衆議院

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第25号 平成14年7月24日(水曜日)

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平成十四年七月二十四日(水曜日)
    午前九時三十五分開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 木村 隆秀君 理事 実川 幸夫君
   理事 橘 康太郎君 理事 林  幹雄君
   理事 古賀 一成君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      赤城 徳彦君    岩倉 博文君
      小里 貞利君    倉田 雅年君
      菅  義偉君    田中 和徳君
      高木  毅君    高橋 一郎君
      谷田 武彦君    中馬 弘毅君
      中本 太衛君    林 省之介君
      原田 義昭君    菱田 嘉明君
      福井  照君    二田 孝治君
      松岡 利勝君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      吉川 貴盛君    阿久津幸彦君
      井上 和雄君    大谷 信盛君
      樽床 伸二君    手塚 仁雄君
      永井 英慈君    伴野  豊君
      平岡 秀夫君    前田 雄吉君
      前原 誠司君    山内  功君
      山田 敏雅君    高木 陽介君
      山岡 賢次君    小沢 和秋君
      瀬古由起子君    原  陽子君
      保坂 展人君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (警察庁交通局長)    属  憲夫君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            三沢  真君
   政府参考人
   (国土交通省都市・地域整
   備局長)         澤井 英一君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  鈴木藤一郎君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  石川 裕己君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           洞   駿君
   政府参考人
   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君
   参考人
   (都市基盤整備公団理事) 那珂  正君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二十四日
 辞任         補欠選任
  田中 和徳君     原田 義昭君
  谷田 武彦君     岩倉 博文君
  今田 保典君     前田 雄吉君
  津川 祥吾君     山田 敏雅君
  大幡 基夫君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     谷田 武彦君
  原田 義昭君     田中 和徳君
  前田 雄吉君     今田 保典君
  山田 敏雅君     山内  功君
  小沢 和秋君     大幡 基夫君
同日
 辞任         補欠選任
  山内  功君     手塚 仁雄君
同日
 辞任         補欠選任
  手塚 仁雄君     津川 祥吾君
    ―――――――――――――
七月二十三日
 障害者対応のETCシステム導入に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第六七一一号)
 同(赤羽一嘉君紹介)(第六八一六号)
 国土交通省の地方整備局等の機構拡充及び職員増員に関する請願(阿部知子君紹介)(第六七四五号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第六八二一号)
 同(原陽子君紹介)(第六八二二号)
 同(横光克彦君紹介)(第六八三一号)
 働くルールを確立させ、建設労働者の雇用を守り、公共事業の生活・環境重視への転換に関する請願(中川智子君紹介)(第六八二三号)
 国土交通省の地方整備局等の機構拡充及び要員確保に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六八三二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長三沢真君、都市・地域整備局長澤井英一君、河川局長鈴木藤一郎君、住宅局長松野仁君、鉄道局長石川裕己君、自動車交通局長洞駿君、航空局長深谷憲一君、警察庁交通局長属憲夫君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長北原巖男君、法務省刑事局長古田佑紀君及び法務省人権擁護局長吉戒修一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として都市基盤整備公団理事那珂正君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田義昭君。
原田(義)委員 おはようございます。自民党の原田義昭でございます。
 いよいよ国会も終わりに近づきました。この国土交通委員会も十三本を超す法案の審議をされたということで、心から御苦労さまです。また、大臣におかれましては、心からおねぎらいを申し上げたいと思います。
 それでは、限られた時間でございますが、私に一般質疑の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。私は、既に資料をお配りしておりますけれども、踏切の問題についてちょっと特化して御議論させていただきたい。あるいは一方的なお話になろうかと思いますけれども、その上で前向きの答弁をいただければありがたい、こういうふうに思っているところでございます。
 まず、大臣、東京、また各地で車に乗られたときに、踏切に行かれますと、遮断機がおりているときは、当然、車はとまっておるわけでありますけれども、遮断機があいているときも、車は一たん停止をするわけでございます。安全のためには必要な感じもしますけれども、考えてみれば、道路の交差点でも、赤のときはもちろんとまりますが、緑のときはもう当然無条件に突っ走るわけでございます。せっかく踏切があいているのに、何で一たん停止をしなければいけないんだろうかというのは、私も素朴な疑問として前から思っておりまして、そういうことでこのテーマを取り上げたわけでございます。
 私だけがこういう素朴な疑問を持っているのかと思いましたら、実は、この国会においても、もう過去何十年も繰り返し繰り返しこの問題が取り上げられているということに気がつきまして、後で少しお話しいたしますけれども、大事な問題ではないかなとあわせて思うわけでございます。
 道路交通法三十三条というのがございまして、鉄道を横切るときは一たん停止しろ、ただし、交通信号が遮断機のところについている場合はこの限りでない、こういう書き方になっております。ところが、実態を申し上げますと、交通信号と遮断機が一緒にあるというのは、考えてみればダブル投資みたいな感じもいたしますし、全国で今日まで百七、八十カ所しかこれは行われておりません。
 ちなみに、資料をお配りしておりますが、これを見ていただきますと、一枚紙と四枚紙をちょっと手元に置いております。この厚い方の一ページだけを見ていただきたいと思うんですけれども、基礎知識として、今、日本に踏切の数は三万六千カ所ございます。そのうち、一種、いわゆる遮断機のついておるのが三万有余、それから三種、四種というところでございます。圧倒的大部分、また大事なのが遮断機のついた一種踏切ということでございます。
 驚くべきことに、鉄道踏切に差しかかったとき一たん停止をしろというのは、この一枚紙に戻っていただきたいと思いますが、実は日本だけなんです。これは、外国に行かれた方もいるでしょうけれども、日本だけがこの規制をやっておるところであります。厳密に言いますと、韓国もやっておるようなんですけれども、どうも日本との歴史的なかかわりの中で韓国もこのルールを持っているんではないかと私は勘案するんですけれども。
 いずれにしましても、このルールは、奇妙なルールと私はあえて申し上げたいと思いますけれども、何でこうなんだろうか、こう思うわけでございます。もちろん二十世紀を通じまして、私たち日本人はこのルールを何も疑わずに、刷り込まれてきたようなところがございますけれども、もし合理的な理由が別に考えられないのなら、あるいは撤廃の方向に動いてもいいんではないか、こう思うわけでございます。
 この一枚紙をずっとなぞっていきますと、二番目に安全性の問題を書いております。もう何といっても、安全が確保されるということが大事でありまして、そのために今の道路交通法も一たん停止を義務づけているんだろうと思いますが、後で議論させていただきますように、この安全性もあるいは乗り越えられる程度の安全性ではないかな、ほかの国が全部やっているわけですから。そういう意味で、このことを十分検討していただいた上で、このことにも前向きに取り組んでいただきたいなと私は思います。
 国会の質問の中には、ノンストップにした方がかえって安全性が確保されるんではないか、何となれば、なまじ手前で一たん停止したりするものですから、よろよろっと鉄道の中に入っていってエンストを起こしたり、最近はエンストする車も少なくはなりましたけれども、そういうことさえ言えるわけでございまして、いずれにしても、この安全性をクリアするということが大切だろうと思っております。
 三番目に、これは交通渋滞の問題がございます。これはもう何といっても、私がこういう問題提起をした一番大事なところでございまして、あかずの踏切があり、そこで一たん停止をすることによってますます渋滞がひどくなる、こういうことでございます。交通流速は一・七倍から二倍と言われておりまして、これは後の方でデータもつけておりますけれども、要するに、これがなければこの交通流速というのははるかによくなる、倍ぐらいよくなるということが言えるわけであります。
 あわせて、経済的、社会的利益と、あえてここで試算をいたしました。これも後ろの方をまた後で見ていただきたいと思いますけれども、全国で年間二千億円ぐらいの経済効果があるんではないか、こういうふうに見られるわけでございます。
 実は、東京都が、石原さんになって、都内の車の流速を飛躍的に上げようということで、あらゆる努力をしておられるやに伺っておりまして、例えば、現在十八キロメートルが平均速度だそうでありますけれども、将来二十五キロないし三十キロにするために、例えば駐車違反を厳しく取り締まる、こういうこともやっております。
 いずれにしても、この交通渋滞をいかに解決するかということが大事だということがわかるわけであります。
 あわせて、ここに書いておりませんけれども、物流の問題が党内また政府全体としても議論されておりますけれども、いかに日本の物流コストが高いか、こういうところにもこの踏切の議論が集約されてもいいんではないかな、こう思うわけでございます。
 さらに、これを取りやめることによって省エネ効果が膨大である。数字でいきますと、年間原油換算で五十一万キロリットル減るというふうな計算もございます。これは全鉄道エネルギー消費の四分の一に当たる、こういうふうに私は試算しております。
 かたがた、これはもう当然予測できることでありますけれども、環境負荷を試算をしております、これも環境省と一緒になってやっておるところでありますが、百十八万トンパー年、CO2換算、こういうことの省エネ環境ができるということであります。私は、今地球温暖化の問題で、どうやって具体化しようということで議論されておるわけでありますけれども、これも大きな切り札になるんではないかと。
 ちなみに、括弧の中でありますけれども、平成十四年度に実は国全体として、今年度ですよ、私の計算で八百三億円の地球温暖化対策費が盛り込まれているんですけれども、見るところ、直接に削減効果というのは余り見られないんじゃないかなと。他の政策をいろいろ言うわけじゃありませんけれども、例えば、調査費とか研究開発費、国際協力費というのはありますけれども、しかしこれは現ナマでありまして、環境負荷がなくなるという意味では、こういう規制を緩和することによってお金をかけずに達成できるんではないか、こういうメリットも私はできると思っております。
 さらに、六番目を見ていただきますと、ETCが今全国の高速道路で導入が図られておりますけれども、これについては、従来の建設省、運輸省を通じてたくさんの研究開発が行われております。ところが、このETCの目指すところというのは、とまっていろいろやり、まさに環境やら騒音が問題になるところを、とまらずにやるというのがこのETCの趣旨だろうと思っております。そういう意味では、こういうようなプラスのメリットもあるというふうに私は考えておるところでございます。
 安全性が何とかクリアできれば、こういう物理的な、目に見えるメリットが享受できるんだというのが、この遮断機の前の一時停止をもう一回見直したらどうかということの趣旨でございます。
 実は、こういうことを調べていく過程で、先ほど申し上げましたように、もう繰り返しこの国会でも、衆議院、参議院でも、一たん停止は本当に必要だろうかということが議論になっておりました。もう昭和三十二、三年ごろから、特に平成十年、十一年ごろから、この国会でももう何回にもわたって議論されました。
 一番象徴的なのは、昭和四十年の三月に、参議院の運輸委員会で河野謙三先生、河野先生も全く同じような問題意識で、なぜ一たん停止をしなきゃいけないんだろうかというようなことを質問されておるわけであります。言わんとするところは、毎日通るとまさに交通渋滞がもう延々と続いておる。当時は何か、踏切番みたいな方が手旗信号みたいなものを含めて差配しておったようなところもありますけれども。いずれにしましても、そのことを繰り返し述べておられるわけであります。それに対して、当時の運輸大臣の松浦周太郎先生が、河野さんのおっしゃること、私自身も身にしみて感じておりますと。松浦大臣も東横線の祐天寺辺に住んでおられて、いつもそういうことを感じているんだ、こういう問題から、それが順調に流れて、なおかつうまくいくように、各省庁とよく連絡をとって頑張りたい、こういうような答弁をやっておられるところでございます。私自身は最近の問題かなと思って心配しておりました。ところが、昔からこの問題があるんだなと、こう自信を得たところであります。
 実は、このことについて、私も発起人の一人になりまして、今自由民主党の中では踏切研究会という議員連盟を立ち上げまして、既に六十数名が活発なメンバーとして入っておりますけれども、この機会に他の党の皆さんにも状況を認識いただいて、真剣に検討していただければありがたいな、こういうふうに思うわけでございます。
 いずれにしましても、この安全性の問題をクリアして初めてできる話でございますけれども、これについて、私どもは、警察庁さらには国土交通省鉄道局と前から議論をしておりまして、正直言って鉄道の難しさはございますけれども、私は、そこはいろいろ工夫、例えばドライバーをきちっと研修し直すとかということによって大きな事故は未然に防げるのではないか、こういう立場に立っておるわけでございます。
 これを具体化していく上においては、いろいろ条件とか障害があろうかと思いますけれども、思い切って大臣なりが決断をしていただいて、小泉改革、規制緩和をやろうというようなときに、やはり二十一世紀においては、人間の考え方、発想から新しい時代に変えていかなきゃいけないんだということから考えますと、私は、ぜひそういう方向で検討していただきたいなと思います。
 あわせて、いきなりというのは、これはなかなか難しいかなという感じもせぬではありません。行政の方もまた、実験はしたいけれども実験する場所もない、例えばこういうことにも悩んでおられるやにも聞いておるわけでございます。
 今、規制緩和やらで特区の問題も出ております。どうしてもその辺のデータがそろわないなら、ある地域で、例えば特区を区切って二、三年やってみる。本当に大丈夫なら、それはだんだん全体に広めていくというようなことも考えられるでしょうし、踏切を千カ所とか二千カ所とか特認をして、そしてとりあえずデータを積み上げる、こういうようなアプローチもあろうかと思います。いろいろあろうかと思いますけれども、今行政の方でも、いろいろ勉強も続けていただいておるようでありますけれども、思い切った方向も検討していただきたい、こう思います。
 よく、遮断機が閉じた後に突っ込む事故も相当あるというように聞いております。これに対しては、竹ざおみたいなクロスバー、これが仮に弱いとすれば、これを鋼鉄のようなものにするとか、このクロスバーに進入禁止の赤い枠、あれは日本人は見る瞬間に必ずとめることになっていますから、例えばそういうような、今でもできることをすることによって、この規制緩和は十分成り立つのではないかな、こんなふうに私は思うわけでございます。
 ほかにも、データがいろいろありまして、メリット、デメリット、これは当然、比較した上での最終的な判断であると思いますけれども、しかし、心配だ心配だと言っていると、この種の規制緩和、特に安全、保安に関するものですから、これは確かに心配が募るわけでありますが、そこは、最後は大臣の、政治的なというか、決断、それにもかかっておるんではないかなと思っておるところであります。
 きょうは、国土交通省からも、また警察庁からも、ずっと検討をしていただいております局長さんたちにもおいでをお願いしております。あわせて、大臣にも、その辺の印象も含めてお話を伺えればありがたい、そう思っております。どうぞよろしくお願いします。
石川政府参考人 今先生からいろいろとお話がございましたが、道路と鉄道がクロスする踏切というものにつきまして、鉄道サイドから見ると、あるいは鉄道事業の運営あるいは運転士という観点から見ると、やはり心配事が残っているわけでございます。例えば自動車が踏切の中に閉じ込められてしまう、いわゆるとりこと言われているものは、年間一万件あるというようなこともございます。それから、過去には、列車が接近しているにもかかわらず遮断機が作動しないというふうなことで事故が起こったというケースもないわけではありません。
 そういうような観点から、やはり道路交通の円滑化と鉄道の安全性の確保という両面から、私どもとしては、踏切信号機の設置を含めて、さまざまな形で安全対策を講じながら検討してまいりたいと考えております。
属政府参考人 踏切における交通事故は、踏切道改良等によりまして減少傾向にはありますけれども、平成十三年中には百四十九件発生をしておりまして、そのうち死亡事故は五十九件に上るなど、一たん事故が起こると非常に大きな事故につながる、そういう特性を持っておりまして、一般の交通事故に比べて致死率が極めて高いという特徴がございます。特に、安全確認を十分に行わないで漫然と踏切に侵入したことによる事故は多数発生をしておるところでございます。
 踏切道における交通規制のあり方については、交通事故の発生状況、踏切保安設備、踏切信号機等の踏切関連インフラの整備状況、諸外国における状況、さらには国民の意識等を踏まえまして、引き続き検討させていただきたいというふうに思います。
扇国務大臣 原田議員からいろいろと示唆に富むお話を伺いまして、今の日本の現状の中でいかにモラルというものが崩壊しているかということで、モラルを取り戻そうということが一つの大きな目標であろうと思います。
 あかずの踏切というのは、日本全国で大体一千カ所あります。今原田議員がおっしゃったように、遮断機のないところは、これは三種、四種で別ですけれども、遮断機があってあかずの踏切だけでも一千カ所あるのを、これをなくそう、なるべく踏切は、道路と交差しているところは高架化しよう。
 それはなぜかといいますと、全国で我々は渋滞に巻き込まれておりますけれども、その渋滞の原因は踏切によるところも大きいということで、その渋滞を緩和するために立体交差にしたり、あるいは今おっしゃったように、あかずの踏切の一千カ所の解消も含めて交通渋滞をなくそうというのが根本的な願いでございます。
 そして、我々は今、計算しますと、日本人一人が一年間に大体四十二時間、渋滞に巻き込まれて時間の損失をしている。一人四十二時間、一年間に。お金に換算すると幾らかというと、大体十二兆円に及ぶのですね。そういう時間のむだというものがあってはならないということで、国土交通省、JR、民鉄、全部含めて、この渋滞をなくしていこうと。
 今おっしゃったように、踏切は、遮断機がおりてないのだったら、ずっと通っていいじゃないかというのは、それは理想なんですけれども、横断歩道で、信号が青でも、手を挙げて右左を確認しなさいよというようなことを私たちは子供に教えますけれども、私は、そういう意味では理想の姿を今原田議員に示していただいたと思っています。
 人間の感覚というのは大丈夫なときもありますけれども、人間ですから間違いもある。また、遮断機の機械も間違いはある。それは今皆さんが答えました。物には間違いがあるから再確認していこうということで、ぜひこれは正していかなければいけない。
 ただ、私からのお願いで、逆で申しわけないんですけれども、せっかく原田議員がノンストップということをおっしゃるのであれば、マナーの一つとして、外国によっては、車のクラクションを鳴らすと罰せられるというくらい大変厳しい国がございます。日本はクラクションを鳴らしっ放しなんですね。ある国に行きますと、よほどでない限りクラクションを鳴らすと一斉に視線が集まって、クラクションを鳴らした方が恥ずかしい、そういうことがございます。
 日本の場合は、狭い国そんなに急いでどこへ行くと言われるように、もうビービービービー、クラクションを鳴らして、これも私はマナーだと思いますので、その辺のところは、せっかく運動していらっしゃるのであれば、なるべくクラクションというのは必要以外に鳴らさない、またクラクションを鳴らさないでいいような運転をするというふうなこともぜひ一緒に啓蒙していただければありがたいと思います。
 そういう住みやすい、そして安全な、理想的なマナーの日本というものをつくるために、我々も御意見を参考にしながら努力していきたいと思っています。
原田(義)委員 ありがとうございます。ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。
 それでは、時間が参りましたので一つだけ、東南海・南海地震についてお尋ねしたいと思っております。
 この地震につきましては、昨年、政府の地震調査研究本部において、今後三十年間に発生する確率が南海地震で四〇パー、東南海地震で五〇パーと、今世紀前半で発生の可能性が非常に高いと言われております。その規模も、マグニチュード八というぐらいのことは予測されておるわけであります。これについて総合的な防災対策が必要だろうと思いますけれども、現在の状況、対応ぶりをお話しいただきたい。お願いいたします。
扇国務大臣 東南海・南海地震につきましては、歴史的には百年から百五十年間隔で発生しているというのは御存じのとおりでございます。そういう意味で今世紀の前半にも発生する可能性が高いと言われているので、本当にこういうニュースは言いたくもないし聞きたくもないというのが現状でございますけれども、少なくとも我々は、これらの地震に対応する防災対策をでき得る限りしておく、用心をするにこしたことはない。
 どこまで準備しても、準備が一〇〇%であるということは言えないわけですけれども、防災対策の重要性を考えて、この国会におきまして、衆議院の災害対策特別委員会の田並委員長の提案によります東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、これがこの十九日に成立したところでございますので、国土交通省といたしましても、こういう地震対策のために、今まで持ち得るすべてのハード、ソフト両面の対策をおさおさ怠りなく準備したいと思っております。
原田(義)委員 大臣から力強いお言葉をいただきました。どうぞまた、今後ともこの国土交通委員会としてもしっかりとした対応をお願いしたいと思っております。
 質問を終わります。
久保委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽でございます。
 きょうは、自民党の先生方に御無理を言いまして五分間いただきましたのは、ETCの普及についてぜひ一言お伺いしたいと。
 二〇〇〇年の十一月の道路審議会の答申では、ETCの利用五〇%を目指す、五年後にはほぼ全部ETC利用の車にする、こういった目標を掲げられたわけでございますが、今月二十日現在、調べによりますと、普及台数は三十八万六千台、利用率はまだ二・八%にとどまっているということでございます。
 特に、問題の首都高速においては、三百六十六カ所の料金所において二十四時間専用となっているETCはたった十カ所、こういったような状況の中で、本委員会でこのETCについて自民党の議員さんから御質問があったとき、道路局からはその普及は進んでいるという非常に前向きな話が出ていて、私はちょっとおかしいな、こう思っていたところ、今月五日の大臣の会見では、まだまだ進めなければいけないと大変前向きな御発言があったように聞いております。
 私は、まさにこの大臣の、ETCを何とか進めたい、こういう方針に従って、国土交通省挙げてこのETC普及に万全の手を打つべきであると思いますし、来年度の予算要求についても、これが大きく反映されるような予算をかち取るように頑張っていただきたいということで、質問させていただきたいと思います。
 三点聞きたいと思います。
 一つは、チャイルドシートの場合と同様に、法律上、すべての車にこの車載器の取りつけを義務づけることを考えるべきじゃないかというのが第一点。二点目、三点目はもう一緒なんですけれども、車載器を載せるのにどうしても三万円から五万円かかる。これはもう、大臣の記者会見でも言われておりますように、このメリットをどう出すか。メリットを出させる、ハイウエーカードよりも安くなる、ここにどう踏み込むかということがすごく大事だというふうに思っております。
 私は、本年度の予算から、道路公団への国費投入、道路特定財源からの国費投入が中止にもなっておりますし、そういうことも考え合わせますと、そういったものを財源にして、各国でやっているような形で、安価に車載器を載せられて、車載器を載せたらそれだけのメリットがあるといったことが目に見えるような形で具体的な措置をとるということが二十一世紀、環境の世紀にふさわしいものと考えますが、この点についてまとめて御答弁をいただければと思いますので、よろしくお願いします。
扇国務大臣 大変ありがたいといいますか、私が昨年から、ETCを導入しようということを、自分では随分宣伝して、広告塔になったつもりでやっているんですけれども、なかなか思うようにはいかなくて。
 皆さん方が高過ぎるとおっしゃいます。それと、物によっては領収書がもらえない等々、いろいろなところから私のところに情報が集まっております。
 けれども、我々は、京都議定書を通すということで、京都議定書を私たちが世界じゅうに広めよう、アメリカも参加してほしいというときに、環境問題、二十一世紀はこれが主でございますから、この環境問題に対応するために、CO2の排出量を少なくするために、渋滞というものを緩和していかなきゃいけない。料金所の渋滞が一番大きいものですから。それでは、料金所の渋滞を緩和するために諸外国がやっていてどうして日本ができないんだと。私はある国へ行ってETCを見ましたら、これはメード・イン・ジャパンだとおっしゃる。よその国がうちの機械を使っていて、どうして日本の国がETCができないんだと。
 私の理想を申し上げますと、車を製造するときに車の中に既に組み込んでしまう、これが一番の理想でございます。でなければ、ICカードで料金所を通過できるか、できれば携帯電話でもこれができる、そしてICカードでガソリンも全部オーケーだというふうになれば、本来はもっと効率が上がると私は思っておりますし、二十一世紀の環境についても、車のCO2の排出量もこれで一挙に解決できる方向に向かうのではないかと。
 全車搭載というのが原則でございますけれども、今赤羽議員がおっしゃったように、ハイカよりもETCの割引が少ないというのは私はおかしいと。ですから、ハイカを全部中止して、ETCをハイカ並みの割引にするという、私はこれくらいするのは当たり前だと、そんなことぐらい何でできないんですかと言っておりますけれども。
 これも工事費等々、ETCの設置場所、一日五千台の上りおりの車があるところからETCを設置するということで、まだおくれているところはるるございますけれども、一気呵成に、御支援をいただいて、来年度頑張って予算をとって、このETCの導入というのをしていきたい。
 また、機種もどんどんふえております。私が一番最初に言いましたときには八社ぐらいでございましたけれども、現在は二十六社で、四十八機種が出ております。その割には安くならないなと私は思っておりますので、もっと安価な、そしてもっと皆さんが気楽に使えるものができるように努力していきたいと思っております。
赤羽委員 ありがとうございました。以上で終わります。
久保委員長 伴野豊君。
伴野委員 民主党の伴野でございます。
 きょうは一般質疑ということで、しかも国会終盤ということで、具体的な法案がかかっていたときにはなかなか質問させていただけないような内容について若干触れさせていただきたいと思います。
 まず、直接国政にはかかわらないといいますか、間接的にはいろいろかかわってくる事柄なんだと思うんですけれども、また、現職の政治家が政治評論家みたいなことを言っていては仕方がないんだと思うんですが、ただ、政策的にもいろいろかかわってくることでございますし、地方自治と国政というのは密接な部分もございますので、そういった観点から、今非常にマスコミあるいはワイドショーの注目を集めています長野県のことについて若干質問をさせていただきたいと思います。
 御案内のように、田中前知事が失職をされて、もう既に実質的な次なる選挙戦が始まっているというわけでございますが、この事柄というのがきちっと解決されなければ、私は、一番その割を食うというか、県民が一番残念な思いをすることになるのではないか、それだけは何とか防ぎたいなと思っている一人であるわけでございます。
 そういった中で、田中前知事ということでございますが、評論家になるつもりはないのですが、私なりの解釈をするならば、覚せい者――覚せい剤を打つという意味ではありませんが、何か目覚めさせる人としては非常に意味のある知事であったのではないかな、そう思うわけでございますね。
 私も学生時代から計画学というのをずっとかじっていたわけでございますが、計画というのはそもそも、立てた上から、いわゆるプラン、ドゥー、チェック、シー、この四項目をぐるぐる回すことによって、常に見直しをしながら、本来、最大目標を最適にするということを計画学的にもやっていくわけでございますけれども、どうも長野県だけではなく、この国のシステムというのは、一度計画するとなかなか見直しをしにくい。現実的にはわかっていても、うん、それはそうなんだけれどもということで、もう決まったことだからねと言いながらもやり続けてしまうというところがどうもあるのではないか。そういうことに対して警鐘を鳴らすというか、みんなちょっとじっくり考えようじゃないかという立場で、覚せい者としては非常に立派な知事であったような気がいたします。
 しかし、実際、特別秘書をされていた方の言葉をかりるならば、要するに県庁から十五分もかからないような浅川ダムに全く行くこともなく、地元市町村長ともじっくり、あの方はテレビのカメラの前では非常によくしゃべられるんですが、どうも人間とは余りしゃべりたがらないのかなと思うんですけれども、そこで具体的な代替案を話されたわけでもなくというような指摘もございます。
 これはマスコミの方にもちょっと御注意願わなければいけないのですが、今どうしてもワイドショー的な、劇場的な政治ということで、いい者と悪者といいますか、すぐそういう単純な区分けをして、どうもその争いだけを何か国民の方に見せて楽しんでいるというところがあるんじゃないか。それに最終的な結論を出されてしまった県民が一番割を食うといいますか、国民が割を食うというか、これは国会でも非常に注意していかなきゃいけないことではないかなと思うわけでございます。
 この長野県、例えば今テーマになっている脱ダムということをとらえられているんですが、脱ダムの理念をどれだけ県民の方が理解しているかということも非常に懸念していることでございますし、ある評論家なんかは、理念対本音の闘いだと。非常に理念はわかる、みんなも、総論はいいね、だけれども、実際、現場では本当に経済状況も逼迫していて、ダムは要らないけれどもダム工事は欲しいというような、そういうことをおっしゃる方もいるわけでございまして、実際に不信任案を突きつけた方なんかも、私もそんなにダムが欲しいわけじゃないけれども、工事が来ないと財政も地域も壊滅状態になるという本音を吐かれているわけでございます。そういった表現をとらえて、未来対今の闘いだと言っている人もいるわけでございます。
 例えば、政策論争なんかをしていても、脱ダム対ダム推進という非常に両極端の対立にしたがる傾向がある。これ自体も県民に非常に不幸なことではないかなと思うわけでございます。
 例えば脱ダム一つを政策的に論じるならば、これは多分、河川工学、水門学の粋を集めて最適解を見つけていくことなんだと思うのですね。今までのように、ダム一辺倒でいいというわけでもなく、かといって、幻想のような、森を再生していけば、何年待たせるんだというような議論も本来はしなきゃいけないわけでございますし、これは、例えば降水量をどう見るかとか、あるいは基本高水流量をどう見るかとか、本来確率論のお話なんですね。その確率論のお話をどうやっていくかということを考えるときに、最終的には自然とどう向き合うかということになってくるわけです。
 やり方がこれしかないというのは非常に極端な言い方でございまして、やり方はいろいろあって、ケース・バイ・ケースというのが、これは私の考え方でございます。例えば知事さんなりが、県民をどう安全に、しかも今は台風シーズンでございますけれども、台風が来たときに、命も守って、かつ、現実に目の前にある家が流れていかないようにし、かつ、それで自然と共生できれば一番いいわけでございまして、これは哲学にも似ているわけで、そのためにどうするんだということは、もし御自身の哲学があるならば、これを県民なり議会なりに納得させる努力もしていかなければいけない、これが政治家の役目であろうかと思うのですね。
 こういうことを政治家としてどうお考えになるか、もし大臣が長野県知事であったら今どうするかというようなことを、本当は最初に大臣にお聞きしたかったんですけれども、残念ながら、今戦場は参議院だと言われまして、ちょっとつらいところでございますが、そのかわりの方が、副大臣がいらっしゃいますので、政治家としてお答えいただければ、そんなふうに思います。よろしくお願いいたします。
菅大臣政務官 お答えをします。
 国民の生命財産を守るというのは、河川管理を行う者にとっては最も重要な役割であると思っています。こうした役割を確実に効果的に果たすことが極めて必要であるというふうに私は考えています。
 今、伴野委員からケース・バイ・ケースというお話がありました。国土交通省としましては、最初からダムを排除する、こういうこともなく、またダムにこだわったりもしない、ダムを含めて、堤防や遊水地、さまざまな手法を総合的に考えてやるべきであるというふうに思っていますし、今までもそういう方向で進んできているというふうに思っています。その中で、それぞれの河川や、これは地域によっても違いますから、それぞれの地域の特性というものを見きわめながら進めていくべきであるというふうに思います。
 よって、最初からダムを排除して検討する、こういう考え方というのは合理的ではないと思っていまして、国土交通省としてはこういう手法はとっていない、御理解をいただきたいと思います。
伴野委員 先ほども申し上げたように、これは一つ象徴的な政策として脱ダムということがやられているんですが、長野県で起こったことは、脱ダムというような形で矮小化されたり、あるいは知事の人間的な資質ということでマスコミがとらえがちなんですが、本来、戦後の公共事業のあり方とか、あるいはいわゆる議会と住民の皆さん方、もっと言うならば首長さんの意思をどう伝えるか、そういう意思決定システムをどうこれから確立していくか、二十一世紀のそういったシステムをどう確立していくか、それから公共事業のあり方も問われている問題ではないかな、そんなふうに思っております。
 そういった面で、一つの地域で起こっている事柄でございますが、ぜひこれを全国的な目で眺めていただいて、本来、県民、国民がどういうものを望んでいるのか、ぜひお考えいただければありがたいかと思います。
 そういったことで、少し本論の方に入らせていただきたいと思います。
 これも、本当は大臣に、きょうは直接お聞きできると思っていろいろ用意してきたんですが、グランドデザインのお話をちょっとさせていただきたいと思います。
 よく大臣はグランドデザインがあるとかないとか、それから、以前私は、平成十四年の三月十四日の衆議院の本会議場で、これは都市再開発法等の一部を改正する法律案及び都市再生特別措置法案の代表質問でもちょっと触れさせていただいたときには、こんな答えになっているわけですが、私の方から、「上位計画である二十一世紀のグランドデザイン、一極一軸型から多軸型へという方向性との整合性は一体どうなっているのか、」というようなお話を質問させていただきましたら、大臣は、「かねてから、私は、国土交通省として日本のグランドデザインをつくりたいといって取り組んでまいりました。」というようなお答えをいただいて――ああどうも、ちょうどお帰りになりました。
 もう一回最初からやっていいですか。(扇国務大臣「どうぞ、どうぞ、何でも」と呼ぶ)では、いいですか。
 もし、今大臣が長野県知事であったらどうされるか、ちょっとそれだけお聞きして、一言でいいですよ、もう時間がないですから。
扇国務大臣 私は知事さんと県議会というのは車の両輪だと思います。国会もそうでございます。少なくとも皆さんと論議を尽くして。おっしゃることはもう何でもいいと思うんです、フリーですから。ですけれども、もし脱ダム宣言をなさるのであれば、一昨年に我々与党三党で中止しました公共工事は三百回の監視委員会に差し戻して、議論していただいて中止したんです。私は、そういう手順をとっていただければ、国民の皆さんも県民の皆さんも――ただ、岡谷市だとか下諏訪の皆さん方がきれいな水を飲みたいとおっしゃっている。私のところにもいらっしゃいます。クロロエチレンとかいうものが地下水に入っているという、そういう本当に県民の皆さんの生命財産にかかわる大事なことだけは、議論を尽くしていただいて、決定を得られるのであればいいと思いますけれども、少なくとも、車の両輪であるという原則だけは、民主主義である以上、皆さんとこうして、この委員会のように、審議を尽くすということが私は大事だと思っています。
伴野委員 ぜひそんなアドバイスを前長野県知事にもしていただけるといいんじゃないかなと思うんですが。
 私も、そのあたりは本当に同感でございまして、先ほど申し上げたように、計画というのは、プラン、ドゥー、チェック、シー、この四項目をぐるぐる回して、常に最善の解を求めていくべきだと思うんですが、それが長野県においては、多少失礼な言い方をすれば、機能停止に陥っていたところに一石を投じたという意味では非常に意味のある、覚せい者としての位置づけとしては非常に意味のある知事だったと思うんです。ではこれからはどうその理念を具現化していくんだという代替案を含めてお示しいただけるかどうかというのが、本来、県民にとって一番重要なことじゃないかな、そんなふうに思うわけでございます。
 では、大臣がお帰りになったので、また先ほどの質問に戻らせていだたきたいと思います。
 大臣のお使いになっているお言葉の中で、グランドデザインというのを私は何度もお聞きしました。ちょっと私も頭が悪いものですから整理しにくいので、ぜひいろいろお聞きしたいんですが、前回の一般質問の中で、うちの樽床議員が長期計画に触れられて、先般七月十九日の閣議後の会見でも、長期計画九本を五本以内に統合されるとか、そういった長期計画のあり方を大幅に変更されるというようなコメントも述べていらっしゃる。その上で、よく大臣がお使いになるグランドデザインというのはそういうものとどういう位置関係にあるのか。
 例えば、全国総合開発計画というのは、御案内のように、昭和二十五年だったと思いますが、法律として成立しておりますいわゆる国土総合開発法の第七条に基づく全国総合開発計画、これによって過去五回、昭和三十七年から始まった全国総合開発計画から、昨今では、二十一世紀の国土のグランドデザインという言葉も使われている平成十年に策定されたものもございます。
 こういったものと扇大臣のおっしゃるグランドデザインというのは何か違うのか。一緒であれば、例えば二十一世紀の国土のグランドデザインの手直しをされようと思っていらっしゃるのか、どういうお考えなのか。そういった位置関係も教えていただきたいですし、また、もし作業的なことをもうおやりになっていらっしゃるのだったら、御自身のグランドデザインというのはこういうもので、こういった作業も実際に今やらせて、こういうような中間報告もしたいと思っているというようなお話があれば、ぜひお聞かせいただきたいんですが、そのあたりいかがでしょうか。
扇国務大臣 伴野議員から改めてグランドデザイン等々のお話がございました。
 今までの公共工事というものが今日の日本をつくったということは否めないと思います。ただ、そこに、今日、公共工事といえば、むだだと言われるような意識がなきにしもあらず。また、限られた予算の中で、長期計画といいますけれども、長期といっても五年か十年なんですね。そして、その五年間に毎年確実にこれだけの予算をとるという、予算をとるための長期計画というものであってはならないというふうに私は考えております。
 それから、長期計画を十本、国土交通省は持っておりますけれども、そのうちの八本が平成十四年で切れます。そして、あとの二本が十五年と十七年になっておりますけれども、その長期計画というものは、今から少なくとも五年前にできているわけですから、この長期計画というものができたときには、旧建設省、旧運輸省であります。けれども、国土交通省になったんですから、旧建設、旧運輸等々でつくられた長期計画というものは、国土交通省になって、今回は見直すべきである。というのは、長期計画を一緒にした方がより効率が上がるというものもなきにしもあらず。ですから、来年、十五年度で切れるものも一本ございますけれども、長期計画の十本のうちの八本は、ことしはどうしても、継続にするか、延長にするか、打ち切るのか、決めなきゃいけません。そのときに、何としても国土交通省らしいものを出していきたい。グランドデザインというものがなかったものですから、昔はですよ、今までできたことはありません。
 皆さんがおっしゃるように、きのうも決算委員会で話題になりましたけれども、アクアラインだって全然予想どおりの車が通っていないじゃないかというおしかりを受けましたけれども、これもグランドデザインがなかったからなんですね。アクアラインを渡って、その先が高速道路で成田空港までつながっていれば、横浜、横須賀の人はアクアラインを通って、高速を通って成田にいらっしゃる。東京湾を一回りするよりはるかに近いわけですから。そういうグランドデザインがないために、今でき上がっているものも本来の活用がされていない部分がある。それはなぜか。
 私は全国のグランドデザインというのをつくりたいと言い続けてきて、一応できましたけれども、今度、再度つくりたいと言うのは、二十一世紀になって、二十一世紀の国土づくりはどうあるべきか。
 御存じのとおり、空港一つとってみても、近隣諸国にあっという間に四千メートル級を複数持った空港ができている、果たして日本は、二十五年間かかって成田もやっと二本目の暫定滑走路。これでは国際的に立ち行かなくなる。
 だったら、日本のどこにどれだけ国際空港が必要なのか、あるいは国際港湾は、国際都市は、そういうことを全部私はつくってみたいということで、国土交通省の、インターネットで全職員に、役職以下ですけれども、若い人たちに呼びかけました。六日間で百四十四名の参加者がございました。その中から三十二名の精鋭を選んで、平均年齢三十二歳。全局から応募してくれまして、中には海上保安庁、気象庁もいます。その若い人たちが、二十一世紀の日本は国際的にこうあるべきだというデザインを、国づくりの百年デザイン・タスクフォースというチームをつくりました。これも霞が関では、恐ろしくて百年後のことなんか今まで出したことがないんですけれども、私は、何かをつくってお示しすることが皆さんの論に供することになる、それによって皆さんに御議論いただければ日本の姿が見えてくるのではないかということで、これを今実行させていただきまして、既に立ち上げております。平均年齢三十二歳、中に女性が四名おります。四つのパーツに分けてございますけれども。そういう意味で、百年ビジョンというものを今実行しておりまして、私から辞令まで渡したんですから、それで始めております。
 例えば明治神宮の森、御存じでしょうけれども、あれは百年前は何もなかったんです。百年たって今の明治神宮の森ができているんですね。
 そのように、百年計画で国づくりというものを示していきたいというのが今の私の願いでございまして、長期計画もそれによって見直されてしかるべきであるというふうに考えて、たまたま十八日に国土交通省の最高幹部会でそのことを申し上げましたら、翌十九日に、総理から長期計画を見直せという御下命があって、余りにもタイミングがよかったので、自分でも驚くほど、びっくりしているんですけれども、国土交通省の姿勢としてはそういう姿勢で進んでいきたいと思ってつくって、今作業中でございます。
伴野委員 大体わかったような、わからないような気がしているわけでございますが。
 ちょっと私も頭が悪いものですから、しつこいようですが、もう一回整理させていただきます。
 今まで縦割り的にあったいろいろな計画、特にお隣の局が何をやっているのかよくわからないものを、お隣も何をやっているのかなとよく相談して、総合調整をして、例えば空港をつくるんだったら、そこの空港に高速道路も鉄道も同時期に、しかも効率よく、例えば工区がぶつぶつ分かれているんなら、そこを一つの大きな工区にして、今まで運輸省と建設省でやっていて発注業務も分けなきゃいけないようなものを、総合的にやっていこうというようなことをやっていらっしゃるのかなと思って、それは非常にいいことであるし、ぜひそれをどんどんやっていただいて、総合調整を進めていただければいいんですが。
 それで、出てきたものは、国土総合開発法による全国総合開発計画の変更という形で位置づけられるのか。あるいは第六次の何か、二十一世紀の国土のグランドデザイン2とかという形で出されるのか。そのあたり、今検討されている答えと国土総合開発法との関係というのはどんなふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
扇国務大臣 伴野議員からグランドデザインという御質問がありましたので、グランドデザインの方を申し上げたのですが、グランドデザインというのは百年計画ですから、これは法律に基づかないものですから、これは別個に考えていただいて結構でございます。ただ、問題は、今までの総合計画の長期計画というものが本年度で切れる。これは法律に基づいているわけですから、これは別途です。この十本のうち八本の期限が切れるものを縮小する、合理化する、なおかつ効率を上げるという、それとは別途でございますけれども、一緒の御質問だったので、私が一緒にお答えしたのでおわかりにくかったのかもしれませんけれども、長期計画はグランドデザインとはまた別個であるというふうにお考えいただければはっきりするんじゃないでしょうか。
伴野委員 時間がたくさんあればいろいろやりたいところですが。
 じゃ、グランドデザインというものが一つあるとして、さらに、大臣のおっしゃるように調整も非常に重要なことだと思います。
 ただ、私は、やはりグランドデザインというのは、一つは哲学、大きな理念じゃないかなと思うんですね。そうしたときに、やはり骨太の、先ほど大臣もおっしゃったような部分部分、地域地域の調整的なお話も非常に重要かと思うんですが、大きな目標というのも、大目標というのも非常に重要じゃないかなと。
 そうしたときに、やはり多少集中投資も考えていかないといけないんではないか。満遍なく、全国にくまなく予算がつくというのも一つの哲学であり一つのやり方かもしれませんが、しかし、例えば今どこの企業も、以前バブルのときは多角経営というようなことで、何でもやらなきゃいけないといって、自分の余り得意じゃないところに手を出して結構痛手を負っているようなところも多うございます。今見直しますと、しにせなんかのお話を聞きますと、やはり自分の強いものをさらに強くしようというようなことをおっしゃっております。
 そういった中で、日本の大きな柱といいますか、背骨といいますか、中心は、やはり東京から大阪間のいわゆる東海道でございます。そういったときに、日本が科学立国として今後もやっていくということで考えた場合に、今世界的な技術として日本が競争力を持っているのはリニアの周辺技術、特に超電導周辺技術ではないかなと思うんですね。
 私もリニアの技術者であったときがあるんですが、非常に生意気な言い方をすれば、いわゆる常電導のトランスラピッドというのは、超電導の今日本が開発しているリニアからすれば非常にふぐあいの多い、おもちゃと言うと大変ドイツに失礼なんですが、技術的にはそのレベルだと思っております。
 確かに、今はまだ金がかかる、今こんなに公共事業が縮小されていく中で、そんなばかみたいなこと言うなという御意見もあるかもしれませんが、私は、将来性のないものにばらばらつぎ込んでいるぐらいなら、これもある面でかけかもしれませんが、ここはひとつどんと大きくやるということも、日本の将来性を示す、これこそまさにグランドデザインではないかなと思うんです。
 そういった意味で、今もう開発計画も随分進んでいるやに聞いておりますが、ここはやはり、財源問題や、あるいはどう法的に整備していくかというようなことも含めて、一定の目標を決めて、リニア中央新幹線の実用化なんかも少しきちっとしたスケジュールにのせてもいいんじゃないかなと私は個人的に思うわけですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
扇国務大臣 伴野議員のリニアモーターの話もそうですけれども、私が先ほど申しましたように、日本の国土のグランドデザインがなければ、どこからどこまでリニアを使うのか、そのリニアをつくるときには、東京―大阪間で約八兆から十兆かかるというこのリニアを、今第二東名とかいろいろ言っておりますけれども、どこにどう使うのかという全体のグランドデザインがあって、初めて私はここに使おうということが出るんだと思います。私が先ほど申しましたのも、そういう国土づくり全体のデザインというものを今まで出したことがなかったから、そういう話ができないんですね。
 部分開通したら、部分開通だけで余計むだになってしまうんですね。新幹線もそうです。あるいは高速道路もそうです。なぜこの部分だけなのと。これがつながっていなかったら生きないじゃないというところを地図にのせてみると、はっきりとわかってまいります。
 ですから、今回の法に基づく十カ年計画、五カ年計画等々も、十年といったら十年かかって仕上げるんですというのじゃなくて、五年かかるというのを、二年前倒しで、三年で集中投資したら二年分が浮いてくるじゃないか、早くすればコストダウンになるじゃないか、そういうことで縛りをかけるということのよしあしも私は判断していきたいと思っております。長期計画というのは何をもって長期というのか。工事上どうしてもこの期間かかるというのか。あるいは、お金さえ集中投資すれば工事を早くできるのか。私は千差万別あろうと思いますので、それを全部チェックしていきたい。
 そして、今もおっしゃいましたリニアの技術というのも、日本が使う前に中国から問い合わせが来るぐらい、世界じゅうが注目はしておりますけれども、果たしてそれを狭い日本の中で、どこにどう使うのか。これだけの投資をして間違いないのかということも、私はさっきの話に返ると、グランドデザインがあって、じゃ、ここからここまで使いましょうということがなければ難しい。また、子供や孫の代まで借金を残さないという原則からすれば、どこにどう効率よく予算の配分をするかということの原点があるというふうに、伴野議員の御質問で私は感じております。また、そうしていきたいと私は思っております。
伴野委員 時間が参りましたので、本当はもっといろいろ議論をさせていただきたかったんですが、大臣在任中にグランドデザインの具現化されたものをぜひお見せいただければありがたい、また、ぜひそれを検討させていただきたい、そんなふうに思いまして、終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
久保委員長 大谷信盛君。
大谷委員 民主党、大谷信盛でございます。
 きょうは、公共事業、国の直轄事業と、もう一つは地方自治体が中心となっている都市計画、土地区画整理事業等々の中でのパブリックインボルブメント、住民参加ということについて質問させていただきたいというふうに思います。
 自分たちの町は自分たちでつくっていく、また、行政中心のまちづくりよりは、いろいろな人の意見を入れて、多様化する社会の中で、その価値観に対応ができるようなまちづくりをしていく、これがこれからのまちづくり、もしくは公共事業の進むべき方向だというふうに思います。
 去年私が担当させていただきました土地収用法の一部改正の法律の中でも、この住民参加という概念について大臣とも議論をさせていただきましたが、その後の国交省の住民参加、パブリックインボルブメントを促進していく取り組みと、また、その必要性について、まず概略的に大臣のお考えをお示しいただけたらというふうに思います。
扇国務大臣 大谷委員から、過日もこのパブリックインボルブメントの話をしていただきました。公共工事がなぜこんなに問題になったり、あるいはスムーズにいかないかというのは、私は原点にそこがあると思っております。それは大谷議員と共通の認識であろうと私は思います。そして、計画段階から、国民に開示をして国民に参加をしてもらって地元の意見を聞きながら、効率的に、地元に、より好まれる公共工事をするというのが私は原則であろうと思っております。例えば、さっきも申しました成田の国際空港等々も、一番最初から国民に開示をしてという参加型でなかったから二本目の滑走路に二十五年もかかった、こういうことも往々にしてあるわけですから。
 特に、昔と違って、今はインターネット等々で国民に、早く、直通で情報開示することができるような状況になっておりますので、私は、そういう意味では、より早く、よりわかりやすく、より明快な情報開示と国民との対話というものはできてくる、それを原点にしていきたいと思っております。
大谷委員 いや全くそのとおりだというふうに思います。
 今、計画段階からというお言葉がございましたが、そのもう一つ上の構想段階から、要するに、計画の選択肢がまだ並んでいる段階から住民参加というものをしていかなければいけないというふうに思います。
 これは局長がいいのかと思いますが、公共事業の範囲の中で、国交省の具体的な取り組みを教えていただけたらというふうに思います。去年議論させていただいたときも、道路行政の中ではガイドラインがつくられて、パブリックインボルブメントが推進されるよう頑張っておられるということですが、その後、去年の土地収用法の改正が終わって以降の御努力も含めて、教えていただけたらというふうに思います。
扇国務大臣 私がこの任に当たらせていただいてから、あらゆる面でパブリックインボルブメントを導入しようということで努力しております。事例を挙げればたくさんございますから、どの事例を挙げればわかりやすいのかなと思いますけれども、バイパスなど道路整備に関しましても、これはアンケート調査ですとか、あるいは委員会などによって地域の住民等の関係者の意見を必ず広く聴取し、計画に反映するというパブリックインボルブメント方式を取り入れております。
 また、都市計画決定に関しましても、これも、従来からの住民に対する公告縦覧、それに加えまして、平成十二年の十二月に、案の策定段階から原則として公聴会とか説明会の開催を行うべきことを周知徹底しようということで、これも地方公共団体に通達をいたしております。
 また、計画段階よりもさらに早期の、今大谷議員がおっしゃいました構想段階においても、幅広く情報公開と住民参加を促していこうということで、これが今後も公共工事に対する大変重要な第一歩であると私も考えております。
 また、道路事業につきましては、構想段階にあるすべての高規格幹線道路を対象にパブリックインボルブメントの導入をして、そして昨年の十二月から、これも例を挙げますと、東京外郭環状道路につきましても、有識者によります第三者機関というものを設置いたしまして、皆さん方のPIのプロセスについて審議をし、そして評価をし、助言をいただくということもしております。
 この外郭も、だんだん時間がたつにつれて高コストになってまいります。これも、私は、何としても私がいる間に目鼻をつけて、住民の皆さんの御理解をいただこう、このように考えております。
大谷委員 わかりました。
 局長にお伺いしたいんですけれども、道路の方のPIのガイドラインはできたというお話ですけれども、今、河川も含めて、全体の事業の中でガイドラインを作成しつつあるというふうにお聞きしておるんですが、そのガイドラインがいつぐらいまでにできて、どんな内容のものにしようとされているのか、お教えいただけないでしょうか。
三沢政府参考人 昨年の国会での土地収用法の改正の際の御審議、それから附帯決議等を踏まえまして、計画段階から、さらに早期の段階である構想段階において、住民参加を推進していくことが極めて重要であるということは、今大臣が答弁申し上げたとおりでございます。
 それで、現在、国土交通省所管の公共事業につきまして、構想、計画段階において幅広い意見を反映させていただくという観点から、事業特性に応じた情報公開あるいは住民参加など、運用面での整合性を確保するためにガイドラインを策定するということといたしておりまして、その策定に向けた作業を現在進めているところでございます。
 これまでに、それぞれの所管事業の中では現状どういうことをやっているかというような調査、あるいは論点の整理等を行っているところでございますけれども、これを踏まえまして、今年度中を目途に、構想段階でのいろいろな情報提供、あるいは住民参加のための具体的な措置など、各事業に共通的に実施すべき標準的な手続というものをガイドラインという形で定めていくという方向で、現在鋭意作業を進めているところでございます。
大谷委員 ぜひとも今の作業中の中でも意見具申をさせていただきたいと思いますし、できてからもがんがんやらせていただきたいというふうに思うんですが、少し踏み込んで、こんなものも考えているのかどうなのか教えていただきたいんですが、これは要するに、PI、パブリックインボルブメントを構想段階で義務化をするというようなこともしっかりと明記されていくんでしょうか。運用面でされていくということなので、法になってということは全く将来的には考えていないのか、どちらでしょうか。
三沢政府参考人 今回のこのガイドラインの性格でございますけれども、先ほど道路の話もございましたように、それぞれの所管事業の中でそれぞれのやり方でやっているものについて、横断的に見て、一つの標準的な手続としてこういうやり方があるのではないかということをお示しするということでございますので、ある意味ではその運用面での整合性を確保するという性格のものとして現在考えているところでございます。
大谷委員 三つほど提案させていただきたいというふうに思います。
 どの事業にも言える、物事の決め方のプロセスの中で共通しているのは、一つ私が思っているのは、事業計画をつくると同時に、PIを実施するんだという計画を、こんなPIの計画でこんな公共事業の計画をしておりますという、要するにPIの実施計画も同時につけなければいけないんだということを考えたらどうかなというふうに思うのですが、そのことについて御意見をいただきたい。
 もう一つは、どこの地域でもそうなんですが、PIをやったものの、アリバイ的なものになってしまっていて、反対している住民とか、もっともっとすばらしい意見を持っている住民の方、有識者の方がどこにお話をしたらいいのか。それはお役所に行ってお話をするわけですけれども、委員会というような形式立った、話し合いのできるテーブルなんというものがなかったりとか、つくる必要がなかったりしますから、いや、こうやってちゃんと来ていただいて、お話を伺いましたということだけで終わってしまったりするようなケースが多々あると思うんですね。
 そこで、実施計画でパブリックインボルブメント、住民参加のコーディネーターというような位置づけの人を必ず置きます。そして、コーディネーターという人はこの人ですよと。もし話がボタンのかけ違いなんかで食い違うようなことになってきたら、このコーディネーターの方が両方の間に入って話し合いの場をつくれるとかいうような権限とか、案を出していきますよというような人を絶対つくるということ。
 三つ目は、ある程度の事業予算になったら、もしくはある程度の規模の都市の地域において、いわゆるアメリカで言うところの、都市圏計画機構と訳すのが一番いいのかと思うんですけれども、町づくりをするときに常時意見を言いに行けるような場、意見を聞く場というものをつくっておいて、そこに平時の段階から意見を言うことができるようにするという、計画があるからパブリックインボルブメントをしてつくっていくというのではなくして、計画のない段階から、こんなふうにした方がいいんじゃないかという議論を常にしているような場を設けるという、この三つをぜひとも入れていただけたらなというふうに思うんですが、局長の方はこの考えに対していかが思われるか、御意見をいただきたいと思います。
三沢政府参考人 一点目の、計画とそれから計画策定のいわばプロセスなり手続というのをある程度一体的に明らかにすべきという点については、おっしゃるとおりであろうと思います。恐らくガイドラインの中でも、これからこういう計画を出すんだ、計画を策定するについては、これからこういう手続をとっていくんだということを、あらかじめある程度オープンに、わかるようにするということは大変大事だと思いますので、そういう点も踏まえて、よく検討をしていきたいと思います。
 それから、二番目の、どういう場で聞いていくかという点も大変重要なことだと思っております。コーディネーターというものについて、どういうやり方、どういう役割があるのかということも、今後検討が必要だと思いますが、やはり、具体的にどういう場で意見が言えるのか、そのことも含めて、あらかじめわかりやすく、しかも参加しやすいような手続を定めていくということも、非常に大事だというふうに思っております。
 三番目に、常設で置くかどうか。これは、各事業ごとというよりも、その公共団体の行政の受け皿としてどういう組織があるかという、多分もう少し幅広い観点での検討が必要かなという感じもいたしますが、引き続き私どももまたよく研究していきたいというふうに考えております。
大谷委員 ぜひ連携をとっていただきたいというふうに思っておりますので。
 これは道路の方で、ちょっとお聞かせいただきたいんですが、道路計画合意形成研究会提言、平成十三年十月三十一日のポイントという、これはレクのときにいただいたものです。道路はPIが一番進んでいるというふうに思うんですが、そんな中で、この研究会の提言の中で、すばらしいなと思うのは、道路整備をしない案も含めた代替案との比較によって検証とか、これにより都市計画手続の前に市民の意見を踏まえて計画を休止する手続を初めて位置づけと書いてあるんですが、これはちょっと、僕は最初はあれだったんですけれども、この提言はどんなふうにこれから扱われていくんですかね。もしだめだったら後で教えていただいても結構なんですが。
三沢政府参考人 ちょっと、申しわけありません、その道路の提言について、また後ほど、追って御報告をさせていただきたいと思います。
大谷委員 わかりました。
 それでは、次に、都市計画、まちづくりの中での住民参加について御質問させていただきたいというふうに思います。
 流れをざっと見ていきますと、昭和四十三年に都市計画法というものができて、公聴会の開催等による住民意見の反映というようなことから始まって、都市計画をつくっていくんだと。また、昭和五十五年には、土地利用計画制度というものができて、もっともっと頑張って住民参加、住民の意見を聞きましょうと。それで、本年は、都市開発の提案制度。これは私も自信と責任を持って本年の初めの通常国会で賛成をさせていただいた法律でございますが、要は、三分の二以上の土地の所有者の方の同意が得られるならば、NPOやまちづくり協議会の方が、既にある都市計画について変更の提案ができる、積極的に自分たちで自分たちの町をつくっていこうということができる、大きな一歩だというふうには思っています。
 しかしながら、それでは構想段階での住民参加になっているかというと、そこはまだまだこれから開拓していかなければいけない分野だというふうに思うんですが、その辺のPIについてどんなお考えをお持ちなのか、局長、よろしくお願いします。
澤井政府参考人 都市計画の決定手続におきます住民参加につきましては、先ほど大臣の御答弁のとおりでございます。
 都市計画決定は暮らしに大きな影響を与える、また、決定されますと一定の権利制限がかかるということで、そうしたことを法律上、最低限の手続的保障として決めているということでございます。
 あと、それをいかに実質的に運用していくかということが非常に重要だと思っておりまして、具体的な取り組み方というのは、地域によってさまざまなものはございますが、最近の例を二つ御披露申し上げたいと思うんです。
 一つは横浜市でございます。ここでは、平成四年から、地域住民の日常生活にとって非常に重要な街路であります恩田元石川線というものの都市計画決定に関しまして、当初、これは先生御指摘の構想段階に該当すると思いますけれども、当該道路を整備しないという案も含めて複数の案を地元に示しまして、沿線一万世帯を対象にアンケート調査を実施するなどによりまして、まず住民の意見の反映に取り組んでまいりました。その後、その議論の熟度が高まってまいりまして、現在では、この道路の具体的な都市計画決定に向けまして、例えば植樹はどうしたらいいかとか、どういう木を植えるかですね、それから歩行者空間をどういうふうにしたらいいかという、極めて建設的な提案が住民から行われているという段階まで来ております。
 また、もう一つ、所沢市の閑静な住宅地であります松が丘地区、ここでは、その住宅団地が開発された当初に、当該地域の良好な住環境を保全しようということで建築協定が締結されました。これは十年ないし二十年の有効期間がございまして、これを延長していくには全員の合意が必要でございます。いろいろな経緯がございまして、これを地区計画に転換していこうという動きが出てまいりまして、最近の動きの中でも、地域住民の間で約五年間にわたりまして、建築協定にかわります地区計画を決めようということで、一生懸命合意形成の努力が重ねられまして、ついに地区計画が定められ、またそれに基づく条例も制定されたという取り組みもございます。
 こうした取り組みもございまして、先ほど先生仰せのように、今度提案制度も創設されました。これは、従来、いわば公共側で案を提案し、それを住民が受けとめて意見を言って、計画をつくっていくという手続に加えまして、住民がみずから主体的に町をどうしようという提案をしていくということを制度的に位置づけたということで、仰せのように、住民参加がより実質的になっていくのではないかというふうに考えております。
大谷委員 横浜のケースは勉強させていただきました。
 これは、具体的には自治体の首長さんのリーダーシップというのがかなり大きいですよね。PIの中で、余りリーダーシップを発揮する気のない首長さんですと、進んでこないということになりますよね。今、都市計画法の中でいうと、構想段階でも何かやりましょうよというのは特に定められていませんし、やはり自治体のやる気にかかってくると思うんですが、そこを促すようなガイドライン、そこを促すような御努力というのは、国交省の方は何かなされているんでしょうか。
澤井政府参考人 市長、知事、そういった首長のリーダーシップ、非常に重要だと思います。あわせまして、最近でいいますと、さまざまな専門的な知識を持って、住民の皆様方にいろいろな情報を提供し、いろいろなノウハウを教えるようなNPOの方々の取り組みも非常に重要になっていると思います。
 そうした中で、私どもでは、最近の平成十二年の法改正に伴いまして都市計画運用指針を出しておりますが、その中では、例えば公聴会、説明会、これは原則として開くべきであるということに加えまして、かなり早い段階から住民の意見を反映させるための措置として、例えばアンケートを実施することが有効だよ、あるいはいろいろな専門家の指導も得ながらいわゆるワークショップ、いろいろな提案をし合いながら案を練っていくというようなことも実情に応じては実施することが望ましいよというようなことも申し上げております。
 また、今申しました十二年の都市計画法改正では、都市計画決定手続、先ほど言いましたように、法律上は権利制限等の観点から最低限のものを決めておりますけれども、公共団体がその実情に応じて、その判断で、例えば縦覧期間は法律上は二週間となっておりますが、これをより長くした方がいいと思えば、条例でそういうことができるということもあえて法律上規定しております。
 また、リーダーシップということがありまして、提案制度ということもできましたが、こうした制度の着実な実践がもちろん重要でありますけれども、例えば、今我々が、自分が住んでいる地域が都市計画でどういう用途地域に決まっているか、住居専用地域なのかあるいは普通の住居地域なのか商業地域なのか、またその決まっている用途地域の中で、容積率あるいは建ぺい率が幾らなのかということを日常的に知っている人というのは実は極めて少ないというのが実情であると思います。逆に、自分で土地を買ったり家を建てたり、あるいは近隣で何か、よく最近ありますけれども、トラブルが起きたりというときに初めて、ああ、都市計画がこうだったんだということを認識するというのが、残念ながら多くの場合、実情ではないかというふうに思います。
 取り組みの一例を申しますと、例えばある市では、その市のホームページの中で、住民の皆さんが自分とのかかわりがよくわかるような形で、都市計画がどのように決まっているかということをホームページに掲載しまして、常時その計画について質問や意見を受け付けるということを始められたところもあります。これは大変重要な取り組みだと思っております。
 こうした地道な取り組みの積み重ねによりまして、日常的に住民の皆様が、生活環境のありようの基本を形成する非常に重要な都市計画に、より関心を持つようにしていくということが、都市計画分野では、まちづくりあるいはさまざまな建築活動をルールに従ってより円滑に進めていくという観点から、そのいわばファンダメンタルズの一つとして大変大事ではないかというふうに思っております。
大谷委員 情報公開によって住民、市民の皆さんのまちづくりへの思いと意識というものが高まっていく、その取り組みを促しているんだというお答えだったというふうに思います。本当に、意識を高める努力をしていかなければいけないと思う。
 例えば、最近よく住民運動、市民運動で起こっているのは、こういうことなんですよね。
 一戸建てを買いました。ここがこれからの一生の住みかだと思って、頑張って暮らしている。土曜日、日曜日は、自分のリビングの窓から見える里山、これを見てほっとして、ああ、この地域に引っ越してきてよかったな、おれもこれで家長というか、一つの持ち家を持って一人前になったな、そんな気持ちで土曜日、日曜日を過ごしている。ある日ふと見ると、その里山がはげている、ショベルカーとユンボで崩されている。え、この山があったからこの地域に一戸建ての家を買ったのに、何で、おれが何も知らないうちに、一週間で山が半分に削られているんだと。
 それは、いわゆるマスタープラン、都市計画の中で、この山を残すか残さないか、これは残さなくてもいいですよ、住宅地にしてもいいですよという区域だったから山が削られているわけなんですよね。地主さんは業者さんに頼んで、市に許可をいただいて、マンションにしたいとか、もしくは宅地造成をしたい、土地区画整理事業にしていただきたいとかということができるわけですよね。しかし、その山を毎日見ている人、毎週末にその山を見て自分の一週間の疲れをいやしている地域の住民にとっては、急に山が削られちゃうわけですよね。
 おっしゃったとおりに、ここの地域が何に使えるのか、この山が残るのか残らないのかというようなことを知ってその地域で暮らしている人はほとんどまれです。こんなことが起きた場合、どうなっているんだと、急に市に行きます。仲間、地域の住民さん同士で話をします。そして、では、ちょっと市に行ってみようと。あんなの勝手にしてもらっちゃ困るじゃないか、あんな里山があってすばらしいところだから、私たちは誇りと安らぎを感じながら暮らしているのにと言います。いや、あれはもうマスタープランで、平成五年以降、ある地域では平成六年に、ある地域では平成十年ぐらいに都市計画というものをつくり直して、皆さんに聞いたら、皆さんが、あそこはこれでいいですよ、山を削ってもいい、住宅地にしてもいいところですよと言いましたと言われる。
 どんな住民参加をやったんですかと言うと、いや、五千人の方にアンケートをいたしましたと。アンケートって、何を見せたのと言ったら、初めからもう計画があるんですよね。この計画を見せて、自然との共生。こっちの自然と、こっちが住宅地で、我が市においてはこれで自然との共生です、皆さんいかが思いますかと言ったら、それは自然と共生しましょう、うんと言うに決まっていますよ。
 だけれども、自然との共生というのはいろいろあります。私の住んでいるところの目の前にある林を一緒に残して暮らしていく、これも自然との共生だというふうに思います。そんなふうに選択肢が出ていないのに、アンケートをしてどうですかといって、自然との共生と書いてあったら、うんと言うに決まっているじゃないですか。
 そこの部分がパブリックインボルブメントができていないなと僕は思う。それゆえに、住民運動とかというようなこと、要するに、マンションの建設反対だとか宅地開発の反対だとかというような運動が起こってくる状況を生んでしまっているというふうに思うんです。僕自身、回答を実は持っていません。しかしながら、何らかの形で、構想段階でPI、パブリックインボルブメントをすることによって、何とかそんな厳しい反対運動や、暮らしていて突然自分の窓から見える山がなくなってしまうということを防げるんではないかというふうに思っているんです。
 その辺、局長、何か自治体のリーダーシップというのが大事、情報公開で皆さんに意識を持ってもらうことが大事というのがありましたけれども、法制度でがちっとやってしまうことでもなく、その地域、事業の内容によって違うとは思うんですけれども、国交省として促すような、住民が急に山がなくなってびっくりしてしまうことがないようにするための何か施策というのは考えないといけないと思うんですが、行政のプロとしていかがお考えでございましょうか。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
澤井政府参考人 緑の事例を引いて御質問でございましたので、緑に関してまず申しますと、制度的には、建築行為とか木を切ったりすることを基本的に制限する緑地保全地区という仕組みがございますし、それから、建築と緑がほどよく調和して保全されていく風致地区という、少しやわらかい制度もございます。そういうものが指定されていれば、今御指摘のような現象は起きないわけであります。
 都市計画を近隣について全部見ていれば、緑があるけれども、そういう制度がかかった緑なのか、かかっていない緑かということもわかります。提案制度を活用して所有者の方ともいろいろなお話をして、ではそういったものをかけてこれを保全しようということは十分可能だと思います。
 ただ、一方で考えなければいけないことは、所有者には所有者の事情がございますし、もちろん、その土地をどのように使うかということは、都市計画等で決められたルールの中では自由であります。都市再生特別措置法のときの議論でも、事前明示性というような議論も相当申し上げましたけれども、一方で、そういった所有者側から見ますと、ここではそういうルールがあるんだから、そのルールの中で建築行為をしたり木を切ったりはできるということも十分にしんしゃくする必要があると思うんです。
 そういった意味で、日ごろから、この辺の町をどうしたらいいかということをみんなが考えるような、先ほど、ホームページで都市計画を常に示していろいろな質問、疑問にも答えるというような体制などが最も基礎的には有効なのかなということを最近は考えております。
大谷委員 情報を開示していって、意識を持って皆さんに見ていただくということが解決につながるんではないかということでしたけれども、ホームページ、いろいろなネットが多い中で、ずっと見ているという人も少ないと思うので、やはり僕はもとに戻って、何らかの形で常時まちづくりについて話がしに行ける、もしくは、どんなまちづくりを考えているんですかといって、行政から嫌な顔をされず邪魔にもされずに教えてもらえるような、そんなところを、市ではなくもう一つ大きな範囲の中で常設していくような、そんなに人が要るわけではありませんから――必要があるのかな。そのことも意識を高めていく努力になるのではないかなというふうに御提案をさせていただきたいというふうに思います。
 今度できてくるガイドラインを楽しみにしながら、しつこくPIというテーマでこれからも頑張っていきたいというふうに思います。みんなでともにつくる町が、勝手に行政だけでつくった町よりかすばらしいんだ、事業者に任せただけの開発よりか、いろいろな人が入って考えたものの方がすばらしいんだという方向性で、ぜひとも国交省の行政にもそんな意識で頑張っていただきたいというふうに思いますし、私自身も、提案また点検させていただきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
久保委員長 井上和雄君。
井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄でございます。
 本日は、国土交通省が現在検討しております成田、関空、中部の三つの国際空港の民営化の計画に関して、大臣に御質問したいと思います。
 この問題については、ここ数日、幾つかの新聞でも報道されております。マスコミの論調を見ますと、関空救済策だとかコスト意識がないとか、かなり批判的な意見が強い。これはすばらしいアイデアだとか、国交省の努力を評価しているという意見は余りないように思います。私も、どうも関空救済なんじゃないか、それだったらそれで、はっきりそういうふうに言っていただいてもいいんじゃないかなというふうに思っておるんですけれども。
 この三つの空港の民営化というのが、交通政策審議会の航空分科会で八月中に中間報告を出されるというわけで、まさにもうすぐ七月もおしまいですので、この時期に、ぜひ大臣の御見解をお伺いするということが非常に意義があるんじゃないかなということで、きょうはこの問題を取り上げさせていただきます。
 私、昨晩、昭和五十九年の四月十三日、衆議院運輸委員会での、関西空港株式会社法案が議論されている議事録、こんなに厚いんですよ、これをずっと読んでいました。このときの委員会の議論の中心の一つは、なぜ関空をいわゆる特殊会社としてやるんだという議論がかなり多かったですね。当時の細田運輸大臣が、すぐこの空港をやるためには、資金調達を多様化することが必要だし、民間活力を利用することがいいんだという答弁をされています。
 また、この法案の採決の前の賛成討論というのがありまして、自民党の中馬先生がこうおっしゃっているんですよね。つまりは、本法案における株式会社方式は、事業の効率的な運営が行われるよう、国の監督措置を必要最小限度にとどめ、企業の自主性を最大に尊重する中で民間活力の導入を意図したものである、今日の国の財政事情を勘案するなら、まことに望ましい方法がとられていると言えましょう、この方式は、今後地域性の強い公共事業の実施のモデルケースともなり得るもので、その成功に期待したいと思いますということが、法律の賛成討論の中で述べられているんですね。昭和五十九年ですから、大分昔の話になります。
 こういう背景を持って関空が成立して、今回、国交省の上下分離案というのが出てきているのを見ますと、地域性の強い公共事業のモデルケースで成功に期待したいと思っておられたこの計画が、どうも失敗したと認めざるを得ないんじゃないかなというふうに、私思いました。
 中部空港の方でも、私今回、平成十年三月十七日の衆議院の運輸委員会の議事録をずっと読んでみました。中部の方は、指定法人というんですか、指定会社というんでしょうか、国の出資も関空に比べれば多くて、五〇%で、いわゆるPFI方式だと。資金調達の多様化や事業の効率的な運営を図る観点から、民間活力を利用して社会資本の整備をする、そして、民間の株式会社が空港の設置管理をすることによって、弾力的かつ効率的な空港の建設、運営を行っていくことが適切であると、当時の藤井大臣もおっしゃっているわけですね。つまり、こういう背景を持って関空、中部ができてきた。
 ところが、中部の場合は、もう既に民間会社とみなしてもいいんじゃないでしょうかね。現在の出資者の方が、現行スキームを前提に出資しているので、スキームを変更するということは出資の見直しにつながる、こういうことも言っているわけですね。国交省の方は、関空の救済ではなく、各空港の体力が違うから、それを平準化しなければ利用者間に不公平が生じるんだと言っていますよね。どういう不公平かというと、これは恐らく、関空の着陸使用料が高くなって、空港の利用者にとっては不公平になるんだということなんだろうなというふうに私は思うんですね。これはやはり関空の救済じゃないかなというふうに思うわけですね。
 今申し上げたように、成田が特殊法人で、関空が特殊会社、中部が指定会社ですか、もともと生まれが違うものを、三空港全体で負担を平準化していくという考え方自体が、ちょっとおかしいんじゃないですかね。これを上下分離にしてしまうと、成田が相当大きな負担を負うことになってしまう。成田の完全民営化というのは難しくなっちゃうんじゃないでしょうか。例えば、成田の場合だと、空港事業収入の約一二%が関空、中部に移されることになるということを、国交省もシミュレーションしているわけですよね。
 だから、関空救済じゃないということならば、三つの空港をそれぞれ別々にやっていったらいいんじゃないでしょうか。関空、中部に関しては、国の出資金を段階的に引き下げていくとか、そういうことをやっていった方がすっきりしていいんじゃないでしょうか。大臣はどういうふうに思われるか、御意見をお伺いしたいと思います。
扇国務大臣 井上議員から、今一番皆さん方が関心のある、また、どう決着するのかなとお思いであろうと思います。また、今御本人から御説明ございましたように、成田の生い立ち、あるいは関空のできるときの伊丹との連携、あるいは新たにできる中部国際空港、それぞれ全部時期も違いますし、成り立ちも違います。
 それは、そのときの事情によって、関空のときには、なるべく早くつくりたい、国際空港を関西に持ちたい、伊丹は満杯である、しかも日本には二十四時間空港オープンのところがない、地元の財界も金を出す、地方自治体もお金を出します、第三セクターにしてください、つくるときに皆さんそうおっしゃって、その当時は一番いい選択方法であったと私は思っております。ただ、伊丹との関係は、これはまた別でございますけれども。成田も関空もそれぞれ、当時の財界も、経済が上り調子になりかかるときでしたから、金を出しますよと、自治体も頑張りますと、そういうことで第三セクターになったわけでございます。
 それが、井上議員は間違っていたんじゃないですかとおっしゃる。間違いではなくて、その当時はそれが最良だったわけですね。ところが、御存じのとおり、昨年の九月十一日の米国の同時多発テロ、あれ以来、日本だけではありません、世界的に航空需要が減った、そして太平洋路線は半減してしまった、需要が下がっている、これはもう事実でございます。特に関西は経済的に一番疲弊している、閉塞状態に陥っている、これも事実でございます。ですから、そういう意味では、出発のときは最良を選んだつもりでも、現在の状況を考えると今は必ずしも最良でないというのは、井上議員のおっしゃるとおり状況変化というものが起こってきた、それは事実でございます。
 また、成田も、きょう朝から御論議いただきましたように、国際空港で日本の玄関口だといって、あれだけ反対の皆さんの闘争を押し切って、滑走路ができ上がってから十年たってオープンしたんです、一九七八年でございました。初めてオープンするときには、もうでき上がった滑走路がひび割れしていました。それくらい、先ほどの大谷議員の話ではないですけれども、成田をつくるときにPIができていなかったということで、そういう状況でオープンした。
 しかも、近隣諸国はもとより、途上国でも、国際空港で一本しか滑走路がないという空港は国際の名に値しない、そう断言してもいいくらい私は情けないと思っています。将来日本がアジアの、あるいはヨーロッパを含めた、ハブ空港たり得るものを幾つ持つべきなのか、またハブ空港たり得る資格を今有しているかどうか、そういうことから考えると、本来は、公共工事という名前がつく限りは、国が責任を持って全部していくというのが当然であろうと私は思うんですよ。もうかるものには黙っていても民間は手を出します。けれども、社会資本整備は国としてどうあるべきか、日本は、社会資本整備でこの程度国際空港をつくるべきだと、これは私は基本だと思っています。
 先ほども、グランドデザインはどういうふうにするんだという御質問がありました。私は、今申し上げましたように、本来は全部これを公共事業で、皆さん方からいただいた税金で賄って、国の玄関はこれですよと全部国費でできるというのは理想だと思っています。それがむだのない公共工事にできるということだと思っておりますけれども、日本の財政事情と早期着工、早期完成という目標からすれば、その時代その時代で、万やむを得ない方法で早期着工に、早期完成に導いていったというのが現状で、今考えれば、やはりあの当時はあれだったんだなと。
 井上議員がおっしゃったような反省も含めて、我々は、今言ったような、日本の顔として、二十四時間空港は、今関西が財界が疲弊しているからといって二期工事に金を出さないということではなくて、苦しい中でもみんな頑張っているわけですから、そういう事情がそれぞれ出生の差によって出てきているということだけは私たちも認め、なおかつそれを何とか、でき上がったものを、産んだ子供を平均に育てていきたいという願いを込めているということはおわかりいただけると思います。
井上(和)委員 まず大臣がおっしゃった、とにかく空港は公共財だから国がしていくのは当然だということに関しては、もうこれは議論の余地がないと思いますね、当然だと思いますね。
 関空の場合も中部の場合も、特殊会社ということで始まったというのが当時としては最良だったということも私は認めます。
 けれども、この関空の議論が衆議院の場でなされたときに、やはり当然将来の需要は変わり得るということも議論されているわけですね。逆に、民間会社であるということは、そういった将来のさまざまな変動に対しても柔軟に適応することができるということなんだと思うんですよね。
 もともと関空建設の前提というのは、航空審議会でも伊丹空港の廃止というものが答申されていたというふうに私も聞いているんですね。現行の伊丹の発着回数が年間十万回で、関空が今十二万回です。これを両方合わせると二十二万回なんですね。関空の方が、第二期工事が完了すれば処理能力が二十三万回になる。つまり、関空が最終的に完成すれば、伊丹はもう要らなくなっちゃうだけの処理能力が関空だけで十分にあるということなんだと思うんですね。つまり、伊丹をどういうわけか、残すんでしょうかね。そういうことで関空が過剰な能力を持つということになっちゃった。国交省の需要予測でも、二〇一〇年十七万回と予測したわけですから、これは関空の二十三万回の発着回数、処理能力というものに比べたら随分少ないですよね。
 済みません、これは質問通告していないんですけれども、ぜひ大臣に忌憚のない御意見をお伺いしたいと思うんですけれども、第二期工事をどういうふうに思っているわけですか。
扇国務大臣 井上議員がおっしゃるとおり、昨年の同時多発テロ以来、航空需要が我が国のみならず減少してきておるということは事実でございます。国としての選択をどうするかというのは、私は国民の多くの皆さんの御理解をいただけるところだろうと思っておりますけれども、例えば、わかりやすい言い方をすれば、今伊丹が十万回、そして関空が十一、二万回ということでありますけれども、これも、二十四時間オープンで、日本の玄関口を広げて、さあお客様来てくださいというのか、お客様の需要があるから改めて玄関を広げようという工事にかかるのか、鶏と卵の論議だろうと私は思うんです。
 けれども、先ほど私が申しましたように、国際空港という看板をつけて一本の滑走路であるという。国際空港の看板が泣くと思います。国際という看板をつけた以上は、私は二本の滑走路というのが最低条件であろうと思いますけれども、諸般の事情で、とりあえず一本でオープンしたというのが日本の現状でございます。
 ですから、隣の仁川でも、あっという間に四千メートル級を二本つくって、一年間に百万人の観光客を導入するんだという、これは国の政策なんですね。シンガポールも、あるいは中国の上海も、みんなあっという間に飛行場を完備しました。そして物流コストも下げてきた。
 そういう意味では、二本目の滑走路に二十五年かかったらコストアップするのは当たり前の話。これでは着陸料が下がらないというのは当たり前なんですね。アメリカのケネディ空港、着陸料二十八万五千七百円、フランスのドゴール空港もそうです、イギリスに至っては七万八千円台の着陸料。日本は九十万台です。これでは国際的に勝負ができないんです。
 ですから、関空も財政的には本当に苦しいところですけれども、約束どおり二期工事を完成させて、そして上下分離ということを私が言っておりますのは、関空もこの間いらして、みんなに言いました。関空の橋を渡るのにお金を取って、飛行場だけではなくて、あれだけ海にすばらしいビューを持っているんですから、子供や家族連れで、関空の二期工事ができ上がったところにいろいろなエリアをつくって、サンセットクルーズをつくってもいい、あるいはサンセットを見るレストランをつくってもいい、みんな関空へ行くことが家族のレジャーの楽しみにもなるというようなことを上下分離にして民間で考えたらどうですかと言ったのも事実でございます。
 私は、井上議員が今おっしゃいますように、伊丹を廃止するというのは、本来は当然だと思います。なぜかというと、伊丹は、米軍が使って返還されたときに千六百億です。ところが、周辺整備、騒音防止に七千億弱使っています。これでは立ち行かないんですね。そういうことも国民の皆さんには知られていないということも、私は、何としても日本の先行き感があるときに、先ほどの大谷議員じゃありませんけれども、PIが徹底していないということで、そういうパブリックインボルブメントの徹底がなかったということが悲劇を生んだ大きな原因でもあろうと思っております。
 卵が先か鶏が先かという論議ではなくて、国の政策としてどれをとるかということが基本だと私は思っております。
井上(和)委員 大臣の御答弁を聞いていても、これはもう完全に関空救済策だということをお認めになっているんじゃないかというふうに思うんですよ。
 おっしゃるように、もし関空にどうしても二本目の滑走路が必要だということだったら、それは国費でやればいいんじゃないかというふうに思うんですね。
 今おっしゃったように、上物の民営化というのは、私もこれは非常にいいと思います。つまりは、民営化すれば透明性とか効率性、これが非常によくなるわけですから、これに関しては非常にいいからどんどんやるべきだと思うんですね。
 それで、今マスコミなんかの論調を見ても、問題になっているのは、下物をどうするか。成田、関空、中部の三空港の土地や基本施設を一つの法人にまとめるということがちょっとおかしいんじゃないのと。なぜかといえば、成田が非常に大きな負担を背負うと。国交省が出している試算でも、現在、成田が九千七百億ですか、関空一兆五千億、中部が五千百億円、全部で三兆四百三十七億円をすべて下物法人が負うということで、成田から関空には、特定債務等処理勘定という会計処理によって毎年百二十七億、つまり全部で四千二百億、中部には毎年二十八億、全部で九百億ずつ補てんをする。これは、以前大蔵省が余りもうかっていない銀行につぶれそうな銀行をくっつけて合併させたということをやっていたことがあるんですけれども、それと同じものじゃないか。
 つまり、成田ですら今着陸料も非常に高い高いと言われているわけですね。これをどうやって下げるかということが非常に大きな課題だと。一体幾ら下げられるかもまだわからないですよね、これはまだやっていないわけだから。民営化してどんどん下げていけばいいんだけれども、それをやる前に、もうかっていないところがあるからそっちに回しなさいというのでは、これは成田を運営する方も、どうなっているんだと言いたくなるんじゃないですかね。
 だから、成田からほかの空港にお金を回すということが空港問題の本質的な解決にはどうもなっていかないんじゃないかというふうに私は思うんですね。どうでしょうかね、大臣。
扇国務大臣 井上議員の御議論は御議論だと思います。
 私がなぜ上下分離ということを言っているかというと、私は安全面で言っているんです。日本は地震国でもございますし、空港というのは、下が安全でなければパイロットはおりてきません。空港こそ着陸するところが一番安全でなければならない。そういう意味で、国が責任を持つべきであるということから、上下分離。上は民間で、知恵を出してもうけていただいて、いろいろなアイデアを出して、そしてテナント料を払っていただいて、効率を上げていくということで、必ずしも、上下分離をしたら国がもうからない、着陸料が下がらないということではなくて、利益を上げて着陸料を下げるために私は上下分離にしたいと。今のように、いつまでたっても二本目の滑走路ができないということでは、つくるたびにコストアップになるんです。
 御存じのとおり、成田空港の着陸料は九十四万八千五百円です。関空は、今の着陸料は九十万八千五百円。これが関空の着陸料なんです。先ほど言ったように、欧米先進国の三倍も取っているんですから。二十四時間オープンだと言っても、これが下がらなければ日本の国に来てもらえない。ハブ空港というけれども、ハブにするためには、玄関口を広げて世界にこれだけ安くしましたと言わなければ、お客さんはいなくなるんです。
 ですから、私は今言ったように、我が家の玄関を広げるんじゃなくて、空港というのは年数がかかるわけですから、二本目の滑走路も安全ですよ、下は国が責任持ってやっていますよといって、着陸をしてください、さあ来てくださいというのが国の政策として必要であるということを申し上げている。
井上(和)委員 私は、大臣の今の御答弁とは違う考えを持っています。別に、民間がやったからといって、危険になるということは決してないと思いますね。当然、さまざまな分野で民間が国民の生命を守りながら運輸事業に従事しているわけですからね。だから、それは余り説得力がないんじゃないかと思うんですね。
 議論がかなりこんがらがっちゃっているんですけれども。
 つまりは、空港ごと、単体ごとで上下分離をしていくというのは、割と責任がはっきりして、いいんじゃないかと思うんですね。ところが、国交省の案の中には、三空港それぞれを上下分離させた案というのがないんですね。これは恐らく意図的だと思うんですけれども、ぜひこの案を入れてください。千葉県の方では、単体で上下分離してくれという要求も出ています。そうすれば、割と責任がはっきりして透明性も高められるし、こっちの空港からこっちの空港にお金を移すとか、そういう必要性もなくなりますから、ぜひそれを国土交通省にお願いして、時間がないのでほかの問題に移ります。
 これは最近の新聞報道に、自衛隊員の方々が訓練のために迷彩服、つまり戦闘服を着て民間航空の定期便で移動しているということが報道されているので、ちょっと防衛庁の方にお伺いしたいと思います。大臣の方は質問はありませんので、ちょっとリラックスしてください。
 七月、人数でどのくらいの数が移動しているかというと、七月七日にJASの一三五便で、羽田から出て釧路に行く便ですか、二十四名、七月五日はJASの一三五便で十八名、七月五日JALの五一一便で十五名、七月七日JALの五三一便で十五名、また七月二十八日、今度の日曜日にも五十名以上の自衛隊員が移動をするということになっていますね。
 何でこれは迷彩服を着て定期便を利用して移動しなきゃならないのかなというのが、私どもの率直な疑問なんですね。本来、迷彩服を着てすぐ訓練のために移動するんだったら、やはり自前の輸送機を持ってやらなければ訓練にならないんじゃないですかね。ぜひ防衛庁、お願いします。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 なぜ民間機を自衛隊が使うかというお尋ねでございますけれども、私ども自衛隊というものは、武力攻撃に際しまして国民の生命財産を守るという任務を持っておるわけでございますけれども、自衛隊の部隊が、駐屯しているところから、武力攻撃が発生する場所に駆けつけなければならないという問題を私どもは常に抱えておるわけでございます。
 それで、その移動につきましては、陸上輸送、海上輸送、航空輸送と、いろいろな輸送手段を考えておるわけでございますけれども、航空輸送の場合においても、先生の御指摘のとおり、私どもは自前の輸送手段というものを持っておるわけでございますけれども、武力攻撃の規模あるいは態様によっては、私どもの輸送手段だけでは対応できない場合が十分想定されるところでございます。この場合には、民間の交通手段を使って現場に駆けつける、こういうことを想定しているものでございまして、その考え方に立って日常の訓練も行われている、こういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。
井上(和)委員 異常事態が発生したときに駆けつけるために民間航空機の定期便を使っているというんじゃ、僕は本当に大丈夫かなというのが率直な印象ですね。
 本当に緊急だったら、まずチャーター便をすぐ飛ばすとか、何かやらなきゃお話にならないし、定期便を利用して行くというのでは、緊急性がないからというふうにしか理解できないんですね。もし緊急性がないんだったら、わざわざ戦闘服を着ないで、やはり民間人と一緒になるわけですから、新しい格好いい制服でもつくって、そういう制服を着せてあげて、国民にアピールするような格好で移動した方が僕はいいと思いますよ。ぜひそういうことを考えてください。
 ちょっと時間がないんですが、もう一問だけ。
 今有事法制というのが国会でも審議されていますけれども、有事の際の民間航空機の利用というものに関して、今どういう議論がされているんでしょうか。防衛庁にお伺いします。
守屋政府参考人 有事の場合の航空機の輸送についての御質問でございますけれども、当然私ども考えておりまして、原則としては自衛隊の輸送機を使って現場に駆けつけるということでございますが、規模、態様によりまして私どもの航空機の手当てがつかない場合、あるいは大量に物資を運ぶ、あるいは要員を運ぶという必要が生じた場合には、どうしても民間の輸送機関に頼らざるを得ない場合があると考えております。
 この場合でございますが、原則としまして、契約によって対応することを考えております。ただ、場合によって、緊急を要する場合には、自衛隊法に百三条という規定がございまして、都道府県知事から輸送業者に対しまして業務従事命令を出して私どもの荷物を運んでもらう、こういう法制が自衛隊法の百三条ででき上がっております。
井上(和)委員 いずれにしても、定期便を利用していこうという考えは恐らくないと思うので、ちょっと今の件に関して十分検討していただきたいと思います。
 私の質問はこれでおしまいにします。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 私の方からは、この一般質疑、今国会が最後になろうかと思いますけれども、国土交通省の前身の官庁、旧建設省、旧運輸省、旧国土庁等が統合されて新しいこういう役所がスタートをして、大臣もこの委員会でたびたび御発言されていますように、総合的にその成果を出していきたいというお話があるわけです。
 私は、最近地元へ帰ったときに、非常に話題になっております市町村合併に関する問題について、国土交通省という役所側として、もう少し本当の地域づくり、国土づくりという観点から、しっかりと意見を言っていただいた方がいいんではないかなという思いを持っているわけです。
 なぜかといいますと、どうも最近の市町村合併の話題のときによく出てくるのは、合併すると財政的に優遇措置がある。当然、今合併の具体的なスケジュールに乗っかりながらいろいろな協議的なものがスタートしているのは、どっちかというと財政的に厳しい、そういう町なり村なりがその対象になっているわけですね。そういったときの議論が、余りにも財政誘導策といいますか、そういうものに振り回されているということを非常に気にするわけです。
 これは、当然、皆さん方御存じのとおり、明治の大合併、昭和の大合併、それから今日、平成大合併を目指すということの位置づけでございますし、半世紀に一度ぐらいは大合併があるというふうにも言われておりますけれども、基本的には、この大合併というか市町村合併というのは、私たちが生活する上での最小単位の行政単位を決める、そういう大変大事な議論だというふうに思います。
 それは、より安全な町であってほしいというふうに思いますし、住みやすいところであってほしいと思いますし、いろいろな面で地域資源が生かされた、そういう特色のある地域であってほしい。かつての歴史的なもの、伝統的なもの、そういう文化的なものもしっかりと生かしてほしい、そういう志がそれぞれ皆あると思うんですね。
 特に若手の方々で、自分たちの生まれ故郷を将来的にこうしたいという問題意識を持っている方々は、合併問題については、割とまじめに、地域づくりという観点からいろいろな議論をしたがっておりますけれども、どうも市町村長とか議会の議員の方々のレベルになると、何か当面の財政問題に終始している、自分たちの地域の本当の将来像といいますか、そういうことについての真剣な議論はちょっと欠けているなという感じがするわけです。
 私は、大体言いたいことはわかると思いますけれども、そういう観点で大臣のお考えを幾つかお聞きしたいわけです。
 私は考え方が古いといえば古いかもしれませんけれども、やはり余り自然に逆らうべきでないというのが基本にあるわけです。基本的に我々は河川の流域単位で生きているのが非常に多いわけでございますし、かつての藩政時代も、一つの大きな河川の流域単位でのそういう藩政があったと思いますけれども、そこの中でいろいろな特色を生かした地域づくりが当時あったと思います。
 そういう面で、特に、国土交通省という役所はもちろんそうですけれども、前身の建設省なり国土庁、そういう官庁は、地方生活圏とか、それから地域づくり、まちづくり、村づくりという観点で、いろいろな行政に取り組んできた経過があるわけです。今日、国土交通省の所管の中でも、当然ながら、大臣も常々、美しい郷土づくりといいますか地域づくりという観点で、住みやすい地域をつくっていきたいという中で総合的な施策を展開したい、そのためにいろいろなグランドデザイン的なものも必要だということを強調されているわけです。
 そこで、私は大臣の基本的なお考えを確認したいわけですけれども、最近のこういった、どっちかというと財政誘導策に振り回されたような嫌いが若干する市町村合併の話題を、国土交通省側からの一つの青写真といいますか、下敷き的に、こういうこともぜひ参考にして市町村合併を議論してほしいですよということをしっかりとおっしゃっていただいた方がよろしいんではないかなという感じがするわけです。
 それは、先ほどちょっと触れましたように、例えば河川の上流、下流域の市町村が、今分かれているとすれば、どっちかといえば、そういうところが合併する方が、私は、水資源の確保という観点からもそうですし、それから水質の汚濁対策といいますか汚染対策を真剣に議論するためにも、上流域と下流域が合併するような考え方の方がもっと問題意識が持てるんではないかなという感じもします。また、いろいろな面で、観光資源という観点からも、魅力ある地域づくりという観点からも、そういう河川の上流、下流域の市町村が一つの合併を目指すということもあっていいんじゃないかと思いますけれども、今、そういうことは余り関係なく、どっちかというと、さっき言ったように、非常に財政的に厳しいところが財政的に豊かなところに引っ張られやすいような議論が非常に多いわけです。
 そういういろいろなケースがあろうかと思いますけれども、私は基本的に、国土交通省の行政という一つの柱からしましても、今日のこの合併問題に対してしっかりとした御意見をおっしゃった方がよろしいんじゃないかと思いますけれども、そのあたり、大臣のお考えはいかがでしょうか。
扇国務大臣 今、一川議員から、新たな二十一世紀の国土づくりの一つの方法論として、私は一川議員と一緒に勉強させていただいた中で、一川議員は今でもお変わりがないと思いますけれども、全国の三千三百の市町村、それを約千にしようという自由党さんの基本的な政策を我々は一たん勉強いたしました。千のブロックに、道州制も含めてですけれども、三千三百を千にするためにはどうしたらいいか、それには少なくとも大体人口三十万くらいでくくったらどうかというような勉強も御一緒にさせていただいたこともあります。
 今、一川議員から、最近の市町村合併というのは財政的な面にとらわれ過ぎるのではないかという御指摘がございましたけれども、確かに一川議員がおっしゃるように、そういう財政的な面での市町村合併というものもある意味では考慮されつつある、それも私は否定するものではありません。
 戦後、大変人口流動が不安定でございましたけれども、今日までたちましてやっと、私は、人口の流動化とか人口の定着度、そういうことを考えますと、本当に落ちついてきたんだと思います。ですから、そういう意味での市町村合併というのは、新たな人口体系の中での市町村合併という論も出てまいりますし、また、少なくとも市町村合併によって行財政の基盤を確立する、これはもう当然のことですけれども、市町村の規模だとか能力だとか、今私が例に挙げましたように、千にするにはどの程度の市町村の基盤があるべきであるか、そういうことも私は大事なことであろうと思っております。
 また、平成十三年の八月三十日、一川議員御存じのとおり、政府として決定いたしました市町村合併支援プランというのがあります。その支援プランによっては、少なくとも市町村合併支援道路整備事業、これは国土交通省に関係ありますけれども、合併したところの道路整備事業、あるいは市町村合併の記念公園、これも国土交通省の所管でございまして、この合併の記念公園もつくるべきである。
 さらには、今おっしゃいましたように、流域の下水道事業、または地方のバスの補助事業、これも市町村合併によって不利にならないような特例を設けるということも言われました。これも国土交通省の所管でございます。
 また、現在、今一川議員がおっしゃったように、河川の流域市町村が合併する場合には、その一体化を促進するための河川事業を、これも我々国土交通省としては、合併することによって河川の一体化を促進するための河川事業を確立していこう、また、その交流を支えるための道路等の公共施設というものを完備するためにも、あるいはまたそれを保全していこう、そして砂防事業等についても優先採択していこうということも決めておりますし、いわゆる自然の地勢に考慮した施策というものを配慮しながら、市町村が合併することによって効率を上げて、倍増する力を持てるように、合併するのは、弱い者同士が肩寄せ合って慰め合うだけの合併ではないというふうに、国土交通省としては支援をし、また事業計画も立てていきたいと思って、現状、取り組んでいるところでございます。
一川委員 今の地方への分権、一つの大きな時代の流れの施策でございますけれども、こういう流れの中で、ある一定規模以上の地方公共団体をつくっていく。そこは、それなりの実力を有するものをつくるということは大変大事な課題でもございますし、その方向については全く同感でございますし、そのとおりだと思いますけれども、先ほどちょっと触れましたように、合併の議論をした場合に、どうも補助金、交付金の話題が多過ぎる。
 そういうことじゃなくて、やはり、その地域の持っている地域の資源、そういうものをしっかりと頭に入れながら、将来的には、より美しい、そういう地域をつくっていく、また災害に強い地域をつくっていくという面では、国土交通行政の側からのいろいろな意見を、その都度そういう場で述べられた方がいいのではないかなという感じを私はいたしております。
 今の市町村合併の特例法の期限がもう間もなく迫ってまいりますから、当面はこういう話題がある程度出てくるのはやむを得ないとは思いますけれども、今ほど大臣もお話がありましたように、やはりそういった合併が話題になっている地域のいろいろな公共的な施設の整備の促進とか、また新たなプロジェクトを立ち上げるということも含めて、それはそれとして非常に大事な問題でもございますので、目先の要望というよりも、やはり地域の、将来的な、そういうデザインのもとでのしっかりとした公共施設をぜひ着実につくり上げていただきたい、そのように思っております。
 この市町村合併問題は、そういうことで、私は、国土交通省は直接の所管じゃございませんけれども、かねがね、先ほど言いましたような、地域づくりなり、まちづくり、村づくりという観点で取り組んできた官庁でございますから、やはり、市町村という一つの単位をつくり上げるときの大きな参考のデータなり意見を述べるのが一つの責任でもあろうかというふうに思いますので、そのあたりをひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 もう一度、大臣のそのあたりの御決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
扇国務大臣 今一川議員がおっしゃいましたように、今の市町村合併というものは、私は、経済的な面だけではなくて、もっと各市町村が持っておりました文化というものを大事にしてもらいたい。それぞれ自分の住んでいるところの生まれ育った町名とか、あるいは、文化遺産があるような有名なところは、だんだん市町村合併によって、名前も変わるし、今まで親しんできたものも文化も忘れ去られるようなことになってはならない。財政面だけではなくて、私は、そういう文化というものも、それぞれの市町村の持っている文化というものも、何らかの形で後世に残せるような知恵もそれぞれの市町村で合併のときに出していただきたいというのが私の切なる願いでございます。
 今、一川議員がおっしゃったような、財政面だけではなくて、我々は、国土交通省としてできることは、社会資本整備とか今おっしゃった災害対策とかに関しては万全を期していくというのは当然のことでございます。そのための法律もあるわけでございますから、私たちも頑張ってまいりたいと思いますけれども、かてて加えて文化というものも重視していただきたいという、一川議員にも、ぜひ私の方からも逆にお願いもしておきたいと思います。
一川委員 歴史、文化、そういったところが過去の先輩の、地域の方々の一つの遺産でもございますし、そういうものの中に我々今現在に生きる人間としては学ぶべきところが非常にたくさんあるわけですし、いろいろな教訓があるわけでございますので、そういう面では、今大臣のおっしゃったような趣旨も踏まえながら、我々も地域でそういうことをしっかりとまた啓蒙をしながら、より安全で美しい、しかも豊かな地域づくりができるような市町村合併に持っていきたいなというふうに思っております。
 さて、今国会で、委員会で何点かお聞きした中で、もうちょっと私なりにお聞きしたいのが二点ぐらいございます。
 一つは、国内航空分野における競争促進策という言い方で、国土交通省が、ことしに入って、今後、そういう競争促進策に積極的に取り組んでまいりたいというような趣旨の方向づけがなされました。
 これは、先般ちょっとこの委員会で話題に出しましたけれども、JAL、JASの合併問題に絡んで、この航空業界は、本当の大手の航空会社がでんと居座っている中に新規の航空会社が割り込んで経営を成り立たせるのは非常に難しいということが、この前の北海道の会社の例も取り上げてみればよくわかるわけですけれども、そうかといって、やはり、新しき会社を立てて意欲を持って取り組んでいくという意欲がわくような施策が一方でないと、これまた航空関係も将来的には非常に寂しい面もございます。
 そういう観点で、今積極的に取り組んでいかれようとするその競争促進策というものは、今どういうふうな動き方をしているのか、今後、具体的にどういう取り組みをしていかれようとするのか、そのあたりをお聞きしたいと思います。
扇国務大臣 今、一川議員がおっしゃいましたように、どのようにして競争原理を導入し、そして会社も効率を上げるとともに、何よりも利用する皆さん方の利便性と、そして経済的なことも含めて、私は、お客様あっての仕事でございますから、何としてもこの競争原理が国民のためにあるいはお客様のために働くということをぜひしてくださいということで、この間も、JASとJALの合併のときに、両社長にお願いもいたしました。
 そのときに私申し上げたことは、かつて、かつてというとかわいそうかもしれませんけれども、北海道のエア・ドゥが、北海道の自分たちの翼だということで、エア・ドゥを立ち上げて参入してまいりました。そのときの羽田の状況を一川議員は思い出してくださったらわかると思うんですけれども、羽田の空港に入って、搭乗手続するときに、エア・ドゥのカウンターは見えないんですね。そして、正直申し上げて、ボーディングブリッジ、これもエア・ドゥは使えない。羽田に入っていったら、エア・ドゥは一番端のカウンターで搭乗手続をし、エア・ドゥに乗るときには、ボーディングブリッジを使わないで、バスでぐるっと連れていかれて、羽田の一番端の方から飛び立つというような、そういう待遇をされたんですね。それで割安の料金で出発したんですけれども、エア・ドゥができた途端にJALもANAも全部値下げをした。私は許せないと言ったんです。だったら、なぜエア・ドゥができるまでに値下げをしなかったんですか、それは大が小をつぶすということになるじゃないですか、鯨がイワシを食っちゃうんですかと言って、私は個人的には怒ったんですけれども。
 今回はJALとJASの合併ということが申請されまして、本年の十月からJALとJASが統合するという話になりました。私は、これを契機としてJASとJALに申しました。JALとJASが一緒になって、少なくとも、統合整理してあいたところがあるんだったら、新規参入には、必ずカウンターも真ん中にし、ボーディングブリッジも使わせなさいよ、今まで、自分たちが先に生まれて、先に居住権があるんだみたいなことはやめてくださいということも申し上げまして、そのとおりにいたしますという話を聞いております。
 少なくとも、私は、平成十二年二月の航空法の改正によりまして、参入規制を路線ごとの需給調整規制である免許制から事業ごとの許可制に変更したということも含めて、航空会社の新規参入を促進していく、そうでなければお客様は浮かばれないというふうに思っていますので、本当に客あっての仕事だというふうに考えてこれを実行してほしい、そして競争促進枠というものを、一番いいところをあけなさいねということも約束しておりますので、それも私は競争原理導入のための原点であろうと思って、私たちも、できる限り助言もし、指導もしていきたいと思っています。
一川委員 エア・ドゥがああいう形になったというのは、ある面では非常に残念なことでございますけれども、あらゆる産業というか、あらゆる分野でもやはり新規参入というのはある面では非常に難しいところがあるわけです。新規参入をしたいという意欲のある、そういう企業が出てくるような条件を整えてあげるということは、今で言う、構造改革といいますか規制緩和の中での今の日本経済に課せられた一つの大きな課題でもあろうかというふうに思います。
 そこで、平成十七年の二月に抜本的に見直しをかけたいという言い方をかねがねされております。その時期にならないとわからないといえばわからないわけですけれども、ただしかし、抜本的に見直すということは、今の、大臣もおっしゃったようなことも含めて、基本的にはどういうところを抜本的に見直しをしてこういうふうにしたいのかという、何か現時点でお話しできるところをもうちょっと具体的にお聞かせ願いたいと思います。
深谷政府参考人 御説明を申し上げます。
 私どもといたしましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、参入規制を基本的には自由化するということで、路線別免許制度、そういうものも廃止をいたしました。需給調整も廃止をいたしました。
 それに伴いまして、ただ、例えば羽田のような混雑空港につきましては、自由に路線を設定してくださいと申し上げても、現実に自由に使えない状況に物理的にございますものですから、そういう意味合いにおきまして、混雑空港につきまして、我々といたしましては、これまでも新規航空会社に対しましては無条件で優先的に六枠までは配分するというふうな措置をとってきたところでございますが、今委員御指摘のように、意欲と能力のある、いわば既存の新規のエアライン、そういったところには、さらに活躍の余地ができるように、申し上げれば、競争がさらに促進されるようにというふうに私どももあるべきだろうというふうに考えておりまして、そういう意味合いにおきまして、先ほど大臣が御答弁申し上げましたような、JALとJASの合併を契機として新たに競争促進枠というのを設けまして、それをいわば既存の新規の航空会社に使っていただきたいというふうなことも取り入れたところでございます。
 それで、先生御指摘の、平成十七年の二月には、平成十二年の二月の改正航空法の施行から五年たちますものですから、混雑空港の発着枠の配分が、一たんすべて見直しのタイミングが参ります。平成十二年の二月の航空法の改正におきましては、発着枠の既得権益化、これを防止する必要があるだろうということで、五年ごとに許可制をとるというふうになったわけでございますので、十七年には回収、再配分が行われることに相なります。
 この発着枠の回収、再配分につきましては、航空法にも規定はございますけれども、その規定を踏まえまして、まさに競争の促進あるいは多様な輸送網の形成など、こういったことを通じまして、利用者の利便に適合するような輸送サービスを提供できるような、そういったふうなことを基軸にいたしまして、基本にいたしまして、適切な回収、再配分をしたいというふうに思っております。
 具体的な配分方法につきましては、新規航空会社のこれからの参入見込み、あるいは既に参入されております新規航空会社のさらなる事業拡大の意向、動向等、全般の航空事業の今後の動向も十分踏まえながら遺漏なきを期したい、今後検討してまいりたい、かように思っております。
一川委員 ぜひまた、そのあたり、今の方向の中で具体的な検討をより詰めていただきたい、そのように思っております。
 そこで、前にもちょっと触れた中に、地方空港のこれからの役割といいますか、そういうものをもう一回見直しをしながら、生かせるものはしっかりと生かした方がいいというふうに思います。
 今ほどの議論にもちょっと関連しますけれども、効率のいいといいますか、割と採算性の高い路線は、じゃんじゃん大型の飛行機が、各会社ともそこをねらって入ってきますから、当然そういうところの路線はしっかりと維持されるわけですけれども、だんだんこういう競争原理から若干立ちおくれていくような、地方空港と地方空港を連結するような航空ネットワークというか、その路線というのは、最近特に何となく寂しい状況になりつつあるというふうに各県の航空担当の方々からよくお聞きします。
 これは、一つの経済原理からすると、各航空会社の考え方もわからないわけでもないわけです。地方空港と羽田空港を連結するドル箱路線は、それは当然各社とも大変な熱意があるわけですけれども、地方空港と地方空港を結ぶ航空路線というのは、私は、やはり日本の一つの航空行政の中でも、そういう路線を絶やさないでしっかりと残していくような施策というのが必要かなという感じがするんです。しかし、そうかといって、具体的に何をするかということになると、非常に難しいところがあるわけです。
 さっき言った、何か着陸料の割引とかそういうことは一部なされているというふうに聞いておりますけれども、もう少し何かアイデアを出しながら、地方空港と地方空港を連結する、そういう航空ネットワーク的なものを我が国の航空行政の一つの財産として残していくような施策があってよろしいんではないかと思いますけれども、そのあたりに対してのお考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
深谷政府参考人 ただいま、いわゆる地方路線についてのお尋ねがございました。
 私ども、日常生活圏の交通網につきましては、離島は、これは隔絶されておりますのでちょっと別だとは思いますが、航空、あるいは航空がない場合につきましては、それ以外の交通手段によりまして、おおむねその人々の足というものは確保されているのではないだろうかというふうには思っておりますが、先ほど申し上げましたような地理的、気象的制約が多い離島につきましては、これは地域の方々の日常生活に必要不可欠な交通の確保は図らなければいかぬだろうということで、先ほど申し上げました平成十二年の二月の航空法の改正法の施行によりまして、路線別免許、需給調整、そういったものは一切廃止をいたしまして、基本的には、路線はエアラインの選択によりまして張られるということになったわけでございます。今申し上げました離島につきましては、そういうことでは、いわば市場原理だけではうまくいかない部分があるだろうということで、平成十一年度から運航費補助制度を新たに導入するなど、そういった手当てをしてきておるところでございます。
 また、いわゆるコミューター航空も含めまして、地方空港の利用促進による全国的な航空ネットワークの形成あるいは充実、こういう面につきましても、私どもも大切なことだと思っておりますものですから、例えば国管理の、先生今御指摘の着陸料につきましても、二種A空港の着陸料につきましては三分の一を軽減するとか、あるいは航行援助施設料の軽減措置をとるなどということで、いわば誘導的に政策はとっておるつもりでございます。
一川委員 最後に、整備新幹線の問題。これは、大臣に前にお聞きしたときには余り明快なお答えをいただけなかったんです、非常に答えづらい点もあろうかと思いますけれども。
 今、こういう時期になると、よく整備新幹線の建設促進の大会というのが方々でありまして、我々もそういうところに駆り出されるときがあるわけですけれども、どうも整備新幹線の取り組み方の中で、私が北陸にいるものだからなおさら気になるわけだけれども、北陸新幹線というのは、前にもちょっとお話をしましたように、もともとスタートする時期には、東海道新幹線の代替補完機能を有するんだ、それでバイパス的な役割を担わせるという国家プロジェクトだということをよく聞かされたことがございます。最近の促進期成同盟会等が配布しているパンフレットにもそこのところを強調しておりますし、当然、いろいろな要請活動をされている方々もそのあたりを強く強調されていると思います。
 今国会で、東海道新幹線、もう十数年たつと五十年に達する、それを目指して引当金制度をつくるんだという法律の一部改正がありました。私はそれを聞いておりまして、余りにも整備新幹線に対する考え方が、ちょっと責任感がないんじゃないかなという感じを持ったのは、東海道新幹線のバイパス機能だということを北陸新幹線、北陸回りの新幹線に期待しておきながら、片や東海道新幹線の大規模改修に入る制度改正をやるということであれば、その十数年後の大規模改修に至るまでの間に、少なくとも北陸回りの新幹線は東京から大阪間はこういう姿で供用開始しますよという整備方針ぐらいをもうそろそろ示してもよろしいんじゃないか。東京―大阪間、完全にフル規格で全線開通ということを今さら言ったって、我々はできるとも思っていません。しかし、その十数年後ぐらいには北陸新幹線はこういう姿で供用開始をしますよということぐらいは、やはり国の責任でおっしゃっていただかないと。
 東海道新幹線が大規模改修、それは、列車をとめないで改修するという話はされておりますけれども、しかし、北陸回りのそういう新幹線がそれなりに東京と大阪が連結できるような状態になれば、大規模な改修も割とやりやすいというふうに私は思います。最近話題になっておりますああいういろいろな地震の問題、東海地震もかつてからそういうことが言われておりますし、それから今の南海地震の話題も出てきた時代でもあります。そういう面では、私は、やはり日本列島の動脈である東海道新幹線だけに頼るんじゃなくて、北陸回りの新幹線、もともとそういう役割を期待しているのであれば、もう少し明確な方向づけをなされてもよろしいのではないかなというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
扇国務大臣 北陸新幹線に関しましては、一川議員にはかつても委員会で御質問をいただいたこともありますけれども、今おっしゃいますように、北陸新幹線、少なくとも国土の骨格となる交通機関であることだけは間違いありません。
 今、私もここで改めて北陸新幹線の地図を見ておりますけれども、本当にこれが国土の骨格であるなと実感を、改めて今委員からの御質問で見ておりますけれども、少なくとも、地域間の連携でございますとかあるいは地域経済の活性化、そういう意味では、従来よりも、政府・与党間の申し合わせというのがございまして、これは着実に整備が推進されていると、今これを見ながらつくづく私は思っているんです。
 北陸新幹線、平成元年には、整備新幹線の中で最も早く、先生御存じのとおり、高崎―軽井沢間が着工されているんですね。そして、平成九年の十月には高崎と長野間が開業しております。開業後の利用者が、開業前に比べて二五%も増加しているんですね。そういう意味では、私は、やはり多くの方に喜んでもらえる、そして、よかったという大きな結果が出ていると思います。
 また、平成十二年でございますけれども、この政府と与党の申し合わせにおきまして、今度は長野と富山間を全線フル化するということで、残念ながらちょっと長過ぎるなと私も思うんですけれども、大体十二年後ぐらいの完成を目指すということでございますので、これも、本当だったら、お金があれば、集中工事をすればもう少し早くなるんだろうなとは心の中では思っておりますけれども、これもきちんと申し合わせができておりますし、また、東京―富山間、これも約一時間短縮されますから、少なくとも約二時間十分で東京―富山間が結ばれるということになると思います。
 これもやはり地域の活性化、あるいは経済的にも大きな効果が出てくるだろうと思いますので、今、私も改めて一川議員の御質問で地図を見ながら、北陸新幹線、着実に前進しつつあるなと。ただ、スピードが、もっと早ければいいなという感はなきにしもあらずですけれども、今の財政事情の中では着実に進みつつあるというふうに思っておりますので、より皆さんの御強力な支援によって財政を投入すれば、一年でも半年でも早くできる、そのように思っております。
一川委員 これで終わりますけれども、こういう地域経済が冷え込んでいる時代でもありますけれども、なおさらやはり、ある一定の目標を定めてあげるということが地域の経済にとって非常に大事なことでございますので、この北陸回りの新幹線、今ほど大臣も、ちょっと時間がかかり過ぎるというような印象をお持ちだというふうに思いますけれども、私は、やはりそういう面では、もう少し、東海道新幹線の話題がこんなに具体的に出てきた以上は、北陸新幹線のことももうちょっと具体的に整備方針を定めていただきたいな。
 これは、政府・与党の申し合わせがあることは重々承知でございますけれども、それを承知の上で私の考え方を述べさせていただきました。ありがとうございました。
久保委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。小沢和秋君。
小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。国土交通での質問は初めてですので、よろしくお願いいたします。
 きょうはまず、川辺川ダム受注企業の政治献金問題について実態を示し、大臣の考えを伺いたい。
 お手元に資料をお配りしてあるはずですが、資料一は、各県や政府の官報に掲載された政治資金収支報告から作成したものであります。八五年から二〇〇〇年にかけて、川辺川ダムと関連する事業の受注企業八十三社が、合計四億五千七十六万円もの政治献金を自民党熊本県連に行っておりますが、これは、同時期に県連が受け取った企業献金総額の三六・一%にも上るものであります。
 また、政治家個人への献金も巨額なものであります。一番多くもらっているのが林田彪衆議院議員で、五十五社から六千七百二十六万円。その次が最近よく話題に上る松岡利勝衆議院議員で、四十二社から三千三百八十五万円という巨額であります。参議院佐賀選挙区の陣内孝雄議員は二十一社二千三百七十万円。衆議院熊本四区の園田博之議員が二十三社二千二百六十九万円と続いております。特に松岡議員の収支報告は、どう見ても適正に処理されているとは言えないので、その一端を資料二としてつけておきました。陣内議員は旧建設省河川局長を歴任しており、林田議員も同じ建設局出身、松岡議員は農水省出身であることを見れば、献金する側が何に期待しているかは容易に想像できます。
 大臣、公共事業受注企業によるこうした政治献金こそ日本の政治を腐らせているのではないか。我が党は、公共事業受注企業からの政治献金を禁止すべきだと要求しておりますが、少なくとも何らかの規制がなされるべきと考えるが、国土交通大臣としてはどうお考えでしょうか。
扇国務大臣 今、小沢議員から資料をいただきまして、これを私も拝見しております。実感としては、すごいなというのが実感でございまして、これが国土交通大臣だったらどうなったかなと思って、今、ぞっとしております。
 ただ、私は、政治献金全般が悪いというのではなくて、広く浅くという方法もあろうと思いますし、今冒頭に小沢議員が政治資金の報告書に基づいてという御発言がございました。ですから、私は、これが正式に政党あるいは政治活動のために、きちんと政治資金規正法等の手続がされているものからお出しになった資料なのか、あるいはそれ以外の、こういう隠れたものがあるとおっしゃったのか、ちょっとその辺がよく判明しなかったのですけれども。冒頭の小沢議員のお話では、政治資金規正法に基づいて届けてあるものを拾っていただいたんだと思っていますけれども、届けてあるものがいいとか悪いとかということは、私はあえてコメントはしたくないと思いますけれども、献金した会社によるべきと思いますし、金額もすごいというのは、私、事実びっくりしております。
 ですから、政治資金規正法あるいは公職選挙法等々、農林省水産とか建設省出身とおっしゃいましたけれども、関係法令に基づいた適正な届け出がされているのであればこれもまた一理あろうと思いますけれども、その額が多過ぎるという、私も正直言ってびっくりしているというのが現状でございます。しかも九州地区ですか。小沢議員がお出しになった、九州地区だけで五十五社から献金というのは、九州地区にこれらの業者が何軒あるかわかりませんけれども、一人の人に五十五社から献金というのもすごい会社の数だなというのも私の実感でございます。
 そういう意味では、私は、政治献金というものは、公共事業を受注しているところからは受け取らないという姿勢が一番理想だと思います。ただ、理想だとはいいながらも、現実に今これだけの数字を見せられますと。
 入札契約適正化法というのは、今まで日本の中に法律がなかったのを、一昨年の暮れに初めて、超党派で、自民党から共産党まで御賛同いただいて、公共工事の適正化を図ろうということで、日本で初めてできました。
 これによって、公共工事の適正化を図っていくというのは当然の一歩ではございますけれども、改めて入札契約適正化法の徹底を図るとともに、建設業者からの政治献金につきまして国民の疑惑を招くことのないように求める趣旨の文書を、今国会、私は何度も質問されましたから、そしてこういう資料も私のところにいっぱい来るんです、それで、献金にまつわるさまざまな論議の議事録を添えまして、私、ことしの四月の二十六日に業界団体を通じて関係者にこの議事録とともに配布いたしました。そして、みずからの姿勢も正してくださいということを強く指導しておりますので、今初めてこの資料を見せていただきましたので、この業者にも今回の小沢議員の御質問の議事録も配布して、業界を指導していくようにしたいと思います。
小沢(和)委員 恐れ入りますけれども、大臣にはぜひ簡潔に答弁をお願いしたい。
 次に、川辺川ダム事業そのものについてお尋ねをいたします。
 まず指摘をしたいのは、私の質問に対して国土交通省が何度も事実をねじ曲げた答弁をしてきたことであります。
 昨年三月一日の予算分科会で扇大臣がこの地域は三十年間で九回も大きな水害に見舞われたと答弁したことについて、ことし四月八日の決算委員会で、私は実際の水害は四回だと指摘をしました。それに対して竹村前河川局長は、危険水位に水位が上がったのが九回と訂正しました。水位が上がったということと、洪水があったということとはまるっきり違う話であります。
 もう一つ言いたいのは、大臣が、昭和三十八年に死者四十六人、四十年には六人、四十七年には二人、死者が計五十四人との答弁をしたことであります。私が実際の死者は二名だと指摘をすると、死傷者というところを死者と言ってしまったという程度の答弁で済ましております。しかし、これも、死者五十四人と死傷者五十四人では全く話が違う。
 このように、国土交通省が事実を何とか大きく大きく描こうとするのは、そうすることでダムを必要と見せたいという計算ではないんですか。
 この点で、私はもう一言言いたいんです。
 その四月八日、私が、川辺川ダムがなくても、人吉では河床掘削など河川改修で対応できるのではないかとただしたのに対し、竹村前局長は、一度、過去に私ども、人吉でやってみましたところ、温泉の泉源を切ってしまいました、大反対がございまして、それ以上しゅんせつができなくなってしまいましたと答弁した。
 これも違うんです。我が党の本村令斗市会議員がすぐ八代工事事務所に問い合わせたところ、あの答弁は間違いで、河床掘削で地下水の水位を下げてしまったことがあると回答してまいりました。地下水の水位が下がることと温泉の泉源が切れることとでは、これも雲泥の差ではありませんか。どうしてもうこのようなことばかり言うのでしょうか。
鈴木政府参考人 まず、川辺川の水位の件でございますが、これは……(小沢(和)委員「そんなこと聞いていないじゃないか。なぜ温泉の泉源を切ったと言ったのか」と呼ぶ)
久保委員長 ちょっと、委員長の許可を求めて発言してください。(小沢(和)委員「じゃ、答弁をさせなさい、ちゃんとした答弁を」と呼び、その他発言する者あり)静粛にしてください。委員長の指示に従ってください。
鈴木政府参考人 ただいまの御質問でございますが……(小沢(和)委員「なぜ泉源を切ったと言ったのか」と呼ぶ)泉源の点だけ申し上げればよろしいでしょうか。
 泉源の件については、これは確かに正確さを欠いておりました。温泉の泉源という表現を確かにとったわけでございますが、実際は、新聞などでも「河川工事で井戸異変」あるいは「旅館街等の水枯れる」というような報道がなされております。温泉街の井戸の泉源と申しますか、その井戸が枯れた、影響を与えてしまった、こういうことが正確なところでございます。
 ただ、こういったことがございまして、結果として実際に井戸枯れが起きた民家や旅館等の水枯れに対して、昭和四十五年から四十七年にかけて対策を実施し、四十六年には約百の井戸の掘り下げや新設も行う、こんなような対策もやっているところでございます。
 いずれにしても、私どもは、大規模な河床掘削は、景観、河川環境、周辺地下水への影響等々いろいろな面から、ここの場合においては適切ではないと判断しております。
 それ以外の御質問の点については、省略していいということでございましたので、省略させていただきます。
小沢(和)委員 だから、質問にずばっと答えてください。
 人吉は温泉町ですから、その泉源を切ったら町の存立にかかわりますが、それと比べれば、温泉街の近くの水脈を切ったといっても被害はたかが知れているわけであります。
 それに、あなたたちが今述べたことも、また事実と違うんです。
 昨晩からけさにかけて、私は、人吉の主なホテルや旅館の主人たちに連絡をとって事実を確認してみた。それによると、球磨川関係の工事で井戸の水位が下がったのは、護岸工事の際、堤防の基礎を岩盤まで打ち込んだときに生じたのであり、河床掘削で起きたことはない。河床掘削によって地下水位が下がったのは、別の支流の鬼木川、山田川の工事の際のみだ。その後球磨川の河床掘削は、現在こそ中断されているが、再開されているのであります。
 このやりとりは、現地で皆さんがインターネットで見ていると思います。私が今指摘した点について、直ちに事実を確認していただきたい。
 最近、河川整備計画にありました球磨川の河床掘削を中断している理由について、国は、住民との討論集会で、我々は川辺川ダム建設を前提にして考えるので、人吉では毎秒四千立米流れればよいから、これ以上掘削していないという趣旨の説明をしている。今掘削をしないのは、できなくなったからではなく、これ以上掘削したらダムの必要性の説明がつかなくなるからではないんですか。どうですか。
鈴木政府参考人 川辺川、球磨川のしゅんせつの件について御説明申し上げます。
 仮に、ダムにかえてしゅんせつをやるということになりますと、ダムの効果というのは言うまでもなく、ダムをつくったところから河口までこの効果が及ぶわけでございます。この効果にかえてしゅんせつでやろうということになりますと、これは上流から下流まで、御存じだと思いますが、人吉市の盆地の下流には狭窄部がございまして、岩盤が出た大変美しい景観のところでございますが、そういったところも含めて、すべて掘削をしないとこの効果が発揮できないということがございます。
 例えば、そんなようなことも含め、あるいはそれにかえて築堤、堤防をつくるというようなことになりますと、これも大臣から今まで御答弁したことがあろうかと存じますが、既存のパラペットといいますか特殊堤といいますか、コンクリートの堤防を二メーターも、つまり三・五メーターといいますと、人がもう到底見えないような高さまで上げなければいけない。
 このようなことになる等々の理由から、しゅんせつという方法、掘削という方法はとらないというふうに考えているわけでございます。
小沢(和)委員 お配りしております資料の四には、国土交通省が私の求めに応じて提出した、九州地方整備局の部内会議の速記起こしの抜き書きがあります。これは、新河川法に基づく河川整備計画見直しについての意見交換のため、二〇〇〇年八月九日から十日にかけて開催された会議であります。
 そこで、九州各地の河川工事事務所長や専門家たちは、ダムがなくても河川整備はできるという趣旨の発言を繰り返しているんです。ダム計画に固執する根拠がないことはいよいよ明白だと思います。
 この速記起こしで重要なのは、この間、現地の住民討論集会で、国と住民で論争になっている余裕高であるとか基本高水流量などの問題について、国の専門家があけすけに本音を語っていることであります。
 余裕高についてですが、その余裕高まで水を流すということになると、本明川ダムがなくても流せるんじゃないかとか、ぶっちゃけた話をすれば、大野川の場合も河道の拡幅あるいは掘削は可能なんです、それで矢田ダム一個なくしてしまうというのも、あながち全く不可能な議論ではなかった、本当は余裕高でいくと、立野ダム一つが吹っ飛んでしまうなどの発言が続出しております。
 残念なのは、当日、川辺川工事事務所長が欠席していて、この人の発言がないことです。この人も、堤防の整備、川幅の拡幅、河床の掘削などを組み合わせれば、本心ではダムは要らないと思っているのではありませんか。
 この速記起こしについて、私が七月十五日午前十時に記者会見発表したところ、わずか一時間後に、九州地方整備局が慌てて記者会見で反論しましたが、逆に記者に突っ込まれて回答不能に陥っている。翌日の各紙は一斉に、国土交通省内にもダム懐疑論などと題して報道いたしました。大臣は、省内からもダムなしで治水が可能という意見が出ていることを御存じでしょうか。
 最後に言いたいが、大臣、長野だけでなく日本じゅうが脱ダムに大きく動き出している、こういう時期だということをよくお考えになってこの会議録を読んでいただきたい、そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
 大臣に答弁していただきたい。あなたなんか要らない。大臣。
扇国務大臣 お呼びをいただいて大変ありがとうございます。それほど貴重にしていただいて、ありがたいと思っております。
 今最後におっしゃったこと、会議録は会議録で、自由に論議をされるための会議ですから、その会議で発言することを、我々が、これは言ってもいい、これは言っては悪いなんということはむしろ私はおかしいと思います。会議は自由に討議をされて、これが必要か必要でないか、真剣な論議をするというのは大変望ましいことだと私は思っておりますから、その会議録のことに関しては私はそういう考え方でございます。反対、賛成、両論あって初めて真実が見えてくると思っていますから、それはそれで尊重していきたいと思っております。
 ただ、今最後におっしゃいました、長野のを含めて、脱ダム宣言が正しいのではないか、世間はそういう風潮になっているよというお話でございますけれども、私たちは巨大な費用を使ってむだなものをつくろうと言っているのではありません。それは、小沢議員も御存じのとおり、治水、利水両面でこの地方にはどの程度のものが必要であるかという、安全性も含めた論議で着手しているわけでございます。
 きょうも私、この後で、ある地方の皆さん方からは、水がないからダムを何とかつくってくれという陳情も受けております。ですから、全部一律に、ダムは無用よという暴論は――私は、国土交通省として、しかも担当大臣として、国民の生命財産を守るという大前提のもとに治水、利水両面を考える。ただ、治水の面は別として、利水の面では、工場が閉鎖されたとか、誘致工場が来ないとかというので、利水の面で数量が要らなくなったということは時代の推移とともにあろうと私は思いますけれども、我々は、治水と利水と両面で地域の住民の皆さんのよりよい選択を探っていって、むだな公共工事をしないためにも、効率のいい、そして国民に喜ばれる公共工事をするというのが基本理念でございます。
小沢(和)委員 いっぱい言いたいことはありますけれども、時間が来ましたのでかわります。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 私は、横浜人材活用センター事件について質問いたします。
 今から十六年前に、国鉄をJRにするための余剰人員対策として、全国各地に人材活用センターが設置されました。この事件は、五人の国労組合員を監視していた助役の責任者に全治四週間の肋骨骨折の傷害と、三人にけがを負わせたとして神奈川県警に逮捕され、マスコミは、人活センターで暴行、国労の五人逮捕と報道いたしました。国鉄改革法が国会を通過したのが五日前です。国鉄分割・民営化や人活センターをめぐって全国初の逮捕者とあって、各紙の反応は大変大きかったわけです。ところが、けがをしたという助役は、会社を休みたいと言って医師から診断書をだまし取っていたということが医師本人の証言で明らかになりました。
 三人が起訴され、暴行の証拠である、現場を録音したとする、助役による隠しどりのテープが裁判証拠として提出されました。ところが、このテープの裏面に、三十分間にわたって、傷害を負ったとする助役らの肉声で、事件をしむける謀議の場面、どのようにでっち上げ事件を仕組むかという生々しい場面が録音されておりました。この謀議テープは、日本テレビ、NHK、テレビ朝日でも報道されましたが、実は、このテープを発見し証拠として提出したのが、あのオウム教に一家殺害された故坂本堤弁護士でした。これは坂本さんがその問題を取り上げている写真なんですけれども、坂本弁護士がその謀議のテープを見つけて明らかにしたわけですね。そうして、九三年五月十四日、横浜地裁は、この事件を管理者側の挑発の策謀だとして、三人全員の、公務執行妨害罪、不退去罪の無罪が確定いたしました。この事件の経過は、一九九〇年の六月十日、日本テレビでも「刻まれた謀議」として放映されましたし、その内容は今お手元に配付しました資料に載っております。
 法務省にお聞きしたいんですけれども、でっち上げ事件の無罪確定から既に九年がたっています。このような経過に照らしても、いまだに職場に復帰もできず放置されていることは、人間の尊厳を踏みにじるもので、人権侵害であり、救済の対象にすべきだと思うんです。私は、昨年十二月五日、第百五十三回国会の法務委員会で、森山眞弓法務大臣に救済を求めました。大臣は、この事件を人権侵害の一つと考え、大切な問題だと答えられました。その後、法務省の人権擁護局は、事件解決に向けた具体的措置の検討を約束しているんです。無罪の労働者と家族が十六年間にわたって人権が侵害されて放置されていることについて、法治国家として解決を決断すべきであると思います。法務省は、解決のためにどのような検討をされたんでしょうか。
吉戒政府参考人 お答えを申し上げます。
 この事件につきましては、かねてから委員の方から御指摘がございまして、法務省の人権擁護機関といたしましても関心を持って見守っておるところでございます。
 そこで、本件にかかわります民事の裁判がございますが、地位確認等を内容とする訴訟が横浜地方裁判所において現に係属いたしております。その判決の言い渡しが近くあるというふうに聞いております。したがいまして、こういうふうな紛争が裁判の場に持ち込まれております以上は、まずは訴訟での解決にゆだねるべきものであるというふうに考えております。したがいまして、引き続きその動向を見守っていきたいと考えておるところでございます。
 今先生の方から御指摘がございましたけれども、かつて、去年の十二月でございますが、法務委員会の場で法務大臣が人権侵害の一つであるというふうに申し上げましたのは、実は前置きがございまして、個別具体的なケースについてはなかなか難しいというふうな前提をつけた上で、本件につきまして、委員御指摘のような労働問題も人権侵害の一つであるというような一般論を申し上げたものでございますので、その点の御理解をぜひお願いしたいと思っております。
瀬古委員 近く判決の言い渡しがあるということなんですが、裁判だって国がちゃんと責任を持たないからやらざるを得ない、こういう状態に労働者を追い込んでいるんですよ。人権侵害として認めておきながら、それも国家的な人権侵害だ、こういう無罪の判決も下っているんです。それでも、その判決に従わないで、居直って、裁判を乱用してといいますか、労働者と家族を十六年間も放置する、こんな人権侵害を正さずして何が人権擁護かと私は言いたいと思うんですね。
 そこでお聞きしたいと思うんですが、一九九六年七月二十六日に国労、支援団体、当事者の申し入れに対して当時の運輸省の北沢清功政務次官は、この問題は百人が聞いても千人が聞いてもおかしいと思う事件である、法の前に人間があり、人権がある、このように答えておられます。
 第百四十国会の一九九七年四月十五日に、衆議院の運輸委員会では、横浜人活事件がでっち上げ事件であるとの認識の上に立って、当時の古賀運輸大臣は我が党の寺前巖議員の質問に対して、解決するためにその時間をしばらくおかしいただきたい、このように答弁されたんです。そして、これを受けて、運輸省鉄道局縄野克彦次長は、九八年の七月十七日に、運輸大臣が国会で申し上げたように、刑事事件についてでっち上げ無罪が確定している事実を前提に一日も早く当事者が納得できる解決に全力で努力します、このように当事者、家族、支援団体に約束されています。でっち上げ事件によって懲戒免職されたものであることは明らかでありますから、当然、歴代の政府関係者が解決するとして決意し、約束しているんですね。
 大臣、いかがでしょうか。やはり速やかに解決すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
扇国務大臣 済みません、私、今、いただいた資料をちょっと詳細に見ておりまして。
 解決すべきであるというのは、おっしゃるとおりだと思いますけれども、現在、法廷で無罪となり、なおかつ、今、民事では係争中でございます。今法務省の方からお答えになりましたように、一たん判決が出ておりまして、そして民事では改めて係争中であるということを私は伺っております。当事者とJR東日本あるいはJR貨物、鉄道建設公団清算事業本部との間でこれは係争中でございます。
 私としては、国土交通省としては本来は当事者ではないと言いたいところでございますけれども、これは経緯もあることでございますから、今御提出の、残念ながら私はこのテレビを見ていないものですからあれですけれども、これも拝見しながら、訴訟とは別の場できちんと解決することができるような法的な根拠を見出すことができないという状況にあるために、この問題の解決に行政として対応することは、国土交通省としては極めて困難な状況にあるというのは瀬古議員もおわかりになると私は思うんですね。
 ですから、私は、民事の判断というものももうすぐ出るということは先ほど法務省からもお話がございましたので、係争中で、近日中にというお話がありましたので、これも見守っていきたいと思っています。
瀬古委員 大臣、このでっち上げ事件は、もう無罪は確定しているんですよ。確定しているからこそ、歴代の大臣などが、解決しなきゃならないと。
 当事者じゃないと言われたけれども、とんでもないんです。実は国土交通省は当事者なんです。実際には、その当時の国鉄をきちんと指導する責任があるわけでしょう。その国鉄がでっち上げ事件を起こして、十六年間も放置していたということは、当然国土交通省は、文字どおり当事者そのものなんです。法的にはもうはっきりしているんです。
 実は今、宿舎は国鉄職員としての居住が本訴で確定しております。この人たちは国鉄の職員として、今、宿舎に住んでいらっしゃるわけですね。でっち上げは、もう解決済み。本人たちは無罪だということが、はっきりしているんです。それを、身分を戻さないということで、だらだらだらだらサボり続けて、そして裁判をやらざるを得ないというところに追い込んで、今裁判中だからその裁判の結果を待つなんて、とんでもない話なんです。だから、全然事実は違うんです、大臣。もうはっきりしているんです。
 そこで、旧国鉄の懲戒基準規程、懲戒基準に関する協定では、でっち上げである場合は、懲戒処分が消滅して、無実が証明された国鉄職員の身分が完全に回復し保障されることに、ちゃんと法律でなっているんですよ。無罪が確定した時点で身分回復になるのは当然だと思うんですね。私は、政府の責任で、旧国鉄時代の身分にふさわしい原状回復を今すぐ行うべきだと思うんです。これは、とっくに解決済みでなきゃならないことなんです。いかがですか。
石川政府参考人 本件につきましては、先ほど大臣から申し上げたとおり、当事者の地位確認については、現在、横浜地裁に民事訴訟が係属中でございます。その判決言い渡しが近日中に予定されてございます。本問題について行政として対応することは、極めて困難でございます。
瀬古委員 全く間違っていますよ。旧国鉄の懲戒基準規程、そして懲戒基準に関する協定では、懲戒処分が消滅した場合はちゃんと戻さなきゃならないと、はっきり書いてあるんです。それを国交省としてはやらなきゃならないんですよ。あなたたちは法律を全く無視するんですか。実際には、身分を回復するというふうになるんですよ。これを法律的にはやれないなんて、とんでもない話です。
 実際には、国鉄からJRには、単純に断絶されているわけじゃないんです。経過措置もあって、ちゃんと継続するように法律もできているんですね。もともと国鉄時代のでっち上げ事件だから、当然JRが、本来、五人の労働者を文句なしに復帰させるべきだと私は思うんですね。少なくとも国の責任できちんと指導すべきだと思うんです。
 そして、無罪が確定した後には、実際には、宿舎明け渡しの裁判、宿舎だって出ていけと言ったのがとんでもないという話になって、裁判をやったら、国鉄職員としてこの宿舎にいてよろしい、当然だということになっているんです。裁判で一々やらなければその場所にも住まわせないという、本当に卑劣なやり方をしてきたんですね。しかし、もう法律できちっと保障されるようになっているわけです。私は、国土交通省は、こういうきちんとした法律があるのに、これは法的には範囲外だなんというふうに居直れないと思うんです。
 この事件の直後に、国鉄からJRに移行が行われました。新会社の職員になる手続にのるためには、その前提として国鉄職員であることが条件とされている。懲戒免職を受けた五人は、JRに提出された国鉄作成候補者名簿から除外されないように、処分の発令禁止を求める訴訟、これもまた起こさなきゃならなかった。その後、懲戒免職無効仮処分が確定したんです。
 五人の労働者に懲戒処分が発令されて職員でなくなったのは、国鉄採用候補者名簿が提出される二日後のことなんですね。そういう意味では、その名簿には当然五人は掲載されていたと考えられます。当然、当局は、訴訟の証拠収集の義務からいって、五人が登載された国鉄作成候補者名簿は保存して国鉄清算事業団に引き継がれていると理解していますけれども、いかがですか。
石川政府参考人 採用候補者名簿につきましては、国鉄清算事業団を承継した現在の日本鉄道建設公団でございますが、保管しておりません。
瀬古委員 大問題ですよ。本人の国鉄職員の身分にかかわる訴訟が起きているわけでしょう。その訴訟の書類は、当然、法務管理規程及び訴訟等基準規程で、全部永久保存しなきゃならないんです。少なくとも、今係争中ですからね。そんなものがなくなっているなんということは、とんでもないことなんですね。隠しているか、もしくは廃棄したことになっているのか。
 訴訟中のこうした証拠書類について、もしないというなら、どのようにしてなくしたのか。廃棄するためのいろいろな、廃棄簿だとか、それから運輸省が引き継いだ名簿、そういうものが全部あると思うんですけれども、一切それについては明らかにしていただきたいと思うんですが、いかがですか。
石川政府参考人 今お話がございましたように、この採用候補者名簿というのは、六十二年四月一日にJR七社等に採用されるための候補者名簿でございまして、資料としては恐らく膨大なものだろうと思いますが、いずれにしても、現在保管されていないということは事実でございます。
瀬古委員 五人の人たちは、職員名簿として載っていなければ新しい会社に今度採用されない、だからわざわざ裁判まで起こして、ちゃんと身分はあるんだぞ、そういうところまできちっと確認してやっているんです。そういう名簿がなくなるなんということは、ちょっと考えられないです。
 私は、きちんとした調査をしてこの委員会に提出することをぜひ求めたいと思うんですが、委員長、いかがでしょうか。
久保委員長 理事会で協議させていただきます。
瀬古委員 こういう点で、大変不誠実だということがおわかりいただけると思うんです。本人たちは、十六年も路頭に迷わされて、犯罪人に扱われて、何とかしてほしいと言っているのに、その大事な大事な証拠書類だってどこに行ったかわからない、こんなばかなことがあるでしょうか。
 こういう事件の被害者の救済や解決がずるずる延ばされている一方、でっち上げた加害者はどうなっているのか。このでっち上げ事件を引き起こしました、いわば加害者である当時の国鉄の役員や職員は、裁判の都度にJR東日本から社長命令で百人を超える社員を動員して応援傍聴を行っております。その責任者は、JR東日本の東京本社社長を歴任、その後JR東日本関連会社の社長となっている。
 公務執行妨害等を理由にした刑事事件がでっち上げ事件であることが確定した段階で、これらの加害者である役員、職員に対し、何らかの告発や処分をしなきゃならぬのです。法務省に聞きますけれども、刑事事件をでっち上げ、医師をだまして告訴したというような場合は、どのような罪になるんでしょうか。また、本来刑事告発しなければならない公務員がその責任を放棄した場合は、どのような罪に当たるんでしょうか。
古田政府参考人 あくまで一般論として申し上げますが、実際は被害の事実がないのに被害があったということで虚偽の告訴をする、それが刑事上の処分を受けさせる目的で行われたという場合には、これは虚偽告訴等の罪の構成要件に該当することになります。
 また、告発の件に関しましては、これは刑事訴訟法上、公務員について告発義務というのが原則として設けられておりますが、これは訴訟法上の規定でございますので、御指摘のようなことが直ちに何らかの犯罪に当たる、そういうことには一般的にはならないと考えております。
瀬古委員 大臣、こうした裁判、本人の身分にかかわる裁判などは、全部逐一大臣にちゃんと報告しなきゃならないという仕組みになっているんです、法律上は。だから、私は大臣に、もっとしっかりこの事件について、ぜひ調べていただきたいと思うんです。
 本来、これは国土交通省、大臣として責任を持たなきゃならない、こういう事件なんですね。こうした十六年間も放置された人たちの問題。こうした虚偽のやり方で罪に陥れるというようなことをやった場合は、そういう人たちを本来事業団が告発しなきゃならなかったわけですよ。それも全然放置されていた。それを国土交通省なりが監督するべきですね。やはり国土交通省としても本来やらなきゃならないことです。
 今だって遅くないと私は思うんですね。一方では、罪に陥れた人たちがのうのうとしている。こういう問題については、今からでも、ぜひきちっと、処分も含めて、十分資料をもう一度見ていただけませんでしょうか、大臣。
扇国務大臣 私、今ちょっと、そのいただいた資料を拾い読みしているというのが現状ですけれども。私は、少なくとも裁判というものは公正であろうと思いますし、今おっしゃったように、皆さん方、暴行したといわれる五人については、刑事罰では無罪である、こういうふうに決まったというふうに今も法務省の方から報告がありましたし、瀬古議員の今おっしゃるとおりだと思います。これは正式な裁判でございますから。
 これはこれとして、職員としての地位の確認といいますか、それを今民事に皆さん方が訴訟を起こしていらっしゃるわけですから、瀬古議員が、地位も確保してくださいよと私に今おっしゃいましたけれども、私は、国民のために法というのは平等に定められていると思っていますから、私たちがどうこうというよりも、御本人たち自身がこの地位確認のための訴訟を民事に起こされているわけですから、その結果を見るというのは、被害者の皆さんが、被害者といいますか、無罪になった皆さん方が自分たちで起こした地位確認のための訴訟というものは、私は最後まで見守っていきたいと。もう間もなく出るというさっきもお答えでございましたから、私はそれに近いなと。その結果によって我々も改めて考えなきゃいけないなということも考えております。
瀬古委員 時間が参りましたので。
 今、本人たちが宿舎に入っても、周りの人たちをその宿舎から移転させる。周りの人たちを全部移転させて、本人だけひとりぼっちで残して、保安上も防犯上も大変問題の中に、ある意味では立ち枯れといいますか、本人が出ていかざるを得ないような嫌がらせも今やられています。そういう問題もぜひ取り上げたかったんですが、もうやれません。
 しかし、今大臣が言われたように、この身分を確定するという場合でも、本人たちがやらざるを得なかったんです。それは、いつまでもJRが戻さないからなんですね。しかし、そんなことは、JRが戻そうと戻すまいと、本来ならJRに対してきちんと指導する責任が国土交通省にはあったんです。ある意味では命令する責任だって今まであったんですね。それを放置してきて、裁判を今やっているからそれを見守るなんていうのは、無責任そのものです。
 本来、裁判をやらせてはいけなかったんですよ。裁判をやらせないで、ちゃんと国土交通省がJRに対しても、清算事業団に対しても、鉄建公団に対して物を言わなきゃいけなかったんです。それをやらないから、無理やりやむを得ず労働者が裁判をやらざるを得なかったという点がございますので、ぜひ大臣、全然認識が違いますから、本来大臣が全部この事件は知っていなきゃならないという法律になっていますので、もう一回しっかり勉強し直していただいて、そして、先ほど委員長にもお話ししましたけれども、必要な書類は全部出していただいて、裁判待ちにせず、ちゃんと国土交通省の責任で、大臣の責任で解決していただきますように要望いたしまして、私の質問といたします。
 終わります。
久保委員長 保坂展人君。
保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 当委員会で交通事故の問題を大分やらせていただきました。きょうは、この問題と公団住宅の問題、二つやらせていただきたいと思います。
 まず最初に、新聞を見ておりましたら、国土交通省は車の保安基準を、これは継ぎはぎだらけでなかなか現実と整合しなくなっているので見直していく、こういう記事がございました。前照灯、後退灯など、さまざまな見直し、省令改正、告示などを行って九月一日から施行していく予定、こうありますけれども、私、この委員会で、高速道路の中央で車が立ち往生してしまって、三角停止板を立てられなかったということをもって、亡くなってなお過失を問われている三苫さんという青年の話を何度か取り上げました。
 国土交通省に伺いますが、この三角停止板、こういう扱いについても今回見直しの範囲に含めているんでしょうか。
洞政府参考人 七月二十二日の東京新聞で報道されております道路運送車両の保安基準の改正の趣旨でございますが、保安基準は一九五一年につくられまして、その間、いろいろな修正あるいは追加等々が行われてきているわけですが、その体系は、省令あるいは告示、通達等々、ありとあらゆる手段でもって、率直に言って継ぎはぎだらけの状況になっている、こういう状況では保安基準が一体どうなっているのかよくわからぬではないかというような問題点、指摘というのが、自動車メーカーあるいは一般のユーザーからも、これまでも多々寄せられておりまして、私どもは、この点を深く反省いたしまして、昨年からこの件についていろいろ勉強してまいりました。
 そして、法的な整理をきちっとしよう、だれでも、気楽に見て、どの部分を見ればすぐわかるというような、そういう仕組みにしようじゃないかということでもって、基本的な枠組みは省令で、その他の技術的な細目は告示で定めようというような整理をするということで臨んでまいりまして、この作業の結果、約三分の一ぐらいのものにつきまして今回準備が整いましたものですから、今回これを公表して九月一日から施行しよう、残りの三分の二についてはできるだけ早く、できれば年内にもそういう整理をしていきたいということでございます。
 基本的には、内容は、今決められている保安基準を整理するということで、中身を改めて全面的に見直してどうこうするという部分、それは一部新しく取り入れる部分はございますけれども、それはございません。
 それで、先生御指摘の三角表示板の問題につきましては、今回の九月一日の施行の部分の中にはまだ入っておりませんが、予定されています残りの部分について、年内にこの部分はきちっと整理していきたいと思っています。ただ、内容につきましては、基準については、これまでの基準をそのまま踏襲するということでございます。
保坂委員 端的に答弁してください、時間がありませんので。
 警察庁の方に伺いますが、お配りした資料の中に、これは教習所とか、あるいは免許の更新のときにいただく教則本なんですが、教則本を見ると、高速道路でやむなく停車する場合には停止表示器材を車の後方に置かなければなりませんと。歩行が困難で自動車の後方の路上にこれを置くことができない場合には、点滅式の表示灯、こういうものも紹介をされていますね。
 これは苦労して手に入れていただいてお借りしたんですが、こういうものを、これは車の電源から、車の上に置く、そして、これはくるくる回るわけですね。今故障していますよと注意喚起する、こういうものだと思いますが、これは、教則本にはこういう書き方が書かれていますけれども、身体の障害等がある方のみが使えるものなんですか。法令的にはどうなっているでしょうか。
属政府参考人 高速自動車国道等において故障等のために自動車を運転することができなくなったときに使用する停止表示器材には、いわゆる三角表示板、それと、今お示しされております停止表示灯、これは認められております。この停止表示灯につきましても、歩行が困難な方だけではなくて、すべての運転者の方が使用することが認められております。
 ただ、委員御指摘のように、交通の方法に関する教則の記載内容には、停止表示灯というのが、一般的には、歩行が困難で自動車の後方の路上に停止表示器材を置くことができない方が使用されるケースが多いというようなことを考慮して、そうした表現にしているところでございます。
保坂委員 この資料の右側につけておいた道路交通法の施行規則の方には両方書いてあるわけですね。要するに、一と二があって、二の方は点滅式のこれが紹介されているわけですよ。しかし、こういうものを私も知らなかったし、恐らくごらんになる方というのは、どうでしょう、初めてという方が多いんじゃないでしょうかね。
 つまり、道路交通法では三角停止板だけが絶対じゃないよと。今警察庁から答弁があったように、教則本には身体の不自由な方と書いてあるけれども、別にそこに法律なり規則は縛っていないということであれば、その状況状況でこういうものを使ってもいいんだということだと思いますが、そうなると、保安基準の方は、これは三角停止板オンリーなんですね。ここは整合性をきちっととって考えていただいたらいいと思いますが、いかがですか。
洞政府参考人 三角停止板はほとんどの車に一般的につけるというふうになっていますから、その基準というのが保安基準で書いてありますし、また、これも国際的な共通の基準として取り決められているところでございます。今の灯火等についても、基準を書くべきかどうかということについては、保安基準がなくともそれはそれで有効だということでございますから、法律的に必ず基準をつけなきゃいけないかどうかというのは、ちょっとまた別途検討してみたいと思います。
保坂委員 国土交通省というのは本当に交通事故をなくしたいと思っているんでしょうかね。本当に、高速道路で車がとまってしまったときにそういう若い方が亡くなった、その遺族の方が、三角停止板を組み立てられなかったということで過失があると言われて、二重三重に悔しい思いをしているということから、いろいろ調べてみたらこういうものもあったじゃないかと。一例ですね、これは。これだけが絶対じゃない。
 ですから、今回の保安基準を見直す際に、高速道路などでとまった際に、三角停止板以外にも、それにかわる表示でみずからの危険、故障を知らせるような、そこのところはしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 もう一点、RV車の事故の問題も取り上げてまいりました。
 お配りした資料の二枚目になるんですけれども、この問題もなかなか奥が深くて、その後に出てきたいわゆる車検の不正の問題などにも一部リンクをしていた、改造車両を車検でパスさせた検査官自身が不正にかかわったことを告白された方が五人いたというふうに前回の委員会で答弁をいただいていました。そのときにも確認をしましたけれども、国土交通省は、この事故発生直後、この車両は適法じゃない、違反車両である旨捜査機関にこれを伝えているということを答弁されていますが、間違いないですか。
洞政府参考人 保安基準に違反する点が、前照灯等々、灯火等についてあったということを報告しております。
保坂委員 それでは、そういう報告を警察庁の方は国土交通省陸運局の方から当時受けておりましたか。
属政府参考人 交通事故の捜査は、交通事故の原因を解明し、関係者の責任を明らかにすることを目的として行っております。本件の捜査に際しましても、事故の直接の原因と考えられました車高あるいは車幅及びタイヤの突出について関東運輸局東京陸運支局に検査を依頼しておりますけれども、これらについては保安基準に適合しているとの回答を得たとの報告を受けております。
 なお、その際、警視庁玉川警察署が同支局から受け取った書類には、その他の保安基準に適合しない部分も示されておりますけれども、これらについては本件事故に直結するものではないというふうに判断したと当時報告を受けております。
保坂委員 前回と少し答弁が変わったんですね。いわばこれだと思いますけれども、平成十一年の十月一日に陸運支局長から玉川警察署の捜査員に対して、これは保安基準に適合しない旨の報告があった。しかし、その報告は交通事故原因と関連がないのではないかということで外したということなんです。しかし、もう少し正直にこの新聞記事を見ますと、やはり遺族の方は、私もそう聞きましたよ、この車は残念ながら車検をパスしてしまうんです、保安基準には合っている車なんですということをずっと聞いてきたんですね。しかし、最近になって、いろいろ情報などを照会したことによって、やはり、一部か全部かは別として、保安基準に適合していないということがわかったじゃないですか。そして、あれですか、ことしの五月に反則金の支払いまで求めているわけですね。ここは車両の構造そのものが事故を生んだというところのもっと強い関心、そこのところが少し捜査当局も足りなかったんじゃないか、そういう反省はございませんか。
属政府参考人 交通事故が発生したときに捜査をするわけですけれども、その捜査をするときには、どういうことが原因であって、因果関係があってそういう結果に、発生に原因があったか、そういう観点からも捜査をするわけです。そういうときに、保安基準の項目は非常にたくさんあるわけですけれども、その中で、やはりこういう事故の原因になったというふうに考えられるものについてどうだったかということで具体的に捜査をしているわけです。そういう観点からやったときに、今回の部分では、その部分についての保安基準の違反はなかったというふうにお答えをしたところであります。
保坂委員 ですから、今聞いているのは、事故から相当年月もたって、そして今わかってきた。そして、遺族のもとにも、こういう点は違反だということがわかった。今局長のそういう説明でも、もう少し全体像を被害者の遺族に伝えて、しっかりと情報をお渡しして、真実を全部開陳した上でやっていくべきだったんじゃないですか、その点で反省点はないですかということを聞いているんです。
属政府参考人 警視庁におきましては、捜査の段階におきまして、可能な範囲で遺族の方々に事故の原因等について話をしている、御説明申し上げているというふうに聞いております。
保坂委員 では、重ねて伺いますけれども、これからもどういう事情だったのかということをきちっと、二度とこういうひどい事故がないために、遺族の方に説明していただけますか。それだけ答えてください。
属政府参考人 今後とも、捜査ですから全部というわけにはいきませんけれども、可能な範囲で、遺族の方々に必要なことについて御説明を申し上げるということは申し上げておきたいというふうに思います。
保坂委員 強く求めたいと思います。
 それでは、実は、つい先日、私は千葉県の柏にある光ケ丘団地というところに行ってまいりました。
 この光ケ丘団地というのは、どうも今の都市公団の、当時の公団住宅のパイオニア的な、一番新しい時期にできた団地だったそうです。したがって、建てかえの時期も早く来たんでしょうけれども。もう新聞等でも伝えられていることですけれども、この建てかえの住宅、つまり、ずっと賃貸で長いことこの住宅に住んでおられた方たち、しかも、新しくできた団地ですから、みんなで桜を植えたりとか町並み全体をつくっていったり、さまざまこの団地のコミュニティーをつくってこられた方たちが、やはりこの団地に住みたい、そして、分譲住宅が一部できるので、分譲住宅に対する優先枠というのがありますよということで、それではということで入った。
 ところが、入ったら、この金額が四千万前後だったそうですけれども、他の入居者がほとんど入ってこない状況。三十数人の方が入居をしたんですけれども、周りはずっと空き家で、その状況がもう二年ぐらい続いたそうです。そして、一般公募になった途端に八百五十万円ほど価格が低いところで公募が始まった。こういう問題が起きているわけです。
 きょうは公団からも来ていただきました。具体的にお聞きしますが、この建てかえというのは住民からの要望があって始まったものなんでしょうか。
那珂参考人 お答えいたします。
 当光ケ丘団地におきます建てかえ事業につきましては、平成二年度に説明会開始という形で着手したわけでございますが、この団地につきましては、特に居住者からの要望に基づいて行ったわけではございません。
保坂委員 ですから、公団サイドで建てかえようということになって、住んでおられる方に、実はこういうふうに建てかえますよという案を示して、建てかえが始まったわけですね。
 そこで、そこに住んでおられた皆さんが説明を受けたのは、優先入居ということです、優先入居。建てかえ後、分譲住宅に入居される方は一般公募に先立って優先的に入居していただきますということで示された。
 この優先入居というのは、今、都市公団ではどういう意味で使っておられますか。優先入居というのはどういう意味ですか。端的にお答えいただきたいと思います。
那珂参考人 先生御案内のとおり、建てかえ事業を進めるためには、現にお住まいの方々の建てかえ事業に対する理解と御協力をいただかなきゃいかぬわけでございます。したがいまして、私どもも、従前居住者の方々の居住の安定を図るという観点から、今御指摘のように、建てかえ後の住宅、これは賃貸住宅も多いわけですが、賃貸住宅や分譲住宅へのいわゆる戻り入居を初め、建てかえ後の住宅の家賃等の減額措置とか、仮移転あるいは本移転に必要な費用の支弁とか、そういうようなさまざまな措置を講じているところでございます。
 これらの措置の基本である戻り入居の場合、賃貸住宅もそうなんですが、今先生おっしゃったように、分譲住宅につきましても、一般公募に先立って従前居住者の方々に優先的に住宅を選んでいただき、入居していただける、こういう意味でございます。
保坂委員 そのとおりなんですね。優先入居というのは、一般の人に先立って入居していただく。
 しかし、その優先ということは、時間的な順番が優先ということだけでは必ずしもなかったと思います。恐らく、ここに住んでおられた方たちは、ずっと長いことこの団地を暮らしの場としてはぐくんできた人たちですから、やはり優遇され、そして、まずはそこに住んでいた方たちが入れるんだということで入った。
 そこで、問題は、そのときにバブルはもう崩壊をして、経済は悪くなってきていた。入居される方たちが、四千万なら四千万という価格を分譲価格で示されて、これは値下げということはないでしょうねという話をされて、いや、値下げはありません、二、三回、値下げはありませんと言うのを聞いて、それならということで入っていかれたというふうに私どもは聞きました。これは事実ですか。
那珂参考人 御指摘の時点、いわゆるバブルが崩壊したと言われている平成三年、四年から平成九年に至るまでの間に、私どもが分譲住宅事業を進めているときに、実際はなかなか売れない、空き家になるというような事態が生じたことは事実でございます。
 その際に、私どもの職員は、それぞれ団地ごとに、住宅ごとにいろいろな販売努力をしておりました。その過程において、その時点で当該住宅、個々の団地で違いますけれども、先生おっしゃるような、値下げはしないというような発言は事実だと思います。
保坂委員 いろいろな契約がありますよね。携帯電話の契約とかいろいろな契約がありますが、不動産契約というのは、やはり人生の中で相当大きな契約ですよね。一回あるかないかという契約だと思います。そのときに、値下げはしないと、しかもそれは、ディベロッパーなどではなくて公団ですよ。公団住宅に生まれた方もいる。そして、立派なものに建てかえてくれる、経済情勢は悪いけれども値下げはしない、そういうふうに言ったら、それはそのとおりと信じて入るのは人情だと思いますね。
 そのことを問われたときに、その時点ではそう言いましたという話、つまり、あのときは値下げしないと言ったけれども、またそれから事情が変わってという話になるわけですね。それは、やはり一般的な契約の原則からいって、また、公団が持ってこられた歴史や信頼からいって、極めて適正を欠くことだったんじゃないのか。
 私は、経済情勢が変わってきて、四千万で販売しようとしていた物件が三千二百万になってしまうということはあると思うんです。ここをよくないと言っているわけじゃないんです。値下げをしないと言っておいて、やはり下げますと言って八百万下げたときに、住民の皆さんから理解を得られなかったのは当然だと思います。そして、なおいまだにこのことが争われているというのは、大変不幸なことだと思います。
 一点伺いますが、そうやって、値下げはしないということで優先入居で入った方たち、気がついてみたら周りは空き家だらけという状況になったわけですね。何年間一般公募しなかったんですか。その理由は何ですか。相当長いこと一般入居が募集されなかったと聞いていますが、どのぐらいの間ですか。
那珂参考人 当該団地につきましては、平成七年の十月に、いわゆる戻り入居の方々の分譲入居があったわけでございますが、その後、当該光ケ丘団地内での戻り入居の方々の追加がもうこれでないんだなということを確認した上で、周辺の他の我が公団の建てかえ事業にかかわる従前居住者が、分譲住宅を欲しいと言われる方もいらっしゃいますので、そういう方々に対してあっせんを続けていたというのが、二年半ぐらいでございます。
保坂委員 では、もう一回、絞って伺います。
 公団で、この光ケ丘で生まれて育ったり、あるいは長いこと住んできて、建てかえがあるんなら、そして公団さんが値下げはしませんとはっきりおっしゃるんだから、いろいろ経済情勢は悪いけれども、そこで踏み切ろうと思って入居していった戻り入居の方々がいます。
 そして、今おっしゃるように、いろいろあの手この手でやってみたけれども埋まらない。一般公募はどんどんおくれにおくれる。そして、一般公募ということではなくて、賃貸にこれを充てようかという案も考えられたけれども、これはまた管理が大変だということで住民の皆さんからの理解が得られないというときに、突如として、二四%ですか、平均八百五十万、そういった値下げ額を発表したわけですね。
 これは公団の信用を大いに傷つけたんじゃないかと思いますし、また、戻り入居の住民の皆さんに申しわけなかった、そういう気持ちは公団の方にあったんでしょうか。
那珂参考人 まず、値下げしないという発言についてでございますが、これはやはり、当時の公団の販売方針として、当分その価格で販売努力を続けるということでありましたので、そういう意味で、今は、今はというか、値下げしないとお答えした、あるいはそういう説明をしたというふうに思います。しかし、そのことは、将来ともこの住宅あるいは同種の住宅をずっと値下げしないというようなことをいわば契約上の合意としたというふうには、私どもは考えておりません。
 今先生御指摘の、そうはいっても、長らく光ケ丘団地を愛して居住されていた方々が、不幸にもそういう高い物件を買ってしまったことについてはどうかというようなお尋ねでございます。
 これにつきましても、私ども、また繰り返しになりますけれども、建てかえ事業の実施に当たっては、そもそも、戻りを賃貸住宅にしますか、分譲住宅にしますか、あるいは他の団地にしますかと、いろいろな生活設計上の選択肢を十分御説明して、その上で、戻られた方の家賃の減額、あるいは分譲価格についても、少しでございますけれども減額をして御提供申し上げた、そういう経緯がございます。
 それで、分譲住宅を一度希望された方でも、その後の新しい住宅も少し時間がかかりますので、そういう経過の中で、少しずつ他の住宅への変更をなさってこられたというようなこともございます。そういう意味で、当初の予定よりも空き家がふえてしまったというようなことでございます。
 その間、その過程において、先に、七年十月に入居された方々に対して、いろいろなことを御説明して、また、賃貸住宅への切りかえということも十分御説明して、それでも御納得いただけないので、とうとう一般公募に踏み切らざるを得ないというようなことを十分に御説明して、御理解、御協力をいただきたいと思ったつもりでございます。
 本件が訴訟にまで至ったことにつきましては、極めて残念なことだと存じます。
保坂委員 短くしてください。
 申しわけないという気持ちはありませんということなんですね。残念だということです。
 これ、扇大臣、ちょっとどう思いますか。
 千葉日報という千葉の新聞がありまして、書いてありますよ。「「団地ができた当時から住み始め四十五年。せっせと植木を植え、保育園もできた。入れ物を用意したのは公団だが中身を作り上げたのは私たち住民」「公団の「優先入居」という約束を信じ、協力したのに」」という、これは、青柳さんという方が証言をされたということが紹介されています。
 そして、今、都市公団の副総裁の久保田さんという方が「役人道入門」という本を書かれていると紹介されていますね。「冒頭が「文章編」で、「すぐれた役人たらんとするものは作文修行に心血を注ぐべし」「ある事項を説明するときに、それに最もふさわしい表現はただ一つだ」」こう言っておられる。「今度会ったら「優先」をうたったのが「最もふさわしい、ただ一つの表現」だったか、じっくり聞いてみよう。」と、このコラムニストの方が、旧知の間柄だということで、ちょっと皮肉を込めて書かれているんですね。
 扇大臣、今私お聞きしているのは、値下げをしませんと言って、それを団地を愛する方が信じて買い求められた。しかし、今の答弁のように、そのときは値下げをしないということであって、未来永劫にわたって値下げをしないなんてことを言っていない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。そこに、やはりもう少し反省とか、申しわけないという気持ちだとか、住民との歩み寄りということはなかったんだろうかと率直に言って思いますよ。大臣、どのようにお考えになりますか。
扇国務大臣 たまたまきょうは保坂議員が都市公団のお話をなさっていますけれども、今同じような問題が、民間のマンション等々でもかなり今建てかえが、ちょうど時期的にそういう建てかえ時期に入っているものですから、そういうことが往々にしてあるというのは、私も世間のお話はよく伺っておりますし、直接私のところへ来ておっしゃる方もあります。
 今お話を伺っていて、都市基盤整備公団の賃貸、今のは賃貸と買い取りと両方あろうと思うんですけれども、少なくとも、従前の居住者を優先にというのは、私は、いい意味で、大変、今まで住んでいただいてありがとうという意味で、従前居住者を優先的にという制度を適用したんだと思うんですよ。
 ですから、恩があだになるというのは、言葉で言うと嫌な言葉ですけれども、私は、都市基盤整備公団が従前居住者を優先的にというのは、好意でしたと思うんです。
 今るるおっしゃったような事情を聞いておりますと、その時期、状況、また、建てかえるときに私ども本当に気をつけなければいけないなと思いますことは、建てかえるという住民の多くの皆さん方の賛同とともに、マンション適正化法も今度通していただきましたけれども、我々も、少なくとも、建てかえたところへ入る人が少なくなるというような建てかえはしてはならないと。なるべく、ああ、あそこはよくなった、あそこへ行こう、福祉施設も、あるいは子供の保育所もできている、ああいうところへ早く入ろうといって、競争率の倍率が何倍にもなるような建てかえ方法を私はやはりするべきであろう、その努力も少し足りなかったのかなと。私、光ケ丘団地の内情、建てかえの内容がまだよくわかりませんけれども、光ケ丘団地という例を挙げられましたので。
 そういう意味では、私は、都市基盤整備公団、閣議決定されて、今回は特殊法人の整理合理化ということで、集中の改革期間中にはこれを廃止して、民間を誘導する新たな独立行政法人を設置するということが決まっておりますけれども、少なくとも、これも、来年の十五年の通常国会に法律として出したいと思います。
 今保坂議員がおっしゃったような、好意でもって居住者優先ということをしたにもかかわらずというのが気持ちとしてはあろうと思いますので、そういうことのないように、しかも、従前居住者に優先的にという好意が、周りがだれも入ってこないというような、そういう建てかえは私は本来はしてはならないと。より今後は、都市基盤整備公団、独立行政法人化した後も、こういう時期に建てかわっていますので、建てかえのときには、十分に気をつけ、住民の皆さんの意向を聞くべきだろうと思って聞いておりました。
保坂委員 住宅局長に伺います。
 これは、公団はやはり信用されているんですね、今でも。だから、その公団が値下げしませんと言ったら、値下げはしないんだな、これは契約書までつくる必要ないなと思う住民の気持ちは当然だと私は思います。しかし、その値下げしませんというのは、今はというのが括弧でついている。今は値下げしません、そんな契約というのはありますか。今は二千万です、しかし、お金を払う段になったら、三日たったから三千万、そんな話はないわけですよね。今はというのはそういうことで、やはり、値下げしませんと言って、扇大臣が言ったように、好意があったんなら、最後まで好意を貫いてほしいわけですよ。そういう落差が生じてしまったときに、やはり、住民の皆さんに謝罪をして、丁寧に話し合いして、そしてきちっとやってほしい。
 それから、行ってきましたら、結局、途中で終わっちゃったわけですよね、これ、見にくいと思いますけれども。建てかえは途中で終わっちゃったんです。半分のところは、もうずっとこの四年ぐらい、高い塀で囲われた空き地になっているんですね。パイオニア的な団地で、意欲もあっただろう建てかえがこんな状態になっている。そういうことを見ると、やはり公団を指導する立場として、余りいいかげんに値下げをしないなどということを言って、そして住民の皆さんとの本来いい関係であるべき関係が壊れているということについて、どういうふうに考えますか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 公団の方が、当時、値下げをしないというふうに言ったということでございますが、これはやはり、値下げをするようなことにならないように努力するということの意思表示だろうと思います。その当初の譲渡の後、約三年を経過しております。やむを得ず、そのときの不動産市況の低迷を反映した結果としての価格設定をして値下げをしたということでございます。これについては御理解をいただきたいと思います。
 それから、建てかえの仕方につきましては、先生おっしゃいましたように、やはり地元の環境を、いい環境になっているものをできるだけ保存するとか、あるいは地元の方々の御意見を取り入れながら建てかえを進めていくということは、当然今後も進めていくべきではないかというふうに考えております。
保坂委員 ぜひ、公団が何か言ったら、言ったことは全部括弧で今はというのが入っているなどという、そういうふうなことになっちゃいけないと思うんで、私は、この住民と最後まで争うというのはいかがかと思いますよ。本当に誠心誠意心を尽くして、やはりこの団地を愛している皆さんなんですから、しっかりやってほしいと思います。
 最後に一点、河川局長に伺います。
 私、公共事業をチェックする議員の会というのに入っておりまして、つい先ごろ、穂高町、長野県ですね、そこの中房砂防ダムという砂防ダムを見てまいりました。砂防ダムといっても、二十五メートルの高さの堰堤でございます。
 そこへ行って驚いたのは、まずその巨大さですね。そして、さらにびっくりしたのは、ちょうどスロープ状に、滑り台を幾つも重ね合わせたような、何といいましょうか、不思議な、コンクリートの、階段じゃない、スロープがあるんですね。あれ、何でしょうかと言ったら、魚道ですと言うんですよ、魚道。二十五メートルを魚がどうやって上るのか、職員の人に、上ったことがあるのかと聞いたら、いや、猿が時々使っていますと。
 こういうことをどうしてやっているんでしょうか。しかも、手前で直角の堰があって、魚なんか一匹も上れない。一億五千万円使っているんですよ、その魚道に、自然環境との調和などといって。こういうのはちょっといかがなものかなと思いました。全体で工事費二十六億でしたが、いかがでしょうか。
鈴木政府参考人 御説明申し上げます。
 これは長野県によって、まあ時間もあれですので省略いたしますが、長野県によって中房砂防堰堤というのが施工されております。この施工に当たっては、中房川に生息する魚類に配慮するため、堰堤に、最大高低差二十一メーターの、おっしゃるように、階段の魚道でございます、これは。
 この魚道の設計に当たりましては、どういう魚を代表魚種として設計するかということで、イワナ、ヤマメ、そういったものがすんでいるということで……(保坂委員「二十五メートル」と呼ぶ)落差がですね、全体の、この下から上までの落差が二十五メーター、この延長はもっとたくさんございます。イワナやヤマメがすんでいるということで、それから、地元の漁協との聞き取り調査等も踏まえまして、今申し上げたイワナやヤマメを代表魚種に、魚道を設計したわけでございます。
 ただ、残念ながら、この砂防ダムはまだ貯砂、満砂になっていないわけでございます。砂防ダムと申しますのは、空になって、上流から土砂が来てためる、これも効果なんですが、実は、そこで役割が終わるんではなくて、むしろそこから、侵食を抑えるですとか、あるいは、ふだん水が少しずつ砂を流して、洪水になったらどんとためる、こういう機能を発揮するわけでございまして、ダムはでき上がりましたが、まだある意味では本格的な効用を発揮していない状態でございます。これが発揮されますと、多分、全体としてダムの上に砂がたまって、そうすると水が上から流れますので、今無用の長物のように見えますが、これが魚道として効果が発揮されるということでございます。
 それで、実際に今までも……(保坂委員「魚が上がるんだ」と呼ぶ)私が発言中でちょっと聞き取れなかったので、申しわけございませんが、実際には、こういった二十メーターの落差のようなものでも魚道として効果を発揮しているというものもございますので、今後とも、十分に調査をしながら、この魚道が十分な効果を発揮するようにやってまいりたいと考えておるところでございます。
保坂委員 終わりますが、やはり魚道というのは魚が上がるためであって、それを大変な金額をかけてつくっている。私が指摘すると、全部、じゃ、これ、そういうものをつけますということになりかねないんで、やはりきちっと生態系を見てやっていただきたいということを申し上げて、終わります。
久保委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十九分散会


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