衆議院

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第16号 平成17年5月13日(金曜日)

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平成十七年五月十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 橘 康太郎君

   理事 衛藤征士郎君 理事 望月 義夫君

   理事 山口 泰明君 理事 阿久津幸彦君

   理事 金田 誠一君 理事 土肥 隆一君

   理事 赤羽 一嘉君

      石田 真敏君    岩崎 忠夫君

      江崎 鐵磨君    江藤  拓君

      木村 隆秀君    河本 三郎君

      櫻田 義孝君    菅原 一秀君

      高木  毅君    武田 良太君

      中馬 弘毅君    寺田  稔君

      中野 正志君    葉梨 康弘君

      林  幹雄君    古川 禎久君

      保坂  武君    松野 博一君

      森田  一君    市村浩一郎君

      菅  直人君    下条 みつ君

      玉置 一弥君    樽井 良和君

      寺田  学君    中川  治君

      長安  豊君    松崎 哲久君

      三日月大造君    室井 邦彦君

      和田 隆志君    若井 康彦君

      若泉 征三君    佐藤 茂樹君

      谷口 隆義君    穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  堀内 文隆君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中村 吉夫君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (消防庁長官)      林  省吾君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            丸山  博君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   政府参考人

   (国土交通省航空・鉄道事故調査委員会事務局長)  福本 秀爾君

   参考人

   (西日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長)     垣内  剛君

   参考人

   (西日本旅客鉄道株式会社代表取締役専務取締役鉄道本部長)         徳岡 研三君

   参考人

   (航空・鉄道事故調査委員会委員)         佐藤 泰生君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  石田 祝稔君     谷口 隆義君

五月十三日

 辞任         補欠選任

  二階 俊博君     石田 真敏君

  高木 義明君     市村浩一郎君

  伴野  豊君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     二階 俊博君

  市村浩一郎君     高木 義明君

  寺田  学君     伴野  豊君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件(JR西日本福知山線列車脱線事故問題)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

橘委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ちまして、委員会を代表して一言申し上げます。

 JR西日本福知山線列車脱線事故により、百七名もの方々がお亡くなりになりました。心から哀悼の意を表します。また、負傷された皆様の一刻も早い回復を心からお祈り申し上げます。

 これより、お亡くなりになられた方々に対し、謹んで黙祷をささげたいと思います。

 全員御起立をお願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

橘委員長 黙祷を終わります。御着席ください。

     ――――◇―――――

橘委員長 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 本日は、特にJR西日本福知山線列車脱線事故問題について調査を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として西日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長垣内剛君、西日本旅客鉄道株式会社代表取締役専務取締役鉄道本部長徳岡研三君及び航空・鉄道事故調査委員会委員佐藤泰生君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長丸山博君、鉄道局長梅田春実君、航空・鉄道事故調査委員会事務局長福本秀爾君、内閣官房内閣審議官堀内文隆君、内閣府大臣官房審議官中村吉夫君、内閣府政策統括官柴田高博君、警察庁刑事局長岡田薫君、消防庁長官林省吾君及び厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橘委員長 この際、JR西日本福知山線列車脱線事故調査のため、去る四月二十八日、兵庫県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員から報告を聴取いたします。土肥隆一君。

土肥委員 去る四月二十八日、JR西日本福知山線における列車脱線事故の実情調査のため、兵庫県に派遣されました。

 この際、派遣委員を代表して、その調査の概要を私から御報告申し上げます。

 派遣委員は、委員長橘康太郎君、理事衛藤征士郎君、萩山教嚴君、望月義夫君、山口泰明君、金田誠一君、委員伴野豊君、石田祝稔君、穀田恵二君、そして私、土肥隆一の十名であります。

 御承知のとおり、今回の事故は、去る四月二十五日午前九時十八分ごろに、宝塚駅発同志社前駅行きの上り快速列車七両編成の五両が脱線し、うち前二両が列車進行方向左側のマンション一階部分に衝撃し、三両目、四両目が大きく脱線したものであり、これにより亡くなられた方が百七名、負傷された方が四百六十名に上るなど、JR民営化後の最大の惨事となりました。

 国土交通委員会としても、事故現場をつぶさに調査することは、今後の再発防止及び被害者対策を検討する上で極めて重要であると認識し、救助活動が進められている段階での委員派遣となった次第であります。

 それでは、調査の概要について申し上げます。

 まず、派遣委員は、JR西日本福知山線尼崎駅―塚口駅間の事故現場へ向かう車内において、国土交通省谷口近畿運輸局長及び中崎次長から、事故の現状等について説明を聴取いたしました。

 事故直後の関係機関の対応状況としましては、国土交通省を初め、兵庫県、兵庫県警、尼崎市の対策本部がそれぞれ設置されました。また、尼崎市消防局のほか、神戸市等の県下の消防局及び大阪府、京都府、岡山県から緊急消防援助隊が出動されました。事故の原因につきましては、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会委員など十名が現地に派遣されており、その調査結果が待たれるところであります。

 なお、派遣委員から、遺族に対するJR西日本の対応のあり方、各対策本部の指揮命令系統の状況などについて質問がありました。

 次に、事故現場を視察いたしました。現地を視察したとき、先頭車両がマンションの一階駐車場部分に閉じ込められており、その救助活動と事故の調査とが並行して進められている状況でありました。先頭車両の救助につきましては、運転士を含め十数名の安否が不明なため、ガソリンによる爆発などに配慮するなど、緊迫した中で慎重に進められておりました。

 事故現場を視察し、私どもは、事故のすさまじさと痛ましさを改めて実感いたしました。

 衝突されたマンションの被害状況につきましては、調査の結果、一部損壊があるものの、現時点では倒壊等のおそれは認められないとのことでありました。また、マンションの居住者は、JR西日本が手配したホテルなどへの一時避難をされているとのことであります。

 概要は以上でありますが、最後に、政府及び関係機関に対し、このような事故の再発防止のためにも原因究明を可及的速やかに行うとともに、亡くなられた方々や残された家族に対する十分な補償措置、負傷者に対する医療、マンション居住者への補償及び今後の生活対策、さらに、事故の被害者のみならず、近隣住民や救助に当たられた方々などへの心のケアにつきましても万全を期していただくよう強く要望いたしまして、御報告といたします。

 以上です。

橘委員長 これにて派遣委員からの報告聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

橘委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。望月義夫君。

望月委員 おはようございます。自由民主党の望月義夫でございます。

 質問に先立ちまして、今般の脱線事故において亡くなられた百七名のとうといみたまに対し、改めて御冥福をお祈りし、御遺族の方々に衷心よりお悔やみを申し上げ、五百名を超える負傷された方々の一刻も早い御回復を心からお祈り申し上げたい、このように思うわけでございます。また、事故現場であるマンション及びその周辺の住民の方々の御心痛、御苦労に対し、心からお見舞いを申し上げます。

 さて、私も四月の二十八日、当委員会としての現地へのお見舞い、そしてまた被害、被災状況の調査に赴いたわけでございますが、新聞、テレビを通じ、それではわからない、まさに想像を絶する惨たんたる現場でございました。

 日本の鉄道の安全神話、安全輸送神話を、ここ十年の間に二度にわたって根底から崩してしまったJR西日本の垣内社長にお尋ねをしたいと思います。

 今回の大惨事によって、平和で楽しかった多くの家庭が、嘆きと悲しみの中で今も立ち直れない日々を送っていられるわけでございますけれども、あなたが幾ら弔問に行って頭を下げたとしても、これは遺族の方々の苦しみ、また悲しみ、そして怒りは決しておさまることはないでしょう。しかも、平成三年の信楽事故を教訓としていたら今回の大惨事は起こらなかったのではないかと思うと、国民の負託を受けた一人の議員としても、私は悔しくてたまりません。

 さらに、信楽事故の初動ミスを教訓としていたならば、事故当初の置き石の可能性といった会見ミスを初めとする不適切な対応や行為は起こらなかったのではないか。JR西日本は、前の信楽事故の際に、二度とこのような事故が起きるようなことはありません、しません、お約束をします、このように被害に遭われた方々に誓っていたはずだ、私はこのように聞いてもおりますし、調査を見ております。信楽の人たちは今、はっきり言って言っていますよ、西日本の体質はそのときから今も何も変わっていないじゃないかと。

 そもそも、金沢、福知山、米子、広島、岡山、大阪、天王寺という七つの管区が統合して発足したのがJR西日本だと伺っておりますが、国鉄時代から縦割りセクト主義がそのまま色濃く残っており、歴代の管理職がそれを許してきた、こうしたことが二度に及ぶ大惨事につながったのではないかと思えてなりません。管理職の教育は一体どうなっているのか。

 垣内社長、あなたも御家族があり、家庭をお持ちなんでしょう。事故現場に立たれて、現在までの率直な気持ちをお聞かせください。

垣内参考人 今回私どもが起こしました脱線事故によりまして、百七名ものとうとい命が亡くなり、また、五百名を超えるお客様が負傷されました。亡くなられた方の御無念や大切な御家族を失われた御遺族の方々の心情をお察し申し上げますと胸の張り裂ける思いでございまして、まさに痛恨のきわみでございます。

 ここに改めて、お亡くなりになられました皆様の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様に深くおわびを申し上げたいと思います。同時に、負傷された皆様と御家族には心からのお見舞いとおわびを申し上げますとともに、一日も早い御回復をお祈り申し上げます。

 事故発生以来、私は、多くの御遺族にお目にかかり、おわびとお悔やみを申し上げ、また、おけがをされた方々をお見舞い申し上げました。その中で、御遺族やおけがをされた方からの強いお怒り、苦痛の声をお聞きしました。特に御遺族からは、家族を生き返らせてほしいといったお声を受け、お返しする言葉もありませんでした。さらには、私たち遺族の喪失感、悲しさ、悔しさが本当にわかるのか、JRは物を運んでいるんではないぞ、命ある人を運んでいるんだぞ、こうした気持ちを社長から第一線の全社員に必ず伝えてもらいたいとの強いお言葉をいただきました。

 私は、このようなお気持ちを心に深く刻み込み、この御遺族並びにおけがをされた方々の立場に立って、この御遺族やおけがをされた方々、また、列車が衝突したマンションの方々への御相談や御支援についても、できる限りの努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。

 また、事故当日から今日に至るまで救助活動等に当たっていただきました消防、警察を初めとする関係機関、あるいは県や市という地元の自治体、あるいは地域の皆様方に、この場をおかりいたしまして厚くお礼を申し上げるところでございます。

 さらに、事故原因の究明に向けまして事故調査委員会の調査あるいは警察の捜査が続いておりますけれども、全面的に私どもは協力をいたしたい、こういうふうに思っております。

 さらには、これまでこの事故に関連をいたしまして各方面からちょうだいしております当社の安全に対する取り組みや企業風土に対する御批判や御意見に謙虚に耳を傾け、今後の当社の安全に対する取り組みや企業風土の改革に全力を挙げて、現在、全力を挙げて国土交通省から御指示のあります安全性向上計画の策定に取り組んでいるわけでございますが、その中にそういったものを取り込みまして、事故防止に向けて、事故の再発防止に向けて全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。

 重ねてではございますけれども、今回の脱線事故につきまして、会社を代表いたしまして謹んでおわびを申し上げます。とともに、今後の再発防止への真摯な取り組みにつきましてお誓いをいたしたいと思います。本当に申しわけございませんでした。

 次に、ただいまの先生からの御質問に対してでございますが、当社は、国鉄改革の趣旨でございます鉄道の再生を目指しまして、全社員参加で経営理念をつくりまして、安全確保を初めといたしまして、さまざまな課題に取り組んできました。とりわけ国鉄時代の仕事の進め方である旧来型のシステムを払拭しようということで、現場に近い本社とすることによりまして、阪神・淡路大震災を乗り越え、株式の上場や完全民営化を実現することができたものと思っております。

 しかしながら、今回の重大事故の発生にかんがみますと、本社と支社、そして第一線の現場との関係を含めまして、これまでの安全確保の取り組みに不十分、あるいは形式に陥っていた面があったのではないかとの思いを持っているところでございます。したがって、現在、今までの取り組みのどこが不十分であり、どこに問題があったのかを徹底的に検証しまして、課題をすべてあぶり出して、一つ一つきめ細かに対処していきたいと考えております。

 また、企業風土の改革こそが大変重要だと思っておりまして、その中の一つといたしまして、私どもが持っております経営理念につきましても、安全を優先する企業風土の構築という観点から、その見直しにつきまして議論をしたいと思いまして、これは全社員、全職場を挙げて議論をするということによりまして風土改革に取り組んでまいりたいと思っております。

 また、このような悲惨な事故を二度と起こさないために、安全対策全般につきまして、私ども、中からだけではなくて外からの視点というものを入れることが大変必要だと思っておりまして、部外有識者から成る安全諮問委員会の設置につきまして検討してまいりたいと考えておるところでございます。

 次に、社員教育のことでございますけれども、鉄道事業の根幹は安全・安定輸送であることはもちろんでございまして、そのために、鉄道固有の技術とか知識の継承、あるいは業務に必要な実務能力の向上ということを目指しまして、大変実践的な教育をしているところでございます。

 特に、管理監督の責にある社員につきましては、鉄道事業の現場の実態を把握するということが大変基本でございますし、また、安全を第一とする鉄道の管理運営に適切に当たるべく、部下社員を適切に指導できるようにいろいろな教育をしているところでございます。具体例といたしましては、管理監督層への登用時には集合研修を実施いたしまして、知識のみならず、管理を行うための必要な知識でありますとか、あるいは部下とのコミュニケーションというふうなことにつきましての教育を実施してきたところでございます。

 しかしながら、今回このような重大な事故を引き起こしましたことを踏まえまして、安全を優先する企業風土を構築するとの観点から、これまでの取り組みを振り返りまして、必要な見直しを行ってまいりたいと考えているところでございます。

 今回の事故の傷跡は決して消し去ることができないものでありますが、お亡くなりになられた百七名の方々の御無念や、御遺族、おけがをされた方々の御悲嘆、お苦しみに報いるためにも、こうした私が今申し上げました思いを全社員が共有し、全社全力の取り組みを開始することによりまして、二度とこのような悲惨な事故を起こすことのない、生まれ変わったJR西日本をつくり上げていかなければならないというふうに思っております。

 最後にもう一度深くおわびを申し上げまして、答弁とさせていただきます。申しわけございませんでした。

望月委員 時間がありませんので、質問を再開させていただきます。

 先般の中越地震の折に、JR東日本の上越新幹線、これは脱線事故がございました。いろいろなことがございましたけれども、あのときには、あそこで脱線してしまったではないかという言い方と、あるいは反対に、あそこでよくとまったということがある。私は、活断層のあるあの地域の橋脚をいち早く耐震補強していたからあそこでとまったんだ、住民は一人も亡くなることがなかったわけでございますけれども、そういったことを考えると、なぜ信楽事故の教訓を生かしてATS―Pが設置されなかったのか、このことについて一点、ちょっとお聞きさせていただきたいと思います。

垣内参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど来から申し上げておりますように、安全、正確な輸送の提供が根幹であるというふうなことで、京阪神のアーバンネットワークにおきましても平成元年度からATS―P型を進めております。

 ただいまお話がございました信楽高原鉄道のことでございますけれども、これは、同社の駅係員の異常時の信号の取り扱い誤りが原因の一つであるというふうなことから、私どもといたしましては、実際に扱っている社員がいろいろ実体験ができるということで、実設訓練センターをつくりまして、実践的な教育による実務能力の向上というふうなことをやってまいりましたし、また、第三セクターと私どもの間の境界駅における信号の取り扱い方法との整合性の確認、あるいは両社でもって異常時の取り扱い訓練というのを実施してきたところでございます。

 ただ、しかしながら、ただいまお話がございましたように、信楽高原鉄道で四十二名のとうとい命が奪われたわけでございまして、私どももそういった事実を厳粛に受けとめていろいろやってきたつもりでございます。先ほど申し上げましたように、ATSにつきましても、私どもの京阪神地区を中心に、高密度線区を対象といたしまして、順次、列車本数とか利用人員などを総合的に勘案いたしまして実施してきたということで、たまたまこの当該福知山線区については現在工事中であったというようなことが残念な事象でございます。

 しかしながら、今回このような重大事故を引き起こしたというふうなことを踏まえまして、国土交通省から御指示がございました安全性向上計画の策定にあわせまして、ATSの運転設備の早期整備についても検討をいたしまして、安全を守る風土についても、先ほどもお話しいたしましたように、どこが不十分であったのか、どこに問題点があったのかを徹底的に検証して、安全問題につきまして一から出直したい、こういうふうに思っております。

望月委員 では、最後に一言言わせていただきますけれども、今の社長の話を聞いて、信楽事故の当事者としても、これはもう理由にならない答弁。本当にこれは遅きに失しているんですよ。遅きに失しているから申しわけない、そういう答弁を聞きたかったんですけれども、これから検討してなんというのはとんでもないことであって、これはJR各社に先駆けてやっていくのが当たり前じゃないですか。私はこのように思います。

 時間がありませんから、このような事故が起こらないように言っておきたいのは、このATS装置の義務づけを決定したというようなことを国土交通省から聞いておりますけれども、事は急を要することでございますので、一刻も早く完了するように、これでは事業者に任せられない、財政措置も含めて検討していただきたいと思います。

 では、答弁だけいただいて、これで終わらせていただきます。

梅田政府参考人 財政支援についての考えでございます。

 私どもといたしましては、このATSの設備につきましては全鉄道事業者に義務づけをしていきたいというふうに思っております。しかし、経済力、財政力の乏しい事業者もございます。そういう点から、近代化補助等の制度がございます、こういうものの拡充を図りながら、支援についても検討してまいりたいと思っております。

望月委員 どうもありがとうございました。

橘委員長 山口泰明君。

山口(泰)委員 自由民主党の山口泰明でございます。

 まず最初に、今回のJR西日本福知山線の事故で亡くなられた百七名の方々と御遺族に対しお悔やみを申し上げますとともに、五百人を超える負傷された方々の一日も早い御回復をお祈りいたしたいと思います。

 また、それぞれの方々、今日までそれの復旧のために御労苦された関係各位の方に、深く御慰労を申し上げたいと思っております。

 私は、とりわけ心理面でのケア、心のケアに絞って質問をしたい、こう思っております。

 実は私、外務大臣政務官在任中の二〇〇一年九月、ニューヨーク・テロが勃発、私自身二週間、現地で陣頭指揮をした経験から、事故後の心のケアの必要性を、非常に重要だということを認識しております。今回の事故とは内容も規模も異にするものでありますけれども、事故によって生じた心理的重圧や負担に対するケアの重要性を痛感している一人であります。

 目に見えない精神的な苦痛や苦悩あるいは心に受けた傷やダメージといったものは、往々にして個人が抱え込んでしまい、事故の後遺症がトラウマになり、パニックや不眠などの症状を引き起こすケースが多いわけでございます。実際、あの凄惨、壮絶をきわめたテロの被害者の御遺族や救助にかかわった方の中には、事故後四年をたとうとした今でも、精神的、心理的な不安を抱え、通院している方がおります。

 二十八日、当委員会として現地調査に赴き、私も同行させていただきましたが、現地の惨状は目を覆いたくなるものであります。事故の原因の究明と今後の安全対策については当然のこととして、不幸にして事故に遭われた皆様や御家族、当日事故車両に乗り合わせて幸いにも被害を逃れた乗客の方々、現場で救助に当たられた方々、マンションの住民の皆様等、多くの人々に心のダメージを与えております。

 兵庫県などが設置した相談窓口に、心に深い傷を負った遺族や負傷者からの訴えが相次いでいると聞いております。災害心理学が御専門の東京女子大広瀬教授は、今回は電車が衝突したマンション住民も被害に遭っており、災害に近い状態であり、乗客や犠牲者はもちろん、近隣住民まで心のケアの対象とすべき範囲と指摘をしております。

 事故後開設した施設なり相談窓口は何カ所なのか、また、現在までの相談者の数は何名なのかをまずお聞きしたいと思います。

梅田政府参考人 現在、地元自治体が中心となりまして、御遺族や負傷された方々への心のケアのための相談窓口を設置しております。

 まず、兵庫県におきましては、心のケアセンターなど計八カ所に相談窓口を設置しております。また、尼崎市におきましては保健所等計七カ所、西宮市におきましては、保健所、心のケアセンターの二カ所、神戸市におきましても電話相談窓口を設置しております。こういうものを合算いたしますと、十八カ所の相談窓口が設置されているということでございます。また、大阪市におきましても、心の健康センターにおいて電話相談を受け付けていると聞いております。

 これら相談窓口に対しまして、五月八日の時点でございますが、約二百五十件に上る相談が寄せられているということでございます。今後も相談の件数は増加していくものと思っております。

山口(泰)委員 これらの人たちの対応を、単に窓口を設けるというだけでなく、相談しやすい的確な場所や、また、臨床心理士等の専門家を常駐させる設備も設けるべきと私は考えております。ぜひ大臣のお考えもお聞かせいただきたい。

 また、JR西日本としても相談窓口等を設置して、事故後の精神的苦痛を感じる人たちのケアに進んで努めるべきと思いますが、垣内社長のお考えもお聞きしたいと思います。

北側国務大臣 委員のおっしゃっておられますように、今回のこの事故で被害に遭われた方々はもちろんのこと、この現場に居合わせた方々、また救助に当たった方々等々、私は、心に大変大きなダメージを与えてしまっている、受けていらっしゃるということは当然だと思います。この心のケアの問題というのは極めて重要な課題であるというふうに認識をしております。

 今鉄道局長が答弁をさせていただきましたように、今、地方自治体、県、市を中心に対応をさせていただいておりますが、その体制だけでは十分ではございません。私の方から厚生労働大臣に、先般、ぜひ心のケアの体制について国としてもしっかり支援体制をとってもらいたいということは強くお願いをさせていただきました。厚生労働大臣の方からも、私の方からも今指示をしておるが、さらにしっかりと支援ができるようにやってまいりますというふうなお話をいただいているところでございます。

 これは文科省もかかわっておりますので、関係省庁とよく連携をとらせていただきまして、心のケアの体制につきまして地方自治体をしっかりとサポートできるように取り組みをさせていただきたいと思っております。

垣内参考人 今回の事故により亡くなられましたお客様の御遺族、あるいは負傷されたお客様、あるいは事故に関係された方々のメンタルヘルスケアというものは、先生御指摘のように、私どもとしても大変重要な問題というふうに考えております。

 関係者の方々からの強い御要請等もございまして、私ども、この五月の四日から、ヘルスケアのための電話相談窓口を設置しておりまして、電話によるカウンセリングを実施しておりますし、また、必要に応じまして、医療機関の紹介、あるいはカウンセラー自身がお宅を訪問するというふうなこと、症状や御希望に合わせました対応を行っているところでございます。

 五月四日から五月十二日までの現在で、既に相談件数は百三件でございます。

 以上でございます。

山口(泰)委員 きょう、あと何問か質問があったんですが、時間がなくなりましたので、最後に、列車が衝突したマンション、そしてそのマンションの敷地をすべて買い取り、更地に整備をしてそこに慰霊碑を建立すべきという意見も多数ございまして、私も同感でございます。その一点について垣内社長さんにお伺いをしたいと思います。

垣内参考人 マンションの住民の方々にも、今回の事故に関しまして多大の御迷惑をおかけいたしたわけでございまして、心からお見舞いとおわびを申し上げたいと思います。

 マンションの住民の方々への対応につきましては、事故発生以降、住民の方々の御要望に沿いながら、誠意を持っていろいろ対応させていただいておりまして、代替する住居等を提供するなりをいたしております。今後、さらにいろいろなお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、今お話がございましたマンションを買い取ってそこに慰霊的なものをつくるというふうなことも、私どもにとって大変重要な課題の、テーマの一つだというふうに考えておるところでございます。

 以上でございます。

山口(泰)委員 ぜひ、JR西日本としてはそういう本当にいろいろな方々の思いを胸にして、私の好きな言葉で、得意冷然失意泰然という言葉があります。今回、特にJRの人々にとっては失意泰然だと思いますけれども、謙虚に、なおかつしかし、信頼回復のために、先ほど望月理事からもありましたけれども、本当に指摘されたことを謙虚に受けとめて、しっかりと信頼回復のために頑張っていただきたいと思います。

 以上で終わります。

橘委員長 市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。

 私は、今回事故を起こした電車がとまった駅、宝塚駅を出発しておりますけれども、次の中山寺駅、川西池田駅、そして伊丹駅、このすべての駅があります選挙区を代表する国会議員として、また、すべての国民を代表する国会議員として、そして今回犠牲になられた本当に多くの方々、百七名の方々でございます、そして大きなけがをされ、私が存じ上げておりますだけでも数名の方が恐らく一生涯障害を負って生きなければならない、こういうお話も聞いております。そうした方々の本当に無念の思い、そして、なぜ自分が、また家族がこうした事故に巻き込まれ、命を失い、またけがをしなきゃならなかったか、そうした苦しみをしっかりと胸に持って、少しでも、本当に万分の一でもそうしたお苦しみが和らいでいただけるように、そうした思いでこれから質問をさせていただきたいと思います。

 まず、本日は垣内社長にお越しいただいております。先ほどから、今回の事故に関するいろいろな反省とおわびの言葉をいただいたわけでございますけれども、今回、私もいろいろ事前に調査をさせていただき、議論をさせていただきました。その中で、やはりJR西日本そのものの今回の事故原因に対する究明と再発防止という姿勢、ここも大きく問われていると私は思っています。もちろん、事故調査委員会、また警察も捜査をされていますけれども、これは、事故を起こした主体としてのJR西日本そのものが、やはりみずから今回の事故原因を究明し、再発防止に努めるということに当たらなくちゃならないんだ、そう思っております。

 その意味で、今回いろいろ、初期の段階ではまず救命救助最優先だということは当然ありましたけれども、この間、そうした現場での救命救助作業が終わった後、JRとしてどのあたりまで今回の事故原因について調査を進めていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。

垣内参考人 ただいまの先生の御質問にお答えをさせていただきます。

 鉄道事故につきましては、かつては、鉄道事業者が事故が起こった場合に原因究明をして、そして対応策をみずから考えていくというふうなことでやってまいりましたけれども、航空・鉄道事故調査委員会ができましてからは、原因究明につきましてはこの調査委員会が基本的に行うというふうなこと、あるいは、それとも関連をいたしまして、警察が捜査をされるというふうなことになっております。

 したがいまして、私どもといたしましては、これらの調査なり捜査に全面的に協力していく、こういうふうな立場でございますので、先生のおっしゃった事柄、わからないわけではありませんけれども、非常に限定的な形で、むしろ事故調査委員会に全面的に協力するということでもって原因の究明が早く、あるいはより専門的に行われることを期待しているというところでございます。

市村委員 今、社長のお言葉ではありますけれども、私は事前に事故調査委員会の方また警察の方ともお話をしました。そのときに、もちろん調査委員会は調査委員会の役割がある、警察は警察の役割がある。しかしながら、調査委員会の調査報告が出てくるのは恐らく一年はかかるかもしれない。警察の捜査も、普通、数日とか一週間の単位ではないと思います、恐らく数カ月、半年、一年と。また、これは起訴をされ、起訴があるかどうかわかりませんが、裁判が行われるとなってきますと、この結果が出るのは恐らく何年もかかるということかもしれません。

 しかし、最初に冒頭に申し上げたように、やはり今、犠牲になられた方々の御遺族のお気持ちや、そしておけがをされた方々のお気持ち、また、マンション住民の方々、本当にこの事故のおかげで大変生活の安定を奪われている方々のお気持ちに立ってみれば、さあ、半年待ってください、一年待ってください、結果は任せてありますから、これではやはり私は通じないと思います。

 やはりそこは、もちろん客観的な事故調査そして捜査は警察や事故調査委員会の役割としましても、JR西日本そのものがやはり当事者としてしっかりと社内調査を進めていく。例えば、社長、今回私は、車掌さんにいろいろお話を伺ってほしい、また偶然乗り合わせた二人の運転士さんにお話を聞いてほしいということもお願いしております。今、車掌さん、運転士さん、どうされていますでしょうか、それをお答えください。

徳岡参考人 JR西日本の鉄道本部長の徳岡でございます。

 このたびの大事故につきましては、まことに申しわけなく思っております。心からおわび申し上げます。申しわけございませんでした。

 先生の御質問でございますが、車掌につきましては、ただいま入院をしております。それから、二人の運転士につきましては、出勤をして乗務をしております。

 したがいまして、車掌並びに二人の乗務員につきまして当社としては所在をちゃんとつかんでおりますけれども、先ほど社長の方から話がございましたように、当社といたしましては、調査、捜査に全面的に御協力いたす立場ということでございますので、車掌並びに二人の運転士につきまして、極めて限定的にしか調査をしておりませんので、明確な事柄を申し上げられる状況にございませんので、御説明は御容赦いただきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

市村委員 先ほど申し上げましたように、どうしても事故調査、捜査は、単位がやはり半年、一年、こういう単位なんです。でも、特に今、御遺族の気持ちやおけがされた方の気持ちに立てば、また、私も実は現場におりましたので、本当に現実離れをした現場でありました。だから、恐らく通常、この事故だけじゃありませんけれども、やはり御遺族の気持ちに立てば、まず本当に信じられないわけですね。現実じゃないんです、自分の家族とか知人が亡くなったことは。

 しかし、そろそろ、じわじわと本当に喪失感を感じてこられるころでありまして、半年、一年の単位ではないんです、これはもう。先ほどから心のケアという話が出ています、この場でも。やはりそうしたことについて、なぜこの事故が起こったのか、なぜ私の親族、家族そして知人は命を落とさなければならなかったのか、なぜ私はこうして大けがをしなくちゃならなかったのか、それについて、いや半年待って、一年待ってとは言えないわけです。

 もちろん事故調査委員会はできています、客観的な話もあります。しかし、やはり当事者として、これは事故調査委員会の方もおっしゃっていました。警察の方もおっしゃっています。やはりこれは当然のこととして、当事者であるJRがまず進めるのは当たり前であるということなわけでございます。

 だから、今のような話で、車掌さんは入院されているということでございますけれども、入院されているということは、多分、社としてお見舞いに行かれたと思います。じゃ、どういう状況なんでしょうか。つまり、この事件についてはとても話のできる状態じゃないという御判断でいらっしゃるんでしょうか。どうでしょうか。

徳岡参考人 車掌につきましては、入院をしておりますが、話はできる状態だと聞いています。

 ただし、先ほど申し上げましたように、当社は当事者でございまして、事情を聴取していくということになりますと誤解を招くおそれもございますので、そういったことについては行わないということで会社としては判断しているところでございます。

 以上、御説明申し上げました。

市村委員 誤解を招くから自分はやらないんだというのはちょっと違うと私は思います。やはり当事者として、みずからの問題としてこれを当然やるのは当たり前の話であって、なぜ事故調査委員会はできているかというと、それは当然の話だけれども、やはり自分の当事者だけの問題では、ひょっとしたらそれこそ誤解を与えたり、内部で何かを隠ぺいしたり、自分たちが都合の悪いことを隠ぺいしたりする、だから事故調査委員会などをつくって、客観性を持った事故調査を行い再発防止に努めるというのが目的であって、当事者は何もしなくていいんだ、協力すればいいんだ、もちろん協力はすべきだと思います、しかし、協力すればそこで事足りるんだというのでは全然話が違うと私は思います。

 ですから、きょうはもうこれ以上お話をしても、恐らく、いや調査はしていませんということでございますから、これ以上のことは申し上げませんが、やはり姿勢として、みずからがしっかり社内調査をされて、そして御遺族の方やおけがされた方に、今、JR西日本は、先ほどから垣内社長は生まれ変わるということをおっしゃっているわけです。つまり、生まれ変わっていく姿勢、過程をしっかりと、そういう半年、一年の単位ではなくて、本当にここまでやっていますということを伝えていくということ。やはり、先ほどもありました、一度お見舞いに行って申しわけないと頭を下げるだけではこれは済むものではないということであります。

 あの日航の御巣鷹山の事件でも、いまだに日航の方はそういうことについてしっかりとやっていると私は聞いておりますが、やはりJR西の皆さんにおいても、これから、これからなんです。本当に長い長い御遺族への心のケア、補償問題等がこれから始まるんです。その中で、やはり他人任せではなくてみずからの姿勢で、ちゃんとやるという姿勢を貫いていただきたい、このように思うわけでございます。

 それで、今、事故調査委員会の話が出ました。きょう、お越しいただいております。事故調査委員会の話としてこの間マスコミにもメディアにもいろいろな情報が出ておりますが、こうした情報につきまして、事故調査委員会の方、こうした情報は事故調査委員会が正式に発表しているものとして考えてよろしいんでしょうか。

佐藤参考人 航空・鉄道事故調査委員会の佐藤でございます。

 先生の御質問にお答えいたします。

 今回の重大事故におきましては、さまざまな要因が関係いたしまして、非常に複雑な原因によって発生したんじゃないかというふうに考えているところであります。その原因究明につきましては、単に現場を調査するということではなくて、やはり幅広い見地から科学的な調査分析を行うということが必要と考えておりまして、まだ予断を許すような事柄につきましては当委員会から発表しているということはございません。

市村委員 それでは、具体的にお聞きしたいと思いますが、先ほどから心の問題が出ておりますが、やはり今回の事故原因につきましては、これは私のそれこそ素人判断なのかもしれませんが、やはりヒューマンファクターが大きい、つまり人間の問題が大きいということが強く高く推定されているわけでございまして、報道の中に、やはり心理学者も入れた調査を進めるという報道がありますが、これはそういう方向性は出ているんでしょうか。

佐藤参考人 御質問にお答えいたします。

 航空・鉄道事故調査委員会では、やはり、今回の重大事故ということにおきましては、ヒューマンファクター、これは非常に重要であるということでございまして、調査分析したいということを考えております。しかしながら、心理面ということにつきましてどのような形で調査分析を進めればよいのかということについての体制その他は、まだ決まっている段階ではございません。

市村委員 どうしても、事故調査委員会というと、機械的な面を恐らく皆さん想像していることだと思います。今回のことでいえば、ブレーキはどうだったかとか、車両が正面衝突したけれども側面はどうなったか、多分こうしたこと、あと脱線痕がどうなのかとかいう話になると思いますが、実は、先ほど垣内社長にもお尋ねしたように、つまり、今回、運転士の心理状態、事故を起こしたときの心理状態。起こしたのがひょっとしたらブレーキ事故だったら、運転士も犠牲者かもしれません。

 私は、今までのいろいろな情報から、ヒューマンファクターの方が強いだろうと思います。恐らく運転士が心理的パニックを起こしていたという思いがあります。かつ、ひょっとしたら、今車掌さんのことを私申し上げましたが、つまり、車掌と運転士のそのときのどういう会話があったのか、どういう二人の心理的な側面があったのかということにつきまして、実はそういうところも大きなファクターになっているんじゃないかなという気がしておるんです。

 ですから、そういった面でも、あとまた、そうした運転士さんや車掌さんを取り巻く企業の周辺のあり方、そうしたことがひょっとしたらこの事故の遠因になっているのではないかというふうに私は強く疑っておるんですね。そのときに、例えばブレーキだ車両の強度だとか脱線痕だとか、そういうことだけでこれは恐らく解明できる問題ではないと私は思っていまして、やはりそうしたことにおけるヒューマンファクターの部分までぜひとも進めていただきたい。

 それは、JR西日本の皆さんは、自社のことでありますから、当然、自社でどういうことが起こっていたか一番よく知っていらっしゃるのはJR西日本の皆さんでありまして、どうもやはりああした企業風土がおかしかったかな、社内の風土がおかしかったかな、ちょっといろいろと問題があったかもしれないな、こうしたことはもちろんJR西日本の中でも進めていただくべきこととは思いますが、事故調査委員会でも、そうしたヒューマンファクターということを重視して、ぜひともそうした専門家も入れた上で事故調査を進めていただきたいと思いますが、一言お願いします。

佐藤参考人 御質問にお答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、今回の重大事故の原因究明を行うためには、幅広い科学的な調査分析が必要となるというふうに考えております。

 航空・鉄道事故調査委員会には人間工学が御専門の委員とかあるいは鉄道の運転が御専門の委員がおりますので、これらの委員を中心にヒューマンファクターの面を含めて調査を進めていきたいというふうに考えているところでございます。また、必要な場合には、さらにいろいろな幅広い知見を有する学識経験者が世の中にたくさんおるわけでございますので、皆様にいろいろな知恵をかしていただきながらヒューマンファクターに関する調査を進めるべきであろうということを考えている次第でございます。

市村委員 実は、私はこの事故現場に、最後の方が救出、残念ながら御遺体となっての救出となってしまいましたが、その最後の方が現場を離れられるまで私は現場におりました。そして、現場の様子を見てまいりました。

 その中で今回、消防の皆さん、また警察の皆さん、そして残念ながら、自衛隊の方も行かれたんですが、もう既に消防の方が中心になってやられておりましたので、自衛隊の方はいわゆる側面的支援をされた。また、本当に、先ほどからも出ていますけれども、近隣の住民の方々が、特に日本スピンドルという会社がすぐそばにありますが、この会社は二時間も操業停止をして救助活動を、二時間かどうかわかりません、二百名でしたか、済みません。とにかくもう全社をとめて救命救助活動に当たられたということであります。日本スピンドルさんだけじゃありません。近隣の工場、工場地帯でありますから、工場の方々、恐らく近隣の方々すべて、何とか一人でも助けたいという思いで、必死で救助活動に当たられたと思います。

 だから、ずっと現場にいた者として、その皆さんの御努力は本当に心から敬意を表す、感謝を申し上げる。一番私が皆さんが頑張ったことを伝えられる人間の一人だとは思っておりますが、ただ、だから、これでよかったねで済む問題ではないわけでありまして、実は、その現場の方の声の中で、単によかったよかったで済まない問題があるんです。皆さん協力し合えたねということで済まない問題があるんです。というのも、ある方が私のところに三日目に寄ってこられまして、確かに皆さん一生懸命頑張っていただいているけれども、もっと早く、この現場、救助救出活動を進めることができなかったのか、進めていたらあと数名でも助かる命があったのではないか、こういう声があったのも実は事実であります。

 ですから、これからしばらく時間をかけて、この現場で御活躍いただいた消防また警察の方に、あれが最善だったのかということにつきまして、やはり御遺族の方、おけがをされた方につきましては、もっとできなかったのか、もっと早くやっていたら助かったかもしれないというお気持ちの方もいられるとお聞きしております。だから、それにつきまして少しお話をいただきたいと思います。つまり、あれだけの時間をかけざるを得なかったのかどうか、消防の方、きょう来ていただいておりますが、いかがでしょうか。まず、当日の現場の救出活動について少しお話ししていただきたいと思います。

林政府参考人 現地消防本部からの報告を踏まえまして、当日等の消防活動につきましてお答えを申し上げさせていただきたいと思います。

 今回の事故が発生いたしましたのは四月二十五日午前九時十八分ごろでございましたが、事故につきまして、現地尼崎市消防局が最初の一一九番通報を受けました時間は九時二十二分であったと報告を受けております。九時二十四分には早速現場に先着隊が到着をいたしておりまして、救助活動を開始いたしております。その意味では、消防機関は、通報を受けましてから二分後、事故発生から六分後には救助活動を開始いたしたという報告を受けているところであります。

 ただ、事故現場を見ました消防局長の話によりますと、その規模の大きさにかんがみまして、局長といたしましては、直ちに県内消防本部に応援出動を要請いたしました。さらに、兵庫県知事からは私ども消防庁に対しまして緊急消防援助隊の出動につきまして御要請がございましたので、私の方から、大阪府、京都府、岡山県に対しまして緊急消防援助隊の出動をお願いいたしたところであります。

 その結果、三両目以降の乗客の方々につきましては、当日のうちに全員救助を完了することができたわけでありますけれども、一両目、二両目につきましては、御案内のように、建物の一階部分に車両が複雑に食い込む形となっておりまして、車両の撤去、移動が困難であった。さらに、そのような状況下で作業を行う空間は非常に限られていた。さらに加えまして、一階の駐車場に置かれておりました自動車からガソリンが漏れておりまして、先着をいたしました救助隊長の判断によりまして、火気、いわゆる火花の出るエンジンカッターの使用はすべきでない、こういう判断をいたしたこともございまして、消防関係者は最大限の努力をしながらも、一両目、二両目の乗客の方々の救助に時間を要することとなったわけであります。

 しかしながら、二日目以降におきましても、消防関係者、県内応援隊、緊急消防援助隊、さらには、警察、自衛隊、関係者との連携を深めながら、全力をもって救助活動に当たったもの、このような報告を受けているところでございます。

市村委員 消防の方が大変迅速な活動に当たっていただいたというのは本当にそのとおりだと思います。

 今、ガソリンの問題がありました。確かに、慎重に現場の救助活動を進めなくちゃいけなかった。つまり、ガソリンに引火して二次災害が起こるということに対する危険性が大変あったということでございました。

 しかし、今回、私が、一つのイフといいますか、もしという思いを持ってのことがありまして、今回は基本的に、消防、警察、その他関係者の合議制で現場の救助救出活動が進められたというふうになっております。ここにもし、アメリカのFEMAがありますが、今FEMAは別の大きな組織に統合されておりますけれども、調整官がそういった場合派遣されるんですね、調整官。

 すなわち、今回、私が現場を見ていまして、もちろん慎重に進めなきゃいかぬということはわかりますが、作業がとまると、それから次の作業に移るまで、はい三十分、一時間とか、これは初期の、本当に急いで被害者を病院に運んだり検視場所に運んだりするという作業があったときは違いますけれども、多少作業が落ちついてきますと、一段落しました段階で、やはり合議制ですからどうしても作業をとめて、次はどういう手順にしましょうかということで、次の作業に移るまで三十分、一時間かかるような光景を目の当たりにしてきました。

 では、もしあのときに調整官がいたらどうだったのかなという思いが強くあります。結局、日本は、そうした危機管理の方に対して、そういう統合した役所がないわけです。つまり、危機管理庁のような役所がない。

 ですから、今回も私、事前にいろいろな質問をするに当たりまして、いろいろな省庁の方とお話をせざるを得ませんでした。国土交通省を初め、内閣官房、厚生労働、警察、消防、いろいろな省庁と、もちろん事故調査委員会もそうでしたけれども、話をせざるを得ませんでした。もしこれが危機管理庁というのがあって、そこがすべて統合したものであれば、恐らく幾つも幾つもの省庁で話をせずに一つの危機管理庁としての話で済んだだろうし、もし事故現場でも調整をしていれば、もっと作業が早く済んだのかもしれないという思いを持っています。

 それにつきまして、これはだれに聞くのがいいのかと思いますが、消防庁長官、いかがでしょうか。消防庁としてどういう思いを、やはりこれは、いや、調整官がいてもあれがもう最善だったのか、それとも調整官がいた場合はもう少し早く進められたのか、いかがでしょうか。

林政府参考人 お答えを申し上げます。

 確かに、今回の救助作業に当たりましては、活動箇所をどのようなところに限定して、どのような形で関係者が協力し合いながら効果的かつ迅速な救助結果を出すことができるかにつきまして、いろいろと話し合いがあったとも聞いております。現地指揮所で、警察、消防、自衛隊、JR、あるいはお医者さんを含めて議論もあったわけでありますけれども、基本的には、今回の事故に関しましては、私ども、現地での関係者の調整協議はかなりうまくいったのではないかと考えております。

 特に、救助技術につきましては、私ども消防関係者の専門家が中心になって、関係者の知恵を引き出しながら、的確な判断をしたというふうに関係者からもお聞きをしておりますし、また、現地消防局長からもそのような報告を受けております。

 今回のような限定的な事故、規模が大きゅうございまして、できるだけ迅速な判断が必要だったと思いますが、そのような際には、現地の状況を踏まえた現地消防の、しかも救助にたけた専門の救助隊長がリーダーシップをとって、関係者の協力をいただきながらやるのが的確なやり方ではないかと思っております。今回につきましては、結果として、関係者は適切な救助活動ができたものと私は評価をいたしているところであります。

市村委員 今回、本当に現場で適切な救助活動を進められた、私もそういう思いは強いんです。

 ただ、ではよかったんだということではなくて、やはりこれまでも、いろいろな震災の現場や、またJCOの事故現場でも指摘されていたことなんです、このことは。つまり、調整官がいない。いろいろな役所が、いろいろなところがやってきて、もちろん今回のように、恐らく連携をとりながら本当に一生懸命、今回だって、消防の皆さんも警察の皆さんも自衛隊の皆さんも、本当に現場の皆さんが、一刻でも早くお一人でも助けたい、早く救助したい、それは当然なんです。そのお気持ちでやっていただいていたと思います。やっていらっしゃいました。しかし、そうした思いをもっと生かす仕組み、システムというものをやはりしっかりと考え、構築するというのがこの国会の役目だ、立法府の役目だと私は思っております。

 ですから、そのときに、恐らく消防の皆さんが中心になってFEMAみたいなのがつくられるのだと思いますけれども、この議論、これまでも何度も指摘されていたわけですから、どうぞ国土交通大臣、いかがでしょうか。ぜひともこうした日本版FEMAみたいなものをつくっていく、今後この事故の教訓としてつくっていく、そういう話で、大臣、いかがお考えでしょうか。済みません、杉浦官房副長官、お願いします。

杉浦内閣官房副長官 先生の選挙区でこのような大事故が起こったわけでありまして、先生の深刻な御心痛のほどをお察し申し上げる次第でございます。

 国、いわゆる国民の安全に重大な影響を及ぼすさまざまな緊急事態に迅速かつ的確に対処できる体制を構築することは、政府の当然の責務でございます。

 国家の緊急事態、さまざまございますが、その対処に当たりましては、関係省庁の機能を十分に生かし、調整しながら、政府全体として総合力を発揮できることが重要でございまして、これまでも内閣官房を中心に、さまざまな緊急事態に対処する体制を整備強化してまいっております。中央省庁再編による防災担当大臣の設置でございますとか、阪神・淡路大震災を契機として危機管理監を設けたり、新官邸のもとで機能を果たすべき危機管理センターを設ける等々、進めてまいっているところでございます。

 大規模災害発生時の現地における調整におきましても、状況に応じまして、各省庁からの要員の派遣や、現地対策本部の設置等の方策を整えておるところでございます。

 しかしながら、緊急事態対処に対する組織のあり方については不断の点検が必要でございまして、これまで整備してきた既存の組織や法令との関係、関係省庁間の一層の連携の強化、効率性などに留意しつつ、引き続き検討してまいることが必要でございます。アメリカのFEMAのケース、参考にすべき事例として、いつも念頭に置かせていただいているところでございます。

 なお、今回のJR福知山線の事故に際しましては、今までお話がございましたように、現地の消防、警察等が連携し、民間の方々の大変な協力もあって、調整が図られまして、懸命な救出活動等により適切な対処ができたものと考えておる次第でございます。

市村委員 ぜひとも、これは速急に内閣でも御検討いただきたい、また、これを国会、立法府としても検討していくべきだ、このように思っております。

 そして、今回、実は事故現場だけの問題ではないんです。御遺体の検視安置所になりました尼崎の記念体育館、私もそこに参りまして、いろいろ見てまいりました。時間の問題もありますので詳しく申し上げませんが、やはりそこでも調整官の不在というのが非常に大きな混乱を引き起こしておりました。安否確認に来られた方に対して適切な情報が行かない。もうおれは昼から来ているのに、何回も言っているのに、入れかわり立ちかわり聞いては帰っていった。だれも返事をしてくれない。私は夕方ごろ行きましたけれども、そういう状況の中で、私も若干対応させていただくこともございます。

 やはり調整官がいれば、事故現場だけではありません、そうした御遺体の検視安置所にも調整官がいればそんなこと自体は防げたと思いますが、だれもいずに、結局、JRの皆さんも警察も、持ち場持ち場で一生懸命やっていたと思います、御遺体の安置所でも。しかし、その連携がとれていなかった。特に御遺体の安置所においては連携がとれていなくて、皆さんがじっと立っていたり、右往左往している状況が本当にあったということであります。やはり、そうしたことも含めて、しっかりと危機管理庁みたいなものをつくっていく必要があると思います。

 今回、結局、非常災害対策本部はできませんでした。もしそれができているとしたら調整官が派遣されたかもしれませんが、これは国土交通省としてレベル四で対応されたということでございますけれども、そういう話ではなくて、こんな事故のたびに指摘されているわけですから、やはりしっかりとした体制をつくっていくということ、そのためにはやはり危機管理庁のようなものが必要だということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 それで、大臣の御都合もありますので、先にちょっと議論させていただきたいことがございます。

 今、福知山線がとまっています。実際、地元ではJR宝塚線と呼ばれています。宝塚線が今とまっています。そして、本当に沿線住民の方々の通勤通学の足なんですね。例えば、関東で例えてみれば、埼京線が池袋でとまっているようなものです。大宮から池袋までとまっている状況が続いているという状況であります。

 それで、どうなんですか。JRの方にお尋ねしたいんですが、もちろん、国土交通大臣の方からやはり今回の再開に向けてはしっかりとした安全対策をとるようにという指示があって、今それを急いでいただいていると思いますが、どうでしょうか。この沿線の皆さんの今の通勤通学の足ということも考えたときに、大体どれぐらいのスピードで、もちろん安全性というのが最優先ですから、スピード向上でまたやって、不確定な段階で運転再開してまた事故を起こしたなんというのはとんでもない話でありますから、ただ、それを踏まえつつ、今、実際とまっているわけですから、設置はしやすい状況だと思います。

 また、警察と事故調査委員会の方にお尋ねしましても、捜査に関しては現場調査は一応終えているから、もちろん今後もいろいろ断続的な調査はしますけれども、しかし、新しい線路を引いて、試験運転に関しては捜査上はもうオーケーである、また事故調査委員会も、現場調査を終えているからオーケーであるという話を、あえてきょうは聞きませんが、とってあります。であるから、その状況を得て、いかがでしょうか。どれだけ急ぐのでしょうか。JRの方からお答えいただきたいと思います。

垣内参考人 お答えさせていただきます。

 現在、私ども、ATS―P型の設置工事を鋭意進めているところでございまして、この工事自体は六月上旬には完成をする予定になっております。当社といたしましては、このATSの設置工事だけではなくて、御案内のとおり、そこにはもう既にレールが外されているとか電柱が外されているというふうなことがございますので、これらと並行しまして行う予定でございまして、事故現場の電気関係あるいは軌道関係の復旧工事に加えまして、ダイヤの必要な修正といいますかダイヤの設定、それから乗務員の教育などによりまして、より安全を確かなものとした上で運転再開をしたいというふうに考えております。

 なお、この事故現場の復旧でございますけれども、先生御案内のとおりでございますが、現在献花台がございます。そんなことに対する御遺族の方々のお気持ちの問題とか、あるいは現場マンションにお住まいの方々のお気持ちというふうなことを踏まえてこれは着手してまいりたいと考えております。

 したがいまして、時期としてはまだ未定でございますが、そんなスケジュールでいきたい、こういうイメージでございます。

市村委員 私も、いろいろな方の御意見をお聞きしています。皆さん、やはりこのことは言いづらいんです。早期再開というよりも、できる限り早く復旧、まあ再生と言った方がいいかもしれません。復旧ではなくて、やはり復旧というとATS―Pにすればいい、早期に再生をしてほしいということだと思いますが、やはり御遺族のお気持ちに立てば、これはなかなか、今社長もお話があったようなこともあります。

 ただ、一方で、やはり通勤通学の大動脈の一つが奪われている今の状況におきましては、私、宝塚駅のすぐそばに住んでおりますけれども、この前、五月九日の連休明けに行ってまいりました。もう大変な大混雑です。しかも、宝塚駅というのはエレベーターとかエスカレーター設置もなく、階段の上りおり。結局、一人のお母さんが言われました。この駅は子供を連れてはおりられない、乗れない駅なんだというふうにおっしゃっておりました。お母さん方の間では、あの階段の上りおりは特に御老人も無理です、お年寄りも無理です、だから、本当は阪急を使って行った方がいいのに、わざわざ尼崎まで行ってJRで乗りかえていらっしゃる方も多いと思うということをおっしゃっていまして、そういう方がひょっとしたら犠牲になったり、おけがをされている可能性もあるというお声もいただいているような状況であります。

 今、一番ホームの上に、線路の上に仮設ホームをつくって、階段の上りおりをしないように対策をしていらっしゃいます。本当にその御英断に関しては私も敬意を表しますが、しかしながら、やはりその現状でも、お声は、例えばダイヤの本数を減らしてもいい、徐行運転をしてもいい、徐行運転じゃないですけれども、スピードを落としてもいい、安全に資してくださいと。しかし、できればあの路線を早く再開してほしいという声があるのも、これは事実であります。

 だから、その辺については、もちろん御遺族の感情もあり、また住民の方々の気持ちもありますから、そこは当然のしんしゃくはありますが、それは、やはりJR西日本として、先ほどから申し上げているように、みずからの当事者としての態度で、そうした皆さんへのしっかりとしたお気持ち、心のケアをしていただきながらの話だというふうに思いますので、ぜひとも。

 ただ、六月の上旬と今おっしゃいました。六月の上旬に工事が完成して、それから試験運転をする。ということは、今の話だと、早くても六月の半ば、これは最後は大臣にお聞きするんですが、どうなんでしょうか。試験運転を済ませたとすれば、大体いつになったらJRとしては安全な運転再開ができるというふうにお考えでいらっしゃいますか。工事が六月上旬になれば、試験運転も済ませてという。どうぞ、いかがでしょうか。

垣内参考人 お答えをいたします。

 先ほどと同じでございますが、先生おっしゃいますように、いろいろな沿線の方々からのお声があるということも承知をしております。しかしながら、先ほどお話しいたしましたように、工事の方は六月上旬には完成するというふうに見ておりますが、その後のダイヤの設定とか乗務員の教育等々、それから、現地を使うというふうなことがございますので、いろいろなことをして支障がないようにいたしたいというふうには思っておりますけれども、ちょっとその再開時期をまだ明確に言えるような段階まで来ておりませんので、大変申しわけございませんけれども、御理解をいただきたいと思います。

市村委員 大臣にお伺いしたいと思います。

 これは大臣の、ある意味で御英断といいますか、お声で、やはり安全対策というものを重視だと。当然、私はそれに全面的に賛同いたします。しかしながら、今申し上げたような、やはり通勤通学の足ということもあります。大臣として、やはり私としては早急な、できる限り早くの再開というものをお願いしたいと思うわけでございますけれども、大臣からお一言いただきたいと私は思います。

北側国務大臣 このJRの宝塚線は、委員もよく御承知のとおり、二十万人以上の利用者の方がいらっしゃいます。今、大変御不便をおかけしておるわけでございます。しかしながら、このような大惨事、重大事故が起こったわけでございまして、これは安全対策が十分にとられないと、私は、利用者の方々も本当に安心して乗車ができるのかというふうに思うわけでございまして、やはりそこはきちんとした安全対策をとってもらう必要がある。

 その意味で、一つは、ATS―P型というのはもともと設置の工事をしておったわけでございますので、これを早急に必要なところにきちんと整備をしていただくこと。また、今JR西日本の方では、社内で再発防止に向けての対策を取りまとめている最中でございます。先般も、JR西日本からはその項目について発表があったわけでございますが、これは、私どもとよく協議をさせていただきながら、十分な再発防止策をつくっていただきたいというふうに思っているわけでございます。これが、五月の末をめどに取りまとめようと今進んでいるところでございます。

 そういうのもよく見させていただきまして、今委員のおっしゃったように、二十数万人以上の本当に多くの利用者の方々が利用されております。本当にライフラインでございまして、この安全対策をしっかりとらせていただいた上で、その上で、できるだけ早期の再開ができるように努めてまいりたい、また、JR西日本に対して促してまいりたいというふうに思っているところでございます。

 この間、大変御不便をかけておりますが、今その御不便につきましては、代替の輸送についても確保する等、さまざまな対策をとらせていただいているところでございまして、また、現場についても日々注視を、ウオッチをさせていただいておりまして、今、使えない、運転が休止しておるということで生じておりますさまざまな問題につきましては、毎日ウオッチをさせていただいて、その課題についてしっかりと対策をとらせていただきたいというふうに思っているところでございます。

市村委員 今、通勤通学の方々、本当に耐えていただいています。今、その皆さんに対してのお気持ちもいただきましたので、そうした方々のお気持ちもまたいただきながら、大臣、よろしくお願いします。

 それで、今回、先ほど御遺体の検視安置所についてのお話をさせていただきました。そのとき、本当に現場は大混乱でありました。その中のお声の中に、これからの教訓にしていただきたいんですが、自分は病院を全部回ってきた、そしてここに来たんだと。しかし、全然情報がない。もちろん、亡くなられた方の情報はここにもあるけれども、一番欲しい情報は何か。すなわち、病院に意識不明で運ばれた方の情報なんだと。つまり、意識不明で運ばれるわけだから自分で名乗れないわけです、自分がだれだかということを。

 そして、たまたま身につけているものの中に身分を証明するものがあれば、その方はだれだということはわかりますけれども、もし、それが例えばかばんに入れていた場合、事故現場でかばんがどこかに行ってしまった場合は、まず身元不明で病院に運ばれていく。病院とすればその身元を確認する以前に即処置をする、それは当然であります。ところが、その方たちの情報が外に出ないわけです。ないわけで、わからないわけですね、自分で名乗れないわけですから。そういう方の情報について教えてくれと。お昼から行っているけれども、だれもやってくれないじゃないかというお怒りの声もありました。

 そして、それにつきまして、特にそのときの御提言はもうそのとおりだと思うのは、JRの社員の皆さんはいるだろう、いらっしゃるだろう、その病院に。JRから社員の皆さんに言って、そういう方の情報をすぐ集めてくれ、そうしたらすぐ集まるじゃないかと、御提言もありました。昼から行っているんだと。

 私、夕方に行きました。だれもやってくれないと。私から地元の尼崎市長さんにお願いして、市役所の方にもお手伝いいただきながら、そうした調査を実はやっていただいたんです。その間で、またJRの方も同時並行的にやっていただいたということがありました。ところが、その話の二時間後に話が何が来たか。すなわち、病院から、実は情報を出せないんだという話が二時間後に来たんですね。なぜかというと、個人情報保護法があって出せないというわけです。

 今回、実は病院に運ばれてお亡くなりになられた方は一名なんです。二十六日の午前零時五分、私も現場におりました。その方が運び出されて、結局、残念ながらクラッシュ症候群で亡くなられたと私は報道で聞いておりますが、もし、これが重体で運ばれて、万が一でもお亡くなりになっていて、そして関係者がその方を捜していて、個人情報保護法を盾に情報を出せなかったがために結局その方が万が一死に目に会えなかった、もしそういう事例があったとしたら、大変な問題になっていたと私は思います。

 そこで、きょうは内閣府もいらっしゃっていますが、そういう場合、病院は情報を出せないんでしょうか。内閣府から一言だけ、もう簡潔にお願いします。

中村政府参考人 お答えいたします。

 個人情報保護法の原則では、おっしゃられますように、「個人情報取扱事業者は、」「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」ということにされておりますけれども、幾つかの例外が規定されておりまして、その中では、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」ということが定められておりますので、この規定に該当する場合には、本人の同意を得ないで個人情報を提供しても法律違反になることはないと思っております。

市村委員 引き続き厚生労働省にお尋ねします。

 厚生労働省の方では、平成十六年十二月二十四日、こうしたガイドラインをつくっていらっしゃいます。ここにも今のお話は載っております。二十三条一項二号の話が載っております。そして、例として、「意識不明で身元不明の患者について、関係機関へ照会する場合」は、この法律の限りでないということを例外規定が書かれているんですね。これが周知徹底されてなかったということなんです。たまたま今回そういう、死に目に会えなかったという事例がなかったからよかったものの、もしあったら大変な問題になっていたと私は思います。

 ですから、ぜひとも私は厚生労働省さんにお願いしたいのは、この例示の中にも、こうした今回の教訓を踏まえて、こうした場合、災害時の場合のこうした事例については情報提供を速やかに行うように、もしくは、これは人間の情から考えれば、一刻も早く、この身元不明の方の関係者は捜していらっしゃるだろうから情報を伝えにゃいかぬと思うのが、普通人間の情のはずなんですね。常識以上の法律はなくて、だから私も直観的に違うと思いましたけれども、やはり調べてみたら違うんです。常識以上の法はないわけですから、やはり常識に従い、または仁義の情に従えば、当然速やかに情報提供を行う、当たり前のことなんです。

 それが、今回、この法律によって、一時期なりとも情報提供がおくれたということは大変大きなゆゆしき問題だと思いますので、厚生労働省さん、一言、ぜひとも例示を含めて私はしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岡島政府参考人 御指摘のガイドラインにつきましては、今後、個人情報保護法の施行状況を踏まえまして、必要に応じて見直しを行っていくこととしておりますので、災害時等における対応の記載につきましても見直しの中で検討していきたいと思っております。

 当面の対応といたしましては、現在、ガイドラインに関するQアンドAというものを作成して公表しておりますので、その中で具体的な事例として加えたいというふうに考えております。

市村委員 では最後に、本当に、今回犠牲になられた方の、また、おけがされた方の無念というものをしっかりと思いながら、さっき社長のお言葉にもありましたけれども、しっかりと思いながら、今後本当にJR、生き返ってほしいと思いますので、そのことを最後にまたお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

橘委員長 赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 まず、今般のJR福知山線列車事故によりまして、一瞬のうちにとうとい命を絶たれ、そして、本当に無念であったろうな、亡くなられた百七名の皆様、また残された御遺族の皆様のその無念さに思いをはせまして、改めてこの場をおかりいたしまして御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。また、五百名にならんとする、今回の列車事故に巻き込まれて、まだ意識不明の方もいらっしゃるわけでございまして、今回負傷を受けられました皆様方の一日も早い御回復を心からお見舞い申し上げる次第でございます。

 また、この場をおかりいたしまして、今回の事故発生直後に、消防庁やレスキュー隊の到着以前にボランティアで、本当に必死の思い、正義の思いで、危険を顧みず救出に走られた民間の皆様方に対しまして、心から敬意を表する次第でございます。

 私たち公明党は、発生当時、直後に今回の事故対策本部を設置させていただきました。冬柴幹事長、地元選出ということもありまして、幹事長みずから本部長になり、私も事務局長を務めさせていただきまして、幹事長は当日のお昼には現場に走らせていただきながら、北側国土交通大臣とともに現場をしっかりと見させていただき、私たちも対策本部として現場に何回か足を運ばせていただいたわけでございます。

 その中で感じたこと、そして今回の答弁を聞かせていただきながら、限られた時間でございますが、何点か御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、先ほど垣内社長の御答弁ございましたが、企業風土の改革、安全性を優先する企業風土に改革する、こういうふうに言われました。私は、大変失礼な言い方でありますが、北側国土交通大臣も記者会見で御発言されているかと思いますし、私は当たり前のことだと思いますが、交通事業者にとって乗客を安全に運ぶことが最大のサービスだ、何を今さら安全優先の企業風土に改革しなければいけないなんということを言っているのか、そのことをまずJR西日本として真剣に恥ずべき、反省するべきだ、私はそう思うわけでございます。

 その大前提に立って議論をしなければこの国会の審議だって何の意味もない、本当に、この国会の審議を通じて真剣なやりとりをすることによって、鉄道事業者としての安全回復ができるのかどうかということが問われる委員会だというふうに私は思っております。真剣に質問させていただきます。

 まず、このJR西日本の今回の事件を機に、会社の体質というのが随分言われました。例えば、当事者感覚のなさ、当事者意識の薄さ、また危機管理対応の悪さ、まずこの点について改めてただしたいというふうに思っております。

 一つは、あの列車事故に二人の社員が乗り合わせていた。私は現場にそのときにおりませんでしたが、あのときのビデオを見れば、巻き込まれた方の悲鳴が聞こえる、電車がマンションの中にめり込む、極めて異常な、天災ではなくて人災の現場の中に、あろうことかJRの社員が二人おりながら、ボランティアだ乗客だって必死になりながら修羅場で人命救助に走っているのに、それをその現場から離れるというその根性というのはどういうことなのか。信じられない常識です。

 上司に連絡をとった。普通、この第一報というのは一番大事であって、この第一報を受けた上司は、垣内社長、トップにすぐ連絡が行って、最大の体制をとるというのがこれまでの事故の反省に立った上での危機管理の対応ではないんですか。こういった感覚が全く考えられない。

 そして、遺体が全部運び出されない、また意識不明でまだ大変な災害が続いている、社長や幹部が遺族の皆さんのところを回っている、そのときに社員がボウリング大会やゴルフコンペをする、そして内部告発のようなことをテレビに出て言う。自分たちの企業が百七名の命を奪ったという責任感が全く感じられないということに私は唖然とするんですよ。どうなっているんですか、これは。何か、本業は人ごと、事故を起こしたのは、ああ、そこの区か、自分たちは関係ない、ゴルフコンペをしよう、ボウリング大会をしよう、本業と同じくらい大事なんだ。政治家だってそこへ参加して黙祷してビールを飲んだ、こんな話もあった。

 しかし、私はこの大事な、未曾有の事件を起こした、自然災害ではありませんよ、皆さんが所属しているJR西日本という会社が起こしてしまった大変な事故の当事者意識がどこにあるというんですか。全く情けないというか、私はこんな非常識な企業があるのかとやはり言わざるを得ない。

 そして、下り線の特急列車も走り込んできた。毎日新聞の報道では、近くを通りかかった四十七歳の御婦人が踏切の非常ボタンを押してこれをとめた。パニックに陥った車掌さんは緊急無線を発報しなかった、こんなていたらくだったということですよ。

 こういった、私が今御指摘した、またさんざんマスコミの報道でも指摘をされている当事者意識のなさはなぜなのか。ほかの企業では考えられないはずですよ。これは、JR西日本かほかの企業かよくわかりませんが、みずからがトップとして、こういったこと、こういった信じられないような事象が数々起こってきたことについて、どう分析をしてどのように反省をしているのか具体的なことがないと、言葉だけで上っ面で、反省した、反省したと言ったって、また起こしますよ、こんなことは。多分構造的な問題ですよ。

 こんな事故が起こったのに人ごとみたいなことをやれるという、この企業の体質こそ改善するということが、安全を優先する風土改革につながるんではないんですか。私は、この点についてまずはっきりと御答弁いただきたいと思います。

垣内参考人 お答えをいたします。

 ただいま先生からの御指摘、本当にもっともでございます。

 私も、事故が起こりましてすぐに対策本部をつくり、そして現地も行き、そしてお見舞いもし、それから尼崎の体育館にも当日参ったわけでございますが、先生御指摘のように、その日に乗っていた乗務員が救助活動に携わらなかったこと、それからまた、ボウリング等を初めいろいろなイベントに参加していた社員がいたということで、私も聞きまして、本当にとても信じられないといいますか情けない気持ちでいっぱいでございます。本当に、会社としても大変申しわけないわけですが、私個人としても大変情けない気持ちでございます。

 したがいまして、先ほども申し上げましたけれども、私どもの安全を優先する企業風土、これは当たり前といえば当たり前でございますけれども、やはり今までのやり方は、国鉄時代には仕事をきっちりしなかったというふうなこともありまして、きっちりさせるということについてはかなりのエネルギーを割きましてきちっとできるようになってきましたし、それなりの成果はあったというふうに私は思っておりますけれども、一方で、決められたことさえすればいいんだというふうな風潮が出てきたのかもしれませんし、また逆に、一般の第一線の社員から上部機関あるいは上司へのコミュニケーションというのが十分でなかったのかというふうなことも感じた次第でございます。

 鉄道というのは、先生御指摘のとおり常に危険と隣り合わせの仕事であるということですから、例えば世間の風潮がそういう、自分に関係のないことは関係ないんだというふうな風潮が最近あるというふうなこともありますけれども、そんなこととは関係なく、私どもは常に一たん緩急あれば救助場面に出かけていく、あるいはいろいろな意味で応援をするというのが一番の基本でございます。それが残念ながらなかったというふうなことでございまして、一から本当に出直さねばならない。本当に恥ずかしい限りでございます。

 そういうことで、先ほども申し上げましたけれども、今回のこの問題は、ハード面で安全を強化すればいいとかソフト面で強化すればいいというふうな問題ではない。もちろんそれも当然やらねばなりませんが、それをやればすべてが解決するというものではありません。御遺族の方々からも、今度はきちっとやりますから事故を起こさないですよということを申し上げたんですけれども、そんなものだれが信用するんだというふうに私は厳しく言われました。

 それと同じことでございますけれども、そういう意味では、今回は、企業の風土を変えたい、それから、いろいろな御批判とか御意見、これに謙虚に耳を傾けたいというふうに考えております。

 それで、再度、現場も含めまして、現状の課題を全部あぶり出して、そして一から出直して、こんな、世の中に出て恥ずかしいようなことの絶対に起こらない企業にしなければなりませんし、そういうことをすることが結果として信頼回復にもつながりますし、安全な鉄道にもなるというふうに信じているわけでございます。私、精いっぱい頑張りますので、ぜひごらんをいただければと思います。

 失礼いたします。

赤羽委員 次に、今問題と言われております労務管理について御確認をしたいと思います。

 まず一つは、いわゆるマスコミでも報道されております日勤教育の内容について、これは実効性がある内容となっているのかどうか。どうも真実は定かではありませんが、報道されている内容を見ますと、懲罰的な、懲らしめ的な内容になっているのではないか。

 私は、オーバーランをするとか、例えば集中力を欠いているような運転士に対する教育であるならば、その集中力を高めるような教育内容でなければおかしいと思いますよ。そういった、二度と日勤教育を受けたくないというような、懲らしめ的な側面の今のあり方について、JR西日本としてどう認識をしているのかということが一点。

 また、今回の運転士であった高見運転士は、報道によると、健康上の問題はなくて、社内試験も優秀な成績であった、このような御発言もあったわけでございますが、その健康上の問題もなく、社内試験も優秀だったはずの運転士は、実は二〇〇二年の五月に、車掌として、オーバーランで非常弁を引かなかった、そして訓告処分を受けた。翌年の八月には、乗客から二度、目がうつろだと指摘をされて厳重注意処分を受けている。そして翌年の六月には、運転士になった一カ月後に、百メートルオーバーランをして訓告処分を受けた。そして、ちょうど一年後のこの四月に、この大惨事を起こした。私は、何も問題がなかったのかと。

 私は、ここの認識についてどうも納得がいかない。そんな優秀な、社内試験の結果も優秀だ、健康状態も問題がないと言われている人が、なぜそんなに何回も訓告処分や厳重注意を受けるようなミスを犯すのか。ということは、社内試験のあり方が問題なのではないか。健康上問題ないと言われている人が、目がうつろだ、目がうつろだという乗客の指摘で厳重注意処分を受けるなんというのはよくわからない。目がうつろなんだという注意を受けるというのはどういうことなのか。

 あるマスコミ報道では、この四月二十二、二十三、そして二十四、二十五と泊まり勤務が二日続いていた。特休の買い上げという制度があるのかどうか知りませんが、そういった勤務をしていた。こういったことを含めて、本当に今回のこの運転士、問題はなかったというふうに言えるのかどうか。その点についてどのように認識をされているのか、御答弁をいただきたいと思います。

徳岡参考人 お答え申し上げます。

 まず、日勤教育について最初にお答えいたします。

 安全・安定輸送を担う乗務員が事故等を発生させた場合に、再発防止を目的として必要な教育を行うことは、鉄道事業者としてやらなきゃいけないことだというふうに認識をしております。実施に当たりましては、本人の気持ちの整理であるとか鎮静化、職責の重要性の理解、不足しておりました知識、技能の取得など、日勤勤務の目的を明確にして行うとともに、教育方法も、自分自身で事故に至った原因を分析し、事故防止はみずからの課題として取り組むよう指導しているところでございます。

 ただ、今後、いろいろ御指摘がございますので、他社の例も参考にして、より効果的な手法について検討してまいりたいというふうに考えております。

 また、報道等にございますように、教育と称して懲罰的なことが本当に行われていたかということでございますけれども、当社としては、あくまでも事故等の再発防止の観点から必要な教育を実施しているものでございまして、大部分の再教育につきましては趣旨にのっとって実施をしているものと考えております。

 ただ、社員の受けとめ方として、一部例外的に、やや疑義のある部分があったというふうに考えられますので、今後さらに適切な教育を行うという観点から、運転事故に係る再教育につきまして、一定の標準を設けることなどを含めて検討したいというふうに考えております。そういうことで、より趣旨にかなったものになるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 本人につきましてでございますが、平成十六年六月に、先ほど先生御指摘のとおり、停止位置不良事故を起こしましたけれども、事故原因が運転士としての職責とか基本動作の重要性を理解していないということにあったということでございまして、他の事故事例を活用した指導等を行いまして、事故の背後要因とか対策及び異常時における対応につきまして、管理者の指導のもとにレポートにまとめさせるなどの再教育を行ったものでございます。

 必要かつ適切なものであったというふうに考えておりますけれども、本人といたしましては厳しいものと受けとめた可能性は否定できないということでございます。今後、本人のこうした受けとめ方などについて配慮していく必要があるかというふうに考えております。

 以上でございます。

赤羽委員 やはり平常時の能力がどうかということに加えて、緊急時とかパニック時にどう対応できるかというのも、別の資質だと思います。

 私は阪神・淡路大震災のときに被災地で被災をいたしました。極めて修羅場のところでどう行動するかということは、平常とは全く違う状況である。ですから、私は、その資質がどうなのかということまで含めてしっかりと検討してもらわなければ、それはとても心配で、乗れないですよ。

 ですから、この労務管理というのは本当に大事で、上からよかれと思っていても、現場の声が反映しないような労務管理なんというのは、私はあり得ないと思うし、やはり現業部門等の声も、しっかりと連携をとっていただきたいと強く申し上げておきたいというふうに思います。

 加えて、次に、安全対策ということについてでございます。

 JR西日本の本年度の安全対策費は四百六十六億円、東日本は千百五十億円、東海は八百億円。こう比較をすると、かなり低くなっている。あと、読売新聞の五月九日付では、ATSの設置について、JR西日本は関西の大手私鉄より三十年おくれている、こういったコメントが、関西の地下鉄の技術系幹部のコメントとして出ておりました。

 神戸新聞の五月十一日付の夕刊では、過密ダイヤと運行高速化によって、運休、遅延が過去十四年間でJR西日本は倍増していると。これは実に百万キロメートル当たりの輸送障害、三十分以上の遅延とか運休は、JR西日本は五・一四件。これが他の私鉄なんかでは、阪急は〇・九五、京阪は〇・九〇と、大変な違いがある。こういった現象を見ていますと、やはり安全対策が不十分だったのではないか。

 また、ニュータウン地域ですから、宝塚、三田、篠山といった、造成で大変に人口もふえている。事実、このJR福知山線の宝塚駅の本数は、八七年の開業は日に九十三本、ところが今は三百六十九本になっている。やはり四倍にもふえている。

 国土交通省としても、運行ダイヤにゆとりを持たせる、余裕時分というんですか、これを過度に削減していた、こう見て、国交省も調査をするというような報道もきょうございましたが、こういったことを含めて、本当に安全対策はどうだったのか。国交省からも指摘をされていると思いますが、その点についての御見解を伺いたいというふうに思っております。

垣内参考人 お答えさせていただきます。

 私どもの会社、やはり安全・安定輸送というのが大変鉄道事業の根幹であるということで、事業運営においても最も大事なものとしてこれまでもやってきたつもりでございます。

 実際、安全投資というものも、全体の投資の約半分程度を継続してきたところでございます。JR他社との比較において少ないというふうな議論はありますが、詳細の方はわかりかねますけれども、やはり事業規模による差もございます。直近の実績で見ましても、そういった意味では大差がないのかなというふうに見ております。

 しかしながら、今回このような重大な事故を起こしたというふうなことでございますので、現在、国土交通省から御指示のある安全性向上計画を策定中でございますが、それにあわせまして今後の投資のあり方につきましても検討をしてまいりたい、より重点を置いてやってまいりたい、かように考えているところでございます。

 それから、過密ダイヤのことでございますけれども、確かにこの線区も、おっしゃるように、新会社発足時点から比べますとかなり列車本数がふえてきてはおるわけでございますけれども、都市圏として見た場合に、もちろんこれよりも過密なところはたくさんあるわけでございまして、過密だからどうのこうのというふうな議論ではなかろうかと思います。

 しかしながら、おっしゃるようなことで、運行上遅延がたくさん出てきておるというふうなことにつきましては、これは大変重要な問題であるというふうに認識をいたしておりまして、この遅延の実態というものをもう少しよく調べまして、そういったものに合わせてダイヤをつくっていく、あるいは余裕を持たせるというふうなこと、あるいは停車時分を少し長引かせるというふうなことを今後抜本的に進めてまいりたい、かように考えているところでございます。

 以上でございます。

赤羽委員 今回のこの未曾有の列車事故を起こしたことにより、まだまだやらなければいけないことは山積をしているわけでございます。安全対策、また労務管理、企業風土、企業風土というのは、中の現業部門と経営者のコミュニケーションというか一体化とか。また、今回の被害に巻き込まれた人たちへの補償問題。また、あのマンションの住民の皆さんからは、要するに謝罪もないというようなことがテレビで報道されている、きのうなんか見ていますと。

 そういったことも、もろもろのことも含めて、私は、やはり今回のこの大変な事故を教訓として、JR西日本として大きな区切りをしっかりつけなければいけない。安全性向上計画、五月末までに提出される、このように言われております。こういったことに、字面だけの報告ではなくて、本当に虚心坦懐に、全社員を挙げての血のにじむような報告にならないと、私は何の意味もないと。

 そして、私からこのようなことを言うのはなんだと思いますが、社長も腹を決められていると思いますが、こういった事故を起こした、区切りをつけた、そこで当然、トップ、経営者としてけじめをつける御覚悟があると思いますが、その点について最後はっきりと決意を伺い、私の質問を終了させていただきます。

垣内参考人 先生の御質問にお答えをさせていただきます。

 先ほど来から申し上げておりますように、今回の大惨事が起こったこと、それから、それに関連していろいろな不適切な行動があったというふうなこともございまして、単にハード、ソフトをいらうだけではなくて、会社の体質自体、会社自体を変えなければ私どもの会社はやっていけない、そういう危機にあるというふうに実は思っておりまして、そういった意味で、これはトップが云々、トップだけではなくて、全社員を巻き込んだ運動にしなければならないと思っております。

 それで、五月の末の安全性向上計画の中では一項目にすぎないそういう企業風土ということですが、字面を書いただけでは全然意味がありませんので、風土を変えるには三年とか五年とか、あるいは十年かかるかもしれません。しかしながら、例えば私が当面やりたいと思っておりますのは、私どもの会社は経営理念というのをつくって、これに基づいていろいろなことをやっております。これは、経営理念をつくるときにも、これは新会社発足時点につくったわけでございますが、全社員がそれぞれチームに分かれまして、今の会社の現状はどうなのか、何が問題なのか、何をやろうではないかというふうなことを議論いたしましてつくった経緯がございます。

 したがいまして、これから全社員を入れてそういう議論を踏まえて、そういった中から、こればかりが風土改革ではありませんが、風土改革の一つのきっかけにやっていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

 それから、私の責任問題のことでございますけれども、このような大きな事故を起こしたというふうなことは十分私としても感じているところでございますけれども、現時点におきましては、御遺族とかおけがをされた方に誠心誠意対応する、これに万全を期すというのがまず第一でございますし、それから、国土交通省から御指示がございました安全性向上計画を策定するというふうなことも大事でございますし、また、先ほどお話がございました不通となっております宝塚―尼崎間についても、安全確保に十分施策を打った上で、運行再開できるように取り組まねばならないと思っております。

 それから、さらに大事なのは、一番先に申し上げましたけれども、当社の風土改革というふうなことでございます。これは私一人でできるものではありませんし、かなりの期間がかかるものでありますが、私といたしましては、このようなことが二度と起こらないような風土をつくるきっかけは、私は今回の事故で一番痛みを感じている私こそがやはり前面に立ってやらねばならないと思っておりまして、そういった事柄が責任のとり方の一つではないか、こういうふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

赤羽委員 終わりますが、その安全性向上計画というものを真の再生計画として出す、これは一つの大きなけじめだと私の見解を申し上げて、終了させていただきます。

 ありがとうございました。

橘委員長 金田誠一君。

金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。

 まず、このたびのJR西日本の大事故によって犠牲となられました百七名の方々の御冥福を心からお祈り申し上げるところでございます。さらに、負傷された四百六十名の方々の一日も早い御回復を御祈念申し上げるところでございます。

 JR西日本には質問の最後にというふうに思っておりましたが、答弁を聞いておりまして、そうもならなくなりました。わかっておられないのかなという腹立たしい思いを今いたしております。

 今日の事故を招いたその最初の出発点が信楽高原ではないですか。あの事故の責任を明確にしてこなかった。JR西は一貫して責任回避をしてきた。裁判でようやく高裁判決が出て、その謝罪も、記者会見で謝罪をしただけで、御遺族には謝罪さえしなかった。抗議を受けてようやく謝罪をする。信楽高原の処理の問題、責任を明確にしてこなかったということが今のJR西の企業体質をつくったんではないですか。それを何ですか、体質を変えるにはあなたが先頭に立てると。全くわかっていないんじゃないですか。経営トップの総入れかえですよ。それがなくて何をやろうというんですか。そのことについて、まず簡潔にお答えをいただきたい。

    〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

垣内参考人 それでは、お答えをさせていただきます。

 信楽高原鉄道の関係につきまして、いろいろそれが踏まえられていないんではないかというふうなお話がございました。

 先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、信楽高原鉄道に関してとうとい四十二名の犠牲を強いたというふうなことでございますので、それらに関しまして、そういったことが二度と起こらないように、あるいは、駅務員が信号扱いを誤ったというふうなことが非常に大きいわけでございましたので、それらに見合うようないろいろな実設訓練センターをつくりまして対応をしてきた等々、いろいろなことをやってきたわけでございます。

 しかしながら、残念ながらまた今回の事故が起こってしまったわけでございまして、先生御指摘のように、それでは言っていることとしていることが違うじゃないかと言われれば、申しわけないというふうにお謝りをしなければならないわけでございますけれども、今回このように大きな惨事が起こりまして、全く私どもがお客様との関係においては一〇〇%悪いわけでございますし、また、いろいろな不祥事といいますか、不適切な行為も出ております。したがって、ここのところは、まず一から出直さねばならないというふうに思っております。

 一から出直す方法としてはいろいろございますし、先生の御指摘のこともありますけれども、やはり風土を改革するというふうなこと、それから御遺族への対応というふうなこと等々もございます。今回の事故の中で、社員の中では最も痛みを感じたのは私でございまして、私が全社員にその痛みを訴えるということ、そしてまた、そういった中から風土改革のきっかけをやはりつくっていかねばならないというふうに思っているわけでございまして、ぜひとも御理解を賜りたいと思います。

金田(誠)委員 もう質問する元気がなくなりますね、こういう御答弁を聞いていれば。さすが、事故の後、直ちに置き石だという発表をして、何の根拠もないのに置き石などということを持ち出した会社だけのことはあるな、あなたがトップであの発表だなということはつくづくわかりました。つくづくわかりましたよ。こういう会社ですからね、大臣、大変だと思います。

 そして、大臣と事故調、こういう体質を、恐らくここまでとは思っていなかったんじゃないですか。そういうことで今日まで対応されてきた。結果、こうですよ。私は、国交省、事故調、それぞれ責任重大だというふうに言わざるを得ない。その結果がこういう状況を招いたという観点から、事故調、大臣、順次御質問をさせていただきたい、こう思います。

 まず事故調でございますけれども、この委員会は、九一年の信楽高原鉄道とJR西日本の正面衝突事故、これをきっかけにして、御遺族の方々がアメリカにまで行かれて、国家運輸安全委員会、NTSBというんでしょうか、ここの調査をされるなどして日本にも必要だという問題提起をされたのが事の起こりですよ。そして、日比谷線の事故によって、二〇〇一年に航空事故調査委員会が改組されて今日に至っている。JR西日本とは非常に因縁の深い組織なわけですね。それが今日、同じJR西の事故調査を行う。信楽高原鉄道の御遺族にとっても感慨深いものがあるだろうな、こう思うところでございます。

 事故調の皆様、連日不眠不休、大変な御苦労をされていると報道もございますけれども、ぜひ頑張って国民の期待にこたえていただきたいな、これを申し上げたいと思います。

 そこで、この事故調に期待されていることでございますけれども、事故の直接的原因はもとより、事故を招いた背景、これをぜひ解明していただきたいと思います。

 例えば、ダイヤ編成にかなりの無理があったというふうに聞いております、これはどうだったのか。異常とも言える労務管理と事故との関連はどうだったのか。ハード面でも、新型ATS、あるいは防護レール、これなどはごく安価に設置できるようです、こういうものが設置されなかった理由は一体何なのか。そして、信楽高原鉄道の事故を教訓化できなかったJR西日本の企業体質、鉄道事業者としてこれは本当にふさわしいのか。こうした背景も含めて、ぜひひとつ調査をして国民の前に明らかにしていただきたい、これを御要請申し上げたいと思います。

 この際、もう一点ちょっと苦言を呈しておきたいと思うんですが、事故調設置法には、「目的」の中に、「事故の兆候について必要な調査」を行う。事故の兆候あったでしょう、事故の兆候は。いろいろなこと言われていましたよね。そして「所掌事務」の中には、「鉄道事故の防止のため講ずべき施策について建議する」ということがある。この兆候を調査して建議をするということがなされてこなかった。これについてどう考えておられるか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。

佐藤参考人 お答えいたします。

 重大事故の調査ということになりますと、やはり予断を持ってこれを調査するということではないというふうに考えております。あらゆる可能性の観点からこれを科学的に調査分析するということが必要であるというふうに思っております。

 今後、本事故の発生に関与いたしました背景を含めましてさまざまな観点から調査を進めて、科学的に分析、検証を行って、事故原因を究明する。あわせて、再発防止策の検討。これらのことに事故調、全面的に全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。

 また、事故の兆候につきましては、JR西日本の起きました事柄についていろいろと調査をしているところでございます。過去にも調査いたしました。そのようなことが今回の事故の防止に役立たなかったということは大変残念なことでございますが、これからも、事故の兆候、重大な兆候でございますけれども、十分役立つような調査を進めていきたいというふうに考えております。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

金田(誠)委員 JR西で、中学生がはねられて、それを救助していた消防の救急隊員が後続列車にはねられて一人が死亡、一人がけがをするというのがありましたね。これあたりも重大な予兆だったと思います。それについての報告書なんですが、非常に甘い。予兆だということを認識されておらない。単体の事故ということで、マニュアルの整備等の対策が出されていますけれども、企業体質そのものには踏み込んでいないですね。こういうことはやはりミスだったと私は思います。

 今回の事故、非常に重大な事故で国民の関心も高いわけですから、今までの延長であっては国民は納得しないということをぜひ御認識いただきたいな、ふんどしを締めてかかっていただきたい、こう思います。

 そこで、これから具体的な作業に入るわけでございますけれども、意見聴取、これは意見聴取会というのがあるそうですね。それはもとよりでございますが、委員会そのもの、これも公開される必要がある。どういう事故調査がされているのか、国民衆目のもとに、国民の期待にこたえ得る調査がされなければならない。節目節目において、したがって、調査の中間報告というものも必要だと思います。

 会議の公開、中間報告、この点についてぜひお考えいただきたいと思いますが、どうでしょうか。

佐藤参考人 御質問にお答えいたします。

 航空・鉄道事故調査委員会におきます審議でございますけれども、科学的に、かつ公平な判断を行うことができる委員長また委員で審議を行っております。

 この審議内容でございますけれども、関係者の利害に関係するような事柄、また企業とかあるいは個人の秘密に属する事柄、これが非常にたくさん審議されているという場でございます。また、原因究明を的確に行うということになりますと、この審議の場におきまして委員及び事務局の職員がやはり自由に発言をする、また意見を述べるということが必要になるというふうに思っております。このようなことを考えまして、委員会の審議は非公開にするということが適当であるというふうに考えております。

 しかし、このような審議を経まして作成された報告書につきましては、事故の再発防止という観点から、航空・鉄道事故調査委員会の設置法によりまして、公表するということをいたしております。

 また、今回の事故でございますけれども、過去にないような大きな事故でございまして、それから内容につきましても、慎重に、また幅広い調査が必要であるというふうに考えております。したがいまして、いつまでに調査結果ができるかということは申し上げかねるわけでございますけれども、その中間におきまして、可能な範囲で、事実に関する情報というものは報告を行っていきたいということを考えて作業を行っているところでございます。

金田(誠)委員 今までそういう考え方でそうやってこられたということは承知をいたしております。しかし、今まではそうで、今回もそうだというふうにこれはなるか、これだけの事故で、これだけの国民的関心を集めている事故で。私は、そうはいかぬだろうというふうに思って質問しているわけです。

 意見聴取会というのは、これは公開だそうですね。今まであったかどうかわかりませんが、意見聴取会、これは公開。委員会そのものでどういう議論をされているか、それぞれの立場立場で専門家の皆さんがどういう議論をされているか、ぜひ知りたいところですよ。それが、公開されれば意見が言いにくいなんということはあり得ないと思います。法律でも禁止は何もされていません。皆さんで決めればいいことです。きょう申し上げましたから、ぜひ持ち帰って検討していただいて、できるだけ公開していただきたい。そうでないと国民の理解を得られませんよ。そして、次の再発防止につなげる。西日本だけじゃないですよ、今飛行機だって大変な状態になっているわけで、そうしたものにずっとつなげていくために公開をと。ぜひ検討していただきたい、いい返事をできればちょうだいいたしたい、こう思います。

 それから、中間報告なども、今まで国交省から出てきたもの、だんだんこれは更新されて更新されてくるんですけれども、本当に、わずか八ページ。この情報だけではほとんどわからない。マスコミ情報を頼りに我々議論するしかないんです。公式な政府の側からの情報というのがほとんどないに等しい。そういうときに、情報を提供してくれるのは、事故調の責務も私は重大だと。それは国交省との連携をどうやってしていただくかというのもありますけれども、ぜひひとつ、情報開示、それは違うよという議論だって実際の当事者の方々が見れば出てくるかもしれません。ぜひこれもあわせて御検討いただきたい、要請しておきたいと思います。

 大臣、この際、関連してお尋ねしますが、事故調の体制、余りにも手薄ではないか。これはもう抜本的な体制強化が必要だと思いますが、その考え方と、今日まで、事故調、予兆があった、調査して建議もできるということを、大臣の管轄にあるわけですよ、事故調は八条委員会ですから、それが機能してこなかったと思うんですね。だれが事故調とどの部局が連携をとりながらやっているのかわかりませんが、その辺の不備があったんではないか。コメントございましたら、あわせてお願いしたいと思います。

北側国務大臣 今回のこの重大事故、事故の原因がどこにあるのか、これをきっちりと究明することが、私は、極めて大事であり、再発防止に向けてもそのことが大変大事であると思っております。今、事故調査委員会が究明に全力を挙げているところでございます。

 先ほど委員の方から情報公開のお話がございましたが、事故調査委員会も、中間報告はもちろんしかるべき時期にさせていただきますが、それを待たず、これまでもそういう努力をされていると私は思うんですけれども、記者会見を頻繁にさせていただいております。その時点で判明した客観的な事実関係については、その都度、きちんきちんと国民の皆様に御報告をしていくということは非常に大事なことだと私は思っておりまして、それはぜひお願いしたいとも私の方からもお願いをしているところでございます。

 事故調査委員会につきましては、委員もよく御承知のとおりだと思いますけれども、もともとは航空事故調査委員会でございました。これが平成十三年十月に鉄道事故についても所轄の事務に新たに追加をいたしまして発足しましたのが、航空・鉄道事故調査委員会でございます。

 この事故調査委員会につきましては、特に鉄道事故につきましては、昨年、中越地震、新幹線の脱線事故がございました。これは今も事故調査委員会の調査が続いております。さらには、先般、土佐のくろしお鉄道の衝突事故もございました。そして今回の重大事故が起こっているわけでございまして、この鉄道事故の調査につきまして、今の陣容では私も不十分であるというふうに思っております。しっかりと、人員の面も含め、機能強化をしていかねばならないというふうに考えたところでございまして、それは具体的にこの夏までにはきちんとその辺の考え方を取りまとめて要求をしたいというふうに考えているところでございます。

 今、委員の方から、連携がとれているのかというお話がございましたが、当然、これまでの事故調のさまざまな調査結果、これは再発防止を図るというのが最大の事故調査委員会の発足の目的でございますので、そういう意味では、連携はしかるべくとられているというふうに考えているところでございます。

金田(誠)委員 連携の方はちょっと疑問のある御答弁でございますが、情報開示、体制強化、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、鉄道事業に対する国のチェック、とりわけ規制緩和に伴う国のチェック体制、これが実態としては機能してこなかったのではないか、こう思われてなりません。こういう観点から質問させていただきます。

 鉄道事業に関する抜本的な規制緩和、これが平成八年ですか、七年ですか、この辺から実施に移されて、需給調整規制の廃止等が行われ、これに伴って免許制から許可制へということにずっと変わってきている。こうした規制緩和に基づく安全性の確保については、政府は、関係法令に基づく届け出とか許可とか立入検査とか、こういう仕組みがある、また、状況に応じて事業改善命令、事業の停止、許可の取り消し、そういう措置もある、これで十分担保できるという説明をしてきた。従来型の事前の規制ではなくて、これは緩和をして、事後のチェック体制、これに移行をする、しかし安全性は確保できる、こういうお立場だったと思います。これは規制緩和全般に共通した政府の考え方、こう理解をいたしております。

 しかし、政府のそうした説明は、少なくともJR西日本に対しては全く機能してこなかった、こう言わざるを得ないわけでございます。事故の後、次々と明らかになったJR西日本の企業体質は、安全よりも収益を優先する、利益を優先する、こういうものであった。スピードオーバーをしなければ確保できないダイヤ、遅延すれば異常な日勤教育が待っている労務管理、安全に対する投資の切り詰め等々、挙げれば切りがないわけでございます。こうした実態を国交省はわかっていた。国交省は知っていた。私だって前に申し上げたことがありますよ。知ってはいたが、是正のための措置はとってこなかった、こういうことでしょう。

 局長、こういうことではないですか。なぜこういうことになったんですか。

梅田政府参考人 ダイヤでございます。これは運行計画と呼ばれるものでございます。これは運転速度、発着時刻あるいは運行回数、こういう計画でございますが、これは鉄道事業者が鉄道の線路とかあるいは車両の構造、性能、こういうものに照らしまして、安全性、利便性を考慮して大臣に届け出るということになっております。

 私どもといたしましては、直線とかあるいは曲線、下り勾配の線路構造、あるいは車両の性能によりまして定められる運転速度、あるいは信号設備、この状況に応じた列車間隔、こういうようなものを確認いたしまして、この届け出を受けております。もし何か問題があれば、これに対しましては是正命令をするというような仕組みになっております。

 現行のダイヤにつきましては、制限速度を守って運行して遵守できるものでございます。しかし、運転士にとってダイヤの余裕が十分であったかどうか、これは今後検証していくものだというふうに思っております。

 また、いわゆる日勤勤務でございます。これにつきましては、昨年の九月の七日に、JRの労働組合の方から、再教育として行う日勤教育における草むしり、これをやめるように私どもの方に要請がございました。

 私どもといたしましては、JR西日本に対しまして事実関係の調査をお願いいたしました。その結果、運転取り扱いに必要な教育とは別に、職場の環境整備の一環としてこうしたことが行われているという回答を得ました。私どもといたしましては、再教育として草むしりなど懲罰的なものは含めるべきではないという口頭の指導を行っております。JR西日本の方では、再教育を行う場合は、事故の再発防止の趣旨に沿った教育内容とするよう社内に指導しているというふうに当時聞いております。

 また、安全の投資でございますが、安全の投資は、毎年一定額以上の安全関連投資を計画的に実施してきております。これは年度ごとに波動がございますけれども、おおむねJR西は五割程度、あるいは五割以上の安全関連投資をやっております。これは、東だとかあるいは東海と遜色ありません、大きな差はありません。全体の修繕費につきましても、JR東あるいは東海と同程度と考えております。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今回の事故を受けまして、JR等に対しまして、列車のダイヤ等が適切に十分余裕を持って設定されているか、ATS等の設備はきちんと働くか、そういうようなものを緊急点検するように通達をして、報告をするように指示したところでございます。なお、JR西につきましては、先ほど来、安全性向上計画、こういうものの策定を指示しておりますので、必要な改善措置が示されるというふうに思っております。

 私どもといたしましては、こういうことで、今までも安全確保のためのダイヤ編成あるいは職員の教育、投資等について指導してきたところでございますが、今後とも指導してまいりたいと思っております。

金田(誠)委員 やることをやってきたんだということをおっしゃりたいんだと思うんですが、きちんとやることをやってきて、それが是正されて結果に結びついていれば、こういうことにはならなかった。局長がおっしゃることは、JR西の社長の言っていることと同じで、問題はなかったということをおっしゃりたいわけですね。

 そういう観点でこれからJR西の企業体質を変えていこうといったって、できるわけないでしょう、今までやってきたんだというなら。やはり、みずからやってきたところに、視点としてどうだったのか、企業体質そのものをとらえる視点もあったのかどうなのか。草むしりという個別の行為は、口頭ということがあるかもしれません。しかし、その程度のことでこの異常な労務管理、ホームに立たされて、頭下げさせているあの映像を見たら、上場企業のやることではないですよ。

 それが、一事が万事ということで、さまざま、途中でも事故も起きている、さっき申し上げた救急隊のものもある、類似したものはいろいろ出ているじゃないですか。そして、指摘をすれば、それについてはどうしましたというのは出るけれども、言いわけにすぎない。結果を出して、きちんとJRの企業体質が変わってきたかというと、そうではない、こういう話だと思います。

 これは、大臣の認識をこの際聞かせていただきたい、こう思うわけでございますが、国交省としてそういう認識でいいのか、これが安全性に対する国のチェックと。規制緩和をすれば、事後のチェックというのは余計厳しく厳正にしなければ、今度は入り口でなくて出口でチェックしようというんですから、これは困ると思うんです、こういうことになると思うんです。第二、第三の事故がこれでは可能性があると思うんです。

 安全性に対して国のチェック機能が果たされてこなかった、こういう認識を大臣にまず持っていただきたい。このことをお認めいただいて、なぜそうなったのか、責任の所在を明らかにするとともに、その原因を究明して、再発を防止する措置を具体的にとっていただきたい。民間のJR西に求めるのは当たり前、それが監督官庁としてそうなってこなかったみずからの体制についてそういう措置をとっていただきたい、こう思うんですが、どうでしょうか。

北側国務大臣 経済的な規制、需給調整機能を初めといたしまして、そうした経済的規制につきましては、経済の活性化のため、またさまざまな利用者の利便性向上のため等々のために、そうした規制については、不断の見直しは私はやはり必要だと思います。

 ただし、そうした経済規制が緩和をなされたとしても、しかし、安全だとか環境だとか、そうした社会的規制は当然必要なわけでございまして、経済的規制が緩和されることによって社会的な規制が後退をしてしまう、そうしたことはあってはならないというふうに私は思っております。現行の制度でも、そういう社会的規制の面で、特に安全確保をしていくためにさまざまな規制の根拠制度は持っておるわけでございます。

 私は、今回、このような重大事故に至ったこと、それが、行政としてチェックに課題がなかったのかどうか、制度としてどこか問題がなかったのかどうか、これはやはり、このような重大事故が結果として起こってしまったわけでございますので、そこは謙虚に検証をしなければならないというふうに思っております。

金田(誠)委員 おっしゃるとおりだと思いますが、鉄道局長の答弁、そういうふうに聞こえませんでした。ぜひひとつ再認識をしていただきたいと申し上げておきたいと思います。

 ぜひこれから、なぜチェック機能が十分に機能してこなかったか、これは、検証するに当たって、私は危惧することが一つ二つありまして、申し上げておきたいと思うんですが、JR西とか東とか、巨大な鉄道事業体を本当にチェックできるだけの体制が、これは出先でしょう、それぞれの地方局、そこにあるのか。鉄道の方により以上の専門家がずっとそろっているわけですから、そこから出てきたものを、これは違うだろうと言えるような仕組み、体制、能力、これがあるのか、これをひとつ検証していただきたい。

 それから、これはもう言いにくいことなんですが、わかっていても言えなくなるようなJR各会社と役所とのいろいろな関係がないのか。関連会社に天下るとか、ないとは思うんですけれども、そういうことも含めてぜひひとつ、言える体制になっているのか、監督する方とされる方、そのけじめがきちっとついているのか、このあたりを検証していただきたい。これだけ老婆心ながら申し上げておきたいと思います。

 その上で再度質問を続けますけれども、JR西の企業体質について、国の認識をただしたいと思います。

 最大の問題は、安全より収益、利益を優先する、こういう体質があったことだと私は理解をいたしております。そのためには、列車はおくれてはならない、おくれたら必ず取り戻す、こういう極端な指導がなされた。ATS―Pというんですか、新型を導入すると解決するなんというものではない。これはいいことですよ、大臣、率先してやっていただいているのはいいことなんですが、それで解決するなんてものではなくて、奥深い、一筋縄でいくようなものではないということを申し上げたいわけでございます。

 例えば事故の直前には、JR西で定時運転確保ウイークというものがなされていましたね。その文書を国交省からいただきました。定時運転確保ウイーク、それを見ますと、乗務員は遅延要注意列車の遅延報告を一秒単位で報告すること、こういうことをやっているんですよ。こんなのありますか。これが行われていた。こういうことがあるものなんですか、局長。考えられないですね。どうですか。

梅田政府参考人 今御指摘の定時運転確保ウイークというのが、事故の直前にそういう取り組みがJR西日本では行われておりました。

 これは、私どもが理解しておりますところでは、いわば新入生とかあるいは新入社員、こういうお客さんがかなりふえる時期、こういう時期は遅延が発生しやすいという時期でございます。したがいまして、この遅延が発生しやすい時期に、列車ごとの遅延原因は何なのか、これを把握する、そして、今後のダイヤ改正の際にその参考にする、こういう調査であったというふうに理解しております。

 また、先生御指摘のとおり、したがいまして、本来であれば、列車のダイヤというのは五秒単位で設定されるものでございますが、一秒単位の遅延報告をしたというふうに聞いております。

 こういう調査そのものは、先ほど言いましたように、いわばそれを、今後のダイヤ改正、あるいは、運転方法だけではなくて、旅客の乗りおりの時間なども結構重要な要素でございますし、今後の施設計画、そういうような面にも役立てる部分がございますので、この調査そのものが特別にやっちゃいけないというような性格のものではないと思います。

金田(誠)委員 私は、JR西の企業体質という観点から、こういうことはどうなのかという質問をしているわけです。仮にそれを個別の問題としてとらえても、ほかでこういうことはないみたいですね。それだけ特異な企業体質。

 役所に話を聞きますと、JR西の言っていることを全部追認するんですよ。説明にも来てもらったんですが、これはおかしいとかなんとかということはなくて、西の言っていることを、これはこういうわけですと、会社の説明をそのまま私にしてくれますわな。大臣、そういうことなんですよ。そういう役所の体質が今日の事故を招いた。これは、役所の方も総入れかえしなきゃだめじゃないですか。

 本来、きょう十七ページの質問要旨を持ってきたんですが、今五ページ目なんです。時間がなくなりましたからまとめたいと思うんですけれども、大臣に質問したいと思います。

 列車のおくれはないにこしたことはない。しかし、さまざまな事情によって起こり得ること。鉄道事業者は、それでもなお法令を遵守、安全を確保する責務がある。これは当たり前のことであります。それを、事もあろうに、おくれを出さないためにスピードオーバーをさせる。これは一体どういうことなのか。安全を優先するということは、たとえおくれが生じたとしても、おくれが出ていたとしても、危険を感じたらブレーキをかける、これが安全優先じゃないですか。列車をとめる勇気を持て、こういうふうに乗務員を教育するのが安全指導じゃないですか。

 日勤教育、中身は私は否定します。とんでもないことだと思います。そういう教育の対象となるのは、中身を別にすればですよ、危険を感じながらスピードオーバーをした方が教育を受けるべきじゃないですか、本来は。何があってもスピードオーバーするなと。コンプライアンス、それが安全確保の最低限のことじゃないですか。

 JR西、全く逆のことをやっている。そういうことをやらなきゃ守れないダイヤだとどこからでも指摘されているのに、鉄道局長は守れるダイヤだと言っている。本当に守れるかどうかチェックする能力はあるの。本当にチェックする能力があって言っているんですか。だれがどこでどうやってチェックしたかという話になったら、大変なことになるんじゃないですかということも指摘をしておきたいと思いますけれども、JR西は安全の原点と逆なことをやっている、こう言わざるを得ません。

 にもかかわらず、国はこれを黙認した。いまだかつて、国の指導に不備があった、問題があったということを認めようとしない。これはどうなんですか、大臣。こんなことでこれからの安全確保はできるんですか。まず国の責任をきちっと認めた上で、今後に向けてのお考えを伺いたい。これは最後の質問になると思います。

北側国務大臣 冒頭に申し上げさせていただきましたが、今回のこの重大事故につきましての事故原因をきちんと究明しなければならないと思っております。そのためには、客観的に、科学的に、また冷静に、その事故原因について分析をしていただく必要があると私は思っております。一時の感情論ではなくて、私は、冷静にそこは分析をしていただく必要があるんだと。

 一つの事故が起こるには、さまざまな要因が重なっていると思います。今回の事故につきましては、今事故調が調査しておりますが、あのカーブの時点で速度が非常に出ておったということが要因の大きな一つであることは多分明らかなんだというふうに思います。しかし、なぜあのようにスピードが出ていたのか。そこには、さまざまなやはり要因があるんだろうと思うんです。

 そこのところを、委員もおっしゃっていたヒューマンファクターの問題も含めまして、また会社の日ごろの教育の問題も含めまして、そうしたさまざまな要因を、全体としてきっちりと、客観的に、冷静に、公正に分析をしていただいて、私は、なぜこのような事故に至ってしまったのかということを明らかにしていただく必要がある、それが事故調査委員会の大きな使命であるというふうに思っているところでございます。私は、ぜひそのことをやっていただけるような体制も強化をしたいと思いますし、事故調査委員会はそのようにしていただけるだろうと。

 ただ、その結果を待つまでもなくやらなきゃいけないことはあるわけでございまして、JR西日本につきましては、社内で、事故再発防止に向けまして、どうすればいいのか、社の問題も含めまして、今委員の御指摘のあった問題なんかも含めまして、今検討しているところだと聞いております。この月末にはその再発防止策が出ると伺っておるところでございます。

 また、国土交通省といたしましても、さまざまな問題がございます。こうしたカーブのところにおいて速度を抑制していくためにはどうすればいいのか、そのあり方をどうしていくのか、また、運転士の方々を初め、そういう方々の教育の問題、資格の問題、そのあり方の問題につきましても検討していく必要があるということで、今議論をしている最中でございます。これも余り時間をかけないで、しっかりととりまとめをさせていただきたい。また、委員の皆様の御意見、御批判をちょうだいしたいと思っているところでございます。

金田(誠)委員 今の答弁についても言いたいことはいろいろありますが、時間が参りましたので、これで終わります。

 どうもありがとうございました。

橘委員長 土肥隆一君。

土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。

 短い時間でございますが、きょうは、尼崎事件、福知山線事故の第一回目の審議だと私は認識しておりますので、大臣におかれましても、ぜひともこの委員会の事故解明についての継続した審議をしてまいりたいと思いますので、御理解いただきたいと思います。

 私も質問を送りましたが、いろいろと考えが変わりまして、少し違った観点、つまり、今度の事故調査の結論がどうなるにせよ、ヒューマンファクターという言葉が何度も出てまいりますけれども、これこそ大問題なんです。人間的要素というのは、機械と違いまして複雑なさまざまな要因があるわけでございまして、ヒューマンファクターに全部押し込めてしまうと日勤教育みたいなことが起こるわけでございまして、人間は鍛えればその期待にこたえられるかということでございまして、人間理解に戻っていくわけでございます。後で学者の意見も御披露したいと思っております。

 まず、JRにお聞きしますけれども、きょう御出席いただきましたお二方、旧国鉄にほぼ同じ時期に入社されまして、そして現場の経験はどういう経験をなさるんでしょうか。私も詳しく調べておりませんが、例えば、今の役員の中で運転士の免許を持っている人は何人いらっしゃるのか、また、社長さんもそうでございますけれども、それぞれごく手短に、現場の経験はどんなものをお積みになったか、今から振り返ってお話しいただきたいと思います。簡潔にお願いします。

垣内参考人 お答えさせていただきます。

 私は、現場の経験は、入社して間もないころに一年近く経験をいたしました。その間、乗務にも、列車にも約半年間ぐらい乗らせていただきました。そのほか、短期間でございましたけれども、通信区の助役というのをやらせていただきました。

 以上でございます。(土肥委員「役員の中に運転士の免許を持っている人はいますか」と呼ぶ)正確ではないのであれですが、少なくとも一人はいるはずでございます。

徳岡参考人 お答えいたします。

 私は、系統が保線系統でございますので、保線支区、それから保線区等で約四年ほど在籍をしたことがございます。いずれも国鉄時代でございます。

 お答え申し上げました。

土肥委員 まあ非常に経験は浅いと。

 例えばオーバーランの話、私も素人ですけれども、どう考えたって理解できないんですね。電車というのは、アクセルとブレーキしかないんだと思いますね、ハンドルはないわけでありますから。それが頻繁にオーバーランするというようなことは何が原因なのか、今でもわかりません。そんなに難しいブレーキ操作を求められているのかどうか。このことについて、事故調査委員会ではどうなんでしょうか、運転士のブレーキの問題というのはどういうふうにお考えなんでしょうか。原則的なことで結構です。

佐藤参考人 お答えいたします。

 航空・鉄道事故調査委員会でございますが、それぞれ専門性のある委員がそれぞれおりまして、私は施設関係でございますけれども、運転関係の委員がございまして、やはり、運転関係には非常に知見を持っております。

 したがいまして、今御質問のありましたブレーキの問題につきましても、十分な対応ができるというふうに考えているわけでございます。

土肥委員 いや、ですから、運転士さんの話をたくさん聞いたら大体わかるというふうに思いますし、あの系統の電車はブレーキが甘かったとか、慣性の法則で、たくさんお客さんが乗れば余計走るわけですから、ブレーキの調整もしなきゃならないだろうというふうに思いますが、もっと科学的に説明していただいて、そしてブレーキが人的な要素として非常に重要であるならば、もう少しメカニックな部分でブレーキ操作が適切に行われるようなものにしなきゃならぬじゃないかというふうに思っております。

 先ほどの話を聞いておりまして、社長は、あの列車事故に乗り合わせた二人の職員が電話等で連絡して、どうしましょうかと。そうしたら、すぐ職場に戻れという指示が出たわけでございます。あとの、パーティーをやったとか何とかということよりも、この二名の職員の行動はどうしても許せない、なぜそういう行動をとったのかと。これも、ある意味でヒューマンエラーなんですよ。それで、そのヒューマンエラーを生み出したものは何かということでございます。

 国土交通省が出しております運転の安全の確保に関する省令というのがございます。昭和二十六年に出発しているわけで非常に古いものでございますけれども、私は、この省令を本当に社長あるいは徳岡さんがお読みになっているのかどうか。そして、これによりますと、従業員はこの規程を携帯しなきゃいけない、持って歩かなきゃいけない。何か手帳みたいなのがあるんでしょうね、それを持っているんでしょうね。いかがでしょうか、社長。徳岡さんでも結構ですよ。

徳岡参考人 お答え申し上げます。

 就業規則の五条に、社員は、事故を発見し、または異変を認めたときは、職責を超えて一致協力し、直ちに応急の措置をとらなきゃいけないということがございまして、この就業規則については所持をしていっておるところでございます。

土肥委員 これは大変な省令でして、「規範」というのがある。「目的」は第一条にありますけれども、第二条に「規範」、そしてその規範の中に「綱領」というのがあるんです。絶対約束すべきものとして三点挙げられております。そして、今おっしゃった規程の携帯を義務づけているわけです。規定をよく理解しなさいと書いてあるんです。「従事員は、運転取扱に関する規定をよく理解していなければならない。」と。

 この理解というところが非常に問題があるんです。聞いて、理解していない人はいっぱいいるんですよ。そして、大事なことは、何と書いてあるでしょうか。本当は社長に言ってほしいんですけれども、「事故の処置」というところがあるんです。「事故の処置」です。「従事員は、事故が発生した場合、その状況を冷静に判断し、すみやかに安全適切な処置をとり、特に人命に危険の生じたときは全力を尽くしてその救助に努めなければならない。」と。何ですか、ここに書いてあるのは。この処置、手帳に書いてあるんでしょう。全然読んでいない。しかも、電話を受けた係官が、早う帰ってこい、運転席に戻れ、運転業務に戻れ、こう言っているわけです。

 私に言わせれば、立派な省令ですけれども、役所の方にも言いたいんです。これは物すごく重要な内容なのに、ちゃんとチェックしているんですか。まず、会社の方からお答えください。

徳岡参考人 お答え申し上げます。

 先生言われたとおりでございまして、省令等についての理解が十分でなかった面があろうかと思います。この辺については反省して取り組んでまいりたいと思います。

土肥委員 理解なんですよ。恐らく全社がほとんどこれを理解していないんじゃないでしょうか。ですから、体質だとかなんとかいいますけれども、まず人間の可能性として、理解できない人がいる、たくさんいるということです。その理解の方法は、日勤教育みたいなものでやっても必ずまた事故が起きるというのが、ヒューマンファクターというか、人間的な要素における事実があるんです。

 私は今ここに論文を持っておりますけれども、立教大学の文学部心理学科の教授で芳賀繁先生というのがいるんですけれども、「違反の心理と組織風土」という論文があるんです。人間は必ず違反をする、物事に違反をするルールが五つあるというんです。それは、一番目は、「ルールを知らない、または忘れた」。それから二番目は、「ルールを理解していない」。それからもう一つは、「ルールに納得していない」というんです。これも人間の大問題であります。四番目は、「みんなも守っていない」。手帳は持っているけれども、それを常時読むとかいうことは守っていない。そして、最も大事なことは、「守らなくても注意を受けたり罰せられたりしない」。これが人間が過ちを犯す五つのファクターだというんです。

 こうなると、人間の組織というのはどこでも問題が起きるということです。それを、何かむちを打つようにしてやったって、本当に理解しているのかどうか、本当にそれを受け入れているのかどうか、そして周りを見て、やはり共通の理解になっているのかどうか。ひょっとすると、職場は、こんなものは守らなくてもいいみたいなことを言っているのではないか、つまり、この省令は全く形骸化している、こう言わざるを得ないと思うのであります。

 ですから、この芳賀先生の言い方からすれば、むしろリスクはいつも起きますよと。不良社員というのは、ちょっと言葉は悪いけれども、この先生の言葉ですからね、不良社員であっても、個人的に誤りを犯すものではなくて、組織風土が、まさに社長が風土、風土と言っていますけれども、「組織風土がそれを許し、あるいはそそのかしているのである。」と。まあ、ちょっとこれは鉄道事故の話じゃありませんからね。しかし、産業心理的な見方からするとこういうものだというんです。

 ですから、何かもう過敏になって隅々をいいの悪いのと言うよりは、まずは人間理解をちゃんと持ってもらわないと、我々、運転士さんに命を預けることはできないわけです。では、その人間が犯すであろう可能性のある過ちをどう防ぐかというのはまさに技術の問題だ、このように思うわけでございます。まあ、ゆっくり今の私の芳賀先生の話をそしゃくして考えていただきたいと思います。

 今回、役所の方のことについて申し上げたいんでありますけれども、大変皮肉なことに、ことしの三月二十四日に、「輸送安全総点検の緊急実施について」という通達が出ているんです。依命通達という、何か非常に、聞いたことのない話なんですけれども。これは、事務次官から、鉄道局長、航空局長に出たわけです。

 そこで言われているのは、最近、人的要因と考えられる事故が多発していると。だから、国土交通省も、人的な要因だと言っているわけです。これは本当にそうなのか。例えば、「点検対象は、鉄軌道事業者、航空運送事業者、航空管制機関」。これ、三月の二十四日です。四月の二十九日には、管制官が、十八名ぐらいですか、そろって、今閉鎖されている滑走路に飛行機をおろしてしまった。まさにヒューマンファクターなんですよ、これは。こういうことがやはり起こるんですね。

 盛んに、自主点検をしなさいとかトラブル再発防止のために体制を整えなさいとか、こう言っております。事故が起きました。さあ、鉄道局長も、人的要因、機会あるごとに注意を喚起したが、また起こったねと書いてあるんです。どれくらい喚起したのか、きょうは時間がありませんから一つ一つ聞きません。

 そして、点検項目というのを丁寧につけておりまして、鉄軌道事業者用の点検項目。「作業ごとに」「曖昧な表現はないか。」、つまり、理解できないような表現をしちゃだめよということです。「係員は、規定類を理解しているか。」と言っております。理解しているかどうかということは、相当詰めた話になるわけです。「係員は、規定類と異なる作業を行っていないか。」、だから、鉄道局もわかっているわけですよ、問題点が。教育訓練とかなんとか言いますけれども、安全意識もありますけれども。

 ここで、「情報伝達の迅速性」ということで、先ほど言いましたように、二名の乗務員がいて、そのまま、上司に電話して、帰ってこいと言うから帰っていった。「トラブルや事故等の情報は、迅速に、上司に報告もしくは関係部署等に水平展開されているか。」と。これは、縦の関係だけでやっている組織では横へ行かないんです。これがボウリング場問題です。横へさっと流れるようなシステムにJR西日本はなっていない。これに対して結果をお出しになるんでしょうから、私もそれを見せていただきたい、大変興味深く思っております。

 私が申し上げたいのは、国土交通省あるいは鉄道局も、最後に五月九日の、急曲線、つまり急なカーブですね、「急曲線に進入する際の速度制限に関する対策等について」というのをプレスにも発表しているわけでございまして、ATSを義務づけましょう、あるいは線区ごとの運転最高速度や曲線部進入前後の速度差、列車の運行頻度等を勘案して、今月までに結果を出しなさい、こう言っているわけですけれども、そんなことが今もう一遍言わなきゃいけないんですかね。

 運転士の資格要件なども言っておりますが、「適性」という言葉が出てまいります。これも非常に危ない話でございまして、何をもって適性とするかということです。運転士さんの適性とは何かということを余り厳密に考えますとおかしな話になる。ロボットの方が安全だということになってしまう。

 そういうことを考えまして、大臣、最後にお聞きしたいんですが、この問題は、私は、JR西日本だけじゃなくて国の公共鉄道事業に対する姿勢も問われているし、国民全体が国に対しても不安を持っている。一体どこがチェックするの、どこがきちっとした仕事をしてくれるのか、JR西日本だけでいいのかということだと思うんですね。

 今後、国の対策として、予算にも触れられておられます、記者会見で。そういう話も含めて、あるいは、心のケアなどというのは、そんなにJR西日本だけでやれる話でもございませんし、それから、今言いましたような人間の研究なども、これは事故調査委員会は無理だと思いますので、あるいは、人間工学の先生もいらっしゃいますが、もっと広くやっていただきたいな、こういうふうに思う次第でございますが、一言大臣の答弁をお願いいたします。

北側国務大臣 今土肥委員からは非常に重要な御指摘を数々ちょうだいしたというふうに思っております。

 事故に至る要因というのは、どの事故でも、単なる物理的な、理学的な要素だけで片づけられるものではなくて、そこには必ずと言っていいほどヒューマンファクター、ヒューマンエラーの要素があるわけでございまして、そのヒューマンファクターにつきまして、これは、これまでもいろいろな、先ほど御紹介された先生方のも含めまして研究をされてこられました。私は、これをしっかりと国土交通省としましても研究をしていく必要がある、事故調の方もそういう問題意識を強く持っていらっしゃるというふうに考えております。

 今一連、さまざま、総点検の確認作業をやっている最中にこうした事故が起こったこと、私も本当にざんきにたえない思いでいっぱいでございます。私は、行政の方からさまざま通達なりさまざまな指導なり出して、現場で一体どのようにそれが生きているのか、機能しているのか、そこは今回の検証を通じてやはりきちんと見ていかないといけないなというふうに痛感をしておるところでございます。

土肥委員 終わります。

橘委員長 穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田です。

 改めて、事故で亡くなられた方々に、お悔やみ申し上げ、哀悼の意を表明したいと思います。そして、負傷者の一日も早い御回復を御祈念申し上げたい。

 私は、きょう社長に端的に答えていただきたいと思います。百七名の方々の命は戻ってこない。つまり、未然に防ぐことができなかったんだろうか。そして、今回の事故の原因究明、そして、どうすれば再発防止ができるか。JR西日本の社長はしきりに風土、風土と言いますけれども、一体全体何がどんな風土なのかというのはさっぱりお答えになっていないわけだけれども、そういう経営者のトップの責任はどうなっているのかについてただしたいと思います。

 重大事故は今回が最初ではありません。これまでも繰り返されてきました。それぞれの事故からどう教訓を学んだか、原因と背景を探り、再発をいかに防止するのか、これらは経営者のトップの姿勢が問われる問題です。

 二〇〇二年四月、京都駅ポイント切りかえのミスで先行車両に異常接近。事故調査委員会は、定時運転確保に対する強い意識が、異常時に焦りを招き、基本動作の確実な実施を阻害した可能性があったと指摘しました。JR神戸線での消防署の救急隊員の死傷事件では、二〇〇五年一月、大阪地裁は、ダイヤの正常化に関心を傾け過ぎたと断じた。

 いずれも定時運転確保、ダイヤどおりの運行を優先し過ぎたことが事故の原因だと指摘している。社長はこの指摘を承知していましたか。

垣内参考人 それでは、先生にお答えをいたします。

 まず、この事故が未然に防げなかったか、こういう話でございますけれども、まだ原因……(穀田委員「聞いたことに答えてくれたらいいです」と呼ぶ)はい。原因の方は現在解明中でございまして……(穀田委員「承知しているかだけでいいです」と呼ぶ)はい。最後の質問でございますか。(穀田委員「そうです」と呼ぶ)はい。最後の質問につきましては、そういう御指摘があることは承知しております。

穀田委員 では、重要な、そこにおってください、もういいですから。重大な事故が起こった原因の指摘を受けて、経営のトップとしてどのような改善を行いましたか。

垣内参考人 御指摘を受けまして、そしてそれぞれの事項に応じて、再度そういうことが起こらないようにというふうなことで、例えば、人身事故で消防士が亡くなった件について申し上げますと、やはり情報連絡が非常に悪かったというふうなことで現地の連絡責任者を設けるというふうなこと、あるいは消防なり警察の方を含めたマニュアルをつくるというふうなことでもって安全を担保しようというふうなことでやらせていただいたところでございます。

穀田委員 今の話を聞いて、ほんまに情けないと私は思いましたよね。

 指摘されているのは違う話なんですよ。連絡の話を言っているんじゃないんですよ、私。事故調も裁判所も、指摘しているのは定時性の問題そしてダイヤどおりの運行、このことを言っているんですよね。それについてどう改善したかと聞いているんですよね。およそ人の話を聞いていないのか、そういう体質なのか、ちょっとそれは別ですが。

 事故調査委員会の指摘は〇二年です。裁判所が厳しく批判したのは〇五年です。その間の〇三年十二月にJR西日本はダイヤ改正を行っています。脱線が起きた宝塚―尼崎間は、このとき中山寺が快速の停車駅になりました。ところが、所要時間は、停車駅をふやす前とほぼ同じ時間での運転を強いています。そして、列車がおくれた場合には指令員が回復運転に努めてくださいとの連絡を行う。

 社長はこれらの事実を知っていましたか、知っていましたか。簡単にお答えください。

垣内参考人 ダイヤ改正をしたという事実は存じ上げております。

 それで、それらを回復運転、ちょっと御質問の方を正確に聞いておりませんでしたけれども、回復運転をすることによってこれらに対応するというふうな、そういう指導はいたしておりません。

 以上です。

穀田委員 それは事実と違います。後ろの方からいけば、回復運転に努めてくださいと連絡を行っている事実は何度もあるわけですから、それは、そんなことを言ってはだめです。

 問題は、ダイヤ改正は行ったという事実は知っているが、私が聞いたのは、同じ時間でやるということ、駅はふやした、しかし所要時間は同じだという事実を知っているかと聞いているんです。

 横の人に聞かなくたって、あなたが知っているかどうかということを聞いているんだから。知らなきゃ知らないと言ってくれればいいんだよ。

垣内参考人 そのことは存じ上げています。

穀田委員 つまり、私は何を言いたいかというと、定時性運転確保、ダイヤどおりの運転の優先が事故の原因と指摘されているにもかかわらず、それを改めるどころか、一層それを強要し逆行させたダイヤ改正を平気で行っているということを言っているわけですよ。その事実を指摘している。

 駅員の、社員の方々がどう言っているか。駅がふえているのに同じ時間で走行させるなどむちゃだ。脱線現場は日ごろから危ないと感じていた。カーブに入るまでの直線で、時速百キロを超えるスピードで時間を縮め、それを急速に七十キロに落として運転をする。これが声ですよ。

 同じ区間を走る快速でも、一本ごとに駅の停車時間や運転時間は違うということもあるんですね。事故列車は、所要時間は最短の十六分二十五秒に設定している。一本前の快速は十七分五十秒、一本後は十七分十秒。乗客の少ない日中の快速よりも五秒も短く、伊丹駅での停車時間もたった十五秒。定時運転を確保するために不可欠とされる余裕時分さえ削っている。他の私鉄との競争に勝つためにスピードを上げるしかない。もうけ第一で安全は二の次という姿勢がここにあらわれているじゃありませんか。

 そこで、聞きます。平成十七年度大阪支社長方針というのがあります。全社員に配付されたパンフです。柱の第一には何と書いてあるか知っていますか、端的にお答えください。

垣内参考人 存じ上げております。(穀田委員「何と」と呼ぶ)「稼ぐ」と書いてあるように存じ上げております。

穀田委員 今お話あったように、「稼ぐ」というのが第一の柱なんです。これがそのパンフレットです。これです。

 三月二十三日に、JR西日本中期経営目標「チャレンジ二〇〇八」を発表しています。「大阪支社は、中心支社として、この達成のために全社を牽引していかなければなりません。」として、「稼ぐ」というのを第一の柱にしているんですよ。

 二番目に「目指す」として、そこで「安全安定輸送」と書いています。しかもその中で、昨年度は重大事故が多発した、大阪支社はもっとしっかりしていると思っていたが、はっきり言ってなっていないと言わざるを得ないとまで言っているんですね。

 安全の、二番目の内容も、じゃ、何か。今言ったように、一番目は「稼ぐ」なんですね。二番目は「目指す」ということで、安全の問題を言っているんです。その安全の中身、何を言っているか。「経費節減〜身近なコスト削減と、駅区あるいは部門をあげてのコスト削減」、つまり、この文書でも明らかなように、「稼ぐ」ということはすべてのところに貫かれているんですね。安全のところでさえ「コスト削減」と言っているんですよという話が出ている。

 では、社長、この十七年度支社長方針、これは撤回させましたか。

垣内参考人 お答えをさせていただきます。

 私どもの会社では、JR発足後、経営理念を定めまして、それでもっていろいろなことをしておりますし、私どもの中長期計画においても、経営理念を踏まえてやるというふうなことにしております。それが経営のすべての第一番目、こういうことになるわけでございますが、その中の行動方針の第一項目に「安全・正確な輸送の提供」というふうなことを挙げておりまして、それを第一に取り組んできておるというふうなことでございます。

 それから、大阪支社の計画につきましては、今回、このような問題が起こってから、稼ぐが第一であるというのを確かに伺わせていただきましたけれども、民間企業でありますから稼ぐことももちろん大事ですけれども、鉄道の場合は安全輸送がなければ稼げないというのは、これは当然でございまして、そういったことを踏まえて、そういうことが大阪支社長の方針になったもの、こういうふうに理解をしております。したがって、安全・安定輸送がどうあってもいい、そういう趣旨では全然ない、こういうふうに理解をいたしております。

穀田委員 要するに、撤回させていない。それは相変わらずこういう方針だということですよ。だから、私どもは、利益優先第一主義で事を運んでいる実態があるということを言っているんですよ。それが事故が起こっても、こういう問題について、安全のことは前提なんだから当たり前だ、こういう感覚でいるということが、事故が起きて百七名が亡くなっていても、そして、稼ぐということが第一であることについて、依然としてそれは支社の方針だろうと平然と言っているというところに、私は驚きを禁じ得ない。

 だから、社員の方々が、ダイヤの改正の目玉は増便だ、定時運転は毎日言われると。次が大事なんですね。安全運転を言われるのは事故があったときだけだ、これが現場の労働者の声です。

 では、安全設備について聞きましょう。

 新型ATS―Pの設置工事費は、二〇〇〇年の十九億円から、二〇〇一年には二億円に激減しています。あなたは事故当日の記者会見で、投資効果を考えたと発言なすっています。私は、この間のこの委員会において、とんでもない姿勢だということを批判し、指摘したところです。

 投資効果とは何か。なぜ福知山線だけATS新型の設備投資をしなかったか。新快速は百三十キロまで速度を上げて走ります。ATS―Pの設置をふやすと、ブレーキがかかっておくれを回復できない。福知山線はスピードアップ、時間短縮を最大の売りとしていた路線です。しかも、先ほど述べたように、新快速は定時運行の余裕時分をも設けていない。だから後回しにしたんじゃないのか。違うかどうかだけ言ってください。

垣内参考人 お答えをいたしますけれども、設備投資、ATSで、ある年度が大きくてある年度が少ないというのは、これはその投資の線区の規模等々によって、大きなところをすれば金額が大きくなり、小さなところであると金額が小さくなるというので、それは年度ごとによってでこぼこが出る、そういうふうな問題でございます。

 それから、投資の方の優先順位というふうなことに結果としてなるんだと思いますが、これは列車の本数とか列車の種別だとかいろいろなことを総合的に勘案いたします。それから、ATS―P型の工事につきましては、かなり特殊な、専門的な技術、能力が必要というふうなことでありますので、そういった能力が対応できるかどうかというふうなことも総合的に勘案して決めている、こういうことでございます。

穀田委員 もう何で後回しになったかということははっきりしているんですよ。それをやったら定時運転できないからなんですよ。

 しかも、特殊な技能が要る、こう言っているんですね。特殊な技能と言っているんだけれども、技師が不足で設置がおくれているということを認めているじゃありませんか。要するに、そういう技師も含めて減らしてきたということについて、みずからの責任について何にも言わないということに、私は、そういう体質というのがあるということも改めてわかりました。

 そこで、費用の問題というんだったら、やはり私は、今大阪駅などの大改修をしているわけです。それを見直してでも、ATSについて全部設置するというぐらいの勇断があってしかるべきじゃありませんか。百七名の遺志に報いるというんだったら、そのぐらいのことを英断して、わかりましたというのが当たり前じゃないですか。

 しかも、ATS―SWだって、路線上の注意すべきである通過地点には地上設備を置けば、速度チェックできる機能がついていたんですよ。このカーブでこの機能を使えるように整備していれば、電車が制限速度を超えることは防げた可能性があったんです。だから、可能性があったという問題を私は一貫して指摘しているんですよ。そういうものを努力を怠ってきたということを私は指摘せざるを得ない。

 もう一つ聞きましょう。

 事故列車に運転士二人が乗り合わせていた。そして、救援活動をせずに、上司の命令で通常勤務のために現場を離れた問題、ボウリングの問題などは、JRの体質に、被害者はもちろん、国民の率直な怒りと驚きがある。

 社長は、一連の不適切な対処について、先ほども個人として情けないとか信じられないとか残念だとか表明しています。しかし、上司に物を言えない、そういう行事に行かなければにらまれるという体質があることを社長が知らなかったということに国民が驚いているんです。いろいろなことを驚いているけれども、そういうこともあったということについて、社長が情けないだとか信じられないなんということを言っている、その感覚が信じられないと言っているんですよね。そこを私は見誤ってはならないと思っています。

 そういうことが起きる、つまり原因をどう考えているのか。これも端的にお答えください。

垣内参考人 今回の事故に関連をいたしまして不適切な行動が出たということで、これは大変、非常に残念なことでございます。こういうふうなことが出たことにつきましては、私どもとしてはなかなか理解ができないわけですけれども、その背景につきましてはこれからいろいろと勉強をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

 この背景としては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり国鉄時代とは違って、しっかり仕事をするというふうなことでもって任務を果たすということに非常に力を入れてきた、こういうことで、指揮命令の系統につきましてはそれなりのきちっとしたことができ、成果が上がってきたんだと思いますが、その陰ということではありませんが、結果として、第一線の社員のいろいろな気持ちとか意見が上の方に伝わらないような状況になってきているのではないかというふうに思っておりまして、そういった意味で、今回、全社を挙げて風土を改革いたしまして、要するに意思疎通の大変いい会社に何としても変わらねばならない、こういうふうに思っているところでございます。

穀田委員 すぐ国鉄時代のと話しますけれども、国鉄時代に比べて合理化をした、安全まで合理化してしまったということだけは言っておきたいと思うんです。しかも、指揮命令系統ができるようになった、つまり、命令と服従だけは前進したということですよ。

 そこで、事故の際に説明が二転三転していることもありますし、もう業務放送を三十数回やっていまして、その中で、重大な人身事故があったにもかかわらず、そのことは触れられない。自社の運営する大阪鉄道病院にさえも、救援出動も行っていない。だから、こういう体質があると私は思っています。

 あわせて、こういうことになっています。救助に向かわなかった人に対して、この日、勤務は午後二時九分から、遅刻の心配はなく、実際には午前十時開会の大阪支社長の講演会に出る予定だったこともわかった。ある中堅運転士は、支社長は王様みたいなもの、講演におくれるわけにもいかないと考えても不思議ではないと推測する、これは新聞で書かれているんですね。

 だから、こういうことについて、まずい、間違っていると思った多くの社員はいたんです。でも、休日でも行事への参加を拒否すればにらまれる、勤務成績に響くという中で、物言えぬ職場になっている。下から意見が通らない、じゃないんです。そういうことをやっているということについて気がついていないあなたが問題だということがきょうわかりました。

 国鉄労働組合西日本本部は、おかしいことはおかしい、悪いことは悪いと言える風通しのよい職場環境及び安全を優先した規律ある作業環境をつくること、人権無視、不当な命令を根絶しようと呼びかけています。こういうことが今必要なんだということを改めて私は申し上げて、質問を終わります。

橘委員長 次回は、来る十七日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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