衆議院

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第6号 平成16年11月12日(金曜日)

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平成十六年十一月十二日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 橘 康太郎君

   理事 衛藤征士郎君 理事 萩山 教嚴君

   理事 望月 義夫君 理事 山口 泰明君

   理事 阿久津幸彦君 理事 金田 誠一君

   理事 土肥 隆一君 理事 赤羽 一嘉君

      岩崎 忠夫君    江崎 鐵磨君

      江藤  拓君    木村 隆秀君

      北川 知克君    櫻田 義孝君

      菅原 一秀君    高木  毅君

      武田 良太君    中馬 弘毅君

      寺田  稔君    中野 正志君

      二階 俊博君    葉梨 康弘君

      林  幹雄君    古川 禎久君

      保坂  武君    松野 博一君

      森田  一君    山際大志郎君

      泉  健太君    梶原 康弘君

      菅  直人君    下条 みつ君

      神風 英男君    高木 義明君

      玉置 一弥君    樽井 良和君

      中川  治君    伴野  豊君

      松崎 哲久君    松野 信夫君

      三日月大造君    室井 邦彦君

      和田 隆志君    若井 康彦君

      若泉 征三君    佐藤 茂樹君

      谷口 隆義君    穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      蓮実  進君

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           木谷 雅人君

   政府参考人

   (水産庁漁港漁場整備部長)            田中 潤兒君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 峰久 幸義君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総合観光政策審議官)     鷲頭  誠君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            丸山  博君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局長)         竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省河川局長)  清治 真人君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  谷口 博昭君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 上野  宏君

   政府参考人

   (気象庁長官)      長坂 昂一君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    石川 裕己君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  河本 三郎君     北川 知克君

  古川 禎久君     山際大志郎君

  高木 義明君     松野 信夫君

  長安  豊君     泉  健太君

  若井 康彦君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  北川 知克君     河本 三郎君

  山際大志郎君     古川 禎久君

  泉  健太君     長安  豊君

  神風 英男君     若井 康彦君

  松野 信夫君     梶原 康弘君

同日

 辞任         補欠選任

  梶原 康弘君     高木 義明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

橘委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長峰久幸義君、大臣官房総合観光政策審議官鷲頭誠君、総合政策局長丸山博君、都市・地域整備局長竹歳誠君、河川局長清治真人君、道路局長谷口博昭君、住宅局長山本繁太郎君、鉄道局長梅田春実君、政策統括官上野宏君、気象庁長官長坂昂一君、海上保安庁長官石川裕己君、内閣府政策統括官柴田高博君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、文部科学省大臣官房審議官木谷雅人君及び水産庁漁港漁場整備部長田中潤兒君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橘委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口泰明君。

山口(泰)委員 おはようございます。自由民主党の山口泰明でございます。

 質問に入る前に、まず、一連の豪雨災害、そして先般の新潟中越地震で不幸にも亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、負傷された方々、そして今なお自宅を離れて避難生活を強いられている方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 まず初めに、今後の国土交通行政における基本的なスタンスについて、私の考え方を申し上げたいと思います。

 我が国は、今国の内外において深刻な問題を数多く抱えておりますが、特に、少子高齢化の急速な進行、経済活動の国境を越えたグローバル化、さらには地球環境問題の深刻化、国際的なテロの脅威の増大など、かつて経験のない大きな転換期を迎えております。我が国が二十一世紀の国際社会で生き抜き、真に国民が安心して将来に夢と希望を持って暮らせる社会を実現するためには、このような我が国経済社会及び国民生活を取り巻く新しい時代潮流に的確に対応していく必要があります。

 一方、これらの時代潮流の中でさまざまな課題に対応すべく、行政側は、官から民へ、国から地方への考えのもと、より知恵や工夫を生かした政策展開が求められているわけであります。また、国、地方ともに財政状況が悪化する中で、限られた財源を最大限に活用していかなければならないという制約もあります。

 具体的には、二十一世紀においても、豊かで安全な国民生活を確保し、自立的な地域社会の実現や経済社会の活力のさらなる向上を目指した社会資本整備を行うことが重要であり、その基盤として、災害防止などの国土管理や地域間交通ネットワークの整備を進めるとともに、我が国の競争力の向上に直結する都市圏の環状道路や国際中枢港湾、大都市圏拠点空港などの社会資本整備を進めることが必要であります。さらに、観光の振興や地域の創意工夫を生かした都市再生、地域再生や環境の保全、ユニバーサル社会の構築など、新たな政策を推進することも重要であります。

 そして、国と地方の役割を踏まえ、重点的かつ効率的な行政をこれからも推進していくべきでありますが、先日、北側大臣の所信表明演説をお伺いしましたが、国土交通省の基本認識も私と同様ですので、真に国民のためになるよう国土交通行政の推進にこれからも努めていただきたいと思います。このことを冒頭お願いいたしまして、具体的な質問に入らせていただきます。

 まず、新潟県中越地震につきまして質問をさせていただきます。

 いまだなお余震が続き、現在までに死者三十九名、負傷者二千七百名以上という深刻な被害をもたらしております。自家用車やテント、体育館などで被災生活を送られている方々がいまだに一万人を超す人数で、極めて深刻な状況であります。

 私はガス会社の出身でございまして、今回の震災においても壊滅的な打撃を受けたと言われるライフラインについて、人一倍心配もし、見守っておりましたけれども、とりわけガス関係は、日本ガス協会の呼びかけにより、すぐさま先遣隊も出し、被害の状況と復旧に必要な人員、機材の見きわめをし、復旧支援体制として五百五十名を派遣決定して、すぐ現地入りをしたわけであります。

 今回の都市ガスの復旧については、阪神・淡路大震災の教訓も生かしつつ、復旧作業を進めたのだと思いますけれども、それぞれの市町村で対応に違いもあり、水道が復旧しなければ都市ガスのみ復旧してもしようがないという意見もあったようにも聞いております。

 そこでまず、今回、省庁を横断的につくられました非常災害対策本部のまとめ役として御尽力をされた内閣府の柴田政策統括官に、ガス、水道、電気などのライフラインの現在の復旧状況と今後の見通し、そして激甚法の指定の時期についてお伺いをしたいと思います。

柴田政府参考人 ライフラインの復旧ということにつきましては、現在苦しい避難生活を送っておられます被災者の皆様が、一日でも早くもとの住宅にお帰りになり、もとの生活に戻られるために、大変大きな課題であるというぐあいに考えてございます。

 まず、ガスについてでございますが、ただいま委員の方から御説明ございましたように、ガス協会あるいは近隣の企業の方から全面的な支援を協力いただきまして、着々と復旧が進んでいるところでございます。

 最大時で約五万六千八百戸の供給支障が生じてございましたが、昨日の十六時時点で、そこが一万八百戸まで減ってございます。小千谷市、川口町以外はほぼ復旧いたしてございます。小千谷市では、十日ごろを目途に復旧を目指してきましたが、若干おくれている状況でございます。被害の著しい川口町では、三十日ごろまでに本支管、根幹となる部分の修繕を完了させる予定と聞いております。

 電気でございますが、最大で二十八万戸の供給支障が生じてございましたが、現在では、山古志村など避難指示が出ている地域等の二千三百戸を除いて、ほぼ復旧いたしているところでございます。

 それから、水道でございます。最大時で約十三万戸の断水が生じてございましたが、十一日十二時時点で、断水戸数三千七百九十五戸、九七・一%まで復旧いたしてございます。川口町、小千谷市で断水が続いている戸数がございますが、できるだけ早急の復旧に努めているところでございます。

 続きまして、激甚災害指定につきましての御指摘でございます。

 村田防災担当大臣から、通常のやり方と違いまして、国の方で直接的に被害を把握するということの御指示が出ておりまして、現在、国土交通省、農林水産省などの職員を現地に派遣して、被害状況の取りまとめを行ってございます。被害状況を鋭意把握中でございますが、全国規模の激甚災害である本激になる可能性があるというぐあいに考えておりまして、今月中に指定したいというぐあいに考えております。

 以上でございます。

山口(泰)委員 引き続き御努力をお願いいたします。

 続きまして、公共施設関連について御質問をさせていただきます。

 このような状況のもとで、政府としては、被災地の早期復旧復興に向けて全力で取り組むべきと考えているわけでありますけれども、とりわけ公共施設の復旧は、住民に安心感を与えるためにも急がるべきだと考えております。

 そこで、国土交通省として、公共施設の被災状況と今後の復旧対策の決意について、蓮実交通副大臣にお伺いいたしたいと思います。

蓮実副大臣 国土交通省所管施設の被害は、新潟県から十一月四日の中間報告でありますが、約四千件、被害額は一千七百億に上っております。このほか直轄施設は、約百二十億の被害報告となっております。しかし、この数字は、まだ被害を把握できない地域がありますので、今後、さらに増加が見込まれると思っております。

 被災した施設の早期復旧のために、地震発生直後から、災害査定官等を派遣し、災害状況の調査等を行って、必要に応じ、二次災害を防ぐための応急復旧工事等を進めているところであります。なお、国土交通省としては、最大で現地に千人を上回る専門の関係者を派遣いたし、万全を期しておるところであります。

 本格的な復旧はこれからになりますが、復旧地が豪雪地帯でありますので、できるだけ迅速に災害査定等が進むよう、地方整備局や地方公共団体から人員を派遣して応援するとともに、査定のための作業を簡素化するなど、最大限の努力をしてまいります。

 また、芋川天然ダム、これは、芋川天然ダムというのは、山古志村長さんなんかは天然ダムという言葉は使わないでもらいたいということで、国土交通省としては河道閉塞、川の道が閉塞したという河道閉塞の対策については、国土交通省は、新潟県の緊急調査チームに専門家を派遣して、技術的な助言や、排水ポンプ、監視カメラ等の資機材の提供等、最大の努力を支援してまいりました。

 十一月二日には、新潟県知事から、芋川流域等の砂防事業について、直轄による事業実施も含めた支援を強く要請をされました。十一月五日から、東竹沢及び寺野の河道閉塞対策を直轄砂防災害緊急事業として実施することといたしました。

 来春には雪解け水が大量に出ることが懸念をされますので、本日、芋川河道閉塞現地対策室を設置し、本格的な降雪前に、排水路の設置や大型土のうの設置、土砂流出を抑える砂防堰堤の設置などの対策に万全を期するよう、全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

山口(泰)委員 ぜひ、蓮実副大臣もオールマイティーな方でありますが、国土交通行政については特に力がありますので、よろしくお願いいたします。

 次に、住宅関連について御質問させていただきます。

 今回の地震は、公共施設やライフラインのみならず、家屋についても甚大な被害が生じておるようであります。住宅については、全壊、半壊、一部損壊を含め、一万八千棟以上が被災しており、日本有数の豪雪地帯であり、日増しに今寒さが厳しくなってきておりますけれども、被災者に対する住宅対策をイの一番に急ぐべきだろうと考えております。被災者は、長引く生活に疲労、ストレスが重なり、震災関連死と見られる方が二十二名にも及ぶという深刻な状況は御案内のとおりでございます。

 こうした点を踏まえ、新潟県知事も、住宅問題を最重要課題に位置づけたと聞いておりますけれども、政府としても、仮設住宅の建設を初め公営住宅の提供など、住宅対策に全力で取り組むべきと考えておりますけれども、その辺の経緯について、住宅局長にお伺いをいたしたいと思います。

山本政府参考人 現地では、今多数の被災者の方が厳しい避難生活を余儀なくされております。御指摘いただきましたとおり、被災者の方々の居住の場を確保することこそ、今一番緊要な課題であると考えております。

 このために、まず、応急仮設住宅の建設につきましては、建設決定した三千二百二十三戸につきまして、準備が整ったところから順次着工をいたしております。その中で、長岡操車場地区におきましては、デイサービスを行う集会所も併設しているところでございます。

 それから、公営住宅の空き家でございますが、新潟県下に百八十六戸を確保するとともに、全国の公共賃貸住宅の空き家九千八百八十八戸について、現地に情報を提供しております。

 それから、応急仮設住宅を初め、公共賃貸住宅や民間住宅の空き家情報につきましては、新潟県が設置しました空家情報提供センターにおいて、一元的な情報提供が行われているところでございます。

 また、被災者の住宅の建てかえや補修でございます。

 これにつきましては、まず、住宅金融公庫におきまして、低利の災害復興住宅融資の実施を始めております。それから、既に公庫の融資を受けておられる被災者に対して、償還期間の延長などの支援を行うことにしております。それから、災害救助法に基づく応急修理に対する支援制度、被災者生活再建法による支援制度など、関係府省、新潟県の施策とも連携を図りまして実施することにしております。

 さらに、十一月五日から設置しております住宅修繕支援隊本部において被災者の方々に工務店の紹介を行うなど、建てかえや補修が円滑に行われるよう支援してまいります。

 それから、特に被災住宅の補修に関する相談でございますが、各御家庭ごとに被災状況も異なっておりますから、個別に、かつ、きめ細かく対応することが必要でございます。このため、建築士が、九市町に設置しました相談所とあわせまして、数名のチームによる巡回相談を行っております。

 被災者の居住の場の確保に向けて、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

山口(泰)委員 現地の方は相当以上に精神的に参っているようでございますので、ぜひ全力でよろしくお願いをしたいと思います。

 続いて、三位一体改革について、いろいろ申し上げたかったんですけれども、時間も押し迫ってまいりましたので、今回の改革というのは、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲という三つをまさに三位一体として進めていくことになっているわけでありますけれども、しかし、公共事業の補助金の財源は建設国債で賄われているのであり、そもそも、公共事業の補助金を廃止しても、果たして税源移譲に結びつくのか疑問を抱くところであります。地方にできることは地方でという観点に基づき、地方の裁量性をふやすことは補助金改革に限らず重要であります。しかし、国庫補助金の改革に当たっては、災害対策上の問題、建設国債の問題なども懸念されるところであります。

 北側大臣は就任後のインタビュー等で、公共事業は建設国債を発行しており、税源移譲の対象になるか問題があると発言をされていますし、財務大臣も再三にわたり、公共事業にかかわる補助金については税源移譲の対象とはならないという見解を表明しているわけであります。

 本日は、閣議のために大臣はお見えになりませんけれども、平成八年、本会議で私と隣に議席を並べた中野政務官が参ったものですから、すばらしい論客でございますので、この辺を、三位一体改革をどうするのか、将来の国土交通大臣にお聞きしたいと思います。

 中野政務官、よろしくお願いします。

中野大臣政務官 お話しのとおり、三位一体改革は、地方でできることは地方にゆだねる、地方の自主性、裁量性を高めて、受益と負担の関係を住民により身近なところで確立をする、そして、国と地方を通じたシンプルでむだのない行財政システムを構築するという上で重要な課題であると思います。国土交通省としても、改革を推進していかなければならないと常々考えており、表明をいたしておるところでもあります。

 言うまでもなく、三位一体改革の推進に当たっては、国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税改革、これを一体で進める必要がありますけれども、お話にありましたように、建設国債を財源とする公共事業関係補助金については、財務大臣がたびたび表明しておられるとおり、あるいはまた過去の実績からも明らかなとおり、税源移譲の対象とはなり得ないのではないかと考えております。

 こうした状況で考えますと、公共事業関係国庫補助負担金の廃止、縮減ということは、事業実施のために必要な財源不足に直ちに結びつき、それは即、事業の廃止、縮減につながるおそれがあります。

 特に、都道府県のみが事業主体となるものに対象を限定した地方六団体の改革案では、災害防止にかかわる河川、砂防などの事業、あるいは下水道、住宅などの特定の重要分野の事業がほとんど行われなくなるおそれがあると考えております。

 このため、十月二十八日に提出をいたしました国土交通省の改革案において、地方六団体の改革案をそのままということではなくして、国土交通省関係補助制度全般の見直しに取り組みまして、一つには、事業分野ごとに、広域性や重要性といった公共施設の性格に応じた重点化などの見直しを行うこと、また二つには、地方の自主性、裁量性を高める改革に取り組んで、より使い勝手のよい、例えばまちづくり交付金など、もうスタートをいたしておるわけでありますけれども、補助制度を実現すること、三つには、補助金の削減規模については、事業への影響、あるいはこれまでの補助金削減の実績などを踏まえて検討すること、これらの改革に取り組むことをお示ししておるところであります。

 よろしくこれからも御支援をお願い申し上げます。

山口(泰)委員 ぜひ、力量ある中野大政務官に期待をしておりますので、よろしくお願いします。

 あと質問が幾つかあったんですが、どうしても、ちょっと時間が来てしまったんですが、地元のことで大変恐縮でございますけれども、圏央道の進捗状況だけちょっと簡単に、局長、よろしくお願いします。

谷口政府参考人 お答えします。

 圏央道は、首都圏の交通混雑の解消のみならず、大きく、都市再生の根幹である重要な路線と認識しております。

 昭和六十年度より事業化を順次図り、全体三百キロございますが、二百六十六キロメートルを現在事業化させていただいております。これまでに、日の出インターチェンジ―鶴ケ島ジャンクション間を初め、約三十キロが供用ということでございます。

 今年度、平成十六年度は約一千五百億円の事業費で推進しておるわけでございますが、とりわけ、東北道から東名にかけての西側区間百三十キロメートルにつきましては、東京外環東側区間、中央環状線の三号線以北の区間とともに、暫定的な環状機能を確保する区間として、都市再生プロジェクトにおいて平成十九年度までに供用が必要な区間と位置づけられており、重点的に整備を推進しておるところでございます。

 鶴ケ島市―久喜市間につきましては、オオタカが発見されたということで慎重な調査を進めているところでございますが、平成十四年五月に専門家から成る検討委員会を設置して、議論を重ねていただいているところでございまして、委員会の検討内容につきましては、いろいろな形で広報に努めて、住民の方々の御意見をお聞きしているところでございます。

 埼玉県内の鶴ケ島市―川島町間につきましては、以前の状況と少し変わってきたということでございますが、オオタカに関する生息状況調査、保護対策の検討に時間を要しておるわけでございますが、今後、保護対策を確定させ、平成十九年度までの供用を目指し、重点的に整備を推進してまいりたいと考えております。

 全体につきましては、残事業費が約二兆円程度というようなことで見込まれておりますので、地元状況、周辺状況にもよりますが、これまでのとおり二十一世紀初頭を目指して頑張ってまいりたいと思っております。

 以上でございます。

山口(泰)委員 当初よりは二年ぐらいおくれてしまいますので、大局長でございますので、短縮して強力によろしくお願いします。

 ありがとうございました。

橘委員長 葉梨康弘君。

葉梨委員 どうもおはようございます。自由民主党の葉梨康弘です。

 大分時間が押していますので、少し早口で申し上げます。

 新潟初め本年多発した地震、台風等の災害の被災者の方々に衷心よりお見舞い申し上げます。

 また、大臣、副大臣初め国土交通省、関係省庁の皆さんの連日の対応に敬意を表すとともに、このような努力が、国民の六七%が地震の初動対応を評価というNHKの調査にもつながったんだろうというふうに思います。降雪期を控え、さらなる御尽力をお願い申し上げたいと思います。

 きょうは、本年の予期せぬ自然災害等を経験して、むしろ前向きな意味でこれを生かして、本当に我が国の社会資本の整備は十分なものなのか、あるいは、箱物という点、さらには交通網という線だけでなくて、面の整備という観点から社会資本の整備も必要なんじゃないか、そういった観点から御質問をさせていただきたいと思います。

 新潟でございますが、私思い出すのは、私、警察庁に勤めておりまして、政治を目指して退官の内示をいただいた日に、新潟で少年問題の講演を県警でやっておりまして、新潟県警の方と一晩飲み明かして、そして帰りに上越新幹線に乗ったんですけれども、地元茨城と比べると大変山の多いところだなというふうに思ったことを覚えております。警察の方も大変だろうと思います、きょうも来ていただいていますが。

 その山ということなんですが、十一月九日付の新聞で、「新幹線トンネル耐震補強へ」、新潟中越地震で想定外の損害と報道されて、魚沼トンネルの内部が想像以上の崩落を見せているというような報道がございました。JR東日本で耐震補強を進めるなどという報道がありますけれども、おおむねどのぐらいの期間で補強を進めていくと考えているのか、鉄道局で把握している範囲で簡単にお答えを願いたいと思います。

 梅田局長、よろしくお願いします。

梅田政府参考人 お答えをいたします。

 現在、魚沼トンネルなどの被害状況の調査をJR東日本においては行っております。しかしながら、まだ余震が続いておりまして、十分詳細な調査が終わっていない段階でございます。したがいまして、まずはこの詳細な調査を終えて、当該のトンネルの復旧を行うというのが先決でございます。その後で、報道されたような事実は今のところ確認されませんけれども、今後、耐震性について検討していくというような話になろうかと思います。

葉梨委員 ありがとうございます。

 今回の地震とか台風の災害というのは、改めて、我が国が災害王国である上に、山国で、しかも、はんらん原に多くの人が住んでいるという実態を浮き彫りにしました。そのためには、ほかの国に比べても、やはり我が国では質的にも高いレベルの公共社会資本の整備が行われなければならないということを意味するのだろうと思います。

 ですから、後知恵で、こんなことあったじゃないかということで行政のあり方を攻撃するだけじゃなくて、やはりこれを今後の社会資本の整備のあり方に結びつけていくという姿勢が必要じゃないかというふうに考えております。

 さらには、ソフト面なんですが、災害王国である我が国の共同社会というのを支えてきたのは、助け合いの精神だと思います。前に、阪神・淡路の震災があったときに、私はインドネシアに暮らしておりまして、外交団の仲間から、被災地で窃盗とか詐欺がほとんどない、日本はすごい国だ、大した国だというような評価を得たのを覚えています。ところが、最近報道されますと、新潟の被災地で、その被災者絡みのおれおれ詐欺であるとかあるいは窃盗、詐欺が多発しているという状況を聞いております。大変寂しい状況だと思います。

 そこで、警察庁に対して、被災地における生活安全対策の取り組みについてお尋ねしたいと思います。

 よろしくお願いします。

伊藤政府参考人 新潟県中越地震の被災地における犯罪発生状況につきましては、今お話がございましたように、留守宅における空き巣、駐車中の車両を対象とした車上ねらいや、いわゆるおれおれ詐欺などの震災の被害に乗じた犯罪の発生が見られ、十一月十日現在、二十八件を認知いたしております。

 警察では、地震発生直後の十月二十七日から、五十台のパトカー及び要員を新潟県に派遣して、被災地のパトロールを強化したり、女性警察官を中心にゆきつばき隊というものを編成いたしまして、避難所を巡回しまして、困り事等の相談に応じたり、震災に乗じた犯罪への注意を呼びかける広報を行うなどの防犯対策を実施してきているところでございます。

 また、十一月八日には、住民の避難所生活や被災地復旧の長期化が予想されますことから、新潟県警察におきましては、県警本部長を長といたします新潟県中越地震被災地域安全安心推進本部を設置しまして、被災地域における犯罪抑止対策、被災者の心のケア、交通対策などの諸対策を推進しているところでございます。

葉梨委員 ありがとうございます。

 被災者を巻き込むような心ない犯罪、これに対しては本当に強い態度で臨んでいただきたいと思います。これは、警察の責任、それから警察の責務もあるわけですけれども、我々国会議員の責任としても、この国会に、おれおれ詐欺に対応するため、私もワーキンググループの一員になっていますけれども、口座取引の規制に関する法律、これを提出させていただいています。野党の皆さんもぜひとも審議に協力していただいて、この国会でぜひとも通すようにお願いを申し上げたいと思います。

 そして、次に治水対策でございます。

 地震だけでなくて、ことしは台風被害も大変な問題になりました。この問題については、六月十日付の読売新聞で、利根川の堤防の百九十三キロは強度不足という記事があって、私の選挙区も利根川沿いにあるものですから、いろいろと聞いてみたところが、思ったよりも日本の堤防というのは弱い、漏水などの、浸透破壊というんですけれども、そういったものに弱いということがわかりました。そして、担当者の方とも話していると、大体担当者の方も、ちょっといろいろと点検をしてみたけれども、やはり思ったよりも弱かったということでびっくりしていたというような状況がございます。

 それが、七月には破堤、この間も円山川でも破堤というようなことで、堤防が破れるというところまでいってしまったわけなんですが、この問題については、全国的にもやはり今後、堤防強化などの治水対策に本当に本腰を入れていかなきゃいけないというふうに思っています。

 ただ、そのことについて言うと、やはり多くの国民が、これは自分のことである、自分の地域のことであると考えることが必須だと思うんです。

 私の地元の取手でも、堤防の弱い箇所があって、その弱い箇所のすぐたもとにたくさんの住民が住んでいて、その住民の方々は東京に通勤をしている。そうすると、夕刊紙を読んでなのか、あるいは私の不徳のいたすところなのか、公共事業三割カットの民主党に入れる方が多いんです。ところが、三割カットをされて、それで、公共事業は悪だ、それで弱い堤防をそのままにしておいて本当に大丈夫なのか、そういう問題がございます。

 ですから、ハザードマップなどの議論、これも大変大事だと思うんですけれども、本年の災害を機に、多くの国民に、我が国の河川堤防は決して強くないんだ、漏水などの強度不足の箇所が多く見られるんだという実態を、過度の不安を与えない形でしっかりと周知して、点検や必要な補修などを進めていく必要があるんじゃないかと考えます。

 河川局長、清治局長、よろしくお願いします。

清治政府参考人 河川の堤防は非常に重要な施設でございますが、委員御指摘のように、浸透のような作用に対しての強化というようなものがまだまだ不足している現状にあるわけでございます。

 堤防は、計画高水位というのを定めまして、その水位までにつきましては通常の流水の作用に対して安全な堤防にしているわけでございますが、堤防の断面ができ上がったように見えましても、河川の水位が長時間高い状況にありましたり長い雨が降り続いたりしますと、堤防が弱体化いたします。そういうような状況下の中で、堤防が破堤するというようなことがことしの洪水でも見られたわけでございます。

 私どもとしましては、直轄の堤防につきましては、平成八年から、堤防強化というものをよく調査して取り組んでいこうということでやっておりますが、都道府県管理の河川につきましても、先日ガイドラインを発しまして、これらを参考にしてしっかりと取り組んでいただくような働きかけを始めたところでございます。

 今後ともよろしくお願いしたいと思います。

葉梨委員 ちょっとまた、次の観点から御質問します。

 社会資本の整備については、箱物という点、それから、鉄道、道路、河川といった線の整備に加えて、やはりまちづくりとか村づくり、そういった面の整備も重要なポイントだと思います。そこで、建設省、運輸省、国土庁が合体した国土交通省、これは所掌が広過ぎて、今お越しになった大臣には大変だとは思うんですけれども、こういった多面的に社会資本整備を考えるには非常にいい合併だったんじゃないか、合併というか省庁再編だったんじゃないかと思います。

 そこで、例えば、私の地元ですが、来年秋開業予定のつくばエクスプレス、これは交通網とまちづくりの面整備を一体的に行う画期的なプロジェクトです。面整備の促進のためにも、開業時期を可能な限り、例えば夏休みといった七月などに前倒しすることをお願いするとともに、東京駅乗り入れの効果、これもいろいろ検討されているわけですが、その効果をしっかり評価して、会社とか自治体が前向きの協議を行うことをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 梅田局長、よろしくお願いします。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 つくばエクスプレスにつきましては、現在、総仕上げと言える全線の走行試験が開始されております。十七年秋の開業に向けて順調に進捗しているところでございます。

 時期につきましては、会社からは、十七年秋といっても、利用者の利便のため一日も早く開業できるよう全社一丸となって努力していきたいという決意とともに、来年の新学期に間に合うよう開業できればというような希望を聞いております。

 私どもといたしましては、安全運行の確保を最大の使命としつつも、一日も早く開業できるよう、関係者と連携協力して、万全の準備を進めていきたいというふうに考えております。

 また、東京駅への路線延伸につきましては、御指摘のように、需要、収支採算性、あるいは財源の確保、事業スキーム、こういうようなものにつきまして、現在、地元の関係者間で協議がなされているというふうに聞いております。引き続き議論を深めていただきまして、まず、関係者間で十分なプランを立てていただくことが必要かというふうに考えております。

 私どもといたしましては、その上で、必要な検討をしていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

葉梨委員 ぜひ、前向きの検討をお願いしたいと思います。秋といっても、立秋からは秋ですから、もうちょっと前倒しをすれば七月になるんですが、それはまあいいといたしまして。

 面整備という観点からは、先ほど山口委員からもお話のあった圏央道、あるいは北関東などについても、つくばと成田を結ぶとか、あるいは常陸那珂港と北関東の後背地を結ぶといったネットワークの早期完成という効果、これだけじゃなくて、インター周辺のまちづくり、そういったことについてもぜひ関係自治体とも協議をお願いしたいと思いますが、時間もありませんので、この質問は飛ばします。

 大臣もお越しになりました。

 きょう、実はずっと、短い時間で議論してきたんですが、本日の議論のポイントというのは、一つは、我が国は災害列島である、そして山がちの地形である、そしてはんらんしやすい河川という地理的条件がある、このことをしっかりと国民に理解してもらって、現在の社会資本の整備、これが質の面でもあるいは量の面でも本当に十分なのかどうか、これを点検していく必要があるんじゃないかということ。さらには、社会資本整備については、点、線のみでなく面の観点からも、あわせて総合的にその効果を論じていく必要があるんじゃないかということの、安全性と整備の十分さ、それから効果面の二点でございます。

 そこで、ちょっとお尋ねをしたいんですが、一つは、特に前者の社会資本整備が十分かどうかという議論なんですけれども、我が国の公共事業というのは、平たんで地震や台風もない諸国に比べれば、やはり山がちですし、災害もあります。ですから、多少割高になるのはやむを得ないんじゃないかという面もあります。もちろん、コストの削減というのは絶対に必要です。ただし、余り郵便入札とかそういうことをやり過ぎますと、ダンピングが起こる。そうなりますと、発注側に検査体制が余りありませんと、行き過ぎると手抜き工事が起こる。そして、結果として国民の血税をどぶに捨ててしまう、こういったことが、今回の災害、そんなことを通じて本当に明らかになったんじゃないかなというような感じもいたします。

 ただし、公共事業というのは、決して建設会社を食べさせるために行うんではないだろうと思います。やはりこれは、あくまで国民のため。何かマスコミですと、公共事業というのは建設業者が言うから自民党は予算をつけているんだ、そんなような議論もありますけれども、本年の災害というのは、やはり国民の生命とか身体、財産を守って、そしてその生活の利便の向上に資するという本来の社会資本、これをやはりもう一度原点に立ち返って整備し直さなければいけないんじゃないかということを改めて示したような、そんなような感じがいたします。

 ですから、公共事業、社会資本の整備というのは、私の考えとしては、建設会社の声ということじゃなくて、本当に国民の声として進めていかなければならない。そのためには、やはり国民に対して、先ほど堤防の話もございましたが、社会資本の整備というのがまだまだ未整備だ、だから、どういった危険があるんだ、そして整備にはどれくらいの、これが非常に重要なポイントなんですけれども、お金がかかるんだということを具体的に示していく必要があるんじゃないかと思います。それがないと、自分のところでは道路は欲しいんだけれども公共事業費の総枠拡大には反対だという、よく社会資本整備、公共事業に見られる各論賛成、総論反対ということがいつまでたってもなくならないんじゃないかと思います。

 そこで、大臣にお尋ねいたします。

 公共事業における品質確保、これについては、今度議員立法で、公共事業の品質確保というような法律もまた国会でも議論をしたいというふうに考えておりますけれども、そこにどのように取り組んでいかれるかという点と、それから、社会資本が必ずしも十分に整備されていない現状を国民にどのように周知して、国民のニーズを把握して、国民とともに考えるため、どのように取り組んでいかれるか、この二点について御所見を伺いたいと思います。

北側国務大臣 閣議で遅参したことをまずおわびを申し上げます。

 まず、公共工事の品質確保でございますが、品質の確保は極めて重要な点だというふうに考えております。このことは、ことしの骨太方針の中でも、公共調達について、価格だけではなくて技術や品質を含めた評価のもとで健全な競争を促進するというふうに指摘があるところでございます。

 これまでも国土交通省といたしましては、この品質確保に向けまして、適切な技術力を持った企業をどう選定するか、また、民間の技術力を活用する入札方式の導入、こうしたことに積極的に努めてきたところでございます。今後とも、コストの削減、また透明性の向上等はもちろん大事でございますが、それとともに、いかに公共工事の品質確保を図っていくか、しっかり取り組みをさせていただきたいと思っております。

 今、国会の方で、議員立法でこの品質確保にかかわる議論も始まるというふうにも聞いておりまして、そこのところもしっかりと見てまいりたいというふうに思っているところでございます。

 次に、社会資本整備の問題でございますが、ことし、本当に災害の多い年でございました。この一連の水害、また地震災害等を通じて、私自身も、治水、また砂防、さらにはさまざまな耐震化等々がいかに大切であるかということを改めて痛感しておるところでございます。

 やはりこうした社会資本整備、特に国民の安全を確保するための社会資本整備というのは、これはしっかりと進めていく必要があるということでございます。そこを、各事業ごとにやはり計画的に国民の皆様に、今後の社会資本整備についてどう進めていくのか、その必要性とスケジュールについてできるだけわかりやすく説明をしていくというのは、政府の大きな責任であるというふうに思っておるところでございます。

 ただ、一面、私が感じておりますのは、そうした社会資本整備というのは、しなければならないことは非常にたくさんございます。一方で、コストというのは、出せる費用というものは限られてくるわけでございまして、それをいかに優先順位をつけるかという問題が一つ。もう一つは、そういうハード面の整備の着実な推進とともに、一方でソフト面での対応をしっかりしていくということも、この一連の災害を通じて非常に大事であるというふうに認識をしておるところでございます。

葉梨委員 ありがとうございました。

 ぜひとも具体的に、そして各論賛成、総論反対というような姿勢ではなくて、実際に幾ら費用がかかるんだということ、それから、国民の方あるいは住民の方も、ソフト面でも、一体何をしなければいけないんだ、そういったことを、ぜひとも行政とそれから国民、住民と一緒に考えていくという形で御努力をお願いしたいと思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

橘委員長 佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 おはようございます。公明党の佐藤茂樹でございます。

 つい数カ月前まで、今中野大臣政務官が座っておられる席に座らせていただいておりましたけれども、きょうは質問する番でございます。ぜひ明快な答弁をよろしくお願いしたいと思います。

 質問に入ります前に、新潟県中越地震並びに累次の台風そして集中豪雨等によりまして犠牲となられました皆様の御冥福をお祈りしますとともに、被災された皆様に対しまして、心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 そこで、大臣も来られましたので、まず最初に質問をさせていただきたいんですが、今、国土交通行政も、時代の要請に伴いまして、どうふさわしい行政をやっていくのかということがいろいろ変わってきているんじゃないかなと思うんです。

 今、国土交通行政を考えましたときに、この累次の災害にも見られますように、まず安全をどうするのかということも本当に必要でございますし、さらに、これは国土交通行政だけではなくてほかの行政にも関連しますけれども、環境ということに配慮して、どう行政をグリーン化していくのかということも大事ですし、さらに、これからの国際競争の中でどう経済を活力つけていくのかということも国土交通行政として考えていかなければいけない、そういう視点だろうと思うんです。

 もう一つ大事な視点は、やはり私も一年間いろいろなところに行かせていただき、また勉強させていただきまして、国土交通行政というのは、国民の暮らし全般に本当にかかわりの強い、そういう分野である。だから、国民の生活、暮らしという視点、こういうものをしっかりとやはり見据えて行政をしていかなければいけないだろうということを、私は本当に実感として感じるわけでございます。

 特に、これからの国民の生活、暮らしということを考えていったときに、もう量から質の時代に間違いなく入っているわけでございまして、その質の中でも、やはり、これからの高齢化また少子化社会というものを考えていったときに、私は、国土交通行政の中でも、これからはユニバーサルデザイン、そういう視点というか考え方というものをしっかりと取り組んでいかなければいけないだろう。いつでも、どこでも、だれでも、自由に、また使いやすい、そういうユニバーサルデザインの考え方を国土交通行政の端々にまでしっかりと取りつけていかなければいけないんじゃないかな、そういう考えを私は持っておるんですけれども、国土交通行政政策におけるユニバーサルデザインの必要性につきまして、まず大臣にお伺いをしたいと思います。

北側国務大臣 これからの日本の社会を考えたときに、本格的な高齢社会がこれから到来をしてまいります。また、少子化の中で、もっと安心して子供さんたちを産み育てられる日本の社会というのをつくっていくということは、極めて大事だというふうに思っております。

 この高齢化がこれから本格的に進む中で、例えばまちづくりを考えましても、高齢者の方々が本当に町を自由に動けるような、そういうふうなまちづくりをつくっていくことは極めて大事でございますし、また、今、ビジット・ジャパン・キャンペーンというのを国土交通省を中心に進めさせていただいておりますけれども、もっと外国人の方々が日本を訪問していただいて、日本ということを知っていただく、そういう日本にしていかないといけない。来日外国人をもっとふやしていかないといけない、また、ふえていくというふうに私は思っておりますけれども。そう考えますと、外国人の方々が日本に訪れても、そこでも安心して例えば観光ができるというふうな日本の社会をつくっていかねばならないと思うわけでございます。

 今委員御指摘のように、どこでも、だれでも、自由に、使いやすい、こういう社会をしっかりとつくっていくわけでございまして、それは、障害の有無はもちろんですけれども、それだけではなくて、年齢、それから性別、さらには国籍等を問わず、そうしたユニバーサルデザインの考え方に基づいて、まちづくりや、また交通環境整備をしっかり進めていかないといけない。国土交通行政全般にわたりまして、このユニバーサルデザインに基づく整備をどうしていくのか、そこを今議論しているところでございまして、先日も、これは十月の二十六日にスタートしたんですが、省内にユニバーサルデザイン政策推進本部というものを設置して、総合的な政策を構築すべく今検討をしているところでございます。

佐藤(茂)委員 そこで、ユニバーサルデザインの端緒となる法律として、これはその中に含まれると思うんです、バリアフリーをどんどん進めていこうということで、一つは、平成六年に制定され、昨年の四月ですか、改正されたハートビル法というものがありますし、もう一つは、交通機関関係では平成十二年に制定された交通バリアフリー法というもの、これも我が党も一生懸命推進をさせていただきましたけれども、そういう建築物や公共施設、また公共交通機関のバリアフリーがこの数年間で非常に着実に整備されてきた。我々も乗り物等に乗ったときにもそれを感じるわけですが、特に交通バリアフリー法の施行前と比較して、実施状況が今どうなっているのかということ。

 そして、これは法律をつくったときにもそうなんです、決めていたんですが、法施行後五年に当たる来年度は明確に交通バリアフリー法を見直さなければいけない、そういうことになっているんですね。

 私は、今の現行法でも非常に成果は上がってきていると思うんですけれども、しかし、さらに大きなユニバーサルデザインという発想に立ったときに、まだまだ限界もあるんじゃないかな。これから、交通バリアフリー法を小さく産んで大きく育てていくためには、いろいろ変えなければいけないところもある。

 例えば、公共の交通機関、中心となる交通機関とその周辺にある建築物とのそういう相互の連携がいま一歩、もう少しとる必要もあるでしょうし、さらに、情報の提供という面でいいますと、乗りかえ案内とか、エレベーターとかトイレとか、そういうものをきちっと情報として与えていく、そういうバリアフリー化情報というものをしっかりと統一的に提供するというような点でも、まだまだ改善の余地は十分あるでしょうし、さらには、そういうハードの面だけではなくて、人的な介助等も含めて、心のバリアフリーと言われるような面についてもまだまだ現行法では限界があるように思うわけでございます。

 来年度に当たるんですが、これから多分検討もされていくと思うんですけれども、今の実施状況とともに、今の交通バリアフリー法で改善する余地があるという点につきまして、国土交通省としてどのように考えておられるか、見解を伺いたいと思います。

丸山政府参考人 交通バリアフリー法の実施状況と、今後どうしていくかということについてお尋ねがございました。

 バリアフリー法につきましては、平成十二年十一月に制定されたわけでございますが、着実に進捗しているものというふうに私どもは考えております。

 例えば、鉄道駅の段差の解消で申し上げますと、平成十二年度末、一日の利用客数が五千人以上の駅で見ますと、段差が解消されていた駅は二八・六%でございました。これが現在、平成十五年度末で見ますと、四三・九%まで段差の解消が進んでおります。

 それから、ノンステップバスの導入について見てみますと、法制定当時二・二%の普及率が現在は九・三%になっておるというようなことでございます。

 ただ、御指摘がございましたように、交通バリアフリー法は五年を経過した段階で見直すということでございまして、私どもは、先ほど大臣からお話がございましたが、既に十月十五日に、ユニバーサルデザインの考え方に基づくバリアフリーのあり方を考える懇談会というものを、ユニバーサルデザインの検討とは別に、交通バリアフリー法の見直しの一環として既に立ち上げたところでございます。そこの中で、現在、障害者団体へのヒアリングとか、地方公共団体へのアンケートなどを実施しておるところでございます。

 今後は、ユニバーサルデザインの考え方に基づきまして、私どもバージョンアップと言っておりますが、交通バリアフリーをさらに進めていくということが必要だと考えております。

 そこの中で考えております視点は三つぐらいあると思います。

 一つは、今後さらに、今でも基準はあるわけでございますが、旅客施設でございますとか車両をどういうふうに、どんな基準で、どういうものを整備していくかということが一つでございます。それから、今先生からも御指摘がございましたが、駅とビルだけなっていて、その間は全然ないじゃないかというようなお話がございました。そこで、旅客施設でございますとか建築物などを一体的にバリアフリー化するためにはどうしたらいいかというようなことが二つ目でございます。それから三つ目は、これも御指摘がございましたが、心のバリアフリー、ハードの整備だけではなかなか立ち行かないところもございまして、心のバリアフリーをどうやって推進していくか。この三点につきまして、今、幅広い検討を進めておるところでございます。

 来年の四月ごろには懇談会としての意見を取りまとめていただきたいということで私どもは考えているところでございます。

佐藤(茂)委員 平成二十二年でしたかね、社会資本整備計画で、それを一つのめどとして整備を進めておられると思うんですけれども、ぜひ、量的にもそこの目標を達成するように、さらに、内容もバージョンアップしたものを進めていただきたいなというふうに思います。

 続いて、ユニバーサルデザインの国土交通行政ということで、今、画期的な社会実験をされているものとして、自律的移動支援プロジェクトというのをことしの三月に立ち上げられて、九月末に、神戸を具体的にモデル地区としてプレ実証試験を始められたわけでございます。これは、具体的に今、私が説明するのもなんなのですけれども、場所にICタグを張りつけて、高齢者であるとか障害者も、場所が逆に情報を発信する、話しかけてくる、そういう新しい発想に基づいたまちづくりをしようという、これは本当にこれからの、まさにユニバーサルデザインのまちづくりにとって一つの大きな社会実験じゃないかな、そういう感じがするわけですね。

 だから、高齢者や障害者にとっても優しいとともに、ほかにも活用できるわけでございまして、台風とか地震といったそういう災害の対応、自然災害のときであるとか、事故であるとか急病などのそういう緊急のSOS発信なんかも、今まで障害者や高齢者なんかでも非常に不自由されていたものも対応できるような可能性も秘めておりますし、さらに大きなのは、日本人だけじゃなくて、外国人の方、観光客の方々にも、そういう多言語で情報が提供できるという新しい要素を持った、観光立国にもつながる、そういう視点を持ったプロジェクトであるな、そういう感じがしているわけでございます。

 北側大臣も、先日、十月末でしたか、委員長をされている東大教授の坂村先生のユビキタス・ネットワーキング研究所でデモをごらんになったと思うんですけれども、私は、こういうものは、ただ神戸一地域にとどめておくのではなくて、近い将来、やはり全国的に大きく普及、展開をさせていく必要がある、そういうプロジェクトである、そのことを痛感しているわけでございますが、そのためには、産学官、これは国も地方も含めて、また市民の知恵も結集してしっかりと進めていかなければいけないだろうなと思うんです。

 北側大臣、このプロジェクトのデモをごらんになった御感想と、これから全国展開をする上に当たって、どういう手法によって、産学官民、こういうものを結集し、また広めていこうとされるのか、その辺の手法についての見解を伺いたいと思います。

北側国務大臣 私も、今委員の方からお話ございましたように、先日、東京都内にございます東京大学のユビキタス研究所の方に行かせていただきまして、坂村先生が今中心になってやっていただいておるわけでございますが、非常にびっくりしたといいますか、このICタグというものを活用して、障害のある方々が町の中をできるだけ自由に歩けるような、そういうことが将来本当に可能でございまして、それは、今委員御指摘があったように、単に障害者の方だけではなくて、さまざまな活用の方法があるなと。

 実を言いますと、この間、小泉総理に観光立国の関係で御報告をした機会があったんですが、そのときも、このICタグを持っていきまして、あれはいろいろな言語のバージョンが使えますので、日本語だけではなくて英語、韓国語等々、それを使いますと、観光地にそういうICタグが埋めてある場に行きますと、その観光場所の説明が英語とか韓国語でしゃべられるとか、それを実際総理の目の前で実地にやってみたんですよ。総理も非常にびっくりされておられましたけれども。本当にいろいろな活用の仕方があるなというふうに思っているところでございます。

 今、神戸の方で、今年度そして来年度と実証実験をやっているところでございまして、その成果をしっかり見て、今後これを全国的に本当に拡大できるように進めてまいりたいと思っています。

 地方団体では、例えば東京都なんかも、自律的移動支援プロジェクトにつきましては非常に関心を持っていただいておりまして、関心を持っている地方団体とも連携をとって、こうしたプロジェクトが社会システムとして定着できますように、しっかりと進めてまいりたいと考えているところでございます。そのためには、産業界、それから学者の方々、そして国、地方の官の側、そして市民の側と本当に密接に連絡をとって、しっかりPRをしていきたいというふうに思っているところでございます。

 言葉で話すよりも実際に見た方がこれは早いので、例えば東京でも、今神戸でやっておりますけれども、いずれ東京の銀座四丁目周辺とかお台場だとか、そういうところでやるともっと一般の方々、市民の方々にこのユビキタスというものの機能のすばらしさを御理解いただけるんじゃないかと思っていまして、そういうこともぜひ念頭に置きながら促進をしてまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 私も、これは非常に大事なプロジェクトだと思いますので、一委員ではございますけれども、しっかりと応援をしていきたいなというように思っております。

 そこで、まちづくりにつきまして何点か、時間の許す限り御質問させていただきたいんですけれども、一つは、まちづくり三法をどうするのかということをお伺いしたいと思うんです。

 まちづくり三法ができましてから六年たったのですけれども、最近いろいろな各種団体の皆様から声を聞く機会もありますし、また、いろいろな地域に行かせてもらって、果たしてこのままでいいのかということを私は非常に不安を持っている一人でございまして、特に各種団体、具体的に日本商工会議所とか地方団体連合会とか、また商店街振興組合連合会なんかの皆さんの意見なんかで特に強調されるのは、六年たつけれども期待していた効果が全然出ていない、逆に、中心市街地が活性するどころか三法制定時よりも寂れてきているんだと。そのことを非常に強調される声をいろいろなところでお聞きするわけでございます。

 現に、中心市街地に立地していた大規模店舗が閉店して、そのあたりでうまくバランスとれていた周辺の商店街がその閉店に伴って寂れるという例が今、後を絶ちませんし、撤退した店舗の約七割に何で撤退したんやと言ったら、要するに、新たな大型店舗がそのちょっと近くの郊外にぐんと進出してきた、それによって、もともとあった大規模店舗というのがもう撤退せざるを得ない、そういうことになると、町全体がにぎわいであるとか構造自体が大きく中長期的に沈んでしまう、そういう現象がいろいろなところで出ているわけでございまして、私は、企業の競争の論理だけによって町が廃れていくという事態を見逃しておいていいのかどうか、そういう問題意識を持っているわけでございます。

 先日も、この点については予算委員会で、この委員会の理事でございます赤羽議員の質問に対しまして、北側大臣は大体次のように答えられたというように聞いております。

 地域の再生や高齢化社会の観点から、中心市街地の活性化や歩いて暮らせるまちづくりをどう進めていくかというのは極めて重要な課題であるとの認識のもと、制定から六年後が経過したまちづくり三法をしっかり検証して見直しの検討をしたい、そういう答弁をされているんですけれども、こうした現場のいろいろな商店街の皆さんとか中小企業の皆さんの声を踏まえて、まちづくり三法についての大臣の御認識と、先ほど答弁では、検証をし、また見直していきたいと言われておりますが、どういうようなスケジュールで見直していかれるつもりなのか、所見を伺いたいと思います。

北側国務大臣 私も、委員と全く同じ問題意識を持っております。

 やはり、まちづくりというのは、私は、ある程度の時間軸を持って見ていかないといけないというふうに思っております。

 今、全国あちこちで見られる現象でございますが、大型のスーパーが撤退する、そのことによって町の中心市街地がさらに疲弊化をしていくというふうなことがあちこちで見られているわけでございます。やはり、経済というのはどんどん変化しますから、スーパーであろうがデパートであろうが何であろうが、当然そこで大きく影響を受けていくわけでございますが、一方、まちづくりというのは、これからの高齢社会、また地域経済の活性化とかいうことを考えていったときに、もう少し長い時間軸の中で検討があってしかるべきだというふうに私は思っておりまして、今、委員と全く同じような問題意識を持ちまして、まちづくり三法につきましても、しっかりその検証をして、見直すべきところは見直すべしという答弁をさせていただいたところでございます。

 国土交通省の中では、広域的な観点から、このまちづくりをどう調整していくのか、また調整機能の強化をどうしていくのかということで、こういう問題につきまして、学識経験者の方々に入っていただきまして、今検討会を開始させていただいたところでございます。中心市街地再生のためのまちづくりのあり方に関する研究のアドバイザリー会議というものを設置させていただきまして、今この会議で基礎的な調査を進めているところでございます。

 十一月五日に第一回の検討会が開催をされたところでございまして、ここで、今委員から御指摘がございました問題点も含めて今検討をしているところでございます。

 それらを踏まえまして、まちづくり三法の見直しを念頭に置きつつ、これは国土交通省だけでなくて経済産業省もかかわっておりますので、関係省庁とも連携をとらせていただきまして、中心市街地の活性化に必要な総合的な対策を取りまとめていきたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 我々も、積極的にいろいろ議論をさせていただいて、国土交通省の考え方等もお聞きしながらこの件については進めてまいりたいな、そのように思うわけでございます。ほっておくと、やはり重大な地域社会問題になったままほっておかざるを得ない部分にもなると思いますので、力を入れていきたいなというふうに思っております。

 その上で、もう一つお聞きをしたいんですけれども、我が党の中小企業活性化対策本部というのがありまして、先日、その一員として、北九州の戸畑区にあります天神商店街という、福岡の天神かなと思ったら、北九州に天神商店街というのがあるんですけれども、そこへ行かせていただいて、今後のまちづくりで一つヒントになるなというふうな、あった事例を申し上げますと、そんなに難しいことをやっておられるんじゃなくて、要するに、地域に優しいまちづくりを商店街として目指しておられまして、何を具体的にやっているのかというと、電話一本でその商店街の買い物を自宅に無料配達するという、てんじんお届け便サービスという名前をつけておられるんですけれども、されているのです。

 それはどういうことかといったら、お年寄りや障害者の皆さんが、もう一々、近くに商店街はあるんですけれども、ずっと歩くのも大変な方々のために、商店街の振興組合が、一つそういう連絡場所を設けて、魚屋でこれを買いたい、お米屋でこれだけお米を買いたい、また八百屋さんでこういう野菜を買いたいんだけれどもということで、一括して注文を受けるんですね。その商店街振興組合の方々が、それぞれ、八百屋とかお魚屋さんとかお米屋に行って注文の物をしっかり集めてきて、交代交代で高齢者であるとか障害者の皆さんにお届けするという、そういうサービスを無料でされている商店街にこの前行かせていただいたわけです。

 これは、当たり前ですが、その地域住民に大変喜ばれておられまして、電気屋さんなんかは、例えば電球の注文を受けて、電気屋じゃないのにその振興組合の人が行って、家まで入ってお年寄りのかわりに電球をかえるというところまでされている。そういう地域密着の商店街というものを見させていただいたときに、まさにこれは、これからの高齢化とか少子化社会の一つのまちづくりとしてヒントを見させていただいたような気がするわけでございます。

 私は、これから高齢化社会になっていったときに、やはり、ある程度、中心市街地といっても、地域がコンパクトになっていって、なおかつ、車とかそういうものがなくても、歩いて、また自転車なんかで行き来ができるような、そういうまちづくりというものをしっかりと考えていかなければいけない。自宅から、徒歩、自転車、また公共交通機関などで行ける範囲に、買い物であるとか、また仕事、また医療、そして遊び場所など、そういう日常的な諸機能がきっちりと集約された、安心、快適な、歩いて暮らせる生活圏というものをいかに形成していくのかということが私どもは非常に大きな課題であろう。

 我々の党で言うと、それは、歩いて暮らせるまちづくりというように名づけたわけでございますが、しかしこれは、よくよく調べてみると、我々が最初じゃなくて、実は旧建設省時代に、平成十一年にこの国土交通省としてそういうことを推進されているんですね。それは小渕内閣の時代だったんですけれども、経済新生対策として、「歩いて暮らせる街づくり」ということで、具体的にモデル事業、全国で二十ぐらい明確に挙げられて、例えば北側大臣の大阪で言うと、豊中市の千里ニュータウン地区というのも一つのモデル地区として取りかかられた、そういう形跡があるわけです。

 私は、もう少しこれを発展させて、単なるモデル事業ではなくて、内容もしっかり吟味した上でないといけないと思うんですけれども、歩いて暮らせるまちづくりの基本指針なんかを国できちっと示して、そして各自治体で歩いて暮らせるまちづくり計画というものをしっかりと策定して推進していく必要があるんじゃないかと思うんですが、北側大臣のこの件に関しての所見を伺いたいと思います。

北側国務大臣 これからの高齢社会を考えますと、地域の中で本当に必要なものが充足される、そういう町をつくっていくことが非常に大切であると思っています。何か、遠いところまで車に乗って行かないと最低限の医療が受けられないだとか、必要な買い物ができないだとかいうのではなくて、自分が住んでいる居住のそういう空間の中で、本当に、歩いて、また時には自転車に乗って、時にはバスに乗って、それぐらいの面的な中で必要なものが充足する、そういうまちづくりをしていくということが、これからの高齢社会を考えると物すごく大事であると思っております。

 また、そういう中心市街地の周辺にちゃんと高齢者の住宅もあるというふうなまちづくりが必要で、この歩いて暮らせるまちづくりというのは、今御指摘ございましたように、かつて国土交通省として推進をしようとしたことがございます。それをもう一度しっかりと推進させていただきたいというふうに私は思っているところでございます。

 先ほどお話ございましたユニバーサルデザインに共通する問題でございまして、ユニバーサル社会をつくっていくためにも、この歩いて暮らせるまちづくりというのは極めて大事なテーマだと思っております。

佐藤(茂)委員 就任早々、大変な災害がいろいろありましたけれども、国土交通行政、本当に大事でございまして、国民の皆さんに安心、安全な国づくりをしていただくためにも、北側大臣、両副大臣、三人の政務官の御活躍をお祈りして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

橘委員長 三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 私も、同僚委員ともども、山積する諸課題について質疑をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、ことし一連の自然災害でお亡くなりになられた方々に対する御冥福を心からお祈り申し上げ、そして、被害に遭われた方々に対するお見舞いを申し上げたいと思います。また、大臣を初め国土交通省の関係者の皆様方は各地で復興復旧に向けて御尽力をいただいておりますし、全国の各地の被災地に、これまた全国から多くの方々が駆けつけられ、復興復旧に向けて御協力、御尽力いただいております。NPOの皆様方や多くの皆様方に敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 新潟で親子三人で生き埋めになられた、また優太君だけ救出されたというあの救出劇を見ました。本当に痛ましい現場を目の当たりにいたしまして、自然災害に対する対策、しっかりととっていかなければならないなということを国会議員としても感じながら、また優太君の今後の元気な成長を私も心からお祈り申し上げたいというふうに思います。

 私は、今年度我が国が多く受けました自然災害、この災害復旧についてということ、また、この経験を生かしてこれから防災対策にどのように取り組んでいくんだというふうな観点から、一時間のお時間をいただいておりますので、質疑をさせていただきます。

 まず冒頭、今後の、また今の国民の生活にとって非常に重要な点幾つかについて、また政治に対する信頼を回復するという観点から、重要な問題について質問をさせていただきます。簡潔に御答弁をいただきたいと思います。

 まず初めに、年金の未納についてお伺いをいたします。北側大臣は、九三年八月から八カ月間の未納の期間があったということを御自身で公表なさっております。副大臣、政務官の皆様方はいかがだったでしょうか。お願いいたします。

蓮実副大臣 国会議員になってからの国民年金の未加入は一切ありません。

中野大臣政務官 私は、国会議員となりました平成八年十月以降、国民年金の未加入期間はございません。

岩崎大臣政務官 私は、国会議員となりました以降につきましても、国民年金の未納、未加入の問題は一切ございません。

三日月委員 ありがとうございました。

 国会議員になる前はどうだったのですかというような質問はいたしません。私自身も学生時代に十カ月の未納期間があったことが判明をし、そして公表をいたしております。

 別にそのこと自身に時間を費やすつもりはありませんけれども、単なる止血、債務をとめるということだけではなくて、また小手先の改革ではなくて、保険料を上げて給付を引き下げるという、ただこのことだけではなくて、やはりわかりにくくて、今の年金は払いにくくなっていますので、これを、一日も早く抜本改革に向けて、まず政府の方針を示していただいた上で、将来のための年金改革論議を早急にしなければならないということを申し上げておきたいと思います。

 二つ目、郵政民営化についての考え方についてお伺いをしたいと思います。(発言する者あり)

橘委員長 御静粛に。

三日月委員 郵貯、簡保から多くのお金を回して融資している財政投融資、平成十六年度で二十兆四千八百九十四億円。そのうち、国土交通政策に関係する住宅や国土保全、災害復旧その他にも三四・四%という、七兆四百五十二億円というお金が流れています。国土交通省が所管する公的投資やインフラ整備にも、この郵政民営化というのは非常に大きな影響を与えるというふうに考えるんですけれども、こういった観点から、現在検討中の郵政民営化についての考え方についてお伺いをいたします。

 また、自民党の副大臣、政務官の皆様方におかれましては、内閣の進める郵政民営化に異を唱えていらっしゃる綿貫先生を会長といたします郵政事業懇話会に所属をされているか否かという点についても、あわせてお答えをいただきたいと思います。

蓮実副大臣 郵政民営化の問題でありますが、内閣の方針に従って対応してまいります。

 それから、郵政懇話会であります。入っておりません。

中野大臣政務官 郵政民営化の対応につきましては、私自身内閣の一員でありますから、内閣の方針に従って対応いたしてまいりたいと思います。

 なおかつ、郵政事業懇話会につきましては、プライベートなことでありますので、答弁は差し控えさせていただきます。

岩崎大臣政務官 まず、郵政民営化への問題でありますが、内閣の方針に従いますことは当然のことであります。

 それから、郵政事業懇話会等の会に所属しているかどうかということでありますが、これは個人の政治活動にわたる問題でございますので、答弁は差し控えさせていただきます。

三日月委員 大臣、いかがですか、郵政民営化に対して。

北側国務大臣 郵政事業の民営化についての政府の方針に私は賛成でございます。

三日月委員 政務官お二人の、国会議員のプライベートなことだから、個人のことだからというのは私は残念です。国会議員ですから、個人のことであっても、プライベートなことであっても……(発言する者あり)

橘委員長 御静粛に願います。

三日月委員 政府の方針に対する考え方、これに異を唱えたり、閣内不一致や、そしてダブルスタンダードというのは、私は、この国の改革をゆがめると思うんですね。道路公団の民営化のときもそうでした。しっかりとこの点について今後も検証してまいりたいというふうに思います。

 続いて、政治と金の問題です。

 これは、この時期に国会議員をする一議員としても非常に残念な問題だと思っています。簡潔にお伺いをいたします。やみで流れて、そして不正に処理をされた旧橋本派の資金、間接的でも結構です、受けられているか否かという点、そしてまた、国民政治協会を介して迂回して献金された資金の有無について、副大臣、政務官にまずお伺いをいたします。

蓮実副大臣 両方ともありません。

中野大臣政務官 政治と金の問題につきましては、一衆議院議員としても、大変広い意味で反省をいたしております。日歯連の問題あり、あるいは山梨県教組の問題あり、本当に重大問題でありますが、二つの問題につきましては、私は全く関知いたしません。

岩崎大臣政務官 まず、迂回献金の質問でございますけれども、迂回献金という意味がよくわかりませんけれども、他の政治団体を経由して私に献金をしているようなものはないというふうに思っております。

 それから、平成研究会からの資金交付を初め政治資金の受け入れについては、すべて政治資金収支報告書に掲載し、これを公表しておりますので、それをごらんいただきたいと思いますし、平成研究会の他の構成員と比べて私が異なる資金の交付を受けているようなことは一切ございません。

三日月委員 大臣にお伺いをしたいと思います。

 私は、生活与党、庶民の政党を自認される公明党、政策の面でも多くの共感する部分があります。公明党から入閣されている北側大臣、今回の一連の献金疑惑、その後の対応、いかがお感じになっていらっしゃるでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

北側国務大臣 政治に対する国民の信頼を確保するためには、やはり政治と金にかかわることについて透明性を確保すること、そしてまた、きちんと説明できるようにしておくことということが極めて大事であると思っております。

三日月委員 大臣がいみじくも言っていただきました。透明性をきっちりと確保すること、そして説明ができるようにしておくこと、これは大事だと思うんです。党の内規を見直すことも必要でしょう。必要であれば法律を変えなければなりません。ただ、何が原因で、一体どうやってそのお金をもらわれて、どう処理されたのかという真相をまず明らかにして、きちんと説明した上でその対策を講じるというのが、これは別に政治の世界だけではなくて、企業でも普通の活動でも何でも同じだと思うんですね。

 そういった意味では、今回、十一月九日に、自由民主党のいわゆる日本歯科医師連盟事案に関する党の調査報告についてという、この二枚物が公表されておりますけれども、ただこれだけで、いや、事実はなかったですとか、これは極めて不誠実であり、そして不十分だと言わざるを得ません。国会で責任のある、偽りのない説明をしっかりとすべきだということを申し上げたいと思いますし、中には、災害があるのにそんなこと言っている場合かと言う方もいらっしゃるかもしれませんし、心の中で思っていらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、それはそれ、これはこれなんです。税金の集め方、そして使い方を決めるこの国会が、こういう政治と金の問題で国民の皆様から信頼を失っているという現状について、真摯な政府・与党の対応を求めておきたいと思います。

 それでは、本題の災害対策、復旧支援政策、防災対策についてお伺いをいたします。

 まず、基本認識といたしまして、地球に生きている人間である以上、自然災害は不可避だというふうに思います。そういった意味で、国を挙げた取り組みというのが重要だと思います。今後起こり得る災害を予知、予測する、また、起こった気象の変化をいち早く伝え、行動に移す、また、残念ながら起こってしまった被害を最小限に食いとめるための取り組みが重要だと思います。

 そういった観点から、まず第一に、補正予算に対する考え方。財務当局の大臣ではありませんけれども、多くの社会インフラの復旧復興に当たらねばならない国土交通大臣として、今なお不自由かつ不安なまま時間が流れて、間もなく雪も降ります、年も越さねばなりません。生活も農業も地場産業も、多くのダメージを受けています、全国各地で。早期に被害額を算定して、年明けの通常国会なんて悠長なことを言わずに、十二月三日の期限を少々延ばしても、それこそ年末年始の休みも返上して、この補正予算の早期の決定に当たるべきだと私は思うんですけれども、お考えをお聞かせください。

北側国務大臣 大切なことは、被災現場で今地方団体を初め大変御苦労いただいておるわけでございますが、各地方地方、また各現場現場で、何か補正予算が編成されていないから復旧事業ができない、こういうことがあってはならないんですね。

 そういう意味では、私どももかねてから申し上げているわけでございますが、災害査定に先立って、応急工事はもうやってください、やってください、それは査定前でも構いませんよと。また、査定が終わった箇所で実施する本格的な復旧工事についても、予算上の措置は後でいいんです、先に工事に着手してくださいというふうに申し上げているんです。ですから、補正予算につきまして、この国会でやらなくても、現実は、現場現場で何か支障が生じるということはございません。

 今、損害額の報告をずっと受けたところでございますが、十一月一日時点で、ことしは国土交通省関係だけで被害報告額がもう既に七千億円を超えておりまして、これは、新潟県中越地震の被害状況というのはまだ今明らかになっていないところもございます。そういうのも入れますと、さらに大きくなるというふうに思っておりまして、非常に大きな被害額になってまいる。これは国土交通省だけでございまして、ほかにも農水省とかあるわけでございます。そうしますと、補正予算を編成し、それの成立をお願いするということは、私は、これはもう避けて通れない。明年の通常国会の冒頭にぜひ、来年度予算案とともに御審議をお願いしなきゃいけないなというふうに思っております。

三日月委員 大臣がおっしゃったように、当初の災害復旧費七百億円ですか、そして予備費の三千五百億円、これではもう到底足りないだけの被害額が全国各地で、国土交通省の七千億円以外にも各分野にわたって被害が起こっている。

 今、もちろん、被害算定額を算出することが非常に困難だというこの事情はわかります。今、一生懸命早期に算定をしているんだというこのことには敬意を表しますけれども、しかし、大臣がおっしゃいましたけれども、予算がなくてもどんどんやってくれと言っている、私、これは違うと思うんです。大臣が、じゃ、すべて示達でそうやって出されているかというと、やはり、予算の裏づけがあっていろいろな施策というものを各都道府県も市町村もされると思いますし、予算があったって、三位一体の税源が移譲されずに補助金と交付金だけが削減されるというこの事情の中にあって、非常に苦しい財政運営を強いられている自治体が、予算もないけれどもとにかくやってくれと言ったって、これは私は違うと思うんです。

 この点をぜひ踏まえていただいて、この補正予算、やはり年を越さずに年内にやろうじゃありませんか。このことを私は強く呼びかけておきたいと思いますし、初めから通常国会ありきでやるんではなくて、算定された暁には、やはり早期にこの成立に向けて努力をするということを要請しておきたいと思います。

 その上で、ライフラインとしての鉄道の被害についてお伺いをいたします。

 この間、台風六号を初めとする豪雨、台風、そして地震、もういろいろなライフラインがめちゃめちゃに寸断をされたり、水浸しになったりしましたけれども、現時点で復旧していない鉄道の線区の復旧見込みについてお伺いをいたしたいと思います。

 特に、信越線、上越線ですね。よく新幹線のことだけは話題になるんですけれども、在来線の信越線、上越線が復旧していないことによる貨物鉄道輸送、物流の被害というのは、非常に影響も甚大です。日本海のルートは、もう既に御案内だと思うんですけれども、輸送量が一日七千五百トン、陸上貨物輸送の比率で見れば、北海道と近畿の四二%、北海道と中国地方との輸送の六九%、北海道と九州の物流に至っては八二%がこの日本海ルートの陸上貨物輸送、鉄道による貨物輸送が行われております。

 また、JR貨物は、十一月二日から、新潟県中越地震による被災自治体に対する救援物資の無賃輸送を、公共輸送を担う一員として行っていらっしゃいます。

 この信越線、上越線を含めた鉄道の復旧見込みについて、まだ余震があるということもわかります、ぜひ踏み込んだ形で御見解、見込みを教えていただきたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃったように、たくさんの路線で運転の休止がなされております。たくさんございますので時間もかかりますので、今御指摘の上越線、信越線、貨物の問題に限りまして答弁させていただきます。

 上越線につきましては六日町―宮内間、それから信越線については柏崎―長岡間、これが現在運転の中止でございます。ただ、上越線につきましては、六日町―小出間があした十三日から運転再開する見込みになっております。ただ、小出―宮内間は相変わらず運転休止というような状況でございます。

 私どもといたしましては、余震はございますが、できるだけ早く復旧をしたいということで、JR東とも相談をしながらやっていきたいというふうに思っております。

 今御指摘の貨物輸送でございます。

 貨物輸送につきましては、御指摘されたように、被災前は一日十七往復、輸送量として一万トン強の貨物輸送が行われておりました。地震後は、こういう被災区間は停止した状況でございます。

 JR貨物では、現在、迂回輸送、それからトラック代行、こういうことによりまして、本来の輸送力の八五%の確保をやっております。ほぼ顧客の輸送依頼には対応できるような状況であるというふうに聞いております。

 ただ、かなりの減収になっておりますので、私どもといたしましては、できるだけこの貨物輸送の影響を小さくしたいというふうに考えております。必要に応じまして、適宜必要な措置をとっていきたいと思いますけれども、やはり根本は早く線を復旧することだというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

三日月委員 ありがとうございます。

 あの新潟地方の上越線、信越線、そして越後線、イメージできない方々も多くいらっしゃると思うんですけれども、せめて復旧見込みだけでも早期にわかるようにしてやるべきだと思うんです。

 といいますのは、迂回ルートをやるのにも、乗務員の要請だとか、今はトラック輸送、迂回輸送で何とか賄っているとおっしゃいましたけれども、正規の輸送規模を回復させるためにも、迂回させる運転手を要請しなければならないのかどうなのかという、この経営判断も非常に大きゅうございますので、ぜひその点お酌み取りいただいて、せめて見込みだけでも早期にわかるよう、JR東日本、JR貨物、それぞれと連携をとった対策を要請しておきたいと思います。

 また、鉄道軌道整備法、鉄道防災事業費補助制度についてお伺いをいたします。

 私も先般、十月の二十二日、菅直人委員と一緒に四国・愛媛のJR予讃線の土砂災害現場、復旧状況を視察してまいりました。本当にひどいものでした。すぐ隣に山が迫っていて、単線で、非常に厳しい自然環境の中、今鉄道輸送が行われております。

 JR四国は、ちなみに申し上げれば、二百七十億円の運輸収入しかありません。その中において、近年高速道路が急速に整備されまして、十六年度の見込みで年間八十億円の営業損失。それを、国の制度で設置をされております経営安定基金の運用収益八十億円で賄って、ほぼとんとんの経常損益で今経営をされているという状況の中にあって、今回の一連の災害で三十億円の復旧費が必要で、五億円の減収があるんだという状況になっています。

 これは、一JR四国ということだけではなくて、公共輸送ネットワーク、鉄道輸送ネットワークを維持回復させるという観点からも、国家的課題だと位置づける必要があるというふうに思いますし、具体的に言えば、鉄道軌道整備法について、既に菅委員、そして玉置委員の質疑の中でも見解が明らかにされておりますけれども、連続した台風被害を一体のものとしてとらえた被害額の算出、そしてそれに対する支援が必要だと思います。

 この点について改めて確認をさせていただきたいのと、この鉄道軌道整備法は原形復旧が原則なんです。ですから、四国の現場でもそうでしたけれども、路盤は固めて線路だけは何とか通したけれども、すぐ隣には崩れかかった土砂がまだまだたくさんあるというような状況で鉄道、列車を走らせなければならないというような制度上の限界というものもございます。この点について、鉄道局の方から御答弁をお願いします。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 鉄道軌道整備法に基づく災害復旧補助の問題でございます。

 この適用につきましては、従来から、連続した台風等複数の自然災害によりまして多数の被害が発生した場合には、それらを一体として取り扱ってきております。平成五年にはJR九州、平成七年と平成十年にはJR北海道に対しまして同じように適用しているところでございます。

 今回のJR四国につきましても、御指摘のように二十八億の被害があると私どもも聞いております。この一連の台風等により多数の鉄道施設に甚大な被害が発生しているということでございますので、これまでと同様に、同法に基づく災害復旧補助の適用について検討しているところでございます。

 それから、もう一点でございますが、原形復旧が災害復旧補助制度の基本であるということでございます。私どもといたしましては、復旧だけでなく、防災対策についてもう少し支援していくべきではないかという御指摘だと思います。

 この防災対策といたしましては、鉄道防災事業費補助制度あるいは鉄道軌道近代化設備整備等の補助制度がございます。こういう制度を使いまして鉄道事業者に対し支援を行ってきているのが現状でございます。今後、これらの支援制度を適切に活用して防災対策の充実を図っていきたいというふうに考えております。

 引き続き、鉄道事業者に対しまして、こういう制度等につきまして、よく連絡をとりながら、さらに拡充を図っていきたいというふうに考えております。

三日月委員 今からお伺いしようとしたことまでお答えをいただいて、ありがとうございます。

 今の、もちろん被害を受けた鉄道を早期に復旧させたりすることとあわせて、私は踏み込んで、起こり得る災害に対する防災対策こそ必要であってということを今から申し上げようと思ったんです。

 現状は、鉄道防災事業費補助制度、今おっしゃった制度があるんです。しかし、この規定の中には、その効果が一般住民、道路、耕地等の保全保護にも資する事業、この事業にのみ国が補助を行える。ということはどういうことかというと、ネットワーク、線路はつながっている、隣に山がある、その下に住宅や耕地、そういったところがあれば、その山の保全、整備はできるけれども、そこの下が谷だった、川だったというと、これはなかなか補助対象にならない等々の限界もあるんです。

 ですから、防災のための施設強化にかかわる費用の助成をできるような補助制度をやはりきちんとつくるべきだと思いますし、もっと言えば、隣で行われている河川の事業、そしてその上で行われている治山の事業、こういった公共事業と一体的に行えるようなルールづくりなり枠組み整備が、この防災対策、特に道路やなんかではそういった一体的な公共事業が行われたりしていますけれども、鉄道に対しても、同じライフラインとして一体的な公共事業ができる枠組みづくりが必要だと私は思いますけれども、改めて御見解をお願いいたします。

梅田政府参考人 防災対策の強化の問題でございます。

 今御指摘のように、鉄道事業者みずからが行う防災対策につきましては、原則として鉄道の用地の中だけというふうに限られているというものでございます。それから、先生御指摘のような要件等もいろいろございます。私どもといたしましては、鉄道路線とその周辺地域、こういうところにつきまして、一体的に防災対策を行う必要があるというところが多々あると思います。そういう観点から、地方公共団体等が行う治山治水等の事業などと連携をしながらやっていきたいというふうに考えているところでございます。

 今後とも、こういうような具体のところで、具体的に鉄道施設、その周辺地区をまとめて防災していくというような発想でやっていきたいというふうに考えております。

三日月委員 ぜひそういう、今後起こり得る災害に対して、やはり強い交通網、鉄道網、道路網を私はつくっていくべきだと考えます。

 特に、この鉄道防災事業費補助制度というのは、これは国鉄時代の制度だそうですね。民間会社になったJRに対して公がどのようにかかわっていくのかという意味において、やはり不十分だと思うんです。もちろん、一事業者が責任を持ってやる防災対策というものも私は一定必要だと思うんですけれども、公的な役割を担う輸送機関に対する公的な支援というものは私は一定必要だと思いますので、ぜひ一緒にこれからも考えてまいりたいというふうに思います。

 さて、多くの委員からも御指摘がありました。ライフラインもそうだけれども、人々が住む住宅も随分今回の自然災害で被害を受けたんだというこの状況にかんがみて、私は被災者生活再建支援法についてお伺いをしたい。

 社会インフラとしての住宅の再建、住宅を基盤とする生活の復旧復興というのは私は大事だと思うんです。ここに異論を唱える方々はいらっしゃらないと思います。そういった観点から、さきの通常国会で、被災者生活再建支援法というものを改正するための審議をし、最終的には改正をいたしました。ここの中で、もう既に皆さん御存じだと思うんですけれども、長年の懸案として、壊れた住宅、瓦れきの撤去だけではなくて、整地だけではなくて、住宅本体の建築費や補修費こそ支給対象にすべきだという議論がありました。今回改めてこの点が求められ、被災地では非常に深刻な、切実な要求として、国会の方にも届いています。

 民主党は、今回、この被災者生活再建支援法について、今年度起こった、四月一日から起こった災害すべてを含んで支給対象にできるようにしようじゃないかということ、そして、この住宅本体の建築費や補修費こそ支援対象にすべきだという点、そして、もう見直しについて限界に来ているんだから、一年以内に見直しにしようというようなこと等々を盛り込んだ改正案を、この国会に提出させていただいております。

 ぜひ、住宅という社会インフラを整備する責任あるお立場にある大臣に、この被災者の住宅再建、法の弾力的な運用というような不明確なことではなくて、こうした法改正、具体的には被災者生活再建支援法を改正をしっかりして支援策を充実させるべきだと考えますが、御見解はいかがでしょうか。

北側国務大臣 委員も御承知のように、さきの通常国会で、この被災者生活再建支援法につきましては、委員の皆様の御意見、御議論もいただきながら、改正をさせていただきました。そこでは、支給限度額の引き上げを百万円から三百万円まで、さらには、これまで適用がなかった住宅の解体費、それから整地費についても適用しましょう、さらには、住宅ローン利子の経費についても対象に加えましょう等々、相当大きな制度の拡充をさせていただいたというふうに私は思っているところでございます。

 今、委員の御指摘は、さらに直接的に被災者の方々の住宅の補修費等々について支援ができないのか、支援すべきではないのかという御議論でございますが、それも、これはもう当初から与野党を通じて議論をしてきた経過がございます。そこには、やはり、私有財産である個人財産の支援について、これは税金でやるわけですので、そこをどう考えていくかという議論、公助としてどこまでやるのか、そういう議論があるわけでございまして、これは先般の通常国会でも、これは衆議院の災害対策特別委員会でございますけれども、これは参議院でも同様でございますが、附帯決議をつくっていただきまして、その附帯決議で、「居住安定支援制度等の充実を図るため、本法の施行後四年を目途として、制度の施行状況等を勘案し、制度の見直しを行うなどの総合的な検討を加える」というふうな附帯決議もちょうだいをしているところでございまして、今後さらに議論を深めさせていただきたいと思っているところでございます。

三日月委員 今の御見解にはちょっと踏み込んで御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、もちろん、公助の観点と、そして私、みずからがやらなければならないことと、それぞれある、これが与野党を通じて長年議論されてきたという経過、私も災害対策特別委員会に所属をしながら勉強させていただきました。また、今回の通常国会の法改正において、ローン利子補給等々、額の増額もそうです、非常に大きな改正がなされたということも承知をしております。しかし、やはり住宅本体に対する建築費、補修費に対して支給がなされるのか、なされないのかというのが、被災者の皆様方にとっては非常に大きな点になるんだということについて、いま一度。

 今回、大きな災害がまた全国各地で起こりました。もちろん、内閣府だとか、これを所管する省庁はあるんでしょう。この国土交通省は、さきに改正、議論をいたしました住宅の品質確保法もそうですけれども、住宅というものを社会インフラだととらえる省ですよね。ですから、こういう省がやはり、この被災をした住宅についても、社会インフラだから、だめになったときには公のお金をつぎ込みながら、特に本体の再建支援をしっかりと行っていくんだということを、むしろこの国土交通省だからこそ求めていける、求めていかなければならない法改正だと私は思うんですけれども、改めて、大臣、いかがでしょうか。

北側国務大臣 委員の御指摘の問題提起は、よく理解をしております。今後の大きな課題として、政府全体でぜひ論議をしてまいりたいというふうに思っております。

三日月委員 今回、さきの通常国会で改正したから、もう、三年、五年いいじゃないかということではなくて、今回図らずもこういう大きな災害が起こったわけですから、ぜひこの改正に向けて一緒に議論をしていきたいと思います。

 さて、話題を変えまして、今回いろいろな災害を見てきまして、この国のいろいろ起こる気象というものについて、気候の変化ということについて、国がどのように察知をし、どのように当該地区の皆様方にお伝えができているかということについて、改めて検証すべきだと私は思うんです。

 特に、気象庁の説明によれば、この夏から秋にかけての降水量、そして局地的な大雨、また暑さ、多くの台風の上陸、これは異常気象だとはっきりと認めていらっしゃいます。この異常気象に、いかに国を挙げて向き合っていくのかということが大切だと私は思うんですね。一方では、温暖化も指摘されて久しゅうございます。いま一度、地球や自然に謙虚な生活や経済活動への転換ということも必要なんですけれども、今、あした、一週間後起こる、こういう気象変化というものについて、この国の体制、技術、能力がどの程度のものなのか、私は検証すべきだと思うんです。

 そういった点で、まず気象庁にお伺いをしたいと思うんですけれども、ことしの一連の気象事象、自然災害に対する観測、予知、予報の技術、体制、能力をどのように検証、総括されているのか、お教えいただきたいと思います。

長坂政府参考人 お答えを申し上げます。

 ことしの夏は、委員ただいま御指摘のとおり、夏の猛暑、梅雨明け末期からの集中豪雨、それから、過去五十年間になかったような年間十個にわたる台風の上陸と、極めて異常気象的な現象が多発したところでございます。

 これにつきましては、気象庁は、現在の持てる力を駆使いたしまして、災害の防止等を目指しまして、実況の把握、それから、これに基づきます予報あるいは警報、こういうものに順次努めてきたところでございます。

 我々としましては、現在の時点で相当持てる力をもって対応したつもりでございますが、今委員御指摘のように、これを踏まえまして、また今後の改善点というところは詰めていく必要も当然あろうかというふうに認識しております。

 以上でございます。

三日月委員 特に、私は、今回この委員会の大臣所信の中にもありました、また大臣の被災現場視察報告の中にもありましたけれども、従前からの災害対策を総点検すべきだというこの観点から、まず最初に、起こる気象変化をどのように察知し、関係部署に伝えるか。当然、気象庁だけではできないこともたくさんあると思うんです。私は、二点指摘をしたいと思うんです。多くの課題があるとは思うんですけれども、二点。

 一つ目は、これは技術的にもかなり高度な技術を要するというふうに認識しておりますし、現在も研究開発を進められているということなんですけれども、局地的な、どこの場所でいつ大雨が降る、豪雨が降るという場所と時間を限定した予測能力がどれだけ高められるのかということ。そして、ちょっと地震に目を向ければ、内陸型地震に対して即時的な検知、反応がいかにとれるかということが一つ大きな点だと私は思うんですけれども、まずこの点から、気象庁、見解、対策をお答えいただきたいと思います。

長坂政府参考人 ただいま二つの観点からの御質問を承りました。

 一つは、非常に局地的に起こる集中豪雨等をどれぐらい時間的に、あるいは起こる場所を絞って予測できるか、この能力はいかがかという御質問と理解をいたしますが、我々としましては、いろいろな観測装置、特に気象レーダー、あるいは上空の風をはかるような装置、こういったものを増強しまして、そういった異常兆候を察知する能力を一方で高めております。

 もう一つは、昨今の予報につきましては、スーパーコンピューターを使いまして大気の挙動を計算機の中でシミュレーションをして将来を見通す、こういう技術が極めて重要でございます。これには各国の気象局とも非常に力を入れているところでございまして、日本の気象庁も例外ではございません。特に、現在、数値予報と申しておりますが、そういったシミュレーションをするスーパーコンピューターの能力アップを目指しているところでございます。ここ数年のうちには、相当なタイミング、あるいは場所を絞った予測を提供できることが可能になろうというふうに考えておるところでございます。

 二番目の質問でございますが、内陸部で起こりました地震への対応でございます。

 今御指摘のように、内陸部の地震につきましては、予知はほとんど困難でございます。そういった中で我々として目指すところは、地震の発生と同時にそれを即時に検知し、その解析結果を活用しまして地震や津波災害の防止、軽減に役立てる、こういうことが極めて現実的、有効だろうというふうに考えておるところでございます。

 気象庁におきましては、このような視点に基づきまして、緊急地震速報というものの実用化に向けまして、従前から、震源近傍での地震波をとらえ、震源、マグニチュード及び各地におきます大きな揺れの到達時刻やその震度、こういったものを即時に推定するための技術の開発を進めてまいったところでございます。

 その成果をもとにいたしまして、気象庁では、平成十六年二月から緊急地震速報の試験的な運用を開始し、関係機関との連携のもとに、列車の運行制御、あるいはエレベーターの緊急制止、危険な場所での作業者の安全確保などへのこういった情報の活用ということにつきまして、実地に検討を進めているところでございます。

 気象庁におきましては、今後とも、緊急地震速報発表のために必要な地震計の整備など、所要の準備を進めまして、早期に緊急地震速報の実運用を目指したいというふうに考えているところでございます。また、この緊急地震速報のさらなる効率化のためには、独立行政法人防災科学技術研究所等々の関係機関との連携も今後大いに進めてまいる所存でございます。

 以上でございます。

三日月委員 若干踏み込んで質問をしたいと思うんですけれども、今回起こった例えば福井、新潟のあの局地的な大雨というのは、気象庁としてどれぐらい前に予測可能で、お伝えすることができたんでしょうか。

長坂政府参考人 今御質問の趣旨の、非常に集中豪雨的な気象現象等の予測の現時点での技術レベルを一般論的に申し上げますと、事態が発生いたします一日程度前には、おおむね県単位でもってそういった集中豪雨がかなりありそうだ、こういうことをまず申し上げられる技術レベルとお考えいただいてよろしいかと思います。

 なお、もう少し絞りまして、県の中のこういった地域ということにつきましては、ケース・バイ・ケースではございますが、我々としましては、数時間前にそういった、いよいよ集中豪雨がここでということを申し上げるということの実施に向けての日々努力をしているところでございます。

三日月委員 いや、御質問したかったのは、今、現時点で、数時間前に、例えばあの福井、足羽川の周辺、若泉先生の御地元でもいらっしゃいますけれども、実際、非常に想定を超えた大雨が降るぞ、例えば足羽川が非常に危険な状態になるということも含めた予知、予測というのは、現時点の技術、体制、能力レベルでどうなんですか。

長坂政府参考人 まことに技術的にいろいろな問題を含んでいる事案についての御質問でございますが、今申し上げましたように、数時間前、三、四時間前には、そういったことをしているというふうに申し上げております。

 なお、先ほど申し上げましたように、若干の数値予報モデルの強化等をいたしておりまして、もう少しこれを前に、五、六時間前に伸ばすことができないかということを現在志向しておるところでございます。

三日月委員 ということは、今の御答弁を伺っていると、現時点ではできていないというか、まあできない。いろいろな技術的な課題はあると思うんですね。それはよくわかります。いろいろな研究やシミュレーションですか、さまざまやられているということなんですけれども、やはり、少々お金をかけても、これはもう災害、雨、異常気象も頻発をしているし、避けられない、多くの被害をもたらすことになってきたんだというこの状況にかんがみて、時間と場所を特定した気象、これを観測し、予知し、可能な限りこれを住んでいる皆様方にお伝えをするというこの努力をこれまで以上に傾けていくべきだ、傾注すべきだと私は思うんです。

 ただ、これを知って終わりということではなくて、私は、この三月からですか、注意報、警報の改善をされて、土砂災害の危険性がここ数年来で最も高まっていますと、これまで聞いたことのないような情報がニュース等々でも流れていました。ああ、変えられたんだな、改善されたんだなと思うんですけれども、しかし、大雨洪水警報をテレビの天気予報で見ても、ニュース速報で見ても、今自分がいるところがどのような状況になるのかという国民の皆さんの判断、イメージにはやはりつながりにくいと思うんですね。

 そういう意味では、もっともっと、例えば何々川が危ないです、足羽川が危ない、円山川が危ない、何々県の何々地区が非常に降水量がふえていると、都道府県と共同の洪水予報、これを気象庁としても河川局と共同をして、国の直轄河川だけではなくて都道府県の河川についても行われ始めたということですけれども、現状を聞いてみると、二〇〇四年七月現在で、全国の河川のうち十九水系二十九河川しかまだこれができていない。

 また、川だけじゃなくて、ことしは土砂災害が非常に多くありました。この気象の変化が地域の土砂災害に、山にどのような影響があるんだという結びつけた情報というのが私は必要だと思うんですけれども、これも、伺ってみれば取り組んでおられました。しかし、河川局砂防部や自治体と連携した土砂災害警戒情報、これはあるんですけれども、まだまだ、二年たっても試行段階、平成十七年度から実施予定だ、まだ約十の都道府県で試行段階中ですという回答でした。

 この点、私は、もちろん、場所、時間を特定した気象情報をいち早く察知すること、それをいかに川や土砂というものに結びつけて早く伝えるかという取り組みが改めて必要になったということがわかったと思うので、この点について、現状に対する認識とそして今後の取り組みについてお聞かせください。

長坂政府参考人 御質問のように、単に集中豪雨あるいは強風、こういった予測ではなくて、そこから起こり得るいろいろな自然災害との兼ね合い、こういった意味での情報が必要という御示唆だと思います。

 我々としましても、こういった風水害等によります人的被害等の軽減のためには、気象庁のみならず、例えば河川管理者等との連携を強化することが非常に大切というふうに承知しております。

 中小河川と申しますか、県の管理しています河川につきましても、一定の流域面積等を持っています重要な河川につきましては、今御質問の中にございましたように、平成十三年からこれが都道府県との間でできるということになっているところでございます。

 この指定河川のさらなる指定の状況を促進するために、これまでも、国土交通省河川局と協力し合いまして、気象庁では、都道府県知事と気象庁長官が共同で行う河川洪水予報ガイドライン、こういったものを作成するなどしまして、県への支援を続けてきているところでございます。

 今後とも、河川局と連携をしつつ、県の河川管理者との情報交換の場などを活用いたしまして、都道府県知事によります洪水予報河川の指定が促進されるよう、積極的に支援してまいりたいというふうに考えております。

 もう一つ御質問がございました土砂災害警戒情報でございますが、これは現在検討中のものでございますが、内容的に申し上げますと、大雨警報が発令する場合に、地盤の状況、過去の土砂災害の発生状況、あるいはそれまでに降った雨、それから現在降っている雨、これから先降る雨の予測、こういったものを総合的に勘案しまして、土砂災害の危険性のある市町村を示す情報でございます。この情報は、国土交通省河川局砂防部と気象庁が連携をして、実施は都道府県と地元気象台が共同で発表するところでございます。

 今御指摘のように、本件につきましては試行を数年間続けてまいってきておるところでございます。この試行の間におきましてのいろいろな問題点の洗い出し等を踏まえまして、先ほどございましたように、平成十七年度から、準備のできたところからその運用を開始するという手順で進めております。

 なお、気象庁におきましては、国土交通省とも連携をいたしまして、できるだけ多くの都道府県でこの早期の運用をしていただくよう、引き続き取り組んでいく所存でございます。

 以上でございます。

三日月委員 ありがとうございました。

 もちろん、気象庁だけでできることじゃないと思うんですね。今の河川や山の土砂、河川局砂防部等々あると思うんですけれども、河川局長、いかがですか、気象庁の情報をもとに、その地域に住まれている方々に、川沿いに住まれている方、山沿いに住まれている方々に、より有効な情報を与える取り組みということについての決意、御見解をお聞かせください。

清治政府参考人 私どもの管理している雨量の観測所、水位の観測所等あるわけでございますが、それらの情報を有効に活用して、しかもわかりやすいような情報にしてお届けするということは、極めて重要なことだと思っております。時間を争うような状況下におきまして、適切な情報をお届けする努力を今後とも続けてまいりたいと思います。

三日月委員 ぜひお願いをしたいと思います。

 もっと言えば、ちょっときょうは時間の関係で踏み込めなかったですけれども、地震の関係ですね。地震の研究開発等々は文部科学省でやられているけれども、実際に起こった地震を検知して伝える情報、先ほど長官の言われた緊急地震速報は気象庁の方で発信している。まだまだ、ここの連携がきちんととれていないと思うんです。東海地震については国を挙げて予知可能になっているけれども、そしてまた海溝型、海の方から来る地震については一定予知可能だけれども、内陸型、直下型についてはまだまだ難しい面がある。もちろん、技術的にいろいろと可能、不可能があるのはよくわかりますけれども、この縦割りの、省庁、部局横断になってしまっている今の防災対策、特に、いち早く気象変化を察知し伝えるという点での、この部局横断の――どうしたんですか、長官、首をひねられていますけれども。そんなことできるはずないと思っていらっしゃるんですか。

 これは、ことし非常に重要なテーマだと私思うんです。これだけの災害が起こって、洪水や土砂災害、起こったじゃないですか。しかも、豪雨は予知の面で非常に難しい面があるということをお認めになったんでしょう。ぜひ真摯な取り組みを要請しておきたい。よろしいですか、そんなことできっこないよというようなお顔をされましたけれども。いかがですか。

長坂政府参考人 委員まさに御指摘のとおりでございまして、気象庁におきましては、現業的なところの責任を持っている官庁でございまして、関係省庁、文部科学省等との連携を今まで以上に進めまして、従来も連携しておりますが、委員の御指摘の線に沿うようなことを努力するのは我々の務めと承知しております。

三日月委員 私の意に沿うようにやってくださるんじゃなくて、国民の皆さんの要請に従ってやっていただくんですよ。

 大臣、いかがですか。今の答弁等々いろいろ聞いていただいていて、改めて決意をお願いします。

北側国務大臣 ことしの一連の災害を通じまして、関係の社会資本整備を着実に推進していくことが極めて大事なわけでございますが、そうはいっても、これは時間と予算が必要なことでございます。やはりソフトの対策をしっかり進めていくというのは極めて大事なことだということを、私も一連の災害を通じて今本当に痛感をしております。

 きょう、委員の御指摘の中で、一つは、気象庁ができるだけ高度な気象情報をできるだけ早く提供することが大事だぞと。今、その研究開発等を進めながらやってきておるところでございます。時間、場所をできるだけきめ細やかにして気象情報が提供できるように、しっかりとこれは進めていきたいと思っていますし、また、洪水等の問題でありますと、これはやはり河川管理者との連携が極めて大事でございます。

 浸水地域と雨が降っているところとは必ずしも一致をしないわけでございます。上流の方で大変な豪雨が降ってしまうと、下流部で必ずしもそんなに豪雨でなくても大変な浸水が生じることにもなるわけでございまして、そういう意味では、河川管理者との連携も極めて大事、その情報をいかに地方公共団体、県や市町村に的確に伝えていくかということが大事でございまして、気象庁また河川管理者、さらには地方公共団体、市町村等との連携をいかにするか。

 また一方で、地方公共団体の方も、私はやはりガイドラインといいますか、こういう警報が出た、こういう事態になった場合には、例えば避難勧告、避難指示はこうしていくんだというふうな、できるだけ具体的なガイドラインをつくっていかないといけないな。そこがなかなか、市町村長また県知事等の裁量だけにお任せをしているのではなくて、もちろんそこは、最終的には的確なる判断が必要なんですけれども、やはりガイドライン的なものをきっちり整備していくことも非常に大事だなというふうに痛感をしておるところでございます。

三日月委員 ありがとうございました。

 また、大臣おっしゃっていただいたように、そうなんですよね、実際、気象情報をとってこの川がどうだ、この山がどうだということがわかっても、じゃ、住民を避難させるかどうかというこの避難指示、勧告、その基準、ガイドラインがどうなんだ。これは別に、今検討会をされていますけれども、それこそ自治体ごとに、地域ごとに地形も気象も違うでしょうから、全国一律に、警報が出たら避難させなければならないとか等々のガイドラインづくりは無意味だと私は思うんですけれども、それぞれの地域に合ったガイドラインが早期に整備できるように、情報交換や国としての技術支援をしていっていただきますように、今も検討会等々でされておりますので、早期に要請をしておきたいと思います。

 もう時間が参りました。私は、人命救助や災害防災対策に政党の、与野党の別はないというふうに思っています。必要な投資に、災害対策、復旧支援、防災対策に必要な予算は、私はこの国土交通委員会挙げて、国土交通省にしっかりと配分がされるように、予算づけについても一致協力してやるべきだと思うんです。そのためには、政治に対するお金の流れも含めて透明にして、国民の皆様方の信頼も取り戻さなければならないということも御指摘しながら、今後とも、災害復旧、防災対策にこれまで以上の取り組みをしてまいることを改めて決意として申し上げ、私の質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

橘委員長 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫です。

 私は、引き続いて、今回の夏の大変な台風の災害、それに伴って、治水対策、洪水対策はいかにあるべきか、こういう観点から質問をさせていただきたいと存じます。

 ことしの夏は大変な台風被害、大雨の被害がありました。多くの方々が大変な被害を受けたことにつきまして、お悔やみ、またお見舞いを申し上げたいと存じます。

 さて、こういう大雨、洪水の問題が発生いたしました。どうも最近見ますと、国土交通省の方は、こういう洪水対策にはダムが非常に効果があったということを非常に吹聴して回っているように思います。

 しかし、やはり洪水対策という観点から見ますと、従来はともするとダムに頼るという傾向があったのではないかと思いますが、やはりダムからの脱出ということをこれからは考えていかなければいけない。堤防を強化する、河床の掘削、あるいは、我が党が言っております緑のダムのような森林整備、遊水地の設置といった総合的な対策をとることで、初めて本当の意味の洪水対策になるのではないか、このように考えておりまして、特に緊急的にやらなければならないのは、やはり堤防の強化ではないか。総合対策をとる中でも、緊急的にやはり堤防の強化をしなければならない、こういうふうに私は考えておりますが、この点、大臣、率直にどのようにお考えでしょうか。

    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕

北側国務大臣 個々の河川、また地域によって特性がさまざまだというふうに思っております。

 ただ、委員が御指摘ございましたように、堤防の強化、河床の掘削、また遊水地の設置等々、本当に総合的に治水対策というのはやっていくべきであるというのはそのとおりだというふうに思っております。

松野(信)委員 従来はややダム重視になっているのではないかなという思いがいたしますが、ダムについては、これはもう大臣も十分御承知かと思いますが、完成までに非常に時間がかかる。十年も二十年も、中には三十年も四十年もかかるというような時間の問題があります。

 また、一応計画がなされておりますが、その計画以上の超過洪水が出た場合には効果を発揮しないとか、あるいは、ダムの操作というのはどうしても人間がやりますので、失敗することもあり得るわけです。現に、ことしの夏の台風十六号による大雨の場合、これは愛媛県の肱川の鹿野川ダムというダムですが、ダムの操作を誤って、ダム湖に流入するよりもそれ以上に流出をして被害を発生させた、こういうような事例も報告がなされているわけです。

 やはりダムにはどうしてもこういう意味の限界がある。恐らく大臣もこういう点については十分御承知かと思いますが、いかがでしょうか。

北側国務大臣 また必要であれば答弁させますが、ただ、ではダムは不必要かというと、そうも言えないわけでございまして、ここはやはり総合的にやっていくしかないわけでございまして、その点もぜひ御理解をお願いしたいと思っているところでございます。

松野(信)委員 ダム以外の、例えば河床の掘削が必要だということは国土交通省みずからあちこちで宣伝もしております。

 私の手元にありますが、これは国土交通省の九州地方整備局でつくられているチラシですけれども、川内川、これは鹿児島です。川内川を襲った台風十六、十八、二十一号については、床上浸水対策特別緊急事業、これは河床掘削のようですが、これが実施されていなかったら大変な被害が出ている、こういうようなチラシもつくっておるわけでございます。

 大臣も言われるような総合対策の中でも、やはり緊急性がある、ダムはどうしても時間がかかりますから、緊急性という点から見るなら、こういう国土交通省がチラシでも言っているような河床の掘削とか堤防の強化とか、特に私は堤防の強化をぜひ早急に検討していただきたい。

 堤防というものは、仮に堤防の上へ水が溢水をしたとしても、それほど大きな被害が発生しない。むしろ堤防が決壊してしまうとこれは大変な被害が発生するというわけですから、まず堤防が決壊をしないように強化をしなければならない、こういうふうに思っている。これはまさに緊急性を要する事業だ、こういうふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

清治政府参考人 堤防についての強化でございますが、委員御指摘のとおり、非常に重要なことでありまして、堤防強化に今一生懸命取り組もうとしておるところでございます。

 また、今御指摘がありました川内川の河道掘削の話でございますが、これは河川の狭窄部と申しますが、河川が狭くなっている部分がありまして、それの上流がよくはんらんするというような地形のところであったわけでございますが、下流の改修ができてきたことによりましてその狭窄部を拡幅することができたということでありまして、その効果がことしの洪水であらわれたということでございます。これも、川それぞれの特性に合った対策を講じていくことによって効果的な対策を講じることができるのではないかという一つの例でございます。

    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕

松野(信)委員 治水の問題については、私は、今申し上げた堤防の強化と同時に、やはり河川整備計画、これをしっかり立てることだというふうに考えております。

 これは九七年、平成九年の河川法の改正で入っているわけですけれども、しかし、見ますと、国が管理をしております百九の河川での河川整備計画というのは、どうも余り進んでいないな、この進捗性が遅れているのではないか。もう少しスピードアップして、河川整備基本方針、そして引き続いて河川整備計画、こういうものを策定していく必要があろうかと思います。

 どうもこの点についてはいささかスピードが遅い、こういうふうに思っておるんですが、この点をいかがに考えておりますか。

清治政府参考人 御指摘のありました河川の整備の基本方針それから整備計画、これにつきましては、現在、できているものといいますか、改定されてでき上がったものというのが百九水系中の二十九水系でございまして、さらに整備計画をその中から策定しているわけでありますが、これがまだ十一河川にとどまっておりますので、御指摘のように、なかなか進んでいないというのが現状でございます。

 これは、整備計画をつくるに当たりましていろいろな御意見をいただくというようなこともありますし、過去の出水状況、それから、今持っております工事実施基本計画、こういうものとの整合性、こういうことをいろいろ検討しながら進めているわけでございます。

松野(信)委員 今御答弁をいただいたように、百九ある水系のうち大体一割ぐらいしか河川整備計画が策定されていない、こういうありさまですね。しかし、法律は平成九年に河川法が改正されましたので、六年、七年ぐらいもうたっているわけです。それにもかかわらずまだ一割しかできていないというのは、何かこれだという原因があるのかどうか、私はいささか疑問に思っているところであります。

 しかも、調べてみますと、河川整備計画が策定されていない川というのは、どうもダム問題を抱えているところ。これについては、見ますと、河川整備計画がつくられていない。例えば利根川、今四千六百億円もかけて八ツ場ダムをつくろうとしているこの利根川、それから長良川、木曽川、私の地元であります球磨川、ダム問題を抱えているところは全部河川整備計画が策定されていないという、これは客観的な事実があるわけであります。

 そうすると、そういうところは軒並み、おくらせているとは私は言いませんけれども、どうもそういうふうに疑いたくなるようなこういう事実があるんですけれども、こういうところがおくれているというのは、その原因はどのように考えておられますか。

清治政府参考人 今お話のありました整備計画なりがまだできていない川とダムとの関係でございますが、これは、特にダムがあるのでそういうことになっているということではございません。例えば豊川それから肱川、こういう川につきましては、ダム計画をしっかりと計画の中で位置づける必要がある、それと河道の整備、こういう関係を明確にする必要があるということで、あえて優先順位を上げたような形で計画を策定しているところもございます。

 また、おくれている理由というものにつきましては、特別な事情があるということではございませんが、既に六、七年たってきておるわけでございますので、鋭意、必要な改定につきまして進めていかなければならないと思っています。

 また、今持っている計画以上の洪水が起こったような場合には、当然計画の見直しというようなものが必要になってこようかと思います。こういうものについてもしっかりと取り組んでいく必要があろうかと思います。

松野(信)委員 鋭意進めていきたいというのはよく聞くことではありますが、しかし、もう法改正が平成九年ですから六年も七年もたって一割しかできていないというのは、どうも余り鋭意やっているとは思えない。

 私の地元で言うところの球磨川についても、これは川辺川ダムが今大きな問題になっているわけで、ここも河川整備基本方針もできていないという状況であります。この策定が今どういう段階に来ているのか。例えば一〇〇%のうち五〇%ぐらいは進んでいる、いつこういう策定ができるというタイムスケジュール、こういうものがあればお示しいただきたいと思います。

清治政府参考人 今お話のありました球磨川でございますが、球磨川は、計画の見直しといいますか、しっかりとした計画を持って今後の対策に当たるということは、ほかの水系もそうでございますが、重要な課題であるというふうに認識しております。

 できるだけ早い時期に改定を行っていくことが必要だと思っておりますが、現在、この水系、球磨川の特徴を生かした望ましい河川の姿ということをいろいろ検討しておりましたり、また、治水計画として今何が重要なのかということですとか、それから、何よりも治水の安全度というのが球磨川につきましては不足している、ほかの一級水系に比べて不足している状況にありますので、この治水安全度のあり方、こういうことにつきましても議論をしていかなければならないというふうに思っているわけでありまして、そのための検討を進めているわけでございます。

 また、幅広くこの水系に必要な検討課題を踏まえて、いろいろな調査を行っているという段階でございます。

松野(信)委員 鋭意検討で一生懸命やってはおられるのかもしれませんが、川辺川ダムがそもそも計画されたのは昭和四十一年ですよ。もう何十年も前の治水計画があって、それでダムができているわけで、平成九年に河川法が改正されてからもう六、七年たっているのにまだ基本方針すらできていないというのは、一体何をやっているかと言われても仕方がないと思います。

 しかも、今お聞きしましたら、タイムスケジュールも出せない。鋭意努力するけれども、いつ具体的にどこまで進むかというのもまだ出せない。これは何もこの球磨川だけじゃなくて、どうも聞いてみますと、ほかの利根川とか長良川、木曽川あたりも大体みんなそういう状況のようで、鋭意努力するけれども、いつまでに基本方針を定め、いつまでに整備計画を策定するか、こういうのをやはりきっちりタイムスケジュールをつくって、努力目標を立ててやらなければ、可及的速やかに頑張りますみたいなことを言っていたってどうも進まないのじゃないかと思いますが、この辺について、ぜひ大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 河川整備の基本方針、整備計画について、早く策定をしないといけないというのは私もそう思います。

 ただ、これは当然地方団体等々の関係者の方々ともよく協議をしながら進めていかないといけませんので、しっかり協議をしながら、この計画の策定、しっかり促進をさせていただきたいと思っております。

松野(信)委員 どこか拍手がわいておるようですけれども、ぜひその大臣の決意でもって早く、住民の人たちが安心できるような整備計画というものを出してやっていただきたい、こういうふうに思っております。

 それから次に、川辺川ダムの事業費の問題についてお伺いをしたいと思います。

 大体、ダムの事業費というものが途中で大きく増額をされるというのはよく言われるところでありまして、変更計画によって何倍も事業費がかかるということは常に批判されているところでありますが、川辺川ダムも全く同様でありまして、当初計画では三百五十億円というふうになっていました。それが、平成十年に変更計画がありまして、二千六百五十億円に増額をされました。そうしたらまた、六年しかたっていないんですけれども、まだダム本体に着工もしておりませんが、ことしになって、今後最大限切り詰めても全体事業費が約三千三百億円となる見通しだ、こういうことが明らかになっております。

 この事業費の増加について、部内でつくられたメモではこうなっているんです。事前協議で事業費増嵩を表明すればそれだけで大騒ぎとなるが、仮に事業費増嵩を表明せず、基本計画変更時に事業費増嵩を表明した場合、熊本県の反発を招く、事前協議にて事業費をどう取り扱うかの意思決定が必要だ、こういうようなメモすらできているわけです。

 やはり事業費というのは大変重要なものでありまして、これは言うまでもありませんが、それをベースに、費用対効果、より有効性の高い治水というものを考えているわけであります。ですから、事業費が増加されるということであれば、速やかに地元、例えば熊本県なら熊本県と御相談をしていただく、これがやはり筋だと思います。

 しかし、この部内のメモだと、今言うと反発する、後から言うとまた大騒ぎになるということで、どうも地元の熊本県をだまくらかそうというような意図すらうかがわれるわけで、これは本当にいかがなものかというふうに言わざるを得ないと思っております。やはり、できるだけ早目早目に正確なそういう数字は地元にも明らかにして、協議をしていただく必要があろうかと思います。

 そこで、いつから、またどういう理由で、この二千六百五十億円では足らなくなった、それで三千三百億円までかかる見通しだというふうになったのか、そのいきさつを明らかにしてください。

清治政府参考人 今委員からお話ありましたように、平成十年に二千六百五十億という事業費に計画を変更しているわけでございますが、その後も事業の進捗に合わせまして、施設計画など事業内容に関するいろいろな検討を適宜実施してきているわけでございます。

 そういう中で、今般の三千三百億という数字がございますが、これにつきましては、現在のところ、農業の利水の計画が見直しに入ってございますので、いろいろな不確定要素があるということでありますが、一方で、現地の生活再建対策、補償の関係が進んできたこと、それから、残ってきた事業が見えてきたというようなことで、事業の中身について検討をしているわけでございます。そういう中で、今回その新利水計画を見直すに当たって、費用負担、こういうものを比較検討したいということで、農林水産省の方から現在の見通しの額を提示してもらいたいというお話がありまして、今までの事業費のレビューを行ったわけでございます。

 これにつきましても、いろいろな不確定要素がございますので、大体五十億単位ぐらいでの大ざっぱな見通しとしてこの数字を出させていただいたということでございます。

松野(信)委員 今の答弁では私の質問にお答えになっていないですね。

 私は、いつからこういうような試算をするようになっているのかと。二千六百五十億円では足らなくなる、三千三百だというのは、いつからそういうふうに国土交通省が試算をしているのか、こういう質問です。

 農水省のお話がありましたが、農水省のことであるならば、昨年の五月に福岡高裁でいわゆる土地改良事業の判決が出まして、農水省が敗訴している。これは確定しているわけですね。これは去年の五月です。そうすると、去年の五月、この農水省敗訴のころから三千三百億円の検討に入ったというふうにお聞きしてよろしいんですか。

清治政府参考人 事業を進めていく段階で、いろいろな調査、それから現地での対応、こういうものが必要になってきているわけでございますが、そういうものが進んできたということもございますし、今委員御指摘のような、農業の利水の関係の問題が出てきたという事情があったわけでございますが、その農業の利水計画の見直しが必要になってきたということと今般の事業費の見通しというものについては直接関係あるものではございません。

松野(信)委員 いや、それでも答えになっていないんですよ。

 要するに、私は、いつからこの見直しの試算に入ったのかというのを聞いているんです。端的に、いつだというふうにお答えください。

清治政府参考人 ダムにつきましては、基本計画というものをもちまして事業を行っているわけでございますが、この基本計画の見直しが必要になったときには、事業費がどうなるのかということは非常に重要な要素になりますので、これが必要になった段階で事業費というものはきちっと詰めて、関係の機関にお示しして説明申し上げるというステップを踏んでいるわけでございます。

 今回、この川辺川ダムにつきましては、基本計画の見直し、これは必要になってくると思いますが、それらについては、本体の事業にかかれるようになったかどうかというようなことも一つのきっかけになるわけでございますが、いつから見直しにかかったかというようなことではなくて、先ほど申し上げましたように、施設計画など事業の内容が変わるのに合わせて事業費の中身については検討を行っている、継続しているということでございます。

松野(信)委員 どうも誠実な答弁じゃないですね。

 要するに、二千六百五十億円という平成十年の計画変更、この金額では足らないというふうにわかったから試算をして、先ほど局長が言われたように、五十億円の単位で計算をして、それで三千三百という数字に積み上がっているわけでしょう。だから、そういうような作業にいつ着手して、この三千三百という数字がいつ固まったのか、それを聞いているんです。端的に、日時で言ってくださいよ。

清治政府参考人 事業費の中身につきましては、九州地方整備局で作業しているわけでございますが、今回、三千三百億というのは数字は固まったものではございませんが、このような数字が出てきたというか、その作業を行ったのはことしでございます。

松野(信)委員 ことしのいつですか。ことしというのはもう一月から十一月まであるので、もう少し日時を特定して、いつごろから作業見直しに入って、いつごろ三千三百という数字が固まったのか、そこをはっきりおっしゃってくださいよ。

清治政府参考人 作業がいつから開始されていて、今の三千三百億という数字自体は出てきた時期がはっきりしているわけでございますが、いつかかったかということについては詳細にはわかりませんが、六月とか七月とか、そのくらいではないかと私は思っております。

松野(信)委員 余りこの問題ばかりやっているとほかに時間がありませんので、この程度にしておきますが。

 この内容を見ますと、最大限切り詰めても三千三百億円となる見通しだというふうになっております。そうすると、切り詰めた場合は三千三百、普通にやれば幾らなのか、切り詰めなければ幾らなのか、恐らくこれは幾つかのシミュレーションを行って、最低でも三千三百億円、つまり六百五十億円増額されるというふうになっているのではないかと思うんですが、そのシミュレーションの中身はどのようになっているんでしょうか。

清治政府参考人 シミュレーションといいますか、仮定条件がこういう場合、こういう場合というようなものについては、行っているとは聞いておりません。

松野(信)委員 ちょっと納得ができないわけですけれども、時間の関係もありますので次の質問に移りたいと思います。

 萩原堤防というのが球磨川の下流の八代のところにございまして、この問題については十月二十六日、菅委員の方からも大臣に質問がありました。大臣の方からも、堤防の強化というのは大変大事だ、こういう御答弁もいただいております。

 地元にとってみましても、球磨川の萩原地区の堤防強化、これは大変重要だというふうに認識をしているわけですが、河川法の改正の平成九年以降、この萩原堤防の強化に関する事業というものはどのように考えておられるのか、事業計画書などが作成されているのかどうか、この辺についてお答えください。

清治政府参考人 萩原地区の堤防につきましては、球磨川の中で、私ども、最も重要な区間の一つというふうに理解をしております。

 この地区の堤防をどのようにして整備していくかということにつきましては、年度ごとの事務所がつくっております説明資料等がございますが、そういう中でお示ししている状況にあります。

松野(信)委員 大まかな内容で結構ですけれども、どういうような事業計画になっているのか、それを明らかにしてください。

清治政府参考人 この区間につきましては、委員御承知のとおり、北上して流れてきた川が直角よりももっときつく西の方に曲がっていくところでございまして、右岸側に水衝部がございます。これは過去の出水におきましても、この右岸側で洗掘だとか水害につながるような問題が起こってきているわけであります。

 この洗掘がかなり進んでおりまして、工法としましては、洗掘のされている部分を補強することから始めまして、それから堤防の正規の断面を確保していくというような手順になってまいります。

松野(信)委員 今、洗掘がされているので、それに対する対策をとっているということで、確かに、いわゆる深掘れ対策ということで、新幹線のトンネル工事で出てきた岩石を堤防の底辺の部分に埋めているというふうに私も聞いておりますが、ただ、それだけで堤防の強化にはならないだろう。底の部分を多少厚くするだけでは、川より上に上がっている堤防の強化に直ちにつながるわけではありませんで、底の上の部分ですね、これも当然必要なわけですけれども、これについては具体的に、いつ、どのようにする、このようになっているんでしょうか。

清治政府参考人 まず、洗掘対策をやるというお話をさせていただきましたが、堤防の断面が不足しているところがありますので、堤防の川側にしっかりとした断面の腹づけというのが必要になってまいります。それから、湾曲して水衝部でございますので、護岸を整備するというようなことが必要になってまいります。

松野(信)委員 こういう堤防の強化ということは前々から国土交通省の方でも御検討をしておられたようで、平成九年度に全国で二百五十キロメートルのフロンティア堤防を整備する、こういうことが挙げられております。二百五十キロのフロンティア堤防、こういうものは具体的にはどのような内容になっていたんでしょうか。このフロンティア堤防の一環として、八代のこの萩原堤防も強化をするというふうになっていたんでしょうか。

清治政府参考人 今お話のありましたフロンティア堤防というものでございますが、これは委員御指摘のころに計画として持ったものでございますが、二百五十キロというものにつきましては、全国の中で、地方都市も含めてでございますが、一たん堤防が切れたりしましたときに大変な浸水被害が生じてしまう、すなわち、はんらん区域内にたくさんの方が住んでいらっしゃる、そういうようなところを全国の代表河川から取り上げまして、計画として持ったものでございます。

 これらにつきましては、堤防の強化を優先的にしっかりと行っていく必要があるということで計画として掲げたものでございます。

松野(信)委員 私も、このフロンティア堤防は、ある意味では非常に評価をしているところでございます。

 国土交通省のホームページの中にも、破堤しにくい質の高い堤防ということで、フロンティア堤防が載っております。ことしの八月の時点でのホームページにも載っておりました。ところが、いつの間にか、このフロンティア堤防というのをやらなくなってきている。せっかく破堤しにくい質の高い堤防だというふうに言っておきながら、どうも余りこれは実施されていないということのようであります。

 八代のこの萩原堤防についても、九九年それから二〇〇〇年のパンフには、八代ではフロンティア堤防というようなことがパンフレットの中にも載っておりました。ところが、二〇〇一年からは、その文字が消えて強化堤防ということになってしまっています。そうすると、二〇〇一年からは、もうフロンティア堤防というのはやめて、またそれとは違う堤防の強化というふうに決めたのではないかな、このようにうかがわれるんですが、実際はどうなんでしょうか。

清治政府参考人 フロンティア堤防という言葉でどういう堤防を定義するかという問題があるわけでございますが、委員御指摘のような、堤防の強化を図ることによって、短時間で容易に破堤しないような堤防、例えば計画高水位を水位が上回ったとか、それから、例えば一部越流したとか、こういうような状況下に陥っても短時間であればそう簡単に壊れないような堤防をつくっていこうという趣旨では、当時考えていた考え方と今は変わっておりません。

 したがいまして、この地区の堤防につきましては、短時間で容易に破堤しないような堤防を目指して堤防強化を図っていく考え方は今も変わっておりません。

松野(信)委員 名称に私もそんなにこだわるつもりはありません。要は、しっかりとした破堤しにくい堤防をつくっていただく、ここが一番肝心なことですから、フロンティア堤防の名称を途中まで採用して途中からしなくなったんで、これはけしからぬというふうに言っているわけじゃない。基本的にはやはり破堤しにくい堤防をまずつくる。

 そのために、やはりしっかりとした計画、それから予算、こういうものをつくらなければいけないと思いますが、フロンティア堤防という名称を使うかはともかくとして、では、この八代の萩原の堤防をまさに破堤しにくい堤防にするための予算、それから事業の計画、これは一体どうなっているんでしょうか。

清治政府参考人 球磨川全体の毎年の改修予算の中で、この地区につきましては一つの重要地区として予算を投入しているわけでございます。現在は、一億あるいは二億というような予算で推移しているわけですが、全体のこれからの必要な額に対しますと、私は、少ないのではないか、こういうふうに思っておりまして、球磨川全体の中の予算のこともございますが、先日も八代の市長さんが、大事な堤防なのでもっと促進をしていただきたいというお話で来られていましたけれども、ここにつきましては、もっと重点的な投資が必要というふうに考えております。

松野(信)委員 局長はそういうふうにおっしゃられるかもしれませんが、しかし、実際は、平成十三年の時点で、この萩原堤防強化というために一応一億円の予算が認められていました。では、この予算が本当にこの堤防強化のために使われたかというと、そうでないんです。実際に何に使われたかというと、八代海域の調査委員会の調査費用に回ってしまって、現実には堤防強化の方には使われていないんです。なぜそんなふうになったんですか。

清治政府参考人 堤防の強化をする工法につきましていろいろ検討している段階であったということもございますし、また、その工事を実施する場所での魚類等の生息・産卵環境、こういうものへの影響等も考えていたわけでございまして、結果として、平成十三年度の予算でもって事業を行うことはできなかったわけでございますが、平成十四年度以降、現在持っている計画のもとに事業を進めている現状でございます。

松野(信)委員 どうも、正直言って、本気になってこの堤防の重要性、あるいはこの堤防を強化しようという意気込みが全く感じられません。

 そもそも、この堤防は重要だと言いながら、では具体的にいつまでにどういうふうに強化をするかという、その事業計画すら明らかにされておりません。また、十三年度の一億円も別の調査に充ててしまって、十四年度に一億ちょっと、何に使っているかというと、先ほど申し上げたように、新幹線のトンネルから出た土砂を下に埋めているだけ、こういうありさまでありまして、本当に堤防強化の必要性を感じておられるんだろうか。

 これは菅委員の質問にも大臣は強化は必要だというふうにおっしゃっているようですので、ぜひ大臣、堤防を強化するならするで、しっかりとしたその計画を立てていただく。いつまでに何をするかというタイムスケジュールも踏まえて、そして予算面についてもしっかりこれは確保していただきたい。我々もそれはもちろん応援いたしますので、大臣、その点についてのお考えをぜひお聞かせください。

北側国務大臣 きょうの御議論を踏まえまして、改めて堤防強化が大事だという認識をしておるところでございます。予算がしっかりつくように、委員の応援もいただきまして頑張りたいと思っております。

松野(信)委員 応援するのは別に、全くそのつもりで応援するんですが、どうも、必ずしも本気になってやるというような意気込みが正直感じられないものですので、私も何度も申し上げているんです。

 実際に、これは二〇〇一年十二月九日に熊本で行われております、熊本県も入り、国土交通省も入っている住民討論集会では、こういうふうに国土交通省も言っておられます。八代の萩原堤防については、堤防の断面が不足しており、いつ破堤してもおかしくない、こういうふうに言っているわけで、事はまさに緊急を要するわけでございます。ぜひその点を御認識いただいて、早急に計画を立てて実施をしてもらいたい、このように思っております。

 それから、フロンティア堤防については、これは先ほど申し上げたように、平成九年度に一応国土交通省の方で、全国二百五十キロという計画を出しておられます。実際に、どこでどの程度このフロンティア堤防というのを実行しているのか、この点についてお答えください。

清治政府参考人 当時、二百五十キロの計画を持ったわけでございますが、その中で、現在実施しているところは四河川ございまして、約十キロほどの整備をしております。

 その整備を行ったものがどの程度の所期の目的に対して効果があるのかというようなことについて、これは実験レベルでは進めてきておりますが、まだ確定した工法というのが見当たらないのが現状でございまして、現在、これらの河川で行っている対策について、その後のフォロー、こういうようなことを行っている状況にあります。

松野(信)委員 フロンティア堤防については、破堤しにくい質の高い堤防だというふうに国土交通省みずからホームページの中でも言っておられるわけですので、何か最近は、技術的にまだ完成していないから手探りの段階だみたいに、かなりトーンを落としているんですが、そういうことにならないようにぜひ進めていただきたいと思います。

 時間が余りありませんので、最後に、ダムの管理費の点について少し触れておきたいと思います。

 ダムの管理費、ダムができれば当然これは管理をしていかなければなりませんので、毎年毎年一定の管理費がかかります。私が聞いているところでは、ダムができる前に試算をして、大体事業費の〇・五%をダム完成後の管理費として一応見積もっているようです。しかし、実際に私が聞くところでは、ダム湖の方にヘドロがたまってしゅんせつをしなきゃいけないとか、いろいろな理由で、予定しているよりも高く管理費がかかっている。それがまた地元の負担にもかかってくるということで、心配をしているわけです。

 そこでお尋ねですが、当初〇・五%ぐらいに見積もっていた管理費の予測が、実際にはもっと、例えば何割増しにかかっているかどうか、こういうふうな検証というか検討はなされているんでしょうか。もしなされているとすれば、どのような状況になっているんでしょうか。

清治政府参考人 ダムの管理費用につきましては、年度予算単位で、必要な内容をよく把握しまして、しかも、その予算要求の段階で内容を吟味した上で行っているわけでございます。ダムの管理費用そのものは非常に内容的には多岐にわたっているわけでございますが、今回、委員から〇・五%というところのお話がございましたので、少しデータを整理してみました。

 これは、〇・五%というのは、事業の計画を立てて例えば費用対効果の検討をするというようなときに、将来どういう維持管理費がかかるかということを細かに積み上げることはなかなか難しいわけでございますので、過去の実績等も踏まえまして、これはダムに限らず、治水の施設につきましてはこの〇・五%を使うということになっているわけでございます。

 最近十カ年間に完成したダム十八ダムについて、今年度どのぐらいの管理費用がかかっているかというのを計算してみましたが、それによりますと、建設事業費に対しまして平均〇・四三%という数字が出てきております。

松野(信)委員 時間が参りましたので。もっとこの問題についてはいろいろ議論をしたいところです。ダム湖の管理については、ヘドロが予想以上にたまっていて、これをしゅんせつしなければならないということで、新たな問題も出ております。こういう問題についても今後しっかり議論をさせていただきたいと思います

 本日はどうもありがとうございました。

橘委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

橘委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 午前中に引き続き、一般質疑ということでございますので、法案ではなく、また災害復旧のことを中心に議論させていただければと思います。

 まず、今年度の一連の災害の中でお亡くなりになられた方々、本当に数多くに上られますが、その方々の御遺族、またその御親族に心からお悔やみ申し上げ、被災された方々へ心からお見舞い申し上げます。

 さて、そのような方々の今のお気持ちにこたえるためにも、これから政府、国会相共同しながら、二度とこういうふうな災害のときに人命を落とすことがないよう、また、財産の失う分が少なくなるよう対処していかなければいけないと考えております。

 きょう、質疑、四十五分ほどいただいておりますが、その三分の二ぐらいを使いまして、災害復旧のこれからのあり方ということについて、北側大臣には初めて御質問させていただきますけれども、国土交通省と議論させていただければと思います。

 また、関連しまして、こういった災害復旧、もう与野党ともに委員の先生方共通に御認識いただいているかと思いますが、国政の中でも最も緊急度の高い、また優先順位の高い災害復旧事業だと認識しております。その中で、いかにすれば早く、国民の皆様方が御理解、御納得いただけるような復旧が実現するのか、そういったことをきょうの議論の中で展開してみたいと思います。よろしくお願いいたします。

 そこで、まず第一に議論させていただきたいのは、今年度は特に災害が多発しておりますけれども、このような中で国としてどういうふうな対処のあり方があるのか、現在の政府の取り組み姿勢について、また、この取り組み姿勢を前提とする体制についてちょっと議論してみたいと思います。

 そこで、今、内閣の中には村田防災担当大臣がいらっしゃいまして、その大臣の率いられる中で内閣府の事務方が鋭意、本当に日夜励まれているというのは存じておりますが、この災害をどのような実態として把握され、どのような被害額として認識されているのか、ちょっと事前に問い合わせてみました。そうしたところ、防災担当大臣の指揮下にある事務局の中ではなかなか全体の災害の実像について把握できていない、いえ、把握しようにも、する体制が整っていないのではないかというふうに感じた次第でございます。

 つまりは、内閣府の方にお問い合わせしますと、内閣府の方では、激甚災害法の指定を中心にして、それにかかわる被害については把握しているけれども、それにはかかわってこないような災害の被害についてはおよそ各省庁の被害状況の把握にゆだねられている、それは、所管事項としてそれが限界であるというふうにお聞きしております。

 内閣府からいらっしゃっていると思いますが、この現実について、もっともっと、防災担当大臣がいらっしゃる以上は組織を充実させて全体像の把握に努める体制を整備すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕

柴田政府参考人 内閣府の防災に関する御質問でございますが、内閣府は、政府の防災担当の窓口といたしまして、防災の予防あるいは復旧復興等に努めているところでございますし、また、大きな災害が起きましたならば、その総合調整を図っている役所でございます。

 今回の新潟県中越地震、発災直後から非常対策本部を立ち上げておりまして、また、その前から、発災当日から、先遣隊チームを各省庁十数名募りまして当日派遣し、向こうの県と政府との窓口というぐあいにいたしておるところでございます。

 また、非常災害対策本部では、村田防災担当大臣を初めとしまして各省の局長クラスが集まっておりまして、それぞれの各省庁関係する部門についての復旧復興活動、被害の状況等について連日議論をしながら、手を打つところはスピーディーに手を打っていくということでやっておるところでございます。非常に政府一丸となって連携をして対応いたしているところでございます。

 また、住まいの復興の問題だとか、避難所の生活の質の向上の問題等々、あるいは山古志村の対策等々の問題等につきましても、非常対策本部の中でプロジェクトチームをつくって、各省庁連携して施策をとりながら非常対策本部で臨むというようなことをしながら、政府一丸となった取り組みをやっているところでございます。

 予算、被害の状況等についての御指摘でございますが、内閣府といたしましては、被害ごとに、公共施設やライフラインの被災箇所数だとか被害状況、応急復旧の状況等をまとめておるところでございますが、ただ、数字がちょっとまとまっておらないことは事実でございます。

 それからまた、激甚災害は今御指摘のとおりでございますし、また、一年間の、年度を通しての被害の状況だとか被害額というのは取りまとめているわけでございますが、御指摘の、その災害についての被害状況、被害の額、あるいはそれのフォローアップ等については実はこれまで余りやられていなかったことは事実でございますが、今年度から、災害ごとに被害状況だとか被害額を取りまとめていこう、あるいはそれをフォローアップしていこうということで今進めているところでございます。御指摘は、非常に重要なことだと思っております。

和田委員 答弁では鋭意その方向で進めていただいているというふうに認識いたしますけれども、私がこの点について大きな問題だと思っていますのは、災害が起きて、それを復旧するための予算と体制を組むときに、今の現状では、各省庁が被害の状況を把握しながら、後で議論させていただきますが、とりあえずの復旧である応急復旧や本格的な復旧である本復旧の方を図るために予算要求を当然ながら財務省にいたします。それで財務省が査定を行っていくというのが通常のルートだと思います。現状では、災害復旧をする際に、まあ緊急性の問題があるんだとは思いますけれども、各省庁がそれぞれ被害額をまとめたら、すぐに査定官庁である財務省に報告をして、その財務省が被害額を認識した上で査定をするというような体制になっているところでございます。

 つまりは、予算の構築のあるべき姿として、やはり、実態を把握するのは要求する役所でありますが、災害という一単位のテーマについて、どれぐらいの規模の予算を手当てしたらいいのかということを旗を振る役所がいないというのが現状ではないかというふうに思っている次第でございます。

 先般より与野党ともに議論を重ねてきていますけれども、今般、これだけたくさんの災害が生じている現在、補正予算を組むのか組まないのか、また、どのタイミングで組むのか、この一カ月ぐらいずっと議論が重ねられてまいりました。政府・与党の姿勢としては、来年の通常国会の冒頭に処理したいという御意向のようですけれども、実際にその予算としてどれぐらいのことが補正予算の上程までに確保できているのか、また、実際に復旧工事をやって支払いがどの程度行われるのか、その範囲については特に議論が行われていないように思います。

 私が地元を中心に聞いて回っている限りでは、やはり補正予算の編成が来年冒頭になるということを前提に、そちらの方が軸になっていまして、それを前提に工事のスケジュールを組んでいる、そういう実態が何となく聞こえてまいります。そういったことを将来解決し、やはり被災された方々のことを思えば、第一にまず復旧することだ、そのための予算を確保するために、政府・与党、野党、全力を挙げるべきだという問題意識を持っているものでございます。

 これ以上ここで議論しても現行制度が限界があるという認識を持っておりますので、将来への検討に、ぜひ国土交通大臣にも内閣の一員として鋭意検討していただければと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

北側国務大臣 きょう午前中の御議論の中にもあったんですが、大切なことは、被災地の現場現場、また地方地方で今応急の復旧をしていただいております、それに支障がないようにすることでございまして、査定前であろうとしっかり応急復旧はしていただくということで今進めておるところでございまして、補正予算措置ができておらないという一点で何か支障が生じているというようなことはないというふうに考えております。

和田委員 大臣に今おっしゃっていただいたことについては、もう少し後ほど議論させていただきたいと存じます。つまり、大臣は午前中の答弁でも、応急復旧工事についてはぜひ工事をすぐやってくれというふうにおっしゃっておられて、そんな中で、地元で実際に災害復旧に当たられている人がどんなことになっているのか、また後で御説明しながら議論させていただきます。

 次に参ります。

 今のは全体の体制の議論でございましたが、これから先、もう少し中に立ち入りまして、実際の復旧工事をやる場面での議論に移りたいと思います。

 まず、その前提となりますけれども、先ほどの議論では、政府全体の被害総額や災害復旧に当たる予算を把握する役所は今のところ存在しないということでしたけれども、その中でも大きな部分を所管していらっしゃる国土交通省における、今回の一連の、今年度起きたものでというふうにお願いしているかと思いますが、自然災害の被害総額、それをどういうふうに算定されたのか教えていただけますでしょうか。

清治政府参考人 お尋ねのありましたことしの一連の被害額でございますが、被害報告額を受けておりまして、平成十六年の十月二十九日現在、十月末現在ということでございますが、直轄・補助事業、国土交通省所管の施設の直轄、補助、全部合わせまして約四万四千件ございまして、額といたしましては約七千四百億円という報告を受けてございます。

和田委員 国の直轄事業のお話はございましたが、地方の管理下にあるものについてはいかがでしょうか。

清治政府参考人 説明不足で申しわけございません。今のが直轄事業と補助事業を合わせたものでございますが、地方公共団体が所管しているものについては、いわゆる補助事業という形で報告を受けておりますのが、数としてはほとんど補助の箇所数になります四万三千九百五十三という数字がございまして、被害報告額につきましては約六千五百億円。これが地方公共団体の関係でございます。

和田委員 ちょっと私、聞き漏らしているかもわかりませんが、今おっしゃったところは、最初に御答弁のあった四万四千件と七千七百億円ですか、これが直轄事業分で、それ以外の補助事業分が四万三千九百五十三件の六千五百億円でしょうか。何か合計の数字をおっしゃったようにも今、第二の答弁では聞こえたのですが、内訳としていかがでしょう。

清治政府参考人 失礼いたしました。直轄と補助、両方申し上げます。

 直轄は、件数にして五百四十でございまして、被害報告額が九百十二億でございます。それに対して、補助の関係でございますが、四万三千九百五十三件で、六千五百三億でございます。

和田委員 今お答えいただいたので大体クリアになりましたけれども、私として指摘させていただきたいのは、今回の、今までに算定できている分という限定つきではございますけれども、このように自然災害が発生したときに、圧倒的な多数は地方の管理下にある事業として災害復旧が行われるという事実でございます。数字としては、今いただいたので結構でございます。次に進めたいと思います。

 こういった中で、実際に災害復旧をどのように進めていかれているのか、これを、今お述べいただいた国の直轄事業と地方の管理下にある箇所の事業に分けて御説明いただけますでしょうか。

清治政府参考人 災害復旧のプロセスでございますが、もう委員御承知のこともあろうかと思いますが、直轄と補助に分けて御説明させていただきたいと思います。

 まず、非常に件数の多い補助の関係でございますが、これにつきましては、まず申請を出していただきます。出していただいた申請に対しまして災害査定を行いまして、事業費を決定いたしまして、その後、本復旧工事を実施するということが原則になっているわけでございますが、事急を要するもの、例えば河川が決壊してしまった、このままではまた次の出水に耐えられなくなるのではないか、そういう二次災害のおそれのあるようなもの、あるいは道路の交通が遮断されて、ライフラインの一つとしての道路の機能が不十分になってしまう、こういうものについては早急に対処する必要があるということで、災害査定の前に地方公共団体の責任において応急復旧工事を実施することができるということになっておりまして、これにつきましては、実施しました応急復旧工事の内容について、主務大臣が必要と認める場合には、この工事に要した費用が国庫負担の対象になるということになっております。

 一方、直轄の災害復旧事業でございますが、これは、地方整備局が国土交通本省に対して申請を持ってきまして、それをもって財務本省との間で本省間の協議を行います。それで事業費を決定して本復旧工事を行うということが原則になっておりますが、直轄の部分につきましても、やはり緊急に対応しなければならないというところがあるわけでございまして、これにつきましては、緊急復旧事業という形で、財務省の承認をいただきまして事業を実施するという形になっておるわけでございます。

和田委員 事前にもお聞きしておりましたので、大体そのようなことと理解いたしますけれども、これから先、特に焦点を絞って議論させていただきたいのは、今おっしゃっていただいた地方管理下の災害復旧事業の実態についてでございます。

 先ほど御答弁いただいたように、六千五百億円が今現在地方管理下の災害被害額ということで把握されているわけなんですが、災害復旧には大きく分けて二通りあるというふうにお伺いしています。

 つまりは、今まで堤防や道路やいろいろなものがその現場にあったものを、被害を受けたからそのままその形で回復するということで、これを、きのう勉強させていただきましたが、原形復旧というふうにおっしゃるらしいですが、それが一つ。もう一つは、その被害を前提に考えたときに、やはりもっと性能のいいものを整備しなきゃいけない、もしくは高さや幅やいろいろな基準をもっと厳しいもので考えなきゃいけないということを前提に、改良したものを復旧工事として使う、改良復旧というふうにおっしゃるらしいんですが、この二つについて、地方が行う場合にどういったルートでどういった国の支援が受けられるようになっているかを御説明いただけますでしょうか。

清治政府参考人 委員のお話がありましたように、災害復旧というのは壊れる前の形に戻すものでございますが、そのままではまた同じような災害が起こってしまう可能性があるとか、それから前後の関係等も含めまして、改良することによって、改良とあわせて実施することによって効果が発揮できるし安全度も上がるというような場合には改良復旧を行っているわけでございます。

 原形復旧につきましては国庫負担率は三分の二ということになっているわけでありますが、改良を含んだような改良復旧を行う場合には、この改良復旧分につきましては二分の一の補助という形になっておりまして、その内容につきましては、申請者が原形復旧で申請をしてくる場合もございますし、改良した方が効果が高いと思われるものについては改良を含めた案で協議されるわけでございます。その協議の段階でいろいろ打ち合わせて、改良復旧という方策をとるのか、その改良復旧の中でもいろいろな対応する費目があるわけでございますが、それらを国土交通省の所管のところと相談して内容を決めていくという形になっております。

和田委員 今御説明いただいたように、実は調べていきますと、もとどおりに直す方の復旧と、それから、必要に応じてということになるんでしょうけれども、必要だと認定された上で、改良工事を行って護岸なり道路なりをもう一回整備し直す場合と、国からの支援の割合が異なるという結果になっているわけでございます。

 もっと言えば、ぜひ大臣にもお聞きいただいておきたいんですが、地方が実際に、被災者が目の前にいる状況では工事を行わざるを得ませんので、実額を支出しながら復旧工事を行っていくわけですけれども、その担当者の心理に立てば、自分の判断で工事をやって、最終的に地方の支出分としてどれぐらいの額になるのか、そして最後に国からどれぐらいの支援が戻ってくるのか、そういったことを考えながら手はずを進めるのが人間の常だと思っております。

 そんな中で、ともすると選びがちなのは、実は応急復旧の中でも原形復旧ばかり。すなわち、原形復旧であれば、今御説明があったように、補助率でいうと三分の二以上、必要度に応じて高まることもあるというふうにお聞きしていますが、三分の二以上の支援が受けられる。ましてや、その裏負担であります地方の支出分、仮に三分の一としましょう、その場合に、三分の一を地方が支出しますけれども、それが規定上は全額地方債の対象として認められる。そうすると、地方債の対象となっているということは、現行制度上は後々交付税で手当てされるということになってまいりますので、原形復旧の場合は、往々にして、最終的には全額が国から支給されるということによくなっているわけでございます。

 それと違って、改良復旧というのは、今御説明があったとおり、地方の負担が二分の一でございます。先ほどは国の支援が二分の一という御説明がありましたから、地方の負担が二分の一、これはどうも確定している数字のようですが、その二分の一の地方の負担のうち、今度は、地方債の対象になるのは全額ではなくて九〇%というふうに聞いております。これはケース・バイ・ケースで違うのもあるのかもわかりません、それは御容赦ください。つまりは、地方が実質的に負担しなければならないものが改良復旧の場合には確実に生じるということになってまいります。

 私も予算査定官庁におりましたので、そういった仕組みが全くいけないと思っているわけじゃないんですが、いわゆる必要最小限の予算を計上するためにはそういったセーブもきかす制度がなきゃいけないというふうには理解しますけれども、実際のところは、この制度の中で、地方が国に申請を上げられている実態として、ほとんどが原形復旧でそのまま上げられておる。そして、それが、実際にその場所がそんなにもう被害を受けることがなければよろしいんですけれども、委員の皆様方にもごらんいただきたいと思いますが、きょう、一枚だけお許しを得まして資料を御用意しました。

 この写真を見ていただきますと、右側二つが、これは見ている方の側が海でございますが、石垣の部分がごらんになっていただけると思います。それから、この写真の左奥の方に、ちょっと見づらいかもわかりませんが、コンクリートの壁が約一メートル五十ぐらい積み上げられております。こういった原形を呈しておったんですが、これはたしか台風十六号のときだったと思いますが、その上のコンクリートが吹っ飛んで、奥の家まで押し寄せてしまった。さらに言えば、下の石垣の部分の一部分が崩れ去っているという現場でございます。

 もう一つ、左側二つをごらんになっていただければと思いますが、これは海をめぐる道路の一部分でございますが、堤防の壁部分が最初にがたっと波の勢いで土地側に、島側に倒れて、その上に道路のアスファルトやコンクリート部分がばたっと倒れたという現場を示している写真でございます。

 この写真で何を申し上げたいかというと、右二つについては、過去にも数度災害に遭っている箇所でございまして、もともとはこの石垣の部分だけがあったところでございます。そして、災害を受けた後にその石垣の部分をまず、先ほど来御説明ありましたが、応急復旧工事で再現して、その後に、次にもう一回災害がありまして、今度は石垣は崩れなかったんですが、水が海を越えてまいりまして、それじゃいかぬというので、左奥に見ていただけるようなコンクリの塀が上に積まれておる。そして、この現場を私も自分で行ってみたんですが、下の写真の真ん中に私が写っているんですが、このコンクリと石垣とは全くもってつながれた形跡はございません。置いてあるだけでございます。こういった現状をどのように認識したらいいのか、私ちょっとしばし戸惑いました。

 それから、左側でいいますと、島の土地部分が見えておりますが、この部分と堤防に当たる壁部分なり道路を形成しているコンクリート片なりを、何かのくい打ちをしてつないだ形跡が全くございません。そういうような工事が行われているのが現状じゃないかというふうに認識いたしました。

 こういった事例を見るものですから、今の現行制度の中で、応急復旧工事をする過程なりその後に本格復旧工事をする過程なりの中で、この工事の査定というものがどういうふうに行われているんだろうなと思って、私自身ちょっと聞いてみました。今地方が管理している事業について申し上げておりますので、それについて申し上げます。

 そうしますと、地方が申請を上げるに伴って、国土交通省の出先機関の方と、それから、やはり予算がつきまといますので、財務省の出先機関であります財務局のそれぞれの担当者が出向いて、その地で、こういう復旧工事であれば可とするという査定を行っておる、不可の場合も時々あるんだろうと思いますが。その中でも、実際に額として満額をつけるのか半分をつけるのか、それらを査定しておるという状況になっていました。

 そこで、実際に国土交通省の担当者として行かれている方が一番この周辺事情にもお詳しいですし、それから技術的に、どんな波が、どんな高さの海との落差があればいいのか、そういったことを一番御存じなのではないかと思いますが、そういった方から今までお聞きしている限りは、申請が上がってきたものに対して可とするか不可とするかという判断だけ行っているようですが、もっともっと国土交通省として積極的に、この仕様であれば大丈夫だ、この仕様であればだめだという判断を行ってもよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

清治政府参考人 工法協議という形をとりまして話をする場合と、それから、今おっしゃいましたような、申請書類で可とするか否とするか、どのぐらい査定するかというようなことと、少し実際に行われる協議の中身が違っているのが実態かなという気はしているわけでございますが、必要な予算とその効果ということは常に考えながら査定官も立会官もやっているんだと思います。

 これらにつきましては、施設ができてきた過程だとか、被災の履歴とか、それからその場所の外力の特性とか、やはり御指摘のようにそういうことを十分踏まえた上で、実質的に役に立つような、役に立つというか効果が発揮できるような、そういうものにしていかなければならないと思いますので、査定官の方としても技術を磨いていくように、あるいは経験を積んでいくように、今後とも精進をするようにしてまいりたいというふうに思っております。

和田委員 ある程度前向きの御答弁をいただいたということは認識いたしますが、実際にいろいろな地方に出かけていきまして、その地の方々の御意見を総体的にまとめますと、私自身も役所におりました人間ですので心情としては理解できるんですが、どうも役人としての仕事を早く終えたいという心情に駆られた方々の行動の結果ではないかなという気が非常にいたします。

 というのは、申請する側の地方自治体の担当者についても、最初申し上げたように、自分がリスクを負うのは嫌だ、そして、全額国庫から最終的には負担されるであろう原形復旧をとにかく続けていれば自分は免責だというふうに考えていらっしゃる方も多いかと思います。ましてや、国からの査定官であります国土交通省や財務省の出先機関である財務局からいらっしゃっている方々についても、自分がどの程度のものであれば一番その海や陸地を守るのに適切なのかということを考えるよりも先に、今までどおりやっておけば、今までの基準がおかしかったかどうかの判断だというようなことにともすると向かいがちだという気がいたします。

 ここのところをぜひ、制度を変えた方がいいのかの御検討もさることながら、実際にある制度をもっときっちりと運用していただきたいということを意見として申し述べたいと思います。

 国土交通大臣、今までの状況を聞いていただきまして、先ほどおっしゃったように、応急復旧工事について早く実施する、それは私も大賛成でございますが、とにかく実施にかかってくれというふうにおっしゃっていただくだけではこういった実態がなかなか解消できないのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

北側国務大臣 御趣旨はよく理解いたしました。

 例えば今回の中越地震におきましても、国土交通省からは、道路の面でも、また河川の面でも、また住宅の面でも専門家を数多く派遣させていただいております。地方の皆様はそういう専門家の方々とぜひよく御相談をいただきたいというふうに思っているんです。

 今、委員の御自身の経験も照らしながら御質問いただいたのは非常に説得力があったわけでございますが、やはりそういうことがあってはならないわけでございまして、大切なことは、二次災害を招かない、また被災地の国民の皆様の安全を確保するということが一番大事なことで、そのためにはどうすれば一番いいのかという判断をやはりしていただかないといけないわけでございまして、国から派遣をしております職員の方々もそういう姿勢で、今委員がおっしゃった、原形復旧でいいのか、それとも改良復旧の方がいいのか、そういう判断も実質的にぜひしていただかないといけないというふうに思っております。

和田委員 大臣にも前向きに御答弁いただきましたので、私としてもそれを非常に評価させていただいて、これからの方向についてぜひ見守らせていただきたいと思います。

 また、先ほどちらっと申し上げましたけれども、こういった災害復旧について、地震が起きたころでしょうか、皆様方の方に御議論があったように思います。すなわち、この災害復旧については実際に国がやはり責任を持ってやるべきじゃないか、そうだとすれば、三位一体改革の中の議論にありますように、地方に財源を渡してやってもらうのでは不十分なのではないかというような御意見をお持ちの方も多数おられました。ただ、実際のこの制度の今の運用を見ていきますと、本当に国にお任せしてきっちりとやっていただけるんだろうかというような疑念が地方に生じていることも事実ではないかと思います。

 これから先、三位一体改革の議論を、どの補助金をどの程度なくすのか、カットするのか、それは政府・与党がまたお決めになることではありますけれども、こういった実態を必ずや解決していただくような結論を導いていただきたい。国が責任を引き取るのであれば、全面的に国がきっちりとフォローアップできるような体制を整えていただきたい。そうでなければ、一番身近な、住民の皆様に一番近いところにおる地方に任せてみてはいかがかと思います。結論はその検討を待ってから持つべきだと思っております。

 これが、災害復旧についてきょう私が申し上げたかったことのすべてでございます。

 最後に少しだけ、前回、先般の通常国会で一般質疑をさせていただいた内容のフォローアップをぜひ大臣との間でお願いしたいと思います。

 もう事前にはお知らせしてあると思いますけれども、五月十九日に同じこの国土交通委員会の一般質疑の場で質問させていただきました内容でございます。ごく簡単に御説明しますと、私の地元になりますが、広島県福山市の沖合で産業廃棄物が何者かによって不法投棄され、それが海に沈んでしまったがために、その周辺海域で操業されていた漁民の方々が大きな被害を受けられている、こういう事件についてどのように対処をしていかれるのかという御質問をさせていただきました。

 あれから半年ほどたちますけれども、それまでに行政当局としてとった対応について御説明いただけますか。

石川政府参考人 先生御質問の、広島県福山市沖の備後灘における海洋への建設廃材の不法投棄事案でございますが、本年一月に地元の漁業者からの通報を受けまして、私ども速やかに捜査に着手しているところでございます。

 現在、目下のところ、地元漁協等へ情報提供を要請するなど関係者との連携を密接にしながら、付近を航行した船舶あるいは廃棄物の発生源の調査など、必要な捜査を鋭意進めているところでございます。

和田委員 今の御答弁は、捜査当局であります海上保安庁の長官にしていただきました。

 この前の議論では、とにかく困っている漁民の方々に対して何か公的な支援の手を差し伸べる必要性はありそうだというところまでは、その当時御出席いただいた石原大臣、それから農林水産省と環境省の副大臣にも賛意を示していただいたところでございますが、あれから半年たっております。そして、実際に犯罪を捜査する立場におられるのは海上保安庁や警察だったりしますけれども、普通に言う警察犯罪は、実際に人が殺されたり傷つけられたりして、そのときの被害で確定して、それをどうやって直すかという問題になりますが、今回の場合、実際に海の底にはまだまだたくさんの産業廃棄物が埋まったままでございます。

 そういった意味では、漁民の皆様の被害はずうっとこの一年弱の間継続しております。これだけの被害を目にしながら、公的支援が差し伸べられない現状について、私としては非常に疑問を覚えます。

 あのときにも申し上げましたが、捜査は捜査として必要なものであることは間違いございませんし、捜査上必要な情報というのはなかなか外に出せないのも当たり前のことでございます。しかし、そうであればなおさら、ある一定期間、困っていらっしゃる方がそのままの現状になるのであれば、政府全体としてもっと救いの手を差し伸べてもいいのではないかと考えた次第でございます。

 その際に、農林水産省と環境省の方々にそれぞれ、この現状において何か救いの手を差し伸べられるようなツールはないのかということをお聞きしたと思っております。その際に、農林水産省から御答弁いただいた内容がございました。農林水産省として、漁場を、環境をきっちりと保ちながらいいお魚をとっていただきたいということだと思いますが、名前としまして、漁場環境保全創造事業というのを制度としてお持ちのようでした。

 ただ、その制度は、いただいた資料を見ますと、原因者が特定できない堆積物に限る、そういう堆積物であれば、堆積物を除去するのにこの事業の予算を使ってよろしいというふうになっているようですが、そのときに御検討をお願いしました、この原因者が特定できない場合というのがどういった場合になるのか、御検討の結果を教えていただけますでしょうか。

田中政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、私ども水産庁の事業として、漁場環境保全創造事業というのがございます。この事業は、効用の低下している漁場の生産力の回復や水産資源の生息場の環境改善を図るために、藻場、干潟の造成、それからヘドロ等の堆積物の除去を実施しているものでございます。

 このうち、堆積物の除去につきましては、例えば長期にわたり堆積したヘドロのように、具体的な原因者が特定できないものを対象として実施しております。この福山市沖のケースにつきましては、不法投棄というのが明らかでございますので、一義的には原因者が撤去すべきと考えておる次第でございます。

和田委員 はっきりとお答えいただければと思うんですが、今、御存じのとおりの状況の中では、この事業は使えないという認識を持っていらっしゃるということでよろしいでしょうか。

田中政府参考人 お答えいたします。

 この事業は、やはり特定の者による不法投棄物の除去というのは対象外としております。こういった事例については適用は困難であると考えております。

和田委員 資料を見る限りは、不法投棄の場合はとは書いてございません。原因者が特定できない場合というふうに書いてございますが、先般のお答えの中では、「相当期間、長い間そういう原因者がわからないというような状況のものに対応しているところでございます。」とお答えになっておられます。

 それから、昨日でしたか、国土交通省の方にお聞きすると、実際に捜査は続いておるけれども、犯人が捕まらない状況の中で使えないという制度ではないという認識だというふうにおっしゃっておられたように覚えております。これは何となく明らかに解釈が違うように思いますが、いかなる解釈が政府の解釈でしょうか。

田中政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申しましたとおり、やはり不特定多数といいますか、原因者がはっきりしないで長期に堆積したもの、私ども、例えばごみとかヘドロのようなものを対象にして考えておりますので、繰り返しになるかもしれませんが、こういった不法投棄というのが明らかな場合には、やはりその不法投棄者といいますか、原因者による撤去を第一義的にやっていただくべきだと思っております。

和田委員 これ以上ここで押し問答するわけにもいきませんので、一般人の解釈として申し上げておこうと思います。

 私は、先般質問したときには、確かに不法投棄事件ですので犯人が捕まることが第一であり、犯人に求償権を発生させるのが一番相当だろうと思って御質問しましたが、一定期間がたったところで、これをそのまま放置することが本当に公益に合致しているのか、公共の福祉に反しないのかという観点からすると、今までいろいろ御検討いただいた中で、これは公共事業の対象としてするかどうかという解釈論にも発展しますけれども、そういったところは国として積極的解釈を適用してもよいのではないかと考えている次第です。また後で御議論させていただきたいと思います。

 これらの状況を踏まえまして、北側大臣、先般の質問では、石原大臣には、農水省とも環境省とも連携をとりながらこういったことに対する対処を進めてまいるというふうな答弁をいただいておりますけれども、今の状況におかれて国土交通大臣としてどのような対処が可能か、またその御決意をお聞きして、質問の終わりにしたいと思います。

北側国務大臣 このような海洋への不法投棄というのは、これは全く許されないことであると思っております。

 委員の御質問は、結局、不法投棄であることは明らかだとしても、不法投棄をした人間がある一定の時間が経過をしても明らかにならない、そういう場合にほっておいていいのかという御質問だと思います。

 これはちょっと我が省にかかわる所管の法律じゃないので私も答弁をしにくいわけでございますが、ただ、今のやりとりを聞いておりましても、恐らくそういうのを認めてしまうと不法投棄を助長してしまうのではないか。結局は、最後は国なり公が、原状回復をするために公が出てくるということになれば、不法投棄を助長してしまいやしないのかというふうな危惧が多分あるのではないのかなというふうに想像いたしますが、そうはいうものの、そういう不法投棄者がどうしても特定ができないような場合に、国等の機関が、環境を保全するために、また原状回復するために何もしないというのはいかがなものかという感じは、印象はいたします。

和田委員 生活者の視点に立つ北側大臣のリーダーシップを特に求めまして、終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

萩山委員長代理 梶原康弘君。

梶原委員 民主党の梶原康弘でございます。

 私も災害復旧についてお尋ねしたいと思っておりますが、まず、実は私、昨晩の九時十分、大阪駅からのぞみに乗車をいたしまして、車中ではそれこそこの質疑の原稿を書いておったわけでありますけれども、浜松で突然車両が停止をいたしまして、東京に着いたのが朝の四時五十五分でありました。

 朝のニュースでは、静岡県内、特に磐田市で大変な豪雨であった。聞いてみると、二千三百戸の世帯に対して避難勧告が出る、三十数戸床上浸水をする。そして、昼のニュースでは、お一人亡くなられているということでございました。亡くなられた方には心からお悔やみを申し上げ、被災をされた方にはお見舞いを申し上げたいと思うわけでありますが、確認をしたわけではありませんけれども、こんな豪雨があるという予報すらなかったのではないかな。予報があったなかったということではなくて、災害の恐ろしさというものを改めて感じた次第でございます。

 台風二十三号の被害なんですが、特に兵庫県の北部、但馬、丹波という地方で大変な被害を出したわけでありますけれども、この地域は私の出身地でありまして、多少、個別の細かいことになるかもしれません。皆さんも水没をした豊岡市を写真でごらんになったことと思いますけれども、市全体の九五%の世帯に避難指示が出た。そして、床上浸水が三千八百戸、床下浸水が四千三百戸、市街地の八割が水没をしたわけでございます。

 その原因について少し申し上げたいと思うんですが、豊岡市内に円山川というものがありまして、四つの支流があります。円山川の水量が大変多いものですから、その四つの支流に水門がありまして、ほっておくと、水量が多くなると逆流をしてあふれる可能性があるということで、四つ水門をつけまして、その水量が多いときには水門を閉じてポンプで本流に流すというようなシステムをとっているわけであります。

 このときも大変な水量でありまして、逆流を防ぐために水門を閉じた。当初はポンプアップで流していたわけですけれども、ポンプで流すと本流が決壊するということで、あえてポンプを閉じた。水門を閉じてポンプで流さないわけですから、当然支流であふれる。まさしく市全体が池のようになってしまったということでありますが、それに加えてその円山川が決壊をして、ひどいところは三メーターぐらいの水かさにもなってしまったということでございます。

 この円山川の堤防整備のことが災害後、再三新聞にも取り上げられたわけでありますけれども、その整備率が今六・八%ということでございます。近畿の一級河川と比較すると、淀川が七〇%、加古川四五%、揖保川五〇%。同じ日本海に注ぐ由良川でさえ二〇%でありまして、いかにも少ない。

 この円山川も、以前から伊勢湾台風を初めとして十年に一回ぐらいこうした大きな水害を起こしている。しかも、先ほど申し上げたかどうか、天井川みたいになっている。また、但馬という広い地域の六割を水系として持っていて、しかも地形的に近いところにその支流が全部集まっている。構造的な問題がありまして、以前から専門家がその危険性を指摘していた。

 その円山川が六・八%の整備率、いかにも低いわけでありますけれども、なぜこういうことになっているのか、その辺のところをまずお伺いしたいと思います。

清治政府参考人 円山川でございますが、今数字を挙げられました六・八%というのは、堤防の断面が完成している、高さがある、幅がある、そういう完成している堤防の延長の比率でございます。それに対しまして、堤防の高さとして計画高水位という一つの目標があるわけですけれども、その高さまで堤防ができているというものが七二・三%、これが円山川の堤防の現況でございます。御指摘のとおりでございます。

 なぜその完成の形まで堤防が盛れていないのかということでありますが、これは委員も御承知だと思いますが、この地域は大変地盤が悪いところでございまして、堤防の整備に当たりまして何回にも分けて堤防の高さを上げていっているわけでございます。この盛る際に、周辺の家屋が沈下するとか、そういうような問題も施工の途上で起こっているわけでありまして、現段階としましては、計画高水位の高さをとにかく維持するような堤防を保っていくというのが現状でありまして、したがいまして、数字としては、完成堤防の比率は六・八%、こういう数字になっているわけでございます。

    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕

梶原委員 今回決壊した箇所も暫定的な堤防であったということでありますけれども、それにしても、災害直後に現場を視察した円山川流域委員会の委員長である藤田教授が、これはほぼ原文に近いと思いますけれども、決壊現場の数十メートル上流から堤防の高さが一メーター低くなっていると。

 これは、先ほどおっしゃられた水準からさらに一メートル低くなっているということなんですよね。そのとおりですよね。もう一度確認します。

清治政府参考人 今、私が申し上げましたのは、計画高水位という治水の基準になる目標の水位がありますが、それを保つために堤防をかさ上げしてきているわけでございます。堤防が高いところと堤防が破堤したところの高さがかなりあるようだというのは御指摘のとおりでございますが、堤防が高いところというのは、計画高水位というものを維持するために堤防を盛ってきていて、その工事が完成していたところの高さということでございますので、計画高水位よりも五十センチか六十センチ高いという状況に今なっているわけでございます。

 それに対して、逐次整備してきているわけですが、整備がまだできていなかったところが破堤しているのですが、これの高さの差は七十センチでございます。

梶原委員 ちょっとすぐ計算ができないわけですけれども。

 本来、この堤防は水位が八・六六メートルあったというふうに、今の御説明は多分そういうことだと思うんですけれども、ところが、災害時は、実際はその水位は八・二九メートルなんですよね。最高水位が八・二九メートル。まだ余裕があるにもかかわらず越水をしたということは、今おっしゃっておられる高さよりもさらに低かった。実際に藤田教授が現場を視察して、一メートル近く低くなっている、地盤沈下をしたのではないかなということを言っているわけであります。

 地盤沈下のその状況とか、地盤が弱いということもわからないではありませんけれども、実際、計画しているよりも低くなってきている、地盤沈下をしている、そういう現実があるわけで、どういう管理をされていたのかな、そのことについてお尋ねをしたいと思います。

清治政府参考人 今問題になった低いところでございますが、これは、前回施工したときには当然今より高かったわけでございますが、その後、堤防に沈下が続きまして約六十センチほど低下していたという実情にありまして、全体、そういう感じで下がっていたわけですけれども、それをかさ上げする工事をやってきていたところは施工後また高くなっておりますので、その差が七十センチということでございます。藤田教授がおっしゃったのは、それが約一メーターというふうに言っていらっしゃるんだと思います。

梶原委員 いずれにしても、十年に一度、こうした決壊なり大きな水害をもたらしているわけでありますから、また一方では地盤が弱いという状況の中で、しっかりとした改修を進めていっていただきたいということを要望申し上げたいと思います。仮にも一級河川であって、国としてこれからどういうふうに整備を進めていくのか、お尋ねをしたいと思います。

清治政府参考人 今回の被災の際の河川の流量がどのぐらいだったのかということをまず推定することにしておりまして、その流量、すなわち、今回、強い雨がありまして洪水の流量になったわけですが、この流量を何とか流下させるために緊急に対応しなければならないと思っております。

 これにつきましては現在検討中でございますが、対策として、堤防を上げるということはもとより、堤防を強化するということ、それから、川の断面自体が不足してございますので、低水路と言っているわけですけれども、洪水を流す水路の部分の拡幅を進めるとか、下流に洪水の流下に対して阻害になっている橋梁もございます。こういう橋梁をかけかえるのかどうか、こういうことを全体的な検討を今しているところでございまして、中期的な目標といいますか、それでは、五年ぐらいの間に今回と同じような出水があっても大きい災害にならないような、そんな対応をする計画を現在検討中でございます。

梶原委員 できるだけ早く改修を進めていっていただきたいというふうに思います。

 しかしながら、一気にそうした整備が進んでいくということでもなかろうと思いますし、これからも予想されるそういった水害に対して、もちろん改修を進めるということもありますけれども、水害を防ぐ、ほかにどういう手だてを考えておられるか。その辺のところ、ソフト面ということになるかもしれませんが、お尋ねをしたいと思います。

清治政府参考人 今御指摘のように、ソフトの部分というのも非常に重要だと思っております。

 これは洪水ハザードマップというのがよく言われるわけでございますが、この豊岡市につきましては、作成の準備中だったということで間に合わなかったわけでございます。ただし、避難の勧告とか指示とかというのは適切になされていたと思いますが、はんらんが起こったときに、それぞれの住んでいらっしゃる方にどういう状況になるかという情報が事前に伝わっていれば、もっと被害は少なくなったのではないのかなというふうに思うわけでございます。

 そういうものとあわせて、河川の整備というものも当然進めていかなければなりませんし、先ほど委員がおっしゃいましたように、内水の対策、これについては、非常に低いところでございましたので、堤防が切れなくてもかなりの内水で被害を受けておりますので、こういうところの強化ということもあわせて検討していく必要があろうかと思います。

梶原委員 続いて、住民の避難のことについてお尋ねをしたいと思うんです。

 災害当時、豊岡市内で四万三千人の人に避難指示が出たわけでありますけれども、実際に避難した人は三千人ほどであった、こういうふうに言われています。八割が水没して、ひどいところは二メートル、三メートルになりまして、家屋、工場、大変な被害を受けたわけでありますけれども、住民の声は、やはりもっと早く的確な情報なりがあれば対処できたんではないか、あるいは、避難指示ということを聞いても危険だという実感がわかなかったということが聞かれます。現実に、市の発令のタイミングというのもあったかもしれませんけれども、この辺はきちっと検証されるべきだと思います。

 そうした話を聞く中で、私は特に疑問に思ったことがあるんですが、市町村が避難指示あるいは避難勧告を出す、その重要な情報というのは、国土交通省から洪水警報という形で市町村に出されるということを聞きました。市町村と同時にマスメディアに連絡が行って、テレビなりラジオで報じられるということでありますけれども、この洪水警報と、私たちがふだんテレビで見ている天気予報の洪水警報というのが全く別のものだということを聞きまして、初めちょっとにわかには理解しにくかったんです。

 聞いてみると、国土交通省が市町村に出している洪水警報というのは特定の河川の洪水警報、ですから、まさしくほっておいたら危険だ、災害に直結する、こういうようなぎりぎりのところで情報が出ているわけであります。ふだん私たちが天気予報で見るのは、けさもかなりの広範囲にわたって洪水警報が、大雨洪水警報ですかね、天気予報で出ていたわけでありますけれども、これが市民にとっては大変わかりにくいんではないかなというふうに思っておりますが、この二つの洪水警報、詳しくというか、わかりやすく説明をいただきたいというふうに思います。

清治政府参考人 気象庁とそれから河川管理者の方と両方関係する話でございますが、気象庁の方から発表されております洪水注意報とか洪水警報というのがございますが、これらは、複数の市町村にまたがって、ある広さの区域に対しまして、洪水の発生するおそれがあります、この洪水は、例えば円山川とか何川とかということではなくて、小さい河川も含めて、雨がたくさん降るので洪水が起こる可能性がありますよということを、住民だとか防災機関等に注意を促すという意味で出しているものでございます。

 似たような名前で、洪水予報指定河川につきましても、洪水注意報それから洪水警報、これは川の名前をつけまして、円山川の洪水注意報、円山川の洪水警報という形で発しているわけでございますが、これは河川管理者と気象庁、気象台の共同発表という形をとっておりまして、現在どこどこの水位がこのくらいになっております、それから、洪水予報の計算をしますので、計算した結果、数時間後そこの水位はこのぐらいの水位になりますので警戒してくださいというような内容で、具体的に数字を示したような形で行われているわけであります。

 今回も、円山川では、実際には川の水位はそんなに上がってないうちに避難勧告を出すことができたわけですけれども、川の方の水位がそんなに上がってないので、実際に起こったような大洪水になるかどうかということで、市民の方々がわかりにくかったということもあろうかと思います。

 また、御指摘のように、気象庁の方で出している注意報、警報と、その辺の区別がよくわからないで十分行き渡らなかったというのがあるとすれば反省点かと思います。

梶原委員 今おっしゃっていただいたように、住民はそんな詳しいところまでわからないんじゃないかな。ふだん聞きなれている天気予報の洪水警報と河川の洪水警報、それこそ、国交省のというか工事事務所のホームページだったでしょうか、まさしく天気予報の洪水警報とこの洪水警報は違いますと赤でわざわざ書いてあるわけですよね。

 そういうことは携わっておられる方でこそわかるんであって、一般に、同じ洪水警報という形でメディアから流れる、あるいは市の広報で流れても、住民の危機感というのがそこまでなかったんではないかなというふうに思うわけでありまして、ぜひ検討をいただいて、きちっと区別がつくように。それこそ、データに基づいて河川がもう決壊の可能性があるんだというようなときには、きちっとその実感が市民に伝わるような、住民に伝わるような、そういう情報を流していただきたいというふうに思います。

 それと、やはり市町村というのはそんなに専門家がいるわけでないと思います。もちろん出先の機関の方と国交省の方と協議をされていると思いますけれども、その警報を出す基準、これがなかなか大変なことではないかな。現場の方にとっては、それこそ豊岡の場合は四万三千人の方に避難指示を出したわけですよね。私は、その情報に基づいていたとはいっても、市長の大きな決断があったんじゃないかと思います。

 確かに、おくれたという指摘もあるかもしれませんけれども、ただ、自信を持って言えるような明確な基準を、例えば降雨量とか水位とか、明確な基準というのが必要ではないかな。そうした基準がまだつくられていないということを聞いておりますので、ぜひそういった基準を明確に国で示していただいて、発令できるような体制をとっていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 また、先ほどの洪水警報ということも全く紛らわしいと思いますので、ぜひ検討の結果を教えていただきたいというふうに思います。

 続いて、災害復旧、これは特に被害の大きかった但馬地方について申し上げるんですが、円山川も含めて三十一河川、破堤箇所が二十三、溢水箇所というんでしょうか、あふれたところが二十八、二次災害の危険も大きいわけでありますし、道路についても、国道四百二十六号線を初め、市町村道を含めて二千四百九十カ所の道路の流出あるいはのり面の崩壊というのがあるわけです。

 寒村ということもありますし、道路にしても、地域の生活あるいは産業を支える基盤でありますから、また、これから雪の大変多い時期を迎えますので、ぜひ早い対応をお願いしたいなというふうに思いますが、その決意というか、お聞かせいただければありがたいと思います。

清治政府参考人 今数字の話もありましたが、非常にたくさんの箇所で被災をしたわけでございます。兵庫県等の調査によりまして報告を受けておりますが、その中で、急ぐものにつきましては応急復旧で対応しておりますし、また、道路等につきましても、雪の季節を迎えるということもありますので、そこらも勘案しながら早急な対応を図ってまいりたいと思っております。

 事務の手続等につきましても工夫しながら、地元の方々に早く御安心いただけるような、そんな対応を図ってまいりたいと思います。

梶原委員 ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 少し個別のことになって恐縮なんですけれども、また、その但馬地方というのが、地形的なことなのかどうかわかりませんが、二軒、三軒という単位で土砂崩れで全半壊をしている、そういう地域が多々あるわけであります。災害関連の緊急急傾斜地崩壊対策事業、この基準が、全壊五棟以上とかそういった単位になっているわけでありますけれども、二、三軒の全壊、半壊というようなところが多々あるわけでありまして、そういったところにも、ぜひ採択基準を緩和して積極的に対処いただきたいというふうに思います。ぜひお願いしたいと思いますが、それについても。

清治政府参考人 今、がけの土砂害の話がございました。

 土砂害も非常に多かったわけでございますが、今お話の中で、災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業というお話がございましたが、これにつきましては、ふだん、安全度を高めるために実施しております急傾斜地崩壊対策事業が保全対象は十戸であるのに対して、保全対象が五戸になっております。これは全壊が五戸ということでなくて、保全対象の家屋が五戸というふうに御認識いただきたいと思うわけですが、それに加えまして、激甚災の指定が今回もいろいろ話題になっておりますが、激甚災の指定を受けますと、これが二戸まで緩和されるという、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業、こういう事業もございます。

 こういうものをうまく組み合わせることによりまして、ハード対策で対処できるものにつきましては積極的に対策を講じていかなければならないと思いますし、あわせて、警戒避難体制の整備、こういうものにつきましても対策を講じて、総合的な対策としてがけ崩れの防止、軽減に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。

梶原委員 ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 本当に個別なことになるわけですが、また土砂なり流木対策も大変な問題になっておりまして、今、山の手入れが十分になされていない、そこへ強風の台風が来てたくさんの木が倒れている、そこへこの大雨で流木がどんどん流れてくる。

 私が行ったところも、二キロぐらい上流の箇所が崩壊をして、それとともに何十本という流木が集落を襲って、それこそ集落は谷合いにありますから、上から順番に大きな倉庫を倒し、民家を倒し、また家を倒していったというようなところもあるわけでありまして、その流木なり土砂がいまだに、きのう、おとつい電話で確認したときも、まだ村の中に流木がどんとあるわけですよね。

 流木といったって物すごい木ですよね。何でこのままほうっているんだと聞いても、それこそ国道が寸断され、大変な状況にあって、地元の長さえなかなか対応ができない、見にも来てくれない。とりあえず道をあけたけれども、住宅の中にまだ流木が、あるいは土砂が集落の中にごろごろ転がっている、こんな状態でありまして、当然、二次災害が心配をされるわけであります。建設業者もそういったところで手いっぱい、それが地方の現状であって、きのうの時点で長がやっと、現場は行っていたわけでありますけれども、その対策について検討するということを言って帰った。地方の現状というのはそんなものだということも御認識をいただきたいというふうに思います。

 それに関連してお願いをしたいと思うんですが、今、被災地の市町村というのは、現場は本当に大変な状況にある。市町村の職員、自分の家も被災しながら、当初から救助をし、被害を見に行って応急措置をして、本格復旧の準備をしなければいけないわけでありますけれども、それこそ休む暇もなく頑張ってもらっているんだと思います。

 これから災害復旧の事業をどんどん進めていっていただくわけでありますけれども、その手順について、事務的な手順、そのことについてぜひ簡素化ができないものかな。

 私も詳細を把握しているわけではありませんけれども、話を聞くと、通常の公共事業と同じような手順、地元の市町村それから県を通じて整備局へ上げていく。何十回となく、数十回だと思います、書類をつくって上げていく。このやりとりをしていくわけでありまして、地元の市町村ということになるとマンパワーも極めて少ないわけでありますし、道路から河川から、それこそ田舎へ行くと建設とか農林がみんな一緒になっているわけですね。職員が五人ぐらいしかいないなんということがあるわけで、すべてそういった職員で対応しなくてはいけない、これは大変なことだと思います。

 せっかく激甚指定を早くしていただける、頑張っていただけるということで聞いておりますけれども、せっかくそうして早く指定をいただいても、事務的なことがスムーズにいかなければ事業の執行ができないわけでありますから、先ほど来申し上げるように、この但馬というところも雪が多くて、五十センチ、一メートル、あるいは年によってはもっと雪が降るわけでありまして、できるだけ早く事業に着手をしてもらいたいというふうに思っているわけですが、ぜひ事務的な簡素化をしていただきたい。あるいは、マンパワーが足らないわけでありますから、人的な応援をするというようなそんな知恵もぜひ出していただいて、スムーズに事業執行できるようにお願いをしたいというふうに思いますが、いかがですか。

清治政府参考人 さきの方にありました話も同じことが問題なのかなと思っています。土砂とか流木の除去が進んでいないというお話も、やはり緊急を要するところから一生懸命やっていらっしゃると思うんですけれども、マンパワーの話だとか事務手続の話とか、大変な状況になっているというのは私どもも推測しているわけでございます。

 技術的な支援でありますとか、御指摘のありました事務の簡素化、これにつきましては、具体的には例えば、申請に当たっての積み上げの積算というようなものを総合単価に置きかえていくというようなことが適用できる範囲を広げるとか、それから実際に現地で査定するというようなことも、写真とかそういうもので机上査定で進めることができないかとか、いろいろな工夫をしておりまして、事務の簡素化あるいは早く対応できるような技術的マンパワーの支援、こういうこともあわせて行ってまいりたいと思っております。

梶原委員 ぜひそういう知恵を出していただいて、できるだけスムーズな事業執行をお願いしたいというふうに思います。

 続いて、住宅融資の制度についてお尋ねしたいと思います。

 二十三号によっても相当数の家が全半壊をした、こういうことであります。また、三メートルも水につかると壁がはげ落ちたり、それこそ屋根と柱しかないような家もたくさんあるわけであります。被災者生活再建支援法、これは民主党がまた提案をしておりまして、住宅本体も対象にしてほしいということを言っているわけでありますけれども、ここでは住宅金融公庫の融資制度、今現実に上限千百六十万ということで制度があるわけでありますけれども、これも地元からの要望があるわけでありますが、それこそ三メートルもつかってしまって家財道具から車から何から何まで一切失ってしまった、そういう中で家を建てている、こういうことでありますから、できるだけ上限を引き上げてもらって助けていただきたい。

 私は、被災をしてすべてのものを失ってしまった、そういう中で家というものがすごく大きいと思うんですね。家を再建していこう、それが、肉体的にも精神的にも打ちひしがれているというか、その中で夢を持てるんじゃないかな、もう一遍頑張ろうということになるわけでありますから、ぜひそうした融資額の引き上げも検討いただきたいというふうに思っておりますが、それについてお願いしたいと思います。

山本政府参考人 住宅金融公庫の災害復興住宅融資につきましては、御指摘のとおり、戸建て住宅の建設費の場合に、融資限度額が千百六十万円となっております。ただ、住宅の規模ですね、床面積の規模が百二十五平米を超える場合には三百万円を加算する。それから、敷地に土砂がたまっていてそれを除去するとか、あるいは敷地が傷んで整地をするという場合には、別途その工事に要する経費として三百八十万円を加算することとなっております。

 この災害復興住宅融資の制度の中身につきましては周知徹底を図りまして、被災者の住宅の復興を促進してまいりたいと考えております。

梶原委員 ぜひお願いしたいと思います。

 もう時間が迫ってまいりましたのですが、最後に、城崎温泉というのを御存じの方も多いかと思いますけれども、志賀直哉の小説で大変有名なところなんですが、豊岡市の北に接しておりまして、やはり二十三号台風で若干の被害があったわけでありますけれども、それがテレビや新聞で報道される、城崎の名前があるがゆえに余計にテレビに出たりするわけですが、テレビに出た途端に、これは旅館組合の話ですが、翌日から宿泊予約のキャンセルがどんどん入ってくるということであります。

 その城崎温泉、これから冬場は十一月から三月にかけてカニすきのシーズンを迎えまして、今が書き入れどきなんですね。今商売しなかったら、やるところがない。ところが、予約のキャンセルが相次いでいる。城崎は年間百万の観光客の入れ込みがあって、宿泊が六十五万から七十万、百軒の旅館があるということなんですけれども、ぜひその風評被害に対して役所としても具体的に何か対策をとっていただきたい。これもぜひ、どういう対策をとったのか聞かせていただきたい。

鷲頭政府参考人 先生御指摘いただきましたとおり、城崎温泉では、ほとんどのホテル、旅館が通常の営業を行っているというにもかかわらず、ホテル、旅館の宿泊予約が例年に比べ大変低いというふうに聞いております。

 私どもからその原因につきまして城崎町役場に確認をさせていただきました。その結果、観光客から城崎温泉観光協会などに問い合わせる中身として、道路が目的地まで通じていないんじゃないかというようなこととか、あるいは観光地としてちゃんと機能しているんですかというような問い合わせが多いというようなことを言っておりまして、観光客の皆様がアクセスがあるのかとか観光地がちゃんとしているのかという点について事実と違う認識を持っておられるということが、どうも旅行を手控えている原因じゃないかというようなことを町の役場の方が言っておられます。

 まさに先生おっしゃいましたとおり、今メディアによって正確な状況が伝わっていないということでございますので、私どもといたしまして、こういう状況に対しまして、事実と異なる認識をもとに旅行が手控えられることがないように、旅行業者に対しまして、台風の被害を受けられた観光地の復興復旧の状況とかあるいは現地の正確な情報が旅行者に対して正確に伝わるように、旅行会社に協力を要請するということを早速やることによりまして正確な情報の提供に努めてまいりたいというように考えております。

梶原委員 ぜひ、どういうことをされたのかまたお聞かせいただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

橘委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十一分散会


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