠償、廃炉、生活再建、こういった問題について、国もやれる分野についてはしっかり前に出て果たすべき責任を果たしていく、こういう趣旨で発言されたと理解をいたしております。

 例えば廃炉の問題について申し上げますと、国としても、廃炉に関する研究施設の整備等で、平成二十四年度の補正予算において八百五十億円を措置しております。また、二十五年度予算でも、遠隔操作ロボット開発等の研究開発のために八十七億円の措置を計上しております。

 それから、廃炉を進める上でも、汚染水の問題、そして地下水の流入の問題は大変大きな問題でありまして、昨日、汚染水処理対策委員会におきまして、地下水流入抑制策についての取りまとめが行われまして、それを受けて、私から東電の広瀬社長に対しまして、凍土方式による陸側遮水壁の早期建設、運用、そして、タンクの十分な確保に関し、緊張感とスピード感を持った取り組みを指示いたしたところであります。

 この面におきましても、特に、遮水壁の建設のフィージビリティースタディーから入るわけでありまして、こういった研究につきましても国が支援をしてまいりたいと考えております。

塩川委員 東電が要請、要望しているような、交付国債が足りないよと言っているわけですから、そういう資金面での支援をさらに考えるのか。

 あるいは、原発の再稼働などについても、地元について、国として前面に立って万全な取り組みを進めていくということが求められる、国として地元をぜひ説得してくれというのが東電の特別事業計画にも書いてあるわけです。

 そういう点でも、さらなる資金面の支援、また、原発の再稼働について、地元に対しての働きかけを行っていく、こういうのを受けとめていくというのが、この国が前に出るという中に含まれているということですか。

茂木国務大臣 原発の再稼働につきましては、その安全性は規制委員会において判断をすることになっております。規制委員会において安全であると判断された原発について、地元、立地自治体等関係者に対する説明等で国がさらなる役割を果たしていかなければいけない、このように考えております。

 同時に、福島の復興、これには福島第一原発の廃炉といった問題が欠かせません。この中で国がやり得る役割、これをきちんと果たしていきたい、このように考えております。

塩川委員 柏崎刈羽原発が立地する新潟県は、事故原因が未解明であることや集中立地の問題点などを指摘もし、知事が事故の検証が先だと言っている。そういう点でも、再稼働を認めるものではないということがあります。

 そういった状況の中で、問題の根本には、国の責任を曖昧にしたままに、東電は潰さない、国費で支える、あるいは原発再稼働とか電気料金の値上げで原資を賄うというこの機構のスキームにこそ問題があるわけです。それこそ見直す必要がある。

 ですから、賠償ですとか除染とか生活再建、廃炉の費用について、電気料金の値上げとか、あるいは税金投入とか原発の再稼働で賄うのではなくて、原賠機構法の附則第六条二項には、東電の株主その他の利害関係者の負担のあり方を含め、国民負担を最小化する観点から、必要な措置を講ずるものとするとあります。

 つまり、電気料金の値上げとかじゃなくて、東電の経営責任、株主責任、そしてメガバンクの貸し手責任、これをしっかり問う、これこそ必要なんじゃないですか。

茂木国務大臣 恐らく、機構がなかったら賠償はさらにおくれることになると思います。我々は、被災者の皆さんに対する賠償を速やかに適切に行っていく、そのために万全の対策をとっていきたい、そんなふうに思っております。

 その上で、メガバンク等々の対応でありますが、原賠機構法の附則の第三条の第二項において、この法律の施行前に生じた原子力損害に関し資金援助を機構に申し込む原子力事業者は、当該原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施のため、当該原子力事業者の株主その他の利害関係者に対し、必要な協力を求めなければならない、このようにされております。

 これを踏まえ、東京電力の総合特別事業計画では、金融機関に対して、与信の維持や約一兆円の追加与信を行うことを要請し、金融機関もこれに応じてきている、このように承知をしております。

 東京電力をめぐる現在のさまざまな状況を考えますと、通常であれば民間の金融機関が融資に応じることは困難な面もある、そういう状況である中で、こうした対応をとることで、金融機関はステークホルダーとしての一定の責任は果たしている、このように考えております。

塩川委員 責任を果たすというのであれば、例えばJALの際にも、八割、金融機関が債権放棄をするということもあるわけで、東電のこの件について言えば、金融機関は、債権放棄どころか、社債とか借入金に対して利息をもらっているわけですよ。それが、あの事故以降だけでも、合計すると二千三百五十五億円も受け取っているわけで、そのほとんどがメガバンクであるわけです。

 結局、東電に金を貸しているメガバンクは債権放棄もしないで利息を受け取り続ける、被害者の皆さんはまともな賠償もされず家も建てられない。これはおかしいと、メガバンクに債権放棄を求めるということで、機構法の見直しそのものを行って、利害関係者に対する負担を求める東電改革が電力システム改革の出発点であるべきだということを申し上げて、質問を終わります。

富田委員長 次回は、来る六月四日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十六分散会


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