衆議院

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第6号 平成15年3月11日(火曜日)

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平成十五年三月十一日(火曜日)
    午前九時十四分開議
 出席委員
   委員長 河合 正智君
   理事 栗原 博久君 理事 菅  義偉君
  理事 田野瀬良太郎君 理事 橘 康太郎君
   理事 今田 保典君 理事 玉置 一弥君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      岩崎 忠夫君    小里 貞利君
      倉田 雅年君    実川 幸夫君
      砂田 圭佑君    高木  毅君
      谷田 武彦君    中本 太衛君
      西田  司君    西野あきら君
      林  幹雄君    原田 義昭君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      堀之内久男君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      山本 公一君    阿久津幸彦君
      岩國 哲人君    大谷 信盛君
      川内 博史君    佐藤謙一郎君
      津川 祥吾君    永井 英慈君
      伴野  豊君    高木 陽介君
      土田 龍司君    大森  猛君
      瀬古由起子君    菅野 哲雄君
      原  陽子君    日森 文尋君
      江崎洋一郎君    松浪健四郎君
      後藤 茂之君
    …………………………………
   議員           大谷 信盛君
   議員           佐藤謙一郎君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (内閣府道路関係四公団民
   営化推進委員会事務局長) 坂野 泰治君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        鈴木 孝之君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房長) 安富 正文君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            三沢  真君
   政府参考人
   (国土交通省国土計画局長
   )            薦田 隆成君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  鈴木藤一郎君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君
   政府参考人
   (国土交通省航空局長)  洞   駿君
   政府参考人
   (環境省大臣官房審議官) 小林  光君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局長
   )            炭谷  茂君
   政府参考人
   (環境省地球環境局長)  岡澤 和好君
   参考人
   (東京大学大学院工学系研
   究科教授)        森地  茂君
   参考人
   (法政大学法学部教授)  五十嵐敬喜君
   参考人
   (奈良女子大学大学院助教
   授)           中山  徹君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十一日
 辞任         補欠選任
  日森 文尋君     菅野 哲雄君
  二階 俊博君     江崎洋一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  菅野 哲雄君     日森 文尋君
  江崎洋一郎君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  松浪健四郎君     二階 俊博君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 社会資本整備重点計画法案(内閣提出第一三号)
 社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一四号)
 公共事業基本法案(前原誠司君外三名提出、第百五十一回国会衆法第三六号)


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     ――――◇―――――
河合委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに第百五十一回国会、前原誠司君外三名提出、公共事業基本法案の各案を一括して議題といたします。
 本日は、各案審査のため、参考人として、東京大学大学院工学系研究科教授森地茂君、法政大学法学部教授五十嵐敬喜君及び奈良女子大学大学院助教授中山徹君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 議事の順序でございますが、森地参考人、五十嵐参考人、中山参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、まず森地参考人にお願いいたします。
森地参考人 おはようございます。森地でございます。このような場で意見を述べさせていただくことを大変光栄に存じます。
 時間が限られておりますので、お手元にメモを用意してございます、ごらんいただきながらお聞きいただければと思います。
 最初に、ちょっと迂遠ではございますが、後ほどの論理展開上、戦後の社会資本整備について私がどういうふうに考えているかということを一ページ目にまとめてございます。
 御承知のとおり、戦後、荒廃したこの国土を復興するという目的、それから、次々に出てきます社会的ニーズにこたえるために、そこにありますようなもろもろの対応がなされてまいりました。
 ここにある五つの目標、少し単純化してはございますが、五つの目標にそれぞれの分野で対応してきた。
 例えば、旧建設省の都市局は都市化という問題、大都市への人口集中という問題がございましたし、道路局はモータリゼーションに、河川局は洪水対応あるいは災害対応に、こういう格好で、いわばそれぞれの目前の課題にこたえることに一生懸命やってきた、こういうことではないかと思います。
 戦後、財政的に大変厳しい状況下で、しかも、ODAが今のようにきっちりしてなかった、そういうときに、日本特有の制度、具体的には受益者負担を極めて重んじるような制度をつくり上げてきたわけでございますが、当初の十年ぐらいはその枠組みをつくるのに模索していた、こういうふうに理解をしてございます。
 その後、一九五〇年代の後半ごろから、社会資本整備をすれば地域構造が変わっていって、農業も漁業もあるいは新たな産業も成立していくような時代になりました。そういう時代が約三十年から四十年間続いたと考えます。言ってみると、地域づくりが大変単純に見えた、そういう、国際的に見ますと大変幸せな時代を過ごしてきた、こういうふうに理解をしてございます。
 その間、特に、一九七〇年代に入りますと欧州、それから八〇年代になりますとアメリカが、経済的に大変厳しい状況になって、そこからどうやって経済的に復興するかということが大きな課題になりました。もちろん発展途上国も、テークオフするのにどうすればいいかということを模索したわけでございます。そういう国々では、どのシナリオもリスクが伴いますし、意見がいろいろ分かれます。しかしながら、ある種のシナリオを選定して一定期間継続することによって、それを、いい選択をし、しかも継続をできた国だけが復興できた、こういう歴史だったのではないかと思います。日本が地域づくりが単純に見えたのと非常に対照的ではなかったかと思います。
 そういう時代を経て、社会資本整備に対するいろいろな批判が出てまいりました。そこにございますように、非効率とか公共事業依存型地方経済ですとか資源配分が適正かとか、あるいは発注入札制度の問題はないかとか、こういうことでございます。こういうことに対応するために、いろいろなスキーム、仕組みが、この数年間、ようやく整備されてきた、こういうふうに理解をいたします。
 社会資本整備の意義の変化としましては、個別社会資本整備の時代から社会資本間の調整が強く求められた時代を経て、今は、地域づくりのシナリオのもとで社会資本を選択していく時代に入っている。こういうことにうまく対応できるのかということが求められ、今回の法案も、そういう背景のもとに成立しているのではないかと思います。
 二ページ目でございますが、長期計画の意義に関しましては、もう言うまでもなく、長期、中期、短期の計画を持たない国はないわけで、それぞれの国がそういうものを持っております。
 その意義は、各分野の計画の整合性を保つとか、あるいは民間も含めた各国民が、この地域がどうなるか、社会資本がどうなるかということを見て長期的な意思決定ができる、あるいは歴史的な判断とか毎年の社会状況の判断とか、各時間レンジでの評価を各時間レンジの計画に際して行うとか、あるいは時系列でマネジメントをする、具体的には、手順前後が起こらないようにきちっとした意思決定をしていく、こんな意図を持っているのかと思います。
 しかしながら、この数年間、長期計画は要らないかのごとき議論をマスコミ等で拝見いたします。公共事業配分の既得権化とか分野別配分の固定化とか社会経済の変化への対応力の低さとか、こういう視点からの御批判ではないかと思いますが、計画論として長期計画を否定する論理性はない。つまり、長期計画が悪いのではなくて、それにかかわる、つまり、計画策定時とかそれに参加する時期とか、あるいは、その計画を実行する時期の意思決定の問題と長期計画自身の問題は、また別の問題と私自身は理解をしてございます。
 そんなことも踏まえて、社会資本整備重点計画法案でございますが、長期計画の策定は意義があることでございます。法案を拝見いたしますと、事業間の整合性、連携を確保した体系的な取り組みが可能になっておりますし、事業執行の計画性、効率性等の確保のため、適切な進捗管理が可能になっている、アウトカム指標を設定することで国民にもわかりやすい計画になっている、あるいは国民に対する説明責任を果たす手段としての方針も規定をされておりますし、国と地方公共団体共通の目標設定をする、こういう枠組みにもなっている。こういう意味で、長期計画の策定を意義あるものとして動かすような枠組みになっていると理解をいたします。
 二番目に、分野別計画を廃止し一本化する、こういうことでございますが、これは大変適切なことで、政策目標達成のための事業間の横断的取り組みですとか事業分野別の重点化、効率化ですとか、あるいは空間計画をきちっとこの社会資本と整合させるとか、こういう枠組みができ上がっていると理解をいたします。
 三番目に、社会資本整備の共通的諸課題への取り組みの明示、この方針が示されております。例えば、地域住民の理解確保、コスト削減、時間管理概念の導入、透明化確保、事業評価、入札制度、以上でございます。
 このような観点から、本法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に賛成するものでございます。
 公共事業基本法案についてでございますが、こういう法案を先駆的に御提案になったことに敬意を表したいと思います。こういうものが今まさに求められていると理解をいたします。ただ、社会資本整備重点計画法案と本質的な差異は少ないと拝見をいたしました。
 少し批判的なことを申し上げますと、民主党案は、社会資本に関する最近の批判への対応に重点が置かれて、我が国が求められている地域づくりに関する方向性に照らしてやや自由度が少ないかな、こういうふうに読ませていただきました。例えば、全総法の改正ではなくて廃止を前提とするというお考え、計画の国会承認を前提とすること、あるいは事後評価も含めて、事業前の評価、再評価と同様に規定していること等々でございます。
 なお、本法案適用上の課題として、そこにございます四つの点を提起したいと思います。
 一つは、新しい国土計画制度との関係でございます。
 新しい国土計画とか土地利用計画、これについて今議論が進んでいると認識してございますが、そういうものと社会資本整備計画は地域づくりの両輪でございまして、それぞれの分野で調整をしていく、こういうことが大変重要でございますので、この法律を実際に運用するに当たっては、どうそれを調整していくのかということを十分お考えいただきたいということが第一点でございます。
 第二点は、公共投資と民間投資についてでございます。
 もちろん、社会資本整備計画でございますから、公共投資についてのものが中心になろうかとは思いますが、特に外国と比べまして、日本の公共投資に関する迅速性の欠如が大変顕著であると認識してございます。民間が資本回収について大変早く回転するような格好で世界じゅうが動いているときに、それとどうも公共投資の速度が合わない。このミスマッチが日本のいろいろな地域づくりに問題を起こしているような気もいたします。競争力の問題としても問題かと思います。それから、PFIとかPPP、公と民の関係についてのいろいろな制度的枠組みが出てございますが、これを計画の実施に当たって十分推進していくことが重要かと思います。
 それから三番目は、各段階の計画の位置づけと内容についての整合でございます。
 長期、中期、短期の計画、あるいは構想計画から実施計画に至る各段階の計画制度の問題、時間レンジの問題、あるいは社会資本整備と各種地域づくり施策、ソフト施策も含めたものでございますが、これらとどういう格好で整合させて運用するかということが大変重要かと思います。例えて言いますと、長期計画の評価とプロジェクト評価はどういう関係にあるのかとか、あるいはプロジェクト評価と各ソフトも含めた施策の評価とをどういうふうに整合させてしていくのか、こんなことが大変重要かと思います。
 最後に、関連する法律として、条件不利地域のバックアップをするための制度がたくさんございます。過疎法とか離島法とか半島法とか、もろもろございます。こういうものをすべて見ますと、要するに、公共投資の自己負担率を下げるところにだけ重点があるような気もいたしますので、こういうものの内容を、そういう地域をこれからどうしていくのかということについてもう一度考え直すことが大変重要か、こう考えている次第でございます。
 ちょっと時間が長くなって恐縮でございました。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
河合委員長 ありがとうございました。
 次に、五十嵐参考人にお願いいたします。
五十嵐参考人 五十嵐です。
 私は、きょうの法案について、議員立法も出されておりますが、両方あわせて私の意見を述べさせていただきたいと思っております。
 長らく公共事業を見てまいりましたけれども、公共事業に関しては本質的な改革が不可避だと私は考えております。その理由は、大きく言って、レジュメに基づいてお話し申し上げますと、一つは、財政危機について非常に大きな責任を持っている分野がこの公共事業であるということであります。二番目は、環境破壊が進んでおりまして、日本のかつての美しかった国土がぼろぼろになっておりまして、この環境破壊の点からも日本の公共事業を見直す必要があるということであります。三番目は、皆さんとも大変関係が深いわけでありますけれども、やはり政治腐敗の根源にこの公共事業がなっている。この三点から、公共事業改革は不可避であると私は考えております。
 なお、一方で、特に小渕内閣以降、公共事業については、経済効果やあるいは雇用の確保という観点から政府側でも一時推進した時期がありましたけれども、経済効果についても雇用効果についても、最近は格段にその効力が薄れているということを御配慮していただきたいと思います。
 そこで、本質的な改革案について幾つか大づかみに論点を提出させていただきたいと思いますけれども、一つは、公共事業のトータルの費用というものについて、もうちょっと計画的にコントロールすべきではないかということであります。
 世界各国の統計が出ておりますけれども、いわゆるある一定のインフラの整った各国では、GDPに比較して二ないし三%ぐらいというのが公共事業のトータルの費用であります。同じような基準に基づいて日本を算定いたしますと八%程度になっておりまして、これは徐々に欧米に近づくように減らしていく必要があるだろうということであります。政府も、小泉内閣になって、一時この問題を取り上げておりましたけれども、最近の不況のために、またこの指標があいまいになってきていることは非常に残念であります。
 二番目は、きょうの主題とかかわる問題でありますけれども、いわゆる公共事業のシステムというものについて抜本的な改革を加える必要があるということであります。
 公共事業のシステムの日本的な特徴を申し上げますと、開発万能のコンセプトのもとで、中央集権的に、とりわけ官僚という人たちが主導的に公共事業計画を策定し遂行してきたというところに、世界に例のない中央集権的な構造を見ることが出てくると私は思っております。
 その一つが、きょうの問題になっております、いわゆる公共事業に関する中長期計画の問題でありますし、さらに言いますと、その全体像を示す全国総合開発計画の問題点であります。先ほどの森地参考人とは少し意見が異なりますけれども、私自身は、一たんこれをすべて廃止すべきであるというのが私の意見であります。
 では、どうするかということでありますけれども、公共事業そのものについて、もっと抜本的に別な観点から、今言いました官僚支配による開発志向のコンセプトから、むしろ自治とか地域とか情報公開とかあるいは参加の観点から、事業そのものを見直すべきであるというふうに考えます。大きく言いますと、今までのような国の直轄事業、補助事業、自治体の単独事業というシステムそのものをもう抜本的に考え直す時期ではないかというのが私の意見であります。国の行うべき公共事業と自治体の行うべき公共事業に二分いたしまして、補助金に基づく補助事業というものを廃止する、いわゆる三分割から二分割に変えるということが必要だというふうに考えております。
 なお、補助事業を廃止すべきだという理由については、それぞれ、縦割り行政だとか自治体の中央省庁に対する追随だとか、あるいは利権とかということがありますので、これを廃止すべきだという理由はもう詳しく申し上げません。
 そこで、きょう出されている法案を見ますと、政府側の提案に係る社会資本整備重点計画法と民主党提出に係る公共事業基本法は、いわば国の行うべき事業についての法のあり方ということについて政策競演をやっているものと理解いたします。もう一つ大きく言いますと、今度は自治体の行うべき公共事業に関する新しい法案をもう一本準備すべきであるというのが私の提案であります。
 そこで、国の行うべき公共事業について幾つか、野党議員立法に係る法案との比較について私の意見を述べさせていただきます。
 まず、今回出されている政府法案の対象でありますけれども、これはすべて国土交通省のみでありまして、農水省その他の事業との関係性がここも縦割りになっております。できれば公共事業、公共事業基本法案ではこれはすべてが対象になっておりますけれども、一括して対象にすべきである、縦割り行政を残すべきではないというのが第一点であります。
 二番目、これが最大の論点でありますけれども、今回の社会資本整備計画は、やはり従来と同じように、閣議決定のみで最終決定が行われております。民主党法案は、これは国会承認にかけているわけですけれども、ここが、法的に言いますと最大の論点ではないかというふうに思います。
 国民の生活に最も大きな影響を持ち、かつ莫大な税金が投入される公共事業の計画について、なぜ国会の皆さん方が自分たちで考えるあるいは討議するということを放棄しているのか、私には理解できません。国会とはそもそもどういうものであるかという根源にかかわる大きな論点がここに含まれているように思います。昭和三十年以降の中長期計画はすべて、漁港法を除きまして閣議決定で行われてきましたけれども、これが最大の失敗であったと私は思っております。
 それから、今言いました国の事業と地方自治体の事業についても、今回の社会資本整備法案によりますと無制限であります。これは国の事業についてはそろそろ限定をして、役割分担をした方がよろしいと思います。
 それから、公共事業の評価に関しましても、ここも自己撞着に陥っているだろうと私は思います。
 政府法案の中でも、最近の批判を受けまして、評価という概念が大分入ってきておりますけれども、だれが評価するかということに関しまして、相変わらずこれは官庁内にとどまっておりまして、第三者の目による評価というのはございません。公共事業基本法によりますと、これを正確に、五年、十年あるいは事業再評価後二年に分けまして、第三者の目で、その成果について公表する、審査をする、評価をするということになっておりまして、これは評価の問題の基本的な原則について、社会資本整備法の方が誤っていると思います。
 それから、法的な観点と少しずれるかもしれません、この法案全体をだれが所管するかということであります。これは国土交通省が自分で所管するということでありますけれども、公共事業全体、特に省庁を超える新しい計画を立てる場合には、内閣府に置くべきではないかというふうに私は思います。
 もう一つ、今後ぜひ先生方に検討していただきたいものとして、地方自治体の行うべき公共事業について、従来の仕組みとは全く変わる新しいシステムを導入すべきであるというふうに思っております。とりわけ、今、地方自治体では議会が行われておりますけれども、公共事業についてはどこでも悪戦苦闘しております。大きいある顕著な自治体では、四年ぐらいの間に公共事業を半分、五〇%削減するなどという状態に追い込まれておりまして、これが地方の経済や地方の事業について、物すごい影響力を与えております。これを従来のように、いわば補助金絡みで細分化されたシステムでやっていくことはほとんど不可能になっておりまして、抜本的な地方自治体における新しい公共事業の取り組み方、システムを考える必要がある。
 ちなみに、私の言葉で言いますと、市民事業、地方自治体の行う事業を従来型の公共事業とはっきり区別する意味で市民事業というものにすべきであると思っておりますけれども、いわば私の提案は、この市民事業法を制定せよというお願いであります。
 どういうふうにするかといいますと、一つは、従来型の補助事業を全部やめまして、総合的にその資金を運用できるようにする。つまり、地域の最も必要なところに重点的に配分できるように、縦割り行政をやめるということであります。
 それから二番目に、公共事業に関しまして、市場と市民の導入を図るということであります。PFI等さまざまな民間活力の運用の手法が最近開拓されておりますけれども、自治体でもこういう点についてはぜひ導入すべきであるということであります。さらに言いますと、もう一方の側であります市民も計画段階からこれに参加する必要があるということであります。
 三番目は、これについて議会に責任を持たせまして、議会が、こういう事業について、いいか悪いかについてみずから決定をする、かかわっていく、あるいは失敗した場合にはそれについて責任をとるというような構造に切りかえる必要があるだろうということであります。さらに、それらの全体について、市民が市民の目で評価するというような形での点検委員会というものをつくるべきであるというふうに思います。
 総じて言いますと、いわば公共事業というのは、自治体から見れば自治体のまちづくり事業でありますから、これを都市計画の観点から、改めて、自治体の行う都市計画事業について抜本的なシステムを構築すべきであるというふうに考えております。
 以上です。(拍手)
河合委員長 ありがとうございました。
 次に、中山参考人にお願いいたします。
中山参考人 奈良女子大学の中山です。
 時間の関係もありますので、社会資本整備重点計画法案に即しながら私の意見を申します。
 まず一点目ですけれども、社会資本の整備を考える場合、その法案の目的、そして現状の公共事業の問題点をどう認識しているか、この点が法案を考える上では非常に重要になると思います。
 この法案では、第一条に、「社会資本整備事業を重点的、効果的かつ効率的に推進するため、」と、これがこの法案の目的として書かれています。また、なぜそれが今までできてこなかったかということなんですが、いただいた参考資料等を見てみますと、長期計画が縦割りであったため、それが十分進まなかったというふうに書かれています。
 確かに、長期計画が縦割りであったという点はそのとおりであって、それを改正していくということは必要だと思います。しかし、日本の公共事業の将来的なあり方を考える場合、この点を公共事業改革の入り口として議論することが果たして望ましいのかどうか、その点をまず考える必要があると思います。
 私自身、日本の公共事業の持っている最大の問題点は、先ほど五十嵐参考人も発言しておりましたように、日本の公共事業費の総額が極めて大きいというところにあると思います。日本の公共事業費の総額が大きいということは、この法案の参考資料にも出ておりますように、例えば対GDP比を見ましても、日本の公共事業費の総額は対GDP比五・一%。それに対して、アメリカは一・九%、イギリスは一・三%になっています。これだけの膨大な公共事業費を長年使い続けているということが、国から自治体までの財政状況の悪化、また、ほかの施策へのしわ寄せ、膨大なむだの発生、環境問題、そういったものの根源にあると思います。これについては、政府でも、橋本内閣そして今の小泉内閣でも、公共事業費の総額をどう計画的に削減していくのかということが議論されていると思います。
 まず、日本の公共事業について、この法案で言うように、長期計画を立てる場合、第一に明確にすべきことは、公共事業費の総額をどの程度削減していくのかという国の方針を明確に示すことが、公共事業の長期計画にとっては最も重要なことではないかと思います。
 公共事業費の総額をどのように削減していくかというのは、先ほど申しましたように、他の国の水準もしくは日本の財政状況、社会資本の整備状況、そういったものを総合的に判断すればいいんですが、いずれにせよ、長期計画のもとで、日本の公共事業費の総額をどのようなスケジュールで削減していくのか、それを国民に明確に示すことがまずもって重要なことではないかと思います。
 今回の法案では長期計画を立てるというふうになっていますが、その目標は、事業量ではなく、アウトカムで示すとしています。それも一つの考え方かもしれませんが、むしろ、公共事業費の総額を削減していくということを前提にするのならば、その削減の目標を明確な数値で国民に示した方がわかりやすいと思います。
 そういう意味では、公共事業費の総額をどのように削減していくのか、どのようなスケジュールで段階的に削減を図っていくのか、そういった長期計画を公共事業の場合はまずもって考えなければならないのではないかと思います。
 二点目ですが、そのような長期計画を仮につくるとすれば、むしろ、この法案で言う重点計画が生きてくるのではないかと思います。というのは、公共事業費を大幅に削減するにもかかわらず、国民が求める公共事業をどのように進めるのか、それを国民に明確に示す必要があるからです。
 その場合、この法案が対象としていますように、国の直轄事業に限定されずに補助事業や単独事業まで含めて広い社会資本整備を考えるのであれば、公共事業、この法案で扱う社会資本整備の定義をもう少し広くとった方が望ましいのではないかと思われます。
 社会資本整備重点計画法の第二条では、この法律が扱う分野を、道路、鉄道、空港、港湾、都市公園、下水道など十四の分野にしています。一方、公共事業基本法案の方ではもう少し広く公共事業をとらえておられるようで、それはそれで望ましいと思うんですけれども、ただし、国民がイメージする公共事業はもう少し広いのではないかなと思います。
 例えば、今の小泉内閣は待機児ゼロ作戦を非常に重視しています。保育所の待機児をなくしていくということは非常に結構なことなので、もっと積極的に推進していただきたいんですが、例えば保育所を整備していく場合、この整備費の大半は税金から捻出されるわけです。ところが、保育所の整備費というのは、この社会資本整備重点計画法の中には入ってきません。
 また、これから高齢化社会が進んでいきます。この法案では、長期計画の目標の中で、例えば道路や公共施設のバリアフリー化が掲げられています。それはそれで非常に重要なんですが、同時に、高齢者施設をどのように整備していくのかというような点も非常に重要になってきます。しかし、高齢者施設の整備については、この法案の定義の中には入ってきません。
 また、御承知のように、この四月から障害者に対する支援費制度がスタートします。今、地域では、支援費制度がスタートするけれども、十分なサービスが供給されるのか、非常に大きな問題になっています。障害者施設を整備していくことが非常に重要ですが、しかし、そういった障害者施設の整備についても、この法案の定義の中には入ってこないということになります。
 むしろ、公共事業費を全体的に削減しながら、国民が求めるような公共事業を全般的にどうやって進めることができるのか、そういったことを考えるのであれば、この法案の第二条で定めている社会資本整備の範囲をもう少し広くとらえた方がいいと思います。
 もしこのような定義の中で公共事業の重点化を図っていくというのであれば、道路がいいのか鉄道がいいのか港湾がいいのか空港がいいのか、そういう中で重点化を図れというのであれば、少し無理があるように思います。むしろこれでは、従来、地方向けに行ってきた公共事業を削減し、都市再生のような公共事業に重点化を図るというような考え方しか出てこないではないか、そのような危惧が持たれます。
 公共事業費の総額を削減するということは、必ずしも公共事業をなくせということではありません。むしろ、必要な公共事業をどうすれば重点的、効率的に進めていけるかということが重要になります。そのためには、包括的な社会資本整備計画、長期計画を考えるのであれば、従来の長期計画の枠組みに縛られずに、もう少し社会資本の定義を広くとり、その中でどこに重点化を図っていくことが国民にとって最も望ましいのか、それを国民的に議論していけるような長期計画、法案にすべきではないかと思います。
 第三点目ですが、この法案の第三条で基本理念が書かれています。その中では、重点計画を作成する場合、「地方公共団体の自主性及び自立性を尊重」するということが書かれています。また、第四条では、重点計画を作成する場合、「国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」ということが書かれています。この点は非常に結構なことなので、こういったことをきちっとすべきだと思います。ただし、国民の意見をきちっと反映する場合、公共事業基本法案では、閣議決定ではなく、国会の承認というふうに書かれています。むしろそのようにした方が望ましいのではないかと思われます。
 ただし、同時に重要なことは、実際の社会資本整備を進めていく場合、地方公共団体の自主性や自立性、国民の意見が個々の社会資本整備にどういう形で反映されるようになっているか、その点が今後は重要になってくると思います。
 この法案の第四条で、社会資本整備について重点計画の内容が書かれています。重点計画の内容についてはさまざまなことが書かれていますが、その中心は、どちらかというと社会資本整備の目標に係るものが多くなっているように思われます。しかし、同時に、長期計画が仮に五年であれば、どのようなスケジュールで地方公共団体の自主性や自立性を確立していくのか、また、どのような方法で国民の意見を反映させていくのか、そういった計画も重点計画の中に入れるべきではないかと思われます。
 その点で重要なのは二つあると思います。
 一つ目は、公共事業に係る権限及び財源を地方公共団体にどのような形で移譲していくかということです。とりわけ重要なのは財源だと思います。
 先ほど例に挙げた保育所でいいますと、保育所というのは非常に身近な公共施設です。ところが、保育所整備費の二分の一は国の補助金というふうになっています。本来であれば、そういった財源措置も含めて、地方自治体が自立的に判断できるような仕組みに変えていくべきではないかと思います。
 また、もう一つ重要なことは、公共事業政策を他の政策の誘導手段に使わないということではないかと思います。
 この間、景気対策で公共事業がかなり進められました。それが地方自治体の財政危機を大きく進めました。
 今問題になっていることは、例えば市町村合併です。市町村合併の是非についてはここで述べませんが、市町村合併を進めるために地方債を特別に認めるというような制度があります。こういった市町村合併という政策を進めるために公共事業を誘導に使うような施策は改めるべきではないかと思います。
 社会資本整備というのは、本来、国民の生活の向上にとって最も何が必要かという視点で進めるべきです。そのためには、他の政策の誘導手段に使うのではなく、地方の自治体が自立性と主体性を持って判断できるようなシステムへと変えていくことが重要です。そういった内容を長期計画の中にも位置づけるべきではないか、そのように考えております。
 以上です。(拍手)
河合委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
河合委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。
福井委員 皆様おはようございます。
 三人の先生には、早朝から本当に御苦労さまでございました。ありがとうございました。
 今伺わせていただきまして、森地先生も五十嵐先生も中山先生も、課題認識は共通しているなという印象を持ちました。私、きょう、計画高権の話と、それから日本人の価値観の創造というのに絞って聞かせていただこうと思ってずっと聞いておりましたら、まさにその点で論点は共通していて、それぞれの先生で結論は違うということだと思いますが、まず森地先生に、その二つについてお伺いをしたいと思います。
 私、たまたま掛川の助役をやっておりまして、平成三年に赴任したんですが、そのときにまちづくり条例というのをつくろうとしておりました。建設省都市局としては非常に迷惑な話なので、おまえは助役で行くんだけれども、まあ、つぶしてこいとは言いませんけれども、余り協力するなというような雰囲気のことを命令された上で赴任したという覚えがございます。つまり、まちづくり条例というのは、もちろん今でも生きていますからあれですけれども、首長さんと地域が協定を結びまして、土地利用計画それから土地の売買に至るまで詳細にわたりまして、首長さんの権限で地域と協定を結んだ上で、とにかく土地と環境については少なくとも首長が計画高権を持つんだ、農水省の農村計画があり、建設省の都市計画があり、いろいろな計画があるけれども、すべての計画を上回る高権を持つということで、ドイツの計画高権を援用しましてそういう条例をつくったということでございます。それはそれで今でも生きておりますし、動いておりますので問題はないんですけれども。
 つまり、先ほど先生のレジュメの方にもございました、調整するという現場においていかにすべきかということについて御助言がありましたらお伺いしたいということでございます。たくさんある計画論をすべて束ねて最終的に決定する権限を計画高権と呼ばせていただければ、すべての計画を総覧し、先生のお言葉で言うならば、シナリオライターとしての計画高権者というのは行政的にどういうふうに位置づけられるべきかというアドバイスをいただきたいということです。
 つまり、法律上あるいは行政組織法上は各局長さんは全く同じ、もうびた一文変わらない同じ権能、権限、力を持っているわけで、例えば現場の所長でもそういうことがあるんです。河川系の副所長からこう言われ、道路系の副所長からこう言われ、どうしますかと裁定を求められても困るんですね、実際としては。したがって、少なくとも、アドホックなプロジェクトにおいてはだれが最大の権能を持つべきかということを、例えば内規上規定するとか、いろいろな工夫があると思います。三百六十五日、日常的な権限を与えるということは行政上無理なんですけれども、権能、権限を裏打ちする意味で、何がしかのプロジェクトを特定した上で、その特定プロジェクトにおいては、だれそれ局長がよその局長よりも、少しだけれども多くの権能を持つ、権限を持つ、権力を持つ、そういう優先権を与えるような工夫とか、いろいろアドバイスがあろうかと思いますので、その計画高権についてまずお伺いしたいと思います。
 あわせて、これも今、日本の閉塞感の最も根本的な問題だと思っておりますけれども、外交から内政まですべての分野にわたって、この日本の閉塞感の原因は、価値観の欠如だと思っております。つまり、何が重要で何が重要でないか区別ができない、判断できない、重要な順に並べることができない、重要度の割合をおおむねでもいいから決定することができない、そのプライオリティーの議論ができないということで、戦略も戦術もシナリオも書けない、そういうことだと私自身は理解をしております。
 つまり、国民的な課題は価値観の創造である。これは民族的な欠陥なのか、それとも、それも先生のレジュメにございました選択する時代、つまり、価値観というのは選択する練習を通じて生まれてくるものでしょうから、選択するという場面とか練習が日本民族として足らなかったのかどうかということもあるでしょう。あるいは役所側と国民側に区別しても、役所側も、官の側も、これは五十嵐先生に言わせるとけしからぬということなんでしょうけれども、例えば、いろいろな計画の仕組みは、国民一人も賛成者がいなくても、一億二千七百万人すべて反対してもでき得るという仕組みがございます。地域を総合的にマネジメントしている、国家を運営しているという自負のもとに、みずからの価値観にのっとって毅然とした態度をとる、そういう価値観もなかなかないということです。一方、国民の方も、一人一人の価値観がまだ創造できていない、情緒に流れやすいというさがを持っているということだと思うんですね。
 しかし一方、イラク問題で、今国民的な試練を受けております。国益とは何かということをまず問い、国家の安全、国民の安全、そして何よりも、今食べているもの、着ているもの、経済的な繁栄を維持する、発展させることという国益を、今、日本民族はかみしめて、その上で、一体どういうことかと。日米安保条約が大事なのか、国連を通じた国際協力が大事なのかというようなことを今一人一人が自分の心に問うているというような状況なので、そういう訓練があれば、国民的にも、それから施行者側も何がしかの価値観の創造が生まれるはずでございますので、社会資本整備、先生のレジュメにございましたように、もう一生懸命やってきた、真っすぐ走ってきた、そこで今立ちどまって、四方八方めぐらせた上でその価値観を創造するときにどういう工夫をしたらいいのかということについてアドバイスがありましたら、ちょっと長くなりましたけれども、計画高権と価値観の創造についてコメントをぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
森地参考人 大変難しいテーマを与えられました。私の考えを述べさせていただきます。
 第一点について、レジュメでも申し上げましたように、社会資本間の調整をする場面と、それから、地域地域で調整をする場面、これは両輪でございます。具体的には、例えば都市計画の中で、水資源も重要ですし、環境ももちろん重要ですし、交通も重要だ、こういう機能別の計画があるのと、その面の中でどうおさめていくか、こういう二つでございます。
 御質問は、主として後者についての御質問と理解をいたしました。
 もう当たり前の話ですが、国は国なり、地方は地方なり、だれが権限を持つべきかということは対象によって違いますし、それから、その費用をだれが負担しているかということと、その行為がだれに影響を与えるかということを通じて、本来はこれは国がやるべきだ、これは地域がやるべきだという格好で決まっていくのだと思います。
 それで、高権の最終的な姿はそういう格好で、非常にオーバーラップしながらでございますから決めざるを得ないわけですが、しかしながら、方向性としては、地域の首長さんが合意をされないと、あるいは市民の方々が合意をされないと意思決定をできないような現場の状況がどんどん進行しております。したがって、PIの話、住民参加の話ですとか、あるいは地方と国を対等に考えていこうとかというようなことが、例えば道路の五カ年計画でもうたわれてございますし、もろもろの政策でも展開しているかと思います。
 もう一つ、高権をだれが持つかということと関連するかと思いますが、例えば地方分権が非常に進行したときに、地方は地方で決めればよろしいというお考えと別に、それに対しても国が関与をしなきゃいけない、そういう場面が世界の中では展開を強めていると私は理解しております。
 御承知のとおり、二〇〇〇年に制定されましたイギリスでのローカル・トランスポーテーション・プランというスキーム、これは、地域が都市交通の計画をつくって、それを中央政府に提案する、その中で一番いい提案をしたあるいは二番目にいい提案をした、こういう格好で順序をつけまして、優秀なところに集中的に五年間補助金を貸与する、こういうやり方でございます。
 あるいはアメリカでも、地方分権の先進国でございますが、中央政府が、例えばトランジットモールにするとか新交通システムをやるとかというような補助制度を持っております。これはデモンストレーションプログラムとして持っております。
 これは、本来は自治体の中の都市交通というのは連邦が関与することではないんですが、そういうことを限定して、デモンストレーションですから極めて限定をしてそういう補助金を与えることによって、その地域が試行錯誤していいプランを仕上げていく、日本で言う社会実験に近いんですが、その成功した体験がほかの地域で大変有効な効果を持つ、こんな格好で機能をしております。
 もう一例だけ申しますと、ドイツでバイオについてのコンペ制度を九六年にとりました。これはまた後で別の機会に御説明をいたします。
 こんなことで、地方分権と中央政府の役割が、分権だからこっちでいいという格好ではなくて進むようなことが世界の潮流である。ちょっと御質問に直接お答えになっていないかもわかりませんが、高権、だれが権限を持つべきかということと、持った上で、その中でどういう格好でお互い影響し合うかという仕組みを両方両立させてつくっていく、こういうことが基本的なとるべき考えなのではないかと考えます。
 二番目については、価値観の問題でございますが、これはもうおっしゃるとおりで、それをどうするかということが、大変難しい日本に直面する課題ではないかと思います。
 なぜ日本がそうなったかということを、国民的性格かというと私はそうは思っておりませんで、戦後のいろいろな意思決定は世界の中で日本が非常にうまくやった、これが奇跡的な復興を遂げたことでございますから、もし問題があるとすると、ずっと成長してきましたので、成長する中での調整は割合楽だった。ところが、縮小する中での、縮小というのは、例えば公共事業費が減ってくるとかデフレ現象が起こるとか、全体のパイが小さくなる上での選択問題は大変厳しい、こういうところについて長年余り厳しく問われなかった、これが我々にとっての一つの環境条件かと思います。
 アメリカでもヨーロッパでも、都市対地域とか地域間の財源配分の問題というのは物すごくぎりぎり毎年毎年やってきた、こんな歴史がございます。そういう中で、ある調整の仕組みも出てきたんだろう、こう理解をいたします。
 ただ、先ほど申しました、イギリスの苦しい時代、アメリカの苦しい時代の中で、例えば、イギリスはPFIというコンセプトをその中からつくってまいりましたし、アメリカは、都市の再生という言葉を使いませんでしたけれども、都市開発を物すごくやっていくというのは、そういう考え方とかIT革命とか、違うコンセプトを苦しい中でつくって、それで次の時代に展開をしていった。そういう意味では、日本も、これが限界だとか難しいとかということに余り議論を集中しないで、その中から何が生み出せるのか、こういう発想をすることが大変重要なのではないか、こんなことを思っております。
 直接のお答えになっていなくて恐縮でございます。
    〔委員長退席、菅(義)委員長代理着席〕
福井委員 ありがとうございました。少し元気を出させていただきました。
 それで、中山先生が、社会資本とは何かということをまず基本から問おうじゃないかということをおっしゃっていただいて、大変ありがとうございました。
 前回の機会で社会資本とは何かということで質問をさせていただいたんですけれども、それを美の創造というふうに例えば新しい部門を考えますと、今までは、天然的な自然環境資源みたいなものは、ただ置いておくのか、あるいは少しは見る場所をつくるのかというようなことで議論があったわけですけれども、景観とか水辺とか水面とか水とか、そういう天然的自然環境ですら社会資本整備あるいは保全、保存の対象であるというふうに概念を広げますと、何かやるべきことがあるんじゃないか、美の創造という意味で、国土の美をつくっていくという意味で何かをすべきじゃないかというふうなお考えがあろうかと思います。先ほどそこまではおっしゃらなかったんですけれども、中山先生、もしそういう面で新しくつくっていくんだということでコメントがありましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。
中山参考人 先ほどはそこまで申しませんでしたが、もちろんそういったことも考慮すべきだと思います。
 例えば、国会でも自然再生についての議論がされていると思います。従来の公共事業は、どちらかというと自然環境にとって余り好ましくないものが多かったかもしれませんが、むしろこれからは、自然の再生、自然の回復をどう図っていくのか、そういったところも、美の創造とか環境の再生という点では重要になるかと思います。
 既に、産業革命等が日本よりも早く起こったヨーロッパでは、そういう自然の再生、回復をどのように図っていくのか、そういったことがその国の公共事業の重点施策の一つになっています。そういう意味では、この国会で議論されています今回の法案なんかでも、自然の再生や回復、それを社会資本整備の対象に位置づけていくとか、新しい美をどうつくっていくか、そういったことも含めて議論した方がより望ましいのではないかと思います。
 以上です。
福井委員 ありがとうございました。
 そして、五十嵐先生にもちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。
 私ども、もちろん先生がおっしゃるには全然足らないということだと思いますけれども、例えば地方都市の中心市街地の活性化の問題でありますとか、あるいは都市観光、何でもない町を観光することでありますとか、先ほど言いました美の創造運動。アイルランドで美しいまちづくり運動というのがありまして、それで地方都市に観光客がふえるようにする、観光客がふえると産業がやってくるということで、ヨーロッパで最貧国だったアイルランドがその経済をもう一度持ち上げてきたというのは、美を通して地方都市も再生し、そして国全体も再生したという経験を踏まえて、それも仕掛けようとしているんですが、何を言おうとしているかといいますと、我々としても国民運動にしようじゃないかということで仕掛けはしていたんですが、なかなかそれがうまくいっていない。それは確かに先生のおっしゃるとおり。
 しかし、繰り返しますけれども、地方都市中心市街地の活性化の問題も都市観光の問題も今の美の創造の問題も、官僚と、官僚といいますか官とNPOあるいは官と市民と、緊張感を演出しながらでも国民運動として、国民全体がとにかくそういう一つの目的に向かっていくんだということをやろうとしていたんです。これは絶対だめだとおっしゃるのはもちろんわかるんですけれども、先ほど言った根本的な御提案はちょっとこっちへおいておきまして、では、今まで何が足らないから国民的に理解が得られなかったんだ、どこがだめだったのかということについて、論点をちょっと教えていただきたいと思います。
五十嵐参考人 五十嵐です。
 今そういう質問があったものですから、私の意見をちょっと言わせていただきたいのです。
 私自身は、そろそろこの時期は、ポスト公共事業社会といいますか、旧来型の公共事業にかわる新しい社会像を示すべきであるというふうに思っております。その重要な一つが、今先生のおっしゃいました美ということであります。
 私は先生に後で本をプレゼントしたいと思いますけれども、美しい都市をつくる権利というものが国民に保障されるべきであるということを考えておりまして、これを少し憲法論的なレベルでいいますと、土地所有権の問題のあり方とか、あるいは新しい日本の価値観の統合の一つの価値原理としてこの美というものを考えるべきであるということを強く強調しております。
 それに当たりまして、先ほどの計画高権と価値の調整のことについて少しいきますけれども、では、だれがつくるかということです。
 悪くするとファシズムになるわけですけれども、そうではなくて、国民全体として、いわゆる真の公共、真の公益といいますか、そういうものとして美を位置づけた場合に、従来型のシステムの中で決定的に欠けていたのは、この美という観点が公共事業には一つもないということです。今回の法案にもそういうことは全くございません。それはやはり、国家が全体を決めるのは好ましくないということだろうと思いますけれども、だからこそ、逆に言えば、それを市民にゆだねるべきであるということですね。
 あの計画高権のときに、これは法学的に最も、ドイツ法以来の最も大きな争点でありますけれども、何が問題かといいますと、だれが物事を決めるかということがあります。一番最初には、王様がいまして、これが決めているんです。二番目は、だんだん近代になりますと官僚が決める。三番目は、やはり国民主権に基づいて国会が決める。日本は、ちょうど官僚から国会の中間ぐらいに今あるんだろうというふうに思います。この法案もそうだと思うんです。民主党の公共事業コントロール法案というのは国会になるんですが、最終的にはそこでも足りなくて、いわば市民が直接的に決める、一部分については市民にゆだねていい。それは直接民主主義の復活であり、あるいは住民投票、制度的に言えばそういうものだと思いますけれども、恐らく美についてもそういうものに一部ゆだねるというぐらいの要請が時代的には来ているんだろうというふうに思います。その考え方が全然議論もされないし、同じテーブルで何かつくるというテーブルがまだなかったというのが今までの不幸だったんではないかというふうに思っています。
 美しい都市を市民が事業としてつくっていくこと、これがポスト公共事業社会の新しい目標だと私は思っております。
福井委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
菅(義)委員長代理 伴野豊君。
伴野委員 民主党の伴野豊でございます。
 本日は、森地先生、五十嵐先生、中山先生、お忙しい中お越しいただきまして、貴重なお話を賜りましたことを、まずもって御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。
 私自身、学生時代から地域計画を専門としておりましたので、先生方の論文が新しく出るたびに私なりに目を通させていただきまして、きょうは、そうした先生方お三方に直接質問させていただけるという大変光栄な時間を賜りましたことを、重ねて御礼申し上げたいと思います。
 では、具体的な質問に入らせていただければと思うわけでございますが、まず、私の社会資本整備に対する基本的なスタンスでございます。確かに、マスコミがセンセーショナル的にとらえます、いわゆる整備にまつわる契約のスキャンダラスな問題とか、あるいは社会資本整備のために社会資本整備をしてしまったという点、否めない点もあるわけでございますが、総じて、例えばNHKの「プロジェクトX」で取り上げられるような諸先輩方の、いわゆる戦後から短期間において、世界の奇跡と言われるような整備をしていただいた先輩方には、その点では敬意を払っているつもりでございます。
 しかしながら、先ほどから先生方の御指摘にもございますように、時代の流れと申しますか、国民の期待するところは少しずつ変わってきた、そういった中でどういった課題があるのかということでございますが、私は、大きく二つあろうかと思っております。
 その一つは、これも先生方御指摘いただいていたかと思いますが、計画全体の整合性、連続性の問題。これは過去もいろいろ、上位計画、中位計画、下位計画の中における整合性の問題、先ほども、現場に来たときにそれがどうマッチングするのかというお話がございましたが、それがまず一点目。二点目としましては、責任の所在が不明確になっている点があるのではないか。これは、事業そのものが評価しにくい。例えば、時間的にどう評価するのか、金銭的にどう評価するのか、効果をどう評価するのか、それはだれの立場で評価していくのかによっても随分違ってまいりますし、計画自体が悪いのか、計画のずれがどうして発生したのか、あるいは、実行をきちっとしたんだけれども、それが今求めているものとは違ってきたというようないろいろな観点がありますから、なかなかそれが評価しにくいわけでございますが、ばくっと申しますと、総じて、最終的に責任の所在が不明確になってくる。この二点が、解消されなければいけない大きな課題かなと思うわけでございます。
 そういった点で今回の二法案を比較いたしますと、私はどちらも一歩前進をしているんだと思います。ただ、その差としまして二つあろうかと思います。
 まず一点目は、国と地方公共団体の役割分担をどうするか。二点目は、先ほども申しましたが、政策評価、事業評価、これをどうするか。一点目の国と地方公共団体の役割分担に関しましては、いわゆる意思決定システム、道州制を導入するのか、あるいは市町村合併をやってから財源移譲した方がいいのか、鶏が先か卵が先かといういろいろな問題点がありますけれども、ここも考えていかなければいけない。二つ目の評価というのは非常に難しい。例えば、大きな木をメスで細かく切っていったら最終的に本当にそれが見えるかどうか、鋭いメスで切っていけば切っていくほど全体が見えなくなる、そういうときは大なたで切った方がわかりやすいという評価の仕方もある。ですから、非常に評価の仕方というのは難しいわけでございますが、これもしかし解消していかなければいけない問題であろうかと思います。
 時間の許す限り、その二点を中心に御質問させていただきたいわけでございますが、まず一点目の国と地方公共団体との役割分担をどうしていくかという点につきまして、お三方の先生方に質問させていただきたいわけでございます。
 森地先生におかれましては、インセンティブ補助制度というものの議論を具体的にしていただいてお答えいただければありがたい。五十嵐先生におかれましては、市民事業という点でどうあるべきかというような点でお答えいただければ。中山先生におかれましては、高齢者、障害者に配慮したものとしてどうすればいいかというような三点の視点でお答えいただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
森地参考人 二つの観点についてのインセンティブ補助制度の果たし方、こういうことかと思います。
 私自身は、インセンティブ型にいろいろなことを変えていくことが大変重要だろうということをしょっちゅう申し上げております。例えば時間管理概念、つまり、プロジェクトを短くする、早くやることで大変な節約ができます。そういうことが既に政策にもう入っておりますが、ただ、欠けているとすると、各、国が地方に与えた、あるいは地方がどこかに、建設会社に発注した、それぞれの主体が、もし早くすると何か得になるということがないとなかなか努力をしない、こんなことがございます。そういう非常に狭い意味でのインセンティブ型の仕組みというのはまだまだ入れていけるというような気はいたします。
 これは国と地方の関係についても同じでございまして、もう少し大きな枠組みで申し上げますと、先ほど福井議員の御質問のときに題目だけ申しましたドイツの例でございます。九六年にバイオコンテストという政策をドイツ連邦政府がとりました。それは何かというと、アメリカに対してバイオ産業の集積がおくれてしまったので、これを何とか取り返したい、そこで連邦は、三つの都市だけに、一都市当たり五億ドイツ・マルクを集中的に補助する、こういうことでコンテストをやりました。自治体は、各自治体が大学とか民間と一緒になって、自分たちはこういう格好でその集積を図ります、こういうことを提案して、評価をして、三つが合格をいたしました。ところが、合格しなかったところも、では、自分たちでやろうではないかと、こんなことをやりました。ある都市は、大学の中で、この分野についてだけは世界的に何とかなりそうだということでやっていきましたし、ある都市は、外国からも含めていろいろな専門家を集めてきてこういうことをやるんだ、こんなことをやりました。これは、本来は自治体が勝手にやっていればいいということではなくて、国の全体政策としてバイオを何とかしたい、産業を何とかしたいというときに、地域づくりの問題として組み直して、それをインセンティブ制度として取り入れたようなものでございます。
 こんな格好で、インセンティブ型の補助制度、先ほどアメリカの例ですとかイギリスの例を申し上げましたけれども、いろいろ事例が出てきておりますので、この面では、これからこの法律を実行される段階でいろいろお使いになればいいのかなという気がいたします。
 それから、事業評価については、これも一種のインセンティブかと思いますが、冒頭に申し上げたように、若干民主党の案について私がひっかかりを持ちましたのは、事後評価を事前とか再評価と同じようにやる、こういう位置づけになってございます。私自身は違うのではないかと思っております。事後評価を六十点とりました、よかったですねという格好でやるべきではなくて、むしろ、百点をとっても、百十点にできなかったかというような格好を歴史的な評価としてやっていくようなスキームを考えた方がいいのかなと思っております。
 詳しくは、また別の機会に御説明をしたいと思います。
五十嵐参考人 まず、役割分担の件について御意見を申し上げます。
 私は、先ほど、国の行うべき公共事業と自治体の行うべき公共事業を分けるべきであるということを申し上げました。
 具体的に、既にもう、民主党の議員さんですから、自分も提案者でありますからわかるんだと思いますけれども、公共事業コントロール法案については、国の行うべき事業として、国有林野とか一級河川とか整備新幹線とか一級国道とか、あるいは大きな港湾などについて限定してあります。それ以外をすべて自治体で行う。一たん区切ったらいいということですね。そうすると、役割分担は非常に明確になります。まず、それをしようというのが第一点であります。
 それから二番目は、それをした上で、それぞれについて、どのようにだれが評価するかということであります。これは非常に難しいです。少なくとも、こういうふうにまず大きな枠組みから考えてみようということですね。
 国営事業については、第一次責任者は国会です。みずから税金を使うわけですから、国会に責任があるということですね。それが違法かどうかについては裁判所が決めるということで、これは非常に大きく計画高権ともかかわりますけれども、大きく言いますと、まさに三権分立をやろうということです。ただ、公共事業については専門的なところも大分あるものですから、それをどうするかというさらに大きな問題が残されているわけです。
 今回の政府法案の欠点は、その評価を、事前か事後かの問題じゃなくて、だれがやるかというところについて非常に不明確ということです。
 私自身は、長野県でダムをどうするかについての審議会の委員をやっておりますけれども、やはり第三者機関が行うということの原則を立てないと、絶えず、これまでもそうでありましたけれども、要するに被告人が裁判官になるということをずっと繰り返してきておりまして、これがこの法案の最大の欠陥だと私は思っております。これに対して公共事業コントロール法案は、行政ではなくて、あるいは官僚ではなくて別なところに第三者機関を置くと言っているところです。最低限度これを確保しなければ、ほとんど評価という名に値しないと私は思っているくらいであります。
 ただ、さらにもっと問題を突き詰めますと、その評価について、では、専門家が集まれば的確な評価ができるかというと、それも実際の経験ではやはり難しいというところも多々ありまして、ダムが要るか要らないか、まずどのように評価するかについて、いろいろ意見はありますけれども、どれを一体優先するんだろうかということになりますと、必ずしも、専門の異なる学者の間で幾ら議論しても、やはりわからないということがあります。
 最終的には、先ほど申し上げました、それはだれが決めるかというと、やはり国民主権で、国民が決めるということでありますから、第三者評価委員会で意見の一致が見られない場合には国民自身にそれをゆだねるというところもどこかで残しておく必要があるだろうということであります。これは国のレベルです。
 それから、自治体のレベルにおきましたら、むしろ、相当な税金を使うわけですから、都市計画の用語でマスタープランというのがありますけれども、どういう町をつくりたいか、そのためにはどういう事業を行うかということをマスタープランにそれぞれ入れまして、その事業費として幾ら、だれが担当者、毎年どこでどういうことをやります、これはどこかで、事前にしろ事後にしろ評価を受けますよということをきちんとした上で、マスタープランの都市計画としてやれば、その評価の仕方もはっきりするだろうということです。とりわけ、マスタープランの場合は割と長期計画でありますけれども、その予算については目に見える形で、毎年毎年繰り返されるわけですから、大きなミスも防げるし、責任の所在も明確になるのではないかということです。
 逆に言いますと、今回の政府法案は、自治体を含めた全体の評価のあり方については全く触れていないし、公共事業について分割についても触れていないし、それから責任の所在も相変わらずわからない。要するに、今まで縦割りで分散されたものを集めただけということでありまして、今、時代が要請している大きな改革については到底間に合わないというのが私の意見です。
    〔菅(義)委員長代理退席、委員長着席〕
中山参考人 まず、国と地方の役割分担、とりわけ高齢者、障害者との関係でということですが、高齢者、障害者との関係でいいますと、基本的な事柄については、基礎自治体に権限、財源を移譲するということになると思います。国の役割は、大きな枠組みを定めるということ、それからナショナルミニマム的な基準を設定するということ、そこが国の役割であって、具体的な整備の進め方、施設内容、そういったものは基礎自治体が、市町村が考えていくというのが基本になるかと思います。
 その場合、計画全体の整合性をどうとるのかということも問題点として指摘されていましたが、さまざまな縦割りの事業を全体として整合性をとれる唯一の機会はやはり地域だと思うんですね。実際、具体的に事業を進めていく場合は、道路や高齢者施設、障害者施設、また、学校、児童福祉とか、いろいろと縦割りの予算というのもやむを得ないと思います。ただ、それをどう全体として整合性をとっていくのか、どのような優先順位で実施していくのか、そういったことをトータルで見ていけるのはやはり地域だと思いますね。ですから、地域の中で政策的な優先順位を市民とともに議論しながら決めていく、そういった政策の総合性を担保していけるのは地域だと思います。
 そういう意味では、基礎自治体に基本的な権限、財源をゆだねて、そこで実質的な市民参加を含めて検討していくということが重要になってくるのではないか、そのように考えております。
 以上です。
伴野委員 それぞれの先生方から貴重な御意見を賜りました。ありがとうございます。
 時間がどんどんなくなってまいりましたが、最後に質問を一つさせていただきたいんです。
 先ほど、評価というのは非常に難しいね、しかし、やっていかなければいけないねと。とりわけその中でも、例えば森地先生の表現を使わせていただければ時間管理概念の導入、あるいは五十嵐先生の言葉を使わせていただければ時のアセスというようなお言葉を使っていらっしゃる。ばくっとすれば同じような概念かなという気もするわけでございますが、例えば事業の見直しをだれがどうやっていくか、いわゆる責任の所在を明確にしながら、どうトレース、監視していくかという点だと思うんですが、その点、先生方お三方から御意見を賜れればと思います。
森地参考人 時間管理概念、つまり、プロジェクトをどのタイミングでやればいいか、それからどれぐらい短くやればいいか、こういうことについてだれがやるべきかというレベルには日本はないと理解をしてございます。
 なぜならば、例えば、積算をするための根拠は毎年物価を見て見直してございますが、さっき言いましたように、もしインセンティブ型にして、これを標準として、これより短くしたらこういうインセンティブがありますよというときに、この標準はどうやって決めるのか。この標準に相当するものが実はないわけでございます。
 事後評価の一つの目的は、そういうそのおくれだとか標準的にどうだったかとかというデータをずっと蓄積して、その分布型をつくる、こんなことも事後評価の一つでございます。もちろん、評価をだれがやるかについて、私自身は、事業担当者がやることが一番効率的であると考えておりますし、それが情報公開されていることがいいというふうに思っております。時間管理についてはそんな状況でございます。
 なぜ後段申し上げたようなことを思うかというと、結局、第三者がやった方がいいのではないかというのは正論としてはそうでございますが、その第三者がちゃんと機能するかどうか、これは五十嵐先生もおっしゃいましたように、ここが大変難しゅうございます。膨大な事業を一体どれぐらいの人たちが第三者としてやっていくのかというようなことは大変重要でございます。
 実は、ちょっと脱線するかもわかりませんが、大学の人間が随分そこに使われてございますが、本来、研究とか教育に邁進するべき大学の人間にそんな膨大な時間を使わす判断をしていいのかどうかというのは、退官前の私としては大変気になるところでございます。
 以上でございます。
五十嵐参考人 少し今の意見を引き継ぎながら言いますと、明確な点が幾つかあると思うんですね。
 一つは、時間によって見ていくというのは非常に客観的だと思います。北海道が始めた時のアセスメントというのは、万人を納得せしめ得る一つの指標ですね。五年たっても事業に着手されていないものとか、あるいは十年たっても完成しないものについては、やはり客観的に異議ありと考えましょうというのは、一つのだれもが納得し得る基準です。
 もう一つだれもが納得し得る基準は費用対効果でありまして、一千億円の事業費を投入したときどういう効果があるんだろうか、この関係で見て、もし百億円しかないというようなことであればやはりバランスがとれないだろうということについても非常に重要だろうと思います。
 三番目に客観的な指標は、人の命や健康に影響を与え、被害を与えるものについてはやはりやってはいけない。あるいはもうちょっと大きく言いますと、自然界全体に決定的に回復不能なような被害を与えるものについてはやってはいけないというのも、あるいは客観的指標だろうというふうに思います。
 これは本来なら、本当は、やった当の本人がそれについて一番よくわかるわけですから、その人が行うというのも一つの社会としてあり得ると思うんですが、少なくとも、今まで私、十年間公共事業を見てきましたけれども、例えば、長良川にしろ諫早湾にしろ、その他いろいろな空港にしろ、いろいろな道路にしろ見てきましたけれども、信頼する人を見つけられなかったということです。少なくとも、それをやった事業当事者は、全く良心というもの、今言いましたように、時のアセスメント、費用対効果のアセスメントあるいは環境等に対するアセスメントについて、全く無視してきたんじゃないかということです。
 今から五十年後、百年後にそういう社会があり得るかもしれませんけれども、今のところ、少なくとも、体制として第三者がやった方がよろしいということです。
 第三者について言いますと、そこにももちろん専門家はおりますけれども、大学のことが出ました。大学について申し上げますと、大学の先生が研究しなかったからこういうことになるんだろうと逆に思いまして、膨大な時間をとられることが問題なんじゃなくて、本当の学問的研究成果が出なかった、出せなかった、あるいは逆に、加担したということが日本の問題点だったろうというふうに思います。
 大学の専門家も病気になっているとすれば、やはり市民が良識とか常識に基づいて判断するというのが最大のアセスメントである。問題は、今までのシステムでは、最終的には国民が良識に基づいて判断するというものについての回路がなかったということです。
 今もってこの回路はつぶされておるわけでありまして、例えば、吉野川河口堰について住民投票で決めたい、原発について住民投票で決めたい、あるいは産業廃棄物の処分場について住民投票で決めたいというときに、ことごとく実はこれはできない。できたところは大きく報道されていますけれども、実態を言いますと、良識に基づいて国民がそれ自体について判断するんだというシステムができない。
 これは国会にも責任があるんだろう、あるいは県議会等々地方議会にも責任がある。つまり、住民投票条例法とか住民投票条例をつくらせないというところに問題があって、ここがアセスメントの最大のアキレス腱といいますか、最大の問題だというふうに思っています。
 ぜひ先生方においては、国民が最終的に良識や常識に基づいて判断するんだ、その手法だけは開拓していただきたいということをお願いしたいと思います。
中山参考人 時間との関係でいいますと、とりわけ再評価が重要になると思います。お二人の参考人の先生方の意見とダブらない範囲で申しますと、再評価の進め方、ここが問題になると思います。
 通常、現状では再評価委員会、そのようなものをつくって再評価をしています。ところが、通常の再評価委員会の場合は、都市計画から港湾から農地から空港から、さまざまなものをすべて再評価委員会で議論するというふうになっているかと思います。ただ、現実的には、再評価に係るような事業、五年ないし十年たって未着手なもの、終わっていないもの、そういったものについては、もう一度、例えば都市計画だったら都市計画審議会で議論し直すような、そういう再評価の枠組みをつくることが重要だと思います。
 といいますのは、審議会の場合は、不十分ですが市民参加等の規定があります。縦覧も行いますし、公聴会もしますし、意見書も出せます。ところが、通常の再評価委員会の場合はそういった参加の規定が非常にあいまいです。ですから、そういう意味では、すべてのものを再評価委員会で議論するのではなくて、ある程度時間がたって未着手なものについては、もう一度審議会で議論し直す、そこでもう一度、住民参加等を保障する、審議会を公開する、そういった、少なくとも計画段階と同じような審議プロセスは再評価でもとるべきではないかな、そういった手続を検討することが重要だと思います。
 以上です。
伴野委員 時間が参りましたので、これで失礼させていただきますが、三名の先生方、本日はまことにありがとうございました。
河合委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 本日は、三名の参考人の先生方におかれましては、大変御多忙の中にもかかわりませず国会に足をお運びいただき、また、貴重な御意見を御開陳いただきましたことを、まず心から御礼申し上げたいと思います。
 私、都市住民のせいですか、まだまだ、日ごろ生活をしておりまして、公共投資の必要性というのを実感している方の一人であります。また、高齢化、高齢社会への突入に伴いまして、私ども、バリアフリーのまちづくりといったものも大変具体的に進めておるところであり、そういったものに対する国民の皆さんの支持というものもしっかり肌で感じておるところでございます。
 しかし、一方では、各地域において、例えばダム建設等々については、大変地元の住民の皆さんの反対に遭う中で、国土交通省、役所の方が説得に行っている。私なんか、よく、冗談まじりというか、半分本気なんですが、これだけ財政的に制限されている中で、どうしてそんなに地元に嫌がられるものをお願いしてつくらなければならないのかわからない、地元で嫌がられているものはもう全部やめた方がいいんじゃないか、こういうような意見もしているところでございます。
 私が冒頭に申し上げたいことは、やはり二十一世紀の中で、まだまだ公共投資という、そのものを否定されるものではないのではないか、ただしかし、そのあり方についてはやはり一度見直さなければいけないのではないかということを実感しているわけでございます。
 先ほどの御質問の中で、全国民が反対をしてもやらねばいけない国益にかなった公共事業があるというような御発言があったかと、ちょっと誤解があるかもしれませんが、私はそう聞いたのですが、その心意気というのは、役所の心意気というのはよしとしても、私は、ちょっとそれは違うのではないかなと。国益というより、公共事業というのは、やはり公共性がどうあるのかというか、私たち的に言うと、みんなのために、国のため、地方のため、そして地域住民のためになる事業かどうかということが問われなければいけないし、事業者の方は、そのことに対するアカウンタビリティーが求められるのではないかというふうに思うわけです。このみんなのためというのがどうなのかということが非常に難しいことなのではないかというふうに思うんですね。
 よく、地方の主体に任せればいいんだ、こういうようなお話がございますが、やはり地方財政というのは国の財政以上に大変逼迫をしておりまして、例えばバリアフリーの話も、当初はなかなか進まない。国が三分の一、地方が三分の一、鉄道事業者が三分の一というスキームをつくって随分進んだところでありますが、それとて、地方自治の財政出動三分の一というのがネックになっていてなかなか、いいとわかっていても進まないというような話がございます。
 また、地方財政というのは規模も限られておりますので、大規模な公共投資というのはなかなかできない。長期的に見れば必要なのかもしれないけれども、それは余りにも財政規模も大きいし、効果が出てくるのもまだ先の話だから、どうしても身近なもの、短期的な事業になっていってしまうというような傾向があるということについて、どのような御認識があるのかということですね。地方に任せればいい、住民主体がいいというのは非常にわかりやすいのですが、そのことについての弊害というのがあるのではないか。
 例えば、佐賀空港というと佐賀県の方に申しわけないのですが、佐賀空港なんかも多分、つくられた、しかし現実にはなかなか利用がされていないというような話がある。これは本当に、地方主体、地元の必要性ということで選考してやっていくということがすべていいのかどうかということが、私は本当にそうなのかなということを思っておるのですが、その点について御所見を、まず森地先生、お伺いしたいと思います。
森地参考人 おっしゃるとおりで、地方の財政が大変厳しいということについて、私もそう認識してございます。そのことと、地方自治体のあり方が、道州制も含めてこれから議論をされなきゃいけない、こういう状況になってございます。
 国土審議会の基本政策部会の中間報告で、圏域の再構成ということが提案されてございますが、その一つは、人口三十万から五十万、一時間圏、これぐらいの規模で都市的なサービスを維持して、減少し続ける農業人口とか国土の管理にかかわるような人たちに十分な生活をしていただけるような環境をつくりたい、これが一点。それから、国際的な状況を考えますと、人口六百万から一千万人ぐらいのエリアでの独立性あるいは自立経済圏、こんなものが大変重要である、こういうことが提言されてございます。
 そういうときに、今の自治体の問題と、そういうふうに変わったときの自治体というのを少し分けて考える必要があろうかと思います。それを分けるときにどういう手段で、例えば道州制を一体だれがどうやって議論するのか、こんなこともございますし、それから、新しい全総法を改定したときに、地方ブロックぐらいの計画の意思決定者はだれかということをまだ審議会の中でも議論をしてございますが、大変重要な課題かと思います。
 こういうことを考えたときに、地方の権限をどうするかということを考えますと、そういうふうに改編された自治体についてはもっと大きな権限が当然与えられてしかるべきだろう、こういうふうに感じてございますし、なおかつ、国と地方の間の緊張関係とお互いの相互干渉というのは大変重要だろうという気がいたします。
 それから、財源自身がどこにあるかということについて、私は財政の専門ではございませんが、社会資本の専門家として見ますと、先ほどの時間管理概念で、大体十年ぐらいかかってございます。駅前広場一つつくるのにも十年ぐらいかかってございます。それを九年にしただけで、毎年数兆円の削減ができる。ためると、十年分であると数百兆になります。それの全部をどうするかということではございませんが、その一部を本当に必要な新たな社会資本整備に使っていく、こんなことが一つの道かなというふうに考えます。
赤羽委員 同じことを五十嵐先生にも御所見をいただければと思います。
五十嵐参考人 端的に問題を考えていきたいと思うんですけれども、地方自治体に任せると、必ずしもいい公共事業ばかりが行われるわけではないだろうということだろうと思いますが、一つだけ前提条件があると思っているんです。それは、財政負担をだれがするかということをはっきりした上でその分担を考えると、私は今よりははるかに地方自治体に任せた方が展望が出てくるというふうに思っています。
 公共事業を見ていますと、多くは、先ほどから言いましたように、国が補助金などを含めて公共事業を支配しております。自治体の単独事業でも、例えばダムなどについて、トータルでいきますと、自治体単独事業でありながら、経費負担は実質は八五%国が負担するというふうな状況になっておりまして、どうしても国の方に目が行きます。その場合、地方自治体の陥りやすいわなというのは、百億円かかる事業が、自分たちの持ち出しが十億や二十億でできるのであれば非常に安いものではないか、これが陳情やその他によって実現できるのであれば、それをとった方がいいということになってきたというのが実情です。
 しかし、実は全部それを自分たちでやらなければいけないという形に切りかえたとして、先ほど言いましたように、私の案では国の事業と自治体の事業を全部分けるわけですから、国の事業については自治体は関係しない、自治体の事業については国の方は関係しないという前提にして、自治体の方でその事業を行う場合にすべての費用を自分で行わなければならないというふうにした場合に、果たして今のような事業を選択するかということであります。恐らく、合併浄化槽など幾つか必要な公共事業もありますけれども、基本的な社会資本については、もう自分の額全額を使ってそれを絶対やらなきゃいかぬというようなものはほとんど自治体に残っていないだろうと私は思っております。
 その上で、さらに、今、中山参考人からもありましたように、もっと重要な、残されている、未踏の、真の意味での公共事業、自然環境回復もそうでありますし、高齢者についての事業もそうでありますし、山ほどありまして、そちらの方にシフトしていくんじゃないかということです。しかも、それらのシフトの仕方が、負担割合やら将来計画やらが、自分の見えるところ、県レベルでありますと、少し遠いですけれども見えています、市町村レベルでありますと、完全に自分たちに見えるところで行われますので、そうすればむだ遣いも不必要な事業もなくなるだろう、少なくとも今よりははるかに減ってくるのではないかということです。
 だから、地方に任せればうまくいくとは限らないじゃないかということに関しては、今私が申し上げたような実験をまずやっていただきたい。それでもだめな場合というのはありまして、その場合には、例えば裁判所がチェックするとか住民投票を行うとか、あるいはもっと言えば、議会とか首長さんをかえるとか、そういう方法が残されている、そういう形で是正していくべきであるということであります。
赤羽委員 今の御答弁に関連して、ちょっと細かいことについての御評価をお二人に確認したいんです。
 平成十二年度から、国交省、統合補助金制度、まちづくりの総合事業等々のような制度を始めたわけであります。これも、これまでのそういう補助金制度に対する見直しというもので、随分踏み込んだ、私たちの党も推進してきたいい制度なのではないかと思いますが、この点についての評価。それと、公聴会がよく大きなプロジェクトのときは持たれますが、これは公共事業の事業者が主体となって開かれておりますが、これも第三者機関によって開くことにする、こういったように変えれば、それなりの住民の声というものが反映できるようなシステムになるのではないかというふうな考えも私は持っておるんです。その点についてちょっと端的に、五十嵐先生と、その後、森地先生、お答えをいただければと思います。
五十嵐参考人 統合補助金についてはもちろん賛成です、促進すべきだと思います。
 なお、きょうの私の参考資料の中に、民主党が出している、この委員会には付託されておりますけれども、補助金に関する法案も一括補助金というのが提案されておりまして、そういう意味ではいい方向だ。
 ただ、あれは、道路なら道路、農業なら農業で、分野ごとにくくられています。それ自体をもうちょっと広げるという形にしていって、最終的には補助金制度はやめるべきであるということであります。
 それから、公聴会を、いわば政府、あるいは事業者でもいいんですけれども、そういう主催でなく、公聴会を第三者がやればもう少し改善されるんじゃないか、そのとおりであります。問題は、日本の公共事業全体の欠陥の一つだと思うんですけれども、だめだといったときに、どうやったらやめられるかという手続がまさしく不明確なんですね。自治体側に立っていいますと、既に受けている補助金について、途中でやめたときに補助金を返還すべきかどうかについてまだあいまいのままであります。時々顔を出したりへこんだりという形になっております。
 あるいは、途中でやめたときに、ゼネコン等に対する、工事事業者に対する補償をどういうふうに考えたらいいかについても、必ずしも、入札に伴って結ばれる工事請負契約では明確ではありません。これも非常にパワフルなゲームになっておりまして、これが明確でないために、ずるずる進捗しなきゃいけないというようなこともございます。
 あるいはダム等の場合、道路でもそうですけれども、計画決定して事業決定するまでに非常に長い期間がある。事業決定があってから、さらに事業着手するまでに非常に長い期間があったときに、その土地利用が凍結されます、あるいはその計画が実現されることを前提として区画整理や再開発事業が組まれるわけですけれども、それを中止した場合に、土地の地権者に対する土地利用が制限されているときの補償だとか、あるいはそれ全体が、それを前提につくられたまちづくり計画に対するケアをどうするかというふうなことがありまして、公聴会でいろいろ意見を言う、それがイニシアチブを持つべきだということはよくわかるんです。それ以上に、仮に中止といったときのやはり回復措置というものをちゃんとしておいた上で、こうこうこういう場合には事業をやめるという前提をつくってやるということが先決ですね。そうでないと、今まで、公共事業は一体幾つあるかと数で数えるのはなかなか難しいと言われているんですけれども、年間五万件とか七万件とかとも言われているんですが、こういう公聴会をやった結果、あるいは意見を出した結果、やめたという例は一つもありません。それを本当に、公益を実現するものを公共事業と位置づけるのであれば、公聴会にしろその他の意見にしろ、あるいはマスコミにしろ、何らかの方法で、やめるということになった場合にやめられる手続に乗ること、手続に乗ったら、今言ったような問題についてちゃんと法体制が整備されているということが必要だろうというふうに思っております。
森地参考人 私も統合補助金制度は大変評価をしてございます。ただし、先ほど申し上げたイギリスのローカル・トランスポーテーション・プランと比較したときに、それがどういう格好のインセンティブに働き、それがいいプランづくりにつながっているかというと、まだまだいろいろな工夫の余地はあろうかと思います。
 それから、公聴会についてだれがやるべきかということについては、二つ問題があろうかと思います。
 一つは、パブリックという概念。日本でも政府がパブリックインボルブメントという外国語をそのまま使っている理由は、パブリックに相当する日本語が、住民ではなくて、ステークホルダー、利害関係者と言った方がいいかもわかりませんが、そういう人を、住んでいようが住んでいまいが広く集めて、いろいろな人の意見を聞こう、この仕組みがなかなか難しい、こんなところがございます。これが一つの問題点です。
 それからもう一つは、だれがマネージするか。これについては、御承知のとおり、フランスは公聴会委員会というのがあって、そこが大きなプロジェクトについてはマネージをして、意見書をまとめて事業者に渡し、ただし、事業をする人がそれを採択しようがするまいが、事業者に任される、こういう仕組みになってございます。現実にそれがどうして機能するかというと、もし公聴会委員会の皆さんの意見と違うことをやると、当然裁判ざたになって、時間が大変かかって、コストがかかる、こういうことで、社会的には機能しております。
 それからアメリカの方は、例えばパブリックインボルブメント、市民団体をちゃんとつくりなさいということを連邦の法律で規定して、連邦補助金をもらうときには必ずそういうところの議を経なきゃいけない、こうなってございますが、アメリカらしくて、それをマネージするような民間の企業、コンサルタントがたくさん生まれてきてございます。その中でいろいろな技法が出てきてございます。
 日本でも、東京の外環について、第三者機関がつくられてフランス的な機能を果たしているように、マスコミ等のニュースで聞いてございます。
 そういう意味で、まだ試行錯誤の段階でございます。したがって、これが正解ということが確実にあるわけではなくて、この国独特のやり方を外環のように少し積み重ねて、それで、事業とか種別にもよりますが、この国にふさわしい制度をつくり上げる、こういう努力を続けることが重要か、こう認識してございます。
赤羽委員 最後の質問になりますが、国交省も、二年前ですか、採択されてもなかなか着工されていない事業等々、全国で二百七十余りの公共事業を中止したという画期的なこともしたわけでありますが、公共事業に対する事業評価というのは非常に難しいんじゃないかな。
 要するに、道路の議論でも、つくったはいいけれども、なかなか通行料金と工事費が見合っていない、コストパフォーマンスに合っていない、こういうことはわかりやすいんですが、本当にそういうことで評価されるべきものなのかな、公共事業というのはそういうことなのかな、民間の事業とはまたちょっと違う側面があるんじゃないかなと。やはり、道路ができて、通行料だけではなくて、そこの周辺の産業立地とか、ソフトで評価されなければいけない部分もあるんじゃないか。
 だから、私が思うのは、公共事業に対する評価というのは大変難しいものなんじゃないかなというのを非常に実感するんですね。非常にむだな道だなと思ってはみるものの、本当に必要ないのかどうかと。空港とか港湾とかという数値として定量的な分析が非常にしやすいものもあるとは思いますが、なかなかそればかりではないのではないか。バリアフリーのまちづくりというのも、評価というのを定量的にやると、なかなか、皆さんは実感としていいまちづくりだと思っていただいても、どのように評価されるのかということは大変難しい作業になるのではないか。
 ですから、コストパフォーマンスに見合わない公共事業はむだ遣いだ、こう言うのは簡単で、そんなものは政党の選挙キャンペーンに任せればいいわけで、もっとまじめな議論として、その辺の積み重ねというのはちょっと難しい、大変な課題が残るのではないかと思うのですが、この点についての御所見を、もう時間がないので、最後、森地先生お一人になりますが、端的に聞かせていただいて、終わりにさせていただきたいと思います。
森地参考人 先ほど五十嵐先生からも御指摘ございましたように、こういうことについての研究は常時続ける必要がございます。ただし、費用対効果の分析、これは、日本は最近でございますが、ほかの国はすべてずっとやってまいりました。苦しいところは、費用対効果の中でも、議員御指摘の、外部効果に相当するところの定量化が大変難しい、こんなところに一つポイントがございます。
 バリアフリーとか安全の問題については、例えばCVM、その価値をどれぐらいに皆さんが感覚するか、こういう調査法も定着をしつつございます。ただ、非常に変動幅が大きいので、まだなかなか実務に使いがたいということでございます。ただし、例えば交通事故で亡くなった方一人当たりの価値をどう考えるかについて、イギリスはCVMで評価をしております。ほかの国もそういうところが多くなってきてございます。所得は日本の方が倍以上多いにもかかわらず、日本の補償、亡くなったときの一人当たりのその損害額は、イギリスの半分以下になってございます。この理由は、そういう定量化のところがまだ十分ではないということで、実は研究会等でそういう勉強も随分進むようになってはございますが、こんな課題があろうかと思います。
赤羽委員 どうもありがとうございました。終わります。
河合委員長 一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫でございます。
 三人の先生方、どうもきょうは御苦労さまでございました。
 私は、社会資本なり公共事業ということを議論する場合に、これまでのいろいろなこういった公共事業、社会資本に関する評価とか、そういう反省点は、先ほど先生方が冒頭にお話しされたのは全く同感でございますけれども、では、これからの社会資本整備とか公共事業のあり方ということをどういうふうに予測するか、あるいはまた、どういうふうにあった方がいいのかというところを、もうちょっと見通しをはっきり持った方がよろしいのではないか。
 今回、政府提案のこの法律を見ていても、ちょっとそのあたりの問題意識が十分ないのではないかなという感じもしますし、そういう観点で、三人の先生方に、これからの社会資本の整備というのはどういうふうに変化していくだろうかというところの特にポイントのところをお話しいただきたい。
 私は個人的には、これまで大規模プロジェクトで、日本の社会は戦後いろいろなものを整備して、それなりの評価はあったと思いますけれども、そういった大型の公共事業的なものは極端に減ってくるだろうというふうに思いますし、これまでつくった施設の維持管理的なものなり、それを若干整備水準を上げていくというような補修的な仕事は当然ありますけれども、そういった維持管理的なものがほとんどになってきて、結局、地域型のきめ細かな公共事業がふえてくるだろう。
 しかし、それに制度が対応していないと思いますし、また、俗に言う地方分権的な権限の移譲もなされていない。財源の移譲もなされていない。そういう現状の中で、いろいろな課題があるわけですけれども、先生方それぞれ、これからの社会資本の整備というのはどういうふうに変わっていくだろう、またどうあるべきかということも含めて、コメントいただければありがたいと思います。
森地参考人 御質問の前段にある今回の法律と今御指摘のことについては、実は、計画の中身にかかわることと私は認識していて、今回の法律の中でそれをどう入れるかということとは少し違うかな、私はそう理解をいたします。
 それから、戦後の評価につきましては、御承知のとおりで、大物だけではなくて、身の回りのものについて、つまり、生活回りの社会資本、あるいは産業のための生活資本と生活の社会資本とか、規模別とか、こういうことについて、数年前「社会資本の未来」という本を出版しましたときに、若い経済学者とか若い工学者に、戦後違う手段をとったらということをいろいろシミュレーションしてもらいました。
 結論は、奇跡的に、社会的構成という評価でいきますと、ほとんど最適解に近い投資をしてきたということ、特に、八〇年代の半ばまでのデータでやったわけでございますが、そこまでは少なくともそうなっていた、こんな結論が出てございます。
 それから、これからどうなるかということにつきましては、おっしゃるとおり、メンテの問題、アセットマネジメント、資産管理、こういう分野がアメリカの交通分野の学界では一番大きな話題でございます。地球環境と並んで大きな研究テーマになってございますので、そういうところに重心が行くのは確かでございますが、ただし、国際化する社会の中で、この資源のない国が外貨を稼いで、ある所得水準を維持していこうとすると、どうしても競争力ということが問題になってまいります。これは産業競争力じゃなくて都市の競争力の時代だ、こういうことでございますので、都市の競争力を強めるために、今の状況が、もう放置して生活回りだけでいいのかというと、実はそうではないと私は理解をしてございます。
 ちょっと時間がございませんので、その程度にしておきます。
五十嵐参考人 これからの公共事業の見通しですけれども、仕組みについて簡単に言いますと、絶対残るべき公共事業というのはございます。それは、危機管理であります。
 最近、日本における危機管理の状態について、地震とか、あるいは原発事故とか、あるいは河川のはんらんとか、あるいはテロリズムなどについて勉強させていただきましたところ、極めて、日本のそれに関する社会資本というのは決定的におくれている、大災害が起こり得るということがわかりました。そういう意味で、だれが反対していてもやらなきゃいけない公共事業はあるかといえば、もしあるとすれば、そういう災害を含めた危機管理については、依然として本当の意味での公共事業は残っているというふうに思っております。
 例えば都市でいいますと、もし東京にこの間の阪神大震災と同じような直下型地震が起きた場合どうなるかというのは、被害想定がたくさん出ておりますけれども、もうほとんどお手上げという状態でありまして、これを災害に強い都市にするなどというのは非常に大きな公共事業だろうというふうに思っております。
 それからもう一つ、絶対やっちゃいけないというものがまた同時に見えてきまして、それは、今まではどちらかといえば、冒頭に申し上げました官僚主導の公共事業でありまして、官僚の判断だけが正しい、官僚が正しいと言うものだけが正しいというものは避けるべきである。
 その中間で、つまり、今後もやらなければいけない公共事業はたくさんある、とりわけ危機管理だと私は思っておりますけれども、そこが一つ。それから、それを判断するについて、官僚だけが正しいという判断はやめるべきであるというのが二番目です。
 中身に移りますけれども、先生おっしゃるとおり、私の言う国営事業について、ほとんどやるべきことはなくなってきつつあると思います。圧倒的に維持管理に移るだろうというふうに思っております。しかし、自治体の行うべき事業については山ほどありまして、特に高齢化社会とか地域の過疎化とか、あるいはその他もろもろ言われている社会現象に伴う必要な公共事業は山ほどあります。
 私のコンセプトで申し上げますと、これは森地参考人と全く一致でありますけれども、やはり都市というものをどのように美しく今後つくっていくかということに立って、日本独自の真の公共事業を行うべきであるというふうに考えております。
 そうすると、ここにも必要な公共事業は山ほどありまして、バリアフリーを含めまして、美しい都市をつくるための新しい公共事業の需要というのはたくさんあるだろう、ここの改革は非常におくれているということを感じております。
 例えば、都市はもっと緑があっていいですし、河川などは復活すべきであるというふうに思いますし、あと、自動車道路についても、これを軽減して路面電車にかえるべきであるとかというような点は幾つもあると思うんですけれども、これについては、今のところこの縦割り型の公共事業は全く対応できていないということを感じております。
 以上です。
中山参考人 御指摘がありましたように、今後、二十一世紀に向けて公共事業をどう改革していくのかという、その内容に関する議論が非常に重要だと思います。
 その場合、従来の公共事業、日本の公共事業がどのような目的で進められてきたかということですが、二十世紀の公共事業というのは、日本の国、とりわけ都市部でふえ続ける人口や産業をいかに効率的に受けとめていくか、ここが二十世紀に行われてきた公共事業の非常に重要な視点であったと思います。もう一つは、御承知のように、不況対策です。
 二十一世紀はどういう時代かといいますと、そのふえ続ける人口、産業という前提そのものがなくなります。国の予測でも、もうあと数年で日本の人口はピークになり、それ以降は確実に減り続けていきます。そういう点では、かつてのように、ふえ続ける人口や産業をどう効率的に受けとめていくか、そういうかつての二十世紀型の公共事業、その社会的必要性が二十一世紀ではもう失われてしまうと思います。
 例えば、首都圏でも関西でもそうですが、二十世紀にはたくさんのニュータウンをつくりました。また、工業団地もつくりました。また、高層ビルもたくさん建てました。でも、そういった公共事業、高速道路もそうですが、そういった公共事業の社会的必要性は、二十一世紀には大幅に減っていくと思います。
 そういう意味では、社会全体の人口や産業、その動向が二十世紀と二十一世紀で大きく異なりますので、二十世紀型のそういった公共事業は、二十一世紀ではかなり減っていくべきではないかなと思います。
 その反対に、二十一世紀には、二十世紀のある意味では負の遺産、例えば、今も御指摘ありましたが、木造密集市街地、災害に弱い地域の改善をどう図っていくのか、また、失われた自然の再生をどう図っていくのか、そういった二十世紀に余り重視されなかったような公共事業をむしろ今後は重視していくべきではないかな、以上のように考えております。
一川委員 どうもありがとうございました。
 そこで、次に、森地先生にちょっとお伺いするんですけれども、先生は基本的にこの政府提案の法案に賛成という御趣旨ですけれども、今、これからの地方分権という一つの大きな流れの中で、要するに、本来、それぞれの地域の特性を発揮しながら、いろいろな公共事業を地域が、地方が主体性を持ってやるべきだという一つの大きな流れが当然あるわけです、それからまた、民間の活力を活用するとか。
 そういう中にあって、なぜ、本来地方が主体的に事業主体となって取り組むべきような仕事、また民間の力をかりた方がいいと思われるような仕事、そういったものをあえて国の長期計画の中に入れ込む必要性というのは、そこはどういうふうに理解したらよろしいですか。
森地参考人 基本的に、だれがやるかということと、それから実際の望ましい姿は、もちろん物すごく密接に関係するんですが、だれがやるかごとに制度をつくるのは間違いだ、こう理解をします。
 例えば、ある補助制度が、こういう主体の場合は補助するけれども、こういう主体の場合は補助しないとかというようなことやりますと、本来望むべき最適な主体を選ばなくなる、こういうことが起こりますので、そういう意味では、ニュートラルである必要があります。
 そういう意味では、地方がやるとか民間がやるとか、そういうことも含めて、本当に民間でやることは国は関与する必要はないんですが、一緒にやっていくことまでは、こういうスキームの中では一つの制度として持っていた方がいい。
 ただし、それを今度、地場におりたときに、地面におりたときに、都市単位とか地域単位のときには、それは調整が当然必要になりますから、これは、だれがどういうふうにやった方がいいかという仕組みをつくっていく必要がございます。これが、多分これからつくられるであろう全総法とか土地利用の関係法案の見直しの、そこの舞台なんだろう、こういうふうに理解をしてございます。
一川委員 五十嵐先生もこういう分野で相当いろいろな勉強をされておるわけですけれども、計画を一本化することによって、これまでたくさんあった長期計画を一本化することによって、この法案の文章を読む限りにおいては、非常に重点的に、なおかつ効果的に、効率的に物事をやれるんだというふうに、まあ一応期待を込めた表現だと思いますけれども。
 しかし、現実問題としては、そういうものを積み上げる作業の段階では、従来どおりのものが依然として残っているんじゃないか、計画を一本化したからといって本当にそういうことができるかなということを非常に心配するわけです。
 また、一方では、予算科目はそのままにしておくわけですよね。本来であれば、予算をもっと流用しやすいような形に、弾力性を持たせたような予算制度にすべきだと思いますけれども、そこは残しておいて、計画だけ、長期計画だけ一本化するということが、果たしてそういうことが現実問題として本当に効果を発揮するかどうかということについて、五十嵐先生はどういう御所見をお持ちですか。
五十嵐参考人 もしこの法案が通れば興味を持って観察させていただきたいと思いますけれども、私の感じでは悲観的です。多分、いろいろな事業が統合的に行われることはないだろうというふうに思っています。
 一つは、長期計画は一本化されましたけれども、これを担当する局というのがありまして、これは、道路局、河川局はそのままでありますから、局ごとに事業は行われるだろうというのが一つであります。
 それから、同じように、局がありますと、それに基づいて河川局の予算、道路局の予算になりますので、これは変わらない。
 もっと大きいのは法案ですね。道路法、河川法の所管というのがありまして、これが総合化されない限りほとんど無理であろうというふうに思っておりまして、長期計画の一本化だけでは、いわゆる縦割り行政が廃止されて本当に総合的な行政が行われるかどうかについては疑問があるということです。
 もう一つ申し上げますと、これが一体どのくらいの、何といいますか、十年先を見込んだ法案なのか、二十年先を見込んだ法案なのかという、先ほどの先生の展望ともかかわりますけれども、一般的に言うと、例えば今回、大方の法案がこの法案と同時に廃止されるわけですけれども、これはみんな暫定でありました。しかし、暫定といいながら、例えば道路を見ますと、五カ年計画が十二回も繰り返されるということがありまして、一たん法案というのがつくられますと、少なくとも今までは、暫定とわざわざつくっても、何十年も続くということです。
 それで、この法案の運命にもかかわるんですけれども、一たんこれがつくられると、また何十年もこれで動くかなと。それで、実態は、私の想像では、ほとんど縦割りが実質的には改善されないということになってくるのではないかということを思っておりまして、今の時代の、非常に速いスピードで変わっている時代には、若干この法案は合わないというふうに思っております。
    〔委員長退席、菅(義)委員長代理着席〕
一川委員 どうもありがとうございました。
 次に、公共事業と政治の世界とのかかわり合いでいつも議論になるのは、建設業界の話題が出るわけですね。
 これは森地先生と中山先生にお伺いしますけれども、私は、建設業界というのは日本の産業界の中でも基幹産業の一つである、しかし、政府サイドとしては、建設業に対してどういう方向へ持っていくというビジョンめいたものが余りはっきりしていないというふうに思っているんです。
 現実問題、地方においてはこの産業に従事している従業者は非常に多いわけですし、企業の数も多いわけです。しかし、公共事業が一種の景気対策的に使われ過ぎちゃって、ふえるときはぐっとふえて、減るときはがくっと減っちゃう。こういう中で、彼らは、非常に先行きが見通しが立たない。そしてまた、なおかつ、政治とのかかわり合いでいろいろな批判を受ける。また、入札談合問題でもいろいろなマスコミで批判されている。働くそれ自体が、非常に生きがいを感じないといいますか、何となく後ろめたいような感じがしている。
 そういうことを考えますと、この建設市場が縮小していく中で、建設業、建設産業というものを今後どういうふうに誘導した方がいいのか、体質改善した方がいいのか、森地先生と中山先生に御意見をお伺いしたいと思います。
森地参考人 二つあろうかと思います。
 一つは、公平性を物すごく重んじたような格好でいろいろな仕組みができておりました。それに対して、この数年間、入札制度についての試行的なトライが、試行的なやり方がいろいろ試みられてございますので、それを踏まえて、もう少し技術力を重視したような格好に転換していく、こういうことが一つでございます。もちろん、その中には、技術者自身の能力をもっと高めるような格好で働く、この政策が大変重要かと思います。
 それから二番目は、日本の中では確かに公共事業は財政事情から縮小するというような方向にございますが、近隣のアジアは世界の最大の成長拠点でございますから、物すごい仕事がございます。
 残念ながら、日本の建設業界はそこでは三〇%ぐらいのシェアしかとってございません。残り三〇%がアメリカ、三〇%がヨーロッパ、一〇%がアジア地域の地元、韓国とか中国も含めてでございます。ところが、コンサルタント業界になりますと、日本のシェアは一〇%で、アメリカは五〇%になってございます。建設業界、コンサルタント業界ともに、日本のODAとか民間の投資にかかわったようなところで中心的な仕事をして、なおかつその程度のシェアでございます。
 この理由は、人件費が高いということがよく言われるんですが、私自身はそう思っておりませんで、一人当たりの能力を高めることによって十分太刀打ちできるような格好になろうと思ってございます。
 ちなみに、私どもの学科では、今年度から、土木工学科社会資本整備工学専攻と称してございますが、そこの中の定員の十人は最初からアジアで働くということを前提にしたような教育をしてございますし、大学院はもう三十年前から英語でのみの教育をしてございます。
 そんなことでございます。
中山参考人 今の点ですが、まず大きくは二点あるかと思います。
 一つは、御指摘にもありましたように、日本の建設業界は非常にある意味で肥大化しています。全国的に見ましても、建設業界に従事する就労者数は一割という水準です。都道府県レベルで見ますと、大きいところでは一五%、就業者数を抱えています。市町村レベルになるともっと大きくなるかと思います。ところが、通常、ヨーロッパやアメリカの場合、建設業従事者は大体、おおむね五%程度になっています。そういう意味では、日本の地域経済が非常に疲弊していますので、その受け皿として建設業界の肥大化が起こっているということは間違いないと思います。
 ですから、そういう意味では、私自身、公共事業費は今後計画的に削減していくべきだと思いますけれども、その場合重要なことは、肥大化している建設業従事者が公共事業に依存しなくても就業できるような地域経済、自立的な地域経済をどうつくっていくのか、その中で公共事業費の削減を考えていく必要があると思います。
 そうしなければ、今の状況の中で公共事業の削減だけを図ってしまいますと、地域経済が破綻してしまいます。ですから、公共事業費の削減と同時に、自立的な地域経済をどうつくっていくのか、そういった大きな産業対策が要るのではないかと思います。
 それからもう一点は、建設業界そのものの今後のあり方です。
 当然、たとえ二十一世紀になっても大型の公共事業というのは存在し得ます。そういう意味では大手の建設業者も当然重要です。ただ、建設業界が本来、地域密着型、地域のさまざまなプロジェクトを今後二十一世紀には行っていくというふうに考えると、中小建設業者の果たす役割というのが非常に重要になってくると思います。そういう意味では、行政が中小建設業者の自立的な育成をどう図っていくのか、そういった視点が非常に重要になろうと思います。
 残念ながら、今の建設業界はやや前近代的なところが残っています。元請、下請、孫請というような非常に重層的なピラミッド構造になっています。
 本来、建設業者の大中小というのは別に上下関係ではなくて、例えば病院でも、大学の附属病院、市民病院、開業医、その規模の大きさが医者の上下関係をあらわしているんではないと思います。建設業界も同様でして、別に、中小企業というのは常に下請、孫請の存在でなければならないというものではないと思います。むしろ、これからの時代、中小の建設業者がどう自立的に発展し得るのか、そういった対策をきちっと国の方でとるということが建設業界の体質改善にとっては非常に重要なテーマになるんではないかと思います。
一川委員 どうもありがとうございました。
菅(義)委員長代理 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 きょうは、早朝から当委員会への参考人御出席、本当にありがとうございます。
 既にいろいろな角度から意見陳述をいただいておりますので、若干重複する面もあるかもわかりませんが、三人の参考人の方の特に異なる点などに着目してお聞きをしたいと思います。
 最初に、これまでの公共事業の評価という点で、五十嵐、中山両参考人におかれては、財政問題への、財政への深刻な影響やら、あるいは不正、談合、贈収賄罪等、こういう不正問題とのつながりを指摘されました。
 最初に森地先生にお伺いしますが、財政問題への深刻な影響という点あるいは不正が発生しやすいというような面、こういう問題があるのかどうなのか、そして、あるとすればそれは何に起因するものであるか。それから、財政への深刻な影響ということであれば、今、公共事業の総額抑制という点でどういうようなお考えをお持ちなのか、まずお聞きをしたいと思います。
    〔菅(義)委員長代理退席、委員長着席〕
森地参考人 いろいろな問題が起こったことについては、評価の仕組みですとか入札制度ですとか、こういうことについて問題があったんだろうと思います。だからこそ、この数年間急速に変更がされてきたんだろうと理解をしてございます。
 それから、財政に対する影響でございますが、基本的には二つの側面があります。一つは景気対策として公共投資をやるという面と、粛々として長期計画に従ってやっていく、この二つがどうしてもこの国では混同されてまいりました。実は、これは戦後ではございませんで、戦前、大正時代からそんなことでございました。
 本来は、非常に長期のことをやっていくものですから、景気対策とは無関係に必要なものをつくっていくということだけに徹すればもっと安定的ではございますが、しかしながら、財政運用上、政府の支出も大変重要な景気制御の手段でございましたから、ある程度はやむを得ない面があったかと思います。そのところが、非常に急にたくさんの事業をやらなきゃいけない、そうしたときに、十分計画を練って選んでということをやる時間的な余裕とか、あるいは合意形成とか、こういうところにやや問題があったのかもしれない、こんなことを思ってございます。
 それから、どれぐらいの水準にするかということにつきましては、先ほど五十嵐先生、中山先生からもお話がございましたように、欧米に比べて日本は多うございます。六%ぐらいから、この十年間で少し景気対策上ふえている面がございますが、どれぐらいにしたらいいかというと、ヨーロッパも、十年ぐらい前には多くの国が五%とか六%の水準で、それを財政事情で下げてきた面がございます。
 日本はどういう水準にするかというときに、欧米水準では、多分そこまで下げるのは問題があろう。なぜなら、この災害多発国で、人々が非常に地盤の悪いところに、しかも稠密に住んでいて、その都市でこそ社会資本整備がおくれている、こういう面がございますので、恐らく、欧米の水準まで下げられなくて、景気対策で少し上に上がった分を少し抑えて、欧米と間ぐらいのところが落としどころになるのかな、マクロにはそんな感じを持ってございます。
 以上でございます。
大森委員 どの程度削減するか、公共事業の削減ということは、公共事業改革にとって今避けて通れない課題になっているわけで、その点では、三人の参考人の方、意見が共通するわけでありますけれども、政府の方も、削減といいながら、実際にはなかなか見えてこない。物価等の変動の範囲を余り超えないような、そういう状況があると思うんです。
 そこで、先ほど来お話がありましたけれども、改めて五十嵐先生そして中山先生の方に、やはり公共事業削減ということを避けて通れないという点で、GDP比でヨーロッパ並みというようなお話もありました。その点の御確認といいますか、改めての御意見と、そのプロセス、考え方等についてお聞かせいただけたらと思います。
 あわせて、中山参考人からは、先ほどお話がありましたけれども、そうはいっても、実際相当程度、地域経済に依存しているというところが少なくないという現実の中で、それを両立させる、一定の御意見の開陳はありましたけれども、改めてこの点、それぞれの先生からお聞きしたいと思います。
五十嵐参考人 私は、原則的に、ヨーロッパ程度のGDP比二%程度でよろしいと思っています。
 どこが違うかといいますと、都市における危機管理の実態については、かなりヨーロッパと比べまして日本の方が劣化しております。特に地震等が起きた場合には、木造密集地帯についてはかなり危険だということでございまして、ここにどのくらい費用を投入するかによって若干違うと思いますけれども、成熟した都市国家型になるべきであるということが一つです。
 方法についてでありますけれども、私は、これこそ計画でいいと思うんですけれども、十年計画ぐらい立てまして、今の六、七、八%かもしれません、ここからずっと減らしていく目標を立てていって縮減していくべきである。場合によっては、これもきょうの参考資料の中に一つ入れてもらいましたけれども、これを法案化して、公共事業トータルの削減法みたいなものをつくりまして削減していくべきであるというふうに思います。
 その間、いわゆる一般的に言われているところの痛みを、建設業界や土木業界中心に起こったわけですけれども、これはある種の構造転換でありますから、避けられないと思っております。
 先ほど私が申し上げましたように、だからこそ新しい事業が必要だということです。それは公共事業の復活ではありませんで、新しい公共事業が必要である。例えば自然環境の再生でありますし、あるいはエネルギーの発展かもしれませんし、あるいは福祉かもしれません。そういうような、地域ごとに自由に事業をやれるようにやっていくべきであるということです。
 大企業及び中小企業を中心として過剰人口になっているものについては、従来型の事業、会社あるいはシステムを維持するという意味ではなくて、やはり構造的な職種転換を促すべきである。
 これに関しまして、全国自治体でも実験が始まっておりまして、非常に有名なものとして例えば緑の公共事業というのがありまして、ダムをつくるかわりに植林事業を行う、その植林事業を、新しいビジネス、新しい事業、新しい人生観をつくる場所として行うということが始まっております。これは大変効果も上がっておりますし、また期待も持たれているわけですね。
 願わくば、従来型の植林を新しくするというだけじゃなくて、木材をどう活用するか。例えば、公共的な施設については、コンクリートではなくて、こういう地元の、地場の、生まれてくる建築資材を使ってやっていくというようなことにするともっと新しい事業が出てくるだろう。そういう形で構造転換をしていくべきではないか。
 実は、この法案の一番足りないのは、そういう国のばらばらになっている長期計画をまとめるというところまではいいんですけれども、それに伴って不可避的に発生してくる痛みについてどういう対策をとるかについて、ほとんど語るところなしということになっているということなんです。そういうふうに思っております。
中山参考人 まず、公共事業費の削減についてですけれども、せっかく国の方が公共事業の長期計画、社会資本整備の長期計画を立てるというのであれば、その長期計画の中に、やはり公共事業費の総額削減の明確なスケジュールを入れるべきではないかなと思います。
 とりわけ、国としてどのような数値目標を持つのか、その数値も含めて、明快なスケジュール、プロセスを長期計画の中にこそ入れるべきだと思います。
 そういうことをすることによって、自治体、各市町村、都道府県が、そういったことを参考にしながら地方の自立的な公共事業の政策も立てられるのではないかなと思います。ですから、そういう意味では、長期計画の中に明確な削減計画を入れるということが恐らく重要だと思います。
 それと、もう一点の、公共事業に依存しない地域経済をどうつくっていくのかということですが、大きくは二点重要な点があると思います。
 一つは、第一次産業の振興をどう図るかということです。今、日本の国の食料のカロリーベースでの自給率は四〇%です。こういった自給率の欧米諸国は、日本を除いて、存在し得ません。一九六〇年ごろには、日本でも自給率は八〇%を超えていました。恐らく、自給率を八〇%ぐらいに引き上げるような計画を至急立てて、そこで地域経済の自立を図っていくということが一つは重要ではないかと思います。
 もう一つは、社会保障分野で地域経済の自立をどう考えていくかということです。
 公共事業も社会保障も、そのかなりの部分は税金によって維持されていきます。公共事業でたくさんの就業者数を抱えていくということも重要ですが、これからの高齢化社会等を考えますと、社会保障分野の政策を充実させて、そこでたくさんの就業者数を抱えていくということが、地域に安定した雇用を確保するという点でも、また、これからの高齢化社会で、地域で人々が安心して暮らせるという点から見ても重要だと思います。
 そういう意味では、地域の自立的な経済という点では、第一次産業と社会保障、この二点が今後は極めて重要になってくるのではないかと思います。
大森委員 続いて御三方にお伺いをしたいんですが、きょうの参考人質疑に先立っての最初の委員会での質疑の中で私も政府側に質問をしたのですが、今回の重点計画法では、従来の特別措置法等にはなかった、全総計画、今回でいえば二十一世紀の国土のグランドデザイン、いわゆる五全総、これとの調和条項が明確に法文上盛り込まれました。
 そこで、全総法、国総法については、五十嵐、中山両参考人についてはこれを廃止ということで、森地参考人は改正と言われているわけなんですが、一つは、森地参考人に、改正ということであれば、どのような考え方でどのように改正するのか。
 それから、これは御三方にそれぞれお聞きをしたいんですが、グランドデザインの評価というと大変大きくなりますけれども、一言でその評価と、加えて、それを法案の調和条項に盛り込むということの問題点といいますか、それの評価といいますか、そこら辺をお伺いをしたいと思います。
森地参考人 全総法について、これをどうするかという議論は、実は、新しい全総、五全総でございますが、それの作成過程で、私も委員の一人として参加してございましたが、その中でも、全総を変えるべきではないかという議論が非常に強くございました。五全総の中にもそういう思想が入っているかと思います。
 どういうふうに変えるかということでございますが、一つは、いろいろな舞台はありますけれども、この国をソフト面とか産業だとか文化まですべて含めてどういうふうに持っていくかということを集中的にする議論の場として、あの全総の場というのは大変大きな意味を持っていた、この部分は残した方がいいと思います。
 ただし、非常に抽象的ではないか、こんな議論と、ブロック単位の計画が非常に総花的ではないか、こういう批判がございます。それから、もちろん、開発開発と言っていいのか、こんな議論もございます。
 そういう意味では、国際化するアジアの中でのこの国の位置づけを考えたときに、先ほど申しましたように、人口三十万から五十万という圏域と六百万から一千万という圏域に、どういう格好につくりかえていき、それがそれぞれどういう特色ある地域になるかという大きなシナリオを書く必要がございます。
 しかも、その段階で、国と地方がどういう役割分担をしていくのかということをそれぞれに決めていかなきゃいけません。それをどういう格好で計画という舞台で実現するかということをこの改正でやらなかったら、一体どこでやるんだろう、私はそう思って、必ず改正をして、将来の日本のために必要な舞台をつくる必要がある、こういうふうに考えてございます。
五十嵐参考人 五全総、グランドデザインの評価でありますけれども、私は極めてネガティブであります。
 まず、費用の面からいきますと、四全総で見積もった費用はおおよそ千兆円と言われておりました。五全総にはトータル費用は出ておりません。これについては、五全総ができたときに随分いろいろ調査したり、質問をしたりしたことがございます。恐らく千兆円をはるかに超える膨大な額になって、もうとても入れ切れぬのだろうということを聞いております。計画策定者からも聞いております。つまり、初めからばかげているぐらいの数字になるということです。
 なぜばかげたものになるかといいますと、途方もないものが幾つも盛り込まれているということです。例えば、首都移転というのが前提になっております。あの首都移転でも一体幾らかかるか正確にわかりませんが、単純に六十万人都市をつくるというだけでも膨大な費用がかかりまして、これなどが前提になっております。あるいは、海峡プロジェクトというのがありまして、四国と本州あるいは九州をつなぐ、まだ幾つもの夢のようなデザインが入っています。
 つまり、グランドデザインの公共事業は、百科事典といいますか、万華鏡といいますか、あらゆる欲望の群れといいますか、あらゆるものを詰め込んだものでありまして、もう収拾がつかないというのが二番目の理由です。
 三番目は、これはどうやったらコントロールできるかといいますと、今の国土利用計画法に基づく全総のつくり方、審議会のあり方自体からしてほとんど不可能であろうということでありまして、こういうもろもろの点から、五全総については私は極めてネガティブであります。
 今後どうすればいいかということでありますが、一般的に、長期計画を漠然と議論しますと、あった方がいい、ないと何にも全然方向がつかないんじゃないかという強迫観念がありますけれども、果たして、今後、五全総が終わるのがもうちょっと先だと思いますが、それ以降どうなるかといいますと、前提として、日本の国家はどうなっているか、あるいは日本の自治体というのはどうなっているかということについて、戦後一度も経験したことのないような大激震に見舞われるということを想定しております。だから、今の、少し苦しいけれども、将来国も自治体も健全に発展するんじゃないか、その方向上に長期計画などとてもあり得ないと私は思っておりまして、極端に言いますと、公共事業はまさに国を滅ぼすというぐらいに考えております。
 つまり、もっとはっきり言いますと、このままいくと、場合によったら、終戦直後我々が経験したように、国の財政もパンク、自治体の財政もパンクで、見たときはまだ山河だけは残っていたんですけれども、山河すらないというぐらいの状態までひょっとするといくかもしれないというふうに思っているわけですね。
 そうすると、今の少なくとも経済ゼロ成長、もしくは前のちょっと成長のところにかくデザインと、一たん国や自治体がほとんど戦争に行って敗れたというぐらいの状態から考える状態とでは、全く将来像は違ってくるだろうと思います。
 仮に六全総をつくるとすれば、そういうことを踏まえてつくらなきゃいけないわけでありまして、こんなものをかける学者も官僚も文化人も評論家も、だれもいないと私は思っているわけです。さらにまた、それとの調和条項を持つ社会資本整備計画の意味がますますわからない、全然想定もつかないというのが私の意見でありまして、だから一たん中止すべきであるというのが私の意見です。
 それで、もしつくるとすれば、堅実なリアリティーのある計画に基づきまして、市町村からこういうことをやりたい、市民参加によるこういう公共事業が必要である、市民事業が必要である、その調整として、首都圏ブロックと近畿圏ブロックの調整として国がこういうことをやらなきゃいけないというものはあり得ると思いますけれども、国の方が、何か妄想のような、あらゆるもの、事業を全部書き込んだようなものを全総でつくって、それを下におろしていくというようなことは到底あり得ないというふうに私は思っています。
中山参考人 全総との関係ですが、現行の全総との調和を図るということについては、やや賛成しかねます。現行の全総、今五十嵐参考人からも指摘がありましたように、まさに大規模開発のオンパレードのような感じになっています。このような全総と調和を図るということについては、やや賛成しかねます。
 ただ、この点で重要なことは、というか、むしろ気がかりなことは、全国的な、日本の国土全体をどのように整備していくか、そういう計画というものは必要だと思います。別に国土そのものを全く無計画にしていいというわけではありません。
 とりわけ、今後の全国的な開発を考えていく場合、今重要なことは、今までの全総が成功したかどうかという評価は別としまして、今までの全総の一つの大きな目的は、国土の均衡な発展ということであったと思います。もちろん、その内容にはさまざまな問題もありますし、きょう議論していますような、ある意味では公共事業のばらまきのようなものもあったと思います。
 ですから、そういったものを改善していくということは当然必要ですが、今の改善の方向でやや私が危惧していますのは、これからは、国際競争の時代だ、都市間競争の時代だ、市町村も合併して自立性を高めていかなければならない。そういう中で、一つ間違えますと、国土の均衡な発展というのではなくて、競争の時代の中で日本の大半の中山間地域が消滅の危機にさらされるんではないかなという危惧があります。
 ですから、むしろ国際化の時代だからこそ、国土の本当の意味での均衡な発展をどう図っていくのか、本当の意味で地域の自立的な経済発展をどう考えていくのか、そういった意味の全国的な整備計画は必要ではないかな、そのように考えています。
 ですから、もしそういった計画であるならば、調和していくということ自身については、別に反対いたしません。
 以上です。
大森委員 時間が参りましたので、これで終了させていただきたいと思います。きょうは、本当にありがとうございました。
河合委員長 原陽子君。
原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いします。
 まず、三人の方に三点ほど御質問をさせていただきたいと思います。
 私が今回この法案の中で大きく問題に思っている三点の部分なんですが、まず一点目が、今回のこの重点計画を国土交通省は、五全総の下位計画にあって、下位計画が変わっても上位計画である全総は変わらないということを認めている点で、私も、五十嵐参考人の意見に非常に近いんですが、全総とその根拠法である国土開発法を廃止すべきだというふうに思っておりまして、まずこの点、この計画と全総との関係をどのようにお考えになるかということがお聞きしたい点です。
 二点目の質問なんですが、これは農水省が所管している公共事業も批判の対象になっているんですが、今回、農水省の公共事業が含まれていない点が大きな問題であると思います。
 先週の金曜日の質疑の中で、都市用水、工業用水、農業用水はどう連携していくか、治山ダムと砂防ダムはどう連携していくか、農道と国道はどう連携していくかということを質問したところ、これまでも目的に応じて役割分担をしてきた、これからも役割分担をしていきますという答弁だったんです。本会議での総理の答弁では、横断的に事業を実施すると言っているのですが、実際の政府の答弁では何も変わらないという点から、こうした事業が、総理が言っていることとは逆で、横断的になり得ないのではないかという点。
 三点目なんですが、道路特定財源の問題をどうとらえるかという点をお聞きしたいと思います。
 これまで小泉総理も塩川大臣もさんざん、見直す、一般財源化すると言ってきたこの道路特定財源が、今回、結局は何も見直さずに終わってしまったという点です。
 道路整備費の財源等の特例に関する法律で、平成十五年度以降五年間で三十八兆円を使うことを閣議決定で決めますと、結局は道路特定財源だけは特別扱いして固めてしまった点が非常に問題だと思っておりまして、こちらの法律の方が実は社会的な影響は大きいのではないかと私は考えております。
 この三点、全総との関係、横断的になっていない点、そして道路特定財源の問題をどうとらえるか。そしてできれば、今国会で国民が期待していた本当の改革は、この公共事業に対してはどんな改革だったのかということを御説明いただきたいと思います。
森地参考人 全総については先ほどから申し上げてございますが、今の五全総に関しては、総論編のところと、それからブロック編で書いてあることを少し読み分けた方がいいかなという気がしております。
 それから、この国が一体どういうふうに向かうのかということについて、これからこの時代状況に応じてまた改定が進むんだろうと思いますが、そういうものを受けない社会資本整備というのはあり得ないわけで、この間は当然両輪である。これを要らないという論拠は私には理解がいきません。
 それから二番目の、農水省の問題について、あるいは先ほど来保育所の話なんかも出てございましたが、この我々の住んでいる国土の基盤を考える、生活のベースを考える、インフラを考える、こういうところでございますから、あらゆるところがかかわってまいります。それをどういうグルーピングで議論すればいいのかという議論は、やり出すと切りのないぐらい大変なことかと思います。どう切ったって必ず入っていないところとの連携は必要なわけで、当然のことながら、二つの意味での連携が必要かと思います。
 一つは、実際のこの計画をつくっていくときに、この中で入っていないところの予算配分とか、あるいは長期の計画とここで言っている計画は、どういう格好で計画的整合があるのかという議論は当然必要だろうと思います。
 もう一つの舞台は、先ほどから申しておりますように、地域におりたときに、その場所で何の事業をどういう格好でどういう手順で進めていくのか、こういう調整でございます。
 それで、農水の話とか、あるいは私、事前に見ていまして、例えば環境基本法とか農業関係の基本法とか、それぞれ違う基本法の体系になっているのを、教育も同じでございますが、一体どこまで含めばいいのかというのは、実は絶対の正解があるわけでは多分ないんだろうと思います。今回は、五カ年計画の見直しで、国土交通省のという格好で今回の法体系がつくられてきて、今申したような二つの格好で連携をしていく、調整を図っていく、こういうことは適当なのではないかというふうに理解をしてございます。
 最後の道路特定財源の問題については、一般論でございますが、実は、受益と負担をなるべく明快にしておきたい、こういう基本方針と、それから財源をなるべく自由に使いたい、これは賢く使えるということが前提でございますが、そういう意味で自由にしておきたい、こういう二つの対置的な議論がずっと諸外国でございます。受益と負担をはっきりしたいというのは、余り自由にすると賢く使えない可能性があって、どこに行っているのかわからないから、こういう議論でございますし、私の払ったお金が違うことに使われているのは適当ではないから、こういう議論でございます。
 そういう意味では、冒頭申しましたように、日本は、ODAのないときに、受益と負担が極めてクリアな格好の財源調達をしていろいろな仕組みをつくってまいりました。
 それが、ずっと続けることがいいかどうかというのはいろいろ議論がございますが、私自身は、道路の負担者というのは極めてクリアになってございますので、その負担者が許容できる範囲内で自由化をしていく、こういう格好が正しいのではないか、こういうふうに考えてございます。
 そういう意味では、環境関係ですとかそういうところに広げていく、あるいは公共交通について広げていくというのは、その範囲内に入っていて、適当な意思決定ではないか、こういうふうに考えてございます。
五十嵐参考人 私は、法学部で授業をしたり勉強した者でありますけれども、計画行政というのは、戦後、行政法の転換を図るものとして非常に前向きなシンボルとしてとらえられていましたけれども、公共事業計画については、まさに前向きでなかったということの典型がこの五全総であろうと思っております。
 まず、五全総でありますけれども、これは三本立てになっておりまして、理念的な部分は一応、通説的には学者が書いたというふうに言われております。その中の、私などは非常にいいなと思う部分も中にはありますね。特に、今後は開発一辺倒ではなくて美しい島としての日本をつくっていくなんということは、理念的コンセプトとしては今後も継続していくべきことだろうと思っております。
 二番目の、地域ブロックの事業別編は、これは主として行政が書いたということで、これも美しい島というコンセプトと少しは整合性がある。
 一番だめなのは三番目でありまして、これは国会議員と知事さんたちが書いたというふうに言われております。ここが事業のオンパレードになっておりまして、これと理念はもう正面衝突じゃないかというふうに思っているのです。
 なぜ六全総ができないかといいますと、こういうことを、ある種の非常に志高くやって日本の国土を考えるということと、事業要求というものを分けて、極端に言えば牛耳ってやるつくり方がもうできないんだろうというふうに思っていて、その面からも余り評価しないということです。
 それから二番目に、今回の社会資本整備計画について、今おっしゃるとおり、国土交通省と農水省の計画は全く分離されました。
 統合すればいいというのはだれでも言うことでありますけれども、私は、もう統合など考えなくてもいい。むしろ、先ほど言いましたように、農水省にしろ国土交通省にしろ、地方自治体のすべての事業をコントロールするというところの方が最大問題でありまして、これを国がやるべきことと自治体に分けますと、国土交通省のやるべき国営事業も農水省のやるべき国営事業も非常に限定されてくる。それをはっきりさせると、国土交通と農水が握手すべきところ、それぞれ独自にやるべきところがはっきりするということだろうと思うんですね。
 だから、思考回路として、何か分かれているものを一緒にしてしまうんじゃなくて、むしろそれより以前に、縦の系列、国の、霞が関ですべてを仕切る、これをまず切ってしまって、残っている国営事業について、合体すべきところと合体すべきでないところを考えたらいい。そうしたら、思考回路が明瞭になってくるだろうと思っております。
 それから、道路特定財源などいわば目的税の問題であります。これは非常に大きな問題があると思っております。
 御承知のとおり、道路公団の民営化等を含めまして、道路の問題も公共事業の天王山でありますから、非常に大きな、最も大きな公共事業の分野でありまして、いろいろな改革案が出されております。
 残念なのは、これは国民が、今国会で公共事業は何をすべきかということを端的に答えますと、もう道路について、道路特定財源をこのまま続けて、必ず一〇〇%の赤字になることがわかっていながらずっと着工を続けていくというような状態が今国会以降も続くとすれば、政府による公共事業改革についてはだれも期待を抱かないということだろうと思います。
 恐らく道路特定財源の問題というのは二つありまして、一つは、道路をつくればお金が入る、お金が入ると、このお金は道路をつくらなければいけないものにしか使えないということですから、悪循環があるということが一つです。
 二番目は、それ以上に、この道路特定財源で賄える範囲を超えて、今の現会計でも二十数兆円、計算によってはもっと上がるわけですけれども、さらに今予定されている整備計画九千キロをつくるだけで六十兆円に膨れ上がるという財政破綻について、だれもブレーキがかけられなくなっているというところが問題なんです。
 私としては二つ提案がありまして、だから道路特定財源は一般財源化して悪循環を断ち切るべしということが一つです。それから二番目の、今後このまま道路事業を続けたら六十兆円という膨大な借金になって、これはだれも救えなくなりますので、直ちにこの道路計画については一たん中止すべきであるということです。
 これも私の参考資料に、ぼつぼつ出して申しわけないのですけれども、もう一つの議員立法提案の中に、民主党が出していただいているものの中に緑のダム法案というのがありまして、とにかくいろいろ問題があるものについては一たんやめよう。まず、とにかく一たんやめて、それから、自治体から見て、あるいは国から見て、あるいは市民から見て、必要な事業をもう一度立ち上げる。サンセット法をつくろうということを提案しているんですけれども、ダムだけではなくて、まさにこの道路についてもサンセットをつくって、一たんすべてを中止して、どれとどれの高規格道路だけ動かすべきか、改めてフラットなレベルで議論しようということを……(発言する者あり)時間を下さればしゃべりますけれども、私はそういう意見です。
 中間報告には一時凍結も入っていたんですけれども、最終的には一時凍結がとれちゃって、ずるずる道路が全部着手されていくということについて心配しております。
 以上です。
中山参考人 まず、全総との関係ですが、先ほど申しましたように、全国的に日本の国をどう整備していくか、そういう計画自身は必要だと思います。ただし、現行の五全総との、グランドデザインとの調和を図ることが今後の社会資本整備にとって望ましいのかというと、この点はもう少し慎重に検討すべきではないかなと思います。
 先ほど申しましたように、二十一世紀はやはり日本の国が大きく変わります。人口も産業もこれからは間違いなく減っていく時代です。そういう時代にふさわしいような全国的な整備の計画になっているのかどうか、そこをもう一度確認した上で、社会資本整備との調和も考えていく必要があるのではないかと思います。
 二点目の農水省との関係ですが、冒頭に私お話ししましたように、社会資本整備に関して網羅的な長期計画を今回立てるのであれば、その対象とする社会資本の定義をもう少し広げた方がいいと思います。
 今回は長期計画の一本化ということになっていますから、対象は長期計画に限定されています。しかも、その範囲は、今御指摘のあったように、農水省の長期計画は含まれていません。
 確かに、国の予算で見ますと、なかなか公共事業を包括的に見るというのは難しいかもしれませんが、私自身、イメージに描いているのは、むしろ今、都道府県や市町村でとられている、予算でいえば普通建設事業費に当たると思います。自治体が言う普通建設事業費の場合は、道路、公園、学校、病院、保育所、基本的には、独立採算の特別会計の公共事業を除けば、ほとんどすべての公共事業が普通建設事業費というところに計上されます。
 恐らく、包括的な社会資本整備のあり方を考えるのであれば、長期計画に限定するのではなくて、より市民が包括的にイメージできるような、自治体レベルで言うと普通建設事業費に該当するような、そういった社会資本整備をどう進めていくのか、そういう大きな枠組みを国の方で示すのが重要ではないかなと思います。
 それから、道路特定財源との関係ですが、これは、基本的には見直すべきだと思います。
 先ほど来出ていますように、例えばヨーロッパの方では、自動車交通をいかに抑制していくのか、これが大きなテーマになっています。そういう中では、もう一度新たなタイプの路面電車を通そうではないか、そういう計画も出てきています。そういう意味では、道路特定財源を広く使えるようにしていくということが重要ではないかと思います。
 最後に、国民が期待する改革ということですが、例えば長良川にしても、諫早にしても、今の川辺川ダムにしても、反対する人もおれば、賛成する人もいてると思います。これは当然、いろいろな価値観があります。
 ただ、大半の国民が最ももどかしく思っていることは、そういった国民の声が事業の決定、実施に届かない仕組みにあると思うんです。国民ですから、いろいろな意見を持っていますが、そういった国民のさまざまな意見がきちっと届くような、そういう改革が今一番国民から求められているのではないか、そのように考えます。
 以上です。
原委員 ありがとうございます。
 最後に、五十嵐参考人に一つ御質問させていただきたいんですが、今、住民の声がしっかりと届く仕組みをつくっていくべきだということが中山参考人からもあったと思うんですが、その点、私は、やはり司法による行政チェックの仕組みというものをしっかりと見直していく時期にあるんだと思います。
 国の公共事業に関して住民の提訴した件数というものの数値を国土交通省に出してもらって、わかりやすいところで河川局と道路局の数を紹介したいんですが、過去五年間、河川局には二十七件ほど提訴されたものがあるんですが、ほとんどが却下をされています。そして、道路局の例ですと、五十六件ある中で、ほとんどが国が勝っているか和解かということになっております。
 こうした市民が裁判を起こす権利という観点と、司法による行政チェックの仕組みについて、具体的に、どういう法律のどういう部分を変えていくことが望ましいとお考えになられるか、最後にお願いいたします。
五十嵐参考人 ヨーロッパ、アメリカを調査しますと、公共事業改革に、国会はもちろんそうですけれども、裁判所が果たしている役割が非常に大きくあります。各国裁判所を見ますと、特に環境影響評価法というのができましてから、公共事業に関するチェックは各国で非常に盛んになりました。それと比べますと、日本の裁判所による公共事業チェックは愕然というぐらいに差があります。
 その一番大きい原因は行政訴訟にありまして、この行政訴訟について、住民が公共事業を裁判所を使ってコントロールするということについて、さまざまなバリケードはございます。
 きょうは、ちょっと行政事件訴訟の講義をするわけにはいかないのでありますけれども、ぜひ司法改革の中で、この問題も長らく取り上げていたんですけれども、どこからどう手をつけるか、今のところ非常に遠い目標になっておりまして、みんな問題だということはわかっているんですけれども、この行政事件訴訟に関する改革というのは急務である。できるだけ、簡便に、早く、裁判所がむだで意味のない、あるいは環境破壊の大きい公共事業についてチェックできるようにすることが必要であるというふうに思っております。
原委員 ありがとうございました。
 きょう参考人の方々からいただいた意見をこれからの審議に反映させていただきたいと思いますし、先ほど五十嵐参考人から、年間五万から七万件の公共事業があって、公聴会が過去さまざま開かれているけれども、とめられたものはないというお話があって、この参考人質疑もそのようなことにならないように、しっかりと議論の中で、きょうのお考えを法案の審議の中に入れていけるようにしていきたいと思います。
 きょうは、貴重なお話をどうもありがとうございました。
河合委員長 江崎洋一郎君。
江崎委員 保守新党の江崎洋一郎でございます。
 本日は、森地先生、五十嵐先生、中山先生、大変お忙しい中当委員会にお越しいただきまして、まことにありがとうございました。
 先ほど来御高説をいただく中で、きょうは大変議論を深めていただいていると思いますが、社会資本整備のあり方におきまして、森地先生におかれましては、ペーパーの中にも、意義という点で、現段階におきまして、「地域づくりのシナリオの下での、社会資本選択の時代」とおっしゃっておられますし、また、五十嵐先生におかれましても、やはり国と地方の役割分担をより明確化すべきであるという御指摘をいただいております。また、中山先生におかれましても、財源の移譲を含めた、地方公共団体におきましてもどのように考えていくべきかといった整理をいただいているわけでございます。
 いろいろお話を伺う中で、まず一つ目にお伺いしたいのは、今の国家の政策決定システムの中でそのような整理がなかなか難しい、いわゆる社会資本整備のニーズというものがどんどん変化を遂げていく中で、国家体系のあり方というものも今後は議論していくべきではないかというふうに私自身は考えておりますが、地方分権ということになるのか、あるいは現行の体系の中でもこの部分につきましてはこういう整理ができるんじゃないかというような、それぞれ先生方、イメージというものをお持ちではないかと思います。
 少し本法案とは離れますが、将来展望を含めた、社会資本整備を考えるときに、本来はこういう国家体系、政策決定メカニズムをつくっておくべきではないかということにつきまして、それぞれの先生方に御意見をいただきたいと思います。
森地参考人 大変難しい御質問なんですが、まず、ティピカル、典型的な、今我々が直面している国土についての課題を二つだけ挙げておきたいと思います。
 一つは、昭和三十年代の半ばに、販売農家、つまりお米とか野菜、農作物を売っていた農家の農業従事者、これはおじいちゃんもおばあちゃんも含めてでございますが、千五百万人でございました。今三百八十万人でございまして、五十歳以下は四十万人しかおられない、こういう状況でございます。
 千五百万人で何とか維持していた農地なり国土なりを四十万人で支える、そういう国土の使い方というのは一体どういうものだろう、これは大変深刻な問題でございます。地方の中心商業地の問題が、郊外の大規模商店街ができたからというオーダーではなくて、そういう国土になってしまうことを一体我々はどう理解すればいいだろう、これが一つでございます。
 もう一つは、かつては、国の競争力というのは日本企業の競争力を意味しておりまして、都市の競争力というのは、それの配分問題でやや従的なものでございました。もちろん、日本企業が競争力を持つのは地方でいろいろな土地が安く手に入るとか労働力があるとか、いろいろな問題もございましたけれども、基本的には従的な位置づけでした。ところが、ヨーロッパで起こっている、近くで同じように豊かな国がたくさんあるところでは、国と国の問題ではなくて、地域なり都市と都市の間がどういう競争状況にあったり、どういう協調状況にあるか、こういう状況でございます。
 そういうことを考えたときに、先ほども申しましたように、二つの圏域構造をつくることが重要ではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
 基本的な意思決定の仕組みとしては、繰り返しになりますが、中央政府が全体のナショナルプランとして、あるいは政策、国の行くべき方向としていろいろなことをお考えになり、その手段としての社会資本整備というのが片やにあり、片やで、地方ベースで今新しいそういう圏域構造の中での議論があり、その二つがたて糸とよこ糸になってその間を調整していく、こんな仕組みかなと思っています。
 その具体的な場所は、例えばブロック計画でいいますと、各県の方が代表で出てきたとします。県ごとの人口推計をそのまま延ばしますと、日本のトータルの人口より多くなります。担当の方がその計画の舞台に出てきて、県議会で決めたマスタープランの中で書いてある人口を、これは間違っていましたと言えるかというと、そんなたぐいの調整からなかなか難しいわけで、したがって、極めて論理的な舞台の中で、国と地方が両方座ったような舞台の中で、あるいは外部の人も含めたような中で、計画、意思決定をしていき、それを政治的な仕組みの中で認知していく、こういうことが当然の仕組みとして考えられる。
 お答えになっているかどうか、大変恐縮でございますが、そんなことを考えております。
五十嵐参考人 先ほども申し上げましたけれども、やはり社会資本に最も重要なことは、国民の意見が反映されるということだと思いますね。国民の意見は、一般的に言えば議会というものが信託を受けて代表するわけです。先ほども言いましたけれども、この社会資本整備計画法案、要するに閣議決定なんです。国会を無視しておる、無視はしませんけれども、厳密に法的に言えば、国会にかける必要がないんです。そういう意味でいえば、国民の意見が反映できないということなんです。
 これをこの時点で、しかも、法律というのは、先ほども言いましたように、来年また時限法で終わるというのではなくて、かなり骨格的な法律ですから、恐らく二十年、三十年も続けるという前提でこれをつくるんでしょうから、二十年も三十年も国会議員の先生方がなお自分たちの意見が正式に反映できない法案をみずから可決するというのは一体何だろうかということをぜひ考えていただきたいんです。これはもう国会議員みずからの問題だ。ここがはっきりしていれば、要するに、こういうものについても国会で議論し、または可決、否決できるというふうにしていくことこそが最大の、まず新しい二十一世紀社会資本のあり方を考えるとき、重要な仕掛けであるというふうに私は思っています。
 それから、事業論でいいますと、さまざまな問題がありますけれども、現地を歩くとわかるんですけれども、旧来型の公共事業については、経済のために、単純に言えば、あした食べるためには働くけれども、だれもプライドを持たなくなってきているということです。
 いい悪いは別にして言いますと、例えば四国と本州にかける橋がありますけれども、これは、美しいデザインというのがありまして、それなりに技術者たちもそれに集中したといいますか、非常にハイテンションで取り組んだところがあるんですけれども、最近のそれを見ますと、それすらなくなってきておりまして、ただ、ただと言うとちょっと語弊がありますけれども、要するに食べるためということになっている。
 そういう公共事業はよくないと思っておりまして、一人一人がプライドを持てる事業であること、二番目には、それが将来的には美しい日本につながること、あるいは自分たちの子孫に誇れるものであること、あるいは自分の子供たちがそれを継いでいけるような事業であることというものが、真の社会資本の事業だというふうに思っているんです。
 そうすると、先ほどから言っていますように、超大型の高速道路を走らせるとか、整備新幹線を走らせるだけじゃなくて、もっと別な事業がたくさんあるはずである。それがうまく開拓されていないのがやはり日本の閉塞感の問題だし、日本の展望が開けない、明るくならない大きな原因ではないか。これをぜひ今国会で議論していただいて、新しい法案を引き続き準備していただきたいというふうに思っています。
 以上です。
中山参考人 どのような政策決定メカニズムが重要かという点ですが、私自身、まちづくりで一番重要なことは人づくりだと思うんです。具体的にはどういうことかというと、まちづくりというのは、別に形をつくるわけではなくて、そこに住む市民をどうつくっていくのかという話になると思うんです。主体的にこの町にかかわりたいという市民、もしくはこの町に愛着を持つ市民、そういう市民をどう育てていくかというのが、まちづくりの最終的な目的だと思うんですね。
 たしか質疑の冒頭だと思いますが、価値観についての議論もありましたけれども、そういった町について主体的にかかわる市民、町に愛着を持つ市民、そういう市民がどうすればできるかというと、市民みずからが町について主体的にかかわれる機会を持てたとき、そのときに初めてそういった自律的な市民が生まれてくると思うんですね。
 日本の町、先ほども出ていましたが、日本の市民は町について統一的な価値観を持っていないんじゃないか、もしくは町に対する愛着が欧米と比べて少ないのではないかという意見が出されていましたが、それはとりもなおさず、そういう主体的にかかわる機会が少なかったためだと思うんです。
 恐らく、政策決定メカニズムを考える上では、市民がそういう町の政策決定にどのようにかかわれるのか、そこをふやしていくということが、これから最も重要な課題ではないかというふうに考えています。
江崎委員 今、非常に、どのように地域のまちづくりにかかわっていくかというようなことも含めた御議論かと存じましたけれども、必ずしも地方分権を推進していく必要はないということでございましょうか。
 お一言ずつ、先生方にお願いいたします。
森地参考人 地方分権は推進していくべきだろうと思います。ただし、地方の今の状況がどうかという、こういうことと、こういうことという意味は、圏域としてどうかということと、各地方で公共事業に関して意思決定されていることが本当に適切かということについては、いろいろな議論がありますから、その状況を踏まえた制度設計だろうと思います。
五十嵐参考人 地方分権はもちろん徹底すべきです。今のところ、かなり財源も権限もそれから組織論的にも、中央集権、事公共事業に限って話しているわけですけれども、まだ依然として強いと思います。
 それで、一つだけ、ここはもう腹をくくってそうすべきであるというふうに私は思っているんですけれども、小さな自治体に権限や財源を移譲すると間違うんじゃないか、変なことをやるんじゃないかという恐怖感が、中央に来ると物すごく聞こえます。それから、学者にも評論家にもそういう、やはり自治体、日本は能力がない、だから任せられない、あるいはもっと逆に、エゴイズムが噴き出す、自分たちのことだけしか考えないような自治体が出てくるんじゃないかというようなことがありまして、その一面がないわけではないと思いますけれども、民主主義ですから、もしちゃんとしたデュープロセスといいますか正式な方法をとって、なおかつ間違えるのであれば、間違っても仕方がないとどこかで腹をくくって、実際に実験をやらせてみるということも必要で、長らく中央集権的な体制で来た日本で一番欠けていたのは、みんなが頑張ってやったけれども間違ったときにも、それはそれでいいんだ、もう一回直せばいいじゃないかという思想はほとんどなくて、全部偉い人が面倒見て、計画づけた後、これをやりなさいと教えてあげるということが公共事業に色濃くあらわれたと思うんです。
 私などは、だから、失敗を恐れずにぜひ分権を徹底するよう国会の先生方にも頑張ってもらいたいと思っております。
中山参考人 地方分権との関係ですが、まちづくりは、先ほどもありましたように、やはり市民の参加をどこまで進めていくか、これに尽きると思うんです。
 参加を考える場合、範囲が広くなればなるほど普通は参加しにくくなります。市民は、なかなか広範囲にすべてのことを考えるというのは難しいと思います。ただ、その反対に、自分の身近なところについてはやはり何よりもよく知っていると思うんです。そういう意味では、市民が参加し、政策決定にかかわっていこうと思うと、その決定する範囲をできるだけ小さくとった方が望ましいと思います。
 そういう意味では、公共事業については、基本的な部分については基礎自治体の市町村、さらに都道府県、そういったところをできる限り重視していくことが実質的な市民参加が進んでいく保障になるのではないか、そのように考えております。
江崎委員 次に、ちょっと違う観点からお尋ね申し上げますが、社会資本整備の水準という点につきまして、一方で、国内の問題だけじゃなく、今度は国際競争力を持った都市づくりということも今議論があるわけでございます。
 その中で、例えばこれも地方主体であり過ぎればなかなか交通整理がうまくいかなくて、めちゃくちゃに広域計画がなってしまう。例えば地域をまたがるような環状道路、首都圏におきましてもまだまだ日本はおくれているように思います。一方で、中国の北京の状況を見れば、環状道路を着々と完成させながら都市づくりを進め、交通体系をならしていっているという現実もあろうかと思います。
 また、先ほど五十嵐先生からもありましたが、美都市という意味において、例えば電線の地中化の問題ですとか、これは地域で選択していけばいいのかもしれませんが、そういったものもありますし、港湾あるいは空港につきましても、国際競争力という観点から見ると、今、日本の中の大型港湾施設というのも若干競争力が落ちて、いわゆる荷物の搬出、出荷量も随分低下していっている。
 しかしながら、今の公共事業の選択のあり方として、我も我もと手を挙げて、どこにでも同じような施設をつくってしまうという選択もいかがなものかとも現在においては考えられるわけでございます。
 こういった交通整理、国の中央が考え、ここには重点投資をするという形になっていくべきなのか、ある程度地方にゆだねて、恐らくプライオリティーの中身の問題が違ってくると思うんですが、地方で主体的にやるべき事業というのはこういうものがあるんだ、国で考えるべきものはこういうもの、地方はこういうもの、そういったちょっと交通整理を、それぞれの先生方に御意見いただけますでしょうか。
森地参考人 例が港で挙げられましたので、これについて先に一言だけ述べたいと思います。
 マスコミ等で、港はもう要らないという議論がこの十年ぐらい猛烈にありました。あのとおりやっていたとしたら、港湾投資はなかったんではないかと思いますが、現実にアジアで起こったことは、十五メーター水深の港はほとんどがこの数年間でアジアの都市でもできております。もし日本が何もしなかったとしたら、その規模の船は日本には寄らないという状況になっていたわけで、大変恐ろしい気がいたしました。
 何でそんなことを冒頭申し上げたかというと、社会資本というのは、常にニーズに応じていろいろな格好で更新していく必要がございます。我々が十五年前に建てていたビルと今のビルとの差をごらんになれば明らかだろうと思います。そういう意味では、選択が大変必要だろうと思いますし、常に機能的にも更新していく必要がございます。
 そこで、では、その選択をどうするかということでございます。一つは、極めて定型的なお答えになろうかと思いますが、国が選択しますし、地方が選択いたします。ただ、日本で欠けているのは、地方が競争して、いいところには集中的にこういうものをつくっていこう、こういう仕組みがやや欠けているかな、先ほど申し上げたとおりでございます。
五十嵐参考人 私の持論は、先ほどから言いましたように、公共事業を二つに分けるということです。
 今先生の質問の大きなところは、国営事業についてどうするかということだと思いますけれども、定義としては、まさに国際競争力をテストしなければいけない事業、大きな空港とか大きな港湾などは国営事業であります。それから、鉄道、道路など横に長いもの、複数の都道府県が共通してかかわるものについては国営事業であります。しかし、下水道や住宅や小さな道路、小さな公園、小さな植林や山などについては、もう地方自治体に任せた方がいいということです。
 それで、地方に任せたときに、その地域は安全か、将来大丈夫かということですが、それはもうその人たちに任せろということなんです。結局、政治学の根本ですけれども、やはりその市民を超える政府はつくれないというのがありまして、国際競争力においても、あるいは都市間競争力においても、負ける自治体は負けるんですね。今までは、だから国が出ていってそれを面倒見なきゃいかぬのだという形でずっとやってきたんだと思いますけれども、それがこの結果になっていて、やはり本質から改革を迫られるような状況になってきた。
 そうしたら、この次のとるべき道は、仮に失敗することがあっても、それはその自治体の責任でありますから、それにゆだねてみるという選択を今後何十年かすべきである。その実験の結果、不都合があったらまた改正すればいいわけでありまして、とりあえず、とにかく、うんと面倒見て、国が主導で何でも面倒見てあげる、失敗するといけないからということだけはやめようということです。
中山参考人 今の御指摘の点ですけれども、例えば国際空港もしくは基本となるような高速道路、こういったものについては国が責任を持って進めるべき事業だと思います。ですから、そういう意味では、国際空港の整備は、やはり国会内できちっと議論した上で、日本の国全体でどう整備していくのか、そういうことを決める必要があると思います。
 その点で一点だけ申しておきますと、例えば、私は家は大阪ですけれども、現状では、関西国際空港等は民間の株式会社が建設しています。むしろ国際空港等については国が責任を持って事業主体になるべきであって、国の責任で本来は進めるべきだと思います。また、高速道路についても、以前も参考人で述べましたが、本来でしたら、高速道路網の計画、建設についても、民間にゆだねるのではなくて、国が最終的にはきちっと責任を持って計画的に進めていく分野ではないか、そのように考えております。
 以上です。
江崎委員 まだまだお伺いしたい点、ございますのですが、時間が参りました。貴重な御意見、ありがとうございました。
河合委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言申し上げます。
 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。大変ありがとうございました。(拍手)
 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
河合委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、内閣提出、社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに第百五十一回国会、前原誠司君外三名提出、公共事業基本法案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長安富正文君、総合政策局長三沢真君、国土計画局長薦田隆成君、河川局長鈴木藤一郎君、道路局長佐藤信秋君、航空局長洞駿君、内閣府道路関係四公団民営化推進委員会事務局長坂野泰治君、総務省行政管理局長松田隆利君、公正取引委員会事務総局審査局長鈴木孝之君、環境省大臣官房審議官小林光君、環境省総合環境政策局長炭谷茂君及び環境省地球環境局長岡澤和好君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河合委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河合委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
岩國委員 扇大臣初め政府の皆さんに、民主党を代表して質問させていただきたいと思います。
 公共事業をめぐって、いろいろな企業献金、大変恥ずかしいことですけれども、この国会から逮捕者が出る、こういうことが次々と続いております。
 鳥取県の国会議員でありました古井喜實さん、二十五年の表彰を国会でお受けになって、そのとき、一九八一年ですけれども、本会議の演説をなさいました。
 政治家は貧しく、そして国民は豊かにという信念を述べられた後、しかるに、政治の現場においては、貧しい政治家は衰退するのみであり、私の信奉してきた政治哲学は幻想にすぎないことを知りましたと大変残念な言葉を述べられました。今や、民主政治のよって立つ選挙は、知力にあらずんば体力、体力にあらずんば金力の戦いとなり、政治は、富の神の支配する領域と化したかの感がありますと。
 こうした金力が支配するというのは、そのお金は主に、今大臣が提案していらっしゃいます、この社会資本整備、公共事業に関連したお金が、日本の政治をある意味では腐敗させてきたということは言えるんじゃないかと思うんです。
 そして、その中で、有罪判決を受けられて今刑務所にお住まいの中村喜四郎前代議士。この部屋は、まさに政治を清くしたいという信念を持った古井さんの肖像と、そして全く違った生き方をされた方で今刑務所にお住まいの中村さん、私は、この部屋に入って、この法案の審議をずっと聞きながら、そういう複雑な思いをしてこのお二人を眺めておりました。
 こうした企業献金ということが常につきまとってくる。そして、今までの九つに分かれておった財布が一つの大きな財布になって一本化するということは、いろいろな効率化の点ではいいことですけれども、ちょうど二十三省庁が十二省庁に大きくくくられて効率がよくなったか。大臣の数が一人でも減ったか、副大臣を入れてちょうど倍。役人の数が一人でも減ったか、一人も減っていない。使うお金が一銭でも減ったか、一銭も減っていない。では、橋本さんのおっしゃったあの行革というのは、一体どれだけの効果を上げる行革だったのか。小さなふろしきに包まれておったものを大きなふろしきに包みかえしただけ、これを大ぶろしき改革というんです。
 大きなふろしきに包めば、外から見えにくい、風通しが悪い、ばい菌がふえる、汚職がふえる、結局そういう方向に行くのではないかという懸念を私はこの法案についても持っております。何でも一本化すればいい、何でも大くくりにすればいい。大くくりにすれば、そういう弊害も、そして次々とまたそのように刑務所へ行かれる方もふえてくるんじゃないかという懸念を持っております。
 大臣に、そうした企業献金というものを徹底的に、閣僚の中で一番熱心なのは、そういう汚職、不正な献金に一番近い金を使っている役所を監督する大臣だからこそ率先して、企業献金は一切廃止、公共事業の仕事をしているところからは一切の献金を廃止するということを常に声高におっしゃるべきだと私は思い、前回でもそのような質問をさせていただきました。
 そして、つくる段階だけではないと思います。つくる段階でいろいろな大きなお金が動く。今度は、例えば高速道路の場合、高速道路という大きな重要な社会資本を料金制という囲いで囲って独占する。これが、料金所がなければ、だれでも自由に出入りできる、沿線にいろいろな会社が店を開くこともできる。しかし、高速道路というものをいわば私物化することによって、独占的にこれを使用し、利用し、運営する。そこからまたいろいろな問題も出ていることは、大臣も御承知だと思うんです。
 つくる段階ではそういった献金、そして料金というものに守られて、一般の人には高速道路は使いにくい。ですから、献金と料金制に守られた高速道路という言い方もできるのじゃないかと思います。
 こういう点を、今はもう時代が変わってきておりますから、そういう規制緩和という風も吹いている中で、私は、高速道路の規制緩和というのは料金所を撤廃すること、それしかないのじゃないかと思います。
 一九五二年です、道路整備特別措置法、これはもう古い法律になってしまいましたけれども、それが制定され、日本で初めて有料道路制が導入された。それからちょうど五十年たちました。一九五二年に有料道路制が導入され、道路は無料という原則に初めて例外が設けられた。そして有料道路制が始まったわけです。いわば江戸時代の関所を再び復活させた日でもあります。
 当時は、大臣も御承知のとおり、日本はお金のない国でした。世銀から借り、よそから借り、外資を導入してはいろいろな社会資本を整備してきました。今、この社会資本整備という法案を我々は前にして、隔世の感があります。この五十年の間に、日本は金のない国からお金の余っているような国、そういう国になってしまったわけです。
 そして、この高速道路一つを見ましても、使う人の数が全く違ってまいりました。五十年前、昭和二十七年の乗用車と貨物車、合わせて七十万台でした。今はそれが七千三百万台です、約百倍。乗用車でいえば、一千人に一台を持っておった当時から、今は二人に一台の時代です。これも全く違います。
 自動車は、ごく一部の人が使うという時代から、だれもが使う時代に変わってきています。当然、道路のあり方、高速道路のあり方、料金制度と有料制度というものに対する考え方も、五十年間変えない、これからも五十年間変えないということは、私は、その方が逆におかしいんじゃないかと思います。
 金の状況が変わってきた、使う人の状況も変わってきた、これだけさま変わりになれば、私は、まさに百八十度違った発想の転換というものをすべき時期に来ていると思います。受益者であるとか特定な人だけが負担をするという時代は、もう昔の話。今やユーザーと道路を料金というくびきから解放し、景気対策にも、雇用対策にも、まちづくりにも、そして環境対策にも、一石四鳥。この社会資本の中で一番大きなお金を使っている、そして一番国民に目立つ、社会資本は、ほかにも大切なものはたくさんあります、しかし、その中で、まずこの高速道路というものを思い切っていろいろな制約から解放して、景気対策のためにも、雇用対策のためにも、環境対策のためにも、思い切って使ってみようという発想やビジョンがない限り、私は、今この段階でこの九つの分野を一つにして、そしてこれからの社会資本整備をやっていこうという法律に一つの魂がこもっていない。
 一番わかりやすい改革というもの、二十一世紀になれば社会資本に対して、これだけの考え方、見方、使い方、つくり方が変わってくるんだということをもっとはっきりとうたうべきではありませんか。大臣の所感をお願いいたします。
扇国務大臣 先日来から岩國委員には、もっと大胆な改革を、そして二十一世紀を見据えた改革を断行すべきではないかという大変力強いお言葉と、本来は、私もすべてを変えていきたいという気持ちを持っております。
 それと今、岩國議員がこの部屋のいろいろな諸先輩の話をなさいました。私も残念でなりません。
 我々国会議員がみんなそういう政治と金という問題で、今若者が国会議員のバッジをつけるのも恥ずかしい、国会議員になりたいという若者がなくなっている、そういう声を聞くたびに寂しい思いをしますし、また、現在バッジをつけている人間として、本当に同等の目で見られる。
 特に、岩國議員がおっしゃったように、この部屋だけではなくて、私は、一番利権の巣であると言われるような役目についているという意味においては、一層、普通の役所よりも倍、身を正していかなければいけない、そういうことを肝に銘じながら政策を実行していきたいと思っております。それが一点。
 それから、行革をしているけれども、大ぶろしきで果たして行革になっているかということをおっしゃいました。
 私は少なくとも、非力ではありますけれども、四省庁を統合した。大臣の数を減らしただけではないか、何が減ったんだ、人数も減っていない、金額も減っていない、こう御指摘なさいましたけれども、私の立場で言えば、例えて言えば、四人の大臣分を、歳費も一人分で済んでいるんですから、少なくとも三人分は節約になっている。金額の大きい少ないは別ですよ。けれども、四人分の大臣の、四人の分を一人で済んでいるということでも、金額ではささやかでも、これは国庫の歳費を不必要に使っているということ自体も、一例を挙げれば、小さいけれどもやはり一歩前進しているということもぜひ頭に置いていただければ、私もやりがいがある。四人分一人で頑張っているわけですから、力は及びませんけれども、そういうこともやはり一歩前進だというふうに見ていただければありがたいと思います。
 それから、高速道路について、無料化であるべきだ。私もできれば、大臣という席に座らせていただいて、全国の高速道路を無料化、すぐできるのではありがたいと思います。
 ただ、今四十兆という赤字を、では、無料化したらその四十兆はだれが払うんですか、だれにツケを回すんですか、あるいは国債を発行するんでしょうか、そういう現実にぶつかりますので、私は一歩ずつ解決していきたい。ささやかではありますけれども、皆さんの、利用者、また今まで法案を遵守していただいたまじめな国民の皆さんにも理解をいただきながら、一歩一歩前進したい。
 料金所をなくしなさいと岩國議員がおっしゃいました。だったらせめて、無料にすればもう満杯になって、お金を取っても首都高などは満杯で動きがとれない、一年間に十二億の経済的損失をしているということですので、一歩前進で、お金がかかるとおっしゃるけれども、岩國議員がおっしゃるように、料金所はとまらないで行けるように、それが二十一世紀のCO2排出量にもつながるというので、ETCの導入。
 お金はかかるかもしれないけれども、先生もおっしゃいますように、料金所であのチケットをとる人、もぎりといいますか、もぎりと言えばわかりやすいかもしれない、あの料金所のお金とかチケットをとる人が全国で二十五社ございます。そして、そこに払っているお金は年間で八百七十五億あるわけです。しかも、それは払うお金だけでございます。あの料金所に集まったお金をだれが収受しているかというと、それは都銀であり、地銀であり、第二地銀であり、そして信金であり、農協であり、そういう地元の人たちがみんなあの料金所へ行ってお金を収受してくるんですね。
 そういうことも含めまして、ETCになれば、そういう収受業務の地銀、第二地銀、信金、農協、みんな仕事がなくなるんです。けれども、私は、高速道路の渋滞を緩和するためにはETCも、それはスタート時においては全部無料にETCの機械もすべきだったかもしれませんけれども、一歩ずつ前進をさせていただいているということも、やはり御理解をいただく一端にしていただきたい。
 それから、値上げの話がありました。高速道路を私が大臣になってからもどれくらい無料にしているのかという、その意気込みはというふうに岩國議員も今おっしゃいました。
 全部をいきなり、四十兆の赤字を抱えて無料化はできませんけれども、私は、首都高の東京線のように、昨年十二月でございましたか、高速道路が新しく開通したところは七百円から八百円に上げるというのも、その時期ではないということで七百円に、せめて百円抑えさせていただいた。また、首都高の神奈川線も、これも本来は十三年の十月でございましたけれども、五百円から六百円に上げるというのも、私は少なくともこれは今上げるべきではないということで、たとえ百円でも、新線を開通しましたけれども、上げるのをおさめていただきました。
 また、名古屋の高速道路も、本年の三月でしたけれども、これは六百五十円から七百五十円にするというのも現在のままで据え置くということも、岩國議員がおっしゃった無料化までは一挙に行けませんけれども、せめて利用者の利便性を考えるというふうに、一歩ずつ、ささやかではあるけれども、前進させていただいているつもりでございます。
岩國委員 ETCのメリットについていろいろお話しになりましたけれども、結局雇用を減らしているというデメリットにもお触れになりました。しかし、料金所を撤廃して、そしてその両側に散髪屋でもラーメン屋でもいろいろなレストランでもどんどん出るようになれば、雇用というものはそこで十分吸収できるんです。
 今政府が取り組んでいる最重要課題は、雇用と株価でしょう。株価はきょうも下がりました。景気に対して、料金所を撤廃して、みんなが伸び伸びと日本じゅうどこへでも物を運べる、九州のおじいちゃんのところへも会いに行ける、そういう気持ちを明るくすることと料金所撤廃は非常に大きな効果があると私は思います。
 同時に、雇用対策にもなると私は先ほど申し上げました。私は、ETCというものは最悪の、最も貧困の、最も貧しい発想だと思います。雇用を減らして、料金所は依然として残して、そして高速道路は依然として閉鎖して独占体制を続ける、三悪、一石三悪です。ETCを早く撤廃して料金所をなくす、テレビでその風景を、光景を眺めるだけで、日本じゅうの気持ちは明るくなります。
 では、四十兆のお金はどうして返すんですか。私はもう去年から何回もこの委員会で、予算委員会でも説明しました。そういうことについて、国交省の方でその検討をしてくださいとお願いしました。きのうのレクでもお願いしました。担当の局長さんは、実際にそういうことについて検討されたんですか。
 高速道路のあり方について、これだけみんなが関心を持っている、そして日本の財政のあり方について、大きな四十兆という負債を抱えている、それについて、あれこれあれこれとあらゆる発想、少なくとも国会議員が国会の中で提案していることについて、きちんとした検討をされたのかどうか。
 それを大臣は全然御承知もなしに、さっきのような答弁をされる。私は大変残念に思います。
 四十兆の借金、どうするんですか、返せないから、私は一歩一歩歩くと。一歩一歩歩いている暇はありません。小泉内閣に一歩一歩歩いている時間はもう残されていないんです。答弁をお願いします。
佐藤政府参考人 先生御提案の方式は、高速道路の通行料を無料として、そのかわりにナンバープレートに対して、車ごとに一定の課税を行う、こういう方式という御提案だと承知しております。この方式は、我が国の高速道路料金が国際的に割高と言われている中で、高速道路の無料化、こういう観点からの一つの御提案というふうに存じております。
 しかしながら、いろいろな検討と申しますか、例えば鳥取県とか和歌山県とか、高速道路の整備計画に対して供用が余り進んでいないというところでは、使おうとしてもなかなか使えないという御不満。
 あるいはアンケート調査をとってみました。ドライバーの方の、八千六百人ほどのアンケートでございましたが、ふだん、一年じゅうほとんど高速道路をお使いにならないという方がそのうちの三割でございます。それから、毎年ほんのわずか、数回使う程度、こういう方がまた三割でございまして、そうしますと、六割の方が年に数回以下しか高速道路を今お使いいただいてはいない。使えないという物理的な事情もあろうかと思います。
 また、先生の御提案の中で、貨物車が二千万台ございますが、このうちの軽トラックといいますか、軽貨物が一千万台ございますので、そういう意味では、同じように課金ができるかどうか、こういうような問題もあろうかと思います。
 そういう意味で、なかなか、公平性というような観点、利用もしていないのに、あるいは利用をほんのちょっとしかしていないのに、こういう観点からの皆様からの御不満というものは、これはなかなか厳しいものがあろうかな、そんなふうに承知しているところでございます。
 世界的には、例えばアメリカでは、一九五六年に、税金でやるかあるいは料金でやるか、さんざん議論した末に、税金でやろうということで、特定財源でインターステートハイウエーをフリーウエーとして建設を始めた。ドイツでは、無料でつくっておりましたが、近時、トラックに対しましてはプレートを交付して有料で通していただいている。ただし、乗用車の方はなかなか料金をいただくというのは、課金が非常に難しいという状況で、いろいろな検討をなさっておられると聞いています。
 私どもも、いろいろな検討をしてみたわけではありますが、そういう意味では、負担の公平、こういうような問題からまいりますと、なかなか厳しいところがあるかな。
 現実に、首都高速道路が、例えば料金が均一制でございますが、長い距離をお走りになられる方は、三十キロ、四十キロを七百円で東京線でいえば走れる。三キロ、二キロという区間の皆様からは、短区間の割引をすべし、こういう声も出ている。こういう状態の中でございますので、そういう意味ではなかなか厳しい問題があるな、そんなふうに思っているところでございます。
岩國委員 私は局長に、全く無料にして、ナンバープレートも使わないやり方と、それからもう一つは、プリペイド方式で、一台四千円、あるいは大型トラックは年間一台十万円とか、そういう割り増し料金のライセンスプレート、その二つの方式でどちらがより経済効果があるのか、どちらがより多くの人が走りたくなるのか、それをシミュレーション、検討していただきたいと、この間、部会の方でもお願いしましたけれども、今、伺ったのは、要するに鳥取県の話。
 鳥取県にしても、早く高速道路ができたら、自分たちの代には少し、十年間、四千円使い続けた割には元は取れなかったかもしれないけれども、自分の子供やお孫さんのときには、立派な高速道路がつけば、おじいちゃん、おばあちゃんが払ったものが十分、それ以上に元は取れるわけです。そういうきちっとした説明をすれば、社会資本というのは、今どうこう、銭金がもうかるんじゃなくて、次の時代にどれだけいい財産が残せるものだ、これはいいお手本じゃないかと思いますよ。
 そして、そういう料金のあり方というものを変えることによって、一年でも二年でも早く鳥取県に高速道路がつく、ついたら無料で大阪まで行ける、そうすれば経済効果にも当然つながってくるわけです。つくまでの話。そして、この料金体系に変えなかったら、高速道路のつく日がますます遠くなってしまう。
 それよりも、一年でも二年でも早く高速道路がつくような仕組みに変えていく。そして、ついたら、いきなり高い料金だからこれからなかなか走れない。一部国の予算でつくって、そこは無料という道路も今度検討されているようですけれども、しかし、それ以外のところは依然として有料制であれば、大阪へ行く、東京へ行く、農産物を運ぶにしても、あるいは親類に、友人に会いに行く場合でも、コスト高の高速道路を使わなきゃならないことにはほとんど変わりがないわけです。
 ですから、今抜本的に何か新しい方法に変えてみる。完全無料制にするか、プリペイドライセンスの方式をやってみるのか、どちらが国の経済効果に貢献し、経済効果に貢献するからこそ税収がふえる、増収効果にもはね返ってくる、そのようなところを計算してみる必要があるんじゃないですか。鳥取県のアンケートだけで、日本の経済効果について全然言及されませんでした。日本全体としてどれだけふえるのか。
 それから、首都高についての答弁もいただきましたけれども、私は、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京、世界の四大都市、全部住んできました。五つのライセンス使って、私は、全部、乗って生活しておったんです。ニューヨーク、ロンドン、パリ、そういった世界の大都市で、自分の税金でつくった道路を車で走るときまた料金を払う、自分の金でつくって、そしてまた自分で料金を払う、そんなことやっているところは日本だけです。パリで、ロンドンで、ニューヨークで、あしたから首都高で料金取りますと言ったら、多分暴動が起きるでしょう。自分の税金でつくっておいて、また使うときにそれを払わされるなんということは、やっているのは日本だけなんです。
 そして、日本は経済大国と言われている。アメリカにお金が出稼ぎに行くような、そういう国になっているでしょう。アメリカは日本のお金を使っています。世界でお金が一番あると言われている日本が、なぜ東京の中で道路を走るときにお金を払わされているのか。世界で一番たくさんお金があるんだったら、道路を走ったら、走るたびにお金がもらえるぐらいの、それだったら世界が納得するかもしれません。お金がない国からお金がある国に変わって、まだ東京の中を走るときにお金を取り続けなきゃならないのか。何かが欠けているからです。政策の貧困以外に私は考えられないと思います。
 今の仕組みを変える、一般財源で返済していくもよし、プリペイドライセンスで返済していくもよし。そして、地域的な格差があるとすれば、北海道や鳥取県の人には、こういうやり方をすることによって地域の農産物が早く大阪の市場へ届くことができる、それだけ新鮮なものを、より高く売れて、利益の高い農業に切りかえていくこともできるでしょう。
 いろいろな経済効果、これは単に社会資本の構造改革だけではなくて、農業の構造改革、あるいは大都市と地方との格差の縮小にも、いろいろなことにつながっていくことだと思うんです。単に四十兆円の借金の返済、それだけのしがらみで何の新しい発想も出てこない。もっと、国土交通省だったら、いろいろな才能を持った方がいらっしゃるでしょう。
 私が提案したことについても、そういうアンケートをとって、少し、三割の人が私たち余り使っていない、使っていないはずですよ。それは設問の仕方がどうだったかということを私は検証しなきゃならないと思いますけれども、設問の仕方によってはノーという返事を引き出す世論調査、幾らでもできます。三割の人がどういうことに対してノーと言ったのか。それは、高速道路を使う機会がないというのは、高速道路というのはお金を払わなきゃならないという観念が日本人の頭に、悲しいかな、しみついているから、高速道路使いますかといえば、お金払ってまで走ることはいたしません、そういうリアクションが出てくるわけです。そういう世論調査のやり方も、もう少し私は工夫してみるべきじゃないかと思います。
 そういった、今政府が一番取り組んでいるデフレ対策にしても、雇用対策にしても、高速道路を使って、高速道路でもっともっといろいろなビジネスができる、そういうふうに切りかえていくべきじゃありませんか。高速道路の規制緩和をやった、雇用が全国で五十万人ふえた、私はこれだって大変な扇大臣の功績だと思います。そういう仕組みに変えていくこと。
 料金を取るのは、どこかで決断し、あしたから取るわけです。料金を撤廃するのも、あしたから撤廃すること、それができないはずは私はないと思います。再度御答弁をお願いします。
佐藤政府参考人 先生、今お二つの御提案ということで、全く無料にするか、あるいはプリペイドで、ナンバープレート課金といいますか、一台当たり幾らという形で取ってそれを償還に回すか、こういうお話だったと思います。
 大臣、先ほど御答弁なさいましたように、道路関係の四公団合計の累積の現在お借りしている借金の額というものが約四十兆円ございます。これをどういう形で返していくかという点について、粛々とコストの縮減や管理費の節減、あるいはまた、昨年、道路関係四公団の民営化推進委員会から、民営化の方向の最終意見というものをお出しいただきました。内閣としては、政府・与党で協議もしながら、それに対する検討をする、こういうことになっておるところではございます。
 問題は、戦後、昭和三十年ぐらいからでございますが、大急ぎで道路の整備をやっていこう、この中では、道路の特定財源もいただきながら、しかしながらそれだけでも足りないということで、世銀の借款をいただいたり、あるいは、いずれにしましても、有料道路ということで借入金で建設をさせていただいて、その後、料金収入でお返しする、こういうやり方でやってきてまいったわけでございます。
 これからも、まだまだ、先生御指摘のように、大急ぎでネットワークの整備をしなければいけないという地域も路線もたくさんございます。ネットワークがつながってこそ初めて有効に機能する、こういうことでございますので、私どもも、新しい建設も、そういう意味では、必要な建設を着々と進める必要があるだろう、そういうふうにも思っております。
 そういう意味では、しからば、無料にする場合に、あるいは課金する場合に、無料にする場合にはその財源をどうするか、借りております借金の返済をどうするか、こういう問題がございますし、課金方式、こういう形で申し上げますと、先ほど先生にちょっと御報告申し上げましたように、私は使っていないよという方が六割ぐらいおられるという状況の中で、なかなか御理解いただくというのは厳しいところがあるかなということだと思います。
 私どもといたしましては、できるだけお使いいただきやすいようにということが大事なことだと思いますので、弾力的な料金政策というものがETCの導入とともにいろいろなことが可能にはなる、こういうことでございますので、そういうことも含めて大いにお使いいただけるような工夫というものをしてまいりたい、そういうふうに思っております。
岩國委員 そうしたいいかげんなと言っては失礼ですけれども、そういった世論調査で、六割の人が必ずしも納得していない。しかし、消費税だって八割の人、九割の人が反対しているときに、我々は導入したわけです。ですから、理解を求めれば、そういった地域格差のあるところの人でも、ああ、このシステムの方がいいんだという理解を私は十分得られる問題だとこの点については思います。
 扇大臣、この高速道路について、こだわるようですけれども、アメリカもドイツもイギリスも無料でやっています。それは、その三つの国が、それ以外もありますけれども、すべて重要道路、基幹道路というのは国を守るためにやっているんです。
 ある国が、特に名前を言うわけじゃありませんけれども、鳥取県に上陸した場合に、自衛隊が何時間でそこへ到達できるのか、そこの人命をどれだけ早く守れるのか。鳥取県はライセンスプレートに反対している人がおるから、あそこは高速道路つくらないんだ、そんな次元とは話が違うと私は思うんです。国のどこも全部守ってみせる、人命は守ってみせる。
 災害のとき、どうですか。阪神大震災があったとき、あそこは表側は全然あれでした。ですが、山陰側、日本海側の国道九号という、これは高速道路でも何でもありません、一般国道ですけれども、それがトラックがどんどん通って地元の人が使えなくなった。このことは前にも申し上げたと思いますけれども、しかし、出雲市民は一人も文句を言う人はいませんでした。何のために、自分たちがこの国道を使うこともできないほどどんどんトラックが走っているのか、それはわかっていたからです。
 そういう災害対策のためにも、国を守る防衛のためにも、国を守り、人命を守るためにつくるのが道路じゃありませんか。採算性だけで論じているというのは、私は、本当に情けない、残念な気がするんです。
 私は、借金四十兆円は一般財源から全部払ってみせてでも、これは国を守るために、人命を守るためにやるんだというぐらいの道路に関する哲学が必要だと思うんです。大臣なら、政治家なら、それぐらいの哲学を持ってほしいと私は思います。
 お役人の方はいろいろな別なことをおっしゃるでしょう。借金のことを心配する、国土交通省はみんな大臣と同じような考えになっては困りますから、ちゃんと銭金をきちっとやる人もそれは必要でしょう。しかし、大臣までが銭金大臣になってしまっては困るんです。国を守るのはだれが守るのか、守る手段は何なのか。鉄砲や機関銃だけじゃありません。道路が国を守っている。人命を守っているのは道路なんだという道路に関する哲学さえあれば、借金をどうするかとか財源をどうするかというのはまだ枝葉の議論だ、私はそのように思います。
 そういう観点から、防衛庁からもいろいろ高速道路の要望というのは当然出てきていると私は思います。
 私は出雲市長のときに、一般国道九号のバイパスをつくっていただきたい、山陰高速道路をつくっていただきたい、一遍に二本はだめだと言われて、山陰高速道路の陳情は防衛庁に行きました。出雲市にある自衛隊の基地を出雲市からどこかへ移してくれということを私はお願いに行ったんです。高速道路につながっていないような自衛隊は置いておく意味がないからです。高速道路のあるところに移してほしい、防衛庁は、それは困る。困るんだったら、自衛隊をどこかよそに移すか、出雲市に高速道路をつなげるか、どっちか決めていただきたい。私は、建設省に防衛庁の方からも陳情の口添えに行っていただいたことがあります。
 そういう国を守るという観点からも、この高速道路の問題、そして社会資本全体の中で、その骨格をなす、経済の動脈をつくる、社会資本の中の社会資本と言われるこの道路問題については、そういう発想の転換、しっかりとした将来ビジョンというのを持っておられない、そういうのであれば、この法案に私は賛成しがたい印象を持っております。
 もう一つは、環境に対する配慮ということを法案の趣旨説明にうたっておられますけれども、この環境に対する問題の中で、環境省とのすり合わせというのは十分にしておられますか。
 例えば、いろいろな高速道路の整備、あるいはその他の港湾の整備、そういったもののときに、京都議定書方式、京都会議、あるいは温暖化防止、そして日本は六%削減しなければならない、これはまた大きな命題となっています。これは社会資本整備と決して相反するものではありません。
 しかし、社会資本整備を進めていく上で、この温暖化防止の精神と、そして六%の削減目標といったものとの整合性はどうなっているのか。環境省の方からは、そういった地域別にどこが、例えばCO2についても、どの県が一番たくさん出して、どの県が一番CO2を吸っているのか、どの県の山や森がCO2を吸っていて、そしてどの県の工事がたくさん出しているのか。これは、県別あるいはブロック別の環境に対する環境通信簿、いいですか、プラスの県とマイナスの地域と、そういうデータをちゃんと持って、この国土交通省にはそういうものを出しておられますか。あるいは、国土交通省からそういう問い合わせが頻繁にあって、いつも国土交通省といえば環境に一番関心を払ってくれている役所だという印象はありますか。御答弁をお願いします。
三沢政府参考人 いわゆる地球温暖化対策と重点化計画の関係ということでございますけれども、先生御承知のとおり、京都議定書の六%の削減ということの達成に向けまして、地球温暖化対策推進大綱の中でいろいろな対策ごとにCO2の排出削減見込み量が定められているところでございます。
 例えば、目標年次である二〇〇八年から二〇一二年の平均値で、国際港湾整備による物流効率化でCO2約百八十万トンの削減、あるいはITSの推進によって約三百七十万トンと、個別のいろいろな政策によって削減を見込んでいるわけでございます。
 今後、重点計画との関係で申しますと、地球温暖化対策推進大綱の目標年次は、重点計画の目標年次とちょっと異なっておりますので、先ほどの数字が直ちにそのままということではございません。それからもう一つ、対策も、当然ハードだけじゃなくてかなりソフトの対策も含めてこういう削減目標ということがございますので、これについて、重点計画の策定において、さらにCO2排出の削減効果というものが定量的にどういうふうに出せるのか、あるいはなかなか技術的な難しい問題があるのか。
 それから、先ほど来先生言われましたように、地域ごとのデータというのがあるいは環境省さんの方にあるのかどうか、そういうことも含めて、環境省さんとも十分協議しながらこの策定を進めていきたいというふうに考えております。
岩國委員 「月刊世論調査」、これは昨年の二月号ですけれども、内閣府、「国土の将来像」、国民がこれからの国土づくりに何を期待しているか。一番は、災害に対する安全性の期待。私はさっき申し上げました、もっと社会資本の整備、国土づくりを進めるときには、災害に対して安心して住める国にしてほしい。そして二番目は、自然環境の保護です。こういう環境の保全と、そして災害あるいは防衛に対する配慮、安心して暮らせる安全な国、この二つがこの国の形として一番大事なことだと思うんです。
 しかし、この法案には、残念ながらそういう哲学があらわれておりません。安全度という物差しがない。環境度という物差しも地域別に持っておられない。そして、前回の委員会でも私は質問しましたけれども、時のアセスという歯どめ、国会承認という歯どめ、それもありません。重点整備計画法案という、計画という名前がついているのであれば、少なくとも数量的な目標ぐらいなければ、計画という名前もおかしいのじゃないでしょうか。
 あれもない、これもない、ないない尽くしの法案には意味がないという印象を申し上げて、私の質問を終わります。
河合委員長 阿久津幸彦君。
阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。
 二月の二十八日に行われました本会議におきまして、私は小泉総理に、社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、そして、民主党法案の提出者に公共事業基本法案について質問をさせていただきました。
 私は、さきの本会議で、公共事業のあり方、法案と地方分権との関係、道路特定財源や政策評価の問題など、さまざまな角度から小泉総理に質問したわけなんですけれども、残念ながら、総理の答弁は全く精彩を欠いたというか、官僚が書いたと思われる原稿を棒読みするような答弁でございました。
 そこで、今回は、国民の望む公共事業改革とはどうあるべきなのか、小泉総理に十分お答えいただけなかったので、そこの部分も含めまして、主務大臣である扇国土交通大臣にお伺いしたいと思いますので、明確な答弁をお願いしたいと思います。
 それから、民主党案につきましても、政府案との比較において、その違いが明らかとなるよう期待しておりますので、どうか答弁の方よろしくお願いいたします。
 さて、国民の求める公共事業、これは時の流れとともに私は変わってくるんだというふうに考えております。
 例えば、一九五〇年代、六〇年代、戦後間もないころ、公共事業は、国民にとって近代化への夢をかなえる一種の手段でありました。東京オリンピック関連事業、万博関連事業、そして東名高速などもその例に挙げられると思うのですが、諸外国へのおくれを取り戻すための緊急措置法として多くの長期計画が立てられたのもこの時期でございます。
 七〇年代、八〇年代に入りますと、公共事業の緊急性は薄れたものの、景気対策として、また予算の分捕り合戦がエネルギーとなって、長期計画は次々と更新され、目標もかさ上げされていきました。まさに質より量の時代であったというふうに思います。
 そのころ、もう既にそのひずみは若干出始めておりましたが、全体とすると、全体計画のチェック体制が整っていなかったこと、それからもう一つ、何しろ飲めや歌えやの右肩上がりの時代でございましたので、国民からそう多くの不満や指摘はなかったんだというふうに私は認識しております。
 この状況が一変するのがバブルの崩壊だと思うんですね。バブルが崩壊しましたら、やはり、成熟社会となった日本というものをだんだんと国民が認識するようになって、そして公共事業が量から質に変わっていった。国民の求める公共事業というのは、まさに、内容はどうなんだ、むだはないのか、効率的にちゃんと進んでいるのか、こういうことが国民から強く意識されるようになりました。その一方で、説明を国民は国に求めてきたんですけれども、なかなか納得のいくような説明が得られなかったんだと思います。それで、公共事業に対する国民の不満はどんどん募っていった、そのように私は考えております。
 そんな中で、先ほど示したのは私の歴史認識なんですけれども、扇大臣には扇大臣なりの歴史認識があると存じます。その中で、今国民の望む公共事業のあるべき姿をどう考えるか、そのギャップを埋めるべく今回の長期計画見直しに至った理由について、いつから、どんな問題点を認識していたのか、扇国土交通大臣にお尋ねしたいと思います。
扇国務大臣 基本的に社会資本整備というものはどうあるべきか。これは少なくとも、阿久津議員はお若いから御存じないでしょうけれども、私は終戦のときを知っております。そして、あの荒廃した日本の中でどう国民が立ち上がるのか。占領下の苦しい中でも、日本が元気になる、今日のような日本になるというのは、私は小学生でしたけれども想像できませんでした。その日の食べるものもないというような時代から今日の日本を築くことができた。
 それは、先ほど岩國議員がここの額の中にもいろいろな人がいらっしゃるとおっしゃいましたけれども、私は、一貫して政治家が、やはり安定した日本の成長ということを願って立ち上がってくれた諸先輩がいらしたと思います。
 また、諸外国との調和を図りながら今日の平和な日本を築けた。そして、そのもとは何か。やはり国民が、あの食べられなかった時代から、食べて、そして安心して、日本に生まれてよかったなと言える、そういう日本をつくりたいということで、政治家と国民が欧米先進国に追いつけ追い越せということで目標を立てて頑張ってきたおかげで今日の日本がある。まして、追いつけ追い越せが、追いついて追い越した部分もあった。
 ただ、残念ながら、社会資本整備ということだけでいえば、それは陸海空あらゆる面で、私は成長過程にあったと思います。
 しかも、私はイギリスへ行きましたときに言われました。新幹線、当時の国鉄が赤字だ。イギリスの鉄道大臣に、当たり前じゃないですか、世界一速い列車をつくって赤字だというのは当たり前、赤字だから国がつくるんだ、黒字だったら民間がするんです、だから、イギリスは必ず赤字だから国営なんですよと大見えを切られた覚えもございます。
 けれども、その新幹線一つとってみても、今日まで三十八年間、七十億人を運んで一人の死者も出していない。これも私は、今日の日本をつくる社会資本整備の大きなインフラとしての成果があったと。
 先ほど岩國議員から物流の話もありました。けれども、これだけ日本が諸外国に対応して発展した中には、日本の製品を外に出すこともできた。残念ながら、阪神・淡路大震災ということがあって、一番日本で港の出荷数の多かった神戸港というのが、世界四位でした、それが今は二十八位です。これも残念ですけれども、そのように、社会資本整備として国のあり方、本体、この国という母体のあり方が、世界に伍して日本が立ち上がって今日まで来たということでは、陸海空含めて私は大きな成果があったと思っておりますけれども、それが、やはり無理をして借金をし、背伸びをした分だけ今ツケが回ってきたと言えないことはない。
 ただ、高速道路の話も出ていましたけれども、長くなると言われますけれども、高速道路一つとってみても、私どもは、中国が、一九八二年、高速道路ゼロが、今、少なくとも二万キロに達しています。日本は、これだけお金をかけてもまだ七千キロ。しかも、今一番お金のかかる、あの圏央道の千葉のところでは、キロ一千億かかると言われる。
 これではやっていけないということも大きなネックになっておりますので、できれば、諸外国のように、物流コストを下げる、そして世界に伍した輸出国あるいは輸入国になって、物流コストの世界一高いと言われているものを安くするためには、あらゆる面で見直しをしなければいけない。それが私の、今回、基本的に、四省庁統合した、その姿として法案を一本にさせていただいたということでございます。
阿久津委員 もう一度お伺いしたいと思うんですけれども、今、国民が望む公共事業のあるべき姿というものがあると思うんですね。それに対して、今回、公共事業改革を行う、長期計画を見直すということに至ったという理由は、今の公共事業のあり方について、問題点を何かの形で認識していなかったら、改革はやるという気持ちにならないと思うんです。効率性はわかっているのです。効率性以外の部分でどんな問題点があるというふうにお考えなんでしょうか。
扇国務大臣 風邪ぎみで済みません。
 私は、この長期計画を一本化した大きな理由は、公共工事のコストの高さ、そして計画の長期にわたること、こういうことから全部見直そうということで、少なくとも行革で、国土交通省、四省庁統合したらどうなるか。今までは、これは港にしろ空港にしろ運輸省の窓口に行き、道路にしては建設省に行き、そういうことでは、日本はむだが多過ぎる。
 例えば、欧米先進国では、国際空港、国際港湾から十分以内に高速道路に入れて、少なくとも主要都市には一時間以内にすべて荷物が運べる。しかも、港湾はワンストップで、船が着いて二十四時間で荷物をおろすことができる。そういうことが全部できておりますけれども、日本は、港湾、国際空港等々から十分以内に高速道路に入れるということもできていません。また、ワンストップサービスで、港に入った船が二十四時間で荷おろしできません。二日から三日かかります。それは、おろした荷物がまた、港湾の運輸から道路をつくった建設、この結節ができていないというのがむだでもあり、あるいは、先ほどもお話が出ました、長期計画に基づいて国づくりをしていない、それが大きな原因である。
 政治判断が悪いと言われても、成田と羽田のように、外国で、国際空港におりて国内線に乗りかえるのに、二万円以上のタクシー代と一時間半の成田から羽田の時間がかかる。これもやはり、政治が悪いのかどうかは別にして、現実には今そうなっている。これでは国際競争力に勝てない。
 こういうことを私はやはり、四省庁統合して、ワンストップで、全部の知恵を集めて、港があるのなら道路と鉄道と都市と、全部そういうグランドデザインをつくるためには、今の計画を、ただ五年ごとの、長期計画といっても五年です、五年ごとに法案を変えて、それぞれの旧運輸、旧建設で出た法案をそれぞれ守っていたのでは、縦割りのままではないか。
 ですから、少なくとも、今までは考えられなかった、五十年間変えなかったこの長期計画を一本にするということに踏み切ったのは、あらゆる面で国際社会におくれをとっている日本の現状を打破することも大きな要因の一つでございます。
阿久津委員 どうもちょっと、私の質問で伺いたいところに届かないんですね。
 効率性、わかっているんです。それで、だから一本化する、これもわかっているんです。だけれども、それに至るには、もっともっと、制度的な問題とか、どこが悪いんだという問題点があると思うんですけれども、そこはどうなんでしょうか。
 では、ちょっとこちらで、私の方が、例えば予算獲得の手段になっていたとか、必要性の乏しい事業が出てしまったとか、それから縦割り行政を今ちょっと指摘されましたけれども、社会経済の変化に柔軟に対応できなかったとか、もっともっといろいろな反省点があると思うんです。この反省点をしっかりと押さえることから始めなければ、私は、公共事業改革の第一歩が踏み出せないというふうに思っております。
 ちなみに、私の見解を述べさせていただけば、一九八〇年代頭に、しっかりとした公共事業改革をやるべきだったと私は思います。これができていれば、日本の今の姿というのは大分変わっていた。景気もこんなふうにはならなかった。国民の不満もこんなに募らなかったと思っています。
 私は、地元でよくタウンミーティングというのをやっているんですけれども、これは政治家が一方的に話をする会合ではなくて、意見を交換する対話集会なんですけれども、そこでいつも市民の方から聞かれるのは、阿久津さん、景気をもうちょっとよくしてください、いつも言われます。それに対して私は、景気をよくするという意味はどういうことですかと聞くと、バブルをもう一回起こしてほしいという意味じゃないんですね。そうではなくて、あのバブルは懲り懲りだ、むなしかった、雨月物語のように、終わってしまったら何が残ったのかわからない夢物語だ、そういうふうに言われます。
 やはりこれからの公共事業というのは、今求められる公共事業は、ある意味では、日本で改革がおくれてしまったために、都市再生、環境再生、すなわち再生ということに力点を置くことから始めないと始まらないというふうに私は思っているんです。
 これは例えば、よく出される例なんですけれども、やり過ぎてしまった公共事業、諫早湾の干拓事業とか中海の干拓とか、あるいは川辺川ダムもそうです。こういう私どもの見解では意味のない、むだな公共事業をやってしまうと、むだだというだけではなくて、環境に対して大きな負荷をかけてしまう。その環境を取り戻す。
 これは扇大臣にわかりやすいように説明すれば、扇大臣がよく例に出されます日本橋の問題もそうだと思うんです。これ、日本橋の上に高速道路が通ってしまった。それを戻すための作業をしなくちゃならないんですね。
 これについて何かコメントがありましたらお伺いしたいと思います。
扇国務大臣 幅が広くて何についてお答えしていいかわからないんですけれども、私は冒頭に、国土交通委員会でも常に言っております、二十世紀はハードの世紀、二十一世紀はソフトの世紀。ソフトとは何か。環境とバリアフリー、これは何度も皆さん方の前でお答えもしているし、それに向かって国土交通省の政策を進行しています。
 何が悪かったか。公共事業のむだがあったと言うけれども、しおくれたこともあるんです。少なくとも東京都、ある知事さんが生まれ、その知事さんが、一人でも反対があったらしないと言って、外環も圏央道も全部三十三年間、塩漬けです。もっと早くやっていれば、もっと安くできたでしょう。そういうことだって、おくれをとったこともあるんです。
 また、つくり過ぎて、四国の三本の橋は三大ばかの工事の一つだと言われますけれども、それとても、国会では四度も採決して、四回とも全会一致なんです。
 ですから、今考えればということもおっしゃいますけれども、おくれをとったこともある。また過大に、そのときは要ると思って、よかれと思ってしたこともある。時代の流れとともに見直さなきゃいけないこともあるので、私は、この九本の法案は、これ、農林水産省と一緒のものもあります。共管です。けれども、それも見直そうということで、ただ予算をとるための道具になっていないかということで、見直したのも、これも初めてのことですから、大変勇気の要ることで、その結果を見て、おまえは何したんだと、後世、言われるかもしれませんけれども、今の時代では、これを二十一世紀の初頭に見直す、大きなコストの削減になるし、スピードアップになって、多くの国土づくりの緒につくためには、二十一世紀型にする、そう信じて、皆さん方に御提案している次第です。
    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
阿久津委員 扇大臣、多分途中で参議院の方に行かれると思いますので、時間になりましたら退席して……(扇国務大臣「いえ、今とまっていますから」と呼ぶ)そうですか、わかりました。では、続けてお伺いします。
 事業間連携の強化とかスピードアップ、効率化というのであれば、重点計画の一本化はなぜ国土交通省関連の計画のみが対象となっているのか、お答えいただきたいと思います。
扇国務大臣 少なくとも私は、全部寄せ集めればいいというものではないと思います。
 何が一番最初にできるかということ、先ほど申しましたように、国土の根幹にかかわることで五年ごとにやっていた十本の長期計画の中で、少なくとも八本までが十四年度で切れるんです。ですから、十四年度でちょうど切れるものは八本あった。けれども、十五年度に切れる治水も統合して、十本のうちの九本をさせていただこうということで、したわけでございます。
 できればもっとすればいいと私は思いますけれども、やはり計画としてきちんと今まで進んでいらっしゃるものがあったわけですから、ちょうど切れ目が十四年に八本あったということも、私は、国土交通省にとっては、こういう一本化することに大きなメリットがあった、またそのチャンスを逃がさないということでは大きかったと思っております。
 今回は、長期計画の統合につきましては、国土交通省の緊急措置法というもの、これは少なくとも原則廃止するわけです。今までの法案で、廃止するというのはほとんどありません。つくったらつくりっ放しというのが多うございましたけれども、今度は廃止させていただいて、また、今、他省庁のというふうに阿久津委員がおっしゃいましたけれども、他省庁の事業につきましても、廃棄物の処理施設の整備緊急措置法というものも一緒に廃止されるということでございまして、十六年に治山の長期計画の根幹である緊急措置法も一緒に廃止する。廃止するものも、すべて政府全体として、今後の改革によりましては、私は、おっしゃるように、緊急措置としての社会資本整備からの転換が図られるという意味では大変大きなことだと思っております。
 御賛同いただければ、今までに、かつてないことなんですから、そういう意味で、土地の改良とかあるいは廃棄物の処理施設の整備など、すべてについてそれぞれの関係法の理念に従って、今回は農業あるいは環境の分野に関するその他の施策と一体的に実行するということで、私は、その目的と効果を達成することが必要であるという意味で、それぞれの関係する法体系の中でこれを位置づけるということに関して大事なことだと思っております。
 まだまだ、重点計画の作成あるいは事業の実施に従って、国土交通省関連以外の事業との連携についても、今後、例えば森林等々、一緒にできることもあろうと思いますので、私は、今後もこういう形で、とりあえず今は大英断で九本を一本にさせていただいて、一歩足を踏み込んだというふうに考えております。
阿久津委員 ちょっと民主党の法案提出者の方に伺ってみたいと思うんですけれども、政府案における重点計画の一本化について、民主党案とどこが異なるのか、また政府案をどのように評価するのか、お伺いしたいと思います。
佐藤(謙)議員 阿久津議員の御質問にお答えいたします。
 実は、私どもの公共事業基本法というものは、我が党の当時鳩山由紀夫代表の時代に公共事業を国民の手に取り戻す委員会というのをつくりまして、そこで精査をしてつくり上げた法律案でありますが、その根幹は、公共事業を官僚の手から国民の手に取り戻そう。それは、言ってみれば我々政治というものがもっと前面に出なければいけない。
 先ほど扇大臣が、公共事業は何でも寄せ集めればいいというものではないというお話がありましたけれども、同じ言葉を今度の九本に私は当てはめてみたいと思うんです。国土交通省の事業を寄せ集めればいいというものではない。私は、寄せ集めるということではなくて、国民の批判というものが、一つに縦割り行政の弊害ということを言われております。
 先ほど阿久津議員が言われましたように、例えば川辺川の事業は、土地改良事業、利水事業とそれからもう一つはダムの問題、国土交通省と農水省がセットで絡んだ公共事業でありますし、諫早干拓事業も、防災という点ではこれは国土交通省が関係をしていく、そういう事業であります。
 幾つもの省庁が国民の生活や将来に大変大きな影響を与えるということを考えるのであるならば、今ここでスタートラインから、国土交通省というただでさえ大きなシェアを持っている、旧運輸省と建設省とが一緒になった巨大公共事業官庁としてではなく、他の公共事業、社会資本整備そのものを一体として国民に近づけていく、そうした努力が必要だろう。
 そういう点で、私どもは、長期計画を国会承認という形で決めていく、そしてその中に都道府県や市町村あるいは広く国民の知恵ですとか意見を入れていくという仕組みをつくる中で、大体縦割り行政というのは官僚の都合ででき上がっているものですから、公共事業を受ける側、そして新たにつくる主役である市民の側から広く、十六本のこうした中長期計画を一つにしていこうということにしたということでございます。
阿久津委員 ちょっと一点だけ気になるので、政府の方の参考人で結構なんですが、治山治水事業が、今回国土交通省の中だけでの一本化なので、分割されることになってしまうわけなんですけれども、縦割り硬直化の弊害をより以上に招くのではないかという心配があるのですが、この点についてお答えいただきたいと思います。
三沢政府参考人 まず最初に、今回、国土交通省関係の緊急措置法の中に治水を入れて、治山の方が農水省さんの方の計画に残った、この理由でございますけれども、これは先ほど大臣からも御説明申し上げましたように、いろいろな切り方が当然あろうかと思います。
 それで、今回私ども、大臣の御指示もあり、我々としてはこういうことを考えているんだということもすべて農水省さんにお話ししまして、いろいろな議論をしてまいりました。
 その過程といいますか、最終的に、いろいろ議論した上で、やはり治山事業というのは、もちろん治水事業とのかかわりも非常に深いけれども、一方で林野庁さんでやっております森林の、造林といいますか、森林整備計画との関係も非常に深い。だから、どういう切り方をするか、いろいろ切り方があるけれども、森林というとらえ方の中で、造林と森林の保全というのをむしろ林野行政の中で、つまり林業振興ということも含めて一体的に森林行政をとらえたい。そういうことで、じゃ、治水分は重点計画に入れて一本化します、治山分はむしろ森林法の体系の中でまた一体的に考えます、こういう整理をしたわけでございます。
 しかしながら、当然、所管する省庁が違うからといって縦割りの事業の進め方をしてはいけないということで、この法律の中にもきちっと、相互にその点については調整するという法律上の明文の規定も入れております。
 そういう意味で、今回こういう整理になりましたけれども、引き続き、そこはきちんと相互に連携しながら、お互いに協力して事業を進めていくということを農水省さんとの間でも確認し、またそれを法律に明記しているわけでございます。
阿久津委員 それは私もよくわかっているんです。
 政府案第四条五項に定められた環境大臣との協議義務とか、あるいは同じく第四条六項に定められた治山治水事業との総合性の確保を図るための調整、こういったものは、みずから、逆に国交省関連だけの計画一本化では効果に限界があることを認めている裏返しではないかというふうに私は感じております。
 実は、先ほどの答弁をよくかみ砕いて聞きますと、こちらの勝手な解釈ですけれども、扇大臣はよくおわかりなんじゃないかと思うんですね。本来、理想としては各省庁またがって計画一本化が望ましいけれども、とりあえずの、初めの一歩というか、確保できるときに確保しておかないと、またどういうふうになるかわからないからということなのかと思うんですが、私は、法律化の観点から一本化するというのなら、やはり全省庁の対象事業を一本化して、その配分に小泉総理が主導性を発揮するべきだ、小泉総理の仕事だというふうにそこの部分は思っております。
 長期の重点計画を一本化して効率化を図ることに関して、国交省のみを対象とする政府案と、全省庁を対象とする民主党案を比較すれば、私は、民主党案に軍配がこの部分では上がるというふうに認識をさせていただきました。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 時のアセスメントについて、その意義をどう考えるのか。再評価の結果、事業の継続が不適当と判断され、中止となった事業数、予算総額はどの程度に上るか。また、事業継続が不適当と判断された主な原因、いろいろな原因があると思うんですが、主な原因はどこにあったと考えられるのか、お答えいただきたいと思います。
    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
安富政府参考人 時のアセスメントについてのその意義でございますが、先ほど来いろいろ議論になっておりますように、公共事業、一度着手した後、社会経済情勢の変化とか、あるいは投資効果の変化とか、あるいは地元の状況の変化とか、いろいろな変化がございます。そういうものに対応して、その都度見直していくということが必要だということで考えております。
 そういう意味で、国土交通省としましても、公共事業の再評価という形で、行政評価法が施行される前の平成十年度から自主的に取り組んでおりまして、行政評価法が施行されました平成十四年度からは、この法律に基づいて、事業の必要性等を客観的に評価して、必要な見直しを行っていくということで、こういうことが極めて重要だと考えております。
 具体的に、平成十年度から平成十四年十二月までの再評価の結果、事業として中止しましたのが二百四十二件ございます。これを仮に中止しないで継続していたとした場合に、その総事業費は約四兆六千百億円という数字になります。
 また、これらの中止になった事業につきまして、具体的な中止の理由はどういうことかということですが、これは各事業によってさまざまでございます。
 一つの例として申し上げますと、例えば、需要の見込みが低下してしまった。これは、いろいろな事業、例えばダムであればダムの場合の工業用水あるいは農業用水の需要量がいろいろな形で変化してしまった、あるいは、宅地開発の予定があったのがなかなか進まなかったとか、そういう形で、需要の見込みの低下等の社会経済情勢が変化したこと。あるいは、用地交渉等が、地元住民等との話し合い、あるいは漁業補償なんかもそうですが、なかなか進まないということで事業の継続が難しくなったというようなことが幾つか考えられると思いますが、これについては、そういう幾つかの事情から、その事業の進捗が見込まれないということで中止になったわけでございます。
阿久津委員 私は、公共事業が国民から徴収された貴重な税金等で行われているということを考えれば、四兆円をはるかに超えるような金額が途中で中止になったというか、結果として要らなかったから中止になったという理解ですから、それは大きな問題だと思うし、また、その原因についてはさまざまな理由があると思うんですけれども、やはり一つは、国民への説明責任というか、説明が十分できなかった、あるいは、説明をしても理解が得られないような内容だったからではないかなというふうに思います。
 これは、国民の価値観、社会経済の変化とか、いろいろと流動していますから、その都度その都度きちっとした公共事業をやるというのはなかなか大変なことだと思うんですけれども、四兆円を超えるような金額がある意味では無になってしまった反省を踏まえて、今後、計画づくりにはもう本当にしっかりしていかなければならないというふうに思っています。
 ちょっと、国民への説明責任という話がありましたので、先ほど午前中の議論を思い出したんですけれども、国民の意思をどこまで尊重するのかという話がございました。
 政治家が政治生命をかけて、例えば、国民の生命と財産を守るために多くの国民の意思と反対の決断をすることは、私は、余り多くはないと思うんですけれども、これはある、可能性はあるんだというふうに思います。それでも国民が納得しなければ、決断の評価については、後々、歴史がすることになると思います。その場合は、政治家は責任をとって身を引かなければならないんだと思うんです。
 例えば、よくも悪くもですけれども、岸信介首相の安保の改定の問題、それから、竹下総理の消費税の問題もそうだったかと思うんですけれども、それほど国民への説明責任というのは重要だというふうに私は考えています。
 ここで、ちょっと公共事業の方に話を戻して、次の質問に続けたいと思うんですけれども、国民の意思は、何にも増して、原則的には重要で尊重しなければならないと思っております。
 政府法案の提案理由説明では、公共事業計画案の作成に際して、「国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」と述べられております。であるなら、まず、国民の代表たる国会の議論の場にのせるべきではないか。
 本会議で、国会承認に関する規定を盛り込むことについて小泉総理に質問をしたわけなんですけれども、小泉総理の回答は非常にそっけないもので、「事業の実施については、毎年度の予算に関する審議により、国会による承認を経た上で可能となることから、必要な国会の関与は担保されているものと考えます。」というものだったんですけれども、改めて扇大臣にお伺いしたいと思います。
 公共事業の国会承認は、予算審議で十分と言えるのでしょうか。
扇国務大臣 少なくとも私は、国土交通省、公共工事に関しては、事前評価、再評価、事後評価、評価制度というものを、先ほど局長が言いましたように、既に平成十年から、他の省庁に先駆けて評価制度の導入を行っております。そして、その事前評価というのは何か。それは、国民参加、住民参加ということを事前評価として私たちは位置づけている。ですから、事業計画のときから参加していただこう。でなければ、成田のように、少なくとも一九七八年につくって、二十五年間たって一本しか滑走路がなかったというようなことは、私はもう時代おくれである。あの当時は、やはり間違った部分があった。だから、事前評価ということで、事業の計画時から、最初から国民に入っていただこうということを一方でしております。
 けれども、重点的な計画、いわゆる社会資本整備、国家プロジェクトというようなものは、当然、多くの皆さんに御論議いただくことも必要ですけれども、何よりも、国家プロジェクトに関しては、国会の中で、国民から選ばれた皆さん方が代表してこうして御審議いただいているわけですから、一人一人の国民に御説明するよりも、代表の国会議員の先生方に国家の重点プログラムというものを御審議いただくということが大変大事なことであって、この審議そのものが国民を代表する皆さん方と論議していることと等しいと私は思っております。誠実に私もお答えしておりますし、皆さんも代表して御質問をいただいていると思っておりますので、国家プロジェクトは、既に国会で皆さんに御審議いただいております。
阿久津委員 扇大臣の説明を聞いていると、何か国会承認を入れない理由が思い当たらないんですけれども、民主党の法案提出者の方に伺いたいと思います。
 国会承認について、民主党案ではどうなっているんでしょうか。
佐藤(謙)議員 お答えいたします。
 私どもの公共事業基本法で、最も大切な部分、譲ることのできない部分は、この国会承認でございます。
 例えば、長期計画というのは閣議決定されると予算要求の基礎となってしまうわけでして、今までの長期計画そのものが予算を縛って拘束化して、そして弾力性を失わせていく。つまり、官僚がつくったそうした長期計画、これはいろいろな形で審議会を経ているから国民の意見を聞いている、こう言われるかもしれませんけれども、先ほどの事前評価のあり方も含めて、私どもが、公共事業の問題で大変難しい問題は、どう第三者性、公平性というものをその評価にきっちりと乗せていけるかということなんだろうと思うんです。
 そうしたときに、開発万能のそうした開発官庁が人選をするそういう審議会ですとか、あるいは、説明者責任と言いながらほとんど国民の声が届かないようなそういう仕組みの中で、実は公共事業というものがどんどん国民から離れていってしまった、それが批判の一番大きな基ではないか。
 そういうことを考えると、私どもは、例えば、小泉総理大臣が予算という形で計画を審議しているじゃないかと言われることにはやはり問題がある。なぜならば、個別の公共事業の当否そのものを審議する場が実は確保されていないということであります。
 したがって、私どもは、第五条と第六条で、それぞれ公共事業中期総合計画とそれから公共事業実施計画というものを定めることになっておりますけれども、これは、それぞれに多様な主体の参加を促すとともに、この法案の基本理念を踏まえて、多角的なチェックを可能とするために、国民、地方公共団体、第三者機関である公共事業調査会の意見を聞き、かつ、国会の承認を受けることを求めているわけであります。
 我々もさんざん議論しました。議会関与がいいのか、第三者機関関与がいいのか、悩んだところでありますけれども、大切な税金を使う公共事業であればあるほどに、我々の、国民の生活に大変重要な影響を及ぼすものであればあるほどに、そうした第三者機関のチェックと、そして本来政治が責任を持たなければいけないということで、国民の信託を受けた国会の承認というものは絶対必要条件だというふうに考えているところでございます。
阿久津委員 ありがとうございます。
 私は大臣になったことがないのでよくわからないんですけれども、閣議決定の形骸化された姿については、民主党の代表であります菅直人が書いた「大臣」という本に事細かに書かれておりまして、それによると、閣議決定というのはほとんどサイン会だというんですね。それで、とても細かい点をチェックできるような場ではないというふうに聞いております。
 閣議決定のみで、厳しいチェックなしに公共事業の暴走を許してきたことそのものが制度的な問題点の一つであるというふうに私は認識しております。国民の意思により、むだな公共事業をチェックして、公共事業が適切に行われるようコントロールしていくことが大切だと思っております。その意味では、国民の代表である国会の承認を明記してある民主党案の方がこの点においてもまさっているというふうに私は結論づけたいというふうに思います。
 次の質問に移りたいと思います。
 次に、公共事業と地方分権の関係について伺いたいと思うんですが、公共事業と地方分権との関係で、国と地方の位置づけはどのようなものとなっているのか。これは、大臣の方と民主党の方、両方に、続けてお答えいただきたいというふうに思います。
扇国務大臣 すべて民主党の提出法案の方がいいとおっしゃるのは、民主党の党員であれば当たり前のことで、民主党の中で御論議いただいたんでしょうから、それはそれとして、阿久津議員のおっしゃることはごもっともだろう、民主党員でありながら民主党員の出した法案を反対とは言えないんでしょうから、それは一々おっしゃらなくても私はよくわかっております。
 今の佐藤議員の御説明、根本的には私と全然変わってないなと思って私も伺っておりましたので、与党とか野党の壁を越えて、公共事業に関しては、お互いに切磋琢磨して、いいものは取り入れるという姿勢は持っておりますことだけ、一言、私は阿久津議員に申し上げておきたいと思います。
 それから、今後の国土交通行政に関しましても、地方がみずからの知恵と工夫で、個性を生かしながら、自立的な取り組みをするということで、私は大臣になってから、二十世紀の均衡ある国土の発展という政策の基本というものを、個性ある地域の発展というふうに転換したということも、地方分権とその実現を図る上で最も重要な課題であると私は認識しているからこそ、このコンセプトを変換して個性のある地方をつくっていこうということにしたこと自体も、これは私は、国土交通省の大臣就任のときの所信でも申し上げました。
 いかに地方を重んじるかということに政策転換して、個性ある地方があって初めて地方が浮かび上がってくる、野菜一つにしても、その地方にしかできないもの、そういうものをぜひつくっていただきたいということで、こういう地方の分権をして地方のいい面をとっていこう。
 また、今回の法案につきましても、今阿久津議員がおっしゃいましたように、重点計画の基本理念として、第三条二項、これは見ていただいたらおわかりのように、「地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、」と書いてございます。また、「適切な役割分担の下に国の責務が十分に果たされること」、こう挙げておりますので、これも計画の策定においては、第四条四項、御存じのとおり、「国民の意見を反映するために必要な措置を講ずるとともに、都道府県の意見を聴くものとする。」こういうふうにしております。地方分権の考え方を大きく取り入れたものであることもおわかりいただけると思います。
 国際競争力に関しましても、観光とかあるいは先ほど話題に出ました災害対策、あらゆる面で、都道府県のエリアを超えた広域的な課題あるいは緊急的な課題に対応が望まれておりますし、また、今後そうした対応を図っていかなければ、観光振興も、あるいは危機管理の面でも災害対策の面でもできないと私は思っていますので、今後は地方にゆだねられるものはできる限り地方にゆだねるという、この小泉内閣の指針というものをこの法案の中にも取り込ませていただいて、これが二十一世紀型であると思っております。
大谷議員 今、扇大臣の方から、地方分権を進めるのも政府案の中に大きく取り入れられているということでございましたが、民主党案の方は、建前で言うならば全く一緒でございまして、二十一世紀の中、地方分権の概念のもとにしっかりと、公共事業、まちづくり、社会資本整備を進めていくというふうになっております。
 大きな違いは、政府案の方は、昭和二十五年にできたその法律を、中央が大体の計画を決める、それに沿って、地方がそれに合った形での地方、まちづくり、公共事業、社会資本整備というものをやっていくという、上から下へのものがずっと続いていて、その形を守りながら地方分権の理念を何とか達成しようというもので、民主党の場合は、全くそこのパラダイム変換をしてしまう。
 前回の委員会の中で、社民党の原陽子議員の御質問にも答えさせていただきましたが、昭和二十五年五月、ちょうど瓦れきの山から日本が立ち上がらなければいけないそのときにおいては、大いに役割のあった国土総合開発法なんですけれども、これを、二十一世紀の今日に至っては、地方分権というならば、全く全部、公共事業というものは、個性あるまちづくりのために地方分権してしまおうじゃないか、国はその中でも広域的な、地方自治体においてできないものだけをやっていこうじゃないかというものをしっかりと転換を図らすための法律が、今回提出させていただいております公共事業基本法だというふうに考えさせていただいております。
 それともう一つが、口では地方分権だ、地方分権だと言えるんですが、しかしながら、財源が伴わなかったら実行できないわけでございまして、その財源をしっかりと担保する、自治体の個性あるまちづくり案というものを本当に自治体が実行できるようにするために、公共事業一括交付金法案というものを同時に提案させていただいておりまして、ここの財源でもって自由に地方自治体が自分たちのまちづくりを進める財源の担保というものを伴わさせていただいております。
阿久津委員 私は、その財源の移譲の問題が大きな違い、この法案だけには民主党が一本化されていないんですけれども、大きな違いなのかなというふうに思っております。
 それから、先ほどの扇大臣のお話でいえば、私は、何も民主党だから盲目的に賛成しているんではなくて、いいものであれば政府案にももちろん賛成させていただきますし、そこのところは前向きにやっていきたいというふうに考えておりますので、念のため申し上げておきます。
 それで、先ほどちょっと扇大臣の方から細かい部分の話が出ましたので、地方分権との関係について、政府案でも確かに、第三条一項で、自主的で個性豊かな地域社会の形成とか、基本理念にきちんと書かれておりますし、同条二項でも、地方公共団体の自主性及び自立性の尊重と国との適切な役割分担がうたわれているわけなんですけれども、しかし、実際の重点計画案作成作業では、あらかじめ、主務省令で定め、都道府県の意見を聞くとあるだけで、その意見を計画にどう反映させるのか、そこの部分が明らかではないんですね。これは、都道府県からどんな意見が出て、どういう国の措置がとられたのか、それが公開されることも含めて、ちょっとお答えいただきたいと思います。
三沢政府参考人 今回、重点計画を策定するに当たりまして、広く国民の意見を聞くということとあわせまして、都道府県の意見を聞くということでございます。
 その際、省令で定めるところによるというのは、できるだけブロック単位でいろいろな議論をして、国とブロックの各県とできるだけ共通の認識を持つような、そういう場を持ちながら議論していきたいということでございます。
 そこで当然いろいろな御意見をいただきまして、反映すべきものは当然反映していく。もちろん、中には反映できないものもございます。そういったことについてはやはりきちんと公表いたしまして、何が反映されたのか、何が反映されていないのかということもきちんと明らかにしていきたいと思っております。
阿久津委員 どうもありがとうございます。
 それでは、次の質問の方に移らせていただきたいと思うんですが、道路特定財源の問題について、ちょっと伺いたいと思います。
 道路特定財源の役割について、これまでの総括と、用途拡大を含め、今後の見通しの可能性について伺いたいと思うんですが、一般財源化についてどう考えるかも含めてお答えいただければと思います。
扇国務大臣 道路特定財源は、何度もこの委員会でも御議論のあったところでございますけれども、なぜ一般財源化しないんだという話もございました。
 例えば、私も車の運転をいたします。阿久津議員は運転されるかどうか知りませんけれども、お車をお持ちでいらっしゃいますか。(阿久津委員「はい」と呼ぶ)持っていらっしゃいますか。
 少なくとも、一般の皆さん方、ユーザーの皆さん方は、普通の車を持っておりますと二年ごとに車検に参ります。私もそのとおり、私の車も車検に参ります。けれども、車検に行ったときにまとめて車検に払うお金というものも、私どもは頑張って、受益者負担であるということで、皆さん方が車検のときに払ってくださる重量税も含めて、これは道路をつくるんだということで、今までの税率よりも倍の税率を私どもは皆さん方に御負担願っているというのが事実でございます。
 そういう意味では、もし、例えばこの二倍の重量税なかりせばということになりますと、少なくとも、重量税の三万七千八百円というのを二年ごとに車検で払います、重量税、それも、二・五倍の暫定税率というものがなかったら、これは二・五倍で二万二千八百円になりますから、これがなければ少なくとも一万五千円で済むわけですね。ですから、それも、ユーザーの皆さん方が車を持っているために、受益者負担という、これによって今までは御負担を願ってきた。ですから、国道さえ舗装されていないようなあの当時に、改めて、この受益者負担という政治家の知恵、私、これは大したものだと思うんですね。
 けれども、先ほどからも話が出ましたように、今までなぜ引っ張っているんだと。少なくとも、高速道路一つを例にとっても、四十路線の中で償還できているのは四路線しかない、しかもあとの二十八路線はどんどん累計の赤字がふえているということになれば、私は、ただになるのが一番いいし、道路特定財源という暫定税率もなくすのが一番いい、だれしもそう思います。少しでも安くしてあげたい。
 けれども、今までの道路は、高い金額でつくっていても、保全のための必要経費もあります、補修のための、あるいは安全確保のための費用もあります。そういう意味では、現段階で、少なくとも私は、この道路特定財源というものを利用しながら、ある程度量的にストックを、ある程度の水準まで今道路は形成されてきましたけれども、なお今後も必要であるという意味では、三大都市圏の環状道路を完成するために約十三兆円かかるわけですね。また、全国の約千カ所のあかずの踏切というものを解消するためにも、これは約四兆円、これが十五年度ですけれども。少なくとも全国の市街地でいわゆる電線の地中化ということを私はしつこく言っております、これもそのためには約四兆円。そのようにまだ多くの課題が、これは車を使う人たちのためにもなることなんです。あかずの踏切が通れるようになったり、電柱がなくなるともっと車道も歩道もゆったりします。
 そういうことも含めて、道路特定財源をこのように一般に拡大して、道路のみならず道路関連に使わせていただくということを改めて今現実に、十五年度予算でもしているわけでございます。また地下鉄のことも、後で御質問があれば、それにも拡大して使わせていただこう。でなければ、ユーザーの人は、この暫定税率やめてくれ、こういうことになるものだと私は思っています。
阿久津委員 続けて、比較になりますので民主党案についても伺いたいと思うんですが、道路特定財源を一般財源化する理由についてお答えいただきたいと思います。
大谷議員 どの公共事業を国がやって、どの公共事業にどれぐらい予算配分をしていくのかというのは、時の政権、政府がそのもって選ばれた理念等々を中心にして決めていくべきものでございまして、この道路特定財源なんかの場合ですと、そういう理念の反映がなく、自動的に予算が配分されてしまいますので、せっかくの時の政権、政府の理想の、あるべき二十一世紀のまちづくり、国土計画というものが反映されないであろう。その思いをしっかりと政策の中で、まちづくりの中で反映させられるためには、一般財源化をして、その中で予算配分を戦略的に行っていくことが必要だろうという考えのもと、廃止というふうにさせていただいております。
 今、高速道路の議論がされていますが、もし高速道路が国会の議論の中で、もっともっと必要だ、二千キロなんて言わずに四千キロ必要だというようなことになるならば、時の政府が、政権がそのリーダーシップのもとに推し進めていったらいいわけでありまして、自動的にとにもかくにも予算が配分されてしまうことは、私は、戦略性に欠け、二十一世紀のまちづくり、個性ある国土の発展にはそぐわないという考えのもと、廃止をさせていただいております。
阿久津委員 私は、先ほどの扇大臣の答弁は、言わんとしていることは非常によくわかりました。問題点は扇大臣も認識しておりますし、変わらないんだというふうに思います。
 あえて言えば、私は実は本会議のときにちょっと乱暴な言い方をして、何でもかんでも道路特定財源で使うんだったら、もうとっとと財務省に回せというふうに言ったんですけれども、最終的には一般財源化するべきだというふうにもちろん思っています。ただ、あくまで次善の策ということで言うならば、せめてこの道路特定財源が、きちんとした社会資本整備の中で、きちんとした理由づけができる範囲内で有効に生かされていくべきだということを一言申し添えまして、時間となりましたので終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
河合委員長 津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。
 阿久津委員に引き続きまして質問をさせていただきます。
 なるべく質問が重ならないようにさせていただきたいと思いますので、若干質問通告した順序とは違うかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。
 まず最初に、政府案の中のお話ですが、九本の長期計画を一本にするというようなお話の中で、予算との関係が語られました。事業量、総事業費のもとで予算獲得の手段となっているとか、あるいは部局ごとの予算比率の硬直化を招いているのではないかというようなことがあって、それも一本化する一つの理由だというような話でありました。
 大臣も先ほどもそういったお話をされたので、そういった認識だと思いますが、大臣にはお伺いしましたので、官房長お見えですか。では、官房長にお伺いいたします。
 同じ質問ですが、予算と長期計画の関係、長期計画というものが予算の獲得の手段となっているというのは事実ですか。
安富政府参考人 あくまで、従来の長期計画につきましては、例えば五年あるいは七年といろいろございますけれども、長いスパンで見たときに、今後必要となる事業というものはどういうものかということで、国としての一つの計画をつくるということでございます。
 ただ、御存じのとおり、予算というものは単年度主義という形になっておりますので、従来の長期計画の総事業費という中で、予算要求のよりどころという点は多少あったかと思いますけれども、具体的には、概算要求等をする際の政府の方針、あるいはその当時の経済状況ということに照らして、具体的な政府の予算要求の方針に基づいて、各個別に、各事業それぞれが概算要求をするという形になっているものだと考えております。
津川委員 今の官房長のお話ですと、長期計画は予算枠をとるための手段にはなっていないんですよね。そうですよね。なっているんですか。
安富政府参考人 あくまで、予算獲得の手段ということではなくて、長期計画は各単年度の予算要求を行う際の参考あるいはよりどころという形で、いわゆる国としての長期にわたる基本的な事業の遂行についての考え方をまとめたものであるということでございます。
津川委員 大臣、違うそうです。大臣、お答えいただけますか。
扇国務大臣 違うんじゃないんです。それは、例えばダム一つとってみても、五年間でこれだけの予算でこのダムをつくりますといったときには、そのダムの総経費を五年間で割って、毎年同じ金額を要求するわけでしょう。だから、私がさっき申し上げたように、ダムも評価制度で中止した。五年たっても、予算はとっても地主の反対があったり、あるいは計画どおりいかないということで、計画したけれども、そのとおりいかない場合もあるわけですね。けれども、それは五年間縛りますから見直せないんですよ。そういう意味では、私は、予算をとるための手段になりつつある。
 これを五年間、長期同じ金額でというんじゃなくて、その時代によって見直すから、先ほども申し上げたように、国土交通省の長期計画の中でもいろいろな事業がありますけれども、中止したものは二百四十二件ある。それをずっと実行していれば四兆六千億だと言いましたよね。これを中止したから四兆六千億要らなくなったんでしょう。これは、長期でずっとやりますと言っていれば予算はちゃんとついていたんです。
 ですから、一般から見れば予算獲得のための手段になりつつある、だから長期計画を見直してその時代に合ったものにしていこうというのは、どこも違っていません。
津川委員 要するに、長期計画があっても中止できるんですよ。
 官房長、もう一回いいですか。では、手段だったんじゃなくて手段になりつつあったということは事実ですか。
安富政府参考人 あくまで、手段かという質問でございますので、我々としては、単なる手段ということではなくて、一つの長期計画というものが予算獲得の大きな目安あるいはよりどころということで見られる、そういうふうにとられるというおそれはあるということは一般的にあるかと思いますけれども、現在の予算の制度の中においては、長期計画があるからその長期計画五年分の、例えば五で割った数字が確実に確保されるというものではございませんし、あくまで単年度のいろいろな経済情勢に応じて我々としても要求しますし、財務省としてもそういう政府の予算要求方針というのを我々に示してくるということでございます。
津川委員 つまり、そういう誤解を招くという部分は政府も認められているところですよね。それはよくわかるんですが、実際どうだったかということです。
 長期計画があってもそのとおりになるわけじゃないという話が今官房長のお答え、大臣が先ほどお話をされた中にも、実際にやめることができた、このぐらいできたというお話がありました。
 実は、午前中の参考人質疑の中でもお話がありました。長期計画の存在の問題と意思決定者の問題の混同があるのではないかという指摘が午前中にありました。この指摘は、まさに、計画があるから問題だというのではなくて、実際にその計画どおりに実行するかどうか、前倒しができないかどうか、中止をすることができないかどうか、それを決定していなかったのが問題だというところを指摘しているわけです。
 長期計画の中にあったとしても、今回だってそうだと思いますよ、また新たに長期計画を立てるわけですよね。この計画の中で、時代の要請の変化なりいろいろな状況の変化で、どの段階で決断をするか、どの段階で変更するか、これはまさに政治の役割のはずです。計画があるから、五年間はみっちりこれで変わらないんだという話じゃないはずなんです。
 せっかく総合政策局長にも道路局長にも来ていただいていますので質問させていただきますが、それぞれ、平成十五年の予算なりあるいは過去の予算をつくるときには、この長期計画というものをどのくらい参考にしたんですか。
三沢政府参考人 午前中の参考人質疑の中でもございましたけれども、長期計画というものが、何兆円とか何千億と事業費で書かれていて、かつ、どうしても事業費で書かれていると、では、何年間の予算でどれだけ達成したかとか、あるいは、この計画の全体の総事業費の規模とこの計画の総事業費の規模とどっちが大きい、どっちが少ない、そういうことにややもすれば関係者が何となく関心が行きがちであったという面はやはり否めないと思います。
 ただ、官房長の答弁にありましたように、それが毎年の予算を拘束し、現実に決定要因になっているか、それはそういうことではございませんけれども、やはり、関係者の意識の中には、どうしてもそういうことに関心が行きがちであった。先ほども先生の方からお話がございましたように、どうしても質よりも量というところに、何のためにやるかというよりも、規模というようなところに関心が行きがちであったということは否めないんじゃないかと思っております。
佐藤政府参考人 交通安全事業なんかの場合を申し上げるとわかりやすいかもしれません。交通安全事業の五カ年計画、もともと三カ年計画から始めて今は七カ年計画になっていますが、例えば、大事なことは、一番多いころで一万六千人という交通事故の死者、これを計画の中で、立てるときに、例えば一万人以内にこの計画期間の中におさめよう、こういうことでみんなで努力しようと。長期計画という意味では大事なことだと思うんですね。
 そして、それを私どもが、ここは反省でございますが、だから、大変な事業費がかかりますよということで、予算下さい、こういうふうにもややもすれば使うこともある。そういう意味で、予算をとるための手段というかのようにとられることもあるであろう、こういうことで反省しておる、こういうことであります。
津川委員 結局、大臣の言うとおりで、長期計画を予算獲得の手段にしたんですね。今の話は、多分、そうしたと見られるという話ではなくて、やはり、それだけでやったとはもちろん言いませんが、一つの手段として使ったということだと思います。
 違いますか。違えば答弁していただいてもいいですが、違いますか。
扇国務大臣 私は、津川議員はおわかりなんだと思います。社会資本整備、公共事業といっても、やはり時代の変化があるわけですね。ですから、時代の変化に沿って、今までは、これ、はっきり申し上げた方がいいかもしれませんけれども、十四年度予算と十五年度予算がこの長期計画によってどう変わったかということを言った方が一番わかりやすいと思うんです。
 それなれば、十四年度どうだったかといいますと、一般公共事業等々で、国全体では〇・八九三だったんですけれども、治水と海岸、これは〇・八八だったんです。それから、道路〇・八九。
 一つずつ言った方がいいですかね。治水と海岸は〇・八八だったんですけれども、十五年度の国全体の平均では〇・九六三なんですけれども、治水と海岸は、同じように大事だということで〇・九六です。それから、道路整備は、十四年度では〇・八九でしたけれども、本年が〇・九六であるのに対して、道路整備は〇・九三と下がっております。もう一つ下がっているものは、下水道・都市公園、これは国全体が〇・九六ですけれども、〇・九五です。
 そして、ふえた部分は何かといいますと、港湾・空港・鉄道は〇・九八、ふえております。去年は平均だったんです。それから、住宅・都市環境整備、これは一・〇二にふえております。
 ですから、全体からいいますと、今までは、この長期計画の中で、治水、道路、港湾、そして施設費も、これは全部平均だったんです。ところが、ことしは、道路と下水道と都市公園がいつもよりも下がって、空港と港湾と鉄道、それと住宅と都市計画というものが上がったというふうに見ていただきますと、いかに長期計画でもバランスのめり張りをきかせたかということが、今回の長期計画の、九本を一本にすることによって、今までだったら、各部署が予算の分捕り合戦をして、みんな同じような伸び方をしていたんですけれども、これを一本化することによってめり張りができたというのが、その数字をもって御説明すれば一番おわかりいただけるのではないかと思います。
津川委員 済みません。ちょっと道路局長の答弁はなくなっちゃったんですが、大臣の御答弁によりますと、やはりそういうものが影響していた、それを一本化することによって影響がなくなったと。今数値を挙げていただきました。私、お伺いしなかったんですが、挙げていただきましたから伺いますが……(扇国務大臣「これ、差し上げますよ」と呼ぶ)では、後で下さい。済みません。
 部局ごとの予算比率の硬直化というのが一つの問題点としてあったと思います。確かに、平成十四年と十五年を比較すると、ふえたところと減ったところがあります。ありますが、治水、海岸、道路整備、港湾、空港、下水道、都市公園、仮にこういうふうに分けて、それぞれの比率を昭和五十九年からずっと見ていますと、やはりほとんど変わらないんです。ほとんど変わらないんですが、多少は違います。
 ことし、違う、違うと大臣はおっしゃいますが、これまで若干出入りがあったときと、余り大きな差があるとは思えないんです。これが、長期計画がわずかに影響していた部分がなくなったからだということで解釈するなら、つまり、部局ごとの予算比率の硬直化は長期計画以外にあるんじゃないかということです。
 むしろ、いや、これは現場で本当に必要なものをどんどん、一つ一つ積み重ねて、たまたまこうなっているんだというなら、それも一つの回答かもしれません。ただ、先ほど三沢局長がおっしゃいました、質より量になった部分があるということから考えれば、やはり、長期計画がなくなっても、実はこの比率は余り変わらないんじゃないか。
 私、今回、政府案を見て、午前中の指摘にもあったのが私の考えとちょっと近かったんですが、一本化をしても、民主党案は十五本全部一本化しろという話をしています、それだけじゃなくて地方分権ということが入っていますが、ただただ一本化をして、それぞれの長期計画という形のものがなくなったとしても、予算に関して、ほかの効率とかいうのはちょっと別かもしれませんが、予算の比率の硬直化ということに関しては、実は長期計画が九本であるのも一本であるのも、余り変わらないんじゃないか。
 今回、変わった、変わったとおっしゃいますが、では、私も数値を挙げますが、例えば、平成十四年度公共事業関係予算の中の治水の割合は一二・五%、平成十五年度も一二・五%。海岸に関しては一%、十五年度も一%。道路整備に関しては、二六・一%から二五・三%に減っています。港湾に関しては、三・七%から三・六%。空港に関しては、一・七%から一・九%。下水道に関しては、一一・二%から一一・一%。都市公園に関しては、一・八%から一・八%。こういう部局ごとの比率という意味で見ると、残念ながらほとんど変わらないんです。
 ただ、これを来年度からはもっと、どんどんやりますという話になるのかどうかわかりませんが、結局、予算を上げてくるときの構図なんです。これは私の推測ですが、実際、予算を計算されるとき、もちろんいろいろなことがあるでしょうけれども、まず基本となるのは前年度じゃないですか。前年度、これだけうちには予算があったんだ、これを確保しようというのが、まさに硬直化の原因じゃないかと思うんです。
 大臣、どうでしょうか。
扇国務大臣 この会場に、この委員会でも、共産党さん以外は、すべての党が政権を担当した政党でございます。日本の政治状況はそういう政治状況になっています。共産党さん以外はみんな一度政権に入っていらっしゃいます。
 そういう意味では、私は、予算というものの分捕り合戦という言葉が一番わかりいいと思うんです。少なくとも、与党、野党といわず、年末、各知事さん、市長さん、また国会議員さん、あらゆる人が、自分のところに予算をくださいと、みんなおっしゃいます。私はそれは重要なことだと思います。自分たちのところを少しでもよくしようという意欲ですから、それは買いますけれども、百万円の補助金をとるために百二十万円使って東京へ来るのはどういうことなのか、これも私は大事なことだと思うんです。
 ですから、陳情というものも意欲のあらわれではありますけれども、その金額と陳情というものが、果たしてどうなんだろうか。一度切れたものを復活することは大変だから、予算を前年よりも少しでもとろう。これは各省、全部です。国土交通省のみならず、各省は、予算の分捕り合戦という言葉が私は一番国民にわかりいい言葉だと思うんです、また地方もそうです、自分のところにいかに予算を持ってくるか。だから陳情合戦が始まる。
 そういう日本の予算の組み方自体が、今おっしゃるように、既に時代が変わったということであれば、長期計画も一本化して、効率を上げて、早期着工、早期完成、コストダウン、当たり前のことなんです。
 ですから、私は、今まで五十年間これが変えられなかったことの方が、むしろ、国会の中で問題にされなかった方が、これは四省庁統合でなかったら、こんなことできません。そういう意味では、基本的に、予算の分捕り合戦よりも、限られた予算をいかに効率的に、そしてめり張りをきかせて二十一世紀型にするかということの基本がそこにあるということは、御理解いただけるものだと思っています。
津川委員 私が質問したのは、各省庁なりあるいは地方の方が予算を下さいと言ってくるということの問題を言っているのではなくて、前年を踏襲するということの問題があるのではないかということを申し上げたのですが、あすも質疑の時間があるそうですので、我が党の議員がこの続きをさせていただくことにして、ちょっと別の質問をさせていただきます。
 アウトカムの問題ですが、いろいろな部局にまたがったものを、例えばバリアフリーなどは、それは一つでやるんだというようなお話でありました。重点目標ごとに、アウトカムを達成するためにしっかりやるんだという話ですが、これは、責任はどこにあるのかということを伺いたいと思います。
 例えばバリアフリーに関しては、今、総合政策局の中だと思いますが、交通消費者行政課というところがあって、一生懸命やっていただいているというふうに私は感じますが、実は予算がないんですよという話で、権限がなくて彼らだけではなかなかうまく進まないというような話だそうです。
 ですから、こういったものがもし重点目標になるんだとするならば、重点目標だけただあるんではなくて、ちゃんとそこを担当するのがだれなのか、責任体制というのも明確にするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
三沢政府参考人 バリアフリーに関しましては、総合政策局の交通消費者行政課で、いわゆる交通バリアフリー法の所管をしておりまして、そこで一生懸命いろいろな目標を定め、連絡調整を図っているところでございます。
 そういう目標をやはり横断的に定めるということが非常に大事なわけでございますが、それとあわせまして、やはり目標どおりにきちんと成果が達成されているかどうかということを評価していく、その仕組みが非常に私どもは大事だと思っています。
 この点について、今回の法案の第七条で、この評価について、例えばバリアフリーがどのくらい達成されつつあるのかというのを、必ず行政評価法の対象として行政評価の手続に従って行うということにしていまして、この評価は、国土交通省の政策評価部局、具体的には局長級の政策統括官のもとで、一元的に評価が行われることになります。
 こういう政策評価を通じまして、各部局が明確な目標のもとで、達成に向けて責任を持って運営を行うという仕組みにしておりまして、もちろん、それじゃ、その実施の責任はということになれば、これは国土交通省全体として責任を持ってこれを担っていくということかと思います。
津川委員 評価の担当は当然あるとしても、やはり実施をする責任、権限をどこかが持たないと、私も責任者だけれどもあなたも責任者だというんじゃ、なかなか進まないと思うんですね。予算は自分のところは使いたくないという話じゃ、結局達成できませんでしたという話になりかねない。
 特に、いろいろ重点目標はありますが、バリアフリーに関しては、私の認識では、そこの総合政策局の中の一つの課が今ちょうど担当されているのであるならば、そういったところに、実際に実行していく責任も、何か権限も与えて持っていただくというのはどうかなと思うんですが、いかがでしょうか。
三沢政府参考人 恐らく、バリアフリーに限らず、例えば温暖化対策でもそうなんですが、いろいろな施策を遂行するときに、一つは、基本的な目標なり物の考え方をきちっと整理していく部局と、それからまた、それを計画に基づいて、具体的ないろいろな事業というツールでやっていく部局と、そこはそれぞれの担当があっていいんではないかというふうに思っております。
 要するに、例えばバリアフリー目標を決めたら、その目標を持った部局がすべて、鉄道駅とかあるいはいろいろな施設の具体の事業実施まで全部一貫してやらなければいけないという、必ずしもそういうものではなくて、むしろ、きちんとした目標と、目標に基づいて政策評価して、足りないところはもっときちっとやれ、こういうふうに言えるような体制をつくっていくことが大事なのかなというふうに思っております。
津川委員 そこが全部やるのではなくて、当然そういう指導をしていただくというようなことだと思いますが、できれば、明らかに、その指導をする担当がどこなのかというのを、国土交通省全体だというのではなくて、なるべく具体的にしていただくべきではないかなという指摘をさせていただきます。
 それでは、民主党案についても若干質問をさせていただきますが、私、この法案を今回改めて見まして、ちょっと気になった点が一つあります。
 施行期日でありますが、この法案は、平成十三年十月一日から施行する。ただし、附則四から六までは、十四年の四月一日から施行する、これは廃止の部分ですね。これはもう過ぎているんですが、これを見て、どんなものかなと思ったんですが、お答えいただけますでしょうか。
大谷議員 若干経緯を簡単に説明させていただきますと、平成十二年の五月にこれと同様の内容の法案を提出させていただきましたが、廃案となりました。翌年、平成十三年の六月にこれと同様の趣旨の法案を提出させていただきましたが、継続審議のまま、今日に至るまで議論をさせていただけなかったというのが実情でございまして、そのまま継続でございますので、十三年でとまっている。
 また、この法案にかかわらず、たくさんの議員立法というものを今の二十一世紀型の公共事業のあり方を進めていくために提案させていただいておるんですが、なかなか議論をさせていただけないまま、今日に来ている。
 そしてもう一つは、国土交通省、すなわちは運輸省と建設省が一緒になったときに、今回、政府提出のこの法案、議論をしておくべきような、かなりの内容であるにもかかわらず、三年間、法案がなかなか出てこなかったということも、ここで、平成十三年十月一日から施行するというような過ぎてしまった日にちになってしまっている法案を議論しているということかというふうに思います。
津川委員 対案がなかなか出てこなかったというお答えだったと思うんですが、この対案の国土交通省の、政府の案でありますが、何カ所か大分違う内容があります。
 長期計画を一本化するという点では非常に似通って見えるところもありますが、一つ決定的に違うのが、国会承認の件です。
 国会承認をなぜするかという話は、先ほども若干お答えをいただきましたが、ただ、やはり政府が行う公共事業、政府が責任を持つという意味では、政府がしっかり閣議で決定をするということも一つの筋かと思います。
 閣議の問題につきましては、今阿久津委員からも指摘がありまして、今のサイン会じゃだめだということになろうかと思いますが、政府がしっかりと責任を持つということの方が実は重要で、国会がそこにまた一々審議をするというのもいかがなものかなというような御指摘もあろうかと思います。そちらの方が、例えば時間がかかるとか、あるいは責任の所在がまたあいまいになってしまう、国会が決めたことになるというような話になりますから、もし、責任を明確化するということであれば、むしろ政府が閣議でしっかり時間をかけて、情報公開もやって、見直しも当然やりながらやるという話の方が筋が通るのかなというような御批判、御指摘もあろうかというふうに思います。
 特に、先ほど大臣は、何か民主党も政権をとったようなことを言っていただきましたが、残念ながらまだとったことはありませんでして、民主党が例えば政権をとっているのであるならば……(扇国務大臣「いやいや、総理経験者もいらっしゃる」と呼ぶ)いや、総理経験はいますが、民主党はとったことないです。(発言する者あり)威張っているわけじゃないんですが。
 民主党が政権をとっていて、閣議でしっかりやりますということなら、ある意味わかる。野党だから、我々も意見が言いたいから国会に出してくれというような、そういったふうにも見られかねないところがありますが、国会承認の必要性をいま一度御説明いただければと思います。
佐藤(謙)議員 実は、この法案をつくるときにそうした論点もあって、我々も葛藤しながらここにたどり着いたわけですけれども、私自身の経験で申し上げますと、全国百以上の公共事業のあり方を見てまいりますと、先ほど閣議決定だけの方が迅速だというお話がありましたけれども、実は基をしっかりとしていないからこそ、国民が、この公共事業というのはいつどこで決まったんだろうと。そうした住民ですとか国民の疑念が大きな反対運動になって、結果として、五年おくれ、十年おくれ、公共事業のおくれというものを引き出していってしまう。本当に迅速に公共事業の執行というものを進めていくということであるならば、その前段の部分をしっかりとしなければいけない。
 今そこで我々が一番考えなければいけないのは、早期の段階で国民的な議論が必要だということであります。私たちが国会承認、一つのクレジットというものを我々が与えるということは、これは国会がその責任を全部しょってしまうということではなくて、議論という場をどれだけ確保できるか。国民経済だとか自然環境に対して大きな影響を確かに及ぼしていくわけでありますし、さらには地球温暖化ですとか循環型社会、生物多様性、そうしたいろいろな新しい価値観というものを国民の前で議論していくための議会の役割というのは非常に私は大きいんじゃないかと思います。
 そういう意味で、私の経験からしても、ほとんど知らされずに、行政というものが自主的に長期計画を作成して、そして閣議で決定される、閣議で決定してしまうと、今度は事実上それに従って予算ができるというように順序立てて行われてきた結果、どういうことが起こったかというと、七十八兆円もの膨大な道路整備計画というようなものができ上がってしまう。
 国民が参加をしているという、そうした思いのないままに、次から次へと長期計画ができ、国民の税金が使われるということを考えるとするならば、私たちは、もちろん閣議、行政、政府の責任というのは重いものがありますけれども、一体として、国会がそこに関与をして責任の一端を担うということを私はしていかなければいけないというふうに考えております。
津川委員 終わります。ありがとうございました。
河合委員長 一川保夫君。
一川委員 できるだけ質問の重複を避けていろいろと確認をさせていただきたいと思います。
 特にきょうは政府提出法案について内容を詰めさせていただきますけれども、この法律の第三条第二項だったですか、要するに、国の責務とか、そういう表現もございますし、また第四条第四項の方には、都道府県の意見をよく聞くというような趣旨のことをうたっている条文もございます。
 前の質問、いろいろと皆さん方も指摘していますように、国と地方の役割分担みたいなものが常にこの長期計画の分野では議論になるわけですけれども、こういった法律の中でところどころそういう、国の責務が十分果たされることとなるように定めるというような言い方とか、何かこんなの、ごく当たり前といえば当たり前みたいな表現なんですけれども、あえてこういうような表現を第三条第二項にそういう国の責務みたいなものを、抽象的な表現ではありますけれども、こういうふうにうたっている。また、いろいろな地方公共団体の自主性なり自立性を尊重する、適切な役割分担のもとに国の責務を果たすというような表現を書いてございますけれども、この国の責務、国の役割みたいなものをもう一回確認しておきたいんだけれども、どのようにお考えになるんですか。
三沢政府参考人 社会資本整備における国の責務、役割がどういうものかということでございますが、これは一般的には、一つは社会資本整備に関する全国的な政策及び計画の立案。それから、全国的な見地から必要とされる基礎的あるいは広域的な事業を実施すること。それから、国がみずから実施する直轄事業に関連する事業であるとか、あるいは先導的な施策に係る事業など、特に必要がある事業について補助をすること。こういったことが国の責務、役割であろうというふうに考えております。
 さらに、今回の法律の中での国の役割ということで申し上げますと、一つは、やはり案の段階から国民、都道府県の意見を聞いて、全国的な計画としての重点計画を作成して、国、都道府県、国民が協力して達成すべき重点的な課題を明らかにしていくということ。それからもう一つは、この計画に基づいて、社会資本整備事業についてみずから実施したり、あるいは公共団体への補助、その他支援措置を講じて、重点計画で定められた目標の達成に努めていくことということが国の役割の主なものであるというふうに考えております。
一川委員 そこで、国と各地方との役割分担に関連する件でございます。
 従来から、現在の長期計画、相当の数がありますけれども、それぞれ皆いろいろな作業をされてこられました。今回、この計画は法律に基づいて一本化はするんですけれども、具体的な計画をつくり上げるまでの作業としては、私は、従来と余り変わらないような作業量というのがその裏には当然あるんじゃないかなという感じがいたします。
 そういうものを受けて、各都道府県なりは、国土交通省の担当者の方と事務的な打ち合わせ等いろいろな作業が相当、以前と変わらないぐらいあるというふうに私は想像するんですけれども、また、それをやらないとこの法律がねらっているようなことも十分うまくいかないのかなという感じもしますし、都道府県の担当者といいますか、各地方公共団体でもよろしいんですけれども、従来の長期計画を策定する場合と、今回のこの新しい法律に基づいて重点計画なるものをつくる場合で、その作業量的には、相当減るんですか、それともふえるんですか。そのあたりをちょっと教えてください。
三沢政府参考人 作業量についてのお尋ねでございますけれども、今回の法律に基づきまして、都道府県は計画実施の一翼をみずから将来担っていただくということで、計画の案の作成の段階からひとつ市町村の意見も集約していただいて、いろいろな御提案をいただく。その結果として、国、地方間で共通の目標が共有されて、効果的な事業実施の確保が図られるということでございますので、私どもの気持ちとしては、従来以上に、都道府県にむしろ積極的にいろいろな御提言をいただくという意味での参画は求めたいという気持ちがございます。
 ただ、その前提となる作業量というのがどういうことになるかというとなかなか難しいのでございます。当然、やはり都道府県なり市町村での、まずどういうニーズがあるかとか、あるいは社会資本整備の現状がどうかという、割合地域に即したいろいろなデータは恐らく都道府県の方で既に整えておられる部分もございましょうし、あるいは、この際もう一回確認されているものもございますので、そういう作業は必要になろうかと思いますが、従来と比べてどうかというのは、これもなかなか難しいのですが、ただ、従来、九本事業分野別に計画をつくっていて、ややもすれば、分野別の計画ごとにいろいろな御意見を伺っていたということもあろうかと思います。そういうことに比べれば、今回、手続も一本化しますので、少なくともそういう面での事務量の軽減というのはあるのではないかというふうに考えております。
 なお、これから実際に、その意見交換の方法をまた都道府県と協議しながら相談していきたいと思いますので、余り過重な事務負担にならないような方法も含めていろいろ御相談していきたいというふうに考えております。
一川委員 扇大臣、ちょっと私の感想なんですけれども、今回のこの法律は、例えば目的なんかを見ても、要するに、各事業のそういった効率性なり効果的な推進をねらう、あるいは重点的に推進する、各事業の連携を保っていくという、非常に大事なことなんですけれども、そういうことを考えれば考えるほど非常に配慮事項がふえてくるんではないか、いろいろな計画を詰めるに当たっては。
 従来は割と単純に、馬車馬的に自分の事業さえ伸びればいいと思ってやっていたのが、何かいろいろなことに目配りしながら、いろいろな担当者と相談しながら、いろいろな市町村に相談しながら物事を進めていかなければならないというときに、作業量といいますか事務的な量としては相当ふえてくる、また、ふえないとこの対応はできないんじゃないかということが気になるわけですね。
 国土交通省のある担当者が一々それをヒアリングするということになろうと思うんですけれども、そこのところが非常に気になるところです。私自身は、従来から言っていますように、できるだけ地方にお任せした方がいいというのはそこなんですけれども、いろいろな事務的な作業の段階で、お互いに担当者同士が机を挟んでいろいろな議論をするときに、いろいろな暗黙のプレッシャーというのが、中央官庁から、地方の出先なりあるいは地方公共団体にそういう圧力がかかってくるというのは常でございますので、それでは、何のための地方分権だというふうにもなります。
 やはり地方の自主性とか主体性ということを重んずるのであれば、何かそこにもうちょっと工夫を凝らさないと、この法律の趣旨に照らし合わせて物事をしっかりとやろうとすると大変な事務的な量になるしというところが、自分も理解がまだ十分できないんですけれども、大臣のそういうことに対する所見をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
扇国務大臣 まず、今、一川議員がおっしゃった御心配も私はそのとおりだと思います。
 評価制度というものを、先ほどのお話でも平成十年から取り入れたと言いましたけれども、評価制度の事前評価に一番今度は時間がかかるわけですね。それが、住民参加ということで地元の事業計画のときから参加していただくということで、今までよりも事前評価の段階で一番時間がかかるというのは、私は一川議員がおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、それが今まで欠けていたから、事業評価、事後評価というここで大きな差が出てきたと思っておりますので、私は、事前評価というものにこれからは少し時間をかけてもいい、そのかわり一気呵成にやるんだということも重要だというのが一点。
 それから、地方の意見をどうしてというお話がございましたけれども、私は、国土交通省になりましたときに、全国を歩きまして、十のブロックに分けました。いわゆるブロック制にしたんですね。そして、そのブロックの知事さん、市長さん、財界等々に集まっていただきまして、地方懇談会を全国に十つくりました。
 その十つくった懇談会から、そのブロックの中では、これはもう国道にしたって高速にしたって鉄道にしたって全部県をまたぎますので、そのブロックの地方公共団体の裁量で公共事業のメニューを、順序と費用分担を選んでください、そういうふうに国土交通省は全国の懇談会を立ち上げて、そこで事業メニューと、そして予算の箇所づけも行ってくださいと言う。先ほど民主党の案とどうこうというお話がございましたけれども、とっくに国土交通省はそれを統合補助金という形で一括地方に渡して、そこでメニューと金額と着工順序を決めてくださいというふうにしております。
 今回は、あらゆる面でこの法律を一本化することによって、鉄道とまちづくり、あるいは港湾と空港、鉄道と道路、そういう一体的なメニューが各懇談会で選ぶことができるということで、私たちは十五年度予算におきましても、市町村への補助というものを一括廃止します。そのかわり、対前年度比八%増の七千十九億円というものを大幅に統合補助金として出して、それぞれのブロックの懇談会でそれを選んでいただこうというふうにしたので、今、一川議員が冒頭におっしゃいました最初の問題点の事前評価に時間がかかるということはそのとおりです。けれども、地方に対しては、そういう懇談会を通じてブロックで事業の選択と金額の配分をできるという統合補助ということの対策が、より私は、後、スピーディーにいくと思っております。
一川委員 全国を十ブロックに分けての話は以前からもお聞きしていましたけれども、それは従来の大臣は余りそういうことをやっていなかったという面では、扇大臣は非常に実行力のある方だと思いますけれども、私はもうちょっと進んで、都道府県レベルにもっともっと自主性を持たせる中でいろいろなことをお任せするということがあっていいんではないかなという意見を前から持っているわけです。
 今後そういったことが、各地域の特性を生かそうと思えばなおさらそうなんだけれども、一つの、今回の重点計画で、事業の重点目標ですか、そういうものを成果目標を掲げながら物事をやるということになるわけですけれども、各地域の特性なり優先順位なりというものが私はいろいろとあると思うんですね。非常に多様性に富んでいると思います。そういうものを一つの計画の中でどうやってうまくまとめていくかというのは非常に難しいところなんですけれども、できるだけ地方の皆さん方のそういう判断にゆだねるというところをできるだけ範囲を広くしてほしいというふうにまず言っておきたいと思います。
 それから次に、これもちょっと気になることで、確認するわけですけれども、本法の目的を読みますと、「都市環境の改善」という言葉がぽんと入ってくるわけです。従来、こういう公共事業にまつわるような、社会資本にまつわるようないろいろな法律の目的的なところの言い方は、都市と地方というのはバランスよく振興させるとか、あるいは国土全体の均衡ある発展を図るとか、そういうことに社会資本というのはしっかりと役割を持つべきだというような言い方が常にあるわけだけれども、今回のこの法律を見ると、国土全体の均衡ある発展とか、あるいは地方の振興ということが余りうたわれていないということがちょっと気になるということです。
 私は、きょうも参考人もいろいろな話をされておりましたけれども、基本的には社会資本の整備という中を通じながら、国土交通省の行政はそうなんでしょうけれども、この日本列島、美しい国土、それから、災害に強い国土をつくるとか住みやすい基盤をつくっていく、また、そういった産業基盤をつくっていく、そしてまた、日本列島どこへ行くにもある程度の利便性が確保できるような交通体系みたいなものをしっかりと整備していくということが非常に大事だと思うんです。
 そういう観点からすると、どうも今回のこの目的をさらっと読む限りでは、若干都市重視型になってきておるのかなという感じもしますし、従来で言う日本列島隅々まで均衡ある発展を図るというような趣旨が消えてきたのかなということをちょっと心配します。
 といいますのは、さっき言ったように、効率的とか重点化とか効果的というような言葉が方々で出てきますから、今現在、人の住んでいない地域はそういう面では非常に優先順位が落ちるということにもなるわけでして、そこのところが非常にまたある面では心配になるところです。私は、日本列島どこだって潜在力があるわけですから、そういうポテンシャルのあるところに対しては、やはりしっかりとした社会資本を計画的に整備するということも大変大事な課題であろうというふうに思っておりますので、そういう観点からするとこの目的の表現がちょっと気になりますけれども、そのあたりはどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。
    〔委員長退席、菅(義)委員長代理着席〕
扇国務大臣 一川議員がおっしゃいますように、私は、今回特に、むしろ地方に光を当てたと言う方が正しいのではないか。
 それはなぜか。二十一世紀型には、やはり地域の発展がなければならない。国全体の均衡ある国土の発展は二十世紀の大きな目標であった。それは、余りにも社会資本整備が劣化していた。そういう意味では、これまでは均衡ある国土の発展を基本的に推進してきたということは事実でございますけれども、今後は、地方がみずからの知恵と工夫で個性を持つということが大きな点だろうと私は思います。
 重点計画のこの法案でございますけれども、基本理念を策定します。御存じのとおり、見ていただいたらわかりますけれども、第三条の第一項、「自立的で個性豊かな地域社会の形成が図られるべきことを基本理念として」と、これも一点、地方のことでございます。また、重点計画を定めることを規定するとともに、第四条の第四項においては、重点計画の案の作成に関して「都道府県の意見を聴くものとする。」これも、今までと違って地方を大事にするという意味でございます。
 また、社会資本整備に当たっては、重点計画のもとで、都市、地方にかかわらず、その地域が抱える課題や社会資本整備の状況等を勘案しながら、真に必要な事業を重点的、効率的にするということで、少なくとも都市の発展のためには、高速道路をつくったために、地方からの中央卸売市場に入る荷物は、材料は二倍にふえたんですね。そして、それができたために、今までは、生産したものが、自分のところでしか生鮮野菜も売れなかったものが、東京まで高速道路で運んできて、朝とったものがもうお昼までに中央市場に倍の材料が届いて、しかも自分たちのつくったものが、地方の経済的にも広がってきたという希望も出てきたわけですね。そういう意味では、私は、個性ある地域の発展という、例えば一川先生の地元なら地元でできるものが、地元にしかできない特性も持っていただきたい。
 また、観光という面では、二十一世紀、我々は観光というものを倍増したいと思っておりますけれども、これとても、日本じゅうどこへ行っても全部同じだったら地方に行く意味がないので、それも個性ある地域をつくってくださることによって、それぞれの個性と個性とをつないで観光客を倍増しよう、これも一つの大きな政策でございますけれども、今、この九本の長期計画ということからすれば、社会資本整備に絞らせて言わせていただくと、今申し上げましたように、地方の個性ある地域の発展というものがなければ国全体の国威というものが上がらない、そう思って地方を、大変個性のある地域の発展ということの重みというものを私は考えているつもりでございます。
一川委員 今、大臣お話しになりましたが、そういった地方の個性ある発展を図る、そういう観点で今回のこの制度は重要視しているというお話で、それはそれで非常に重要なことなんですけれども、では、そういうことが具体的に、これからの制度とか実際のやり方としてどこで担保されるかというところが非常に、わからないというか難しいところだと思うんです。
 さっき大臣は、全国十ブロックに分けて、そこでいろいろな意見を聴取するというやり方もその一つかもしれませんけれども、この法体系の中で、本当に地方に自主性を持たせ、地方の特色を生かして、地方にふさわしいそういう計画をつくらせるんだという言い方なんですけれども、制度的にどこに担保されているかというところを説明していただかないとちょっとわからないんですけれども。
三沢政府参考人 大臣から既に御説明をされたことでございますけれども、まず、法案の中で、「公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、」という規定を置き、かつ、案の作成に際して「都道府県の意見を聴く」というふうにしております。
 それで、この場合、重点計画の策定とか実施段階で、地方のブロック単位で、先ほど大臣言われました、公共団体、地元経済界あるいは地元の学識者の方々と国土交通省の地方支分部局との間で、その地域の将来のあり方はどういう姿がいいんだろうかという意見交換、あるいは、さらにその後の事業実施のためのコミュニケーションを図るための会合、懇談会、こういうものを催して、いろいろな意見を聞いていこうと思っております。
 それで、当然そこで出た意見をきちっと計画の中に反映していくということが必要でございますが、従来からも、先ほど大臣から御紹介がありました、統合補助金の拡充であるとか施設整備に当たってのローカルルール化とか、いろいろな取り組みをやってきたわけでございますけれども、今回、こういう意見を聞くことによって、この意見交換を踏まえまして、計画に反映させるべきものは反映するし、それから、その後の事業の制度あるいは運用の改善に反映させるべきものは反映していくという基本的な考え方を持っております。
 それで、その際に、第四条第三項第三号という中で、社会資本整備を効果的、効率的に実施するための措置を盛り込むということになっております。その中には、先ほど申し上げました、規格、基準のローカルルール化とか、あるいはさらに、事業に係る情報公開とか住民参加とか、そういうことについて具体的にこの法律の規定に基づいて計画の内容として盛り込んでいきたいというふうに考えております。これに沿って、また具体的な制度の見直しをさらに進めて、個性ある地域の実現というものにいろいろ努力をしていきたいというふうに考えております。
一川委員 次に、きょう岩國委員からもちょっとこれに関連したような質問がございましたけれども、社会資本の整備というものを進めるに当たって、我が国の、要するに非常事態に対する対処法ということなんですけれども、ここも非常に、それなりに今、特に今日、いろいろなことがありますから、気になるところでもあります。
 一方では、自然災害ということを考えてみましても、最近の異常気象が続いている時代でもございますので、いつまた大地震が発生するかもしれない。また、大洪水といいますか、集中豪雨があるかもしれない、それとは反対に大干ばつが来るかもしれない、火山の爆発とか、いろいろなことが想定されるわけですけれども、そういう本当の自然災害、大規模なものが発生したときに備えての対応の仕方ということからすると、今回、こういう社会資本の長期計画的なものを詰めるに当たっては、そういうことを念頭に置いた整備の仕方というのは当然あっていいというふうに思います。
 また一方では、あってはならないわけですけれども、戦争状態、有事発生といったようなときに備えてのいろいろな対応ぶり、それは、これから有事法制等でいろいろな議論があるのかもしれません。空港にしたって港湾にしたって道路にしたって、それはそれなりにまたいろいろな議論があるのでしょうけれども、しかし、そうかといって、この社会資本の整備に当たっては全くそういうことは関係ないというふうに言うのもまたおかしいわけでございます。
 そういうことに対する基本的な国土交通省としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
中馬副大臣 一川委員御指摘のとおり、これは、利益、利潤追求の民間事業じゃないわけで、国の事業をこれからどう決めていくかということでございますから、ただ効率一点張りで、もう一つ道路が一本あればそれで事足りるということではないと私は思います。やはり今おっしゃったような配慮がなければなりません。かといって、では、全部道路を二本引くか、全線二本引くかということではなくて、それにかわる代替的なことが十分機能されれば、それでもう一つの総合的な計画になり得るわけでございますから。
 私も実際経験をいたしておりますが、阪神・淡路大震災のときに、大阪から急に見舞いということで行こうと思いましたけれども、もう途中は、電柱が倒れている、あちこちで道路までふさがってしまって、到底神戸に到達することができませんでした。もちろん、いろいろな公共的なものも運ぶことがほとんど不可能な中で、何が大きく一番最初に機能したかといいますと、自衛隊の阪神基地隊がまず、船でざあっと、若干権限を越権したような状況でもありましたけれども、独自で基地隊の司令が神戸に物を運んだ、水を運んだといったようなこともございました。私は、機動的にやるならばそういうことも必要だと思います。
 もっと大きなことでいえば、東海道に二本、線を今引いております。これも必要でございますが、東海道が大きく崩れたときに、北陸を回ってずっと物が運べるということも必要だと私は思いますし、何かのときにヘリコプターがさっと飛んで、そこにヘリコプターがちゃんとした着けるところをつくるとか、そういった総合的なことも、もちろん危険を、テロ等のことは別にいたしましても、そうした大きな災害が起こったときにどう対応するかといったことも勘案しながらの重点計画にすべきだということで、国土交通省としましても、そういう観点からの指導といいましょうか、そういう重点計画の作成に意を用いたいと思っております。
    〔菅(義)委員長代理退席、委員長着席〕
一川委員 自分のところのことを言うわけじゃありませんけれども、東海大地震が発生するとか、要するに太平洋側に大きな地震が発生するということをいろいろと専門筋の方はおっしゃっています。そういうことを考えれば考えるほど、北陸回りの新幹線を早く整備することが大事だというふうに私は思いますので、そういう代替機能を持った国家的なプロジェクトは、しっかりとした問題意識を持って対応された方がよろしいんではないか、そのように思っております。
 そこで、最後になりますけれども、ちょっと環境省の方、来ていらっしゃいますか。この条文で、環境保全に関し環境大臣と協議するという旨の記述がございますけれども、この重点計画なるものの計画内容について、環境省とどういうレベルでの協議をするのか、そこがちょっと私自身もまだ理解できないんです。まだ基本計画とか整備計画とか実施計画とかという段階でもないと私は思いますし、どういう内容で、どの程度の協議をすることを環境省は期待しているのか、また、国土省は国土交通省として何かお考えがあるのか、何か実効性のある協議ができるのかどうか、そのあたりが気になるわけですけれども、御答弁をお願いします。
小林政府参考人 環境省でございます。
 今のお尋ねの点でございますけれども、協議、いろいろなレベルがございまして、実行計画といいますか実施計画の段階で、例えばアセスメントをするとか、いろいろなやり方がございますけれども、この計画は、御案内のとおり、公共資本整備の大もとを定める計画というふうに承知をしております。そして、今回全く新たに、環境保全ということをその目的の一つあるいは基本の理念の一つに加えたわけでございます。
 そういうわけでございまして、私ども、そういった環境保全に当たりましては環境基本計画といったようなものを定めておりますけれども、そこに定めました大きな政策の方向あるいは目標、こういったものと整合性があるような計画としてこの公共資本整備の重点計画ができてくだされば大変ありがたいというふうに思っておりますので、そうした大きな目標なり政策の方向といったような観点で協議をさせていただきたいというふうに考えてございます。
一川委員 では、以上で終わります。ありがとうございました。
河合委員長 瀬古由起子君。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 本法案で、私は本会議で、需要予測が過大で事業の根拠がなくなったり、不必要となった事業を抜本的に見直すことができるのかどうか、例えば関西空港の二期事業や中部空港を例に質問いたしました。これに対して総理は、関西国際空港の二期工事も、また中部空港も必要な事業であり、着実に推進していくという答弁でございました。
 そこで、改めて具体的にお聞きしたいと思います。きょうは関西空港第二期工事について質問いたします。
 まず大臣に伺いますが、関空二期工事につきましては、航空業界、財界、マスコミなどから、二〇〇七年の供用延期や建設中止などの見直しをせよとの声が出されています。大臣は、関西空港の二期事業が抱える問題点をどのように認識されておられるでしょうか。
扇国務大臣 これは先ほども少し論議が出ましたけれども、日本の国際的な地位、アジアの中の日本がどうあるべきかということから考えますと、我々は、日本の国の玄関口というものをまずつくらなければ、先ほど申しましたように、二十一世紀の観光客倍増計画、まず玄関がなければ入ってくださいと言えない。しかも、国際空港と名がつくのは、関空に絞ってと今瀬古議員おっしゃいましたけれども、世界に冠たる、日本で初の二十四時間オープンといって関空をつくったんですけれども、これがいまだに一本しか滑走路がありません。
 そういう意味では、アジアの近郊、韓国、中国、アジアのどこを見ても、国際空港で一本しか滑走路がなくて、なおかつ二十四時間オープンでありながら一本というのは見当たりません。そういう意味において、日本がアジアの中で、まして国際の中で生きていくためにはまず玄関口を整えるというのが、我が家でも、一軒のうちでもみんな同じことでございますから、玄関口、二十四時間オープンであるならば、それにふさわしい国際空港にするべきだと思っています。
瀬古委員 私は今、財界も含めてこういう、マスコミなども二〇〇七年の供用延期、建設の中止、見直し、こういう問題が出ている。これについて、どういう問題点でこういうものが出されているのかという背景を、大臣の認識を今お聞きしたんです。
 大臣は玄関をきちっと整えると言われたんだけれども、玄関がないわけじゃない。実際には玄関があるけれども、それが大臣が言われるように、二十四時間オープンで、それもぴっかぴかの玄関口が必要なのかどうかという点でいえば、関空が一期工事で今オープンしているわけですから、そういう問題もございますし、また、実際にそこの家の家計がぐらぐらしているのに、玄関口だけ立派につくってもどうなのかという問題もございます。
 私が今大臣にお聞きしたのは、今、何でこういう見直しをしなければならないかということを指摘されている、そのことについてお聞きしたんですね。大臣が何でつくらなければならないかと言っておられるのはわかりますけれども、それでもなおかつ、そんな立派な玄関口を今の時期につくる必要があるのかという問題が指摘されているわけです。
 そこでお伺いしたいんですけれども、昨年十二月十八日に、扇大臣と塩川財務大臣が「関西国際空港について」という覚書を結んでおられます。その中の三項で、「二期事業については、予定通り用地造成を進めることとし、供用開始に必要な施設の整備については、今後の需要動向や会社の経営状況等を見つつ行う。」このように書かれているんですね。
 これは、確認したいんですけれども、二〇〇七年の供用開始は延期するということも含んでいるんでしょうか。
扇国務大臣 お答えする前に、瀬古議員が、財界が反対している反対しているとおっしゃるんですけれども、私の手元には、財界から見直せという要望は来ておりませんし、関西の財界からこぞって、そのまま二期工事を達成してくださいと言っておりますので、財界というのはどこをお指しになっているのか一点わからない部分は、はっきり申し上げておきたいと思います。
 それから今の、昨年の十二月の財務大臣との申し合わせですけれども、これは、前の宮澤大蔵大臣のときからもこの申し合わせはいたしております。そして昨年の十二月、改めて塩川大臣との間に両大臣申し合わせで、「二〇〇七年の供用開始を目標として進められている」と明記してございます。これは、そのとおり確実に実行するということで明記している、書いてあるとおりでございます。
瀬古委員 財界がこぞってかどうかは別にして、きちんと報道などもよくお調べいただきたいと思います。
 この覚書の中には、「供用開始に必要な施設の整備については、今後の需要動向や会社の経営状況等を見つつ行う。」こう書いてあるわけですから、その点では、このままでは、実際には、需要動向もしくは経営状況、こういうものが当初予定されていたよりもかなり深刻で、一定の配慮を行わなきゃならない、こういう段階で塩川大臣とのこういう覚書が出されていると私は思うんですね。
 そうしますと、例えば、需要動向が最初の予定されたようになければ、また、経営状況が深刻な事態になっていれば、供用開始に必要な施設ができなければ使えませんから、当然延期するということも想定して書かれているんじゃないでしょうか。いかがですか。
扇国務大臣 地上とは違いまして、御存じのとおり、海の中に埋め立てております。そういう意味で、私たちは十六万回という回数が理想でございましたけれども、あの一昨年の九・一一以来、世界的に航空の需要減ということで元気がありません。各航空会社、日本だけではありません。けれども、少なくとも、埋め立て方式ですから、今、二期工事を完成させないで放置したら、千六百億という、逆に歯どめのお金が要るわけですね。これは金額が違ったら後で事務局から言ってもらいます。
 これは一本の滑走路で安全かと言われると、やはり二本あって初めて二本足で立てるというのと同じように、一本足ではやはり不安なんですね。ですから、国際空港としての役割、隣の韓国の仁川にしても、四千メートル級が二本、しかも、二〇〇五年にはこれが四本になる。国際競争に勝てないんです。
 しかも、関西は、財政的にも今、地盤沈下が一番ひどい、失業率も多いと言われている中で、関西も含めたいわゆる近畿圏の経済の浮揚のためにも、外国から乗り入れるという、そのウエーティングしている人がある間が花であって、だれもウエーティングしなくなって、そして、でき上がってもだれも来ないというのでは時代おくれなので。女と同じでございまして、やはり売れごろというのがございまして、やはり嫁にもらってくれるという人の申し込みが殺到しているときはうれしいですけれども、だれももらい手がないというのは困るので、関空も、今一生懸命して、世界じゅうからお客様も来てくださらなければ、でき上がってもだれも来てくれないという手おくれになる可能性がありますから、私は、何としても目標どおり達成したいと思っています。
瀬古委員 そういうやり方でどんどん工事を進めていく、そして、でき上がったときにはそれこそお客さんは余り来てくれないという事態になって、ああ、失敗したなということになってしまう。こういう莫大な公共事業のむだを本当に今考えなきゃならないということで、ある意味では今回の法案も出していらっしゃると私は思うんですね。実際に扇大臣とそれから塩川さんの間で、ちゃんと需要動向や経営状況も見て行うと言いながら、ともかく最初につくっておかなきゃといって、まだ供用開始に必要な施設の整備もどうするか決めないまま一定の用地造成だけは進めていく。こういうやり方が、今の公共事業のあり方で問われているんじゃないかと私は思うんですね。
 ある意味では、今の時期に、私は後でまた具体的な事情を言いますけれども、造成工事だってストップしなきゃならない、こういう深刻な事態が、今この関空の二期工事をめぐって起きているという問題を指摘したいと思います。
 まず第一に、なぜ今この問題にメスを入れなきゃならないかということなんです。
 需要予測の問題ですが、二期事業を推進する理由は一体何だったのか。今の一期事業の滑走路一本では年間の離着陸回数が十六万回までが限度だ、需要が伸びて二〇〇七年には十六万回を超えるんだから新たな二本目の滑走路が必要だというのが最大の理由でございました。そうだと思うんですね。
 ところが、先ほど大臣が言われたように、下方修正を昨年されて、二〇〇七年には十三万六千回、こういうふうになったんですね。これでは現在の一期の滑走路で十分賄える数字ではないかと思うんです。何か、みっともないとか、二本足でなきゃ立てないという、そんな時代ではない。ちゃんと一本でも、十分滑走路を活用していただければ、それは確かに、二本あって、三本あって、四本あればいいですよ。しかし、今の国の財政事情などを考え、公共事業に今メスを入れなきゃならないと思えば、もう一度この問題を見直さなきゃならない。現在の一期の滑走路で十分賄えるんじゃないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
扇国務大臣 今、瀬古議員が、一本の滑走路で十六万回の需要が可能であるとおっしゃいましたけれども、現実的には十三万回です。そして、なおかつ今でも、午前七時から十時まで、これがピークのときには二分に一本、集中的にもうパンク状態になっていることも事実です。
 それで、今の国際的な考え方では、十六万五千回が限度じゃないかという数字も確かにあります。けれども、それでは日本の国の国際的な地位がだめなんです。もっと、一本ふやして十六万回ふやそうというぐらいな勢いでなければ、需要がないから狭いものをつくって、いや、これでぎりぎりですよということでは日本の発展性はない。
 それから、瀬古議員に私はお伺いしたいんですけれども、二本目の滑走路ができて、もしも需要が今言ったように十六万回に達しないで、一本で十三万回でいいじゃないですかということであれば、そうしたら伊丹からこっちへ持ってきて、そして国内線と国際線の乗り継ぎが一本でできるという航空政策もすれば、もっと外国から来るお客様に利便性を図れるんじゃないんですか。どうして、関空がだめで片方がいい、そういう発想で、もっとあるものを自由に使おうということが、より効率的で公共事業のむだがなくなる、私はそう思いますけれども、近畿に三空港要らないよという御発想が、むしろ公共事業のむだということで、あればいいので、一つあるものをもっと集中的に、国際競争力に勝てる空港をつくることが日本のためだという原点が私はあると思います。
瀬古委員 そういう面でいえば、神戸空港をつくろうとか、まだいっぱい空港をつくろうとやっていらっしゃるそういう扇大臣の言葉とは思えないわけですが、私が今言っているのは、現在の関空だって、どのように使われているかということについてよく見る必要があると私は思うんです。
 確かに扇大臣が言われたように、現在、ピークになっている時間帯はございます。しかし、よくグラフを見てみると、その時間帯は、例えば十時だったり、二時ごろだったり、それから十九時だったりいたします。しかし、あとの時間帯は、二十四時間空港というけれども、〇回、一回、二回、十五回、十回、こういうのも幾らでもあるんですね。確かにそれは、ピーク時に合わせて二本、三本つくれば便利といえば便利かもしれないけれども、しかし、今まだ、この関空でいえば、一定の時間帯を少しずらせば、この関空をもっと活用する方法は幾らでもある。
 今、ピーク時になっているのは一日三回ぐらいですね。これだからということで、これに合わせて莫大なお金をつぎ込んでいいのかどうか。お金はそう要らなければつくっていいということになるかもしれませんが、そのための莫大なお金を今必要としている。そういう点では、私はこの需要の問題も、本当に需要予測を下方修正した段階での見直しということについてもきちんと考えるべきだというふうに思います。
 時間がありませんので、次に行きます。
 もう一つ、関空の、やはり経営破綻の状態なんですよね。
 関空がばりばりもうけが出て十分財政的に余裕があるなら、私は、それはどんどん窓口をつくっていいでしょう。今の関空の実態はどうなっているんでしょうか。実際には破綻状態ですよ。さらに破綻のツケを国民に押しつける状況が今生まれてきております。
 まず、関空の経営状況は、二〇〇一年度の財務状況を見ますと、営業利益百九十九億円に対して利子払いが三百六十三億円もある。経常収支は百七十億円の赤字です。欠損金は千九百一億円に膨れ上がっています。現在、債務は、何と一兆一千三百四十三億円、うち有利子負債が九千九百八十一億円もあるんです。そして、毎年、もうけよりも利子払いの方が多いという状態なんですね。本当に私は経営破綻の状態だと思います。本四公団の二の舞になるのはもう目に見えているんですよ。
 これは改善する見込みはあるんでしょうか。今後、二期事業でどれだけの事業費がかかるのか、債務は一体どれだけ膨らむのでしょうか。
洞政府参考人 お答えいたします。
 関空会社の十三年度決算におきましては、先生今御指摘のとおり、同年度におきます米国同時多発テロの影響が大きく、経常損失は、前年度比を十三億円下回ります約百七十億円になっております。
 しかしながら、需要の面について見ますと、国際線につきましては、二〇〇二年の冬期のスケジュールが二〇〇二年の夏のスケジュールを上回る、普通は冬は下がるんですけれども、夏よりも多いダイヤが組まれておりますし、また、二〇〇三年、ことしの夏のスケジュールにつきましては、さらに増便とか新設を表明している航空会社がかなりございます等、需要は確実に回復傾向にあるところでございます。
 昨年の財務・国土両大臣申し合わせにおきまして、関空会社の抜本的な経営改善等を前提としながら、有利子債務の確実な償還を期すために、新たな補給金制度を設けまして、毎年度の予算の範囲内において継続的に措置することとして、経営の安定化を図ったところでございます。
 また、今後の二期事業につきましての残る事業費、現在のところ、十四年度末で七割方できておりますけれども、二期事業の残事業は約四千六百億円でございまして、うち債務が、無利子融資も含めまして半分の二千百億円さらにふえていくという見込みになります。
 以上でございます。
瀬古委員 今お聞きいただいたように、来年から補給金を入れるわけですよ、九十億円、三十年にわたって。これは国民の税金でしょう。国民の本当に負担になって、そして何とか破綻状態の関空を維持する、こういう形なんですよね。
 九十億円の補給金を入れる法的な根拠は一体何ですか。
洞政府参考人 法的な根拠といいますか、この九十億円は、いわゆる法律補助あるいは予算補助というのに分けていきますと予算補助でございまして、毎年度予算の範囲内で継続的に措置されるということが、先ほどの申し合わせの中に明記されているところでございます。
 この九十億円の法的な根拠でございますけれども、先生御指摘のとおり、関空は、海上空港ということで非常に多額の建設資金を要しているということから、一兆円を超えます有利子債務を有しておりまして、まだ昨今のテロ等の影響もございまして需要動向もある意味で不透明でございまして、そういう意味で、このような債務の償還にかなりの期間を要することが想定されているということでございます。
 そういう意味で、関空会社の安定的な経営基盤を確立するために、経営改善を進めて、有利子債務の確実な償還を期するために、新たにこの補給金制度を設けたということでございます。
 具体的には、会社の行います経営刷新におきます三十億円の経費削減を内容といたします抜本的な経営改善策を前提としまして、プラスして継続九十億円のこの補給金を交付することによりまして、昨年の六月に私どもが示しました新たな予測どおりに航空需要が推移する場合には約二十年間で有利子債務が完済される見込みであり、仮に需要が下振れしたとしても三十年後にはこの有利子債務が完済されるということで、会社の経営基盤が安定する、こういうことでございます。
瀬古委員 足りなければどんどん税金をつぎ込めば何とかなる、帳じりが合う、こういう放漫経営をやっていていいのか、こういうところにこそ今本当にメスを入れて反省しなきゃだめだと思うんですよね。
 工事の工事費の積み増し問題について、私は関空の二期事業について指摘したいと思うんです。
 不透明な工事費の積み増しや談合の疑惑がこの中で出されております。国民には莫大な負担をかぶせておきながら、実際には工事費がどんどん積み増しされているんですね。これでうまみを吸っている人たちがいるという問題なんです。
 関空の二期空港島の護岸工事の費用が、何度も契約変更され、当初の契約時点から大幅に増額されております。お手元に皆さんにお配りしております資料にも、その中に書いていますので、ごらんいただきたいと思います。
 一番新しい資料で、これは二〇〇〇年七月時点ですけれども、二〇〇二年八月も新たに出ていますが、若干増減ございますが、実際には、これを見てびっくりいたしました。平成十一年三月に契約された二期空港島護岸築造工事は、全体を六つの工区に分けて、全体で千五百九十二億八千五百万円。ところが、二〇〇〇年七月までに、一工区、三工区が四回、その他が三回の契約変更が行われて、追加額が全体で四百二十二億六千万円、二六・五%も増加している。その時点で、総額が二千十五億四千五百万円に膨らんでいる。何だか最初は低く見ておいて、どんどこどんどこ膨らむ、こういう問題に今なっているんですね。
 これは、私たち、大阪府議会で我が党の府議団が追及いたしまして、大阪府は調査をするという約束をいたしました。私は、国土交通省としてもきちんと調査するべきだと思うんです。この六つの工区だけでなくて、二期工事にかかわる工事全部について、それぞれ、契約変更、追加額が一体どうなっているのか、その理由が一体何なのかを調査すべきじゃないでしょうか。
洞政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の護岸築造契約につきまして、関空会社を通じまして調査いたしましたところ、護岸築造工事の契約変更は、護岸の上部の追加を行う変更が大部分を占めてございます。上部構造は護岸築造の最終工程であるということで、地盤改良後の沈下の状況等によりまして施工数量が大きく増減されるということが当初から想定されたため、もともと、工事がある程度進捗した段階で追加契約を行うということにしていたものでございます。
 したがいまして、もともと増額する、場合によっては減額することもあるわけでございますけれども、そういったことが想定されていたものでございまして、全体として必要な工事の内数ということでございまして、私どもとして、特段問題があるというふうには認識してございません。
瀬古委員 少しは変更はあるかもしれないけれども、こんなに莫大な金額がふえたら、最初に考えていたところを抑えて、だんだん膨れ上がる、そういう仕組みがあるんじゃないかと住民がこれについて不審に思うということだって出てくるじゃないですか。もともとこれぐらいだというのは最初の想定でやればいいわけで、金額もちょっとの差じゃないですよ、四百億円を超える、約四分の一を追加に組むなんというのはちょっと考えられないですね。そういう点でのずさんな組み方の問題について、ああ結構です、こういうやり方ですなんということについても私はメスを入れなきゃならないと思うんですね。ぜひ私は調べていただきたいと思います。
 それから、もう一つ、談合疑惑の問題なんです。資料をめくっていただきたいと思うんですが、本当に見てびっくりいたしました。これは、国土交通省を通じていただいた資料を一枚の紙にしたものなんですけれども、こんな神わざみたいなことができるのか。
 一九九九年から二〇〇二年の二月までに、空港島の護岸工事のほか、消波ブロックの製作工事、埋め立て部の地盤改良工事など、工区別に四十九工区の工事が契約されていますが、そのうち二十九件の落札率は何と九九%を超えている。九八%以上は三十八件、九五%を超える事業が九一・八%。ちょっと注目していただきたいのは、六五%以下というのは四件あるんですね。これは、どうも談合がうまくいかなかったんじゃないか。それから、百億円以上の工事を見ますと、十八件のうち十六件が九九%、他の二件も九八%。よくここまでそろえることができるものだと私は思うんですね。
 私、長野の浅川ダムの問題を指摘したことがございます。なぜあれが談合として認定されたのか。一つは工事内訳書、実際には発注者が明らかにしていないものまでみんなグラフが同じになっている、こういう問題や、もう一つは談合情報、もう一つは落札率の問題で、この浅川ダムは談合の疑い濃厚という形で判断を適正化委員会は長野でされたんですね。
 私は、これからしっかり学ぶべきだと思うんです。結局、九〇%、九九%、九八%というのは、公共事業費をうんと上げる仕組みでしょう。こうやって国民の税金がどんどんつぎ込まれていく。こういう問題について、私は調査すべきだと思うんです。国土交通省は、この浅川ダムの教訓からしても、この談合はなかったかどうかという点は調査すべきだと思うんですが、どうでしょうか。
 それから、この長野の適正化委員会の委員長は公正取引委員会の出身だそうなんですが、この三点の長野の教訓からも、談合と認定されているという問題は、公正取引委員会としても今回調査すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
洞政府参考人 お答え申し上げます。
 談合の有無の調査、認定についてのお尋ねでございます。
 関空二期事業につきましても予定価格の積算基準は公表されてございまして、今までに契約されている用地造成工事は、土砂、コンクリート等の積算が容易な資材費が大部分を占めておりまして、その上、契約対象工事の設計、仕様の説明を詳細に行っていることから、見積もり業者が施工条件を十分理解して、予定価格に近い見積もりをすることが可能でございます。
 したがって、入札率の高いものが多いということをもって、直ちに談合を疑うということはなかなか難しいのではないかと考えております。そういう意味で、現時点では、調査を行うことが適当であるというふうには考えておりません。
 しかしながら、当然のことながら、入札談合等の不正な行為は決してあってはならないことでございますので、具体的な談合情報等ございますれば、事情聴取なり工事費内訳書のチェックなどを行いまして、それらの結果を照らし合わせて、入札を施行するかどうかの判断を的確に行うと同時に、入札契約適正化法に沿いまして、公正取引委員会への通知を行っていきたいと考えております。
鈴木(孝)政府参考人 お答え申し上げます。
 調査を行うか否かにつきましては、個別具体的な事案についてのお尋ねになりますので、お答えを差し控えさせていただきます。
 一般論として申し上げれば、長野県におきます検討において、民事裁判例等をもとに考えられたということは承知しておりますが、行政処分を行う公正取引委員会の立場といたしましては、単に落札率が高いという外形的事実のみによっては、直ちに独占禁止法上の問題とすることはなお困難と考えております。
 しかし、事業者の間で共同して入札に係る受注予定者を決定することが独占禁止法に違反する行為でございますので、そのような具体的な事実に接し、違反する疑いがあると考えられる場合には、公正取引委員会としても必要な調査を行い、その結果、違反の事実が認められれば、厳正に対処してきているところでございます。
瀬古委員 時間が参りましたので、残余の質問、また後に残したいと思いますけれども、やはり、需要予測も狂っていても、経営破綻が起こっても、決めた工事はやめられない。そして、談合かどうかという問題も、九九%がずらっと並んでいる、これについてもメスが入れられない。
 一体、本気で公共事業の見直しを行う気があるのか、今、このことが問われる内閣の姿勢だというふうに改めて指摘して、質問を終わります。ありがとうございました。
河合委員長 原陽子君。
原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いします。
 まず初めに、住民参加のための情報公開について御質問をさせていただきます。
 公共事業を改革するためには、公共事業の予算やアウトカム指標を確保する法律だけを整えてもだめで、やはり、情報を公開して、住民を参加させて合意形成を図る仕組みを整えていかなくては、本当の公共事業改革とは言えないと思います。そして、住民が参加をするためには、十分な判断材料が公開されなければならないと考えています。
 先日、予算委員会の分科会で川辺川ダムについて質問させていただいたところ、河川局長から、意思決定以前の検討過程の業務というものを公開するということは基本的に考えていませんという答弁がありました。
 一方、これは道路局の話なんですが、道路局では、平成十三年に道路計画合意形成研究会を開催して、「構想段階における新たな計画決定プロセスのあり方について」という提言書を出しています。この提言書の最後には、将来的には法令により位置づけられていくこともあわせて望むものと書かれております。
 こうした提言書等を踏まえて、今後、国土交通省として、情報公開、住民参加をどのように行っていくかということを、まず総合政策局長から御説明いただきたいと思います。
三沢政府参考人 公共事業の実施に当たりましては、国民の理解と協力を得ることを基本とするとともに、透明性を確保するため、計画段階において、幅広く情報公開、それから住民参加を行うことを積極的に推進してまいりました。
 具体的には、これまで、計画段階の住民参加手法として、バイパスなどの道路整備において、アンケート調査や委員会などにより地域住民等関係者の意見を広く聴取し計画に反映するパブリックインボルブメント方式を平成九年から試行しております。
 それから、都市計画決定に際しまして、住民の意見を反映させるため、従来からの住民に対する公告縦覧に加えまして、平成十二年十二月に、案の策定段階から原則として公聴会、説明会の開催を行うべきことを公共団体に対して周知しているところでございます。
 さらに、計画段階より早期の段階である構想の段階で幅広く情報公開、住民参加を行うことが、事業の透明性、客観性を向上させるために非常に重要であるというふうに考えておりまして、例えば道路事業におきまして、構想段階にあるすべての高規格幹線道路を対象にパブリックインボルブメントを導入しているところでございます。
 それで、今後でございますけれども、国土交通省の所管の公共事業において、構想段階における幅広い意見を反映させるために、事業特性に応じて、情報公開、住民参加など、これはそれぞれの事業ございますけれども、そういう事業の運用面での整合性を確保するために、事業横断的なガイドラインをできるだけ早期に策定しようということで今作業を進めているところでございまして、引き続き、事業の構想段階からの住民参加の試行を積み重ねて、仕組みの整備に向けて努力してまいりたいというふうに考えております。
原委員 続きまして、費用対効果について今度はお聞きしたいんですが、やはり、公共事業を進めていく上で、費用対効果という考え方も今後ますます重要になってくると思います。
 ことしの一月に河川局が発表したダム事業に関するプログラム評価案によれば、計画の策定に当たっては、河川や流域の特性、沿川の土地利用の状況や整備の効率性、費用対効果等を考慮し決定していると書かれています。ちょっとここは具体的な数値でぜひお聞かせ願えればと思うんですが、費用対効果を数値であらわすとどの程度が理想とお考えになられていらっしゃいますでしょうか。河川局長、お願いします。
鈴木(藤)政府参考人 費用対効果に関するお尋ねでございます。
 御指摘のように、河川ごとの治水計画の策定に当たりましては、費用対効果というものを一つの指標として使っております。ただ、この際、費用対効果だけで判断するのではなく、先ほどの御質問の中にもございましたが、地形、地質を初めとする河川や流域の特性、これはいろいろな状況があるんですけれども、代表的なことだけ申し上げていますが、あるいは都市化の状況と沿川の土地利用の状況ですとか用地に係る状況ですとか、あるいは、その効果が治水面だけではなくて、ほかの利水とかいろいろな面にわたるのかどうかといった、そういった整備の効率性等を総合的に考慮して決定しているということでございます。
 したがいまして、この費用対効果は、事業の計画策定や事業の採択等を判断する際の一つの大変重要な指標というふうに認識しているわけでございますが、それだけでもちろん判断するわけではない。あくまでも総合評価だということで、そういった意味で、この数値自体が、もちろん一を超えているということが原則になるわけでございますが、その数値が幾らが理想であるとかいう、そのようなとらえ方はせずに、総合的な判断の中での重要な一指標としてとらえているということでございます。
原委員 つまり、今の河川局長の答弁によると、費用が一であれば効果は一以上であることが望ましいということでよろしいんですね。ありがとうございます。
 例えば、今の費用対効果の話もそうなんですが、これから住民参加が求められてくるときに、住民が費用対効果なり、だれもが費用対効果を適切に比較するためにも、やはりいち早く情報を開示していくことが求められてくると思います。
 またこれも先日の話なんですが、情報公開に関して河川局長が、その意思決定以前の検討過程の業務というものを開示することは基本的に考えておりませんと述べたことや、あと、例えばさまざまな情報というものも、住民の方が情報公開を使って開示請求してやっと出てくるような情報公開では、パブリックインボルブメントといいましょうか、住民参加というのはなかなか難しい、不可能に近いと思います。
 一つ、情報公開の中では、社民党の阿部知子議員の質問主意書により、国土交通省内で、情報公開法第十条で求められている期間の延長手続を行わずに開示決定を行った件数が三件あったということが明らかになっております。
 ここでひとつ国土交通省の姿勢をお伺いしたいんですが、情報公開に対する国土交通省の今後の対応なり姿勢なりというものを三沢局長から御答弁いただきたいと思うんです。
安富政府参考人 先般の質問主意書の中で、情報公開法第十条で定められている期間の延長手続を行わずに開示決定した三件というのがございますが、これは同一の請求者からの一連の請求でございまして、三十日の開示決定期限を一日オーバーしてしまったということでございます。
 原因は、基本的に、本来、請求書の、開示請求が出た内容について補正を求めたわけですが、その補正の期間が四日間ございまして、この四日間を加算する際にその起算日を誤ったということでございます。そういう意味で、若干、関係職員の事務に適切さを欠くということで、今後このようなことがないように、事務の適正な遂行について改めて指示したところでございます。
 我々としては、情報公開については、やはり情報公開法の制度にのっとって適切な形でその運用に努めていきたい、こういうふうに考えております。
鈴木(藤)政府参考人 前回の議員からの御質問に関連しまして、私の答弁について今御指摘がございましたので、ちょっと補足させていただきます。
 確かにそういった発言をしておるんですが、前回の答弁は、国土交通省の意思決定以前の報告書、具体に前回提示された報告書でございますが、これについては、各種の検討過程の一部であるために、これ自体を議論の対象とすることは考えていないというような趣旨で申し上げたことでございまして、そのため大臣の方から、わざわざ後から、その資料は隠したものでも何でもございません、公表されています、このような答弁をされているところでございます。
原委員 いや、別にその答弁を責めるとかそういうことではなくて、先ほど三沢局長が住民参加を積極的にやっていくという話の中で、住民参加を促すためにはやはり情報公開が大前提になってくると思うんです。そこの部分に関して、住民を公共事業にこれから、公共事業改革が叫ばれている中で住民に参加をしてもらうためにも、やはり情報公開というものが大前提にあるという考え方から、ぜひ三沢局長から、住民参加のために情報を公開していく、そういう国土交通省の姿勢をお聞きしたかったのですが、いいですか、答弁をお願いして。よろしくお願いします。
三沢政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、国土交通省におきましては、ガイドラインを今後作成いたしまして、構想段階で複数の案を作成、公表するということを考えております。その際、地域住民への説明会であるとか、事業に関する情報の公表、提供など、やはり事業に関する住民の意思形成に必要な措置をきちっととっていくということは非常に大事でございますので、そういう趣旨も含めてガイドラインの中に盛り込んでいきたいというふうに考えております。
原委員 ぜひそのあたりはよろしくお願いをしたいと思います。
 次に、道路の特定財源に関して御質問させていただきたいと思います。
 今回、この道路特定財源に関して半世紀ぶりの見直しという非常に大きな局面にあるわけで、どのような意思形成がだれによってなされたのかということを御質問したいんです。
 昨年の三月に発足して十二月ごろまで、国土交通省道路局長の私的研究会、道路財源の在り方に関する検討委員会が非公開で開催をされて、道路特定財源制度に関して、学識経験者八名を集めて論点整理を行ったと聞いております。
 このことについて、まず、八名の学識経験者とはどなただったのか。また、全体の経費はどのようなものだったのか。何回開催されて、どのような論点及び結論が出たのかということを御説明いただきたいと思います。
佐藤政府参考人 昨年三月に発足しまして、お尋ねの国土交通省道路局長の私的研究会、道路財源の在り方に関する検討委員会、こういう名前でございますが、八名の学識経験者の皆様からお集まりいただきました。姓だけ申し上げます。金本先生、碓井先生、小幡先生、杉山先生、八田先生、林先生、屋井先生、山崎先生、以上八名であります。
 委員会そのものは、道路財源のあり方に関する課題につきましていろいろな観点から意見交換を実施し、論点を整理していただく、こういうことにしたものでありまして、平成十四年の二月から六月にかけまして、四回の委員会を開催していただいております。四回の委員会におきまして、延べ二十四人御出席いただきました。謝金の合計は、約三十六万円でございます。
 そして、論点整理でございますので、結論をどうする、こういうことではなくて、そういう意味では、整理していただきました論点は、ガソリンと軽油の課税格差、燃料課税のあり方であるとか、あるいは営業用車と自家用車の課税の格差であるとか車体課税のあり方というような形で、議論の焦点をいろいろ教えていただいたものでございます。
原委員 そこで、ちょっとこれは別途の質問なんですけれども、国土交通省に設けられたさまざまな私的研究会があると聞いております。局長の私的研究会というものは現在幾つあるのか、その数値を教えていただきたいと思います。
安富政府参考人 国土交通省における内部部局の局長の私的研究会等でございますが、現在のところ、二十八ございます。
原委員 それで、先ほどの道路財源の在り方に関する検討委員会について、また戻って聞きたいんですけれども、これはなぜ非公開で行ったのかということを教えてください。
佐藤政府参考人 先ほども申し上げましたように、何らかの結論をいただくというよりは、論点の整理でございますから、いろいろな角度から先生方に御自由にお話をいただくために、そういう意味で、議事のその場は非公開ということでございますが、その後、議事録をつくり、議事録そのものは、お求めに応じて公開している、こういうことであります。
原委員 済みません、ちょっと聞き取りにくかったんですけれども、議事録は作成していて、ホームページで公開されているという答弁でしたか。
佐藤政府参考人 公開の仕方は、御請求があれば公開ということで、今のところはそうしております。
原委員 今、さまざまな審議会の議事録は、結構ホームページで、多く、広く公開されているので、先ほどからの、住民参加、情報公開ということをキーワードに公共事業を考えていくとすると、ぜひ公開すべきではないかというふうに思っております。
 ちなみに、先ほど御答弁いただいた二十八ある私的研究会の中では、議事録は作成されているのでしょうか。
安富政府参考人 先ほど、私的研究会等二十八と申しましたが、このうち、議事録等を公開、あるいはそもそも会議自体を公開している研究会等は二十六ございまして、ほとんどのところで公開しているという状況でございます。
原委員 特に道路の財源に関しては、これから本当にさまざまな議論が必要になってくるところだと思っています。どこにどういうふうに税収を再配分していくというのは、専門というか、学識経験者だけが集まった場所ではなくて、国民的な議論が必要になってくると思いますので、今後とも、その私的研究会で論点整理をしたものはぜひ公開をして、そして国民から意見を求めるというような形で、積極的な情報公開、国民的議論というものを進めていっていただきたいと思います。
 そのまま続いて、道路特定財源に関してなんですが、これは、提案者の方と、きょう、環境省の方に来ていただいているので、お二方に御質問させていただきたいんです。
 今、道路特定財源は、道路を使う受益者の負担という考え方からなっているんですが、それを、例えば、大気汚染、騒音公害、二酸化炭素などによる地球温暖化など、道路による環境負荷に対する課税という考え方へ変えていくこともありじゃないかと思うのですが、今回、民主党の中でこれを一般財源化としております。なぜ環境税化ではなくて一般財源化としたのかということを提案者の方に質問したいと思います。
 そして、この環境税化、環境税について、環境省の中では、この間、どのような議論があったり、どのような検討を行ってきているのかということを環境省にお尋ねしたいと思います。
 では、提案者の方から。
大谷議員 一言でお答えをさせていただきますと、予算配分の硬直化を生むから廃止させていただいたとともに、また同時に、わざと、予算の硬直化を生みますので、環境税にはしなかったということでございます。
 二十一世紀は環境の時代でございますし、今まで配意をしてこなかった分、それ相当のことを環境に対してやっていかなければいけない。それを、何をしていくのかを決めてから、では、財源、お金はこれぐらい要るねというふうに、戦略的に、理念に基づいて配分していかなければいけないというふうに思いますので、わざわざ環境税化にはしなかったということでございます。
 また、附則におきまして、平成十六年の三月三十一日まではしっかりと、環境に係る抜本的な、揮発油税であったり石油ガス税であったりするようなものにかわって、環境に対してどんな税をしていくべきかということを議論していくというふうにさせていただいておりますので、そちらの方で、またお金の面は、環境対策について議論をさせていただくつもりでございます。
炭谷政府参考人 環境省における環境税の現在の検討状況でございますが、環境省といたしましては、まず、環境税は、環境負荷に応じて価格を変えることによりまして、消費者の方々、また企業などの事業者の方々が自主的に、みずから、行動を環境負荷の少ないものにするように促進されるというものでございまして、温暖化対策を進める上でも効率的な方法であると認識いたしております。
 このため、環境省といたしましては、温暖化対策としてのステップ・バイ・ステップのアプローチに沿いまして、二〇〇四年に実施される対策の進捗状況の評価、見直しにおいて必要とされた場合におきましては、第二ステップが始まる二〇〇五年度以降、早期に、温暖化対策のための環境税を導入する必要があるのではないかという方針で検討いたしているわけでございます。
 現在、二〇〇四年の評価、見直しにおいて必要とされた場合に備えまして、中央環境審議会の地球温暖化対策税制専門委員会におきまして検討を進めていただいているところでございまして、今年夏ごろをめどにいたしまして具体的な案を取りまとめていただきまして、世の中にお示しいたしたいと考えているわけでございます。
 私どもといたしましては、この具体的な案を踏まえまして、国民の皆様を初め関係方面の理解が得られるよう最大限の努力を傾けてまいりたいと考えております。
原委員 ありがとうございます。
 総務省が来られていますので、済みません、ちょっと順番が最後になってあれなんですけれども、最後に総務省に、情報公開について、その見解をお伺いしたいと思うのです。
 情報公開法により、文書は非開示となる場合には合理的な理由がなければならない、会議も原則的に公開すべきであり、公開しないなら、議事録をつくって後から議論の過程が見えるようにすべきではないかと思っております。先ほど、国土交通省の中の私的研究会についてお伺いしたんですが、情報の公開請求をすればいつでも出してくるということだったんですが、もっと積極的に自分たちの方から情報を公開していくような姿勢が私は必要であると思っています。
 ここで一つアメリカの例を紹介させていただきたいんですが、アメリカに情報自由法というものがあって、それはいわゆる日本の中での情報公開法に当たるもので、その情報自由法とセットであるのがサンシャイン法という通称を持つ会議公開法というものだそうです。その会議公開法では、会議は合理的な理由がなければ非公開にはできないとなっていて、また、もしも非公開にするとしても議事録は作成しなくてはならず、後に公開すべきだったとなれば、開示して議論の過程が見えるようにしている。つまり、もちろん国民の方が情報を請求することもできるけれども、会議の方にも情報というものはしっかりと公表していかなくちゃいけないという、その二つの法律がセットになってあるそうです。
 私は、ぜひこの考え方を日本にも導入すべきではないかと思っているのですが、そのあたりの総務省の御見解をお伺いしたいと思います。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 日本の情報公開法におきましても、国民に対する説明責任を全うする、そういう観点から、積極的な行政機関の保有情報の公開を図るようにされているところでございまして、情報公開法におきましても第四十条で、「政府は、その保有する情報の公開の総合的な推進を図るため、行政機関の保有する情報が適時に、かつ、適切な方法で国民に明らかにされるよう、行政機関の保有する情報の提供に関する施策の充実に努めるものとする。」ということにされているところでございます。
 今、審議会ですとか、あるいは先ほど問題になりました行政運営上の会合、懇談会等についての会議の公開の話がございましたが、これにつきましても、平成十一年四月二十七日、閣議決定がございまして、そこにおきまして、審議会等、懇談会もこれに準ずることとされておりますが、議事の公開につきまして、会議または議事録を公開することを原則とする。特段の理由により会議及び議事録を非公開とする場合には、その理由を明示して、議事要旨は公開するということにされているところでございまして、積極的な国民に対する情報公開の推進に引き続き努めてまいりたいと思っております。
原委員 ありがとうございます。
 私は、公共事業改革には、住民参加のための情報公開が本当に不可欠であると思っておりますので、これはぜひ政府一体となって、積極的な情報公開、そして、その情報も必要なときにちゃんと手に入るような仕組みにしていっていただきたいし、請求してくれれば出すよではなくて、議会の方からも、政府の方からも積極的に情報を開示していく仕組みというものをつくって、大きく公共事業が見直していけるような形になればと思いますので、これからも、パブリックインボルブメント方式ですか、PI方式を進めていくためにも、さまざまな情報というものを積極的に公開していく姿勢というものを貫いていっていただきたいと思います。
 終わります。ありがとうございました。
河合委員長 松浪健四郎君。
松浪(健四郎)委員 保守新党の松浪健四郎でございます。
 社会資本整備重点計画法案並びに社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について質問をさせていただきます。
 社会資本の整備は、これまで、我が国の経済成長や豊かさの実現に大きな役割を果たしてまいりました。特に、欧米に比べて社会資本整備の歴史がうんと浅く、その立ちおくれを取り戻すべく整備を緊急に実施する必要性が非常に高かった我が国にありましては、従来の事業分野別の長期計画は、こうした社会資本整備の計画的かつ着実な推進に大きく寄与してきたものであります。このため、社会資本の整備水準はかなりの面で改善が見られました。高度成長を初めとする経済成長や国民生活の質の向上、安全の確保など、我が国の発展が図られてきたものと認識しております。
 しかしながら、昨今の厳しい経済情勢、財政状況にかんがみますと、公共事業全体について改革が進められる中、長期計画についても例外ではなく、社会資本整備をより重点的、効率的に実施していく観点からの改革が求められているものと理解しております。
 このような中で、今般、事業分野別の長期計画が一本化されることになったと認識しておりますが、その趣旨について総合政策局長にお尋ねしたいと思います。
三沢政府参考人 長期計画の一本化の趣旨でございますが、今回新たに作成いたします社会資本整備重点計画は、従来の事業分野別の緊急措置法に基づく長期計画につきまして、事業の縦割りあるいは事業費への偏重、こういったような御指摘、御批判があったということを踏まえまして、これを見直しまして、例えば都市内の雨水浸水対策ということであれば、下水道事業と河川整備の連携によってこういう雨水対策を進めるということで、横断的な目標を設定するというような、例えばこういうような形での事業間連携の強化を図るということ。それから、その際、従来、事業分野別の事業費ということで表示しておりましたけれども、むしろそれにかえて、具体的にどういうようなメリット、どういうような効果がもたらされるかという、アウトカムと申しますか、達成される成果へとその目標の中身を転換していくというものでございます。
 また、これとあわせまして、この計画の中で、地域住民の方々の理解の確保であるとかコスト縮減、あるいは入札契約の改善といった事業横断的な公共事業改革の取り組みを盛り込むということによりまして、事業の重点的、効果的かつ効率的な推進を図ることとしているところでございます。
 こういうような趣旨から、今回、重点計画として長期計画の一本化を図ろうとしているものでございます。
松浪(健四郎)委員 重点計画法案の対象事業は、交通安全施設や海岸を除きますと、国土交通省関係の事業となっております。公共事業には、対象事業以外にも、農林水産省関係の農業、農村、森林、漁港などの事業や、環境省関係の廃棄物処理施設整備事業がありまして、これらについては、それぞれの関連の施策と一体として実施される必要があることから、計画の枠組みとしては別途の整理になり、それぞれの分野において改革が行われるものと伺っております。
 計画論としては、すべてが緊急整備というコンセプトから脱却して、大改革だと思いますが、他方、事業の実施の場面では、重点計画法の大目的である効果的かつ効率的な事業実施に照らしても、省庁や計画の枠組みを超えた連携が極めて重要になるものと思われます。
 そこで、他省庁との連携についてどのように進めていくのか、このことをお尋ねしたいと思います。
三沢政府参考人 他省庁事業との連携でございますけれども、他省庁の所管事業を含めまして、関連する事業の間で必要な連携、調整を図っていくということが、社会資本整備の効率的、効果的な実施の上で大変大事な問題であるというふうに考えております。
 こういう観点から、例えば交通安全施設、海岸事業については、警察庁さん、それから農林水産省さんとの密接な連携が不可欠であるということで、これはいずれも重点計画法の対象事業として、これらの省庁の所管事業も含めて規定をしているところでございます。
 それから、計画の策定段階でも他省庁との密接な連携を図る必要があるということで、例えば汚水処理施設について、下水道と集落排水施設と合併浄化槽との連携の問題、これもよく御指摘いただく問題でございますけれども、こういうことについてもきちっと連携していくという観点から、いわばこれらの総合指標として、例えば汚水処理施設整備率のような共通的な目標を設定して、計画の段階でも他省庁事業との連携について盛り込むという方向で検討していきたいと考えております。
 それからさらに、計画に基づいていろいろな事業を実施する、その事業実施段階における連携というのも当然重要でございます。これも従来から、道路と農道、あるいは港湾と漁港、砂防と治山など、関係事業者間でいろいろな連絡会議のような場を設けまして、いろいろな連携、調整の場をつくっております。そういった場の活用等によりまして、省庁の垣根を越えてこの連携に積極的に取り組んできたところでございますので、今後とも、こういう連携を引き続ききちっと推進していきたいというふうに考えております。
松浪(健四郎)委員 次に、法律の規定内容について質問をさせていただきたいと思います。
 重点計画法は、従来の長期計画、公共事業に対する指摘を踏まえた改革型の計画の根拠法となるものでありまして、九本の長期計画を単に一本化するのみならず、従来の計画事業として緊急措置法に規定していた事業の量を事業の概要に改め、総事業費を内容とせず、アウトカム中心の計画としております。かように、計画の内容につきましては、かねてから扇大臣が主張されている二十一世紀型の改革を実施したものであると思います。
 そこで、計画の策定手続についても、情報公開や国と地方の新たな関係など、近年の議論の方向を踏まえた改革を行うべきであると考えますが、従来の緊急措置法と比べて違った策定手続を規定したのはどのようなお考えからなのでしょうか。その手続の違いとともに御説明いただきたいと思います。
 また、従来の緊急措置法では、計画策定後のフォローアップは、法律上明確には規定されていなかったと記憶しております。ともすれば計画をつくりっ放しになりがちで、長期計画の掲げる目標がどの程度達成されたか検証されないとの指摘も見られたように思います。今回の法律ではフォローアップの規定が盛り込まれていると理解しておりますが、それは具体的にどのようにして行われるのでしょうか。
 この二点についてお伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 まず一点目の、策定手続で従来の緊急措置法との違いということでございますが、従来の緊急措置法では、長期計画の案について閣議決定を行い、これを事後的に公表したり、あるいは都道府県等に通知するというようなことが法定されていたにとどまるものでございます。
 今回は、社会資本重点計画法におきまして、計画の案の策定の段階で、あらかじめ、重点目標の内容、あるいはその効果的かつ効率的な社会資本整備の改革の取り組みの方向等に関しまして、地域の実情、ニーズあるいは国民の意見というのを把握した上で策定作業が行われることになるように、一つは、インターネット等によりたたき台の計画素案を公表いたしまして、これで広く国民の意見を募集するというような形で国民の意見を反映させるための必要な措置を講ずるとともに、もう一つは、都道府県の意見を聞くという形で各地域のニーズをよく把握して、いろいろな地域との間のディスカッションをしていくということにしているわけでございます。
 こういう意味では、今回の社会資本整備重点計画法は、従来の緊急措置法と比較して、透明性、公開性を高めているということとともに、国以外の、地方や国民の計画策定過程への参加を図るということにするなど、ある意味では手厚い事前手続を法定しているところでございます。
 それから、もう一点のフォローアップでございます。
 今回、重点計画法の中で、やはりフォローアップをどうするかということについて非常に重視をしております。従来の緊急措置法は、どちらかといいますと、計画の策定までの過程に重点が置かれていた。今回は、それもさることながら、策定後の措置を非常に重視した形になっております。
 特に三点申し上げますと、一点目は、重点計画法の中で、重点計画法に定められた社会資本整備事業について行政評価法の事後評価の対象とするということにしておりまして、その結果として、重点目標に照らして事後評価を行うべきことを主務大臣に義務づけをしております。
 それから二点目に、第五条でございますが、社会経済情勢の変化に的確に対応するために必要があると認めるときは、速やかに変更の案を作成すべきことを主務大臣に義務づけておりまして、計画期間中での変更の規定というのを置いております。
 それから三点目に、附則の第三条で、計画の最終年度におきまして、社会経済情勢の変化、それから社会資本の整備状況等を勘案いたしまして、重点計画に係る制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるということを政府に義務づけております。すなわち、計画の内容にとどまらず、この計画の策定根拠になる制度そのものについてもこういう検討の規定を置いているということでございます。
 こういう措置によりまして、計画の達成状況の監視や改善方策の検討、実施等、社会経済情勢を十分踏まえた計画策定等を行っていきたいというふうに考えております。
松浪(健四郎)委員 中馬大臣、次の会議があるとお聞きしておりますので、どうぞ退室していただいて結構でございます。
 次に、今後の道路整備についてお尋ねいたします。
 一部のマスコミや都会に住む人の中から、道路の整備はもう十分だという御意見をよく耳にしますけれども、私は、日本の道路整備の現状に触れるたび、その言葉に疑問を覚えてなりません。
 例えば、都市部においては、慢性的な交通渋滞や環境の悪化が社会問題となり、地方においては、地域の活性化や市町村合併を進める上で骨格となるべき道路が十分に確保できていないなど、道路は必要だという声には依然根強いものがある、こう思います。また、昨今の厳しい財政状況にかんがみれば、道路特定財源制度は、国債発行などに比べても、国の財政を圧迫することなく、着実な道路整備を進める上で、先人の考えた貴重な財産であり、この制度を引き続き活用していくことは極めて重要だと考えております。
 今後、この道路特定財源制度を活用し、国民の望む道路整備をより重点的に進めなければならないと考えますが、これについて道路局長にお伺いします。
佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 戦後、国道さえもほとんど舗装されていない、こういう劣悪な状態からスタートしました日本の道路は、欧米水準へのキャッチアップを目標に、量的不足の解消を至上命題といたしまして、およそ半世紀にわたって精力的に整備が進められてきたところであります。
 おかげで、ようやく量的ストックはある程度の水準まで形成された、こう御評価もいただいたりもしておるわけでございますが、渋滞によって経済損失が全国で年間十二兆円、あるいは、ピーク時に四十分以上閉まるあかずの踏切が全国で一千カ所、電線類の地中化も大きくおくれている。さらに、先生御指摘のように広域市町村の合併、こういう形になってまいりますと、そのための連携道路がどうしても必要であるというようなこともございまして、道路整備が大変厳しい要望をいただいている状態であります。したがいまして、引き続き道路特定財源を活用して、効果的、効率的に道路整備を推進することが必要と考えております。
 この道路整備の推進に当たりましては、事業の効率性や実施過程の透明性の向上を図るため、評価システムの一層の充実を図りますとともに、国民への説明責任を徹底して、透明性の高い効果的かつ効率的な道路事業の実施に引き続き一層努めてまいる所存でございます。
松浪(健四郎)委員 最後に、社会資本整備の今後の課題とその対応方針について扇大臣のお考えをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
扇国務大臣 社会資本整備に関しましては、冒頭に松浪議員から、日本が諸外国に比しておくれているという御発言がございまして、そのとおり御認識をいただいている、皆さんが認識が同じであればありがたいなと思って拝聴しておりまして、その認識は、私もまさに申し上げたいところでございます。
 また、特に、昭和二十九年、道路整備五カ年計画というものを策定して以来、長期計画というのは、今日まで五十年間変わらなかったんです。何度も何度も、五年ごとに繰り返し繰り返ししてきたわけですけれども、松浪議員がおっしゃったように、二十一世紀に入って、私は絶えずこの委員会でも申し上げておりますように、二十世紀はハードの世紀、二十一世紀は環境とバリアフリーの世紀、ソフトの世紀だと言っておりますけれども、それを達成しなければ社会資本整備というものは、世界の社会資本整備と日本の社会資本整備が、ハードだけでは、ソフトをつくらなければ国際的に日本は先進国と言えない。そういう時代になってきたということで、五十年ぶりに、より効果的で、より目的をきちんと持った社会資本整備に短期に集中投資することによってコストダウンが図られて、今までは五年かかったところが四年で済む、そうするとあとの一年分は違うところへ入れるというふうに、中でのこの計画の融通性、また、それが真に国民のためになり日本のためになる、そういう計画というものを見直していく。また、消費社会、高齢社会、かつて諸外国に例のないスピードでこういう時代を迎える日本にとって、真の社会資本整備の中にバリアフリーを加味するということも重要なことであると思います。
 今回は、こういう意味で、今までの総決算、四省庁が国土交通省一本になったということで、計画も、縦割りではなく横断的な、真に国土づくりの基本になるような社会資本整備の一本化を図りたいということが、今回の提案させていただいた法案の基本的な姿勢でございますので、ぜひ御理解をいただき、公共事業も、少なくとも費用対効果というものの分析、あるいは、先ほどから御議論が出ております評価制度、そういうものも我々は大事にしながら、社会資本整備という国家の基本というものをどう持っていくかということを、皆さんの御意見をいただきながら真剣に取り組んで、二十一世紀型にしていきたいと思っております。
松浪(健四郎)委員 十分にこれらの法律を理解できたということをお伝えして、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
河合委員長 次回は、明十二日水曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十六分散会


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