衆議院

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第13号 平成14年5月8日(水曜日)

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平成十四年五月八日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 木村 隆秀君 理事 実川 幸夫君
   理事 橘 康太郎君 理事 林  幹雄君
   理事 古賀 一成君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      赤城 徳彦君    倉田 雅年君
      菅  義偉君    田中 和徳君
      高木  毅君    高橋 一郎君
      谷田 武彦君    中本 太衛君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      二田 孝治君    松岡 利勝君
      松野 博一君    松宮  勲君
      松本 和那君    森田 健作君
      吉川 貴盛君    阿久津幸彦君
      井上 和雄君    大谷 信盛君
      後藤  斎君    鮫島 宗明君
      樽床 伸二君    津川 祥吾君
      永井 英慈君    伴野  豊君
      平岡 秀夫君    前原 誠司君
      牧野 聖修君    斉藤 鉄夫君
      高木 陽介君    山岡 賢次君
      大幡 基夫君    瀬古由起子君
      原  陽子君    日森 文尋君
      保坂 展人君    西川太一郎君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通副大臣      月原 茂皓君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   高橋 健文君
   政府参考人
   (警察庁交通局長)    属  憲夫君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局長)      鈴木 孝之君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 河村  博君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鈴木 直和君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           濱田 隆道君
   政府参考人
   (経済産業省商務情報政策
   局消費経済部長)     青木 宏道君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房長) 風岡 典之君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            岩村  敬君
   政府参考人
   (国土交通省都市・地域整
   備局長)         澤井 英一君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  竹村公太郎君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  大石 久和君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  石川 裕己君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           洞   駿君
   政府参考人
   (国土交通省海事局長)  安富 正文君
   政府参考人
   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君
   政府参考人
   (国土交通省政策統括官) 丸山  博君
   政府参考人
   (国土交通省国土地理院長
   )            星埜 由尚君
   参考人
   (日本道路公団総裁)   藤井 治芳君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月八日
 辞任         補欠選任
  田中 和徳君     森田 健作君
  今田 保典君     後藤  斎君
  高木 陽介君     斉藤 鉄夫君
  保坂 展人君     日森 文尋君
  二階 俊博君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  森田 健作君     田中 和徳君
  後藤  斎君     牧野 聖修君
  斉藤 鉄夫君     高木 陽介君
  日森 文尋君     保坂 展人君
  西川太一郎君     二階 俊博君
同日
 辞任         補欠選任
  牧野 聖修君     鮫島 宗明君
同日
 辞任         補欠選任
  鮫島 宗明君     今田 保典君
    ―――――――――――――
四月二十六日
 建築基準法一部改正法案の修正に関する請願(保坂展人君紹介)(第二五六三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長風岡典之君、総合政策局長岩村敬君、都市・地域整備局長澤井英一君、河川局長竹村公太郎君、道路局長大石久和君、住宅局長三沢真君、鉄道局長石川裕己君、自動車交通局長洞駿君、海事局長安富正文君、航空局長深谷憲一君、政策統括官丸山博君、国土地理院長星埜由尚君、内閣府政策統括官高橋健文君、警察庁交通局長属憲夫君、公正取引委員会事務総局経済取引局長鈴木孝之君、法務省大臣官房審議官河村博君、厚生労働省大臣官房審議官鈴木直和君、経済産業省大臣官房審議官濱田隆道君及び経済産業省商務情報政策局消費経済部長青木宏道君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本道路公団総裁藤井治芳君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。
福井委員 おはようございます。自由民主党の福井照でございます。
 まず、早速御質問させていただきたいと存じますけれども、昨日から有事法制の審議が始まりました。大臣には御苦労さまでございます。まず第一問といたしまして、有事法に対する国土交通省の基本的スタンス及び今後の取り組みいかんという観点で御質問申し上げたいと思いますが、若干趣旨説明をさせていただきたいと思います。
 有事法にも二つございまして、きのうから始まっておりますのは、第一分類、第二分類という今出されている法律への対応、そしてもう一つは、第三分類という今後の法整備に対する対応という一つの軸がございます。そして、もう一つの軸としては、軍事的防衛、フォース、軍の防衛と民間の防衛ということで、そういう観点もございます。
 私は、どちらかといえば、国土交通行政として、防衛庁や内閣府から、協力しろということで、受け身的なスタンスではなくて、民間防衛こそ国土交通行政の今後の大きな大きな柱とすべきではないかという立場で御質問させていただきたいというふうに思います。
 まず、軍隊による防衛の前提として、国民による国民のための防衛、つまり民間防衛が国体、国の体制の基礎になっているというのは国際的常識というふうに思います。スイスでもドイツでもフランスでもアメリカでも、アメリカではFEMAという組織がありますし、ほかの国でも、国家組織として、行政機関として位置づけられているわけであります。
 一見、こういった点は国土交通行政とは関係がないように感じられますけれども、民間防衛と国土交通行政が実はこの国の形というのを今から制度設計しているわけであります。小泉構造改革で五十年、百年もつこの国の形を制度設計しようとしている今、この二つが非常に密接でなければならない、いや、国土交通行政の根源的な基本としなければならないのではないかという論点を提起しながら、現在の所掌事務の範囲内においてお答えいただけるものをお答えいただきたいということでございます。つまり、民間防衛という分野自体がこの国の形から欠落しているということを指摘申し上げたいと思います。
 例えて言うならば、生命維持装置で神経系と循環器系と免疫系というのがございますけれども、神経系と循環器系は、我が国は非常に効率的なものを整備したわけであります。神経系は、情報の伝達、テレビ、ラジオ、IT産業というものを立ち上げました。循環器系は、人の流れ、物の流れ、お金の流れ、経済のシステムというものを立ち上げました。非常に効率的なもので我が国の高度経済成長を支えたわけでありますけれども、一方、免疫系の国の仕組みというものについては、教育以外ございません。しかし、本当はもっと必要であるということであります。
 つまり、何を言っているかといいますと、免疫系というのは、自己を増殖し、自己を規定し、そして環境に順応する、免疫系というシステム自体も進化させるというスーパーシステムでございまして、そういうものが日本には欠けている。しかし一方、村落共同体への異物排除というのは、我が国の民族的な特質として持っているわけでありますけれども、国全体としての免疫系、つまり、自己を認識し、そして愛国心を持ち、自己の人生像と国家像とを重ね合わせて、一人一人の心の中のこの国の形というものをつくり上げていくことこそ今肝要ではないかというふうに思います。
 そういう意味で、体をもって身体的に学習する民間防衛のシステムこそ最適だと思います。もちろん、現在ではこういうことについては国土交通行政の所掌事務外でありますけれども、この点についてどのようにお考えになるのかということ。
 そしてもう一つは、安全保障会議に国土交通大臣が入られていこうとしております。これは、海上保安庁、あるいは港湾、空港ということが重要だからということでありますけれども、もっと言えば、今の民間防衛のような、基本的な防災ソフトあるいは防災システムの組織化という行政分野を強化すべきであるという認識で、国土交通大臣には安保会議でファンクションをしていただきたいということをこいねがうわけであります。
 本日、大臣も副大臣もお見えでございますので、論点はいろいろとあろうと思いますけれども、この有事法制に対する国土交通省の基本的なスタンス、そして今後の取り組みということで御教示を賜りたいと存じます。よろしくお願いいたします。
扇国務大臣 おはようございます。
 御教示と言われるほどのものではございませんけれども、今、福井議員がおっしゃったように、いつ何が起こるかわからないというのが、我々生きている者の常でございます。そのときに何ができるか。そして、災害というものもいつ降ってわくかわからない。
 阪神・淡路大震災のときも私申し上げました。まず、みずから助ける自助、そして、ともに助ける共助、最後が公の公助、私はそうあるべきだと思ってます。それが、今、福井議員がみずからをとおっしゃるのはそのとおりだと思いますけれども、私たち国会議員は、国民の生命財産、国を守ること、何かのときに自助、共助、公助、これは当然ですけれども、我々はもっと大きな目で、一般の人が収集し得ない情報も我々は把握し、それをどうしていくかということが、私は一個人ではなくて国会議員に課せられた大きな責務であると認識しております。
 そういう意味で、戦後今日まで五十七年、振り返ってみますと、個人的なことを言うつもりもありませんけれども、私も今日までよく無事にこうして皆さんと御一緒できると思っています。そういう年代でございます。そして、苦しいときを過ごしてきましたけれども、私たちはそれなればこそ、二度と多くの国民を第二次世界大戦のような目に遭わさない。そして、私たちが今なし得ることは何なのか、また我々の子供や孫に何をし得るか、これが我々に課せられた今大きな問題であろうと思っています。今回の有事法制三法案も、昨日から議題に上がりました。私は、国という形を持っている独立国家であるならば、そういうときを想定しないということの方が国としてのていをなしていないと思っておりました。
 ですけれども、戦後五十七年たって、十年一昔といいますけれども、五十七年の中の少なくとも四十七年間は、憲法を論じることもタブー、言論の自由がありながら、あらゆることにタブーがございました、言わずもがな。それが、この国会の場で堂々と衆参で憲法調査会もおつくりになって、そして我々が今の形を国民の目に見せることができるようになった、危機管理についても有事法制に対しても論議できるようになったということは、私は一個人の人生体験からしても感無量でございます。
 もっと早く我々は国民の前にこれを明らかにし、日本の国としてでき得ること、また憲法の中ででき得ないことを国民に明快にするべきであるというのは、私の自身の考え方でございましたので、今やっと日本らしい、一国の国としての体制のあるべき姿が国会の場で展開されるようになったということを私は大変喜びに感じておりますだけに、喜びとともに責任の重さ、またこの論議の行方というものが国民の多くの目にとまり、そして国民全体で有事というものを考えるような論議が尽くされることを心から願って、真剣に議論に参加させていただきたい。
 また、国土交通省は、御存じのとおり、輸送、航空、港湾、陸海空を所管いたしますから、一たん有事の場合には国土交通省として何をなし得るのか、また自衛隊が活動する何にお手伝いできるのか、自衛隊の関係にかんがみましても十二の法案を、陸海空の中で十二本の法案に関与するという国土交通省ですから、あらゆる面で我々はこの有事法制というものに対して真剣に、国民の皆さんの理解を得ながら、また理解が、今日まで論議されていないから、及んでいないというところ、これも我々の大きな責任であろうと思っておりますので、そういう意味では全く、二十一世紀の冒頭にこういうことが国会で論議されることこそが、私は日本らしい姿になったという喜びと責任感で打ち震えていると言っても過言ではないくらいな今時期であると思っております。
福井委員 ありがとうございました。
 次に、内閣府の方から御答弁いただきたいと思います。
 この有事法も、まあ戦時法というよりは、むしろ事前のリスクマネジメントのための法律というふうに私自身は理解をしております。防災も、事が起こってからではなくて、事前のリスクマネジメントということの方がはるかに大事であります。一方、省庁再編が行われまして、行政改革が行われまして、防災については内閣府に一元化をされました。それで、改めて行政の意思というものを問いたいというふうに思います。
 アメリカのFEMAのように、平常時は防災機能、ロサンゼルスの地震でもサンフランシスコの地震でもお助けマンとしていろいろな方々をお救いになられました、そういう組織があります。有事には防衛機能を果たします。あの九月十一日のテロのときには実は大統領機能はFEMAのヘッドクオーターにあったとすら言われている、そういうものがございます。民間防衛も防災も同じ組織でやっているということにみそがあるわけでありますけれども、まあそれは内閣府の所掌事務の枠を超えるわけでありますけれども。
 本日はその内閣府の方から、FEMAのような組織が日本で何とかできないものかということについての御見解を伺いたいと思いますが、よろしくお願いします。
高橋政府参考人 御指摘のありましたアメリカのFEMAでございますが、大規模災害等の発生時に、州政府と連絡をしつつ、災害応急対応から復旧復興にわたる連邦各機関の支援を総合調整する機関でございます。また、平時は、連邦対応計画の整備ですとかあるいは災害のための研修、訓練の準備、被害軽減等を担当しております。
 アメリカにおきましては、連邦制のもとで、州が事実上の国家でございまして、州を中心として災害に対応することが原則でございます。ただ、州の対応能力を超える場合には、州知事が大統領に対して大災害または緊急事態の宣言を要請して、大統領宣言後に連邦政府の支援が始動する、これが原則でございます。連邦政府の支援としましては、連邦調整官が任命されまして、州政府とともに災害の現地事務所を設置して、この事務所を通じて総合的な調整、支援を行うことになってございます。
 我が国におきましては、平時から、それぞれの省庁において、地方公共団体と非常に密接に連携して、災害対策が講じられております。また、大規模災害の発生時には、官邸の危機管理センターに内閣官房、内閣府、そして国土交通省を初めとする関係省庁の行政の事務責任者が緊急に参集することになっておりまして、初動対応に遺漏ないように備えることとしております。また、現地の状況等で必要な場合には、防災担当大臣または防災担当副大臣を団長としまして、各省庁の担当者らから成ります政府調査団を現地に派遣する。これらの体制によりまして、政府一体となって災害対策に当たっております。
 さらに総合調整が必要となる場合には、政府に非常災害対策本部あるいは緊急対策本部を設置することになるわけでございまして、大規模災害発生時の初期対応の段階では、御指摘のようなFEMAのような形をとるというのも一つの考え方ではありますが、我が国におきましては、各省庁が政府一体となって災害対応する体制となっておりまして、今後とも、日本の国情を踏まえながら、関係省庁や地方公共団体と密接な連携をとって、政府としてより迅速な支援を行えるような方策の充実に努めてまいりたいと思っております。
福井委員 ありがとうございました。
 まあ、そうなんですけれども、FEMAの場合は、フォーキッズという、子供用の、子供さんが見られるサイトがございまして、九月十一日の自分が書いた絵をそのサイトに寄せたりして、その安心、安全の組織というのが子供にも目に見える形で組織整備がされているということをぜひ御参考にしていただきたいというふうに思います。
 次に、そのFEMAのヘッドクオーターでは、全米各都市のデジタル地図が大画面で把握できます。的確な救助活動が指示できるシステムがございます。そのデジタル地図の中に、下水道管がどこに埋まっているか、ガス管がどこに埋まっているかという情報も含まれているわけです。
 我が国も、GIS整備に乗り出して数年、雇用対策にもなるから、内需拡大にもなるからということで積極的に進めてきたと思いますし、コンサルタント業界もそのマーケットに注目しております。しかし、一方では、地方行政においてはプライオリティーがどうしても低くなる。ですから、基本的な地図は、デジタル地図は国でやるけれども、あとは地方でどうぞと言われても困る状況に今あるわけであります。国としても、そのメタデータを自分で整備していく、国として整備していくという姿勢が重要と思われますけれども、本日は国土地理院長にお見えいただいておりますので、このデジタル地図の整備状況についてお教えをいただきたいと思います。
星埜政府参考人 お答えいたします。
 ただいまお話のございましたように、災害対応等の国土の管理を行う上で、地形とかあるいは河川とかあるいは道路、鉄道、こういった国土の骨格的かつ基盤的な地理情報を正確に把握しておくということが重要であるというふうに私どもも認識しております。
 こういった防災分野を初めとしまして、都市計画とかあるいは環境問題等々の行政分野において活用できる骨格的かつ基盤的情報を含むデジタル地図を整備するということにつきましては、特に重要な事項であるというふうに認識しております。
 ただいまお尋ねの件でございますけれども、国土地理院におきましては、国土のこういった骨格的かつ基盤的な地理情報につきましてデジタル地図として整備しておりまして、平成十二年度までに全国の都市計画区域、これを対象にいたしまして、縮尺二千五百分の一のデータを整備しております。また、平成十三年度、昨年度までにその他の地域を対象といたしまして、縮尺二万五千分の一のデータを整備してございます。ということで、全国のデータの整備がされているということでございます。これらのデータにつきましては、CD―ROMで刊行しておりますが、そのほか順次インターネット等を通じまして広く一般に公開していきたいというふうに考えているところでございます。
 また、地方公共団体あるいは民間におきまして整備されております地理情報もございますが、こういったものも広く有効に活用できるよう、デジタル地図情報に関する標準、これを策定いたしまして、この普及を図っているというところでございます。
 なお、今後でございますが、国土というものは変化するわけでございまして、このデータの更新というものが非常に重要になってまいります。というところで、データの更新等、社会の要請に的確にこたえて、一層の整備に努めていきたいというふうに考えております。
福井委員 ありがとうございました。
 もう一度内閣府の方から御答弁いただきたいと思いますけれども、基本中の基本であります我々のコミュニティーという観点で御質問を申し上げたいと思います。
 隣組とかバケツリレーとか、コミュニティーレベルでの防災意識、防衛意識については、我々としては負の記憶があるものですから、戦後のこの国の形をつくり上げる意味で、コミュニティーに防衛、防災意識を刷り込むということについては、忘れてきたあるいは逃げてきたということがあろうかと思います。しかし一方で、特に過疎地域においては、農民、農村の維持管理、そして漁師さん、一本釣りの漁師さんの維持管理というのも重要になってきております。
 防災が一元化したものですから、どうしても高いところに行政が行ってしまって、現場感覚からひょっとして遊離しているのではないかということを疑念として思いますので、ぜひその疑念を晴らしていただくという意味で、地域防災を強化するという観点からコミュニティーの重要性についてどのようにお考えか、御紹介いただきたいと思います。
高橋政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、平常時からその地域のコミュニティーをちゃんと醸成しておくことが防災の観点から大変重要だと思っております。
 阪神・淡路大震災のときにおきましても、消防あるいは警察、自衛隊、そういった公助で救援活動に必死に当たっていただいたわけですが、例えば、神戸市におきます、建物が倒壊したその下敷きになった人たちのような、救助を必要とされた方、こういった方の八五%が近隣の一般住民の方、そしてさらに五%が地域の方々から成る消防団、ですから、九割の方がそういった意味で共助ということで救われているケースがございます。
 また、個々の具体の例で申しますと、例えば、その地域の住民の方から成る消防団におきましては、事前にひとり暮らしの世帯の名簿を渡されていた、そういうようなこともあって、非常に的確に救助活動が行われた事例もございます。
 例えば、阪神・淡路の震源地に非常に近い淡路島の北淡町、これはその町自体で三十九名の死者、八百七十名の負傷者を出す大変な被害を受けたわけですが、ここでは、地元の消防団と住民が協力していろいろ救助活動に当たった結果、その日の、被災当日の夕刻にはもう行方不明者ゼロということで確認できた、そういったコミュニティーの大事さが現実に確認できております。
 しかしながら、地域を構成する住民というのは多種多様でございます。委員御指摘ありましたような過疎地域におきましては、そういう地域防災を機能させるためのコミュニティーが崩壊しつつあるというのも、これも大きな問題でございます。また、新興住宅地等では、地域コミュニティーが大変未成熟で、住民一人一人がコミュニティーの一員として防災の担い手であるという自覚が必ずしも高くなかったり、あるいは地域の防災リーダーが不足している、そういったことも指摘されてございます。
 このため、住民に対する正しい防災知識の普及、あるいは防災マップ等の公開によります住民との防災情報の共有、そして地域の防災リーダーの育成、防災資機材の整備等を通じた地域コミュニティーによる防災体制の充実、こういった施策を通じまして地域の防災対応力が確保されるように、関係省庁と協力しまして今後とも対処していきたいと思っております。
福井委員 ありがとうございました。
 そして、もう一つ大事なことは、我が国の建設業でございます。六十万事業所、六百万人というその力を資源として考えますと、日々防災意識の高揚に努めておりますし、機械のオペレーターはおりますし、水防のノウハウはありますし、地震対応のノウハウもありますし、どういう資材を備蓄しておればいいかというノウハウすらあるわけであります。わざと備えを持っている。
 こういう資源、国土交通行政においてあるいは防災行政において、建設業界というこの世界を使わない手はないと思いますけれども、こういったことを今後国土交通行政の大きな柱として立てるべきだと思いますが、きょうのところは、建設業における就業者数の推移、そして、例えばシンクタンクなどにおける今後の見通しについてお伺いしたいと思います。それでもって、建設業界全体がいかに民間防衛あるいは防災について寄与できるかということについてこれから我々としても考えていきたいというふうに思いますので、数字を御紹介いただきたいと思います。
岩村政府参考人 建設業に就業されている方の数の推移そして将来の見通しでございますが、総務省の労働力調査が一つ材料にあるわけですが、建設業の就業者総数は、バブル崩壊後、建設の投資が伸び悩んだわけですが、そういう中で、政府の建設投資、これは数次にわたる経済対策等で一定の額が投資されてきたというようなこともございまして、官民合わせた投資はピークを既に過ぎておったわけですが、平成九年まで、実数そして就業者総数に占める割合、それぞれ伸びております。平成九年がピークだったわけですが、六百八十五万人、全産業に占める就業者の割合が一〇・四%ということで、平成九年までは伸びておりました。
 そういう中で、実は、今申し上げたように、バブル崩壊後、建設の投資が減っています。それで、そういうことを受けまして、平成十年以降は市場が縮まってきた、投資が減ってきたということで、建設業の就業者数は減少傾向にございます。直近の、ことしの三月の調査によりますと、就業者数は六百二十八万人、先ほど六百八十五万がピークと申し上げましたけれども、六百二十八万人まで減っておるわけでございまして、これは前年同月比で八万人のマイナス、そして十六カ月連続して減少しているという、就業者数が減る傾向にございます。
 そして、今お尋ねの今後の見通しでございますけれども、ことしの二月に建設経済研究所が発表した予測によりますと、平成十四年そして十五年の二年間で約三十五万人の建設就業者数の減少が見込まれております。ただ、この予測のベースとなりました建設投資の額が、建設経済研究所で使った数字と、実は先月の三十日に国土交通省が建設投資の見通しを出しておりますが、この中で見る数字と比べますと、経済研究所の予測値が下回っております。ということは、ここで乖離がございますので、今申し上げた三十五万人というのはもう少し減少の幅が大きくなるのではないだろうかという見通しがございますが、いずれにしましても、今公式に出ておる数字は、今後二年間で三十五万人の減少だというふうに見込まれております。
福井委員 ありがとうございました。
 以上で有事法制に関する質問を終わらせていただきまして、次に、今年度から始まりました自然再生事業について御質問申し上げたいと思います。
 自然を再生するということで非常に国民的期待は大きいわけであります。なおかつ、公共事業のイメージを全く根本から一新するという可能性すら秘めているわけであります。
 現場では、生態学もわかっている、土木工学、河川工学もわかっているという技術者が必要とされておりますし、それは恐らく国土交通省でお持ちの技術者としていらっしゃるんじゃないかという観点から、国営公園の今後の展開の柱として自然再生事業を大きく展開するということについていかにお考えか、教えていただきたいと思います。
澤井政府参考人 自然再生事業を国営公園の展開の柱にすべきではないかという御質問でございますが、都市公園全体につきまして、これまでは、どちらかといいますと、一人当たりの公園面積といったような、量的な目標に重点を置いて整備を進めてまいりましたけれども、今後は質的な側面、例えば御指摘の、都市における自然環境の保全、再生あるいは都市の防災性の向上といったことにより一層の重点を進め、なおかつ、公園事業だけではなく、都市全体のミニ緑地等を含めた緑のネットワークの拡大を図っていくという観点から、総合的に進めていかなければいけないと思っております。
 そうした中で、都市公園事業の取り組みにつきまして、自然再生との関係で幾つか具体的に申し上げますと、例えば、ラムサール条約がございますが、ここに登録されております日本の十一カ所の湖沼がございますが、その中で、例えば千葉県の谷津干潟など五カ所が都市公園として整備、管理されております。
 また、十四年度からは新たに自然再生緑地整備事業という事業を創設いたしまして、都市における樹林地や湿地、干潟の再生、創出など多様な生物の生息、生育基盤の確保を図りたいと考えております。この事業によりまして、例えば埼玉県の三富新田くぬぎ山地区におきましては、環境省との連携を図りながら、廃棄物処理施設跡地におきます樹林地の回復を図りまして、里山環境が再生された緑地を整備したいということを考えております。
 御指摘の国営公園につきましても、国営昭和記念公園では、元飛行場であったところを、その跡地を緑地に復元し、現在ではトンボが飛来する湿地が整備されております。また、国営常陸海浜公園におきましても、砂丘あるいは海浜植生の保全、復元が図られております。
 これまでもいろいろそうした取り組みを進めてまいりましたけれども、今後とも、地域の創意工夫を生かしながら多様な自然再生の実現を図るための公園緑地の整備を進めてまいりたいと考えております。
福井委員 ありがとうございました。
 持ち時間がやってまいりましたので、鉄道局長には大変申しわけございませんが、次回またLRTで御質問させていただきたいと思います。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
久保委員長 古賀一成君。
古賀(一)委員 民主党・無所属クラブを代表しまして、きょうは一般質問に立たせていただきます古賀一成でございます。
 先ほど、大臣の方から、有事立法に関して、この五十有余年の変化に心打ち震えてというお話がございました。私は、きょうはいわゆる国土交通行政の所管に係ります、大きく二つの点について、この二十年の変化、そして現在があって、向こう二十年を想像したときに本当に大丈夫だろうかと思うその二つの問題について、心の中に懸念を持ち、打ち震えるほどではございませんけれども、指摘をし、大臣の所見をお聞きしたいと思います。
 まさに時代は本当に大転換期だと思うんですね。大転換期のあらしにさらされている問題がたくさんあるんですけれども、きょうは私は、時代の変化のあらしにさらされているとともに、しかし、行政が、いわゆる過去のパラダイムといいますか、これまでの政策の延長に少しく新しい機軸を入れてやれば済むんじゃないかと思っている、しかしそれでは本当はもたないだろうという二つの問題でもあるんです。
 それは何かと申しますと、一つは、これから少子化、人口が大幅に減っていく、そして超高齢化社会に突き進んでいく中での地方都市のあり方、とりわけ中心市街地の育成というものに私は大変な心配を持っておる、この点をお聞きしたい。これが一点であります。もう一点は、いわゆる国際ハブ空港機能論といいますか、大空港時代において、アジア諸国が次なる大航空時代に備えてのインフラを整備しておる。この前、成田の開港がありましたけれども、果たして経済大国日本の国際ハブ空港機能、今の状況で大丈夫だろうか。この二点について御質問したいと思います。
 第一点目でありますけれども、まず地方都市から入りたいと思うんですが、都市・地域整備局長、澤井局長と、経済産業省、青木消費経済部長にそれぞれ所管の分野についてお聞きしたいんですが、中心市街地活性化事業。
 この数年、法律もできましたし、大変鳴り物入りで、各省庁珍しくといいますか、相協調しましてこの法律ができました。私も期待するところ大変大でありますけれども、法律はつくったけれども、後のフォローというか、実施段階になると実際上これが機能していないという例はたくさんございます。補助金もそうであります。融資関係もそうであります。
 そこで、まずお聞きしたいのは、中心市街地整備活性化法による市町村の基本計画、これをつくるのがスタートになっていますけれども、これは実際どこまで進んでおるのか、ひとつ御披露をお願いしたいと思います。
澤井政府参考人 中心市街地活性化によります基本計画の作成状況のお尋ねでございますが、法律が平成十年の七月に施行されまして、ことしの五月一日現在で五百三地区において基本計画が策定されております。
古賀(一)委員 問題は、数は五百三ということはわかりました。ふえてきております。では中身の点ですね。私も、地元あるいは地元に限らずいろいろな地方自治体とまちづくりの話をしたり地域づくりの話をしますけれども、どうもこの二十年前、あるいはもっと前からと比べてみまして、いわゆる地方自治体の計画立案能力というか、あるいはまちづくりをみずから発案してやっていこうという気概というか情熱に私は陰りがあるんじゃないかということを常々最近心配しておりまして、基本計画五百三計画が出たということは承知いたしましたけれども、この点について、どうでしょうか、所管局長として、私が今申しました懸念を感ずるところはございませんか、問題点はございませんか、所感をお聞かせ願いたいと思います。
澤井政府参考人 およそこうした計画というのは、それを実行しようとする方々が汗をかいてつくっていくという過程が非常に大事だと思っておりまして、御指摘のような、余り汗をかかずに、ある意味じゃ専門家に丸投げをしてつくるような計画も全くないわけではないと思います。しかし、この中心市街地活性化法に基づく施行状況を関係の経済産業省、総務省と一緒にずっとフォローし、いろいろなアドバイスもしている中で、例えば幾つかの例を申し上げますと、九州、大分県中津市の中津市中心市街地地区あるいは長野県松本市の松本中心市街地地区、これは、それぞれ城下町でもありまして、歩行者ネットワークの整備とか公園、広場の整備等を総合的に実施する、歴史を生かした回遊性の高いまちづくりを進めるということに大変熱心にお取り組みになっていると考えております。
 また、もう一つ挙げますと、山形県の鶴岡市鶴岡地区におきましては、都市計画道路等の施設整備にあわせまして、地元まちづくり協議会によるワークショップなどのまちづくり活動を支援していくということによって、幅広い関係住民の方々の参加のもとに活性化に取り組んでいる、こういう地区が一方でかなりふえてきているというように考えておりまして、施行間もないということもありますけれども、これから大いに支援し、またその成果に大いに期待をしていきたいというふうに考えております。
古賀(一)委員 いい例だと思うんですが、お示しをいただきました。問題は、私は、こういう法制度をつくるというだけでは物事は完結しないと思うんですね。それは一つの条件であります。
 今、具体的な事例を挙げられました。これなんかは、いわゆる他の市町村が見れる形で、例えば山形の鶴岡はこんなまちづくりをしているよと。もちろん活字もあるだろうし、デジタルの画像もあるのかもしれない。そういったものは、国土交通省のホームページなり、あるいは特別の関係団体が広く自治体、国民に知らせるような仕組みになって、いわゆるモデルとしてPRするようなシステムになっているんでしょうか。
澤井政府参考人 おっしゃいますように、成功した事例、あるいは必ずしもうまくいかなかった事例、こういったものを全国的に収集して、一生懸命頑張っておられる地方の皆様方に提供するというのは、私ども、大変重要な役割だと思っておりまして、徐々にそれを進めておるところでございます。
 現在、先ほど申し上げました三省共同で、中心市街地活性化推進室という部屋をつくりまして、そこにいろいろな情報に対するアクセスが可能なシステムを設けたり、あるいは、個別の相談や何かに応じたりということも現にやっております。現に、そのホームページへのアクセス数も、平成十一年八月に開設したんですけれども、既にこれまでに二十一万件に達しております。また、いろいろな事例も含めて、取り組みなり仕組みを紹介したパンフレットを関係省庁統一でつくっておりますが、既に十五万部配布されているということもございます。
 なお、関連いたしまして、十三年度、昨年度には、中心市街地の活性化の取り組みがこれでいいのかどうかという診断とか助言を希望する市町村を特に募りまして、そのうち十の市と町を対象にそうした事業も実施しております。そのようないろいろな取り組みをしております。
古賀(一)委員 私は、アドバイスといいますか、大臣の方にもちょっと頭に置いていただきたいんですが。
 今、三省庁でつくられたパンフレットあるいはホームページというものを見させていただきました。これは私は、意地悪を言っているわけじゃないんです、建設的なアドバイスとして申し上げたいんですけれども、このパンフレット、写真のアングルが悪いし、色もよくないし。どうせなら、そこら辺は、やはり制度というのはつくるだけじゃなしに、各市の市長さんであれ部長さんであれ、そういう人が見た瞬間に、これはいいと思うような、もっとリファインされた工夫というものを今後ひとつ頑張っていっていただきたいと指摘をさせていただきたいと思います。
 もう一つ局長にお聞きしたいんですが、まちづくり総合支援事業がありますね。これは非常に総合化されたメニューということで、一つのモデルケースだろうと思うんです。これの実施状況、評判、みずからの自己評価といいますか、そこら辺のところはいかがでございましょうか。
澤井政府参考人 御指摘のまちづくり総合支援事業、平成十二年度に創設されまして、今年度、平成十四年度におきましても、予算額を十三年度に対しまして一割増の国費六百六十億ということで予算を措置しております。この六百六十億で十四年度の事業予定箇所は四百九十七、約五百地区でございます。
 特に今年度からは、従来からいろいろなハード事業を地域の判断で自由に組み合わせて使えるということで、大変要望の強い補助事業でございましたけれども、今年度から、まちづくり協議会あるいはNPOの方々の取り組みに対する支援も対象にいたしまして、充実を図ったということでございます。
古賀(一)委員 では、現行制度の中のもう一つの大きいテーマだと思うんですが、中心市街地商業等活性化総合補助事業、経済産業省でございますが、きょう来ていただいておると思いますが、ひとつ運用状況、問題点、何かいい具体事例があるならば、ぜひ何カ所か教えていただけたらと思います。
青木政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の中心市街地商業等活性化総合補助事業でございますが、この事業は、中心市街地における商業の活性化を促進するために、いわゆる商業基盤施設のハード整備事業、さらにこれと一体となったソフト事業を、その地域の特性を最大限に生かしながら、これに取り組む市町村に支援をするために、実は平成十三年度に新たに創設をしたものでございます。
 平成十三年度におきましては、この事業を活用しまして、初の試みとして二つの自治体の事業の支援を行ったところでございますが、一例を挙げますと、愛知県の豊川市におきましては、全国的に知名度の大変高い日本三大稲荷の一つと言われております豊川稲荷、この観光施設を最大限に活用いたしまして、まずここに観光客の誘致を図るということ、ここに来ていただきました観光客をさらに中心市街地の方に誘致をするといったような活性化をねらいといたしまして、駐車場の整備事業と観光マップの作成といったような事業を実施中でございます。
 この事業は、当該地域の商業者、さらには住民の参画も得ながら、中心市街地活性化に取り組む市町村を支援する事業でございます。私ども、地方公共団体から意見を聴取しますと、非常にニーズも高いということもございまして、平成十四年度におきましては、初年度のほぼ十倍の約三十五億円の予算を確保しているところでございます。
古賀(一)委員 さて、平成十四年度といいますか、現段階で二つの省庁を例にとりまして、重立った中心市街地活性化事業の概要中の概要をお聞きしましたけれども、このほかにも実は経済産業省あるいは国土交通省、ほかの省にも、いわゆる中心市街地活性化あるいは商業活性化という施策はたくさんございます。
 しかしながら、私は、そういうある意味では微に入り細に入りといいますか、あるいは手とり足とりというか、いろいろな施策を中央で考えてはあるけれども、では、現実の地方都市の現状はどうか。あるいは、十年前に比べて現在はどういうトレンドで地方都市が変化してきているかというところを見たときに、私は、冒頭申し上げましたように、大変そら恐ろしいというぐらいの感じを持っています。
 これはこれまで機会あるごとに、例えば都市再生二法のときも申し上げましたけれども、折に触れ私は指摘をしておりますけれども、私の地元の福岡だけではないと思うんです。福岡あたりがある面では厳しいのかもしれませんけれども、いわゆる地方都市の商店街は、もう半分近くシャッターがおりている。三分の一ぐらい、もうずうっと、土日も、まして平日もおりているというのはもう珍しくなくなっているんですね。
 私は、こういう地方都市の現状があって、それがたまたま不景気で今は悪いというならまだ救いもあるんだけれども、もうこれは確実なトレンドとして、地方都市の中心市街地というのは、人口減、お客の減、そして商店街がいわゆる歯抜けのようにシャッター街になってきている現実は厳然としてあるんです。
 そこで、大臣にぜひお聞きしたいんですが、まず大臣、最近、そういう地方都市の商店街のシャッター通りと我々はよく地元で呼ぶんですよ、そういう現実を見られたこと、ちょっと視察で行かれたことはあるでしょうか、お聞きしたいと思います。
扇国務大臣 特別にそれを目的に視察したことはございませんけれども、正直申し上げて、私は昨年選挙でございました。私は全国区でございまして、全国歩きました。全国と言うとオーバーですけれども、行けるところへ行きました。まして選挙でございますから、私は比例ですから、なるべく人の多いところというので、商店街で、商店街の一番入り口に宣伝カーをとめて演説させていただきましたけれども、商店街も歩きます。でも、今おっしゃったように、シャッターが閉まっているところがたくさんございます。そして、先週も長岡へ行きました。その前は新潟へ行き、和歌山へ行き、選挙応援のたびにあらゆる商店街へ行くというのが私の一つの仕事のようなことになってしまいました。
 多くの商店街を拝見しております。おっしゃるように、シャッターの閉まったところもたくさんございます。そういう意味で、そのシャッターの閉まったところをどうしたらいいかということで、閉まったお店を利用して託児所をつくろうではないかということを研究したこともございます。そして、いかに町をよくするか、活性化を図るか。活性化というより復旧と言った方がいいくらい。活性にまで及ばないんですね。現状を維持するということだけでもきゅうきゅうとしている。
 それと、私、国土交通大臣になって、本当に情けないといいますか、矛盾を感じております。あらゆるところで、便利になり、道路ができ、交通の便利ができ、そして、極端な例を挙げさせていただきますと、本四架橋ができました。四国の皆さんは、四国がすごく発展し活性化すると思って、橋ができて大喜びなさいました。ところが、徳島の皆さん方に聞きました、どうですかと。扇さん、だめなのよ、橋ができて便利だから、みんな橋を渡って大阪や京都へ日帰りして、向こうでお金を落として帰ってきちゃうのよと。松山へ行きました。道後温泉、満員になると思ったら、昼間来て、昼、おふろに入って帰っちゃうんです。こういう便利さと、そしてその地域の活性が便利さにつながらないという矛盾を、私は、国土交通大臣になってから改めて、どうあるべきかということをいろいろ考えさせていただきましたし、勉強もさせていただきました。
 名案は正直申し上げてございません。ただ、私が国土交通省としてまちづくりの優秀なところをいつも表彰しているんです、毎年。そのまちづくりを見ますと、例えば飛騨の高山で、高山の和紙を使った、ほんのりと街灯が全部和紙で覆ってあるとか、岐阜の駅前広場の商店街に続くところの活性化ですとか、あらゆる表彰をするんですね。そうしますと、やはりそれぞれ物すごく工夫していらっしゃるんです。
 そういう意味では、今局長が答えましたように、地域の商店街の皆さんの発案、そして町内会の皆さんの熱意、そして各地方自治体の支援、そしてNPOの知恵、そういうものを全部統合しながら、それぞれが苦しみながら地域の活性化を図っているというのが現実でございます。私たちも的確な名案は今ありません。けれども、振り返ってみますと、我々、戦後の日本の、先ほども話しました、あの焼け野原の中から、欧米先進国に追いつけ追い越せということだけで、二十世紀、励んできたんですね。ですから、欧米先進国に追いつけ追い越せという認識が町の中にもできていたことは確かだと私は思うんです。
 ですから、その町の特徴、その地域でなければならない特性のまちづくりというものが、今後大いに国民の足をとめ、町の人の豊かさを表現できる。その町の文化、その町の歴史というものを生かしたまちづくりをぜひしてほしい、また、それがその町の個性で、外部からも、あそこへ行けばこんなものがある、そういうものが出てくるんではないかと私は思っております。私は、均衡ある国土の発展ではなくて、個性ある地域の発展というのを二十一世紀のキーワードにしたい。どこへ行っても同じようでは行く必要がないんです。そして、皆さん方が地元を愛する精神というものもそのまちづくりの中でどう生かしていくか。
 そして、統一性がないんですね。町全体のグランドデザインができていなかったから、同じような店が並んだり、あるいは建物が高かったり低かったり、町並み自体もきれいではない。そういうことも、国土交通省としては、まちづくりの基本というもの、あわせて、インターネット時代ですから、産地直送というのもあります。そういう意味では、今インターネットでも皆さん方は買い物ができて、産地直送の特徴のあるものをお選びになりますので、大分の一村一品ではありませんけれども、そういう個性あるものをぜひつくっていただいて、その地方の歴史と文化を大事にしていくまちづくりに私たちもできる限りの努力をして御支援していきたい。
 今は名案はありませんけれども、地道にそういうことをやっていきたいと思っています。
古賀(一)委員 これまでの私の質問はイントロでございまして、今大臣に、名案かどうかわかりませんが、一つの案を申し上げたいと思うんです。
 実は、ヨーロッパの都市、アメリカの都市をいろいろ見て日本の都市を見たときに、明らかに違う点があると私は思うんですね。その一点こそが実は地方都市の空洞化であり、歴史を生かそう、文化を生かそう、あるいは新しい知恵で商店街活性化を図ろうといろいろな手だてをしても、それが効果なきがごとく、まさに大臣が、活性化どころか復旧だ、そこまで言わなきゃならぬぐらい疲弊してきた原因というのは一つあると私は思うんです。
 それは、私は、日本の歴史を見たときに、日本は歩行者文化だったから、車両文化がなかったから、結局、戦後に道路をつくり始めて、バイパスという形で車の文化のインフラをつくってきたんですね。実は、ドイツのアウトバーンの横に建物はないですよ。アメリカのインターステートの周りにもないし、地方都市と地方都市を結ぶ都市間の地方道路にもイギリスは家は建っていませんよ。やはり結局日本は、新しくバイパスをつくったところに余りにも多くの新規店舗、住宅、学校、そして当然それに伴って横断歩道橋、信号、そういうものが、実は通過交通のためにつくったほとんどのバイパスにそれが張りついて、結果として、大規模な農地が手に入る、単価はもちろん中心市街地よりも安い。そういうことで、ほとんどの新規立地というのが旧市街地をほったらかしてそういうバイパス近辺に張りついてきたのがこれまでの社会資本整備と地方都市の推移だったと私は思うんですね。
 だから、幾ら歴史を生かして町おこしをやりなさいとNPOに言っても、実は、そこの部分を自由にしているから、結局、中心市街地は、あるいはその町が持つ雰囲気、歴史というものはもうとめようもなく疲弊していっているというのが私は現状だと思うんですよ。ヨーロッパの都市を見れば、日本の都市のようにはなっていません。そこが私は決定的な盲点じゃないかと思うんです。
 実は、私の地元は福岡県の筑後ですけれども、一番大きい母都市が久留米でございます。筑後地方というのは、道路局長お見えでございますけれども、国道はたくさんあるんです。三号線、二〇九、二百十号とたくさんあるんですけれども、改築が終わっている国道というのはないんですよね。バイパスがないんです。その数少ないバイパスが、久留米インターから出ております櫛原バイパスというのがあるんですけれども、今でも数少ないバイパスなものですから、しょっちゅう渋滞するんです。ここに実は、今話した、例によって例のごとくの大規模店舗を立地しようという話があって、商店街はもう戦々恐々であるとともに、数少ないバイパスが恐らく大渋滞になるんじゃないかという懸念も今出ています。
 私は、地元のその案件を一つの例として出しましたけれども、日本全体にいわゆる新しい社会資本であるバイパスができたときに、自由自在にそこに新しいものが張りつくことを許してきた。それは、昭和五十年代の日本の経済成長、いわゆる新規立地の、つまり民間設備投資の需要の相当部分は沿道産業だったと思うんです。それは大変な役割を果たしてきたと僕は思うんです。でも、こういう低成長の、成熟化社会の、人口減の、高齢化社会の、こういった今の日本が置かれた現状、マクロの経済状況からいうならば、これまでどおりそういうことを放置していったときに、本当に、地方都市の中心市街地を守れとか、補助金を出しますとか、表彰しますと幾ら言ったって、私はとめようがないと思う。
 本当に大変な問題ではありますけれども、この際、四省庁一緒になった大大臣でございますから、しかも、それは、単に都市計画行政とか道路行政のエゴでも何でもなく、地方都市のあり方そのものを、これからの超高齢化社会の低成長時代に合わせて考えようではないかということで、私は一つの問題提起として、具体的に言うならば、新規のバイパスをつくるときには、それは通過交通のためにつくるわけですから、それに特化させて、沿道への立地に一定の歯どめをかけ整序する、そういうことを関係省庁集まって考えるべき、そういう時代に来ているんじゃないか。この十年、二十年、あるいは外国に行って、見て、つらつら彼我の差を比較したときに、そこに一つの大きい活路があるんじゃないかという気がしてならないんです。
 この点、初めての提案だと思うんですが、どうお考えでしょうか。
扇国務大臣 古賀議員が、御自身の御経歴の中から、また、あらゆるところをごらんになって、日本の中心市街地の疲弊状況、そういうものを見て、一つの提案を今なさいました。
 私は、まだ衆議院には来ておりませんけれども、中心市街地、地方都市の活性化ということを図っていこうということで、住民ですとかあるいは商業の皆さん方、そしてNPOとかまちづくりの専門家の皆さん方、多様な方々の力を活用して、地方の都市のあり方、商業地だけではありませんけれども、都市自体のあり方ということも含めて、今回はこの国会に法案を提出しております。都市計画の提案はそのためにしておりまして、もっと大きな輪から、都市というものの中から商業地がどうあるべきかということも私は考えていくべきであろうと思っています。これは、参議院を四月の二十六日に通していただいて、やがて衆議院でも御議論いただくことになっておりますので、そういう意味でも、今の古賀先生の御提案になったことは、大きなグランドデザイン、まあグランドデザインとまで言えませんね、地方のデザインといいますか、私は、都市というものを含めて検討するのに、ちょうど先取りをしていただいたというつもりで今拝聴しておりました。
 今後は、少なくとも今おっしゃった、バイパスというものをつくったら、その沿道というものに対してどうしていくか。商業立地が進んで、そして、これが無秩序に進んでしまったら中心市街地が疲弊する、それはもう当然の理でございますので、そういう意味でもきめ細かく用途を制限することが必要となっているというのは今おっしゃったとおり。大胆な発想でとおっしゃいますけれども、本当にこれは抵抗もあると思うんですね。けれども、地方公共団体が目的に応じて用途を制限することができるように特別用途地区制度というものを拡充することとともに、平成十二年に、都市計画区域外の区域においても、市町村が地域の実情に即して特定の建築物の用途を制限できる制度の創設というものを行ったのは先生御承知のとおりでございます。
 私は、今おっしゃったのは大胆な提案ではありますけれども、こういう通った法律の制度を活用していくということで、それぞれの地域が御論議をいただいて、そして、その活用方法というものを改めてみんなで論議していただくということも要ると思います。また、商業機能の需給調整というものを目的とするものではありませんけれども、商業立地が市街地環境の悪化をもたらすおそれのある場合にはこれらを活用することができる、こうなっておりますので、私は、今おっしゃったことは、全国あらゆるところで大変問題になることでもあろうと思いますので、次の法案の御審議のときにも、きょうは先取りして御論議いただいたような気を持っていますので、ぜひ、今おっしゃった御提案を含めて、我々もこの論議の中で、いかに名案となり得るかどうか、御論議させていただければありがたいと思っています。
古賀(一)委員 日本のこれまでの農耕文化といいますか、あるいは都市化の進展からいったら、今私が提案したような沿道規制というか、新しい道路を中心とした立地規制というのはとんでもない、大変な問題だと思われるかもしれませんが、素直に外国を見たときに、それを当たり前のようにやっているということ。
 それで、もう一つは、物すごく重要なことは、今、国家財政が、地方財政と合わせまして長期債務が七百兆弱。恐らくどんどん膨らんでいくでしょう。それで、道路が要るとか下水道は高過ぎるとか、いろいろな論議が出ていますよ。もっと出てくるでしょう。それはそれでもちろん議論をしなきゃならぬわけですけれども、私は、長期債務があるから道路は要らぬとかいう、直結する議論にはならないと思うんですよ。
 ただ、よくよく見てみると、この東京一つ見ても、僕が学生のころから見たら、例えば、あのころは八王子はまだ小さい町だったし、相模原もあんなでかい町じゃなかった。私は、静岡に赴任したことがありますけれども、新幹線で通ると、十五年前、二十年前はきれいな田園風景だったのに、何か住宅とか工場とかがあって、こんなに変わったかと思うぐらい変わってきているんですね。
 私は、ここで問題提起をしたいのは、結局、自由な、計画なきとは言いません、計画が弱いというか、あるいは農村と都市との調整がまだきちんと図られないままの、何か妥協の産物と言ってもいいですかね、中途半端なそういう都市計画のあり方というものがある程度自由な立地を許してきた。沿道もそうです、田んぼもそうです。それが結果として今後どうなるかといえば、これから高齢化社会ですよ、多摩ニュータウンの小学校がなくなったように。今はいいけれども、あと十年後、二十年後、三十年後を考えたときに、あの広大に広がった町に、もちろん福祉施設も要る、道路の管理も要る、まだまだ都市計画街路が、新しくできた相模原だって八王子だって追いつかないところはもう恐らく山ほどあるわけでしょう、あると思うんですよ。新橋のマッカーサー道路なんかも、五十何年たったって全然できていないわけですから。こんなことが将来の財政負担として、もう膨大なものが私は出てくると思うんですよ。道路整備はまだできていない、だから下水道もできていない、でき上がったものは維持管理しなきゃならぬ、でも、うちの町は高齢化比率がもう二八%になった、福祉施設も要るとかいう。
 私は、今言ったような沿道を中心とした都市の外延化というか、つまり、中の空洞化、そういうものが膨大なる公共事業投資あるいは維持管理コスト、そういうものを生み出してきたと思うんですよ。それが、私は、ある面じゃ、この七百兆の長期債務の相当部分を占めるんじゃないかと思うんですよ。要る道路は要る、要る下水道はつくるべきです。しかし、歯どめなくそういう需要が発生してくるようなその構造の中に、実は、財政問題、都市の問題、環境問題すべてが生み出されてきているんじゃないかという気がするんです。
 一つの提案でありますけれども、中央省庁統合になって、総合調整を政治のリーダーシップでやっていこうという時代になってきたわけですから、まさにこの点にこそ、農林水産省、都市・地域整備局あるいは道路局一体となって、やはりあるべき姿を総合調整してデザインしようという論議を始めるべき時代だと私は思っております。時間はかかると思いますが、ひとつこの点、これはもう時間がございませんので、私から一方的に指摘をさせていただいて、次の問題に移らせていただきたいと思います。
 この前、四月の十七日、暫定平行滑走路供用開始ということで、供用開始前日に、大臣、委員長ともども、私も同行させていただきましたけれども、あそこで私は大臣のあいさつを聞きまして、政治家としての一つの、何といいますか、問題意識というものをかいま見たような気がするのです。新空港公団総裁も、やはり成田開港に当たっての過去を振り返る一言があっても私はよかったなと思うんですが、それはなかったように思うので、ちょっと残念でありますけれども。
 開港後何と二十四年。開港後ですよ。開港前のあの問題も大変な問題でした。開港後滑走路一本で頑張ってきた新東京国際空港が、こうして二本目の滑走路になりました。これについて大臣、あのあいさつで、万感胸にあったと思うのですが、改めまして過去を振り返っての反省といいますか、私はあってしかるべき、大臣のせいではないのですが、思うところがあるのではないかと思うので、その所見を改めてここでお聞きしたいと思うのです。
扇国務大臣 先日、四月の十七日、二十四年間の悲願を達成したといいますか、達成し得ていないのですけれども、達成近く、まだ寸足らずではございますけれども、二本目の滑走路をつくることができたということで、私は心から関係者の皆さんにお礼を申し上げるつもりで行ったのですけれども。
 私あのとき申し上げましたかどうか、勝手なことを言わせていただいたので、今覚えておりませんけれども、一九七八年、成田を開港しますときに、私、成田空港滑走路、オープン前の視察を国会議員でさせていただきました。ですから、一九七八年のお正月明けだったか、ちょっと定かではないのですが、要するに、開港前に滑走路の視察に行きました。成田ができ上がって十年たっていまして、開港前の空港を視察に行きましたら、滑走路がひび割れしておりました。何とも無惨な成田の運命というもの、これだけ国費を投じて、そして滑走路が完成しながらオープンできない、そして、私が国会議員で視察したときには既にひび割れていた、あの衝撃は私は今も忘れません。これがやはり成田問題の原点であったと思います。開港を待ちに待ったにもかかわらず、でき上がっても開港できなかった苦しさ。どこかにボタンのかけ違いがあったんだ。私は、この成田の問題が一番最初話題になったころには国会に籍を置いておりませんでしたから、事後、詳しくいろいろな話を伺いました。いかに地元との摩擦があったか、地元の理解を得られないまま工事が進んだか等々、お互いにあげつらえば切りがありません。けれども、日本の国の表玄関というものを決めた以上、私はきちんとした態度をとるべきであったと思いますし、それぞれの皆さん方が、努力が足りなかったとは言えません、死ぬ思いもしながら説得なさった方もあります。けれども、私がひび割れた滑走路を見学して、やがてオープンになったときのあのテレビ中継を、古賀先生、どこでごらんになったか知りませんけれども、お役人でいらしたかどうか、本当にテレビであれだけ覆面をして管制塔を割る人たちをなぜ逮捕できないのかというもどかしさ、私はその前にひび割れた滑走路を見ておりましただけに、本当に悔しい思いをしながら見ました。そして、やっと一本の滑走路で押し合いへし合い、外国からは今も三十三の国が乗り入れを希望するのをウエーティングリストに載せながら、玄関を開放することができないもどかしさ。それがやっと二本目。ただ、遠距離からはその二本目の滑走路に迎え入れることができない短さ、これもざんきにたえません。
 ただ、私は、御協力いただいた皆さんには感謝をしますけれども、ここに政治と国民の乖離があったということは、これからの公共工事すべてに反省点があろうと思いますけれども、国の威信をかけてきちんとした計画を国民にオープンにしながら、二〇〇七年にはもう今の二本目の滑走路もパンクすることはわかっているのです。だったらどうするかという基本的なものを、私は国民の前に大きな議題を提案しながら話し合いを進めていくべき、だめならだめで次をどう考えるかも、私は大きなステップになろうと思います。
古賀(一)委員 私も、あの記念式典の前に、ぜひ見せてくれということで、一時間ぐらい早く行きまして、車で見させていただきました。大臣と同じ思いを持ったわけでありますが、大臣は、七八年ですか、滑走路を見られたと。私は、前の年に、もちろん飛行機が一回も飛んだことない滑走路をパトカーで走った経験がございます。視察をさせていただきました、当時役人でございましたけれども。
 その後、私、出向で県警に行ったのですね、千葉県警じゃないですけれども。あのときに本当に、機動隊の皆さんを装甲車に乗せて、もう何度も何度も成田警備に送ったのです。朝昼晩、弁当だと。機動隊員が食傷して、もう弁当が食えない。弁当だけじゃ食えぬというものだから、そりゃそうでしょう、何カ月も朝昼晩、弁当を食ったら、人間おかしくなりますよ。それで、トランクに漬物を入れたり、私は静岡県警に行ったのですが、静岡の何かおいしいものを入れたりとかいうことをやって、それはもうすさまじい、いわゆる社会コストというか犠牲というか、そういうものの中であれが来たわけですよ。だから、二本目の滑走路ができました、よかったよかったじゃ、私は済まないと思う。
 この際、公共事業というか、あるいは行政の昭和史における一つの大教訓として、反省点をこの際やはりしっかり分析し、刻んで次に対応しないとならない問題だと私は思うのですよ。そういう面で、大臣のあいさつの中にその思いというものがあったと思うので、私も共感をしましたし、今後まだ課題は残っております。公共事業の最大の所管大臣でありますから、この点、ひとつ深く厳しく督励をしていただいて、これからの二十一世紀の公共事業の、理解される公共事業のあり方というものを確保していただきたいと私は思うのですね。
 さてそこで、実は成田がようやく、二千五百メーターに大分足りません、予定の土地を逃げて北側に展開して、とりあえず二千百八十メーターという、変則の短い滑走路で、大臣がおっしゃったとおり、道のりは長かった、しかしその末できた滑走路は短かったとおっしゃいましたけれども、けだし名言でありますが、それで開港しました。これで、世界的に見たときにどうなったかといいますと、五年前までは、一回言ったことがありますけれども、世界の国際空港で滑走路が一本しかないという空港は世界に三つしかなかったのです。一つは香港の啓徳、そして、日本の成田、関空なんです。ところが、あのせせこましい香港の新空港、チェックラップコック空港というのですが、これは、あんな海に張り出したところで滑走路二本なんです。ついに、世界の国際空港で滑走路が一本しかないという空港は二つとも日本の空港となったのですね。ようやく成田が汚名返上をとりあえずできることになって、残るは関空になったのですが、依然成田も問題を残しておる、こういう状況ですね。
 そういう中で、今この現にある国際空港ですね、とても日本は国際空港ではおくれているわけです。大臣は、これまでの都市再生法であるとかいろいろな法律の審議のときに、やはり魅力ある日本、観光客がもっと来る日本、そういうことを常々おっしゃった。その玄関は国際空港でありますから、そういう面で私自身は、果たして日本の空港、とりわけ国際的な窓口であるべき国際空港、さらに物流まで含めた二十四時間空港という話にもなってきますので、ハブ空港機能というものは日本はこれで大丈夫だろうかと常々思っておるわけでございます。
 まずその前提として、ことしワールドカップがもうすぐ開かれますから、日韓について現状をお聞きしたいと思うんですね。日本と韓国を結ぶ航空路線、現状、どうなっておりますでしょうか。日韓のエアライン別に教えてください。
深谷政府参考人 日本と韓国の間の現状についてのお尋ねがございましたけれども、現在、日本と韓国の間では、日本側で二十二地点、それから韓国側四地点、日韓両国の航空会社、それからアメリカの航空会社も二社ございます、アメリカの航空会社を含めまして、そういう地点で相互に便がございます。
 日本企業はこのうち週百一便運航しておりまして、韓国企業が今申し上げました地点、週で二百五十便、米国企業が週二十八便ということで、現在、週三百七十九便という数の運航がなされています。また、最近でも日本の国内では地点がふえたりして、日韓との航空路線がさらに充実しておる、こういう状況でございます。
古賀(一)委員 今、便数が出ましたけれども、JAL、JAS、ANA、いわゆる日本のエアラインが何路線持っているか。韓国のエアライン、大韓航空、アシアナ、ここら辺はどうでしょうか。便数じゃなくて、路線数はいかがでございましょうか。
深谷政府参考人 お答え申し上げます。
 日本の企業が、現在、東京―ソウル、大阪―ソウルなどを初めとして九路線やっております。韓国企業がソウル―東京など三十路線になりますでしょうか。米国企業が一路線、こういう状況でございます。
古賀(一)委員 私は日韓のエアラインはずっとウオッチしてきたつもりですが、韓国は三十路線もふえましたですか。四、五年前、あのときはたしか日本六路線、韓国二十路線ということで、ちょっとそれ調べていただきたいのですが、要は、韓国のエアラインの方が圧倒的に日本と韓国を結んでいるのです。私は、三、四倍ではないかと思うんですよ。今の、三十路線というのは、僕はちょっとよくわからないのですけれども、あったら後ほど言ってください。
 それで、過去十年、日韓のエアラインがいろいろ開設されましたけれども、十路線全部韓国のエアラインなんですね。つまり、日本と韓国を行き来するには、韓国の航空会社が持っている路線の方が日本よりも圧倒的に多い。そして、近年は全部やっている。日本は恐らく六ぐらいしか都市を結んでいないと思うんですよ。成田、大阪、名古屋、福岡、そんなものです。
 つまり、仁川の新メトロポリタン空港という大ハブ空港が韓国にできました。これは、ヨーロッパからアメリカから来てもらって、日本の二十数都市と結んでいる。日本は六都市しか結んでいない。ワールドカップになったら、大韓航空が安いよ、仁川の国際空港に来なさいよ、ハブはここですよと、スポークで日本の地方都市へどんどん私たちが運んでやるという体制を、実は韓国の場合、国家戦略としてつくってきているわけですよ。
 次に、これは私は認識をお聞きしたいのですけれども、さっき言った香港のチェックラップコック空港も御承知のとおりできました。マレーシア、そうですね。世界に冠たるシンガポールのチャンギ、それから上海の浦東、第二国際空港、これはビルの長さが二千メーターあるんですよ。将来、滑走路は四本。こういう我が国を取り巻くところに着々と国際ハブ空港ができつつある。この現状を、大臣としてどう危機感を持たれておるかをぜひ聞きたい。
 国際重要港湾については、かつては神戸は、地元の神戸は世界のナンバーファイブに入っていたんですよ。もう今や見る影もない。釜山あるいは台湾の高雄、そっちの方が圧倒的な地位を占め、もう神戸というのはアジアの港ではない、日本の港ではあるのでしょうけれども、そういう地位に落ちたという経験の中で、ハブ空港というものは、日本はもたもたしてきた。しかしアジア諸国はこれだけ着実に巨大空港というものをなし遂げてきている。
 この点について、私は、大臣の御所見というか今後の方針というか、そういうものをぜひこの際お聞きいたしたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
扇国務大臣 古賀議員のおっしゃるとおりで、私も絶えずこの危機感を皆さんに申し上げているところです。
 玄関が狭いのに、いらっしゃいいらっしゃいと呼び込んでも、玄関に人が入り切らない。今度の関空の二期工事のときにも、予算をとりますときに、便数が減っているのに二期工事はむだでやめなさいとおっしゃいました。けれども、玄関が狭くて、玄関を広げてどうぞ来てくださいと言うならいいけれども、空港は一朝にして成りません。そういう意味で、何としてもということで、私は、関空の二期工事も国土交通省としては予定どおりしたいということで、御無理をお願いしました。
 それもこれも、今古賀議員がおっしゃったように、日本の空港というものは、国際という看板を上げる価値がありやなしやという基本にかかわってくるのです。今おっしゃったように、世界の先進国はもとより、途上国を見ても、国際空港という名前をつけて一本しか滑走路がないというのは、恥ずかしながら日本だけという、今古賀議員の御指摘のとおりでございます。
 そして、国家戦略としてというお言葉がございました。仁川の新しい空港に私もおり立ちました。四千メートル級が二本です。そして、韓国の政治家が言いました、扇さん、仁川が四千メートル級二本、二〇〇五年には四千メートル級四本にします、そして一年間に百万人の観光客を韓国に入れる計画が国策としてあるんだ。私たちは、振り返って、果たしてその国策が日本にあるだろうか。成田の現状一つ見てもあのとおり。関空も一本。
 二十四時間オープンという看板を上げたけれども、果たして、深夜に着いて、どこへどう連結するのか、それがない。しかも、地図でごらんになったらわかりますけれども、日本の地図では日本が真ん中にありますけれども、世界じゅう行ったら日本は一番右の端、探さなきゃ見えないようなところにあるから、ヨーロッパをいい時間に飛行機が出ると、日本に着くのは夜中になるのです。ですから、二十四時間オープンでなきゃいけないということになるのです。
 そして、残念ながら、空港の滑走路が足りないだけではなくて、飛行機の着陸料が欧米先進国に比べて余りにも高過ぎる。私はそのことも考えながら、アメリカのケネディ空港では着陸料が二十八万五千七百七十円、フランスのドゴール空港は二十八万五千四百五十二円。日本は、成田が九十四万八千円、関空が九十万八千五百円、三倍。一番安いのはイギリスのヒースローです。ヒースローは七万八千二百八十七円です。問題にならない。
 いらっしゃいと言いながら、来ると、飛行機は満杯でおりられない、おりれば高い、これではハブ空港と言えないのはもう本当に歴然なんです。
 私は、国土交通省としては、何としてもそれを安くできないか。しかも、今の日本の旅客量と貨物の量を考えれば、日本の国土の中で国際空港が幾つ、何メートルが必要なのかというグランドデザインがない。私は、そのことも含めて、今、超長期、笑われるかもしれませんけれども、国土交通省の中で、役所のポストを離れて募集をしまして、五月じゅうに発足いたします。それは、今まで五年、十年の長期計画をつくっておりましたけれども、二十一世紀の初頭に、二十年、五十年、百年、二十一世紀じゅうに日本はこうなるという超長期のグランドデザインをつくりたいということで今しております。
 それも、私は、少なくとも今古賀先生が、まちづくりから話が始まりましたけれども、国際的に日本が二十一世紀どうあるべきか、また、今何をなさなきゃいけないか。羽田にサッカーでチャーター便を着陸させますのも大変なことでございました。でも、みんなが頑張ってやってくれました。できてしまうと、みんながよかったねと一言なんです。そうではないんです。今、羽田も週七十便、夜間飛んでいます。昼間もサッカーでは十便チャーター便をおろします。そして今、ゲートも一本ふやしています。
 そのように、我々は国際的なものを、日本が沈没しないように、あらゆる面で、貨物も空港も全部、日本が沈没したと言われないように新たな計画を立てようと思っています。
古賀(一)委員 大臣が強烈な問題意識を持っているのはわかりました。
 でも、やはり責任と権限ある所管大臣でございますから、私はぜひこれをやっていただきたいと思うし、航空局長お見えでございますが、私は、決してああだこうだと足を引っ張っているんじゃないんです。やはり日本のためにもっと頑張ってほしい、こう思うんですよ。
 それで、今超長期の検討会を始めたとおっしゃった。それはそれでいいんですが、ただ、国際ハブ空港論といいますか、大空港時代の空港整備論というのは、私は超長期じゃ間に合わないと思うんですよ。もうこれは今まで歴代運輸大臣に私は何度も質問してきたんですけれども、仁川はできたんですね。あの浦東だって、最初は、当時の運輸省の答弁は二〇〇五年にできますと言っていたんです。違いますって、もっと前倒しになるって言ったら、六年前倒しで浦東はついに供用開始になったんです。
 これで、この前ある新聞見ていましたら、フェデラルエクスプレスが浦東に大物流センターを建設すると。つまり、世界航空ネットワークというのは、浦東なり仁川なり、もうつくられてしまうんじゃないか。あと十年、二十年たってハブ空港ができたときにはもう遅いよということになるんじゃないかということを、私は、神戸と釜山、そういうものを見たときに持つんですね、恐怖感を。だから、それは超長期、五十年、百年の大計じゃなくて、私は、五年、十年の大計でつくるべきだ、急ぐべきだ、こう指摘をしたいと思うんです。
 それで、せっかく来ていただいたので、あとちょっと、二、三分延長になるかもしれませんが、お聞きしたいんですが、実は、国土交通委員の皆さん、役所の皆さん御存じないかもしれませんが、通産省、経済産業省がこれまでやってきたラムジェットエンジンの開発に私は非常に関心を持ってきて、フォローしてきたつもりなんですね。
 これは、工業技術院を中心に国際協力で官民一体の開発をやって、設計速度がマッハ五という、説明はしませんが、ちょっと一風変わったラムジェットエンジンというエンジンを開発してきて、これは一応成功しているわけです。
 私は、数年前に質問したときに、政府の答弁は、二〇〇五年にはこのラムジェットエンジンを応用した、恐らくマッハ二・何ぼの極超音速機、ハイパーソニック・トランスポーテーションというんですけれども、これが就航すると政府も見ているという話になっている。私は、こうなりますと、ますます玄関の重要性というのが出てくると思うんですね。
 今、ニューヨークは、七時超したらもう成田へ飛べません。もうしょっちゅう、バンコクへ行ったって、バンコク空港からえらい、八時間ぐらい待たされる。そんなことはしょっちゅうあるんですけれども。
 このラムジェットエンジンというか、極超音速機のエンジン開発、これは機体を整備しなきゃならないわけですけれども、ここら辺について、経済産業省、情報をお持ちだったら、説明できることはこの際ばあっと端的に、口早で結構でございますから、答弁を願いたいと思います。
濱田政府参考人 経済産業省といたしましては、極超音速機用のエンジンの研究開発を十年かけてやってまいりまして、大変な成功をいたしまして、国際的に大変権威がございますフォン・カルマン賞などを受賞するなど、マッハ五の実証運転、成功いたしております。
 ただ、それからさらに十一年度から五年かけてマッハ二のエンジンの開発もやっておりますけれども、マッハ二で飛びましても、現在の技術水準でございますと、音速を超えると衝撃波、ソニックブームというのが起こるわけでございます。これが陸上部分で非常に大きな問題を起こしますので、現在、マッハ二以上で飛ぶような飛行機につきましては、具体的な就航時期を設定できる段階には至っておりません。
 ただ、ソニックブームの問題を回避できる最大限の巡航速度はマッハ一程度でございまして、これにつきましては、現在、ボーイングを初めとして、日米でソニッククルーザーという機体の開発に取り組んでおりまして、これが二〇〇八年ごろまでには就航する見込みで、ことしの一月から日米で共同研究を始めているところでございます。
古賀(一)委員 これで終わりますが、そういうことで、大航空時代が来ているんです。そして、今言ったラムジェットエンジンほか、新しい機材も投入されてくる。日本の周りで、現に見える形で大ハブ空港がありとあらゆる主要国でつくられてきているという現実がございまして、一方で、着陸料が高いとか、関空だっていろいろ問題ありますよ、地盤沈下の問題とか。
 だから、この点、国益の、何といいますか、入り口であり出口というか、まさに窓口の極めて重要なインフラであるので、私は、ぜひとも総合的に、短期的にも長期的にもしっかりとした戦略を立てて、国民の理解を得られるような努力もまた一方でしながら、航空行政、とりわけ国際ハブ空港行政というものを推進していっていただきたいとお願いして、終わります。
 あと幾つかの質問、時間の制約でできなかったのは大変残念で、しなかったことを申しわけないと思いますけれども、お許しをいただければと思います。次回に回させていただきたいと思います。
 以上で終わります。
久保委員長 井上和雄君。
井上(和)委員 民主党の井上です。
 本日は一般質問ということでありますので、国土交通省所管のトラック事業者による交通事故に関して、大臣にお伺いいたしたいと思います。
 交通事故は、皆さんもよく御存じのように、年間約九千人ぐらいの方が亡くなっているわけです。昨年度は、死者数は若干減ったということですが、けが人はふえております。死傷者全部では約百十五万人が一年間に交通事故に遭っていられて、これは、広島市の人口というのが百十二万人ですから、それよりも多いぐらいなんですね。ちなみに川崎市が百二十万人ちょっとの人口ですね。それだけ多くの方が交通事故に遭っているという現状があるわけです。
 私、これは静かなる有事と言えるような状態じゃないかと思うんですね。国民の安全にとっては本当にもう有事であるという認識をしておりますけれども、どうも政府の認識というのはちょっと甘いというふうに日ごろ思っております。
 実は、私、奈良県の児島早苗さんという方から、息子さんの児島健仁さん、当時十八歳が二年前、二〇〇〇年五月に亡くなった交通事故の件で、真相究明や運送事業者への指導を求める署名運動をされていまして、それを国土交通大臣と法務大臣に提出したい、そういう御相談をつい先日受けました。これは、たまたま私が超党派の議員でつくっております交通事故を考える議員連盟の事務局長をやっているという関係で、知り合いの新聞記者を通じまして児島さんを紹介していただいたということなんです。
 この事故の内容なんですが、ちょうど二年前に奈良県の生駒市で、バイクで登校途中の児島さん、当時国立奈良高専四年生が、宅配中のヤマト運輸のトラックと衝突して亡くなったという、痛ましい交通事故なんです。
 貨物運送事業法第二十四条には、運送事業者には事故報告の義務が規定されておりますけれども、国土交通省は現時点でヤマト運輸より事故の報告を受けているかどうか、お答えをお願いします。もし受けているとすれば、それはいつ受けたのか。
洞政府参考人 トラック運送事業者は、先生今御指摘になられたとおり、貨物自動車運送事業法二十四条に基づきまして、その事業用の自動車が重大な事故を起こしたときは遅滞なく国土交通大臣に報告しなければならないということになっております。
 御指摘の事故につきましては、実は本年の二月に御遺族の方から、報告書が提出されていないのではないかというお問い合わせがございまして、改めて詳しく調査しましたところ、当該事故車両は、ヤマト運輸が所有する自家用自動車、要するに訓練用の白ナンバーの自動車、いわゆる宅配便の格好をした自動車ですけれども、そういう自動車で、有償運送の許可を受けているというものでございまして、事故報告をしなければならないものであるということがわかりました。そこで、ヤマト運輸に対しまして事故報告の提出を指示しまして、本年の三月十八日に報告書が提出されたところでございます。
 なぜヤマト運輸が、当該事故が発生して後、速やかに事故報告をしなかったのかということにつきましては、事情があるのかないのか、実はちょっとはっきりしないところがありまして、もしヤマト側の言い分をそのまま報告しますれば、当時、白ナンバーである、自家用である当該トラックの事故報告の必要性があるかどうかということを、私どもの出先である近畿運輸局に照会したけれども、自家用であるならば報告の必要はないという回答であったため提出しなかったというふうに述べておりますが、近畿運輸局の方で調査をしたところ、そういう照会があり回答をしたという事実は現時点では確認できていない、こういう状況でございます。
井上(和)委員 この事故は、もう一度申し上げますが、二〇〇〇年の五月に起こった交通事故ですよね。今現在もう二年たっている。やっとヤマト運輸から事故報告が、まあ遺族の方の指摘によって国土交通省からヤマトに聞いて、初めて出てきたということですね。
 それで、この車が白ナンバーであった。私、この事故車を写真で見ましたけれども、ふだん宅配便で使われている同じ車ですね。今局長おっしゃったように、その教習用に使われている。しかし、すべてが何かうまくつじつまをつけているようなヤマトの説明じゃないかというふうに私は思います。
 いずれにしても、運輸審議会でも、事故報告に関しては、事故報告を怠った業者に関しては厳格な処分が必要だということを言っているわけですよね。つまり、人一人が亡くなった事故ですから、ただ、ヤマト側が電話で問い合わせたとか、そういうことをとても私は真に受けて信じるわけにはいかない。恐らく行政も同じ立場だと思うんですけれども。
 それで、十分な監査ということをやっていただけるんでしょうか。
洞政府参考人 まさしく、事故報告を怠っていたということになれば、行政処分の対象になるわけでございます。
 私どもといたしましては、平成十二年の九月から、貨物運送事業者、いわゆるトラック事業者が第一当事者、原因者となった死亡事故を起こした事業者を重点的に選定して監査を行っていくこととしておりまして、当該事故につきましては、運転者がことしの二月に起訴されたという事実を踏まえまして、近畿運輸局におきまして監査を実施する予定であります。
 ただ、事故報告を怠っていたことについて、先ほど申しましたような経緯があるのやないのやということがひっかかっておりますけれども、そういう点の調査も含めまして、運転者に対する安全運転指導等の運行管理の状況など全般的な監査を実施する予定でございまして、その結果を踏まえまして、法令違反があったという場合には、厳正に処分を行うということにしたいと思います。
井上(和)委員 今の御説明を聞いて私が基本的に思うのは、陸運局、まあ国土交通省も、要するに事業者になめられているんじゃないかと思うんですよ。つまり、死亡事故を起こしたって、報告しないところで大した処分も受けないというか、そういうこれまでの状況があったから、事業者の方もいいかげんな態度をとっている。私は本当にそういう事態があると思うんですね。
 ちょっと、この前国土交通省から出していただいた監査の資料を拝見してみたんですけれども、例えば、平成二年から平成八年の七年間に、七万四千事業者が監査を受けているんですね、何か問題があるからということで監査を受けている。そのうち、この七年間に、免許取り消しになったのは十五件だけ、事業停止も一件だけですよ。貨物自動車の業者というのは約五万以上あるわけですよね。それが七年間に、免許取り消し十五件、事業停止一件。本当にもう、考えられないぐらい少ない数字だ。
 つまり、監査をやっていても、実質的にやっていないとほとんど同じ、つまり、非常に甘い処分しか下していないという現実があると思うんですね。だからこそ、事業者の方も、要するに国土交通省を甘く見ているわけですよ、陸運局も。
 私は、そこにどういう背景があるかわかりません。しかし、これまでは少なくともそういう事実はあったわけです。それが、やはり世論の高まりがあってちょっと変わってきている。これは非常にいいことだと思いますよ。例えば、平成十三年、去年ですが、半年間で、許可取り消しが六件で、事業一部停止二十四件も出ているわけですね。
 それはまあ、監査基準が厳しくなったということもあるかもしれません。しかし、毎年一千人以上の方が事業用トラックによる交通事故によって亡くなっているわけです。平成十一年には千二百三十九件、平成十二年、千百八十三件、平成十三年、千七十五件。幸い減ってきています。恐らくこれは、監査の効果が多少出ているからでしょう。そして、事業用トラックに事故責任があると考えられる、つまりトラックの方が第一当事者だというのは、その約半分なんですね。平成十一年だと六百十二件、十二年に五百九十、十三年に四百八十五。
 つまりは、一年間千人以上の方が事業用トラックの事故によって亡くなっていて、その半分はトラックに主な原因があるということになっているわけですね。私、この数は非常に大きいと思いますよ。大体、全死亡事故の約一六%が事業用トラックによって起こされている。
 委員の皆さんも、高速道路なんかを車で走れば、大型トラックに車間距離を詰められて非常に怖い思いをしているということは、もうだれもが経験していることだとは思うんですが、それが実際的に数字によってはっきり出ているわけです。
 ヤマト運輸に関しては、平成十一年から平成十三年の三年間で二十件の死亡事故があります。十三件に関してはヤマト運輸が第一当事者、つまり死亡事故の責任があるというふうに考えられる事故です。
 ヤマト運輸の起こした事故に関しては一体どういう監査を実施したのかお聞きします。
洞政府参考人 ヤマト運輸が平成十一年から平成十三年までの三年間に起こしました十三件の死亡事故につきましては、そのうち平成十二年の三件につきまして監査を実施しております。その結果、点呼記録の記載漏れ及びタイヤの整備不良で文書警告が一件、運転時間の基準の遵守及び運転者の指導監督の徹底についての口頭注意二件、こういう結果となってございます。
 なお、先生御指摘の今回の事故も含めまして、今後さらに四件について監査を実施していくという方針でございます。
井上(和)委員 問題は、その監査が本当に厳格に行われるかどうかだと思うんですね。だから、それを本当にきちっとやる。これまでの監査の結果を見ていると、やはりかなりなれ合いの状態があるというのは確かですから、こういった非常に陸運局と事業者とのなれ合い構造というのを断ち切っていかなければ、この交通事故の数というのは私は減らないと思うんですね。ぜひきちっとやっていただきたいし、またその結果というものに関してはぜひ私は報告していただきたいと思います。
 先日、御遺族の児島早苗さんが、四千人の署名とともに国土交通大臣、実際には大臣はいらっしゃらなかったということで洞局長にお渡ししたんですが、要望書というのを提出させていただきました。私も同席させていただいたんですけれども、特にその要望書の中の大きなポイントというのは、ヤマト運輸が任意保険に加入していない、そのことを非常に強く訴えておられます。とにかく運送業の任意保険の加入の見直しをしてくれないかということを児島さんが要望されているんですね。
 トラック事業者の自動車任意保険に関しては、一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理についてという細部取り決め、通達なんでしょうか、こういうものがあって、任意保険に加入すべき事業者というのは百台以下、つまり中小の事業者だけというふうになっているわけですね。ヤマト運輸に関しては、当然百台以上あるわけですからこの法律の適用は受けない、つまり任意保険には加入していない。
 ただ現実に、事故の遺族一人が大会社であるヤマト運輸と賠償問題なんかをいろいろ交渉するというのは非常に大変だ。私もいろいろな書類を見せていただきました。
 例えば、ヤマトの方から弁護士を通じて、交通事故に関して「関係各所の見解」というのを遺族に送ってきたわけですね。これは、警察の現場検証の話や、ヤマト運輸さんは安全対策は完全だったのに…と、言ったのか言わないのか、そういう文章が書いてあって、事故センターの見解、過失割合はヤマト三、児島さん七になるのでは。○○火災の見解、過失割合はヤマトが二で児島さん八じゃないか。○○法律事務所は、ヤマト運輸が四で児島さん六だと。当社の顧問弁護士の見解でいけば、過失割合はヤマトゼロ、児島さんは一〇〇もあり得ると。そんなことを書いてあるんですね、こういう文書。こういうのを遺族に持ってきているわけです。
 さらに、数カ月していろいろな賠償問題が出てきたということで、ヤマト運輸から児島さんに、弁護士を通じて代理弁護士から手紙が来まして、それには、ヤマト運輸から児島さんを訴えると。つまり、債務不存在確認訴訟を起こす、つまり債務がないんだという訴訟をヤマトから起こしますよと。つまり、遺族がヤマトを訴える前にヤマト運輸から訴えますよ、そういう文書も送られてきておるわけです。
 こういうことを見ますと、一個人が大会社を相手にして事故の原因究明とか損害賠償を交渉するというのは、これはなかなか大変なことですよね。
 そういった意味で、現在は、百台以下の小事業者、中小事業者は任意保険に加入すべきというふうにしか決められていませんが、被害者救済という意味から、大規模な事業者に対しても任意保険に入ってもらう、そういう企業責任というものが必要なんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
洞政府参考人 任意保険の加入を義務づけるといいますか指導するということにつきましては、どういう観点からそういうことを求めるかということがポイントだろうと思うんです。
 やはり、そういう事故を起こした場合に損害賠償能力がちゃんとあるかどうかということがポイントでございまして、先ほど言いましたように、百台以下について任意保険の加入を指導しているというのが私どもの指導の通達の内容でございますけれども、トラック事業者は、先生方よく御存じのとおり、ほとんどが中小企業者、九九%でございます。そういう意味で、損害賠償能力そのものがあるかどうか非常に疑問なところでございます。でありますから、百両以下の比較的経営基盤が脆弱な中小企業者については五千万以上の任意保険の加入を強力に指導しているところでございまして、この結果として、全事業者の九九%がその対象で、その大半の事業者が入っていると考えられます。
 片一方で、今回のヤマト運輸のように保有車両は三万両とか、あるいは大手のトラック事業者は何万両とか何千両とか持っていまして、非常に事業規模は大きいわけです。保険を掛けますと、率直に申し上げまして、年間の保険料だけで数十億に上るわけでございます。ヤマトのような場合は、事業者として十分な損害賠償能力を持っているかということについては、十分持っていると考えられますので、事業者みずからの責任において確保している資金をそういう損害額に充当する方法によってこれまでも対応しているということでございます。
 ですから、強制保険に加えて任意保険に加入するかどうかということは、事業者の判断が基本的には優先されるのかなというふうに考えているところでございます。
井上(和)委員 先日も、洞局長とこの件に関しては議論を随分長くさせていただきましたけれども、少なくとも今の状況は被害者救済という観点から見ると非常に不公平だ、そういう面があると思うので、やはり、新しい枠組みを考える必要があるんじゃないかと私は思っております。
 ちょっと法務省の方にお尋ねしたいんですけれども、今回の事故でも、児島さんがいろいろな活動をされた。署名活動をされたり、実際に現場検証もやられて、奈良地検の方にいろいろ運動して、最終的には運転手を起訴をすることになったんですが、それまで約一年九カ月かかってきた、そういう事実があります。
 先日も、児島さんから法務大臣に要望書を提出いたしまして、大林官房長といろいろお話しさせていただきました。とにかく交通事故の真相を知りたいというのが遺族の声なんですね。ところがどうも、今回の事件に関しても、検察の方は、要するに、児島さんの言葉をかりれば、とにかく時間を延ばして遺族があきらめるまで待つ、検事の方は死亡事故の現場に足も運ばないし遺族にも会わない、ただ書類を見て不起訴にする、余り信頼できないんだということも言っておられます。
 交通事故の件数というのは非常に多いですし、最近は、本当に真実を知りたいんだという遺族の方の声は非常に強くなっているんですけれども、こういった状況に関して、非常に時間がかかる、検察の起訴不起訴に対する遺族への説明が十分でないとか、いろいろ問題があると思うんですけれども、いかがでしょうか。御説明いただけますか。
河村政府参考人 御説明申し上げます。
 まず、事故発生から起訴まで長期間要しておる理由ということでございますけれども、先生お尋ねの件は個別の事件におきます捜査の具体的内容にかかわる事柄でございますのでお答えを差し控えさせていただきたいのでございますが、事件の処分時期というものは、収集すべき証拠その他の事情によりまして個々に異ならざるを得ないということをまず御理解いただきたいと思います。
 また、あくまで一般論として申し上げますと、交通事故によります業務上過失致死事件の場合、被害者御自身が死亡しておられるという事情がございますほか、目撃者が存在しない場合も多いことなどから、犯罪の成否などに関します証拠の収集などに期間を要する場合もあるわけでございます。
 ただ、一般的に申し上げまして、可能な限り事件を迅速に処理すべきであるというのは当然のことでございまして、検察当局におきましてもそのように努めているものと承知いたしております。
井上(和)委員 時間がないので、大臣に、最後にちょっとお伺いしたいんですが、私は、日本の交通政策というのはもう大失政だと思っています。つまり、年間百万人以上が死傷しているのに、それを減らすだけの有効的な手も打っていない。
 昨年の六月ですか、当委員会で大臣に私同じ交通事故の問題をお伺いしたときに、大臣は、これはもう省にとってまさに第一義の目標であり使命である、ミッションだということをおっしゃっているんですね。ミッションならミッションとして、トッププライオリティーというんですかね、優先的に一生懸命取り組んでもらいたいし、予算もちゃんとつけていただきたいというふうに思うんですけれども、特にこのトラックの問題、事業者と甘い監督官庁の態度なんかも非常に関係しているんじゃないかと思うので、いかがでしょう、頑張ってやっていただけますか。
扇国務大臣 事業用自動車の事故防止、また、事故多発をいかにして食いとめるかというのは、輸送の、いわゆる交通の安全性というものを確保しなきゃいけないというのは基本でございます。それはもう議員もおっしゃるとおりだと思うんです。
 高速道路一つとってみても、外国と違う面も多々あります。高速道路が二層になっていて、下はトラックが通り上は自家用車が通るというふうに区分けをしているところもあります。けれども、日本の国情として、まだ事業用車と自家用車等々との区別ができるほどの行政というものはなし得ないというのが現状でございます。
 その中で、我々は、昨年の九月に貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正というものを行って、皆さん方にも御議論いただいて、運行管理の充実等安全対策の強化を図ってきました。また、昨年の十二月には危険運転致死傷罪を新設しまして、これは、酔っぱらって、飲酒の上で死傷事故を起こした人に関しましては一年以上の有期の懲役に処するというような厳罰、悪質かつ危険な運転行為による事故防止というものに万全を期そうということで、一部法改正をさせていただきました。私たちは、この法改正したことを改めて通達しております。
 さらに、現在国会に提出させていただいておりますトラック事業法の改正というもので、ぜひ先生にも御議論をいただき、安全等の最低限のルールを守らせて公正な競争を図る観点から、重大な事故の惹起者に対しましての処分強化の行政処分基準の見直し、あるいは、時速九十キロ以下しか速度が出ないという制限をしますスピードリミッターというものを導入しようというようなことも考えておりますし、事業者の安全性について評価するシステムの導入等、あらゆる点で努力はしておりますけれども、何しろ事業者の喚起と運転する本人の意識強化というもの、先ほど自分の考えがというのが冒頭に出てきましたけれども、運転する本人と事業者に我々は強力にそういう指導徹底を図る、あらゆる面で改正をしながら、事故が一件でも少なくなるように、今後も努力していきたいと思っております。
井上(和)委員 今おっしゃった危険運転致死傷罪に関しては、私どもも遺族の方たちと一緒に我々独自の議員立法をいたしまして、法案の成立に努力してきたわけなんですね。運輸審議会でも、とにかく厳格な処分、厳格な処分という言葉が何回も出ているんですよ。つまり、それはいかに今まで甘かったかということの反映だと思うんです。
 だから、それをとにかくしっかりやって、政治は結果ですから、これは、減らなければ幾らやったって言いわけになるわけで、また半年か一年したらもう一回大臣にこの件に関して御質問させていただきますので、ぜひ結果を出していただくようお願いします。
 終わります。
久保委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四分開議
久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。細川律夫君。
細川委員 民主党の細川律夫でございます。
 私からまず道路公団のコンプライアンス本部についてお伺いをいたしたいと思います。
 三月の二十一日の朝日新聞によりますと、道路公団は三月二十日、外部の法律専門家によるコンプライアンス、法令遵守本部を設置し、初会合を開いたというふうな報道がございます。この件につきましては、四月の二十四日、内閣委員会におきまして津川議員の方から質問もし、公団の藤井総裁は、コンプライアンス本部、つまり法令遵守のための機関設置の意義などについて答えております。
 本日は、それに引き続いて、何点かちょっと確認をいたしたいと思います。
 このコンプライアンス本部については、今までに何度会合を開いたのか、それはいつであったのか、まずお聞きをいたします。
藤井参考人 私どものコンプライアンス本部は、三月十四日に発足いたしまして、現在までに、第一回の会議を三月二十日、第二回の会議を四月十日、第三回の本部会議をきょう、五月八日に開催しております。
 これまでのところ、まず公団の事業について勉強していただかなきゃいけませんので、その事業概要、あるいはどういうやり方で契約をしているかといったような運営方法について御説明し、その議論をされたやに聞いております。
 また、公団内部においてこのコンプライアンス本部を今後大事にしなければいけませんので、コンプライアンスの意識を周知徹底させるという意味で、全国の幹部を対象にいたしまして、本部長及び本部員による講習会といいますか、これを二回にわたってやらせていただいております。
細川委員 ここに公団の内部で作成をしたと思われます「「コンプライアンス体制」の発足について」という文書がございます。ここには目的や本部の設置、運営、発足時期などが記された後に、コンプライアンス本部に諮るべき事案の例ということで十一の例が挙がっております。その中には、ファミリー企業の問題あるいは山形自動車道におけるメンテナンス業務に関する問題など、現在いろいろな疑惑が持たれておりますさまざまな例が列挙されております。こういう疑惑の解明をいたしまして、道路公団が法令の遵守を目指すということは大変意義のあることだと思います。
 そこで、お聞きをいたしますけれども、ここに挙げられております十一の事例は何を基準にして作成をされたのか、また、こうした問題を本部で取り上げて、どういう方向で議論をしていくのか、こういう点について総裁にお聞きをいたします。
藤井参考人 先生御指摘の資料は、コンプライアンス本部、こういうものは私ども全く初めての経験でございますから、どういうものを対象にするのかという、実は模索の中から、どういうようなものがテーマとしてあり得るのかなということから、最近のいろいろな、最近といいますか、この一年間といいますか、こういった状況の中でどういう問題が取り上げられているか、雑誌その他、そういったようなものの案件を内部的な参考メモというようなことで取りまとめたものと私は理解しております。
 実は、コンプライアンス本部におきますJHの業務の進め方を正しく社会に理解していただくことは非常に重要なことでございます。とかく昨今の状況から、誤解されている面、また、襟を正さなきゃいけない点等々あることは承知しております。そういう意味で、具体的には、契約に関する諸問題の対応、あるいは、住民運動、その他環境問題等々、いろいろな問題、そういう御要請に対する対応、あるいは公団の社会的評価を失墜させる行為、こういったものに対して、私ども自身も考えてはおりますけれども、それだけでは足らない面があろうかと思いますので、そういう点を含めて、公平公正な視点から御指導を得たいというふうに考えております。
 一つの実例を申し上げますと、先ほど先生が山形問題というのをおっしゃいましたけれども、山形の問題というのは、維持管理業務についての、いわゆる、俗っぽい言い方で言います、関連企業が、関連法人がとったんではないか、それに仕事をさせているんじゃないかという御指摘が新聞等々でございました。
 私どもとしては、その時点ではきちっとした対応をしたつもりではございます。そして、契約をし、今日に至り、仕事の内容はきちっとしているという評価はしておりますけれども、社会的な信用を失墜させ、いろいろな問題を社会に投げかけたということは事実でございます。
 そこで、いわゆる単純な、契約上から見た、仕事をきちっとしているからそれでいいのかという問題意識と、それから、社会的な信用というような、公平公正の点からの問題点、こういうものを勘案いたしまして、このコンプライアンス本部の御指導をいただいて、今回、六月には、契約はさらに継続させなきゃいけない、そういう随契契約という権利をその当該企業は持っているわけでございますが、これをやめました。そういう権利を一切認めないという方式に変えまして、全く新たに、競争入札で新しくその担当の企業を決めよう、こういうような方式も実はこのコンプライアンス本部の御指導の結果とらせていただいた、こういうようなことがございます。
 ということで、これから何がということは、私どもからお願いすることもありましょうし、本部の方から自主的にいろいろと私どもに注意をし指導する点もあろうかと思います。
細川委員 今総裁の方からは、いろいろ週刊誌とかマスコミで取り上げられた問題について、それらを列挙しながら検討をしている、こういうようなお話でございましたけれども、道路公団の問題で、マスコミ、特に週刊誌で大きく取り上げられた事件がございます。それは仏経山トンネルの談合疑惑についてでございますけれども、今総裁が言われた、いろいろな雑誌等で問題になった事件を検討課題に取り上げるんだというようなお話の中で、とりわけ週刊誌なんかで騒がれた事件、仏経山トンネルの事件だと思いますけれども、これについて例として挙がっていないのはどういうことなんでしょうか。
藤井参考人 内閣委員会で津川先生にも御説明申し上げましたけれども、この工事の問題は、資金調達及び工事の発注契約手続に係るものでございまして、道路公団として、昨年の十二月に、資金の問題から一時見合わせて、そして、資金調達の見通しの立った段階でまた年度内の工事を出させていただいた、この仏経山も含めて出させていただいた、こういうことでございまして、いわゆるコンプライアンス本部に係るような問題ではないというふうに私どもは認識をいたしまして、このような措置をした、こういうふうに理解をいたしております。
細川委員 この仏経山トンネルの件につきましては、十三件の工事が、発注予定であったものが中止になったわけですね。中止になって、そしてまたそれが復活をした。その復活をする過程においていろいろな問題があったんではないかということで、いろいろ週刊誌なんかで報道されたわけなんです。
 したがって、このコンプライアンス本部をつくった目的、ここで申し上げますと、日本道路公団役職員倫理規程を定め、職務の公正さを確保し、倫理観をもって業務の遂行をしてきたところである、これに加え、公団業務が適切に執行されていることを社会に理解していただくために、コンプライアンス体制を構築することが必要だ、これがコンプライアンス本部設置の目的というふうに書かれているわけなんですけれども、まさに、この目的からしますと、この十三件の工事の中止、復活の問題というのは、このコンプライアンス本部で取り上げるに最も適した事例ではないんですか、総裁。
藤井参考人 コンプライアンス本部で、みずから取り扱われる問題意識もあろうかと思いますし、私どもからお願いして御検討いただく問題もあろうかと思います。
 先ほど申し上げましたように、資金調達をベースとする問題意識の中で、昨年からことしにかけての問題は処理したというふうに私どもは認識をいたしておりますので、そのように思っております。
 ただ、この件について、コンプライアンス本部会議が今後どういうふうに御対応になるか、これは私どもにはわかりません。しかし、現時点、きょう現在までの段階では、取り上げておられるという話はまだ私の耳には入っておりません。
細川委員 このコンプライアンス本部がつくられまして、きょうで三回目ということなんですけれども、この本部の調査に対して、公団の一部役員の人が自民党の人たちと一緒でコンプライアンス本部にクレームをつけているというような話が私のところに来ているんですけれども、そういう事実はありますか。
藤井参考人 そのような話は承知しておりませんし、また、そのようなことはあり得ないというふうに認識しております。
細川委員 それでは重ねてお聞きをいたしますけれども、道路公団の佐々木中国支社長さんがコンプライアンス本部から参議院の青木議員との接触状況などをいろいろ聞かれたというようなことは聞いておりませんか。
藤井参考人 私は、一々、コンプライアンス本部の細かいことまでを承知しているわけではございませんが、少なくとも私はそのような話は聞いておりません。
細川委員 これも後の質問とも関連しますけれども、これらについて、事実関係について佐々木中国支社長がいろいろなことを聞かれているということについて、今、知らないということの御答弁ですけれども、これについて調べてみるということ、これはどうですか。
藤井参考人 私ども、コンプライアンス本部というのは、道路公団に設置してはございますけれども、ある意味で道路公団をも監視するというか、総裁を含めて私どもの仕事ぶりをきちっと見ていただく、こういう立場の組織というふうに理解をいたしております。そういう意味で、私どもからコンプライアンス本部の実施状況についてとやかく、特に総裁が口を出してどうのこうのということは差し控えた方がいいのではないかという理解をいたしております。
細川委員 先ほどの、佐々木中国支社長がコンプライアンス本部でいろいろ青木議員との接触状況を聞かれたということで、それを知った村瀬副総裁あるいは奥山理事、この方たちが自民党の方に連絡をしたというふうに私の方には話がありますけれども、こういうことはどうでしょうか。
藤井参考人 私は、全くそのような話は承知しておりません。そういうことはないと私は思っております。
細川委員 今回、内閣委員会の方にかかりました道路四公団の民営化の問題につきましての法案で、いろいろ道路公団の問題が議論になったわけなんですけれども、私は、このコンプライアンス本部がつくられて、総裁のもとでこの本部が適切に機能していくということは今後の道路公団にとっても大変重要な、意義のあるものだ、したがって、大いにこの本部が活動を活発にしていただきたいなというような強い希望も持っているわけなんですけれども、法令を遵守するという極めてまともな正しい方向が、何かいろいろな形で、曲げられるといいますか、圧力がかかるといいますか、そういうことで、この活動がいろいろな妨害をされるというようなことになりますと、私は道路公団の将来にとってもよくないことだというふうに思っております。
 そういう意味で、先ほどのような件について、総裁としては、調べていただくというわけにはいきませんか。
藤井参考人 先ほど申し上げましたように、私の方からどうこうせいというようなことはなるべく控えさせていただきたいと思いますが、きょう、こういう委員会の場で先生からそういうふうな御指摘があったということは、コンプライアンス本部の方に私からきちっと伝えたいと思います。
細川委員 このコンプライアンス本部、これは本部長が日野正晴さんで、元名古屋高等検察庁の検事長、元金融庁長官でもございますし、現在は弁護士さん、この本部長さん。そして、本部員、お二人いらっしゃいます。岡田良雄さん、これは元東京高裁の長官、現在帝京大学の法学部長さんでありますし、それからもう一人の方も、もともとは警察庁の刑事局長さんもされているというような、もうそうそうたる、経験そして見識をお持ちの本部長さんであり委員さんがこの本部をつくり上げておられますから、こういう人たちにぜひとも思う存分に活動していただいて、道路公団が将来に向けて本当に国民から信頼もされ、そして利用もされ、いい形の道路公団をつくり上げていくためには本当に大事なコンプライアンス体制だというふうに思いますので、私が指摘したような問題が起こらないように、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 それでは、続いてタクシーの問題についてお伺いをいたします。
 タクシーの規制緩和についてお伺いをいたしますが、ことしの二月に改正道路運送法が施行されまして、乗り合いバス、ハイヤー、タクシーの需給調整規制が撤廃をされました。これで運輸部門におきます規制緩和はほぼ完了したというふうに言ってもよいと思います。
 中でも、特にタクシーの規制緩和は、競争が激化いたしておりまして、そのことから安全性を損なうおそれがあるということが常々心配であったわけでございます。ただでさえ、モータリゼーションによります利用者の減少と景気の悪化によって大変厳しい状況の業界になっております。それがこの規制緩和によりまして一層の打撃を受けるといたしましたら大変問題でありまして、そういうことをやる以上、そういうマイナス面を最小限に抑える環境整備をすべきだということは、運輸委員会当時から委員会で指摘をしてきたところでございます。
 そこでお伺いいたしますけれども、この改正道路運送法の二月の施行以来、新規の許可申請あるいは増車の届け出、新たな運賃申請などの状況はどういうふうになっているのか。そして、これらにつきまして国土交通省としてはどういうような評価をしているのか、これについてまずお聞きをいたします。
洞政府参考人 改正道路運送法施行後におきますタクシーの申請状況についてのお尋ねでございますが、三月三十一日までに全国におきまして四十四社から新規参入の許可の申請、二十三社から営業区域拡大の認可申請、そして四百六十七社から約二千六百台の増車の届け出がなされております。
 また、運賃関係につきましては、関西圏を中心にいたしまして、初乗り運賃額を五百円とする申請のほか、五千円を超える部分について五割引きとする遠距離割引運賃など低額な運賃とする申請や、深夜割り増しを廃止する申請など、各種の申請がなされております。
 これらの申請状況につきましては、需給状況が厳しい中での増車というような指摘もございますが、一方で、今回の法律改正を契機といたしまして、従来のサービスのみにとらわれることなく、ニューサービスの導入など、創意工夫によって利用者に評価され、新しい需要を開拓しようという意欲、さらに言いますならば、それぞれの企業の経営戦略が目に見える形で感じられるようになってきたんじゃないかというふうに考えております。
細川委員 いい形で評価をされているようでありますけれども、しかしこの業界で働いておりますタクシーの運転手の賃金というものは依然として低い状況が続いております。昨年の調査では、他の産業との年収比較は二百三十万円以上も低くなっておりますし、車両台数の増加とかあるいは現行の運賃からの割引ということが、タクシーの運転手の賃金あるいは労働条件を悪化させている、ひいては運転者の質を低下させて安全性の確保に影響を及ぼす、そういうことにもつながってくるのではないかという、大変心配でございます。行政は、そうはならないような何らかの手だてを講ずるべきではないかというふうに思っております。
 そこで、九五年から九六年に現行の運賃の認可がされておりますけれども、そのときの認可条件というのは、労働条件を改善する、こういうことで現行の運賃が認可をされました。ところが、当時からいたしますと現在は大幅に賃金は低下をしておりまして、またそういう中で、関西を中心に、ダンピングまがいの割引の導入や極端に安い運賃申請が相次いでいるというような状況でございます。そういうような運賃申請に当たっては、適正な労働条件の確保についてどういうような審査をするつもりなのか、これについて明快なお答えをいただきたいというふうに思います。
洞政府参考人 先ほど申しましたとおり、タクシーの運賃につきまして、初乗り運賃額を五百円とする申請のほか、五千円を超える部分について五割引きとする遠距離割引運賃など、低額な運賃とする申請がなされております。これらの申請を、関係者からいろいろ意見を聴取したりして、今いろいろ審査しているところでございますけれども、こういう申請を処理するに当たりましては、改正道路運送法の附帯決議を十分に踏まえつつ策定しました認可基準でも明らかにしていますとおり、人件費等の費用については適正な水準を反映させる、具体的に言いますと、労組の同意を求める、あるいは地域の、地区の平均的な料金水準というものを参考にして、それを著しく下回らないというようなことをしっかりチェックして、と同時に、不当な競争を引き起こすおそれがないのかどうかという問題とか、あるいは不当に差別的でないかどうか等々について、あらゆる方面から厳正に審査していくという方針で臨んでおります。
細川委員 今、人件費等も含めていろいろ考慮しながら審査を進めているというようなお答えでございましたけれども、この遠距離割引も含めた新たな運賃申請について、現行の自動認可運賃に該当しない新たな運賃申請はすべて申請原価を公表する、例えば今おっしゃった人件費などについても公表して、厳正に個別審査を行うべきじゃないかというふうに思いますけれども、その点についてどうなのか。また、低い運賃申請については、労働者代表の同意があるものについては、その内容を公表してもらいたいというふうにも考えますけれども、その点、いかがでしょうか。
洞政府参考人 申請の内容の公表についてのお尋ねでございますけれども、先ほど申しましたとおり、これらの申請を処理するに当たりましては、改正道路運送法の附帯決議を十分に踏まえつつ策定した認可基準でも明らかにしていますとおり、人件費等の費用について適正な水準を反映させると同時に、不当な競争を引き起こすおそれがないかどうかとか、不当に差別的なものでないかどうかを審査していくということにしております。
 申請原価や労働者代表の同意内容の公表につきましては、情報公開法の規定上、個別事業者の具体的な原価等その公開が難しいと考えられるものもございますけれども、それ以外のものについては、情報公開の請求があれば、情報公開法の趣旨を踏まえて積極的に検討してまいりたいと考えております。
細川委員 ぜひ積極的な方向で御努力をお願いしたいというふうに思います。
 続いて、地球温暖化問題についてお聞きをいたします。特に、運輸部門におきます地球温暖化問題を取り上げて議論をしていきたいと思います。
 ことしは桜もいつになく早く咲きまして、これも大きな目で見れば地球温暖化が一因ではないかというふうにも思います。温暖化が進んでまいりますと、地球の気候の変動、あるいは海水面の上昇によります災害の多発、あるいは農作物への影響、いろいろと生活を脅かすさまざまな問題が起こってまいります。
 強いて言えば、この温暖化の問題は、地球の生態系に影響を及ぼし、人類そのものの生存をも脅かすというような大変深刻な問題でもあろうかと思います。したがって、日本は、各国と協調をいたしまして温暖化対策を緊急に進めていかなければならないというふうに思っております。
 それで、この三月には、政府の方から新しい地球温暖化対策推進大綱が出されまして、京都議定書での国際的な約束であります温室効果ガスの六%削減に向かってさまざまな分野で対策を講じるということにしております。私も、京都議定書の二〇〇二年発効を目指しまして、国としての最大限の努力をすべきだというふうに考えております。
 今国会でも、環境委員会で地球温暖化対策推進法の改正案が審議を行われるということになっておりまして、ここでは運輸部門に限って大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、この運輸部門におきます温暖化対策、これについて大臣はどのようにお考えになっておるのか、大臣の所信をお伺いしたいと思います。
扇国務大臣 今細川議員がおっしゃいましたように、ことしは桜もボタンもツツジも異常早期開花、それが地球温暖化かということを言われますと、何かそら恐ろしいような気もいたしますし、我々の身の回り、本当に変化が起こっているのではないかと気にいたしますけれども、運輸部門に限っての御質問でございますので、私から運輸部門に限ってのお答えを申し上げたいと思います。
 運輸部門で二酸化炭素の排出量が、自動車の保有台数でありますとかあるいは走行量が大幅に上回ってきたということによって、九〇年から九五年の間に一七%増加したというのは、細川議員も御承知のとおりでございます。この状況を放置すれば、少なくとも二〇一〇年には九〇年の当時に比べまして四〇%増になると言われておりますので、そのことは何としても避けなければならない。そのために、今議員がおっしゃいました地球温暖化対策推進大綱、これを作成いたしまして、運輸部門につきましては九五年度並みの水準、九〇年に比べあの当時で一七%増に抑制するということを何としても達成しようということで目標を立てました。
 その目標はなかなか難しいんですけれども、九五年以降、公共交通部門とかあるいは流通部門からの排出量はほぼ横ばいになってきたということを考えてみますと、自家用乗用車からの排出量はこの間は一一%増加、そのかわり、自動車部門からの排出量の削減が最大の課題ということになるわけでございますので、少なくとも低公害車の開発でございますとかあるいは普及、それらに、自動車の交通対策ですとかモーダルシフトの推進等を初めとしまして、環境に優しい、そして新たな交通体系というものを私たちは構築して、それを柱として今後推進していきたいと思っておりますけれども、その結果、九九年から二〇〇〇年にかけては、運輸部門からの排出量が二%減少いたしました。まだ二%ではございますけれども、少なくとも一定の成果は上がりつつあるのではないかなと、かすかな希望を持ちながら推進しております。
 運輸部門からの二酸化炭素排出量を九〇年度比大体一七%までに抑制していこうということに関しましては、我々は、目標の達成は決して容易ではないとは思いますけれども、今おっしゃったように、二十一世紀の我々の大きな目標として、自動車税のグリーン化等を生かすことによりまして達成可能にしていきたいというふうに思っておりますし、今後も一層の努力をしていきたいと思っております。
細川委員 この目標の達成はなかなか容易ではないけれども、しかししっかりとやっていきたいという大臣の力強いお答えでございました。国を挙げてということはもちろんですけれども、国土交通省を挙げてぜひ積極的に取り組んでいただきたいというふうに思います。
 そこで、温暖化の具体的な施策の前に、国土交通省として、役所としてできること、これについてちょっとお伺いします。環境負荷の小さな物品を購入しているかどうか、国土交通省が環境負荷の小さい物品を購入してどういうふうに努力をしているのか、これについてお伺いをしたいと思います。
 実は、二〇〇〇年、おととしの通常国会でありますけれども、通称グリーン購入法が成立をいたしました。正式には、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律でございまして、国の機関は、環境への負荷の少ない物品を調達する義務を負うことになったわけでございます。この法案そのものは、私が環境委員会の委員長をやっているときの委員長提案で提出をいたしまして、与野党各党にお世話になってこの法案が成立をいたしました。したがって、この法案がどういうように運用されているかということについて、私自身関心を大いに持っているところでございます。
 そこで、お聞きをいたしますけれども、温暖化防止に限ったことではありませんけれども、現在国土交通省は、グリーン購入、例えば低公害車の導入などにつきましてどういうような取り組みをしているのか、その点についてお聞きをいたします。
風岡政府参考人 国土交通省としてのグリーン購入に係る取り組みの状況でございます。
 先生御指摘いただきましたように、グリーン購入法に基づきまして、政府全体としての基本方針、これが閣議決定をされております。私どもも、国土交通省としても、それを受けまして、平成十四年度につきましては、去る四月二十六日に調達方針というのを省として決定をいたしました。ここにおきまして、事務用品とか機器類とかあるいは自動車等の品目ごとに具体的な調達目標というのを定めまして、私どもとしては可能な限り環境に配慮した製品の調達に努めているところであります。
 その中で、国土交通省として特に力を入れております自動車について具体的に申し上げますと、一般公用車につきましては、これは大臣車それから副大臣車、政務官車も含めまして、十四年度に購入する百四十五台、これはすべて低公害車とするということにしております。これによりまして、平成十六年度末までには国土交通省が保有します一般公用車すべて低公害車としたい、このように考えております。
 それから、自動車の中には、一般公用車以外のグリーン調達対象自動車もございます、工事用車両等でございますけれども。これにつきましては、まず、主として乗用に供する自動車につきましては、一般公用車と同じように極力低公害車にするということで、これにつきましては、十四年度二百七十七台調達することにしております。
 それから、現場業務に使用する自動車につきましては、燃費とか排ガスとか、そういった環境に配慮した自動車を購入するということで、これは三百六十九台、十四年度に調達するということにしております。これによりまして、一般公用車以外の車につきましても、低公害車を含めて環境に配慮した自動車の購入ということに努めていきたいと思います。
 今後とも国土交通省としては、地球温暖化防止対策というような観点での低公害車の導入だけではなくて、その他の物品調達におきましても率先垂範してグリーン調達というものに努めていきたい、このように考えております。
細川委員 ありがとうございました。
 ぜひとも積極的に取り組んでいただきたいというふうに思いますし、また、この方針そのものは公表することになっておりまして、十三年度はまだ統計がとれていないから、どれくらいその目標を達成したか、まだ統計が出ておりません。したがって、これから統計が出てまいりますと、各省庁どれくらい努力をしたかというのが統計によってわかる仕組みになっておりまして、ぜひ国土交通省はトップになっていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 次に、自動車の単体対策などについてお聞きをしたいと思いますけれども、私もかつて運輸委員会の中で何度か地球温暖化の問題について質問もしてまいりました。その中でいろいろな答弁をいただきましたけれども、しかし、必ずしも成果が上がっているとは言えないのではないかというふうに思っております。
 先ほども大臣からもお話がございました。運輸部門は、他の産業部門あるいは民生部門と比べますと、九〇年以降のCO2の排出量の増加が際立っておりまして、九五年では一七%、九九年で二三%も増加をいたしております。失われた十年というふうに言われております長期不況の中でこれだけ排出量がふえているのを見ますと、二〇一〇年で九五年のレベルにするという目標というのが実際に達成できるのかどうか。大臣からは、なかなか容易ではないけれども頑張りたいというお話がありましたけれども、これもまたなかなか大変なことだろうというふうに思います。
 政府でつくりました新大綱、新しい大綱によりますと、運輸部門の対策というのは三つありまして、一つは自動車交通対策、二つ目はモーダルシフト・物流の効率化、三つ目は公共交通機関の利用促進等の対策、これらを引き続き行っていくということでございます。これらの中で、車そのものの自動車単体に関する対策、つまりはグリーン税制の導入も含めました低公害車の開発、普及については私は効果が上がるのではないかというふうに期待をいたしております。
 そこでお伺いをいたしますけれども、低公害車の技術は十分進歩はしているとは思いますけれども、その普及についてはどのような施策を講じるのか。グリーン税制についてもっと強化すべきだということも考えておりますけれども、これらについてどうなのか。国土交通省の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
岩村政府参考人 先ほど大臣から御答弁申し上げたように、自動車部門、ここの対策というのが非常にかなめになります。特に、自家用乗用車に関しての対策ということでございます。
 この普及促進について、税によってインセンティブを与える、また逆にディスインセンティブといいますか、不利な扱いをすることによって、より環境に優しい車を普及させていこう、そういう施策をおかげさまで十三年度から導入をさせていただいたわけでございます。
 これの成果でございますが、まだ導入してから一年でございまして、はっきりしたものはまだ出てきておりませんが、例えば、昨年の四月、税制が入りましたけれども、その後、この税制で優遇されるいわゆる低公害車の車種、これが非常にふえております。
 数で申し上げますと、税が入る前の二〇〇〇年の十二月には型式でいって七十九でございましたが、これが昨年の九月には百四十六ということで、まず車種が大幅に増加しているということ。それから登録台数、これも、まだデータは十三年度の上半期しかございませんが、六十五万台この対象となる車が導入されたということでございまして、先ほどこれは大臣も御答弁いたしましたけれども、こういった取り組みも含めて、九九年から二〇〇〇年にかけて運輸部門からの排出量は二%減少したわけでございます。初めてのケースでございます。先ほど先生からの御指摘があったように、九〇年から九五年にかけて一七%ふえ、さらにその後まだふえているということですが、初めてだということもございます。
 国土交通省としては、九五年のレベルに抑える、すなわち九〇年比一七%のところで抑えようということが目標でございますので、今申し上げたグリーン化税制を含めてさらに議論を進めていかなきゃいけないと思います。ただ、グリーン税制は今申し上げたように昨年度入ったばかりですので、さらにこれをどうするかというのは、もう少しこの成果を見きわめる必要があろうかというふうに思っておるところでございます。
細川委員 ぜひグリーン税制も積極的に進めていただきたいと思います。
 今までの話は自動車の単体対策でございますけれども、その点については、私もある程度効果については理解できますけれども、次の、交通システムを変えるということになりますと、この実効性は大いに疑問も感じるわけでございます。
 モーダルシフトという言葉も、これももう随分前から使われておりますし、温暖化対策の一環といたしまして、これもまたずっと示されております。しかし、モーダルシフトと言いながらも、自動車によります貨物の輸送分担率は増加を続けておりますし、逆モーダルシフトというように言われるくらいでございます。近年はやや戻りつつあるといっても、ほとんど変わっていないところでございます。
 そこでお聞きをいたしますけれども、新しい大綱ではこういうふうに書かれております。「幹線物流の効率化を支援するための法的措置を含む制度の検討」とありますように、モーダルシフトに対する新しい取り組みを期待させるような表現になっております。
 それでは、どういうふうにそのモーダルシフトを推進させるのか。今までモーダルシフト、モーダルシフトと言いながらも、なかなかそれがうまくいってこなかった。これまでとどう違うのか、これらについてお聞かせをいただきたいと思います。
丸山政府参考人 モーダルシフトの推進についてのお尋ねがございました。
 先ほど来御指摘をいただいておりますが、地球温暖化問題への対応あるいはエネルギー問題への対応、それからさらには物流の効率化を図るという観点から、環境負荷の少ない大量輸送機関でございます鉄道、海運にモーダルシフトをしていくということは、国土交通省としても非常に重要な政策課題だというふうに考えております。
 本年三月にできました大綱において、今先生から御指摘いただいたような諸施策、いろいろ書いてあるわけでございますが、これを着実に進めていくということでございますけれども、具体的には、次に申し上げます四つの点に私ども絞って施策を推進していきたいと思っております。
 一つは、今年度予算が認められたわけでございますけれども、幹線物流の環境負荷のためのアイデア、道路運送事業者が持っておりますそういうアイデアに対しまして助成制度というものを開始いたしました。
 二つ目は、私ども現在国会に提出させていただいておりますけれども、貨物運送取扱事業法におきまして、参入規制、料金規制を緩和することによりまして、海運でございますとか鉄道の利用が促進されやすいようにしていきたいということでございます。
 三つ目は、ハードの施策でございますが、拠点的な港湾の整備でございますとかモーダルシフト船の建造の支援あるいは貨物拠点駅の整備を進めていくということでございます。
 四つ目が、ただいま先生から御指摘いただいたところでございますが、幹線物流の効率化を支援するための法的措置を含む制度の検討ということでございます。具体的にはこれから検討していくということで、まだ、どういう形にすればいいかということを今この場で申し上げる段階ではございませんけれども、法的措置を含む制度の検討を進めていきたいというふうに思っております。
細川委員 その法的措置をも含む制度につきまして、期待をいたしておりますので、ぜひひとつ早急に、具体的にお話をいただけるような段階にしていただきたいというふうに思います。
 そこで、先ほどもお話がありましたこの新しい大綱には、内航海運の競争力の強化ということも追加的な措置としてうたわれております。これまでも内航海運の競争力強化ということをずっと言われてきておりましたけれども、今回新たに追加施策としてこのようなことがうたわれた。具体的にはどのような新しい施策を講じるのか、また、それは本当に実効性があるのかどうか、この輸送分担率の画期的な増加になるのかどうか、これらについてお伺いをいたします。
安富政府参考人 内航海運の競争力の強化についてでございますが、モーダルシフトを推進するためには、やはり内航海運のコスト削減あるいは良質なサービスをどう提供していくかということが必要になってまいります。そのために、内航海運の競争力強化のため、本年の四月二十六日にその指針となる次世代内航海運ビジョンというのを策定したところでございます。
 本ビジョンは、内航海運について、海運分野だけでなくて、船舶あるいは船員の分野についても総合的な政策を立てるということで、その指針としてつくったものでございますが、具体的には三つございます。
 一つは、内航海運事業の事業展開の今後の多様化、円滑化を図るための内航海運の事業規制の見直し。それから二つ目には、経済性にすぐれ環境負荷の小さな次世代内航船、スーパーエコシップと呼んでおりますが、こういう新技術の開発普及。それから三点目に、船舶の性能、構造要件あるいは船員の乗り組み体制等に関する社会的規制を見直していくというようなことを考えております。
 こういう三つの具体的な施策について、今後強力に推進することによって海上の物流コストの一層の低減を図る。それによって内航海運の輸送分担率を向上し、さらに二酸化炭素排出量も約三百六十六万トン削減するということを目指して現在進めているところでございます。
 この具体的な施策については、我々としても、着実な推進を図るため、その実施スケジュールを明確化して、着実にそのスケジュールに沿って鋭意具体化を図っていきたいというふうに考えております。
細川委員 時間が参りましたので終わりにしたいと思いますけれども、今まで質問してきたほかに、鉄道貨物についての輸送分担率の増加についてはどうするのか、とりわけ鉄道の貨物のネットワークについての維持あるいは増強についてどうなるのか、これらについても詳しくお聞きをいたしたかったわけですけれども、また次の機会に譲りたいと思います。
 いずれにいたしましても、地球温暖化の対策につきましては、国を挙げてあるいは世界を挙げて取り組んでいかなければならない問題でありますので、ひとつぜひ、二十一世紀、未来の地球のためにも、国土交通省を挙げて頑張っていただきたいと思います。
 以上で終わります。
久保委員長 斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。
 私は、建築基準法についてお伺いをいたします。
 今国会にも建築基準法の改正案が出ておりますが、実は四年前、平成十年に大改正がございました。この大改正の趣旨は、それまでの仕様規定から性能規定へということで、これによって研究開発の促進等が図られるということで、我々も賛成をしたわけですが、どうもその目指した方向に行っていないのではないかという問題意識で質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、この平成十年六月の建築基準法改正の趣旨、特に仕様規定から性能規定に変わったということについて、その目的と予想された効果について簡潔にお伺いいたします。
三沢政府参考人 平成十年の建築基準法改正は、建築基準の性能規定化と、それからもう一つ、建築確認検査の民間開放を二つの柱として行われたものでございます。
 そのうち、特に性能規定化でございますけれども、それまで、個別具体の材料、寸法等を定めた、いわゆる仕様規定によっていたものを改めまして、必要な性能さえ満たせば個別具体の材料、寸法等を問わない、いわゆる性能規定へと規制方式を転換したというものでございます。
 その目的は、建築物の設計の自由度を拡大し、また、技術革新とか海外資材の導入を円滑化するとともに、法令で求める性能を明確化するということによりまして基準の透明性を高めるということでございました。
 この結果といたしまして、例えば、例で申し上げますと、免震建築物が一般化したとか、あるいは特殊な処理を施した木材が不燃材料として使用可能になったことなど、その成果は着実にあらわれているというふうには考えておりますけれども、今後とも、技術革新等に対応して、この基準の見直しについては進めてまいりたいというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 改正のポイントは、先ほど御答弁あったように、性能規定にすることによって、これまで材料とか一つ一つの技術についてすべて仕様を規定していたのを外した、これによって設計の自由度が高まる、それから技術開発が活性化する、このように言われておりました。
 だからこそ、当時のいろいろな大学の先生また構造設計の方々も、これはいわゆる建築学会の雑誌ですけれども、次のように述べておりまして、「性能規定型設計は設計の本来あるべき姿を具現化するものとして、設計者をはじめ一般からの期待も大きかった。 それは、まず、要求性能、目標性能を明確化できること、それを実現するための、設計法や計算法および構造方法は自由に選択できるという展望があったからである」こういうふうに期待をしていたわけでございます。
 ところが、平成十年六月に新しい法ができて、二年後の平成十二年六月に施行令が発せられます。計算法など細かく規定したということですが、これによりまして、自由な発想に基づく設計、研究開発の進展という面から問題が生じている、このように言われております。
 こういうこともありまして、建築学会を中心に、いろいろな研究者、それから設計事務所の設計者、建設会社の設計者等にアンケートをとりまして、果たして四年前の建築基準法の改正がその趣旨どおりに運用されているんだろうかという意見集約が行われております。また、この意見集約に基づいて、建築学会でシンポジウム等も、これは官、学、民それぞれが集まってシンポジウムが開かれておるわけですけれども、どうもその議論を聞いておりますと、先ほど局長がおっしゃった方向に進んでいないのではないかという議論がございます。
 例えば、これは、いわゆる建設省の建築研究所の研究員、前の建築基準法の改正をリードした人でございますが、このように言っております。性能規定化は、建築物に要求される性能を明確にするとともに、構造技術者の裁量のもと多様な材料や構造形式を可能とするものであるはずである、この性能規定化の目的が技術革新の推進にあることを忘れてはならない、しかしながら、判断基準は厳格さをきわめたものになり、また方法も一定のルール以外は認められないといったことが起きて、結果として、悪いものは排除できても新しい技術を容易に認めないといった科学技術立国にあるまじき状況も生み出してしまっているように思う。このような状況も生まれてきているわけでございます。
 この問題意識で種々質問をしてみたいと思うのです。
 まず最初に、この建築学会のアンケート等でも一番たくさん出てきた意見ですけれども、旧三十八条というのがございます、古い建築基準法にあって今の新しい建築基準法になくなったもの、三十八条。この三十八条によって、新材料それから新構造方法の開発など新しい技術の研究開発が促進されてきた、けれども、これがなくなってその技術開発の方法が、道が閉ざされたという意見が一番多くこのアンケート、構造技術者のアンケートにも出ております。
 まず三十八条ですが、旧三十八条、今はない条文ですけれども、読んでみますと、「この章の規定又はこれに基く命令若しくは条例の規定は、その予想しない特殊の建築材料又は構造方法を用いる建築物については、建設大臣がその建築材料又は構造方法がこれらの規定によるものと同等以上の効力があると認める場合においては、適用しない。」つまり、前の建築基準法は事細かに仕様が規定されておりましたが、それ以外の新しい技術については、これは大臣認定でいいんだ、これが三十八条です。
 具体的には、新しい技術を開発すれば、いわゆる財団法人の建築センターに持っていき、そこでこの三十八条に基づいて、大学の先生、約二十人だそうですが、この二十人の大学の先生方がこの新しい技術について検討し、これはオーケーというお墨つきをつけて、大臣認定になる、そして新しい技術が世の中に出る。こういう三十八条が残っていたのですが、新しい建築基準法ではこの三十八条がなくなった、この点を問う声が一番多いわけでございます。
 その建築学会のあれでも、これはそのシンポジウムでの学者の発言です、材料、構法を分離しての評価は不適切なので、建物個別に旧法三十八条の認定を得た従来の方法が合理的であり、その趣旨を受け継いだ個別評価の道を残すことが望ましい、こういう声もございます。
 また、これは岩波が出している「建築の設計と責任」という多田先生の、有名な構造技術者の本ですが、こういう文章がございます。「建築基準法第三八条は新しい設計手法が世に出るための抜け穴の役割を果たしていたが、今回の改正によって第三八条が消えた。これは、同条の実質的廃止を意味する。このままでは建築界の逼塞は避けられない。」とか、ちょっとしつこいようですが、「法に定義されていない新種の設計手法であっても、「実験」によってその正当性、安全性を明らかにすることができれば「例外」的に合法として認めることをうたった第三八条が救済措置としての機能を果たしていた。」「今回の改正によって、事実上「実験」という抜け道が塞がれてしまった。」「建築の社会から自由な設計能力が奪い取られようとしているのだ。」こういう指摘もございます。
 この三十八条がなくなった、研究開発によって新しい手法、技術、構造方法、材料を世に問うその道がなくなったということが、研究開発の道を閉ざし、科学技術立国としてあるまじき姿を現実として現出している、こういう声が一番学会の中でも多いわけですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
三沢政府参考人 旧法第三十八条の規定でございますけれども、旧法は、先ほど申し上げましたとおり、仕様規定が原則でございまして、仕様規定を満たさない新材料、新構法について、旧法の三十八条で仕様規定と同等以上の効力を旧建設大臣が認定するということによって建築を可能にしたわけでございます。
 ただ、やはりその場合に一つ問題になりますのは、何が同等以上かという判断基準が法令上明らかでなくて、ここが非常に裁量性が高い、裁量にゆだねられていた部分であるということでございます。
 これに対しまして、性能規定化いたしました改正後の規定は、どういう性能が必要かという、その要求する性能を法令上の原則として明確に規定して、この性能さえ満たせば具体の仕様規定を満たしているかどうかは問わないということにいたしました。このために、仕様規定の例外を認めるための旧法三十八条は、性能規定の中に包含されるということから、廃止されたということでございます。
 この場合、では、具体的にどういう方法があるかということでございますが、三つの方法がございまして、一つは、高度な計算等により直接性能を検証する方法で、これはまさに国土交通大臣が、やや旧三十八条に似ておりますけれども、認定をする方法でございます。その場合にも、指定性能評価機関による性能評価というのを経まして認定するという仕組みが一つでございます。それからもう一つ、一般化された計算等によって直接性能を検証する方法というのがございます。これは、建築主事が建築確認の中でチェックを行うという方法でございます。それから、従来の仕様規定に該当するものでございますけれども、あらかじめ例示的に、こういうものが性能を満たすものだよという形で規定をする、それを建築主事が建築確認の中でチェックを行うという、この三通りのやり方の中で申請者が選択できるということでございます。
 したがいまして、例えば旧三十八条による認定は、先ほど申し上げました一番最初の、高度な計算により直接その性能を検証する方法で建築する、まさに大臣認定を得て建築するということが可能でございまして、そういう意味では、旧三十八条のもとでできた研究開発の道が閉ざされるということではないと考えております。
 むしろ、旧三十八条認定では判断基準がすべて大臣の裁量にゆだねられて非常に不明確であった。今回は、法令上性能を明確にしまして、基準としての透明性を高めた。そういう意味では、申請者の方からも認定取得の見通しがより立てやすくなっているという観点から、技術開発の促進に資するものだというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、この性能規定化につきまして、昨年の六月から施行して基準化を図っているところでございますが、当然いろいろな御批判もございますので、それらにつきましては謙虚に耳を傾けながら、またいろいろな努力はしていきたいというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 御答弁を要約すると、三十八条はなくなったけれども、新しい道ができている。昔からあった超高層の時刻歴解析、これは古いのも新しいのも一緒ですから除きますと、旧三十八条で対応していたものに二つの方法ができた。一つは、建築主事が、いわゆる役所にいらっしゃる建築主事が対応することになりますけれども、いわゆる限界耐力法、これによって、簡易な方法でチェックするという道が一つ。それから、もう一つは、その性能規定ということを明確にした上で大臣認定の道が残されている。だから、旧三十八条がなくなっても問題ないんだという御答弁だったと私は解釈をしたわけですけれども、しかし、現場からの声を聞きますと、三十八条がなくなったことによって、実際の研究開発がやはり大きなそごを来している部分がある。
 例えば、これも建築学会のシンポジウムで、今は独立行政法人になっておりますが、建築研究所の構造研究グループ長の先生がおっしゃっていることですけれども、「部材レベルや部分的な架構のレベルへの配慮を怠ったため、それらの限界値への影響が考慮されないといった状況が生まれていると聞く。」こういう表現がございます。
 つまり、どういうことかといいますと、確かに時刻歴解析をするような、コンピューターを使って大きな構造解析をするようなものについては大臣認定というルートが残されているけれども、しかし、建築の構造の研究開発はそれだけではありません。新しい部材、接合部、挙げれば切りがないほどいろいろな新しい構造方法が提案をされております。そういう部材とか架構方法といったレベルでの研究開発については、実は大臣認定ルートというのが現実には存在しない、だから研究開発してもだれも認めてくれるところがない、現実に使いようがない、こういう声もございますが、この点についてはいかがでしょうか。
三沢政府参考人 性能規定の中では、構造部材に用いる各種の材料の強度を定めるというところが一つ、それから、こういう材料を用いた建築物について構造計算を行って、想定される荷重及び外力に対して安全かどうかを検証するということが一つございます。
 したがいまして、大まかに言いますと、部材開発や接合部の開発につきましても、材料に関する中身と構造計算に関する中身と分けて考えることができるわけでございますが、構造部材に用いる材料につきましては、基準法の第三十七条に基づきまして品質の基準が定められております。これは、従来、JIS、JAS規格を満たさない新材料については旧三十八条の認定でこれをやっていたわけでございますけれども、今回、三十七条の大臣認定を受けることによって使用することが可能になっているというものでございます。
 別途、構造計算につきましては、先ほど申し上げました時刻歴応答解析あるいは限界耐力計算を行うことによって建築することが可能でございまして、こういった新しい部材開発とか接合部開発による構法の実績が積み重ねられればこれをさらに例示仕様として告示するというような基準の見直しも行って、そういう個別の建築行為ごとに認定等を要しないことにすることによりまして、新技術の円滑な普及ということを促進していきたいというふうに考えております。
 ただ、いずれにいたしましても、技術革新の進展は非常に目覚ましいものがあるわけでございますので、いろいろな方々からの技術提案につきましては今後とも十分耳を傾けて、技術基準についてもやはり常に不断の見直しを進めていくということが非常に大事だというふうに考えております。そういうことによりまして、先進的な建築技術の開発が促進されるように全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 今の御答弁についてもう一度確認ですけれども、新しい三十七条で材料について規定されている、これは後でまたお聞きします。また、限界耐力計算ルート、これについても後で対応します。この二つのルートで対応できない、大臣認定ルートしかない技術開発について、新しい構造方法でありますとか部材開発といったものについても、今後その大臣認定ルートの道をきちんと開く、そういう技術開発についても大臣認定ルートの道を開くということでよろしいでしょうか、今の御答弁。
三沢政府参考人 ただいま申し上げましたように、材料についてはその三十七条の認定でいくことは可能である。一方、構造計算の方については、新しい技術について新しい構法の実績が積み重なれば、それは認定ということじゃなくて、むしろ告示そのものを改正して、一種の仕様規定として、こういうのはいいんですよということを認めることは可能であるということを申し上げました。ですから、個別の認定じゃなくて、一般ルールとしてそういうことを取り入れることが可能であるということでございます。
斉藤(鉄)委員 いや、開発された新しい技術です。積み重ねれば使ってもいいですよというのは、それはもう新しい技術じゃないわけです。新しい技術が出てきたときにそれを認めるルートを残しておいてほしいという意味です。
三沢政府参考人 新しいルートとおっしゃる意味が、材料については、新しい技術であれば、例えば免震材料の積層ゴムみたいなものであれば、そういう複合的な材料を含めた構造部材そのものについて、実験データに基づいてまさにその法三十七条の認定が受けられるということでございますので、そういう意味で、新しい技術開発の認定について新しい研究の道を閉ざすということではないんじゃないかというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 三十七条は材料だけですね。今言っているのは、新しい構造方法でありますとか構法でありますとか、材料以上に大事な点です。
三沢政府参考人 構法と言われますものは、要するに、新しい技術について、やはり材料の問題と構造計算の問題と二通りに分かれるんではないか。材料に関する内容は今の三十七条でございますし、構造計算についてはまさにその大臣認定の道が開かれているということで申し上げているということでございます。
斉藤(鉄)委員 次に進みますが、新しい構造方法、構法についても大臣認定ルートの道は残されている、このように理解をいたします。
 それから、先ほど、一般化してそれを基準化、告示化していくということでございますが、役所の建築主事が判断しやすいように建築基準法の枠の中で政令で基準化、告示化していくこと、これは大事なことでしょうけれども、しかし、民間が自分の会社のお金を使って研究開発した技術、これを法律の中で、政令の中で告示化、一般化するということは、お金を出していない、研究開発をしていない第三者もそれを使えるということになって、これでは民間の研究開発意欲をそぐことになるんじゃないでしょうか。
三沢政府参考人 性能規定化の趣旨の中には、国民から見て基準自体について透明性があるということがやはり求められているというふうに考えております。そういたしますと、一つは、大臣認定を行う場合の技術的基準というのもできるだけ明確化するとともに、それから、そういう実績の積み重ねられた技術については、できるだけ一般ルール、一般基準化していくということが透明性を高める上で大事なことではないかというふうに考えております。
 その場合の、例えば研究開発を行う事業者の方々の知的財産権の問題等につきましては、これはむしろ、建築基準法というよりは特許制度等によって必要な対応が図られるべきものだというふうに考えておりまして、性能規定化ということからすると、透明性の要求というのはやはり必要ではないかというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 その点についてもわかるんですけれども、やはり民間企業が研究開発のインセンティブを持つような部分についてもぜひ御理解をいただいて、何でもかんでも一般化して告示化するということについては御考慮をお願いしたいと思います。
 それから、先ほど局長がおっしゃっていた、三十七条で材料については大臣認定のルートが残されているんだということでしたけれども、これまでは三十八条で、先ほど読み上げましたように、材料と構法は一体のものとして扱われてきましたが、今回は、材料については三十七条、構造方法、構法については全くなくなりました。材料と構法は一体となって性能を生み出すものであって、この材料と構法の分離は不適切なのではないかという指摘が建築学会からも出されておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
三沢政府参考人 いろいろな御意見があることは承知しておりますが、ただ、一般的に申し上げますと、やはり性能規定の中でどういうものが求められるかといいますと、一つは、材料自体の強度についてどういうものを要求するかということ、それから、そういう材料を用いたときに、その構造計算をして、それが、想定される荷重とか外力に対して安全かどうかという二つの要素があるということかと思います。したがいまして、材料に関する内容と、それから構造計算に関する内容と、基準上はやはり別々に考えて分けるということにしておりまして、この考え方自体は合理性があるというふうに考えております。
 むしろ、旧三十八条では、材料と構法を一体的に評価するとはいいながら、結局、個別の建築行為ごとに認定をとっているという事例も多かったわけでございます。今回の新法の中では、今度は、材料の方であらかじめ認定を受けておけば個別の建築方法は建築確認で足りるというような事例もありますので、手続という面からいうと、一概にこれで負担が二重になったということにはならないんではないかというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 私がお訴えしたいのは、実際の研究者、また設計者から、新しい技術開発について、その道が狭くなったような気がするという声が建築学会等で言われておりますので、どうかそういう懸念を払拭するような、そういう声を聞いていただいて、払拭するような施策をとっていただきたいと思います。
 あと三分ですので、二問続けて御質問します。簡潔にお願いします。
 一つは、いわゆる古い三十八条で認定された、技術開発された技術、これがことしの五月三十一日で有効期限が切れる。つまり、六月一日からはそれが使えなくなるということだそうでございます。つまり、開発した技術を、前は使えたのに、今は使えなくなる。こういう事態に対して何らかの方策が必要だ、この点が一点でございます。
 第二点目は、これについてはちょっとゆっくり議論をしたかったんですが、役所の建築主事さんが技術を認定するために限界耐力法が出てきたということだったんですけれども、これは日経アーキテクチャーという雑誌に出たんですが、「ある行政庁の建築主事は「難しすぎて審査できない。このため、申請を受け付けなかった。今後、受け付けるとしても申請者に公的な評価機関などの技術評定を得るようにお願いする」」こういう現実の声。現実にほとんどこれが機能していない、難し過ぎて。公的な認定機関に行くと、旧三十八条がなくなったので、法的な根拠がない、法的な根拠のない評定はできない、こう言ってはね返される。つまり、新しい技術について、持っていくところがなくなった、現実に使えない、こういう声もございます。この限界耐力計算ルートの現状についての認識、この二点を最後にお伺いします。
三沢政府参考人 できるだけ簡潔に申し上げます。
 一点目は、旧三十八条の認定を受けた技術の中で、現在でもJIS、JAS規格を満たさないなど一般的でないものについては、新法でも法三十七条の大臣認定を受けることになります。これにつきましては、特例といたしまして、新法に基づいて大臣認定を受けるに当たりましては、新法に基づく認定手数料は不要にいたしまして、原則として、有効期限が終了する十四年の五月三十一日までに国土交通省の書面審査のみで認定書を発行するということにしております。
 それからもう一点、三十八条で認定を受けた技術で、実績が積み重ねられて一般化したものは、できるだけ例示仕様の方へ、告示にしようということで整備をしているところでございまして、これにつきましても、平成十四年五月三十一日までに例示仕様の告示を整備して建築確認で建築できるようにするということで、今現在準備を進めております。
 それから二点目、限界耐力計算の問題でございまして、これは確かに、現時点では限界耐力計算は導入されたばかりということで、必ずしも広く活用されていないという実態がございます。ただ、今回の建築基準法の改正の中で、民間開放ということで、民間の確認検査機関がもう既に七十五出てきておりますけれども、こちらの民間確認検査機関では限界耐力計算をもう円滑に審査しているという実態がございます。
 いずれにいたしましても、こういう計算方法を実務者にもわかりやすく解説したものが普及させていくためには必要でございますので、これを構造別に、具体的な、実務的なマニュアルの整備を進めているところでございまして、こういうことを進めまして、行政担当者や設計者に対しても普及を図ってまいりたいというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 終わります。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 では、私の方から、きょうは一般質疑ということもあって、ちょっと関心のあるテーマについて質問させていただきますけれども、関心のあるテーマは大体重複しますので、先ほど古賀一成先生の方からも空港問題についてのいろいろな御議論もございました。
 まず冒頭に、大臣に。これは通告も何もしていない話ですけれども。
 最近、外国において大変航空機の事故が目立つような印象を持っております。飛行機の安全性の問題については、当然常日ごろ御指導をされていると思いますけれども、相次ぐ外国でのこういう事故、最近特に目立ったような印象を持っているわけですけれども、大臣としては、我が国の航空の安全について、日ごろどういう御指導をされているのか、その決意のほどをまずお聞かせ願いたいと思います。
扇国務大臣 常日ごろから、私は、国土交通省は、飛行機のみならず、陸海空でございますから、まず安全、それを第一に遵守するように、そのためには、日ごろの整備点検、そして人材育成、あらゆる面で目配りをするように、それと、日進月歩、どんどん新しいものが開発されますので、それに適応できるような能力を養成する、再訓練をする、そういうことも、これは陸海空通じることでございますけれども、行っております。
 ただ、昨今見直しましたのは、特に昨年の九月十一日のアメリカの同時多発テロ、あのとき以来、総点検をしましょうということと、一たん危機がある場合にどのような対処法があるのか、それも陸海空、改めて点検をいたしました。それでなければパニックが起こる。あるいは飛んでいる飛行機をどこにおろすか、あるいは着陸不能になった場合はどちらへ向けるか等々、管制塔の再訓練、そして、全国一律にその指令が行き渡るものなのかどうなのか、昨年の同時多発テロ以来初めてでございますけれども、全国の管制官が同時命令でどう対処するかという方法もマニュアルをつくり、なおかつ、それを初めて実施するというように、改めてテロ対策に対して準備をいたしました。
 ただ問題は、老朽化している機材が多々ございます。今日まで戦後五十七年、あらゆる面で便利になりましたけれども、あらゆるものが耐用年数が来ているのではないかというようなことも含めて、必ず点検怠りなきをするようにというように申し伝えておりますので、万全を期してはおりますけれども、事故を避けるような手はずだけはお互いに気をつけようと、みんなに指令をしております。
一川委員 ぜひそういうことで御努力を引き続きお願いしたい、そのように思っております。
 さて、先月十八日から成田空港の第二滑走路が暫定的に供用開始をいたしました。それはそれとして一つの節目だというふうに私は思います。
 この成田空港という、我が国にとっても大変歴史的なプロジェクト、振り返ってみても大変な重い歴史があるわけです。昭和四十一年ですか、公団がスタートし、その翌年に工事実施計画を認可した、そういう一つのスタートラインがあって、三十五、六年たって今現在こういう状態だということですね。先ほど来のやりとりを聞いておりましても、大臣も十分そのあたりのことは御認識をしておられると思います。
 私自身ちょっと気になりますのは、今回、暫定という名のもとに滑走路が供用開始しました。その滑走路、計画では二千五百メーターの中の、部分的なところにまだ反対派の農民の方がいらっしゃる。ちょっと追い詰められるような形で今回供用開始した姿を見て、今までのこの長い歴史の中で、その地域で反対運動してきている農民の方々の気持ちというものを本当に十分わかっているのかなというようなところもちょっと気になったところがあるんです。大臣も十分そのあたりは御承知だというふうに思いますけれども、この成田空港を始める最初の段階でのボタンのかけ違いがあったというような評価があることはあるわけですけれども、しかし、これまでの長年の歴史の中で、段階段階でいろいろな関係者が努力してきたことも事実でございます。そういう反省の上に立ってこれからもろもろの課題を解決しなければならないというふうに思います。
 そこで、扇大臣は、これまでの成田空港の歴史をどういうふうに評価し、御自身、今国土交通大臣として、これまでのやり方に対して何か反省する点があるというふうに思っていらっしゃるのかどうか、そのあたりの認識をまず大臣からお聞きしたいなというふうに思っております。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
扇国務大臣 けさも、古賀一成議員と、成田空港を含めて、日本の航空行政というものを論議させていただきました。
 果たして成田が日本の国の国際的な玄関口として機能を果たし得るかどうか、また、それだけの機能を備え得るかどうか。国策というものと住民の反対。いまだ和解できないという、ギャップというものは今でもございます。ですから、少なくとも、国策であるという以上、この政策を決定したときから、先ほど私、ボタンのかけ違いという言い方をしましたけれども、日本のあらゆる政策というものは情報開示ということで情報公開をして、立案当初から住民の皆さん方と話し合っていくということが、昭和四十一年の閣議決定当時は欠落していた部分があるのではないか。それが、開港以来今日まで、昭和五十三年に開港して、二十四年間たった一本の滑走路で、それぞれのパイロットが危険を冒しながらも一本でしのいできたという言葉が私は実感だろうと思うんですね。
 まして、日本の玄関口であるといいながら、現在も三十三カ国がウエーティングしながら、おりていただくことができない一本の滑走路。では、三十三のウエーティングしている国が、今二千五百がまだ達成できておりませんから、次の二千五百達成するまでその三十三カ国が待っていてくれるのかどうか。先ほども議論いたしましたように、近隣では四千メートル級が次々できてきている。果たして日本がハブ空港たり得るのかどうか。では、日本に国際空港というものがなくてもいいのか。それでは日本は沈没いたします。
 観光客一つとってみても、これも国土交通省の所管ですけれども、今度のゴールデンウイークも多くの日本人が海外へ出ました。昨年より減ったとはいうものの、落ちたお金はもっと多いのですね。日本人が世界じゅうへ出ていって落としてくるお金は世界で三位、世界から日本に来てくださる観光客は世界で二十四位。このギャップ。
 第三次産業の観光は、基幹産業として、私は今後伸びるべきものだと思っておりますけれども、それ一つとってみても、どこから来てもらうのか。四方が海ですから、やはり空港がなければならない。そういう意味では、日本の将来を考えるときに、やはり理解をしていただいて、空港のあるべき姿、国際空港という、国際の名に値するものを日本じゅうに幾つ持つべきかという基本政策というものを国民の前に提示し、御協力をいただかなければ日本の発展はあり得ない、私はそこまで考えております。
一川委員 こういった国際化社会の中で、飛行機に対するニーズというのは当然ますます大きいものがあるというふうに思いますし、また、そういう時代に備えてしっかりとした国際ハブ空港を整備しないと日本という国そのものが立ちおくれてしまうという、そのお考えは全く同感でございます。しかし、現状では、先ほどの議論のように、国際拠点空港といいながら滑走路が一本しかないという飛行場は日本しかないというまた非常に恥ずかしい状態でもあるわけでして、大臣の、超長期的なデザインというものも大事だというお話も先ほどお聞きしました。
 確かにそういうことも大事でございますけれども、当面、何か最大限の努力をしていくということも非常に大事なことでございます。
 そこで今、暫定滑走路二千百八十メーターというものが、計画では二千五百メーターだというふうにお聞きしましたけれども、その足らない部分について、じゃ、今後反対派の方々とどういう折衝をして、どういうめどが立っているのかというところが今ちょっと見えてこない。かつての運輸大臣は、みずから反対派の農民と話し合いを持ったというケースが何回かあったような記憶があります。扇大臣は反対派の方とまだ直接お会いしていないのかもしれませんけれども、幸いに今、千葉県の知事さんも女性でございますし、大臣も日本の女性をリードする方でございますので、私は、この反対派の農民の方々と、本当に、じかに腹を割って話し合うという面で、扇大臣にそのあたりをぜひ期待したいと思います。今恐らく、反対運動をしてきた方々もだんだん高齢化をして、反対運動そのものが衰弱したという中で、この成田空港というものも一つの歴史があるような気がするんです。
 ですから、そこのところを話し合いの中でお互いに円満に、我が国全体の発展、また、成田空港も地域との共生ということを一つのキャッチフレーズとして最近出しておられるようですから、そこのところも踏まえて、地域の発展、それから我が国の発展という中で、大臣みずから反対派の方々と話し合いに入るということも非常に意味があるというふうに私は思いますけれども、大臣のそのあたりのお考えをお聞きしたいと思います。
扇国務大臣 私はそのことも大事なことであると考えております。なぜ私がそれを考えたかと申しますのは、今、一川議員の御指摘の前に、千葉県に収用委員が一人もいないという現状です。そういう意味で、任命者に委員になることを拒否して、千葉県自体に収用委員会が成立していないということ自体も大変異常なことであると私は思っております。それは、過去のあらゆる例を考えて皆さんがそれを受けてくださらないという状況だと思います。これは知事さんの権限にかかわることですけれども。
 そういう意味で、私は、先日、四月の十七日に成田の空港の式典に出ますときに、成田へ向かっていたものですから、私は役所に、せめて今から島村さんという、御存じのとおり、島村昭治さんですけれども、お宅に伺いたい、拒否されても玄関まで、こんにちは、来ました、きょうから、きょうというか、十七日でしたからあすですけれども、御迷惑かもしれませんけれども事情を御理解いただきたいとごあいさつをしたいというふうに申しましたけれども、私が行きました十七日の日は、それこそ機動隊が出なければいけないような状態でございまして、私が高速から向こうへ行くと言ったら、頼むから勘弁してほしい、配置している人たちが大移動して、それこそ騒動が起こると言われまして、ではせめてということで、私は島村さんのお宅へ、失礼でしたけれども、車の中からお電話をさせていただきました。そうしたら、たまたまもう、何か百人ぐらいの集会があったということでお出になった後らしくて、留守番電話が入っておりまして、かけた電話が留守番電話でございましたので、私は近くへ行くのできちんとごあいさつを申し上げたかったけれども、お留守でしたので、留守番電話でしたけれども入れさせていただきますというふうに、私、通常、ごあいさつするのは当たり前だと思いましたから、私はごあいさつをさせていただきました。
 その後、向こうからお電話とか連絡はございませんけれども、そういう何気ないコミュニケーション。私、言うんです、こそこそ隠れてしないで、堂々とお会いしましょうと。そして、私が役に立つことがあるのであれば。
 ただ、国土交通省は旧運輸省当時から、地元の千葉県の担当者、そして旧運輸省の担当者が延々と今日まで努力し、陰に陽に話し合いを続けてきたという現実を私は知っておりますから、私が出るべき時期、また、今までの彼らの話し合いの努力というものを私が出ていって壊さないようなタイミングというものもあると私は思います。
 そういう意味で、今日まで御努力いただいた多くの人、また、何よりも地権者の皆さん方に今日まで御協力いただいたことは感謝しながらも――御本人よりも周りを取り巻いている人たちにむしろ遠慮していらっしゃるのではないかと思う点もなきにしもあらずでございます。そういう意味では、私は、タイミングというものがあろうと思いますけれども、今後、私でお役に立つことがあり、なおかつそれが一歩前進になる可能性があるのであれば、どんなこともさせていただくというつもりでおりますので、国際空港として恥ずかしくない空港にするための最大の努力、あるいは助言等々、また、一川先生等々も何かの機会がありましたら御指示いただければ、私はできることは最大限にしていきたいと思っております。
一川委員 タイミングというのはもちろん大事でございますし、反対派の皆さん方もいろいろな思いが当然あろうかと思いますけれども、ぜひ扇大臣の時代に、何かそういう突破口を開いていただくと非常に先が明るくなるんではないかなという感じを持ちますので、ぜひ御努力をお願い申し上げたいと思います。
 次に、局長さんにちょっと具体的なお話をお聞きするわけですけれども、今、我が国の国際拠点空港と称する成田なり関空なり中部国際空港的なもの、また、大都市圏の拠点空港と称する羽田空港の整備の問題、これからの役割分担という話は当然あるわけですけれども、それはそれとして非常に大事な課題でございますし、なかなか明確なお話もお聞きできないんじゃないかという感じもいたしますが、ちょっとそのことに関連しまして、国際的な航空機を受け入れるやり方として、我が国の日本列島のほぼ中央部に位置するような地方空港を、国際拠点空港を補完するような意味で、当分の間いろいろな面で活用するというようなことも含めて検討されたらどうかなという、私は個人的に素直にそう思うわけです。
 今、二千五百メーター以上なり三千メートルぐらいの滑走路が地方空港でも徐々に整備されつつあります。そういったところで国際便を受け入れて、そこから日本国内、各地方の空港へまた運ぶということだって当然可能なわけでございますので、成田なり関空なり、場合によっては羽田なりというところへ無理やり、そういう余裕はないといえば余裕はないわけですけれども、地方空港の活性化という観点から、地方空港に国際拠点空港の一種の補完的な役割を担わせるということも我が国の新しい方式として考えたらどうかなというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
深谷政府参考人 ただいま先生から御指摘をいただきました地方空港の活用の点でございますけれども、大変重要な御指摘だと思います。私どもといたしましても、これまでも地方空港の活用、それは地域におきます国際交流あるいは国際化、そういったものにも資するというふうにも考えておりまして、現在、先生御指摘の成田や関空のような国際拠点空港以外の地方空港、今現在二十一の空港に国際定期便が就航しておりまして、そこから四十三の都市を結んで国際便が飛んでおります。最近五カ年におきましても、例えば福島ですとか米子ですとか宮崎ですとか秋田、こういうところがソウルとの間の定期便が結ばれる。あるいは函館とユジノサハリンスクのようなところの定期便が就航し出すというふうなこともございます。
 私どもといたしましても、地方空港におきますところの国際線の運航、これは大事なことだとは思いますが、他方では、その就航いたします路線の需要の問題、こういった問題もございます。そういったものを前提といたしまして、今後もそういった取り組みをしていきたいと思います。
 他方ではまた、CIQ、いわゆる税関とか出入国管理、こういったことの受け入れ体制の整備あるいは例えば受け入れ機材の問題等が発生する場合、あるいは滑走路の強度の補強、こういったいわゆる既存施設の整備改善、こういったものも必要に応じて対応してまいりたいというふうに考えております。
一川委員 地方空港の活用ということも施策の一つの柱としてぜひ御検討をお願いしたいなというふうに思います。
 地方空港に関連しまして、最近、空港を持つ地方の皆さん方の意見を聞くときに、かつては地方空港と地方空港を結ぶような路線というのはもっとたくさんあったけれども、最近は、やはりどうしても採算性の問題から、地方空港と地方空港を連結するようなネットワークというのはだんだん弱くなってきている、地方空港と大都市圏の空港を結ぶというものにどうしても需要が大きくなりつつあって、採算性も当然そちらがとりやすいということもあるということで、地方空港と地方空港間のそういう航空路線というのは将来的に見ると非常に心配な点があるわけです。
 私は、民間の競争原理のもとで路線が維持されるか、あるいは廃止されるというところがあるわけですけれども、我が国の高速交通ネットということを考えた場合に、地方空港と地方空港を結ぶルートというのは、やはり行政的にある程度カバーしていかないと、採算性の低いところは全然そういう航空路線がなくなってしまう、そういうおそれがあるような気がするわけですけれども、そういうことについて国土交通省はどのようにお考えでしょうか。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
深谷政府参考人 ただいま先生から地方空港間のネットワークを中心とした地方空港のお尋ねがございましたけれども、地方空港間の路線の利用状況を見ますと、直近の実績で、平成十二年度、我が国の国内航空旅客数、全体で約九千三百万人の利用者がおられますが、そのうち、いわゆる地方と地方を結ぶ路線のお客さんが約千九百万人ということで、二〇%程度のシェアでございます。
 この数そのものはこの二十年間で二倍ぐらいに増加しているわけですけれども、シェアもおおむね二割程度の状況で推移しておりまして、地方と地方を結ぶ路線のネットワークというものが弱くなってきているというふうには必ずしも認識しておりませんけれども、私どもといたしましては、地方路線にかかわりますところの着陸料の軽減措置でございますとか、あるいは地方路線の充実を図るための地方空港の運用時間の延長でございますとか等々の施策もとりながら、地方空港というものは、高速交通ネットワークの基盤施設として、地域経済の活性化あるいは地域住民の生活向上等々に寄与しているものでございますので、大都市とを結ぶのみならず、全体の航空ネットワークの重要な位置づけをなすものというふうに考えておりますので、これからもそういう取り組みをしていきたいと考えております。
一川委員 地方空港と地方空港を連結する交通ネットワークの問題についても、ぜひ行政の中の一つの大きな施策として位置づけをお願いしておきたいと思います。
 また、航空行政の一環として、最近の話題としてJALとJASの統合の問題というのがございました。日本の航空会社は、全日空を入れて実質三社でずっと今日までやっているような状態ですね。それが、JALとJASが統合するということは、実質二社体制に入るということになるわけですけれども、三社しかないものが二社になるというのは、今回、統合の本来の目的なり趣旨というのはどこにあるのかというところを、まずちょっと教えていただきたい。
深谷政府参考人 JALとJASの統合の件についてのお尋ねでございますが、既に御案内のとおり、両当事者は昨年の十一月に経営統合の計画を公表したところでございますが、公正取引委員会から去る四月の二十六日に、最終的な経営統合計画については独禁法上の規定に違反するおそれはないというふうな御判断をいただいて、それを受けまして、両社は同日、統合契約を結んだと承知しておりますけれども、私どもの認識といたしましては、今回の経営統合につきましては、外国航空会社との間で大変厳しい競争環境にございます国際航空市場、この場においてグローバルな競争をしていけるような事業基盤を確立することを目的とした統合というふうに受けとめておりまして、また、その統合の効果としては、さまざまな航空輸送ネットワークを統合後の会社が提供していくことによって、利用者利便の向上あるいは事業運営の効率化を目指していくものだというふうに承知しております。
一川委員 では、公正取引委員会の方にちょっと確認するわけですけれども、今回この二社の経営統合の話が出されて、これではますます航空業界の寡占化を招き、正当な競争原理が働かないというような趣旨で、利用者の利便につながらないというような判断のもとで、当初の統合計画ではだめだというふうに私はとったわけですけれども、今回、最終的に承認をされたわけですが、当初の統合計画ではだめだという、その判断のガイドラインといいますか、そういったところはどこにあるんでしょうか。そのあたりを御説明願いたいと思います。
鈴木(孝)政府参考人 御指摘の統合計画につきまして、私ども、公正取引委員会において事前相談を受けまして、独占禁止法の規定に基づきまして検討を行いました。
 私どもの検討の観点は、競争が実質的に制限されるかどうか、そういったおそれでございまして、具体的な意義としましては、当事会社が単独で、あるいは他の会社と協調的行動をとることによって、ある程度自由に価格、品質、数量その他各般の条件を左右することができる状態を形成または強化することとなるかどうかというところに判断の基準を置いておりまして、本件統合計画が実施された場合には、第一に、全日空を含めました大手航空会社が三社から二社に減少することにより、これまでも同調的であった大手航空会社の運賃設定行動がさらに容易になる。それから第二に、就航企業数が少ない路線ほど特定便割引運賃が全便に設定される割合及びその割引率が低くなっておりまして、大手航空会社数の減少は競争に重大な影響を及ぼす。第三に、このような状況のもと、混雑空港における発着枠の制約等によりまして新規参入等が困難でありますことから、新規参入が同調的な運賃設定行動に対する牽制力としての期待ができない。第四に、その結果、航空会社が設定する運賃について、価格交渉の余地がない一般消費者がより大きな不利益をこうむることとなるものと考えられる。この点を、三月十五日の時点で問題点として指摘いたしましたところでございます。
一川委員 そういう指摘をされまして、それで、先月末に最終的に承認をされたわけですけれども、新規枠十路線ぐらいを返上するとか、これまでの空港内のいろいろな施設を提供するとかの報道がありました。それは、承認されたときの、この程度だったらいいだろうという、その判断基準みたいなものはどういうところにあるんですか、基本的なお考えは。
鈴木(孝)政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、私どもの問題点の指摘に対しまして、日本航空、それから日本エアシステムの両社は、四月二十三日に、公正取引委員会に対しまして、羽田発着枠の返上や新規航空会社に対する空港施設の提供等を内容とします対応策を提出いたしました。
 さらに、国土交通省におきましても、新たに競争促進枠を創設し、平成十七年二月の混雑空港の発着枠の見直しにおいては、新規航空会社がその後の事業活動を拡大していくために十分なものとなるよう既存の発着枠を抜本的に見直し、競争促進枠を拡充すること等を内容とします新たな競争促進策をとることを明らかにしたところであります。
 以上のような両社の対応策それから国土交通省の競争促進策を前提とした上で、今後本格的な事業展開を具体的に計画している新規航空会社が存在していることを考慮いたしますれば、このような新規航空会社が大手航空会社に対して有効な競争を行うことが可能となる競争事業者となる蓋然性が高いものと考えられる、そういった今後の航空市場におきます競争の状況を考えまして、本件統合は独占禁止法上問題ないものと判断いたしまして、四月二十六日にその旨を両社に回答したところでございます。
一川委員 そこで国土交通省。
 これは大臣の御答弁になるんですか。
 今の公正取引委員会の裁きの中で、これからの航空行政に関してのいろいろな課題もあろうかというふうに思うわけです。混雑空港等についてはなおさらのこと、今までだったら新規参入なんというのはほとんど不可能に近いような状況だったんですけれども、若干の新規枠が出てきたという中で、これからの航空行政の中でやはり基本的には利用者の利便性なりそのメリットということを十分考えた判断というのが必要になってくると思いますけれども、国土交通省としては、今回のこの問題については今後どういうふうに対応をしていく基本的な考え方をお持ちなのか、お聞かせ願いたいと思います。
扇国務大臣 一川議員に御心配いただきましたように、私も同じような心配をいたしました。
 それはなぜかといいますと、御存じのとおり、JALとJASが合併いたしますと、JALとJASの国内線の利用率が四五・八%、そしてANAが四八・三%、その他がわずか五・九%なんですね。そして、公正取引委員会が問題にされるのは、なぜかこの国内線の利用率だけしか公正取引委員会は検討なさらないんですね。他方、国際線はどうかといいますと、JALとJASが統合しますと、国際線の率は七六・三%になるんです、JJが。そして、ANAが二三・七%なんですね。これで果たして競争原理というものが働くのかどうか。確かに、国内線だけ見ますと、JALとJAS、JJで四五・八%ですけれども、国際線で比べたら鯨とイワシぐらい違う。これで果たして競争原理が働くんですかというのが一つの大きな問題。
 それから、新規参入のお話を一川議員がなさいました。かつて北海道にエア・ドゥという航空会社ができました。札幌と羽田です。このエア・ドゥができたときに、羽田のカウンターは、入って見ても、どこにエア・ドゥがあるのかわからない。新規にはカウンターの一番端の方しか場所を渡さなかった。しかも、飛行機に乗るときには、羽田の飛行場の一番端までバスで行かないと乗せない。しかも、エア・ドゥが安いというのがわかったら、JALもANAも全部航空料金を下げたんです。だったら、なぜ最初から下げないんですか。そういう、新しいものが入るときの競争条件を公平にしていなかったということの反省から、私は、JASとJALのJJが統合するためには、何のための統合かという理由を明快にしてくれと両社長に申し上げました。そして、両社が統合することによって国民にどういう利益が、目に見えたものがあるのか、これも示してほしいと。
 それから、大変申しわけないんですけれども、JALとJASを考えますと、かつての経歴を見ますと、組合のスト回数から見ましても、JASの方がはるかに多い。ですから、JASとJALが一緒になって、いい悪いは言いませんけれども、過去のこのストライキの経験から見ても、一般が迷惑するんですから、大体悪いものに染まる、いい方は悪い方に流されるのが常ですから、組合員が国民の生命財産、飛行機の命を預かるんですから、なるべくいい方に指導していってくれるように、悪い方に流されて、それによってお客様の安全が図られないということがあってはならない、私はこの三つの条件を両社長に申し上げました。
 そして、公正取引委員会に、今回は新規参入を認めます、しかもカウンターも真ん中のいいところを差し上げますと、きちんと言ってくれましたので信用していますけれども、私は、国内線だけではなくて、国際線のパーセンテージを公正取引委員会が問題にしないというところは、まだ私の頭の中にクエスチョンマークが残っておりますけれども、国際線でも競争原理が働くかどうか見守っていき、また指導していきたいと思っています。
一川委員 大臣の大変な意気込みで、ちょっと時間もなくなりましたので最後にさせていただきますけれども、今ほどおっしゃったとおり、これまでの航空行政、一つの大きな転換期にあるというふうにも思いますので、ぜひそういう方向で頑張っていただきたいと思います。
 そこで、最後にさせていただきますけれども、これは副大臣になるんですかね。
 今、有事法制を議論している中で、私も前回のこの委員会で大臣の所見を伺いました。ちょっと気になるのは、国土交通省所管の法律が十二本もいろいろな面で適用除外になる可能性があるということです。
 これまで国土交通省がいろいろな面でハード的な施設を地方にたくさんつくってこられました。知事が管理しているものもあれば、いろいろなものがあると思いますけれども、基本的には国土交通省所管のハード的な施設がたくさんあるわけですね。有事の際には、そういったもろもろの施設、端的に言えば道路なり橋梁なり、そういったものの、場合によっては、設計基準的なものを一部見直すとかあるいは補強工事をやるとかというようなことを、かつてその道の人にちょっと聞いたことがあるんです。
 やはり重量車両が通過するとか、いろいろなことを考えると、場合によっては補強的な工事も事前にやっておく必要があるんではないか。あるいはまた歩道橋的なものは余りつくらない方がいいとか、あるいは今、整備されていない国道なんというのは、前にも質問させていただきましたように車が通れない国道も結構まだ残っておるわけです。そういうところは少なくともジープが通れるぐらいにしておくとか、そういうようなことも含めた有事対応的な国土交通行政みたいなものが必要になってくるような意見も一部あったわけですけれども、そこのところを副大臣はどのようにお考えですか。
月原副大臣 有事のこと、それは当然自衛隊等が行動する場合、あるいは避難住民の方々が安全なところに行くためにいろいろな施設の問題があると、議員御心配の点があると思います。
 自衛隊のことについて申し上げると、重量の問題が最大の問題だと思います。しかし、現在のところ、国土交通省に対して防衛庁の方からそういう申し出がありません。しかし、これから先、法令ができた段階でまたいろいろ話し合っていきたいと思いますが、幅の方は、御承知のように、トンネルもあるし、それから道路の幅も、それに合わせて自衛隊のスペック、要するにそういうものをつくっていったわけですから、問題は、重量の問題が、どこでどういうふうに耐えられるかという議論が残っていると思います。
 しかし、繰り返しますが、まだ防衛庁の方からそういうことについて国土交通省の方に意見を申し述べてきたことはありません。
 以上です。
一川委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうござました。
久保委員長 大幡基夫君。
大幡委員 日本共産党の大幡基夫です。
 私は、まずタクシーの規制緩和の問題について質問をします。
 タクシーは、需給調整規制を廃止し、ことし二月から改正道路運送法が施行されました。国会での議論の際にも、これらの措置によって、タクシーの供給過剰の極めて深刻な事態が生まれるんじゃないか、そして、それによって、中小業者はもちろん、労働者の長時間過労運転、また低収入などの直接の影響とともに、利用者、国民の安全と利便にも多大な問題をもたらす危険性も指摘されていました。
 そこで、まず、この問題がどうなっているのかについて議論をしたいと思います。
 国土交通省は二年前まで需給判断結果を公示し、供給過剰地域を示してきました。そこで、二〇〇一年度の東京特別区域、神奈川京浜、大阪市、神戸市について、基準車両、恒久車両、過剰数と過剰率について報告してください。
洞政府参考人 二〇〇〇年度における需給動向判断についてお尋ねでございますが、従来実施していました需給動向判断は、平成九年三月の規制緩和推進計画に基づきまして、平成九年以降、需給調整規制の弾力化措置を行ってきたところでございます。
 お尋ねの二〇〇〇年度、平成十二年度における需給動向判断に用いた基準車両数、恒久車両数、これは実在車両数でございますが、また、我々としては過剰数、過剰率という定義はしておりませんけれども、基準車両数とこの恒久車両数との差し引き車両数、そして差し引き車両数の基準車両数に対する率については次のとおりでございまして、東京都の特別区・武三交通圏におきましては、基準車両数は二万一千百八十四台、恒久車両数は二万五千八百六十一台、差し引き車両数は四千六百七十七台、差し引き車両数の基準車両数に対する割合は二二・一%。
 神奈川県京浜交通圏につきましては、同じく四万九千百十三台の基準車両数に対しまして恒久車両数は六千十九台、差し引き一千百六台、この割合は二二・五%。
 そして、大阪市域交通圏につきましては、基準車両数七千九百九十五台、恒久車両数一万三千百四十台、差し引き車両数五千百四十五台、差し引き車両数の基準車両数に対する割合は六四・四%。
 同じく、神戸市域交通圏につきましては、基準車両数三千百六十二台、恒久車両数五千八百七十六台、差し引き車両数は二千七百十四台、その割合は八五・八%でございます。
大幡委員 今の数字の、神奈川京浜は四万九千じゃなくて四千九百ですね。
 二〇〇〇年の法改正のときでさえ、当時の二階大臣が、現在のタクシー台数は確かに多い、こういうふうに委員会で明確に述べています。当時の、一九九九年度と比べてみると、東京、神奈川は若干下がっているんですが、これは基準車両数を引き上げたからで、恒久車両数の数は変わっていないんです。それでも、東京は四千六百七十七台もの過剰になっている。とりわけ大阪と神戸は、過剰数、率とも悪化をしているんですね。大阪は六三・四から六四・四、神戸は六〇・八から八五・八へと、大変な数字になっています。極めて深刻な事態が広がっていることを示しています。
 そして、この上に、この二月から改正道路運送法の施行に伴って、全国で三千台以上の新規、増車、それから事業拡大申請が出されています。この中で、大阪市が新規が二社三十台、増車が三十三社五百十四台、神戸市が新規が一社十台で、増車が十四社六十四台、このようになっているというふうに聞きました。私、計算をしてみたんですが、そうすると、先ほどの数にこれを足すと、大阪市では過剰率が七一・一%、神戸市では八八・一%にも達します。神奈川の京浜も新規が一社十台、増車が三十一社三百六十一台で、これを足すと過剰率は三割を超える、そういう事態になっています。
 私は、これでは大変な過当競争が起こることは明らかだというふうに思います。この事態について、国土交通省として供給過剰だという認識は当然持っていると思うんですが、答えてください。
洞政府参考人 タクシー事業の現況に対する認識についてのお尋ねでございますが、タクシー事業に係ります規制のあり方につきましては、利用者利便の確保と輸送の安全の確保を前提に、その活性化を図るという観点から、平成九年三月の規制緩和推進計画に基づきまして、平成九年度以降、タクシーの需給調整規制の弾力化措置を行い、さらに、平成十二年に道路運送法改正に関する国会の御審議を経まして、本年二月から需給調整規制が廃止されたところでございます。
 現在のような状況を供給過剰ではないかという御指摘もあることは承知しておりますけれども、一方で、国民、利用者にもよりよいサービスを提供していくためには、適切な競争を基本として、このような問題に対応していくことが基本であると考えておりまして、最終的には事業者の判断で事業への参入とか事業規模の選択が行われていくべきものだと考えております。
 また、改正道路運送法の趣旨は、需給調整をやめたわけですが、それがために利用者の利便とか安全が大きく損なわれているということをしっかりチェックしていくというのが基本でございますので、この二月の施行の動向というのを見守っていく必要があると思います。
大幡委員 今の自動車交通局長の答弁は、私はとんでもないと思います。
 つまり、新法の際の議論の中でも、供給過剰かどうかについて一義的に経営者が行うという答弁は確かにありました。しかし、供給過剰かどうかの判断を国が行うということについての、いわば放棄だとか、しなくていいということは一切言っていないわけです。当時の議事録を見ても、自動車交通がいわば公共機関として非常に重要だ、こういうことを共通の認識にして議論をした。したがって、国の責任は絶対に否定できないんだと。したがって、著しい過剰供給となり、輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難な場合には緊急調整措置を設けるということにしたわけです。だから、今局長は私の、供給過剰かどうか、その認識を持っているかどうかという質問に対して答えない、これはとんでもない責任放棄だというふうに私は思います。
 扇大臣にお聞きしたいんですが、扇大臣は今のタクシーの状況について、これは供給過剰だという認識はお持ちでしょうか。
扇国務大臣 タクシーのみならず、少なくとも今の景気状況、タクシーだけではなくて、あらゆるところで苦しんでいらっしゃる方が大勢いらっしゃいます。
 タクシーもどんどんふえ続けたのは、好景気のときに、バブルのときに、夜遅くまでみんな利用した。しかも、私もよく町を知っておりますけれども、道路は空車で、タクシーの待ちが二車線並んでいます。それを見て過剰かどうかと言われれば、過剰かもしれません。けれども、私は言ったんです、だったら、深夜早く走れて、なぜ深夜割り増しなの、余計乗らないわよと。常識です。そういう努力もしてほしいということを、私は、タクシーの今回二月のときにも申しました。それぞれの努力が必要だし、またサービスも、少なくとも、お客様に禁煙を強いながら、乗ったらたばこ臭い車もある、待ち時間の間に運転手さんがたばこを吸って、乗ったときには中がたばこ臭い。こういうことも、お客様とタクシーの運転手さんが一体として、良識的な、あるいは快適な車の利用というものを促進するためにもっとお互いに理解し合い、なおかつ努力し合うことも私は必要である。
 一概に、経済の状況だけで過剰であるかどうかは、私は努力次第もあると思います。
大幡委員 大臣、タクシーの今の苦しい経営は、もちろん不況問題が深刻な影響があるのは事実なんです。ただ、国土交通省が数字を出す上での基準車両という数字は、前年とかという利用者の数、動向を見て出しているんです。ですから、景気の問題というのは重要な要素なんだけれども、国土交通省が出してきた過剰数や過剰率というのは、景気の問題だけじゃなくて、文字どおり、タクシーにおける需要と、そして配車の関係、こういう問題を客観的に示すものとして存在してきて、前は、運輸省も二十数年来この数字を使って需給調整をやってきたわけです。
 扇大臣は、去年四月の委員会で、タクシーを例にとってこういう答弁をしていますよね。産業的な規制緩和になって、ある面では苦しむ方もあるということも現実にはある、今全部、一〇〇%緩和してしまったらいいかというと、そうではない、ぎりぎりのところで、規制緩和はなるべくしていこうという努力をしている。つまり、我が党の立場とは当然違うんですが、しかし、規制緩和万能論の立場ではないと。私は見識を聞いたんですが、こういう答弁を大臣は一年前にやっているわけで、今のタクシーの状況について、文字どおり、客観的には供給過剰だということについては当然そういう認識をお持ちなんでしょう。再度お願いします。
扇国務大臣 今の現実は確かに過剰ぎみであるということは、私は、世の中を見ればそのとおりだと思います。
 ただ、自由参入で事業を拡大していこう、新規参入も認めよう、業界の発展のためにはどうあるべきか、そういう基本に立って私は考えていくことも必要であると思いますので、そういう意味では、先ほどの空港の話、飛行機、JASとJALの話をお聞きいただいたと思いますけれども、新規参入を図るために、私どもは、新たな事業展開をしていただきたい、そういう意味も含めて今回の法律が施行されているものと考えております。
大幡委員 その新たな事業展開の議論はまたやるとして、客観的には過剰状態にあるという認識についてはお持ちだと確認できるというふうに思います。
 そこで、平成十二年の、これは二〇〇〇年五月十六日の参議院の交通・情報委員会での審議なんですが、当時、縄野自動車交通局長がこういう答弁をしています。著しい供給過剰によって具体的な弊害が出ているということにつきましては、最低限増車及び新規参入をとめるということによって、これは緊急調整措置のことだというふうに思うんですが、その後、あわせて違法な状態にある悪質な事業者の重点的な監査ということによりましてそのような状況の改善を図ることができるのではないか、こう考えているというふうに答弁をしているんです。
 自動車交通局長に確認しますが、具体的弊害が出ていれば悪質な業者への重点的な監査をやる、この方針を実行するという立場について改めて確認したいと思います。
洞政府参考人 規制緩和が二月に施行されたわけですけれども、それに伴って、利用者の利便とか安全性はしっかりチェックしていくというのが基本的な立場でございますから、特に新規参入事業者であるとか、あるいは新たに増車をやった事業者とか、あるいは今先生御指摘のような非常に悪質な事業者というものが目についた場合には、重点的な監査を行って、その辺をしっかりチェックしていくというのは当然の我々の責務だと思います。
大幡委員 二年前の交通・情報委員会では、供給過剰の具体的弊害に対する対策としても、悪質業者への重点的な監査ということによって、それを減らす、こういうことを自動車交通局長が国会の委員会で公然と報告をしているわけで、この点も改めて確認したいというふうに思うんです。
 この点を確認して、もう一つの問題ですが、運賃・料金制度についてです。
 国土交通省は、四月の十一日に、同制度認可処理方針にかかわる通達を出しました。昨年十月の通達を一部変更したもので、具体的には、距離制運賃の適用方法について、旧通達は、初乗り距離が一・五から二キロ、加算距離は三百メーターから五百メーターまでの間で設定するというふうに幅でしていたのを、各営業区域ごとに地方運輸局長が決めるとして、地方運輸局長が具体的距離数値を決めて公示するというふうにしました。
 そこで聞きたいのは、なぜこの通達を出したのか、どういう必要性から生まれたのか、端的にお答えください。
洞政府参考人 改正道路運送法の施行に当たりまして、タクシー運賃の具体的な審査基準について、先生今御指摘のとおり、昨年の十月二十六日に、地方運輸局長それから沖縄の総合事務局長あてに通達したところでございます。
 今回四月の十一日付で重ねてその改正の通達を出しましたけれども、これは前に出しました通達の明確化を図るものであって、基本的な取り扱いに変更を及ぼすものではございません。
 と申しますのは、今回、改正道路運送法が施行されましたけれども、特に近畿地区を中心としまして、さまざまな運賃申請がなされました。その中には、消費者の目から見て非常にわかりづらい、あるいは、一見安く見えて、途中で追い抜く、安くスタートして、途中から高い運賃よりも高くなるような運賃とか、いろいろなものが出てきて、タクシー運賃を認可制とした基本的な考え方、要するに、消費者の利便をしっかり確保するという精神が十分生かされていないんじゃないか、そういう懸念がございましたものですから、そこのところをはっきりさせるために、これは査定の結果で示してもよろしいんですが、今その審査中ではございますけれども、そこではっきり考え方というのを示した、こういうものでございます。
大幡委員 資料をお配りしていますが、実は、この資料の1というのが、大阪で幾つかの企業が運賃の認可申請を出したものなんです。A、B、Cというのは、企業名をかえてA、B、Cというふうにしているわけです。初乗り一・七というのが出ているわけですよ。そして、見てほしいんですが、一・七だったらA社が安いんですね。一・八キロになったらB社が五百円で安くなる。つまり、本当にわからない。こういうのが大阪で出されて、それに対するいわば対応として、一・七というのじゃなくて、初乗りは二・〇に統一する必要がある、こういう形でもってこの通達が出されてきた、そういうふうに聞いています。
 同時に、初乗りをそういうふうに地方局長が公示したとしても、矛盾はなくならないんです。
 この運賃表を見てほしいんですが、九キロになるとC社が安くなるんです。あわせて、大阪では五千円を超えると五割引き、こういうのも出ていて、そうすると、四十キロを超えるとそれが安くなる。今回の通達は、初乗りというか、距離について言っているんですが、加算運賃について何も言っていないんです。
 そして、今のこの制度というのは、結局、利用者にとると、流しですから、加算運賃なんというのは乗るまで完全にわからないんですよ。そうすると、知らないうちに不利益をこうむっていた、こういう可能性というのが広範に生まれる可能性がある。規制緩和、規制緩和と言っているんですけれども、こういうツケに今直面している、こういうことも認識しての対応が求められているわけです。
 あわせて、先ほどの供給過剰という事態とある意味では運賃過当競争という事態の中で、タクシー労働者の労働条件というのは今本当に深刻になっています。
 先ほどから大分長い答弁をされたので、時間を取り戻すために、今ずっと質問しないで私の方で数字を示しているのですが、例えば、労働時間についていいますと、男子の常用労働者の平均というのは、年間二千十七時間、年収は五百四十万五千三百円です。タクシーは、それに対して、二千五百十時間で、収入は三百二万六千百円。時間当たりの収入は、常用平均が二千六百七十九円、タクシーは千二百五円。つまり、労働時間では五百時間も長いのに、収入は二百四十万円も少ない。一時間当たりの賃金は四五%です。ちなみに、東京で五〇%、半分です。大阪、福岡、愛知が四五%、兵庫が四四%。
 まさに、寝る間も惜しんで働いても食べていけない、これが今のタクシー労働者の実態で、そして、この異常な労働強化が交通機関の命ともいうべき安心と安全にも大きな問題をもたらしています。
 一九九五年から二〇〇〇年の五年間で比べてみたんですが、九五年と二〇〇〇年で、タクシーの総走行距離ですね、どれだけ走っているか、これは一三%減っています。ところが、事故は、一万八千七百五十六件から二万五千六百二十四件へと三六%もふえている。まさに、これはタクシーに働く労働者とその家族にとっても大変な問題ですが、同時に、利用者国民の安心、安全にとっても放置できない事態になってきているというのが現実です。
 扇大臣にお聞きしたいんですが、このタクシー労働者の労働条件について、直ちに必要な対応を検討する、こういうお考えがあるのかないのか、お聞かせください。
扇国務大臣 タクシー運転手さんの労働条件について、今、ここに参考資料でお出しいただきました。厳しい状況にあるというのは私も認識しております。だから、延々と午前零時過ぎても並んでいらっしゃるんだと思います。
 そういう現状を見て、私は、では、今までのように需給調整規制を続けて、そして、事業全体の活性化が阻害されているというのがそのままでよかったのかどうか、これも大きな問題で、少なくともその改善は、あの需給調整のままであれば、私は余り期待できなかったと思います。
 そういう意味で、私は、今回のこの改正後まだ時間がたっておりませんけれども、道路運送法のもとで、どのようにタクシーの事業というものを活性化させ、なおかつ需要を喚起して収入をふやしていただくか。そういう意味で、労使が知恵を出し合って、何よりも国民利用者にもっと利用していただけるようなサービスを重視していただきたいというのが、私も利用者の一人ですから、そういう認識を私は持っております。
 なお、今御指摘になりましたように、労働条件へのしわ寄せとなる過労運転等の道路運送法上の問題のある行為、これについては、私はしっかりと、先ほども局長が答えましたけれども、輸送の安全性の確保に対して、きちんと行政処分というものも考えながら対応していくというふうに言っておりますので、私は、それはそれとして別問題ですけれども、調べるべきところはきちんと調べて、行政を、対処していきたいと思っております。
大幡委員 私は、規制緩和が大問題だというふうに思っているのですが、しかし、今その議論をしているんじゃないのです。扇大臣は、利用者の前に国土交通大臣ですから、今、タクシーの労働者が現時点でどういう状態に置かれているか、この問題を本当につかんで、それに対する対応をどうするか。私は、前向きな議論を今しているつもりなので、過去のことを今責任をどうのこうのというふうに言っているわけではないのですから、そこはしっかり足場を固めて、今の問題に対してどう対応するかという本委員会の役割をともに考えていきたいというふうに思うのです。
 この規制緩和の流れとあわせて、実はタクシー業界にも大きな変動が起きています。今、業界の最大手は第一交通産業グループというふうに聞きました。この第一交通産業グループというのは、一九九三年当時は、タクシー部門では全国十四都府県に二十七社、二千七十七台でした。これが現在は二十七都府県、七十四社、五千六十台に急成長して、現在我が国のタクシーのトップに躍り出ました。
 実は、これは一九九二年、今から十年前の参議院の地方行政委員会の議事録なんですが、この中で我が党の諫山議員がこう言っています。福岡に第一交通という企業がある、もう数十回にわたって裁判所から不当労働行為の認定を受けながら、絶対に裁判所の言うことを聞かない会社です、こういうふうに述べて、こういう悪質な会社は例外的な存在だと思うが、そういう実態を知っているかという質問をしました。
 これに対して、当時の運輸省の自動車交通局の旅客課長がこう答えているのです。御指摘の福岡第一交通、グループということでございますけれども、大体の先生の御指摘の状況は承知していますと。裁判所の言うことを聞かない、札つきだということは知っている、こう答えて、最後にこう言っています、今後ともその会社の動向につきましては注視してまいりたいと。十年前に運輸省は国会で、第一交通の動向を注視してまいります、こういうふうに約束をしていたんです。
 この会社が、この十年間に全国で不当労働行為を繰り返し、どんどん大きくなってきています。一昨年から大阪と和歌山にも進出をしてきまして、この一年間で大阪と和歌山で二十四件もの争訟事件を早速起こしています。
 その一つ、大阪の佐野第一交通では、これは南海電鉄が第一交通に、労働者に一切何も言わないで株式譲渡したものなんですが、労働協約の一方的破棄による賃金不払い、本人同意なしにうその退職処理をしての中退金解約、組合つぶしを目的にした労組委員長や副委員長の不当解雇、まさに勝手放題やっているのです。
 そこで、厚生労働省にお聞きしますが、佐野第一交通が、大阪地裁が新賃金規定は無効であり従前の賃金規定で支払うことの判決を出したのに、これに従っていない、また、実際には退職していないのに中退金制度を運営する勤労者退職金共済機構に退職届を出している、さらには、組合員のみに長時間点呼を行うなどの差別的取り扱いをやってきたことについて、どのように考えていますか。
鈴木(直)政府参考人 今三点ほど御指摘がございました。
 第一点目の問題でございますが、御指摘の会社におきまして平成十三年五月に新たな賃金規定によりまして賃金の支払いを行ったところ、その労働者がこれに対して従前の賃金規定による賃金の支払いの仮処分命令の申し立てをしております。これについて、同年七月に五月分の賃金については従前の賃金規定で支払うべきとの仮処分の決定を受けたものと聞いております。ただ、その後も会社の方は新しい賃金規定で支払いを行ったというので、さらに労働者が提訴したところ、平成十三年五月から十月分の賃金については、同年の十二月に和解が成立して支払われたというふうに聞いております。
 それから、第二点目の中小企業退職金制度の問題でございますが、これにつきましては、平成十三年の五月二十四日に、佐野南海交通からの同年三月三十一日付の退職届が勤労者退職金共済機構に提出をされております。しかしながら、一部の労働者から実際には退職していないという相談がこの機構に寄せられていることから、その事実関係を把握した上で適切に対応するように勤労者退職金共済機構を指導しているところでございます。
 それから、三点目の長時間点呼の問題でございます。これは、自交総連佐野南海交通労働組合が、不当労働行為に当たるということで、平成十三年七月に大阪府地方労働委員会に救済の申し立てを行っております。この事件につきましては、現在、同地労委で係属中でありまして、適正に調査及び審査がなされるものと考えております。なお、十三年九月に公益委員から、会社に対して口頭で、長時間点呼を行わないようにという旨の要望を行い、現在は長時間点呼は廃止をしているというふうに聞いております。
大幡委員 去年の七月三日に大阪地裁が仮処分決定を出したんですが、この仮処分決定の文書の中にはこう言っているんです。会社側は、株式譲渡があっても労働協約は有効であり、これに基づいて賃金を支給しなければならないと十分認識していた。認識しながらやっていないということで、この第一交通の行為について、犯罪を構成するものである、ここまで言い切っている。裁判所が犯罪行為だというふうに言い切るというところまでの行為をやっておるわけです。
 自動車交通局長にお聞きしますが、先ほど悪質な業者の重点的な監督ということについて、確認というか、しましたが、こうした第一交通などの企業に対して重点的な監査を行うというのは当然のことですね。
洞政府参考人 不当労働行為等労使間の問題につきましては、第一義的には労働関係法令の担当省であります厚生労働省における対応にまつべきものと考えておりますけれども、国土交通省といたしましても、輸送の安全にかかわるような道路運送法上の具体的な問題がある場合には、重点的な監査を実施するなど適切に対処する、その過程で不当労働行為、我々がそれを発見した場合には、厚生労働省にきちっと通報する、そういう制度がございますので、両省連携してそういう問題の解決に当たっていきたいと思っています。
大幡委員 これも十年前の議事録で、さっきとは違う委員会なんですが、第一交通に対してどうしたのかという追及に対して、当時の運輸省はこう答えているんです、強力に九州運輸局の方で指導しました、その上、当該社長を二度、三度、運輸局の方に招致いたしまして説得いたしましたと。当時、十年前ですが、社長を二度、三度呼んで説得して、福岡第一交通なんかの不当労働行為なんかに対しても、当時、運輸省は労働省と連携してやっていたわけで、文字どおり、こういうことも当然やるし、また違反点数制に基づいての行政処分というのも厳格にやる、こういうことが必要だというふうに思うんです。
 同時に、この佐野第一交通の問題にかかわって指摘したいのがこの資料の2なんですね。この部分なんです。これは、この佐野第一交通が一方的に労働協約を解約して押しつけてきた賃金体系なんです。これがいわば累進歩合給という、本委員会でも何回も問題になっていた制度です。
 これの右から見てほしいんです。この会社の場合は、従来は六二・五%がタクシー労働者の収入、月給でした。これが右の制度に変わったわけです。四五%から六一・〇、五段階の累進歩合制です。このようにして五段階に分けているわけです。
 この制度をわかりやすくしたのがこの真ん中の表です。要するに、水揚げ三十九万円の場合、労働者の取り分は十七万五千五百円、会社は二十一万四千五百円。要するに、水揚げは三十九万から六十万、幾らでも、会社取り分は二十万円以上保証されるわけです。
 それから、見てほしいのは、三十九万円の場合の会社取り分は二十一万四千五百円です。四十万円になると二十万八千円で下がります。四十九万円の場合も二十二万で、五十万円になると二十万に下がります。だから、会社は、四十万の水揚げよりも三十九万にとどまる方が会社も上がるし、車も傷まない。つまり、タクシーの台数をどんどんふやせばふやすほど会社は丸もうけする、これが累進歩合給なんですが、こういう賃金体系が佐野第一交通にとられたわけです。
 厚生労働省も、これは累進歩合給だというふうに認定をしました。
 そこで、この累進歩合給というのは、私、調べてみましたが、実に三十五年前、一九六七年にハイタク労働者の労働条件に関しての二・九通達というのが最初でした。三十五年前からもう何回もこの問題で通達を出し、やってきましたし、前回の道路運送法改正の際の附帯決議にも、この累進歩合制の廃止という問題を改めて明記しました。
 厚生労働省にお聞きしたいんですが、今この累進歩合制というのはどれぐらいの会社で残っていますか。
鈴木(直)政府参考人 累進歩合制度の実態についてでございますが、近年は統計的な調査というものは実施しておりません。具体的な監督指導の中で、どのくらいの企業が累進歩合制度を導入しているか、それを把握しております。
 最近の知見でいいますと、平成十二年ですが、全国で対象の監督指導をした件数は九百六十八件でございますが、そのうち四・三%、件数で四十二件でございます。
大幡委員 私、調べてみたんですが、三十五年前に二・九通達を出した当時はかなり詳細に調査をやっていましたよ。定期的に全国調査もやっていたんですね。ところが、この二十数年間、全国調査は全くやられていないんです。そして、この委員会で何回か数字が出ましたが、その数字というのはいわばたまたまの抽出調査。したがって、極めてあいまいなものです。
 そして、今、規制緩和の中でこの累進歩合給制というのが実はどんどん広がっている。つまり、先ほど言った第一交通のような会社がどんどん出てくる。そうすると、他の会社も、程度の違いはあっても、そういう体系をとらないと競争に負けてしまう。大阪の自交総連という労働組合が、大阪に約百五十社のタクシー会社があるんですが、今この調査を始めているんです。まだ過程です。その過程なんですが、現時点で判明しただけでも大阪のタクシー会社の約半数の会社が累進歩合制を導入しているというふうに言うわけです。
 この累進歩合制というのは、私、国会の議事録を見る限り、一九六七年当時、一四・七%というのが大問題になって、これは廃止、絶滅ということでやってきたんですが、当時をはるかに超えるような事態が今生まれているというのが大阪から報告をされています。
 扇大臣にお聞きしたいんですが、この大阪の自交総連の調査が、これは過程ですが、これが事実だとすれば、累進歩合給制という問題におけるこの三十五年間のタクシー行政の根本が覆される事態、そういう事態が起こっているということを意味します。私は、大変なことだというふうに思います。直ちに責任ある実態調査を行って、その事実に照らして対策を検討する、もちろんこれは厚生労働省と国土省が連携してそういう調査を行うことが必要だと思いますが、そういう調査と対応をやるというふうにお約束していただけませんでしょうか。
扇国務大臣 今、大幡議員の御指摘のように、水揚げ高がふえるに従って歩合率がふえていく累進歩合制、歩合給といいますか、これを見せていただいておりますけれども、労働条件そのものの問題でございますので、今御自身がおっしゃったように、これは第一義的には厚生労働省の所管ではございます。
 けれども、これは、厚生労働省が把握されておりますから、その時点で、国土交通省としても、少なくとも事業者に対する監査が行われますので、監査が行われたときに、この今お示しになりましたような累進歩合制を活用しているということがわかった場合には労働当局に積極的に通報するとさっき局長が言いましたけれども、私はそのとおりだと思いますので、今後、局長が先ほど答えましたように、両省が相まってそういうものの指導監督をしていくということに変わりはないし、なおかつ、きょうの御指摘によってそれを厳重にしていくということが、両局長ともお答えしているとおりでございます。
大幡委員 時間が来ましたのであれですが、累進歩合給制をなぜ廃止するのかというと、利用者国民のいわば安心と安全にかかわる大問題だ、したがって、累進歩合給制の廃止に対して運輸省というのは随分と努力してやってきているわけですね。そういう点では、国土交通省のこの点での責任というのは、労働条件一般ではないんだと。しかも、今回、この改善基準の大臣告示は、二月一日から国土交通大臣の告示にもなったわけで、それはこの累進歩合給制と労働時間の延長とが密接な関係にあるということを認めたからなわけです。そういう点では、国土交通省としても、安全確保とこれ以上の長時間化を未然に防ぐという点からも、厳格な監査を重ねて求めまして、私の質問を終わります。
久保委員長 保坂展人君。
保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 私も、タクシーの労働者の問題を取り上げたいと思っております。
 一般質疑で、それぞれの立場からこの問題が出ているわけで、やはり国会議員として、いろいろな状況に接するに当たって、この二月一日から行われた規制緩和で、いわゆる市場の競争に需給調整をゆだねるということだけでは、やはり不十分なことが随分目立ってきているんじゃないか。
 まず国土交通省に伺いたいんですけれども、先ほど扇大臣からも、新宿、銀座とかそういう繁華街を夜、車で走りますと、客待ちのタクシーが二重とか、時には三重とかいう形でお客さんを待っているんだけれども、なかなかお客さんが来ないそうですね。大変苦労されているわけなんです。国土交通省の方では、この今の首都東京でのタクシーの稼働状況、盛り場で相当に待って、道路が本当に客待ちのタクシーであふれている、時間帯が遅くなればそういう状況になる、これをどのように把握されているでしょうか。
洞政府参考人 タクシー事業の現況に対する見解についてのお尋ねでございます。
 実は私も、おまえ行って見てこいという御指摘を受けて、銀座の夜遅くというか、かなり早い時間、八時ぐらいだったですけれども、わざわざ見に行った経験がございます。
 需要量としては、先ほどの、平成三年とか七年当時に比べて減っているということは事実でございまして、その一方で、タクシーの車両数というのは、規制緩和ということもあって、需給調整下でもふやしてきた。実は、阪神地区ではほとんどふえてきていない。そういう中にあって、需要が落ちているがために夜になるとお客が減るということで、お客さんがいる銀座とか新宿とか、そういうところにタクシーがあふれて交通の障害になっているという事態が生じているということは認識しております。
 しかしながら、片一方においては、周辺部とか雨のときなんかにはやはり不足しているという状況もあるわけでございますから、一概にタクシーがいつもあふれて問題であるということが果たして言い切れるかどうかということは、もうちょっと様子を見なきゃいけないのかなと思っています。
保坂委員 問題があると言っているんではなくて、今言われたように、確かに空車率というか、実車率が低くなっていて空車の時間が長くなっているということだと思います。
 先ほどからも指摘が出ていましたけれども、タクシーの全国平均だと東京都が一番賃金的には高いんですね。しかし、その東京ですら一般の労働者と比較すると相当の差があるというふうに聞いていますが、具体的にどのぐらいの差が年収ベースで生じているか把握されていますか。
洞政府参考人 タクシー運転者の労働実態についてのお尋ねでございますけれども、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によりますと、タクシー運転者の年間賃金は、平成八年には四百十四万で、全産業平均の五百六十七万に対して百五十三万円少なかった。それが平成十二年には三百三十八万円に減少して、全産業平均の五百六十万と比較しまして、さらに二百二十二万少ない状況になっている。格差がだんだん拡大してきているという状況にあるということは事実でございます。
 一方で、平成十二年のタクシー運転者の年間労働時間というのは二千四百三十六時間でございますから、全産業平均の二千二百八時間と比較しまして二百二十八時間多い。そうすると、先ほどの御質問にもございましたけれども、一時間当たりの賃金の単価というのはさらに下がるという状況になってきているということを承知しております。
保坂委員 タクシーの運転手さんというのは、安全というものを担う特別な職業だと思います。長時間それだけ働いても、ほかの仕事をされている方よりも格段に低いという、条件が年々悪化してきているということを認めた答弁だったわけですけれども、しかし、全体で、この長期不況で失業率が上がって、タクシーの乗務員になる、ドライバーになるという方が少なくないというふうに聞いているんですね。常時募集もされていると思います。しかし、入ってきても、条件が実際やってみるとなかなか厳しいということで、入れかわりが非常に激しいという話を聞きます。
 東京自動車連合、東自連、この健康保険組合、この加入者も減少してきているという話を聞くんですが、その点、いかがでしょうか。
洞政府参考人 タクシー運転者のいわゆる定着率についてのお尋ねだと思いますけれども、健康保険組合の加入者数につきましては、先生おっしゃるとおり、平成七年度末の四万九千二百七十四人から平成十三年度末では四万五千九百七十四人と、約七%減少していると考えております。
 ただ、これは、定着率を示す指標としては、入れかわれば頭数としては変わらないわけですから、それよりも、一般的にタクシー運転者の定着率を示す指標の一つでございます平均の勤続年数というのがございますが、一九九五年度が九・〇年、これが二〇〇〇年度には八・二年と短くなってきております。
保坂委員 そうすると、先ほど同僚議員から、大阪で、規制緩和の中でさまざまな運賃体系で申請があり、相当混乱を呼んでいるという話がございました。
 規制緩和、つまり、市場の中で競争にゆだねて、働く側もあるいは事業主も、そして利用者も、それぞれお互いの利便性などを追求するという考え方の中で、なかなかこれは調整し切れない問題が出てきていると思うので、局長に伺いたいんですけれども、結局、こうやって労働条件は非常に悪くなっている、この不況の中で格段と年収が落ち続けているわけですよね。賃金は安定して確保できない、長時間労働になる、それから競争は激しくなるということだと、規制緩和の中で、このままの状態では、タクシー運転手の皆さんの生活が最低できる賃金、その労働条件、十分休んで安心、安全でハンドルを握る、そういう条件が生まれないのではないか、これはやはり改善が必要なのではないかというふうに思いますが。
洞政府参考人 二月以降、特に関西地区に運賃を中心とするいろいろな申請が出てきている。先生は混乱が生じているとおっしゃいましたけれども、まだそれを認可したわけではございませんから、混乱は生じておりません。
 ただ、その申請の中身がいろいろございまして、消費者の目から見て非常にわかりづらい運賃で、これはかえって消費者を紛らわす運賃というようなものもございますので、改正道路運送法の趣旨に従って、ここのところを消費者保護にちゃんと資するように整理し直すという作業を今やっているということです。
 そして、運賃の査定をする際に、労働条件、特に賃金をどういうふうに見るかということにつきましては、改正道路運送法の附帯決議の中でも、そこはきちっと見ろという御指摘を受けているところでございまして、自動認可運賃をはみ出してそれを下回る運賃が出てきた場合には、きちっと原価計算書を出させますし、そしてそれがちゃんと労働組合の同意を得ているかどうか、そして賃金水準がその地区の平均的な水準を相当下回っていないかどうかというのをきちっと査定して、それがもしそういう運賃であるならばそこはきちっと査定をして、そして認可をする、こういう方針で臨んでいるところでございます。
保坂委員 私は、混乱が生じていると申しましたのは、運賃体系のことではなくて、何か大阪で、タクシー乗り場で、本来ならそれはオープンで使えるものが、数社のドライバーがいわば談合をして、ほかの知らないドライバーを入れないというようなことで、それを知らずに入ってきた方が威迫を受けたり、そういうことで事件が発生しているなどということも聞いておりますので、こういうことは、何かちょっと不正常な事態が発生してきているなというふうに思います。
 今局長の答弁にあったのですが、国会の附帯決議、不当運賃の排除や適正な人件費の反映ということを履行していくためには、今後この委員会にも、その都度情報を開示して、申請原価の審査やあるいはその認可のプロセスを明らかにしていただきたい、これをちょっと求めたいと思うんですが、いかがですか。
洞政府参考人 先ほどの細川先生の御質問の中にも、できるだけ情報開示をしていくべきである、特に自動認可運賃から外れているような運賃認可申請が出てきた場合にはそういうことをやるべきだという御指摘がございました。
 そのときもお答え申し上げましたけれども、情報公開法の趣旨にのっとって、公開できるものはできるだけ公開していくという方針で、具体的に、情報公開の場合でも、各企業の競争力といいますか、そういったものに触れるものについては開示しなくてもいいという規定等もございますけれども、どういうものが開示してもいいものか悪いものかということを関係の方面ともいろいろ相談いたしまして、できるだけ積極的に開示するという方針で臨みたいと思っています。
保坂委員 これは細川先生の答弁でも言われたということで、ちょっと確認を局長にしたいんですけれども、情報公開法に基づいてというのは、まさか情報公開請求をしろという意味ではないですよね。したがって、国会の附帯決議がついているわけですから、それについても、速やかに、なるべく正確な議論ができるように、附帯決議がきちっと守られているかどうかを検証するために情報を出す、こういう意味ですね。
洞政府参考人 おっしゃるとおり、情報公開法に基づく申請をしてくださいと申し上げているつもりではございませんが、その精神にのっとって公開できるものは積極的に公開していきたい、こういうことでございます。
保坂委員 扇大臣、よろしいですか、長時間、お疲れだと思いますが。このタクシーの問題。
 私はタクシーで夜遅く帰ることもたびたびあるんですが、最近、やはりこの東京でも変化が生じてきているかなと思うことを、ちょっと気になるので申し上げたいと思うんです。
 例えば、議員会館で、所用があって、タクシーをとめますよね。そのときに、手前の車線を走ってくるタクシーを見て挙げるわけですよね、とまってくださいと。ところが、あるとき、中央車線寄りの真ん中の車線を走っている車がうわっとこう、急停車というんですか、ちょっと怖くて乗りませんでしたけれども。プロだからとはいってもちょっと危ないなという感じを覚えたりとか、あるいは、別のところで、やはりタクシーを拾うときに、反対車線の車がぐわっとUターンをして、来てくれるからありがたいんですけれども、しかし、最近だとどうもかなり急いで来られるという感じですね。それにしても、お客さんを奪い合うという状況が出てきているんじゃないのかな。
 この前の金曜日、久しぶりに赤坂周辺でちょっと夜遅くなりまして、なかなかタクシーに乗れないという時間帯がありました。確かに、そういうときもあるんですね。しかし、そういうときは一番の稼ぎどきだそうで、その個人タクシーさんが、乗ったら、とにかく飛ばし方が物すごいんです。うわっと飛ばしていくんですね。どうしてこんなにすごいのかなと思って後からいろいろ事情を聞いてみると、とにかく稼げる時間帯が限られているんだと。そうすると、終電がそろそろ終わって、しかも朝までいかない、せいぜい二時前後ぐらいまでの二時間で、お客さんを拾ったら後はとにかく早くおろしてまた戻るというために急いでいるわけですね。
 非常に危ない状況が、過当競争というか、なかなか稼げない、賃金も低いです、そういうことで生まれてきていることについて、これはまだ全般的な傾向になっていません。私も、何回もタクシーに乗る中の十回のうちの一回ぐらいのことで、しかし、これが十回のうちの五回になり六回になっていったら大変なことになる、こういう懸念を持つんですが、いかがですか。
扇国務大臣 保坂議員も危険な思いをされた経験を今お話しになりましたけれども、町を見ておりましても同じようなことがあるのは私も見受けますし、私は、タクシーをとめるときには、なるべく自分が進む方向側に立って手を挙げるように努力しております。
 特に日本の場合は、手を挙げたらどこでもとまってくれます。こんな便利な国はありません。外国では、所定の場所に行かなければ乗れないんですね。それだけに、利便性はありますけれども、今おっしゃったような、どこでもとめられるということの危険性も多々あろうと思います。そういう意味では、私たち、車を利用する客側にもマナーがある程度必要であるし、また、先ほどからお話しのように、タクシーが過剰ではないか、いわゆる客の奪い合い、これも私は確かにあろうと思います。そういう意味では、車を利用する側、乗せて車を運転していく供給者側、両方の日本人のマナーというものもお互いに気をつけなきゃいけないし。
 私は、よく、方向を言いますと、大変親切な運転手さんは目的地のちょっと手前で、メーターこれでいいですからここでとまりますかなんて、すごく親切な人がいるんですね。もうおりようと思ったときにメーターがぱっと上がるときがあるんです。そういうことをわざわざ言ってくださる親切なタクシーのドライバーもいらっしゃいます。
 先ほど私が申しましたように、客に禁煙と言いながら乗った途端にたばこ臭くて、おりたいなと思うものもございますので、快適に乗れるように、また、快適に乗せてもらえるように、私は双方のマナーというものも大事だと思っております。
保坂委員 もちろんマナーも大事だと思いますが、もっと大事なのはやはり生命だと思います。これで万が一のことがありますと、事故というのは最悪の場合は命がなくなってしまう。ドライバーの方ももちろんですけれども、客も同様です。ですから、命を乗せて運ぶというタクシーのあり方の問題を議論していきたいんです。
 警察庁の方に来ていただいていると思うんですが、タクシーの事故の状況、総体の件数がふえているのか、特に東京などでどうなのか。そして、死亡事故とかあるいは重傷事故とかいう、その件数においてどうですか、ここ最近の傾向は。
属政府参考人 タクシー、ハイヤーを第一当事者とする交通人身事故の発生状況について申し上げますと、昨年は約二万四千件で前年よりは千六百件少なくなっておりますけれども、最近五年間で見てみますと約二八%増加をしておりまして、傾向としては増加傾向にあるというふうに考えております。
 また、死亡事故で申し上げますと、昨年はタクシー、ハイヤーによる交通死亡事故というのは五十二件発生をしております。前年の平成十二年は四十三件でありますので、若干ふえておるといった状況でございます。
 また、タクシー、ハイヤーに限定した数字ではございませんけれども、自動車走行キロ当たりの事故率で見ましても、平成十年以降は、いわゆるタクシーとかハイヤーとか、事業用乗用車の方が自家用乗用車よりも高くなっている、そういった状況になっております。
保坂委員 今の数字を見ましても、急激な変化が起きる前の兆しであってはならないと思うんですね。今ふえ始めている、これがもっとすごいことにならない前に、やはりここはぜひ扇大臣を先頭にきちっと見ていただきたいと要請をいたします。
 きょうは一般質疑なので、なかなか国会で交通事故の問題を議論する機会がないのですが、昨年の五月に一度、内閣委員会でございますが、議論をさせていただいた。二人の若い方が交通事故で亡くなられている。お一人は三苫剛嗣さん、九五年の九月に二十一歳で亡くなられているんですね。もう一方は宮沢陽一さん、九七年の三月に二十八歳で亡くなられている。お二人の遺族の方にもきょうのやりとりを見守っていただいていますので、極めていろいろな問題を含んでいる二つの事故なんですが、限られた時間ですので、端的なところでお尋ねをしていきたいと思います。
 まず、三苫剛嗣さんですが、大変若く、大学生でいらっしゃいました。慶応大学に通っていられたそうなんですけれども。家族の方を空港まで送って、早朝の高速道路で車がなぜか中央車線で動かなくなってしまったそうですね。これをどうにかしようとしていたところに相当遠くの方から車がやってきて、そして衝突をして死亡されてしまう、亡くなられてしまうという事故でした。
 昨年も実は議論をしたんですけれども、三角停止板という、組み立てるものですね、これを義務づける、こういう制度がございます。これは警察庁に伺いたいんですけれども、これは法律や規則で全部決められていて、三角停止板を出すという決まりになっているんですね。ですから、これは出さなきゃいけないということでしょうけれども、高速道路の大変危険な状況の中で、トランクをあけて、ごそごそ探して、どんなにスムーズに組み立てても五分ほどはどうしてもかかるだろう。この三角停止板というものを、もっとスピーディーに出せるものへ改善をしてみてはどうかということを昨年求めたんですが、その後の議論はいかがになっていますでしょうか。
属政府参考人 委員御指摘のいわゆる三角表示板ですけれども、これは、故障その他の理由によりまして高速自動車国道等の本線車道等に停止せざるを得ない場合に表示が法律で義務づけられているものであります。
 警察庁といたしましては、この三角表示板以外にも、道路交通法施行規則において、停止表示灯を停止表示器材として認めております。また、現在の停止表示器材にかわるものとして適切な器材が開発される場合には、国民の負担等も考慮しつつ、また国土交通省とも連携をしながら導入することを検討することもあり得るというふうに考えております。
 ただ、これまでのところ、新たにそうした器材が開発されたとは承知をしておりませんが、今後とも、国土交通省とも連携をしながら、器材がどのように開発されるかといった動向を踏まえながら、適切に対処をしていきたいというふうに考えております。
保坂委員 国土交通省の方にも伺いますけれども、交通事故が高速道路上で起こる際に、故障した車をどうにかしようとして車外に出て、そして衝突をされたりひかれたりするケースは多々あると思うんですね。昨年例示したのは、例えば、車が壊れてしまっていても、電気系統を使わずに、何か引っ張ればトランクが垂直にあいて、そこにちゃんと印が出るとか、あるいはいろいろな工夫をして。
 とにかく、三角停止板というのを組み立てて、置かなければいけない、こういうふうになっているわけですね。この三苫さんという方は、御本人が停止板を立てなかったということで、過失だというふうに言われているんですね。つまり、法律で決められていて、規則で決まっているから、三角停止板を立てないという過失があるじゃないかと、こう言われて、しかし、御両親は、これは本当に交通安全とか命を守るということにつながるんだろうかという深い疑問を持っておられる。その点で、やはり改善をしてほしいというふうに求めていきたいと思います。昨年も求めたんですが、より強く求めたいと思いますが、いかがですか。
洞政府参考人 高速道路上で故障等によって夜間に車両が停止した場合には、運転者は、非常用の点滅表示灯とか駐車灯とか尾灯を点灯するとともに、発炎筒とか赤色合図灯等の非常信号用具により後続車に合図しながら車両の後方に三角板を置くということになっております。そして、道路運送車両の保安基準では、三角板につきまして、使用に便利な場所に備えつけられたものであること、大抵はトランクの中に入っております。それから、容易に組み立てられる構造であること。だから、長くかかっちゃいかぬ。五分かかるかどうかははっきりわかりませんけれども。そういうことを要件としておりまして、この表示三角板の基準というのは諸外国においても同様の内容です。
 先生の昨年の五月の御質問を受けて、停止表示器材にかかわる装置についてもいろいろ調査してまいりましたけれども、例えば、一部の欧州車についてはトランクの扉の裏に三角板を格納しているものもございますが、これとても、トランクから外して路上に置くということが必要でございまして、運転席において簡便に使用できる装置というのはまだ開発されている状況ではないということで、先ほどの答弁と全く同じになるわけでございます。
 今後ともメーカー等ともいろいろ話をしていきたいと思っていますけれども、私どもも、交通安全運動において、三角板を設置する場合の、非常に原始的な方法ですけれども、取り扱いにはくれぐれも注意するということを重点項目として啓蒙しておりますけれども、今のところはそういう、意識の喚起といいますか、そういったものに頼らざるを得ないという状況であるということを御報告させていただきます。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
保坂委員 扇大臣、これは、三角じゃなくて、四角い話になっちゃっていると思うんですね。とにかく、法律が一回できて、規則ができてしまうとなかなか変えないんですね、日本の行政というのは。
 しかも、今のお話は、三角停止板がいけないと言っているんじゃないんです。道路状況によってはそれが一番適切な表示というんですか、故障しているよということを示すいい道具でもあるだろう、諸外国でも使われているでしょうと思うんですね。しかし、状況によっては、例えば追突をされて、もうトランクがあかないとか、あるいは、そもそも故障したところが非常に危険なところで、そういうものを取り出している時間を費やしていると身の危険があるとか、そういう場合はもっとほかの、これだけテクノロジーの発達している日本ですから、例えばエアバッグと連動して何か出るということもあり得るでしょうし、車外に出て探したりするのではなくて、もっと簡単に――今のお話だと、垂直にあいてもそれを取り外してまた置きに行くという話ですよね。高速道路の中で、命を守るということで、状況によっては、これはもっと柔軟に、ちょっと大臣、よろしいでしょうか、そういうところを改善してほしいんです。
 つまり、亡くなった息子さんの命は返ってこないけれども、しかし、息子さんの事故を通して、そういうことを少し改善するだけでも。三角停止板というのは、実際組み立てたことがない人が多いですよ。私も一回ぐらいやったことがありますかね、二十年ぐらい前に。もう忘れています。あることは知っているけれども。それから、非常点滅灯とか言っておられましたけれども、とにかくそういう基本的な道具ですよね、これを一つしか認めない。しかも、そこに罰則があったりとか、亡くなってもなお、過失じゃないかなんて言われたら、これは遺族の気は晴れないと思います。
 これはぜひ一緒にアイデアを出して改善をしていただきたい。警察の方もぜひ前向きに取り組んでいただけるように、大臣、いかがですか。
扇国務大臣 私も男の子を二人持っておりまして、オートバイにだけは乗らないでねとか、四輪車の免許が取れるまでは我慢しろとか、いろいろ悩んできた時期がございました。それと同じように、やっと一人前になって、親を送って、しかもなお帰りにというのは、もう本当に情けないといいますか、本当に御両親のお気持ちは察するに余りあるというのが現実です。
 私これでも四十数年間免許証を持っております。高速道路等々でも、私は発炎筒をよく見るんです。あれが一番よくわかりいいんです。発炎筒があると私たちはよけようと思いますし、あの発炎筒が一番手っ取り早くて、一番よく見えるんですね。
 私の車はバンパーを上げると三角が出るようになっています。けれども、今なぜ後ろを向いたかというと、あれはあけたままじゃいけないのと言うと、取り外せ、こう言うので、これも私今初めてあれしたんですけれども、私は、バンパーがあきますと三角が出ますので、上の方がよく見えるじゃないと今言い合っていたので、そういうことも含めて、事故を回避するためのあらゆる手段というのは、これだけ科学技術が発達してきた中で、まだ原始的だなと思われるかもわかりませんけれども、あの三角というのが国際ルールなんですね。ですから、外人さんにもあの三角が一番よくわかるので、いかにそれを早く、どういう方法がとれるかというのは研究の余地もあろうと思います。
 私は自分が運転していて一番早くわかるのは発炎筒なんですけれども、その辺のところも、お互いに拳々服膺しながら、また、あらゆる研究所を持っておりますので、国土交通省としても、その研究開発、そして事件の防止、事故の防止に役立てるように知恵を働かせていくべきだと思っておりますので、お互いに勉強になったとお礼を申し上げたいし、また御遺族のお気持ちに心からお悔やみを申し上げたいと思います。
保坂委員 警察庁に一言だけ伺いますけれども、やはり交通安全、生命を守るということ、ですから、三角停止板もいいんです。しかし、これが使えない状況や、あるいはもっと緊急を要するときに、つまりそれ以外の方法もぜひ積極的に検討して、早期に道を開いていただきたい。いかがでしょうか。つまり、三角停止板はだめだというんじゃなくて、そのほかの方法も、扇大臣、言われるように、これから積極的に研究をしてほしいということです。
属政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、現在の停止表示器材にかわって、さらにいいものができる可能性も、今後のいろいろな技術によって十分あるだろう、そういうふうに思います。ただ、残念ながら、現時点でまだ、私どももこういうものがあるというところまではいっておりませんし、現に器材が開発されているわけではありませんが、引き続き、みんなが知恵を出しながら勉強していきたいというふうに思っております。
保坂委員 当たり前の訴えがやはりなかなか行政に届かないという現実がございます。ぜひ今の答弁を踏まえて、道を開いていただきたいと思いますし、一刻も早い実現を、これはメーカーさんなどにもどんどんアイデアを出してもらって、実現できたらと思います。
 もうお一人の宮沢陽一さん、この方は実は外科医でございました。人の命を救命するという外科医で二十八歳、千葉労災病院というところに勤務されていて、ジョギングをされているところを、これは本当にこういうことが起こり得るのかという事故でございまして、ジョギング中に酔っぱらい運転の車にはねられたんですね。そして逃げてしまう。そして、倒れているところを、周りの車が停車したりして、それこそ発炎筒かなんかたいて現場保存をしようとしたところ、また酔っぱらった人が突っ込んできて、今度は巻き込んでしまって、そしてまた逃げちゃった。こういう二重轢過の事故なんですね。千葉県警も、こんなひどい事故があるということで新聞社に紹介したようですけれども。しかし、御遺族の訴えというのを聞いていくと、今も見えていらっしゃいますけれども、どうしてという部分があるんですね。
 一台目の車は、フェンダーミラーで接触、フェンダーミラーに当たって、そして肋骨を折ったというふうに推定をされているわけであります。実は、亡くなった後の鑑定では、両肺が挫滅をしていたということなんですね。目撃者の証言等々でも、二台目の車に、要するに、車の中に引き込まれるように巻き込まれて、十三メートルも引きずられて。お医者さんのお友達が処置に当たったそうなんですね、わからなかったというぐらいの状況なんです。しかし、その二台目の車については、これは去年も国会で取り上げたんですが、刑事罰は略式で二十万円取られましたけれども、免許証については減点ゼロなんですね。こういう扱いを受けている。しかも、死亡原因については、一台目ではなくて、二台目ではないかという、もう大変な努力をされて、鑑定を頼まれたり、相当専門的な角度でやっているんですね。
 私思うのは、きょう一点だけ大臣に伺いたいんですけれども、事実認定のなかなか難しい事故について、警察が捜査して、検察が一台目だという結論を出すと、いろいろ後で証拠を出したり鑑定書を出したりしてもなかなか変わらないんですよ。
 だから、難しいケースについてのみでいいと思うんですけれども、航空事故調査委員会のように、しっかり事実関係を専門的にきちっと確定していく、それまでは余り早計な結論は出さない、こういうシステムをぜひつくっていただきたい、こういう思いがあるんですが、どうぞ。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
属政府参考人 交通事故の捜査につきましては、事故の内容、規模等を勘案いたしまして、捜査本部を設置するなど所要の捜査体制を確立するとともに、必要に応じまして、警察にあります科学捜査研究所やあるいは部外の専門家による鑑定を行うなどいたしまして、的確な交通事故原因の究明を図っているところであります。
 警察庁といたしましては、適正な交通事故事件捜査がきちんと推進され、的確な事故原因の究明等が図られますように、今後とも交通事故捜査体制の確保に努めるとともに、都道府県警察に対する指導を強化してまいる考えでございます。
保坂委員 先ほどの三苫さんの場合も、そして、宮沢さんの場合はこういった御本を御遺族が出されているんですけれども、読むと涙なくしては読めないんですね。人の命を救っていこうと、せっかくそういう仕事について、そういう見るも無残な形で。しかもひき逃げですよね。飲酒運転、ひき逃げ。最悪。しかも二台続けてという。そういうことに遭遇して、御遺族の方の思いは、一体真実がどうだったんだろうかということをやはり知りたい。結局、遺族がみずからの力で鑑定を頼み、いろいろ努力をしていくことで。
 今は十年前、十五年前の状況と大分変わってきたと思うんですね、工学的な立場から、医学的な立場から。亡くなった人は語らないというのではなくて、しかし、語らない中からもいろいろなことが見えてくるということがございます。ですから、こういうことの事実認定をしっかりしていただきたいというのと、逃げちゃったら得みたいな、そういうことはとてもおかしいと思いますので、その辺のことで、やはり新たな取り組みを、リーダーシップをとっていただきたいという点、大臣、いかがでしょうか。
扇国務大臣 私ではなくて、警察の方がお答えに適しているのではないかと思いますけれども、きょうは一般質疑でございますので、一般的にという御指摘もあろうと思います。
 私は、今なぜ警察に聞いたかというと、酔っぱらい運転の法律を変えて、酔っぱらい運転は何点減点になるの、免許証取り上げになったでしょうと今警察に聞いたんです。私は、酔っぱらいのお酒の濃度によるというので、これも気に入らないんですけれども、アルコールを飲んだら一切運転しないという徹底をしなければなりませんし、なおかつ、酔っぱらってひき逃げして、日本の警察は、そんなひき逃げした者を許すまで能力がないのかというのはこれも残念なことで、警察がいますので、ひき逃げして逃げてしまって見つからないなんというのはもう許せないと思っています。
 そういう意味で、私は、お互いにですけれども、こういう委員会ですので、アルコールを飲んで運転する者は運転資格がない、そこまで我々は啓蒙していきたいと思いますし、警察の領分なので、私は出過ぎたことを言っておりますけれども、一般の概念としては、アルコールを飲んだ人も飲ませた人も罰せられるという今の改正になっていることが私はもう原則だと思います。
 そういう意味では、運転免許証を持っている者が少なくとも、アルコールを飲んで、ましてひき逃げで逃げてしまうなんて許せない行為は私は厳に慎むべきだと思いますし、厳重に罰するべきだと思っています。
保坂委員 時間が来ていますのでまとめます。
 ちょっと誤解があるんですが、ひき逃げで逃げてしまって、その後、結局わかるんですね、その方は。飲んでいたこともちゃんと調書で言っている。しかし、現行犯で捕まっていないから、これは何の減点にもならない、減点ゼロなんですよね。しかも、一番目の方がひいたので遺体になっていた、そこをひいていったということは、私はどう考えてもひき逃げだと思うんですけれども、例えば安全運転注意義務違反みたいな基礎的な事故を起こせないので、つまりひき逃げだけ独立して減点することはできないんですよという説明でした。
 私が求めたのは、国土交通省に、警察からは一歩離れて、航空事故の調査のように、交通事故の難しい件について調査する体制を求めたいということでした。だから、警察が主にやっているんですが、しかし、難しいことについては、厳罰ということも一つあるでしょう。しかし、亡くなった方の遺族の方においては、なぜ、何があったのか、真実はどうだったのかということがすごく重要なんですね。そこを突きとめていくシステムを一緒に議論していきたいと思います。
 では、ちょっとオーバーしていますが。
属政府参考人 誤解がないようにもう少し御説明をしておきたいと思います。
 この事件につきましては、警察の方では、ひき逃げをしたというその二番目の方につきましても、事件を立件して、業務上過失致死及び道路交通法、これは救護措置義務違反ですが、で千葉地方検察庁に送っております。その結果、千葉地方検察庁の方で、業務上過失致死については不起訴になりまして、道路交通法の救護措置義務違反については千葉地方裁判所に略式命令の請求が行われまして、罰金が科された、そういう状況であります。
 この場合に、現在の道交法の制度から申し上げますと、飲酒運転に関しましては、酔っぱらって、もうはっきりわかるような酒酔い運転と、それともう一つは政令で定められる基準、現在は、血液一ミリリットルにつき〇・五ミリグラム、あるいは呼気一リットルにつき〇・二五ミリグラム以上の場合に違反として検挙ができる、そういうことになっております。こうした事実が認定できなければ、行政処分上の点数を付することができないということがあります。
 この事案につきましては、千葉県警からの報告では、運転者の飲酒については当然調べましたけれども、検査の結果、いわゆる立件できる酒気帯びには至らない状況にあったということで、違反行為として問擬できなかったということであります。そのため、基礎となるべき違反行為、これは道交法の場合も、基礎となる違反行為があって、それに上乗せで救護措置義務違反、いわゆるひき逃げがあったときにはその付加点数を加するというふうになっておるんですけれども、その基礎となるべき違反行為、いわゆる飲酒の部分について立件できなかったので、措置義務違反の点数を付することができなかったというふうに報告を受けております。
保坂委員 時間をオーバーしたことをおわびしますが、今の答弁にも問題点がございます。また別の機会、次の機会にきちっと議論をしたいと思います。
 終わります。
久保委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 首都圏の活性化のために、都市再生本部、いろいろ御苦労されておりますし、いろいろな意味で、私は、羽田空港の再拡張の問題というのは大変重要な問題だというふうに考えております。
 長年東京に住み、暮らしている者として、多摩地区における横田基地の使用の問題とか羽田の再拡張の問題とか、これは東京都としても大変重要な問題として国にお願いを申し上げているだろうというふうに思っておりますが、現在、羽田の拡張につきましては、いわゆる工法評価選定会議、ここでどういう方法で滑走路の延長を図ったらいいのかということについて選定の作業を進められていると伺っております。私ども保守党も、過般、関係の方々にお出ましを願いまして、勉強会をさせていただきました。
 そういうベースに基づいてお尋ねをしたいと思います。
 まず初めに深谷局長に伺いますが、新滑走路は何年にいわゆる供用開始というものをなさろうとしているのか、そのためには、いつまでにどんな方法をとるということをお決めになる必要があるのか、そして三つ目には、現在の検討の進捗状況はどんなふうか、伺いたいと思います。
深谷政府参考人 御説明申し上げます。
 羽田空港についての御指摘でございますけれども、羽田空港につきましては、航空需要の増加から今その能力の限界に達しつつあるような状況でございまして、これから先の将来の航空需要の増大に早急に対応しなければいけないというふうに考えております。また、都市再生というふうな観点からも、いわゆる都市再生プロジェクトの第二次選定におきまして、羽田空港については再拡張に早急に着手して四本目の滑走路を整備すべしというふうに認定されたところでもございます。
 このため、羽田空港の再拡張につきましては、その早期完成を目指して、環境アセスなど諸手続の早期かつ適切な実施などにつきましてさまざまな方策を現在勉強しているところでございます。
 また、再拡張事業においてどのような工法云々ということにつきましては、今先生御指摘のとおり、本年三月に有識者で構成されますところの羽田空港再拡張事業工法評価選定会議をつくりまして、現在その工法の評価選定作業を行っているところでございまして、できる限り早い時期に会議の結論をお出しいただいて、その後速やかに国土交通省としてその工法を正式に決めたいということで、速やかな手続をとっていきたい、かように考えております。
西川(太)委員 まことに私はその答弁は不満であります。経済がこういう状況の中で、やろうということは決まっているのに、できるだけ早期、できるだけ早期と。できるだけ早期というのは、どれぐらいを考えたらいいんですか。例えば五年後とか六年後とか、具体的にいつまでに供用を開始するんだということが明確になれば、それが、大げさに言えば、私は、波及効果というものを東京にももたらして、経済にとっても決して悪いことにならない、こう思うのでありますが、これは無理な質問なんでしょうか。無理なら無理と答えてください。
深谷政府参考人 現在、十四年度ではいろいろな調査を進めるよう予算も計上いたしてございますが、十五年度におきましては、事業着手に向けての予算が要求できますようにということで、私どもといたしましては、いつまでならよいというよりも、一刻も早くいろいろな諸手続を進めて事業着手にこぎつけ、なるべく早い時期での供用開始を目指している、かように考えているという意味でございます。
西川(太)委員 具体的な数字が入った方がいいと私は思いますけれども、ここは我慢をして次に進みたいと思います。
 今、提案された三つの工法があるんですね。すなわち、これは埋立工法とか桟橋工法とかまた浮体工法とかいろいろあるわけでありますけれども、工期とか工費というのは、私ども調査をさせていただきますと、三つとも大差がないようであります。そこで、私ども利用者にとっては、やはり何といったって安全性ということが最も重要だ、こう思うわけでありますけれども、選定会議ではどういうようなことを評価のポイントとして選ぼうとしているのか、局長に伺いたいと思います。
深谷政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、今現在、選定会議で評価選定作業をしていただいておりますが、羽田の再拡張事業につきましては、いずれにいたしましても巨額な国費を投ずるという最重要国家プロジェクトの一つではないかというふうに私どもも認識しておりまして、そういう意味におきましてもさまざまな観点から十分検討していかなければならないと思っておりまして、工法評価選定会議におかれましても、そういう意味で工法のそれぞれの団体から説明内容について今後十分に精査していただけるものと考えております。
 いずれにいたしましても、この評価選定会議におきましては、一つとしては、空港として長期的、安定的に機能をするか否か、二つ目には、工期はどうだろうか、どの程度かかるだろうか、三点目には、建設の費用あるいは維持管理費用といった費用面ではどうだろうか、四点目は、安全、確実な施工が可能であるかどうか、五点目は、東京湾あるいは多摩川などへの環境面の影響はどうだろうか、六点目につきましては、その他工事中の海上交通への影響などはどうかという点を中心に御議論をいただいているところでございます。
 評価選定会議では、これらの点を適切に今後御議論の上、評価をいただけるものと考えておりますが、当省といたしましては、ただいま申し上げた六つほどの視点、いずれもそれぞれ大変重要な視点だと認識しておりまして、工法を選んでいただく上におきましては、その評価選定会議においてもそれを総合的に御評価いただき、その結果を踏まえて、当省といたしましても羽田空港の再拡張事業として最もふさわしい工法を決定してまいりたいというふうに考えております。
西川(太)委員 今六つ挙げられましたけれども、工費とか工期というのは具体的な数字はわかっていないんですか。
深谷政府参考人 先般、評価選定会議におかれまして、それぞれの三つの工法につきまして関係の団体からヒアリングをいたしました。それぞれの団体から、滑走路の島本体、それから現在の羽田空港への取りつける連絡誘導路、それの直接工事費、それはそれぞれ、例えば桟橋工法でございますと五千六百四十億円、埋め立てあるいは桟橋のいわゆるハイブリッド工法でございますと五千五百七十億円、浮体工法でございますと五千三百億円というふうな、それぞれの団体からの積算の報告がされております。
西川(太)委員 今、羽田は、いわゆる人口密集地にある空港としては大変重要な空港でございまして、防波堤も現在ありません。現在検討が進められている三工法のうち浮体工法については、横須賀港の防波堤の内側で約一キロの実証実験を行って、四キロ級の空港でも建設可能という結論を得たということですけれども、強度や耐久性を初めとして今後解決すべき課題があるというふうに承知をしておりますし、一方、埋立工法の場合には地盤沈下などの問題点がある、桟橋工法の場合にも地震に対する強度など確認すべき課題があるというふうに承知をしているわけであります。
 私は、先ほど申しました、事人命にかかわる重要な問題である安全性の確保ということでは、これらの工法を提案している団体ではなく、結果的にもし何かあった場合には国土交通省が全責任を負わなきゃならないという大変重要な問題だと思うんです。したがいまして、長く使える、空港として安定的に機能するということは、もちろんそれは安全性という裏打ちがあって可能なことでございますから、おっしゃることはよくわかるわけでございますけれども、利用者の安全にかかわるあらゆる観点というものをひとつ慎重に検討して、これらをクリアできる工法に決めることが至当ではないかというふうに私個人は思いますが、そのことについて、深谷さん、局長としての御見解を承りたい。
深谷政府参考人 先ほど、工法の評価の視点というのを六点ほど指摘させていただきましたが、先生御指摘のとおり、その中で、空港として長期的、安定的に機能するというのは安全が前提でございます。また、先生御指摘のとおり、まさに運輸行政、国土交通行政、安全の確保が最も基本の一つだというふうに認識をいたしておりまして、空港の整備に当たりましても、この点は当然のこととして、おろそかには決してできないことというふうに認識をいたしております。
 工法の選定に当たりましても、もちろんこの点につきましては十分に検討を行った上で、当省として、最適な工法を選びたい、かように考えておる次第でございます。
西川(太)委員 この問題の最後に大臣にお伺いをいたしますが、工法評価選定会議で、安全性でございますとか工費、工期、こういうものを含め総合的な見地から慎重に検討していただき、その結果を十分尊重して国土交通省として工法を決定すべきだというふうに私は今局長にお尋ねしたんでございますが、それについて、そのとおりであるという趣旨の御回答をいただきました。同じことを大臣に、確認の意味でお尋ねをいたすわけでございますが、いかがでございましょうか。
扇国務大臣 私は、西川議員は都議会の御経験がおありになるので、特に羽田に関して御注目いただいて、心から感謝申し上げたいと思います。
 私は、そういう意味で、あるものは何でも便利に使おう、予算のないときだからというので、お互いに、成田だ、羽田だという縄張り争いは厳に慎もうというのが原点でございます。まして、羽田がもう満杯になって、お客様をどうするかというところへ来ているのに、なおかつ決められないということはない。
 それから、今、三工法おっしゃいました。今、三つ工法が挙がっていますけれども、これも、国土交通省になったからできる工法があります。旧運輸、旧建設で縦割りで張り合っているのではなくて、国土交通省になったからこそできる羽田の新たな四番目の滑走路というものは、多くの皆さん方に、安心して、しかも安い工法で一日も早くできるものがないかということで私はお願いしているわけでございます。
 今西川議員からお示しいただきましたように、私は、この工法を、中立で、そして公正で、客観的で、なおかつ透明性を持つという工法を選びたい、そういうことで、あえて外部からの有識者で工法の評価選定会議をつくったわけですけれども、その会議の座長には、元航空審議会の委員長の経験がございます、現在の日本IBMの最高顧問の椎名武雄さんに、私自身が、座長として入ってくれと強いてお願いをして、お入りいただいたわけでございますので、そういう意味では、私は、すばらしい委員会ができたと思っております。
 椎名座長を初めとしまして、副代表には飯島さん、東レです、それから磯部さん、これは首都圏の空港調査会のメンバーでございますし、猪口さんも、今度大使になられましたけれども、私はどうしてもこれは完成するまで参加させてくださいという強い御要望で、猪口さんも女性で一人入っていただきました。首都圏の第三空港調査検討会のメンバーでもございましたのでお入りいただき、杉山さんも交通政策審議会の委員、そして須田さんも首都圏の第三調査会のメンバー、吉田さんも海洋構造の日本の権威でございますので、このメンバーによって、七人でございますけれども、私は、最適な選定をしていただけるものと思っております。
 一点、申し上げます。私が今回、委員会をつくりまして、今、三つの工法と申しましたけれども、この三つの工法の中で、桟橋工法、これも二・五年の工期、そしてハイブリッド、埋め立ての方、二・六年、そして浮体が二・五年と、これはそろってきたんです。一番最初に私聞いたときには、約十年かかるといったものもあったんです。それが、委員会に提出資料を出しなさいと言ったらそろえてきたのがむしろ私は不服なんです。そういう意味では、十年かかるといったのが二・六年や二・五年にどうしてなるのだという疑問も私は持ちましたけれども、今の技術をもってすれば、最初に言ったことが、これだけ独自の勉強をして、前向きに検討しているんだなということで評価をしながらも、安全性を確保するためにも、これは私は、東京都の石原都知事と昨年十二月にお互いに連絡し合ってこれを決定したわけで、都議会のA案を取り下げて、国土交通省のB案に御賛成いただいた。まさに国と地方とが連携した、すばらしい四番目の滑走路の早期実現のために私たちは努力していきたいと思っております。
西川(太)委員 どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 もう一点、小笠原空港についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 昨年十一月十三日に東京都が小笠原空港の取り扱いについてという考え方を表明されました。まことに残念なことに、現計画、すなわち、父島の時雨山周辺地域に新たな空港を建設するということを、現計画を撤回するということですね。もう一回言いますと、昨年の十一月十三日に東京都は、現計画を撤回して、新たな航空路案を検討する、こういうふうに言ったことは、私はまことに残念に思っているんです。
 というのは、平成十年の五月に、時雨山周辺地域を候補地として東京都が決定したわけですね。このときは、小笠原村民の皆さんは大変喜ばれて、私どもも、小笠原が遠いところから近くなった、また、小笠原が沖縄と同じように大切にされる、離島振興法に関係ない地域として三カ所指定されているうちの一つとして、特別な法律で早く小笠原の振興というものが確保されなければならないのに、東京から千キロ離れていて、足が短い現在のヘリコプターでは届かない、やはり飛行機というもので行かなければいけない。だから、小笠原で何かあったときには、自衛隊が出動して、いろいろな形で収容して本土の病院に運んだりして、救急のことをやる。しかし、それはよほどのことでない限りなかなか実現しない。憲法のもとで保障されている、法のもとでみんなが平等である、そういう意味でも、やはり空港を小笠原につくるということは、単に観光を振興するというだけでもなくて、小笠原島民を、本当の意味で復帰というものを実現させるためには必要なことだ、こういうふうに私は考えております。
 そういう意味で、東京都の小笠原空港に対する姿勢について、やはりこれは扇大臣から石原知事に、この点についても、言葉を選ばずに言えば、説得をしていただくといいますか、こういうことをやるべきだというふうにおっしゃるべきだと思うのでありますが、これはいかがでございましょうか。
扇国務大臣 今西川議員がおっしゃいましたように、私、昨年の一月の二十四日、小笠原諸島の中の父島に行ってまいりました。そして、すばらしい、それこそハワイだとかインドネシアだとか、あらゆるところにある果物がそのまま父島にできている、それをそのまま東京に運んであげたら、私は、東京都民としても、同じ東京都民ですから、村の皆さんがどんなにお喜びになるだろうと思って、空港予定地も拝見してまいりました。
 そのときに、地元の皆さん方から、一日も早くという要望も受け、また、昨年の六月に国土交通省としまして「国土交通省における公共事業改革への取組」というものを発表しましたけれども、その中で、特に「今後の地方空港の新設について離島を除き抑制」ということで、「離島を除き」ということを強調したのも、私は、この父島が念頭にあったからでございます。そういう意味では、この抑制の対象外にしたにもかかわらず、今仰せのとおり、昨年の十一月に東京都から「小笠原空港の今後の取扱いについて」が公表されて、撤回をするということを伺ったときには大変残念だと思いまして、小笠原村の皆さん方の御意見をよく聞くように、そしてそれを聞いてから進めるようにということを航空局から東京都に申し入れたところでございます。
 そういう意味で、東京都としては、余りにもあの自然がすばらしい環境である、その環境のためには、航空滑走路をつくってこれを壊したくないというのも東京都の苦しい判断、また保存ということの大事な御判断であったろうと思いますけれども、私は、もし国土交通省に対して東京都から再度お話があるのであれば、少なくとも、国土交通省の技術面でございますとか、行政面でございますとか、あらゆる手だてを尽くして御協力申し上げることにやぶさかではないので、石原都知事とももう一度話し合いの場を持たせていただきたいと思います。
 何よりも、私は、当面の対策として、テクノスーパーライナーを走らせて、そして、現在二十五時間かかっておりましたのが、二十五時間三十分から所要時間が十六時間に短縮されたことだけでも、せめてもと思っていますけれども、これに安住しないで対策を検討していきたいと思っています。
西川(太)委員 この点も扇大臣の手腕にぜひ期待をしたい、こう思います。よろしくお願いをいたします。
 最後に、もうあと五分しかございませんので一つしかお尋ねできないと思いますが、話が変わりますけれども、九州の大分県では、四月二十五日に大分―上海線が地方空港としては開設をされました。これは、大分県にとって本当に喜ばしいことだと私ども思います。これによって、いわゆる観光交流でありますとか産業交流など、さまざまな可能性が広がるわけでございますし、地域の振興にも大いな効果が期待できるわけでございます。
 これは、ひとり大分県だけではなく他の地方空港についてもひとしく当てはまるものでございまして、今後新たな開設に努力をしてもらいたいというふうに考えておりますが、航空局長、現在、海外との定期航空路線を持つ地方空港はどれぐらいあるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。時間がありませんので、箇所数を簡単にお願いします。
深谷政府参考人 それでは、簡潔に申し上げますが、成田、関空以外のいわゆる地方空港から、定期国際路線二十一空港、各国四十三都市が結ばれています。
西川(太)委員 これは、地元の本当に血のにじむような努力、また国土交通省のバックアップ、こういうものが相まって大きな成果を上げているというふうに言っても言い過ぎでない、こう思うわけでありますが、空港設置後の地方空港に対するこの種の支援、こういうものについてはどんなものを考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
深谷政府参考人 地方空港につきましては、地域の開発あるいはその地域の振興等々の効果も期待されるわけでございますが、私どもといたしましては、地方路線に係りますところの着陸料の軽減でございますとか、地方路線充実を図るための地方空港におきます運用時間の延長でございますとか、御指摘の国際線の運航に必要なCIQ施設の整備、就航率の向上、アクセスの改善あるいは空港のバリアフリー化などのいわゆる既存空港の高質化といったための施設整備、さらには地方空港を利用していかに地域の活性化にも役立てていくかという観点からの活性化検討委員会への参画、あるいはいろいろな御助言などもさせていただいておりますし、各地域の地方空港を活用してのいわゆる「空の日」のようなイベント、こういったものにもいろいろ御支援をさせていただいております。
 そういったものに加えまして、地域と国が連携して、あるいは協力して今後の各地域の空港をどう利活用していくか、こういうことにつきましても、引き続き、地方の空港の設置管理者あるいは周辺の自治体、こういった方々の御意見を伺いながら諸般の御協力をさせていただきたい、かように考えております。
西川(太)委員 もういよいよ時間でございます。最後に大臣に、ただいまの問題につきまして、いわゆる国際線を開設するということは、観光振興、産業振興、双方の国にとって極めて有効なものでございます。なかんずく、日本の空港所在地域につきましては、地域振興策としては非常に重要なことだというふうに思います。これは、国土交通省が外務省や経産省などとも調整を行って、総合的、戦略的に取り組んでいく必要がある問題だろうというふうに認識をいたしております。
 ぜひひとつ、大臣、地方空港の国際線開設に関して総合的、戦略的な取り組みを行っていただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、これについて御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
扇国務大臣 今局長が申し上げましたように、少なくとも、昭和六十二年から地方公共団体とともに地方空港国際化問題懇談会というものが設置されておりまして、国際化のためにいろいろ検討してまいりました。今申しましたように、四十三都市との間で週四百六十便を超える国際線が飛んでおります。そういう意味では、地方の国際的に果たす役割、また、地方の特色に合わせて、外国から地方へ飛びおりてくださる皆さん方、本当に私は、二十一世紀の第三次産業の基幹産業として観光というものを位置づけられる大きな役割を示してくだすっているものだと思っております。
 きょう、これからもそうでございますけれども、日中国交三十周年あるいは韓国との国際年、国民年、そういう記念の行事で、多くの行事がなされておりますけれども、大体が、日本へ誘致する宣伝が足りないと言われました。
 そういう意味で、今回は特に需要を喚起して、各地から、日本へ来てください、日本の紹介をということで、ビデオを作成いたしまして、多くの皆さん方に、各国の空港の待合室、それから日本の航空便の画面等々を通じまして、ビデオで日本への誘致をつくりまして、今キャンペーン中でございまして、これが少しでもお役に立てばありがたいと思っております。
 また、今局長から申しましたように、各地方でCIQをいかに完備して皆さん方の利便性を図るか、こういうことにも気をつけながら、なお多くの皆さん方に、少しでも日本を知っていただき、そして孫にも子供にも日本へ行かそう、そういう機運が高まることを念じながら努力してまいりたいと思っています。
西川(太)委員 ありがとうございました。
久保委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十一分散会


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