衆議院

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第8号 平成25年11月20日(水曜日)

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平成二十五年十一月二十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 宮下 一郎君 理事 山際大志郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 田嶋  要君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      井林 辰憲君    石崎  徹君

      岩田 和親君    越智 隆雄君

      大見  正君    勝俣 孝明君

      神山 佐市君    佐々木 紀君

      白石  徹君    菅原 一秀君

      田中 良生君    武村 展英君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      根本 幸典君    福田 達夫君

      細田 健一君    牧島かれん君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      山田 美樹君    枝野 幸男君

      岸本 周平君    近藤 洋介君

      辻元 清美君    吉田  泉君

      伊東 信久君    木下 智彦君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      青柳陽一郎君    三谷 英弘君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国務大臣         稲田 朋美君

   内閣府副大臣       後藤田正純君

   内閣府大臣政務官     福岡 資麿君

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   会計検査院事務総局第五局長            太田 雅都君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      中島 秀夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 萩本  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 行成君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           田中 正朗君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           広瀬  直君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           河村 延樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           安永 裕幸君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            鈴木 英夫君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          富田 健介君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 上田 隆之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁汚染水特別対策監)       糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            矢島 敬雅君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役副社長)       石崎 芳行君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     岩田 和親君

  宮崎 謙介君     宮川 典子君

  山田 美樹君     井林 辰憲君

  近藤 洋介君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     山田 美樹君

  岩田 和親君     辻  清人君

  宮川 典子君     牧島かれん君

  吉田  泉君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     神山 佐市君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     宮崎 謙介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第七二号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 第百八十三回国会、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。稲田国務大臣。

    ―――――――――――――

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

稲田国務大臣 ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる独占禁止法については、平成二十一年に成立した一部改正法の附則第二十条第一項において、「審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成二十一年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされております。

 また、同法案に係る衆議院及び参議院の経済産業委員会の附帯決議においては、「審判手続に係る規定については、本法附則において、全面にわたって見直すものとし、平成二十一年度中に行う検討の結果所要の措置を講ずることとされているが、検討の結果として、現行の審判制度を現状のまま存続することや、平成十七年改正以前の事前審判制度へ戻すことのないよう、審判制度の抜本的な制度変更を行うこと。」とされております。

 今回は、これらの附則等を踏まえ、公正取引委員会が行う審判制度を廃止する等の所要の改正を行うため、ここにこの法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案について、その主な内容を御説明申し上げます。

 第一に、独占禁止法違反に対する排除措置命令等について、公正取引委員会が行う審判制度を廃止するとともに、審決に係る抗告訴訟等の第一審裁判権が東京高等裁判所に属するとの規定を廃止します。

 第二に、裁判所における専門性の確保等を図る観点から、独占禁止法違反に対する排除措置命令等に係る抗告訴訟等については、東京地方裁判所の専属管轄とするとともに、東京地方裁判所においては、三人または五人の裁判官の合議体により審理及び裁判を行うこととしております。また、その控訴審である東京高等裁判所においては、五人の裁判官の合議体により審理及び裁判を行うことができることとしております。

 第三に、適正手続の確保の観点から、排除措置命令等に係る意見聴取手続について、その主宰者、予定される排除措置命令の内容等の説明、公正取引委員会の認定した事実を立証する証拠の閲覧及び謄写に係る規定等の整備を行うこととしております。

 なお、これらの改正は、一部を除き、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。

富田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長中島秀夫君及び法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井雅人君。

今井委員 おはようございます。日本維新の会の今井雅人でございます。

 きょうは質問の時間をいただきましてありがとうございます。

 独禁法改正ということでありますが、せっかく稲田大臣と公取の皆さんがいらっしゃいますので、少しその前にお伺いをしたいんです。

 十月一日に消費税の転嫁の法律が施行になりまして、今、アンケート等いろいろやっていらっしゃると思いますけれども、どういう状況になっていて、今後どういうスケジュールでどのようなことをやっていかれるか、まずそれについてお伺いしたいと思います。

稲田国務大臣 今お尋ねの消費税転嫁対策の現状でございますけれども、平成二十五年度において、消費税転嫁対策のための人員として、公正取引委員会そして中小企業庁で合わせて約六百名の手当てをしており、転嫁対策にしっかりと取り組んでいくことといたしております。

 消費税の転嫁拒否等の行為の未然防止のための取り組みといたしましては、本年九月十日に公正取引委員会がガイドラインを策定、公表いたしております。また、消費税転嫁対策特別措置法の内容をわかりやすく説明したパンフレットを作成、配布しているほか、事業者に対して同法の遵守の徹底を要請する文書を本年十一月十五日付で発出いたしております。さらに、公正取引委員会主催の説明会の開催、また、商工会議所や事業者団体が開催する説明会に職員を派遣するなどの取り組みを行っております。

 消費税の転嫁拒否等の行為に対する取り組みといたしましては、事業者からの相談や情報提供を受け付ける相談窓口を公正取引委員会の本局及び地方事務所等に設置いたしております。さらに、被害を受けた中小事業者の方々にとってみずからその事実を申し出にくい場合もあると考えられることから、積極的に情報を収集するため書面調査を実施することといたしておりまして、公正取引委員会において本年十一月に中小企業庁と合わせて十五万件の調査票を発送したところでございます。

 転嫁・表示カルテルの届け出については、本年十月一日から届け出の受け付けを開始しておりまして、本年十月には転嫁カルテル五件、表示カルテル六件の届け出を受け付けたところであります。

 今後も引き続き転嫁拒否等の行為の未然防止を図っていくとともに、公正取引委員会において平成二十六年度以降も大規模な書面調査を実施するなど、転嫁拒否等の行為に対して迅速かつ厳正に対処していく所存でございます。

 以上です。

今井委員 ありがとうございました。しっかりやっていただきたいと思います。

 ガイドライン、アンケート等を見ますと、この委員会の中で、こういうケースはどうなんだ、こういうケースはどうなんだと、いろいろな議論をあのときしたと思いますけれども、そういうケースを事細かに書いておられるようでありますから、国会の審議をしっかりと反映していただいているというふうに評価いたしたいと思います。

 それで、もう一点、これは委員長にお伺いしたいんですけれども、当時の議論の中で、四月以降の分は当然でありますけれども、その前の段階で、事前に値下げを最初にしておけ、そうしたらそこで値下げにならないというような、そういう圧力、プレッシャーがかかっているケースが見られるというようなお話があったと思いますけれども、そういうところに対しての対策等は今講じておられますか。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のように、消費税率引き上げ前に行われた行為でありましても、二十六年四月以降に供給する商品、役務の対価について、合理的な理由なく通常支払われる消費税を合わせた対価よりも低く定める行為は、買いたたきに該当すると考えております。

 したがいまして、消費税率引き上げに先立ちまして納入価格をあらかじめ引き下げておく行為も、消費税率引き上げ後の納入価格を引き下げることになることから、合理的な理由なく行われる買いたたきに該当する場合は、これに対応しなければいけないと考えております。

 転嫁拒否等の行為について調査を行う際には、先ほど大臣から御答弁がございましたように十一月中に調査票を発送して調査を始めておるわけでございますが、御指摘のような、もう既に来年の四月を念頭に置いて価格が決められるような行為、こういうものも対象にして調査を行いまして、転嫁拒否等の行為に対しては迅速かつ厳正に対応していきたいと考えているところでございます。

今井委員 消費税転嫁の法案の審議の中では、我々は非常に問題があるということでいろいろ疑義を唱えさせていただきましたけれども、やるからにはやはり委員長を初めしっかりやっていただきたいと思います。

 なぜこれをお伺いしたかというと、十一月一日にアンケートが出ておりましたけれども、そのアンケートが二十六年四月以降の役務に関してというような質問でした。その前はどうなっているのかなということを素直に感じましたので、その分もしっかりやっていただいているとここで確認させていただきまして、これからもしっかりやっていただきたいと思います。

 それでは、法案の方に入らせていただきたいと思います。

 先ほど大臣の提案理由説明にございましたけれども、平成二十一年の改正独禁法の中での附則に審判制度についての全面的な見直しをするという規定があり、今回提案したということであります。もう四年たっておりますので、ここで改めまして、私が最初の質疑者でありますので、四年前の議論の中、どういう問題意識でこの附則が盛り込まれて、今それを受けて大臣はどういう問題意識でこの改正案を提出されたか、その辺についての背景とお考えについて御説明をいただきたいと思います。

稲田国務大臣 今御指摘がございましたように、平成二十一年に成立をいたしました独占禁止法の一部改正法の附則におきまして、「審判手続に係る規定について、全面にわたって見直す」とされ、さらに、同法に係る衆議院及び参議院の経済産業委員会における附帯決議において、「現行の審判制度を現状のまま存続することや、平成十七年改正以前の事前審判制度へ戻すことのないよう、審判制度の抜本的な制度変更を行うこと。」とされたところでございます。

 平成二十一年の改正時においては、経済界等からの批判を踏まえて審判制度の見直しについて鋭意検討を進めたが多くの論点が残って、成案を得るためにはより慎重に、さらに多くの方々から幅広く意見を聞き検討する必要があると判断したため、附則に書くにとどまったわけでございます。

 今回、それを踏まえて全面的に改正をし、審判制度を廃止した改正案を提出したところでございます。

今井委員 私はそういう答弁を期待していたのではなくて、そもそも、どうして審判制度を見直ししなければいけないのか、どういう問題意識からそういう附則が入ったのかということをお伺いしたかったんですけれども、もう一度お願いできますか。

稲田国務大臣 事後審判ですと、先に判断した者と同じ者、まさしく検察官と裁判官が同じになるではないかという外観上の不公正さが残るという指摘があったことが今回の改正の理由でございます。

今井委員 そういう答弁になると思います。そういう問題意識でこれがスタートしているということだと思います。

 ところが、いろいろな経緯がございまして、この四年間ずっとたなざらしになっていたということでありまして、我々としても、やはりこれは早く附則にある措置をとらなきゃいけないということで、この法案には協力をさせていただきたいということであります。

 ちょっとお伺いしたいんですけれども、ずっとこの状態が続いた四年の間に、審判手続開始件数が何件あり、審決まで行ったのが何件あり、最終的に原処分が取り消されるという処分がなされたのは何件ございますか。

杉本政府特別補佐人 平成二十一年改正法、これは平成二十二年一月に施行されたわけでございますが、その二十二年一月から本年二十五年上半期までの件数で申し上げますと、平成十七年改正後の独禁法に基づく審判手続、すなわち事後審判の手続でございますが、これは合計百六十八件でございます。

 このうち三十三件について審決が既に出されたところでございます。その三十三件のうち三十二件につきましては審決において原処分が維持されたものでございますので、一件につきまして原処分を覆す審決もしておるということでございます。

今井委員 百六十八件あって、原処分が取り消しとなったのは一件、そういうことを確認させていただきました。

 今の数字でもう一度確認したいんですけれども、審判手続開始件数が百六十八件あるにもかかわらず審決が三十三件しかない、この差はどういうことなんでしょうか。

杉本政府特別補佐人 審判手続を開始いたしましてから審決に至るまで二年強ぐらいの期間が平均的にかかっております。それから、審決の出された件数は、それぞれの年におきましてかなりばらつきがございまして、多い年、少ない年がございます。そういうことから、審決が終結いたしましたのが三十三件ということでございまして、残りの件数につきましては係属中でございます。

 できるだけ早い期間で審決を出したいと思っておりますが、いろいろ慎重な手続等も必要でございますので、大体二年強ぐらいの期間がかかっているというのが現状でございます。

今井委員 今の答弁は余り論理的じゃないですね。

 というのは、私は一年ずつずっと見せていただいていますけれども、二年半で審決するのであれば、二年半後に全部反映するはずですから、審判件数と審決の数がそんなに違うということは、それでは説明がつかないんです。つきません、単に期ずれをしているだけでありますから。恐らく別の理由があるんじゃないですか。ずっと審決がなされないまま長期間にわたって保留になっているものがたくさんあるのでこういうことが起きているんじゃないでしょうか。

杉本政府特別補佐人 年度別の審判手続開始件数を申し上げますと、二十一年度が五件、それから二十二年度が二十一件、二十三年度に八十二件ございまして、ここに大きな山がございます。それから、二十四年度が四十七件、二十五年度が十三件でございます。審決には先ほど申し上げたように二年強ぐらいかかりますので、その大きな山が期ずれになって、まだ審決に至っていないものもございますので、先ほど申しましたような今までの審決の数字になるということでございます。

今井委員 私のいただいた資料ですと、審決に至っているのは、二十一年がゼロ、二十二年が六、二十三年が十二、二十四年が八、それから二十五年度が七と平均しております。確かに、二十三年が八十二件、二十四年で四十七件、それがまだ審決に至っていない、そこの部分も影響していると思いますけれども、恐らくそれ以外の理由も少しあるんじゃないかと。横に並べて、二年ごとにずらしてみると、それでもちょっとまだ少し数字が合わないので。まあ、これぐらいにしておきます。

 今、審決に至るまで大体二年強というふうに御答弁がありました。これは、先ほど大臣がおっしゃったように、そもそもの目的は、裁判官と両方を兼ねていると問題があるので、外出しをして公平さを保とうということであります。その考え方はよくわかりますけれども、移したことによって一般の市民、国民が不利益をこうむるようなことが決してあってはいけない、その点はよく注意をしなきゃいけないと思います。

 その点で幾つかお伺いしたいんです。

 まず、期間の話です。今御答弁で、今の審判制度の中では審決まで二年強ということでありました。これは法務省になると思いますが、今度東京地裁に業務が移管されましたら、手続に入って最後の審決までどれぐらいでできるというふうに今想定をしておられるでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 事件には複雑困難な事件、そうでない事件、いろいろございますので、予測することはなかなか困難ではございますが、平均審理期間については統計がございます。例えば、これは現行法の制度でございますが、東京高裁で今行われております審決に係る抗告訴訟で申しますと、過去五年間の平均審理期間といたしましては十六・六カ月というふうに承知しております。

今井委員 今十六・五カ月というふうにお伺いしました。つまり……(小川政府参考人「六カ月」と呼ぶ)十六・六カ月。ということは一年四、五カ月ですね。

 ということは、二年強のものが少しは短縮できる、そういう理解でよろしいですね。

小川政府参考人 ただいま申し上げました十六・六カ月というのは、あくまで現行の制度で審決についての抗告訴訟ということでございます。なかなか比較は難しい点はあろうかと思いますが、差し当たって、現行の制度での高裁の平均審理期間が十六・六カ月ということでございます。

今井委員 実際にやってみないとわからないという部分はあるでしょうけれども、一般の裁判と比較してみると大体それぐらいということで。

 非常に専門性を要求される判断になるかと思いますけれども、決して現行よりも長引くことにならないようにしっかりと対応していただきたいと、この場でお願いをしておきたいと思います。

 次に、公正取引委員会の皆さんにお伺いしたいんです。

 今、公取で審判制度の業務にかかわる人員は何名いらっしゃいますか。

杉本政府特別補佐人 審判制度にかかわる人員数のお尋ねでございますが、現在、定員ベースで審判官の数は六名でございます。それから、審判事務を行っている職員が三名おりますので、審判官と職員とを合わせますと九名ということになります。

今井委員 その六名の構成はどういうふうになっていますか。

杉本政府特別補佐人 裁判所から出向していただいている、本来は裁判官の方が二名、それから弁護士資格を有していらっしゃる方で任期つきで公正取引委員会に来ていただいている方が二名、それから公正取引委員会の職員が二名、そういう構成になっております。定員上の話でございます。

今井委員 その裁判官二名というのは、主にどこから派遣されている裁判官ですか。

杉本政府特別補佐人 主に直前の勤務先が東京地裁の方が多いと考えております。

今井委員 東京地裁からの方が多いということで、今回移管するのも東京地裁でありますから、その点においては今ある程度の知見は東京地裁にもあるのかなと思いました。

 今御説明あったとおり、事務員の皆さんは定員ベースで三名、それとプロパーの職員の方が二名、合計五名の方がプロパーで公取の中にいらっしゃるということですけれども、今回、この業務を移管することになるわけでありますから、当然、人員の整理あるいは統合、見直しをやる必要があると思うんです。

 一方で、指定職員主宰が設けられますので、その部分は業務がふえることになろうかと思いますけれども、両方の業務の量を考えると、かなりスリム化できるのではないだろうかと思っておるんですが、移管後の組織の整理、見直しはどういうふうにお考えでしょうか。

杉本政府特別補佐人 本法案が成立いたしましても、当面は係属事件がございますので、今係属しているものにつきましては引き続き審判制度の対象となります。そのための職員は当面は必要でございますが、本格的に審判制度の廃止に移行いたしますと、審判手続を行う必要がなくなりますので、審判に関する職員は不要になるということでございます。

 また、先生おっしゃいましたように、今般改正におきましては、新たな意見聴取手続につきまして、手続の万全を期するということから手続上の措置を手続管理官等を設けて行うことになっておりますので、手続管理官が主宰する意見聴取手続のための人員は必要になりますけれども、いずれにいたしましても、組織が肥大化することがないように、必要な見直し等はしっかりと行っていく必要があると考えております。

今井委員 もう一度確認させていただきたいんですけれども、現在残っている審判が結了するまでは少し人員を残しておかなきゃいけないということでありました。今、平均で二年ぐらいかかっているとおっしゃっていましたから、当たり前の話なんですけれども、これは施行になってから二年以内ぐらいにはもうそういう人員は必要なくなる、その分見直しをしていく、そういう理解でよろしいですか。

杉本政府特別補佐人 二年強と申しましたのは平均でございますので、案件によっては、その複雑性、困難性からもう少し期間がかかることがあると思います。大きな流れでいいますと、先生おっしゃるように平均いたしますと二年半で、この法律が通りまして施行までまだ期間がございますが、施行されてから二年数カ月たてば大宗のところはもう終わっている可能性が高うございますので、この進捗状況で、今から案件がだんだん減っていくのは明らかでございます。それで人員は徐々に削減されていって、最終的に、九名の定員はおっしゃるような平均の期間でなくなっていくと思っております。

今井委員 大臣は行革担当大臣でもございますので、今の公取委員長の答弁を受けて、しっかりこの部分をやっていくとぜひ御答弁いただきたいと思います。

稲田国務大臣 今委員長が答弁されたように、重複の期間はあるものの、審判手続は廃止されますし、意見聴取などの防御の手続をきちんとやらなければなりませんが、組織が肥大化しないように、行革担当大臣としてもきちんとフォローしてまいります。

今井委員 どうもありがとうございました。

 次に、先ほど少し触れましたけれども、今度、東京地方裁判所に業務を移管することになるわけですけれども、この判断は、経済あるいは経営に関する専門的な知識が必要になってくる分野でありまして、いろいろな意見を伺う中でも、東京地方裁判所に本当にそういう専門性が担保できるんだろうかというような疑問も聞くわけであります。

 先ほどの二名がある程度知見を持っていることは当然わかりますけれども、継続的にやはり知見を高めていかなきゃいけないと思います。その辺について、今後、法務省はどういうような指導あるいは対応をしていくおつもりであるか、その点についてお伺いをしたいと思います。

小川政府参考人 これは運用の問題でございますので基本的には裁判所マターでございますが、今回の改正法案が成立いたしました場合には、第一審の裁判管轄を東京地方裁判所に集中させて専門的な知見の蓄積を図るという改正法の趣旨を踏まえまして、その施行までに、配填と申しますが、裁判所を構成する単位である特定の部に事件を集中的に割り当てまして、その部のみが公正取引委員会の処分に対する抗告訴訟等を審理することとするなど専門的な処理体制の確保に努めますとともに、独占禁止法事案の審理のあり方についても十分検討していくものと承知しております。

今井委員 基本的には裁判所の運用ということでありましたけれども、適切な判断がされていくかということはやはり行政としてもしっかりチェックしていただきたい、その辺の御指導もしっかりしていただきたいとここでお願いをしておきたいと思います。

 次に、費用の問題を少しお伺いします。

 現在も恐らく、審判手続の申請をするに当たって申請者は弁護士等の専門家に依頼をしているのではないかと想像しているんですけれども、今度、裁判所に行くことになれば、当然またそこで弁護士費用等がかかるわけであります。

 本来であれば、やはり分権の時代でありますので、何でもかんでも東京に出てこい、北海道も沖縄の人たちもみんな東京に出てきなさい、こういう措置はちょっといかがなものかなと思うんです。ただ、専門的な人員をそれぞれのところで確保することは非常に難しいと思うので、これはやむなしと思いますけれども、それでいろいろな負担がかかり過ぎてはいけないと思います。その点についてのお考えは何かございますか。

杉本政府特別補佐人 先生御指摘のように、現行の審判制度におきましても、事業者は代理人として弁護士を参加させることが一般的であると考えております。したがいまして、現行の審判制度においても弁護士費用が発生していると考えられますので、その観点からは、東京地方裁判所での審理となった場合でも基本的には大きく変わらないと思っております。

 他方、訴訟の提起に当たりましては、民事訴訟費用等に関する法律に基づき申し立て手数料が発生いたします。審判におきましては当該手数料を徴収していなかったことから、その部分については訴えを提起される側に負担が増加することになります。

 ただ、訴訟に要する全体の費用がどのように変動するかというのは、個別事案における弁護士との契約内容や裁判における当事者の訴訟活動の態様によっても異なることでございますので、一様には申し上げられないと思っております。

今井委員 ありがとうございました。

 先ほどもちょっと申しましたけれども、議事録にしっかり残しておきたいので。

 今回、東京に集中するということはやむなしと思いますけれども、本来はやはり、国民のいろいろな便宜ということであれば、それぞれの地域で、それぞれ地方の裁判所で申し立てができて、近いところでちゃんと手続が踏めるようにするのが国民の利便性を高めるということだと思います。今回はこういう運用で始まりますけれども、見直しができるようにならないか、ぜひ今後も検討していっていただきたいと思います。法務省さん、済みません、これは通告しているわけではありませんが、ちょっと御意見をいただけますか。

小川政府参考人 今回の改正法案は、東京地裁に専属管轄を認めるというものでございます。

 基本的には、もちろん当事者の便宜ということも考慮要素ではございますが、専門性を確保するという点も非常に重要でございますので、私どもといたしましては、専属管轄とする改正法案の趣旨は、専門性の確保を重視したものと承知しているところでございます。

今井委員 一度改正をしてそれでいいわけではありませんので、しばらくやってみて、いい方法があるんだったらまたそれを検討していただきたいとここで要望しておきたいと思います。

 最後に、そもそも論ですけれども、今回、指定職員主宰の意見聴取手続が新設されます。これをつくる狙いと、それからどういう効果を期待しておられるか、そのことをお伺いして、終わりたいと思います。

杉本政府特別補佐人 今回、審判制度を廃止いたしますと、公正取引委員会が行います排除措置命令、課徴金納付命令、こういったものが公正取引委員会としては最終判断になるということでございます。

 したがいまして、それを踏まえて、処分を行う際の手続をしっかりとしていく、丁寧な手続をし、かつ透明性を確保しながらデュープロセスをさらにしっかり踏んでいくために、手続管理官を設けて手続の充実を図るということを法案の中で提案させていただいているものでございます。

今井委員 ありがとうございました。

 独占禁止法あるいは公正取引委員会は、とにかく競争をしっかりと担保していくという非常に重要な役目を担っているところでありますから、これからもしっかりやっていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、独占禁止法改正案について質問をさせていただきます。

 まず、質問に先立ちまして、本日の委員会のあり方について一言申し上げたいと思います。

 本日は、いわゆるお経読みから、審議、採決までを本日の午前中の時間だけで終わらせるという予定になっております。

 もちろん、みんなの党といたしましても、本法案を早期に成立させるべきだという要請は十分に理解しているつもりではございます。しかしながら、このような審議の過程で本当によい制度改正を行うことができるのかということについては、非常に疑問を有しております。

 今回の改正案は審判の廃止に踏み込むものでございますけれども、本来であれば、今までの審判の意義ですとか、廃止することの影響等を含めて、外部の有識者の意見も聞いて行うことが、本当に責任を持って審議を尽くすという観点からは不可欠だろうと考えております。

 本国会の残り時間から、法案を成立させるためにここしかあいていない、それはそれで切迫した要請ということも理解しておりますけれども、ぜひとも、立法府の責任放棄と批判されないような審議のあり方を改めて検討していただきたいということをお願いさせていただきます。

 それでは、今回の改正案についての質問に移らせていただきます。

 まず、今回の改正に至った経緯についてお伺いいたします。今までの独占禁止法の改正を見ておりますと、一言で言いますと、まさに右往左往しているような印象を正直受けております。今回の改正に当たって、そういう意味で不可解なことが多いので、端的に伺いたいと思います。

 まず、本法律案の提案理由によりますと、平成二十一年に成立した一部改正法の附則第二十条一項におきまして、審判手続に係る規定について全面的に見直すというふうにされていたことが挙げられております。また、もちろんこれは政府に伺うべき趣旨ではないですけれども、同法案に係る衆議院、参議院の委員会の附帯決議にも、先ほど稲田大臣もおっしゃいましたが、審判手続に係る規定については全面にわたって見直すものとするというふうにされております。

 平成十七年に導入された事後審査型の審判方式というものが、平成二十一年の改正の際になぜこのように審判手続の見直しが必要だとされたのか、その経緯について説明いただきたいと思います。

稲田国務大臣 今、三谷委員が御指摘になりましたように、平成十七年の改正で事後審判制へ移行し、平成二十一年に、その審判制度の見直しの検討が附則において書かれたわけであります。

 繰り返しになりますが、先ほど提案理由の中でもお話ししましたように、平成二十一年に成立した独禁法の改正法の附則で、「審判手続に係る規定について、全面にわたって見直す」というふうにされ、また、衆参で附帯決議があって、その際には、現在の、現在のというのは平成二十一年当時の、事後審判制を存続することも、平成十七年以前の事前審判制度へ戻すこともないように、事後にも事前にも戻すことなく、抜本的に改正すべきであるというような附帯決議がなされたところです。

 では、なぜ平成二十一年のときにやらなかったのかという御質問だと思います。

 平成二十一年改正時においては、経済界から、先ほど来もございましたけれども、事後審判では検察官と裁判官が一緒というふうに外からは見えるではないか、公正性を担保していないように見えるではないかというさまざまな批判があったことを踏まえて、審判制度の見直しについて鋭意検討を進めたけれども、まだその当時では論点がたくさんあって、成案を得るためには、より慎重に、またさらに幅広い意見を聞く必要があったために、二十一年では全面改正には至らず、附帯決議がなされ、今回の法案の提出に至ったということでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 今いただいた答弁と一部かぶってしまうところもありますけれども、この点について重ねてちょっと伺いたいんです。

 今、平成二十一年の改正の際にそういうもろもろの批判があったということで改正をするという話です。平成十七年、先ほども申し上げましたけれども、事後審査型の審判方式に改められた直後の平成十九年六月に出されました独占禁止法基本問題懇談会報告書、これは三十回を超えて議論されたものですけれども、その中で、もう既に、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当とされているわけであります。平成十七年に事後審査型に変えて、もう平成十九年の六月には、もとに戻した方がいいというふうな、これは内閣府で開催されているものですけれども、判断が既に出されてしまっている。

 これは、しばらく事後審査型の審判制度というものを運用してみて、やはり不都合が出てきたということで変えようとなったわけではないように思われるんですね。改正した直後に見直しが提唱されたこと自体の理由というか、それはなぜだったのか、もしそのことについての分析があれば教えていただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘の独占禁止法基本問題懇談会報告書、内閣府で平成十九年六月に公表されたものでございますが、ここにおきましては、審判制度につきまして、行政審判は、行政過程において準司法的手続を採用して被処分者に十分主張、立証の機会を与えることにより適正手続を保障するとともに、紛争の専門的早期的解決を図るものであることから、審判の迅速化や制度の趣旨に沿わない審判の増加を防止するための措置を講じた上で、独占禁止法違反事件の大部分を占める入札談合事案に関する実効的予防策の実施状況を踏まえつつ、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当だというのが結論でございました。

 他方で、同報告書におきましては、平成十七年の改正によりまして導入された不服審査型審判方式は、その当時の状況の判断でございますが、処分を早期化する、審判件数の減少等一定の成果を上げているとも考えられることから当面はこれを維持することが適当とも判断されておるわけでございまして、当面、不服審査型の審判方式を維持することを否定したわけではございませんので、それを当面維持するとした上で、いろいろな問題解消措置を考えながら事前審判制度に移行するということが適当ではないかというふうな報告の結論であったかと思います。

 ただ、その後、先ほどから御議論になっておりますように、二十一年の改正のときの附則、それから附帯決議、今の審判制度を抜本的に改正するときに事前審判制度、昔の制度に戻らないようにというような附帯決議もありましたので、そういう趣旨を踏まえまして、どういう審判制度を考えていくのが適当かということを検討した結果、審判制度を廃止するという方向に結論が行ったというふうに考えております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今お話をいただきました附帯決議ですけれども、これは平成二十一年当時の衆議院及び参議院の附帯決議ということで、その決議に拘束されるのはもちろんそのとおりだろうと思います。公正取引委員会が事前の審判制度に戻らないように新たな別の制度を考えること自体はやむを得ないことですけれども、ここ国会というのは違うと思うんですね。

 もちろん、当時の判断としては、事前の審査手続に戻らないように検討しろというのが当時の立法者の意思でございました。しかしながら、平成二十五年のこの国会での判断が平成二十一年当時の立法者の意思に拘束される必要はないわけで、そこは広く、そこも含めて判断する、検討するということは当然だろうと思っております。その意味で、今回の改正案が、事後の審判手続、事前の審判手続、平成十七年以前のもの、平成十七年に改正されたもの、そのいずれよりもすぐれたものであるということをお答えいただきたい、こういうふうに考えているわけでございます。

 そういう観点からすると、これも重箱の隅をつつくような話になってしまうのかもしれないんですけれども、もともと、平成十七年の改正によって、経済界からいろいろな批判があった。検察官役と裁判官役を同じところが占めるのはどうなんだという批判によって変えることにしましたという話はあります。事後審査型にしたときに当然そのような議論は出てきたと思うんですけれども、そこを踏まえた上で変えたんですよね。そこについてお答えいただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 十七年改正の際に、事前審判制から事後審判制に変えたときの理由は、審判にやはり時間がかかっていて、審判請求にまで行きませんと最終的な結論にならないということでございましたので、それに時間がかかり過ぎる。それからもう一つは、談合等の関係におきまして、指名入札から外れないために、そういうことを目的としてむしろ審判請求するというようなこともありましたので、そういうことの弊害を除去するということから不服審査型の事後審判制度に変えたわけでございます。

 そういう問題意識から変えたところでございますが、それに対しまして、その間、かなり独占禁止法の執行力というものを強化させていただきましたこともございます。リーニエンシー制度、課徴金減免制度も導入させていただきましたし、さらには課徴金の水準の引き上げ、課徴金の対象の拡大ということもやらせていただきまして、独占禁止法における執行力の強化を図りました。そういうこともございまして、経済界等から、やはり審判制度の外観的な公正さというものもしっかり確保すべきではないかという御批判があったわけでございます。

 私どもといたしましても、そうしますと、審判制度の外観的な公正さということを確保することも独占禁止法の適正な執行に対する信認を確保するために必要ではないかというふうに考えておりまして、そういった観点から審判制度を廃止するということでございまして、そういった変遷、その時々の要請、独禁法の執行力を強化したことへの対応、そういうことから、今般、審判制度を廃止するということが適切ではないかと考えて、提案させていただいているものでございます。

三谷委員 外観的な公正さ、中立性ということは、事後審査型に移すというときになって、当然ながら議論として出てきたんじゃないかというのが私の質問の趣旨でございました。

 つまり、当時はもろもろ、時間がかかり過ぎる等々の要請があったから、何とかそれを変えなきゃいけないということで変えられたんだろうと思っておりますけれども、変えた後、やはり批判があって、また変えることになった。簡単に言うと、この平成十七年当時の改正が余りにも拙速だったのではないかと私としては考えているわけでございます。

 最初に私が一言申し上げたように、まさにこれが今回の一連の問題なんだろうと考えております。独占禁止法の改正は非常に重要なものでありますから、それについて十分な審議をしていく。そうしないと、制度の改正によって本当に右往左往するビジネス界の方々が多くいるんだということにもしっかりと目を向けていただきたい、これを心からお願いさせていただきます。

 質問を続けたいと思います。

 今回、審判制度の廃止が妥当だという結論に至ったということであっても、その上で、どういう方式に移行させていくのかというのは別途考えなきゃいけないことだろうと考えております。

 さまざまな資料を見ていくと、簡単に三つぐらいあるんだろうと思っております。

 一つは、もともとの、先ほど申し上げた懇談会の報告にもありましたけれども、事前審査型審判方式を改めて採用するというやり方、二つ目は、審判と裁判の選択式を採用するというやり方、三つ目は、その事案の性質によって、審判を使うもの、審判を使わずに最初から裁判でいくもの、そういった二様に分ける方式を採用するもの、さまざまな方式があるんです。

 今回の改正案は余りにも唐突感がありまして、どういう議論があってこの結論に至ったのか。そこの議論の経過が見られないので、今回の改正案が出てくるまでにいかなる方式が検討され、いかなる理由からこの制度が採用されたのかということについてお答えいただきたいと思います。

稲田国務大臣 今委員のお尋ねは、事前審査型にもう一度戻すという考え方、また審判と裁判、当事者がどちらでも選択できるという方法もあったし、事案によって分けるというような方法もあったのではないかということだと思います。

 その上で、先ほど委員も御指摘になったように、平成二十一年当時はまだ抜本的な改正まで至っていなくて、そのときに附帯決議があって、事前審査には戻さない、今の現状というものもそのままにはしないというような附帯決議がなされました。それは当時の国会の決議であって、現在まで拘束するものなのかという質問もございましたけれども、一応、当時の国権の最高機関である国会がそういう決議をしたということはやはり重いのではないかというふうに思います。

 また、公正取引委員会の審判制度がずっとそのまま残る限り、審判制度の公正さの外観に対する経済界の批判とか、また実際に公正取引委員会は中立公正に今までも職務に専念していたわけですけれども、外観上やはり不公正があるのではないかという懸念、その不信感を払拭することができないという状況のもとで、審判制度の廃止という判断に至ったものです。

 委員御指摘の、審判と裁判が選択できるようにしてはどうかということについてですけれども、それについては、カルテルとか談合のように多数の当事者がいる場合には、やはり審判手続と裁判手続で同一の結果になる必要があるかと思います。公正取引委員会と裁判所において、二つの異なる手続が進行して、異なる判断がなされるおそれもあるということでございます。

 また、事案によってということについても、公正取引委員会の処分について迅速に裁判所で争いたいという要請もあり、さまざまな議論の結果、今回の法案となったという次第でございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 そういうことで本改正案に至ったということでありますから、それを踏まえて内容についても聞いていきたいと思いますけれども、その前に一点、今までの議論のところについて最後に質問したいと思っているんです。

 何度も繰り返し出てきております事後審判制度、審判を後で行うということについて、検察官役と裁判官役を同じところがやっているんだから、そういう意味でこの一人二役が外観上は公正でない、中立的でないというふうに言われておりますけれども、実際に今まで中立的でない判断がされたという事案はあるのか、公正さが結果において阻害された例があったのかということについて教えていただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会が裁判官と検察官の一人二役を担うということで、審判制度の公正さの外観を損なうのではないかという批判はございましたが、公正取引委員会としては、従来から審判制度の公正中立的な運営に努めているところでございます。

 私どもといたしましても、そこは事案をきちっと、いわば訴訟的な手続、対審構造的な手続で、証拠等に基づいて見直していって、行政処分措置の適切さを判断していくということは、公正取引委員会としてはきちっと適正にやってきたと考えておりまして、現実問題といたしましても、審決におきまして行政処分を取り消したりとか見直したという案件がございますので、そういうところで審判制度の中立性の中身について何か具体的な問題があったものとは承知しておりません。

 ただ、外観的な公正さというものに対する批判に対してお応えしていって、公正取引委員会の措置についての信認、信頼を確保するということも必要ではないかと思っているところでございます。

三谷委員 おっしゃるとおり、中立的な判断が曲げられてしまったというようなものはなかったんだろうと思っております。

 先ほど今井委員からの質問にありましたとおり、裁判官ですとか法曹資格を持った方がこの独立行政委員会の委員をされて判断しているというところで、そこはまさに専門家としてのプロ意識というもので、事前の処分を出す段階、攻撃防御方法を尽くして出す審判の段階、それぞれにおいては当然ながら考慮要素が変わってくるでしょうし、その中で判断も変わってくる。それはしっかりと職務の適正に留意されて仕事をしてきたんだろうと思いますから、一概に、同じように見えるから、それは批判だ、だから変えましょうというようなことはちょっと安直に過ぎるんじゃないか。もうちょっとそこは闘っていただきたかったなということは、私の感想として述べさせていただきたいと思います。

 特に、今回、私もずっといわゆるエンターテインメント系の仕事を弁護士としてやってきておりましたけれども、JASRACの包括契約が独占禁止法に違反するかどうかということが争われております。まさに最初の処分と審判、そしてその後の裁判がもう本当に二転三転しているということを考えても、こういう微妙な事案ですら、最初の処分の段階と審判の段階の判断が違うわけですから、そこは、中身において中立性が損なわれたということはなかったんだと胸を張って、一つの事例ということで言っていただければとお願いをさせていただきます。

 それでは、今回の処分前手続の内容について伺いたいと思います。

 この処分前手続ですけれども、一般の行政処分に係る処分前手続と、今回の独占禁止法による処分前手続は同じなのか、違うのか、違うとすればどこなのか、簡潔にお答えいただければと思います。

杉本政府特別補佐人 独占禁止法の今回の改正案におきます意見聴取手続と、行政手続法の聴聞手続、かなり共通する部分もございますが、違いますのは四点ぐらいあると思っております。

 一つは、証拠の閲覧、謄写の関係でございまして、行政手続法の場合は閲覧のみが可能でございますが、今回の改正案におきましては、自社留置物の謄写、自社従業員調書の謄写が可能なようにしてございます。

 それから、主宰者の指定に関しまして、独占禁止法の改正案におきましては事件担当者は指定できないということにしておりまして、その点が行政手続法と違っているところでございます。

 それから、処分内容の説明の中で、処分内容、認定事実等を口頭で説明するところは同じでございますが、主要な証拠についても口頭で説明するというところが独占禁止法の改正にはございます。

 それから、調書、報告書に関しまして、今回の法案におきましては事件の論点を記載した報告書を出すということにしておりますが、行政手続法は被処分者の主張に理由があるかどうかについての主宰者の意見を記載した報告書ということになっておりまして、その四点ほどが主に違っているところではないかと思っております。

三谷委員 ありがとうございます。

 その意味では、その四点の違いはいずれも、ほかの一般の行政処分に係る処分前手続よりもより適正手続に配慮されていると整理することができるのではないかと考えておりまして、それは本当に重要なことなんだろうと思っております。

 しかし、一点だけお考えをお伺いしたいんです。そういう意味で、適正手続を事前に行っていくということで微に入り細に入りしっかりやっていくと、証拠の十分性ですとか争点の成熟性を一生懸命高めようとすればするほど平成十七年以前の事前審査型審判に近づいていくというおそれ、つまり、やればやるほど確かに適正手続は配慮されることになるんだろうと思うんですが、今までのような、時間がかかるんだという批判もまた出てくるんじゃないかと思うんです。その辺のバランスはどのように考えていかれるおつもりでしょうか。

杉本政府特別補佐人 改正法案におきましては、意見聴取手続を主宰する手続管理官は、当事者から聴取した意見聴取の期日の経過や陳述された意見の要旨を記載した調書及び事件の論点を整理した報告書を作成して、公正取引委員会に提出することとされております。

 したがいまして、現行の審判手続において審判官に求められております、その事案についてどういう判断をするかというところまで求めておりませんので、審判官に求められるような役割を担うものではないということでございますので、この点で以前の事前審判手続とは基本的に違うものになると考えております。

 そうしたことでございますので、この手続にかかる時間的経過につきましても、以前の事前審判制度のような、ある程度の期間を要するということにはならない、期間的にももっと短期間のもので済むのではないかと思っております。

 本手続におきましては、予定される排除措置命令に対する当事者の意見を十分に聞くこととしておりますので、その点には配慮する必要があると思いますが、いたずらに長くならないように、適切な手続を主宰することが重要であると考えているところでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 その次の話ですが、処分前手続が行われて、実際に処分が行われて、その後、裁判手続ということになろうかと思いますけれども、不服審査手続の中では、今までとられていた実質的証拠法則が廃止される、そして新証拠提出制限も廃止されるということでございます。その意味では、裁判手続の中でより広くいろいろな証拠を出すことができるし、主張、立証を尽くすことができるので、今までの処分を覆すことができるんだということにもなろうかと思うんです。

 その一方で、行政訴訟法第三十条にはどう書いてあるかといいますと、裁判所は、裁量権の範囲を超え、またはその濫用があった場合に限り、そういった機関の行政処分を取り消すことができると。逆に言うと、裁量権を逸脱しているかどうかというような判断しかなし得ない。そういう意味では、今回、審判を廃止して訴訟手続に委ねたことによって、それが取り消される可能性も非常に狭められたことにもなろうかと思うんです。

 その点、公正取引委員会としては、今回の改正によるいろいろなことがどういうふうに見られているか、今まで公正取引委員会が出した処分が維持されるようなことが多いのかどうか、それについてどのような見通しを持たれているか、お答えいただければと思います。

杉本政府特別補佐人 行政事件訴訟法に基づきます取り消し訴訟におきましては、委員御指摘のように、裁量権の範囲を超え、またはその濫用があった場合に限り、裁判所は処分を取り消すことができるとされているところでございます。

 したがいまして、一般論といたしましては、行政庁の裁量の範囲において行われた処分の妥当性については、取り消し訴訟の審理の対象とならないとされております。

 ただ、行政庁の裁量が認められたといたしましても、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること、これが恐らく、公正取引委員会がかかわります事件の取り消し訴訟とか、そういうものについての主な論点になると思いますし、それが一番重要な点になるかと思います。そういった重要な事実の基礎とか事実に対する評価というものに対しては、裁量権の踰越とか濫用に当たるような違法処分として取り消し訴訟において取り消しの事由になっていくと思いますので、そこは裁判になったときに争われていくと思います。

 さらに、現行法で規定されております実質的証拠法則とは、公正取引委員会の認定した事実はこれを立証する実質的な証拠があるときは裁判所を拘束する規定でございますので、この実質的証拠法則等の特例を廃止することになりますと、やはり、重要な事実それから事実の評価に関しまして第一審においていろいろ議論される幅といいますか、範囲というのは広がっていくのではないかと思っておりますので、そういったことで、実質的証拠法則の制約を受けずに裁判所により審査されることになっていくのではないかと考えております。

三谷委員 ありがとうございました。

 いずれにしても、今回の審判制度の廃止で公正取引委員会の法的性格が非常に大きな変容を遂げていくものであるとも考えられようかと思います。その意味で、いわゆる一般に独立行政委員会と言われていた公正取引委員会には、しっかりとその後も専門機関としての職務、職責を果たしていただきたいということを心からお願いさせていただきまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 独禁法改正案の審議に当たりまして、まずこの法案提出の経緯を確認したいと思っております。

 二〇〇五年四月の独禁法改正で、法制定以来のいわゆる事前審査型審判制度を不服審査型審判、事後審判制度に変更いたしました。リーニエンシー制度導入を含む同改正案に対して我が党も含め賛成、全会一致で可決、成立いたしました。この法の附則及び附帯決議を受けて、法施行後二年以内の検討見直しに当たっては国民各層の意見が適切に反映されるよう十分配慮するといたしました。

 そこで、二〇〇五年の七月に、上記の附則及び附帯決議を受けて、内閣官房長官のもとに、有識者、消費者、弁護士等で構成された独占禁止法基本問題懇談会が設置されました。二年越しの議論で、二〇〇七年六月、この懇談会は、三十五回の慎重な論議を踏まえて第一次安倍内閣の時代に報告書をまとめました。

 そこで、公正取引委員会にお尋ねいたしますが、この独占禁止法基本問題懇談会報告書において、審判制度のあり方について、その検討結果はどのようになっていたのかお答えください。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘の独占禁止法基本問題懇談会の報告書、これは平成十九年六月に内閣府で公表されておりますが、それにおきまして、審判制度については、審判の迅速化や制度の趣旨に沿わない審判の増加を防止するための措置を講じた上で、独占禁止法違反事件の大部分を占める入札談合事案に関する実効的予防策の実施状況を踏まえつつ、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当との結論が示されております。

 他方、同報告書におきましては、平成十七年改正により導入された行政不服型審判方式は、処分の早期化、審判件数の減少等一定の成果を上げていると考えられていることから当面はこれを維持することが適当と判断されたことを前提として、平成十九年十月に公正取引委員会におきまして独占禁止法の考え方を公表しているんですが、そういった経緯でございます。

塩川委員 当時、現行の事後審判制度を維持ということで、一定の条件が整った段階で事前審査型審判方式に戻しましょうということが出されたわけです。この報告書において、地方裁判所に直接取り消し訴訟を提起する方式をとらない審判制度を設けることが適当、このような結論に至った理由について説明していると思うんですが、その部分を紹介していただけますか。

杉本政府特別補佐人 不服審査型審判方式について指摘される問題点と考え方というところの中で、不服審査型審判方式については、一、不服審査型審判方式における事前手続は、審判と比較すると簡易な手続であり、違反行為に対する抑止力を強化することになればなるほど、適正手続の確保の面で十分とは言えない……(塩川委員「審判制度の維持」と呼ぶ)不服審査型審判方式に対する、指摘される問題点と考え方でございます。

塩川委員 まず、懇談会においては、審判制度を維持するか維持しないかという議論の中で、審判制度を維持することが必要ですねと。その審判制度が事前と事後のどっちかということについて、当面は事後、将来的には事前という整理をしたわけですけれども、そもそも、その前段の、なぜ審判制度を維持するのか。

 では、ちょっと私の方で紹介します。

 報告書が審判制度の維持を求めた理由について四点書いてあります。独禁法の執行には高度の専門性が要求されること。二点目として、審判の結果示される審決の蓄積が法解釈の形成に大きな役割を果たしてきたこと。三点目に、裁判に準じた手続である審判の存在が公正取引委員会に独立性、中立性を必要とする根拠となっていること。四番目に、取り消し訴訟よりも審判手続の方が幅広い事項が審理の対象となり、より柔軟で適切な解決が図られることである。このように述べております。

 こういった審判制度を維持するということを前提にした報告書について、公正取引委員会は二〇〇七年十月の意見書において、同報告書における独禁法見直しに関する提言を踏まえつつ、具体的な法改正の方向性についても検討するということでありました。ここにおいては、審判制度の廃止という話は出てこなかったわけであります。

 そこで、稲田大臣にお尋ねをいたします。

 今回の法案は、この〇七年のときの懇談会の報告書の結論と全く逆方向に行くものであります。審判制度を設けることが適当とされていたのに、なぜ審判制度の廃止に変わったのか、その理由について御説明いただけますか。

稲田国務大臣 先ほど来の質疑の中で示されたとおり、内閣府の平成十九年六月公表の報告書において、審判制度については、審判の迅速化や制度の趣旨に沿わない審判の増加を防止するための措置を講じた上で、独禁法違反事件の大部分を占める入札談合事案に関する実効的予防策の実施状況を踏まえつつ、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当だという結論が示されておりました。

 他方、同じ報告書の中で、平成十七年の改正によって導入された行政不服型審判方式は、処分の早期化、審判件数の減少等一定の成果を上げていることから当面はこれを維持することが適当であるということを前提として、平成十九年十月、公取委員会において独禁法の改正等の基本的考え方を公表し、平成十七年に導入された行政不服型審判方式を維持することを前提として審判手続の公正さ及び透明性の確保のための措置を示したところでございます。

 このように、公取としては従来から公正中立な審判の運用に努めてきたところですけれども、平成十七年の独禁法の改正に執行力の強化が盛り込まれたことを背景に、行政不服型審判方式、事後審判制度へ移行した審判制度の公正さの外観に対する経済界等の批判が強まることとなったところでございます。

 平成二十一年の独禁法改正の附帯決議において、現行の審判制度すなわち事後審判制度を現状のまま維持することと同時に、平成十七年以前の事前審判制度へ戻すことのないよう抜本的な制度変更を行うことという附帯決議が国会でなされたところでございます。それによって、制度変更の選択肢が示されたというふうに考えてよいかと思います。

 そのような状況のもとで、公正取引委員会の審判制度が存置される限り、審判制度の公正さについての外観に対する経済界等の不信感を払拭することは困難であると考え、審判制度を廃止する今回の改正案を提出したところでございます。

塩川委員 経済界等からの、検察官役と裁判官役をしているのはおかしいという、外観に対する批判に応えるということですけれども、もともとの二〇〇九年の独禁法改正の附則や附帯決議について、では、その後十分な議論があったのか。ないわけですよ。二〇〇七年六月に独禁法基本問題懇談会が三十五回も議論を重ねて出した結論を全くちゃぶ台返しするような話になっているという点で、私はこの経緯も含めて極めて重大だと思います。

 国会審議の経緯がどうだったかといえば、二〇〇八年の独禁法改正案、提出されましたけれども、審査未了、廃案でありました。

 二〇〇八年の十二月に、参法という形で参議院に出された中に、審判制度の廃止等を検討するという附則を盛り込んだ案が出ましたけれども、これも継続審査、未了、廃案となりました。

 二〇〇九年の四月に、今ありましたように、独禁法改正の附則及び附帯決議で、審判制度の抜本的制度変更を要求、そういう中身となったわけであります。

 二〇一〇年の三月十二日に、本改正案とほぼ同じ改正案が国会に提出されました。その後、継続審査となって、結果として衆院解散で廃案となりました。

 もともと、二〇一〇年の通常国会でこの法案を議論するというときに、野党からは本会議の登壇物だと、本会議趣旨説明要求が出されていた案件なんですね。それが、当時の民主党政権の与党のもとで議運において委員会付託が強行採決されて、委員会においてもわずかな審議時間で採決するという委員長の提案に対して野党が厳しく批判し、当時野党でありました公明党の理事からも、公聴会や参考人質疑も必要だ、十分な審議を行うべきだという声が上がっていた。慎重審議を求めるような案件であったにもかかわらず、これを強行しようということに対して、結果としては、委員会では提案理由説明だけで終わったわけですけれども、委員長は解任決議案まで出されるという極めて重大な問題となったわけであります。

 このように、短時間の審議、参考人など有識者の意見も聞かずに審判制度の廃止という競争政策のルールを変更するという、今回のような短時間での審議のやり方というのは、法案の重要さからいっても容認できるものではありません。

 大臣にお尋ねしますが、三十五回も会議を重ねた懇談会の報告書の結論を覆すような議論が、一体どこでどんなふうに行われたんですか。

稲田国務大臣 先ほど答弁いたしましたように、平成十七年の改正で事後審判制に移行し、それに伴い公正取引委員会の執行力の強化も盛り込まれたことから、それに対していろいろな議論があって、平成二十一年のときには論点の整理ができずに審判制度自体の抜本的な改正は行われなかったところでございますが、その後、さまざまな議論、また関係者の意見等を集約して今回の改正案になったものでございます。

塩川委員 いろいろな議論、さまざまな議論といっても、表に出るような、国民各層の意見を聞くような場なんかなかったじゃないですか。そういう百八十度変えるような中身を出してくる、手続のあり方からいっても極めて重大な法案であります。

 この間、検察官役と裁判官役を兼ねているという批判、これ自身は当たらないと公正取引委員会自身は言っているわけです。外観上の批判に応えるためということであります。

 もともと公正取引委員会は、内閣府に置かれた独立行政委員会であります。やはりこの審判制度が、公正取引委員会が内閣から政治的な独立性、中立性を保持しながらその専門的能力を発揮して、独禁法の執行に当たるための重要な根拠となってきたのではないのか。

 ですから、大臣にお尋ねしますけれども、こういう準司法的手続であります審判制度の廃止というのは、独立行政委員会としての公正取引委員会の権能と独立性を弱めて、談合、カルテルの摘発や優越的地位の濫用の是正など、公正な取引ルールを確立するための独禁法の執行力を弱めることにつながるのではないのか。このように考えますが、お答えいただきたい。

稲田国務大臣 委員御指摘のとおり、公正取引委員会は、まさしく市場のルール、公正さ、中立性を確保するために独立性を有していかなければならないと思います。そのためにも、独禁法の二十八条で、公正取引委員会の委員長及び委員は独立してその職務を行うと、職権行使の独立性について法定されているところでございます。

 今回の改正によってその独立性等が阻害されるのではないかという御質問ですけれども、今回の改正によって審判制度が廃止された後の排除措置命令等の取り消し訴訟、これは裁判所の審理、東京地裁に委ねられることになるわけですけれども、独禁法に違反する行為を排除し、我が国における公正かつ自由な競争を促進していくという公正取引委員会の役割に何ら変わるものはないと思っております。

 また、今回の改正案では、公正取引委員会の調査権限、措置権限を弱めるわけではなく、公正取引委員会としては、今後とも厳正かつ実効性のある独占禁止法の執行に努めていくものと承知をいたしております。

 さらに、独禁法は、経済活動の基本的なルールを定めており、その執行、運用は、法律及び経済に関する高度の専門的知識に基づき、公正かつ中立的に、また継続的一貫性を持って行うことが必要であるというのは、先ほど委員が御指摘されたとおりだと私も思います。

 公正取引委員会が合議制の独立行政委員会として設置されるとともにその委員長、委員が独立して職務を行うというのは、冒頭私が指摘いたしましたように、独禁法の二十八条に定められているところでございまして、公正取引委員会の役割であったり、独立性であったり、そういった特質はこの改正によって変わることはないというふうに考えております。

塩川委員 この公正取引委員会の独立性、中立性を保障する大きな役割となっていたのが審判制度だったというところがまさに問われている問題で、私は、禍根を残すような大改悪だと言わざるを得ません。

 こういった審判制度の廃止は誰が望んでいるのか。つまり、公取が検察官役と裁判官役を兼ねていて不公平だということを繰り返し述べてきたのは、経済界といいますけれども、日本経団連であります。

 日本経団連は、この法案に対しても、早期廃止を求める、早期再提出、成立を求める提言など、過去何度も審判制度の廃止を求める提言を行ってまいりました。このように、日本経団連が審判制度の廃止を繰り返し要求してきた、これは事実ですね。その点、確認します。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会の審判制度の廃止を求めるということは、経団連等、経済団体からも強く要請されてきたところでございます。

 ただ、現状では、法曹界とか中小企業団体からも、審判制度の廃止の実現を求める要望、提言もなされているところでございます。

塩川委員 経団連から繰り返し出されてまいりました。

 そこで、お配りしました資料をごらんいただきたいんですが、「日本経団連の役員企業のカルテル・談合事件および課徴金一覧」であります。これは、公正取引委員会からいただいた資料と各企業の公表資料をもとに作成いたしました。

 経団連の役員企業、会長企業、副会長企業、審議員企業、全部で三十六社であります。一九九〇年代以降のカルテル、談合事件について記載してあります。それぞれ、役員企業、子会社、関連会社であります。

 特に、九〇年代の初頭から、日米構造協議もあって、ほえない番犬と言われていた公取が機能するようにという状況もあって、以降、いろいろなカルテルの事件、談合の事件について、公正取引委員会として摘発を行ってきたわけであります。

 これで見ていただくとわかるように、網のかかっているところがカルテル、談合事件を起こした企業であります。三十六の役員企業のうち、網のかかっているのを全部数えますと十九に上ります。三十六分の十九ですから過半数であります。会長企業であります住友化学や日立製作所や小松製作所、三菱商事、日本郵船、三菱重工業、多いところでいえば新日鉄住金ですとかトヨタ自動車もありますし、パナソニックなども含まれているわけであります。

 稲田大臣にお伺いします。この表を見ての大臣の率直な感想をお尋ねしたいんです。

稲田国務大臣 率直な感想でしょうか。率直な感想は、非常に名の通った大企業が多いというふうに思います。

塩川委員 まさにそのとおりで、日本経済を担うような大手企業が実際にはカルテル、談合事件を繰り返しているんですよ。

 例えば、一枚目の日立製作所も、子会社、関連会社を含めて見ていただくと、時期の欄を見れば、九〇年代から二〇一三年まで連綿とカルテル、談合事件を起こしている。十六番の新日鉄住金でも同様でありますし、このように、名立たる大企業がずっと一貫してカルテル、談合事件を起こしている。カルテル、談合事件を起こすのが社風ではないかと言いたいぐらいの現実というのが実態としてあるんじゃないでしょうか。こういう問題について、率直に、大臣はどのように受けとめておられますか。

稲田国務大臣 社風とまでは言い切れないのではないかと思っています。

 それと、先ほど来、委員御主張の、経団連が要望しているから今回の改正ということにつながったのではないかという御質問に関しても、私は、大企業ばかりではなくて、例えば、審判制度廃止を求めておられる団体の中には全国中小企業団体中央会等もあるということも指摘をしておきたいと思います。

塩川委員 名立たる大企業が競争政策のルールを守っていない、この重大さ、重みについて大臣としてどのように受けとめているかということをお聞きしたかったんです。こういう大企業が守っていないということで、厳しく企業としての責任が問われているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

稲田国務大臣 企業としての社会的責任を果たすためにも、独禁法の理想としているところの市場の公正性とか中立性というのは、大企業がみずから率先して守るべきであるというふうに思います。

塩川委員 犯罪ですから。企業犯罪の常習犯というのが現状だということを指摘し、具体の話としてこの間、自動車部品に関する事件もありました。これについて、概要に関して公正取引委員会から少し御説明いただけますか。

杉本政府特別補佐人 自動車部品に係るカルテルのお尋ねでございます。

 公正取引委員会は、これまでに自動車部品に係るカルテルにつきましては、自動車用ワイヤハーネス、オルタネーター等の自動車用の電気装備四部品、自動車用ランプ、自動車用軸受け、ベアリング、これらに関しまして計七件の事件につきまして所要の調査を行いまして、関係する事業者に対して排除措置命令を出し、課徴金納付を命じているところでございます。

 課徴金の合計額は二百七十三億円余となっております。

塩川委員 二百七十億円余りという課徴金、大変大きな額であります。これ自身がアメリカやEUなどにまたがるような国際的なカルテル事件ということでありまして、アメリカにおいてもEUにおいても摘発されている事件でもあります。

 そういう点で、この配付資料でごらんいただくと、自動車部品に関するような事件が、例えば二番の日立製作所でも、上から七、八行目、スズキが発注する自動車用オルタネーターの入札談合、自動車用スターターの入札談合などもありますし、一番下の子会社でも、ワイヤハーネスの国際カルテルの事件もあります。

 自動車部品にかかわっては、二枚目の十二番、三菱重工業の一番下にワイヤハーネス等の自動車部品の国際カルテルの件もありますし、三枚目を見ていただくと、二十七番のパナソニックで、上から五行目のところにワイヤハーネス等自動車部品の国際カルテル、三十四の三菱電機も、最後の欄にワイヤハーネス等自動車部品に係る国際カルテル。もちろん役員企業ですから名立たる大企業ですけれども、こういった自動車部品についてのカルテル、談合事件は、国際的な事件としても摘発されているわけであります。

 日立や三菱重工業、さらにはトヨタ自動車については、二五%以上の関連会社ということで入ってこないデンソーもあります。グループで見れば当然のことながら関連会社にはなってくるわけですけれども、こういった自動車部品についての談合、カルテル事件にはデンソーも入っているわけであります。こういった名立たる大企業が繰り返しこのような事件を起こしている。

 私はやはり、まさにそういう企業体質が問われるような問題が出ているんじゃないのか、自動車部品の問題を見ても、国際的な事件に発展するような重大な事件が相次いでいるということについて、経団連役員企業の企業としてのあり方そのものが問われていると思うんですが、大臣に再度お尋ねします。

稲田国務大臣 今回の改正において、やはり、審判手続の外観における公正さというものも確保すると同時に、今までどおり、公正取引委員会が市場の番人としてその権能を発揮していくということが重要であると考えております。

塩川委員 独禁法の改正に対しては、経済法の研究者、有識者の方から厳しい批判の声も上がっております。こういった審判制度の廃止によって、公正取引委員会が独立行政委員会としての役割を発揮できずに、いずれは産業官庁の一部門、一部局となって、公正かつ中立的な独禁法運用が期待できなくなるおそれが強い、こういう懸念の声が上がっている。

 これに対して、公正取引委員会の担当の大臣としては、どのように真摯に受けとめられるでしょうか。

稲田国務大臣 公正取引委員会の役割の重要性、そして独立性は、今回の改正によっても何ら変わることはないというふうに考えております。

 今御指摘の点なども踏まえて、公取がこれからも職務を全うしていくべきであり、そうあり続けるということをきちんとフォローしていきたいと思います。

塩川委員 談合、カルテルという企業犯罪への真摯な反省もなしに、自分の都合がいいようにルールを変える、こういう姿勢が厳しく問われるんじゃないでしょうか。談合、カルテルという企業犯罪の常習犯であります日本経団連の役員企業は、みずからの談合体質を正す自己改革を行わずに、逆に、審査、審判ルールの変更を求め続けてきた。

 今回の法案というのはまさにこういった本末転倒な経団連の要求に沿うものであり、こういった法改正は断じて認められない、このことを強く申し上げて、質問を終わります。

富田委員長 次に、越智隆雄君。

越智委員 自民党の越智隆雄でございます。

 きょうは、懸案でございました独禁法改正案の質疑ということで、質問に立たせていただくことになりました。大臣におかれては、ほかの委員会もあって、私の質疑時間に出席できないんじゃないかという話もございましたが。また、杉本委員長にも質問させていただきますので、適宜御答弁いただければと思います。

 今回の独禁法の改正は、審判制度の八年ぶりの大改正ということであります。今までもいろいろと御議論がありましたけれども、まず最初に、私なりに独禁法のこれまでの経緯をちょっと振り返ってみたいと思います。

 言うまでもなく、十七年の改正は、事前手続、事前審査型から、事後手続、不服審査型に変わりました。

 当時のことを考えてみますと、競争政策の執行力を強化しなきゃいけない、審判件数が急増したり審理の長期化が懸念されるという状況の中で改正が行われたものと理解しています。一方、当時は、企業が処分の先延ばしを狙って裁判を通じて時間稼ぎをするとやゆするような議論も出ていたと聞いております。そんな中で二〇〇五年、平成十七年の改正が行われたわけであります。

 これは行政処分の執行と裁判を同じ機関が担う仕組みだ、世界的にも例が少ないと言われています。経済界を中心に、検察官が裁判官を兼ねているということで大きな批判が出ていた。企業側からいうと、処分前に言い分を聞くならば意味があるけれども、処分後だと同じ組織の中の機関に申し立てをしても企業側には勝ち目がない、負担になるだけだ、そんな意見もあったと聞いておりますし、不服の審判に至る比率が当時低下したとも聞いております。

 改正後間もない時期から、政策担当者の中で再改正に向けた議論もあったと聞いております。その背景には、事前手続と事後手続で実態がどう変わるのかということについて、さほど認識していなかったんじゃないか、そんなことも指摘されていたわけであります。

 次に、平成二十一年の改正でありますけれども、課徴金の対象の違反の範囲を拡大する、そういうことを含めた改正の中で、先ほども御説明がありました、附則には、「審判手続に係る規定について、全面にわたって見直す」、附帯決議では、衆議院、参議院ともに、「現行の審判制度を現状のまま存続することや、平成十七年改正以前の事前審判制度へ戻すことのないよう、審判制度の抜本的な制度変更を行うこと。」とされたわけであります。

 その後、政権がかわりまして、平成二十一年十二月には、政権の中から独禁法改正等に係る基本方針が出されて、事業者側の不信感を払拭できないという理由で審判制度を廃止する方針が決められたと聞いております。平成二十二年三月に改正案が提出をされました。ただ、審議未了で平成二十四年十一月に廃案となりました。

 平成二十四年十二月にこの政権になって、二十五年四月十日に、先ほども御指摘ありました経済団体からの要請、これは六団体なんです。経団連だけじゃない。経団連、日本商工会議所、経済同友会、全国中小企業団体中央会、関経連そして在日米国商工会議所も入った六団体、大企業から中小企業まで入った形で、共同で要望が出ています。

 事後審判制度について、かねてより中立性、公平性を欠く不服申し立ての仕組みであるとして、経済界では廃止を求めてきた。こうした主張を踏まえて、審判制度を廃止し裁判所で審理することとする独禁法改正法案が国会に提出されたものの、一度も審議されることなく廃案となった。この改正法案を今通常国会に再び提出して、早期に廃止を実現することを求めるという要請が出されたわけであります。

 それも含めて、そういう状況の中で、五月二十四日に政府から今回の法律が出された。ただ、前国会は継続審議ということでございますので、いよいよ今国会、本日、この法案が審議されるということだと思います。前回の大改正から八年がたちました。衆参で附帯決議が付されてから四年半。今回と同一の法案が出されてから三年八カ月。本当に長年の懸案でございますが、これをいよいよきょう審議しているということであります。

 まずお伺いしますが、今般、審判制度を廃止して新しい制度をつくる趣旨について、簡潔にお答えいただきたいと思います。

稲田国務大臣 今、越智委員がずっと経過について詳しく述べていただいたように、平成二十一年で附帯決議、そして、附則で書かれていた審判制度の抜本的な見直しの方向性に基づいて、経済界等の要請も踏まえまして、審判制度の外観上の不公正さ、中立性を欠くのではないかという懸念を払拭するために今回の改正案を提出したところでございます。

越智委員 この際、審議をしっかり前に進めていきたいと思いますが、幾つか気になる点がございますので、そこを確認していきたいと思います。

 まず一つ目に、今回、審判制度を廃止することについて、いろいろな意見が出ています。その中で、公正取引委員会による独禁法の執行力に影響が出るんじゃないか、公取の摘発能力に変化があるんじゃないかという指摘がありますけれども、この点について、公取の御見解をお伺いしたいと思います。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 今般の改正によりまして、審判制度が廃止された後におけます排除措置命令等の取り消し訴訟については、裁判所の審理に委ねられることになります。しかしながら、独占禁止法に違反する行為を排除し、我が国における公正かつ自由な競争を促進していくという公正取引委員会の役割に何ら変化はないと考えております。また、今回の改正も公正取引委員会の調査権限それから措置権限を弱めるものではないと考えております。

 私どもといたしましては、やはり、独占禁止法の執行力確保ということは、今の経済情勢の中で経済力を高めていくためにも、さらには消費者の利益を確保するためにも非常に重要だと考えておりますので、厳正かつ実効性のある独禁法の執行に努めてまいる所存でございます。

 そういうことで、独禁法の執行力が弱まることにはならないと思っておりますし、私どもとしても執行力をさらに強化する形で運用を進めていきたいと思っておるところでございます。

越智委員 ありがとうございました。

 今回の改正で執行力が弱まることはないということでございます。ぜひとも執行力をしっかりと維持して取り組んでいただきたいと思います。

 次に、今回の審判制度の廃止によって公取が独立行政委員会であることの根拠が失われ、独立性について変化があるんじゃないかという意見もありますけれども、これについても確認をしたいと思います。平成十七年以前の事前審査型、またそれ以降の不服審査型、いずれにおいても公取による準司法的な手続を経て権限を行使することになっておりました。何が変わるのか、変わらないのか、この辺の独立性についての公取の今の御見解をお伺いしたいと思います。

杉本政府特別補佐人 独占禁止法は経済活動の基本的なルールを定めたものでございまして、その執行、運用は、法律及び経済に関する高度の専門知識に基づきまして、公正かつ中立的に、また継続的一貫性を持って行うことが必要であると思っております。

 そうした趣旨から公正取引委員会が合議制の独立行政委員会として設置されているというふうに考えております。そして、「委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」と独占禁止法第二十八条に記載されているのは、公正取引委員会の職務の特質に由来しておりまして、したがいまして、独立行政委員会という特質は審判制度の廃止によっても全く変わらないものだと考えておるところでございます。

越智委員 次に、今回の改正によって、実態として不服審査が公取から東京地裁に移るわけでありますけれども、そのことについていろいろな指摘がなされております。

 特に一番多い指摘だと私が思うのは、公取が扱う独禁法の事案に係る高度な専門性について、東京地裁でもしっかり担保できるのか、そういう体制をつくれるのかということであります。逆に、先ほどの人数の話もございますし、いろいろな形でそこを担保されるということだと思いますが、取り組みについてお答えいただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 委員御指摘のように、今回の独占禁止法改正法案におきましては、裁判所における独占禁止法違反事件の審理に係る専門性の確保のために、公正取引委員会の処分に係る抗告訴訟等につきましては、第一審の裁判管轄を東京地方裁判所に集中することとしております。

 そのほか、裁判所においては、予想される事件数等のさまざまな要素を考慮した上で、特定の部に事件を集中して配填することを検討されていると思っておりますし、また、改正法に関する研修を行うというふうに聞いております。こういうことを含めまして、東京地裁においても専門性を高めていく取り組みが行われると思っておりまして、改正法下における適正かつ迅速な事件処理が図られるのではないかと考えているところでございます。

越智委員 関連して一つお伺いしたいんですけれども、この独禁法の取り扱いについての人材養成をしていくということがございます。裁判所の中に専門の部署をつくるとかいうような検討をなされているのか、御存じの範囲で教えていただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 御指摘のように、独占禁止法に係ります訴訟というものは非常に専門的な判断を必要とする事案でございますので、そういったことを合議してくれる専門の部署を設けることも含めて検討が行われているのではないかと考えておるところでございます。

越智委員 次に、東京地裁で不服審判が行われると利便性がどうなるのかということについてもいろいろと議論がございます。

 抗告訴訟の第一審を地裁の専属管轄とする理由についてお伺いしたいんですが、従前の制度との比較において、利用者の利便性がどう変わるのか。端的に言いますと地方の事業者が不利益とならないのかということでありますけれども、これについてお考えをお伺いしたいと思います。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会による排除措置命令等の取り消し訴訟に係る裁判管轄につきましては、裁判所においても専門的な判断を確保する必要性があること、カルテル、入札談合のように複数の企業が違反事業者となる事案において同じ裁判所が判断することにより判断の合一性が確保される必要性が高いこと、これまで第一審機能を担ってきた公正取引委員会における審判手続は基本的には東京にある公正取引委員会内の審判廷で行われているものでございますので、東京地裁に管轄を集中しても事業者にとりまして現在よりも利便性が大幅に低下することにはならないのではないか。こういうことから、東京地方裁判所に管轄を集中することとしているものでございます。

 一方、裁判所における審理では、争点整理の期日におきまして電話会議システムを利用するとか、証拠調べの期日におきましてテレビ会議システムを利用するなど、必要に応じまして、当事者等の関係者が東京地方裁判所に出頭することなく審理が進むことを可能とするように考えていただいていると承知しております。

 したがいまして、管轄を東京地方裁判所に集中した場合でも、裁判所におきましては、地方在住の事業者の利便性や出訴に伴う負担等も考慮いたしまして、適切な運用がなされるものと考えているところでございます。

 また、将来的な裁判所の管轄の問題につきましては、以上のような観点も踏まえながら、改正後の取り消し訴訟の状況等を勘案し、必要に応じ検討するということになろうかと考えております。

越智委員 ありがとうございました。

 今委員長から御説明がございましたけれども、従前の制度において東京の公取で行っていたことが、今後は東京地裁、東京でありますけれども、場合によってはさまざまな仕組みを利用して地方でも関与ができるということになりますと、地理的利便性に関しては従来より向上する可能性もあると考えていいのかどうか、そこについてお教えください。

杉本政府特別補佐人 お答えいたしましたように、裁判所の審理におきまして、各種のツールを利用するといいますか、電話会議システムだとかテレビ会議等を利用することになりますと、わざわざ東京に出てきていただかなくても争点整理だとか証拠調べをこなせることになりますので、今は審判廷ではそういうシステムを活用することが余り行われていない点も考え合わせれば、東京で審理することについて、利便性が向上する部分もあるのではないかと考えているところでございます。

越智委員 ありがとうございます。

 次の質問に行きたいと思います。

 審判制度が廃止されて訴訟に移行する場合に、手続全体にかかる時間がどう変化するのか、それをどう想定されているのかということについてお伺いしたいと思います。

 従前、公取の中でやっていたことが東京地裁に来るわけであります。今お答えいただいた東京地裁の体制あるいは人員の練度にもよると思いますけれども、公取の審判件数は昨年度、新規で四十七件、係属で百七十件と聞いておりまして、そういう状況が今年度、来年度以降どうなるかまだわかりませんが、全体にかかる手続の時間はどういう想定をされているのか、お伺いしたいと思います。

杉本政府特別補佐人 審判制度は、今、手続を開始しましてから審決が出るまで大体二年強ぐらいかかっております。

 これが訴訟制度に移りますとどれぐらいの時間がかかるかということは、今、私どもの立場で具体的なことは申し上げられないわけでございますけれども、効果的かつ迅速に競争の回復を確保するという観点からいたしますと、裁判の手続も時間をかけないでできるだけ早期に結論を出していただくことが必要と考えているところでございます。

越智委員 経済実態が大幅に変化した後に判決が出るということになりますと、意味がなくなる場合がございます。これだけいろいろ動きが速い時代でございますので、早期に結論が出るような形に最終的に落ちつかせるということはとても重要だと思いますので、公取サイドとしても、限りはあるでしょうけれども、御検討いただけたらと思います。

 次にお伺いしたいのは、処分前手続についてであります。処分前手続を充実するということでありますが、これ自体はとても必要なことだというふうに思います。

 証拠の閲覧や謄写を認める、指定職員主宰の意見聴取手続を導入する、事業者による質問や口頭による意見陳述もオーケーにするということでありますけれども、一方、これが処分にかかる時間にどう影響するのか。

 これについては公取の中の話だというふうに思いますので、具体的に教えていただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 改正法案におけます意見聴取手続は、今般の審判制度の廃止に伴いまして、従来は審決において示していた公正取引委員会による最終的な判断が排除措置命令、課徴金納付命令等において示されること、適正な手続を確保するという観点から、処分前に相手方事業者の主張を一層よく聞いた上で適切に排除措置命令を行うため、新たな処分前手続として整備しようとするものでございます。

 しかしながら、競争秩序の早期回復という公益の観点からいたしますと、意見聴取手続を迅速に進めていく必要がございます。したがいまして、実際の運用におきましては、処分の迅速性の要請に十分配慮しつつ、当事者の意見聴取手続を適正に行っていきたいと考えているところでございます。

越智委員 ありがとうございます。

 冒頭に、今回のこの法改正の経緯について、私なりの認識をお話しさせていただきましたけれども、今回、この審判制度を廃止して、公平性また透明性を確保した上で地方裁判所で第一審を行うということは、私は本当に重要なことだ、必要なことだと思っております。

 一方、新しい制度の運用がままならないというようなことにならないように、そこについては公取にもしっかりと取り組んでいただき、目を光らせていただきたいと思います。

 若干趣旨は変わりますが、もう一つ質問させていただきたいことがございます。課徴金制度の問題であります。

 現在の審判事件の大半は課徴金案件だと思っております。日本の課徴金制度というのは、諸外国と比較すると硬直的じゃないかという指摘が一般にされているわけでありますけれども、このような見解について、今、公取の方ではどのような認識でおられるのか、何か検討の方向性はあるのか、お伺いしたいと思います。

杉本政府特別補佐人 現行の課徴金制度は、違反行為の抑止という行政上の目的を達成するために、公正取引委員会が違反行為者に対して金銭的不利益を課すという行政上の措置でございます。こういうこともありまして、課徴金納付命令の発動や金額の算定は、法律上も非裁量的に行うこととされているところでございます。

 ただ、EUを初めとする諸外国におきましては、制裁金というのが我が国の課徴金に相当するものだと考えておりますが、裁量的に制裁金を算定し、賦課できる仕組みとなっている国が多うございます。

 我が国の課徴金制度におきましては、独占禁止法の禁止規定の実効性確保のための行政上の措置として、算定基準を客観的かつ明確にして機動的、効果的に発動できるようにするとの観点から、非裁量的なものとして設計されているものであります。

 ただ、今申し上げましたように、競争行政の執行というものは、原状回復、抑止効果というものが非常に重要視される、しかも迅速に対応していくことが重要視される分野でございますので、こうした制裁金におきます裁量制というものに関しましても、EUを初めとする諸外国の制度について、今後とも公取としても勉強していきたいと考えているところでございます。

越智委員 ありがとうございます。

 課徴金制度についてはいろいろな議論があると思いますので、ぜひともこの辺の検討を深めていただけたらありがたいと思います。

 一つ、質問通告に入っておりませんが、公取にお伺いしたいんですけれども、先ほど来議論があります大企業、中小企業の話であります。

 今回の改正で中小企業が不利になるのではないかというような御指摘があると思いますけれども、この点について公取として今どういうお考えなのか、最後にお伺いをさせていただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 お答えいたします。

 独占禁止法の執行に関しまして、特に中小企業等から非常に御関心がございますのは、優越的地位の濫用とか不当廉売とか、そういった形で中小企業に非常に不公正な取引方法が行われている、それに対して公正取引委員会としてしっかり取り締まるべきではないかという御議論だと思います。

 今回の改正におきましても、中小企業の利益を守っていく、不公正な取引方法を排除していくということに関しまして、私どもの執行姿勢は何ら変わることはございません。しかも、審判制度が廃止されたからといって、中小企業に対する優越的地位の濫用だとか、いろいろな措置に関する執行を緩めていくつもりもございませんので、そこは中小企業の不利益になるということは全くないと考えているところでございます。

越智委員 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹です。

 本日は、独禁法の改正案について質疑をさせていただきます。

 本改正案は、公正取引委員会が行う審判制度の廃止、公正取引委員会の処分に不服がある場合の不服申し立ては東京地方裁判所を第一審の専属管轄とすること、公正取引委員会の処分前の意見聴取手続の整備等をその内容とするものです。

 平成十七年の独禁法改正によるいわゆる事後審判制は、処分を下した公正取引委員会がその処分に対する不服申し立て制度を主宰する構造になっており、公正取引委員会がいわば検察官と裁判官を兼ねるようなもので、公正、中立ではないというような批判が主に経済界からございました。

 今回の改正案は、行政処分が正当かどうかの判断を司法に委ね、制度の信頼性を高めるものであって、妥当なものであると考えます。他方で、独禁法違反事件については、経済実態についての高度な専門的知見が必要となり、そのような知見がありませんと、かえって適正な司法判断ができなくなります。

 そこで、公正取引委員会にお尋ねしますが、この独禁法違反事件に必要な専門的知見とは具体的にどのようなものでしょうか。

杉本政府特別補佐人 独禁法は経済の基盤をなすものだと私どもは考えておりまして、そういった意味から、経済取引の実態、さらには経済事業は一体どちらに動いているのかという認識も必要でございますし、同時に法律の解釈、いろいろなものに関しまして非常に専門的な法律の構造になっております。その法律をしっかりと知悉した上で運用していくということでございますので、法律上の専門的な知識も要すると考えております。

國重委員 裁判官は法に関しては専門的知識がございますけれども、経済実態、また市場に対する影響等、そういった専門的知見がこれから必要になってくると思います。

 平成十八年一月四日から平成二十五年三月三十一日までで、独占禁止法違反による公正取引委員会の排除措置命令、課徴金納付命令について審判を開始した比率は一〇・三%です。ただ、平成十七年の独禁法改正前の審判開始の比率はその倍の約二〇%でした。処分を下した公正取引委員会に審判を申し立てても企業側に勝ち目はないし、負担になるだけだというような理由で、事後審判制度に改正された後は審判開始比率が半数程度に減ったと思われますが、今回の改正で第一審機能が東京地方裁判所に委ねられることによって、抗告訴訟の割合、件数がふえると予想されます。

 本法律案は、一部を除いて、公布の日から起算して一年六カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされており、施行まである程度の期間が設けられていますが、改正を前提とした裁判所の受け入れ体制は現在どのようになっているでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案におきましては、裁判所における独禁法違反事件の審理に係る専門性の確保のために、公正取引委員会の処分に係る抗告訴訟などについて、第一審の裁判管轄を東京地方裁判所に集中することとされたものと承知しております。

 審判制度を廃止する改正法案が現在成立しているわけではございませんので、裁判所において現時点で具体的な措置を講じているわけではございませんが、改正法の趣旨を踏まえまして、今後、施行までの間、改正法のもとでの適正かつ迅速な事件処理が図られるよう、研修の実施など必要な措置を講じるものと承知しております。

國重委員 先ほど今井委員の質疑に対する回答の中で、独禁法の違反事件に関しては東京地裁の特定の部に集中して受け入れることも考えているというようなことをおっしゃっていたと思いますけれども、それは専門部を新たに創設するのか、それとも、現在ある商事部で受け入れて、事実上、専門部として機能させるのか、いずれでしょうか。

小川政府参考人 御指摘のように、現在、例えば独禁法上の差しとめ請求訴訟は、東京地裁の民事第八部、いわゆる商事部が担当しております。

 改正法が成立した後、どのような体制で臨むかということにつきましては、いずれにせよ、東京地裁で専門性の確保という観点から、特定の部に事件を集中して配填することなども含めて、適正かつ迅速な処理を行うことができる体制整備を検討するものと承知しております。

國重委員 今後考えていくということですけれども、時間的にも一年半という限られた期間ですので、できるだけ前倒しで検討していっていただきたいと思います。

 いずれにしても、経済にもビジネスにも精通した裁判官が事件を担当して、信頼に足る司法審査をしていかないといけないと思います。

 育成方法を聞こうと思いましたけれども、多分、今後検討するというような回答だと思いますので、事実確認をさせていただきたいと思います。

 現在、公正取引委員会に出向している裁判官の方、これも今井委員の回答の中にありましたけれども、二名いらっしゃる。そして、その二名の方は、現在の審判制度において審判官を担当されているということです。

 それでは、公正取引委員会に出向した経験のある裁判官で、現役で仕事をしている裁判官の方は今現在で何名ぐらいいらっしゃるんでしょうか。

小川政府参考人 これまで公正取引委員会に出向いたしました裁判官の数は、平成三年以降、十四名でございます。現有勢力という観点から見ますと、そのうちの三名が既に退官した者ということでございます。

國重委員 これは質問通告になかったんですけれども、詳しく答えていただいたので。

 公正取引委員会に出向して帰ってきた方というのは、今、全国各地の裁判所にいらっしゃるんですよね。通告なしで答えられなかったら結構です。

小川政府参考人 私どもの方で詳細を把握しておりませんが、恐らく通常の任地だろうというふうに承知しております。

國重委員 今後、専門的知見のある裁判官をふやしていく意味でも、今現在、公正取引委員会に二名が出向しているということですけれども、当面の間、裁判官の育成という意味におきまして、今後、公正取引委員会に出向する裁判官の人数を若干ふやすということも検討に値すると思いますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 一般に、裁判官の出向につきましては、派遣先からの要望を踏まえて行われてきたものと承知しておりまして、今後の公正取引委員会への出向のあり方につきましても、公正取引委員会からの御要望などを踏まえまして、最高裁において適切に検討されるものと承知しております。

國重委員 今回、審判制度が廃止されまして、第一審機能が東京地裁の専属管轄となるということで、いかに裁判官の専門的知見を向上させていくのかということが重要になってきますので、ぜひともその観点での取り組みをよろしくお願いいたします。

 続きまして、裁判所の事実認定についてお伺いします。

 これは、先ほどの三谷委員の質疑と一部重複する部分もありますけれども、先ほど三谷委員には公正取引委員会にお答えいただきましたけれども、次は法務省にお答えいただきたいと思います。

 これまでは、公正取引委員会の事実認定について、地方裁判所の再審査が省略されたのみならず、高等裁判所では、通常の裁判のように、みずから証拠の取捨選択や評価を行って自由に事実認定を行えないために、違反事実に関する司法機関による再審査が十分には保障されていませんでした。

 しかし、今回の改正法案で、審判制度が廃止されることに伴って実質的証拠法則も廃止されます。実質的証拠法則というのは、公正取引委員会の認定事実について、実質的証拠がある場合には公正取引委員会の事実認定に裁判所が拘束されるというものですけれども、これがなくなります。そうすると、抗告訴訟を審理する裁判所が自由な判断で事実認定を行えそうにも思いますけれども、一方で、行政事件訴訟法三十条一項には、「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。」と定められています。

 この行政事件訴訟法三十条一項のいわゆる行政裁量論は、独禁法違反事件における裁判所の事実認定に及ぶのでしょうか。及ぶのであれば、実質的証拠法則が廃止されたとしても、公正取引委員会に対する事実認定の拘束力に大きな変化はないことになると思いますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 実質的証拠法則が廃止された後の裁判所の事実認定のあり方についての御質問をいただきました。

 御指摘いただきました点は、個別の事案に関する事実認定に関するものでございますので、個別の事件を担当する裁判体の判断に委ねられるべきものと承知しております。

國重委員 先ほど公正取引委員会委員長から、議論はされるけれども、これまでとは大きく変わるんじゃないかというような趣旨の御回答があったと思います。裁判所サイドとしては今のような回答をせざるを得ないのかなとは思いますけれども、裁判所が実質的な判断ができるように、どうかよろしくお願いいたします。

 続きまして、今回、審判が廃止され、東京地裁を専属管轄とする抗告訴訟に移行したとしても、公正取引委員会には独禁法違反行為の立証責任があるんでしょうか。それとも、原告である事業者が排除措置命令に記載の事実が存在しないことを主張、立証し、公正取引委員会はその主張、立証を覆すに足りる範囲で反論し、証拠提出いわゆる反証を行えば足りるのでしょうか。

 証拠の構造的偏在、また専門的知識の差からすると、審判制度が廃止され抗告訴訟に移行されるとしても公正取引委員会が独禁法違反行為の立証責任を負担すべきと考えますが、いかがでしょうか。これも個々の裁判官の解釈ということになるのでしょうか。

小川政府参考人 取り消し訴訟における立証責任の問題についての御質問をいただきました。

 御指摘いただきました点も、基本的には個別法の解釈に係る問題でございまして、この点につきましても、個別の事件を担当する裁判体の判断に委ねられるべきものと承知しております。

國重委員 承知しました。

 次に、意見聴取手続について若干お伺いします。

 今回、法案五十八条におきまして、意見聴取手続を主宰する手続管理官が、意見陳述等の経過を記載した調書または事件の論点を記載した報告書を作成し、公正取引委員会に提出することになっております。

 論点整理報告書は、その内容いかんによりますが、処分対象事業者の争点の理解に役立つだけではなく、取り消し訴訟においても、裁判官が事案を迅速に理解する上で有用であると考えます。この論点整理報告書には、どのような記載がなされるのでしょうか。

杉本政府特別補佐人 今回の独占禁止法改正法案の第五十八条四項によります、意見聴取の手続の主宰者である手続管理官が作成する論点を整理した報告書についてのお尋ねでございます。

 これは、意見聴取の全手続が終了しました後、被処分予定者の意見陳述の内容、意見聴取の期日における審査官の説明及び被処分予定者と審査官との質疑応答を踏まえた上で、手続管理官が当該事案の論点を整理して記載するものでございます。

 委員会が被処分予定者からの証拠提出及び意見を十分に踏まえて判断する際の参考に資するためのもので、今のようなものが記載内容かと考えております。

國重委員 そうしますと、論点整理報告書は公正取引委員会に提出するということですけれども、抗告訴訟が提訴された場合には、この論点整理報告書は裁判所にも提出されるということになるんでしょうか。

杉本政府特別補佐人 裁判手続におきまして、裁判における資料として要求があれば、提出することになるのではないかと考えております。

國重委員 ありがとうございます。

 提出することによって迅速な審理が可能となると思いますので、ぜひとも前向きに提出していただければと思います。

 次に、本法案は、もとをたどれば、平成二十二年三月十二日、第百七十四回通常国会に提出された法案であって、その附則第十六条には、「公正取引委員会が事件について必要な調査を行う手続について、我が国における他の行政手続との整合性を確保しつつ、事件関係人が十分な防御を行うことを確保する観点から検討を行い、この法律の公布後一年を目途に結論を得て、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする。」と定められています。

 自己に不利益な供述を強要されないという自己負罪拒否特権や、立入調査、供述録取の際の弁護士の立ち会い権等が議論されることが予想されますが、この調査手続の現状はどのようになっているのでしょうか。大臣にお伺いします。

稲田国務大臣 今委員御指摘のとおり、附則十六条に、「他の行政手続との整合性を確保しつつ、」「法律の公布後一年を目途に結論を得て、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるもの」とされております。

 まず審判制度の廃止を速やかに実現することが重要であるというふうに考えておりまして、行政調査手続のあり方については、附則第十六条の規定に定められているように、改正法案が成立した後、政府として速やかに検討を行ってまいりたいと考えております。

國重委員 最後の質問というか意見になります。

 先ほど申し上げましたとおり、これはもともと平成二十二年三月に提出されたものであって、その当時、「法律の公布後一年を目途に結論を得て、」云々と書かれてあって、そのときに既にこのような必要性があったと思われます。ただ、現在そのような検討は余り進んでいないということですので、本来であれば、実際に検討を同時並行で進めて、今回の改正案に同時に上すことも可能だったんじゃないかと、私は個人的には思います。

 今回、法案が成立した後、調査手続について、早急に検討会を設置して検討を進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 委員御指摘のとおり、改正法案が成立した後は、政府として速やかに検討を行ってまいりたいと思っております。

 具体的な検討方法としては改正法案成立後に決定することになると思いますが、例えば、学識者や関係団体の有識者を構成員とする検討会議を設置して、一年程度をかけて検討を進めていくことが考えられるのではないかと思っております。

國重委員 以上で質疑を終了します。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介であります。

 本日は、独占禁止法改正案についての質疑であります。

 実は、同時刻、内閣委員会でも重要広範の特区法案というのをやっておりまして、私はそちらの筆頭理事を務めておるんですが、この独禁法改正も極めて大事な法改正だと認識しております。ですから、志願してこちらに出稼ぎに参りました。

 審判制度の廃止を柱とする本法案の改正は、大臣御案内のとおり、四年越しの懸案でありました。懸案というか、方向は、そもそも民主党政権時代に閣法として提出させていただき、その後、継続審議、そして廃案となり、また、政権がかわった前々回の国会では現在の与党である自民党、公明党さんの中で議論が進められ、議員立法での提出も我々は検討いたしましたけれども、閣法で受けとめてやる、こういうことで提出されたわけであります。

 安倍政権は民主党政権のものを比較的否定しがちでありますけれども、いいものはいいと言って、ちゃんと引き継いでいただいた度量の大きさには敬意を表したいと思います。

 本来ならばもっと早く成立させるべき法案でありましたから、きょうは確認の意味も含めて政府側の答弁を求めてまいりたいと思います。

 まず、稲田大臣にお伺いしたいと思います。

 独占禁止法はこれまで数々の改正がございました。最近の、平成十七年そして平成二十一年の改正、この二つの改正の審議に私も経産委員としてかかわってまいりました。

 大きな流れは、この二つの改正とも、経済活動が非常に複雑になる、その範囲、領域が広がる、いわゆるグローバル化も進む、取引が複雑になる中で、市場の番人としての公正取引委員会の役割というのは非常に大きくなっている、それがゆえに権能をやはり強化しなければいけないということで、これまで、十七年、二十一年の改正で公正取引委員会の権限を強化してまいったわけであります。犯則調査権の導入、課徴金の引き上げ、さらには減免制度といった新たな制度も入れました。日米構造協議以来の流れではありますけれども、とりわけ十七年、二十一年は外圧というよりは我々の意思で強化してきた。

 強い公正取引委員会にしてきたわけですけれども、一方で、それがゆえに公正取引委員会には透明性、公正性がより強く求められると考えるけれども、大臣はどのように認識されているか。また、その文脈の中で、審判制度の廃止というのは公正取引委員会にとって発足以来の大きな組織変更となるわけでありますけれども、新しい時代の公取に適した制度の見直しだと私は認識していますが、大臣はどう受けとめていらっしゃるか。お答えください。

稲田国務大臣 近藤委員御指摘のとおり、前政権下でなされたものでも、安倍政権においてはいいものはきちんと引き継いでいく、これも同じだと思いますし、私が担当しております行政事業レビューも、民主党政権のものをきちんと引き継いで、よりよいものに改善しているところでございます。

 その上で、日本の経済情勢はグローバル化の中で非常に複雑化しておりまして、その中における公正取引委員会の役割というのは年々重要になっていると思います。

 委員の言葉をおかりすれば、市場の番人としての役割は非常に強くなっていて、それだからこそ、平成十七年、例えば課徴金制度の拡充でありますとか、刑事罰の犯則調査権限の導入ですとか、また平成二十一年も課徴金の対象行為を拡大したりとか、どんどんと公正取引委員会の権限、執行力も強化したところでございます。

 であるがゆえに、公正取引委員会に対しては公正性、透明性も強く要請されており、事後審判の中立性とか公正性に対する外観的な懸念というものを払拭し、その上で、公正取引委員会における独禁法の執行、運用における手続の公正性を確保し、透明性等も拡充していくというのが今回の制度の趣旨でございます。

近藤(洋)委員 大臣、ありがとうございます。認識を共有できたと思います。

 まさに市場の番人としての業務に専念してもらいたい、私はこう思うわけであります。

 検察官と裁判官を兼ねることはやめる。外観的にやはりこれはいかがなものかという批判が強くなってきたわけでありますし、公正取引委員会はマーケットを適正化するために集中排除というものを一つ考えているわけですけれども、当の公正取引委員会が権力を集中させている、公取が独禁法違反じゃないか、こういうことだったと私はよく思うわけであります。まさにそこに市場の番人として専念してもらいたいと思うわけであります。

 そこで、委員長にお伺いしたいんです。

 これまでの独禁法改正の歴史の中で、課徴金減免制度、やはりこれは非常に大きかったと私は思うんですね。もちろん犯則調査権もそうですし、権限を強化してきた歴史の中で、課徴金減免制度は、権限強化だけではなくて、一種、日本に司法取引的なものを導入したという意味においても非常に大きい改正ではなかったかと思うわけであります。米国と違い、日本にはそういうものは刑法上ないわけでありますけれども、課徴金減免制度、リーニエンシー制度は、ある意味では司法取引的な色彩を持つものであります。

 初めて導入されてこれまで七年たったわけでありますけれども、本改正とは直接の話ではございませんが、せっかくの機会ですので、この課徴金減免制度、現時点でどういった点で成果があったというふうに総括されているか、お答えいただけますでしょうか。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘の課徴金減免制度、いわゆるリーニエンシー制度は、平成十七年の独占禁止法の一部改正により導入されまして、平成十八年一月から施行されているものでございます。

 御存じのように、カルテル、入札談合、こういったものは密室の行為でございまして、発見、解明が非常に困難でございます。さらには、意思の連絡ということを立証しなければなりませんので、立証にも非常に困難性が伴うものでございます。

 こういったことを前提としますと、違反行為の発見、解明、さらには立証を容易にするということから、この課徴金減免制度というものは非常に有用なものだと考えております。

 諸外国におきましても、こうした減免制度が大変活用されまして、独占禁止法、アンチトラスト法の執行に役立っているところだと思っております。

 私どもといたしましても、課徴金減免制度、リーニエンシー制度の対象となるカルテル、入札談合等につきましては、十八年一月以降、先ほど申しました法が施行されて以降、公正取引委員会がとりました法的措置、そのうちの相当多くの部分が同制度の適用になっていると考えております。この課徴金減免制度の導入は、違反行為の発見、解明、立証に多大な効果を上げているものだと考えております。

近藤(洋)委員 私も、これは導入されて以来、一定の効果があったんだろうと思います。談合天国とかつて言われていたわけでありますけれども、この制度によって、一定の抑止効果も含めて効果があったんだろうと思うわけであります。

 改めて、また委員長にお伺いしたいんです。

 独禁法違反の事案というのは、刑事罰になる事案も多いわけであります。脱税もそうですけれども、刑事罰と重なる部分が多いわけであります。

 例えば、入札談合というのは、独占禁止法上では、不当な取引制限としての独禁法違反の事案。だけれども、入札談合の場合、そもそも談合罪というのは刑法上の犯罪でございますから、刑法で摘発しようと思えばできる。過去、談合罪、刑法が適用されたことは余り私は記憶にないんですけれども、よくあることは、入札談合で独禁法違反で摘発され、それが捜査を進めるに従っていわゆるさんずい、汚職につながって刑事事件、贈収賄という形で贈収賄事件に発展する、そういう形で刑事罰となるというケースであります。

 したがって、要は、独占禁止法違反の事案、案件というのは刑事罰との関連性も高い、こう考えると、やはり検察当局との連携ということも大事になってくるだろうと思うわけであります。人事の交流も含めて、公正取引委員会の中で捜査能力を高める必要もありますし、検察当局との連携ということも重要だと思いますが、杉本委員長、いかがでしょうか。

杉本政府特別補佐人 従来から、価格カルテルとか入札談合、こういったもので国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案については、公正取引委員会といたしましても積極的に刑事処罰を求めて告発を行っていくという方針を明らかにしておりまして、実際、このような事案につきましては、刑事告発を目指して犯則調査権限を行使して審査活動を行っているところでございます。

 検察当局との交流ということでございますが、現在、検察当局から検察官三名に公正取引委員会に来ていただいておりまして、このうち二名の方は、刑事告発に関する事務への参画、関連事務に係る必要な調整等を担当していただいております。また、検察官以外の検察当局からの出向者も二名ほど来ていただいているところでございます。

 また、個別の事案の刑事告発に当たりましては、告発を円滑かつ適正に進めるという観点から、検察当局との間で告発問題協議会を開催いたしまして、各事件に係る具体的問題等について意見、情報の交換を行っているところでございます。

 このように、検察庁との間では人事交流を行うとともに円滑な刑事告発等のために必要な連携を行ってきておりますので、今後とも密接な連携を進めていきたいと考えておるところでございます。

近藤(洋)委員 今、杉本委員長がお話しされた告発問題協議会でいろいろお話もしている。現実問題、公取当局が刑事告発したケースというのは余りないわけでありますが、いずれにしても、ぜひ実態的な連携を深めていただきたいと思うわけであります。

 杉本委員長の前任の竹島公取委員長は、そこはなかなか、さまざまなレベルで検察当局との連携を深められていた委員長ではないかと私は見ております。大蔵、財務省出身の委員長でありましたけれども、逆に財務省であるがゆえにというか、国税も知っているがゆえにと言った方がいいのかもしれませんが、国税と検察というのも連携する部分もあるでしょうし、非常にそういう意味での連携はとられていたのではないかと思うわけであります。法務省出身の方が委員長になるよりも、そこは、杉本委員長も財務省御出身であられますから、逆にいい意味での連携を多面的に深めていただきたい。ここは要請をしておきます。

 そこで、稲田大臣、先ほども公明党の委員からも御指摘ありましたが、今回の改正では宿題も残っております。附則十六条、ここは大事な点ですので、私も伺いたいと思います。

 一年後に結論を得る、こういうことになっておりますけれども、この一年後に結論を得るという法律が出てから四年間たっているわけでございまして、そもそも、そういう意味でいえば、政府内においては十分検討が本来なら進んでいるんだろう、弁護士の立ち会い権ということも当然議論されているのだろうと思います。

 やはり、強い公正取引委員会、先ほど言ったように市場の番人に専念してもらいたいと思いますし、実際の犯則調査権も得たわけですから、捜査手法ということも含めて検察との連携も強化してほしい。同時に、だからこそ、調べられる側の権利も守らなければいけない、弁護士の立ち会い権というのは必要ではないか、私はこう思うわけであります。

 大臣は、弁護士でもあられますし、大変その辺お詳しいと思うわけでありますが、いかがお考えか、お答えいただけますでしょうか。

稲田国務大臣 先ほども御答弁いたしましたように、附則十六条の検討については、この法案成立後、速やかに検討を開始しなければならないと思っております。

 そして、その附則十六条の規定に基づく見直しの中には、今御指摘の、事件の関係人が十分防御権を行使できる仕組みというのも入るのかと思います。供述聴取時の弁護士の立ち会いなども含めて被処分者の手続保障の向上を求める見解もありますので、こういったことも含めて調査手続のあり方に関する検討を行わなければならないというふうに思っています。

 ただ、独禁法の行政調査手続において、防御権の確保は重要であると同時に、やはり、現状の制度においてこれらの権利の導入のみを行うということになれば、実体的な真実の発見というものも困難になる場合もあるかと思います。公正取引委員会における独禁法の執行の必要性、また強力な執行体制が必要というのも委員が御指摘のとおりでありますので、そういった点も十分勘案しながら検討する必要があろうかと思っています。

 調査手続の見直しについては、今後、本法案の成立後に設けられる検討の場において、我が国における他の行政調査手続等との整合性の確保に留意しつつ、諸外国の、先ほども委員から司法取引のような要素も組み入れられているという、そういった動向なども参考にしながら、公正取引委員会の実態解明の機能の確保と、被処分者の防御権の確保、手続保障という面もバランスよく検討していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 前回の改正のときの議論を思い出すと、ここについてはやはりなかなか事務方からはやりましょうという話にはならないわけでありまして、それはある意味当然だと思うんですね。当時の竹島委員長も、ここの点については頑として、とにかく附則で書きますから、こういうことで終わったわけであります。

 ここはやはり、まさに政治家として、また政治家であると同時に法曹の資格者として専門的な知見もお持ちであられる大臣として、ぜひ判断して御指示をしていただきたいと思います。委員長とも連携をとりながらだと思いますけれども、なかなか事務方も出てこない。公取から捜査当局に波及する、こういう懸念も政府全体ではあるのかもしれません。

 我々は、民主党政権下では、どちらかというと、取り締まられる側の権利というのを大切にしようと、可視化ということも含めて進めてきた政権でございましたから、そういう流れに沿って考えてまいりました。しかし、ここはやはり大事な点でありますので、ぜひ政治としての御判断もしていただきたいという要請をしたいと思います。

 続いて、委員長、公正取引委員会の透明性の確保についてお伺いしたいと思います。

 公正取引委員会というのは、まさに合議体で、公正取引委員会が開かれて、そこで意思決定をされるわけであります。

 この委員会の議事録なんです。委員の発言録はどのように作成されているのか。きちんと間違いなく作成されていると思いますが、過去のものも含めて、公取委発足以来、全ての発言録、議事録はきちんと保管されているのかどうかということをお伺いしたい。

 そして、この保管された発言録についてのアクセス権でありますけれども、どういったラインの方々だったらその発言録を読むことができるのか。現時点では発言録は非公開となっていますが、どの方々であればこの発言録を読むことができるのか。

 まず、議事録の保存状況についてお答えをいただけますでしょうか。

杉本政府特別補佐人 先生御指摘のとおり、公正取引委員会は、委員長、委員、五名により成っております。したがいまして、その全ての委員会につきましては、委員の発言を記した議事録を作成しているところでございます。また、作成いたしました委員会の議事録は、全て保管しているところでございます。

近藤(洋)委員 全て保管している、こういうことですね。

 加えて、勉強不足であれですが、その保管された文書は、過去のものは例えば国立公文書館に移管されるものなのかどうかということの確認が一つ。多分されていないんだろうと思いますが。

 もう一つはアクセス権ですけれども、稲田大臣、今でいうと後藤田副大臣、また政務官、政務三役は、この発言録を読もうと思えば、委員長、読むことはできますか。

杉本政府特別補佐人 まず、公文書館との関係でございます。公文書等の管理に関する法律第八条一項の規定に基づき、公正取引委員会は、委員会の議事録につきまして、保存期間が六十年でございますので、これが満了したものについては独立行政法人国立公文書館に移管しているところでございます。

 それから、議事録のアクセスでございます。議事録は、あくまでも委員会として公正取引委員会の独立性等がございますので、アクセスにつきましては、公正取引委員会事務総局の職員、それから委員会のメンバーも含めてでございますが、その事務に必要がある場合に限り委員会議事録を閲覧できるということにしてございます。

 政務の方々は、そういった閲覧の対象にはなっておりません。

近藤(洋)委員 対象になっていない。だとすると、稲田大臣が、所管大臣ですから、議事録を政策を考える上で読みたいというのは当然あり得ると思うんですが、要求しても読めない、こういうことですか、委員長。

杉本政府特別補佐人 そういうことでございます。

近藤(洋)委員 これは、私はいかがなものかと思うんですね、大臣。

 公正取引委員会の議事録というのは、要旨はホームページに公開されますが、ほとんど中身のないものしかございません。合議制で、投票でされるから、意見が分かれるときもあるわけです。大変大事な意思決定ですし、その積み重ねですから、この事案でどういう判断がされたのかということは大変貴重な資料ですし、この議事録というのはまさに公取の政策決定そのものですから、私は、大臣であれば当然読んでしかるべきだと思うんです。

 大臣、ここはいかがでしょうか。私は感覚として、公正取引委員会の議事録は保管はしている、委員長は読める、恐らく課長級も読めるはずです。きのうレクに来た課長級の職員の方は、私は読んでいますという話でございましたから。それはそうです、職務上必要でありますから。でも、大臣が読めないというのは私はいかがなものかと思うのです。

 今の議論を聞いて、大臣、どうお感じですか。今まで少なくとも、読ませてほしいと言ったことは、まだ日が浅いですから、ないかもしれませんが、いかがでしょうか。どうお考えになりますか。

稲田国務大臣 まず、議事録は、独禁法の七十条で、「公正取引委員会の合議は、これを公開しない。」というふうになっております。やはりこれは、非常に個別の具体的な、捜査に準ずるような、準司法的な手続における委員の皆さん方の合議ですから、非常に取り扱いは慎重にしなければならないのではないかなというふうに思っております。

 そして、先ほど、職員にしても、個別の事案に何らかの関係があるような場合には閲覧することができても、一般的に、個別の事案について議事録を見なければ公正取引委員会の政策が立案できない、今そういうような状況とは私は感じたことはありません。

 したがって、やはり、公正取引委員会の独立性とか、特性に着目をしてその問題については考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。

近藤(洋)委員 しかし、大臣ですからね。一般の公開の話はまた別の話としてしたいと思うんですが、閣僚が議事録を読めないというのはいかがなものかと私は思います。

 それぞれの事案についてどういう意見がなされたのか、また、過去にさかのぼっても、過去のカルテル事件、過去のさまざまな問題について当時どういう判断をしたのかというのは非常に大事な蓄積ですよ。それについて、閣僚、大臣が議事録を見たからといって、指示をすることではないわけです。それは、独立性のある委員会として、それは公正取引委員会としてやるわけですけれども、所管する閣僚として見られないというのは、私は、そんな機密性の高いものなのか、ぜひそこは検討すべきではないかと思います。

 同時に、公開の問題でありますが、大臣、日銀の議事録は完全公開ですね。何年か後に完全公開です。

 これはまさに公文書管理法の議論にもなりますし、稲田大臣は公文書管理法の担当の大臣でもあられますから、今度我々が、きょう議運でつるしがおりるかどうかわかりませんけれども、提案させていただいている公文書管理法は、閣議の議事録、閣僚懇の議事録、さらには主要な会議の議事録は公文書管理をすべきである、そして一定期間後には全面公開すべきであるといった趣旨の法案であります。私は極めて重要なことだと思っています。その対象に、重要な会議の中に、やはり私は公正取引委員会の議事録もあってしかるべきだと思うわけであります。

 強い公正取引委員会は結構なことですが、それがちゃんと歴史の検証にたえ得るものでなければならない、それは一定期間後に公開されるものでなければいけない、そして、現在進行中のものについては、少なくとも閣僚ないしは副大臣までは、認証官まででも結構です、それを読めるのは当然だと思います。

 公開の原則も含めて、大臣、公文書の御担当の大臣でもありますので、改めて見解を伺いたいんですが、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 公文書管理法、公文書を所管する大臣として、やはり公文書というのは民主主義の根幹を支える国民共通のインフラですから、きちんと管理していかなければならないと思っております。

 先ほど委員長も答弁になったように、六十年間保管したものは公文書館に移管するということでございます。その上で、閣僚が合議の内容を見なければ政策が立案できないかというと、私は、個別の事件の合議についてまで見なければ政策が立案できないというようなものではないのではないかと思っています。

 もちろん、審決自体はもう文書で公開されているわけですし、合議については、私は、公正取引委員会の独立性確保という意味から、行政機関からも独立しているという公正取引委員会の特質からも、きちんと検討しなければならない問題ではないかと思っております。

近藤(洋)委員 独立性の議論でいえば、日本銀行も独立性の確保が極めて重要な機関であります。日銀法改正のときにさんざん日銀の独立性というのを議論したわけでありますが、私は、日銀政策委員会の議事録が一定期間後に全面公開されているからといって、日本銀行の金融政策が独立性を欠いた形になっているとは思えません。むしろ、逆に透明性が高まり、独立性が高まったのではないかとすら思います。ですから、公開と、ないしは誰かが見るということと、独立性が損なわれるというのはイコールの話ではないと考えます。

 この話、私は多少こだわらせていただきたいと思いますし、これからも公文書管理法の議論が場を移して内閣委員会で行われる、こういうことでございますから、こちらでしっかり議論させてもらいたいと思います。

 その範疇の中で、強い公正取引委員会、力を持った公正取引委員会であることは私は大事だと思います。しかし、その裏側で、やはり透明性の確保の仕組みというのはあってしかるべきである。これまでの公取の蓄積をオープンにすることで、政策なりさまざまな部分で社会にプラスに働く、知見を広めるという効果もあると思います。公開の仕方はいろいろ知恵の出しようなんだろうと思いますが、今の公開の仕方はほとんど公開していないに等しい、こういうことであります。

 杉本委員長のお考えもトップとしておありになろうかと思いますが、また改めて機会をいただければと思います。

 この話をやるとあと五時間ぐらい必要ですので、時間は五分前でございますが、切りのいいところでございますので、質疑を終了させていただきたいと思います。

富田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、独占禁止法改正案に対する反対討論を行います。

 討論に先立ち、独占禁止法の根幹にかかわる審判制度の廃止という重要な内容の本改正案を、提案理由、質疑、採決までわずか三時間、参考人の意見も聞かないまま、一気通貫で処理するという拙速な委員会運営に対して厳しく抗議をするものであります。

 本改正案の反対理由の第一は、準司法的手続である審判制度を廃止することは、独立行政委員会としての公正取引委員会の権能と独立性を弱め、談合、カルテルの摘発や優越的地位の濫用の是正など、公正な取引ルールを確立するための独禁法の執行力を弱めることにつながるからであります。

 第二は、日本経団連の役員企業の過半数が談合、カルテルという企業犯罪の常習犯となっていますが、経団連は、みずからの談合体質を正す真摯な自己改革をせずに、逆に、検察官と裁判官の兼任などという俗論を流し続け、審判廃止を求めてきました。本改正案は、こうした本末転倒な経団連の要求に応えるものであり、中小企業者、消費者、国民の要求ではありません。

 また、改正案は、第一次安倍内閣の官房長官のもとに設置された独占禁止法基本問題懇談会の、審判制度は維持するとした報告書の結論を、何の説明もなく、完全に覆してほごにするものとなっています。二年近く、三十五回にわたって慎重に議論した同懇談会の有識者、産業界、消費者など国民各層の代表意見は、本法案の根拠である附帯決議とは全く反対のものであり、これを何ら説明もなく否定することは、懇談会代表の努力に対する冒涜であります。

 第三は、処分前手続に関して、審判制度の廃止に伴い、複雑な経済事案に対する公取の高い専門性と判断を尊重する趣旨から設けられてきた実質的証拠法則などの公取の権能を削除し弱める一方で、被審人である当事者に対しては、行政手続法上の聴聞手続をも上回る、余りに手厚い防御権の保障手続となっているからであります。

 その上、附則第十六条で、公取の事件調査において、関係者に一層の防御権を確保する観点から見直すとする条項まで置かれています。どこまでも経団連の思惑どおりとなっており、容認できません。

 第四は、一社で市場シェア五〇%超などの独占的状態に対する競争回復措置命令、すなわち企業分割命令に対しても排除措置命令と同様の手続を準用するとしている点です。

 二〇〇五年の独禁法改正で現行の事後審判制度に変更した際も、競争措置回復命令に関する審判については、企業分割という影響の重大性に鑑み、従前のいわゆる事前審査型審判制度を残した経緯があります。なぜ準用なのか、十把一からげにすることには賛成できません。

 以上申し述べて、反対討論といたします。

富田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより採決に入ります。

 第百八十三回国会、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、宮下一郎君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の諸点について格段の配慮をすべきである。

 一 独占禁止法違反事件が複雑な経済事案を対象とする専門性の高いものであることに鑑み、審判制度の廃止に伴い、公正取引委員会の行政処分に係る抗告訴訟の第一審を専属管轄する東京地方裁判所における審理及び裁判の専門性を確保するため、早急に専門的知見を有する人材の養成及び確保に努めること。

 二 公正取引委員会の行政処分に係る抗告訴訟の第一審の管轄については、当面東京地方裁判所の専属管轄とするものの、利用しやすい司法制度の実現の観点から、本法の施行状況を踏まえて、必要な見直しを行うこと。

 三 排除措置命令等に係る意見聴取手続を主宰することとなるいわゆる手続管理官については、手続の透明性、信頼性を確保する観点から、その権限・義務を明確化するとともに、その指定に当たっては中立性を確保するよう努めること。

 四 公正取引委員会が行う審尋や任意の事情聴取等において、事業者側の十分な防御権の行使を可能とするため、諸外国の事例を参考にしつつ、代理人の立会いや供述調書の写しの交付等の実施について、我が国における刑事手続や他の行政手続との整合性を確保しつつ前向きに検討すること。

 五 中小企業を圧迫する不当廉売や優越的地位の濫用等の違反行為を迅速かつ効果的に取り締まるとともに、来年四月の消費税率引上げに向けて実効性ある消費税の転嫁対策を講じることができるよう、公正取引委員会の体制の一層の拡充を図るとともに、公正取引委員会と関係省庁との緊密な連携体制を確立すること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、稲田国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。稲田国務大臣。

稲田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

富田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

富田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役副社長石崎芳行君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として法務省大臣官房審議官萩本修君、外務省大臣官房審議官広瀬行成君、文部科学省大臣官房審議官田中正朗君、経済産業省大臣官房審議官広瀬直君、経済産業省大臣官房審議官河村延樹君、経済産業省大臣官房審議官安永裕幸君、経済産業省通商政策局長鈴木英夫君、経済産業省商務情報政策局長富田健介君、資源エネルギー庁長官上田隆之君、資源エネルギー庁汚染水特別対策監糟谷敏秀君、中小企業庁長官北川慎介君及び中小企業庁経営支援部長矢島敬雅君の出席を求め、説明を聴取することとし、また、会計検査院事務総局第五局長太田雅都君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸本周平君。

岸本委員 ありがとうございます。民主党の岸本周平でございます。

 きょうは、一般質疑ということで、茂木大臣の胸をかりまして、産業競争力強化法案が衆議院で可決したわけですけれども、本当に企業の競争力を強くしていくために経済産業政策としてどういう手法がいいんだろうかということについて、これまでの常識的な、オーソドックスな考え方ではなくて、全く新しい次元で、アベノミクスという異次元の政策をとっておられるわけですけれども、異次元という言葉はともかく、新しい次元の政策について問題提起をさせていただきたいと思います。

 もともと企業関係は茂木大臣がお詳しいわけでありますので、簡潔にお答えいただきながらと思います。

 まず、日本の企業の問題点です。幾つかありますけれども、やはり利益率が非常に低い。外国の同じようなブルーチップの会社同士を比べたときに、産業にもよりますけれども、基本的に利益率が相当低いわけであります。個別に数字は言いませんけれども、物によっては半分以下のような産業もあるわけでありますから、やはり利益率を高めていっていただくということが大変重要になってくるだろうと思います。これについても後ほど御見解を問いたいと思います。

 一方で、安倍内閣は、法人税の実効税率を下げるということを提案されています。この点については、私も全く賛成、同感であります。現実に、平成十年度に法人税率を下げてから十三年間全く下げてこなかった中で、民主党政権のときに十三年ぶりに法人税の実効税率を下げたわけであります。私どもも、法人税の実効税率を下げることによって企業が競争力を持つことはとても重要であろうと思っています。

 一つは、企業そのものが払う税金が減るわけですから、それで内部留保をためるのか、あるいは新たに設備投資をするのか、フリーハンドを持つわけでありますから、企業の競争力も増します。法人税の実効税率が下がれば資本政策に影響を与えますので、そのこと自体が当然設備投資を誘引するということも経済学説上言われているわけですから、その結果として、日本経済全体が投資がふえるという形で強くなっていく。二つのメリットがあるわけであります。

 そこで、法人税の実効税率の引き下げには大賛成なのでありますけれども、今回、震災復興のための三年間の特別法人税の増税分、一年前倒ししておやめになる、その財源をどうするのかということはまたこれからの議論になると思いますけれども、税収がふえてくるでしょうということですから、代替財源は必要ないんじゃないかという議論も仄聞いたします。来年以降、法人税の実効税率を下げていくときに、代替財源をどう考えていくのかということが非常に重要になってくると思います。

 これは野党の立場で申し上げるのでお許しをいただきたいんですけれども、今の安倍内閣、運もお強くていらっしゃって、経済政策は大変うまくいっていますが、財政規律に対してはいささか甘過ぎるのではないかという懸念を持っております。

 例えば、法人税の実効税率を下げていく。これは私どもも二十三年度改正でやりましたけれども、税率を下げると当然減収になります。しかし、当然のことながら、これだけの財政危機にあるわけですから、減った分はどこかから財源を持ってこなければいけない。レベニュー・ニュートラルでなければいけない。これは原則であります。

 そこで、当時の民主党政権は、必死になって経団連あるいは関係の諸団体と交渉しまして、減価償却制度を見直す、欠損金の繰越控除制度を見直す、小さな金額でしたけれども貸倒引当金制度を見直す、あるいは試験研究を行った場合の特別控除を三割から二割に減らす。つまり、対象となる税金の課税ベースを拡大することによって、税率を下げても増収分がありますので、それでレベニュー・ニュートラルを目指しました。

 残念ながら全額は賄えなかったわけでありますけれども、心構えとして、法人税の実効税率を下げるときには、当然、その減収分は代替財源を用意するということがとても大事だと考えております。

 実際に、ヨーロッパを中心に法人税はどんどん下がっております。もちろんアジアの国もそうです。ヨーロッパが法人税率を下げていくときは、当然ですけれども、彼らもレベニュー・ニュートラルを目指しています。

 ドイツが二〇〇七年に税率を引き下げましたけれども、このときは支払い利子の損金算入を制限するなど、大体イコールフッティングといいますか、法人税の引き下げで三百十六億ユーロの減収になるんですけれども、課税ベースの拡大で約二百七十億ユーロ稼いで、できるだけ財政に影響を与えないように努力をされて、結果として、約五十億ユーロ、GDP比でわずかに〇・二%の赤字ということで、課税ベースを拡大して税率を引き下げるということをやったわけであります。

 一方で、このときにドイツは付加価値税率を三%引き上げておりますので、全体の財政はもちろん収支がプラスになっているわけでありますけれども、企業分野でもとんとんになるぐらいの課税ベースの拡大をしています。

 イギリスも同じでありまして、二〇一一年度にやっておりますけれども、法人税率を引き下げました。減価償却制度を見直して税収を足しましたけれども、実はそれだけでは足りませんでしたので、このときイギリスは銀行税を導入しております。銀行税を導入して、何とプラス〇・〇五%、小さな世界でありますけれどもプラスにしています。企業分野からの増減税は、トータル増税という形で、法人税の実効税率を下げたわけであります。

 さらに言いますと、古典的な例でありますが、レーガン税制改革。これも、実はレーガンさんは二つ税制改革をやっていまして、一回目は大失敗に終わっています。このときは所得税を大幅に下げました。そのこと自体は時代を先取りしていたわけですけれども、彼らは、ラッファー曲線という、覚えていらっしゃると思うんですけれども、ともかく減税したらみんな楽しくなってお金を払うから税収がふえるんだというラッファー曲線を想定して、大減税をしました。そして、法人税も、特別償却を導入したり、税額控除を入れたり、こちらも大減税をしました。

 結果として、景気はよくなったんですけれども、その税収効果だけでは追いつかなくて、大変な赤字を出してしまいました。このときから双子の赤字が始まるわけであります。

 ただ、このことに懲りて、一九八六年改正では、レーガン税制改革も税収中立という考え方で、法人税率はこのとき四六から三四まで大胆に引き下げていますけれども、課税ベースを拡大しています。

 このとき、これもややマジックがありまして、五年前に租税特別措置をがんと拡大していたものを縮小することで税収を出してくるということで、一回目に失敗しているのを取り戻すような形ではありましたけれども、八六年だけを見れば少なくとも税収中立という考え方をとっているわけであります。

 そこで、法人税率引き下げは茂木大臣も賛成いただけると思うんですけれども、税収中立、財政規律の問題について、課税ベースを拡大しながらということについての御見解を問いたいと思います。

茂木国務大臣 多岐にわたる御指摘をいただいた上で御質問をいただいたわけでありますが、確かにレーガン政権は、一期目におきましては、ラッファー曲線は私も覚えておりますけれども、そのとおりにはいかなかった。二回目、八六年の改正におきましては、レベニュー・ニュートラル、こういう政策をとった。

 岸本委員はちゃんとレベニュー・ニュートラルと言える。以前、御党の総理経験者の方がアメリカへ視察に行ってきたんですけれども、レベニュー・ニュートラルの話を聞いてきて、レベル・ニュートラルとずっと言い続けた元総理もいらっしゃいました。

 それはともかくといたしまして、先日、岸本委員は、法律の問題について、どういう課長が偉くなるかということで、法律を一本通した課長が偉くなる、その法律が使われる使われないということは関係ないと経験に即したお話をされましたが、税についても同じようなところはあると思っております。

 法人税をやはり引き下げていかなければならない。それから、やはり中長期的には、税としての中立性を保っていくということは必要でありますけれども、単に税率を上げることより、いかに税収を上げていくか、こういう視点が少なくとも現在の日本の景気回復局面においては必要なんだろうと思っております。

 平成二年から、日本の財政赤字、バブルが崩壊して膨らんでまいります。二十数年の財政赤字の拡大の要因分析、実際にしてみますと、やはり社会保障費の増大、これは極めて大きな要因ではありますけれども、長引く景気の低迷によります税収減、これが一番大きな要因ということでありまして、景気を回復させて税収が上がるような措置をとっていくということが必要ではないか、そんなふうに思っております。

 法人税の引き下げを行う。同時に、単に法人税の中だけで税収中立を図るということだけではなくて、諸外国、ドイツの例、それからイギリスの例、お示しをいただきましたが、確かにメルケル政権でも、付加価値税率の引き上げとともに課税ベースを拡大しておりますが、法人税率の引き下げということを行って、法人課税にとってはネットで減税になっております。

 そしてまた、イギリス・キャメロン政権におきましても、法人税を引き下げる、一方で銀行税等々の創設を行っておりますが、ここでもネットでは課税負担の軽減ということになっていると考えております。

 今、まずは企業がしっかりと再生できる、そして再生して収益が上がった企業が賃金や下請中小企業、関連企業等への条件の改善等々を行うことによって、最終的には所得もふえ、それが消費の拡大につながり、さらなる生産や投資を生む、こういう好循環をつくってまいりたいと考えております。

岸本委員 現職の閣僚としてはそういう御答弁になると思うんですけれども、つまり、課税ベースを拡大するということは、税収をその分取り戻すということだけではないんです。行政政策の中立性を担保することにもなるわけですが、これはアメリカの経済を対象とした実証研究ですけれども、法人税を下げると、それで失われた税収の半分ぐらいを景気がよくなることによって取り戻すという実証データがあります。だけれども、それは半分しか取り戻さないわけです。

 実は、財政規律という観点からすれば、これは財務大臣に言わなきゃいけないんですけれども、いわゆる保守的に、コンサーバティブに見積もりをしていくとか、そういう姿勢が大事なわけですから申し上げているわけであります。それは、風が吹けばおけ屋がもうかるで、とんとんとんとんいって、好循環で税収がふえるというのはそうかもしれませんが、そういう見積もり方を政府はしてはいけないんです。

 話は脱線しますけれども、もともと、財政当局が本当に財政規律を守る気持ちがあるのかということは、ビッグクエスチョンなんです。財務省、大蔵省、私は勤務しておりましたけれども、彼らは本当に財政規律を守ることに専念しているのか。むしろ自分たちが、霞が関、永田町の政治シーンの中で、組織にありながら一人の政治プレーヤーとして、いろいろなツールを持ってそこに参画することに重点を置いているのか。これは、私の経験では、恐らく後者にかなりのウエートがあるというふうに思わざるを得ないんです。

 一つだけ例を言います。

 どこの国も税収見積もりをします。必ず予算にはそれが必要です、歳入が必要ですから。税収見積もりをするには経済成長見通しが必ず必要になります。この経済成長見通しを財政当局がやっている先進国はほとんどありません。

 なぜなら、どこの財政当局も見積もりを蹴上げるんです、楽ですから。もちろん、政府としてのメッセージもありますよ。経済成長を蹴上げれば、税収がふえる前提で予算が楽に組める。途中で、いや、景気が悪くなったので減収になりましたとか、いろいろな言いわけができますから。

 したがって、財政当局が、あるいは政治家である財務大臣、あるいは政治家たる内閣、あるいは大統領が、どうしてもそこは、政治家たるもの、予算を大きく配りたいですから、税収見積もりを上げたい。したがって、経済見通しを高く見積もりたい。

 ヨーロッパの先進国では、アメリカもそうですけれども、見積もりは第三者機関にさせるんです。独立した第三者機関に政府経済見通しなるものをさせて、まあ政府かどうかはあれですけれども、その前提で税収を見積もれと。こういうことが先進国で行われているにもかかわらず、日本の財政当局は全くそれを採用する気はないんです。それは、彼らがコントロールできなくなるからです。私は財務金融委員会で四年間言い続けましたけれども、彼らは全く動かない。

 そういうことでありますから、少なくとも私たち立法府は、財政再建をなし遂げるためには、コンサーバティブな立場で議論をすべきであるということを申し上げたいと思います。

 もう一つの中立です。

 実は、租税特別措置というのも、これは本当によいのかどうか。つまり、これまで私もそっちの世界にいましたので、いわゆるターゲティングポリシーで、この分野、分野を租税特別措置で誘導する。主としてインセンティブですよね。ペナルティーはよくないです、インセンティブで誘導していく。前の法案でも言いましたけれども、こういう経済産業政策が本当によいのかという疑問を持っているんです。

 私も自民党税調に数年座っておりましたけれども、まさに電話帳をもとに、各業界の団体が来て、族議員さんと一緒になって租税特別措置をとりに行くわけです。今なさっているかどうかわかりませんが。そういうことで癒着が生じるわけであります。

 租税特別措置は、そういう意味で癒着が生じるからよくない。したがって、民主党政権のもとで、租税特別措置の透明性を高めるための租特透明化法を通させていただきました。そして、この租特透明化法に基づいて、少なくとも一決算年度の結果は出ているわけであります。これから二年度、三年度と積み重ねて、本当に租特が効果があるのかということを検討していかなければならないと思っています。

 それで、脱線しますが、租特だけじゃないんですね。

 今御議論になっていますが、消費税が一〇%になったとき安倍内閣は、与党の中での御配慮で、軽減税率を御検討なさるというふうに聞いておりますけれども、これもいろいろな議論があっていいと思います。メリットもデメリットもあります。給付つき税額控除のメリット、デメリット、どっちもどっち。これは本当に効き目の問題であって、どっちもメリット、デメリットがあることは承知しておりますけれども、やはりここに癒着が生じるわけです。

 あなたの業界のこれは軽減税率ですよ、おたくは違いますよ。そうなると、おたくは違うと言われた業界は、やはり走りますよね、何とかしてください、茂木大臣と。こういうことになるわけですから、そこに癒着が生じる。

 例えば、新聞を軽減税率にしてくださいといって新聞協会は大変なプレッシャー団体に今なっていらっしゃいますけれども、新聞を敵に回すのは怖いですよね。怖いですよ、私だって怖いですよ。では、新聞協会に軽減税率にしてくれと言われたときにどうするのか。そういうことが全ての業界に起きるから私たちは反対しているわけです。租特も同じことがあるのではないかと思っています。

 それで、本当に日本の法人税率が高いのか、実効税率が高いのかという問題であります。

 例えば私が勤務しておりましたトヨタ自動車、あるいは経団連会長を出していたキヤノン、もう御存じのとおりで、製造業で、試験研究開発をたくさんやるところ、あるいは設備投資をふやしていくところは、租税特別措置がありますので、実は実効税率は結果として非常に低くなります。

 ただ、私がトヨタにいた経験からすると、租特があるから投資はしません。これは経済学説は違います、大事な投資ですから。需要があって、マーケットがあって、売れるかどうか徹底的に議論して、租特があるなんという議論は絶対ありません。それで、結果として、決算が出たときに経理部長が喜ぶわけです。こういう税制があるので使いますと、これだけ実は内部に戻りますと。

 こういうことで、製造業、あるいは医薬品業界もそうですけれども、租特を使ったところは結果的に得をする。そのこと自体が試験研究をたくさんする製造業を応援することになっていましたから、ある時代までは私はそれでも結果オーライではなかったかと思います。自分がやっていましたので、そういうふうにみずからを慰めているわけであります。

 しかし、サービス産業は、六割も七割も占めている中で、試験研究開発が余りない。大型の設備はするところがあるでしょうけれども、トータル設備投資も少ない。サービス産業は、実は租特の恩典がないんですよ。では、今度、サービス産業向けの租特をつくるんですか。もうそういう時代じゃないと思うんですね。

 そうだとするならば、租特をやめて課税ベースの拡大をする。三千億円の租特を全廃すれば、法人税一%は四千億円でほとんどチャラになりますから、租特をやめる。もちろん、ほかの租特もありますが、まず企業向けをやめる。そのことで法人税率を下げる。もちろんほかの財源を探してきても結構ですよ。ともかく、租特をやめて法人税率を下げていけば、実は今まで恩典のなかったサービス産業を応援することにもなるわけであります。

 そういう部分もあって、中立的で癒着もない、競争力を強化していく一つのツールとしてそういう考え方もあるのではないかと思っておりますけれども、まず、租特透明化法による検討結果と、今の私の見解に対しての大臣の御意見を承りたいと存じます。

茂木国務大臣 租特透明化法、平成二十二年に施行されました。これに基づきます調査を見てみますと、研究開発税制であったりとか中小企業投資促進税制など広く利用されている税制もある一方、グリーン投資減税のように当初の見込みよりも利用が低調な税制も存在することが明らかになりました。

 これは、御案内のとおり、ことし初めて報告をされた事案でありまして、今後も調査を行ってまいります。そこの中でさらなる検討を進めていきたいと思っております。

 租特をどうしていくか、さまざまな議論があると思いますが、日本におけます租税特別措置、御指摘いただいたような研究開発であったりとか中小企業の支援など、業種横断的なものであります。また、基本的には、一つの政策目的のために行うわけでありますから、時限立法といいますか、期限を区切ってやっていく、こういったことが必要だと思っております。

 租特がいつから始まったか。

 古い歴史はわからない部分もありますけれども、紀元一七年、ローマで、ちょうど三代皇帝のティベリウスの時代でありますけれども、西アジアの小都市で大地震が起きます。三つの都市が崩壊をいたします。そのときに、ティベリウスはローマの元老院に対して二つの提案、了解を求めます。

 その一つが復興に係る公共事業、これはローマ帝国において行う。大体一億セルテルティウスという、当時の単位でありまして、これを今の単位に換算するのは難しいんですけれども、二十五兆円ぐらいになるのではないかなと。

 もう一つは、ローマにとって虎の子であった属州税、これをこの三都市については五年間猶予するということで、それによって民間活力でしっかりと復興してくれと。実は、これをとることによって、一つの都市は属州税が四年目から払えるようになりまして、これも時限立法の典型的な例であります。御案内のとおり、古代ローマにおきましては、大きな災害が起こりますと、このティベリウス方式を以降の復興に使うことになるわけであります。

岸本委員 茂木教授の講義をいただいて、私も思い出しました。そうなんですね。租税特別措置そのものが、政策ですから、全部が全部悪いということであれば今までなかったわけですからそうなんですけれども、それを二十一世紀の今私たちがやるべき経済産業政策として、少しその考えを変えていってはどうかという問題提起をさせていただきました。

 もう時間もありませんのであと一つだけ問題提起をいたしますが、実は企業が今内部留保をためています。これをともかく吐き出させなきゃいけない。投資をさせる、あるいは賃金を上げさせるというような御議論がありますし、場合によっては内部留保課税をしたらどうかというような御意見もあります。

 ただ、私は、全くそういう立場はとりません。それは余りにもパターナリスティックな政府の介入に過ぎると思うんですね。企業がみずからの存立基盤をどう考えていくのか。内部留保をためることはいろいろな変化に対応するためにやっている資本政策でありますから、それに対して政府が余り干渉するのはよくないのではないかと思っています。

 というのは、個別名を出しちゃいけませんけれども、シャープとかパナソニックは大変な目に遭いました。しかし、彼らは内部留保を持っていたから倒産しなくて済んだわけです。雇用も守られたわけです。そういう部分もあるわけです。

 企業は、あした倒産するかもわからない中で内部留保をためる。ため過ぎるのはよくない。それを学者が言うのは結構だけれども、政府がそれに対して介入をする、場合によっては税制なりで介入するということは全くおかしいと私は思っていると申し添えまして、また機会があれば残りを続けさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、吉田泉君。

吉田委員 民主党の吉田泉です。

 きょうは、経産委員会で質問の機会をいただきました。ありがとうございました。

 私からは、ただいま原発事故と必死に闘っている福島県浜通りの課題を二つほど取り上げて、お話をさせていただきたいと思います。

 まず一つは、浮体式洋上風力発電実証事業ということでございます。

 震災の年の夏でしたけれども、政府は、東日本大震災からの復興の基本方針を作成しました。その中で、福島復興の目玉は二つあると。一つは、医療機器とか、医療産業の集積地にする。もう一つは、再生可能エネルギーの拠点整備をする。そして、この二つのうちの後者の中心的な事業が洋上風力発電ということでございます。

 巨大な新産業ということで、地元でも大変期待感が高まっている状況でございます。また、国全体としても今新しいエネルギーのベストミックスを探っているわけですけれども、この風力発電は太陽光と並んで非常に有力な再エネである。この二つがうまくいかなければ、大方針である脱原発依存というようなことも本当に絵に描いた餅になりかねない。いわば日本のこれからの命運を握る事業の一つであると言ってもいいと思います。

 今、福島県沖で、三年間にわたる国の実証事業が始まっております。複数の浮体式風車と変電所、ウインドファームというそうですが、これは世界で初めての試みである。

 この間、十一月十一日、運転開始式というのが行われて、赤羽副大臣にもおいでいただきました。全体としては天候の関係で若干おくれているということですが、いよいよ本格的な実証運転がこの十一月から始まるということでございます。

 改めて、政府として、この実証事業の位置づけといいますか、抱負なり御決意を聞かせていただきたいと思います。

田中大臣政務官 吉田委員にお答え申し上げます。

 福島県沖におけます浮体式洋上風力発電の実証事業でありますけれども、本格的な事業化を目指したものといたしまして、委員御存じのとおり、世界初となる浮体式の洋上風力発電所を洋上に建設いたしまして、世界最先端の技術開発、実証をぜひとも進めていきたいと考えるところであります。

 先ほどもありましたように、先般、十一月十一日より二メガワットの実証機が運転をスタートいたしました。そして、来年度には、世界最大となります七メガワットの浮体式の洋上風力発電設備が設置される、そういう予定でおります。

 本事業におきましては、日本の誇る風車製造技術、造船技術はもとより、数十年にわたり強度を保てる製鉄技術、アンカーと洋上設備をつなぐ鎖の製造技術、荒れる洋上における変電設備技術など、オール・ジャパンの技術が結集された一大プロジェクトと位置づけております。

 ぜひとも、この事業を通じまして、浮体式洋上風力発電技術の確立、事業化につなげていきたい、そして同時に、再生可能エネルギー先駆けの地、福島の実現を図ってまいりたいと思います。

吉田委員 ありがとうございました。

 いずれ、商業発電に向けて、機材の生産体制をどうするかとか、さらには固定価格買い取り制度、漁業者との共生という問題、いろいろ課題はあるわけですが、ぜひこの実証事業を無事になし遂げていただいて、洋上風力発電を大きな産業として着実に育成していただきたいと改めてお願い申し上げます。

 二つ目の課題ですけれども、第一原発の汚染水の対策の問題であります。

 この半年余り、汚染水絡みの事故が起こって、今、政府、東電を中心に、緊急対策から始まって抜本対策や、いろいろ検討が続いているという状況だと思います。

 そんな中で、先月、十月十九日ですが、日本水文科学会の学術大会というのが開催されまして、産業技術総合研究所地質調査総合センターに所属する三人の研究者が発表を行いました。テーマは、公開資料に基づく福島第一原発周辺の水文地質構造と地下水流動の検討、サブタイトルで、数十年程度を見越した地下水対策をどう考えるかという研究でございます。

 私は、数日後でしたが新聞報道で概略を見て、汚染水対策を考える上でこれは大変重要な指摘、提案ではなかろうかと感じましたので、きょうぜひ取り上げたいということになった次第でございます。

 先日、私もその研究者の方々からお話は伺ったところでございますが、なぜ今回そういう解析に取り組んだか、きっかけは何でしたかと聞いたら、ことしの五月、政府の第三回汚染水処理対策委員会の報告書が出されたわけですが、それが今回の解析を始めるきっかけだったということでございました。

 まず、今申し上げた政府の報告書では、第一発電所の敷地内の地下水の流れについてどう述べられていたのか、確認をいたします。

糟谷政府参考人 五月三十日の汚染水処理対策委員会の報告書は、地下水の流入抑制を図るために、陸側遮水壁を中心に検討を行った報告書でございます。

 この報告書の中におきましては、地下水の流れにつきまして、発電所敷地内に分布する地下水は、敷地外から供給される地下水に加え、敷地内地盤への降雨浸透により供給され、敷地の西側にある阿武隈山系の方向から東側へと流れているというふうに記載をしているところでございます。

吉田委員 敷地の外からの地下水というのがある、それに加えて敷地の中の雨水、この両方が汚染水の源になっている、そういう捉え方だったわけです。

 それで、その研究者三人は、二つの可能性があるわけですが、そのうちの敷地の中に降る雨水が一体どの程度なのか、場合によってはそっちの比重が大きいということになれば、より受動的な対策に結びつくのではないか、こう考えたというんです。受動的というのは、政府で考えられて実行された地下水バイパスからくみ上げるとか、凍土壁とかは電気を使うわけで、いわば能動的な対策である、それとは違って、電気を必要としない、長期的に継続しやすい対策に結びつくんじゃないか、そういうふうに考えたと。

 そして、東京電力なり地質調査所が発表して、公表されている地層のデータを使って一つの結論にたどり着いたわけであります。それを十月の水文科学会で発表したところ、科学会では、モデル的には妥当であるという評価をいただいたということでございました。

 そこで、確認ですけれども、政府としてはこの研究者の発表の内容をどう承知しておられますか。

糟谷政府参考人 十月十九日の産総研のレポートでございますが、福島第一原発敷地内の地下水、このうち、建屋の中に流れ込んでおるものの大半は福島第一原発敷地内に降る雨水由来であるというものであると承知をしております。

 また、このレポートでは、地下水位を制御する方法として、敷地全体を表面遮水、つまりフェーシングする提案が記載をされておるわけでございます。他方で、短期的には地下水バイパスや凍土方式による陸側遮水壁を併用し、地下水を制御することを推奨している、そのようなレポートであるというふうに理解をしております。

吉田委員 実は敷地の中に降る雨水が汚染水の源だったという解析結果、そしてフェーシングが有効な対策ではなかろうかという発表だったわけでございます。

 一つ確認です。この地域は年間に雨が千五百ミリ程度降ってまいります。それが東電の敷地の中に浸透して、今九百トンぐらいが地下水として建屋に押し寄せているわけですが、この千五百ミリという雨量と九百トンという地下水量というのは、整合性は確認できますか。

糟谷政府参考人 福島第一原発の一号機から四号機のあたりの敷地面積は約八十万平方メートルでありまして、これに対して年間降雨量の約千五百ミリが降ったといたしますと、七十七万立米に千五百ミリを掛けまして、それを三百六十五で割り戻しますと、一日当たりの降雨量は平均で三千トン余りということになります。

 もちろん、このうちどれぐらいが地下の中にしみ込むかという浸透率というのがあるわけでございますけれども、浸透率を幾らで置くかということにもよりますが、地下水の量について、雨水によってかなりの部分が説明できるという可能性があるというふうに考えております。

吉田委員 かなりの部分が説明できる、一応、大ざっぱには整合性があるという答弁だったと思います。

 そこで、改めて大臣にお伺いしたいんです。

 五月の段階では、敷地の外から来ている地下水がメーンの汚染水の源だ、こういうニュアンスだったわけですが、実はそれは建屋よりはるか下の地層を流れていて、今回の汚染水には関係がない、そして、敷地に降る雨水こそ汚染水になる地下水の源であるということが、これは一〇〇%確認されたわけではないんでしょうが、確認されつつあるという段階だと思います。

 そして、フェーシングと言われる敷地の表面の舗装が一番有効な対策であるということになりますと、この半年、政府でいろいろ考えられてきた対策の全体像を見直す必要があるんじゃなかろうかという感触を私は持っているんですが、政府として、大臣として、この産総研の指摘及び提案をどう受けとめておられますか。

茂木国務大臣 建屋付近に流れ込んできます地下水、これが阿武隈山系由来のものであるか、委員御指摘のように、敷地に降ります雨水由来のものであるか、さまざまな見解はあると思っておりますけれども、いずれにしても、地下水を汚染源に近づけない、こういった対策をとっていく。しかも、単体の対策ではなくて、予防的、重層的な対策を政府としてはとることにいたしております。

 雨水ということでいいますと、フェーシングを行っていくということになると思うんですが、このフェーシングの提案を含めて、現在、汚染水の処理対策委員会で、想定されている潜在的リスクを広く洗い出し、予防的、重層的対策を検討していく中で考えていきたい、このように思っております。

 ただ、産総研のレポートを見ましても、雨水は、別に建屋のところだけ雨が降るわけじゃないんですね。敷地内全体で降るわけですよ。恐らく、これぐらいの面積ですと、敷地の中のどこか一部だけに物すごい量の雨が降って、ほかは晴れているなんということは一般的にはないと思うんですね。私は気象予報士じゃありませんけれども。

 今とっている対策は、地下水のバイパスにつきましても、今後とってまいります凍土方式の陸側の遮水壁にしましても、建屋に相当近い部分であります。敷地全体で考えましたら、建屋に近いところでやるということになりますと、雨水由来の地下水についても制御する働きがあるのではないか。そんな観点も含めて、産総研のレポートにおきましても、フェーシングを地下水バイパスや凍土方式の陸側遮水壁と併用することを推奨している、このように承知をいたしております。

吉田委員 予防的、重層的な対策をとるということは賛成でございます。

 そして、汚染水の源についてはいろいろな考え方があると大臣はおっしゃいました。

 実は私、通告した後で見つけたんですけれども、今おっしゃられた汚染水処理対策委員会は、十一月十五日に一つ結論を出した、敷地外から敷地内への地下水の流れ込みはないとする解析結果をまとめたというような報道、これは十六日の新聞だったんですが、何かその辺の情報はございますか。

糟谷政府参考人 敷地外から敷地内への流れ込みはないという結論をまとめたという事実はないということでございます。すなわち、地下水のシミュレーションについて、汚染水処理対策委員会で、現在、集中的に精査を行っている途中でありまして、まだ、確定的な結論を汚染水処理対策委員会としてまとめるには至っておりません。

 東京電力は、これまで、みずから地下水のシミュレーションを行っておりましたけれども、それよりも対象範囲をさらに広げて、モデルをつくって検証いたしております。

 これまでのところでわかったことは、建屋に流入する地下水、一日当たり四百トン、これははかってわかっておるわけでありますが、それ以外に、建屋東側の護岸に流れ込む地下水は一日当たり約四百トンである。その意味で、東京電力の地下水シミュレーションのモデル、つまり、この敷地に流れ込んできているものが八百トンぐらいであるということはほぼ妥当であるということについては、おおむねコンセンサスを得られたところであります。

 ただ、その地下水が一体どこから来ているかということについてはなお精査中でありまして、先ほどのレポートをまとめられました産総研の研究者の人たちにも参加をいただいて、ずっと検証を行っているところであります。

 いずれにしても、これについては、汚染水処理対策委員会として何らかの共通認識の取りまとめをしていただきたいというふうに考えておるところでございます。

吉田委員 ありがとうございました。

 精査中ということでございました。いずれにしても、重層的に考えていこうとなると、フェーシングということについても少し踏み込んで検討していただきたいと思うんです。

 まだ確定的なことは言えないんでしょうけれども、東電の敷地の中でフェーシングをする、もう随分いろいろなタンクが立って、実質的にはフェーシングが進んでいるような状況ですけれども、フェーシングの対象地域というのはどのあたりと考えればいいのか。一号機から四号機までのずっと、七百メーターの幅で一キロぐらいを考えたらいいのかどうか。その辺はいかがでしょうか。

糟谷政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、現在、汚染水処理対策委員会で、さらに対象範囲を広げた地下水の挙動モデルをつくりまして、精査をやっているところでございます。

 フェーシングの効果につきましても、ほかのいろいろな対策の効果とあわせまして、幾つかの場合について、具体的にどういう地下水流入の抑制効果が得られるかということを、そのモデルに基づいてシミュレーションを行うということを今やっておるところでございます。

 フェーシングを単体でやったらどうなるか、また、フェーシングをほかの対策、例えば、フェーシングの境のところにまた別の遮水壁のようなものをつくったらどうなるか、そんなことも組み合わせた場合も含めて、幾つかの場合について効果の検証を行っているところでありまして、そういうことも踏まえて、どういう対策が予防的、重層的対策として適切かということを検討しておるところでございます。

吉田委員 フェーシングというのは、何か弊害はあるんでしょうか。何か問題点があれば教えていただきたいと思います。

糟谷政府参考人 フェーシングは表面遮水でございますので、それを行うことで、雨水が地下に浸透せずに地面の表層を流れることになるわけであります。したがって、今まではしみ込んでいった水がしみ込まなくなるということで、地下水の挙動が変化するということになるわけであります。

 一番極端な場合、地下水の水位が下がることによって地盤沈下するおそれがないかというような指摘もございます。

 また逆に、今度は、フェーシングの表面、表層を流れる水の速度は地下水として流れる場合に比べてはるかに速いわけでありますので、万一、汚れた水がフェーシングの上に流出した場合には海に流れていくスピードが相当速くなるわけでありまして、それに対する備えが必要ではないかという御指摘もございます。

 いずれにしても、フェーシングを行う場合、地下水流入の抑制の効果だけではなくて、フェーシングを行うことに伴うリスクについても検討した上で、汚染水処理対策委員会として、一体どういう対策が適切かということを検討しておるところでございます。

吉田委員 今はコンクリートの表面舗装ということは意図的にやっていませんけれども、降った雨は全部が全部浸透するわけじゃなくて、土の上を通って海に流れ出るのが三割ぐらいという話を聞きました。三割ぐらいは下に浸透している、残りは蒸発している、大ざっぱに言うとそんな状況が今現在もあるわけです。これは、コンクリートで表面を舗装すると、浸透している三割が今度は海に出ている三割にプラスされる、そういう何か相対的な変化になるだけじゃないのかなという気もしているわけです。

 最後に、改めて大臣からちょっと御見解をいただきたいと思います。

 私は、今回の産総研の解析、提案というのは、まだ精査中であるということですが、最終的に検証された暁には大変有力な選択肢になると、素人ですけれども思います。

 従来から、汚染水対策というのは、取り除く、近づけない、漏らさない、この三本柱でやってきたわけですが、フェーシングというのは要するに水を地下に浸透させないということですから、地下水バイパスとか凍土壁よりも、より抜本的な近づけない対策になることは自明だと思うんです。より根本的な解決策である。かつ、工事も地表でやるわけですから、時間もかからず、相対的に低いコストで済むように思います。そういう意味で、汚染水対策としての優先順位は大変高いような印象を個人的には受けました。

 今、政府としていろいろな検討をされているわけですが、今回の産総研からの提案にもっと積極的に対応したらどうかなと思うんです。いかがでしょうか。

茂木国務大臣 フェーシングそのもの、海側におきまして、今御案内のとおり、水ガラスによりまして地盤改良を行っております、その上で恐らくフェーシングもしていくということが検討されていると思います。

 一方、陸側をどうしていくかということで、先ほど申し上げたように、予防的、重層的な対策をとっていく。また、そこの中で、今、専門的な検討が行われております。御案内のとおり、七百八十件に及びます技術応募をいただきまして、その検証を行っているところであります。もちろん、一つ一つのオプションを今の段階で排除するものでは全くないと私も考えております。

 要するに、地下水をとめればいいわけです。それに対して有効な手段があったら全てやればいい、こういう思いで取り組みをしていきたい。フェーシングをするにしましても、どのエリアで、どういう時期に、そしてまたどういう方法でやるか、専門的に検証していただければと思っております。

吉田委員 ありがとうございました。

 汚染水対策というのは、当然のことですけれども、地下水の構造をきちんと把握するのが基本中の基本だと思います。産総研の専門家が解析して、問題提起をしたわけでございます。これを最大限に活用し、より根本的かつ簡易な対策を優先的に採用するよう御検討をお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 本日は一般質疑のお時間をいただきましてありがとうございます。

 前回、一般質疑をさせていただいた際に、東京電力福島第一原発の環境整備というところに着目をして質問をさせていただきました。きょうも、引き続きその辺の話をさせていただきます。

 きょう、東京電力の広瀬社長、最初お願いをしていたんですけれども、被災地の方々とお会いするということで、ぜひともそちらを優先してほしいということで、事前にいろいろとお話を聞かせていただきました。それを、東電さんからいただいた情報も含めて、前回お話ししたことをまとめるところからやらせていただきたいと思います。

 前回、ずっと福島第一原発でいろいろなミスが頻発している、その報道されているミスのほとんどがヒューマンエラーだった、そのヒューマンエラーを抑えていくためにはどういうことをしていくべきかというお話をさせていただきました。

 その裏にあるのは何かというと、何でもそうなんですけれども、プロジェクトを進めていくときに重要なのは、ミス、トラブルをなくす。トラブルシューティングを徹底的にやることによってそのプロジェクトがスピードアップし、しかも質の高いプロジェクトを完成していくということにつながるだろう。これがプロジェクトマネジメントの基本的な概念なんです。

 それで、私から東京電力さんに、今これだけミスがある中で、トラブルシューティングをするために何らかの対策をとられていますかと質問をさせていただきました。そうしたところ、これだけヒューマンエラーが続いているのでこれからつくっていくというふうなことを言われていたので、では、それは何人かの特別チームみたいな形にされるのかと聞かせていただいたんです。そうしたら、回答が来たんですけれども、同じようにまだ検討中ということでした。

 検討中ということで、さすがに対策が遅いんじゃないか、東電さんは当然のことながら今の廃炉事業、汚染水対策であるとか、そういうことに相当時間をとられていて、ヒューマンエラーに対しては本格的な取り組みがなされていないんじゃないか、そこまで手が回っていないんじゃないかというような印象を受けました。

 もう一つ、前回お話しさせていただいたんですけれども、ヒューマンエラー撲滅で私がキーになると思っているのは、何度かサイトに行かせていただいて、見ていて思ったんですが、やはり防護服、タイベックであるとか防護マスクの着用、その必要がないエリアを早急に広げていくということで、これは広瀬社長からも御同意をいただいたというふうに思っております。

 それで、前回のお話の整理になるんですが、防護服、防護マスクは何を避けるためにやっているのか。それは、構内に放射性物質が微粒子になったりしてそこらじゅうに落ちている、建屋の壁面も地面も含め、そういったところにあるものが体内に入ってくることによって内部被曝が起こる、これを避けるためだというふうにおっしゃられていました。内部被曝がやはり一番恐ろしいというふうなこともあり、それを避けるためにやっているということだったんです。

 逆に、格納容器周辺、特に格納容器が破損して底の方にデブリがあり、そこから高線量の放射線が発せられている、それについては避けられるのかというふうな質問をさせていただいたところ、それは避けられないというふうなお話でした。ただ、そこは水に浸っているので基本的に長時間そこにいなければ大丈夫だというお話だったんです。

 そこまでのお話があった中で、やはり今言っていた防護服、それからマスク、そういうものを着なくても作業できるエリアを広げていくことがミスの撲滅につながる、そしてそのためには何をしなければいけないかというと、福島第一原発のなるべく多くのエリアをしっかりと除染するということでありました。

 そこで、では除染が完了するまでに何年かかるんですかと前回の一般質疑の後に東電に確認させていただきました。あともう一つは、構内の屋外、それから建屋、建屋付近、そういう形で区分けをして何年でそういうことをしっかりとやっていけるように考えられていますかと確認させていただいたところ、それも回答がありました。

 まず最初、作業員の目標線量率を設定して除染を行っていきます、第一ステップとしては、五年後までに、作業員が立ち入るエリアは十から五マイクロシーベルト・パー・アワー、主要道路は三十から二十マイクロシーベルト・パー・アワー。第二ステップの十年後まででは、作業員が立ち入るエリアは五から一マイクロシーベルト・パー・アワー、主要道路が二十から十マイクロシーベルト・パー・アワー。最終ステップは十年後以降で、さらなる線量の低減をしていきますということで、大まかな話は決まっている。

 ただ、これにあわせて、では、タイベックは線量に応じていつまで着用しなきゃいけないんですかという、その見通しについて聞かせていただきました。そうすると、まだ今の時点では決まっていないと。正確に読みますと、「現在は、福島第一構内で作業を行う場合は必ず着用することとなっております。今後、どのような線量環境になれば、タイベックを着用しないこととするかは、現時点では決まっておりません(規則等でタイベックやマスクの一般的な着脱基準はあるようですが、福島第一でどう適用していくかは今後の検討との意味合い)。」こういうふうなお話でした。

 私は回答を受けてちょっと寂しくなってしまいました。このような状態がこれから先も、先ほどの質疑にもありましたような汚染水対策であるとか、燃料棒の取り出しであるとか、そういうことと並行して、まだまだ続くのであればミスは防げないんじゃないか、私はそういう印象を受けてしまいました。

 非常に長くなったんですけれども、私が何を言いたいかというと、目標が現時点でできていないということは、まだまだミスが出るでしょう。なぜミスが出るかというと、やはり、いいか悪いかは別にして、東電にあそこの中の作業を全部任せているからじゃないかと思っているんです。

 当然のことながら、東電には事業者としての責任がある、それから、原子力発電に係る高度な技術を要するような作業はやはり東電にやってもらうというお話があると思います。

 そこで、ちょっと大臣に御見解をいただきたいんですけれども、確かに、国が前面に出て事業としてやっていくということでしたが、今の彼ら、東電のキャパシティーというんですか、許容力の中で、これからもそういうふうな形でやっていくのは、私は相当無理があるんじゃないかと。

 前の御答弁でも、国が前面に出て、やっていけるところはやっていくというふうにおっしゃられていました。ただ、私は、構内の除染であるとか環境整備こそ、余り専門的な知識というか高度な技術がなくてもできるところなので、ここから国がやっていくべきではないかというふうに思っているんですが、もう一度御見解をいただければと思います。

茂木国務大臣 ヒューマンエラーについて、ミスは出るものだと。おっしゃられますと確かにそういう側面もありますけれども、必要なことはいかにミスを減らしていくかということだと思います。

 例えば、タンクからの汚染水漏れは、タンクがボルト締めではなくて溶接型のものであれば、随分漏れそのものも少なくなっていた。また、タイベックを着るか、そしてまた防護マスクをかぶるかぶらないにかかわらず、巡回パトロールの人数であったりとか回数をふやす、さらには水位計をつける、そしてまた水門を閉運用にする。さまざまな取り組みで、別にタイベックを着ようが着まいが防げる、低下させられる、こういった措置もある、そのように考えております。

 申し上げてきたのは、炉の設置者は東電であり、現場にも当然その分精通をしております。そして、これまでもさまざまな取り組みをしてきた。その東電には引き続き実施主体としての責任を果たしてほしいと思っておりますけれども、国としてもやるべき事業についてはしっかりとやっていく。

 十八日から、第四号機におきまして、燃料棒の取り出し、これも、もともとのスケジュールより一カ月前倒しで始めることができました。さらには、一号機の中におきましても、恐らく水漏れがあるであろう、ただ、どこの部分であるかわからない。遠隔操作の船によりまして、その一部、どこに漏れが生じているか、こういうこともわかってきたり、一つ一つ事業というのが進んでおります。

 そういった中で、廃炉に係る研究開発の問題、また、汚染水に係る技術的難易度が高い問題、これについてはしっかりと国として責任を果たしていきたい、このように考えております。

木下委員 ありがとうございます。

 やはりいろいろ多岐にわたる作業が現場で行われているので、どこからどこまでを東電がやって、政府主導でやるのはどこからどこまでというのは、いろいろな考え方があると思います。

 そこを否定するお話ではないんですけれども、やはり環境整備というのは基本の部分であり、それで、私が東電から聞いている、例えばタイベックはいつまで着たらいいんだとか、除染がどれぐらいまで進むんだというところは、具体性が余りまだ見えないので、ここを加速化することによってほかの作業も加速化するのではないか。

 そういう意味合いで、そういうことであれば政府主導で引き取っていくというのも一つの考えではないかという提案でございましたので、ぜひとも御検討を引き続きやっていただければと思っております。

 そこで、これは通告にないのですが、糟谷参考人がいらっしゃるので、ちょっとお聞かせいただければと思います。

 先ほどの吉田委員のお話で、フェーシングをするというふうにおっしゃられていた。そこに関連して、私も、構内の除染をどんどんやっていったらいいんじゃないかといったときに、フェーシングをもしするとした場合に、除染を行ってその上からフェーシングをするのか、それとももうそのままかぶせてしまうようにしてやっていくのか、もしも御存じであれば教えていただければと思うんです。

 それはなぜかというと、この辺の話をずっといろいろ考えていて思ったんです。確かに高濃度の汚染水が海に流れることは問題だと思うんですけれども、当然のことながら、あの福島第一原発の構内に微細な放射性物質があるので危ないからタイベックを着ているという状態ですので、雨が降ったら地下水になってしみ込んでいって、それで放射線源に触れなくても、表面にある微細な粒子がそのまま流れていっているという事実はあるだろうと思っておりました。

 その辺も含めて、フェーシングをするときにどうやられているのか、もしわかれば教えてください。

糟谷政府参考人 御指摘のように、水素爆発によって飛び散った放射性物質が地表にあって、それが雨水によって溶け出して流れていくという部分、それが排水溝の中で高い濃度になっていくということも指摘をされるところでございます。

 除染といいましたときに、雨が降ったときに、雨水が地表にある放射性物質とまざらないということだけを考えますと、今あるものをそのままにしながら、その上からフェーシングをするということで、放射性物質が海に溶け出して流れていくということは十分抑えていけるということでありますけれども、他方で、徹底的にやるのであれば、地表を剥ぎ取って、どこか別のところに持っていくべきじゃないかというようなことも言われるところであります。ただ、その場合、一体それがどれぐらいの分量になって、どこに持っていくのか、そういう問題もございます。

 いずれにしても、フェーシングはどういうやり方をするのがいいのか。もちろん、どんな形でも、やれば冒頭に申し上げたような効果はあるわけでありますけれども、地表を剥ぎ取るのかどうするのか、そのあたりについては、フェーシングをやるのかどうかを決めた上で、そのやり方として検討されるべき問題だというふうに考えております。

木下委員 突然の質問にもかかわらず、ありがとうございます。

 やはり相当検討課題があるのかなと思っておりますので、こういったところも環境整備という一つのプロジェクトとして、いろいろな作業と並行して、独立した考え方でやっていかなければならないんだろうと。となると、そのときの主体が誰になるのかということは、しっかりともう一度考えるべきなのかなというふうな印象を私は受けました。

 次に、ALPS以上の性能の多核種除去装置、それから凍土壁、あの辺のものについて、国が前面に出て事業としてやっていくというお話があります。そこで私は、事業としてやるのであれば、やはり国がこれは資産として持ってやるべきではないかというふうなお話を前回させていただきました。

 きょうの朝も、たまたま東京電力さんから汚染水対策について説明を受けまして、そのときに、これは経産省の補助事業だとしっかり書いてあったんです。いわゆる補助金でやっていて、資産自体は国が持つものではなく東京電力さんというふうなことを言われていました。

 私はやはりどうしてもここは疑問を感じておりまして、東京電力に対して、もしもこれから先、この高精度の、能力の高い多核種除去装置もしくは凍土壁のオペレーション上で問題があったとき、その責任の分岐点はどこになるんですかと。当然、資産を持っていて、オペレーションをしているのであれば、私は東京電力だというふうに思ったんです。ただ、きょうの朝、私がぱっと聞いてぱっと彼らが言ったので、確認ができているかどうかというのはあるんですが、彼らは、これについてはまだ検討中です、どういうふうになるかは決まっていない、そういう回答をされたんです。

 これを見て私は思うんですけれども、確かに、前回茂木大臣が、とにかく現場の事態を収束させるんだ、それに集中するんだというのはわかるんですけれども、やはりミスが起こったときに責任の分岐点がどうなるのかということをしっかりと定めておかなければ、事故がもしも起こったとき、もしも取り返しがつかないようなミスが発生した場合に、すぐに対処することができないんじゃないかと思っているんです。

 それを考えれば、やはり、しっかりと事業としてやるというのであれば、私は、国が資産としてそれを取得して、そして、本当の意味で事業としてやっていくべきではないかというふうに思っているんですが、茂木大臣、もう一度御答弁いただければと思います。

茂木国務大臣 先日も申し上げましたが、今必要なことは、誰の責任かということよりも、世界にも例のないような廃炉・汚染水対策について、東電はもちろんでありますけれども、内外の英知を集め、そして国会でも、与野党なくさまざまな議論を行い、よい提案は取り入れて具体的に実施していくことだ、こんなふうに思っております。

 高性能の多核種除去装置、御案内のとおり、これをつくりますと、処理能力がALPSと比べて圧倒的に高まります。同時に、残留の放射性物質は八割程度減容できるという形でありまして、ぜひこれは国として進めたい、こんなふうに思っております。

 責任については、考え方によりますけれども、国が進める事業でありますから、国に責任がない、補助事業だから東電が全て悪い、こんなことを言うつもりはありません。ただ、やはり、試合が始まる前に、負けたときに誰が責任をとるか、こんなことをやっていたら、ベルギーには日本は勝てなかったと思います。

木下委員 ありがとうございます。力強い御答弁をいただいたと思います。

 水を差すつもりは全くないんです。先ほど言われたように、国を挙げて何とかしてやっていくんだ、その思いは私も一緒です。何とかしたいという思いなんです。だからこそ、私はお話しさせていただいています。何か責任の分岐がしっかりしていないんじゃないか、何かあったときに誰が責任をとるんだ、そういうことを言うつもりじゃなくて。

 やはりしっかりとプロジェクトとして、向こう四十年かかるだろうと言われていることを加速化させて、そして、なおかつ正確に、着実にやっていくということを考えるのであれば、今現場はなかなかそういうふうなことは考えられない。実際にそれに携わっている人は、もう本当にそれに集中してしまうから、一々そんなことは考えたくない、それはわかるんです。

 ただ、我が国全体が知恵を絞る、そういうときに、やはりこういう考え方をしっかりと積み上げていくことができる人間も政府が用意して、許容力というんですか、バックアップ体制も含めてやっていくこと、これが私はすごく重要なことだと思っているんです。

 なぜかというと、失敗をしたときどうこうというんじゃなくて、日本はこの事故が起こったことから立ち直ったんだ、どうやって立ち直ったんだ。もしもほかの国で同じような事態が起こったときに、日本はこうやったんだよと。全てこうやって計画もつくり、誰がどういう役割をしたのかということをしっかり後世に残していける、そういうことを私はつくらなきゃいけないんじゃないかと思っているので、ここは冷静にしっかりとプランニングをしていくことが重要だと思っております。

 大臣のおっしゃる、そうはいいながらも一丸となってやっていく、まずはそれに集中するんだというふうな意味合いもわかります。ただ、これは今後の課題になるのかもしれませんけれども、やはりしっかりと責任分岐点ということも含め、それからもう一つ、それに対する法整備というのもしっかりやっていくべきなのではないかなというふうに思っている次第です。

 このままお話しさせていただいてよろしいですか。

 それでは、もう一つ、特例法を整備する予定について聞かせていただきたいと思ったんですけれども、事業としてやる裏づけになるような特例法は私はないと思っていまして、今聞いていると、まずはやっていくという話なので、多分ないと判断をさせていただきます。

 もう一つあるのは、なぜ責任分岐点も含めてちゃんとやっていかなきゃいけないと私が思っているかといいますと、今回、東京電力が金融機関から三千億程度融資を受けた、今後、廃炉に向けて費用は当然かさんでいくと考えています。その融資だけで事業として見通しが立っているのかどうかというお話を、実はこれは広瀬社長に聞きたかったんですけれども、ちょっと通告が漏れておりましたので聞けなかったんですが。

 金融機関は融資をする際に、当然、これから先三十年、四十年やっていく中で、これぐらいの金額までは貸してもここの会社は潰れないでやっていけると思って貸すわけです。ただ、そのときの判断として、先ほどの補助事業、国がお金を後ろからどんどん出している限りは大丈夫だろう、そういうふうな考え方で金融機関が融資をしているんじゃないかと私は思っているんです。これは、金融機関の判断も鈍らせるし、ましてや、後ろから出しているお金イコール国民の血税です。

 ということを考えた場合に、どこまでが東電が責任を持つところ、そして、国が事業としてやるといったときに、事業の範囲がどこまでなのか。これは補助金ではなく、しっかりとした事業としてやるのはここまでだという形で明確にしなければ、金融機関は、国が後ろから補助金として、何か足りなくなったら、本当に危なくなったらお金を出してくれるだろう、そういう判断のもとに融資をしているということが十分考えられます。

 その辺も含めて、事業の区分けということを明確化すべきではないかと思っているんですが、その点については大臣いかがお考えでしょうか。

茂木国務大臣 まず廃炉・汚染水対策、特に委員から御指摘があった現場での除染の問題であったりとか労働環境の整備、これにつきましては東電が基本的に進める。そのために、既に一兆円の引き当てを行っております。さらに、今後十年間で、国から要請を行わせていただきまして、さらに一兆円の積み増しを行う。これを活用してしっかり進めてもらいたいと思っているところであります。

 そして、各金融機関からの融資、これはまさに、東電は事業計画があります、東電と各金融機関の間で話し合って決められるべき問題である、そのように考えております。

木下委員 ありがとうございます。御答弁のとおりだと思います。

 ただ、そのときに金融機関が判断する基準となるのが、国からの補助金も一つの要素になっていると思われるところで、そこを断ち切れという話ではなくて、やはりなるべく明確にしていかなければ、これから先、ちゃんとした事業を継続していくことも難しいのではないかと思っているんです。

 それと同じく、東京電力の分社化のお話が、自民党の中のプロジェクトチームのような形で検討されていると私は聞いているんです。自民党の中のプロジェクトということもあるのでなかなかお答えしづらいと思うんですけれども、今の検討状況はどうなっているのかというお話をお願いいたします。

茂木国務大臣 まず、国が廃炉・汚染水対策、これにつきましては予備費を使ってでも進める。これは融資を引き出すためにやっているわけじゃないんです。一日も早く事故収束を進めたい、廃炉・汚染水対策を進めたい、こういう思いでやっていますので、決して銀行の融資を引き出すために国がこういった事業をやっているのではない、このことはぜひ御理解いただきたい、こんなふうに思っております。

 その上で、東電にとりまして今最優先の課題は、今申し上げた廃炉・汚染水対策を確実に実施して事故の収束につなげていく、同時に、三・一一以降の新たなエネルギー制約のもとで電力需給の安定に万全を期していくということであると考えております。

 そして、電気事業法の改正案、この国会でおかげさまで成立を見ることができました。二〇一八年から二〇二〇年をめどに、最終的には発送電の分離、こういったものも全国レベルで行う形をとっていくわけでありますが、東電におきましては、既に発電・燃料部門、それから送配電部門、そして小売部門、そして本社機能、こういった形の社内カンパニー制を採用しておりまして、これはまさに電力システム改革、こういったものを先取りするものであるということで歓迎したい、そんなふうに思っております。

 その意味で、今後の東電のあり方等々については、各党内におきましてさまざまな議論があると承知をいたしております。今私自身が例えば自民党のその議論に参加しているわけではありませんので、つまびらかな部分まではわかりませんが、例えば、廃炉について独立の組織にする、こういう議論を行う場合に、では人材の確保をどうしていくのか、採算性についてはどう考えるのか、さまざまな論点があると思います。こういったことをそれぞれの党で御議論いただくということは極めて重要だ、こんなふうに考えております。

木下委員 ありがとうございます。

 やはり、大臣がおっしゃられたように、電力システム改革をしっかりと進めていく、そのためにも、東電の分社化は一つのキーになるだろうと思っております。

 その点では、私ども維新の会も含めて、他党もそうだと思うんですけれども、しっかりと会派を超えて議論ができることを目指す。協力をしてこれからの日本の電力システムをつくっていきたいという思いは皆さん一緒だと思っておりますので、ぜひともそういう議論に参加させていただければと思います。

 それでは、ちょっと話をかえまして、これも前回の続きになるんですけれども、先ほど福島第一原発の環境の回復という中でいろいろなお話があったんですが、前回は原子力損害賠償法の見直しについて少し話をさせていただきました。

 というのは、今、原状回復であるとか、構内の凍土壁であるとか、そういったものへの補助金であるとか、それはどういうふうな考え方で出ているのか、なかなかそれに見合った法律がないんじゃないかというふうな話をさせていただきました。きょうは、その辺も含めて、申しわけないんですけれども、原子力損害賠償法は文部科学省の所管ということでしたので、ちょっとお話しいただければと思います。

 それは、凍土壁であるとか多核種除去装置、それ以外の私が言ったような構内の除染であるとか、そういったものも原子力損害賠償法の規定に基づいてやっているのかということです。条文の中に原子力事業の発展に資するというふうな文言がありまして、そこぐらいしか考えられないと思ったので、一度ちょっと内々には聞かせていただきましたが、その辺を御答弁いただければと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 原子力損害賠償法は、原子力損害が生じた場合におきます被害者から原子力事業者に対する損害賠償の制度を定めたものでございます。したがいまして、東京電力が行います福島第一原発の廃炉及び汚染水対策に係る例えば経費の負担といったような問題につきましては、被害者に対する損害賠償とは性格を異にするものだと考えてございます。

 第一条の「原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。」ということについてのお尋ねがございました。これは、当時、原子力損害賠償法の法案審議の際の国会答弁におきまして、「万々一放射能等、原子力による被害を第三者に与えました場合、その損害の賠償に関する基本的制度を定めて、被害者の保護に遺憾なきを期することにより住民の不安を除去し、同時に、」「原子力事業経営の基盤を安定化し、原子力事業の健全な発達に寄与しようとするもの」という説明をさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

木下委員 ありがとうございます。明確に御答弁いただいたかと思います。

 ちょっとまた飛躍するのでややこしくて申しわけないんですが、実は、きょうは外務省の方にも来ていただいています。

 今、原子力の輸出に関する条約を、トルコであるとかUAEであるとかと締結しようというお話があります。それと関連性があるかないかという問題はありますけれども、それと同じく、ある国際条約の批准を目指しているというお話があります。それは何かというと、原子力損害の補完的補償に関する条約、いわゆるCSCという条約であります。

 これは原子力損害の補完的補償ですから、損害に対する補償についての規定をしているんです。その中に対象となる損害が明確に書いてあると思うんですけれども、このCSCの中で、対象となる損害は何であるかということを外務省からお願いいたします。

広瀬(行)政府参考人 お答えいたします。

 今議員御指摘になりましたCSCでございますけれども、これは原子力事故により生じました原子力損害に適用され、この原子力損害の中には、死亡または身体の障害、財産の滅失または損傷、環境回復費用といった損害が含まれております。

木下委員 ありがとうございます。

 私の手元でもう一度ちょっと読ませていただくと、簡単に今お話しされたんですけれども、人身、財産への損害、経済的損失、環境回復費用、損害拡大予防措置の費用、それから逸失利益、これが対象になるというふうになっています。

 ということは、損害の規定が、原子力損害賠償法で対象となっている以外のものも、対象として明確に書かれているのではないか、もしくは原子力損害賠償法では対象になるものを明確に判断しにくいのではないかと私は思っております。そして、このCSCという条約を批准する場合に、恐らく国内法についても、それに準じた国内法の解釈もしくは基準の見直しが必要なのではないかと思っているんです。

 この点については、外務省に聞くのか、それとも文科省に聞くのか、それとも経済産業省に聞くのか、どなたにお聞きするのか。皆さん手を挙げていただいていますが。

広瀬(行)政府参考人 CSCにつきましては、現在、締結に向けた作業を行っているところでございますけれども、いずれにいたしましても、CSCと原子力損害賠償法の関係につきましては、今後とも関係省庁とも連携し、引き続き検討していきたいと考えております。

茂木国務大臣 我が国としてCSCの条約締結に向け決断をしたわけでありますけれども、なぜこういう決断をしたか。例えば、福島における廃炉・汚染水対策に取り組む。海外の企業、例えばアメリカの企業がそういった取り組みをする。そこで何らかの事故が起きたときに、今アメリカの民法上、その企業が損害賠償等々の訴えを起こされる危険があるわけです。このCSC条約に入りますと、そういったことがなくなってまいります、委員御案内だと思いますけれども。そういったことで、廃炉・汚染水対策を進める上でも必要な条約である、このように考えております。

 そして、この条約を締結し、批准していく上で必要になります国内法の見直し等、必要であれば適切に対応させていただきます。

木下委員 ありがとうございます。

 今のお話を聞いた後に私がお話しして、大臣がお答えいただくのかなと思ったことを全て答えていただいて、本当にありがとうございます。まさしく大臣の言われたとおりです。しっかりと国内法を整備していかないといけないと思っております。

 今ちょっと芝居じみたことをしてしまったんですけれども、どなたにお伺いすればよろしいですかと聞いたら皆さん手を挙げていただいたんです。ということは、これは省庁にまたがる問題だと思っているので、その際にやはり必要なのは茂木大臣のリーダーシップだというふうにお話をさせていただいて、そう思いませんかと聞いたときにお答えいただければと思っていたんです。

 ぜひとも、今お答えいただいたように、リーダーシップを発揮していただいて、しっかりとその見直しをしていっていただければと思っております。

 特に、これから先議論が必要だと思っているんですけれども、原子力損害賠償法。これは、今もお話しされたように、やはり賠償のことだけを規定しているものであって、それ以外のところ、範疇としては難しい判断がある。さっきのお話で、環境整備であるとか、事業をどうするとか、私が言わせていただいたときに大臣が言われたように、とにかくもう収束するんだというのもあるんですけれども、やはり冷静になって、これから、国際的な基準づくりを日本はしっかりやっている、世界に対して自慢できるような整備ができているということをやっていかなきゃいけない。

 この原子力損害賠償法については、賠償というふうな名前がそのままでいいのかどうかという問題もあるんですけれども、原状回復であるとか、CSCは損害拡大予防措置の費用とかも対象になっているので、そういうことも含めて、しっかりと議論をこれから先できるようにして、なるべく早く現状に合った法律体系にしていっていただければと思います。ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、時間がまだありますので。ちょっと長くいただいて、ありがとうございます。

 私、実は、先週、国会会期中だったんですけれども、ドイツ政府に招聘を受けまして、ドイツの今の再生可能エネルギー、それからエネルギーシフトという観点において、ドイツに超党派で行ってまいりました。自民党からも出てこられましたし、公明党からも来られていますし、民主党からも来られています。皆で行ってきて、ドイツの主要なところを見て回りました。それから、地方の州政府の環境大臣であるとか、連邦政府の環境担当の方とディスカッションを、丸々一週間続けてまいりました。

 先週、この委員会は大変だったのに、私はちょっと遠慮させていただいて申しわけなかったんですが、その一週間、どんな話を聞いてきたのかというところを、この場をかりて少し報告をさせていただきたい。それと、それについての政府の御見解もいただければということで、まだ少し時間がありますので、お話をさせていただきたいと思います。

 まず、私が行かせていただいたのは、ドイツの南西部にあるバーデンビュルテンベルクという州でございます。フランクフルトよりちょっと南からずっと下の方、シュツットガルトとか、それからカールスルーエとか、そういったエリアです。工業が相当発達している。特にシュツットガルトは自動車産業の盛んなところで、ダイムラー・ベンツであるとか、ポルシェであるとか、そういった工場のあるところに行ってまいりました。

 ここはもともと工業が発達しているところなので、電力需要が非常に高く、原子力発電に対する依存度も相当高いところで、今ちょっと手元にぱっと出てきませんけれども、二〇〇〇年ごろだったと思うんですけれども、原子力への依存度が五〇%ぐらいでした。

 そこの環境大臣にお話を聞いてきたんですけれども、環境大臣のいらっしゃる棟へ行くと、玄関に五〇それから八〇、九〇という大きな数字のモニュメントが立っています。これは何ですかと聞いたところ、彼らは、二〇五〇年までに電力需要を二〇一〇年の五〇%にする、要は二〇五〇年までに電力は半分にする、それから、八〇は再生可能エネルギーを電力供給の八〇%にする、九〇は何かというと一九九〇年と比べて温室効果ガスを九〇%削減する、こういうお話をされました。連邦政府もこれと同じような目標を掲げてやっているんです。

 では、今、ドイツの再生可能エネルギーの割合はどれぐらいかというと、二五%を超えてもう三〇%ぐらいになっている。彼らがなぜこんなふうになったのかというと、一九八六年にあのチェルノブイリがすぐ近くで事故を起こして、それから原発の是非について相当議論があった。それで、ちょっと言いづらいんですけれども、二〇一一年の福島第一原発、あれを見たおかげで、バーデンビュルテンベルク州は政権もひっくり返ってしまった。それぐらいインパクトがあったんだと。

 それを考えたらエネルギーシフトをしっかりやっていかなきゃいけない、原発が四基あったものを二基にするとか、もう既にしている。これから先もどんどんなくしていこうということを彼らはやっている。なぜそれができるのかと聞いたら、彼らは自国の産業発展を再生可能エネルギーにかけていると言うんです。

 我々日本はどういうふうに考えているかというと、やはり電気代が高い。これが原子力であれば電気代をしっかり抑えられて工業が発展するんだという考え方に基づいてやっているんですけれども、彼らは、これから先、世論も九〇%以上が再生可能エネルギーにしていくべきだという中で、原子力をこのまま維持していくことは考えられないと。逆に、特に風力なんですけれども、風力においては世界のトップランナーになって世界を引っ張っていく、産業をそうやって育成することによって自分たちが豊かな国になる、そういう言い方をしていたんです。ここは決定的に違うんじゃないかと私は思いました。

 これを余りしゃべってしまうとちょっと長いので、適当なところで切り上げたいと思います。

 通常国会のときにも茂木大臣にお答えいただいたんですけれども、電力システム改革の中で、ベストミックスというのは、どれぐらいの割合で何をどういうふうにしていくべきだとお考えですかと以前私は聞かせていただいたんです。それはこれから先しっかり考えていくし、それから、電力システム改革の中で、何年に何をして、何年に何をしてというふうなお話はされたんです。

 ただ、彼らは、やはり明確に、何年にどれぐらいにしようというお話をしています。ただ、それが理論的にできるかどうかという問題があって、日本は、例えば二〇三〇年までとか、二〇三〇年代までに原発をなくしていこうというふうに言われていたりとか、いろいろなことがあったと思うんですけれども、やはりちゃんとした目標を掲げなければいけないんじゃないかと思っております。

 この辺、前回から半年ほどたったと思うんですけれども、今、ベストミックスに対する目標というのがあるかどうかをお聞かせいただければと思います。

茂木国務大臣 まず、国会会期中に海外に行けるというのは、大変うらやましいなと個人的には思っております。

 確かに、ドイツ、再生可能エネルギー、二〇一二年の実績で二一・九%。これは、御指摘のように、二〇二〇年には三五%、さらには二〇五〇年には八〇%に引き上げていく、こういう目標の数字を掲げております。

 ドイツはドイツでありますけれども、私は、目標というのは、どこまで実現可能性があるか。ただ数字を並べればいいとは。決してドイツのことを批判しているわけじゃありませんけれども、そういうものだと思っております。

 我が国においては、今、電力については、一つは、新たなエネルギー制約のもとで電力需給の安定に万全を期す。そして、日本はドイツと違って陸続きの国がありません。何かのときにほかから電力を融通してもらう、こういうことができない状況にあります。同時に、もう一つ、電力コスト、これも非常に大きな問題でありまして、日本も再生可能エネルギーを最大限導入しようと思っておりますけれども、これが家庭や企業にとって過大な負担になってはいけない。その点、ドイツについては、固定価格買い取り制度に伴います負担というのが相当大きくなっている、こういう意見は強いと思います。

 また、バーデンビュルテンベルク州のお話をされましたが、ドイツというのは、もともと南と北は全く違います。南のバイエルン、これは、工業地帯であったり、ビールをよく飲んで、気質的には明るい方が多い。それに対して、北のもともとのプロイセン、これはどちらかといいますとがっちりした体格でありまして、気候風土も違います。そして、おっしゃられた風力、これは北でできるんです。北で発電をして、送電線を使って南の工業地帯に運ぶ、こういう状態でありまして、そういった送配電網を整備していく、こういうインフラの充実もどうしても必要であります。そういったことを総合的に考えながら、ドイツはドイツとしての目標設定をしている。

 日本としても、現実的に再生可能エネルギーの導入がどこまでできるか、さらには、七原発十四基につきまして安全審査の申請、こういったものが行われております。これについて、独立した原子力規制委員会がどういう判断をされるか。さまざまな要素を勘案しながら、現実性が見えてきましたら、できるだけ早くベストミックスの目標設定、三年以内と言っておりますが、進めていきたいと思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 私が見てきたことを全てもう御存じだなと。北と南で違うとか、隣国があるかないかとか。その辺も含めて、私まだまだ時間があると思っていたらもう終わっているらしくて、申しわけございませんが、また次回以降お話しさせていただきたいと思います。

 もう一言だけ。前回の一般質疑のときもお話しさせていただいたことですが、原子力政策全般について、今、理事会で御検討いただいていると思うんですけれども、小泉元総理の参考人招致を何とか実現していただきたい。

 というのは、新聞の調査などを見てみても、六〇%ぐらいの方々が支持すると。ドイツもやはり、彼らが言っているのが、政権をひっくり返された側も含めて、今の世論はもうこういうふうになっている、だからこれに従ってどうやってやっていくのかを考えるべきだ、この意見は皆同じだったんです。そうやっていくことによって、しっかりと産業の発展も含めて考えていくべきだと。

 ただ、小泉元総理がおっしゃられていることが正しいのかどうか、私も疑問をまだまだ感じておりまして、その辺も含めてしっかりと議論ができればと思っておりますので、それを引き続き御検討いただければと思います。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 みんなの党の青柳陽一郎です。

 本日は質問の時間をいただきましてありがとうございます。

 三十分という時間なので、早速質問に移りたいと思います。

 安倍内閣の方針に、世界一企業が活躍しやすい環境をつくるということを掲げていらっしゃいます。

 それで、八月以降、直近のものまで、企業を対象にしたアンケート調査を見ると、法人実効税率引き下げを求める声が圧倒的に多いことがわかります。私は、この委員会でも大臣に一度質問させていただきました。その際、大臣からは、実効税率引き下げは極めて有効な手段であると、必要性は認めていただいておりますが、引き下げについては引き続き検討するという御答弁でございまして、残念ながら踏み込んだ回答はいただけませんでした。

 財政再建の観点でいくと、法人税減税一%で四千億円の税収減となる試算があるのは承知しておりますが、一方、法人税パラドックスという言葉もあります。欧州の事例では、十年間に法人税を一〇%引き下げた結果、税収のGDP比が上昇したという結果もあり、課税ベースを見直すことなどとあわせれば、必ずしも法人実効税率引き下げが税収減になるとは限らないのではないか。

 これだけ産業界から求められ、安倍内閣の方針として企業が活躍しやすい環境をつくると宣言されているのであれば、もう一歩踏み込んだ御決意を聞きたいと思いますし、あるいは、実効税率引き下げに踏み込めない懸念は何なのか、こうしたことについて、大臣の御所見を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 委員御指摘のように、安倍政権として、日本を世界で企業が一番活動しやすい国に、恐らくそれは人材にとっても一番輝きを増す国ということにもなってくると思いますが、そういった国づくりを目指しております。

 こうした観点から、国際水準に比べて高い我が国の法人実効税率の引き下げは避けては通れない課題だ。御案内のとおり、現時点で三八・〇一%、これは先進国だけではなくて、まさに今、日本が競争しているアジア諸国と比べても極めて高い水準にあるわけであります。

 さらに申し上げると、諸外国は今、法人実効税率をさらに下げる、こういうトレンドでありまして、ドイツしかり、英国しかり、アメリカしかりという状況であります。

 私が全部決めていいということだったら、この場で決めますよ。ただ、与党のプロセスもございます、政府のプロセスもございます。産業界からの、そして多くの皆さんの意を体して、今後の税制改正、秋の与党税制改正大綱も踏まえながら、しっかりと前向きに検討してまいりたいと思っております。

青柳委員 ありがとうございます。

 大臣が決められるなら下げるという力強いお言葉をいただきましたので、ぜひリーダーシップを発揮していただきたいと思っているところであります。

 次に、企業における独立社外取締役の設置について伺いたいと思います。

 先日、この経済産業委員会で、政策工房の原参考人から、産業の新陳代謝にはコーポレートガバナンス強化の視点が必要で、具体には企業の課題は低収益率に甘んじる取締役、株主、融資元金融機関の存在という指摘がされ、企業経営の刷新を厳しく指摘する独立性の高い社外取締役の設置が必要だという意見がありました。

 実際、東京証券取引所がことし公表したデータでは、独立社外取締役の総数に占める比率とROE、株主資本利益率の関係で見ると、独立社外取締役の導入により確実にROEの数値は高まり、事業の刷新とコーポレートガバナンスの強化に効果があるということを示しております。

 複数独立社外取締役義務化、法制化の必要性があるという指摘がありますが、現在の取り組み状況について、政府参考人の答弁を求めたいと思います。

萩本政府参考人 法務省におきましては、コーポレートガバナンスの強化は重要な政策課題と考えておりまして、まず、社外取締役の活用を促進するための方策、具体的には監査等委員会設置会社という新たな機関設計を導入することなどを盛り込んだ会社法の改正法案を国会に提出する準備を進めております。

 また、会社法の改正とあわせまして、法務省令を改正し、一定の要件を満たす株式会社につきまして社外取締役を置かない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告に記載しなければならないとすることにより、なぜ社外取締役を置かないのかを株主等に開示させることを予定しております。

 さらに、東京証券取引所に対しまして、上場規則の中で、上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の努力義務を規定するよう要望しておりまして、前向きに御検討いただいていると認識しております。

 現在準備中の会社法の改正法案では社外取締役の選任を法律で義務づけることまではしておりませんが、今御説明申し上げた諸施策を実施すれば、社外取締役の導入が促進されることになるものと考えております。

青柳委員 今の答弁では、必要性は認めつつも、結局、今検討されている会社法改正には入らないということであります。

 経済産業省は、先般衆議院を通過した産業競争力強化法案では、あれだけ企業の新陳代謝が必要だということを大臣の答弁でもおっしゃられている。さらに、今データでお示ししたように、実はこういうことをやれば新陳代謝に効果があるということがわかっていても、結局、会社法改正には入らないということでありますが、大臣はこうしたことでよろしいかどうか、御見解を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 社外取締役を導入した企業の方がROEが高い、統計的にはそういうデータかもしれませんけれども、例えば、一九七〇年代から八〇年代にかけてのアメリカの軍事費と、その授業をやっていた教授のお父さん、お母さんの年齢、これはアールスクエア、相関係数が極めて高い。実際には全く関係ないんですが。だから、単純に社外取締役が多いから、それが一番のキーになってROEが上がるかどうか、こういう問題はありますけれども、産業の競争力を高める観点から、コーポレートガバナンスを強化して前向きな企業経営を後押しする、この御指摘は大変重要だ、そのように思っております。

 日本再興戦略におきましても、独立性の高い社外取締役の導入を促進するための措置を講じるなど、少なくとも一人以上の社外取締役の確保に向けた取り組みを強化する旨盛り込まれております。

 どうして一人以上と一律に社外取締役の選任を義務づけることにしていないかということでありますが、幾つかの論点があると思うんです。

 例えば、一つは、我が国では既に社外監査役の選任が義務づけられておりまして、両者の機能が重複するために、両方をもし残すとしたら過剰になってしまうのではないか、こういう論点。さらには、委員も御案内のとおり、恐らく、アメリカ等と比べて社外取締役として本当に能力のある人材がどれだけいるのか、こういう問題も出てくると思います。

 実態面として人材確保をどうしていくか、こういった議論も含めながら、しかし、方向性としてはコーポレートガバナンスを強化する、こういう方向で検討することが必要だと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 次に移ります。

 TPP交渉における課題について伺いたいと思います。

 日本は、本年四月のTPP交渉参加に向けた米国との事前協議において、農業分野への配慮を求めるかわりに乗用車、トラックなどの自動車分野で譲歩をしてしまったために、関税撤廃による自動車産業へのメリットが少なくなったのではないかという指摘もあります。アメリカへの譲歩により、それが今度は、他国との自動車関税の交渉でも不利になるのではないかという懸念があります。

 さらに、米国との交渉では、日本の聖域としてきた農産品分野についても、結局、聖域撤廃を主張され始めて、交渉がどんどん不利に進んでいるのではないかという懸念が指摘されているわけであります。最初から農産品を守ることに固執してTPP交渉に参加するということであれば、初めから負ける交渉をしているのではないかという懸念が強くなっておりますが、こうした点について、まず政府の答弁を求めたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、貿易・投資立国でございまして、アジア太平洋地域の成長を取り込んでいくために、TPPが目指している高いレベルの経済連携の実現に向けて交渉するのが政府の基本的な方針でございます。特に、関税撤廃だけではなくて、非常に幅広い分野の新しいルールをつくるという意味でも、我が国の経済にとって大きなプラスになるというふうに考えております。

 また、今御指摘の自動車関税の撤廃につきましても、これは米国のみならず、ほかの国に対しても日本の輸出競争力の強化に大きく貢献するものと考えておりまして、積極的に交渉していきたいというふうに考えております。

 もちろん、他方で、各国とも政治的に非常に困難な課題を抱えているというのは事実でございます。そういった意味で、厳しい交渉であることに変わりはないというふうに認識しておりますが、我が国としては、政府の基本方針として、攻めるべきは攻め、守るべきは守る、国益にかなう最善の道を追求していくということ、そしてさらにアジア太平洋の新たなルールづくりに日本として積極的に貢献していくという方針で臨んでまいりたいと考えております。

青柳委員 ということは、農産品を守ることに固執して交渉しているわけではないということですね。念のためお願いします。

茂木国務大臣 二月の安倍総理とオバマ大統領の首脳会談におきまして、日本は農産品について一定のセンシティビティーを持つ、また、米国におきましては一部の工業品につきましてセンシティビティーがある、こういったことを確認いたしました。

 その上で、より高いレベルの経済連携に向けてTPPを進めていくということでありまして、これは、マーケットアクセスの問題だけではなくてさまざまな、投資の問題、サービスの問題、知的所有権の問題等々、成長するアジア太平洋地域におけます新たなルールづくり、最終的にはFTAAPにつながっていくルールづくりの土台であります。それに日本として積極的に関与していく、こういう観点から議論を進めているところであります。

 国益にかなう、こういう観点から、守るべき分野は守る、攻めるべき分野は攻めるということでありまして、決して、どこかの部分を犠牲にして、どこかを何しようということではございません。

青柳委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただいたように、ぜひ国益を追求していただければと思っております。

 次の質問に移ります。

 アベノミクスの四本目の矢と言われている東京オリンピック・パラリンピック招致について、そしてスポーツビジネスの推進について質問させていただきたいと思います。

 改めまして、東京オリンピック・パラリンピック招致の成功おめでとうございます。お祝いを申し上げたいと思います。

 オリンピックの招致について、経済効果については諸説あるわけでありますが、いずれにしても、景気浮揚効果、経済効果が大きく見込まれていることは間違いないと思います。

 私も、新たに設置されました議員連盟、スポーツ庁設置のための超党派のプロジェクトチームの幹事をやらせていただいておりますけれども、現在、スポーツ関連施策は各省庁にまたがっている、各省庁がスポーツ関連施策を持っているわけであります。経済産業省もスポーツ産業を所管しているということであります。

 このスポーツ行政の一元化、スポーツ庁設置と、オリンピック・パラリンピックに向けた経済産業省の取り組みについて、まず大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 委員にも新たな議連で活躍していただいておりますが、スポーツ庁の設置につきましては、平成二十三年の超党派の議員立法により成立したスポーツ基本法において、検討を加えるということにされておりまして、現在、文部科学省において検討がなされておりますし、超党派のスポーツ議員連盟のプロジェクトチームでも検討が進められている、そのように承知をいたしております。

 オリンピック・パラリンピックにどういった形で対応していくか。今まで文部科学省、厚生労働省にまたがっていたものを一本化する等々の議論も進んでおります。できる限り、統一できるというか、一本化できる部分はそうしていったらいい、このように考えております。

 同時に、それぞれの省庁が持っております例えば振興策であったりとか、それぞれの業界であったりとか、そこについては連携をとりながらしっかり進めていくということが重要だと考えておりまして、例えば、ヘルスケア産業の育成であったりとか、スポーツ施設の運営であったりとか、我が省として所管している部分がございます。こういったことにつきましては、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの招致を機に、さらに振興が図れるように全力で取り組んでまいりたいと考えております。

青柳委員 そうすると、スポーツ庁を設置して一元化していこうということについては、基本的には大臣は賛成の方向ということでよろしいんでしょうか。

茂木国務大臣 基本的にはそれで結構です。

青柳委員 ありがとうございます。

 オリンピック・パラリンピックは、今大臣に御答弁いただいたように、一大プロジェクトであり、ビジネスにとっても大きなチャンスでもあるわけです。

 私は、スポーツビジネスの輸出の支援策、スポーツでの国際貢献を積極的に検討すべきであると考えております。これはクール・ジャパン戦略の理念や狙いと一致する部分もあると思います。

 先ほど大臣からは日本対ベルギーのお話もありましたけれども、実はJリーグでは今、力を入れてASEANでの戦略をつくっているわけでありまして、このJリーグのASEAN戦略について少し御紹介したいと思います。

 先週の私の質疑でも申し上げたんですけれども、ASEAN地域というのは、日本が今、戦略的に重視している地域であることは間違いないと思います。安倍総理も、先日、カンボジアとラオスを歴訪し、首相就任一年でASEAN加盟国十カ国を全て訪問するという力の入れようであります。さらに、来月には、東京でASEAN特別首脳会議を開くということも聞いております。

 ASEAN地域での日本の支援というのは、大規模なインフラ支援ももちろん重要なんですけれども、日本らしい、多方面のきめ細やかな支援も求められておりますし、交流支援というのもとても有効であると思います。

 そういう面で、Jリーグは昨年からASEAN各国のサッカーのレベルアップを無償でサポートするという取り組みを行って、各国との交流を深めているわけであります。そして、こうした活動が実って、ことしの八月にベトナムの国民的英雄、サッカーではないんですけれども日本でいえば長島茂雄さんのような、サッカーのスター選手であるレ・コン・ビンさんという選手をJリーグのコンサドーレ札幌というチームが獲得に成功したわけであります。

 ベトナム国民の約半分ぐらいがレ・コン・ビン選手を通じて日本の北海道、札幌について知ったと言われているほど、現地では報道がとても過熱している。連日、レ・コン・ビン選手の活躍が報道されているわけであります。その中で、北海道民の温かい声援や今はやっておりますおもてなしがベトナムで報道されて、北海道ひいては日本の好感度が急上昇しているという事象が発生しているわけであります。十月七日に安倍総理がベトナムのサン国家主席と会談した際もこのレ・コン・ビン選手の話題になって、会談の場がとても和んだということも報道されております。

 こうした報道が続いていくことで、日本の地域の知名度、観光地、名産品、さまざまなコンテンツが現地で露出してくる、現地で取り上げられさまざまなメディアにのる、こういうことが実際に物販の拡大、さらにはビジット・ジャパンにもつながる。

 ASEAN地域の選手が日本でプレーすることによって、クール・ジャパンではASEAN地域でもメディアの放送枠や掲載枠を購入するということをやられると聞いておりますが、むしろ購入しなくても、放映権料を販売するというところまで可能性が今出てきたということであります。

 私も、先週末に、議運の許可をいただきまして、ベトナムに出張してまいりました。ベトナムで初めてJリーグのパブリックビューイングを大規模に開催するということのお手伝いをしていまして、訪問してまいりました。このパブリックビューイング、現地の反響はすさまじく大きく、六万五千人の方に集まっていただきました。

 こうした活動を各国で続けて成功事例がふえる、これこそがまさにASEANでのクール・ジャパンの推進に実際につながり、国際貢献、国際交流にもなって、そして日本のイメージアップ、日本のビジネスへの貢献につながるということで、実際に好循環が生まれてきております。

 Jリーグはまず最初の段階の無償のサポートを続けてきているわけですが、こうした取り組みや、Jリーグに限らないと思いますが、スポーツビジネスを支援するという新しいスキームが必要なんじゃないか。経済産業省に相談に行っても、なかなかしっくりくる支援策がないということでございましたが、こうした新しいスキームで、スポーツでの国際交流、スポーツビジネスの輸出というものを積極的に支援したらどうかと思っております。

 ぜひ前向きに検討していただきたいと思いますが、政務官の御答弁を求めたいと思います。

田中大臣政務官 委員が行かれましたベトナムでのジャパン・フェスティバル、これはJリーグのサッカー中継のパブリックビューイングをしたということであります。大盛況であったということを聞いております。こうした日本のスポーツの放映は、やはり日本のイメージアップやブームの創出に大きく貢献するものだと思っております。日本もこうしたビジネス的な観点からスポーツを海外展開できれば、当然、日本のブランド力の向上に資するものと認識しております。

 今、政府としましても、クール・ジャパン戦略に取り組んでおります。その中で、来週十一月二十五日にはクール・ジャパン推進機構が設立されます。日本企業の意欲的な海外展開を支援することとしております。機構の支援する対象事業としましては、例えば、放送枠を買い取ってジャパン・チャンネルとして放映する、そういう形なども考えているところであります。海外において日本のコンテンツを配信して、あわせて関連商品も販売する、そうした事業も想定しているところであります。

 いずれにしましても、スポーツビジネスの海外展開につきましては、民間企業の動向も踏まえた上で、こうしたさまざまな枠組みを活用しつつ、今後、積極的な取り組みを進めていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 積極的に進めていただけるという御答弁をいただきましたので、ぜひお願いしたいと思います。

 時間の関係で、最後に一問、質問させていただきたいと思います。

 政府の中小企業支援策について伺いたいと思います。

 中小企業政策については、まさに中小企業というのは、もう数字はこの委員会でも出ているとおりでありますので、あえて繰り返しませんが、我が国の経済の成長の原動力であるということは間違いありません。そして、経済産業省、中小企業庁でさまざまな支援策が提供されているということも事実であります。世界で一番種類が充実しているとも言われていて、経産省というか中小企業庁に聞くと、すぐに一冊の分厚い冊子をいただけるということにもなっている。

 にもかかわらず、中小企業の衰退に歯どめがかかっているとは言いがたい状況であります。私も地元は横浜ですけれども、横浜の中小企業、特に小規模事業者に冊子を持って説明に伺ってもそれなりの評価しかいただけないということでありますし、政府でも中小企業政策審議会というところがヒアリングを行った結果などからもわかるとおり、決して今の中小企業支援策が有効に機能しているとは言えないのではないかと思います。

 このヒアリングによると、適切な情報の入手、手続が煩雑である、あるいは公募期間などの問題があって利便性が高くないというか、使う側の利便性を本当に徹底的に研究しているのかどうかというところにはまだやはり疑念が残っている。つまり、メニューは豊富でも、使い勝手がよくないし、よりきめ細やかな対応が求められているということだと思います。

 そして、中堅企業の対策が抜け落ちているのではないか。中堅企業というのは地域で中核的な役割を担っておりますが、今の政策、施策の体系上の明確な位置づけがなくて、支援策が手薄になっているのではないかという指摘もあります。

 私は、中小企業も経営や戦略が多様化して、消費者ニーズも多様化している状況の中で、霞が関がつくった全国一律の政策で対応していくというのは難しいのではないか、中小企業政策はむしろメニューを少なくして、支援は幅広く拾ってあげて、きめ細やかに対応するというふうに政策を再編して加工すべきだと思いますけれども、こうした考えについて、これは大臣にお伺いしてもよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 ロシアの文豪トルストイの「アンナ・カレーニナ」は、たしかこんな文章から始まったと思うんです。幸せな家庭は皆平凡で同じように見える、しかし、不幸な家庭はそれぞれに不幸である。

 決して中小企業、小規模事業者が不幸であるとは思っておりません。しかし、中小企業、小規模事業者はさまざまなタイプがあります。当然、さまざまな課題を抱えている以上、経済産業省として、中小企業庁として、それに応えられるような多様な支援策のメニューは用意をしなければならない。

 一方で、それを使っていただくということが重要でありますから、どういったメニューがあるかということについて、わかりやすく、また使いやすく提供していくということで、中小企業庁のサイト、ミラサポも十月から刷新させていただきました。相当見やすくなっているのではないかなと思っております。

 そして同時に、これは全国レベルだけではなくて、私は、各地域の経済産業局が主導して、地域ごとに合った形の施策をしっかり進めてほしい、こういった要請も行っているところであります。

青柳委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が超過してしまいました。済みませんでした。

 終わります。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、一般質疑ということで、東京電力から石崎副社長にお越しいただきました。

 早速質問をいたします。

 十一月八日に、東京電力が緊急安全対策を発表いたしました。作業員の労働環境において、設計上の労務費割り増し分の増額として、敷地内作業に適用する設計上の労務費割り増し分の増額が日当たり一万円を日当たり二万円ということで、十二月発注分以降の実施となっております。

 この趣旨について、まず御説明をいただけますか。

石崎参考人 お答えさせていただきます。

 私どもは、廃炉作業そのものは三十年も四十年もかかる作業でございます。そういった作業で、今、国民の皆様に大変な御迷惑、御不安を与えていることを、この場をおかりしましてまずはおわび申し上げます。本当に申しわけございません。

 そして、この作業は、これから作業員の方を長く確保しなければいけない、そういう作業でございまして、今までも私どもは設計上の割り増し単価というものを設けておりましたけれども、それをさらに今回はっきりと、一万円から二万円という金額を具体的に公表させていただきまして、元請会社からいわゆる下請の会社の作業員の方にしっかりとそういった数字が認知される、そしてしっかりとその分が渡るということを期待しまして公表させていただいたものでございます。

 それによりまして、これからも、長い間の作業員の確保、そして作業をやっていただける方のモチベーションの維持というものも期待しているところでございます。

 以上でございます。

塩川委員 作業員を長く確保する必要がある、この額を公表することで元請、下請作業員に認知されることを期待しているという話であります。現場におきましては歓迎の声もございますし、同時に、本当に上がるのかという疑念の声があるのも率直なところであります。

 そういう点では、確実に、現場の作業員の方の賃金、日当が上がるということに、やはり発注者として責任を持って取り組む必要があるんじゃないのか。ですから、発注者として、現場作業員にとって確実に賃上げにつながる措置をとっていただきたいと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

石崎参考人 おっしゃるとおりでございまして、私どもはまずは、こういった数字は今まで公表しておりませんでしたけれども、公表したということに一つ大きな意味があるというふうに思っております。数字を公表したからには、元請の会社からしっかりと下請の作業の皆さんに渡るということを大きく期待しているところでございますけれども、その確実性の担保という意味ではいろいろこれからも工夫をしなければいけないと思っております。

 一つは、私どもが直接下請の方に指示をするわけにはいきませんけれども、アンケートというような形で、実際にどういうふうに賃金を受け取っておられるか、そんなこともやる必要があるというふうに考えておりまして、既にやっている部分もございますけれども、そういった工夫をこれからもやりながら、実態をしっかりと注視してまいりたいと思います。

 もし何かあれば改善を、さらに元請の会社さんにもしっかりと私どもから注意喚起をするというようなこともあわせてやってまいりたいと思います。

 以上でございます。

塩川委員 確実性の担保が必要ということで、アンケートなど、実際にどういうふうに賃金を受け取っているのか、こういうことの確認もしたいということです。

 もともと、去年アンケートをし、ことしもアンケートを行っている。去年のアンケートの賃金については、最賃との関係で上ですか下ですか、こういう中身でありました。ことしはそういう項目もなくて、契約上の中身がしっかり守られていますかという趣旨のアンケートになっているわけです。

 ですから、私はぜひ、アンケートということであれば、やっていただきたいのが、確実に賃上げにつなげるためにも、作業員の方の賃金の実額について、幾らですかと。その実額を把握する実態調査のアンケートを実施する、こういうことについてはいかがでしょうか。

石崎参考人 お答えいたします。

 今御指摘の点も含めて、私どももまだまだ工夫の余地があろうかと思っております。そういった点も含めて、幅広く検討、努力をしてまいります。

 以上でございます。

塩川委員 過酷な労働環境に見合った賃金に引き上げるために、全力を挙げていただきたいと思います。

 次に、東京電力への金融機関の資金供与の問題についてお尋ねをいたします。

 会計検査院においでいただいております。

 会計検査院が、東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況に関する会計検査の結果について、十月に報告書をまとめ公表しております。その内容に沿って何点か、会計検査院にまず伺います。

 総合特別事業計画においては、財務基盤の強化として金融機関に要請をするというふうになっているわけですけれども、金融機関に対しどのようなことを求めているのか。この点について教えてください。

太田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 総合特別事業計画におきましては、金融機関に対しまして、社債市場への復帰等自律的な資金調達力が回復するまでの間、借りかえなどにより与信を維持すること、新規融資等の実行、短期の融資枠の設定等を行うこと、二十三年三月十一日から同年九月末日までの間に東京電力から弁済された額と同額の資金供与を行うことについて、協力要請を行うことが記載されたと承知しております。

塩川委員 これまでの資金供与については維持してくださいねという与信の維持、それからニューマネーの提供ということ、あと、事故後減った分についてはもとに戻してくださいねという復元、この三つということであります。

 そこで、総合特別事業計画の要請に沿って東電として金融機関に要請を行ったわけですけれども、会計検査院から、その結果がどうだったかについてお答えいただけますか。

太田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げました与信維持の協力要請を受けたものが七十七金融機関ございます。それにつきましては、弁済期限が到来した借入金を随時信託スキームの私募債引き受けなどによる資金供給にかえておりまして、平成二十五年三月末時点におきまして、借入金及び私募債の発行残高は四兆一千八百五十八億余円となっております。

 それから、新規融資実行及び短期融資枠設定の協力要請を受けました十一金融機関でございますが、二十四年七月に東京電力に対する三千九百九十九億余円の短期融資枠を設定するとともに、二十四年八月には信託スキームの私募債引き受けなどによりまして、協力要請額四千九百九十九億余円の一部であります一千九百九十九億余円を供給しております。また、資金供与の協力要請を受けました三十金融機関でございますけれども、二十四年八月に一千六百九十九億余円の融資を行っております。

塩川委員 その資金供与において、ここに信託スキームの私募債引き受け等とありますけれども、この信託スキームの私募債というのはどういうものでしょうか。

太田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 東京電力が信託受託者に金銭を信託することによりまして信託勘定を設定した上で、まず金融機関が信託勘定への融資を行い、次に信託受託者が当該融資をもとにして東京電力に資金を供給する信託スキームを利用することになったものでございますけれども、この信託スキームの中で長期資金につきましては信託受託者が東京電力の社債を引き受ける形態をとっておりまして、金融機関の融資に実質的に一般担保が付されることとなったと承知しております。

塩川委員 一般担保が付された社債ということで、東京電力の石崎副社長に確認ですけれども、この私募債というのは一般担保つきの社債に相当するものだと思いますけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃるとおりでございます。

塩川委員 そこで、重ねて石崎副社長にお尋ねします。

 総合特別事業計画を踏まえて、昨年八月以降ことし三月末までの金融機関からの資金供与というのは、そのほとんどが私募債ではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 結果として、私募債の残高は七千二百六十四億ございます。

 以上でございます。

塩川委員 私募債の三月末の残高が七千二百六十四億。要するに、昨年の八月以降の金融機関からの資金供与において、私募債が大半を占めているんじゃないかということをお尋ねしたんですが、いかがですか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 七千二百六十四億のうち四百九十九億円は新規融資分でございます。残額につきましては、与信の維持、復元に該当するというものでございます。

 以上でございます。

塩川委員 ニューマネーの部分について、昨年八月は二千億円、これは当然のことながら私募債に当たると思いますが、いかがですか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 そのうちの一千五百億は、政策投資銀行からの融資ということになっております。

 以上でございます。

塩川委員 政策投資銀行の融資については一般担保つきでありますけれども、政策投資銀行を除いた金融機関から昨年八月以降に資金供与を受けたものについては、短期のものを除いて、長期のものは私募債で対応しているということですね。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 私どもは今、非常に経営状況が苦しいということ、その中で廃炉や賠償や除染等々の責任を果たすためにはやはり金融機関の方からの御協力が必要だというふうに考えておりまして、私募債を発行せざるを得ないという状況につきましては何とぞ御理解を賜りたいと思います。そういう状況でございます。よろしくお願いいたします。

塩川委員 改めてお答えいただきたいんですけれども、昨年八月以降に政投銀を除く金融機関から東電が資金供与を受けた、それは、短期のものを除けば、長期のものは私募債で対応してきたということでよろしいですか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 政策投資銀行以外のものは私募債ということで御理解賜りたいと思います。よろしくお願いします。

塩川委員 確認ですけれども、短期融資額の三月末の残高は九十五億円と承知しておりますけれども、よろしいでしょうか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。

塩川委員 ですから、与信の維持、あるいはニューマネー、減った分を戻したという復元、こういうことで、総合特別事業計画を踏まえた金融機関への要請に対して、金融機関側からその要請に応えた対応というのは、昨年八月以降の資金供与においては、短期の九十五億円を除けば、残りの大半、長期のものについては私募債で対応してきた、その額が七千二百六十四億円というのは、改めてですけれども、よろしいでしょうか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 今委員のおっしゃるとおりでございます。

塩川委員 これは三月末の数字ですけれども、七千二百六十四億円の私募債は三月末ですが、その後、十一月まで来ているわけですけれども、直近の数字でこの私募債の発行残高がどのぐらいになっているかというのは、今おわかりになるでしょうか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 先ほど三月末の数字は申し上げましたけれども、申しわけございませんが、直近の数字は今手元にございません。よろしくお願いいたします。

塩川委員 この間の資金の供与というのも私募債で対応されてこられたのか。その点はいかがですか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 私どもは、繰り返しになりますけれども、経営状況がこういう状況でございまして、その中で、私どもの責任、廃炉、賠償、そして除染等、さらには安定供給、これをしっかりと果たすためには私募債に頼らざるを得ないというような状況もございます。その点は何とぞ御理解賜りたいと存じます。よろしくお願いします。

塩川委員 十二月末に資金供与という話も報道されております。これはニューマネーの部分ということで言われておりますけれども、一度ニューマネーの部分を返してまとめてとか、もう一回供与を受けるとか、いろいろやりとりはあると思うんですが、今後についても、例えば十二月に予定している資金供与というのも私募債ということになるんでしょうか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 十二月に予定しておりますのは、まず新規与信として三千億、そして二千億の借りかえを予定しておりますけれども、そのうちの半分以上は私募債の形式をとらざるを得ないというふうに考えております。

 ただ、私募債の発行に当たっては、私どもは、公募債の償還の進捗ぐあい等に留意しながら、震災前に一般担保が付されていた総量を上回らないように努力をしてまいる所存でございます。

 いずれにしましても、今後も、経営状況を踏まえて適正な運営に努めてまいります。どうぞよろしく御理解賜りたいと思います。

塩川委員 大臣にお尋ねいたします。

 昨年八月以降、金融機関が東電に供与した資金はほとんどが私募債ということになっております。金融機関では、それまでの担保なしの債権をいわば担保つきの債権につけかえるということが実際に行われています。

 今、原発事故の被害者の方々の賠償問題が解決しない。こういう原発事故被害者の賠償よりも、電力債に相当する私募債という形であれば、金融機関の債権の方が優先される、そういう状況については、私は、原発事故被害者の方々の理解が得られないのではないかと考えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

茂木国務大臣 恐らく、東電の資金繰りの問題については、事故前と事故後を比べてどうなっているかということから始めなければいけないと思います。

 御案内のとおり、震災後、東電が公募債を発行できない状況が続いている中で、金融機関によります融資が公募債の目減り分を基本的に補完している状況であります。

 公募債は、平成二十二年の三月期から平成二十五年の三月期でマイナスの一兆四千九百六十九億円、これだけ減っております。一方で、長期の借入金につきましては、同じ期間でプラスの一兆六千八百六十六億円、こういった形であります。これが基本構造の中で、長期の資金調達の手段として私募債という形式が一部とられるということになっている、このように理解をいたしております。

 私募債は、御案内のとおり、公募債より弾力的な発行が可能であります。ただ、法律に基づく一般担保が付されることになりますから、発行に当たっては公募債の償還等を踏まえつつ事故前に一般担保が付されていた総量を上回らないようにするという答弁が今ございまして、一般担保が付された社債、借入金の残高は、事故前が五兆五千六百六十七億に対しまして、平成二十五年三月期、一番新しい数字で持っておりますのは五兆百四十八億。五千億のうち半分以上が私募債であっても、この基準は満たすことになると思っております。

塩川委員 会計検査院の報告書の中に、東電の資金調達先の推移があって、そこで、いわば一般担保つきの政投銀の融資を除く、担保がつかない金融機関の融資の額、二十三年の三月末、二〇一一年の事故後に担保なしで金融機関も融資しました、そのときの額が三兆五千百四十六億円なんです。それに対して、今の三月末でいうと、それが二兆八千四百八十一億円に減っているんですよ。そのかわりに、今言った一般担保つきの社債が七千二百六十四億円になっているわけですから、事故後で見て、今までの担保なしの債権が担保つきに切りかわっているというのが実態であるわけです。

 そういう点でも、東電への貸し手責任が問われる金融機関がみずからの融資を一般債権より優先して弁済される電力債に置きかえているというのは、私は、国民の理解を得られないし、ましてや原発事故被害者の理解が得られないということを言い、こういうスキームの検証と総括こそ必要だということを申し上げて、質問を終わります。

富田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十四分散会


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