衆議院

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第4号 平成25年11月8日(金曜日)

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平成二十五年十一月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 宮下 一郎君 理事 山際大志郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 田嶋  要君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      越智 隆雄君    大西 英男君

      大見  正君    勝俣 孝明君

      佐々木 紀君    清水 誠一君

      白石  徹君    菅原 一秀君

      田中 良生君    武村 展英君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      根本 幸典君    福田 達夫君

      細田 健一君    牧島かれん君

      宮崎 謙介君    宮崎 政久君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      枝野 幸男君    小川 淳也君

      岸本 周平君    近藤 洋介君

      辻元 清美君    伊東 信久君

      木下 智彦君    丸山 穂高君

      國重  徹君    青柳陽一郎君

      三谷 英弘君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   経済産業副大臣      松島みどり君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   厚生労働大臣政務官    赤石 清美君

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      飯塚  厚君

   政府参考人

   (内閣府地域活性化推進室室長代理)        富屋誠一郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 平嶋 彰英君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 昌稔君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           宮野 甚一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西山 圭太君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           後藤  収君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          菅原 郁郎君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            松永  明君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  根本 幸典君     牧島かれん君

  細田 健一君     大西 英男君

  宮崎 謙介君     清水 誠一君

  宮崎 政久君     岩田 和親君

  辻元 清美君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     宮崎 政久君

  大西 英男君     細田 健一君

  清水 誠一君     宮崎 謙介君

  牧島かれん君     根本 幸典君

  小川 淳也君     辻元 清美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 産業競争力強化法案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、産業競争力強化法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長飯塚厚君、内閣府地域活性化推進室室長代理富屋誠一郎君、総務省大臣官房審議官平嶋彰英君、厚生労働省大臣官房審議官成田昌稔君、厚生労働省職業安定局次長宮野甚一君、経済産業省大臣官房審議官西山圭太君、経済産業省大臣官房審議官後藤収君、経済産業省経済産業政策局長菅原郁郎君、中小企業庁長官北川慎介君及び中小企業庁事業環境部長松永明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田美樹君。

山田(美)委員 自由民主党東京一区選出の山田美樹でございます。

 アベノミクス第三の矢、経済成長戦略のかなめである産業競争力強化法案について質問のお時間をいただき、心より御礼申し上げます。

 昨年末に発足した安倍政権のもと、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体として進めてきた結果、日本経済に明るい兆しが見えてまいりました。ことし二〇一三年は、日本の経済が長い冬を脱して、未来に向けて歩み始める最初の年になろうかと思います。今このときに国にできる全てのことをやりたいという思いが結実したのが、この産業競争力強化法案だと思います。法案をまとめられた関係者の方々の御尽力に心から敬意を表し、感謝を申し上げます。

 最初に、産業競争力の強化における政府の役割についてお伺いいたします。

 私は、これまで、政府で経済政策にかかわる立場で、政府を離れて企業の経営戦略を支援する立場で、そして企業の経営に直接かかわる立場で、一貫して、日本の経済をよくしたいという思いで働いてまいりました。日本経済全体がよくなるということは、個々の企業の収益が改善することにほかなりません。

 政府の仕事では、国レベルの政策の議論が、その政策が届く先である企業に本当に役に立っているのかどうか、一つ一つの会社、そこで働く一人一人の方に、政府が行う経済政策のおかげで会社の業績がよくなった、自分たちの生活がよくなったと実感してもらうのは非常に難しいという悩みがありました。

 他方、政府を離れて、企業の経営に直接かかわる仕事においては、営業体制の構築やマーケティング、顧客戦略などを行うことで売り上げを伸ばし、財務面の見直しによって収益を改善することで会社の業績がよくなるのを実感できた反面、その成果を日本経済全体へつなげていくのは非常に難しいという悩みがありました。

 国の経済政策は、特定の産業分野に資源を集中して投入するターゲティングポリシーと、予算、税、規制改革、知的財産など、制度面での環境整備の二つが柱だと言われます。

 前者は、医療とエネルギーとインフラと、地域、農業、観光の四分野に限られており、後者は、全ての産業分野に横断的な政策なので、おのずと最大公約数的なものにならざるを得ません。ターゲティングポリシーと環境整備の中間に位置するような政策、例えば、ビジネスを実際に推進していくための人とノウハウを結実させていくための従来型ではない新しい政策が求められます。

 国の経済政策と企業の経営努力がどのように相まって日本経済の再生を進めていくのか、産業競争力強化における政府のかかわり方について、お考えをお聞かせください。

茂木国務大臣 経済産業省に入省され、そしてまた内閣でも副長官補室におきまして企業の再生、産業の再生、地域再生に取り組み、さらには企業経営の前線にも立ってこられた山田委員が、この産業競争力強化法の審議のトップバッターに立たれる、非常に象徴的なことだ、こんな思いを持ちながら今の質問を聞かせていただきました。

 恐らく、城山三郎さんが「官僚たちの夏」を書いた状況と今の日本は少し違っている、こんなふうに思っておりまして、産業競争力の強化に向けた個々の企業の具体的な取り組みはあくまで民間の自発的な判断によって行われるべきものであり、政府の役割は基本的にこのような民間の活力であったりとか努力、イニシアチブというものを支援するための環境整備ということになってくると考えております。

 我が国の産業競争力の強化のため、我々は、日本経済が持っております三つのゆがみ、過少投資、過剰規制そして過当競争、これを是正するために最も重要な役割を果たすこの法案も、基本的な認識はこういうところに置きながらさまざまな規定を置いているところであります。

 具体的には、法案に大きく三つの措置を盛り込んでおります。

 その一つが過剰規制の改革でありまして、企業単位で規制の緩和措置を講じる制度、いわゆる企業実証特例制度、さらには企業が新事業を行う際に事前にその事業が適法かどうか確認できる制度、グレーゾーン解消制度、これを新たに創設することといたしました。

 また、過少投資の是正に向けまして、今後三年間で年間の設備投資額を現在の六十三兆円から一割増加させて、リーマン・ショック前の水準七十兆円以上とすべく、大胆な支援措置を実現してまいります。

 そして、三番目に、過当競争の解消のために、税でのインセンティブを含めて大胆な産業再編や事業再編を促し、経営者の決断を後押ししていきたいと考えております。

 企業がみずからの意思でこれらの措置をうまく活用して積極的な取り組みを進めることによって、我が国産業全体の競争力を大きく引き上げていきたい、このように考えております。

山田(美)委員 ぜひ強い力で民間の動きを後押ししていっていただければと思います。

 次に、産業競争力強化のための施策を実行するための体制についてお伺いいたします。

 今回の法案では、戦略を強力に実行していくための仕組みとして、五年間の集中実施期間の具体的なアクションプランを実行計画として策定し、総理のイニシアチブによって定期的に検証すること、計画の実行が進まない場合は担当大臣は追加的な措置を講ずる義務があることなどを法案に盛り込んでいます。代替案まで含めて担当大臣にコミットを求めるのはこれまでになく、大きく踏み込んだものと言えます。

 これまでも、閣議決定などに基づく戦略のアクションプランの中に数年後にレビューを行うことが盛り込まれていて、各アクションプランに対して関係省庁が事務レベルでレビューを行うことがありましたが、実際には、事務的な作業として各施策の進捗状況の一覧表をつくり、取りまとめた結果を形式的に担当大臣の名前で公表するものがほとんどであり、よほどの政治的な要請がない限り、担当大臣がみずからレビューにかかわるということはまれでした。

 今回、レビューの義務が法律で定められたことによって、担当大臣に対して実際にどのように強制力が増すとお考えでしょうか。

 政策の実行力を確保するには、行政よりもむしろ政治の側の責任によるところが大きいと言えます。行政が政策課題に継続的に取り組むのに対して、政権の側はその時々の世論にアピールするような施策を打ち出さなければならず、政権が掲げる目玉戦略には賞味期限があるのも事実です。結局は、政権の安定に頼らざるを得ず、たとえ閣僚が交代した場合でも、どこまで当事者意識や責任感、使命感を持ち続けることができるのかという点に政策の実効性がかかっています。

 政務の立場からの御決意をお聞かせください。

松島副大臣 お答えいたします。

 委員は、先ほど大臣もおっしゃいましたように、小泉内閣のもとで役人という立場で産業再生や地域再生、そういったお仕事を務められ、さらに民間企業に転じられ、そして今は政治家という道を歩まれている。そうした中で、つくられた制度、つくられた法律が実際にどのように効力を発揮するか、その実効性ということに非常に関心を持たれているものと考えます。

 この法律に基づいて、当面三年間で確実に実行していくべき内容を盛り込んだ実行計画というものを策定してまいります。

 そして、その実行計画の中にはいろいろな施策が含まれるわけですけれども、その施策ごとに担当大臣及びその実施期限を明確に書き込んでまいります。こうすることによって、担当大臣の責任のもとで施策を確実に実行していく考えでございます。

 そうした上で、毎年度一回、当該施策の進捗状況を、政府としてもそのスピードがどうであるかといったことをしっかりと評価し、経済社会情勢の変化なども踏まえて実行計画を見直すことも法律上明確化することにしておりますけれども、成長戦略の着実な実施、実現に対して政権としてしっかりと責任をとっていく、そういうものであります。

 さらに、やむを得ずその実施期限までに実施できなかった内容がある場合は、担当大臣の責任のもと、その理由を検証し、速やかに必要な措置を講ずることを定めております。これまでにない仕組みを設けている、そういう法律であります。

 担当大臣というのは、確かに何年かに一遍交代するものだと思います。仮に担当大臣が交代した場合におきましても、交代した次の大臣が、実行計画に基づく担当大臣としての責任を引き継ぎ、施策の確実な実行に取り組んでまいります。

 こうした仕組みによって、安倍総理を中心に、内閣全体の強いリーダーシップで、日本再興戦略の実現、実行に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

山田(美)委員 ぜひ、強力な政治的イニシアチブをお願いいたします。

 次に、先ほどからお話に上がっております、企業実証特例制度についてお伺いいたします。

 規制緩和をめぐる議論には、常に厳しい利害の対立があります。今回の企業実証特例制度においては、企業が事業所管大臣に直接申し立てができることと、事業所管大臣が規制所管大臣に対して直接規制の是非の再検討を促すのがこの制度の主眼ですが、現実に協議を成功に導くためには、企業から申請を受けた担当大臣の強いイニシアチブが必要になります。新しい制度ができたが、個別の案件では協議が調わず、具体的な適用事例が思うようにふえないという事態にならないよう、担当大臣には強い覚悟で臨んでいただきたいと思います。

 報道などでは、具体的に想定されるケースとして、自動車などの新技術を実証実験する際に障害となる交通規制を緩和するという事例が挙げられており、このような場合は、経済産業省ないしは国土交通省が国家公安委員長と協議することになるのでしょうが、仮に事業所管大臣と規制所管大臣が同一の場合は、この制度が規制所管大臣に規制の再点検を促す引き金にはなりにくいという問題もあります。

 ほかの規制緩和の取り組み、例えば規制改革会議ですとか国家戦略特区などとどのように連動を図っていくのでしょうか。お考えをお聞かせください。

松島副大臣 お答えいたします。

 企業実証特例制度は、企業が提案する規制緩和の実現に向けて、その事業を所管する省庁が関与する仕組みであります。委員もよく御承知のとおりでございます。

 具体的には、事業を所管する省庁が、企業の新たなチャレンジを支援する立場から、規制を所管している省庁に対し、規制緩和の必要性や、当該企業が規制緩和に当たって安全性を確保するためにとる措置などについて、しっかりと十分に説明を行って、強く積極的に働きかけを行ってまいります。

 そして、委員が御心配されているとおり、事業を所管している大臣と規制を所管している大臣が同じである場合、企業が事業を所管している大臣からサポートを受けられず、その提案の実現が難しくなるのではないか。そうした場合であっても、当該省庁は、安倍政権の基本姿勢に基づいて、産業競争力の強化というこの法律の目的を踏まえてできる限り前向きに対応していく、そのように確信しております。

 仮に企業の提案が適切に取り扱われない場合は、その企業から規制改革会議の規制改革ホットラインに相談していただくことになります。その相談を受けて、内閣府が、反対しているというか、ぐずぐずしている関係省庁に対して、法案の目的に沿ったしかるべき対応を促す、そういったことも起こってまいります。

 そして、この制度運用の透明性を高めて、法案の目的に沿った取り扱いがなされることを担保する取り組みといたしまして、企業実証特例制度の運用状況につきまして、定期的なフォローアップを行うことを考えています。特に、この規制はおかしいということで多くの企業が同じような申請をするような重要案件につきましては、産業競争力会議や規制改革会議の場において、各省庁の対応状況や結果などを検証する、そういったこともあわせて考えております。

山田(美)委員 ぜひ、ほかのいろいろな枠組みと連携しながら、制度の実効性を高めていただきたいと思います。

 次に、この制度が企業の側から見て使いやすい制度かどうかという点からお伺いいたします。

 まず、日ごろの業務の中で事業所管官庁との接点が余りない企業に対しては、新しい制度の存在を周知する必要があります。場合によっては、企業からの個別の相談に応じて、該当する規制が何なのか、関係省庁がどこなのか、当該企業から詳しく話を聞いて、申し立ての内容を明らかにしていくことが必要となる場合もあるでしょう。制度の公表の仕方や個別の問い合わせへの対応などについて、具体的にどのようにお考えでしょうか。

 また、事業所管官庁と日常的に接している企業で、既に新制度の内容をある程度わかっておられる企業にとっても、実際に特例が認められるかどうかの予見可能性を高めることは重要な課題です。企業みずからが安全性を確保する措置を講ずるには、新たな投資が必要な場合も考えられます。その企業が事業計画、投資計画、収益見通しをつくっていくに当たって、特例措置が認められるか否か、認められるまでにどのくらいの時間がかかるのかという不確実性は、ビジネスを行う上でのリスクになりかねません。

 規制の緩和の方法が法改正を伴うものなのか、政省令の改正で済むのか、あるいはより長期的に審議会などで検討すべきものなのかにもよりますが、いずれの場合も可能な限り迅速な対応ができるよう、何らかのガイドライン的なものを示すべきかと思いますが、いかがでしょうか。

松島副大臣 まさに委員おっしゃいますように、企業が壁にぶつかる、何か新しい事業をしようとするのにとにかく待ったをかけられたときに、一体、どの役所のどの法律にひっかかるのか、あるいは法律でなくて政省令なのか通達なのか、一般の企業の方はなかなかおわかりにならない。特に中小企業の場合はどこへ言いに行けばいいかわからない、そういうことは本当にたくさんあると思います。

 そういった観点から、経済産業省では、各経済産業局に相談とか申請の窓口を設ける。それを経済産業省のホームページで明らかにすることはもちろん、それ以外にも、一般の方々、特に中小企業の方がふだん目にするのは、自治体の広報、私どものところですと区報、これはよく読んでいるけれども、経済産業省が何をやっているかの政策とか政府広報などなかなか見ないので、こういった自治体の広報などでもこういうことをやろうとしているんだということを知らせてもらって、それが端緒になればいいと考えております。

 そしてまた、実際に時間がかかったりする場合に、委員は事実関係をよく御存じのように、法律を変えなきゃいけない場合、政省令を変える場合、あるいは通達や告示によって新しいことを設ければいい場合、いろいろなレベルによってかかる時間も変わってくる。そういったことの見通しが立たないと、企業は、資金の調達をどうするのか、そして投資をどうするのか、いつごろまでにどういう準備をすればいいのか、わからなくて困ると思います。

 ですから、法律改正で時間がかかるような場合でも、方向性として、この規制は撤廃するとか緩和するとかこのように改めるといった対応の方針が決まったら速やかにそれを当該企業にお知らせして、意欲ある民間企業がタイミングを失することがないように準備ができる、そういう制度もきちっと進めてまいります。

山田(美)委員 ぜひ、自治体や地域とも協力して、わかりやすい迅速な取り組みをお願いいたします。

 次に、今回の産業競争力強化の目玉施策の一つとして、国内市場での過剰供給や過当競争で消耗している企業や業界に対して事業再編を促す取り組みが盛り込まれています。過去には、水力発電の分野で、世界の競争に打って出るために、業界三社が事業統合して一つの株式会社となった例もあり、後に続くような事例が期待されます。

 しかし、一言で競争力を高めるための事業再編を促すと言っても、状況は業界ごとにさまざまです。業界全体の成長が見込めない成熟産業で、過剰供給による構造不況に直面している業界では、事業再編の必要性をみずからも実感していて、政府による後押しが有効となるかもしれません。

 他方、今後も市場全体の成長が見込まれる成長産業の場合、あるいは、業界の特性、企業の風土から、各社のライバル意識が非常に強い場合は、この制度が存在するというだけでは事業再編を促すことは難しいですし、そもそも、政府が関与すべきなのかどうか難しい判断を迫られます。民間企業の経営判断に政府がどこまで踏み込むべきなのか、お考えをお聞かせください。

松島副大臣 委員がおっしゃるとおりに、企業活動というのは、民間の企業がそれぞれの経営判断で日々努力して行っていくものだと思います。

 それに対して、企業の中でも矛盾がある、例えば、中堅や若手の方々が、これはこう変えないとこの産業の未来はない、せっかく伸びる産業なのにこういうたたき合いを国内でやっていたらだめじゃないか、ライバル企業にもいいところがあるから手を結ぼうとか。さっき水力発電の例を言われましたけれども、重電メーカー三社が水力発電部門を切り出して、国内ではもうそれほど水力発電というのは新規設備を導入するところはありませんから、海外に打って出るのに必要だということで、切り離して、三社が一つになって大きな効果を生み出した。

 このようなことを企業の中で考えたときに、それをいろいろな形で後押しするのが我々政府の仕事だと思っております。

 この法律では、複数の企業の特定部門を取り出して、統合などによって既存の経営資源をより有効に活用することでグローバル市場、海外市場に打って出るような事業再編に取り組む企業に対して、例えば、親会社の出資や融資の七割を限度に準備金として積み立てて損金に算入させる、そういった課税負担を軽減することを可能にする税制措置も設けます。こういったことで背中を押す機能が働いていくと思います。

 また、金融面におきましても、特定事業再編を実施するために必要となる資金について、株式会社日本政策金融公庫による指定金融機関を通じた長期低利子の融資を行ったり、独法の中小企業基盤整備機構による債務保証を行うことなどによって有利になる。こういうチャンスもあるんだから踏み切ろうじゃないか、そう思っていただけるように、このような税制や金融の措置をつくって、事業再編を後押しする形の政策をこの中に盛り込んでいるところであります。

山田(美)委員 ぜひ、さまざまな施策を組み合わせて取り組んでいっていただきたいと思います。

 この事業再編措置の中で、政府は市場構造に関する調査を行い、その結果を公表するものとすると定めています。公表される調査結果によっては、政府による当該業界への圧力にならないかという批判がありますが、調査対象の選定や公表の仕方などについて、具体的にどのようにお考えでしょうか。

松島副大臣 先ほど申しましたように、あくまでも決定するのは民間企業であります。でも、現実に、過剰供給が長く続いている、過当競争になっている、そういった業界、市場というものがございます。市場の動向というのは、各社がつかむよりも、政府が客観的な調査によって明らかにした方が、非常に理解をされやすいものだと思います。

 これは、広く経営者や、あるいは投資家、金融機関の皆さんの問題意識を喚起するとともに、事業再編に向けた経営者の判断に資する材料を提供する、決断すべきときはしていただく、あくまでもそういう材料を提供するために行うものであります。

 具体的には、各大臣が所管する業種について、つまり各省それぞれですけれども、幾つか考えられるのが、例えば、一定期間における商品やサービスの価格動向。ずっと値下がりしているとか、実勢価格が下がっているとか。二つ目に、その事業分野における企業の収益率の推移。たたき合いによって収益率がずっと落ちているとか。三つ目といたしまして、これらの業界の国内市場と海外市場の比較。そういった市場構造に関して調査をし、公表することを考えております。

 既に各省庁が実施している調査があれば、必要に応じてその結果も活用することとなってまいります。

山田(美)委員 ありがとうございます。

 最後に、産業競争力強化法案が目指す産業の新陳代謝の新の部分であるベンチャー企業の支援について、中小企業政策全般とあわせてお伺いいたします。

 日本の開業率が欧米に比べて低いことは、私が知る限りでも二十年以上前から指摘され続けてきた問題であり、政府もさまざまな支援や優遇措置を講じてきましたが、いまだに目に見える効果が出ていないのが現状です。

 先日、大学一、二年生の方々を相手に、経済の成長戦略についてというお話をさせていただきました。中小企業という言葉を聞いてどんな会社をイメージするかと聞いたら、半沢直樹のお父さんの会社、ベンチャー企業という言葉でどんな会社を思い浮かべるかと聞いたら、IT企業という答えが即座に返ってきました。

 経済政策にかかわっている者の立場からすると、大企業、中小企業、小規模企業、そしてベンチャー企業という枠組みで物事を捉えがちですが、その考え方で本当に正しいのか、改めて考えさせられるときがあります。

 大企業は強い、恵まれている、それに対して中小企業は弱い、小規模企業はもっと弱い、ベンチャー企業はリスクが高いという考え方は、余りにも一面的で画一的です。志の高さやビジネスのスケールは資本金の額や従業員の数で決まるものではありません。中小企業だからこそ大きな会社とは違ってすぐに決断し実行に移せる、自分で起業すれば自分のキャリアや働き方を自分でマネージできる、何千人に一人という確率で大成功をおさめた有名な起業家でなくても、身近なロールモデルに数多く接するということが、若い世代に起業を促す貴重な経験になることは言うまでもありません。

 女性の起業への意識も高まりつつあります。私の地元の選挙区にも、すてきな女性経営者、女性起業家がたくさんいらっしゃいますし、私の世代にも、みずから起業して活躍される女性が数多くいらっしゃいます。皆それぞれ成功に至るまでに孤軍奮闘で本当に苦しい思いをしておられます。

 これから起業する可能性がある方一人一人が心の中に潜在的に持っている、こんなことがしたいという小さな夢から、一歩前に踏み出せるような支援策をぜひお願いしたいと思います。

 今回の法案で、創業支援についてどのように総合的な取り組みが行われているのか、今後の我が国におけるベンチャー振興施策のあり方について、お考えをお聞かせください。

茂木国務大臣 確かに、半沢直樹の半沢ネジを見ると、小規模企業は弱い立場だ、こういう思いを持ちますけれども、すばらしい技術を持った会社もたくさんあると思います。そして、ホンダやソニー、こういう会社も、もともとは小規模企業、ベンチャー企業でありました。さらに、大きくならなくても、ある一定の分野で、ある一定の素材や部品において、やはりこの会社がないとやっていけない、ビジネスが成り立たない、そういう非常にすぐれたニッチ企業というのも存在するんだと思います。そういう人たちがもっと希望や元気を持てるような経済社会を我々はつくっていきたい、こんなふうに思っております。

 現在、例えば、日本において開業率が上がらない原因、いろいろあると思うんですけれども、起業に対する意識改革も必要だと思います。そういった意味で、私も先日、大学で講義をやってきましたけれども、先生もそれをやっていただいた、こういった若者に対する意識の喚起も重要なんだと思っています。

 同時に、日本の場合、起業家に対する資金の提供であったりとか経営のノウハウを提供する、こういったことも十分ではないという側面があると思います。

 アメリカはベンチャーの国、起業の国、こんなふうに思われがちですけれども、恐らく、一九六〇年代、七〇年代のアメリカのホームドラマを見ていますと、ベンチャー企業というのは出てきません。主人公はほとんど大会社のサラリーマンか医者、弁護士です。スーパーマンも、デイリープラネット社という新聞会社に勤めていたわけであります。八〇年代ぐらいからベンチャーキャピタルというのが生まれて、そこに国も支援措置をとることによって十分な資金供給が行われた。こういう側面が大きいんだと思います。

 さらには、スピンオフであったりとかカーブアウトなど事業再編を促進する構造改革、こういったものがおくれている側面がある、こんなふうに考えております。こういったことも踏まえて、今回の産業競争力強化法案では、経営支援能力が高いベンチャーファンドを認定して、あわせて認定ベンチャーファンドに対する企業からの投資を促進する新たな税制措置を設けました。また、地方自治体と民間の支援事業者が連携して行う創業支援に対する支援措置も盛り込んだところであります。

 スピンオフ、カーブアウト。言ってみると、一つの企業というのは文化を持っています。その一つの固まってしまった文化の中ではなかなか育たない新しい事業がカーブアウトされる、スピンオフするということで、その眠っている経営資源、人材を使う、そういった意味でも非常に大きな意味があるのではないかな、こういったことに対する支援も行っていきたい。

 そして、六月に定めました日本再興戦略で、日本としてこれから開業率一〇%を目指す、この目標を一日も早く達成できるように全力で取り組んでまいりたいと考えております。

山田(美)委員 ぜひ、将来の開業率一〇%の目標達成に向けて、全力で私も頑張ってまいりたいと思います。

 本日はどうもありがとうございます。

富田委員長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹です。

 本日は、今回の臨時国会の目玉の一つである、産業競争力強化法案についての質疑をさせていただきます。

 今回の臨時国会は成長戦略実行国会と銘打たれており、総理も、先日の所信表明演説の中で、大事なのは実行であり、もはや作文には意味がないというふうにおっしゃいました。今回の産業競争力強化法案の肝も実行です。

 それでは、これまで何が実行されず、今回は何が実行されるのか。実行、実行、実行と繰り返されますけれども、その実行の中身は一体何なのか。国民の皆さんにわかりやすい、期待の持てる説明、またメッセージを、大臣、よろしくお願いいたします。

茂木国務大臣 成長戦略、委員おっしゃるように実行することが極めて重要であります。同時に、スピード感を持って実行することが重要だと思っておりまして、例えば税制改正、御案内のとおり、毎年、年末の恒例行事でありました。今回は秋に税制改正を行うということを、恐らくここ数十年の中では初めて既に実行させていただいたところであります。

 さらに、岩盤規制と言われる規制も、この産業競争力強化法で目指している三つのゆがみの是正の一つであります過剰規制を直していくという意味から現在取り組んでおります。既に、六十年間続いてきた電力の地域独占を変えていくための電気事業法の改正、第一弾も、衆議院では可決をしていただき、これから参議院の方で審議が行われることになっております。また、医療機器の開発の問題、さらには再生医療の実用化などを推進するために、薬事法の改正等も行っていきます。

 iPS、日本は山中教授のノーベル賞の受賞に象徴されるように、研究開発は相当先を行っている。しかし、再生医療であったりとか創薬の製品ということになると他国に劣後している。こういった状況を一気に我々として変えていきたい、このように思っております。

 そのための実行体制も政府一丸となってつくっていくことにしておりまして、規制改革を進める、そしてまた産業の新陳代謝を進めるといったことをこの法案を中心にして一気に進めてまいりたい、そのように考えております。

國重委員 大臣、よろしくお願いいたします。

 今回の産業競争力強化法案を作成するに当たって、これまでの産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法、いわゆる産活法について、どのような検証をしたのか、評価をされたのか。これを踏まえて今回の法案ができていると思いますけれども、これについての検証、評価について大臣にお伺いします。

茂木国務大臣 産活法は平成十一年に制定をされましたが、当時の状況、一九九二年にバブルが崩壊をするという中で、企業が過剰設備を抱える、また過剰債務を抱える、これを解消していかなければいけない。そういう状況下にあって、産活法、我が国事業者の生産性向上と産業活力の再生に向けて、個々の事業について一定の成果を上げてきた、このように考えております。

 具体的に申し上げますと、平成十一年の産活法の制定以来、平成二十五年、ことしの十月一日の時点で、全省庁で六百九件、経済産業省で四百件の計画を認定いたしております。毎事業年度、認定を受けた企業の生産性や新たな取り組みの成果を詳細に検討しておりますが、経済産業省が認定し、計画が既に終了した三百五十件のうち、大体八割以上の案件が計画期間中に法律の求める生産性の向上を実現いたしております。

 ただ、冒頭申し上げたように、基本的な目的は、過剰設備とか過剰債務を解消することでありました。ところが、今日本が直面している問題は、過少投資なんです、過剰規制なんです、過当競争なんです。それに必ずしもぴったりするような仕組みが産活法には盛り込まれていないということで、新しい産業競争力強化法をキードライバーにしながら、三つのゆがみをしっかりと是正していきたいと思っております。

國重委員 よくわかりました。産活法の検証を踏まえた上で、今回の法案をしっかりと推し進めていっていただきたいと思います。

 では次に、重点施策の定期的な検証、見直しについてお伺いします。

 本法案の六条では、産業競争力の強化に関する実行計画を作成し、これを公表し、少なくとも毎年一回、重点施策の進捗状況、その効果に関する検証を行い、必要があると認めるときは改定する旨が定められております。

 ただ、今回のアベノミクス、新政権、国民が非常に期待しております。この一、二年が勝負だと思っております。そういう点からしますと、重点施策によっては、一年に一回ではなくて、半年あるいは三カ月に一回程度でも検証を行い、改定していくということも、場合によっては必要になってくると思います。

 進化し続ける成長戦略という観点からして、どの程度の頻度で検証を行っていくのか、政府の見解をお伺いします。

菅原政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員が申されたように、この法律では、少なくとも毎年一回見直すことになってございますけれども、御指摘のとおり経済はまさに生き物でございまして、経済環境が急激かつ大きく変化するということも十分想定されます。その場合には、一年を待たずして必要な政策対応をとるということが十分考えられるわけでございます。そこはやはり機動的に、必要に応じて政策の評価をする。評価の次第は、要するにこの政策は今の経済環境の実態に合わないということが明確になればその都度政策の見直しにつなげていくということで、例えば三カ月ごととか六カ月ごとという定期的な頻度ということはありませんけれども、状況の変化があれば、機動的にまずは担当大臣がその政策を評価し、見直して、しっかり変更を加える。

 場合によっては、見直すべき範囲が広範囲であれば、産業競争力会議ですとか日本再生本部という内閣全体で政策の見直し、評価を行うということも十分想定されることでありまして、いずれにせよ機動的に対応していくというのは当然だというふうに思ってございます。

國重委員 先ほど大臣もスピード感が大事なんだとおっしゃられましたので、機動的な検証を何とぞよろしくお願いいたします。

 次に、今回の法案六条では、政府がこの評価を行うと定められておりますが、具体的には、一体どのような方たちが、どのような方法で評価をするんでしょうか。この内容について教えていただきたいと思います。

菅原政府参考人 先ほども申し上げましたように、今回の法律の実行計画では、それぞれ政策の責任担当大臣を決めてございます。そういう意味で、まずは、その大臣のもとの担当省庁が、自分の政策について、しっかり実態に合っているかどうか自己評価を行うというのが基本でございます。

 ただ、自己評価だけに頼っていたのでは甘く評価される可能性もございますので、常に、産業競争力会議でありますとか規制改革会議でありますとか、それを束ねる日本再生本部という内閣全体で、それぞれの政策についてもあわせて評価を行っていくということとしたいと考えてございます。

國重委員 よろしくお願いいたします。

 今、産業競争力会議また規制改革会議と出ましたけれども、これまでに産業競争力会議は十四回の会議が行われております。また、経済財政諮問会議は、これまで二十一回だと思いますけれども開かれております。それ以外にも、先ほどおっしゃられた規制改革会議があります。

 これらの会議は重複する部分も当然あると思います。また、協力し合ってやっていかないといけない部分も当然あると思いますけれども、経済財政諮問会議、産業競争力会議、規制改革会議、これらの会議の連携はどのようになっているのでしょうか。お伺いします。

飯塚政府参考人 お答え申し上げます。

 経済財政諮問会議は、経済財政政策全般の基本的な方針の審議、取りまとめなど、いわば大きなビジョンの基本設計を担っている部分でございます。産業競争力会議は、産業競争力強化の観点から、我が国に必要な構造改革の実施設計を担っている機関でございます。また、規制改革会議は、民需主導の経済成長を実現する等の観点から、規制改革事項の具体的措置を審議している機関でございます。

 各会議の連携でございますけれども、議員御指摘のとおり、各会議が、いわば我が国経済の再生といった大きな目的を共有しながら、連携して取り組んでいくことが重要と考えております。さまざまなレベルで連携を図っているところでございます。

 具体的に申し上げますと、まず、経済財政諮問会議と産業競争力会議の間では、甘利大臣のもとで、昨年末に新設されました日本経済再生総合事務局で事務的に連携を図っておりますほか、経済財政諮問会議と産業競争力会議の民間の議員間でも意見交換等が行われているところでございます。

 なお、諮問会議と規制改革会議の民間議員の間でも、同様の意見交換等が行われているところでございます。

 また、産業競争力会議と規制改革会議との間では、担当大臣間や各事務局間の連携が図られているということに加えまして、規制改革会議の岡議長が産業競争力会議の議員を兼ねておられます。このほか、議題に応じて規制改革会議のメンバーが産業競争力会議に出席して議論が行われているところでございます。

 このように各会議間の有機的な連携に努めているところでございまして、引き続き連携を図ってまいりたいと考えております。

國重委員 今、連携についてはわかりました。

 そうすると、総合戦略としての司令塔的な役割を果たすところはあるんでしょうか。それについてお伺いします。

飯塚政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁を申し上げましたように、経済財政諮問会議と産業競争力会議につきましては、同じ甘利大臣のもとで事務局も一つで連携が図られておりますし、また、規制改革会議につきましては、担当大臣は異なりますけれども、二人の大臣が連携しながら、まさに司令塔としてやっておるというところでございます。

 全体的には、先ほど菅原局長の答弁にもございましたように、日本経済再生本部というところがございまして、総理が本部長で全閣僚がメンバーになっておる組織でございますけれども、これが今、政策全般の調整、司令塔の役割を果たしているということだと思います。

國重委員 しっかりと司令塔機能を果たして、それぞれの整合性をうまく保ちながら、力強く前進していただきたいと思います。

 次に、企業実証特例制度についてお伺いします。

 今回の企業実証特例制度では、新事業活動を実施しようとする企業は、事業所管大臣に対して、規制の特例措置の整備を求めることができると定められています。

 では、そもそも、特例措置を求める企業は、大臣に対してどのような文書を提出して特例措置の提案をすればいいのか、私ちょっとイメージが湧かないんですけれども、一般の企業も難しく考えてちゅうちょしてしまうおそれがあるんじゃないかというふうに思っております。

 この点、私は弁護士をしておりましたけれども、裁判所の窓口とかホームページでは、例えば相続放棄の申述書のサンプルのひな形とかが置いてありまして、専門家である弁護士以外の一般の方でもそれを見れば簡単に作成できるようにしてあります。

 今回の企業実証特例制度を実効あらしめるためには、サンプルとなるひな形の文書のようなものがぜひとも必要だと考えますけれども、これが現在あるのか、なければ早期にそのようなサンプルのひな形文書を作成していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

菅原政府参考人 國重議員が今おっしゃったとおり、企業実証特例制度を幅広く中小企業の方も含めて活用していただくためには、ユーザーの利便性に配慮した手続としていくことが非常に重要であると思います。

 御指摘のように、中小企業の中には、すぐれた製品やサービスを生み出す力を持っていながら、行政への申請にふなれな方も多数存在するということを我々も承知してございます。

 そのため、今議員がおっしゃったようなことも踏まえまして、運用の細部を定める主務省令、通達で簡素な申請様式を定めるとともに、わかりやすい記入例、今おっしゃったようなひな形というものや、手続の流れ、こういったものも準備して、具体的な手続のイメージが湧きやすくなるようできる限りの工夫を行うこととしておりますし、経産省としては、地方経産局にこういった方々の相談に応ずる窓口を設けて、懇切丁寧に周知徹底、もしくはアドバイスをしていきたいというふうに考えてございます。

國重委員 せっかくの制度ですので、つくって実際は使い勝手が悪いということで終わらないように、特に今回は本当に実行が大事だというのは、予算をつけることも大事なんでしょうけれども、実際にやる側が使いやすいようにしないといけないと思いますので、ぜひともよろしくお願いします。

 それでは、この特例措置を講ずるかどうか、規制所管大臣はどのような基準で判断するんでしょうか。見解をお伺いします。

菅原政府参考人 企業実証特例制度は、最先端の技術を有し、安全性等を確保する措置を確実に実施しながら、先行して技術開発、製品開発を行おうとする企業に対し、先行的に規制の特例措置を講ずるものでございます。

 具体的には、事業所管大臣がその提案を受け付けまして、規制所管大臣と積極的に、その企業の意欲を酌み取るべく協議、調整を行っていくというのが基本でございます。

 この場合、規制所管大臣は、その企業が提案してきた措置が確実に規制の心配を取り除くものであるかどうかというのを慎重に検討した上で、企業の要望に応える規制の特例措置を創設していくというのが基本になろうかと思います。直ちに特例措置を創設することは難しくても、では、どのような代替措置を講ずればそのハードルを越えられるのかという問題点をクリアにしていただくですとか、もしくは、もう企業単位の特例措置ではなく全国単位の規制緩和を行う場合には、その方針、スケジュールなどを明確にしてもらうというような対応が考えられるというふうに思っております。

國重委員 わかりました。

 では、特例措置が認められた場合は、その内容を公表するとあります。先ほど山田委員も公表について質疑されて、その答弁として、ホームページ以外に自治体の広報等でもその内容を公表するとおっしゃられていました。

 私は、アベノミクスの成長戦略で、今回の実行ということに照らすと、先ほど来申し上げていますとおり、やはり使う側にいかに知っていただくかということが大事だと思っております。ホームページ、自治体の広報はわかりましたけれども、今後、この広報をもっと研究するというか、どうやればより国民の皆さんにわかっていただけるかということにもっと特化して、本気で取り組んでいく必要があると思います。今後の広報への取り組みの決意、または見解についてお伺いします。

菅原政府参考人 お答え申し上げます。

 企業実証特例制度は、最初は、第一号の企業の人の申し出によって、特例措置を設ける、設けないというのが決まるわけでございます。そうしましたら、この特例措置の内容については当然わかりやすく公表するということでございます。そういったことによって、二番手、三番手の人が、同じ代替措置をちゃんと講ずるということが確認されれば、同じような特例措置を受けられるという意味において、最初にどんな形で特例措置を認めたのかという広報が非常に重要になってくると思っております。

 今委員の御指摘のとおり、単なるホームページにとどまらず、個別の、先ほど申し上げましたような地方経産局も活用した、場合によっては中小企業団体等も通じたさまざまな媒体、手法を使って、こういった企業実証特例制度の運用の実態、成果についても普及させていきたいというふうに考えてございます。

國重委員 ぜひとも強力な広報をよろしくお願いいたします。

 続きまして、ちょっと順番を入れかえます。設備投資減税についてお伺いします。

 今回の産業競争力強化法案の肝の一つに設備投資減税があると思います。ただ、この設備投資減税に関しましてはさまざまな意見がありまして、そもそも需要がないのに設備投資減税をしても意味がないというような識者の方もいらっしゃいます。また、この設備投資減税に要件がいろいろとついて使い勝手が悪いとか、もっとシンプルに、普遍的な設備投資減税にしてほしいといった声もお聞きします。

 先ほど、定期的な検証、場合によっては半年、三カ月、そういったスピーディーな検証をして見直しをしていくという答弁がございました。

 今回のこの設備投資減税は、六十三兆円ほどの今の設備投資を七十兆円にしていくというような目標を掲げておりますが、スピーディーな検証によって、場合によってはより簡素な、普遍的な設備投資減税にしていくことが必要になることもあると思いますが、その余地はあるのかどうか、見解をお伺いします。

赤羽副大臣 十年以上続いている円高、デフレ不況の中で日本の企業が受け身に回ってきた、その中で設備投資が全然進んでこなかったという意味で、今回、設備投資減税に大胆に切り込むということは大変重要なことだと考えております。

 ただ、一方で、一般的なさまざまな支援政策で、現場を回っていると、特に中小企業、小規模事業者の皆様にとりましては、使い勝手が悪い、また申請の仕方が煩雑だというようなことがあって、よくよくトレースをしてみると、こちらが期待しているほど使われていないというケースもこれまで間々ありました。

 そういった意味で、今回の設備投資減税はより多くの事業者の皆様に活用していただくのがその趣旨でありますので、法律に基づく認定手続を不要とするなど、簡素な手続で税制優遇を受けられる仕組みとしておるところでございます。

 加えて、平成二十二年に租税特別措置透明化法というものが成立いたしまして、この法律に基づきまして適用件数ですとか活用状況が調査されることになっております。ややもすると、役所というのは制度をつくりっ放しのところがあったかと思いますので、それがどう利用されているのかをしっかりフォローして、なかなか利用状況がはかばかしくないときにはその改善策を二の矢、三の矢で打っていくようにしていきたい、こう考えております。

國重委員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 続きまして、開業率、またベンチャーファンドについてお伺いします。

 日本の開業率は約五%ということで、一〇%台である欧米に比べて非常に低い。今回、この開業率を上げていこうというような施策が盛り込まれております。

 先週、議員会館に私の友人が来まして、彼は、アメリカ、イギリスで働いておりまして、今週からドバイに一年間行ってくるというようなことで小一時間ぐらい話をしました。そのときに、彼が世界から見た日本ということでるる話をしておりましたけれども、やはり、開業率が低い理由として、アメリカ等では起業教育が日本に比べて大分進んでいるからじゃないかというようなことを話しておりました。

 開業率の低い原因の一つとして起業教育ということもあると思いますけれども、起業教育に対するこれまでの取り組み、また今後の取り組みについての決意、見解をお伺いします。

赤羽副大臣 今回の開業率を上げるということは、一つの指標をつくって、単なる挑戦ではなくて、私自身の捉え方は、ある意味では日本の産業界の体質改善というか、もっと大きく言いますと産業革命に近いぐらいの大きな試みだというふうに思っております。

 開業率が上がらないというのは、いろいろ考えてみますと、もともと日本のこれまでの産業風土というのは、どうしても大企業に集中する、その大企業に連なる下請構造があってこれまでずっと回してきた、そこが立ち行かなくなって日本の産業界の活力全体が失われている。

 ですから、いい学校を出て大企業に行く、それが一番いい道だ、こういったことの意識革命とか、チャレンジ精神とか、いわゆる学校での教育の改善。加えて、では起業をしようとしたときのノウハウとか資金の供給とか、チャレンジに対して具体的な支援をしていこうという国全体での教育のあり方。また、やはりリスクが大き過ぎて、起業を失敗したときに再挑戦できない、そういったことに対するリスクヘッジのあり方。

 私はかつて、大企業の中での起業みたいなことを進めて、分社化していく、スピンアウトしていくということが具体的なんじゃないかということをこの委員会で、今から思い返してみますと、平沼さんが通産大臣をやっていたから相当前だったと思うんですけれども、これまでも開業倍増計画とか大学発ベンチャー千社計画とかやっていたんですが、瞬間的、打ち上げ花火的にはうまくはいっているものの、結局は長続きしないということなので、本当に今回根本的な取り組みが必要だということであります。

 一つは、御質問に対してのお答えですが、教育についても二つある。

 やはり学校の教育、学生に対しての教育はどうなのかということでございますけれども、まず、我が省としては、平成二十二年度にキャリア教育アワード、経済産業大臣表彰というものを始めております。

 具体的な事例で申し上げるとわかりやすいと思うんですが、福島県会津若松の商工会議所の青年部が、ジュニアエコノミーカレッジというもので平成二十二年度の優秀賞を受賞されています。これは、小学五、六年生が一チーム五名で模擬的な株式会社を設立して、計画、仕入れ、製造、販売、決算、納税といった一連のサイクルを体験するキャリア教育プログラムでございます。これは結構うまくいって、全国の青年会議所と連携して、平成二十五年現在、全国十七地域で同様のことが開催されて、約四千名の小学生が参加されている。こういったことを育てていこう、頑張っていこうという側面が一つ。

 もう一つは、もう少し具体的な起業家教育について、大学の教員の皆さん、また起業家の皆さん、弁護士、ベンチャーキャピタル等により構成される、大学・大学院起業家教育推進ネットワークというものを組織、運営させていただいております。これは、関係者八百六十名が参加して、ビジネスプランコンテストを開催したりとか、専用のポータルサイトを活用して、実際の具体的な講師のマッチングみたいなことを行いながら、少しでも起業家風土を醸成していこうということを今心がけてやっているところでございます。

國重委員 最後に、あと一問だけお願いします。

 今回の法案では、企業のベンチャー投資促進税制が定められておりますけれども、人によっては、日本のベンチャーファンドというものは全然だめなんだ、ここにお金をつぎ込んでも無駄になるんだというようなことをおっしゃる方もいます。

 この点、イスラエルはベンチャー企業数世界二位、国民一人当たりのベンチャー投資額世界一位のベンチャー大国になっております。ナスダックの上場数も世界三位と非常に高い成功率を誇っております。イスラエルでは、ベンチャーキャピタリスト、また専門学校、ビジネスマン、こういった人たちが集まったクラスターという組織をつくっています。アメリカ、インド、中国でも同様の動きが見られます。日本でも今後そういった組織を創設していくことを考える必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

赤羽副大臣 御指摘もっともでございまして、事業会社からベンチャーファンドへの投資を促進しまして、また、資金供給能力を有し、かつ経営支援ノウハウを持っているベンチャーファンドによるベンチャー企業への支援を活性化させるということは大変重要なことだと考えております。

 平成二十四年度の補正予算におきまして、ベンチャーキャピタリスト、弁護士、公認会計士などの専門家が連携する新たな総合支援体制の構築、今御指摘のようなものにかなうかどうかあれですけれども、新事業創出のための目利き・支援人材育成等事業七・三億円を計上しているところでございまして、これを足がかりに、今御指摘のような固まりをつくっていけるように頑張っていきたいと決意しているところでございます。

國重委員 以上で質疑を終わります。

 進化し続ける成長戦略、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

富田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤洋介です。

 本日は、第三の矢、成長戦略の実現の目玉の法案、産業競争力強化法の質疑であります。

 この法案は、本日、本会議で議論される国家戦略特区法案と並んでといいましょうか、経済再生に向けての一つの大きなアベノミクスを代表するもの、こういうふうに伺っております。

 ざっと中身を拝見すると、それなりにフルパッケージで、それなりにと言うと、つくった大臣には大変恐縮でございますけれども、フルパッケージで形を整えられているなという印象は受けます。きょう本会議で質問させていただきます国家戦略特区法に比べれば、相当完成度は高いなという気がするわけでございます。しかし、やはりきちっきちっと内容を詰めていかなければいけないと思うわけであります。

 日経新聞は、私がいた会社でありますけれども、ここ数日、この競争力強化法の解説記事を掲載しておりまして、比較的好意的に書いておる。日経新聞という新聞の性質上、そういうものなのかなと思って読んでいるんですけれども、随分、背後にいるお役人の方々の教育がよいのか、切り込みが甘いなと思うわけであります。

 最近のメディアは、私も茂木大臣もジャーナリスト出身でございますけれども、まずは疑ってかかれというのが新聞記者の原則だったんですが、随分そういうものを失ってきたなと、ちょっと後輩たちを危惧している。今度、秘密保護法案などが出るとますます批判精神を失うのではないかと、余計な話ですが心配しておるので、その部分も含めて、原則、こういう法案は大事ですし、大臣の姿勢、また経済産業省の努力は多としながらも、きちっと指摘すべきところは指摘する、これが野党の役割でございますから、そういう観点に立ってこれからの質疑に臨んでまいりたい、こう思うわけであります。

 まず最初に伺います。

 この法案のもとになっているといいましょうか、前身となっています産業活力再生特別措置法が制定されたのが、先ほどの質疑でもございましたが、平成十一年でありました。以来、四度にわたって改正されてきました。

 私も、経産委員会の中で、いわゆる産活法の改正の質疑にかかわってまいりました。ですから、この内容については存じておるつもりでございますし、その都度、評価して賛成票を投じてきたものであります。

 さて、この産活法のこれまでの一定の評価について、どのように大臣はお考えなのか。ありていに言うと、過剰債務、過剰設備という課題について産活法はどこまで寄与できたのかという観点も含めて、お答えをいただければありがたいと思います。

茂木国務大臣 先生のいらした日経新聞の記事、けさが四回目であったかと思いますけれども、こういった法案について、いろいろなメディアが丁寧に国民の皆さんに広報していただけるというのは大変ありがたいことだ、こんなふうに思っております。

 産活法、御案内のとおり、平成十一年に制定されたわけでありますが、当時の状況は、バブルが崩壊して、その後の景気の低迷、デフレが長引く中で、企業にとってはどうしても、過剰設備、過剰債務の解消が最優先の課題でありまして、それを後押しするということで、産業再生機構、さらには不良債権の処理を推進した金融再生プログラム等の施策とも相まって、この過剰設備や過剰債務の解消に寄与するということはやってきたと思っております。

 具体的な件数で申し上げますと、ことしの十月一日時点までで、全省庁で六百九件、経済産業省で四百件の計画を認定しておりますが、経済産業省が認定いたしまして計画が終了した三百五十件のうち、八割超が計画期間中に法律の求める生産性の向上を実現いたしております。

 ただ、考え方によっては、三百五十件なんですね。改正のときも私も申し上げてきたのは、趣旨自体が悪いわけではないけれども、もっと大胆な措置がとれないかな、こういう思いも持ってきたところであります。

 そして、現在日本が置かれている状況、今まさにバブルからの脱却が見えつつある中で、過少投資、過剰規制、さらには過当競争という三つのゆがみを是正していかなきゃならない、そのキードライバーとなるのがまさにこの産業競争力強化法だと考えております。

 一連の規制改革、これは、企業単位でやるものを産業競争力強化法でやり、そしてまた地域単位で国家戦略特区、全国単位のものにつきましては規制改革会議でさまざまな提言を六月にも取りまとめ、追加的な対応もしていきますけれども、重層的な対応をする中の一番ミクロのレベルのものをしっかりとこの法案の中でやっていきたいと思っておりますし、また、過少投資、過当競争の原因になっているといいますか、これを解消するための産業の新陳代謝、こういったものをこの法案の中でしっかり進めていきたい、このように考えております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 過剰設備はほぼ解消されて、これからは過少投資に対する対策が重要だ、全く大臣のおっしゃるとおりだろうと思います。

 同時に、ただ、我が国の産業の現状を見ると、委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますけれども、一枚目をごらんいただいて、これは経済産業省の資料でありますが、この真ん中のグラフ、私はこれが非常に深刻だなと思うわけであります。

 設備年齢が非常に古くなっている。以前もこの委員会で申し上げたとおり、マザー工場というのは母なる工場であったけれども、今やグランドマザー工場、要介護のおばあちゃんになっちゃった、母というよりはおばあちゃんになっちゃったんじゃないか、こういう危機感でございます。

 古い設備を持ち続ける傾向が非常に加速している、これは本当に看過できない状況ではないかと思いますが、この点について、大臣、いかが御認識されていますでしょうか。

茂木国務大臣 委員からお示しをいただきました資料は大変重要だと我々も考えておりまして、一九九〇年と比べて、現在、我が国の設備年齢は、ちょうど先生の資料ではグレーの部分でありますけれども、三・四歳老朽化している。マザー工場がグランドマザーになっては困るわけであります。

 そして、どんなことがこれまで起こってきたかというと、どんどん企業が海外に設備を移転する、本来だったら日本の企業の技術者が海外に行って技術指導できるはずなのが、日本の企業の方が古くなっているから最先端の海外の工場で指導ができないという状況まで起こっております。

 実は、最近も私は、もう一回マザー工場を日本に戻そうという企業の取り組みも拝見してきたところでありますけれども、その状況の中で企業も、一番核となるようなマザー工場を日本に立地しようという考えに変わりつつある、そういう側面があると思っております。

 生産性を向上させ、ひいては産業競争力を強化していくためには、こういった形で設備の更新を含めた設備投資を促進していくことが極めて重要でありまして、今回の法案でも、リース手法を活用した新たな先端設備の投資促進策も設けているところであります。具体的には、中古市場が未発達な先端設備についてもリースを活用できるよう、転売時のリスクを軽減する新たな仕組みも加えております。

 そして、この法案と並行しまして、税制改正、生産性の高い先端機械装置への設備投資に対して即時償却するか税額控除するか選べるような制度、特に中小企業、小規模企業につきましては、よりインセンティブが高く、より広く企業をカバーできる、こういう制度も設けまして、大胆な投資減税を促していきたい。

 そういったことを中心にしながら、設備年齢の若返りを図っていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 これは本当に大事なところであって、政策を相当集中していることを今御答弁いただきました。特に、新機軸として、リースの活用、これはなかなかおもしろいなと思うわけであります。ぜひ広げていただきたいと思いますし、税制につきましては、この資料の二枚目でありますけれども、通常は年末にやる税制について、前倒しで今回決着されてこの法案に盛り込んだ。

 これは非常に大変だったと思います、前倒しするということ自体。そもそも財務省は、この年末の税制プロセスのスケジュールを前倒しするというだけでも、何だこれはと言ったと思いますが、それをあえて前倒しした。設備投資を早く復活させるということを考えると、早い決着がやはり大事でありますから、そういう意味も含めて、秋の陣を設定して行動されたことについては評価したいと思いますし、この一連の設備投資促進税制については、一定のというか、大変新しい深掘りの措置もあった、これは認めたいと思います。

 その上で、ちょっとお伺いしたいんですが、特に即時償却ですね。税額控除五%、そして特別償却、即時償却。こちらの即時償却についてなんですが、固定資産税はどのような扱いになるのか。政府参考人で結構ですから、お答えをいただけますでしょうか。

平嶋政府参考人 お答えいたします。

 即時償却を国税の法人税で行う制度、先生御案内のとおりでございますけれども、国税の減価償却は、利益計算上、設備投資に要した経費をいつの年度で費用化するかという費用配分の考え方に立って行われるのに対しまして、固定資産税は、その資産の価値と市町村の行政サービスの受益関係に着目して、資産価値に応じて課税する、こういうことになっておりまして、たとえ国税において即時償却、特別償却が認められた資産でありましても、固定資産税においては、事業の用に供されている場合には、通常の減価償却後の価格等に基づき、資産価値に応じまして固定資産税は課される、こういう制度になってございます。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 そうなんですね。国税のところは大胆になったわけですけれども、地方税たる固定資産税については手つかずといいましょうか、このまま残っているということなのであります。

 大臣、その上でお伺いしたいんです。

 くどいようで恐縮でございますけれども、大事なことはしつこくというのが私のモットーでございます。何度でも申し上げたい、こう思うわけであります。

 次のページでありますが、償却資産課税の抜本見直しの必要性であります。

 総務省の審議官のいる前だからこそあえて申し上げたいと思うわけでありますけれども、償却資産への固定資産課税が設備投資の足かせとなっていると私は考えます。もう釈迦に説法、大臣も同じ思いかと思いますが、日本でのみ課されている国際的にまれな制度であります。中小企業にも課税されているため、中小企業にとってもマイナスであります。

 これを申し上げると、地方自治体の方々、首長さんたちが、何だ、おまえは地方の財政のことを考えていないのか、こういうふうに陳情に来られます。まあ、総務省の皆様方の御指導を受けてのことなのかもしれませんが、私のところにも来られます。しかし、私は申し上げます。首長さん、市長さん、待ってください、鶏と卵ですよ、このまま工場がいなくなってしまったらどうするんですか、雇用がなくなったらどうするんですか、元も子もないじゃないですか、こういうことであります。

 私の地元ではございませんが、山形県鶴岡市にルネサスという会社の半導体工場がございます。私の地元米沢にもルネサス工場がありますが、今大変な存亡の危機に陥っているのは鶴岡工場であります。八百四十名の正社員、関連会社、派遣も入れたら千三百四十名になります。鶴岡市の工業出荷高の二五%を、何とルネサスは一社で占めております。

 このルネサスが今大変な状況になっています。台湾の企業との売却交渉は、事実上、決裂をしてしまいました。ルネサスについては、私が副大臣のときに資本注入を決めさせていただいたわけであります。日本にとって極めて重要な半導体産業であるということで、革新機構から一千億円ということをジャッジしたわけでありますが、ルネサスの鶴岡工場は、あれから数カ月たって、今大変厳しい状況に置かれています。

 その中の一つに、台湾の企業との交渉で、私も現地に行って社長さんのお話をいろいろ聞いてまいりましたが、日本のビジネス環境の悪さというのが挙げられた、こう訴えられました。一つ目はエネルギー価格がございました。大変なエネルギー価格の高騰。そしてもう一つは税制でございました。

 鶴岡市長さんが大変な状況になっています。もう固定資産税どころの話ではございません。こういうのが今の現実だということを踏まえますと、やはり地域の経済にとってもこの問題は重要ではないかと思うわけでありますけれども、改めて、大臣、本件、残された大きな課題、年末に向けてでありますが、いかがお考えでございますでしょうか。

茂木国務大臣 鶴岡市のルネサスの問題、私もお話を直接伺いまして、大変深刻な状況であり、地域の経済そのもの、雇用そのものにかかわる問題だと認識いたしております。

 今、安倍政権においては、世界で企業が一番活動しやすい国を目指しているわけでありまして、そこの中で、委員の方からお示しいただいた表を見て、本当にこれで世界で一番活動しやすい国になっているのか、そうじゃないじゃないかという御指摘を受けても仕方ない、そんなふうに思っているところであります。

 償却資産に係る固定資産税について、手つかずと先生の方から御指摘いただきましたが、正確に申し上げると攻防中であります。今後の協議ということでありまして、これを行うことによって、赤字であっても投資したいと思っている会社を後押しすることもできるわけでありまして、年末の税制改正に向けて、再度見直しの実現に向けて全力で取り組んでまいりたい。

 もちろん、地方の財政も必要であります。それは全体で考える問題だ、そんなふうに私は思っております。

近藤(洋)委員 まさにおっしゃるとおりでありまして、地方財政のことを無視していいとは言いません。ただ、まさにおっしゃっているように全体で考えるべき問題であって、そこの企業が元気になり、雇用が生まれることによって地域も元気になるんだ、こういうことであります。

 ぜひここは、攻防中というお話でございましたが、これが実現できたら、まさに異次元といいましょうか、大きな、大きな、大きな一歩だと思いますし、私どもも、野党の立場でありますけれども、そうした取り組みを側面支援してまいりたい、このことを申し上げたいと思います。

 あわせて、もう一つ。世界で一番活躍しやすい国日本をつくりたい、全くそのとおり。ここは質問ではなくてちょっと問題提起だけにさせてもらいたいと思うんですが、実は、私が特に中小企業の方々とお話をしていると、税もそうだけれども、やはり社会保険料の負担がきついと。

 すなわち、今、政労使の会合で賃金について政府において取り組まれている、このことも聞いております。しかし、なかなか賃上げ、ベースアップに、大手の企業、自動車なり大手化学は踏み切れるかもしれませんけれども、中小企業がどうしても踏み切れない。ベースアップをすると、その分漏れなく社会保険料がどんとついてくる、これがやはり大きな要因になっているわけであります。厚生年金の部分であります。

 ここをどうするか、特に中小企業についてどう対応するか。雇用を生み出し、かつそれをベースアップにつなげるということの議論を真剣に始めると、設備投資ないしは法人税だけでは対処し切れないではないかと考えるわけであります。これはこれで大変難しい課題でありますけれども、現実問題として、要するに賃上げを通じて、よいデフレ脱却を安倍政権が本気で目指すとするならば、ここの部分についての取り組みが必要になる。我々民主党も旧政権時代に取り組んでまいりました。

 大変難しいことは十分承知の上でなんですけれども、ぜひそこの部分について、経済産業省は、経済の実態、企業経営の実態がわかる役所としてぜひ果敢にチャレンジしていただきたい。ここは提言、要望でございます。

 さて、法案に移ります。

 今回、いわゆる規制改革の中で新たな機軸を打ち出されました。企業実証特例制度及びグレーゾーン解消制度であります。

 ここで、やや意地の悪い質問で恐縮なんですが、事業所管大臣が関与すること、この事業所管大臣は、大方の場合、経済産業大臣になるケースが多い。もちろん、国土交通大臣なり厚生労働大臣というケースもあるんでしょうけれども、新たなサービス産業を医療の分野でというと経済産業大臣ということになるので、経産大臣がかかわる比率が多いんですが、これまでできなかったことに経産省がかかわり、霞が関の中で力添え、後押し、制度的に口添えすると進むというのは、どうも何か、腑にすとんと落ちないのであります。

 これは何か経産省の権限だけを強化したいのか、それとも、今まで経産省はそんなものがなくても果敢に他の省庁よりチャレンジングに攻めてきたのを、やはり法的なお墨つきがないとできなくなってしまったのか。ちょっと腑に落ちないのですが、この点について、大臣、御答弁いただけますか。

茂木国務大臣 規制の見直し、基本的には規制の撤廃であったりとか緩和ということになってきますので、事業所管大臣の権益が広がるということにはならないと思っております。

 その上で、企業実証特例にしましても、グレーゾーンの解消にいたしましても、一企業にとどまらず、物事の性格にもよりますけれども、できれば全体に広げていく、こういうスキームで考えていきたいと思っております。

 先ほど申し上げたように、今、規制については、全国レベルで行うことを規制改革会議で、そして特区で行う国家戦略特区、企業レベルから全体に広げていくこの産業競争力強化法での仕組みと、重層的なアプローチで規制改革を進めたい、このように考えておりまして、そこの中では、今まで、事業の所管大臣が丁寧に、規制の担当大臣に、この問題がどうなっているのか、企業の提案を受けながら、その説明であったりとか、それについて具体的な議論をするということは余りなかったんだと思います。

 特に中小企業の場合は、そういった説明を十分に行う人材であったり、そういうものが不足している。こういったことも側面支援しながら、大企業だけではなくて、特に中小企業や小規模企業で、新しいことにチャレンジしたい、そのための技術も持っているところを事業所管大臣として後押しするということは重要なことだと思っております。

近藤(洋)委員 時間が迫ってまいりましたので、これが最後の質問になるかと思いますが、ちょっと金融面での対処について一点、まず頭出しでお伺いしたいと思うんです。

 今回は、ベンチャーファンドによる資金供給について新たな機軸を打ち出されました。これはこれでよいことだ、一つの考え方だと思います。

 しかし、ここでお伺いしたいのは、ベンチャー企業への資金供給は主に出資になるわけです。もちろん出資による資金調達は大事ですが、しかし、現実にベンチャー企業が動いていくためには、やはり運転資金、融資というのが極めて重要であります。

 最近はやりのドラマで「半沢直樹」というのがあったわけですけれども、これは銀行をめぐるドラマであります。まさにあれが大ヒットしたのは、いろいろな要因はありますけれども、やはり、あそこで描かれている銀行の態度、また銀行員の態度、対応ぶりというのが非常によくわかるなとみんな思い当たるわけです。中小企業が潰れていったさまなどというのも、うん、わかるなと共感を覚えたわけですね。まだまだ日本の中では、大手銀行というのは人物本位ではなかなか貸してくれない、担保がどうだこうだということでしか貸してくれないという現実があるのも事実だと思うんです。

 こういう面について、融資に対する手だてというのは本法案では、今までやっていると言えばそれまででありますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

茂木国務大臣 確かに、新しいねじが日本を変える、あの時点で大和田常務が半沢ネジに融資をしていれば状況は変わったんだと思います。

 ベンチャー企業を育成していくという意味において、出資も融資も、両方とも私は重要だと思っております。アメリカの場合は、一九八〇年代、まずベンチャーキャピタルに対する税制優遇措置をとることによって、どちらかといいますと出資面、ベンチャーファンドからベンチャーにお金が出ていく、こういったところから始まっております。

 今回の法案では両面を重視するつもりでありまして、まず、出資に関しましては、本法案では、ベンチャー企業への資金供給を促すために、経営支援能力が高いベンチャーファンドを認定して、その認定ベンチャーファンドに対する企業からの出資を促進する新たな税制措置を設けたい。これによってベンチャーファンドにお金が入り、ベンチャーファンドが出資するという形になってまいります。

 一方、委員御指摘の融資に対する支援策としましては、市区町村が整備したワンストップの創業支援体制のもとで支援を受けた創業者に対して、信用保証の限度額を一千万円から一千五百万円へ拡充することによりまして、創業者に対する資金調達の円滑化を図ることといたしております。

 また、起業家に対し開業資金を円滑化する観点から、日本公庫によります創業者向けの新創業融資制度を実施しておりまして、年間一万件近い実績を上げているところであります。

 ベンチャーに対する支援、恐らくこれ以外にも経営ノウハウの支援であったりさまざまな側面が必要だと思いますが、資金面でいいますと、出資も融資も重視していきたいと思っております。

近藤(洋)委員 時間ですので、終わります。

富田委員長 次に、田嶋要君。

田嶋委員 おはようございます。田嶋要です。

 きょうは、逐条的な質問も含めまして、御質問させていただきたいと思います。

 今、近藤さんの質問に対する答弁もお伺いしておりまして、私も、今回の規制改革、第八条からでございますけれども、今までなかなか困難を極めているものが残っている中で、この新たな取り組みでどういうふうに突破できるのかなというところに関しては、同様に少し疑問もあるわけでございます。

 先ほどの大臣の御答弁の中で、特に、今までに加えて中小企業への側面支援ということを御指摘されました。ちょっと質問通告はありませんが、その内容は具体的にどういうことですか。中小企業が規制に風穴をあけていくことを経産省が今まで以上に側面支援する。具体的にもう少し御答弁をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 先ほど申し上げましたのは、企業実証特例さらにはグレーゾーンの解消等を行うに当たって、事業の所管大臣がどういう役割を果たすかということに対して答弁させていただきました。

 恐らく、企業の側から、新しいビジネスモデルといったものをつくり、これが規制に抵触してしまう、こういうことに対して撤廃を求める、もしくは、新しい事業が今の規制にひっかかってしまうのかどうなのか、ホワイトゾーンにしてほしい、グレーのままではなかなか出るのにちゅうちょする、こういう相談であったりとか提案を行うに当たりまして、大企業と比べた場合に、提案を行う人材であったりとかノウハウ面に、特に四百二十万の中小企業の中でもその九割を占める小規模企業はなかなか困難な面があるのではないか、そういったことについて事業所管省庁としても支援していく、こういう意味で申し上げました。

田嶋委員 ということは、中小企業からもし風穴をあけたいというような話があったら、もちろん最初のアクションは会社側からということですが、経済産業省がリソース不足を補って、まさに二人三脚で一緒に突破していこうというような側に立ってやっていただける、そういうような考えでいいですか。

茂木国務大臣 基本的にはその考え方で結構です。

田嶋委員 そうしますと、例えば今話題になっています薬事法の問題等でいろいろ三木谷さんのような動きもございますけれども、改めて確認なんですが、ああやって彼らの目から見てだめだということになったという場合に、例えばケンコーコムさんがもう一度相談を持ちかけたときに、それは突破できる可能性はある、あるいは別の例として混合診療、特定の病院だけが何らかの安全性との組み合わせということで混合診療に関しての規制を突破する可能性は、理論上はあるということでよろしいですか。

茂木国務大臣 この法案の中でも、安全性等に対する措置を講じた上でという形になっているわけであります。

 そういった提案を受けて、それが適正なものであるという場合には、当然、規制の所管省庁に対して我々からも働きかけをし、調整を行い、そこで事業所管省庁と規制所管省庁の間で考えが違う場合には、内閣官房において最終的な調整が行われるものだと思っております。

田嶋委員 安全性等というのは法案の中には書かれていないです。その点はそういうことでいいですね。安全性という言葉自身は、説明資料には載っていますけれども、法案の中には入っておりませんので、確認させていただきたいと思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案の中では、規制の特例措置という表現をとっております。この規制の特例措置という表現の中で、今先生御指摘の安全性の問題についてどう対応するか、あるいは、逆にどういう点について従来の規制を緩和するかといったことを取りまとめて表現している、こういうことでございます。

田嶋委員 十条の第三項四号ということだと思いますけれども、非常に、役所からの説明と法文が全然合わないものですから、理解に苦労いたします。

 もう一度大臣に確認なんですが、では、さっきの例、いろいろ世の中で話題になっていますノーと言われた会社が、今回の場合はケンコーコムさんであり、三木谷さんの楽天であり、もう一度挑戦したら経産省が横に並んで一緒に応援して突破する、あるいは、医療の世界で、混合診療をどこか特定の病院が提案を持ちかけて、茂木大臣が一緒に応援して厚生労働省とかけ合って突破する、これは理論上はあるということでいいですか。

茂木国務大臣 個々の事例について言われますと、それについてどうするかということは判断しなきゃなりませんが、企業からさまざまな提案が行われる、これは、グレーゾーンの解消の問題であっても、企業実証特例であっても、今出された例が適切かどうかといいますと、必ずしも私はそうではないという思いもありますが、一般論として申し上げますと、そういったことについて、事業所管省庁として企業の側に立ち、規制所管省庁と調整させていただくということは十分あり得ます。

田嶋委員 やはり、今の大臣の答弁を聞いていましても、いわゆる岩盤規制と言われているものは、今おっしゃったまさに適切じゃないケースの方に多く当たってしまって、結果的には余り具体的な成果が出てこないんじゃないかなという懸念は私自身も持っております。

 次の確認でございます。

 企業からのイニシアチブを受けて政府側がアクションをとっていくということで、二つの役所が、それ以上かもしれませんが、協議していくわけですけれども、出した側からすると、待てど暮らせど何の返事もないということでは私はいけないと思います。行政サービスとして、提案してきた企業に対してのしっかりとした回答期限を設けるべきだと思います。

 卑近な例を挙げますと、地元の千葉市でも、今、市民のアクションを受けて行政サービスがそれに対して返事をするという実証をスタートさせておるんですけれども、それはホームページで全て、今のステータスがどうなっているかを誰でも見られるようになっております。そして、あと一カ月ぐらいで回答が来る、そういうことがわかるような仕組みになっております。

 今回、新たな規制改革に関する取り組みで、そのような回答期限をしっかり設ける、あるいはそのプロセスを公開していくという考えはございますか。

茂木国務大臣 企業実証特例とグレーゾーン解消制度は、若干制度に違いがあります。

 恐らく、グレーゾーンの解消制度の方がプロセスとしては進めやすい面があるのではないかと思っておりまして、グレーゾーンの解消制度については、回答期限三十日、一カ月を一つの目安とした上で、企業の利便性を高める観点から、個別の事案に応じて、できるだけ速やかに回答が得られるように、お返事ができるようにしたい、こんなふうに思っております。

 一方、企業実証特例制度は、先ほども申し上げたように、安全性等を確保する措置の検討であったりとか規制担当大臣との協議、調整にどれぐらい時間がかかるかという側面もありまして、一律になかなか何日ですとお答えすることはできないんですが、こうしたいと思っています。

 まず、個別の案件について大体どれぐらいのめどで考えたいということをお話しさせていただいて、回答期限の見通しをお示しするということで進めていきたいと思っておりまして、なかなか一律にはこの問題は、出てくる提案にもよりますので、三十日ということよりも、個々のケースに応じて大体の見通しをお示しする、こういう運用をとっていきたいと思っております。

田嶋委員 グレーゾーンは三十日という御答弁をいただきましたけれども、もう一方も、岩盤のかたさと厚さによってやはりカテゴリーがあると思います。だから岩盤規制と言われているわけで、それは、ある程度の見通しを、なるべくオープンガバメントという精神にのっとって提案者にしっかりと出していっていただきたいというふうに考えます。

 それから、同じように、もう一点、八条などにかかわる話でございますけれども、情報公開をしっかりしていかなきゃいけないということで、今の法案ですと、オーケーされた場合には情報公開するというたてつけになっておるわけでございます。しかし、企業側からすると、何がオーケーで何がバツかはやってみなきゃわからないわけです。

 私は、まさにオープンガバメントという考え方にのっとって、うまくいかなかった事例、すなわち、トライはしてみたけれども特例を措置として認められなかったような場合も、個人名というか企業名は伏す形で特定できないような工夫をして極力同様に情報公開していくべきだ、それが国民全体にとっての利益だし、それによって、いろいろほかの後に続く企業の、ではこういうのだったらどうだろうという挑戦も促すことになるのではないかなと思っていますが、大臣、そういうふうに法案を変えることはできませんか。

茂木国務大臣 先生も、一流企業で仕事をされて、おわかりだと思います。例えば、情報通信の分野で、どこかの企業が一つの提案をしたとします。恐らくほかの企業は、どこの企業が提案したものか、A社、B社といっても特定できるケースはかなり高いのではないか、私はこんなふうに思います。これは事例によって違ってきますので、必ずしもそうであると言えるわけではありません。

 そして、そこの提案の中には、先生も御案内のとおり、企業にとって秘密に属するものを含んでいることが想定されるわけでありまして、例えばA社、B社という形であっても、要望の内容、その結果について、全てそのまま公表することは適切ではないのではないかと考えております。

 その上で、その他の企業の創意工夫、こういうものを促す観点から、企業の要望の概要であったりとか、その結果、理由について、提案した企業の意向にも配慮しつつ、適切な形で公表することは考えたいと思っております。

 この制度は、公表の運用によって、せっかく出したいと思っている企業が、出したら自分のところのアイデアが表に出てしまったり、いろいろな秘密が出てしまうということでちゅうちょしてしまう、そういう側面もやはり配慮する必要があるのではないか。

 御提案としてはわかるんですけれども、多分、先生も、企業の側に立ってみるとというか、自分がいらしたときを考えていただきますと、ほかの同じような業種の企業が出したら、A社と書いたらどこの会社なのか、N社と書いたらどこの会社なのかはわかるんじゃないかと思います。

田嶋委員 通信のような最もプレーヤーの少ない事例を挙げられておっしゃっていますけれども、四百二十万社の中小・小規模企業を申し上げているんですよ。九九・七%の圧倒的多数は、そんな特定なんかできませんよ。

 むしろ、そうじゃなくて、こういうアイデアがあるんだ、それはやはりだめなのか、だけれどもこういうアイデアはマルになった、その境目がわからないからグレーゾーンと言うんですよ。だから、それは、やはりこれからの時代は極力オープンにしていくことの利益の方がうんと大きいんだという、まず基本的な認識は僕はあると思うんです。

 だからこそ、やはり特定できないのが基本ですよ、大きい会社はちょっと配慮が要るかもしれないけれども。しかし、そういうような取り組みをしていただきたい。ちょっと見解の相違で残念でございますが、申し上げておきたいと思います。

 それからもう一点、グレーゾーンに関しては全く公開しないというたてつけに法案上はなっておりますね。そこはいかがですか。

茂木国務大臣 先ほど申し上げたのは、全てを公開しませんという形ではなくて、他の企業にとっても、企業の創意工夫を促す観点から、できる限りの適切な公表の形というのは考えていきたいという話であります。

 一方、グレーゾーンについては、似通った照会が出てくる可能性は結構ある、こんなふうに私は思っておりまして、回答のいわゆる類型化というものが可能な場合には、わかりやすいガイドラインをつくる、こういった形で公表したいと考えております。

田嶋委員 次に、これは本会議質問でさせていただいた関係でございますけれども、この二つの規制に関する政策は、よくよく考えてみると結構一体化しているんじゃないかなという感じがいたします。

 企業がこういう取り組みをしたい、ただ、それがグレーで、黒か白かよくわからないということで、本会議でも申しましたが、もしこれが黒だった場合に、それは黒ですよと企業に返すだけじゃなくて、当然、黒だけれども規制の特例措置を設けることで突破できないかというふうに、冒頭おっしゃったように、経済産業省が企業の率先した行動を応援する姿勢で取り組んでいただきたいと私は思うわけでございます。

 いわばこの二つの制度をワンストップで受けとめていただいて、企業の二度手間になることなく、企業を後押しする運用をしていただきたいと思いますが、その点は実現可能でしょうか。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 今先生のおっしゃられましたとおり、まず、この制度そのもの、産業競争力強化法案に基づいてできます企業実証特例制度とグレーゾーン解消制度については、制度としても、いわば姉妹の制度として広報、周知ということをやってまいりたいと思います。

 その上で、具体の事案につきましては、これは最終的にもちろん事業者の方の意向ということになりますので、全て自動的にというわけにはまいらないというふうに思いますけれども、事業者の方が仮にグレーゾーン解消制度を活用した結果、その事業計画が規制の適用を受ける、つまりそのままやると適法でないというふうに判断された場合について、企業がその規制の緩和、先ほどの規制の特例措置の適用を求めるという御意向をお持ちの場合については、企業実証特例制度の活用が当然可能でございます。

 したがいまして、事業所管官庁、私どもといたしましては、企業実証特例制度の活用は可能であるということを紹介するとともに、活用する制度が当初のグレーゾーン解消制度から切りかわるわけでございますので、例えば、仮にそれが安全性の問題であれば、それを確認する上でこういう措置があり得るのではないかということについて助言を行うなど、できる限りきめ細かい指導助言を行うということをしたいと思います。

 その結果、その企業からまさにそういうことを踏まえて企業実証特例制度を活用したいということが示された場合には、グレーゾーン解消制度で既にビジネスプランについては一度議論済みになっておりますので、そういうことも活用しながら、事業者の方、起業家の方にとって利便性の高い運用をしていきたいというふうに考えております。

田嶋委員 ぜひそのような運用でお願いをしたいというふうに思います。

 それからもう一つ、第十四条に関係してお伺いいたします。

 私はこれはちょっと驚いたんですね。規制の特例措置の見直しということでございますが、これは要は、企業の涙ぐましい努力、そして経産省が応援して特例措置が設けられた、しかし、特例措置は後で取り消して規制が再強化されることもフリーハンドで、経済産業省、国がそういうハンドを持っているというたてつけになっておるわけでございます。

 これは、方向性としては、当然、さらなる規制改革、規制緩和の方向であれば結構なわけでございますが、こういう第十四条が置かれているというのは、ある意味大きな、トライしようと考えている企業にとってはちゅうちょする根拠になるのではないのかなというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 規制の特例措置の見直しに当たっては、企業の負担であったりとか混乱をできるだけ少なくしていくということが重要だ、こんなふうに考えております。

 本制度は、企業からの要望を受けて規制の特例措置が実現した後は、特例措置を利用した企業の取り組み結果を踏まえて、できればこの特例措置の適用範囲を全ての事業者に拡大することや、規制そのものの廃止または緩和につなげていく、こういう仕組みにしております。

 ただ、検討過程の中では、規制の全面撤回に向けた検討が行われることも、不測の事態等々が発生して、それを受けて規制の特例措置自体の廃止が検討されることもあり得るわけでありますが、どちらの場合であっても、慎重に検討を行った上で適切に結論を得ることが当然であると思っております。

 基本的な考え方は、規制を撤廃していきたい、そして、その規制撤廃を一企業にとどめずに全体に拡大していきたいと思っております。しかし、運用上何らかの問題が起こってきて、それを拡大することであったりとか廃止するということに問題がある場合は、当然、行政としては、そこで検討する場合が出てくるということになります。

田嶋委員 次の第十五条に規制改革の推進という部分が入ってございますので、基本的には、今大臣がおっしゃったとおり、方向はそっちを向いてやっているというのがこの法案で、全くそれは結構なことだと思います。

 しかし、この十四条が独立した条文としてここに書かれていて、これだけを読むと、何だこれは、せっかく努力して金をかけて特例をもらっても、また後で取り消されるリスクがあるんじゃないかということになる。私は、もう少し、同じだけの比率じゃなくて、基本はそっちなんだけれども、こちらはもう本当に例外的な、今おっしゃったような予期せぬ事態が発生したときだけだということを何らか書き込まないと、これはディスインセンティブといいますか、やる気、トライする意欲をそぐような中身に感じられます。そのことを申し上げさせていただきます。

 最後に、規制改革でございます。

 いろいろ企業のイニシアチブでこういった新しい施策を導入するのは結構でございますが、これはひょっとして何件になるのかなという感じの、先ほど申し上げた不安もございます。同時に、しかし、一番大事なことは、企業が提案してくる以前から、国の行政の中で闘ってもらって、まさに改革を前に進めなきゃいけない。これに任せっきりになってしまって、本来業務がおろそかになってしまうのではないかという懸念もやはりあるわけでございますが、そうはならないんだという仕組みはどこにあるんでしょうか。

茂木国務大臣 今、政府におけます規制改革の取り組みは、この産業競争力強化法案に盛り込まれております企業の発意によります制度改正だけではなくて、国家戦略特区、地域単位のもの、さらには規制改革会議でことし議論を行ってきたさまざまな全国レベルの規制というものもあるわけでありまして、企業の発意を待って規制改革を進めるということではなくて、必要な規制改革は政府みずから進めていきたいと思っております。

 同時に、そういった中で、先端の企業、新しいチャレンジをする企業がもしそういった規制に政府が感じるよりも早く突き当たった場合は、それについては全面的に対応していきたいということで、こういった制度も設けているわけであります。

田嶋委員 私はまさに補完的なものとして今回の制度はありだと思いますけれども、この第二章の実行計画の中で、基本線としての政府みずから取り組む規制改革ということは担保されるんですか。ここの中でPDCAが規制改革に関しても行われていく、そういう理解でよろしいですか。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回、この産業競争力強化法で定めております実行計画におきましては、日本再興戦略、六月に定まりました成長戦略の全体を受けて、経済産業省に限らず内閣全体の施策について盛り込まれることとなっております。当然その中には日本再興戦略の中に盛り込まれております規制改革に関するさまざまな措置も書かれることになりますので、その実行計画の中でフォローアップそれから実現が行われるということになります。

田嶋委員 規制改革が民間のイニシアチブ任せにならないようにぜひ取り組みを続けていただきたいし、強化していただきたいというふうに思います。

 それでは、事業再編について次にお伺いをいたします。

 二十三条から五十条までが事業再編でございますけれども、これは本会議のときも申し上げた内容にかかわりますが、一体、国は個別業界の案件にどこまで能動的な関与をしていく考えなのか。

 その関連で、五十条を発動すると、国が事業再編を促すための相当程度のプレッシャーをかけることができる。調査してそれを公表するということでありますが、いわゆる条文で書かれている指針の決定や認定、そういったことであれば、非常に受け身的な印象を受けます。そして、やはり再編というのは民間主導だ、そういう説明も聞きましたが、本当のところは、やはり相当のプレッシャーを政府からかけていくということになるのかどうか、その辺の考え方を教えてください。

茂木国務大臣 事業再編は、あくまで民間の自発的な判断によるものであり、政府の役割は基本的にそれを促すための環境整備を行うものである、このように考えておりまして、本法案におきましても、経営者の判断を後押しするような思い切った措置によって民主導の早期かつ大胆な事業再編を促進するものとなっております。

 「官僚たちの夏」の時代とは違うんですね、今の状況は、そのように思っています。さらには、この事業再編は、国内だけではなくてグローバルなレベルへ進み、そこの中にサプライチェーンも生まれ、いろいろな合従連衡も生まれてくる、こんなふうに思っております。そういうダイナミックな発想が必要なんだと思います。

 ただ、その上で、これまで事業再編が進みにくく過剰供給構造や過当競争の問題が長期にわたって解消されていない事業分野については、政府が客観的な調査を実施した上で公表することとこの五十条ではしておりまして、これは、広く経営者、さらに言うと市場関係者、金融機関等の問題意識を喚起するとともに、事業再編に向けた経営者の判断に資する材料を提供するために行うものである、このように考えております。

田嶋委員 今まで、いろいろな折に経産省からの説明でプレーヤーが多過ぎるという話はよく聞くわけでございまして、基本的には民間の自発的なアクションということだと思うんですが、しかし、あらかた、どの業界が今そういう状況にあるというのは、もう茂木大臣も頭の中に構想があるんじゃないかなと思うんです。

 だから、それは先ほどの中小企業に伴走してサポートしていくというのと同じ発想で、わかりませんけれども、例えば家電なら家電、そういうところの業界に、やはり今の状況ではじり貧になっていくからみんなで強化していこうというふうな、能動的なアクションをとっていくのではないかなというふうに私は理解いたしました。

 お手元に資料をお配りしておりますので、一点確認でございます。

 これも、茂木大臣、海外を飛び回って頑張っていただいておりますけれども、まさに私どもの政権のときから、エネルギーにかかわる我が国のアキレス腱、特に資源のない日本で、一番の川下の部分のこの二つの組織、JAPEXとINPEX、これはもう御案内のとおりでございます。

 私たちの政権のときから、この辺が大変これから戦略的に大事になってくる、資源獲得のための一番重要な部分だということで認識いたしておりますが、これはどちらもプレーヤーとしては世界の中で非常にちっちゃな存在ということが資料の表側のグラフでございます。

 裏を見ていただきますと、一応並べて、その二つの組織の規模感とか比較を見ていただくと、どちらも上場しておるんですが、かなり売り上げ規模や純利益が、JAPEXは赤字でございます、従業員数も違う。平均年収も、どっちも高いですが、少し違うということです。これは株式を持ち合っておりまして、JAPEXはINPEXを持ち、INPEXはJAPEXを持つ、しかし、どちらも筆頭株主は経済産業大臣というわけでございます。

 これは、私どもが政権与党のころもいろいろ議論がありましたけれども、私は積年の課題の一つだと思っておりまして、まさに資源エネルギー政策の一番の川上の部分のここを強化するために、まさにこの法案でイメージしているようなことの典型例として、最も経済産業大臣に近い組織ですよ、株主ですから。そういうこの二つの組織を統合していくということも可能性としては十分検討に値する。

 したがって、メリット、デメリット、そういったことを、ほかの産業、業界はもちろんそうでございますが、一番身近な存在であるこういった組織の検討も当然ちゅうちょなくやっていただいて、そう遠くない将来に結論を聞かせていただきたいなというふうに私は思っております。

 私自身は、統合した方が強化できる、世界にもっと打って出られるというふうに確信いたしておりますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

茂木国務大臣 委員の御指摘は一つの考え方であると私も思っております。

 その上で、筆頭株主でありますが、半分以上のシェアを持っているわけではありません。基本的には、事業再編はそれぞれの企業の経営者の判断によって行われるべきものであると思っております。

 同時に、このINPEXとJAPEX、国内と海外ということで、事業の仕分けというか、すみ分けはある程度できております。

 ただ、委員御指摘のように、我が国の石油関係企業は石油メジャーと比べて圧倒的に小さいわけですね。それは間違いないんですよ。そうすると、このINPEX、JAPEXだけじゃなくて、JOGMECも含めて、どういった形でこれからの資源外交戦略を展開していくか、検討しなければいけない課題だと思っております。

田嶋委員 基本は民間のイニシアチブということであれば、まさにこの会社に関しては株主であるから、マジョリティーは持っていませんけれども、より能動的にそういった検討を積極的にやっていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

富田委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平でございます。

 茂木大臣、御無沙汰しております。さきの通常国会以来、再び大臣と議論する機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 きょうは、時間も短いので、少し提案をさせていただきます。

 これは、全く同じ方向を向いた提案であるということを申し上げたいと思いますのは、茂木大臣御自身が本当の意味の改革派であるということを私は確信しております。

 思い返しますと、大臣が民間セクターから華々しく政治の世界に出てこられましたときに、私も霞が関におりました。そして、十年以上前ですけれども、経産省でIT担当課長をしておりましたときに、まさに茂木大臣をトップに、例えば平井たくや先生とか伊藤達也先生とともに改革のために大暴れをしていただきましたし、私どももそれをお手伝いさせていただいた経験があるものですから、本当に規制改革をしたい、その思いはもう党派は関係ないと思います。その意味で幾つかの御提案をさせていただきたいと思います。

 実は、昨年、私は、経済産業大臣政務官をさせていただきまして、古巣なんですけれども、若手の官僚の皆さんといろいろな議論をしてきました。そんな中で、この法案はすばらしいと思いますけれども、競争力の強化というのは二つあると思うんです。

 一つは、例えば、楽天の三木谷さんだとか、孫さんだとか、いわゆる天才型の、彼らはビジネスモデルを変えるという意味の天才ですけれども、技術的にブレークスルーする起業家もいますけれども、そういう大きな起業家を応援することはとても大事だと思います。

 一方で、私の選挙区、あるいは同僚の議員の先生方の選挙区を思い起こしていただきますと、地方の中小企業を中心に、地味ながら、初代、あるいは場合によっては二代目、三代目だけれども、事業の中身を変えながらこつこつとやっている皆さん、ここの競争力もやはりふやしていかなきゃいけない。その二つがあると思います。

 きょう、私は、後者について少しこの法案で質問したいんですけれども、昨年、若手と話していたときに、これは一般論にいたしますけれども、選挙区が和歌山市なんです。ここは、市内は割と市街地なんですが、車で十分走ると田んぼの田園地帯なんです。そういうところで、和歌山ですから、昔は繊維産業のメッカだったんです。これがみんな中国に工場が移っちゃったんです。

 そんな中で、初代で、何とか辛うじて繊維産業を和歌山市内で、今二、三百人雇用しながらやっていらっしゃるところがある。これは、販売方法を上手にして成功されているんです。では工場を拡張しようとなったときに、工場立地法に緑地規制というのがあるんです。もちろん、工場を建てるところですから対象になるんです。だけれども、周りは全部田んぼなんです。緑の中に工場を建てるのに、二五%の緑地制限がかかるんです。これはどうかと。

 それで、その社長は悩みまして、つまり、そうするとなかなかペイしない。田舎でも土地は案外高いです。やはり中国に行くかなというディスカッションをしていた中で、通産省の若手の人から、いやいや、それはまさに個別の企業が、特区じゃなくて、新しい規制改革を提案して、何か実現できるようなことができるといいですねと。

 例えば、緑地にかわるものということであれば、工場は大体平屋ですから、屋根にソーラーパネルを敷いて省エネにするということで、例えば屋根のソーラーパネルの面積と緑地の面積を足して二五%をクリアできないだろうかと。今はできないんですよ、できないんですけれども、そういうことができると、ある意味、その社長は中国へ行かなくていいし、また、地元で雇用が二、三百ふえるということになるわけです。そんな議論をしていました。

 結果として、この法案を出していただきまして、本当に喜んでいます、個別論を言っているわけじゃありませんけれども。そういう、天才じゃないんだけれども、中小企業で一生懸命、地元の雇用を考えながら知恵を絞っている人たちがたくさんいると思うんです。こういう人たちを助けることが案外この法案の肝じゃないか。

 今、田嶋委員もいろいろおっしゃっていましたけれども、一部の大企業も大事です。しかし、その裾野の中小企業の皆さんを助けるのに、この法案はとても意味があると思っています。

 そこで、大臣にお聞きしたいんですが、法案の二条の三項に定義があります。新事業活動、いろいろ書いてあります。新事業活動でないと、法律上のたてつけは入らないんです。従来型の繊維製品をつくっていて、もう販売方法を革新的にしちゃって成功したわけです。新たに拡張する、工場をつくる、これは新事業になるのかどうか。

 要件次第では申請ができないということになるかもしれませんので、ここはひとつ大臣の方から、新事業活動は主務省令で定めるわけですが、ここの定義をどのようにお考えか、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

茂木国務大臣 恐らく、岸本先生の和歌山と私の栃木、そんなに状況は違わないといいますか、私も足利市、繊維の町の出身ですけれども、今の、繊維で二百人、三百人の雇用を持っている、私は、相当の経営者の方だなと。御苦労もされながら、また、革新的なことをやっていらっしゃる、こんなふうに思っているところであります。

 この法案の新事業活動でありますけれども、何か新事業活動というと分野を絞るようでありますけれども、できるだけ幅広いチャレンジを新事業活動として位置づける方針であります。

 具体的に、新事業活動には、分野を特定することなく、例えば新たな商品、サービスの開発、生産だけではなく、生産性の向上に資する新たなビジネスモデルの採用や生産工程の高度化など、システム面で新規性のある取り組みも含めることとしております。

 主務省令で定めるものとは、これらを具体的にわかりやすい形でお示しするためのものでありまして、何か省令で定めるというと、非常に分野を限定するというイメージがあるのかもしれませんけれども、こういうことですよというのを知っていただくために定めようと思っております。

 繰り返しになりますが、どの分野はいい、どの分野はだめとか、新規性についても、単に商品だけではなくて、あらゆる面での新規性といったものも対象にしていきたいと思っております。

岸本委員 大変温かい御答弁をありがとうございます。

 今ヒントをいただきましたので、ぜひ、私の選挙区だけじゃなくて同僚の議員の皆さんも、派手さはないけれども地道な中小企業の提案を一つ一つ拾い上げていただきますように。私も頑張ります。今の言葉は社長に伝えて、提案をするように促したいと思います。

 ここから先は少し現場の話をしたいと思うんですが、企業実証特例制度とグレーゾーン解消制度については、今、私の前に質問があったと思います。

 それで、すごく単純化して、私の理解がひょっとしたら単純過ぎるかもしれませんが、例えば、グレーゾーン解消制度、これは規制に当たるんですか、当たらないんですかと仮に聞きます。

 これは経済産業省はいいんですけれども、いろいろな役所があるんですよ。どことは言いません、例えば厚生労働省とか。インターネットの薬販売禁止が最高裁で違法だとなっても、いまだに三年間の対面販売を要求するような、あり得ないような方々なんです。

 私自身も、霞が関にいたときに交渉します。これも言い過ぎですけれども、いわゆる経済官庁、菅原さんとか座っていらっしゃいますけれども、経済官庁同士だと、大体用語が一緒ですし、発想が一緒なので、会話は成り立つんです。しかし、厚生労働省と言っちゃいましたけれども、旧内務省系、また言っちゃいましたけれども、違うんですよ。言葉も違う、発想も違うのでなかなか会話にならない。

 しかも、課長補佐あたりになると、まず譲らないんですよ。譲ったら怒られる。だから、課長補佐同士でやると、まず話し合いは平行線。このグレーゾーンもそうなると思います。済みません、そうなると思いますよね、菅原さん。答弁は求めませんけれども。課長補佐同士で一カ月にらみ合うんですよ。

 そのうち、そうはいっても三十日ですから、何とかかんとか政治家が出てきて、副大臣がやることはないと思いますけれども、ちょっと政務官も行って、まあそう言わずにということになってきて、結果としてやはりこれは規制の対象ですとなったときに、どうするんですか。

 意欲があれば、よし、それじゃ企業実証に行くかということになるのが何かすごく二度手間的な感じがするわけで、もし私がいいアイデアを持っていたとするならば、グレーゾーンには行かずに、最初から企業実証特例に行くと思います。しかも、それは、いろいろな意味で、地元の経産局、業界団体であれば経産省の窓口に行って相談しながら、グレーゾーンへ行く暇があれば企業実証に行くんじゃないかなという気がしております。

 そこで、質問なんですが、例えば経産省所管のよく似た制度にノーアクションレター制度というのがありますけれども、これは、今まで経産省で使われてきた実績というのはあるんでしょうか。お聞きします。

田中大臣政務官 お答えいたします。

 経産省としては、平成十三年度からノーアクションレター制度に対する適用の事前確認を受け付けてきております。

 そして、ここ三年間、二十二年から二十四年までに合計で十二件の照会、回答を行ったところであります。

 主な分野では、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に六件、電気事業法に関するものが三件であります。

岸本委員 十二件なんです。いわゆる笛太鼓で、鳴り物入りで、私も当時霞が関にいましたけれども、大騒ぎをしてつくったノーアクションレター制度が経産省所管で十二件。これまでの累積であります。

 さて、松島副大臣。同級生の松島副大臣に質問する機会を与えていただいて、感謝しております。大学の同級生です。尊敬する同級生の一人であります。

 副大臣、本音で答えてください。ノーアクションレターが十二件ですから、本当にこのグレーゾーン解消制度が使われるのかどうか、どう思われますか。

松島副大臣 まず最初に、岸本委員に答弁させていただくというのを非常に光栄に感じております。

 先ほどちょっと話がありましたが、工場立地法の緑地の問題は常々私も問題意識を感じていた、緑豊かなところで何でわざわざまたやらなきゃいけないかということを。

 先日、和歌山県の方に、私、伝統的工芸品の全国大会、和歌山市で大会そして海南市で展示を見て回りまして、田畑広がるところだというのをよく認識しながら、おっしゃるとおりだと感じていた次第でございます。

 さて、御指摘のグレーゾーン解消制度は、今までの制度と同様、ろくな結果にならないんじゃないかという、率直な、霞が関の官僚システムを全てわかった方の御質問にお答えいたします。

 違いは、安倍政権のもとで、経済官庁が一つの役所だけで張り切って突っ走って制度をつくるのとは今回は違うと私は思っています。違うし、違わせなきゃいけない。

 そして、もちろん、もう既に回答を述べられたように、グレーゾーン解消制度で黒か白かと出して黒だと言われたら、そこからもう一度チャレンジしようと思う方は企業実証特例制度を活用していただくことになりますし、今後、法律に基づく通達などにおいて、それで尻込みする企業があったらいけませんから、きちっと書いてまいります。

 最初からこっちへ行った方がいいのか、グレーゾーン解消制度をとった方がいいのかというのは、事業を所管する例えば経済産業省が相談されたとき、それは企業と経済産業省で知恵を絞って、どっちがうまくいくか、早くいくか、そういうことを考えてアドバイスをする、そのような考えです。

岸本委員 全くそれは模範答弁としてお受けいたします。

 要するに、現場の課長補佐クラスの官僚がどう判断するかというところもあるので、多分これは一体化されていくんじゃないかと思うんですね、運用上は。絶対これは規制に当たりませんからこっちでいきましょうという場合もあるだろうし、これは白黒五分五分ですからもう実証特例へ行っちゃいましょうよ。多分、何か一体として運用されるような気がしますので、そこは本当に経産省がモデル的な運用をぜひしていただきたいと思います。

 ちょっと中途半端な時間になってしまったので、また質疑の時間をいただいていますので、芽出しだけをしたいと思うんです。

 実は、役所の得意なやり方で、認定制度というものがあるんです。今回も認定制度があって、いろいろな基本計画をつくって認定をする。

 認定制度というのもよしあしがありまして、私も含めて、経済産業政策、変な人が出ちゃいかぬ、悪い人が出ちゃいかぬ、効率をよくしなきゃいかぬ。ですから、ある程度役所がいわゆる認定をしなきゃいけない。スキームはわかるんですけれども、二十一世紀になって、新しいパラダイムになってきたときに、そういう行政手法が本当にいいんだろうか。

 これはちょっと次回に質問させていただきたいんですけれども、二つあります。

 一つは、認定といっても、形式的になりがちです。だって現場のことがわかっている人が役人をやっていませんから。どうしても形式的審査になります。したがって、書類が多くなるんです。めちゃくちゃ書類が多くなるんです。だから、認定を申請しないんです。悪循環です。

 それも理由は簡単です。減税が絡みますと、主税局は認めるんです。しようがないから。政治的プレッシャーがありますから。認めるけれども、減税額が少ないように要件を厳しくするんです。絶対に申請がないようにするんです。私がつくってゼロ件のものもありました。そうすると、主税局は悔しくないんです。減税がないから。

 経産省の課長は、それでもいいんです。旗が立ちますから。実績が出るのは二年たったときですから。課長が税制一本とれば、もう出世しますからね。

 そこで、主税局と経産省の課長がラブラブになれるわけです。それで何か仕事をした気になるんです。これがこれまで二十年我々のやってきたことなんです。これをやめなきゃいけないと思うんです。

 だから、認定なんというのはやめる。例えば、ベンチャーファンドを今度やりますけれども、ベンチャーファンドを進めたい、これは認定要らないですよ。金商法上別にお墨つきじゃないけれども、金商法でクリアしているベンチャーファンドなら全部減税の対象にするぐらいのことをすれば、役人の恣意性がゼロになるんです。

 どうですか、大臣。それだけ御答弁ください。

茂木国務大臣 省庁の現場を知り尽くした岸本議員の本当に大変示唆に富む提案だと思っております。

 これは、書類が多過ぎるというのは大きな問題でありますし、形式になってはいけない、そんなふうにも思っております。

 本当の意味の結果ではない、ただ形式の結果を出した課長が出世しないようにしてまいります。

岸本委員 次回また質問します。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 本日もまた質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず最初に、今回の産業競争力強化法案、先ほど岸本委員もおっしゃっていましたけれども、やはり省庁の抵抗は相当大きいものだと思っております。本当の意味で規制の緩和を目指していくのであれば、大臣のリーダーシップ、それから法案を所管されています経済産業省の皆さんの頑張りがやはり一番重要になってくるのではないかと思っておりますので、ぜひとも頑張ってやっていただきたいなとまず最初にお話をさせていただきます。

 その中で、先ほど来お話がありましたけれども、今回の国会は成長戦略の実現国会であるとか実行国会であるというふうなことを安倍総理もお話をされております。私はやはり、茂木大臣も先ほど御答弁いただきましたけれども、とにかく実行するということは非常に重要だろうというふうに思っているんです。

 ただ、この実行していく中で、私も、先ほどから田嶋委員であるとか岸本委員がお話しされていることはもっともで、きょう同じようなことをお話ししようと思っていたので、多少重なってしまうかもしれないですけれども。

 実行者として、実行とは実際に行うの実行ですけれども、これが実際に効いていくかという実効性、それから実現可能性というものについて、ちょっと考えていきたいなと思っておりますので、そういう観点で御質問させていただければと思います。

 まず最初に、企業実証特例制度についてお話をさせてください。

 ここに目的として、「骨太の規制改革を推進するツールとして、企業自らが安全性等を確保する措置を講ずることを前提に、企業単位で規制の特例措置を適用する制度」、「企業の技術力等に着目し、全国一律の規制改革を先導するとともに、産業競争力の強化と安全性等の確保・向上を同時に目指します。」と書いてあります。

 この目的を前提にして、いま一度ちょっと聞かせていただきたいんですけれども、本制度の適用の該否、企業がこういうふうなプランでこういうことを考えているんだという申請をしてきたときに、その該否を判断する基準を今の時点で何かしら考えられているのかということについてまずお話をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、江田(康)委員長代理着席〕

菅原政府参考人 企業実証特例制度でございますけれども、これは先ほど大臣からありましたように、まず入り口のところでは分野を特定することなく、しかも、商品、サービスの生産、開発にとどまらず、さまざまなビジネスモデルというソフト面の新規性についても幅広く取り入れたいと思います。

 ただ、これが企業実証特例制度で認められるかどうかというのは、そういった入り口を、まあ低いハードルだと思いますけれども、通過した上で、今の規制に対するどのような代替措置を講ずるのかという、個別具体のビジネスモデルが出てこないとわからないものですから、そこはなるべく規制の高いハードルを越えるべく支援していきたいと思いますが、最終的に規制官庁の理解を得るためにはしかるべく代替措置を含んだビジネスモデルが必要になる、そこを判断していくことになろうと思っております。

木下委員 相当多岐にわたるものが申請されてくる、されてこなければならないんだというふうに思っているんですが、なぜ基準について聞くかといいますと、目的の中に、先ほど私お話しさせていただきましたが、企業単位でということと企業の技術力に着目してという、キーワードが二つあったと思うんです。

 このことは、さまざまな業種について、多岐にわたる技術を逐一吟味してそして判断するということになると思うんですけれども、ここで問題になるのが、それだけ多岐にわたることを、ちょっと確認なんですけれども、先ほど、三十日以内でまずは答えますというようなお話をされていたかと思うんです。そういった技術専門性の理解などをしっかりして、それで判断していくことが今の国の中で本当にやっていけるのかどうかというところがまず質問なんですけれども、お聞かせ願えますでしょうか。

菅原政府参考人 まず、三十日というのはグレーゾーン解消制度でございまして、企業実証特例は個別の判断になろうかと思いますが、まさにこれまで、グレーゾーンにせよ企業実証特例にせよ、何らかの規制についての白黒の判断を仰ぐ、もしくは規制改革の要望をするときに民間企業の方が直接規制官庁に行くということになりますと、正直申し上げて、民間のビジネスの実態がわからない人を相手に、先ほど岸本先生からもありましたけれども、会話をして、理解をしてもらうということになります。

 そこは今回は両制度とも事業所管官庁がしっかり民間企業をサポートするということで、もちろん我々、民間の人ほど個別実態については詳しくないかもしれませんが、少なくとも規制官庁の方よりは企業実態についてより多くの情報を得る立場にあるわけでありますので、そういった民間企業の方の新技術についても、我々の中にも技術の専門家を抱えておりますので、そういった人間の能力も活用しながら的確に判断した上で、規制官庁とある意味で議論を真剣に交わしていく体制が一応あるのではないかというふうに理解しております。

木下委員 ありがとうございます。

 まさしく、私、最初に言わせていただきました、頑張ってくださいということだと思うんですけれども、やはりこの制度を実際に取り込んでいくことになれば、今まで以上に、僕はこれは相当大変だと思うんです。これを本当にやり遂げる気概というのか、それをしっかりと示して、それがなければ、恐らくほかの省庁を納得させることは、まさしく先ほど岸本先生も言われたように相当難しいと思いますので、これは頑張ってやっていただきたいと重ねてお話しさせていただきます。

 次に、これもまた田嶋議員が先ほどちょっとお話しされていたことなんですけれども、もう一度整理をさせていただきたいんです。

 適用された事例が、どういう特例が認定されたのかということが、ちゃんとその後の抜本的な規制緩和につながるためにも、それから、ほかの企業が、ああ、こういう形でやればこの制度が使えるんだということがしっかりとわかるためにも、基本的に公開されるもの、もしくは基本的に公開されるべきものだというふうに私は考えているんですけれども、これはその理解でよろしいでしょうか。

菅原政府参考人 御指摘のとおりでございまして、これはまず企業単位から規制の緩和を求めていくものでありますけれども、それは第一番目に提案した企業だけに閉じられるものではなくて、可能な限り第二、第三の人が出現することを前提としますし、最終的には全国もしくは全ての事業者にその規制の改革が適用されるということを狙いとして、まずは個別の企業から始めるという制度でございます。

木下委員 そこで先ほど大臣が御答弁されていたところに入ってくるんですけれども、制度で適用された企業名も公開されるのかということも一つちょっと質問させていただきたいんです。

 公開された場合に、すぐにほかの企業が追随してくる可能性というのがやはり考えられると思うんです。最初に申請した企業にとっては好ましいものでないケースもあり得ると思っておりまして、そうなったときに名前まで出てくるのか。それとも、名前が出なかったとしても、先ほど来お話しされていましたが、特に大企業の場合は、ああ、どこが何をやっているんだということはすぐわかってしまうわけで、それを考えた場合には、やはりこれは慎重に対処していかなければならないのかなと思っております。

 その点について、もう一度、どういうふうなことを考えられているか。大臣にお願いします。

    〔江田(康)委員長代理退席、委員長着席〕

茂木国務大臣 企業実証特例制度にしましても、先端的な取り組みを始める一つの企業から始まっても、最終的には日本全国に、全体に広げていきたい、こういうふうに考えております。

 その上で、アイデアであったりとか新しいビジネスモデル、そこの中に、新技術であったりとかその企業にとって秘匿をしたい情報が含まれている可能性、懸念もあるわけでありまして、そこにつきましては、当該企業の意向も踏まえながら、適切な形で、でき得る公開というのはやっていきたいと思っております。

 ただ、その公開は、あくまでそれによって新しい取り組みが広がっていくということを進めるものでありまして、それが公開されることによって、同じような取り組みをやりたいというところが、かえってこの制度を利用することによって自分が不利益をこうむるということでちゅうちょする、萎縮するようなことがないようにはしていきたいと思っております。

木下委員 ありがとうございます。まさしくそうだと思っていて、ここは相当しっかりとした決め事を表に出していかなければならないんじゃないのかなと思っております。

 やはり、今大臣おっしゃられたように、個別でそれぞれ考え方が多分違うと思います。公開した方がいいもの、その企業にとっては公開されると相当痛手をこうむるもの、逆に、痛手をこうむるかもしれないが、その産業が発展していくことを考えた場合には公開しなければならないもの。これは政府が判断するべきところもあるかもしれない。

 恐らく、申請した側と政府の側で相当攻防もあり得ることなんじゃないかなと思っておりますので、これについて、先ほどお話しさせていただきました基準というところです。

 基準はなかなか決められないことはわかっていますけれども、ある程度、こうなったときはこういうことが考えられる、こういうときには公開しますとか、そういうことについて、やはりぱっと見てすぐわかるような、先ほど言っていましたけれども、たくさん書類を読まなきゃわからないというんじゃなく、気軽に、気軽にと言ったらあれですけれども、申請ができるような基準をしっかりと示していっていただきたいと思っております。

 もう少しその話を続けさせていただきたいんですけれども、大臣が先ほど新しいビジネスモデルというふうにおっしゃられました。新しいビジネスモデルでいいますと、私もIT系のことを昔仕事にしていたこともあって、特に、ITが絡む、技術的な部分がしっかりと構築されているようなビジネスモデルに関しては、大半の場合が、企業側はビジネスモデル特許の申請を考えると思っております。

 今の話と絡むんですけれども、恐らく、この制度の申請もしくは照会をするのとほぼ同時に、ビジネスモデルの特許の申請をすることが相当考えられるんじゃないかなと僕は思っているんです。

 これについて、ビジネスモデル特許として申請されますと、公開されるまで一年六カ月ぐらいかかると私は記憶しているんですけれども、その間は閉じておいてもいいよというふうな決まりになっていたかと思うんです。そこと、今回の公表するしないというふうな話と、この辺の整合性をどういうふうに保っていくのか。恐らくこういうケースは絶対考えられると思いますので、今どういうふうなことを考えられているかお話しいただけますか。

菅原政府参考人 今おっしゃられたようなケースというのは十分考えられると思います。

 ただ、規制改革の現状を考えますと、規制を緩和する際に、今先生がおっしゃったような極めて限定的な新しいビジネスモデルに特定の規制を緩和するというよりは、そのビジネスモデルを核としたもうちょっと広範な、その外縁も含めた、ほかの人も、そのコアの新しいビジネスモデルなり新技術はわからなくとも、こういう代替措置を講ずればこの規制については一定程度こういう緩和が認められるんだなというところで、恐らく、そのコアの企業秘密に属するようなところは公表の対象外としながらも、この規制についてはこういうことをやれば緩和の対象になると。

 規制改革をやるときに、余りハードルが高い規制改革をやっても仕方ないと思いますので、そういった企業秘密とは違うもうちょっと下のレベルのハードルでその規制の緩和ができるかできないかというところをまずはトライして、そしてそういうところが獲得できれば、企業秘密の部分を暴露することなく、第二、第三の人が継げるような形に持っていくということが考えられるのではないかと思います。

木下委員 なかなか難しいお話だと思うんですね。やはり、それも個別で判断していかざるを得ないんだろうなと。

 ここでちょっと、先ほど田嶋委員も聞いていらっしゃいましたけれども、逆に、この制度が適用できなかった場合に公開されるのかどうかといったところです。条文ではそうじゃないというふうなことを言われて、いや、こういうふうなものはだめでしたよということもある程度公開していくことも考えるというふうにおっしゃられていたと私は理解したんですけれども、その理解で正しいですか。

菅原政府参考人 御指摘のところについて、例えばグレーゾーン解消制度が考えるに当たって一番わかりやすいと思うんですけれども、ある企業が自分のビジネスをやるに当たって、これが現行の規制の対象となるのかどうかというトライをするときに、それは法律違反ですよという判定が出ることは十分ありますけれども、法律に違反することをこの企業がしようとしていたのかというようなことが情報として全て公開されますと、ある意味で不測の風評被害をその企業が受けることも想定に入れなくてはいけない。

 例えばグレーゾーンであれば、実証特例とは異なって、現行の規制がどうなっているかという確認だけにすぎないので、特に緩和という恩典を受けるものではないということを考えれば、全てグレーゾーン解消の請求について個別具体的にそれを情報公開するというのは必ずしも適切ではない。

 ただ、みんながトライして、常に黒判定を受けるというように類型化されるような場合、これは二番目、三番目の人が同じ轍を踏む必要性は全くないと思いますので、先ほど大臣が申し上げたように、例えば複数の似通った、類型化されるような問い合わせ、要望については、個別企業とかということを公表することなく、ある意味でガイドラインという形でお示しして、二度手間、三度手間を省くことは十分考えられるのではないかというふうに考えてございます。

木下委員 主にグレーゾーンのところでお話をされたかと思うんです。

 では、ちょっと、そのグレーゾーン解消制度、ここも目的のところを少し読ませていただきますと、「企業が、現行の規制の適用範囲が不明確な分野においても、安心して新分野進出等の取組を行えるよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ、規制の適用の有無を確認できる制度」と書いてあります。

 今度は基準というところですけれども、その適用の基準が具体的にあるのかどうか。というのは、ここに書いてある事業計画が、要は、うちはこういう事業計画を立てて、ほかの会社はこういう事業計画を立てている、ぱっと見た限りにおいては余り違いはないだろうと思われる部分というのはあると思うんです。なのに、あっちは認定されて、うちの企業は認定されませんでしたということが起こりかねないんじゃないかと僕は思っておりまして、「具体的な事業計画に即して、」と書いてあるんですけれども、そこはどういう基準なのかということを、もう少し突っ込んでお話しいただけますか。

菅原政府参考人 企業実証特例もそうでございますけれども、特にこのグレーゾーン解消制度の、先ほど岸本先生からありましたノーアクションレターとの最大の違いは、抽象的、一般的な法令適用の有無について聞くのではなくて、個別具体的な事業計画に基づいて判断を迫るというものですから、今までであれば、一般的に、これは黒ですか白ですかと言われれば、どちらかと言えば、よくわからないので黒ですと言われるのが通例だったと思います。しかし、今回は、個別具体的な事業計画を出すものですから、この事業計画のどこが黒なんですか、なぜ黒なんですかと、より具体的な話を規制当局とできるというところが、ノーアクションレターとの最大の違いだと思っております。

 先生の御質問にお答えすれば、例えば似通ったような事業計画であっても、コアのところに規制当局の琴線に触れるところがあるかないかで黒となったり白となったりということはあり得るというふうに思っていまして、その意味で、事前に、どの規制についてどういうビジネスモデルで照会するのかわからない段階で基準を定めるというのは、かなり難しいとは思っております。

 ただ、法の運用において、その人のビジネスモデルが、同じだと思った人が白になっているのになぜ私は黒になったんですかということについては、公表するしないは別にして、その人に対して、我々事業所管官庁として、あなたのここが黒だったんですよということを懇切丁寧に説明することによって、例えばそこを改変したビジネスモデルであれば、グレーゾーンではなくて白の中で正々堂々と安心してビジネス展開ができるというふうなことで、そこは個別の対処というのも十分考えられるんじゃないかと思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 この法案、先ごろの本会議でも、官が民のやることに介入して実際に産業が発達するのかというふうなことを言われていた方々もいらっしゃいました。

 その中で、先ほどの話じゃないんですけれども、今まで官がやってこなかったことをやるんだというふうに、今の御答弁を聞いていて私は思ったんですけれども、やはり、今までやれなかったことを実行していってもらうということの重要性があるんだろうな、それができなければこの法案自体に私は実効性がないというふうに判断をしたいと思っております。実効性があるようにするためには、皆さんの実行にかかっているんだというふうに思いますので、ぜひとも頑張ってください。

 次に、事業再編の促進についてお話をさせていただきます。

 事業再編を行う場合に、切り出し元となる出資会社は、その出融資額の一定割合、七〇%相当ということを想定されているようですが、それを損金算入することが認められるということになる。そうなったときに、この税制優遇措置によって、今考えられている中で、税収がどれぐらい減ると見込まれているのかということが一つ。それから、それに対して金額的にどれぐらいの市場効果が期待されているのかということについて、この辺、具体的な数値があるかどうかをお聞かせください。

菅原政府参考人 事業再編がどれだけ出てくるのかというのは、まさにこの法律の運用をどう我々がやっていくか次第だと思っております。そういう意味で、事業再編案件がどれだけ出てくるのかというのは、なかなか予測しがたいというところがございます。

 ただ、これまで財務省と事業再編に関するいろいろな税制要求をやる中で、過去の事業再編のペースその他を考えれば、この事業再編絡みだけで百五十億程度の減税規模というのはある意味で想定して、財務省とは、いわゆる財政再建とのかかわりについても議論してきた経緯がございます。

 この百五十億が一体どの程度の事業再編のインパクトになるのかというのは、正直申し上げて、今言ったようにかなり仮定を置いた数字でございまして、大企業同士の事業再編がどれだけ起きるのか、もしくは中小企業の、小さい方々の事業再編であれ、その数がどの程度出てくるのかというのは、相当ラフな計算をして置いています。そのインパクトというのは、減税規模以上に、実を言うと、恐らく事業再編については、規模にかかわらず、どんな再編が行われるのかというところが非常に重要だというふうに考えてございます。

 その点、減税規模と設備投資金額の相関関係というのは、事業再編税制については余りないのではないかというふうに考えてございます。

木下委員 私、今のところがちょっと残念でならないんです。

 というのは、理由はある程度わかるんです。ただ、それなりの税制措置をするのであれば、それに対して、普通の企業であれば、どんなに難しかろうが、こういう前提であったとしたらこれぐらいの規模になるであろうとか、だめな場合でもこれぐらいはいけるだろうとか、そういう数値化したものがなければ、例えば会社の制度を変えていくにしても決裁は普通はおりないものだと思っているんです。

 そういう感覚はないんでしょうか。

茂木国務大臣 今、菅原局長の方から、減税規模、これまでの税務当局との議論の中では百五十億円程度ということなんですけれども、例えば法人税を減税するとか、エコカー減税をつくる、これは市場にもう出回っている車が何台あるかとかそういうことで想定できるわけですけれども、まさに新しい試みなんですよ、やろうとしていることは。これまでにない試みでありますから、その規模を今の段階で想定するのは難しい。

 ただ言えますことは、これをすることによって新しい企業が生まれていきます。そこからプラスの税収が生まれてくるんです。それによって、マイナスの額というか減税額が幾らになるかはわかりませんが、それを確実に上回るような効果を我々は上げていきたい、また上がるものだ、このように考えております。

 一つは、こういった減税の制度をとることによりまして、複数の事業分野を抱えている企業同士が共通の製品分野に係る部分を切り出して統合するということになれば、スケールメリット、お互いに長所を生かして、市場の開拓であったりとか海外での受注ということもしていくことができます。同時に、設備の効率化も図れるということでありますから、当然、収益の改善にはつながっていくんだと思います。さらには、例えばカーブアウト、スピンオフ、こういうことが起こっていく。

 その企業の中にあっては、なかなかその事業が育ちにくい。一つには、やはり大きな会社の中でちっちゃな新しい事業をやっても注目を集めない。また、その事業の運営の制度がその企業の制度とは違う場合になかなか伸びない。さらに申し上げると、企業にはそれぞれ文化というのがあります。文化が違うものはその企業の中では伸びないという部分があるんです。

 典型的な例はおもちゃです。例えば玩具。タカラとバンダイという会社があります。今はタカラトミーとバンダイナムコになっていますけれども、かつては、同じように玩具をつくっているんですけれども、タカラは女児玩具が得意なわけです。そして、バンダイは男児玩具が得意なわけです。キューティーハニーが登場するまではそういう時代だったんです、間違いなく。

 女児玩具というのは人間に近ければ近いほどいいから、どうやってもバービーが日本で売れずに、リカちゃんが売れたわけであります。一方で、男児玩具というのは人間から遠ければ遠いほどいいから、ガンダムのようなものをつくるわけですよ。だから、バンダイが女児玩具をやっているんですけれども、うまくいかない。タカラが男児玩具をやってもうまくいかない。

 そういう文化の違うものを新しいところでつくり出した方が育つ。しかも、それに違う企業の経営のノウハウであったりとかチャネルというのを組み合わせたら、確実に新しいビジネスというのが広がり、そこからまた収益が上がってくるということでありますから、事業の再編を通じて、確かに減税もあります。ただ、これはどれだけ起こってくるかによって違ってくるものがある。そこがエコカー減税等々とは違うということを御理解いただいた上で、我々は、今までとは次元の違うことをやるんだという思いで取り組んでいきたいと思っております。

木下委員 ありがとうございます。本当にうなずくお話だと思うんですね。

 やはり、大臣がそういう言葉を発していただき、かつ本当に実行していくということが一番重要なことなんだろうというふうに思っております。

 それで、あえてちょっとお話しさせていただくんですけれども、前回もタカラとバンダイのお話をされまして、私の友人で、いわゆるオタクの人間が、ちょっと名前は忘れてしまったんですけれども、タカラでも男児玩具で結構有名なのがあるよというふうに言っていましたので、ちょっとお話しさせていただきました。

 今のお話はもうほとんど解は出たと思うんですけれども、もう一つ聞きたいことがあります。

 統合によって国際的な市場シェアをやはり狙っていくというのが一つの目的だと思っております。

 過去、そういう事例では、私もちょっと見せていただいたんですけれども、ジャパンディスプレイ。今、成功と言っていいのかどうか、まだ途上だと思いますけれども、ある程度の成果が出たものがあると思います。

 これが、お答えできるかどうかというところもあるんですけれども、今後、どういった具体的分野に国際的な市場シェアをとれるような再編が考えられるのか。やはりそういう計画がなければこういうお話は実効性がないと思うので、どういったものが考えられるのかというのを、できれば具体的に、今後のことでお話しいただけますか。

菅原政府参考人 どういう分野で事業再編が行われて、それがグローバル市場でも闘えるようになるかということについては、正直申し上げて、全く予測できないことが常だと思っております。例えば、過去の例が今後もある程度続き得るということを考えれば、先ほど松島副大臣からも説明がありました水力発電設備を初めとするインフラ分野、これについては、水力発電に限らず、日本企業はかなり強い要素技術を持っておりますので、これがうまく事業再編でより強くなれば、いろいろ世界市場で闘える可能性は出てくるのではないかというふうに思っております。

 あとは、今委員が御指摘しました電子デバイス分野もさまざまな可能性を日本はまだまだ秘めていると思いますし、過去の例でいいますと、セラミック会社とプラスチック会社もしくは合金会社が一緒になって人工骨を世に出して世界シェアをとっていったというようなことも考えますと、今後、健康分野、医療機器分野においても、恐らく、事業再編が進むことで、グローバル市場でグローバルトップもしくはグローバルニッチを獲得していく可能性は十分あるのではないか。

 いずれにしても、どの分野ということは事前に限定できません。ただ、こういった分野に限らず、日本企業はまだまだ十分な潜在力を持っているというふうに考えております。

木下委員 官が今までやってこなかったことをやるということが重要だと私はお話しさせていただいたんですけれども、やはり、ある程度、今の分野もそうなんですけれども、狙っていくところは何だということをしっかり言っていくこともこれから先は重要なんじゃないかと。やはり政府としては、こういうことが考えられるということで逃げてしまいがちだとは思っているんです。

 競争力というお話をしたときに、ちょっと飛んでしまいますけれども、競争市場の中で切磋琢磨されて、それぞれの企業がしっかりと地力をつけていく、こういう競争力もあれば、やはり国際的な競争市場の中で考えたときに、お隣の韓国は、一社に対して、ほかはもういいからここだけというぐらいのめり張りのついた優遇措置をしたりしている。

 その中で、我々日本の企業が本当にそういったところと競争していけるのかということを考えたときに、当然のことながら、公平な競争というのは必要でしょう。だから、先ほど言いましたように、基準というのをしっかりと公開していくことが重要だと思っているんですけれども、片や、こういった事業再編に関しては、ある程度戦略的に、これが国際的な競争力を持つんだということをしっかりと国として宣言して、それで肩入れしていくということも必要なんじゃないだろうかなというふうに、最近、私は思い始めています。

 そのかわり、やはり公平性という部分が難しいと思っているんですけれども、ここが今まで官ができなかったことであり、それをこれから殻を突き破って実行していくことなんだろうというふうに、私は大臣や皆さんのお話を聞いていて考えているんですけれども、その点について、大臣、御所見があればお願いいたします。

茂木国務大臣 事業の再編、産業の再編、あくまで民間の経営者の判断によって行われる、国としてはその環境整備を図っていく、これが基本的な役割分担だ、そんなふうに思っています。

 各国によって事業再編の進み方は違ってきたと思います。お隣の韓国、お話ありましたけれども、一九九七年のアジア金融危機を契機といたしまして、ある程度国が主導して産業の再編、一業種一社、二社という体制をつくってきました。ヨーロッパの場合は、EUの統合を契機として相当の再編が進みました。アメリカは、株主のプレッシャーが恐らく一番大きかったのだと思います。そういった中で、コアコンピタンス、集中と選択というものが進んできたわけであります。

 我々は、まさに、今回、異次元のさまざまな対応をとることによって、経営者の事業再編に向けた環境整備を図っていきたい。そういった意味で、さまざまな分野が考えられます。

 イメージしていただければいいのは、例えばキーコンポーネント、キーデバイスという言葉があります。キー何とか、そういうところがこれから日本としては強くしていかなけりゃいけない分野だ、そんなふうに思っています。

木下委員 ありがとうございます。

 やはり、そういうめり張りというのを、今までどうしても、政治家も含めてですけれども、公平性という部分でしかお話がなかなかできなかったと思うんです。ただ、選択と集中とよく言いますけれども、集中をどこにしていくのかということがこれから先は大きなキーポイントになってくるのかなと私は思っておりまして、これがしっかりと言えて、それで実行していけることが、ひいてはその他の産業も含めて発展していくことにつながっていくのかなというふうに思っております。

 ぜひとも、冒頭にも申しましたけれども、大臣のやはりリーダーシップと経済産業省の皆さんの頑張りが、これから先、規制緩和が本当に産業を発展させることに結びつけられるかどうかというキーポイントになると思いますので、引き続き頑張っていただきたいと思います。

 きょう用意していました質問を半分以上残しておりますけれども、とりあえずこれにて終了させていただきます。どうもありがとうございます。

富田委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久です。

 質疑の時間をいただきましてありがとうございます。

 木下委員に続き、日本維新の会の持ち時間において、内閣提出の産業競争力強化法案などについて質問します。今回の質疑のテーマは、最終的に省間の縦割りの打破ということで、そのことを踏まえて、よろしくお願い申し上げます。

 長く続きましたデフレによって低迷してきた我が国の経済再興のため、アベノミクスの三本目の矢である民間投資を喚起する成長戦略を着実かつ早急に実行に移すことにより、日本経済の三つのゆがみ、すなわち過剰規制、過少投資、過当競争を是正していきますと、さきの本会議で大臣の趣旨説明にありました。

 我が維新の会としましても、既得権益の打破を綱領に掲げていますので、本議案の規制改革の推進、産業の新陳代謝促進を図るという趣旨には共感を覚えるのですけれども、過去をとやかく言うのもなんですが、歴代内閣が改革を訴えてきた歴史に鑑みますと、政策ありきといっても実効性が伴わずに今日を迎えているのも事実です。未来のために有意義な質疑をしたいと思っております。

 私も、医療法人の経営者として、また先端医療を担う研究機関での経験を通して、今までさまざまな壁に阻まれて規制の障害を感じてまいりました。そんな今日の状況を改革すべく、質問に移りたいと思います。

 さて、本法案の趣旨である規制改革と産業の新陳代謝でありますけれども、分野の横断的な措置とある中で、大臣自身が思い入れのある事項もしくは産業分野に関して、具体的に事例を挙げて語っていただければと思います。

茂木国務大臣 ごめんなさい、ちょっと質問の御趣旨が十分理解できていないんじゃないかなと思うんですけれども、もしよろしければ、もう一度質問していただけますか。

伊東(信)委員 今回の法案に関しまして、アベノミクスの三本目の矢であります成長産業の中で、いろいろな分野があると思いますけれども、特に、御自身の御興味であっても構いませんし、この分野に力を入れたらどうかとか、日本の経済の再興のためにこの分野が発展するのではないかというお考えがありましたら、そのことについてお教えいただきたい。

茂木国務大臣 ありがとうございます。

 恐らく、我々が六月に日本再興戦略の中でも幾つかの成長分野を挙げておりますけれども、その一つはやはり健康長寿ということになってくると思います。

 先生はノーベル賞を受賞された山中教授と同じ教室で学ばれた、このように伺っておりますけれども、まさに目、iPS細胞、これは単に研究にとどまらず、創薬であったりとか再生医療へと広がりを持つと思いますし、予防分野も含めて、健康で長寿な社会をつくっていく、そのための技術やシステム、サービスへと広がりが極めて大きい、こんなふうに思っております。

 さらに申し上げると、エネルギーの分野。例えば、日本は一九七〇年代、二度のオイルショックを経験しました。そのオイルショックを克服する中で、世界に冠たる省エネの製品を、これは家電であったり自動車であったり、つくり上げ、省エネの技術というものも確立したわけであります。

 現在、日本は三・一一以降の新たなエネルギー制約に直面しておりますが、これを乗り越える中で、例えば蓄電池の技術とか高効率の石炭火力とか、さまざまな技術的な分野への広がりが生まれてくるのではないか、こんなふうに思っております。

 iPS細胞、インデュースド・プルリポテント・ステム細胞。Pはラテン語なんですね、プルリポテント、複数の能力を持つ。いろいろな可能性を持つということからプルリポテントという言葉は来ていると思うんですけれども、まさに日本の経済、企業はそういったさまざまな可能性を秘めていると私は思っております。

伊東(信)委員 すばらしいです。感心いたしました。流れるように。通告ができなかったにもかかわらず。

 では、ここからiPS細胞のお話をさせていただきたいと思うんです。

 医療分野というのは厚労省管轄であります。でも、大学の研究機関というのは文科省であります。しかしながら、実用化に向けては経産省というふうに所管が複雑でして、研究開発、実用化支援と言われながら、なかなか支援の効果が実感されておりません。

 まずは、本法案での支援の具体的措置の内容を、再生医療とか、先ほどの健康長寿とか、もしくは先進医療の分野に限ってお伺いしたいと思います。

田中大臣政務官 再生医療の産業化を進めていくためには、やはり、まず制度的な課題を解決することが絶対に必要なことであります。

 今、政府といたしましては、再生医療製品の早期承認を可能とするための薬事法の改正案、そして、細胞の加工業務の外部委託を可能とするための再生医療新法案を提出しているところであります。本臨時国会で何としても成立を目指しているところであります。

 産業競争力強化法案におきましては、企業実証特例制度、またグレーゾーン解消制度といった規制改革スキームを導入しているところであります。今後の再生医療に関する具体的なニーズに応えていくためにも、こうした制度を活用することによって、再生医療の実用化を加速することが可能になると思っております。

 また、本法案においては、再生医療分野などにおきましても、大学発のベンチャーを支援するための資金面の措置も盛り込んでおります。

 再生医療の産業化を促進すべく取り組んでいるところでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 先ほど大臣から、ラテン語と英語を交えてiPS細胞の御説明をしていただきましたけれども、多能性幹細胞を産業のツールとして使用するメリットといたしましては、何といいましても、一度に相当たくさんの細胞が、つまり製品が無限にできるということなんですね。この発想、大量生産によって大量販売ができるというのは、産業革命以降、もしくは戦後の復興を支えてきた日本の経済と唯一合致している、そういう医療技術であるんです。

 現場の意見といたしまして、先ほど私のプロフィールを言っていただいてありがとうございます、実はきのう京都のiPS細胞研究所及び神戸に電話いたしまして、きょうの質疑に関してヒアリングさせていただいたんですけれども、いわゆるiPS細胞を使用した再生医療産業は技術的には確立されている、安全面も含めてです、現在のところ。技術的にはほぼ終わりに近づいているんですけれども、ビジネスモデルとしてはまだ確立されていないんです。

 先ほど、経産省としてのいろいろな政策、グレーゾーンのことや大学のベンチャーキャピタルのことをお伺いしたんですけれども、大学側は、いや、なおまだビジネスモデルとしては確立されていないと。大臣としては、このことに関していかがお考えか、お伺いしたい。

菅原政府参考人 iPSを初めとする再生医療については、まさに今先生がおっしゃったように、技術はあるけれども、これから実用化、商品化に向けて大きな課題があるというのは、全くそのとおりだと思っております。

 そのために、今回、再生医療法では、これまで病院の中でしか培養できなかったことを外部に委託して大量に培養できるようにするという、ある意味で商品化に一歩近づくような措置、あと、薬事法においても、審査を再生医療についてはより短縮化するというような措置を講ずることで、まさに産業化、事業化のスピードアップを図っているというふうに思っております。

 ただ、いろいろな特例制度を設ける設けないにしても、医療の分野については、やはり倫理とか、他の産業とはかなり違う概念があることもまた事実でありまして、そういったものも含めて、これは経産省だけではなくて、まさに厚労省もしくは医師会、そういったところともしっかり議論していかないと産業化のスピードアップは図れないのではないかというふうに考えてございます。

伊東(信)委員 再びありがとうございます。

 確かに、iPS細胞におきましても、もともとのES細胞という受精卵を使ったものに比べて倫理面での問題が少ない。その倫理面の問題を解消するためにiPS細胞ができた。しかしながら、iPS細胞も、個人的ないわゆるゲノムのデータが全部入るから倫理委員会をつくったというのもホットな話題でして、そのことを御説明していただいたこと、山中先生に成りかわりお礼を申し上げます。

 さて、資金面の話、つまり私がビジネスモデルとしてということで申し上げたかったことは、先ほどの木下先生の質疑の中にもあったんですけれども、海外との競争もやはり考えなければいけない。

 再生医療のベンチャー企業といえば、アメリカにはジェロンという会社がございまして、これは私が現在専門としている脊椎の再生医療の分野に関するベンチャー企業でして、ベンチャーキャピタルで経営が回っているんですけれども、現在、ジェロンのホームページにも既に出ていますが、結構資金がショートしてきているんですね。

 これに対して、ヨーロッパ、特にロンドンは、ロンドン大学のコフィー教授という方がロンドンプロジェクトというのをやっていまして、これは眼科の分野で、日本でいえば理化学研究所の高橋教授がやっておられるような網膜の再生をiPS細胞でやっているんです。

 実は、誤解を与えたら申しわけないんですけれども、大学発のベンチャー、これは割と大学内では一応盛り上がってはいます、ただ、一方では、そんなことが我々にできるだろうかという不安があるのも事実なんですね。ベンチャー企業でなく、例えばファイザーとかのメガファーマがロンドンプロジェクトを支えているわけなんです。

 つまり、今回の法案に対して、医療分野に関して、特に文科省、厚労省、経済産業省の橋渡しのプロジェクトの中では、やはり大企業があって、それのサポートとしてベンチャーを使う方がいいのではないかというような意見もあるんですけれども、政府としてこの現場の意見はどう考えられますか。

菅原政府参考人 医療分野について、大学発ベンチャーはこれまでさまざまな試みがなされていると承知しております。

 ただ、正直申し上げて、なかなか商品化まで行っていないのも事実でありまして、これは、シーズのくみ上げのところまではうまくいっても、その後のアーリーステージといいますか、規模が一桁二桁違うお金が集められないというところと、あと、研究者だけではどうしてもちゃんとしたビジネスモデルの展開ができないという二つのところが大きな障害になってきている。

 今回、この法案では、大企業から大学発ベンチャーを支援するというよりはむしろ、お金の出どころは別として、ベンチャーファンド、ベンチャーキャピタルについては、いろいろな企業がベンチャーファンドもしくはキャピタルにお金を出資することによって、大学発ベンチャーのシーズレベルからアーリーレベルのところにしっかりお金が流れるようにするというところで、いずれにせよ、今回の特徴は、ベンチャーキャピタル、金の出し手、しかもハンズオン機能を持っている人たちが大学発ベンチャーをうまく育てる仕組みを回していくというところが大きな特徴だというふうに考えてございます。

伊東(信)委員 おっしゃることはごもっともでございます。どちらかというと大阪はものづくりの企業がかなり多いものですから、維新の会は、ものづくりの企業を支えたい、中小企業を支えようと。この趣旨は私も間違いないと思っているんですけれども、事現場の、特に医療に大学で携わってきたスタッフなりの皆さんが、このことに関して、今まで経営をしたことがないから不安を感じているのも事実なんです。

 例えば、トヨタという会社であれば、トヨタ自体が潰れてしまって、製品をつくる会社だけを支援しても無理なのではないか。どうしても、メガファーマとかを支えて、そこからの連携で再生医療を推進していって、足りない部分、例えば外注の細胞培養、細胞加工をベンチャー企業にする、そういうような使い分けというのが大事じゃないか。

 そういう意味で、五年ごとにいろいろ検証していって修正しようという趣旨はわかるんですけれども、PDCAサイクルといいますように、やはりスピード感ということもありますので、これはもう、どちらがいいとか、どちらが悪いとかというのは、これから徐々にお答えが出てくると思います。

 ロンドンプロジェクトでさえも、実は、本当のことを言いますと、結構資金がショートしてきているんですね。では大企業もだめじゃないかということが本当は今回の現状に即した答えだったんですけれども。

 では、なぜか。再生医療がこけたら、iPS細胞がこけたら日本の医療産業にはかなりの大打撃というか、世界に誇れる医療産業としてiPS細胞が目玉であることは事実なんですけれども、再生医療を目指す先生はあくまでも専門領域なんです。網膜であっても、脊髄であっても、かなり数が限られています。専門領域の分野こそが実際には出口であり、産業の基本はやはりニーズありきじゃないかと思うんですね。先ほどシーズの話をされていましたけれども、やはりマーケティングありきではないかなと思います。

 そのマーケティングありきの医療分野を確立するためには、重ねて申し上げますが、文科省が基礎研究の入り口で、臨床が厚生労働省、そして経済産業省が出口であれば、それぞれの橋渡しの溝の部分、これは申しわけないことに、研究の分野ではデスバレー、死の谷と呼ばれています。メタファーですけれども、このようにやゆされていますので、私としては、この機会に、出口である経済産業省、茂木大臣にぜひともこれを引っ張っていっていただきたいのであります。現場としての希望です。ちょっとその辺の御決意はどうでしょうか。

茂木国務大臣 実際の医療関係のシーズを最終的なニーズにつないでいくと、先生がおっしゃるように、さまざまな省庁がかかわってまいります。その間には、魔の川があり、そして死の谷があり、ダーウィンの海がある、こんなふうにも言われるわけでありますけれども、きちんとつないでいきたい。

 実際に健康長寿の社会をつくっていく上で、ニーズは大きいんだと思います、そういうニーズも踏まえながら、先ほど局長からも答弁させていただきましたが、培養を研究室だけでやってもだめなわけですよ。もっとこれが大規模にできるような状態をつくっていかなければいけないとか、許認可のあり方、こういうものも考え直す時期に間違いなく来ていると思っています。

伊東(信)委員 大臣、ありがとうございます。

 まさしく横につなげる事業、ハイウエー事業と呼ばれているわけなんです。先ほど大臣がキューティーハニーのお話をしていたのですが、キューティーハニーは空中元素固定装置によって衣裳を変えていくわけなんですね。その中にレーサーに変身するのもありますので、大臣も、如月ハニーのように、レーサーとして横に突っ走っていただければと思っております。

 さて、今、研究分野の出口としての産業の話をしましたけれども、では、臨床の分野でベンチャーというと、やはり先進医療分野になってくると思うんです。

 今回の法案の中で、先端設備投資の促進について、初期稼働が見通しにくい先端医療機器の取り扱いというのがありましたけれども、リスクの高い先端設備投資を促進するために、リースの手法を用いて措置するとあります。

 私自身も医療法人をやっておりまして、先進医療をやっていますが、機器を買うとき、私はリースを避けて割賦にしたんです。なぜかと申しますと、やはりリース方式というのは事業者にとって金利のリスクがかなり割賦に比べて高い。次に、リースというのはマネジメント料が、これも資金面の話になります。加えて、特別償却があるということなんですけれども、ただ、資産にはなりませんので、ある一つの医療の手法が底を打ったとき、それを販売することができなくなってしまう。こういったデメリットがあります。

 問題点として資料では、リース業者への単なる支援となることを避けなければいけないとあったんですけれども、このリース手法を用いた本法案の措置の新設に関して、ちょっと御説明をいただければと思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案の中で設けております先端設備投資支援策でございますが、これは先端医療機器を含みますけれども、それに限らず、先端設備全般についての導入支援策として提案しているものでございます。

 特に、先生からお話のございましたとおり、この仕組みの中では、リースの中でもいわゆるオペレーティングリースと呼ばれる手法に着目して、その活用を支援する仕組みを設けるものとしております。

 このオペレーティングリースといいます手法は、二次利用、つまり、最初にリースを受けて使用した人が、終了後、他の人に転売する、あるいは二次的に再度リースするということを前提に組まれるものでございますので、そういう意味では、最初にリースとして導入された企業は、これも先生からお話のございましたとおり、バランスシートに計上せずに活用することができるというメリットがございます。

 ただ、これをメリットとして感ぜられるかどうかというのは、それぞれの法人の会計の仕方あるいは設備の使い方にもよろうかと思いますけれども、特に先端医療機器ということに絞って申し上げれば、私どもも、リース会社等々も含めて、先端医療機器でこの手法が使えるかどうかについて議論してまいりましたけれども、特に、どちらかといえば規模の大きくない医療法人においては、そもそも、リース手法のいかんを問わず、バランスシートにのせるのせないという議論が会計上はないというふうに承知しておりますので、そういう意味においては、必ずしもリース手法がメーンのメリットにはならないかと思います。

 ただ、他方で、典型的には大学病院のようなところというふうに聞いておりますけれども、規模の大きい法人におきましては一般の企業と同じような会計処理が行われておりますので、そういう場合においては、まさにこういうオペレーティングリースを使った先端医療機器の導入にメリットを感じられるというような場合もあるというふうに伺っております。

 先生からお話がございましたとおり、オペレーティングリースを逆に使わない、まさに自己の資産として使う形で先端医療機器の導入をしたいということにつきましては、これはこの法律に基づいて新しくできたものではございませんけれども、一定の額の特別償却を行うことができるといったような税制上の措置も講じているところでございます。

伊東(信)委員 今の答弁の中でポイントになるのは、今回の先端設備投資の中で例として医療機器と3Dプリンターとかということが挙げられていたんですけれども、やはり医療機器を扱うところは医療法人であることが多いわけです。3Dプリンターを含め、いろいろな機械もあると思います、介護ロボットとかもあって、法人によって法人会計が変わってくるとは思うんですけれども、今の御説明の中で、そういった法人会計の違いとかというのも入っていたでしょうか。もう一度ちょっとお願いいたします。

西山政府参考人 再度御説明申し上げます。

 私どもが今回支援の対象にしておりますオペレーティングリースのメリットを感じられる法人、これは医療法人、株式会社を問わず、オペレーティングリースとファイナンスリースを区別する会計基準を使っておられる企業ということになります。

 そうしますと、規模という観点からは、簡単に申し上げれば大きな企業、これは企業によって会計の方式を選択されますので、単純に規模ということではございませんけれども、単純化すれば、大きな規模の企業あるいは大学病院のような法人がメリットを感じられる制度ということだというふうに理解しております。

伊東(信)委員 先ほどリースに関してメリットを感じられるとありましたけれども、もちろん各医療法人にとって、医療機器もはやり廃りというのがあるんですね。数年前まではもてはやされたけれども、十年たったらその技術は使われなくなった。そういったことに関して、リースがいいのか割賦による買い取りがいいのかというのは、各経営者の判断が分かれるところだと思います。

 今回、法案を出して、政府として、リースのメリットに関してはどう提案されるのでしょうか。

西山政府参考人 今回、オペレーティングリースを採用することにつきまして、この法案のもとで考え得るメリットは二つというふうに理解しております。

 一つは、先ほど一般論として、オペレーティングリースになった場合、最初に設備を導入した事業者の方はバランスシートに計上する必要がないと申し上げましたけれども、現時点では、それが実際にバランスシートに計上する必要があるかどうか、つまり、オペレーティングリースと認定されるかどうかについては、会計士の間でかなり判断にばらつきがあるというふうに聞いております。

 したがいまして、私どもとしては、今回、支援措置を講じる中で、オペレーティングリースということを前提に政府が支援するものについては、少なくとも現時点よりはオペレーティングリースであるということがより明確に事前にわかるという判断の明確化をしたいというふうに考えておりまして、これにつきましては、現在、会計基準機構等々と議論を進めているところでございます。

 それからもう一つは、まさに先端設備を対象にいたしますので、こうしたものについては、オペレーティングリースというのは転売あるいは二次利用を前提にしているわけですけれども、当然、先端設備である以上、現時点においては二次市場はございません。

 したがいまして、このまま放置いたしますと、リース会社としては、その全てのリスク、つまり二次利用についてのリスクがとりにくいということがございますので、これを全て政府が負担いたしますとモラルハザードということにもなりかねませんので、その一部のリスクを政府がシェアすることでこのオペレーティングリースの手法が普及し、その結果、それを導入される事業者の方にメリットを感じていただける、こういう形にしたいというふうに考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 医療法人の経営者としましては、やはり融資というか設備を入れるときのハードルが低いのがメリットだという共通の認識がございます。

 本会議の時間を挟んで、もう十分ほど時間をいただいておりますので、ここで一旦終わらせていただきます。ありがとうございます。

富田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時四十八分開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東です。

 午前中から引き続きよろしくお願いいたします。

 午前中の質疑は、省間の縦割りの打破ということで、再生医療を題材にお話をさせていただきました。後半は、いわゆる先進医療について全般的にお尋ねさせていただいたんですけれども、実は私の本当の専門というのは椎間板ヘルニアのレーザー治療という先進医療で、光の技術を使うわけです。午前中の大臣の答弁にございましたいわゆるエネルギー戦略で、電磁波というのがありまして、電磁波の中にも光に近いものとしてレーザー光というのがあるんです。

 実は、私が使っているレーザー光線なんですけれども、一九八六年にアメリカのドクター・チョイとオーストリアのドクター・アッシャーが開発しました。一九六〇年にアメリカのメーマンという学者がやった。最初は、日本の研究所を使ってメード・イン・ジャパンで開発して、例えばオリンパスがつくったりとか、日立が開発したりしているんですけれども、現在の市場では海外のものしかございません。現在私が使っている治療機器もそうなんです。

 いわゆるデバイスラグの問題もございますけれども、手法としてメード・イン・ジャパンの医療技術を進めていこうという、その一方で日本の中に治療機器としてメード・イン・ジャパンがない、このような状況に関してどのようにお考えか、お答え願いたいんです。

松島副大臣 委員は、お医者様として腕を上げられると同時に、医療法人の運営という本当に大変なお仕事をされてこられたと思っております。

 そうした中で、まさしくおっしゃるとおりに、日本の医療機械そしてまた医薬品合わせて毎年二兆円の輸入超過になっているのは本当に残念なことであります。特に、医療というのは本人の好みで選ぶんじゃなくて保険でなされている事業で、外国にお金が支払われるともったいないわけであります。

 ですから、私ども政権といたしましては、医療機械の分野、特に日本でしっかりとつくられるように、その重要な品目の一つとして取り組んでまいります。

伊東(信)委員 実は、具体的にいろいろな手法があると思うんです。

 一つは、検査の機械、例えばMRIとかは、シーメンスという海外の機械もありますけれども、日本の機械もあるんですよ。検査の機械はメード・イン・ジャパンであるのに、治療の機械がなぜか日本では発達していない、それはリスクの回避とかもあるんですけれども、今回の規制の緩和とかグレーゾーンの解消というところで、こういったことにもぜひ経済産業省、政府として取り組んでいただきたいんです。

 治療の機械でメード・イン・ジャパンが少ないことに関してどのようにお考えか、お答えいただけますでしょうか。

菅原政府参考人 委員御指摘のとおり、日本の中小企業の方を含めて、医療機器を製造する能力については世界的にも非常にたけたものが本来あると思っております。それにもかかわらず、検査機器以外のいわゆる接触する医療機器については、やはり、薬事法上の審査ですとか、その辺のリスク、治験にかかる費用、コストが極めて不透明であるというようなことから、どちらかというとこれまで敬遠ぎみになってきたというふうに承知しております。

 ただ、今の国会に出ております薬事法では、医療機器のこれまでの一類、二類、三類の分類を大幅に変えることによって、そういった接触型の医療機器についても、よっぽど危ないものは別として、割と簡易なPMDA審査の道を開いたということをもって、その辺についてはかなり改善されるのではないかと思っております。

 ただ、経産省としても、そういった中小企業の方を含めた医療機器の能力をより持ち上げるためにさまざまな研究開発費の助成をしておりまして、厚生労働省の規制と、我々のそういった開発、実用化に向けた補助金、それと今回御説明しておりますグレーゾーンですとか企業実証特例、こういったものをあわせて、日本発の医療機器がより日本国内で普及するように最善を尽くしていきたいというふうに考えてございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 まさしく、衆議院で通りました薬事法改正案の中に、医療機器の部分だけ章立てを別にする、これはもちろん厚生労働委員会、厚労省の範囲なんですけれども、そういった分野まで経産省、経済産業委員会として関心を持って、そういったところとも連携を組むということこそ、デスバレーを解消する、キューティーハニーに変身した茂木大臣が横に突破するための手法じゃないかと思うんです。

 それで、午前中の御答弁に関して、あえてちょっと苦言というか疑問を呈したいと思うんです。

 例えば、中小企業で、非常にすぐれたプラスチックの技術がある会社、そしていわゆるセラミックの技術がある会社、もしくは金属の分野ですぐれた会社、そういったところがそれぞれ手を組んでやっているものづくりで、医療の分野の人工関節とかですぐれたところを日本で推し進めていくとおっしゃったのですが、実際、人工骨に関しては、ストライカーとかオルトメディコという会社があるんですけれども、今、埋め込まれているものは、大体八割、九割は海外のものです。材料開発に関しては、かなり日本はおくれております。埋め込み型のペースメーカーでいいますと、やはり九割ぐらいはアメリカ製のものではないでしょうか。

 実は、私は大阪大学の工学研究科の粟津教授ときのうもそういったことでディスカッションしていまして、私自身も医学と工学を連携する臨床医工学融合研究教育センターの招聘准教授という立場で、このことはぜひとも質問してくれと言われたんです。手術するのは日本人、患者さんも日本人、中に入れるものはアメリカ製。メード・イン・ジャパンのものをどんどん政府として、国として推進していただきたいのに、午前中の答弁はもう既にメード・イン・ジャパンが普及しているかのように聞こえたのですけれども、それは誤解なのでしょうか。ちょっとお答えください。

菅原政府参考人 午前中にお答えした例は、事業再編の例でございまして、セラミック会社と合金会社がやって、人工関節で新しい製品を開発したというところで、もちろん、先生がおっしゃるとおり、日本の市場は、世界の市場を考えますとまだまだ小さいものであります。

 ただ、先生御案内のとおり、どうしてもヨーロッパ製の人工骨、人工関節というのは欧米人の体格に合ったものでつくられている例が非常に多いと聞いておりまして、新しい合金、セラミックの技術も、しかも東洋人、アジア人の体格に合ったものをつくって、じわじわとではありますけれども、東南アジア、日本でシェアを伸ばしつつある。

 それがもし再編がなければ全くゼロで、今までどおり欧米の企業に全て席巻された状態であったかもしれないというところで、これでもう勝った勝ったと言うつもりではなくて、ある意味で日本の技術を組み合わせることによって勝負ができる地合いができたというところで御紹介した次第でございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 実にクリアにお答えいただけたと思っております。

 時間もなくなってきましたので、最後に、これは質問というよりもお願いなんです。

 午前中、グレーゾーンに関係しまして、民主党の先生から、いわゆる混合診療に関して、各個別に相談した場合という質問があったんですね。混合診療には評価療養というのと選定療養というのがあります。これは経産委員会の方にもぜひとも知識として知っていただきたいお話でして、評価療養というのは、将来的に保険に入るだろうなというものを前もって入れる話であって、選定療養はそれ以外のことです。例えば、歯医者さんで入れる金属とか、そういうものが自由に選べるというのがあるんです。

 メード・イン・ジャパンの人工関節とかが入るのであれば、そういったことも今回の法案に関連して考慮していただければ、規制の緩和にもなりますし、日本の医療産業の発達に資するのではないかということを提言させていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、産業競争力強化法案についての質問をさせていただきます。

 安倍首相は、この臨時国会を成長戦略実行国会と位置づけております。今回の成長戦略というのは今までの成長戦略とは違う、実行を伴うものであるというふうに強調されておりました。本法案は、この成長戦略のうちの産業振興策を具体化するもので、非常に重要というふうに認識をしております。

 この法案についての質問をさせていただきます。

 まず、日本再興戦略という中での本法案の位置づけについて確認させていただきたいというふうに思います。

 安倍総理大臣は、「日本再興戦略 ジャパン・イズ・バック」というものを定めまして、その中で本法案を定めております。いわゆるアベノミクスの三本の矢と言われる経済政策の三つ目の矢が成長戦略であって、その成長戦略を具体化するのがこの法案だというふうに考えておりますが、それでよろしいか。この日本再興戦略の中での本法案の位置づけについて、まず確認させていただければと思います。

茂木国務大臣 六月に策定をいたしました日本再興戦略、まさに三本目の矢、民間の投資を喚起する成長戦略を着実に、スピード感を持って実行していくためのものであります。そして、そのキードライバーとなりますのがまさに御審議をいただいております産業競争力強化法案でありますが、同時に、税制の改正、また規制の関係では国家戦略特区を初め、幾つかの施策を同時に走らせるということで日本経済の再生をしっかり果たしてまいりたいと考えております。

三谷委員 ありがとうございます。

 その中でいかに成長戦略を描いていくかということを考える際に、もちろん意見の相違はもろもろあろうかというふうに思われますけれども、一つの考え方として、経済というのはできるだけマーケットに任せ、国または役所の関与は最小限にすべきという考え方がございます。これは、産業競争力会議の中で三木谷委員が発言した中に認められる考え方でございますけれども、それについてどのようにお考えでしょうか。

茂木国務大臣 この法案の狙いでありますが、企業の自発的な判断によります新たな挑戦そして積極的な事業活動を後押しすることによって産業競争力の強化を図るものでありまして、あくまで企業が主役だ、そのように我々は考えております。

 では、政府の役割はということでありますけれども、企業の取り組みを促すために規制の見直しを行ったり支援措置を講じるということで事業環境の整備を行うことにあると認識をいたしております。

 このような考え方のもとで、本法案におきましても、第三条になりますが基本理念で明確にしておりまして、企業が主役、そして国としては、その決断であったりとか、さまざまな新陳代謝も含めた新たな活動を促す環境づくりを行っていく、こういう基本的な思想を貫いております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今、答えをいただきましたけれども、あくまでも企業が主役、お役所というのはその環境をつくっていく、それを促していくような役割であるということについては、その方向性は全くもって同じだというふうに考えております。

 その中で、ちょっとこの法案についてお伺いしたいんですけれども、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法、産活法というものがございます。本法案は全部で百五十六条から成りますけれども、産活法からの移行条文が約百条を占めておりまして、新設条文は五十カ条。この五十カ条が新しく加わった部分ということになりますけれども、今までの産活法で足りなかった部分というのは一体何なんでしょうか。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 これまでの産活法は、幾度か改正をされてきておりますけれども、基本的には過剰債務、過剰設備といった問題に取り組むということを課題としてまいりました。その中で、特に企業のベースで申しますと、いわゆる選択と集中を促すということで累次の施策が講じられてきたわけでございます。

 その結果、産活法だけでそれが達成されたということではないと思いますけれども、一時期非常に高かった設備の過剰感というのも、マクロの統計で見ましても、大分落ちついてきたということになっているわけでございます。

 逆に申しますと、設備の過剰感がなくなった分、ある種、裏腹でございますけれども、新しい設備投資が起こらずに、設備の年齢がどんどん古くなるという事態が起こっておりますので、そういう意味においては、過少投資というのが一つの課題になっております。

 また、一つのマーケットで非常に企業の数が多い、ある意味ではグローバルに闘う上で必ずしも有利な条件になっていない、いわゆる過当競争というものもございます。

 さらに、規制という観点からも、規制改革の推進、さまざまなことが言われておりますけれども、規制が多過ぎる、過剰規制ということがございます。

 こういった三つのテーマについて、特に今回の産業競争力強化法案の中で、成長戦略を受けて取り組もうとしている、こういうことでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 今お話しいただきました過当競争ですとか過少投資という部分については、後ほどお伺いしたいと思っております。

 中身について、もう少し踏み込んで質問をさせていただきたいというふうに思います。

 日本再興戦略というものがありまして、この法案の中では、日本再興戦略に盛り込まれた施策について五年間で集中実施というふうに書いてあります。この五年間の集中実施という意味合いについて、まずは簡単に確認させていただければというふうに思います。

 日本再興戦略の中では、一つ、別項目ではございますけれども、電力の自由化というものにも触れられておりまして、この中では七年で結果を出していくというようなことが書かれているわけでございます。

 みんなの党案と言って支障がないのかもしれませんけれども、我々みんなの党といたしましては、五年間で電力自由化というものを進めていくべきだということを以前から訴えさせていただいておりました。

 五年間で何らかの結果を出していくということは、そういった意味では、大きな流れには乗るのかなというふうには思っているんですけれども、日本再興戦略では、五年間で集中実施していくということを一方では言いながら、電力の自由化については七年間と、多少それよりも緩い期限を定めているという点。

 日本再興戦略の中で、五年間で集中実施するのは、経済産業省以外の省庁に対して求めるものではあるかと思いますけれども、その一方で自分の省庁の改革については七年というと、何となく自分に甘いという批判もあり得るところなのではないかと思うんですけれども、その点についていかがお考えでしょうか。

茂木国務大臣 この法案では、産業競争力強化のためのさまざまな施策を、先ほども申し上げたように、スピード感を持って実現、実行していくために、今後五年間を施策の集中実施期間と定めております。

 ちなみに、五年というのは、経済学でいいますと五年が長期ということに当たります。インベストメントバンカーにとっては十分が長期になります。それぞれによって違ってきますけれども、なかなか五年以上先を見通すのが難しい分野と、ある程度見通せる分野というのはあると思います。

 そして、電力システム改革については、これから五年から七年で、発送電の分離まで含めた改革の全体のスケジュールというのを示しているわけでありまして、これは我々にとって現実的なスケジュールだな、こんなふうに思っております。

 電事法につきましては、既に衆議院の方で可決をいただいているわけでありますけれども、例えば、送配電部門から発電所に指示を行うためのルールの整備、恐らくこれで一年はかかると思います。そして、システムの設計に一年。さらには、システムを実際に、相当大きなシステムになります、開発するのには三年から五年かかってしまう。

 システムを開発しないで移行しろというのなら別です。しかし、そういう現実的なスケジュール感というのは私は必要なんだと思っておりまして、そういった意味で、電力システムに関しては、五年以上にわたって、しっかりしたスケジュール感を持ちながら取り組むべき課題だと思っております。

 いずれにしても、電力システムも五年から七年ということでありますけれども、この五年間の集中期間の中でやるべきことは、経産省の施策であろうが、どの省の施策であろうが、しっかりやっていく。さらには、今後、三年間の実行計画をつくって、それをローリングすることとしておりまして、そこの中でも実際に進捗状況等々をしっかりと管理していきたい、こんなふうに思っております。

三谷委員 ありがとうございました。ぜひとも進めていただければと、これは本当にお願いをさせていただきます。

 それでは、この法案の中の規制改革の部分について、一つ一つお伺いさせていただければというふうに考えております。

 まずは、このうちの一つ、企業実証特例制度についてお伺いをいたします。

 この企業実証特例制度、一つの企業でまずは特例を認めていくものですけれども、実証期間を経て問題がなければ全国一律で規制を解除していくというようなものであるという理解でよろしいでしょうか。

田中大臣政務官 お答え申し上げます。

 この企業実証特例制度でありますけれども、最先端の技術を有し、安全性等を確保する措置を確実に実施しながら、先行して技術開発、製品開発を行おうとする企業に対して、先行的に規制の特例措置を講じることを検討するものであります。また、その取り組み結果を踏まえまして、特例措置の適用範囲を全ての企業に拡大することを検討しようとするものであります。

 この制度は、事前に対象分野を限定するという考え方はとっておりません。企業は、具体的な事業計画において、新たな事業の支障となる規制があれば、どのような規制であっても特例措置を提案することが可能となります。また、実際に提案が実現するためには、もちろん、代替措置が妥当なものであって、それを確実に実施することができることが条件となります。

 一方、こうした特定の企業の提案を経て創設された規制の特例措置は、その他の企業であっても、当初提案した企業と同様に、代替措置を実施する旨の新事業活動計画の認定を受けることで、全て適用の対象となるものであります。

三谷委員 一つの企業で認めて、その後で全国一律に規制を解除していくということなんだろうと思うんです。

 以前、小泉政権のもとでありました構造改革特区というものでございますけれども、これは、一部の地域で認められた特例措置を、その後、問題がなければ全国に広めていくというふうになっていた。千二百件ぐらい、そういった特区に関して特例措置を認めて、それで多くの数が全国に広められたというふうに理解をしております。実は、質問でこの数についても聞こうかと思っていたんですけれども、意外と時間が進んでしまっているので、事実確認なので割愛させていただきます。

 そういう意味では、この構造改革特区と同じように考えれば、企業単位で特例を認めていく本制度でも、やりようによっては効果を上げることができるかもしれないとは思うんです。しかしながら、やはり問題点がこの制度にはあるのかなと考えております。

 一番大きな問題は、なぜこの制度が特定の企業との関係でのみ規制を解除しようとしているのかということなんです。いわゆる特別措置法は別ですけれども、一般的な法律とか政令、省令というものは、抽象的に、一般的に適用されるのが本来であると思うんです。

 そういう意味では、特定のものにこれを認めていくということではなく、そういった内容を精査された上で、一定の条件、こういう条件、こういう条件、例えば資本的な条件かもしれません、技術的な条件かもしれません、ハードルが高いものかもしれません。しかしながら、そういう形式的な要件を定めていって、そういう要件を満たした企業であれば何でも使っていいですよと。

 その結果、事実上、一つの企業というものに限られてしまうことはあるかもしれない。しかしながら、そういう一般的な、形式的な要件を重ねていった上で、それを全て満たすものについて認めていくというふうな制度にするべきではないかと考えておりますけれども、その点について、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 一般的でないから企業実証特例なんです、まずは。それから、先生のおっしゃる、そういった要件の設定、これはまさに規制です。我々はそう考えています。

 その上で、どうして今回こういう特例制度を導入するかといいますと、極めて先端的な取り組みをしている、新しい取り組みをしている、そういう企業の提案を受けて、恐らくそういう企業であるからぶつかる規制の壁であったりとか制度の壁、ほかの企業ではわからない、そういうものについて、この特例を一定の安全性の条件等々を措置した上で認めていくという形であります。

 もちろん、これを最終的には多くの企業に利用してもらうという形に持っていきたいと思っておりますけれども、政府の方で、例えば、あなたの会社だけ認めますよとか、この会社だけ認めますよということではなくて、まさに先端的な取り組みをしている企業の自発的な提案に基づいて行っていく制度であります。

三谷委員 ただ、その点に関しては、先端的な企業の自発的な取り組みというものを認めるかどうかというのは、行政裁量によるところではないかというふうに考えているわけでございます。

 その意味では、特定の企業にのみ、例えば、経済産業省が、これはおもしろい、これは先端的だ、自発的な取り組みだと認めるその要件がわからないということであれば、結果としては、この企業は結構仲がいいし、いろいろ取り組んでいるし、いろいろ貢献もしているから認めていく、こっちは認めないというようなことになりかねない、そういうふうに見られてしまってもやむを得ないのではないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

茂木国務大臣 もう一度説明しますけれども、こちらの側から、例えば、この企業は先端的な取り組みをやっているとか、この企業はいい企業だから認めるということではなくて、恐らく先端的な取り組みをやっている企業だからぶつかる制度の壁、規制の壁、そういったことを乗り越える提案を企業の側からしていただく。それについて、一定の措置をとった上で規制の緩和、改革等を行うという話でありまして、どの企業が先端的な取り組みをやっているというのを政府の側で一元的に決めるということではございません。

三谷委員 そこについては、それは評価の違いといいますか、どっちからその声を上げていくかというところに関しては、見方としては違うのかなというふうに思っております。

 例えば、今回の法案の中で対象になっていると言われている、自転車をこいで荷物を運んでいきますよというようなものを考えたときに、やはり出力不足だから、ほかのいわゆる電動機つき自転車よりも出力が物すごく高いものを認めていくのかどうかというような話ですとか、そういったものに関しては、例えばペリカン便だろうがクロネコヤマトだろうが、どういった企業でも直面している問題なのではないかというふうに思うんです。

 そういう中で、どの一つを認めていくのかというのがまさに行政裁量ではないかというふうに思うわけですけれども、形式的にはおっしゃることはわかるんです。最初に提出した人が、経済産業省としては、自分からそういったことをアプライしてきたというような評価につながるんだとは思うんです。

 ただ、そういった問題は当然ながら業界の中では共有をされているわけでありまして、どの企業がどのタイミングで提出したかによって大きく取り扱いを変えるべきものではないはずだというふうに思います。一つの申請があった、五分後に別の会社から申請があった、では二つまとめて判断するといったことができるのかとか、例えば、一つの企業に認めた後に、ああ、それができるんだったらいいなということで、次から次にそういったところに参入することがちゃんと保証されているかどうかということも確認させていただければと思います。

菅原政府参考人 今の具体的な事例に基づけば、最初に企業実証特例を申請した企業に認められたことと全く同じ代替措置を講ずる、ある企業であるから認めるというよりは、ある企業が今の規制で心配している点をこういう形で解消するという代替措置を講じてくるがゆえにその企業に認めるわけでございまして、次に二番手の人が同じような措置を講ずるということで申請した場合には、当然その二番手の方についても、極端な話、五分後の申請であっても、当然認められるものでございます。

 先ほど来、一般則で全国もしくは全事業者を対象に規制緩和すべきではないかという御議論だと思いますけれども、それについては、我々経産省としても、規制改革委員会等でさんざんこれまでいろいろな規制についてある意味ではトライしてきました。

 ただ、やはりどうしても、全国もしくは全ての事業者について規制を開こうとしますと、規制当局としては、ある意味極端なケースも挙げて、こんな場合はどうする、こんな場合はどうする、こんな場合はどうする。もしくは、新しい技術であれば、そのリスク評価についてこんな試験、こんな試験、こんな試験をやらない限りは全ての人に開放するわけにはいかないのではないかといって、延々と時間がかかって、その間、技術が全然別のところに行って、その規制改革に対してトライする理由がなくなることがあります。

 まさに、そういう一般論、抽象論で規制改革を行うよりは、個別具体的なビジネスモデルを前提に申請してもらえば、まずはその人にトライしてもらう、そこで問題点が生ずればどう解決していくかというので次のステップに進めるという意味で、規制改革の新しい手法になるんじゃないかというふうに考えてございます。

三谷委員 今お答えいただいた中で、前段と後段に分かれるのかなと思います。前段の部分、代替措置を講ずれば、ほかの企業でも基本的には認めていくということは非常に心強いお答えかと思っております。ただ、その一方で、企業が同じ代替措置を仮に講じたとしても、この企業については安心だとか、この企業については心配だというような判断があるということであれば、そこは、まさにいろいろな方が心配される、行政裁量によって差が出てきてしまう部分ではないかと思っております。

 この点に関して一つ質問をしたいんです。

 この企業実証特例制度の認定を受けた企業、例えば自動車の自動運転というものを仮に特定の企業に認めたとします。そのときに、恐らく、自動車の自動走行についての規制官庁は国土交通省なんだろうと思うんですけれども、何かそれで自動運転中に事故が起きた場合に、その事故について責任を負う省庁はどこになるでしょうか。経済産業省になるのか、それとも国土交通省になるのか、教えていただければと思います。

田中大臣政務官 この企業実証特例制度は、申請を受けた事業所管大臣が、まず規制所管大臣の同意を得て、今言ったような新事業活動計画の認定を行うというものであります。この際、両大臣は、申請企業が安全性を確保する措置を確実に実施できるかどうかを慎重に審査するということであります。その上で、共同で規制の特例措置の活用の可否を判断するということになります。

 したがいまして、新事業活動計画が実施される中で、万が一、企業の故意または過失によらない何らかの理由によって事故等が発生した場合には、両大臣はともに責任がある、そのように考えられるものであります。

三谷委員 どちらかというと規制をしている側の省庁の大臣が責任を負うのではないか、そういった答えをいただけるのかなと思っていたんですけれども、経済産業省も同じように共同して責任を負うということであれば、それはそれでいいのかなとは思うんです。ただ、先ほどの自動運転の場合もそうですし、荷物を運ぶときの電動機つき自転車の馬力といったものに関しても、それぞれの省庁において規制を置いているということは、全く無目的な規制というのはないわけであります。

 今まで特区という意味で規制緩和をしている場合には、その省庁よりもある意味上の立場から、規制緩和をやってくれというような話があったと思うんです。今まで、内閣府ですとか、そういったところが政府の肝いりで特区を設けていく、それでいろいろな省庁を説得していくというような話があったと思うんです。

 今回の法律ですと、経済産業省ももちろん共同して同じような責任を負うということであったとしても、企業に関して実質上の特区を設けてくれと言われても、はいそうですかとはなかなかなりにくいのではないかと考えているんですけれども、そんなことはないのかどうか、お答えいただければと思います。

茂木国務大臣 我々は今、これまでと次元の異なる経済政策を進めようと思っています。これまでの尺度で、どちらが上だ、どちらが下だではなく、事業の所管省庁も規制の所管省庁も一緒になって日本の再生のために取り組む、これが今回の法案の趣旨であります。

三谷委員 本当に、経済産業省の意欲的なところというのは、経済産業省らしいというか、すごく僕も好きなところではあるんです。ただ、縦割りというのが霞が関の今までの文化と仄聞しておりますけれども、そういった中で経済産業省の思いが他の省庁に伝わるかどうかというのは、まさに運用にかかってくるのではないかというふうに思っております。

 それは、実際にこの企業実証特例制度によって何を進めていくのかがもう少し見えてきたら、その評価が見えてくるのかなというふうに思っておりますので、今の時点ではこれぐらいにしておきたいというふうに思います。

 続きまして、グレーゾーン解消制度について質問をさせていただきます。

 このグレーゾーン解消制度というものでノーアクションレターでは足りない部分について解決していくということでありますけれども、正直、何が違うんだというところが、幾ら説明書きを読んでもなかなか僕には理解しづらいものがあるんです。

 例えば、金融庁のホームページには、このノーアクションレター、いわゆる法令適用事前確認手続の説明がこう書いてあります。

  民間企業等が事業活動を行う上で、新しい商品の販売やサービスの提供を行おうとする際に、その新たなビジネスが法令に違反しないことが事前に明らかにならない場合には、民間企業等としては、折角の有望なビジネスの開始をあきらめてしまうケースも考えられますが、そのビジネスが適法に行い得るものであった場合には、結果として、我が国の社会経済において大きな損失となってしまいます。

  このような問題に対処するため、政府は、平成十二年十二月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」において、「IT革命の到来等の中で、民間企業の事業活動が迅速かつ公平に行われることを視野に入れて、行政処分を行う行政機関がその行政処分に関する法令解釈を迅速に明確化する手続を、我が国の法令体系に適合した形で導入を図る」こと

ということでこのノーアクションレターを入れたと書いてあります。

 正直な話、今回のグレーゾーン解消制度とこのノーアクションレターは、設置された目的とか実際の運用とかはそんなに変わらないように見えるんですけれども、何が違うんでしょうか。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 もちろん、新しい事業活動を起こすという意味において、全く重なるところがないということではございませんが、違いが大きく二つございます。

 一つ目は、ノーアクションレター制度といいますのは、基本的には、ある企業の一つの行為、何々をするということが具体的な法令の条文に違反しているかどうかということを端的に確認する制度であります。

 今回のグレーゾーン解消制度というのは、まず事業者の側が具体的なビジネスプランをお持ちになっておられて、場合によっては、その一つのビジネスプランが複数の法令との関係で適法関係を確認する必要がある場合についても、そのビジネスプラン全体に着目をしようということでございます。

 ですから、こちらはどちらかというと企業実証特例制度でございますけれども、事業所管大臣がまさに窓口になって、そのビジネスプランを全体としてまず見てみようというところが第二の違いにつながってまいります。

 つまり、これまでの制度は、端的に、規制省庁に直接行って、これこれをやることがこの条文に合っていますかどうですかということを確認するのに対して、今回は、まずビジネスプラン全体を事業所管大臣が見た上で、規制担当大臣に働きかけるということになります。

 その結果、これは企業実証特例制度と同じでございますけれども、事業所管大臣の側が、ある意味では、申請のあった事業者の方がグレーゾーン解消制度を活用して、そうした解釈の確認がしやすいようサポートをする、これも大きな違いだというふうに考えております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今、大きく二点というふうにおっしゃいまして、そのうちの一点目については、例えば、ノーアクションレターだと一つの論点について確認をするだけだ、グレーゾーン解消制度は、論点が複数ある場合にその複数を全部サポートしてあげるよというようなことなんだろうと思うんです。

 正直、私も弁護士として仕事をしてまいりましたけれども、もちろん、一つの新しいビジネスを立ち上げるときに、論点が一つという場合もあれば、そうでない場合もあるわけでございます。二つ以上の論点がある場合にそれぞれについて検討をするというのは、特段それは難しいことでも何でもありません。そういう意味では、ノーアクションレター、それぞれの規制官庁に提出して、しっかりとそれぞれの規制官庁と確認をするというのはやっていることなんだろうなと思うんです。

 そういう意味で、ノーアクションレターとグレーゾーン解消制度の最大の違いは何かといったら、窓口なんだろうと思うんです。

 結局、グレーゾーン解消制度が運用されたら、全部一度は経済産業省にお伺いを立てないとなかなか難しいという話になってしまうのではないかと思うわけです。もちろん、経済産業省としては、いやいや、ビジネスのサポートをするんだというような観点でお話をされるんだろうとは思うんですけれども、本来的には直接の規制官庁とやればいい話を、ある意味、中に入っていくグレーゾーン解消制度の経済産業省の役割というのは、窓口としていろいろなところに働きかけてやっていく。ある意味、企業に対して、言葉が悪いと言われたらそれまでなんですけれども、恩を着せていく形に見えてしまうのではないかと思うわけでございます。

 そういう意味では、ノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度は、質的には非常に違うところもあるのかなと今の話を受けて理解をさせていただいたんですけれども、ただ、経済産業省の関与が今まで以上に強くなっていくことを意味するのかなというふうに理解しております。

 そして、もう一つ質問ですけれども、今回、ノーアクションレターではなくグレーゾーン解消制度というものですけれども、これは、ある意味、何らかの規制にひっかかっているということがわかったら、逆にそのビジネスの首を絞めてしまうおそれもあるのかなと思っております。

 先ほども申し上げた私の弁護士時代に、さまざまな新しいビジネスの適法性を聞かれることがございました。本当に、聞かなきゃいいのに、聞かれたら違法ですよと答えざるを得ないようなことが幾らでもあるわけでありますから、そういう意味では、知っちゃうとおしまいという部分はあります。

 例えば、弁護士時代に、意見書というものを書くときは、ビジネスを推進したい側からすれば適法意見書を書くことになるわけです。もちろん、ビジネスを進めたいというときに、違法であるとかグレーであるという意見書は百害あって一利なしなので、相談されても意見書まで書くことはほとんどないです。逆に、企業のトップが暴走とかしている場合に、法務部員が、その暴走をあえてとめるために違法の意見書を書いてくれというようなことはありましたけれども、それは非常にレアケースでございました。

 そういう意味では、このグレーゾーン解消制度は、相談したら必ずしも白という答えばかりをもらえるわけではありません。黒になってしまうかもしれない中でこの制度を使わざるを得ないということであれば、逆に使わない方がいいと判断をされる企業は結構あるだろうと思うんですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。

茂木国務大臣 ノーアクションレターと今回の新しいグレーゾーン解消制度の違いにつきましては、政府参考人から制度については説明を申し上げたところでありますけれども、ノーアクションレターなんですよ、これはもともとは。アクションをとらないんです。単にこれは参照したり問い合わせるだけなんです。グレーゾーンは解消するんです、これを。

 解消の仕方はいろいろあると思います。例えば、全体のビジネスモデル、この中で抵触する部分があったら、ビジネスモデルを変えることによってできる、こういうこともあると思いますし、どうしてもこれが規制制度にひっかかってしまうということだったら企業実証特例に持っていく、こういうやり方もあって、実際に乗り越えて新しいビジネスをつくっていくことに大きな意味があるんだと思っております。

 そして、受け付ける窓口は規制所管省庁ではなくて事業所管省庁であるのは間違いありません。ただ、ぜひ御理解いただきたいのは、全ての事業を経済産業省が所管しているわけではございません。

三谷委員 おっしゃるとおりです。

 ただ、今お話にありましたとおり、ノーアクションレターとかグレーゾーン解消制度、いずれも、どういう形で法律が適用されるか、アクションされるかを確認するという意味では変わらないと思っておりまして、今大臣がおっしゃった、こういうビジネスだったら今のところ規制されるし、処分されるかもしれないけれども、この部分を変えたらそれはクリアできるかもしれませんというような話は、確かにそれ自体は魅力的ではあるんです。

 ただ、一つ懸念がありまして、新しいビジネスを立ち上げていくときに、実はそこは譲ってはいけない部分かもしれないわけです。その魅力的な部分を、そういった規制を乗り越えるという目的が先に立ってしまって、そこを変えるとなると角を矯めて牛を殺すようなことになりかねない。逆に、そういった制度を使わなくて、えいやで行ってしまった方が、結果として産業競争力が高まることすらあるだろうと思うんです。

 そういう意味では、どこまでビジネスモデルの中に、経済産業省に相談をして、そこは変えていくということまで企業においてやるべきなのかは評価の分かれるところかなと考えております。

 そういった中で、今回のグレーゾーン解消制度が適用できるかもしれない一つの例がありますので、ちょっとその点についても伺いたいと思うんです。一般用医薬品のインターネット販売の規制について、簡単にお伺いしたいと思います。

 この規制については、先日、最高裁判所において、規制が違法、無効だという判断がなされております。厚生労働省としては、この最高裁の判決を受けて、現在の一般用医薬品のネット販売は適法と考えているのか、違法と考えているのか、お答えいただければと思います。

成田政府参考人 説明させていただきます。

 本年一月、最高裁判決では、一般用医薬品のうち第一類、第二類のインターネット販売を省令で一律に禁止することとなる限度において、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとされたところでございます。この判決を受けまして、現在、第一類、第二類のインターネット販売を行ったとしても、それだけで薬事法違反を問うこととはしておりません。

 また、今後の対応につきましては、日本再興戦略に従って検討してまいりました結果、現在の一般用医薬品全体の九九・八%は一定のルールのもとでインターネット販売を認めること、残された〇・二%であるスイッチ直後品目と劇薬は、一般用医薬品とは別の医療用医薬品に準じたカテゴリーの医薬品とした上で、劇薬は対面で使用者本人に販売すること、スイッチ直後品目は、医療用から転用後の安全性調査の期間を短縮した上で、この期間経過後にインターネット販売を開始することとし、それまでの間は対面で使用者本人に販売することとしたいと考えております。

 厚生労働省といたしましては、関連の法案を今国会に提出すべく準備しているところでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 現状としては、この規制というものを適用していないという意味では、効力がないと判断しているということなんだろうと思うんです。

 このグレーゾーンは、何らかの形で聞けば結果が出るという意味では解消されるということになるのかなというふうに思っておりますし、今後、改めて法律を変えていく、一般用医薬品の中で〇・二%のものについては規制をかけていくというようなことであれば、改正後は規制の対象になるというのが厚生労働省のお考えなんだろうと思います。

 では、同じ質問を経済産業省にお伺いできればと思うんですけれども、このグレーゾーン解消制度というものが仮にあった場合に、現在と改正後それぞれの場合において、薬をインターネットで販売するということについてどのようにお考えか、お答えいただければと思います。

田中大臣政務官 このグレーゾーン解消制度、この法案が成立そして施行された後、企業から、実際にこの制度を活用して医薬品のインターネット販売に関する具体的な事業計画に即しまして規制の適用の有無を確認する求めがあった場合には、事業所管省庁であります経産省がその内容、方法、必要性などを精査した上で、規制所管省庁である厚労省と協議、調整を行っていくことになります。

三谷委員 協議、調整を行われるということなんですけれども、それはどういう方向で協議、調整を行うかにもよると思っております。

 それは、あくまでもグレーゾーンを解消していくという意味で、これは大丈夫ですよねという方向で確認されるのか、それとも、厚生労働省はどうお考えなんですかと聞かれるだけなのか、どういうふうにお考えでしょうか。

茂木国務大臣 このグレーゾーン解消、さらには企業実証特例にしましても、基本的には、企業の側から新しいビジネスモデルであったりビジネスプランを提案していただいて、それを精査した上でということになりますので、具体的にどういうモデルということをお示しいただかないと、個別の事例についてお答えさせていただくのは、今の時点ではなかなか難しいと思います。

三谷委員 それは全くもってそのとおりなんだろうとは思います。

 ただ、私が懸念しておりますのは、このグレーゾーン解消制度というのは、それはもちろん事業所管官庁が経済産業省である場合に限りますけれども、経済産業省が規制官庁に対して聞くということで、そういうふうな答えでしたよと、ある意味、連絡役にとどまるのでは、全くもってこのグレーゾーン解消制度の目的を達しないだろうなというふうに思うわけです。

 では、それを、規制をかけないでくれと一生懸命働きかけることまで経済産業省に求めるとすると、それはもちろん規制官庁とのあつれきがそれ以上に強まってしまうだろうと思うので、いずれにしても、なかなかうまい着地点が想像しづらい部分ではありますので、その点、懸念を今お話をさせていただければというふうに思います。

 それでは、続いて、三点目についてお話をさせていただきます。

 事業再編の点について伺います。

 例えば、エルピーダメモリとか、産活法が適用された事案としては有名ではございます。そういったものがうまくいったのかどうなのかという評価はぜひとも聞いてみたいところではありますけれども、ちょっと時間の関係で、その点は別の機会に伺わせていただくことにします。

 五十条にあります調査等ですけれども、誰がどういう基準で過剰だとか過当だとか判断するのかという点について伺えればと思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 五十条についてのお尋ねでございますけれども、ある事業分野が過剰供給構造あるいは過当競争にあるか否かは、その事業分野を所管する大臣が判断をするということになります。

 その場合におきましては、さまざまな要素が考えられますけれども、一つには、当然、当面の足元の需要の動向、それから将来的な需要の動向、それは商品である場合とサービスである場合があろうかと思いますけれども、それの価格の動向、それから、それを踏まえましたその事業分野における企業の収益率の動向、そういったようなことを踏まえまして、供給能力が需要に照らして著しく過剰である状態が長期にわたり継続することが見込まれるかどうかといった観点から判断するということになります。

三谷委員 まさにそこはビジネスの肝だったりもするわけでございまして、それぞれの特定の企業が、自分がやっているビジネスの今後の将来性というものを考えたときにやるかどうかという、そこら辺はもう本当にひとえにその企業が判断することなんだろうと思っております。そういったところで、企業よりも政府の方がうまく判断できるともし仮に思っているとすれば、それは違うんだろうなと思います。

 それで、むしろ、そういった過当なのか過剰なのかを政府が判断するということより、実は政府の側には動いてほしいところがあります。

 それは何かといいますと、雇用の問題なんです。雇用の問題というのは、いろいろな方面からいろいろな見解を持つ方がいらっしゃるだろうとは理解しておりますけれども、事業再編をする上で効率化を図っていくとして、効率化が図れて足腰が強くなるようなビジネスを目指すとすると、当然ながら、今まで抱えていた人たちを抱え切れなくなる。ある意味、人員の整理にしっかりと手をつけていかなければ、幾ら右から左へ事業を動かしたところで、強いビジネスというのはなかなかできないだろうと思うんです。

 この法律の百三十五条の第一項に、雇用の安定が企業の努力義務とされているんですけれども、あえてこういうものを置いてしまうと、なかなか人員の整理をした後の手当てがつかないから、では、それはやめておこうとなって、うまい事業の再編が図れない、結局絵に描いた餅に終わってしまう懸念もあるのではないかと思うんですけれども、その点についてお伺いできればと思います。

茂木国務大臣 まず、この百三十五条の一項の前に、五十条の関係でありますけれども、政府として、この分野が過当競争であるとか、一元的に、一方的に決めようとは全く思っておりません。申し上げておりますように、我々がやろうとしていることは、まさに企業の経営者の判断を後押ししたり、また、それに資するような事業環境の整備をしていくということでありまして、調査、公表等を行うことによりまして、そういった企業の経営者にとって適切な判断材料が与えられる、そのための条項だと御理解いただければと思っております。

 その上で、百三十五条の一項でありますが、委員も御案内のとおり、今、雇用の安定そして増加、これは経済政策上も極めて重要な課題である、このように考えておりまして、競争力の向上への取り組みと両立は可能だ、こんなふうに考えております。

 本法案でも事業者には雇用の安定を図るために必要な措置を求めておりますが、雇用の安定を優先しろと言っているわけでは決してございません。我々は、この法律といいますか政策によりまして、産業の新陳代謝、こういったものを進めてまいります。

 そうなりますと、そこの中で我が国の人材を最大限活用していくことが不可欠でありまして、新しい分野、これから伸びていく分野、そういう分野に円滑な労働の移動が行われるということは極めて重要だと思っておりまして、事業の再編も進む、新陳代謝も進む、同時に人材のフル活用も進むということが必要だと思っております。

 御案内のとおり、六月にまとめました日本再興戦略の中におきましても、失業なき労働移動の実現のために労働移動支援助成金の抜本的拡充等を位置づけているところでありまして、引き続き、これは厚労省とも連携をする分野でありますが、しっかりと取り組みをしていきたい。事業の再編そして人材の有効活用、これは車の両輪だと思っております。

三谷委員 ありがとうございます。

 時間ももう間もなくなので、二つ伺えればというふうに考えております。

 まず一つは、先ほど政府にお願いをしたい、雇用の問題ですと言いました。もちろん、人材の活用と事業の再編は車の両輪とおっしゃっておりますけれども、そうはいっても、やはり特定の企業という観点からすると、人件費のコストをしっかりと軽減していくという意味では、ただ単に首を切ればいいんだという話にはならないのはそのとおりだと思いますので、そういう意味で、うまく人員をほかに動かせるように、労働移動するための予算措置というものを政府において検討できるかどうかというものがまず一点としてあります。

 それからもう一つ、これは逆の方向なんですけれども、雇用の流動化というものを考えると、ワーキングプアじゃないですけれども、どうしてもなかなか仕事にありつけない人たちが非正規雇用でという考え方にもなるんですけれども、本当に事業の再編とか強い産業というのを考えた場合には、逆に、本当に優秀な方々とか、ビジネススキルを持った方々がまさに移動していく、そういう意味での雇用の流動化というものをもっともっと促進していくべきなんだろうというふうには思っているんです。ある意味、失業者対策ではない、そういった方々の雇用が流動化するような施策というものをお考えなのか、お答えいただければというふうに思います。

茂木国務大臣 先ほども御答弁申し上げたんですが、日本再興戦略において、失業なき労働移動の実現のために、労働移動支援助成金の抜本的拡充等をきちんと位置づけているところであります。そして、労働者の就職のあっせんであったりとか労働者の職業訓練の実施、このこともこの法案の中でしっかりと位置づけをさせていただいております。

三谷委員 ありがとうございます。

 この質問に五十分いただきましたけれども、全然終わっていないので、またほかの機会にほかの質問もさせていただければと思います。ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 産業競争力強化法案について質問いたします。

 関連して、最初に、福島第一原発における作業員の問題について紹介もし、大臣に一言御答弁いただきたいと思うんです。

 きょう午後一時半から、東電の広瀬社長が臨時の記者会見を行いまして、福島第一の緊急安全対策を発表いたしました。この中で、作業員の労務費についての発表をいたしました。

 敷地内作業に適用する設計上の労務費の増額についてということで、一日一万円を一日二万円にする、十二月発注分以降実施するということであります。元請に対して、下請作業員に渡るようお願いしているということでありました。

 この間の当委員会で、福島第一の困難な作業をされておられる作業員の方の労賃、日当などが、より困難な環境であるにもかかわらず、除染の作業員の方を下回るような日当、賃金の水準、これの抜本的改善こそ、不安を抱えておられる作業員の方に報いることにもなるし、さらには要員の確保にもつながっていくということを訴えましたが、そういう中での対応を一歩踏み出すということでありました。

 そういう点でも、設計上の労務費の単価ですから、やはり確実に作業員の方に渡るような取り組みについて、ぜひ茂木大臣としましても、事故収束を進めていく立場から、東電や元請、下請事業者に対し、作業員に適正な労賃が渡るような働きかけを行っていただきたいと思いますが、一言いただきたいと思います。

茂木国務大臣 再三申し上げておりますが、現場で大変困難な作業に当たっている作業員の皆さんがモチベーションを維持して、安全にしっかりと仕事をしていただく、事故収束に当たっていただく、極めて重要でありまして、そのための労働環境の整備は重要な課題だと思っております。

 きょうの東電の発表につきましては私も承知をいたしております。汚染水、廃炉の問題については、与野党ない、さまざまな党からさまざまな提案をいただいています。よい提案を取り入れながら、事故の収束の加速化に努めていきたいと考えております。

塩川委員 しっかりとした対応方、よろしくお願いいたします。

 やはり、働く方々が意欲を持って元気に仕事ができてこそ産業競争力の強化だ、そういう立場からきょうは質問をいたします。

 本会議の質問で、多国籍企業化が進めば、企業利益と国民の利益が一致しなくなることは、既に一九九二年の通商白書が指摘したところと述べました。これに対して、茂木大臣は、多国籍企業と国民経済の関係についてですが、多国籍企業の利益と一国の利益が一致しないケースは、多国籍企業の性格からして当然出てくるもの、このように答弁をされました。

 この意味するところについて、まず御説明いただけますでしょうか。

茂木国務大臣 多国籍企業、恐らく一九八〇年代ぐらいからよく使われるようになってきた言葉じゃないかな、こんなふうに思っておりますけれども、OECDの多国籍企業ガイドラインでは、複数の国に拠点を設立している企業を一般的に多国籍企業と呼ぶわけでありますが、多国籍の度合いというのは、単に拠点の数とか、幾つの国に拠点を置いているということだけでは決まらないんだと思います。恐らく、企業の組織運営システムがどうなっているかとか、株主、従業員の国籍の構成、さまざまな要素によって決まってくる、このように考えております。

 その上で、先日、多国籍企業の性格からして当然である、このように申し上げましたのは、企業活動が国際化するに従って株主であったり従業員、顧客などの言ってみますとステークホルダーも多様化いたします、そうなりますと、相対的に企業は特定の国のステークホルダーの利益のみを優先しづらくなる、こういったことを念頭に発言したものであります。

 各国政府とも、自国の事業環境整備をすることによりまして、自国内での企業の活動分野の拡大、活性化を図り、自国民の雇用の拡大やGDPの成長率の引き上げにしのぎを削っているのが現在の状態だ、こんなふうに認識いたしております。

 安倍政権では、第一の矢、第二の矢、第三の矢から成りますアベノミクスによりまして、これまで日本は六重苦というふうに言われてきましたが、この事業環境を改善して、世界で企業が一番活動しやすい国、こういったものを目指してまいりたいと考えております。

塩川委員 御答弁いただきましたとおり、要するに、日本の多国籍企業であっても、日本のステークホルダーの利益を優先しづらくなるということでのお話でございました。

 まさに、そのような事態が進んでいるのではないかということをきょうは御質問したいと思っておるんです。

 資料を配付させていただきました。一枚目が「自動車産業の海外生産シフトと製造業における国内雇用の空洞化」ということで、グラフをつくりました。棒グラフと折れ線グラフがあります。

 棒グラフの方が自動車の生産台数、日本自動車工業会の資料をもとに載せました。海外生産がグレーで、国内生産が黒ということで、棒グラフ、九〇年度から二〇一二年度まで書いてあります。

 ここをごらんいただきますとわかりますように、国内の生産台数は、一九九〇年度千三百四十九万台が二〇一二年度には九百九十四万台と、一千万台を切っています。一方、海外の生産台数は、一九九〇年度三百二十六万台が二〇一二年度には千五百八十三万台と、約五倍に増加しております。自動車産業の海外生産シフトが進んでいることが見てとれます。

 あわせて、折れ線グラフの方が、自動車産業を含む製造業の就業者数、従業者数であります。

 国内の就業者数は一九九二年をピークとして大きく減少し、上の折れ線グラフですけれども、一九九〇年度千五百五万人が、二〇一二年度におきましては千三十二万人と、三分の二になっております。一方、海外の常時従業者数は、一九九〇年度百二十四万人が二〇一一年度には四百十一万人と、三倍以上に増加しております。自動車などの製造業において、国内雇用が減少し、海外雇用が増加しております。

 そこで、大臣にお尋ねをいたします。

 日本再興戦略でも、失われた二十年の経済の低迷は余りにも長過ぎ、我が国経済社会に深刻な影響をもたらしたと述べておるわけですが、その過去二十年間において進んだということは、多国籍企業化が進む中で国内産業と雇用の空洞化が生じたということではないのか。この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

茂木国務大臣 先ほど私が答弁いたしましたのは、企業は特定の国のステークホルダーの利益のみをということでありまして、例えば日本の自動車産業が日本の利益のことを全く無視して海外展開している、こういったことを申し上げるつもりはないわけであります。

 我が国の製造業にとりましても、これは長引くデフレ不況の問題もあります、国内市場が落ち込む、そしてまた一方で円高が進む、さらには新興国市場が大きく拡大する、こういったグローバル市場の拡大に伴います海外需要の取り込みは必須であります。

 海外での現地生産の拡大が不可避な状況もございます。これは恐らく、関税の問題等々もありまして、これから我々としては、経済連携協定等々を進めることによりまして、こういったさまざまな課題を解決していかなければならない。一方で、自動車産業初め製造業でありますが、非常に裾野の広い産業集積と広範なサプライチェーンは我が国の製造業の強みでありまして、雇用の確保にもつながる国内での生産活動の活性化は引き続き重要だ、こんなふうに考えております。

 実は、直近なんですが、ある自動車メーカーの新しいマザー工場へ行ってまいりました。そこでお話を伺ったのは、海外展開をしていると日本の技術よりもかえって海外の技術が進んでしまう、だからやはりマザー工場を日本に置いて、しっかり日本のマザー工場を中心にしながら国際戦略も組み立てていかなければならないと。まさに私も同じようなことを思っているところであります。

 国内での設備投資を促すために、ことしの一月の緊急経済対策でも最新設備の導入の支援のため二千億円の予算措置を行ったところでありまして、この事業の効果として、一兆円を超える民間投資の呼び水となる、こんなことも期待をいたしております。

 十月一日に決定いたしました経済政策パッケージにおいても、これまでにない大胆な投資減税などを盛り込んだところでありまして、産業競争力強化法案においては成長戦略を確実に実行するための仕組みを新たに創設し、まさに日本にベースを置く企業にとって、この日本を世界の中心として活躍しやすい国にしていく、こういったことに全力で取り組んでまいりたいと考えております。

塩川委員 サプライチェーン、広く裾野もある、そういう日本の製造業の強みのお話がございました。

 同時に、トヨタ、愛知などでお話を伺っても、やはりそういう協力会の企業そのものがこの間で半分に減っているという点でいいますと、非常にそのピラミッド構造そのものが大きく変貌してきているという状況にあるんじゃないのか。海外展開の中で、このピラミッド構造が大きく切り崩されている事態が現に進行しているというのが今の実態なのではないのか。そういう点でも、多国籍企業化が進むことで、企業利益と国民の利益が一致しない事態が進んでいるということを直視すべきときだと思います。

 同時に、こういった空洞化を初めとした今の日本経済の構造変化というのは、単に自然現象ではなくて、政治のもたらした、政策がもたらした結果だということも見ておかなければならない。例えば、一九九五年の日米自動車合意によって、北米市場に進出する、製造拠点、生産拠点を移す、このことが加速いたしましたし、また、九九年以降の産活法改正によって事業再編、それは働く人にとってみればリストラが進む、こういうことにもつながったわけであります。

 配付資料の二枚目に「正規雇用・非正規雇用の推移と労働法制の規制緩和措置」を取り上げましたが、正規雇用について見れば、一九九三年三千七百五十六万人が二〇一三年では三千二百八十一万人になり、一方、非正規雇用は一九九三年九百八十六万人が二〇一三年には千八百七十万人と、二倍に増加しております。

 この間に行われたことが有期雇用の導入であり、労働者派遣の原則自由化であり、製造業への労働者派遣解禁、有期雇用の拡大、きょう本会議質問がありました国家戦略特区の法案におきましては、一部の業種などにつきまして有期雇用のさらなる拡大も盛り込むという話にもなっているわけであります。

 正規が減少し、非正規が大幅に増加している、このことが国民、勤労者の所得が減る大きな要因となっているという点でも、私はやはり、大臣にお尋ねしますが、こういった一連の政府の政策によって雇用が失われ、産業と雇用の空洞化と言われるような事態が進んだのではないのかと率直に思いますが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 バブルの崩壊から二十年以上がたつわけでありますが、その間、一貫して、日本はデフレ不況、そして企業の経営も縮み思考といいますか、どうしても前に出られない、こういった状況の中で、資金の活用についても、人材の活用についてもなかなか前向きの行動がとられてこなかった、こういう側面は否定できないと思っております。

 それをまさにアベノミクスで変えていきたいということでありまして、企業の収益の改善を賃金の上昇であったりとか雇用条件の改善や所得の向上に結びつけ、それによって消費が拡大し、さらなる投資や生産を生む、こういう好循環をつくっていくというのが我々の決意であります。

塩川委員 この間の二十年を見れば、勤労者の所得、国民の所得が減少してきた二十年だった、そこはやはりしっかり見なければなりません。私は、そこにそもそも今のデフレの根源があるということこそ問われなければならないと思います。勤労者、国民の所得をふやすということを中心にした取り組みこそ今求められている、そういう点でも、この二十年間の政策のあり方そのものを問い直すときだと考えております。

 そういった意味でも産活法の総括が問われるわけですが、今回の産業競争力強化法案は、産活法をベースにしてまさにバージョンアップするという中身となっておりますけれども、産活法の果たした役割は何だったのか。もともと、人、物、金の過剰を解消しようというのが産活法の目的だったわけですけれども、本会議の大臣答弁で、産活法の認定事業者の大半においては、計画期間中に生産性の改善等に一定の成果が出ているが、他方、雇用者数を減らした例があることも事実と述べておられます。

 そこで、産活法認定事業者で雇用者数を減らしたのはどういう例があるのか、御紹介いただけますか。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 二つの例を申し上げさせていただきたいと思います。

 一つは、旭化成のグループでございますけれども、これにつきましては、事業再構築の過程におきまして、産活法に基づきます計画の開始前に一万八千九百二十七人であったものが、計画後には一万七千九百五十四人になったというケースがございます。

 それからもう一つは、流通のグループでございますけれども、西友グループでございまして、こちらにつきましては、産活法の計画適用前に二万九千五百十二人であったものが、計画後に二万四千六百八十九人になったというケースがございます。

塩川委員 こういう形で、雇用者数を減らしたという例もあるわけですが、全体の構図を考えたときに、例えば昨年、電機情報産業で大きなリストラ計画がありました。全体を足し上げると十三万人とも言われるような計画が大きな問題となりました。そういう中で、人減らしの計画を上げている企業、名立たる大企業であるわけですが、パナソニックが四万人とか、ルネサスエレクトロニクスが一万四千人、NECが一万人、シャープが一万人。これらは皆、過去に産活法の認定を受けた企業ばかりであります。

 ルネサスエレクトロニクスの例を紹介すると、これは、昨年、ことしと続けて早期退職の募集を行っておりますけれども、そのやり方がひどい。

 昨年の早期退職募集に続けて、ことしの早期退職の募集などでは、社員に繰り返し面談を強要する、整理解雇をするとおどしながら、応募するように迫ってきているということで、例えば、課長級の職員を降格する。そうなると、非組合員という状況です。ルネサスでは、労働組合との協定によって、組合員に対する面談は二回までという上限があるんです。繰り返して強要してはならないという労使の協定で、面談は二回までとなっているわけですけれども、課長を降格された職員は非組合員ということで、それが適用されないという形で、繰り返し繰り返し面談が強要される。中には八回も強要されるような方もいた。

 ですから、そういった中で退職を迫るということが行われたというのが、まさにこの産活法の認定を受けたルネサスエレクトロニクスの実態だったわけであります。

 過去、幾つも合併してきたルネサスエレクトロニクスですけれども、二〇〇三年に認定を受け、あるいは二〇一〇年にも認定を受け、また、産活法のスキームに入っております産業革新機構は、昨年十二月にこのルネサスエレクトロニクスに一千三百八十三億五千万円の出資も行うことになった。そういう会社において、こんな大規模なリストラの強要が行われているということであります。

 大臣にお尋ねします。

 産活法においては、従業員の地位を不当に害するものでないと定めていますけれども、実際には、産活法のもとでリストラが強行されて、労働者の権利と地位が不当に害されたということは、このルネサスエレクトロニクスの事例を見ても明らかではないでしょうか。いかがですか。

茂木国務大臣 委員御指摘のとおり、産活法におきましては、企業が事業の選択と集中等によります事業再構築を行い、生産性の向上を図る取り組みの過程で、やむを得ず雇用者数を減らしたり、配置転換等を行わざるを得ない場合も想定されることから、従業員の地位を不当に害するものでないことを計画認定の要件として、労働組合等と協議により十分に話し合うことを求めてきているところであります。

 確かに、個別の事例におきまして、認定者の中で雇用者数を減らした実例というのはあります。ただ、考え方だと思うんですけれども、例えば事業の再構築を進める、もし進めていなかったときにどうなっているのか。いろいろな業種を私も見てきました。多いのは、事業再編に早く取り組んだ企業の方が最終的には雇用を維持している、こういうケースが多いことなんですね。

 例えば、先ほど旭化成の例を紹介させていただきました。認定開始前は一万八千九百二十七人で、終わった時点では一万七千九百五十四人、確かに減っておりますけれども、現在のグループの従業員数は二万八千三百六十三人、ふえているんですよ、確実に。事業を再編することがあったからこそ、雇用も維持し、ふやすことができた、こういう形になっている。

 個々の企業全てについて、どうであるという評価はできませんけれども、全体としては雇用の確保に資してきた、そのように考えております。

塩川委員 ルネサスのように産業革新機構が出資した企業において、産活法で支援していた企業においてまさに違法なリストラが強要されている事態が生まれている。このこと自身、私はやはり、こういった雇用破壊の背景として、事業再編の名のもとに、国の施策がリストラにお墨つきを与えるような形になっているということを言わざるを得ません。多国籍企業のリストラ支援となっている、雇用破壊を推進したのが産活法だということを強く指摘しておくものであります。

 そこで、この産活法を引き継ぐ今回の法案がどうなるのかをお尋ねします。

 この点では、企業実証特例制度をきょうはお尋ねします。

 本会議での大臣の答弁で、企業実証特例制度を活用し、労働規制に関する規制緩和の提案があった場合には、事業所管官庁が、その内容、必要性などを精査した上で、規制所管官庁である厚労省と協議、調整を行っていくことが想定されるとあります。

 そこで、大臣にお尋ねします。

 こういった個別の企業が求める労働規制に関する規制緩和の提案については、企業側が提案する内容について特段の制約というのはあるのかないのか。

茂木国務大臣 ございません。

塩川委員 そういう場合で、例えば、労働の規制緩和であれば規制官庁は厚労省ですから、事業官庁が企業からの提案を受けて、それについて事前に内容などをチェックするということで、代替措置をきちんと対応するということも当然でしょうけれども、そういうことで厚労省に話を持っていく、協議、調整する。その意味でも、別に厚労省に事業官庁が持っていくところにも特段の何らかの制約、制限というのはないということであるわけですね。

茂木国務大臣 仮に、企業から雇用規制に関する規制緩和の提案があった場合には、まず事業所管省庁がその内容そして必要性などを精査した上で、規制所管官庁であります厚生労働省と協議、調整を行っていくということであります。

塩川委員 労働分野を含めて、規制緩和要求自身には制限がないわけであります。安全性を確保する措置が実施されることなどを条件とすれば、あらゆる規制が対象になるわけであります。

 そこで、厚生労働省にお尋ねをいたします。

 本会議での田村大臣の答弁におきまして、労基法等に定めるルールは、労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準であり、企業によって差をつけることは困難、このように答弁しておられますが、これはどのような趣旨なのか、御説明ください。

赤石大臣政務官 塩川委員にお答えいたします。

 私も企業の経営者をやっていまして、リストラは一回もしたことはないんですけれども、おかげさまで、医療産業にいたものですから、ずっと成長してきました。

 企業の経営者は、総じて、やはり従業員のことを一番よく考えて経営していると私は思います。そして、会社をどうやって成長させるかということを常に考えているのが経営者だろうというふうに思っています。

 御質問の件でありますけれども、十月二十九日の衆議院本会議における塩川議員からの質問に対する田村厚生労働大臣の答弁の趣旨は、労働基準法等に定めるルールは、労働者が人たるに値する生活を営むための最低条件であるため、一般的に、企業ごとに労働基準法等に定めるルールに差を設けることは困難であるというものであると承知しております。

 以上です。

塩川委員 最低基準である、企業ごとに差を設けることは困難だということであります。労基法等に定めるルールというのは最低基準ですから、これは当然守ってもらわなくちゃいけないということであります。

 国家戦略特区の議論のように、そういう緩和については、では全国展開でというのは私たちとしてとる立場ではありませんけれども、少なくとも地域単位とか企業単位で特例を設けるというのは困難だということでございました。

 そうしますと、重ねてお尋ねしますが、厚生労働省としては、企業単位の労働規制の緩和というのは認められないということでよろしいですね。

赤石大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の要望については、労働基準法が極めて画一的であり、企業実態を反映していない部分は集団的労使自治を尊重する仕組みに見直すことが必要であるとした上で、個別の労働時間制度の規制改革を求めているものと承知しております。

 労働時間法制においては、サービス経済化やグローバル化の進展といった経済社会の変化に対応するため、労使協定や労使委員会決議等を要件とする各種の弾力的な制度を設けてきたところであります。こうした制度改正の前提として、最低基準の確保を初めとする労働者保護の観点を十分踏まえる必要があるものと考え、労使の議論を尽くした上で対応してきたところであります。

 現在、労働政策審議会において、企画業務型裁量労働制を初め、労働時間法制に関する総合的な検討を行っておりますが、そうした検討に当たっても、労働生産性向上と同時に、ワーク・ライフ・バランスの観点もしっかり踏まえて進めているところでございます。

塩川委員 今、経団連の提言の中身についての御説明ということで、要するに、経団連は労働時間規制の緩和については労使協議、労使自治に任せるべきだということで、労使で合意すればそれをもって労働時間規制、裁量労働制の対象拡大などを図ってもいいじゃないかというスキームが、私は企業実証特例制度のスキームで行い得るのではないのかということを考えたわけであります。

 つまり、代替措置というのは、労使における合意をもってすれば裁量労働制の対象の拡大とかいうこともやってもいいんじゃないの、こういうのが企業実証特例制度でも使えるんじゃないのということだと思うんですが、大臣はその点はどうですか。

茂木国務大臣 労働基準法、このルールは一つの基準というか最低の基準ということでありますけれども、では、そのルールが同じように全部の企業に適用されているかといいますと、例えば労働時間、一週間四十時間以内というルールでありますけれども、労使が合意を行った企業で弾力的な運用も行われております。

 そして、賃金の支払いについても、通貨で支払うということになっておりますけれども、持ち株会で株式の購入費用に充てたりとか、賃金の一部を控除して、違った形で支払うということもできるような形になっております。

 こういった最低基準に反しないさまざまな形の規制の特例の提案があった場合には、それにつきましては、精査の上でありますが、厚生労働省と協議、調整を行っていくことを想定いたしております。

塩川委員 労働時間規制は企業ごとに違うという話であります。フレックスタイム制とか裁量労働制とか当然ありますけれども、しかし、今この労働時間で問題になっているのはやはり長時間労働なんですよ。現場は実際には、世界に冠たる長時間労働で、過労死しかねない状況。

 だからこそ、この労働時間規制の緩和は認められないというのは働く皆さんの共通の声になっているわけで、仕事と家庭の両立が困難になり、少子化が加速し、過労やメンタルヘルスといった問題を引き起こす、こういう長時間労働を一層拡大しかねないような労働時間の規制の緩和は認められない。

 私は、それに反するような日本経団連の要求は多国籍企業の利益を代弁するものということを言わざるを得ない、その突破口を開くような企業実証特例制度であってはならないということを申し述べて、きょうのところは質問を終わります。

富田委員長 次回は、来る十二日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十四分散会


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