衆議院

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第14号 平成17年4月26日(火曜日)

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平成十七年四月二十六日(火曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 橘 康太郎君

   理事 衛藤征士郎君 理事 萩山 教嚴君

   理事 望月 義夫君 理事 山口 泰明君

   理事 阿久津幸彦君 理事 金田 誠一君

   理事 土肥 隆一君 理事 赤羽 一嘉君

      江崎 鐵磨君    江藤  拓君

      木村 隆秀君    櫻田 義孝君

      菅原 一秀君    高木  毅君

      武田 良太君    中馬 弘毅君

      寺田  稔君    中野 正志君

      二階 俊博君    葉梨 康弘君

      林  幹雄君    古川 禎久君

      保坂  武君    松野 博一君

      森田  一君    菅  直人君

      下条 みつ君    高木 義明君

      玉置 一弥君    辻   惠君

      中川  治君    長安  豊君

      伴野  豊君    松崎 哲久君

      三日月大造君    和田 隆志君

      若井 康彦君    若泉 征三君

      佐藤 茂樹君    谷口 隆義君

      穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   参考人

   (横浜国立大学大学院工学研究院教授)       小林 重敬君

   参考人

   (東洋大学工学部教授)  内田 雄造君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  室井 邦彦君     辻   惠君

同日

 辞任         補欠選任

  辻   惠君     室井 邦彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的資金による住宅及び宅地の供給体制の整備のための公営住宅法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)

 地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案(内閣提出第二五号)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

橘委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省鉄道局長梅田春実君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橘委員長 JR西日本福知山線列車脱線事故について政府より報告を求めます。国土交通省鉄道局長梅田春実君。

梅田政府参考人 鉄道局長の梅田でございます。

 西日本旅客鉄道福知山線における事故について御報告いたします。

 昨日、四月二十五日午前九時十八分ごろ、西日本旅客鉄道福知山線の尼崎駅―塚口駅間において列車が脱線し、多数の死傷者が生ずる事故が発生いたしました。

 まずは、事故に遭いお亡くなりになりました方々の御冥福をお祈りし、御遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げたいと思います。事故で負傷されました方々の一刻も早い御回復をお祈り申し上げます。

 この事故は、宝塚駅発同志社前駅行き七両編成の快速列車のうち、前の五両が脱線し、そのうち前の二両がマンションの一階部分に衝突したものであります。約五百八十名の方が乗車されておりましたが、これまでに判明したところでは、死者は七十二名、負傷者は四百四十二名に上っております。

 かねてより、安全は運輸サービスの基本であり、安全性の確保が利用者に対する最大のサービスとの認識のもと、安全対策に全力を挙げて取り組んでまいりましたが、今回のような多数の死傷者が生じたことはまことに遺憾であります。

 国土交通省といたしましては、北側大臣を本部長とする福知山線事故対策本部を設置するとともに、現地でも近畿運輸局に福知山線事故対策本部を設置し、事故の対応に全力を挙げているところであります。

 私自身も、昨日、北側大臣とともに事故現場に急行し、事故の実態を把握するとともに、北側大臣から西日本旅客鉄道の垣内社長に対し、事故の被害者に対して誠実かつ万全な対応を期すること、事故原因の究明について、航空事故調査委員会等関係機関に対し全面的に協力することを強く要請いたしました。その旨を鉄道局長名で文書にて警告いたしました。

 なお、現地においては、岩崎大臣政務官が引き続き事故の対応を行っているところであります。

 さらに、公共交通機関に係る安全対策の徹底を図る観点から、昨日、国土交通大臣名で公共交通事業者あてに文書にて、改めて安全対策の徹底を図ること、その際、本社の安全対策の責任者が直接現場に赴き確認をすることについて強く要請したところであります。

 事故原因につきましては現在調査中でありますが、まずは被害を受けられた方々への対応を最優先にするとともに、事故原因の究明、さらには今後の事故再発の防止に全力を挙げて取り組む所存でございます。

 よろしくお願いいたします。

橘委員長 以上で政府の報告は終わりました。

     ――――◇―――――

橘委員長 次に、内閣提出、公的資金による住宅及び宅地の供給体制の整備のための公営住宅法等の一部を改正する法律案及び地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、横浜国立大学大学院工学研究院教授小林重敬君及び東洋大学工学部教授内田雄造君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様方に、本委員会を代表し、一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、大変御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、小林参考人、内田参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承お願い申し上げます。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず小林参考人にお願いいたします。

小林参考人 小林でございます。

 きょうはこの場にお招きいただきまして、ありがとうございます。

 最初に、私の方から十分ほど、メモが渡っていると思いますが、そのメモに従いましてお話しさせていただきたいと思います。三点に分かれてございます。

 一点は、今日の住宅政策をめぐる課題の多様化という意味でございます。

 あるいは御案内かもしれませんが、平成十六年十二月六日に、社会資本整備審議会住宅宅地分科会、私が参加している分科会でございますが、そこで新たな住宅政策に対応した制度的枠組みのあり方に関する中間取りまとめをいたしました。そこでは、住宅政策が、これからいろいろな大きな変動がある中で、一つの大きな課題としてやはりセーフティーネットをいかに確実なものにするかということがあるだろう、ただ、そのセーフティーネットのあり方についても課題はいろいろ多様化しているという議論がございました。それを整理したのが、そこに書いてあります1)から4)でございます。

 最初の1)は、既存住宅ストックの有効活用ということで、既存にあるさまざまな、特に公的賃貸住宅その他を有効に活用して、セーフティーネットの充実あるいは展開を図るという意味です。具体的には、例えばストック更新の多様化という意味では、単なる建てかえだけではなくて、改修とか、場合によってはコンバージョンといって用途、中身を変えていくというような、多様なストック更新を考えたらどうかというようなことでございます。

 二番目は、福祉政策との連携でございます。御案内のように、最近の高齢化社会の中で、福祉施設がさまざまな形で要求されてございますから、福祉施設、福祉サービスを伴った公的賃貸住宅をきめ細かに供給したらどうかという議論でございます。さらに、多様化する社会的弱者への入居支援という議論もその中で語られていました。

 また、これは住宅政策のみではございませんが、都市づくりの面から、あるいはまちづくりの面から、大規模な公的賃貸住宅はまちづくりの大きな資源でございますので、それをうまく活用して住宅政策を進めたらどうかとか、最近の地方中心市街地の衰退を考えると、町中居住によって活性化を図るというようなところに住宅政策の役割を見出すのはどうかという議論でございます。

 さらに、民間等の活力の活用という意味では、民間事業者などによる公的賃貸住宅の整備とか管理というような議論もあわせて必要ではないかというような中間まとめをしているわけでございます。

 ここで私が申し上げたいのは、このような住宅政策の課題、特にセーフティーネットにかかわる課題の多様化は、国が今思いついたことではないということでございます。

 私も幾つか地方自治体の住宅マスタープランに、後でお話しいたしますが、かかわってここ十年以上経過してございますが、そのような形で直接住宅供給その他にかかわっている地方自治体において、住宅マスタープランというものを従来からつくってございます。そのような住宅マスタープランをつくっている中で、先ほど申し上げましたような、住宅政策をめぐる、特にセーフティーネット面での課題がさまざまに語られ、具体的にマスタープランの中に位置づけられているということでございます。

 今回の新しい特別措置法は、地域が、地域住宅計画を作成し、地域の多様性に応じた新しい住宅政策を進めるというのがポイントでございますが、そのような制度ができたから地方公共団体が慌てて計画をつくるというような状況にはないということです。これまで住宅にかかわるマスタープランがさまざまな形でつくられ、その中で多様なその地域地域に基づく必要性が語られている、そういう土壌がある中で今回の新しい措置法が生まれてきているということをぜひ御理解いただきたいというのが、二点目の議論でございます。

 そこに書いてありますように、2の地方自治体地域住宅計画づくりの蓄積でございますが、大きく分けて二つございます。

 一つは、昭和五十八年から始まりました地域住宅計画、これはHOPE計画と略称してございますが、市区町村が中心になってつくっている計画でございます。これまでに、そこに書いてございますように、五百に上る市町村がそれぞれの地域特性に応じてHOPE計画というのを立案してございます。このHOPE計画は、住まいづくり、住宅づくり、その地域地域の資源なり地域地域の文化なりを背景として、住まいづくりをベースにしてつくられてきたものですが、その後、それが地域づくり、まちづくりに展開して総合的な計画になりつつございました。

 さらに、そのような地域住宅計画としてのHOPE計画が蓄積する中で、より一般的な住宅マスタープランづくり、これは国土交通省が一定の音頭をとってそういう方向に向けてきたわけですが、住宅マスタープランづくりが展開され始めました。具体的には、平成六年度からそのような計画づくりが展開されたわけです。現在まで千四百七十四の都道府県あるいは市町村で住宅マスタープランづくりが行われている。やはりそのことを今回の特別措置法との関係では重視すべきではないかというのが、二点目の議論でございます。

 さらに、二枚目でございます。三番目でございます。それでは、今回特別措置法でつくられました制度の枠組みの中で、地域住宅計画を運用するもとになる地域住宅交付金にかかわる議論を少しさせていただきますと、3にございますように、1)から3)とございます。

 一つは、今回の地域住宅計画をつくることによって、福祉部局、都市・まちづくり部局、経済部局など地方自治体の多くの部局が積極的に連携を図って住宅政策をつくる、そういう基盤が従来以上に固まってくる可能性があるのではないかということでございます。具体的には、私がかかわっている横浜市の住宅マスタープランでも、都市政策、まちづくりとの連携とか、福祉、教育との連携というようなことをうたわれておりますし、川崎市のマスタープランでも同じような傾向でございます。

 さらに、もう一つ私が議論したいのは、地域ボランティア、NPOなどとの連携の強化による新たな公共性の実現というようなものが、具体的に地域住宅計画の中で言葉として表現されているということでございます。これについても、横浜市住宅マスタープランと川崎市マスタープランの中で、それぞれ、さまざまな形で地域ボランティアやNPOとの関連を具体的に計画に位置づけ、その実践を図っているところでございます。そのような実践を今回の特別措置法は制度として具体的に位置づける、そういうものではないかということで期待しているところでございます。

 さらに、今回の地域住宅計画は、地域住宅協議会というものをつくって、都道府県、市町村、都市再生機構、地方住宅公社などが一体となって新しい住宅政策を担うという仕組みが出ております。私も幾つかの小さな市町村の住宅マスタープランづくりにかかわったことがございますが、なかなか住宅サイドの実力と申しますか、全体を見通して計画をつくるという力が十分でない市町村も多いわけでございまして、今回は、そういう市町村に、都道府県が一定の役割を担って協議会をある意味で先導していけるというような、そういう仕組みが生まれたということは評価したいと思います。

 ただ、そのことが、実はHOPE計画というのは市区町村を中心にして策定されて、全国組織がつくられて、それぞれの市区町村がどのような努力をしてそれぞれの地域特性に応じた住宅政策を展開しているかという意見交換をやる場がつくられてございましたが、そのような全国的な横のつながりも私は今後も必要だと思っておりまして、地域住宅協議会という縦の系列とあわせて、横の連携としての全国組織があわせて活用されることを期待したいと思います。

 最後でございます。4ということです。ただ、その中にも幾つかの施策の課題があるだろうと思っております。

 一つは、計画実現効果の客観的な評価ということで、今回の計画が、事前審査から事後評価に計画の評価が変わったということでございます。このことを具体的にどのように進めるかということは必ずしも明確ではなくて、特に一番問題なのは、住宅にかかわる地域に根づいた情報がどこまでとれて、そういう情報をベースに、データをベースにどれだけ効果があったかということを述べなければいけない、そういう基盤が十分あるかということが一点でございます。

 それから第二点は、今回の計画ですと、基幹事業と提案事業の二つに分かれていて、基幹事業が四、提案事業が一、大体の比率ですけれども、そういうようなことが示されてございますが、幾つかの私のかかわる自治体では、基幹事業を十分組めない自治体がある。そういうところで今回の地域住宅交付金をどのように運用していくかという問題があるのではないかということが二点目でございます。

 最後のNPOの主体の位置づけですが、この点は、最近お話を聞いたところでは、私の疑念はむしろそうではなくて、このような問題はないということでございますので、これについてはここに書いたことを若干訂正させていただきたいということでございます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

橘委員長 ありがとうございました。

 次に、内田参考人にお願いいたします。

内田参考人 東洋大学の建築学科の教員の内田でございます。こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 今回は、二つの法律、公営住宅法の一部改正の法案、それから特別措置法に関する二つでございます。私は、きょうは、時間の関係もございますので、主に公営住宅法の問題をしゃべりたいと思います。

 ただ、一言、特別措置法に関しても申し上げておきたいと思うんですけれども、私は、特に中心になっております地域住宅政策交付金というのは、先行して実施されておりますまちづくり交付金と同様な性格を持つ一括補助金だというふうに思います。

 確かに、他分野との連携とか、小林参考人が申されたような、自治体が計画を立てて評価するというこのプロセス等、非常に注目すべき点は多いのでございますけれども、地方自治体の職員の方々に伺いますと、まちづくり交付金が、非常にチェックが厳しくて使い勝手が悪いというふうな批判があるということはぜひ理解していただきたいと思います。

 それから、そもそもこれは、一括補助金でございますけれども、本来で言えば、交付税なりあるいは税源の移譲が本筋ではないかということも述べておきたいと思います。

 それから、私が申し上げます公営住宅法の一部改正についてでございますけれども、私は、個々の施策についてはそれなりの改善案として評価しております。その上で、私が申し上げたいのは、一部改正はそれなりに理解いたしますけれども、公営住宅をめぐる状況認識がちょっと甘いのではないかということを危惧するわけでございます。

 今日、私もさまざまな自治体と住宅マスタープランなんかをやりますけれども、公営住宅を積極的につくっていこうという自治体はもう皆無の状態です。大都市では建てかえのみが行われているという状況なんですね。なぜそうなのか。単にこれは財政上の問題ではないというふうに私は思います。やはり、もう公営住宅システムがかなり破綻しているのではないか。あるいは、自治体の担当者なり担当部局がやる気を失っている。あるいは、私がかかわりました住宅の審議会等において、公営住宅をもっと建てようという発言に対して、市民の方からブーイングが起こるという状況だということも理解していただきたいと思います。

 そこに、私の簡単な、「大都市の公営住宅行政の改革を」というペラのメモがございます。御存じのように、一九九六年に公営住宅法の改正が行われて、応能応益家賃が中心になりました。これは公営住宅の入居者に対して家賃補助をするというふうに読みかえてもよろしいかというふうに思います。

 私は、豊島区の住宅対策審議会の会長として住宅マスタープランの答申案策定にかかわり、この間、情報開示を徹底して求めました。どういうふうになっているかということを求めて、ある程度実態を知ることができました。

 私は、住宅供給に当たりまして市場メカニズムを重視しておりますけれども、例えば、主たる家計支持者が失業したとか死去したという場合のセーフティーネットとして、あるいはファミリー層に対する安定した賃貸住宅の供給主体として、あるいはまちづくりとの連携で、例えば木造密集市街地ですけれども、そういうところのまちづくりと連携して公的住宅を供給するという意味では、公共の役割について非常に評価しております。ただ、一体、住宅行政におけるセーフティーネットとは何かということをもう少しはっきりお互いに議論した方がいいのじゃないかというふうに思うんですね。

 例えば、豊島区においては、区営住宅と都営住宅が千五百戸ございますけれども、ほとんど空き家は発生しないという状況です。発生すると、百倍近い応募率なんですね。そうしますと、いざ、セーフティーネットとして、困ったと駆け込んできた方々が公営住宅に入る機会は皆無に等しいという状況でございます。

 それから、高齢の年金生活者のほぼ八〇%は、収入の上では公営住宅の入居階層になっている。そういたしますと、どこまで住宅をつくっていいのかというのが担当部局の非常に困惑するところだと思います。

 それから、豊島区の場合でいいますと、区営住宅に対して区、都、国からさまざまな補助があるわけです。建設補助もありますし、家賃補助もあるわけですけれども、その補助は平均九十万円ぐらいに及んでいます。八十万から百万を超えるところまである。そうしますと、公営住宅に入れた方と、入れないで民間の借家に住んでいる方の格差は余りにもひどいんじゃないか、公平性を失しているのじゃないかというふうに思います。よく、高額所得者が偽っているというような議論がありますけれども、それは私から見るとマイナーな問題で、むしろ、入居できた人と入居できない人の問題をどう考えるかということが問題だというふうに思います。

 あるいは、一言申し上げたいんですけれども、生活保護の住宅扶助額というのは月額で五万三千七百円でございます。ということは、場合によっては、生活保護の住宅扶助額の倍ぐらい公営住宅の方に対する助成がなされているという実態でございます。

 それから、そもそも、応能応益家賃に移行したときに、当時の政府のお考えでは、所得の大体一五ないし一八%が住居費だということだったと思います。それが、実際には今九%ぐらい。あるいは、公営住宅に関しては七、八%だと思うんですね。こういう状態でいいのか、なぜそういうことが起こっているのかということ。

 私は、特に規模係数の問題が大きいと思っているんですけれども、これはちょっと技術的な問題に入りますけれども、公営住宅に住んでいる方は今ほとんど高齢の方が多いんですね。お一人の場合もありますし、お二人の場合もある。それで、小さな住宅に住んでおられるわけです。しかし、実際に、応益係数、要するに規模係数では七十平米で割っているということですと、小さな住宅に住んでいる方は大体半額ぐらいにディスカウントされるということになっております。そういう問題も大きいと思いますし、詳しいことは触れませんけれども、近傍同種家賃というのは、市場並み家賃ではない、関係者では大体八割ぐらいじゃないかと言われているわけですけれども、利益が入っていないというふうな問題がありまして、そこら辺も問題があるように思います。

 それから、これは国の問題ではございませんけれども、公営住宅法の本来家賃に対してさらに自治体レベルで各種の減免措置がなされていて、例えば豊島区の場合、半数以上の方々が月額一万円の家賃であるという実態です。しかも、多く払っている方の中には、生活保護である程度ちゃんと出せるという方がおられるわけですから、非常に低家賃になっているということも申し上げたいと思います。

 それから、これは市民のいろいろな御意見で特に出てくることでございますけれども、入居選定に当たって資産の問題がチェックされていないわけですね。そのために、資産がおありでも、あるいは子供夫婦に自分の住宅を譲ったなんという形で借家に入られるなんということも起こり得るわけであって、そういう点もかなり問題だろう。

 それから、一たび入居した場合、今度、継承の問題、だれがその権利を引き継ぐかという問題でございますけれども、今の継承は、まず同居は三親等まで認められています。私はこれは結構だと思うんですけれども、継承の権利というのが同居している親族ということになっているわけですね。そうすると、三親等まで現実的には継承されている。そうしますと、ほとんど家族内で、あるいは親族間で継承されまして、ほとんど表に出てこない。そうしますと、一生懸命住宅をつくっても、そういう形でどんどんストックになってしまっていて、いざ、セーフティーネットとしてというときに苦労するわけでございます。そこら辺の実態をぜひ御理解いただきたいと思います。

 私は、政府なりがやる気になれば、規模係数、先ほど申しました七十平米というのを直すこともできるし、近傍同種家賃というのもこれも改定可能だと思います。こういうことはすぐにでもやっていただきたい。

 二番目に、第二段階としては、やはり、これは地方自治体の問題ですけれども、独自減免措置というのが今のままでいいのかどうかということをちょっとは検討していただきたい。それから、セーフティーネットとして、例えば五年間の時限つきの借家なんかもぜひ考えていただきたい。それを乗り切れば、かなり頑張れる若い世帯も多いと思うんですね。そこら辺を思います。

 それから、もう終わりますけれども、入居に当たって、単純なガラガラポンと称されている抽せん方式ではなくて、ポイント制にしてほしい。あるいは、居住の承継も基本的には夫婦間でいいのではないかというふうなことがございます。あるいは、資産についても申告制にして、不正があったらペナルティーをかけるというふうなことを考えてもよろしいんじゃないか。

 さらに、最後に一つだけ私は申し上げたいんですけれども、先ほど、民間の借家に入っている方と、あるいは公団もそうなんですけれども、公営住宅に入る方の不公平が非常に多いんですね。公平性を失していると思います。そういう面でいえば、今の全体の公営住宅に入っている方に費やされている助成をもっとみんなにやった方がいいのではないか。そのためには、一種の、民間に入っている方、公団に入っている方にも家賃補助を本気で考えていく必要があるというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございます。(拍手)

橘委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

橘委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 自由民主党の寺田稔でございます。

 まず冒頭、昨日発生をいたしました列車脱線事故、大変な大惨事となっているところでございます。お亡くなりになられた方々、犠牲となられた方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、けがをされた方、また被害を受けられた方、心よりお見舞いを申し上げる次第でございます。

 当委員会初めこの国会の場におきましても、早急なる原因の究明、そしてまた詳細なる状況分析、また再発防止策等々につきましても、論議が早期になされることを望むものでございます。

 さて、ただいま両参考人の先生方より大変意義深い意見陳述をいただいたところでございます。今回、住宅政策の一つの大きな転換ということで、両参考人に対しまして質疑をさせていただこうというふうに思います。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 戦後の住宅不足が累次の政策的な努力の進展によりまして次第に解消をされてきまして、直近の数字ですと、世帯数を上回る住宅ストックが既に達成をされているというふうな状況になっているわけでございます。直近の数字で申し上げますと、世帯数が四千七百二十二万世帯に対しまして、住宅総戸数は五千三百八十七万戸数ということでございます。約六百万戸数上回っているというのが状況でございます。

 これまで国民の豊かさの指標としてよく論議をされておりました住宅の平均床面積につきましても、昭和四十八年の七十七平米から、直近の数字、平成十五年でございますが、三十年たちました平成十五年におきましては九十六平米と、恐らく本年、平成十七年におきましては百平米に迫る、あるいは百平米を上回るような水準になってきておろうかというふうに思います。

 また、これまで非常に水準が低いということで問題視をされておりました一人当たりの床面積の指標で見ましても、直近の数字で三十六平米ということでございます。これは確かにアメリカの六十五平米に比べますと見劣りがする数字でございますが、例えばフランスの四十一平米、あるいはまたドイツの四十三平米、さらにはイギリスの四十四平米というふうな欧州の諸国の数字と比べますと、我が国の人口稠密度、またさらには土地取得コストの高さなどを総合的に勘案しますと、十分に比肩し得るレベルにまで上ってきたというふうに認識をしているところでございます。

 特に、来年以降は本格的な人口減少社会を迎えるわけでございます。そのようなことで、世帯数も減ってくるということでございますので、やはりこれからの住宅政策の根幹は、既存ストックの有効活用ということが当然メーンの施策であるべきであるというふうに考えるわけでございます。

 そのような観点から見ましたときに、今回の公営住宅法の改正でございますが、いわゆる公営住宅ストックの一体的、一括的管理が可能となるような法改正が施されているわけでございます。例えば、県が県営住宅とあわせまして市営住宅の管理も一緒に行うことができるようになる、あるいはまた、住宅供給公社が県営住宅や市営住宅を一体的に管理できるようになるというふうな仕組みを導入されている。また、もう一本の公的賃貸住宅の整備特措法によりまして、大臣が定めますところの基本方針に従いまして、それぞれの自治体が住宅の整備計画を策定して、計画的に住宅ストックの整備、しかも優良で良質な整備をまちづくりと一体となった形でもって行うことができるような体制が整えられるわけでございます。これは、この一連の、社会資本整備審議会におけます昨年十二月の中間取りまとめを踏まえたような方向であるわけでございます。

 そのような意味で、今回の改正によりまして、非常に効率的かつ一体的な公営住宅の管理が可能になってくるわけでございまして、その意味で、先ほど申しましたような既存ストックの有効活用というふうな点から見て一定の前進がある、一定の効果があるものというふうに思料されるところでございます。

 このように、賃貸住宅、すなわち公的主体が所有権を持ってそれを貸し付けるという形態の公営住宅におきましては、既存ストックの有効活用という視点を入れやすいというふうに思うわけでございますが、問題は、いわゆるこれまでの政府が進めておりました持ち家促進政策のもとでの個人住宅、これに対して一体どういうふうに対処するかという処方せんはまだ示されていないわけでございます。

 この個人住宅のストックを有効に活用するというふうな観点での空き家対策としては、既に先駆的な試みはなされているわけでございますけれども、例えば構造改革特区の試みとして、いわゆる町並み保存特区、これはつい先月でございましたが、中旬、この申請がございまして、政府によりまして先月末に認定になったばかりでございます。これは、一定の空き家対策を視野に入れて、個人の持ち家ストックを有効に活用していこうというふうな構造改革特区の取り組みでございます。

 しかし、個人住宅について、抜本的に考えまして一体どういうふうなストック活用策というのがあり得るのか、その点につきまして、両参考人、それぞれお伺いをいたしたいと思います。御所見をお願いしたいと思います。

小林参考人 それでは、お答えさせていただきます。

 かなり基本的な御質問で、どのようにお答えしたらよいかちょっと戸惑っているところもございますが、私は、住宅政策は基本的に、公平性という立場と効率性という立場、この二つが必要だと思っております。住宅ストックをできるだけ活用するというのは、そういう意味では、効率性という視点から重要な政策の一つだと思います。

 公的住宅についてはお話のような議論がございますが、いわゆる一般的な個人住宅をどのようにストックとして活用するか。

 今、実は、ある市でこういう試みをやろうとしております。それは、高齢者が比較的広い住宅にお住まいである。しかし、その高齢者は、あるいは一人、あるいは二人でお住まいで、その高齢者が住まわれている広い住宅を維持管理していくことに大変難渋している部分が出てきている。一方で、子育て世帯が狭い住宅に入っておられて、これから子供が成長するに当たって、より広い住宅を求めている。高齢者は、できれば例えば比較的施設の整った有料老人ホームに入りたい。そのためには、元手はある程度確保しているけれども、月に例えば十数万の支払いをどのようにするかということを考える。高齢者が持っている住宅を子育て世帯に一定の賃料でお貸しして、上がってくる賃料で高齢者が有料老人ホームで生活する、そういう仕組みがうまくとれないか。その仲介役を地方公共団体がうまくとれないか。

 その辺は、シミュレーションをしっかりやらないと、実際にその制度が動くかどうかなかなか難しい点もあるんですけれども、例えば、そのような具体的な事例を展開するというのも一つの方式ではないかというふうに私は思っております。

内田参考人 まず一つ、ちょっと一般的なことを申し上げたいんですけれども、アメリカにおいては、人生というか家族形態が変わってくるに従って、転居が一般的です。人生で四回ぐらい転居するというふうに平均的には言われているわけです。それに対しまして、日本の場合には住宅の増改築で対処するということが一般的で、私は、杉並区の住宅審議会の責任者を務めたとき、杉並区で調べますと、大きな住宅でもう二階は使っていない、子供たちが結婚して出ちゃっていて、英語で言いますとエンプティーネストといいますけれども、そういうふうな形で、使っていないという住宅が随分多かったというふうに思います。

 それからもう一つは、住宅の平均的な耐用年限が、日本では三十一年、アメリカでは四十四、五年、それからイギリスでは七十五年と言われていまして、日本の場合でも、木造住宅に関して言えばもっとずっと早く壊されてしまうわけです。

 そういうふうな状況をどうするかというのが大きな問題で、基本的には今の議員の考え方と私も同じなんですけれども、一つは、技術的にそういうふうに住宅をリフォームしながら使いこなしていく、具体的にはバリアフリーの問題なんかがあると思います。それから集合住宅の場合には、スケルトン・インフィルといいまして、枠組みをつくって、その住戸の部分だけを新しくつくり直していくというふうなこともあり得ると思います。

 もう一つ、ソフトの問題ですけれども、これは小林さんとかなり近いんですけれども、例えば、そういうふうに半分空き家になっている、あるいは使われていない、ストックとして十分活用されていない部分をどう活用するかという問題で、私は、要するに相対でやるのは非常に不安が強いんですね、そういうときに住宅供給公社なんかがそういう問題に入ってくるのがいいんじゃないかというふうに個人的には思っております。

 以上でございます。

寺田(稔)委員 ありがとうございます。

 それぞれ、個人住宅の分野につきましても、有効なストック活用策というのを導入していくのは今後の大きな課題になってこようかと思います。アメリカのようにセカンダリーマーケットが非常に発達しておりますと、例えばリバースモーゲージによってキャッシュフローを賃貸化していくというふうな手法が既に一般的に用いられておりますが、先ほどの陳述にもありますように、耐用年数の違いの問題、あるいは基本的な住宅の構造の問題にもかかわってくるような論点も入ってこようかと思いますので、そういった点も十分また検討をしていければというふうに思っております。

 確かに、このように、住宅ストックの有効活用策というのは今後非常に大きな柱になってくるわけでございますが、しかし、だからといって、公営住宅あるいはまた個人住宅についてもそうでございますけれども、優良で良質なストックを供給していくという新規の建設ニーズ、これは決してなくならないというふうに思うわけでございます。しかしながら、現在の国及び地方の危機的な財政状況ということにかんがみますと、例えばこれまで、過去、住都公団が行ってきたような大規模ニュータウンの建設事業、これはもう不可能でございますし、そういった分野から撤退をしていくというふうなことでございます。

 また、いわゆる公的金融として、これまで住宅金融公庫が新規融資業務を行ってきまして、個人の持ち家取得の促進施策を行ってきたわけでございますが、そういったような分野につきましても、今回の独法化によりまして、新たな形での新規融資業務については原則廃止をするというふうな流れでございます。

 したがって、そういうふうな状況にかんがみますと、国やあるいは公的な主体が個人の住宅建設に直接融資をしていくというふうな手法にはおのずと限界があるわけでございます。そうしますと、公的な住宅施策として、融資以外に一体どういうふうな手で、住宅ストック、特に個人の持ち家を促進していくことが可能かというふうなのが大きな課題となってこようかと思います。

 これは一つの方向性といたしましては、例えばアメリカのジニーメイやファニーメイに見られますような住宅抵当公庫を活用することによりまして、リファイナンス機能と保証機能に特化した形でもって、この二つの機能を重視したいわゆる市場志向型の住宅政策というのは当然あり得るわけでございますけれども、これにつきましても、まだ日本においては十分な中古住宅の流通市場、特に客観的な値づけを伴った形でもってのセカンダリーマーケットが確立をしていない現状では、一足飛びにそのような保証機能とリファイナンスといっても、なかなかそこは限界があるものというふうに思うわけでございます。

 今後のそういう住宅政策、特に公的金融あるいはまた直接的な住宅建設というふうなことを原則撤退をする中で、一体どういうふうな政策手段があるのか、両参考人の先生方にそれぞれ御所見をお伺いいたしたいというふうに思います。

小林参考人 ただいまの御質問、かなり基本的な御質問でございます。

 今、国やあるいは地方公共団体で住宅政策の新しい議論をしていく中で、一つ大きなテーマとして上がっているのは、先ほど中古住宅の流通の議論がございましたけれども、中古住宅の流通によってストックを活用していくというベースには、正しい情報をどのように提供するかということが大きなテーマではないか。市場重視がこれからの住宅政策の一つの柱であるとする、あるいはストック重視がこれからの住宅政策の大きな柱であるとすると、どのように正確に情報を、住宅を必要としている人たちに提供するか。

 民間市場で民間が出される情報というのを、一般の消費者は、そうですかという形で簡単に受け入れることはなかなか難しいとすると、特に今日のようにニーズが多様化している中で、本当に自分たちに必要な情報をどこからどういう形で得たらいいのかということが非常に難しい。そういう社会においては、公の側が住宅にかかわる情報を正確に提供する、しかも従来以上に多様な形で提供するという役割が求められている。

 これは特に、地方自治体の住宅マスタープランの議論をやっていくと、今の住宅政策の新しいあり方として、お金がないということも実はあるんですけれども、情報提供をいかにしっかりやっていくかということに政策転換を図っていこうというお話が非常に強く出されておりまして、参加している市民の方々、一般の方々もそういうニーズが非常にあるということを感じております。

 以上でございます。

内田参考人 市場メカニズムを重視するとすれば、その市場メカニズムがいかに円滑に働くかということを考えるわけでございます。私も、日本においては、一方ではモーゲージ、金融の問題がございますけれども、今小林さんが言われたように、適切な情報の開示。例えば、よく私が気にしているのはマンションの問題なんですね。

 例えばマンションに関して、マンションを売買しようと思っても、設計図書、図面なり、あるいは今まで計画修繕の積立金をどのくらいやってきたのかとか、あるいは管理規約がどうなっているかなんということが余り整理されていないんですね。こういう問題は、例えば、自治体がそういう場をつくって、そこにちゃんと情報を出しているマンションに関しては優良のマンションだという形で、みんなが安心して取引ができるなんということが必要なんじゃないかというふうに思っています。

 それから、先ほども申しましたけれども、一方で、やはりセーフティーネットとして、いざ生活に困ったというときにちゃんと受け入れる余地をつくっておいてほしいということと、これも先ほどお話がありましたけれども、まちづくりなり防災なり社会福祉と結びつく形で、単なる物の提供ではなくて、もう少し幅広く住宅行政を展開していくべきじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

寺田(稔)委員 ありがとうございます。

 それぞれ、情報提供の問題あるいはまた管理規約の問題、今後のこの施策の方向性について、極めて示唆に富む御発言をいただいたものというふうに思っております。

 さて、近時の非常に憂慮すべき状況の一つとして、地方住宅供給公社の財務悪化の問題が非常に顕在化してきております。

 現に、北海道や長崎や千葉においては破綻をいたしまして、民事調停法に基づきます特定調停事案として、非常に深刻な問題として発生をしてきているわけでございます。実は、私の地元でも、公的主体でありますところの勤労者住宅協会が供給いたしますところの住宅事業が財務悪化をいたしまして、非常に大きな問題としてクローズアップされてきております。

 このような公的主体の管理住宅が財務悪化をいたしますと、当然のことながら管理事務が滞ってくる、非常に不十分な管理となってきて危険性も増すわけでございます。また、近隣にとりましても、ごみ処理の問題でございますとか、あるいは大型廃棄物処理などが滞ったことによりまして非常に迷惑になってくる、迷惑施設と化してしまう。そしてまた、非常に住宅の質も劣化をしてくるということでございます。

 具体的には、例えば、共同溝工事がストップしてしまったりとか、あるいは、基礎的な生活インフラでありますところの上下水道あるいは電気などの供給が非常に不安定化してくるということで、住むこと自体、生活インフラ自体に滞りが生じることによって住環境が劣化をしてくるということがございます。

 そういうふうな状況を受けまして、居住者の方もだんだん歯抜けのように減少してくる、減ってくる、そうした中で管理費や負担金の未納がふえ続けてきているというふうな悪循環に陥っているわけでございます。どちらが鶏でどちらが卵かというふうな問題もあるわけでございますけれども、そういうふうな管理費の未納がふえますと、当然のことながら十分な管理業務ができない、積立金もこの取り崩しが一気に進んでくるということでございます。

 そのような悪循環状況を抜本的に改善していって良好な住環境を維持していく必要があるわけでございますが、いずれも、そういうふうな住宅公社の提供しておりますエリアというのは、ある意味で町中のいいところであったり、あるいは、郊外であっても非常に優良な場所が多いわけでございますけれども、住宅公社を破綻に追いやる以外に一体どのような抜本的な解決の手があるのか、それぞれ両参考人の先生方より御所見をお伺いしたいと思います。

小林参考人 大変難しい議論ですけれども、地方住宅供給公社は、御紹介いただいたような問題を抱えている地方住宅公社と、それから、そうではなくて、かなり良好に運営されている地方住宅公社がそれぞれありまして、非常に多様だというふうに思っております。非常に良好に運営されている、比較的良好に運営されている地方住宅公社では、例えば高齢者向けの住宅供給にかかわったり、新しい展開をどんどんやっているところもないわけではありません。

 ただ、御案内のように、確かにそうでない地方住宅供給公社が幾つか具体的にありまして、それについては解散ができるというような形で法改正がやられたところでございますが、解散すればいいというものではない、そういうお話が質問の趣旨ではないかと思いますね。

 私もどうやったらいいかよくわかりませんけれども、賃貸住宅として管理が行き届かなくなっている、例えばそういうところを、立地もいいわけですからもう少し多様な、例えば所得が低い方で、公社住宅の中には比較的規模の大きいところとか、あるいは規模が小さくても、立地がいいですから単身世帯が入居したい、そういう方々が場合によってはニーズとしてあるとすると、そういう情報をしっかり提供して、所得水準、収入水準、その他について一定の制約条件を場合によっては解除してやる、幅広くそういうところにさまざまな世帯が住めるような仕組みを積極的にやるというような手も、場合によってはあるのではないかというふうに私はとりあえず思っておりますが、お答えになったでしょうか。

内田参考人 議員の御質問あるいは御意見にもありましたように、住宅の新規供給からは、もうこれは大きな意味で引いていかざるを得ないというふうに理解しております。

 一方では、今小林さんがおっしゃったように、非常にいいところにいいストックを持っているわけでございますから、それを活用して、特定の高齢者とか目的をはっきりした供給はあり得るだろうということが一つ。

 それからもう一つは、先ほどちょっと申しましたけれども、公的な機関としてある面では住民の評価は非常に高いわけですから、ストック活用として、空き家になっているところなんかをうまく公社が入る形で定期借家として活用していくなんということもあり得るんじゃないか。あるいは、比較的数棟というレベルでの共同建てかえとか協調建てかえとか、そういう点で公社が果たす役割もあり得るんではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

寺田(稔)委員 ありがとうございました。

 それでは、時間が参りましたので、これにて終わらせていただきます。ありがとうございました。

橘委員長 菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自民党の菅原一秀でございます。

 まず初めに、昨日起きました兵庫県尼崎市におきますJR西日本列車脱線事故におきまして、死亡者七十一名、負傷者四百四十二名という大変多くの死傷者を出したことに、大変な大惨事になったようでございますが、亡くなられた方々に心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、遺族の方にお悔やみを申し上げたいと思います。また、負傷者の方々にも一日も早い回復を祈るばかりでございますが、当然、JR西日本、事故の徹底究明、要因究明、そしてまた再発防止に力強い取り組みをしなければいけない、また、それを監督指導する国交省の役割についてもしっかりその任を全うしていただきたい、このことをまず冒頭申し上げたいと思っております。

 さて、本日は、小林先生、内田先生、大変、大学の授業の合間を縫ってお運びをいただきまして、また、貴重なお話を賜ったことに厚くお礼を申し上げる次第でございます。

 きょうは、時間が限られておりますので、私からは公的賃貸住宅制度について御質問したいと思っております。

 私は、実は、これまで練馬区議会議員として、また東京都議会議員として、その後衆議院議員となったわけでございます。約十四年間議員活動や政治活動をしてきたんですが、この十四年間で非常に多かった課題は、一に介護における特別養護老人ホーム、この入居の問題、また、働く世代が非常に多い東京の状況の中で、保育園の入園の問題、そして都営住宅、区営住宅などの公営住宅、この入居の問題、非常に陳情が多かったわけでございます。

 とりわけ東京の場合は、応募の平均倍率は三十倍、中には五十倍という状況もありまして、ただ、入居方式については、やはり一般公募の場合は単純くじ引き、抽せん、もちろん住宅の困窮度に合わせたポイント方式も導入をされているわけでありますが、大概においてくじ引きで決められてしまう。したがって、初めて応募した方でも一発で当たる方もいれば、年に二回、三回応募をしても二十年も三十年も当たらない人もいるわけでございまして、私自身、この公営住宅のあり方について自分なりに考えてきたところでございます。

 公営住宅法は昭和二十六年に制定されて今日まで五十四年の歴史を数えたわけですが、戦後の復興期、それから高度成長、そして安定成長、バブル、バブルの崩壊、低成長、こういう時代を経て、昭和五十五年の改正では高齢者あるいは身体障害者、生活保護被保護者等の単身入居が可能になった。あるいは平成八年、先ほどのお話もありましたが、自治体の直接の建設からいわゆる民間の借り上げ、買い取り、こういったことが加わって、さらには障害者等に対するグループホームの利用も認められるようになった。こういう変遷を経てきたわけであります。また、きめ細かな応能応益家賃制度を導入することによって、公営住宅制度そのものが時代にマッチし得るような行政側の努力もあったと思っております。

 さらに、平成五年には、低所得者じゃなくて中堅の所得者に対する特定優良賃貸住宅制度、特優賃、この制定、そしてまた平成十三年には高齢者向け優良賃貸住宅に関する法の制定によって、高齢者が安心して居住できるような市場提供、整備というものを推進してきた、このように認識をしております。

 そういったことの結果、約三百四十万戸のいわゆる公的な賃貸住宅がストックとされ、そしてまたその中で二百十八万に及ぶ公営住宅が存在するわけでありまして、これは賃貸住宅全体の、千七百十六万戸のうちの約二割を占めているわけであります。

 そこで、まずお二人の先生方にお尋ねをしたいことは、こうした日本の住宅政策の中で公的賃貸住宅がこれまで果たしてきた役割、そして、今日多様化する需要、ニーズの中で今後この公的賃貸住宅の役割そのものも変わっていく、変わっていかざるを得ない状況があると思うんですが、この点につきまして、ポイントだけ小林先生、内田先生の順でお尋ねをしたいと思います。

小林参考人 それでは、お答えいたします。

 今、歴史をお話しいただきました。そのとおりだと私も認識しております。これまで果たしてきた役割は、多くの場合、収入という視点に立って、収入の低い方々に住宅を提供する、そういう役割を担ってきている。それはそれで非常に大きな役割を担ってきたと思いますが、先ほど内田先生もおっしゃったように、今日、収入という基準だけで本当に、真に住宅に困窮している人に対しての住宅供給になるのかという議論がございます。

 さまざまな形でハンディキャップを持った方々が出てきております。高齢者もその一つかもしれませんし、障害者、場合によっては外国人というような立場の方も、そのような住宅弱者の位置づけに入ってくるかもしれません。あるいは、子育て期の家庭、多くの子供を抱えている子育て期の家庭も場合によっては住宅弱者。

 そういうさまざまな側面から新しい公的な賃貸住宅に対するニーズが展開をしているのが今日でございますので、従来の収入基準、しかも収入基準といっても二五%という一つの大きな区切りの中で展開している公営住宅のあり方が、これからの公営賃貸住宅のニーズに十分対応している、そういうものであるかどうかということについてはやはり疑念がある。それをさまざまな形で展開していかなければならないだろうというふうに私は思っております。

 以上でございます。

内田参考人 先ほど私は意見陳述で申し上げましたけれども、議員も練馬で御活躍だということでよく現場を御存じだと思いますけれども、要するに、公営住宅に入りたかったけれども入れなかったという方は、かなりの家賃を払って民間の住宅に住んでいるわけですね。この方と公営住宅に入った方の、まあ入れた方はラッキーだったわけですけれども、その不公平さをどうするかというのが一番大きな問題だと思います。

 ちょっと古いデータですけれども、単身者を除く公営住宅に入居希望している人が約二百万世帯はあるんじゃないかというふうに言われているわけです。そうしますと、今公営住宅は二百二十万戸近くだと思いますけれども、こういうことを考えると、公営住宅を当面建設していっても、とてもうまくそれには対応できない。それよりは、むしろ公平性を担保する意味では、大きな意味で、民間の例えば木造の住宅あるいは賃貸アパート、あるいは公団住宅に住んでおられる方に対しても家賃補助をすべきではないか。

 今の応能応益家賃というのは、公営住宅に入れた方に関しては家賃補助をする、その家賃補助の基準が応能応益なわけでございますけれども、同じような考え方を公営住宅でない人に対してもやるべきではないか。原資が限られているとすれば、若干公営住宅に入っている方の家賃が高くなっても、幅を広げる方が、私は社会的なコンセンサスが得られるんじゃないかというふうに思っています。

 それともう一つ、セーフティーネットだけはぜひ確保していただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

菅原委員 内田先生にお伺いをしたいんですが、ただいまのそのセーフティーネットについてでございますが、時代の変遷とともにセーフティーネットのコンセプトが非常に変わってきていると思うんですね。この論文にも先生書いてありますように、主たる家計支持者が失業したり亡くなった場合のセーフティーネットとして公的賃貸住宅の供給を役割として果たすべきだ、まことにもって私もそう思っております。

 実は十四年前に、私、区議会議員だったんですが、たまたま父親が人の会社の保証人になって、会社を整理しなきゃいけない、会社も自宅も全部一度失って、競売にかかったことがあるんですね。そのときに、きょう住むところをどうしようか、あしたからどうしようかと。やはりそういう状況に陥って初めてわかる、こういう状況がある。私は、そのとき親だけでも都営住宅に入れたいなと思ったんですが、そういう経済的事由で応募しても、これが全く対応できていない。

 一方で、実態はといえば、先ほど来お話がありますように、今まで従来どおり、所得が低くて、そして民間の住宅市場においては最低居住水準を満たす住宅を取得し得ない方々が入居している。

 私は、年間三万人を超える自殺者が出ている今日、あるいは失業者、自己破産の数が非常にふえている、そういう意味では、先ほどおっしゃった別枠の設定、つまり定借、定期借家制度を含めて、例えばそういう緊急対応を要するものについては五年間ぐらいの期間を設けて定借を導入したり、あるいは入居の審査等も、あるいは入居の応募方式についても、今までの単純な抽せん方式から、優先、困窮度に応じたポイント制を導入した上で抽せんをするような仕組みがこれから必要ではないかな、こんなふうに思っておりまして、この点、広義の意味のセーフティーネットと狭義の意味のセーフティーネット、簡単に、あわせてこの改善策についてもお教えいただきたいと思います。

内田参考人 議員の方からむしろ方向性を出されていて、私が申し述べるところは少ないんですけれども、おっしゃるように、特に高齢者を中心とする住宅に困窮される方、これをどうやっていくかということをちゃんと考える必要があって、むしろこちらに関しては、私は、社会福祉とか身辺自立、生活自立をどう支援するかということと結びつけて考えていく必要があるだろうというふうに思います。

 それから、そうではなくて、比較的若い層で失業されたり、あるいは主たる生計維持者が亡くなったり病気になられたりという方に関しては、これはある時期を乗り越えればまたうまくやっていけるということがありますので、今議員がおっしゃったように、定期借家なんかをもっともっと導入して、いざというときにやっていただきたい。

 それから、練馬区もやっていると思いますし豊島区もそうですけれども、そういう場合、民間借家に対して家賃補助を、例えば豊島区でいうと安らぎ住宅といったかと思いますけれども、そういう形でもやっております。それは一種の緊急性に迫られて家賃補助をしているわけであって、そういうことをもう少し幅広くやってよろしいのではないかというふうに考えます。

菅原委員 先ほど内田先生おっしゃった収入超過者の問題、やはり高額所得も含めると、いわゆる本来入居資格がない方々が全国で二十四万世帯弱いらっしゃるわけですね。そういう状況の中で、家賃が市場の三分の一から二分の一、あわせて公的な助成も受けている。これはやはり、民間の賃貸住宅に入っていて本当に失業している方々等々を含めると、先ほどまさにおっしゃったセーフティーネットの概念というものが今日そういう部分では変わってきているのではないかな、さらにこの議論を進めていかなければいけないと思っております。

 小林先生にお尋ねをしたいんですが、今、期限つきの定期借家制度の問題が出ました。御案内のとおり、非常に全国的に公営住宅の団地の高齢化が進んでいまして、私も夏に百カ所ぐらい盆踊りに行くんですけれども、団地の盆踊りは、物すごいパワフルなところもあれば、高齢化が進んで開催がやっとこだというところもあって、見ていると、非常に高齢化そのものが地域あるいは町の活気にかかわりが深い状況というものを目の当たりにしているわけでありまして、やはり公営住宅団地の若返りということを図っていかなければいけない。

 そういった中で、実は東京都で、先生の論文にも御指摘ありましたけれども、新しく定期借家制度を導入して、東京都の場合は、子育て支援ということも含めて、四十歳未満のファミリー世帯を対象に入居期間を十年間に限って期限つき入居制度を導入しているわけでありまして、これは、全国で初めて定期借家制度を公営住宅に導入した例だということで評価を受けていると思うんです。

 さらに、東京都の政策を言うと、マンションの建てかえや密集市街地の整備に際しての仮住居としての都営住宅、これを期限つきで提供するなどの事業を展開しておりまして、先ほどの失業のセーフティーネットとまた違った意味で大事な制度として、定期借家制度の活用が私は非常に大事ではないかなと思うわけですが、この点についての小林先生の御見解をお示しください。

小林参考人 期限つき借家については、私は東京都の住宅政策審議会にかかわっていたときに、現在もかかわっているわけですが、制度として議論し、導入する方向で答申した施策でございます。

 菅原議員がおっしゃるように、その役割を我々はそのような形で認識して、公営住宅の今日状況としてある衰退感と申しますか、高齢者が非常に多く住宅団地の中にあって、さまざまな社会的な活動ができなくなってきている。それを一定程度活性化するために公営住宅を活用できないか、あわせて仮住居の問題も対応したわけです。

 ただ、東京都の場合は、一般的に都営住宅をそれに開放したわけではなくて、たしか国の補助が入っていない都営住宅があって、その国の補助が入っていない都営住宅に限ってとりあえずそういう方向に展開をしたというふうに、答申に対応する東京都の対応はそうだったと思います。

 その後、さまざまな議論がございまして、私も公営住宅管理に関する国の委員会にかかわってございまして、その中でも、先ほど内田先生がおっしゃったように、もう少し定期借家を公営住宅の中で一般的に導入できないかという議論がされております。

 当然、定期借家の導入ですから、既存の居住者にそれを適用するということではなくて、新規に入居するときに一定期間に限って入居してもらうというような制度は十分公営住宅でもあり得るのではないか。ただ、それが公営住宅のすべてになっては困りますので、それは、ある限られた範囲で、あるいはある限られた住宅立地の中で展開するというのは、これからのさまざまな住宅ニーズが展開する中では十分必要な制度ではないかというふうに私は思っております。

菅原委員 貴重な御意見、ありがとうございます。

 ちょっと論点がそれますけれども、今は、よく言われることに、大都市がどんどん新しい人、若い世代が入ってきて、地方は高齢化していくという論理があるんですが、果たしてそうだろうかと。今は確かにそうなんですが、世界一の少子高齢社会が進む中で、二十年後、三十年後は私は逆じゃないかなと。むしろ、その大都市に流入した今の若い世代が高齢化をして、地方では高齢者がいろいろな理由でなくなっていく。そうすると、Uターン、Jターン、Iターンということの中で地方が若返りがされるということもあると思いますが、こういったことも含めて、この定期借家制度のあらゆる面での活用、可能性について協議をしていくことは、国交省についてもぜひお願いをしたいな、こんなふうに要望しておきます。

 続きまして、こういった三百四十万戸の公的賃貸住宅、二百十八万戸の公営住宅というストックが形成をされてきたわけですけれども、まず、そういう意味では、公営住宅は全国平均で九・四倍の倍率、東京の三十倍を筆頭に一・八倍というところもありますけれども。それから、特優賃住宅については、バブルの崩壊によって、結果的に地主さんもあるいは自治体も家賃補助が、もちろんフェードアウトしてくる仕組みではあったんですけれども、極めて国交省も都道府県も見通しが甘かった。そういったことの中で、長期空室率が六%以上になっている。これはやはり問題視をしていかなきゃいけない。

 あわせて、高齢者向けの優良賃貸住宅も現在一万四千戸供給をされておりますが、二千五百万人以上の六十五歳以上の高齢者がいて、既に単身、ひとり暮らしの高齢者、夫婦高齢者、これが二百万世帯を超えて、あと十年すると三百五十万世帯にも及ぶ、その状況に対して、一万四千世帯というのは当然圧倒的に数が足りない。とするならば、このようないろいろな政策をミックスして、これが両先生おっしゃる既存ストックの効率化ということにつながると思うんです。

 そういった中で、例えば港区の南青山の一丁目の建てかえ、これは、福祉、民間施設の複合的な整備をしております。仙台の太白区のグッドライフ長町、これもやはり高齢者向けの優良賃貸と福祉施策の複合的な施設ということで、大変評価が高いわけです。一方で、今言ったのは大都市圏なんですが、地方においては人が減ってきて、定住対策としての公的賃貸住宅の供給ということが望まれているわけです。

 そこで、先ほど先生おっしゃった地域住宅交付金、この創設があるわけですけれども、おのおの、大都市、地方、郊外、その異なる住宅需要の状況に合わせて、国の役割、地方の役割というものはどういうものかということをお示しいただきたいと思います。

小林参考人 私は、これからの住まいのあり方として、大きく二つの方向に分かれるのではないかと思っております。

 大都市においても、都心部でかなり密度高く利便性の高いところに住まわれる、いわゆる都心居住という住まい方。もう一つは、大都市周辺であっても、これから人口が減少して、世帯が減って、ゆとりある住まい方ができる、そういう場になる可能性があるところはかなりありますから、大都市においてもそういう二つの居住のあり方があると思いますね。

 地方都市は、お話しのように、より人口が減って、それが衰退しているということではなくて、もっとゆとりを持って、自然に親しんで住める場が新たにできたんだというふうに考えて、そういうものに対する施策をいろいろな形で進める必要があるだろうと思います。

 私は、十年ぐらい前に、地方定住に関する調査というのに実はかかわってございまして、日本でいうと例えば中国地方ですかね、そこで、やはり中国山間地を中心にして人口がかなり既に減っておりまして、地方定住の施策をさまざまに展開している。例えば広島県の油木というところでは、夏山冬里住宅というような、夏にはもといたところに戻り、冬には都市部に住まうというような施策を町としてやっているところがありますが、そういう施策を、例えば一例でございますが、公ができないか。そのための施策として今回の地域住宅計画、あるいはそれに対する交付金が運用できる余地があるのではないかというふうに思ってございます。

菅原委員 最後に一点、やはり小林先生にお尋ねしたいんですが、地域住宅交付金の中で、この論文にもお示しをされております基幹事業と提案事業、この比率の問題。

 これは、各自治体がおのおの建てかえ計画なんかがある場合は、極めてタイムリーに基幹事業として、そしてそれを事後的に審査をして、提案型で評価ができ、また申し出ができるわけですけれども、たまたま五年先、十年先にしか建てかえがない、こういう状況では交付金をいただこうにもおりてこない。こういう極めて、谷間といいますか、こういう状況が生じている自治体もあると思うんですね。我が練馬区なんかもそういう状況がありまして、しかと区長から申しつかってきたわけでございますけれども、この点について、改善策といいますか、率直な御意見をいただければと思います。

小林参考人 四対一というような数字が示されておりますけれども、それはあくまでも大枠としての四対一だというふうに認識しておりまして、その辺の関係は、運用次第である程度の幅は読めるんだろうと思ってはおります。

 ただ、そうはいっても、全く基幹事業がない中で今回の交付金が運用できるのかというふうに御質問ですと、私もそこはどうなるか、私の立場からお答えするという状況にはないと思っております。

菅原委員 両先生、貴重な御意見をありがとうございました。

 救済されるべき方が救済される公的賃貸住宅のあり方、これを求めて、さらに御指導賜り、そしてまた我々も委員会の場で審議をしていくことが大事だ、このようなことを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

橘委員長 穀田恵二君。

穀田委員 昨日の列車事故は本当に大被害になっています。亡くなられた方々に心から哀悼の意を表し、被害に遭われた方にお見舞い申し上げたいと思います。今後、補償の問題や事故の原因究明、再発防止など、当委員会としても必要な対策をとらなければならないと思っているところです。

 きょうは、両先生、参考人として御出席いただきまして、本当にありがとうございました。私、端的に両先生にお伺いしたいと思います。

 住宅金融支援機構法案を含む住宅関係三法案は、ことしから来年にかけて政府の住宅政策を大転換する方向に沿って、その一環として提出されたものです。政府はこれまで、住宅建設計画法を中心に、公営住宅、公団住宅、金融公庫融資住宅を三本柱として、量的確保と質的な向上を基本に進めてきました。しかし、九六年の公営住宅法の改定以来、新規建設の抑制と入居資格の所得制限強化が進められ、さらに二〇〇〇年以降には、公団住宅が分譲賃貸住宅の建設を中止し、さらに民間住宅供給の支援に傾斜する中で、二〇〇四年七月、都市機構になり、住宅部門からの事実上の撤退方向を強めていると私は考えています。

 このような政府の住宅政策の転換方向が国民にとってどのような影響があるのか、市場に任せて大丈夫なのか、マイナス面はないのか、こういう点について、きょうは両先生に率直にお聞きしたいと思います。

小林参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 やはり極めて基本的な御質問で、どこからお答えしていいか私もちょっと戸惑っておりますが、最近の市場重視という住宅政策の大きな柱、それはあわせてストック重視という議論がございますが、今、例えば私がかかわっている住宅宅地分科会では、市場重視であるからこそ、セーフティーネット政策をそれに対応して十分やっていかなければいけないのではないか、精査してやっていかなければいけないのではないかという議論がなされているところでございます。

 冒頭から私が申し上げましたように、今日のセーフティーネットというのは本当に何なのかということから議論を始めようと。市場重視の中で、その中で救われない方々がいろいろな形で生まれてきているのが現代ではないか。先ほど内田先生のお話もございましたけれども、現在の収入面から考えられている公営住宅の運用のあり方は、ある面で公平性を欠いている部分もあるというふうに私も思っておりまして、そういうことを十分精査すると同時に、新しいセーフティーネットを必要とする多様なニーズに対応する住宅政策を進めるというのがこれからの新しい住宅政策のあり方ではないかというように考えておりまして、まさにその議論をベースに、先ほど申し上げました昨年末の中間取りまとめを分科会として発表させていただいたわけでございます。

 さらに、今、住宅建設計画法を新しい法に組みかえる必要があるということで、どのような法に枠組みとして考えていったらいいかという議論が分科会で始まりつつございます。その中でもセーフティーネットの議論がさまざまに展開してございますので、そのような議論の中で、しっかりと新しい時代のセーフティーネットについてこれから議論させていただきたいと思っております。

 以上でございます。

内田参考人 今議員からもお話がありましたように、これは非常に基本的な問題だと私も思っております。

 ただ、今までの公営、公団、公庫という三本柱が現実の社会の中で十分機能しなくなっているというのも歴史的な事実だというふうに私は思います。例えば、人口も減少する、少子高齢化が進む、都心回帰が行われるという中で、今までとは違うさまざまな住宅困難、居住の困難が生じてきたり、新しい動きがあるということだというふうに思います。

 そういう中で、私も、日本の場合、市場メカニズムを重視して、市場メカニズムがいかに円滑に働くかという問題、それを国なり自治体は整備していくという問題と、もう一つは、セーフティーネットを整備して、いざというときに安心できるような施策を整えるということが必要だというふうに思います。

 確かに、あるいは議員がおっしゃりたいのかもしれませんけれども、住宅基本法なり住居法なりをどう考えるかという問題がございます。例えば日本の今までの住宅建設基本法の場合には、最低居住水準なり誘導居住水準なりがありますけれども、これは何ら法的な意味を持っては、全然持っていないと言うと語弊がありますけれども、非常に弱いと思うんですね。それに対して、イギリスなどのハウジングアクト、住居法の中での居住不適格という概念は、基準に値しないということで政府が融資するか、あるいは公的な住宅をあっせんするかというふうなことが行われるわけで、いざとなれば居住禁止を命ぜられるというふうな非常に強いあれを持っているわけでございます。

 ですから、私は、あるべき姿として、そういうふうな一人一人の住宅の質を確保するというのは必要だと思うんですけれども、同時に、例えば先ほど申しましたように、今の公営住宅がどういう問題を抱えているかというふうなことをちゃんと解決しない限り、市民的に今住宅基本法をつくろう、あるいは住居法をと言っても、今の不公平をどう考えるかというところをちゃんとやっていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

穀田委員 ありがとうございました。

 ただ、公営住宅法で述べられている趣旨は、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は」ということを目的としているわけですね。これは憲法第二十五条の生存権規定を受けたものであって、その責任は国及び地方自治体にあること、このことは踏まえておかなければならない問題だと私は思うんですね。事実、そういう三本柱の中で起こっている住宅政策の中で、柔軟性に欠ける、さらにはニーズの把握の弱点がある、これらについては当然のことだと思うんです。

 ただ、皆さんがおっしゃる公平性という場合に、私は、ではこの理念どおり、住宅に困窮する低所得者層に足りているかどうかということをまず見る必要があるんじゃないだろうかと。先ほども内田先生からお話があったように、入居資格のある世帯数というのは約二百万ぐらいある。この間も、審議の過程で約百七十万以上はあるだろう、こういうふうにおっしゃっていました。

 したがって、私も同様の意見でして、現実に今、九六年以降、御承知のとおり、公営住宅についてはほとんど建てられていないという現実があります。私は、依然として建設も重要だという意見なんです。ストックについてどのようにこれを有効に活用するかという問題も大事だけれども、公平性の問題でいうならば、あまねくそういう方々の要望にこたえ得るだけの措置をどのようにとるか。それは全部建てるということじゃないですけれども、建てながら、なおかつ、先ほどありましたように、家賃補助の政策を含めて、全体として、この健康で文化的な生活を保障するという理念に基づく施策が必要だ。

 その意味で、私は、九六年以降ほとんど建てられていないという事態自身について問題がある、したがって依然として建設も重要じゃないかと思うんですが、その辺、お二人はいかがでしょうか。

小林参考人 私は、基本的には、現在ある公営住宅をどのように有効に使えるかということをまず考えるべきだというふうに思っております。

 先ほど内田先生がおっしゃった、公営住宅が本当に困窮する世帯にしっかり供給されているのかというところについて、やはりしっかりチェックすべきではないか。例えば、資産の問題はどうなのか。あるいは、二五%という収入基準が、民間賃貸住宅に入られている方の状況と比べてその基準自体が本当にいいのかどうか。あるいは家賃の問題ですね。家賃の水準が、これも内田先生のおっしゃるように、現在の公営住宅の家賃というのは必ずしも市場家賃ではありません。非常に低廉な家賃しか徴収していないというのが実態でございます。

 大分前になりますけれども、現在の機構住宅、当時は公団住宅と言っておりましたが、そこに入っている入居者の団体の方が、隣に都営住宅がある、同じ市場家賃なのになぜこんなに違うんだということを指摘されました。それは、現在の機構住宅はそういう意味でまさに市場家賃なんですが、都営住宅は市場家賃とはいいながら実際はそうはなっていない。二割から三割の違いがあるということです。それをしっかり家賃として、やはり市場家賃をベースにして物を考える方向に持っていくというような、さまざまな仕掛けが必要だろうと思っております。

 それから、先ほど、例えば都営住宅の倍率が三十倍だと。実態は確かにそうなんですが、例えば都営住宅とほかの住宅とそれぞれに、区営住宅があるとすると区営住宅に応募しているというような方がいらっしゃると、それによって倍率が二倍になってしまうとか、例えば神奈川県なんというのはその典型的な例なんですけれども、県営住宅と市営住宅にそれぞれ応募していると、実質三十倍だけれども実態はその半分以下であるというような状況がないわけではないということを考えると、本当に困っている人が現在の公営住宅のストックでどこまでカバーできるのかということについては、しっかり制度的にも、それから実態的にも精査して、その上で本当に問題があるならば、場合によっては家賃補助というような議論も十分あり得るのではないかというふうに私は思ってございます。

 以上でございます。

内田参考人 私も豊島区で住宅審議会の会長を務めまして、そのとき一生懸命情報開示に努力したんですね。かなりいろいろな問題が明らかになった。ぜひ、同じように情報を東京都レベルで、あるいは国のレベルで開示していただきたい。そうすれば、問題はもう少しクリアに見えてくるんじゃないかというふうに思っております。

 大体、現在、単身者を除いて、公営住宅に入居したいとおっしゃっていて、かつ入居資格がある方が二百万世帯ぐらいあるだろうと言われています。それは、今後、今のままだったらもっともっとふえていくだろうというふうに思います。というのは、一度入ったらもうほとんど動かないわけですね。

 そういう中で、議論になるのは、例えば五十戸なり百戸なりつくりたいというふうに、私もそう思うときがあるんですけれども、でも、それが有効に活用できるのかというと、今のままだったら、またそれもだれかが入ってそのままでもう表には出てこないというふうな状況になっている。そうだとすれば、小林さんが言われたように、ストック活用をどういうふうにやるか、現在はどうなっているかということを言わないと、新しくつくってほしいという、ある面ではもっともな御議論だと僕は思うんですけれども、それも非常に迫力を欠いちゃうんじゃないかというふうに私は思います。

 それからもう一点、ちょっとこれは視点が違うんですけれども、例えば今、国によって一律に応能応益家賃のシステムが決められておりますけれども、これももう自治体ごとに変わっていっていいんじゃないかというふうに思います。

 例えば、介護の問題に関しては、結果的にどれだけお金を払うかによって違っているわけですね。ですから、私の県はあるいは私の市はこういうふうな水準を保障するかわりに費用はこのくらいかかりますというふうに変わってくるわけですけれども、同じようなことが、私のところは住宅はこういうふうに頑張ります、そのかわりこうですというふうな、例えば住宅の目的税なんかも含めて、もう少し自治体ごとの裁量権を認めていいんじゃないか。そういうことをやってくれれば、随分いろいろな可能性が生じるんじゃないかというふうに思っております。

 以上です。

穀田委員 私も、今お話もありましたけれども、情報開示の問題というのはとても大切だと思っています。それと、地方自治体による裁量権という問題も、これも当然のことだと思っています。それが弊害になっている事態をつくり出しているということが、いろいろな困難に一層拍車をかけていると考えています。

 ただ、先ほど両先生もお話があったように、今後ともこういう対象者がふえていく可能性がある。社会資本整備審議会住宅宅地分科会の中でも、例の、きょうもお話がありましたけれども、子育て世代、DVの被害者、それから外国という形がふえる可能性があると。ですから、そういう意味では、必要なものは建てる必要がある、同時に有効活用もする必要がある、二つ柱があると私は考えています。

 ただ、実際、地方自治体などでは、皆さんかかわりになっているところでもあるわけですが、多様な居住ニーズに対応するには市場機能を有効に活用することが最も効率的だ、こうしていまして、これまでの市営住宅等の公共賃貸住宅の供給を中心とした政策から、市場の活用を重視した政策への転換が必要だ、こういうふうな論が随分多くなりまして、実際には、住宅等の供給をやめよう、市場任せにしようと。では、そういう問題について、住宅補助なんかもするのか、家賃補助するかというと、そうでもないんですね。

 したがって、やはりどうも、下を見れば、上を見ればという議論はありますけれども、そういう論で、全体として市場任せにするという形が私は経過として強いような気がします。だから、それはちょっとまずいという意見なんです。

 最後に、お二人が都市づくり、まちづくりの問題についても言っていますので、その点だけ簡単にお答えいただいて。

 私は、多様性をいかに包み込むかという問題があると思うんですね。つまり、今まで出ていましたように、お年寄りだけとか低家賃だけとか、それは確かに、全体としての都市のバランスやあり方からして、とても大切な問題としてはらんでいると思います。ただ、その場合、コミュニティーの維持の問題にしましても、住居が核です。したがって、その際に、弱者対策をどうするかという点での、市場とそれから行政の役割、ここの点は非常にバランスというのが大事だと思うんですね。したがって、その点だけ、少し将来的な政策的展望についての礎石の点を、お考えを提示いただければと思っています。両先生に。

小林参考人 適切なお答えになるかどうかわかりませんけれども、まちづくりの面で、例えば公共が提供している公営住宅団地がその地域の中にある、その周辺の地域の人たちが今何に困っているかということをいろいろお聞きすると、例えば、周辺の地域は古くからある住宅地で、新興住宅地であれば、そういう方が、そういう町内が集まる町内会なんか持っているんですが、集まる場所がない。あるいは、公営住宅団地の周辺にある小さなマンションで、管理組合を結成して集まりたいと思っても、小さなマンションは集会する場所がない。そういう場所を、例えば公営住宅の集会所を使わせてもらえないかという議論があります。

 これは非常に小さな議論なんですけれども、しかし、公営住宅団地と周辺の地域との交流を初めとして、ソフトなまちづくりに公共が用意した住宅団地を活用するという意味では、大変意義のある活動ではないかと思っておりまして、そのようなことがうまくできる運用ができたらなというふうに考えております。

内田参考人 私は、住宅というのは国民生活の基盤ですし、そういう面で、住宅への公共投資をもっとふやしてしかるべきだというふうに思っております。

 ただ、現場の例えば住宅行政の担当者なんかが、もう公営住宅をつくる気がない。なぜそういうところに追い込まれちゃったのか。要するに、もう公営住宅のシステムがパンクしている。要するに、幾らつくっても全然セーフティーネットとしてうまく機能しないで、どんどんどんどんストックがふえていくだけというふうな状態をやはり国としてぜひ考えていただきたい。そういう中で、住宅のパイをふやして、公共投資のパイをふやしていただきたい。

 それと同時に、一方では、公営住宅なり公的な政策にあずかれない層に対して、いかにアンブレラを広げていくかということを考えていただけたらというふうに思っております。

 以上です。

穀田委員 どうもありがとうございました。

橘委員長 佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 まず、両参考人への質問に先立ちまして、昨日、JR西日本福知山線における列車脱線事故で亡くなられた皆様に対して心からお悔やみ申し上げますとともに、負傷された皆様に心からお見舞い申し上げ、一日も早い回復をお祈り申し上げたいと思います。

 また、今もされておりますけれども、関係部局力を合わせて、ぜひ政府を挙げて被災者の救出に全力を尽くしていただきたいとともに、私も昨日、国交省の現地対策本部をお伺いして、大臣また鉄道局長に会ってまいりましたけれども、国土交通省を挙げて原因の究明と再発防止策の早急な検討を図っていただきたい、そのように考える次第でございます。

 それで、きょうは、参考人の両先生、大変お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございました。また、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 私は、今までの質問者と同様、余り細かいところに入らずに、基本的なことをいろいろとお聞きをさせていただきたいと思うんですけれども、一つは、大きな話でいいますと、社会経済情勢の変化とこれからの住宅政策ということで、特に私がこれから力を入れなければいけないだろうと思いますことは、政府を挙げても取り組んでおりますが、少子化社会になりますけれども、その中で、やはり子育て支援としての住宅政策というものもこれから本当に考えていかなければいけないだろう。

 そういう観点で御意見をお聞きしたいんですけれども、少し述べさせていただきますと、少子高齢化の進行など社会経済情勢が大きく変化する中で、家族形態が大きく変化するとともに、人々の居住に関して地域が直面する課題が多様化しており、それに伴って、住宅政策に期待される役目も変化しております。特に家族形態の変化という点だけ見ても、我が国ではこれまで主として、いわゆる標準世帯、これは厚生労働省の年金のときも出てきましたけれども、そういうものを念頭に置いた施策というものを、どちらかというと、これまで住宅政策でも展開してきたと思うんですが、世帯構成が大きく変化する中で、多様化する国民の居住ニーズに的確に対応したそういう住宅供給がこれから求められるのであろうと思います。

 特に、高齢者の夫婦、単身世帯が今本当に増加しておりまして、子育て期に取得した比較的大きな住宅が負担になる一方で、本当は御本人たちは利便性の高い町中居住へのニーズが高まっている、そういう一面がございますし、もう一方で子育て世帯は、子供の教育費等の負担が大きくて、やむを得ず居住水準の低い住宅に住んでいることも多いわけでございまして、ゆとりある住宅や職住近接した住宅の確保という点でも、子育てへの支援が私は求められているのであろうと。

 特に、国土交通省の資料でもよく出されるんですが、総務省の平成十年の住宅・土地統計調査によりますと、最低居住水準を満たしていない子育て世帯は、三人世帯で約二割、四人世帯で約三割と、子育て世帯が適切な規模の住宅に入居できていない、そういう点がデータとしても出されておりますし、現在、子育て世帯に必要な職住近接で比較的安価な住宅ストックが基本的には不足している、子育て世帯が勤務場所から著しく遠隔の地への居住を余儀なくされたり、収入と比べて著しく過大な家賃の支払いを余儀なくされている、そういう状況にあるわけでございます。

 私は、そういう観点からいうと、今回の法案を通して、やはり職住近接型のそういう公的賃貸住宅を整備するとともに、ただ整備するだけじゃなくて、その整備したところには、保育所等の子育て支援施設とか、そういうものの一体的整備とか、あるいは緑地であるとか広場という子供の遊び場というものがきちっと確保されるような、そういう整備のされ方というのがこれから必要になるだろうというふうに思うわけでございます。

 さらには、そういう子育て世帯の公営住宅等への優先入居であるとか、あるいは収入基準の緩和を図る、そういうことであるとか、さらには子供がどんどんふえた場合の公営住宅間の住みかえの円滑化というものも図るというような、そういう子育て支援策をこれから積極的に進めていくことが必要ではないかと考えるんですが、両参考人それぞれの御意見をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、山口(泰)委員長代理着席〕

小林参考人 議員のおっしゃること、もっともでございます。私もその必要性を十分認識し、それをどのように展開していったらいいか、これから研究面でもいろいろ考えなければいけないと思っております。

 恐らく、新たに住宅を建てて職住近接を図るということはなかなか難しいかもしれない。やはり、先ほど冒頭におっしゃった議員の方がいらっしゃるように、空き家がかなりある、そういう中で、そういうストックをうまく皆さんで活用していくシステムができないか。それも、現在ですと、ある地方公共団体の枠の中で、その施策としてやっている。先ほど私が申し上げた、高齢者が広い住宅に住んでいて、子育てで狭い住宅に住んでいる人と、うまく公共団体が間に入って、その高齢者が住んでいる広い住宅に子育て世帯が住めるような仕組みをさまざまなシステムで考えようというふうに申し上げましたけれども、それは、ある地方公共団体の枠の中で考えていくんですね。

 今議員のおっしゃっている職住近接、例えば東京大都市圏を考えると、職住近接といっても、例えば、神奈川に現在住んでいるけれども、通勤は一時間半をかけて東京に実は行っているんだとか、そういう方もかなりいらっしゃるわけですね。

 そういうふうに考えると、ある現役時代は東京に住んでいるけれども、本当に子育ての時代、女性が社会参画して、女性も働くという場として、極めて職住近接を求めている年代があるかもしれない。しかし、子供がある程度育っていくと、育っていった子供をもっと自由に自然の中で過ごさせたい、もっと郊外に移りたい、それで高齢者になったらまた都心に戻って利便性の高い生活をしたいという形で、ニーズが年代に従って変わってくるわけです。それを、ある市町村の枠組みの中だけで考えて住みかえをしたりストック活用をしたりするのでは私は十分ではないと思っておりまして、例えば東京大都市圏全体で住みかえのネットワークをつくれないかというような議論を、可能であれば起こしたいと思っております。

 実は今、日本学術会議というところで大都市に関する特別委員会というのをやっておりまして、その特別委員会の中で、我々が担っている専門委員会の提言の一つとして、そのような必要性をぜひ学術会議として提案していこうと。それが恐らく、議員のおっしゃっている職住近接、あるいは場合によっては郊外で生活するという、全体のパースペクティブを持った新しい施策になるのではないかというふうに思っております。

 以上です。

内田参考人 今、例えば、私は大学で教員をしているんですけれども、学生に聞いてみると、圧倒的に長男と長女が多いんですね。子供が二人だとすれば、男女、女男、男男、女女ですから、考えてみれば、ほとんどのケースが長男か長女なんです。親御さんの方は住宅はそれなりにつくっていますから、ある面でいえば、住宅は、将来的には安泰と言ったら変ですけれども。

 それで、世代間のある面でのずれというかギャップみたいなところが非常に問題になって、一方では、先ほどもお話がありましたけれども、十分大きな家で、一階きり、老夫婦が住んでいて、二階のかつての子供たちの部屋というのは全部空き家になっているというふうな状態ですし、一方では、今御指摘のあったように、子育て世帯が割を食って非常に厳しい生活をしているというふうに思います。そういう全体のパースペクティブをどうするかというふうなことを考えることが必要だという小林さんの御意見に私も賛成いたします。

 それから、先ほどの優遇措置の問題ですけれども、現在、住宅の、例えば私の収入が幾らかというのは、政令月収というシステムによって査定されるわけですね。それは、例えば高齢者の場合とか子供が何人いる場合とかというので非常に細かく分かれていまして、これはなかなかよくできた制度で、子供が四人いる場合でも、子供が二人の場合でも、高齢の場合でも、一列でずっとランキングが決まるわけです。

 それはそれでよくできているんですけれども、それが今の時代に合っているかどうか。かつての、非常に住宅が不足していて、まだまだ家族形態が比較的多かった、あるいは独居や高齢者の二人世帯が少なかったというときには、政令月収というのはそれなりの説得力があったし、うまい制度だったと思うんですけれども、今の時代で、もう少し見直してみる必要があるんじゃないかというふうに思っています。

 それからもう一つはポイント制で、おっしゃったように、子供の問題をポイントの中でどう評価していくかということではないかというふうに考えます。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 済みません。貴重な御意見、ありがとうございました。

 住みかえの問題等、またポイント制の問題等、後でお聞きしようと思ったんですけれども、お答えしていただきましたので、全く違う問題で、今回の法案に至る前までのことも含めてなんですが、先ほどどちらかの先生が、公営、公団、公庫の役割というのが時代とともに変わってきて機能しなくなってきている部分がある、そういう話がありました。その一つのあらわれが、例えば都市再生機構の独立行政法人化でもあり、また、今回だったら、地方住宅供給公社の自主的な解散、そういう項目が入ったことも、新たなこれは時代の変化だと思うわけですね。

 しかしながら、具体的にこれは都市再生機構に名前が変わった、独立行政法人に変わったとしても、既に賃貸住宅で住んでおられる方々が七十七万世帯もいらっしゃいますし、また、地方住宅供給公社の方も十五万世帯住んでおられるわけですね。

 私は、これから、例えば都市再生機構なんかでも、ニュータウン事業を速やかに終息させるための措置ということが今回組み込まれているんですが、例えば、具体的に、土地処分なんかを優先する余り、周辺の居住環境に悪影響を与えるような、快適に住んでおられた方々がびっくりするような、そういう施設用地としてばあんと売り払われるというか、そういうようなことが私は間違ってもあってはいけないと思いますし、これは住宅供給公社の土地処分に関してもそうだと思いますし、さらに、例えば公団から独立行政法人になったということで家賃が急に上がってしまうとか、そういう居住の安定が損なわれるというような、そういう不安も住人の方には持っておられる方もやはり多くいらっしゃるわけでして、やはり今まで公団住宅として、例えば都市再生機構なんかでも果たしてきた、そういう公的な住宅として果たしてきた役割というものがこれからもやはり損なわれることがあってはならない、そういう運用をやはり両者にしてもしていってもらう必要があるのではないかと思うんですが、お二人の先生方の御意見があれば、お伺いしたいと思います。

小林参考人 これまでの公団、機構住宅が八十万戸ある、御案内のとおりでございます。八十万戸持っている公的、まあ公的に準ずると言った方がいいんでしょうかね、そういう主体は世界でも機構だけですよね。それだけの大きなストックを持っているということは、ある意味での大きな我が国の資産ではないかというふうに私は思っております。その資産をどのように有効に活用していくかということがこれからの再生機構の一つの役割だと私も思っております。

 名前が都市再生機構になったわけですが、ある部分、今まで持ってきた八十万戸に近い賃貸住宅をどのように経営して地域の活性化に寄与するか、そういう面が恐らく都市再生機構の底辺になければいけないというふうに思っておりますが、ただ、私が気になるのは、都市再生機構が、それを余りにも重視するがために、賃貸住宅管理機構になってもらっては困るなと一方で思っております。

 私の専門が都市づくりというか都市計画なものですから、都市再生機構が担う新しい都市再生、それは大都市、地方都市、それぞれだろうと思いますが、それぞれに都市再生、地域再生を図らなければいけない。そのときの機構の役割というのがこれから大きくならなければいけない。大きく役割を担う、その基盤にあるのが実は賃貸住宅である。賃貸住宅をいかに有効に活用して、それを基盤として都市再生機構としての役割を果たしていくか、その関係をしっかり見詰めて運営していただきたいというのが私の思いでありまして、そういう意味でも、賃貸住宅八十万戸のストックをいかに重視するかというのは非常に重大な役割ではないかというふうに私は思っております。

 以上です。

    〔山口(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

内田参考人 今、古くなった公営住宅、老朽化した公営住宅を建てかえるという場合には、建てかえた後も家賃としては応能応益家賃になるわけですね。ところが、公団、今度機構ですけれども、機構住宅の場合には、一応そうではなくて原価主義がとられておるわけです。

 従前から居住している高齢者に対してはさまざまな優遇措置がとられていますけれども、家賃がやはりはね上がる、特に若い人にとっては非常にはね上がるということがあって、そのこと自体が老朽化した公団の建てかえを難しくしているという側面があるというふうに思います。

 私は、例えばそういうときにどういう所得階層の方がおられるかなんということをときどき見せていただくんですけれども、第二、第三の人生に入られて年金で生活しておられる方も多いし、古い団地になれば、公営住宅の方とほぼ同じような問題なんですね。ですから、私は、公団の方にも応能応益家賃というか、家賃補助みたいな考え方を及ぼすべきだというふうに思っています。

 ただ、そういう論理を積み重ねれば、どんどんどんどん支出はふえるばかりですから、現実的ではないとすれば、まずはトータルをプールした中で、民間の方とかあるいは公団の方に対しても、公営住宅に居住の方に準ずるような応能応益家賃のシステムを家賃補助という形でやっていくのがいいんじゃないかというふうに私は思っております。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 示唆に富む御意見、ありがとうございました。

 あと、そうしましたら、今回のもう一本の法案でございます地域住宅交付金についての考え方を、冒頭でもそれぞれ御意見をぱっと言っていただいたんですけれども、改めてお伺いしたいと思います。

 前口上を少な目にして、私は、地域の実情を最も正確に把握して福祉やまちづくりの推進等を実際に担っている市町村等の地方公共団体が、具体的にこれからの住宅セーフティーネットワークの再構築という役割を考えたときに、主体となって果たしていくべきであろうと。そういう観点から見ますと、この地域住宅交付金というのは、三位一体の改革の議論から出てきたものとはいえ、結果として、大いに活用すれば、これは、これからの地域の住民の皆さんのセーフティーネットとしての公営住宅の役割というものも今までのイメージから大きく広がるような、そういうまちづくりにも結びつくような、そういうものに使われるんではないかなというように思うわけです。

 それで、それぞれ御意見を述べられた中で、小林先生は、もう既にこういうものは、例えば横浜や川崎のことを詳しく述べられているので、後もしおっしゃっていただければありがたいですが、既に実践をそれぞれ自治体ではやっている、それを今回制度として位置づけるものである、そういう評価をされました。もう少しその評価と、この運用に当たってこういう点を考慮してもらいたいとか、そういうものがあればおっしゃっていただきたい。

 もう一つ、内田先生は、まちづくり交付金の例を挙げられました。私は、ただまちづくり交付金というのを一歩前進させたものだと思うんですね、それまでの補助事業から見ると。ただ、その上で、チェックが厳しく使い勝手が悪いという声を聞いておるというお話がありましたけれども、地方自治体の自由度を高めていくためには、地域住宅交付金制度、新しい制度ですけれども、どういうことに配慮していかなければならないと考えておられるか、お二人それぞれの御意見を伺いたいと思います。

小林参考人 地域住宅計画、私が申し上げましたように、従来から市町村、都道府県が住宅マスタープランをつくっているというお話は、先ほど申し上げたとおりです。

 その延長線上に、具体的な制度の枠組みの中にこういう計画がつくられたことは高く評価したいと思いますが、一方で、そのような実績がある自治体とそうでない自治体との格差は非常に大きいものがあるのではないか。特に、近年、財政状況その他の問題で、住宅政策の位置づけが地方公共団体の中で相対的に下がっている部分があります。それから、新しい計画、提案をして計画をつくる、それは一定の提案能力がないとできない。そういう能力を住宅セクションで持っている自治体が我が国の中でどの程度あるのかということについても、若干疑義がございます。

 今回、地域住宅計画の中で協議会をつくって、県に一定の役割を与えて、もしそういう提案能力のない市町村に対しては、県が一定の役割を担ってそれを補助していく。そういう協議会の役割が果たせるとすると、それは、従来、例えばHOPE計画をみずから積極的にやっていた自治体とは違う自治体が、住宅政策にいろいろな局面で出てくる可能性を広げたのではないか、あるいは広げるように運用していただきたい、希望でもあるんですが、そのような期待を持っているということだけ申し上げさせていただきたいと思います。

内田参考人 先ほど私は、一方で三位一体の改革の中では不十分なものじゃないかというふうには申し上げましたけれども、一方でいえば、この一括補助金というのはそれなりの進歩だということは重々認めております。

 特にこういう住宅交付金の中で頑張ってほしいという分野は、地域福祉政策との連携の部分で、あるいは議員もおっしゃったのかもしれませんけれども、グループホームとかデイケアセンターとか、箱物だけではどうしようもないんですね。箱物というのは住宅、箱としての住宅を供給するというのが今までの公営住宅なりあるいは日本の住宅政策だったわけですけれども、例えば自立支援をどうするか、配食サービスをするとか、介護をどうするかとか、そういうふうなトータルな生活支援を考える中で、住宅供給も位置づける必要がある。特に高齢化社会の中で、そういうふうに思います。

 それからもう一つは、まちづくりとの結合の問題でして、これは私自身にとってはかかわることが多いんですけれども、随分さまざまな試みが行われています。例えば、木造の密集市街地の中で部分的に不良住宅地を除却して、そのかわりに公的な住宅を建てる、コミュニティー住宅とか、改良住宅とか、いろいろありますけれども、建てる場合とか、あるいは細街路をつくるためにそこでひっかかった住宅に対して住宅を供給するとか、そういうさまざまな施策がありまして、そういうふうなまちづくりとの連携をぜひやっていただきたい。

 今まで住宅局、国の施策を見てみますと、まちづくりとの連携というのをよくやられていると思うんですね。ただ、福祉との連携というのはまだまだこれからだというふうに思います。そこら辺を、一括補助金といっても、どうしても、持っていきますといろいろな資料をつくらされて、持っていきますと、今までの担当者というのは自分の担当をやっているわけですから、どうしてもそういう目でチェックされちゃうわけですね。それで、そこからあふれ出る部分、はみ出しちゃう部分というのは非常に担当者は苦労するわけでございますけれども、そこら辺をやわらかく運用していただきたいというふうに思う次第です。

佐藤(茂)委員 まちづくり交付金は、昨年導入されたんですけれども、昨年度の予算で千三百三十億だったんですね。これは、今、本当に緊縮予算の中で、今年度はさらに各自治体から全体として大いに声が上がってきまして千九百三十億、そういう予算が拡充されているのを一つ見ても、非常に地方からの需要も高い。今回の新しいこの地域住宅交付金も、結果として地方公共団体、市町村が、本当に使い勝手のいいものをつくってくれたというような、そういうものになるように私も望みたい、そのように考えている次第でございます。

 それで、最後に小林先生にお聞きしたいんですけれども、内田先生は、いろいろ質問等、また冒頭の話の中でも大いに意見を述べていただいたんですけれども、公営住宅への入居における公平性の確保というものをどうしていくのか、そういう問題で案をちょっとお聞きしたいんですけれども、既存ストックの有効活用を図るためには、特に公営住宅やセーフティーネットとしての役割、真に、本当に社会的に困窮しておられる方を入居させる、そういう役割を担うためには、適切かつ合理的な、公平な管理というものが必要になってくるんだろう、そのように私は思うわけです。

 それで、内田先生も具体的に言われておりましたけれども、現行の公営住宅制度は、専らフローの所得ですね、最初に着目した、そういう入居者資格要件が定められているわけです。要は、預貯金であるとか有価証券の有無というのは考慮の対象外であって、何のチェックもなされていない。しかし反面、逆にそれは、高齢者の皆さんにとると、老後のそういう蓄えというものもチェックされないことは逆にいいんだ、必要なんだ、そういう観点も残っているかと思うんですけれども、しかし、実態としては、公営住宅にそういう高額資産等を保有する者が居住している、そういう例があったり、さらには、多額の預貯金を有しながら、要するに、それ以外に、例えば従来居住していた住宅を子供の世帯に譲り渡して、親の世帯が公営住宅に居住するという、そういう例なんかもあるわけですね。

 それは、要するに資産をチェックできていないからそういうことになるわけですけれども、入居者の選考に公平を期するために、保有資産をきちっと最初の基準のところに加味するような、そういう仕組みも検討する必要がそろそろ出てきているのではないかと思うんですけれども、公営住宅の入居に係るそういう公平性の確保という点でお考えがあればお聞きしたいと思います。

小林参考人 私は、二つあると思うんです。一つは、横浜市でよくあるんですけれども、公営住宅に入居していて、その間に一生懸命貯蓄をして、持ち家にかわるというのが若い世帯は結構いるんです。それはそれで一つの公営住宅の役割かなと思っています。それは、先ほど内田先生もおっしゃったし、私もかかわっていた期限つき入居という仕組みを導入すると、そういう世帯が入って、公営住宅の中で新しい居住に展開していくという役割を公営住宅は担うという可能性が出てくると思いますね。

 それ以外の公営住宅については、公平性の観点から、やはり資産把握を十分やるべきではないか。現在は一年ごとに収入のチェックをやってございますけれども、どのような資産をそれぞれお持ちなのかということについては、全く情報を持っていないわけですね。当然、プライバシーの問題とかそういう問題がかかっておりますから、それはそれなりの手続をしっかり踏まないといけないわけですが、そういう手続をしっかり踏んだ上で、資産について調査し、それを入居の条件に反映させていくということは、今後の公営住宅の政策の中で重要な仕組みではないかというふうに私は思っております。

佐藤(茂)委員 貴重なお二人の御意見、ありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

橘委員長 若井康彦君。

若井委員 民主党の若井康彦です。

 まずもって、福知山線における列車の脱線事故、大変に多くの方々が命を落とされた、本当に心から哀悼の意を表しますと同時に、今後、各方面におかれては、その原因究明を徹底的に行い、再発防止に努めていただきたい、私たちもそのために努力をしたいとまず表明をさせていただきます。

 さて、両先生におかれましては、きょうは、お忙しい中、私どものために貴重な時間を割いていただきまして、本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。

 各委員の方々から多方面にわたりさまざまな御質問がありましたので、私は、それとは少し違った面からこの問題について先生方の御意見を拝聴させていただきたいと思います。

 公共住宅政策といいますか、戦後、大変な住宅困窮の中で、ある意味でいうと緊急避難というか、そうした性格を持って始まった。しかし、この半世紀の間に、先ほど来議論になっておりますけれども、三百万を超える公的な賃貸住宅のストックも大都市圏を中心にして形成をされている。これが、今後の人口減少時代、こうした中にあって、新たなどのような役割を果たしていくのかということが問われているんだろう、そのために、今回、こうした公的住宅に関するさまざまな法案がこの時期に出てきたというふうに考えておるわけです。

 今申し上げましたとおり、戦後の住宅事情というようなものを考えてみれば、都市問題の中で、いわばこの住宅政策というものが大変に突出をし、また国民的に重要な課題であったということは、だれにとってもわかりやすいことだと思いますけれども、この半世紀の間に住宅政策の性格は大きく変わってきたと思います。

 例えば、都市が形成をされる中でこうした公的住宅が果たしてきた役割というようなものを考えてみますと、数字で、具体的な数字はまだ十分に把握はしておりませんけれども、この三百万戸の公的な賃貸住宅というものは、住宅としてのストックと同時に、私は、この半世紀の間に形成された大都市圏、いわゆる市街地の中で、重要なファクターを構成している。端的に言えば、この三百万戸の公共賃貸住宅が建っている用地、居住地と言ってもいいと思いますけれども、このストックについてももう一度ここでしっかり議論をしておかなければならない問題だと思います。

 特に、最近、この三百万戸に及ぶ公的な賃貸住宅、昭和五十六年以前ですか、に建築をされたものが四割に及んでいる。各地でその建てかえというようなものも目立ち始めている。そして、その中で懸念されますのは、公的な住宅が建っております居住地の土地利用について、これがどのようになるかという議論が十分にされてはいないのではないかということを考えております。

 例えば、今回、都市再生機構が建てかえをする際に、その用地の一部を住宅の建てかえではなくて別の用途に転用するというようなケースもあらわれているやに聞いております。いわば、大都市圏における重要な、ある意味でいうと公有地ですけれども、これらがいわゆる市場メカニズムに無計画にゆだねられる危険性というのが非常に高くなっているのではないかというふうに考えます。

 これだけの、恐らく、三百万戸住宅がありますと、三百平方キロぐらいはいわゆる公有地、あるいは公的な土地の所有、まあ居住地と言ってもいいですけれども、これらを今後、都市全体としての居住環境、そうしたものの向上に生かしていくというようなふうに考えた場合には、さまざまなこれまで論じられてきた住宅そのもののストックの議論とは別な、土地政策としての取り組みも必要になるのではないかというふうに考えるわけです。

 例えば、最近では、七十年周期で起きるだろうと言われている関東大震災クラスの地震が、既にさきの大震災から八十二年で、いつ起きてもおかしくない。例えば、東京都の周辺部には延々と既成市街地が連なっておるわけですけれども、ある意味でいうと危険この上ない環境になっている。

 そうした中で、かつて、私、こうした仕事に携わっていたことがあるんですけれども、航空写真で見ると、緑の田園の中に茶色く造成をした土地が航空写真に写っている。それが、この三十年あるいは四十年たった今日になってみると、そこだけが緑のストックになっており、周りはもうびっしりと既成住宅地で覆われているというような状況でございます。

 そういう意味で、かつての、いわゆる住宅を建てるための土地としてのストックと、非常に良好な環境を持っている居住地あるいは居住環境、あるいは、もっと端的に言うと、周りの住宅地にとってのオープンスペース効果、安全性を高めるための装置。先ほどちょっと、集会施設の利用ができないかというような議論もありましたけれども、社会的な一種の共通の資本というような、そういう性格があると思うんですけれども、これらの土地を、これらの居住地を、今後、二十一世紀の大都市の問題解決の上でどのように位置づけ、考えていったらいいのか、その辺について両先生のお考えを聞かせていただければありがたいです。お願いいたします。

小林参考人 我が国の都市づくりを考えているときに、欧米に比べて、特にヨーロッパに比べて一番大きな問題は、公有、公が持っている土地、ランドバンキングとかいいますけれども、それが決定的に不足しているということですよね。まちづくりを新しい時代に向けて公がいろいろな施策を打つときに、その施策を打つ資源として、それぞれ公がどれだけ土地の余裕を持っているかということが重要なまちづくりの資源になるわけですが、欧米では、ランドバンキング、いわゆる土地の公有化ということを歴史的にずっとやってきた歴史があるように聞いてございますが、我が国はその辺が全く欠けている。

 それを補うものとして、今若井先生がおっしゃったような、公団その他の大規模団地が既に、当時は恐らく郊外だったんでしょうけれども、既成市街地になってきつつある市街地の中で良好な緑を持った団地となっているということは、そのとおりだと思います。

 以前、ここの参考人として、たしか公団関係の法改正にかかわる参考人として出たときに、私とそれから公団居住者の代表が出られたんですね。その公団居住者の代表は、公団住宅がいかに緑あふれるすばらしい団地になっているかと誇らしげに語っておられました。そのぐらいのものになっている団地は結構あるわけですね。そのような既成市街地の中で、まさに緑の真珠みたいな形で残っている場所をどのように今後生かしていくかというのは都市づくりの面から重要な課題だろうと思いますね。まさに、そこを市場機能だけで考えて、半分建てかえて半分を売り払うというような形の政策がいいのかどうかというのは私も若干疑問があります。

 都市再生機構の既存の住宅団地の建てかえ計画に私はかかわったことがあるんですけれども、その建てかえ計画を、その団地に住んでいる方々とそれから周辺の方々とを含んだ委員会をやりまして議論しました。団地が二十年、三十年たってきますと、完全にその地域社会に団地が溶け込んでおりまして、団地に住んでいる方が、その周辺の市民農園をうまく運営する、そういううまい人がいたりして、地域社会の耕作放棄地をうまく運用しているとか、そういう関係ができてきたり、あるいは、周辺の方々が、お話しのように、大きな団地の中にある福祉施設を頼っている。何かそういう関係がうまく生まれてきている。

 物的な緑の環境と同時に、先ほど集会所のお話がございましたけれども、そういう社会的なネットワークが実は大規模団地は地域社会に根づいておりまして、そのようなものも含めて評価し、位置づけていくということは、これからの住宅政策の一つとして私も重要ではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

内田参考人 私も、今の小林さんの御意見に近いんですけれども、例えば、今の公営住宅とか公団住宅の建てかえというのは、基本的に、戻り入居、どうしても戻って入居したいという人の分だけは公的に住宅を供給しなさい、あとの部分は、土地として民間に売るか、あるいは民間ディベロッパーを活用してマンションをつくる、そういうふうな傾向が強いように思います。あるいは、もっと別の言い方をすれば、全部民間のディベロッパーによって建てかえてもらって、その中で必要な部分だけ公営住宅として買い上げればいいじゃないかというような発想も見えるように思います。それがPFI的な手法と言われているように私は感じます。

 そういうふうに、今までの公営の団地あるいは公団の団地を単に種地として考えるだけではなくて、やはり都市のストックとして考えていくべきだというふうに思います。それは小林先生と同じなんですけれども、例えば、地域の防災拠点になっているところもありますし、地域の公園として子供たちが来ているところもある。あるいは、福祉施設を今度新しく建てかえに当たってはつくろうという話もあるわけですね。そういうふうに、もっと都市のストックとして活用していく必要があるだろう、単に財産としてあるいは売り地として考えるんではなくて、というふうに思う次第です。

 それから、もう一つ、今日、PFI的、プライベート・ファイナンス・イニシアチブ的な手法というのがあって、ヨーロッパの場合、建設から運用まで、特に運用に妙味があるわけですけれども、日本の場合にはどちらかというと建設のところが中心になっていると思うんですけれども、その場合、あるいは民活と言われますけれども、その民というのは単にそういう不動産の会社ではなくて、そこに住んでいる人という面での民も考えていただきたい。

 私は、アジアのスラムのまちづくりなんかにずっとかかわっているわけですけれども、前のイスタンブールのハビタットのとき、民活、その民をどう考えるかというので非常に鋭い対立があったわけですね。住民の方々は住民こそ民だとおっしゃったわけですし、むしろ政府なんかは民間資本を言っている。

 私は、特に住宅の管理、これもどんどんどんどんPFI的手法というので、一般の民間の不動産業者なんかに任されていく傾向がありますけれども、そのときに、住民による管理なんかを考えた方がいいんじゃないかと。あるいは、住民がディベロプメントまでかかわるのは無理だとしても、住民がちゃんとまちづくり会社みたいなものをつくることによって、自分たちの居住地が今後どうなるかという形で、一つのプロセスに有力なパートナーとして参加するということも十分考えられるんじゃないかというふうに思っております。

 以上です。

若井委員 今の問題に関連をいたしまして、地域住宅交付金の問題、お考えを聞かせていただきたいのです。

 これは、地域住宅交付金の中に、地域の住まいづくり支援ということで、密集市街地の整備というようなアイテムも入れてあるわけですが、この地域住宅計画の中における広場や生活道路を整備するというレベルでは、ある意味でいうと、公有地としてあるいは公共用地としての活用は、私にとっては、ややこれは不十分で、消極的ではないか。ある意味でいうと、住宅局の事業の枠の中で十分にそうした公有地としてのポテンシャルを引き出すのは難しいのではないか、ほとんど不可能に近いのではないかというふうに感じるわけです。

 この事業自体を、さらにもう少しまちづくり全体、例えば都市局レベルのものとの共同事業というような形にして、先ほどお話があった住宅マスタープランよりさらに大きな意味での都市計画のマスタープランというようなものに組み込み、公園であるとか緑地であるとか水面であるとか、そうしたものをもう一度、ある意味でいうと、ばたばたばたと戦後つくってしまった、粗製乱造ともいうべき大都市を再生させる、そうした事業の一環にできるのではないかというふうに思うわけですけれども、そういう意味でこの法律はいかがでしょうか。お二人にとってどのように評価ができるものか、ちょっと御感想を聞かせていただきたいと思います。

小林参考人 今、密集市街地を例にとりながらお話でございました。

 御案内のように、特に大都市においては密集市街地がかなりの比率でありまして、震災その他が起きたときに多くの被害が出ることがいろいろなところで予測されているところでございます。それに対する施策として、住環境整備にかかわるいろいろな施策がこれまでありまして、それの運用がされてきたわけでございます。ただ、残念ながら、十年、二十年の成果という面で見ると、必ずしもそういう災害を除去できるような形での改善が十分されたかというと、そうはなっていない。

 今回の少なくとも表面的に見える地域住宅計画とそれにかかわる交付金によって展開できる施策は、若井委員のおっしゃるように、従来からの住環境整備の枠組みからそんなに離れていないと私は思っておりまして、都市再生の枠組みの中で二十世紀の負の遺産というふうにうたい、それの緊急整備が非常に重要だというふうに言っている中で、これだけの施策では恐らく十分ではないのではないか。

 逆に言うと、今回の地域住宅計画というのは、市町村とか場合によっては都道府県が音頭をとる政策だというふうに思っております。二十世紀の負の遺産として密集市街地を整備するというのは都道府県とか市町村レベルの政策では場合によってはないのかもしれないと思っておりまして、まさに国の施策として二十世紀が残した負の遺産を解決する、そういう施策を打つべきではないか。

 今回、特別措置法で展開した枠組みは、あくまでもそこまでやれるツールを私は用意したとは思っておりませんので、そういう意味では十分ではないというふうにお答えした方がいいのか、あるいはそこまでは期待していない計画である、あるいは交付金であるというふうにお答えした方がいいのか、ちょっと判然としませんけれども、そんな感想を私は持っております。

 以上でございます。

内田参考人 私は、先ほど申しましたけれども、これは一括補助金、住宅交付金というのは一括補助金だと思うんですね。一括補助金だということは、やはり交付税と違って国が許認可権を持っているというふうに思います。そういう面では、地方自治体の担当者と国との話というのはなかなか難しいだろうというふうに思います。

 そういう構図の中で、やはりNPOなり住民なりをどういうふうにパートナーとしてまちづくりに参加させていくか、保障していくかということが重要なんじゃないか。それは、先ほど一番初めに小林さんもおっしゃっていたと思うんですけれども、そういう仕組みをつくらない限り、非常に今の補助金行政の枠を突破するのは難しい。私は、地方自治体に対しても思うんですけれども、もう地方自治体があるいは国の政府なりが公共を独占できる時代ではないと思うんですね。むしろNPOの方なんかが公共を体現している例が多いわけであって、やはりそういう新しい時代の新しい参加の仕組みが必要なんだというふうに思っております。

 以上です。

若井委員 私も、負の遺産としての大都市、郊外ゾーンと言っていいかもしれませんけれども、画期的な手法によってこれを解決していくというのはなかなか名案はないわけですけれども、恐らく今、公共賃貸住宅というストックで残されている土地だけが、既成市街地の中にあって唯一使える、ある意味でいうとストックなのではないか。

 そういう意味で、既存のストック活用という面を単に住宅問題だけの枠で考えるのではなくて、今回の交付金の中ではとてもそこまでは手が届かなかったけれども、今後さらにそうした意味で何か別の方策を考えていくということをしなければならないと考えておりますし、また、恐らく両先生も同じことを今言っていただいたのだと思います。

 それから、ちょっと変わりますが、その話とは別に、今既に団地にお住まいの皆様、公共賃貸住宅にお住まいの皆様が今後そうした地域で安全、安心な暮らしを一生送れるというような状況をつくるために、これをどういうふうに考えていったらいいのかということを少し議論したいわけです。

 先ほどのセーフティーネットを、情報公開等によってメカニズムを回復していくという中で、さらに今、日本の社会、特に大都市で今後急激に進むだろう高齢化社会に対応する高齢者の居住問題、それを既存の団地、公共賃貸住宅のストックとどのようにマッチングをしながら生かしていくかということを少し議論しておく必要があるのではないか。

 既に三十年、四十年たった住宅のストックをこれから建てかえていく、そういう仕事が今待っているというふうに議論されております。この住宅ストックが今後の、先ほど質の問題でちょっと本当は足りないんじゃないかという議論もありましたけれども、全体とすれば住宅が、数がこれから余っていく、恐らくここに住んでおられる方も次第に減っていく。現に、私が住んでおります千葉ニュータウン等でもかなり空き家が目立ってきております。恐らく、高齢者の方々の居住という形でいうとミスマッチがあるんだろう、その問題をハードの側面、ソフトの側面でどのように解決していくかということが特に問われている。

 賃貸住宅ではそういう入居の入れかわりがあるせいか、分譲のところに比べると非常に人間関係が希薄なような気がいたします。そのことも含めて、なるべく、住宅、ハードの部分をもう少し長い期間使えるように補修をしながら、しかも住んでおられる方々が一生そこで住めるようなそういう仕組みをもう一回、今再構築すべき時期だと思うんですが、その点について何かよい具体的な方策があれば教えていただきたい。

小林参考人 比較的規模の大きな団地を建てかえる、公営住宅団地を建てかえる、そのとき、これまでは、そういう公営団地は高齢者の方が既存居住者としてかなり多くて、建てかえて床面積を広くして、家賃が高くなってそこに入居できないというような問題、だから建てかえがなかなかスムーズに進まないという、何かそういう循環が、悪い循環が一部であったように思っております。

 私は、これからの例えばサステーナビリティーや何かの議論を含めて、比較的大きな団地であれば、建てかえする住戸と、それから、現在、建てかえする以前は、昭和四十年代に建てられた団地ですと四十平米とかそのぐらいの住戸が多いんですよね。そういう住戸はむしろ改修して家賃をできるだけとどめて、そこに高齢者が、従来から住んでいる団地の、戸は変わりますけれども、住んでいる住戸は変わりますけれども、同じ団地の中に、改修した、家賃が比較的高くならない住宅団地に住むというようなそういう仕組みを導入する。場合によっては、一部、民間がその敷地の中に入ってきて、民間に処分した住宅、敷地のお金を、例えば高齢者に対する戻り入居の家賃補助に使うなんということもあるいは運用上考えてもいいかなと私は思っております。

 だから、そういう全体の仕組みをつくり上げて、今まで高齢者が地域になじんできた、その団地の中から一方的に出されるのではなくて、できるだけそこにとどまり、そこに生活できる。ただ、それだけではやはり地域の活性化になりませんので、新しい住戸が一部で用意され、場合によっては民間が供給される住宅がその中に入ってきて、まさにミックスコミュニティーとしてその地域がこれからも十分に住宅団地として生き長らえる、そういう団地につくりかわるべきではないかというように思っております。

 以上です。

内田参考人 私は、公営あるいは公団を問わず、例えば、特に公営だとそういう傾向が多いんですけれども、同じ収入階層であるいは同じ年齢階層の人が何千戸というのがまとまっているのが地域社会として健全かどうかという問題は非常に大きいと思います。

 そういう面でいえば、私自身は、大きな方向としてはむしろきめ細かく家賃補助をしていった方がいいんではないかというふうに思っているわけです。それで、あるいは、だから団地を捨てよということは全然なくて、その過程では、小林さんが言われたように、多様な開発で多様な年齢階層のミックストディベロプメントが必要だというふうに思っております。

 それから、今の公営にせよ公団にせよ、どちらかというと、今までどんどん建てかえるという、それは民間でもそうですけれども、そういう風潮が強かったわけですけれども、今後、やはり社会的に変わってくるわけですよね。資源の問題にせよエネルギーの問題にせよ、それから、そもそももう右肩上がりの社会というのではないわけだとすれば、むしろとことんまで使いこなすということを本気で考えた方がいいんじゃないかと。

 それは、公的な住宅もそうですし民間の住宅もそうで、例えばマンションにおいては長期修繕計画なんというのがかなり整備されていますけれども、民間の戸建て住宅のことを本気で考えたこというのは僕らほとんどなかった、そういう視点はなくて。そういうのをきめ細かくやれば、かなりのストックが、少なくとも今みたいに二十五年ぐらいで木造住宅が建てかえられるという状況は改められると思うんですね。そういうことも一つは考えていきたい。

 それから一方では、先ほど申しましたように、これからつくられる住宅にあってはスケルトン・インフィルという形で、外枠、構造体は百年なり二百年もつようにして、中に入れる住戸部分をどんどん三十年なり五十年なりでかえていくというふうな建築、これはもう技術的には可能なことですから、そういうふうなことも考えた方がいいんじゃないかというふうに思います。

 それから、先ほどもちょっと申しましたけれども、公団なり公営に対して町としての役割を期待する、都市の空間としての役割をうんと期待するわけですけれども、それを公団だけに押しつけるというのはやはり無理だと思うんですね。それで、やはりそういう役割を押しつける以上、それに対してちゃんと、こちらとしてもどういう対価を払うかということを町として考えるべきであって、例えば私は、そういうふうにした場合には公団に対して減税措置をするとか、そういうことを考えていいんじゃないかと。

 ちょっと話が脱線しますけれども、例えば、今まで道路をつくる場合には、都市計画的に見て道路は必要だと思っても、そのつくられる人にとっては何で私のところにというので反対運動が起こるわけですね。それに対して今までの行政がやってきたことは、一種の緩衝地帯だという形で高容積を認めて、あなたの財産価値を高くしてあげるんだからというふうなことをやってきたわけです。だけれども、今はもう杉並区なんかで申しますと、住民はそんなことは望んでいない。静かなあるいは澄んだ空気がいいんだという形で、もうそんな容積率なんか高くしないで結構というわけですね。

 それでも、私は非常に内心困惑するわけですけれども、都市計画的に見れば必要なときというのはあるわけですね。そういうときにどうするかといえば、私は、むしろ固定資産税なり都市計画税を減税する。要するに、必要なんだけれどもあなたに迷惑がかかるとすれば、それを都市のトータルな経営の中で考えていくということが必要なんじゃないか。公団に対して、今までも公団だからこういうことをしろという形でツケをたくさん回してきて、にっちもさっちもいかなくなっちゃったところというのはあると思うんですね。住宅金融公庫の赤字も、別に住宅金融公庫がお金の運用に失敗したというよりも、むしろ国からそういうふうにすることを求められた結果として今の膨大な赤字があるわけですね。

 そうだとすれば、それをどういうふうに考えるかということをきちんと考える。機構に対して、あなたは、公的な空間なんだし施設なんだからそれを頑張れと言う以上は、それをいかに全体でバックアップしていくかということを言わないと非常につらかろうというふうに考える次第です。

 以上です。

若井委員 私も、一時の建てかえ優先のやり方は変えるべきだという考え方ですし、もし新しくこのミックストディベロプメントをするのであれば、百年住宅ですね、そうしたものをどんどんつくるべきだというふうに思うわけです。

 今ある三百万のストック、これをどれぐらい使い回しができるかということについては大変に関心を持っております。既にこの四割が四十年近くたっていて、もう本当にこれは使えないのか、あるいは、例えばあと一世代、今住んでおられる方が一生を終えられる、それだけの時間というものをそれによってしのぐことができないのか。

 つまり、恐らくこうしたものがつくられたということは、ある意味でいうと、急激な都市化という事件対応型の応急住宅的な性格もあったんだろうと思うんですけれども、もうここに来て、本当にこれがストックとして評価ができないものなのかどうか、その辺についてはどのような御感想をお持ちでしょうか。

小林参考人 お話しのように、我が国はこれから人口が減少していく社会になってまいります、世帯はそれに比較して減少の割合が小さくなりますが。

 ただ、大都市圏と地方都市圏ではその様相がかなり違っておりまして、国土交通省の予測によると、大都市圏はそんなに大きな人口減少とか世帯減少がない、地方都市は極端に減る、もし現在のトレンドを推していくと、ということですね。そうすると、住宅団地がどこにあるかによって、その住宅団地の位置づけがかなり変わってくるのではないかと思っております。

 大都市における住宅団地は、私はやはり、これからかなり有効に使っていかなければいけないのではないかと思っておりまして、そう簡単に、住宅用途を廃止して次の用途にというのはなかなか難しいかなという思いがあります。ただ、そういう中でも、いろいろなニーズが多様化していますから、その多様化したニーズにどのように新しい住宅団地が対応しているかということについてのさまざまな工夫をすべきだと思います。

 先ほど、高齢者には改修という議論がありましたけれども、住宅団地に若い人たちが住むという場合には、今日本で住宅団地を改修するとそれなりにコストがかかっちゃうんですよね。結構高いんですよ。家賃が上がるんですね。私は、はつるだけで、あとは居住者に任せろと。非常に安いコストで、自分たちで工夫してそこを住みこなせ、若い人はそれでもいいんじゃないかと。

 所得の低い人たちが、現在の機構住宅なり場合によっては公営住宅をはつって、基本的な給排水だけは整備するけれども、あとはもう入居者に任せて、むき出しで生活してもいいという人はそれにゆだねておけばいいんじゃないか、安い家賃でそこに住みたいという若い人がそういう団地の中に住むということもいいんじゃないかと思っておりまして、そういう多様な仕組みをやって、これからどんどん大都市では活用していくべきではないか。

 地方都市では、恐らく人口が減少し、世帯が減少する中で、これは私は、地方都市は団地だけではなくて持ち家も空き家が相当ふえてきて、今、地方都市の行政にいろいろな、安全、安心というアンケートをとると、安全、安心の中で一番心配される問題、ワーストスリーの一つが廃屋ですよね。廃屋が地域社会の安全、安心に非常に問題を起こすのではないか、そういう意見を言うと。むしろ、そういう立場での議論というものもこれからの住宅政策の中で必要ではないかなというふうに私は思っております。

 以上でございます。

内田参考人 私は、まずは、自治体にかなり多様な試みを認めていく方がいいのではないかというふうに思います。

 例えば、今たまたま私は山古志村の復興支援にかかわっていて、この間も長岡の市長とか旧山古志村の村長と話し合ったんですけれども、これは国は立派だと思うんですけれども、木造の戸建ての災害復旧のための公営住宅を認めてくださるというわけですね。しかも、それをかなり集落の中にばらまいてもいいと、少なくとも担当者はそう考えているわけです。

 そこまで国が認めたのかどうかというのは私にはちょっとわかりませんけれども、そういうふうな試みというのが例えば地域であって、地域の産材を使って安くつくって、今までですと公共建築というのは非常にコスト高と言われているわけですけれども、その地域のあれを使って、地域の人たちがやってということをやれば、本気でできると思うんですね。

 それから、先ほどの小林さんのも非常におもしろくて、今の住戸改善というのはほとんど新築と変わらないだけのお金がかかっているわけですね。ああいう本当に骸骨みたいにした上で直すんだったら、もう少しほかの直し方があるじゃないか、それを自治体に任せてくれたら、あるいは若い人たちの共同居住なんかを認めてくれたら、いろいろな方法があると。今までも私はこんなふうに考えていたわけです。

 都市計画は、かなり長い、一九六〇年代、七〇年代から、さまざまな住民に対する対応なんかがありまして、苦労して、いろいろな方法があった。ところが、住宅行政はずっと公営住宅の建設ばかりで、国の言うままに来て、初めてHOPE計画で現場が生き生きしたというふうに思うんですね。それで、今こそもう少し現場に、特にこの新しい交付金制度を使って、自由な裁量を認めて新しい試みをさせるべきだ、それをゆっくりとみんなで共有していく時期なんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味では、私は、これが地方のある面では裁量権を大きく膨らますことになることを期待しております。

若井委員 私も、先ほどの人口の減少のお話、世帯が減っていく種類のお話、共感するところですけれども、大都市圏は恐らく、地方圏に比べて一世代おくれてこの人口の急激な減少あるいは世帯の減少が起きるんだろう。そうすると、その間に若干タイムラグがあり、今の過疎地域等で見ているような状況が四半世紀後には起きてくる。それまでの間、どういう住宅ストックをうまく活用していけるかということが非常に大きな一つのキーになるのではないかというふうに思っておるわけです。

 そういう意味で、今のお話の中でありました、本来であれば、四十年たったら今までは規格でどんどん建てかえていくというような話を、住民の方々、あるいは先ほどのお話でいえば若い世代の方々に大幅にゆだねて、あととにかく四半世紀もたせるという方向でいくのが望ましいし、また、いかざるを得ないんじゃないかなというふうな感想を持っております。

 それに関連して、最後になるかもしれませんが、もう一つお聞きをしたい。今後のいわゆる公的な住宅団地、そうしたものをどういうイメージで新しくつくっていくか、あるいは、新しくつくらなくてもいいんですが、どういうイメージでつくり直していくかということを一つお聞きしたいと思います。

 例えば、ヨーロッパに行って本当にびっくりするのは、既にもともと三十年ぐらい前に二十階も三十階も高層で建てた集合住宅を壊して、それを例えば二、三階の公的な住宅につくりかえているというようなことも見られますし、また、先ほど来お話に出ておりますけれども、居住水準の新しい考え方、これらについても、今までのように面積要件等で右肩上がりで伸ばしてきたというようなものとはまた違った考え方をすべきじゃないかというふうに思うんです。

 これからの新しい都市居住のイメージみたいなものをこの公共住宅政策とあわせて議論するとすれば、どんなふうな方向でイメージをしていったらいいのか、その辺についてお話を聞かせていただければと思います。

小林参考人 その辺も恐らく大都市圏と地方都市圏ではちょっと違うのかもしれませんけれども、私が主にかかわっている大都市圏のお話をすると、今、大都市圏の中では、自分たちの町の姿がどうあるべきかという議論が、例えばマンション問題をベースに起こっていますね。近くにマンションが建ったから慌てて反対運動を起こすのではなくて、あらかじめ自分たちの町はどうあるべきかという姿をしっかり考えて、例えばまちづくり条例に考えを反映させていこうというような試みが少しずつ展開されている。

 その中では、当然のことながら、既成市街地にある公営住宅なり機構住宅なりの町の姿を、そういう周辺地域との町並みと申しますか、まちづくりの一環としてやはり考えていかなければならない、そういう時代に入っているのではないかというふうに思います。

 ですから、そういう地域で考えているそれぞれの地域ごとの住宅市街地像というようなものをしっかり確立することは私は重要だと思っておりまして、日本で住宅を都市の中で考えるときに一番欠けているのは、住宅市街地像ではないかと私は逆に思っているわけです。

 それは大都市においてもそうでありますし、それから、特に地方都市の中心市街地の住宅市街地像というのは、どうなんですかと聞かれたときに、ほとんど答えられる人はいないんですね。地方都市でどのように都心部で住んでいったらいいのか。今建っているのは、地方都市では、大都市に建っているのと同じようなマンションが場合によっては建っている。あれは、地方都市の中心市街地の住まい方ではないなと思っております。

 そういう、それぞれの地域の町、住宅市街地のありようをしっかり皆さんで考える、そういう時期に来ていて、そういう考え方を持った地域においては、若井さんのおっしゃるように、公営住宅なり機構住宅なりの、そのまちづくりの一環として位置づけられるべき、そういうものではないか、むしろ積極的にそういうことに寄与していくというようなことが必要ではないかというふうに私は思っております。

 以上でございます。

内田参考人 今、地方都市は非常に難しい状況です。それは、若井議員は都市計画の御専門ですし、よく御存じだと思いますけれども、かつての駅前とか中心部というのは、どんどん衰退してシャッター通りになっているわけですね。個々の住民に関して言えば、土地も安いし車を利用すればというのでどんどん郊外に出ちゃっていて、結果的に、新しくできた道路沿いのショッピングセンターに全く客をとられて、町が解体しちゃうというような状態なわけです。

 そういう中で、先ほど小林さんがちょっと言っておられたかと思いますけれども、例えば町中居住なんかをどう考えるかというのは大きな問題で、そういうふうに地域の中で具体的に公営住宅なり公共住宅をどう活用するかということが問われると思うんですね。そこら辺が一つです。ですから、こういう中心市街地を活性化する意味でも、ちゃんと、そういう一つの資産としてどう考えるかというような視点が必要だろうというふうに思います。

 それから、先ほど一番初めに私は申し上げましたけれども、余り公営住宅だけを考えていただきたくない、もう少し全体を見てほしい。例えば、先ほどの山古志村ですけれども、かつての長島村長、今は復興管理監となっていますけれども、彼が言っていることは、村の中に小さな集落ごとに木造戸建ての、どうしてもやはり経済的に厳しい人なんかもいるからつくりたいと。それで、そういうのを本気でローコストでつくりたい、そうすれば一般の住宅だってローコストでできるじゃないか、そういうふうに考えているわけですね。それで、将来、そういう方が、もしだれも継ぐ人がなかったとしたら、むしろグリーンツーリズムの拠点にしたいというふうなことを考えるわけですよね。

 そういうふうに、地元に、自治体に任せてくれれば結構いろいろなことを考えられるんだと思います。そういうことに期待しております。

若井委員 今お話に出てまいりました町中居住であるとか、地方の小さな集落の活性化にしてもそうですけれども、そこに住んでおられる方々、そこで活動しておられる方々の、先ほどからお話に出ております多様な対応、自発的な活動みたいなものを何とかこうしたところに上手に生かしていくということが大事だと思うわけですけれども、そうした意味で、まちづくりNPOというようなものがより積極的な役割を果たせるような条件をつくるとするとどんな点になるのか、その辺について、これまでの経験を踏まえて教えていただければと思います。

小林参考人 私は、まちづくりNPOという正式な団体がまちづくりにかかわっているというだけではなくて、むしろ、最近の地方のまちづくりを考えてみると、さまざまな立場でかかわっておられる方、ボランティア的な方々を含めて、さまざまな活動をしていらっしゃる方が総体としてまちづくりにかかわっていると思いますので、よく地方公共団体が新しい主体として考えるのはNPOだというふうに限定してしまうことに、私は逆に言うと反対なんですね。もっと多様な動き方をしておられる方々を、うまくまちづくりの中で活躍してもらう場をどのようにつくったらいいのか。そのときに、私は従来からエリアマネジメントと言っているんですけれども、いろいろな活動が展開する、その地域の価値を上げるための一つの場、プラットホームをどのようにつくれるかということが重要ではないかと思っております。

 先日、山口県の宇部市というところに行ってまいりました。宇部は、町中居住という意味で、恐らく先進的な実績を今確実に成果として示し始めた都市の一つではないかと思っております。

 先日、宇部に伺いまして、そこで活躍している三人の地域の方々とお話をしました。大変すばらしい方々がそれぞれの役割を担っているんですね。中心市街地活性化は商業開発ではない、そこに住む人をいかにふやすかということが重要であって、そのための施策を一生懸命やりたいと。

 そもそも、そういうことの必要性を考えたのは、商業が活性化するということは中心市街地でもそれは重要だけれども、しかし、今自分が住んでいて何が寂しいかというと、子供がいないというんですね。その人が言うには、五年間、子供会に自分のうちの子一人だった。今、宇部市では、借り上げ公賃を積極的に展開しまして、子供会に三十人、そういう子供会になった。いかに住宅が地域の活性化、若返りを含めて地域の活性化に寄与するか、そういうある意味での実証実験みたいなものを宇部市でやっているんですね。

 それを担っているのは何もNPOではなくて、そこにある商店街の商店主三人がそれぞれ役割分担をして、地域の人をなだめる人、積極的に推進する人、それから全体のいろいろな仕組みを考える知恵のある人、その三人が一組になって、宇部市の中央三丁目の建てかえをやったわけです。

 そのような試みが必要ではないかと私は思っておりまして、そのような実践をむしろ幅広く、こういうことをやればできるんだということを紹介していく、情報として流していくということが重要ではないかというふうに思っております。

内田参考人 私は、例えば都市計画にかかわるまちづくり条例でまちづくり団体をどんどん育成していく、それでそこにカウンターパートとして都市計画を営んでいくというのが盛んだと思うんですけれども、同じように、住宅協議会においてもさまざまな、それは法人としてのNPOもあるでしょうし、そうじゃない部分もあるでしょうけれども、そういう人たちを幅広く受け入れてやっていくということが必要なんじゃないかというふうに思います。

 それから、今後、地方都市に私もかかわることがありますけれども、そんな、今さら工場が出てくるなんということはほとんどないわけですよね。そうだとすれば、本当にコミュニティーの方々がコミュニティーで食べていく、例えば老人に対して配食サービスをする、あるいは介護をするということが同時に地域の方々にとっていえばコミュニティービジネスとして、それは、丸々、都市で会社に勤めたなんという額ではないでしょうけれども、ある種の生活費にもなるというふうな、そういう仕組みをきめ細かくつくっていかない限り、地方の都市というのは成り立ち得ないんじゃないかというふうに思います。

 そういう大きな仕組みとしても、さまざまな、小林さんはプラットホームと言われましたけれども、そういう場をつくっていく必要があるんじゃないかというふうに思う次第です。

若井委員 人口がどんどん増加しているときのまちづくりを、振り返ってみますと、私たちもそうした仕事に幾らか携わってまいりましたが、役所があって、そこに専門家がいて、ある程度そこへお金を持ってこられる政治家という人がいて、それで仕事がある程度できた。つまり、これから来る人のために準備をするということがまちづくりだったし、そういう時代がいよいよ終わりつつあって、次の時代のまちづくりは何かということを考えると、要するに、今いる人たちが今以上に生き生きと能力が発揮できる、安心して暮らしていけるという状況をつくること自体がまちづくりなんだろうというふうに、私も先生方がおっしゃられたことと全く同感をしております。

 ですから、今おっしゃられた商店街の三人の方々がそういう活動をしていること自体がまちづくりであるということなのではないかというふうに思うわけです。そうした状況が、今、この公共賃貸住宅にお住まいの方々、そうした方々のコミュニティーの中で次々起こっていくような仕掛けをどうやってつくるかということが本来の法律が目指すべき方向じゃないかというふうに思う次第です。

 ですから、この躯体を使って、若い人たちがそれを使いこなしていくというか、そうした仕組みをどんどん準備していただければ、これからあと四半世紀の間、これまでのストックを有効活用していくという意味で非常に有用な財産になるのではないか、これから高齢化の社会を乗り切っていかれる世代の方々も、そういった意味で、若いころに準備をされたこうしたストックを一生使いこなしていけるような仕組みになるのではないかというふうに思っております。

 いろいろ聞いてまいりましたけれども、先ほど、九六年以降新しい公共住宅が建っていない、公営住宅を建てているところがないというお話でしたが、改めてお聞きをいたしますけれども、これからさらにこの公営住宅を積み増ししていく必要があるかどうかについて、一言だけ、お二人に御意見をいただきたいと思います。

小林参考人 先ほどから私申し上げているところと絡むのですが、その必要性があるかないかというところは、現在の公営住宅の運用のあり方をかなり精査した上で考えないと、必要性があるかないかという議論がなかなか成り立ちにくいのではないか。精査して本当に必要性があればとは思いますけれども、ただ、そのときに、家賃補助の仕組みと公営住宅を建てることと、どちらが我が国の住宅政策として意味があるのかということをまた考えなければいけないという二段階のステップを実は踏まなければ、公営住宅の新規建設の議論は、ここでこうですよというお話はなかなかできないのではないかというふうに私は思っております。

内田参考人 私も先ほど申しましたように、今、よほど位置づけをはっきりさせないでつくると、二百十七万戸が二百十八万戸になって、また今と同じ状況ということになりかねないというふうに思います。そういう面ではレビューが必要ですし、その中で、私が先ほど申しましたように、国なり地方自治体としてどういうことを整理していく必要があるかということが必要だと思います。

 その上で、私は、例えば先ほどの木造密集市街地のまちづくりとか、それから、例えば特にセーフティーネットとしての住宅とか、そういうある分野に関してはぜひ必要だ、これは建設することも必要だというふうに思っております。

 以上です。

若井委員 長時間お聞きしてまいりましたけれども、今回の公的賃貸住宅に関する法案等について大変示唆に富んださまざまな御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。

 私の質問を終わります。

橘委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

     ――――◇―――――

橘委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 国土交通行政に関する実情調査、JR西日本福知山線列車脱線事故調査のため、来る二十八日木曜日、兵庫県に委員を派遣いたしたいと存じます。

 つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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