衆議院

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第14号 平成26年5月7日(水曜日)

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平成二十六年五月七日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 宮下 一郎君 理事 渡辺 博道君

   理事 田嶋  要君 理事 今井 雅人君

   理事 江田 康幸君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    小田原 潔君

      越智 隆雄君    大見  正君

      勝俣 孝明君    佐々木 紀君

      白石  徹君    田中 良生君

      武村 展英君    辻  清人君

      冨樫 博之君    根本 幸典君

      福田 達夫君    細田 健一君

      宮崎 謙介君    宮崎 政久君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      枝野 幸男君    岸本 周平君

      近藤 洋介君    辻元 清美君

      伊東 信久君    木下 智彦君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      三谷 英弘君    小池 政就君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   参考人

   (東京大学社会科学研究所教授)          松村 敏弘君

   参考人

   (21世紀政策研究所研究主幹)

   (NPO法人国際環境経済研究所所長)       澤  昭裕君

   参考人

   (一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長(共同代表))         河野 康子君

   参考人

   (株式会社政策工房代表取締役社長)        原  英史君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     青山 周平君

  菅原 一秀君     小田原 潔君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     穴見 陽一君

  小田原 潔君     菅原 一秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電気事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学社会科学研究所教授松村敏弘君、21世紀政策研究所研究主幹・NPO法人国際環境経済研究所所長澤昭裕君、一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長(共同代表)河野康子君、株式会社政策工房代表取締役社長原英史君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず松村参考人にお願いいたします。

松村参考人 東京大学社会科学研究所の松村と申します。

 きょうは、電事法の改正に関連して、電力システム改革に関して私の意見を申し上げさせていただきます。

 言いたいことはお配りした資料のスライド二とスライド三のところで全て書いてあるということですので、最後にここを見てわかっていただければ、全て伝わったということになるかと思います。

 それから、スライド十五から十九、二十一、二十五は、ひょっとして後から質問があったときに答えるためにという形で、今回直接関係ないことまで入れてしまいましたが、そこは飛ばして説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、電力システム改革というのは、基本的に、一部の役所の知恵と一部の事業者の知恵でつくられてきた電力システムというのを、全ての事業者、全ての消費者に門戸を開いて、この知恵を結集して、効率的で低廉で安定的な電力供給というシステムをつくっていくというのが目的だと思っています。

 自由化するというのはそのための重要な第一歩ですが、自由化するだけでは本当に競争的な理想的な市場は生まれないということで、多くの対策が必要だと考えております。そのためには競争基盤の整備というのが必要で、そのための対策というのが、第一弾の電事法の改正でも、今回の電事法の改正でも、それから次に控えている電事法の改正でも多く盛り込まれることになると思っております。

 それから、次にスライド三をごらんください。

 法律で示されるようなぶれない基本的な方針というのが最重要ですが、その法律を踏まえてつくられる詳細制度設計というのも同様に極めて重要だと思っております。この詳細制度設計もずっと注視していく必要があるんだろうと思います。

 それから、自由化すると安定供給は大丈夫かということを言われるのですが、私は、自由化は、ちゃんと制度を設計すれば安定供給にも資すると思っています。そのためにきちんとした制度設計が必要だと思います。

 競争メカニズムが十分に働けば価格は下がると私は思っておりますが、しかし一方で、自由化した結果として規制なき独占というのが起こってしまうおそれがあるので、これに対する備えというのも一定程度必要だ、そのために一定の規制を残さざるを得ないと考えております。

 順次説明させていただきます。

 まず、電力システム改革のスケジュールですが、御案内のとおり三段階に分かれておりまして、第一段階で広域機関というのを設立し、次に家庭も含めた全面的な自由化というのを行い、三段階目でネットワークの中立化、具体的には法的分離による発送電分離ということが計画されております。

 きょうの議論は基本的に第二段階のことだと思いますので、ここを中心にお話しさせていただきます。

 それぞれの局面で、安定供給のための対策、競争基盤整備、それから公正な競争環境をつくるために、いろいろな手段が盛り込まれております。

 次をおめくりください。

 自由化ということを何のためにするのかというと、消費者に選択の自由を与えることによって今言ったようなさまざまな利益を得て、最終的には、総合エネルギー企業、総合公益企業というのが相互に切磋琢磨して効率的な市場をつくる、こういう状況にしていくというのが理想的な姿だと思います。

 エネルギーミックスに関しても、本来は、まず、国の基本的な価値、セキュリティーだとか環境価値だとかというようなものをさまざまな政策手段で補正するということを前提として、それを踏まえた上で生産者が公正な環境のもとで競争し、消費者が事業者を選択するということを通じて、最終的にエネルギーのベストミックスというのが自然に実現するという状況が理想的な状況だと思っています。システム改革というのはこのための第一歩だというふうに考えております。

 次をおめくりください。

 電力システム改革というのは、国の基本的な政策というのは大きく環境が変化すれば当然変わるということになると思いますが、どのような環境変化があったとしても柔軟に対応して、より低廉で、より目的にかなうような対策ができるようにするための基盤整備だと考えております。したがって、ほかの国家戦略、エネルギー国家戦略が十分に明らかにならない限りシステム改革が進められないという議論は、そもそもおかしいのではないかと考えております。基本的に、どんな政策になったとしても効率的に対応するための手段だと考えております。

 電源構成というのは、基本的に、消費者がどのような選好を持っているのかによって決めればいいということになると思います。

 九ページ目をごらんください。

 再生可能エネルギーを支持するというようなことに関しては、アンケートで聞けばいいじゃないかというふうに思われるかもしれませんが、その場合には、ひょっとすると、再生可能エネルギーを支持するというのは、それに伴って発生するコストというのを負担する覚悟のない無責任な支持表明なのかもしれないし、あるいは、本当にコストを負担するという覚悟を持った支持表明なのかもしれないし、それはわからない。しかし、自由化して、消費者が再生可能エネルギーを主力とした事業者を選ぶということは、まさにそのためのコストを負担するということをきちんと認識した上で私は再生可能エネルギーを支持しますという、責任ある意思決定になるんだと思います。

 事業者の方も、将来、再生可能エネルギーの方がコストが低くなるんだ、だから再生可能エネルギーは効率的だということを主張したとしても、それは単に自分に都合のいいデータだけをとっているだけかもしれない。しかし、再生可能エネルギーを主力とした事業を立ち上げて参入してくるということになり、将来は補助金が減るかもしれないという状況でもちゃんと参入するということは、本当にコストが下がり、太刀打ちできるということを考えている事業者が、そのことをちゃんと意思表明するということになる。こういう機会をぜひ与えていただきたいということで、自由化ということが重要だと思います。

 おめくりください。

 しかし、現状では、そもそも家庭用の市場は自由化されていないので、意思表明する機会というのが与えられていないだけでなく、自由化されている大口市場でもほとんど競争が機能していないという状況になっており、例えば分散型電源の方が効率的だと思っていたとしても、本当にその意思を表明できるような機会になっていない。電力システム改革によってぜひそういうことを実現させていただきたいというのがシステム改革の根幹だと思っています。

 しかし、自由化したら必ず料金が下がるとは限りません。今般の料金値上げ申請を見ていれば、ガイドラインがきちんとつくられていたのにもかかわらず、どう考えても低廉で効率的な電力供給と関係ないと思われるようなコストがいっぱい入った料金申請というのが出てきて、もし規制がなかったら、あのままの価格というのが実現してしまったはずです。これは競争によって抑えられるというのが一番理想的な状況ですが、しかし、今までの状況からして必ず競争メカニズムが働くということは保証できないと思いますので、そのための万が一の備えとして、規制料金を残すということが必要だと思います。

 おめくりください。

 スライド十四のところですが、なぜ規制料金を残すのかということに関して、規制料金というのは、まず第一に、消費者が最低限選べるものに対して規制するというだけであって、一般電気事業者がほかの料金体系を出すことを禁じるものではありません。そうすると、消費者は最悪でも規制料金を選べるという状況ですから、今より悪いことにはならないはずです。今より悪いことにはならないということを保証した上で、十分競争が働き、その結果として、規制料金なんか誰も選ばないという状況になるのが一番理想的な状況です。そういうふうになるように詳細制度設計も私たちは頑張っていくという覚悟でおりますが、しかし、そのための備えというのは必要だと思っています。

 しばらくは第三段階の話なので飛ばさせていただいて、スライド二十二を見てください。

 電力の安定供給は大丈夫かということに関してまず考えなければいけないのは、既存のシステムが安定供給のためにベストなものではないということです。既存の仕組みというのは、相当大きな問題をいっぱい露呈している。その反省を踏まえて、システム改革で、より効率的にするという手段をいっぱい織り込んでいます。

 そもそも、価格メカニズムが働けば、例えば電力が不足するという状況になれば、卸市場の価格が上がって、その結果として投資が促されて自然に不足というのは解消するはずだというのは、市場メカニズムが十分働けばそうなるはずですが、しかし、この市場メカニズムが十分働くということを完全に信頼はしていないということで、万が一働かなかったときのためにということで、広域機関は電源が不足するというときには入札によって電源を確保してでも不足という事態を防ぐんだという強力な手段、諸外国にもここまで強力な手段を講じている例は極めて少ないのですが、そこまで講じて安定供給ということに万全を尽くしているということはぜひ御理解ください。

 さて、次に二十三ページ。

 安定供給というのは、基本的に、改革後も独占部門として残る送配電事業者というのが第一義に担うことになりますが、広域機関というのも、今言ったように大きな役割を果たします。

 この広域機関が電源入札をするということに関して、一般電気事業者は、こんなことをしたら市場メカニズムを乱すではないかということで反対しています。もし広域機関の電源入札がなければ、電源が不足すれば電気の値段はすごく高騰するわけですね。高騰すると、すごく大もうけできる、こういう機会がひょっとしたら生まれるかもしれない。その機会というのを、いわば十分に電源を用意することによって、めちゃめちゃ電気の価格が高くなるということは防いでしまうということになる。それはある意味で市場メカニズムを乱していることになるかもしれない。しかし、私たちは、そのようなコストというのを負担してでも安定供給を維持すべきだというふうに考えて、最後のセーフティーネットとしてこういうことを考えているということをぜひ御理解ください。

 さて、電力システム改革というのは、自由化によって全ての事業者が潜在的に参入できるようにし、あらゆる人の知恵を集めて、これで安定供給も低廉な電力供給も賄っていこうという発想です。もちろん一番重要なのは電気のプロである一般電気事業者の知恵ですが、この知恵だけに依存しないというシステムをつくることが電力システム改革の大きな目的だと思っています。

 今までの一般電気事業者には市場メカニズムを使うという発想がないために、余りにも高コストなやり方というのを十分してきた。それから、競争を回避するために、連系線の投資というのをかなりの程度怠ってきた。周波数変換所というのは典型的にそうだと思いますが、震災前の段階でも、経済学者が、安定供給に絶大な威力を発揮するFCを増強すべきだということを強硬に主張し、それに対して一般電気事業者は、そんなコストがかかるようなものをつくる必要はないんだといって葬り去ってきたという事実をぜひ思い出していただきたい。

 そのときに投じるコストというのは、周波数変換所というのは物によっては三十年から百年もつような施設というのをつくるコストなわけで、そのことまで考えれば、一般電気事業者が毎年毎年投入していたオール電化営業のコストというのを投入すれば、膨大なFCというのは簡単につくれるはずです。しかし、一般電気事業者は、そうではなく、そちらに払うお金はあっても、FCをつくるコストというのはコスト高なんだからよくないんだ、こういうことを主張してきたということは十分考えていただきたい。

 そうすると、その結果として、なぜFCというものの建設に消極的だったかというと、FCをつくると将来潜在的に競争を激しくするかもしれない、将来の電力会社間の競争というのを激しくするかもしれない、だから、垂直統合している電気事業者の利益としては合理的な判断だったかもしれないけれども、安定供給という観点から見れば、私は合理的な判断だったとは到底思えません。

 こういうような判断を利害関係のない中立的な人がきちんとできるようにするというのが広域機関をつくるということであり、このことは既に動き出していると思います。これから引き続いて出てくることも、安定供給に資するような改革が十分盛られているということをぜひ御理解ください。

 最後に、二十六と二十七を見ていただきたいのです。

 しかし、だからといってバラ色のことばかり言うわけにはいかない。電力システム改革によって安定供給を損なうということがあってはいけないし、規制なき独占によってコスト高になっても困るということで、これから詳細制度設計も十分監視していき、そのようなことがないように、また、安定供給に関して万全の体制を尽くすように、詳細制度設計というのは努力していかなければいけないし、諸外国の反省というのも踏まえていかなければいけない。今の法案には、その諸外国の失敗の反省というのもかなり盛り込まれているというふうに考えております。

 済みません、長くなりました。以上です。

 ありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、澤参考人にお願いいたします。

澤参考人 21世紀政策研究所の澤です。よろしくお願いします。

 私の資料に基づいて、電力システム改革についての意見を申し上げたいと思います。

 まず、基本的な立場でございますが、欧米の例を見ると、システム改革には次のようなリスクが存在しているということでございます。

 一つは、中長期的な供給力が不足するような状態が起こるかもしれない。二番目に、ほかのエネルギー関連政策、例えばエネルギー安全保障政策あるいは温暖化政策ですが、こういったところとの整合を図らなければならない。そして、来年の話かもしれませんが、法的分離に向かう、組織的な分離に向かうとすれば、緊急時の対応力を低下させないかというリスクがございます。

 しかし一方で、システム改革には大きなメリットも存在しています。

 一つは、家庭の小売自由化に代表されるように、ユーザーの選択肢が多様化する。二つ目に、これまで総括原価あるいは地域独占という制度に安住してきたと言われる電力会社をメーンに、ガスの自由化等を含めて考えれば、経営力の競争によってエネルギー産業構造そのものが進化をしていくのではないかというメリットであります。三番目に、このエネルギー問題については常に行政、政治の介入が行われるわけでありますが、市場のメカニズムを働かせることと、政治の介入あるいは行政の介入ということをどうバランスさせていくのか、この点が非常に難しい問題なわけですが、自由化によっていろいろな規則が整備されていけば、その介入の仕方もルール化されたりあるいは透明化されたりする、そういったメリットもあるのではないかというふうに思います。

 全体を総合して言えば、こういったリスクへの対応を丁寧に講じながら、メリットを発揮させていくという政策が必要だろうということでございます。

 その次のページの絵ですけれども、中長期的な供給力がどういう形で不足するのかということでございます。電力需要のピーク、この時間帯だけピーク電源は働くわけですけれども、果たしてその時間帯に生じる価格が十分に上昇するかどうか。上昇しなければ誰もピーク電源を持とうと思わないわけですし、一方でまた、需要もこれだけ大きくなるかどうかというのは、毎年起こるかどうかもわからないわけです。

 したがって、需要の不確実性、あるいは価格上昇への介入のリスク、いろいろなことを考えると、ピーク電源を持つことのリスクが非常に大きくなってくる。そういう中で、事業者が価格シグナルを正確に受けとめられなくなる。そういう状態の中で、供給力を不足させていく事態がマクロ的に生じるということでございます。

 一方で、一番下の方に書いてありますように、特に、今後、再生可能エネルギー、不安定電源の再生可能エネルギーがふえていけばいくほど、それが系統に流入をしてくる、それも非常に不規則に流入してくるわけですので、それのしわをとるための調整電源というものも整備していかなければならないということになります。

 したがって、全体の供給力不足だけではなくて、調整電源をどれぐらい整備すればいいのか、これは、再生可能エネルギーをどれだけのペースでどれだけの規模やるかということにも依存するものですから、供給力をどれだけ整備していけばいいのかということが非常に難しくなってくるということでございます。

 次のページでございます。

 そのリスクへの対応、対策でありますが、ここは、今の電力システム改革の議論、あるいはこの電気事業法の改正などにも前提となって進んでいると思うんですが、ここに書いてありますように、市場で形成される非常に短期的な需給調整価格のみでは、適切な規模の長期固定投資が実現しない懸念がある。実際、ヨーロッパでもそういうことが起こっているわけです。

 そういう中で、今後、改革を進めていくとすれば、中長期的な需給見通しと投資計画を、政府、送配電部門、あるいは発電部門間でどうやって意思疎通させていくか。「再エネ導入のスピード・規模調整を含む」と書いてありますが、先ほど申し上げたとおりでございます。こういうエネルギー源を多様化していくときに、それぞれの発電計画、送電線の整備計画、それをどういう需要想定のもとにやっていくのか、これが意思疎通がきっちりできていないと、過剰な投資が行われるかもしれませんし、一方で過少な投資が行われるかもしれない、そういう問題がございます。

 二番目に、ここに書いてありますように、設備、容量市場あるいは容量メカニズムと言われるものですが、先ほど申し上げたピークにおける価格形成は、基本的には限界費用で形成されると考えられているわけですが、その際に、固定資本そのものを回収する価格には足りないというケースが大いにあり得るわけであります。したがって、中長期的に供給力を不足させないためには、容量そのものに価格をつけていく、価値をはかっていくという手段がどうしても必要になってくるわけであります。

 先ほど松村先生からもおっしゃったように、これから詳細設計の中でそういう容量市場あるいは容量メカニズムというのが検討されていくと思いますが、ここは今、欧米でも同時並行的にトライをされている分野でありますので、完成された、これがベストだという形はないのかもしれませんが、このシステムをどう組み込んでいくかということがその成否を分ける大きなポイントになりますので、非常に重要なポイントだろうと思います。

 三番目に、金融補完措置とありますが、今、自由化とともに、総括原価を基本的には廃止していく、そして一般担保も廃止していくというふうに一時議論されてきたわけですけれども、今後、総括原価あるいは地域独占が全て崩れていくという中では、電力会社の倒産確率というのが非常に高くなります。金融機関から見た場合に、倒産した場合の損失カバー率に当たるものが一般担保でありますが、この損失カバー率を同じく低めてしまうと、非常に大きな金融的リスクを金融機関側が感じるということになってしまいます。

 先ほど申し上げたように、供給力を不足させないために適切な規模の投資が必要なわけですけれども、そのために必要な金融については、一般担保を残しつつ、ほかにも、場合によっては政府の債務保証なども考えていく必要があるのかもしれません。こうしたことについて、法的分離を進める中で、それの時期に合わせて制度的に完成させていくという必要があります。

 次のページでございます。ほかのエネルギー関連政策とのそごのリスクであります。

 今申し上げてきたことを発電部門で考えますと、上の世界、供給義務がかかって、総括原価、一般担保や地域独占という制度が認められている中で、LNG、石炭、石油、そして原子力というものが整備されてきたわけでありますが、その裏づけとなるファイナンスも、今言ったような制度で確実だったわけであります。その上に、最近、再エネが、フィード・イン・タリフという制度で、究極の総括原価主義でありますが、市場の枠外で流入が認められる、いわゆる国策として位置づけられたということでございます。

 そういう中で、全部下の方に持っていくというのが自由化の意味でありまして、今申し上げたような諸制度を廃止しつつ、それぞれの電源同士が競争していくというような形で市場を形成するわけでありますけれども、その際に、今までいわゆる国策として扱われてきた原子力についてどういう扱いをするのか、どういう位置づけをするのか。ほかの電源とともに競争的な電源の一つとして考えるのか。原子力の技術というのは、電力だけの意味ではなくて、原子力という技術そのものを維持することにも意味があるという立場から、それを国策として維持するのか。

 いろいろな立場はあると思いますけれども、その立場とともにこの原子力の位置づけというのもあるわけでありまして、もしもそれをきちっと残すとすれば、相当いろいろな措置をセットでとっていかなきゃいけなくなるわけであります。そういった検討を今政府でも進めておられるとは思いますけれども、これを早急に詰めていかなきゃいけないということでございます。

 もう一つは、黄色の部分に書いてあります、二番目にあります温暖化政策であります。

 御存じのように、来年の冬、COP21は、パリで行われるわけですけれども、京都議定書の次の枠組みの交渉の一種のデッドラインになっております。来年の第一・四半期には、日本も含めた先進国でできるところは削減目標を出していく、そういうことが求められているわけであります。もしも数値的な目標を出すとすれば、CO2を出す一番大きな分野であります電力分野についての電源構成を、今後、将来にわたってどういうふうにするのかという、一種、国のプランが必要になってくるわけであります。そういった中で、自由化をすると、仮に国がプランをつくったとしても、その割合をどう担保していくのか、そういった制度的措置を果たして入れていくのか入れていかないのか、こういった議論を十分にしなければ温暖化政策との整合がとれなくなってくるというタイミングに来ていると思います。

 次のページでございますが、今申し上げたことを繰り返すようで申しわけございませんが、二つの大きなエネルギー関連政策との調整、原子力政策の見直し、そして温暖化政策の見直しでございます。

 原子力政策につきましては、これを述べると時間が足りなくなるわけですけれども、基本的に官民のリスクの分担をどうするのか、事故の賠償リスクあるいは稼働率のリスク、あるいはファイナンスのリスク、いろいろなリスクがあるわけですけれども、これをどういうふうに官民で分担していくのか、この責任の明確化というのが必要になってくる。

 そして、リプレースや新設といったことについては、今、政治的イシューで何も決まっていないとは思うんですけれども、仮にそれを進めていくとすれば、それに対する金融措置が自由化の中では必要になってくるということでございます。

 もう一つの温暖化政策は、先ほど申し上げたとおりですので、省きたいと思います。

 三つ目のリスクですが、これは、緊急時対策の見直しであります。

 日本の、特に電力の現場、ガスの現場、両方ともそうですけれども、非常に現場力が強いと言われています。ハリケーン・サンディの後の電源復旧なんかに比べても、東日本大震災の後の東北電力管内の電力復旧というのは、見劣りするどころか、日本の方がスムーズにいったというふうに私は感じています。

 そういったことが、今後、法的分離に向かうに従って、日本人は真面目ですので、一旦組織を分離してしまうと、その間のファイアウオール的なものを本当に真面目に高くし過ぎてしまう可能性があります。それでなくても電力会社は、今、内部的には非常に縦割りだと言われているわけですけれども、これを組織的にも分離してしまうことになると、果たして組織間でのコミュニケーションができるかどうか。発電部門と送電部門が分かれることは自由化のためには必要な措置だとは思いますけれども、実際に復旧の現場に行けば、両者が協力して復旧しないといけないという場面も多々あるわけであります。

 そういう意味で、今後、例えば組織的な分離が現場力の維持にどういう影響があるのか、それを防ぐために緊急時シミュレーションをどうするのか、どういうルールでお互いを頼り合うことにするのか、こういったことを決めなければならないということに加え、ここに書いてあります電源燃料とか資材、これは、よいか悪いかは別にして、総括原価の中では、ある程度、無駄だと思っても予備をストックできたわけであります。自由化というのはこういったことを全部絞り込んでいくわけですから、そういう中で、いざ緊急時になったときにこの緊急資材をどうやって調達するのかという大きな問題があります。特に、大規模な首都あるいは大阪、こういったところで震災あるいは津波などが起こったケースにおいては、どこにもそういう資材がないということでは、日本の立ち直りという面でも大きな問題が出てくるということでございます。

 わずかになってしまいましたけれども、最後、逆にメリットの部分でございます。

 今後、実際にエネルギー産業がどういうふうになっていくかということをイメージした図であります。

 これは、A電力会社、B電力会社、今存在しているものの中で、特に火力、LNGを中心に化石燃料の共同調達をお互いにアライアンスを組んでやっていこうじゃないかとか、あるいはガス、石油の会社も含めてそれこそ総合エネルギー企業としてアライアンスを組んでいったらどうか、あるいはそれが産業ユーザーと直接の相対取引をすることによって、各電力会社が産業ユーザーをとり合うという競争が起こるかもしれない。そういう中で、では原子力はどうやって再編していくのかという問題も出てきます。また、小売の部門では、エネルギー企業ではなくて、通信とか流通企業とのアライアンスでサービス開発競争が起こるかもしれない。

 こういったことで、エネルギー企業が今までの九電力、十電力というような体制から非常に流動化し、経営力そのものの勝負ということになっていく。これは非常にいい面だろうと思っていますので、この改革に期待しているところでございます。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、河野参考人にお願いいたします。

河野参考人 一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長の河野康子と申します。

 本日は、電気事業法等の一部を改正する法律案の審議に際しまして、消費者として意見を申し上げる機会を頂戴いたしましたことに感謝申し上げます。

 簡単な資料を用意いたしましたので、それに沿ってお話を申し上げたいと思います。

 まず、表紙をめくっていただきまして、済みません、ページ番号を振ってありませんが、「はじめに」というところをごらんくださいませ。

 私たち消費者団体といたしましては、三段階に分けて進められる電力システム改革と、その第二段階に当たる今回の電気事業法等の一部を改正する法律案に対しまして、基本的には賛成の立場から発言をさせていただきたいというふうに思っております。

 率直に申し上げまして、消費者の選択肢が拡大する小売自由化という段階までやっと到達したというふうに感じております。

 ただ、電力システム改革を進めるに当たりまして、消費者の中には、大きな期待を寄せる一方で、不安の声があるのも事実でございます。改革がうまくいくかどうかは、これまでに松村参考人、澤参考人、御両名の方からもさまざまな専門的な要素が御披露されておりますけれども、私たち消費者から見ましても、国と事業者の役割発揮、さらに私たち消費者の理解ということが不可欠だというふうに思っております。

 電力システム改革という大きな転換を目前にして、そうした不安を解消していくためにぜひ御留意いただきたい点をお伝えしたいというふうに思っております。

 次のページをごらんください。

 電気は、私たち消費者の暮らしに不可欠なインフラでございます。スイッチを押せばすぐつく、それからコンセントを差し込めばすぐ使える、いつでも必要なだけ電気を使える便利な暮らしというのは、ちょうど三年前の福島第一原発事故を機に一転いたしました。

 原子力、再生可能エネルギー、化石燃料など電源に対しては、発電効率だけではなく、安全性や環境負荷、さらにコスト面で非常に消費者としても関心が高まりました。さらに、社会インフラとしての電気というのを再確認しましたし、特に省エネ、節電意識も一層高まりました。

 さらに、原発停止と化石燃料のたき増しによる電気料金値上げの審査に際しましては、電力会社さんが必要とするコストを積み上げて総括原価方式という形で総額を提示される今の電気料金の決定の仕方には、競争による効率化が反映されないということ、また、地域独占であるがゆえに電力会社を選べないなど、現状に対する疑問というのが膨らんできております。

 震災を契機とした消費者意識の変化で一番私たちが大きく感じ取ったところは、私たちには選択する権利がないんだというところでございます。

 次のページをごらんいただきたいと思います。

 選べないことへの不満解消につながるという意味で、電力システム改革への期待は大きくなります。例えば、電力会社や料金メニューを選べるようになる、また、うちでは風力と太陽光だけとか、原子力発電は嫌だからそれ以外のところからというふうな、どのような電源からつくられた電気かを選べるようになる、そんなふうな将来像も描いております。

 また、事業者間の競争が進むことや、ピークシフトやピークカットなどを含む全国規模でメリットオーダーが働くこと、恐らく絵に描いた餅だというふうに言われるかもしれませんけれども、私たち消費者からすると、そういったことで電気料金の抑制にもつながるのではないかというふうに思っているところでございます。

 電気料金の低減への期待はございますけれども、必ずしもそれだけが消費者の願いではございません。私たち消費者は、納得できる電気料金、サービスの実現を望んでおります。

 一方、こうした期待を実現するためには、当然のことながら、複数の供給事業者による競争的な電力市場の形成が不可欠だと思います。競争的な市場が形成されない場合は、先ほどから何度も話されているように、規制なき独占に陥る危険性が十分にあると思います。例えば、現在の一般電気事業者がそのまま地域で他の事業者の参入を寄せつけない状況で、消費者に実質的な選択権がない中で、もっと利益が上がるように自由に価格を引き上げられるようになってしまう、そのような状況になってしまうと、これは消費者や需要家にとっては最悪の状態になってしまいます。

 次のページをごらんください。

 そこで、電力システム改革を少なくとも今設計されているとおり成功に導くためには、とにかく競争環境の整備というのが重要だというふうに思っております。

 現在、大口の電力会社さんは既に自由化されているのにもかかわらず、既存の一般事業者がエリアを超えて相互に参入することは、実際のところ、ほとんど行われておりません。自由化されているはずの市場において、こうした競争の自粛、さらには相互不可侵という不正常な状況が放置されている現状を一刻も早く変えていただく必要があるというふうに思っております。これまでの事業姿勢を改めていただけるような適切な施策の検討が必要だというふうに思っております。

 次に、発送電分離を早期に実現すること、これも重要だと思います。いつまでもだらだらと現状を引き延ばしていくことで、競争は起こり得なくなります。送配電部門を法的に分離し、中立化することによってこそ、既存の電力会社と新規参入者が本当の意味で対等な競争を行うことができるようになるというふうに考えております。

 さらに、電気料金の値上げや電源構成に関しましては非常に敏感に反応する私たち一般消費者ですけれども、実は、この三番のところに書きました消費者、需要家への広報活動、情報提供の強化、ほとんどの消費者がこのことを自覚しておりません。

 ちなみに、私、既に結婚して家を出て働いております家庭を持っている娘に、電力システム改革があるんだけれども知っているかというふうに聞いてみました。一般企業で働いているきちんとした社会人である娘は、このことをほとんど知りませんでした。これは大きな盲点だと思います。この改革が本当にワークするためには、やはり私たち消費者がこのことをしっかり理解すること、それが非常に重要だというふうに思っております。

 ぜひ、私たち消費者団体もさまざまな場を通じて学習活動や情報提供を進めますけれども、国として、全ての消費者、需要家に対して、電力会社を選べるようになるということを知らせる広報活動をお願いしたいというふうに思っております。

 私の手元に、つい先日、手に入れましたけれども、経済産業省さんの方でつくってくださいました国民向けの電力システム改革の説明パンフレットというのがございますけれども、こういったものも活用されて、広く広報していただければというふうに思っております。

 実質的な競争環境を確保して、消費者が選べる状況を整備する、そのことが一番重要だというふうに理解しております。

 では、次のページをごらんくださいませ。

 これまでお話ししたことに加えまして、消費者の視点から今回の法律案に示されている内容に関しまして不安に感じていることを何点かお伝えしたいというふうに思っております。

 やはり一つ目は、ユニバーサルサービスに関してです。

 どこに住んでいても電力が供給される体制整備というのはもちろんでございますし、このことの担保は法律案に示されているというふうに思っております。さらに、消費者団体といたしましては、近年増加していると言われます生活困窮者への対策、本来これは社会政策として求められることとは思っているんですけれども、生活困窮者が電気の供給を受けられなくなったことで亡くなってしまう、そのような悲劇が起きないような配慮というのをぜひ検討していただければというふうに思っております。

 さらに、二つ目になりますけれども、私たち消費者が適切な選択を行えるように、国や事業者は積極的に情報を開示してほしいと思います。

 私たち家庭の需要者は、供給コストという面で見ますと、大口の事業者と比べますと、供給コストは大きく、さらに価格交渉力というのもございません。消費者に不利な選択にならないように、適切な情報開示が求められるというふうに思っております。

 三つ目になりますけれども、新規参入が進み、適切な競争市場が形成されるまでの経過措置として、一定期間、料金規制を継続することは妥当な措置だというふうに思いますが、できるだけ経過措置を短くすることが必要だというふうに思います。ぜひ、一定のめど、目標を持って競争的な市場形成の努力をしていただきたいというふうに思います。

 さらに、四つ目としまして、今回の法律案に示されていました、電力先物取引を可能にするために電力が先物取引の対象になるということですけれども、ぜひ、不招請勧誘などによる消費者被害が起きないよう、適切な消費者保護が図られるようにすることが重要だというふうに思っております。このあたりの担保もぜひお願いしたいというふうに思っております。

 さらに、資料には書きませんでしたが、五つ目として、やはり保安の問題がございます。

 メーターまでは配電事業者が責任を持ってくださいますけれども、家庭内の設備の保安に対して今後どのように担保するのか、そのあたりも不安に思っているところでございます。

 では、最後になります。最後のページをごらんくださいませ。

 私たち消費者にとっても非常に大きな転換期となる小売の自由化が目前に迫っています。

 まずは、競争環境の整備に力を注いでください。同時に、スマートメーター、スマートグリッド、スマートハウスなど、ITの進化は非常に目覚ましいものがございます。ITなどさまざまな技術の活用促進もあわせて求められています。そうした先に、多様な選択肢が初めて生まれてくるんだというふうに思っております。そこで、改めて私たち消費者は、何を選ぶのか、どう選ぶのか、選択に対する責任ある消費行動が求められているというふうに思っております。

 スイッチを押す、コンセントを差す、これまで余りにも自然で、余りにも当然だと思っていた、そして、だからこそ、意識していなかった電気の利用に対する私たち一人一人の行動が、電源構成も含めて、これからのエネルギー政策につながっていく、すばらしい、いい機会を与えていただいたというふうに思っております。

 小売自由化を機に、電力の安定供給、さらには安全性、コスト等の課題に対して、私たち消費者は責任ある消費行動を通して意思表示をしていかなければならないというふうに思っております。

 ぜひ、私たち消費者にとってわかりやすい、そして、こうした改革があってよかったと思えるような制度設計をお願い申し上げます。

 以上で私の意見表明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、原参考人にお願いいたします。

原参考人 政策コンサルティングの会社を運営しております原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 政府関係では、昨年から産業競争力会議のサポート、また国家戦略特区のワーキンググループの委員などを務めておりまして、昨年秋には、この委員会で、産業競争力強化法についての意見を申し述べさせていただきました。今回は、電気事業法改正案に関して、こうした機会をいただき、大変ありがとうございます。

 既に御意見を述べられたほかの参考人の方々とは異なり、私は、今回の電力自由化の検討プロセスに直接参画などしてきた立場ではございませんので、少し違った視点から何点か意見を申し上げたいと思います。

 まず、電力自由化と、成長戦略、アベノミクスの第三の矢の関係について申し上げたいと思います。

 アベノミクス全般について、内外の関係者の目は、残念ながら、決して好意的なものばかりではありません。特に、第三の矢に関して、どうなっているのか、もう飛ばないのではないかといった声も少なからずあるわけであります。

 その中で、世界の期待をつなぎとめているのが、安倍総理の強いコミットメント、とりわけ、ことし一月に、スイスのダボス会議の場で、世界に向けて大変意欲的な方針と決意を示されたことだと思います。

 このスピーチで、この資料にも書いておりますが、安倍総理は六つの大きな方針を示されています。第一に岩盤規制の改革、第二にTPP、EPAの推進、第三、GPIF改革による成長への投資、第四、法人税改革、第五、女性活用、雇用市場改革、それから第六にコーポレートガバナンス改革ということでありました。

 昨年、私は、産業競争力強化法の参考人質疑でこちらに伺った際にも申し上げましたが、産業競争力の強化のためには、民間部門がいかに活動しやすい環境をつくるか、不合理な制約を取り除くかということが大変重要であり、規制改革は成長戦略の最も重要な柱であると考えます。

 この観点で、安倍総理が第一の柱としていわゆる岩盤規制の改革を掲げられたということは、的確な方針であると思います。

 その上で、第一の柱である岩盤規制の改革に関して、安倍総理がイの一番に触れられているのが電力自由化であります。

 少し引用いたしますと、「昨年終盤、大改革を、いくつか決定しました。できるはずがない――。そういう固定観念を、打ち破りました。」として、最初に電力市場の完全自由化について取り上げられています。スピーチでは、その後、農業や医療について触れられた上で、「既得権益の岩盤を打ち破る、ドリルの刃になる」、そして、向こう二年間で、少なくとも国家戦略特区では全ての岩盤を打ち破るという宣言をされたわけであります。

 この今後二年間という期限を切った大変意欲的な宣言は、ダボスのスピーチ会場はもちろん、世界でも大きな期待を持って受けとめられていると承知をしています。

 ただ、今後二年間に向けての約束の前提となるのが、先頭を切って進行中であるこの電力自由化であります。

 万一にも、これが失敗するようなことがあれば、すなわち、二〇二〇年に日本の電力市場は完全に競争的な市場になっていますという総理の宣言に疑いが生ずるような事態に仮になれば、これは、電力分野だけの問題にとどまらず、アベノミクス全体に対する世界の信頼を損なうことにつながりかねない。これが最初に申し上げたい点であります。

 電力自由化の合理性、必要性については改めて申し上げるまでもないかと思いますが、簡単に言えば、かつては、規模の経済の働く構造で、世界じゅうどこでも、電力分野は公営または独占形態で規制がなされていたわけでありますが、技術革新によって、送電部門を除いて、規模の経済が消失をし、従来の規制の合理性はなくなっている。ところが、既に合理性を失った規制がそのまま維持されて、世界の多くの国々と比べて二歩も三歩もおくれて、ようやく完全自由化に取り組まれている、そういう状況だと思います。

 いわゆる岩盤規制と言われる分野でしばしば見られる典型的な事象の一つということではないかと思います。

 この観点で、今回、この第二弾の法案で示されている小売参入の全面自由化という方向については何ら異論なく、ぜひしっかりと進めていただきたいと思います。

 ただ、その際に留意しておくべき課題として、三点申し上げたいと思います。

 第一に、これはもう既にほかの参考人からも御指摘があった点ですが、自由化によって現実に競争が生ずるかという点であります。

 これまでの大口部門を対象とした小売自由化では、自由化という制度改革はなされたものの、残念ながら、競争環境は極めて乏しい、現実の新規参入もごく限定的でありました。事実上の独占という市場構造は基本的に変わっていないと電力システム改革専門委員会報告書でも指摘されていたような状態だったわけであります。こうした結果に終わらせてはならないと思います。

 現実に新規参入する事業者があらわれ、活発な競争がなされることが重要であります。特に、これまでの垂直一貫の電力供給という制度的な制約が取り払われることにより、電力事業やガス事業といった縦割りを超えて、新たな参入、業界再編が起こっていく可能性に大いに注目すべきと思います。

 さらに、エネルギーという枠も超えて、通信あるいは上下水道といった領域ともまたがって、新たなサービス、インフラ産業が生まれていく可能性もあろうと思います。例えば、フランスのヴェオリアは水道事業の会社として知られますが、実際には、エネルギー、廃棄物処理なども扱う総合インフラ企業なわけであります。

 このように、業種の枠を超えて、共用できる設備や技術を共用して効率化する、あるいは消費者向けにセットメニューを提示するといったような、さまざまな形で新たなサービスや業態が生まれていく可能性があろうと思います。

 今回の電力自由化は、こうしたインフラ産業全体の進化ないし再編に向けた出発点になるものであり、また、そうなって初めて十分な実効性を伴うものと思います。

 他方で、こうした業種を超えた展開を本格化していく上では、電力自由化以外の制度的な課題も出てくるかと思います。

 例えば、既に経済産業省で検討が開始されていると承知していますが、ガスについてのシステム改革もあわせて必要でしょう。熱供給についても課題があろうかと思います。また、上下水道など公営インフラの民間開放について、これは産業競争力会議の立地競争力分科会で、ことしの二月以降、集中的に議論を行っております。二〇一一年のPFI法改正で、いわゆるコンセッション方式、運営権を設定する方式での民間開放が可能になりましたが、実際上の課題は少なからず残されている状態であります。

 こうした課題は、日本では、電力分野などがたまたま歴史的に公営でなかったため、別のカテゴリーの課題として扱われがちなわけでありますが、実は、インフラ部門への競争導入という意味では、共通の課題と思います。

 こうしたインフラ部門への競争導入にかかわる課題を一体的に、整合性を持って解決していくことにより、部門を超えた相互参入と競争促進、新たな総合インフラ事業の創出、さらに、将来的には新たなインフラシステムの輸出や世界展開にもつながっていくものと思います。

 ただ、こうした多様な領域にまたがる改革を一斉に進めるということには困難が伴うのかもしれません。この場合は、最初に触れましたが、まずは、国家戦略特区のような枠組みを活用して、地域を限った実験を先行してみるといったことも一案ではないかと思います。

 次のページに移らせていただきます。

 第二に、独立性と専門性を有する規制組織への移行の重要性であります。

 現実に競争を起こすという観点で、市場が正常に機能しているか、あるいは競争阻害的な行為がなされていないかといったことを的確に監視する機能が重要であります。この点、昨年成立した第一弾の改正法の附則でも、平成二十七年をめどにというプログラム規定が定められていると承知していますが、早急に検討、準備が進められるべきと考えます。

 その際、特に、従来、独占的な地位を有していた電力会社からの影響を十分に排除できるような独立性を持たせること、また、金融規制などでの例も参考に、専門性ある人材を十分に確保、育成できるように設計する、こういったことが重要ではないかと考えます。

 また、先ほど、電力だけでなく、より幅広くインフラ分野への競争導入全般が課題であるということを申し上げました。今回設けられる規制機関は、恐らく、電力だけではなく、より広範な競争規制機関に発展していく可能性があるものと思います。こうした可能性も視野に検討がなされるべきかと思います。

 最後に、第三点ですが、自由化プロセスの停止、逆行を生じさせないことが重要であります。

 何より、まず、今回の法案で第三段階として積み残しになっている発送電分離、料金規制の撤廃まで、確実に、十分な措置が実行されるべきであると思います。

 また、今後、例えば、一時的に電気料金が上昇したとか、たまたま停電が発生したとか、あるいは原発に関する何らかの事情変更があったといった、本質的ではない理由をつけて自由化プロセスを停止、逆行させようとする動きが生ずる可能性は否めないのではないかと思います。こうしたことを起こさないようにしなければいけないと思います。

 過去のほかの分野での規制改革に関して、二つこれまでの例を申し上げたいと思います。

 まず、航空自由化についてであります。

 航空分野は、かつては、国際線と国内線でのすみ分け、同一路線には一社だけといった競争回避措置がなされていました。一九八〇年代以降、これが徐々に緩和、撤廃され、運賃規制についても規制緩和がなされました。規制緩和がなされた当初の文献を見ますと、規制緩和がなされて以降、むしろ運賃が上昇したといった指摘もあります。

 しかし、現時点になってこれを振り返ってみれば、こうした規制改革の成果として、多様な運賃メニュー、LCCの登場などが実現したわけであります。もちろん、LCCも順風満帆ではありませんし、解決すべき課題もあると思いますが、少なくとも、今となって、やはりかつての同一路線一社体制を維持しておけばよかった、規制改革は失敗だったと言われる方はほとんどいないのではないかと思います。

 次に、タクシー規制についてであります。

 こちらは、九〇年代から二〇〇〇年代の初めに規制緩和が進みましたが、その後、行き過ぎた規制緩和であった、運転手さんたちの労働環境悪化や事故が起きているといった議論が出てきて、再び需給調整と厳格な運賃規制の方向へとかじが切られつつあるようであります。

 きょうはテーマが違いますので、この話は余りいたしませんが、本来、労働環境の悪化や安全上の問題というのは、これは労働規制、安全規制で対処すべき問題であって、本件で、これらを理由に需給調整あるいは運賃規制の復活が必要というのは筋が違うと考えております。

 ともかく、申し上げたいのは、自由化の成果、規制改革の成果が十分にあらわれる前に、何らかの理由をつけて停止、逆行させようという動きが生ずることは危惧すべきことであって、防ぐ必要があるということです。

 これを防ぐための一つの方策が、所管省とは切り離して、改革プロセスにつき提案、監視をする機能を設けるということだと思います。例えば、かつて、道路公団民営化推進委員会、郵政民営化委員会など、担当省とは切り離して、別の担当大臣のもとに第三者機関を設けた例がありました。

 こうした議論を経済産業省の方たちにすると、いや、自分たちはそういう改革反対の役所とは正反対で、むしろ自分たちこそ自由化推進の本丸なんだということを言われるわけですが、確かに、そういう方たちが頑張っていることはそのとおりであって、だからこそ、今この法案を審議されているんだと思います。

 ただ、仮に、今後そういった逆向きの動きがあらわれたり、あるいは自由化プロセスが迷走するような事態が想定されるとすれば、政府内でチームを二つに分けるというのは、過去にもこうした難度の高い改革プロセスでとられてきた一つの知恵だと思いますということを最後に申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田健一君。

細田(健)委員 自民党の細田健一でございます。

 まず、四人の参考人の皆様方、お忙しいところ、お時間をいただきまして、本当にありがとうございました。改めて、心から御礼を申し上げます。

 また、時間が二十分と限られております。四人の方、全員からお話を伺いたいところでございますが、結果として御質問できない方も出てくることがあり得ることをあらかじめ御了解いただければと思います。

 私も、いろいろるるお話がございました今回の電力システム改革、マーケットの力を利用して資源配分の効率性を高める、また、その過程において消費者に選択の機会を与えることにより消費者の効用を高める効果があるというふうに考えております。

 一方で、やはり電気、これはきょうは全部売り切れたからもう売れないというようなわけにはいかないコモディティーでございまして、いわゆる電力供給不足がどのような混乱とまた社会的コストを与えたかというのは、これは震災後の非常に苦い経験から明らかであると思います。

 したがって、当然、自由化によって資源配分の効率性を高めつつ、先ほどいろいろお話ございましたさまざまなリスクに的確に対応するということが必要だろうと考えております。

 先ほど、価格メカニズムが恐らく投資を促すというようなお話もございました。これは、確かに中長期的には当然こういう側面があると思いますが、ただ、特に電力、もう重厚長大型産業の典型のようなところがございまして、きょう五十万キロワット足らなくなったから、あしたすぐ供給しろというわけには当然いきません。

 これは、私の理解では、やはり発電所を新規につくろうと思えば十年近い年月がかかるのでありまして、この意味では、常に適当な投資が、また、これは常に、供給不足に陥ることがないように、その予備率が必要だと思いますが、そういう予備的な投資も含めて適切な投資が行われるという条件をつくっていくということが必要だろうというふうに考えております。

 せっかくの機会ですので、まず、多少、電力システム改革と離れたところから、いわゆる日本のエネルギー政策を考える前提条件についてちょっとお話をお伺いしたいと思うんですが、日本の場合、化石燃料が自国に賦存しているかどうか、あるいは島国であること、あるいはリニューアブルエナジーの適地があるかどうかも含めて、かなり特殊な状況にあるのではないかと思います。

 いわゆるエネルギー地政学というふうな観点が必要ではないかと思いますが、この点について、まず、澤参考人から、日本のエネルギー状況の特殊性といいますか、日本のエネルギー政策全般を考える場合において、どのようなことについて配慮すべきかということについてお話をお伺いできればと思います。

澤参考人 どうもありがとうございます。

 私は経済産業省出身ですけれども、入ったのが一九八一年であります。第二次オイルショックの直後で、スリーマイルの直後でもありました。そのときのエネルギーの安全保障についての、政府あるいは政治あるいは電力会社、みんな物すごい危機感があったわけであります。

 今、細田委員おっしゃったように、ヨーロッパでは、それぞれの国が連系線でつながっていて、どこか一朝事あると、ほかのところが助けるということもできますし、また、今となってはかれつつありますけれども、北海油田とかそういうものも出てきた。

 そういうのに比べると、日本は、構造的にあるいは運命的に、そういう資源賦存状況が悪い、その上に島国であるということから、やはり、一朝事あると、エネルギー安全保障が非常に大きな問題になってくる。これをヨーロッパと同じだという前提で話を進めると非常に危険かなという点は御指摘どおりだと思います。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 やはり、安定供給について、島国ということもありますし、より考えていかなければならないということだと思います。

 それでは、いただいた資料に基づいて質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、澤参考人に対して、私も、先ほど申し上げたように、いわゆる各種リスクへの対応が非常に重要だと思います。

 いただいた資料の中で、リスクへの対応(一)というページがございまして、中長期的な供給力確保というのが重要であると。これも先ほど申し上げたように、常に適切な、この適切なといいますのは、ある程度の予備的な力を持ったというところがやや微妙なところだと思いますが、常に適切なレベルの投資が行われるということが必要だろうと思います。

 これについて、今回のシステム改革では、いわゆるネットワーク事業者にかなり厳しい規制をかけて、ここの部分でそれを担保するということになっていると理解しておりますが、より具体的に、経済産業省が今後ネットワーク事業者をさまざまな指導ないしはリードしていくということになるでしょうが、そこの部分の事業者に対する指導等を行うときの留意点といいますか、特にここについてはこういう形できちんとやらなきゃいけないということがあれば、ぜひ御意見をお伺いしたいと思います。

澤参考人 ありがとうございます。

 基本的には需要想定だと思います。エネルギーのサプライサイドの方は、事業者が、あるいは送配電事業者が投資計画をつくっていくわけであります。

 ただ、では、どういう需要を想定していくのかということが、諸外国でも非常に難しい問題だ。いろいろな研究では、やはり規制当局がそれを示す必要があるのではないか。このケースであれば、経済産業省が送配電事業者に対して、どの程度の投資を、どの需要想定をやるから必要だということを示さないといけないわけですね。

 ただ、その需要想定というのがまたくせ者でして、どの政権でも、経済成長率というのは、ある意味、高目に目標設定してしまうわけですね。そうすると、それに対して電力需要が決まってくるわけですから、それに合わせて投資をしようとすると、若干過剰ぎみの投資になりかねない。一方で、それを社会的に非常に効率的な投資に抑えようとすると、もしも景気の揺れがあったときに大丈夫かということがまた問題になるわけです。

 さっき細田議員もおっしゃったように、あした五十万キロワット必要だといってもすぐにできる問題ではないので、そういう意味では、たしか十年ぐらいの計画を送配電事業者と議論していくというふうになっていたと思いますけれども、僕としてはもう少し、実際のあれを考えれば、十年以上の中で見ながら、十年そして五年と、きめ細かく需要想定をしていく必要があるのではないかと思います。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 同じ観点から原参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほどいただいた参考人資料の一枚目の一番下のところ、いわゆる発電部門の参入等々が鍵であるということで、今、澤参考人のお話もございましたが、いわゆる新規事業者が発電部門に特に参入をして競争が行われるということが望ましいと思います。

 こういう環境を整備するために政策的にとり得る手段というのはあり得るのか、また、とり得るとすればどういうものがあるのかということについてお話をお伺いできればと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 基本的には、これは今回のシステム改革全般にかかわるところかと思いますが、市場環境を整備して、その中で競争がきちんと働くようにということだと思います。

 まずは、競争環境がきちんと働くような環境をつくること、その中で新しい事業者がどんどんと入ってくるようにすることというのが非常に大事ではないか。その観点で先ほど規制機関についても重要であるということを申し上げましたが、それもその一つではないかと思っております。

細田(健)委員 済みません、ちょっと今の点について。

 仮に私が新しい発電所をつくろうと思うと、例えば用地を取得するとかあるいはアセスメントの手続がある、それから、当然長期的な相当大きな額を固定的に投資しなければならないということで、お金を貸してくれる人がいるかどうかとか、そういうさまざまな問題があるわけなんですが、ここについて、通常であれば、何らかの参入を促進しようとすれば、ある種の誘導的なといいますか、補助金をつけたり、あるいは金利について何らかの優遇措置をつけるとか、いろいろ考えられるわけですね、あるいは政策投資の活用とかも考えられるんですが、こういう点についてはいかがなんでしょうか。

原参考人 市場に任せると全てが簡単に短期的にうまくいくということではもちろんございませんでして、例えば自由化をしたことによって、発電投資について、これは短期的には抑制をされてしまうという可能性については当然考えておくべきだと思います。

 これは実際に、短期的な利益を考えれば、そこに投資をするよりは、発電投資をせずに収益を上げる方が望ましいというような判断がなされてしまう可能性はあるわけでありまして、それをいかに防いでいくのかということは、これは先ほどほかの参考人からも御指摘のあったような、リスクへの対処をするための制度的な措置をきちんと講じていくということは当然必要だろうと思います。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 それでは次に、消費者の立場ということで、河野参考人にお伺いしたいと思うんですが、これは、いわゆる消費者に選択の機会を与えるということが今回のシステム改革の一つの大きな目玉になっております。

 それで、先ほど松村参考人の方からもお話がございました、例えばリニューアブルエナジーについて、これは望ましいと言いつつ、恐らく実際に購入する場合は非常に高い値段になってしまうので、市場メカニズムをかませることによって、ある意味、市場の経済行動として、実際に責任のある形でステートメントに対するコミットメントが図られるということだと思うんです。

 非常に素朴な疑問なんですが、仮に消費者の方に幾つかのメニューが提示をされた、例えば、リニューアブルエナジーのみで、ただ非常に値段が高い料金プランと、原子力なりあるいは大規模な火力発電所を中心として、それよりも安い料金プランが提示をされたときに、実際に消費者の方が前者を選ぶ可能性といいますか、前者を選ぶ方がそれほど大きく出てくるのかどうか。

 これも、基本的には、最終的にはマーケットに任せるということなんでしょうけれども、ここについては実際にどういうふうにお考えなのかということをぜひお伺いしたいと思うんですが。

河野参考人 御質問ありがとうございます。

 私が今現在お答えするのはなかなか難しいかなというふうに思っておりますけれども、でも、消費者側は、現在は、電気に色はないですし、電源が何なのかということも含めて、選べない状況でおります。国会の周辺でも、さまざま、反対運動等で行動を起こしていらっしゃる方々も大勢いらっしゃいますが、恐らく、少なくとも、反対ということを声高に叫んで、実際、行動に移せない状況よりは、一歩は進むのではないかというふうに思っています。

 そこで、本当に、もし、非常に原価が高い再生可能エネルギー等のみで供給されるグリーン電力のようなものが改めてメニューに入ってきたときに、それを本当に選択するということになれば、私たちが今考えているこの国の未来に対する姿というのが国民の考える一つのありようであろうというのを、いろいろなところに決意を表明する機会になると思います。

 今、現状ではそういったことも、ただ反対であるということをお伝えするだけで、具体的に私たちには選挙で投票する以外にはなかなか行動の選択権はないというふうに思っております。

 ですから、最終的にどういう選択になるか、それのみになるのか、家計の問題もございますから、ベストミックスという形でいろいろ取りまぜた提案になるのか、それは履いてみないとわからないところですけれども、消費者は試されるのではないかなというふうに感じております。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 私も、マーケットを通じて、実際、消費者の選択の結果として、マクロ的に、先ほど澤参考人から話もありましたように、政府としては、政策的にある程度の支援を行うという前提のもとで、それを所与のものとして、最終的にはマーケットの消費者の選好によって日本のリニューアブルエナジーの規模が決まってくるということが望ましいというふうに考えております。

 それでは次に、松村参考人にちょっとお伺いしたいと思います。

 いただいた資料、二十六ページの(三)の部分なんですが、いわゆる規制なき独占について相当程度の警鐘を鳴らしておられます。それで、これも先ほどの原参考人に対する質問とややつながるところがあるんですけれども、実際問題、私の感じだと、ある程度政府が後押しをするような優遇政策的なものをとらなければ、なかなか、いわゆる工場にあるような既存の発電設備は別として、結果として、新しい事業者がどんどん発電所をつくるというふうなことにはならないんじゃないか。

 逆に、政府がある程度のインセンティブ施策をつければまた状況は変わってくるかもしれませんが、ただ単にマーケットに任せるというだけだと、なかなか現実としては難しい面があるんじゃないかと思うんですが、特に、この発電の分野について、規制なき独占という最悪の結果を生まないような制度的手当てとして具体的にどのようなものが考えられるのかということについて、お話をお聞かせいただければと思います。

松村参考人 まず、発電投資しなければ参入できないという状況にはしないということが重要だと思っています。

 現状は、原子力発電所がこれだけとまっている状況であるのにもかかわらず、したがって、需給はかなり逼迫はしているけれども、しかし輪番停電のようなものが不可避になるほどにはなっていないというのは、十分電源があるからなんですね。そうすると、これだけ十分な電源があるときに、今慌てて新規の電源を大量に建てなければいけないのかというのは、そもそも経済効率性から考えてみても、多少疑問があります。

 もちろん、電源はできてくると思いますが、まず、電源ができなくてもちゃんと競争ができるようにしなければいけない。そうすると、既にある既存の電源というのをうまく使って、競争というのが起こってほしい。一番典型的なのは、今の一般電気事業者間が競争する、こういう状況をつくりたい。

 それから二番目は、新規参入者が、自社の電源も使うけれども、卸供給を受けた電源を使って小売をする、こういうことも整備したい。そうすると、卸市場を十分に整備するということが鍵になると思います。

 それから、卸市場の十分な整備は、新規の電源の立ち上げにも後押しになると思います。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 私に与えられた時間が十八分までということですので、これを最後の質問にしたいと思いますが、最後に、では澤参考人にお伺いをしたいと思います。

 直接的な電力改革システムとはやや離れますが、先ほどの資料、リスクへの対応の(二)の部分で、原子力政策の見直しについて言及をされました。

 先ほど、いみじくも、時間がないのでちょっとここについては詳しくお話しできないというふうな発言をされたんですが、ここの部分、いろいろな御意見、各党によってもいろいろな差がありますが、私自身はいろいろ、安全保障の面であるとか、環境適合性、あるいはコストの面からも、日本が今後原子力技術を放棄するということはあり得ないというふうに考えておりまして、ぜひそういう意味では原子力事業の環境整備を行うべきだと思っているんです。

 これは党内にもいろいろな意見がありますし、また各党間でもいろいろな御意見があると思いますが、ここの部分について、ぜひ詳しくお話を伺えればと思います。

澤参考人 原子力については、やはり三つの不透明性があるといつも申し上げていまして、一番目は政治的不透明性、これはそれこそ言うまでもなくなんですけれども、事業者にとって政治的不透明性のある中で原子力を続けていくというのが極めて難しい状況に今なっていると思います。

 二番目に政策的不透明性で、これがさっき申し上げたシステム改革とバックエンドの政策、この二つについて、システム改革では原子力の位置づけがまだはっきりとしていませんし、バックエンドについてはまだ具体的な手順その他が決まっていないということであります。

 三つ目に、きょうは関係ないですけれども、規制法の問題、規制委員会の規制活動の不透明性であります。

 こういった原子力をめぐる不透明性、いわゆる事業リスクでありますけれども、今委員おっしゃったように、原子力を今後続けていくとすれば、こういった事業リスクを全部払拭していかなければいけない。そういう中で、非常に政治的にはハードルの高い制度改正や、予算措置や、その他いろいろな措置が必要になってくる。そういう中で、原子力の議論を早く深く政治がリードして進めていただきたいということでございます。

細田(健)委員 問題が非常にクリアになったと思います。

 四人の参考人の皆様方、本当にありがとうございました。

富田委員長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 本日は、御多用な中、四名の参考人の皆様に本委員会までお出ましいただきまして、貴重な御意見を賜りましたことを、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。

 早速、質問の方に入らせていただきたいと思いますけれども、まず松村参考人と澤参考人にお伺いいたします。

 今回の改正法案では、小売全面自由化に必要な措置も定められておりますけれども、その中で、電気の安定供給を確保するために小売事業者に対して必要な供給力の義務づけ、空売り規制がされております。この小売事業者が確保すべき必要な供給能力には、予備力の確保も含まれているとされております。このことについては、先日、私は政府に質問しまして、そのような答弁を確認いたしました。ただ、どの程度の割合の予備力を確保するのかという明確な、また具体的な数値というか基準というのが定められているわけではありません。

 先ほど、細田委員の方も供給力、予備力について触れられておりましたけれども、小売の全面自由化、また電力の自由化がどんどん進んで、この予備力の確保というのを各事業者の取り組みに委ねてしまうことになると、経済合理的に考えて、発電事業者が余分な発電設備を持つことをやめてしまうおそれがあります。予備力を含む長期的な安定した供給力の確保が難しくなれば、そもそもの電力システム改革の目的を阻害してしまうことになります。

 そこで、例えば、発電能力を保有して必要な供給力の確保に貢献している発電事業者については、その分の対価をきちっと得られることができるようにするとか、こういった仕組みも検討していく必要があるのではないかというふうに考えております。

 不足分の補完供給、しわ取りですね、これについては一般送配電事業者の業務とされているともなっておりますけれども、この予備力をいかに確保すべきか、これは一つの急所になると思っていますけれども、これについての見解を松村参考人、澤参考人にお伺いいたします。

松村参考人 御指摘のとおり、安定供給のためには予備力の確保というのが最重要だと思います。発電事業者あるいは小売事業者が確保するというのは、それは一つの側面だと私は思っております。

 容量に対して支払いをする、いわゆる容量メカニズムというようなものもこれから検討されていくことになると思います。特に、現時点では電源はある程度あるとしても、今後の投資インセンティブということを考えれば、早急に整備しなければいけないことは御指摘のとおりです。そのためには、容量に直接払うというのも一つの重要な手段になると思います。

 それから、現在、明確に準備されているものは広域機関の入札というのがありますが、入札するというのは、まさにお金を払うことは当然の前提でして、そのときに、当然設備は持っているけれども、結果的には使わなかったものに対してもちゃんと支払われるというようなことは出てくると思います。

 それから、入札に関しては、発電所をつくるためには、十年かかるとかいうような類いのものから、ガス発電なら四年ぐらいでできるとかということから、いろいろな観点から、つまり十年の側面でも、四年の側面でも、前日の側面でも、それぞれ御指摘のような、きちんと予備力を確保するということが経済的にもペイする仕組みというのを、容量メカニズム、入札、あるいはアンシラリー料金だとかインバランス料金の設計ということ、あらゆる手段を尽くして考えていくことになると思います。

澤参考人 繰り返しの部分を除いて補足的に申し上げると、先ほど申し上げたように、例えば、送配電事業者が電源入札をするとしても、どれぐらいの量を入札するのかということは需要想定にかかわってくるわけで、これを電力自由化と呼ばずに電力システム改革と呼んでいる理由は、実は、自由化としてしまって、市場あるいは価格メカニズムに任せてしまうと、最終的に需要をどれぐらいに考えて、どれぐらいの投資を入札すべきなのかという判断ができなくなるわけですね。

 したがって、今回のものというのは、自由化、価格メカニズムのいいところは取り入れるけれども、規制当局あるいは政府が、例えば需要想定の段階でどういう考え方を持つのかということをやはり最終的には入れ込んでいかないといけない、そのバランスなんですね。ですから、さっき規制なき独占という話がありましたけれども、規制だらけの自由化になってしまいかねないわけで、その間でどういう規制と価格メカニズムのバランスで予備力を確保していくか、これはもう試行錯誤でしかないんじゃないかなというふうに僕は思っています。

 特に、ここにいらっしゃる皆さんはリニューアブルが大好きで、全員、再生可能エネルギーを入れろなんですけれども、入れた場合に、ますます、今言った予備力あるいは調整電源をどれだけにしていけばいいのかということが余計に難しくなるということはぜひ御理解いただければと思います。

國重委員 ありがとうございました。よくわかりました。

 それでは次に、松村参考人にお伺いいたします。

 二〇一二年度で卸電力取引所での取引量というのは全販売電力の一%に満たない状況となっております。競争基盤を整備するためには卸電力取引所を活性化させることが不可欠であると考えますし、松村参考人も卸市場改革が必要とおっしゃられております。

 この卸電力市場を活性化させるために、具体的にどのような取り組みをしていけばよいと考えるか、これまでなかなかこれが活性化されなかった原因等も踏まえて、御見解を伺えればと思います。

松村参考人 取引所の活性化というのは、御指摘のとおり、競争基盤という点で極めて重要なのですが、もう一つ、メリットオーダーを実現し、より効率的な電力供給にするということでも非常に重要な点です。

 経済産業省の試算によれば、メリットオーダーまで考えて合理的に取引された数量と比べても、極端に少ないということが明らかになっていると思います。ということは、明らかに出すインセンティブが小さ過ぎたということなので、今現在は、とにかくメリットオーダーをきちんと実現できるぐらいの合理的な量を出してくれということを自主的な取り組みとして要請している段階なのですが、これで取引量が十分ふえてこないということであれば、もはやそのような自主的な取り組みでは無理だということが火を見るより明らかになるわけですから、何らかの強制的な手段というのが必要になってくると思います。

 その場合の強制的な手段としては、例えば、売り量というのを一定量は出させるということをする、もちろん買い戻すことができるわけですから、供給不安になるような量を出せ、そういうことではないんですが、そういうことを義務づけることもあり得るでしょうし、あるいは、一定量の電源に関しては相対取引で、仮に取引所を通じなくても出せということをやることもあり得るでしょうし、あるいは、電源が不足しているんだから出せないというのに対しては、では買いの方で流動性に貢献してくださいという形で、売りと買いを両建てで出させ、その値幅というのを制限するという規制も考えられると思います。

 いずれにせよ、澤参考人が御指摘になったとおり、規制だらけの市場にしてもしようがないじゃないかというのに対しては、私たちは、自主的な取り組みでも十分だと言えるぐらいにならないかと期待を込めて、まず要請はしているということなのですが、これで全く期待外れだということであれば、御指摘のような観点から、何らかの規制的な手段というのはとらざるを得ないと思います。

國重委員 ありがとうございました。

 引き続いて、もう一度、松村参考人にお伺いいたします。

 本日頂戴しました参考資料の二十一ページ目に記載されておりますけれども、この中に、「日本の電力安定供給は、一般電気事業者の、とりわけ現場の職員の高い職業意識、安定供給への責任感と矜持に支えられてきた」「先進的で安定的な送配電技術、現場の高い職業意識は日本の宝」、この「日本の宝を破壊しないシステム改革を」「現場がやる気をなくすルールは避けるべき」であり、「十分な配慮が必要」というふうに述べられております。

 まさにおっしゃるとおりだと思いますけれども、この日本の宝を破壊しないシステム改革、また現場がやる気をなくさないルールというのは、具体的にはどのようなものをお考えになられているのか、御教示いただければと思います。

松村参考人 私は逆に考えておりまして、つまり、こういうことをやって現場の宝を破壊するというルールがあるとすると、それを、あらかじめ、そういうことをしないようにすることが非常に重要だ。

 具体的に言うと、例えば、法的分離をしたときに、送配電部門と発電部門はちゃんと分けるんだ、だから人事の交流は一切なしとやるのが一番明確なルールなんですが、それをやってしまうと、発電の現場を全く知らない送配電屋さんと、送配電のことを全く知らない発電屋さんというのを大量につくってしまうことになり、今までの電力会社のローテーションのいいところというのを破壊してしまうことになりかねないわけですね。

 そうすると、人事の交流というのを無前提に認めるわけにはいかないけれども、そのような現場の実際の状況というか、どういうふうに蓄積してどういうふうにモラールを高めてきたのかということをつぶさに観察した上で、それを破壊しかねないようなルールというのをとらないようにすることが極めて重要だと考えております。

國重委員 それでは、原参考人と澤参考人に。

 今、松村参考人に、日本の宝を破壊しないシステム改革、現場がやる気をなくさないルールについてお伺いして御意見をいただきましたけれども、これについて何かそれぞれ御意見等がありましたら、また、それにとらわれずとも、現場がやる気をなくさないルールというような観点から何か御意見があれば、よろしくお願いします。

原参考人 若干の補足で申し上げますと、松村参考人がおっしゃられたように、分離をきっちりやることは重要であり、一方で、専門性のないような状態になってしまうということは避けないといけない、これも全くおっしゃるとおりだと思います。

 ちょっと、やや話が飛んで聞こえるかもしれませんが、この話は恐らく労働の流動性の話にもかかわり得る話でありまして、一つの会社に入ったら、ずっと終身雇用的にそこに勤めるということを前提にすると、それはやはり、その二つの会社を一緒にしておかないといけない、そこで人事交流ができるようにしておかないといけないということにつながるわけでありますが、分離をした状態であっても、人的な、専門性の高い人を集めるような、人材を確保する仕組みをつくるということは、これはまた別の労働市場の議論としてあり得るのではないかと思います。

澤参考人 今おっしゃった、供給マインドというか供給責任というか、そういう現場の高い職業意識というのは、僕は組合の人とかといろいろ話をした中で思ったのは、やはり電気事業法の存在というのは非常に大きいんですね、彼らにとって。要するに、供給義務というのは既にあるものだというふうに先輩からずっと教え継がれてきているわけで、一種のDNA化しているわけです。そういうものを、今度、システム改革ということで大きく制度改革すると、これは影響ないということは多分あり得ないと思うんですね。

 それを、オーバーライドしてでも改革を進めるべきだということになるのであれば、もう少し現場の中を詳しく見ていく必要があって、多分、送配電分野の人たちは、仕事は今と余り変わらないと思うので、それほどその影響はないんだろうと思うんですけれども、むしろ、やはり発電部門の、例えばそれぞれのサイトごとで応援をするとか、あそこのタービンがだめになったらうちから部品供給をするとか、そういうようなことの、現場で、発電部門間での連携が行われてきたことが、今後、市場でどうやって高く売るかを考えた発電設備の運用に変わるということですから、壊れたら直してじゃないかもしれないわけですね。

 そういうようなことが起こり得るので、さっき資料で説明したように、緊急時の対応というのは、ふだんのルールとは違うルールで、一挙に集まる、それをシミュレーションするということをやっていくぐらいしか僕も余りアイデアはなくて、むしろ、今までの組織一体だったものを分離するとすれば、分離された組織同士の連携のルールというものをきっちりと決めてから分離していかないと、非常にリスクは高いかなというふうに思います。

國重委員 ありがとうございます。それぞれの御意見、よくわかりました。

 続きまして、河野参考人にお伺いいたします。

 河野参考人のきょうの御意見、また参考資料の中にも、適切な選択を行うためには国及び事業者による消費者への積極的な情報開示が必要だということであって、もっともなことだと思います、極めて重要なことだと思いますけれども、この情報開示の内容、方法について、消費者目線に立った具体的な考えがあれば御教示いただきたいんです。

 電力自由化を日本よりも先行しているイギリスで、例えば、需要家に対する料金メニューの提示のときに、四百を超える料金メニューが作成されていると推計されている。かえって、あり過ぎるとどれにするか非常に迷う。

 これは我々の選挙でもそうかもしれませんが、余りにも乱立して、特に地方選挙とかになると余計にそうですが、物すごい人数とかがいると、一体、誰がどのような政策を言っているのかわからないというようなこともあるとは思います。

 同じように、料金メニューも余りにも多くあり過ぎると、かえってサービスを受ける側が混乱してしまうということもあって、イギリスの規制当局は、できる限り、各社に四種類ぐらいに限定しようよというふうに指示しているそうなんですけれども、これにとらわれずに、消費者目線に立った情報開示の内容とか方法等について、何か御意見がありましたら伺いたいと思います。

河野参考人 ありがとうございます。

 私たちも、消費者の選択肢の拡大についてということで、こうあったらいいのになというふうな、まだ目前ですけれども、想像の範囲でしかございませんが、選択肢が拡大することで、多様な情報提示なんですけれども、ある程度分けていただければいいかなと。例えば、電源はどんなものなのかとか、発電コストはどのぐらいかかっていますよとか、それから、これを選択するとあなたにとってこんなふうなメリットがありますよというふうな形で。

 例えば、選択肢の拡大について申し上げますと、購入先が選べるというのはもちろんなんですけれども、あとは、省エネ、節電などコストや使用料にかかわる情報ですとか、さらには、例えばふるさと納税とかがございますけれども、再生可能エネルギーの導入というのは、意外にエネルギーの地産地消というか、電気の地産地消につながるということで地域の活性化にもつながりますから、そういったところの情報が出てくると、私は山梨県の出身なんですけれども、ああ、私は山梨の水力を使った電気を購入しようとか、そんなふうな形で、恐らく事業者の方も電気を提供するときにそれなりの差別化をしてくださると思います。

 ですから、その提案してくださるものと、私たちが欲しいと思っている情報がうまく合致するような形で、四百といいますと確かに迷ってしまいますけれども、それなりに、コストの面とか電源の面ですとか、幾つかの情報提供をしっかりした形でいただきたいというふうに思っております。

 以上です。

國重委員 ありがとうございます。

 以上で終了いたします。

 本日は、四名の参考人の皆様に示唆に富む御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。

富田委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 本日は、四名の参考人の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。

 民主党の辻元清美です。どうぞよろしくお願いいたします。

 それぞれのお立場で御意見を賜りまして、河野参考人にいただきました資料の中に、最後に、「消費者の責任ある選択を通じて、事業者とともに、」消費者と事業者ともに、「エネルギー政策を、社会を変えていく。」ということで資料を締めくくられているんですが、四名の参考人の方に、この御意見に関連して質問したいんです。

 今回の電力の自由化ということが社会に及ぼす影響、例えば、どう変えていくのか、それぞれのイメージがあると思います。例えば、社会をもっとオープンにしていくんだとか、地域が活性化されるんだとか、新しい産業が生まれるんだとか、私たちは社会をよりよく変えるために今回の法案の審議もしていくわけですけれども、それぞれのお立場で、どう社会が変わっていくのか、まずお聞きをしたいと思います。

松村参考人 私は、この電力システム改革あるいは都市ガスなども含めたエネルギーのシステム改革によって、インターネットで起こったようなことをさらにエネルギーの市場でもぜひ起こせないかということを考えております。まさに社会システム全体が変わるというようなことで、一挙に社会全体の仕組みというのが非常に効率的になるというようなことを大きく期待はしています。

 具体的に言われた、よりオープンあるいは地域の活性化というのに関して言えば、いわばエネルギーの地産地消というのが強調されますが、一方で、電気は比較的送電ロスの小さなものですので、大規模な発電所で遠隔地から運んでくるのも、ある程度のアドバンテージはある。しかし、地産地消というのも、それはそれで物すごく大きなアドバンテージがある。そうすると、その適切なバランスということになるんだと思います。

 私は、今までは、大規模な発電所で、大送電線で需要地まで運んでくるというこのビジネスモデルしかなく、余りにもこちらに偏っていた、こういう状態から、よりバランスのとれた仕組みに変わってくるということを期待していますし、そうなると思っています。

 ただ、具体的にその割合がどれぐらいになるのかというのは、その地産地消がどれぐらい競争力を持っていて、大型電源がどれぐらい競争力を持っているのかということに依存してくると思いますが、今よりはるかに分散型電源あるいは地産地消というものが強くなり、さらにオープンな仕組みになってくると思います。

澤参考人 私は、産業面の方から、最後に資料でいろいろなダイナミックに変わる図を描いていますが、電力は、御存じかと思いますけれども、松永安左エ門という方が、昔、電力の鬼として存在していたわけですが、どなたかもおっしゃっていましたけれども、日本の電力は、国家管理は一時的な時代だけで、あとはずっと民でやってきたわけですね。民としての野生というんですか、こういったものが実は電力には昔はあったわけです。それが、この今の電気事業法のシステムの中で、いつの間にか薄れてきたんじゃないか。

 そういう中で、今回の自由化というのは、いろいろな悪影響もリスクもあると思いますけれども、やはり電力会社の経営にすごく大きなインパクトを与えていることは間違いないわけで、これから、電源の選択だけではなくて、どういう投資、どういうユーザーのターゲット、どういうことをやっていけばいいんだということを自分の頭で考えないといけなくなってきた。それが、実は大きなポテンシャルを持っている企業ですので、欧米を見れば、特にヨーロッパなんかは、自由化を契機に、逆に大規模な総合エネルギー企業が誕生しているわけですね。もし、この改革が日本の電力会社にもそういういいチャンスになれば、日本の産業が一種のダイナミズムを取り戻す。

 そういう意味では、さっき原参考人もおっしゃっていたように、一種の成長戦略の一つとしてこれを考えていくというのが、ブライトサイドというんですか、一番明るい面を見た自分のビジョンであります。

河野参考人 ちょっと格好いいことを書き過ぎてしまったというふうに今思っております。

 私が考える、社会を変えていくというイメージなんですけれども、ですから、これまでなかなか私たちの選択の範囲にはなかった電力というものを、自由化を契機に、選ぶ側に回れるということをきっかけにしまして、私は恐らく、先ほどからお話しになっていますけれども、非常に資源に乏しい日本である、島国である、それからさらに、先日の総務省の発表にもありましたとおり、非常に高齢化が進んでいる、さらに少子化も進んでいる、労働力不足も言われていますし、本当にこの先、日本はどうなっていくんだろう、そういったときに、こういった社会的インフラの大きな転換を私たち消費者がしっかりと受けとめて、そのことに対してみずからの頭で考える、当然あるものだと思わずに、みずから能動的に考えていくということで、さまざまな社会問題に対してもしっかり考えていく場になってくれればいいなと。

 最終的には、私は、やはり持続可能性、大きな成果も求めませんけれども、私の孫子の代までこの日本の国でしっかりと生きていける、その土台になるというふうな、そういう社会を考えていくきっかけになればいいなというふうに今思っているところです。

原参考人 ありがとうございます。

 二つ申し上げたいと思います。一つは、先ほども申し上げましたが、規制や制度の枠を取り払うということによって、新しい産業分野、新しい企業が生まれてくる可能性があるという意味で、これは成長戦略として非常に重要な領域であるということが一点です。

 それから二点目に、これは松村参考人が最初におっしゃられた点でありますが、今回のシステム改革というのは、需要家であるとか消費者の判断に任せる仕組みに変えるということが非常に重要だと思います。これは電力の分野に限りませんが、日本のいろいろな制度、仕組みというのは、消費者には任せない、お上が決めますという仕組みが大変多いわけでありまして、そういったものを改めていく大変重要な改革の一つということではないかと思います。

辻元委員 ありがとうございます。

 今お話しいただきまして、社会を変えていく起爆剤の一つになる可能性を秘めている。その中で、先ほど、消費者それから事業者とともにということで、今参考人の皆様の中からも、電力会社もみずから考える、そして消費者もみずから考えるという新しい段階に入っていくのかなと思うんですね。

 そこで、ですから、実りあるものにしていかなければいけない。その中で、先ほど松村参考人にいただきました資料の二十六ページですが、「最後に」というところの一番最初に、「改革はどの段階でも骨抜きにできる。」とお書きになっておりまして、非常に御懸念も示されているわけで、最も骨抜きにされかねないので懸念しなきゃいけない点、どうお考えでしょうか。

松村参考人 まず、大変申しわけないのですが、これが絶対だということがあるならば、それはむしろ対応がしやすくて、私たちは絶対それを死守するということでやれるので、まだまだ今私たちが思いつかないびっくりするような骨抜きというのが出てこないかが実は一番心配です。

 しかし、今目前にあるものとしては、例えば広域機関というのは、これは第一弾の話なのですが、これに関しては、需要想定だとかを政府がつくるということを何か澤参考人がずっとおっしゃっていたんですが、私はちょっと違和感がありまして、私は、これは基本的に、今の送配電部門及び広域機関が基本的につくり、政府は監視していく、そういう格好だし、今までだってそうだったと思っています。政府にそんなものをつくる能力があるとは到底思えません。

 そのようなものをつくっていくときに、九つの一般電気事業者の送配電部門が言ってくるものを広域機関がそのまま無前提で全部認めてしまい、供給安定性だとかあるいは公平性だとかを担保するための仕組みというのを、ルールはつくっているけれども、実質は全部出てきたものをそのまま無前提に受け入れますなどというような弱体な機関になってしまったら、もう全く機能しなくなります。ここは、本当に弱体な機関になるかどうかというのは人事だとかにすごくかかっていて、本当に強い決意のある人がやってくれるのか、一般電気事業者が言うことを素直にうなずくだけの人がなるのかというようなことも含めて、まだまだ予断を許さないと思います。

 それから、自由化とかに関して言うと、例えば電力業者、小売事業者が供給したとすると、需要にぴったり完全には合わせられません。それは必然的にぶれが出てきます。そのときのインバランス料金と呼ばれるようなものをどうするのかというのに関しては、今、一般電気事業者は強力に今まで自分が持っているある種の人為的な規模の経済性というのを何とか確保しようと思って悪戦苦闘している、それに対して抵抗している、こういう状況が続いているんですが、大規模事業者に圧倒的に有利な、もともと技術的な意味ではない大規模事業者に有利な制度というのをこのまま温存してしまうというようなことも出てき得ると思います。こういうようなことに関しても監視が必要だと思います。

 ただ、インバランス料金をどうするのかということを、細かいことを法律に書くというのはさすがにできないと思いますので、これを詳細制度設計の段階で常に注視していく必要があると思います。

 ちょっと不十分な回答で申しわけありません。

辻元委員 ありがとうございます。

 原参考人にお伺いしたいんですが、今インバランス料金というのが出てきましたし、託送料金、これを適正にしていかないと、結局法律をつくっても、運用面で骨抜きにされてしまうと思うんですが、この二点についてはどのようにお考えでしょうか。

原参考人 ありがとうございます。

 今回の政府がされている措置の中でも一定の前進はされているように理解をしております。

 これは、従来ですと、新規で参入してくる事業者さんの場合に、いわゆる三十分の同時同量というのが求められて、イコールフッティングではない状態があった、そこが競争環境という観点では非常に不利な状態に置かれることになっていたんだと理解しておりますけれども、これを計画値同時同量に改めるということで、一定の前進はされるのかなというように理解をしております。

 ただ、もちろん、実際にその制度をどうやって運用していくのか、市場がいかにきちんと機能しているかを監視するのかというところが大変重要なわけでありまして、その観点でも、規制機関をきっちりとつくってしっかりと機能させていくということが非常に重要なのではないかと思います。

辻元委員 ありがとうございます。

 河野参考人にお伺いしたいんですけれども、東日本大震災以降、消費者の間で電力を選択する意識がかなり広がってきたという先ほどのお話、私もびっくりしましたのは、先日、女子会、女ばかり何人かで時々飲み会をやっておるんですけれども、していましたら、自分の住んでいるマンション全部で話し合って、東京電力には申しわけないんですが、東京電力から別の会社に切りかえたんだというような話がそのテーブルでも話題になったわけですね。

 先ほどの情報という話もありまして、今、さまざまな消費者団体や生協なども含めて、またNPOなども含めて、電力ということに着目しての情報開示であったり、ただ政府や電力会社だけに頼るのではなく、市民みずからが情報を発信していこうというようなさまざまな動きがあると思うんですが、そのような動きについてどうお考えか、また、どう広めていくべきか。

 私はやはり、消費者みずからが考えるということは、今まで電力会社やそれから政府に頼ってきたところを、情報も含めてシェアしていく、その情報を市民の目線で採点しながらシェアしていくことが、これは株式の社会的責任投資ではありませんけれども、そのような電力市場を市民みずからがコントロールしていくというようなことが育って初めて多様化してくるというように考えているわけですが、そういうような動きをつくっていくということについて、いかがでしょうか。

河野参考人 今おっしゃってくださったようなことが本当に実現すると、消費者としても非常にうれしいなというふうに思っているところです。

 今回の福島第一原発以降、電気をどうするのかということは本当に消費者の間でも大きな話題になっています。

 それで、私たちは消費者でとどまっていていいのか、電力システム改革が進んで自由化が本当に動き出したときには、私たちは生産者にも回れるのではないか、自分たちが欲しいと思う電気を自分たちがつくり出せる、そんな大きな、産業を賄えるような電気ではなくて、自分たちの身近なところで賄えるようなことができるのではないかということで、今先生がおっしゃったように、私の周りでも、生活協同組合を初めとして、再生可能エネルギー、そのあたりを利用した小さな取り組みが今あちらこちらで始まっているところです。

 そのことで、やはり、事業者といいましょうか、選ばれていくのではないか。今後、スマートハウス等も出てくると思いますけれども、そういったところで、例えば新しい住居の提供があるとか、新しいさまざまな商品とかサービスの提供があったときに、そのエネルギーは一体どこから来ているの、そのことに対してしっかりと私たちはアンテナを張って、そこでしっかりと選択する、そのことで事業者の方を逆に選んでいくような状況につながっていってほしいというふうには思っているところです。

 確かに、生活協同組合で再生可能エネルギーを電源とする電力事業に乗り出すということで、組合員の皆様からは、頑張れ、そこでなされた電気に関しては、本当にその事業投資に関しても応援するというふうな情報はあります。さらに、自分の家の屋根に取りつけた太陽光のパネルから、そこにしっかりと、多少なりとも余剰電気を売ってもいいというふうな動きもあると聞いています。

 本当に、そういうふうな形で、消費者がみずから消費することと、それから、さらに生産者にもなれるというふうな状況につながっていけばいいと思っております。

辻元委員 私も、いろいろなNPOや生活協同組合などが新規参入したいなとか、実際に活動しているという事例の視察に行ったり、私の仲間が実際行ったりもしておりまして、この自由化というのは、消費者と事業者という、買う者と売る者だけではなくて、買う者みずからが自分たちの選択に見合った売るものをつくろう、要するに電力をつくろうというところまで転換できる可能性が必要だと思うし、それを後押ししていくことが社会の質を変えていくと私は思うんですね。

 最後に、松村参考人が先ほど地産地消ということをおっしゃいました。確かに、いきなり地産地消で、地域でさまざまな、市民も含めて、電力を自分たちで賄うということは難しいですけれども、その方向にやはり進んでいくということは私は大事だと思うんです。

 先ほど災害時の緊急対応ということもありましたが、東日本大震災のときも、東電がアウトになったら皆アウトになってしまうというようなことも一方で起こったわけで、仮にですよ、ちょっと東電に悪いですけれども、大きな電力会社がアウトになっても、地域地域で小さいのがいっぱいあれば何とかなる。

 この地産地消を進めていくに当たって、電力の規制を外していくことと同時に、どういう点が大事か、最後にお伺いをしたいと思います。

松村参考人 地産地消というのに関しては、昔からマイクログリッドと呼ばれるようなものがありまして、比較的小さなところで閉じて、これで電気を安定的に供給するというような発想があります。

 しかし、このやり方をすると、すさまじいコスト高になります。どうしてかというと、電気をたくさん使うときに太陽光が足りないなんというようなときにも、そのための予備の電源を物すごく持っておかなければいけないということになりかねないですし、逆に、太陽光が物すごく発電したというときに、余っちゃうなんというようなときに、無駄に捨てなきゃいけないようなことだって出てくる。

 そうすると、太陽光が大量に出てきたようなときには、むしろ系統の方に流して、お隣の地域で使っていただく。逆に、足りないようなときには、ある程度系統から買ってくる。それは結果的にお隣から買ってくるということかもしれないのだけれども、これによって全体としてコストを節約しながら、しかし、地元で使っていれば送電ロスとかも少なくなるわけですから、特に熱エネルギーなどというものと一緒に使うような場合には圧倒的に効率性を高めることになりますから、これを上手に組み合わせていくことになると思います。

 組み合わせの選択肢をふやすという意味でも、電力システム改革というのは大きな力になると思います。

辻元委員 私も、電力の自由化を通して、社会とそれから人の生き方が変わる方向を目指して頑張っていきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

富田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 日本維新の会の今井雅人でございます。きょうは、参考人の皆さん、貴重な意見をありがとうございました。

 五月の一日から省エネのためにクールビズが始まっておりますので、きょうはノーネクタイでやっておりますが、御了解をいただきたいと思います。

 二十分しかありませんので、早速本題に入りたいと思いますが、まず、松村、澤両参考人にお伺いしたいんです。

 その前にちょっと、我が党は、電力の自由化は、発送電分離というのはもう公約に挙げていますので、推進ということでやっております。今のお話の中でも、一つは、やはり競争力をきちっと担保すること、独占にならないということ、それからもう一つは、安定供給をいかに確保するか、大まかに言うとこの二つだと思いますけれども、原参考人の方から、競争力を担保するに当たっては、例えば道路公団の民営化推進委員会、あるいは郵政民営化の委員会のような、外部に独立した委員会をつくって、しっかり競争が担保されるようなものをつくった方がいいんじゃないかというような意見があったんですけれども、この点について、今までの、例えば自由化されても大口の需要がなかなかふえなかったとか、そういうことも踏まえまして、この意見についての御所見をいただきたいと思います。

松村参考人 外部の独立した委員会に関しては、これは十分意義はあると思います。したがって、選択肢としては考えるべきだ。

 ただ、一つ考えなければいけないのは、私は、現時点で本当に適切かどうかは若干疑問に思っています。まさに原参考人が説明の中で言われたとおり、仮に岩盤規制があり、その岩盤を守るために所轄官庁が一生懸命やっていて、それを打ち破るために独立した委員会をつくるというようなことは大きな意味はあると思うのですが、今までの震災後の改革の流れというのを見ていれば、そういう状況にはなっていないと私は認識しています。むしろ、一生懸命改革を進めようとしている。ひょっとして足を引っ張ろうと思っている人が省内にいるかもしれませんが、少なくとも今の段階では目立っていないというふうに理解はしております。

 そうすると、そこで別の委員会をもう一回立ち上げたとしますね。そうすると今度は、規制に抵抗する側が、そっちの委員会の委員というので自分たちの言うことを言ってくれる人を送り込むという二度目のチャンスが生まれる、こういう可能性もあり得るわけで、ブレーキにだってなりかねないわけです。

 ただ、一般論としてブレーキになると言っているわけじゃなくて、それをやらなければもう全然進められないじゃないかというような状況であるとすれば、大きな意味はあると思います。

 したがって、選択肢としては重要だと思いますが、現状は、私は改革はいい方向に進んでいると思っているので、改革をとめるための二度目のチャンスになりかねない委員会をこの段階でつくるのが本当に得策かどうかについては、若干疑問に思っております。

澤参考人 お答えが難しいんですけれども、要は、これまで諸外国でいろいろ自由化をやっていく中で、一つの攪乱要因というのは政治の介入だったわけですね。特に電気料金については、逆進性が高いという問題もあって、誰かが困ると声を出す、それに政治がレスポンスするという形の中で、最終的に価格に介入してきたり、あるいはルールそのものに介入してきたりする。実は、それがいつ、どういうタイミングで起こるかがわからないので、事業者の側としては、例えばそういう中長期の設備をつくって、投資をして、金を借りて、果たしてそれを回収できるのかどうかということが非常に不明確になってしまうわけですね。

 ですから、自由化、つまり価格メカニズムを使うんだということと、政治の介入というのは本当に食い合わせが悪いわけで、そういう意味で、市場の自由化を中心に考えていくとすれば、政治の介入、あるいは介在する行政、それと事業者、この間のやりとりというのを、プロセス、タイミング、あるいは様式、こういうものをルール化するということが非常に重要になってくるのではないか。

 それでもやはり避けられないとは思うので、今の省庁体制だと、大臣がいて、行政機関がいて、事業者がいるわけですけれども、別の委員会をつくって上に政治家を置かないというやり方ももちろん選択肢としてはあり得ます。それはもう千差万別だと思うんですけれども、要は、事業の不透明性を高めないためにどうすればいいかという観点から考えていただきたいなと思います。

今井委員 今のお二方の意見を聞いて、原さんは何か御意見はございますか。

原参考人 ちょっと確認のために先に申し上げたいのが、私、先ほどお話をした中で二つのことを申し上げまして、一つが、競争環境をきちんと確保するための規制機関、これは独立したものをきちんと置くべきであるということが一つと、それからもう一つ、二つ目に、改革プロセス、規制改革ないし電力システム改革というプロセスをきちんとやり切るための機関についても検討すべきではないかということを申し上げました。

 前段の、競争環境、競争規制についての監視機関については、これは独立したものを必ずきちんとつくらないといけないと思っています。

 二点目の自由化プロセスについては、これは今、松村参考人からもいみじくもお話がございましたように、一定程度、少なくとも今までのところはきちんと進んでいるということだと思いますので、そこで、私が先ほどお話をしましたときにも、仮に今後それが迷走するような事態が想定されるのであれば、一つの知恵としてあり得るのではないか、そんなことで考えております。

今井委員 ありがとうございました。

 次に、河野参考人にお伺いしたいと思います。

 二、三聞きたいことがあったんですが、前の方が御質問されてしまいましたので、ちょっと外れますけれども、これから電力の問題を考えるときには、当然、供給と需要と両方考えなきゃいけないわけであります。需要サイドでは、今、ずっと省エネの取り組みを国も挙げてやってきています。各産業でもいろいろ取り組んでいるんですが、家庭において省エネというのはかなりやってきていると思うんですけれども、これからさらに省エネをしていくという可能性については、消費者の立場から見てどういうふうに考えていらっしゃいますか。

河野参考人 ありがとうございます。

 省エネも、それから節電も、私たち国民がしっかりと取り組んでいかなければいけない非常に重要なことだというふうに思っています。

 これまでも、いろいろ大きなところから小さなところまで、私たち家庭でできることというのはそんなに大々的にはありませんけれども、例えば、電気器具を買いかえるですとか、それから待機電力をなくすためにコンセントは全部抜くですとか、あとは、屋根のペンキを塗りかえるときに、光を反射するような最新のペンキが開発されていますけれども、そういったものを利用するですとか、できることに関していいますと、電力の総需要を抑えるために私たちができることは何だろうということで、ヘチマを買ってきて窓際にグリーンカーテンをつくったりとか、本当にさまざまなことをやっていると思います。

 ただ、ここから先は、そういった個々人の努力というよりは、さらにもう少し、いわゆる事業者の方も一緒になった形での省エネというのが取り組まれていくべきだというふうに思っています。既に、さまざまな電気機器ですとか、そういったところでは提案はされていますけれども、あと、今後でいいますと、ホームエネルギーのマネジメントシステムですか、ああいったものを使った家全体での省エネですとか、そういった新たな提案がされれば、私たちはそれに対して真摯に検討していく段階にあるというふうに思っています。

今井委員 ありがとうございました。

 では、次に原参考人にお伺いしたいんですが、今回の法案は、プログラム法案で三段階になっていますけれども、来年出る法的分離、発送電分離ですね、ここのところで、いわゆる一般担保つき債券をどうするかをそこで見直す、検討するというようなたてつけになっていると思います。

 先ほどから電力会社の調達の安定化ということも当然考えなきゃいけないということで、もちろんそれもそうなんですけれども、公平性の観点からは、特定の事業者だけがそういう権利を認められているというのはやはりどこかで解消していく必要があると思うんですけれども、どういうスケジュール感でこれを解消していくのがいいというふうにお考えか、お考えをいただきたいと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 やはり競争環境をきちんと整備するということが今回のシステム改革の根幹であって、非常に重要だと思います。

 その観点で、一般担保つきの社債というのが新規の事業者に対しては認められない中で、従来の電力会社に対しては認められているという状態は、これはやはり早急に解消すべきではないかと思います。

 この解消の仕方にはいろいろとやり方があって、既に発行されている債券まで権利関係を変えるというのは、これは難しいかもしれません。しかし、少なくとも新規に発行することについては制約をする、制限をするといったようなことは、これは十分あり得ることではないかと思います。

今井委員 ありがとうございました。

 それでは、澤参考人と原参考人にもう一回お伺いしたいと思うんです。

 卸売電力取引所の話なんですが、先ほど松村参考人からお話がありました。実は、昨年の最初のプログラム法案のときにこの議論をここで、委員会で私、質問させていただいて、茂木大臣に、ここがやはり広がっていかないとまず電力の自由化というのは進みませんね、例えば一定のものを義務化して出したらいかがですかというお話をしたんですけれども、そのときのお答えは、各電力会社が自主的に取り組みをやっているので、とりあえず一年様子を見て考えますというような答弁だったと思います。

 それを受けまして、今回、もう少し国の関与という形で、いろいろな監督のようなものが法制化されるというたてつけになっていますけれども、例えばそれに加えて、先ほど松村参考人がおっしゃっていましたけれども、やはり一定量を供給することを一定期間義務づける、こういうことも場合によっては必要なんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、この点について、澤参考人と原参考人の御意見を伺いたいと思います。

澤参考人 今の一定というのがどれぐらいかでも全然違うと思うんですね。ですから、規制というのは一回入れると外せないという問題も出てきます。したがって、僕は、それは非常に慎重に考えるべきだと思いますし、さっき使った資料の中にも書きましたけれども、相対取引という形も、取引所を通じない形でどんどんふえていくというふうに思います。

 実は、家庭の小売の自由化というのは、家庭での自由化よりも、むしろ、これまで進んでこなかった産業大手ユーザーのとり合いの電力間競争がスタートするのではないかと僕は思っていまして、今までは確かにそういうのは一件しかなかったとか言われますけれども、今後原子力がどこが動くかとか、そういうこととの関係で、非常に電力事業者同士の競争力の差が出てくるわけですね。そうすると地域独占もなくなるわけですから、ほかの地域の産業大手ユーザーを相対取引でとりに行くという競争が非常に大きくなってくる可能性も僕はあると思っていまして、競争を担保するためには必ずしも卸取引所だけではないだろうと思っています。

原参考人 卸取引市場を十分に機能させるというのは、これはもう当然大変大事なことであると思います。

 私の聞き間違いでなければ、先ほど松村参考人もおっしゃったんだと理解しておりますけれども、直ちに規制を入れるというよりは、まずはそういったことを促してみて、それで十分に機能しないようであれば規制を導入するということだったんじゃないかと思いますが、そこは、それこそ、市場がきちんと機能しているかの監視ないし競争規制をやる監視機関の腕の見せどころということになるのかなと。そこがしっかりと監視をして、必要があれば新しいルールを導入していく、そんなことになるのではないかと思います。

今井委員 ありがとうございました。

 次に、松村参考人にちょっとお伺いしたいんです。

 先ほどのお話の中で、エネルギーのベストミックスの話がありました。ちょっと私は違和感があるんですけれども、もちろん、私たちも、いろいろなところでやはり自由な競争をしてマーケットメカニズムを入れていくべきだというのは基本的な考え方でありますけれども、エネルギーに関してマーケットがベストミックスを決めるというのは実は非常に難しい。

 先ほど澤さんも少しお話しされていましたけれども、やはり地球温暖化の問題、もう一つ、あえて言えばエネルギーの安全保障も出てくるんだと思います。こういったいろいろな別の要因が制約要因として絡まっていますので、これを自然体で任せれば確かにマーケットが決めるということになると思いますけれども、こうした制約要件がある中では、やはり政府がある程度、ベストミックスというのはこういう形だというのを示して政策を持っていかないと、いろいろなものの整合性がとれなくなってしまう、私も実はそう思っているんですけれども、その点についての御意見をお伺いしたいと思います。

松村参考人 安全保障だとか環境だとかということが重要ではない、したがって、そういうことは一切無視して市場で決めればいいと言ったつもりはありませんでした。そのような国策上極めて重要なものに関しては適切な補正が必要だということで、フィード・イン・タリフを初めとしていろいろな政策で補正するということが大前提だと思います。

 次に、数字を示さなければいけないかどうかに関しては私は若干懐疑的なんですが、いろいろなレベルの問題があるんだと思います。再生可能エネルギー全体でどれぐらいとかというようなことをいわば政府の見通しとして示す、このパスに乗るはずだと私たちは思っていて、この政策でうまくいくと思っているということを示すということは意味があると思いますが、それがコミットメントに近くなればなるほど深刻な問題が起こってくるのではないかと思います。

 つまり、どれぐらいが望ましいのかというのは、どれぐらいのコストでできるのかにも依存してきます。例えば、水素自動車を何台普及させるということを政府が数字としてコミットしたとすると、水素自動車のコストがすさまじく高いということだったとすると、それを実現するためには膨大な補助金が必要だということになるわけですね。しかし一方で、目安だということであったとするならば、想定したよりもはるかにコストが高いということであれば、見直すということが当然に出てくる。そうすると、当然にコスト削減の誘因というのを与えることになると思います。

 数字のコミットメントが先走りして業界の甘えのようなものを生んでしまわないようにという配慮は必要なのではないかと思いました。

今井委員 どうもありがとうございます。

 そういうものを無視しているというふうに思っているわけではありませんでしたので、大変失礼をいたしました。

 では、時間もあと二、三分ですので、最後に澤参考人にお伺いしたいんです。

 先ほど原子力政策のところで、政治的リスク、政策、それから規制法、ここをはっきりさせないと原子力政策は非常に難しいと。私も実はそう思っております。ですから、今の現状でやると、原子力は、フェードアウトさせるんじゃなくてフェードアウトしていってしまうんじゃないかなというふうに思っているんです。

 そこはクリアさせるとして、では、仮に原子力を維持してやっていく場合に、先ほど資料の最後のところに原子力事業の再編というのも書いておられましたけれども、今のように九つの一般電気事業者の人たちにそれぞれ原子力発電というのをこのまま続けさせていいのか、あるいは、国策でやるのであれば、一定の集約をして何らかの形をして国が全部面倒を見るという形でやるのがいいのか、どういう形で進められるのがいいというふうにお考えでしょうか。

澤参考人 これこそ、多分、一番僕自身が九電力の人に考えてほしい部分で、経営が持つリスク、原子力を持っているということのリスクをどうやってヘッジしていくのか。もちろん国の支援もあるでしょうが、例えば、みんなで集まって保険組合みたいなものをつくるというやり方ももちろんあるわけですね。したがって、これまでと同じような制度とは違う中で原子力をどう生かしていくのかということについて知恵を絞る時期が来ているわけで、こうあるべきだというのは、むしろ多様な選択肢が今あると思います。

 ただ、一つだけ言えるのは、この自由化を進めていく中で国として原子力を維持していこうと思えば、それをまた電力会社にやらせようと思えば、やはり電力会社のファイナンスについては何らかの国の補完的措置が必要だろうというふうに思っています。諸外国で、やはりプロジェクトファイナンスでは原子力は建たなかった。詳しくは申し上げませんけれども、欧米でも国の金融補完措置はあります。

 そういう意味で、今後自由化を進めていく中で、原子力政策として今言ったような支援策を同時並行的に考えていく時期が来ているのではないかと思います。

今井委員 大変参考になりました。どうもありがとうございました。

 これで終わります。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、お忙しいところ、非常に貴重な、有意義な御意見、まことにありがとうございます。

 時間も限られておりますので、質問に移らせていただきます。

 まず、原参考人の意見の中で最初におっしゃっておりましたけれども、アベノミクスの第三の矢の先頭バッター、これが電力の自由化ということで、これが失敗すれば、アベノミクスに対する、日本の経済の復興に対する大きな疑問符というものが世界からつけられるということになろうかと思っておりますので、その意味では、失敗させてはいけない、これは恐らく日本国全体の共通の認識ではないかというふうに思っております。

 この点でいう失敗とは何かということについて、ぜひとも率直な御意見を伺いたいと思います。

原参考人 考えたくはないんですけれども、失敗は幾つかあり得るかと思います。

 例えば、今、このプログラムで三段階でやるということになっていますが、第三弾が飛ばないなどということになったら、これはもう明確な失敗ということになろうかと思います。

 それからもう一つ、これも想定されますのが、これも私、先ほど申し上げましたように、自由化といいますか、制度の改革はやったんだけれども実際に競争が生じないというのも、これも大変困った事態でありまして、これは規制なき独占と先ほどからおっしゃられていますけれども、そういった事態になってしまうということも大きな失敗だろうかと思います。

 仮に、制度改革はやったけれども新規事業者も出てこない、競争が生じませんでしたということになると、これまた先ほど私が申し上げた点ですけれども、やはりこんな制度改革は間違っていたんじゃないのかといってもとに戻すというようなことにもなりかねないのではないかということかと思います。

三谷委員 非常にわかりやすい話をありがとうございました。

 第二段階の法案というのは、今まさに通る、通らないという状況になっておりますので、第二段階の法案が通らないということは考えにくいとは思いますけれども、第三弾が飛ばない、それから、より想定しやすいのは、結局、小売市場の改革をやったけれどもほとんど競争が起きなかったということになれば、これはまさしく今回の電力の自由化が失敗に終わったというふうに認識すべきだろうというふうに思います。

 その中で、このレジュメの中にもありましたし、先ほどの参考意見の中でもありましたが、今までの小売自由化のように、事実上の独占という市場構造は基本的に変わっていない、これが電力システム改革専門委員会報告書の中で結論づけられているわけですけれども、この状態というものは失敗というふうに認識してよろしいんでしょうか。原さんにお答えいただきたいと思います。

原参考人 仮に、全面自由化をしたんだけれども、今までと同じような、たしか新規参入業者が三%とか四%とかという数字だったと思いますが、そんな程度にとどまるということであれば、これはもう明確な失敗ということではないかと思います。

三谷委員 原参考人、ありがとうございました。

 それでは、この前提を受けまして、松村参考人そして澤参考人に伺いたいと思います。

 恐らく誰もが電力自由化というものを失敗に終わらせたくないというふうに思っていらっしゃるとは思いますけれども、その中で、今の小売自由化、現状のものは、事実上の独占状態は変わらないというところではございますが、どうしてこういうふうな状況になっているのか、そしてそれを打ち破るためにはこれをやっていくべきだということを手短にお答えいただければというふうに思います。

松村参考人 まず、今、失敗していると言われた現状の部分自由化に関して、誰も失敗するものをつくろうと思ってつくったわけではない。もともとのところでも、競争の一つとして、電力間で激しく競争してくれるのではないかということを期待していたということがあります。しかし、これが現実にほとんど起きなかったということは私たちは踏まえる必要がある。

 よく、電力間競争がこれから起きるから、ほかのことはそんなに大したことをしなくてもというようなことを言うんですが、それは、十年前に言っているならともかくとして、ここで、起こっていなかったということを前提としてそんな議論をするのは全くナンセンスだ。

 したがって、それだけに頼らないような形で、ずっと指摘が出ている卸市場改革だとかをし、ネットワークを中立化し、イコールフッティングというのをきちんと確保するということを地道に積み重ねて、新規の参入と、それからさらに、もともと期待していた電力間の競争というのを促していくべきだと思いますし、手段は十分あると思います。

澤参考人 松村参考人と一緒で、やはり電力間競争というのがもし起こっていればこういった議論には多分ならなかっただろうと思います。

 家庭の小売の自由化が引き金になるとしたら、さっき申し上げたように、家庭のところというのは、新規事業者にとって、それほど利潤の厚いというか、そういうものでは多分ないだろう、むしろ、テークケアする方が結構面倒な、そういう市場ではないかと思うんですね。

 ですから、結局本命は、もう一度産業大手ユーザーのターゲットを目指して電力間で競争するかどうかということになるわけですが、それが起こってこなかった理由の一つが、先ほど申し上げた原子力の、特にバックエンドの政策だろうと思います。原子力について、一社ごとに、それぞれが再処理工場あるいは最終処分地を探すわけにいかないわけですから、電力全体としてどう取り組むかということを一方でやりながら、こっち側で競争するというのはやはりなかなか難しい話だったと思います。

 ですから、今後、自由化のシステム改革が今度は不退転の決意で進んでいくとすれば、逆に、バックエンドの政策の方が今度はついていって、今度、電力の業界全体で、ある意味合議的に進めていかなきゃいけないものかどうかということをもう一度見直して、バックエンド政策を国としてもう一度きっちり政策として打ち出すことが、むしろ自由化による競争を進めることにもつながるんだろうと思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 そういう意味で、電力間競争というのがなかなか進まなかったという状況の中で、これから、本当の意味で小売の自由化、電力の自由化を進めていく上で、ぜひともこういう業者が出てきたらやはりいいんじゃないかなと思うのは、今までの業界慣行にとらわれない、ある意味突破者的な、そういったビジネスをやる方々ではないかと思います。

 その中で、これは松村参考人、澤参考人、そして原参考人に伺いたいんですが、発電所というものは持っていない、けれども、悪く言えば電力ブローカーということになろうかと思いますけれども、とにかくいろいろなところから電気を買ってきて、それを安く消費者に提供しようとする、そういった事業者というものがふえてこないとどうしようもないんじゃないかと思いますけれども、この点について御認識を伺いたいと思います。

松村参考人 全くそのとおりだと思います。マーケッターのような人たちだけに期待しているわけではないけれども、そういう人たちも入ってこられるような市場にしないと活性化しないと思います。それから、そういう人たちであれば、いわば発電所を建設し運営するというプロでなくても入ってこられるということになり、例えばガスのプロだとか、通信のプロだとか、住宅のプロだとかという人たちが、そちらを主力にしながら電気も組み合わせて売るというようなビジネスがこれから次々と起こってくると思います。

 御指摘の点は極めて重要な点で、そのような人たちが入れるような競争基盤の整備というのが非常に重要だと思います。

澤参考人 私も松村参考人と同感で、基本的に、僕はよく旅行業モデルと呼んでいるんですけれども、例えば全日空やJALが航空機を持ち、それを飛ばしているわけですね。ただ、旅行のパッケージプランは、例えばJTBがつくるとか、近畿ツーリストがつくるとか、消費者にはそういう小売事業者がいて、インフラをやっているところはまた別にある。そういう形で電力の方も今後とも進んでいくのではないかと思います。

 電気というのは、ある意味無機質で、生活必需品なので、余り色合いのないものですよね。ですから、先ほど松村さんがおっしゃったように、いろいろな業界から入ってきて、むしろ電気をおまけで売る、電気を中心に売るのではなくて、電気をおまけに、こちら側の、自分でやっている本業の商品にくっつけて売るみたいなサービス開発競争、こういうものを旅行業モデルでいうツーリスト関係の人たちがやっていく、これによって結構彩りのある電力市場になるのではないかなと思います。

原参考人 重複してしまうところが多いかもしれませんが、多様な事業者が参入してくるというのは非常に重要であると思います。特に、消費者とのインターフェースということで考えたときに、これは私、最初にも申し上げましたけれども、例えばガスであったり水道であったり通信であったりといったようなほかの領域との融合、セットでサービスを提供するといったような可能性というのは、これは非常に大きな可能性の一つだと思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 そのときにどうしても問題になってくるのが、今の電力卸市場というものの中に、いわゆる安い電力がなかなか供給されないのではないかというような懸念を、新規参入を考えられている多くの事業者が持っているということではあるので、その点についてちょっとお伺いをしたいんです。

 これから、もちろん、将来的には発送電が分離をされます、発電をする会社と送電をする会社が分かれますというときには、発電会社の中での収支というのは明確になりますから、幾らでその電力を卸すのかということが明確になってくるわけですから、その先には、自分の会社に自分の送電会社を通じて自分の小売業者から卸させる、小売するのが一番もうかるのか、それとも、その発電会社だけの収支を考えれば、もちろん全体で見れば全部一気通貫で通した方がもうかるんでしょうけれども、そうじゃなくて、その発電会社単体で見れば、ある意味、新規参入業者に流した方が逆にもうかる場合というのが当然ながら出てくるんだろうと思います。

 そこで、今必要になってくるのは、この電気を幾らで卸すのかということを明確化することなんだろうと思います。現時点での電力の小売自由化の法律ではなかなかそこまで明確化されていないと思いますけれども、この点についてもう少し踏み込んで、幾らで電気を卸すんですかということまで明確にするべきなんじゃないかというような、その意見についてどのように思われるか。これは、ちょっと時間の関係もありますので、松村参考人と原参考人に伺えればと思います。

松村参考人 現行では一般電気事業者が独占している状況で、卸事業者が買う価格というのはある種規制されていて明確になっており、コストベースになっているわけですが、自由化するというのは、むしろそれを自由に決められるようにするということなので、その意味では、期待に反する方向に来るのかもしれません。

 しかし、私はむしろ、競争的になり、必要な電源が安い価格で卸されるということが非常に重要な点であり、特に現時点では、全体の価格もさることながら、ベース電源と呼ばれるものに関して全然安い電源が出てこない、コストからかけ離れたものしか出てこない、これが競争を著しく制約しているということなので、御指摘のことをきちんと頭に入れながら、ベース電源というのがきちんとリーズナブルなコストで出てくるようにするためにはどうしたらいいのかということに知恵を絞っていく必要が出てくると思います。

原参考人 基本的には松村参考人がおっしゃられたとおりだと思いますけれども、競争環境の中で市場がきちんと機能していくということがまず基本として考えられるべきだろうと思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 今、松村参考人がおっしゃったことに関して、だからこそ、独占禁止法なりそういったところで、競争を制約するような取引の形態については積極的に公正取引委員会なりが介入していくべきじゃないかというふうに個人的には思っているところでございます。

 それはさておきながら、先に質問をさせていただきます。

 これは澤参考人それから河野参考人に伺いたいと思うんですが、先ほど河野参考人も、投票ということではなくて、そういった消費者の行動によって将来が決められるというような趣旨のことをおっしゃっておりましたし、私は、本当に、消費者というのは、その意味では、ふだんの消費行動の中で自分の、そしてこの国の将来を決めているんだ、これは実際正しいんだろうというふうに思っております。

 この点に関してなんですが、どうしても消費者というのは安いものを比較的好んで購入したりするという傾向にあることは間違いないだろうというふうに思っております。その意味で、あえて自然エネルギーだから高い電気を買いますという人がどれぐらいいるかというと、そんなにいないんじゃないかなというふうなことも現実問題として思うんです。

 伺いたいんですが、その点についての河野参考人の見解と、それから、実は今、消費者の選択がゆがめられているんじゃないかというような指摘もあろうかと思います。それは何かといいますと、原子力によって生み出す電気というのは実はそんなに安くないぞというところがあるのではないか。先ほどまさに、PFIという形ではなかなか実現しなかったと。これはなぜかというと、民間では到底リスクを引き受け切ることができないというような観点からすると、実は、本当の意味でリスク計算をすれば、コストというのが一番高くなるんじゃないかというような考えもあるんじゃないかと思います。この点についての澤参考人の御意見も伺いたいと思います。お願いします。

河野参考人 実際のところ、再生可能エネルギーについて、原発事故を受けて、自然エネルギーへの期待というのは大きくなっています。一方で、私たちは、家計がありますから、できればさまざまな部分で安価なものでやりくりしたいというところももちろんございます。

 ただ、例えば、今現在、再生可能エネルギーに関しますと、二年前に固定価格買い取り制度が導入されて、今、私たち、日常的に賦課金というのが乗ってきていますよね。私も時々ふっと見るんですけれども、二年前よりも倍ぐらいの金額になっている。そのことに対して消費者の間では、高くなっているよねという受けとめはしていますけれども、そのことが、高いから問題だというふうな受けとめは余りされていないんですね。つまり、そのことで大きくクレームというのはないというふうに考えています。

 ただ、太陽光にしても風力にしても、電源になるもとというのは確かに自然にあるんですけれども、それを電気に変えるところで結構お金はかかっているだろうと。ですから、風力や太陽などは、発電インフラのライフサイクルというのも考えた上で、トータルで本当に私たちが選択すべきものかというのは、やはりこれは消費者も少し考えどころかなというふうには思っています。

 ただ、最終的に、ほかの電源と比べて多少は高かったとしても、それから多少不安定だと言われていても、そういった選択肢が提供されれば、そのことに対してしっかりと行動を起こす消費者は一定数はいると思います。

 また、先ほどおっしゃっていたように、原発から生み出されるエネルギーというのは、かつては、温暖化対策ですとか、そういった環境負荷の問題もありまして、私たち、安くて安定的というふうに思っておりましたけれども、福島第一原発事故の後は、そのリスク等を考えますと、今現在、ふるさとに戻れない方がまだ四万人いらっしゃるということを考えますと、やはり必ずしも安全で安価なエネルギーではないということには消費者も気づいているというふうに思っております。

澤参考人 原発のコストの問題は、いつも、今ある原発を動かすということと新しく一基建てるということが混同されて話をされるので、高いとか安いとかいう議論になるわけですが、今既にある、減価償却が終わっているものは、経済的にいえば、燃料費だけで動くわけですから、それは圧倒的に安い電気が出てくるのは間違いないわけですね。

 一方で、事故リスクを含んで次の新しいものをつくろうとしたときには、これはいろいろな計算の仕方、あるいはリスクの物の考え方によって、大きくなったり小さくなったりするわけであります。

 問題は、原子力と再生可能エネルギーをリプレーサブルなものと考えるというか、対極にある電気だと考え過ぎることなんですね。むしろ、ヨーロッパで行われているように、フィード・イン・タリフというのは、つまり、再生可能エネルギーというのはCO2を減らすためのエネルギーとして導入する、そのために幾ら消費者が払うべきものなんだという、その値段をフィード・イン・タリフの引き取り価格にしているわけですね。それが高いとか安いとか言っているわけです。

 ですから、ある意味、石炭と比べるということをしないといけないわけですが、今、日本で、多分、石炭火力と比べてもフィード・イン・タリフの方が高いわけですね。そうすると、消費者の方としては、別に原子力は私は要らないとしても、では、石炭やLNGと、フィード・イン・タリフで入ってきているリニューアブルとどっちを選びますかと言われると、おっしゃったように、どちらかというと火力発電の方に多分流れていくだろうと思うんですね。

 ですから、本当の意味で再生可能エネルギーを入れようと思えば、環境税であったり、あるいは排出量取引であったり、要は、温暖化対策の点で、カーボンにどういうプライシングをつけるのかという議論と、フィード・イン・タリフとどっちがいいですかという議論でしないといけないと思うんですね。

 だから、何度も言うようですけれども、原子力と再生可能エネルギーを一緒の電源として考えるというのは多分違うだろうと思います。

三谷委員 今までの既存の原発というものに関しての方が、もしかしたら何か事故があったときのコストは高く考えなきゃいけないのかなと考えているので、新設の方がそういうのが高いというのはちょっとどうかなというふうに思いましたけれども、時間が限られておりますので、これで質問を終了したいと思います。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 結いの党の小池政就でございます。

 きょうは、連休明けのお忙しいところ、ありがとうございます。

 二十分ということでありますけれども、重複するところがあるかと思いますが、ぜひよろしくお願いいたします。

 まず最初に、河野参考人に伺いたいと思います。

 選択できるということが今回の電力システム改革の大変大きな意義だと思うんですが、その意義に関して、消費者の立場では、どのような選択基準がこれから実際にあって、その中から実際にどのようなサービスを望まれて、このシステム改革に付随して電力の消費者へのサービスというのが広がっていくということを考えていらっしゃるか、まずお聞かせいただきたいと思います。

河野参考人 私たちがどんなサービスを望むのかというところなんですけれども、今のところは、決められた価格で自分の暮らしに必要な量を購入して対価を支払うというふうな状況です。

 ですから、そこから、スマートメーターの導入というのが私たちが選択の幅を広げる一つの入り口だというふうに思っていますけれども、それが各家庭に設置されたときには、先ほどから話題に出ています節電等にも、省エネ等にも協力することもできますし、それから、さらに言えば、価格ですとか電源ですとか、これまで選べなかったものに対して積極的にアクションしていく。

 やはり、消費者が考える価格の問題というのはそんなに簡単ではありませんで、なるべくならピーク時は避けて、それ以外のところで電気を使って、それがかなり安く済むのであればそういった選択もしたいと。ただ、今現状ではなかなかそれが難しいということもございますので、そのあたりは、今後このシステムがしっかり機能していく中で、さまざまなメニュー提案の中で、自分の暮らしに合った形で選んでいければいいかなというふうに思っています。先はそんなに簡単ではないかなというふうに感じております。

小池(政)委員 ありがとうございました。

 そこで、松村参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 関連するんですが、いただきました資料の八ページに、まさに消費者の選択ということで書いていただいております。このように、メニューが提示できるようにということで、それがなければ、恐らく消費者は価格ぐらいの選択肢しかなくなってしまうんじゃないかということが考えられまして、その電源等をしっかりと提示するために必要な制度というものが考えられるんでしょうか。例えば原産地証明とかいうのも必要であったりとか、また、おっしゃいましたスマートメーターでありますとか、実際に発電されたものを、消費者にそれが伝わるように、しっかりとそれが担保できるような制度をどうやってつくれるか、それについてお伺いさせていただきたいと思います。

松村参考人 まず、電気には色がついておりませんので、完全に電源を特定するというのは極めて難しい。インバランスが発生したときのそのインバランスというのは、当然、一般電気事業者なり送配電事業者から買ってくるという格好になり、それがどこの電源だったのかというのはわかりません。

 したがって、一〇〇%絶対この電源ですということはできないけれども、もし自社が電源を持っているとすれば、あるいは自社が長期調達しているんだとすれば、この電源ですということは示そうと思えば示せるはずですし、このようなものに関しては、原産地証明のような厳格な制度をしなかったとしても、うそをつけば明らかにすぐにわかるわけですから、そのような虚偽表示というものに関して取り締まる。あとは、事業者が自主的に必要であれば宣伝するようになってくるのだと思います。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 また、今回のシステム改革を通して、できる限り新規参入をふやしていくということが、河野参考人のおっしゃるようなメニューを広げていくということに重要な点であると思っております。

 この点も松村参考人にお伺いさせていただきたいんですが、その際に二点あると思っておりまして、今、接続の障害となっているものをしっかりと緩和していく、低減していくということとともに、また新規参入を促すような競争政策をしっかりと後押ししていくということだと思っております。

 その際に、接続の点におきまして、現在、広域的運営推進機関というものがあるわけでございます。これはもともと、松村参考人もかかわっていらっしゃいました前の実際の報告書の中では、系統運用まで書いて、もう少し前向きな取り組みということを考慮されていたかと思うんですが、これが運営推進機関という形になってしまって、その際に、おっしゃるような過少投資とか、そういう課題について、果たしてこのままで大丈夫かなという懸念があるところなんです。

 具体的に、これを進めていった際に起こり得る課題でありますとか、それを本来はもう少しこう改善するべきだったということがあるのであれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

松村参考人 接続に関して潜在的に問題があるというのは全く御指摘のとおりです。

 それで、広域機関というのが、中給のような機能から吸収して、いわば送配電部門の一部を支社あるいは支所として統合するという、いわゆる機能分離というやり方で分離するというやり方と、法的分離という形でやるやり方が、両方が激しく議論された結果として、メリット、デメリットを考えて、法的分離の方がメリットがあるのではないかということでこうなりました。

 法的分離の方をすると、機能分離に比べると、御指摘の点は若干弱くなる。つまり、そこの部分がそもそも広域機関の権限ではなくなるということになるので、その点はデメリットだというふうには思います。ただ、それを上回るようなメリットというのが法的分離方式にあるということでこちらが選択されたということなので、その点は、後退しているように見えるかもしれないけれども、総合的に判断した結果だということはぜひ御理解ください。

 それで、潜在的にはデメリットがあるということですから、このやり方をしたときに接続に関して不利益にならないようにするということは、より重い課題になったというふうに理解しています。第一段階、第二段階、第三段階それぞれで、接続というものに関して本当に中立性が担保されているかどうかというのは厳密に見なければいけません。恐らく、それを完成させるのは第三段階で、第三段階の最も重要な問題になると思いますが、御指摘の点が最も重要な課題としてまだ残っているということは認識した上で、これからも、詳細制度設計、手を抜かないできちんとやっていかなければいけないということを御指摘いただいたのだと理解しております。全く御指摘のとおり、まだ問題は残っていると思います。

小池(政)委員 ありがとうございました。

 また、競争政策についてでございますが、こちらも、委員がワーキンググループの方でよく指摘をされていらっしゃいますけれども、非対称規制という形で、本来は小規模の新規の参入業者に対する取り組みということが想定されていた一方で、現状は、一般担保でありますとか、またインバランスについても、規模の経済という形で、大きな一般電気事業者に対して少し優遇されるような、そういう制度になってしまっているという中で、果たして新規参入というものをこれから進めていく上ではどのように考えていけばよろしいんでしょうか。

松村参考人 御指摘のとおり、一般担保条項というのはしばらく残ることになりますし、これから議論することになります。この点は、実質的に非対称ではないか、あるいは、インバランス料金が、形の上では対称だけれども、実質的には大規模事業者に著しく有利になるというところがまだ残るのではないかという、こういう懸念はあると思います。

 こういうようなものがどうしても不可避的に残る、例えば、一般担保条項に関して、もし安定供給のために不可避的に残るということがあったとするならば、このハンディキャップの部分というのをきちんと解消するように非対称規制をかけて、それで実質対称にする。インバランス料金などで明らかに不公正が残るのだとすれば、非対称規制を課してでもイコールフッティングを確保するということは非常に重要な視点だと思います。

 御指摘の点は大変重要ですが、ただ、やはり基本は、そのような既存事業者に著しく有利にならないような制度設計というのをまず考え、安定供給等のために不可避的に残る部分については補正すると考えるのが私は順序なのではないかと思います。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 次に、原参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 今、松村参考人から制度設計の重要性ということをお聞きしまして、実際にこれから制度設計が動き出す際に、それをしっかりと監視する、継続的に独立的に監視するということから、参考人が先ほどおっしゃったような取り組みというのが非常に大事だということを感じました。

 また、参考人は経産省出身ということから、その経験も踏まえてという形の提言でありましたし、また、海外の知見等も含めて、その取り組みの意義というものでもう少しおっしゃることができるのであれば、ぜひお願いいたしたいと思います。

原参考人 競争規制についての規制機関の重要性ということかと思います。

 海外でどういう実例があるのかといったことについては、総合エネ調の分科会などでも議論がなされていて、独立行政委員会的な組織であったり、あるいは、別の形態でより一定の独立性を保った組織をつくったりしている例があるというようなことが示されていると思いますが、いずれにしても、問題は、これまで独占的な電力会社が存在しているという前提で、そこに競争を導入していかないといけないということが非常に重要だと思います。

 その意味でいうと、独占的な地位にある電力会社からの独立性ということは当然ながら非常に重要であり、そこからさらに踏み込んで言えば、経済産業省あるいは政治からの独立といったようなことも含めて、独立性をきちんと保っていく必要があるんだろうと思います。

小池(政)委員 ありがとうございました。

 次に、澤参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 参考人が、今回、市場の世界になってしまうということで、いろいろなリスクも検討されて、ではそれを上回るにはどうすればいいかということも提言していただいているわけでございます。

 その中で考え得るのは、海外からの燃料の調達について、確かに市場でアクターが小さくなってしまうと、そもそも今、日本が高い値段で燃料を輸入しているという中で、それがもっと悪化してしまうんじゃないかというような懸念もあるところでございますが、それに対してこれからどうすべきだということがもしありましたらお願いいたします。

澤参考人 化石燃料、LNGに限らず、石油、石炭、それぞれ市場のコモディティーに既になっているという考え方、見方と、いやいや、まだやはり政治商品、あるいはナショナリズムが関係するんだ、向こうの資源企業も国有だったりする、そういうことから、資源外交的な、単に市場メカニズムに任せちゃいけないという見方もあるわけですね。どっちが正しいかというのは、時代にもよるし、今度のシェールガスでわかるように、資源の発見にも大分よる、そういうことだとは思うんですけれども、日本の場合は、さっき冒頭の質疑にもありましたように、やはりエネルギーのセキュリティーというものは切っても切り離せない要素だと思うんですね。

 したがって、どっちが正しいかと言われれば、安全の方を見る、セーフティーサイドを見る方が僕は大事だと思っていて、したがって、化石燃料はやはりまだ政治商品だという物の見方から、日本の企業が実際には調達しに行くわけですけれども、そのときの交渉力をどういうふうにつけるか、それはその企業の編成だけじゃなくて、それに資源外交をどうプラスするかとか、そういった外交的な配慮も含めて考えていくべきものだと思っています。

小池(政)委員 ありがとうございました。

 その際に、例えば韓国で行われているような、電力とガスが一体になって輸入する取り組みを進めてみるとか、そういうことも考え得るとは思うんですが、日本の場合はそれに対して難しい障害というのが何かあるんでしょうか。

澤参考人 もともとは、LNGを輸入するときはみんな一緒にやっていたと思うんですが、それぞれみんな使う時期が違うとか、いろいろな理由で別々になってしまっていたわけですね。ところが、今回の福島の事故以降、エネルギーの制約にもう一度直面しているという状況の中で、かつ自由化も進むという中で、もう一度、今おっしゃっていたガス会社あるいは石油会社も含めて電力と共同で調達するというようなアライアンスを組む事例は、シェールガスの山元への投資も含めて結構出てきていると思います。

 ですから、今後、仕向け地規制なんかの排除も含めて考えれば、外国の企業との連携とかも含めて、いろいろな調達の形態というものが、方向としては相当大規模化の方向で向かっていくんじゃないかなと思います。

小池(政)委員 ありがとうございました。

 また原参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 今回の電力システム改革の中で、安定供給について不安な声は結構あるわけでございます。ただ、参考人は、特に非常時等において、むしろ発送電一貫より分離していた方が資するようなこともあり得るんだというようなことをおっしゃっていらっしゃいます。

 その点について、具体的に、どういう場面で今までのシステムだとなかなか本来のメリットが達成できなくて、これからこういうふうに改革していったら非常時でも本来できることはこうなるんだよということについてお伺いさせていただけますでしょうか。

原参考人 非常時での対応というのは、これは今回のシステム改革の中でまさにそういうところを目指されているんだろうと思いますけれども、これまでのような垂直統合型の一貫的な供給をするのではなくて、地産地消で供給することもある。ただ、そのときに必要なのは、ネットワークはきちんと保っておいて、限られた地域の中で何らかの問題があったときにはほかのところからきちんと回せるような体制をつくっていく、そういう枠組みで今回の仕組みがつくられているんだろうと思います。まさにそういう方向で改革が進みつつあるということなのかなと思います。

小池(政)委員 ありがとうございました。

 そこで、地産地消の話になるんですが、今までもちょっと質問が出ておりました。

 松村参考人にお伺いさせていただきたいんですが、具体的に、今回のシステム改革の中ですと、託送料金は均一料金という中で、どのように地産のインセンティブというかメリットというのが生まれてくるかなと思うんです。例えば自己託送をこれから広げていくとかということもあるとは思うんですが、もし何かこの中にそのような考えというものがあるのであれば教えていただきたいと思います。

松村参考人 託送料金のつくり方というのはこれからの議論になるはずですが、これがまさに地産地消にとって肝になるところだと思います。ここが非合理的になったら全く競争できないというか、太刀打ちできない。地産地消の方がより効率的であるのにもかかわらず進まないということになりかねません。

 地産地消を入れる結果として、設備が効率的に使われるということになり、したがって投資負担をむしろ軽減しているのにもかかわらず、買ってくるものと出ていくものの双方向で基本料と従量料金のようなものがかかるとかということになったら、もう目も当てられないことになってしまう。

 実際には合理化しているのだから、その分料金は安くなって当然だという、合理的につくればそうなるはずなのに、いつの間にか、むしろ不利な料金体系になっているということは十分あり得ると思います。その点については、今まで基本的に逆潮するなどというようなことは一切考えないでつくられてきた料金体系の発想のままで、不合理な料金体系にならないかどうかということは詳細に監視していく必要があると思います。

小池(政)委員 大変参考になりました。

 時間になりましたので、これで終わりにします。ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、参考人の皆様、お忙しい中おいでいただき、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 最後の質問者ということもありますので、重複するようであれば御容赦いただきたいと思います。

 最初に、澤参考人にお尋ねをいたします。

 冒頭の意見陳述の中で、原子力政策の見直しに関連して、事業環境の整備として、官民のリスク分担明確化、金融支援等という説明として、賠償リスクやファイナンスリスクなどに対する金融措置が必要と述べておられましたけれども、ここで述べておられた賠償リスクやファイナンスリスクに対する金融補完措置、これは現行にもある一般担保も含まれる、その選択肢の一つとされている、そういうお考えなのかどうか、お尋ねしたいと思います。

澤参考人 一般担保は当然と思っていて、その上に、原子力については、欧米の例で見るように、国の債務保証であるとか、イギリスにおけるストライクプライス制の導入であるとか、そういう個別の金融措置が多分必要だろうということでございます。

塩川委員 一般担保に加えて、イギリスで行っているような公的な金融支援措置というお話でございました。

 関連して原参考人にお尋ねいたします。

 先ほどの質疑の中で、一般担保つき社債の優先弁済規定に関連して、一般担保は解消すべき、その新規発行については制限、制約することはあり得るというお話をされておりました。

 それとの関係で、現行は三十七条、一般担保規定ですけれども、一項、二項があります。それが今回二十七条に移って、一項と四項で、その間に二項、三項が入りました。

 この二項、三項というのが新たに追加されたわけですけれども、新総特などに盛り込まれております新たな法的な措置ということで、東電の分社化のために規定をされた、いわば東電条項ではないかと思っておるんです。そういう点でも、一般担保そのものについての特別扱いがいかがかという点に加えて、東電について特別な条項を新たに追加するという今回の法案については、どのように考え、受けとめていらっしゃるのかについてお聞かせいただけないでしょうか。

原参考人 ありがとうございます。

 東電について何らかの特別なことをしなければいけないであるとか、あるいは何か懲罰的なことをしないといけないとか、そういうことは考えておりませんけれども、ただ、あくまで一般論として、一般担保つきの社債という制度を、競争環境を阻害する形で特定の事業者だけについて認めているということは、これはやはり早急に解消していいのではないかということかと思います。

塩川委員 続けて原参考人にお尋ねいたします。独立性と専門性を有する規制組織への移行についてです。

 前段の質疑の中でも御答弁いただいたわけですけれども、事業者の影響排除や専門性のある人材の確保や経産省からの独立、こういう観点で、より広範な規制機関に発展していく可能性もあるという御説明もございました。

 その点で、一方で、昨年の電気事業法の第一弾の改正において附帯決議が付されておるんですけれども、その附帯決議の規制機関の部分というのが、「必要最小限な組織とし、肥大化は極力避けること。」と規定されています。

 ですから、膨大な肥大化などは当然想定されるものではないと思うんですけれども、こういう書き方ですと、結果として、小ぢんまりとしたもので、資源エネ庁のちょっと切り出しで、あるいは、切り出すのかどうかもわからないんですけれども、そういった点で、本来の規制機関としての役割を果たすことができなくなるようなことになりはしないのかという懸念も浮かぶんですが、こういうことについてお考えがあればお聞かせいただけないでしょうか。

原参考人 ありがとうございます。

 行政の無駄な肥大化を防がないといけないというのは当たり前のことであって、それは当然そうだと思いますけれども、ただやはり、過去二十年あるいは三十年ぐらいの日本のいろいろな規制改革を見たときに、事前規制から事後規制に転換していくであるとか、あるいは競争規制に転換していくということをやったときに、本来、事後型の規制であったり競争規制というのは、きちんと監視をする、市場がきちんと機能しているかどうかを監視するというところが非常に重要なわけでありますが、そこの部分が十分できていないということが間々見られるように思います。

 これは、事前規制だと、お墨つきを与えないと物事が動かないという仕組みなので、比較的小規模な規制機関であっても足りたりするわけですけれども、そこは、必要な規制機関はきちんと置く。これは、人をふやすことが大事なわけではなくて、監視機能を十分に持たせるということは当然必要だろうと思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 河野参考人にお尋ねいたします。

 河野参考人の、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の会合などにおいての発言を拝見いたしました。そういう中では、原子力発電は決して安くはない、環境負荷も大きく、安全ではない、透明性のある議論が行われていないという発言が紹介をされておりますが、その意図するところについて少し御説明いただけないでしょうか。

河野参考人 原子力発電をどう見るかなんですけれども、確かに、資源が乏しい日本において、産業と国民の暮らしを守るために、さまざまなエネルギーを効率よく利用していくことは重要だというふうに思っております。

 一方、原子力発電に関しましては、福島第一原発事故を契機に、覆い隠されていた問題がやはり表出したのではないかというふうに消費者は見ております。一番の危惧のもとというのは、先ほども申し上げましたように、いまだ四万人もの国民がふるさとに戻れないという現実があるということだというふうに思っております。

 さらに、二〇一〇年の時点でエネルギー基本計画を策定した際は、私たちは、やはり地球温暖化にどう立ち向かっていくのかというのが一番大事なテーマだというふうに思っておりました。今でも重要なテーマなんですけれども、そう思っておりましたので、環境負荷が少なく、低炭素社会に貢献するというふうに思っていたところですが、その後、さまざまな電気料金の値上げ審査等を含めまして、核燃料サイクル計画の頓挫ですとか、最終処分場の問題ですとか、バックエンド費用や廃炉費用など、ライフサイクルで考えたときに、先ほど御指摘いただいたように、必ずしも安全でも安価でもないというふうに気づいているというのは、これは紛れもない事実だというふうに思っています。

 原子力に依存しない暮らしを可能にするためには、ただ怖いからとか反対だからというだけでは何の実効性もないというふうに私自身は思っております。本当に、国と企業と国民は、それぞれがどういう責任において何をどういうふうに負担していくのかということを情報提供していただいてしっかりと議論していく、納得のいく議論がやはり必要なんだというふうに思っています。やはり今後に向けても、そのあたりは、国民もしっかりそこの議論する場にぜひ呼んでいただいて、かかわっていければというふうに考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて、河野参考人に電気料金の関係でお尋ねいたします。

 昨年の電気事業法の参考人質疑でもこのことはお尋ねしたところなんですが、昨年は辰巳菊子参考人においでいただきまして、その際にも、総括原価方式で何が積み上げられていたか、すごく見える形になったということは有効なこと、規制がゆえに審査されているという仕組みというのは非常にいいことだ、私たちとしては知ってしまった以上もう少し知りたいというお話をいただきました。

 この点でも、河野参考人が、電気料金審査専門小委員会の中においても、総括原価方式は難しい算出規定に基づく一方的な料金決定方法に思えたが、消費者が過度な負担を負わないようにする仕組みでもあることも勉強したというお話もされておりましたし、きょうの意見陳述でも、国及び事業者による消費者への積極的な情報開示を要望されております。

 そういう点で、やはり電気料金がブラックボックスであってはいけない。そういう点でも、この情報開示、この間、一部開かれてきておりますので、その情報開示が後退するようなことがあってはならないと思うんですが、その点、消費者の立場からのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

河野参考人 私も、ここのところの電気料金値上げ審査にはオブザーバーとして立ち会わせていただいております。

 私、現在の審査に関しましては、本当に透明性のある議論をして、より納得のいく形で電気料金を決めようということで、ここのところの経済産業省さんと、そこの場に置かれている電気料金審査専門小委員会の委員の皆様の御努力、それから、そこに出てきてくださっている事業者さんの情報提供のあり方ということに関しましては、改めて消費者として不勉強だったことを恥じるとともに、非常に透明性のある議論が行われてきたというふうに思っております。

 ただ、やはり出されてきた資料を拝見しますと、使われていないというか、稼働していない原子力発電の費用も全て、当然のことながら、決まっているからそこに乗ってくるというふうな形で、消費者にとってみますと、改めて、今現在の電気料金のやり方というのは、なかなか簡単には理解できないといいましょうか、複雑な形だというふうに思ったところです。

 ですから、今後に向けてこれが自由化されますと、それこそ自由競争の世界。今は規制がかかっていますから、当然情報開示の義務がありますから出てくる情報も、自由化されたときには今度は出てこない。逆に、適正な競争によって、そこのところは最終価格に反映されていればいいじゃないかということになるかもしれませんが、そのあたりもぜひ、事業者の方と消費者というのは必ずしも対峙するといった関係ではございませんで、お互いに情報開示で納得のいくというところは、今後の公正な市場においても大事なところだと思います。

 ですから、自由化になったとしても、どういうふうにこの料金は組み立てられているのか、企業秘密でないところはぜひ明らかにしていただいて、私たちの適切な選択に資するような形であってほしいというふうに思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、松村参考人にお尋ねします。

 最初に、託送料金の関係なんですけれども、託送料金について、この間の情報開示、エネ庁の方なんかでも、例えば、特別高圧が二円前後で、高圧が四円前後で、低圧が八円から十円というふうに大きな差があるということなども示されました。これなどは変圧費用の違いだけで説明がつくのかなと率直に思うんですが、こういう託送料金で差があるという現状についてはどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

松村参考人 まず、特別高圧と高圧も違う、高圧と低圧も違うということは必然的に出てくると思います。どうしてかというと、低圧にだけ使う設備というのがあり、高圧には使わないもの、あるいは高圧は使うけれども特別高圧は使わないもの、こういう設備が厳然として存在するために、料金の差が出てくるというのは、必然的にそうなると思います。

 ただ、今言及された料金水準が本当に適正かどうかということについては、厳密に検証されていません。特に低圧の料金に関していえば、今までは規制料金だったので、これが本当に託送料金なのか、それ以外の料金なのかという区別をする意味が余りなかったわけですね。どの道、どっちに配分されたとしても家庭用の料金になるからということなんですが、これから自由化されてくれば、それは本当に託送の料金なのか、そうでないのかということが極めて重要になってきます。

 特に、配電のコストというのは、営業のコストとの区別ということによって、この値が大きく変わってくるという可能性は十分あると思いますので、ここの精査というのは、今までの料金審査以上に、特にこの部分に焦点を当てた形で一生懸命やらなければいけないところだと思います。

 したがって、この料金水準が本当に出てくるかどうかに関してはまだわからず、本当にこの水準が出てきたとすれば、私は、高過ぎるのではないか、もっと精査が必要なのではないかという発言をすることになるかと思います。

塩川委員 適正かどうかの検証がされていないという点で、この点では、松村参考人の、電力システム改革小委員会の制度設計ワーキンググループでの発言などを拝見しますと、事務局試算の低圧託送料金について、こんなにコストが高いのかとショックを受けているという話もされて、そういう点では、今お話しされたような低圧託送料金の妥当性についての検証が必要です。

 そういう点でも、例えばオール電化の問題が実際どうなっているのか、あるいは事業報酬率がどうなのか、こういう点については、現行はまだ十分検証、検討されていない段階ということで受けとめていいのか、それについて今後どういうふうにしようとしているのか、この点についての御見識があればお示しいただけないでしょうか。

松村参考人 事業報酬率については、既に具体的にいろいろな方が議論をしています。

 どういうことなのかというと、送配電部門は、相対的に安定的な、今までと同じように独占企業が規制料金で徴収するという形になり、需要の離脱ということも基本的にほとんど考えられないような安定的なものですので、これと、比較的リスクの高い発電事業というのと、同じ報酬率でいいのかというのに関しては既に問題意識として出されており、どう考えても託送部門の方が報酬率が高いという理屈はないと思いますから、この点については見直しがされると思います。実際の料金のつくり方というのも、今までの小売料金と本当にコンシステントなのかということについても、同じく検証されることになると思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて松村参考人に、広域的運営推進機関で、今回、発電所の建設者を公募する業務というのが追加されました。本来、昨年の法改正で入れられた広域機関ですけれども、今回入ったというのは、要するに、どのような場合が想定されるのかとともに、何で昨年じゃなくてことしなのか、その辺の経緯とかもわかれば教えていただけないでしょうか。

松村参考人 昨年ちゃんと書くべきだったのではないかというお叱りだとすれば、委員の一人として反省いたします。申しわけありませんでした。

 しかし、これに関しては、かなり長い期間のものですので、今回の改正に盛り込んだのでは遅過ぎるなどということは絶対にない。その結果として何か弊害があるということはあり得ないと思います。

 特に入札のことに関しては、安定供給ということとすごく関連しているということで、それから、澤委員も御指摘の容量メカニズムとの関係とかということも議論しなければいけないという側面もありますので、そのような議論を一定始めてから組み込まれたということがあったとしても、必ずしも不自然ではないのではないかと思います。

 いずれにせよ、国民の皆様に御迷惑をおかけしたということは決してないかと思っております。

塩川委員 時間にもなりましたので、以上で終わりにしたいと思います。本当にありがとうございました。

富田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十七分散会


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