衆議院

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第25号 平成16年6月1日(火曜日)

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平成十六年六月一日(火曜日)

    午前八時二十分開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 今村 雅弘君 理事 衛藤征士郎君

   理事 橘 康太郎君 理事 望月 義夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 奥村 展三君

   理事 玉置 一弥君 理事 高木 陽介君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      岩崎 忠夫君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    江藤  拓君

      梶山 弘志君    櫻田 義孝君

      島村 宜伸君    高木  毅君

      中馬 弘毅君    寺田  稔君

      中野 正志君    二階 俊博君

      葉梨 康弘君    保坂  武君

      松野 博一君    水野 賢一君

      森田  一君    渡辺 博道君

      下条 みつ君    園田 康博君

      高井 美穂君    中川  治君

      中川 正春君    長安  豊君

      伴野  豊君    古本伸一郎君

      松崎 哲久君    松野 信夫君

      三日月大造君    室井 邦彦君

      和田 隆志君    若井 康彦君

      佐藤 茂樹君    穀田 恵二君

      川上 義博君

    …………………………………

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   国土交通副大臣      佐藤 泰三君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   財務大臣政務官      七条  明君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   衆議院法制局第一部長   臼井 貞夫君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 藤原 啓司君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  鷲頭  誠君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  鬼頭 平三君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 矢部  哲君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君

   国土交通委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  古屋 圭司君     水野 賢一君

六月一日

 辞任         補欠選任

  江崎 鐵磨君     宇野  治君

  大島 理森君     赤城 徳彦君

  岩國 哲人君     高井 美穂君

  岡本 充功君     園田 康博君

  山岡 賢次君     中川 正春君

  武田 良太君     川上 義博君

同日

 辞任         補欠選任

  赤城 徳彦君     大島 理森君

  宇野  治君     江崎 鐵磨君

  園田 康博君     岡本 充功君

  高井 美穂君     岩國 哲人君

  中川 正春君     山岡 賢次君

  川上 義博君     武田 良太君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 建設関連労働者・中小建設関連業者の雇用と暮らしを守り、公共事業の生活・環境重視への転換に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二六五二号)

 同(奥田建君紹介)(第二六五三号)

 同(北橋健治君紹介)(第二六五四号)

 同(今野東君紹介)(第二六五五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二六五六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二六五七号)

 同(島田久君紹介)(第二六五八号)

 同(東門美津子君紹介)(第二六五九号)

 同(羽田孜君紹介)(第二六六〇号)

 同(牧野聖修君紹介)(第二六六一号)

 同(松野信夫君紹介)(第二六六二号)

 同(松本龍君紹介)(第二六六三号)

 同(山口富男君紹介)(第二六六四号)

 同(荒井聰君紹介)(第二七三八号)

 同(石井郁子君紹介)(第二七三九号)

 同(大出彰君紹介)(第二七四〇号)

 同(古賀一成君紹介)(第二七四一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二七四二号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二七四三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二七四四号)

 同(篠原孝君紹介)(第二七四五号)

 同(下条みつ君紹介)(第二七四六号)

 同(田中慶秋君紹介)(第二七四七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七四八号)

 同(土井たか子君紹介)(第二七四九号)

 同(中川正春君紹介)(第二七五〇号)

 同(永田寿康君紹介)(第二七五一号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第二七五二号)

 同(牧野聖修君紹介)(第二七五三号)

 同(松木謙公君紹介)(第二七五四号)

 同(村越祐民君紹介)(第二七五五号)

 同(横路孝弘君紹介)(第二七五六号)

 同(横光克彦君紹介)(第二七五七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二七五八号)

 国土交通省の地方整備局等の機構拡充及び必要な職員の確保に関する請願(今野東君紹介)(第二六六五号)

 同(荒井聰君紹介)(第二七五九号)

 同(大出彰君紹介)(第二七六〇号)

 同(奥田建君紹介)(第二七六一号)

 同(古賀一成君紹介)(第二七六二号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二七六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二七六四号)

 同(篠原孝君紹介)(第二七六五号)

 同(下条みつ君紹介)(第二七六六号)

 同(田中慶秋君紹介)(第二七六七号)

 同(手塚仁雄君紹介)(第二七六八号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二七六九号)

 同(土井たか子君紹介)(第二七七〇号)

 同(永田寿康君紹介)(第二七七一号)

 同(羽田孜君紹介)(第二七七二号)

 同(計屋圭宏君紹介)(第二七七三号)

 同(松本剛明君紹介)(第二七七四号)

 同(山口富男君紹介)(第二七七五号)

 同(横路孝弘君紹介)(第二七七六号)

 同(横光克彦君紹介)(第二七七七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二七七八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案起草の件

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省海事局長鷲頭誠君、港湾局長鬼頭平三君、政策統括官矢部哲君、海上保安庁長官深谷憲一君、警察庁警備局長瀬川勝久君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省条約局長林景一君及び財務省大臣官房審議官藤原啓司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。

 きょうは、冒頭、一般質疑という形態をとっておりますが、本来、この後上程されます特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案、これについて集中的に質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 これは、私たち民主党とそれから与党の方で、同じ危機感といいますか、一つの今の外交情勢の上に立って、船舶を日本の国家の意思によってコントロールしていくことが必要であろう、そういう共通認識の中で、お互い法案を提出させていただいておりました。その結果、それぞれ目的とするところが同じだということ、それと同時に、一番外交的に効果のある、いわば内閣総理大臣、これが外交の専権を担っておるわけでありますので、その内閣が、使い勝手がいいといいますか、フリーハンドをできるだけ与えて、外交効果が上がるような中身にしていこうということ、この大きく二点で共通項を見出して、一つの案にまとまったということであろうかと思います。

 その上に立って、本来、原点に戻って考えていけば、これは本当に、軍事的手段で外交を進めるということを放棄した日本の立場からいけば、前の経済制裁に関しても同様でありますが、こうした法律を政治的にしっかりと使っていくことによって、今の特に北朝鮮との情勢をひとつ新しい展開に向かって進めていこう、そういう意図の中でこの法律を使っていってもらいたい、あるいは使っていくべしということ、この気持ちが私たちの中にあります。

 ですから、冒頭指摘をしておきたいのですが、今回の小泉総理の訪朝の中で、早々に、経済制裁あるいはこうした船舶のコントロールということに対して、それを使う意思がないというような、もう最初から外交カードを放棄したような発言があったわけでありますが、このことに関して、いかに外交がわかっていないか、我々が環境づくりをしておるにもかかわらずそうした流れをくんでいないという今の小泉総理の姿勢に対して、強くまず冒頭抗議を申し上げておきたいというふうに思っております。

 以上申し上げた上で、まず、実態の方から一つ一つ確かめていきたいというふうに思います。

 現在、北朝鮮との貿易、人の交流あるいは資金の流れ、金と物と人の流れというのは実態としてどうなっているのか、そこのところから政府のサイドに聞いていきたいというふうに思います。

七条大臣政務官 お答えさせていただきます。

 財務省の方としましては、物の流れという意味で、貿易の中での北朝鮮に対する貿易につきましては、輸出総額は百六億円でございまして、前年に比べて三五・九%の減少をいたしております。輸出品目は、自動車など輸送用機器あるいは織物用糸、これは背広の生地のようなものが入っておりまして、繊維製品が中心であります。

 それから一方で、輸入総額は二百二億円で、前年に比べて三一・三%減少をいたしております。輸入品目は、アサリあるいはカニ、ウニというような魚介類や、先ほど申し上げました衣類、背広の生地がそのまま背広に変わって入ってくる、そういう附属品が中心になっております。

 昨年の北朝鮮からの魚介類だけを特に取り出してみますと、輸入額が九十一億円、うちアサリが四十五億円、カニが二十二億円、ウニが九億円相当、こういうようなことでございます。

 それから、先ほど先生、お金の方の流れも言え、こういうようなことでございましたから、送金の状況についてでございますが、外国向け送金につきましては、外為法上、十五年の四月以降は三千万円相当額を超える送金が支払われることについて報告の対象となりますが、十五年の四月一日以前の場合は五百万円ということでありました。そういうことを勘案して申し上げますと、平成十五年度中に報告のあった北朝鮮への送金の合計は約八千万円となっております。

 それから、送金ではなくして現金を携帯して持ち出す場合、現金の持ち出しについてでございますけれども、これは百万円相当額を超える金額の持ち出しについて届け出が必要でございまして、平成十五年度中に届け出のあった北朝鮮への現金持ち出しについて集計いたしましたところ、約二十六億円となっております。そういう状況でございます。

実川副大臣 法務省関係といたしましては人の流れが主たるものになると思いますけれども、北朝鮮との人的往来につきましては、平成十五年には、北朝鮮からの新規入国者数が七十三人でございました。

 また、在日韓国・朝鮮人につきまして、再入国許可を受けて北朝鮮へ出国した数及び北朝鮮から再入国した数の統計は存在しませんけれども、我が国と北朝鮮との間を往来する万景峰92によって北朝鮮へ出国した在日韓国・朝鮮人は一千五百七十六人、我が国に入国した在日韓国・朝鮮人は一千四百七十三人でございました。

中川(正)委員 先ほどの話で意外に思ったのは、金の動きなんですが、現金の持ち出しが二十六億円という額に上るということに対して、これは人が持って北朝鮮に運んだという意味だと思うんですが、一般の送金が八千万円ということになっていますね。これはどうしてこれだけの格差が出てくるのか。恐らく、第三国へ送金したものがまた北朝鮮へ行ったというような解釈で、数字に上がってこない部分が大きいと考えるのが正しいのか、それとも、もともとこれぐらいのところなんだというふうに理解をしなければいけないのか。ここのところはどうなんですか。ここだけちょっとはっきりさせてください。

七条大臣政務官 第三国を通してというケースについては我が省で把握ができておりませんが、外為法という形の中で、先ほど申し上げましたように、平成十五年の三月までは五百万円相当額までは報告しろ、そして平成十五年の四月一日以降は三千万ということでございますが、平成十二年度、十三年度、十四年度、十五年度、この四年間の推移したものを調べてみますと、平成十二年度は四億四千五百万、これは件数にして三十一件、平成十三年度は五億八千七百万で、件数にして二十五件、十四年度が三億七千七百万で二十八件、そして十五年度になりましては、先ほど言いましたように三千万相当額以上の送金ということの報告ですから、七千九百万円、約八千万円、こういうふうになるのが実態でございます。

中川(正)委員 貿易額だけで輸入が二百二億円あるということが片方で出ていて、送金がこれぐらいしかつかんでいないということ、これ自体は、今の財務省の統計が全く当てにならないということですね。実態をつかめていないんですよ。

 そういう中で、すべて、いわゆる為替法の改正もやったわけですが、実態が理解されていない中でこれを運用するというのはこれも情けない話でありまして、今事務方からいろいろ耳打ちがありますが、もうちょっとこれ、ちゃんとした答えにしてください。

七条大臣政務官 今、貿易相当額、こういうお話がございましたけれども、今の先生の場合は、お金の流れあるいは物の流れ、こういうようなことで物の流れの部分とお金の流れの部分が出てくるわけですけれども、貿易という形からいいますと、今の現金の流れの場合、先ほど申し上げた八千万、こういうような話については、電話をかける、あるいは電話をかけて向こうが、日本の電話を向こうの電話の中から回線をつないでしまうとその電話の使用料のようなもので出てくる、こういうお金が主な、八千億近くある。

 ですから、物の流れの中に考えるかどうか、お金の流れで考えるかということもありますけれども、そういうようなものが入っている、これも含めて考えていただければ。

 八千万円です。済みません、八千万円でございます。

中川(正)委員 ますますわけがわからなくなってきました。ちゃんと整理して答えてください。

七条大臣政務官 もう少し整理せよということでございますが、もう少し詳しく申し上げますと、現金を持ち出していくような方もあるとさっき申し上げましたが、これの方も申し上げますと、金額が、これも十二年、十三年、十四年、十五年、こういうふうにありまして、十二年が三十九億二千三百万円、十三年度が三十八億四千万円、十四年度は三十五億九千八百万円、十五年度が二十五億七千六百万円。これは、年ごとに額はだんだん減ってきております。しかし、件数の方が大分ふえてくる、こちらの方はアップしておる、こういうような現状でございます。

 今先生申し上げていただいたことなんかをこちらは報告いたしますけれども、報告の届け出の対象となっていない送金の状況については、これは把握をしておりません。申しわけありませんが、そういうことで答弁させていただきます。

中川(正)委員 輸出だけでも百六億、あるいは輸入の方が二百二億、こういう話がさっきあったんですよね。これに対する金銭の移動というのは確実にあると見なきゃいけないわけでしょうね。それに対して、現金の流れ、これは二十六億持って運ぶということでありますが、送金したのが八千万円、これしかないということなんですね。この矛盾なんですよ、本来説明しなきゃいけないのは。だけれども、その程度しか現実の認識がないというか、問題意識がないという程度のことであろうというふうにきょうは理解しておきます。普通の質疑と違って、先に進めていくことの方が大事だと思うので。

 こんな情けない状況ではいけませんよ、財務省。外交の背景の中で、今問題になっている国ですから、ちゃんと数字ぐらいしっかりと把握を、これは表に出た数字ですが、しなきゃいけないということ、これを指摘しておきたいと思います。

 次に、それは表に出た金額ということでありますが、本来私たちが問題にしなきゃいけないのは、アメリカから名指しでテロ国家という異名をとった、そうした中身のある国でありますから、非合法の取引、特に、外貨を稼ぐために、国家を背景にしながら、麻薬の製造であるとか、あるいは非合法な生産といいますか、そうしたものを北朝鮮の中でやって、それを密輸という形で日本に持ち込む、あるいは世界じゅうにばらまいているということ、このことがよく指摘をされます。

 これの現実的な把握をどれぐらい日本の国家としてやっているのか、いわゆる調査当局としてはその辺の認識をしているのか。これは改めてここで聞いておきたいというふうに思っております。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮による我が国に対する薬物の密輸の状況についてのお尋ねというふうに思いますけれども、過去五年間、平成十一年から十五年の薬物の大量押収事案についての統計を見ますと、北朝鮮を仕出し地とする、要するに北朝鮮から出てきた覚せい剤でございます、この押収量は千二百六十四・二キログラムということになっておりまして、これは、我が国の覚せい剤の全押収量の三〇・四%を占めている、こういう状況にございます。

中川(正)委員 非常に大きな額になるわけでありますが、これは、押収した、差し押さえたものですね。

 それから推しはかって、全体の像、どれぐらいのものがこの日本に今入ってきているのか。もう一つ、それを金額に直すとどれぐらいのものになるのか、末端価格で。そのところを詳しく述べてください。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 我が国に入っている覚せい剤といいますのは、我が国では、押収される覚せい剤というのはこれはもうすべて外国から密輸入されたものだというふうに私ども思っております。国内で製造されました覚せい剤というのは、現時点ではまだ把握をされておりません。かつては我が国国内でも生産をされておりましたが、現在はすべて外国から密輸入されたものということでございます。

 その総量というのは、なかなかこれは難しい御質問でございまして、全体がどのぐらいなのかということについて、今にわかにお答えするのはなかなか難しい状況だということを御理解いただきたいと思います。

 それから、北朝鮮の覚せい剤でございますが、私ども、一つの大きな特徴として申し上げておきたいのは、一回ごとの押収量が極めて大量であります。それから、純度が非常に高いという特徴がございます。そしてまた、そのパッケージといいますか、包装が非常に整った形で行われている、こういうことが特徴としてあるというふうに思います。

 したがいまして、北朝鮮が国家として覚せい剤の密輸入、製造に関与しているということを断定するだけの材料は持ち合わせておりませんけれども、そういった状況でございますので、高度の技術水準及び相当の資金を有する組織が関与してこれらの犯行がなされておるものというふうに理解をしております。

 それから、全体で金額的にいかほどになるのかというお尋ねもございましたけれども、覚せい剤の値段といいますのは、卸の値段、末端の値段、それからそのときの状況等によりまして大分変動いたしますので、これも一概に申し上げられませんが、一応基準的なものとして、最近では一グラム当たり約六万円ぐらいで取引をされているものというふうに理解をしております。

中川(正)委員 これの密輸ルートなんですが、これは、今回、船舶を入港禁止することができるという法律を準備しているわけでありますが、船舶を通じてのもの、あるいは飛行機を通じてのもの、さまざまにあると思うんですが、実態としてはどうしたルートが一番大きいんですか。

瀬川政府参考人 密輸入ルートについてはいろいろございまして、その割合が何が何%というふうに、これも一概に申し上げるのは困難でございますけれども、今まで検挙した事例といたしましては、例えば、奄美沖の不審船事案のときにも取りざたをされましたけれども、工作船等を通じまして洋上で取引をするというような事案がございます。

 それから、中国の漁船あるいは日本の漁船等が北朝鮮の沖合まで行きまして、いわゆる瀬取りという状況で、向こうから覚せい剤を受け取ってくるというような状況もございます。

 それから、我が国に入港いたします北朝鮮船籍の船舶、貨物船等々に積み込まれて、それが非合法な形で国内に持ち込まれるというような形態のものについても承知をしているところでございます。

中川(正)委員 時間にも限りがありますので、次に政治的な問題に移っていきたいというふうに思っております。

 先ほどちょっと触れたように、今回の拉致、五人の家族の皆さんが帰ってきたということ、これについては本当によかったというふうに思いますし、まだ解決の済んでいない曽我さんのジェンキンスさんの問題、それから行方不明者、これは十人だけではなくて、百二十人、三十人という数が指摘をされておりますが、そういう問題。あるいは、人権ということから考えていくと、九万五千人の在日の帰還者あるいはそれに伴う日本人妻、この人たちが非常に厳しい差別の中で北朝鮮で生活をしているという実態。こういう問題を、これからまだ、しっかりとした交渉過程にのせていかなければならない、こういうことだと思うんです。

 その上でもう一度確かめさせていただきたいんですが、経済制裁の発動はしないということの小泉総理の真意、そして、外務省として、今回私たちが用意している、船舶を規制していくというこのカードをどのような形で運用していこうとしているのか。政府サイドに立って今の状況を説明しながら、この小泉訪朝でやった大きな過ちというものに対して、改めて、そうじゃないんだという説明をする必要があるんだろうと私は思うんですが、そこのところを外務省のサイドから答えていただきたいというふうに思います。

松宮大臣政務官 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、従来より、北朝鮮に対しましては、対話と圧力の方針のもとで、諸問題の解決に向けまして、北朝鮮の前向きな対応あるいは誠意ある対応を引き出すことが重要である、こういうスタンスをとってまいりました。

 そういう基本的な考え方に基づきまして、現時点では、北朝鮮に対しまして経済制裁を行うことは最も効果的な方策ではない、こういう判断に基づいて、北朝鮮に対しましても、小泉総理が、経済制裁を行う考えはないということを明らかにさせていただいた次第でございます。

 今回の総理の訪朝によりまして、日朝平壌宣言を遵守している限り日本は制裁を発動しない、こういう政府の考えの伝達を小泉総理みずからがお出しになられたことは、今申しました考え方に基づくものでございます。

 ただし、北朝鮮が、事態をさらに悪化させるような措置をとったり、あるいは日朝平壌宣言に反するような状況を仮につくり出すということをするならば、これは、いわゆる経済制裁の発動を含め、政府としても適切な対応を図らなければいけない、そういう観点からの検討をすることは、これは当然であると考えております。

 そういう文脈の中で、ただいま御審議いただいている法律も一つのカードとしては、仮にこの法律が成立するとするならば、カードとしてあり得るというふうに考えられます。

中川(正)委員 もう一つ指摘をさせていただくとすれば、平壌宣言の履行、これが本当になされているのか。違うでしょう、これは。拉致問題の解決をしていないんですよ、まだ。もっと言えば、六カ国協議で核問題が俎上に上っていますが、これは全然進展がないんですよ。全く、これまでに話し合った部分だけが今回返ってきたというだけのことであって、これから先の交渉を考えていったら、経済制裁にしても、あるいはこの船舶にしても、大きなカードにしていかなければならないというその認識が外務省には足りない。あるいは、小泉総理自身に外交感覚がないんだということを指摘しておきたいと思うんです。

 さらに言えば、先週私はアメリカに渡って、さまざまな識者、リーダーと話をする機会があったんですが、今回アメリカにしても一番懸念をしたのは、この六カ国協議の私たちの輪といいますか、一つの連携というのを金正日政権は分断したいんだと。その中で小泉総理がねらい撃ちをされて、今回訪朝ということになった。その結果どんなことが起こったかといったら、日朝正常化交渉をやりましょうというこの部分についてコミットしてしまった。あるいは、経済制裁はやりませんよというような言質をとられてしまった。

 そんな中で、日本だけが先行して、これは正常化交渉というのは経済交流ですから、人道支援とは全く別な話、経済交流なんですよね。そういう話し合いが日本だけが先行してやられていくということについて、非常に、本音のところで、外向いてはそんな話はしませんが、本音のところで、日本の外交というのは稚拙だな、確実に金正日の手のうちに踊らされてしまったなという印象をぬぐえない、そんな指摘がありました。

 そこについて改めて指摘をしておきたいと思いますし、今回のこの船舶のコントロールをするための私たちが用意した法案、それから経済制裁というカード、この二つも、もう一回原点に戻って、しっかりとした日本の外交カードとして使っていくということ、このことを改めて申し上げておきたいというふうに思います。

 以上です。

赤羽委員長 水野賢一君。

水野委員 自由民主党の水野賢一でございます。

 北朝鮮船の入港禁止問題についてお伺いをしたいと思います。

 さて、北朝鮮船が日本の港に入港した数ということですけれども、二〇〇三年の場合をとってみますと、海上保安庁の統計だと九百九十一隻というふうに言っているわけですね、これは、どうも最近修正して九百九十二というふうに直しているようですけれども。一方で、税関の統計を見ると、これは一千七隻というふうに言っているわけであります。

 微妙なずれがまずあるわけですけれども、この入港数、どうして微妙なずれが統計上あるのか、財務省の方にお伺いをしたいというふうに思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、海上保安庁の数字と税関の数字とで若干数字に違いがございますけれども、私ども財務省税関の公表しております船舶統計におきましては、不開港を含むすべての港湾に入港する外国貿易のために本邦と外国の間を往来する船舶、いわゆる外国貿易船を計上しているわけでございます。

 一方、海上保安庁の出入港届による統計では、港則法に基づく特定港へ入港するすべての船舶を計上しておられると聞いております。

 このように、計上する対象が異なりますので、両方の統計に違いが生ずるものと思われます。

水野委員 いずれにいたしましても、年間約一千隻の船が、日本の港に北朝鮮船が入港しているわけですけれども、ところで、ここで北朝鮮船という場合は北朝鮮の国籍を有する船舶なわけであります。しかしながら、日朝間を往来している船舶というのは、必ずしも北朝鮮の国籍を持つものに限らず、例えば第三国の船、パナマ船とかそういうようなものが往来をするということもあり得るわけですし、現実にあるわけなんです。

 これについては、これは海上保安庁にお伺いをしたいと思うんですけれども、明確な統計というのは実はとっていないというのは承知していますけれども、例えば入港届とかによって、仕出し港とか直前の寄港地とかあるわけですから、ある程度確認はできるはずなわけですね。

 質問は、国籍を問わず、日本に入港した船の中で、その前に北朝鮮に寄っていた船というのは、これは数でいうとどのぐらいになりますでしょうか。

深谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 ただいま御指摘のとおり、北朝鮮籍の船という意味では統計をとってございますけれども、北朝鮮に寄港した、そういった履歴についての統計、これは実はこれまで集計してございませんので、歴年の具体的な数字は現在ございませんけれども、昨年一年間といいますか、平成十五年一年間につきまして、今回、我々の把握している範囲で調べました。

 その結果、北朝鮮の港を最初に貨物を積んで出港したもの、あるいは北朝鮮の港から直接我が国に入港した船舶、これにつきましては、年間、十五年分でございますけれども、総計で約千五百隻というふうに承知をいたしております。

水野委員 寄港した船舶ということになぜこだわるかといいますと、入港禁止法ということを考えたときに、国籍だけに対象を絞ってしまうとどうしても漏れが出てくるわけですね。というのは、もちろん北朝鮮という国家はいろいろと問題がある、そして北朝鮮船を入港禁止にするというのは非常にわかりやすいんですけれども、国籍だけを対象にすると、例えば第三国船が日朝間を荷物を運んで往来したりする場合には漏れてしまう。今約千五百隻あるという話ですから、そこから北朝鮮船の大体一千隻を抜けば、五百隻分ぐらいは北朝鮮以外の国の船が日朝間を往来している、単純に計算すればそういうことになるわけですね。

 ここも入港禁止の対象に、実は自民党並びに公明党さん、そして民主党さんとの合意で、きょう提出をさせていただく法案の中では、寄港した船舶ということも入港禁止の対象にし得るということが法案の第二条の第二項第二号に書かせていただいておるということで、そのことを強調させていただきたいというふうに思います。

 さて、寄港した船舶ということに今こだわらせていただきましたけれども、これに着目をするのは、船舶の世界の場合、便宜置籍船というのが非常に、往々にしてそういうことが行われる。これは、普通、税金を逃れるために籍だけを税金の安い国、パナマとかリベリアとかに置くというようなことでありますけれども、これ、もし入港禁止法が入港禁止の対象にするのを国籍だけに限っていると、今度は税金逃れならぬ入港禁止逃れのために国籍を移すというようなことが可能性として出てくるかもしれない、そういうようなことから、便宜置籍船を防ぐためにも寄港要件というのを対象にしたんです。

 ちょっとここでひとつ試算をしていただければと思うんですけれども、例えば一番有名な北朝鮮船、万景峰号でございます。これを日本船に籍だけ北朝鮮から置きかえるという、便宜置籍するというようなことを仮にやった場合、これはもちろん所有が日本人じゃなきゃいけないとかいろいろな条件はあるわけですけれども、これは簡単にクリアし得ますから、こういうことを仮にやった場合、万景峰号ぐらいのトン数の船を便宜置籍したときに、お金としてはどのぐらいかかるのか。例えば登録免許税だとか手数料とかいろいろありますけれども、国土交通省の方に、試算してみるとどのぐらいかかるのかをお伺いしたいと思います。

鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘されましたとおり、日本に移すためには日本国民あるいは日本の会社が登録をする必要がございまして、そういう前提で日本船舶になりますと、各種法令、まず登録とか、それからトン数をはかる、船舶検査、こういう手続に要する費用が、万景峰号クラスでございますと、合計で約百二十万円程度かかります。

 それから、先生今お話がございましたとおり、税金につきましては、登録免許税と固定資産税の二つが課されることになります。仮に、万景峰号の新造時の船価を八十億円と推定いたして税額を計算いたしますと、登録免許税が八百万円、それから固定資産税が年間三百万円ということになりまして、これらを足し上げますと、税金と登録費用を合わせて千二百万円以上、最初の年には費用がかかるというふうに想定されます。

水野委員 日本の場合は税金が高いわけなんでしょうけれども、例えば、この同じ万景峰号をパナマ船籍に変えたりした場合というのは、仮に試算すればどのぐらいのお金でできますでしょうか。

鷲頭政府参考人 万景峰号クラスでいわゆる我が国に置く場合と、パナマ籍を取得する場合との税の額を比較いたしますと、日本籍の場合には、先ほど申し上げましたように、一千百万円かかりますが、パナマ籍の場合には税額が約百万円でございまして、一千万円の差が出てまいります。

 検査、登録等にかかわる経費については、ちょっと私ども把握できておりませんので、そこのところは今申し上げるわけにはまいりません。

水野委員 いずれにしても、百万円程度で籍は変えられるということであると、非常に簡単にできるわけですので、そういう便宜置籍船を防ぐためにも、入港禁止法の要件の中には、国籍だけではなくて寄港したということ、北朝鮮に寄ったということも入れているということの意義を強調させていただければというふうに思います。

 さて、今の万景峰号、最大の不審船であるというふうに言われておりますし、さまざまな証言などから、この船は工作活動や不正行為に関与していたということが証言でもあるし、そういう疑惑というのが常にささやかれているわけですけれども、警察の把握している範囲で、この船舶が不正や工作活動などに関与していたという事例としてはどういうものがありますでしょうか。

瀬川政府参考人 万景峰号がかかわった不正事案ということでございますが、幾つかございます。

 まず第一に、これは昨年私どもの方で検挙した事件でございますが、朝鮮労働党統一戦線部に所属する北朝鮮の工作員が、虚偽の氏名、生年月日で外国人登録を行うとともに、こうした虚偽の氏名等を利用して我が国に上陸後不法に在留していたということで、警視庁公安部が、昨年の二月でありますが、公正証書原本不実記載、同行使及び入管法違反で検挙した事件がございます。

 この過程で、この工作員は、我が国を拠点として韓国に対するさまざまないわゆるスパイ活動等を行っていたわけでございますが、この工作活動についての北朝鮮本国からの指示、指令の伝達が万景峰号により行われていたということが明らかになっております。具体的には、その工作の指令書を船長が持ってきて、これを船内で受け取る、あるいは万景峰号に乗ってきた指導員から直接指示を受けるといったような状況であるということが判明をしております。

 さらに、違法行為ということで申し上げますと、一つは、北朝鮮関係の安全保障関連物資の不正輸出事案がございます。

 これは、例えば、平成十年の事件でございますが、潜水用具の部品であるスキューバ用ダブルバルブ、これを万景峰92で不正輸出した事案の事件検挙がございます。それから、昨年の六月、ジェットミルのイラン向けの不正輸出事案の捜査の過程で、平成六年に北朝鮮向けにこのジェットミル等が不正輸出されていた事案に万景峰が使われている、こういった事案が把握をされているところでございます。

 また、万景峰号以外の北朝鮮船舶につきましても、先ほどちょっと申し上げましたけれども、覚せい剤の密輸入事案がありましたり、またあるいは、サリンの原料ともなる弗化水素酸それから弗化ナトリウム、こういったものを北朝鮮船籍の貨物船により北朝鮮向け不正輸出した事案の検挙などがあるところでございます。

水野委員 万景峰号に関しては、今話にあったように、まさに最大の不審船であるというだけではなくて、今のようないろいろな事件に関与していることが明らかなわけですから、最大の工作船と言っても過言ではないと思いますけれども、ほかの船もいろいろ疑惑というのは当然あるわけですね。

 もちろん、これはすべての港で非常に厳格なチェック体制、入管とか税関とか、これが行われればいいわけですけれども、しかしながら、予算的にも物理的にも人員的にも、これは、言うはやすくしてなかなか行うはかたい部分もあるのではないかというふうに思います。そのためにも、そうした不正行為をもとから絶つためにも、入港禁止ということを、そもそも入港禁止という形で一律に規制をできるという手段をやはり政府が持っておくということは極めて大切だと思うわけです。

 税関の体制についてちょっとお伺いをしたいんですけれども、例えば、万景峰号に対して、最近非常に厳格な警備体制をしいているということは、少なくとも最近はわかるわけですけれども、国内には、外国貿易に開いた港、つまり北朝鮮船も自由に入っていい港というのは、つまり開港というのは百二十あるわけですが、この百二十の開港の中で、典型的な、シンボリックな例として聞きたいのは、エックス線の検査装置などが配備されているのはどのぐらいの港にありますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、全国で開港百二十あるわけでございますけれども、輸出入貨物の検査を行うために、業務量あるいは貨物の形態などの行政需要を勘案いたしまして、今申し上げました百二十港のうち四十の開港にエックス線検査装置を配備しているところでございます。そのほかの開港につきましては、移動式の、車に載せる車載型のエックス線検査装置の活用等によりまして、厳正な水際取り締まりに努めているところでございます。

水野委員 今のお話だと、四十にある、その他も何とか移動式ので対応を一生懸命やっているということでしょうけれども、裏を返して言えば、八十の港には、そういう装置というのは常設的には置いてないというようなこともあるわけでございます。やはり、繰り返しになりますけれども、こうした不正を絶つためには、もとから絶つという点で、入港禁止法というものを整備しておくということの必要性というのを改めて感じるわけです。

 さて、この入港禁止法というのを考えたときに、当然、日本は国際社会の一員として国際条約に抵触するようなものをつくってはいけないというふうに思うわけですけれども、私は、今提出しようとしている入港禁止法というのは国際条約上何ら問題はないと考えています。

 これは外務省の方に確認をしておきたいと思うんですが、日本も一九二六年に加盟した海港ノ国際制度ニ関スル条約及規程というのがございます。この条約を見ると、一見、特定のどこかの国の船舶だけを特別に入港拒否するとなると抵触するんじゃないかというような意見も一方ではあるのではないかと思いますけれども、私は、北朝鮮に対してこの法律を発動する限りにおいて、乱用という意味ではありませんよ、一定の必要な際において発動する限りにおいて、この条約と何ら抵触するものはないというふうに考えますけれども、条約局、いかがでしょうか。

林政府参考人 一般国際法上、各国は、不合理または恣意的な扱いなどによって権利乱用とならない限りは入港に関して一定の規制を行うことができるというのが基本原則としてまずございます。

 その上で、御指摘の海港ノ国際制度ニ関スル条約及規程につきましては、これは御指摘のとおり、基本的には、海港につきまして、自国船舶または第三国の船舶と均等な待遇を与えるということを規定しておりますけれども、その一方で、安全保障上の理由等によりまして、そのような待遇の供与を停止するということも認められておるということでございまして、仄聞しております法案に基づきまして、我が国の平和及び安全の確保のため特に必要がある場合に所要の措置をとるということは、基本的に問題がないというふうに考えております。

 いずれにせよ、承知しておりますところでは、この法案におきましては、念のために、施行に当たって、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないように留意というようなこともビルトインされておりますので、政府としては、国際約束の義務に整合的に国内法を運用するということで、この義務との関係の問題は整理できるのではないかというふうに考えています。

 それから、北朝鮮との関係ということについてのお尋ねでございますけれども、北朝鮮は、今御指摘の条約規程というものを締結しておりませんで、我が国と北朝鮮との間で、船舶の入港等についての国際約束に基づく義務というものは特に存在しておりません。その意味で、我が国が入港規制をあり得べき法案に基づきまして行うということが北朝鮮との関係で問題になることはないというふうに考えております。

水野委員 国内法との関係で伺いたいと思うんですけれども、私は、入港禁止法は、国内法上問題ないし、憲法との関係でも何ら問題はないと考えていますけれども、一部には、憲法二十二条の規定する居住、移転、もしくは海外渡航の自由との関係で疑義を唱える人も中にはいるかもしれません。これは、ここで言う居住とか移転とか海外渡航の自由というのはもちろん大切な自由ではあるけれども、しかしながら、ありとあらゆる交通手段というものを政府が保障していなければいけないなどという意味のわけがないわけであって、私は、入港禁止法をつくることは何ら憲法上問題ないと考えますけれども、衆議院法制局、いかがでしょうか。

臼井法制局参事 衆議院法制局です。お答え申し上げます。

 最高裁判所判例を引用させていただきますけれども、最高裁判所判例によれば、外国へ一時旅行する自由は、憲法第二十二条第二項の外国へ移住する自由に含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものでなく、公共の福祉のための合理的な制限に服するものと解すべきであるとされているところでございます。

 今国会に与党あるいは民主党の方から提出されました法律案による特定船舶などの入港を禁止する措置につきましては、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めた場合などに、閣議決定により内閣がとるものとされているところでございまして、しかも、その措置につきまして、国会が承認するということになっております。したがって、極めて高い国益上の判断に基づいて行われるとされておるところでございます。

 また、その入港禁止措置は、特定船舶などについて期間を定めて行われることとされており、特定の外国への渡航の自由は、その手段の一部が一定期間制限を受けるにすぎないものとされているところでございます。

 以上のことから、この特定船舶などの入港禁止措置は、極めて高い公共性に基づくものであり、かつ、その規制も必要最小限の合理的な範囲にとどまっており、十分合憲性が推定できるものと思っているところでございます。

水野委員 今、非常に明快に、十分合憲性があるということをおっしゃっていただいたと思うんですけれども、さて、一点お伺いをしたいのは、地方自治体が最近港湾条例などで入港禁止を定めるようなことがある。これは港湾条例の中で、例えば東京都なども北朝鮮船などを念頭に置きながらそういうようなものを定めたりしていますけれども、これは自治体がそういうことをするのは可能かどうか、港湾局の方にお伺いしたいと思います。

鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもの所管しております港湾法、港湾の適正な管理及び運営を図る上で、港湾管理者が必要な規制を行うことを認めておりまして、港湾管理者は、例えば、安全上問題がある船舶が港湾を利用することにより港湾施設が損傷または汚損するおそれがある場合や、あるいは混雑している港に長期間船舶を停泊させることによって港湾の効率的な利用が妨げられる場合など、港湾の適正な管理及び運営に支障が生じると認められるときには、港湾管理条例等に基づき、港湾施設の使用を拒否することが可能でございます。

 他方、港湾法は、公共施設である岸壁等の港湾施設の利用については、何人に対しても不平等な取扱をしてはならないという規定を設けておりまして、港湾管理者は、特定国に関係する船舶という理由だけで、港湾管理条例等に基づき、港湾施設の利用を拒むことはできないと考えております。

 ただ、今お尋ねのありました地方自治体、事例として東京都の条例がお話に出ましたけれども、今回の東京都の改正条例におきましては、都民の安全を確保することを目的として、密輸、密入国、テロ行為等の犯罪に関与した船舶の入港を制限しようとする規定が設けられましたが、これは、先ほど申し上げましたような港湾の適正な管理運営という公物管理権に基づく規制とは別途の観点から盛り込まれたものであると聞いております。また、この入港制限は、船舶の国籍にかかわらず、その犯罪関与性に着目して行われるものであり、特定国に関係する船舶を排除することを目的としているものではないと聞いております。

 いずれにいたしましても、今回の東京都の改正条例等、地方公共団体にこのような動きがございますが、そういった規定は、内容としては、港湾管理という、港湾法で定める範疇を超えたものであるというふうに私ども理解をしております。

水野委員 時間の関係で最後の質問にしたいと思いますけれども、先ほど中川議員からも質問がありましたけれども、総理がこの前、平壌宣言を遵守する限り制裁を発動しないということを金正日に対して約束したそうでございます。

 私も、北朝鮮という国が拉致、核開発、ミサイル開発、こうした部分で誠意ある態度を見せない、そして相も変わらず身勝手な理不尽な主張を繰り返しているという中で、政府がみずからの手足を縛るような形のことを言うのは、いささか疑問を持っているものでございますけれども、ここで外務省に最後にお伺いをしたいのは、総理のその発言というのは、経済制裁一般に対して言ったのか、それとも、船舶の入港禁止をするとかしないとか、送金の規制をするとか貿易の制限をするとか、そういう具体的な、そういうことに対しては発動をするとかしないとかいうような具体的な個々別々のことに対して何か約束するような発言をしたのか、その辺についてお伺いをして、私の質問を終了したいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 総理が先般の日朝首脳会談において述べられましたことは、全般的に北朝鮮側が日朝平壌宣言を遵守している限りにおいては、経済制裁措置を発動する考えは有していないということで、これは一般論として、いわゆる経済措置の一般論について、それはまた向こうが、北朝鮮側がきちんと今後とも平壌宣言を守っていく、そういう限りにおいての発言でございました。

水野委員 以上です。

赤羽委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、一般質疑という形でございますが、これから提出される予定となっております特定船舶の入港禁止法案についてということに関連して質問させていただきたいと思います。

 先般総理の訪朝がございまして、五人の家族の方々が戻ってきた。さらに、曽我さんの御家族を初め、十人の行方不明者、さらには特定失踪者、こういった方々の問題というのを早急に解決しなければいけない、これは国民だれもが思っていることであると思います。

 そういった中にあって、ただ単に、外交交渉、そこを明確にしてください、またはそれをしっかりと日本に帰国させてくださいと言っているだけではなかなからちが明かない。そういうような中にあって、やはり外交のカードというものをしっかり持たなければいけない。

 今国会においては、まず外為法の改正、送金の停止という形で一つカードを持つことができましたけれども、今回、この入港禁止というカードはこれまた重要なカードになるのではないか、私はそのように思っております。

 しかしながら、時間の限られた中での質問でございますので、基本的なことをまずお伺いしたいと思いますが、そもそも、国交のない北朝鮮、この船舶、国交がないわけですから、認める必要はないのではないか、こういうような考えを持っている人も多くいると思うんです。

 なぜ国交のない北朝鮮船舶の入港を今までも認めてきたのか、この点についてまずはお伺いをしたいと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 国際海運におきましては、開港におきまして外国船に対して自国の船舶あるいは第三国の船舶と均等な待遇を与えるということによりまして、自由な貿易を促進するということが広く行われてきております。

 我が国におきましても、これまでのところ、特定の外国籍であることのみを理由として開港への入港を禁止するような法律は存在しておりません。したがいまして、国交のあるなしにかかわらず、各国に広く開港に対するアクセスを認めてきているところでございます。

高木(陽)委員 四方が海に囲まれている日本、海運国家日本でございますから、開港という考え方の中で、どの船舶でも自由に入れる、これはこれで一つの考え方、方針としてはいいと思うんですね。

 その上で、基本的には世界各国海でつながっておるわけですから、そういった開港の原則というものをどの国も持っている中にあって、ほかの国で、特定の国、この国はだめですよというような形で船舶の入港を規制するような法律を持っているところはあるかどうか、この点も確認をさせていただきたいと思います。

矢部政府参考人 国土交通省といたしましては、特定の国の船舶の入港禁止を明示的に規定した法令が諸外国におきまして広く存在するとは聞いておりませんけれども、少なくとも米国におきましては、安全保障や経済制裁を目的として、特定の国に関係する船舶の入港を禁止していると承知しております。

 米国におきましては、通称マグナソン法と言っておりますが、この法律によりまして、国家安全保障の観点から、キューバ、リビア等の特定の国の船舶の入港が原則として禁止をされております。

 また、これに加えまして、キューバに対する経済制裁措置として、これは通称トリチェリ法と言っておりますが、この法令によりまして、貿易等の商取引に従事するためキューバの港湾に寄港した船舶について、寄港した後、その後六カ月の間は米国の港湾への入港を禁止する、こういう法令がございます。

高木(陽)委員 今御説明があったように、米国において、マグナソン法またはトリチェリ法という形で特定の国の船、これをストップさせる、これは今のお話にありましたように安全保障上の問題。

 今回提出を予定されておりますこの入港禁止法案、そしてまた今国会で成立した外為法の改正案、このいずれにしても、我が国の安全に関するという指摘をしながらこの法律案というのが成り立ってきている。そういった意味から考えますと、日本だけ特別なことをやっているわけではなくて、もう既に米国ではそういったものがあるということを考えますと、この船舶の入港禁止法案というのは重要な形となっていくのではないかな、このように思います。

 その上で、これまでもさまざまな法律の中で入港というのをとめることができなかったのか。特に、この委員会でも審議をさせていただきました、今国会で成立をした国際船舶港湾保安法及び改正油濁損害賠償保障法、入港禁止の規定がありますけれども、これらの法律で北朝鮮船籍の船舶の入港禁止措置ができるのではないだろうか、こういった点も指摘はされると思うんですが、この点についてはいかがでしょう。

矢部政府参考人 ただいま、今国会でさきに成立をいたしました国際船舶港湾保安法とそれから改正油濁損害賠償保障法についてのお尋ねがございました。

 まず、国際船舶港湾保安法によります入港禁止命令でございますけれども、これは、自己警備が不十分である船舶に対して、その船舶に起因して、港内にありますほかの船舶や港湾施設に危険が生ずるおそれがある場合に行うものでございます。

 また、改正油濁損害賠償保障法は、これは座礁事故や油濁事故が発生した場合に船舶の撤去や油の処理が円滑に行われるように保険の義務づけ等を図るものでございまして、保険に加入していない船舶について入港を禁止するというものでございます。

 このように、これらの二つの法律によります入港禁止の規定は、船舶の国籍に着目をいたしまして特定国の船舶を排除しようとするものではございません。

高木(陽)委員 今、特定の国に対してとめるものではないという御指摘がございました。

 ただ、北朝鮮船籍がその保険にしっかりと入っているかどうか、ここら辺のところも、この委員会で質疑をしたときにも指摘をさせていただきましたけれども、しっかりとチェックをしながらやっていただきたい。

 この特定船舶の入港禁止法案が通った段階で、カードとしては有効に活用していただかなければいけないんですけれども、それ以前の法律もしっかりと駆使をしながら、ただ、国土交通省の関連からいいますと、安全保障という観点、これはなかなか持っていないんじゃないか、いわゆる実務的な部分、油が漏れたら被害が甚大になる、こういった指摘の中でやると思いますけれども、この点もしっかりと運用していただきたいということを指摘させていただきます。

 あと、外務省の方にもお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほどから各委員の指摘がございました。

 今回、総理が経済制裁のカードを切らない、その前提が平壌宣言を遵守していればと。これは読み方、とらえ方によって、私は逆のとらえ方というか、しているのは、平壌宣言を遵守していればこれは発動しないんだけれども、逆に平壌宣言が遵守されなければすぐに発動する、こういうふうにもとらえられるわけですね。

 その発動する、しないの権限、または遵守しているか、していないかという認定、これは我が国の方が権限を持っておりまして、この点はしっかりと見定めながら有効に使っていただきたいと思いますし、どうしても発動しないというニュアンスだけが先行してしまいまして、これがかなり誤解を生んだんじゃないかな、このようにも思います。

 その上で、今回の入港禁止法というものができた場合、今後の北朝鮮外交に対しまして有効なカードとして私は機能するというふうに思いますけれども、この点についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに政府は、北朝鮮外交、北朝鮮との関係におきまして、これまで対話と圧力ということでその外交を進めてまいりました。そして、その目的はもちろん、さまざまな問題を解決するということのために何が大事であるかということでございます。

 そういう意味で、今回、日朝首脳会談において、まさに委員御指摘のとおり、日朝平壌宣言を遵守している限りにおいて、こういうことでございまして、それは逆に言えば、日朝平壌宣言に沿った行動、これを北朝鮮に強く促す、求めるという趣旨でございます。

 そしてまた、委員御指摘のとおり、北朝鮮側におきまして、この今御審議の法案についても非常に大きな関心を持っているということは、もう御案内のとおりでございます。

 そういう意味では、今後ともそうした流れの中でまさに平壌宣言の履行を迫っていく、そういうことで我々としても考えているということでございます。

高木(陽)委員 今回、日朝の首脳会談が行われて五人の家族が帰ってきた、これは一歩前進だというふうに私は認識しております。

 その上で、まだまだ解決していない問題というのが山積みされておりますので、そういった意味では、この入港禁止の法律というカード、その前にできました外為法のカード、カードというのは持っていることに一番大きな影響力を持っている。カードというのは切ってしまいますと、向こうは向こうで対応を考えてしまいますので、切るぞというところが一番プレッシャー、圧力になってくると思うんですね。

 そういった意味では、総理もいろいろなインタビュー等々で答えられましたけれども、立法府として、国会の意思としてこの法律というものをしっかりとつくって、今後の日朝の諸問題というものを早期に解決していただきたい。なかんずく、この拉致問題というのは本当に多くの家族の方々が長い間苦しんでこられた問題でございますし、この問題を最優先課題としながら解決をしていただきたい。

 そしてまた、私たち国会のメンバーも、この問題に対して、また多くの国民にそれを訴えかける中でこの問題解決を図っていくということを確認し合いながら、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 穀田恵二君。

穀田委員 特定船舶入港禁止法案は、北朝鮮に対する制裁圧力を目的にしたものです。与党と民主党の間で合意されたと聞きますが、この法案の扱いについては、五月二十二日に小泉総理が再訪朝し、事態の進展が図られている状況を踏まえて考える必要があると私は思います。

 今回の再訪朝で、私は本会議でも見解を述べましたが、簡単に言って、日朝平壌宣言を日朝関係の基礎として再確認し、拉致問題や核、ミサイル問題、人道援助問題などで一定の合意と国交正常化交渉への前進を確認したことを評価できると述べてきました。

 そこで、大臣にお伺いしたい。

 今回の北朝鮮再訪問の成果についてどのように認識しておられるか、お聞きしたいと思います。

石原国務大臣 この点につきましては、本会議でも総理が御答弁されておりますように、私は、小泉総理の毅然たる対応によりまして、五名の家族の方々が御帰国される、また、曽我ひとみさんの御家族についても第三国で再会をするということが決まった、さらに、十人の方についても再調査を行うということを確約した、かなりの成果のあった会談であったと認識をしております。

穀田委員 拉致問題の解決の方を言われましたけれども、後ろの方もあるんですが、それは私の見解なので、少し違うかもしません。

 外務省に確認したい。

 今回の日朝首脳会談について、日朝双方が「日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む」とした日朝平壌宣言の精神に従った取り組みを北朝鮮が誠意を持って履行しているかどうか、どのように認識しているのか、お伺いします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに二〇〇二年の小泉総理の訪朝の際、日朝平壌宣言ができたわけでございます。そして、当然のことながら、その時点において、日朝双方ともにこの宣言を遵守していくということでの申し合わせがあったわけでございますが、その後の展開といたしましては、もちろんさまざまなことがございました。拉致の問題でもまだ未解決の問題が残る、そして、どうやって拉致の問題の早期の解決を図るかということを一生懸命やってまいりましたが、他方において、核の問題について、国際的に北朝鮮がNPTからの脱退を表明する等々、さまざまの遺憾な状況ができ上がってきたわけでございます。

 そういう意味では極めて遺憾な面も出てきている。そうした中で、総理としては、改めて訪朝されて、この問題、おのおの、拉致問題の解決、そしてまた核問題においても北朝鮮が積極的に核廃棄に取り組むように、その基礎として日朝平壌宣言があるということで、今回、その平壌宣言の遵守を改めて再確認したというのは、そういう意味での意義があったというふうに考えております。

穀田委員 そこで、今、二〇〇二年における平壌宣言以降の一連の経過というのがお話がありました。その上で再確認をして、その方向性を再び歩み始めているという評価だと思うんです。

 今、最後の方で核問題についてもお話がありましたから、核についてもお聞きしたいと思うんです。

 私はこれは非常に重要な問題だと思いまして、六カ国協議での進展、それは確かに朝鮮とアメリカという当事者ですから、そこを含みながら解決するという問題もあります。しかし、日朝間というのは、被爆国としても、同時にその問題については、唯一、日朝平壌宣言において核問題についても確認をしている。二つのリンクの問題があると思うんです。

 したがって、私は、日朝会談と六カ国協議がそれぞれ成功し、両々相まって解決へと前進が可能であると考えています。そのリンク、関連性について政府の認識を問いたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮による核開発問題というのは、日本の安全保障にとって大変大きな脅威であり、日本として絶対これは認めることができないという、まさに日本自身の安全保障の問題が一つございます。そしてまた、それは、この地域、北東アジア地域の平和と安定に係る問題であり、国際的には核の不拡散についての問題である。

 そういう意味で、日朝の問題でもあり、かつまた、この地域あるいは広く国際的な問題、その広く国際的な問題として六者協議という場がつくられたわけでございまして、そういう意味では、日朝の問題、この日朝平壌宣言にも書いてございます核の問題と六者協議の進展というのは、非常に密接な関係がある。

 具体的には、我々は六者協議の一員としてこの核廃棄については一生懸命努力していくということにしておりますが、当然、日朝の中でもこの問題の重要性、核廃棄の重要性を訴えていくというリンクがあるというふうに考えております。

穀田委員 私は、核問題の解決に当たって、この二つを両輪のごとくうまく進めるということが大切だと思っています。そして、日朝平壌宣言に基づいてまた日朝間のそういう対話を一層進めることによって、六者会議での積極的なイニシアチブをとる可能性があるということについて指摘しておきたいと思うんです。

 私は、北朝鮮の核問題の解決に当たって、北朝鮮が核兵器の開発に乗り出している論理そのものへの理を尽くした批判が大切だと考えます。北朝鮮にとって安全保障の最大の問題は、核兵器を持つことではなくて、国際的な今まで行ってきた無法を反省し、そして国際社会に仲間入りすることだというふうに私は考え、主張してきました。その立場から、首脳会談のやりとりにかかわる記者会見の内容を注目し、本会議で質問したところです。

 小泉総理は、北朝鮮にとって最も利益になるのが核の完全廃棄だ、さらに、核を廃棄することによって得られるものを考えたらどうかと金正日委員長に訴えた、そして、結論として、かなりの部分で理解を得られたものと思いますと述べているんですね。ここが肝心でして、どう受け取ったのかについて、わかる範囲内での答弁を求めます。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに日朝首脳会談において、小泉総理から、核廃棄の重要性、そしてまた、核廃棄をすることによって得られる利益、これは北朝鮮にとって国際社会の責任ある一員となるということであって、そうした中では国際的な支援も得られるであろうと。他方、核を持っている限りにおいては、絶対にそうした支援というか国際社会からの支援の手は差し伸べられないんだということの非常に強い、そしてまた説得力のある議論を展開されたわけでございます。

 もちろん、その間におきまして、金正日国防委員長の方からは、いわゆるアメリカの敵視政策、これによって、自分たちは、核あるいは核抑止力を持つことを余儀なくされているんだ、しかし、究極の目的は非核化であるということを繰り返し、そしてまた、六者協議に積極的に参加するんだという意思の表明があったということでございます。

 さらに詳細はございますけれども、いずれにせよ、そうした中では一定の、まさに従来から、これは米朝の問題であるという立場をとっておりましたけれども、日朝の首脳会談においてかなり内容のある議論が行われ、そしてまた、六者協議の進展に協力していこう、努力していこうということが申し合わされたということでございます。

穀田委員 そこはわかっているんですよ。いつも外枠だけ話して、その中身がもう一つ、米朝というところから、内容のある一定の前進を遂げたというのはわかっているんです。問題は、その中身をどういうふうに相手が理解したかということを、いつも、何回聞いてもうまくお答えいただかないということは、それはそれなりの範囲の話なんだと理解をしたいと思います。

 そこで、私は、準備されているこの特定船舶入港禁止法案について反対です。第一回六者会合で、平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動はとらないという同意が行われ、対話による外交努力が続けられています。これは重要な国際約束であり、その遵守は、北朝鮮問題の平和的解決のために日本政府が果たすべき責任であります。北朝鮮に対する圧力、制裁を目的にした法案を準備することは、国際約束に反するもので、許されないと考えます。

 同時に、小泉総理が再訪朝し、日朝平壌宣言を日朝関係の基礎として再確認し、拉致問題や核、ミサイル問題、人道援助問題などでの一定の合意と国交正常化交渉の話し合いのレールが敷かれたばかりです。そのやさきに、一方で握手しておいて、片方の手では殴るためにこん棒を用意するというやり方は、この間積み上げてきた話し合い解決の精神に反するからであります。

 そこで、法案について、私は理事会でも言いましたが、提出者に質問の機会が与えられなかったことは非常に残念で、承服できません。この法案について一番疑問に思うことは、この法が成立し、発動されたらどうなるか、どういう場合に発動されるかということです。

 例えば、我が国の平和、安全の維持のために特に必要があると認めるとき、閣議決定で特定船舶の入港禁止を決定できるとしているが、この我が国の平和、安全の維持のため特に必要があると認めるときとはどういうときなのか、定義があいまいです。差別的、恣意的な判断が持ち込まれない保証はどこにもありません。しかも、国際法上、違反行為を行った特定の国に対する制裁措置をとる場合は、その国際違法行為を構成する客観性と正当な事由を明確にする必要があり、慎重な検討を要し、国連、国際社会と協調して実施されるべきだというのが今日の世界的常識です。

 そこで、外務省に聞きたいと思うんです。

 特定の国を制裁する目的で、特定の国の国籍を持つ船舶やその国に立ち寄った他の国の船舶などを入港禁止にできるとした法律を持っている国の事例はありますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさにアメリカにおきましては、一般的にマグナソン法と呼ばれる法律でございますけれども、この法律によって、特定の国の船舶の入港を規制するということが行われております。さらには、キューバとの関係でのトリチェリ法があるということ、そしてまた、アメリカ以外の国につきましては、フランス、カナダ、イタリア等におきましては、これは港湾の安全、海上交通の安全等の観点からということになっておりますが、入港を規制する法律があるというふうに承知しております。

穀田委員 今ありましたように、周辺国にはない。それから、カナダやフランスその他については、海上安全のためにという限定された内容だということはそのとおりです。キューバの制裁に関しても、かつて日本は、二国間の問題であって、しかも、国際制裁の中には国内法の域外適用であるという部分に当たるおそれがあるものが含まれていること、そして、WTOの精神に照らして懸念があるのではないか、こういう理由をもちまして、アメリカのキューバに対する経済制裁終了の必要性に関する国連総会決議に賛成しているという経過があるんですね。ですから、そういう経過を見ても、やはりこういうやり方が非常に世界的にもまれだということがおわかりいただけると思うんです。

 したがって、私は、先ほど言いましたように、こういう問題のやり方はまずいというふうに思うし、もし発動を前提に考えれば、定義があいまいだ。発動要件そのものが極めて恣意的な要素を持つ。発動するとなれば、有事もしくはそれに匹敵する事態、そして、相手国との平和的な交渉がとんざし、国交回復の努力を放棄するなどの特別な状況しか考えられないと思うんですね。

 したがって、先ほど言いましたように、世界じゅうでも例がないというだけじゃなくて、しかも、六カ国協議等で約束した平和的解決、さらに首脳会談での再確認、それに基づく話し合いのレールが敷かれた状況を台なしにし、水を差すものだということを改めて申し上げ、そして、委員会提出法案とすることについては反対だという意見を表明して、質問を終わります。

     ――――◇―――――

赤羽委員長 引き続き、国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、水野賢一君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案により、お手元に配付してありますとおり、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。水野賢一君。

水野委員 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案の起草案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び概要について御説明申し上げます。

 本案は、近年における我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、我が国の平和及び安全を維持するため、特定船舶の入港を禁止する措置について定めようとするもので、以下、その概要について御説明申し上げます。

 第一に、この法律において、特定船舶とは、閣議決定で定める特定の外国の船舶、閣議決定で定める日以後の期間に特定の外国の港に寄港した船舶及び特定の外国とこれらの関係に類する特定の関係を有する船舶のうち、閣議決定で定めるものをいうこととしております。

 第二に、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときは、閣議において、期間を定めて、特定船舶について、本邦の港への入港禁止を決定することができることとしております。この閣議決定においては、入港禁止の理由、特定の外国、特定船舶、入港禁止の期間等を定めることとしており、内閣総理大臣は、閣議決定があったときは、直ちにその内容を告示しなければならないこととしております。

 第三に、政府は、告示の日から二十日以内に国会に付議し、閣議決定に基づく入港禁止の実施について国会の承認を求めなければならないこととしております。この場合において不承認の議決があったときは、政府は、速やかに、当該議決に係る入港禁止の実施を終了させなければならないこととしております。

 第四に、特定船舶の船長は、当該特定船舶に係る入港禁止の期間において当該特定船舶を本邦の港に入港させてはならず、また、入港禁止の期間の開始の際、現に本邦の港に入港している場合には、閣議決定で定める期日までに当該特定船舶を本邦の港から出港させなければならないこととし、これらに違反した船長は、三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科することとしております。ただし、遭難または人道上の配慮等やむを得ない特別の事情がある場合は適用除外としております。

 第五に、入港禁止を実施する必要がなくなったと認めるとき、または国会がその実施を終了すべきことを議決したときは、速やかに、閣議において、入港禁止の実施を終了することを決定しなければならないこととしております。

 その他、附則において、国は、この法律の施行の状況、我が国を取り巻く国際情勢等にかんがみ、必要があると認めるときはこの法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて、廃止を含め必要な措置を講ずるものとしております。

 以上が、本案の提案の趣旨及び概要であります。

 なお、本案は、本年三月三十一日に民主党・無所属クラブから提出されました特定船舶等の入港の禁止に関する特別措置法案、四月六日に自由民主党及び公明党から提出されました特定船舶の入港の禁止に関する法律案の両案について、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派が修正協議を重ねた結果、まとめられたものであることを申し添えます。

 何とぞ速やかに御決定くださいますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 これより採決いたします。

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案起草の件につきましては、お手元に配付してあります草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時五十分散会


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