衆議院

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第5号 平成14年1月10日(木曜日)

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平成十四年一月十日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 実川 幸夫君

   理事 橘 康太郎君 理事 古賀 一成君

   理事 細川 律夫君 理事 河上 覃雄君

   理事 山田 正彦君

      岩永 峯一君    木村 隆秀君

      倉田 雅年君    坂本 剛二君

      菅  義偉君    高橋 一郎君

      谷田 武彦君    谷本 龍哉君

      中馬 弘毅君    林  幹雄君

      菱田 嘉明君    福井  照君

      松岡 利勝君    松野 博一君

      谷津 義男君    阿久津幸彦君

      赤松 広隆君    大谷 信盛君

      川内 博史君    今田 保典君

      津川 祥吾君    手塚 仁雄君

      永井 英慈君    藤村  修君

      前原 誠司君    松原  仁君

      高木 陽介君    西村 眞悟君

      山岡 賢次君    大幡 基夫君

      瀬古由起子君    原  陽子君

      日森 文尋君    保坂 展人君

      西川太一郎君

    …………………………………

   国土交通大臣       扇  千景君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   国土交通副大臣      月原 茂皓君

   国土交通大臣政務官    菅  義偉君

   国土交通大臣政務官    高木 陽介君

   国土交通大臣政務官    森下 博之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 上原美都男君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長

   )            岩村  敬君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月八日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     大島 理森君

  木村 太郎君     虎島 和夫君

  吉田 幸弘君     西川 公也君

  井上 義久君     高木 陽介君

同月十日

 辞任         補欠選任

  虎島 和夫君     岩永 峯一君

  中本 太衛君     谷本 龍哉君

  樽床 伸二君     藤村  修君

  伴野  豊君     松原  仁君

  山岡 賢次君     西村 眞悟君

  日森 文尋君     原  陽子君

  二階 俊博君     西川太一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岩永 峯一君     虎島 和夫君

  谷本 龍哉君     谷田 武彦君

  藤村  修君     樽床 伸二君

  松原  仁君     手塚 仁雄君

  西村 眞悟君     山岡 賢次君

  原  陽子君     日森 文尋君

  西川太一郎君     二階 俊博君

同日

 辞任         補欠選任

  谷田 武彦君     中本 太衛君

  手塚 仁雄君     伴野  豊君

    ―――――――――――――

平成十三年十二月七日

 一、公共事業基本法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三六号)

 二、公共事業関係費の量的縮減に関する臨時措置法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三七号)

 三、公共事業一括交付金法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三八号)

 四、ダム事業の抜本的な見直し及び治水のための森林の整備の推進等のための緊急措置法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三九号)

 五、航空法の一部を改正する法律案(細川律夫君外二名提出、衆法第二三号)

 六、国土交通行政の基本施策に関する件

 七、国土計画、土地及び水資源に関する件

 八、都市計画、建築及び地域整備に関する件

 九、河川、道路、港湾及び住宅に関する件

 一〇、陸運、海運、航空及び観光に関する件

 一一、北海道開発に関する件

 一二、気象及び海上保安に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海上保安に関する件




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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 この際、新たに就任されました国土交通副大臣及び国土交通大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。国土交通副大臣月原茂皓君。

月原副大臣 国土交通副大臣の月原茂皓でございます。よろしくお願い申し上げます。

 扇大臣のもとで、主に安全危機管理関係、交通関係及び北海道開発関係の各施策を総括してまいります。委員長初め委員各位の御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 国土交通大臣政務官菅義偉君。

菅大臣政務官 大臣政務官の菅義偉であります。

 主に災害対策関係及び社会資本整備関係を命ぜられております。一生懸命頑張ります。どうぞ、委員の先生方、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

赤松委員長 国土交通大臣政務官高木陽介君。

高木大臣政務官 このたび大臣政務官に任命を受けました高木陽介でございます。

 主に安全危機管理関係及び交通関係を命ぜられておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

赤松委員長 国土交通大臣政務官森下博之君。

森下大臣政務官 大臣政務官の森下博之でございます。

 主に国土関係及び北海道関係を命ぜられております。どうかよろしくお願いをいたします。ありがとうございます。(拍手)

     ――――◇―――――

赤松委員長 海上保安に関する件について調査を進めます。

 この際、九州南西海域不審船事案について政府より報告を求めます。国土交通大臣扇千景君。

扇国務大臣 おはようございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 委員長からお話のありました九州南西海域の不審船事案について御報告を申し上げます。

 去る十二月二十二日土曜日午前一時十分、防衛庁から海上保安庁に対しまして不審船発見の連絡がございました。

 海上保安庁としては、防衛庁からの情報を入手後、直ちに巡視船艇、航空機並びに特殊警備隊に発動を指示し、二時五分に海上保安庁警備救難部長を室長とする九州南西海域不審船対策室を設置いたしました。

 現場には、まず航空機が到着して当該船舶を確認し、その後、巡視船も現場に到着したことから、十二時五十分、海上保安庁長官を本部長とする九州南西海域不審船対策本部を設置して、現在も対応しているところでございます。

 巡視船の再三にわたる停船命令を無視し、蛇行する等悪質な抵抗を繰り返しながら当該船舶は逃走したことから、射撃警告を実施した上、十四時三十六分から、逃走防止のため上空及び海面に向けて威嚇射撃を開始いたしました。

 しかし、なおも当該船舶は逃走を続け、停船する気配を見せなかったため、十六時十三分から、人に危害を与えない範囲で威嚇のための船体射撃を実施いたしました。

 このような巡視船による射撃を実施したにもかかわらず、当該船舶は停船、航走を繰り返し、逃走を続けたため、二十二時零分、巡視船二隻により当該船舶を停船させるべく接舷を開始したところ、二十二時九分、銃撃及びロケット弾様のものの発射を受けたことから、巡視船が正当防衛として射撃を行ったものでございます。

 その後、当該船舶は、二十二時十三分、原因はいまだ明らかではございませんけれども、爆発して沈没いたしました。

 また、当該船舶からの銃撃によって、職務を執行しておりました海上保安官三名が負傷しております。

 現在は、行方不明となっております当該船舶乗務員の捜索とともに、本事案につきまして必要な捜査等を鋭意進めているところであり、引き続き事実関係の解明に向けて全力を尽くしていくことといたしております。

 今回の海上保安庁による一連の対応は正当なものであったと考えておりますが、今回の事案を教訓として、海上保安庁の装備、体制、制度及び関係省庁との連携等の充実強化について検証するよう海上保安庁長官に指示をいたしまして、関係省庁とも今後十分に検討していくことといたしております。

 以上でございます。

赤松委員長 以上で政府の報告は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長岩村敬君、海上保安庁長官縄野克彦君、内閣官房内閣審議官村田保史君、警察庁長官官房審議官上原美都男君、警察庁刑事局長吉村博人君、防衛庁防衛局長首藤新悟君、防衛庁運用局長北原巖男君、外務省大臣官房審議官佐藤重和君及び外務省大臣官房審議官林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。

赤城委員 おはようございます。自由民主党の赤城徳彦です。

 早速でありますが、ただいま報告のありました不審船事案につきまして質問させていただきます。

 今回の不審船に関しましては、同船からの攻撃によって海上保安官三名が負傷し、巡視船にも甚大な被害が出るという大変危険な中で、海上保安庁の職員が迅速的確に対処をしていただいた、そのことについては高く評価されるべきだ、こういうふうに思っております。

 特に、ただいまの大臣の報告にありましたように、停船命令を出し、射撃警告をした上で、上空、海面に威嚇射撃をし、その後、人に危害を与えない範囲での威嚇のための船体射撃をし、接舷を試み、相手方から銃撃があったということですので、正当防衛に基づく射撃を行うという、こうした一連の手続をきちっと踏んだ対応をされたということであります。

 一つ伺いたいのは、こういうきちっとした手続、手順を踏んだ行動だというふうに思っておりますけれども、それがどういう法的な根拠に基づいて行われているのか、そのことについてお伺いいたします。

縄野政府参考人 御説明申し上げます。

 当該船舶は、その外見から外国漁船というふうに判断をされ、我が国の排他的経済水域内におきまして、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律、いわゆるEZ漁業法第五条第一項に違反して無許可で漁業等を行ったおそれがあることから、海上保安官が事実関係を確認するため、EEZに適用されます漁業法第七十四条第三項に基づきまして検査をしようと、停船命令を繰り返し発したところであります。

 しかしながら、当該船舶はこれを無視して逃走いたしましたために、漁業法百四十一条第二号に基づく検査忌避罪が成立いたしまして、その犯人を逮捕するため、海上保安官が巡視船及び航空機により追跡をしたものでございます。

 なお、当該船舶は、日中中間線を越え、我が国の排他的経済水域外に逃走いたしましたけれども、巡視船及び航空機は国連海洋法条約第百十一条の2及びEEZ法第三条第一項第四号に基づく追跡権を行使したところでございます。

 以上でございます。

赤城委員 関係法令に基づいて、きちっとした手順を踏んだ対応だ、こういうことだと思います。私は、後でまた触れますけれども、こういう法令、制度をきちっと整備していくということが危機管理において大変大事だというふうに思っております。

 ところで、この不審船、これは一般に、北朝鮮の工作船だ、こういうふうに言われておりますけれども、その点について大臣はどういうふうに認識しておりますか。

扇国務大臣 今、赤城先生の御質問にございました北朝鮮の不審船ではないかという御質問に対しましては、まだ確たるところのお答えができかねておりますけれども、事実として、現段階で揚がっているものを御報告申し上げたいと思います。

 それは、現在まで、海に浮かびました浮遊物、これを揚収しましたけれども、その浮遊物、漂流物の中には、御存じの方あるかもしれませんけれども、ハングルでリョカタンベというたばこ、日本製より少し大き目のたばこでございますけれども、リョカタンベと印刷されたフィルターつきたばこのパッケージも拾得しております。そして、リョカタンベというのはフィルターつきたばこという意味だそうでございますけれども、これらの揚収物に書かれておりますハングル文字、リョカタンベというたばこの字の下に、北朝鮮製であるというふうな文字が入っております。

 それからもう一つは、もう御存じの方もいらっしゃると思いますけれども、落花生砂糖の菓子袋が入っていました。菓子袋にはハングルで製造元が朝鮮平壌と印刷されておりました。これもポケットの中に入っていた落花生砂糖の菓子袋でございます。

 それともう一つ。リョカタンベというのはフィルターつきたばこで、日本で買おうと思いますと、一定のところへ行きますと六百円という高額なたばこでございまして、一般の北朝鮮の人たちにはこの六百円のたばこというのは買えないたばこで、手に入らないといいますか、高額過ぎて、一部の人しか吸っていないような、北朝鮮ではリョカタンベというのは高級たばこであるということも、これもわかっております。

 これらのことから、私どもは、不審船の国籍をまだ断定するには至っておりませんけれども、そういう意味では、揚収されました漂流物等々、北朝鮮の製品と思われておりますので、今後、徹底的な解明のために、引き続いて必要な捜査等に全力を傾注していきたいと思っております。

赤城委員 防衛庁から、最初にP3C哨戒機で画像を撮影し、海上保安庁に対して通報したときに、この当該船は北朝鮮の工作船の可能性が高い不審な船舶と判断した、こういうふうに言われておりますので、防衛庁の方の画像処理から見ても、その当該船舶の形状、態様、それから、これは余り表には出せない話かもしれませんけれども、通信を傍受していた、こう言われていますから、その傍受の内容とかさまざまな周辺情報もありますし、ただいまの大臣のお話にありましたような、たばことか物的なものも今揚がっております。

 これは極めて北朝鮮籍の船であるという蓋然性が高いな、そういうふうに印象を持ちましたが、なお政府として最終的な確定はされていない、こういうことでありますので、私は、これは一刻も早くその事実を明らかにするためにも、この当該船舶を引き揚げる、あるいは潜って、潜水で調査をする、何らかの形でその捜査をしなければならないと思います。

 大臣は当初からこの引き揚げについて積極的だと伺っておりますけれども、そのお考えについて改めて伺います。

扇国務大臣 私は、ともあれ、これだけ日本の近海に重装備した漁船らしきものが徘回しているということ自体が日本にとっては重大なことであると認識しておりますし、今から思えば、一昨々年になりますか、あの不審船追跡で、我々は何の手出しもできないで、スピードも追いつけないまま逃走してしまったという苦い経験もございます。

 そういう意味で、我々の日常生活の安全と安心のためにも、しかも、これは後でわかったことですけれども、ロケット砲まで装備している船であるということがわかりまして、私も行ってまいりましたけれども、船を見ると、日本の船の被弾状況というものはひどいものでございます。ですから、そういう意味でも、我々は、どこの国の船なのか、その原因を究明する上にも、私たちはできる限りこれを徹底して調査したい。

 ただ、ロケット弾まで装備しているということは、なぜ沈没したかという原因がまだわかりませんけれども、船内爆破したのではないかという疑いもあるわけでございますので、近寄ったら何らかの形で爆発物が装置してあるのではないかというようなこともありますし、船底で爆発が起こったということですので、もしも引き揚げようと思ったら、船体がばらばらになるのではないかという懸念もなきにしもあらず。

 そういう意味で、あらゆる点で、私どもはこれを、どこの国の船であるかということを鮮明にするためには、徹底的な究明のために引き揚げたいという気持ちは十分持っておりますけれども、それに近づいて二次災害が起こらないように、例えばサルベージの皆さん方にも危害が起こってはいけないということで、これをどのようにしていったらいいかということを今考えておりますけれども、何しろ沈没しておりますので、その沈没の水域を監視することも怠ってはならないと私は思っております。

 途中で私ども一度銃撃をやめましたのも、中国の旗を船員が上げたんですね。ですから、中国の船ではないかということで一たん銃撃をやめたこともございます。中国にとっても、中国の旗を上げられたということは、私は、もしも中国の船でないなら大変失礼な話だと思いますので、中国の排他的経済水域の中ですけれども、お互いに情報を交換し合って、そして一刻も早くどこの国の船籍であるかということを明快にする手段を、慎重に取り扱いながらも、なおかつ迅速にしていきたいと思っております。

赤城委員 引き揚げるか、潜って調査をするか、いずれにしても、沈んでいる船、またその近傍に対して捜査をしなければならないと思います。

 特に大事なのは、中国の排他的経済水域ですし、大臣もおっしゃるように、中国としてもこの実態解明をしたいというふうに思っておられるはずで、これは、具体的にどういう捜査をするかは別にして、少なくともその捜査、調査に対して中国にぜひ協力してほしいという要請をすぐにもすべきではないかと思いますが、どうも外務省は中国に何か遠慮されてそういうことを要請していないというふうなことも聞くんですが、外務省はいかがでしょうか。

佐藤政府参考人 ただいま御質問ございました中国との関係でございますが、今回の事案が発生いたしまして以来、当該不審船が中国側の海域の方に向かっているということもありましたので、近隣諸国との関係ということもありますので、私ども、かなり早い段階から中国側とはコンタクトをとりまして、これまで情報の提供といったことを随時行ってきているわけでございます。

 現時点では、先ほど大臣からもお話ございましたが、当該海域の監視あるいは漂流物の回収といったことを精力的に行ってきているわけでございますけれども、これから中国側との関係をどうするかということでございますが、今後、仮にいろいろな引き揚げ等、調査を行うということを考えていく際に、その現場水域につきましては我が国が事実上中国側の排他的経済水域であるというふうに扱っている海域でございますので、これから中国側と必要な調整を行いながら、適切に対処をしていきたいというふうに考えております。

赤城委員 中国に対して情報を提供はしてきたんだけれども、捜査の協力を要請はしていないというふうにうかがえましたね。

 これは中国の排他的経済水域ですから、だからといって別に中国の了承を得なければならないということではないわけですけれども、むしろ率直に、この不審船は北朝鮮籍の工作船であるという疑いが強い、中国とも協力し合って実態解明をしたい、ついては近傍の安全確保とか具体的な捜査について中国もぜひ協力してほしいということに何はばかることはないと思いますので、ぜひそういうふうにお願いをしたいと思います。

 次に、防衛庁に伺いますが、このP3C哨戒機が不審船をとらえてから海保に連絡をするまで大変時間を要した、こういうことが批判されております。

 かつての能登半島沖の不審船事案のときの反省から共同対処マニュアルができて、両省が初期の段階から情報を共有し合って共同して対処するべきだ、そういうことが当時の反省から決まっておったんではないかと思いますけれども、今回のこの写真を解析するということと並行して、すぐにも情報を伝達してよかったんではないか。あるいは、もっと早い段階からこういうものがありますよと。具体的にどういうふうに対処するのかというのはまた別として、少なくとも情報としてはできるだけ早い段階から共有すべきであると思いますが、いかがでしょうか。

首藤政府参考人 今、赤城先生おっしゃられました、こういう案件についてできるだけ早期に情報を共有すべきであるということにつきましては、防衛庁としても能登半島沖不審船事案以来一貫した認識でございます。

 今回の事案につきまして、現時点で防衛庁として把握しているところを申し上げさせていただきますと、まず、通常の警戒監視活動を行っておりました海上自衛隊鹿屋の第一航空群のP3C、これが十二月二十一日の十六時半ごろ、奄美大島の北北西約百五十キロの海域におきまして、後に不審な船舶であることが判明する漁船らしき船舶を視認したわけでございます。このP3Cは、この船舶につきまして一般の外国漁船と判断しておりましたが、念のため十七時過ぎ同海域に戻り、再視認、写真撮影を実施して、十八時半ごろ鹿屋基地に帰投したわけでございます。

 今一言申しましたこの念のための意味でございますけれども、P3Cが警戒監視活動中に視認いたしました数十隻の船舶がございますが、そのうちで外国漁船と判断された船舶はこの船舶一隻のみであったということでございますので、一たん通り過ぎたわけでございますが、鹿屋へ帰る途中、帰投中に念のために写真を撮っておこうということで実施したわけでございまして、この時点でP3Cの搭乗員が、後に今回のような船とわかる、そういう意識を持っていた事実は全くなかったわけでございます。

 それで、その後、鹿屋基地におきまして、同機が撮影した写真を識別いたしましたところ、当該船舶の写真につきましては上級機関による精緻な解析を求める必要があると判断されましたことから、当該船舶の写真につきまして直ちに、すなわち二十時ごろ海上幕僚監部などへの伝送を開始した。この写真につきましては、精緻な解析を要するにもかかわりませず、当日の天候等の関係で不鮮明であったというようなこと、あるいは海幕等の複数の関係部署に伝送する必要がありましたこと等からいたしまして、安全、確実、かつ精密に伝送すべく、つまり密度の濃いような写真伝送方法をとったという処置をしたところ、海幕におきまして必要な写真の出力を完了したのは、送信開始後約三時間後の二十三時ごろになってしまったということでございます。

 これを受けまして、この写真について、海幕において専門家による写真解析を実施するなど、防衛庁として総合的に分析、検討をしましたところ、翌二十二日零時半ごろ、当該船舶は平成十一年三月に能登半島沖で確認された不審船舶と同様な性格の船舶である可能性が高いとの判断に至った。このため、防衛庁としては、速やかに官邸及び内閣官房に対する報告を開始するとともに、位置情報等の把握のために飛行していたP3Cから、鹿屋基地所属でございますが、最新の位置情報を入手した上で、これは一時過ぎでございますが、一時十分ごろ直ちに海上保安庁に連絡し、引き続き所要の追尾、監視を実施したところでございます。以上の経過でございます。

 私、先ほど、途中、P3Cの搭乗員がその時点でそれじゃ全く意識がなかったかという、そこで全くとか言いましたが、いずれにしましても、その時点においては帰投中に念のために撮ったということでございます。

 以上でございます。

赤城委員 解析をできるだけ速やかにするとか、画像の伝送を速くするということも必要だと思いますけれども、私が申し上げたいのは、防衛庁と海上保安庁との連携の問題で、少なくともこういうことがありますよと、情報の確度がまだ低い段階であっても、また、何もないかもしれないけれども、とりあえず第一報はお伝えしますといって、お互いにその持てる情報を交換し合い、共有し合いながら対処していく、まさにこの一連の不審船事案に対しての反省はそういうところにあったんではないかなと思います。

 次に、今回の不審船が、もし日本の領域内で、領海内で発見された場合は、さきの国会で成立した改正海上保安庁法第二十条第二項、この規定が適用になって、いわゆる危害射撃ができたと思います。しかし、たまたま今回は領域外であったために、この適用がなくて、威嚇射撃と接舷、挟撃というふうな手段しかとれなかった。その結果、近寄ったために相手方からロケット砲の反撃があった、そのために負傷者まで出てしまったということなんですが。

 こういうふうに、接舷する、近寄れば危ないなと思われるような今回のような場合は、まさにその改正法の二十条二項に言う、船舶の進行を停止させるためにほかに手段がないと信ずるに足りる相当な理由があるときだ、こういうふうに思います。まさにそういう危害射撃を許容しなければ、危なくて近寄れない。では、威嚇射撃だけして追っ払うことしかできないのか、領海の外で見つかった不審船に対してはそういうふうな対応しかできないのかということになってしまいますから、これは領海の外であっても危害射撃ができるように改めて法改正すべきではないか、こういうふうな考え方もありますが、大臣はどうお考えでしょうか。

扇国務大臣 今、法改正に関しまして明快に申し上げるよりも、何よりも自衛隊と海上保安庁との連携を密にして、そして今回のことをよく検証し、もっと早く、なぜという疑問もございます。

 それともう一つ、相手の船がどうもエンジントラブルを起こしていたのでスピードが出ていなかったらしいという話もあります。ですから、たまたま海上保安庁の「あまみ」等々が追いつきましたけれども、一昨々年のようなスピードで逃げられたのではとても追いつけなかったかもしれない。たまたま相手がエンジントラブルか何か、スピードが、追いつけたスピードであったから、自衛隊と海上保安庁の間の九時間の連絡の空白時間がありますけれども、それでも、追いつけたということだけでも、私は、今回、現実を把握する上の大変な成果であったと思います。これ、そのまま知らないでいれば、また何度も同じことが繰り返されるであろうということは想像できるわけでございますので、少なくとも、今後二度とこういうことがないようにしなければなりません。

 また、私、十二月の二十七日に奄美大島に飛びまして見てまいりました。そして、お見舞いもしました。

 私は、鹿児島へ飛んで、鹿児島のドックに入っております「あまみ」、「いなさ」という両方の日本の海上保安庁の船を見ましたときに、「あまみ」という船は座って操縦しておりますけれども、その前面のガラスが、もうクモの巣状況と言った方がいいでしょうか、もう射撃で百数十発受けています。そして、よく死者が出なかったな、操縦士がよく死ななかったと思うぐらいの、前面ガラスが防弾ガラスでなかったということから被害を受けておりますので、私は、軽々に海上保安庁が相手がどういう武器を持っているかわからないで一方的に威嚇といえども近寄るということも今後は大いに検討しなければならないし、海上保安庁の職員の生命ということから考えれば、今回の教訓として、一刻も早く、ロケット弾ではとても、どんな防弾ガラスにしてもだめですけれども、今回の百数十発の射撃を受けたのを私が見たときには、少なくとも防弾ガラスにしてあげなければ生命が守れないなというぐらいなことを実感しております。

 何よりも、攻撃をするのが目的ではなくて、そういうものが来たときには日本は毅然とした態度で対応する、そしてまた、それに対応できるような装備をするということが私は重大であろうと思っておりますので、両方の、自衛隊と海上保安庁等々と国民の皆さん方、国会での御論議を得て、法整備をしなきゃいけない点が出てくれば、これは法改正をするということもぜひ皆さんと一緒に考えさせていただきたいと思っております。

赤城委員 今後いろいろ法的な整備を考えていかなきゃいけないと思うんですけれども、その場合には、実態的に、どうやったらこういう危険な不審船に対して有効な、停船させ、あるいは抑止し、そういう方法がとれるか、また、特に我が方に危険が及ばないように、そのことも十分考えていかなければならないと思います。

 そうしますと、もう一つ別の側面は、大臣がおっしゃるように、大変な装備を持っている、これはある意味では海保の能力を超えるんではないか、その場合、海上保安庁の能力を超える場合には海上警備行動を海上自衛隊が発令されて対処する、こういうふうな仕組みになっているわけで、ある意味では、たまたま死者がなかった、負傷で済んだけれども、本来これは海上警備行動を発令するような案件ではなかったかなと思いますし、まさに政府部内でもそのような検討がされた、こういうふうに伺っております。

 結果として不審船が沈没してしまったので発令はされなかったということなんですが、今回の反省点として、武装工作船というような、海保の能力を超えることが予想されるようなものについて、つまり自衛隊が対処すべきような相手方に対しては、第一義的には海保の任務だというのはわかるんですが、しかし、専ら海保が対応するということで一歩間違えば大変な損害を受けかねないということ、そのことをよく反省する必要があるなと思います。

 では、その能力を超えるかどうかという判断を、現場に行って、すぐ目の前で、これはもうまずい、海上自衛隊でなければ対処できないとそこで判断しても遅いわけですから、無理だと思ったらすぐに海上警備行動に切りかえて、即座にその現場で今度は海上自衛隊が対応できるというふうな、そういうある意味の連携体制をとっておかなきゃいけないと思います。

 そのためには、海上警備行動発令前に海上自衛隊が現場にいなければ、今回も、随分護衛艦が出動するのが、出港するのがおくれて、もう着いたときには終わっていた、こういうことだったんですけれども、海上警備行動発令前であってもその準備行為ができるように、必要があればそれは法改正になると思います。また、事実上、調査という形でやることもあるというふうに思いますが、何らかのそういう準備行動というのが必要ではなかったかなと思いますが、いかがでしょうか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、今回の事案につきましては、赤城先生が先ほど来御指摘されております平成十一年十二月に策定いたしました共同対処マニュアル、これに基づいて対応しております。

 この共同対処マニュアルでございますけれども、不審船への対処につきましては、先生も今御指摘のように、第一義的には警察機関たる海上保安庁が対処する、そして、海保では対応が不可能あるいは著しく困難といったときに自衛隊が海上警備行動によって海上保安庁と連携しつつ対処するという基本的な考え方に基づいて策定をされておりまして、今回の事案につきましても、まさに今申し上げましたような基本的な考え方のもとに海上保安庁が第一義的に対応したもの、そのように理解しているところでございます。

 それで、私ども、今回の事案につきまして、不審船の速度ですとか、あるいは投入された巡視船の能力、隻数などから、海上保安庁では対応することが不可能または著しく困難と認められる事態に至ることにつきましては想定されていなかったところでございまして、これは防衛庁といたしましても、かかる状況にかんがみまして、海上警備行動を発令する手続をとるといったことはしなかったところであります。

 また、海上保安庁とは常に情勢認識を共有しておりまして、その海上警備行動を発令するに当たりましては、海上保安庁自身が対応不可能もしくは著しく困難であると判断しているか否かも、これは要件ではございませんが、一つの重要な判断材料になるわけでございますが、今回そういうことはなかったわけでございます。

 そうしたもとにおきまして、私ども、護衛艦二隻を出しております。これも、先生先ほど触れられましたが、私どもはあくまでも警戒監視という形で出したものでございますが、いずれにいたしましても、先生御指摘の海上警備行動の準備行為といったものにつきまして一般的に申し上げさせていただければ、必ずしも法律の規定がなければできないものではないのではないだろうかというような思いもするわけでございます。

 いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては、先ほど扇大臣からもございました、海上保安庁との連携を密接にするということで検証をする等進め、また、関係省庁とも十分に調整をしながら政府全体として検証を進めていきたい、そのように考えているところでございます。

赤城委員 小泉内閣では、この通常国会で有事法制、危機管理体制をやっていこう、こういうことを表明されています。

 従来型の大規模な戦闘というのはなかなか考えにくい時代ですけれども、今さまざまな危機に日本はさらされていて、北朝鮮からテポドンミサイルが飛んできた、こういうこともありました。ボタン一つで数分後には日本に着弾するという、そういうものです。炭疽菌とかサリンとか、姿の見えないそういう攻撃もありますし、少数の武装工作員によるテロ、こういうこともあります。今回の不審船事案も、一歩間違えば、また、その目的によっては大変日本に対して重大な危機を及ぼしかねない、そういうものでありますから、こういう新しいさまざまな事態に十分対応できるような危機管理体制、また法制整備をしていかなければならないと思っております。

 その点と、それから、大臣言われたように、海上保安庁の能力、装備、また防衛庁との連携体制、そういったものをきちっと高めていく、充実させていく、そのことをお願いいたしまして、質問時間が終わりましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 河上覃雄君。

河上委員 私の与えられた時間は二十分でございますので、極力簡潔に質問をいたしたいと思いますが、よろしくお願いを申し上げます。

 今回の不審船の対応を通じまして、危機管理における情報の共有あるいは情報の的確な伝達ということが極めて重要であると改めて痛感をいたしております。

 海上自衛隊のP3Cが不審船を発見いたしまして、防衛庁から海上保安庁に情報が通報された以降、警察機関である海上保安庁が第一義的に対処をした対応というものはやむを得ないものであったと私は考えております。しかし、海保の要員の負傷あるいは不審船の沈没、乗組員の行方を見失った結果など、反省すべき点もあるのではないかと思っておりますし、さらに、自衛隊と海保の連携、武器使用のルールあるいは停船後の安全性の確保など、今後取り組むべき課題もあると思っております。

 その上で何点かについて、きょうは事実確認の観点から質問をさせていただきたいと思っております。赤城委員と重複する部分もあるかもしれませんが、何とぞ明快な御答弁、簡潔な御答弁をいただきたいと思っております。

 まず第一点目に、関係各省から成る今回の事件につきましての政府対応によりますと、十二月二十一日十四時十八分に海上自衛隊鹿屋基地所属のP3Cが通常の監視活動のために鹿屋基地を離陸後、十六時三十分に一般の外国船と判断される船舶を確認したと報告をされております。しかし、海保への連絡は、九州南西海域で一そうの不審な船舶が航行中と、自衛隊P3Cが発見してから九時間後の十二月二十二日午前一時十分でございました。

 不審船を確認してから九時間の時差は余りにも遅い情報の伝達であろうと思っておりますが、海保への通報がおくれた理由につきまして、防衛庁から見解をお述べいただきたいと思います。

首藤政府参考人 全体的には先ほど赤城先生のときに詳細を申し上げましたので、ポイントを絞って御答弁させていただきたいと存じますが、四時半に視認したというのは、どうもその時点から数えて九時間のおくれというように言われておるようでございますが、私どもの認識では、その時点では一たん見て、それから帰るさなかに、その数十隻見た船の中で外国漁船はその船一隻だったので、念のため帰りに写真を撮って、そして六時半に鹿屋にランディングした。その後、通常の飛行記録をつくったりするのに十五分から三十分かかりまして、そして七時過ぎぐらいからASWOCと申します鹿屋の対潜作戦指令センターにおいて解析を始めたあたりから、いわば本格的に、この船は普通の船ではないのではないかという判断が動き始めて、自分たちだけではなく、上級司令部、海幕の判断を仰ぐべきだということになったのが八時ごろでございます。

 したがいまして、そのような判断になったころからの対応については、今後私どもいろいろと今回の事案を教訓、反省事項として改善していかなければならないと存じておりますが、まず一点目の事実関係はそういうことでございます。

 それから、二点目に、八時ごろ判断して海幕に必要な写真が届いたのが何と三時間後であったということは、何と申しますか、精密画像で送るためには、密度が濃い、ということは非常に回線容量を食うわけでございますけれども、それが回線の容量不足、そういったことからいたしまして非常におくれてしまった。したがいまして、この点につきましては、私ども、装備の改善、あるいはそういった限られた回線の中で必要な部局へ速やかに届ける方法の改善とか、マニュアルの改善、こういったようなことを考えていかなければならないのではないかと思います。

 それから、もとより今回の場合は必ずしも最初P3Cの搭乗員が見て、これはもう明らかに不審船であるというようなことを考えたわけではないわけでございますけれども、今後そのように判断されるようなことがあり得ないわけではないということを考えますと、既に北の方の八戸とか厚木に配備されておりますP3Cに積んでおりますいわゆる静止画像伝送装置、これは通信衛星を使って基地に送るものでございますが、そういったもので機上から直ちに、多少粗い写真ではあっても、司令部なり幕僚監部へ送ることで時間を短縮するというような方法も改善策として考えなければならないのではないかということでございます。

 いずれにしましても、私ども、今回の事案を教訓、反省として、装備面のみならずソフト面におきましても改善して、おくれはないようにしなければならないと考えております。

 以上であります。

河上委員 同じ御答弁だと思いますが、私が申し上げたいのは、第一義的に海上保安庁が対処するということがお互いに確認されているわけでありますから、第一報として、正確不正確の問題はあったとしても、連絡を入れておくという考え方はないのか。共同対処マニュアルは第一義的に海上保安庁が対処するとなっておるわけでしょう。合意しているのですから。合意しているのだったら、その情報の第一報として、海保が準備態勢も整える時間的な余裕もできるわけでありますから、そういう意味から第一報を入れておく状況にあったのではないか。写真撮影をしたこの時点直後に第一報として入れる必要性はあったのではないのかと私は思うのです。

 局長はさっき、今の答弁でも出てまいりましたが、それはあくまでもP3Cの搭乗員は念のためだと。念のためであって、十分意識をしていなかったという言い方をなさったけれども、私は、この時系列、政府が出しました時系列を素直に見まして、P3Cの搭乗員はむしろ明確に認識をしていたんではないかと直感をしたのです。

 だから、そういうことも含めて、十七時直後、やはり私は、準備態勢を海上保安庁が整えるため第一報を入れておく必要性があったと考えるのですが、どうですか。

首藤政府参考人 事実関係は先ほどお答え申し上げましたとおりでございます。したがいまして、先ほどの繰り返しになりますが、今後機上から電波で写真を送れるような装置の投入も考える、あるいは基地に戻って分析を開始し、怪しいのではないかと思われた以降、当然こういった実力組織は、まず迷ったときは上級司令部に上げて判断を仰ぐというのが常道でございまして、今回もそのようにしたわけでございますが、今後そういう縦、上にだけやることでいいのか、あわせて横、すなわち管区保安本部なりに、まだ未確定、不確定ではあるけれども第一報というようなことをまずやるというやり方なども含めて、今後いろいろ検討、改善を加えていかなければならないのではないかと考えております。

河上委員 時間が夜の時間に差しかかっておりますからね。当然防衛庁の幹部もいらっしゃったとは思っておりますけれども。

 十一年の三月二十三日、能登半島の不審船の対応では、海上自衛隊の航空機が不審船と認められる漁船を発見した後、一時間三十分で海保に連絡をしているじゃありませんか。多分通常の活動として航空機が飛んだんでしょう。でも、一時間半で能登半島沖の場合には連絡が入っていますよ、海保に。今回は九時間ですよ。この際の不審船の速度が追跡した海保の船より速かったために、残念ながら海保は追いつくことができなかった。これが海保の反省点になっているわけでございます。

 この教訓を踏まえてできたのが、今申し上げた不審船の共同対処マニュアルでしょう。自衛隊と海保の間でこのマニュアルをつくったわけであります。運用局長もさっき御答弁をされておりましたが、不審船への対処は警察機関である海上保安庁が第一に対処することになっているのがその基本的な考え方ですよ。だから、自衛隊と海保の間の反省点からこれが生まれてできたわけですから、第一義的に対処する海上保安庁が早く情報を知っておくということは重大な問題でしょうと私はさっきから申し上げている。それが何で九時間なのか。十七時直後の時点で、明確不明確は別として、こういうことがあるよという、これも共同対処マニュアルの双方の連携、これは書かれた文書で重要な問題じゃないのですか。私はそう思っていますよ。ということを含めまして、私は、もう少しスピーディーな、迅速な対応が必要なのではないかと思うんです。

 では、共同対処マニュアルというのは、今申し上げたとおり、共同訓練等を実施することになっております。平成十一年三月以降、自衛隊と海保の間ではどんな共同訓練をしてきたのでしょうか。

縄野政府参考人 不審船事案の後、平成十一年六月、今御指摘の共同対処マニュアルを整備いたしました。これに基づきまして、海上保安庁と海上自衛隊との間におきまして、これまで迅速なる情報連絡の実施でありますとか、共同対処訓練の実施、情報交換訓練などを行ってきております。

 今後とも、このマニュアルに基づきまして、定期的な相互研修、情報交換、共同訓練等を実施してまいりたいというふうに思っております。

河上委員 防衛庁は、今回の事案に対して、共同対処マニュアルがもとになった双方の行動であったと思っておりますか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 先生御指摘の共同対処マニュアル、これは先生のおっしゃるように、十一年三月の能登沖不審船事案等の教訓、反省に基づきましてつくったものでございます。この中には、情報連絡体制につきまして、海上保安庁及び防衛庁は、所定の情報連絡体制を確立し、初動段階から行動終了まで的確な連絡通報を実施する、このようになっております。

 それで、防衛庁のとった対応につきましては、先ほど防衛局長が事実関係を述べたとおりでございまして、私どもといたしましては、まさにマニュアルに書いてあります初動からその最後まで、最後というのは、まだ今も災害派遣等でP3Cを出しておりますが、最初から今日まで本マニュアルに従いまして密接な情報交換等に努めてやっている、そのように考えておるところでございます。

 ただ、これは河上先生並びに先ほどの赤城先生からも御指摘いただきました情報伝達のタイミングということにつきまして、今回の事案、私ども防衛庁といたしまして、判断困難な状況において現認し撮影した船舶について必要な分析等を行った上で海上保安庁等に通報を行ったところでございまして、正確な情報を提供するといった観点からは、私どもは本マニュアルに従って行った適切なものであった、そのように考えているところでございます。

 ただ、御指摘の、いわゆる不確実な段階でも一報を云々といった御意見等もございますので、これらを踏まえまして、今後、海上保安庁等関係省庁との十分な調整を行ってまいりたい、そのように考えているところでございます。

河上委員 同じ質問を海保の長官に。

 今回の行動についてはマニュアルに基づく行動であったとお考えですか。

縄野政府参考人 私どもとしましても、もちろんなるべく早い段階での情報の共有ということが十分な態勢をとる上で必要でございますので、どのような段階でどういうルートで情報を共有するかということについて、さらに防衛庁との間で共同マニュアルの検証という形で再検討をしたいというふうに思っております。

河上委員 もう一点防衛庁にお伺いいたしますが、この新聞報道によりますと、十二月十九日ごろ、自衛隊喜界島通信所で、鹿児島県ですね、不審船と北朝鮮との間の無線交信を傍受したとの報道がございます。これは事実でしょうか、事実じゃありませんでしょうか。

首藤政府参考人 防衛庁といたしましては、個々の報道の内容につきまして一々具体的にコメントすることは必ずしも適切でないと考えておりますが、なお、今回の不審船につきましては、通常の警戒監視活動を行っていた海上自衛隊のP3Cが二十一日午後五時ごろに撮影した写真を防衛庁として総合的に分析した結果、平成十一年に能登半島沖で確認された不審船舶と同様な性格の船舶である可能性が高いという判断に至ったものでございます。

 今、喜界島とか、電波のことをおっしゃられましたけれども、防衛庁の電波情報業務の具体的な内容に係る御質問につきましては、他国に防衛庁の情報監視あるいは情報収集、処理能力を明らかにすることにもなりまして、自後の効果的な情報活動の支障となるおそれがありますことから、恐縮でございますがお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

河上委員 質問を変えます。

 海上保安庁にお尋ねいたしますが、排他的経済水域、EEZ内で、漁船と麻薬などを積んだ船舶とでは対処方法は異なりますか、異なりませんか。

縄野政府参考人 国連海洋法条約におきましては、排他的経済水域におきましては、漁業、鉱業、海洋環境の保護及び保全に関し、沿岸国の主権的権利、管轄権行使を認めております。

 対象船舶が外国漁船である場合には、EZ漁業法によりまして、その違反の有無に関しまして漁業法が適用されまして、先ほど申し上げましたけれども、七十四条三項に基づいて検査を実施することができます。今回の船舶は、この検査を忌避したわけでございます。

 一方、国連海洋法条約は、EEZにおきまして漁船でない外国船舶が麻薬を積んでいるおそれがあるような場合には、沿岸国に主権的な権利及び管轄権行使を認めておりませんので、我が国の法令の適用はなく、取り締まり、検挙をするということは困難であると考えております。

河上委員 まだあったのですが、時間が来てしまいましたのでこれで終わりたいと思いますが、いずれにいたしましても、十二月二十八日には鹿児島大学で二遺体の司法解剖も行われたようでございますし、ここから国籍が特定できるのか、あるいは漂流物、そうしたものから国籍が特定できるのか。いずれにしても、国籍をきちっと特定する作業が重要でございますので、それらの問題に対しましてもしっかりと対処をしていただきたいと申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 西川太一郎君。

西川(太)委員 私に与えられた時間はわずか十分でございますので、質問はぶっきらぼうにお尋ねをして恐縮でありますが、簡潔にお尋ねをしたいと思います。

 昨年の十二月二十一日、九州南西海域において発見された不審船に対する海上保安庁の対応につきましては、報道によって私どもはリアルに近い状況を承知したわけでありますけれども、命にかかわるような大変な危険を顧みず、海保の現場の皆さん、よく頑張ってくださった。私は、今度のことは非常に画期的なことだと思っています。

 実は、私もかつて防衛政務次官を務めた経験がありますから、この問題については非常に関心を持っておりまして、こういう実力行使をしたという、これに踏み切ったということは、これは大変画期的なことだ。これからこういうことがしばしばあっては困るのでありますけれども、我が国の姿勢を明快に示したという意味では、大変よかったというふうに私は思っております。

 そこで、何のためにこういうものが我が国に対して来るのか、これをやはり承知しておく必要がある。そのためには、やはり沈没した船を何か手がかりにできないものか。一部報道によると、いわゆる中国からの圧力があるなんということを報じられているようでありますけれども、とんでもないことでありまして、このことについて大臣はきっぱりした対応をしていただきたい。これをまず一点お尋ねしたいと思います。

扇国務大臣 西川先生も防衛政務次官というお役をお務めになって、このことに対して特に関心をお持ちいただいておりますことに感謝申し上げますとともに、私どもは、どこの国の船が何の目的でこういうことをするのか、また重装備をしてなぜ日本近海へ来るのかという原因がわからなければ対処のしようがないわけでございますから、その原因究明のために、私はみずから近海の国々と連携をとって、どこの国に行くかもわからないこの不審船、今後みんなが協調をして真相究明に当たるというのは一番重要なことであると認識しております。

 ただ、今、海上保安庁が持っておりますのは、この位置としては、自航式水中テレビ装置というものを持っておりまして、これを使って、最大限用心をしながら水中テレビでこの船を観察する。それによって、引き揚げ可能かどうか。サルベージということも言われておりますけれども、これは、海が荒れておりますので、サルベージをお願いするにしても、波が静まるということで、四月以降でないとできないということもありますので、今は沈没した船の監視を徹底するということと、近隣の皆さん方の御理解をいただいて究明に私たちは全力を挙げるという姿勢には変わりありませんし、水深が九十メートルから百メートルというこの水中に潜ってこれを監視し、なおかつ、引き揚げる可能性としては、九十から百ということでは、可能性としてはあるわけですけれども、先ほど申し上げましたように、爆発物がないか、そういうことは徹底しながら解明に全力を挙げていきたいと思っております。

西川(太)委員 ぜひ期待をしたいと思います。

 それから、この九州の南西海域の問題とは少し違うんですが、六日に江の島で不審な騒動があった。これは結果的には全く虚偽のことであって、人騒がせな事件であったわけでありますけれども、私は、だからそれでよかったということじゃなくて、ぜひ考えなければいけないのは、これからそういうようなことに警察も自衛隊も、そして、これは海のことでありますから海上保安庁も振り回されるようなことがあって、もし捜査や警備のすきをつかれて、意図的に虚偽の情報によって攪乱をされ、そのすきをついてというようなことが起こらないとも限らない。そんな小説のようなことを想像するのは嫌なんでありますけれども、こういうことに対して、これは単にいたずらだで済ますわけにはいかないと思うんです。

 これは国土交通省の所管じゃないかもしれませんが、しかし大臣としては、深い関連があるわけでございますから、こうしたことに対してどう対応されるのかということ、これも考えておかなければいけないと思いますが、いかがでございましょうか。

扇国務大臣 暮れに不審船がありまして、それに続いての通報でございましたから、やはり緊張せざるを得ませんし、即対応ということで、私は海上保安庁の報告だけをさせていただきますと、海上保安庁としましては、巡視船艇を六隻、航空機を四機、派遣要員を十人と、すぐ投入して捜査に当たったわけですけれども、これが全くの虚偽であるという。しかも四十一歳という男性。子供ではなくて、四十一歳ですから、振り回されたと言われればそれまでですけれども、これに対応しなくて、それが本当だったらどうするんだということにもなりますので、私たちは最大限の対応をさせていただいた。結果は空振りということで、犬も食わない夫婦げんかの結果というのではおさまらない。

 私たちは少なくともこの刑事責任の追及については考えなきゃいけません。神奈川県警を中心に今捜査していただいておりますけれども、これは軽犯罪法に該当するということで、三十日未満の拘留または一万円未満の科料、これでは私はおさまらないという怒りを持っておりますので、少なくとも私は、今後こういうことのないようにという意味でも損害賠償を請求できないのかと今検討しているぐらいでございます。

西川(太)委員 ぜひ、そうした模倣犯や愉快犯が出ないように、国防の問題でありますからしっかりやっていただきたいと思います。

 扇大臣を補佐していただく佐藤副大臣、大変御苦労さまでございます。新たに月原副大臣が佐藤副大臣ともども扇大臣を補佐してくださるわけであります。

 また、月原副大臣に私はお尋ねしたいんですが、月原副大臣は防衛庁に御勤務をされた御経験もあるわけでありまして、いわゆる危機管理、安全保障の専門家であります。月原副大臣は、今度の九州の事件、また江の島の虚偽の事件、我が国が決してそういう意味では安心していられない、こういう状況の中で、どういう御決意で扇大臣を補佐されて仕事をされるのか、ぜひ専門家としてのお立場で決意を伺わせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

月原副大臣 お答えいたします。

 西川さんも防衛庁の政務次官として現実に防衛を通じての危機管理について大変御尽力されたわけでありますが、私もおっしゃるとおり防衛庁に勤務した経験を持っております。

 この最近の事象について私が思うことは、非常に国民の理解も得、また議会の理解も得て危機管理そのものについて内閣が正面から取り組める体制ができつつある、こう思っております。

 しかし、そこにおいて国家として大事なことは、第一義的には、夜警国家論ではありませんが、国民の生命財産を守る、そして守ってくれているんだなということを国民が実感を持って感じていく、そういう体制をつくらなければならない。そういう意味において、私はこの問題について言えば、情報の共有、そしてちゃんとした処理をする、そういうことをちゃんと行えるようなものを積み上げていく。そういうことを、私は扇大臣のもとで危機管理を担当せよという命令を受けておりますので、国家の中で、海上保安庁、それを中心として他の省庁とどういう連携を持って我が方の任務を全うすることができ、国民の負託にこたえることができるか、そういう点で取り組んでいきたい、このように思っております。

 以上です。ありがとうございました。

西川(太)委員 終わります。

赤松委員長 古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 きょうは閉会中審査ということで、本当に急なセットでもあったんですが、大変重要な問題ということで多くの委員の参加のもとに行われております。

 まずは冒頭でございますけれども、現場で職務を全うされまして二人の海上保安官が傷を負われました。恐らく皆さんもそうだろうと思うし、国民の皆さんも思っておられると思いますけれども、これは国会、国民を代表する国会の場でございますので、私の方からも、まずは、このお二人、そして頑張られた皆さんにお見舞いを申し上げたい、かように思います。

 さて、質問でございますけれども、まず外務省の方にお聞きしたいわけでございますが、現在中国の排他的経済水域に沈没しております例の不審船、これは純粋法理論的に、今、だれに帰属し、これを日本が引き揚げることについて国際法上どういう位置づけになるのか、これをまずお聞きいたしたいと思います。

林政府参考人 お答えを申し上げます。

 二つ御質問がございました。

 まず、今般の不審船の所有者ということでございますけれども、これにつきましては、現段階におきましても不明のままでございます。いずれにしましても、船舶が沈没した場所、今回の場合は中国が排他的経済水域としている水域でございますけれども、その場所いかんによってその所有者が決定されたり、あるいは変更されたりということはないということでございます。

 それから、我が国が引き揚げることが国際法上可能かどうかという、あるいは国際法上の位置づけというお尋ねでございますが、今、当該不審船につきまして引き揚げを行うといったことが決定されたわけではないと承知しておりますけれども、そういう前提で一般論として申し上げますと、この海域、日中間ではまだ海洋の境界画定というのは最終的になされておりません。しかし、ただ、御案内のとおり、沈没していると思われます水域というものは日中中間線の中国側の水域ということでございますので、我が国としては、中国の排他的経済水域として事実上取り扱っているということでございます。

 したがいまして、当該船舶につきまして何らかの調査を行うという場合には、これは国連の海洋法条約上、沿岸国としての中国がその排他的な経済水域において有しております天然資源に関する主権的な権利及び海洋環境に関する管轄権といったものを害さないような方法で行うことが必要になります。したがって、沿岸国たる中国の海洋法条約上の権利との関係が生じる可能性があれば、その必要な調整が行われることになるということでございます。

古賀(一)委員 まず答弁で、所有者は、帰属関係は不明、それはそうだと思うんですよね。場所によっては云々という言葉がありました。もう一つは、地下資源の、海洋資源のことについて言及がありました。

 これは、私が問題にしているのは船でございまして、これが無主物であると法的に位置づけられるならば、公海上で無主物先占、であれば、もう日本側が揚げても問題ないという位置づけなのか。海洋資源、地下資源ではない、したがってこれは無主物先占でもう引き揚げていいというか、そこら辺の純粋法理論的な、政治的判断は別です、外交的判断は別ですけれども、これはやはりはっきりと、今のような答弁ではなくて、この不審船についての法的な、国際法上、国連海洋法条約だと思いますが、はっきりと外務省は位置づけをする。

 一部報道によりますと、このEEZ内では沿岸国の同意なしに漁業や科学的調査はできない、しかし今回のような引き揚げについては条約上中国の同意は不要であるという報道も一部あったわけでありまして、ここら辺のところは、後ほど申し上げますけれども、政治的判断、外交的判断、いろいろ今後あるでしょう、あるんだけれども、法理論的にはしっかりと外務省条約局は理論武装をやはりすべきだと思うんですね。

 その点で、要するに、引き揚げできるのか。不審船ですよ、別に地下資源を掘り当てようとかいう話じゃないんです。この点をもう一度、ちょっと重要な点ですので答弁をお願いします。

林政府参考人 私の御答弁が十分意を尽くさなかったかもしれませんが、申し上げたかったことは、所有権というものが、船舶が沈没したという事実あるいはその沈没した場所いかんによって変更されるということはない、これはもともと、何がしかのその所有者、ただそれがわからないという状態であったのだと思いますが、そのわからないままの状態が続いておるということでありまして、沈没したという事実あるいは沈没した場所というものによってその所有関係、帰属関係というものが変化を受けるということは法的にはないということを申し上げているわけでございます。

 我が国が仮にその引き揚げをした場合に、それでその所有権が我が国に移転するとか帰属関係が変わるといったたぐいの問題ではなくて、今恐らく問題になっておりますのは、捜索、捜査、検査、調査、そういった次元での話なんだろうと思います。これを所有したり、まさに今先占とおっしゃいましたけれども、領域の先占とか、そういった次元の話とは全くこれは異にする話で、当初航行しておった段階においてその所有者というものが、不明ではありますけれどもあったわけで、その所有関係というものが沈没したことによって変化を受けるわけではないということを法理的には申し上げたということでございます。

 それから、二点目の話でございますけれども、確かに、海洋法条約上のこの水域の性格というものは排他的経済水域ということでございますので、天然資源に関する主権的権利としてはということではございますけれども、これは、調査の態様によりましては、どういう形で行われるかわかりませんけれども、その態様によりましては、例えば海洋資源に影響を与える、漁業に影響を与える、あるいは油漏れが生じた場合には海洋汚染を生じせしめて海洋環境に影響を与えるということがあり得るわけでございます。あるということを申し上げているわけではございませんが、あり得る。

 そういうものである以上、沿岸国の権利権限というものに妥当な考慮を払うべきであるというのが海洋法上の仕組みということになっております。これは、別に相手が中国であるからとかいった問題じゃなくて、沿岸国との関係においてそういうものである、国際法上の仕組みとしてはそうなっているということでございます。

古賀(一)委員 では、この不審船について、中国側の排他的経済水域ですからもちろん中国への配慮は必要だと思うんですけれども、そこら辺の中国への申し入れを含めて、これはいわゆる国際法的に引き揚げられると。もちろん、あいさつは、ちゃんとしなきゃならぬところはしますよ。そういうのも総合的に考えて、外交的あるいは国際法的に引き揚げは可能であるか否かというところを最後にはっきり、ちょっと再度答弁をお願いしたいんですが。

林政府参考人 引き揚げということが決定されたわけではないという前提でございますが、この当該水域におきまして不審船について何らかの調査を我が国が行うという場合には、沿岸国たる中国の海洋法条約上の権利との関係が生じる可能性がございますので、そういう可能性があるのであれば必要な調整を行うことになるということでございます。

古賀(一)委員 この質問は一分で終わろうと思ったんですが、今の答弁で、国際的な調整をすればできるというふうに私は理解をいたしました。

 ところで、なぜこのことを聞いたかといいますと、もう一点次に物理的な話を聞きますけれども、閉会中この委員会が開かれた意味というものは、国民がこの事案について大変な関心を持っておるわけです。

 ことしはワールドカップもある。国際的な例の大テロ事件もあった。そして、これも後ほど申し上げようと思ったんですが、戦後これまで不審船について拿捕の実績はゼロでありまして、能登半島のときは取り逃がした。過去の実績を聞いたら、不審船の拿捕の経験、まして乗組員を拘束してしっかり全容を明らかにしたという取り調べも一回も行われていない。そういうことを国民は知っているわけですね。知っているんです。したがって、この大事件があった。

 だから、この閉会中に委員会が開かれたことは、そこら辺の問題点がどうであるかを国会が明らかにするんだろうということと、とりわけ一番関心のあるのは、あの不審船ですよ、もう逃げようもない不審船が海に沈んでおるわけで、これについて日本政府は毅然とした態度をとるかどうかということを知りたいわけで、それが国民の常識だと思うんですね。

 その点について、もちろんこれまでの委員の方からも質問はあったわけですが、やはりそういう位置づけの委員会だと私は思ってきょうは臨んでおりまして、それはしっかり、関係省庁、御理解をいただきたいと思うんですね。

 二番目の質問でありますけれども、これは海上保安庁及び防衛庁にお聞きしたいんですが、今、海面下の百メーターにあると言われておりますこの不審船、物理的、技術的にこれは引き揚げが可能であるかどうか、これを簡潔にお答えいただきたいと思います。

縄野政府参考人 海上保安庁自身が百メートル程度の沈船を引き揚げる装備等は有しておりませんが、過去、例えば国内において民間サルベージ業者が沈んだ船を引き揚げた事例、二百十五メートルの海底から引き揚げた海洋調査船「へりおす」、五十メートルの海底から遊漁船第一富士丸を引き揚げた事例等がございまして、これらの事例から見て可能ではないかと考えております。

古賀(一)委員 一応そういうことで技術的には可能だとはっきりとした明言をいただいたわけでありまして、これは防衛庁の方も同じ答弁だと思うのですが、確認のためにちょっと防衛庁の方の御意見もいただきたいのです。

首藤政府参考人 古賀先生のお尋ねが、海上自衛隊自身がそういった引き揚げる能力を持っているかということと存じましたが、海上自衛隊の場合、その任務遂行に際しまして水没した船舶を引き揚げることは想定しておりませんで、沈没した今回の不審船といったものを引き揚げるような装備、能力は有していないということでございます。

 私どもは潜水艦救難艦というのを持っておりますが、これは、DSRVと呼ばれる深海救難艇、こういったものを用いまして沈没した潜水艦から中の要員を救出する船でございまして、水没した船を引き揚げる能力は有していないということでございます。

古賀(一)委員 せっかくの機会でございますので、例の北海沖のロシアの潜水艦の事件を思い出すわけですが。

 引き揚げという話についてはわかりました。では、今度は、いわゆる投光器を持って人間が潜水して調査をするという点について言えば、海上保安庁、あるいは防衛庁は特に潜水艦隊を持っているわけでありますから、助けなければならぬ、その装備は持ってあるという話ですけれども、潜水能力、いわゆる潜って調査する能力という面について、防衛庁、いわゆる海上自衛隊、百メーター、これは能力ありでございましょうか。参考までに、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。

縄野政府参考人 私どもの能力からいたしますと、水中カメラによりまして調査をするということは可能であるというふうに思っております。

 ただ、ダイバーによって、私どもの職員が潜水をして調査をするということにつきましては、潜水の方式の限界がございまして、この深度では難しいというふうに思っております。

首藤政府参考人 百メーターぐらいまでの水深でございますれば、海上自衛隊に専門の潜水員というのがおりまして、そのぐらいまでの深度であれば、それが潜りまして調べるということは可能であります。

古賀(一)委員 そういうことで、調査あるいは引き揚げというものの物理的、技術的な体制はあるということでございます。

 それで、本論に入る前にもう一点ちょっと事前に確認をしたいのですが、これまでの情報について、いろいろな情報が新聞、テレビで報道されております、この不審船というものがいかなるものであったのかと。先ほど大臣の方からは、いわゆる高級たばこの事例あるいは落花生の紙袋の話が出されまして、平壌製という話でございましたけれども。

 このほかにも、私がインターネットであるとか新聞、テレビでいろいろな雑多な情報をかき集めてみますと、かじの位置が最後尾になかったのじゃないかとか、特殊船じゃないか、エンジンの位置もおかしい、あるいは、テレビで見ましたけれども、自爆して船を自沈させたのではないか、あるいは人間そのものも自殺した可能性があるとか、ロケット弾が発射された、あるいはこれは旧ソ連製の特定されたロケット弾じゃないかという報道もありました。

 先ほど話がございました無線交信、これは答弁が詳しくはできないという話でございましたけれども、その無線交信の事実等、そして、その周波数がその手の人たちが使う周波数に近かったとか、そういうことがたくさん載っているのですね。それを見た国民の皆さんはみんな、そういうことで、例の特定された国のとんでもない工作船ではないかと思うのですね。

 そういう中で、さて、先ほどの引き揚げの話になるのですが、先ほどたばこと落花生の話が出ましたけれども、一連のそれだけの特異な情報というのがマスコミを通じて示されておる。ここら辺のところの全容把握、先ほど大臣がお答えになった以外の、船の形状であるとか、いろいろな怪しいと思わせる情報について、総合的に今この不審船の全容をどう判断しておられるのかをお聞かせ願いたいと思います。

縄野政府参考人 今委員御指摘のように、船の形状、外観が過去北朝鮮の工作船と断定された船に類似していること、それから、現在揚収をしておりますいろいろな物品、それから遺体の解剖、そういうものからどのような情報が得られるか、一つ一つ分析をしております。

 先ほど大臣から、北朝鮮の製品と思われるものについて一、二御紹介をいたしました。これら以外につきましても、一つ一つ、関係省庁の情報も得まして、私どもとしまして、すべてについて情報を総合的に判断をして、最終的に当該船舶の国籍というものを断定したいというふうに思っておりますが、現時点で国籍が断定できるというところまではいっていないという状況でございます。

古賀(一)委員 恐らくそういうことだろうと思うのですね。それは、一〇〇%確定をして断言はできない。

 ならば、そこで、この不審船の引き揚げの調査でありますとか、先ほど大臣の方から二度ほど答弁がございまして、大臣としては引き揚げに対する強い意欲を私は感じました。

 先ほど申し上げましたように、これまで不審船事案というのが戦後ずっとございまして、合計二十一件あったそうであります。それがことごとく実は拿捕、取り調べということには至っていないという中に今回の事件があったわけでありまして、そして、もちろん、我々は頑張ったのだ、何せ相手が自爆するかもしれないような、あるいはそれだけの重火器を持っているという中での厳しいいわゆる追跡であった、それはよくよくわかります。しかし、現実として、数百キロ、あの、最高速船とは言いませんけれども、三十五ノットという相当の高速の機能を持っておる巡視船三隻が何百キロも追いかけて、結果としては取り逃がしたという、これも厳然たる事実だと私は思うのですね。

 それは、頑張ったことは認めますけれども、しかし、今回も結局、バックには拉致事件という問題もいろいろ国民の心にあるわけです。それを取り逃がしたという面においては、いろいろ外交的には難しいことがあるけれども、そんなのは乗り越えて、そういう外交的配慮よりも日本国家の主権である、国民の心配、長い歴史の中でこの問題がうやむやの中に究明されずにきた、こういう重い現実を考えたときに、断固として、不審船を引き揚げるということをまず政府はこの委員会で表明するというのが筋じゃないかと私は思うのです。この点について、再度大臣の決意を私はお聞きをいたしたいと思います。

扇国務大臣 私も、けさからその方向性について私の意思を明快に申し上げているつもりでございますけれども。とにかく、御存じのとおり、この十二月の二十二日、追跡中ではございましたけれども、正直に申しますと、十四時四十七分、この不審船の乗員が中国の国旗らしきものをかざして、そして逃走しようとしていたという事実をもってすれば、私は、中国のEEZ水域であったとしても、中国も被害者である、そういう不審船が中国の国旗らしきものを出されたこと自体でも、私は中国に対しても失礼だと思います。

 また、海上保安庁と中国の公安部とはお互いに連絡を、この海域等々で平生から海上保安庁は隣国と、また周辺国と連絡をとり合っておりますので、今回もその状況に基づいて中国の公安部から、今後も情報があればこちらにいただきたいということを海上保安庁も言われておりまして、連携をとりながら、中国のEEZ水域であっても、中国と調整しつつ、しかも、我々としては船体攻撃は初めてのことでございますから、そういう意味でも、大きな国民の疑惑というものにこたえるよりも何よりも、今後の対策としても、我々は、どこの国の船であるのか、何をしに、また目的は何であったのか、なぜここまで武装していなければならないかということを追求する上においても、海上保安庁としても完全にこれを把握することに努めていきたい。そのためには、まず調べなければこれは対応ができませんので、そういう意味では、中国と綿密に連絡をとりながらこの不審船の本体をいかに解明していくかということに全力を挙げたいと思っています。

 一方、私は自衛隊の長官とも話し合いまして、今後自衛隊と海上保安庁と連携を密にするということも連絡し合いましょうと大臣同士で話もしておりますので、今後、向こうの武器から考えますと、武装から考えますと、とても対抗できるようなものは早急にはできませんけれども、一刻も早く、自衛隊と海上保安庁との連携をとることによって、もっと手前で、あるいは日本の海上、排他的経済水域でこれももっとできたかもしれないという反省も込めて、今後の対処の方向に持っていきたいと私は願っております。また、そのように実行していきたいと思っております。

古賀(一)委員 この引き揚げに関しては、大体問題点が浮き出されたような気が今してきました。

 一つは、いわゆる中国への配慮というか中国との連携というか、そういう面がきちんとできれば一つ状況は実現に向かうなと。中国側から、事件が起こった後に大使館員がすぐ呼ばれたとか、今の答弁でも中国側からの申し入れがあったとかありますが、せっかく外務省来ておられますので、では、日本側から、これを引き揚げたい、そういう申し出、外交的なアプローチというものは今までされたんでしょうか。まずこれが一つの今後の外交的な問題のポイントだと思います。わかれば外務省、きょうは条約局しかお見えでないのかもしれませんが、答えられれば、ぜひお願いします。

林政府参考人 担当事務局が参っておりませんのでちょっと明確に申し上げにくいのでございますが、先ほどの御質問でたしかアジア局の方から申し上げたとおり、事案の当初から中国側に対しまして緊密な連絡をとっておったということでやってきているというふうに承知しております。

古賀(一)委員 いや、それはもう緊密な連絡というのはわかるんですよ。向こう側から、どうなっているんだと、いわゆる公海上での銃弾射撃があった、それは中国側が関心を持つのは当たり前で、ちゃんと報告してくれということで。

 むしろ、沈没した後ですね。日本としては、こういう国の主権にもかかわる、まあいろいろな理由はあるでしょう、ぜひ、おたくのEEZ上ではあるけれども、これをこういう理由によって引き揚げをしたいんだ、中国として協力願いたい、問題はありますかと。そういうことを、もう事件が終わって相当たっているわけで、日本側からの申し入れとしてこれを行い、了承を取りつけるということがこの引き揚げの外交的条件の一番重要な部分だと思うんですね。

 密な連絡をとり合っているというのはわかりますよ。どうなった、いや、こうなっているんですと。そうじゃなくて、不審船の引き揚げについて今後行われる予定があるのか、その点ちょっと、これは外務省になるんだと思いますけれども、答弁をお願いします。

林政府参考人 ちょっと担当外のことを申し上げるのは恐縮なんでございますけれども、私どもとしてはもちろん日中間で緊密な連絡をとっているということは今申し上げたとおりでございますけれども、今具体的にこういうことをやるということを決定なされておらないわけでございます。事実上いろいろな連絡はとっているということだと思いますけれども、今御質問のようなことについては、ちょっと私は今申し上げられません。

古賀(一)委員 今、外交の話をしました。極めてわかりにくい答弁、まだ決まっていないと。

 それでは、今度、引き揚げについての問題点、二番目の問題は、まさにここだと思うんですね。扇大臣も、海上保安庁の所管大臣としての、あるいは政治家としてのやる気を示しておられる。ただ、これを引き揚げる、あるいは引き揚げる前に潜水調査をするということをだれが決めるんですか。

 実は私は、今までの一連の流れを見て、今度の事件を見ても、大臣は危機管理センターには恐らく入っておられなかったと思うんですね。安倍官房副長官が何時に入った、どうのこうのとありました。いわゆる内閣主導といいますか、官邸主導にどんどん危機管理というのは移っているわけですね。ところが、実は安倍官房副長官、当時官邸でどれだけの采配を振るわれたかわかりませんが、少なくとも当時の政府のトップであったということで答弁に立ってくれと言ったら、きょうは小泉総理と外遊中なんですね。

 でも、国家にとって非常に重要なこの問題を、一方で海上保安庁があり、一方で防衛庁もあり、一方で危機管理監、内閣の危機管理センターがあり、そのトップたる総理がおられ、そのサブとしての官房長官、官房副長官がおられる。こういうことで、例によって、内閣は縦割りじゃないんでしょうけれども、これも一つの役所と見るならば、一つの縦割りの中で、結局、この重要な問題をだれが言い出して、どこで意思決定をするかというのが私は見えないんですね。だから外務省も困ってあると思うんです。外務省単独でこんなこと言えないだろうという遠慮がある。海上保安庁もそこまでは出しゃばれない。そういうことが感じられます。

 そこで、これは大臣にお聞きしたいんですけれども、これは大変重要な、国家の主権にかかわることでありますし、そこをあいまいにすると、新聞に書いてある北朝鮮も、この問題にかかわるかないかは別にしたって、北朝鮮も中国側も、ああ日本はこの程度の国だ、逃げればいい、自爆すれば結局徹底究明までこの国家は追求してこない、そういうふうになめられる、そこでまた次の不審船が出てくるという循環だと私は思うんですよ。

 この事件は、沈んだこの船を絶対引き揚げるということは、毅然たる態度で引き揚げるということは、単に不審船の帰属がどこであるかとかそういうのを調べるだけではない、もっと重要な意味を持つ、私は大変重要な事柄だと思うんですね。これをだれがいつ決めるのか。それについて、むしろ大臣が、私が帰国した総理に言って決断を促すというようなことになるのか。私はそういうマターだと思うんですね。その点について大臣の御感想をお聞かせ願いたいと思います。

縄野政府参考人 不審船の引き揚げは、申すまでもなく、私どもの犯罪捜査としての事実の解明に必要なものであるという位置づけでございます。そういう意味で、警察とも合同捜査本部をつくっておりますが、私どもがこの事実の解明の責務を担っておりますので、私どもが、どのような段取り、どのような時期、スケジュールで引き揚げを行うことができるか、行うかということを私どもとして検討し、それにかかわる関係省庁についての意見を集約し、中国との関係も含めまして、政府全体としての対応を決定してまいりたいというふうに思っております。

扇国務大臣 私は内閣の一員として官房長官と連絡もとり合っておりますけれども、少なくとも、私どもは初めて船体射撃をし、海上保安庁として初めての行為でございます。

 そして、私は奄美へ行きました。金城さんという航海長がけがをしております。頭に破片も入っておりました。それも摘出しまして、おかげさまで命には別状ないということでございました。また、鹿児島でも揚野さんという首席航海士をお見舞いいたしました。これも、手の中にまだ砲弾が、破片が入っております。

 けれども、そのように負傷者を三名まで海上保安庁は出しながら、なおかつこれが逃走されないで、沈没したことは残念ではありますけれども、海上保安庁としては、日本の権威と国民の安全と安心のために初めてとった行為というもの、三名の負傷者を出しながら、この行為の決断をした、海上保安庁の命令によってこれを行ったということに対しては、今後少なくともこれらしきことがないようにするためにも、万全を期すという意味で、私はこれを明快にしていくということを決然と決意しておりますので、そういうものを閣内において、少なくとも小泉内閣において、国民の安全と安心のために海上保安庁たるものがどういう任務をするべきなのか、また自衛隊とのこの何時間というロスというものを今後どう対処していくのか、これは内閣を挙げて取り組むことだと思っておりますので、内閣の一員として、外務大臣、官房、あるいは内閣全体として今後対策の万全を期すために、そのための検証をするべきだということを私は長官とも話し合ったところでございます。

 小泉内閣として敢然とこれを国民に、今後検証していく上に、どこに問題があるのか、対外的なものであれば外務省にも果敢に交渉していただく、外務省の本来の姿を私は国民のために明快にしていただきたいということも、内閣として声を上げていきたいと思っております。

古賀(一)委員 今の大臣の答弁で、本当に私は了解をいたします。

 現場は頑張ったわけでありまして、私もテロ対策委員になりまして、この前の、あのときの海上保安庁、どちらかというとアフガン対応が、あるいはパキスタン対応が多かったんですが、海上保安庁法改正というものに携わった。結局、それを海上保安庁の現場の皆さんも国民の期待というふうに心に受けて、あの危険な行動に、それはやはり撃つ方としても、責任は大丈夫だろうか、あるいは何だと、いろいろ心配をしながらも敢然とやったわけですね。それで現場はやったんです。

 では、それは、まさに今大臣が、敢然と外務省もとおっしゃいましたけれども、中国に対しても外交的に努力も毅然としてやはりやらなきゃならないし、内閣も、だれが責任者だというのを、横を見るんじゃなくて、まず言い出しっぺは、極めて歯切れのいい扇大臣が官房副長官あるいは総理に強烈に督促をしていただきまして、毅然たるそういう対応というものをできるだけ早くやっていただく。私は、今の答弁でそうなるんだろうという感じもいたしましたけれども、お願いをしたいと思います。

 それで、次に質問したいのが、先ほど来問題になっております、いわゆる今度の対応についてのいろいろな教訓があった点でございます。

 私も詳しくは知りませんで、先ほど言いましたように、新聞であるとかインターネット情報とかで情報をかき集めてやるしかないんですが、これを現場と政府と、あるいは政府中央といいますか、二つに分けまして、時系列でずうっと並べますと、何か物事がはっきり見えてきて、この時間帯は政府はどうなんだというふうに、新聞報道を時系列に現場、政府で並べたときには思わざるを得ないんですね。

 そこで、大体先ほどの答弁で明らかになった面もあります。ありますけれども、ここで再度確認したい点が幾つかございます。

 まず、哨戒機が十二月二十一日に奄美大島の北北西百五十キロで不審船を発見、これは、気になる程度だ、念のため、こういう答弁だったんですね。それが、いわゆる、鹿屋に戻って伝送をした、三時間かかったという答弁がありました。新聞によれば、一枚の写真伝送に五十分かかったともある。私もしょっちゅう写真伝送をやるし、実はこの委員会からモバイルで、その場でホームページに原稿を張ったこともあるんです。三時間も五十分もかかりませんよ。一秒ですよ、八十万画素で。一秒はちょっと速いか。まあ、要するに数秒ですよね。それが私は不思議でならない。

 例の、不審船という能登半島沖のあの大事件があった、機材も装備をされてきた、哨戒機が行った。

 まずここで聞きたいのは、哨戒機に写真を危機管理センターあるいは鹿屋基地あるいは海上保安庁に瞬時に送るといういわゆる伝送システムは搭載されていないんでしょうか。ちょっと、わかれば答弁をしていただきたいんですが。

首藤政府参考人 現在、海上自衛隊が運用しておりますP3C約八十機、この中の約二十機ほどには衛星通信装置並びに静止画像伝送装置がありますが、これは実は、北の方の八戸及び厚木に配属されているP3Cにだけある。逐次今整備しつつございまして、電波を受けるためのいわゆるパラボラアンテナ、地上局などは既に鹿屋あるいは那覇についての予算措置を今やりつつあるところなんでございますが、今回の時点におきましては鹿屋にはそういう装置あるいは搭載機材がなかったということでございますので、今後の運用としましては、既に持っておる厚木あるいは八戸のP3Cを適宜鹿屋なり那覇に進出させたりして、必要に応じ伝送ができるようにしたい。ただ、この場合は、まだ地上局が鹿屋あるいは那覇に設置されておりませんので、直接厚木なりにP3Cから伝送する、こういう仕組みになると思われます。

古賀(一)委員 時間が来たのでやめざるを得ませんが、最後に申し上げておきますけれども、前回の事案で高速巡視船を整備しようと、それはつくればもう大変な額の、四十ノットのものをつくってきた。ところが、やはり実際のオペレーションですよ、何度も出ましたけれども。防衛庁と海上保安庁、共同対処マニュアルがあります。見せてくれと言ったって、それは機密上見せられないと。だから余り物が言いようがないけれども。

 でかい金のかかる機材の話も巡視船の話もありますけれども、問題は、今度結論として問われたのは、万全とやったとおっしゃるかもしれないけれども、一つ一つの事案を教訓として徹底して洗い出すことが危機管理の体系をつくっていく基礎だと私は思うんですね。そのいいチャンスです。私は、伝送システムあるいは意思連絡の体制、聞くところによると、官邸の仮眠室なんというのもないという話も聞きました。ひどいものだという状況も聞きました。そういうものを全体洗い出して、これをさらなる教訓として、私は、政府部内で徹底した論議をし、法律に丸投げじゃなくて、いや、これはもう結局、射撃の、権限の問題だと言わずに、実際のオペレーション、実態の部分を、縦割りを超えて危機管理監のもとで全部洗い出して、新しい、さらに効率的な危機管理体制をつくるという一つのきっかけにしてほしいと要望しまして、質問を終わりたいと思います。大臣に答弁していただければ。

扇国務大臣 今、古賀先生がおっしゃったことも当然のことですけれども、何よりも海上保安庁、今長官が来ておりますけれども、平素からロシア、韓国、中国、カナダ、アメリカ等々と海上保安庁関係同士でいかに海賊船、麻薬等々の検挙に協力しようかという会合を持っておりまして、そういう近隣諸国と海上保安庁との綿密な平素からの連絡というものがあって、こういうことが起こったときに、協力体制がとれるまでこの話し合いの会合というものを昇華させていくということが大事だと私は思っておりますので、それも他方で力を入れていきたいと思っております。ありがとうございました。

古賀(一)委員 ありがとうございます。終わります。

赤松委員長 前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 古賀議員に続いて質問をさせていただきます。

 まず、防衛庁に伺いたいんですが、先ほどから答弁を聞いていますと、不審船についてはP3Cのパイロットが目視をした、こういう話ですけれども、本当に偶然に見つけたのか、あるいは何らかの情報があって集中的にそこを警戒監視していて見つけたのか、その点の違いを簡単に御答弁ください。

首藤政府参考人 今回のP3Cは、通常の警戒監視活動をやっている最中に目視したということでございます。

前原委員 いろいろな報道がありますし、また、それについては玉石混交の部分があるとは思うんですが、当初から、米軍による情報があったとか、あるいは通信傍受を行う中で不審な発信源が近海に存在をするということの中でP3Cが特別に重点的に捜すようにと言われていたという報道もあります。

 もう一度繰り返し聞きますけれども、全くそういうものはなく、通常の任務の中で、そういう前提条件の中で偶然見つけた、目視をした、これはそのとおりですか。

首藤政府参考人 先ほどの繰り返しになりますが、通常の警戒監視活動の最中に見つけたということでございます。

前原委員 だから、そういうことの中身を聞いているわけです。

 前に情報があって、通常の警戒監視活動というのは、全く偶然に見つけたのかと聞いているんですよ。全く偶然なのか、ある情報があって、通常P3Cは警戒監視活動をやっているわけですから、それで見つけたのか、どちらかと聞いているわけです。

 通常の警戒監視活動という木で鼻をくくったような答弁でなくて、その中身を教えてください。

首藤政府参考人 防衛庁におきましては、常時、電波情報の収集を初めといたしまして、各種の情報収集活動をいたしております。けれども、今お尋ねの防衛庁の電波情報業務の具体的な内容に係ってまいります御質問になりますと、他国に防衛庁の情報関心でございますとか情報収集能力あるいは処理能力を明らかにすることになりますので、そして自後の効果的な情報活動の支障となるおそれがございますことからいたしまして、大変申しわけございませんが、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

前原委員 そういうふうにある程度ニュアンスを伝えるような話をしてもらえれば、また全然質問の仕方が変わってくるわけです。

 なぜかといいますと、私は、今回のことについてはいろいろな教訓があるんだろうと思っているわけです。問題点はどこかというと、つまり、捜査を始めたきっかけというのは、やはりある程度はっきりしておかなきゃいけないんですね。つまりは、今回のいわゆる捜査については、先ほど御答弁がありましたように、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利行使等に関する法律と漁業法によって適用されているわけです。

 防衛庁のいろいろ情報収集の通信業務については、それはなかなか平場では言えないところがあるというのはよくわかりますけれども、つまりは、結果的にその根拠となった法律は、排他的経済水域圏における漁業に関する法律であったり漁業法であったりするわけですけれども、本当に純粋な警戒監視を行っている中で目視をしてということでは多分ないんだろうと思います。

 私も何年か前に那覇の海上保安庁に伺って、YS11で、那覇それから尖閣の周りを飛行機に乗りまして視察をさせていただきました。そのときに海上保安庁の仕事は大変だなと思いましたのは、日本の国土というのは狭いですけれども、領海とか排他的経済水域を入れると世界で七番目ぐらいの広さであって、特に南西のああいう諸島における海域というのは物すごく広いんですね。台湾の密漁船なんかも頻繁にやってきて、それを海上保安庁が一生懸命追いかけて追い出しているわけですよ。そういうものも数多く見させてもらいまして、海上保安庁の業務の大変さというものをそういう視察の中で私は感じたところなのです。

 一つポイントとして先ほど申し上げたのは、通常の業務の中で単に目視をしてたまたま不審船を見つけたというのは、これはやはりおかしいわけです。もちろん、なかなかそういう秘に関するところについては言えないという部分があっても、いろいろな情報がある中で、海上自衛隊がP3Cでそれを目視した。そして、後で聞きますけれども、一隻じゃなくて複数あったのではないかという話もあるわけですよね。そういうことの中で、いろいろな船の写真を撮って、そして持って帰って処理には時間がかかったというのが実際のところだろうというふうに、いろいろな方々の話を聞いて私はそう分析をしています。

 そこで、もう一つ事実確認のために質問をいたしますが、不審船は一隻だったのか、あるいは複数あったのか、それはどういうふうにとらえているんですか。防衛庁、御答弁ください。

首藤政府参考人 今回のP3Cが視認して、そして持ち帰ったデータから判断された結果、一隻であるということでございます。

前原委員 複数あるいは二隻だったという報道もありますが、もう一隻あるというような情報を得ていたのかどうか、その点はいかがですか。

首藤政府参考人 今申し上げましたとおり、P3Cで視認した船が今回の一隻であったということでございます。

 なお、先ほど前原先生お尋ねになりました電波情報との関連で申し上げますと、先ほどお答え申し上げましたとおりでございまして、防衛庁の情報関心あるいは収集処理能力を明らかにすることになるということで、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

前原委員 多分御答弁はそういうことになるんだろうと思いますし、これ以上は質問は突っ込んでやりません。

 ただ、私は、今後の教訓にしなくてはいけないと申し上げたのは、今回の法的根拠が漁業に関する法律であったということが一番大きな問題点なわけです。つまりは、今回の不審船が漁船の格好をしていなかった場合、不審船だけれども漁船の格好をしていなかった場合に、追いかけることはできますか、できませんか。

縄野政府参考人 排他的経済水域で適用されます漁業法七十四条三項の検査を忌避したということで私どもは追跡をしたわけでありますけれども、この検査は、漁業法の条項上は船舶となっております。漁業法の違反をしている疑いがあれば検査ができるというふうに考えております。

前原委員 つまりは、漁業法違反であるかどうかというところが排他的経済水域の中での捜査の限界なわけですよ。

 根本的に言えば、本来、今回のような、なかなかはっきりはもちろん言えない部分はあるかもしれませんけれども、やはり、いろいろな交信をしていた、そして不審船だと断定をした、そしてP3Cが目視をした、そして不審船が存在をするということを海上保安庁に伝達したということの中で、漁船の格好をしていて、そして今言われたような法律に基づいては取り調べができたけれども、完全に漁業活動をしているんじゃないと間違わないような船だった場合、仮にいろいろな無線交信をしていて確実に不審船で怪しいという場合についても、これは領海内でも今それを取り締まれる法律はないでしょう。無害通航に当たらないのに、それを取り締まる法律はないでしょう。

 領海内と排他的経済水域内について、両方答えてください。

縄野政府参考人 お答え申し上げます。

 領海内あるいは接続水域であれば、漁業法以外の我が国の国内法令の励行という観点から、私どもが例えば停船を命じて捜査をすることは可能でございます。

 ただ、排他的経済水域におきましては、沿岸国の主権が及ぶ範囲が漁業等に限られておりますので、我が国におきましては漁業法違反の疑いがある場合に立検をすることができまして、この船はこれを拒否いたしました。そこで漁業法違反の検査忌避罪という現行犯、犯人になったわけでございます。

 そういう意味で、私どもとしましては、漁業法の違反がある場合には排他的経済水域においてこのような対応ができるものというふうに考えております。

前原委員 国連海洋法条約というのがあって、無害でない通航を取り締まることというのは、その国連海洋法条約に加盟をしている国は国内法として整備できるわけです。だけれども、例えば沿岸国の防衛または安全を害することとなるような情報の収集を目的とする行為、これは無害通航ではないんですね。ないけれども、国内法が整備されているかというと、整備されていない。

 つまりは、漁船に偽装して北朝鮮の船が、不審船がやってきたので、たまたまそれに当てはめて取り調べることができた。それはさっきおっしゃったように、排他的経済水域も一緒。しかし、仮に、例えばこのやりとりを聞いていて、漁船だから漁業法にひっかかるんだ、では普通の船でそういう活動をすれば漁業法にはひっかからない、こういう話になるんですよ、今の日本の国内法だったら。

 だからこそこの今回の問題についても、私から言わせると、やられた行為は結果として正しかったし、もっと厳しく取り締まらなきゃいけないと思うけれども、かなり別件逮捕的な部分がありますよ。つまりは、情報収集をしていて漁船に偽装していたから漁業法というところで何とか法的な根拠は見出せたけれども、それ以外の船だったら法的根拠がないじゃないですか。そうじゃありませんか。

縄野政府参考人 漁船というお言葉でございますが、漁業法違反をしている疑いのある船舶であれば、形はどうであれ漁業法違反の疑いを持たれるような船舶であれば、私どもが漁業法に基づいて立検を求めることができますし、それを忌避すれば検査忌避罪になるというふうに思います。

 ただ、今のお尋ねの点につきまして、御承知のように、日本は従来から、領海内におきましても外国船舶の取り締まりにつきましては個々の行為類型に対しまして必要な取り締まりを行うための規定を個別に整備すべきだという基本的な立場をとってきておりまして、このような個別実体法、つまり漁業法でありますとか、そういうケースケースに応じて、その規制に加えまして、外交ルートを通じての対応、私どもの海上保安庁法の規定に基づく現場での指導、そういうもので組み合わせて対応してきているというのが私どもの基本的なスタンスだというふうに承知をしております。

前原委員 いや、だから、さっきから言っているように、答弁は全く従来の繰り返しで、漁業法に違反をしているという疑いが持たれない限りは取り締まることはできないんですよ、裏返して言えば。そして、先ほどおっしゃった領海の中でも、国連海洋法条約で無害通航ではないと認められている行為についても国内法整備ができていない項目は幾つかあるんですよ。それは海上保安庁長官が一番よく御存じだと思いますよ。その法的な整備をどうしていくんですかということの問題提起をしているわけです。

 今回は、ある意味で、私からすると別件逮捕ですよ、これは完全に。漁船でないと言い張ったら、もし相手国が特定されて、漁船だといちゃもんをつけただけじゃないか、漁業法で何で取り調べるんだということに向こうが突き詰めたときに、本当に正当な回答ができますか。

 つまりは、何度も申し上げているように、情報収集の目的で来ている、あるいは他の目的で来ているということについては、しっかり取り締まるような法律をつくらなきゃいけないんじゃないんですか。国連海洋法条約で認められているでしょう。

 これ、だれに答弁してもらったらいいのかよくわからないんですけれども。外務省かな、それとも防衛庁か。

赤松委員長 縄野長官。

前原委員 いやいや、これは海上保安庁じゃないですよ。長官の範疇じゃない。国連海洋法条約だから、外務省、答えてください。

佐藤政府参考人 ただいまの御指摘のポイントにつきましては、海洋法条約に基づく法的な体制の整備ということで国内法を整備してきているわけでございますが、今のその体制のもとで、どういった点が不足をしているかあるいは必要とされるかということについては、私ども今の時点で、私の方からは直接今具体的にきちっとしたお答えができません、まことに申しわけございませんが。

前原委員 済みません、気の毒でありました。

 扇大臣、今のやりとりを聞いていただいて、扇大臣は国土交通大臣でありますけれども、すべての政策の決定をする閣僚のメンバーの一人であります。

 今私が申し上げたように、排他的経済水域での取り調べというものについては、かなり私はグレーだと思っているんですね。つまりは、漁業法にひっかからなかった場合は、今回は多分通信傍受ができていたとしても取り調べはしっかりできなかったと思うんですね。ましてや領海内は、先ほど海上保安庁長官が御答弁されたように、いろいろもっと厳しい法律がある。無害通航でない項目というのは幾つも列挙されていて、しかしそれを裏づける国内法の整備ができていない部分もたくさんあるわけです。こういうものは早く整備をしないと、私から言うと別件逮捕的な部分ができてきて、そこを他国に追及をされるということになると、やはり主権国家としての体裁が保てないと私は思うわけであります。そこの整備の問題についても閣僚としてお取り組みをいただきたいと思いますが、御答弁いただきたいと思います。

扇国務大臣 今大事なことを前原先生から御指摘いただいておりますけれども、もともと一九八二年、御存じのとおり海洋法に関する国際条例というものを今まで日本は持っていたわけでございますけれども、先生がおっしゃいます排他的経済水域というものに対して、一九九六年に私どもは日本として排他的経済水域というものを入れるということを設立したわけでございます。

 ただ、今先生がおっしゃいましたように、漁船なのか、漁船でない一般航行を取り締まることができるのか、こういうことでございますけれども、私は、領海警備に関する法制度というものの中に、少なくとも船名を記載しない、あるいは旗を上げない、これを明快に示さない、どこの国の船かわからない船、そういう一見して不審船らしきもの、どこの国の船であるか、船名がない、それから、漁船らしきものだけれども魚をとっている様子もない、かといって、どうも不審な行動で蛇行をしているとか、あるいは不審な停船事項があるとか、あらゆる面で海上保安庁としては、一義的に、自衛隊ではなくて海上保安庁の任務として、これに停船命令をしたり、あるいは調べさせてくださいといって、乗り込みますよ、捜査に入りますよという警告も発することもできる。

 あらゆることで私は条件としては整っていると思っておりますけれども、今先生がおっしゃいますように、漁船としての不審なのか、あるいは通航上の船としての一般船の中での不審なのか、その境目はどこにあるのかということをおっしゃいますと、それは今の海上保安庁の任務の中でも、不審であると思ったときには停船命令もできますし、そして乗船捜査もできますし、そういう意味では、今の海上保安庁の活動の中では、現段階では国内の水域であろうと排他的経済水域であろうと私は海上保安庁の任務としてはでき得ることはあると思いますけれども、突き詰めて法令として、世界じゅうに、この条項の何項によってということになれば、不審船というのは、ごまかすことが目的で向こうはかかってくるわけですから、漁船の格好をしたり一般船の格好をしたり、どういう対応をしてくるかわかりませんので、そういう法的な整備というものは明快に突き詰めて、今回のことも教訓としながら、私は中谷長官とも今後連絡を密にしてやっていきましょうというお約束もしておりますので、多くの教訓をこのように国会の場で御指摘いただいたり、不備があるとするなれば、それは改正するように私どもしていかなきゃいけないと思っております。

前原委員 今の御答弁でさらなる努力をいただきたいんですが、要は、漁業法というところで不審船を捕まえるというのは根本的に無理があるわけです。漁船に扮して来ているものについてはそれで取り調べができるけれども、これから堂々と漁船じゃなく来た場合にどうするんだという話があったときに、できないわけですよ。だから、そこら辺の法整備をしていかないことには、今後違う形で不審船が来たときには、日本は法を拡大解釈して何でも他の国を捕まえるということになっちゃいますよ、逆に言えば。だから、その点については、今扇大臣が言われたように、法的な整備が足りないと私も思っています。国連海洋法条約に認められた領海内での権利についても穴がいっぱいある。そのことについては、しっかりやってもらいたいと思います。

 時間がないので幾つかポイントを絞って聞きたいんですが、先ほど扇大臣が、北朝鮮の工作船として確定していないということなんですが、これだけ時間がたって、そしていろいろな情報があるでしょうに、何で確定できないんですか。むしろ、今の時点で確定できていないことの方が政府として大問題じゃないですか。

縄野政府参考人 先ほどから御説明申し上げておりますが、例えばたばこのように、北朝鮮の平壌で製造されたもの、そういうものは幾つか揚がっておりますし……(前原委員「そういう話じゃない」と呼ぶ)それから、ハングル文字が記載された例えばライフジャケット、そういうものも揚がっております。それから、遺体の解剖もしております。

 ただ、その製造地とか使用地が北朝鮮であるということが類推されても、この船の国籍が北朝鮮であるということを断定するところまでいっていないということでございまして、引き続き、揚収されたもの、これはきれいなものだけではございませんで、ばらばらになったものもございますので、そういうものを今整理し、私ども以外の、情報が必要であれば、そういうところにもそれを鑑定に出して、それらの情報を総合的に勘案して、断定できるのかどうか、作業をしているところでございます。

前原委員 海上保安庁長官の立場としては、それが精いっぱいだと思いますよ。

 情況証拠で僕は相手国を特定しろなんということを言っていないわけです。総合的な情報収集をした中で判断をすべきことで、多分もうこれは特定できているんだと思うんですけれども、さっきから首藤さん、防衛局長が言われているように、なかなか平場で言えない部分もある。でも、ここはネックですよね。そこは、国会の知る権利と、国会での、委員会での議論というものを形骸化しないために、これはもう少し工夫をしなきゃいけないと思いますので、委員長、ここの点は少し詰めて議論しないと、すべてシャットアウトされると核心の部分に入っていけないということがあるので、ちょっとそれは理事会で議論していただけませんか。

赤松委員長 はい、わかりました。

前原委員 ありがとうございます。

 公安の方にも来ていただいているので少しお話をしたいんですが、この工作船、不審船と前後して北朝鮮の工作員が国内で活動をしているような情報があるのかないのか。あるいは、この間朝銀が破綻をいたしまして、そしてまた、資金流用事件ということで朝鮮総連への強制捜索というものがありました。

 時間がないのでまとめて質問をいたしますが、あるテレビ番組で、朝鮮総連の元財政副局長をしていた韓光熙さんという人がインタビューに応じて、私なんかが極めてびっくりするような発言をしているわけです。

 つまり、その内容はどうであったかというと、朝銀破綻の主要因は、朝鮮総連が朝銀を金庫として扱って、そして架空融資を繰り返し行ったり返済見込みのない貸し付けを許宗萬責任副議長の指示のもとで行ってきたことだということを具体的にテレビの前で述べているわけですね。しかも、朝鮮総連が朝銀から集めてきた金は、総連の組織運営費用のみならず万景峰号などを使って北朝鮮へ送金されている、しかも、自分はそれを具体的に運んだこともある、こういうことをテレビのインタビューの前で言っているわけですね。

 しかし、どういう取り調べが行われているかどうかは別として、その調査について進展がされているようなことが見えてきていない。少なくとも、いろいろこういう、証人といいますか、証言をされる方々が出てきている中で、公安当局はどのような捜査をしていて、そして今回の不審船の問題と関連があるのかどうか、その点も含めて御答弁をいただきたいと思います。

吉村政府参考人 警察におきましては、昨年の秋以降に、破綻朝銀の経営陣に対しまして刑事責任を追及するという観点から、朝銀東京、朝銀近畿等の元理事長、在日本朝鮮信用組合協会会長、元朝鮮総連中央本部の財政局長ら合わせて二十四人を検査忌避、背任あるいは業務上横領により逮捕するなど、捜査を進めてきたところであります。その中で、平成六年から十年にかけて、当時の朝鮮総連中央本部財政局長が、当時の朝銀東京の役職員と共謀の上、朝総連の使途に充てる目的で朝銀東京の資金約八億四千万円を着服、横領していた事実を解明しているわけであります。

 委員お尋ねの報道を含めまして、朝銀をめぐりましては、その金の流れでありますとかあるいは口座の問題などいろいろな報道がなされているところでありますけれども、現在捜査中のものでもございますので、警察でいかなる事実を把握してどのようなことをやっているのかということにつきましては、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、ただいまも申し上げましたとおり、これまでも各種の刑事責任を追及してきたところでございますので、今後とも、違法行為があれば厳正に対処をしてまいりたいと思っております。

前原委員 簡単に御答弁いただいたら結構なのですが、今私が申し上げたような事実関係は認識をされているのか、それと、先ほど申し上げたように、今回の不審船の問題と関係があると公安当局は見ているのかどうなのか、その二点について御答弁ください。

吉村政府参考人 ただいま申し上げましたように、この捜査の中で、だれから事情聴取を行ったのか、あるいはどういう方針でやっていくのかということにつきましては、恐縮でございますが、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

 後者の問題につきましては、別途、審議官から。

上原政府参考人 お答えになるかどうかわかりませんが、戦後約五十年ですが、警察としましては、北朝鮮の工作員絡みの諜報事件を検挙いたしております。これらの事例から判断いたしますと、彼らは、我が国においては、対韓国工作の拠点としての活動を我が国で行う、我が国に存在する在日米軍あるいは自衛隊に対する情報収集活動をやる、こういったことが言えようかというふうに思っております。

 それで、先ほどの不審船事案との関連というふうにお尋ねでございましたけれども、今回の不審船が、どこの国籍を持って、どのような目的で来ていたのかというのは、現在、海上保安庁と合同捜査を鋭意展開しているところであるということをお答えいたしたいと思います。

前原委員 時間が参りましたのでこれで終わりにいたしますが、いずれにいたしましても、主権国家で、国民の生命財産を守るという責務が我々にはあるわけです。早くその国を、もし外交的な配慮で特定していないのだったら、逆ですよ、ナンセンス。早くに特定をして、国として主体的な行動をとるように結論づけるべきだと私は思いますし、先ほど扇大臣が御答弁になりましたように、足りない国内法、いっぱいありますよ。だから、そこの整備はぜひしていただきたい。また、私も、至るところでそれについては質問し、また提案もしていきたいというふうなことを申し上げて、私の質問を終わります。

赤松委員長 川内博史君。

川内委員 川内でございます。よろしくお願いいたします。

 今回、閉会中審査ということで、昨年末の不審船事件についてでございますけれども、私、選挙区が鹿児島でございまして、十管の皆さんや巡視船の乗組員の皆さんともかねてからおつき合いがあったものですから、扇大臣より先に不審船の視察等をさせていただいたのですけれども、銃撃戦のすさまじさというか、大変な状況だったんだなということを感じました。

 三名の負傷者を出したということでございますけれども、私が現場を見た感覚で言えば、ハチの巣状でございましたし、よく死者が出なかったなということを感じて、また、海上保安庁の皆さんがいかに常日ごろよく訓練をされているかということを感じまして、現場のお働きというものに関しては、縄野長官に対して大変敬意を表させていただきたいというふうに、まず冒頭申し上げさせていただきたいと思います。

 私の質問は、先ほどの前原議員の質問に若干関連をいたします。

 確認をさせていただきたいのですが、先ほど前原議員は、漁船でなければ排他的経済水域においては取り締まれないということを再三おっしゃっていたわけでありますけれども、たとえ漁船でなくても、漁業法違反の疑いがあると思われれば、漁業法にのっとって、国内法が整備されるまでの間は、不審船についてもしっかり検査をする、取り締まるということで、縄野長官、よろしいでしょうか。

縄野政府参考人 お答え申し上げます。

 漁業法には、船舶が漁業法違反の疑いがある場合には立検を求めることができるという趣旨のことが規定をされております。

川内委員 不審な船についてはどんどん取り締まっていただきたいと思います。

 まず、不審船が発見された十二月二十一日、海上自衛隊鹿屋基地所属のP3C哨戒機が、通常の警戒監視活動中に多数の船舶を識別していた。事件現場となった奄美大島北西海域には何隻ぐらいの漁船が操業していて、また、漁船でないと思われる民間の船等についても哨戒活動を行っていたのかということについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘のP3Cの視認状況でございますが、当日は天候が不順であったこと、あるいは、飛行経路上におきまして確認できます船舶には限りがございます。当該海域で操業いたしておりました船舶の隻数や、あるいは先生御指摘のその内訳等につきましては正確な数をお答えすることは困難でございますけれども、当該機は、当該機といいますのはP3Cでございますが、数十隻の船舶を視認したところでございます。

川内委員 そして、同二十一日の十六時半ごろ、結果として不審船と判明する船を一般の外国漁船と判断をして視認したという説明をされていらっしゃいますけれども、一般の外国漁船であるということを判断したその理由、またそのときのP3C哨戒機の高度、お答えいただきたいと思います。

首藤政府参考人 本件につきまして防衛庁におきましては、専門家による写真解析を実施するなど防衛庁としての総合的な分析、検討によって、この船につきまして、一般の漁船と比べてウエーキ、いわゆるスクリューがかいた後の水の航跡でございますが、その位置がわずかに中心線からずれているといったような特徴を有していることが判明したことから、平成十一年に能登半島沖で確認されました不審船舶と同様な性格の船舶である可能性が高いとの判断に至ったというものでございます。したがって、このような総合的な分析、検討を経る前の段階でございます二十一日の十六時半ごろの時点では、現場海域のP3Cにおきましては、同船舶を一般の外国漁船であると判断していたところでございます。

 なお、警戒監視活動中のP3Cの飛行高度といった自衛隊の警戒監視活動の細部内容につきましてこれを明らかにいたしますことは、他国に自衛隊の警戒監視活動の実施状況でございますとかあるいは警戒監視能力などを明らかにして自後の効果的な警戒監視活動の支障となるおそれがございますので、はっきりしたお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、一般的には、普通に広域哨戒するときの高度よりは大分下がりまして写真を撮る。ただ、余り下がり過ぎますと、安全上、もしそういったときにエンジンに故障が起きた場合直ちに海面に衝突するというようなことを考えて、一定の高度以下には下がらない。こういった飛行パターンをとっているわけでございます。

川内委員 不審船を発見したときに通常の飛行高度をとっていた、十六時三十分。十七時十二分に念のために写真を撮った。しかも、何で写真を撮ったんですかと一昨日お聞きしたら、普通のデジカメですというお答えだったんですね。

 最も日が短い、十二月二十一日の十七時十二分といったら、私も鹿児島でふだん生活していますから、もう大体五時過ぎは真っ暗ですね、真っ暗。そういう中で、普通のデジカメでどうやって写真を撮ったのかなというふうに疑問に思って、そのとき撮った写真を見せてくださいと言ったら、これがそのとき撮った写真ですということで、昨晩夜十一時ぐらいにいただいたんですけれども、このデジカメで撮ったとされる写真には、日付も時刻も何にも入っていないんですよ。

 複数の写真を撮ったというふうに先ほどおっしゃられたんですけれども、複数の写真を撮った方だけの記憶を頼りに基地に戻って写真を整理されるのか。普通、デジカメには時刻とか日付がしっかり入ると思うんですけれども、なぜこの写真に日付とか時刻が入っていないのか。あるいは、自衛隊さんが持っているカメラというのはそういうものなのか。あるいは、真っ暗な状況の中で、高度をどのくらいまで落として写真を撮ったのか。そのときの具体的な状況について詳細にお答えをいただきたいと思います。

首藤政府参考人 今、先生前段でお尋ねございました日付が入っていないという点でございますが、警戒監視活動の際に識別用に撮影いたします写真につきましては、撮影日時等の印字が対象船舶等の識別のかぎとなり得る部位等を隠してしまうことがあり得る、そういうことを防止するために、通常、撮影日時等は写し込まないこととしているところでございます。また、これらの写真の整理、保管につきましては、別途に必要な事項を記録することとしておりますので、特段の支障は生じていないというところでございます。

 なお、撮った高度につきましては、具体的な、海面何メーターとかいうことは差し控えさせていただきたいと存じますが、通常の広域哨戒するときよりも写真をできるだけ近くから撮るという一方で、エンジンなどがトラブルを起こしたときに海面からの距離に安全があるというようなことを勘案して、かなり低く飛ぶわけでございます。

川内委員 P3Cに乗り込まれた方々は、一般の外国漁船だと思って写真を撮って帰った。念のために撮って帰った。それを分析したら不審船であったと。何か非常に取ってつけたような説明になるわけですけれども、私は、やはり先ほど前原議員がおっしゃったように、何らかの情報に基づいて哨戒活動をしたというふうに正直にお答えになる方がいいと思うんですよ。それは、どこからの情報とか、何かを傍受したとか、アメリカから情報が来たとか、そういうことまで言う必要はないですけれども、確実な情報をもとに哨戒活動を行ったというふうにする方が、日本の自衛隊の能力というものを内外に知らしめる上でも、より正確な説明になるというふうに思いますが、いかがですか。

首藤政府参考人 防衛庁といたしましては、常日ごろから不審船舶の動向につきましては、関係機関等と緊密に連絡をとりながら、細心の注意を払って、あらゆる手段によって継続的に情報の収集、分析に努めているところでございます。

 他方におきまして、防衛庁の電波情報業務の具体的な内容に係る御質問につきましては、先ほど来繰り返しになりますが、他国に防衛庁の情報関心でございますとか情報収集、処理能力を明らかにすることになりまして、自後の効果的な情報活動の支障となるおそれがございますことから、恐縮でございますが、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

川内委員 そうすると、今回の場合もある種の情報はあったということでよろしいですか。

首藤政府参考人 繰り返しになりますが、電波情報業務の具体的な内容につきましては差し控えさせていただきたいと存じます。

 なお、今回の九州南西沖不審船事案におきまして、防衛庁としましては、通常の警戒監視活動を行っていた海上自衛隊のP3Cが撮影した写真を総合的に分析した結果、不審船の可能性が高いという判断に至ったわけでございます。

川内委員 いや、だから、その説明ではかえって防衛庁のというか、自衛隊の能力を疑ってしまうんですよ、私は。

 哨戒機によって撮影された写真は、二十一日の二十時ごろから防衛庁部内の専用回線を使って鹿屋基地から海上幕僚監部へ伝送を開始した。最終的に送信が終わるのに三時間を要したと。この専用回線の容量は果たして電話線よりも容量がちっちゃいんじゃないかとか、あるいは不審船のみ、この船だけの写真を送ったのか、それともほかの写真も送ったのか。

 あるいは、中谷長官が十二月二十八日の記者会見で述べておられるように、その分析に多くの時間がかかって、再びP3Cを飛ばして二十三時四十九分に不審船の位置を確認するまでの間はその船のケアはだれもしていなかったということにもなるわけでございまして、この船については最初からマークをしていたんだ、どこにどういうふうに動いているかも全部わかっていたというふうに言わないと、すごい間抜けな自衛隊、間抜けな防衛庁だということになりますが、どうですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 最初の専用回線の関係でございますけれども、これは先生御承知のように、特定の利用者が自己の特定の業務を遂行するために特定の区間を結ぶ通信回線でございまして、今回の不審船画像の伝送を行いましたのは海上自衛隊が作戦遂行のために借り上げている専用回線でございますけれども、お尋ねの伝送速度等につきましては、任務の効果的な遂行に支障を生じさせるおそれがございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、今回時間がかかったことは事実でございます。これにつきましては、先ほど先生も御指摘されました写真でございますが、これが大変精緻な解析を要するにもかかわりませず、当日の天候等の関係で不鮮明であったことと、また、海上幕僚監部等の複数の関係部署に伝送する必要があったといったことから、安全かつ精密に伝送すべく措置したところでございます。

 伝送遅延の主たる原因につきましては、今申しましたような複数の箇所ということで、海上幕僚監部に加えまして、同時に他の多くの部隊に当該画像を伝送したために海上自衛隊のメール用の専用回線がふくそうしたといったことが考えられます。

 したがいまして、私どもといたしましては、映像画像の伝送先につきまして、状況に応じた優先度を考慮してメールを送信するよう周知徹底していく、また、それに必要なマニュアルも整備する、さらには、メールの送信先を最小限に抑えるためにデータベースによる情報共有化も促進する、さらには、既存の業務支援用として使用しております通信系を秘匿できるように措置いたしましてメール用の専用回線を数倍に高速化する、これは十三年度末までに整備したいと思っていますが、このようなことで迅速化を一層図っていきたいと思っております。

 それから、二点目の飛行機の点でございますけれども、御承知のように、P3C、これは、後に不審な船舶であることが判明する漁船らしき船舶を視認しまして、鹿屋に十八時三十分ころ帰投したわけでございます。そして、私どもといたしましては、先ほど来るる御説明してきておりますけれども、同基地におきましてその画像を識別したところ、これにつきましては精緻な解析が必要だということで上級機関に伝送を行ったわけであります。そして、上級機関に対して精緻な解析を求めているような船舶の位置を見失う事態は、これは回避する必要があるだろうといった観点から、二十二時半ごろ再度P3Cを離陸させまして、二十三時五十分ごろに同船の位置を再確認したわけでございます。

 これはるる申し上げておりますが、不審な船舶であるという判断を防衛庁が行う以前の段階において行った対応でありまして、防衛庁といたしましては適切なものであった、そのように考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今後、いろいろな御指摘の点等を踏まえまして、不審船の監視あるいは対応に遺漏なきを期してまいりたい、そのように考えております。

川内委員 もう時間が来ましたので、全然納得も理解もできませんけれども、終わります。

赤松委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村眞悟君。

西村委員 本年も、お国のために気を引き締めて、よろしくお願い申し上げます。

 自由党の西村でございますが、私は、本件東シナ海の不審船事例における我が国の対応は、国際法上全く正当であり、周辺諸国から何ら非をあげつらわれるものではないというふうに思っております。その前提で、しかし、国内においては、我が国の特殊な歴史上、議論すべきものが多い、したがって、その点について議論するということでございます。

 さて、海上保安庁とは何ぞやということでございますが、本件の事例は国境警備、警戒活動の領域にある事例でございまして、国際法上、分類はむしろ軍事的領域に入っておる。海上保安庁法二十五条は、この法律は、海上保安庁またはその職員がいかなる意味においても軍隊であるというふうに解釈されてはならないし、軍隊の機能を海保が営むものと認めることはできないという規定があるわけでございます。この海保が、国際法上軍事領域と目される領域である本件銃撃戦を行い、そして相手方十五名が死亡しておる事態を担当したわけでございます。

 そこで聞きますが、仮に、海保法二十五条の規定を遵守するならば、我が国の海上保安庁は、ロケットランチャーをもって応戦し、それに対して攻撃を加え人員十五名を死亡するに至らしめるような、国際法上正真正銘なる軍事行動をとるマニュアルを持っていなかったはずだ、もしそのマニュアルを持っているならば海上保安庁法二十五条違反である、このように論理上は言えるわけでございます。

 したがって、私としては、論理上そうなのでありますから、海上保安庁は、本件のような事例においては、例えばロケットランチャーを現認した時点、例えば全く従う意思が相手船にないと判明した時点、あるいは反撃の意思が相手船に明確にあると確認した時点、このいずれかにおいて、国際法上軍隊と認められる海上自衛隊に対処を移管すべきであったのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、大臣は私の二十五条の見解を含めていかに御認識をされているかお伺いしたい。

扇国務大臣 西村先生がふだんから国の内外の安全に対して御関心をお持ちいただいていることに敬意を表しながら、この不審船事案につきましては、政府として、少なくとも海上保安庁というものは第一義的には警察機関としての任務を遂行する、そして、これは海上保安庁の組織をもってしては不可能である、また著しく困難である、そういう判断をしたときに初めて海上警備行動による対処を自衛隊にお願いするということになっておりますので、私どもは、海上保安庁が一義的に海の警察としてでき得ることは何かということで、今回の対処方法を実行したわけでございます。

 幸い、先生から今回の海上保安庁の対処に対しては御理解あるお言葉を冒頭にいただきましたので、御理解いただいているところではございますけれども、私は、海上保安庁と自衛隊との相違というものは、ここではっきり、一義的には必ず海上保安庁が海の警察隊としての任務を遂行し、今申しましたような、不可能であるという限界を海上保安庁長官が判断した場合に初めて海上警備行動に移るという、この選別はきちんとできているものであると思っておりますし、またそういう実行の仕方をしております。

西村委員 これから立法論に移るのですが、私、論理的に申し上げたのですね。二十五条を読めばそうなるのです。そうなるのですから。片や自衛隊法八十条は、治安出動、防衛出動の方においては海上保安庁は防衛庁、総理大臣の統制下に入ると。今まで軍隊の装備もなく軍隊の機能も有しないものが、一たんその瞬間に統制下に入って軍隊の機能を有するはずはないわけですから、この自衛隊法八十条と海上保安庁法二十五条は矛盾しておるのです。

 そこで、立法論ですが、大臣、この二十五条は削除する必要あり。削除しないのならば海上保安庁は警察に移管する、削除して自衛隊に移管する、この二つの道があるのですね。

 今は、二十五条を論理的に読む以上、海上保安庁は、あの発射した弾は、あれはRFS、遠隔自動照準つきの二十ミリバルカン砲ですね、軍隊でないものがこういうものを持っている必然性はないのですね。これは軍隊が持つものですね。二十五条がありながら軍隊が持つものを持っておる。だから、いっそのこと海上自衛隊と共同行動をよりとれるような組織改編をすべきではないかと思います。私はそう思う。

 二十五条は削除するか残すか、警察に移管するか海上自衛隊に移管するか。これが将来起こるべき同じような事案に対してスムーズに事態を収拾する道ではないかと思いますが、いかがですか。

扇国務大臣 私は、西村先生のおっしゃることは、それは西村先生の今までの御活動の中では当然おっしゃるべきことだろうと思っておりますけれども、私どもは戦後一貫して海上の警察隊として海上保安庁をつくり、そして国民の生命財産を守るために自衛隊をつくり、この歴史の中で、平和を維持する日本の国の体制としては、今の限度のあり方が諸外国に一番理解いただける日本の姿勢である。そして、我々は、少なくとも海上保安庁、自衛隊等々と連絡を密にして、それぞれの分担能力の中で最大限に国民の生命財産、国の安全を守るということに徹した今までの経緯というもの、また諸外国に対し脅威を及ぼさないということにおいては、今の方法が一番諸外国に納得をいただいている方法であると私は確信しておりますし、今後そういうことに対して、もしもこれはおかしい、できないということがあれば国会の中で法改正するということもあるでしょうけれども、現段階ではこれが大変うまくいっていることであるというふうに信じております。

西村委員 さて、諸外国に脅威を与えないのか否か、それを点検しなければならない。政治はもっと軍事を知るべきなんですね。

 二年前の日本海事例について例を挙げますと、今回の場合も次に聞きますが、共通して言えることは、相手の出方に引きずられて、時間的にも距離的にも範囲が拡大している。それで、二年前は何が起こったか。北朝鮮の防空識別圏まで追いかけていった。追いかけていったものは何か。正真正銘の軍艦である。百五十トンの船二隻に対して数千トンの船数隻が追いかけていき、上空からは百五十キロ爆弾を六発投下した。これは相手にいかなるサインを与えるのか。多くの国際紛争はこのようなサインの誤解から起こっておる。

 仮に、日本領海に向けて日本漁船らしきもの二隻が、百トン足らずの船二隻が全速力で逃げてきた。追尾してくるのは某国の正真正銘の軍艦数隻であり、上空からは百五十キロ爆弾を落としておった。いかなる平和ぼけの日本でも、某国がひょっとすれば我が国に対する攻撃の意思を発動したのかもしれないということを考えざるを得ないような事態、それを平気でやったんだ。

 さて、今回の事例。

 私は、根本的に、二年前の事例も今回の事例も、こういうふうな領域警備の事態においては局所において一挙に収拾しなければならない。そうでなければ、日本海事例のように他国に要らざるサインを送ってしまう。北朝鮮があのときスクランブル発進をしたようですが、過剰反応して軍事冒険主義者が実戦配備のノドン・ミサイルを飛ばしたらどうなったか。しかも、そのときに、我が国政府がやったことは、そのミサイル発射に対して、それは自衛のための措置であるという口実を相手国に与えておるのです。

 だから、のほほんと、やったやったと、海上保安庁をつくったんだから、やっておると、自画自賛ではなくて、領域警備の事例は必ず相手国がいるということを考え、相手国にいかなるサインを送っておるのかということを考えなければ、国内の体制再構築はできない。その意味でお聞きしておるんですよ。

 マニュアルが果たしてあったのか、このようなものに対処するマニュアルですね。

 例えばですよ、マニュアルがあったとするならば、そしてマニュアルどおりに運んだとするならば、なぜ人員を確保できなかったのか、海に浮かぶ人員を。それを承知でマニュアルを発動して、そのとおりやって、そして、何ら不適切な部分はないんだというならば、我が海上保安庁はオーバーキルのマニュアルを持っておったんだ。救助する意思もなく、相手船を追い詰めて、自沈するなら海に浮かぶならそのままと。これはオーバーキルのマニュアル。こういうマニュアルを持っておるのかどうかということを私はお聞きしたいと思いますが。

 これは時間的、空間的に局所で処理しなければならない事例だという私の問題意識に対しては、そのとおりだとおっしゃるのか。何百キロも追いかけていって、今回は中国の排他的経済水域に入っても当たり前だ、中国の領海付近まで行っても仕方がないんだとおっしゃるのか。どっちなんですか。

縄野政府参考人 まず第一点でございますが、局所的にということでございますが、船が出動しまして追いつくまでにおおむね、例えば五百キロぐらいの距離を速度差時速四十五キロぐらいで追尾しておりますので、十時間以上の時間がかかったということは、私どもとしてはやむを得ない、それは事実であろうというふうに思います。

 それから、その間、停船命令をかけ、射撃警告をし、威嚇射撃をし、船体射撃をしたということについて、一つ一つ危害を及ぼさないための手続をしていったということについてもいろいろ御指摘がございますが、結果的に時間がかかり、中間線も越えた。これは、停船命令をかけたところが日本の排他的経済水域でございますので問題はないわけでありますけれども、私どもの体制と不審船の逃走経路からしてやむを得なかったというふうに思っております。

 それから、不審船の乗組員の救助についてどのようなマニュアルで対処したかというお尋ねがございましたけれども、私どもとしましては、一般的に、おぼれる者に対しての救助という責務があることは承知しておりますけれども、相手方が武器等を持ったまま刺し違えあるいは自決のような可能性がある、そういうことも勘案いたしますと、私どもの海上保安官の安全確保を図りつつ、最大限の相手方への救助の措置、浮き輪を可能な限り投げたわけでありますけれども、水温十八度という状況から見まして、私どもとしましては可能な限りの救助措置をしたものというふうに考えております。

 以上でございます。

西村委員 要するに、大方針として局所で収拾するのかという問題ですな。これは陸の上のことを考えればわかりやすいのですよ。丸の内の銀行に強盗が入って、それを名古屋まで追いかけ回すかというんだ。そんなことをやれば、我が国内の治安は破壊される。海の上でも同じなんです。燧火して停船を命じて、それに従わない場合に、いつ敵性を判断するか。そして、陸上と同じように、拡大せしめることなく――相手方の逃げるに任せれば、中国の領海まで行くんだ、北朝鮮の領海まで行くんだ。いつとめるか。そして、国際的な介入をいかにして最小にとどめるか。こういう戦略がなければならない。

 だから、いろいろなことを言いはったけれども、陸に引き当てて考えてみなさいよ、海の警察だと言うのなら。強盗がロケットランチャーを持って逃げ回っているのを、陸上で百キロも追いかけたらどうなるか。海の上でも同じだ。某国がスクランブル発進した事態が二年前に、海上保安庁が漫然と相手を追いかけていくことで、局所で収拾しないから起こったじゃないか。そして、自衛のための措置としてミサイルを発射する正当性の口実を相手国に与えたじゃないかと私は申し上げておる。

 それから、これは領域内で起こった不審船の上に載っているもの、つまり特殊訓練を受けた人物であるとかロケットランチャーであるとか自動小銃であるとか、これはみんな我が国陸上に既にあると考えた方がいい。

 それで、年末、何が起こったか。十五名の仲間を日本に殺された非合法のテロ組織が日本国内と周辺に存在するという事態が起こっておる。そうでしょう。

 一年前の杉並の一家皆殺し事件がありました。北朝鮮の声明はわかっておるのです。新潟で女の子が十年近く監禁されたときに、日本という無法な国家ではこういうことはいつでも起こっているんだと、そのような無法な国家が日本人を拉致されたと言って共和国を非難しておると、こういうことを彼らは声明しておるのです。ことし、全く無関係に各所で一家がせん滅されている。これが起こって我が国が非常な社会不安に襲われたときに、日本という無法な国ではこういうことは日常茶飯事で起こっておるのだと。

 テロリストの復讐心というものを過小評価してはならない。なぜなら、我々はその背景、実態をいまだ知らないから。背景、実態をなぜ知らないのか。不審船を引き揚げて調査していないからです。

 警察にお聞きしますが、国内治安上、今回の事態は重大な事態を引き起こす端緒になり得るという認識を持って年末年始を過ごされたのかどうか。海上保安庁は、適切な措置をとった、海の上で起こったことで陸の上のことは知らぬと言うかもわかりませんが、陸の上に責任を持つ警察はどう思って年末年始を送られたのか、これをお聞きしたい。

上原政府参考人 お答えをいたします。

 警察庁におきましては、十二月二十二日の本件不審船の事案以後、全国の都道府県警察に関連情報の収集及び沿岸の警戒強化を指示いたしまして、今なおその警戒を継続中でございますし、重大な関心を持って情報収集活動に努めているところであります。

 また、昨年の九月十一日にアメリカで発生しました同時多発テロ以後でありますが、米国関連施設等重要施設、全国で五百八十カ所の警戒は、今なお継続中でございます。

 今後とも、海上保安庁、防衛庁等々関係機関と緊密な連携を保ちつつ、情報収集活動を一層強化して、テロ事案の未然防止に全力を尽くしてまいる所存であります。

西村委員 ワールドカップを控えて、我が国周辺にロケットランチャーを持った部隊がおるということは自明のことになっておるわけでございまして、これを我が国治安を維持するために乗り切っていかねばならない。

 なぜ不審船を引き揚げないのか。言うまでもなく、海の中は海流が流れておる。直ちに確保して引き揚げる努力をしなければ、どこに行ったかわからない。あれは宝の山ではありませんか。不審船に載っておるものは陸上にもあるんです、我が国内に。どういう通信手段を持っておるのか、どういう周波数でやっておるのか、どういう暗号でやっておるのか。宝の山じゃありませんか。大臣、なぜ引き揚げない。

扇国務大臣 きょう、朝からこの委員会が開かれまして、閉会中にもかかわらず、先生方の御熱意によってこうして審議をさせていただいておりますから、朝から私も、この船を引き揚げ、どういう目的で何をしに来たのか、それを特定しなければ対処のしようがないということで、強く引き揚げたいという希望を既に申し上げてございます。ただ、引き揚げるに当たっては、先生は海流があるからと今おっしゃいましたけれども、今、この沈んだ船、不審船を警備するためにどういう処置をしなければいけないかということも海上保安庁に言ってございます。空からも見ております。

 そして、自爆したと言われております船が、午前中も申し上げましたけれども、船体が果たして引き揚げに耐える船体であり得るのか、あるいは近づいたときに新たに爆発物を仕掛けていないか、あらゆることを勘案しながら、排他的経済水域である中国と連携をとりながら、私どもはこれを引き揚げたいと。

 ただ、状況が、サルベージで潜水をいたしますには四月まで海域的には無理であるというような話も専門家のサルベージからは聞いておりますけれども、私は、一日も早く船籍を調べたいという気持ちは西村先生と同じ、いえ、西村先生以上の気持ちを持っていることだけは確かでございますので、一歩でもそれに近づくように、政府として対応していきたいと思っております。

西村委員 私は立法府の議員でありますけれども、大臣は行政府の執行の責任者である。同じ思いを持っておれば、おのずから発露の形態が違う。私はこのように質問しておる、大臣はそれを実行する立場だ。

 それで、こういうことは間髪を入れず決断してやらさないかぬです。例えば、不審船が傾き始めた、接舷して沈没するのを阻止する、これは当たり前のこと、現場でやるんだ。それで、水の下まで行きよった、しかし海底まで行かさぬようにする。海底に着いた、引き揚げる。それはもうマニュアルに入れてもいいんだ。こんなものは中国に相談してやるべきことではないんだ。仮にそういうふうにやるべきことになった、それは反省せないかぬです。適切にやったとかいうことで流れていてはだめだ。そして、それを局所で収拾さす、そのマニュアルがなければマニュアルを決断しなければならない。これは内閣がしなければならない。いかなる意味においても軍隊であってはならないと二十五条があるのに、自動照準つきのバルカン砲まで持っておるじゃないですか。

 余りこのことに時間を費やしてもしようがないから次に行きますと、これは本当に警察、海上保安庁、自衛隊の相互連携した国家の国境防備、そして国内の、つまりせんじ詰めれば、国民の安全を確保するための我が国のシステムをいかに再構築するかという問題なんです。

 ちょっと時間があれですから、海保の方にちょっと聞きますけれども、こういうことが起これば、また装備についてということが言われて、小型高速艇がいいとかいろいろな議論があります。しかし、これは結局船と人と武器の三者の総合した能力が問われるわけですね。つまり、高速で走ることが目的じゃなくて、インターセプトして、臨検して、捜索して、拿捕する、この能力が海保になければならない。これをやるのは人間なんです。そして、人間が持つ武器なんですね。

 だから、単に船が高速で走るとかいう問題ではなくて、ヘリコプターの速度以上に走る船はないし、弾丸の速度以上に走る船はないわけですから、この三者の総合として、今後海保は、私が立法論として先ほど言ったことはまずのけて、海保が存在する以上、海保はどういう装備でどういう訓練をして臨みたいかということについて構想があるなら、短時間で恐縮ですが、おっしゃっていただけませんか。

縄野政府参考人 簡潔に申し上げます。

 一つは、防弾の機能の強化という点がございます。それから、RFSという自動照準の機能についても強化をしてまいりたいと思います。

 それから、先生がおっしゃられましたように、これだけのしけの中でできるだけ高速で追尾をするということにつきましては、できるだけ大型の高速船が必要であるというふうにも思っておりまして、平成十四年度の予算で一部認められておりますが、これらにつきましても、できるだけ拡充をしてまいりたいというふうに思っております。

 人につきまして、私どもは、警察機関の中で、これらの対応能力としては一定のレベルを持っておると自負しておりますけれども、さらに職員の訓練、教育に力を入れ、さらにそのような体制の強化につきまして図っていきたいというふうに思っております。

西村委員 それで、三者共同が必要で、自衛隊です。

 日米安保体制の中で自衛隊は何をすべきかという抽象的議論ばかりでありました。しかしながら、ゲリラ・コマンドーに対する対処においては、我が国独自で何をすべきかという段階、具体的な段階に来ているわけでございます。

 海上自衛隊に限りましては、ブルーウオーターネービーといいますが、大きな船で外洋において活動するという前提での装備に関心があったわけですが、沿岸の浅い海域における活動のあり方、これが問われるべきだ。

 むしろこのことが、今の大臣の答弁でありましたように、もうちょっとこれは、対処不能になれば移管するのだということを言われていますね。だから、これからの自衛隊の装備のあり方、警察、海保と連携して、情報の連携ももとより、装備の点についてもいかなる見解を持っておられるか、ちょっと御答弁いただけますか。

首藤政府参考人 西村先生おっしゃられましたように、海上自衛隊の場合、我が国の防衛のために護衛艦、潜水艦あるいは哨戒機、ヘリ、そういったものを持っているのももとよりでございますが、同時にいろいろなテロ、不審船、こういった事態もあるわけでございます。

 それで、これは釈迦に説法でございますけれども、平成七年に、これは冷戦後でございますが、策定されました防衛大綱では、テロリズムによって引き起こされた特殊な災害を含む各種事態の対応を防衛力の役割の一つとして位置づけておりまして、これに基づいて、平成十二年に策定されました現在の中期防におきましても、ゲリラや特殊部隊による攻撃、あるいは核・生物・化学兵器による攻撃とかいった各種の攻撃形態への対処能力の向上を図っていくということでございます。

 したがいまして、今般の不審船事案、あるいは米国で起こりました同時多発テロ事件、さらには炭疽菌を用いた事件等、こういったものを含みます各種の事態に、今後ともより一層適切に対応していきたいと考えております。

 具体的には、十一年三月の能登半島沖不審船事案を踏まえまして、不審船を有効に停船させるために必要な装備の整備とかいうもので、海上自衛隊の不審船に対する対応能力の向上を図ってまいりましたけれども、さらに今後、今般の事案を踏まえまして、特にP3Cが基地に帰る前に、空中から画像を基地まで送れるような能力、さらには地上で写真画像などの容量の大きな情報を迅速、安全、確実、精密に伝送する能力の強化といった観点から改善策を講じてまいりたい。

 さらに、ゲリラ・特殊部隊による攻撃対処につきましては、具体的には、十四年度予算におきましても、アメリカの訓練場におけるより実践的な訓練の実施でございますとか、市街地における戦闘訓練を実施する都市型の訓練施設の整備、あるいは米陸軍に派遣しましてNBC対処要領の研修、さらには十三年度末、今年度末には島嶼部での対処能力の充実強化を図ることを目的としました西部方面普通科連隊を佐世保の相浦駐屯地において新編したり、あるいは首都圏の第一師団を改編いたしまして、ゲリラや特殊部隊による攻撃対処能力を強化する等いろいろ措置を考えております。

 さらに長期的には、昨年秋、既に防衛庁長官のもとに防衛力のあり方検討会議というのが発足いたしておりまして、現在の防衛大綱に特に縛られずに今後の国際情勢あるいは脅威形態の変化、そういったことをよく勘案して適切な防衛力のあり方というものを今後検討していくべきである、そういう時期に来ているということでございます。

西村委員 ほぼ私の質問時間も終わりに近づいてきましたが、今回の最大の反省点は、諸外国から見て、我が国はオーバーキルのマニュアルを持っているのではないか、こういう誤解を与える点ですね。

 海保の諸君の努力は本当にたたえねばなりません。しかしながら、我が国の治安維持、国防のための不可欠な情報である相手方の人員を生きて確保できなかった点、それから、大臣が当初から船体は引き揚げて宝の山だから調査しなければならないと、しかしながら、それがいまだに実現されていない。海上保安庁の行動の域を超えた我々の政治とは何だろうか、大臣自身がその意思を持っているのにそれが実現できない我々の政治とは何なのか、果たして、国民の安全を守るために、その一点に向かって力を集約できる政治なのか、それとも、うやむやに、のど元過ぎれば熱さ忘れるということを繰り返しながら、大きな惨害が起こったらまた驚くだけの政治なのかということでございますね。

 海保法二十五条は廃止すべきだと思いますが、最後にどうですか。

扇国務大臣 それもこれも、この事態で、一体どこの国が何の目的で何のために来ていたのか、また、我が国の近海に、武装した、漁船に似せた不審船が多数あるのではないかというクエスチョンマークがあるということ自体が私は国民に対して申しわけないと思いますので、海上保安庁としても、今後自衛隊と連携しながら、この安全のために万全を期すためにお互いに検証していきたいと思っておりますので、西村先生等々にもぜひ今後この検証に対してのお知恵をいただいたり、いろいろな示唆をいただくように努力していただいて、私たちも一緒になって果たすべき役割を果たしていきたいと思っております。その結果、どれが必要でどれが不必要かということも選択していきたいと思っております。

西村委員 終わります。

赤松委員長 大幡基夫君。

大幡委員 日本共産党の大幡基夫です。

 今回の事案を検証する上で、我が国の領海の警備、警察活動は海上保安庁が第一義的にする任務であり、国の主権を侵害する行為に対しては毅然とした対処を行う、まあ当然だということが前提になると思います。

 その際、今回の事件について言えば、領海内ではなくて排他的経済水域、つまり公海上で起こった事件であります。したがって、国内外に対して事実関係を明らかにすること、そして、今回の対応の国際法、国内法上の根拠についてのしっかりした検証と説明が要ると思います。事態の経過に即して、この点について質問していきたいと思います。

 まず第一は、海上保安庁が出動する前の段階であります。新聞の報道などでは、十九日までに米軍から防衛庁に複数の工作船の情報が入った、また、防衛庁が不審船の発した無線を傍受した、これは鹿児島県の喜界島通信所、象のおりと言われる通信施設で北朝鮮との交信と見られる電波を傍受したという報道です。この報道について、事実経過について明らかにしていただきたいと思います。

首藤政府参考人 防衛庁といたしましては、先生挙げられました個々の報道の内容につきましては、一々具体的にコメントすることは必ずしも適切でないと考えております。

 なお、御指摘の不審船につきましては、先ほど来申し述べさせていただいておりますけれども、通常の警戒監視活動を行っていた海上自衛隊のP3Cが二十一日午後五時ごろに撮影した写真を防衛庁として総合的に分析した結果、平成十一年に能登半島沖で確認された不審船舶と同様な性格の船舶である可能性が高いという判断に至ったものでございます。

大幡委員 非常にふまじめだと思うんです。本委員会は、今回の事案を検証するためのものであります。国民は、防衛庁が二日前から知っていてなぜ知らせなかったのかということで、大きな疑問と批判の声があるわけです。それをまともに答えない。これでは国民は納得しないと思うんです。

 自衛隊、防衛庁の問題はまだあります。

 十二月二十一日の十六時三十二分にP3Cが不審船を発見した。ところが、海上保安庁への第一報は翌日の午前一時十分、発見から九時間近くたっている。なぜ九時間もかかったのかという疑問の解明も必要です。

 私は、それとは別に、不審船と見られる船を発見した時点でその事実をなぜ海上保安庁に連絡しなかったのか、まずそのことが当然必要であったんじゃないかと思うんですが、これについての事実経過の説明も求めたいと思います。

首藤政府参考人 発見から九時間とおっしゃられますが、先ほど御説明申し上げましたとおり、その四時半というのは、最初に、多くの日本漁船の中で一隻外国漁船と思われるものがいるということ、その後、帰りしなに、五時ごろに念のためその外国漁船を撮影して帰った、そして、六時半にランディングして、七時ごろからASWOKにおきまして担当者たちがその持ち帰ったデータの解析を始めて、これは中央機関に上げて判断を仰ぐべきであるという判断に至ったのが夜の八時ごろということでございます。

 したがいまして、四時半から数えて九時間もおくれたというようなことは私どもはないと考えております。

 ただ、今回の事案を今後振り返りまして、いろいろな教訓、反省事項はあるはずだと思っておりまして、それについてはいろいろと検討して、今後の改善にいたしていきたいと考えております。

大幡委員 P3Cが十六時三十二分の段階で不審船の発見という形でもって報告があったんでしょう。そういう報告は一切なかったんですか。

首藤政府参考人 十六時半時点では、P3Cの搭乗員が、哨戒しております途中で、多くの日本漁船の中に外国漁船と見られるものが一隻いると、それはそのとき視認して、そして帰りがてら、五時ごろに、念のためその一隻について写真を撮って帰ったということでございまして、その時点で搭乗員たちが、結果的に後になって不審船あるいは武装工作船とわかるこの船について、その時点でそういう認識を持っておったのをすぐに報告しなかったというようなことは全くないわけでございます。

大幡委員 私は、ごまかしがあると思います。本来、領海警備という任務は海上保安庁の任務なわけで、自衛隊、防衛庁がいわゆる国籍不明の外国船というか不審船というのを発見した段階で直ちに海上保安庁に連絡するということが当然であります。また、事実の確認という作業が仮に必要としても、事実確認も含めて海上保安庁が行うということも当然で、それと並行して防衛庁が行うということもできたわけで、明らかにすりかえだというふうに思います。

 しかも、防衛庁・自衛隊の対応で、まだ不信もあるんです。P3Cが十六時三十二分に発見してから、九時間と言いましたが、海上保安庁に連絡するまでの間のこの不審船の航跡図といいますか、どういう走行をしたのかという情報について明らかにされていません。この情報について明らかにする必要があると思うんですが、いかがですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 もう一度、整理いたしまして。今般の事案に際しましては、防衛局長からも申し上げましたけれども、通常の警戒監視活動を行っていた鹿屋のP3Cが、二十一日の十六時半ごろ、これは奄美大島の北北西約百五十キロの海域でございますけれども、これで後に不審な船舶であることが判明する漁船らしき船舶を視認したわけでございます。そして、このP3Cは、当該船舶については一般の外国漁船と判断しておりましたけれども、先ほど防衛局長も申しましたが、外国漁船と判断される船舶はこの船一隻であったということで、鹿屋に帰る途中に、念のために写真を撮った。

 その後鹿屋に戻りまして、撮影した画像を識別していったわけでございます。そうしたら、この写真については上級機関による精緻な解析を求める必要があるだろうという判断をして、そして直ちに、これは二十時ごろでございますけれども、海上幕僚監部等へ伝送を開始した。そして防衛庁として、翌二十二日になりますが、零時半ころに、この船は平成十一年三月の能登半島沖で確認された不審船舶と同様の船舶である可能性が高いという判断をするに至ったものでございます。まずそういった経緯を、恐縮でございますが、よく御理解いただきたいと思います。

 そして、そうした経緯の中で、鹿屋基地におきましては、先ほど申しました上級機関に対して精緻な解析を求めているような船舶の位置を見失う事態というものは回避しなければいけない、そういった観点から、二十二時半ごろでございますけれども、P3Cを離陸させまして、そしてそのP3Cが二十三時五十分ごろ、該船の位置を再確認したところでございます。

 このように、今くどくどと申しましたけれども、私どもといたしましては、不審な船舶である可能性が高いという判断を行う以前の段階において、その判断が零時半ころでございますので、以前の段階においては、私ども、必ずしも継続的な追尾、監視は行っておりません。

 したがいまして、この間の具体的な航跡は把握をしていないわけでございますので、先生御指摘のような航跡図につきましては作成をしていないということにつきまして、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。

大幡委員 P3Cが発見して、それ以降の走行がつかめていないはずがないんです。また、そういう情報活動だったら、冒頭の質問に対しても隠す必要はないんです。明らかにしない。しかも、私驚いたのは、海上保安庁に対しても、この間の経過について一切知らせていない。これでは、自衛隊や防衛庁の情報収集は一体何のためのものかというふうに言わざるを得ないと思うんです。マスコミも、情報断絶浮き彫り、こういうふうに厳しく批判をしています。

 これは予定していなかったんですが、扇大臣に、海上保安庁に対してもこうした情報が伝えられていなかった、こういう問題に対してどういう意見をお持ちか、一言述べていただきたいと思うんです。

扇国務大臣 今お話を伺っておりまして、一言で述べろといっても一言で述べるわけにはいきませんけれども、お互いが、ふだんからマニュアルはつくってございます。自衛隊と海上保安庁とのマニュアルはございまして、そのマニュアルによって、不審船への対応は警察機関たる海上保安庁が一義的に行う、また、海上保安庁及び防衛庁は情報連絡体制を確立して、初動段階から行動終了まで的確な連絡通報をお互いにし合うというマニュアルはつくってございます。

 ただ、今回は余りにも不審船らしき姿をしていなかった。向こうも、敵という言葉を使うとわかりませんけれども、相手もさる者だという、わからないようにするからこそ初めて不審船であって、最初から不審船だという顔をしていないところが不審船の不審船たるゆえんなものですから、私は今回は、自衛隊としてP3Cが、ひょっとしたら不審船ではないかと思ったという、気がついただけでもよかったと思っておりますし、逆に言えば、漁船らしき姿をしてそのまま何もなかったら、またいつの間にか来て、いつの間にか帰っていたという、知らないで済んでいたんです。

 その対処の仕方については、今後反省する点は多々ございます。もっと綿密な連絡をする、これも私は、自衛隊の長官と一緒に、お互いにやっていこうねということで、反省点としては、情報の協力のあり方、マニュアルどおりできたかどうかということも含めて今後していきたいと私は思いますし、またもう一点では、海上保安庁と自衛隊の能力のあり方、これが果たして、今回のように初めて相手から攻撃を受けたということに対しての能力のあり方が、海上自衛隊と海上保安庁との分担がどうあるべきかということも今後の大きな問題になろうと思います。

 私は、今後の反省材料と、対応というものを教訓として、お互いに情報交換しながら、こういう有意義な委員会を開いていただいたんですから、こういうところで論議させていただいて、私たちもこれを実行に移していきたいと思っております。

大幡委員 今回の防衛庁、自衛隊の情報活動について、海上保安庁には知らせていない、しかし米軍には既に伝わっている、そういう情報もあります。これでは、自衛隊の情報活動は日本の主権と安全を守るための活動ではないのか、こういう批判もあるやに聞いております。

 前に進みます。

 今回の事態に対して、国際海洋法の専門家の中からも、今回の不審船がどこで何をしてきたのか、その犯罪容疑は何であるのか、このことが明らかにされていないとの疑問が出されています。

 国際法上、不審船という概念はないんですが、前国会での海上保安庁法改正のときには、一義的には犯罪を目的にした船というふうに答弁しています。今回のこの海保のレポートも不審船情報ということでなっているんですが、政府は、不審船とは何かについて、改めて現時点での概念といいますか定義といいますか、見解をお聞きしたいと思います。

縄野政府参考人 不審船という法令上の定義があるわけではございませんけれども、今お尋ねの、前回私どもが提出をいたしまして改正していただきました海上保安庁法第二十条の二項に基づく、いわゆる不審船の定義がございます。これは簡単に申し上げれば、凶悪犯罪を犯すのに必要な準備のため行われているのではないかという疑いを払拭することができない等々の要件がございます。

 この要件に該当するいわゆる不審船は、危害射撃をして停船することができるという改正をしたわけでございますけれども、この要件の中の一号、領海において現認されたというこの一号の要件を除けば、今回の不審船はこの二号、三号、四号の概念に当たっているものというふうに思っておりまして、そういう意味での不審船に該当するというふうに判断をしております。

大幡委員 一九九九年のときには、関係閣僚会議の新聞報道があるんですが、ここでは不審船について、工作船のような武装した船というふうに書かれていました。昨年は、犯罪を目的にした船。今はっきり言いませんでしたが、海上保安庁からの今回の説明では、武装している可能性がある不審な漁船、こういうふうに今回の不審船を特定したというふうに聞きました。容疑の項目というのはもちろんいろいろあるんですが、いわば不審船の定義についても幾つもある。そういう点では、現時点でといいますか、海上保安庁が判断している不審船の定義、つまりこういう船が不審船だというものが幾つもあるんだったら、その幾つかについてすべて答えてもらうというふうにできませんか。

縄野政府参考人 先ほど申し上げましたように、一言で言えば、重大凶悪犯罪を犯すのではないかという疑いを払拭することができない等々の要件に該当すると思ったわけでありますけれども、その理由は、これまでの議論にもありましたように、過去に工作船と判断をされた船と非常に外見が酷似しているという点がございます。

 例えば、漁船に見せかけておりますけれども……(大幡委員「どういう船を不審船というふうに呼ぶかという、その定義を聞きたいんですけれども」と呼ぶ)いわゆる漁船を装っているけれども漁具が備わっていない。あるいは、通常はエンジンのあるところにエンジンがなくて、別なところに多分別の目的でエンジンが搭載されている。ということは、通常はエンジンのあるところに別のスペースが用意されている。その結果としてでございますけれども、煙突が偽装の煙突である等々の外見上の要件から判断をしたというふうに考えていただいて結構だと思います。

大幡委員 私が聞きたかったのは、要するに去年は、犯罪を目的にした船という、「犯罪」があったんですよ。今回の不審船の定義というか特定の際には犯罪ということは言われていないんです。

 こうした不審船への対応の問題が問われているんですが、国民の間でも、今回の不審船の目的はどこにあったのかという、ここに非常に大きな疑問の声があります。これは今回の不審船の犯罪容疑の特定にもかかわってくる問題です。

 そこで、扇大臣に聞きたいんですが、大臣は今回の不審船の目的をどう考えておられるか。二十五日の記者会見で、一問一答ですが、多分何かの目的を果たして帰る途中だっただろうと思うんですけれどもというふうに答えられている。目的を果たして帰る途中というふうに記者会見で言われたのは、何らかの目的にかかわる情報をつかんでいたからではないかと思うんですが、いかがですか。

扇国務大臣 今一部だけおっしゃいましたけれども、可能性の問題として考えられるあらゆることを想定したわけでございます。今までも、日本人の拉致問題があり、あるいは密輸問題があり、あるいは麻薬の密売問題があり、一年間に日本じゅうで押収されている薬物等々の、そして不審上陸、密航者等々からいえば、何があったかわかりません。そのためにも、私は、あらゆることを想定しなければいけないけれども、船がどっちを向いて走っていたかというと、向こうを向いて走っている、日本の方へ向かって走っていないということは、帰り道ではないかというふうに言えるということも申し上げられますし、またこっちへ向かって逆戻りすることもあるんですけれども、通常私たちは、日本から離れる方向に向かって走っているから、目的を達成して帰るのか、あるいは目的を達成しようと思ったけれどもエンジントラブルで引き返すのか、何らかだろうと思っております。

大幡委員 実は、大臣の記者会見の四日後ですか、十二月二十九日の新聞で、これは防衛庁の関係者が、既に日本で目的を達成して戻る途中だったのではというふうに同じ見解を語っています。私は、何らかの情報を踏まえたいわば半公式的な見解だというふうに考えるのが普通だと思うんですが、こういう点も、隠された九時間、隠された二日間、三日間という情報ともかかわってくる。海上保安庁が明らかにしている航図というのは、確かにこうなんです。しかし、ここの航図の、この前の段階の動きということがあって方向という問題も出てくるので、率直に言って今回の不審船にかかわる問題で公表されていない情報があるのではないかという疑問をこういう点からも持つわけであります。

 次に、不審船への対応の法的根拠の問題です。

 今回の事案が発生したのは、日本の領海内ではなくて、排他的経済水域、EEZで起こった。また、船体射撃を行った場所は中国の排他的経済水域でありました。

 そこで、今回の一連の事態における国際法上、国内法上の根拠についてお聞きしたいんです。つまり、十三時十二分の停船命令、また十四時三十六分の威嚇射撃、これはいずれも日本側のEEZ内です。また、十六時十三分の船尾への船体射撃、これは中国側のEEZ内です。この国際法上、国内法上の根拠について説明してもらいたい。

縄野政府参考人 まず、二十二日の十三時十二分からの停船命令でございますが、これは海洋法条約五十六条一及びEEZ法第三条一項により、我が国の排他的経済水域において適用されるEZ漁業法、この五条一項に違反して無許可で漁業等を行ったおそれがあることから、海上保安官が事実関係を確認するために、漁業法七十四条三項に基づく検査を実施しようとして行ったものであります。

 それから、十四時三十六分からの上空に向けた威嚇射撃でございますが、漁業法の七十四条三項の検査を忌避して逃走しておりまして、この漁業法百四十一条第二号の検査忌避罪の現行犯であることから、その犯人の逮捕、逃走の防止のために、海上保安庁法第二十条一項によりまして準用する警職法七条、これは本文でございますが、人に危害を与えない武器使用として行ったものであります。

 それから、十六時十三分と承知しておりますが、威嚇のための船体射撃でございますが、この犯人の逮捕、逃走の防止のために、海上保安庁法第二十条第一項により準用する同じく警職法第七条の本文、人に危害を与えないという前提での、危害を与えないように配慮しつつ行った武器の使用でございます。

 それから、この当該船舶は日中中間線を越えて我が国の排他的経済水域外に逃走いたしましたけれども、私どもの巡視船艇等は、海洋法条約百十一条の二、それからEEZ法第三条第一項四号に基づく追跡権を行使した。これは、私どもの排他的経済水域において停船命令をかけ、追跡を開始したということで、海洋法条約上要件を満たしているというふうに考えております。

大幡委員 今の説明にかかわって聞きたいんですが、今回の不審船は漁船の形状をしながら武装船である可能性がこれまでの事例からいっても容易に推定できた。したがって、今回海上保安庁は、不審船は自動小銃からロケットランチャーまで備えた一種の武装船であったと想定していた。

 事前に聞くところによりますと、これまでの情報から見て、今回の不審船にはロケットランチャー、自動小銃が最初から積み込まれていると判断をして、そのつもりで対応したというふうに聞いています。また、出動のときから船体射撃を含む威嚇射撃もあり得るというふうに考え、したがって特殊部隊の出動も指示した。この点について、事実として確認できるかどうか。

縄野政府参考人 今回の不審船は、先ほど申し上げましたように、過去の工作船に非常に酷似をしている、そういうこと。それから、停船命令あるいは威嚇射撃を全く無視し、ジグザグ航行し、場合によっては蛇行によって私どもの公務執行を妨げる動きもいたしました。そういう観点から、この工作船が一定の武器を持っている蓋然性、重火器も含めて蓋然性はあるというふうに承知をしておりますし、このような行動をする船舶は私どもの停船命令を、幾ら行ってもその停船命令を聞かないということから、最終的には威嚇射撃、それから……(大幡委員「ロケットランチャーを想定していたかどうかだけでいいです」と呼ぶ)具体的なロケットランチャーの機種はわかりませんが、重火器のようなものを含めて武器を持っていたことは想定をして、威嚇のための船体射撃まで私どもとして承認をして行わせたところでございます。

大幡委員 いずれにしても、今回の海保の行動というのは、ロケットランチャーなどの装備をも認識して行動した。ただ、ロケットランチャーを想定しながら防弾ガラスもなかったというのは率直に言って貧弱で、そういう点では海上保安庁の装備についての検証も要ると思います。

 まだいろいろあったんですが、時間が来たので。

 今回の事案をどう教訓にするのかという問題は非常に大事だと思うのです。今回の事件にかかわって、一部に、テロ事件ともかかわって、有事立法の議論さえ出ています。これはとんでもないことで、もし今回自衛隊が出ていたら、国際的にも大問題になっていました。いわば今回の事案は自衛隊活用の必要性を何一つ提起していない、それどころか海上保安庁で十分対応できたことをむしろ証明したとも言えると思うのです。

 今の時点で必要なことは、今回の事案を国内法、国際法の両面から検証すること、また、巡視船艇の防弾ガラスなど、海上保安庁の安全確保その他の面から装備をどうするのか、いわば海上保安庁の警察機能を果たす体制をさらに拡充する方向での究明と検討が必要だということを申し述べて質問を終わります。

赤松委員長 日森文尋君。

日森委員 日森でございます。ことしもどうぞよろしくお願い申し上げます。今、佐藤副大臣、いい目で見ていただいたのですが。

 恐らく重複した質問になるかもしれませんけれども、御容赦いただきたいと思います。

 最初に、不審船事件というふうに言っておきたいと思うのですが、双方が銃撃戦になるという前代未聞の事件に発展をいたしました。そのときに、本来指揮に当たるべき安倍官房副長官が、実は事態が急展開する前に帰宅をしてしまったというような話がありましたし、これは今度の問題に対する政府の対応が非常に不十分だったというふうに言えるのではないかと思っているのです。

 と同時に、海上保安庁は直ちに対策本部を設置いたしましたけれども、国土交通省の不審船対策本部設置というのは二十三日の午前一時ですか、いわゆる不審船が沈没をした後に設置をされている。海上保安庁の対策本部の設置と国土交通省の対策本部の設置の間にかなりの時間的なずれがありますし、そういう意味では、関係機関内の意思の疎通といいますか、認識の一致といいますか、これが非常に不十分だったんじゃないのか。もうその段階で扇大臣はしっかりと対策本部にいらっしゃったという話は聞いているのですが、この辺の経緯について最初にちょっとお聞きをしておきたいと思います。

岩村政府参考人 私の方から経緯を御説明申し上げたいと思います。

 本件については、先ほど来御答弁がございますが、二十二日の午前一時十分に防衛庁から海上保安庁に第一報が入ったわけでございますが、その後、午前二時五分、直ちに海上保安庁そして第十管区海上保安本部に対策室を設置したわけでございます。そして、同日の午後零時五十分には、海上保安庁長官及び第十管区本部長をそれぞれ本部長とする対策本部を設置いたしました。そして、扇大臣の指揮監督のもと、事態の進展に応じ適切な措置をこの本部でとってきたところでございます。

 その後、不審船側の発砲がございました。また、巡視船の正当防衛射撃もございました。そして、最終的には不審船の沈没ということで事態が進展してまいりましたので、そういったことを踏まえまして、二十三日の午前一時には、国土交通省の本省におきまして、扇大臣を本部長とする国土交通省不審船対策本部を設置したわけでございます。そして、設置とほぼ同時に本部会合を開催いたしまして、大臣、そして佐藤、泉の両副大臣、その他関係局長、事務次官等々、会合に出席をいたしまして、これまでの対応を確認するとともに、引き続き本事案に係ります捜査を厳正に行うこと、そして沿岸の警備、警戒等、海上警備に万全を期すこと、そしてさらには、空港においても万全の警備、警戒態勢をとることなど、必要な決定をこの場で行ったわけでございます。

日森委員 結局、不審船が沈没をして事態の重大さということを改めて確認した上で、だからこそ国土交通省の対策本部設置をしたということでよろしいんでしょうか。

岩村政府参考人 先ほども御説明申し上げたように、海上保安庁長官、そして第十管区本部長を本部長とする本部を立ち上げたわけでございますが、それ以前から、扇大臣の指揮監督のもとに海上保安庁長官は動いているわけでございまして、そういう意味では、順番に事を進めていったということでございまして、国土交通省がこの件について関心を持たなかったとか、そういう意味では全くございません。順序の問題だというふうに理解をいたしております。

日森委員 わかりました。

 今度の事件では海上保安官三名が負傷するという事態になりました。一日も早い回復を願っているものですが、相手側も、数は明確ではないようですけれども、約十五名と言われていますが、うち二名が死亡して、これは確認をされて、他の者は行方不明。戦後初めてと言われる大事件になったわけです。

 恐らくこういう事件、海上保安庁でも初めての経験ではないかと思うんですが、海の警察である海上保安庁として、このような結果になってしまったわけですが、本来、船舶を拿捕して証拠を確保する、そして事の真相を明らかにするというのが警察職務の課題になっていると思うんですが、そういう点ではさまざまな問題があるのではないかというふうに思っているんです。

 そういう意味で、まだまだ時間がかかるかもしれませんけれども、今度の事件について反省点、これらについては今整理をしつつあるのではないかというふうに考えているのですが、全面的な総括、あるいはその視点、基本的な考え方についてお聞きをしたいと思うんです。

縄野政府参考人 今回の私どもの一連の対応は適正なものであったと考えておりますけれども、今お話が出ましたように、私どもの職員が負傷をしたこと、それから、爆発の原因はわかりませんが、爆発が原因で相手の船が沈没をし乗組員が二名遺体として収容されましたが、それ以外の乗組員が行方不明であること、その他につきまして、私どもの装備、それから船の運用体制、それからいろいろな制度、それから関係省庁との連携のあり方、そういうものにつきまして全般にわたって関係省庁とともに検証していく必要があるというふうには考えております。

日森委員 保安庁から出された文書の中でも、今後の課題といいますか方向といいますか、出されているんです。実は二年前の能登半島沖不審船事案の概要というのが海上保安庁の文書で出されていまして、それをちょっと読ませていただきました。その中でも、同じような中身で総括がされているわけなんです、装備の問題であるとか。

 具体的内容でいいますと、「海上保安庁及び防衛庁は、不審船を視認した場合には、速やかに相互通報する」と。視認した場合には相互通報するということで、さっきの防衛庁の話はちょっとどうかなという気もするんですが。状況により、官邸対策室を設置をすることとか、巡視船艇等の能力の強化など海上保安庁等の対応能力の整備を図ること、海上保安庁及び自衛隊間の共同対処マニュアルの整備など具体的な運用要領の充実を図ること、また、不審船を立入検査するために、対応能力の整備や運用要領の充実に加え、危害射撃のあり方を中心に法的な整理を含めとか、こんな話があの二年前のときの総括として出されました。

 実際に、三隻の高速艇も配備をされたし、それから二十ミリ機関砲、これは今回威力を発揮したのでしょうが、これも積み込まれました。それからヘリコプター、これも二機準備をするということが既に行われてきたわけです。これでも非常に不十分だというふうな総括に先ほどの長官の御意見は聞こえたのですが、その辺についてもう少し突っ込んだ御答弁をいただけますでしょうか。

縄野政府参考人 不十分だというふうに申し上げたわけではございませんが、今回私どもが対応したその結果について、それぞれ体制なり装備なりについて検証して、何が改善すべき点なのかということを明らかにしていきたいという意味でございます。

 前回の不審船事案以降、例えば高速巡視船の配備あるいは自動照準の武器の装備、それから乗組員の射撃あるいはその他の証拠の採取等の訓練をやってまいりました。今回私どもから提供したものではございますけれどもごらんいただきまして、少なくとも、私どもの四隻の船の乗組員たちは、それぞれの訓練あるいはマニュアルに従って非常に冷静に停船のための措置あるいは証拠のためのビデオの撮影等を実施しているというふうに思っておりまして、前回の不審船の事案以降の反省についての検証は生かされているというふうに考えております。

日森委員 そうすると、決して十分ではないというふうに判断してよろしいんでしょうか、現在の装備であるとか体制その他について。

縄野政府参考人 私どもの装備が十分であるかどうかにつきましては、私どもがどのような活動をするかという国民の期待とのバランスで決めていかなければならないものでございまして、私どもとして、こういうものがあればさらにここまでできた、あるいは、今回はこのように仮定すればこういう結果ではなくてここまでできた、そういうことを明らかにする、そのためにどのような装備の改善、体制の充実が必要かということをお示しして、立法府なり国民の御判断を仰ぐべきであろうというふうに思っております。

日森委員 最初に申し上げたとおり、海上保安庁は警察機能を担っているわけでありまして、いたずらに不審船を撃沈したりというところに仕事の中身があるわけではないので、したがって、不審船を停船させ、拿捕し証拠を確保する、そういうことに関する能力、体制をきちんと十分につくり上げる、ここに重点がなければならないと思っているのです。

 そこで、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、海上保安庁法二十五条はやめてしまえという話がございましたが、私は海上保安庁法第二十五条というのはしっかりと守っていただきたいという立場でちょっとお伺いをしたいのです。

 そういう意味では、例えば今十分であるかないか、それぞれ国民の御意見を聞きながら、あるいは実態に即してこれから判断をしていきたいというお話だったのですが、仮に今度の事件を契機に海上保安庁の例えば武器を含めた装備が強化をされるとかいうことになっていくと、実は庁法第二十五条に抵触するおそれが出てくるのではないかという心配をしているのです。その辺の線引きだとか、長官も言われていますが、海保では不可能な仕事については海自に頼むということになっているようですが、その辺の線引きみたいなところはどこで判断をされているのか、ちょっとお聞きをしたいと思います。

縄野政府参考人 庁法二十五条は、私どもとしても、警察機関たる地位を明らかにしたものでございますので、引き続きあるべきだというふうに思っております。

 例えば、相手がロケット砲を持っている。これは陸上でもあり得ると思うのですが、ロケット砲を持っている可能性がある、あるいは機銃を持っている可能性がある。こういう可能性のある船を犯罪者としてどうしてもとめなければならない、それから相手を捕捉しなければならない。その場合に、一定の距離をとって停船させるための威嚇射撃あるいは船体射撃、場合によっては正当防衛の射撃、そういうものに必要な最低の武器というものは私どもとして保有する必要があると思いますし、各国のコーストガードもそのような武器は持っております。少なくとも私どもが今持っております、今回は二十ミリ機関砲でございましたけれども、大型船が持っております三十五ミリ機関砲、そういうものは犯罪をする船を一定の距離をとって確実に停船させるための武器でございますので、庁法には違反をいたしませんし、私どもの警察機関として必要なものであるというふうに考えております。

日森委員 そういうことであれば、現在のいわゆる不審船対策については、海上保安庁単独で大体は対応できるということになるのではないかという気がしているんです。

 それで、海上自衛隊との連携というか、関連の問題でお伺いをしたいのですが、海上自衛隊との間に既にマニュアルが策定をされていますよね、昨年の十一月でしょうか。マニュアルを見せてくださいと言ったら、これは秘密だから出せませんというふうに断られましたが、そうなのかなという気もいたします。今回の事件では、先ほども御質問ありましたけれども、海自と海保の間の連絡の不十分、情報の交換の不十分さというのが実は明らかになったのではないかというふうに思っているんです。

 それで、そのマニュアルの中身を我々は関知できないわけですから何とも申し上げようがないのですが、例えば海自から海保に連絡が来るまで九時間とかいう時間的な経過があったとかいうことを考えていくと、策定されたマニュアルが不十分だったのか、あるいはマニュアルどおりに今回の対応がされなかったのか、いずれかの問題があったというふうに考えざるを得ないのですが、その辺についてちょっとお伺いをしておきたいと思います。

縄野政府参考人 海上自衛隊との間の共同対処マニュアルでございますけれども、一言で申し上げれば、一義的には私どもが対処をする。私どもの力を超える場合には、海上警備行動が防衛庁長官によって内閣総理大臣の承認を得て発令されて、海上自衛隊が対応するということでございます。

 私どもとしましては、防衛庁とともに、一つは、その情報の共有、連絡体制をきちんととるということでございます。初動段階から行動終了まで的確な連絡通報を実施いたしまして、情報を共有するということでございます。

 今回、最初の私どもへの通報の時間につきましていろいろ御指摘がございますが、少なくともその時間以降、相互にお互いの動きについては、官邸はもちろんでありますけれども、海上自衛隊との間で私どもの行動、海上自衛隊の行動について連絡通報をリアルタイムで実施いたしまして、その結果、このような成果が得られたというふうに思っております。

 もう一つは、例えば共同行動としてでございますけれども、海上自衛隊から私どもに引き継ぐ、海上自衛隊が視認をしたその船の位置を私どもに通報するに当たり、これは海上警備行動前でもできると思いますけれども、P3Cによって私どもの航空機を誘導して実際の船の位置まで私どもの航空機をリードしてくれたというようなこと。それから、必要に応じて護衛艦が対応できるということで、防衛庁の判断で佐世保から二隻の護衛艦が出港したこと。それから、沈没後の行方不明者あるいは揚収物の捜索に当たりまして海上自衛隊の航空機にも支援をしてもらったこと等々ありまして、私どもは共同対処マニュアルの考え方、項目に従って対処ができたものというふうに考えております。

日森委員 それで、ちょっと関連して聞きたいのですが、二年前の能登沖の不審船事件のときは海上警備行動が発動されて、自衛艦ももちろん出動した。今回の場合は、これは発動されていないわけですね。その辺はどういう線引きで判断をされたのか、どういう条件の中で今回は海上警備行動が発動されなかったのか、ちょっとわかりやすく説明していただきたいと思います。

縄野政府参考人 海上警備行動は、先ほど申し上げましたように、防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得て、海上保安庁では対処できない場合に、海上の治安を維持するために自衛隊に命ずるものでございます。

 そのためには、私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、お互いに事態の発生直後から情報を共有して、私どもの力を超えるかどうかという防衛庁長官の判断ができるようなリアルタイムの情報の共有をしていくということでございます。

 平成十一年の不審船の事案の場合には、私どもの船艇のスピードが相手船に追いつかなかった、燃料切れを起こしかけたという点がございまして、私どもとしてはそれ以上対応できない、私どもだけで対応すれば逃す可能性があるということで、その状況から防衛庁長官が判断をしたものというふうに思っております。

 今回の事案は、排他的経済水域から出発をいたしましたけれども、停船命令を私どものEEZでかけ、追尾を開始いたしまして、私どもの船艇によって一定の対応はできるというふうに私どもとしては判断しておりましたし、そのような状況認識を常に防衛庁にも伝えておりました。そのような観点から、防衛庁長官においては海上警備行動が発令されなかったものというふうに承知をしております。

日森委員 よくわかりました。

 つまり、第一義的に海保が対応するというのはもう当然のことで、結局、二年前の事案と対比をしてみても、それなりに装備といいますか、特に高速艦艇、あるいは、先ほどちょっと御答弁ありましたけれども、もう少し大型の高速巡視船などを配備することによって海上保安庁で対応できる事案の方がむしろ多い。むしろ、海上保安庁にお任せして、そういう意味では、神奈川県警と同じぐらいの人数しかいないとか予算が大分少ないとかということで私ども大分心配をしているんですが、そういう装備がしていければ、これからどの程度の数が出てくるかわかりませんが、海上保安庁で十分対応していけるような事案の方がはるかに多いというふうに判断してよろしいのでしょうか。大臣、答えますか。

扇国務大臣 日本の位置から考えれば、今後もこういう事案がなきにしもあらず。また、こういうことがふえたのでは困りますから、今回は初めて不審船に対して船体にじかに射撃した、これも初めてのことでございます。

 けれども、これを行いますまでに警告を、これはビデオが残っておりますけれども、日本語、韓国語、中国語、英語、あらゆる言葉で停船命令も出しました。そして、停船の旗も出しました。あらゆる信号を発信してもなお停船しなかったということで、最後の手段として、しかも今回、今までと違ったことは、甲板に何回も人が出てきたのですね、不審船の上に。これも今までと違う対応でございましたので、そのたびに警告を発し、そして、聞こえるように拡声器を使ってし、あらゆることをしたということでの停船方法ですし、また、射撃を行いますときに、甲板に上がった人に当たらないようにという警告まで発し、しかも、これから船体に対して射撃を行いますよという、これも放送して、相手に危害が、人体に加わらないようにということをして、すべてテープが残っておりますので、あらゆる方法でいたしましたけれども、少なくとも相手があれほどの重装備をしているということまでは考えられなかったということは現実でございますので、私は、ロケット砲を持つなんということは想像もし得ませんでしたし、あっという間にこれが当たらなくて本当に幸いであったと。

 先ほど、日森先生、防弾ガラスにするのは当然だとおっしゃいましたけれども、これがロケットであれば防弾ガラスどころの騒ぎではございませんので、そういう意味では、どこまで重装備すれば対抗できるかなんということよりも、少なくとも不審船が日本近海に重装備でうろうろするということのないように、国としてのきちんとした対処の仕方を、今後自衛隊と協力しながら、海上保安庁を万全の体制にしていきたいと思っております。

日森委員 ぜひ、頑張れ海上保安庁でやっていただきたいと思っております。

 ちょっと時間がなくなりましたので質問をはしょります。

 であるにもかかわらず、今回の不審船は、どうも漁船らしいといいながら漁具は積んでいないし、果たして漁船と言えるかどうかもわからない、だから不審船だというふうに先ほど大臣おっしゃいましたけれども、その漁船らしきものが単に警告に従わなかったというだけで、しかも、本当に密漁をやっているのかとかあるいは密航者を運搬しているのか、そういう違法な活動を示すような証拠もその時点でははっきりしていないという船を不審船として追尾をしていったわけです。

 そのときには、最初は漁業法違反で臨検をするということになるわけですが、その漁業法違反というのは六カ月以下の懲役ということらしくて、比較的軽微な犯罪に属している、こう言われているわけです。その漁業法違反で追跡をしていった船に、相手が撃ってくる前に三度にわたって威嚇射撃と称して船体射撃を行うということは、どうも威嚇の範囲をはるかに超えているのではないのかという気がしてなりません。

 同時に、二十二日の十四時三十分、日中の排他的経済水域境界線を越えて中国の経済水域に入って、十四時三十六分から威嚇射撃を行った、船体射撃を始めているわけですね。しかも、この不審船と言われる船は出火をしている、火災を発生させているというような状態までなっているわけです。こう考えていくと、どうも海上保安庁の過剰対応ではないのかという気もするわけなんです。しかも外国の経済水域。外国の領海手前まで追跡権が法的にあることはもちろん承知をしていますが、そのことを前提にしても、火災に至るような激しい武力行使が威嚇射撃として行われるということは、国際法上は問題ないとしても、例えば中国あるいは韓国もかなり批判というか懸念の意を表明しているわけですから、外交上の問題を残したのではないかという気がしてなりません。

 この問題についてどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

縄野政府参考人 武器を使用した点についてでございますけれども、漁業法の立入検査、この検査を忌避した罪の現行犯でございます。海上保安庁法二十条一項によりまして警職法の七条が準用されております。警職法七条においては犯人の逃走防止のために武器を用いることは許されております。ただし、凶悪な罪を犯した者でなければ、あるいは正当防衛でなければ危害を加えてはならないということでございますので、危害を加えないという前提で警告もし、そのような武器も使って、私どもとしてはほかに停船をさせる手段がないという判断で船体射撃をしたものでございます。

 それから、中間線を越えて武器を使用したことにつきましては、先ほども申し上げましたように、中間線の手前、私どものEEZで停船命令をし、武器使用を開始し、追跡を開始したということでございまして、海洋法条約上何ら問題がないというふうに考えております。

日森委員 法律的には私も十分承知をしております。

 ただ問題は、その中国のEEZ内でそういう事態が起きたということについて、外交上の問題が当然あるのではないかという心配をしているんです。現に、中国は遺憾の意を表明していますし、韓国の新聞も御存じのとおりですので多くは申し上げませんが、北朝鮮かどうか特定できませんが、その不審船の行動については非難しつつも、日本の海上保安庁の行動について、日本政府の行動について非難を、非難というか批判を行っているという報道も韓国国内では行われているわけです。

 そういうことを考えたときに、外交上の問題として非常に重要だったのではないのかという気がしてならないんです。それはこちらの判断ですが。それについても、特にアジアの諸国に対しては説明責任があるというふうに考えていますので、今後ぜひ努力していただきたいと思います。

 同時に、これは最後に大臣にお聞きしたいんですが、八日の閣議が終わった後に、新しい法律を、沿岸警備のための法律を整備する必要があるのではないかというコメントをお出しになられまして、これは新聞で読んだのですが、閣議の後の記者会見ですかね、というふうに新聞報道されていました。

 今特にその新しい法律をつくるということについて、いろいろ御意見があるようですが、私ども、その新しい法律をつくって何やらテロ対策法やあるいは有事法制と結びつけるようなことがあってはならないのではないかという気がしていますし、現行法の中で、先ほどの長官の発言だけでは不十分なんですが、装備などの改善あるいは体制の整備などをしていくことで十分に対応できるのであれば、改めてそういう法律まで準備する必要がないのではないか、中身についてまだ聞いていませんからわかりませんが、という気もしているんです。

 そこで、大臣の真意を最後にお聞きして質問を終わりたいと思います。

扇国務大臣 私どもは少なくとも、海上保安庁、国民の生命財産を守り、我々国会議員もそうですけれども、あらゆる対処をしている。今、日森先生のお話を聞いていると、何もしないで、威嚇射撃もしないで、どうぞお帰りくださいと言った方がよかったように聞こえるので、私これだけは何としても、海上保安庁のとった態度というものに対しては明快に今回は御理解いただけると思っておりますし、一々、追いかけているときに、外国に何と言われるだろうと思って私たちは行動しておりません。日本の国民の生命財産、国土を守るために海上保安庁が行動しているわけでございますから、そのことを私たちはきちんと認識しながら、海上保安庁の任務たるものがどうあるべきか、どうするべきかということの推考を、私は、国民のために、国土のためにするのであるというこの海上保安庁の認識だけはぜひ誤解のないようにしていただきたいと思います。

 私は、重装備をすれば万全であるとは思っておりません。ですけれども、二度とこういう重装備をした船が日本近海に来ないように、それが一番大事なことなので、私はあくまでも、何の目的で、何をしに来たのかというために引き揚げたいということを午前中から申し上げておりますので、どうか今後、どういう装備をし、どういう活動をするかということではなくて、原因が何だったのか、こういう船がうろうろしないようにするということへの今後の対処の仕方というものをしていきたい、そのために近隣諸国の御理解を得て、その原因究明をしていきたいということをけさから申し上げているのでございます。

 私は、これだけ海に囲まれている日本、海洋王国日本と言われますけれども、どこでも国境がつながっているところには国境警備隊があるわけですね。ですから、海上警備隊があってもいいのではないか。現に、アメリカもカナダも、あらゆるところで海上警備隊というのを持っております。私はそれに匹敵するのが海上保安庁だと思っておりますので、今後、そういうことも含めて、今先生がおっしゃった諸外国に脅威を与えないような警備の仕方はどうあるべきかということもお互いに研究していきたいと思っております。

 また、日本の国が不安だと思うことは近隣諸国にとっても不安なことでございますから、やはりどこの国のものであるか、何を目的に来たかということだけは真相究明に総力を挙げていくように努力していきたいと思っております。

日森委員 いや、法律、新法についてはどんなお考えなのでしょうかということを最後にお聞きしたんですけれども。ちょっと時間が超過して申しわけございません。

扇国務大臣 きょうは午前中からその話も出ております。検証した上で、どこをどう直すべきか、どこをどうしたらいいのか、それは改めて国会の場も通じて、こういう委員会で検討したいと先ほどもお答え申し上げたとおりでございます。

日森委員 ありがとうございました。

赤松委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十九分散会




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