衆議院

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第3号 平成13年11月27日(火曜日)

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平成十三年十一月二十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 桜田 義孝君

   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君

   理事 古賀 一成君 理事 細川 律夫君

   理事 河上 覃雄君 理事 山田 正彦君

      今村 雅弘君    木村 太郎君

      木村 隆秀君    木村 義雄君

      倉田 雅年君    菅  義偉君

      田中 和徳君    高橋 一郎君

      中馬 弘毅君    中本 太衛君

      西川 公也君    原田 義昭君

      菱田 嘉明君    福井  照君

      松岡 利勝君    松野 博一君

      松本 和那君    森田 健作君

      谷津 義男君    吉田 幸弘君

      阿久津幸彦君    赤松 広隆君

      大谷 信盛君    川内 博史君

      今田 保典君    樽床 伸二君

      津川 祥吾君    永井 英慈君

      伴野  豊君    前原 誠司君

      井上 義久君    山岡 賢次君

      瀬古由起子君    藤木 洋子君

      日森 文尋君    保坂 展人君

      二階 俊博君    松浪健四郎君

    …………………………………

   国土交通大臣       扇  千景君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   内閣府大臣政務官     渡辺 博道君

   国土交通大臣政務官    木村 隆秀君

   国土交通大臣政務官    田中 和徳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   坂  篤郎君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  武田 宗高君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長 

   )            岩村  敬君

   政府参考人

   (国土交通省河川局長)  竹村公太郎君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  大石 久和君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局

   長)           洞   駿君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  川島  毅君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長

   )            中川 雅治君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十六日

 辞任         補欠選任

  坂本 剛二君     原田 義昭君

  林  幹雄君     木村 義雄君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  高橋 一郎君     西川 公也君

  大幡 基夫君     藤木 洋子君

  二階 俊博君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  西川 公也君     高橋 一郎君

  藤木 洋子君     大幡 基夫君

  松浪健四郎君     二階 俊博君

    ―――――――――――――

十一月二十二日

 長良川河口堰の開放に関する請願(佐藤謙一郎君紹介)(第五五五号)

 同(前原誠司君紹介)(第五五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案起草の件

 国土交通行政の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長岩村敬君、河川局長竹村公太郎君、道路局長大石久和君、住宅局長三沢真君、自動車交通局長洞駿君、港湾局長川島毅君、航空局長深谷憲一君、内閣府政策統括官坂篤郎君、内閣府沖縄振興局長武田宗高君、警察庁交通局長坂東自朗君及び環境省総合環境政策局長中川雅治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桜田義孝君。

桜田委員 自由民主党の桜田義孝でございます。本日は、PFIについて、簡単なポイントを今後のために確認しておきたいと思っております。

 今、小泉内閣においては、民間でできることは民間でとしきりに言っておりますし、私も、少子高齢化時代を迎え、GDPも二、三%程度の成長は何が何でも必要だなというふうに思っております。こういう観点から見て、経済を是が非でも活発にさせるためにはこのPFIの制度を充実化することが不可欠であるという認識を持っておるところであります。

 民間というものは、何を国民が求めているかということにつきまして、利益をもってはかれるという極めて高い利点がございます。そこで、明治以来、優秀な人材は行政に参加するということがありましたけれども、今後は民間中心の経済というものの確立が求められているような、そんな認識を持っているところであります。現在の行政改革や特殊法人の改革もそうした時代の流れに沿って行われているというふうに認識している次第であります。そして、PFIも民間の資金やノウハウを公共投資に生かすという画期的な手法であり、その制度の充実を強く求めているところであります。

 そこで、内閣府にお尋ねしたいところでありますが、実際にはこういう制度ができても、実行に移るまでがなかなかスムーズにいっていないというような認識を私は持っているところでございます。

 平成十一年九月に施行されたPFI法ではありますが、二年間たったにもかかわらず、具体的な進捗状況において前向きな成果というものは余り私は聞いたことがございません。国レベルの話と自治体レベルの話におきましても、それぞれどのような実績、また当面の見通しについてどの程度きちんと把握しているかお伺いしたいな、こんなふうに考えております。

坂政府参考人 先生、今お尋ねの件につきましては、PFI法に基づく事業といたしましては、現在に至るまで地方公共団体につきましては私どもが把握いたしておりますのは、三十五事業が実施方針の策定、公表が行われ、それぞれ手続が進められております。このうち、協定等の締結まで至った、協定というのは御承知のように契約というか話がちゃんとついたということでございますが、そこまで至っている案件が三十五事業のうち十件。さらに、その中で施設等の供用開始にまで至ったもの、つまり施設や何かが完成しているということだと思いますが、これが三件ということでございます。

 また、国につきましては、PFI法に基づく手続、つまり、先ほど申し上げました実施方針の策定とかそういった手続にまで至っている案件は現在のところございませんが、ただ、平成十四年度の概算要求におきまして、衆議院の赤坂議員宿舎あるいは公務員宿舎、それから独立行政法人通信総合研究所の実験施設といったものにつきましての事業化につきまして予算要求が行われているというふうに承知いたしております。

 また、このほか、中央合同庁舎第七号館、これは文部科学省と会計検査院の庁舎のところでございます、虎ノ門のところでございますが、これの建てかえなどにつきましてPFIによる整備についての検討が進められているというふうに理解いたしております。

桜田委員 やっている方は一生懸命やっているのだということは理解できるのですが、この法案を期待する側からすると、もっとスピードがあっていいのではないかというふうな認識をしているところであります。政策というものはスピードというものが極めて大切なように思われます。平成十一年度に法律ができて、まだこの程度かなというのが正直なところ私が感じているところであります。

 そこで、受け皿となる各省庁、自治体のPFIについての認識度、浸透度はいかがなものか。それから、内閣府としてはPFIの浸透のために一体どのような努力をなされているのか、ちょっとお伺いしたいなと思います。

坂政府参考人 お答えいたします。

 PFIは、先生御指摘のように平成十一年度に法律が国会で制定されたわけでございますが、日本ではそれまで余り考えていなかったような方式、これはもともとイギリスでやっていた方式でございますが、そういったこと、あるいは技術的にも、どういった手続といったようなこともなかなか大抵の方はふなれであるというようなことがございまして、先生御指摘のとおり、なかなかすいすいとは進んでいないということでございます。

 その中にありまして、内閣府といたしましては、PFIのことについて関係者の方によく知っていただく、あるいは技術的なことについても知っていただくということで、これまでホームページとかあるいはパンフレットの作成などを通じて情報提供を行う、あるいはより積極的に都道府県でございますとか市町村の方々を対象にして、私どもが主催いたしましてPFIについてのセミナーをしたり、あるいはガイドラインというのが三本ほどございますが、それの説明会を開催いたしたりということで一生懸命努力をいたしてきたわけでございます。

 また、今般の法律改正でございますとか、あるいは補正予算で先般お認めいただいたわけでございますが、地方公共団体がPFIをやるときに、外部の方、例えばコンサルタントとかそういうところに、いろいろ手続とかそういったことについて調査を依頼するということがあるようでございまして、そういったことに対する調査補助の予算でございますけれども、調査補助の予算をつけていただいた、あるいはこれは役所の方の問題でございますが、イコールフッティング、つまり補助金がつく事業とあるいは補助金がつかない普通の単独事業、地方単独事業とがございますが、これとのイコールフッティングといったような観点から、PFIの事業につきましても、地方公共団体がなさるときに、それが普通であれば補助金がつくというような事業につきましては、必要な補助金交付が行われるように補助金交付要綱の見直しということをいたしておりまして、こうしたことからさらなる事業の促進が図られるのではないかというふうに期待しているところでございます。

桜田委員 私が地元の首長さんなんかとお話をすると、PFIの進捗状況は余り進んでいないような話を聞くと、桜田さん、PFIはもっと事業面よりもファイナンス面をしっかりしないと今の自治体ではなかなか取り組みづらいよ、民間では長期で二十年も貸すところはないんですよ、ですから金融面をもっと充実させてくださいという陳情が行われているところでありますが、今後のPFIの運用に当たって、金融面の問題についてどのような考えで対応策を練っているかお伺いしたいなと思っております。

坂政府参考人 先生御指摘のとおり、PFIは民間資金を活用するということでございますので、民間の方がどういうふうにそれをファイナンスするかという問題は当然出てくることが、すべてではありませんけれども、そういうケースもたくさんあるわけでございます。

 PFI事業に係る金融上の支援につきましては、政府としていたしておりますことは、まず、日本政策投資銀行などを通じました廃棄物処理施設等への無利子融資制度、これは第三セクター関係でございますが、そういった制度や、あるいは港湾整備特別会計などを通じましたコンテナターミナルにおける荷役機械などへの無利子融資、あるいは日本政策投資銀行の一般的な低利融資制度といったものがございます。

 また、PFI事業に対する融資につきましては、民間でも新たな金融手法といたしましてプロジェクトファイナンス、事業者ではなくてプロジェクトというのに着目してファイナンスをする、そういった手法の活用も行われておると聞いておりますけれども、こうした民間部門における金融手法に加えまして、政府といたしましても、今後、PFI事業の円滑な促進が図られるように、必要な金融上の支援についてさらに検討してまいりたいというふうに考えております。

桜田委員 当面、銀行が貸し出しを拡大するような状況にないということは御承知のことと思いますので、今後とも金融面の充実にぜひ力を入れていただきたいと考えております。

 それと、金融面と同じようにもう一つ重要視しなければならないのは人材の問題であると思います。

 PFI、PFIと盛んに言っているのは我々、政府と国会議員ぐらいなもので、なかなか地方の自治体の人たちにまではまだ十分浸透していないように思います。そこで、これを貫徹するには地方にも人材が必要ではないだろうか。特に、いろいろ話題になっております住宅・都市整備公団とか、ああいうところには都市再生を目がけた都市計画のプロフェッショナルの集団がおるわけでありますので、あのような人たちの頭脳というものを地方の自治体で活用することができないかなというふうに思っている次第であります。

 地方自治体には都市再生に向けた人材がまだまだ不足しているように思いますが、PFIの地方自治体への浸透を含めまして、人材の面についてどのような考えを持っているか、扇大臣にちょっとお伺いしたいなと思っております。

扇国務大臣 閣議でおくれて申しわけありません。

 今伺いますと、PFIのお話が進行しているようでございます。

 地方自治団体にPFIの人材不足あるいは広報不足等々を今御指摘になりましたけれども、私は、地方自治体もさることながら、まず国としてこれを大前提にPFI方式を取り入れるということが浸透すれば、自然と地方自治体にも目が行く。まして、国がつくるいわゆる公共的なものに対しても、政府が行うPFIに地方からも参加できる。そういう意味で、私は、まず政府が率先してPFI方式を取り入れる、このことを宣伝することは、とりもなおさず地方への浸透につながる。

 そう思って、先生、もう既にお答えがあったのかどうかは知りませんけれども、今回私どもは十四年度からPFI方式を取り入れる。しかも、国会見学にたくさん来てくださいますので、国会の近くの公共的な建物の中でも、まず文部科学省と会計検査院を来年度はPFI方式で入札をして、そして新たに建てる。ああ、これがPFIなんだ、民間の頭脳が入ったらこれだけ新しい建物で、なお国民が、ああ、これが文部科学省だなと一目でわかるような、同じ四角い箱だけじゃない、そういうPFIも、また議員会館も、皆さん方、今回のPFI法で衆議院議長、参議院議長を入れていただきましたので、議員会館の建て直しにもPFIをするということで、今多くの皆さん方が全国から、PFIに参加できるという期待を専門家が持ってくださっているのですね。

 ですから、地方だけではなくて、国が公共工事にPFIを導入すれば地方自治体もPFIを取り入れるということになって、全国展開で民間の活力がこれによって生まれてくると思っておりますので、地方だけではなくて、国全体で十四年度はPFI方式というものの取り入れ方を実行し、なおかつそれでPRしていこう、そういうふうに私は思っております。

桜田委員 私が望むとおりの御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 まず隗より始めよで、まず中央がみずから率先してやるという、具体化も進んでいるみたいでございますので、大いに期待しているところでもあります。

 私は、まず中央がやることによって地方の都市再生に向けた施策が行われる、そして国全体が経済の活性化ができて、活力のある国づくりができるだろう、そんなふうに考えておるところであります。

 もう一本あったのですけれども、時間が来ましたので、これで終了させていただきます。どうもありがとうございます。

赤松委員長 井上義久君。

井上(義)委員 時間が十分しかないので簡潔にやりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 私は、特殊法人改革について何点か質問したいと思います。

 大臣御案内のように、特殊法人というのは、一定の政策目的を遂行するために個別の法律によって設立されているわけでございます。したがって、この特殊法人改革というものを議論する場合には、組織論とその政策目的、これをやはりきちっと議論しなければいけないのですけれども、最近の議論を聞いていますと、どうも組織論の方が先行しているのではないかという危惧を抱いておるわけでございまして、そういった点から、三点についてお伺いしたいと思います。

 まず、住宅金融公庫です。

 住宅金融公庫は、長期、固定、低利の融資を実行することによりまして、日本の戦後の持ち家政策に大変大きな貢献をしてきたわけでございます。これからは、良質な賃貸住宅を供給する、あるいは中古住宅市場を育てるということに住宅政策の力点は変えなければいけない、私はこう思うわけですけれども、やはり依然としてこの長期、固定、低利の融資、特に中低所得者の皆さんにとって、これは家をつくるためにはどうしても必要な施策でございます。あわせて、住宅金融公庫については、例えば基準金利適用住宅とかあるいは割り増し融資制度、いわゆる政策誘導で、例えばバリアフリーとか長寿社会とか環境とか、あるいは長期の耐用住宅をつくるとかという政策誘導が行われているわけです。

 この前の国会で、例えば高齢者向けの返済特例制度、これは高齢者居住安定法という法律で、要するにバリアフリーにして、余生をゆっくりしてくださいよ、返済は亡くなってからで結構ですよ、こういう仕組みとか、あるいはマンションの修繕積立金を、いわゆるペイオフに合わせて不安がないようにということでお預かりしますよ、こういう制度を実はビルトインしたばかりなのですね。

 こういうことがきちっと担保されていかなければ、これは朝令暮改ということになってしまうわけでございまして、こういうことについて国土交通省のきちっとした、こういう政策目的についてはきちっとやるのだということを明確にしておいていただきたい、こう思います。

三沢政府参考人 住宅金融公庫については、先生御指摘のとおり、戦後建設された住宅の約三割、千八百五十九万戸に上る国民の住宅取得に大変大きな貢献をしてきたということと、それから今バリアフリー化というお話がございましたけれども、それも含めまして、住宅の質の向上にも大変大きな役割を果たしてきたというふうに認識しております。

 ただ、特殊法人については、やはり民間にできることはできるだけ民間にゆだねていくという基本原則に立った改革を推進していくという観点から、住宅金融公庫についても、本日、五年以内の廃止と証券化支援業務を行う法人の設立等を内容とした改革の方針が出されたところでございます。

 ただ、やはりこの改革方針の具体化に当たりましては、これまで公庫が住宅政策上果たしてきた役割、特に、長期、固定、低利の住宅資金を大量かつ安定的に、しかも選別なく供給するといった役割、それからバリアフリーも含めました住宅の質の向上にも資する、こういう住宅政策上の目的を、例えば民間住宅ローンを今後伸ばしていくとすれば、その民間住宅ローンによって、どういう形で、どのようなスピードで代替できるのか、そういう議論をきちっとしていきながらその改革の具体化を進めていく必要があるというふうに考えております。

井上(義)委員 次に、都市基盤整備公団ですけれども、大臣、これも一昨年に公団法の大改正をやったばかりなんですね。それで、要するに、分譲からは撤退をしましょうと。

 都市基盤整備公団は、いわゆる都市基盤整備、これから都市再生ということが言われておるわけでございまして、私は、プレーヤーとしては極めて能力のある集団といいますか活用すべき集団だ、こう思っておるわけでございます。それから、都市部における賃貸住宅、これはなかなか民間では供給しないわけでございまして、特に良質な賃貸住宅を供給するということと、それから既存のいわゆる公団住宅七十万戸、この七十万戸については、そのうち約九万戸がいわゆる家賃助成をして住宅政策の大きな柱になっているわけです。

 そのときに、私ども、この法案の成立に当たって附帯決議をやりまして、幾つかあるんですけれども、その中で、特に既存の公団住宅については、ちょっと読ませていただきますと、

 既存の賃貸住宅団地について、居住者との信頼関係を尊重し、十分な意思の疎通のもとに住宅や利便施設等の適切な維持管理を行い、快適な生活環境の確保に努めること。また、老朽化した賃貸住宅の建替えや住戸改善に当たっては、居住者の居住の安定に努めること。

それからもう一つが、

 新公団は、賃貸住宅の家賃の設定及び変更に当たっては、居住者にとって過大な負担とならないよう十分な配慮に努めること。特に、低所得の高齢者等に対する家賃の減免や建替えに伴う急激な家賃の上昇の抑制については、十分に配慮すること。

こういう附帯決議までして、居住の安定を図ろう、安心して住み続けられますよということを申し上げたわけでございまして、私は、この都市基盤整備公団廃止の議論の中で、公団に住んでいる皆さんに安心していただけるようなメッセージをきちっと送るべきだ、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。

扇国務大臣 井上先生おっしゃるとおり、きょう閣議前の会合がございまして、行政改革本部が朝八時十分から開かれまして、そこで今の七公団に対する話が決まったわけでございますけれども、きょう一部新聞にもう既に載っている、全文もございます。私がきょう再度申し上げましたことは、住宅金融公庫あるいは都市基盤整備公団等々で住宅ローンを借りている人、それから井上先生が今おっしゃった賃貸に入っている人、そういう人たちがいかに安心して住み続けられるか。特に、中小所得者、そして弱者ですね。

 高齢者ですとか母子家庭ですとか、そういうところから今私に、たくさん民間の皆さんからお言葉をいただいています。それは、母子家庭で子供二人で、やっと一軒持とうと思って今は賃貸に入っているけれども、それすら危なくなった。そして、一般の民間金融機関に行きますと、とにかく同じ就職場所に三カ月いないと貸してもらえない。母子家庭の場合、母親は特にパートで働いているんですね。そうすると、三カ月定住して働くということが条件として最初からはねられる。そして、父親がいない。そういうところで、どうしても、住宅ローンを借りることによって賃貸から持ち家に変わりたいけれども変われない。そして、賃貸に入っているけれども、この賃貸自身も危なくなるんじゃないか、証券化されるといって私たちはどうなるんだろう、そういう不安が大変多く私のところにも寄せられております。

 今先生がおっしゃいましたように、特に高齢者、六十五歳以上の賃貸住宅の世帯主というのが二一・三%あるんですね。ですから、こういう高齢者の行き場所のない人、そして今言った母子家庭の人、そういう人の賃貸自身の不安、そして持ち家制度の住宅ローンを借りようという夢、これは両方ともふさがれるわけですね。そうあってはならないということを、たった今、再度閣僚懇でも財政当局にも私もお願いしてきましたし、そういう不安をなくそうと思っていますので、今先生がおっしゃいましたように、行政改革も大事ですけれども、不安を与えるようでは私はいい行政改革ではないと思っていますので、そこに留意したいと思っています。

井上(義)委員 最後の質問ですけれども、道路公団について。

 これも、組織とそれから政策目的がどうも逆転した議論が一部あるんじゃないか。

 民営化するためには今の高速道路を凍結しなきゃいけない、こういうような極端な議論があって、私は、もちろん高速道路見直しは必要だ、こう思います。ただ、この高速道路の予定路線の選定から基本計画の決定、整備計画の決定と幾つものハードルを越えて今の整備計画があって、その中には地方の皆さんの意見が相当たくさん反映され、また長年にわたって運動してきてこの計画が積み上げられているということを、やはりよく頭の中に入れておかなきゃいけないということ。

 それと、当然、それぞれの基本計画なり整備計画の段階でいわゆる国幹審、今は会議になっていますけれども、その議を経てきているわけでございまして、私もそのメンバーの一人なんですけれども、それについて全くそういうところの議論もないまま、この見直しとか凍結とかということが議論されているということに、私は非常に不満を持っています。

 そういう意味で、これからの進め方ということについて、やはりそういう国民的なコンセンサスをつくりながら進めていく。組織論は組織論として議論することは必要だと思いますけれども、そういった観点をぜひ認識してこれから進めていただきたいと思いますが、この点いかがでしょうか。

扇国務大臣 きのう、私、総理にお目にかかって、道路公団を初めとする四公団のお話を諸井座長と、あり方懇談会の座長と一緒に行きました。そのときに私も総理に申し上げましたことは、とにかくスリムにするということによって、今まで料金を払って、そしていつかただになると思ってそれを払い続けた国民を裏切るようなことがあってはならない。特に、本四公団を入れるということで、あとの三公団の通行料でもって本四の赤を埋めるというようなことではいつまでたっても料金が下がらない、これでは利便性というものあるいは日本の物流の将来というものにかけても大変弊害が起きる。

 ただ、総理がおっしゃった第三者機関をつくって、そして国会に提出してこれを決定するということに対しては、私どもは閣議として了解をしたわけでございます。この第三者機関というのは、今たまたま先生がおっしゃった、井上先生が御参加になった国幹審の八条機関と同じ八条機関になるのかどうか、これがまだ十二月までクエスチョンマークでございます。ですから、同じ八条機関で二つの法案をつくるわけにいきませんから、前の国幹審の八条機関を廃止して新たに第三者機関としてこの公団の統合の話をするのかしないのか、その辺は総理の頭の中でも私はまだ固まっていないと思っております。

 ですから、そういうことで、私は、例えば総理は十二単衣のお人形の最後の姿をお示しになったので、私たちは、十二単衣といっても十二枚着ているわけじゃございませんで、襟を重ねたり、中身を赤だとか緑にするとか、その中身の手順は国土交通省がこれから真剣に作業をしていくものである、総理は最後のでき上がった姿だけおっしゃったんだと思っております。

井上(義)委員 国幹審は国民の代表も入っている重要な機関なので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

赤松委員長 松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 関西国際空港についてお尋ねをさせていただきます。

 大阪府を初め関西の自治体及び経済団体で構成します関空全体構想促進協議会は、昨年末に関空の事業推進方策に関する検討会議を設置いたしました。関空の利用促進、利便性の向上、国際競争力の強化、事業の安定的な推進について、国と連携しながら幅広く検討を進めるというふうにうたっております。

 そして、昨日、その検討会議の最終報告書がまとまりました。それによりますと、関空全体構想の実現、とりわけ二期事業の円滑かつ着実な推進、これを強くうたっております。

 大臣におかれましては、たびたび関西に入られ、また関空を利用されて、関空の必要性については十分御認識であるというふうに理解をしておりますけれども、二期工事を揺るぎなく推進していくという決意は前からお伺いしておりますが、今も変わりがないかどうか、その決意のほどをお願いしたいと思います。

扇国務大臣 松浪先生のおっしゃるとおり、国際という看板を上げた以上は、私は、国家の存亡にかかわると思っています。しかも、成田も関空も日本の玄関口であると言い続けてきたんですね。しかも、成田ではできない二十四時間オープンというのは関空に求めて、そして、地域も自治体も財界も国も一緒になって、第三セクターで、早く早く早くということでつくられたんです。

 けれども、二期工事に至っては、昨年、これは前職ですけれども、当時の宮澤大蔵大臣と建設大臣の私と二人で覚書を交わしました。それは、次期十四年度予算案までに基本的なことに関してスキームの見直しをするということを合意しておりましたので、それを話し合いまして、今回はことしの八月でございましたけれども、事業スキームの見直し案をつくりまして、事業費は削減しながらも、少なくとも二〇〇七年度までに完成さすということを私は確認し合っております。

 また、国際と看板をつけて、関西の財界が景気が悪いからといって、そのたびに飛行機を飛ばしたり飛ばさなかったり、そんなことできません。私は、国際という看板がついた以上は、やはり少なくとも国が基本的に何かの保証をすべきだと。ですから、関空と今度新しくできる中部国際空港は、三つを合併させて、下はきちんと国が保証するということになれば、これこそまさに日本の顔を国民の皆さんに負担していただいた公共工事にする、こういうことが国際的には通用すると思うんです。そうでなければ、私は、アジアの中で孤立して、ハブ空港たり得る姿がない、そう信じております。

 私は、いつも申し上げておりますように、この二十四時間フルオープンの関空の二期工事は、国際という看板がつく限り、成田の二の舞で一本で終わってしまったというのでは、やっと来年四月、成田の二本目が来るんですから、それと同じ轍を踏まないようにということを心して交渉しております。

松浪委員 大臣から心強い決意をお伺いして、安心させていただくところでありますけれども、深谷航空局長にお尋ねをしたいと思います。

 一生懸命関空をつくろうということに努力をされた中心人物の一人に塩川正十郎先生がいらっしゃいます。この先生は今財務大臣であられます。景気が低迷しておる、そこからどういう問題が起こってくるんだろうか、それは申すまでもございませんけれども、十九日に護岸の概成を祝う式典が行われました。私も出席をさせていただきました。何としても二〇〇七年に供用開始できるように、一生懸命やっていかなきゃいけない。そして、工事が始まって二年と四カ月たつわけですけれども、来月からは土砂も入れられる、こういう状況であります。

 来年度の予算、これについて、関空の工事については全く心配が要らないのか、その辺を航空局長にお尋ねしたいと思います。

深谷政府参考人 御説明申し上げます。

 御指摘の関空の二期事業につきましては、平成十一年七月に現地着工をして以来、護岸工事あるいは埋め立て部の地盤改良工事、こういうことをやってまいりました。先生今御指摘のとおり、今月、護岸の概成がいたしたところでございます。

 二期事業につきましては、本年度当初予算では、事業費ベースで千七十二億円を確保しております。

 今後、御指摘のとおり、用地造成のための本格的な埋立工事を進めていきたいというふうに考えておりまして、来年度の概算要求におきましては、二期事業費千百三十七億円を要求しているところでございます。

 来年度予算、御指摘の来年度予算につきましては、二期事業が、関西圏の航空輸送需要の増大に的確に対応していくために必要不可欠というふうに考えておりまして、関西圏あるいは我が国の発展のためにも極めて大事なプロジェクトということを十分踏まえながら、所要額の確保に全力を挙げて努めてまいりたい、かように考えております。

松浪委員 どうもありがとうございました。終わります。

赤松委員長 樽床伸二君。

樽床委員 民主党の樽床でございます。

 まず、せんだって、小田急線の高架化につきまして、世田谷区内の工事のことでありますが、裁判所で国土交通省の事業認可取り消しを認める判決が下されたわけでありますが、このことにつきまして、我々司法の分野に立ち入るべきではないわけでありますが、この大きな意味での公共事業は、川上段階、つまり計画段階できちっとした合意ができておればこういうことにはならなかっただろうというふうに思っております。

 実は、こういう観点から、さきの通常国会のときに、土地収用法の修正、附帯等々の中で、その川上部分についての取り組みをきちっとやっていくということがうたわれておるわけでありますが、こういう判決を受けまして、通常国会でそのようなことが決まった後、どのように整備等々、検討が進んでおるのか、まずお聞きをしたいと思います。

扇国務大臣 樽床先生がおっしゃいましたように、私は、公共工事というものは基本的に、今先生は川上という言葉をお使いになりましたけれども、事業の計画段階から幅広く、情報公開とか住民参加、そういうことをしたいということを、土地収用法のときにも御答弁をいたしました。私は、もうそれが原点だと思っております。

 具体的にこれまで、平成九年でございますけれども、河川法の改正によりまして、もう御存じのとおり、河川整備計画の策定の際には地域住民等の意見を反映させる手続を導入というふうに決められておりまして、あらゆる面で、少なくとも都市計画策定に関しましても、私は、この決定に際して、住民の意見を反映させるというのは原点だったと思います。特に私は、案の策定段階から原則として公聴会でありますとかあるいは説明会、そういうことを行うべきだということを言っております。

 また、今先生がおっしゃいましたように、さらに今後どうしていきたいかということで、道路事業につきましても、計画当初より御存じのインボルブメント、PIの積極的導入、今回は今月の二十二日から、原則として構想段階にあるすべての高規格幹線道路の事業に関しては、そのプロセスを公表して多くの皆さん方に参加してもらうという方針を国土交通省としてはとっております。

 ですから、皆さん方にぜひこういうときには率先して参加して御意見もいただきたいという方式に変わっておりますので、私は、今後横断的な取り組みを進めるために、六月の二十一日にも、「国土交通省における公共事業改革への取組」におきまして、構想と計画段階における幅広い意見反映のための手法について、運用面での整合性を確保するためのガイドラインの策定書というのをつくっております。これを皆さん方へお渡しして、今申しました九月二十一日には経済財政諮問会議、これで決定していただいたということでございますので、二十一日の経済財政諮問会議においても、先ほど、皆さん方ももう既に御承知の、工程表というのをお出ししましたね、あの工程表の中にこれを取り入れるということをきちんとうたってございますので、これによって、より多くの皆さんに徹底して御参加いただけるものであると。

 今、先生がおっしゃった、川上を基本にするというのは、私ども、今後心がけていきたいと思っております。

樽床委員 ぜひ、その計画段階における合意というものをよろしくお願いを申し上げる次第でございます。

 続きまして、道路公団の改革案につきまして御質問させていただきます。

 今いろいろマスコミをにぎわしておるわけでありますが、実は我が党も、道路公団及びその関係三公団の改革案について決定をいたしておりますが、ざっと簡単に言いますと、三年をめどに分割・民営化、上下一体ということでありまして、それから、本四の部分もとりあえず第三者機関でどうするかということをちゃんと決めましょうと。しかし、我々は、これは三条機関でやっていくべきである、こういう見解を持っております。

 それから、道路の整備計画につきましても、凍結とか見直しとか、いろいろ言葉が飛び交っておりますが、凍結というのは、広辞苑を引きますと、一時的に保留する、こういう意味でございますので、言葉の意味にこだわらずに申し上げますならば、我々は、一時的に凍結をして、その路線を民営化した企業でそのままやっていく路線、それから、地域の事情で採算性を度外視してもつくらなければいけない道路は、国とか自治体が税金を入れてつくる路線、それから全くやめる路線、こういうものにちゃんと分けてやるべきである、その分けるのも第三者機関できちんとやりなさい、第三者機関が三条機関ですから大変大きな権限を持つ、こういう案でございますが、そういう我々の考えに基づきますと、世上伝え聞いております政府・与党の案について不明な点が幾つかございますので、御質問させていただきます。

 まず、民営化ということでありますが、これは分割なんですか、それともそうでないのですか。一つにして分割というような言葉がいろいろ飛んでおりますけれども、ちょっとそこら辺のことをはっきりと明言をいただきたいと思うわけであります。

扇国務大臣 今先生がおっしゃいますことは、一番基本の基本でございますので、長くなるといけませんので簡単に申し上げますけれども、私は、そのことを論議しようということで、高速自動車道に関係しまして、諸井あり方懇談会というのをつくりまして、五名の方においでいただいて、きのう、私にいただいた答申を、総理に御報告に行ったところでございます。

 その中で、今までこのあり方懇談会の中で論議されましたことは、上下分割は天下りをふやすだけで、しかも収入、支出を一体化するということから、民営という言葉から離れる。ですから、上下分離はしないで一体で民営化するということが、きのうの諸井座長の話の中できちんと出ておりまして、そのことは総理に申し上げました。

 ですから、上下を分離しない、それは、普通の民間人、例えば諸井さんとかトヨタの奥田さんが入っていますけれども、民間人からすれば収入と支出を一体化するのは当たり前の話だ、それを上下分離して収入と支出を別にするようなことでは民営化ではないと民間人のきちんとした答弁が出ておりますので、私は、このことははっきり総理が認識してくださったと思っております。

 それから、今先生がおっしゃいましたことで大事なことは、何条機関にするかは、私には総理からまだ御下問はございません。けれども、きのうは総理は内閣としてということで、さっきも御報告申しました行政改革本部がけさ開かれまして、この法人の民営化ということだけ、そして、廃止ということも、五年つきの住宅金融公庫等々、きちんときょう閣議決定いたしましたので、道路に関しては民営化、そして住宅金融公庫、都市基盤整備公団は廃止ということを確実に決定されました。

 ですけれども、今樽床先生の御質問は、道路公団に限ってでございますので、そういう意味で、国土交通省としても、本四をしょうと、四公団統合すると、これは少なくとも、あとの三公団で本四の赤を埋めるということは、料金を払っている皆さんに納得していただけるかどうか、これは疑問だ、東京とか大阪を走っている人たちで四国の穴埋めをしろという、それだけは理解が得られないのではないかということを、私はきのうはっきりと総理に再度申し上げました。

 ですから、今樽床先生が、民主党として案をお出しいただいて、三公団統合で本四は別途ということでございますけれども、私も、まず日本道路公団を最初に民営化して、阪神、首都もそれぞれ民営化したところで一体にすることは賛成、本四を入れることは慎重を要するということをきのう申し上げて、今もその考え方に変わりありません。

樽床委員 今のお話を要約しますと、民営化、分割というのはほぼ間違いない。それで、上下は分離しない、これもはっきり明言をされたわけであります。上下一体というのは、これは世上言われていることとちょっと違うのかなと、私は、大変望ましい方向だというふうに認識いたしておりますが。

 本四のことにつきましては、私どもは、三つと本四を切り離してというところまでは明言をいたしておりません。本四については、ほかの三つと一緒にするかどうかということも三条機関できちっと検討し決定をしていこう、こういうことであります。

 実は本四の問題で大変大きいのは、今大臣がおっしゃいました、本四の赤字をほかのところの黒字で穴埋めしていいのか。これは、ちょっと言葉が不適切かもわかりませんが、変形プール制みたいなものでございまして、黒字のところで赤字を埋める。今までのプール制も、要するに、いいところの収益で悪いところを埋める、こういうことで、それのちょっと焼き直し版みたいなところもあります。ですから、大臣のおっしゃることはよく理解できます。

 ただ、ここで問題は、なぜ本四が赤字になっているのかということをきちっと総括をしなければならぬということであります。総括をするというのは、私は過去の人を批判するつもりは全くありませんし、昔にさかのぼって責任追及したところで橋がどうなるものでもありませんので、時計の針は戻りませんから、それをとやかく言わないという前提で言いますと、なぜ三本つくったんですか、なぜ一本でとめておかなかったのかということであります。採算性というものを考えれば、あの瀬戸内海に三本ああいう橋が要ったかどうかということの総括が要ると思うのですね。そのあたりについては、どのようにお考えでございましょうか。

扇国務大臣 これは過去にさかのぼることでございますけれども、いつか私申し上げたかどうかわかりませんけれども、私、一九七七年に初当選いたしまして、自民党の部会で、三本の橋は要らない、真ん中の一本の分で四国一周の高速道路をつくるべきだと発言しまして、後で呼び出されました。

 私は、やはりこの三本というのは政治判断だったと思います。政治が間違ったのであれば、今回は政治で正していくしかない。そういう意味で、私はある程度お許しをいただいて、今考えれば、政治家だけが悪いわけじゃなくて、それに資料を出せと言われて、その当時の国土庁だったか建設省だったかがこの通行量の資料を出したのだろうと私は思う、想定資料。

 それは、あの当時、高度成長でもっと車がどんどんふえて通行量が倍増するという、私は、その当時の景気からすれば、人口増になるし、景気もよくなるしという通行量の設定自身もやむを得なかったのかなと。ですから、そういうすべての政治的な判断のミスもあったでしょう。また、甘い計算の方法もあったでしょう。そういうものの相乗効果のツケが、本四に三本つくって今の赤字という状況になったので、私は、これは政治家にも責任もありますし、また、今景気が落ち込んだ誤算というもの、社会情勢というものもやはり加味されていると思っておりますので、この際、これは間違っているということを言いながらも、だれが責任者というのは私は言えないと思います。総合的に間違っていたんだということだけは改めて私も確認して、そして、これを前進させるためにどういう方法をとるかというのは今後の課題だと思っております。

樽床委員 本四の問題につきましては、一体にするのか、別にするのか、いろいろ今後の議論ですが、今大臣がおっしゃった、政治の責任、それから将来の予測の誤りというものをきちっと押さえてから議論をしないと、すべてこれまでのように、うやむやで、責任隠しでぐちゃぐちゃとなっていくようなことだけは、これは何としても避けなければならぬ、このように思っておりますので、ぜひとも大臣の強力なリーダーシップのもとで、よろしくお願いを申し上げる次第であります。

 実はその関連で、需要予測ということのお話がありました。要するに、倍増するんだとか、そういう過去の甘い見通し、こういうお話がありましたが、実は今回の政府・与党の合意の中で、三十年を五十年に延ばす、もう御存じのとおりでありますので詳細は全部省略をいたしますが、説明はいたしませんが、ある意味で言うと、これが妥協と映るのかもわかりません。

 これは、その方々の主観の問題でありますけれども、これが何で五十年になったのかということは、世上言われておりますのは、低い金利で、交通の需要量がもうちょっとふえていく、こういう前提に立てば五十年でも大体十九兆円を超える規模が確保できて、まあまあ何とか上手にしのげるのではないか、こういう思惑があるやなしやということが言われているわけであります。真偽のほどは私は定かではありませんが。その三十年から五十年の中に、政府・与党が合意をした前提にそういうことがあるとするならば、五十年に延ばすと十九兆幾らということの試算の背景というのは、一体どういう背景があるのでございましょうか。

扇国務大臣 これはきのうのお昼でしたか、政府・与党連絡会議が開かれまして、与党三党の皆さん方が政府・与党連絡会議で、その前の二十二日、先週ですけれども、与党の三党首会談がありました。その前に私も総理にお会いしましたけれども、私がお会いした後で、政府・三党首会談で、これは三党首が皆さん承認なすったということでございます。

 三十年から五十年に変更したということは、私自身も力が足りなかったのかもしれませんけれども、総理からいきなり一番最初にいただいた宿題は、三十年で国費ゼロと。それで、私は一生懸命国土交通省で対策を練ったわけでございますけれども、総理に呼ばれて、今度は、五十年で国費ゼロはいい、そのまま。三十年が五十年になったという話を私も総理にいきなり言われまして、その点の過程がなかったので、私の力不足かもしれませんけれども、私は、やはり少なくとも皆さんの御意見を聞いて、総理がトップダウンで、それこそ独裁者のように決めたことを全部するのではなくて、今やはり連立与党という、連立をしておりますので、多くの皆さん方、しかも、国会にこれを出したときにも皆さん方の承認がなければ通らない法案ですから、与党と話し合って、皆さん方で、これが一番良好であろうという線を政府・与党で話し合ってお決めになったのであれば、それはそれで私は尊重すべきだと思いますし、できればこういう話し合いに政府・与党だけではなくて民主党もお入りいただいて、私は、広域な論議をして三十年が五十年になるというならもっとよかったなと思っておりますので、その点は、私は、妥協の産物という言い方ではなくて、より国民に理解される改革の過程だというふうに思っていただければいいと思います。

樽床委員 段取りとしてはいろいろあるんでしょうけれども、そうなると、世間で言われていますように、金利が低くて交通需要がちょっと伸びる、こういう前提で関係者の方々が合意をした。

 私は、需要が伸びるというのはちょっと甘いのではないか、このように思わざるを得ないわけであります。しかも、今後つくって整備していくであろうという路線は、申しわけないですけれども、これまでつくってきた道路よりも交通量は恐らく少なくなるだろう、これはだれが考えてもわかるわけでありまして、そう考えると、予測の前提とした需要量も下がる。金利も、これはどうなるやわかりません、これははっきり言いまして、経済は生き物ですから。

 そうなると、前提がぐらっと崩れる、関係者のですよ。我々はそこら辺はちょっと横に置いておきますけれども。そうすると、本四の話で政治的な責任もあった、こういうことでありますが、そこで政治的な力でまた計画の先送りということが出てくるのではないか、うやむやになってしまうのではないかということを大変懸念するわけであります。

 なぜかといいますと、我々の案では、要するに、第三者機関を三条委員会という強力な機関にして、そこで、先ほど言いましたABCの路線に分けましょう、こういうことを言っているわけですね。そうすると、それで決まって進むわけなんですが、どうも与党の方では、その第三者委員会は八条機関でちょっと緩やかで、我々が言っているよりも緩くて、第三者機関は、経営形態のあり方は検討するけれども、個別路線ごとは、これはここでは決めない、それは最終的に国土交通省で線を引いてちゃんとやるんだ、第三者機関の権限をぐっと下げてやろうという話も漏れ伝え聞いておるわけであります。

 そういうことをもろもろ考えますと、どうも、前提条件が変わってくると、またかつて来た道と同じような経緯をたどって、政治の責任が果たせなくなるのではないかということを私は懸念をいたしておりますが、大臣、いかがでございましょうか。

扇国務大臣 再び計算の間違いというものがあってはならないと思いますけれども、私は、今コンピューターで計算するものですから、インプットする材料が問題だと思うんですね。今先生がおっしゃったように、金利がどうなるのか、三・〇でいくのか五・〇でいくのか、あるいは通行量がどうなるのかと。今の本四を計算したときと同じように、低く、最低限に見積もってどうかということであればいいですけれども、なるべく甘い計算方法をインプットして、出てきた答えはこうだと言われても、インプットするときの計算が違っていれば、当然コンピューターははじき出すわけでございますから、それは私はあってはならないと思っております。

 けれども、民主党で樽床先生等々が勉強して、今ABC案とおっしゃいましたけれども、私はそこまで細部を存じ上げておりませんけれども、そういう御意見がどんどん出てきて、そして、三条機関にするか八条機関にするかは、私先ほどから聞いておりませんということを申し上げましたけれども、例えば、よしんば八条機関にするのであれば、先ほども井上先生がおっしゃいました、八条機関で既に国幹審というものがあるわけですね。そうすると、その国幹審を廃止しなければ同じ八条機関でできないわけですね。ですから、そういう手続上、先生はもっと厳しい三条機関にするべきだという、これはもう参考にさせていただくと思いますけれども。

 道路をつくりますときに税法上の耐用年数というのが決まっております。それは五十年に決められているんですね。ですから、今度三十年から五十年とおっしゃったのは、税法上の道路の耐用年数が五十年というところから来たというふうに私は聞いておりますので、もしもそれであれば、五十年という線もあり得るかなと思っております。

 先生がおっしゃいましたように、五十年に延ばしたから十九兆円ぐらいで今までの九三四二全部できるよということではなくて、金額の問題ではなくて、例えば、先生が今おっしゃいました日本道路公団一つとってみても、これを民営化するということは、もちろんコストダウンになるわけですね。人員整理もしますでしょうし。まして阪神も首都もみんなで合体した、例えば三公団を統合したとして、総裁だって一人でよくなるわけですね。総裁なんてなくなるわけですね。例えば、民間会社であれば社長になるわけですから。

 世間がリストラやっているんですから、そういう経営母体自体のリストラ、もしそのことをやれば、経営母体も、今道路公団は八千八百人しか人数がいませんから、今までのNTTとか国鉄のように何十万人じゃないんですから。それを分割する意味はないというのは、私は、八千八百人しかいないんだからという意味で一体化しよう、上下も分離しないということで、上下分離したらもっと役員がふえていくんです。

 そういうことで、民営化するということは、すべて日本道路公団が、名前がどう変わるかわかりませんけれども、これ自体がスリムになるんだということからすれば、経費の節減もできます。例えば、三十日からETCを私は全部やります。ETCをやれば料金所の収集人も要らなくなりますね。そういうことで、会社自体のリストラができて、そして母体も小さくなるから効果が出てくるということもあり得るので、それも道路に回すというのであれば、それはまた次の話だと思っていますので、まずそれをするというのが行革だと思っております。

樽床委員 そういう観点からいきますと、道路公団は赤字、関係会社は黒字、こういう構造が今あるわけですね。民営化になると、これも当然全部一緒くたにしていかないかぬわけで、公団は赤字、関係会社は黒字というのも大変おかしなことであります。そこにいろいろなことがくっついて回っているわけでありますけれども、公団は赤字、関係会社は黒字、こういう現状もきちっと民営化の過程の中で是正をして、そして、きちっとした経営ができるようにこれはぜひともしてもらわなければならない、このように思うわけであります。

 今お話を聞いておりまして、一点だけもう一遍確認をさせてもらいたいんです。

 今の大臣のお話の中でいきますと、分割でないようなお話をちらっとされたように思うのですが、我々は地域ごとに分割をしたらいいのではないか、もしくは、路線ごとに会社を分けてやったらいいのではないかということを言っておりますが、今の大臣のお話でいくと、分割しないで全部一つだというお話がちょろっとあったようでありますが、これをちょっと確認をさせてください。

扇国務大臣 分離と分割は違うわけでございまして、上下分離しないということでございまして、全国を分割するとかなんとかということは、それは違う話でございます。今申しましたように、日本道路公団は国鉄、NTTと違って、人員も何十万じゃなくて八千八百人ですから。それももっと縮小するわけですから。分割すれば分割するだけ、会社の役員もふえていくわけですね。ですから、まずは上下も分離しないで、そして一体化するということ、母体をつくって。その上で考えてみれば、地域間の競争もするように、あるいは支店をつくっていこう、これは後の話でございまして、今はまず一体でやるということ。一本でなければ話が先に進みません。私はそういう意味で、国鉄のように、全部を分割していくということ、数十万人の職員がいるということと全然違うということを一点確認させていただきたいと思います、私の言っていること。

 それから、今おっしゃった子会社の話でございます。

 親ガメがこけているのに子ガメと孫ガメがもうかっている、こういうことはもうそのとおりでございます。しかも、御存じのとおり六十三社ございます。これはファミリー企業と言った方がいいでしょう、関連ファミリー会社、みんなお互いに株を持ち合っています。既に民間です。ですから、日本道路公団を民間にするといったときに、この人たちは、いや、僕たちは最初から民間だからノータッチにしてくれ、僕たち関係ないよと言われたのでは、それは、言葉は悪いですけれども、世間で言う食い逃げになる。

 私は調べましたら、その関連の子会社も、役員同士が兼務したり、株式を相互に持ち合ったり、あらゆることをしております。そういう意味では、私は今回は、日本道路公団の民営化のときにそれらのファミリー企業、関連企業を、全部それを逃さないで連結で計算できるように、うまい汁だけを吸って子ガメや孫ガメだけがぬくぬくと逃げていくということだけはしないでおきたい、その点は特に注意したいと思っております。

樽床委員 ありがとうございました。

 私の持ち時間が終了いたしましたので次に譲りますが、最後に一言だけ申し上げておきたいと思います。

 大臣の非常に前向きなお話をお聞きいたしました。私どもも考え方が、方向性がかなりかなり似ているわけでありまして、ただ具体的なところになりますと、若干またいろいろ違う点がございます。

 こういう問題は、その具体的なところのどこが肝心のつぼかということで、つぼのところをくるっと変えてしまうと全体ががらっと変わってしまうということがありますので、つぼがどこかということをしっかりと見きわめながら、今後、具体論としてまたいろいろと議論をさせていただきたい、このように思っております。

 ただ、大臣の心意気につきましては、私はそれなりに敬意を表させていただきたい、生意気でございますが、そのように感じたところでございます。

 それで、一点だけ、一言だけでいいんですが、この改革案の法案としての提出はいつごろを予定しておられますか。もしわかれば、明言できれば、一言お言葉をいただいて、終わりたいと思います。

扇国務大臣 現段階では、私の権限ではございませんけれども、総理は、来年、通常国会の予算案提出前に、通常国会早々に第二次補正とこの第三者機関の、三条か八条かまだ未定ですけれども、それを一緒に出して、通常国会の予算案審議冒頭でこれを審議していただいて作業を進めたいというのが、今の総理のお言葉でございます。

樽床委員 ありがとうございました。

赤松委員長 今田保典君。

今田委員 民主党の今田保典です。

 私は、航空機内の迷惑行為についてお伺いをしたい、こういうふうに思っておるわけであります。

 御案内のように、アメリカでテロ事件がありました。さらには、来年五月にワールドカップが開催される。こういう状況の中で、機内迷惑行為について何らかの施策をとらなきゃならぬのではないかというような思いでこれから質問をさせていただきたい、このように思います。

 まず最初に、この問題の現状認識についてお伺いをしたい、こういうふうに思います。

 御案内のように、飛行中の航空機内で、暴力、暴言、威嚇、あるいはたばこを吸ったり、酒を飲んだり、あるいは携帯電話をかけたり、いろいろな方々がおるわけであります。さらには、セクハラという方もおられる。こういうことでございまして、世界の主な航空会社で組織しております国際航空運送協会で調査してみれば、九四年では千百三十二件だったのが、九七年には五千四百十六件ということで、三年間で実に五倍になっておる。そういう関係で、日本ももちろんそういう状況でございまして、定期航空協会で今年度調べた結果、三年で五倍に急増している、こういう状況でございます。また、警察も中にはいませんので、警察を呼ぶわけにもいかぬ、こういうことでございます。

 こういった現状をどの程度航空局で把握しているのかということについて、まずお伺いをしたいと思います。

深谷政府参考人 御説明申し上げます。

 先生御指摘のとおり、近年、我が国におきまして、いわゆる機内迷惑行為の発生件数、これが増加傾向にあって、警察要請を伴うような重大な事象も増加しているというふうなことにつきましては、定期航空協会からの要望等を通じまして、私どもとしても承知をしておるところでございます。また、国際航空運送協会、いわゆるIATAによれば、世界的にもそういった傾向にあるというふうに言われておるというのも承知をいたしております。

 これらの点につきましては、航空企業が大変ふえてきて極めて利用が一般化してきたということや、あるいは機内での禁煙化というものも普及するということなどによるものではないかというふうにも考えられますが、いずれにいたしましても、航空業界をめぐる新たな問題かなというふうに認識をしております。

今田委員 そもそも航空機は、例えばジャンボ機なんかは四百トン近い重量があるわけですね。そういった重量でバランスよく飛んでいるわけでありまして、言葉をかえれば、密閉空間である、こういう状況ではないかというふうに思うわけであります。もし何か事件があった場合にはすぐに着陸はできない、こういうたぐいのものでございます。また、航空機内には五百名近くも乗れる飛行機もあるわけであります。そういう状況のもとで、いわば極めて特殊な空間だと言わざるを得ないわけであります。

 当然、機内で迷惑行為を行った方に対して、違うところに囲んでおくというわけにもいかない状況なわけですので、そういった行為に対してやはり何らかの処罰を行う必要があるのではないかというような観点から、私どもは立法措置が必要ではないかというふうに思っておるわけでございます。

 当然、運送約款等を改定しなければならないし、また、新たに迷惑行為についての立法をつくらなきゃならぬ、こういうふうに考えておるわけでありますが、このことについて、我が党でも、いろいろなところで勉強しながら今日までやってまいりまして、きょうかあすじゅうに機内迷惑行為法案たるものを提出する予定でございます。当然、お話にお聞きしますと、与党である自民党の中でも、このことは容易ならぬというようなこともありまして、いろいろと検討されているというふうにもお聞きをしております。

 そこで、大臣にお聞きしたいんですが、立法措置についてお考えがあるのかどうか。また、我が党でこれから出そうとするものを十分に理解をしていただいて、精査をしていただいて、ぜひひとつ御検討いただければ大変ありがたい。このことを含めまして、大臣のお考えをお聞きしたい、このように思います。

扇国務大臣 今、今田先生の、これだけ数がふえているということを伺いまして、私も資料を拝見して、改めて、こんなに件数があるのかなと思ってびっくりした次第でございます。

 少なくとも、今までの大半のこういう行為に関しましては、刑法等の既存の法律において既に処罰の対象とされておりますのは、先生御存じのとおりでございます。また、航空法に基づいて、あらゆることで、先生もさっきおっしゃいました、機長の判断でこれをおろすことができるとか、あるいは必要な限度で拘束する、抑止処置をとるというようなこととか、あるいは運送約款におきまして航空会社も搭乗拒否等の処置をとることができる。

 あらゆることがありますけれども、今先生がおっしゃいましたように、これだけ多くなると、各航空会社が毅然とした対応をとるのが一番大事なことですけれども、かといって、では法律をつくればなくなるかというと、そういうことでもないとも思うんですね。これはやはり、文化の差といいますか、頻度といいますか、これは人格にかかわることでございまして、まさか飛行機の中でこんなセクハラなんて考えられないんですけれども、それもあるということで、情けない話だな、日本人でなければいいのにななんて私は思いますけれども。

 そういう意味では、今先生がおっしゃいました立法化ということに関しましては、民主党がお出しになるとおっしゃっていますので、よく吟味させていただきたいと思いますし、私たちも航空会社等々関係業界とよく検討していきたいと思っております。

今田委員 確かに、大臣が言われますように、法律をつくれば犯罪がなくなるかといえば、その点はあろうと思います。しかし、私は、日本の国民に、今こんなに一生懸命いろいろなところで検討しているんだというような一つのPRにもなるんではないかと。さらにまた、来年度はワールドカップがあるわけですから、そういったこともあり、政府あるいは国会でいろいろ議論しているんだなということが国民にわかっていただけるだけでも私はいいのではないかというふうに思いますので、ぜひ御検討いただければ大変ありがたいというふうに思います。

 そこで、立法措置をする必要があるというような理由についてこれから申し上げたい、このことについてもお答えをいただきたい、こういうように思います。

 いわゆる国際民間航空機関、ICAOと言うんだそうでありますが、九月のモントリオール総会で、航空機内犯罪に関するモデル法案というものを可能な限り早期に国内法へ採用するよう締約国に促すことを決議いたしました。

 このモデル法案では、民間航空機内で行われた三つの行為類型を犯罪といたしますということになっておるわけであります。

 その一点は、乗務員に対する暴行その他の妨害行為、二点目は、機内の安全性を損ない、秩序、規律を乱す暴行その他の行為、三点目は、その他の犯罪として、トイレなどに行ってたばこをのんだりいろいろなことをやったりする安全関連機器の作動妨害、禁止された電子機器の使用などが挙げられておるわけでございます。

 一方、諸外国での取り組みですが、アメリカやイギリスあるいはカナダ、オーストラリアなどでは、乗員への暴行、脅迫、あるいは機内での酩酊、喫煙、粗暴行為に対する立法化が既に図られておるわけであります。例えば、アメリカでは大変な厳しい処置をしておるようでありますが、暴行や脅迫で業務を妨害した者については、二十年以下の懲役あるいは一万ドル以下の罰金、また、さらに二万五千ドルの民事制裁金という厳しい規定になっておるわけであります。

 こういった機内迷惑行為が、世界的にもあるいは日本でも急増しているわけであります。また、日本は世界で第二位の航空先進国でもあります。そういった意味からして、日本という立場での責任もあるんだろうというふうに思うわけであります。

 さらにまた、先ほど言ったように、来年度はワールドカップがあります。いわゆるフーリガンというものが発生したりする場面があるわけでありまして、その対策も私は必要だろうというふうに思います。

 その対応について、いわゆる国際民間航空機関の総会で確認されたモデル法案について、日本政府としてどのようにこれまで対応してきたのか、またこれから対応しようとしているのか、お尋ねをしたいと思います。

深谷政府参考人 先生御指摘のとおり、先般の国際民間航空機関、いわゆるICAOの第三十三回総会におきまして、航空機内犯罪に関するモデル法制案なるものがつくられました。可能な限り国内法に取り入れるよう促す決議がされたというところでございます。

 このモデル法制案につきましては、その総会での審議過程におきましても、私どもも積極的に参加をいたしましたけれども、あくまでモデルであるので、それをそのまま各国の国内に適用するかどうか、これはそれぞれ各国の事情も異なるところがございますので、その点は各国がそれぞれ判断すべきものではないかというふうにされたところでもございますが、このモデル法制案に掲げられました先生御指摘の何類型、その中にはまた細分化された事柄が記されておりますけれども、そういった行為のうち重大なものにつきましては、我が国におきましても既に現在の既存の法律で罰則の対象となって、いわゆる犯罪行為として規定されておるところでございますのは、先生御案内のとおりでございます。

 今後、国際民間航空機関の議論の動向、諸外国でのそれぞれの対応等も踏まえながら、立法措置が必要かどうか、関係機関とも十分に連携、御相談しながら検討を進めてまいりたい、かように考えております。

今田委員 今ほど申し上げましたICAOのモデル法案の中の、航空機内での電子機器の使用についてお尋ねしたいんです。

 財団法人航空振興財団の調査委員会で調べた結果、携帯電話あるいは電子機器、いろいろなものがあるわけですが、幾ら機内で使用しないでくださいと言ってもなかなか聞き入れてもらえない、こういうことで調査したんだそうですが、実に乗務員の五二%の方がそういう機器を使用しているところに遭遇をしているというような状況でございます。

 このことをやはりやめさせないことにはだめだろうということもありますし、いろいろ科学的に調査した結果、こういう電子機器、あるいは携帯電話も含めて、航空の安全に非常に関係あるものだ、こういうふうにも言われておるわけでありますので、この点についての法的な処置というものも考えざるを得ないのではないかというふうに思いますが、このことについてお伺いをしたいと思います。

深谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 先生御指摘のとおり、ICAOのモデル法制案の中で、航空機において行われたその他の犯罪という類型の中で、電子機器についての部分もございますのは御指摘のとおりでございます。

 この航空機内での電子機器の使用につきましては、航空機の航法装置あるいは通信装置、そういったものなどへの何らかの影響を与える可能性が指摘はされておるわけでございまして、私どもといたしましても、平成八年、九年、二カ年にわたって調査をいたしました。

 その結果、携帯電話等の電波を発射する電子機器については航空機システムに何らかの影響を与える可能性を否定することはできない、さらには、一般の携帯用の電子機器であっても、影響の可能性は極めて少ないものの、航空機システムに影響を与える可能性は全くないとは言えない、こういう調査結果が出ました。

 この結果を受けまして、私どももその指導に入ったわけでございますけれども、現在、電子機器の使用制限、これにつきましては、法令によって電子機器を個々に特定をして、あるいは指定をして使用を禁止する、こういうことはしておりませんが、運航の安全に一層の万全を期そうという観点から、先ほど申し上げました調査結果を踏まえまして、電子機器の使用について適切な措置をとっていただくようにということで、通達で各日本のエアラインに指導をさせていただいて、運送約款でその使用を制限をしていただいているところでございます。

 なお、先生、その使用制限にさらに法的根拠を与えるべきではないか、こういう御指摘でございますけれども、その点につきましては、今後、いわゆる機内迷惑行為全般に関する検討とあわせまして、その規制のあり方などにつきまして検討を進めてまいる、かように考えております。

今田委員 次に、裁判の管轄権についてお尋ねをしたいと思うわけであります。

 現在、国際線の航空機内で発生した犯罪の裁判管轄権は、第一義的にはその航空機の登録された国にあるわけであります。したがって、日本に到着した航空機内で発生した犯罪によっても、それが外国の航空会社であれば裁判管轄権は日本にはない、こういう状況にあるわけでございます。

 逆に言えば、日本からよその国に行ってもそういう状況になるわけでありますが、逆に、日本から立った飛行機が日本の航空会社の飛行機であるという場合は日本で裁判を行う、こういうことなわけであります。ただ、到着国の官憲が犯罪者を日本に強制送還しなければ実際に処罰はできないということに今の法律はなっているんですよね。したがって、刑事罰を受けるべき者が法の網をかいくぐって、結局のところ刑事罰を逃れるという場面が数多く発生しているわけでございます。

 このようなことから、ICAOは、モデル法制案に裁判管轄権の拡大を盛り込むとともに、迷惑行為を行った者についての裁判管轄権は着陸国にあることを決議しておるわけでございまして、アメリカ、イギリス、オーストラリア等ではこのことがもう既に拡張されておるわけであります。

 このことについて、日本ではどのようにこれまで論議をされて、また、これからどうなされるのか、これをお聞きしたいと思います。

深谷政府参考人 御説明申し上げます。

 裁判管轄権の関係についてのお尋ねでございますけれども、これは先生御案内のとおり、我が国の刑法におきまして、日本国内で罪を犯したすべての者に適用されるいわゆる属地主義というのがとられておりますが、さらには、日本国外にあります日本航空機内において罪を犯した者、これについても同様とするいわゆる旗国主義、これがとられているというのが基本なところでございます。

 国外において行われた犯罪、いわゆる国外犯につきましては、内乱罪でございますとか、あるいは通貨の偽造罪でございますとか、航空機の強取の罪でございますとか、航空の危険を生じさせる罪などの罪を犯した者、これはすべて対象になり、また、殺人でございますとか、傷害でございますとか、そういった重大な罪を犯した日本国民、これに適用するというのが現在の仕組みでございます。

 そういった基本はございますけれども、では、いわゆる機内迷惑行為につきまして、どうか。

 これにつきましては、まず、比較的軽微な行為を含めまして、これらの行為そのものを犯罪というふうにするかどうかという点についての検討も当然必要はあると考えておりますけれども、裁判管轄権の拡大につきましては、先ほど申し上げましたような日本におきます刑法の裁判管轄権の考え方のほか、あるいは、このような事案におきますところの身柄あるいは証拠確保の措置、こういったことをどうするかというふうなことなども含めて検討していく必要があるのではないかというふうに考えておりますが、この点につきましては、我が国におきます刑事司法制度そのものにかかわる部分もあろうかと思うんです。したがいまして、国際的な動向も見きわめながら、必要に応じ関係機関とも十分に相談をしながら検討していくべき事柄かなというふうに考えております。

今田委員 七〇年に日本で、航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約、いわゆる東京条約、こういうものが批准されておるわけであります。もう既に三十一年ぐらい前になりますか、こういったものが批准されておるわけでありますが、それにもかかわらず、国内での対応した整備がなされていないのではないかというふうに私なりに感じておるわけであります。

 時代の流れというものがありますし、また変化というものがあるわけでありまして、私は、当時は確かに機内迷惑行為というのは余りなかったのではないかなというふうに思います。したがって、余り深く物事を考えなかったんじゃないかなというふうに思えるんですが、現在ではこういう状況になっておるわけでありますので、その時代の変化に即した国内法の整備を早急に行うべきである、このように思っておるわけでありまして、どうぞ真剣に取り組んでいただきたい、このように思うわけでありますが、その決意のほどをもう一度お聞きしたいと思います。

深谷政府参考人 先生ただいま御指摘のいわゆる東京条約でございますが、これは、航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約、通称東京条約と言われておるものでございますけれども、これにおきましては、自国において登録された航空機内で行われた犯罪につきまして、登録国として裁判権を設定することを義務づけるとともに、機長の抑止あるいは拘束の権限、こういったものについて規定をしているところでございます。御指摘のような、いわゆる機内迷惑行為の類型に当たりますような航空機内の安全や秩序を乱す、こういった行為そのもの自体を刑罰の対象にしようという条約では必ずしもないわけでございます。

 ただ、日本におきましては、昭和四十五年の航空法の一部改正、あるいは東京条約第十三条の規定の実施に関する法律、こういったことでいわゆる東京条約に沿いました国内法整備は既に手当てされているというふうに考えておりまして、この条約との関係につきましては、改めて国内法の整備を行う必要は必ずしもないのではないかというふうに考えております。

 先生御指摘のように、この東京条約の条文に基づきまして、現在の航空法の中で、航空法七十三条の三というのがその批准のために措置をされました。この航空法七十三条の三におきまして、機長は、航空機内の秩序もしくは規律の維持のために、必要な限度で、その者に対し拘束その他これらの行為を抑止するための措置をとり、あるいはその者を降機させることができるというふうな手当てをされたところでございます。

今田委員 時間になりましたが、一点だけ申し上げます。

 今ほど、東京条約については早急に整備する必要がないんじゃないかというような考え方を言われましたが、いずれにしろ、迷惑行為は多くなっておるわけでありますので、ぜひともひとつ、我が党でも、あるいは与党の中でもいろいろ検討されているというふうにお聞きしておりますので、どの党であろうとも、このことは同じ問題として取り組んでいただいて、早急にその立法措置も含めて御検討いただければありがたい、このことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤松委員長 大谷信盛君。

大谷委員 大阪選出、民主党の大谷信盛でございます。

 きょうは、国内貨物の輸送、特に環境、物流効率、そして安全のバランスという観点から、大臣と御議論をさせていただきたいというふうに思っております。特に、国内貨物の九割を担っているのがトラック事業でございますので、このトラック事業を中心にして御議論をさせていただきたい、なおかつ政策実行のリーダーシップというものも含めてぜひとも御議論をさせていただけたらというふうに思っております。

 約十一年前、平成二年に物流二法の新しい法律ができて、経済的には規制緩和で、そして社会的、いわゆる安全や環境ということでいうならば強化をして、我が国の国内物流、特にトラックの場合ですと近代化をしていこうじゃないかということで進んできました。その間、九七年には総合物流施策大綱であったり、ことしの七月にもそのものが新しくなって、物流効果を高め、環境負担の低い物流体系をつくっていこう、なおかつ安全も確立していこうということで進んでおるんですが、この進捗状況と、大きく目指そうとしているものについて、まず総論的な方向性について大臣にお伺いしたいというふうに思います。

扇国務大臣 今大谷先生から、本年の七月の六日に新総合物流施策大綱を閣議決定いたしましたことについてお触れいただきましたけれども、私は、二十一世紀、国際社会の中で日本が取り残されるのではないかという懸念があるその大きな原因が、今大谷先生が御指摘になった物流の話だと思うんですね。

 そして、今日まで、公共工事、悪く言われてきましたけれども、公共工事がなお不足しているという基本的な考え方の中に、今先進国の中では、少なくとも、空港でございますとか港とか、あらゆるところから高速道路に入ったり、あるいは主要都市に行ったりと、そのタイムラグが、余りにも日本は遅過ぎる、先進国では、世界では、十分以内にインターチェンジに入ったり、あるいは一時間以内に主要都市に入れたりということができますのに、日本の場合はそれがまだ達成できていない。

 そのことが、物流の効率の悪さ、まして高速道路の料金の高さ等々、これも含めて、二十一世紀、世界で日本が取り残される大きな理由の一つが物流であるということから、今先生がおっしゃいました、本年、閣議決定されました新総合物流施策大綱によって、私は、コストの削減をすることでございますとか、先進国と同じように、船が港に着いて荷揚げの時間を少なくするとか、そういうあらゆる面で政府として対応をしていく。

 中には、今先生がおっしゃいましたトラックの話もございますけれども、世界のコンテナの大きさと日本のコンテナの大きさ、高さが違うものですから、外国から船で着いたコンテナをそのまま日本のトラックに載せて通行すると、大型のコンテナ、外国のコンテナが通れないトンネルがいまだに数多くある。これも私は世界的には通用しない話だと思いますので、そういうあらゆる物流コストあるいは物流自体の効率化を図っていくのが国土交通省に課せられた大きな役目だと思っております。

大谷委員 わかりました。

 競争力を高めていくには、物流コストが低くなればなるほどありがたいわけなんですけれども、そこにはやはり安全と、なおかつ環境との観点というものが入ってこなければならないというふうに思います。

 まず、このコストと安全ということで考えますと、高速道路の料金は余り安くなっていかない、軽油税が変わらないままでどんどん進んできている中、しかしながら現実を見ますと、料金、運賃、トラックでは届け出制ではあるんですが、実質、現実では、この届けた原価、料金、運賃よりか半分もしくは三分の二ぐらいで今トラックが動いている。要するに、企業努力をしているということなんですけれども、ある意味、無理な企業努力をし過ぎて、過積載もしくはドライバーへの負担でもって交通事故につながるような可能性が高いというような状況なんです。要は、外部環境が努力の割には余り進捗していなくて、料金だけがぐんぐん推し進められて、そこの部分で安全性というものが少しおろそかになってしまっている。

 こんな状況の中、大臣は、この安くなり過ぎている運賃ということについてどのようにお考えですか。

扇国務大臣 どこかにしわ寄せが来ているという大谷先生のお話、私はそのとおりだと思うんですね。

 業者も、高度成長期には足りない足りないといってトラックをたくさん購入してしまった、なおかつ仕事量は減ってきた。では、人件費を下げるのか、あるいはコストをどこで下げていくのかというところで、やはりどこかにしわ寄せが行っているという大谷先生の御指摘は、私はそのとおりだと思うんです。

 これは運送業者のみならず、今、日本じゅうがこの中で苦しんでいるわけでございますので、その中では、今おっしゃいましたように、私は通常国会のときにも二十一世紀はソフトの時代だと申しました。それは、今まで、ただ走ればいいというハードとか、公共工事でもハードをつくりましたけれども、二十一世紀は環境とバリアフリーを考えたソフトの時代にしたいということを私は先生にも御返答申し上げたと思います。

 私は、そういう意味で、トラックのしわ寄せがどこへ行っているのかということの基本的なもの、そして安全性が守られないということが最大限私どもにとっては問題点でございますので、それを業界と、意見聴取しながら、どこにどうしたらいいのかと。

 仕事量が減っていることはもう現実でございますので、公共工事だって二〇%減っているわけでございますから、そういう意味で、より安全性の確保、しかも物流コストを下げて利益が上がるかということは、業界の皆さんと国土交通省担当者とが親密に話し合って、そして安全性を確保するためには何をするべきか、何が必要かという環境の問題を含めて私は検討させていただきたい、また、している現状でございます。

大谷委員 ぜひとも安全、環境、そして物流の効率化というバランスを持ってこれからも進めていただきたいというふうに思います。

 一つ気になったのは、九七年、最初の物流大綱のときにはあったのですが、新物流大綱のときには、いわゆるコストの低減というところが新しいものでは抜けているんです。ある意味安くなったからかなというふうに思うのですけれども、ぜひしっかりと、そのほかの安全や環境というところで力を注いでいただきたいなというふうに思います。

 ここで一つ提案があるんですが、環境であり、コスト、物流効果を高めるということで、大きなトラックにたくさんの荷物を効率よく載せて走れば、交通渋滞もなくなるし、出てくる排ガスも少なくなるというのが当たり前の一つの方向性であるのですけれども、しからばこんなことが考えられるのではないかなというふうに思うのです。

 今、いわゆる四トントラックというものがございます。これは、総重量八トンまでが普通免許で乗れるトラックなんですけれども。四トン荷物があるから四トン車を持ってこいというふうに荷主さんがおっしゃいます。しかしながら、その荷物を効率よく載せたり、荷物が大きいからクレーンやユニックなんかが必要であったりして載せていたり、また保冷関係の荷物を運ぶときはそれなりの冷蔵庫的なものがある、もしくは、荷物が汚れないようにガルウイングがついたような、屋根のついたようなトラックにする。そうすると、最高で四トン載せられるのですけれども、一トン、一トン半ということになってしまって、二トン半とか三トンぐらいしか積めなくなってしまう。しかしながら、いただいている料金設定を見ると二台使うわけにはいかず、一台を使って過積載になってしまう、そして安全性というものが損なわれてしまう。もしくは、運転手さんが週四十時間を超えてしまって、過労しているにもかかわらず、一日休みを返上してもう一回運転してしまうというような現実が起こっているというふうに聞きます。

 しからば、初めから車のブレーキを強化し、サスペンションを強化し、普通車で乗れる総重量八トンのトラックを、十トンまでは普通免許で乗れるように。何が言いたいかというと、普通扱いであるからマーケットメカニズムに合致して何とか企業努力ぎりぎりのところで運賃を乗せてそれで少し利益が出る。大型になってしまうと、いわゆる高速料金であったり、行けるところも限られてきますから、サイズが同じであるのに高速道路ではたくさん負担をするというような、要するにマーケットメカニズムで料金が合わなくなってしまうということになるのです。

 これが、もし総重量八トンが十トンということでも普通ということになるならば、荷物がたくさん載りますから、二台持ってこなきゃいけなかったところが一台で済むし、無理な過積載もしなくて済むというようなことになるというふうに思うのですが、これは国土交通省的にはどんなふうにお考えか、ぜひ御意見いただきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるトラックの積載効率を高めるということは、先生おっしゃるとおり、物流の効率化とか環境負荷の低減に資するものでございまして、国土交通省としても、これは取り組むべき課題としてこれまで推進してきているところでございます。

 その場合に、当然のことながら、安全の確保というものと調和していかなければなりません。自動車の安全の基準、あるいは環境の基準というものは、道路運送車両法という、保安基準というもので決まっているわけでございますけれども、その場合の規制区分としては、自動車の車両総重量というものがメルクマールとして使われる。これは世界的な傾向でございます。そういう意味で、大型トラックの規制においては、我が国のほかの諸制度との整合性を図りながら、車両総重量八トンというのが一つの区切りになっております。

 車両法の観点からいいますと、車両総重量八トン未満の自動車、八トン車という自動車というものについて、四トンという最大積載量を維持しながら架装、クレーン等をつけたりするということは、車両総重量が八トンを超えることになりますので、先生おっしゃるとおり、ブレーキ性能などの安全規制をちゃんと満足するように改造を行えばこれは可能でございます。また、既にそういう架装を見越して、車両総重量が十トン程度であって、架装しても改造することなく要するに四トン積みを確保できるという自動車も流通しているという状況でございます。

大谷委員 車両法的には二十五トンまでオーケーだから、それなりに強化、安全基準さえクリアすれば大丈夫ですよという御回答だったというふうに思うのです。

 これは警察庁の方にお聞きをしたいのですが、これは免許証的には、やはり八トンを超えちゃいますから、今の法律ですと大型ということになってしまうのですけれども、その車が大型扱いされてしまったら、今言ったような運賃コスト、マーケットメカニズムに合わず、余り効果が上がらないことになるんです。その辺、安全性というものをかんがみて、このトラック、八トンから十トンに、サイズは変わらず重さがちょっとふえるということになるんですけれども、何とか普通扱いにするようなことは、安全の面から、また警察庁の方から見るとどんなふうに映るのか、お答えいただきたいというふうに思います。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 普通免許で運転することができる自動車の車両総重量の上限というものを、これは現行八トン未満ということになっておりますけれども、これを例えば十トン未満まで拡大できないかというお尋ねだというように思います。

 そこで、まず、事故の状況でございますけれども、車両一万台当たりの死亡事故件数を見てみますと、七トン未満の平均では一・〇二件でございますけれども、七トンから普通免許の上限である八トン未満までにかけましては三・五〇件ということで、七トン未満の約三倍以上の事故発生率ということになっております。それから、さらには、やはり車両総重量が多くなるに従って事故の発生割合は多くなるといった傾向にございます。

 こうしたことから、現行の普通免許で運転できる自動車の範囲をさらに拡大するということは、道路交通の安全を確保する上で問題がかなりあるのではないか、問題が大きいのではないかと考えております。

 それからまた、国際的な状況というのを見てみますと、道路交通に関する条約というのがございますが、この条約では、国際的に通用する運転免許証の様式におきまして、普通免許に相当する免許で運転することができる自動車の車両総重量というものを三・五トン以下というふうに定めております。そしてまた、主要国におきましては、普通免許の上限を三・五トンとしている国が最も多い。そしてまた、例えばドイツでは、九九年の一月に、従来は普通免許で七・五トンまで運転できておりましたけれども、これを三・五トンまで引き下げた、このように承知しております。

 このような形で、車両総重量八トン未満という日本の現在の基準というものは、国際的な基準から見てみましても大幅に緩和されたものというようになっているのではないかと思います。したがいまして、普通免許で運転できる自動車の総重量を十トンまで拡大するということにつきましては、かなり難しいのではないか、このように考えているところでございます。

大谷委員 今の御回答ですと、七トンから八トンぐらいのトラックの交通事故が多いから、これ以上重さが増すとますます安全性が損なわれるというような回答だったかというふうに思います。それから、ヨーロッパが三・五トンというのはヨーロッパのお話でございますので、我が国は我が国の、今近代化しようとしている大きな閣議決定をされた物流の効率化というものがあるんですから、それにのっとって考えていかなければいけないというふうに思っております。

 私、では八トンで何で日本が切ったのか。普通自動車で何で日本は八トンまで乗れるのか。これは昭和三十五年に決まっているんですけれども、調べたんですけれども、余り明確な回答がないんですよね。とすると、八トンも十トンも、車のサイズでいえばこんなでかいわけですから、そんなに関係ない。

 しかしながら、普通免許を取るときは、二トンのセダンで自動車の免許を取得いたします。二トンの車に乗った人が八トンの大きな大きなトラック、十二メートルに乗っているから、運転のトレーニングが足りなくて事故を起こすんじゃないかというようなことも分析されているそうですけれども、僕は、ちゃんとはっきり事故原因を分析してほしいのです。二トンのセダンで免許を取ってから、四トン、いわゆる十二メーターのトラックに乗るまでに何年か運転していると思うんですよ、死亡事故を起こした人は。それは、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの形でトレーニングをして車を走らせていた、しかしながら、過積載であったり、もしくは過労のため、本当は休みなのに運転を強いられて、ドライバーへの負担が強くて事故を起こしてしまったということの方が事故理由として大きいんじゃないかなというふうに私は思っているんです。

 何が言いたいかというと、それなりに今の説明は整合性があったように聞こえるのですが、もう二枚、三枚分析をしていくと、八トンのところで区切る理由、十トンになっちゃだめなんだという理由は、整合性が薄いのじゃないかなというふうに思っています。

 時間がないから、もう提案をさせていただくのですが、確かに一理あって、普通自動車、二トンのセダンしか乗ったことのない人が大きなトラックに乗っているわけですから、これは何らかの形で、やはり事故が多いものを解決しようと思ったら、研修というか、何か講習を受けるようなシステムがあってもいいのかななどというふうに思っているのです。そのかわり、サイズ変わらず十トンに、重さだけ二トンふえたというような車の場合には、普通免許で講習を受けておればいいですよ、その講習を三年とか五年ぐらいの間で受けたらどうですかということでいうならば、ある意味、ドライバーとしての安全対策というものも施されて、実現可能ではないかなというふうに思うのです。

 これは、物流を効率化していこうという閣議決定がされていることでございますので、ぜひともその安全と、最初言いましたように、効果そして環境というものをしっかりとバランスを持って、閣議、これは一月に省庁再編がありましたけれども、内閣府、総理大臣、しっかりとしたリーダーシップを発揮できるようにしたというふうになっていますので、それは、ぜひとも各省庁連携をしてやっていただきたいというふうに思います。

 もう時間がないのでこれで終わりますが、また、局長の方も言いたいことがありそうですから、ゆっくりと委員会もしくは個別に意見交換をさせていただき、時間厳守で終わらせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

赤松委員長 山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。

 きょうは一般質問で、前々から道路公団の話をずっとやってまいりましたが、委員長に、きょうは石原伸晃行革大臣に、道路公団の改革問題で論議したいのでぜひとも御出席いただきたいと再三にわたって、前回の委員会でもその旨申し出ておったのですが、きょう残念なことにやはり見えられませんでした。ひとつ、どういう理由で見えられないか、委員長にお聞きしようかと思っておったのですが、ぜひ、議事録にこの件はとどめておいていただいて、私の方は質問を続けさせていただきたい、そう思います。

 先ほどの大臣のお話の中で、本四公団の赤字を日本道路公団あるいは首都高速道路公団、その三公団で埋めていくのはいかがかというお話がございました。

 実は私、前回、日本道路公団の財務内容についていろいろお聞きしたのですが、きょうは、問題の本州四国連絡橋公団について大臣及び副大臣にお聞きしたいと思います。

 一般にこの本四公団は大変な赤字だと言われておりますが、平成十二年度、昨年度民間企業仮定損益計算書、これによると、一体どれくらいの収支になっているのでしょうか、民間型とした場合に。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

佐藤副大臣 数字だけ申し上げますけれども、平成十二年度行政コスト計算書における民間企業仮定損益計算書では、料金収入等の収入が八百六十九億円、新たに計上する減価償却費等を含む費用が二千百七十五億円となっておりまして、その差額の一千三百七億円が当期損失金として計上されております。

 また、民間企業仮定貸借対照表では、減価償却後の資産額が三兆二千百六億円となっておりまして、これに見合うものとして、負債が三兆八千七百四十二億円、資本金七千四百四十六億円、欠損金が一兆四千八十二億円となっております。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

山田(正)委員 この民間企業仮定損益計算書によると、本四公団の収入は、道路料金収入が八百五十九億、鉄道その他の収入、全部で九千九百九十五億、間違いないでしょうか。

佐藤副大臣 今、先生八百五十九億と言われましたが、八百六十九億です。

山田(正)委員 鉄道の使用料等を含めると、全収入、これは九百九十九億、いわゆる約一千億、総収入が。

佐藤副大臣 ちょっともう一度、ちょっと恐縮です。

山田(正)委員 私の手元にいただきました民間企業仮定損益計算書によりますと、本四公団の平成十二年度の総収益が、トータルで九百九十九億五千四百九十五万八千九百六十二円となっておりますが、そうでしょうか。

佐藤副大臣 先生、恐縮でございます。鉄道の数字をちょっと今持ってきていなかったものですから、道路だけ申し上げました。

山田(正)委員 副大臣、ちょっと手元に資料がないようですが、質問通告してあったはずなんで、資料を見ていただければ大臣もよくおわかりかと思います。いわゆる本四公団の収入は約一千億ある。その中で、本当の経常費用ですが、実際に道路管理費は、これでいきますと百五十四億しかかかっていない。大臣、見られているでしょうか、民間企業型仮定損益計算書です。道路管理費、鉄道施設管理費を合わせて百五十四億、これが実際の管理費のようですが、一般管理費がその下に九十億とあります。

 ちょっと手元にないようですね。(佐藤副大臣「鉄道がちょっとないものですから」と呼ぶ)大臣、副大臣ともこれを手元に持っていないようですね。

 では、本四架橋のいわゆる行政コスト計算書、平成十二年度版なんですが、私の方で説明いたします。

 これは私としては質問通告しておったつもりなんですが、この中でいきますと、実際、経費は、本四公団においては減価償却まで見て二百六十億ぐらいしかかかっていない、一千億ぐらい収入があって。とすると、約七百四十億というのはいわゆる粗でいう利益に当たるということになります。

 ところが、実際に何で赤になっているかというと、金利として千三百八十五億出ているわけです。それで、結果として本四公団の赤字になっているということなのです。

 大臣、私は質問通告しておったつもりなのですが、この千三百八十五億の金利、これは何でこんな高い金利になったかということなのですが、一応簡単に御説明願えればと思います。

扇国務大臣 今鉄道が抜けた資料しか手元になくて、道路だけになっていて申しわけないと思います。

 今おっしゃいましたように、国土交通省で債務圧縮の処理方法というのも随分検討しましたけれども、国と地方と受益者というこの方式、負担のあり方、そういうことも含めて今後検討する必要があるというのが、きのうから、先週の金曜日からと正式には言った方がいいでしょう、総理と私どもと、本四公団の将来像を検討しているときに話になっておりますのはそういうことでございます。

 今先生がおっしゃった数字は間違いないところでございますけれども、この負担はどういうことであるか。もうさっき樽床先生の御質問のときにも私申しましたように、もともと三本つくったのが間違いだったのだという反省のもとに、私ども、それができてしまった、技術としては世界に誇れる技術だと私は思っておりますけれども、それを今後いかに有効にしていくか。その採算目標、通行量、料金等々を、負担しながら、いかにしてこれを国民の財産として活用できるかということを、今後検討していきたいというのが今の心境でございます。

山田(正)委員 大臣、一般的なお考えは結構なのです。私が聞いているのは本四公団の中身そのものについてなのです。

 三兆八千億のトータルの負債があり、その借金の金利が一千三百億になっている。金利が大変な負担でもって、実際、経常では七百四十億ぐらいの黒字を今現在でも出しているけれども、金利負担で赤字になってしまっている。そういう御認識、それでいかがでしょうか。

扇国務大臣 今先生がおっしゃった数字に間違いございません。

 本四に関しましては、少なくとも管理費が二百四十八億円でございます。そしてこの管理費を上回る料金収入が八百六十九億円あるのですね。それはもう先生がおっしゃったとおりでございます。けれども、約三兆八千五百億円の借入金の利払いが千三百七十九億円、今先生が千三百八十億円とおっしゃいましたとおりでございます。これで当期の損失金の七百五十八億円が発生しているというのが現実でございますので、これを今どうしていくか。

 そして、国費ゼロというのが総理がおっしゃった言葉ですので、先生がおっしゃった数字は間違いないものですから、交通量も今後ふえるかどうかという、先に話が行くわけでございますけれども、この方法をどうしていくか。ですから、私は、本四だけは別途考えさせていただきたいというのを、国土交通担当としては切実な思いをしながら申し上げたところでございます。

山田(正)委員 千三百八十五億の金利、これがなぜ高い金利負担になっているか。平均金利は、これでいきますと約四%ぐらいになるのじゃないか。

 ところが、今の国債の応募利回り、金利はきょう現在一・二九六%、この安い金利の国債に借りかえると、恐らくこれは、四百五十億ぐらいの金利負担で場合によれば済むのじゃないか。例えば、今、外債の金利が年に一%ちょっとですが、外債金利等で借りかえすれば、本四公団は黒字になってしまうのじゃないか。金利負担が例えば四百五十億ぐらいあるいは五百億ぐらいになれば、鉄道収入も入れ、経費を差し引いて、減価償却を差し引いて、実は七百四十億は利益を出しているわけですから。そうすると、これは借りかえだけで立派な黒字経営になっていくのじゃないか。大臣、いかがでしょうか。

扇国務大臣 これはそもそも、本四公団のみならずあらゆるところへの、財投も含めて国の融資あるいは無償等々の出し方だと私は思うのですね。ですから、今先生がおっしゃいましたように、有利子負債を圧縮して、無償にしていくということに切りかえるか、あるいは今の世間並みの低い金利にしてもらったら、これは償還できるのは当たり前の話なんですね。

 ちょっと外れて例を挙げますと、例えば金融公庫等々が財投からお金を借りております。三十年償還なんですね。三十年を、借りたときの金利で今も払っているのです。その負担分が四千億あるといって、国からまた税金を借りるんですね。借りて、四千億でその金利の差額を払っているわけですね。ですから、財投を低くして、今の集まってきた財投のお金を財投に返させてくださいというと、三十年の約束でしたのだから三十年分の金利を上乗せして返せ、こういうことになるのですね。

 それと同じことで、私は、今先生がおっしゃった有利子負債と無償をふやしていくとか、あるいは、今償還期間を五十年にしているのを七十年にするとか。そういうことで、今先生がおっしゃった一つの案として、金利を今の世間並みの金利に、低金利にかえるのは常識じゃないかとおっしゃれば、私は、本四のみならずあらゆるところで今の金利に下げてもらったら、わざわざ国民の税金からその差額を、わざわざ政府から三千億とか四千億もらわなくたって、しかもこれは八百億、こういうものも要らなくなるわけですね。

 それを私は財務省に、なぜ切りかえさせてくれないのですかというのが今原点になっておりまして、今先生がおっしゃったことは私のような素人でも考えられることなので、償還制度、そして切りかえ制度、前倒し償還を認めるというようなこと、これも改革の一つであると思っておりまして、財投の考え方も変えていただきたいということを申し上げましたけれども、今、閣内ではそのことに対して賛成者が少ないのが残念な現状でございます。

山田(正)委員 今申し上げましたように、一般、通常並みの金利、いわば外債あるいは国債等の金利で借りかえれば、まさに本四公団においても約三百億から四百億ぐらいの元本の償還ができるようになる。それでもって何十年かで払っていけば、今、国費を八百億、そして自治体がさらに合わせて八百億、千六百億を投じていますが、こんなばかなことをしなくて済む。それは大臣、認識としては大臣も共通でしょうか。

扇国務大臣 私は同じ考えを持っておりまして、閣内で声を上げて、それを何とか切りかえさせていただきたいということを、本四だけではなくて全般的な問題として、国土交通省の今の六法人を改革する、廃止するということに関して、そのことが大きなネックになっているということは事実でございます。

山田(正)委員 借りかえ等々でできない云々と、大臣はしきりに閣議でも声を大きくして話しているということですが、JR、旧国鉄、これを清算するときにいわゆる借りかえをしたという事実は、大臣、御存じでしょうか。

扇国務大臣 わかっております。

山田(正)委員 そうすれば、ぜひこの本四架橋についても早急に一般の外債、国債金利で借りかえて金利負担を軽減さえすれば、一般並みの金利負担にすれば、本四公団も経常収支においては、単年度黒字を立派に出していき、そして何十年かかければ三兆八千億も払っていける。となれば、先ほど大臣が言った、日本道路公団、首都高速、そういった三公団で本四公団の赤字を何とかして埋めていくのはいかがなものかといったこと、この考え方は必要ないんじゃないのかどうか、大臣、いかがですか。

扇国務大臣 山田先生も御承知のように、先週の二十二日から、総理のところで、第三者機関でというお話がございます。きょうも私が総理に申し上げましたことは、行革本部が閣議の前に開かれましたので、私はそこで、今度の第三者機関に関しましても、国土交通省として少なくとも意見を聞いていただきたいということを改めて申し上げました。

 国土交通省に六公団の廃止、民営化という課題が、これは本四のみならず、大きな問題として残っておりますので、これは第三者機関をおつくりになるという総理のお話ですけれども、担当閣僚としては、この声を言い続けて、それを反映させていって、健全な、世上と同じような財政体制をつくっていくということは大きな課題だと私は認識しております。

山田(正)委員 先ほど、新聞等によりますと、これから先、道路公団の建設投資を、国からの三千億を入れないで、三十年でやっていく、あるいは五十年でこれまでの借り入れを償還して云々というお話で、いわゆる小泉総理大臣は五十年でやるということで話がついたとか、そういう報道がありました。この五十年、三十年の話ですけれども、大臣、これは三十年、五十年で今現在の日本道路公団の借り入れ二十七兆円を全部返済して、三十年後、五十年後は今の高速道路は全部無料開放するという前提、その上でのお話だと承っていいんでしょうか。

扇国務大臣 私は、山田先生のおっしゃることは理想論だと思います。私もそうありたいと思います。

 ただ、高速道路を全面無料にすることが高速道路たり得るかどうか。一般国道と同じになる。そして安全性、品質保持、それから緊急時、災害時にどうするか。高速道路のあり方というものは、全線無料にするというのは、基本的にはこれは法律になっていますけれども、全線無料になるという保証は、今私の言葉からはそれは言えません。

 ただ、今申し上げましたように、高速道としての体系のあり方、維持管理、そして安全性と危機管理対策という、阪神・淡路大震災のときにもこれは痛いほどわかっておりますので、そういう意味では、これの維持費というものに対しては、今よりもうんと下げられればありがたい。そしてただになったら、高速道路が満杯になっちゃって、そして高速たり得ないということも想像されるわけでございますから、法的には将来的には無償ということで、公共性で固定資産税も全部免除されているわけですから、私は、理想としてはそこまでも持っていきたい。また、国民としても、それがただでも、普通の急がないときは下を通って、急ぐときだけ通るというような、そういう認識がお互いにできれば、将来としてはそこまで持っていくというのが私は一番理想だというふうに考えております。

山田(正)委員 五十年で話し合いがついたとかというふうに新聞で報道されておりますが、この五十年で話し合いがついたという中身は、五十年で無料で国に返すということだ、そういうふうに私も確認させていただき、大臣はそのことを、いわば理想である、あり得ないと……(扇国務大臣「いや、あり得ないとは……」と呼ぶ)理想であってというお話でしたが、あり得ないとまでは言わないということなんですが、総理大臣がそのような話をし、大臣がそれは理想じゃないかと言うので大変おかしなことだと思うんですが、私は扇大臣の言うことはもっともだと思っております。

 この五十年の国費を投入しない場合の試算、これを私見せていただきましたが、これによると、将来金利がやはり三・五%になっている。この金利が三・五%でいいものかどうか。あるいはこれが一・二九%で計算したら、五十年後、一〇〇%計画どおりの道路はできてしまう、そういったまだまだ不確定な要素というのはいろいろあると思います。

 それよりも、何より大事なことは、大臣、前々からいつも論議しておりました、日本の高速料金は諸外国の六倍から八倍高い、近距離においては十倍高い、これがまさに日本の物流コストを押し上げて、日本経済の国際競争力を失わせた。まずこの点では、将来、三十年、五十年後無償にする無償にしないじゃなく、今本当に、維持管理費だけで、安い高速料金で何とかいわゆる民営化を図る、これはぜひ大事なことだと思っておりますが、私の持ち時間、もうなくなりました。大臣に最後にその点についての御回答をお願いできればと思います。

扇国務大臣 山田先生がおっしゃるとおりでございまして、先ほど今田先生がおっしゃったように、日本の物流が高いというお話、私はそのとおりだと思っています。高速道路をもっと皆さん方に喜んで使ってもらえる料金、しかも、成田から東京へ来るのに高過ぎるとか、あるいは関空へ行くのに、あの橋は飛行場しか行けないのになぜ千七百五十円取られるのとか、そういう高速道路の高さというもので物流コストが世界的に恥ずかしい思いをしているということ。

 今、先生方に御論議いただいておりますように、平均的な金利が三・六%、それが今現在の国債の金利は約一・三%というのは、先生がおっしゃるとおりでございます。そういう意味で、新規国債発行額を極力抑えるというのは、小泉内閣の三十兆円枠というのは公約でございますから、それを守りながら、民にできるところは民間にということで、この高速道路を民間にすれば、今おっしゃったような金利とかあるいは料金とか、これが国民のためになるということで民間にするのであって、それが何の不満も解消されないというのでは民間にする意味がございません。私は、道路公団、あるいは本四架橋も含めてですけれども、改革をするということのあり方、民営化とは何か、民間にしてよかったと皆さん方に言われるような改革をするのが我々に課せられた大きな任務だと思っております。

山田(正)委員 終わります。

赤松委員長 次に、瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 私は、この後に提案される予定になっています民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案に関連して、質問をいたします。

 まず最初に、PFI法が成立して以来、法の施行状況は国、自治体でどのようになっているでしょうか。

坂政府参考人 PFI法に基づく事業といたしましては、私どもの把握いたしておるところでは、現在に至るまで、地方公共団体におきまして三十五事業につきまして、実施方針の策定、公表、あるいは協定の締結まで至ったものもございますが、それぞれ手続が進められております。協定の締結まで至った案件が十件、その中にさらに施設等の供用開始にまで至ったというものが三件というふうに把握しております。

 また、国におきましては、残念ながらこれまで余り進んでおりませんで、今のところPFI法に基づく手続というものが始まっている案件はございませんけれども、平成十四年度の概算要求におきましては、衆議院の赤坂議員宿舎、あるいは公務員宿舎、あるいは独立行政法人の通信総合研究所の実験施設といったものの事業化に向けて予算要求が行われておりますほか、中央合同庁舎の第七号館、これは文部科学省とか会計検査院の庁舎の建てかえでございますが、などにつきまして、PFIによる整備をしてはどうかということで検討が進められているというふうに聞いております。

瀬古委員 民間活力導入のかけ声のもとで事業破綻が相次いでおります第三セクター方式では、事業破綻になればどうなるか。民は撤退して負債は官が背負うというパターンが繰り返されてきています。PFI方式が第三セクターの二の舞にならないという保証は一体何だったんでしょうか。

坂政府参考人 この点は、PFI法をそもそも制定されるときにも御議論があったというふうに私ども伺っておりますが、まず、PFIは、御承知のように、公共施設等の管理者、例えば大臣とか衆議院議長とか、そういうことになるわけでございますが、と、その相手方となる民間事業者との間で締結いたします協定、普通の言葉で言うと契約ということかもしれませんが、法律には協定というふうになっております。こういった協定に基づきまして、公共施設の建設とか維持管理、運営などを民間事業者にゆだねるというのがPFIということでございますが、第三セクター方式というのは、事業会社を例えば公的な主体が出資をいたしましてつくるというところが違う。

 それから、PFIというのは、基本的にはもともと公共的な主体がやることを民間にいわばPFIという形でゆだねるということだと思いますが、第三セクターの方は、私ども承知いたしますところでは、むしろ、もともと民間でもやっているようなことを公共事業体が第三セクターという形で関与するというケースが多いように思います。

 また、いわゆるテクニカルな点を申しますと、PFI事業におきましては、国会等の御議論等もその当時ありましたこともありまして、リスクの分担をあらかじめ官と民とで明らかにすることが重要であるという考え方が強く出ておりまして、例えばPFI法の三条には、基本理念として官民の責任分担の明確化を図るという規定がございます。それから、第四条に基本方針、あるいは第五条に実施方針、こういった規定がございますが、こういったところにも、民間事業者の責任の明確化に関する事項を定めることといったような規定がございまして、これを踏まえまして、個別の事業ごとにそれぞれいろいろなリスクというのがあるんだと思いますが、官民の契約によって、そのリスクの分担が事前に詳細かつ明確に規定されているということになっているということだと考えております。

瀬古委員 このPFIによって官民の責任分担が明確化されるということになればきちんとその処理がされるのかという問題なんですね。

 経済企画庁は、一九九九年一月に出した「PFI推進研究会中間とりまとめ」では、「契約による明確化」としてこのように言っています。「民間が負担すべきリスクについては、一方的に民間のリスク負担が大きくなることのないよう」に「民間事業者の収益機会が確保される事業の枠組を構築する」、このように言っております。つまり、第三セクターでは収益面に不安があるが、PFIならそれが確実に確保できると。第三セクターで失敗したものを、PFIによる契約の明確化によってむしろもうけを確保する保証をしてやる、そういう可能性も生まれているわけです。それも、土地の提供や補助金の公的支援措置までつけているというのが、私はこのPFI事業の特徴だというふうに思うんですね。

 そこで、国はまだこれからなんですが、各自治体では進められてきております。まだそれほどたくさんあるわけではありませんけれども、しかし、実際にはどういうふうに進められてきているのかということを見てみたいと思うんですね。

 私は東京都と神奈川県で調査をいたしました。東京都は、一九九八年三月に自民党本部でヒアリングを受けました。その記録を私ここに持ってきております。

 このヒアリングでどういうことを東京都が言っているか。これは副知事が言っているんですが、こう言っています。PFIは打ち出の小づちではなく、後年度の財政負担を伴うものなので、予算の制約や採算性の比較等について十分検討を要するものである。都市部はPFIで、地方は公共が行うとの意見については、了解できない。PFIが適用される場合であっても、すべて民間資金で対応することが可能なのか疑問であり、公的資金の導入が不可欠と考える。高地価、高密度の東京においては、案件に適合する事業を選定することは困難が多く、リスク軽減などの措置が必要などと、問題点を副知事が述べています。そして、大変慎重な姿勢をここで示されているわけです。

 これに対して、当時の自民党の皆さんがどのように言っているか。臨海副都心に応用できぬか、環状七、八号線に導入できないか、首都圏の第三空港の問題についても何か妙案がないかと東京都に検討を迫っているという議事録がございます。

 しかし、東京都では、具体化されたのは実際には金町浄水場ぐらいで、事業は進んでおりません。多くの自治体は第三セクターで大失敗しているわけですから、そういう点では、このPFIについては慎重にならざるを得ないんじゃないかというふうに、これは東京都の例なんですけれども、全体的なそういう傾向があるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

坂政府参考人 どのような事業がPFIに向いているかというのは、その事業それぞれの特性というのが当然あると思いますので、それぞれの管理者の方がお考えになるということだと思います。

 ただ、PFIというのは、先ほども申し上げましたように、従来、公共的な主体が公共施設を自分でつくって、自分で管理して、あるいは自分で運営してということであったわけですけれども、PFI法におきましては、公共施設の建築あるいはその運営、管理、そういったことにつきまして、資金ばかりでなく、民間の事業者の方々の知恵と申しますか経験と申しますか、そういったものを入れることによって、より合理的、よくバリュー・フォー・マネーというふうに申しますけれども、同じお金であればより質のいいもの、あるいはより機能の高いもの、要求される機能が同じであればより安くということだと思いますが、そういう場合にPFIで事業をやるべきであるというのが基本的な考え方でございまして、そういった考え方に基づいて、それぞれの管理者の方におかれて積極的に御検討いただきたい、こういうふうに私ども考えているわけでございます。

瀬古委員 民間の事業者の知恵や経験を生かせば、より合理的になるか。逆の場合もあるんじゃないかという事例が生まれてきております。このPFIが、自治体の財政難の中で大型公共事業を進めていくための手法に活用されて、新たな利権が生まれているわけです。

 例えば、神奈川県では、県立保健医療福祉大学、衛生研究所、近代美術館新館、海洋総合文化ゾーンなど、いわゆる箱物の大型プロジェクトを次々とやろうとしています。県立保健医療福祉大学をめぐっては、国内初の大型PFI事業とあって、大手のグループが落札にしのぎを削っておりました。ところが、四十五億円も割高で、機能の劣るとされる大林組のプランが選定されました。

 この事件で明らかになったのは、低廉かつ良質な公共サービスの提供というPFIの効果に反している、コストが高くなっているということが、マスコミの報道などでも指摘されているわけですね。また、PFI事業については、公共性、それから効率性、透明性を強調しているわけですけれども、入札をめぐって大変不透明なことが問題になっているわけです。ですから、合理的というけれども、全く逆行する場合がある。これではPFI事業と言われているものの公共性、効率性、透明性などの前提が崩れているということも言えるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

坂政府参考人 先生御指摘のとおり、PFI事業の実施に係る、例えば民間事業者の選定手続につきましてはPFI法の七条というのがございまして、そこには、「民間事業者を公募の方法等により選定する」、こういう規定がございます。また、同八条におきましては、「民間事業者の選定を行うに当たっては、客観的な評価を行い、その結果を公表しなければならない。」といった趣旨の規定がございます。

 さらに、こういった法律を受けまして、基本方針でございますとか、あるいは手続の実務上の指針、先ほどガイドラインとちょっと申し上げましたが、こういったものにおきましても、公平性の原則でございますとか、透明性の原則というのが定められております。

 これは、考えてみますと、PFIに限らず公共事業というのは本来そういうものだろうと思いますが、これらにのっとり行われるPFI事業の実施に当たっては、こういったガイドラインや法律にのっとって公平性、透明性が十分確保されることとなっておりますし、またそのようにしていただきたいというふうに考えております。

 ちなみに、御指摘の県立保健医療福祉大学につきましては、たしか私の認識では、時期が割合早うございまして、厳密に言いまして、PFI法に基づく手続にのっとって行われたケースではない、先ほど申し上げました三十五の中には入っていないということでございます。

瀬古委員 今後、この神奈川の例などは、PFI事業としての一つの先験的というか、ある意味では一つの先駆け的な例として、私はきちんと教訓を学ぶ必要があると思うのですね。PFIをどういうふうに導入していくのか、これがPFI事業としてふさわしいのかどうかというチェックをどうするのかとか、どういう契約内容にすればいいのか。それからまた、情報公開の仕方も、今までの公共事業とは違った情報公開の仕方もあるわけですね。こういう基準とかチェックのための機関、こういうものが必要となってきます。

 東京都の場合を私調査しましたけれども、ここはもともとこのPFI事業をやるべきかどうかというところから出発して、かなり専門家の配置がされております。しかし、聞いてみたら、こういう体制はとても地方の自治体などでは難しいなというふうに思わざるを得ないような、そういうチェックでないと、このPFIの場合には、チェックというのはなかなか難しいという、率直な東京都の御感想も出されておりました。

 そこで、国もこれからPFI事業をやる場合、例えばこの建物が本当にPFIとしてふさわしいものかどうか。さっき議員宿舎の問題が出ておりましたけれども、これは調査費という段階で、私たちはPFIでやるなんていうことがもう決まっているというふうには思っていません。PFIとしてふさわしいのかどうかという調査がされているというふうに聞いているわけですけれども、そういう場合でも、本当に必要なのかどうかというのをだれがどのような形でチェックするのかというのは、やはりそれなりのチェック体制などが必要だと思うのですね。そうでなければ、結局、企業が言うままというか、言われたままというふうになってしまうのではないかという危惧がされているのですが、その点はいかがでしょうか。

坂政府参考人 PFI事業の実施手続につきましては、先ほども申し上げましたとおり、その基本方針等に、公平性の原則でございますとか、透明性の原則でございますとか、そういうことがきちっと書いてございます。

 したがいまして、そういう原則に基づきまして、事業の発案から終結、終結というのはその建物が完成したとかそういうことではなくて、その後の運用のところまで含めてということだと思いますが、その終結に至る全過程を通じまして、民間事業者の選定などに係ります公平性の担保でございますとか、あるいは先生御指摘のきめ細かな情報公開ということが重要でありまして、そういったことを通じまして透明性の確保を図っていく必要があるということは御指摘のとおりかと存じます。

 なお、地方公共団体あるいは国も同じでございますが、PFI事業の促進につきましては、実務上の指針といたしまして、御参考のためということで、私どもで三つのガイドラインをつくっておりまして、プロセス関係、リスク分担の関係、それから先ほどちょっと申し上げましたバリュー・フォー・マネーの関係というものを取りまとめておりまして、これを当然公表いたしておりますし、累次説明会等も開催いたしております。そういった手続や考え方についての普及ということの促進に私どもも努力をいたしております。

 東京都でさえなかなか難しいとおっしゃったということですが、当時はまだ始まったばかりという状況でございましたので、そういう意味ではなかなか知識も普及していなかったし、大抵のところにとっては初めてのことでございまして、なかなか大変だったろうと思いますが、だんだん知識も普及してまいりましたし、あるいは経験もふえてくる。また、専門知識やノウハウを有する外部のコンサルタントを活用するとか、あるいは先生さっきおっしゃいましたチェックという意味もありましょうが、有識者等から成る審査委員会を設けて意見を聞くといったことも好ましいことではないかというふうに考えておるところでございます。

瀬古委員 私たち日本共産党は、もともとこのPFI法については、国、地方自治体の財政が危機的な状況にあっても大型の公共事業をどんどん進める、こういうものだということで反対してきましたけれども、実際に見てみますと、そういう事例がたくさん生まれてきています。

 例えば、北九州市の響灘港のように、不況により企業誘致に失敗した、船も来ない、むだな公共事業として本事業そのものが存続できるかどうかと危ぶまれている事業にもかかわらず、上物のコンテナターミナルの建設がPFI方式で契約されるという例が生まれてきております。

 このような中で、東京都がこんなことを言っています。「東京都におけるPFI基本方針」の中で、PFIを導入することが目的化し、PFIに適した事業を他の事業に優先して実施していくことは必要のない事業をふやすことになりかねず、PFIの適切な導入方法とは言えません、このように言っているわけです。

 神奈川県では、二〇〇一年度は公共事業は四十五億円削減した、このように言っているのですが、一方ではPFIの建設費相当額を百三億円計上している。差し引き五十八億円、負担をふやしているという状況もございます。

 これでは、PFI事業が国や地方自治体の財政危機をさらに深刻化させる、むだな公共事業を推進させる、そういう一つのてこになるんではないかと思うのですが、国土交通省に伺いたいと思います。

岩村政府参考人 今、響灘の例を挙げながら、PFIをやると従来の公共事業でできないようなものまで手を出して、結果的に財政に悪い影響を与えるのではないかというお話でございますが、先ほど来御説明がありますように、PFI方式をとる場合には幾つかの手順を踏んでいるわけでございます。

 まず、PFI方式をとるからといって、従来、公共事業を実施する場合に当たってやっております、例えばベネフィットがコストを上回るというような評価、こういった事前評価を含め、真に必要な公共事業であるという判定がまずあるわけでございまして、そういったものに合格しないものにPFI方式が導入されるということにはまずならないわけでございます。

 また、そういった中で個々の事業を選んでいくわけですが、その際には、先ほど来の御説明にありますように、バリュー・フォー・マネーの検討、評価をするなど、客観的な評価をしております。また、その結果についても公表することとされておりまして、客観性、透明性の高い事業プロセスを経て進められるわけでございます。そういう意味で、従来は公共事業でやらないようなことをPFIでやるという委員の御指摘は当たらないのかなというふうに思います。

 特に響灘についてでございますが、これは当初北九州市の事業として始めていたわけでございますが、この事業の中身が、例えばガントリークレーンであるとか上屋であるとか、そういった施設の整備を伴っておりました。そういう意味から、施設の整備だけではなくて、管理運営まで含めて行うためには民間の方がより効率的な運営ができるだろうという判断をした上で、今回PFIを取り入れて事業をしているわけでございます。

瀬古委員 この事業は、先ほどお話がありましたように事業の発案から終結までやるという点でいいますと、今までの公共事業よりももっとある意味では一貫性というか効率性を求められるので、最初にかかわった企業がずっと最後まで面倒を見るという形式が大変多くなってくるわけですね。そういう意味では、一々チェックすると言っても、例えば最初にかかわった企業がずっとそれを、建設もやるし運営もやる、こういう状況が大変多くなってまいります。

 そういう意味では、これは国土交通省に伺いたいんですが、今まで、公共事業の場合に、中小業者に対する分割だとか分離発注なども随分努力してやっているところもあります。まだまだ少ないと思っているんですが。しかし、このPFIの場合には、それこそ大きな企業が、ある意味では資本も持っているところがどんどんやっていくということになると、そういう中小業者に対する仕事確保が排除されるということになるのではないかというふうに心配するわけですが、いかがでしょうか。

岩村政府参考人 現在PFI法に基づいて行っておる事業で具体化が進んでいるものは、先ほどの説明にありますように三十五事業でございますが、そのうち、事業者が決定し契約が行われているものが十事業ございます。この内訳を見てみますと、このうちの六事業は、複数の事業者が参画しております特別目的会社、SPCという形で事業に参加をしているわけでございまして、このSPCに参加している企業を見ますと、必ずしも大手事業者に限定されているものではございません。

 また、今御説明申し上げたように、緒についたばかりで、まだ具体的な事業者が決まっている数は多くございませんが、今後この分野が広まってまいりますと、そして、PFI事業がそういう広い分野で導入が進むことによりまして、中小企業者を含むより多くの事業者の参加の機会がふえてくるというふうに考えているわけでございます。

瀬古委員 町の小さな中小業者まで入れようと思ったら、ある意味では、こういう大がかりなPFI事業で、資金まで準備して、そして設計までやり、あと運営まで責任を持つというふうになれば、私は当然排除されてくると思うんです。

 時間がないのでこれ以上言いませんが、特に今回の改正で私は大変重要だというふうに思っているのは、これまで行政機関や特殊法人の公的な施設に限られてきた事業範囲を、今回、国会や裁判所、会計検査院の関連施設にまで広げているという問題です。そういう意味では、本来、国の施設は国自身の責任において整備、運営しなきゃならないし、とりわけ国会とか裁判所まで民間に事業をしてもらうということはいかがなものかと私は思うんです。そういう場合には、例えばかかわっている業者が倒産した場合は、最高裁判所や国会まで差し押さえになるなんということにもなりかねないというか、こういう重大な施設についてもPFI事業を導入するというのは、大変私は問題があるというふうに思います。

 さらに、今国会移転の問題などを出されていて、私たちはもともと反対なんですが、一方では、これについてもまだ議論がいっぱいある中で、ともかくまずPFIで手をつけて、国会の議員宿舎だとかそういうものをどんどんPFIで推進していく、こういうやり方がいかがなものかというふうに思うんですが、最後に伺いたいと思います。

扇国務大臣 もともとPFI法に反対された瀬古先生ですから、ずっと反対の持論を展開されるのは私は仕方がないと思うんですけれども、私どもは、今先生がおっしゃったように、PFIで公共事業をどんどんふやしていくということではなくて、この公共事業は大事だという決定をした後で民間の皆さん方に参入してくださいというのがPFI法でございますから、PFI法で勝手に民間がどんどん公共事業ができる、そんなことではないんですね。これは必要不可欠なものであると言ってから一般入札方式をとるということだけは、ぜひ先生の認識の中に入れておいていただきたいと思います。

 私は、PFIというのが民間のノウハウと活力、そして資金を調達するという意味では、今の経済状況で、活性化するという意味ではいかに大事なことかと。

 そして、霞が関をごらんになったらおわかりのとおり、同じような色の四角い箱ばかりが並んでいて、何の個性もないわけですね。そこへ民間のPFIによって新しい文部科学省ができたり会計検査院ができて、ああ、これが文部科学省かといって、子供が来てもすぐわかるような。子供が参観に来てもわからないんです、どこに何があるか、地図を見ないと。

 そういう、個性がある、そしてノウハウを生かすPFI法というのをこれからの公共事業というものに、より国民に身近で、そして新しい感覚で導入していくということが、私は世の中が明るくなることだと思っておりますので、ぜひそういう点は、共産党さんは法案に反対されましたけれども、PFI方式の新しい事業というものが目に見えて出てくるというのをお楽しみいただきたいと思います。

 私は、もしも許されるならば、今先生が、議事堂とか宿舎も、あるいは会館もというふうにおっしゃいましたけれども、現実にどうなっているか、先生に見ていただきたいと思うんです。

 今、国会の見学に学生さんが、民間もいらっしゃいます。正面で記念写真を撮っています。今記念写真を撮っても、絵はがきにあるような国会議事堂は入らないんです。今は現実的に、少し右へ振って憲政記念館の方を向かないと、あの山王ビルというのが国会議事堂よりも高くそびえていますので、写真の邪魔になるんです。右へ振っておりましたら、今度ここに、右側に、今のニュージャパンの、あれが二十五階とか九階建てで、今クレーンが国会議事堂の記念写真に入っちゃうんですね。私はこういうのは、これも本来であれば、国会議事堂を大事にするのであれば、記念写真がせめて絵はがきのようにできる範囲の建物にしていただきたいというのが切なる願いなんですね。そして、今の議員会館を全部、衆参建て直すことになっていますけれども、これを建て直して高層にしたら、国会議事堂より高い建物が正面の記念写真に全部入っちゃいます。

 こういうことも、民間であれば、会館を広くするためには、民間の発想でもっと下へ広くして、記念写真に議事堂より高いものが建たないということも私は考えられると思いますので、PFI法によろうと公共事業で私たちがしようと、少なくとも全体的なバランスというものを、国会を大事にするという意味で、PFIがいけないとか公共工事がどうとかという以前に、私どもはもっと大事にする基本を保ちたいというのが私の願いでございます。

瀬古委員 そんなことは、PFIだから国会議事堂が写真に写るかというのは関係ないことですよ。それはちゃんと公がもう少し国民の立場になってそれをどうするかと考えればいいことで、国民に奉仕する建物やそういうものについて、本来公が考えなきゃならないことです。最高裁判所だって国会だってそれなりのユニークな建物ですから。

 民間は営利企業だってやることになるような、そういう土地の提供もやるわけですから、そういう点では、もっと慎重にならなければならないと思います。とりわけ、営利巨大企業に採算性を確保してやるという点では、私は、こういうPFIの問題は、さらに今回改正することによって、どさくさに紛れてということはないですけれども、もっと公的な要素の強い裁判所や国会までこういう事業でやるということは大変問題だということを指摘して、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社会民主党の保坂展人です。

 扇大臣には六月に泡瀬干潟のことをお尋ねいたしました。その際に、私、見てきたということでいろいろ見解を求めましたけれども、実は、そのときの印象が大変強かったものですから、超党派の議員約百名でつくる公共事業をチェックする議員の会というのがございまして、何と十二名で、この九月、衆参両院の国会議員十二名でこの干潟に行ってまいりました。大変天気がよくて、我々、波打ち際に行きますと、何にもなかったんですが、泡がある、その泡をずっと黙って見ていますと、無数の、何千というミナミコメツキガニというカニが顔を出して、大変感動した次第なんです。

 このことについてまず伺いたいと思います。

 これは、内閣府、そして沖縄総合事務所がこの工事を推進していると思いますけれども、最近、沖縄タイムス、地元紙ですね、朝日新聞、琉球朝日放送合同の世論調査がありました。地元の人たちがどう考えているか。埋め立てに反対だという人が五七%、住民投票をやるべきであるという人が六八%、そしてまた、この計画は説明不十分だったという方が七五%。やはり反対の理由の多くは、干潟がなくなるからという理由が多いようです。

 たびたび、市議会で全会一致で議決をされたということが、これは国会でも、かなりこの泡瀬干潟の問題が論じられている中で政府側の答弁にあるんですけれども、今の時点で民意は変わってきているんじゃないかということについて、まず内閣府の方より、どういうふうに見るのか、答弁いただきたいと思います。

武田政府参考人 委員御指摘のとおり、最近新聞社等が実施をいたしましたアンケート調査におきまして五七%の市民の方が埋立計画に反対をしているという調査結果が出たという報道がなされたことは承知をいたしております。本事業につきましては、地元の強い要請に基づくものと理解しておりますが、地元にもいろいろな意見があるというふうに聞いておりまして、今回のアンケートもその一つの調査結果であるというふうに受けとめておるところでございます。

 また、国や県、沖縄市におきます埋立計画の説明が不十分であるというところにつきましては、これまでも関係者による事業説明等が随時なされてきたということでございますけれども、構想以来長い年月を経ていることでもございますので、今後とも、事業の推進母体であります沖縄市、それから事業者であります沖縄総合事務局及び沖縄県においても適切に対処するよう、指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

保坂委員 この計画はバブル時代に立てられたものです。前回の質疑でも、扇大臣は、干潟は自然の宝庫であるし、非常に貴重なものである、干潟は、もう本当に我々子孫に残していく、地元の人にとっても大変大事だけれども、その地元の人だけのものでもない、地球生命にとって非常に大事なものだという認識を示していただいたと思います。

 ところが、この干潟、具体的には今の新港、これは大型船がつけられるように、海洋、海の底をしゅんせつして、そのしゅんせつしたもので埋めるという一体となった計画になっているわけなんですけれども、そしてできる干潟の上の人工島、そこに人工ビーチをつくるという計画なんですね。

 そして、一方においては、干潟も人工的に残せるじゃないかという議論もあるんですが、環境省は一体こういう人工干潟、人工ビーチなどの考え方に対してどういう見解を持っているのか、簡潔にお願いします。

中川政府参考人 一般的に、干潟とか海浜は複雑で精緻なバランスの上にできておりますので、これを人工的に新たにつくり出すということは技術的に大変難しいというふうに認識いたしております。

 したがいまして、泡瀬地区で整備しようとしている人工ビーチや人工干潟につきましても、期待される役割を発揮するためには、専門家の意見も聞きながら、環境条件を詳細に調査検討するなど、事業者において相当な努力を要すると考えております。

 人工ビーチ及び干潟をつくられる以上は、所期の役割が果たせるよう万全を期していただきたいと考えております。

保坂委員 最後の一言がなければ大変いい答弁だと思ったのですが、環境省は、もう少しやはりしっかり物を言っていただきたいと思うのです。

 干潟は、やはり人工的にはなかなかつくれないんです。人工干潟というのは、見てきましたけれども、やはり貧弱というか、これは干潟という形で呼吸をするのはなかなか今難しい状況です。沖縄の泡瀬の現地にわずかながら人工干潟がありますけれども、それを言っておきたいと思います。

 ところで、もう一度内閣府に伺いますが、例えば、沖縄市長あるいは市議会などで、とにかくこの事業は、埋め立てて、人工ビーチにリゾートホテルというのはさすがに時代おくれだから、埋め立ててから考えよう、そういう議論があるようですけれども、こういう議論がもし出てくるようでは、埋立免許の見直しが必要じゃないかと思うのですが、いかがですか。

武田政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、御案内のとおり、泡瀬の埋立事業につきましては、七月に行われました環境監視・検討委員会におきまして、大規模な藻場の移植を行うという御指摘がございまして、そちらを先行するということで、現在、藻場の移植、それからそれに合わせまして、その期間を踏まえて、事業見込みとかそういったものにつきましても確認作業を行っているというところでございます。

 今後は、十二月にも予定されております環境監視・検討委員会において、そういった移植作業の状況あるいは確認作業の状況等を見ながら総合的な判断を行っていくということになろうかと考えております。

保坂委員 質問に対する答弁に全くなっていません。

 これは、埋立理由書というのをつくりまして、そしてリゾートホテル、これだけの需要があると、大変過大な見積もりで、そして干潟というすばらしい自然の上に海洋の土砂を入れて、そしてリゾートホテルをつくって、さあどうぞと言ったときに、一体何人が来てくれるんだろうか。これはイロハのイで、こういう事業は見直した方がいいということを前回大臣に求めたのですが、今もう一度扇大臣に聞きたいと思います。

 前回のやりとりで、干潟は自然の宝庫だということと同時に、地元の方がどう考えられているのか、これも大事な要素だと。地元の要望から、これは沖縄振興事業でつくるという経過がありました。しかし、干潟ということについて、先ほど環境省の前半の答弁にもあったように、大分認識が変わってきましたよね。なかなかこれは再生するのは難しい。干潟が日本じゅうにあったころは、沖縄にもたくさんあったんですけれども、まあ多少埋め立ていいだろうと。しかし、だんだんなくなってきた。泡瀬干潟というのは、最大の、貴重な資源だと思います。

 扇大臣、今のやりとりを聞いて、干潟はやはり基本的に私は残していただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

扇国務大臣 この件は、保坂先生、前にも私に御質問があった同じ件でございます。

 これは、もともと事業主体者が沖縄県、そして内閣府等々で決められておりますけれども、これは総合的に環境アセスメント評価法をつくろうということで、環境アセスメントを論議しようということで委員会までつくられておりまして、そこで論議が進められておりますので、その所要の手続をして、その委員会での審議というものと、また、事業の実施に当たりましては、免許権者である沖縄県で、もう先生現地へいらして、よく御存じのとおりだと思いますけれども、私に権限があるわけではございませんけれども、私は、二度とつくり得ない、ここが一番大事なところだと思いますので、干潟の生息種、この貴重な種を存続するという意味におきましても、環境への影響を十分に配慮しつつこれを検討しているというふうに報告をいただいていますので、先生が先日私に御質問されたと同じように、私はその検討を見守っていくしかないと思います。

 先生がおっしゃって、また現地に入って、これはどうしても残したい、そういうことがより検討委員会の材料になればと思って私は拝聴しておりました。

保坂委員 これは直接には内閣府なんですが、きょうの答弁も、内閣府が答えるのか、国土交通省が答えるのかで大分もめたんです、私の部屋で。

 要するに、これは公共事業の見直し、全部なくせというんじゃないですよ、やはり不要なものは大胆に見直していくという先頭に立っていただきたいと思うので、扇大臣も、ぜひ機会をつくってその干潟を見ていただきたいし、また、世論の推移、地元の人たちの声はかなり反対の声が強まってきた、しかし同時に、やはりこの工事を進めようという人たちの声もある。両方聞いて、まず実態を見ていただきたいと思いますが、いかがですか。

扇国務大臣 これは、先生、現地にお入りになっておわかりのとおり、少なくとも国際交流のリゾートの拠点になるということでございますから、私は、地元として、経済効果とあるいは環境への影響と、このバランスを地元がどう判断するのか、そこが問題だろうと思っておりますので、私がここでどっちにしろということではなくて、内閣府と沖縄県と、両方のバランスをとってどう判断されるか、また、住民の願いはどこにあるかということを三位一体になってお考えになる、それが一番私はいい方法ではないかと思っております。

保坂委員 これは、シーガイアという巨大な施設がやはり破綻をしてしまった、そういうことを私たちのこの今現在の時点で教訓化するということを少しでも考えれば、その場に立ってみれば、写真を見ても活字を見てもなかなかわからない部分があるので、ぜひそういう機会をつくっていただきたいということを要望としてお伝えしておきたいと思います。

 ところで、今、川辺川のダム建設をめぐって大変緊迫したやりとりがございます。

 先日、菅直人さんからの質疑もあったようですけれども、熊本日日新聞などで報道された、漁業権がもし収用されたら三分の一に圧縮、減額されちゃうんじゃないか、こういう問題については、そんな発言はしていないということで扇大臣から直接答弁があったようですけれども、その点について、まず、ちょっと細かい点について局長にお尋ねしたいと思います。

 土地収用法でできるのは共同漁業権の使用だというふうに思います。球磨川漁協に免許されている共同漁業権、これは球磨川水系全体について言えるのではないか、この共同漁業権は漁業権として丸ごと収用するしかないのではないかと思いますが、その点いかがですか。

竹村政府参考人 川辺川ダムの漁業補償につきましては、明日、球磨川漁協の総会が開催されますので、私ども、それを見守っていきたいという立場でございます。

 収用につきましての考え方の御質問でございますので、それについて、収用を前提ということではなくてお答えさせていただきたいと考えてございます。

 まず、漁業補償の内容につきましては、二つの項目がございます。漁業権という権利に対する補償と、もう一つは、ダムの工事を行う際、さまざまな濁水等がもし出た場合、それの工事に伴う影響補償、二つの項目でございます。

 その際、土地収用法によりまして規定されておりますのは、収用できるものは権利に関するものだけだということでございます。そのため、私ども、現在、漁業組合に提示している漁業の内容のうち権利に関するものが収用の対象になるんだという御説明は、プロセスの中でしていると考えてございます。

 さて、次の、共同漁業権でございますが、この共同漁業権と申しますのは、漁業法におきまして、第六条で、漁業権のうちの共同漁業権という概念がございます。その内容は、一定の水面を共同して利用して、そしてそこの漁業を営む内容でございまして、これは熊本県知事が球磨川漁業協同組合に一括して付与している権利でございまして、私ども、内水面の権利を今回ぜひお願いしたいということで、今一括して漁業協同組合の権利の交渉を行っている最中でございます。

保坂委員 短くお願いします。

 今一括してという答弁でしたけれども、この共同漁業権はダムの部分だけ切り取って収用というようなことはできない、もし分割するんであれば、共同漁業権の分割、切り取りというのは、漁業法によれば漁業の生産力を高めるという方向でしかできないということになっているので、これは丸ごとしかできないということを確認いたしました。

 そして、ダム建設に当たり、土地収用法でやれるのは共同漁業権の収用ではなくて使用ではないかと。いわゆる、いっとき使うという使用ですね。この使用の場合は権利関係の変更はありませんので、使用後はまたその権利者の使用権というのが出てくる、使用する権利というのが出てくる、こういう理解をしていますが、いかがですか。

竹村政府参考人 先ほど御説明した共同漁業権の一括と申しますのは、相手が球磨川漁業協同組合である、主体が、相手が単独であるという意味でございまして、私ども、今回の工事で使用する場所は、ダムをつくる場所、そして水をためる場所でございます。ですから、河口から上流の末端まで漁業権を買い取る、またはいただくということではなくて、ダムをつくる場所、そして水をためる場所の一部の消滅及び使用権の内容となってございます。

保坂委員 ですから、それは先ほど指摘したとおり、共同漁業権というのを切り取って、それは分割して収用するということはできないですねというふうに聞いているじゃないですか。それにちゃんと答えてください。

竹村政府参考人 それは、土地収用法の第五条において、収用の対象となる権利についてという内容でございますが、漁業権も収用の対象となる権利の一つとされております。それで、その一部の収用も可能であると解しておりまして、過去の市房ダム等でも、一部の漁業権につきまして収用裁決のケースもございます。

保坂委員 これは納得できませんけれども。先ほど、答弁がないんですよね。要するに、使用後はこれをちゃんと使えるんじゃないかと。

 さらに、補償の方法として、当然、任意交渉で合意して補償契約を結ぶというやり方と、この交渉ができずに土地収用法を適用して支払うということがあります。漁業補償には、消滅補償、制限補償、影響補償とあると思いますけれども、今、川辺川近辺でうわさとして、収用されたときには影響補償は支払われない、こういううわさがあるそうですが、これは事実と異なるデマであると。公共用地の取得に伴う損失補償基準の要綱には、任意交渉と収用で補償額が異なってはならないというふうにありますけれども、川辺川近辺でそういううわさが流れているとしたら、それはデマですね。いかがですか。

竹村政府参考人 先ほども御説明申し上げましたが、私ども、漁業組合の交渉委員とは、漁業権に関するものと工事の影響に関するもの、二つの項目をあわせて交渉してございます。そして、土地収用法の段階では、土地収用法には権利に関するものだけが収用対象であるということが明記されておりますので、工事に関係する影響につきましては、実際工事をやって影響が出た場合、別途、それについて必要に応じて対応するという行政システムになってございます。

保坂委員 大臣にお聞きします。

 あしたそういう総会があるということで、これは地元でも大変激しい議論が起こっているわけですけれども、十一月二十四日、毎日新聞に、川辺川ダムの防災計画書、国土交通省が九八年に出しているもの、これを見ても治水上の必要性はなかった、二〇〇一年版、ことしのところで訂正がされているというような記事が出ております、御存じだと思いますけれども。

 やはり、この川辺川ダムの問題については、こういう大きな、この委員会でも指摘されたと思いますけれども、しっかりとこの事業の目的を、これまでのいろいろな経過があったとしても、今の時点でしっかり見直すべきじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。

扇国務大臣 今局長とやりとりしていらっしゃることで、先生は頭の中に既に入っていることだと思って、私も拝聴しておりました。

 それは、今局長が申しましたように、補償権とそれから少なくとも工事に伴う影響、この補償というものとは、私は当然、先生は局長が答えたとおりに御理解いただいているものだと思います。

 また、熊本日日新聞の、補償交渉がまとまらず、この場合に云々ということになって、今先生が冒頭におっしゃいました、国土交通省の職員が、これが土地収用法になればその補償金額が三分の一になると言ったという、これは、私が聞いたら、いや、そんなことだれも言っていませんというんですから、まあ両方聞かないとわからないと思いますが、私が聞いた範囲ではそれは言っていないということですから、これは風評だったのか、あるいは意図するデマだったのかは私存じませんけれども、だれも言っていないということだけは、一点、明快になっております。

 それから、今先生がおっしゃいましたように、漁業権と今後この工事に伴う影響に対する補償というものとは、局長が言ったとおり、うなずいていただいていますから、これは御理解いただいたのだと思います。

 収用した場合、現在の国土交通省が提示している補償額よりも減少するかどうかということは今後の成り行きを見なきゃいけないところですけれども、少なくとも、補償権と工事に伴う影響というものに対しての考え方というものは、国土交通省、今後の成り行きで私は判断をさせていただきたいと思いますし、その工事に伴う影響に関する補償については、漁業権の収用とは別に、必要に応じて対応する、これは当然のことだろうと思っていますので、先生の御理解はいただいているものだと思っております。

保坂委員 あしたの総会でどのような展開になるかわかりませんけれども、これはもう重大関心事だと思います。

 実は、先般の予算委員会で、扇大臣もいらっしゃいましたけれども、小泉総理大臣に向けて、清津川ダムということについて触れさせていただきました。

 もう時間がないので一問だけにしますけれども、この清津川ダムというのは、名勝地の清津峡というのを御存じだと思いますけれども、大変美しい渓谷が下流にあります。中里村という村の中にありますけれども、そちらの方にも行ってきたんです。そうしますと、村長、村会議員全員、村の助役さんも含めて、このダムの計画は長いこととまっていたけれども、調査費が八億円もついて、そして動き出そうとしている、これは本当に困るので、我々はもう清貧に甘んじたい、そんな巨大な開発だなんだという話はやめてほしいということで、反対を打ち出された。

 さらに、もう一つ下流の十日町市、こちらの方の選挙でも反対を正面に掲げた方が当選された。

 そして、自民党の地元代議士の方も、これはもう不要だ、上流の信濃川水系の部分で長野県においてダムの見直しも行われていますし、いろいろな理由をとってみても必要ないという議論が高まってきて、ついに、北陸整備局で十一月九日に専門委員会が開催された際に、この結論によっては清津川ダムの中止もあり得る、そういう話まで国土交通省の中から出てきている。

 こういう事態を踏まえて、扇大臣はどうお考えになるのか、お願いします。

扇国務大臣 これは、今先生がおっしゃいました、昨年の公共事業の見直しのときに、事業評価監視委員会から、信濃川水系の治水、利水、そしてあわせて環境等の観点から、ダム計画の代替案を含めた総合的な検討を、専門委員会を設けるという御報告を私もいただきました。

 そして、ことしの七月でございますけれども、先生も現地においでになっておわかりのとおり、河川工学あるいは経済などの学識経験者から成る清津川ダム専門委員会、私もこの名簿を拝見させていただきまして、大変立派な先生方がお入りでございますけれども、その委員会が設置されまして、現在この委員会で検討が行われているということは私も報告をいただいております。先生も現地に行って委員会の名簿も御存じだろうと思います。

 私は、その委員会の結論を待たなければ、少なくとも現地の意見を尊重してこの公共工事の見直しをするというのが私の基本姿勢でございますので、この委員会からの報告を待っているところでございます。

保坂委員 下流の市町村がそれだけ反対をされている中でこの工事の強行というようなことが絶対ないように求めて、質問を終わります。

     ――――◇―――――

赤松委員長 次に、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来の理事会等において御協議願い、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得た次第であります。

 本起草案の趣旨及びその内容について、委員長から御説明を申し上げます。

 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、いわゆるPFI法は、平成十一年七月に制定され、同年九月二十四日に施行されました。このPFI法の施行を受け、昨年三月には、PFI事業を進めるに当たっての基本的考え方や留意事項を示す基本方針が策定されるなど、PFIに関する制度上、実務上の枠組みが整備され、これに伴い、基本方針策定以降三十件を超える事業について実施方針が策定されるなどの進展が見られるところであります。

 しかし、現行PFI法においては、法の対象とする公共施設等の管理者の範囲が、国においては各省庁の大臣に限定されており、また、国有財産法及び地方自治法上、国または地方公共団体の行政財産は原則として貸し付けができないこととされております。

 本案は、このような状況を踏まえ、PFI事業のなお一層の促進を図るため、現行PFI法について所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、公共施設等の管理者等の定義に、公共施設等の管理者である衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長を加えることとしております。

 第二に、国または地方公共団体は、必要があると認めるときは、選定事業の用に供するため、行政財産を選定事業者に貸し付けることができることとしております。

 第三に、国または地方公共団体は、選定事業者が一棟の建物の一部が当該選定事業に係る公共施設等である当該建物の全部または一部を所有しようとする場合において、必要があると認めるときは、行政財産である土地を、その用途または目的を妨げない限度において当該選定事業者に貸し付けることができることとしております。

 その他所要の改正を行うこととしております。

 以上が、本起草案の提案の趣旨及び主な内容であります。

    ―――――――――――――

 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 本件について発言を求められておりますので、これを許します。瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党を代表して、ただいま議題となりました民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 討論に入る前に、この法律が公共事業のあり方を大きく変え、国有・公有財産にかかわる重大な法案であるにもかかわらず、審議が行われず、発議者が答弁に立たないという異常な状態で可決されようとしていることに、議会制民主主義の観点からも強い懸念を表明するものです。

 反対する理由を申し上げます。

 その第一は、もともとPFI事業が、国、地方自治体が財政破綻にもかかわらず引き続き浪費とむだの公共事業を推進することが可能になる手法であるからです。そのことは、企業誘致にも失敗し、船も来ない北九州市の響灘港において、上物のコンテナターミナル建設がPFIで契約されたことや、神奈川県では大規模な公共事業が不透明な形で、かえって県の、県民負担が重くなっているPFIで行われている事業等を見れば明らかです。

 第二は、改正内容が、PFI対象事業をこれまで行政機関や特殊法人の公共施設に限られてきた事業範囲を国会や裁判所、会計検査院の関連施設にまで広げていることです。とりわけ、立法、司法機関という高度の公共性を要請される施設にまで安易に拡大し、民間企業に維持管理させることは、重大な問題があります。

 第三は、本改正案で、PFI事業以外の民間収益事業との施設の合築を行う場合、PFI事業者に対して行政財産である土地の貸し付けができるようにしていることについてです。

 憲法、国有財産法及び地方自治法により、行政目的に供せられるべき行政財産の民間への貸し付けは制限されているにもかかわらず、これを長期にわたって貸し付けできるようにするものです。これは、営利企業に採算性をも確保してやることで、企業参入を促すための支援措置にほかなりません。

 第四は、PFI事業が資金調達、企画、計画、建設、運営など効率性、採算性を追求するために、従来であれば分離分割発注などが行われていた中小業者育成の立場を投げ捨てて、大企業中心の事業の独占が行われる可能性が強いことです。不況で苦しむ中小業者への官公需をふやさなければならないのに、中小建設業を排除していくとんでもない内容となっております。

 以上、反対理由を申し述べ、討論を終わります。

赤松委員長 これにて発言は終了いたしました。

 これより採決いたします。

 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立多数。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。

 なお、ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十二分散会




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