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第17号 平成14年5月31日(金曜日)

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平成十四年五月三十一日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 木村 隆秀君 理事 実川 幸夫君
   理事 橘 康太郎君 理事 林  幹雄君
   理事 古賀 一成君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      赤城 徳彦君    小此木八郎君
      小里 貞利君    北村 直人君
      倉田 雅年君    佐藤  勉君
      菅  義偉君    田中 和徳君
      谷田 武彦君    中馬 弘毅君
      中本 太衛君    菱田 嘉明君
      福井  照君    二田 孝治君
      堀之内久男君    松岡 利勝君
      松野 博一君    松宮  勲君
      松本 和那君    宮澤 洋一君
      吉川 貴盛君    阿久津幸彦君
      井上 和雄君    大石 尚子君
      大谷 信盛君    今田 保典君
      津川 祥吾君    永井 英慈君
      伴野  豊君    平岡 秀夫君
      前原 誠司君    松本 剛明君
      高木 陽介君    山岡 賢次君
      大幡 基夫君    瀬古由起子君
      原  陽子君    日森 文尋君
      西川太一郎君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   国土交通副大臣      月原 茂皓君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  山本繁太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鈴木 直和君
   政府参考人
   (国土交通省都市・地域整
   備局長)         澤井 英一君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  石川 裕己君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           洞   駿君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月三十一日
 辞任         補欠選任
  小里 貞利君     佐藤  勉君
  高木  毅君     宮澤 洋一君
  高橋 一郎君     北村 直人君
  堀之内久男君     小此木八郎君
  樽床 伸二君     松本 剛明君
  平岡 秀夫君     大石 尚子君
  保坂 展人君     日森 文尋君
  二階 俊博君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  小此木八郎君     堀之内久男君
  北村 直人君     高橋 一郎君
  佐藤  勉君     小里 貞利君
  宮澤 洋一君     高木  毅君
  大石 尚子君     平岡 秀夫君
  松本 剛明君     樽床 伸二君
  日森 文尋君     保坂 展人君
  西川太一郎君     二階 俊博君
    ―――――――――――――
五月三十日
 建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)(参議院送付)
 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省都市・地域整備局長澤井英一君、鉄道局長石川裕己君、自動車交通局長洞駿君、内閣官房内閣審議官山本繁太郎君及び厚生労働省大臣官房審議官鈴木直和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。
福井委員 皆様、おはようございます。
 ただいま上程されました全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案につきまして御質問させていただきたいと思います。
 まず、全国新幹線の最大ターミナルでございます東京駅及びその周辺の整備について御質問させていただきたいと思っております。
 まず、現在の東京駅、丸の内本屋でございますけれども、これはもともと、現在は壊されておりますが、建築の祖であります辰野金吾さんが、西洋式三階建てのれんがづくりの中央停車場駅舎として明治四十一年に着工して、大正三年にできたものがオリジンでございまして、そのネクストバージョンが今の東京駅舎でございます。
 ここの貴賓室から、日本に着任いたしました各国の大使、公使が、その国の元首の発した信任状を天皇陛下にお手渡しになります信任状奉呈式に臨む際に、儀装馬車に乗りまして、東京駅から丸の内駅前広場を通過して、横切って、そして行幸通りを通って皇居に向かうという、まさに我が国の晴れの場であるわけであります。
 しかし、現在のこの景観状況を見ますと、そのような威厳を持った空間とはなかなか言えないのではないか、疑わしい状況と言わざるを得ないわけであります。しかも、テレビの資料映像を見ますと、東京駅から毎朝出てくるサラリーマンの顔が、疲れた日本の労働者の代表ということで映像に出てまいります。とてもそういう晴れの場というイメージは出ません。
 我が国の一番大事な場所である東京駅の内外について、威厳を持った我が国の顔として今後とも整備すべきと考えますけれども、月原副大臣の方からお考えをお聞かせいただきたいと思います。
月原副大臣 おはようございます。
 ただいまの御質問に、東京駅周辺の整備のあり方というようなことについてのお尋ねでありましたので、お答えいたします。
 おっしゃるとおり、大正三年に東京駅、辰野金吾さんによって完成されたというようなことでありまして、おっしゃるとおり、我々も、東京駅、皆さんも使われておると思いますが、とにかく日本の交通の最大の結節点である、そしてまた顔であるというのにしては、前の方が非常に混雑しておる、そしてまた、威厳を保つというような点についてもやや劣っている感じがする。この二つ、おっしゃるとおりだと思います。そういうことで、今、地方自治体も含めて、我が国土交通省も含めまして、その問題に取り組んでいるところであります。
 具体的に申し上げると、東京駅の丸の内駅舎の創建当時の姿への復元ということ、そしてまた行幸通り、丸の内、それから八重洲の駅前広場を整備すること、さらには周辺の開発という、そういうプロジェクトを今計画しているところであります。
 とにかく、委員も御指摘のとおり、非常に重要な、あらゆる公共交通機関の中心であるとともに、日本の国の顔であるというにふさわしいものにするためにこれからも努力していきたい、こういうふうに考えているところであります。
福井委員 ありがとうございました。
 さらに具体的にお答えをいただきたいということでございます。
 丸の内というのはまさに丸の内、つまりお城の中、都市の中ということでございますし、八重洲というのは海の玄関口ということをあらわしているわけで、まさに近代都市の中心地として、東京駅の土地柄というのが持って生まれたものを発揮しなければならないということでございます。
 ちょうど五月二十九日、おとといでありますけれども、東京都の都市計画審議会におきまして、東京駅周辺の再開発、駅前広場、自由通路について、御審議を賜って、そして議決をいただいたということで、本当にありがとうございました。特に、歴史上始まって以来の容積率移転を、離れた敷地にできるというその制度をお認めいただきまして、皆さん方の御努力に感謝申し上げたいと思います。
 八重洲の方は、今、この東京駅と地下鉄浅草線が離れて走っておりまして、枝線さえつくれば、東京駅発成田行き、東京駅発羽田行きという、まさにインターモーダルな国民生活が実現できるという事業も考えられますし、東京駅周辺の民間の再開発事業及び公共事業を足しても八千億程度でありますけれども、もし全部できれば約二兆円ほどの効果を生むというふうに言われております。
 二十世紀のまちづくりは、セントラル・ビジネス・ディストリクトということで、業務地は業務地に特化するということでありましたが、これからは、二十一世紀、二十二世紀の方は、アメニティーもあり、文化もあり、商業もありということで、まざっている。それが新しい都市生活のライフスタイルを表現できる、そんな場所になるということでございます。
 この再開発とか、駅前広場とか、自由通路とか、そして地下鉄の延伸に関しまして、より具体の、今おっしゃれることがございましたら、再び副大臣の方から御紹介をいただければというふうに思います。
月原副大臣 委員御指摘のとおりでありまして、その方向に我々努力しているところであります。
 より具体的に申し上げますと、行幸通りの整備、それから丸の内の広場の整備とともに、今、北側だけしか通路がありませんので、それを南側の方に東西自由通路をつくりたい、こういうことも考えております。そして、当然のことながら、八重洲の広場の整備を考えております。
 そして、今御指摘のとおり、都市計画法を二年前に改正していただいて、容積率を移すことができるという、これを第一号として今回その適用を考えている、これはもう委員御指摘のとおりであります。要するに、歴史的な東京駅の建物の高さを、その後の、ほかの方に移して使う、こういうようなことであります。
 それからまた、浅草線のお話がありましたが、これは成田それから羽田、これのアクセスの問題として、既に都市再開発の問題として大きく取り上げられている問題であります。非常に大きな経費がかかるわけでありますが、これは今、東京都あるいは地元自治体、そして我々が入って、いろいろ協力して、実現に向けて具体的な検討を進めているというところであります。
 以上であります。
福井委員 どうもありがとうございました。東京駅が新しいライフスタイルを表現する場になることを期待申し上げたいと思います。
 ただ、おとといの東京都都市計画審議会の場で議論されなかった、ペンディングになりました丸の内の駅前広場の地下部分について、局長の方から御紹介をいただきたいと思います。
 地上部分と地下部分をあわせて、品格の高い、まさに皇居と町とを結ぶ空間を整備できると思いますけれども、今回都市計画決定されたのは地上部分だけでございますので、地下部分についてどういうお取り組み状況か。特に、一部でありますが、地下部分について公共事業で整備をさせていただいた経過もございますので、一日も早く地下部分についても都市計画決定し、そして周辺の建築物とタイミングを合わせて地下空間整備をする必要があると思いますけれども、どのような御予定か、局長の方から御紹介をいただきたいと思います。
澤井政府参考人 丸の内側の地下広場のお尋ねでございますけれども、これまで丸の内地区の地下歩行者ネットワークの拠点施設とすべく、都及び関係者などによりまして検討が進められてまいりました。
 現在、丸の内ビルの前の地下部については、丸ビルの整備とあわせまして整備を行い、本年八月には完成の予定となっていると聞いております。約二千六百平米余りの面積であります。
 東京都におきましては、今後も引き続き、広場周辺でこれからもビル開発が進みますので、これにあわせた整備につきまして、関係者による検討を進めていく予定であると聞いております。
福井委員 ありがとうございました。
 もう少し東京駅にこだわらさせていただきまして、今般お認めをいただきました都市再生法にかかわる問題につきまして御質問させていただきたいと思います。
 ちょうど六月一日、あしたから施行になるわけでありますけれども、この東京駅周辺につきましても、都市再生緊急整備地域として指定する予定があるかどうか。そして、この東京駅を含む地域の広がり、あるいは、一般的に言いまして、全国ベースとして、どのようなスケール、広がりで指定する御予定か、いつ決定し、そしてだれがアナウンスメントするのかという予定につきまして、山本審議官の方から御紹介をいただきたいと思います。
山本政府参考人 都市再生緊急整備地域の指定についてのお尋ねでございます。
 都市再生緊急整備地域は、都市開発事業などを通じて、緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として政令で定めることとしております。具体的な地域の指定に際しましては、地方公共団体の意見などを踏まえながら検討を行っていくこととしておりますので、お尋ねの東京駅周辺も含めまして、どの地域が緊急整備地域として指定されるのかということについては、現時点では定まっておりません。
 ただ、今先生も御指摘ありましたように、きょう都市再生特別措置法を施行する政令が公布されまして、あす六月一日から法律が施行されます。法律の趣旨にのっとりまして、現場の状況を熟知しております地方公共団体と徹底的に意見交換をして、できるだけ早期に地域を指定する政令を立案したいと考えております。政令の立案は、都市再生本部がこれを行うことになっておりますので、次期の都市再生本部で政令を立案いたしますと、今までの本部の会議同様、これは直ちに公表されることになります。
 なお、都市再生緊急整備地域のスケールとか広がりについてでございますけれども、法律上は基本的には限定はございませんけれども、法律の趣旨にのっとりまして、きちんとした、具体的なプロジェクトがあることはもちろん出発点でございますけれども、それに限ることなく、ポテンシャルのある地域について、できるだけ多くの都市再生事業が生まれてくるように、ある程度の広がりを持ってこれを指定するという方針のもとに、公共団体とやりとりを進めていきたいと考えているところでございます。
福井委員 ありがとうございました。
 そうなんですけれども、この都市再生法につきましては、国民こぞって、そして今不況をかこっております不動産業界も、そして建設業界も、そして日銀特融、RCCを得意とする不良債権を扱っている方々からも、生の不良債権を優良債権にできるんだというコペルニクス的転回をこの都市再生法で期待しておるわけでございます。
 したがいまして、国民が今期待しておりますのは、そして経済界がこぞって期待しているのは、東京都全体とはいかなくても、二十三区全体でありますとか、大阪市であると大阪市内全体、区部全体でありますとか、あるいは地方都市でいきますとTMOという、タウンマネジメントオーガニゼーションがかかわる、ある広がりを持った中心市街地の区域全体、そのような、もちろん敷地レベルではないことはわかっておりますけれども、大きく窓口を広げたような区域の指定、プロジェクト、さあいらっしゃいと両手を大きく広げたような、そういう区域を想定しているというのが今の現状であるわけであります。
 仮にこの区域指定が東京都周辺だけとかあるいは新宿周辺だけとか、そういう区域が狭い場合に限定されますと、あるいはプロジェクトの成熟度が極めて高い区域に限定されるということになりますと、国民的な落胆が非常に大きいわけでありまして、広がるわけであります。せっかく政府統計上底を打ったと言われる景気に水を差すことになりますし、土地の流動化への期待がしぼむことになるわけであります。住宅局というか、住宅行政サイドあるいは都市計画行政サイドからいきますと、建築物を高く建てることによって日照とか周辺環境を心配する向きが当然あるわけでありますけれども、土地ごとのアセスメントは当然実行されることになっておるわけでありますから、建築行政的な限界で区域を限定するということについては不適当だと思っております。そして、何よりもまず、区域をプロジェクトが成熟しているところに限るとなりますと、また都市計画が経済活動を邪魔していると言われることになるわけでありまして、それを一番私としては危惧いたしているところでございます。
 今おっしゃれる範囲内で力いっぱい、審議官の方からお答えをいただいたところでありますけれども、もう一度現在のところ、区域指定の基本的な考え方について御紹介をいただきたいと思います。
山本政府参考人 先ほど緊急整備地域の広がり、範囲について、法律上の限定はないという御説明をさせていただきましたけれども、対象となる都市につきましても、具体的に大都市とかどの都市に限るという法律上の限定は全くございません。当該土地の地域がしっかりした可能性を持っているといいますか、土地利用の可能性があるということが基本的な前提でございますので、ただいま先生御指摘がありました土地の流動化についての政策的な課題でありますとか、そういったことをきちんと受けとめた上で、民間都市再生事業者の力をフルに発揮できるような形で、その土俵を整備するという意味で緊急整備地域がきちんと指定されるように努力してまいる所存でございます。
福井委員 どうもありがとうございました。
 今回の法律の根本部分についての御質問に変えせていただきたいと思います。
 今回の法律のきっかけとなりましたのは、東海道新幹線の大規模改修であります。いつから、幾らかけて、どのような改修工事を想定しているのかという御質問をさせていただきたいわけですが、ちょっと前提条件として、一土木屋として思いますのは、土木最大の過ちというのがございまして、東海道新幹線のルーティングの際に関ケ原を通過させたことにあるわけであります。
 普通というか、古代から、名古屋から西へ東海道というのは、桑名から亀山、そして滋賀県から京都に行くという三重県ルートでありました。だれそれというわけではありませんけれども、政治力によってゆがめられたというか、北に向かわされたルートによりまして必然的に関ケ原を通過せざるを得なくなったために、そこだけ雪が降るわけです。当時、雪仕様には東海道新幹線はなっておりませんでしたので、その関ケ原の雪のために何回もストップし、そして何回もおくれということで、そういう繰り返しが起こったわけであります。そのために何億人時間、日本人が損害をこうむったか、はかり知れないものがございます。
 このように、土木というのは設計思想において国民生活を大きく左右するものであるわけであります。そして、阪神・淡路大震災のときにも、余りにも構造物が複雑であったものですから、静定トラスといいまして三角形のトラスで簡便な構造物があって、そしてその代替部材が近くにあればどれだけ便利だったか、どれだけ早く修復できたかわからないというふうな気持ちでほぞをかんだことも私たちは経験したわけであります。最少鉄筋、最少コンクリート、最も安くということを追求して、私たちは最適解として出してきたわけでありますけれども、そのリスクマネジメントまで考えると最適ではない場合もあることも痛感させられたわけであります。
 そして、今般、鉄鋼メーカーのことも考えますと、箱げたとかちょっと複雑なラインはペイするけれども、鈑げたといいまして、最も単純な構造物をつくるラインは赤字になるというような、肥満体質に私たちは今陥っておるわけであります。
 真にリダンダントで、この百年二百年、本当に持続して、機能を発揮して、国民に信頼されるサービスを提供するシステムを全体として考える、名づけてメガエンジニアリングとでもいいましょうか、そういうものを今確立しておかなければならないと思います。
 以上を踏まえまして、歴史とはシナリオのないドラマじゃなくてシナリオから外れるドラマだという言葉もありますので、そのシナリオから外れたときにどうするかまで想定した強い設計思想について御紹介をいただきたいと思います。
 東海道新幹線当時の設計の思想のあり方の反省、総括を踏まえて、今後の新幹線の構造物の設計思想の展開について、鉄道局長の方から御紹介をしていただきたいと思います。
石川政府参考人 ただいまの、新幹線の設計思想についてのお尋ねでございますが、東海道新幹線は、御案内のとおり、昭和三十六年の当時に国鉄が策定した新幹線構造物設計基準というもので設計されてございます。
 設計の方法としては、許容応力度設計法というものによって行われたものでございます。設計基準につきましては、その後数度改定が行われておりまして、平成三年には、限界状態設計法というものを導入してございますし、平成十年には、兵庫県の南部地震を契機といたしまして耐震設計の見直しというものも行ってきてございます。
 これまでの設計の方法というものは、土木構造物がその機能を果たすこと、これを重視したものでございますけれども、現在、これに加えまして、新材料の活用、あるいは環境への適合、あるいは構造物のライフサイクルコストというようなことも考慮した設計の方法について検討を進めているところでございます。
福井委員 どうもありがとうございました。
 次に、今回の法律は、その大規模改修、メンテナンスの方の費用について支弁する方法を考えるわけですけれども、新規投資の方、設備投資の方も必要だというふうに思います。
 例えば、新幹線につきましては、新駅を整備する、あるいは既設の駅にあってはバリアフリーの施設を整備するということが多いと思いますけれども、例えば、新駅設置ですと、従前の場合、今回の栗東の駅、そして東京から北の方、別の新幹線ですけれども、本庄の駅ということになりますと一〇〇%地元負担で、鉄道側は、JR側は一銭も負担しないという基本的な思想があったわけであります。
 その新しい駅ができることによって、電気、機械系統すべて、信号も変えなければならないので、そういう費用まで含めて新しい駅の地元で負担しろという、ちょっと余りにもひどいじゃないのということが今まであったわけですけれども、そういった場合における現在のJR、新幹線の側の考え方。
 あるいは、よく私たちが経験しますが、空港とか空港バスの中は、重いスーツケースを持っていても移動は割と簡単なわけですけれども、新幹線に乗りかえると突然非常にトランスポーテーションプアになるという経験がございます。下りのエスカレーターもまだまだ足りません。このバリアフリーの施設をどんどんふやすことに関する、いわば設備投資に関して今どのようにお考えか、鉄道局長の方から御答弁をいただきたいと思います。
石川政府参考人 まず最初に、新駅の設置の問題でございますけれども、先生御発言のとおりでございますが、JRの会社の経営判断ということではございますが、一般的に言えば、その新駅の設置ということにつきましては、五点ほど考慮要素があると思います。
 一つが、十分な利用者が見込まれて、経営収支を悪化させないこと、それから、線形、勾配等から見て技術的に問題がないこと、それから、新駅の周辺地域において地元や関係地方公共団体の協力が得られること、それから、設置費用の具体的負担関係が明らかになっていること、さらには、新幹線の輸送特性でございます速達性、こういうものを阻害しないこと、こういうふうな点があろうかと思いまして、これらを総合的に勘案して判断されるものでございます。
 それから、新幹線を含めた既設駅のバリアフリーの問題でございますが、先生御案内のとおり、現在、いわゆる交通バリアフリー法というものに基づいて整備を進めてきておりまして、同法に基づきまして国が定めた基本方針というものは、二〇一〇年までに、一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上の鉄道駅について、段差の解消等のバリアフリー化を実施するということが目標でございました。
 したがいまして、この目標を達成すべく、具体的に、エレベーター、エスカレーターの整備だけではなくて、スロープ、階段の解消というようなことについて努めているところでございますが、特に既設の駅のバリアフリー化ということにつきましては、営業中に工事をしなければいけないとか施設の制約があるとかいうことでなかなか難しいところがあるわけでございますけれども、私どもとしては、毎年一回、こういうふうなバリアフリー化の実施状況というものを鉄道事業者から報告を受けております。できるだけ目標を早期に達成するように努めてまいりたいと考えております。
福井委員 どうもありがとうございました。
 この鉄道と土木との関係においてはかなり微妙な問題がございまして、政治力に負けて志がないと言われたときもありましたし、あるいは、JR各社に分割されたときの経営企画、マネジメントの担当に当初は土木屋がいたんですが、今全然いなくなったということがありまして、その土木屋全体あるいはそういう技術全体の士気が、そしてプライドがひょっとすると今弱まっているのではないか、そういう趣旨で、その設計思想でありますとか、地域全体、国全体のことを考えて一生懸命やっているんだということをあえて御質問させていただいたわけでございます。
 最後に、前回はちょっと時間がなくて局長には大変失礼を申し上げましたですけれども、LRTに関する技術力維持のための国土交通省の対策いかんということで御質問させていただきたいと思います。
 実は、私の地元の高知市内の土佐電気鉄道という路面電車がございまして、やっとこの四月に初めて、低床式の、床の低い、バギー車でも車いすでも停車場からそのまますとんと行けるという低床式路面電車を購入できたわけであります。
 それはある関西の工場でつくられたわけでありますけれども、実はその工場が三月末をもって不景気のために廃止をされる。なおかつ、その前提としては、車両メーカーさんにおかれましてはかなり景気が悪いということで、その車両をつくる、あるいはメンテナンスする、電気、機械、軌道、車両そのものの保全能力というのがひょっとすると日本からなくなってしまうのではないかという危機を実感させられたわけでございます。
 幸い、その車両メーカーも関西の工場も今のところ操業は続けておりますけれども、全体として考えると、補助事業があり、道路事業として路面電車走行空間整備事業というのがあり、そしてお客さんもいれば安泰なわけですけれども、その最初につくる車両メーカーについて、国土交通省としては今までスコープ・オブ・ワークにはもちろん入っていなかったわけです。通産行政の範疇だったかもしれません。しかし、我々としては、システム全体として、地方都市は中心市街地に歩いて行ける、楽しく歩いて買い物できる、そういうような町を国是として目指しているはずなのに、ではその前提となるLRTについて、それをつくるメーカーあるいはその会社の経営について何もコミットをしないというのはちょっとおかしいんじゃないかということを実感させられたわけでありますので、その辺のことも含めまして、現在のこのLRTに関する対策について御紹介をいただきたいと思います。
石川政府参考人 御指摘のとおり、LRTに対する技術力の維持というものは重要な事柄であると私どもも考えてございます。
 鉄道車両工業会が極めて厳しい環境にございまして、御指摘のように業界の再編成というものも進んでおりますけれども、LRTの製造というものにつきましては大手車両メーカーも一部引き続き行っているということもございますので、このような民間の力を活用しながら、LRTに関する技術力の維持発展というものに取り組むことが大事だとまず考えておりますが、国土交通省としては、バリアフリー化を進めるということもありますので、重立った車両メーカーで構成されます技術研究組合というものに対しまして、LRTの狭軌超低床化に対する技術開発につきまして補助を行っているところでございまして、こうした技術開発の補助というものを通じまして技術力の維持に努めてまいりたいと考えてございます。
福井委員 どうもありがとうございました。
 以上で時間が参りましたので、御質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 自由党の一川でございます。
 いよいよ東海道新幹線の大改修に備えての制度を用意するという法律の改正でございまして、新幹線全体についても、現時点での私の疑問点といいますか、そういったことも含めて、確認をしながら質問させていただきたい、そのように思っております。
 以前からこの委員会でもちょっと指摘させていただいたことがあるんですけれども、これからの社会資本の整備というのは、今までのように大規模に、新たに大きな施設をつくっていくということだけじゃなくて、これまでつくった施設を補修し改修しなきゃならない、もうそういう時代を迎える。しかも、そのためには、当然ながら善良な維持管理をしていくということも前提にあるわけですけれども、そういう中で、私は、社会資本を着実に整備していくという必要性はやはり従来以上に高まってきておるなという感じもします。
 そういう面で、国民がより安心して快適な生活ができるように、また、こういった経済が低迷している折でございますけれども、経済が持続的に発展できる、そういう基礎をつくっていくという面では、やはり国と地方の役割分担なり、また官と民とのすみ分けといったようなこともしっかりと念頭に入れながら、なおかつ、最近では環境問題にも配慮しなきゃならぬという中で社会資本を着実に整備していくということになるわけでございまして、高齢化社会はまだピークに達していないとは思いますけれども、我が国は、高齢化社会がピークに達するまでに、基幹的な社会資本の整備というものはもう完全に整備し終えておくということも、ある面では非常に大事じゃないかなという感じもいたしております。
 そういう大きな背景の中で、私は、今回のこの新幹線の大規模改修という問題について、まず基本的にお尋ねしたいのは、JR東海なり東日本、西日本というような、民間会社として本格的に再スタートを切ったこの時期に、なぜこういう制度を、要するに国土交通大臣がその主体を指定して、なおかつ補修計画を承認するという手続をとらせてまで、せっかく完全に民営化している時期にこういうことをスタートするのかという、そこのところがちょっとわからない点もあるんですけれども、そこをひとつ御説明をお願いしたいと思います。
石川政府参考人 今回の大規模改修でございますけれども、東海道新幹線につきましては、いずれは大規模改修が必要となるというふうに認識していたわけでございますけれども、我が国で初めて建設された大量高速交通機関であったということで、具体的にいつごろからどのような規模の改修が必要かということについて専門的な検討が行われてきたわけであります。このために、JR東海は外部の専門家を交えまして、東海道新幹線の状況の把握、あるいは維持管理のあり方、鋼構造やあるいはコンクリート構造を中心とした土木構造物全体の老朽化対策等について専門的な調査検討を重ねてきたわけでございます。
 その結果、開業から五十年程度経過する今から十五年後ごろに大規模改修が必要であるということが明らかになったわけでございます。したがいまして、その将来の大規模改修に備えるためにあらかじめ引当金を積み立てさせるという内容の法案を国会に提出させていただいたわけでございます。
 こういう形でございますが、事業者を指定するという今回の措置でございますが、将来にわたって新幹線の安定的な輸送を確保するためのものでございまして、新幹線の極めて高い公共性にかんがみれば、完全民営化とかあるいは規制緩和ということとは別で、その必要性が認められるというふうに考えてございます。
 民間に対してこのような引当金というものをやっておりますのは、先生御案内のとおり、ほかに電気あるいはガスという事業につきましても同様に、公共性あるいは公益性の観点から、民間会社に対して引当金の積み立てを義務づけているというところでございます。
一川委員 高い公共性ということが一つの大きな背景にあるということでございまして、それはそれとして理解できるのでございますけれども、片や、今の時代の流れとして民営化なり規制緩和という中で、今なぜこの時期に国がそこまで関与してこういうことをやらせるのかということについてしっかりと国民に理解をさせておかないと、ちょっと流れに逆行するのではないかな、そういう疑問を持つ方も中にはいらっしゃるんじゃないかなという感じもいたします。
 さて、これからこの制度ができ上がった暁には、所有営業主体と称する法人を指定していくというわけですね。当面は恐らくJR東海だというふうに思いますけれども、それは大体いつごろのタイミングで、今後どういうようなスケジュールでそういう指定なり、そういう手続をとっていこうとされているのか、そこのところを御説明願いたいと思います。
石川政府参考人 大規模改修を行う所有営業主体の指定でございますけれども、個々の新幹線ごとに、開業からの年数だとか車両の走行実績、財務の状況等から、大規模改修の必要性あるいは引当金積み立ての必要性及び妥当性というものを判断して指定を行う予定でございます。
 それから、山陽、東北、上越の各新幹線については、開業からの経年年数も比較的新しいということもございます。当面は、東海道新幹線を所有するJR東海を所有営業主体として指定を行うことと考えてございます。
一川委員 当面はJR東海を指定したいということでございますけれども、その東海道新幹線のことで、割と年月が経過しておりますので、我々もそのあたりをちょっと忘れた感もございますので、いろいろと御説明をお願いしたいと思います。
 昭和三十九年にでき上がって、延長が五百十六キロですか、そういう相当長大な新幹線を相当短期間で、当時のお金で、私が聞いたところでは三千三百億円ですか、三千三百億円ぐらいの建設費で当時五百十六キロの新幹線をつくったと。
 今回は、その大規模改修をする一応の予定として約一兆円ぐらいを見込んでおるというふうなお話をお聞きしたことがあるんですけれども、今回、引当金で用意するのはその約半分ぐらいだというふうに説明を受けました。
 約一兆円もかかるという大規模改修というのは基本的にどういうことをやろうとしているのかというのがまず一点と、全体の一兆円に対して約半分を引当金で用意するというのはどういう考え方に基づくのかというところを御説明願いたいと思います。
石川政府参考人 今回の東海道新幹線の大規模改修というものにつきましては、ほぼ全線にわたりまして基礎的な土木構造物の取りかえまたはこれと同等の効果を有する補修ということを考えてございまして、例えば、鉄げた、コンクリート関係の取りかえでありますとか、高架橋の構造の変更あるいはトンネルの補強工事、盛り土の強化というふうなことを考えてございまして、鉄げた、コンクリート関係では約二千億程度、高架橋関係では約五千億程度、トンネル関係では約二千億程度、盛り土関係で約一千億程度ということで、約一兆円程度になると見込まれてございます。
 もっとも、具体的な額は、これからJR東海が提出いたします引当金積立計画ということの内容の審査をした上で承認する段階で数字が確定するものでございますが、現時点では約一兆円と見込まれております。
 これの約半分を引当金として認めるということについてでございますけれども、これらの大規模改修については、JR東海自身の利益あるいは借り入れなど、JR東海自身の自助努力というものを当然前提とするわけでございます。したがいまして、約一兆円の工事費用に対して、その半分に当たる五千億という引き当てが妥当であると考えておりまして、ほかの準備金制度につきましても、似たように、費用の二分の一程度というものを認めているというものでございます。
一川委員 今のところでもう一回確認するわけですけれども、引当金として約五千億円を用意させるというのは、これはJRの自主努力とは余り関係ないんですか。余り努力しなくてもそういったものは自動的に積み上がっていくということなんですか。
石川政府参考人 今申し上げましたように、工事全体は一兆円ほどかかるわけでございます。一兆円のうち、半分につきましては、当然JR東海みずからが借り入れなり利益の中から準備をしていくということでございますし、その残りの五千億については、引当金という形で積むことを認めて、税の優遇措置を講じよう、こういうものでございます。
一川委員 引当金という制度といえども、やはり会社全体の経営の中でしっかりとした位置づけがないと積み上がっていかないものだというふうに私は思いますし、また、そういう面では、これからのJR東海の経営ということについては非常に関心を持っていきたいなというふうに思っております。
 そこで、東海道新幹線は、先ほど言いましたように昭和三十九年ごろでき上がったわけですけれども、それ以降も山陽新幹線なり上越新幹線あるいは東北新幹線、北陸新幹線、九州新幹線と、開業しているもの、あるいは一部開業しているもの、それから一部着工しているもの、いろいろな形態で今進められているわけですけれども、私が覚えているところでは、最近の着工している区間というのは、関係する都道府県の負担割合が徐々にふえてきているような感じがするわけですね。
 かつて東海道新幹線をつくった当時には、関係する、例えば東京都なり静岡県なり、そういう沿線の都府県にそういう負担というのはなかったと思うんですね。その当時の東海道新幹線の財源とか、あるいはその後の開業しておる新幹線というのはおおむねどういう負担割合で物事ができたのかというのは説明していただけますか。
石川政府参考人 新幹線は、今、五新幹線ほどございますけれども、東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線、上越新幹線、これらは国鉄時代に建設されたものでございます。したがって、この四新幹線につきましては、建設費のほとんどは借入金という形で賄われておりまして、地元の負担はございません。
 その後の、国鉄が民営・分割した後のいわゆる整備新幹線につきましてでございますが、最初の北陸新幹線高崎―長野間、これにつきましては、平成元年度から平成八年度まで、国がおおむね三五%、地方がおおむね一五%の負担ということでございまして、平成九年度以降の整備新幹線の建設につきましては、国と地方の負担割合が二対一というふうになっているわけでございます。
一川委員 過去にそういう負担割合なり財源措置で新幹線が整備されてきたというのはわかりましたけれども、では、これから東海道新幹線を大規模に改修する場合に、東海道新幹線の関係する都府県になぜある程度負担させられないのか、こういう素朴な疑問が出てくるわけです。単なる維持管理じゃないですよ。大規模に改修して、ほぼ新しい施設に部分的につくりかえていくということであれば、最近のほかの路線では国と地方の負担は二対一ですか、そこまで地方の負担はふえてきておるわけだけれども、そういう考え方を東海道新幹線の大規模改修にも取り入れたらどうかなというような考え方が当然疑問として出てくるわけだけれども、そこのところはいかがですか。
石川政府参考人 先ほど申し上げましたように、国鉄時代につくられた四新幹線につきましては、建設営業主体が国鉄であるということだけではなくて、非常に旅客需要が多いところで、鉄道単体として一応経営ができるというところであると思います。整備新幹線は、その既設の四新幹線と比べて相対的に旅客需要が少ないということもございまして、そういう意味で地域の御協力を得ているということだろうと思います。
 したがいまして、東海道新幹線そのものの大規模改修ということにつきましては、基本的には事業者の責任であると考えております。
一川委員 そういうお答えであると思いますけれども、私たちが東海道新幹線の利用状況を見た場合に、相当収益が上がっている、そういう路線じゃないかなという感じもいたします。また、それを使っている方々も、日本全体、各地域からその路線を使っている方が当然たくさんいらっしゃるわけでございますので、東海道新幹線の収益的なものを何かもっとほかにうまく還元していく方法というのはないのかなという感じが素朴にするわけです。
 今、各整備新幹線沿線の都道府県が、大変負担をしながらそれを期待しておるわけでして、無理して一生懸命取り組んでいるところもたくさんあると思います。最近のいろいろな促進期成同盟会的な動きも、何十年と取り組んできて何となく形骸化しているところもありますけれども、そういう面では、この東海道新幹線の大規模改修という一つの話題が出てきたこの折に、何かもう少し地方の方にも配慮のある、そういう新幹線の整備の仕方ができないのかなという感じを私は素朴に持ったわけでございますので、まあこの問題は引き続きまた問題意識を持って対応していきたいなというふうに思っております。
 さて、この整備新幹線等に関連した一つの大きな課題として、フリーゲージトレーンという一つの方式が、今現在もその実用化に向けてのいろいろな試験、実験等がとり行われております。これは、アメリカのコロラド州の試験線でも何十万キロという走行をして、ある程度そこをクリアして、今国内でテストが行われているというふうに聞いておるわけですね。
 もうそろそろ実用化のスケジュールがあってよろしいのではないかなと、私はそういうふうに思ったんですけれども、まだどういう研究課題が残っているのかというところがちょっとわからないのと、現時点で、今後どういう見通しで実用化を図りたいというふうに考えておられるのか、今現在何をやっておるかということも含めて、御説明をお願いしたいと思います。
石川政府参考人 フリーゲージトレーンの実用化でございますが、先生御指摘のように、平成十一年四月から平成十三年一月まで、アメリカのプエブロの実験線で高速耐久試験等を実施してまいりました。この間、累積走行距離が約六十万キロ、最高スピード二百四十六キロということは達成したわけでございます。
 その試験車両を現在国内に持ち帰って、国内の在来線で試験を実施しているところでございますが、実は、在来線の場合は、新幹線と比べまして、急なカーブ、曲線が連続する区間が多いということで、このような急カーブの部分、急曲線部を高速で通過するということについて、ゲージが変わっていく車輪で技術的に解決すべきことは若干ございます。
 それから、やはり振り子機能というものをつけないと、在来線で高速的な運転ができない、あるいはしにくいというふうなこともございますので、この振り子機能を付加する、こういうことについても技術的な検討が必要であるという段階でございます。
 ただ、いずれにしましても、これまでに明らかになった技術的諸課題というものについて検討を進めながら、国内での車両の走行試験というものを継続して、フリーゲージトレーンのできるだけ早い実用化というものを目指して頑張ってまいりたいと考えております。
一川委員 このフリーゲージトレーンというのは、当然その軌道の間隔の違う路線を直通運転するということですから、利便性なり時間の短縮という面では非常に期待の持てる方式であるというふうに思いますし、また、新幹線の効果を全国に波及させるという面では、新幹線が当面来ないというところにとっては、在来線を通じて新幹線が乗り入れるということで、非常に期待の持てる部分でございますので、できるだけ早く実用化のスケジュールが発表できるように御努力をお願いしたい、そのように思います。
 さて、私自身もちょっと関係しております北陸新幹線というのがあるんですけれども、前にも大臣に決算行政監視委員会で御質問をしましたけれども、その前にちょっと事務的なお話を確認させていただきたいんですけれども。
 北陸新幹線は、ほかの新幹線に比べて長大で、相当の経費も要し、大変な難工事区間も抱えておるということでは、新幹線全体から見れば、大きな課題を抱えている路線だというふうに認識しております。
 ただ、一方では、その区間の中で、例えば上越から石川県の小松という区間、延長にしたらどれくらいあるんですかね、二百キロぐらいあるのかもしれませんけれども、昭和六十年の十二月に工事実施計画の認可申請をしておるんです。昭和六十年の十二月です。もうそれから相当の年月が経過しておるわけです。普通、役所の仕事であれば、計画の申請をさせるんだったら、当然ある程度見込みがあってさせるわけでして、計画の承認もできないものを受け付けるということ自体が非常に不可思議であるわけだけれども。昭和六十年の十二月に認可申請したものは、当然、部分的には今工事着工しておるところもありますよ、でも全然着工もしていない、完成の見通しも立っていないというのがその区間の中にも入っておるわけです。こういう実態を局長に聞いてもどうしようもないのかもしれませんけれども。
 先ほど私の前に質問をされた先生も、いわば政治力で新幹線がゆがめられたというようなお話もございました。私も同感でございますけれども。しかし、政治家としてはやはりそのあたりは当然責任を持って、そんなに早々と認可申請したものに対してはもっとちゃんとした説明をする、また、いつごろを目標に認可するんだということぐらいは、その関係する県民の方々にちゃんと説明する義務がある、責任があるというふうに私も思います。
 そういう面で、局長にちょっとお尋ねしたいのは、昭和六十年十二月に工事実施計画の認可申請を出したその書類、それは今そのまま使えるんですか。相当の年月がたっておるということであれば、当然中身を見直ししないと、もうチェックもできないんじゃないですか、それは。いかがですか、それ。
石川政府参考人 先生御指摘のとおり、北陸新幹線の上越―小松間というものは、昭和六十年の十二月二十五日に工事実施計画の申請が出てございます。これは実は国鉄の時代でございまして、その後国鉄の民営・分割というふうな大きな流れもあったのも一つの要因でございますが、現在まだ工事の着工に至っていないということも事実でございます。
 この工事実施計画の申請の中身につきましては、当然現時点においてまだ見直す必要がある部分があろうかと思いますが、それにつきましては、例えば、物価上昇に応じた工事費の計算の変更だとか技術開発に伴う材料の改良等々、こういうこともやったことはございます。
一川委員 私は、今局長もちょっと触れられましたけれども、当時の経済社会情勢と比較すれば、昭和六十年代に出したものの中身はもう恐らく相当変更しなきゃならない状況にあると思いますし、ましてや環境アセスメント的なことは全面的にやりかえる必要があるような気もいたします。そういうことが事務的にちゃんとフォローされているのかどうかということがちょっとわからなかったんですけれども。まあそのことをやること自体も相当の年月を要するような気もするわけです。そんな、半年やそこらでできるものじゃないと思うんですよね。そういうことも含めますと、もっと親切に、やはりもっと国民、県民の皆さん方にわかりやすいような対応があってよろしいのではないかなと。そういうことからこの新幹線そのものに対する一種の不信感というものが地方で今高まってきているということだというふうに私は思いますので、ぜひ責任のある対応をお願いしたいな、そのように思います。
 それで、最後に大臣にお尋ねしたいと思います。
 先ほど言いましたように、四月の決算委員会でもこれに近いことをお尋ねしましたけれども、私は、今回、東海道新幹線が大規模改修に入るための制度を用意するということをお聞きしまして、私たち若いころには東海地震というのが非常に話題になりました。東海地震があった場合に、東海道新幹線なり国道一号線なり、日本の動脈的な幹線交通が遮断される危険性がある、そのためには北陸回りの新幹線をつくるべきだというのは、いや本当に当時あったんです、そういう説明だった。
 もう全然忘れてしまって、先ほど言いましたように、今、何か北陸新幹線そのものをお荷物みたいな言い方をされる方もいらっしゃいますけれども、そういう面では、東海道新幹線の大規模改修に入る前に、その北陸回りの新幹線の部分的な供用開始ができるような、せめてそれくらいの整備方向をしっかり進めますというのが国の責任じゃないかな、私はそのように思いますし、東京、大阪という大都市を連結する交通機関としては、やはりそういうことを常に念頭に置いたことがあってよろしいんではないかなというふうに思います。
 かねてから大臣もおっしゃっていますように、高速交通ネットワークというのは、単に鉄道だけじゃなくて、当然ながら陸海空、そういうものが一体となって総合的に整備されなければならない非常に大事な課題でございますし、国土の均衡ある発展を図っていくという面、あるいはまた地域の自立性を促すという面、それからまた、今日的な課題であります地方分権というものをちゃんと支えていくという面でも、こういう高速交通のネットというものをしっかりと整備していくというのは非常に大事なことでございますし、こういったものはやはり国の責任においてしっかりと整備していくことだというふうに思っております。
 そういう点で、先ほど私がちょっと指摘したようなことも含めて、東海道新幹線、まあ、新幹線のシンボルみたいな新幹線ですから、これが今度大規模改修に入るということですから、それだったら、それまでに北陸新幹線はもう少しめどを立ててくださいよということも含めて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
扇国務大臣 今、一川議員がおっしゃいましたように、御希望があるところすべてを達成できれば私も大変うれしいと思うんですけれども、それがなかなか思うように任せないという国の現状。
 そして、地域の皆さん方の利便性を考えて――北陸新幹線、これはやはり国土の骨格として大事な交通機関であるということはもう言うまでもありません。また、平成元年に整備新幹線の中で最も早く高崎―軽井沢間の準備を進めております。平成九年の十月には高崎―長野間が開業しまして、開業後見ておりますと、開業前に比べまして、この区間だけでも二五%利用者がふえているということを考えてみましても、やはり本当に喜んでいただけたなという実績は見えるわけです。
 また、平成十二年の政府と与党の申し合わせで、長野―富山間、これを全線フル化して、今後おおむね十二年間、十二年強ですけれども、完成さそうということが決まりましたし、現在それは工事中でございます。同区間の開業後は、東京―富山間が大体一時間短縮されて二時間十分で結ばれるということで、これも、利用者にとっても、地域の経済にとっても、大きな効果が見られるのではないかと私は思っています。
 さらに、未着工区間につきましても、社会経済情勢、国、地方公共団体の財政事情に照らしながら、東北新幹線盛岡―八戸間、これは本年の十二月一日開業予定にしております。また、九州新幹線、今もお話があったかもしれませんけれども、新八代―西鹿児島間、これは平成十五年の末に完成予定ですけれども、両区間の完成後にはこれを見直していくということになっております。
 このように、北陸新幹線につきましては、着実に私は前進しているとは思っておりますけれども、今議員がおっしゃいましたように、なかなか思うに任せないというのは現実でございます。今後とも努力してまいりたいと思っております。
一川委員 先ほどもちょっと触れましたように、昭和六十年十二月という、相当以前に工事実施計画の認可申請がされた区間を持ち、なおかつ、それよりも後発の認可申請が出された区間がもう既に完成のめどが立っているということも、ある面では非常に理解のしがたいところでもございますけれども、まあしかし、せめて部分的にでもいつごろを目標に開業しますよということぐらいはやはり政府・与党の責任でしっかりと示していくということをぜひ果たしていただきたいと心からお願いしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
久保委員長 伴野豊君。
伴野委員 民主党の伴野豊でございます。
 本日は、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案ということで、この法案に直接かかわる事柄と今回話題になっておりますいわゆる大規模改修に伴う技術の話題、それから、時間があるようでございましたら、新幹線を初めとする鉄道周辺の話題につきまして、順を追って質問させていただきたいと思っております。
 まず、今回の法案に一番直接的にかかわる質問からでございますけれども、今回の趣旨説明にございますように、東海道新幹線を初めとする新幹線が今まで果たしてきた役割、それから今後も果たしていただかなければならないその使命というものをかんがみた上で今回の法案が必要であるという趣旨でございますけれども、この東海道新幹線も、発案されたといいますか、計画の前は、これは大臣もどこかでお耳にされたことかもしれませんが、むだな投資の代表例として、よく世界の三大投資というようなことで、文化的な価値は別としまして、ピラミッド、万里の長城、それから、これは戦争末期の旧帝国海軍がよく言ったというんですが戦艦大和、この次に東海道新幹線だと批評をしていた人も当時はいるんですね。
 ただ、この東海道新幹線がなかりせば、多分、今の日本の鉄道、特に高速鉄道のネットワークというのは存在し得なかったでしょうし、あるとすれば地方のローカル線と民鉄が一部あったぐらいで、ということになれば鉄道局長さんのポストも今はなかったというようなことになっているわけでございまして、こういういろいろな世論、当時の新聞なんかも結構そういうことを書いていまして、多少世界的に斜陽になっている鉄道に何で、しかもモードの違ういわゆる標準軌、日本の狭軌に対して広軌でやらなきゃいけない、乗り入れができなくなるんじゃないか、そんなのよりももう一つ狭軌で横に敷いた方がいいんじゃないかとか、そんなようなことをいろいろ言われてきたんですよ。
 そこで、そうではないんだよと。よく、世界、社会に貢献した人が何か発言をしたときに、案外その発言した当時というのは認められなくて、コロンブスもそうだったと思うんですが、後になって評価されるというのは、多分、東海道新幹線を初めとする新幹線もその典型的な例だと思うんですけれども。最初は弾丸鉄道構想で始まったこの東海道新幹線というのは、当時の十河信二総裁、七十一歳で第四代国鉄総裁になられた方のリーダーシップと島技師長の構想力によって現実に日の目を見たんだと思うんですね。
 それで、昭和三十四年に着工し出した。三十九年の東京オリンピックを目指して始まったわけでございますから、今の整備新幹線の進捗状況から見ると、五年でつくり上げたというのは、今にしてみれば奇跡的な、すごい一大プロジェクトに向かって国家が力を注いだ結果であるというような感じもするわけでございますし、当時の国鉄が公社制度であった、財投を投入して行うことができるというような、非常に組織的な柔軟性もあったんじゃないかという評価もあるわけでございますが、いずれにしましても、昭和三十四年といいますと、私は三十六年生まれなんですが、私の両親も私を世に出すためには多分昭和三十四年ぐらいから一生懸命準備したんだと思うんですけれども、だから、そういう意味じゃ東海道新幹線は同じ世代なんですね。
 これであと十何年もすると私も五十を超えるのかと、これを見ながら思っていたんですけれども、やはりどんないいものでも年月とともに、女性のお化粧に例えるわけじゃないですけれども、多分年齢とともに、大臣はすっぴんで十分通用されますけれども、世の皆さん方は年齢とともにいろいろ補修をされて、毎朝御努力されているんじゃないかと思うんですが。
 今評価を受けている東海道新幹線を初めとする新幹線。国鉄改革のときも、最終的に三十七兆円の債務を背負って、ドル箱である東海道新幹線に五兆円の荷重をさせる、そして、さらには新幹線内で調整する。当初は、リース料という形。簿価とは随分違う評価の仕方をして、調整をすることによって、分割・民営化、さらには、先般行われたいわゆる完全民営化も実施できた。
 ただ、一方で、二十八兆円もの国民負担を強いられたというこの環境下において、先ほど一川議員の方からも御質問があったように、国民の側から見れば、やはりちょっと民営化の方向とどうなのとか。あるいは、これを例えばお店に例えた場合、しにせの、非常に一等地の、非常に売れるまんじゅう屋さん。しかし、そのまんじゅう屋さんはすごく老朽化していて、このままだと風雨にさらされて、まんじゅうもまともに売れない。だから固定資産税ちょっと十年十五年待ってね、その間に補修するからねといって一般国民は許されるかどうかといったときに、やはりそれなりの説明責任や国民感情を害さない対応を、これからJR各社にも努力してもらわなきゃいけませんし、十河信二総裁のいわゆる経営者としてのリーダーシップをいま一度思い起こしてやっていただくことが必要になってくるんではないかと思うんですが、監督官庁として、説明責任や今私が申し上げたお話についてどう御所見をお持ちか、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
扇国務大臣 伴野議員からるる御説明がございましたけれども、昭和三十六年生まれでいらっしゃいますから、まあ大体新幹線とともに育っていらしたと思います。まだ三十六歳では傷んだところはおありにならないと思います。けれども、やはり二十五歳過ぎれば大体人間の機能というのは低下すると思っても間違いないと医学専門の方はおっしゃいます、私にはわかりませんけれども、私は余り感じていませんけれども。
 ですから、東海道新幹線も、今おっしゃったように半世紀たとうとしております。やはり二十五年で人間も老化に入るとおっしゃるんですから、本来であればもっと早くこの計画で引当金等々の準備をしているべきだったというのが、私は国としての責任であろうと思います。
 今おっしゃったように、多くの国費を使って東海道新幹線はできました。このおかげで我々はどれほど日本の経済の発展、あるいは、最初は世界一のスピードでございました。私は、イギリスへ行きましたときに、イギリスでイギリスの国鉄総裁にすごく怒られました。イギリスより速いものをつくるとは何事だ、負けた国がと。ここまで私はイギリスの国鉄総裁に怒られましたけれども、それが日本の経済の向上あるいは国民の意識、人を運ぶだけではなくて、日本の国を引っ張っていく大きな役割を私は新幹線は果たしてくれたと思っております。
 けれども、今申しましたように、そろそろ半世紀たって大規模改修が必要になるという時期を迎えるのは、これはもう当然の理でございまして、何とか私たちはそれにこたえなければならない。また、国土交通省としては国民の安全、安心を損なっては皆さん方に申しわけないという責任もございます。
 そういう意味で、なるべく将来の料金の値上げを抑えて、いつまでも国民に愛される。
 また、民営化したことによって、皆さんがおっしゃいます、変わったね、国鉄からJRになって、おはようございます、ありがとうございます、電車の中でも気持ちがいいですよとみんなおっしゃいます。それくらい変わった民営化をしたわけですけれども、実際には、これだけの大改修時期を迎えてなかなか難しいというのはだれが考えていただいても当然のことでございますので。
 そこで、所有営業主体というものの指定、そして、引当金積立計画の承認の審査等に当たって、国としては厳正に行いながらこれを見ていこうということでございますので、今回の法案になったというのが趣旨でございますので、どうぞその点は御理解いただいて、お互いにオーバーホールしながら元気にやっていきたい、新幹線も元気に走ってほしいと思っています。
伴野委員 私も三十五歳を超えてから人間ドックへ行かせていただいて、いろいろ手入れをしているつもりなんですが、やはりいろいろなところがそろそろ傷んできているわけなんでございます。
 先ほど、大体、建設費の試算のお話も出て、一兆円ぐらいかなと。その半分ぐらいを今回特別措置をしていただくというお話なんでございますが、これも、人間に例えますと、十五年後の体がどうなっているか、今はこういうふうだからといって、十五年後にどうなっているかという前提で、その人が十五年の間にどんな治療を受けて、どんな体になっていて、最終的に入院費が幾らで治療費が幾らだというのを正確に出せと言われても、これはどんな名医でもなかなか、生活習慣もいろいろありますし、十五年間どんな生活をするか、これは鉄道でいえばどんな使い方をするかということにもなってくるんですが。
 ですから、それは少なければ少ないほどJRにとってもいいわけですし、国民の皆さん方の理解も得やすいわけですが、場合によってはそうじゃない、体でいったらちょっと重要な部分にというようなことがあるかもしれません。そういう場合は、ひょっとしたらもうちょっとというようなこともあろうかと思いますので、体の方で例えましたけれども、この辺は少し柔軟に見ていただいてもいいのかなという感じがするんですが、一方で、やはり国民感情的にはきちっと説明してねというのがあろうかと思いますので、ぜひそのあたりをJRとの信頼関係の中できちっと御指導いただければと、そんなふうに思っております。
 それに付随いたしまして、大規模災害時といいますか、地震になったときと今回の法案の兼ね合いはどうなのと。例えばこの鉄げたは十五年後に補修するからプールしていたよ、設計もこんな程度にしていましたよと言っていたときに、あってはならないんですけれども、どんと来てしまった。その場合は、お金の考え方というのはどうなるのかなというのは、ちょっと素朴に思うんですが、局長、よろしかったら御説明いただけますか。
石川政府参考人 今回の大規模改修、これは要するに、時間がたったこと、あるいは車両の走行によって劣化したというふうな鉄道施設について、施設の取りかえ等の工事を行うというものでございます。したがいまして、地震等の災害対策として積立金、引当金というものを使用するものではございません。
伴野委員 はい、よくわかりました。
 いずれにしましても、どちらも非常に重要な新幹線のお話でございますので、この整理だけはきちっとしておいていただいて、そごのないようにお願いしたいと思います。
 では、次に、この大規模改修にまつわる周辺技術のお話に移らせていただきたい。
 中学校の理科の実験みたいで申しわけないんですけれども、ここにちょっとクリップを持ってまいりました、事務でよく使うクリップ。これをくちゃくちゃ、こうやるわけですよ、繰り返しの運動をさせるわけです。これを、引っ張ってぷちんと切ろうとすると、これは大臣がどんなに力をお持ちでもほぼ不可能、私も無理です。しかし、これを繰り返ししていきますと、あるときぷちんと切れてしまう。きょうは、そこまでやっていると質問時間がなくなっちゃいますから、やりませんけれども。これをいわゆる疲労というんですね。理科の実験みたいな形で、もう多分御存じだから、NHKの少年理科室みたいで申しわけないんですけれども、そういうものです。
 これは一般的に、いわゆる鋼、先ほどはがねとおっしゃっていました。今までは特に機械、金属、そういうもので非常に重要視されていた。一時期航空でも金属疲労というのが話題になったことがございますけれども、そんなときに年配の方をつかまえて、金属疲労が出ているんじゃないかとかよく言ったものでございますけれども、これが最近では、コンクリートの場合にもシビアに考えていかなきゃいけないというような見地もございます。
 そういう中で、いわゆるメンテの技術というんですか、今まであるものを生かしてきちっと使っていく技術というのは、案外新しいものをつくる技術よりも非常に重要で、かつ地味で、場合によっては研究者も余りやりたがらない。余りモチベーションが高くないんですね、この分野というのは。しかし、これから非常にますます重要になってくる。
 きょうはあえて触れませんが、新幹線のみならず、東海道新幹線ができた時期に同じように建造されたものはたくさんございます。第二東名もそうですし、若干時期が前後しますが、都市内高速道路なんかでもそれに付随するものもございます。さらにはほかの土木構造物なんかもあると思うんですが、そういった中で、先ほど鋼のお話が出ましたけれども、溶接の技術。これは、よく鉄げたの中へ潜って溶接工が工事をするんですけれども、ニュートンの法則と逆行する形で溶接づけをするんですよ。これは非常に技術の要るものでございまして、例えば溶接の固まりの中に気泡でも入ろうものなら、直したつもりが悪くしているというようなことになるわけなんですね。こういう職人的なものがないと、こういうメンテとか重要な補修というのはできなくなっているんですね。
 先ほども申し上げましたように、これは、例えば鉄道が国鉄であったりとか、それから、今整理されようとしております高速道路、国がきちっと施工管理していた時代というのは、ある程度経済原則にのっとらないでもそういう分野の技術というのは確保できたんだと思うんですね。民営化の方向性の中で、経済原則にそぐわない、市場原理にそぐわないそういった非常に重要な、職人芸的な技術というのが忘れ去られている可能性もある。
 そんなような面で、そこに何らかのインセンティブが働くように、さらには、そういった地味な分野でもきちっと将来的に、昔はよく鉄道なんかでも、頑張って研究していくと最後は大学教授の道があるとか、そんなようなルートがあったんですが、最近はなかなかそれが非常に、鉄道の分野だけじゃないと思いますが、いろいろあると思いますが、そういうモチベーションが高くなっていく方策といいますか、システムというんですか、技術士の中にもぜひ入れていただくとか。
 きょうの新聞にも載っていましたですか、科学技術庁さんを中心として、ある技術に特化してやっていくことに対しての減免措置とか、そういう工夫もされているようでございますが、構造物のメンテナンスの分野でもそういうインセンティブが働くような仕組みというものを、これを機会にぜひ工夫していただけないかなと。新幹線でできれば必ずほかへ波及するかと思いますので、そのあたりのお考えをいただければ、よろしくお願いいたします。
扇国務大臣 メンテナンスに関するお話でございましたので、伴野議員が、伴野議員御自身の経歴から申し上げても、国鉄に入り、JR東海に就職したという御経歴の中で、私は、愛情が今でも消えていらっしゃらないと思っています。
 そういう意味で、今おっしゃったメンテナンスの方法、また、メンテナンスをするために、年々技術が向上している、その見えない技術の開発というものを大事にしてくださいというお話ですけれども、それは国鉄のみならず日本のあらゆるところで、あるいは国土交通省としても、建築も、すべてそれでございますし、耐震性あるいは環境に優しい機材を使う、あらゆる面で、メンテナンスと技術の向上というものが両々相まって、経費の削減とより持続性を大事にするという両面で、私は、新たな開発というものは、日々というよりも一刻一刻進歩し、なおかつそれを使用することによって、今まで二十世紀につくったものをいかに二十一世紀にメンテナンスを大事にして長もちさせるか、これが私たちの今大事なところであろうと思います。
 そういう意味で、今議員が指摘になりましたメンテナンスの今後の計画、またメンテナンスの技術の向上に、どういうふうに我々がお手伝いができるか。そして、社会資本のストックの合理的なあるいは効率的な、維持費の手当て、手法、そういうものとか、補修技術の開発、そういう新しいものを使う人材の育成、これらをすべて総合して日本の国の財産を維持し、そしてメンテナンスの技術向上を図っていく、当然のことだろうと思いますので、ぜひ、御専門ですから、お知恵がありましたら御進言いただければなおありがたいと思っています。
伴野委員 その技術の大切さをよく御理解いただきまして、本当にありがとうございます。私もあらゆる機会を使わせていただきまして、そのあたりの推進に努めさせていただきたいと思っておりますので、ぜひとも大臣の後ろ盾を賜れればと、そんなふうに思っております。
 では、続きまして。当然大規模改修をしていくわけなんですけれども、新幹線の工事というのは、多分大臣もよく御理解いただいているんじゃないかと思いますけれども、一般の営業線、都内を走っています普通の通勤電車とはちょっと違いまして、営業時間中に何らかのさくをしてやれる代物ではないんですね。大抵は夜間で、しかも夜間間合いというものを使ってやっていくわけなんですけれども、しかし、長大橋梁のときに、その間合いだけでやれるのかどうか。
 こういったときに、先ほど、本当に国民の足として重要で、国民も、おくれない乗り物といいますか、必ず定時に着くという信頼性のもとに乗っていただいているところもあるわけでございますので、そういった大規模改修に伴って、営業列車に、輸送に極力影響を及ぼさないようにやるというのは当然のことだと思うんですが、そのあたりの見込みとか、どうなんでしょうか。
石川政府参考人 御指摘のように、新幹線の大規模改修工事につきましては、できる限り新幹線の運転に影響を与えないような形で実施することが望ましいと私どもも考えてございます。
 具体的な工事方法、これにつきましては、今後JR東海が提出いたします実施計画の中で明らかになっていくと思います。その審査に当たっては、私どもとしても、新幹線の運転への影響についても十分お話を伺い、精査をさせていただいて、安定的な輸送が確保されるようにしていきたいと考えております。
伴野委員 今の局長のお話の中で、実施計画を見て判断をしていただくということでございますが、監督官庁としてその計画が本当に的確なものなのかどうかということを御判断いただくには、やはりペーパーだけではなかなか難しいと思うんですね。先ほど技術のお話、これは年々難しくなっております。とりわけ、現場の技術力というのを高めていくのと同時に、それを監督する側の技術力といいますか、見る側、だから、現場が持っているものすべて吸収して知らなきゃいけないということはないと思うんですよ。だから、監督するための最低限のチェックポイントを、やはりこれからやっていただく意味で、今もやっていらっしゃるようでございますが、どんどん国土交通省の担当職員の方にも現場へ出ていっていただいて。
 東海道新幹線ですと毎日のように二千五百名が鉄道を再生するために入っているんですよね。よく、そんなことやっているのと驚かれる方がいるんですが、これは、壊れていると言うと語弊があるんですが、やはり列車が、今ですとのぞみが一時間に二本、ひかりも六本か七本、こだまが三本、一時間に十一本。何と、当時一―一ダイヤと言われたひかり、こだまのダイヤが、今はもう、例えば一―七―三、十一本ダイヤ。運んでいる人数も、当初六万人程度だったのが三十六万人前後になっているわけです。これはすべての面で、もう計画当初とは随分変わってきている。
 そんなようなこともありまして、現場をぜひ把握していただいて、具体的にどんな工事になっているのか、日々軌道というのはどういうふうになっているんだというようなことも把握していただく。もう一ミリの単位で整備しているんですよ。二百七十キロでどんと走ってもらうためには、やはりそれだけの精度が要るわけでございまして、そういった中で、夜間どういう工事を行っているのか、実際に見ていただいて。よくお上の方がいらっしゃると、大名行列じゃないですが、非常に形にこだわってというようなことが言われがちなんですが、そうじゃない、本当に継続的に現場に入っていただくことも含めまして、もっと言うならば、事故調査委員会の方も、事故が起こってから入るというんではなくて、やはり、日ごろから見ていて、何か事故が起こったらそこに入るというようなことの方が信頼性が高まると思いますので、そういった日ごろからの現場との交流というものをさらに深めていっていただければと思うんですが、御所見はいかがでしょうか。
扇国務大臣 行政に携わります職員とか、あるいは特に技術関係の職員に関しましては、現場に赴いて、今おっしゃるように現場の実態をよく見て、そして業務につくというのは当然のことでございますし、これは大変基本的なことだと思っておりますので、大事な御指摘だと思います。
 国土交通省の職員というのは、鉄道の現場に、派遣実績として過去五年間について見ますと、これはちょっと報告させていただきたいと思いますけれども、鉄道事業法等に基づく立入検査として年平均四十回、そして工事の完成検査として年平均二百二十回、鉄道の現場に赴いております。そのほか、職員の研修で鉄道の現場を見る機会を設ける、そういうことで、極力職員を派遣するように努めているのが現状でございます。
 今回のこの法改正の運用につきましても、所有営業主体の指定でございますとか、また引当金の積立計画の審査を行うに当たって職員を現場に派遣いたしまして、そして土木構造物の実態を調査させております。また、させたいと思っておりますけれども。本当に検査の一部の見落としが大事故につながりかねないという大事なことでございますので、仰せのように、なるべく現場に行って、見る目を、確かな目を教育するということに努めたいと思っています。
伴野委員 大臣も同じ御認識でいらっしゃるということで、安心したわけでございますが、いずれにしましても、うのみにするということは信頼ではなくて、本当の信頼関係というのはいい緊張感の中に生まれると思うんですね。現場と、それから監督官庁の間のコミュニケーションも日ごろからぜひとっていただきまして、今もとっているようでございますのでさらにとっていただきまして、お互いの現状認識を一致させた上で、最終的に国民にとってどういった乗り物が一番すばらしいかということをお考えいただければいいのではないかな、そんなふうに思うわけでございます。
 いただいている時間がまだございますので、少し周辺の話題で恐縮なんですけれども、時間の許す限り幾つか質問させていただきたいと思います。
 これは、先ほどの中でも触れられたかもしれませんが、当然ほかの新幹線にも波及する、適用可能なものであるということでございますけれども、その見通しなんかも含めて。これは、例えば山陽新幹線のコールドジョイントのお話とか、それから上越、東北。施工年月が遅くなるほど土木技術なり建築技術が上がった上での構造物であるから安心だと一般的には思われがちなんですが、案外、最新のものほど欠陥があったりというようなことがほかの業界でも間々あります。
 ですから、落とし穴みたいなことにならないためにも、大丈夫だからいいのだというようなよくわからないことではなくて、今のうちから、適用をされるとすればいつぐらいかというような試算も含めて、現状認識と将来計画というのを、いつの時期に公表していただくかは別としまして、御準備いただくことがいいのではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。
石川政府参考人 今回の法の改正は、新幹線の老朽化対策ということでございますので、当面は東海道新幹線ではございますが、東海道新幹線のみではなくて、将来的には山陽だとか東北だとか上越の各新幹線ということも対象になり得るわけでございます。
 ただ、これらの新幹線、東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線、上越新幹線、先生今御指摘のように、実はそれぞれの構造物の形態あるいはつくり方、つくった期間、さまざまな状況の違いがございます。そういうふうな状況の違いも考えながら、私どもとしてはしっかりとフォローをしていきたいというふうに考えてございます。
伴野委員 ぜひその面からもチェックをしていただければと思います。
 続いて、整備新幹線の話題にちょっと触れさせていただきたいのです。
 先ほどもちょっと質問の中にあったようでございますけれども、客観的に見てというと語弊があるかもしれませんが、それは地元事情、それから大臣初め国土交通省の御事情等々、いろいろな経緯も含めて、難しさはあるんですが、地図に落としてみると、もっと集中的に早くできないものかなと個人的には思っちゃうんですね。早く供用開始した方がいろいろな面でリスク回避できるんじゃないかなと。
 ですから、先ほども話題にあったかもしれませんが、場合によっては、ある区間の優先順位を下げることがあってもあるところに集中して投資をする、あるところは優先順位が下がることがある、だけれどもおしりは絶対下らないよというような、何か別の担保をきちっとしてあげて、さわっているところがすべてなかなか供用開始ができないというよりも、ここの一本は早く供用開始するよというようなことをやられた方がいいのじゃないかなと個人的な見解を持っていますが、いかがですか。
石川政府参考人 整備新幹線につきまして今御質問がございましたけれども、まず、私、申し上げたいのは、整備新幹線、今工事しているところは三新幹線でございます。東北新幹線、北陸新幹線、九州新幹線、三つだけでございます。そういう中で、集中的にといいますか、重点的にといいますか、そういう点でいえば、私どもは既に北陸新幹線の高崎―長野間、こういうものを集中的に投資を行いました。それによって平成九年の十月に開業しているところでございます。
 その後、平成十二年の政府・与党申し合わせというものにおきましても、開業時期が近づいている区間の早期完成あるいは工期短縮を図るというふうなことをうたっておられるわけでございまして、そういう点からも、本年十二月一日には東北新幹線の盛岡から八戸まで延長がされます。それから、九州新幹線の新八代―西鹿児島間について、平成十五年末の完成を目指して、現在、重点的な投資を行っているというところでございます。
 新幹線、なかなか厳しい面もございますけれども、早期完成あるいは工期短縮の観点から、投資の重点化、効率化ということについては精いっぱいやっているところだと考えておるところでございます。
伴野委員 経営判断というのも入ってくるんでしょうが、集中投資ということもぜひ選択肢の一つにこれからもお考えいただいて、バランスよくやっていただければと、そんなふうに思います。
 今ちょっと整備新幹線のことに触れさせていただいて、まだ基本計画路線のものに触れるのはちょっと早いのかもしれませんけれども、いろいろなところで話題になっている事柄として、中央新幹線をどういうモードでやるか。今の在来型の高速型でやるのか、あるいはリニアという方式をつくるのか。
 先ほど、昭和三十年ぐらいに東海道新幹線をつくったときに、世界の三大何とかと言われたとか、あるいはこんなものつくってどうするんだというようなことを言われた、批判があったと。その中で十河総裁と島技師長のコンビでつくり上げたものが今の鉄道を生かしている最大の目玉になっているということもあるわけでございまして、リニアの技術というのは、ひょっとしたら二十一世紀の日本が世界に冠たる技術立国として誇る材料になる、シーズになるものがたくさんある、だから、鉄道技術だけに生かされるものでなく、超電導技術におけるいわゆる極低温の材料というようなことからすると、場合によっては、ブレークスルーすれば、世間を席巻できるようなものになる可能性がある。
 ですから、よくリニア中央新幹線を第二東海道新幹線だというような言い方をする人もいるんですが、そういう考え方とはちょっと切り離して、あえてこの時期に、日本がまた技術立国として爆発していくための起爆剤としてこれを位置づけ、この景気の悪い、しかも国家の財政が逼迫しているときに何を言っているんだ、おまえも三大ばかの次ぐらいじゃないかと言われる可能性があるかもしれませんが、しかし、国を挙げて、ひとつ思い込んでやってみるというのも非常に重要かと思いますので、今の見通し、山梨で鋭意努力していただいているようでございますが、どんな見通しか、お話しいただければと思います。
石川政府参考人 リニアモーターカーの技術開発でございますけれども、山梨でるる実験を進めてきているところでございます。
 それで、平成十二年の段階でそれまでの三年間の走行実験についての評価というものがなされてございまして、長期耐久性、経済性の一部に引き続き検討する課題はあるものの、超高速大量輸送システムとして実用化に向けた技術上のめどは立ったものと考えられるという評価をいただいておりますが、まさにこれらの長期耐久性、特にコスト低減など、こういうふうな課題があろうと思います。コスト低減ということについての技術開発ということが大事なことでございまして、こういうことを克服するために、現在引き続き山梨実験線において実験を進めているところでございます。
伴野委員 ぜひ先ほど申し上げた見地からも鋭意御検討をいただきまして、鉄道局長が二十一世紀の十河総裁と言われるような感じで頑張っていただければと、そんなふうに思います。ちょっと言い過ぎましたですかね。失礼しました。
 続きまして、きょうからワールドカップが開催されているわけでございまして、韓国は、何と韓国の試合のときは休みになるそうでございますね。休日は国土交通省さんの管轄だったですかね、そんなことも聞いたんですが。日本なんかも、思い切って、今度の六月四日の初戦ぐらいは休みにしてやってもいいような感じがしているわけですけれども。委員会が長引いたりとか、委員長よろしくお願いします、本会議がだらだら夜中までかかっちゃったりとかしないようにしていただいて、私も六時ぐらいからテレビの前でしっかり応援したいな、そんなふうに思うわけでございます。
 今回、フーリガン対策とか、混雑をさせないためのいろいろな努力がなされていると思うんですが、新幹線も夜中の運行といいますか、今までとは違う運行も考えているようでございますけれども、そのあたりの対策等々、順調に進んでいると思いますが、いかがですか。
石川政府参考人 ワールドカップ輸送でございます。
 世界的なイベントだということで、国を挙げて万全を期すべきものだということで、国土交通省全体といたしましても、ワールドカップ開催に当たりまして、輸送対策、移動の利便性向上、観光振興、安全対策などなどにつきまして、本省、地方局を合わせて全力を挙げて、関係省庁、関係自治体と連携してやっているところでございますが、鉄道関係につきましては、まず具体的には、試合終了が深夜に及ぶ場所がございます。新潟と静岡でございますが、これにつきましては深夜に新幹線を運行することにいたしました。これにつきましては、関係のJRあるいは関係の地方自治体に大変な御尽力をいただいているところでございます。
 そのほか、新幹線、在来線につきましても、山手線を初め、各開催日ごとに各路線で必要な臨時列車、運転区間延長、終電延長など延べ千五百本以上を行うこととしてございます。
 それから、外国人旅行者を初めとする観客の移動費用の低減化ということを図るために、五日間全国JR乗り放題のフットボールパスなどの各種割引を設定してございます。
 それから、外国人旅行者に対する案内の充実というようなことにつきましても、会場の最寄り駅あるいは主要な結節駅において行っております。
 これらに加えまして、特に警察当局とも連携をとりつつ、駅構内における監視カメラの設置、あるいは職員、警備員の大幅な増員による関係施設の巡回警備の強化、あるいは凶器となりそうなごみ箱あるいは備品等の撤去など、厳重な体制で警備を実施するというふうなことで、さらには、深夜の新幹線で酒を販売することを中止するというふうな、きめ細かい対策を講じているところでございます。
伴野委員 具体的な箇所を申し上げるとまたまずいことになろうかと思いますので、これを機会に、新幹線において例えばテロが起こった、あるいはテロを仕掛けられたらどうするんだというような観点で健全な危機管理をぜひしていただければな、そんなふうに思っております。
 質疑時間が次のバッターに交代しなければいけなくなっておりますので、最後に、これは今の大臣の思いだけで結構でございます。当初、局長にお答えいただこうかなと思っていたんですが。
 今回のこともあります。やはり新幹線、よりよいサービスをしていくことが国民にこたえることであるし、国民感情を害さないことにもなっていくと思います。私も週五日ほど新幹線に乗っているわけでございまして、多分先生方もたくさんいらっしゃって、速くなることが政治家にとって本当にいいかどうか。おまえ二時間で帰ってこられるだろうと言われちゃうとつらいところがあるんですけれども。
 ただ、これからも新幹線のサービスというのは、当時の島技師長が文化勲章を受けたように、一つの文化になってくるんだと思うんですね。よりよいサービスをこれからも求めていただく意味で、これからもJRを初め、あるいは監督官庁の方も御指導いただかなければならないと思うんですが、そのあたりの大臣のお考えを一言、もしいただければ。
扇国務大臣 先ほども申し上げましたように、改革をすればいかに物が変わるかという一番の典型が、国鉄からJRへの変わり方であろうと。改革をしたらこれだけ変わるということが、目に見えて一番大きかったのはサービスでございます。おはようございますも、ありがとうございますも言わなかったものが、全員が快く、しかも笑顔で物を言い、そしてお礼を言ってくれる。そして改札のときも、今までだったら乗せてやるというような態度が一変したと。こういうことを私は思いますときに、いかにサービスというものが、人間の快適さ、そしてスピードがあって早く着くという、お金がもっともっと、倍にも三倍にもその運賃が効果を上げて、迅速さと快感度と、そしてより次の仕事へのエネルギーになっていくと。
 そういうことで、私はサービスというものがいかに大事であるかということのいい例であろうと思っておりますので、我々はあらゆる面で改革をし、いい改革でなければ、改悪であってはならないということを意識しながら、サービスの向上に努めるのは当然でございますけれども、新幹線のみならず、国土交通省は陸海空のサービスを提供しておりますので、安全を図りながら、このサービスのあり方の基本を忘れないようにしたいと思っています。
伴野委員 どうもありがとうございました。
 次の阿久津議員に交代させていただきたいと思います。ありがとうございました。
久保委員長 阿久津幸彦君。
阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。
 全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案につきまして質問させていただきます。
 本題に入る前に、参議院先議で、先日、道路運送車両法改正案が衆議院を通過したわけなんですが、その直後の五月二十七日に、東京陸運支局等の職員が関与したとされる不正改造車を車検に合格させていた問題について、現時点での調査概要と今後の対策の見通しについて扇大臣にお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
扇国務大臣 阿久津議員からこのことに御質問をいただくこと自体、私は残念なことだと思っています。
 あってはならないことがなぜ通るのか、なぜ人によってこんなことができるのか、私は大変不思議に思っています。そして、多くの皆さんに、まじめに車検を受けた皆さん方、まじめにお金を払った人たちに申しわけないという気持ちでいっぱいでございます。こんなことがあってはならないんです。
 ただ、今現状を報告しろという仰せでございますので、事務的で申しわけないんですけれども、あえて御報告でございますから報告をさせていただきます。
 これは、東京及び神奈川陸運支局等において、一部の特定の申請者が、検査職員に対しまして日常的に罵声を浴びせることなどしてこれを威圧し、なおかつ、着色フィルムを貼付した、基準に不適合な車両、あるいは検査に必要な排出ガスの試験成績書の提出がない車両を合格させたと。本当に情けないことでございます。また、着色フィルムの関係につきましては、十名の検査職員が関与し、そして約五十台の車両が、排出ガス関係については、四十九名の検査職員が関与して、二百一台の車両が不正に合格している。
 検査員の資格なんかないですよね。本当に私は、情けないと思いました。私は、この検査制度に対する国民の信頼を著しく失墜したということに関しましては、先ほど冒頭に申しましたように、正直者がばかを見るというような、こんなことがあってはならないと。
 そして、私は、なぜこんなことがあるのかと聞きましたら、着色フィルムをつけているものが何で通るんですかと言ったら、どういう手口なのと言ったら、みんな、窓を下げているんですって。それで、検査場へ来て、窓を上げなさいと言ったら、故障で上がりませんと言うんだそうです。それで通るんですかというんですね。私は、それを聞いて、情けないと思いました。そして、罵声を浴びせられるといって、あるいは脅迫まがいのことを言うんだったら、車の番号わかっているんですから、なぜ警察に通知しないんですかと、それも申しました。
 私は、あらゆることを、これはいつから、だれが、何年間やってきたのということも調べろということも申しました。
 現段階で、今申しましたような数字が出ておりますけれども、今後、警察と連携を密にして。なおかつ、物がそこにあるんですから、番号がわかっているんですから、完全に警察と連携して。それはそのときに、私がもし検査員であれば、それは目の前でナイフを出したり、何か完全に恐喝であれば、それはもう当然ですけれども、言葉だけでも、言葉の暴力というのはあるんですから。
 私は、今後こういうことを何としても回避できるように、また、一人一人の職員がこの職務に忠実にしていくように、検査員というものの重みというものを各自が自覚してほしいと思いまして、三つ挙げました。それは、検査をしますときに、一人ではなく複数で対応するチーム制の導入ですとか、管理職によります検査コースの巡回、これをするのが一つ。二つ目には、トラブルの発生時における警察との一層の連携の強化、当然ですけれども、改めて指示をいたしました。三つ目には、緊急事態を想定した訓練の実施でありますとか、内部監査の強化、これらをまず早急にするようにということを申し上げました。
 以上が、経過と今の現状でございます。
阿久津委員 一部の報道によると、業者による職員への暴行なども行われていたということで、仕事をできないようにしてやるといったような脅迫まがいの、これは脅迫ですね、そういうようなことも日常的に行われていたというんですね。こうなったら、逆に国土交通省としても、職員について守るという体制もとらなくちゃならないというふうに思うんです。
 ちょっと、これは自動車交通局長の方に伺いたいんですけれども、業者の威圧で要求を断れなかった、見返りは受け取っていないと言うんですけれども、これは現状どうなっているんですか、確認できているんでしょうか。
洞政府参考人 お答え申し上げます。
 この種の事案というのは全国的にもしばしば発生しておりまして、非常に悪質なものについては警察当局に通報して、摘発等をいろいろやっております。
 実は、この件数をこの数年の傾向で見ていきますと、だんだんふえているという状況にございます。現場の職員は、本当にいろいろな、特定の申請人がいらっしゃるわけですけれども、一人一人の職員の話を聞いてみますと、なかなか、もう本当に恐怖感を覚えるほどの、しかも巧妙な手口でそういう不正を強要していくというような事態になっていまして、おっしゃるとおり、一人一人の職員は、自分たちが車検というまさしく公権力の行使という非常に責任の重い仕事をしているんだという自覚を持っているわけですけれども、ついつい、そういう者に、一たん見逃してしまうと、その弱みにつけ込まれて、その辺がずるずるといくというようなこともあると聞いております。
 いずれにいたしましても、見返りを求めたりとか、そういう関係でこういう事態が発生しているということではございませんし、また、先ほど大臣が答弁申し上げましたとおり、一人一人のそういう自覚というものを改めて覚せいさせると同時に、こういう事案に対しては、管理職も含めた複数の人間で共同して対処する、組織を挙げてこれに対抗する、そういう姿勢で臨まなければ解決できないことだ、そういう方針で臨んでいるところでございます。
阿久津委員 外務省の例もありますので、見返りを受け取っていないということを余り簡単に言うべきではないと思うんですね、私は。やはり、じっくり調査していただいて、内部調査ですけれども、厳しいものをやって、国土交通省はやはり違うんだというところをしっかり見せていただきたい。
 それから、今、聞くところによると、検査場の中で検査を、ベルトコンベアー式というんですか、車を移動させながら検査するそうなんですけれども、車検のときに。車を移動させなければならないので、検査をしてもらう側の業者もそこに入っているというんですね。つまり、業者からすると、あ、あいつが検査官で、あ、これをやっているんだというふうにわかるわけなんです。
 これはもちろん、日本だけじゃなくて、どこの国でも、普通の国の車検はもっと簡単にやっちゃいますから、業者と検査官が顔を合わせることはあるんでしょうけれども、このような事件が続くのであれば、ちょっと、今後の検討なんですけれども、もう業者をそこに入れない、それは車をちょこっと移動させるだけの話ですから、検査官だけでやる体制もつくっていただきたい、それを検討していただきたいと思います。それで、これは、人が足りないというんだったら、やはりふやせばいいと思うんですね、私は。そこのところを一言、大臣の方、ございましたらお願いいたします。
扇国務大臣 私どもは、国会の中でこのようにやりとりをしておりまして、現場が恐怖心で、なるべくあそこへ行きたくない、定職率が悪い、そこまで恐怖心を持つ職員が大勢いるということも、私も調べてわかりました。あそこへは行きたくないと。
 私、最初は何か原因があったと思うんですよ、あそこはやらなかったというような。ですからみんなそこへ来るというのではないかなと思うんですけれども、これは全国一律にあるわけじゃなくて、やはり、ある程度数が多いところがあるわけですね。ですから、いつかの時点で最初に脅迫まがいをされて、うん、まあしようがないやと、ドア上げろ、上がりませんといって、検査が済んでいったら上げているという、そういうのがあったんだろうと思います。
 そして、私も聞きましたら、どう言われるんだと言ったら、あそこでは通してくれたのに、おまえは何だ、こう言われるそうなんで、そういう意味では、国会でこうして御論議いただいて、職員が現場で恐怖におののいて、転職したいというくらい、みんなが恐怖感を持っているのであれば、我々としては、その対策というものは十分に対応していかなければならないし、人数をふやせばいいというものではなくて、その恐怖心をまず取り除く手当てを我々は国土交通省として考えてやらなければ、私は、現場も対応できないだろうと思いますので、省を挙げてその対応策をとり、また、そういうときには警察と完全に連携するという、この制度を確立していきたいと思っています。
阿久津委員 私、これは結構根が深い問題だと思いますし、東京、神奈川だけに限ったことではない可能性もある。ぜひ、厳しい対応で、この根絶に向けて御努力いただきたいというふうに思っております。
 大規模改修について伺いたいと思います。
 今回の大規模改修工事の必要性は、いつからわかっていたのでしょうか。少なくとも、JR三社、東日本、東海、西日本の完全民営化を審議する段階であらかじめ公表すべきではなかったかというふうに私は思うんですが、完全民営化直後にこのような措置を講ずるということは、民営化の趣旨に反するのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
石川政府参考人 大規模改修工事の必要性ということにつきましては、従来から、JR東海が、外部の専門家も交えて、東海道新幹線について、鉄道施設の状況の把握、あるいは維持管理のあり方、構造物を中心とした土木構造物全般の老朽化対策等について、専門的な調査検討を重ねてきたわけでございます。
 一方、JR各社の完全民営化というものにつきましては、累次の閣議決定等がございまして、御承知のとおり、昨年、完全民営化のための法案の措置を講じていただいたわけでございます。
 この完全民営化という問題と大規模改修工事の問題というのは、直接、タイミング的にリンクするものではございません。しかしながら、昨年、ちょうど完全民営化法を御審議していただいたころに、JR東海から、大規模改修に備えて何らかの支援措置を講じてほしい旨の要望があったわけでございまして、国土交通省といたしましても、新幹線の公共性というものにかんがみて、大規模改修について何ができるかということについて別途検討していたということでございます。
 そういう意味で、今回の引当金というのは、バリアフリー化のための補助制度等のように、民間企業に対して公共政策上の見地から行われる他の支援措置と同様でございまして、完全民営化というものの趣旨と反するものではないと考えております。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
阿久津委員 人命の安全がかかわっている問題なので、なかなか反対しにくい法案だというふうに私は思うんですが、ならば安全性の方を本当に心がけていただきたいというふうに思います。
 そこで、ちょっと新幹線の安全性の問題で具体的な話をしたいと思うんですが、新幹線のボルト破損が相次いだというんですね。これは、ボルト破損というので私は小さなものかと思っていたら、八百六十ミリに及ぶブレーキディスクを支える百七十二ミリぐらいの、二十センチ近くのボルトが破損したり落ちたりしていた。これに対して国土交通省は、JR各社に対し、原因の究明と抜本的な対策を指示したということでありますが、事件の経緯と今後の対策について伺いたいと思います。
石川政府参考人 新幹線のブレーキディスクの取りつけのボルトの破損でございますけれども、平成七年ごろからこれまで百二十二本発生してございます。新幹線を保有するJR東海、JR西日本、JR東日本、これらの各社は、こうした破損が起きるたびごとに原因を調査して、例えば腐食対策あるいはボルトの強度向上というふうな対策を講じてきております。しかしながら、ことしに入りましても、なお五本のボルト破損が発生してございます。
 私どもとしては、JRに対して本年三月に、原因の究明あるいは抜本的対策というものをできるだけ早期に行うように指示したところでございます。これを受けまして、JRでは、これまで行ってきた腐食対策あるいはボルトの強度向上という対策に加えまして、車輪にブレーキディスクをボルトで取りつける際の組み立て精度の向上、あるいは部品の品質の管理の徹底というふうなことを実施しているところでございます。
 このボルトというのは高速で走行している新幹線のブレーキにかかわる部品でございますので、こうした対策が早期かつ適切に講じられるよう、引き続きJR各社を指導してまいりたいと考えております。
阿久津委員 情報公開がある程度きちんとされているということは評価したいと思うんですが、原因が本当のところまだきちっとわかっていないんじゃないかという指摘もございますので、ぜひこれからも、原因究明を含めて、よろしくお願いいたします。
 最後に、大臣にお伺いしたいんですが、国土交通省では、インシデントと鉄道事故の関係をどう考えているのか。同時に、インシデントの重要性をどう認識しているのか。小さい事象から大きな事故を防ぐということでの意気込みを伺わせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
扇国務大臣 インシデントが事故の芽ということでございますし、最も事故になるおそれがある事態ということで、列車が他の列車と衝突しそうになった事態のようなもの、いろいろな場合がインシデントとして想定されるわけですけれども、このためにインシデントの調査分析をする、そのことが事故の未然防止には欠くことのできないものであると、その重要性を私は認識しているところでございます。国土交通省といたしましても、このインシデントについての調査分析体制の強化、これは先ほどから私が申しましたように、航空もそうでございますし、鉄道の事故調査委員会、これも設置してございますので、そういうものが分析して、そして事故防止につながるという、インシデントが事故の芽を早く摘み取るということの原点に返って、私たちはその情報、調査委員会での結果というものを共有して、陸海空にこれを適用していくという基本は大事にしていきたいと思っております。
阿久津委員 どうもありがとうございます。これで終わらせていただきます。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。私は、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案について、まず大臣にお伺いいたします。
 この法案は、新幹線の大規模改修のために巨額な引当金を認める形で国が支援をするものですが、これはJRの完全民営化、民間会社になったのに、なおかつ公的支援をするということは、完全民営化の趣旨とは反するんじゃないでしょうか。いかがですか。
扇国務大臣 先ほどからもお話が出ておりますように、瀬古議員がおっしゃいますように、JRの各社につきましては、累次の閣議決定によりまして、できる限り早期に純民間会社とするということが求められてきたのは御存じのとおりでございます。私たちはそれにのっとって、このJR東海を含みますJR本州三社につきましては、設立以来良好な経営状況を維持しているのは御存じのとおりでございますし、経営基盤の確立が図られるに至ったことから、昨年、完全民営化ということに皆さんの御理解をいただいたところでございます。
 一方、今回の引当金の制度というのは、これはやはりこの委員会でもたびたび言われますように、環境とバリアフリーということが二十一世紀の課題であると随分言われてまいりましたけれども、今回のはこのバリアフリー化のための補助等、民間企業に対して公共政策上の見地から行われる他の支援措置と同様であるということが先ほどもお話に出ておりましたが、そのことは、新幹線の安定的な運行の確保のため、将来の運賃の値上げをしない、また、してはならないという交通政策上の見地からこれを支援していこうというのが趣旨でございますので、これは安全のためには御理解賜れるものではないかと思いまして、今回の引当金制度の創設というのはJRの完全民営化の趣旨に反するものではないということはおわかりいただけるものと思っております。
瀬古委員 既に、旧国鉄の債務は約二十四兆円を国民が負担させられているわけです。そして、今言われたように、JR東海は、国鉄分割・民営化による発足以来、ドル箱である新幹線を経営して、今、年間四百億円から千三百億円の経常利益がある、こういう経営をしているわけです。今大臣が言うように、環境やバリアフリー、これは確かに私は必要だと思いますよ。それは今でも民間の鉄道会社にもやっていると。しかし、今回の引当金を認める形で国が支援するというのは、すべての私鉄に適用するものじゃないんですね。これでいうと、明確にJR東海。将来はそれをもっと広げるというお話が先ほどありましたが、当面はJR東海。これは一般的な安全性やバリアフリーの問題と同じ性質のものだとは言えないと私は思うんですね。
 お聞きするんですけれども、本来、国鉄分割・民営化のときに、JR各社は国鉄の施設を引き受ける際に、将来この大規模修繕がどんなものかと普通は当然検討すると思うんですよ。私たちだって、家を買ったりマンションを買ったりするときに、この耐用年数はどれぐらいで、あとどれだけで改修しなきゃならぬのか、建てかえなきゃならぬのかと思って、そのためにお金を積み立てるというのは当たり前でしょう。新幹線でいえば、JR東海が莫大な経常利益を持ちながら一切こういう積み立てをしていなかったとは、一体どういうことなんでしょうか。
石川政府参考人 東海道新幹線がいずれは大規模改修が必要となるという認識はあったわけでございます。ただ、東海道新幹線はまさに我が国で初めて建設された新幹線でございます、大量高速交通機関でございます。したがいまして、具体的に、いつどのような規模の改修が必要かということについては、専門的な検討が必要だったわけでございます。そういうことで、JR東海は、外部の専門家を交えて、東海道新幹線の状況の把握等々について調査検討を重ねてきたということでございます。
 一方で、平成三年あるいは国鉄が民営・分割された時点、例えば平成三年にこの新幹線を購入した時点、JR東海は年間の営業収入の五倍に当たる五兆円の長期債務を負ったということでございまして、これにつきまして、今までさまざまな形でその債務の縮減に努めてきたというところでございます。
瀬古委員 JR東海は、民営化するときには、初めからこれに気づいていたんですか。改修がどれぐらいかかるのかという検討はいつから始めたんですか。
石川政府参考人 先ほど申し上げましたように、将来の大規模改修の必要性ということについては、昭和六十二年のJR東海の発足の時点から認識はしてございまして、ただ、具体的にどのようなものであるかということについての検討が続けられてきたというところでございます。
瀬古委員 最初に気づいていたのは六十二年当時からでしょう。それで、中間取りまとめをつくったのが一九九七年。そうすると、十年間もかけて一生懸命計算されたわけですね。それで、これだけかかると。私は、まあ何という無責任だと思いますよ。それは半年でできるか一年かかるかわかりませんよ。十年間ずっと計算し続けてきて、ようやく、要りますから頼みますなんという、こんな経営者としての無責任な話はないと私は思うんですね。
 そこで、中間まとめなんですけれども、約一兆円の工事費を見込んでいるようですが、それをはじき出した根拠は何でしょうか。専門家の検討結果だと言われていますけれども、検討はだれが行って、その報告書による計画は政府として、これはもう当然だというような形で、どういう場でこれは検討したんですか。法律的に公的な枠組みをつくるという場合は、政府だけでなく、当然国民や国会にも、どういう内容なんだということをきちっと報告する責任があると思うんですが、その点いかがでしょうか。
石川政府参考人 先生今御指摘の事柄は、JR東海が平成九年に取りまとめられたものについての御質問だろうと思います。
 これにつきましては、東海道新幹線土木構造物調査委員会と申しまして、松本嘉司東京大学名誉教授を委員長に、合計二十五名で構成されているものでございます。
 中間取りまとめの概要でございますけれども、鋼構造物については、現時点での特段の変状は発生しないことが明らかになるとともに、今後とも適切な保守管理を継続していけば、当分の間、大規模な取りかえには至らない。また、鉄筋コンクリート構造物についても、適切な保守管理を行っていけば、当分の間は大規模な取りかえには至らない。この当分の間というのは、具体的に言えばということで、その時点、平成九年の時点ではおおむね二十年ぐらい先のことであるということでございまして、私どもとしても、中間取りまとめについては、技術的におおむね妥当であると判断をしてございます。
 なお、大規模改修の具体的内容につきましては、今後指定に当たって精査をすることとしてございます。
瀬古委員 法的な枠組みを今検討しているわけですから、具体的な内容は当然国会にも提出していただきたいと思うんですが、いかがですか。
石川政府参考人 この大規模改修工事につきましては、前から答弁しておりますように、約一兆円の工事規模がかかります、中身はこれこれこうでございますと御説明しているわけでございます。(瀬古委員「出してくださいと言っているんですよ、中身をすべて。中間まとめを出してくださいと言っている」と呼ぶ)
 中間まとめでございますか。中間まとめにつきましては……(瀬古委員「中間まとめとあなたたちが検討した内容を出してくださいと。何度も同じことを言わさないでください」と呼ぶ)
久保委員長 不規則発言は控えてください。
石川政府参考人 東海道新幹線の土木構造物調査委員会、これの報告でございますが、これはJR東海が私的に設置した委員会でございます。JR東海からは、同委員会の報告は社内秘であるために公表は差し控えてほしいというふうに言われてございます。
瀬古委員 こんな大事な問題を、JRは社内秘だと言って出さないと。本当にそれが妥当かどうかわからないじゃないですか。どうやって私たちはそれを審査するんですか。あなたたちだけ見て、ああ、よしよしと。これは、少なくとも国が法的な枠組みをつくるんですよ、今から。当然JRはきちっとそのまとめを、これは内々ですなんていって出せませんなんて、そんなばかなことないですよ。
 大臣、これはぜひ検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
久保委員長 石川鉄道局長。
瀬古委員 大臣、大臣に言っているんです。大臣に、出すように検討してくださいと言っているんです、大臣に言っているんですよ。(発言する者あり)
久保委員長 ちょっと待ってください。
石川政府参考人 今申し上げましたように、この委員会の報告は、要するに、当分の間、適切な保守管理を行っていけば、東海道新幹線は大規模な取りかえには至らないけれども、これは、その平成九年からおおむね二十年先の時点では取りかえが必要ですよ、そういうことを言っているものでございまして、具体的な中身につきましては、これから審査をされるものでございます。
瀬古委員 私も実際見ていないので、あなたが幾らそうやって言われても、そういうものかどうかわかりませんし、具体的な内容はこれからなんというのは、まあ十年間も検討された割には大変ずさんだと私は思いますよ。ちゃんと責任持って出すべきだと私は思います。
 私たちは、当然、新幹線の安全輸送のためには大規模改修は必要だと思っています。そして、公的な援助をやるというなら、そういう措置を講じるなら、どのような工事を想定しているのか、どれぐらいの費用が必要なのか、内容を国民や国会に報告するのは当然だと思うんですね。中身は見せないが援助だけしてほしいと、余りにも虫がよ過ぎますね。
 具体的に聞きたいと思うんですが、工事はあくまでも安全輸送のための大規模改修であると私は思うんですが、例えば、その際、駅の大改修をやって、今あっちこっちで問題になっております、JRが巨大ビルを建ててデパートやホテルを誘致する、いわゆるJR商法ですね、周りの商店街がばたばたとつぶれるような、こんなやり方をするということはないでしょうか。
 お金に色がついていないわけですから、これは厳密に行うことが必要だと私は思うんです。積み立てが他に使われないという、チェックする方法はあるんでしょうか。いかがですか。
石川政府参考人 今回の引当金の積み立てでございますが、法律上諸手続を組んでいるわけでございます。所有営業主体の指定、あるいは引当金積立計画の策定、国土交通大臣による引当金積立計画の承認というふうな手続を踏むわけでございます。こういうふうな形によって、引当金の適切な積み立てというものが確保されるわけでございます。(瀬古委員「運用を聞いているんです、運用について」と呼ぶ)
 この引当金の運用につきましては、租税特別措置法の一般的な原則によって運用されるわけでございますが、まず基本的に、この大規模改修工事を実施しないということになれば、これは租税特別措置法において、一括益金算入ということで、巨額の法人税を納付することになります。
 それから、中小企業に対する配慮規定ということにつきましては、完全民営化の指針において、地域において同種の事業を営む中小企業の営業活動を不当に妨げ、またはその利益を不当に侵害することのないよう特に配慮するものとされるというふうな完全民営化法の指針に従って、適切に対応されるものと考えております。
瀬古委員 現在の完全民営化法でも、実際には守られていないんですよ。だから、大変な事態が起きているんです。
 今言われたように、この引当金の運用は全く自由になります。そうすると、やりたい放題になっちゃうんですよ。このことについて、やはり私はきちっとチェックしなきゃならないと思います。
 さらに質問しますけれども、一兆円の二分の一、五千億円を引き当てるということになるわけですけれども、それがどんどん膨らんでいく、五千億円が。そういう、膨らまないという保証はあるんでしょうか。いかがですか。
石川政府参考人 この改修工事につきましては、私どもとして、公益性、公共性の高い観点から制度を創設するものでありますけれども、当然、政府としてきちっとチェックをするわけでございます。したがって、引当金の金額につきましても、実施すべき大規模改修工事の内容、それに要する費用の総額、あるいは所有営業主体の財務の状況等を勘案して、適切な金額を承認するということにしてございます。したがいまして、指定所有営業主体の申請をそのまま承認するということでは必ずしもございません。
 私どもとして、東海道新幹線の大規模改修工事にかかわる引当金、先ほど来御答弁しておりますけれども、現時点では、工事費としては約一兆円を考えてございます。その半分に当たる五千億円程度が引当金として妥当であると考えております。
瀬古委員 実際には法案には歯どめがありません。だから、あなたたちが適切な金額と言うけれども、それも変わっていく可能性は十分あるんですね。
 次に質問を進めたいと思うんですが、整備新幹線の建設に伴う並行在来線問題について伺います。
 国土交通省は、JRに公的支援は行うけれども、整備新幹線の開業に伴う並行在来線のJRからの経営分離で地方に負担をかぶせていくという実態がございます。一九九〇年に、新幹線の着工について、政府・与党の、新幹線を建設着工する区間の並行在来線は、開業時にJRの経営から分離することを認可前に確認するとした申し合わせが行われております。その結果どうなったのか。経営分離された並行在来線の第三セクターはどうなっているのか。
 私は、先日、長野県に行ってまいりました。一九九七年の長野新幹線の開業時に長野県が中心となって設立したしなの鉄道、これは並行在来線の第一号ですけれども、ここが、二〇〇一年度の損益計算書中間決算時見込みを見ますと、当期末処理損失は二十四億円です。資本金は二十三億円で、つまり、超過債務見込みに陥っております。
 国土交通省は、このような実態をどのように把握しているんでしょうか。経営悪化の原因は一体何だと認識していますか。
石川政府参考人 しなの鉄道の経営でございます。
 しなの鉄道につきましては、平成十三年九月の中間決算時点で、累積赤字が二十四億六千万円でございます。資本金は二十三億円でございます。この会社の経営悪化の要因でございますけれども、基本的には、まず、輸送実績が見込みを下回ったということがやはり大きいわけでございます。それから、開業時点から平成十三年三月まで運賃を従来のJRと同額の運賃に据え置いたこと、それから、運賃収入に対する人件費の割合が高い、人件費率が七八%というふうに他の事業者と比較して高いというようなことが挙げられるかと思います。
瀬古委員 もっと大きな問題があると思うんですね。
 当初、資産の買い取りは無償譲渡を前提としていたんですけれども、JRが拒否をする、有償となった。そのため、資産買い取りで長野県からの借入金百三億円の償還が始まれば、もう経営は維持できないという事態だ。もともと、資産有償買い取りでは経営が成り立たないということがはっきりしているんですね。
 二つ目なんですけれども、JRは、もうかる路線はやるけれども赤字になる路線は自治体に押しつける。同じ並行在来線であります、現在ドル箱の篠ノ井―長野間はJRが引き継いで、赤字になる部分は第三セクターに切り離す。いいとこ取りというのは、実は九州新幹線でも、飛び地としてもうかる部分だけJRが引き受ける。過疎化している地域を自治体が引き受けるという形では、第三セクターが赤字になるのは当たり前なんですね。
 そして、JR時代は、信越本線などは特急列車が走っていたが、それもなくなった。そして、ひどいのは、軽井沢―横川間の鉄道輸送を打ち切ってバスに切りかえたために、乗客は不便になって余計に鉄道に乗らなくなって、実際には新幹線に乗らなければ目的地に行けない、こういうところまで鉄道の路線を切っちゃう、こんなひどいことをやって、乗客は減ってきているわけですね。
 私は、こういうJRのもうけ主義、政府・与党の申し合わせによるこうした内容が赤字の本質的な原因になっているということを指摘したいと思うんです。
 そこで、大臣に伺いたいんですけれども、長野県の経営改革検討委員会が提言をしているわけですね。並行在来線以外の第三セクター鉄道などの公共交通機関が行う建設費等に関しては、国庫補助制度等のさまざまな公的負担の制度があるけれども、並行在来線には、公的負担がなければ経営が成り立たないにもかかわらず、特別な措置が講じられていない。今、第三セクター鉄道も軒並み赤字ですよね。それでも一定の国庫補助制度があるけれども、並行在来線はない。公的支援をぜひという提言をしております。
 それから、九州新幹線の建設促進期成会でも、第三セクターによる経営が成り立つよう事業用資産の無償譲渡、税制上の優遇措置を要望しています。
 私は、自治体の要求はもっともだと思うんですね。新幹線の建設もあるけれども、しかし、それに伴う並行在来線は在来線の役割を十分持っています。この並行在来線をどうするかということは、私は、国の政策としてきちっとやるべきだと思うんですね。その点、いかがでしょうか。
扇国務大臣 今おっしゃったように、基本的には、しなの鉄道の問題に関しましては、今、瀬古議員がお読みになったように、長野県が設置しましたしなの鉄道経営改革検討委員会、これを設置して議論をされていらっしゃいます。
 今、瀬古議員が御指摘になったように、整備新幹線の着工に際して、並行在来線は地域の足として地域が責任を持って経営する、先ほど政府・与党の合意事項のことを議員がおっしゃいましたが、これを今さら私が申し上げるまでもなく、並行在来線については、従来どおり、開業時にJRの経営から分離するということが、これは平成八年の十二月の二十五日に政府・与党で合意がされておりますし、また、十二年の十二月の十八日にも、新たな区間の着工に関しまして、並行在来線の経営分離については、沿線地方公共団体の同意の取りつけ、基本の条件が整えられていることを確認するということが決まっているのは、今、瀬古議員も口にしていただきまして、おわかりいただいているものと思っております。地域の力でこれを維持していくということは、少なくともこのときからもう決まっていることでございます。
 国としては、この第三セクターというものの安定的な経営を図るために、JRから譲渡される鉄道の資産につきまして税制上の優遇措置、それをとってまいりましたし、JRに対しましても、要員の派遣でございますとか運行面での協力等を行うように、今まで指導してきたわけでございます。
 ちょっと長くなると悪いと思ってやめますけれども、全国の統計が出ておりまして、在来線の利用者の数が総体的に減ってきているというのは事実でございます。これは、老齢化等々あらゆる面での状況があろうと思いますけれども、全国の在来線の利用者数というものが本当に減っているという実情というものも、先生も御理解いただけるところだろうと思っております。
 数字については、全国でございますので長くなるから失礼いたしますけれども、そのように、各地域の努力、そして、せっかく第三セクターになったという、その第三セクターを設立された地域の熱意というものが消えることは本当に残念だと思っておりますし、どうか地域の皆さん方の創意工夫というもの、努力していただきたい。また、今申しましたように、最大の協力をJRとしてもしてきたという事実は、ここに認識しておきたいと思っています。
瀬古委員 第三セクターを守るために、並行在来線を守るために、どんなに住民の皆さんが知恵と工夫を出して必死でやっているか、現地に行けば本当によくわかりますよ。それでもだめなので、何とかしてほしいと皆さん言っていらっしゃるわけです。経常利益が四百億円から千三百億円あるようなJR東海に公的な支援の仕組みができて、本当に今大変な事態になって、今までではだめだと言っている、そういう自治体になぜ援助ができないのか、第三セクターに援助ができないのか。政府・与党の申し合わせでは、地方公共団体の財政事情等による見直しだってはっきりと言っているわけですよ。私は検討すべきだと思います。
 もう時間がございませんので、きょうは厚生労働省から来ていただいているので、この国土交通省の関係はこれで終わって、バス路線の問題も本当にやりたかったんですが、残念ながらきょうはやれません。また次回にしたいと思います。
 JRの採用差別事件、早期解決に向けての質問をさせていただきます。
 去る三月二十二日に、ジュネーブの第二百八十三回ILO理事会は、JRへの採用を拒否された千四十七名問題について、日本政府を含むすべての関係当事者が、解雇された当該労働者が公正な補償を受けられるように保障する満足いく解決に早急に到達するよう再度促すとした、附属機関であります結社の自由委員会の報告を全会一致で承認、採択いたしました。
 この決定には、日本政府も参加しています。日本政府自身の対応が私は求められていると思うんですね。日本政府は、この決定を実行するために、今までは、政党間の協議を見守る、こういうように言っていらっしゃったわけですが、もうそれだけではだめだ、やはり一歩踏み込んだ、政府自身も当事者として、解決のための働きかけが求められていると思うんですけれども、いかがでしょうか。
狩野副大臣 瀬古委員にお答えいたします。
 本件につきましては、平成十二年十一月のILOの勧告の中で、関係者に四党合意の受け入れを要請しております。四党合意に基づいて問題が解決されていることを求めてきているわけであります。
 今御指摘の本年三月の報告につきましては、四党合意に基づく解決の動きについてフォローアップしたものであり、政府には、四党合意の枠組みにおける役割を果たすことを求めているものであると受けとめております。
 いずれにいたしましても、先日、五月二十七日ですけれども、国労が臨時全国大会を開催し、四党合意推進を内容とする方針が賛成多数で決定されたと聞いておりますので、厚生労働省といたしましては、これからのことにつきましては、与党三党と社民党の今後の話し合いを見守ってまいりたいと思っております。
瀬古委員 このILOの決定は、今までやってきたけれどもなかなか進まない。何とか政府も当事者として一歩踏み出しなさい、責任を持って何らかの対応をしなければ、実際には解決が遠のいてしまうということを言っているわけですよ。
 そういう点では、今まで見守る、見守ると言ってずっとそのままにしていらっしゃったわけですよ。しかし、もう政府としても一定の責任を果たさなきゃならないんじゃないかと思うのですが、ずうっと見守る、こういう姿勢なんですか。それとも、このILOの決定を受けてやはり何らかの対応を考えるということはあるんじゃないでしょうか。
鈴木政府参考人 事実問題にも関係する問題でございますので、お答えを申し上げます。
 ILOの勧告、それから本年三月の報告のお話がございました。ただ、いずれにしても、これは四党合意、これに基づいて問題が解決されることを求めているものでございます。この間、四党合意の前提条件が成就されていないということで与党三党からの声明があり、それを踏まえて国労として臨時大会で四党合意推進、そういった内容の方針が賛成多数で決定されたと聞いております。
 したがいまして、そういった国労側の今後の対応、それから、それを踏まえた与党三党、社民党、そういったところの動向を見守るのが当面の対応というふうに考えております。
瀬古委員 時間がもう参りましたので、残念ですけれども、やはりもう何度も何度も見守るばかり言わないでほしいと思うのですよ。ちゃんと解決のために政府が責任を果たすべきだと思います。ILO報告では日本政府は当事者の一員です。JRに働きかける責任がちゃんとあるんです。民営化を口実に地元の命綱を、もうからない鉄道やバス路線を打ち切る、一方では公共性があると言って引き続きJRのもうけのために国民の税金をつぎ込むようなシステムをつくる、このようなJRに私はちゃんと社会的な責任を政府は果たさせるべきだと思います。
 以上、終わります。
久保委員長 日森文尋君。
日森委員 社民党の日森文尋でございます。
 最初に、扇大臣にお伺いをしたいんですが、これは基本的な問題で、しかも、今度の法案に対して、恐らくここにいらっしゃる委員さんすべてに近い多くの方々が、なぜかというふうに思っている課題ではないかと思うのです。なぜJR本州三社が所有する新幹線、これだけに本法案を適用しようとしているのかということなんです。
 いろいろ御意見がございました。完全民営化になってまだ間もない。完全民営化ならば、その会社の責任で大規模改修は行うべきではないのかという意見もございましたし、それはそれで理屈としてはもう全く正しいというふうに思っているんです。
 これまでも同じような質問がありまして、御答弁いただいたんですが、なぜかということについて大臣からもう一度確認の意味も含めてお話を伺いたいと思います。
扇国務大臣 私は、今までの論議で、みんなが疑問に思っているのではなくて、日森議員もお聞きいただいて、大体わかってきたな、なるほどなと御理解いただけ、またこうだったのかということもある程度御理解賜るように説明してきたつもりでございますけれども、再度のお尋ねでございますので、改めて――大見え切って言うわけではありませんけれども。
 やはり新幹線の必要性と、それから我が国唯一の大量高速輸送という、本当に大事な交通機関であることは御存じのとおりでございますし、私たちもしょっちゅう乗らせてもらっているわけですから、そういう意味で、適切な時期に確実に大規模の改修をして、そして安全性を確保するということがなければ私はならないと思っています。
 では、なぜかという日森議員の御疑問のように、全部自己で改修、大規模改修もしてから民営化したらどうだとおっしゃるのか、あるいは国が全部それを持って、その上で、安全を確保してから民営化すべきだったのか、選択肢としてはそういう二つしかないわけでございますね。
 けれども、先ほどからもるるお話しいたしましたように、民営化というものを閣議決定し、また、民営化というのはやはり世の中の流れだと、そして、国鉄も改革をしなきゃいけないということで国鉄というものを改革し、その陰で、今瀬古議員がおっしゃったように、職員で泣いてくだすった方も大勢いらっしゃいます。
 その上に立って、時代の要請に従って国鉄が生まれ変わってJRになった、そのときのJR本州三社が所有しております、営業しております東海道とか山陽、東北及び上越新幹線、これを対象として新幹線の大規模改修の時期に来た。それを制度として新しく創設しなければ安全が図れないということで、私たちは今回踏み切ったわけでございます。
 新幹線以外の鉄道になぜしないかという御疑問は残ると思いますけれども、新幹線以外の鉄道の場合は延長キロ数が短うございますし、新幹線のような大規模の改修費が要るとは思えません。また、時期的にもまだ改修の時期ではないということも含めまして、費用が必ずしも全部に平均にかかるということではなくて、耐用年数と利用者の数、そしてどれくらいの距離があるか、こういうことから、今回は鉄道公団が所有しております、JRが経営をしますけれども、いわゆる整備新幹線である東北、北陸新幹線はまだ平成九年に開業したばかりでございますので、今回はこういうことで改めて皆さん方に御理解を賜るように説明もしてきたつもりでございますし、私たちとしては、大規模改修をしてもらわなければ安全が保てないという、国土交通省としての責任も重で大であるということも認識賜りたいと思っております。
日森委員 二つ目の質問なんですが、これは当面東海道新幹線が対象になるだろうということでよろしいと思うんですが、新幹線は大変うらやましいと思っています。五十年たつと一兆円かけてオーバーホールできる。私も五十三歳になるんですが、大規模改修をやって、先どの程度もつのかという自信は余りないんですけれども。それはともかくとして、東海道新幹線であると。
 そうすると、実際にこれが実施をされる時期というのは、積み立てが十五年間で終わる平成三十年ごろから十年ぐらいかけて大規模改修を行うというふうに理解してよろしいでしょうか。
石川政府参考人 先生御指摘のとおり、東海道新幹線の大規模改修工事の実施時期でございますが、開業から約五十年になります今から十五年後、平成三十年、これから大規模改修工事が始まるものと考えております。
日森委員 それでは、ちょっと具体的な中身についてお伺いをしたいと思うんですが、法案の十五条の一項、大規模改修引当金の積み立てが必要かつ適当とする新幹線鉄道事業者を大臣が指定される。そして、その指定の要件として、一、営業の開始から経過した期間、二つ目に、当該区間における車両の走行実績、三つ目に、当該新幹線所有営業主体の財務状況を勘案するというふうになっているわけです。一と二については非常にわかりやすいということがあるんですが、具体的な基準というのを例えば省令だとか政令で定めることになるのかということが一つ。
 また、走行実績だとか、それから経過した期間ということになると、これは統一した基準を定めて、そこに達したものについては、本州三社が持っている新幹線について大規模改修を行っていくというふうなことになっていくのか。その辺についてちょっとお伺いしたいと思います。
石川政府参考人 一口に新幹線と申しましても、東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線、上越新幹線、実はそれぞれ構造がかなり大きく異なってございます。例えば、東海道新幹線の路盤というのは、御案内のとおり、盛り土、切り土が過半数でございます。これに対しまして山陽新幹線は、トンネルが多うございます。あるいは、東北新幹線、上越新幹線は、高架橋がそれぞれ半分を占めているというようなことで、それぞれの新幹線の態様がかなり異なっております。また、それぞれに使用されている部材、あるいは建設時期、建設期間、それからまさにその使用頻度、それから、雪国であるか、雪が降るかわからないかというふうな、そういう意味での気象状況、さまざま違います。それから、会社の財務状況もさまざま違います。
 そういう意味で、この法案では、指定の要件を具体的に省令で規定することはしてございません。開業からの経過期間、車両の走行実績、財務の状況等の諸般の事情を勘案して、指定するか否か総合的に判断するということになってございます。
日森委員 そこはわかりましたが、そうすると、例えばJR東海も十年間かけていろいろ検討してきた結果、大規模改修に至るということになるわけで。そうすると、例えば、いろいろな条件によって違うんですが、JR東日本なりあるいはJR西日本の会社が大規模改修計画なるものを検討する会議をつくって、何年間か一定の期間をかけてその計画を出すということにお任せをするということにある意味ではなってしまうんじゃないのか。一定の、必ずしも統一したものではなくても、何かガイドラインみたいなものがないとなかなかやりにくいんじゃないかという気がするんですが、その辺はちょっと、関連して、どうなんでしょうか。
石川政府参考人 先ほど申し上げましたように、各新幹線、構造その他違いますけれども、基本的にこの大規模改修というのは、できているものを取りかえるということが必要になる、そういうことが必要かどうかということにつきましては、それぞれの新幹線で、あるいはそれぞれのJRが検討される、我々ももちろん検討していきますけれども、JRもそれぞれが検討した上で、さらにその金額がどのくらいになるか、それについて会社としてどう対応するかというふうなこと等を総合的に勘案してこの引当金制度を使うかどうかということになろうかと思います。
日森委員 わかりました。
 少し気になっているのは、三つ目の、財政状況を勘案するということが指定の要件に入っているんですが、これはどういう意味でこれをお入れになったのかということなんです。
 JRの本州三社は、いずれもその運輸収入と比較すると膨大な長期債務を抱えているということは、もう御存じのとおりですね。新幹線収入というのは各社、ちょっとばらつきはあると思うんですが、半分ぐらいは占めているということも実態としてあると思うんです。そこで、財務状況を勘案するというのは、どこをどう見てその指定のための要件にしていくのかということがどうも法律の中でははっきりしないというところがありますので、そのことについて一点目は質問したいと思います。
 それからもう一つ、関連してですが、財務状況が例えば余りに悪いとか非常によいとかいうことがあると思うんです。先ほども出ましたけれども、経常利益がこれだけ出ていますとか。例えば、財務状況が非常によくて、この会社は国が支援しなくても大丈夫だということになれば、指定しないということもあり得るわけですね。そうすると、その基準、どういうところでどの程度の財務状況であれば要件を満たしているから指定するよ、あるいは、この程度じゃもう指定しなくても済むだろうという、基準もないとなかなか難しいようなところがあるんですが、その辺のことについてちょっとわかりやすくお話しいただけたらと思います。
石川政府参考人 今回の引当金制度は、大規模改修、これは将来巨額な費用がかかるであろうということで、こういうふうな巨額の費用が必要となる大規模改修に備えて、国土交通大臣が引当金積立主体を指定して引当金を積み立てさせるというものであります。
 しかしながら、財務状況がよい会社であれば、あらかじめ引当金を積み立てなくても大規模改修費用の調達が可能になるということもあり得るわけでございます。つまり、大規模改修工事の大きさと会社の財務状態というものがあるわけでございますので、もちろん大規模改修工事の規模がどのくらいかかるかということも大きな要素でございます。それと、会社の財務状態ということでございます。
 したがいまして、そういうふうに、あらかじめ引当金を積み立てなくても所要の大規模改修費用が調達が可能だということになれば、これは積立主体として指定する必要がないということになろうと思います。
日森委員 参考までに、もし将来、指定しなくても済むような会社は出てくるとお思いでしょうか。いろいろ差しさわりはあるでしょうが。
石川政府参考人 将来の検討課題だと思いますけれども、これは観念的には幾つかのケースがあり得ると思っております。
日森委員 大変失礼な質問をいたしました。
 それで、今回の場合、引当金は五千億円、約一兆円かかると言われている工事費総額の約半分、毎年三百億円を超える額になりますが、これを十五年間積み立てていくということになっているんです。これは、一兆円かかるよというのはまだあくまでも概算であって、実際にかかるかどうか、いや、それを超えるかどうかもわからないと思うんですが、その三百億円強を積み立てる根拠について一点目は聞きたい。
 それから、この積み立てによって影響する法人税額が十五年間で約一千五百億円というふうに言われています。これは取り崩しが始まる平成三十年から毎年百五十億円の法人税を十年間払って、この一千五百億円を埋めましょうということになっているんですが、二つ目は、東海道新幹線だけではないんです、新幹線全体の状況、輸送手段に占める利用者の割合、シェア、これは年々低下をしている。そういう数字も出されていたりして、ちょっと心配もあるんです。
 平成三十年以降も順調に収益が上げられて、毎年百五十億円の法人税を十年間ずっと払い続けていけるだろうということに対して、何かアクシデントでもあるとそれができないかもしれない。本当にこの一千五百億円、平成三十年から後に払ってもらえばいいよということになるんだけれども、これは確実に担保できるのかどうなのか。大変心配があるものですから、その辺、ちょっとお聞きしたいと思います。
石川政府参考人 現時点で大規模改修工事の規模は約一兆円で、引当金についてはその半分の五千億ということで、これを十五で割れば毎年三百三十三億ということでございます。
 それで、逆に、先生御指摘のように、では、その後取り崩していく場合に毎年百五十億以上の法人税が払えるのかということでございますが、現在、JR東海でございますが、その設立以来、毎年六百億円を超える経常利益を計上してございます。私どもとしては、この積立金の取り崩し期間に支払う法人税というものは、JRは十分支払い能力がある会社であると考えております。
日森委員 同時に、これは一兆円かかるとすると、引当金の総額は五千億ですから半分で、あとの半分はJR東海が自前で資金調達しなさいということになるわけですよね。今は六百億で何とかなるだろう、これも恐らくこれから二十五年先まで続いていくであろうという前提でこういう計画を出されていることになると思うんですが、ぜひその辺は慎重に対応して、取りっぱぐれがない、そうしないと、一体何だ、結局国の税金で面倒を見たことになっちゃうんじゃないのかということにならないような、そういう対応もしていただきたいと思っています。
 それから、もう一つ具体的な話なんですが、新幹線は、人身事故なんかは別にして、大変事故が少ないと言われているんですが、平成十一年に山陽新幹線のトンネル内でコンクリートの剥落事故がありました。そういう事故が二件ないし三件あったというふうに聞いているんですが、一歩間違えば大変な大事故になりかねないということにもつながるわけで、一つは、新幹線に関するこれまでの主な事故について、把握されている範囲でお聞きをしておきたいと思います。
 それからまた、このことも含めてなんですが、通常どのような安全点検が行われているのか、これも把握されている範囲で結構ですから、お聞きをしておきたいと思います。
石川政府参考人 新幹線の土木構造物に関します主な事故でございますが、先生御指摘のとおり、平成十一年六月に山陽新幹線福岡トンネル内でコンクリートの剥落事故がございました。また、十一年十月には、同じ山陽新幹線の北九州トンネル内で同じようにコンクリートの剥落事故がございました。
 こういうトンネルの剥落事故対策につきましては、平成十二年の二月に、当時運輸省におきまして、トンネル保守・管理マニュアルというのを策定してございまして、これに従って各鉄道事業者を指導してきているところでございまして、具体的には何をやっているかと申しますと、まず、基本的に、新幹線トンネルについては平成十二年度内に初回の全般検査というものを行いました。覆工の状態を詳細に把握して、綿密な打音検査を行いまして、初回の全般検査というのをやりまして、それに基づきまして、変状展開図という形の、いわばトンネルの表面のマップみたいなものをつくってございます。
 そういうものをもとにいたしまして定期的な検査が行われているものでございまして、検査結果に基づいて、その変状展開図と照らし合わせて適切な補修を行っているところでございます。
日森委員 そこで、今回の大規模改修では、例えばトンネルでは入り口付近に鉄板を張りましょうとか、そういう工事が予定をされているんですが、どうも、剥落の事故なんかの経験からいうと、その入り口付近だけに鉄板を張っただけで本当に大丈夫ですかという疑問もあるんですね。この辺についてなぜそうなのか。もちろん、詳細はこれから検討して詰めていくことになると思うんですが、当面予定されているのはそういうことになっている。これについてちょっとお聞かせいただきたい。
 それから、先ほど、北陸新幹線の関係で東海地震の話が出ました。北陸新幹線は迂回するんだと、それはそれで結構なんですが、その東海地震が心配されていますが、今回予定されている大規模改修、これは鉄げたとか高架橋とかいろいろなことをやるわけですが、その耐震性などについてはどのように考慮されて大規模改修に臨んでいくのかということについてお聞かせいただきたいと思います。
石川政府参考人 最初に、トンネルの入り口付近のお話がございました。
 トンネルの入り口付近というのは、トンネルの中央部と比べまして土かぶりが少ないものでございます。したがいまして、列車風あるいは列車振動というものに繰り返し作用されやすいというところで、将来的にトンネルの入り口付近というものが変状するおそれがあるのではないかというふうなことで対策工が必要だという対象にしているものでございます。
 それから、地震対策でございますが、既に東海道新幹線につきましては、昭和五十四年の強化地域指定で告示された地域において、平成八年度までに東海地震対策は行われております。
 さらに、平成七年の阪神・淡路大震災で被災したと同種の構造物、これにつきましては、平成七年から平成十年の間に緊急耐震補強というものを行ってきたところでございます。
 さらに、JR東海は、平成十二年度からは、阪神・淡路大震災において、鉄道においては被災例のなかったコンクリート橋の橋脚等の構造物、これについても耐震補強を行っているということでございます。
 今回の大規模改修というものにつきましては、将来劣化する鉄道施設についての取りかえということでございまして、地震等の対策については今申し上げたように別途行われているところでございます。
日森委員 わかりました。
 最後に。代替施設がないということですから、新幹線を運行しながらの改修工事というのは当然夜間工事、これが中心にならざるを得ないというふうに思っております。それはそうなんでしょうかということが一点目です。
 これは要望も含めてなんですが、夜間工事などによって近隣住民の日常生活、これは新幹線建設工事などでも大変影響が大きかったところもたくさんあるようですし、できた後も騒音や振動などいろいろあったようですが、特に工事になると、かなり大規模な工事が行われるわけですから、近隣住民の日常生活に大変大きな影響を与えるのではないかという心配があるわけです。これについてはぜひ細心の注意をというか配慮をして行っていただきたいと思いますし、同時に、そういう内容をJRや工事関係者にきちんと指導していただきたい。それから、そのためには事前の説明会を徹底するとか、それから苦情などがあった場合は直ちにそれを処理するというような対応策も具体的に考えておく必要があるのではないかというふうに思っておりますが、それについてお答えいただきたいと思います。
石川政府参考人 大規模改修工事に限定せず、鉄道工事を行う際は沿線の地域住民の方の理解と協力というものを得るように鉄道事業者が努めるということは当然のことだと考えております。
 先生御指摘のように、特に夜間の工事になりますと、これについてはさらに一層の配慮が必要でございます。地元住民への十分な説明、理解を得るということは当然でございますし、低騒音タイプの工事用の機械の使用、あるいは工事箇所を防音パネルなどで取り囲むというふうな措置を講ずる等の騒音対策も考えるというふうなことで十分配慮する必要があると考えております。
 今回の大規模改修につきましても、同様に地元住民の理解を得てから適切な騒音対策等を行い、住民の日常生活に影響のないよう工事が行われるよう、私どもとしても鉄道事業者を指導してまいりたいと考えております。
日森委員 若干時間があるんですが、ちょっと、水戸に行く列車の関係がございまして、これはまた委員長の方に貸しておきたいと思いますので、議事進行に協力して、終わりたいと思います。ありがとうございました。
久保委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。瀬古由起子さん。
瀬古委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になりました全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
 反対の理由の第一は、新幹線を保有するJR各社は、国鉄分割・民営化による発足以来、新幹線料金収入がドル箱となって毎年巨額の経常利益を得ているのに、なぜ将来の大規模改修に国の支援措置が必要なのかということです。
 法案で創設する引当金制度は、新幹線の改修工事に必要な資金の積み立てを認め、積立金の課税を先送りするものです。当面対象になるJR東海は、年間四百億円から千三百億円の経常利益を上げているにもかかわらず、完全民営化となった今、本来、みずからの努力で大規模改修の資金を積み立てることは当然です。それを怠ってきたにもかかわらず、国が支援措置を行うことは認められません。
 第二の理由は、JR各社は、駅前開発等により周辺の中小業者に深刻な影響を与えながら、営利中心の経営を行っていることです。
 それによって、地方ローカル線やJRバスの廃止、整備新幹線開業による並行在来線の不採算路線の経営分離を次々と行い、国民の足としての役割を大幅に後退させています。こうした公共性をなおざりにしたJR経営に実質的な何の規制もなく、課税を先送りし、税金をまけてやるのは本末転倒であります。
 第三の理由は、国土交通省は、当面JR東海が大規模改修の対象になり、その場合、大規模改修工事費は約一兆円で、その半分の五千億円を大規模改修引当金として認めると説明しながら、改修工事費の内容も引当金の額もそして積立期間も国会や国民に明らかにすることなく、すべてJR任せにしていることです。しかも、一兆円の工事費の根拠さえ明らかではありません。
 以上の理由により、本法案に反対することを表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)
久保委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより採決に入ります。
 全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
久保委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、実川幸夫君外五名より、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。古賀一成君。
古賀(一)委員 ただいま議題となりました全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文はお手元に配布してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のことでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。
    全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。
 一 新幹線鉄道が我が国の基幹的大量高速輸送機関であることに鑑み、所有営業主体が大規模改修工事を実施するに際しては、新幹線鉄道の運行に極力影響を与えないよう指導すること。
 二 大規模改修工事の実施に当たっては、事業者が沿線住民に対し十分な説明を行うとともに、その意見に適切に対応するよう指導すること。
 三 東海道新幹線以外の新幹線鉄道について、大規模改修工事に関し、開業からの年数、運行実績等を踏まえ、必要な検討を行うこと。
 四 新幹線鉄道大規模改修引当金積立計画の承認に際しては、厳正なる審査を行うこと。
 五 新幹線鉄道について、安全かつ安定的な輸送を確保するため、大地震等の災害対策、事故防止等のため適切な措置をとるよう指導すること。
 六 新幹線鉄道の維持管理に係る技術開発の推進に努めるとともに大規模改修の実施に当たっては施工管理及び竣工確認の徹底を図るよう指導すること。
以上であります。
 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
久保委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
久保委員長 起立総員。よって、実川幸夫君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、扇国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣扇千景君。
扇国務大臣 全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案につきまして、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただきまして、ただいま可決されましたことを深く感謝申し上げます。
 今後、審査中における委員各位の御高見、また、ただいま附帯決議において提起されました引当金積立計画等の適正な審査及び承認等につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいりたいと思っております。
 ここに、委員長初め各委員の皆さん方の御指導と御協力に対して深く感謝の意を表し、御礼申し上げたいと存じます。
 ありがとう存じました。(拍手)
    ―――――――――――――
久保委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
久保委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十分散会


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