衆議院

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第17号 平成27年5月27日(水曜日)

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平成二十七年五月二十七日(水曜日)

    午後一時三分開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 鈴木 淳司君

   理事 田中 良生君 理事 三原 朝彦君

   理事 八木 哲也君 理事 中根 康浩君

   理事 鈴木 義弘君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大見  正君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    今野 智博君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      白石  徹君    助田 重義君

      関  芳弘君    武村 展英君

      冨樫 博之君    野中  厚君

      細田 健一君    宮崎 政久君

      神山 洋介君    近藤 洋介君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      本村賢太郎君    渡辺  周君

      落合 貴之君    木下 智彦君

      國重  徹君    藤野 保史君

      真島 省三君    野間  健君

    …………………………………

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   経済産業大臣政務官    関  芳弘君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          片瀬 裕文君

   政府参考人

   (特許庁長官)      伊藤  仁君

   政府参考人

   (特許庁特許技監)    木原 美武君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    堂ノ上武夫君

   政府参考人

   (特許庁審査業務部長)  諸岡 秀行君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     今野 智博君

  福田 達夫君     助田 重義君

  渡辺  周君     本村賢太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     黄川田仁志君

  助田 重義君     福田 達夫君

  本村賢太郎君     渡辺  周君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省産業技術環境局長片瀬裕文君、特許庁長官伊藤仁君、特許庁特許技監木原美武君、特許庁総務部長堂ノ上武夫君及び特許庁審査業務部長諸岡秀行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 自由民主党の宮崎政久です。

 きょうは、特許法の改正につきまして質問の機会をいただきましたこと、委員長初め理事各位の皆様に御礼を申し上げます。

 さて、今回の特許法の改正、経済産業委員会でこういった形で審議がされますが、知財戦略というのは、この国の行くべき大きな歩みのポラリスというんでしょうかね、目指すべき方向性だと私は実は思っております。それを、経済産業政策という形でこの委員会で審議をして前に進めていくということは、大変意義深いことだと私は思っております。

 早速、具体的な中身に入りたいと思います。

 まず最初に、ガイドラインのあり方について質問をさせていただきたいと思います。

 今回の特許法の改正によりまして、会社の従業者等が職務上の発明を行った場合であっても、職務発明規程をあらかじめ定めることによって、この特許権を会社に最初から、これは原始帰属でありますけれども、原始帰属をさせることができるようになるわけであります。

 この制度改正に関しましては、いろいろな声がある。例えば、発明者に認められていた権利やインセンティブの法的な基盤が失われてしまうんじゃないか、そのことによって、中長期的には報奨が引き下げられてしまうんじゃないかとか、そういうことを繰り返すことによって有為な発明人材というものが海外に流出してしまって、我が国の国力をそぐことになるんじゃないか、こんな御指摘もございます。

 他方、この改正によって、権利関係の紛争を未然に防いで、安定的な職務発明に関する知財の運営ができるようになる。実際の職務発明の現場、企業において、さまざまな製品開発などをしていく前提となる我々の産業の基盤という意味でいうと、この安定化のメリットというのは非常に大きいところがございます。

 従業者の側としても、あらかじめしっかり、これは権利でありますけれども、相当の金銭その他の経済的な利益というものを確認することができれば、逆に言えば、発明後のことに煩わしい思いを持つことなく、安心して研究活動であったり企業活動、日々の目の前の業務、こういうものに打ち込むことができる、こういうメリットもあるわけであります。

 著名な事件としては日亜化学の事件がございます。この裁判の中で、中村博士との間で、例えば当初報奨金が二万円だとか、第一審の判決では二百億円が相当だとか、高等裁判所で和解する段になったら今度は六億円だとかというような形で、裁判所の認定額も含めて、争われた額、扱われた額が大きく変動した、こういう事情もありました。もちろん、日亜化学さんの方としては、多額の給料で処遇をしてきた面を考慮するべきであるという主張もありましたし、また研究者の側からすれば、それは発明の対価というか、今でいえば報奨になるわけですけれども、これは対価ではないじゃないか、こういうような主張がありました。

 つまり、この裁判に象徴されるのは、特許、発明に関して、職務発明の分野において労使の間で共通の認識を持っていない、持つような制度がないということによって、これだけの混乱と、事業活動においても、また、働いている、発明をされている研究者の方にとっても、さまざまリスクが出てしまう、顕在化してしまうということでありまして、この事例一つとってみても、きっちりとした決まりがないということは、会社の側にも、働く人の側にも、両方いい話じゃないということになるわけです。

 こういう権利の不安定さを克服するという意味で一定の指針が示されるということになれば、まさしくこれは職務発明の場面で、企業、使用者側にとっても、発明をされる従業者側にとっても、ウイン・ウインの関係が導けるということになります。

 問題は、「相当の金銭その他の経済上の利益」という、三十五条四項の改正案の中にあるこの文言が、どれだけの内実を持ったものとして定められるかということになるわけでありまして、そこで、そのガイドラインというものの持ってくる意味は非常に大きいと思うわけです。

 発明を奨励して、イノベーションを創出して、科学技術立国、知財立国日本をつくり上げていく、こういう意味で発明者のモチベーションを保つ、増進するというのが、ガイドラインをつくる上では非常に重要なことだと私は思っております。

 このガイドラインの策定に向けた宮沢経済産業大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

宮沢国務大臣 長らく弁護士としてまさに実務に携われた宮崎委員から今法律論的な御質問をいただいて、やはり弁護士さんだなと思いながら話を承っておりました。

 今御説明がありました。これからの日本の経済とか産業を考えますと、サービス業を含めていかに生産性を向上させていくかということが大変大きな課題となっております。生産性を向上させるためには、やはりイノベーションといったものをさらにさらに進めていかなければいけないという中で、発明をされる方、発明者に対するインセンティブを確保するということが大変大事な政策だろうと思っております。

 今回の改正法案では、発明の奨励を目的とし、発明のインセンティブを決定する手続に関するガイドラインを策定することを法定化しておりまして、このガイドラインというものが、おっしゃるように大変大事なものだと思っております。

 ガイドラインにつきましては、発明者との協議や意見聴取などのあり方について明示して、発明者の研究意欲が湧くようなインセンティブを確保するということとしております。

 まさにこのガイドラインによってしっかりと手続を踏んでいただいて、発明に従事される、研究に従事される方にインセンティブが湧くような、そういうことをしっかり奨励していきたいと思っております。

宮崎(政)委員 大臣、ありがとうございました。

 今大臣も繰り返し触れていただきましたが、やはり、発明を奨励するインセンティブ、これが最終的にはこの国が知財立国として大きく飛躍していくためのポイントになるんですね。ですから、ぜひそこへの御配慮を十分にいただきたいと思います。

 二番目には、今度は、中小企業支援策はどうなんだということについてお伺いしたいと思います。

 特許をめぐる、要するに職務発明に関してですけれども、こういう点は職務発明規程を定めるということによって調整できるわけです。大企業は九九%がこれを整えている。しかしながら、中小企業でどれぐらいなんだと調べたところ、これは二〇%の会社でしかその備えがない。

 私は、この二〇%しか職務発明規程が整っていないというのは、単にこの規程を置いているかどうかというような意味ではなくて、例えば、就業規則のようなものであれば、モデル就業規則があることによって、そういうことが示されることによって、中小企業においても零細企業においても、常時十名以上の雇用をしているところでは、みんな定められているわけですね。ところが、いろいろ中小企業で発明にかかわっている会社でも、なかなかこういう規程が置けていない。

 この二〇%というのは、規程がどれぐらいかということが氷山の一角となって、つまり、現在の知財をめぐる行政の支援が中小企業にどれだけ行き渡っているのかということを示している数字でもあると思うんです。

 言うまでもなく、中小企業というのは、日本の産業の柱でありますし、イノベーションの先駆け、パイオニア、大企業の下請をしているというだけではなくて、市場をリードし、日本の国を引っ張っていっているところであります。知財を扱うだけのマンパワーが足りない、情報が十分に行き渡っていないということが、この二〇%に出ているんだと思います。

 お許しをいただいてお配りした資料の一枚目では、日本の特許出願件数に占める中小企業の割合はわずか一二%だというようなことも調査で出てきております。

 中小企業にこそ、この法改正をもって、知財総合支援窓口のような支援を十分に活用すること以上に、新たなイノベーションを導く入り口をもっともっとつくっていかないといけない。安倍政権が今進めている地方創生の取り組みとも連動していくわけでございます。

 そこで、山際副大臣に、これから知財の分野について、どういった形での中小企業支援策を進めていくか、その御所見を伺いたいと思います。

山際副大臣 これはもう委員御指摘のとおり、知財だけではありませんけれども、中小企業に対しての支援策というものがいまだ不十分であるというのはおっしゃるとおりだと思います。一方で、民間の企業が自分の力で業をなしていくということも大変重要なことでございまして、そのバランスをどうとっていくかということを、我々としても、日ごろから御指導を賜りながら御支援申し上げるというふうにしております。

 今、中小企業に対して、知財の分野においてどのような支援をしていくかという御質問でございましたので、これからというより、今始めているところとして、中小企業が知財について気軽に相談できる体制の整備、これは具体的には、全国四十七都道府県に設置されている知財総合支援窓口で活動する弁理士、弁護士等の専門家の活用を拡大するであるとか、あるいはジェトロ等々も通じまして、世界に羽ばたきたい、こういった中小企業の海外展開を一気通貫で応援するような支援メニューというものも用意してございます。

 また、今回提出させていただいておりますこの法律案が成立した場合には、職務発明規程の重要性を啓発するため、全国規模の説明会の開催や、先ほど申し上げました知財総合支援窓口を通じて職務発明規程整備のアドバイスなどを行う次第でございます。

 また、支援策を活用した地域での具体的な支援の成功事例を積み重ねて、それを横展開するように情報を発信するというようなことも考えてございます。

宮崎(政)委員 山際副大臣、ありがとうございました。

 地方経済の主役は、都市圏以上に中小企業であります。知財というものが中小企業においてももっと十全に活用される。それが、先ほど指摘をさせていただいたような、例えば規程の整備が二〇%、申請が一二%しかないというところから大きくジャンプアップして、結果としても出ていくような中小企業知財戦略というのが、この国の行く末として大きいポイントになるだろうなと思っております。

 次に、特許支援体制の充実の強化を図っていただかないといけないという点について質問させていただきます。

 改正法の三十五条六項では、「発明を奨励するため、」という文言が入っているんですね。特許法の目的というのは、第一条にあります。「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与する」というのが目的なんです。つまり、第一条で「発明を奨励し、」というのが目的ですよということが書いてある法律において、今度改正法で、改めて「発明を奨励するため、」という文言を入れたということの意味は、実は私は非常に大きいんじゃないかというふうに思っております。

 きょう、お許しをいただいてお配りをさせていただいた資料の三枚目を見ていただきますと、一人の審査官が抱えている審査の処理件数、これが日本は二百三十四件である。アメリカの約三倍、欧州諸国の約五倍というようなことになります。

 発明を奨励すれば、当然出願件数もふえてくる。日本再興戦略二〇一四でも、世界最速、最高品質の知財システムの確立を目指すとある。今まで以上に出願件数がふえてきても、迅速、適切に処理できる人的な体制、システムの構築が不可欠だと思うんです。これをしなければ、絵に描いた餅になってしまう。

 そこで、知財立国日本の確立という意味で、私ども政治の現場から全力で応援をしていくことはもちろんでありますけれども、特許庁にぜひ頑張っていただきたい、そう思っているわけです。この点に関する伊藤長官の御決意を聞きたいと思います。

伊藤政府参考人 委員御指摘のとおり、知財立国を推進するため、審査体制の整備、強化を進めて、諸外国からも信頼される世界最速あるいは最高品質の審査を実現することが極めて重要な課題であると認識しております。

 人員面では、迅速な審査あるいは質の高い審査を行うべく、平成二十七年度の予算において、百名の任期つき審査官を手当てさせていただいております。

 また、予算面でも、膨大な文献の中から効率的に審査を行うための情報システムの整備、あるいは先行技術調査を民間企業にアウトソーシングするといったような形で、効率的な審査を実施するための予算も確保させていただいております。

 他方で、世界最速あるいは最高品質の審査を実現するためには、現状の審査体制ではまだ十分ではないと認識しておりまして、審査官の確保を含め、人員、予算面からの環境整備を精力的に進めていきたいと思っております。

 以上でございます。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 日本の国の進むべき道としての知財立国の実現に向けて、私もこれからも全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 私からも、職務発明制度の見直しについてまず御質問したいと思います。

 産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会が、ことしの一月に「我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しに向けて」の報告書を公表されました。

 同報告書では、現行制度が企業におけるイノベーションの実態に対応しなくなっている問題点として、第一に、企業におけるイノベーションは、一人の発明者が行うよりもグループ単位で行うことが多く、また、一つの発明を生み出すのに発明者以外の多くの従業者が協力する場合が一般的である、第二点として、製品の高度化、複雑化により、一製品が数百、数千の特許から構成されたり、一発明が複数人から生み出されたりすることも珍しくなく、しかも、その傾向は近年一層顕著だというふうに指摘をされております。

 さらに、特許を受ける権利の承継の際の二重譲渡の問題、特許を受ける権利が共有に係る場合の帰属の不安定性の問題を指摘されて、企業におけるイノベーションの障害になるおそれがあるというふうに指摘をされています。これらの問題点の指摘はまことに的を得たものだというふうに考えます。

 私ども公明党の経済産業部会は、職務発明制度の見直しにつきまして、二月二十五日に日本経済団体連合会、日本商工会議所、そして二月二十七日に日本労働組合総連合会、日本弁理士会から、それぞれの団体の御意見をお伺いいたしました。

 これらの各団体の意見の中で、日本商工会議所の意見は大変傾聴に値するものでした。

 少し御紹介をさせていただきたいんですが、まず第一点目として、中小企業のイノベーションの実現の鍵は、ものづくりで蓄積された高度な技術と知的財産の活用にある、知的財産活用のためには職務発明は法人に帰属させることが求められ、高度な技術力の維持強化のためには発明者に帰属させることが望ましい場合もある、これら両者のベストな組み合わせが中小企業のイノベーション実現のために必要であるというふうにまず言われました。

 第二点として、我が国中小企業の中には職務発明規程等を十分に整備していない企業も少なくない。先ほど自民党の宮崎先生の方から二割程度だという御指摘がありましたが、商工会議所からは、東京商工会議所中小企業の知的財産に関する研究会が行ったアンケートで、職務発明規程があると回答した企業は全体の一九・四%、二割に満たないという数字も教えていただきました。

 限られた経営リソースの中、従業者との調整を経てこうした規程等を整備する余力のない企業も存在するのが実情である、仮に一律に職務発明が自動的に企業に帰属することとなると、職務発明規程等がない中小企業の経営者と従業員との間で、その報奨等をめぐってトラブルが発生するおそれがある。

 三点目として、中小企業は、少人数の人的なつながりを生かして経営しているため、職務発明規程等を整備して特定の社員に金銭的に報いる仕組みをとっている場合は少なく、社長表彰など企業風土に応じたそれぞれの工夫によって活力の向上を図っている、また、小規模の企業では経営者自身が現場に入り込んで研究開発を行っていることが多いというふうな御意見でした。

 そして、こうした実態を踏まえると、新たな制度では、全ての中小企業に対して一律に職務発明規程等の整備を義務づける仕組みとしないように、また、職務発明規程等を有しない中小企業に対してまでも一律に特許が法人帰属とならないように配慮することが望ましいという御意見でした。

 今回の職務発明制度の見直しは、このような意見を踏まえたものと理解してよろしいでしょうか。

宮沢国務大臣 成長戦略のまさに主役は中小企業であり中堅企業だと私は思っておりまして、そのためにも、中小企業においてイノベーションをどんどん進めてもらうということが大変大事であります。

 一方で、まさに御質問のとおり、中小企業の中には職務発明規程を有していない企業が多々あるということは事実でありまして、したがって、今般の法改正におきましては、職務発明規程などであらかじめそういうものを定めてある場合には特許を受ける権利は初めから使用者帰属といたしますけれども、逆に職務発明規程等を有していない中小企業につきましては、引き続き従業員帰属とさせていただいたところであります。

 一方で、職務発明規程を、まさにこれからいろいろな特許を取る可能性の高い中小企業においては、そういう規程等を整備していただくということは大事なことだと思っておりまして、中小企業に対して、職務発明規程の整備などの支援をこれから積極的に進めていきたいと思っております。

富田委員 今回の見直しに当たっては、相当の対価を相当の利益というふうに変えましたけれども、これをどう決定していくかが大変重要だと思います。

 先ほど宮崎先生の方からも質問ありましたけれども、改正法第三十五条第六項の指針、いわゆるガイドラインをどのように策定していくのかが大事になると思います。大臣からは、研究従事者にインセンティブを与えていくんだという御回答がありましたが、この点について再度確認をしたいと思います。

山際副大臣 今、ガイドラインのお話がございました。ガイドラインの具体的内容といたしましては、相当の利益の基準策定のための従業者との協議、そして相当の利益の基準の従業者への開示、さらには相当の利益を付与する際の従業者への意見の聴取を想定してございます。

 これを決めていくに当たりましては、産業界や労働界の代表、研究者、学識経験者から構成されます産業構造審議会の意見を聞くこととしてございます。

 これによりまして、従業者が相当の利益の決定手続に参加できることとなりまして、従業者の納得感が高まるものと考えてございます。

富田委員 ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。

 委員長、理事の御了解をいただきまして机上に資料を配付させていただきました。A4判になっていますが、実際は新聞の全面広告で、多分何千万かかるんだと思うのですが、すごい広告を、中村先生、また弁護士の升永先生が発明を奨励する会ということで意見広告をされております。

 二〇一四年十一月二十日付の朝日新聞の意見広告ですが、この中に、大正十年以来今日までの九十三年間、特許法は、発明はサラリーマンのものと定めている。今日まで九十三年間続いているこの特許法の規定を、発明は会社のものに変更しようとする法改正の動きがある。それに対して、猛反対だというふうに大きな文字で出ているんですが、ちょっと誤解もあるんじゃないかな。この後、ずっとやってきまして、先ほど特許制度小委員会報告書によりますと、こんな指摘がありました。

  なお、職務発明制度を巡っては、「発明は会社のものか、社員のものか」といった短絡的な議論がなされることが少なくないが、上記の見直し後の新たな制度の下では、そのような会社と社員の二項対立を想定したような問いは、不適切である。

  新たな制度の下では、職務発明に関する「特許を受ける権利」は、原則として、初めから会社に帰属することとなるが、職務発明の発明者は、従前通り、社員とされる(「発明者人格権の従業者等帰属」)。それゆえ、職務発明が会社と社員のいずれのものかを言うことは、一概にはできない。また、優れた職務発明は、会社の経営者と社員が目的を共有し、協働するときに生み出すことができる。その成果は、いわば経営者と社員の共通の利益であって、その利益がいずれに帰するかを争うことは生産的であるとは言えない。

との記述があります。

 私もこのように思うのですが、特許庁としてはどのように考えているんでしょうか。

伊藤政府参考人 御紹介いただきました特許制度小委員会の報告書は、ほぼ一年間にわたりまして、産業界、労働界、あるいは学者、学識経験者の方々からの意見を取りまとめたものでございまして、これを踏まえて今回の法改正に我々は臨んでいるところでございます。

 お話がございました今回の職務発明制度の見直しについて、中村教授を含めた発明を奨励する会では、本改正案が発明は会社のものに変更するものだということで、発明の奨励に反するという意見広告が出されているわけでございます。

 一方、今回提出させていただいています法案では、特許を受ける権利を初めから法人帰属にすることを可能とするものでありますが、他方で、職務発明の発明者については、従前どおり、当該発明を生み出した従業者が発明者でございます。

 また、本改正案では、発明者に対しまして企業がインセンティブを付与するということを法定していまして、現行法と同様に発明を奨励していくという考え方でございます。発明の奨励に反するという御指摘は当たらないものというふうに我々は考えているところでございます。

富田委員 ぜひ、その点も御理解いただけるように、今後の広報等で、誤解されているようでしたらきちんと御説明をしていただきたいというふうに思います。

 先日、日経新聞にぼんと出てびっくりしたんですが、五月二十一日、日本国特許庁と米国特許商標庁は、平成二十七年八月一日から日米共同審査を開始することに合意したという報道がありました。これまでとどのように手続が変わって、どのようなメリットがあるのか。特許庁によりますと、「世界で初めて米国との間で特許審査の協働調査を開始します」ということで、「日米両国での早期かつ同時期の特許権の取得が可能に」とプレスリリースされていました。この点について御説明いただければと思います。

木原政府参考人 お答え申し上げます。

 企業の事業活動がグローバル化する中、日本のみならず海外でも特許権を迅速に取得する必要性が高まっているところでございます。

 委員御質問の、本年八月から開始予定の日米共同調査は、日米両国に特許出願された発明につきまして、出願人からの申請によりまして、日米の特許審査官がまずそれぞれ先行技術調査を実施いたします。その調査結果を共有した後に、それぞれの特許審査官が早期かつ同時期に最初の審査結果を送付するものでございます。

 この日米共同調査を活用することによりまして、我が国企業は、日米におきまして、より強く安定した権利を早期かつ同時期に取得することが可能となるわけでございます。両国での事業展開をより円滑に進めることができるものと考えております。

 また、日米での早期の権利取得によりまして、それ以外の国におきましても、我が国企業の権利取得の予見性が高まるものと期待されるものでございます。

 こうした取り組みを通じまして、今後も我が国企業の国際事業展開を後押ししてまいる所存でございます。

富田委員 済みません。ちょっとその関連で、質問通告していなかったんですが、その新聞に、今おっしゃられたように、ほかの国にもどんどん広げていくということで、「日本は国ごとに異なる特許や商標の出願手続きを統一する国際条約に今秋にも参加する。」というような記述がありましたけれども、これはどうなっているんでしょうか。

伊藤政府参考人 それは、今特許法で国内担保措置をお願いしております特許法条約と商標法条約の二本のことでございまして、現在、国会の中でその条約の批准に向けての検討をしていただいているところでございます。

富田委員 その条約の審議ができればここに参加できるということで理解していいんですか。(伊藤政府参考人「はい」と呼ぶ)ありがとうございました。終わります。

江田委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 富田先生が突然終わられましたので、済みません、息を整えて始めたいと思います。

 私のほか、この後、委員が二人、深掘りをした議論をすると思いますので、私は、今まで前段の質問者、自民党、公明党の委員の皆様方が御質疑されたことも含めて、幾つか、議論の入り口として確認をさせていただく作業をこの時間でさせていただきたいと思っております。

 特許法の改正案の主要な論点の一つは、今も議論されておりました、職務発明に関する特許を受ける権利を現行の発明者帰属から法人帰属を可能とするように変える、これがこの改正案の一つの重要な柱ということになっております。

 政府が法改正を必要だと考えたのは、発明者あるいは従業者への対価の支払いを切り下げたい、発明した人への対価の支払いを引き下げたいという産業界からの御要望を反映したものになっているのではないかという見方もあるわけでありますけれども、今回のような九十年ぶりの法改正ということでありますが、法改正をしないと競争力が弱体化するとか、いろいろと理由はあろうかと思いますけれども、今回、このような大きな方向の転換をしなければならなかった何か立法事実というものがあるのか。産業界からの対価の切り下げだ、これが理由だということではないはずでありますので、説得力のある法改正の理由をお示しいただきたいと思います。

宮沢国務大臣 特許法の前回の大きな改正が十六年ですから、十年近くぶりの改正ということになるわけでありますけれども、この間、グローバル化というのはますます進展をしております。また、いろいろな生産研究についてオープンイノベーションといったこともかなり進展をしてきておりまして、やはり知財戦略といったものの重要性というものが大変大きくなってきたんだろうというふうに思います。

 特に、近年、製品の高度化、複雑化によりまして、一つの製品が数百、数千の特許から構成されるようになっている。例えばカメラでいいますと、私が高校生のころ憧れていたニコンFなんというのは百ぐらいの特許だったらしいんですけれども、今のキヤノンのEOS―1Dなんというのは一万を超える特許というような、特許がかなり、同じ製品でも大変大きくなってきているというようなことで、特許戦略というのは大変大事なことになってきております。

 こうした環境の変化を踏まえて、産業界から職務発明制度の見直しの要望が高まり、日本再興戦略などにおいて見直しについての検討を明記したところであります。これを受けまして、産業界だけではなくて、労働界の代表、学識経験者などを集めた産業構造審議会において検討を進めてまいりました。

 そして、この検討を踏まえて、権利の帰属が不安定とならないようにすべく、職務発明に係る特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることを可能とし、企業が特許を円滑かつ確実に取得できるよう環境整備を図る。

 そしてさらに、政府が、インセンティブを決定する手続につきましてガイドラインを策定いたしまして、従業者との協議や意見聴取などのあり方について明確にすることで、発明者の納得感を高め、イノベーションの源泉であります発明に対するまさにインセンティブを付与する、こういうことで今回の法改正をお願いいたしました。

 産業界も、決して相当な対価、利益を下げるためにこれを要望してきたわけではなくて、権利関係を最初からはっきりする。一方で、まさに相当な対価を従業員に納得してもらえるように、発明者がもらえるようなシステムも同時に導入するということで、双方が先の見通しが立つような制度をお願いしていると思っております。

中根(康)委員 大臣からのお話でも、この改正が出された契機が、やはり産業界からであるとか日本再興戦略に基づく、こういうお言葉もあったわけでありますので、やはり働く側の人、発明当事者からすれば、対価が適正、十分なものでなくなってしまうのではないか、あるいは納得できるものにこの法改正によってならなくなってしまうのではないか、こういう懸念が生じるのは自然の気持ちだと思いますので、ぜひきょうからの審議で、そういう懸念が払拭されるような議論にしていきたいというふうに思っておるところでございます。

 就業規則などで職務発明規程が整備されていない事業所については、初めからの使用者側への帰属は認められないということでよいのか。つまりは、規程等を整備していないということは使用者帰属を選択していない、こういうような考えでいいのか、確認をしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 現行の制度では、職務発明の特許を受ける権利は、初めは発明者である従業者に帰属いたしまして、当事者間の取り決めに基づいて従業者から企業者に権利が承継されるという形になってございます。

 本改正におきましては、企業が従業者に対してあらかじめ職務規程等に基づいて意思表示をした場合には初めから法人帰属、これに対しまして、あらかじめ法人帰属の意思の表示をしていなければ従業者帰属という形で、選択できる形としております。

中根(康)委員 そういうことであるならば、契約や就業規則に職務発明は企業に属すると書けば現行法でも使用者帰属とすることは可能で、つまりは、現行法の運用の改善で十分であって、法改正までしなくてもよかったのではないかという御意見もあるわけでありますが、この点についてはどのようにお答えになるでしょうか。

関大臣政務官 その場合は、やはり、就業規則や職務発明規程等の社内ルールによる特許を受ける権利の継承だけでは、権利の帰属が不安定になる場合がございます。

 例えば、A社に属するA社員が発明を行いました。そのA社員が、自分の所属するA社にその発明を言わずに、B社の方にその発明内容を言ってしまって、B社がその特許の申請をしてしまった、こういうふうないろいろなケースが考えられますので、そういうふうな不安定な状況を避けるためにも、今回の法改正では、初めから法人帰属を可能とすることを法定いたします。

 その上で、権利帰属を安定化させて、企業が特許を円滑かつ確実に取得できるよう環境整備を行って、そのためのガイドラインを明確化するということでございます。

中根(康)委員 今の御答弁の中にあった、A社の社員が、A社ではなくB社に、B社で特許の取得をするということですか。これは違法な行為なんですか、それとも従業員の発明者の方が選択可能な範囲の行為なんでしょうか。違法な行為なんでしょうか、どうなんですか。

伊藤政府参考人 補足説明いたします。

 二重譲渡問題と呼ばれているものでございまして、考え方といたしましては、本来は、従業員はその企業の中で発明していますので、その権利を使用者に対して承継するという取り決めにしていますから、社内的には問題があると思いますけれども、現行ですと、第三者に対しましてそれを譲渡すると、第三者に対する対抗力が、社内の取り決めですから、ございません。したがって、第三者が特許庁にその特許を申請しますと、我々はそれを拒絶できません。

 しかしながら、今回、そういった形で原始的に法人にその特許を受ける権利が残る、最初からあるということでありますと、そのB社が行う特許の出願というものは無効ということになりまして受けられない、そういう形で遮断するという形をとろうということでございます。

中根(康)委員 もちろん、そういう二重譲渡みたいなことをすると信義則に反するというようなことはあるかもしれませんが、それ以前に、A社の経営者とA社のその発明者と、きちんと何か就業規則とか契約とか約束事が交わされていないというところにやはりまず問題がある。あるいは、信頼関係が確立されていないというようなところに問題があったり、A社では十分な対価が得られないというようなところに課題があったりということであろうと思いますが、そういったことは、いずれも、法改正しなくても、まさに運用の改善で可能であったのではないかというようにも思いますが、これはこの後の質疑を十分拝聴していきたいと思います。

 法人帰属を可能とするような法改正でありますけれども、法人に帰属するということになった場合に、せっかくの特許がいわゆる休眠状態になってしまうおそれがないか。大企業などが保有する特許は百三十五万件あると言われておりますが、その五割が休眠状態であるというふうにも言われております。

 産業界に広く活用されていない実情にある、休眠状態が多いという状況、これが法人帰属でさらに助長されるおそれはないかということについてお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 今回、企業が法人帰属を選択した場合でも、従業者帰属と同様に、企業はその事業において活用する見込みが経営としてないというふうに考えたものについては、これを企業側が一回持ちますけれども、それを従業者にお返しするということは可能でございます。したがって、この改正によって直ちに休眠特許がふえるという御懸念は当たらないと思っております。

 他方で、休眠特許といったような状態が全般的に起こっていることは、せっかくの発明がもったいないことになっておると思っておりまして、特許庁の独立行政法人の方で、INPITと申しますけれども、ライセンス許諾の用意のある特許、いわゆる開放特許に関するデータベースを設けまして、そういったような情報を積極的に提供したり、あるいは、地域において、さまざまな中小企業とそういった開放特許とのマッチングの機会を行うような活動を今現在実施しております。

 こういったものを積み重ねながら、休眠特許問題についても解決を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

中根(康)委員 特許の帰属が企業なのか従業者なのか、もちろんこれは大事なことでありますけれども、やはり、今回の改正法案の審議で大切なのは、発明をした人が十分適正な、十分な対価を得られる法律の仕立てになっているかどうかということであろうと思います。

 対価請求権というものが法定をされていたからこそ、企業は発明者に相当な対価を嫌々ながらも支払ってきたということもあろうかと思いますけれども、これを初めから法人に帰属させる場合、使用者が従業者の発明に対して十分な対価を与えないおそれがないか、今までもこれは議論されてきましたが、改めて民主党の立場からも確認をしたいと思います。

 そして、相当な利益ということになるわけでありますが、現行法の相当な対価と同義なのかどうかということ。それから、相当な利益というふうに言った場合に、これは、例えば企業が発明によって受けた利益の何割程度とか、そういうふうに何か基準というようなものは示すことができるのかどうかということ。それから、金銭以外で報奨対価を支払う場合に、それが十分かどうかは誰がどのような基準で判断をするのかということ。これについてお尋ねをしたいと思います。

山際副大臣 後半の御質問につきましては、政府参考人からお答えをさせていただきたいと存じます。

 発明者への対価について十分適正なものが発明者に付与されることになるかという御質問についてでございますけれども、もちろん、これは各企業、各業種によりましてその研究開発戦略、研究環境がさまざまなものですから、インセンティブの決定を一律に決めてしまうというようなことはどだい無理があるわけでございまして、その合理性の判断は特に手続面を重要視してなされるべきだと考えてございます。

 そういった観点から、企業と従業者の間でのインセンティブ決定手続に関するガイドラインの策定を法定化することとした次第でございます。

 このように、企業と従業者との間のインセンティブ決定手続を具体的に明示することによりまして、従業者の納得感を高めることで個々のインセンティブが適切に確保されるものと考えてございます。

伊藤政府参考人 ほかの質問についてお答えをいたします。

 まず、相当の利益が現行法の相当の対価と同じかということでございますが、今回、相当の利益というふうに変えさせていただきましたのは、今回の改正に当たりまして特許庁が実施いたしました一万五千人の研究者向けのアンケートの中で、金銭以外のさまざまなインセンティブについても重要なインセンティブであるというような回答も得られました。

 そこで、こういったインセンティブの範囲を金銭以外にも拡張して、柔軟化を許容したものでございます。したがって、従業員が受けることのできる相当の利益というものは、現行法上の相当の対価と実質的に同等のものであるというふうに考えているところでございます。

 それから、利益の何割ぐらいが相当の利益かということでございますが、ここは、企業の技術戦略が業種あるいは企業ごとに相当さまざまでございます。したがって、本改正案の中でも、相当の利益については、この決定手続のあり方をガイドラインに示して、その中で企業の技術戦略の多様性を反映できるようにという形にしてございます。

 相当の利益は、ガイドラインに従って、従業員と協議や意見聴取を行いながら個々の企業ごとに定めるものであると思っておりますので、会社の利益の何割が相当の利益であるということはなかなか言えない性格のものであるというふうに認識しておるところでございます。

 それから、相当の利益として金銭以外の付与についての適正性のことでございますけれども、これも金銭と同様で、相当の利益の判断、付与につきましては、ガイドラインの規定に沿った手続で、従業者の意見を反映するという機会がございますので、そういった形で従業者の納得感を高めながら行うということで、仕組みとして基本的に適正な形で判断されるものというふうに理解しておるところでございます。

 以上でございます。

中根(康)委員 続きの議論は後の委員にお任せをしたいと思います。

 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

江田委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 今の中根委員と若干重複する部分もありますけれども、逆に質問し切れなかったことも含めまして、系列立ててお尋ねをしたいと思います。

 今回の法案改正の最大の論点が、報道されていますように職務発明制度の見直しでございまして、この点につきまして、きょうも各委員からさまざまな質問がされております。従業者に帰属させているという発明者主義、これが、知的財産の後押しというような形で企業側に属することになるということでございまして、二〇〇五年施行の今の現行法では、社員と会社の双方にインセンティブがあったと記憶をしております。

 私も、かつては商工委員会、経済産業委員会がまだ商工委員会だった時代に特許裁判を、特許庁に委員会の視察で行きました。その際に、特許の裁判を見ていて、私は文系出身でございますから、化学の分野とか産業化の分野というのは苦手でございまして、そのときはたしか、塩基の配列をめぐって、どこかの製薬メーカーが知的所有権の侵害をめぐって裁判をするという模擬裁判を見せていただきましたのですが、何が何だかほとんどわからなかったような思いがあります。

 しかし、非常に難解な特許を、侵害に当たるかどうこうということを、まさに本番さながらに模擬裁判を見せていただきまして、いや、これは相当な分野の専門家がいないと、なかなか、どう太刀打ちするのかという、本当にただの法律家だけでは対応できない大変なことなんだな、そんなことを思い出しながら今回質問をつくったんです。

 そもそもですけれども、産業界の意向で議論が始まったのではないかと指摘をされております。ですから、さまざまな労働界や、先ほどお話の出た中村先生も極めて懸念を抱かれているということでございます。

 反面で、職務発明というのは、会社がリスクをとりながら、会社の資金だとか設備をつぎ込んで使って、多くの社員のチームプレーによって、結果、でき上がっていくということも理解ができるわけでございます。発明というものが会社の利益になるというそのプロセスには、製造、生産、あるいは販売、さまざまなチームワークがあって、まさに総合力で会社の、企業の利益を生み出すわけでございまして、双方の言い分というものは、やはり私もわかるんです。

 そこで、お尋ねしたいのは、産業界からは訴訟のリスクをまず挙げられていた。それから、訴訟のリスクに合わせて、企業の方では、例えば特許を多数申請する大手企業においては、対価の算定であるとかその支払い事務において、非常に煩雑であって、多数の人員も必要である、その分コストがかさむということが指摘をされてきて、そのことが一つのきっかけとなって今回の法改正になったというふうにも指摘をされているわけであります。

 この訴訟の件数、近年どれぐらいあって、そしてまた、対価の算定というものがどれほど経営を圧迫といいますか、経営の負担となったのかということについては、客観的な何か数字はあるんでしょうか。だからこそ今法改正なのだという、客観的かつ具体的な事由をぜひ述べていただきたいとまず冒頭申し上げたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 平成十六年の改正以降、現行法が適用されている中での職務発明の訴訟は、私どもが承知している範囲で四件でございます。

 それから、御質問の対価の算定に係る経営に及ぼす影響でございますが、経済界が参加しています日本知的財産協会というものが会員企業に行ったアンケート結果でございますが、対価の算定に係る年間の業務負担として、そのアンケートの企業の単純な平均というふうに理解しておりますけれども、六百三十人日の工数がかかっているということを承知しているところでございます。

 以上です。

渡辺(周)委員 今おっしゃっていただいた四件の訴訟と、かかった日数が延べで六百三十人日だと。

 私がお尋ねをしたのは、対価の算定、客観的数字で、例えば、どれぐらいの人的コストがかかっているとか、そこまでのデータは持っていないということですか。例えば、売り上げに占める中の何%が実は手続にかかるコストであった、そこはないということで。うなずいていらっしゃいます。

 ここについてはもうちょっと指摘をしたいところではございますが、ちょっと時間の関係で次に行きます。

 今回、成長戦略と言われる中で、これは残業代ゼロにしてもそうなんですけれども、どうも経営者サイド、企業サイドの立場になって成長戦略が考えられている、その一環ではないかということも我々は懸念をするわけなんです。つまり、そこで働いているまさに従業員の方々の努力というものに対して、どうも今の政権は、産業界サイド、成長戦略という名前のもとで企業側の論理に立っているのではないか、非常にそのことに対して懸念を持つわけでございます。

 ですから、訴訟のリスクというけれども、四件という数字は決して多い数字ではない。そして、残念ながら、どれぐらいの金銭的なコストがかかっているかということについてもお答えはなかったわけでございます。残念であります。

 ここで、先ほど中根委員も触れましたけれども、今回の法改正によって、改正というのか改悪になるのかということについては、やはりそこは、申し上げたとおり、従業員にとってこれは不利益をこうむることになるのではないか。やはり日本の企業は、従業員が自由に活動できない、組織を重視する日本型企業の中において、どうしても使用者側の方が強い立場にある。それを、契約であるとか会社の規則であるとかそういうもので決めるということでございますが、今回の制度変更によって発明者の意欲が低下をしてしまっては全く意味がないわけであります。

 今度の改正案でできます相当の利益、現行法の対価と実質的に同じなのか。対価というものを利益とした意味を同等の権利として理解していいのかどうなのか、その点について、今回の審議会でのやりとりもそうでありますけれども、どのようにお考えか。企業の論理だけで対価が決められるのではなくて、やはりそこはしっかりとした従業員のモチベーション、まさにやる気をそぐことがないように、どのような制度設計をしていくのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 相当の利益につきまして、相当の対価とどういう関係かというのがまず御質問にあったかと思います。

 現行では、相当の対価は金銭のみを指すものでございますが、先ほどもちょっと御説明いたしました、今回の改正の関係で一万五千人ほどの研究者向けのアンケートをいたしますと、やはり金銭のみならず、研究設備の充実など金銭以外のインセンティブも重要だというお話がございましたので、インセンティブの範囲を今回広げて、柔軟化を許容するという形で一つ変化をさせているものでございます。

 したがって、従業者が受けることのできる相当の利益、経済上の利益といったようなものは、現行法の相当の対価と実質的に同等のものであるというふうに考えておるところでございます。まず、範囲についてはそういうことでございます。

 それから、それがどういった形で担保されるか、不満のないような形で担保されるかということにつきましては、先ほども説明ございましたけれども、インセンティブの決定手続については、経産大臣が定めるガイドラインというものを設定いたしまして、この中で、従業者との協議、あるいは、どういった基準をつくって、それをどういう形で開示するのか、それから、個別の利益を従業者に渡す場合にその意見の聴取をする手続、こういったようなものをガイドラインで定めることによりまして、発明者に納得感の得られる形でインセンティブの付与のスキームというものが行われるということになりますので、今回の改正によって経済的利益という形で範囲が広がりますけれども、スキームとしては、ガイドラインに沿って、きちっとした手順をもって個々の企業が従業員と相談をして進めるということでありますので、このインセンティブが切り下げられるといったような懸念は当たらないというふうに思っているところでございます。

渡辺(周)委員 ちょっと確認ですけれども、この相当な利益、いろいろな恩典が考えられると思うんですね。

 ちょっと例を挙げますと、これは報道ベースで見たんですけれども、日立製作所は二〇〇五年から、社員の発明について特許の出願は会社名で行ってきた、発明した社員には、特許の登録が認められた際などに数万円単位を払う報奨制度を設けたと。その特許を使った技術が製品化をされれば、会社の業績に大きく貢献をするわけですので、売上高に一定の比率を掛けた金額がさらに報奨金として支払われる、こういう制度を導入している。ほかのメーカーでもそのようなことが行われるというふうにもありましたし、また、欧米のベンチャー企業においては、発明にかかわった従業員にストックオプション、いわゆる株式購入権を与えている、こういうふうなこともやって、とにかくインセンティブというものを幅広く考えているわけなんですが、こうした例を含めて、どのように今後検討していくのか。

 何よりも、経済産業大臣が策定をするインセンティブの決定手続、これはガイドラインが大きな意味を持つんですけれども、現状、大臣としてはどういうふうに考えているのか。相当な対価を算定する際の考慮の要素としてどのようなことを考えているか。これからガイドライン策定に当たっては、やはり大臣の今のお考えをぜひ伺いたいと思います。

宮沢国務大臣 相当な利益の中身自体につきましては、これはやはり、会社側と従業員側、発明に携わる方たちの間で具体的なことを決めていただかなければいけないわけでありますけれども、一方で、今回の法改正におきましては、その決め方、デュープロセスを経て決めてほしいということを法律に書きまして、そのデュープロセスをガイドラインという形でお示しをしたい、こう考えております。

 ガイドラインにつきましては、相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際しての従業者との協議、要するに従業者と協議する、そして、従業者に対する基準の開示、それから、相当の利益の内容の決定についての従業者からの意見の聴取など、こういうことをガイドラインとして定めて、これをデュープロセスという形で経ていただきたい、こういうことを考えております。

 したがって、ガイドラインでございますから、これを絶対に尊重しなければいけないということではないわけですけれども、一方で、今後裁判等々ということが起こったときには、やはりガイドラインで定められた手続を経ているか経ていないかというのは、恐らく裁判の過程において相当考慮されることになろうかと思います。

渡辺(周)委員 中根委員も私も、質問をする中で一つ共通している懸念というのは、やはり従業者の方が弱い立場にあるわけであります。会社規則としてある程度のことが定められていくだろう。しかし、例えば、研究者の卵が大学院なり大学を出てその企業に就職をする、採用試験を受ける側というのは弱い立場ですから、当然、我が社はあなた方が会社に入って利益をもたらしてもこういうことになりますよ、それでもよろしければということで、詳細はわからないけれども、まず会社に就職する、研究室に入るときに、わからぬけれどもと言ったらあれですけれども、余り詳細を詰めて、採用してくれると言ったところにあれこれ言うと、こんな面倒くさいやつはうちの会社は要らないといって、変な話、はじかれることだって当然あるんです。当然、採用前の弱い立場の方々もいるわけであります。

 そうしますと、入ってからいろいろな形で、救済措置とでもいいましょうか、あるいは、入ってみて社員が不満だった場合の苦情処理、苦情処理というんじゃないですけれども相談するような窓口、あるいは、裁判にはならないんだけれども、その手前で何らかの形で、紛争といいましょうか意見の対立等あるいはいろいろな要求が違った場合にどのような形で処理をしていくのかという、やはり会社にとっての仕組みも大事だと思うんです。

 大手企業だったら、例えば、労働組合がしっかりしていたり、あるいはさまざまな法務担当の部署があったり、いろいろな、社員の権利を守るということについて専門家がいるところはありますけれども、決して全てがそうじゃない。

 だとするならば、今後どのような形でそうした従業員側の主張というものを受けとめるか、あるいは改善に役立てるかという窓口が必要だと私は思うんですけれども、そうした仕組みはどのようにあるべきだと考えていらっしゃるか、お尋ねいたします。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 最初に、入社前の従業員など、そういう立場の弱い方のことについて御質問がございました。

 当然のことながら、入社時においてまず内容をきちっと説明し開示することは必要だろうと思いますし、また、個別に具体的なインセンティブを行うといった場合には、新入社員であったとしても、意見聴取を個々に行うという形がガイドライン上も必要になってくると思っております。

 ガイドラインを策定するに当たっても、この手続をいろいろ明示することになりますが、入社前の従業員のような、いわば弱い立場に置かれているような方の状況を踏まえた対応をとるようにしたいと思っております。

 それから、苦情処理のようなことにつきましても、今後、政府が定めるガイドラインの中で、従業者が付与された相当の利益の内容に不満があった場合に、それを企業に対して意見を言えるような手続、こういったようなものもガイドラインの中に定めたいというふうに思っております。

 以上でございます。

渡辺(周)委員 法案が成立した暁に、そのガイドラインを定める期間といいましょうか、これは通告していませんけれども、そもそも、ガイドラインをつくることに着手する時期、それからどれぐらいの期間でガイドラインを定めるのか。

 その際に、どういう方々に入っていただくのか。当然、先ほど名前を挙げられたような団体の方々もそうでしょうけれども、やはり発明者の代表、従業員側の代表、決して大手の労働組合だけではなくて、その分野において、もっと言えば、反対だとおっしゃっている、例えば、先ほど中村先生の意見広告をどなたか委員が出していらっしゃいましたけれども、なぜ反対するかという、こういう方々の意見も取り入れるようなガイドラインをつくっていくことが非常に有意義だと私は思いますけれども、その点についてはいかがですか。

伊藤政府参考人 期間につきましては、法律が成立していただきましたらば、できるだけ早急に着手して、一年とたたないうちにはつくりたいと思っております。

 それから、策定の手順につきましては、そもそも法律の中で産業構造審議会の意見を聞いてということになってございますけれども、それ以外にも、さまざまな調査とかヒアリングとかを行いながらまとめていく必要があるというふうに思っているところでございます。

渡辺(周)委員 先ほど御答弁の中に情報開示というようなことが少し触れられていたのではないかと思うんですが、今のような、ガイドラインをつくる中で、従業員側の立場、権利というものをぜひとも尊重できるような形でガイドラインをつくることに取り組んでいただきたいと思いますし、そのときには幅広く、今回の法改正に対して真っ向から反対を言っている方々、懸念を抱いている方々も、ぜひ何らかの方を参考人として入れて、よりよいものをつくるようにしていただきたいというふうに思うんです。

 なかなか、そのガイドライン、結果的には、規則なり契約なりをつくるのは企業のサイドだとは思いますけれども、繰り返しになりますけれども、そこが余り企業の論理ばかりが立って、従業員にとって不利益になることがないように、結果的にそのことが、研究者の卵であったり、いい人材が、後に質問しますけれども、流出をするような、いなくなってしまうようなことにならないように、その点についてはぜひ配慮をしていくべきだと思います。

 ちょっとお尋ねをしますが、この制度ができたとして、先ほどもちょっと日立の例を挙げて申し上げましたけれども、各企業の報奨制度の詳細だとか、あるいは技術者をどう処遇しているかということについて、情報開示というものをこのガイドラインで義務づけるというお考えは現状あるかどうか。

 それはやはり、それぞれの企業の取り組みを比較することで、今後就職する、先ほど言った、これから世界的な発明をするかもしれないという研究者の卵や意欲のある人たち、あるいは、ひょっとしたら、よそから転職をしてくる、転職を考えているエンジニアも、よりよい職場を選ぶことができるというメリットがあると思うんです。つまり、情報公開をして透明性を高めることによって、それぞれ選ぶときに、ここで俺の研究してきたこと、やりたいと思ったことができるかもしれないということで、よりよい職場を選ぶことができるというふうに思います。

 また、あわせて、こうした優秀な人材をそれぞれが集めようということでいけば、そこは待遇を各社がやはり競い合うことによって、それぞれ底上げがされる、そういうことが出てくる可能性もあると思うんですが、その点については、情報公開ということについては、いかがお考えでしょうか。

伊藤政府参考人 委員御指摘のとおり、企業が優秀な人材を集めるために社内に設けておりますそういった報奨制度のようなものを公開するということは当然あると思っておりますし、私が知っている範囲でも、中小企業などの場合はとりわけそういうニーズが高いので、そういうことを行っておられるところは承知しております。

 他方で、現状、大企業などでは、そういった社内における報奨の制度といったようなものについて、具体的に開示しているところは余りございません。基本的に各社の技術競争力に係る経営戦略だという位置づけかと思っておりまして、果たして情報開示のようなものを義務づけるといったようなことには、ちょっと性格上向かないのではないかというふうには思っているところでございます。

渡辺(周)委員 今、性格上、それはやはり各企業任せというか、各企業に委ねられるんだろうというようなお答えでございました。

 しかし、何らかの形で、別に、取り組んでいる研究成果、研究について、何もそれをつまびらかにしろと言っているのではなくて、例えばA社の場合はこういうことで研究職を優遇しているし、実際、こういうことで成果の出た人にこういう恩典が与えられている。それが出世なのか、例えば海外への留学という形でもっとさらに探求欲を充実できるような、会社が後押しをして、もっと高度な知識を身につけるための後押しがあるのか。あるいは金銭的なことも含めてではあると思うんですけれども、やはり、そういうことは私はそれなりにやっていくべきだろうというふうに思います。ぜひ御検討をいただければというふうに思います。

 そしてまた、もう一つ、ちょっと伺いたいのは、では、例えばこの法改正がされて、これから発明は企業側に、会社に帰属するということになる。しかし、今いる研究者の方々、この人は現行法の時代に例えば採用されている人、あるいは二〇〇四年の法改正、二〇〇五年の法が施行されたその前、いわゆる現行法の前段階、現行、今の段階、そしてこれから採用される人、いろいろ採用時期によってそれぞれのインセンティブというものが違うんですが、それを法改正によって一つにならされた場合に、当然、私が入ったときの条件と違うじゃないか、私が聞いていたときとちょっと話が違うじゃないか、そういうこともこれは起こり得るのではないのかなというふうに思うんです。

 先ほどの、社員の不満を、あるいは社員の要望を、苦情という言い方がいいのかわかりませんが、やはりそれを受けとめるという形で何らかのことを考える必要があるのではないかと思いますけれども、研究者、従業者の採用時期、二〇〇四年改正前の旧法、現行法、今回の新法、採用時期によっては発明の権利の取り扱いが、結局は社員である以上は変わると思いますけれども、権利の移転を余儀なくされる、例えば進行中の開発案件、今何かを目指して取り組んでいる、進行中です、これを今もやっていらっしゃる方々がいる。法の方が後から変わってくるわけですから、この新法への移行に伴って、何らかの形で同意しないとか、同意しづらいとかいうことがあった場合に、それを理由に従業員に対して不利益が及ぶようなことはないのか。その点について確認をしておきたいと思います。

堂ノ上政府参考人 お答えを申し上げます。

 職務発明に係る特許を受ける権利につきましては、発明者がいつ採用されたかということにかかわらず、その職務発明が発生した時期、すなわち完成した時点に応じまして、それぞれ、平成十六年改正以前、現行法、本改正法案が成立した場合には適用されるということになります。

 改正法案におきましては、企業にこの権利を帰属させるためには、契約、勤務規則その他の定めにおいて、あらかじめその旨を定めている必要がございますけれども、こうした定めがない場合には原始的に従業者に帰属するということになりまして、自動的に企業に帰属するということはございません。

 一方、この際の従業員の受ける利益につきましては、契約、勤務規則の定めによって、企業に帰属させる場合には、相当の利益を、先ほど来御議論いただいておりますガイドラインに沿って適正な手続を踏んで定めるということになりますので、本改正法案の施行に伴って従業者に不利益が及ぶということはないものと考えております。

渡辺(周)委員 私のお尋ねは、つまり、法の方が後から変わってきたわけだから、当時、私が入社したときの条件と違ってくる。レアなケースかもしれませんけれども、もし話が違うとなったときに、では、そんなんだったら、あなた、やめてくれということになりやしないか。つまり、それを理由に不利益な扱いを、利益、不利益という金銭的な問題ではなくて、待遇というか処遇という面で、雇用関係において不利益なことになることがないように配慮してくださいということの質問なんですが、その点はいかがですか。

堂ノ上政府参考人 本法成立の暁におきまして、ガイドラインの策定、その他さまざまな話し合い、手続の中で、不利益のないように配慮してまいる所存でございます。

渡辺(周)委員 残りわずかになってきました。その点については、我々もこれからフォローしていきたいと思います。

 今回の法改正、結果として法改正が改正だったのか改悪だったのかということで、従業者のインセンティブにどのような影響を今後与えていくのだろうか、法改正後の話ですけれども。法改正後、調査、検証、何年かたち、フォローアップしていくのか、その点についてはいかがですか。

関大臣政務官 本改正案が成立した場合には、委員の御指摘も踏まえまして、大事な点だと思いますので、企業や発明者に対しますヒアリングまたアンケート等、調査、検証を行ってまいりたいと思います。

渡辺(周)委員 これがいい結果が出るように、従業者の権利も守られるように、ぜひとも取り組んでいただきたいと思うんです。

 やはり、これから新興国に人材が高額で引き抜かれるというようなことが、新興国に限らずですけれども、例えば、研究費用についてはどんどんつぎ込むからやってくださいと。日本にいてなかなか芽が出ない、くすぶっていてチャンスが与えられない、では、うちの国でどうですか、こういう人材の引き抜きというか人材の流出、これをどう防いでいくかということも一つのテーマであります。

 また、ロボットスーツHALという、これをつくった山海教授さんのお話を私は好きでずっと読んでいたんですけれども、やはり子供のころから非常にロボットに関心があって、これは経済産業大臣の賞も受けています。御存じのとおり、介護の現場、それから建設現場、福島第一原発、あらゆるところでこのロボットスーツが、今世界でも実証されているわけですけれども、こういう方々がいる。それには、私は、やはり子供のときから芽をつくっていくべきだろうと思うんです。

 高専でロボットの例えばコンテストがある、私の地元の沼津というところでかつてやったんです、ロボットコンテストを。それで、どうしてこういうのをつくったんですかと来ていた中学生、高校生に聞いたら、実は、阪神大震災のときに友達を失った、火災現場の中、瓦れきの中に入っていくことができれば助けられたかもしれないということが自分の思いだったということで、瓦れきの中に入っていくような、ロボットといってもキャタピラのついたプラモデルのようなものでありましたけれども、それで人の生存をセンサーで調べられるようなものをつくる。ああ、そういうことからこの子たちは始めたのかと思って、涙が出ました。

 そういう例えば発明家の芽、卵、この出てくる芽をどうつくるか。もちろん、海外に行く人材の流出を防がなきゃいけませんけれども、これから次を担う中で、国立高専だけじゃなくて例えば工業高校、地方にある工業高校はどんどん今統合されて、だんだん総合学校になって進学校になっちゃったりしています。そんな中で、これからの芽をどうつくるかということをお尋ねしたいと思いますし、あわせて、今後、中小企業やベンチャーというもののあるべき姿についてどうお考えか、最後に伺って、質問を終わります。

山際副大臣 まず、人材の流出、そしてまた人材の流出に伴う技術流出についてのお尋ねでございます。

 人材の流出に関して、これを法律で規制するということは、これは職業選択の自由からして不可能なことでございます。

 しかしながら、人材流出に伴う技術流出に関しては、これは当然とめていかなくてはいけないということでもございまして、技術流出に関しましては、不正競争防止法で、海外を含めて、他社で使用することを営業秘密侵害罪として、既にもう禁止してございます。

 人材の流出をとめるというのは社会全体で取り組まなくてはいけないことでございまして、法制度的な手当てだけではなくて、社会全体で営業秘密を守り抜く意識の醸成に向けた官民戦略会議等々を開催して、その能力・成果主義に基づいて適正に処遇をすることによって、人材流出が行われないようにしていくというようなことを醸成していくことが必要だというふうに思ってございます。

 それから、理系人材に関しましてですけれども、理系人材の育成のための具体的なアクションプラン、これを策定するために、本年五月に産学官をメンバーとする理工系人材育成産学官円卓会議、これを文部科学省とともに設置しまして、議論を開始しているところでございます。年内に具体的な行動計画をまとめる予定でございます。

伊藤政府参考人 中小企業、ベンチャーに関する御質問がございました。

 今回の法改正をきっかけといたしまして、中小企業自身が、自社にとって最適な職務発明のあり方を検討して、発明のインセンティブを高めるということが非常に重要だと認識してございます。

 先ほどもありましたように、二割程度しかまだ職務発明規程を整備していないということでありますので、まず、こういった、経営に与える重要性というものの意識を浸透させることが最大の課題だと思っております。

 今後、商工会議所などとも協力いたしまして、こういった規程の策定を支援するような普及啓発の機会の拡充とか、あるいは具体的な規程の策定に向けた支援といったようなものをきちっと進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

渡辺(周)委員 ぜひ、人材を育てることも、流出を防ぐことも、成長戦略の中でしっかり位置づけていただいて、そんな、法律でとめられないことはわかっていますので、どうするかということは、ぜひ政府で、我々もそうですけれども、取り上げて考えていかなければいけないと思います。

 終わります。

江田委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 民主党の篠原孝でございます。

 我が党のプリービアススピーカー、お二人とも絶対的に従業者、ここの法律用語では従業者になっていますけれども、研究者の立場の質問をされております。私も全く同じです。

 不思議だなと思うんですが、この中村さんの何かいかつい顔、いかにも文句を言いそうな顔で、非常に鼻っ柱の強い顔で、私のような穏やかな雰囲気は全然ないんですね。でもやはり、こういう人が、イノベーティブであって、日本の国をリードというか、日本に大きな恩恵をもたらすんじゃないかと思いますよ。

 だけれども、今回の法律改正は時代の流れに合っているかどうかと思うんですね。僕は、発明者主義になっているなんというのを知りませんでしたよ、特許制度。特許制度をそこそこ、特許特許と言うからかじったつもりですし、ウルグアイ・ラウンドのときに、私は、新分野というので、今はうんと上の人しか知りませんけれども、サービス貿易と、インテレクチュアルプロパティーと、それから海外投資という三つの分野をやっていて、これは余りうまくいかなかったので、アメリカがそれでほかのことをやろうとしたんだけれども、またうまくいかなかったからTPPで悪さをしようとしているんですけれども、そっちはどうでもいいです。

 それで、前だったら、我々、我々といったって、三原さんや私の年代ですよ。この人たちは、滅私奉公ですね、終身雇用。先週ですか、何か、自分のお世話になった役所に敵対的か親和的かとかいう議論をしていましたけれども、私は、敵対的なんというものは信じられないです。お世話になったところには、世話になった礼儀があって当然だと思います。我々はみんなそういう気持ちでいました。

 だから、そういうときには法人に帰属、会社に帰属、そういうふうになっているんじゃないかと思っていた。これからはもっと個人の能力を生かしていかなくちゃならないから、発明者の帰属にしなくちゃいけないんじゃないか、そっちの方に改正するものだとばかり思っていたら、逆なんです。何事も先進的に取り組んで、進み過ぎて失敗するようなことも多いんですけれども、そういう経産省としては珍しい、後ろ向きの改正じゃないかと思うんです。

 私は、これで中村さんがお怒りになっているんだろうと思いますけれども、中村教授、ノーベル物理学賞をもらった方ですよ。このお怒り、ごもっともで、発明者の研究意欲を相当にそぐことになってしまうんじゃないかと思います。

 理科系理科系と言いました。これもまた、我々の世代、今の世代はどうか知りません、我々の世代は、これから工業立国で、社会科の教科書には、これといった資源に恵まれない日本は、外国から原材料、鉱物資源を輸入して、加工して、輸出して生きていかなければいけないんだと。

 そして、地方、田舎にも、農業高校だったのに工業科ができてというふうになっていって、何か、勉強できるのはみんな理科系に行くんだ。数学ができない、物理ができない、化学ができないのが、しようがない、文科系に行く、そうなっていた。私は数学もできたんですけれども、文科系に行きましたけれども、それは珍しいので。

 だから、そういうふうになっているのにもかかわらず、理科系の皆さんをこういうので冷遇しちゃいけないですよね。僕は、そこのところがよくないんじゃないかと思うんです。これは、そういう世相を反映しているんじゃないか、非常によくないことじゃないかという気がするんですが、そういう認識が経産省にないんでしょうか。理科系の出身ですよね。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

山際副大臣 医学というものが本当の意味での理科系に所属するかどうか、私自身も悩んでいるところではございますが、しかし、研究の現場にも身を置いていた自分としては、もちろん自分のやる気というのは大変重要です。しかし一方で、自分が研究を行っていく上での環境というのも大変重要でございまして、それは、時代が変わったからといって、個人だけで研究ができるということではないんだろうと思います。

 そういう観点からいたしますと、当然ながら、企業のメリットと発明者のメリット、これをいかにバランスをとって両立をさせていくかということが重要でございまして、そういう意味から、きちんと両者のメリットが確定できるようなガイドラインを示していくということが重要なのではないか、このように考えております。

篠原(孝)委員 今、ガイドラインも出まして、渡辺委員も、ガイドラインについてもっときちっと早く示していけと言っておられました。

 三十五条の職務発明のところを新旧対照表でよく見比べてみたんですけれども、全てのものが、法律の条文は大半が使用者側の方に気を使った条文ばかりで、ガイドラインのところで、三十五条六項で、経済産業大臣は、「産業構造審議会の意見を聴いて、前項の規定により考慮すべき状況等に関する事項について指針を定め、これを公表するものとする。」と。相当の利益や何かが、使用者も研究投資をする気になる、従業者も発明をしていこうとやる気を起こす、そういうことをガイドラインに委ねていますけれども、法律上は余り担保されていないんです。これもまた、私は時代に逆行していると思うんですね。

 我々は、選挙でしょっちゅう有権者に判定を下されてというふうになります。では今、研究者の世界はどうなっているかというと、私は、かわいそうだなと思いますよ。任期つき採用というのが圧倒的に多いんですね。山際副大臣は御存じだと思います。

 任期つき採用、四年とか五年で成果を上げて、そしてまた採用。採用にならなかったらほかの研究所に行け、ほかの大学に行けというんです。私は、こんなのじゃ、おちおち研究していられない。四年以内に成果を絶対上げなくちゃいけない。一生懸命ユニークなことをやっていても、さっき研究成果、研究環境とおっしゃいましたが、何をやっているんだかわからないけれども一生懸命やっているというのではなくて、わからない、こんな役にも立たない研究をぐうたらしている、おまえはだめだと採用されないというふうになってしまっているんですね。

 日本は、何かあった大きな発明のものをちょっと改良してやるのが上手だ、猿まねしているんだとか外国から言われていた。そういう悪いあれは払拭したと思いますが。

 今、ほかの委員会では、労働者派遣法、労働者の流動性、自分に合った仕事を選んでいく、腕に自信のある人は次から次へ職場をかえていっていいんだと。そうすると、どうなるんですか。自信のある研究者こそ、そうするんじゃないですか。自分の研究が思い切りできるところを求めて職場をかわる、研究所をかわる。それを企業にと言っていたら、これも逆行しているんじゃないですか。あっちでは、労働者の流動性、労働市場の流動性流動性と、それを高めるんだと。研究者の世界はもうそうなっているんです。

 僕は、あれはよくないと思いますけれども。一つの研究をだあっとやっていて、大器晩成じゃないですけれども、三十五、六年、研究者として勤める。三十五年目にやっと成果がある、それまで何をやっていたのかわからない、そういう研究だって僕はあるんだろうと思います。弟子の研究者でもって実を結ぶという研究もあると思うんです。

 それを、何か研究者がこうやって移るのを、その場所、いたところの会社のその研究、その研究成果がそのところにだけ帰属するということ。これも私は、滅私奉公、終身雇用、家畜じゃなくて社畜とか言われていた時代、そういうときだったらいいんですが、違う世の中になってきているのにもかかわらず、違うふうにいくのはおかしいような気がするんですね。

 例えば、法律上どこに担保されているんですか。研究者、従業者の権利を擁護するようなものはほとんど見受けられないんじゃないですか。

 ところが、ガイドラインと言っていますけれども、ガイドラインがまた問題なんです。経産省はそこまでやらないと思いますけれども。

 安倍政権になったら、審議会とかなんとかというのを、片っ端から、これからやろうとするのに賛成するような人ばかり選んでいる。偏った委員ばかり選んでいるんですね。労使関係の云々だったら、労働者側三人、経営者側三人、中立が三人とかいうふうになっているし、そういうふうに言わなくたって大体そういうふうになっているのに、偏った人たちばかりを小委員に小委員会が選んで、そしてやったりしたら、このままいくと、産業構造審議会の小委員会ができて、小委員会にはどういう人が入るんですかと渡辺さんは優しく嫌みを言っていました。例えば中村修二教授を入れるんですかと。そういうふうにしてもらわなくちゃ私はいけないと思うんですけれども、なかなかそうはならないんだろうと思います。

 法文上に担保しなくちゃいけない。どこにあるんですか。それで、どうやって担保していくんですか。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

関大臣政務官 篠原委員の御質問、非常に難しいところであると思います。

 法案の内容上からいきますと、そのガイドラインの策定を法定化するということの具体的内容としましては、先ほども何度か出ていましたが、一つとすれば、インセンティブ基準策定のための従業者との協議、二つ目には、インセンティブ基準の従業者への開示、三つ目には、インセンティブを実際に付与する際の従業者への意見聴取等、適正な手続のあり方について明示することを想定して、従業者と企業が納得感があるように相当の利益を確保するとなっておるわけなんです。

 私も民間の企業で十七年近く働いてまいりましたけれども、そして、いろいろなところのシステム開発を担当してまいりました。その実感からしまして、みずからが社会人一年生として入って、いろいろな先輩に怒られながらいろいろな知識を蓄えていき、そして、今まさにこのプロジェクトをやろうというときにも、同僚議員にいろいろアドバイスをいただき、それで何かができたときに、その何かの申請書自身を書いたのは私ですけれども、私の知識の中の成り立ちと過去の経緯を考えますに、では、これは私だけの本当に努力なのかと考えたときには、やはり会社で働いていたいろいろな方々の恩恵や研究させてもらった状況だとか、その恩恵を全体的に受けているのは、これは確かに事実だと思います。

 そういうふうな総合的な、会社の力があってみずからが何かの発明ができたというところから考えますと、会社、企業側と従業者がしっかりと納得できるような打ち合わせをし、ガイドラインをつくり、そして、その中で、発明の帰属というのが企業に行き、ただし、それに対する個人の、まさにその一点だけを発明した人にはいわゆる相当の利益を与えるというのは、私は妥当だと考えております。

篠原(孝)委員 私も一生懸命発明者や従業者の味方をするような立場から質問していますけれども、基本的な価値観としては、みんなのものだと思うんです。思うんですけれども、今の例でいいますと、移った研究者が残したものでもって、それで大功績で、そのものをちょっと変えてやっていったらうまくいって、大きな発明ができて、特許をいっぱい取れて、企業も業績を上げてというふうになった。だけれども、去った、最初に口火を切った研究者には何も行かないというようなことが出てくるんだろうと思います。僕は、余りよくないので、両方うまくやっていったらいいんじゃないかなという気がするんです。

 そういう点では、特許を大事にしているアメリカですよ。TPPの中で今一番もめているのを、相変わらず情報開示しませんで、全然わからないんです。

 ああ、お礼を言っておかなくちゃいけない。四月十五日にこの委員会で五十分間西村康稔内閣府副大臣にさんざんここで質問させていただいたおかげで、実現していないからだめなんですけれども、一応そういう姿勢を日本国政府の方も示しました。それについてはよかったので、お礼を申し上げておきたいと思います。

 それで、アメリカとやっていて、あちらはもめているんですね。一番もめているのが知的財産の分野だと言われています。アメリカ対発展途上国ですけれども。だけれども、アメリカは、とっくの昔から発明者主義なんですね。

 そして、TPPをなぜやっているか。レベル・プレーイング・フィールドとか言っていて、同じ条件のもとで競争していこうということで、特許のルールもなるべく一緒にというふうにやっているわけです。だから、アメリカとマレーシア、ベトナムは、特許について相当価値観が違うと思う。

 日本とアメリカも一緒にしておかなくちゃならない。先願主義とかなんとか、みんなちょっとずつ違うわけですけれども、そういった折、珍しくアメリカと日本は同じなわけです。同じ発明者主義になっているのに、今なぜここでわざと違って法人帰属主義にしている。

 わかりませんよ、TPPのところでこうやってやろうと言っていて、何言っているんだ、アメリカのこっちの流儀に従わなくちゃいけない、そういうふうになっている可能性もあるので。

 僕は知りませんよ。知りませんけれども、TPPの交渉の中で、知財問題も、特許の期間だとかデータの保護期間だとか、相当もめているはずです。そうしたら、TPPが余りまとまらない。私はまとまらない方がいいと思っているんですけれども、仮に間違ってまとまってしまったりしたら、またすぐ改正しなくちゃいけないので。

 僕は、アメリカとの関係でいったら、共通のルールにしていこうというTPPの精神からしても、発明者主義にしておいた方がいいような気がするんです。僕はみんな、TPPのことを考えても、労働者の流動性、研究者の流動性のことを考えても、滅私奉公、会社会社と言っていたのにもかかわらず、違う会社に転職したっていいんだというふうになってきている、こういった三つの点からしたって、時代に逆行するような改正だと思うんですが、大臣、この点について、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 まず申し上げておかなければいけないことは、職務発明制度につきましては国によってそれぞれ異なっておりまして、各国国内制度を共通化しようという動きは一切ございません。

 そして、アメリカについてお話がございました。

 アメリカにおきましては、職務発明の特許を受ける権利は、まず従業者に帰属する制度でありますけれども、契約に基づきまして企業に帰属する実務となっております。そして、日本ともう一つ異なる点は、相当の対価、相当の利益というものを我が国は法定化しておりますけれども、アメリカにおいてはそういうものは法定化がされておりません。一方で、イギリス、フランス、中国といった国では、初めから企業に帰属する制度としております。

 したがって、各国それぞれ制度は違うわけですけれども、最初の帰属は異なるわけでありますけれども、最終的に職務発明の特許を受ける権利が企業に帰属するという実態は共通している、こういう状況でございます。

篠原(孝)委員 大臣の答弁は真っ当だと思いますよ。それぞれ価値観が違うし、考え方が違うから、何でもかんでもびしっと合わせる必要はないんです。僕はそれは大事だと思います。

 だけれども、TPPは、強引にいろいろなところを全部合わせよう合わせようと。関税ゼロに。では、そんなだったら、言っておきますけれども、みんなそれぞれの条件が違うから関税も認め合おうと、WTOだってみんな関税ゼロにしなくていいと言っているのに、何でTPPだけみんな関税ゼロにしなくちゃいけないんだ、そっちの方もちゃんとみんな各国事情があると主張していただきたいと思います。お願いしておきます。

 表をちょっと見ていただきたいんですが、二枚紙ですけれども。ほとんど同じことを言っておるんですが、折れ線グラフの方を見てください。

 「特許登録件数の推移」と「特許出願件数の推移」、説明を聞いたんですけれども、よくわからないんですけれども、出願件数と登録件数がちょっと違うんですね。色刷りじゃなくて済みませんけれども、見ていただきたいんです。下の方の折れ線グラフの、特許出願件数が一番客観性があるというんです。それが、日本だけが出願件数が減っているんですね。中国がばあっと伸びていて、アメリカもふえている。あと、欧州と韓国も少しずつふえている。日本だけが減っている。

 そうしたら、経産省の担当者は、いやいや、そんなことを心配しなくてもいいです、上を見てくださいと。登録件数は減っていないんだ、日本は、ちゃんと効率を考えて、量より質を選択し始めたと。もっともらしい説明だと思います。だけれども、やはり、そうはいったって、減っているんですよ。

 次の、裏側の棒グラフの方を見ていただきたいんですけれども。

 これで、件数は、この場合、先ほど宮崎委員が言っていましたけれども中小企業のが少ない。三十万件ぐらいの一二%の三万二、三千件しか中小企業の特許出願件数がない。こっちは出願件数ですけれども、減っているんですよ。法人と個人等というので、トレンドとしては確実に減っているんです。

 それから、知財大国と言っていますけれども、この下のは日経新聞からちょっと引用してきたんですけれども、上は黒字、特許料として払ったものと収入というので、両方やると、二〇一四年は一兆六千九百五十億円黒字になっているんです。黒字の理由は、これはリーマン・ショックのときにちょっと赤字になったぐらいで、大体黒字の傾向が続いていて、ふえてきているんですけれども、海外に企業展開をしていて、海外企業のなんだそうですよ。

 そうすると、下で、業界によってちょっと違って、電気機器はマイナス三十二億、これもまた海外企業との関係があるんだそうですけれども、見かけ上は知財大国みたいになっていますけれども、実態は、海外企業との関係で、純然たる特許でもって外国からちゃんと特許料をもらってというのが、やはり余りふえていないんです。そんなにふえていないということになる。これは、私は重大問題だと思うんですよね。これは、本当に考えていただかなければいけないんじゃないかと思います。

 さっき中小企業についての質問がありましたので、中小企業を大事にということですけれども、さっき言いました絞り込んで量から質へ転換したからいいんだとか言っていますけれども、この一番の理由は何だというふうに考えておられるんですか。大臣、この点についてはいかがですか。

宮沢国務大臣 まず、事実関係をお話しさせていただきますと、知財の国際収支自体は、これは国際収支統計ですけれども、二〇〇六年が五千三百五十九億円のプラス、その後、七千億、七千億と来て、二〇〇九年に、リーマンの結果だと思いますけれども、四千五百億ぐらいのプラスに落ちておりますが、その後、順調に伸びて、二〇一三年では一兆三千四百二十三億までふえてきております。

 そして、おっしゃるように、企業内取引を除いたものはどうかということになりますと、企業内取引については、これは総務省の科学技術統計に出ておりますけれども、二〇〇六年はわずか五十一億円のプラスでありましたけれども、その後、二〇〇七年は六百億円、二〇〇八年、九年は千四百、千二百、二〇一〇年がプラス二千七百億、二〇一一年、一二年が三千七百億、三千六百億円のプラスで、二〇一三年には六千三百三十三億ということで、実は、企業内取引を除いた知財の国際収支というのは、このところ、もう格段にふえてきております。

 特に企業内取引だけでいえば、二〇〇六年の五十一億から二〇一三年の六千三百三十三億円に、相当な倍率でふえているというのが現状でございます。

篠原(孝)委員 僕が資料要求したときにちゃんと言えばいいのに。僕へは言わなくて慌ててここで出す。いや、それだったらいいです、そういうふうにちゃんとふやしていっているんだったら。

 やはり頭で勝負というのも大事だと思いますよ。僕は、本当は汗水垂らして働くというのが基本であるんですけれども、ただ、そればかりじゃなくて、ちゃんと頭を働かせてお金もうけしていくのもこれは大事なことだと思うんです。

 ですけれども、特許について、ちょっとこれは私の意見を聞いていただきたいんですけれども、このことを考えるときに、特許なんて昔はなかったわけです。私がずっと携わっている農業の世界でいうと、聞かれたことも余りないと思う、隣百姓というんです。この意味がわかる方はおられますか、隣百姓。わからないですね。隣の百姓、いい百姓のまねをしてやるというんです。それで、枝を一つ折ってもらって、いい枝だからこの枝がいい、ここのリンゴがいつもより一週間早く赤くなってでっかくなっていくからと、その枝をくれといって折っていくというんです。いい種をもらっていって、ぱっと広まっていくんですよ。特許とかそんな考えはないんですよ。

 農業の世界では、先進地視察、システムを全部見せて、はい、もう俺たちがやっているから見てくださいと。こういう世界があっていいんだろうと思うんです。うまいこといっていたらみんなうまくやりましょうと。それをやった人がいるんです。

 池袋の大勝軒というラーメン屋を御存じでしょうか。これは、皆さん、いっぱい行って、知っておられる。大勝軒の山岸一雄社長というのは私の地元の出身なんです。私と同じ価値観で生まれ育って、ちょっと年上です。それで、中学を卒業して集団就職です。いとこがいるところへ行って、そしてやって、偶然ですけれどもつけ麺というものを考案して、そして味がいいということでキヤノンの御手洗社長が大ファンだったそうです。

 この人はどうしたかというと、弟子をいっぱいとって、すし屋ののれん分けというのがありますけれども、のれん分けというほど大げさじゃないですけれども。そして、偉いのはここからなんです。

 日本再興戦略や何かからすると、大勝軒の味で特許を取って、いい味で、そして大勝軒一号店、二号店、三号店と、ミラノの食の博覧会でやって、日本の和食を世界じゅうに広めていく、これが日本的な成長戦略です。後ろに大外食産業の御当主さんがおられますね。

 それはそれで一つの生き方だと思いますけれども、彼は、そうせずに、レシピを公開してみんながつくればいいと。弟子たちにもやっていた。三カ月前に亡くなられて、通夜のときに五十本以上のラーメン店ののぼりが並んだそうです。私は、こういう生き方があってもいいんじゃないかと思うんですね。全く別の生き方です。

 そういうのがほかの世界にもあるのかなと思ったら、特許の公開というので新聞記事になって、トヨタ自動車が水素自動車関係で五千件の特許を全部公開している。みんなやってくれと。パナソニックもやっている。これは自分の企業の戦略もあるんでしょうけれども、こういうことも奨励されている。

 なぜこういうことを言うかというと、いいことはみんなやって、みんな豊かになった方がいいじゃないか。特許特許と余り言うのはよくないです。もちろん投資したお金は戻ってこなくちゃならないし、もうけていいんですけれども、必要以上に。

 例えばエイズの薬はずっと特許が長く続いていてアフリカで全然つくれなかった。ジェネリック薬品でつくれるようになったらぱっと抑えることができた。こういうものが必要だと思うんですが、特許の根本にかかわる考え方ですけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。これを最後にして、質問を終わらせていただきます。

宮沢国務大臣 企業、特に株式を公開している企業からしますと、大勝軒のように利益を度外視してという行動はとりにくいわけでありますけれども、いろいろな企業の戦略があると思っております。

 まず、いわゆる技術にしろ、特許的なものが社内で発明されたときに、これをどういうふうに使っていくのか。それは、一つはオープンにする戦略、もう一つはクローズにする戦略。

 オープンにする戦略というのは、まさに特許を取るというのが代表的な例だと思いますけれども、特許を取る。クローズにする戦略というのは、これは全く社内の機密にして、ブラックボックスにして、相手に対する優位を徹底的に追求していく、そういう経営戦略をとる部分というのももちろんあると思います。

 また、オープンにするという戦略をとる部分も当然あって、特許を取っていく。そして、その中で、オープンにする戦略の中で、まさに特許をオープンにして一般の人に使ってもらうという、トヨタでありパナソニックであるという戦略があって、その場合に、これはトヨタがそうだ、パナソニックがそうだというわけではありませんけれども、オープンにして使ってもらう特許よりはもう少し一枚上の技術を持っていると、わあっと広まったところでさらに自分が上の技術でいけるというようなことがあって、それぞれの企業がいろいろな戦略を組み立てながら、今後、まさに大変厳しいグローバルの競争の中でそういう備えをしながら戦っていく、こういうことだろうと思っています。

篠原(孝)委員 以上で終わります。

江田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 維新の党の落合貴之でございます。

 本日は、特許法等の一部を改正する法律案の審議でございますので、関連する質問をさせていただきます。

 今回の法改正により、職務発明に関する特許を受ける権利を、今までは発明者に帰属していたのを初めから法人に帰属させることも可能になります。また、その変更によって発明者の立場が弱くならないように、発明者に対して相当の利益を付与するとの法定化をして、そして、その相当の利益の決定手続のガイドライン策定の法定化が定められています。

 まず、質問ですが、この何回も出てくる相当の利益、これは具体的にどういうことかを改めてお聞かせください。

関大臣政務官 現在、発明者たる従業員の方に対しまして、各企業が発明の対価としてお渡ししているのが、報奨金等の名目で金銭で払っているのが現状なんですが、今回、「相当の金銭その他の経済上の利益」としたのは、発明を奨励して、我が国のイノベーションを促進することを目的とする、発明者たる従業員に対するインセンティブ。これはインセンティブを指すことと御理解いただけたらと思います。

落合委員 相当の利益が今までは金銭だったのが、その他の経済上の利益、非金銭の部分まで拡大したということで、これはインセンティブを与えるということですが、わざわざ今回の法改正で非金銭にまで拡大した理由、今までのように金銭だけでもよかったんじゃないかという意見もあると思いますが、非金銭まで拡大した理由をお聞かせください。

関大臣政務官 以前、ノーベル賞を受賞されました島津製作所の田中さん、あの方が会社からお祝いをいただいたのが、新しい研究所をつくっていただいたというのは、よくテレビで報じられて有名なところでございますが、今回も特許庁が、一万五千人に対しまして、どういうふうな経済上の対価を受けたいですかというアンケートをとりましたところ、やはり研究者でございますと、研究設備の充実とか、金銭以外のインセンティブをアンケートでお答えされた方が結果に散見されました。

 そこをもちまして、本改正法案におきましては、インセンティブの範囲を金銭以外にも拡張し、柔軟化を許容したところでございます。

落合委員 今研究所の例を挙げていただきましたが、この非金銭、具体的には何を想定するか。先ほど企業の方で決めてもらうものだという答弁も少しありましたが、役所の方では、研究所ですとか、またどんなことを想定していますでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 金銭以外の経済上の利益としましては、例えば、今出ました研究設備の充実に加えまして、留学の機会の付与、あるいはストックオプションといったものが、多様なものとしてでございますけれども、想定されております。

 具体的には、ガイドラインに従って、企業と従業者との協議に基づいて、個別企業ごとに決定いたします。

 なお、この経済上の利益の付与というのは、やはり職務発明をしたことを理由として行うということが条件として求められるというふうに考えているところでございます。

落合委員 今、研究施設、それから留学、ストックオプションも現金ではないので非金銭ということで、どのようなものを非金銭として位置づけるか、これが重要だと思います。

 私もこの特許庁の一万五千人のアンケートを拝見しました。確かに、研究施設をつくってくれとか留学をさせてくれとか。金銭が重要だと答えている研究者は六、七割で、ほかにもいろいろニーズがあることは確かです。企業側のアンケートを見てみますと、一番重要だと社長さんが言っているのが、社長表彰とかが七割、七七%が重要だ、これが一番に挙がっていまして、研究者が考えている非金銭と社長が考えている非金銭がかなり違う可能性があると私は思います。

 ここをしっかりと法改正したときにやらなければ、かなり食い違って、また訴訟などが起こってしまう。法改正した意味がなくなってしまいますので、ぜひここは留意しなきゃいけない問題だと思いますが、そこの点はいかがですか。

伊藤政府参考人 条文上も「経済上の利益」ということでございますので、単なる賞状とかというものですと名誉みたいなことなのでこの対象には含まれないと思いますが、それに付随して何らかの経済的なものを付与するということがありますればこの対象になってくると思います。

 いずれにしても、そこの食い違いなどが起きないように十分従業者と企業との間で協議をするスキーム、ここが大事だと思っておりますので、ガイドラインできちっと位置づけたいと思います。

落合委員 そのガイドラインというのがやはりこの法改正では一番重要な点だと思います。研究者にはしっかりとインセンティブを与えて、企業側には訴訟リスクを減らしていくために、両者が職務発明報奨規程をしっかり結ぶこと、これは重要であるというふうに思います。

 これは、今回、今までは発明した人に帰属していた特許の権利が社長さんですとか使用者にも今回の法改正で与えられることになりますので、下手をすると使用者の力を過度に強めることになってしまう。先ほどからあるように、しっかりやらないと優秀な研究者の国外流出も考えられる問題だと思います。

 一製品当たりに使う特許技術の数が劇的にふえた、これは確かですが、例えば、青色発光ダイオードのように、あれがなかったら今のカラー液晶というものがないというような、同じ特許でもホームラン級の特許、社会にブレークスルーを生むような発明もあるわけですので、こういった質の高い特許はしっかりと研究者の利益を保護することが重要であるというふうに思います。

 この三十五条に定められているガイドライン、相当の利益をお互いが話し合って決定するためのガイドライン、これは実際には法的拘束力がないわけですが、これは法的拘束力がなくて大丈夫でしょうか。

宮沢国務大臣 相当の利益については、これは基本的に、会社側と研究者なり労働者側、従業員側とで話し合ってその中身を決めていただかなければいけないわけでありますけれども、今回、まさにその決め方につきましてガイドラインを発出するということを法律で規定させていただいております。

 中身は基本的には会社と研究者が決めるけれども、しっかりとしたデュープロセスといったものをとってほしい、そしてそのデュープロセスをガイドラインとして示していく、こういう構成になっております。

 相当な利益の決め方がどこまで具体的に決まっているか云々というようなことがそれぞれ今後会社と研究者の間で決まっていくと思われますので、本当にきっちり決まっていれば、算定の式まで決まっていれば、恐らく訴訟といったものは起こらないわけですけれども、その解釈において、いろいろそれぞれの解釈が違って訴訟が起こるということは、この改正法が通っても起こり得ることだろうと思います。

 ただし、その場合に、やはり、そこに至るまでの、まさにガイドラインに沿ったプロセスを経ているのか経ていないのかということは、裁判の過程でかなり大きな考慮の要素になると思っておりまして、それを経ていない場合にはやはり相当な訴訟上のマイナスを持つ、こういうことになろうかと思います。

落合委員 従業者と使用者の職務発明規程は、統計では中小企業の八割がつくっていないということです。これから日本経済をベンチャーがもっと出てきて引っ張っていかなければなりませんし、今まで日本経済を支えてきたのも中小企業でございます。

 大企業でしたら弁護士や弁理士も雇えますが、中小企業となると難しい。そこで、こういった点で、中小企業のこういった策定のバックアップというのはどのような形でされていますでしょうか。

諸岡政府参考人 発明者のインセンティブを確保する観点からも、職務発明規程などを十分に整備できていない中小企業あるいはベンチャーに対しまして、規程の整備を含め、職務発明制度の定着を図ることが重要な課題であるという認識をしてございます。

 今回の改正に当たりまして、法案が成立した暁には、各地の商工会議所などで説明会を開催し、中小企業や中小企業支援者に対しまして、職務発明規程の中小企業の経営に与える重要性に関する意識啓発を強化するとともに、各都道府県にございます知財総合支援窓口を通じまして全国各地への専門家派遣等を行うことによりまして、中小企業からの相談対応、また専門家による職務発明規程整備に関する支援を地域レベル、全国レベルで強化し、中小企業に対します普及啓発や支援を積極的に進めたいと思っております。

落合委員 今出てきました知財総合支援窓口、これは、調べてみましたら、二〇一三年の一年だけでも支援件数が十四万八千七百七十件、これはかなり大きい数字だと思います。これはかなり意義があると思いますので、ぜひこういうものを改善して、どんどん広げていっていただければと思います。

 中小企業をバックアップするという上で、いろいろな新聞記事なども今までのを探したんですが、知的財産権を担保に銀行が中小企業に融資できるように特許庁が支援をするということもされています。それで、知財の評価書を作成する費用を負担したり、専門家を派遣したり、その中で、新聞の中では、千葉銀行が一号案件をやったというふうにあるんですが、そこから先、一回も新聞に出てきていません。これは、一号案件の後はどうなっているんでしょうか。

諸岡政府参考人 中小企業が持っています知財を活用した融資等を拡大することは重要でございまして、地域の金融機関から中小企業に対し知財活用融資を拡大していくことは、地域の活性化にも貢献するものと思っています。

 中小企業の知財を評価する、いわゆる知財ビジネス評価書を活用した融資につきましては、委員御指摘の千葉銀行や、大分県の豊和銀行、また、兵庫県の産業活性化センターによる支援といった、一部の金融機関等によって先進的に取り組みが行われているところでございます。

 このような取り組みを全国的に広げていくことが重要であると思っておりまして、特許庁におきましては、二十六年度から試行的に知財ビジネス評価書の作成支援をしております。二十二の金融機関に五十一の評価書を提供し、具体的な融資につながったという例も聞いてございます。

 二十七年度におきましては、知財ビジネス評価書の作成支援を本格的に実施するとともに、これまでの実績を広く金融機関や中小企業に普及するということで、知財金融シンポジウムの開催等の包括的な取り組みを通じ、知財を活用した融資のより一層の拡大につなげていきたいと思っております。

落合委員 先ほどの知財総合支援窓口に一年間で十四万八千件も相談が来ている中で、やはり、こういう知財を担保にした融資というのが全国で五十一件しかないというのはほとんどまだ進んでいないということですので、私もこれについては注視をしていきたいと思っています。

 では、残りの時間で特別会計についてお伺いします。

 特許庁に関する予算は、主に特許特別会計で賄われています。ここ十年以上特別会計が見直されている中で、この特許特別会計だけは残ってきた。この残った理由は何でしょうか。

山際副大臣 事実関係から述べさせていただきたいと思います。

 特許特別会計は、受益と負担の関係を明確にしつつ、増大する事務に適切に対処するために、昭和五十九年に創設された特別会計でありまして、創設以来、制度利用者から納付いただいた料金を原資といたしまして、一般会計に依存することなく、独立採算で運営されているものでございます。

 こういう流れも受けまして、特会改革の議論におきましても、平成十七年の財政制度等審議会の報告書において、「受益と負担の関係を明確にしつつ、技術革新に併せて不断に特許事務が高度化される体制を構築し、財源としての手数料等の適切な改定を行っていくことは引き続き重要であり、区分経理には妥当性がある」とされたほか、平成十七年に閣議決定されました行政改革の重要方針、平成十八年に施行されました行政改革推進法におきましても、その予算特性や政策的見地に鑑みまして存続の方針が位置づけられるなど、これまでの特会改革の議論におきましても、現行制度を維持する方針が示されてきたところでございます。

 経済産業省といたしましては、知的財産政策をめぐる国内外の環境変化に柔軟に対応し、行政サービスの充実を図るとともに、将来にわたり安定的に産業財産権制度を運営していく観点から、財政的基礎となります特許特別会計を維持していくことは重要と考えておりまして、業務効率化や利用者の負担軽減に配慮しつつ、引き続き適切な特会運営に努めてまいりたいと思います。

落合委員 独立採算で、歳入歳出を調べてみますと、この特別会計は基本黒字です。黒字をどういうふうに使うかですが、今回の法改正でも、特許料を下げて負担を少なくさせると。もう一つ考えられるのは、いろいろな投資に回していくということも選択肢だと思います。

 いろいろ調べましたら、かつて、数年前に、特許庁がシステム開発に失敗している。システム会社に五十四億五千百万円払って、もうシステム開発できませんと言われて、五十六億、利子と合わせて返してもらっています。この五十億以上のお金、大変大きなお金ですので、この失敗については会計検査院も指摘をしております。

 このたび、また特許庁が、システム刷新、再挑戦することを発表しました。民間企業ですと大型投資は常に株主などから厳しい目にさらされているわけですが、こういった特会や公的機関は納税者の厳しい目は届きにくい。それをチェックするのが国民の代表である国会議員の仕事の一つであると思います。

 前回の失敗、これは原因は何だったのか、それから、何を教訓に今回新しくまた投資を行っていくのか、お聞かせください。

山際副大臣 これは、今、委員から御指摘いただきましたとおりに、特許庁の情報システムについて、平成十八年に東芝ソリューションとアクセンチュアが受注いたしまして、その開発には着手いたしましたものの、開発の見通しが立たず、平成二十四年一月に中断したものでございます。

 この原因につきましては、弁護士、学識経験者等から成る第三者委員会によって、設計開発業者の技術力、プロジェクト管理能力が不足していたということ、調達手続において設計開発業者の技術力を確認するプロセスが不十分であったということ、システムを一括更新する大規模開発であったため技術的に難易度が高かったことなどによるとされてございます。

 こういった反省を踏まえまして、システム整備のおくれを取り戻すべく、平成二十五年三月に改定した特許庁業務・システム最適化計画では、それ以前の開発計画ではシステムを一括して更新することとしておりましたが、こうした方法によるものではなくて、段階的に個別業務システムごとに更新することによって、各業務システムの開発規模を適正化するとともに、技術的容易性を高めたという点、あわせて、開発能力の高い事業者を選定できるよう、技術審査における審査事項の充実など調達手続を改善いたしました。

 今後、この特許庁業務・システム最適化計画の実現がおくれることがないように取り組んでまいりたいと存じます。

落合委員 黒字で進んできている中で同じ失敗を繰り返さないように、私も注視させていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

江田委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 維新の党、鈴木義弘です。

 そもそも、なぜ知的財産が価値があるのかという話になっていくんだと思うんです。工業所有権と言われている特許だとか、実用新案だとか、商標登録だとか、さまざまな、そこに価値があるというふうに、日本ばかりじゃなくてほかの国も認めましょうというのがこの知財の考え方なんだと思うんです。

 最終的にはこの知財がお金にならなければ、先ほど篠原先輩がおっしゃったように、お金にしなくてもいいじゃないかという考え方も片やあるんだと思うんです。ただ、日本の限られた国土の中で、一億三千万人にきちっとおなかいっぱい御飯を食べさせるにはどうすればいいのかというのが、加工貿易から来た知財を温めていこうという考え方。これから先も、人口が減っていったとしても、やはり世界の競争の中で伍していかなければならないという考え方であれば、やはり大切にしていかなければならないんじゃないかと思っています。

 過去に、古い話なんですけれども、ベータとVHSで覇権を争ったのがきのうのように、今はブルーレイですかね、今はそんなことしないでネットでダウンロードすれば映画が見れたり音楽が聞けたりするんですよね。私はがらくた携帯、いや、ガラパゴス携帯しか持っていないんですけれども。

 ですから、時代とともにツールがどんどん変わっていくんですけれども、日本は今まで世界標準技術というのをどう捉えてきたかというところなんだと思うんです。だから、国家戦略の位置づけの中で知財の特許はどういうふうに位置づけていくのか。後半で今度質疑になります不正競争防止法の改正もそうなんですけれども、営業秘密というのはどういう位置づけにしていこうとするのかというのが、きちっとやはり方向性を示していった方がいいのではないかという考え方ですね。

 片や、なおかつ、日本はJIS規格があるからいろいろなものがきちっと、きめ細かい、行き届いた、背中に手が届くような、厳格な規格でどんどんやってきたから世界に冠たる工業立国になったというのも揺るがない事実だと思うんです。

 ISOがあったり、ヨーロッパでは違う規格があったり、アメリカでも違う規格があります。でも、規格を世界標準にしていくという考え方で戦略を立てていこうとするのか、発明者も含めて個別の企業に特許とか知財を任せる、そういう考え方でやっていこうとするのか、そこのところの方向づけだと思うんですね。

 今回、特許法の改正ということになるんですけれども、今までの中で具体的な例を挙げていただいて、世界標準技術というのは日本がどのぐらい持っていたのか、また、ではこれからどうしていくのか、それをまず初めにお尋ねしたいと思います。

片瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 日本発の国際標準についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のISO、IEC、そういう中で、日本企業、産業分野ごとに、戦略的に、専門委員会の幹事とか議長をとりまして、日本発の国際標準の獲得に努めているということでございまして、顕著な分野を申し上げますと、鉄鋼産業、工作機械、それから省エネ機器全般、蓄電池、最新のところですと、燃料電池というところがございます。

 具体的に幾つか御説明申し上げます。

 まず、鉄鋼分野では、三十五年間、鉄鋼分野の委員会の議長というのを日本がとっておりまして、そこの幹事も務めております。その結果といたしまして、例えば、自動車用鋼板などの高機能鋼材の強度の評価方法、あるいは耐震建築用の鋼材の国際標準化というものを実現いたしまして、こういう国際標準をとることによって、日本の高機能の鉄鋼の国際競争力というものが確保されているというふうに認識しております。

 もう一つ申し上げます。工作機械でございますけれども、御案内のとおり、工作機械も、全体でいうと日本はシェアが三割から二割、さらに高機能のはよりたくさんシェアをとっているわけでございますけれども、これにつきましても、機械の精度あるいは通信に関する作業グループの座長を日本が務めまして、例えばマシニングセンターの計測精度の測定方法ですとか、そういったものの国際標準化を実現いたしまして、市場シェアを確保する基盤となっているということでございます。

 このほか、省エネ分野でいうと、エアコン、それから燃料電池、そういうものについて同様の取り組みをしているところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。ぜひ後で資料をいただければ、よく読ませていただきたいと思います。

 ところが、これがまた標準技術を推進し過ぎちゃうと、米国では、特許不実施主体による特許権行使のあり方とか、標準技術として採用された特許権に基づいて権利行使を行う場合に特許権による差しとめを認めるべきかどうか、これが今議論されているんだそうです。標準技術と特許とのバランスに関する対応策がアメリカでは議論されているということなんですけれども、日本ではほとんど聞いたことがないんです。何でなのかといったら、特許権者が侵害訴訟を起こす割合が極端に低くて、標準化しろと言いながらも、いや、俺の特許だというふうに言わないところで、議論がなされないんですよね。これは私が言っているんじゃなくて、ここに書いてあるんだよ。

 ですから、今相反したことを御質問しているんですけれども、国際標準を日本がリーダーシップを持ってやっていこうとする中で、今回の特許法の改正の位置づけとか知財の位置づけが、どこにどういうふうにしていくのかというのがやはり日本の国家戦略の位置づけできちっとしていないと、今みたいなことが今後起こり得るということですね。

 例えば、これは例示で挙がっています。医薬品などの一部の技術分野では、インドなど、薬価が上昇して適切な医療を受けられないということで、欧州の製薬会社の特許権に対して強制実施権を設定して対応をとっているということがもう既に行われているわけです。

 幾らすごい特許を日本の製薬会社が持っていて、先ほどのエイズの話じゃありませんけれども、それを実施してもらうインドならインド、東南アジアなら東南アジアのどこかの国の製薬会社のOEMでつくれるものがあったとしても、ロイヤリティーが高過ぎて使えないといった場合に、国が強制的に、あんたがやれというふうになったときに、ロイヤリティーは格段に下がるということなんです。だから、ここのところは難しいと思うんですね、知財の位置づけと国際標準の位置づけ。

 さらに、中国では、日本でも一時期奨励していた実用新案、これがウナギ登りに出されているんです。これは、特許の内容の審査をするのとは違って、ほとんど無審査で実用新案を出されちゃっていますから、日本も一時期それを奨励した時期があったんですね、奨励というより、どんどん出した時期があったんです。

 ですから、そういう国と今後訴訟にならざるを得ないんじゃないかというふうに言われているんですけれども、国としての企業防衛策をどう考えているか、お尋ねしたいと思います。

堂ノ上政府参考人 今御指摘いただきましたとおり、海外におきまして知的財産に関する企業を取り巻く諸課題が存在していることは事実でございます。一方で、我が国の企業の事業活動はますますグローバル化しておりまして、これらの諸課題にはまず企業がみずから取り組んでいくことが必要でございますけれども、これに対して政府としても可能な限り支援をしていくことが重要だと考えております。

 具体的には、中国、インドなどの諸外国におきましては、我が国企業が知的財産に関する情報交換グループを組織して、知的財産に関する問題の情報収集、それから、これに対する取り組みについて議論する活動を実施しております。これに対して、特許庁といたしましても、各国の情報の収集、ジェトロなどを通じてこれを提供することなどによって活動を支援しているところでございます。

 一方、今御提起いただきました中国の無審査の権利に対して我が国が防衛をするというツールの提供といたしまして、本年一月から、中国における膨大な特許、実用新案の権利情報を容易に日本語で検索できるシステムを提供開始したわけでございます。

 加えまして、中小企業に対しましては、海外における知財に関する情報提供、知的財産の活用等について助言を行う知的財産専門人材の派遣を行っているほか、海外での権利化のための外国出願費用の補助、それから二十七年度からは、外国企業から訴えられた場合の訴訟費用等の一部を補助する支援を開始したところでございます。

 引き続き、日本企業による海外進出の支援に取り組んでまいる所存でございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。ぜひ力強く御支援をいただきたいと思います。

 先ほども少し議論のありましたオープンとクローズド戦略の話なんですけれども、結局、今の流れは、特許を出さない方向に少しずつなりつつあるという話です。

 大手のメーカーさんの話を聞きますと、基本特許になるものはオープンにしないんだそうです。クローズして周辺特許の応用のところだけを特許化して、二十年でカバーしていきましょうというやり方を戦略としてとられる。そうしますと、大手さんはそれができるんですけれども、中手、小手、中小零細はそれができないんです。だから、二十年しか保護してくれない知財になってしまうんですね。

 ですから、逆に、これは営業秘密でクローズしておいた方がいいですよ、オープンにした方がいいんですよというのを誰がアドバイスするのかということなんです。

 今までの特許庁のやり方というのは、実用新案も、出したら、では、受理して、わかりました、受け付けます、特許もとりあえず申請して、一年半たったら、どうぞ、審査請求してくださいよと。相手が言ってこない限りはただ受けっ放しなんですけれども、情報だけはどんどん開示されていくんです。

 そういうやり方を今後もどんどんとっていこうとすると、何を営業秘密にしていくのか、秘匿化するのか、それとも知財としてきちっと外に出していった方が防衛できるのか。例えば、こういうものは誰が見てもつくれそうだったら、これは特許を取った方がいいわけです。でも、この中に何が入っているかわからないような飲み物で、おいしいなといったらオープンにする必要はないんです。それがアメリカのコカコーラのやり方です。

 そこを、特許庁か、もしくは経産なのか、文科なのかわかりませんけれども、どこかできちっと一元化、知財を集約させるようなことをして、そこで判断をしてあげないと、これからは、人口減少がこれからももっと厳しくなっていく中で、知財を高めて日本の優位性を上げていこうというふうに考えたときには、役所も、ばらばらでやって、ただ受け付けて、はい、どうですかということじゃなくて、やはり戦略的にやっていく時代に入ってきたと思うんですけれども、その辺のお考えを、副大臣、よろしくお願いします。

山際副大臣 これは企業戦略そのものですよね。ですから、企業が開発をする製品ないしはサービスの中で、どこの部分をオープンにして、どこの部分をクローズにするかということまで、公の立場でそれを制度化していくということではないんだろうと思っております。

 一方で、今回は、特許という形でオープンにした場合に、発明者の権利をどのように確保していくか、そして企業の権利をどのように確保していくかということについて明確化するという法改正でございます。

 一方で、今委員御指摘のあったクローズにする部分、秘匿化される部分に関しましても、きちんとこれは発明者の権利というものが利益を受けられるような、そういう形にしていかなくてはいけないということで、企業が特許を受ける権利を取得した場合には、発明者は、特許出願される場合と同様に、秘匿された場合でも相当の利益を受ける権利を有します。企業が取得した発明が特許出願されなかった場合でも、各企業の職務発明規程に基づいて、発明者に相当の利益が与えられるような、そういう制度にしてまいります。

鈴木(義)委員 質問する前に答えられちゃったので、困ったなと思ったんです。

 実は、特許庁にお尋ねしたら、もうこういうパンフレットができているんだそうですね。ただ、これがどれだけの中小、大手さんはいいんです、何千人も何万人もいるんだから、それは自分たちでやりますよ。ただ、中小零細で限られた人数の中で、これはおもしろいものができたんだといったときに、それは秘匿化した方がいいのか、それともオープンにした方がいいのかという判断が、どこに相談すればいいのかがよくわからない。

 だから、そこのところは今後もう少し啓蒙啓発するなり、中小を対象にして何かをしてくれと、個人であったり、特に大学の先生とか、企業の研究所でないところに勤めている人たちに対してどうサポートしていくかというのは今後の課題になっていくと思いますので、ぜひ御支援をいただければと思います。

 それと、もう一つ、もう時間がないんですけれども、そもそも、特許を取って二十年、物によっては二十五年までカバーしてくれるんですけれども、最近の製品の寿命が一・五年だという、社会に出て、それが社会で売れて製品として使ってもらう年数が一・五年だというんです、物によってですけれども。昔は、一回特許を取れば一生食いっぱぐれがないぐらい。今回の法改正で、従業員にロイヤリティーをどのぐらいやるのか、会社に帰属するのかというのはいいとしても、製品をつくったものが結局一年半とか二年ぐらいしか売れないのだそうです。また次に新しい商品をつくっていかないと、お客様が買ってくれない時代なんだ。

 そんな中で、特許だけは二十年保護したとしても、絵に描いた餅になっちゃったものは誰も使わないわけですよ。ましてや、オープンにしますから、製造方法だとか、物によって。あと、請求項を細かく見ていけば、何がどうなっているのか、データまで開示をして、それでまねすることはないとしても、ただ、そこからつくったものがサイトが短いという話になると、そもそも特許を出す意味があるかどうかというところになっていってしまうと思うんです。

 それについて、今回も少し、申請の手数料だとか、あと私の前任の落合議員が質問したように、特別会計で確かに黒字だからいいじゃないかというんですけれども、それだったら、国家戦略の位置づけだったら、ちょっと外国の企業さんとか個人の方には申しわけないんですけれども、国内の産業を振興させるという意味で、もっと余った分だけ下げちゃったっていいんじゃないかと思うんです。

 なおかつ、年金の払い方は、一年増すごとというより、年数がたてばたつほどロイヤリティーがたくさん入ってくるだろうという考え方で、年金の額を年数に応じて上げてきたんです。でも、今申し上げたように、商品としてのサイトが短いんだと、年金ばかり上げられて、まあ、そこで切っちゃってもうあとは放棄すれば別にどうってことないんですけれども、その辺のことをもう一度考え直せないかなという御質問なんです。

伊藤政府参考人 中小企業とか小規模事業者がみずからの技術、アイデアを知財として活用していくというところをどう支援するかというのは、大変重要な課題だと思っております。

 今般、法改正の中で盛り込んでおります料金の引き下げについても、これは全ての利用者に対して一律に一〇%引き下げるということでありますけれども、中小企業はもちろん含まれまして、それによって利用者の権利を取得したり維持する負担が減ることで、利用を拡大したいと思っております。

 また、中小企業とか小規模事業者につきましては別途の特許料の軽減措置というものを図ってきておりまして、昨年度からは、中小ベンチャー企業あるいは小規模事業者に対して、特許料を三分の一に軽減するということを始めました。

 また、それ以前から、産業技術力の強化を図るために特に必要とされるような研究開発型の中小企業、あるいは資金力に乏しい中小企業、具体的には法人税が納められない、非課税の中小企業に対しては、政策的に特許料を半分にするというようなことをしてきておりまして、年間でいうと二万八千件ほどの利用をいただいているというふうにしておりますが、周知がまだ十分ではないと思っております。

 それから、今のは手数料の軽減の方でございますけれども、別途、支援の方につきましては、先ほどの営業秘密も含めたようなワンストップの支援、それから海外への出願とか国内への出願のさまざまな出願に対する支援といったようなことも予算を増強してきておりまして、二十七年度につきましては、昨年度と比べて二十一億円ふやして、約六十五億円を中小企業の支援という形で特許特会から支援しております。

 まだまだ不十分な部分があると思いますので、この辺の支援をさらに強化していきたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 次に、そもそも、特許や実用新案、商標権も含めてなんですけれども、その件数がいつも話題になるんですね。先ほどもちょっと出たと思うんです。何件出願して、どれだけ権利が取得できたか。その件数よりも、実際に使われているか使われていないかのカウントをどうするかということ。それと、使って、確かに防衛的な特許を出すというやり方もあるでしょう、わざと使わせないための特許。でも、自分のところで使う特許もあると思うんですね。

 それがどれだけの知財としての金額にカウントできるのか、資料をひっくり返して見ても、ほとんど金額が出てこない。大学のランキングがあったときに、どれだけの特許を出願しているか、どれだけの件数の特許権を持っているかというのはランキングで出てくる、なおかつ、どれだけのロイヤリティーをもらっているかというのはランキングで出てくるんですけれども、本来だったら最後の金額のところが一番大事なのにもかかわらず、申請の件数だけなんです。申請してそれが生きているか生きていないかというのは、誰も議論にしない。

 今回の、我が国の技術貿易収支、黒字の拡大と言っているんですね。では、どのぐらいあるのかというと二兆円で、欧米諸国と比較しても、まあ何分の一なんです、二兆円であっても。でも、技術立国だとか知的財産が大事だとかというのにもかかわらず、比較対象になるものが件数では、全然意味をなさない。

 だから、今後のデータのとり方は、企業の方で出してくれるかどうかは別にしても、国家戦略の位置づけで国が知財をこれからも推し進めていくんだということであれば、私たち議員も含めて、もう少し、このぐらいもうかるんですよというのをきちっと位置づけてやらないと、インセンティブが働かないんじゃないかと思うんです。ここの中だけの議論で終わってしまって、件数がどうだとかインセンティブを与えるんだといっても、では、これだけもうかったんですよというのを金額できちっと示してあげることがやはり大事なんだと思うんですけれども、そこについてお答えいただければと思います。

堂ノ上政府参考人 さまざまな統計上のデータに基づきまして施策を検討するということの重要性は、全く御指摘のとおりでございます。特許庁といたしましては、知的財産活動調査という調査を実施して、研究開発の段階から権利の活用段階までの企業の知的財産活動の把握に努めておるところでございます。

 一方で、ロイヤリティーにつきましては、民間同士の相対において決定されるというものであることから、事業戦略上の機微な情報を含むことが多いとして、大半の企業はその内容を公表しておりません。特許庁では、平成二十一年度の調査研究におきまして、ロイヤリティーの料率に関してはアンケート調査を行いましたけれども、金額については確認できていないというのが事実でございます。

 しかしながら、施策立案の上では、特許によって生み出される企業の利益を把握することは大変重要でございますので、ロイヤリティーを含めまして、統計上の数値を客観的に把握しながら、施策の検討を進めるとともに、必要性に応じてその改善に努めてまいりたいと存じます。

鈴木(義)委員 昨年の経産委員会で私が質問したときに、GDPの話とGNIの話で、海外に投資したときに、バブルのころ三兆円ぐらいリターンがあって、ここ二、三年前ぐらいで約十五兆ぐらい戻ってきているんじゃないかと。それで、なぜ景気がよくならないのかと大臣に質問したと思っています。その大臣の答弁の中で、四兆円ぐらいはリターンで戻ってきているけれども、あとは、現地の国で工場をもう一回建てかえるか、内部留保で残しておくか。ですから、数字上は十五兆もうかっているんですと。それが全部日本に来ているのかと思ったら、四兆円ぐらいしか戻ってきていないわけです。

 ですから、知財も同じで、幾ら日本で知財を持って海外にいろいろなパテントを出したとしても、では、どれだけ日本に戻ってきているのか。日本の中でその知財が価値あるものなんだといったときに金額にカウントできないと、どれだけの成果が出たのかというのがわからないということなんですね。

 そこのところを、ぜひ最後に、大臣に締めくくりの答弁をいただければ、これで引き下がりますので、ひとつよろしくお願いします。

宮沢国務大臣 ちょっと今手元に答弁がないんですけれども、先ほど篠原委員から御質問を受けまして、知財の収支についてどうだ、そして、特に企業内の分を除いた部分でどうだ、こういう御質問がありまして、たしか知財の収支が二〇一三年で一兆三千億ちょっと、そして、企業内のものを除いた収支がたしか五千億だか六千億だったと思います。

 逆に言いますと、まさに投資して戻ってきた企業内のものというのが、知財でいえば八千億とかいうような数字だろうと思っております。だから、これはもちろん、特許等々だけではなくて、使用料的なものも全部含まれておりますので、全てを含んだ数字ですけれども、そういったような数字は恐らくお示しできるだろうというふうに思っております。

 ともかく、知財戦略というのは、これからの日本のイノベーションのために大変大事なことでありますし、一方、まさに世界で稼ぐ企業を育てるために大事なことでありまして、今回の法改正だけではなくて、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

江田委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 まず初めに、幾つか特許庁長官に確認をさせていただきたいんです。

 本法案は、第三十五条三項を新設して、この分野では原始使用者帰属を認めるということだと思うんです。しかし、同条には一項、二項がありまして、依然としてこれについては基本的に変わらない、原始発明者帰属ということだと思うんです。

 そしてまた、大もとの二十九条、これにつきましては、まさに原始発明者帰属の大原則を規定していると思うんです。

 そこで確認ですけれども、今法案によるいわゆる原始使用者帰属というのは、あくまで契約とか規則とか、そういうものがある場合の例外であって、原則としては原始発明者帰属ということだと思うんですが、それでよろしいでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本改正案では、三十五条三項及び五項の要件を満たす職務発明規程であらかじめ取得等をすることを定めた場合には、特許を受ける権利は権利が発生したときから法人に帰属するということでございます。これに対して、このような職務発明規程等をあらかじめ定めない場合には、特許を受ける権利等は従業者個人に帰属するということでございます。

 このように、今回の改正案では、特許を受ける権利を法人に帰属する旨の意思表示を職務発明規程を定めるかどうかで区別して、法人帰属か従業員帰属かを選択できるような形にするというふうな説明をしてきております。したがって、原則とか例外といった言い方は使っていないものでございます。

藤野委員 これは、原則と言われる二十九条がしっかりあるわけですので、これとの整合性というのはやはり問われてくるというふうに思うんですね。

 レクの段階では、原則としては、そういう契約や規則がある場合、こういう場合のあくまで例外だということが言われておりましたので、そこをやはり、二十九条や三十五条の一項、二項との関係で、しっかりここは原則ということを確認する必要があると思うんですが、もう一度答弁をお願いします。

伊藤政府参考人 特許庁の報告書で、二十五年における年間の特許出願件数は約三十万件ございます。このうち、法人による出願が件数全体の約九七%ということでございまして、その多くが職務発明によるものと考えられます。

 さらに、特許庁が実施している、特許の出願をしたことのある企業に対するアンケートによりましても、職務発明に関する取り決めを持っている企業は回答企業の約九割ということでございまして、このように、今回、職務発明規程をあらかじめ定める大多数の企業にとって、初めから法人帰属になるという今回の改正は非常に大きな影響を与えるものだというふうに考えているところでございます。

 また、職務発明規程を持っていない多くの中小企業がそれぞれ社内の発明を奨励する仕組みをつくるといったようなことが非常に重要だということは、この委員会でも大変御議論ございました。

 したがって、こういう職務発明規程の導入を図っていくというのが大きな政策課題だというふうに考えておりまして、そういったような意味でも、法人帰属と従業員帰属を、どちらが原則、どちらが例外といったような言い方は我々としてはちょっと使っていないものでございます。

藤野委員 この点は、特許法全体の組み立てとの関係で引き続き追及したいと思っております。

 次に、現行法でいえば法定対価請求権という形になると思うんですが、今度、相当の対価から相当の利益に変わるということで、どういう名前になるのかわかりませんが、いわゆる法定請求権、対価を抜いたとして、法定請求権というのはこの法案によっても依然として残っている、こういう理解でよろしいでしょうか。簡潔にお願いします。

伊藤政府参考人 三十五条の四項において、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する旨規定してございます。

 従業者が、職務発明規程の定めによって職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させるということを行ったときにはそういう形になるということなので、法律の定めによって、職務発明について従業員にこういった相当の利益を受ける権利を与えているということでございます。

藤野委員 これは、三項が適用されて、いわゆる原始使用者所属になる場合でも四項はしっかり生きているということだと思うんですね。

 特許庁にお聞きしたいと思うんですけれども、ガイドラインというのが先ほど来話になっておりますけれども、これはお話にあるように手続に関するものだということで、要は私の関心としては、相当の利益、いろいろあるんだけれども、金銭換算などをした場合に、結局、現行水準を下回らない、これが大事だと思うんですが、それを下回らないようにする担保、先ほども担保という言葉がありましたけれども、担保というものが今法案にはあるんでしょうか。

    〔委員長退席、鈴木(淳)委員長代理着席〕

伊藤政府参考人 ガイドラインにおいては、相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際して従業者との協議を行う、あるいは従業者に対する基準を開示する、あるいは相当の利益の内容の決定について従業者からの意見の聴取を行うといったようなことに関して適正な手続のあり方を定めるものでございまして、いわばそういう手順についてのガイドラインということでございます。

 したがって、企業がガイドラインに従って手続を行う場合には、従業者が、基準の策定時だけではなくて、当該基準に基づいて相当の利益の内容が具体的に決定される場合、個別に決定される場合にもその意見を反映するということが可能でありまして、金銭的な水準についても従業者の意見が反映されるという仕組みになっているというふうに理解してございます。

藤野委員 でも、それはあくまで手続なんですね。

 結局、担保する規定があるかという言葉については、それは担保する規定はないというお答えだと理解しております。担保するものがないということは、結局、相当の利益が合理的か不合理かということについて争いが起き得るということだと思うんですね。

 結局、ガイドラインの手続をしっかり踏みました、全部やりましたという場合でも争いは起きるという場合に、発明者というのは裁判所の判断を求めることができると思うんですけれども、つまり、ガイドラインというのは、訴訟を抑制するとかあるいは裁判所を拘束するとか、そういうものじゃないんですね。

伊藤政府参考人 ガイドラインの性格でございますけれども、先ほど申し上げました、従業者と使用者との間での手続のあり方を定めるものであります。

 ガイドラインに規定された手続を通じて企業と従業者双方の意見がそれぞれ反映されるという形になりますので、双方にとって相当の利益に関する納得感が高まるという意味で、相当の利益に関する予測可能性が高まるということだと思います。

 したがって、企業ガイドラインに従って相当の利益を従業者に与える場合に、通常は、紛争が裁判所に持ち込まれる可能性はこれによってかなり低くなると思っております。

 しかしながら、例えば、企業が、形式的にはガイドラインに従っているように見えても、実質的な協議とかあるいは意見の聴取を全くしていないといったような場合には、特許法三十五条五項で不合理と判断されることになりますので、従業者は与えられるべき相当の利益について裁判所の判断を求めることは可能であるというふうに考えております。

藤野委員 もう一点、簡潔にお願いしたいんですが、結局、このガイドラインというのは事実上の拘束力しかない、法的な拘束力はないと。当たり前のことですけれども、よろしいですか。端的に。

伊藤政府参考人 私ども、法的な拘束力というものは法律上位置づけられておりませんけれども、裁判所の判断において重視されるものであるというふうに考えております。

 と申し上げますのは、十年前の改正においてもこの手続の規定が定められたわけでございますけれども、その後の裁判の判例の中で、手順を重視して、その手順において一定の合理性が認められるという場合には不合理と判断されないというような見解が述べられておりますので、そういったことを踏まえれば、このガイドラインの制定によりまして、その部分がより強化されるというふうに考えているところでございます。

藤野委員 事実上の拘束力かどうかだけ、もう一度お願いします。

伊藤政府参考人 実質的な効果があるということでございまして、法律上、裁判を拘束するような規定にはなっていないということでございます。

    〔鈴木(淳)委員長代理退席、委員長着席〕

藤野委員 効果という言葉を繰り返されるんですけれども、その効果というのがくせ者で、ガイドラインに定めればいいんだと書いてありますけれども、先ほど紹介された特許小委員会の報告書を見ますと、「政府は、ガイドラインの策定にあたっては、研究活動に対するインセンティブについて民間における創意工夫が発揮されるよう、民間の自主性を尊重するもの」こう書いてあるわけですね。要するに、ガイドラインをつくるときには民間の自主性を尊重しろと。

 今、この大前提として、やはり、発明者と企業というのには大きな力の圧倒的な差がある。この状態を放置したまま民間の自主性ということにしてしまったら、これはやはりとんでもない効果が生まれると思うんですね。

 ですから、効果というのであれば、ガイドラインをつくるというのであれば、現行水準を下回らないような、しっかりそこを担保できるような効果をこのガイドラインによってつくるべきだということを強く指摘しておきたいと思うんです。

 そのためにも、先ほど来御指摘ありますように、ガイドラインをつくるメンバーですね。今、特許小委員会の議論を見ていますと、たしか労働者側はお一人で、企業は、中小企業を含めますと五名も入っている。経営者ですね。ですから、あとは学識経験者とかいろいろありますけれども、こういうメンバーでやっていたら、やはり労働者の声というのは反映されないというふうに思いますので、そこはしっかりやっていただきたいと思います。

 そして、ちょっときょうは審議会そのものの展開についても御紹介したいと思いまして、資料をお配りさせていただいているんです。

 実は、この委員会、非常におもしろいというか、奇妙な経過をたどっていると思うんです。といいますのは、配付資料一を見ていただきますと、これは、特許制度小委員会が二〇一四年三月から議論を始めまして、一回目から六回目まで議論をされて、それを受けて七回目に出された、日付としては六月十八日の資料なんです。

 これまでの議論の整理ということで、よくやる中間整理みたいなものなんですが、要するに、これまでの議論の整理ですから、これまでの議論の到達点をまとめたものだということなんです。

 黄色いところを見ていただきますと、右の方ですね、ちょっと字が小さくて恐縮ですけれども、「今後の検討の方向性」ということで、仮に一定の場合に使用者帰属を認めるとしても、全ての使用者等について一律に従業者帰属を使用者帰属に変更する必要があると認められるほどの事情の変更が、平成十六年以降に生じているとまでは説明されていないのではないかと。これは別に事務局の方針でもありませんし、一つのまとめでしょうからあれですけれども、ただ、要するに、事情変更が認められていない、説明されていない、こういうことをはっきり言っているんですね。

 もうちょっとかみ砕いて、そのときの審議も紹介させていただきますと、こういうふうに言われております。るる事務局からそういうお願い、いわゆるその説明、事情変更が必要だ、産業界がおっしゃるからそういう説明をしてくれとお願いをしていたわけですが、そこのところは定量的なものは産業界からお示しいただけなかった、こういうことなんですね。ですから、抜本的に原則論を変えるところまでは説明されていないのではないか、こういう認識のもとにこういうまとめがされたというふうに説明をされております。

 その上で、当時の室長ですけれども、配付資料の二の方へ行っていただきますと、こういう認識を語られているんですね。「五回目から六回目の間には私ども法制的な検討を随分進めました。その過程の中で、やはり現行法が従業員帰属となっていることの重みを私どもとして十分に理解しました。」こういう発言であります。重みということで、なかなか名言だと思うんですけれども、当時、非常に重要な認識に到達していたと私は思うんですね。

 経産大臣にこれをお聞きしたいんですけれども、そういう意味では、一回から六回をやってこうなって、従業員帰属を変える。要するに、事情変更、立法事実がない、説明されていない、原則は重みがあるというふうになっていたわけですが、最終的には使用者帰属になった。がらっと変わっていくわけですが、不自然だというふうには感じられませんか。

宮沢国務大臣 私も今、配付資料を初めて拝見したわけですけれども、ここに至る議論をつまびらかに存じ上げているわけではありませんけれども、今回の法改正においては、契約とか職務発明規程といったものに定められていれば、従業員ではなく会社側に権利が帰属するということでありまして、その裏返しとして、そういうものが定めていなければ従業員に帰属するという、もともとの法律と同じことになってくる。そして、中小企業とかまた大学といったところから、やはり自分自身に帰属するよりは従業員に帰属する道を残しておいてほしいというような議論があったというふうに私は聞いておりますので、そういうことがここに書かれているのかなと思って聞いておりました。

藤野委員 やはりこれはちょっと、非常に議論として珍しいといいますか、不思議な経過だと思うんです。

 もう少しだけ紹介させていただきますと、この中間取りまとめといいますかこれまでの整理というものが出された後に開かれた審議会を読みますと、いわゆる企業が、先ほど言った五名の方から驚きの声、ちょっと紹介しますと、五回目から六回目にがらっと変わったという印象を我々は受けている、非常に奇異に感じるといいますか、ごろっと方向が変わっているとか、こういう感じなんですね。びっくりされている。要するに、今までの議論と違うじゃないかというような感じの議論がこれを出されたときにやられているわけですね。

 しかし同時に、この整理が六月十八日に出されているんですが、この後、定例なのか何なのか、人事異動があって制度室長がかわりまして、その次に開かれるのは六月からちょっと飛んで九月になるわけですけれども、九月には、また全然、もとどおりといいますか、いわゆる従業員帰属ではなくて会社帰属の案が事務局のこれまたオプションとして出されるという経過をたどるんです。

 そのときには、今度は経営者側じゃなくて労働者側がこういう言い方をしているんですね。前回、この小委員会で確認した内容、つまりこれですね、前回、この小委員会で確認した内容と全く違う方向だ、一定の場合という制度設計を明らかに否定するものだ、こういう認識なんです。

 ですから、あくまで事務局が出した案なんでしょうけれども、それをめぐって委員が、メンバーが、ごろっと変わったとか、がらっと変わったとか、前回と全く違うとか、こういう議論をしているということ自体が、やはり私は非常にまだ議論が足りていないし、おかしいと思うんですね、それまでの認識をがらっと変えていくわけですから。

 産業界の意向という指摘が先ほどからあると思うんです。しかし、私は、それ以上に大きいのは、やはり安倍政権の姿勢だというふうに思うんですね。もともと、〇四年の法改正があって以降は実質的な裁判というのは四件というお話が先ほどありました。それまでに比べればほとんどないと言っていい。立法事実がないわけです。

 その間も、財界側としてはいろいろ変えてほしいというのがずっとあったわけで、〇九年には長官の私的諮問会議も置かれておりますし、二〇一一年の産業構造審議会でも議論はされている。しかし、その二〇〇九年の際も、二〇一一年の際も同じ結論なんですね。二〇〇四年の改正後の運用状況を見守る、あるいは慎重に検討を行う、こういう感じであります。

 ですから、企業側からはずっとそういう要求があって、変えてほしいというのがあったんだけれども、審議会もやり、何回もやったけれども、慎重に見守ろう、検討しよう、こういう状況だったと思うんですが、これが、安倍政権の出現といいますか、それによってがらりと変わるわけですね。やはり、世界で一番企業が活動しやすい国づくり、これを特許の世界でもやろうということで、一気に動き出したということだと思います。

 ですから、今回の議論のスタートでも、初めは私に言わせればバイアスのかかった、一回から五回まで、まあ別に全部がそうだとは言いませんし、議論は非常に多角的だったと思いますが、スタートとしてもそういう方向で始まったわけですが、しかし、議論してみると、先ほど紹介したように、現行法が従業員帰属となっていることの重みが認識されるという、ある意味、異例な変化というのが起きてくるということだと思うんです。これは異例だけれども、私は前向きな変化だというふうに思うんですね。しかし、それがまたがらりと変わっていくということです。

 大臣にちょっとお聞きしたいんですが、こうした経過そのものについて、御存じなかったかもしれませんが、改めて不自然だとは思われませんか。

宮沢国務大臣 藤野委員のお話を聞いていると、不自然かなという気もしないわけでもないわけですが、恐らく、全体を読んでみると自然の成り行きだったのではないのかなと思っております。

藤野委員 いや、全体を読めば読むほど不自然なんです。ですから、そういう意味で紹介したんですけれども、やはり私、これは特許制度そのものにかかわる問題じゃないのかなと思います。

 といいますのは、先ほど紹介されておりましたけれども、私も重要だなと思うのは、すぐれた職務発明というのは、会社の経営者と社員が目的を共有し、協働するときに生み出すことができるという、これは私もそういう認識でいるわけです。しかし、こういうやり方で、ある意味、議論もなぎ倒すようなやり方で、発明者の方は納得できるのか、従業員はこれで納得できるのかということなんですね。本当の意味での共有や協働というのを今回の法案は潰してしまう可能性があるんじゃないかというふうに思うんです。

 発明者とそして企業、両者のバランスを絶妙にとっていたのが三十五条だと思いますし、〇四年の改正で、ある意味、そこに改善といいますか、一定のモディファイも加えてきたということだと思うんですが、そのバランスを今回は一気に企業側に寄せてしまうんじゃないかというふうに感じるわけであります。

 そういう意味で、こうした法案の中身や、あるいはプロセス、これではやはり社員の納得が得られないし、先ほど紹介した協働による職務発明の発展、すぐれた職務発明というものについてはマイナスの方向なんじゃないかと思うんですが、この点については、大臣、どう思われますか。

宮沢国務大臣 先ほどから、これまでの職務発明に対する相当な対価、相当な利益のレベル以上のものを云々、こういうお話が時々御質問の中で出ておりましたけれども、そもそも、対価であり、利益であり、それぞれの会社ごとに恐らく相当違っているんだろうと思うんですね。それを、それまでの水準以上のものといっても、なかなか正直難しい話をされているなと思って聞いていました。

 今回の改正は、まさにガイドラインにすぎないとおっしゃいましたけれども、相当な利益を決めるプロセスといったものをしっかりガイドラインという形で明示をして、従業員の声をちゃんと聞けというようなことを書くことによって、まさに相当な利益が合理的になるような方向の制度を入れる。

 これがガイドラインにすぎないとおっしゃれば、そのとおりでありますけれども、ここで書くことによって、間違いなく幾つかの訴訟は今後も起こってくる、その過程において、このガイドラインのとおりにやっていたのかどうか、これ以上のことをやっていたのか、ともかくこのガイドラインに問題のないプロセスを経たのかどうかというのは、恐らく法廷における判断の大変大きな要素になるといった意味では大きなものだと思っておりまして、相当な利益、相当な対価といったものが研究者にもたらされるための契機になる法改正だと思っております。

藤野委員 私がお聞きしたのは、その前にですけれども、私は別に今の現行水準以上のものを出すべきだとは言っていないんです。そういうことは言っておりません。相当の対価と言われる今のものと同等水準のもの、現行水準を切り下げるようなものになってはいけない、こういう質問なので、以上とは言っておりません。

 その上でですけれども、私の質問は、要するに、こうしたやり方で、ある意味、審議会の委員が、ごろっと変わったとか、聞いていないとか認められない、こういうプロセスを経て決まったものが従業員側に納得が得られるのかということなんです。すぐれた職務発明というのは双方がやはりそれぞれの役割を果たさないとだめなんじゃないか、それが職務発明の普通の発明と違うところじゃないかということなので、その点についてもう一度御認識をお願いします。

宮沢国務大臣 ガイドラインにおきまして、従業者との協議を行わなければいけないとか、また、相当の利益の内容について従業者からの意見を聴取する、こういうことを定める予定でございまして、そういう手続をしっかりやることによって、現行法より従業者、研究者の意見が反映されやすいものになるということは、私は間違いないと思っております。

藤野委員 私は逆に、現行法よりも、会社帰属になることによってやはり発明者の方にとっては不都合な例がふえてくるということを懸念せざるを得ないと思います。

 最後になりますけれども、冒頭言いましたけれども、やはり二十九条を初めとする特許法全体としては原始発明者帰属なわけで、この原則に照らせば、これから考えられる報奨の水準の決定とか、そういったことについて企業が好き勝手することは許されないということを強く指摘して、質問を終わります。

江田委員長 次に、野間健君。

野間委員 無所属の野間健です。

 きょう最後の質問をさせていただきます。

 本改正案では、職務発明に係る権利の法人帰属に当たっては、その旨をあらかじめ勤務規則等で定めているということが要件となって法人帰属をさせるということになっています。

 本日もいろいろ議論が出ましたけれども、やはり使用者と従業員という、力関係においては非常に差がある。まして、従業者、これはほとんど大企業の場合でしょうけれども、大企業に入った時点でもう企業の側では規則等々も定まっているわけですね。そこに新たに入っていって、いや、これは困るとか、これはああだという苦情を最初から言っていく人もいないでしょうし、なかなか力関係でその辺の公平性というのを保つのが難しいんじゃないかと思いますけれども、本改正案でどのような配慮がされているのか、お聞きしたいと思います。

関大臣政務官 従業員の利益を保護していくこと、これは非常に大事なことだと思っております。

 発明者に対しますインセンティブ付与の決定をしていきます、その手続についてガイドラインの策定を法定化するわけでございますが、そのインセンティブ決定手続におきまして、発明者たる従業員がみずからの意見を伝える機会が与えられる。この意見を伝える機会が与えられるというところに、発明をした場合に受け取るインセンティブをあらかじめ把握できることになりますので、そこで納得感が従業員の方に得られるだろうということを期待しておりますし、そういう方法をとりまして、従業員の利益を保護して、また発明の奨励につなげていきたいと考えております。

野間委員 とにかく、本改正案も、発明の奨励、知財の発展ということが目的でありますから。

 相当の利益を判断するためのガイドライン、指針をこれからつくるということなんですけれども、きょうの議論も聞いて、ガイドラインというのは、何かある種のブラックボックスのようになっていて、とにかく何でもかんでもそこで最後、結論が出るんだという感じがいたしますけれども、このガイドラインというのは、どんなような審議機関、メンバー、プロセス、期間を経て、その公平性が担保されるものがきちっと出てくるのかということを質問したいと思います。

伊藤政府参考人 ガイドラインにつきましては、法案三十五条六項にも規定がございますように、産業構造審議会の意見を聞くことになっておりますので、その場で、労働界、産業界、あるいは研究者、さまざまな立場の人の意見を聞いて策定するということでございます。その後に、大臣が定める指針として、告示で公表することを想定してございます。

 法律を成立いただきますれば、一年以内にはガイドラインを制定したいというふうに思っておりますけれども、その委員会などで検討するに先立ちまして、さまざまな調査とか具体的な事例について、いろいろなヒアリングなどをかけながら、できるだけ情報公開して、適切なものをつくっていきたいというふうに思っております。

野間委員 最終的には経済産業大臣が決めるということでありますので、ぜひとも使用者、従業者の公平なガイドラインが出るよう、大臣からも最後に決意を伺いたいと思います。

宮沢国務大臣 企業の方も、特別変わった企業があるのかもしれませんが、一般的には、職務発明について相当な対価を出すということは当然考えているわけで、そうでなければいい研究者が来ないという状況であります。

 そういう中で、まさに企業であり、また従業者、特に、例えば組合ということになる、恐らく組合の方から聞かざるを得ないんだと思うんですけれども、例えば、二百億も一人に払うなんという話が出てきたとすると、組合としても、これは困るな、俺に来る給料はどこに行っちゃうんだ、こういう話が出てくるような話も恐らくあって、組合の方も含め、また、それこそそういう研究に携わっている方の御意見もよく聞いた上で、しっかりと、まさに相当な利益が許容されるということが決まるようなプロセスを提言していきたいと思っております。

野間委員 ありがとうございました。終わります。

江田委員長 次回は、来る二十九日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時八分散会


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