衆議院

メインへスキップ



第6号 平成25年11月13日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十五年十一月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 宮下 一郎君 理事 山際大志郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 田嶋  要君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    越智 隆雄君

      大見  正君    勝沼 栄明君

      勝俣 孝明君    熊田 裕通君

      國場幸之助君    佐々木 紀君

      白石  徹君    瀬戸 隆一君

      田中 良生君    武村 展英君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      中谷 真一君    根本 幸典君

      福田 達夫君    細田 健一君

      宮崎 謙介君    務台 俊介君

      八木 哲也君    山下 貴司君

      山田 美樹君    枝野 幸男君

      奥野総一郎君    岸本 周平君

      後藤  斎君    近藤 洋介君

      辻元 清美君    足立 康史君

      伊東 信久君    浦野 靖人君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      青柳陽一郎君    椎名  毅君

      三谷 英弘君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   経済産業副大臣      松島みどり君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  藤山 美典君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            遠藤 俊英君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            小野  尚君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局次長)     太田 晃詳君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 昌稔君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 熊谷  毅君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西山 圭太君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石川 正樹君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          菅原 郁郎君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            鈴木 英夫君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          片瀬 裕文君

   政府参考人

   (特許庁長官)      羽藤 秀雄君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            松永  明君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     國場幸之助君

  越智 隆雄君     瀬戸 隆一君

  宮崎 謙介君     務台 俊介君

  宮崎 政久君     山下 貴司君

  岸本 周平君     後藤  斎君

  近藤 洋介君     奥野総一郎君

  伊東 信久君     浦野 靖人君

  木下 智彦君     足立 康史君

  三谷 英弘君     椎名  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     穴見 陽一君

  瀬戸 隆一君     熊田 裕通君

  務台 俊介君     勝沼 栄明君

  山下 貴司君     中谷 真一君

  奥野総一郎君     近藤 洋介君

  後藤  斎君     岸本 周平君

  足立 康史君     木下 智彦君

  浦野 靖人君     伊東 信久君

  椎名  毅君     三谷 英弘君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     宮崎 謙介君

  熊田 裕通君     越智 隆雄君

  中谷 真一君     宮崎 政久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 産業競争力強化法案(内閣提出第三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、産業競争力強化法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官藤山美典君、金融庁総務企画局審議官遠藤俊英君、金融庁総務企画局参事官小野尚君、金融庁証券取引等監視委員会事務局次長太田晃詳君、厚生労働省大臣官房審議官成田昌稔君、厚生労働省医政局長原徳壽君、厚生労働省政策統括官熊谷毅君、経済産業省大臣官房審議官西山圭太君、経済産業省大臣官房審議官石川正樹君、経済産業省経済産業政策局長菅原郁郎君、経済産業省通商政策局長鈴木英夫君、経済産業省産業技術環境局長片瀬裕文君、特許庁長官羽藤秀雄君、中小企業庁長官北川慎介君及び中小企業庁事業環境部長松永明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸本周平君。

岸本委員 おはようございます。民主党の岸本周平でございます。

 先週に引き続いて質問の機会をいただきましたことを御礼申し上げます。先週は時間も短かったので予告編的な質問になりましたけれども、引き続ききょうは、認定制度というような、古いと言うと言い過ぎかもしれませんが、旧来の行政手法について問題提起をさせていただきたいと思います。

 認定の仕組み、つまり役所が、官僚がいろいろなことを審査する仕組みでありますけれども、先週は申請する側からの問題点を指摘しましたが、実は受ける役所の側にもマイナス面があるわけであります。

 十年以上前に私が経産省の情報処理システム開発課長をやっておりましたときに、当時安延さん、あるいは今は亡き、本当に尊敬申し上げていた高鳥さんが今で言う情報政策課長をやっていたとき、当時まさに茂木大臣がITのかなめでおられて、IT戦略本部を回していただいて、いろいろな補助金制度をつくっていただきました。

 これが非常に画期的な補助金で、制度も決して悪くなかったと思います。ゆえに、申請がたくさん出ました。補助金と認定制度は違いまして、補助金は審査しなければいけません。これは当然なんです。

 しかし、余りにも一斉にたくさんの補助金の申請が上がってきたものですから、経済産業省、当時通商産業省のIT担当部局の課員、係員が疲弊したわけです。何百件という申請が上がり、それは想定していませんから、その審査だけでほとんど徹夜徹夜の作業になり、本来クリエーティブで、企画立案をすべき本省の課員の仕事が、まあ審査は大事なんですよ、しかし下から上がってくる書類審査で半年間忙殺されるという経験をしました。

 したがいまして、余りにも役所がパターナリスティックな立場から民間活動に干渉することが、かえって役所のクリエーティブな創造力をそいでしまったという苦い経験をしております。

 認定制度が今回鳴り物入りでできるわけですから、私はたくさんの申請が出てくることを望みます。皆さんも同じ気持ちだと思います。しかし、これがたくさん出てくれば何が起きるかというと、経済産業省本省の、本来クリエーティブな仕事をするべき課員が認定作業にとられてしまう。これもまた私は大きなデメリットの一つだろうと思います。

 そして、今法案審議をしておりますけれども、ぜひ同僚議員の皆さんにお願いしたいのは、あくまでも私たちは立法機関の一員としてこの審議をしております。与党も野党もないと思います。経済産業委員会の委員としてこれから私は同僚議員の皆さんとともに質問をしてまいりたいと思いますので、立法府対行政府という立場で、同僚議員の皆さんの応援をいただきたいと思います。

 そこで、赤羽副大臣にお聞きをしたいと思います。

 同じとは言いませんけれども、実は平成九年に中小企業事業活動促進法によりましてエンジェル税制というのができました。これはまさに今回の法案と同じように、いわゆるベンチャーを育てていこうという趣旨でつくられた税制であります。

 しかし、もう十五年たったわけでありますけれども、では本当にエンジェル税制がうまく機能しているのか、国民の皆さんに使われているのかという点から確認をしたいと思います。創設から今日まで、認定対象の企業数でありますとか対象の投資家数、あるいは、おわかりになれば減税額等について、副大臣から御答弁をいただきたいと思います。

赤羽副大臣 お答えをさせていただきます。

 このエンジェル税制、今御指摘のように平成九年度の創設以来十六年間で三百四十五社のベンチャー企業が認定を受けているところでございます。

 減税規模については、個人投資家の所得税率が多様でありますので正確に算出することはちょっと難しいと思いますが、三千九百八十九名の投資家が、これまで約八十七億円の投資をされて、税制優遇を受けているという状況でございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 これは本当に、数字として、世界第二位の経済大国である日本、当時は二位、今は三位の経済規模を持つこの国のエンジェル税制で、申請した件数が三百四十五社、年間二十三社であります。一年間に二十三社。そして、投資した方も一年間で二百六十人、これは余りにも少な過ぎます。恐らく、制度の要件が厳しいということに尽きるんだろうと思います。この同じ轍を今回の法案で踏むべきではないと私は思います。

 こういう、あえて失敗とは申し上げませんけれども、利用者が少なかったエンジェル税制、これは個人の投資家、ベンチャー企業に対する税制であります。今回は新しいスキーム、ベンチャーファンドに対する損金算入を認めるような新しい枠組みでありますから、ぜひ門前に市が立つような申請をお願いしたいわけであります。

 そこで、ここから立法府と申し上げた趣旨なんですが、いただいているいろいろな資料があります。我々は野党ですから、ほとんど説明らしい説明は受けられないわけでありますけれども、与党の皆さんは法案審議の段階で、商工部会なりで大変詳しい説明を受けておられると思います。さっと見ましたら、特定新事業開拓投資事業に関して認定の制度が定められておりますけれども、一体、その特定新事業開拓投資事業計画について、具体的な要件はどうなっているのかということであります。

 聞かないとなかなか御説明はいただけないということでありますけれども、これが大事なんですよ。法案にはきれいなことしか書いていません。いいことしか書いていません。法案の条文になかなか反対はできません。しかし、法案を実行する要件は官僚が勝手に決めているんです。この官僚が勝手に決めている要件の方が大事なんです。

 それをこれまでなかなか国会で審議してこなかった。これは国会で審議すべきです。今、インターネット中継で見ておられる国民の皆様に直接、官僚が何を考えているのか、それがおかしいのかおかしくないのか、これをきょうは追及していきたいと思います。

 そこで、大臣にお聞きするのも恐縮なのですけれども、今回、なかなか表に出ていませんけれども、この特定新事業開拓投資事業計画について、認められるファンドはどういうものなのか。ぜひ、具体的な要件について、現在お考えになっている範囲でお答えをいただきたいと思います。

茂木国務大臣 冒頭、私と同級生になります安延氏、五十三年ですけれども、高鳥氏が一年下ですから五十四年。確かにあのころ、新しいビジネスの創造ということで当時の通産省は頑張っていた、こんな記憶がよみがえってくるわけでありますけれども、エンジェル税制、こういったものをつくっても、結局はベンチャーキャピタルなりベンチャーファンドがしっかりしていないと、お金がきちんとベンチャーに流れる道筋ができないということで、今回、新しい制度をつくったわけであります。

 認定するベンチャーの数、多ければ多いにこしたことはない、こんなふうに思っています。ただ、御案内のとおり、これは税金というか、税制上の優遇措置を伴うものでありますから、当然、税の公平性の観点からも、一定の要件を満たすに足り得るファンドであるかどうか、こういったことは見きわめなければいけない、こんなふうに思っております。

 我が国ベンチャーキャピタルの数、大体二百ぐらいではないかな、こんなふうに思っています。その意味で、そんなに多い数ということにはならないと思うんです。例えば、見るにしても、申請が上がってくるにしても、膨大な作業量でどうにもならないという状況には私は陥らないと思っております。

 そういった中で、本制度においては、対象となりますファンドを認定する際に、ファンドを運営するベンチャーキャピタルの過去の投資実績、投資計画等を提出してもらい、そのベンチャーキャピタルが投資経験や、高い経営支援能力と経験を有していること、十分な投資実績を上げていること等を確認させていただく、こういうことになっております。

 何件について認定すると現段階で決めているわけではありませんけれども、どちらかといいますと、ネガティブリストをつくる、基本的には。ネガティブというか、どうしてもだめなところはだめでありますけれども、最初から狭い入り口で限定しよう、このようには考えておりません。

岸本委員 ありがとうございます。

 そこで、質問を続けさせていただきます。

 では、対象となる組合ですけれども、ファンドを絞られていないとおっしゃいましたけれども、経済産業省の事務方の説明では、相当厳しく絞り込みをされているというのが現状であります。例えば、ファンドは有限責任組合に限られています。ベンチャーファンドの多くは有限責任組合でありますけれども、当然、それ以外に民法組合もあれば、外国のファンドもあります。ケイマン籍等の外国ファンドもたくさんあるわけでありますけれども、今の考え方では、これらのベンチャーファンドは入りません。

 できるだけ幅広くベンチャーファンドを育てていくという観点からいたしますと、何も有限責任組合に限る必要はないと思うんですけれども、副大臣のお考えを聞きたいと思います。

赤羽副大臣 今、大臣の御答弁でもあったように、有象無象でいいかどうかという視点から、こういった一定の要件を入れさせていただいております。

 いわゆるLPSは、投資事業有限責任組合法に基づいて、登記をすることが義務づけられているほか、毎事業年度、LPSの財務諸表を作成し、公認会計士の意見書を取得することが義務づけられているわけでございます。今、岸本委員御指摘の民法組合や外国ファンドと比べて、その所在や資金の運用実態が把握しやすく、ファンドの不適切な運用を防止しやすいという観点から、設定の対象をLPSに限定させていただくことにしております。

岸本委員 副大臣が今おっしゃいましたが、投資事業有限責任組合契約に関する法律の所管省庁はどこですか。

赤羽副大臣 当省です。

岸本委員 そうなんです。経済産業省所管の法律に基づく組合しか対象にしていないんですよ。そういうことなんです。自分たちの庭先で事を進めようというわけであります。裏を返せば、官僚答弁をすれば、自分たちが責任を持って監督しているところしか対象にしないんです。

 有象無象はちょっと言い過ぎだと思います、副大臣、訂正された方がいいと思います。有象無象は入れないということは、自分たちが責任を持つという官僚答弁はできますけれども、裏を返せば、自分たちの守備範囲の中だけかわいがる、こういうことにも見方によってはなるという意味で、すごく限定されているように見えます。そこは考え方です。

 もっと大事なことがあります。出資金額です。出資金額まで限定されます。投資家からの出資約束金額の合計が二十億円以上であるという限定があります。

 これは実は、経済産業省が立派なのは、立派と私が褒めてもいかぬのですが、結構調査をしているんです。いろいろな調査をして実態を把握した上で、いろいろな行政をしている。

 平成十九年度に、ちゃんとベンチャーファンドの調査をしているんです。これは与党の先生方は説明を受けているでしょうけれども、田嶋さん、野党は説明を受けていないですよね。それはいいんです、聞けば教えてくれますから。このときの調査によりますと、アーリーステージの企業向けのファンドの平均規模が二十億円なんです。エクスパンションステージにいきますと平均七億円なんです。

 平均二十億円というのは、これは時代が十九年ですよ。それで二十億円の限定をかけているんです。十億円のファンドと三十億円のファンドが二つあって、平均したら二十億円です。三十億円のファンドは認められます。十億円のファンドは認められません。十億円は大きいお金です。有象無象じゃ集められません。しかし、今の経産省の考え方では、十億円のファンドは入らないんです。

 何でこんな縛りをするんですか、副大臣。

赤羽副大臣 今回の法案と税制、事業拡張期にあるベンチャー企業への大規模な資金供給が不足している、ここについて、今回の税制ではベンチャー企業への投資を質、量ともに大きく高めることを主たる目的とする、そういった思いから、今岸本委員御指摘のように、さまざまな調査をする中で、中央値の二十億円という金額を設定させていただいたところでございます。

岸本委員 いや、そうじゃないんですよ。エクスパンションステージのファンドの平均額は七億円しかないんです。アーリーステージが二十億円なんです。事業拡張期を推進したいなら、このエクスパンションステージのファンドをエンカレッジすべきなんです。

 そうだとすると、せめて五億円。五億円以上を対象にして、どこがいけないんでしょうか。私たちはこれからベンチャーファンドを推進するんです。ベンチャーファンドを促進して、競争力を強化するんです。ベンチャー企業を育てるんですよ。何で二十億円でなきゃいけないんですか。アーリーステージの平均が二十億円。十億円でだめなんですか。五億円でだめなんですか。一億円じゃなぜだめなんですか。

 そういう意味で、もう答弁は求めませんけれども、ぜひ真摯にお考えをいただきたい。一億円お金を集めるのは大変なことですよ。そういう意味で、ぜひ認定対象についてお考え直しをいただきたい。

 もう一つ。ファンドの存続期間が十年以下であることということも書かれています。シードステージから育てていく研究開発型のベンチャー、いろいろなベンチャーがあります。平均十年以下というのも一つのお考えかもしれませんけれども、やはり、物によっては、研究開発から育てていく場合に、十五年があってもいいんじゃないかと思います。

 なぜ十年がよくて十五年がだめなのかということについても、理論的な説明は多分できないと思いますけれども、この十年以下というファンドの存続期間の要件を見直すおつもりはありませんか、副大臣。

赤羽副大臣 今御質問の中にもありましたように、存続期間の業界水準がおおむね十年以下だということから、こうさせていただいております。

 加えて、御指摘のように、研究開発型のベンチャー企業は、研究開発期間に比較的長い期間を要することからファンドの存続期間として十年以上を要する場合もある、それは御指摘のとおりだというふうに思っております。

 しかしながら、今回のこの制度は、民間企業によるベンチャーファンドへの投資を促進するものでありますので、私は、自分自身も三井物産に勤務していた経験から、一つの民間企業のプロジェクトとして資金回収期間が十年以上となることは少し適切性を欠くのではないかと思いますし、一定の期間のうちにしっかりハンズオンの支援を行って投資先のベンチャー企業の事業を軌道に乗せることが重要であるという観点から、十年という年月を設定させていただいたところでございます。

岸本委員 ありがとうございます。副大臣としてのぎりぎりの御答弁だと思いますが。

 さらに、ファンドの目標収益率も、認定の対象として厳しい制限がかかっています。目標IRRが一五%以上でなければならないとなっています。この収益率一五%は大変大きい数字です。

 実際、平成十九年度の経産省の調査によりますと、四百二のうち二十七のものしか一五%以上を上げていません。つまり、全体のパフォーマンスのうち大体七%ぐらいのファンドしか一五%以上の収益を上げていないわけです。大変厳しい目標じゃありませんか。

 しかし、これは官僚的に答弁すれば、いや、目標なんです、目標は一五と書いておいてください、後はわかりません、夢は大きい方がいいでしょう、審査は通しますよと。そういう問題じゃないと思います。その辺が私は納得できない。

 もちろん、夢を持たせることもいいでしょうけれども、七%のファンドしか達成していない目標IRR一五%以上という制限、これはちょっと厳しいんじゃないでしょうか、副大臣。

赤羽副大臣 リーマン・ショック以降の現在の状況から見ると、おっしゃる御指摘ももっともだと思いますが、私は、ファンドというものがしっかり回っていくようにするためには、ある一定の収益が必要と思います。

 これまでなぜファンドが育たなかったのかというと、そこには収益率の問題が逆に言うとあったんだと思うんですね。ですから、今回、これまでの延長じゃなくて、新たなものを始めようとするときに、ターゲットというか事業収益の高さというのは、やはり必要なものではないかと私は思っております。

 収益率三%とかでいいのかどうかというと、それはちょっと、考え方にもよるかもしれませんが、私たちは少しいかがなものか、こう思っておりますので、こういった目標値を設定していただくことにしております。

岸本委員 まさに、こういった目標値を設定していただくことに意味があるということであれば、別に一〇%でもいいのではないかと思いますが、この議論はここでおきたいと思います。

 あと、同僚議員の皆さん、御存じかどうか。本当に細かい要件がずらずらと並んでいるんです。

 それで、例えば、LPSでいいですよ、有限責任組合がお金を出します、ファンドをつくります。そのファンドに対して、いわゆるベンチャーキャピタル、無限責任組合員の出資割合が一%以上でなければならないという制限もかかっています、一%以上。これは、小さな金額のファンドをつくっていく場合は全然問題ないと思います。無限責任組合員、ベンチャーキャピタルがハンズオンでやっていくわけですから、小さなファンドはこれで結構です。

 しかし、まさにこの競争力強化法案が念頭に置いているのは、小さいものもあれば大きいものもあるはずだと。例えば百億円のファンドをつくったら、ベンチャーキャピタルは一億円以上出さないといけないんです。これはこれでなかなか大変なことでありまして、そもそも、手足を縛るようにファンドの規模をちまちまと制限していくというのはおかしいんじゃないですか、副大臣。

赤羽副大臣 ベンチャーファンドにおいて、ファンドの運営に責任を持つベンチャーキャピタルに出資を求めるというのは、ある意味では大事なことなのではないか、私はこう考えております。毎年二%の管理報酬を受け取ることが通常であることから、一%以上の出資を求めることは適当というふうに考えて、こう制定させていただきました。

岸本委員 それはもちろんそうなんですよ。ハンズオンでやる以上、それは全てのベンチャーファンドの考え方として当然なんですけれども、では〇・五%じゃなぜいけないんですか。〇%じゃいけないですよ。では、〇・五じゃいけなくて一がいいのか、何で二じゃないんですか。こういうところを、もちろんどこかで線を引くんですが、引くときにその線、つまりハードルを低くしてはなぜいけないんでしょうか。今、もう五つも六つも要件を議論してきましたけれども、全てのハードルが高いんです。

 実は私もこれまでの経験で、いろいろなファンドの皆さんと話をしています、現場の話を聞いています。今まさに、現場の皆さんの御意見は、ハードルが高過ぎるということに尽きるんです。いや、いいことをやってくださいますよ、我々、この競争力強化法は応援したい、でも実際に現場でファンドをやっている自分たちからするといささかハードルが高いんですよ、岸本さん、というのがファンドの皆さんの本音なんです。だから私はしつこく聞いているわけであります。

 それで、今、事業拡張期のベンチャーを推進されたい、まさにそこは私も賛同するわけですけれども、これも、投資額の五割以上が事業拡張期、エクスパンションの段階のベンチャー企業であることも要件とされているんです。それは、政策的に事業拡張期を育てたいということですから、五割以上そこにお金を出しなさいよという要件になっているんです。しかし、実際、資金調達が特に困難なのはアーリーステージであるわけです。

 どちらも大事なわけですし、わざわざここに五割以上という、政策的な要件はわかりますけれども、これもハードルを高めている条件だと思います。これはもう御答弁はいただきませんけれども、ぜひこの要件も含めて、現場の声に耳を傾けていただきたいと思います。

 それから、こういう法案は、経済産業省所管だけではないんですけれども、やはり中小企業の定義が問題になってまいります。

 投資先が中小企業、中堅企業に限られているわけですけれども、例えば資本金が一定額以下であるということが要件とされています。もちろん、経産省所管の中小企業の定義がきちんとあるわけですから、それに基づいてやってどこが悪いというのは、経済産業省としては当然のお立場かもしれませんけれども、さっきも言いましたように、いろいろなケースがあります。大きなお金が集まるケースもあると思います。あるいは大きなところを対象にするケースもあり得て、それをあえて外すことにどれだけの意味があるんだろうかと思います。

 あるいは、中小企業ですから従業員数が一定の要件になっています。これは産業によって五十人であったり三百人であったり、詳細はもう皆さん御存じのとおりですから言いませんけれども、従業員が一定数以下であることがこのスキームの要件なんです。

 そうすると、今せっかく雇用をふやそう、賃金をふやそうとしている中でディスインセンティブになるんです。従業員の数が少なくないと対象にならないわけですから、従業員をたくさん雇って頑張ろうという企業は対象になってこない。ある意味、これまでの行政はそれでよかったのかもしれませんけれども、これからそれでいいんでしょうか。そういうところで縛っていいんですか。もっとおおらかに、従業員をふやした方がいいんじゃないんですか。私たちは、雇用をふやすために、心を一つにして、党派を超えて、競争力強化法案をやっているんじゃないんですか。ぜひ、そういう資本の制限、従業員の制限、もっとおおらかにされたらどうですか、副大臣。

赤羽副大臣 今回のこの制度は、ベンチャー企業の支援を目的としていることから、投資先の六割を中小企業、残り四割を中堅企業者としておるところでございます。資本金、従業員の要件はファンドがそのベンチャー企業に最初に投資した時点でのものでございまして、資本金や従業員の拡大に応じて投資をすることも可能としておりますので、その辺をお酌み取りいただきたいと思います。

岸本委員 私も赤羽副大臣のお気持ちは痛いほどわかるのでつらいんですけれども、ならば、最初の入り口を広げてあげたらどうですか。入り口を狭くして狭くして入れないようにして、さあ、どうぞというのは、同僚議員の皆さん、どうですか。今言った要件は全部入り口が狭いじゃないですか。お茶室のにじり口じゃないんですから、背中をかがめて、はうようにして入る必要はないじゃないですか。どんとオープンなドアにして、大勢の人に入ってもらう。なぜ入り口を狭くするのか、そこが私には全く理解できないのであります。(発言する者あり)不規則発言のお気持ちもわかるんですけれども、我々は国権の最高機関たる立法府ですから、余り情けないことはおっしゃらないようにしてください。

 それで、投資家が銀行などの適格機関投資家の場合に、当該投資家による出資約束金額が二億円以上の者でなければならないという要件もあります。これも要件としてどうなのか。

 経済産業省の十九年調査では、銀行、信金、信組、まさにこの適格機関投資家の平均出資額が約一億八千六百万円なんです。これは微妙なところですね。平均一億八千六百万円で、要件が二億円。平均より高くしているんです。なぜこのハードルが平均額を上回らなければいけない二億円なのか、一億円じゃだめなんですか。一億円が悪くてなぜ二億円がいいのか、合理的な説明を副大臣に求めます。

赤羽副大臣 適格機関投資家である金融機関というのは、そもそも本来業務を行うプロとして、みずからのリスクでベンチャー企業への資金供給を実施するべき主体だ、こう考えております。

 ただ、二億円以上の多額な資金を投資して相当のリスクを負う適格機関投資家については、その損失に備えるため、認定ベンチャーファンドを通じて投資した額の八割を損失準備金として積み立て、その積立額の損金算入を認めるベンチャー投資促進税制の対象としているわけでございまして、これは合理的な要件設定であると考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 税制が絡んでいるから厳しい要件になっているという御趣旨の御答弁と思います。

 損失準備金といいますのは、もちろん、その限りにおいて税制上優遇されます。しかし、損失準備金の本質は、課税の繰り延べでしかありません。未来永劫、国家が税収を失うわけではないのです。損失準備金というのは繰り延べなんです。いずれ必ず取り戻すことができるんです。そんなに、そっくり返って、ざま見ろというほど大層なことではないんですよ。ただ、短期的には大変助かります。だからインセンティブになるんです。いわゆる政策税制というのはそういうことなんです。

 ですから、損失準備金というのは実はいい税制なんです。いろいろなものがあります。特に経産省所管のエネルギー関係とかもありますけれども、私は、専門家として申し上げると、ああいうものは租税特別措置である必要はないとまで思っています。損失準備金というのは課税の繰り延べであって、必ず取り戻せます。

 しかし、使う企業にとっては、弾力的に経営が行えるという意味で、とてもいい税制なんです。そういうことなんです。とてもいい税制なんですから、できるだけたくさんの方に使っていただこうじゃないですか。だから、要件を狭めないでほしいと申し上げているわけであります。

 以上、るる副大臣と議論をしてまいりましたけれども、副大臣のお立場はよくわかります。御答弁もこれまでの議事録等から考えましても、整合のとれたとてもよい答弁であると思いますけれども、前から言っていますように、パラダイムが変わったわけです。

 それで、アベノミクスについては私自身はいろいろな考えが専門家としてありますけれども、それはおいて、政権交代が二回起きた、これもいいことだと思います。民主党が政権をとり、政権を失い、自民党が政権を失ってまた復帰する。二大政党として、残念ながら私たちは二大政党と言えないような敗北を喫しましたけれども、また頑張りますよ。そして、政権交代を繰り返していく中で新しい政治というものを模索していきます。

 そして、これは前にも言いましたけれども、茂木大臣と私と、多分、改革についての思いとか考え方とか情熱は全く同じだと思います。ここの同僚議員の諸君も全く同じだと思います。だから、立法府の力でこれまでの行政を変えようじゃないですか、私たちの力で。これはできますよ。それは、まさに立法府の代表として、政務三役として政治家が入っているんですから。そして、官僚の諸君は本当に真面目にこの国を考えている人たちばかりなんですよ。だから一緒にやれるんですよ。

 そこで、大臣、どうでしょうか。これまでるる申し上げてきましたけれども、認定要件は厳し過ぎます。私は、認定はやめてくださいと先週申し上げました。それは一気には無理でしょう。最終的には目指しますけれども、認定をやめてくれとはもう申しませんから、せめてこの認定要件を緩くしていただきたい。これは大臣が命令すれば、ちょっとおまえら検討しろ、やれと言えば、官僚の諸君はまたいい知恵を出してくれるに違いない。全くフリーにはならない、しかし、きちんとした枠の中でいい知恵を出してくれますよ。

 大臣、どうでしょうか。これまでの議論を聞いていただいて、要件の見直しについて前向きに取り組んでいただけないでしょうか。

茂木国務大臣 冒頭申し上げましたように、この制度は、経営支援能力のあるベンチャーファンドを通じて、特に事業拡張期のベンチャー企業への投資を質、量ともに高めるということに目的があるわけでありまして、質、量ともにお金が出ていかなかったら何の意味もない、これが基本にあると思っております。

 その上で、岸本委員の方から大変重要な御指摘といいますか要件を七点おっしゃっていただいたと思います。ファンドの規模、それからファンドの存続期間、さらにはファンドの目標のIRR等々について、全てを満たしていないとだめですと言うつもりはありません。

 さらに申し上げると、当然、法案を準備する以上、我々として、客観的な何らかの要件について議論を深めておかなければいけない。その上で御審議をいただきたいということで、一つのメルクマールを出させていただきましたが、確定しているものではありません。今後さらに詰めていきたい。議員の御指摘に加え、現場の声、こういったものにも丁寧に耳を傾け、使い勝手のいいものとならなかったら意味がない、そのように思っております。最低限の要件にしたい。

 その一方で、余りにも恣意性が働くといいますか、こっちは認めるけれどもこっちは認めない、何らの数字といいますか目標値もないものであると極めて恣意性の高いものになってしまう、こんなふうに考えておりまして、できる限り、そういった意味で間口は広くしたいと思っております。

 その一方、認定したけれども全然お金を出さない、こういうところがありましたら、認定は取り消したいと思っています。

岸本委員 ありがとうございます。大変前向きな御答弁をいただきまして、意を強くいたしました。

 そういう意味では、私もさきの通常国会から経済産業委員会に入れていただいて、いろいろな議論をしてまいりました。ほかの委員会もそうなんですけれども、委員会の現場で、実際いろいろな議論を深めながら、法案を修正したり、あるいは附帯決議で、行政に対して何らかの方向性を立法府として示すということを積み重ねてきていると思います。特にこの経産委員会ではそれが与野党関係なく進んでいると思います。

 ぜひ同僚議員の皆さんあるいは理事の皆さんにお願いしたいのは、今の議論も踏まえて、附帯決議という形がいいのかどうか、それは理事の皆さんにお任せいたしますけれども、この認定要件などについて、今大臣に御答弁いただいたような観点から、立法府として行政府に対して、実際にファンドがたくさんたくさん利用する、その結果、ベンチャー企業が競争力を持って大きく羽ばたくようにという趣旨で、きちんとメッセージをお伝えする。そのことを立法府としてやることを、ぜひ同僚議員の皆さん、理事の皆さんにお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 民主党の奥野総一郎でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、理事の皆さん、本当にありがとうございます。改めてお礼を申し上げます。

 私は、この法案の全体像について、いろいろな角度から質問してまいりたいと思います。

 目的規定を見ますと、「産業競争力の強化に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための態勢を整備する」、すなわち政府主導で民間投資をふやして事業再編や新規事業の創出を図ろうとすること、そして、「規制の特例措置の整備等及びこれを通じた規制改革を推進し、」ということで、大きく分けてこの二つがこの法案の骨子だと思います。

 まず、前段の事業再編、新規事業の創出、民間投資の増加でありますけれども、日本再興戦略におきましては、三年間でリーマン・ショック前の設備投資水準七十兆円を回復するとございます。昨年度は六十三兆円ということでございます。これはこの法律の目標ということにもなるんでしょうけれども、再興戦略で目標を七十兆円にしている根拠を伺いたいと思います。

 リーマン・ショック前までの我が国の設備投資は平均して七十兆円程度、このときにどの程度GDPが成長したかといいますと、平均で大体一・二%、名目では〇・三%であります。政府の目標であります今後十年間の名目三%、実質二%という成長率の達成のために、果たしてこの七十兆円が十分な数字かどうかということを伺いたいと思います。

茂木国務大臣 時間軸に若干違いがありまして、名目GDP成長率三%程度、実質GDP成長率二%程度、この目標は今後十年間の平均目標値でありまして、十年後に三%にする、十年後に二%にする、こういう目標値ではございません。

 それに対して、設備投資の七十兆円は今後三年間で達成する目標でありまして、恐らく本年度の設備投資は、一連のこれまでの対策によりまして二兆円弱増加することが見込まれております。

 今後、集中的な対策をとることによりまして、現在の六十三兆円をリーマン・ショック前の七十兆円に戻す。野心的な目標でありますけれども、これは達成できない目標ではない、このように考えております。

 我々としては、輸出も伸びてきた、そして個人消費、ばらつきがまだありますけれども改善傾向にある中で、ようやく一定の改善の兆しが見えてきた、もう一つの柱であります設備投資を伸ばすことによりまして企業が収益を上げる、そしてその収益が賃金や所得の拡大につながり、これが消費の拡大を生み、さらなる投資、生産を生む、こういった好循環をしっかりとつくり出していきたい、こんなふうに思っております。

奥野(総)委員 野心的な目標を掲げて達成を目指していく、可能な目標だ、こうおっしゃるんですが、達成した七十兆円が十年間の平均の名目三%あるいは実質二%につながるかということを今伺っているわけでございます。

 設備投資の水準について言えば、日本はアメリカと比較して必ずしも少ないとは言えない、こういうデータもございます。むしろ過剰な設備投資が過剰な供給を生んでいる、こういった指摘も従前あったところでございます。投資不足というよりは、むしろ投資効率の低さが問題じゃないかと思うわけですが、この点について、この法案では具体的に何か対処されているんでしょうか。

茂木国務大臣 確かに、アメリカと比べまして、設備投資の対GDP比率は日本が今一三%、アメリカは一二%、ほぼ同じ水準であります。それは御指摘のとおりだと思っておりますけれども、若干、分子と分母が違うんですね。日本の場合は、分子、分母ともに減ってきて一三%。それに対してアメリカの場合は、リーマン・ショック以降でありますけれども、拡大してきて一二%。分子も分母もふえているわけでありますから、GDPを分母にしますと、分子であります設備投資もやはりふやしていくことが重要だ、こんなふうに考えているところであります。

 ただ、量だけふやせばいいというわけではなくて、質の改善、投資効率も高める必要がある、こんなふうに考えております。

 今、日本では、製造業の設備の老朽化を招き、マザー工場であったはずがグランドマザー工場になってしまっているという状況でありまして、本来だったら日本の技術者が海外に行って投資した先の工場でいろいろ指導するところが、日本の工場の方が古いから逆転現象が起こっているということもあるわけであります。

 さまざまな税制の措置も含めまして、日本においてマザー工場をしっかりと立地して、投資効率も上がる、こういったことをしっかりと考えていきたいと思っております。

奥野(総)委員 今回の法案の中で、事業再編ということを一つの投資効率を上げるための手段としてとっているわけでありますけれども、これについてマスコミあるいは経済界から懸念の声が上がっておりまして、例えば日経新聞の社説では、「今回の法案には、供給過剰などで事業再編が必要な業界を国が調査・公表する規定もある。国が成長分野と衰退分野を選別し、特定の方向に企業を誘導するのがいいことだとは思えない。」こういう懸念を表明しております。

 この点について大臣はどうお考えですか。

茂木国務大臣 本法案の狙いは、企業の自発的な判断によります新たな挑戦であったり積極的な事業活動を後押しすることによって、産業競争力の強化を図るもの。あくまで主役は企業であります。国が強引に事業再編を先導、介入するものではもちろんありません。しかし、事業再編を進めたいと思っている企業であったりとか産業において、そういったものが進めやすいような環境をつくることは極めて重要だ、そんなふうに思っております。

 さまざまな御意見はあると思います。しかし、私も産業界の皆さんと相当な意見交換をしております、この法案について、また成長戦略について。マスコミがどう書いているかは別にしまして、産業界からそういったことに対する懸念の声は、しっかりした説明を行えば、全く聞いておりません。

奥野(総)委員 今回の法案は、いわゆる産活法の廃止、そして、その産活法そのものがこの法案全体の三分の二に当たるというものでございます。

 そこで、そうした産業界の懸念、ないとおっしゃっておられましたけれども、マスコミ等で報じられる懸念の原因の一つとして、産活法の評価というのがあると思うんですね。エルピーダ、あるいは最近ではルネサスへの出資等もありますけれども、産活法をどのように評価しているのでしょうか。そして、その評価を踏まえて、今回の法案ではどのように改善がされているのでしょうか。伺いたいと思います。

菅原政府参考人 産活法がつくられた時代というのは今と大きく異なっておりまして、過剰供給、過剰雇用といった要すれば過剰状態で、企業をどうスリム化するかというところが課題になっていたと思います。その関係で、今の状況とは全く違うという認識のもとに、産活法ではそういったときにはしっかりした成果を上げ得たとは思いますけれども、今回の法案の策定に当たって、大きく二点、変更を加えてございます。

 一つは、産活法時代は、事業再編の定義のところで、事業再編とは、企業のいわゆるリストラか、もしくは新規の事業に取り組むか、どちらかを選べば産活法の対象になっていた。裏返して言えば、いわゆるリストラの部分だけでも産活法の対象になっていたということでございますが、これは、過剰設備、過剰雇用の中ではそういう選択肢がとられたということでございます。今回はそこの、またはのところを、かつということで、事業の形態を変えると同時に新しい取り組みを行うべきだというふうに要件を、前向きなものを必ず付加することに限定することといたしております。

 もう一つは、産活法時代は、事業再編の分類を四つという形で、かなり細かく国が事業再編の形態を規定して、それに合う再編を持ってきてくださいということにしていたわけですけれども、これについては、今回は基本的には事業再編は一本ということで、国が事業再編の形態に口を出さないというところと、あとは事業分野指針、十二の事業分野について国がある意味で方向性を出すという指針を法律上つくるということもあって、現につくっていたわけですが、こういうことについては一切廃止するということで、大臣が申し上げたとおり、今回はまさに民間の発意を基本とした再編に変更しております。

奥野(総)委員 昔から、産業政策ということで、「官僚たちの夏」のいわゆる特振法の世界、よく通産省時代の話で言われるのはホンダの自動車参入を阻止しようとしたとか、官主導の産業界再編はずっとこれまで失敗してきた、こういう評価もされているところでございます。ですから、くれぐれもそういうことにならないように、民主導でやっていただきたいと思います。

 今回の法案を見ると、やはり産活法と余り変わっていない。確かに後ろ向きなものから前向きなものへということでありますけれども、道具立ては余り変わっていないように見えるわけでございます。産業競争力強化という中身にしては、その大半が産活法のリニューアルということで、ちょっと物足りないということを指摘しておきたいと思います。

 今度は、開業率の話をさせていただきたいと思います。

 米英並みの開廃業率一〇%、現在五%のものを一〇%にする。これもかなり野心的な目標だと思いますけれども、では、これを具体的にどうやって実現するか、今までとどこがどう違うか。今まで随分ベンチャーのファンドもやってきましたが、いろいろな施策をやってきても、ずっと開業率は伸びてこなかったわけであります。

 今回の法案で、どういう施策の効果で開業率が上がるというふうにお考えでしょうか。

菅原政府参考人 委員御案内のとおり、これまで、開業率の向上、ベンチャーの育成のためにさまざまな手を打ってきてございます。

 ただ、これまでの経験を踏まえますと、日本が例えばアメリカとの比較において足りなかったところは、いわゆるベンチャーファンド、ここがベンチャーを育てる母体となる機能を有していると思いますけれども、ここについてのある意味での政策的てこ入れがやはり弱かったのではないかというふうに考えております。

 今回、従来の施策を引き続き強化することとあわせて、この法案におきまして、先ほど議論もありましたいわゆるベンチャーファンド税制というものをつくりまして、企業からベンチャーファンドへの資金の流れ、その場合も、単なるお金を間接的に流すベンチャーファンドではなく、しっかりとしたハンズオン機能を有したベンチャーファンドに対して資金の流れを太くすることによって、そのベンチャーファンドがより多くのベンチャー企業を育てるという、アメリカで見られた好循環を日本でも出現させたいというところをこの法案の大きな特徴の一つにしてございます。

茂木国務大臣 制度的には、今、政府参考人菅原局長から説明したとおりであります。

 今回、欧米並みの開廃業率一〇%という明確な目標を掲げました。恐らく、日本で今までベンチャーが育ってこなかったのはさまざまな要因がある。ベンチャーの側でもそういったメンタリティーを持っている人間が少ない。ベンチャーファンドもそれほど勢いがない。また、事業会社の側でもベンチャーに対する投資意欲が余りなかった。スピンオフ、カーブアウト、あらゆるものが少なかったんですよ。これを一気に変えていこうという目標を掲げて、それに向けた動きを国全体として進めていくというところが私は今までと違うのではないかと。

 確かに、例えば一つの課とか一つの局でベンチャーを育てていくということを一生懸命やってきたかもしれません。これからは、国を挙げてベンチャーに対する支援を行い、この目標達成に向けて政府一丸となって取り組んでいくということが極めて重要だと思っております。

奥野(総)委員 ベンチャーファンドの問題点は、先ほど岸本委員の御指摘のとおりでございますので、ぜひ改めていただきたいと思います。

 しかし、それだけで本当にうまくいくのかというところもあります、起業教育の推進とか。やはり一番ネックになっているのは、個人保証の問題だと思うんですね、これはベンチャーに限らず。大体、中小企業のオーナーは皆さん個人保証をして、自分の全財産をかけて事業をやらなきゃならない、ここを改めなければならないと思います。私の父なども中小企業をやっておりましたけれども、結局、畳むときには家もなくなる、こういう話になってしまって、これは改めなければならないと痛感しているところであります。

 今回、ガイドラインを設けると書いてあります。法人の事業資産と経営者個人の資産が分離されている場合等、一定の条件を満たす場合には経営者の保証を求めないことのガイドラインと書かれていますけれども、これはガイドラインで果たして足りるんでしょうか。ガイドラインで指導してこの慣行が改まるんでしょうか。

田中大臣政務官 お答え申し上げます。

 中小企業の経営者本人による個人保証につきましては、やはり、思い切った事業展開や早期事業再生を阻害する要因となっているという指摘があります。そして今、その見直しが重要な政策課題であると、委員のおっしゃるとおり、認識しているところでございます。

 本年六月に閣議決定されました日本再興戦略におきましては、個人保証制度の見直しとして、ガイドラインを策定することとしております。

 これに基づきまして、本年八月に、日本商工会議所あるいは全銀協を共同事務局といたしまして、中小企業及び金融機関の代表あるいは有識者から構成される経営者保証に関するガイドライン研究会というものが設置されました。

 この中におきまして、事業資産と経営者個人の資産が明確に分離されている場合など一定の条件を満たす場合には保証を求めない、また、事業承継時におきましては後継者保証の必要性を改めて検討する、さらには、保証履行時におきまして一定の資産が残るなど早期事業再生に着手するインセンティブを与えること、こうしたものを盛り込むことを検討しております。今、年内に成案を得るべく取り組んでいるところでございます。

 また、ガイドラインの策定後におきましては、研究会の共同事務局である日商や全銀協とも連携しつつ、ガイドラインを活用する中小企業、小規模事業者のみならず、支援を実施する税理士等の専門家への周知等を徹底して図っていくなど、ガイドラインが民間の実務に浸透して、真に実効性あるものとなるように努めてまいりたいと思っております。

奥野(総)委員 これはぜひ機能するように、金融庁にも前面に出ていただいて、しっかりやっていただきたいと思います。

 それから、創業関係でいえば、創業支援事業ということで、市町村に計画を作成してもらって企業を支援していこう、百七十市町村に計画をつくっていただくことを見込んでいるということでありますが、市町村がやるというインセンティブは働くんでしょうか。例えば財源、交付税措置をしているとか。やるといったって、お金がなければ人も物も頼めない、事務所も置けないと思いますが、財源等の支援は行うんでしょうか。あるいは、どういうインセンティブが働いて百七十もの市町村が計画をつくるという見込みになっているんでしょうか。

田中大臣政務官 本法案では、創業者に一番身近な市区町村を中心とした創業支援体制の構築を支援するということとなっております。しかしながら、今、奥野委員が懸念されているように、現状では十分な支援体制を構築することが難しい市町村も存在すると考えられるところでございます。

 そのために、本法案におきましては、例えば、複数の市町村が共同で計画を策定すること、また、市町村の創業支援計画の策定、事業の実施に当たっては都道府県の支援を受けることも可能としております。

 また、中小企業基盤整備機構が市町村に対し、創業支援の専門家あるいは成功事例の紹介等、創業支援に関する情報提供などの支援を行うこととしております。さらに、市町村の創業支援計画に関しまして、県の支援メニューを組み込むこともできるということになっております。

 こうしたさまざまな取り組みを活用しつつ、創業支援を行おうとしても、例えば財源あるいはマンパワー、こうした観点から十分な体制をつくることが難しい市町村に対しまして、実効的な創業支援体制が構築できるように、国としても支援してまいりたいと思っております。

奥野(総)委員 自治体がこれを喜んで進んでやるともなかなか思えないんですね。むしろ、既存の商工会とか商工会議所とかがありますから、そこに情報提供してあげて、そこを窓口にして、自治体と連携させてワンストップでやるような仕組みを考えた方がより効果的ではないかと思います。絵に描いた餅にならないことを祈念します。

 今まで見てきましたけれども、産活法のほぼ焼き直しであったり、開業の目標が必ず達成できるという確たる道筋も今の答弁ではなかなか見えないわけでありますが、やはり大事なのは規制改革だと思います。

 今、日本の産業で一番伸びているのは何かというと、ICT、いわゆる昔の電気通信産業であります。これはなぜ伸びたかというと、私も郵政出身でありますけれども、規制緩和をした。当時、電電公社を民営化し、新規参入を認め、その後、携帯電話の端末売り切りとか、規制緩和をしていって市場がどんどん広がっていった、日本で有数の成長産業になっていったということであります。この例を見るまでもなく、再編を政府主導でやっていくのではなくて民に任せる、そのためには規制改革が私は一番大事だと思います。

 この法案の目的に書かれているわけですが、その中の目玉の一つと言えます企業実証特例制度について、最後に伺っていきたいと思います。

 今具体的にどういうものが挙げられているかを見ますと、水素を保管するタンクの素材を新しくするとか、電動アシスト自転車の馬力を上げるとかいう話でありますが、そのほか、例えば今話題になっている混合診療とか株式会社の農業への参入、こういったものはこのスキームで対応できるんでしょうか。

菅原政府参考人 企業実証特例制度は、最先端の技術を有し、新事業に挑戦する企業の提案を受けて、安全性等を確保する措置が実施されることを条件として、企業単位で規制の特例を講じるものでございます。

 現在、まだ法律ができていない段階で、細かな事業計画についての相談は受けておりませんが、今の段階で相談を受けているものとしては、委員が今御指摘したようなものに加えて、例えば自動車の公道走行に係るもの等が挙げられてございます。

 特定の分野については、企業実証特例制度については特定の分野を事前に対象外とする仕組みはとっておりませんので、御指摘のあった分野について、企業が新事業の実施のために必要があると判断すれば、規制の特例措置を提案することは可能であると考えてございます。

 法案の成立、施行後、仮にそうした分野の案件について企業から企業実証特例制度を活用した具体的な提案があった場合には、事業所管官庁がその内容、方法、必要性などを精査した上で、規制所管官庁と協議、調整を行っていくこととなっております。

奥野(総)委員 申請があって、事業所管官庁と規制官庁で協議して答えを出すという仕組みだと思いますが、認められない場合に異議申し立ての方法はあるんですか。例えば行政不服審査法の異議申し立てとか、何らかの形で、認められなかった場合に異議を申し立てる仕組みは入っているんでしょうか。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、これは規制の特例を求めるものでございますので、それが認められなかったことは直接的にいわゆる行政処分を対象にいたします行政不服審査の対象にはなりません。ただ、この制度の中では、まずは、今お答え申し上げましたとおり、事業所管官庁が丁寧に、事業者から上がった提案をよく検討しながら、規制所管官庁に対する働きかけ、あるいは事業者に対するアドバイスを行うといったようなことをしてまいります。

 また、政府全体の取り組みといたしましては、これはグレーゾーン解消制度も含めてでございますけれども、この法案の中で、御案内のとおり、いわゆる実行計画というものを政府全体として定め、産業競争力強化法案に基づいてできますこの制度を含めて、全体の施策、規制改革を含めた施策の実施状況をフォローアップしてまいりますので、その中で各省の対応が適切かどうかについてもフォローアップしてまいります。

 さらに、さまざまな省庁との関係で、これは事業所管省庁あるいは規制所管省庁に限りませんけれども、さまざまな相談があった場合に一元的に対応する窓口として、例えば今、規制改革会議の中で規制改革ホットラインというものがつくられておりますので、そうしたものも事業者として御活用いただくことが可能でございます。

奥野(総)委員 仮に出して、だめだという話になってしまうと、だめ出しになって、だめだという事実だけが残るということですね。確定判決みたいになってしまう可能性があると思うんです。

 この法案に書かれていることは皆さんが通常やられていることでありまして、経産省も非常に熱心に、規制改革ということで、所管の事業のために他省庁の分野にもいろいろ目配りして、規制の緩和について従来から訴えてこられたと思うんです。しかし、それは各省の設置法に基づく所管の壁があって、はね返されてきたということです。

 では、この法案が今までとどう違うかというと、結局同じでありまして、事業所管官庁が、例えば経産省所管のある業界について、例えば自動車なら自動車の規制の話を国交省に持っていったときに、はねつけられたらそれでおしまいということでありまして、何ら変わりがないと思うんですよ。せっかく規制改革というからには、やはりきちんと実行できるように考えなきゃいけない。

 そうすると、やはり総理とか官房長官なりのイニシアチブ、協議が調わないときに、事業所管官庁は特例を認めることが必要だと考えている、しかし規制官庁は反対だというときに調整する仕組みを入れなきゃいけないと思います。総理主導で、そういうイニシアチブを入れるべきだと思いますが、最後に、大臣、どうでしょうか。

茂木国務大臣 まず、この法案のたてつけが決定的に今までと違っておりますのは、私も事業の所管大臣になることもあります。場合によっては規制の所管大臣になることがあります。

 単に、法律がないままにやりとりをするのではなくて、今回、企業実証特例制度も含めたこの産業競争力強化法は閣議決定しているんです。全閣僚が、厚生労働大臣も、国土交通大臣も、全員がサインを、花押をして、これで決めているわけであります。ですから、規制の担当大臣がこの法律に従わないということはあり得ないんです。

 当然、事業の所管大臣、こちらの側から規制の所管大臣に働きかけを行いますが、規制所管省庁においても前向きに規制の特例措置を創設する。あるいは、特例が難しい場合には、例えばどのような、規制が要請する安全性等を確保する措置が講じられれば要望実現か、これが解決されるか、こういうことについて論点を明確にすることが期待されているわけであります。

 それでも事業の所管省庁と規制の所管省庁の意見が合わなければ、当然のことでありますが、総合調整を行う権能を有しております内閣官房が各省庁の意見の調整を行い、そのプロセスの中で最終的には総理が判断するということになってまいります。

奥野(総)委員 その調整プロセスが今うまく機能していないからなかなか規制改革が進まないんだということを指摘させていただき、あと、この法案をいろいろ見てきましたが、経産省の努力は多としますけれども、どうも経済産業省強化法案というようなイメージを持ってしまいますので、それを一言つけ加えて、終わりにしたいと思います。

富田委員長 次に、勝俣孝明君。

勝俣委員 自由民主党、静岡六区の勝俣孝明でございます。

 本日は経済産業委員会にて質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 きょうは、成長戦略実行国会と位置づけられている今国会におきまして、その成長戦略の柱となる産業競争力強化法案についての質問をさせていただきます。

 今、安倍政権の誕生後、約一年がたとうとしているわけですが、ちょうど一年前に党首討論が行われまして、解散に至ったこの時期の日経平均株価は八千六百円台でありました。また、円も七十九円台という水準でございました。それがこの一年で、日経平均株価も値を戻しましたし、懸念されていた円高も大分是正されてまいりました。これもアベノミクスに対する国民の皆さんの大きな期待ではないか、このように考えております。まさに三本の矢の最初の二本の矢である、大胆な金融緩和政策そして機動的な財政出動によって、大きな期待を得ることができたと考えております。

 今後私たちがやらなければならないことは、このアベノミクスに対する期待を、地域に生きる国民の皆さんお一人お一人にしっかりと実感していただくことだというふうに考えております。

 しかしながら、五月に私がこの経済産業委員会にて質問させていただいたときは、各金融機関の日銀当座預金残高が四月末で過去最高額の約六十五兆円であったのが、今現在は約百兆円になっており、さらに金融機関にお金がだぶついてしまっている状況にあります。また、皆さん御承知のとおり、日本の個人の金融資産も一千五百兆あると言われている状況であります。

 金融機関でお金が目詰まりしてしまっている状況の中で、やはり、金融機関より先の、中小企業の設備投資や個人消費にしっかりとお金を回していかなければならないわけであります。人間は、欲しいものがなければお財布のひもを緩めてお金を出さないわけでありますから、今私たちがやらなければならないことは、やはり欲しいものをつくり出すこと、まさに需要をつくり出すこと、これを政府が責任を持ってやることが必要であるというふうに考えております。

 その需要をつくり出すための環境づくりこそがこの産業競争力強化法である、このように私は考えているわけであります。この産業競争力強化法によって、日本の三つのゆがみである、過剰規制、過少投資、過当競争を是正して、そして民間投資を喚起し、需要をつくり出すことこそが三本目の矢である成長戦略の成功のために必要である、このように考えております。

 そこで、民間投資、とりわけ企業の設備投資の促進手段について質問をさせていただきます。

 まず、民間企業の設備投資額の推移を見てみますと、二〇〇八年度に七十一兆円であったものが、二〇〇九年度から二〇一二年度まで約六十兆円と、非常に低調に推移をしております。目標のまずは七十兆円に戻すという中で、リース手法の活用や、設備投資のしやすい税制措置が挙げられております。

 二〇〇八年からの会計基準の変更以降、特に、設備投資全体に占めるリース手法を活用した設備投資は、七%を切るまでに縮小している状況にあるわけであります。

 産業構造の変化の激しい現在、最先端の技術を駆使した設備投資等、以前よりも短期間で技術革新があり、新たなバージョンアップされた設備に投資するという、設備投資のサイクルが非常に短期間になっているという特徴もございます。

 こうした状況の中で、企業が設備投資に対して積極的な姿勢になるように、リース手法の活用や、設備投資のしやすい税制措置の実行によってサポートしていくことが重要である、このように考えております。

 いずれにしましても、十月一日に公表された短観によりますと、業況判断DIが大幅に改善する一方で、設備投資計画は市場予想の中央値を下回っている状況です。前回の六月調査からも下方修正されており、依然として企業が設備投資に慎重な中で積極的な姿勢に変えていくためには、具体的にはどのような設備投資の促進手段をお考えなのか、お伺いをいたします。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、全体の景況感についてお話がございましたけれども、他方で、産活法の総括等々でも説明申し上げておりますとおり、全体として、一時期ございました設備のいわゆる過剰感については一服をしているものというふうに認識をしております。

 そうしたことの中で、これも今先生からお話ございましたとおり、現在、足元で年間六十三兆円程度の設備投資額を、リーマン・ショック以前の水準約七十兆円に向こう三年で戻すということを目標にしているわけでございます。

 その主要な柱といたしましては、この産業競争力強化法案の中にも盛り込んでおります、例えば生産性の向上を一定程度果たすものについて大胆な設備投資減税を予定しております。これにつきましては、例えば即時償却ですとか、あるいは、企業の規模にもよりますけれども、五%、七%、一〇%といった税額控除のメニューを用意しておりまして、そういう意味では、これまでに前例のない異次元の設備投資支援策をこの産業競争力強化法案のもとで用意しているわけでございます。

 したがいまして、そうした施策とあわせて、先生から今お話がございましたリース手法の活用にも着目をしているところでございます。これも今お話がございましたとおり会計基準の変更がございましたものですから、リース全体につきましては近年その利用が落ち込んでいるというところがございますけれども、まさにその落ち込んでいる理由というのが、会計基準の変更によりまして、いわゆるファイナンスリースと言われる手法についてはオフバランスの効果がなくなったことに起因をしていることもございますので、引き続きオフバランスの効果があるオペレーティングリースという手法に着目をして、この法律のもとでは、特に先端設備について、オペレーティングリースを活用した設備投資支援策ということで支援しようというふうに考えております。

 具体的には、特に、オペレーティングリースを活用することになりますと、リース会社がいわゆる二次利用価値、つまり、最初の事業者の方が使われた後、転売あるいは再度リースに出す場合の価格の変動リスクを負担するわけでございますけれども、そうしたものを軽減することで、より積極的にリース会社が先端設備のリース事業に取り組み、裏側から申しますと、事業者の方が先端設備の導入をしやすいような環境を整えていきたいというふうに考えております。

勝俣委員 七十兆円の目標に向けてしっかりと頑張っていきたいと思います。

 続きまして、産業の新陳代謝について、とりわけ開業率一〇%に向けて、開業率を高めるための具体的なベンチャー投資の促進について質問させていただきます。

 今後、日本が人口減少社会を迎える中で、このままでは当然消費が減っていくわけですから、今の経済のパイは確実に減少していくことが予測されるわけであります。私たちは、こうした経済のパイをふやしていくために、新しい産業をしっかりと戦略的につくっていかなければなりません。特に、各委員から再三出ておりますけれども、日本の開業率は約四%と欧米と比較しても低い水準にあるわけです。開業率一〇%の実現のためには、ベンチャー企業の育成は急務であります。

 中小企業白書によりますと、萌芽期における起業・事業運営上の課題で、半数以上の起業家の皆さんが資金調達に不安を抱えております。また、資金調達先を見てみますと、九〇%近くの皆さんが預貯金等の自己資金で賄っている状況であり、残念ながら民間金融機関の融資は二五%にも満たない状況であります。

 私も十一年間銀行員生活を送っておりましたけれども、若い人がみずからのアイデアを実現すべく起業したいですとか、新規事業を思い切った形で、それこそ社運をかけて行いたいという方がたくさんおられました。しかしながら、やはりネックになるのは、先ほどもありましたけれども資金調達であります。日本の間接金融の文化の中で、担保、保証人また過去の決算状況、債務という大きな壁に当たるわけであります。

 これはあくまでも過去の部分であって、重要なのはこれからの将来のことであり、的確な事業評価というものを行っていく必要があります。そういった中では、このような創業スタート時に、間接金融もさることながら、直接金融の手法に選択手段をつくっていくことも重要であります。

 そこで、ベンチャー投資の促進が必要不可欠になってきます。今回の産業競争力強化法案におきましては、開業率一〇%に向けて、ベンチャー投資の促進が挙げられております。

 しかしながら、これも先ほどの中小企業白書の創業スタート時の資金調達先でありますけれども、自己資金が九〇%、民間の金融機関が二五%、そしてベンチャーキャピタルの出資によるものはわずか一%であります。

 日本でベンチャーファンドの投資が活性化しない要因の一つに、ベンチャーファンドの資金回収手段が限られているため、なかなか投資収益を上げにくく、投資活動が消極的になってしまうといったことが挙げられます。

 そこで、開業率を高めていくために、こうした課題をどのように解消し、そして、ベンチャー投資を具体的にどのように促進していくのか、お伺いいたします。

赤羽副大臣 我が国の開業率が上がらないという原因の中に、今勝俣さんが御指摘のように、業を起こすときの資金が十分じゃないというようなことも大変大きな要因だと思います。

 それに加えて、私、実は三十年近く前に台湾に駐在していたことがあるんですが、台湾というのは、日本と全然違ってとにかく社長主義なんです。要するに、自分が社長にならないと気が済まない、そういう方向性がすごく強い。片や、我々の世代の日本というのは大企業主義。大企業に勤めることがある意味で立派な人生ということがあって、そこから踏み出して自分で仕事、会社を起こすのはリスクが多いというか、そういったことは真っ当じゃないような状況だったと思うんです。今は随分変わってきたと思いますが。

 起業家精神をどうやって養っていくのかというのは、教育の問題もあると思います。加えて、実際いざ業を起こすときに、今、銀行時代の経験からも言われていたように、資金面の手当てですとか、あとノウハウも十分じゃないということとか、また、失敗したときのリスクが大変大きくて、人生をかけて失敗したらどうしようかという話もある。いろいろなことを手当てしなきゃいけない。その中で、ベンチャー企業の育成に当たって、直接金融が大変重要な手法だというのは御指摘のとおりだと思っております。

 そういった意味では、今回の産業競争力強化法案では、経営支援能力が高いベンチャーファンドを認定して、具体的には、認定されたベンチャーファンドを通じて企業がベンチャー投資を行った際には投資額の八割の損金算入を認めるなど、新たな税制措置を設けているところでございます。

 このほか、地方自治体と民間の支援事業者が連携して行う創業支援に対する支援措置も盛り込んでおります。具体的には、市町村が創業支援事業計画を作成して認定を受けた場合に、当該計画に基づいて支援を受けた創業者に対する信用保証の拡充等を行うというような制度設計もさせていただいております。

 また、企業の内部では十分に成長できない、しかし潜在能力のある事業をスピンオフ、カーブアウトして新たな企業を立ち上げるなど、思い切った事業再編を後押しする措置も盛り込んでおります。具体的に言いますと、事業の切り出し、統合を行う事業再編におきまして、企業が新会社に対して行う出融資額の七割の損金算入を認めるというふうに盛り込んでいるところでございます。

 こうしたさまざまな施策を総動員して、何とか開業率一〇%台を目指す、これは大変野心的な高い目標でありますけれども、この目標を何とか実現するように頑張っていきたい、こう考えているところでございます。

勝俣委員 開業率一〇%に向けて頑張ってまいりたいというふうに考えております。

 続きまして、産業の新陳代謝、とりわけ企業の新規事業の創造、そして業態転換時の取り組みについて質問させていただきます。

 中小企業の競争力を高めていくためには、既存の事業構造を常に点検して、新たな可能性に挑戦していくことが必要であるというふうに考えております。

 私の地元の静岡県東部地域では、最先端医療技術を持つ県立静岡がんセンターを中心に、ファルマバレー構想というものが提唱され、医療機器関連産業も徐々に育ってきているわけであります。

 町工場で自動車部品をつくっていた会社が、技術力と研究を重ねて体内に入れることのできるねじをつくって、それをきっかけに自動車部品分野から大幅に方向転換をして、医療分野の売り上げを大幅に伸ばしています。

 こうした、既存の事業構造の中で苦悩している経営者には、その経験や技術力を生かして、新たな事業分野に希望を見出し、挑戦していく方々も多くおられます。しかしながら、低迷する業績と大きな債務を抱える中で、金融機関からの新規の資金調達が困難な企業も少なくありません。過去の決算書や担保、保証人に過度にとらわれることなく、未来、将来の新しい事業をしっかりと評価し、資金調達はもちろんのこと、事業の成功に向けてサポートをしていくことが重要であります。

 中小企業白書によりますと、新事業展開に際して直面した課題では、新事業を担う人材の確保が困難であったり、販売先の開拓、確保が困難、また新事業経営に関する知識、ノウハウの不足など、課題を持っている中小企業が三〇%以上に上ります。

 昨日の参考人意見聴取で、エフビズの小出センター長も、効果の出せる支援体制が鍵を握るということをおっしゃっていました。

 企業の新規事業創造、そして業態転換時における中小企業に対する総合的なサポート体制、また具体的な取り組みについてお伺いをいたします。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、産業の新陳代謝を進め、中小企業、小規模事業者の競争力を高めていくためには、事業の転換や多角化など、新事業への展開を促していくことが極めて重要だと考えております。

 このため、経済産業省におきましては、平成十七年度から、中小企業新事業活動促進法などによりまして、中小企業、小規模事業者の新商品開発や販路開拓、こういった新事業への取り組みに対しまして総合的な支援を実施しているところでございます。

 具体的には、まず資金調達でございますけれども、補助金や低利融資、こういった支援を行っているところでございます。また、委員御指摘の総合的な支援体制ということで、知識、ノウハウの提供として、中小企業基盤整備機構が事業計画の策定段階から計画認定後のフォローアップまで一貫した支援を行っているところでございます。

 さらに、こうした法認定の枠組みに限らず、新事業展開に取り組んでいらっしゃいます中小企業、小規模事業者に対しまして、専門家派遣による経営相談、あるいは若者の新たな人材確保、こういった幅広い支援施策を整備しているところでございます。

 また、御指摘のとおり、これらの支援施策の整備に加えまして、地方自治体、地域に密着した中小企業関係団体、それから新たに創設いたしました認定支援機関等と連携した総合的なサポート体制を構築しまして、中小企業、小規模事業者の新たな事業への挑戦を強力に推進してまいりたいと思います。

勝俣委員 総合的なサポート体制で取り組んでいただければというふうに考えております。

 次に、中小企業の事業再生の支援の強化について質問をさせていただきます。

 日本の約四百二十万社の中小企業におきまして、特に我々地方に生きる地場産業にとって、まだまだ経営環境は厳しい状況にあります。失われた十年、二十年と言われたデフレ時に金融機関からの資金調達によって生き延びてきた中小企業は少なくなかったはずです。

 こうした状況の中で、本年三月に中小企業金融円滑化法が終了いたしました。今後は過去にとらわれない未来志向の企業経営をしていかなければならない中で、大きな債務が足かせとなって身動きのとれない中小企業が多く存在します。設備投資をしようにも、真水のお金がない、資金調達ができないといった、将来への投資が難しい状況であります。

 いわゆる過剰債務状態にある中小企業、例えば、私の地元伊豆半島においても観光産業が基幹産業である中で過剰な設備投資によって過剰債務状態に陥ってしまっている旅館、ホテルがたくさんあるわけです。

 こうした中小企業に対しての事業再生手法はさまざまあるわけでありますけれども、しっかりとした将来に向けての事業計画を立てて、金融機関がしっかりと責任を持った上で、事業者と一丸となって再生に取り組んでいくことが重要であります。

 そこで、事業再生が必要と言われている五万社から六万社の中小企業に対して、今後具体的にどのような支援をしていくのか、お伺いをいたします。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、引き続き中小企業の経営改善、事業再生への取り組みを支援していくことが極めて重要だと認識しております。

 このため、本法案におきましても、四十七都道府県ごとに置かれる中小企業再生支援協議会に対して助言を実施している中小企業再生支援全国本部の機能を強化することとしております。具体的には、各地の協議会の再生支援業務の評価を行い、それを再生計画の改善につなげていくこと、さらには全国本部みずからが案件を受け付け、再生計画の策定支援や債権者間の調整等の再生支援を行うこととしております。

 また、これらの措置以外にも、中小企業の再生支援といたしましては、従来から、税理士、弁護士、金融機関等から成る認定支援機関による経営改善計画策定支援事業、あるいは中小企業基盤整備機構から中小企業再生ファンドへの出資等を行っているところでございます。

 ファンド出資につきましては、これまで機構から合計四十ファンドへの出資が行われまして、出資したファンドからは二百二十社以上の中小企業に対して投資実績を上げている、こういった状況になっております。

 先生がお触れになりました静岡県でございますけれども、平成十六年三月以降、四ファンドが組成されておりまして、合計四十社に対して投資を実施しているところでございます。

 これらの措置を活用いたしまして、引き続き中小企業、小規模事業者の再生支援を着実に推進してまいりたいと考えております。

勝俣委員 いずれにしましても、地域に根づいた施策をやっていただきたいというふうに思います。

 最後に、規制改革を強力に推進していくための制度について質問させていただきます。

 かつては国から民間企業に対して一方的な規制改革を行っていた印象が強いと考えております。今回の産業競争力強化法案におきましては、こうした規制改革を企業提案に基づいて行う点に特徴があり、大変期待できると考えております。要するに、企業が自分たちの努力によって、真剣に事業を考えて、業務や事業の遂行の妨げになっているような規制を把握し、そして規制改革を発案していくことであります。このような意欲のある民間企業の創意工夫や挑戦を支援していくことが重要であると考えております。

 例えば、グレーゾーン解消制度において、これまで規制によってできなかった新たな事業について、民間事業者が事業計画を確認することによって、萎縮することなく挑戦できるといったことが考えられます。

 そこで、具体的に、これまでこうした規制によって民間企業が挑戦しにくかった事業、また想定される事業はどのようなものがあるでしょうか。また、今回のグレーゾーン解消制度において、そのことが解消し、民間企業が新たな事業のチャンスをつかむことができるのか。お伺いをいたします。

菅原政府参考人 委員御指摘のとおり、グレーゾーン解消制度は、企業の具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を明確にすることで、企業がちゅうちょなくその事業に挑戦することを後押しするものでございます。

 その活用が想定される取り組みといたしましては、本格的な高齢化社会の到来を前にして、例えば社会保障の公的保険に隣接する分野における、高齢者等のニーズに対応した、新たな健康の維持増進に資するサービスなどが想定されております。

 法案の成立、施行を控えた現段階で、まだ企業から個別具体的な事業計画が来ているわけではございませんけれども、これまで寄せられている相談の中で幾つか御紹介すれば、例えば、民間のスポーツジムが生活習慣病の予防を目的として運動指導を行おうとする場合、利用者の身体の状況やその指導の内容のいかんによっては医師法等により医師等のみに認められる行為に該当する可能性があることから、どこが法律の白と黒の境目なのか明確にしてほしいという問い合わせですとか、あるいは同じように健康分野で、医療法人として病院食を通院患者など入院患者以外の者に対しても提供することを考えているけれども、こうした取り組みと、医療法により医療法人に認められる附帯業務との関係がどうなっているのか。

 この辺について、事業の範囲次第では抵触する可能性があるということで、グレーゾーン解消制度を使って明確になれば前向きな事業展開ができるというような声が寄せられております。

勝俣委員 いずれにしましても、民間投資を促す環境をつくることが必要であり、さらに力強い日本経済をつくっていくためには、政府が責任を持って需要をつくり出すということが重要であります。一日も早く国民の皆さんが経済成長を実感できるよう、スピード感を持った政策実行をお願い申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、武村展英君。

武村委員 自由民主党の武村展英でございます。

 産業競争力強化法案は、安倍政権の成長戦略を実現するための中核となる法律案であるというふうに考えます。安倍政権が掲げる経済再生の成否は、まさにこの法案にかかっているわけです。したがって、主にこの法案の実効性を中心に、そしてまた他の委員の方から質問が出ていない分野につきましても、細かいところもございますが、質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、これまでの成長戦略と、安倍政権の成長戦略である日本再興戦略の大きな違いは何か、お伺いいたします。

赤羽副大臣 これまでも、幾つも成長戦略というものが発表され、さまざまな評価があったというのは事実だと思います。

 私は、武村委員の質問にどう答えるべきかということを考えた場合に、一番大きなことは、今の自公政権、安倍内閣、ちょっと語弊があるかもしれませんが、やはり政権が強いかどうかということは大変大事だと思います。

 加えて、今の強い政権の最大の眼目が、十年以上続く円高、デフレ不況からの脱却。そのために、いわゆるアベノミクス、三本の矢の政策、今まさに一本目の大胆な金融緩和、二本目の機動的な財政出動ということで、多くの国民に景気回復がいよいよ本格的になるんじゃないかという期待感が醸成されている。この期待感が醸成されるということが大変大事だということ。

 同時に、デフレ下で受け身に回って、なかなか設備投資等々が積極的にできなかった多くの企業がようやく攻めに転じる環境が整いつつある、そういう状況の中で、いよいよ三本目の成長戦略を打つ、政権がどれだけの意思で取り組むかということが、私は実は一番大きな違いなのではないかと思うわけです。

 今までの成長戦略というのは、時の政権のさまざまな課題のワン・オブ・ゼムで、政権を挙げて成長戦略を進めていくことが果たしてどうだったのか、私は個人的には非常に疑問に思っております。

 今回は、まさに総理みずから、また全閣僚みずから円高、デフレ不況から脱却するために取り組んでいくという強い姿勢があることが、何よりもまず大きな違いだと思います。

 これから先、何が違うかというと、今回の成長戦略で目標とするレベルと、その目標を実行するスピード感がやはり違ってくる、そうしなければいけないというふうに考えております。

 以前の大臣の答弁にもありましたが、例えば、税制改正は年末に決めるのが従来の慣習でしたけれども、今回は、前例にないレベルでの大胆な投資減税や、事業再生を促進する税制なども既に決定したところでございます。

 また、これまで何度も国の課題とされてきた岩盤規制と言われるものについても、具体的な道筋を描いて挑戦していこうと。我が省におきましては電力システム改革、私は、これからの日本のエネルギー政策を考える上で、なかなかこれまで手がつけられなかったことについて大変大きな改革が進められているというふうに思っております。

 それに加えて、政府一丸となって、企業版の特区制度とか、さまざまなことを強い政治力のもとで実行していくということが本当に大事で、今までの成長戦略と同じ轍は踏まないようにしていかなければいけない、これが私たちの決意であり、そういう状況にあるというふうに思っております。

武村委員 ありがとうございました。

 政権の意思と姿勢、そしてまた施策のレベル、スピード感がこれまでとは違うということでお答えをいただきました。

 今おっしゃった政権の意思と姿勢があらわれたものとして、例えば成長戦略の中短期工程表の中に政策群ごとに達成すべき成果目標が示されている、これは私は画期的なことではないかというふうに思います。一方で、本法案では、日本再興戦略に盛り込まれた施策を五年間で集中的に実施するための仕組みとして、産業競争力の強化に関する実行計画を策定し、進捗管理を行うこととされています。

 私は、この成果目標と実行計画の関連が非常に重要だと考えています。例えば、今後三年間のうちに設備投資を二〇一二年の六十三兆円から一〇%増加させて七十兆円に回復させることを目指す、そういう成果目標が掲げられています。こうした成果目標を効果的に達成するためには、可能な限り年次ごとの成果目標とひもづけした形で実行計画を策定する、そしてPDCAによる管理を行っていく、こうしたことが必要だというふうに考えますが、御見解をお願いいたします。

田中大臣政務官 成長戦略ですけれども、やはり、スピード感を持って実行、実現できるかが鍵であろうと思います。このため、本法案におきましては、この成長戦略を確実に実行していくための仕組みが盛り込まれております。

 具体的には、当面三年間に確実に実行していくべき内容を盛り込んだ実行計画を策定し、施策ごとに担当大臣、実施期限を明確化することなどを通じて、担当大臣の責任のもとに施策を確実に実行していくということになっております。その上で、毎年度一回、当該施策の進捗状況などを、日本再興戦略に盛り込まれたいわゆるKPIに近づいているかどうかという観点からも政府として評価し、必要があれば、当然、経済社会情勢の変化等も踏まえながら実行計画を見直すこともこの法律では明確化しております。

 KPIの中には中期にわたって取り組むべきものもありますが、KPIを着実に達成していくためにも、実行計画に定める直近の三年間において、まず実施すべき施策を明確にコミットしまして、一歩一歩推進していきたいと思っております。

 こうした仕組みを活用しまして、安倍総理を中心にいたします内閣全体の強いリーダーシップで、日本再興戦略とその戦略に盛り込まれたKPIの実現に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

武村委員 ありがとうございました。

 実行するという強い決意をお示しいただいたと思います。実行することは確かに重要ですけれども、それとともに効果を上げることが究極的な目標であるということを強調しておきたいと思います。

 続きまして、公正な競争環境の整備について質問させていただきます。

 本法案では、規制緩和によって新たな需要を喚起することが重要であるというふうにされています。しかしながら、経済の健全な発展のためには、公正な競争環境を整備する、これが大前提であるというふうに考えます。

 この法案では、産業の新陳代謝を加速するために、ベンチャーへの支援や、主に国際的な競争にさらされている大企業の事業再編の促進の措置を講じること等により、過当競争を解消し、公正な競争環境の整備を図ろうとしています。しかしながら、こうした分野以外でも、例えば、取引先との力関係の違いから、公正な競争環境とはほど遠い取引が横行している実態があるというふうに考えます。

 この点について御見解をお伺いいたします。

田中大臣政務官 武村委員のおっしゃるとおりであります。

 適正な競争環境を整備し、公正かつ自由な競争を促進していくことは、事業者の創意を発揮させる、また事業活動が盛んになる、ひいては経済の発展、産業競争力の強化につながるといった意味で大変重要なことであります。

 本法案におきましては、再編計画の認定に当たりまして、主務大臣が適正な競争の確保を確認するということになっております。仮に、適正な競争が確保されないおそれがある場合は、もちろん公正取引委員会に協議を行っていくということであります。

 今後とも、独禁法を所管する公取委員会と緊密に連携をとって実行してまいりたいと思っております。

武村委員 公正な競争環境を整備するために、ぜひとも経済産業省としても力を入れて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 一例を挙げますと、トラック業界では燃料費の高騰を価格に容易に転嫁できない状況があると認識しておりますが、燃料費が上がった場合に運賃に転嫁できる燃料サーチャージ制度の導入促進のために、荷主に対して大臣名で行政指導を徹底的に行うといったお考えはないか、御見解をお伺いしたいと思います。

赤羽副大臣 経済活動において、トラック業界というか物流は、人間の体に例えると血液のように大変重要なものだと思っております。しかし、血液というのは流れていて当たり前で、なかなかその重要性が実感できないというのも、トラック業界の置かれている環境もよく似たところがあります。

 私は、今の運賃の水準は、規制緩和を行って十年以上たちますが、経済の低迷と相まって大変不健全、健全じゃない状況にあるというふうに思っております。全国のトラック業界の大半が中小事業者ですので、大変御苦労されている、これは何とかしなければいけない。

 私は、運賃というのは荷主が負担するべきものであって、やはり荷主の自覚が大変重要だと。加えて、最近の軽油の高騰に対して、燃料サーチャージ制度を荷主が徹底して守るという仕組みをどうしても導入しなければいけないと強く思っております。

 飛行機ですとか船においてはサーチャージ制というのは結構ちゃんと機能しておりますが、トラック業界においてはなかなかサーチャージ制が機能しないという状況があって、これは国土交通省とともに何とか改善しなければいけないという自覚のもとで、これまで何もやっていなかったわけじゃございませんで、五月には、経団連、日本商工会議所に対しまして、国土交通大臣と経済産業大臣の連名で、私も直接、サーチャージ制の導入というものの要請に行かせていただいております。

 また、地方におきましても、地方の運輸局、経済産業局が一緒に地域の商工会議所等々を訪問し、同様の要請活動を行っております。

 加えて、本年八月には、国交省、経済産業省、全日本トラック協会の連名のリーフレットを十七万部作成し、全国の商工会、商工会議所を初めとする荷主団体にも配付させていただいております。

 ことしの十月からは、国土交通省やトラック協会がトラック事業者と荷主のパートナーシップ構築セミナーを開催しておりまして、経済団体にも参加を呼びかけるなど、我が省としても支援させていただいているところでございます。

 トラックの問題というのはややもすると国土交通省任せになっていた嫌いがありますが、私が冒頭申し上げたように、やはり荷主に運賃を出す責任があるという観点から、経済産業省としても、我が省の責任という認識で行動していきたいと考えております。

武村委員 力強い御答弁をありがとうございました。

 続きまして、先端設備の導入の促進についてお伺いいたします。

 本法案では、先端設備リース保険制度及びオペレーティングリース型スキームの二つの制度が創設されることとなっております。この二つの制度の概要と制度の目的について、二つの制度はどういうリスクを軽減することが目的であるのか、ここを明確にしたいと思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、お答えの前提といたしまして、産業競争力強化法案以前から既に存在しておりますいわゆる低炭素投資促進法、正式にはエネルギー環境適合製品の開発及び製造を行う事業の促進に関する法律という法律がございまして、そのもとで低炭素リース信用保険というものが運用されてきた実績がございます。この制度については、今先生御指摘のように、基本的にはリースを受ける事業者の信用リスクをカバーすることを目的に運用されてまいりました。

 そうした運用実績を踏まえまして、今回、産業競争力強化法案のもとで、今先生からお話がございました二つの制度、つまり先端設備リース信用保険制度とオペレーティングリース支援制度というものを御提案申し上げているわけでございます。

 特に、本法案におきましては、どちらに力点があるかといえば、基本的には後者、つまりオペレーティングリースに着目した制度というものを中核というふうに考えております。これは今の先生の御質問と関係するわけでございますけれども、このリース制度を活用する上で特に重要なのは、オフバランスを可能にするようなオペレーティングリースを使用する場合に伴うリスク、つまり、リース会社、一次利用者が使用を終了した後に転売などをする場合の二次利用価値の変動リスクに対応することが必要であるというふうに考えているということでございます。

 同時に、こうしたオペレーティングリースの支援を含めて、特に中小企業などが先端設備を利用する場合には、リース会社から見ますと信用リスクを伴う場合もございますので、ある意味では今申しましたオペレーティングリース支援制度を補完する制度として、信用リスクをカバーする制度として先端設備リース信用保険制度というものを導入することを盛り込んでいるということでございます。

武村委員 ありがとうございます。

 先端設備リース保険制度は信用力の低い中小企業の信用リスクをカバーする制度だ、二つ目のオペレーティングリース型スキームは設備が陳腐化してしまうリスクをカバーするものであるというふうな御答弁だと思います。

 ここでちょっと強調しておきたいのは、会計上、資産計上するか、オフバランスするかということは、あくまで副次的な効果であると私は考えます。確かに、上場会社や大会社の経営サイドから資産をオンバランスしたくないという要望があることは承知しておりますけれども、契約がリースの形式をとっていても設備投資と同一視される場合は、資産計上するのは当たり前の話なんです。

 何よりも経営者には誠実な開示が求められている、このことに逆行するような説明は望ましくない、そういうふうに私は考えます。この制度はファイナンスリースと判定されることを回避するための制度だ、こういうふうに説明することは慎むべきではないかと私は考えています。

 あくまでも、会計基準というのは経済的な実態を正確にあらわしていくものですので、それが結果として資産計上になるのか、オフバランスになるのかということに政策論が振り回されるのは、私は本来のあるべき姿ではないと思います。

 この点については御答弁は結構です。

 オペレーティングリース型スキームについて、さらにお伺いしたいと思います。

 取引が最終的にオペレーティングリースと判定されなかった場合の取り扱いについてお伺いをいたします。当初の契約が本法案の、今後出されることになる適用基準に該当するケースにおいて、個々の企業または法人の財務諸表上に、最終的にオペレーティングリースと判定されずに資産がオンバランスされるような場合、私は本来の目的に照らして適用を排除すべきでないというふうに考えるんですけれども、この点についてお伺いをいたします。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、先生からお話がございましたとおり、具体的な事案につきまして、最終的にその事案がオペレーティングリースと判断されるかどうかというのは、その判断を行います会計士の方の実質的な判断に基づくことだというふうに理解しております。

 その上で、先ほどの御指摘にもございましたとおり、もちろん、それがオペレーティングリースと判断されるかどうかというのは、使用の実態を踏まえた、また企業としての適切な開示との目的で、整合性のあるものである必要がございます。

 したがいまして、私どもが導入いたしますオペレーティングリース支援制度だけの世界で、あるいは独自の世界でそれがオペレーティングリースに該当するかしないかということを判断する、あるいは別途の基準をつくるということは当然できない、あるいはしてはいけないわけでございますので、まずは、私どもとしては、既存の会計基準の適用関係を明確化する中で、私どもの支援制度と会計基準の実際の適用がうまく連動するように、現在、企業会計基準委員会や公認会計士協会などと議論させていただいているということでございます。

 したがいまして、できる限りその運用は一致させたいとは思いますが、最終的には、個々の取引実態により、先生のおっしゃるとおり、私どもがオペレーティングリース支援制度を適用しようとしたが最終的にはオペレーティングリースとは会計士の方から見て判定されないという事態が生ずる場合もあろうかと思います。

 ただ、その場合につきましても、これも先生御案内のとおり、実際の会計処理と、リース会社、契約を結んでいる事業者との間の契約関係というのは独立のものでございます。

 したがいまして、会計上そのように判断されても、リース会社としては一定のリスク、つまり買い戻して二次利用先を探さなければいけないというリスクを依然として負うということになりますので、先端設備の導入を促進するという観点からは、そうした事例についても、例外的というふうには思いますけれども、支援対象とすることを検討しております。

武村委員 ありがとうございました。

 最後に、産業革新機構におけるガバナンスについて質問させていただきたいと思います。

 まず、国の出資額及び出資比率、また取締役につきまして、国との関係も含めて、その構成についてお伺いいたします。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 株式会社産業革新機構に対しましては、政府出資として二千六百六十億円を出資しております。全体の出資、民間出資も含めました出資に対する出資の割合は約九五%でございます。

 取締役の構成でございますけれども、取締役としては、代表取締役社長、専務取締役一名のほか、社外取締役六名、都合八名の者がおります。この中には、国家公務員の出身者、OBや出向者は含まれておりません。

武村委員 ありがとうございました。

 二千六百六十億円という大きな出資を国が行っているわけです。

 私は、問題意識として、いわゆる官製ファンド、この産業革新機構もその一つだと思いますが、株主としてのガバナンスが不十分ではないかというふうに思っています。

 これだけ大きい出資比率を占める株主であれば、民間企業であれば全ての取締役を派遣する、そして完全に経営権を握って業務を執行する。結果として、取締役に情報も集まってきますので、株主としてのモニタリングも果たしていることとなるわけです。官製ファンドというのは民間に経営を任せる必要性がありますので、取締役の派遣は行っていない。しかしながら、株主としての積極的なモニタリングは必要であると思います。二千六百六十億円という大きな税金、これがどのように使われているのか。

 私は、例えば取締役会、投資委員会に出席する、陪席させてもらう、そういった中で状況を把握する、内部監査調書を閲覧する、監査役の監査調書も閲覧する、こうしたモニタリングを行って、国として経営状況を適時に把握しておくことが必要であると思いますが、御見解をお願いいたします。

富田委員長 申し合わせの時間が過ぎていますので、簡潔に御答弁ください。

西山政府参考人 簡単にお答えを申し上げます。

 国から取締役のいわゆる派遣というのは行っておりませんが、取締役については国がいわゆる選任についての認可を行っております。

 個別の投資案件についても、支援基準に基づいて適切に投資が行われているかどうかについては事前に関係大臣の意見を聞くということになっております。

 また、その他にも報告徴収あるいは監査という手続を通じまして、さまざまな情報の把握に努めているということでございます。

武村委員 ありがとうございました。

 官製ファンドのモニタリングにつきましては、引き続きいろいろな場で発言していきたいと考えます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

富田委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、本会議の代表質問に続きまして、産業競争力強化法案に関して質問をさせていただきます。

 我が国経済を長期にわたるデフレから脱却させて本格的な成長軌道に乗せていくために、アベノミクスの大胆な金融緩和と機動的な財政出動という二つの矢に加えて、民間主導の成長を促す三つ目の矢、成長戦略の着実な実行が必要不可欠となっております。こういうような状況下で、本法案は成長戦略の柱となるものであります。

 まず、実行計画について質問をさせていただきたいと思います。

 これまでの政権でも成長戦略は繰り返し策定されてきた、そういう状況の中で、今回の成長戦略は一体何が違うのかという指摘もございますけれども、やはり重要なのは、いかに実行につなげていくかということであると思います。

 安倍総理が今国会を成長戦略実行国会と位置づけて、所信表明でも、成長戦略に実行が伴うかどうか、作文に意味はないと述べられているのは、スピード感を持った実行を重視しているあらわれであります。

 こうした観点から、本法案に盛り込まれた実行計画は、成長戦略の実行の鍵となる重要な仕掛けであります。担当大臣が責任を持って実行する仕組みを法律上盛り込んだことは画期的と評価できると思います。

 しかしながら、しっかりと進捗を管理していかなければ、実行計画はいわゆる作文に終わってしまう。実行計画の仕組みを活用して各施策の実行をいかに担保していくのか、これまでの質疑でも議論がなされ深められたところでございますけれども、重要な論点であります。改めて政府の方針を伺わせていただきます。

菅原政府参考人 委員御指摘のとおり、成長戦略は、スピード感を持って実現、実行できるかが鍵であると認識しております。このため、この法案におきましては、成長戦略を確実に実行していくための仕組みを構築してございます。

 具体的には、当面三年間に確実に実行していくべき内容を盛り込んだ実行計画を策定し、施策ごとに担当大臣や実施期限を明確化することなどを通じて、担当大臣の責任のもと、施策を確実に実行していくこととなっています。その上で、毎年度一回、当該施策の進捗状況等を政府として評価し、経済社会情勢の変化も踏まえて、実行計画を見直すことも法律上明確化しているところでございます。

 さらに、やむを得ずその実施期限までに実施できなかった施策があった場合には、担当大臣の責任のもと、その理由を検証し、速やかな措置を講ずることを定めるなど、これまでにない仕組みを法律上設けているところでございます。

 こうした仕組みを活用して、成長戦略の実現、実行に向けてしっかりと取り組んでいくつもりでございます。

江田(康)委員 この実行計画は、法律に明記して、成長戦略の進捗、また必要な見直しを図るものであるわけでございます。しっかりと成長戦略が実行されるかどうか、これはまさにこの実行計画に基づくものであろうと思いますので、しっかりと対応していただきたいということを改めて強調しておきます。

 次に、人材の活用が大事であるということで質問をさせていただきます。

 産業の新陳代謝を進める上では、産業を支える人材がその能力をしっかりと発揮できるようにしていくことが重要となってまいります。このため、成長戦略においては、失業なき労働移動に向けた助成金の抜本的な拡充、そして非正規労働者の若者等の学び直しの支援などを盛り込んで、雇用・人材分野に関するさまざまな施策を推進していると理解しております。

 他方で、本格的な少子高齢化社会を迎えた我が国においては、今後、生産年齢人口が減少していくわけでありますから、女性が社会で活躍できる環境整備が非常に重要になってくる。これに関しては、ダイバーシティー、多様な人材活用を経営戦略として位置づけて、積極的に女性を活用している、またイノベーションや生産性の向上につなげている企業もふえてはまいりました。

 しかし、管理職の比率は先進国と比較して低水準にあるわけでありまして、こうした状況を改善するため、女性の活躍推進に向けた企業の取り組みを経済産業省として具体的にどのように支援していくのか、改めてお伺いをさせていただきます。

赤羽副大臣 御指摘のとおり、今後、生産年齢人口の減少が見込まれる中、多様な人材を活用していくということは大変重要なことだと思っておりますし、特に、今、自公政権の成長戦略の成否も、その中でも女性の活躍推進をどう図っていくかということが大きなテーマだと考えております。

 経済産業省といたしましては、これまで、ダイバーシティ経営企業百選ですとか、なでしこ銘柄といった取り組みを通じまして、女性を積極的に活用して成果を上げている先進的な企業の事例をベストプラクティスとして広く発信するといったことで、女性の活躍を推進する多くの企業を後押ししていこうという状況でございます。

 また、中小企業、小規模事業者において人材を確保するという観点から、育児で離職した女性や、能力があるけれども就職されていない方々を有効活用するために、中小企業、小規模事業者が行うインターンシップを支援しております。中小企業新戦力発掘プロジェクトという名称で、予算もつけていただいております。

 さらに、女性や若者が新たに起業、創業、第二創業を行う場合については、事業計画を募集して、計画の実施に要する費用の一部を助成するなどの支援もしておりまして、第一次、第二次公募採択数は全部で二千四百五十九件、そのうち女性の採択件数は八百十四件に上っている、こういった状況でございます。

 今後とも、女性の活躍推進に向けた企業の取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えております。

江田(康)委員 まさにこの委員会でも、人材の活用、成長戦略においても、特に女性の活用が鍵を握っている、そのことが議論されてきたわけでございます。

 今、赤羽副大臣に答えていただきましたように、経済産業省としてもさまざまな施策を今やられているところでありますが、実効性が伴うか、そういうところにおいて、しっかりとフォローしていってもらいたいと思います。

 私も大変期待しているのは、女性の起業、創業支援に補正予算でも二百億を計上して、先ほど赤羽副大臣が申されたように、二千二百の応募件数の中から八百件にも上る女性の創業を支援できている、そういう大変重要な成果も出ているところでありますので、しっかりと今後も取り組んでいっていただきますように強く申し上げておきます。

 次に、設備投資の促進についてお伺いをさせていただきます。

 経済の活性化を図る上におきましては、設備投資の促進が重要な柱であって、本法案においてもそれが大変重要なところとなっております。バブル崩壊後の長引くデフレによりまして、多くの日本企業では設備投資が活発にならず、設備年齢が上昇してしまっている状況にあります。特にリーマン・ショック以降は設備投資額は減少しておりまして、結果として日本企業の国際競争力が失われている状況にあります。

 このような状況を踏まえて、成長戦略においては、今後三年間で民間投資額をリーマン・ショック前のレベル七十兆円まで引き上げるという高い目標を掲げたわけであります。しかし、どのような設備投資であってもよいというわけではなく、高い収益力を生み出す質の高い設備投資を促していくことが重要であると考えます。

 この法案や税制の仕組みを通じて、どのように質の高い設備投資を促していくのか、明らかにしていただきたいと思います。

 他方で、中小企業に対しては、やはり使いやすい制度としていくことが非常に重要でございますが、その点についても政府の見解をお伺いさせていただきます。

赤羽副大臣 今御指摘のように、過少投資は、我が国の産業競争力の強化のため是正すべき三つのゆがみの一つであると考えております。

 加えて、質の高い設備の導入を促すことが重要であるということは今御指摘のとおりだと考えております。

 今回の本法案では、初期負担を抑制した先端設備への投資を促進するために、リース手法を活用した新たな投資促進策を設けているほか、本法案と並行して、税制面でも、生産性の高い先端の機械装置等への設備投資に対しましては、即時償却や最大五%の税額控除を認める措置も講じているところでございます。

 また、特に中小企業にという御指摘がございました。これまで中小企業の皆様に大変評判のよかった中小企業投資促進税制も拡充して、よりインセンティブが高く、より多くの中小企業をカバーするという目的で、具体的には、資本金三千万円以下の小規模企業には従来の七%の税額控除を一〇%に拡充するほか、資本金三千万円から一億円の中小企業にもその対象を拡大するなど、これまでにない大胆かつ使い勝手のよい投資減税を決定しているところでございます。

 こうした措置も含めまして、予算、税制、金融措置等、政策を総動員して、今後三年間でリーマン・ショック以前の水準でございます七十兆円以上の年間設備投資額を実現してまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今回創設しました先端設備に対する投資促進策、これは大変効果的なものであろうかと思っております。本当に使いやすい、わかりやすい制度にしていくことが今求められていると思いますので、よろしくお願いしたいんです。

 そして、今、赤羽副大臣、次の質問として用意していたのを先に答弁していただきましたが、中小企業の投資促進税制というのがやはり使い勝手がいいと、中小企業の皆さんには大変に好評なわけであります。我が国の企業の九九・七%は中小企業であります。やはり、中小企業を元気にしていく以外、日本再興戦略の成功はあり得ないわけであります。

 我々も、中小企業投資促進税制の拡充を公明党として大変に重視して主張してきたわけでございます。その結果として、今回、中小企業の設備投資促進税制を大幅に拡充することができました。

 今後はやはり、わかりやすい制度にしていくことと、また中小企業投資促進税制を広く多くの中小企業の皆さんに周知徹底していくことが大事だと思われます。その周知徹底、中小企業の皆さんに活用していただくための方途について、どのような施策をなされようとしているのか、大臣にお伺いさせていただきます。

茂木国務大臣 赤羽副大臣に先行してお答えいただきましたのであれですが。

 成長戦略は、江田委員がおっしゃるように、実行が重要であります。同時に、やはり実感というのが重要だと我々は考えておりまして、アベノミクスの成果を全国津々浦々まで行き届かせる。

 そのためには、全事業所の九九%を占める中小企業、特にそこの中でも九割を占める小規模事業者に対する施策が重要であります。御指摘いただきましたように、公明党からも御要望いただきまして、現在、三万七千社が既に利用しております中小企業投資促進税制を大幅に拡充させていただいたところであります。

 ただ、これを使っていただくということが極めて重要になってくるわけでありまして、これからしっかりした広報をしていかなければいけない。パンフレットの作成、配布もありますけれども、中小企業庁のサイト、ミラサポ、これは、経済産業大臣が言うと自画自賛みたいな感じなんですが、相当見やすくなっています。ぜひ皆さんにもごらんいただきたいと思っております。相当、中小企業、小規模事業者の方から見ても使いやすい、どこに飛んでいいかすぐわかる、こういう形になっていますので、こういったものも御利用いただきたいと思っております。

 また、積極的に各種の説明会を開きましてPR、さらには中小企業団体によりますPR、こういったものを進めることによりまして、この制度がいかに充実したか、いかに使い勝手のいいものになったか、こういったことを周知していきたいと考えております。

    〔委員長退席、渡辺(博)委員長代理着席〕

江田(康)委員 私も、経済産業省のミラサポを見せていただきました。大変すばらしい内容で、使い勝手がいいというか、中小企業の皆さんにも非常にわかりやすく、また、次の戦略を考えていく上において十分活用されていくものだと思っております。

 どうか、この中小企業投資促進税制を、幅広く一つでも多くの中小企業の皆さんに活用していただいて、成長戦略を支える中小企業を元気にしていっていただきたい。これはこの法案の柱の一つでもあると思いますので、この運用面について、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 引き続き大臣に、やはり中小企業、小規模企業というのは大変に重要でございます。我々自公政権はアベノミクスによる経済対策を打ってきたわけでございますけれども、アベノミクスへの期待感が高まる一方で、デフレ脱却はまだ道半ばであるわけであります。私の九州や地方においてはまだまだアベノミクスの効果は行き届いていない。地方に行けば行くほどなんです。企業の規模が小さくなればなるほど、経済対策の効果はまだ実感されていないのが実情であろうかと思います。

 こういう中小企業、小規模事業者の生の声を踏まえて、アベノミクスによる景気回復の恩恵を、大企業だけではなく、我が国経済、そして雇用を支える全国四百二十万社の中小企業、小規模事業者、そして地方の隅々にまで至らせることが今最も重要であり、それこそが我が国の競争力の強化に直結すると考えますけれども、大臣、この中小企業・小規模事業者政策に対する基本的な考えをお伺いできますでしょうか。

茂木国務大臣 我々が政権に復帰いたしまして、これまで一般的に中小企業対策と呼んでいたものを、できる限り中小企業・小規模企業対策といった形できめ細かい支援策をとってきたところであります。

 まず、予算面でありますけれども、我々が政権に復帰して最初にやった仕事は、御案内のとおり、緊急経済対策をつくるということでありました。平成二十四年度の補正、全体では十兆円でありますが、経済産業省関係だけでも一兆二千億、過去最大規模の補正を組ませていただきましたが、そのうちの半分近く、五千四百億は中小企業・小規模企業対策であります。

 例えば、そこの中で、町工場のものづくりを支援していく、そのための試作品づくりの補助を行うということで、全国一万社の中小企業、小規模事業者を対象にした試作品づくりの支援を行ってきまして、実際に一万五百十六社を採択することができました。こういった芽が実際に草木となって育っていくということを今期待いたしているところであります。

 同時に、体制面でありますけれども、ことしの二月から、“ちいさな企業”成長本部を設置いたしまして、全国二十一カ所で会合を開催いたしました。今二巡目、セカンドラウンドの会合も行っておりますけれども、各地の経営者の皆さんから伺った生の声をもとに、六月に新たな行動計画を取りまとめました。

 具体的には、地域のリソースの活用、新陳代謝の促進、戦略市場への参入、国際展開支援、これを四つの柱としておりますけれども、今回は、事業者がやるべきこと、国がやるべきこと、さらには認定機関初め支援機関が行うこと、それぞれがやるべき具体的なアクションを約束する行動計画、こういった形でつくらせていただいております。

 さらに、法律の面でありますけれども、さきの通常国会におきましては、小規模事業者に焦点を当てまして、例えば中小企業基本法の中に小規模事業者の役割を明確に書き込む等々、八本の関連法案を一括で改正した小規模企業活性化法を成立させました。現在、中小企業政策審議会の小規模企業基本政策小委員会におきまして、さらなる小規模企業の振興のために、基本法の制定に向けての検討を進めているところであります。

 安倍政権が発足して十カ月がたつところでありますけれども、中小企業は確かにまだ本当に景気回復の実感を得るというところまでいっていないと思いますが、業況判断DIも六ポイント改善という状況でありまして、これをさらに実感につなげ、具体的な成果につなげていく、こういう観点から、今回の政策パッケージにおきましても、中小企業、小規模事業者の成長分野への参入等を後押しする投資補助金等により思い切った事業展開を支援してまいりたい、このように考えております。

    〔渡辺(博)委員長代理退席、委員長着席〕

江田(康)委員 今、大臣から、中小企業、特に小規模事業者まで含めた政策について力強い御答弁をいただきました。

 中小企業、小規模事業者に対する政府の基本的な考えが政策に反映していくということが大変重要でございます。引き続き、我々は、成長戦略を実現していくためにも、やはり中小企業、小規模事業者に光を当てて、政府の施策をしっかりと支えていきたいと思います。

 時間が残り少なくなってまいりましたが、もう一つ二つ。

 まず、創業支援についてお伺いをさせていただきます。

 産業の活性化には創業の促進が欠かせないわけでありますけれども、この審議でも何度も言われますように、日本の開業率は四・五%であって、欧米の一〇%前後と比べれば遠いわけでございます。

 先日、公明党の経済産業部会として静岡県の富士市で視察を行ったということは本会議でも御報告させていただきましたけれども、昨日は、その富士市が行っている中小企業の創業支援、民間で、エフビズという創業支援センターから、カリスマ起業支援家として有名な小出宗昭さんをお招きして、大変に重要な御指摘を数々いただいたところでございます。

 我々も、民間ノウハウを活用して基礎自治体が創業支援を行う重要性を大変強く認識したわけでございますが、今回の産業競争力強化法案においては、こうした先導的な事例の全国展開を図る観点から、市区町村が民間金融機関などの創業支援事業者と連携した、いわゆるワンストップの創業支援体制を整備することとしております。

 しかし、きのう小出参考人や他の方々からもお聞きしましたけれども、富士市のような事例はいわばトップランナー、先端的な事例であって、それをほかの市区町村に展開しようとしても、多くの市区町村にはそういう創業支援のすぐれた能力を持った者がいない、もしくは少ないのではないかという懸念が、ますますきのうの参考人のすぐれた識見によって湧き上がってきたわけでございます。

 そういう中で、創業者にとって効果的な支援体制の構築をどのように図っていくのか、政府がそこまで考えてこのワンストップの創業支援体制を整備しようとしているのか、そこについて政府の考えをお聞きしたいと思います。

赤羽副大臣 私も、富士市のエフビズの取り組みというのは大変成功した事例だと思っておりますし、その取り組みを中心的な役割で推進されている小出さんも大変すばらしい能力の高い方だと思っております。加えて、お一人でやったわけじゃなくて、富士市がコミットした上で、創業支援者と連携したネットワーク、支援体制の構築がうまくいっているのではないかというふうに思います。

 一方、では、この富士市でしかできないかというと、さまざまクリアしなきゃいけない問題があると思いますが、さまざまなことを支援する人材というのは、全国各地、あまねく存在しているというふうに思っております。

 大事なことは、商工会とか商工会議所など地域の支援機関に加え、金融機関、コンサルティングなどといった民間の機関とのネットワークをどう構築するかということが一つと考えております。

 二つ目は、一つ一つは小さな市町村でありますので、御指摘もあって、複数の市町村が共同で計画を策定することも認めておりますし、また、市町村の創業支援計画の策定や事業の実施に当たっては、当該の都道府県の支援を受けることも可能としております。

 三つ目は、中小企業基盤整備機構が専門家を派遣する、専門知識の提供を行うというようなこともサポート体制として組んでおります。

 加えて、先ほど大臣の御答弁にもございましたが、ミラサポといったことも駆使しながら創業支援を国としてしっかりやっていこう、こう決意をしておるところでございます。

江田(康)委員 今、赤羽副大臣からおっしゃられたように、このワンストップの創業支援体制は全国展開でき得る環境にあると私も信じるわけでございます。

 きのうも、創業支援について重要なことは、経験豊富な人材が必要不可欠であるということが前提ではありますけれども、やはり公による創業支援がいわゆるビジネスとして成立するかどうかだということをおっしゃっておられました。今まではプロフェッショナルな体制、ビジネスがなかった、それでいわゆる創業支援がなかなか進まなかった、もしくは温度差のあるものになったのであろうと。

 そういう意味で、プロフェッショナルな創業支援、また、起業支援家が中小企業を企画から創業から販路開拓までトータルとしてサポートできる、そういう体制がビジネスとしてでき上がる、その発端になる政策が今回の本法案には盛り込まれているということで、大変期待するものでございます。

 きょうは用意した質問が全てはできませんでしたが、時間になりましたので終わらせていただきますけれども、これは我が国の成長戦略の柱となる法案でございます。日本経済を本格的な成長軌道に乗せるため必要不可欠な政策が盛り込まれること、早期の成立を期待することを強く申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 後藤でございます。

 大臣、どうぞよろしくお願いします。まず、大臣に冒頭お尋ねしたいんです。

 この新しい産業競争力強化法、今回は名称も変えましたけれども、そもそもは平成十一年に産業活力再生法という形で制定をされて、十四年がたって、十五年目に入るのかなとも思った時期があったんですが、いろいろ先ほど来の御質疑のように、時代の大きな変化の中で新法制定に至ったということは何となくわかる感じもするんです。

 そもそも産業活力再生法は四回改正しながら現在に至っていますけれども、制定以来、この法による認定件数は全体で六百九件、製造業が三百十六件、サービス業が二百八十六件、その他が七件とお聞きをしています。この六百九件というのは、選択と集中という本来の法目的に照らして、それぞれの地域でプラスになってきたのかということも含めて、現行の法律の評価の中で、どういう問題点を検証した結果、この新しい産業競争力強化法という形になったのか、まず大臣に冒頭お尋ねをしたいというふうに思います。

松島副大臣 後藤委員がおっしゃいましたような件数で推移してきたわけですけれども、経済産業省が取り扱いました四百件のうち計画が終了した三百五十件につきましては、八割超が計画期間中に法律の求める生産性の向上を実現しています。これは一定の成果ではないか、そのように考えているところでございます。

後藤(斎)委員 そうであれば、今プラスの評価を松島副大臣はおっしゃられたんですが、なぜそれをベースに新法の制定に至ったのか、その点についてはいかがですか。

松島副大臣 産活法の単なる改定ではなくて、新法に移りました。新法をつくろうと考えた点は、以下のようなことでございます。

 今回の新法におきましては、過剰規制を打破するということ、そして過少投資、何とかして設備投資を盛んにするということ、このあたりが前回の手法ではやはり足りなかったと考えております。過剰規制を解消するために、グレーゾーン解消制度や企業実証特例制度、こういったものを新しくつくることによって、かつての法律ではできなかった部分をしっかり捉えていきたい。

 また、過少投資の問題につきましては、今までの設備投資減税、これではまだまだ甘かった。異次元のという言葉を我々はしばしば使っているんですけれども、設備投資減税に関しましても、初めて即時償却という考え方を入れる。さらに、税額控除につきましても、大企業には設備投資に使った額の五%を税額控除する。さらに、資本金三千万円以下の小規模企業あるいは個人事業主の方には一〇%、つまり百万円設備投資したら十万円税金が戻ってくる仕組み。真ん中の、資本金が三千万円超一億円以下の企業に関しましては七%という減税の制度をつくり、このことによって設備投資をしっかりやってもらえる環境をつくる。

 これが前回との大きな違いであると考えております。

後藤(斎)委員 松島副大臣がおっしゃることは何となくわかるんですが、これは旧法でも、要すれば、設備投資しやすい減税の仕組み、そして、補助金をつけて構造改革を進めたり、消費を拡大する仕組み。そして、規制の部分についても新たにというお話がありましたが、この法律でなくても、規制改革というものには、いろいろな法律の基準を緩めたりして当然対応しているというふうに思うんです。

 成長戦略であるとか産業競争力の強化であるとか、当然誰も反対できないような、あえて言えば美しい言葉です。ただ、先ほどの質疑にもあったように、例えば成長戦略でグリーンとライフという話になると、例えばエコカーでそれを普及するために、業界の人から見れば、エコカー減税をしろ、エコカー補助金をつけろ、そして税金が安くなるということも含めて、やはり今まで不十分だった部分が多分あるのではないか。役所から見れば、成長戦略の中に入れ込めば予算は何とか確保できるという実質的な部分もあった。

 それが全体として産業競争力強化という形で一くくりにしたのは決して間違った考え方ではないというふうに思うものの、産業競争力の強化とはそもそも何かと問うたときに、企業が経済活動をしやすくすることが産業競争力強化なのか。その辺について、大臣はどういうふうにお考えになりますか。

茂木国務大臣 まず、先ほどの質問とも関係するんですけれども、国の法律それから制度、これは時代環境によって求められるものは違ってくると思っております。

 バブルの崩壊以降、日本は過剰設備そしてまた過剰債務ということで企業が苦しんでいた。産活法の活用によりまして、そういった状況から脱却する。今、直面している問題は、先ほど答弁ありましたように、過少投資、過剰規制そして過当競争、こういったものを是正することによって、もう一回日本経済の再生を図っていきたいと思っております。

 そこの中での産業競争力の強化でありますが、二つの側面があると思っております。それは、個別の企業それから産業の強さ、これをしっかりと伸ばしていく。もう一つは、そういった強い産業や企業をつくるための国内のさまざまな制度整備であったりとか環境を整える、こういうことになってくると思います。

 では、強い産業とは何なのか。なかなか定義は難しいところがございます。特に、企業も今、グローバル化をする中で、結果的には市場のシェアが大きくなる、こういうことなのかもしれません。サプライチェーンがいろいろな国にまたがる中、その一番重要な部分を占め、サプライチェーン全体をコントロールする力が持てるかどうか、もしくはその産業にとって、またその製品にとって必要不可欠となる一番中核の部分を握れるかどうか、こういったことが極めて重要であります。

 例えば今、日本で国際的に競争力を持つ産業とか分野で恐らく一番に頭に浮かぶのはデジカメじゃないかなと思います。いろいろな形で、まだ日本の企業というのは圧倒的な市場のシェアを占めている。

 どうしてデジカメが強いか。恐らく、一番キーになりますのはCCDの製造プロセスのところなんですけれども、この技術をブラックボックスにして日本の企業が持っているために強いんです。このCCDというのは要するに画像を最終的に鮮明にするものでありまして、それがあるために日本のデジカメは強いわけであります。そういった技術であったりとか設備であったりとかキーコンポーネント、これをいかに握れるかということが重要だと思っております。

 一方で、今度は環境を整えるという観点から申し上げますと、これまで日本の企業は、三重苦、四重苦、六重苦、こういうさまざまな言い方がされてきましたけれども、大きく分けますと、為替と過度な円高の問題、それから関税などの国境措置、さらには国内の規制や税の問題、そして資源エネルギーや電力コスト、こういう四つのハードルをいかにクリアしていくかということが重要であります。

 為替につきましては、我々が政権につきまして、我々のターゲットはデフレからの脱却でありましたが、大胆な金融緩和を進めることによりまして過度な円高は是正をされてまいりました。

 同時に、国境措置という意味では、TPPだけではなくて、RCEP、日・EU・EPAさらには日中韓FTA、さまざまな経済連携協定、グローバルに経済連携の網を張りめぐらす、こういった対策をとってまいりたいと考えております。

 同時に、規制緩和の問題も重要でありますから、もう手を挙げていらっしゃるのでこの辺にいたしますけれども、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

後藤(斎)委員 確かに、特に輸出をメーンにしている企業であれば、円安になって、稼ぐ力が強くなった、競争力が強化をされた、これは当然だと思うんです。ただ、大臣はいわゆる供給サイドの部分だけで今お話をずっとされたのかなとちょっと不安になりました。

 実は、平成十九年、前々回の法律改正のときに、サービス産業の生産性向上という項目を入れて、私はそのときに甘利大臣と質疑をしたことを思い出して議事録をひっくり返して読んでみたんですが、そのときになかなか自分でもいいことを言っていたなと思いました。いわゆる需要サイド、消費者が、顧客がどう思っているかということが今のお話にちょっと抜けているのかなと。

 この委員会でお話をさせていただいたように、確かにデジカメは世界最高水準だというふうに思います。ただし、スマホみたいなものは、代替機種ではありませんけれども、デジカメの機能もあると、もう消費者はそちらを選好します。デジカメの生産台数というのは、国内市場では特に急激に減少していますし世界でも同様です。ですから、顧客、需要者に目を向けるということがないといけないと強く思っています。

 ある研究所で、成長に魔法のつえなし、結論を言えば、成長戦略には教育と研究開発が効果大ということで、いろいろなヒアリングでは、一番は、学力の世界トップレベルへの上昇がGDPに〇・五%寄与するとか、研究開発投資をGDP比一%にすれば〇・三%寄与するとか、いろいろな指標があるんです。

 やはり大臣がおっしゃるように、ずっとこれからもデジカメ時代が続いていくということはなくて、スマホにかなりの部分がこの数年間でかわっていることも事実だと思うんです。ですから、飯の種というのは常に変化をさせていかなきゃいけない。

 ある雑誌がやったレポートが最近出ているんです。会社の寿命が、三十年前は基本的に一番旬の時期というのは三十年、今はそれが十八年くらいになっているというのがあるんです。その中で、老化防止を企業がするのに大切な視点が三つあると。一つが、創業者視点というものが二十年、三十年たつとなくなってしまう、ですからそれに戻れということ。もう一つが、日本企業に今顧客視点というものがない。あともう一つが共創、ともに創造するという共創視点がない。

 この二つ目の顧客視点というものは、今、食品の偽装がある。お酒も、醸造用アルコールを入れて純米酒として売ってしまうのもあった。やはり食品の偽装も、この顧客視点というものがなかったから、食品だけじゃないかもしれませんけれども、ここまで広範囲に起こってしまった事象だと私は思うんです。成長戦略とか産業競争力強化を考えるときにはこの顧客視点というものがないと、また過剰生産ということになりかねない。

 私、実は、この法律が出てくる前は、昔の通産省が元気のいい時代のように、行政指導が事業再編も含めてできるくらいの規定を入れるのかなと思っていたんです。

 それが、さっき松島副大臣がお話をされたように、何か、三分の二は旧法の継続で、確かに規制の部分は形だけはできたものの、需要の視点というものがないし、その過剰な部分をどうするか、事業再編をどうするか。やはり税誘導しかないということであれば、結局は、またもっと短い期間で、さっき三十年くらい前は旬の元気のいい会社が三十年続く、今それが十八年くらいというのが最近のこの方たちの分析ですけれども、確かに言われればそうかなというふうに思うんです。

 ですから、そういう部分の視点というのはこの中にきちっと入れ込んで、そして事業再編も、政府がどこまで関与するかとか、後でお聞きしますけれども、そういう点も含めて本来はつくるべきだと私は今でも思っているんですけれども、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 先ほど十分答弁できなかったんですけれども、顧客の視点というのは極めて重要だと思っております。

 かつて、日経ビジネスが会社の寿命三十年ということを、一九八〇年代の初めだったと思いますけれども出したのが、委員おっしゃるように現在相当縮まってきている。

 なかなか創業の気持ちをずっと持ち続けるというのは難しい。これは、かつて中国の唐をつくりました太宗が貞観政要という本の中で、創業はやすく守成はかたしと語っている言葉のとおりだと私も思っております。

 そして、顧客視点を持つ。確かに、携帯、写メの機能であったりとかいろいろつくわけでありますけれども、どういう顧客ニーズがあるか。いろいろな機能さえあればいいとは思わないんです。例えば、中東で今売れている携帯は何の機能がついているかというと磁石なんです。磁石があればメッカの方向がどこでもわかるということで、これが一番、写メ以上に重宝されるということでありまして、それぞれの地域に合った顧客のニーズというのはあると思っております。

 そして、シーズから生まれる商品もあります。同時に、ニーズから生まれている商品もある。そういうのがある意味ぶつかり合うといいますか、マーケットメカニズム、こういったものを我々としては大事にしていきたい。

 同時に、これからベンチャーを、しかも事業拡張期のベンチャーを育成する、こういった新しい視点を今回の法律の中にも入れさせていただきまして、委員御指摘のような方向で、この法案、日本の産業競争力の、まさに現時点における、さらには将来における強化に大きく資するものである、このように考えております。

後藤(斎)委員 ぜひ、成長の視点と研究力の部分を、文科省も来ていただいていますから後ほどお尋ねします。

 先ほどの六百九件の認定もそうなんですが、主に製造業とサービス業が半々。六年前に、日本のサービス業は非常に生産性が劣る、当時アメリカが一としたら日本が〇・六か〇・七だという議論をした記憶があります。

 でも、それはやはり顧客満足で、例えば今、「ななつ星」のような電車、二泊三日で三十万とか二十万とかいろいろあって、そういうのに乗る人もいるし、平日だったら一泊二食ついて八千円の旅館に泊まる人もいる。

 ただ、一番気になっているのは、前にもこの委員会で大臣と議論をさせていただきましたけれども、やはりいろいろな時代の変遷で、農業から製造業に、製造業からサービス業に、その雇用という部分、働く人の数という部分は当然移動をしている。二〇〇〇年代になって、製造業では約二百万人弱減少して、医療、介護を含めたサービス業を中心に二百万人強プラスになっている。

 資料をちょっとつくってもらったら、業種別には、やはり製造業がサービス業よりも平均給与は、どこと比較するかは別として一割以上高くなっています。平成二十四年、製造業平均で四百七十二万円。サービス業では、医療、福祉が三百七十八万円。特に、介護がこの十年間急増しています。これは年平均がないようなのでつくらせてみたら三百二十万円くらいです。ですから、マクロで見た場合、製造業からサービス業に雇用が移動するということは、一人当たりの給与が低くなる。

 ただ、製造業というのは、当然、国内マーケットだけではなく海外もターゲットにしなきゃいけませんから、そのグローバル競争の中で勝ち抜く、その一つの考え方が規制の改革か為替の円安かということになっている。それもよくわかるんです。

 六年前に同じ議論をしたんですが、やはりサービス産業の生産性をもっと上げるということを、実はさっき松島副大臣は全然触れていただかなかったんですけれども、この六年間、サービス産業の部分で、生産性向上の指標のようなものを定めて評価もするということになっていました。

 これは質問通告していませんが、誰かお答えになれる方がいたら。この六年間、前々回の産活法の改正以来ここまでで、どの程度伸びていますか。サービス産業の生産性向上、法律に基づいて。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 残念ながら手元に資料はございませんけれども、まず、サービス産業の生産性の国際比較という意味では、依然として我が国が相対的に低い水準にあるという実態は余り変わっていないということがございます。

 ただ、他方、先生もよく御案内のとおり、サービス産業の生産性というのは計測が非常に難しい。何をもって生産性というのかが非常に難しいところがございますので、単純に数字で上昇した、低下をしたというのがはかりにくいということがございます。

 それから第二に、これもさまざまな研究が出ておりますけれども、日本の国内でも企業によって相当程度の差があるということも言われておりますので、必ずしも全体の平均的な数値だけではかるのがいいかどうかということについては議論があろうかと思います。

後藤(斎)委員 わかったようなわからないような感じです。むしろ、医療、介護というのはある意味では法定単価ですよね。ですから、そこをもう少し手厚くすれば上手にマクロで回るのかなと私の頭では単純に思ってしまうので。

 要するに、日本経済全体にやはりそれぞれの産業があるわけですから、それをどう生かすかという視点も、私、この中に全部入れようとは思いませんけれども、この法律がどういう形でできるかは別としても、実行に移していただきたいなと思うのが一点です。

 もう一つが、先ほども教育と研究開発に成長のベースを求めるべきだというお話をさせてもらいましたけれども、今回、国立大学法人が出資をするということが盛り込まれています。

 これも決して私は悪いことではないと思っていて、私もそういう仕事を文科省時代、内閣府時代にやらせてもらったんですが、文科省にお尋ねをしますけれども、国立大学法人が出資をする規定が今回入る前に、いわゆる産業界や自治体とも連携をしながらいろいろな施策を共同研究のような形でやってきましたけれども、それがどういう実績になっているのかということと、そして、十年くらい前にTLOに対応してきましたけれども、それがどういうふうな状況で文科省としては評価をなさっているかということをあわせて教えていただけますでしょうか。

西川副大臣 御質問ありがとうございます。後藤先生は、文科省の政務官をおやりになったときにこの問題にしっかり御対応いただいたということで、多分すごく思い入れもおありなのだろうと思って、責任重大に感じております。

 産学協同研究政策は、大分以前からずっと産学協同、産学協同と言われてきたわけですけれども、ではどのくらい実績があったのかと。多分、先生のお気持ちは、過去の実績をきちんと評価した上で今後どうするんだという話だろうと思います。

 実は産学協同連携活動は量的には大変拡大しております。大学の特許保有件数、これが平成十八年は三千二百五十六件でしたが、平成二十三年には一万四千十六件にまで拡大しているんです。

 ただ、それを実際の業で実施するときの収入が余り大きくなくて、実は大半が小規模なものにとどまっているということがあります。特許実施件数は、平成十八年二千四百九件が平成二十三年五千六百四十五件と二倍以上になっているんですが、実際の収入となりますと、平成十八年八億百万円から二十三年十億九千万円と、ほんの二億ぐらいしかふえていないという実態にあります。非常に小規模なものが多いということで、これを今後一層、本当に上場できるようなものに拡大していく、その出口戦略を意識しながらやっていかなければいけないんだろうなということを思っております。

 そういう中で、一つの例として、先日、東大にちょっと見学に行ってまいりました。実は、東京大学エッジキャピタル、UTEC、これが十年ほど前に、社団法人が一〇〇%出資して、東大が唯一認定しているベンチャーキャピタルなんです。今までの研究室から飛び出して東大全体で応援するという中で大きな成果を出しております。

 一つのビジネスモデルで、株式会社モルフォというところの例ですが、東大の理学部と工学部の助言を得ながら、携帯カメラの手ぶれを補正するという技術で、これは国内標準になって、これをきっかけとして上場するようになっております。

 それと例えば京都大学のヒトiPS細胞を用いた創薬事業の開始ですとか、個別に大きな成果が幾つか出てきております。

 先ほど先生がおっしゃいましたTLO、技術移転機関の実績を含めてベンチャーに、要は、大学に研究を認める目ききの人がなかなかいない、経営能力を大学の研究者は持っていない、そういうことで大学と直結した組織をつくろうということで、今回それに対して補助金を大きく出しておりまして、TLOも含めて出口を見据えた知的財産戦略が課題だという認識は持っております。

 以上でございます。

後藤(斎)委員 五十三年前、中曽根科学技術庁長官の時代に「21世紀への階段」という本があって、今度復刻版が出て、急遽読ませていただきました。おもしろいな、五十三年前によくこんなことを考えたなと。これに項目が百五十くらいあって、六十くらいが実現できています。特に、電子レンジであるとか、人工衛星を使った中継であるとか、海水の淡水化技術であるとか。もちろんまだ道半ばのものもあるんですが。

 この評価というのはいろいろあると思うんですけれども、一つは要するに技術を進歩させるだけのもの、いわゆる生産性を向上させるだけの要素技術のようなものは、百五十分の六十アイテムくらいが五十年たって現実になっているということなんですが、当時の時代環境というのは、私が生まれたころですから、ちょうど東京オリンピック直前の時代背景。

 今、西川副大臣がおっしゃられたように、出資も結構です。ただ、知財が眠っていてはだめで、それをどう使い切っていくかということです。新規性のある研究シーズというものは、大きいか小さいかは別としても、世界じゅうの専門家が研究をして、実用化をしているわけですから、当時よりはるかに大変なことはよくわかっています。

 六重苦という言葉がまだ残っているとしたら、確かに大臣がさっきおっしゃったように、TPPやEPAも含めて少し進み始めた、為替も円安になった、あとは法人税と環境規制と労働規制と電力問題だというふうなことで、簡単にいかないものもあるのは十分承知をしています。一つは、震災の直後は電力不足ということで電力問題を経済界の方が熱心におっしゃっていました。今、この残りの四重苦とかいうことも、喉元過ぎたらどうかは別として、もう余りお話しにならなかった。

 私は、以前この委員会でも議論させていただいたように、電力不足は今火力発電の部分である程度めどがついているという前提がもしあるのであれば、今の要素技術の開発もそうですけれども、これをずっと私は四年間言い続けて、何もできていないんです。

 電気代を半分にする目標をどう達成するか、要素技術をやってみて、少なくとも韓国と同レベルの電力料金まで下げるという大目標を、僕は計算をいろいろ自分でもやったんですけれども。二年前、去年まではスマートグリッドみたいな話が発送電分離でありましたけれども、今になるとほとんどメディアでも関心がなくなっている。

 実は、冒頭大臣にお話をしたように、十年続いた産活法というのは、もともとの制定当時の部分が忘れられてしまっている。六年前たまたま私も質疑をさせてもらったサービス産業の部分が生かされていないし、評価もきちっとやっていない。結局、六百九認定したからそれでいいやみたいなことではだめだと思うんです。これが本当に正念場だとしたら、文科省にも経産省にも優秀な研究者や事務方がいらっしゃるわけですから、やはり夢を堂々と語れるようにする。

 要素技術で何が困っているか。例えば特保がなぜ売れるかというと、ちょっとさっきも言った食品の話になりますけれども、脂肪が分解しやすくなるのが普通のペットボトルで三十円、四十円高くても、大臣は飲まなくてもいいかもしれませんが私は時々飲むんです。もしかしたら燃焼しやすくなってダイエットにいいかなと。整髪剤もつけますし、きれいでいたい、アンチエイジングもそうですし、痩せたいとか頭の毛をふやしたいとか、いろいろな欲求があるわけですよね。それが多分さっきの顧客満足、需要にどう応ずるかということだと思うんです。

 先ほど大臣が、アラブの国では携帯の機能に磁石があるんですよと。すごい、ああ、そうだなと、言われてみればというものがたくさんまだあるし、研究者は研究者で、研究費がついていればそれだけやっているというのは、西川副大臣、多分、そうお気づきになって、何とかしなきゃなというお気持ちがあると思うんですけれども、要素技術やその芽、研究シーズを実用化するということに、このエンジェル税制だけではやはり大臣、だめですよ。最後は金融機関が金を貸しませんから。

 まず、電気代を二分の一にするということを、私、絶対やってもらいたいんですけれども、どういうふうにしたらできますか。

茂木国務大臣 今、電力の問題でいいますと、三・一一以降、我が国が新たなエネルギーの制約に直面をしている。電力需給も完全な状態ではありません。御案内のとおり、今、原発が全部とまる中で、老朽化した火力、これのたき増し等々も行っておりまして、さらにこの需給の安定に万全を期す、こういったことは重要であると考えております。

 同時に、燃料費のコストが年間で三・六兆円上がるという中で、コストを下げていく、極めて重要な課題だと思っておりまして、一つの方法だけではなかなか実現できない。技術による部分もありますし、違った方法もあると思っております。まさに需要ということでいいますと、これからは、我慢の省エネではなくて、需要をいかにスマートにコントロールしていくかが極めて重要でありまして、電力システム改革の中でも、これからさまざまな料金体系が出てくる、競争も進んでいく。

 昨年、北九州で実証実験を行ったわけでありますけれども、ピーク時とオフピーク時で料金に相当差をつける。こういった料金体系をつくりましたら、ピーク時の電力需要を二割減らすことができました。同時に、家庭が支払う電気料金を三割減らす、こういうことができたわけであります。

 エネルギー源の多様化も進めなきゃならない。同時に、調達先の多角化というものも進めていかなきゃならない。今御案内のとおりLNGの火力が非常に大きな割合になってきているわけであります。この価格につきましても、百万BTU当たり今十六・八ドルぐらいで買っているケースが多いかと思うんですけれども、今アメリカ、北米におきましてシェール革命というのが起こっている。大体、北米市場におけます現地でのLNGといいますか天然ガスの価格、これが四ドルぐらいであります。そして、液化するのに三ドル、日本までの輸送三ドルでありますから十ドルちょっと。現在の調達価格の三分の二になってくるという部分もあります。

 恐らく、幾つかの調達サイドにおいても、また発電する上においても、高効率の石炭火力の問題であったりとか、その技術も現在は日本が一位でありますけれども、これが二〇二〇年代、三〇年代になって今度は燃料電池を併設するという形になりますと、さらに高効率な石炭火力ができてまいります。そういう発電の分野でも、最終的には需要サイドもスマートにコントロールする。さまざまな対策の組み合わせによりましてエネルギーコストをできる限り引き下げていきたい、そんなふうに思っています。

後藤(斎)委員 この五十三年前の本の第一章も、「原子力時代は花ざかり」ということで、「無尽の動力源」という位置づけがされていました。この中に原子力と一緒に実は核融合というのが入っているんですが、これもまだ、ITER構想も含めて、今まさに実証、商業化に向けて各国努力している、これもよくわかるんです。

 今のような要素技術の組み合わせや需要のコントロールももちろんなんですけれども、やはりそれをどうやって見せて、経産省は経産省単独ではなくて、文科省の持っている大学も含めた研究の芽とかそういうものをもっとうまく使っていかないと、何億円使っているかはあえて触れませんけれども、やはり国民の皆さん方が支払われた血税をどう生かすかということ。

 研究のための研究というのはやはりだめだと思うんです。必要なものもたくさんあるということ、これも一方でよくわかっています。ですから、実用化というところに出資という規定を入れる以上は、もっと真剣にやはり国立大学を中心に大学もちゃんとやってもらうということ。

 これで足らざる部分はありますよね、それをどう、ほかの文科省の関係している研究機関も含めて、実用化の出口の部分というのは性急に求め過ぎるなという研究者もたくさんいらっしゃいますけれども、そうではなくて、少なくとも需要を目標にしてやっても、実は余りノーベル賞でプラスの評価は得られないという話も聞きますので、崖っ縁までやはり追い込まれないと。

 松島副大臣が言ったこの新法の部分、なぜ名前を変えたのかというのはいまだに僕は半分わからないんですけれども、ぜひ西川副大臣、大臣も松島副大臣もいらっしゃいますので、経産省ともよくよく連携をして、やはり研究者レベルで一緒にやっていかなきゃだめだし、そこにいつまでの目標というのが、あるのかどうかは別としても、やはり夢のある、みんなもう少し頑張ればこういうふうになっていくんだというふうなメッセージをまとめて送ってほしいと思うんですけれども、いかがですか。

西川副大臣 本当に先生のおっしゃるとおりでございまして、将来の出口を見据えてどうやっていくんだという中で一番問われているのは、要は省庁の垣根を越えて本気でその一点にみんなで向かっていけということだろうと思います。

 そういう中で、具体的に、なぜ実際になかなか大きく花が開かないかということに鑑みまして、シーズをいっぱい持っている大学を四大学ぐらいとりあえず指定させていただいて、昨年度予算を一千億つけました。

 要は、みんなで議論したりなんなり、これは本当に必要なんですが、大学は大学、産業界の人は産業界ではなくて、大学と企業の共同研究の場を活用する人材育成ということで、産業界のメンバーも大学の学内委員会の中に入っていただくとか、文部科学省と経産省が連携をして、今回、認定制度を設けまして、特定研究成果活用支援事業を立ち上げさせていただきまして、東京大学と京都大学それから東北大学と大阪大学、この四大学がとりあえずシーズをいっぱい持っているということで指定させていただいて、これに予算を大きくつけたということでございます。

 では、それ以外の大学はどうなるんだということは、この成果を見ながら広げていきたいという思いで、先生がおっしゃったように、ただ制度をつくればいいのではないということは十分わかった上で、しっかりと、私たち役所の人間も現場に入りながら、一緒に考えさせていただきたいと思います。

後藤(斎)委員 大臣、今の部分で、電気代二分の一戦略は、いろいろな条件をたくさんつけていたので、簡単には経産省でも進めていただけないと思うんですが。

 以前もお尋ねした、燃料電池を大型化するというのはもう既にアメリカでもかなり進んでいて、どこまで実用化が進んでいるかという視点は別としても、小型化はもう一定のめどがついて、二〇一五年、若干おくれるかもしれませんが、一台五百万円台のものが出てくる。大型化の部分は、さっきの環境規制というものがこれからもかかるのであれば、やはり燃料電池というものも上手に、大型を含めて、組み合わせでどうするかということだと思うんです。

 一千億が四大学には行くようでありますから、そこに、それでどういうふうにつくるという設計図を描かせるくらいのことはやはりさせないと、六重苦のうちの二つが取れて、あとをどうするかということは、税金だけ安くすればいいものでは多分ないと思うんです。税金は、取れる人から取ればいいと思うんです。ただ、それが国際基準から見てどうなのかということはあるかもしれません。

 金融にしても、創業したり、新しい業として一つの会社に事業部門を起こす開業にしても、実際、さっきも話がありましたけれども、金を貸してくれないですよ、金融機関は。あれだけネットバンキングを含めて手数料ゼロの金融機関も出始めましたけれども、いいシーズがあるからやりたいというふうに言っても、金を貸してくれません。

 そこをどうするかというのを、やはり下支えの機能としてこの中に明示をしないと、全体の競争力の強化の大前提の、研究から実用化へ持っていくというところも含めて。デイサービスとヘアサロンと整体しか地方都市に新しい業ができないじゃないですか。大臣のところも多分そうだと思いますけれども。松島副大臣のところは都会ですから、いっぱい違うものがあるかもしれません。どこへ行っても、この三つの業だけですから。だから、そうじゃないところに、製造業でもサービス業でも、新しいものをやる部分にお金を貸す仕組みをもっと積極的につくっていただきたいと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

茂木国務大臣 大変いい御提案をいただいたと思います。検討したいと思います。

 エイトマンはたばこを吸って燃料にしていたんですね、鉄腕アトムはどういう燃料で動いていたかな、御質問を聞きながらこんなことも思ったわけでありますけれども、燃料電池それから蓄電池の技術、日本は進んでおります。これをより安いコストでつくれるような状態が必要だと思っておりまして、百五十項目のうち六十ぐらいは達成されているということでありますけれども、やはり夢を持つということが大切なんだと思います。

 とても人類を月に送ることはできないとみんなが思っていましたが、アポロ計画によって、アームストロング船長は月におり立ったわけであります。一人の人間にとっては小さな一歩であるけれども、人類にとっては大きな一歩である、そういう大きな一歩をつくっていきたいと思っております。

後藤(斎)委員 これで終わりますけれども、食の偽装に関して、日本の和食が世界無形文化遺産に十二月にも指定、登録をされます。日本の食というのはこれから輸出も可能だと僕は思っていますし、それが日本の農の競争力を高める。

 今七百万から三千万するDNAの検査器を東芝が来年の春に向けてもう少し安価でつくろうという企業努力をしているようであります。日本の農家全てとは言いませんけれども、少なくとも農協単位で使えるようになれば、それぞれの地域の農のブランド力というのは絶対上がるはずなので、偽装問題も大きな社会問題にやはりなっていますから、ぜひそういう部分での研究支援や金融支援を、大臣、西川副大臣にお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。今井雅人君。

今井委員 日本維新の会の今井雅人でございます。

 昨日に続きまして、法案について質問させていただきたいと思います。

 きのうは制度面でしたけれども、きょうは金融全般についてお伺いしていこうと思っています。

 本法案では、企業実証特例制度ですとかグレーゾーン解消制度ですとか、規制をそのまま撤廃するものではありませんけれども、一部規制改革に入り込む、そういう内容になっていると思います。

 一方、金融面を見ますと、はっきり言ってしまえば、民間がやらないから公的な金融が全面的に支援をしていきましょうということで、今までの公的な金融の支援策をどんどん拡充しているというのが目立っていると思います。

 税制をどんどん簡素にして、企業が活動しやすくするということはとても大事ですし、ぜひ推進していっていただきたいと思いますけれども、きのう、新浪参考人がファンドの話をしておられました。日本の場合は、ベンチャーファンドは銀行系が多く、どうしてもアーリーステージにお金を入れないので、本来は民間がやった方がいいんだけれども、そういうところがないから官がやるしかないんだというような御意見もおっしゃっておられました。

 これは、ある意味そうなんですけれども、言ってみれば鶏と卵のようなもので、現状で民間の金融機関が十分な役割を果たしていないということは私は大変問題だと思っていますし、ここを改革しない限りは金融と経済の連動は起きてこないというふうに常々思っていて、これは持論で何度もここで申し上げています。

 今回、確かにいろいろな企業を支援するため、あるいは新しい創業をするために支援策をつくっていくということは、経済産業省の立場としては非常にわかりますけれども、私は、金融庁がどうしてもこれまで規制庁という面が強かったことの弊害だというふうにも思いますけれども、民間の金融機関の役割をもっと機能させていくことも同時にやっていかなきゃいけないと思うんですね。

 こうやって公的な支援を拡大してしまうことによって、かえって、民間金融機関の意識の変化、あるいはリスクマネーをどんどんとっていくという姿勢への変化、これを阻害してしまうんじゃないかということを大変私は危惧しているんですけれども、その点について大臣はどうお考えか、まず御所見をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 民間金融で全てができれば、その方がいいと思います。基本的な認識はそうでありますし、今回も、民間金融の活力を最大限引き出したい。成長戦略、我々も、民間投資を喚起する成長戦略、そういう形容詞をつけております。

 そこの中で、政府系の金融機関そのものが乗り出すよりも、例えば、この法案におきまして措置しております中小企業基盤整備機構の債務保証、さらには信用保証協会の信用保証制度、これの資金の貸し手はあくまで民間の金融機関でありまして、その民間の金融機関が本来だったら自分の目ききで全てができればいいわけでありますけれども、なかなか事業者の信用力に対して十分な信頼が置けない、その信用力を補完する意味で民間金融機関からの貸し出しを後押しする、信用保証にはそういう意味がある、こんなふうに思っております。

 一方、産業革新機構、これにつきましても、現時点ではリスクが高くて、民間が中長期的にそのリスクをとっていくにしても、初期段階で投資がなかなか行えない、こういう事業分野について、民間の出資や融資を促す呼び水となる、こういう機能があると考えておりまして、あくまで主役は民間である、これは金融においても同じだと思っております。

今井委員 今、産業革新機構の話が出ましたけれども、産業革新機構は、官のお金は保証を入れれば二兆近く、一兆八千億ですか、使えるようになっている一方で、きのうも紹介がありましたけれども、各企業が出資を五億円ほどしていますけれども、全部足すと数百億円ということでありました。

 これはクール・ジャパン・ファンドのときも、官民ファンドというからにはせめて半分半分ぐらいじゃないと、これでは官民ファンドじゃなくて官官官民ファンドだと申し上げました。産業革新機構も、そういう意味においては官の意向が非常に強いファンドでありますから今後も民のお金をどんどん入れていくということをぜひやっていただきたい。これはお願いだけにしておきまして、ちょうど今、保証協会の話が出ましたので、ちょっとこの話をさせていただきたいと思うんです。

 保証協会のあり方というのはいろいろこれまで議論をされてきました。実は私も銀行員で、最初の二カ月間だけ貸付にいましたけれども、自分の経験を言いますと、銀行の姿勢の非常に悪いところはまず担保主義。稟議を書くときに担保保全十分と書けば、企業の内容はともかく支店長の決裁がおりてしまう、こういう状況だったわけであります。今若干改善はしているようですが、依然としてそういう状況が私は続いているというふうに認識しています。

 もう一つの問題は、保証協会のマル保です。

 私も実は保証協会の担当をやっていましたから、このマル保というのは非常にいい制度でもあるけれども問題なんですね。銀行員からすると、保証料を払ったらほとんど自分のところにリスクはありませんから、マル保案件と書いて、もう何も書かないんです、採択理由。マル保案件と書いて出すと、稟議のオーケーが出るんですよ。これは金融機関の審査能力を極めて低下させている制度だというふうにずっと思っているんです。

 だから、この制度の見直しはどうしてもやらなきゃいけないと僕は思っているんですが、もともとそういう議論があったと承知しております。ですから、金融機関にも少しリスクをとってもらおうということで、金融機関に二割リスクをとってもらい、そして八割は保証するという制度を原則にしたのは、モラルハザードをなくし、あるいは金融機関の審査能力を高める、こういうことを狙ってやったんだと思います。

 リーマン・ショックがあったときに、本来は八割なのに緊急だということで十割保証ができてしまいました。また今度、新しい制度で十割という形が残ったと思います。ですから、現在は八割保証と十割保証が併存しているはずです。

 緊急対策ということでやったのはわかりますけれども、やはり僕はここは出口が必要だと思うんです。やはり金融機関にもそういう審査リスクをとらせるという意味では、早く八割保証に統一して、もう十割保証はできるだけ早く廃止することが必要なんじゃないかと思いますけれども、これについての政府の御所見をいただきたいと思います。

北川政府参考人 信用保証についてのお尋ねでございます。

 一〇〇%保証制度、これは委員御案内のとおり、急激な景気後退、金融の逼迫、そういうものにこれまで大きな効果を発揮してきたわけでございますけれども、それをやってきた結果、金融機関側が中小企業の経営状況を余りよく見ないとか、経営支援が十分に進んでいないとか、こういう面があった、これは認識しております。

 したがいまして、平成十九年十月になりますが、一般保証で御指摘の八〇%保証、責任共有制度を導入いたしました。これは徐々に拡大してございまして、二十四年度末のフローで見ますと七割近く、そしてストックベースで四割近くまで達してきてございます。リーマン・ショックのような特別なことがあったり、あるいは大きなリスクがあるような、政策的に判断してやっていくようなものは別といたしまして、基本的にこの八割保証の定着を図っていきたいと考えております。

今井委員 今の御答弁でいうと、もう十割保証は緊急なので、一定の期間を経たらもう廃止していくということでよろしいですか。

北川政府参考人 中小企業の金融でございますので、今ここでいつ廃止するということをちょっと申し上げることはできませんが、基本的にはそういう方向でいきたいと思っております。

今井委員 やはり、金融機関にリスクをとることを促すためには、アベノミクスで経済も安定してきたわけでありますので、早くそういう措置をとっていただくことをまずお願いします。

 その上で、今回この法案の百十五条に、保証協会に対する保証がありますね。廃業経験者に融資をする場合には、保証協会に対する保証率を九割に引き上げるという条項があります。これは、ある意味同じ話なんですね。今度は保証協会が審査を厳しくやらなくても九割保証されるということであって、これも実は貸す側の審査能力を極めて低下させる制度ではないかと思いますけれども、この点について御所見をいただきたいと思います。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 今のお話は、公庫から各県の信用保証協会へどのような填補をするか、そういう数字でございます。今、基本的には填補は七割から九割ということでございまして、例えばセーフティーネット保証五号でいいますと八割、あるいは東日本大震災保証でありますと九割、こういうものもございますけれども、八割ぐらいで考えております。そこは各県の信用保証協会の財政事情というものがございますけれども、中小企業金融に支障がないような範囲で填補率は考えてまいりたいと思います。

今井委員 大体八割ぐらいを考えているという御答弁をいただきました。

 それはそれで受けとめますけれども、ここで私が申し上げたいのは、余り官が守り過ぎて、民間の能力を低下させるような、あるいはモラルハザードを起こしてしまうようなことはやはりあってはいけないと思うんです。成長戦略というものは、当然、製造業もありますけれども金融もあるわけですね。金融もやはり成長していかなきゃいけないんです。

 私は、とにかく自戒を込めて、今の金融機関は本当に機能を果たしていないというふうに思っていますので、きょうは金融庁が来ておられるので少し聞きたいと思います。

 昨日来られた参考人の小出さんが静岡銀行の出身で、今コンサルタントをやっておられて、いろいろな企業の支援をしておられる。大変すばらしい取り組みだと思いました。

 その話の中で、金融機関の中にも能力を持った人がたくさんいらっしゃいますから、そういう方をぜひ活用していただきたいというお話がありました。そのとき私は、それは必ずしも正しくないんじゃないでしょうか、地域差も非常にあるんじゃないでしょうかということを申し上げたんです。

 民主党政権のときに中小企業金融円滑化法案をつくったと思います。あのとき、あの法案の中に、銀行のコンサルティング機能をもっと強化させよう、そういう方針が入っていたというふうに承知しております。あれ以降、金融機関に対して、コンサルティング機能の強化あるいはコンサルティング人材の育成に金融庁としてどういう取り組みをされてきたか、それから、今後どういう取り組みをされていくおつもりか。

 これは、きのうの議論でもわかったとおり、各地域でコンサルティングをやるに当たっては、金融機関の役割というのは実は非常に大きいんです。ですからここが地方活性化の一つの鍵だというふうに私は思っているんですけれども、この点についての取り組みを教えていただきたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、金融機関におきましては、これまでも借り手の経営改善支援等に取り組んできているところでございますが、一方で、借り手の企業の皆様からは、財務面のアドバイスのみならず、売り上げの増加等についての適切なアドバイスやビジネスマッチング等の仲介など、さらに充実したコンサルティング機能の発揮についての要望があると承知しているところでございます。

 このようなことを受けまして、特に本事務年度につきましては、金融庁におきまして、中小企業の経営改善、事業再生支援を本格化させるに重要な一年とことしを位置づけまして、本年九月に策定いたしました私どもの監督方針におきまして、金融機関が外部専門家や外部機関等とも連携協力しながらコンサルティング機能を発揮するよう求めているところでございます。

 さらに、金融庁におきましては、金融機関におけるコンサルティング機能の発揮等の自主的な取り組みを促すために、経営改善、事業再生等に係る先進的な取り組みや、広く実践されることが望ましい取り組み事例を収集いたしまして、参考事例集として先般公表したところでございます。

 金融庁といたしましては、このような方策によりまして、今後とも、金融機関に対しまして、経営改善や事業再生等、このようなコンサルティング機能の発揮等のさらなる取り組みを促すようにしてまいりたいと存じます。

今井委員 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私も、半沢直樹じゃありませんけれども、金融庁の検査を受けて大変苦労した経験がございまして、まあ、余り委員会の場で内情を言うのもあれですけれども。

 つくづく思っているのは、金融庁というのはもともと大蔵省の中の検査局から派生しているものでありますから、規制をするのが本来の金融庁のなりわいです。成長戦略を考えたときにも、金融庁の皆さんは、出自の問題で、規制をする方向には頭がいきますけれども、成長させようというところにはどうしても目が向かない省庁だと私は感じております。

 金融の世界は金融庁が監督官庁ですから、ここの機能をどうやって回していくか、本当に真剣に考えていただきたいんです。

 批判しているんじゃなくて、私は本当に、金融庁に旗を振っていただかないと日本の金融はよくならないと思っております。ですから、人材の育成というのも、例えば認定制度とか、いろいろ新しい取り組みをやっていただきたいんです。そのことによって日本の金融を世界に冠たるものにすることをぜひ金融庁にはお願いしておきます。

 次に、ちょっと細かい話になりますけれども、本法の十九条に中小企業基盤整備機構のベンチャーキャピタルの資金調達への債務保証というのがあります。これは何割ぐらいを想定しておられますか。

西山政府参考人 この制度につきましては、中小企業基盤整備機構が行います、認定ベンチャーファンドの資金調達に対する債務保証ということでございますけれども、保証割合は五割を想定しております。

 ただし、この制度全体について申し上げますと、申し上げるまでもなく、ずっと御議論がございますように、認定ベンチャーファンドの資金調達につきましては、やはり、出資性の資金、いわゆるエクイティーによる調達が基本だというふうに考えております。したがいまして、それを容易にするために税制の優遇措置を設けているところでございまして、あくまで、今御説明をしております債務保証制度については、いわば例外的、補完的な制度として位置づけ、保証割合は五割を想定しております。

今井委員 その税制の措置、損金算入、これは私は非常にいい制度だと思うんです。

 しかし、この十九条の制度は、言ってみれば、ベンチャーキャピタルがリスクをとって投資をするのに、その資金調達まで保証してやろうというものです。先ほどの保証協会じゃありませんけれども、こんなもの、リスクがないじゃないですか。投資が失敗しても、借りている金を保証してもらえるんですよ。そういうことですよね、この制度は。本当にそこまでやる必要があるんでしょうか。いかがですか。

西山政府参考人 一つ目は、繰り返しになりますけれども、先生もお話しのとおり、ベンチャーファンドの資金調達、逆に申し上げれば出資に関しましては、基本的にはエクイティー性の資金によるべきものだというふうに考えております。したがいまして、それについては税制によってバックアップをするというふうなことが制度の基本になっております。

 他方、今回の私どもの支援措置は対象に事業拡張期のベンチャーファンドを念頭に置いていることもございまして、資金の性格として、純粋なエクイティー以外の資金、簡単に言えばメザニンのような資金を提供する場合も想定できるということでございます。そういう場合については、ポートフォリオのリスクプロファイルに合った資金調達を考える場合もあるのではないかということでございます。そのために、そうした資金の調達をする際の支援措置としてこういう措置を講じているわけでございます。

 先ほどお答え申し上げましたとおり、あくまで現在想定しております保証割合は五割ですので、逆に申し上げれば残りの五割というのは、仮にこの制度を活用する場合ですと、貸し出しを実施する金融機関が残り半分のリスクを負うということになりますので、そういう意味においてはモラルハザードは生じないのではないかというふうに考えております。

今井委員 私は、これは本当にやり過ぎ、保証し過ぎだと思いますので廃止した方がいいと思いますけれども、仮にやるとすれば、先ほど御答弁があったように、極めて例外的であるということで厳格にやっていただきたいとお願い申し上げます。

 次に、私は常々日本の金融機関の一つの問題点は個人保証であると思っています。これは、ほかの国にはない極めて異例な制度だと思います。日本再興戦略に経営者本人の個人保証について早期にガイドラインをつくって検討するということが書いてありますけれども、現在の検討状況を教えていただけますか。

北川政府参考人 個人保証の見直しについてでございます。

 委員御指摘のとおり、日本再興戦略では、個人保証に関するガイドラインを策定するというふうになってございます。それに基づきまして、八月に日本商工会議所と全銀協を共同事務局といたしまして経営者保証に関するガイドライン研究会を設置して、今検討を進めております。

 この中では、一つは、事業資産と経営者個人の資産が明確に分離されている場合など一定の条件を満たす場合には保証を求めない、あるいは、事業承継時には後継者保証の必要性について改めて検討する、あるいは、保証を履行される場合において一定の資産が残る、その結果早期の事業再生に着手するインセンティブを与える、このようなことを盛り込む方向で検討してございまして、年内に成案を得るべく取り組んでいるところでございます。

今井委員 ありがとうございます。今の三点は私は非常に重要なポイントだと思います。

 線引きをどうするかというのは、実は不正の温床になりかねないので、ここをしっかりするのは非常に重要ですから、早急に問題を整理して、見直しをぜひやっていただきたいと思います。

 もう一点、今度は、経営者本人じゃなくて第三者保証の件であります。

 第三者保証に関しましては、政府は基本的にはもう第三者保証はとらない、担保はとらない、そういう方針だと理解しています。これから新規で借りる人たちはそういう制度でありますけれども、既存の人たちは以前のままでありますよね。

 二つ問題があると思います。

 一つは、既に要望も私は少し耳にしているんですけれども、新規のものがあるんだから、既存のものだって第三者保証を外してくれればいいじゃないかということで係争になる、裁判沙汰になりかねない。それから、仮に借り入れが継続した場合、継続新規になりますけれども、第三者保証をどうするのか、そこで外すのか。

 その二点に関して、金融庁は今どういう御見解でいらっしゃいますか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立を図るため、平成二十三年七月に私ども金融庁の監督指針を改正いたしまして、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めない旨を明記したところでございます。

 監督指針の改正前に第三者保証の提供が行われた既存の借り入れにつきましては、この監督方針は適用されません。一方、保証履行の際には、金融機関が、保証人の生活実態を十分に踏まえて判断される履行能力に応じた合理的な負担方法とするなど、きめ細かい対応を図るよう監督方針において求めているところでございます。

 なお、御質問がございました、既存借り入れの更新による継続の場合でございますけれども、このときに金融機関が新たに個人保証の契約を締結する場合には、先ほど申しました、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めない旨の監督方針を踏まえた適切な対応を図ることが金融機関に求められるところでございます。

今井委員 なかなかはっきり答えていただけなかったんですけれども、私が想定するに、これは係争が結構起きると思っていますので、ここの部分もぜひ明確にして対応していただきたいというふうに思います。

 まだ質問はいっぱいあるんですけれども、時間もありませんので、大臣も大分お休みになったので、最後に大臣にお伺いしたいと思います。

 今回、ベンチャーキャピタルにいろいろな支援策、税制の面とか金融支援とかがありますけれども、アメリカでは、もちろんベンチャーキャピタルもありますけれども、もう一つは、企業内のいわゆるコーポレートベンチャーキャピタルですね。企業がベンチャーキャピタルに投資するのではなくて、企業があたかもベンチャーキャピタルであるかのようにどこかのベンチャー企業に投資をする。マイクロソフトですとかヤフーですとか、こういうところが積極的にやっていると思うんです。

 日本では数社実績があるようですが、非常に小さいマーケットです。実はアメリカでは、IT企業が中心だと思いますけれども、こういうところがみずから直接ベンチャー企業に投資をして、非常にベンチャー市場を拡大させている面もあるというふうに伺っているんです。

 今回、そういうところに対する措置はこれを見る限り見当たらないと思うんですが、今後、本当はこの中でぜひやっていただきたいんですけれども、この辺についての支援を、大臣、何かお考えではないでしょうか。

茂木国務大臣 ずっと休んでいたという話でありますけれども、真剣に議論を聞かせていただいておりまして、さすがに金融機関出身の先生だなと思っておりました。あの半沢直樹はフィクションでありますけれども、モデルになっている銀行は先生御出身の銀行だ、こんなふうにも言われておりますし、さらに申し上げますと、半沢ネジに貸し付けを行いました大和田常務、合併前の銀行が先生御出身の銀行だ、こんなこともあるようであります。

 御指摘のとおり、事業会社の中には、自社でベンチャー企業に投資を行ったり、ベンチャーキャピタル子会社を設立して投資を行ったりするコーポレートベンチャーキャピタル、これが存在いたします。これらの企業は従前から、自社の事業活動に関係するベンチャー企業に投資を行い、ベンチャー企業と事業提携やMアンドAを行うことで新事業展開を図っていると認識をいたしております。

 今回の措置は経営支援能力を有するベンチャーキャピタルが広く企業投資家を募集してファンドを組成することを促進するものでありまして、自社で完結するコーポレートベンチャーキャピタルによるベンチャー投資について、支援措置を講じることは現段階では考えておりません。

 その一方で、出口戦略、こういったことを考えたときに、アメリカにおきましては、もうベンチャー企業の九割が事業会社とのMアンドA、こういったことによります出口を求めている、つまり、事業会社からの出資があるということが重要でありまして、そういった観点を含めた検討というのも必要になってくる。

 そして、今回の措置によりましてベンチャーファンドを通じてベンチャーと事業会社の距離が身近になるなど、間接的には事業提携とかMアンドAが進んでいくことを期待したいと思っております。

今井委員 ぜひ今後検討していただきたいというふうに思います。

 半沢直樹の真相については、この委員会ではなくてまた別の場でお話しさせていただきたいということで、質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久です。

 今回も質問のお時間をいただきましてありがとうございます。

 我が党の今井理事に続き、産業競争力強化法案について質問をさせていただきたいと思います。

 前回、先端医療を担う研究機関での経験を踏まえまして、アベノミクスの三本目の矢である成長戦略の目玉ともなり得る再生医療の実用化に関しまして質問させていただきました。今回も、冒頭は、再生医療産業に関して前回残した部分から質問させていただきたいと思います。

 まずは、今回のこの産業競争力強化法案、理念であるところの規制改革を論ずる以前に、むしろ逆行して新たな規制強化もなされたり、また規制強化の懸念というのもございます。

 例えば、医薬品のネット販売規制もその事例となり得るでしょうし、ちょっと話は違いますけれども、先ほど今井理事の話にもありましたように、そもそも金融庁は監督をする庁でありまして規制が得意だということです。再生医療の分野でも、再生医療に関する法案は、今国会、衆議院を通過いたしまして、もちろん厚生労働委員会からなんですけれども、この法案がかえって自由診療の過剰な制限につながるのではないかという懸念もございます。

 前回、各省庁間にある死の谷、デスバレーを何とか大臣のお力で横一直線につなげてほしい、橋渡しをしてほしいということでしたけれども、各省庁から出される法案によっては逆に規制が強化されかねないんですが、大臣、この点に関してはいかがでしょうか。

菅原政府参考人 今回、厚生労働省が提出した法案については、正直申し上げて、我々経産省から見ますと、薬事法で医療機器の審査期間の短縮化ですとか、再生医療法でも培養の外部委託を可能にするとか審査期間の短縮もたしか考えられておりますので、そういう面では、規制の強化というよりは商業化に近づけるための措置を厚労省が思い切ってとったと。

 ただ、前回も申し上げたとおり、再生医療についてはやはり倫理の問題がありますので、それはそれとしてクリアしていただくことを前提として大きな前進が図られているということです。もちろん、厚生労働省の再生医療法案では、産業振興の観点のみならず、やはり人体、生命、いろいろな意味での安全について十分手当てをするということで、その面について産業化を一歩進めるに当たっては、何らか補完措置としての安全規制が追加されることは十分あり得るというふうには考えてございます。

伊東(信)委員 安全面のお話をされまして、全くそれはそのとおりでございます。安全面の問題を重視する、それと、それぞれの治療法もしくは製品が有益なのかどうかという検証は非常に大事なものだと思います。

 しかし、今回の法案は、どれだけ各論に対してスピード感を持って踏み込んで規制を緩和できるかということもありまして、そのときに、一方でいわゆる大きな規制があるんです。今は小さな規制の話をしましたけれども。それは、各省庁、関係する議員、企業の鉄のトライアングルともいうべき大きな規制をいかに突破できるかということなんです。その点に関して、規制をぜひとも取り払うんだという決意のほどをお伺いしたいのです。

菅原政府参考人 先生御指摘のとおり、これまでいろいろ、規制緩和の動きに対して、いわゆる抵抗勢力というものがあったことは私も感じてございます。

 ただ、これまでどうしてそういった状況の中で規制緩和が前に進まなかったのかというのを顧みますと、どうしても一般論もしくは極端な規制緩和を求める余り、もともと規制を講じる側の人たちが、とてもそこまで一気にできないということゆえに一歩も動かない事態に陥っていたのではないかと考えております。

 今回の企業実証特例というのはまさに、ある意味でゼロ、百の膠着状態から具体的事業プランに基づいて一歩一歩、規制に穴をうがつことによって本当の着地点、次の大きな一歩はどこにあるのかを探るためにも、非常に大きな前進のためのエンジンになるのではないかというふうに私は考えてございます。

伊東(信)委員 規制というのはあくまでも交通ルールであってほしいわけで、ルールが決まれば先に進む、それがブレーキにならないようにしていただきたいわけです。

 例えば、再生医療を応用しようと思えば、前回申し上げましたように、iPS細胞というのは、無限にたくさんふえるということで製品に価値がある。例えば、免疫の細胞は、悪いところにまで行く、運び屋さんをしてくれるわけですね。その運び屋さんに、例えば、がんに強いウイルスをくっつければ、そのウイルスががんをやっつけてくれる。製品としてiPS細胞を使うというのは、もともとサイラ、iPS細胞研究所にいて、今は神戸大学の青井教授が進めているところです。

 今説明をさせていただいて、なるほどなと思っていただけると思うんですけれども、iPS細胞は、それに関しての法案ができますけれども、ウイルスの治療はウイルスの治療でまた別の法律です。つまり、二つの法律に対しての認可になり、一個ずつ検証していくと時間がかかるわけです。

 世界との闘いになりますと、やはりスピード感が大事です。御答弁の中に安全性ということがありましたけれども、それぞれもう既に安全性が確保されているのであれば、同時に申請を出せばいいのではないかと思うんですけれども、残念ながら、今のシステムを考えますと、順番にやっていく、そういうようなラグがございます。

 こういったものをぜひとも経済産業省もしくは大臣主導でスピード感を持って進めていただけるようにお願いしたいのですけれども、そういった観点に関して、一つの事例ですけれども、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 今委員から交通ルールのお話がありましたけれども、同じ交通ルールといっても、自動車に適用するもの、それから自転車に適用するもの、バイクに適用するもの、違ってもいいと思うんです。これまで日本の場合は、例えば医薬品であっても医療機器であっても同じような審査体制で、特に機器の方の審査がおくれる、こういう問題もありました。

 iPS細胞の実用化についても同じようなことが言えると思います。薬事法そのものが悪いということじゃありません。御案内のとおり研究開発でiPS、日本は山中教授だけではなくて世界最先端を行っておりますけれども、それを使った再生医療の製品化は、韓国よりも、ヨーロッパよりも、アメリカよりも決定的におくれている。やはりここら辺の適用すべき法律というのは変えていかなくちゃならない。

 幾らいいバットを使ってもゴルフのボールは飛ばないんですよ。やはりゴルフのボールを飛ばそうと思ったら、ゴルフのクラブをつくらなければいけない。そういう意味で、制度の設計というのはやっていく必要があると思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 昨日の大臣の御答弁でも、ダーウィンの進化論を例に出していただきました。本当に生き残っていく種というのは、大きいものでも強いものでもなく、時代に、環境に適合したものだということをおっしゃっていただきました。

 では、その適合とは何なのかということに関しまして、生物学的にはセレクションといいまして自然淘汰されて残っていくということと、もう一つはミューテーションつまり変化、進化があるんです。

 今回の法案の中で規制改革の実行を図るわけですけれども、集中実施期間を五年と定めています。その間の規制改革の調査、報告、公表をする方法に関しては各議員からも質問がありました。五年経過後、実効性を伴う規制の全面緩和の事例の検証を、セレクションが行われたのか検証して、もし、それが適さないとしたら、そこで変化させるのかどうかということになるんですけれども、その事例の検証をどのように行うかというのをもうちょっと聞かせていただきたい。

茂木国務大臣 セレクションというより、基本的にはエボリューションを進めていくということになると思うんです。

 この成長戦略、さまざまな税制であったりとか措置の集中実施期間は五年間ということであります。ただ、計画をつくりますのは三年です。まずは三年間の計画をつくり、そのローリングをかけていく。同時に、一年ごとにその状況についてチェックをしていって、必要な追加措置等々があれば追加をしたり、見直しが必要であればやっていく、そういうPDCAサイクルをしっかりしながら成長戦略を実行していきたい、こんなふうに思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。まさしくPDCAサイクル。

 三年という期限をまずは五年以内の期間として設定していただいたわけですけれども、その間にいかに国民の皆さんの生活に反映されていくかということです。

 アベノミクスに三本の矢がございまして、一本目と二本目は成功、三本目を成功させるためのこの産業競争力強化法案ですけれども、前回今井理事が、選挙区に行って有権者のお話を聞くにつけ、まだまだやはり実感としては感じられにくいと。安倍総理がおっしゃるところの全国津々浦々に効果をどのように、私の言葉で言うとデリバリーできるかということなんですね。

 薬にDDS、ドラッグデリバリーシステムというのがございまして、例えば飲み薬とか注射薬とかあります。抗がん剤とかをがん細胞に行かすために、そこの血管にチューブを入れて直接抗がん剤を運んでいくデリバリーシステム、DDSというのがあるんです。サメの軟骨を幾ら食べても膝の軟骨はできないですよね、そこに軟骨組織は行き渡りませんから。

 この産業競争力強化法案、アベノミクスの三本目の矢を全国津々浦々に届けるためのシステムというのは、何か考慮されているでしょうか。

菅原政府参考人 この法律では、規制改革はもちろん、四百二十万の中小企業者を対象に企業実証特例ですとかグレーゾーン解消制度を展開していきたいというふうに思っておりますし、あとは地方の創業支援というものについても今回の法律では大きく取り上げて、地域が元気になる施策を総合的に講じていくこととしております。

 何よりも、成長戦略のある意味ではキードライバーである産業競争力強化法案を仕上げて、それをしっかり実施に移す、今のデフレマインドから脱却して、経済全体が大きく飛躍することで地方にもしっかり、先ほど言ったような施策を万遺漏なく講ずることによって届けていくべく、全力を挙げたいというふうに考えてございます。

伊東(信)委員 グレーゾーンのお話をしていただいたわけなんですけれども、そもそも私は理系のせいかグレーというのが余り好きではなくて、やはりデジタルな、白か黒、ゼロか一、そういった発想なので、そもそもグレーとは何ぞやということなんですね。グレーをつくるから問題になる。全ての規制改革をすればこんなグレーゾーン解消とかは要らないのではないかと思うんですけれども、その点に関していかがでしょうか。

茂木国務大臣 全部白黒がついた方がいいと思います。ただ、多分、事業環境も変化をします。事業も新しくなってきます。そうなりますと、法律というのは毎日変わるわけではありませんから、事業の進展に従って、もともと白か黒かはっきりしていたものがグレーになってしまう、こういったことはあり得るんだろう。そういった意味での、ドラッグラグじゃないですけれども、タイムラグというのは出てくると思います。

 そこに当たって、これまではきちんとした、白か黒か判定するような制度がなかった。そういったことから、今回、グレーゾーン解消制度を設けました。そして、白と判定されればそれでいい。もし、そこの中で白と判定されなくても、こういう条件を整えてくれれば白に変わります、こういったことまで規制を所管する省庁に求めるといった形で、できるだけ新しいビジネスがホワイトになる、こういった状況をつくっていきたいと思っております。

伊東(信)委員 その点に関しまして、本当にちょっと細かいことを指摘するようですけれども、今回、先端設備のリースの保険制度で、先端設備の例として、先端手術の支援ロボット、例えば前立腺のがんを治療するダビンチという機械です。これは実際に前立腺のがんとかで使われております。

 そして、介護ロボットなんですけれども、筑波大の山海教授とかがやっているサイバニクスの機械です。介護ロボットというのは二通りの側面がございまして、つまり、介護する人の体の負担をサポートする。介護する際に、ヘルパーの方とか介護のスタッフの方が患者様を抱きかかえるときに腰とか体を傷めないように、力をサポートするという側面が一つ。もう一つは、例えば、歩いたりするのが不自由な方の、不自由な足の方につけて、サポートして歩けるようにする。同時に、ここを刺激することによって、それがリハビリにも結びつく。患者様に使うのとスタッフに使う、この二つの側面があるんです。

 二つの側面があるので、これからいろいろ規制緩和をしていって、市場に導入していかなければいけないわけです。つまり、新規事業になるわけなんですけれども、介護ロボットと手術支援ロボット、同じようにリースの事例として出すのはいかがなものかなと思ったんですけれども、その点に関してはいかがでしょうか。

茂木国務大臣 先生御案内のとおり、日本は世界で一番少子高齢化が進んでいる。そういった中で、我々は健康長寿社会をつくっていきたいと考えております。

 それは、一つにはやはり予防の分野を強化することによりまして、できるだけ病気にならない。そして同時に、病気になっても、例えば再生医療を使ったりさまざまな形で治癒が完全にできる、できるだけ早くできる。最終的には、例えば要介護、何かの障害が残ったにしても、健常者となるべく同じような生活ができるような環境を整える。それは、先生おっしゃるように、受ける側を支援する、もしくは介護する方のそういった負担を減らすロボットであったりとかスーツ、こういうものも必要になってまいると思います。

 ただ、例えばダビンチのようなもの、これは二番目のカテゴリーといいますか、より精度の高い手術なりが行えるということでありまして、これから日本としても強化をしていかなければいけない分野だと考えているわけでありますけれども、よほど考えないと。

 例えばゴルフのパター、日本は余りいいパターができていないんですよ。海外のパターの方がいいんですね、別にブランド名を出す必要もないんですけれども。なぜかというと、日本人はパターが上手なんですよ。だから、余りいいパターができないんです。それに対して、スコッティ・キャメロンとか海外の方がいいのができちゃうんですよ、海外の人はパターが下手だから。

 手術も私は同じようなことが言える気がするんです。日本の外科医は手先が器用で手術がうまいとなると、ダビンチみたいなものが出てこないということもある。

 これはいろいろな分野でもありまして、金型が日本人は得意なのはいいですけれども、その分、3Dプリンターがおくれたら困るんですよね。大量生産の部分は金型でやるにしても、小ロットでやる3Dとかいろいろなもの、日本が今まで得意であったから逆におくれてしまった分野、こういったものも強化をしていかなきゃいけない、こんなふうに思っています。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 くしくも予防医学の話をしていただいたんですけれども、少しだけ気になるところを指摘させてください。

 再生医療自体もそうなんですけれども、やはり、予防を怠り病気が進行して組織の破壊があった場合、つまり、病気が進行したとしても治せる究極の医療である再生医療というのは、山中先生を初め再生医療をやっている人間としては本意ではなくて、先進的な再生医療というんですけれども、予防のために再生医療を応用していきたいという思いがあるんです。

 今回いろいろな事例を申し上げましたけれども、やはり各研究者は四苦八苦しているんですね。最終的にそれが商品化していって、いわゆる成長戦略になり得るには、やはりニーズ、マーケットの問題になってくるわけです。

 前回お話ししましたように、文部科学省から研究分野が出されて、それを臨床応用にするために厚生労働省に行って、そして製品化となると経済産業省になるんですけれども、現実に今、再生医療商品として世界の中で出回っているのは、わずか二種類しかないんです。

 この二種類のものは、人工皮膚です。人工の皮膚というのは、やけどとかの跡に使われるんですけれども、その製品を使う際にも、有識者となると、熱傷学会というやけどの学会もあれば、形成外科の学会もあれば、アンチエージングの学会もある。たくさんのところが入り組んで、交通整理ができていない状態なんです。各省庁間、各学術間のいわゆるブリッジとなり得るように、本当に茂木大臣には御尽力いただきたい。

 先ほど、エイトマンの話が出まして、鉄腕アトムのエネルギーの話が出ました。そして、石ノ森章太郎さんのキカイダーですけれども、キカイダーのお兄さんゼロワンは太陽電池で動いております。曇った後も、夜になっても、しばらくはゼロワンは動いています。つまり、蓄電池の機能があるわけなんです。本当はエネルギーの話もしたかったんですけれども、もう大分時間がなくなってきました。

 最後に、ちょっとエネルギー戦略に関して、これもやはり成長戦略となり得ますので、茂木大臣にその決意をお話ししていただければと思います。

茂木国務大臣 鉄腕アトム、調べてみましたら、当初は原子力のモーターで動いておりましたが、一九八〇年代から核融合エネルギー、そして二〇〇九年からは、どこの分野かわかりませんがクリーンエネルギーで動く、こういうことになっているようであります。

 その上で、日本は今、三・一一以来の新たなエネルギー制約に直面をしております。重要なことは、電力の安定供給、そして同時に、低コストでの提供を進めるということであります。これも成長分野になっていく。日本は、一九七〇年代、二度のオイルショックを経験しました。その中で、世界に冠たる省エネ社会、そして、自動車、家電、省エネの製品をつくり出したわけであります。

 なかなか難しい問題でありますけれども、エネルギー制約を克服する過程におきましては、蓄電池の技術であったりとか最も高効率な火力発電であったりとか、さまざまな成長分野も同時に育てることができる、このように考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 今回、本当に私が強調したかったことは二点です。一つは、各省庁間の橋渡しをしていただきたいということと、もう一つは規制強化。資金面の話は私は今回はしなかったんですけれども、全国津々浦々にアベノミクスの効果が出てこその産業競争力強化法案だと思うんです。残念ながら、長い歴史の中で実行力が発揮できなかった、今までに似た法案もありましたけれども。

 この点、実行でき得るのかどうかを我々維新の会としては細かく厳しくチェックさせていただきたいので、ぜひともよろしくお願いします。

 質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 維新の会、三人目としまして、きのうに引き続き、今回の産業競争力強化法案につきまして質疑させていただきたく存じます。

 きのう議論させていただいた中でも、二点、私としてはこの法案で気になっているところがございます。

 一つは、産活法が今回廃止されるということですけれども、この廃止に当たって、とはいえ、大部分が産活法から引き継がれている法案でございますので、産活法の功罪の点検と、それがきちんと改善されて反映されているのかどうかということが一点目。

 もう一点につきましては、やはり規制緩和の部分。三木谷社長が民間議員を辞任されるという話も出ましたけれども、やはりどこまで踏み込めるかというのを国民の皆さんはごらんになっていると思いますので、そういった意味で、その踏み込みの部分。

 この二点が私は気になっておりますので、この部分を中心に、きょうの質疑も二十分と少し短いんですけれども、やらせていただきたく存じます。

 先ほどの伊東委員のお話で、白と黒を決めるのかグレーかというお話があって、伊東先生は白黒を決めるのがお好きだとおっしゃったんですけれども、私はどちらかというと、グレーを残すのも人間の妙味といいますか、世の中のありようというか、一番大事な、余白がなければうまく回らないということは勉強しておるところでございまして、そういった意味で必要な部分ではあるんです。

 一方で、この国日本が残念ながら日出る国から少し落ちてきているんじゃないか、失われた二十年と言われているところで、どうしてそうなっているのかなと考えるに、我が国に余りエッジのきいたところがなくなってきている。例えば、人口にしても中国やアメリカに勝てるわけでもなくて、シンガポールや韓国のように国が引っ張って、かじを大きく切るようなことがなかなかできなくなっている。

 そういった意味で、日本風でグレーのよいところももちろんあるんですけれども、一方で、エッジのきいた部分がないゆえに、うまく小回りがきかない、民間でうまくやろうとしてもなかなかできないというところに来ているんじゃないか。

 どちらかといいますと、政治の方もむしろ、あれやこれやと言うよりは、もちろん大臣もずっとおっしゃっていることですけれども、なるべく民間でできることはしてもらってどんどん活力を生み出していく、日本を再び興すという意味では、かなりエッジのきいた規制緩和もやっていく必要があるというふうに私も同感している次第です。

 そうした中で、きのうも申し上げたんですけれども、今回、大臣が先日おっしゃった三層構造で、まず全国でできるものは規制緩和していく、そして特区でできるものはその地域でやっていただく、そこでできないものはまず企業で実証特例という形でやっていただくので、恐らく、企業実証特例制度で残った、要は規制緩和されていないけれども企業に対してやってみようという部分に関しては、先ほど来少し答弁があった抵抗勢力という形で、かなり抵抗される部分も多いところだと思うんです。そういった意味で、規制所管官庁と緩和したい事業所管官庁がかなりしのぎを削る折衝が見られると思うんです。

 一方で、先ほど少しだけお話をさせていただいたネットでの薬の販売の件、九九・八%は解禁になるということです。三木谷さんも会見等で述べられていましたが、最高裁で判例も出ている中で、解禁したい側、規制緩和してほしい、やってみたいというところからすれば、逆に言えば、抵抗勢力と彼らが言うような厚労省だったら厚労省、規制官庁、規制を持っている側がうまいことやって、結局、一〇〇%ではなくて一部例外を残す形になってしまうとか、骨抜きになってしまうという流れになりがちだと思うんですけれども、この部分に関しましてもう少し、どうやって抵抗を抑えることができるのか。

 そして、実行が大事だと常々大臣もおっしゃっていましたけれども、経産省としてこの実行をどうやって担保するのかというのは、非常に国民の皆さんも、また我々も、先ほど伊東先生からお話がありましたしっかりチェックしていきたいという意味でも見るべきところだと思うんです。このあたりにつきまして、もう少し詳しく、どうやったらそれを緩和する方向に持っていけるのかという部分に関しまして、お考えを伺えればと思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生も御指摘のように、我々は三層構造と言っておりますけれども、規制改革については、この法案で御提案申し上げている企業実証特例制度のみならず、全国ワイドの一般的な規制改革、あるいは地域別の規制改革も含めて取り組んでいくということになります。

 その上で、まず全国ワイドの規制改革については、さまざまな分野につきまして、その検討がことし取りまとめました日本再興戦略、成長戦略の中に盛り込まれているわけでございますけれども、項目によりましては、まだ現時点では、いついつまでに何々をするという具体的な案が明確でないようなものもございます。

 そうしたものについて、できる限り早くその措置を明確にして、政府全体として具体的なコミットメントができるようにということで、この法案の中では、随時御説明を申し上げております実行計画というものを策定して、その内容を明らかにし、可能な限り随時更新し盛り込んでいくということをしようというのが一つ目の取り組みでございます。

 具体的な制度として御提案申し上げております企業実証特例制度、まず、繰り返しになりますけれども、この制度につきましては、この分野だけにするとか、逆に言えばこの分野は外すということは一切設けない。つまり、ある意味では全ての分野についての提案がオープンであるということを政府全体として決め、御提案申し上げているというところでございます。

 もちろん、個別の規制改革について具体的な事案をもとに規制所管省庁がどういうふうに判断するかということは今の時点で一般的には申し上げられませんが、逆に、企業実証特例制度の中で企業が持っている具体的なビジネスプランに基づいた提案を行った方が、規制所管省庁としても判断しやすい。つまり、どういうビジネスプランで、どういうようなことが起こるかということを想定できない、あるいは逆に申し上げれば、全ての場合を想定しなければいけないという場合よりもこういう具体的な提案があった方がむしろ規制所管官庁としても判断しやすい、簡単に申し上げれば、規制改革、特例措置を設けることに取り組みやすいというようなこともあろうかと思います。

 ただ、直接的に事業者と規制所管省庁だけで会話をいたしましてもなかなかうまくいきませんので、その間にまさに事業所管省庁が入って、できる限り、ビジネスプランを実現する上でどうしたら規制所管省庁を含めて全体の話がまとまるかということについて、例えば安全性の確保についてどういう措置を講じたらいいかということについて、さまざまなアドバイス、橋渡し、あるいは規制所管省庁への積極的な働きかけということをしていこうということになっております。

 これも累次申し上げておりますとおり、まさに、この制度そのもの、あるいはこの法案そのものは政府全体として提案申し上げていることでございますので、当然、私どものみならず各省も含めて規制所管省庁も積極的にこの制度を活用するということが前提ではございますが、もちろん、全ての事案について事業所管省庁と規制所管省庁の話し合いだけで解決するというわけでもない場合もあろうかと思います。意見が異なるということになった場合については、総合調整を行う権限を有する内閣官房が各省庁の意見調整を行うことで解決することを目指し、最終的には、非常に重要な事案については、総理を含めて内閣全体のリーダーシップを発揮して、しっかりとした結論を出すことを想定しているというものでございます。

茂木国務大臣 細かく答弁してもらったんですけれども、簡単に言うと三つなんです。

 一つは、今までは規制を所管している省庁と各企業が直接やり合わなければいけなかった。その間に事業を所管する省庁が入りまして、もちろん新しい事業のモデルについてもしっかり確認をとり、安全性等の措置がとれているかどうか、こういうことも確認した上でありますが、働きかけを事業所管省庁から規制所管省庁にする。

 二つ目は、この法案、そして企業実証特例制度、これは、規制を担当する大臣も閣議決定に参加しているわけであります。私も場合によってはエネルギーの問題とか規制を所管いたしますけれども、当然、サイン、花押はしているわけでありまして、そういったことから、この企業実証特例制度を使っていくということに対して政府全体としてコミットメントしている。

 三番目は、当然のことでありますけれども、そこで意見の違いがあったら、これはこの法案に限らずあらゆることについてそうでありますけれども、内閣官房において総合調整を行い、その総合調整の最終的な判断というのは内閣の長であります総理大臣が行うというプロセスをとっているということであります。

丸山委員 いずれにしましても、この案件はオープンになっていくことですので、まずオープンになるプロセスの中で国民世論で判断する機会もあると思いますので、しっかりとやっていただきたいということと、昨日例に挙げられた電動モビリティーのお話、もちろんこれ自体が悪いというわけじゃなく、しっかりやっていただきたいんですけれども、やはり、これだけだと何となく踏み込み不足じゃないかという感があります。

 先ほど申し上げたように、企業さんから出てくるのは恐らく、特区でも認められなかったようなかなりエッジのきいたものでございますので、相当議論が盛り上がるとは思うんです。経産省の場合はエネルギーとかの規制をお持ちだということですけれども、そうじゃなくてやはり押す側、規制緩和の側になることも多いと思いますので、その場合にはしっかりと後押ししていただきますようお願い申し上げます。

 全国展開等のお話も聞こうと思ったんですが、時間の関係上、飛ばさせていただいて、御説明いただきまして重なるところがありますので。

 大事な部分でお伺いしたいのは、PDCAということを先日も少ししつこいぐらいに言わせていただいたんですけれども、これにつきましてもきちんとそのあたりのサイクルを回していただきたいと思うんです。実際、例えば、今回の先ほど来申し上げている企業実証特例制度、そしてもう一つの目玉であるグレーゾーン解消制度につきまして、政策目標としての数値といいますか、件数なのか、どういう案件なのかというのがあるのかもしれませんが、そのあたりのプランのPに関しまして、どのように考えていらっしゃるのか、お答えいただければと思います。

菅原政府参考人 先ほど来委員も御指摘のとおり、企業実証特例、そしてグレーゾーン解消制度、できるだけ多くの人がこの制度を利用して、まさに規制改革を一歩でも二歩でも前進させるツールにしていきたいというふうに考えておりまして、今まだ法律ができていない段階ですのでふわっとした問い合わせしか来ておりませんけれども、この法律ができて我々が周知徹底すれば、まさに新しいビジネスに取り組もうという人は地方を含めて大勢いらっしゃると思いますので、今ここで何件を目指すとかいうことよりは、とにかく可能な限り多く手を挙げていただいて、それをグレーゾーン解消なりもしくは企業実証特例で一つ一つ解決していきたいというふうに思っております。

丸山委員 もちろん、現時点で数字をというのは難しいとは思うんですけれども、なぜこの数字の話、プランの話をしているかというと、きのうも少しお話をさせていただいた産活法の検証につながっていくからです。

 先日、ノーアクションレター制度の活用が十二件で、またいわゆる第二会社方式の事業再生の案件は十五件しかないというお話を副大臣からいただきました。

 少しここでお伺いしたいのは、産活法が今回廃止されるということですが、この二点以外で、産活法と本法案はかなり重なっている部分があると思うんですけれども、創設されて以来、活用件数の少ないものを経産省でどれぐらい把握しているのか。案件は多いと思いますので、ノーアクションレターや第二会社方式の事業再生以外で、少ない順で構わないんですけれども、二、三例ほど、そういうものがあるのかどうかということをまずお答えいただきたいと思います。

菅原政府参考人 この国会の審議でも随分出ましたけれども、産活法と今回の競争力強化法の違いというのは、特に事業再編のところは重なり合うわけでありますけれども、産活法の特徴として、非常に多くの計画類型を役所が決めて、それに合う計画を認定する、ある意味で正直言ってパターンをはめるような感じがあった嫌いがございます。

 これまで、実を言いますと、ある意味で九つの計画が類型として定められまして、ニーズがないものは途中でやめるという形で、現段階では六つの計画が産活法上残っております。

 この利用実績について言いますと、例えば事業革新新商品生産設備導入計画、これは設備投資の計画でございますけれども、これについては残念ながら利用する人がいなかったというような計画類型であります。そのほかにも、資源制約対応製品生産設備導入計画、これもこの計画をつくって以来二件しかないというところで、事業再構築計画のように三百十一件というふうに非常に多く使われるものから、非常に利用実績のないものまで存在しております。

 まさにこういう反省に立って、今回の競争力強化法では、役所が勝手にと言われますけれども、自分で思い描いて計画類型をつくって、それに合う計画申請を、手を挙げてくださいというよりは、基本的には事業再編計画という大きな一くくりにしまして、その中で特に重要な切り出しのものについては特定事業再編という内数としてやるということで、基本的には大きな一つの事業再編計画にくくって、利用実績が上がるように、もしくは事業者の創意工夫が生かされるような形態に変更したということでございます。

丸山委員 今、ゼロ件の案件もあるというお話がありましたけれども、いろいろな原因があると思います。先ほど、計画類型をはめ過ぎたという御指摘もありました。恐らくそういう部分もあるでしょう。お話を聞いていると、とにかくわかりにくいという御意見を企業さんから伺ったり、実際にニーズ自体がないものがあるというのも伺ったことがございます。

 やはり、今回の件もそうなんですけれども、企業さんでやりたいというものがまず出てこなければ数もふえませんし、結局規制緩和にいかない、そして最終的に日本再興にはつながらないということで、幅広にオープンな形でやっていただくということなので、まずしっかりとそこはやっていただくとともに、申請があったとしても少なければ意味がないので、申請をふやすことと同時に、申請を通しやすくする仕組みのようなものが必要になってくると思うんです。

 先ほど件数の話も聞きまして、政務の方々のどなたでも構わないんですけれども、これをふやしていく、今回、同じ轍を踏まないために、申請をふやす方法よりも、来たものに対してなるべく申請を許可していく、認可していくという方法に関しまして、政府内での御意見を伺いたいんです。

茂木国務大臣 まず、受け付けにつきましては事業の所管省庁が行うということでありますけれども、例えば二つの省庁にまたがることについては、どちらに出していただいてもワンストップでできるような形をとってまいります。また、なかなか事業者さんで、どこの所管になるかわからない、これにつきましては、この法案を提出しております我々におきましてしっかり対応して、経産省が担当しないにしてもワンストップで済むような体制をつくっていきたいと思っております。

 今回の実証特例、さらにはグレーゾーンの解消にしましても、単にできるできないではなくて、このままでできるのか、一定の条件をクリアすればできるのか、また若干のビジネスの変更があればできるのか、どうやったらできるのかという視点で考え、そして成功事例ができるということが重要だと思うんです。

 やはりそういったことが民間にも伝わり、今度の制度というのは使い勝手がいいな、やってみると通るんだな、こういうふうに思うか、結局やっても書類だけ書かされて時間ばかり食うということになってしまうかでありますから、成功事例をこういった中でつくっていきたい、こんなふうに考えております。

丸山委員 ぜひ、大臣がおっしゃった窓口の一本化というか、わかりやすい窓口、まずオープンにしていただく部分はしっかりやっていただきたいと思います。

 そして、きょうお話しさせていただいてわかったのは、具体例がないと議論がしづらいのもあって、どうしても抽象論に聞こえてしまうなと思いました。要は、伺っていると器はすごくよさそうに見えるんです。産活法も、理念としてはすばらしくて、ぜひやってほしいという案件でも、中身を見れば少なかったというのが実際でございますので、結局のところ実行しなければ、計画だけでは意味がないんです。

 そのあたりをしっかりと見ていただくことをお願い申し上げますし、我々も、野党として、しっかりとやっていらっしゃるのかどうか確認するのが仕事でもございますので、しっかり確認させていただきます。

 時間になりましたので、私の質疑を終わらせていただきますが、我が党から足立委員が引き続き御質問させていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 維新の会、四人目です。連日の審議でございますが、よろしくお願い申し上げます。

 私は、先般も茂木大臣のお手を煩わせましたが、通常は、常任委員会は厚生労働委員会、特別委員会は復興特委と原子力特委で与党の先生方と御討議させていただいております。この経産委にも二、三度来させていただきましたが、その際は原子力が中心でありました。

 きょうは、厚生労働委員会でふだん社会保障、医療、年金の議論をしている立場から、この法案についていろいろ御討議させていただければと思います。

 きょうは先輩方もいらっしゃるのでちょっとやりにくうございますが、かつて経産省の中でさまざまな政策論議というか討議をさせていただいた、その雰囲気と同じ雰囲気でぜひ御指導いただき、また私も意見を申し上げたいと思います。

 きょうは、この法案の中でも、特に私はヘルスケア分野に光を当てたいと思います。

 この法案は特に分野を何か限定しているような枠組みではないと思いますが、これまでさまざまな成長戦略をそれぞれの政権でつくってきたときに、必ず柱に入っていたのがヘルスケア分野であったと思います。

 私も今、厚生労働委員会で社会保障財政もやっていますが、どうしても今の日本の社会保障はお金の話だけでは、年金は特にお金の話、現物給付ですから足し算、引き算の世界でありますが、医療や介護を中心とするヘルスケア分野というのは、お金がさらに人の手に渡って、さまざま掛け算、割り算、微積分までできる世界だと思っています。医療、介護、ヘルスケアの分野について、経済産業省の皆様方のてこ入れをぜひこの法案に基づいてお願いしたい、こういう立場でございます。

 実は、十一月一日に本会議で、社会保障プログラム法案について厚生労働大臣に質問させていただきました。そのときに田村大臣に、きょうは原医政局長にもおいでいただいておりますが、会計基準の話をお伺いしたんです。今、日本にはさまざまな会社、株式会社、有限会社、あるいは非営利でも医療法人、社会福祉法人、さまざまな法人の種別がありますが、医療法人だけ会計基準がないんです。

 それについては、実は、私がまだ経産省におった当時、小泉政権のときに、医療制度改革大綱で、医療法人制度改革として、「医療法人に必要な会計の在り方について検討する。」、こういうことがまとめられております。これは平成十七年です。

 医政局長には改めて後でお伺いしますが、実は、平成十七年に医療法人の会計基準を検討すると政府として決めた後、今に至ってもこれが整備されていないんですね。経産省の皆様方からすればちょっと驚きの世界だと思いますが、これが実態でございます。

 本会議で、田村厚生労働大臣から、四病院団体協議会、四病協という団体で今検討していて、年内にもまとめるという御答弁をいただきました。しかし、これはヘルスケア産業の効率化あるいは適正化を考えたときには本当に一歩も一歩、大前提の議論でありまして、きょうはその話も含めて御議論させていただきたいと思います。

 まず、今回の法案において、ヘルスケア分野は恐らく成長戦略との関係においても重要だと位置づけていただいていると思いますが、ぜひ、このヘルスケア分野に取り組む意気込みのようなものを茂木経済産業大臣からお聞かせいただければと思います。

茂木国務大臣 足立委員から御質問いただきましたが、きょうは政府参考人もたくさんそろっておりますけれども、恐らく、経済産業省にいらしたときも、誰よりも医療制度改革やヘルスケア産業の振興に熱心に取り組まれてきたのが委員だ、このように私は承知いたしております。

 ヘルスケア産業は、まさに日本にとってこれから重要な産業である、こんなふうに考えておりまして、日本再興戦略におきましても、健康長寿を重点分野の大きな柱として取り上げております。

 経済産業省としても、健康寿命の延伸のために、例えば、医療機関と民間の事業者が連携した生活習慣病予防に資する運動、栄養指導等の健康サービスの創出、事業化の支援をする、また、治療効果の高い医薬品の開発プロジェクトや、中小企業のものづくり技術を生かした医工連携によります医療機器の開発支援、こういった支援措置を講じているところであります。

 この法案におきましては、例えば企業単位のさまざまな規制改革を進めるにしましても、この分野を優先的にやりますよ、この分野の窓口を閉じますよということはせずに広くいろいろな提案を受けたいと思っておりますけれども、健康・医療分野におきまして新たな事業に挑戦する多くの企業に積極的に活用していただく、こういったことを期待いたしております。

足立委員 ありがとうございます。大臣のこの分野への意気込みがよくわかりました。

 次いで、私も経産省にいましたのでよくわかるんですが、一方で、医療、介護の世界は、先ほど申し上げたとおり、医療法人とか社会福祉法人が中心的な経営形態であります。教育は学校法人。いろいろな非営利法人があるわけでございますが、今回の法案において非営利法人の扱いがどうなっているか御教示ください。お願いします。

菅原政府参考人 お答え申し上げます。

 本法におけるいわゆる非営利団体の取り扱いでございますけれども、この法律全体を見渡しますと、認定ベンチャーファンドだけが有限責任組合に限定されておりますけれども、それ以外については、企業実証特例はもちろん、グレーゾーン解消制度、そして産業再編の対象としても、非営利事業団体を除外するものではございません。

足立委員 ありがとうございます。私も、条文を拝見して、そういうことかなというふうには思っておりました。事業者、事業活動、いろいろな定義がございますが、特に縛りはないということであります。

 ただ一方で、実際に彼らがいろいろな支援策を使うとなると、要すれば法案のたてつけとして、今局長がおっしゃったように、入り口で対象を縛っているわけではない、では、具体的な支援策は彼らが使える枠組みになっているんだろうか。拝見すると、この法案は大部というかさまざまなパーツからできておりますので、個別に挙げるのは難しいわけですが、例えば中小企業政策。

 きょう長官においでいただいていますが、私は中小企業庁にもおったことがあるのでよく承知しておるつもりなんですが、要は、中小企業政策というのは会社及び個人を対象にしている、どの法律を読んでも会社及び個人と書いてある。個人ですから、それはどんな個人でも対象ですね。ところが、事業がだんだん大きくなると法人成りをします。個人事業から法人、会社をつくります。個人が営利の会社をつくると、さまざまな中小企業政策がついてきます。ところが、個人が医療法人をつくった、これは非営利法人です。すると、基本的に中小企業政策の対象ではないんじゃないかなというふうに思っています。

 事務的に法律をざっと見ると、一つだけ例外があって、中小企業信用保証制度だけは、医業を主たる事業とする法人はいいよと書いてあるわけでありますが、それ以外の法律については基本的に、中小企業の定義として会社及び個人、会社は営業をしている営利会社、こういう整理になっていると思います。そういう意味では、中小企業政策を中心に、なぜ今こういう体系なのか。

 まず、私が今申し上げた理解がそのとおりであるかどうか、もしそうであれば、なぜそうなっているのか、ぜひ御教示いただきたいと思います。

北川政府参考人 お答えいたします。

 二つ論点があると思います。

 一つは、法人と個人の問題、もう一つは、信用保険で特別に対象になっているのはなぜか、この二つだと思います。

 一つ目の中小企業政策の範囲でございますけれども、御案内のとおり、中小企業基本法におきまして、新たな産業の創出とか市場における競争の促進、こういうことをうたっておりますので、原則として営利を目的とする事業者を支援の対象にするのであろうと思っております。

 そういう意味では、まず、個人につきましては、例えば、営利でない、あるというのを判断するのは外形的には難しゅうございますので、事業を営んでいる以上、営利であろうという判断で御支援するわけでございますけれども、法人の場合におきましては、特定の法律に非営利とうたっているようなものもございます。そういったものにつきましては、法でそういうふうにうたっております以上、原則としては営利を対象とする支援策でございますので、そこは外れるということでございます。

 一方で、次の論点で、そうはいいながら、なぜ信用保証についてやっているのかということでございます。

 これは大変長い経緯がございまして、医療法人は、資金需要の高さ、国民の医療環境の整備の必要性がかつてあり、今でもあると思うんですが、古くなりますけれども、昭和二十五年に中小企業信用保険法ができ、そしてまた昭和二十八年に中小企業金融公庫法ができましたときに、特別に、今申し上げたような事情から保険、融資の対象としたところでございます。

 その後、昭和三十五年に医療法人に対して貸し付けを行います医療金融公庫ができまして、貸し付けについてはこちらの医療金融公庫にお任せした方がいいだろうということで、中小企業政策としての公庫の対象から外れておる。一方で、保証については医療公庫の業務とされませんでしたので、引き続き信用保証の対象として行っている、こういう経緯でございます。

茂木国務大臣 今回の法律の中でも、設備投資を促進していくさまざまな手法がありますけれども、リース手法を用いた設備投資の支援につきましては先端医療機器を含めて対象にする、こういう形もとっております。

 それから、今後いろいろな制度の見直しが必要だと思うんですけれども、恐らく、欧米における非営利と、日本のいわゆるボランティアというんですか、概念的に少し違うかなと。やはり、アメリカであったりとかイギリスあたりの非営利法人はかなりしっかりしています。きちんと給料も出る、たまたま利益を生まないというだけで、組織も大きくてしっかりしている。そういったものをつくっていくことを日本でもやはり考えていく必要があると私は思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 今大臣からも御答弁をいただきましたが、これからちょっと厚生労働省からも御答弁をいただきます。

 経済産業省の皆様が、これまで会社法の世界で、あるいは税制で、さまざまな制度イノベーション、政策をずっとつくってこられた。中小企業庁長官がおっしゃったようなことも含めて、経産省が営利の世界で培ってこられたさまざまなノウハウがあるわけですが、これが、結論から言うと、私の理解では、ヘルスケア、医療法人、社会福祉法人の世界ではほとんど使われていないわけであります。

 今、茂木大臣がおっしゃったように、今回のこの法案はともかくとして、中期的にはぜひこの分野にそのノウハウを注ぎ込んでいただきたいというのがきょう私の質問の趣旨でありますので、大臣の御答弁ありがとうございます。

 信用保証制度など中小企業政策について長官から御答弁をいただいたわけですが、医療は零細、中小がほとんどなんですね。その医療界に対して中小企業庁という横断省庁が、うちは原則営利ですと言っている状況において、厚生労働省は、医療法人、社会福祉法人等に対する政策は何か講じてこられたんでしょうか。今、経産省から見たときの枠組みを教えていただきましたけれども、厚生省から中小企業の世界はどう見えているんでしょうか。

原政府参考人 お答えいたします。

 医療施設に対する支援としては、先ほども出ましたけれども、政策金融公庫による信用保険業務というのが今でも残っておりますが、融資の部分につきましては、医療貸付事業として、福祉医療機構が長期、固定、低利による融資を実施しているところでございます。

 そのほか、事業支援としては、社会福祉法人や医療法人の経営者に対する経営にかかわる正確な情報や有益な知識を提供することによる相談事業といいますか指導事業、こういうこともやっているわけでございまして、これらも含めて医療サービスが安定的に提供されるように支援が行われていると承知しております。

足立委員 ありがとうございます。

 原医政局長には、厚生労働委員会で別の観点からもいろいろ御答弁いただいているわけですが、今おっしゃったように、厚生労働省は厚生労働省でさまざまな施策がある。あると思いますが、私がこの話をきょう経済産業委員会で取り上げたのは、営利の世界と非営利の世界がいかに違うかということなんです。

 冒頭申し上げたように、会計基準一つをとってもまだない。平成十七年に、検討すると政府として閣議決定した。その検討が今もまだ少なくとも実現していない。これは何で今までかかっているのか。これをちょっと、原医政局長、よろしくお願いします。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、平成十七年に医療法人にも会計基準を設けるべしという決定がされているわけでありますが、それを受けていわゆる四病院団体協議会で検討が始められました。

 ちょうどその時期に何が重なったかといいますと、医療法人制度全体の改革の話がございました。医療法の改正によって社会医療法人制度がそのときにでき上がったわけでありますが、持ち分あり、なしの医療法人の区別、そういうような経緯があって、ちょうどその検討が進んでいる中で医療法人全体の制度改正の話が同時に出てきたということで、全体の中での慎重な意見もあったので一旦議論がとまったというふうに聞いております。

 その後、現在再開されまして、私どもの田村大臣も答えたように、年内に四病協で取りまとめていただけるという方向と聞いております。

 厚生労働省としては、会計基準を活用して医療法人の経営の持続性、安定性を確保するとともに、健全性と透明性をしっかりと担保することが必要と考えておりますので、医療法人会計基準が早急に策定されるよう、全力を挙げて私どもとしても支援していきたいと考えております。

足立委員 今おっしゃったことは、本会議でも田村大臣から、年内にはというお話でした。

 通告からいうとちょっと派生した問いになるかもしれませんので、原医政局長、可能な範囲でちょっとお願いしたいんですが、本会議の答弁で、田村厚生労働大臣は、この会計基準が年内に取りまとめられるという方向性と聞いている、その早急な策定がされることが重要であり、その取りまとめを支援すると。さらに、策定された後、策定され次第これを活用して、積極的な情報開示が図られるように努めていくと。

 すなわち、厚生労働省として、この会計基準の適用というか、これはもちろん、個々の医療法人がどうするかという一義的には民間の話でございますが、私は、年内に取りまとめられるということについては実は余り信用していないんです。これまでも何度もやるやると言ってやられてきていないわけですから、私は本当に年内にまとまるのかなというふうに思っていますが、仮にまとまったら、例えば一定規模以上の医療法人が、この委員会で言及するのが適当かわかりませんが、例えば徳洲会。徳洲会でなぜああいうことが起こっているか。

 よく、さまざまな規制改革の中で、保育だとか医療とか介護の分野で株式会社の参入の議論というのがあります。株式会社の参入の議論をするたびに、厚生労働省は、やはり非営利は安心なんだ、営利は心配なんだという話をされますが、私は営利、非営利は余り関係ないと思っていて、非営利でも悪いことをする人はする。その象徴が、繰り返しませんが、先ほど申し上げたような例も出てきている。

 医療法人の会計の実態は、税理士がおられて最低限の税務会計をやって終わり、そこまでだと思うんですね。それでは、八五%が保険料と税金で成り立っているこの医療界に、これまでも、これからもいわゆる公費を注ぎ込んでいく。

 かつて、財政投融資と特殊法人改革という、財政の問題とその出口の問題がありました。社会保障費については、社会保障のお金の出口にヘルスケア産業が広がっている、このヘルスケア産業の実態を見ると最低限の税務会計しかやっていない、あとはもう何でもありの状況になっていていいのかという問題意識があるわけです。医政局として、あるいは厚生労働省として、年内に四病協がこれをまとめたらどうしますか。

原政府参考人 お答えいたします。

 現在も、医療法人としての情報開示の部分が当然ございます。ただ、その中で、御指摘のように会計基準がございませんので、それがどういうような項目をどういうふうに集計しているのかということは、実は全く不透明なところがございます。むちゃくちゃな会計がされているとは思いませんけれども、その部分が十分に開示されていないというのは御指摘のとおりだと思います。

 そのため、今回、医療法人の会計基準をまずはやはり現場をよく御存じの団体の方々に、公認会計士さんがたくさん入って検討していただいておりますので、その成案を得た上で、厚生労働省としても、会計基準を御使用いただけるように通知で周知していきたいと考えております。

足立委員 今御答弁いただいたように、これはぜひ経産省の先輩方に、また茂木大臣に御認識をいただきたいと思って僣越ながらこの委員会でヘルスケア分野をやらせていただいているわけですが、本当に最低限の税務会計しかやっていないんです。会計基準がないんです。この日本の制度の中で、会計基準がない法人の種別は医療法人だけです。

 ぜひ、年内に四病協がまとめた暁には、ある分野については厚生労働省としてやはり、これは、会計基準というのは課税所得を算定する一つのベースになるだけじゃなくて、いわゆる内部統制というんですか、要は医療機関自体が経営の状況を把握する、自分で自分を把握するということもあります。また、医療グループが借り入れをしたり、さまざまな利害関係者があるわけですから、その利害関係者にしかるべき情報開示をしていくというのは私は絶対に必要だと。また、本会議では、医療法人の最大の利害関係者は国民でしょう、なぜならば国民の税金で動いている世界だからです、こういうことを申し上げたわけであります。

 先ほど、茂木大臣にリースの話をおっしゃっていただきました。まさに重要な分野で、医療の分野は高額の医療機器を導入します。今般の法案にも、ファイナンスリースとオペレーティングリースなどの整理をしながら大変重要な規定を盛り込んでいただいているわけであります。

 ぜひ御理解をというか、釈迦に説法だとは思うんですが、先ほど原医政局長からも話があったように、医療の世界はこのリースに係る今回の措置は関係ないんです。なぜ関係ないか。そもそもバランスシートにのせていないんです。いや、のせていないと言ってはいかぬな、大宗の医療法人はのせていないであろうと。実は、実態がよくわからないので誰もわからないんですけれども、わざわざのせる理由が恐らく医療法人にはないんです。あるいは退職給付会計。

 さまざまに会社の世界で会計基準が整備されてきた。リースとか退職給付会計とか、そういういろいろなものについて、グローバルな基準に沿いながらさまざまな制度イノベーションを行ってきた世界において、医療だけはいまだに基準自体がないということでございます。

 会計基準に加えて、もう一つぜひ改めて御認識いただきたいと思っているのがMアンドAでございます。

 一時、これから少子高齢化だということで、ヘルスケアの分野に、さまざまなファンド、海外からもいろいろなお金が入ってきました。ところが、余りうまくいっていないと仄聞します。理由は幾つかあるかと思います。例えば、医療はやはり医療事故があるものだから、どうしてもリスクが大き過ぎる、リスクが読めないとかいろいろな議論がありますが、そもそもこのヘルスケア分野において事業再編のニーズがあるのか。

 原医政局長、これもぜひ厚生労働省として、なぜこういうことを伺うかというと、今回、社会保障国民会議や社会保障プログラム法案においては、MアンドAのような話がちょっとだけ出てきています。それは、こちらから申し上げますが、要すれば、医療法人間の合併を法律に初めて規定しようということを言っているんです。今までは通達だった。合併の取り扱い、権利の移転の取り扱いを、どう書いてあるかはちょっと、ここには物がありませんが、局長の通達でやっていたんです。初めて医療法人間の合併、特に異種合併、社団と財団の合併について規定することを御検討されていると聞いていますが、これは、医業の世界で再編のニーズはあるという理解でよろしいですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど委員が触れられました社会保障制度改革国民会議の中でも、医療機関の病床機能を分化及び連携していく、ある意味でいえば、医療機関の再編、統合につながるような話もございます。これを進めていかなければ超高齢化社会に対応する医療が提供できないだろうと言われておりまして、御指摘のように、医療法人間の合併や連携というのは非常に重要な課題だと思っております。

 そのため、私どもでも、医療法人の合併だけではありませんけれども、全体の構成をどうしていくのかということについての検討会をやりまして、先ごろも、形態の違う財団や社団などの合併をどうしていくのかということについて検討していただくことにしております。

足立委員 事務的にも医療法人の異種合併について検討しているということは伺っていますが、医業、病院の実態を見ると、病院を持っている法人は医療法人だけじゃないです。医療法人立の病院もあれば、社会福祉法人立の病院もある、学校法人立の病院もある、株式会社立の病院もある。営利、非営利を超えてさまざまな法人立の病院があります。

 今、医政局長がおっしゃったような、これからヘルスケア分野を介護も含めて大きく再編しながら、効率的かつ質の高いヘルスケア産業を、産業というのは厚生労働省はだめかもしれませんが、ヘルスケア分野を成長させていく、大きく国民の福祉に沿うような事業の世界をつくっていく。こういうことを考えると、MアンドA規定の整備については、医療法人の異種合併だけではなくて、広く医業にかかわっているあらゆる法人種類についての異種合併を全てのクロスで認めるべきだと思うんですが、いかがですか。

原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、さまざまなところ、例えば近隣でいいますと社会福祉法人などもございますけれども、そういうところとの統合なり合併の基準をどうするか、それについても検討していっていただきたいと思っております。

 ただ、営利法人が入ってきますと、これは営利を排除するという原則から外れますので、その部分はかなり難しいのではないかというふうに思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 検討するということですが、営利と非営利の橋渡しも含めて、ぜひお願いしたいと思います。

 今、実は厚生労働省は、子育ての分野や介護、特に介護ですね、介護保険制度を導入したときには営利法人の参入を認めました。だから、介護保険の世界では営利事業体が大きく活躍しています。

 ところが、先般の医療法改正で、厚生省は医療法人の非営利性を強めました。今までの医療法人よりも、持ち分が解散したときに分配できないとか。今まではできるだった。要は、営利、非営利というのは基本的には配当の有無で決まるわけですが、持ち分の解散時の分配についても認めない、こういうふうにしたわけでありまして、私は非常に残念な思いでございます。

 ぜひ、実際に営利法人立の病院が存在している中で、これから大きくこのヘルスケア分野を成長させていくために、広い異種合併を営利法人を含めて御検討いただきたいと思います。

 もう時間がなくなってきましたので、最後に、またちょっと経産省に戻らせていただきます。

 今聞いていただいたように、恐らく、会社法をずっと見てこられた先輩方というか、経済産業省からすれば驚きの世界が広がっているわけです。今国会とは申しませんが、次期通常国会あるいは来年、ぜひこういう分野にも、てこ入れするぐらいの気持ちで取り組みを進めていっていただきたいと思います。

 茂木大臣、きょうずっと聞いていただいた御感想を含めて、お願いしたいと思います。

茂木国務大臣 質疑を聞いておりまして、原医政局長と言っているんですが、途中から腹いせ局長に聞こえてくるのでありますけれども、厚労省も腹いせでやっているとは思っておりません。真剣に取り組んでもらっていると思っておりまして、連携をしながら、このヘルスケアは成長の分野であります、しっかりと取り組んで、改革も進めていきたいと思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 きょう取り上げた分野とは異なりますが、再生医療の分野では、本当に今、経済産業省と厚生労働省で一緒に議論をしていただいていると伺っています。今回出てきている法案等についても、私は厚生労働委員会ですけれども、大変よくできた法案、世界全体を見渡しても、日本の法制度が先に走っているぐらいのできだと。党としてどうなっているかわかりませんが、私個人は大変すばらしい法案にでき上がっていると敬意を持っています。

 両省が連携し、きょう申し上げたような経営の分野にもぜひ今後お取り組みいただくようお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

富田委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 こんにちは。みんなの党の椎名毅でございます。

 経済産業委員会で初めての質疑ということで割と緊張していたんですけれども、茂木大臣のとてもすばらしいユーモアで私の緊張をほぐしていただいて、感謝を申し上げたいと思います。

 本日は、我が党の三谷議員にかわりまして、産業競争力強化法案についての質疑時間を四十分いただきました。本当に感謝を申し上げたいと思います。

 本法案、日本再興戦略と言われております安倍政権の成長戦略、これを実行する非常に重要な法案だと伺っております。この重要な法案について、私、一年生の若輩者ではございますが、質疑時間をいただけたことに本当に感謝を申し上げたいと思います。

 早速ですが質疑に入りたいと思います。

 まず一点目です。三条から四条、五条に本法案の目的、それから事業者の責務、国の責務が書かれております。こういったところについて伺ってまいりたいと思います。

 二条一項に産業競争力の定義があって、高い生産性及び十分な需要を確保して高い収益性を実現する能力と定義されています。これを達成するために政府がやるべきことが書かれているわけでございます。

 三条の基本理念のところで、事業環境の整備、それから事業者に対する支援措置というのが本法の目的になっていようかと思います。いろいろな方々とお話をさせていただいて、私自身も法文をざっと読ませていただいて、政府の役割について改めて確認したいと思います。

 私自身は、個人的に、産業競争力会議のメンバーでもありました竹中平蔵先生のお話を何度か聞く機会がございまして、そのとき、自分の考えに近いなと思って非常に感動した部分があるんです。

 竹中先生は、政府が成長戦略をつくったところで、それで経済成長していくわけでは決してない、そうではなくて構造改革をすることが重要であるということをおっしゃっていました。今回の産業競争力会議の中では、構造改革派と、産業政策派と言えばいいんでしょうか、そういう方々とのやりとりの中で、成長戦略とそれに基づく本法案ができてきたというようなことをおっしゃっていたわけでございます。その後の話は、なるほどな、そういうことなのかという程度ですけれども。

 私自身も、構造改革こそが重要であるということについては、本当に賛同しているわけでございます。結局、経済政策というのは、財政政策、金融政策そして構造改革、こういったものをいろいろ駆使しながらやっていくものだというふうに思います。

 その中で、まさに本法の理念、それから国の責務というところを大臣に伺いたいんですけれども、民間事業者が自由に活動できる競争環境を整えるということ、まさにこのことが重要なのであって、民間企業の自由を促進していくということこそが重要なんだと思います。しかし、本法をいろいろ見ると、政府の措置等々がさまざま書かれているということもございまして、大臣のお考えをいただければというふうに思います。

茂木国務大臣 御指摘いただきました産業競争力会議、我々が政権に復帰をして最初につくった会議であります。私もメンバーとして出席をしておりますけれども、何か、構造改革派と産業擁護派の間に大きな対立がある中で一つの法案が出てきたと。そんなドラマチックな感じじゃないんですね。それぞれいろいろな意見があって、それは、いろいろな立場から、幅広い、そして深い御議論をいただいて、これが成長戦略をつくる上でも大きな材料になっていると考えております。

 そして、今、アベノミクス、三本の矢で我が国の再生を図っていく、特に三本目の成長戦略が重要だ。この成長戦略については、民間投資を喚起する成長戦略、こういう言葉を使っておりまして、政府が主導する産業政策ということではない、あくまで主役は民間の企業だ、こんなふうに我々は考えております。

 そして、委員から御指摘もいただきましたように、この法案の三条に、基本理念として、規制の見直しを行う、そして支援措置を講ずるなどの事業環境整備を行うことが国の役割、こういったことで、民主導、企業が主役の改革を進めていく、こういう理念をしっかりと貫いていきたいと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。その理念は本当に重要だと思いますので、ぜひ逆転しないでほしいなと本当に思うんです。

 それで、法文を通して読んでみると、例えば五十条を見ると、政府が事業再編の円滑化のために必要があると認めるときはマーケット構造に関する調査を行って結果を公表するというふうに書かれているわけです。

 これは、政府が調査をして、過剰か過剰じゃないかを判断するということなのかなというふうに読めてしまうんです。政府がまさに、過剰供給構造にあるとか、過当競争にあるとか、マーケットの需給バランスが悪いとか、そういうことを裁量で御判断いただくということなのか。

 さらには、政府主導型の産業政策に誘導されてしまうんじゃないかと懸念されると思います。ここは過当競争だからこの分野については事業再編をしてほしいというふうに誘導されるのではないか、この点についても続けて御意見をいただければというふうに思います。

菅原政府参考人 本法案の第五十条でございますが、これは、これまで事業再編が進みにくく、過剰供給構造や過当競争の問題が長期にわたって解消されていない事業分野につきまして、その事業分野を政府が恣意的に選ぶのではなく、客観的な指標に基づいて、客観的な調査を実施して公表するものでございます。

 こういった調査を行う意図といたしましては、事業再編するしないは最終的には経営者の御判断でありますけれども、経営者以外にも広く市場関係者、金融機関等の関係者の皆さんの問題意識を喚起するとともに、事業再編に向けた経営者の判断に資する材料を幅広く提供するために行うものでございまして、意図的もしくは恣意的に政府が特定の事業分野を指定し、個別企業の再編をある意味で介入、誘導、主導するような趣旨のものではございません。

椎名委員 ありがとうございます。

 そういうことであればそうなんですけれども、他方で、「商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否か」と法文上書かれているわけです。今聞くと客観的な調査をしますということだったんですけれども、マーケットに関する客観的な調査であれば、統計局などさまざまなところで行われていることなのではないかというふうに思います。

 本法の五十条でわざわざ記載している意味は、ここが過剰供給構造になっている、ここが過当競争になっているとかというところが、ほかの政府機関でやっている、客観的な単なる数字の羅列である統計等と違うところなのではないかというふうに思います。

 さらに言えば、情報提供ということであれば、民間のシンクタンク、民間のインベストメントバンク、それから金融機関等が自分たちでレポートを出しているというふうに思います。それと違った形でまさに五十条というものを設けているのはやはりよくわからないんですけれども、御所見をいただければというふうに思います。

菅原政府参考人 御指摘のような、既に公表してあるいわゆる統計データの数字の羅列を切り取って公表するだけの調査、公表ではないと考えております。

 例えば諸外国との比較ですとか、さまざまな手法による分析、もしくは業全体でやるのか、商品、サービスごとに分類した方が日本の産業の今の実態をあらわすのに何が適切か、何と何を比較すると、むしろある産業が過当競争にあるとか過剰供給にあるとかいうのが浮かび上がるかという意味での、いろいろ関係者の皆様の理解を深めるという中で、もちろんシンクタンクその他のさまざまな調査研究はあると思いますけれども、やはりこういったものについては幅広く、経産省のみならず他省庁のデータについても近い立場の我々が入手すること、さまざまな手法でいろいろな情報を提供することによって関係者の皆様の判断の一つの資料、材料にしてもらうという趣旨でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 やはりよくわからないんですけれども、お話を伺っていても、事業の再編等を行うかどうかを最終的に決定するのが民間企業であるということであれば、ここで事業再編をしたり、ここでグローバルな競争に勝ち抜いていくための事業をするというのがまさに経営者の判断であり、その経営者の判断に資するような情報、分析なりなんなりを提供する場所は、インベストメントバンクであり、それから経営コンサルティングファームであり、法律事務所なのではないかなと思って聞いていたんですけれども、その話はまた後でします。

 次に、六条の「実行計画」について伺いたいというふうに思います。

 本法は、日本再興戦略の実行のための法案であると理解をしております。再興戦略中短期工程表を拝見いたしますと、KPIレビューによってPDCAサイクルを回していく、そして成果が出ているか出ていないかチェックをした上で施策を柔軟に見直していくと記載をされています。

 六条は、重要施策について実行計画をまさにつくっていくという話で、具体例なんだろうというふうに理解をしました。確実に実行すべき当面三年間の計画を練って、毎年一回の見直しをするということを定めております。

 法文をよく読んでみると、記載すべき「重点的に講ずべき施策ごとの次に掲げる事項」とあって、「施策の内容」それから「施策の実施期限」、「担当大臣」、「その他」と書いてあるわけです。

 ここでちょっと気になったのが、「実行計画」に規定されているのは施策の内容と実施期限だけです。KPIレビューという話、そしてPDCAサイクルを回していくという話は、KPIを省略しないで言うとキー・パフォーマンス・インディケーターであって、要は数値目標であり、指標なんです。

 しかし、「実行計画」を見ると、実施すべきことと実施期限が書いてあって、数値目標を出すということについてまでは言及されていない。これは、KPIで定めた結果や指標で評価はしないということなんでしょうか。仮に結果で評価しないということであれば、実際に、この六条で定めている重要施策に関する実行計画、これをどう成長戦略の実施に役立てていく形でレビューをするのか、教えていただければというふうに思います。

菅原政府参考人 私から事実関係を。

 成長戦略、日本再興戦略で設けましたKPIについては、委員も御案内のとおり、足元の二年とか三年というよりは、ほとんどのものが二〇二〇年もしくはこれから十年という期限。大ざっぱに言えば、十年ぐらい先に数値目標を設定して、そこに近づけるためにこれから成長戦略をどう講じていくかというところで、成長戦略自体もKPI自身も、ローリングしながら弾力的に変えていくということになっております。

 今回の実行計画と成長戦略のKPIとの関係でありますが、成長戦略で設けられたKPIを達成するには必ずそれについての道行きというのがございます。これを達成するために足元でどんな政策を打つべきなのか。

 三年ごとに実行計画を定めて、しかも、それをだらだら十年間やるのではなくて、五年間の集中実施期間においてこの三年計画をローリングすることによって、成長戦略で定めたKPIを三年ずつ、五年間、しっかりその政策を実現していくというものでございます。

 その場合、実行計画にはKPIのある意味で短期の数値目標を定めるということは基本的にはないと思っていまして、むしろ、その十年後のKPIを達成するために、足元の三年間、どんな政策をやるのか。

 このローリングもしくはその評価でございますけれども、仮に一年やってみて、KPIに到達するには足りないと思えば、追加するというようなことをやりながら、この実行計画を三年ずつローリングしながら、中期の目標である成長戦略のKPIを達成することを、より確実かつ一歩一歩前進させるという趣旨での実行計画でございます。

茂木国務大臣 一言で申し上げれば、評価はしっかり行って、その成果をローリングしていくということに尽きるんだと思います。

 そして、冒頭申し上げましたけれども、我々は、今回の成長戦略、そしてこの法案、民間が中心になり、民間が主役だというつもりでやっておりまして、五十条も、言ってみますと、囚人のジレンマを避けていかなければいけないと思っています。全ての情報を一つの企業が持っているわけではない。結果的に、囚人のジレンマのように、情報が不足しているために、本来下すべき適正な判断が経営としてなされないんだったら、それに資するような情報を提供するということでお考えいただければいいと思います。

椎名委員 非常に勉強になるお話をいただきました。ありがとうございます。

 参考人から伺った話に戻りますけれども、要するに、再興戦略で立てたKPIを達成するための足元のことを実行計画に書いていきますというお話だったと思います。結局、そうするということは、足元の三年間という意味でいうと、結果では評価をしないで行為義務を課すことになるんだと話を伺っていて思いました。

 そうすると、行為義務を実施したかしないかという意味でいうと、この行為をやったかやらないかだけなので、レビューをするのは簡単だというふうに思いますが、裏を返して言うと、その行為をしたから目的となっているKPIが達成できるかどうかとか、さらに言うと、そのKPIが、実際に日本の経済を成長させるために本当に適当な指標なのかどうかという、どのような体制で実効的にレビューをしていくのか、教えていただければと思います。

菅原政府参考人 先ほどの私の説明に不足があれば補足させていただきたいと思いますけれども、単なる施策をやったやらないの白黒ではなくて、施策をやるからには、その効果についても検証しなければ、その施策が正しく、例えば十年後のKPIの達成に向かっているかどうかわからないわけです。ある施策をやったやらない、予算をつけたつけないじゃなくて、それによって、KPIに向けたいろいろな前進が図られているのかという評価も当然なされるべきだと思ってございます。

 あと、今おっしゃった、成長戦略におけるKPIの、ある意味でローリングでありますけれども、成長戦略の中では、成長戦略は常に進化するものだと書かれてございます。このKPIについても、例えば、ことしの六月に十年後のものとして立てたものであっても、その後の経済事情の変化によっては、いや、十年では遅過ぎる、七年に前倒しすべきだとか、もしくはこのKPIの数値をこういうふうに下げるとか上げるとか、いろいろな見直しが必要になると思います。

 これについては、実行計画は三年のローリングをやりますけれども、KPIの見直しについては、産業競争力会議の中で毎年PDCAサイクルを回しながらやっていくというところで、根っこのところは産業競争力会議でしっかりやり、実行計画はこの法律に基づいて足元の政策実現の手段としてしっかりPDCAを回していく、そういう関係にあると思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 私自身もコンサルティング会社にいたことがありますし、大臣もマッキンゼーにいらっしゃったかと思います。そういう意味で、KPI、指標によって目標を出してPDCAサイクルを回す、こういうコンサルティング会社的な発想は非常に評価できるというふうに私自身は思っています。

 今まで経済産業省が主導してきた事業というのは、やったらやりっ放しではなかったかというところも散見されるような気がします。

 例を挙げますけれども、情報大航海プロジェクトというのが五年ほど前にあったかと思います。日本版の検索エンジンをつくるということで、非常に大々的にやっていた情報大航海プロジェクト。これも、主役は民であるといい、そして、産業競争力の強化につながるという名目で宣伝がなされたことだったと思います。

 こういったことについて、やったらやりっ放しだったのではないのかなと思うわけです。

 大臣としてどう評価されていて、KPIでレビューしていくという本法のスタンスについて何が今までと違うのか、御所見をいただければと思います。

茂木国務大臣 KPI、キー・パフォーマンス・インディケーターでありますから、一番中心となる指標で、それを達成していく。ただ、恐らく、KPI一つを達成すればいいのではなくて、それが幾つかの要素に分かれたりとかさまざまなものがあって、そういったものを同時並行的に進めていくということが極めて重要だ、毎年の事業の評価の中ではそういった項目も含めて検証していきたい、このように考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 今までの話と何が違うのかというところについてお答えいただけなかったんですけれども、もう時間も時間なので次に行きたいと思います。やったらやりっ放しではなくて、役所の公的な事業にPDCAのサイクルを入れていくということは非常によいことなんだろうというふうに思います。

 次に行きます。九条のいわゆるグレーゾーン解消制度について伺いたいと思います。

 この制度は、新事業活動を実施しようとする民間事業者が主務大臣に対して当該事業計画の規制適合性の判断をお願いした上で、規制所管大臣、まあ規制所管大臣が主務大臣かもしれないですけれども、規制所管大臣に確認をした上で回答する、そういう制度だと思います。

 先ほどの調査の話ともかかわってくるんですけれども、今までは、こういった制度については基本的には民間企業は、大手の法律事務所だったり、大臣がいらっしゃったマッキンゼーだったり、そのライバル会社であるBCGだったり、そういうような会社に依頼をして、事業計画を立てて相談をし、これがリーガル的にオーケーなのかどうかというところの意見書をもらいながら、徐々に進めてきていたというふうに思います。

 場合によっては、ノーアクションレターというものを使ったりして役所の見解を聞いたりもする。しかし、ノーアクションレターは使い勝手が悪いということで、活用されている例は非常に少ないということでございます。この制度の使い勝手をよくすればするほど、事業者としてはありがたいというふうに思います。

 特に経団連に所属するような大規模の企業は、ファイナンスリスクはとるんですけれども、リーガルリスクは基本的にとらないと思います。なので、あれば一定程度使うと思います。使い勝手がよければもっと活用はふえるだろうと私自身は予想しております。

 しかし、こういう制度を、民間企業、すなわちコンサルティング会社であったり法律事務所であったり、こういうところで今までやってきた事業と事実上同じようなことを役所がやるということは、さらに言うと、ツー・パターナリスティックではないかなというふうに私自身は感想を持ちました。

 こういった制度があれば、間違いなく、先ほども申し上げましたけれども、企業、特に大きな企業は使うと思います。しかし、こういう制度を使えば使うほど、日本企業のチャレンジ精神というか、リスクをとってチャレンジをしていくということが減り、政府に対する依存度を上げていくのではないかということを気にしております。

 さらには、先ほども申し上げたような、プロフェッショナルサービスに対するクラウディングアウト、民業圧迫にならないかというふうに思ったりもします。そういったところについて御見解をいただければと思います。

松島副大臣 何か、どうしてそういうふうな角度で捉えるのかなと私は素朴に不思議に思っているんですけれども。

 グレーゾーン解消制度。どの役所にも、恐らくこの役所にもあると思いますけれども、法律、それから政令、省令、通達、いろいろなものがあって、企業が活動を行おうとしたときに、おっしゃるように大企業の場合は法務部もあるし、弁護士を雇っている、あるいは高いお金を出してコンサルティング会社を雇っているかもしれません。

 しかし、全国には四百二十万の中小企業があります。そして、新しく業を始めようとしたところで、どこかの何かにぶつかる方もあります。そういった方々から、こういう事業をやろうと思っている、この事業はこの役所が所管かなということで問い合わせをいただいて、場合によったら違って、よその部署を紹介することもある。

 そこに、経済産業省であれどこの役所であれ、一緒になって考えて、規制をやっている役所に、こうやればいいじゃないかと言ってあげるということ、これはしっかりと新しい分野を開拓することであって、リスクを回避するどころか、リスクをとって仕事をしよう、新しい分野を開拓しようとする会社にとってプラスだと思っております。

 そして、何かクラウディングアウトというおっしゃり方をしましたが、別に、弁護士さんやコンサルティング会社は役所の規制をうまくかいくぐる方法を見つける手段によって成り立っていらっしゃるとも思いませんし、もし、もっとこういう仕事をなさりたいんだったら大企業にどんどん声をかければいいと思います。ちょっとその御疑問は、法律家であり、かつ、そういう仕事をされてきた方だからかもしれませんけれども、意外に感じております。

椎名委員 多分、よって立つ世界観の違いのような気がしますが、わかりました。

 私自身は、民間企業が可能な限り自由に活動するのが望ましいことであって、それをサポートする、規制環境を整えていくのが政府の役割だというふうに思っているので、どうしてもそういう発想になってしまうんだろうなと思います。

 そういう意味で、よって立つ世界観の違いかなというふうには思いますが、中小企業であれば、コンサルティングを政府がやるのはいいと今副大臣がおっしゃっていたと思いますけれども、必ずしもそうではないんじゃないかなと、私自身は聞いていて思いました。

 基本的には、リスクをとって仕事をしていく、事前規制よりも事後規制、これが国のあるべき姿であり、かつ、政府がまさに経済活動をサポートするための環境を整えるということなんじゃないかなと私自身は思って聞いておりました。ありがとうございます。

 次に、企業実証特例制度、八条及び十条について引き続き伺ってまいりたいと思います。

 企業実証特例制度については、恐らく、一定程度の期待が企業側からあるだろうと思います。かつ、企業側のニーズを満たせるような制度設計にしようと御努力をされていることは十分理解をしております。

 しかし、これを読んでいると、企業単位、また、その申し出た企業と同程度の能力を持っている企業群に対して、小さな規制緩和を積み重ねていくという方向性は見えます。それはそれで大事なのかもしれませんけれども、それよりも抜本的に大規模な規制改革をしていくということが日本の経済成長にとって望ましいのではないかと私自身は思っています。

 特に、経済成長をしていくために外せないテーマが雇用の流動化ではなかろうかと思います。雇用の流動化の話をすると、解雇自由化だとかブラック企業とか、そういう批判を浴びるわけです。しかし、雇用の流動性が高まらないと、チャレンジし、そしてもとに戻ってくることもできないですし、雇用の流動性は産業の活性化にとって最も重要なことの一つだというふうに思います。

 解雇四要件、判例で認められているものでございますけれども、こういったところの見直しを含めて、自由な労働移転ができるような労働規制の緩和について鋭意御検討していくべきなのではないかと思いますけれども、大臣の御所見をいただければと思います。

茂木国務大臣 この法案におきまして、産業の新陳代謝を進める、それと同時に雇用の流動性を高める、車の両輪である、そのように考えておりまして、これまでの労働政策、行き過ぎた労働の維持から、円滑な、失業のない労働の移動、こういった方向に持っていくことが極めて重要だと考えております。

 同時に、規制でありますが、この法案におきましては、企業実証特例、グレーゾーンの解消といった、言ってみますとマイクロの切り口から穴をあけて、それを大きくしていく。一方で、規制改革会議におきましては全国レベルの規制改革を大胆に進め、さらには国家戦略特区、こういった形で地域単位の規制緩和を進める。三層構造によりまして、これまで岩盤規制と言われた規制も含めて大きく変えていきたい、そのように考えております。

 それから、先ほどの質問に若干関連をいたしますが、コンサルティングファーム、いろいろなタイプはあると思いますけれども、私のおりましたところは相当のフィーを取っておりましたから、多分、先ほどおっしゃったようなことではビジネスとして成り立たない。むしろ、企業の戦略そのもの、そして、その企業の戦略の中で、新規事業としてこんなものがある、こういったところをつくることに比較的重点を置いて仕事が行われている、このように理解をいたしております。

椎名委員 そのあたりはよく存じております。大臣とコンサルティング会社論をしたいわけではないんですけれども、ありがとうございます。

 法律事務所もフィーはそれなりに高いんですけれども、民間企業であるプロフェッショナルファームがサービスを提供するというところに、行政が事前規制で突っ込んでくることについては、やはり慎重であるべきなんだろうと私自身は思っています。

 それで、解雇の話については、規制改革会議の中でも、全国展開をしていくということで、ぜひ検討をしていかなければならないと私自身は思います。

 次に参ります。

 八条一項で規制の特例措置の整備を求めた事業者は主務大臣に特例措置を講ずる必要性を申し出るわけですけれども、主務大臣から規制所管大臣に話が行った上で、特例措置を認める必要性があるかないかについてもんだ上で、最終的に特例措置を認めるという判断になるわけです。

 要は、特定の能力を持った会社について規制を緩和する必要性を認める、認めないという話がやはりあるわけですけれども、それは結局、主務大臣及び規制所管大臣にどの程度の裁量があって、そして、どういった形で恣意性が排除されるのかというところについて伺います。

松島副大臣 委員は、勝手な判断があるんじゃないかという意味で恣意性とおっしゃったと思うんですけれども、ありません。

 つまり、事業所管大臣に話が来た、そして、規制を持っているところに、こんな規制はおかしいじゃないか、こういうふうに安全な条件も整え、なおかつ、こうやられることによって新しいビジネスも生まれるんだと。そういう判断によって、ぜひ規制をやめるようにということを申し入れるわけですし、聞いた方も、しかし、安全規制とか、いろいろな意味の規制の目的と照らし合わせて、本当に責任を持って、まあ、言われたから全部受け入れるわけではないでしょう。でも、客観的に考えて、よいという決定をする。

 お互い、どちらの役所にしましても、例えば安全をないがしろにしていいかげんな決定をした場合、恣意的に、何となくやってしまった場合、何か事故が起こったら、どなたかの質問にもありましたけれども、もちろん両方の役所が責任を感じるということになるわけです。ですから、それはしっかり考えた上で結論を出す。

 さらに、両方が結論を出すことができなければ、内閣官房なりに上げて、ジャッジをし、判断をしてもらうということになります。

 なお、先ほど委員から、よって立つ基盤が違うというような表現をされまして、まるで私が役所の味方であるようなことをおっしゃいましたので、一言だけ申し上げさせていただきます。

 私は政治家になる前に新聞記者を十五年やっておりまして、各役所のおかしな規制について原稿を書きまくってきた人間であることを申し添えさせていただきます。

椎名委員 そういう趣旨じゃなかったんです。済みません。それは失礼いたしました。申しわけありません。

 恣意性というのは勝手なという意味ではなくて、能力を持っている企業を指定することによって、最終的には特定の企業を優遇することにならないかということです。そういった恣意性をどうやって排除していくのかについて伺いたいのと、規制所管大臣と事業所管大臣の間でやりとりをするわけですけれども、どうやって実効性を担保していくのか、教えていただければというふうに思います。

茂木国務大臣 規制は何のためにあるのか。無意味な規制、役所の権力を振りかざすための規制なんというのは撤廃すればいいんですよ、もともと。恐らく安全性であったりとか、何らかのその規制が求める要件というのがあるんだと思います。

 そういう要件のもとで、要請のもとで規制が行われるというときに、その安全性を担保する別の措置なりがきちんととれているということによって、その規制について特例を認めるということであります。企業の大きさであったりとか、何年その企業がやってきたかということではなくて、基本的な考え方については、その安全性等の措置がとれているかとれていないか、この判断を行うのが基本になってくると思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間も来てしまったので、これで終わりたいと思いますが、もし機会があれば引き続き質問させていただきたいと思います。どうもありがとうございます。

富田委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 みんなの党の青柳陽一郎です。

 本日は質問の時間をいただきましてありがとうございます。

 さて、この産業競争力強化法案の最大のテーマは、規制改革にどこまで切り込めるか。この実行力が問われていると思います。

 まず、いわゆる岩盤規制への切り込みについて伺いたいと思います。

 これまでもそれぞれの政権は規制改革への取り組みを行ってまいりました。一九九八年の規制改革委員会、二〇〇一年の総合規制改革会議、二〇〇四年の規制改革・民間開放推進会議、二〇〇七年の規制改革会議、二〇一〇年、行政刷新会議規制・制度改革委員会、そして二〇一三年の規制改革会議と続いているわけであります。どの政権も規制改革に取り組んだということでありますが、逆にいつまでたっても規制が残っている。総論賛成、各論反対が続いていることを証明しているとも言えるわけであります。議論は出尽くしております。あとは実行あるのみ。

 私は、先週の委員会でも大臣に規制改革への意気込みをお伺いしましたけれども、やはり、岩盤規制と言われる医療、農業、労働、教育、これらの規制を切り崩してこそ、この内閣の本気度、そして茂木大臣の改革への強いメッセージが国民にわかりやすく伝わると思います。大臣、改めてもう一度、この規制改革にかける意気込みを伺いたいと思います。

茂木国務大臣 これから成長戦略を進めるに当たって、規制の改革、極めて重要な課題だと思っております。

 例えば、この国会におきましても、きょう、電力システム改革を進める電気事業法の改正の第一弾、法案の成立をおかげさまで見ることができました。これまで六十年間にわたって変わってこなかった地域独占の体制が大きく転換をするということであります。

 同時に、農業におきましても、これまでとられてきた減反制度というものが今後五年間で廃止をされていく、これもある意味革命に近いような大きな改革なのではないかなと思っております。

 医療の分野でも雇用の分野でも、必要な改革につきましては、先ほども申し上げたように、規制改革会議を中心にしながら全国レベルのもの、そしてまた国家戦略特区を中心にしながら地域単位のもの、そして個別の企業等につきましては産業競争力強化法案の中でしっかりと手当てをしていきたいと考えております。

青柳委員 大臣、ありがとうございます。

 それでは、一般用医薬品のネット販売について伺いたいと思います。

 最高裁でも厚労省令の一律規制については既に違法判決が出て、安倍総理は全ての薬のネット販売を解禁するということを表明しましたが、結局、全面解禁は見送られて、規制改革側の主張と厚労省の主張が対立して、そして新ルールが法制化される見込みであるということが明らかになってまいりました。これは、今大臣がおっしゃられたこととは違って、明らかに後退しているのではないでしょうか。

 これに関連して、産業競争力会議の三木谷議員は、新ルールは明らかに改革と真逆だと言い、民間議員を辞任して裁判で争うとまで表明しているわけであります。こうしたことについてどのように考えられるでしょうか。これでは、幾ら制度をつくっても、規制当局の意向が働いてしまえば結局何も変わらないのではないか。

 本件について、内閣の方針と完全に逆行しているのではないかと一般的には理解できますが、参考人の方の説明を伺いたいと思います。

成田政府参考人 御説明させていただきます。

 一般用医薬品のインターネット販売については、六月の成長戦略の安倍総理のスピーチにおきまして、消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールのもとで全ての一般医薬品の販売を解禁いたしますとされております。

 また、六月に閣議決定されました日本再興戦略においては、消費者の安全性を確保しつつ適切なルールのもとで一般用医薬品についてインターネット販売を認める、ただしスイッチ直後品目及び劇薬指定品目については医療用に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組みについて、医学、薬学等の専門家による検討を行い、その結論を得て所要の制度的な措置を講ずるとの方針が明記されたところでございます。

 この総理スピーチと日本再興戦略を踏まえて、昨日閣議決定されました薬事法及び薬剤師法の一部改正法案に基づきまして、現在の一般用医薬品の九九・八%について一定のルールのもとでインターネット販売を認める、残りの〇・二%に相当するスイッチ直後品目についても、医療用から移行後の安全性調査の期間を原則三年に短縮した上で、この期間の経過後にインターネット販売を認めることとしております。したがいまして、安全性を確保した上でインターネット販売を認めるとの総理のスピーチや、日本再興戦略に沿ったものと考えております。

 このように、スイッチ直後品目が消費者に安全に提供される環境を整備することで、医療用医薬品から一般用医薬品へのスイッチ化の促進も期待されますので、一般用医薬品の市場拡大につながり、政府の成長戦略にも資するものと考えております。

青柳委員 今の答弁を聞いていると、あたかも進んだように感じるんですが、それではなぜ三木谷議員はこのように表明するのか。今の答弁で、全面解禁ではないということが明らかにされているわけであります。

 安倍総理は、日本再興戦略で規制改革の方針を示し、ジャパン・イズ・バックと表現しました。こうしたことが続くのであれば、これは復活じゃなくて、まさに後ろに進むバックになってしまうのではないかと思いますが、大臣、御答弁されますか。

茂木国務大臣 書面とそれから対面という概念しかない中に、インターネットという新しい概念が入ってきたわけであります。そして、安全性を確認した上で、九九・八%の一般用の医薬品はインターネットでの販売が解禁をされた。前進だと思っております。

 ただ、このインターネットの発展は御案内のとおり日進月歩ということでありますから、今後も、真に対面で販売しなければならない一般用医薬品は何かという点については、常に最新の技術動向等々を検証していくことは極めて重要だ。

 価値観が変わるというのは結構時間がかかるんです。それから見ると、私は、速い部分もあると。

 例えば、一〇七七年にカノッサの屈辱がありました。圧倒的なキリスト教の権威でありました。それが、八次の十字軍を経て、一三〇九年にアビニョンの捕囚、全く違った状況が生まれる。この間には二百年かかっているんですね。

 それから見ると、今の時代の変化は極めて速いと私は思っております。

青柳委員 ありがとうございます。すばらしい御答弁をいただきました。

 次に、法案の中身について伺います。

 まず、先端設備投資の促進策について、先端設備リース保険制度、先端設備導入促進法人について伺いたいと思います。

 平成二十二年にこれとほぼ同じスキームでつくった省エネ設備の導入を促進するための制度である低炭素投資促進法の成果について伺いたいと思うんです。

 当時の経済産業委員会での政府の答弁を確認すると、当時は民主党政権でしたが、中小企業を中心に年間一千億円から一千五百億円程度の設備投資を後押しすると答弁しております。現在、目標の五分の一の三百五十億円程度しか使われていないそうであります。また、既存の法人を指定せずに、わざわざ一般社団法人低炭素投資促進機構という新法人をつくって指定している。

 この平成二十二年の本制度の評価と、法人を新しくつくった理由について、政府参考人に伺いたいと思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この制度の評価ということでございますが、今先生からお話ございましたとおり、当初、いわゆる低炭素投資促進法を御提案している段階では、年間の市場規模が一千億円から一千五百億円を想定しているというふうに申し上げておりました。

 現実はどうであったかということでございますけれども、平成二十四年度末の時点で、保険引受件数が三千四百五十五件、引受総額が約四百七十七億円になっております。

 まさに御指摘のとおり、今の引受額というのは、当初想定をしていた額に達していないわけでございます。その間の変化を申し上げますと、平成二十三年度の引受額が百二十六億円、平成二十四年度が三百五十一億円でありますので、簡単に申し上げれば三倍増ということになっております。

 したがいまして、当初目標にしておりました市場規模に達していないということは十分反省する必要がございますけれども、次第に制度も普及し、利用状況も向上しているというふうに理解をしております。

 それで、なぜ当初想定をしていたものに達していないかには幾つかの理由があろうかと思います。一つの理由は、この制度が特にファイナンスリースを中心としたリースの活用ということを念頭に置いていたわけでございますけれども、これは今御議論の対象になっております低炭素リース信用保険かどうかを問わず、ファイナンスリースについては、会計基準の変更の結果、オフバランスにできなくなったということもございまして、全体として利用状況が下がるということが起こっております。

 したがいまして、こうした評価、総括を踏まえまして、今回の産業競争力強化法案においては、今御説明をいたしました低炭素リース信用保険とは異なる内容あるいは目的を持った活用支援策を創設することにしております。

 具体的には、オフバランス化を可能にするオペレーティングリースということに焦点を絞って、その活用に必要な会計上の基準の明確化ですとか、あるいはそれを活用していただく上で必要になる二次利用価格の変動の損失を軽減する、こうしたことに特に重点を置いているということでございます。

 もう一つのお尋ねは、もともと、今御説明をいたしました低炭素投資促進法において、低炭素リース信用保険を運用する法人として低炭素投資促進機構という新たな法人を指定して運用面を委ねているということでございますけれども、これはその時点で、この法律に基づく指定法人として必要になるような要件、例えばリース契約及びリース保険事業に係る金融面でのノウハウといったようなものがある法人が、ほかに適切なものがなかったためにこの法人を新たに指定したということでございます。

青柳委員 詳細な説明をありがとうございます。

 ただ、今回の法律の資料を見ると、低炭素法の設備導入のときのスキームとほとんど変わっていないように見受けられます。ですから、今回せっかくつくるんですから、しっかり運用されて、件数も利用額もしっかり高まるように、もし改善点が途中で見つかれば果断に改良していっていただきたいと思います。

 念のため確認しますが、図でいくと今回も新法人を設立するということに見えるんですが、そうなるのでしょうかということ。もし新法人を設立して、新たにそれを指定してその業を行うのであれば、そういうことはないと思いますが、そこにいわゆる天下る方がいらっしゃらないように、いらっしゃるのであれば変な疑念を抱かれるだけですから、念のためその確認の答弁を求めたいと思います。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、制度の今後の運用についてでございますけれども、今先生御指摘のとおり、法文にあらわしますとどうしても、抽象的な文言でございますので、低炭素法上の制度と新しい制度は似るわけでございます。制度の内容としては特にオペレーティングリースに重点を置いたもの、また、会計基準とできる限りの連動を図るという意味において、内容においては低炭素法の制度とかなり異なるものになるというふうに考えております。

 それから、法人についてのお尋ねでございますけれども、今回、指定法人制度ということになっておりますが、どの法人を指定するかについては、現時点では白紙、未定ということでございます。したがいまして、既存の法人、つまり低炭素投資促進機構というものが指定の対象になる場合もあろうかと思います。

 念のため、いわゆる天下りについての御質問にお答えをさせていただければ、現在、低炭素投資促進機構には、いわゆる天下り、公務員からの出身者というものは勤務しておりません。

 以上でございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 次に、政府系のファンドについて伺います。

 政府系のファンドの膨張、肥大化の懸念が指摘されているところであります。現在、いわゆる政府系ファンドはどのぐらいあるんでしょうか。そして、その中で、安倍政権になってからできた新しいファンド、あるいはことしじゅうにできる予定のファンドは幾つあるんでしょうか。参考人の方、教えてください。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、政府の中に、いわゆる官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議が設けられておりまして、そのもとでガイドラインが既に策定されておりますが、そのガイドラインに基づいて検証を行うことになっております官民ファンドは九つございます。そのうちで、現政権下で設立されたファンド及び設立が予定されているファンドは五つございます。

 具体的には、既に設立されているものとして、一つが株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンド、第二に株式会社民間資金等活用事業推進機構がございます。今後設立を予定している、準備中のものが三つございます。その最初の一つが官民イノベーションプログラム、二番目が株式会社海外需要開拓支援機構、三番目が耐震・環境不動産形成促進事業ということになっております。

青柳委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただいていない中にも、例えば東京中小企業投資育成、これは大阪にも名古屋にもありますし、まだ私が調べ切れていないファンドもあるかもしれません。

 こうした政府系のファンドを含めて、そこの役員に省庁の出身者は何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議が対象にしております官民ファンドは九つあると申し上げましたけれども、そのうち経済産業省が所管しておりますファンドは四つございます。

 具体的には、株式会社産業革新機構、産業競争力強化法案の中に根拠がある機構でございます。第二に中小企業基盤整備機構。第三に、これは内閣府、総務省、財務省との共管でございますが地域経済活性化支援機構。第四に、先ほど申しました設立準備中のものに株式会社海外需要開拓支援機構がございます。

 このうち、経済産業省出身の役員は、地域経済活性化支援機構に非常勤の社外取締役として一名在籍しております。

青柳委員 今御答弁いただけなかったところにも、個人的に調べた限りにおいては、省庁出身者の方で役員をやっている方が何人もいらっしゃると思います。また、私が知らないところでもまだあるかもしれません。あと、民間のファンドも多数あるわけですね。

 その中で、これだけ政府系のファンドがあって、ファンドですから、個別の産業、個別の企業にどんどん投資していく。これはいいことではあるんですけれども、政府系ファンドばかりが余り目立ち過ぎると、民間の経済活動が少しゆがんでしまうのではないかという懸念があるんです。これは否定できないと思います。

 ですから、しっかり政府系ファンドにはリスクとリターンを開示してもらって、しっかりとした出口戦略を持ってもらうことが必要であると思います。例えば、産業再生機構が今御説明のあった地域経済活性化支援機構に看板をかけかえて存続するということは、政府系ファンドの肥大化そして天下りの懸念が指摘されるわけですが、大臣、こうしたことについて御所見をいただけますでしょうか。

松島副大臣 お答えいたします。

 確かに、今委員おっしゃるように、官製ファンドが膨張し過ぎたり、いつまでもぐずぐずと仕事をしているのは、いいことではないと思います。

 各ファンドごとに期限を設ける形をとっております。例えば、産業革新機構は、かなり先ですけれども平成三十七年三月までですとか、このたびつくっておりますクール・ジャパン推進機構は平成四十六年三月までの間というような形で、期限を区切っております。

 そして、それだけでなくて、例えば、実際に成功事例で申し上げますと、産業革新機構で、iPS細胞を用いて血小板製剤をつくる、その事業化に取り組んでおりますメガカリオンという会社に十億円の出資を行いました。株式を過半数取得しているわけですが、この会社に対しては、ほかにも民間ベンチャーキャピタルが出資する。つまり、経産省所管なり役所所管の機構がこういう形で出すことが呼び水となって、民間からも出資がしやすい、そういうような状況でいろいろと行われている、そのように思っております。

青柳委員 ちょっと時間の関係もあって、まだ新人議員で時間の配分にふなれなものですから、きょう用意しました後半の質問をぜひ大臣に伺いたいと思いますが、まず政府参考人に伺いたいと思います。

 政府が力を入れている政策として、インフラ産業のパッケージ輸出というのがあると思います。政府の対応も、二〇一〇年の経産省産業構造審議会産業競争力部会報告書にインフラシステム輸出についての方向性が示され、本年二月には今度は国土交通省の、これからのインフラ・システム輸出戦略が取りまとめられた。そしてさらに、本年三月に内閣官房に経協インフラ戦略会議も設置されて、五月にインフラシステム輸出戦略が取りまとめられている。

 インフラシステムの輸出、これこそ官民一体、オール・ジャパンで取り組むべき課題だと考えておりますが、それぞれ報告書が発表されて、これを読んでみると、そもそもインフラ産業の定義というのがまちまちで、ばらばらに取り組んでいるのではないかという懸念を持つんです。

 まず政府参考人に伺いますが、インフラ産業の定義と、インフラ輸出については内閣官房でこれからしっかり取りまとめるという理解でいいのか、教えていただければと思います。

藤山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、経協インフラ戦略会議等に申しますインフラ、また、インフラシステム輸出戦略に言うインフラシステムについて、固有の定義を設けているということではございませんが、一般的にインフラ産業と申しますと、主に、道路、鉄道、港湾などの産業基盤、それから、学校や病院などの生活関連の社会資本の整備にかかわる産業というふうに理解をしているところでございます。

 以上でございます。

青柳委員 それは今度からは内閣官房で取りまとめられて、進めていくという理解でよろしいんですか。

藤山政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先生の御指摘がございました、五月に取りまとめましたインフラシステム輸出戦略、この中で、各省横断的な取り組みとして、さまざまな施策を立ててございます。これを中心にして、各省一丸となってインフラシステム輸出に取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。

    〔委員長退席、渡辺(博)委員長代理着席〕

青柳委員 ありがとうございます。

 つまり、今の答弁でいえば、固有の定義はありませんし、産業を指定するということであると思います。ですから、現在、報告書で明記されている分野以外も、インフラシステム輸出に位置づけて取り組むということも可能だというふうに理解できます。私は、特に日本はASEAN地域でインフラ輸出を強化すべきだと考えております。

 ASEAN地域については、言うまでもなく、現在日本が戦略的に重視している地域でありまして、安倍総理も、年内にASEAN加盟十カ国、全て訪問するという力の入れようであります。

 そのASEAN地域でインフラ産業の輸出を行う際には、ASEAN地域の要人とお会いして話をすると、必ず人材育成の話になります。経済産業省でも高度人材育成の政策を特にASEAN地域で実施していると思いますが、今の高等教育システムについてもぜひインフラ産業の分野に位置づけて取り組んでいただきたいと思います。

 高等教育システム、つまり大学の輸出。これは、国内ではもう大学というのは完全な斜陽産業、なおかつ、教育再生実行会議でも検討されていると思いますが、一層のグローバル化が求められていて、さらに、ASEANの地域からは、ぜひやってください、日本の大学に進出してほしいというふうに求められているわけであります。日本から見れば、行かなきゃいけない。ASEAN各国からは、ぜひ来てほしいと。

 ASEAN地域は、豊富な若年人口と、そして、中間層がこれからまさにどんどんふえてくるということで、大学自身が成長産業で、ベトナムに限って言えば、大学は利益率が二〇%のビジネスになっているとまで言われております。

 しかし、現状、今の日本の大学を見ると、もうそれどころじゃない。国内の対応で手いっぱいというのが現実です。文部科学省に言っても進まないので、ぜひ経済産業省が平たく言えばお尻をたたいていただいて、今ASEAN地域では本当に求められている状況ですから、高等教育システムをインフラ産業に位置づけて、ぜひ輸出してほしいというふうに私は思っております。大臣、こうした取り組みについて支援を御検討いただけないか、御所見を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 まず、インフラシステム輸出についてであります。概念としては非常に広いんですが、恐らく、高速道路をつくる、これは開発援助的な話でありまして、インフラシステム輸出の中では、日本が持っている運営ノウハウの高さ、こういうものが生かせる分野を中心にこれから行っていくということになると思います。

 例えば電力でいいますと、日本の停電時間、年間で十六分、ドイツで十九分、アメリカは二百九十二分、中国は七百九十一分です。それから、水道の漏水率、水漏れでありますけれども、日本は三・六%に対して、米国が九%、イギリスが二六・五%、タイは三三%。鉄道の発着時間の正確さ等々もそうでありますが、こういった、長期的なランニングコストであったりとか運営ノウハウをアジアの国々の求めに従って輸出していくということになります。

 その上では、日本らしい協力をしていきたい。その一つが、おっしゃる、現地における人材の育成です。もう一つが、技術の移転であったりとかノウハウの移転、こういうことになってくると思っております。

 現実的に、分野は絞る必要があるんじゃないかなと考えておりますけれども、我が国の大学であったりとか高等専門学校の海外展開というのは、そういった現地での人材育成にも資しますし、同時に日本企業の海外進出にも役立つものだということでありまして、関係省庁とも協議をしながらできる限り進めていきたいと思っております。

青柳委員 ありがとうございます。大変力強い御答弁をいただいたというふうに思っております。

 終わります。ありがとうございました。

渡辺(博)委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 産業競争力強化法案の質疑に当たりまして、本会議において、私は、ファンドによる野放しの企業支配とリストラの是正を求めました。我が国における内外ファンドの摘発事件数をただしたところ、二十三件の行政処分の勧告等を行っているとの答弁でありました。

 そこで、証券取引等監視委員会にお尋ねします。

 ファンドの運用業者に対する検査等を踏まえて、二〇一二年度に二十三件の行政処分の勧告等を行っているということですが、その内容について御説明をいただけますか。

    〔渡辺(博)委員長代理退席、委員長着席〕

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、ファンド等の販売、勧誘による個人投資家・消費者被害が拡大いたしまして、社会問題化いたしております。

 しかしながら、適格機関投資家等特例業務届け出者に対する検査におきましては、金融商品取引法上行政処分の勧告ができないということになっておりますので、証券取引等監視委員会におきましては、平成二十四年七月以降、届け出者に対する検査等の結果、重大、悪質な法令違反行為等があり、投資者保護上広く周知することが適当であると認められます事案につきまして、検査対象先の名称等を公表するということにいたしております。

塩川委員 適格機関投資家等特例業務届け出者に対して、重大、悪質な事例について投資家等国民に広く情報提供を行うということで措置を行っているという御説明がございました。

 投資家保護の観点からも、より踏み込んだ規制が必要だと考えます。同時に、投資家保護や金融システム維持の観点からのファンド規制にとどまらず、企業の持続性の維持や、また労働者保護の観点に立った規制に踏み込むべきときだと考えます。この立場から質問いたします。

 十一月一日に、証券取引等監視委員会は、ウェッジホールディングス株式に係る偽計に対する課徴金納付命令の勧告を行いました。この勧告の内容及び法令違反の事実関係について御説明をいただけますか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねがありました事案につきましては、十一月一日金曜日、証券取引等監視委員会から、内閣総理大臣及び金融庁長官に対しまして、ウェッジホールディングス株式に係る偽計事件として、金融商品取引法に基づく課徴金納付命令を発出するよう勧告を行ったところでございます。

 本事案の課徴金納付命令対象者は、ウェッジホールディングス等の取締役としてAPFグループを統括いたしておるものでございます。

 この者は、ウェッジホールディングスの株式等の価格上昇を企て、同社がAPFグループの関連会社発行の社債を引き受けるに当たり、資金を同グループ内で循環させて払い込みを仮装するなどいたしました。その上で、同社債の引き受けにより収益が増加する旨の虚偽の業績予想数値等の公表を行い、同社の株式等の価格を上昇させたものでございます。

 今後の手続につきましては金融庁で担当いたすこととなりますけれども、勧告と同日の十一月一日に審判手続開始決定がなされており、金融商品取引法の規定に基づき適正に審判手続が進められることになっております。

 本件は、国境をまたがるいわゆるクロスボーダー取引を用いた事案でありますが、証券取引等監視委員会といたしましては、こうしたクロスボーダー取引等を利用した不公正取引の調査を強化してきたところでありまして、今後とも、このような違反行為が判明した場合には厳正に対処していく所存でございます。

 以上でございます。

塩川委員 資料をお配りさせていただきました。

 一枚目が今お話しいただいた内容、証券取引等監視委員会のペーパーであります。

 今お話がありましたように、課徴金納付命令対象者は、ウェッジホールディングス、昭和ホールディングス、APFホスピタリティの取締役等として、これら法人等で構成するAPFグループを統括している人物であります。

 偽計を用いてウェッジホールディングスの株式の価格上昇を企図したということで、監視委員会は、架空取引の情報で関連会社の株価をつり上げたとして、金融商品取引法違反の疑いで課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告したということであります。

 そこで、金融庁にお尋ねします。ぜひしっかりと厳正に対処すべきだと考えますが、いかがですか。

遠藤政府参考人 今委員御指摘ありましたように、この問題は、現在、適正なプロセスを経て審判手続に来ております。金融庁といたしまして、この事案が監視委員会から上がってきましたので、その事案をよく見て、厳正に対応するようにいたしたいと思います。

塩川委員 課徴金額が過去最高の約四十億円ということですけれども、こういう事件となっている、その重さという点についても一言御説明いただけますか。

遠藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、まさに課徴金額四十億超ということでございまして、課徴金額の計算としては史上最高の事案でございます。そうした重い事案であるということを我々は真剣に受けとめまして、適正な手続を経まして対応を検討していきたいと思います。

塩川委員 投資家保護の観点からも厳正に対処すべきだと考えます。

 今回の監視委員会の勧告、法令違反の事実関係は、資料の一枚目、上の四角囲みの「二、法令違反の事実関係」を見ていただきますと、上から四行目の右側に昭和ホールディングス株式会社という会社の名称も出てまいります。これは、これから御紹介いたします昭和ゴム株式会社の持ち株会社であります。

 昭和ゴムは、創業一八八六年、ゴム製品の一貫製造企業であります。売り上げは三十数億円前後を確保し、東証二部に上場しておりました。かつては明治製菓のグループ企業であり、扱う商品は、製造設備のゴムライニングですとかテニスボール、哺乳瓶の乳首と広い範囲に及んでおりました。ゴム事業及びスポーツ事業の従業員数は合計で約二百名ということで、今この昭和ゴムはアジア・パートナーシップ・ファンドというファンドの支配のもとにあります。先ほど紹介しました課徴金納付命令の対象者である此下益司氏が代表であり、彼は昭和ゴムの社外取締役でもあります。

 資料の二枚目をごらんいただきますと、有価証券報告書及び同社の公表資料に基づいて、「昭和ホールディングス(旧・昭和ゴム)関係企業の概要図」を上に示しております。

 昭和ゴムは、APF、アジア・パートナーシップ・ファンドが支配権を握った二〇〇八年六月に純粋持ち株会社昭和ホールディングスに社名を変更し、同年十月に会社分割を行い、昭和ゴム株式会社という同名の子会社に再編されています。また、二〇一一年五月には、異業種であるウェッジホールディングスの株式を過半数保有することになり、連結することとなりました。APFグループによる昭和ゴムの経営資源収奪の事例も重大であります。

 昭和ゴムは、十一年ほど前から幾つかのファンドによって財産と信用が奪われ、その後、タイに本部を置くAPFのグループ企業が第三者割り当て増資を引き受け、APF代表此下益司氏が社外取締役に、また実弟が代表CEOに就任し、その他の役員も相当数がファンドから送り込まれたものであります。

 下に「「プロミサリノート」による貸付け金二十七億円の流れ」という図がありますけれども、いわゆる約束手形に相当するものを譲渡不能なのに可能と、うそでAPFグループ内で資金を還流させて、昭和ゴムの資産規模八十七億円の三割に相当する二十七億円もの資金を流出させたということが問題となっております。

 こういった企業の経営資源の収奪の問題と同時に、APFグループ支配のもとで昭和ゴムの経営者は不当労働行為を繰り返し、労働者の権利をじゅうりんし、生活や健康に不安を与えている、この点でも極めて重大であります。

 そこで、厚生労働省にお尋ねをいたします。

 昭和ホールディングスに対して、都労委が一部救済の命令を出した事件があります。申立人の労働組合による救済申し立ての内容について説明をいただけますか。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの事件でございますけれども、持ち株会社である昭和ホールディングス株式会社が会社分割後に昭和ゴム株式会社等の子会社三社の従業員の使用者ではないとして団体交渉に応じないこと、あるいは、子会社三社が組合員に対し懲戒処分を行ったことなどが不当労働行為に当たるか否かが争われた事案でございます。

 本件は、昨年十一月に東京都労働委員会から一部救済命令が交付されましたけれども、当事者双方から再審査の申し立てがあり、現在、中央労働委員会において係属中でございます。

塩川委員 昭和ゴムの労働組合であります全労連・全国一般昭和ゴム労組は、昭和ゴムのホールディングス化、会社分割により昭和ホールディングスとの団交を行えず、子会社化された昭和ゴム経営者と団交を行ってまいりましたが、昭和ゴムの社長は団交の場において、昭和ゴム経営者には夏季一時金を上積みする裁量がない、このように述べるなど、実態は昭和ホールディングスとAPFグループが昭和ゴムを支配しているということは明らかであります。

 昭和ゴムの職場では重大な労災事故も発生しておりまして、組合役員に対する強引な人事異動が行われた結果、新たに職場に配置された三十歳の男性職員が右腕を失うという事故に遭いました。八月十六日、昭和ゴムの柏工場において、ゴムの精練工程でスクリューに右腕が巻き込まれて挟まれたまま一時間、一時間後に救出されドクターヘリで病院に搬送されたそうですが、出血が多いために右上腕部からの切断という痛ましい大事故となりました。

 労働基準監督署は、昭和ゴムらが安全保護策を講じなかったとして、労働安全衛生法違反で地検に書類送検いたしました。地元紙の報道を見ますと、製造部長は、社員には回転中のスクリューに手を入れるなと注意していた、金がかかるので設備を設置できなかった、このように述べております。

 組合役員に対する強引な人事異動により熟練労働者が職場を離れ、危険の伴う精練職場の熟練工の要員不足のもとで作業に従事した労働者が事故に遭いました。まさに人災であります。安全対策を軽視した会社側の責任は極めて重大であります。このような不当労働行為を行ってきた昭和ホールディングス及びAPFの使用者責任こそ問われなければなりません。

 企業の内部留保や保有資産、労働資源など、ファンドによる経営資源の収奪が社会的な問題になっております。株主の利益と労働者その他のステークホルダーの利益が相反する、こういう事態が生じております。事業会社を支配している持ち株会社に対して労働組合が団交を申し入れても、持ち株会社には団交応諾義務がないことが問題となっているわけであります。ましてや、その持ち株会社を実質支配しているファンドと交渉することはできません。

 今回の昭和ゴムの事例を見ても、二枚目の資料でごらんいただきましたように、製造現場として労災の話もしたのが昭和ゴム株式会社です。上の図の真ん中の上下に四角い箱がありますけれども、ゴム事業と書いてある二つ目が連結子会社の昭和ゴム。ここの労働組合が団交を行おうと思っても、実質支配しているその上の持ち株会社、昭和ホールディングスとの交渉は行えない。さらに、昭和ホールディングスを支配しているファンド、APFグループとの交渉は当然のことながら行えない。

 そういう点でも、二重に実質経営している者と団体交渉が行えないということが、労働組合、労働者にとって権利を侵害するものになっているということを言わざるを得ません。労働者に不利益変更を強いる持ち株会社及びファンドに対して団交応諾義務を課すことが今必要ではないのか、まさにこの昭和ホールディングス及びAPFグループも同じ事態になっている、このことを指摘するものであります。

 そこで、厚生労働省にお尋ねをいたします。

 純粋持ち株会社を解禁とした一九九七年の独禁法改正には、当時の衆議院商工委員会、当委員会です、当委員会で附帯決議がついております。一九九七年の五月十四日であります。

 この附帯決議におきましては、「持株会社の解禁に伴う労使関係の対応については、労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。 なお、右の検討に当たっては労使の意見が十分に反映されるよう留意すること。」と、労働組合法七条の団交応諾義務にかかわっての法的な措置を含めて検討するということが掲げられておりましたが、この附帯決議を踏まえてどのように措置をされましたか。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど委員から御指摘のございました附帯決議を踏まえまして、当時は労働省でございますけれども、持株会社解禁に伴う労使関係懇談会という場を設けまして検討を行ったところでございます。

 平成十一年十二月に検討結果が取りまとめられておるところでございますけれども、団体交渉当事者としての持ち株会社の使用者性等の問題については、これまでの判例の積み重ね等を踏まえた現行法の解釈で対応することが適当だということ、それから、純粋持ち株会社の今後の動向を見つつ、引き続き本問題について検討していくことが必要、このような結論が取りまとめられたところでございます。

塩川委員 判例の積み重ねを踏まえて現行法で対応ということですから、団交応諾義務に踏み込むような法改正は行わないという結論だったわけであります。このこと自身も問題ではありますが、当時は持ち株会社そのものがほとんどなかったということがあるわけであります。今はホールディングスの形態が大変ふえているという実態にあるということを指摘しなければなりません。

 一九九七年の純粋持ち株会社を解禁とした独禁法の改正において、つけられた附帯決議には幾つもの項目がありました。私は当委員会でもそのことを議論いたしましたけれども、一連の企業組織再編の措置については、その後みんな丸がついている。それなのに、一方の、企業組織再編の影響を強く受ける労働者の保護を図る、こちらは全然措置がされていないという点で、もう明確にくっきりと対応が分かれている、このことがまさに労働者の権利を侵害する今の深刻な事態につながっているということを言わなければなりません。

 一方、持ち株会社を実質支配しているファンドに対しても団交応諾義務を課すことが必要ではないのか、この点についての検討がどうか。

 厚生労働省に重ねてお尋ねをいたします。

 東急観光事件を契機として、厚生労働省は、投資ファンド等により買収された企業の労使関係に関する研究会を開き、二〇〇六年五月に報告書をまとめております。その結論はどうなったのかについて御説明ください。

熊谷政府参考人 ただいまお尋ねのございました研究会の報告書でございますけれども、この報告書におきましては、投資ファンド等の労働組合法上の使用者性については、最高裁の判例において示されたとおり、基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるかどうかにより判断すべきであること、二つ目といたしまして、どのような場合に投資ファンド等が使用者に当たることになるかを一律に決定することは困難であることとされておるところでございます。

塩川委員 過去の最高裁判決の考え方に基づいて、要するに個別事案ごとに判断するのが適当だということであるわけで、団交応諾義務を課すような法改正を行うという立場には立たなかったわけであります。この点でいえば、経団連などは、日本経団連の主張が反映されたというふうに述べているわけであります。

 このような持ち株の労使関係懇談会の報告から十四年、ファンドの労使関係研究会の報告からは七年半、その後、持ち株会社の設立が大幅にふえ、ファンドによる企業支配の弊害も明らかになってまいりました。持ち株会社及びファンドによる労働者に対する不当労働行為が多数発生しているにもかかわらず、それに対する改善策が放置されたままであります。

 厚生労働省にお尋ねします。

 この十年前後にわたって、持ち株会社あるいはファンドが大きくふえる中で労働者の権利を侵害するような事例も生まれている、こういうときに当たって、改めて持ち株会社及びファンドへの団交応諾義務を課す措置に踏み出すときではないのか。この点についてお答えください。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 投資ファンドや純粋持ち株会社の使用者性につきましては、先ほど御説明申し上げました最高裁の判例が判断基準として確立しておるところでございまして、実務もこれに従って取り扱われているものと承知しております。

 厚生労働省といたしましては、投資ファンドや純粋持ち株会社の使用者性に関する裁判例や労働委員会の命令例の動向等を通じまして、投資ファンドや純粋持ち株会社の実態や労働条件決定へのかかわり方を適切に把握してまいりたいと考えております。

塩川委員 この間、ここで紹介しました昭和ゴム事件を初めとしまして、アデランスの事件やカイジョー事件やユニオン光学事件など、幾つものファンド支配による労働者への不当労働行為がまかり通っております。持ち株会社が増加し、ファンドが増加し、企業への支配が強まっているのに、労働者保護の制度が全く変わらないままでは、労働者の権利を守ることはできません。

 今、実態の把握に努めたいという話がございましたけれども、実情が大きく変わっているんです。ファンドについて検討、あるいは持ち株会社について検討、もう十年前後たっているわけですから、改めて実態調査をしっかりと行うべきときにあるんじゃないのか。実態調査をしっかりと行う、このことについて改めて対応を求めたいと思いますが、いかがですか。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 純粋持ち株会社につきましては、報告書の取りまとめの後、平成十五年に調査を行ったところでございますけれども、その際には、持ち株会社の解禁の際に憂慮された労使関係上の問題は特に生じていないという結果だったわけでございます。

 いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、裁判例や命令例の動向を通じまして、私どもは、投資ファンドや純粋持ち株会社の実態、労働条件へのかかわり方についてはきちんと把握してまいりたいと考えております。

塩川委員 持ち株の調査をやったといっても十年前ですから、もう十年一昔で、今の状況は大きく変わっている。改めて、持ち株やファンドによる企業支配の実態について、しっかりとした実態調査を政府として行うことを強く求めておくものであります。

 ファンドの利用が拡大する一方で、ファンドの規制がこのままでいいのか、このことが今問われているときです。今、欧州では、この点で、ファンド規制に踏み出す措置を始めているところであります。

 金融庁にお尋ねをいたします。

 ことしの七月十九日、金融庁と欧州証券監督当局は、クロスボーダーで活動するファンド業者に対する監督協力に関する覚書に署名を行いました。その内容と趣旨について御説明をいただけますか。

遠藤政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の欧州当局と我々の間の覚書でございますけれども、欧州当局におきまして、新しい指令、ディレクティブが出ました。これは代替投資ファンドマネジャー指令というものでございます。

 これは、二〇〇九年四月のG20ロンドン・サミット、それから二〇一〇年六月のトロント・サミットでヘッジファンドの規制を強化しようということがうたわれまして、それを受けて二〇一一年七月につくられた代替投資ファンドマネジャー指令というものがございますが、この指令に基づきましてファンドが活動を行っている監督当局同士で監督協力の枠組みをきちっとつくろうということがここで書かれておりまして、監督協力の枠組みという形でお互いにこの覚書を結んだわけでございます。

塩川委員 代替投資ファンドマネジャー指令、ヘッジファンド規制強化を目指す指令として、これに基づいて日本側と欧州側で枠組みをつくるというのが今回の覚書の中身ということであります。

 続けてお尋ねいたします。

 この欧州の代替投資ファンドマネジャー指令の内容と、制定の経緯について御説明をいただけますか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、二〇〇九年四月のロンドン・サミット、二〇一〇年六月のトロント・サミットにおきましては、ヘッジファンドの登録制導入あるいは適切な情報開示の義務づけなど、ヘッジファンドの透明性、監督を改善する措置を国際的に実施するということが提言されております。こういった動きを受けまして、欧州におきましては、代替投資ファンドの運用や販売を行う業者への規制を目的といたしました代替投資ファンドマネジャー指令が二〇一一年七月に公表、施行されております。

 この指令におきましては、G20で提言されたヘッジファンドに対する規制・監督制度の導入に対応するとともに、代替投資ファンドの金融市場におけるプレゼンスの影響や、影響力の増大に伴うリスクの増加を踏まえまして、これまで欧州各国において個別対応をしていたわけでございますけれども、その個別対応にかえて、代替投資ファンドマネジャーに対して、包括的で共通した、より適切な規制を欧州全体で導入するために新たに策定されたものでございます。

塩川委員 ヘッジファンドに対する措置として適切な情報開示などを行っていくということで、この指令の五十四項では、ファンドマネジャーに対して経営者が労働者代表に情報提供するよう最善の努力をなす規定も設けていると思いますが、その内容について御説明いただけますか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、この代替投資ファンドマネジャー指令におきましては、代替投資ファンドが非上場企業を買収もしくは支配権を取得した場合に、当該企業の経営陣に対して労働者代表もしくは労働者への情報開示を行うよう促すことを代替投資ファンドマネジャーに対して義務づけるといった規定がされているものと承知しております。

塩川委員 今御説明いただきましたように、ファンド運用者は、企業買収を行う際に、その買収意図や、雇用や労働条件に与える影響についての情報を事前に開示するとともに、その情報を買収された企業の経営者を通じて労働者代表に提供させるよう、最善の努力を行うことが定められているものであります。

 このように、間接的ではありますけれども、労働者に対して適切な情報提供、情報開示を行うということを求める内容になっている、その点で、ファンドにも一定の義務を負わせるものとなっているわけであります。

 そこで、大臣にお尋ねいたします。

 冒頭、証券取引等監視委員会におけるファンドに対しての規制について、投資家保護の観点での取り組みの話がございました。こういった投資家保護や金融システム維持の観点からのファンド規制もしっかり行うと同時に、それにとどまらず、企業の存続維持、収奪をするようなファンドはもうお断りだと、あるいは労働者保護をしっかり行う、そういう観点に立った規制に今踏み込むべきときではないのか。このことについて、経産大臣としてのお答えをいただきたいと思います。

茂木国務大臣 今、塩川先生と政府参考人の議論を聞いておりまして、非常に議論の進め方が先生はお上手だなと思いました。

 三つの議論をしているんですね。最初は、クロスボーダーの違反取引とか架空取引にかかわりますファンドの違法案件にかかわる金商法の問題。最後は、ヘッジファンドの透明性であったりとか代替投資ファンドマネジャーのあり方等々に関する問題でありまして、ファンドそのものをどう管理していくか、そこの中で国際協調をどうするか、こういう議論をしているんですね。その間に、うまい形で労働法制の問題を入れているわけですよ。最初にあれは悪いと言って、それで労働法制の話が入ってくるわけなんです。

 労働者の権利の保護につきましては、御案内のとおり、金商法でやるわけじゃないわけです。労働基準法であったりとか、労働組合法、労働契約法、こういった労働関係法制によって行われるべきものである。

 これは、日本国内の企業であれば、日系企業であれ、外資系企業であれ、あるいはファンドが買収した企業であれ、そうでない企業であれ、ひとしく労働関係法制の遵守が求められるところでありますけれども、あくまで企業に求められるものでありまして、ファンドも含めた株主の行為を直接規制するものではない、そのように考えております。

 他方、投資家と企業の間で、企業の持続的成長や企業価値の長期的な向上に向けた対話を行うことは重要であると認識いたしております。東急観光の件、これは御案内のとおり、第一組合、第二組合の問題もありました。そういったことで若干複雑な面はありましたけれども、最終的にはファンド側、そして企業側、組合側の話し合いが行われた、このように私は記憶をいたしております。

 日本再興戦略においても、英国におけます取り組み等を参考としながら、機関投資家が対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど受託者責任を果たすための原則、いわゆる日本版のスチュワードシップ・コードについて検討し、年内に取りまとめる旨盛り込まれているところであります。

 議論については非常にうまい展開をされていると思います。

塩川委員 質問が褒められたと前向きに受けとめながら、私は、ファンドや持ち株会社が企業を実質支配していることに対して、労働者、労働組合との団交応諾義務が必要だということで厚生労働省とやりとりをしているわけで、大きな枠組みとしてはファンドをどう考えるかという話をしたわけです。当然それは大臣もよく御承知の上で、投資者保護の観点と同時に、労働者保護や企業の持続性維持という観点から、ファンドに対してきちんとした規律を求めていく時代ではないのか、そういう観点での御意見を伺ったわけで、そういう方向での対応をぜひ強く求めておきたいと思います。

 残りの時間で、税制の関係で何点かお尋ねをいたします。

 国際展開している多国籍企業に減税を行っても、グローバル資本としての彼らが当該国の投資や雇用に振り向ける企業行動をとる保証はあるのか、このことが今問われているわけであります。

 そこで、経済産業省にお尋ねします。

 日本の国・地域別対外直接投資残高、資産について、二〇一二年末時点の上位十カ国の名称とその金額を挙げていただけますか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 統計は、財務省、日本銀行が公表しています国際収支統計に載っておるものでございますけれども、二〇一二年末における対外直接投資残高の上位十の国及び地域は、米国、オランダ、中国、オーストラリア、英領ケイマン諸島、英国、シンガポール、ブラジル、タイ、韓国でございます。

 金額ということでございましたので、投資残高についても御答弁申し上げます。

 米国につきましては二十四兆七千三百三十二億円、オランダ八兆一千五百二十四億円、中国八兆四百六十三億円、オーストラリア五兆二千九百五十二億円、英領ケイマン諸島五兆一千六百七億円、英国四兆六千五百七十四億円、シンガポールが三兆一千百三十億円、ブラジルが三兆五百五十九億円、タイが三兆二百四十七億円で、最後、韓国が二兆二千九十三億円でございます。

塩川委員 アメリカや中国への直接投資が多いというのは当然でありますけれども、ケイマン諸島が五番目に入っているわけです。これはなぜなのか。人口四万人のケイマン諸島に対する直接投資残高が五番目に多い理由について御説明いただけますか。

鈴木政府参考人 一般的に言われておりますのは、ケイマン諸島はいわゆるタックスヘイブン地域でございまして、そこにおいて投資会社などをつくることに対する投資が多いというふうに言われております。

塩川委員 そういう投資が多くなる理由について、もう一歩踏み込んで説明いただけませんか。

鈴木政府参考人 今申し上げたように、タックスヘイブンということで、法人税がかからない地域だということで投資が多くなっていると思っております。

塩川委員 租税回避を可能とするタックスヘイブン、情報開示が非常に弱いということも背景にあるわけであります。

 先ほど御説明しました昭和ゴムを支配するAPFグループというのは、英国領のバージン諸島であります。人口十万人の地域でありますが、ここもタックスヘイブンの一つと言われております。

 金融庁にお尋ねします。

 「会計・監査ジャーナル」という雑誌で、二〇一〇年五月号に「不公正ファイナンスへの対応」という論文が出ております。

 そこで執筆者の方が、英領バージン諸島は、数あるオフショア金融センターの中でも、特に金融機関での口座開設時やSPCを設立する際の顧客の本人確認に関する規制が緩く、例えばペーパーカンパニーであるSPCの裏にいる真の所有者についての情報を秘匿するために利用されることが多い、そのため、国際金融界では、英領バージン諸島については、金融証券犯罪やマネーロンダリングに悪用されるリスクが高いというのが常識であり、まともなビジネスを行おうと考える場合には、英領バージン諸島を利用することは通常ない、このように指摘しております。

 金融庁にお尋ねします。

 国際金融界では、英領バージン諸島については、金融証券犯罪やマネーロンダリングに悪用されるリスクが高いというのが常識であり、まともなビジネスを行おうと考える場合には、英領バージン諸島を利用することは通常ない。これは金融庁としても同じお考えでしょうか。

遠藤政府参考人 お答えいたします。

 英領バージン諸島を経たビジネスが今御指摘のようにマネロン等に利用されて、そもそもおかしなものだということを前提に、我々は、そういう目で見ているといった認識はございません。

 あくまで、さまざまな事案において、どのようなお金の流れがあるか、どのような金融機関が活動しているか、それが現行法令、我々の法令に基づいて適正に行われているかどうかということを個別に見てまいりますので、それぞれの国において、あるいはそれぞれの地域において法律に基づいて設定されたお金の流れについて、我々は日本の法律に基づいて適正に見ていく、おかしなことが行われたら、それは厳正に対応するといった対応をしております。

塩川委員 この論文で、まともなビジネスを行おうと考える場合には英領バージン諸島を利用することは通常ないと書いている執筆者の方は、二〇一〇年の時点では証券取引等監視委員会事務局総務課長、今は金融庁の審議官ですから、まさに金融庁の立場だと思うんですけれども、もう一回、いかがですか。

遠藤政府参考人 お答えいたします。

 申しわけございません、ちょっとその記事を私自身は読んでいないものですから、何とも評価できないところがあるんですけれども、英領バージン諸島に対するアプリオリの偏見があるわけではございません。

 あくまで、英領バージン諸島等を利用したさまざまな企業活動というのが我が国の法制に照らして適正なものかどうかということを、証券取引等監視委員会も含めまして見ていきたいというふうに考えております。

塩川委員 現在の金融庁の審議官がこのようにおっしゃっておるわけですから、金融証券犯罪やマネーロンダリングに悪用されるリスクが高いというのは常識だ、そこまで述べているわけで、私は、こういう立場でのしっかりとした規制策を行うべきときだと思います。

 大臣、直接の所管ではないんですけれども、私も、ベンチャーファンドなど、しっかりとした、いいファンドが企業活動を支援する、こういう取り組みは極めて重要だと考えます。同時に、ファンドによって投資家の権利が、利益が侵害されるとか、言いましたように、企業の持続性の維持を損壊する、あるいは労働者保護に欠けるようなファンドに対しては、しかるべく規制を行っていくことが必要だと考えております。

 まともなビジネスでは使わない、バージン諸島などタックスヘイブンを利用した情報隠しとか租税回避に対する規制強化策を改めてとるべきじゃないのか。そういう点について、最後にお考えをお聞かせください。

茂木国務大臣 バージン諸島は、観光で行ってみるとなかなかいい場所ですよ。

 ただ、その一方で、ベース・エロージョン・アンド・プロフィット・シフティング、BEPSですが、これは国際協調の中で対応していかなければいけない問題だ、このように考えております。

 タックスヘイブン対策、我が国独自でも行っていきますが、海外に実体のない企業を設立して課税を逃れようとしている企業に対しては、当然、追加的な課税を行う制度であります。ただ、実体があるかどうかというのは、どうしても、個々の案件について判断する、こういう要素は出てくると考えております。

塩川委員 ファンドのあり方として、述べましたように、昭和ゴムの事件のように会社の存続を毀損するような資産の収奪を行うことは当然認められないわけですし、労働者の権利を侵害するような企業支配についてはあってはならない、こういう立場で、監督官庁などがしかるべく対応を行うことを強く求め、また、こういう規制策をしっかりととることを改めて求めて、質問を終わります。

富田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.