衆議院

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第13号 平成17年4月22日(金曜日)

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平成十七年四月二十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 橘 康太郎君

   理事 衛藤征士郎君 理事 萩山 教嚴君

   理事 望月 義夫君 理事 山口 泰明君

   理事 阿久津幸彦君 理事 土肥 隆一君

   理事 赤羽 一嘉君

      岩崎 忠夫君    奥野 信亮君

      加藤 勝信君    木村 隆秀君

      北川 知克君    河本 三郎君

      櫻田 義孝君    菅  義偉君

      菅原 一秀君    田中 和徳君

      高木  毅君    武田 良太君

      中馬 弘毅君    二階 俊博君

      葉梨 康弘君    原田 令嗣君

      古川 禎久君    保坂  武君

      松野 博一君    森田  一君

      加藤 尚彦君    菅  直人君

      高木 義明君    玉置 一弥君

      樽井 良和君    中川  治君

      長安  豊君    伴野  豊君

      古本伸一郎君    松崎 哲久君

      三日月大造君    和田 隆志君

      若井 康彦君    佐藤 茂樹君

      谷口 隆義君    穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   国土交通副大臣      蓮実  進君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   浜田 恵造君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   政府参考人

   (住宅金融公庫総裁)   望月 薫雄君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        伴   襄君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事)         田中 正章君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事)         河崎 広二君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  江崎 鐵磨君     北川 知克君

  江藤  拓君     加藤 勝信君

  寺田  稔君     奥野 信亮君

  中野 正志君     菅  義偉君

  林  幹雄君     田中 和徳君

  下条 みつ君     古本伸一郎君

  室井 邦彦君     加藤 尚彦君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     原田 令嗣君

  加藤 勝信君     江藤  拓君

  北川 知克君     江崎 鐵磨君

  菅  義偉君     中野 正志君

  田中 和徳君     林  幹雄君

  加藤 尚彦君     室井 邦彦君

  古本伸一郎君     下条 みつ君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     寺田  稔君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 独立行政法人住宅金融支援機構法案(内閣提出第二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 公的資金による住宅及び宅地の供給体制の整備のための公営住宅法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)

 地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案(内閣提出第二五号)


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     ――――◇―――――

橘委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的資金による住宅及び宅地の供給体制の整備のための公営住宅法等の一部を改正する法律案及び地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局長山本繁太郎君、財務省理財局次長浜田恵造君及び住宅金融公庫総裁望月薫雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事長伴襄君、独立行政法人都市再生機構理事田中正章君及び独立行政法人都市再生機構理事河崎広二君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橘委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村隆秀君。

木村(隆)委員 おはようございます。

 順次お尋ねをしてまいりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 これまでの公営住宅の仕組みというのは、戦後、戦災復興で国民の住宅が困窮をする中で、その制度のスタートを見たということを伺っております。その後、今日では社会情勢がいろいろ変化をしてきた。当初は、例えば福祉でいうならば、母子家庭という、戦災で御主人を亡くされたそんな家庭を対象とした制度等々があったわけでありますけれども、今日では、母子、父子家庭だけではなく、例えばDV被害者、また完全失業者も大分ふえているわけでございまして、そういう社会情勢の変化によっていろいろな仕組みも変えていかなきゃならないのだろうと考えるところでございます。

 今回、地域住宅交付金を創設するということでございますけれども、この一連の公的住宅政策の中で、このたびどのような方向性で政策を変えていくのか、また、どんな考え方で推進をしていくのかという基本的なことについて、これは基本的なことでございますから、まず副大臣にお答えをいただきたいと思います。

蓮実副大臣 地域住宅交付金は、これまでは個別事業ごとに補助をしていた制度であります。これにかえまして、地方公共団体が自主性、裁量性を十分に発揮しながら、それぞれの地域のさまざまなニーズに応じた住宅政策を総合的に推進することができるわけであります。

 具体的には、民間住宅の耐震改修やバリアフリー化支援など、これまでは国の補助の対象となっていなかった事業等についても、地方公共団体の提案によりまして交付金の対象とすることができるようにしたわけであります。地方公共団体が、交付金を地域住宅計画の枠内で、どの事業にどれだけ充当するかということも自由に決めることができるわけであります。そのため、地方公共団体にとっては大変使い勝手のよいものとなっております。

 この交付金を活用すれば、少子高齢化や中心市街地の活性化など、その地域が抱えるさまざまな課題に対応して地方公共団体が地域住宅計画を作成し、国の支援を受けながら、地方の創意工夫を生かしながら住宅政策を展開することができると考えております。

木村(隆)委員 ただいま副大臣からは、地域の自主性、主体性を高めることができる、また新たに、最近のいろいろな社会の情勢の中で、バリアフリーや耐震等々にも使えるようにしたということでございます。

 今、耐震、バリアフリー等々のお話を伺いましたけれども、それ以外にも今回の改正によってより使い勝手のいい制度になっているのではないか、また、地域のいろいろな実情に応じていろいろな政策が打てるのではないかと思いますけれども、さらにちょっと具体的に、どのような使い道がされるのか、わかりやすく御説明をいただければと思います。

山本政府参考人 地域住宅交付金を使いまして具体的にどのようなことを支援することができるのか、どんなことを進めることができるのかという御質問でございます。

 今回、公営住宅の建設費補助金を改正して交付金制度にするわけでございますので、公営住宅を初め公的賃貸住宅の整備、それから面的な居住環境の整備、これが交付対象になるのはもちろんでございますけれども、さらに、公共団体が地域住宅計画によって位置づけた事業、これは従来の補助対象外のものでありましても交付金で支援することができることになります。

 具体的には、公営住宅と保育所とかデイサービスセンターを一体的に整備する場合の事業に要する経費でありますとか、あるいは高齢者などを初めとするいろいろな住宅相談に応じる経費、あるいは住宅情報を提供する事務に要する経費、それから、今御質問の中にもありましたけれども、民間住宅の耐震改修を進めるために必要な経費、そういった地域の住宅政策上の課題として公共団体の首長さんがこういうこともしたい、ああいうこともしたいということがあれば、この地域住宅計画の中に位置づけていただければ交付金でこれを総合的に支援できる制度としているものでございます。

 さらに、計画の枠内ではありますけれども、毎年度に交付金を計画の中に位置づけられたどの事業に充てていくかというのも公共団体の方が自由に決められるという仕組みになっておりますので、公共団体の使い勝手は格段に向上するものと考えております。

 この制度を活用することによりまして、公共団体が主体となって地域における総合的な住宅政策の一層の推進が図られることを期待しております。

木村(隆)委員 そもそもこの交付金というのは、去年の夏の三位一体改革の中で、地域から、もう少し地域の実情に合わせて使い勝手のいいものにしてくれという要望等々があった中でいろいろ制度を考えたというふうに認識をしております。

 ですから、これまで公営住宅をつくるための建設費補助金というのは廃止をされた、建設費の二分の一を補助金を打っていたのを廃止にした、それをこの交付金へ持ってきた。それが五百八十億という金額なんだろうと思いますけれども、今東京あたりでは公営住宅の倍率が約三十倍だと聞いております。ほとんどの都道府県で倍率が出ているということからすると、まだまだ公営住宅に対する地域の要望というのはあるだろう。

 ただ、今回、非常に使い勝手をよくしますよ、あれもこれも使えるようにしますよというお話でございますけれども、例えば、そちらの今までの補助対象外のところがふえてくると、肝心の公営住宅の建設、築後三十年以上の住宅も四割あると認識をしておりますけれども、そういう建てかえ需要もある中で、それらに影響を及ぼすのではないかという逆に心配をするわけです。

 ですから、例えば今回の交付金の中で、これまでの補助対象外の、新たに使い勝手をよくした部分というのはある程度量を抑えていかないと本体の事業に影響すると思うんですが、その辺はどのようにお考えになっておられるのかな。

山本政府参考人 御指摘のように、地域住宅計画に位置づけられた事業を交付金で進める場合に、従来の補助の対象でありました事業、これは基幹事業と呼んでおりますけれども、それと従来補助対象外であった事業、これは当然、地方公共団体が地方単独事業として財源を全部自分で調達してやっていく事業でございますけれども、との間のバランスを確保するということが非常に大事な視点だと思います。

 そのために、交付金の制度におきましては、地方の提案に基づく事業、従来は全部地方の財源でやっていた地方単独事業、この提案事業が地域住宅計画に位置づけられたもので一定割合を超えますと、それ以上提案事業がふえても交付金の額はふえないという仕組みにしております。つまり、提案事業の割合の上限を設けているということでございます。

 具体的には、地方の提案事業が全体の二割になるまでは、交付率が四五%で交付金が交付されます。しかし、それを超えれば交付金はふえないということになります。提案事業、もちろん組み入れていただくことは公共団体の自由なんですが、交付金の額はふえないという仕組みにしておりまして、御提案のような問題意識でそういう制度としておりますので、本来の基幹事業の推進が阻害されるということはない、そういうことにならないように運用することとしております。

木村(隆)委員 今回のこの交付金の中で、例えば、今の提案事業の中で社会福祉施設も一体的に整備をすることができる。これまでは、例えば住宅であれば国交省、社会福祉施設であれば厚労省、それぞれ手続をして進めていかなきゃならなかった。でも、面倒なので、この交付金を使って社会福祉施設もついでにつくっちゃえみたいなことがあれば、どちらにとっても大変問題が出てくるので、その辺はよくよく地方とも話をしながら、これまでの制度もしっかり使えるところは使っていくというところをしながら進めていただければありがたいなと思います。

 ただ、今、二割ということからしますと、五百八十の二割ですから百十六億というところがこれまでの公営住宅以外のところで使えるということになるわけです。例えば、その中には今の社会福祉施設の一体的な整備もありましょうし、また住宅の中の街路事業みたいなこともありましょうし、いろいろなものが出てくると思うんです。

 今、私どもの方は東海地震、東海南海地震、先日、九州でもたび重なる地震が起きておりまして、耐震というものは、安全、安心ということからすると、国民の皆さんが大変今注目しているところではないかなと思うんです。

 今、大変耐震改修が進まない。これは、これまでの補助制度が使い勝手が悪い、いろいろな制約があるゆえ、なかなか使われていないという状況だと思いますが、横浜や静岡あたりは、結構独自の、単独の補助制度をつくって、右肩上がりで耐震改修が進んでいるということを聞くわけです。

 例えば、耐震改修一つをとりましても、百億の枠の中で新たにしていくというのでは余りにも進みぐあいが遅いのではないかと思うんですが、逆に、先ほどは公営住宅に影響してはいけないぞと言いましたが、またその反対の、相反することですが、その耐震改修、これで大丈夫なの、ある意味じゃちょっと中途半端な感じがしないわけでもないんですが、その辺はどう考えておられますか。

山本政府参考人 御指摘のように、人の命、国民の命を守るという観点から、既存住宅の耐震改修を進めるというのは非常に重要な課題だと認識しております。

 このために、今御指摘がありました、これまで耐震改修費補助は、市街地整備についてのいろいろな事業制度の中で工夫をしながら補助制度を構築してきておったわけです。したがって、各市街地整備の事業費目ごとにばらばらにあったんですが、十六年度にこの補助制度を一元化しまして、耐震診断それから耐震改修を一気通貫で応援できるという仕組みにしたので、公共団体に積極的に取り組んでいただきたいと思っているわけです。

 特に、耐震改修費補助につきましては、従来、その中でも国の補助制度がいろいろな要件を課しておりますので、主として公共団体が地方単独事業として取り組んでおられました。御質問の中にありました横浜市などはその最も先進的な事例でございますけれども、取り組んでいただいてきておりまして、そういうふうな地方単独事業の取り組みが、今度の地方住宅交付金制度の創設によりまして、この中に取り込むことができる、交付金で応援することができることとなったわけでございます。したがって、これから公共団体と協力して、積極的にこれを使っていただく、いただけるようにしていきたいと考えております。

 どんどんこれを進めると、十七年度予算の五百八十億の交付金の枠ではとてもおさまらなくなるんじゃないかという御懸念でございます。私どもも、そういうところまで耐震改修の機運が盛り上がってくるといいなと実は思っているんです。

 と申しますのも、現実には、公共団体も、六百を超える公共団体が地方単独で制度を設けておりますけれども、その中で横浜みたいに意欲的に制度をつくっているところがありますけれども、現実にその補助制度を使って自分のうちを耐震改修するという行動に出られる御家庭は非常に限られておりまして、これまで、私どもが調べた限りでは、例えば戸建て住宅について、公共団体の補助制度を使って耐震改修をされた戸建て住宅の累計、平成十五年度までの累計で全国で三千五百戸ぐらいです、数が。これは、横浜市なんかもそうですが、入り口でまず地震のハザードマップを御家庭に示して、こういう危険があるというのを示して、それから耐震診断をやりますのでどうぞそれを受けてくださいというふうにして、それで危険だとされたところは手厚く補助しますから耐震改修をしましょうということを慫慂して、出てきた結果、このオーダーです。

 ですから、これから交付金を使っていただく過程でどんどん公共団体と協力してやりますけれども、したがって、予算が足りないというところまで進んでほしいという気持ちはあるんですが、まだまだ五百八十億の枠内で十分、十七年度、これに取り組めますので、そういう気持ちで進めてまいりたいと思います。

木村(隆)委員 阪神・淡路大震災のときの試算等々で、しっかりと前もって改修しておけばあれだけの被害は出なかったんじゃないかということも伺ったことがあります。小さく産んで大きく育てるというようなことがありますから、今年度からスタートをしていく制度でございますから、この五百八十億の交付金が足らないんだ、足らないんだ、地方から多くのそういう声が出るぐらい、しっかりと宣伝をしていただいて、みんなに使っていただけるように努力をしてもらいたいと思います。

 先ほど、東京の倍率を申し上げましたけれども、東京都が、今公営住宅が二十九・二倍ですか、倍率が。東京圏全体で二十倍ぐらい、大阪圏で十一・五倍ぐらい、三大都市圏で十三・七倍、全国、その他で五・一倍ということで、どの地域においても、一番倍率の低い茨城でも一・九倍という倍率が出ているわけであります。

 その公営住宅の倍率が出るということになると、一般の方の入居がややもすると優先されてしまって、福祉向けのところがちょっとおろそかになってしまうのではないか。私の愛知県も、昔は福祉の関係は先着順で、抽せんなしで、時間を待てばきちっと入れたわけでありますけれども、最近は、そういう住宅も、福祉向けの住宅も抽せんでないと入れないという状況が出てきているわけであります。

 そういう中で、今回のこの法案によって、そういうものにももう少し対応できるのではないかなと思うんですけれども、いかがでございましょうか。

山本政府参考人 社会的弱者である高齢者、それから母子世帯といった世帯の居住の安定の確保のために、住宅のセーフティーネット機能を強化するというのは非常に重要な課題であると思っております。

 そのため、今回の法案でも、公共団体が地域のそういった需要に柔軟に対応できますように、公共団体が作成した地域住宅計画に基づきましてまずきちんと供給するという意味で、交付金を活用した公営住宅、それから高齢者向けの優良賃貸住宅などの公的賃貸住宅を総合的に整備するといったような仕事。それから、その際に、みずからつくるというだけではなくて、民間でおつくりになった賃貸住宅を借り上げるとか、あるいは現にある賃貸住宅を買い取るとか、そういったような形で民間賃貸住宅ストックを有効活用するといったような仕事。それから、地域住宅協議会を通じて、公営住宅、都市再生機構の賃貸住宅といった公的賃貸住宅を相互に融通しながら、全体で一体的に有効に生かして使うといったような仕事。それから、ファミリー向けの賃貸住宅であります特定優良賃貸住宅を高齢者向け住宅として活用したり、あるいは公営住宅をグループホームに活用するといったような、地域の需要に対応した公的賃貸住宅の弾力的な活用といったようなことができるようにしております。

 それから、市が同じ団地の中である県営住宅を市営住宅と一体的に管理するといったようなことも今回の法律措置で可能となるわけでございまして、住民に最も近いところで、福祉施策を市町村が担っているわけでございますけれども、福祉施策とこの住宅セーフティーネットの運用を一層連携強化させるということで、地域の実情を踏まえた住宅弱者の居住の安定確保がなされることを期待しているわけでございます。

 今後は、地域住宅計画に基づきまして、住宅セーフティーネットとして地域の実情に応じた公的賃貸住宅の的確な供給が行われることが重要と考えております。

木村(隆)委員 画竜点睛という言葉がありますけれども、この法案をつくりましても、実際、地域が真剣に考えてくれないと実にならないわけです。

 例えば、今お話がありました地域協議会、県営、市営の住宅の管理をどちらかへ移すことができるような仕組みにしたというお話も今伺いました。まさに、それぞれ役割分担をして、近くにある住宅をどう活用していくかという、それぞれの自治体がお互いに真摯な議論を重ねて協力をしていったら、もう少し違った運営ができるのだろうと思うんです。それを地域がしっかり受けとめてやってくれないといけないと思いますけれども、そんなことに対するPRやら、また、国はそれを進めるために地方に対してどう政策をとっていくのか、督促をされていくお考えなのか、これは決意のほどだと思いますけれども、お聞かせをいただきたいと思います。

山本政府参考人 この仕事を進める上で非常に大事な点を指摘していただいたと思います。

 私どもの心構えとしては、各公共団体、事業主体に対して、こういうやり方もあります、こういうやり方もありますという情報をできるだけ提供して、今御指摘がありました、公共団体にこれに取り組む気持ちになっていただくということが非常に大事だと思いますので、そういう情報提供は積極的に進めていきたいと思いますけれども、この法律の枠組みの中で、入り口で、国がまず基本方針を定めることにしております。この基本方針におきまして、地域の需要に対応した住宅政策を的確に推進するために、地域住宅計画をつくるに当たって、地域の各事業主体がそれぞれの問題意識をきちんと出し合って、相談した上で連携して仕事ができるということを確認して計画をつくってほしい、したがって、そういう意味で今の協議会をきちんと運用してやってほしいといったようなことを基本方針に書き込んで前に進めていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

木村(隆)委員 今、基本方針にしっかり書き込むというお話でございますけれども、しっかりと地域の協議会が機能するように、よく、素人ではできませんけれども、取り組んでいただきたいなと思います。

 今回の法案でもう一つ特徴的なのが、まちづくりと一体となった良好な居住環境の整備を進めるということを書いてありますけれども、具体的に、この法案ではどのように対応されることになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

山本政府参考人 実は、既存の公的賃貸住宅、特に供給年次の古い公的賃貸住宅の団地は、同じ町の中といいますか市街地の中で比較的利便性の高い町の中心に近いところに存在しておりまして、そういう意味では、町の非常に大事な財産であるというふうに考えております。

 したがいまして、そういうところに立地する大規模な公営住宅団地を建てかえるというときには、実はその周辺の方々も含めて、ああもしてほしい、こうもしてほしいというのが当然出てくるわけですね。そういったことをきちんと受けとめて仕事をしていくことができるようにしたい。これがまちづくりと一体となった居住環境の整備ということになるわけでございますけれども、そういうことに取り組んで、住民の声にこたえて、例えば福祉施設といったような生活支援施設をあわせてつくっていけば、そこが地域の生活拠点として大きな役割を果たすことになると考えておるわけでございます。

 それからもう一点は、中心市街地の活性化のために、例えば民間住宅を借り上げて、従来商店があったところに、商店主の方が市と協議して、話し合った上で賃貸住宅をつくっていただいて、それを市が公営住宅として借り上げて、いろいろな方々に、お年寄りも含めて住んでいただくということになれば、地域の政策課題に対応するためにも公営住宅は役立つわけでございます。

 そういうような考え方に沿って、地域住宅交付金におきましては、公共団体の創意工夫で公営住宅の整備とあわせていろいろな福祉施設や商業施設を含めた民間の施設、住宅を導入して複合開発ができますし、民間住宅の借り上げによって供給する、あるいは公共賃貸住宅をつくる際に、周辺の方々の声にこたえて生活道路とか小公園、広場といった公共施設を一体的に整備することを応援することができるようになっているわけでございまして、こういったものを生かしてまちづくりと一体となった居住環境整備を進めてまいりたいと思っているわけでございます。

木村(隆)委員 これまで、ややもすると、住宅というか団地とその近くの自治体とのコミュニケーションというのは、疎外されるといいますか、なかなか触れ合いがなかったというところもあるんだろうと思います。この法案を契機として、その辺が、住宅に住む方々と地域の方が一体的にこれから連携がとれるような施策を進めていただけるようにお願いをしたいと思います。

 もう時間がございませんので、最後に一問ですが、今、よく、住宅金融公庫法に関係をして、私どもの方へ、個人向けの住宅ローンが大変使い勝手が悪くなった、独法化に際して、官から民へ、長期の住宅ローンも民間に任せればいいんじゃないかという国の流れの中で、使い勝手が悪くなったというような声が時々入ってきます。例えば、条件をつけられる、その銀行の開発した住宅でないと銀行のローンをなかなか使わせてもらえないとか、いろいろな制約があるやに私どもの耳に入っているわけであります。

 そこで、民間の金融機関の住宅ローンの現状というのは今どのようになっているのか。そして、個人向け直接融資は独法化に際して原則廃止となっているけれども、本当にこれで問題ないのか。どのように考えておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。

山本政府参考人 民間にできることは民間にということで、民間の住宅ローンを応援するという姿勢に立っているわけですけれども、これまで拡大してきました民間住宅ローンの中身を見てみますと、長期にわたる低利の金利情勢のもとで、民間の住宅ローンの大半は変動金利のローンでございます。それから、固定であっても短期、例えば三年固定の、あるいは五年固定のタイプのローンが大部分でございまして、昨年来、国土交通省も調査をしておりますけれども、昨年の上半期で見ましても、民間ローンにおける十年を超える固定金利のローンの割合は、わずか五%程度に限られております。

 こういったところにはいろいろな問題意識を持っておりますので、独立行政法人が主として取り組むことになります証券化支援ローン、民間ローンを証券化によって応援をするローン、これは長期固定のローンでございますので、しかも融資条件は、例えば長い間同じ仕事についているという条件とか、そういう民間ローンについては当然一般的に行われている要件を付してはならない、公庫が今直接融資でやっております条件以外の条件は付してはならないということで証券化ローンは進めておりますので、これをぜひ使っていただくことで、まず長期固定になる、それから無選別融資が実現できるということで、今御指摘のような課題にこたえることができると思うんです。

 実は、直接融資の取り扱いにつきましては、平成十三年十二月の特殊法人等整理合理化計画の中で、平成十九年に独立行政法人が発足するまでの間、民間住宅ローンの状況とか、今先行的にやっております証券化支援ローンがどの程度定着するか、ちゃんとそれで国民の住宅ローンに対するニーズにこたえ切れているかどうかというのをきちんと判断して、改めて平成十九年度の予算編成過程で最終的に判断するとしておりますので、それまで引き続き証券化支援ローンを一生懸命やることとあわせて、民間の市場の状況もきちんとよく見て、その判断に役立てるようにしてまいりたいと思っております。

木村(隆)委員 ありがとうございました。

橘委員長 若井康彦君。

若井委員 おはようございます。民主党の若井康彦です。

 本国会にこのように複数の公的住宅政策に関する法案が出ているということは、恐らく、これまでのいわゆる住宅政策の大きな曲がり角に差しかかっている、そういう時期に当たって、この間のこうした公的賃貸住宅等の役割、位置づけ等をもう一度見直そうという議論だと思いますので、少しマクロな視点から、きょうはこの問題について幾つか御質問させていただきたいと思います。

 まず、この公的賃貸住宅の今後の位置づけに関してでございますけれども、これまでこの公的賃貸住宅が果たしてきた役割というものをどのように規定し、そしてこれから新たにどんな役割を持たせていこうとしておられるのか、その辺についてお答え願いたい。

山本政府参考人 公営賃貸住宅が歴史的に果たしてきた役割でございますけれども、何といっても、昭和二十六年に一番最初に制度ができました公営住宅でございます。これは、終戦直後の住宅が絶対的に足りないという状況のもとで、終戦直後は四百二十万戸住宅が足りなかったとされておりますので、毎年毎年、歴代の内閣が、私どもが地震被災直後に例えば応急仮設住宅を一生懸命供給するように、とりあえずの仮設住宅をどういうふうに供給するかというような課題が内閣の正面の課題であったような時代でございます。

 そのときに公営住宅法ができまして、国費をベースにしまして、公共団体が残りの所要資金は起債によって賄って、それを家賃で返していく。基本的に、地方公共団体の財政事情にかかわらず、必要な住宅をきちんと供給できるという枠組みを二十六年につくりました。これで絶対的不足に取り組んでいこうとしたわけでございます。

 だんだん経済も復興してきまして、昭和三十年でございますが、大都市への人口の集中が非常に速度を増してきまして、大都市の勤労者の住宅をどうするかというのが一番大事な課題になってきまして、日本住宅公団法が施行されました。日本住宅公団が、集合住宅、ニュータウンの開発、新たな団地の供給、大量の供給といったような仕事を担ってきたわけでございます。このニュータウンの整備を通じて、高度成長期の大都市への人口集中の受け皿として非常に大きな役割を果たしてきたところでございます。

 マクロに見ますと、昭和四十年代に全国で大体一世帯一住宅を達成いたしました。昭和四十八年の住宅統計調査で、全都道府県で住宅数が世帯数を上回ったわけでございまして、昭和五十年以降、昭和五十年というのは、結局、戦後の三十年、それから、それから後の三十年という戦後六十年のちょうど真ん中でございますが、そこで量的な充足が足りて、昭和五十年以降、住宅の質をどういうふうに確保するかということで住宅政策を展開してきたわけですが、その中でも、住宅の質という場合に、特に住宅の規模、床面積の規模に着目してきちんとした公的賃貸住宅をやっていこうということで昭和五十年以降も一生懸命やってきている、そういう役割を果たしてきたと思います。質の向上をリードしてきたという役割を果たしてきたと思います。

 またさらに、その後の経済社会情勢の変化に対応しまして、低額所得者を対象とする公営住宅だけではなくて、市場の機能ではなかなかきちんとした居住水準が確保できない、特に大都市の勤労者、中堅所得者について、賃貸住宅がなかなか足りないという課題にこたえるために、平成五年に、中堅所得者を対象として特定優良賃貸住宅の制度、それから平成十三年には、高齢化社会に立ち向かうということで、高齢者向けの優良賃貸住宅の制度を創設しました。こういう時代時代の要請にこたえて、公的賃貸住宅が国民の居住水準の向上に貢献してきたというふうに認識しております。

 今日、公的賃貸住宅をどう考えるかということでございますけれども、公営住宅が果たしてきた、本当に困っている低額所得者にきちんと住宅を供給するという仕事は、時代を超えて仕事はあろうと思います。

 それからさらに、災害等もございますので、国が公共団体と協力して、そういう住宅を失って自力では住宅を確保できない人に的確にセーフティーネットとして住宅を供給するという仕事は、時代を超えてまずあると思います。

 それから、今日、公的賃貸住宅が果たしている役割のうちで、例えば都市再生、密集市街地における従前居住者の対策とか、あるいは、地方都市でも中心市街地が非常に疲弊しておりまして、その活性化のために人口定住対策あるいは地域づくりをするといったようなことについても、公的賃貸住宅が役割を果たしているというふうに認識しております。

若井委員 大臣にお聞きしますが、これから人口が減っていく、近い将来、世帯数も減少に転じるだろうという中で、今、住宅局長いろいろるる御説明ありましたけれども、基本的には、これまでの公的住宅はかなりストック、賃貸だけでも三百万を超えるというようなものを持ちながら、これを今後どのような、このストックを生かしながらどっちの方向へ公的賃貸住宅の政策を持っていこうと考えておられるか、簡単にお答え願えればと思います。

北側国務大臣 今、住宅局長から、これまでの住宅政策、特に公的賃貸住宅政策についての戦後の政策の流れについて御報告をさせていただきました。

 冒頭、委員の方から、今、大きな転換期にあるのではないかとおっしゃいましたが、全くそのとおりでございます。人口減少時代、そして本格的な高齢社会がこれからやってくるわけでございます。

 そういう中で賃貸住宅政策はどうあるべきなのかということでございますが、今、公的賃貸住宅は全国で約三百四十万戸のストックがございます。これからは、このストックをいかに改善をするのか、建てかえをしていくのか、この既存ストックの有効活用ということが一つ大きな課題であるというふうに考えております。ですから、これまでどんどんどんどん公的賃貸住宅をつくってきた、開発してきたという時代から、この既存のストックをいかに有効活用していくかというふうな流れにやはり転換をしていくのだろうというふうに思っております。

 ただ、市場重視になっていくわけでございますけれども、一方で、住宅のセーフティーネットというものはやはり確保をしていかねばならないわけでございます。我々の生活の一番基礎にあるのが住宅でございまして、この住宅につきまして、例えば、高齢社会が進んでいくということでございますので、高齢者の方々が本当に使いやすい、そういう住宅に誘導していく必要がありますし、また、障害者の方々やDV被害者の方々への対応とか、そうしたさまざまな課題にこたえていける、住宅のセーフティーネットについてもきちんとこたえていけるような住宅政策でないといけないと思うわけでございます。

 市場機能は重視をしていくわけでございますけれども、一方で、そういう要請にこたえて市場機能を誘導し、また補完をしていく機能というものは、非常にこれからも重要な機能であるというふうに考えております。

若井委員 今後必要となるそうした多様な居住サービスを市場メカニズムを通して本当に提供ができるのかどうかという問題については、甚だ問題が多いような気もいたしますけれども、その問題はまた来週じっくり議論をさせていただくことにいたしまして、大臣、お時間がないようですから、質問の順番を変えて、一つお聞きしたいと思います。

 この公共住宅地区というのは、住宅のストックとしても大変に貴重なストックであるわけですけれども、もう一つ大きな意味があると思うのは、この間形成されてきたいわゆる都市地域、大都市圏の特に郊外、こうした中における地区としての公共住宅ストック、これをこれからどのような位置づけで見直していくかということが今後の公共住宅政策の一つの大きな視点であると私は思うわけです。

 最近、各地域で非常に大きな地震が起きたりしております。この間、ある意味でいうと、一言で言って粗製乱造してきた大都市地域の中にあってこの公的住宅地区というのは大変に貴重なストックだと思うわけですけれども、今回の地域住宅交付金の中に密集市街地の整備というような話がありますけれども、本来であれば、むしろ公的住宅地区の居住密度をうんと落として、今大都市にとって一番必要なそうしたオープンスペースあるいは緑というようなものを確保するために使っていくべきものではないかというふうに考えます。

 そういう意味でいって、これからの建てかえあるいは地区更新のあり方というものは、そうした意味で大変に重要な位置づけがあると思うわけですけれども、現在、各地域で行われている建てかえや地区更新の中で、こうした問題についてどのような対応がなされているのか、あるいはどのように進めようとしておられるのか。その辺について、大臣、これからどうしたらいいか、お考えがあれば少しお聞かせをいただきたいと思います。

北側国務大臣 今委員のおっしゃった視点というのは非常に大事な視点であると思っております。

 既成市街地の中に老朽化した公営住宅などの公共住宅団地というのはたくさんあるわけでございます。非常に立地に恵まれた地域に公営住宅等がある、団地がある、これを住宅市街地の再生に生かしていくということは大変重要なことだと思っております。

 大規模団地の建てかえ事業にあわせまして土地の高度利用を図りまして公共空地を確保していくとか、それから、複数の小規模団地を集約化して建てかえることで既成市街地内に公共空地、非常に大きな空き地が生まれてまいります。そうしたことを活用いたしましてさまざまな取り組みができるのではないかというふうに思っているところでございます。緑の空間をつくっていくということも非常に大事な政策であると思います。

 いずれにしましても、それぞれの地域の特性を一番よく理解しておりますのは地方公共団体でございますので、地方公共団体におきまして、地域の活性化、居住の確保等を勘案しながら、そうしたさまざまな要請にこたえていく総合的な取り組みができるというふうに考えておりますし、そうしなければならないというふうに思っております。

若井委員 基本的なシナリオはそういうことになるんだと思うんですが、現実はどうもそのように進んでいないんじゃないかということを私は申し上げたいと思う。

 かつて代々木に代々木ハイツという、これは米軍の施設ですけれども、その跡地は全面的に代々木公園という非常に大きな公園がつくられた、NHKとか幾らか建っておりますが。立川の基地は、昭和記念公園として非常に貴重な、こうしたオープンスペースの確保に使われておるわけですけれども、事この公共住宅地区の更新の状況を見ておりますと、基本的には密度が高まっているというのが現状でありますし、それに伴って、それまで住んでおられた方の家賃が非常に高くなるというような状況が現実であります。

 本来であれば、かなりそうした部分について、今大臣は、これは地方自治体の問題だというふうにおっしゃいましたけれども、いわゆる住宅政策の枠を超えて、さらにもっと広い意味での、例えば都市の安全性を高めるとか、都市の、大都市の質を高めるという意味で、もっと例えば住宅局の枠を超えた、だから、私が言いたいのは、大臣でなければできないような、そうした政策をここで思い切って打っていくということが逆に言うとこの公共住宅地区の再生にとって大事じゃないかと思うんですけれども、その辺について御決意を一言御披露いただきたい。

北側国務大臣 人口減少時代に入ってくるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、ストックを今まで長い期間にわたってつくってまいりました。この既存のストックをどう有効に活用していくか、次の世代にどうつなげていくのかということがこれから非常に大事な視点であると思っております。そういう視点の中で、今委員のおっしゃった、できるだけオープンスペースを、例えば緑の空間をしっかりつくっていくだとか、そうしたことが大切であるということは、全くそのとおりであると思っております。

 具体的にどういう形でやっていくのか、これはほかの省庁とも連携をとらないといけないところがあるかもしれません。しっかりとリードできるように頑張ってまいりたいと思います。

若井委員 では、この問題については、また来週続きをよろしくお願いいたします。

 住宅局長に続けてお伺いをしますけれども、建てかえ時期の公共住宅の戸数ですけれども、大体何割ぐらいが既に建てかえの時期に差しかかっているのか。いかがでしょう。

山本政府参考人 先ほどちょっと御説明しましたように、公営住宅は昭和二十六年に制度が創設されまして、今日まで、平成十五年度末の時点で二百十九万戸管理されております。それから、公団の賃貸住宅、今日の機構の賃貸住宅でございますが、昭和三十年に公団が設立されましてから、十五年度末までに七十七万戸が管理されております。

 これらのうち、建てかえ時期にあるのは何戸かということでございますけれども、一応築後経過年数で見まして築後三十年が経過したもの、要するに昭和四十年代以前のストックでございますが、公営住宅でおよそ四割、九十四万戸、機構の賃貸住宅で約五割強、四十二万戸でございます。

若井委員 私は、こうした住宅ストックが既にある意味でいうと寿命が尽きているというふうに考えるべきなのか、さらにこれを、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、既存ストックとして有効に生かしていくという方向で使っていくという方向がないのかということについて、もう一度再検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

 最初にお聞きをいたしましたとおり、この公的賃貸住宅の戸数をこれからさらにふやさなければならないというのであればまた違った考え方もできるかもしれませんけれども、もしもこれからそれに対応する需要が全体の住宅需要が縮小するのと同じように減っていくというのであれば、むしろ、今ある住宅をしっかりメンテナンスし、補修し、使えるところまで使っていき、その後は、先ほどからお話ししているように、都市の居住サービスの向上、広い意味での居住環境をよくするという意味でオープンスペース化していく。そして、今住んでおられる方々は、その住宅が滅失する、そうした状況まで使っていただく。

 私たちも含めて、いずれ天国に行くわけですから、そのときまで安心して住んでおられる、そうしたストックであればよいわけでございますので、そうした意味で計算を合わせていく、そうした考え方が成り立たないのかどうか。今の建てかえ更新のやり方は、私はそれに対して逆行しているのではないかと考えておりますけれども、いかがでしょうか。

山本政府参考人 築後経過年数が一定経過したので、すぐ、さあ建てかえだというふうな行動をとるべきではないという点、おっしゃるとおり、御指摘のとおりだと思っております。

 既存の公営住宅の団地についてでございますけれども、これを管理しております公共団体が、築後経過年数、経過したときに、老朽化の度合いとか、あるいはその地域で住宅に困っておられる方々がどのぐらいあるかということとか、あるいは団地の立地、そういったようなことを総合的に勘案しまして、建てかえるのか、あるいは改善とか補修で対応するのか、方針を決めているということでございます。

 もちろん、委員が御指摘いただきましたように、団地によっては建てかえずに改善、補修をしていく。その場合に、例えば、エレベーターを設置してバリアフリー化をしましたり、あるいはグループホームとして使えるようにしたり、高齢者の福祉の拠点として団地を使うといったようなことを積極的にやっている例もございます。

 ただ、一方で、団地に高齢者だけが集中してしまうということになりますと、コミュニティー活動もなかなか難しくなってまいりますし、災害などが起きますと緊急対応にもいろいろな心配事がふえますし、日常の防犯面でも不安が生じるといったような課題も指摘されているわけでございます。

 いずれにしましても、老朽化した公営住宅団地をどうするかということにつきましては、地域の実情を十分に掌握しております地方公共団体が、地域の高齢化の状況、住宅事情を踏まえた上で総合的に取り組んでいただくということが大事であると考えております。

若井委員 今、高齢者の方ばかりになってしまう、それは問題だというお話がございましたけれども、今地方自治体がいろいろ苦労しております高齢者の福祉施設についても同じようなことが、新築で、新しく郊外にそういうものをつくっても同じような問題はあるわけです。

 ですから、むしろ、今住んでおられる場所が、それ自身が福祉施設に近い、そうした性格を持った、そうした地区になるように工夫をしていく。もちろん、その中に、例えばヘルパーさんの家族を五階に優先的に住んでいただくとか、そのお子さんたちは、足元で保育所をきちんとしていただいて、例えば高齢者の方にそれを見ていただくとか、そうした非常に、ソフトウエアによって団地というのはまだまだ使えると私は考えておるわけです。

 そういう意味で、先ほどからあります地域住宅交付金ですか、これは、制度とするとそれなりの仕掛けになっていると思うんですけれども、基本的な考え方として、今ある団地を可能な限り生かしながら、そうしたものをそういうふうに改造していくという方向に使っていただきたいということを私は要望したいと思います。そうした例をどんどんつくっていただくことがこの交付金を生かすことにもなると思うんですけれども、その点について、一言でいいですから御決意なりをお聞かせください。

山本政府参考人 非常に大事な問題意識だと思いますので、きちんと受けとめて、この制度の運用に努めてまいりたいと思います。

若井委員 今回の法案の一つに、独立行政法人都市再生機構法の関係の法改正の問題が出ておりますが、ここの問題意識にあります、都市機構の持っているニュータウンの用地ですね、そうしたものは、どこにどれぐらいあるのか、そして、その中で、いわば塩漬けに近いと考えられているような土地はどの程度あるのか。それについて簡潔に教えていただきたい。

山本政府参考人 都市再生機構のニュータウン事業における保有地で、今後処分しなければならないものでございます。

 平成十五年度末の時点で、宅地に換算した面積で説明させていただきますけれども、五千七百ヘクタールございます。この五千七百ヘクタールの中で、首都圏には三千百ヘクタール、それから近畿圏には千八百ヘクタール、その他の地域に八百ヘクタールございます。

 それから、塩漬けに近い土地という御質問でございましたけれども、都市機構が今後処分しなければならないというときに、素地のまま、取得した素地のまま処分することになる土地、それから、余り工事をしないで、権利関係だけ集約して、まとめて、現況のまま処分をするということとしている土地を集計しますと、同じく十五年度末で、宅地換算で千二百ヘクタールございます。

若井委員 これにつきましては、値段を、評価を下げて、その損金分は、例えば宅地造成等経過業務に係る勘定の中で処理をされるということでよろしいわけですか。

 そうすると、その免除される補償金等については、どういう責任を、だれがとられるということになるんでしょうか。そして、その額はどれぐらいなのか。

山本政府参考人 都市再生機構につきましては、平成十三年十二月の特殊法人等整理合理化計画におきまして、ニュータウン事業について、時価評価の結果を踏まえ、プロジェクトの見直し、土地の処分等を早急に進め、できる限り多くの継続事業を速やかに終了させるとされておりました。

 昨年実施されました時価評価の結果、賃貸住宅資産には含み益が生じたわけでございますけれども、ニュータウン事業を中心に大幅な含み損が発生しました。機構全体として債務超過には至らなかったんですが、七千三百億円の繰越欠損金が発生したところでございます。

 このような厳しい経営状況に対処するために、今御指摘にもありましたけれども、一層の経費削減、土地の早期処分等、機構として最大限の自助努力を盛り込んだ経営改善に取り組むとともに、財投への繰り上げ償還を行って、機構の財務基盤の改善強化を図ることとしたものでございます。

 具体的に、ニュータウン業務等の経過措置業務勘定の財投の残高でございますけれども、三兆三千億円と見込んでおります。金融情勢にも左右されますけれども、このうち、約定償還分を除きまして、おおよそ三兆円前後を繰り上げ償還させていただきたいと考えておりまして、この場合の補償金免除額は七千億円前後と見込んでおります。

 機構は、これまでも、時々の経済社会情勢の変化に対応して業務を見直して、本来取り組むべき仕事に取り組んできたところでございます。今回、ニュータウン事業から早期撤退して、繰り上げ償還などの措置によって、問題を先送りすることなく早期に対処することで、今後とも、我が国の喫緊の課題でございます都市再生業務、それから賃貸住宅をきちんと適切に管理していくという業務、これを実施していくことが重要な責務であると認識しております。

若井委員 先ほどからの、ニュータウン計画が中途で挫折をし、数千ヘクタールの土地が使われないまま、ニュータウンが完成しない姿で終わってしまう、そして今のような、何兆、あるいは七千三百億ですか、そうした欠損を残したまま、これに終止符を打つというような、そういう意味での法改正を含んでいるこういう法案だから、なかなか私たちも丸のみして賛成はしづらいというところなんですけれども、この問題について、また後ほど、次の機会に集中的に議論をさせていただくということにして、私から申し上げれば、少なくともこうした問題をきちんと次の世代に責任を持って渡せるような形でしっかりした終止符を打つということを、これからまたさらにみんなで一緒に議論をさせていただきたいと考えています。

 時間が来ましたので、とりあえずきょうはこれで終わります。どうもありがとうございます。

橘委員長 赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 本日は、都市再生機構から伴理事長も御出席をいただいておりますので、冒頭まず、大変恐縮でございますが、都市再生機構に関係する質問をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、今回議題となっております、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案、この法案の中で、公的賃貸住宅等とは何ぞやと、この公的賃貸住宅等に関する定義というのがされているわけであります。

 これは、当然御承知のように、一つ目には地方公共団体が整備する住宅、二つ目には独立行政法人都市再生機構または地方住宅供給公社が整備する住宅、三番目にはいわゆる特定優良賃貸住宅、そして四番目には高齢者向け優良賃貸住宅と、こういった定義が法案の中で明確にされておるわけでございます。

 そして、今回、地域住宅交付金制度のもとで、市町村が中心になって地域住宅協議会をつくり、そして地域住宅計画を作成する、こういうスキームになっているわけでありますが、市町村でもいろいろありまして、公営住宅のストック数に比較いたしまして、いわゆる機構住宅の数が少ない地域などでは、機構住宅が地域住宅計画や地域住宅協議会に位置づけられることがないのではないか、こういったことは、大変強い不安があるとお聞きをしておるわけでございます。

 この都市再生機構の機構住宅につきましては、これまで国会で、独立行政法人都市再生機構法案の審議の中でも、衆参それぞれの、両院において附帯決議がされておりまして、独法化されても、簡単に言えば、都市再生機構住宅の「居住者の居住の安定を図ることを政策目標として明確に定め、居住者との信頼関係を尊重し、十分な意思の疎通と連携の下に住宅や利便施設等の適切な維持管理を行い、快適な生活環境の確保に努めること。」ということが、衆議院でも参議院でも同様の附帯決議がされているわけでございます。

 そういった中で、機構住宅の数が少ない、公営住宅の方が多いというような地域においても、公的賃貸住宅として機構住宅が果たす役割を考えますと、機構住宅を地域住宅計画や地域住宅協議会に適切に位置づけるということが、法の精神からも当然なのではないか。ですから、国としても、各地方自治体、市町村に、こういったことを絶対漏れるなよと、機構住宅もこの位置づけをしっかりしていくんだよということを、何らかの指導を行う必要があるというふうに考えておりますが、当局の見解を伺いたいと思います。

山本政府参考人 今回お願いしております法律の目的でございます、地域における住宅に対する多様な需要に的確に対応していくというこの目的を果たすためには、都市再生機構も含めました公的賃貸住宅の事業者が相互に密接に連携することが非常に重要であると認識しております。

 このため、必要な協議を行います地域住宅協議会には、都道府県、市町村、地方住宅供給公社のほか、都市再生機構を主要な構成員として位置づけるとともに、地域住宅計画において、地方公共団体が実施する事業のほか、機構などが行う事業についても記載するということにしているわけでございます。

 こういったことを的確に、現場において実現するように国がしっかりやれという御指摘でございます。このことにつきましては、国が定めることとしております基本方針の中で、地域の需要に対応した住宅政策を進めるために、地域住宅計画の作成に当たって、都市再生機構を含めた事業主体の連携強化をきちんとやってくださいということを位置づけたいと思っております。

赤羽委員 地方分権の時代であって、地方の自主性と創意工夫というのは大事だというのは、これは別に反対するわけではありませんが、いろいろ地方にゆだねると、そういったものがなかなか現実として守られないケースも出てくると予想されますので、ぜひ、事後的にもしっかりと国交省としてフォローもしていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 次に、都市再生機構法の一部改正についてちょっと移りたいと思いますが、この中で、ニュータウン用地の早期処理を促進する、そういった目的で、ニュータウン事業の経過措置業務について財投資金の繰り上げ償還措置を実施しようとする、今回こういった法改正なわけであります。

 このニュータウン用地の早期処理についてでありますが、都市再生機構が保有するニュータウン用地は全体で五千七百ヘクタールもある、大変膨大な面積を保有しているわけでありまして、今後、今の経済状況を考えてみると、これらすべてを本当に売却することができるのかどうか。

 私、大変心配もしておりますし、地元でもあったんですが、この売却する過程で、やはり売却第一、とにかく不良債権を売却しなきゃいけないということが強くなりますと、はっきり言うと、だれでもかれでも、売却先まで選定するような余裕がなくなる。往々にして、私の地元でもゲームセンター、アミューズメントなんかが入ってくる施設が建てられることになって、大変な大問題になったという経験もあります。

 大体、かつて公団が宅地を開いたときには、文化の薫りあふれるとかと文句をつけているわけです。何で文化の薫りあふれる公団にゲームセンターができるんだという話で、これ、本当にすごい根深いトラブルになるので、そういったことは極力というか、避けることが大事だというふうに思っておりまして、どういう販売方針、販売見通しを立てて取り組んでいくのか。これは都市再生機構の御見解を伺いたいと思います。

伴参考人 お答え申し上げます。

 五千七百ヘクタールの販売量をどうこなすかという御質問がございましたが、大変、確かに販売環境厳しいわけでございますが、販売拡大に向けていろいろ努力いたしておりまして、民間事業者との連携だとかあるいは事業用定期借地を取り入れるというようなことをやっておりまして、その結果、近年販売量が増加しておりまして、昨年度、平成十六年度におきましては、宅地として三百五十ヘクタールの供給、そのほかに八王子川口地区で、宅地完成ベースでございますけれども、百ヘクタールほど持っておりまして、それも地元八王子市に素地処分を行ったというようなことで、昨年度、平成十六年度の実績は四百五十ヘクタールということになります。

 都市機構が保有する五千七百ヘクタールのうちに、これから十年、平成二十五年度まででございますけれども、その十年間で五千ヘクタールを処分したいと思っておりまして、したがって一年間に毎年五百ヘクタールの処分をすることになりますが、十六年度の供給量、四百五十ヘクタールの一割増ということになります。これを処理するに当たりまして、今までのいろいろな取り組みに加えまして、いろいろな工夫をしたいと思っておりまして、これまで実績のない中小のハウスメーカー等に積極的に営業活動を行うとか、あるいはインターネットやガイドブック等の販売ツールを活用するとか、情報発信を強化いたすというようなこととか、あるいは販売代理方式とか土地信託の活用というようなことをやりまして、販売拡大方策を講じていきたいというふうに思っております。

 あわせまして、素地処分とか、山林、田畑のまま現況処分するという宅地がございますけれども、それも幅広くいろいろな利用可能性を探りまして、公共団体なり民間事業者へ処分を行っていきたいというようなことで、年平均五百ヘクタールの供給は十分可能と今考えておるところでございます。

 なお、五千七百と五千の差、七百ヘクタールにつきましては、第三期の中期期間、すなわち平成二十六年度から三十年度の間に処分してしまいたいと考えております。

 それからもう一点、ニュータウン用地の処分に当たりまして、居住環境を損ねるようなことは避けよという御指摘ございましたが、私どもも、良好な町づくりの観点というのは一番大事だと思っております。土地利用計画につきましては、十分、地元、関係地方公共団体と協議して、合意した上で募集を行いたいと思っております。

 また、募集に際しましても、法令遵守はもちろんのことでございますけれども、買った事業者に、近隣住民との調整を十分に行うことを条件づけたいというふうに思っておりまして、さらにトラブルとなった場合には、募集要項にも書いてございますけれども、事業者に対して責任を持って解決するように指導していきたいと思っておりますし、必要に応じて、私どもも必要があれば調整に乗り出すということはしっかりやりたいというふうに思っております。

赤羽委員 ぜひ、今の御答弁にありましたように、地元、近隣住民との合意形成というのは大変重要なことだというふうに思っておりますので、ぜひその点は必ず義務づけていただきたい。

 私、やはり経済というのは、余り無理をすると必ずひずみが来るというか、こういった経済状況の中で、ある程度の計画性を持って全力で取り組むということは当たり前のことでありますが、どうしても、何年間でということが先行しますと、必ず無理が出てくるというふうに思いますので、住宅政策において豊かな居住環境を確保していくというのは大前提だということで、私が言うのも変ですけれども、無理ない範囲で計画を進めていっていただきたい、これがお願いでございます。

 このニュータウン用地の早期処理に当たって、今回の法改正では、その勘定を新たに区分すること、勘定区分を設けるということになっております。その新たな勘定とその勘定間の繰り入れ規定によって、賃貸住宅の収益の一部をニュータウン業務の特別勘定に繰り入れることができるというふうにされているわけでありますが、今回のニュータウン用地の早期処理スキームを実施することで大変皆さんの御心配があるわけでありまして、こういったことを認めることによって、結果として、全国七十七万戸の賃貸住宅の家賃の値上げにつながるのではないか。また、本来は家賃収入というのは、我々公明党もこれまで尽力してまいりましたが、賃貸住宅の修繕七項目、修繕の維持管理、こういったものに使われるべきだということで働きかけを強め、そういったことも進めてきていたわけですけれども、こういった適切な管理に影響を与えることになるのではないか、こういったことが大変大きな心配になっておりますけれども、この点についての御見解を伺いたいと思います。

山本政府参考人 今回、繰り上げ償還の措置を講ずるに当たりまして、これまで機構全体で一つの勘定でありましたものを、繰り上げ償還の対象となりますニュータウン事業等について特別の勘定を設けまして、賃貸住宅などの一般勘定と法律上区分し、両者の経理を明確に分けることとしております。

 また、一般勘定に利益が生じた場合におきまして、各年度のその利益の額を上限として特別勘定に繰り入れることができることとしております。これは、特別勘定の運営上必要が生じた場合に、機構の一般業務に支障のない範囲で利益の一部を繰り入れ、機構の財務管理に役立てようというものでございます。この場合に、国土交通大臣が一般業務に支障のない範囲として承認する金額でなければならないということとしておりますほか、その承認に当たっては第三者であります独立行政法人評価委員会の意見を聞かなければならないということにしております。

 今回、法律において勘定を分離しまして、特定の年度に一般業務に支障のない範囲の一定額を、第三者機関の審査を経た上で特別勘定に繰り入れる措置を講じたわけでございますので、このことが、例えば一般業務の中の賃貸住宅業務の中で家賃の値上げにつながったり、あるいは維持修繕がきちんと行われないといったような支障、影響は生じないものと考えております。

 機構の約七十七万戸の賃貸住宅でございますが、これにつきましては、今後とも、少子高齢化を踏まえた居住環境の向上を図る上で非常に大事でございますので、引き続き適切に管理を行い、居住者の居住の安定を図っていくことが重要であると考えております。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 これは、先ほど、私も冒頭申し上げました、かつての附帯決議で、今の機構住宅の「居住者との信頼関係を尊重し、十分な意思の疎通と連携の下に住宅や利便施設等の適切な維持管理を行い、快適な生活環境の確保に努めること。」これはこの国会の院の決議でございますので、ぜひそれを遵守されていただきたい、こう思うわけであります。

 この維持管理について、ちょっと一言、また重なるような話でありますが、今、全国各地域で治安の問題というのが大変大きな問題として議論されているわけでございまして、私の地元でも、いわゆる機構住宅というのは結構広い敷地内で、樹木も多い。そうすると、逆に見ますと、治安としては大変問題が多いところが少なくない。地元で、外灯をふやしてくれとか、いろいろな御要望をいただきまして、実は、ふやすというのは財源としてなかなか難しいので、第一段階として外灯の明るさを高めた、それで随分死角になるようなところが少なくなったというふうに言われておりまして、一段でも、そういった些細なことと言ってはあれですけれども、そういったことというのが物すごく今後大事になってくるのではないか。

 ですから、今回の、今新しいスキームの中で維持管理は適切に行うという局長の御答弁もあったわけでありますけれども、重ねてで恐縮でありますけれども、居住者の安全、安心というものを意識して機構住宅内の治安を高める、こういったことについて、都市再生機構としての御見解、理事長からもお聞かせいただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、山口(泰)委員長代理着席〕

伴参考人 お答え申し上げます。

 ニュータウン事業の早期処理の方は、先ほど山本局長から答弁ありましたように、別勘定の中でやるということでございまして、したがいまして、賃貸住宅の適正な管理を従来どおり実施することは当然であるというふうに考えておりますし、居住者の方々の安全、安心をおろそかにするつもりは全くございません。

 具体的には、先ほど修繕七項目の話がございました。その中で、安全、安心の関係では、屋外通路の段差解消とか、あるいは階段室に手すりをつけるといったようなこと、それから、今治安の問題として指摘されました外灯の整備等々につきましては、やはり団地の安全、安心にかかわる居住環境の整備の問題でございますので、引き続ききっちりと整備に努めていきたいというふうに思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 それでは、次のテーマに移らせていただきたいと思います。

 私は、これから少子化対策に資する住宅政策ということについて議論を進めたいというふうに思っておりますが、少子化社会というのは、まさに国家的な、これをどうしていくのかというのは国家的な緊急に対応すべき課題である、そのような認識のもとで、我が公明党の中でも少子社会対策本部というのをつくり、少子社会トータルプランというものを作成しているところでございます。

 その中で、子育てを積極的に支援していくという観点からも、この住宅政策についても、子育てというのを、そういった概念、テーマを常に意識しながら子育て支援策に資する住宅政策というものを考えていくべきだというふうにかねてより提言をしているところでございまして、今回の地域住宅交付金制度、こういったものが具体的にどのように子育て支援とすることが可能なのか、具体例をかざしてお答えをいただきたいというふうに思います。

山本政府参考人 少子高齢社会における住宅政策の中で、安心して子育てできる環境づくりというのは極めて重要な課題であると認識しております。

 今般お願いしております地域住宅計画の制度、地域住宅交付金の制度におきましても、計画の中で、子育てを支援するための施策をきちんと位置づけた上で、例えばファミリー向けの公営住宅、それから特定優良賃貸住宅の整備、それから公営住宅と併設する保育所、それからコミュニティー施設、そういったものをあわせて整備する。それから、子育て世帯にふさわしい規模の民間賃貸住宅ストックを公営住宅として生かして使う、民間の持ち家も含めて民間の住宅ストックを公営住宅として借り上げたり生かして使うといったような場合の改修に要する費用、こういったものについて地域住宅交付金を活用しまして、子育て環境の整備を支援してまいりたいと思います。

赤羽委員 今の局長の御答弁にもありましたが、この子育て支援に資する住宅政策を考えた場合、やはり、家賃負担も民間に比べて負担額が低い公的な賃貸住宅を活用するということは大変有効なことだというふうに考えておるところでございます。特に大都市部においては、職住近接で子育てがしやすい、そういった居住環境を確保する点からも、公営住宅、公的住宅への入居が促進されるのが理想的なのではないか。

 そういった観点で、我が党はかねてより言っておるわけでありますけれども、子育て世帯に対する入居基準の緩和、これを実施することによって優先入居を進めていく、こういった発想というのはぜひ取り入れていただきたい。現状、局長通達であるかと思いますが、子供が三人以上の多子世帯についてはそういった制度があるというふうに聞いておりますけれども、三人というのは、なかなか今、今の出生率を見ても三人子供を産むというのは非常に数少なくなっておりますので、こういったことも、現実に即して局長通達を出し直す等々の対応が考えられるのではないか、これが第一点であります。

 もう一点は、子供が一人ふえたら市営住宅がなかなか狭くなる、もうちょっと広い公営住宅に移りたい、こういったニーズもかなり大きいわけでありまして、子供がふえると子育ての費用が負担がふえる、だから民間にはなかなか出れない、狭いところで我慢するみたいな話というのを何とか改善できないかなと。子供がふえるたびに公営住宅の中での移転というものを円滑にしていく、こういったことも私は取り入れていくべきではないかというふうに考えておりますが、この二点について、国土交通省としての今後の取り組み方針を伺わせていただきたいと思います。

山本政府参考人 公営住宅におきまして、少子高齢社会に対応して子育てしやすい環境を整えるということ、それから、さまざまな方々が住宅に居住して交流をするというバランスのとれたコミュニティー形成を図ることが大事だと考えております。

 このために、まず優先入居の御指摘でございます。御指摘いただきましたとおり、国土交通省からの通達の中で、優先入居が適当であるという例として三人以上のお子様を抱えておられる多子世帯という例を出しております。御指摘のように、実情に即して事業主体が判断して優先入居をさせていくということも大事ですので、私どもの方で通達における例示の見直しを検討してまいりたいと思います。子供が二人いるといったような世帯も大事ですので、ぜひ検討していきたいと思います。

 それから、子供がふえて世帯が大きくなった場合に、公営住宅の中で円滑に移動できないかという御指摘ですけれども、子供のふえた世帯が狭い住宅に住んでいる、お年寄りが単身で広い住宅に住んでおられる、これは実は、我が国の持ち家も含めた住宅ストックの使い方について課題のあるところでございますけれども、公営住宅団地についても、こういった居住状況のミスマッチという問題が生じている場合がございます。

 子育て世帯を支援するという観点からも、スムーズに公営住宅の中で住みかえられるようにすることが重大な課題だと思いますので、このようなミスマッチを解消するために、まず事業主体において、入居者双方の利益につながる住みかえをお勧めする、あるいは空き家を使ってそういった住みかえを促進するといったような努力をする。そういった努力をした上で、実は、例えば単身で住んでおられる方、かつてはファミリーで住んでおられて、単身になられて広いところに住んでおられる方に対して、単身用のきちんとした住宅を用意して、どうぞ住みかえてくださいということをお願いするということに加えまして、お願いしてもなかなか規模の大きい住宅からお移りにならないような場合には、事業主体の判断によりますけれども、判断に基づいて、大きい住宅なので大きい便益を得ているという観点から、家賃を少し高く引き上げさせてもらうというようなことも講じて、きちんと必要な世帯が必要な住宅に住む、的確に公営住宅を使っていくといったようなことも考えられますので、これはよく検討して住みかえを促進する方策を進めてまいりたいと思います。

赤羽委員 ミスマッチングをどう解消するかというのは、今のストックをどう有効に使っていくかということで大変重要な課題だと思いますので、これはまたぜひ議論を続けさせていただきたいというふうに思っております。

 また、これは国の施策ではないと思いますが、それぞれの都心部、大都市部で、新婚世帯ですとか子育て世帯に対しての、これは民間住宅へのことも含めて、家賃補助をしたりとか引っ越し助成をしているというのは、結構大胆にやっているところがありまして、これは国としても奨励するような、金も出さずに口を出すなというふうに言われるかもしれませんが、そういったものをもう少し普及させていくような御努力をお願いしたいというふうに思っております。

 今、お話に出ました公営住宅のストックの有効活用、こういったお話でございます。

 子育て世帯についても公営住宅のストックを有効に活用していこうということもあると思いますが、かつて、マンションの建替え円滑化法のときに、マンションを建てかえるということが議決されてもその間移り住むところというのはまた大きな問題でありまして、こういった状況にあるとか、また、あと東京都なんかでは、自己破産をしたりとかリストラに遭った人たちが再チャレンジをするときに、住宅ぐらいは公的なところで手当てをしようというような、いわゆる期限をつけた入居制度の導入とか定期借家なんかの活用も検討されて公営住宅の有効なストック利用ということを考えていくべきだというふうに思いますが、この点についての御見解を。

山本政府参考人 実は、定期借家の制度が導入されるに際しまして、いろいろなことを検討したわけでございますけれども、まず、基本原則から申し上げますと、公営住宅は住宅に困窮する低額所得者のための賃貸住宅でございますので、入居者の住宅困窮事情に変化がない限りは引き続いて居住が継続する、安定して住んでいただくということが公営住宅の施策目的の一部でございますので、まず、原則としては期限を付して入っていただくというこの定期借家の制度はなじまないと一般論としては言えると思います。

 しかしその上で、今まさに御指摘がありましたマンション建てかえに伴って、要するに一時的にどうしても仮住居として住宅が必要である、それで初めてマンションの建てかえが前に進むというような事情、あるいは非常に若い、若年世帯で将来は自助努力で収入がふえていく、だんだん住宅困窮者ではなくなっていくということが明らかに見込まれる、けれども非常に立地のいいところの公営住宅なので出ていかれないし、しかもそこに入居したいという方も非常に多い。年数がたつに従って、入れた人と入れない人の不公平が著しくなっていくといったような特別な場合、これは入居者の個別の事情とか地域特有の事情を踏まえて、公共団体がせっかくの定期借家の制度を使って公営住宅をきちんと機能させていくということもあり得ると思います。

 今回、地域の住宅主体、みんなが相談する協議会なんかでも論議もしますし、その結果を地域住宅計画という形で公にしますので、そういったことできちんと方針を樹立した上で定期借家の枠組みを導入していくということはあり得ると思います。

赤羽委員 それでは、最後に大臣に、今後の住宅政策についてお伺いしたいわけであります。

 今回の国会でも、住宅金融公庫について、また公営住宅について、そして都市再生機構について、このいずれについても見直しを行う法案も提出されておりますし、大臣の先ほどの御答弁もありましたが、住宅政策は大きな転換点にある、今後はストックの有効な利用というものを考えていくといったことも披瀝されたわけでございます。

 そのために、私なんかは、良質なストックを形成するための努力、また中古住宅の市場を確立するとかリフォーム制度を拡大するですとか、また世代間の移り住みを、これはミスマッチングをなくしていくといったことから考えるですとかも大事だと思いますし、また、所得税法の改正で高齢者控除が廃止をされまして、そのことで公的な住宅の家賃について上がる現象が出てくる。このことについては、住宅局が三年間でしたか猶予措置をとっていただいたわけでありますが、高齢者の低所得者の方のセーフティーネットをどう構築するかということも大変いろいろな課題が多いわけでございます。

 こういったことも踏まえて、住宅基本法なんかの提出も考えられていると思いますので、その点を踏まえて、最後に、今後の住宅政策についてのお考え、北側大臣からお聞かせをいただきたいというふうに思います。

北側国務大臣 今、住宅政策の今後のあり方について論議をしている真っ最中でございます。先ほども申し上げましたが、日本の社会が人口減少社会に入ってくる、また量的には住宅は充足をされている、そういう中で今後の住宅政策をどうしていくのか。

 一つは、やはり既存の住宅ストックをいかに有効に活用するか、そこに限られた資源を使っていくということが非常に大事な視点であると思いますし、また、民間にできることはできるだけ民間にやっていただくという意味で、市場機能をできるだけ重視した、また活用した、そうした政策というのがこれからは重要であると考えております。

 ただ、一方で、例えば本格的な高齢社会は本当にこれからやってくるわけでございまして、そういう高齢社会への対応が望まれているわけでございます。住宅におきましても、そうした高齢者の方々が生活しやすい、さまざまなニーズに対応できる高齢者住宅もしっかり整備をしていく必要があるわけでございますし、また、低所得者等の方々を初めとして、住宅困窮者の方々に対するセーフティーネットというのはこれからも必要です。また、その住宅困窮者というのは必ずしも所得の少ない方だけではなくて、今さまざまなニーズがございます。

 先ほど子育て支援の話がございましたが、本当に子供さんを安心して育てられる、そういうふうな住環境、住宅というのはやはり望まれているわけでございまして、そうした、市場機能だけでは任せられない部分というのはやはりあるわけでございます。そういった、市場機能をきちんと補完し、そしてまた市場の役割を誘導していくような役割というのはやはり必要なわけでございまして、こうした住宅セーフティーネットの機能はしっかりこれからも強化をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 公明党も、かつて昭和四十四年から七回にわたりまして住宅基本法というのを国会に提出もしております。今、党内にも住宅のプロジェクトチームをつくっておりますので、ぜひ、政府・与党で望ましい住宅基本法ができるように頑張ってまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山口(泰)委員長代理 和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 私の場合には、本日議題となっている法案の中でも一つのテーマに絞らせていただきたいと思います。もう通告済みですので、大臣の方にもお話が行っているかと思います。

 私の方からは、きょう幸いにして傍聴の方もたくさんいらっしゃいますので、今まで、問題となります住宅金融公庫それから都市再生機構、この二つの組織がいろいろ業務を行われてきた中で、どういったところがどういうふうによかったのか、悪かったのか、その評価を含めてお聞きしていきたいと思います。

 まず、傍聴の方もいらっしゃるので、この仕組みを若干私の方から述べさせていただきたいと思います。

 この二つの組織は、国民の皆様方が郵便貯金等をお預けになられて、それが原資となって、財政投融資のために使われる資金となってその二つの公庫に貸し付けられておった、公庫、公団ですね。そのお金を使っていろいろな業務をやられて、それに財政投融資資金を借りたわけですから、借りたものは返さなければいけない。しかも金融業務として借りたわけですから、金利としてついているものを、金利をしっかりとつけた上でお支払いしなければいけない。そういった仕組みの中でのお話でございます。

 今般この法律案の中に含まれております言葉で言いますと、それぞれの組織が行ってきた勘定の中で、なかなか難しい問題がいろいろあって、全部が全部、今申し上げた元金と金利の部分を返せないから、その金利の部分を差っ引いて元金だけをお返しする、それを認めようではないかという法案の内容となっております。これを用語的に言いますと、財政投融資への補償金なしの繰り上げ償還ということになっているかと思います。この点までは議員各位もよく御存じだと思います。

 そこで、補償金を取らないで財政投融資の資金会計の中に借金を返済するということについてどう考えるかですが、もともとそのお金が国民の皆様から来ているだけに、そのお金を借りて返すときに金利の部分がなくていいということになりますと、国民の皆様方にお返しする金利の部分もどこから来るのかわからなくなってしまいます。そう考えていきますと、この仕組みをとろうとすれば、相当の説明を行った上で国民の皆様方の理解を得なければやってはならないことだと考えます。

 そういった意味で、今までそれぞれの組織におかれて、今のような法案をつくらなければいけない、そういう経緯に至ったところに何がしかの責任があるのではないかと考えるわけでございます。

 そこで、まず、両組織からきょう代表者の方にいらっしゃっていただいていると思います。今回問題となっておりますのは、都市再生機構のニュータウン事業を中心とした相当な欠損金、それから住宅金融公庫が融資業務を行って、利子が、財政投融資から借りたものの逆ざやで貸していたがために発生した損失、もしくは不良債権化したものの回収不能部分、こういったものが当たっていると思います。

 まず、組織の代表者の方々から、この業務においてどういったことが原因でどれぐらいのロスが発生して、これから法案の中で認められた場合にどれだけロスを国民の税金の集合体である一般会計から補給することになるのか、それぞれ御説明いただけますでしょうか。まず都市再生機構、お願いいたします。

    〔山口(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

伴参考人 お答え申し上げます。

 都市再生機構の方はニュータウン事業でございますけれども、今回、機構移行に当たりまして時価評価をさせていただきまして、公団時代には五兆九千三百億円の資産でございましたけれども、それが約半分に目減りしたということでございます。

 我々の実施しておりますニュータウン事業というのは、御案内のとおりでございますけれども、住宅宅地供給対策とかあるいは総合経済対策といったような、いろいろなその時々の社会情勢の中で国の施策上大いに期待されて着手したものや、地方公共団体の強い要請にこたえて実施したものもございまして、一方、これらの事業は、施行者として利益を上げられる仕組みにはなっておらないといったような性格もございます。地方公共団体との調整とか、多数の地権者との合意形成を図りながら実施していくという業務の特殊性から、臨機応変あるいは柔軟な計画変更がなかなか困難な面がございます。

 しかしながら、バブル崩壊後の社会経済情勢、厳しい変化があったわけでございますので、我々もいろいろ工夫をいたしまして、用地買収を伴わない事業に着手する等々、先行投資を削減して事業リスクの回避策をいろいろ講じましたり、あるいは新規着手を行わないようにいたしましたりしまして、地方公共団体や地権者の了解を得る必要があるわけでございますけれども、協議、調整を進めまして、既に二十一地区におきまして事業中止あるいは区域縮小等の抜本的な見直しを進めて、そういう努力をやってきております。

 その結果でございますけれども、機構として、今回、時価評価の結果、大変厳しい額が出ているわけでございますので、我々もさらに一段の努力として、販売収入の確保とかあるいは事業コストの削減等々の事業全般を通じた経営改善への取り組みをしっかりやりたいと思っております。

 一方、繰り上げ償還によって財務基盤の強化を図るという、事業資産の処分を促進しながら欠損を回収するという経営安定化の道を抱いたわけでございますので、我々は、そういうことで経営者の責めとして、こういう自己努力を最大にやりながら、経営の安定化を図っていきたいというふうに思っております。

望月政府参考人 先生からちょっと幅広の御質問をいただいたわけですが、大きく言って、いわゆる任意繰り上げ償還に伴う公庫のロス、もう一つは債務者の延滞によって発生するロス、この二点というふうに受けとめさせていただいて、御答弁させていただきます。

 まず、任意繰り上げ償還の問題でございますが、はっきり言いまして、住宅金融公庫は昭和二十五年に創立されているわけでございますけれども、法文の第一条に書いてありますように、国民大衆の持ち家を支援するための金融を行うということで、あくまでも庶民金融として構築されているものと思っています。

 そういった中で、言うなれば、ユーザーである国民の皆さん方にはできるだけ、可能な限り、とにかく余計な御負担をいただかないというのがどうも法の精神らしくて、端的に言いまして、今のお話の繰り上げ償還というものについても、俗に言う逸失利益をいただくという仕組みになっておりません。端的に言って、ほかの政府系機関ではそういうのもございますけれども、住宅金融公庫の場合は実費手数料以外はだめだというふうに決まっておりまして、そんなことから、端的に言って、ユーザーである国民の皆さんから繰り上げ償還をいただく場合には、私ども、逸失利益はもらわなくて、財政投融資資金にお返しするときには利息相当分をおつけして返す、こういう妙な構造になっているということが現実でございます。

 そういった中で、特に申し上げたいことは、この任意繰り上げ償還というものでございますが、当然のように、三十年、三十五年の長きにわたる住宅ローンでございますので、御利用いただいている皆さんからすれば、やれ家を引っ越すとかあるいは退職金でお払いするとか、さまざまな事情がございます。それを率直にお受けとめするのは当たり前でございましてというふうになっていまして、そういった意味での自然的な、我々が経営を考える上でのみ込んでいる繰り上げ償還というのは当然ございます。

 ところが、それとは別に、特に平成六年ころから、七年ころからと言ったらいいでしょうか、急速に任意繰り上げ償還がふえてきているという状況がございます。これは、端的に言いまして、民間金融機関の住宅ローンが非常に活性化したということが一つございますし、その背景には、低金利時代でもって過去に公庫が御融資申し上げた金利が割高であるということからして、民間に借りかえようという方々が急速にふえて、特に平成七年度には、数字を言うのも本当にびっくりするくらいですが、一年間で十兆円返したときがございます。以来、十兆円が七兆円になり等々していますが。

 改めてまた、平成十三年度の年から、言うなれば、政府が国を挙げて特殊法人の抜本改革ということを打ち上げたときからでございますけれども、特にその中で、私ども公庫は、当時でいえば五年以内に廃止するということをお決めいただきました。それと同時に民間の住宅ローンが非常に活況を呈するということで、言葉はちょっと言い過ぎかもしれませんが、民間に借りかえよう、民間はまた住宅ローンが非常に活性化するという中で借りかえようという方々が急増いたしまして、そこでまた、毎年七兆円前後の返還が出ている、こういう状況になっておる、これが公庫の財務をかなり傷めたということがございます。

 それからもう一つ、延滞問題でございますが、これはもう御高承のとおり、我が国の経済環境が非常に厳しい中で、はっきり言いまして、延滞者がふえております。私ども、延滞者がふえている現実に対して何ができるかということでございますが、やはり冒頭申しましたような公庫の金融の性格、政策機関という立場からすると、単純にそれを強権的に処理するというのはいかがなものかというのは正直言ってございまして、もちろん、どこかでは見きわめをする必要がございますけれども、ぎりぎりの御相談に応じながら、後をフォローする、こういう取り組みをさせていただいています。

 とりわけ平成十年度からは、我が国の緊急経済対策の中でもお決めいただいたように、公庫の融資については、とにかくできるだけ債務者の事情を受けとめて、丁寧な条件変更等をやりなさいということが決まっていまして、そういった中で、そういうものも含めますと、いずれにしましても、本来的な意味での、破綻してしまった方はもとよりでございますが、条件変更等も含めて、はっきり申して、不良債権と言っていいんでしょうか、三カ月以上延滞等々のそういう数字が最近ふえている、こういう状況でございます。

 これについては、私ども、現場での最大の取り組みというものはやらせていただいています。そういった中ではございますが、やはり限界が見えているのも事実でありますということだけ申し上げさせていただきます。

和田委員 傍聴の皆様もお聞きになっておられますので、端的にお答えいただければと思いますが、私がお聞きしたのは、どれぐらいのロスが発生して、これからどれくらい一般会計から穴埋めしなければいけないのかをお聞きしております。お答えください。

望月政府参考人 これは法案審議の大前提になる部分だと思いますが、端的に言いまして、今現在の公庫が抱えています債権、五十兆円余りでございますが、そういった中で、もろもろのデフォルトもありますし、それから政策としてやっていた金利差の補給金問題あるいは今の任繰り問題等々を対処いたしまして、今後を見通したときに、必要なロスといいましょうか、国で御面倒を見ていただく必要があるものが大体二兆ないし三兆円、こういうふうに推計されております。

 もちろん、これは金利動向等によりまして非常に状況が変わってまいりますので、しかも、それは昭和五十二年度までの話でございます。現在、それが発生しているという意味では決してありませんので、御理解いただきたいと思いますが、今そういった計算を踏まえて、もろもろの施策を御提案させていただいているということです。

伴参考人 私どもの方の繰り上げ償還によりまして、財投側に、逸失利益というんでしょうか、利息を払わないわけではないんですが、一たん全額償却することによって、将来、本来であれば得た金利が得られるなら、その合計額は七千億というふうに聞いております。

和田委員 住宅金融公庫の方から御答弁いただいた二兆円から三兆円、国民の皆様方がこの答弁をお聞きになられて、どのようにお感じになるでしょうかね。すなわち、国民の税金を埋めてくれという法案であるにもかかわらず、そのロスの額を確定させた上でお願いされるのが普通だと思いますが、いかがですか。

望月政府参考人 ちょっと言葉足らずだったかもしれませんが、要するに、私どものそういう、今先生の御指摘のお金の内容というものは、多くの部分が金利差の補給金となります。公庫は、今まで調達したお金、財投からお借りした金を皆さんにお貸しする、そのときに逆ざやで融資している、それを埋めなきゃならぬというのがまず一つあります。

 それからもう一つは、先ほど申しましたような繰り上げ償還が非常に出てきて、その逆ざやがさらに大きくなっている、この部分、あるいは、延滞によって生じている債権の傷み、こういったもの等々を全部総合したときに、昭和五十二年度というのは、実は独立行政法人に移行させていただいた後の姿ですけれども、第一期が終わります二十三年度までに何とか処理していただければということでいるわけですが、ともかく五十二年度という、三十五年間融資している期間が最終は五十二年度へかかるものですから、そういったものが、累計するとそう見込まれるということでございます。

 これは、本当に申し上げさせていただきますのは、金融と金利動向によって非常に動いてしまうんですね。現在発生しているデフォルトが幾らかというのははっきりしていますけれども、今後に発生するものも含めて、今申し上げさせていただいていますということでございます。

和田委員 まだまだ、国民の御納得いただける答弁とはとても思えません。

 私の方が事前にお伺いしている資料でいいますと、まず二つ要素がありましたが、いわゆる将来回収不能となり得る金額、これだけでも三兆円ほどございますね。それから、利子の逆ざやによって生じるであろうお金、これが今、はっきりおっしゃれないような状態なんでしょうか。

 すなわち、どういったところは取るべきお金であったかということを勘定に入れないと、もっと言えば、これから国民の皆様方に税金で穴埋めしてくれとお願いされる金額が、最高値では幾らです、これが全部回収できれば、全部利子が払っていただければ幾らですというぐらいは言えるんじゃないでしょうか。いかがですか。

望月政府参考人 何といいましょうか、積算の根拠というものを明確にせいという御質問だと思いますけれども、私ども、決していいかげんな積算をしているわけではございませんで、くどいようですけれども、昭和五十二年度までにどれだけの、先生のお言葉で言うと損失が出ているか、国からの御援助をいただかなならぬかという、マックスの数字で言うとどのくらいかということは、先ほど言ったように、二兆ないし三兆円という数字を申し上げているわけです。(和田委員「二兆ないし三兆」と呼ぶ)二兆ないし三兆円です。

 それはどういうことかといいますと、本当に金利が動きますと、これは非常に延滞の状況も違うし、私ども、再調達のコストも変わってくるし、金利を今の状況で固定すればという仮説計算はできるかもしれませんけれども、それは余り意味がないことではないかと思っておりまして、そういった中での一つの前提がある数字であるということを御理解いただきたいと思います。

和田委員 傍聴の方も委員の方々もぜひお聞きいただければと思いますが、今、法案の中に上がっているのは、既往債権を特別勘定に移行して、その部分における損失を穴埋めするために一般会計から入れるというお話ですよね。

 そうすると、既往債権はすべて元本が決まっていて、金利も決まっているわけですよね。そうすると、幾らロスが出るのかというのは、最大値と最小値ははかれるんじゃないですか。いかがですか。

望月政府参考人 ちょっとしつこくて恐縮なんですけれども、あくまでも二兆から三兆円というのは金利動向で非常に変わるということを御理解いただきたいと思います。

 それから、ではどういうものが考えられるかということだけをちょっと申し上げさせていただきますけれども、これははっきり言いまして、私ども、過去十年間のいわば長期国債金利の変動の範囲内で今後の金利を想定しまして、最も損失が大きくなるという金利シナリオを描いたときが三兆円であるというふうに申しているわけです。

 その三兆円というのは何かというと、先ほど来申していますように、金利差補給金といいます、金利差の穴埋めですね。特に、その中には、繰り上げ償還によって拡大した分も含めまして、これが大体一・八兆円くらいと見ております。それから、保証協会に実は保証していただいている債権がほぼ九九%あるわけですけれども、この保証協会の方で実は債権が回収できないという将来損失分、将来ですよ、将来まで含めて、昭和五十二年度まで含めての分が大体マックス〇・九兆円である。これも実は、地価の動向等々が今後どうなるかとか、先ほど来言っていますように、金利動向がどうなるか等々によって動きます、最終的にどれだけ回収できるかというのが当然前提になりますので。

 そういった意味で、私どもは、かなり厳し目に見て〇・九兆円であるということ等でございまして、その他のもろもろのものを加えまして三兆円ということを申しておるわけです。

和田委員 これ以上押し問答をしてもしようがないと思います。ぜひ皆様方に御理解いただきたいのは、数兆円規模でとにかく国税を埋めるという仕組みであることだけは御理解いただきたいと思います。

 ここから先、少し大臣と議論させていただきたいと思います。

 大臣は、きのうまでに、この法案と、それからもう既に支援機構法案もきのう代表質問を受けていただきましたが、その答弁の中で、一つには、住宅金融公庫が補償金なしの繰り上げ弁済を受けてきた経緯として、一つには民間金融機関の方がそのような習慣をとっていなかった、もう一つには政策的判断に基づいて補償金を取らない方がよいと思ったという、二点を御説明になったと思います。それで間違いございませんね。

 この二つについて、私自身もいろいろ考えてみましたけれども、本当にそうだろうかというところをもう一度確認させていただければと思いますが、住宅金融公庫がこの補償金なしの任意繰り上げ弁済を認めていくに当たってどのような経緯があったか、大臣の方は御報告を受けていらっしゃいますでしょうか。

 それから、もう一つ、政策的判断ということでおっしゃったのは、いわゆる借金を返済しようとする人が、返済しようという意欲があるんだから、あとの金利部分は減免してもいいやと、それが住宅政策上必要だというふうに判断されたようにお聞きしましたが、なぜ住宅政策上これが必要なのか、私にはまだ理解ができておりません。

 この二点を、大臣、御説明いただけますでしょうか。

北側国務大臣 和田委員も長年大蔵省にいらっしゃいましたので、財政をお預かりでございましたから、住宅金融公庫のことは一番よく御承知のことと思います、その経過につきましては。

 住宅金融公庫は、民間の金融機関ではございません。これまで、先ほど来議論が出ておりますように、戦後、住宅が非常に不足している中で、持ち家を持っていただこうということで、社会政策、公的な住宅政策という観点で住宅金融という大きな役割を果たしてきたのが住宅金融公庫であることは、委員もよく御承知のとおりでございます。全く民間の金融機関ではありません。そこのところは、委員が一番よく御承知のはずであると思うわけでございます。

 今問題になっておりますのは、きのうの本会議での答弁の話をおっしゃいました。要するに、借りている方が一括で返済をする、一括で返済するときに、委員はもしかすると補償金を取るべきじゃないかという御主張なのかもしれませんけれども、果たしてそういうことが住宅金融公庫の公的な性格からしてふさわしいのか、また、住宅政策として本当にそれでいいのかということだと思うんですよ。

 それで、まず一点目が、民間金融機関が、私はそういうことは余りやっていませんよということを申し上げたんですけれども、これは民間金融機関がこういう任意繰り上げ返済、借りている側が任意繰り上げ返済をしたいと言ってきた場合に、民間金融機関がどういう対応をしているかといいますと、私どもが調べた範囲では、そういう補償金を、要するに補償金というのは将来の得べかりし利益ですね、その補償金を徴収する事例というのは見当たりません。任意繰り上げ返済に当たって、三万から五万程度の手数料を取るというのは一般的だというふうに聞いておりますが、得べかりし利益となりましたら、これは大変な金額、けたが全く違うような大きな金額を一括返済をする方に、民間金融機関でさえ取っていませんよということを申し上げたんです。

 二点目に、先ほども議論が出ておりましたが、住宅金融公庫法、これは、住宅金融公庫というのは昭和二十五年につくられた制度でございますけれども、住宅金融公庫法の二十一条の四に「公庫から貸付けを受けた者は、貸付金の弁済期日が到来する前に、貸付金額の全部又は一部の償還をすることができる。」と、制度の出発点から、全部償還できるんですよ、一括償還できるんですよ、こういう制度になっていたんです。

 だから、私から考えますと、こういう制度にするならば、本来は財投への返済も一括返済できるように当初からしなければ、住宅金融公庫の財務が悪くなるのは当たり前なんです。そうじゃないでしょうかね。それで、現に、毎年毎年これまでは、そうでしょう、毎年毎年、住宅金融公庫に対して政府の方から、そういう理由もあって、補給金を毎年の予算として積んできていただいたわけでございまして、ですから、この公庫法に基づきまして任意繰り上げ返済を自由に行うことを設立当初から認めてきたわけでございます。

 なぜそういうふうにしたかといったら、住宅金融公庫の役割というのが、当時の住宅事情を考えても、金利というのは変動しますから、長期固定の住宅ローンの供給によって、国民の方々の生活設計に即した計画的な住宅取得を支援していこうというところにねらいがあるわけでございまして、現に住みかえだとか転勤なんかの理由で繰り上げ返済もある中で、ペナルティーとして補償金を徴収すること、こういう制度を、任意繰り上げ返済をしようとするローン利用者に負担を課してしまいましたら、そういうことが最初からわかっていましたら、住宅金融公庫なんか使わなくなってしまいますよ。それなら、固定の金利だという意味が全然ないわけですから、長期固定の金利であるということが、そういう制度が、意味がなくなってしまうわけでございまして、制度上、出発点からそういう仕組みであった。

 なぜそういう仕組みであったかといえば、冒頭申し上げたように、これは住宅政策、社会政策として、政府がそういうものだというふうにしてきたわけでございます。

 そういう中で、今回住宅金融公庫を廃止する、新たな独法を設立する、新たな役割を担っていただくという中で、こういうのをきちんと清算をするためにも、新しいスタートをしていただくためにも、任意繰り上げ返済を、一括にして繰り上げ返済をするということは必要であるというふうに思います。

和田委員 同僚の中川議員に時間を少しいただけるので、もう少しやらせてください。

 大臣の御答弁、それぞれずっと聞いてまいりまして、熱心に御説明いただきましたが、私から申し上げれば、幾つかの矛盾点がございます。

 まず、住宅金融公庫法がそのような一括弁済を認めた法律として成り立っているのは私もよく存じております。しかし、そこには、補償金を取らずに一括弁済をさせてよいとは書いていないはずです。それをどういうふうにお考えになるんでしょうか。

 それから、まず、住宅金融公庫が設立された当時、そのときから財政投融資をお借りになるのであれば、財政投融資の金利をどのようにお支払いになるつもりで設立されたのか。最初から、さっき御説明のあったように、一般会計からの補給金を補って、その利子差部分だとか収支差分だとかいろいろ解釈ございますが、一般会計からもともと補給金をもらう仕組みとして成り立っていたのか。本当に政府のその解釈はそうでいらっしゃいますか。

 では、財務副大臣、いかがでいらっしゃいますか。財務副大臣にお願いしています。

田野瀬副大臣 繰り上げ償還を認めてきた理由につきましては、ただいま国土交通大臣が申された解釈と私どもも一にするところでございます。ただ、委員がおっしゃるような問題意識も確かにあるわけでございまして、そんなことで、このたびの法案の改正ということになったと理解するわけでございます。

 そんなことで、新法人は補給金には頼らない自立的経営を確立することが肝要であるということで、この法案は、新たな法人の業務は、従来の直接融資からは大幅に撤退し、繰り上げ返済に伴うリスクをみずから負わない証券化支援業務を柱とする、もう私から説明するまでもないと思うんですが。それから、既往貸し付けに係る財政負担については、組織、業務の効率化など最大限の自助努力や、それを前提とした財政融資資金への繰り上げ償還の活用により、補給金所要額を大幅に圧縮した上で早期の処理を進めて、新法人の第一期中期計画期間中に補給金を廃止する、こういうふうに改善していこうという法案である、このように理解しております。

和田委員 財務副大臣が国土交通大臣と住宅金融公庫が設立された当時の財政投融資の貸し方、借り方について意識が一致しているというふうに御答弁なさいました。そうすると、最初から住宅金融公庫はなぜ財政投融資を借りなきゃいけないんでしょうか。もともとお借りしたお金をお返しするという仕組みの中で生きてこられる組織でないんだとすれば、ほかのお金を引っ張ってこられる方が適切ではないんでしょうか。

 国民のお金をお預かりになって、財政融資資金の方から皆さんの方にお貸しになる、そのときには原則やはり金利はつけて返してもらおう、その業務を行われる際にもその金利が稼げるようにしてくれよという趣旨で財政投融資をお貸しになっているのではないのでしょうか。財務副大臣、いかがでしょうか。

田野瀬副大臣 ただいまの御質問につきましては、政府参考人が答弁を用意しておりますので、それにかわらせていただいてよろしいでしょうか。

浜田政府参考人 失礼いたします。

 ただいまの先生の御指摘は、財政投融資を実施するに当たって、一般会計ないし特別会計からの利子補給あるいは収支差補給を予定しているということが、本来の財政投融資の姿としていかがかというようなことかと、一般論として、そういう理解をしておりますけれども、私ども、財政投融資というものが、有償の、つまり金利をつけて返していただく前提のそういう手段を用いた財政政策であるということは、先生まさに御指摘のとおりでございます。

 したがいまして、もともと国民の皆様から、かつては郵便貯金、現在では財投債という国債の形で、まさに国の信用でお金を最も低利で集めさせていただいて、それを必要な各財投機関の事業にお貸しするという前提でございますので、本来であればそれだけで、事業活動を低利の資金でできるということが既にもう財政政策としてあり得るわけですけれども、さらに国民の皆様に手数料なりあるいは利用料なり、この場合でいいますと住宅公庫から皆様がお借りするローンの金利をさらに低くする、そこに、一般会計なり特別会計の最終的には国民の負う負担をそこにあわせて活用する、こういう手段も、ほかにも、この住宅公庫以外にもさまざまな形で活用させていただいているところでございますので、先ほどの財務副大臣の答弁はそういうことを申し上げたということでございます。

和田委員 私も中におりましたので、苦しい御答弁であることはよく理解します。しかし、いわゆる本当に借金をされている機関の自覚が余りにも私は薄いのではないかと思ったので、あえてお聞きした次第です。今回問題となっておられる両組織のそれぞれのトップの方々には、自分たちが使っている資金が国民の預けられたお金で成り立っているんだという自覚が本当におありになったんでしょうか。

 そこを考えれば、先ほど大臣は、住宅政策上、補償金を取らないことの方が正当性があるという御説明をされましたが、私は、あえて問題提起させていただければ、補償金を取らずして住宅金融公庫が一括弁済を受けることは、一面においては国民の皆様に著しい不利益を与えているのではないかというふうに考えます。

 その理由は、まず、住宅を建てようと思ってあらゆる方々が住宅金融公庫にいらっしゃるでしょう。そして、その時々に応じて金利情勢は違いますが、その金利で少なくともその方は納得して借り入れたはずです。それを、どこかの時点で、その一括弁済、補償金をなくしての一括弁済、いわゆる元金部分が返せる余裕がある人が返す、その仕組みを住宅金融公庫としておとりになるということは、資金に余裕のある人に優しい制度であって、ぎりぎりの生活でその金利と元本の負担を何とか返していっている人に対しては逆につらいことになっていませんでしょうか。大臣は、この点についてどうお考えになりますでしょうか。

北側国務大臣 いや、私、逆に委員にお聞きしたいんですけれども、住宅金融公庫を利用して住宅をつくられた、そしてローンを住宅金融公庫に毎月返済されている、そういう方々が、さまざまな事情によって一括返済をしたいというときに、それはだめですよ、補償金を、何百万という補償金をあなた払ってもらわないと、そんな一括返済なんかできませんよということが本当にいいのかどうか。これまでの住宅政策から考えて、住宅金融公庫が担ってきた役割から考えて、そういうことが本当にいいのかどうか。私は、それはいいとはとても思えません。

和田委員 それは、大臣がおっしゃっている任意一括弁済というものをその個人が手段として選択される背景がどのようなものであるかを考えに入れられた御発言でしょうか。

 いわゆる、その方は、よくありがちなのは、民間のローンに乗りかえるために、その借りかえ資金を民間にお願いして、その部分一括返済をする。しかも、何百万というふうにおっしゃいましたが、確かに何百万になる計算はありますですね。しかし、その方々はもともと、住宅を建設するときに借金をする際、その金利を許容されているわけですよね。その約定どおり返していただければそれで困らないわけなんですよね。

 その補償金が取れないことによって国費の中には穴があく。そして、その元金が返ってきた部分で再融資に回す。そうすれば、もともと取れたであろう資金から目減りしていますので、その分だけ資金融資枠が総体としては減っている、そのような現象になっていると思いますが、いかがでしょうか。

北側国務大臣 委員に私も逆にまたお聞きしたいんですけれども、急激な金利リスク、金利差、これを利用者の方々に負わせていいんでしょうか。

 あのバブルの時代は、大変な金利、高金利でございました。今は超低金利、信じられないような超低金利。あの高金利、バブルの時代に、仮に法定金利が五・五、それで実際はそれ以上の金利、それを、バブルが崩壊して超低金利になって、この金利リスクを利用者の方々に、それは、あなた、最初からわかっていたんでしょうということで負わせてしまってよかったんでしょうか、住宅金融公庫として。私は、やはりそれはそうじゃないんじゃないかと思いますよ。

和田委員 ここは判断の問題として分かれるところですが、住宅を建てられる人には、それだけの金利の減免をどの制度にしろ担保するということであれば、例えば、その時代に生きてこられた中小企業経営者にはどのようなローンが組まれたんでしょうか。そういった中に穴埋めする措置が全部あったとお考えでしょうか。

 そう考えたら、住宅を建設する人とその当時同じ条件下で中小企業を経営する人との間に差が出ているのではありませんか。

北側国務大臣 だから、恐らく委員は、財政の健全化ということを、それをまずがあんと中心に置かれてお考えになられていらっしゃるんだと思うんですよ。

 住宅金融公庫というのは、昭和二十五年に設立以来、当時も住宅が、非常に貧しい住宅、また数も少ない、そういう中で、社会政策、住宅政策として、住宅をできるだけ国民の方々に持っていただくために、長期固定の低利のそういう金利で住宅融資をして、住宅を持ってもらいましょう、こういうことで昭和二十五年からやってきているわけです。今突然やり始めたわけでも何でもありません。今からもう五十五年も前からやっている制度なわけですよ。それは、ずっとこうした利用者の方々の一括返還につきましては認めてきたんです、補償金も取らずに。それを、こういう金利差が急に出てきた時代になって、やめましたというわけには、これはいきません。そうだと思いませんでしょうか。

和田委員 金利が上下するのは大臣のおっしゃるとおりですが、この住宅金融公庫については、長期固定の融資ということで皆様方が資金をお借りになっておられます。

 そうだとすれば、その時々の景気情勢の中で、その固定の金利が移動するのは、皆様方が制度として許容していらっしゃるんじゃないでしょうか。その五・五%でお借りになられたのが七%、八%になるのであれば別ですが、それから先、数年たったときに三%の金利に落ちたからといって、五・五%で借りた方が、おれの損はどうしてくれるんだというふうにおっしゃるのであれば、ここは金融の世界ではないのではないでしょうか。

 そこは、その部分が大変なのであれば、もともとそういう時代には、財政融資資金を使った融資ではなくて、皆様方に恩恵としてきちっと裨益が及ぶような説明をした上で、無利子の資金を使われるべきじゃないでしょうか。

北側国務大臣 ですから、先ほど来申し上げておりますとおり、社会政策としての住宅政策として住宅金融公庫の役割は果たされてきたわけです。私は大きな役割を果たしてきたと思いますよ。そこのところ、だから、これまでも毎年毎年予算の中で、委員も一番よく御承知のとおり、毎年の予算編成の中で、仮にそういうふうな損益差がある場合には、補給金として一般予算から、毎年の予算で計上して、税金を使ってこの補給金を算出してきたわけでございます。

 ですから、今回、住宅金融公庫というのは廃止をする、そして、全く従来の役割、直接金融はもう原則としてしない、そして証券化業務をしっかり果たしていく、こういう役割が大きく転換する中で、これまでの毎年毎年やってきたこういう補給金を今回一括償還をすることによってやるということでございまして、それは今までやってきたことと何ら矛盾するわけではないわけでございます。社会政策上、住宅政策上やってきたわけでございまして、これを一般予算から使ったからといって、それは全然おかしいことではない。これまでやってきたことと何ら矛盾することではないと思う。

 ただし、多分、委員の一番おっしゃりたい趣旨は、こういう税金を活用するわけだから、当然、スリムになってもらわないといけませんよ、住宅金融公庫自身スリムになって、コストが縮小するようにやってもらわないとだめだというのはおっしゃっているとおりでございまして、そうした努力は、住宅金融公庫はこれからしっかりやってもらわないといけないと思っております。

和田委員 そろそろいただいた時間も尽きてまいりますので、また次に支援機構法のときにもいろいろな議論になるかと思います。

 今大臣のおっしゃった、政策的に社会政策上それを推進してきたんだという政府の判断は、それはそれで受けとめましょう。しかし、それが本当に正しかったのかという意味においては、私は根本的な疑問を抱いています。ですから、その昭和二十何年にさかのぼられましたけれども、そのときからもともとそれだけ確固たる信念がおありになったのであれば、一般会計からの補給金をきっちりとそういったものに使うのであるということを予算上も制度上もお示しになって進むべきであったのではないかというふうに考えます。

 最後に、これだけの大きな資金を一般会計からつぎ込むことになりますので、両組織の経営には、本当にこの機を境に改善が見られなくてはいけません。そういった意味で、両組織の経営改善計画というのが、いただいた資料によりますと、財政投融資の分科会上、要件の一つというふうに言われております。

 私は、ここまで国税を使うスキームの話であれば、もともと審議会でオーソライズされた要件にはめてこの計画を立てておりますということでは非常に弱いと思っておりまして、以前に、数年前に金融機関が倒産しかかったときに公的資金をつぎ込むときには、もっともっと厳しい経営改善計画を立てたと思います。そういった意味で、この都市再生機構なり住宅金融公庫なり、今考えておられる経営改善計画の中にどれだけ国民の皆様方に理解していただけるような内容があるのか、お聞きしたいと思います。これはそれぞれお願いします。

伴参考人 財投資金の繰り上げ償還措置をしていただく以上、我々は最大のいろいろな意味の自己努力をしたいと思っておりまして、経営改善計画もきちっと決めてそれを着実に実施したいというふうに思っております。

 特に、業務運営の中で、やはりキャッシュフローを確保するというようなことで、まず、販売収入の確保とかあるいは事業コストの削減というようなことをやりまして、事業全般を通じた経営改善努力をしたいということがございます。また、人件費等の一般管理費の削減につきましては、従来一五%削減すると言っておりましたけれども、これを二〇%にするとか、大幅な一般管理費の削減努力をしたいというようなことを思っております。

 したがいまして、今回の措置によって、我々が受ける恩恵に、その前提といたしまして、自己努力と言われておりますので、そういう最大限の努力をしてまいりたいというふうに思っております。

望月政府参考人 先ほど来の委員の御指摘等々も踏まえながら、今般の国会に別途、住宅金融支援機構法を御審議いただいていると理解していますが、まず、これがまさしく我々の抜本的改革の最たるものと思っております。

 それは、具体的には、業務を徹底的に見直すということでございまして、言うなれば、一つには、直接融資はもう基本的にやらないということが一点ございます。

 同時にまた、先ほど来出ていますような既往債権の管理の問題、四百万件以上、五十数兆円に及ぶ債権管理をしっかりやっていかなければなりませんが、それについては勘定を区分して、これについては、透明性の高い格好でもろもろの財政負担問題を、今般御審議いただいている法案の内容も含めて、そういった道筋で処理いただくという中で、過去分と新規分をしっかりと分けて取り組んでいくということは言うまでもありません。

 同時に、私どもの組織管理、組織運営のあり方としても、組織、定員のあり方、これを全面的に、抜本的に見直していくということも当然の努めとして受けとめております。

 そういったことで、先般の業務改善計画では、私ども、独立行政法人化以降は、十九年度からを予定させていただいているわけでございますが、その前、十七年度、十八年度でも、既に定員の削減、一般管理費の削減、もっと言うと、俸給表の切り下げ等々を力強く着実にやっていきたいし、また、十九年度以降、支援機構に移行させていただいた暁には、その一期期間中である二十三年度に向けて、また新しい、経営の自立性の高い、見通しを持ったさらなる改善努力というものに全力を投入していきたいという思いでございます。

 そういった方針で今後業務運営に邁進していくというのが基本でございます。

和田委員 最後に、北側大臣の御感想をいただければと思います。

 今、私は、それぞれの組織のトップの方から、経営改善計画の内容を少しでも、せっかく傍聴者の方々もたくさんいらっしゃいますので、具体的にここまで血を流す用意がありますというようなコメントをいただけるのかなと思ってお聞きしておりましたが、まだまだ具体的な内容を定めるにも至っていないのか、定まっているけれどもおっしゃりたくないのか、わかりません。

 しかし、ここから先、国土交通大臣にはぜひとも指導力を発揮していただいて、これらの組織が本当に経営改善努力を精いっぱいやったんだという実績を示せるような指導を行っていただきたいと思います。

 これから先、独立行政法人化する住宅金融公庫、それから業務を切り離していく都市再生機構、こういったものがそれぞれ業務をスリム化するのであれば、人員も削減できるんでしょう。しかし、もっと言えば、トップの方々の数も少なくていいはずです。そういったところもきっちり見ていただきたいと思いますが、最後に、国土交通大臣にいただけますでしょうか。

北側国務大臣 都市再生機構はもう既に独立行政法人として今機能しております。そして、住宅金融公庫も廃止をされまして、独立行政法人に平成十九年からなるわけでございます。独立行政法人になるということは、これは自立的な経営をしてもらわないといけない。独立行政法人でございます。

 そういう意味で、これから、今機構もそして住宅金融公庫も過渡期だと思います。この過渡期の中で、今委員のおっしゃったように、組織、業務の効率化をこれは最大限やってもらわないといけない、努力をしてもらわないといけないと思っております。

和田委員 終わります。ありがとうございました。

橘委員長 中川治君。

中川(治)委員 理事長、帰られたんですね。時間が少し短くなりましたので、公団運営等のことについてまで話がいかないかなと思います。ですから、忘れないように先に申し上げておきますけれども、都市再生機構、理事の方が二人来られています。理事長がいてはったらついでに言うておこうと思っていたんですが、今、最大限の努力をする、千人近い人員削減に取り組んでおられるというふうに聞いております。

 私は、この間、おととい、道路公団の関係で質問をさせていただきました。そうしたら、御存命の元OB約三千六百人中、高齢で仕事についておられないという方が約三分の一、千二、三百人おられました。残り二千二、三百人のうち、認定子会社といいますか、七十七社、そちらの方も認めておられる子会社に退職後再就職された方が千百五十九名であった。約二千二百人ぐらいの働きたいという方が、そうであった。それにさらに、そちらが認定されていない、猪瀬さんに言わすと認定だと言われる会社も含めますと、ほぼ全員、要するに、希望する方ほぼ全員が子会社に退職後再就職をされているという現実があるわけでございまして、千人減らしても、それがそっくり子会社に行っているんではないかと私は実は疑っております。

 疑いを晴らすような資料をぜひ、後日で結構でございますから、出していただきたい。そうでないと、これはやはりいかがなものかなというふうに思っております。忘れない間に先に要望だけしておきます、私はついつい忘れますので。

 それでは、公共住宅の、特に公営住宅ですけれども、今までも幾つか議論がありました、福祉活用の問題について議論をさせていただきたいと思います。その後は、できれば入居基準の問題までいけばありがたいかな、そんなふうに思っております。

 昨年のまちづくり交付金に続きまして、今回は地域住宅交付金ということであります。国交省が非常に意欲的に出されている。一面、各市町村も都道府県も、これは使いやすいなと。あるいは、私も見てみて、はっきり言いまして、ああ、地元で、あそこで使える、ここで使えると、三、四カ所ぐらいは頭の中に浮かぶんですけれども。

 本来は、私たち民主党の立場からいえば、国交省が持ってやる事業かなという思いはありますけれども、今回は、その制度のあり方の問題については別の方にお任せをして、私は、もう少しこの制度の具体的な内容についてお聞きをしたいというふうに思っております。

 それで一つ、大臣、大阪の堺市にお住まいでございます。いつも地元のことを引き合いに出して申しわけございませんが、泉北ニュータウンに御池台という団地がございます。その中に、大阪府営住宅で、多分これは全国でただ一つやと思います。痴呆性高齢者のグループホームを大阪府営住宅、要するに、公営住宅二つをセットにして、二戸一にしてつくったというグループホームがございます。二部屋で都合五人の非常に小規模のものでありますけれども、そういう住宅を、既存の住宅二つを改造してグループホームをやっております。これは近隣の社会福祉法人が運営をしているということでありまして、たしか大阪で取り組んだのがもう三、四年前だったと思います。

 結論的には、こういうものをもっとふやすべきだということを、何といいますか、今回の法律もそうですけれども、建てかえのときにグループホームを組み込もうという議論はたくさんあるんですけれども、実は、建てかえというたって、予算はどんどん減っておりますし、どこまで進むやわからぬという思いはあります。しかし、公営住宅にお住まいの方、大変多いわけでございまして、やはり既存の住宅を思い切ってどんどんグループホームに活用できるようにしようということを本当の意味でやっていただきたいなというふうに思っております。

 障害者のグループホームに活用するということが始まったのは、何年前でしょう、もう十年になるんじゃないでしょうか。国がやっと、公営住宅を障害者のグループホームに使ってもよい、こういうふうに言われてからほぼ十年たっていると思います。

 しかし、実際のところは幾らできていますかと言うたら、四百室というような言い方を、四百とか三百とかとおっしゃるんですけれども、私が知っている限りは百数十カ所です。要するに、二つか三つの部屋をやって一カ所できたら三というふうに、そちらは部屋を管理する側ですから三とおっしゃるんですけれども、私にとったらそれは一なんでございまして、全国でいえば、グループホームに活用しているのは百数十カ所、しかも、そのうちの三分の一は大阪府なんです。はっきり言って、私たちが、初めは、国が認めぬかったら大阪府単独で国の目を盗んでやってしまおうと言うていたころからやって、まだ百数十カ所なんです。

 そういう現状を踏まえて、障害者のグループホームもそうでありますけれども、高齢者の痴呆性グループホーム、こういうものについても、思い切った対応をぜひやっていただきたいなという思いでございます。

 ぜひ大臣、連休中、もし地元に帰らはることがあったら、御池台を見に行っていただいてもろたら非常にいいものだと思います。御答弁をお願いしたいと思います。

北側国務大臣 私、堺の選出なんですけれども、かつてその御池台に住んでおりましたので、よくわかっております。

 今委員のおっしゃったお話は、先ほど来議論していただいております、住宅政策が今大きな転換点にあって、既存ストックをいかに有効活用するかということがこれから大事だというふうに答弁申し上げているわけでございますが、やはりその一つの具体例の話だと思うんですね。少子高齢化が進展していく中で、住宅政策におきましても、高齢者の方々また障害者の方々が地域で安心して生活ができるような政策をとっていくということは非常に大事なことであると私も思います。

 法律上は、公営住宅法の四十五条で、事業主体は、社会福祉法人に住宅として使用させることが必要であると認める場合においては、公営住宅の適正かつ合理的な管理に著しい支障のない範囲で社会福祉法人等に使用させることができる、こういう規定、根拠法がそもそもあるわけでございまして、今委員のおっしゃったように、まだまだ少ないわけでございますが、いわゆるグループホームとして使用している実績もあるわけでございます。

 今後、今住宅政策のこれからのあり方を議論している中で、今委員のおっしゃったようなことも大きなテーマとしてぜひ議論をさせていただきたいと思っております。

中川(治)委員 実は、その御池台の公営住宅を活用してグループホームをつくろうと私たちが始めたんですけれども、先ほど、このグループホームは五人だというふうに言いました。実は、二つの部屋を、一つの真ん中の壁をぶち抜ければ六室つくれたんです。ところが、真ん中の壁を抜けない。それで、私は当時、府議会議員ですから、何で抜かれへんねん、抜かれへんのかと。向こうの建築部の職員は、法律、いろいろやりましたと。国にも調べたのかと言ったら、たしか調べた、こっちは聞いたことがないと言わはるんですけれどもね。私がだまされたのかもわかりませんが、とにかく、抜けないんですということでありました。

 要するに、目的外使用ですから、もとに戻すときには原状復帰せないかぬというふうなことも含めて、壁を抜くことができない。普通はここであきらめるんですけれども、私はそれでもあきらめない。ベランダをサンルームでつないで一つの部屋にしたらどうやということで、無理やりつくったのがこのグループホームでございまして、ですから、部屋が一つ減ったんですね。それで五部屋になりました。経営者は、六部屋あったら楽やったということで、何とか維持をしたはるようですけれども。

 要するに、既存のものを福祉活用しようという場合には、いろいろな意味で思い切った規制緩和をやらないかぬということなんです。それをするための個々の細かい通達があります。そういうものを、できる限りやる側の自治体の立場に立って、先ほどの壁のことも含めて、どんな形で規制があるのか私はよくわかりませんけれども、そういうことも含めて、大胆な規制緩和とセットでやっていかないかぬ。そうでないと、なかなか一気に進まない、大きく進んでいかないというふうに思います。

 局長、どうですか。

山本政府参考人 御指摘のとおり、既存の住宅をそのまま使う場合は、法律上の措置を講じていますので、非常に弾力的なやり方でこのグループホームとしての使用ができるようになっておりますけれども、例えば二つの住戸を一つにする、しかも真ん中の壁をぶち抜くという話になりますと、目的外使用ということで、本来の手続を踏む必要があります。

 建物の安全上の問題が生じたりというようなことがあると問題ですけれども、そうでない限り、公共団体の方々ときちんと意見交換して、グループホームとしての活用が前に進むように、思い切った取り組みを進めてまいりたいと思います。法律上の手続は確かにあるので、それは桎梏になるんですが、前に進むように取り組んでまいりたいと思います。

中川(治)委員 やる気があるのになかなか進まないということのないように、ぜひひとつお願いを申し上げます。

 もう一つは、実は、こういうグループホームに改造する、こういう場合に、ここからがみそなんですが、今回の地域住宅交付金の適用はできるんだろうか。

山本政府参考人 地域住宅交付金の充当のポイントは、従来国土交通省の補助対象事業であったものは、基幹事業として当然なります。それ以外のものは提案事業という類型で対象になります。

 先ほども御答弁したんですが、本来、公営住宅建設費補助金を改めて、制度を改めて交付金をつくりますので、やはり従来の補助金の対象であった基幹事業というのは真ん中に据えなきゃいけません。したがって、提案事業の割合も限界があります。限界がある範囲内ではありますが、提案事業の対象になります。

 今論議になっておりますグループホームは、厚生労働省が基準を設けて補助しているものでございます。したがって、この地域住宅交付金の枠内でいいますと、厚生労働省の基準に適合したものであっても、あるいは基準に満たないものであっても、公共団体が地域計画に位置づければ、いずれも提案事業として、交付金の対象としてこれを推進することができるものでございます。

中川(治)委員 これは、きのう私は実は答弁の質問を投げかけました、本当にできるのかなと。

 実は、私は、地域の真ん中で福祉事業をやるべきだということで、ずっとそういうことを言っておりました。例えばグループホームは、厚生労働省の基準というのは、部屋は六畳なんです。廊下は一・八メートルなかったらいかぬ。しかし、こんなグループホームは私はおかしいなという思いがありまして、もっとアットホームでいいじゃないかということで、既存の住宅それから既存の公営住宅、そういうものを大いに活用しよう。公営住宅でしたら、二軒お借りしても家賃は大体五、六万なんですよね。そうすると、NPOで介護活動をやりたいという女性たちがやったって、五人ぐらい確保すれば維持できるんです。

 そういう拠点を小学区ごとにあちこちにつくるのが、実は本当の意味での地域福祉だ。福祉は町の真ん中でということをやるためには本当は、厚生労働省はそこまでできないですよね、できる力を持っているのは国土交通省、また言いますけれども。国土交通省のお持ちの資財を活用すれば、各小学区ごとにでも小さなアットホームな地域福祉センターをつくっていくことができる。そういう意味で、ぜひ思い切った活用をやっていただきたいというふうに思います。

 グループホームも、厚生労働省の基準でいきますと、大体、入る人は一人ですね、一人頭五百万円の設備整備費がかかると言われております。市町村と都道府県で二百五十万円ですから、例えば府県でいえば一人頭百二十五万円補助金を出さないかぬ、施設整備費ですね。

 ところが、公営住宅を活用すればもっと安上がりでいいということなんでございまして、こういうことを、希望のあるところ、とにかく今、公営住宅は高齢者の率が非常に高いんですから、ぜひ意欲的にやっていただきたい、そんなふうに思います。同じように、公団住宅の部屋についても、今申し上げたような福祉活用をぜひ進めていただきたいと思いますけれども。

河崎参考人 私どもの都市機構も、勤労者のための大変たくさんの賃貸住宅を管理しております。したがいまして、高齢化の進展に伴ってグループホームといった新たなニーズがたくさん出てきておる、これに当然対応していかなきゃならないというふうに認識しておるところでございます。

 先ほど来議論がありました既存住宅を活用したグループホームということにつきましては、どうも私どもの方の既存住宅の方では、恐らく大規模な改修工事が必要になる場合があるだとか、いろいろなことで今のところ条件が整うようなケースがなかなかないということで、実績がないのが現状でございます。

 したがって、私どもでこれまで取り組んでやっていますのは、一つは、建てかえ事業等の際に新しい住宅建設を行う場合、そのときにグループホームを導入する。それからもう一つは、店舗、商業店舗であったところがあいている、その場合には結構かなり広いスペースが確保できる場合がございますので、それを転用するという形でグループホームに取り組んでおるわけでございますが、先ほど来の議論も踏まえまして、今後とも、公共団体の要請あるいは運営事業者の要請に対応しながら、積極的に取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

中川(治)委員 建てかえのときにそういうものを組み込んでいこうというのも、ある意味では当たり前の時代になってきております。特に市町村ですね。民間のあいている土地を売買するときにも、福祉施設を組み込むこと、それを市町村から条件をつけますから、大体もうそんなのは当たり前なんです。

 そういう意味では、今回いろいろな組み込みをやっていくことになったということですけれども、決意したのは国が一番最後、一番遅かったということなんで、僕は、はっきり言いまして、地方自治体出身の議員としては今さら偉そうに言うなよという思いがしております。言うてしもうたな、こういうことを。

 公団住宅の場合は、建てかえじゃなくて既存のものをどう活用するかなんですよね。そういう意味では、家賃はちゃんと払いますから一階で二部屋続きで貸していただきたいとかという場合に、大いに、グループホームだけじゃなくて、例えば小規模なデイサービスセンター、もちろん介護保険適用の事業、あるいはこれからだったら介護予防事業、そういうものを、こんなのたくさん、大きな部屋は要らないんです、小さな部屋でいいんですから、一部屋でも二部屋でも貸してくださいということがあった場合には、積極的にこたえていくということをやっていただきたいと思います。

 店舗ということをよく言わはるんです。店舗は、確かに広いんですけれども、家賃も高いし保証金も高い、こういうところで、ここでやったとしても、利益を上げようと思ったら、利益を考えている社会福祉法人は来ません。地域のNPOやとか、そういう人たちが自主的に自分らでやろうと思ったら、これは手が届かないんです。それとも、福祉活動でやる場合には家賃を半分にするとか、できないでしょう。だから、店舗はなかなか難しいんです。ヘルパー派遣業者として、ここやったらもうかると思ってやらはるようなNPOやったら借りはりますよ。しかし、福祉事業としてほんまにやろうと思ったら、これは無理です。

 だから、私は、既存住宅の、既存の部屋の活用ということに思い切って協力していただきたいというふうに言っておりますので、繰り返し、しつこく、ひとつよろしくお願い申し上げます。

 あと十五分でございます。もう一つ、大臣、済みません、堺の例を申し上げます。ほとんどローカルな話ですが、泉北高速鉄道という鉄道がありまして、深井駅というのがございます。大臣も御存じやと思いますが、深井駅という駅の隣に宮園町という町がありまして、実は、大阪府営住宅八田荘団地、三千数百軒だと思いますけれども、これは丸ごと小学校区になっている。要するに、公営住宅だけで小学校区を形成しているという珍しいケースの団地であります。

 実は、大阪にはこういう小学校区丸ごと公営住宅という地域が三カ所あります。堺と貝塚と門真にあります。私は、府会議員時代にみんな見に行ったんですけれども、ここの学校についてはテレビでも取り上げられたことがあります。はっきり言いまして、非常に荒れている、学力に非常に大きな問題がある。学校の先生もかなり配置をしております。しかし、学校の先生側からいいますと、これは教育問題じゃなくて、はっきり言うて住宅問題だ、居住の問題だというふうなこともおっしゃっておられました。

 私も、こういう場合、建て方も悪かったのかもわかりませんけれども、既存の住宅を、先ほど申し上げたと同じような形で、二つか三つぐらい、先ほどの高齢者のデイサービスセンターやとかグループホームに活用するのと同じように、地域子育てのための拠点として、これも厚生労働省の事業になりますけれども、そういうものにも活用させるということをやはりすべきではないのかな、そんなふうに思っております。これについてはどうですか。局長でも結構です。

山本政府参考人 高齢化社会、高齢化時代が到来するということで、公営住宅を福祉の拠点として生かして使っていくということは、非常に大事なことだと思います。

 例えば、子育てのための保育所とか、その他のコミュニティー施設をあわせてつくるとか、既存の公営住宅を活用してそういう拠点として生かしていくといったようなアプローチが大事だと思いますので、公営住宅と一体的に、こういう福祉施設、コミュニティー施設といったものも今回法律でお願いしております交付金の対象として活用して、御指摘いただいたような公営住宅の地域における有効活用を的確に図っていけるように努めてまいりたいと思います。

中川(治)委員 分けてお尋ねをしたのは、先ほどはグループホームとかという、やはり家なんですよね。高齢者であろうが障害者であろうが、そこで住んでいるんです。もう一つは、例えば地域子育てセンターであるとかそういうのは、晩は住まないんです。ですから、いずれにせよ目的外使用なんですが、完全な目的外使用でありますから、そういうものについても、団地の住環境を維持するという意味でもやはり必要な施設の一つだというふうに私は思いますので、ぜひこれも、都道府県から上がってきた、市町村から上がってきたというときには積極的に受け入れをしていただきたいと思います。

 もう一つ、まさかこれはもうないと思いますが、聞いておきたいと思います。公営住宅を目的外使用した場合に、例えば面積がかなり広いというときには、入っている補助金、住宅の補助金が入っています、その補助金分を返還せよというふうなことはもうないですよね。

山本政府参考人 補助金適化法との関係で手続がありますので、きちんと手続を踏んで、そういうことで結構ですとやっていれば、補助金を返還する必要はありません。黙って使われていたり、承認したことと別のやり方がされていたりしたら、しかもそれが明らかになった場合は補助金を返してくださいということはありますけれども、承認したとおりに使っておられる、適正な目的外使用であれば補助金を返してくれということはありません。

中川(治)委員 これは大事なことは、こういう住宅の活用、大いにオーケーだということを国土交通省がやはり事例でも示して、こういう活用の仕方ができるんですよ、こういう場合には手続さえとれば補助金返済要りませんよということをちゃんと周知徹底してほしいんです。

 これをやらないと、多分私は、全国あちこちの都道府県がおたくのところに隠れて活用している例はいっぱいあると思いますよ。しかし、そんなのみんな自首して出してきたら、怒らへんから出してこいというふうにやれば、もっと事例が出てくるかもしれません。ぜひ、そういうことをやっていただきたいと思います。

 この福祉活用の件について大臣に最後にもう一遍決意をお伺いしたいんですけれども、私は、小学校区単位ぐらいに小規模多機能な福祉ハウスが必要だというのがこのごろのはやりでございまして、厚生労働省もそんなことをおっしゃっています。要するに、施設福祉から在宅福祉という基本の福祉の構想が、どうも収容施設ばかりになっておるではないか、地域の中に戻していかないかぬというところまでは今議論が来ております。

 しかし、これを本当にできるのは、やはり私は、国交省のお持ちの公営住宅、公団住宅、こういうものをフルに活用する、その一つとして活用するということをやらないと、本当に福祉は町の真ん中でということにならないんじゃないかなと思っておりますので、ぜひ、聞いていたら、最後の最後で一言お願いします。時間がなくなりますので、もう……。

北側国務大臣 既存ストックを有効に活用する、そして少子高齢社会にふさわしいさまざまな政策を実施していくためにこの既存ストックを有効活用したいという、地方公共団体の側のそうした希望があったときにきちんと柔軟に対応していくのは当然の話であるというふうに思います。

中川(治)委員 ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。

 次は、公営住宅の入居基準の問題、これも少し福祉と関係があるんですけれども、入居基準で、私はずっとよく言っているんです。

 もう亡くなられましたけれども、きんさんとぎんさん、一緒に住宅入居を申し込めるんですよね。しかし、いくよ・くるよはだめ、何ぼ仲よくてもだめ。要するに、これは赤の他人だからなんです。それで、きんさん、ぎんさん入居はオーケーやけれども、何でいくよ・くるよはあかんねん、本人怒らはったらいけませんから。例えば、連れ合いを亡くして、お互い年やということで一緒に住もうかということが今はだめなんです。これは何とかならぬか、もう認めるべき時期ではないのかということを私は申し上げたいのでございます。

 阪神大震災のときに、仮設住宅で非常に仲よくなった、そして身寄りを亡くした、そういう方々で、これはたしか実際にあった事例でございます。公営住宅に入るということになったときに、同居親族以外はだめというあれがありますから、一緒に入りたいという御希望は却下されてばらばらになりました。団地まで離れてしまいました。そして、片っ方が孤独死をされたというようなことが、私はどこかで新聞の記事を見たことがあります。

 これは何とかせないかぬということで、府議会でもこのことをしつこく議論したことがあります。いくよ・くるよ入居認めろ、あるいは高齢者友人同居、シルバールームメートとかいろいろな言い方をしておったんですが、最近のはやりで言えばルームシェアってありますよね、シルバールームシェア入居というものをもうぼちぼち認めるべきではないのか、検討する気はありませんかということを、まず。

山本政府参考人 世の中の必要に応じて本当に困っている人に的確に住宅を供給していくというのが公営住宅の趣旨でございますので、世の中のニーズがこのように変わってきているのに公営住宅の制度がそうなっていないのは問題であるという御指摘だと受けとめております。

 実は、先ほど来何回も説明しておりますけれども、戦後の二十六年からできた制度でございます。当時は一緒に住んでいるのはみんな親族ばかりでございます。家族が住んでいるわけで、公営住宅の入居基準に同居の親族があるということがあるわけでございます。

 新しい高齢化社会の中で、いつまでもそのままの基準でいいのかという問題の指摘でございますので、高齢者の居住の安定確保に向けた入居のあり方について検討していきたいと思っております。

中川(治)委員 すぐに答弁求めませんけれども、大至急検討をいただきたいというふうに思っております。これからやはり、男と女だけで平均寿命が八歳も違うんですから、仲のよい女性同士が一緒に住もうかということは私はあってもいいと思います。

 そういうことになりましたら、これは一人で住んでいたら、病気になったら訪問看護なんですよ。介護保険で一万五千円ぐらいのお金を払わないかぬのです、介護保険制度は。二人で住んでいたら、お互い看病しますわな。そんなことも含めて、私は、お互いが助け合う仕掛けをきちっとつくっておけば福祉コストはもっと下がるんじゃないかという思いがありまして、そういう意味でも、認めないのはもったいない、そんな思いがしております。

 あるいは、同居親族ということで、だめだということで一番困ってはるのは老いらくの恋、これは籍入りませんね。入ったらもう遺産相続で子供と孫がけんかしよりますから、大体籍を入れることを反対するんです。そういう方々が一緒に住みたいという場合も、今は法的には無理ですね。都道府県では、実際のところ認めているところがたくさんありますよ、内縁関係だとかなんとかというて。ただ、法的にはまだだめと書いてあるんですね。その辺も含めて、思い切って都道府県に任すとかいうことをやらないとだめです。

 あるいは同性愛の夫婦、これもだめなんですね。いや、もう時流に応じて検討したいと言うて、大体、先ほど言うたでしょ、五年から十年おくれているんですから、国の決断は。その間に都道府県はいろいろ目を盗んでやるんです。そんな格好の悪いことじゃなくて、もうちょっと初めから思い切って認める。都道府県に、もう認めますから、よっぽどえぐいことはせんといてくださいよという通達を一遍出しなはれ。その方が私はよっぽどいいんじゃないのかな、そんなふうに思っております。

 これは本当に感謝されると思いますよ。ぜひ、大至急御検討いただきたいと思います。来年まただれか質問してください、あれどないなりましたと。ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 それから、もう一つだけ。これは私は公営住宅の入居にかかわって、もう時間がありませんからみんな申し上げますけれども、今は国交省の通達では、三親等以内であれば一緒に住んでもよい。公営住宅の通達、そうですね。入っていて三親等以内であれば、その入居権、入居権と言うかどうかわかりませんけれども、それを継承してもよい、こういうふうになっておるんですね。あとは、一応、都道府県の判断というふうに考えていいんですか。

山本政府参考人 入居したときからずっと一緒に同居している方、それから配偶者の方は別ですが、それ以外の親族は、一年以上入居している場合は承継を承認することができるというのが法律上の定めでございますので、その範囲内で、承認するか承認しないかというのは、個別の事情に応じて事業主体が判断するということになります。

中川(治)委員 これもぜひ、私は個人的には、世帯主の配偶者以外は続けて住むことを認めないというふうにはっきりすべきではないのかな。

 公営住宅の場合、もう半分近い、五〇%以上の人が何十年もそこで住んでいる。子供も住む、孫も住む。先ほど局長、ぽつんと大きな部屋に公営住宅で高齢者が住んでいる、これを何とかせないかぬと言わはりましたけれども、そんな心配せんでも、かわりなはれと言いに行ったら、孫が籍だけ入れるんです。そんなことはちゃんとしてはるんです。そんなことでいいのかという思いが私はあります。

 ただ、しかし、そこで生まれた人を出て行けということはいかがなものかというふうにも思いますし、そういうことも含めて、公営住宅や機構住宅、さまざまなものを組み合わせて建設をしていくとか、そういうことをこれからはぜひやっていく必要があるのではないのかな、そんなふうに思っております。これは非常に大事な問題でありますけれども、これをまた後日、機会がありましたらお聞かせをいただきたい。

 そういうことを実現するためにも、私は、公営住宅と公団住宅はセットで、管理から施工、建てかえまでやるような時代にすべきではないのかなという思いがありまして、この法案、一番初めのときに、なぜ公団住宅については入っていないんだというふうに申し上げました。これは引き続き、私たちもきちっといろいろな意味で検討をしていきたいと思いますし、ポイントは、何のことはない、都市再生機構というもとの公団、これをどうするのかということで、私たちと皆さん方との意見が違うというふうに思います。それ以外は大体歩み寄れるのではないのかなというふうに思います。

 ぜひ、公団の問題については、来年ぐらいに住宅まちづくり基本法みたいなものが出されるということですから、それまでに、直ちにとは申し上げませんけれども、いつまでに整理をするのかぐらいのことはきちっとやっていただきたいなということを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

橘委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

橘委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿久津幸彦君。

阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。

 傍聴人の大勢の方々に比べまして、ちょっと委員の先生方の出足が悪いようでございますが、一生懸命頑張ってやらせていただければと思います。

 住宅二法について、国と地方の……(発言する者あり)はい、御静粛に。住宅二法について、国と地方の役割分担、責任の所在を明らかにしつつ、住宅セーフティーネットの構築は十分か否かという視点で質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、公的資金による住宅及び宅地の供給体制の整備のための公営住宅法等の一部を改正する法律案について伺いたいと思います。

 本会議で同僚の室井邦彦議員が指摘させていただいたところでありますけれども、この法律の構成について伺いたいと思うんです。といいますのは、この法律は、五つの法改正が一つのセットになって並べられ、組み込まれた法律でございます。これは普通の一般の国民の方々がすっと読んですっとわかる内容では私はないと思うんですけれども、大臣はこの法律の構成について適切と考えるのかどうか、お話をいただきたいと思います。

北側国務大臣 一本一本慎重に論議するのもいいと思いますが、ただ、関連するところがあるものについては、できるだけ一緒にその法案について御審議をいただくということでございます。

 このいずれの法律改正も、詳細は申し上げませんけれども、国、地方公共団体そして民間、住宅金融公庫、機構等の各供給主体の適切な役割分担を踏まえて、公的資金による良質な住宅及び宅地の供給体制を整備するということでは一つの共通の枠にはまるものでございますので、一緒に御審議をいただいているものでございます。

阿久津委員 大臣のこの答弁の仕方を通じて大臣の胸の内が何となくわかったような気がいたしますので、もうこれ以上は申し上げないんですけれども、この法律は、公営住宅法の一部改正は管理主体拡大の話、住宅金融公庫法の一部改正と都市再生機構法の一部改正は政府貸付金の繰り上げ償還の話で、特別勘定の問題もありますから、かなりこれだけでややこしい話です。それから、地方住宅供給公社法の一部改正は管理権限代行と設立団体解散の話で、さらに、公営住宅法の一部を改正する法律の一部改正は家賃収入補助廃止と税源移譲の話であります。

 これは普通の国民がぱっと見てわかる組み合わせではないんですね。私は、官僚の優秀な諸君が、法律になれた諸君だけで見る場合はそれでいいと思うんですけれども、やはりこの一本一本の法律には込められた意味があると思いますし、政治家が審議するという意味でいえば、国民の代表として審議するわけですから、ぜひ、このように無理やり一本にまとめるのではなくて、できるだけきちっと内容によって分けて今後は法律を構成していただきたい。

 運輸省と建設省が合わさったわけですから、国土交通省が提出する法律が閣法として多いのは当たり前の話なんです。それは我々も覚悟しています。協力するときは協力します。ですから、法律の構成については、やはり賛否のそれぞれの問題もありますから、ぜひ今後は分けていただきたいということをお願いしておきます。一言、もしあれば。

北側国務大臣 委員の御趣旨に沿ってできるように、また協議させていただきながら進めさせていただきたいと思います。

阿久津委員 ありがとうございます。

 質問の方を次に移らせていただきたいと思います。

 公営住宅法の一部を改正する法律の一部改正において、家賃収入補助を平成十七年度までとするとありますが、家賃収入補助の廃止は公営住宅の果たしている住宅セーフティーネットとしての役割の低下につながらないか、伺いたいと思います。

山本政府参考人 公営住宅制度も非常に古い制度でございますので、いろいろ変遷してきております。

 御指摘の家賃収入補助でございますが、昭和四十四年に公営住宅法を改正いたしまして、土地取得造成費、かつては土地費にも補助が出ていたんですが、この法律の改正で土地取得造成費に対する補助が廃止されました。その際の代替措置としまして、土地代、取得費には補助金は出さないけれども、毎年の家賃にはね返る地代相当分について毎年補助していくという制度を代替措置として設けたものでございます。

 近年になりまして、平成八年に公営住宅法の大改正をしました。このときに、市場家賃と公営住宅入居者に負担していただく家賃の差額を国と公共団体が協力して助成をするという制度を設けました。この制度によって、民間の賃貸住宅ストックも借り上げて公営住宅として供給できるようになったわけでございますけれども、この新たな家賃補助の制度が導入されたことに伴いまして、その改正後の法律に基づいて供給された公営住宅、平成八年度以降、については家賃収入補助は廃止されました。ですけれども、それまでに、昭和四十四年以降平成七年度までに供給された公営住宅については、従前どおり家賃対策補助で地代相当額を経過措置として補助するということで、今日まで継続してきたものでございます。

 昨年の三位一体改革の議論の結果、政府・与党の「三位一体の改革について」という方針の中で、家賃収入補助については全額地方公共団体に税源移譲する方針が示されまして、今般、家賃収入補助を平成十七年度まで、今年度までとする、来年度以降は廃止するという法律措置をお願いしているわけでございます。

 税源移譲に伴いまして、公営住宅を四十四年以降七年度までに供用開始した公共団体におきましては、収入に差が出るわけでございますけれども、これにつきましては、税源移譲に加えて、地方交付税の算定において実績に応じたきめ細かな算定が行われると聞いておりますので、これにより、事業の円滑な執行に必要となる財源は適切に確保できるということでございますので、今般の措置で住宅セーフティーネットとしての公営住宅の役割が低下するということはないと考えております。

阿久津委員 今回の措置で住宅セーフティーネットとしての役割の低下につながらないように、ぜひ大臣の方も御指導のほどをよろしくお願いいたします。

 続きまして、公的賃貸住宅のうち、公営住宅の管理戸数が約二百十九万戸ありますが、それに次いで管理戸数が多いのは、都市再生機構の賃貸住宅、約七十七万戸であるというふうに聞いております。公営住宅ストックの有効活用を掲げる本法案の延長線上には、今後、公営住宅と都市再生機構住宅の一体的管理があり得るのかどうか、明確にお答えいただきたいと思います。

山本政府参考人 今般お願いしております公営住宅法の改正によりまして、入居者の決定など、公営住宅法に規定する事業主体の権限を他の地方公共団体あるいは供給公社が代行できることになります。ですから、同じ団地の中に管理主体の異なる公営住宅があるような場合に、これを一元的に管理するということが可能になるわけでございます。このような法律上の権限の代行の制度を機構の賃貸住宅にも拡大して一体的に管理を行うことはできるのか、そういう方向に向かうのかというお尋ねでございます。

 同じ公的賃貸住宅の中でも、公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者を対象として運用します。一方、機構の賃貸住宅は、主として大都市地域における中堅勤労者、ファミリー層を対象としておりまして、それぞれ施策対象、役割が異なっております。したがって、同じ公営住宅同士で一元的に管理するというところまで持っていくことは困難だと考えております。

 しかしながら、それはそうですけれども、これまでも、例えば、地方公共団体を中心に、公的賃貸住宅の募集情報をセンターとして一元的にまとめる、あるいはコンピューターのウエブサイトでも検索できるようなシステムを運用しておりますし、相互の連携を進めてきたところでございますので、こういった試みをさらに進めるために、今般の法律でお願いしております地域住宅協議会で、公共団体、都市機構、供給公社、それぞれ御相談をいただいていろいろな取り組みをしていただく、そのために協議会を活用していただくということを期待しております。

阿久津委員 情報交換を含め相互協力はあり得るけれども、地方公共団体または地方住宅供給公社が、都市再生機構の賃貸住宅を管理主体となって一括管理するようなことはないということを確認させていただきました。

 続いて、ちょっとややこしい質問に入らせていただきたいと思うんです。

 独立行政法人都市再生機構法の一部改正では、現行勘定を、ニュータウン整備等の宅地造成等経過業務に係る特別勘定と既成市街地整備や賃貸住宅管理等のその他の都市再生業務に係る一般勘定とに区分することになっています。しかし、国土交通大臣が承認すれば、もちろん評価委員会の意見を聞いた上でなんですけれども、家賃収入など一般勘定の利益をニュータウン事業など特別勘定に繰り入れ、赤字補てんなどができるものとしています。これは、衆議院国土交通委員会が全会一致で行った、独立行政法人都市再生機構法に対する附帯決議に反するのではないかというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

 その附帯決議の七項は、「機構は、賃貸住宅事業とその他の事業との区分経理を明確にする」としています。都市再生機構の会計処理に当たっては、区分経理を厳格に守り、賃貸住宅事業等の収益をほかの事業会計に流用することなく住環境の整備を図るべきだという意味だと私は考えるんですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

北側国務大臣 これまで、公団時代から、機構全体で一つの勘定でございました。その中で、ニュータウン事業については、これは今後やらないということでございますので、また繰り上げ償還の対象ともなります、そうしたニュータウン事業等について特別勘定にする。そして、賃貸住宅の管理だとか、それから既成の市街地の整備、都市再生ですね、そうしたものについては、一般勘定として法律上区分し、両者の経理を明確にするということにさせていただいているところでございます。

 一般勘定に利益が生じた場合において、その利益の額を上限として、特別勘定に繰り入れることができるというふうに制度上しておるわけでございますが、これは幾つか要件がございまして、特別勘定の運営上必要であるということ、それから、そもそも機構の一般業務に支障のない範囲であること、その中で利益の一部を繰り入れることができるという規定でございます。

 それは機構単独でできるわけではなくて、国土交通大臣が一般業務に支障のない範囲として承認する金額であって、かつ独立行政法人評価委員会の意見を聞くことを義務づけしているということでございまして、相当要件は厳格にさせていただいております。また、透明性も確保させていただいておりますので、今委員のおっしゃった附帯決議にも反しないというふうに考えているところでございます。

阿久津委員 大臣、その意味は十分にわかっているんですけれども、そもそも、先ほどの同僚議員の質問の中でも確認していただいたところなんですけれども、今回の補償金の支払いを前提としない繰り上げ償還が極めて例外的な措置であることは十分御理解いただいていると思うんです。これは、国民負担を軽減するために補償金分の利益の放棄が必要かつやむを得ないと認められることに限られた特別の措置で、例外中の例外だというふうに考えております。

 これほどの措置を求めながら、なおかつ、わざわざ区分した勘定の賃貸住宅事業等の収益にまで手をつけさせるというのは、余りにちょっと機構を甘やかし過ぎるのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。局長でも結構です。

山本政府参考人 昨年の改革で、独立行政法人に公団から機構改革をしております。独立行政法人で、独立行政法人通則法に基づいて機構を運用していくことになっているわけでございますけれども、その中で、今般、経過措置業務、これからもうやめてしまうニュータウンの業務について、特別勘定をもって経理した上で、力を集中してこの資産を処分していくというのが今機構のやろうとしていることなんです。

 その際に、一般業務は賃貸住宅管理だけではございませんで、都市再生機構がやります都市再生の業務と賃貸住宅の管理というのが車の両輪でございますけれども、その運用した中で各年度に利益が出た場合は、その範囲内で、同じ機構の中の非常に大事な二つの勘定でございますので、特別勘定の方の運用に必要が出た場合は融通ができるように、しかも、透明性のある形でチェックしながら融通ができるようにしようという制度でございます。

 先ほど大臣がお話しになりましたとおり、幾つものチェックをかけた上で独立行政法人としての自律的な運用を可能にしようというものでございますので、必要な措置だと考えております。

阿久津委員 私は、むしろそこが危ないと言っているんです。先ほど伴理事長が最大限の努力を約束したわけなんですけれども、ここのところは、大臣、やたらに賃貸住宅の収益に手をつけないようにしっかりとチェックしてほしい。最終的には、大臣の承認がなければできないんですから。

 それから、もちろん確認としては、前提として、「運営に支障のない範囲内」ということがうたわれているんですけれども、大臣、この意味は、少なくとも賃貸住宅事業等の収益はそこに住む人々の居住の安定、住環境整備に優先的に還元すべきというふうに理解していいんですか。

北側国務大臣 当然そういうことだというふうに私は理解をしております。国土交通大臣の承認が必要なわけでございまして、そこでしっかりチェックをしますし、また、評価委員会の方で透明性ある形で審査もしていただくわけでございまして、委員の御懸念のようなことがないように、また、機構そのものの組織また仕事の効率化、そういうものはしっかりとさせるように見てまいりたいと思っているところでございます。

阿久津委員 ありがとうございます。はっきりと確認させていただきました。

 続いて、もう一つの法律の方に入らせていただきたいと思うんですが、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案について伺いたいと思います。

 この法案の中で地域住宅協議会というものがあるんですけれども、その設置目的と位置づけを伺いたいと思うんです。それから、住宅のセーフティーネットを確実に構築するため、地域住宅協議会をどのように活用すべきと考えるのか、あわせて御答弁いただければと思います。

山本政府参考人 法律で、地域における多様な住宅ニーズに的確に対応する、あわせて良好な居住環境の形成を図るということを目的にしておりますので、これに携わる地域の住宅事業主体、具体的には都道府県、市町村、都市再生機構、地方住宅供給公社などが取り扱う公的賃貸住宅の整備とか管理に当たりまして、的確に連携を強化するということが大事でございます。あわせて、福祉とかまちづくりに関する施策との連携も強化する必要があるわけでございます。

 このことを踏まえまして、これらの主体間の連携、それから福祉、まちづくりの関係部局との連携を強化する場として、地域住宅特別法におきまして地域住宅協議会を位置づけることとしたものでございます。

 地域住宅協議会の場を通じまして、公的賃貸住宅等の有効活用や整備に当たっての役割分担などが協議されます。そのことによりまして、的確な地域住宅計画を策定する、あるいは、地域の住宅ニーズに適切に対応していくための各事業主体の連携が一層強化されまして、御指摘のありました、地域における住宅のセーフティーネットの構築がきちんと図られていくということを期待しているわけでございます。

阿久津委員 今の御趣旨からすると、この法律では地域住宅協議会の設置をできる規定にしてあるわけなんですけれども、本当にうまく運用させることを考えるんだったら、義務規定にするという議論はなかったんでしょうか。

山本政府参考人 協議会で論議をしまして、それぞれ各主体でどういう役割分担をしようか、みんなで協力して、どっち方向に力を加えていこうかという結論が出ます。出ました結果については各メンバーを縛るというのが今回の制度のポイントでございます。

 結果についてはそういうことで、縛って、力を合わせていくということでございますけれども、そもそも、地域の住宅事情、各主体がどういうふうな役割分担でこれに取り組んでいくかというのは、地域によって非常に異なっております。大都市地域とか地方とか、地方でも中心地域とか、それぞれ異なっておりますので、非常に住宅事情が逼迫している例えば東京などの問題意識で、すべての住宅主体は義務として集まれということをやるということは、全国の制度として、全国で地域の事情に応じて仕事をしていこうという今回の法律の趣旨からして、義務づけるというところまではいかないんじゃないかということで、原案の形で審議をお願いしているわけでございます。

阿久津委員 私は、だからだめだと言っているんではないんですけれども、今お話にありましたように、協議会の決定事項が尊重義務というふうになっているんですね。私は、ここのところに実はちょっと、アンバランスというか、違和感を感じるのは感じるんですね。

 あと、市レベルにどのように周知徹底しているかなんですけれども、ちょっとある調査を、資料をいただいたんです。今局長がおっしゃったように、確かに市町村でレベル差というか意識差がかなりあって、地域住宅協議会の設置を求めていますが設置する予定はありますかというアンケート調査をしたんですけれども、九つの自治体に聞いたところ、六つは考えていない、使わないということなんですね。これは答弁を求めませんけれども、ぜひ周知徹底の部分はして、わかった上で参加しないなら参加しないで結構なんですけれども、そこのところをぜひやっていただきたいなというふうに考えております。

 もう一つ伺いたいと思うんですけれども、地方公共団体に対して地域住宅計画の積極的作成を促すためにどのような措置を講じるつもりか、また、地域住宅計画に定める目標としては具体的にどのような目標を記載することになるのか、お答えいただきたいと思います。

山本政府参考人 これは、先ほど御指摘がありました協議会の制度を周知させるということともつながるわけでございますけれども、今回のお願いしております制度につきましては、予算が政府の案として決まりました段階で、年が明けましてから、各ブロックごとに説明会を開きながら公共団体にも説明してきております。今般、晴れて法律をお認めいただきました暁には、改めて各ブロックに出かけて、あらゆる機会をとらえて制度の周知を図ってまいりたいと思います。これがまず第一でございます。

 それから、制度の運用として、イの一番に国が基本方針をつくることになっておりますので、これについても早急に取り組んで、公共団体が地域住宅計画を速やかに作成していただけるように、それによって交付金をきちんと使っていただけるように、準備を急ぎたいと思っております。

 それから、地域住宅計画に定める目標でございますけれども、これは地域における住宅政策上の課題と表裏の関係にございます。したがって、地域の住宅事情、それぞれの課題、それぞれによって区々であるとは思いますけれども、おおよそ私どもが例えてこんなものがあるだろうと考えますものを御説明いたしますと、例えば、社会の高齢化に対応しまして、民間の住宅も含めまして住宅のバリアフリー化をどこまで進める、そういうバリアフリー化の目標でございますとか、安全な暮らしを確保するという観点からの住宅の耐震化の目標、それから、少子化に対応するということでは、公営住宅の建てかえに当たって、子育て支援施設を計画期間中にどういうふうに整備するかといったような具体的な目標、さらには、中心市街地の活性化というような地域政策上の観点から町中居住を進めようというふうに目標を立てた場合には、町中における住宅供給の目標、そういったようなものが掲げられることになると考えております。

阿久津委員 まだまだ事前の段階なので、いたし方ないところもあると思うんですけれども、現時点の事前説明だと、まだ市町村で、先ほどの九つの中で三つは、何か聞いていないんじゃないかと言っているんです。ですから、それを徹底していただくこと。

 それから、これから、特に基礎自治体の力量格差というのがおのずと生じていると思うんですね。それで、市町村へのバックアップ体制が必要だと思うんですけれども、そこのところは何か考えていらっしゃいますか。

山本政府参考人 この地域住宅計画は都道府県も市町村も策定できることになっております。

 その際の都道府県と市町村の役割分担でございますけれども、地方自治法に基づく役割分担と基本的な考え方は同じでございますけれども、やはり基礎は、身の回りの市町村が中心だ、市町村に前に出てきていただくということになります。しかし、特に町村とか、いろいろこれを補完しなきゃいかぬ部分については都道府県が補完をする。これは、能力補完だけじゃなくて広域的観点からの補完もございます。

 そういうふうな役割分担で、的確にこの制度を運用していくということを考えているわけです。

阿久津委員 地方分権をしっかりやることはもちろん大切なことだし、地方に任せられることは地方に任せるということも本当の意味では大事だと思うんですけれども、だからといって、国の責任が軽くなるわけではないし、なくなるわけではないというふうに思っております。

 特に、住宅セーフティーネットという視点の部分というのは、やはり国がしっかりと目を光らせていかなければならないところだと思っておりまして、そこのところ、大臣、ぜひこの住宅政策の中できっちりと確保していただきますようお願い申し上げまして、また次回の質問以降に回させていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

橘委員長 穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 住宅金融支援機構法案を含む住宅関係三法案は、ことしから来年にかけて政府の住宅政策を大転換する方向に沿って、その一環として提出されたものです。そこで、政府の住宅政策の転換方向はいかなるものか、国民にとってどのような影響があるのか、この視点でこの一連の質疑についてはやっていきたいと思っています。

 まず、国による住宅政策は、御承知のとおり、公営住宅そして公団住宅、住宅金融公庫融資住宅を三本柱として実施されてきました。今回審議する二法案は、既に先ほどもありましたけれども、そのすべてが少しずつ入っている。それぞれが議論すべきいろいろな問題点を含んでいるのに、まとめて一緒くたに出してくる、こういうやり方は問題だということを、あらかじめ私としては最初に指摘しておきたいと思っています。

 そこでまず、国交省が昨年十二月に出した住宅政策改革要綱を見ると、これまでの住宅政策は、住宅建設計画法に基づく住宅建設五カ年計画によって進められてきたが、住宅建設計画法の制定の背景にあった住宅不足が解消して久しく、さらには、住宅の量的確保を主眼とする法の意義そのものが低下しておるなんということを言って、まるで住宅は足りている、余っているということは強調して、だから住宅政策を変えなくちゃならぬ、こういう論理なんですね。

 確かに、住宅総数は二〇〇三年度で五千三百八十九万戸、これに比べて総世帯数は四千七百十六万戸、この差を見れば六百七十三万ですから、数字上は余っている。しかし、単純にそれだけを見るわけにはいきません。住宅の総数のうち、空き家となっている住宅とその中身、内容を見なくては実際に使えるのかどうかわからないし、そういう問題をたくさんはらんでいるんですね。

 そこで、空き家の数とその中身、内容についてはどうなっているのか、お答えいただきたい。

山本政府参考人 直近の住宅・土地統計調査、平成十五年でございますけれども、空き家は約六百六十万戸でございます。

 このうち、別荘などの二次的住宅が五十万戸、それから長期不在で取り壊し予定という住宅が二百十万戸でございます。賃貸に付したい、賃貸用ですね、貸し家です、それから売却用、これから売りたいと言っている住宅が四百万戸が、その内訳でございます。

    〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

穀田委員 確かに、数としては空き家があるのは事実です。しかし、それをもって住宅が余っていると盛んに宣伝するほどなのか、疑問です。また、住宅の居住水準が満たされているかどうか。健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠で、すべての世帯が確保すべき水準とされる最低居住水準が充足されているかどうか、これが問われます。

 そこで、再度聞きたいんですけれども、まず最低居住水準とはいかなるものか、お答えいただきたい。

山本政府参考人 住宅建設五カ年計画の中で、最低居住水準という住宅の規模の目標を掲げております。この考え方についてのお尋ねでございますが、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な水準ということで定めているわけでございます。

 具体的な考え方としましては、まず第一に、各居住室の構成及び規模は、個人のプライバシー、家族の団らんなどに配慮して、自立した生活を営む上で最低限必要な水準を確保する。第二に、専用の台所その他の家事スペース、便所、洗面所及び浴室を確保する。三番目に、世帯構成に対応した適切な収納スペースを確保する。この考え方で床面積の規模を定めております。

 なお、第六期までは部屋別の構成を示しておりました。一人だと一Kとか、そういうのを示しておりましたけれども、七期以降は規模で最低水準を示しております。

穀田委員 本当につつましい水準だということがわかると思うんです。

 今お述べになったのは八期のでしたよね。六期もそんなに変わっていなくて、基底の考え方を少し言っている程度で、基準は変わっていないんですよね。だから、一人当たりでいいますと四畳半なんですよ。そして、三人でいっても十五畳、一人当たりでいうと五畳なんですね。さらに、当時の基準からいいまして、例えば、食事のための場所を食事室兼台所として確保するだとか、さらには単身、二世帯についてはどうのだとか、その場合についても中高年の場合には浴室を確保する、こういう程度であって、単身者の場合には浴室もないということまである実態なんですね。だから、こういう最低水準がこれを決めているわけです。これも確保できていないところがたくさんあるということが今の問題なんですね。

 だから、持ち家、借家で今人が住んでいる住宅のうち、最低居住水準以下は何世帯ありますか。

山本政府参考人 最低居住水準に満たない世帯の割合についてお答えいたします。

 まず、四千七百万戸、人が居住する我が国の住宅ストック全体で見ますと、ただいま申し上げました最低水準に満たない世帯の割合は四・二%でございます。これを持ち家、借家別に見ますと、持ち家の場合は一・一%でございます。借家の場合は九・六%となっております。

穀田委員 つまり、合わせると、その数を私は聞いているんだけれども、こっちから言いましょう、百九十四万三千世帯だ。間違いありませんね。

 何でこんなことを言っているかというと、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠で、すべての世帯が確保すべき水準とされる最低居住水準以下が百九十五万世帯ある。もともと、国土交通省が目標としている誘導居住水準に至っては、それ以下が二千万世帯あるんですね。だから、いろいろな基準があります。例えば耐震基準を満たしていないなどの既存不適格住宅は、この間再三私も議論してきましたように、簡単に言えば、大体千二百万戸と言われている。この中で、リフォームでは対応できない住宅もある。

 つまり、今住んでいる世帯でさえ、健康で文化的な住生活を送るための住宅の水準にはない現実のもとで、住宅の質や水準に関係なく、数だけを見て、余っている、余っていないという議論はおかしいのだということを言いたいわけですね。ここをきちっと見なければ、余っているんだというだけの話では、それは、今、国民が本来確保されなければならないその水準に対してどうなのかという視角を欠くようになるということを言っておきたいと思います。

 そこで、民間を含めた話ですが、公営住宅など公的住宅は余っているのか。そして、公営住宅、公団住宅、地方公社住宅、特優賃、高優賃の管理戸数全体と空き家戸数、総計でいいですから、割合はどうなっていますか。

山本政府参考人 公的賃貸住宅全体の管理戸数、三百三十万戸でございますが、空き家戸数は三万戸でございます。管理戸数に占める空き家の割合は一%となっております。

穀田委員 今ありましたように、正確に言えば、管理戸数は三百二十八万戸、空き家戸数は三万二千四百八十四戸、割合でいいますと一%、つまり〇・九九%なんですね。民間も含めた空き家は、住宅総数の一二・二%、これは総務省が出している資料で明らかです。だから、国や地方自治体が直接、間接的にかかわる公的住宅は空き家が一%もない。つまり、公的住宅に関して言えば、空き家が多いだとか、余っているなどとは言えないということは明らかだと思うんです。

 さらに調べてみると、公営住宅に限って見ると、空き家の状況は年々減っているんじゃありませんか。九六年の法改正で公営住宅の新規建設が抑制された結果の反映であろうと私は思いますが、九六年から二〇〇三年までの管理戸数は七万戸しかふえていないんです。空き家率は、九六年に一・六%あったものが、今、〇三年は三分の一の〇・五二%になっている。だから、公営住宅の空き家というのは、その中身も問題だけれども、要は、数的に経年で見ても空き家が多く余っているなどとは言えないということがはっきりしたと思うんですね。

 そこで、もう少し公営住宅に絞って聞きましょう。

 まず、確認したいんです。公営住宅法は、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、または転貸しすることを目的としているが、これは憲法第二十五条の生存権規定を受けたものであって、その責任は国及び地方自治体にあること、つまり、住宅に困窮する低所得者には国と自治体が責任を持って低家賃の住宅を整備し、賃貸しなければならないということだろうと思うんですが、これは間違いありませんね。

山本政府参考人 憲法二十五条に起因する制度だと認識しております。

穀田委員 そこが大事なところなんですね。

 憲法の生存権規定に基づいて国と地方自治体が公営住宅の建設、整備に責任を持つ、これによって、これまでも全国で二百十八万戸の公営住宅が建設されてきました。今、私は、空き家がないという事実を、そんなに大して多くないという事実を述べてきました。では、別な角度から見て、問題は、この理念どおりに住宅に困窮する低所得者層に対しては足りているかどうかということについて議論してみたいと思います。

 公営住宅が足りているかどうかを見るときに、当然、その分母となるのは住宅に困窮する低所得者であります。そこで、公営住宅に入居可能な収入基準は、収入分位は二五%、高齢者などは裁量の階層ですから四〇%だが、その世帯数は全体で幾らか。入居資格のある世帯数ということについてお答えいただきたいし、あわせて、それらへの対応についてもお答えいただきたいと思います。

山本政府参考人 法律の目的は、先ほど先生からも引用いただきましたけれども、施策の対象者が住宅に困窮する低額所得者となっております。その場合の収入の基準が、基本的に、所得で見た場合の収入分位二五%以下というふうに整理をしております。

 ですから、それが非常に広義の分母になることは事実でございますけれども、その土俵の中で、住宅に困窮するという要件をどういうふうに整理するかということがポイントとなってくるわけでございますけれども、これは現行の第八期住宅建設五カ年計画でも、施策対象世帯がどのくらいあるかということをいろいろな吟味をして計画を整理しています。

 その際には、例えば、自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯ということで、推計のプロセスを若干かいつまんで申し上げますと、自分で持ち家を持っておられれば、所得水準は低くても困りませんので除きます。したがって、まず、民間の借家に居住しておられる世帯が基礎になります。それを基礎にしまして、これらの世帯について、世帯人員別、所得水準別の数字を、マトリックスをつくりまして、それぞれの所得水準に応じた家賃負担の可能な家賃を設定しまして、割り戻しまして、確保可能な床面積というのを設けまして、その床面積が世帯人数に応じた、先ほど御紹介しました最低居住水準に達するか達しないかということをチェックして、その未満になる世帯数を推計するというような道筋で、自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯がどれだけあるかという作業をします。

 ちなみに、第八期五カ年計画の場合は、これら世帯数が百七十六万世帯と推計いたしました。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 二つだけ言っておきたいんですけれども、局長、あなたは、住宅に困窮する低所得者に対して、こう言うんだけれども、その前提があるんですよね。忘れちゃならないのは、もう一度言えば、健康で文化的な生活を営むに足る住宅を整備するということが前提にあるんですね。それで、後ろの方もあるんですよ。それは、低廉な家賃で貸すということを言っているんですよ。その二つの話を抜いて真ん中だけ言ってはあきません、やはりそれは。

 それで、あなたはおっしゃらなかったけれども、結局、では百七十万が対象だと。先ほど私が言ったのは、それへの対応はどないだったかということも含めてと言いましたよね。その辺の方はなかったですわな。どうですか。

山本政府参考人 この推計作業の中で、自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯ということで百七十六万世帯を推計したわけですが、これまでの公的賃貸住宅の運用の実績から、五カ年間に公的賃貸住宅に生じる空き家が、経験的に数字がわかっておりまして、大体百万戸、五カ年間に発生いたします、百万世帯が入れかわるということでですね。

 そういうことを整理した上で、この第八期の五カ年計画期間中、平成十三年度から今年度まででございますが、公的賃貸住宅として七十六万戸を供給する、これは対応する必要があるというふうに計画では整理しているわけでございます。

穀田委員 計画では整理しているけれども、なかなかあなたは言われへんから、要するに、三年間で新規にふえた戸数、つまり、管理戸数ベースでいきますと一万戸程度なんですよ。だから、不足していることは明白なんです。

 資料を見ますと、実際大阪などで今後どれだけ需要があるかということを推計してみまして、二十二万戸が必要だと。平成十二年度の大阪府の包括外部監査結果報告書、ちょっとあれですけれども、そういうふうに大体なっています。その方法は、大体、総世帯数から持ち家の戸数を差し引いた借家に住む世帯のうち、収入の二五%、すなわち四分の一が公営住宅に入居資格があるとして、そこから既設の公営住宅戸数を引けば、概数ですから非常に粗っぽい数字ですけれども、必要な住宅の戸数が出る。そして、この借家は、一方、先ほど述べた最低居住水準以下のものが多いということを分析しています。

 だから、私が言っているのは、確かに地域によって差はありますよ。でも、公営住宅の総数が足りないということを私はあえて言いたいわけです。現に、公営住宅の応募倍率は大変なものだとだれも知っています。入りたくても入れない。

 最近の応募倍率数はどうなっているのか。全国と東京、大阪の実態はどうなっているか、お聞きします。

山本政府参考人 公営住宅の応募倍率でございますが、平成十五年度におきまして、全国で九・四倍、東京都で二十七・四倍、大阪府では十三・八倍となっております。

穀田委員 今お話しされた実態からしても、不足していることは火を見るより明らかです。単なるミスマッチでは済まされません。

 今回、この法案の審議に当たって配付された調査室の資料によれば、「住宅困窮者の増加、多様化」という資料がありました。これは、いずれも社会資本整備審議会住宅宅地分科会に提出した資料のようです。現在も、公営住宅入居の裁量階層としている高齢者、障害者はふえていきます。これに、その資料で述べているように、子育て世代、DV被害者など、入居要件を緩和するなど公営住宅が受け入れるべき対象は今後もふえ続けるのではありませんか。その点はどのようにお考えですか。

山本政府参考人 少子高齢化の急速な進展などの社会経済情勢が大きく変化している中で、高齢者が増加しておりますし、障害者それからドメスティック・バイオレンスの被害者など、社会的弱者が多様化しているという事実がございます。

 こういった社会的弱者の多様化、増加に対しましては、公営住宅を初めとする公的賃貸住宅におきまして適切にその居住の安定確保を図るべきでありまして、将来の世帯数の動向、経済情勢の変化などをかんがみますと、今後も公的賃貸住宅の役割はしっかりあるというふうに認識しております。

 こうした公的賃貸住宅に対する需要に対し、民間住宅も含めまして、既存ストックを有効に活用して的確に対応していくことが必要であると考えております。

穀田委員 いつも最後の方にそっちをつけ加えるんだよね。私が聞いているのはその前半の方なんです。

 いずれにしても、需要はふえるという見込みだと。もちろん、世帯数の増加というのは二〇一五年に向けてピークを迎えますから、その伸び率は鈍化するでありましょう。しかし、ふえるということは確かだと思うんです。

 しかも、今社会状況でどうかという問題になりますと、調査室の資料も触れていますが、雇用の問題も深刻ですし、国際化によって外国人もふえているということを指摘していました。私は、それ以外に、リストラなどを背景にした問題やホームレスもふえているという現状に着目する必要があるし、同時に、この間の国民所得階層の極端な二分化といいますか二極化とか、そういう問題がありますから、低所得者層というのはふえると考えるのが一般的だと思うんです。

 そこで、民間のどうのこうのと言うよりも、まず率先して本来役割を果たさなければならない国と地方自治体が仕事としている公営住宅は、足りないということになるということが大きな結論だと思うんです。

 ここまで論じてきたわけですけれども、法案について一点だけ、じゃ、最後大臣に聞く前に聞いておきたいんですけれども、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法、この法案で、大都市で異常に高い応募倍率である公営住宅の量的な不足は解消されますか。この点、聞いておきたいと思います。

山本政府参考人 公営住宅につきましては、住宅困窮者の居住の安定を確保するためのセーフティーネットとして供給されてきたところでありますけれども、応募倍率、先ほど御説明しましたように大都市を中心に非常に高い、需要が依然として高い状況にございます。

 このような状況に対応するために、今回の法案におきましては、地方公共団体が、地域の需要に柔軟に対応できるように、公共団体が作成した地域住宅計画に基づきまして、地域住宅交付金を活用した公営住宅あるいは高齢者向け優良賃貸住宅などの公的賃貸住宅の総合的な整備を図るという仕事、それとあわせまして、その際、民間賃貸住宅の借り上げあるいは買い取りによる民間賃貸住宅のストックの有効活用、それから、地域住宅協議会を通じた、公営住宅それから機構の住宅、特優賃も含めまして、そういった公的賃貸住宅を一体的に、有効的に活用するといったようなことが可能になっているわけでございます。

 これらによりまして、住宅困窮者に対するセーフティーネットの充実強化が図られることを期待しております。

穀田委員 その期待どおりいくかなと私は危惧を覚えます。

 というのは、ある地方自治体では、多様な居住ニーズに対応するには市場機能を有効に活用することが最も効率的として、これまでの市営住宅等の公共賃貸住宅の供給を中心とした政策から市場の活用を重視した政策への転換が必要だといって、例えば川崎の住宅基本計画などではその住宅供給基本計画を方向づけています。

 だから、多様なニーズに応じるためには、簡単に言えば、市営住宅等の供給を手控えて市場に任せようということだと思うんですね、この考え方は。極めてそうなりかねない問題をはらんでいるという現実があるということをぜひ見てほしいと私は思うんです。

 そこで、最後に大臣にお聞きしたいんですけれども、副大臣もあわせて答えていただいても結構なんですが、ここまで私が論じてきたのは、公営住宅でいうんであれば、余っているどころかそれは足りない。その要因は、九六年の公営住宅法改悪で新規建設を抑制したからにほかならない。東京や大阪は、これ以後、新たな建設をやっていません。確かに、建てかえなど、改善で幾らか戸数がふえている、これはあります。

 しかし、最初に言いましたけれども、公営住宅を住宅困窮者に供給するのは国と地方自治体の責任であります。セーフティーネットと言うなら、公営住宅を必要とするすべての住宅困窮者を対象にして公営住宅を供給するべきだという方向は変わらないと私は思うんですが、その点の見解を伺っておきたいと思います。

北側国務大臣 低所得者の方々を中心といたしまして、住宅に困窮されている方々の居住の安定を確保していくというのは国の大きな責務であるというふうに思っております。

 現在、この公営住宅は二百十九万戸でございます。ちょっと、これまでどれぐらい公営住宅を建設してきたのか、その経過を見てみますと、昭和四十年時点では十八万戸余りだったんですね。二十万戸も公営住宅がなかったんです。昭和四十年です、今から四十年前。これが今、約二百二十万戸に近くなっているわけですね。そういう意味で、この四十年間で十倍以上もこの公営住宅を建設してきたわけでございます。特に、昭和四十年代に一番建設しました。今ある公営住宅の三分の一強がこの昭和四十年代の十年間で建設をしています。これがもうこれから当然、建てかえを初めといたしまして、さまざま改善をしなければならないわけですね。

 一方、日本の社会は人口減少社会にいよいよ突入する、そしてさらに高齢社会。高齢社会というのは、本格的な高齢社会はこれからでございます。これから本格的な高齢社会が到来する。となると、きょうの御議論にもありました、公営住宅のバリアフリー化をしっかり進めていくだとか、また、公営住宅に、建てかえの際に、そうした高齢者の方々のケアをできるような施設を併設していくだとか、そうしたニーズなんかもたくさん出てくるわけでございます。

 そういう意味で、今、やはり住宅政策の転換期にあることは間違いないと思うんですね。やはり、この二百十九万戸という公営住宅であれば、このストックをこれから建てかえも含めましてどう有効に活用していくかということに、限られた予算の相当な部分を使っていかないといけない時代になってきたことは確かなんだろうというふうに私は思うわけでございます。そういう大きな変化の中で、今、新たな住宅政策というものを検討しようとしているところでございます。

 ただ、一方で、住宅セーフティーネットの確保というのは当然必要なわけでございます。市場重視ですけれども、一方で、住宅セーフティーネットの確保というのは国また県の大きな役割でございまして、それはしっかり果たしていかなければならないと考えているところでございます。

 また一方で、公営住宅というのは、住宅に困窮する低額所得者に供給していくということがこの公営住宅の一番の役割でございます。そういう意味では、きょうも幾つか議論ございましたけれども、入居者の方々の中に収入超過者の方々もいらっしゃるわけですね。そういう方々についても、今後それをどうしていくのか。また、先ほども御議論ございました入居承継の問題、承継の問題をどうしていくのか。そうしたことも議論をしていく必要があると考えているところでございます。

 いずれにしましても、公営住宅の役割というのは決して小さくなっているわけではない。私は、大事な役割をこれからもしっかりと担っていかないといけない。ただ、時代の大きな変化の中でその役割の果たすべき方向が、従来は、公営住宅をしっかりどんどん建設していく、開発していくということにやはり主眼を置いてきたわけでございますが、これからは、そういう意味では、既存の公営住宅を、どうこのストックを有効に活用していくかというところに重点を置いていくという方向性は、流れは、これは正しいものだというふうに思っております。

穀田委員 私は、転換期、そういうストックが重要な側面を持っているということを否定しているわけじゃないんです。それもやはり、例えばどういう視点に立って物を考えるかということが問われているんだと私は思うんですね。国交省は必ず住宅困窮者という話はするんですけれども、前の方の、健康で文化的なというのをいつも抜かすんですよね。やはり私は、憲法二十五条の精神というのは今ほど大切な時期はないと思うんです。転換というのは、ある意味では充実ということだと思うんです。その際の視点というのは、住まいは人権だということをどうやはり我々が見るかだということは思うんですね。

 昭和四十年ごろに随分建てたという問題もそうですし、その点では、住み続けたいという思いもあれば、また、それを建て直してほしいという場合もあるし、その建て直しについても安くやってほしい、そういう方々の希望もあるわけなんですね。そういうものをいかにしてとらえるのかということだと思うんです。

 その際に、なぜ私はその前段の方を強調したかというと、やはり、生存権を住宅の面から支える、そういう精神でつくられた法律の真髄が問われているからだと思うんですね。というのは、生存権というのはあくまでも、社会や経済の水準の向上に応じて、求められる生存権の水準も上がるということだと思うんですね。これが社会の進歩であって、歴史の進歩だと思うんです。

 そういう意味で、私は、転換期という名前で事実上新しい住宅をつくることを手控える、抑制するというやり方はちょっとおかしいんじゃないか。そういう意味での、政府の住宅政策が公共住宅からの撤退という道筋で進もうとしている懸念を持たざるを得ない、その点だけ指摘をして、きょうの質疑は終わりたいと思います。

    ―――――――――――――

橘委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る二十六日火曜日午前九時、参考人として横浜国立大学大学院工学研究院教授小林重敬君及び東洋大学工学部教授内田雄造君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十六日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時七分散会


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