衆議院

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第20号 平成27年6月5日(金曜日)

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平成二十七年六月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 鈴木 淳司君

   理事 田中 良生君 理事 三原 朝彦君

   理事 八木 哲也君 理事 中根 康浩君

   理事 鈴木 義弘君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大見  正君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    國場幸之助君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      白石  徹君    武村 展英君

      冨樫 博之君    野中  厚君

      福田 達夫君    細田 健一君

      宮崎 政久君    若宮 健嗣君

      神山 洋介君    篠原  孝君

      田嶋  要君    渡辺  周君

      落合 貴之君    木下 智彦君

      國重  徹君    藤野 保史君

      真島 省三君    野間  健君

    …………………………………

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   経済産業大臣政務官    岩井 茂樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  三角 育生君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 島根  悟君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 上冨 敏伸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           平井 裕秀君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          菅原 郁郎君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            鈴木 英夫君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    堂ノ上武夫君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  福田 達夫君     國場幸之助君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     福田 達夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、不正競争防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官三角育生君、警察庁長官官房審議官島根悟君、法務省大臣官房審議官上冨敏伸君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官樽見英樹君、経済産業省大臣官房審議官平井裕秀君、経済産業省経済産業政策局長菅原郁郎君、経済産業省通商政策局長鈴木英夫君及び特許庁総務部長堂ノ上武夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝俣孝明君。

勝俣委員 自由民主党の勝俣孝明でございます。

 本日は、不正競争防止法の一部を改正する法律案に関する質問をさせていただきます。

 まず、近年の我が国を取り巻く経済環境を考えましたときに、IT技術の飛躍的な進歩によりグローバル化が進み、それに伴い人や情報の行き交う量も飛躍的に伸びました。我が国の旧来からの強みであった技術力も、国際競争の激化の中で、その優位性がかつてほどではなくなっていることも事実であります。

 こうした状況の中で、まさに我が国の産業競争力を強化し、その優位性をさらに伸ばし、世界最高の知財立国にしていかなければなりません。いわゆるオープン・クローズ戦略であります。その手段として、先日、特許法の改正法案を議論いたしました。そして、今回の不正競争防止法改正案であります。

 トップバッターですので、この法案の基本的な部分から確認をさせていただきたいと思います。

 まず、近年起きました三つの重大事件についてであります。

 まず一つ目は、新日鉄住金の元社員が変圧器用の電磁鋼板の製造プロセスや設計図を外国のライバル会社へ漏えいした事件であります。これによって、新日鉄住金側は約一千億の賠償請求を行っております。

 二つ目は、東芝の業務提携先であった会社の元社員が、東芝のNANDフラッシュメモリーの仕様やデータ保持に関する検査方法を、これも外国のライバル会社に漏えいした事件です。これについては約三百三十億円で和解に至っております。

 三つ目は、昨年発生した記憶に新しい、ベネッセの事件であります。これは、ベネッセが業務委託した先の社員がお客様の個人情報を持ち出し、名簿業者に売っていたという、まさに衝撃的な事件でありました。

 この三つの事件でありますけれども、何が共通しているのかというふうに考えてみますと、新日鉄住金の件は、まさに、一千億円という巨額の賠償請求をするほど、新日鉄住金にとっては基幹技術であったわけであります。東芝のNANDフラッシュメモリーも、三百三十億で和解しましたけれども、それほどの東芝にとっての稼ぎ頭の製品であるということ。そして、ベネッセにおきましては、まさに、商品力はさることながら、子供を持つ家庭をターゲットにした営業展開がベネッセの柱でありますから、そのための最も重要な顧客情報であったわけであります。

 ゆえに、この三つの事件が共通するところは、企業の経営における競争力の源泉、いわゆるコアコンピタンスが不正に扱われ、漏えいしたということだと考えております。今回の不正競争防止法改正案に出てくる営業秘密の意味とは、私は、まさに企業の競争力の源泉、コアコンピタンスであるのかなというふうに考えております。

 そこで、大臣、まず、この法案における営業秘密とはどのようなものであると大臣は認識されているか、お伺いをいたします。

宮沢国務大臣 まさに委員おっしゃるとおりでございまして、今例に出されました新日鉄住金、また東芝、大変高額の損害賠償請求がなされ、または高額の金額で和解がなされているということに見られますように、製造ノウハウや顧客名簿といった営業秘密は、他社商品、サービスとの差別化を通じた競争の源、まさに比較優位のコアコンピタンスとなるものであると思っております。

 製造ノウハウを初めとする技術上の営業秘密については、今御指摘がありましたオープン・クローズ戦略に置いているクローズ部分の中心的役割を担うものであって、先日御審議いただきました特許制度、これはオープン戦略を担うものでありますけれども、相まって企業の収益向上に重要な役割を果たしているものでございます。

 ともかく、本法案におきましては、侵害し得となっている現状を改善して、営業秘密の保護を強化することを御提案しているところでありまして、我が国企業のオープン・クローズ戦略の展開に弾みがつくものと期待をしております。

勝俣委員 まさに営業秘密は企業によってさまざまであるのかなというふうに思っております。

 私は、議員になる以前は、実は銀行で十一年間働いていましたけれども、例えば、銀行の営業秘密、いわゆるコアコンピタンスは何かというと、まさに顧客情報であります。

 銀行というのは、特に金融商品には余り競争優位を感じませんけれども、やはり顧客情報に私はコアコンピタンスがあるのかなというふうに思っております。誰が幾ら預金があって、借入金があって、そういう情報をもとに投資信託ですとかローンの枠の増額といった営業活動をするわけですから、顧客情報こそが銀行の最大の営業秘密であるわけであります。

 私は、銀行員時代には、実は、朝出勤すると、ロッカーにまず自分のかばんを入れて、そのロッカーの中にプールバッグのような透明のビニールバッグがありまして、その中に私物を、要はお財布だとか新聞だとかを入れかえて、それを営業場に持っていくということをやっておりました。カメラつきの携帯は、もちろん持ち込みは禁止でございます。銀行で付与された、カメラもついていない携帯のみが持ち込み可ということでございますし、また、パソコンや端末機は情報を絶対にコピーできないようになっておりました。

 相当厳しい体制で仕事をしていましたけれども、それが当たり前のような雰囲気でありました。まさに危機管理体制というものがしっかりしていたというふうに、今振り返れば思っております。

 何が言いたいかといいますと、幾らこういった法整備をしっかりとしても、やはり企業側の取り組みがしっかりしていないと、この法律の効力というものが全くなくなってしまうというふうに考えております。

 企業は、まず、自社のコアコンピタンス、何が経営上重要な情報であるのかということをしっかりと浮き彫りにして、情報を区分することがまず必要なことなのかなというふうに思っております。その上で、営業秘密の管理水準を高めていくこと。要は、法整備と企業の管理とを両輪で行っていかなければならないのかなというふうに考えます。

 先ほどの銀行における顧客情報のように、例えば製造業における製造技術情報など、企業によって営業秘密はさまざまであります。そこで、現在の企業における営業秘密の管理状況を教えていただければというふうに思います。

菅原政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、しっかりと営業秘密の管理を行っている企業と、残念ながらそこがおろそかになっている企業で、濃淡があるのが現実でございます。

 具体的には、平成二十四年に経産省が行った、三千社を対象にしたアンケートによりますと、営業秘密とそれ以外の情報をそもそも区分していないと回答した企業は、全体で約三六%に上っております。その中でも、中小企業に限りますと、その比率はさらに上がりまして、四〇%を超える結果になってございます。

 また、平成二十六年に帝国データバンクが行った一万一千社を対象とした意識調査においても、約三五%の企業が営業秘密の漏えい防止に対する取り組みを行っていないという回答をしております。こちらも中小企業に限定しますと四〇%、その中でも小規模企業に限定すると四八%と、半数近い企業がきちんとした対策を講じていないという結果が出てございます。

勝俣委員 まさに営業秘密を情報区分していないという回答が、特に中小企業は四〇%以上ということでございます。

 まさに、営業秘密を区分していない、わからないという企業は、そもそも、先ほど申しましたように、自分たちの会社の競争優位性、コアコンピタンスを理解していないということにもつながるわけでありますから、やはり、自分たちの会社の収益の柱がわからないわけであります。ですから、これは経営上も大変私は問題だと思います。

 まさに、この法案の根本というのは、やはり日本の産業力を強化していくということでありますから、その辺もしっかりと区分をしていくということが私は大事なのかなというふうに思っております。

 特に、中小企業、小規模事業者にとっては、こうした営業秘密の管理体制がとれていないということであります。先ほど申しましたように、幾ら特許法を改正し、そして不正競争防止法を改正して、法整備をしっかりと行っても、やはり企業現場側にそのことが伝わっていなければならないということであります。

 また、営業秘密の管理性が不明確であることで、企業現場は具体的にどのような対策をどの程度講じればよいのかがわからないということが、やはり現実ではないでしょうか。要は、企業の取り組み、そして国の取り組み、官民連携という三位一体で営業秘密を守っていく、そして我が国の産業競争力をしっかりと強化していかなければなりません。

 そこで、国がどのように企業に対し営業秘密の管理に取り組んでいくように促していくのか、政府の取り組みをお聞かせください。

菅原政府参考人 営業秘密が守られる社会環境を実現するためには、今回御提案申し上げております法整備等の国としての役割をしっかり果たすということも重要だと思っておりますが、委員御指摘のとおりそれだけでは足りないと思っていまして、企業による漏えい防止対策、あわせて官民の連携した取り組みという、委員御指摘の三位一体の取り組みというのが非常に重要であると考えてございます。

 このため、経産省では、産業界と連携いたしまして、技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議、これを一月に開催いたしまして、産業界との意識のすり合わせを行っているところでありまして、企業側の対策も強化していただくよう、きっちりとした位置づけをしているところであります。

 あわせて、企業側の対策を支援するという観点から、営業秘密管理指針、これについて、非常にわかりやすいものに全面改良いたすとともに、中小企業等の営業秘密管理について、弁護士など専門家による相談を受け付ける営業秘密一一〇番を設置いたしました。さらに、今後、具体的な営業秘密侵害の手口の情報などをしっかり共有するための官民フォーラムを立ち上げる予定でございます。

 今後とも、企業側の自助努力と政府による抑止力の確保が相乗効果を発揮するよう、全国各地でのセミナーの開催等、啓蒙普及活動に力を入れまして、中小企業の皆様の御理解が少しでも進むように全力を注ぎたいと思っております。

勝俣委員 この三位一体の取り組みが大変重要になってくると思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 最後になりますけれども、やはり、最も怖いのが、漏えいしていることさえもわからなかったという場合であります。漏えいしていることがわからずに時間が経過をして、さまざまな取引先やステークホルダーに損失を与えてしまっているケースも出てきております。特に、ITが普及した社会において、時間を置かずに漏えいが拡散してしまうリスクが大きいものとなっているわけであります。また、ベネッセのケースのように転売がどんどん進んでいくということも十分に考えられております。

 そこで、こうした漏えい情報の拡散防止のために抑止力をどのように高めていくのか、具体的な方策をお伺いいたします。

山際副大臣 御案内のように、世の中は変わっておりまして、一瞬の間に漏えいした情報が拡散してしまう、そういう状況にございますので、抑止力を高めていくために多くの努力を払わなくてはいけないと思っております。

 その流れから、本法案では、営業秘密を転売利用する者については、無限に処罰範囲を拡大させます。また、営業秘密侵害罪の未遂罪の創設といった措置を講じることによりまして、営業秘密侵害に対する抑止力を向上させていこうと考えております。

勝俣委員 いずれにしましても、我が国の産業競争力をより強固なものにしていくため、私も全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 今、勝俣先生の質問を聞いていまして、ほとんどかぶっております。やはり同じように思うんだなということで、用意しておりますので質問させていただきたいと思います。

 不正競争防止法改正のまず立法事実について確認をさせていただきます。

 事務方の方からは、秘密として管理される企業情報をめぐって、スマートフォンの普及、サイバー攻撃技術の高度化といったIT環境の変化等を背景に情報漏えいが深刻化している、一方で、オープン・アンド・クローズ戦略の広がり等を背景に競争力や雇用の基盤として企業の情報の重要性が増大、このため、企業情報の漏えい防止のため法制面における抑止力の向上等を図る必要があるというふうな説明を受けております。

 先ほど菅原局長の方からも御説明がありましたけれども、平成二十四年度の経済産業省委託調査、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った「人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書(別冊)」の中に、営業秘密の管理実態に関するアンケート調査結果というのがございました。

 過去五年間で営業秘密の漏えい事例はありましたかという問いに、明らかに漏えい事例があったが二三・七%、恐らく情報流出があったが一六・二%。少なくとも四割の大企業で情報漏えいの疑いがあったということであります。これは全企業ベースでやると約一四%という数字も出ておりました。

 ジュリストの二〇一四年七月号、「特集 営業秘密 その現状と向かう先」の座談会で、先日参考人として当委員会に出席をしていただきましたキヤノンの長沢健一さんが次のように指摘をされておりました。

 最近いちばん変わったことは、昔は製品化する技術で特許化できるものは必ず特許にしていたのですが、最近は特許を出願すると一年半で公開されてしまうということで、本当にこれを公開してよいのかという議論があり、技術を特許出願する場合でも、その技術の内容によっては、秘匿すべきものは秘匿しましょうという「クローズ」戦略が、我々もやっていますが、企業の命運を握るようになったことではないかと思います。

  そういう意識が高くなって、秘匿するものが増えている中で、新日鐵住金とポスコの事件や東芝とSKハイニックスの事件が新聞紙上を賑わせたことや、弊社も出ていましたが、「週刊ダイヤモンド」の雑誌記事(二〇一三年十一月十六日号)で、

現在、資料として机上にお配りさせていただきましたが、

 日本企業を退職した多くの技術者が韓国企業に流出しているという事実が明らかにされたこと等も、重要性が改めて認識される契機になったのではないかと思います。

 この週刊ダイヤモンドの記事では、サムスンに三十名技術者が流出して、この方たちがたくさんの特許を持っている、そういうことを暴いておりましたけれども、こういうことで本当に企業情報が外に出ているんだな、情報漏えいが深刻化しているというふうに私も思うんですが、経産省の方としてもそのように認識されているんでしょうか。

宮沢国務大臣 我が国は、特にものづくりの分野では世界の最先進国と言っていいと思っております。そういう中で、いろいろな技術、特許が開発を常にされているわけでありますけれども、おっしゃるように、従来であれば特許を取るというような形で処理したものが、オープン・クローズ戦略の中で営業秘密として秘匿される傾向が強まっております。そういう意味で、営業秘密の保護の重要性は一層増大しているものと考えております。

 我が国においても諸外国においても、こういった営業秘密が外国企業を含めたライバル企業に流出する事例が、我が国だけでなくて諸外国においても増加傾向にあることは大変憂慮すべき事態だと思っております。早急に今、対応が必要だと思っておりまして、今回、本改正法案を提出させていただきました。

富田委員 先ほど御紹介したアンケート調査の結果によりますと、これは菅原局長もおっしゃっていましたけれども、営業秘密とそれ以外の情報を区分しているかという問いに、区分していないというのが三五・九%。それに加えて、役員、従業員と秘密保持契約を締結しているかという問いに対して、締結していないという企業が五五・六%。役員、従業員と競業避止義務契約を締結しているかとの問いに、締結していないが何と八二・〇%。私は弁護士出身ですので、弁護士の感覚からいうと、何でこんなことすらしていないんだという企業が本当に多い。

 先ほど御紹介したキヤノンの長沢さんは、日経新聞から、「企業の工夫で技術流出を防ぐことは無理ですか。」というふうに問われて、こんなふうに答えています。「秘密を法的に保護するためには、社内の情報を重要性によってランク付けし、その情報にアクセスできる人も制限するなど情報管理しなければならない。当社ではそうした管理も行い、全社員に講習会やeラーニングでの教育も実施している。重要な秘密に接した社員が退職するときには、具体的な内容を示して秘密を守るよう誓約書も提出してもらっている。」

 ここまでやっても出てくるということで、先ほど勝俣先生も質問されていましたけれども、やはり法制面だけでの抑止力向上というのは限界がある、情報管理に関する企業努力を促すのが先なんじゃないかというふうに思うんですが、局長、もう一回、その点はどうでしょうか。大臣でもいいです。

宮沢国務大臣 やはり日本の社会というのは、これはいいことなのかもしれませんけれども、性善説によって成り立ってきたところがこれまで多々あったと思っております。ただ、残念ながら、それだけではとてもいかないのが国際社会でありまして、法制面だけではなくて、企業自身において必要な対策を行っていくことが必要であります。

 今、キヤノンの例を挙げられましたけれども、残念ながら、企業によって企業秘密の管理について大きな濃淡が見られます。したがって、まさにそういう意識の薄い企業にさらにしっかりとした問題意識を持ってもらうということが大変大事になってまいります。

 このため、不正競争防止法上の保護を受けるための最低限の措置を明らかにするための営業秘密管理指針の全面改定を行いました。さらに、関係省庁と業界団体トップなどで構成する技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議を本年一月に開催し、経営者自身がリーダーシップを発揮して対策を講じること、スキルのある社員の適正な処遇といった対策を推進することで合意し、今後、具体化のための官民フォーラムを開催することとしております。

 経産省としては、こうした取り組みを通じまして、企業の取り組みを全力で支援していきたいと思っております。

富田委員 先ほど菅原局長の方から、官民戦略会議や営業秘密一一〇番の設置のお話がありました。

 渡部俊也東大教授がこんなふうに、ちょっと皮肉まじりだと思うんですが、日経新聞のインタビューで指摘をされております。

 「法律をいくら整備しても、企業自らが情報の管理水準を上げなくてはダメだ。特に中小企業には、まだ対策が遅れているところもある。」ここからなんですが、「経済産業省はこれまで「法改正だけでは流出は防げない。企業側の対策が先だ」と言い続けてきた。ようやく、企業側の対策と法整備を同時進行させることで意見がまとまりつつある」。これが今回の改正だと思うんですが、ぜひ、今大臣が言われたような取り組みをよろしくお願いしたいと思います。

 改正法第五条の二、立証負担の軽減の必要性についてちょっと確認をしておきたいというふうに思います。

 先ほど来御紹介していますキヤノンの長沢さんは、同じジュリストの座談会の中でこんなふうに指摘されていました。

 例えば、新日鐵住金とポスコの件を例にとると、ポスコが新日鐵住金から電磁鋼板に関する技術を不正取得したこと自体は事実のようですが、もともとポスコの従業員が中国の宝鋼集団に

宝山鋼鉄だと思うんですが、

 転職した後に、韓国のポスコに訴えられて、そのときに出てきた書類によって新日鐵住金からの技術流出であったことが偶然にわかったわけです。この偶然がなければ、新日鐵住金は自社技術の流出の証拠を示すことは非常に難しかったのではないかと思います。しかも、いまも裁判が続いているわけですが、ポスコ側は一部の技術については不正取得は認めていますが、その技術は使っていないと主張していて、これが裁判を長くしています。現行の法律下では不正使用を立証するのは非常に難しく、新日鐵住金のほうもそれに対して非常に苦労していると聞いております。

  この事件のように、悪意を伴った故意による営業秘密の不正取得に対応するのは、現行の営業秘密管理指針に基づく対応だけでは決してできるものではなく、非常に困難だと思います。営業秘密が不正取得されたことを掴むこと自体がかなり難しく、もし、そのような事実があるということを掴んでも、これを立証するのがかなり困難です。仮に取得まで立証できても、それを使ったことを立証するのは非常に難しいということもあって、現行の制度には限界があると思います。この限界を乗り越えるために、我々産業界を中心として、現行の制度を、実際に制度を運用する司法や捜査機関がより使いやすい制度に変えていこうと考えており、そのような活動をしています。

  後ほど別途お話をすると思いますが、秘密管理性の要件が、今までの判例からすると諸外国に比べて厳しいということがあって、産業界にとっては告訴や原告訴訟を提起することに対して大きなハードルになっています。特に中小企業はそうだと思います。

というふうに指摘されております。

 こういう背景、立法事実があって、被告が営業秘密を不正取得したこと及び当該営業秘密が物の生産方法に係るものであることなどを原告が立証した場合には、当該営業秘密の使用が疑われている被告の製品は、被告が当該営業秘密を使用してこれを生産したものと推定するというふうな形で立証負担を軽減する規定を設けるに至ったというふうに理解してよろしいでしょうか。

菅原政府参考人 五条の二の関連質問だと思いますが、本規定の趣旨、背景は委員御指摘のとおりでございまして、企業が、みずからの製造ノウハウなど技術に関する営業秘密を他社に窃取ないし不正使用されたものとして民事訴訟で差しとめ等を行う場合を念頭に置いた規定でございます。

 こうしたケースでは、民事訴訟法上、原告が被告企業の使用の事実を立証する必要はありますけれども、現実には、目に見えない技術の被告による使用の有無を原告が立証することは極めて困難でありまして、これまでの裁判事例でも、この部分の立証ができないゆえに裁判で民事訴訟法上勝てないという事案が頻発してございました。

 このため、今回は、営業秘密を窃取した者はそれを使用するという一般的な経験則にのっとりまして、当事者間で公平に立証責任を配分するため、被告企業による不正取得等を原告が立証した場合には、立証責任を転換し、被告企業が当該営業秘密の不正使用、要すれば使用していないことを証明させることにしたものでございます。

富田委員 この改正法第五条の二に「政令で定める行為」というふうに規定されていますが、これは具体的にはどういう行為になりますか。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 この改正法第五条の二の規定は、物の生産方法等の技術情報が窃取された場合におきまして、窃取者が当該技術情報を使用しているものと推定いたしまして、営業秘密侵害訴訟における立証責任を窃取者に転換するものでございます。その対象は、窃取者が当該物の生産活動を行っている場合など、当該技術情報の使用と関連性が高い行為を行っている場合に限られてございます。

 その趣旨といたしましては、仮に営業秘密の窃取があったといたしましても、これを奇貨として、当該営業秘密とおよそ関係のない被告の事業についてまで転換された立証責任を負わせることは、公平に反し、濫訴を招きかねないという考慮をいたしたものでございます。

 具体的な政令の内容につきましては、今後検討してまいる所存でございますけれども、例えば、物の分析方法に関する営業秘密を窃取された場合における同一の物の分析サービス、こういったものは政令の対象となるというふうに考えます一方で、接客マニュアルといったような営業情報はこれになじみにくいというふうに考えております。いずれにせよ、今後、産業界などの意見を広く聞いて検討してまいる所存でございます。

富田委員 最後に、捜査機関の協力についてちょっと確認をしますが、先ほど御紹介した渡部俊也東大教授はこんなふうに言われています。

 新法ができても、捜査当局や検察の協力がなければ絵に描いた餅に終わる。韓国では捜査の初動が早く、徹底している。大企業から情報を盗んだ社員を韓国当局が監視し続け、その社員が証拠を破壊しようと自宅マンションの十階から落としたパソコンの破片を集めて違法行為の証拠を押さえた事例もあるという。そこまでしても、韓国での営業秘密漏洩事件の検挙率は二〇%程度だ。日本でも営業秘密が守られるかどうかは捜査当局がどこまで本腰を入れるかにかかっている

というふうに指摘をされています。

 また、経団連の知的財産政策ビジョン策定に向けた提言の資料におきましても、米国捜査当局の取り組みが詳しく紹介をされております。

 警察としては、今回の法改正を受けて、営業秘密漏えい事件の捜査にどのように取り組んでいかれるのか、教えていただきたいと思います。

島根政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正は、法定刑の引き上げによる抑止力の向上、未遂罪の創設や転得者処罰規定の拡充など処罰範囲の拡大等を内容とするもので、警察といたしましても、改正に至る社会的背景や改正内容を踏まえまして的確に対処していく必要があると考えているところであります。

 また、この種捜査に当たりましては、種々の要素の立証の点で被害企業との連携が不可欠でありまして、改正のための議論や官民フォーラムの場などを通じまして、企業側の営業秘密保護に関する意識が高まり、管理体制の充実も図られつつあるものと承知をしております。

 警察といたしましては、今まで以上に企業との連携に努めまして、事件として取り上げるべき事案につきましては、着実に検挙してまいる所存であります。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

江田委員長 次に、神山洋介君。

神山(洋)委員 おはようございます。私で本日三人目のバッターということになりますが、私も若干かぶっておりますので、うまく調整をさせていただきながら議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 かぶらないように質問させていただきますけれども、先ほど来、中小企業への配慮が重要であるという問題意識が各委員からも披瀝をされているとおりでありますし、私も、今回の法改正、今回のみならず、今までも含めてということでありますが、中小企業の方々、中小企業への配慮というのは、やはり今なお、そして今後も大事であろうというふうに思っているわけです。

 過去の資料等をいろいろ見ている中で、やっぱりなというふうに思ったんですが、例えば、二回前の、これは六年前になりますが、平成二十一年の不正競争防止法の改正に際しても附帯決議が付されておりまして、四項目あるうちの一つはやはり中小企業向けということです。

 読み上げます。「中小企業や下請事業者の技術力が我が国産業の強みであることを踏まえ、これらの者の保有する営業秘密が不当に流出することのないよう、中小企業の実態に即した適切な措置を講じること。また、元請企業等の有力な取引先による営業秘密侵害に対しては、厳正に対処すること。」というふうに書かれておりまして、基本的な問題意識は今なお同様なんだろうなというふうに思うわけです。

 まずは前段として確認をさせていただきたいわけですが、この間、こうした決議も含めて、具体的にどういう対応がとられてきたのか、この点を確認させていただきたいと思います。

菅原政府参考人 委員御指摘のとおり、中小企業にとって営業秘密、これは、全て特許申請できる財力がない、管理する費用を捻出することも難しいということを考えますと、中小企業であればこそいわゆるノウハウなどの営業秘密は極めて重要だということについては、我々も認識しておりますし、いろいろな場を通じまして、これまでパンフレットの作成ですとか、全国各地でのセミナーの開催等、もしくは中小企業団体への呼びかけ等を通じて、我々としても啓発普及について努めてきたところであります。

 ただ、一方的な情報提供だけでは親身な相談に乗れないということから、営業秘密・知財戦略相談窓口を設けまして、個別の中小企業の方の、そもそもオープン・クローズ戦略というのはどういう考えでとっていったらいいのか、もしくは営業秘密の管理、セキュリティーレベルをどう設定したらいいのか、もしくは、場合によっては、どうも盗まれた可能性がある、これについては法律上もしくは民事上どう対処したらいいのかという個別事例についても、相談する体制をとったところでございます。

 こういった窓口、存在しても知られないとどうしようもないものですから、例えば、今、中小企業者の人に多く利用されておりますミラサポというインターネット経由での啓発普及方法がありますけれども、こういったところでもこの窓口の存在をしっかり宣伝するですとか、あとは、先ほど来大臣も申し上げているような、営業秘密管理指針、これは従来は非常に複雑でわかりにくいものでございましたけれども、今回、これを中小企業の人が読んでもわかりやすいものに全面改定いたしたところであります。

 こういったさまざまな行為を通じまして、中小企業の人の理解レベル、対処レベルを上げていきたいというふうに思っております。

神山(洋)委員 そういう積み上げでずっとやっていくしかないんだと思うわけです。その結果、徐々に徐々に求められるレベルも上がっていくでしょうから、その差を埋めていくという不断の積み重ねになるんだと思うわけです。

 今回の法改正によっても、ある意味ではまた求められるレベルというのは、特に大企業ではそもそもでありますが、中小企業においてもまた高くなっていくということになると思うわけですね。そうすると、やらなきゃいけないことはさまざまあるわけですが、例えば初歩的な話でいえば、中小企業の中での技術を管理する、営業秘密を管理する文書の管理であるとか、履歴の管理であるとか、そういったある意味では基本的なことも含めて、レベルアップを、全般的に、我が国全体の中小企業の中で底上げをしていかなきゃいけないということになるんだと思うんです。

 これはもう前段で同種の質問があって、その中の御答弁でも、営業秘密の管理指針を改定しますという話であるとか、一一〇番をつくります、あと官民フォーラムなんというお話もありました。

 要は、先ほど、この間とられてきた中小企業向けの措置もしかりですし、これからとられようとしている、今申し上げたようなやろうとしている項目もしかりなんですが、そのことによって、実際の効果がどれだけ上がるか、ここがやはり大事なんだと思うわけです。

 項目としてはもう既におっしゃっていただいているわけですが、今おっしゃっていただいたことを含めて、どの程度これからそれが効果が上がると見込まれているのか、これではまだやはりなかなかきついですねというふうにお考えなのか、この点はいかがでしょうか。

菅原政府参考人 今は、そもそも、中小企業の人は営業秘密としての情報を特定していない、管理もしていないということは、盗まれているかどうかもわからない。そうすると、我々は盗まれているかどうかもわからない人に被害実態はどうですかと言っても、多分何ら我々には届いてこないということですので、まずは、先ほど来申し上げているような、営業秘密というのは中小企業にとってまさに根幹をなすものだ、しっかり特定して管理してくれというところを始めていくのが第一歩でございまして、そこから、中小企業の方から、どうもこれはやはり盗まれている可能性が高い、ついては、例えば元請企業を何とかしてくれという声がそこから上がってくる可能性もあります。

 あと、今回の法律改正でも、今までは中小企業の親告罪ということで、仮にとられたとしても、中小企業の人に元請に対して対峙してくれというのが法律上の要請でございましたけれども、なかなかこれが難しいということであれば、仮に中小企業の人が親告しなくても、明らかにある、例えば元請企業、大企業がとにかくいろいろな下請企業から営業秘密を盗みまくってみずからの利益にしているというような場合には、非親告罪を今回規定することによって、そういった大企業の行為をとめるというようなことを通じて、中小企業の被害をかなりのところ防止できる可能性が出てくるんじゃないかというふうに考えてございます。

神山(洋)委員 親告罪のところに関しては、実はきょうは質問としてはあえて取り上げていないんですが、今までも中小企業の側が告訴すれば、それは訴訟に上っていたわけです。今回は、そうしなかったとしても、これは大企業との力関係の中で泣き寝入りをしていた部分をある意味では掘り出すことができるという意味ではプラスの効果かもしれませんけれども、ただ、場合によっては、これはいろいろな意味での、経営判断なのかもしれませんが、それでもやはり訴訟という場には持っていきたくないけれども、意図せずに訴訟になっちゃうということをやはり避けなければいけないと思いますので、そこはぜひ丁寧な運用をこの場でお願いさせていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、今回の法改正の中でやはり大きな要素としては、推定規定を導入することによっての立証負担の軽減ということはあると思うんです。

 これは、やはり今までの訴訟の中で、推定規定がないがゆえの立証の困難性ということがあるがゆえになかなか訴訟件数も含めて上がってこなかった、実効性が上がらなかったという部分があるという意味でいえば、ここは、もしかしたらそう私は否定的に捉えるものではないわけですが、しかし、逆の濫用の危険性ということもやはり避けなければいけないというふうに思うわけです。

 ある意味では、より容易に訴訟に持ち込むことができるようになったということを考えれば、余りにもそれが進み過ぎるようであれば、それは訴訟の乱発を引き起こすでしょうし、乱発された訴訟によって、本当は非はないにもかかわらず被告になるというリスクもあるわけです。

 その被告になった場合の、特にこれは中小企業であればその応訴負担というのは極めて大きなものになるということも考えられますし、やはり何よりも、この推定規定の裏返しの話ではありますけれども、侵害をしていないということの立証というのは、これはよく言われる話ですけれども、悪いことをやりましたということの証明というのは比較的容易であると言われます。しかし、やっていませんということの立証というのは、これは一般論ですけれども、極めて難しいと言われています。

 そういう意味で、こういう今回の法改正によって論理的に考えられる負の効果というのも当然これはあると思うんです。とすると、その負の効果を増大させないためにはいろいろな意味で具体的なアプローチが必要だと思うわけですが、この具体的なアプローチ、どう考えていらっしゃいますでしょうか。

菅原政府参考人 御指摘のとおり、立証負担を転換するということは、野方図にやれば非常に濫訴を招いて、訴えられた方がある意味で物すごく苦労する可能性がございます。

 それで、今回の立証負担の転換を定めました改正法案の第五条の二でございますが、これについては幾つかの濫訴を防ぐための、ある意味でバリアを講じているところであります。

 一つは、少なくとも盗まれたこと、その人がある営業秘密を盗んだことについては原告側が立証する必要性がございます。あとは、その盗んだ営業秘密をどうもこの製品に使っている蓋然性が高いというところまではまずは当然立証するというところで、勝手に、この製品は自分の営業秘密を使っているのではないかという疑いレベルでは告発できないようにしてございます。

 さらに、今度は、立証負担を転換された方の負担の軽減ということから、委員御指摘のとおり、存在しないことの証明は極めて難しゅうございます。それで、今回では、ある意味で、立証負担の軽減の範囲を製造プロセスに基本的には限定しておりまして、もしくは政令でそれに類するものもある程度追加する予定でございますけれども、製造プロセスであれば、恐らく、自分で研究開発したということであれば、そのデータが残っているでしょうし、他の方法で製造したということであれば、裁判の中でその人の営業秘密を守る仕組みが今できておりますので、きちっとそこで、原告の主張する営業秘密を使わずにこの製品ができたという証明は、製造に限ればそれほど難しくないというふうに考えております。

 そういう意味では、まずは基本的には製造プロセスに限定している。ビジネスモデル一般ですとか、サービスのやり方一般に広げるのは時期尚早だというふうに考えてございます。

神山(洋)委員 製造プロセスにまずは限定というお話がありました。私は、それは妥当なところだと思います。

 先ほどの一個前の御答弁の中で、中小企業の中には、これはいろいろあるとは思いますけれども、営業秘密ということの認識そのものがやはりまだ余り行き届いていない部分があるというお話もございました。

 確かに、それは、法律的な意味で、営業秘密及びそれの管理に対しての体制、管理方法というのが整っていないという部分はあると思うわけですが、逆に、私は、現場でさまざまそういう、特に製造プロセスにかかわる方々とも接していて思うのは、やはりこれはもううちにしかない技術なんだ的な、ある種の職人的な、動物的な勘も含めてですけれども、そこの意識というのはかなり強いと思います。それは逆に、法律的に合致をするか否かというところとは違う次元なのかもしれませんが、そこをうまく、営業秘密の今回の改正も含めた枠の中できっちりと、我が国の知財を守るんだというところにいい意味で順応させていく、その不断の細かいプロセスというのはこれからも必要になろうかと思います。

 これは言うのはやすしで、やるのは難しいと思いますけれども、ぜひそこは柔軟な取り組みをお願いさせていただきたいと思います。

 続きまして、今回の改正案の中の一つの項目で、未遂行為を刑事罰の対象にするというお話がありました。

 未遂行為、これまでと比較をすれば、刑事罰の対象にするというのはある意味私は当然だと思っていますが、よく考えていったときに、これは、物理的にどこかに侵入をして紙をかっぱらいますという昔々のスパイみたいな話をしているんだったらそれはいいんですけれども、今はもうそういう時代じゃないことは明らかなわけです。

 先ほどの御答弁の中にもサイバー空間という話が少し出てきましたけれども、例えば、サイバー空間の中で未遂ということは一体何を意味するんだろうというふうに考えるわけです。未遂というからには、これは実行の着手が必要なわけです。では、サイバー空間の中で実行の着手とは何を意味するのかという話になるわけです。

 今、年金の漏れた何のという話が出ていますけれども、あんなのは私に言わせればサイバー攻撃でも何でもなくて、単なるウイルスに感染をしちゃった、どうにもレベルの低い話であって、ああいうレベルではなくて、もっと重たい大きな意味でのサイバー攻撃なり、意図的な情報の窃盗というか、情報を盗みに来るということに対してどう防御するかという話だと思うんです。

 一方で、そこをブロックしようとするが余り、一般のその意図がない人まで未遂の行為に問われるというリスクは避けなきゃいけないという意味で、この定義をやはり明らかにしていただきたいですし、具体的な事例も含めてお話をしていただきたいわけです。

 例えば、それはサーバーに何らかの形で不正なアクセスをしようと最初にしたときなのか、もっと手前でそういう意思を持ったときなのか、セキュリティーのブロックをとって、さらにサーバーにまで侵入できたときなのか、そこで具体的なファイルにアクセスをしたときなのか、それをとろうとしたときなのか、これはいっぱい定義があり得ると思うんですね。

 どういう定義でサイバー空間の中での未遂の行為というのを定義しているのか、この点を明確にしていただきたいと思います。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、未遂罪が成立するか否かということにつきましては、実行の着手があったかというところが大きな基準となるわけでございます。

 一般的に、実行の着手があったか否かというところにつきましては、その保護利益の侵害に至る現実的な危険性のある行為があった、そんな時点が基準となるというふうに解されていると理解しております。

 その具体的な判断につきましては、個別事象におきましては、裁判所で事案に即してなされるものではございますけれども、これまでの裁判実例、最高裁の判例等も含めて、御指摘のサイバー攻撃などについて考えてみますと、例えば、今先生の御指摘にもありましたけれども、よくある最近のサイバー攻撃では、通常のメールのやりとりをして、偵察メールみたいなものが送られた上でウイルスメールが送られるというようなことがあろうかと思います。

 そのような場合には、通常メールのやりとりを経た上でウイルスメールを送られた瞬間、そうした行為などが、受信者が当該ウイルスメールを開封してシステムが乗っ取られる危険性が上昇しているというふうに評価できる場合には、未遂罪が成立し得るものというふうに考える次第でございます。

神山(洋)委員 ここだけで、全ての危険性、それを排除するための方法論を議論し切ることはできませんが、今のお話だけ伺っても、非常にいろいろなパターンがあり得るだろうなということは思うわけです。

 私が懸念をしているのは、そのことの濫用というか、間違った適用によって、意図せざる被害者が出るということはやはり避けなきゃいけない、そういう意味でありますので、ぜひそこは配慮をいただければなと思います。

 ちょっと順番を入れかえさせていただきます。今回の一連の法改正に至るさまざまな検討の中で、今回は抑止力を上げるのだという観点で幾つかの法改正の中身がとられているわけですが、例えば、罰金刑を引き上げますとか、輸出入を禁止しますとか、そういういろいろな話があるわけです。

 抑止力を上げるためにいろいろな法改正、適用範囲を広げるというのは大事だと思うんですけれども、法律的にこれはだめですよという範囲を広げるだけじゃだめですというのはここまでも議論があったとおりで、要は、それを実効あらしめるためには、取り締まることを含めた実力的な意味での機関の整備、まさに実行力を高めるということが必要だと思います。

 少なくとも、そういう意味でいえば、現状よりもその能力を高めていかなきゃいけないんだと思うわけです。これは、税関の話もあれば、情報を含めた意味での関係省庁間の連携ということもあろうかと思います。

 その具体的な強化策はどういう内容なのか、御確認をさせていただきたいと思います。

山際副大臣 当省におきましては、今般の法改正と並行いたしまして、捜査当局と連携した相談窓口、営業秘密一一〇番を設置する、あるいは民間との連携で官民戦略会議等々を開催して、取り組みを進めてきたところでございます。

 また、御指摘がございました税関の強化という観点からは、財務省と組みまして、効率的に、かつ、公正に差しとめるための手続の税関体制等の強化策、これも早急に検討してまいる予定でございます。

神山(洋)委員 ここまでの法改正に至る議論の中で、今回は見送られたというふうには伺っているわけですが、この不正競争防止法というか、営業秘密を盗み取ろうとする意思に対して、共謀であるとか、そのことの教唆ということも処罰範囲に加えたらどうだという検討はあったけれども見送られたというお話を伺っています。

 その理由をここで御答弁いただければと思います。

菅原政府参考人 先ほど議論もありましたけれども、今回、未遂罪については、委員も御指摘のとおり、実行の着手の時点で未遂というのは成立するわけでございますけれども、それ以前の、いわゆる共謀のような、誰かと営業秘密を盗もうという相談をした段階、もしくは準備行為をしている段階について、今回の処罰の対象にするかどうかというところについて、我々も議論はいたしました。

 今の我が国の法制におきましては、委員御案内だと思いますけれども、例えば共謀については、刑事責任を問う根拠となる道義的非難可能性が乏しいということから、経済犯を含めたほとんどの犯罪類型については処罰対象外になっておりまして、例外的には破壊活動防止法、いわゆる破防法のような極めて限定した場合にのみこの共謀罪の適用の可能性が法制上は指摘されているところでございます。

 諸外国では営業秘密侵害の共謀が処罰される可能性もございますけれども、これは、諸外国における立法論もしくはいろいろな事犯の積み上げ、あとは国情による違いもあるものと考えます。

 例えば、現在、国会に提出されるも廃案となっております組織犯罪処罰法改正法案、この中では共謀罪の処罰規定が規定されているというふうに承知しておりますけれども、こういった、いわゆる組織犯罪を防止するところでの共謀罪においてすら、まだ我が国では明確な法律上の決定がなされていないということを考えれば、こういった国会もしくは世間一般での共謀罪に対する国民の理解のようなものをしっかり認識した上で不正競争防止法上で取り上げるかどうかを検討すべきというところで、今回は見送ったものでございます。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 時間がなくなりましたが、最後に大臣、一つだけ。

 企業間の今回の法改正ということは大事だと思うんですが、一方で、これは国対国または国に関連をする機関という意味では、私はカウンターインテリジェンスの観点も極めて大事だというふうに思っております。

 たくさん伺いたいことはあるわけですが、本来は、カウンターインテリジェンスの話はこの不正競争防止法だけの話ではありませんし、もっと大きな観点で語られるべきだと思いますが、その観点で、やはりこれからもこの中身をレベルアップさせていくということは大事だと思いますし、経産省のみならず、これは場合によっては警察庁だったりとか防衛省だったり総務省だったりといろいろまたがる話だし、NISCもかかわってくると思います。

 ぜひそういった部分で、これはこの法改正のみならず、レベルアップを図っていくという意味で、最後にこれについての御所見をいただいて終わりにしたいと思います。

宮沢国務大臣 外国政府そのものとか外国政府の機関というのは基本的にこの法律の対象ではなくて、外交ルートということで対応していくことになろうと思いますが、一方で、国営企業を含む外国企業につきまして、この法律で、営業秘密を国外で使用したり漏えいする行為に加え、窃取する行為についても処罰することを可能にするとともに、国外での使用行為などについて、個人、法人に対する罰金を国内での原則より重課する海外重課規定を設けることとしております。

 まさにこういう我が国政府の強い姿勢というものを示すことによりまして、おっしゃったカウンターインテリジェンスの一助になるかと思っておりますけれども、今おっしゃいましたように、経産省だけではなくて、やはりこれだけ国際競争が激しくなっている時代でありますから、カウンターインテリジェンスの強化ということには政府一丸となって当たっていかなければいけないと考えております。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 以上で終わります。

江田委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 おはようございます。民主党の篠原でございます。

 前回、ちょっと時間の配分を間違えまして、質問し損ねたものがありますので、済みません、最初は特許の質問をさせていただきたいと思います。

 四問ほど通告してあると思いますけれども、大臣の二つというのを一緒にお答えいただけたらと思います。それから、大臣政務官のも、時間の節約のために、二つ一緒にお答えいただけたらと思います。

 特許の問題ですけれども、グアムで首席交渉官会合というのが開かれました。資料のところに、ちょっと新聞記事でお配りしてありますけれども、新聞や雑誌はアメリカのTPA法案が通るかどうかばかりでして、まあ、あちらにかかっているので。ちょっとしか書かれていませんけれども、どうなったかというと、「知財なお溝」と、一番下の方ですね、日本経済新聞。時事通信のニュースのところでも、下のところ、「新たな医薬品の臨床データを保護する期間の設定だ。」と、知財分野が非常にもめているんですよね。当然だと思います。守ろうとする先進国、なるべく使わせてほしいと思っているベトナム、マレーシア、こういうのがあると思います。ところが、日本が一体どうやって参加し、どういう意見を言っているのかというのはよくわからないんですね。

 問題は、今もオープン・クローズ戦略と言っています。オープンにしてやっていくのも必要だし、クローズのところも必要だと。ところが、TPP交渉については専ら超クローズ戦略ばかりで、何も外へ出てこないわけです。何の得があるかというのがこれですね。得があるとしたら、ごく一部。交渉担当者が何の責めもなく自由勝手に交渉を、勝手にというか、国益を考えてやってくれていると思いますけれども、我々国民や国会議員は何も知らされていない。どうしてそんなことになるのか。いや、これでは困る、こんなことでは困る。わかりませんよ。特許のルールなんて、みんなに知らせていかなくちゃいけないと言っているのに、ルールができる過程が全く明らかにされていない。

 どうやって決められたかわからないんだけれども、特許が二十年、なのに今二十五年に、アメリカが言っているそうですよ。それから、生物系の薬剤、そこが問題になっているようです。データの保護期間というのは、アメリカは当然長く十二年とか言い、発展途上国が三年、四年と言い、日本は珍しくて八年とか言っているそうですけれども、私は日本の役割というのは大事だと思うんです。

 大臣に二つお伺いしたいと思います。この現状についてどうお考えになっているかということと、情報公開です。

 この前ちょっと申し上げましたけれども、済みませんけれどもここに西村副大臣を呼んで、五十分間やったんですね。それで行って、それが口火を切った形で、やはり情報公開していこうというふうになったのに、またクローズになってしまった。これはやはり私はよくないと思うんです、こういうことは。この二点について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

宮沢国務大臣 まず、TPP交渉の現状等でございますけれども、知財分野におきましては、新技術や、日本でつくられた高付加価値製品、コンテンツを海外で適切に保護していくということは大変重要なことでございまして、TPPの関係におきましても、我が省所管分野では特許権、商標権、意匠権などの権利につきまして、アジア太平洋地域において高水準の保護を確保するとともに、その権利が円滑に行使される制度を実現することが重要、そういう考えで交渉に臨んでおります。

 ただし、交渉内容につきましては、まだ交渉中でございまして、お答えはできないわけでありますけれども、まさに最後の詰めを行っている、こういうことでございます。

 当省関係以外の分野につきましては、私自身も新聞報道に出ている程度の知識でございます。

 そして、国会議員にも公表すべきということでございます。西村副大臣とのやりとりも拝聴をしておりました。恐らく甘利大臣が今、秘密保持の制約の中で政府としてどういう工夫ができるか悩まれているんだろうと思っておりますけれども、そもそもで言いますと、憲法上、条約につきましては、内閣が締結をする、ただし、事前に、時宜によっては事後に国会の承認を経る、こういうふうに規定されております。したがって、条約を締結すること自体は、まさに内閣の権限であろうと思います。

 そして、一方で、それぞれの国に事情があって、アメリカにおいてはTPAという制度があって、ある意味では事前にお知らせをある程度しなければTPAが獲得できない、獲得できないとその後の交渉に支障を生じる、こういう状況がある。一方で、日本においてはそういう制度がないという中で、まさに篠原委員のように交渉の過程を知りたいという方に、どの程度のことをどういうふうにお示しするかということであるわけです。

 例えば、アメリカと同様に秘密保護がかかった場合に、今の状況を篠原議員が知ったとして、それをどういうふうに使われたいと思われているかというのは正直言ってよくわからないことでありまして、知ったとしても外には言えない、国会でも議論ができないということになりますと、ある意味では宝の持ち腐れみたいな話なんだけれども、それでもお知りになりたいんだろうな、そうなのかなというふうに思っております。

篠原(孝)委員 情報を与えるに値する見識があるかどうかという問題はあるかとは思いますけれども、それなりのアドバイスをできて、これじゃだめだということを言えるんじゃないかと思いますよ。決まっちゃってからこれでやってくれと言うだけじゃなくて、ここはこういうふうに攻めた方がいい、ここは譲ってもいいんじゃないかというのが言えるんだろうと私は思いますよ。

 今、日本国内は、審議会や何とか小委員会でも、みんな下手すると、担当者よりも関心のある国民の方がアクセスができるぐらい、審議経過がわかるようになっているんですね。これは大進歩だと思います。それがパブリックコメントなどに後で生かされて、それを聞いてまた直したり、形式的にやるだけで全然聞いていないというのもあるかと思いますけれども、しかし、プロセスとしてはそうなっている。ところが、ここはなっていないので、ここのところは私は改めていっていただかなければいけないと思います。

 どういう提案をしているかというのは副大臣や政務官にお伺いすることになっていましたけれども、大臣からお答えいただいたので、これはちょっと省きまして、不正競争防止法の方に移らせていただきます。

 不正競争防止法、これは質問にないんですけれども、ちょっと答えていただきたいんですけれども、略称が不競法というんだそうですね。余りいい名前じゃない。好況法だったらいいんですけれども、フキョウ法なんというのは。これは、特定秘密保護法と、個人情報保護法とやってきている。だから、もっといろいろ、そういう名前を考えるのは経産省の皆さんは得意じゃないですか。何でこんな古ぼけた、不正競争防止法というのは公正取引委員会の法律かと思いますよ。

 だから、何か、機密とかなんとか、産業機密保護法とか、そのぐらいのことは考えなかったのかなと思うんですけれども、いかがでしょう、こんなのは大臣の一言で変わったりするものですから、大臣。

宮沢国務大臣 産業競争保護法だと、今の法律よりは語感として若干狭くなるのかなという気がいたします。なるべく、この略語は使わないようにしていきたいと思っております。

篠原(孝)委員 その方がいいと思います。

 それでは次に、富田さんも質問されましたけれども、中小企業です。中小企業のところ、私はわかりませんけれども、大企業が中小企業の技術を盗んでいると。農業界にもこういうのがあるんです。ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 私は、長野県の飯山市という一番北の市です。エノキダケの栽培が、栽培というか、外でやるんじゃないんです。冬の労働力が余っているときに、あれは冷たいときにちょうどいいんです、菌を埋めてというのは。あれは、松代の農家が偶然発見して、そして中野市でやり、今も中野市、中野市は私の地元中の地元なんですね、そこでいっぱいやっているんです。

 飯山市の支持者訪問に、冬、雪になる前に行こうと。あそこに家があるじゃないですか。いや、もう潰れて廃屋になっていますよと秘書が言うんですよ。煙が出てるんです。歩いて行ってください、五十メートルぐらいですが、車が動けなくなるといけないからと。行ったら、この件を聞かされるわけです。一生懸命やっていたと。ごめんくださいと言ったら、腰の曲がったおばあちゃんが出てきて、篠原さんがわざわざ来てくれたのに、おらのじいちゃん、耳が遠くなって困っちゃっているんだと言っておじいちゃんを呼んできたら、じいちゃんはじいちゃんで、うちのばあさんを見てくれ、毎日おじぎしている、一日じゅうおじぎしていると。八十歳ぐらいのお年寄りのおじいさん、おばあさんが、おれとばあさんでこれをやっているけれども、このエノキダケも終わりだと。どうしてか。

 皆さん、お聞きになったことがあるかと思いますけれども、ホクト、北海道に進出して、この前工場が焼けていますけれども、ホクトと雪国まいたけというのが、エノキやシメジの産業に乗り出しているんです。ホクトというのは、もともと機材を売る会社だったのに、自分でできるという一番いいノウハウを、農家がいろいろ工夫しては直しているんです、彼らは特許だとかなんとかという概念はないんです。先進地視察をやって、みんな日本じゅうに広まっています。

 だから、一村一品でどうこうと大分県でありましたけれども、梅栗植えてハワイへ行こうと。あれは実は、本当のお金は、中野から考案されたエノキダケでやっていたんです。今、九州でも北海道でもできるんです。これは完全に、わかりませんよ、わかりませんけれども、小さな農家が冬の余った労働力を生かして細々とやっている。それを大企業がとっている。何でキノコ産業ができるかというと、おてんとうさまと勝負するのはできないと思いますけれども、あれは工場生産と同じようにできるんです。だからなんです。そして、仕事を奪ってしまう。こういうのはよくないなと思います。海外のことを一生懸命心配されていましたけれども、国内のこういうのをきちんとやっていただきたいというのが僕の要望です。

 そして、ちょっと資料の裏側のページを見ていただきたいんですが、カツオ、マグロ、この産業界のことです。こここそ、先ほどの富田さんの週刊ダイヤモンドの電機企業のがありましたけれども、よく言えば技術移転、悪く言えば技術が盗まれていた。左側は漁獲量です。見てください。一九六〇年、ほかの国はゼロに近いんです。日本が遠洋漁業に進出して、世界じゅうで魚をとって歩いていた。一九七六年から海洋法、二百海里時代で追い出されるわけです。

 典型的なんです。こういうふうにほかの産業もなってしまうというので見ていただきたいんです。いいですか、どうなったかというと、締め出される、仕事がなくなるんです。漁業界に、そんな暴利はむさぼれませんから、高給をもって外国企業に迎えられるなんてないんです。仕事がなくなっちゃうんです。だから、資料が多くなり過ぎるのでやめましたけれども、中古漁船が中国、韓国、フィリピンにどんどん出ていくんです。かつ、漁労長と一緒に出ていくんです。おわかりになりますか。どうやって魚をとるか。はえ縄漁業、カツオの一本釣りなんて、我々が行ったって全然釣れませんよ。相当熟練した人じゃないとだめだ。だけれども、二年、三年訓練するとよくできるようになる。

 ばあっと、インドネシア、台湾、韓国、そして最近は中国です。これは全て技術が移転し、人も行ったんです。野方図にしていたんです。これは今の御時世に合わせると、企業の海外移転と同じなんですね。

 こうやっていったらどうなるかというと、韓国人などはマグロなんてそんな食べなかったのに国内でも消費するようになってきていますけれども、当然、輸出先国は日本です。右側、どんどんどんどん輸出されてきていて、そして、我々日本人は真面目です。まあ悪いのもいるかもしれませんが、ほとんどルールを守って、とり過ぎは抑えますよ。しかし、外国の漁船は、簡単に言うと、自分たちも食べませんし、やらずぶったくりみたいな感じでとって日本に売りつける。

 どうでもいいことをちょっと申し上げさせていただきますと、これは誰がそういうことをしたかというと、よかれと思ってやられたんですけれども、商社が絡んでいるわけですね。それはそうです、日本に技術があって漁船もある。

 だから、ちょっと思い出していただきたいんですけれども、三菱商事の社長、三村庸平、槙原稔、二人とも水産部長をやられて、そして三菱商事の社長になったんです。こういうことと関係あるんです。

 これはなぜ長々申し上げているかというと、日本のカツオ、マグロ漁業界、これと同じことをほかの産業界でやっていたら、日本の産業もいずれそうなる。何か、先ほどのところではサムスンに技術者が行っていると言っていましたけれども、進んで行っているのは、工場を移転しているため。みんな技術があちらに移転されていきますよ。そして自分たちでつくるようになるのは当たり前ですよ。だから、私は、そういう短期的なのを考えるのはいかがなものか。

 それからもう一つ、ここにはあらわれていませんけれども、みんな漁業は大先進産業なんです。だから、外国人労働者は入れちゃいけないというのがありましたけれども、漁船員の大半が外国人漁船員になっていくわけです。まあ、法の目を盗んでというのがあるかもしれません、日本に寄港しませんからね。安い労働力で、今、実はそれは日本の船舶にも同じようになっていっているんです。

 どうでもいい話かもしれませんが、ホルムズ海峡で、あそこで機雷掃海して日本のタンカーをと言っていますけれども、タンカーを動かしている人たちの大半は外国人で、日本船が狙われるようになっていったら船員が来てくれないという問題が、あっちの委員会でやる話ですけれども、そうなっているんですよ。だから、よく見ていただきたいんですけれども、こういうのがあるんですよね。僕は、こういうことを本当に考えていかなけりゃいけないと思っております。

 それで、質問ですけれども、この漁業者に悪い意図はなかったです。漁労長も。仕事がなくなっちゃったんです。漁もなくなり、外国に行けなくなった。職場を失う。船は余っている。中古船とともに、漁労長とともに行ったんです。

 しかし、では、今現にどういうふうに流出しているかというと、研究機関が調査したものがあります、三菱リサーチですが、中途退職者、ここが問題なんです、五〇%ぐらい。中途退職者なんてほとんどいなかったんですよ。ミスで行ってしまっているから、不正競争、ここにひっかかるようになるんです。ミスが二七、八%。そして、完璧に悪い意図があるというのが一二%。取引先がちょろまかすというのが一〇%ぐらい。あとは定年退職者。そして、外部からの侵入なんというのは数%なんです。

 そうすると、これは特許のところでも申し上げましたけれども、日本の就労形態とは違ってきているわけです。途中で転職していくんですよね。このルールはちゃんとしなくちゃいけないんじゃないか。

 そして、特許のところでも同じなんですが、では、転職していくんですけれども、その転職者が、仮にそのノウハウを自分で考案し、自分が発明者だったと。発明者だったけれども、ろくに処遇もされていないし、余り使ってくれない、だから外国に行くという、こんなのはどうしたらいいんですか。この問題についてどう対応するのか、お答えいただきたい。

山際副大臣 大変難しい問題でございますけれども、今、漁労長のお話がございましたけれども、ものづくり等々も含めまして、当該技術が転職者自身によって考案されたもの、ノウハウも含めてでございますが、であったといたしましても、研究者を雇用し、研究費を賄っている企業においてこれが営業秘密として管理されているものであれば、当該転職者が自由に利用することはできないということが原則でございます。

 ただし、転職の自由、あるいは途中で解雇されたがゆえに転職せざるを得なくなったというようなことも含めてでございますが、その調和を図る観点から、第一に、当該技術が一般情報から区分された企業固有のものである場合に限定されるということ。また、転職による当該技術の利用が民事上の責任追及の対象となる場合は、事業者の損害の程度、転職の経緯、営業秘密の開発への貢献の程度、貢献に対する報酬の有無等を踏まえて、信義則に反する場合に限定されること。特に、刑事罰の対象となるためには、転職前に転職後の企業と営業秘密を開示することを約束していた場合に限定されることでございます。

 また、当該技術者が発明者である場合には、実際に特許出願がなされるか否かを問わずに、特許法に基づいて適切な報奨を受けることができることはもちろんでございますけれども、そのようなルールになってございます。

篠原(孝)委員 では、一つだけ、今聞いていてあれですけれども、漁業者の味方、弁護をしておきます。企業は潰れちゃったんです。職場がないんです。日本で雇ってくれるところがなくなっちゃったので行っているんですね。こういうような場合。

 だけれども、非親告罪になってきているというのは、国の富に技術がなってきているんですね。一企業だけじゃない、いろいろ悩みがあるんだろうと思いますけれども、これは経産省の法律事務官がやる仕事だと思いますけれども、そういうことを念頭に置いてお仕事していただくことをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

江田委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 おはようございます。田嶋要です。

 きょうは、大臣と何か服装が似ているなと思いながら立っておりますけれども。

 前回も山際副大臣にもお越しいただいて、サイバーの話をさせていただきました。お配りした資料の一でございます。

 今読むとそうだなというふうに改めて思うわけでございまして、ただ、あのときは、電力自由化に伴ってこれからリスクが高まると私が思っていたら、同じことをおっしゃっていた方がいますというこの左側の記事。しかし、まさか電力ではなくて年金でというところが、私も想定を超えておりました。そこは私も含めてでございますけれども。

 結論的には、日本の年金はやはり鬼門ですよね。だから、やはり、いろいろ失敗も重ねてきましたけれども、これまで以上に対策をとらないと、また三度目の失敗ということも起きるのではないかなと思います。

 そこで最初に、お配りをした資料の二をごらんいただきたいと思いますが、NISCさんですか、年金というのは、今政府が指定している重要インフラ十三分野には入っているのでしょうか。

三角政府参考人 お答えいたします。

 重要インフラの情報セキュリティー対策につきましては、民間事業者や地方公共団体をその対象といたしまして、重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第三次行動計画を定めております。この……(田嶋(要)委員「入っているか、入っていないか」と呼ぶ)入ってはございません。

田嶋(要)委員 この十三分野は、多くは民間関係でございます。「政府・行政サービス」というのも一つ書かれておりますが、では、この中にも入っていないということでよろしいですね。

 そういうことでございますが、私、今回のこのことを受けて、私もこれに年金を入れるべしということは前回そこまでさすがに思いつきもしませんでしたけれども、この重要インフラというのは、電力などに象徴されるように、言ってみれば基幹サービスですね、そういうイメージが強いわけです。しかし、今回このことが起きて改めて考えてみると、水道が突然とまったら暮らしに困る人はいる、振り込まれる日に年金が振り込まれなかったらやはり苦しむ人がいるはずですね。

 そう考えると、ちょっとインフラという領域から外れる感じもしますけれども、私は、年金というものも重要インフラに入れた方がいいんじゃないか。これはかつて十三なかったんです。何か専門家が議論して、右側の化学、クレジット、石油、この三つが加わったんですね。

 そういうことで、今回の失敗を踏まえて、これはぜひ重要インフラに加える検討をしていただけないでしょうか。

三角政府参考人 お答えいたします。

 年金事務に係りましては、政府機関でございます厚生労働省、ここの事務と考えておりますので、そこの年金事務は、国の機関である厚生労働省所掌事務を通じまして、厚生労働省と日本年金機構が一体となって処理している。したがいまして、かかる事務の情報管理につきましては、両組織を一体不可分のものとして考えまして、国の対策として取り組んでいくものがいいと考えております。

田嶋(要)委員 何でもいいですけれども、失敗したんだから、もうちょっと考え直したらどうですかね。その建前はわかりますよ。しかし、失敗したんだから。だから、要は、大事なことは二度とこんなことが起きないようにすることでしょう。別に厚生労働省がどうのこうのという理屈よりも、同じことを繰り返さないために考えたらどうですかと言っているんですよ。検討してくださいよ。

三角政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおりでございまして、今回の事案につきましては非常に深刻に受けとめております。

 現在、検証委員会、それから私どもNISCの中でも専門家を集めました原因究明調査チームをつくっておりまして、そこの検証結果、それから調査結果を踏まえましてしっかりと考えていきたい。その間で、見直すべき、それから考えるべき点、これをしっかりと考えてこれからやっていきたいと考えております。

田嶋(要)委員 おっしゃるとおりなら最初からそう言ってください。

 先ほど神山委員の方からも、これは何か、大げさな、深刻な攻撃じゃないんですよ。恥ずかしいんです、こんなことで漏れるのは。だから、余りのレベルの低さに世間は唖然としているというのが現実じゃないでしょうかね。

 そこで、次のページをごらんいただきたいんですが、今のが重要インフラですが、次の統一基準群の改定、これは政府全般に当てはまるものだそうでございます。

 その一番頭の、主な改定内容の標的型攻撃への対策、ここを読むと、今回の年金機構にも関係するような中身が書いてありまして、これはまだ法律に基づいてやっているわけじゃなくて、今、実務上、運用、対策を強化している、そういう御説明を事務方から伺いました。

 と同時に、ことしに入って、いわゆる議法で成立したサイバー基本法が施行されたということでございます。

 それではお伺いしますが、サイバー基本法、要するにいろいろなところが自律的に頑張って取り組まなきゃいけないんですが、やはり、サイバーのことは非常に複雑でもあり専門性も高いので、NISCがしっかりとチェックをしなきゃいけないと私は考えるわけでございますが、セキュリティー監査の責任というのは誰にあるのでございましょうか。

三角政府参考人 お答えいたします。

 サイバーセキュリティ基本法に基づきまして行う監査には、まず各府省庁が統一基準に基づいて自組織について実施する情報セキュリティー監査、そしてサイバーセキュリティ本部の所掌事務として私どもNISCが各府省庁に対して第三者的立場から実施する監査、この二種類がございます。

 したがいまして、まず各省庁における監査、それがしっかりできているかということを私どもがしっかり見ていくということかと考えております。

田嶋(要)委員 この年金機構に関しては、NISCは監査責任がありますか。それとも、なければどこがあるんですか。

三角政府参考人 お答えいたします。

 年金事務は、国の行政機関であります厚生労働省の所掌事務を、先ほど御説明いたしましたように厚生労働省と年金機構、ここが一体となって処理しているものでございますから、一義的には、まず厚生労働省の監査ということから始まるのかと考えております。

田嶋(要)委員 そこで、資料の四をごらんいただきたいんですが、サイバー基本法の第二十五条でございます。

 これは、きのうたまたま産経新聞でも書かれておったのを後で見たわけでございますが、二十五条によりますと、国の行政機関及び独立行政法人というふうに監査を指定しておる状況でございます。

 そこでお伺いしますけれども、日本年金機構に対するセキュリティー監査というのは、厚生労働省は行っておったんでしょうか。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども厚生労働省年金局において、セキュリティー監査というものを行ってきております。

 平成二十二年度から二十四年度までの間に、情報セキュリティー対策に関するシステム監査という形で四回実施しまして、二十五年度以降は、日本年金機構が実施している監査の有効性の確認というところに重点を置く形での監査というのをやっております。

田嶋(要)委員 ということは、法律上は独法までですね。日本年金機構は独立行政法人ではございません、特殊法人でございますが、それでも厚生労働省がしっかり監査をしてきた、そういう理解でいいんですか。

樽見政府参考人 監査をやらせていただいておりました。しっかりできていたかということに関して言いますと、今回の事案を考えますと、いろいろ反省しなければならないところがあるかなというふうに考えておりますけれども、やることはやってきたということでございます。

田嶋(要)委員 ちょっと私は不思議だなと思ったのは、相変わらずなかなか情報が出てこない今回の問題でございますが、すぐわかっていたことが二つありますね。一つは、四情報漏れたのが何件、三情報が何件という情報。それからもう一つは、五十五万件にパスワードがなかったということがすぐ発表されましたね。私はそれを聞いて思ったんです。そんなにすぐわかることを把握していなかったのかということなんですよ。パスワードをしっかり全部にやっていたら、状況は相当違っていたんじゃないか。

 しかし、調べたら、百二十五万件中五十五万件もパスワードがなかったということがすぐ報告されたということは、それを監査の対象にしていなかったということなんですかね。なぜそういうことがわかっていなかったんですか。そういう状況は本来内規違反だから、やらせなきゃいけないはずなのに、なぜそれを把握していなかったんですか。

樽見政府参考人 パスワードがついていなかったというところの確認でございますけれども、実際、今回は、警察の方から、外に情報が出ているというところの情報をもらいまして、それに基づいて、日本年金機構において、どのファイルのどういう情報というところの特定を木曜日の夜から日曜日までやったということでございまして、その中で、そのファイルに該当するデータをいわば一個一個見ていくような形で確認したというふうに聞いております。

 したがいまして、きれいにぱっと出てきたというよりは、一生懸命見ていったということだというふうに理解してございますけれども、そういう形で確認をしたということでございます。

田嶋(要)委員 今、私は情報流出のことは言っていないんですよ。警察が情報流出を最初に見つけたということは説明を聞いておりますが、情報流出以前の話です。

 ふだんの組織のやらなきゃいけないルールとして、パスワードを必ず設定しなきゃいけないにもかかわらず、半分近くの五十五万件がやっていなかったということが、すぐに調べればわかるようなことも、ふだんの監査の中には入っていなかったんですか。厚生労働省は監査をしているとおっしゃいましたけれども、イロハのイが抜けていたような、そんな印象でございますが、そこはもう一度どうですか。

樽見政府参考人 実は、私、きょうここへ参るに当たって、過去数年の監査の状況をちょっと教えてもらったんですけれども、平成二十四年度の情報セキュリティー対策の実施状況に対する監査という中で指摘している事項の中に、個人情報データ等のパスワードを用いた保護の実施状況というのをやっています。

 ですので、見て指摘をしているというところはあるということでございますが、結果的に見ると大変不十分であったということであろうというふうに反省をいたしております。

田嶋(要)委員 不十分なのは明らかでございますので、言葉だけで、前回副大臣からもしっかりとした御答弁はいただきましたけれども、それでも実態はこういうお粗末な状況があるんだということで、特に、年金は鬼門だと肝に銘じて、やはり私は重要インフラにもしていただくべきだと思うし、しっかりここはゼロから対策を見直していただきたい。これはやはり人災ですよね、明らかに。だから、一番の基本中の基本が押さえられていなかったことが事態を深刻化させてしまったということだろうというふうに思います。

 それでは、この法案との関係でございますが、たまたまこの法案審査のタイミングでこういう問題が出てきたので、少し想像力をたくましくして考えたところ、お尋ねをします。副大臣でございますが、今起きている年金情報流出の事案というのは本法の処罰対象になるんでしょうか。

山際副大臣 本法の適用範囲について、これは最高裁の判例において、競争秩序を維持すべき分野に広く認める必要があるものとされていることを踏まえますと、営利事業か否かにかかわらず、広く経済上その収支計算の上に立って行われるべき事業が含まれるものと考えてございます。

 もっとも、不正競争防止法違反が成立し得るか否かの判断に当たりましては、本件の年金情報が年金機構においてどのように管理されていたのか、サイバー攻撃を行った犯人は不正な利益を得る目的ないし年金機構に損害を与える目的を持って本件犯行を行ったのかといった具体的な行為態様が明らかにされる必要があるため、現段階では判断できないものと考えます。

田嶋(要)委員 ありがとうございます。

 現段階ではということですが、了解いたしました。

 ということは、営業秘密という言葉にかかわらず、それは必ずしも企業のみではなくて、ひょっとしたら、場合によってその三要件と言われるものが満たされれば、例えばそれが政府であろうと独法であろうと自治体であろうと特殊法人であろうと当てはまるということでよろしいですか。

菅原政府参考人 今、副大臣から申し上げたとおり、広く経済上その収支計算の上に立って行われるべき事業ということでございまして、国が例えば戸籍情報のように、いわゆる収支というか経済上のこととは全く関係なく何らかの情報を入手しているという場合には該当しないと思いますが、今回の年金事業のように、ある意味で経済行為を補う一環としてやる場合には、それが国であれ自治体であれ独法であれ、例えば営利行為を目的としないと称している社団、財団、もしくは医療法人、そういった人たちの情報についても形式上は営業秘密の概念に該当し得ると思います。

 ただ、それを侵害したかどうかというところについては、図利加害目的という別の要件がかかわってくるものと承知しております。

田嶋(要)委員 政府から説明を受けた資料の中では、ベネッセのケースが個人情報が漏れたケースでありますが、ベネッセは株式会社でありますけれども、私は今回のこの事象をもっていろいろ考えてみますに、個人情報はいろいろな団体から抜かれる可能性があるということで、企業だけではない。抜かれた企業が商売をやっていないからこの法律は適用されないのかということについてちょっとお尋ねします。

 流出した個人情報が万が一商売に利用されても、年金機構が直接不利益をこうむるわけではない。しかし、今個人情報が抜かれています。その抜いた企業が不正に利用して、そして、当然そういうのを利用できない競合他社が相対的には不利益をこうむることになりますが、その場合、この競合他社というのはこの法律に基づいて訴えを起こすことができると考えてよろしいんでしょうか。

宮沢国務大臣 年金情報について、きのうの夕方、委員の御質問を見て、ああ、関係しているんだなと思って、さすがの御質問だと私も思っておりました。

 今のお答えにつきましては、本件につきましては中身を承知しているわけではございませんので一般論でお答えをさせていただきます。

 まず、本法、不正競争防止法につきましては、営業秘密保有者が営業秘密侵害者に対して賠償請求、これは民事の場合ですけれども、損害賠償とともに、差しとめその他の侵害の停止、予防を請求することができる法体系となっておりまして、その競合企業による不正競争防止法の利用を想定するものではございません。

 一方で、競合企業の場合は、当該不正利用者の競合企業が不利益をこうむる場合には、当該不正利用者の具体的な行為態様等にもよるものの、当該不正利用者の違法な行為と競合企業の不利益との間に社会通念上因果関係があると認められる場合は、いわゆる民法の不法行為に基づいて損害賠償を求めることは可能であると考えております。

田嶋(要)委員 私、今回、非親告罪化をしたということもこれにかかわるのかなと思っておったわけでございます。

 要は、情報を抜かれる団体の性質はさまざまある中で、例えば、今ビッグデータなんという話があって、役所の中には、もう喉から手が出るぐらい欲しい情報が眠っている場合があるわけですね。そうすると、それを抜いた会社だけが突然もうかります。ターゲティングマーケティング、本当にそういうものを必要としている日本の国民がどこかがわかったりして、そういうことはあり得ると思うんですよね。そうなると、相対的に、真面目にやっている会社はもうからない。そんなようなことを防止することは、今回の法律の中で対象となるかということをお伺いいたしておるわけでございます。

 そういう意味では、可能性としては、今後、この法改正で、非親告罪化ということも含めて、訴えを起こせる人のエリアが広がるわけですから、今回、例えば、年金機構がこの法律に基づいた訴えを起こすことがないとしても、第三者、不利益をこうむる可能性のある第三者が訴えを起こすということは考えられるという理解でよろしいですか。

宮沢国務大臣 民事と刑事を分けて考えなければいけないと思っておりまして、非親告罪化するというのは刑事の世界であります。

 そして、民事の場合は、まさに今回は挙証責任の転換というようなことでありまして、ですから、非親告罪化するということで、当該年金機構のような実際に損失が生じていないというところが訴えを起こさなくても、捜査当局が捜査ができて事件にできる、こういうことになりますと、逆に言いますと、そういうことが起これば、民法の原則に基づく民事の訴訟についても、ある意味では競合企業に有利な状況が出てくるという可能性がある、こういうことじゃないかと思います。

田嶋(要)委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一点お伺いしますけれども、今回、自然人への罰金を一千万以下から二千万以下に引き上げたということでございますが、そもそも今回の法律を改正するきっかけになったのは、数億円の高額報酬の事件などを契機としているわけであります。数億円の高額報酬の事件を契機としているのに、一千万円を二千万円に引き上げただけで、なぜ抑止力が高まるんでしょうか。

宮沢国務大臣 今回、おっしゃいますように、一千億円程度の高額の賠償請求で、海外に技術流出事案が続発するといったようなことで、営業秘密侵害の懸念が増大しているということで、罰金の引き上げを行いました。おっしゃいますように、一千万円を二千万円に引き上げるとともに、海外の場合はさらにそれを三千万円としたわけであります。

 まさに数億円の報酬をもらっているわけで、三千万円じゃ少ないではないか、おっしゃるとおりでありますが、一方で、本法案におきまして、営業秘密を他者に売却することによって得た金銭や営業秘密たる設計図を使用して製造した製品といった犯罪収益は、個人、法人とも上限なく全額を没収できることとしておりますので、抑止力は極めて高くなったと思っております。

田嶋(要)委員 加えて、犯罪収益という点を御指摘されました。全くそのとおりであろうというふうに思います。

 ただ、であれば、この間はもらい得、逃げ得がずっと続いている状況を放置していたということではないのかなと私は考えるわけでありますが、大臣、これは、振り返って、前回も違う法律で同じようなことを言ったような気がしますが、タイムリーに法改正をしないと、やはり不正な状況が野放しになっているということではないかと思いますが、そこは大臣、お認めになるわけですか、今の状況は逃げ得の状況を放置していると。そういう状況が長く続いてしまったということは反省が必要だと思いますが、そこはいかがですか。

宮沢国務大臣 もっと早くできれば、それはよかったんでしょうけれども、この法律は、中身において、挙証責任を変えるとか、まさに全額没収するとか、非親告罪にするとか、実は、産業界、経済界に与える影響というのはかなり大きなものがございました。

 そういう中で、ある意味では、皆さん、関係者に納得していただく時間が必要だったということも御理解いただきたいと思います。

田嶋(要)委員 一回であれもこれも一緒にやろうとすると、時間がかかって仕方がないというのはあると思うんですよ。私は、本当に急がなきゃいけないものは、早目にそこの改正だけでもやるようなことをしないと、前回も申し上げたかと思いますが、法律事項ですから、時間もかかる、だから、毎回毎回出すようなことも含めて、やはり急ぐことは急いでやってもらいたいと私からの要望でございます。

 それでは、もう一点、海外重課という考え方でございます。

 私は、この考え方はどうもひっかかるんですね。これはよく見ると、アメリカやドイツでも海外重課という考え方は採用していないと思います。法のもとの平等に反するのではないかということが一つありますし、今やネット犯罪が多い中で、海外で犯罪行為が行われたのか、海外で利用されるのか、実際問題、そんなことはなかなかわからないと思うんですね。だから、国内と海外とで線を引くというようなことは本来私はやる必要もないのではないかというふうに考えますが、そこはいかがですか。どうしてこういうことにするんですか。

山際副大臣 本改正案におきましては、国外に営業秘密が流出した際の我が国経済あるいは雇用に対する悪影響の大きさ及び我が国の技術が国外へと流出するリスクが近年増加しているということに鑑みまして、国外流出に対してはより強い抑止力を働かせる必要がある、このような観点から海外重罰規定を導入することといたしました。

 この規定は、あくまでも営業秘密侵害の場所が海外である場合の重罰を規定したものでありまして、日本法人であるか外国法人であるかによって差別化することではないため、法のもとの平等には反しないものと考えてございます。

 また、日本国外で使用する目的については、例えば、取引の際のメールや侵害者の言動についての証言などの証拠に基づいて、捜査当局において適切に立証がなされるものと考えてございます。

 なお、アメリカやドイツ、韓国においても、外国政府のための行為や海外での行為について重罰を行っている例があるものと承知してございます。

田嶋(要)委員 私は、これは、知財戦略で世界最高レベルを目指すということを再興戦略にもうたっているわけでございますので、であるならば、そして、おくれてしまっているという現状認識もあり、アメリカやドイツをある意味参考にしながら追いつこうというステージに今あって、そういう中で、ドイツとかアメリカが採用しております罰金の上限がない制度ということは私は研究すべきだと思うんですが、きのう、役所の方から、罪刑法定主義があるからそれはできないんだという話をお伺いしました。

 そして、法務省の方から、罪刑法定主義はアメリカやドイツにも当然あるわけでございますので、同じ罪刑法定主義を貫く世界で、それぞれの国で上限がない制度があるにもかかわらず、日本ではそれはできませんと最初から言うのは、私は矛盾していると思います。

 そういう意味では、今回は今回として、そういう中で、本当にいろいろ工夫をすることで上限のない形ということが考えられないのかどうか。それこそ、最大に抑止効果が働いて、最大の保護ができる仕組みではないかなと私は思っておりますが、その点、どのように考えますか。

山際副大臣 罪刑法定主義の具体的なあり方につきましては、憲法の文言などの事情により異なるものと考えておりますけれども、例えば、アメリカでは、法律上罰金刑の上限は定められていない場合がありますが、実際には、独立行政委員会である連邦量刑委員会が定めるガイドラインというものが存在しておりまして、罰金刑の適用に当たっては事実上の制限が存在しているものと認識してございます。

 いずれにいたしましても、本改正案におきましては、営業秘密侵害行為によって得た利益などを上限額を設けずに没収することができる規定を盛り込んでおりまして、罰金刑の引き上げと相まって、やり得を許さない法制度となるものと考えております。

田嶋(要)委員 ぜひ、今回で立ちどまるということなく研究を進めていただいて、工夫によってできるのであれば、そういうオプションもぜひ検討いただきたいと思います。

 それでは、最後の質問をさせていただきます。やはり今までも出ております中小企業、小規模企業でございますね。

 いいツールであり、強い道具であっても、知られていないと役に立たないということでございますので、こういったものがあるんだよ、だから、オープン戦略じゃなくてクローズ戦略でいく場合に、こうやって皆さんのいろいろなものは守られていくんだよということをしっかりと知らしめていく。資料の六でございますけれども、知財活用支援センターというのがあって、かつ、四十七都道府県に窓口が設けられておりますということでございますけれども、こういった取り組みがこれから不可欠でございます。

 顧客名簿ですね。一つ前の資料をごらんいただきたいんですが、いわゆる営業秘密の類型というのは、ここに書いてありますが、私はその中でも、顧客名簿というのはやはり、今回の年金問題もそうですけれども、およそどんな業種、業界でも存在し得る営業秘密は顧客名簿ですね。

 今回のこの法律の一番イメージしやすいのは、その会社しか持っていないようなすぐれた技術ですね。それは新日鉄や東芝の例です。しかし、より普遍的に存在し、かつ盗まれ得るのは顧客名簿だと思います。だから、そのときに、顧客名簿に関してこういう対策をしっかりとれば大丈夫だよということをやはり教えていかなきゃいけないと思います。

 私、地元でこういう経験があります。

 ヘアサロンの会社があるんですが、ヘアサロンの美容師たちを育てるんですね。そうすると、育ててしばらくすると独立するんですけれども、美容師についているお客が根こそぎ持っていかれるんですよ。そういうトラブルが結構あります。ところが、持っていかれた方は歯ぎしりするだけで、結局仲が悪くなっちゃって、私、両方とも応援してもらっていたりすると非常にやりにくくなるということが間々ある。そういう経験はあるかと思います。

 その場合、もとの社長さんはどういうプロテクションをかければそういうことが回避できるのか。例えば、その美容師さんを指名してくるわけですから、それはそれで仕方がないけれども、その人の顧客名簿はマル秘と書いてちゃんととっておくとか、そういうことをもう一つやっておけば、仮にその人が独立して新しい美容室を始めても、持っていけないことになる。あるいは、その人が顧客を持っていったらそれは営業秘密の法律違反になるのかとか。そういう知識は私はないと思うんです。そこが本当にこれから大事になってこようかと思います。

 今のこの資料六の、これも、何でいわゆる中小機構と一体化してやらないのかなというふうに私は思うんですね。

 中小機構が日本の三百八十五万社のいろいろな意味でよろずサービスを海外進出を含めてやっているのに、一番何か敷居が高そうな知的財産に関してだけは違うところがこうやって担当していて、私の地元でも、違う建物に入っているようでございます、発明者協会とかいうところに。行ったことはありませんけれども。それではなかなかこれは進展しませんよ。

 三百八十五万社が自分たちの機密情報、秘密情報を守って損害をこうむらないようにするためにこういういいツールができ、今回改正されましたということをしっかりと普及させていくためには、私は、中小機構との一体化も含めて強化していかなきゃいけない、先ほどの美容師さんの例も含めて、そのように考えておりますけれども、大臣、最後に、どのようにお考えですか。

宮沢国務大臣 きょうの議論、まさに中小企業にこそ知財戦略が必要であるということが多くの委員から指摘をされまして、そのとおりだと思います。

 一方で、中小企業の七割はサービス業でありますから、おっしゃるように、顧客名簿といったようなものがかなり中小企業にとっては大切なものであるということは間違いなくて、中小企業のまさにサービス業に向けて、どういう知財戦略といいますか、営業秘密を守ることをお伝えしていくということが大変これから大事だと思っております。

 知財活用支援センターというのもありますし、また、経産省におきましても、独立行政法人工業所有権情報・研修館、INPITというところですが、そこに営業秘密・知財戦略相談窓口をことし二月に設置いたしました。やはりこれは、工業所有権情報・研修館に置いたということであって、まさに物をつくる技術といったことが入るわけでございますので、中小機構の利用を含めて、これから中小企業に営業秘密の保護についてのどういうアドバイスができるかということをしっかり支援できるような体制というものをつくっていきたいと思っております。

田嶋(要)委員 本当にしっかりお願いしたいんですが、もう一度言いますけれども、この分野は難しいという印象がやはりあるんです。わかりにくい、形がない、無体ですよね、そして敷居が高い。それをわざわざ違う団体に任せてやっていて、私は、本当にほかの分野と同じように中小企業に浸透するのかなと。

 それだったら、こういう団体を中小機構と一体化することも含めて、本当に中小企業の皆さんが知財のことをしっかり、そんなにいい道具があるんだということを学べるような環境をぜひ急ぎつくっていただきたいというふうにお願い申し上げまして、終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 午後零時三十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時四十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時三十五分開議

江田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。木下智彦君。

木下委員 維新の党の木下智彦でございます。本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 では早速、二十分ですので、さっと質問させていただきます。

 今回の法案の中で、日本国内において事業を行う事業者が保有する営業秘密について、これを日本国外において不正に取得する行為などを罰則の対象とするというふうにありました。

 ここについて少し質問させていただきたいんですけれども、いろいろと法案の説明について書いてある中で、クラウドサーバーなどの普及に伴って、国内で管理され、国外で保管されていたような営業秘密が不正に取得された場合は処罰の対象になるというふうに言われています。

 ここの中で、国内で管理されというところをちょっと聞かせていただきたいんですけれども、その管理とはどの程度のことを指して管理というふうに言われているのかというところをお話しいただければと思います。

岩井大臣政務官 お答えをいたします。

 まず、御指摘の条項は、日本で事業を行う企業が保有する営業秘密について、クラウドに保存されている場合が代表的でありますけれども、物理的には海外のサーバー等に保管されていると評価し得るような場合であっても我が国不正競争防止法の処罰対象であることを明確にすることを目的としております。

 それを踏まえまして、不正競争防止法上の秘密管理性要件というのがございまして、これを満たす情報、すなわち、マル秘の付記やパスワードの設定など、当該企業において秘密として管理されているといった要件を満たす情報については、本条項の対象になるものと考えております。

木下委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、これから先、もう既にそうだと思うんですけれども、クラウドサーバーでいろいろなところでデータを管理されている、それのオリジナリティーは日本国内にある、もしくは日本国内の企業がオリジナリティーを保有しているものに関しては、何か犯罪が行われた場合には処罰できる。これはそれなりに今の技術革新に伴った法律の改正かなというふうに理解したんです。

 実は私、前職が、クラウドを世界各国に立てて、自分の会社のデータであるとか商売のトランザクションであるとかをシステム的に全部記録したりとか、そういうことを専門にやっていたこともありまして、ちょっと質問させていただきたいんですけれども、今言っていた管理という部分が非常に微妙だなと。管理というか、オリジナリティーがどこにあるかといったところなんですけれども。

 なぜならば、ちょっと一足飛びに話をして申しわけないんですけれども、多国籍企業、もしくは、多国籍企業じゃなかったとしても、今後、コンピューター技術の発達によって、クラウドサーバーに対してデータを保管するのが、一つの国に限るものではなくなってくると思うんですね。

 例えば、その会社がBという国にクラウドサーバーを持っております、それで、その会社はもともとはAという国だからということで、Aという国が日本であったら、もしもそのBという国でサーバーに何か不正アクセスがあったりして違法に取得されたといった場合は、この法律は非常に簡単に適用されるだろうということは理解ができる。

 ただ、これが、Bというふうなクラウドサーバーを持っている国に対して多数の国からアクセスを起こして、それによって一つの営業秘密がつくり上げられるということがこれから先は起こってくるだろう。

 これは、顧客情報のみではなくて、例えば、純粋なる営業秘密というんですか、一つの商売を、オープンソースといって、自分たちのイントラネット上で、イントラネットを海外も全部含めて持っているような会社が、そこに総合的にアクセスをして、そのデータ自体はBという国で管理されているといった場合に、オリジナリティーがAの国にあるというふうにこれは言いにくいんじゃないかなと思っているんですね。そうしたときに、処罰の対象がどうなるんだろうということが一つ、私がいろいろケースとして考えていてあったんですね。

 それからもう一つ。ちょっと細かいところになりますけれども、今回の部分では、親告罪というんじゃなくなってきた。非親告罪という形にしようというふうになれば、なればなるほど、例えば、もともとその営業秘密を持っていたところが親告しなかったとしても刑事処罰の対象になる。なれば、もともと秘密を持っていたところが、自分たちがこの日本で持っていた、管理していたそういうものに対して侵害が起こったというふうに言わなかった場合に、オリジナリティーを特定するのは非常に難しくなってくるんじゃないかなというちょっと懸念を持っております。

 これは恐らくなかなか難しいところだと思うんですけれども、まず冒頭、私、お話ししましたけれども、技術革新に伴ってこういう形で法整備をされるということだと私は理解しているんですけれども、さらに技術革新がもう既に日本の企業の中では進んでいる、日本だけじゃなくて世界の企業でも私は進んでいるんじゃないかなと思っておりまして、こういうケースに対してはどういう対処が考えられるのかという辺を教えてください。

菅原政府参考人 大変専門的な設定の御質問でございまして、個別具体的に検証しないと答えられないと思いますけれども、先生がおっしゃった最初のケース、要すればA国の事業者がB国のサーバーに営業秘密をためている、それが盗まれたときは簡単なんですが、それがCとかDとか違う国からの情報がB国のサーバーに入って一つの何らかの価値を生み出しているというようなケースだと承知しますけれども、我々の理解としては、仮にCからBに入った情報だけが抜かれるというとなかなか本法の対象となるのかどうかというのは疑念が生じます。

 ただ、サーバー全体としてそういう場合というのは余り考えられないと思いますので、A国の会社がB国におけるサーバーについて全体に秘密管理をしっかりしているという場合には、そこに対する侵害については、当然A国にいる事業者のノウハウがB国のサーバー内にあるというのはもう明らかでございますので、その場合にはこの法律の対象になり得るんじゃないかというふうに思います。

 同じようなケースで、非親告罪になったときに、今言ったような解釈であれば、非親告罪として多分捜査当局は、明らかにA国にいる事業者の営業秘密がB国にあるサーバーで侵害されたということがわかって、仮に親告がない場合であっても捕まえることは可能ではないかと思いますが、先ほど申し上げたように、それがC国で発生した情報だけをB国のサーバーから抜かれる、国外情報が国外のサーバーで入ってそれが盗まれるというような場合には、明らかに我々の法律の外の話になりますので、概念的ではありますが、そういう場合には捜査当局は勝手には動けないというふうに考えております。

木下委員 ありがとうございます。

 物理的というのか、実質的に理論としてはそういう形になるんだろうと。ただ、現実問題として、そこの境目というのが扱っている側としてもわからないという状態が出てきているのかなと思うんですね。

 ただ、そのかわり、一つはまずそういったところは社内規定などで実質的にトランザクションであるとか、サーバーの中の状態を一元的に管理している部署が日本国内にあるとか、そういったことがよくあるので、そういう形で判断していくんだろうというふうに思われます。

 ただ、そうはいいながら、日本国内でそういう管理をしているけれども、その管理は実際の組織ではどうなっているかというと、日本では全く行われていない海外のトランザクションに対する責任も日本国内のヘッドクオーターが持っているという場合もあり得るので、そうなってくると余計のことややこしくなってくると思うんですね。

 そうはいいながら、それを法律のもとでどういうふうにして判断するかというのは、なかなかこれから先難しい。まだまだどんどんどんどん新しいそういう技術が出てくるでしょうから、それになるべく対応していくようなことを今後も考えていただければなというふうに感じております。

 次にお話をさせていただきたいのが、営業秘密の侵害により生じた財産などを没収することができるものとするということで、先ほど罰金の上限が決まっているというお話があって、それだけでいいのかどうかという話がありましたが、そのかわり、そこで不正に取得して、それを利用した人たちが得た利益というのも没収の対象になるというお話がありました。これは私は至極真っ当なやり方だろうなと。

 というのは、刑事罰としてある程度上限額というのは決められているかもしれないけれども、実際、それ以上に利益を得ることで刑事罰を別に物ともしないような、そういった人たちというのがある。

 これは以前にもちょっとお話しさせていただきましたが、しばらくの間サンゴの密漁のお話がありましたけれども、あれも罰金というのはそんな大した金額じゃなくて、それ以上の利益があるから、捕まったところで、お金がもうけられればいいという人たちが出てくるということだと思うんです。そういうことの歯どめにはこれは非常に有効な方法だろうなというふうに私は考えていたんです。

 刑事罰に関してはそうだと思うんですね。ただ、これは二つのパターンがあって、刑事罰ともう一つ、民事に関する部分がある。

 というのは、民事に関しては、営業秘密を盗まれた企業はそれだけ被害をこうむるわけで、ではその被害をこうむったことに関して、どれぐらいの損失、利益があったかというふうなことを算定して、そこで損害賠償が請求されるということになります。

 ただ、私、いろいろなケースで、刑事と民事と両方争っているパターンを見ていますけれども、民事に関して、例えば裁判所の裁定で、どれだけの損害賠償というふうにして裁定が下りましたというふうに言っても、被害者側がなかなかそれを受け取れていない。裁判所の裁定ではそういうふうになったけれども、実際、雲隠れされてしまったとか、そのまま知らんぷりをされていて、なかなか回収ができないというふうなケースをよく聞きます。

 そこで考えたときに、やはりこれだけの罰金が刑事で決まっていて、特に上限が決められた罰金についてはまだしも、それによって得た利益というのが莫大であった場合に、その莫大なものを没収された、その中から、民事でもしも裁定が下ったときに、まず最初に優先的に支払われる、そういうような決めをした方が私はいいんじゃないかなというふうに思っていて、そういう考え方がこういうところで適用されないかどうかということについてお話をいただければなと思います。

宮沢国務大臣 なかなかこれは難しい御質問でございまして、恐らく、実際に裁判の判例を積み上げていかないとなかなか出てこない問題だろうと思います。

 まず、理論的に言いますと、刑事裁判、刑事訴訟と民事訴訟が両方行われている、そして刑事訴訟が例えば先に結審をした、確定判決となったということになりますと、その没収された財産は国庫に帰属をして、国民共有の財産になります。そして、その後に民事裁判において原告側の賠償が認定されたとしても、これはあくまでも当事者間で解決されるべきことが原則であって、既に国庫に帰属した財産が原告に給付されることはありません。

 ただし、一方、こういう場合でも、全ての刑事事件で全額を没収しなければならないというものではなくて、没収により加害企業の資力が乏しくなり、民事訴訟での賠償に影響が生じかねないといった事情がある場合には、裁判所において没収の要否が適切に判断される。

 ただ、一方、民事訴訟の行方によっては、民事では賠償がゼロというようなことになったときには、余り残しておいてもいけないわけでございまして、なかなか、その辺のさじかげんというのが、これは裁判所にお願いしなければいけないことでありますけれども、難しい問題だろうと思います。

木下委員 ありがとうございます。

 そこをうまく見ていくというのはなかなか難しいところだろうなと思いますが、実際に、そういうケースがよく見られるというところも聞いているので、そういったところを善処できるような運用がなされればいいなと思っておりますので、今後、また御検討いただければなと思います。

 あと五分ほどなので、用意していた質問の中で三番目をちょっと抜かせていただいて、通告は漏れているんですけれども、資料をお配りしております。この資料についての通告が抜けていて申しわけないんですけれども。

 これは何を見ているかというと、出典元に書いてある、二〇一二年の「情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」という、NPOの日本ネットワークセキュリティ協会さんが調べられた数字なんです。ここの数字はどんなものを調べているかというと、主に、インターネット上で記事になっているようなもの、もしくは会社のホームページ上の広報などに載っている事象、そういうものを全部かき集めて、二〇一二年に起こった、そういう事象を数字にしてあります。

 図一のところが、これは特に個人情報の漏えいに関しての数字なんですけれども、図一のところで書いてあるのが、漏えいした媒体はどこか、経路はどういうふうなところからかという図が出ています。ちょっと見ますと、五八%が紙媒体で漏えいが起こっている。それ以外に、二五・九%はUSBであるとか外づけハードディスクみたいなものであるとか、そういうところでパソコンから抜き出される。五・五%が電子メール。その他は、インターネットからとられたとか、いろいろ書いてあります。

 図二のところが、漏えいの原因の比率、これは、また読ませていただきますが、管理ミスというのが五九%、誤操作というのが二〇・一%、紛失、置き忘れは八%、これを合わせて大体九〇%ぐらいがその三つの要因になっているということをあらわしています。

 図三も、もう少し説明させていただきますと、これは右からずっと年次が左の方へ行くほど若くなっておりますけれども、すごく数字が動いております。どういった原因で漏えいしたかというのが毎年の記録で言われていまして、さっきの管理ミスだとかいろいろなことが書いてあります。

 見ていて思うのが、管理ミスそれから誤操作、そういったものが近年になって相当ふえている。二〇〇五年などは、紛失、置き忘れというのがそれだけで四二%あったんですが、今となっては八%を下回るような、そこまでになっていて、ほとんどがこういう状態だという資料があります。

 私、思っていたんですけれども、今回の法律というのは、不正にとった人を罰するというふうな話をされておりますけれども、不正にとったという前に、どうやって未然に防ぐかということもこれは非常に重要だろうと。先ほど、午前中に田嶋委員もお話をされておりましたけれども、今回のあの年金の問題であるとか、そういうのもそうだと思っているんです。

 たまたま、私が前職でこういうシステム管理の、セキュリティー関連の話とかもやっておったので、前職の会社にどんな管理をしているかという話をちょっと聞いたら、いろいろすごいことをやっておりまして、すごいというのか、普通の企業ではこのごろは当たり前になっていますけれども。

 例えば、USBも、外から持ってきたUSBをパソコンに差し込んでも見られないんですね。まず、だめと。例えば、パソコンからデータを抜き出したいといったときには、上司に言って、特別のUSBを申請して会社から出してもらって、そこに差し込んでデータを落とす。そのデータは、どういうふうに、どこへ持っていくために、どうするんだということを全部説明しなきゃいけないんですね。それ以外にも、外に対してインターネットで何か見るときは、当然のことながら、禁止されているようなものは見られないとか、そういうことはしてあります。

 あとは、紙媒体も多いということであれですけれども、例えばプリントアウトしたときに、プリンターの上に紙をずっと置いておくということはできないようになっていて、そうなったときに、ログが全部残っているんですね、誰が出したかとか。それぞれが、そこに紙があったら、すぐに、紙が置きっ放しになっているというようなことも言う。もしくは、誰がプリントアウトしたかということも出てくるようになっています。

 ではそれだけでいいのかというと、それ以外にも、そのままぱっと外へ持っていけないようにするために、秘密情報と言われるものは、会社のそれこそクラウドサーバー上にフォルダがあるんですけれども、そこは申請をしないとあけられないようになっていたりとか、そういう手だてがたくさん打たれているということなんですね。

 ただ、全ての会社がそういうことをやっているかというと、そうではないと思うんですね。特に、先ほど田嶋委員も言われていたように、中小企業はまだまだそこまでやっていけていないと思っておりまして、先ほどは、そういう施策をいろいろやったらどうだというふうに言っていたんですけれども、私もそう思っております。

 特に、中小企業庁で、今まで一般質疑などでもお話しさせていただきましたけれども、やはり資金繰り云々に対しての補助であるとかそういうものがメーンになっていますけれども、できれば世界に対する競争力をこういうところでつけるような、そういう施策を中小企業対策としてやっていただければなと思いまして、それで、きょうはちょっとこの資料を出させていただきました。

 ただ、通告でここは書いていないので、もしもよろしければ一言大臣からお話しいただいて、終了したいと思います。

宮沢国務大臣 先ほど田嶋委員ともいろいろ議論をさせていただきましたけれども、やはり中小企業がこの分野でかなりおくれている。しかも、中小企業においてはサービス産業の割合が大変高い。例えば顧客情報といったものも大変重要なものであるという中で、中小企業につきまして、やはり相当まさに意識を持っていただくということを徹底的にやっていかなければいけません。また、まだ適当な補助金があるわけではありませんけれども、例えばものづくり・サービス補助金といったものもこういうものに使えないわけではありませんので、ぜひそういう側面からも応援をしていかなければいけないと思っております。

木下委員 ありがとうございました。

 以上です。

江田委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 維新の党、鈴木義弘です。

 木下委員に引き続きまして、質問をさせていただきたいと思います。

 もう御案内のとおりだと思うんですけれども、先般、ハイボットですか、ロボットをつくっているベンチャー企業さんのところに視察に行ったときに、意見を述べる場じゃないと思ったものですからそのまま帰ってきたんですけれども、通常、どこの企業と何をやっているかということ自体が営業機密なのだそうです、本来は。ですから、大手の製造メーカーさんと守秘義務契約を結ぶと、そこで、どのメーカーさんと何の研究をしているか、何を商品開発しているかということ自体が守秘義務の対象になるということですね。イコール営業秘密ということになります。

 ですから、今回の法改正の中で、営業秘密にしなければならないものは企業が管理をしなさいということで、通常、秘密保持契約を結んでからいろいろな共同開発をしたり共同研究をしたりするのがすべだと思うんですけれども、その中で、大手のメーカーさんには失礼ですけれども、中小零細に対しては大変高飛車な態度で臨んでこられます。契約書一つとっても、自分たちに有利なような文章を書いてきて、全てのノウハウは自分に帰属するんだぐらいのことを平気で出してきて、それを押し通さない限りは先に進まないような形になっています。

 それと、日本は今までの長い商習慣みたいなのがあって、とりあえず物をつくるところにみんな英知を結集しようじゃないかということに主眼を置いて、その後の果実をどういう分け方をするかといったときに、大概の守秘義務契約の中で、成果の帰属をどうするかというところは、甲乙丙とか、その先があったり、甲乙で貢献度合いに応じて案分するんだ、その他協議はこの契約書以外で結びましょうという契約書に大体なっているんだと思います、物ができていないわけですから。

 ということは、そこで持ち分を何分の一ずつにするか、知的財産権になって特許を出すとか、実用新案を出すとか、商標権をどうするとかといったときに、必ずトラブルになります。社内的なルールが確立されていれば、その中で、発明者は誰と誰、権利者は誰というのが、先週議論になった特許法の改正で、そこのところはクリアになっていくんでしょう。ですから、今回の営業秘密にかかわるものに関しては、やはり、今までの日本人が考えていた商習慣とは違うやり方をしなければならない時代に入ったということなんだと思うんです。

 でも、中小零細企業は、それはどうでもいいから、とりあえず商売しなくちゃ御飯が食べられないから、午前中の質疑でありましたように、パーマ屋さんの顧客をとったとかとらないとか、飲み屋さんのお客さんをとったとか、不動産もそうだと思うんですね、こういうものを売りたい買いたいといった情報だけを伝えることで、お客がとられた、とられないと。

 それは、今までの商習慣がそうせざるを得ない、それで食べてきたからなっているので、そこまで今回の不正競争防止法で当てはめられるのかどうか、それをまず初めに、通告というよりも全般の話になってしまうんですけれども、大臣の考えをひとつお聞かせいただければと思います。

宮沢国務大臣 まず、今回の法律におきましては、まさに営業秘密というものを営業秘密として取り扱わなければならない、こういう点がまず第一歩でありますが、中小企業におきましては、なかなかそれがしっかりいっていない。

 例えば先ほどの顧客についても、みんなが見られるような状況にあるといったようなことになりますと、これが営業秘密とならない、こういう話なんだろうと思いますので、やはり営業秘密を、まさに顧客情報を含めて営業秘密をしっかり決めて、それを守る手だてをするということを中小企業の方にやはりしっかり浸透させていくということが大変大事なことだろうということは、先ほど田嶋委員と議論しながら考えておりました。

鈴木(義)委員 昔は、今余り聞かなくなったでっち奉公の制度があって、三十年前、今でも多少やっているところもあると思うんですけれども。でっち奉公をすることで、そこでいろいろな営業ノウハウも、いろいろな商品も教えてあげて、のれん分けをするというのが日本の商習慣だったわけですね。だから、みんな我慢して、安い賃金でも、いつか独立して自分で店が持てる、だから、理容業でも、美容業でも、おそば屋さんでも、ラーメン屋さんでも、やってきたんだと思うんです。

 そこに、営業秘密の管理なんですと言ったら、もうその商習慣が成り立たないだろうということなんです。そういう考えで今後もやっていくということであれば、それは大きな価値観の転換を図っていかない限り、やはりいざこざはずっと残ると思うんです。ただ、なかなかでっち奉公で我慢してくれる若い人がいないから、これまた問題なんですけれどもね。そういうことを含めまして、質問に入りたいと思っています。

 外国の企業が、日本にもたくさんの合弁会社があります。いろいろな入手先があるんだと思うんですけれども、営業秘密を持ち出して自分の国で製品を製造して、午前中もいろいろな事例が挙がっていたと思うんですけれども、でも、もともと日本の今回議論している営業秘密の定義だとか、今申し上げました日本の商習慣とか、判例を積み上げていかなければ、なかなかひもとけないんですよというのは、先ほど大臣が御答弁されたと思うんです。

 全然違う法体系だとか法律の制度があったり、もともとの知財に対する取り扱いが日本と他国がずれちゃっているのに、では、こちらで侵害をしたから裁判にかけますといったときに、応じてくれるのかくれないのか。では、そうなったときはただ泣き寝入りするしかないのかという問題が生じてくると思うんですけれども、そういった場合に、価値観の相違だとか今までの歴史だとか商習慣も含めて、国として今後どう措置をとっていこうとするのか。

 例えば、被疑者の引き渡し条約というのがなければ、日本で悪さをして自分の国に戻っちゃった人で、きちっと条約が締結されていなければ身柄も戻せない国もありますよね。それでどうやって裁判をやるんですかね。隣の国だと、あなたは出ていっちゃだめだといって拘束されちゃうんだかわかりませんけれども、自国に戻るのだって拘束されちゃう国もあるんですよ。それでどうやって、営業秘密を持ち出されちゃって、相手に罰則をかけたり裁判に臨ませたりするのか。

 そこのところはやはりきちっと今の時点でも考えていないと、法律改正をしたとしてもスムーズな運用になっていかないと思うんですけれども、大臣に御所見を伺いたいと思います。

宮沢国務大臣 我が国において相当なビジネス、事業を行っている外国企業の場合は、そういう事業を我が国でやっている関係がありますので、日本の国内で訴訟を起こすということが恐らく可能になってくると思います。

 ただ、そうでない場合は、これは正直言ってなかなか厄介でございまして、特許制度というのは古く、いろいろな枠組みができておりますけれども、営業秘密につきましては、一九九〇年代に、WTOにおきまして、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、略称TRIPsという協定によって概括的な国際枠組みが整備されておりますけれども、極めて歴史の浅い制度であります。したがって、海外においては、欧米諸国や中国、韓国といった主要国は営業秘密保護法制を整備しておりますけれども、保護法制が存在していなかったり、また保護水準が大変低いという国々もございます。

 このため、経済産業省といたしましては、各国とEPA、経済連携交渉などの場を通じまして各国における営業秘密保護制度の水準が我が国と同等なものとなるよう働きかけを行ってきております。具体的に言いますと、これまで、EPAにおいて営業秘密を保護することを確保する旨規定したのは、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンなど七カ国ございます。こういうような働きかけは今後もやっていきたいと思っております。

 また、外国において我が国企業の営業秘密が侵害されたケースで我が国で処罰できるか否かについては、まさに犯罪人引き渡し条約や捜査共助条約が締結されていない場合には、容疑者の確保その他の刑事手続の側面でさまざまな問題が生じます。現実に、捜査共助条約はEUを含んで六カ国、犯罪人引き渡し条約は米韓二カ国しか実はございません。

 したがって、先ほど申し上げたような、EPA等を通じる形で各国にしっかり働きかけていくということが今後の課題であろうと思っております。

鈴木(義)委員 今大臣から御答弁いただいたんですけれども、そういったことを内包している制度であれば、働きかけだけで何とかなるものじゃないと思いますので、やはりとられ損をしたのでは真面目にやっている企業が何ともならない話になりますから、もう少し、この制度をスタートしたときに、三年なのか五年なのかはわかりませんけれども、そのぐらいのスパンで、やはりもう一回その状況を見ながら制度の改正をするなりしていった方がいいんじゃないかなというふうに私は思っています。

 次に移らせていただきたいんですけれども、法制度を幾ら確立して罰則を強くしたとしても、言葉は適切じゃないかもしれませんが、従属関係、元請と下請、孫請。先般も例示を出させていただきましたが、アルミの加工をやっている企業さんが、メーカーさんから言われてプロトタイプをつくって、直してくれと言われた。これは営業秘密に当たるかどうかわかりません。でも、修理をするということは、営業ノウハウがそこに入っているはずなんですね。

 こういった従属関係にあるような企業同士の中で、幾ら法律を制定したとしても、非親告罪だと言われながらも、情報を流して、あなたは裁判に出てこなくても大丈夫ですよというふうにやったとしても、メーカーさんからすれば、どことタイアップしてやっているかは全部わかっているわけですね。

 では、どこの分野の何が、情報漏えいじゃないですけれども、非親告罪で訴えられたかというのは、下請さんの名前を出さなくたってわかるはずなんです。じゃなかったら、だって、何が侵害しているかどうかがわからないんです。それをやってしまったら二度とメーカーさんからは仕事が来ないというのがあって、みんな、しようがないかというふうになっているんだと思うんです。ですから、警察や検察で技術的なことを本当にカバーできるのかということですね。

 この発言席、いつも例示に挙げちゃって申しわけないんですけれども、では、これが侵害に当たるかどうかというのは、見る人が見れば侵害に当たるだろうけれども、警察や検察の方が、もっとたくさん、法律に抵触している、犯罪を取り締まるということを果敢にやっているにもかかわらず、本当に技術的な、細部にわたってそれがカバーできるのかといったときに、私は疑問が出るんじゃないかと思うんです。

 その辺について、今後の取り組み方はどうされるのか、お尋ねしたいと思います。

菅原政府参考人 先生から御指摘ありました、最初のいわゆる下請企業の問題でございます。

 おっしゃるとおりの事態がありまして、なかなかこれまでは、親告しようとすると、それを理由に、裁判が終わったとしても取引から外されるというようなことを懸念しまして、そもそも訴えないというのがある意味で通常にあったと思っております。

 今回、非親告罪にしますと、おっしゃるとおり、非親告罪であっても、誰がこれに関係したのかというのはばれる可能性がありますけれども、ただ、今まで完全に泣き寝入りしていた事態と比べれば、いわゆる元請で下請から自由に営業秘密をとってきた人からすれば、いつかどこかでやられるかもしれないという意味で大きな抑止力になるのではないかと思います。

 あとは、捜査の過程で警察、検察当局の専門性の問題でありますが、おっしゃるとおり、警察、検察が常に最新技術をフォローしているとは限らないと思っています。

 ただ、これまでも、捜査をする場合には、警察当局、検察当局から、我々経産省に対しても、法律の解釈の問題もしくは技術の問題についても、実を言うと、政府間同士ということで随分問い合わせがございます。そこは我々、いろいろな専門家、もしくはばれないように本当の専門家から情報を仕入れるということは可能でありますので、こういった警察当局に対する政府間での情報提供という協力はこれからも積極的にやって、捜査の実効が上がるようにしたいと思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 それで問題になってくるのが、日本の裁判に行くまでの間、私が聞いている範疇では、九五%有罪が確定しなければ起訴しないという現状の検察の対応で営業秘密侵害罪をどのように立証するのか、疑問になるんです。なおかつ、未遂罪というのも、午前中もちょっと話題になりましたけれども、着手したところからスタートするんですよということなんです。

 ですから、今、特許庁の方から御答弁いただいたんですけれども、タイアップしながらいろいろ技術的なものも含めて連携をとってやっていきますと言いながらも、では、裁判、前よりは随分早く進むようになったんですけれども、こういった事案というのはやはりスピード感がなければ、何年も何年もかかっていたのでは話にならないと思うんですよね。その辺の対応をお尋ねしたいと思います。

上冨政府参考人 まず、起訴に当たっての考え方についてでございますが、一般論として申し上げますと、我が国の検察実務におきましては、的確な証拠によって有罪判決を得られる高度の見込みがある場合、すなわち、法廷において合理的な疑いを超える立証ができると判断した場合に初めて起訴をするという運用が実務上は定着しているものと承知しております。

 そして、検察当局におきましては、お尋ねの罪に係る事件を含めまして、刑事事件として取り上げるべきものがございましたら、捜査を尽くした上、法と証拠に基づき適切に処分を行っているものと承知しております。

 また、起訴した事件の公判の維持に当たりましても、法と証拠に基づき、事実関係等について十全の立証活動を行い、適正、妥当な判決を得られるように努めているものと承知しております。

鈴木(義)委員 何を申し上げたいかといったら、今御答弁いただいたんですけれども、営業秘密に当たるかどうかというところの判断が、今までの裁判の判例を見ても、厳格な管理をしているかどうか、パスワードは持っているとか、特定の人しか見れない、そういうものしかここ直近の判例の中では認めていないんです、有罪として。それ以外は無罪になっちゃったりするんです。

 今回、罰則を上げたり、非親告罪を取り入れたりしているんですけれども、結局、判例の積み重ねだと先ほど大臣がおっしゃられたわけですから、では、それが百八十度変わるということはまずないんだと思うんですね。今までのずうっと判例を積み上げてきた。ということは、一つは、法律を改正することによって、抑止力になっていなければならないんだと思うんですね。

 でも、実際、その抑止力を超えてしまったら、もうアウトですよというところで初めて抑止力になるはずなのに、そこで、先ほど御答弁いただいたみたいに、きちっと公判が維持できるかどうかという判断で起訴するかしないかということなんでしょう。そういうふうにやったときに、結局、悪さをしようというふうに故意にやる人と、今までの商習慣の中でたまたま犯罪になっちゃったという人とは、もう全然意味合いが違うと思うんですけれども、それに対応し得る体制が整っているかどうかということなんです。もう一度だけ御答弁いただきたいと思います。

上冨政府参考人 個別の犯罪の成否は、捜査機関が収集した証拠に基づいて判断されるべき事柄でありますけれども、検察当局といたしましては、刑罰法令がございます以上、その法令に違反する行為があったかどうかについては、犯罪として取り上げるべきものとして考える場合には、十分に捜査を行って、必要な処分を行うものと承知しております。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 時間がないので、ちょっと飛ばします。

 営業秘密侵害品、物とかサービス、図面も含めてですけれども、譲渡されて、海外で行われた場合に、大手企業は、ある程度財力もあるしマンパワーもありますから、またいろいろな国に今、工場があったり海外拠点がありますから対応できるんでしょうけれども、中小企業が特許を侵害されたり、営業秘密といったものを盗まれてしまったときに、国がどこまでサポートしてくれるのかということです。

 それと、損害賠償を請求したいんだけれども、一中小企業でそこまでの体制がとれるかといったら、なかなか難しいと思うんですね。損害賠償の請求を、ある意味、国が代行してやってくれるぐらいまで、踏み込んでサポートしてくれるのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。

岩井大臣政務官 お答えいたします。

 中小企業に対するサポートというお話でありますが、中小企業が保有する営業秘密が海外で侵害されている場合については、全国五十七カ所に知財総合支援窓口というのがございまして、そちらの方で、専門家を活用しつつ、実際に相談支援を行っているところでございます。

 また、中小企業が保有する特許権や商標権等が海外において侵害を受けた場合につきましては、調査費用等を国が補助する事業を実際に実施しているところであります。

 オープン・クローズ戦略との整合性の観点や相談内容の実情も踏まえまして、営業秘密侵害についてどのようなサポートがあり得るのか、今後しっかりと検討を深めていきたいと思っております。

鈴木(義)委員 例えば、私がこれをつくったときに、ヨーロッパのフランスならフランスで売っていました、とられちゃったとしますね。フランスでこれと同じものを売っていたときに、私の営業所がフランスにあればまだ情報収集できるんですけれども、わからないんです。

 大手さんはわかりますよ、世界展開しているんだから。自分の営業秘密だとか特許権の侵害だというのは認識できたとしても、中小零細で、国内でいろいろな活動をしている人が全部の情報収集ができるかといったら、できないわけです。そこは国がカバーしてくれなければ、九八%の中小企業は次の新しいアイデアを出してもみんなとられちゃうということなんです。そこのところを申し上げているんですね。

 五十七カ所の拠点で相談してくれと。相談していいのかどうかもわからないということなんです。そこのところを誰がカバーしてくれるかというお尋ねなんですけれども、もう一度御答弁いただきたいと思います。

岩井大臣政務官 実際に現状を踏まえまして、海外でその前段階にすら至らないというお話かと思いますが、やはり、相談内容の実情、現場の声をしっかり聞かせていただいて、そのサポート、どのようなことができるかというのをしっかりと検討してまいりたいと思います。まずは現場の声をしっかりと伺いたいと思っております。

鈴木(義)委員 時間がもう終わりますので。

 この後に貿易保険法の改正の話が出るんですけれども、これは国が責任を持ってやろうとするわけですね。だったら、知的財産の損害賠償について保険をつくってもらったらどうかなと思うんですけれども、保険。その原資はどうするかというのはあったとしても、今お答えいただきましたように、結局全部とられちゃったら、それで終わりというのじゃなくて、それをカバーする制度を、やはり保険もひとつ、貿易保険をつくるんだったら知的財産保険ぐらいなものをつくったらどうかなと思うんですけれども、大臣、最後に一つ御答弁いただきたいと思います。

宮沢国務大臣 伺っておりまして、オープン・クローズ作戦ですけれども、オープンにしてあるものの保護というのは割合やりやすいわけですけれども、クローズしているものは、実際に何が存在しているかということを国自身も知らないわけでありまして、正直言ってなかなか難しい御質問をされたなと思っておりました。

鈴木(義)委員 終わります。

 どうもありがとうございました。

富田委員長代理 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 まず、本法案が、営業秘密侵害行為に対する抑止力の向上策として、営業秘密侵害罪を被害企業の告訴が必要な親告罪から非親告罪に変えようとしている問題について質問します。

 経産省は、現行制度が営業秘密侵害罪を親告罪にしてきた理由を、公開が原則である刑事裁判の過程を通じて、被害企業にとって秘匿しておきたい営業秘密がさらに公開され、営業秘密の価値が失われてしまう問題があるからだとしてきました。

 二つお聞きします。

 一つは、二〇一一年改正において、営業秘密侵害罪に係る刑事訴訟手続において営業秘密を保護するための特例措置が設けられたのはなぜか。もう一つは、二〇一一年改正でその特例措置が設けられた後も引き続き親告罪とされたのはなぜか。

 この二点、お答えください。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

菅原政府参考人 まず最初の点でございますが、当時というか今でも親告罪でありますけれども、親告した事例について、裁判において、そもそも守ろうとする営業秘密が裁判の公判の過程で一般のもとにさらされてしまうということであっては何のための訴えをしたのかわからなくなるということから、前回の改正におきまして、それを秘匿措置する、もしくは証言期日をずらすとかいろいろな、ある意味で公判の過程、公判というのは明らかに、被告に対してこの営業秘密をあなたは盗みましたねというのを示さない限りは裁判にならないわけですけれども、それで一般の傍聴人もしくは裁判記録でオープンにならないような措置を講ずる必要性があったということでございます。

 当時は、おっしゃるとおり、親告罪を前提としてもやはりそういう営業秘密が公判過程で漏れるということからの措置でありましたが、正直申し上げて、その後、この特例措置を使った事例が幾つかございます。その過程を見ますと、この措置の結果、しっかり、懸念していた営業秘密が漏れない状態で公判が進んでいるという実績が既に積み上げられております。そういう意味では、ある意味で、裁判の過程で営業秘密が漏れる心配はなくなったという認識が関係者の間に既に広がっているという事案。

 もう一つは、新しい事態として、例えば、去年の問題でありますがベネッセでありますけれども、あれは、営業秘密である顧客名簿が漏れたときに、もしベネッセが訴えないときには、その顧客名簿に記載されているお子さんですとかお母さんの情報がだだ漏れの状態を放置しかねない。これは、やはり明らかにベネッセが評価を落とすために、ベネッセはちゃんと訴えましたけれども、そういったときに、評判を落とすのを嫌がって警察に告訴しないケースが考えられるわけです。

 そういう意味で、営業秘密の被害者が盗まれた人と違う、名簿のような、第三者が被害に当たるケースが最近出てきた。これが、情報技術の発展によってますますそういう事態が拡散する可能性があるということから、未然防止の観点からも非親告罪化が必要だというふうに判断したわけでございます。

真島委員 質問通告で二番目に大臣にお聞きしようとしていたことまで答えられました。だから、大臣への二問目の質問は飛ばしますけれども。なぜ今回非親告罪にしたのかということを大臣に聞こうと思ったんですが、それまで答えてしまったので。

 営業秘密というのは、秘密であること、つまり、公知でないことをもって保護されております。この特例措置というのは、あくまでも、刑事裁判は公開で行うという憲法上の要請を踏まえた上で、営業秘密に当たる部分の呼称の言いかえとか、今おっしゃった期日外の証人尋問の設定を可能にするという、秘匿する範囲を限定しているわけですね。つまり、事実関係を司法の場で明らかにするか否かというのは被害企業の意向に委ねられるべきだという立場でこの特例は設けられたわけです。

 現行法でも、裁判所が、被害企業が言っている営業秘密というのは構成要件から見て営業秘密に該当しないと判断した場合、営業秘密保護手続が取り消されるということがあります。

 それに加えて、本法案で、今言われた非親告罪化をすることによって、被害企業の意向にかかわらず、警察や検察の捜査が可能になって、捜査手続の中で営業秘密が漏えいする危険性がさらに高まるということになりかねないと思うんですね。

 今、先ほども議論になっていました、中小企業が泣き寝入りさせられているという事例だとか、あるいはベネッセの問題を言われましたけれども、中小企業に対して取引先の大企業が製造法などの情報を一方的に開示要求して、中小企業は情報流出に泣き寝入りをさせられている。そうするならば、これは独占禁止法の優越的地位の濫用に当たるんじゃないかと思うんですね。独禁法とか下請代金法などの中小企業施策の中で本来厳正に対処すべき問題で、もしそうした中小企業の泣き寝入りを放置しているとすれば、経済産業省は何をやっているんだということになるんだと思うんですよ、現行法でも。

 不正競争防止法の逐条解説を見ますと、親告罪にしている理由としては、被害企業の告訴が加害企業を刺激することによって、逆に営業秘密を公にされてしまうおそれがある、または、告訴することによって、刑事訴訟手続以外の場面でも営業秘密の内容が公になるおそれがあるということを経産省自身が挙げているんですね。

 非親告罪化しても、大企業と中小企業の力関係は変わらないわけです。しかも、立件には被害企業の多大な協力が必要です。証拠の大多数が被害企業の中に偏在しています。秘密管理性の立証のためには、資料や証言、不正行為があった証拠の提出に協力が得られないと捜査も進まない。その上、被害者企業の強制捜査とか、あるいは証人としての関係者の勾引という事態になれば、被害者企業に多大な負担やダメージをもたらすことになります。

 また、先ほど言われたベネッセの顧客情報流出事件を挙げて、個人情報保護のために抑止力を高めるんだと言わんばかりの説明をされているんですけれども、昨年の九月二十六日に、当時の小渕優子経産大臣、懐かしい名前ですが、ベネッセに対して、個人情報保護法が規定した個人データの安全管理や委託事業者への監督を怠った結果、個人情報が漏えいし、個人の権利利益を侵害したとして、その是正を勧告しているんですね。個人情報保護法に違反して真の被害者である個人の権利を侵害したのは、データの管理と取引先への監督責任を怠ったベネッセなんですよね。

 そこで、大臣にお聞きします。

 非親告罪化によって、かえって、被害企業の意思に反して刑事裁判がされたり、あるいは裁判所の手によって営業秘密が開示されてしまうというリスクが高まってしまうんじゃないでしょうか。

宮沢国務大臣 まず、恐らく、個人情報、ベネッセのような例でいいますと、やはりベネッセはしっかり親告したわけで、親告罪ということでやったわけですけれども、なかなか重い腰を上げない、そして、被害を受けるのは情報を載せられた個人であるというようなことを考えますと、やはり非親告罪にするということは大変大事なことだろうと私は思っております。

 そして、捜査過程でいろいろ秘密が漏れる云々という話については、これはあってはならないことということを申し上げる以外にないわけでございます。

 一方、裁判の過程で営業秘密の秘匿に関する決定が取り消されるということについて言えば、一般的に言えば、恐らく、公開の法廷で裁判の進行中に公知な事実となってしまったような場合などということでありまして、それほど大きな影響がないと裁判所が判断した場合だろうと思います。

 非親告罪にすることというのは、もともと、恐らく、中小企業、下請の例などを見ますと、親告罪ではやはりなかなか言いにくいけれども、非親告罪で勝手に動き出したということになると協力しやすいということがあることは間違いないわけでありまして、いろいろな御心配をされておりますけれども、そういうことがないようにしっかりやっていきたいと思っております。

真島委員 何か根拠のない期待だけを語られているんですけれども。

 そもそも、経産省自身、二〇一四年の委託事業のアンケートで、営業秘密侵害罪の非親告罪化については、四割が賛成、一割が反対、五割の企業がわからないという結果だったと。これを素材にした報告書でも、「非親告罪化への期待が幅広く浸透しているとまでは言えないのが現状である。」と経産省自身がおっしゃっているんです。

 そして、日本弁護士連合会は、産構審小委員会の中間取りまとめ案に対する意見書を出しておりますが、その中で、「被害者等の要請や協力が刑事事件の立件に必要なことも考えると、被害者等の意思をまず尊重すべきであって、被害者等の告訴を要せずに起訴できるようにする必要性には疑問が残り、非親告罪化は、国家の過剰な介入になる危険性があって、反対である。」と表明されているということを私は受けとめるべきだと思います。

 次に、この非親告罪化によって、労働者の日常業務、労働組合活動、正当な内部告発を抑止することになるのではないかという問題について質問します。

 日本労働組合総連合会が三月に出した談話では、「営業秘密が存在しうる職場では、労働者にとっての日常的な業務が刑事罰に適用されることがないよう十分な配慮が必要である。また、労働組合への情報提供や労使協議への制約、公益通報者保護制度と矛盾あるいは阻害があってはならない。」と指摘をしております。これは当然の指摘だと思います。

 二〇〇九年の不正競争防止法の改正で、営業秘密侵害罪の不正の競争の目的が、営利目的や加害目的、いわゆる図利加害目的に拡大されました。それに合わせて、営業秘密の使用、開示をもって処罰対象としていたものを、領得、つまり、持ち出してみずからの管理下に置くことまで処罰すると対象が広げられました。

 当時の当委員会の我が党の吉井英勝議員の質問に対して、経産省は次のように答弁しています。

 残業をする場合にUSBメモリーを持ち帰ったりコピーしたりする行為は、図利加害目的を持たないので処罰の対象にならない。

 労使交渉に際して、使用者側から労働組合に開示された営業秘密を組合活動に必要な情報の共有として労働組合内部や上部団体に開示するという行為や、組合員が個々に持っている情報を持ち寄って、それぞれを突き合わせて分析を行うとか、そういう中で営業秘密に該当するものが含まれていた場合などは、正当な労働組合の活動の一部であり、処罰の対象にならない。

 そして、当時の二階経産大臣は、内部告発等によって不正を防止するということは、一方で大変大事なことでありますから、そうしたことを行った人たちが不当な扱いを受けるということがないように十分配慮してまいりたいと思っていますと答弁されています。

 政府は、現行法では営業秘密侵害罪は親告罪であることをもって、企業が不正競争防止法を濫用して労働者の正当な権利行使、労働組合の正当な活動を制限してはならないと明確に答弁されているわけです。

 そこで、確認いたしますけれども、本改正案は目的要件も処罰要件も変更はありませんので、これらの答弁は維持されますよね。

菅原政府参考人 平成二十一年の改正当時の国会審議において申し上げたとおりでございまして、残業の際の営業秘密の持ち出しや正当な労働組合活動に伴う営業秘密の持ち出しなど、また公益通報、こういったものについては、営業秘密侵害罪の構成要件の一つでありますいわゆる図利加害目的に該当しないという立場は前回も今回も全く変わっておりませんで、こういった残業の取り扱い、労働組合における取り扱いについては、一切変更はございません。

真島委員 そこで、大臣にお聞きしますけれども、非親告罪化することで、正当な労働者の権利行使や労働組合活動が刑事罰の対象となって萎縮させられてしまうとか、あるいは警察、検察の捜査権が濫用されるということは決してあってはならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 現行法上、刑事罰の対象は、犯人に、不正の利益を得る目的、または企業などの営業秘密保有者に損害を加える目的がある場合に限定されております。労働者の正当な権利行使や公益通報を目的とする営業秘密の開示といった行為を刑事罰の対象とはしておりません。

 本法案においても、この考えのもと、刑事罰の規定を引き続き維持しており、労働者を萎縮させる内容とはなっていないものと考えております。

 捜査権につきましては、当然のことでございますけれども、濫用ということはあってはならないものでございます。

真島委員 ぜひそういう方向でやっていただきたいと思います。

 さて、営業秘密が中国や韓国に流出している背景の一つとして、大企業のリストラで技術者が流出しているということが挙げられております。特に、この間の電機産業のリストラは二十五万人の規模に膨れ上がっておりまして、今や電機産業では、黒字であるにもかかわらずリストラが進められております。

 私は、電機・情報ユニオンの組合員の皆さんから、電機産業で吹き荒れているリストラの実態をお聞きしてきました。

 ルネサスの組合員は、九回の退職強要面談で、あなたの仕事はないなどと言われて、退職を拒否すると、課長職から係長相当職に降格され、月収が二五%低下、年収は六〇%前後になりそうだと。こんなやり方は、事実上の指名解雇だと思うんですね。

 日立超LSI分会の組合員は、退職強要面談が七回から十回行われ、退職しなかった人は降格、減給され、追い出し部屋に配属されるというんですが、こんな、労働者の自由意思を踏みにじって、何度も面談に呼び出して退職を強要する、明確な権利侵害であり、違法行為です。

 パナソニックの組合員は、事業譲渡による人員に対して残った人に遠隔地配転を押しつけ、親の介護や子供の教育、難病を持つ家族がいるなどの事情で転勤できないと訴えられました。

 本改正案によって、こうした大企業の身勝手なリストラで職場を失ったり、あるいは、みずから転職をした労働者が、退職後に、在職中に培って自分の一部となったスキルや人間関係、ノウハウを別会社で活用する、その自由まで営業秘密の侵害行為の厳罰化をもって抑止するということがあってはならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

菅原政府参考人 不正競争防止法上、企業側の営業秘密保護の必要性と、職業選択の自由といった労働者の価値との調和を図る観点から、法的に保護される営業秘密の範囲について、一定の限定を行っているところであります。

 具体的には、当該企業固有の情報に限り、また、一般情報と合理的に区別された情報について、しっかりと労働者にも認識できるような管理状況に置かれているものについては、不正競争防止法上の営業秘密として法的保護を受ける可能性が高いものと考えておりますが、個人に化体したいわゆるスキルのようなものですとか、もしくは、名簿のような営業秘密管理としてやっていないような人間関係といったものについてまで営業秘密に該当することはないケースの方が圧倒的に多いと思っておりますが、具体的には、個別具体的な事案によって判断されるものと考えてございます。

真島委員 先ほども紹介しました、大企業の職場を中心に横行しております、正社員に対する悪質で卑劣なリストラ解雇。繰り返し面談に呼び出して精神的に追い詰める手口、退職に応じなかったら、会社都合による整理解雇を実施するぞと脅迫するなど、労働者を追い出すためなら何でもやるという、違法、横暴の総動員です。

 本当に、大きな企業としてのモラルや社会正義のかけらもないと私は思うんですけれども、その上、営業秘密侵害行為の抑止という口実で、憲法上も保障されている退職後の職業選択の自由さえも萎縮させられるということになるのは絶対許されないと思うんです。

 経産省が第一回の営業秘密の保護・活用に関する小委員会に提出した資料を見ますと、営業秘密の流出が増加している背景に、第一に、我が国電機産業におけるリストラで技術者の海外企業への転職がふえていること、第二に、我が国企業の海外への生産拠点の移転による技術流出がふえていること、第三に、サイバー空間の拡大、第四に、我が国企業の営業秘密の管理水準の低さというのを指摘しています。

 経産省のアンケートを見ますと、情報漏えい者のトップ、半数が中途退職した正規社員だったのを見ましても、つまるところ、個々の会社が労働者を大切にしてこなかったために、そういう不満や恨みを持って退職していっている人たちが持ち出しているという面も強いと思うんですね。

 営業秘密を守ろうと思えば、まず、企業が労働者との信頼関係をいかに構築し、維持していくかということが私は大事だと思うんです。

 大臣にお聞きします。

 個別企業の秘匿したい技術がライバル他社に流出している一番の出口が、こういう調査でも、その企業を中途退職した元社員から出ている。しかも、企業と社員の信頼関係が壊れている。結局、各企業が国内での雇用や生産体制を大事にしていくということがなければ、幾ら厳罰化をしていっても、警察や検察の介入を強めても秘密漏えいは減っていかないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 おっしゃるとおり、営業秘密漏えい事件の多くは中途退職者によるものであります。そして、中途退職の理由も、純粋に、単純に金銭を目的とする者もいるわけでありますけれども、おっしゃるように、企業と社員の信頼関係が失われたことが背景にある人、また解雇された人など、いろいろな類型があります。

 したがって、まさに漏えいを防止するためには、この法律のように、いろいろ、法定刑の引き上げ等々の措置を講じることも大事でありますけれども、やはりもう一つ、企業側において、人材を適切に処遇することを含めて、予防策を推進するということが大変大事だろうと思っております。

 このような観点から、ことしの一月に開催した、関係省庁と業界団体トップなどで構成する技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議においても、情報漏えいの予防策の実施に当たって、スキルのある従業員を能力主義、成果主義に基づき適正に評価する人事制度を構築し、処遇することの必要性について合意したところであります。

真島委員 よく今回の改正で、アメリカや韓国に比べて、日本の厳罰化の問題や警察、検察の介入強化という点で、まだまだ日本はもっと強めるべきだということをおっしゃるんですけれども、そのアメリカや韓国でも、経産省の資料を見ますと、漏えい事件はこの間ふえているわけですね。厳罰化と警察、検察の介入の強化が抑止力になっていないんですよ。

 経産省のアンケート調査によりますと、大企業の六割が漏えいはないとしておりまして、そのうち三割は、そもそも漏えい防止措置を何らとっていないと。きょう、中小企業のことも話題になりましたが、大企業でさえもそうなんです。個々の企業の営業秘密の漏えいは、個々の企業の責任で起きているという面が非常に大きいわけですね。その全体が我が国の競争力を弱めている。

 そもそも、企業の私的財産権である営業秘密の侵害行為への規制や抑止というのは、私は、あくまでも民事罰中心で、民事法的な救済手段の充実によって行われるべきだと思います。刑事法上の処罰は抑制的で、民事罰の補完的な役割にすべきだと思うんです。

 もう時間の関係でまとめますけれども、本改正案には、非親告罪化の問題以外にも多くの重大な懸念がございます。今でもほかの経済犯罪や企業犯罪の法定刑と比較して重い法定刑なのに、罰金刑の上限をさらに引き上げる問題、未遂罪の新設で、実行の着手の解釈によっては処罰範囲が不当に拡大するおそれがある問題、専門的で高度な判断が必要な水際規制を明確なルールも示さないまま導入を決めようとしている問題、被害企業の立証負担の軽減策としての推定規定の創設が、被告の反証の困難性や、正当な事業活動を行う企業が濫用の被害者となってしまう危険がある問題など、私は、まだまだ議論を尽くすべき問題が山積みだと思います。

 日本経団連は、昨年二月の要望書の中で、営業秘密の流出は、国富の損失であり、我が国の産業競争力の低下につながる深刻な問題である、個別企業の問題に矮小化せず、危機感を持って対策の強化を急ぐべきだとして、さらなる刑事罰強化や警察、検察当局の積極的介入による取り締まりなど、アメリカの経済スパイ法のような独立の営業秘密保護法制の整備などをこの間政府に対して求めております。本法案は、そうした多国籍企業の要望に応えて、おとり捜査とか司法取引を導入したアメリカのような密告監視社会を志向したものだと私は思います。

 営業秘密侵害行為の抑止力の向上どころか、秘密漏えいを米韓並みに拡大するだけで、労働者の権利行使や労働組合活動に対して警察や検察の監視と介入などの権力の濫用を招く危険があるということを厳しく指摘いたしまして、私の質問を終わります。

江田委員長 次に、野間健君。

野間委員 無所属の野間健です。

 最後の質問となりましたけれども、質問の時間をいただきましたことを感謝申し上げます。

 さて、今回の不正競争防止法の改正で、罰金額の引き上げでありますとか、非親告罪化、立証負担の軽減など、一定の法整備が行われたとは思うんですけれども、本当にこの法整備をしただけで現実にどれだけ営業秘密の漏えいの防止に実効性があるのかということについて、少々疑問があります。なかなか今日までも、実刑判決というのは、東芝の件とかベネッセとかごく数件しか下されていませんし、本当に実効性がこれで上がるのか、お答えいただければと思います。

菅原政府参考人 委員御指摘のとおり、これまでいわゆる刑事罰ですとか裁判で実績が上がっていないのは事実でございます。

 ただ、裁判に行く前の問題として、そもそも営業秘密として管理がなされていないがゆえに、盗まれていること自身を認識できていなかった中小企業の方が非常に多いということに対して、今回は盗むと厳罰が下されるという意味で、ある意味で抑止力を働かせる。要すれば、侵害し得という状況を是正するということをもってして、仮にこれまで自由に盗んでいる人がいたとすれば、その人たちの行為をとめるということをもって、それなりの法制度による効果はあると思います。

 ただ、御指摘のとおり、最後はやはり、中小企業の方を含めて、認識をしっかり持って営業秘密管理を行うというところまで意識が浸透することが一番大事だと思っておりまして、るる説明しているようなさまざまな対策を講じまして、これから懇切丁寧に、中小企業の方々にいろいろな方法の啓発普及ですとか、個別の相談に乗っていきたいというふうに考えております。

野間委員 ありがとうございました。

 特に、今日、海外からの産業スパイ、経済スパイは多いわけですけれども、アメリカでは二〇〇一年からONCIX、いわゆるカウンターインテリジェンスのための情報局もつくって、企業ともいろいろ連携を密にしながら情報提供などをして、官民連携して経済スパイ、産業スパイに当たっているわけです。

 先日、委員会であるロボット関連の企業の視察も行きましたけれども、そういったところでも、我々が見ても明らかに軍事に転用できるようないろいろな技術がいっぱいありますけれども、こういったものの防止というのを一企業ではとてもできない状態だと思います。

 やはり今後は、経済産業省のみならず、警察庁とか公安調査庁とかそういったところと、法執行体制も含めて、縦割りではなくてよく連携をして防止の体制を図っていくべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、まさにこういう秘密を守るということについて言いますと、当然、今回お願いしておりますような法整備というものも必要になりますが、その中でやはり企業の行動というものも大変大事でありますし、また官における体制整備ということも大事でありますし、そして官民の協力といったものも大変大事です。それらが相まって成果を出すものだろうと思っております。

 一方で、官における体制ということで今お話がございましたけれども、まさに省庁の縦割りを排し、関係省庁が一丸となって取り組むことが大変重要でありまして、まず、企業の情報漏えいへの早期の気づき、気がつくということを促し、かつ、予防策の徹底を図るという観点から、公安調査庁から技術情報の窃取動向について情報提供を受けることといたしました。この情報につきまして、可能な範囲で、官民の情報交換の場であります営業秘密官民フォーラムの活用などによりまして、関連企業、また業界団体等に注意喚起を行っていきたいと考えております。

 さらに、円滑な法執行を図るという観点から、中小企業などから営業秘密に関する相談を受け付ける窓口といたしまして、本年二月に特許庁に設置した営業秘密一一〇番に寄せられた事案について、相談者が捜査を求める事案については、警察庁において実際に捜査を行う都道府県警察との連絡調整などがなされる仕組みを構築いたしました。

 こういうものを利用しまして、まさに法をしっかりと施行し、企業にもいろいろやっていただき、そして官側でもそれをしっかり受けとめていくようなことをやって、成果のある取り締まり等々をやっていきたいと思っております。

野間委員 ぜひ、実効性の上がる体制をつくっていただければと思います。

 最後、ちょっと技術的な御質問になりますけれども、今回の法改正では、罰金刑、自然人二千万、法人五億以下ということになります。米独などでは罰金刑の上限はないわけですけれども、非常に大きな被害も出ていますので、罰金刑の上限がないということも考えられないのか。

 そしてまた、これはちょっと一つ確認ですけれども、犯罪収益の没収規定の対象として法人も入るのかどうか。法文上からは個人だけなのかなとも読み取れるんですけれども、その辺の確認を最後にさせていただきたいと思います。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 午前中にも議論がありました、アメリカ、ドイツにおける罰金刑の上限がない件でございます。

 そうした例が存在していることは承知しておるわけでございますけれども、これにつきましては、我が国の憲法上の罪刑法定主義の要請、それから、こうした考え方に基づいたこれまでの刑罰の罰則の体系との均衡といったような点で課題があると考えているところでございます。

 一方で、本法案につきましては、犯罪収益は、個人のみならず、御指摘の法人というところからも全額を没収することができるということとしております。したがいまして、法人の従業者等が当該法人の業務に関して営業秘密侵害行為を行った場合、当該法人に対しての両罰規定、法律上は二十二条に規定しているところでございますが、これが適用されまして、その際、当該法人が有する財産が没収対象財産に該当すれば、当該財産は没収可能というふうになるわけでございます。

 いずれにせよ、こうした侵害し得の状況はなくなっていくということを期待しているところでございます。

野間委員 ありがとうございました。

 終わります。

江田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十四分散会


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