衆議院

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第20号 平成18年5月16日(火曜日)

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平成十八年五月十六日(火曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 吉田六左エ門君

   理事 渡辺 具能君 理事 長妻  昭君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      坂本 剛二君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    鈴木 淳司君

      薗浦健太郎君    田村 憲久君

      長崎幸太郎君    長島 忠美君

      西銘恒三郎君    葉梨 康弘君

      松本 文明君    盛山 正仁君

      若宮 健嗣君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    下条 みつ君

      高木 義明君    土肥 隆一君

      鉢呂 吉雄君    馬淵 澄夫君

      松木 謙公君    森本 哲生君

      伊藤  渉君    斉藤 鉄夫君

      穀田 恵二君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   参考人

   (東京大学大学院工学系研究科教授)        久保 哲夫君

   参考人

   (社団法人日本建築士会連合会会長)        宮本 忠長君

   参考人

   (社団法人日本建築家協会会長)          小倉 善明君

   参考人

   (弁護士)        日置 雅晴君

   参考人

   (慶應義塾大学理工学部教授)           村上 周三君

   参考人

   (東京大学生産技術研究所教授)          野城 智也君

   参考人

   (東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)    神田  順君

   参考人

   (社団法人日本建築構造技術者協会会長)      大越 俊男君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  金子善次郎君     長崎幸太郎君

  小宮山泰子君     松木 謙公君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  長崎幸太郎君     金子善次郎君

  松木 謙公君     小宮山泰子君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八八号)

 居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(長妻昭君外四名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び長妻昭君外四名提出、居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、午前の参考人として、東京大学大学院工学系研究科教授久保哲夫君、社団法人日本建築士会連合会会長宮本忠長君、社団法人日本建築家協会会長小倉善明君及び弁護士日置雅晴君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、久保参考人、宮本参考人、小倉参考人、日置参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず久保参考人にお願いいたします。

久保参考人 東京大学大学院工学系研究科教授の久保でございます。

 私は、教育研究機関である大学において建築学分野に属する教員として、建築構造、その中でも耐震構造を課題として教育と研究に携わってきております。

 私は、社会資本整備審議会建築分科会の委員を務めており、今回の偽装事件を受け、建築分科会内に設けられた基本制度部会において、建築確認検査制度の今後のあり方等について、その議論に参画してまいりました。

 本日は、建築構造、耐震構造を専門とする立場と社会資本整備審議会建築分科会の委員としての立場から、その二つの面より、社会資本整備審議会建築分科会の中間報告及びこのたびの建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に対して意見を述べさせていただきます。

 今回の意見陳述に当たり、まず、二つの点について私の見解を先に述べさせていただきたいと思います。

 第一の点は、構造設計と構造計算と言われる行為についての私のとらえ方でございます。

 設計と計算の違いとして、構造設計の行為とは、これからつくる建築物を計算ができるようにモデル化し、設定される外力に対して、いわゆる構造計算というものを行いまして、計算によって求められる応力等の結果に対して、柱、壁、はりといったような建築物を構成する部材の断面を決めていく行為であるととらえております。

 ちょっとおわかりにくい点があるかもしれませんが、設計行為には、新しい建築物をつくる創造的もしくは創作的な面が強く、計算の行為は、どちらかというと、ある決められたルールに従って数値を計算するといった行為の面が強いというふうに私はとらえております。

 第二の点は、今回のいわゆる偽装問題に対する認識であります。

 今回の偽装の問題には、この構造計算と構造設計における偽装の二つの面があるのではと思っております。電算プログラムによる構造計算図書の中の数値を別の値に書きかえたりといった、そういったようないわゆる改ざん行為がありますし、また、二つの設計図書を組み合わせるような偽装の行為がありました。また、もう一つの行為として、いわゆる建築物に設けられる耐震壁のモデル化等を不適切に行った偽装と思われる行為があったと思えます。つまり、今回の偽装問題には、構造計算の偽装と構造設計の偽装の二つの面があったものととらえることができると私は考えております。

 続きまして、建築構造を専門とする立場と社会資本整備審議会建築分科会の委員としての立場から、今回問題についての建築分科会の中間報告及びこのたびの改正法律案に対して意見を述べさせていただきます。

 社会資本整備審議会建築分科会の中間報告では、建築物の安全性確保のために早急に講ずべき施策として、幾つかの点を中間報告として提案してあります。私からは、大きく、次の三点について述べさせていただきます。

 第一番目の点は、一定高さ、一定規模以上の建築物については、第三者機関における構造計算の適合性の審査を義務づけることとしております。つまり、第三者によるピアレビューというものを行うことを義務づけることとしております。

 この場合、大臣認定によるプログラムを用いた構造計算については、建築確認申請時に入力データを添付させ、第三者機関において、構造の専門家等により入力方法などを審査の上、再入力による計算過程の審査を行い、計算過程におけるミスだとか偽装の有無についてのチェックを行うこととしております。大臣認定によるプログラムを用いない建築物については、構造専門家等による計算方法、計算過程の審査を行うとする点でございます。

 第二番目の点は、構造計算プログラムの見直しでございます。

 構造計算プログラムについては、プログラムの内容が適切なものであること、建築基準法令の規定に適合しない数値を入力できなくするようなこと、計算途中での改ざんや計算結果の改ざん等ができないようプログラムのセキュリティーの確保が講じられていることなどについて国土交通大臣の認定を行うことが必要であるとして、大臣認定の制度の見直しを図る点でございます。

 第三番目の点は、建築の施工段階における中間検査の義務づけと検査の厳格化です。

 施工途中での工事状況等を検査して、建築確認図書との照合を厳格に行い、鉄筋量の配筋不足などの不審な事項を見つけた場合に構造計算書の点検を義務づけるなど、検査を厳正に行わせるため検査基準に法令上における明確な位置づけを与えるとする点です。

 建築分科会からの中間報告に対しまして、提出されております政府の案では、第一番目の点としては、建築物の設計段階での審査の厳格化が挙げられております。

 高度な構造計算を必要とする建築物の高さ等の規模が一定以上の建築物については、構造計算が適切であるかの判定を義務づけております。この場合、大臣認定プログラムを用いた建築物については、建築確認申請時に入力データを提出させて、指定される判定機関において、機関に属する判定員が入力方法等を審査の上、再入力、再計算を行います。大臣認定プログラムを用いない建築物については、判定機関において判定員が計算方法、計算過程について詳細な審査を行うこととなっております。

 第二番目の点として、構造計算に用いられる電算プログラムの大臣認定制度の見直しであります。

 構造計算に用いられる電算プログラムについて、構造方法等の認定を定めております建築基準法第六十八条の二十六に基づき、大臣認定の制度を見直すこととしております。

 第三番目の点としては、工事途中段階での中間検査の義務化であります。

 今回の改正によって、国土交通大臣は、確認検査、構造計算の適合性判定並びに中間検査及び完了検査の公正かつ的確な実施を確保するため、これらの事項についての指針を定めることとなっております。

 このように、今回の政府の法律案は、社会資本整備審議会建築分科会より提出された中間報告に対応したものであります。

 最後になりますが、本法律案の改正によりまして、一日も早く国民が安心して住宅の取得や建築物の利用ができるよう、安全、安心の社会を実現するため、委員皆様方の議論を通じて再発防止策を講じていただきたく存じます。

 以上でございます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、宮本参考人にお願いいたします。

宮本参考人 社団法人日本建築士会連合会の会長をしております宮本忠長と申します。

 初めに、このたびの耐震強度偽装事件に対する私の認識を述べさせていただきます。

 本来、建築の安全性を確保し、国民の生命財産を守るべき立場の建築士が、みずからの責任を放棄して基準に満たない建築物を設計したことは、建築士の職能倫理が欠如していたことは明らかです。私ども、大変残念に思っております。また、反省もしております。

 元請設計事務所が、下請建築構造事務所に発注した構造計算書について適切な指導やチェックをすることができず偽造を見逃してしまったことは、重大な問題だと思っております。また、建築確認検査機関が構造計算書の偽造を発見できなかったことも重大なことと思います。

 日本では、建築設計者に対しまして、建築士法で一級、二級及び木造建築士の国家資格を定め、建築の設計と工事監理を行う者に業務独占が与えられています。

 以下、全国四十七建築士会を会員としまして、現在十一万人の建築士を構成員とする建築士会連合会を代表して、主に建築士制度をいかに見直すべきかについて意見を述べさせていただきたいと思います。

 現行建築士法についての建築士会連合会の見解と問題点を申し上げたいと思います。

 現行の建築士法は、日本の建築生産の現状、包括的な建築技術者教育を含め、いわゆるアーキテクトとエンジニアが一体となった建築技術者の基礎的資格法として、その枠組みは国際的議論にも十分たえられるものです。すなわち、教育、実務訓練、試験、免許、登録、資質の維持向上といった基本システムはしっかりしていると思います。

 しかしながら、これらを具体的に支えている運用に問題があったのではないかと思います。その結果、現行の建築士法は十分に機能してきたとは言えないのではないかと思います。具体的には、建築士の業務領域の拡大と専門分化への対応、管理建築士の要件などが問題になると思います。

 建築士の現状につきましては、現在、建築士名簿に登録されている建築士の数は、平成十七年九月三十日現在百一万六千名を超えていますが、その正確な実態、例えば建築士の生死、生きている人とか死んでいる人とか、あるいは一級、二級、木造の資格が重複している人、あるいは居住地等の変更などは把握できない状態であります。

 現に活動している建築士の数は、推測六十万人程度と思います。しかも、設計、工事監理を行っている建築士は全体の有資格者の三割程度でしかありません。残りの七割の建築士は、建築士法第二十一条の「建築工事契約に関する事務」、「建築工事の指導監督」、あるいは「建築物に関する調査又は鑑定及び建築に関する法令又は条例に基づく手続の代理等の業務」などのその他業務を行っているのが実態です。これらの建築士は、建築生産関連業務全般の中で重要な役割を果たしてきました。

 建築士会の現状につきましては、建築士会は四十七都道府県に設置されております。会員総数は約十一万人で、建築士全体の、実は二割程度しかありません。

 建築士会は、平成十五年度より、多様化している建築士の業務の実態に即しまして建築士の職業の分類を行い、それぞれの職能の責務を果たす制度を既に実施しております。この制度は、一つは、建築士の技術と知識の維持向上のための継続能力開発(CPD)制度と呼んでいますが、もう一つは、建築士の専門領域を市民や社会に表示するための専攻建築士制度から成っております。

 専攻建築士制度は、建築士という資格をベースに、その上に設計、構造、環境設備、まちづくり、生産、棟梁、法令、教育研究の八領域に専門分化した建築士を業務実績と能力の評価に基づいて認定し、かつ、五年ごとに登録更新するものであります。

 建築士法の改正に関しまして、幾つかの事項について御意見を申し上げたいと思います。

 建築士の使命、職責、義務。これは、第一に、建築士の使命、職責、義務に関することですが、名義貸しなどの禁止と罰則の強化は、実効性を高める行政の体制を構築することを前提に行っていただきたいと思います。そのためには、違反者の摘発など顔の見える地方自治体と国との連携が必要であると考えています。

 また、職責につきましては、近年は、建築物の質の向上だけでなく、安心、安全で、かつ良好なまちづくりも大事になってきておりますので、建築士の重要な役割であると認識しております。

 第二に、建築士の建築士会への加入義務化についてですが、現に建築生産にかかわる仕事をしている建築士については、当然、加入することが必要であると考えています。全国四十七都道府県建築士会は、資質が高く市民に信頼される建築士が会員となり、ふえていくことを希望し、またそのようにしたいと思っております。

 しかし、加入義務化を実現するためには、実は幾つかの困難な課題があると思います。

 まず、現状百万を超える建築士の実態がわからないことから、そもそもすべての建築士を強制加入させるということは不可能に近いのではないかと思います。また、さきに述べましたように、建築士の業務は拡大し多様化しておりますので、既存の関係建築技術者団体との調整が必要ですし、建築士会自体も事務局体制の拡充強化をしなければいけないのではないかと思います。

 このような課題につきまして解決の道をつけるには、国土交通大臣の諮問機関であります社会資本整備審議会を初め、関係の機関でも十分に時間をかけて議論していただきたいと存じます。

 建築士事務所のあり方についてでありますが、建築士法人の開設者を建築士に限るということは、建築士事務所も経済活動の一部であることから、営業の自由の観点からも問題があると思います。

 また、建築士法人の社員に無限責任を負わせることも大きな問題です。建築の瑕疵の多くは、竣工後数年を経て顕在化し、設計者と施工者の責任が複合化している場合が多く、建築士のみに無限責任を負わせることは不合理であると考えます。

 さらに、消費者保護の観点からすれば、建物の売り手と買い手の売買契約で歯どめをかけるのが第一義であり、建築士のみに過度な責任を負わせるのはいかがなものかと思います。

 現行建築士法では、建築士事務所の開設者が管理建築士でない場合を想定して、事務所の技術的総括者として管理建築士を位置づけています。しかしながら、現在は、建築士免許を取得すればだれでもすぐに建築士事務所を開設できることになっており、管理建築士の要件を強化することが必要であります。例えば、資格取得後、一定期間の実務経験と実績に基づいて認定している建築士会の設計専攻建築士や、APECアーキテクトあるいはAPECエンジニア、そういったレベルの者であるべきと考えています。

 建築基準法の改正につきましては、設計、工事監理と施工を分離すること、すべての建築物について中間検査を義務づけること及び建物完成二年後検査を実施することなどにつきまして提案されておりますが、時間の関係で詳しくちょっと意見を申し述べることができませんでした。この後の質疑で対応させていただきたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、小倉参考人にお願いいたします。

小倉参考人 日本建築家協会の会長の小倉でございます。

 日本建築家協会は、建築家という名前がついているとおり、明治維新から西欧社会から我が国に導入されました建築家の存在あるいは役割を日本の社会の中に定着させて、建築の質を高めるということ、それによって国民のための建築環境の向上を目指して取り組んできておる団体でございまして、今現在は、建築士法の抜本的改正によりまして建築家の役割を果たす資格、必ずしも建築家という名前をつけなくても結構ですが、建築家の役割を果たす資格を確立したいという運動をしているところでございまして、この資格制度につきましては、積極的に、日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会、建築業協会等とさまざまな場で意見交換を行ってまいりました。

 特に、建築設計資格制度調査会がこの資格についての議論をしておりまして、この制度の検討をしている最中に今回の事件が発生したわけでございます。この発生する前に既に検討しておりました専門別資格制度を骨子とする建築士法改正というのが、今回の事件を二度と起こさないようにするために不可欠なものであるというふうに考えています。

 今回の改正案を拝見しまして、幾つかの気になる点、賛成する点、ございます。その中で特に気になる点が数点ございますが、一つは、建築確認と検査の厳格化の問題でございます。

 これは厳格化の問題と違うのですが、民間検査機関による建築確認業務の問題が集団規定の検査の点であると思います。個別規定に関しましては、構造等の問題でございますから建物固有の問題でございますけれども、現在、我が国は、町の景観は町に住む住民の財産であって、景観法によれば、景観は国民の財産である、私権を制限しても景観を守るということをうたっておりまして、この景観に関する、すなわち、建物の形状、色彩等をチェックする、その集団規定をチェックするには民間では無理ではないかというふうに私どもは考えていますので、集団規定に関しましては、ぜひ特定行政庁でのチェックをしていただくようにならないかというふうに思っております。

 それから、建築士の責任、職務でございますが、罰則強化に関しましては全面的に賛成でございまして、これまでも、なぜ罰則がそれほど低いのであったかということを考えておりました。二年から五年に、免許を受けることができない期間がありますけれども、私は、ひどい人には原則永久取り消しであってもよいのではないかというふうに思います。

 さて、姉歯元建築士の行為は、職業倫理の欠如によるものであるというふうに考えます。建築士法には、この建築士の使命あるいは職責に関する規定を追加するべきではないか。今、二十一条には、「建築士は、建築士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」とございますが、姉歯元建築士の行為は、品位というものではなくて職業倫理の欠如でございますから、品位というような言葉よりは職業倫理というような表現の方がよろしいのではないかというふうに考えています。

 士法改正の最大のポイントは、先ほどお話しいたしましたように、専門別資格制度の導入であります。

 外国のメディアに対しては、姉歯一級建築士は姉歯ファーストクラスアーキテクトというふうに紹介されております。これは本来、姉歯ストラクチュアルエンジニアというふうに伝わらなければいけなかったわけですが、建築士が建築家と訳されているところに問題がございまして、これは外国人のみならず消費者にとっても、建築士とはどのような役割と責任を持っているのかがわからなくなる一つの原因でございます。

 それから、設計監理に関して結果として消費者が理解できない、適切な設計依頼ができない、それから、建築士本人も役割と責任について意識が低下しているというさまざまな事例がございます。

 したがいまして、消費者保護の立場からこれは非常に不適切でありまして、現在、国際的にも、APECアーキテクト、APECエンジニアという資格をつくっている折でもございますから、アーキテクトとエンジニア、すなわち、建築家の役割を果たす建築士と構造設備のエンジニアリングをつかさどる建築士の資格が分かれるのが通常であるというふうに考えております。

 いただきました資料を拝見しましたところ、いろいろな団体の、十に及ぶ団体の要望書がございましたが、我々の日本建築家協会の建築士法改正に向けての提言がなかったために、きょう、一枚の紙をお手元に配らせていただきました。

 そこの最初のところに書いてございますように、設計技術、これは、昭和二十五年にできたときには設備あるいは構造も、超高層もございません、いろいろな技術がまだまだ現在のようには特化していないときにつくられた資格でございますので、これは統括をする建築士、統括というのは、例えば、基本設計を策定するとか、建築の質を定めるとか、構造設備のグレードを決める、予算のバランスをとる、発注者との契約をまとめる等々、総合的なマネジメントをする資格のもとで構造及び設備の専門家がチームをつくって建築というものはできるものでございますので、それに沿った資格にぜひしていただきたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、日置参考人にお願いいたします。

日置参考人 弁護士の日置です。

 私は、弁護士になって二十五年になりますが、近隣紛争に多くかかわってきました。それから、建築関係の人の知り合いもふえたことから、いわゆる欠陥住宅問題に関しては、施主側、工務店側、建築士側、さまざまな立場でかかわってきました。いろいろな、党派を超えた議員さんや秘書の方から近隣紛争等の相談を持ち込まれることもございます。

 本日は、これらの事件を手がけた立場、経験から、建築基準法を初めとする日本の建築の問題を述べさせていただきたいと思います。

 まず、今回、建築士という資格者が不正行為を行っております。有資格の専門家が故意に不正行為をした場合、それを防止することは極めて困難だ、このことは認識する必要があろうかと思います。そして、この背景として、建築業界に、このような違法な行為につながる規制を軽視する風潮、それから確認さえとれれば何をしてもいいんだという風潮、それが長年にわたり形成されてきた、このことを指摘する必要があろうかというふうに思います。

 今回の問題の背景として、極めて公共性が強い、長期的視点から対応すべき都市計画あるいは建築という問題、これを、経済に対する規制の問題からのみとらえ、規制緩和、民営化、自由競争、そういう流れに安易に乗せてきた政策の存在を指摘すべきであるというふうに考えます。

 集団規定に関しましては、規制の緩和が次々となされてきました。これまで、自治体のみが確認を担当していたときには、自治体の行政指導といったような形で法律の問題点がある意味カバーされていたわけですが、これが、民間確認機関と分離されることによって、ある意味問題が表面化したということがあろうかというふうに思います。

 これまで国会でも、たびたび、常識から乖離したような建築の出現、いわゆる地下室マンションだとか、一つの建築物、たくさんの建築物をつなげてしまうようなもの、あるいは天空率による斜線制限緩和がもたらした、さまざまな、常識から乖離した建築物というのが議論になっております。

 いろいろな規制が緩和されますと、それを逆にシミュレーションして、最大限の床面積を持つ建築計画を考え出すようなソフトというのが次々と開発されてきます。建築家そして建設業界にとっては、これらを活用して最大限の床面積を確保する、そのことが至上命題で、それをやれば、近隣には迷惑はかかるけれども最大限の経済的利益が得られる、そういうのが現状でございます。

 このような、社会的には疑義があるとしても、最も利益を生むそういう計画、それをためらいなく選択される、そして、そういう事業者が経済的競争力を持つ。そうなると、良質な計画を検討している事業者あるいは建築士というところが経済的にそちらに引きずられてしまう、そういう状態が形成されてきたというふうに思います。さまざまな問題ある設計手法というのも、業界を代表するような大手ディベロッパーでさえ競って採用しているのが現状です。

 建築業界あるいは建築士の方が社会的な妥当性を考慮していては自由競争に勝てない、そういう状態がある中で、その中で、少し先を行って、法規を無視してでもばれなければいいんだ、確認さえとってしまえばいいんだ、そういう行動をとる者が出現する、これは紙一重ではないかというふうに思います。根本からそこの問題を変えない限り、問題の解消はできないのではないかというふうに思います。

 なお、自由競争に任せておけば、質の悪い設計者や事業者が淘汰されるのではないかという意見もあります。確かに、自動車とか家電のようなものについて言いますと、大量生産されて多くの数のモデルが市場に出回ります。自由競争に任せても市場の評判で淘汰がされるかもしれません。ところが、建築というのは非常に個別性が強いものでございます。性能の検証、特に耐震強度の検証などについては地震が来ない限り判明いたしません。そういったものについて、市場原理によって淘汰がされるということは期待できないのではないかというふうに思います。

 紛争を手がけた経験からいいますと、個人住宅のレベルであれば、現在の建築基準法の基準を厳密に遵守させれば、性能的な面においてはかなり問題は生じない形になろうかと思います。このレベルにおきましては、基準法の定める基準が実際にはなかなか守られていないというところに問題があろうかと思います。中間検査や完了検査が十分ではない、完了検査は実際にはやらなくても通用してしまう、それから、手抜きや不十分な工事であっても発覚しなければそれで通ってしまう、そういったところが放置されています。その意味では、中間検査あるいは完了検査を一〇〇%行うというようなことになると、この点はかなり改善されるのではないかというふうに思います。

 さて、これらの問題を考えてみますと、やはり最終的には、建築確認という現在の建築基準法の制度、これ自体が本当にいいのかというところに問題の本質はあるのではないかというふうに思います。

 幾つか問題点がございますが、一つは、建築確認の対象というのが限定された法令に限られているということでございます。地方分権の時代と言われていますが、まちづくり条例だとか地域の建築物の紛争予防条例等と建築確認というものはリンクしておりません。近隣住民あるいは行政がさまざまな問題点があると考えても、基準法の対象法令に含まれていない問題については、確認の対象とならず確認がおりてしまいます。

 それから、基準法の中で非常に細かい数値的規定等は設けられております。ところが、例えば、高さの基準となる地面の定義、あるいは建築物単位で規制が行われているにもかかわらず、建築物が一つかどうかというような根本的なところについて明確な定義がございません。これが、ある意味、民間の確認機関等において極限まで拡大された解釈がなされて、それが通用しているという問題がございます。

 それから、都市計画と建築が矛盾するかどうかというチェックもなされておりません。

 あわせまして、今、確認という制度上の限界から、その手続に住民参加あるいは情報公開それから事前手続、こういったものがほとんどございません。これが近隣との紛争も引き起こすという問題につながっております。

 ちなみに、建築確認に関する具体的な資料というのは事前に周辺の住民等が入手することができませんし、建築審査会に行っても確実に出されるという保証がございません。訴訟になるとようやく釈明処分によって出すということが可能になりましたが、その段階になると、今度は建物が完成してしまって訴えの利益がなくなるということで、ほとんど確認の内容について公開の場で審査されるという機会が保証されておりません。そういうことで、地域の実情に合わないものであっても確認が出て、どんどん建築が進んでしまうという問題がございます。

 それから、民間の確認というシステムですが、今述べたように、建築というのは非常に公共的な立場、特に集団規定に関しては公共的な視点からのチェックが必要でございます。ところが、民間の確認機関というものは、確認を申請する者からの申請料に依存して経営が成り立っております。申請を拒否するということは、その事案において料金が入らないというだけではなくて、次からの顧客を失うということにつながりかねません。どうしても、顧客である建て主の立場、建設会社の立場に立って、なるべく建てる方向での解釈をするという形になります。

 しかも、特定の自治体だけが確認していた場合と違って、複数の機関が併存して確認を出すことができるとなると、競争原理によって、最も緩やかな解釈を行う、そういう確認機関の判断基準が通用してしまうという形の問題に行き着くということで、これがますます問題を悪化させてきたかというふうに思います。

 最近、地方独自の規制を行うという自治体もふえてきました。今度は、それぞれの自治体が独自の規制を行った場合に、たくさん、全国を管轄するような確認機関が適切にそれぞれの地方のルールを判別できるのかというような問題も生じてきます。少なくとも集団規定に関しては、自治体が地域特性に応じた最終判断を行うべきであるというふうに考えます。

 それから、建築士の制度です。倫理的な問題が追求されていますが、今述べたように、経済的に倫理を追求したような建築士が成り立たない、そういう経済的、社会的体制のもとでは、建築士に倫理を求めるということはできないというふうに思います。倫理を求めるのであれば、それが成り立つような、建築士が尊重されるようなシステム、それを構築することが必要だというふうに考えます。

 最終的にこういった問題を解決するためには、基本的には、確認という形で最低限の基準さえ満たせば建てられるということではなく、規模に応じて許可制度を導入する、建築士が責任を持って、地域を踏まえ、環境を踏まえ、いい設計を行った場合に初めて建築が認められる、そういう制度にして、建築士が誇りを持って仕事ができる、いい設計を行った事業者が建築を行うことができる、そういった制度にしていくことが必要かというふうに思います。

 今回の法の改正ですが、それ自体は一つのプラス方向が多いと思いますが、基本的には、今言ったような根本的な社会的背景、これを変えていかなければ問題は解決しないというふうに思います。そういう意味では、改革のスタートということで、問題点の改革に当たっていただきたいというふうに思います。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤宣彦君。

遠藤(宣)委員 おはようございます。自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 お忙しい中、参考人の先生方には当委員会に来ていただきまして、本当にありがとうございます。

 昨年発覚しましたこの耐震偽装の問題から、さまざまな議論、そして、その中からさまざまな問題点が提起され、議論をされてまいりました。当委員会を初め多くの方々にいろいろな議論をしていただいて、問題点もいっぱい出てきたと思いますが、私自身もいろいろな資料を読んでいろいろな勉強をさせていただいたんですが、どうしても素人の域を出ないということで、今回、あえて住民といいますか使う側の立場で、素朴な疑問をちょっと先生方にお伺いしたいなというふうに思っております。

 また、今回のこの改正というものが恐らく最終形ではなくて、これからよりよい形に行くための一つの一里塚であるという認識で問題点を考えてみたいと思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 私自身も、実は六年前に非常に無理をしまして小さい家を三十五年ローンで買いました。見てすぐに買ってしまったという非常に無謀な決断をしたんですが、今から考えれば大変恐ろしいことをしたなと思っているんですが、後で調べてみますと、多分うちは大丈夫そうだということで安心をしています。

 言うまでもなく、住宅というものは一生の中で一回、二回買うのか、大体皆さん一回買うという非常に重要な買い物でありまして、よく言われますように、人生の大半そのローンを背負ってやっていかなきゃいけない、そのくらい重大な人生においての出来事だと思います。そしてまた、巷間言われておりますように、いつ地震が来るかわからない、関東の方になるのかどうなのかわかりませんけれども、私の地元の福岡でも、昨年の三月二十日に滅多にない地域で大きな地震があって、すごく衝撃を受けておりまして、そういったものが相まって、今までになく、建築関係のこの問題というものが、すべての日本人と言っても過言ではないぐらい関心を持たれているというふうに思います。

 さて、今回の問題について、幾つか視点があると思います。一つは、まず、言うまでもなく原因を究明しなきゃいかぬ、何が本当に問題だったのか。これは、ここでも多く取り上げられておりますけれども。二番目が、実際に再発防止をするにはどうすればいいのか。これが二番目の視点。三番目が、被害者を実際にどうやって救済していくんだろう。この三つがあると思います。

 原因究明については、先ほどというか、ずっと議論がされておりますけれども、再発防止、罰則で縛るのか、あるいは、後ほど申し上げますように、建築関係者のモラルとかインセンティブをどういうふうに上げるのか、法令遵守の方向にどうやって持っていくのか、こういったことがあると思います。

 また、被害者救済についても、後ほどこれも申し上げますけれども、知らなかったから全部その住民が悪いというのか、あるいは行政が全部責任を持つのか。後ほど弁護士の先生にお伺いしたいと思いますが、過失割合とか、そんな観念も出てくるんじゃないか、こんなことが今頭にあります。

 以上、原因究明、再発防止、被害者救済という三つの視点を持ってちょっと御質問をさせていただきたいと思いますが、まず、再発防止、これについても幾つかの視点があると思います。

 まず、建築関係者の人の担保。建築士、建築家、建築に携わる方々のその信用、この人は信用できるんだという担保をどこでとるのかという問題が、どうしても私のような素人からすると頭から離れない。さらに申し上げますと、そもそも今日本にある資格というのはどのくらい信用できるのかなという気持ちがどうしてもぬぐい切れません。

 最近は、医者にしても弁護士にしても、あるいは私も出身者ですが国家公務員にしても、本来その資格を持った人は、きっとこれだけ立派な人だろう、こんな能力があるんだろうというその信用がいろいろな分野でずるずると崩れてきている。そしてまた、資格の恐ろしさというのは、そのときに資格を得たからといってある時点においてその能力が保証されるわけではない、こういったことが言えると思います。

 ある私どもの自民党の先生、弁護士出身の先生に、先生、弁護士出身ですか、じゃ、すぐに法廷に立てますね、こういうふうに言ったら、いや、それは何年もメスを握っていない医師の先生に手術をしてもらうぐらい怖いんだよというようなことがありました。

 つまり、何が言いたいかといいますと、資格を取った段階でいかに優秀であっても、常に腕を磨いていなければその資格というものはかえってその能力についての錯覚を引き起こすんじゃないかという思いが、どうしても私自身はぬぐい切れません。

 また、こういったような地震についての不安が高まっている、そういった時代、あるいは環境の変化に応じて求められる資質というものを常に見直さなければならないということが言えると思います。

 そして、そこでお伺いをしたいんですが、冒頭申し上げたように非常に素人感覚で御質問させていただきますが、例えば、私たちが持っております車の免許、この免許でさえ更新がある。常にその能力を、免許を持っている人に対してチェックをする機会というものが十分担保されているか。広く見れば、昨今言われているように、先生の教員免許にしたって資格をちゃんとチェックする場面が必要なんじゃないか。最高裁の国民審査でも、何を手がけてどういうようなことをやってきたかというチェックの段階がある。この免許更新というものについて、どういう形で考えればいいのか、特にこの建築という関係について、これをぜひお伺いしたいと思います。

 小倉参考人と宮本参考人に、ぜひ、免許の更新とか資格のあり方というものについて御意見を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。

宮本参考人 ただいまの御質問につきましてお答えしたいと思います。

 まず、我々建築士の資格というのは、設計監理等を行う者の資格という業務独占を与えているわけです。それから、士法二十一条で、建築士の資格はあるんですけれども、「その他の業務」という仕分けがございまして、実は、私ども今まで一番頭を悩ませてきましたのは、設計監理をやっている資格を業務独占でやっている人が有資格者の約三〇%ぐらいなんです。その他業務についておられる人が大体七〇%ぐらいという実態がございます。

 そういう中でございまして、建築士会連合会としましては、ちょうど、約五十年間この問題を、ずっと登録更新制度のことを、どうやったらできるかという問題を議論してきたり考えてまいりましたし、それから、何としても実態を把握するにはどうしたらいいかということをやってきましたが、なかなかそれができませんでした。

 それで、今回、私ども士会連合会では、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、その他業務についておられる人たちのことを無視して、設計監理という業務独占だけを持っている人に対することだけに焦点を合わせてきたのでは、やはり、このような偽造事件といいますか、そういうことがまた再発するだろうと。

 それからもう一つは、登録更新ということは私は非常に大事だと思いますし、私ども、専攻建築士制度をスタートさせて三年になるんですけれども、五年ごとにCPDといいますか、そういった研修をきちんとやって、それを認定して、そのときに登録更新をぜひやっていくというような制度を今やっておりまして、まだ経緯としては三年しかありませんが、これからも実はそれは全士会的に続けていきたいと思っております。

 お手元の資料に、このブルーの、ちょっと私、このような専攻建築士制度、こういった資料を用意いたしましたけれども、また後ほどごらんになっていただきたいと思いますが、結局、我々は、その他業務の人も含めて、設計監理の業務独占を持っている人と同等に資格を扱っていかなければいけないのではないかという観点から、このような制度を、我々はちょうど職能制度とたまたま呼んでいますけれども、資格で縛るんじゃなくて、職業分類して我々は自主的にやっていこうではないかと。こういうことを、実は五年前から議論をしたんです。そして、この事件がまさか起きるとは思いませんでしたけれども、案外起きるのではないかと思いました。

 それからもう一つは、その他業務という七〇%の方が、何といいますか、名義貸しを一番しやすい人たちではないかということも内部で議論してきました。そして、三〇%の業務独占がある方は自分でやっていらっしゃるから名義は貸せませんが、結局、七〇%の方を何とかして掌握して、そういうところから名義貸しも防ぎ、それから、自分の仕事に対して、社会に専門的なことを開示して、そして責任をとっていくというような自浄作用というんですか、そんなことを考えて、今このブルーのパンフレットをちょっと用意しました。また後ほどごらんになっていただきたいと思っています。

小倉参考人 再発防止に関してですけれども、現状、今までにも述べられていますように、建築士制度そのもの、建築士の例えば総数にしても質にしても、いろいろな役割を果たす人が建築士というふうな一つの資格で定められているというところが、いろいろなことが起きる一番大きな理由になっていると思います。

 私どもは、建築士の中から、それぞれの分野の一定レベルにある人たちに専門資格を与える、それで、その専門資格を与えた人たちに、重要と言ったらいいでしょうか、大切なもの、あるいは一定の、特定のものといいますか、一定規模あるいは特定の用途の建築については、その分野の設計と監理はその専門資格を持つ人だけしかできない、これは国家資格にしないと業務独占というのはできないわけですが、やはり建築士の中から、それぞれの分野できちっと仕事をする人たちを分けていくということがまず基本ではないかというふうに思っております。

 それから、登録更新でございますが、資格の登録更新というのは、国際的に見ますと多くの国でなされていまして、それの条件としては、やはり宮本会長が今おっしゃられているように、CPDでございます。常に研さんが必要で、現在でもいろいろ新しい材料、新しい法律ができている、そういう状況に対して、常に研さんをしていないと常に切れる刀が使えないというような状況にございます。

 我々の協会もCPDというものを実行していまして、今、建築家の資格制度というのを独自につくりまして、これは建築士を取得してから五年以上の人に、今までの業務実績を審査しまして、よしと認めた者に関して資格を与えて情報公開をする。この情報公開をするという意味が、建築士が、この人がどういう人であるか、どういう経験をしているか、どういうCPDをとっているかということを判断する一つの根拠でございまして、日本建築家協会にアクセスすると、我々の認めた建築家というのがどういう人たちでということがわかるようになっています。

 その制度では、三年ごとに資格更新をしようと今しているところでございまして、必ずしも資格更新というのはたやすいことではございません。来年の三月に第一回の資格者千人ばかりを更新審査しようとしていますけれども、CPDも年間三十六単位の勉強をしていないといけないというようなこともございます。そういうことはやはりいろいろな国の状況を見ても必要だと思いますし、そのためには、建築士が一人でいるといろいろな誘惑がございます。やはり団体に加盟して、多くの人と交わりながらともに切磋琢磨するということは、やはり人間、いずれも弱い部分がございますから、そういうことがないようにするにはやはり団体加入ということが必要かと思います。

 それから、先ほどからしつこく専門資格というふうに言っておりますけれども、建築家、アーキテクトとエンジニアというような区分がない資格を持っている国は、あるいはアーキテクトとエンジニアを一緒にした資格の国というのはほとんど世界でございません。アジアの韓国、中国、シンガポール、マレーシア、タイ、どこでも、建築家と技術者というのは分かれた資格になっていますし、もちろん欧米諸国もそうでございます。

 これは、我が国は、士法をつくったときに、戦後の復興をいち早くなすためにこういう資格にしたんだという断り書きがございますけれども、もう今や先進国の仲間入りをしたわけですから、それぞれの役割がはっきり消費者に見える制度にすることも再発防止の重要な点であるというふうに考えます。

 以上でございます。

遠藤(宣)委員 どうもありがとうございました。

 今、先回りしてといいますか、言っていただいたんですが、この資格に関して見落としてはいけないことというのは、恐らくプロ意識だと思います。私は非常に俗っぽい人間でテレビをよく見るんですが、昨年までやっていた、たしか日曜日の夜でしょうか、所ジョージが司会の「大改造!!劇的ビフォーアフター」という番組がありまして、こんな家をこんなに建築家が変えてしまうというので、私も毎週見ていたんですが、その中で、プロというものをたくみと呼んでいたわけですね。

 日本の社会の中でこのプロ意識というものが何で担保されているのかなというふうに私はいつも考えてしまいますけれども、これはやはり周りからの評判、その評判を落としたくないという緊張感、そして、その評判というものは何に支えられるかというと、自分が手がけたものについて世間で知られているということだと思います。

 となると、この前提は情報公開。例えば、ある建築士が手がけたもの、こんなものがいっぱいある、その建築士さんに頼むときに、心配な人は、前に手がけた物件に住んでいる人に、どうですか住み心地はと聞きに行けるような情報公開があれば、これもまた後ほど質問させていただきますけれども、自分の責任で、その情報をもとに確度の高い選択ができるということになっていくんじゃないかなというふうに思います。

 そしてまた、今御指摘いただきましたように、この専門性をどこに見るかということについては、資格を多少細分化すること、あるいは試験を多段階化すること、あるいは経験と実績を加重すること、さらに報酬に反映することとか、こういった問題が恐らく出てくるんじゃないかなというふうに思います。

 今、世の中、例えば、彼は英語ができるんだよ、英検一級なんだよという時代がありました。ところが最近は、TOEICで何点、TOEFLが何点、ヒアリングではこのくらい彼は優秀だと。その分野ごとに何が得意なのかという、実は、私たちの身近においては判断基準がいろいろな細かいものが出てきて、自分の目で判断できる、自分でチョイスできる前提としての専門性の情報公開というものがこれから必要になってくるんじゃないか、この建築の分野においても例外ではないというふうに思います。

 人の担保に続きまして、私自身が思いますのは、対象物をどういうふうに担保するのか。これは、世の中いい人ばかりじゃない、今回の事件みたいなことも起きる中で、相互チェックのシステムをどうやってこの制度の中に組み込むか。政治の世界も、小学校で習ったときのように、三権分立というのがあって、チェック・アンド・バランスというのがある。悪い言い方をすれば、常に悪事を発見しようと思って虎視たんたんと見ている仕事が自分たちの業界の横にあると、いつ摘発されるかわからぬという緊張感を持つようなものを制度の中にビルトインしていけないかどうか。

 あるいは、使用した材料、建築物の材料。これも非常に俗っぽい話なんですが、最近、レストランに行きますと、うちの材料は、食べ物の材料はどこの産地ですというものが出てきています。私の住んでいる家も、一体どこのどんなものを使ってやったのかというのは実は知らなかったということにはっと気がつきました。

 何が言いたいかと申し上げますと、材料の、今使っているものが何なのかというものについても建築関係において情報公開ができないかどうか。こういった、使用した材料等のより多くの情報公開、あるいはチェックをする、緊張感を持つようなシステムをどういうふうにビルトインしていくかということについて、久保参考人にお伺いできればなというふうに思います。よろしくお願いします。

久保参考人 今の遠藤議員の御指摘でございますけれども、情報公開とか、一体、建築士が、自分がどういうものに携わってどういうものをつくったかという情報公開は今後どんどん進んでいくものだと思います。また、私ども建築に携わる人間も、自分たちの行った問題だとか、今ここで話題になっております継続教育で一体どういうような知識を、新しい知識を得て新しい技術についていったかというのも出していかないと、職業人というのかプロフェッショナルとしての地位を失うような体制になっていく、そういうふうに私は思っております。

 後段の方の材料の使用云々ということに関しては、これから私どもがつくるものが一体どういうものでできていて、どういう性能のものかというのはやはり表示すべきだと思いますけれども、例えば非常な細部の点までいくとこれは設計図書並みの量になりますので、そのあたりはやはり職能団体というのか建設団体の方で、一体どういう表示をするかというのを前向きにずっと考えていくという方向ではないかと思います。

遠藤(宣)委員 ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、これから一生に一回の買い物をするときに、どこまで情報が公開されているのかということが非常に大きいというふうに思います。自分の、幸い今のところ被害がないんですが、一日で決めてしまった、それまでに情報もろくに知らなかった、こんなような無謀な人間の自省の念を込めて申し上げるんですが、建物それ自体についての情報をできる限り入手できるようなもの、そして、そこに、手がけた方々の能力そしてプロ意識というものを少しでもわかるような情報を得られるようなものを組み込んでいきたい、組み込んでいっていただきたいなというふうに思います。

 そして、今回の問題の中にいろいろ言われています規制緩和。規制緩和というものは、今、大きな流れの中で、事前の役所のチェックから、できれば事後チェックにというような流れとか、あるいは民間にできるものは民間にというこの基本は、私自身は決して間違っているとは思いません。しかしながら、自分たちの命にかかわるような建築の関係においては、言うなれば、安全性と迅速性のバランスをどうとるのか、そして、リスクを覚悟で購入した人間に、何か問題があったときにどのくらい責任を負わせるのかということがあります。

 またまた俗っぽい話なんですが、私は、議員になる前はよく格安航空券を使って旅行に行きました。言うまでもなく、乗りおくれたらもう乗れません。リスクがあります、でも安い。こういったものが今社会にはいろいろな場面で出てきています。建築関係の人間とお話をしたときに、これを建築関係に当てはめるとどうなるのか。例えば、うちの家は震度四でつぶれちゃうかもしれないけれども、めったに地震が来ないから、普通の市価の半額の家があったらおれ買っちゃうかもしれないという人もいるかもしれない。しかし、その結果、道がふさがれてしまったらほかに迷惑かかるから、やはりそれは規制しなきゃいけない。いろいろなそういった話があります。

 極論すれば、自分のリスクでやるんだから、死のうが生きようが、おれは別に安全性の低い住宅に住んでもいいよという人がひょっとしたらいるかもしれない。そういった自分のリスクでやるということと、しかしながら、公共の安全というもののバランスをどういうふうにとっていくべきなのか、そこの線をどうやって引くべきなのかという話と、そして、仮に、安かろう危なかろうという物件を一定程度認めるとした場合、そして地震が来てそれが倒壊した場合、その危険性を事前に知っていたのか、情報公開がなされていたのかなされていないのかで随分これは違ってくる。

 日置先生にお伺いしたいなと思いますけれども、民法上も過失相殺とかそういった観念があります。例えば交通事故を起こしても、過失割合の認定、保険のときに必ず出てきます。そうしたときに、被害を受けた、地震でつぶれた側の方が、どのくらい実際それは過失として認められるのかというところは非常に大きな被害者救済の際の論点になってくると思うのですが、そのあたりについて、建築関係の特殊性を踏まえた上で、どういう御認識か、ぜひお伺いできればなと思います。よろしくお願いします。

日置参考人 まず、今震度四ぐらいで壊れてもいいというような話が出ましたが、建築基準法上は最低限の基準だというふうに決められていますから、最低限の基準を下回るというものについて、それを知らされないで買ったというところで過失を認めるというわけにはいかないかと思います。

 性能評価等で基準法のレベルを上回るもの、一・五倍とか、そういうようなものがある。それについて言うと、それぞれの選択肢で、おれは金を出してより安全なものに住むんだ、おれはぎりぎりでいいんだという選択肢はあろうかと思いますが、最低限ですから、それを下回るというのは基本的にはあり得ないというふうに思います。

 ただ、往々にして工務店や設計者から困った相談ということで持ち込まれるのは、基準法のいろいろな規定の中で、施主からも、ちょっとこれ何とかならないかと。建築士も悩んで、施主が了解しているなら目をつむるかみたいな話というのは時々聞きます。そういった形で、施主も了解して一定の基準を守らなかったというような場合には過失相殺という問題はあり得るのかなと思います。

 ただ、今回の耐震偽装に関して言うと、施主が知らされていたわけではないし、だから安いんですよと言われていたわけでもないですから、過失相殺という考え方は当たらないというふうに考えております。

遠藤(宣)委員 ありがとうございました。

 いずれにせよ、こういった、それぞれの人にとって大きな買い物でありました、社会の安全にとって非常に重要な問題、この分野で、今の規制緩和の流れ、そして官から民へという流れの中で、不幸にしてこういうような出来事が起こりましたけれども、私自身は、むしろ災い転じて福となすというような形でいけばいいなというふうに切望しております。

 冒頭に申し上げましたように、今回の原因究明と再発防止、そして被害者救済という視点を常に持ちながらよりよい制度づくりをこれから考えていかなきゃいけない。冒頭申し上げましたように、今は過渡期だと思います。角を矯めて牛を殺すことなく、こういった流れの中でよりよい制度をつくるために、今後も、参考人の先生方のお知恵をかりながら、よりよい社会をつくっていく、よりよい安全な社会をつくっていくために私たちも努力をしてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

 以上です。

林委員長 森本哲生君。

森本委員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 きょうは、参考人の皆さん方、大変お忙しい中御出席をいただきましてまことにありがとうございます。きょう、いろいろな面で御指導をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。

 それでは早速質問に入らせていただきますが、まず第一といたしまして、確認検査機関の強化の実効性ということでお伺いを皆さんにお願いをさせていただきます。

 今もお話しいただいたところもあるわけでございますが、特定行政庁による指導監督、立入検査、業務停止命令の強化ということでは、民主案、政府案が同じ考え方でございます。中間検査の意義、義務づけについてどう考えられているかということでございますが、先ほど久保参考人からは一定の規模というようなことでお話もいただいておりますので、あと、皆さん方、この問題につきましては簡単にお答えいただけるかと思いますので、四人の方にそれぞれ御意見を賜りたいと存じます。よろしくお願いいたします。

久保参考人 議員に対してお答えいたします。

 一定の規模というのは、建物の大きさなんでございますけれども、建築物、地震だけではなくて、ほかの荷重にも設計しております。それとやはり、物をつくる段階において、幾ら何でも五センチ掛ける五センチの柱をつくるといったこともございませんので、一般論として申し上げて、規模の小さいものは耐力上の余裕は多いということと、それから、全建物を見たらという御意見もあるかもしれませんけれども、実効性から見て、ある程度の規模の大きいものというのが建築分科会での議論でございました。

 あと、特定行政庁の話も今お答えした方がよろしゅうございますか。

 特定行政庁の確認ということについては、民間開放という前回の基準法の改正時の問題が皆さん方の御指摘だと思いますけれども、私はやはり、なるべく新しい技術を取り入れて即対応できるといったことで、民間機関による確認申請というのは否定いたしておりません。

 以上でございます。

宮本参考人 宮本です。

 確認というのは、実際実務をやっております設計者の立場で言われていますことは、やはり相当大きな意味を持ちます。

 例えば、実施設計と基本設計とございますが、実施設計が終わった段階で、それから例えば工事のための入札とか見積もりになるわけですけれども、その前に確認申請を出します。確認申請がおりるということは、実施設計業務が終わったということが一つの何か慣習みたいに認識されています。それほど大きな問題だと思います。そういったことが民間に移されるということは、私は大変いいことだと思っております。

 ただ、問題は、民間でやるにしても、ピアチェックといいますか、チェック機能が十分働けばいいのではないかと思うんです。

 と申しますのは、例えばマンションのようなものというのは、建築はどんな場合でもそうですが、同じ建物を幾つもつくっても、これは試作品と同じでございまして、自動車のように量産体制に入るものじゃありません。試作ですから、試作については、設計をやる人も工事をやる人も、お互いに中間で何回かピアチェックできるようなシステムが当然なくちゃいけないわけで、現にやっているところがたくさんありますが、私は、民間がそういったチェックをするという今の検査機関というのは、これはやはりとても大事なことではないかと思っております。

 ただ、そこにいろいろ経済効率があったり、あるいは確認検査機関が、民間の機関が、サービスとかそういうことがあって今度のようなトラブルになっているわけですけれども、これは本当に、資質の問題と、それから、確認検査機関にいる人の自分自身に対するいわば自己責任というんですかね、そういうことが何か欠落していてこういう問題になっているのであります。

 一方で、我々建築士会等もそうなんですが、四十七士会の会長さんたちと議論したときも、いや、やはり民間はだめなんだからもうちょっと行政の方へお願いするのがいいのではないか、そういった意見の人もおりましたが、しかし、最終的には全員一致で、小さい政府という方針にのっとって民間にそれを委託されたんだから、やはりそれをきちんと民間の知恵でやるべきであるということになっております。

 検査機関はそういうことでございます。

小倉参考人 中間検査の強化というのは、私は、今現状ではやむを得ないことであるというふうに考えています。

 ただ、本来ならば、やはり資格者の責任として、工事のしかるべきプロセスの中で検査をする、自主的に検査をし、施主を伴って検査をするというのが本来、資格者の役割ですから、本来ならば、設計監理契約の中で、種々の段階での検査をするということをきちっとやるように指導していただければよろしいと思います。

 それから、一番難しいのは、マンションのように、入居者が入って初めて欠陥がわかるというようなこともございます。これは、海外の例でもそういうことは非常に多いんですけれども、やはり設計契約の中あるいはマンションの売買契約の中で、入居して一年目の検査というようなことは非常に大切で、これは法的に規制されないかもしれませんけれども、マンションの購入あるいは家の建設というときになるべくそれが実行されるような御指導がしていただければ、それは非常にありがたい話じゃないかと思います。

日置参考人 まず、確認機関ですが、先ほども申し上げましたが、やはり民間でやった場合、申請者からの料金に依存して経営しているということがあるので、どうしても経済的に厳しいチェックがしづらいということがあって、民間でやる場合、そこの何らかの制度的手当てが必要ではないかというふうに思います。

 それからもう一つは、やはり集団規定につきましては、民間ではなくて公的なコントロールが必要ではないかというふうに思います。

 それから、検査ですけれども、私が建築紛争等にかかわっている経験から申しますと、むしろ戸建て住宅等において、小さな工務店が、名義貸しなんかで建築士も実質かかわらないような形で建ててしまうというようなケースにおいて、基礎等の手抜きが発覚するというようなケースを結構見ております。そういう意味では、小さいものであってもきっちりと、特に基礎のように後から見ることが困難な部分を実際に検査するということは重要であるというふうに思います。

 それから、完了検査を全部するはずですけれども、実際にはやらないでも今使えてしまうということなので、やはり中間検査をやるということと完了検査を一〇〇%実施する、それを例えば登記などとリンクして実効性を担保するということを組み合わせてチェックするということが必要かなというふうに考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 私の方の意見は極めて少なくさせていただきたいというふうに考えておるんですが、確かに性善説、性悪説、私はむしろ性善説でいって、いいものを安くというような、今の、だんだんだんだん規制を強めていくと、どうしてもその人件費とかいろいろな問題が高くなってくるというようなことを非常に残念に思いながらの質問をさせていただいておるんですが、そういう思いは実はあります。

 その中で、次に移らせていただきますが、先ほど御意見をこちらの方にいただいた部分についてはもう省略をいただいて、私の方もメモしておりますのでダブルではもう結構でございますので、どうぞ簡潔で結構でございます。

 次に、建築士法の改正でございまして、連合会への強制加入とか建築士会による監督、法人制度の創設、これは業務独占資格に比する内容となっておるわけでございます。

 民主党案が採用された場合、その現場、今後のこの認識はいかにという思いでございますのですが、先ほど宮本参考人からは、建築士の、私どもは賠償保険ということも視野に入れながら、無限責任というようなことを提案させていただいておるんですけれども、そこにはかなりコメントもございましたし、その問題について、宮本参考人からはもう少しそこのところ、賠償保険と無限責任の関係を、この点に、私が申し上げたこと一点に絞っていただいて、あとのお三方につきましては、私の今申し上げた質問に全部お答えいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

宮本参考人 宮本です。

 建築士会としましては、賠償責任ということは非常に大事だと思いまして、私ども、内部で制度委員会というものをつくりまして、一応ずっと長い間検討しております。

 現在ありますのは、建築の賠償保険にできるだけ全員加入するようにというようなことで全国の都道府県士会にはお願いして、もちろんやっていらっしゃる人もいますけれども、問題は、まだまだそれは一〇〇%の会員が、義務づけていませんので、これからこの問題については相当積極的に取り組んでいかなければいけない、そのように思っております。

 以上でございます。

久保参考人 森本議員の御質問内容について、私はちょっと門外漢に近いところでございますので、適切な御回答となるか……。

 士会の、いわゆる職能団体としての加入義務というのは、これはやはりちょっと職業の問題で、加入義務というあたりの強さに対しては、少し全面賛成はいたしかねます。

 あと、補償問題に関しては、これは、私がメンバーでございます基本制度部会において、保険とか絡む問題で、今後の審議事項ということで、今回の回答とさせていただきたいと思います。

小倉参考人 職能団体への加入でございますが、今までの建築士に対する団体の考え方と、それから私が先ほどからお話をしています専門別資格ができたときの団体への加入というのは、私はちょっと違ってくると思っております。

 今までですと、建築士会あるいは建築士事務所協会への加入ということが視野に入っていると思いますが、もし専門別の資格ができた場合には、それぞれの専門別の職能団体というのが今でもございます。建築、構造、設備に対する職能団体がございまして、それも今でも非常に重要な役割を果たしておりますので、その資格者団体といいますか、建築士会というような資格者団体と我々のような専門別の職能団体、これのやはり加入ということも、特に専門別の能力を高める、切磋琢磨する、固有の問題を議論するというような意味では、職能団体としての加入としては大切であると考えます。

 それから、保険の問題ですけれども、これはもう設計者責任賠償保険に入らずして設計はできないというふうに我々は考えておりまして、まだ建築家協会の会員は一〇〇%、保険には加入しておりませんけれども、これだけいろいろ自分たちのミスというものが、やはり想定する限りは、クライアントに迷惑をかけないためにも、これは施主にその事情を説明して、お互いの幸せのために、設計料の中に、設計料以外に保険料を加算して設計契約を結ぶというようなことは、私はもう必須のことだというふうに理解しております。

 以上です。

日置参考人 専門職として職能団体をつくるということは、一つの方策であろうと思います。

 ただし、弁護士会はそういう職能団体をつくっておりますが、それが本当に機能していくためには、その中でやはりその専門職としての厳しい相互批判をやる必要がある。まあ、弁護士会がどこまでできているかという問題はありますが、そういうことをやった上で、問題があるときにはそこから除名してその業務ができないようにする。そういったみずから規律を保つ、そこまでの内部規律を持って職能団体を運営していくという覚悟が必要かというふうに思います。

 それから、保険の問題ですけれども、基本的には賠償保険でカバーするというのは、消費者保護の視点からも必要かと思います。

 ただし、これは私の経験からいきますと、建築家賠償責任保険というのは、建築家の設計ミスで事故が発生して、被害が発生して初めて賠償がおりるんですね。ミスが発覚した、まだ壊れていないというときには、被害が発生していないということで救済されないんですね。普通の損害賠償保険だと、賠償責任が認められれば大体カバーされるんですけれども、建築家の場合、どうもそうなっていない。保険会社の人に聞くと、そこまでカバーすると非常に料率が上がるという話をされました。

 この辺はきちっと調査をされる必要があろうかというふうに思いますけれども、事故が発覚して補修しなきゃいけないというような場合にもきっちりカバーされるということを含めて、賠償保険の必要性はあろうかというふうに思います。

 それから、実際の話、小さな設計事務所の人の相談を受けますと、例えば、一億の物件を設計して、それで何百万とか報酬をもらったという場合に、やはり欠陥が見つかって建て直したりすると一億以上の損害が生じるということで、通常の設計者であれば、一つでもミスを出すと経済的にとても成り立たないという形がありますので、やはりその意味からも保険は必須ですけれども、きっちり保険の救済範囲が広がるということを御検討いただきたいというふうに思います。

森本委員 ありがとうございました。

 ほかの士業の関係の方でもそうした保険はあるんですね。ただ、建築の場合は額が相当な額に上りますので、そのあたりが非常に微妙な問題があるのかなということを私も認識させていただいておるんですが、ありがとうございました。そのあたりは、早速もう少しシビアに研究もさせていただきたいというふうに考えさせていただきます。

 あと、建築士の身分の独立性ということをお聞かせいただきたいんですが、これは宮本参考人と小倉参考人に限らせていただいて、お願いをさせていただきます。

 設計者と施工者が請負契約の関係にあることは極めて異質なんですが、ただ、私ども、設計、施工、監理というのは、三権分立というようなことを言うておるんですけれども、やはり設計、監理が分離するところに非常に難しさも出てくるように、ちょっと読ませていただきますと、御指摘をいただいておるということでございますので。

 しかし、今回の姉歯問題は、そこがある意味では本質なところでもございますので、小倉参考人は、私、小倉参考人のいろいろな、こう見せていただいておりますと、構造設計は下請になることを法的に禁止すべきだという思いは、それはちょっと私の解釈間違い、私の言い方が間違ったかわかりませんけれども、いわゆる構造設計がやや建築士の下請になるような位置づけに今あるんではないかということの中、これを変えていくことが必要なんだということなんですけれども、そのことについて御意見を、さらにもう少し丁寧に小倉参考人からは御説明いただけたらというふうに思っておりますので、お二人によろしくお願いします。

宮本参考人 設計と施工というのは、日本ではどうも完全に分離するということは社会通念からなかなかできないことではないかと思いますね。しかし、私は、やはり設計という行為の独立性ということは非常に大事だと思うんですね。

 それと同時に、例えば、公共性の非常に高いというか強い建物、例えば公共建築とか、そうすると、それは設計と施工は今もう完全に分離して実際に建設されているわけです。そうしますと、例えばマンションのようなものというのは何十戸というか、そういうような、戸建てと、一戸一戸と違いますから、一つの公共性が非常に強いものと思います。そういう場合などは、設計と施工というのは分離してやるのが、独立してやるのが一番理想的だと思うんです。

 ただし、一つの施工、建築主の流れの中で、今度のような事件は、設計施工は一緒というより建築主も一緒でありまして、全部何か一つのグループの中でやっているという、これはもう非常に異常な行為だと思っています。

 ですから、やはり基本的には、設計施工というものは、私は、完全になくすことはもちろんできませんけれども、しかし、設計と施工の独立してやるべき公共建築とか公共性の強いものはそうしてやった方がいいんではないかと考えております。

 以上です。

小倉参考人 まず、設計施工の問題でございますが、社会通念上、日本というのは、ゼネコンが昔から設計施工をしてきた、世の中、世界的にも非常に特異なケースです。私もこれを壊すということはまず無理ではないかと思いますが、設計施工というのはあくまでも性善説にのっとった制度でございますので、これを何らかの形でもうちょっと第三者的にする。設計施工の中でも、例えば○○建設が、設計部が工事をするということはあり得るわけですけれども、設計契約と施工契約、これをはっきり分離するとか、今のやり方の中でも契約をもう少し明確にすれば、もうちょっと第三者的に内容がわかりやすくなる。そういう改良の余地はあると思いますし、特に、設計者が施工者とペアになって、いわゆる欧米流に言うデザインビルドというようなことになれば、もう少し消費者に対しては歓迎される制度になるのではないかというふうに思います。

 それから、先ほどの職能別の構造の専門家が下請にという件でございますが、元請、下請という概念は我々設計者同士では持っておりませんで、これはイコールパートナーでございます。構造の専門家が我々と仕事をするときには、やはり我々の設計にふさわしい構造の設計者をパートナーとして迎えて、設計を一緒にしていく。上下の関係はありません。ただ、契約上はやはり私どもが一括して受けたものの一部を担当してもらうので、費用をこちらからお支払いするということはございます。

 ですから、私どもは、構造の専門家はイコールパートナーであって、必要不可欠でございます。幾ら建築士といえども、今の複雑な構造計算を私どもだけでやるわけにはいきません。仕事の仕方としても、最初はいろいろな知恵を出し合いながらいって、最終的には構造の専門図面、構造計算をパートナーにしていただくわけですから、我々としては、建物全体の統括をしながら意匠の設計をする、その全体の統括の大きな方針のもとで構造の専門家に構造の設計をしていただくというような形の分業が望ましいというふうに思っておるわけでございます。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、これは日置参考人にお願いをさせていただきます。時間もありませんので、一人に限らせていただきます。

 耐震偽装物件のマンションの住民の法的救済の課題があるというふうに考えています。民事訴訟、それから行政訴訟またはADRには幾つかの問題点、課題があるというふうに考えておりますが、ポイントだけ御指摘いただけたらと思うんですが。非常にこれは説明が長くなりますか。そしたら、一つだけでも結構です。例だけでも結構でございます。

日置参考人 やはり、一つは、確認等が抱える問題について言うと、それを実際に係争していくことが非常に難しいという問題です。これは、先ほども言ったように、周辺の住民等が争うような場合に資料が出てこない、行政訴訟に行っても訴えの利益等で争うことが難しいという問題があります。

 それから、民事上の被害者の方から訴える場合に、やはり、技術的に問題を究明するというのは、裁判で、証拠で証明するというレベルで技術的な問題をはっきりさせるというのは、費用、時間、そういったものがかなりかかります。ほかでもそうですけれども、欠陥住宅の問題というのは、やはりもうローンを組んで、手元のお金をぎりぎりまで出してその家に入っているわけですよね。そこで問題が起こった場合に、費用と時間を出して対応するというのは極めて難しい。そういう意味では、そこの問題がまず第一にあるというふうに思います。

森本委員 ありがとうございます。

 時間もございませんので、最後に一つ、これは宮本参考人か日置参考人が書かれておったことの中で、全総が廃止されて、将来、地域の自主性を反映した都市計画決定のためには建築家の役割がますます重要になってまいります、今前段でお話しさせていただいたこともそのことにつながるんじゃないかと思います。

 建築家の役割を再評価するときに来ておると思いますが、このあたりについて、これは国際的にもこれから日本が大事な立場に立つというふうに私は認識していますので、もう時間があと三分ぐらいしか残っておりませんので、お二方でお答えいただければ大変ありがたいと思っております。よろしくお願いします。

宮本参考人 手短にお答えいたしますが、建築士会は、たまたま、各都道府県にもちろんありますけれども、大体、地方事務所ごとに支部があります。そうしますと、その人たちが地域と日常生活の中で非常に密着しておりまして、特に、最近、まちづくりそれから景観法、そういったものが施行されました。そんなわけで、非常に地域中心型の、そういった意味で、士会の皆さんはまちづくりに積極的に取り組んでおられるというのが大きな特徴です。

 士会連合会としましても、そういった運動に内部で助成をいたしまして、どんどん、市民運動、市民参加で一緒にやってもらいたい、そういうような傾向にございまして、目下、大分いい効果を上げております。

 以上でございます。

日置参考人 やはり、これからの地域づくり、まちづくりの上で建築家が専門家として果たす役割は大きくて、まさに今おっしゃられたように、地域に密着した、地域で評価される建築士、その人が行政の計画も地域の視点でチェックする、あるいは住民の意見なんかも専門家としてチェックするというような形で、行政と住民の間に入ってあるべき地域像を確立していく、そういった形で職能を発揮して尊敬を受けていく、そういった姿が望ましいのではないかというふうに思います。

森本委員 ありがとうございました。

 先ほど日置参考人が指摘された、地域紛争は法的な中でどうにもならない悔しさのようなものを地域住民の皆さんもお持ちであるという現実を目の当たりにして、やはりこれはこれからしっかりと考えていかなければならない課題だというふうに思っておりますので、建築基準法の改正だけでなしに、この課題も私どもしっかりこれから取り組ませていただきますので。

 きょうはどうもありがとうございました。

林委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 本日は、お忙しい中当委員会のためにお時間をいただきまして、大変にありがとうございます。早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず冒頭は、久保教授に、技術者の育成という観点から御質問をいたします。

 近年の風潮として、経済性が重要視される一方で、安全性といった当然確保されるべきものが失われている、これはさまざまな分野で散見をされております。今、建築に携わる教育者というお立場から、肌で感じていらっしゃる教育現場での、特に技術者の育成、御専門が耐震ということで、日本はある意味、耐震設計、耐震構造というのは、世界広しといえどもこれほど難しいお国柄はないと私は思うわけでございますが、教育現場での問題点、あるいは懸念をされていること、これについて御教示いただければと思います。

久保参考人 議員の御質問でございますけれども、教育現場で建築構造が今何か問題を抱えているかというと、差し迫っては特にないと思います。若い学生も、次の世代を担う、大学院に進学する学生もおりますし。やはり、建築学科というのが日本のシステムとして工学部の中にございまして、特に私どもの大学は教養課程から進学という制度のときに、建築という名前でデザインに行く方は比率的には多いのは事実でございますけれども、後継者ということでは、私どもは育てておるつもりでございますし、今後、私の後の人間も必要な人間がそろっているという形でございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 続いて、やはり同じような観点から、宮本参考人と小倉参考人にお聞きをいたします。

 今回の法改正に当たって、公明党としてもさまざまなヒアリングをしてまいりました。そんな中で、私が持った認識としては、先ほど小倉参考人からも専門別の資格制度というお話がありましたけれども、構造を専門とする建築士の育成、増員をやはりしていかないと、制度を幾らつくってもそれを専門的にやる方の絶対的な人数が足りないんじゃないかというような認識を持ちました。

 そもそもの認識が違っていれば別ですけれども、そういう認識の上で、そのために今からなすべきこと、これをちょっと御専門の立場から御助言をいただきたいと思います。

宮本参考人 宮本です。

 構造専門の人が設計する人の中で非常に少ないという現実がございます。例えば、私は長野県で仕事をしているんですが、長野県に一級建築士が二名以上常時おります設計事務所が約二百社ぐらいございます。そのうち、構造計算を専門にやる事務所は十五ぐらいしかございません。そのようにして、非常に、まず少ないということは言えます。

 それから、例えば、設計事務所の二百社の中で構造の専門のエンジニアを常時所員として抱えている事務所というのは一社しかありません。そうすると、ほとんどの設計事務所は構造の事務所と、外注という言葉は余りよくないんですけれども、コラボレートして、協力し合ってやっていく、そういう実態にあります。

 ですから、今、御質問いただきましたとおり、私ども建築士会としましては、やはり、建築士のいわば素養として、とにかく、最初から構造は構造、意匠は意匠と分けるのではなくて、まず素養として構造も勉強せにゃいかぬ、意匠も勉強せにゃいかぬというわけで、ある程度、基礎的素養というものが今どうも不足しているのではないか。そういうところに力を入れて、やはり、CPDといいますか、継続能力開発とかそういったことをもっともっと、とにかく積極的に、自主的にやってもらうように考えております。

 資格でただぴしゃっと決めるのは、なかなか、これは問題がまた出ると思いますが、一つは、建築基準法で言う構造の、例えばルート二とかルート三という相当高度なものがありますが、そういったものは建築士の資格を持っていてもさらにそういった研修をして認定をしてもらう、そういう人でないとそういう仕事はできないというふうにこれはやるべきではないか。これはすぐ手をつけられる問題だと思って、そんなふうに心がけております。

 以上でございます。

小倉参考人 構造設計者の育成、これは大学レベル、日本建築学会、学会レベルでも、実は非常に多くの先生方とそれから学生がございます。それから、特に日本の構造というのは世界的に見ても非常に充実したものでございまして、それがなぜ逆に構造事務所の数が減ってしまうかというのは、テーマとしては非常におもしろいテーマですが、それを開設し成功していく成り立たない一つの条件があるわけで、これは設計料の問題だというふうに思います。

 特にこの問題につきましては、姉歯元建築士がどのぐらいの設計料を一件当たりもらっていたかというような状況と彼の生活のレベルを考えていただくと大体類推できると思いますけれども、そういうような健全な技術者が成り立ちにくい条件はやはり設計料でございまして、これは元請と言われる設計事務所のもらうフィーが少ないものですから、それに対して構造のフィーというのは、大体一五%前後になると思いますけれども、非常にわずかなものになってしまう。

 これも、我々がいつも直面している、設計者を入札で選ぶというような法律があるというところも直接の大きな原因でございまして、我々としてもぜひ健全な構造事務所がもっと育ってほしいと思いますし、我々が元請になったときにもうちょっと払いたいという気持ちは十分ございます。そういう点も、実は会計法に起因する問題としてぜひ議論していただければと思っております。

伊藤(渉)委員 今の御質問、さらに小倉参考人にお聞きしたいと思いますけれども、今のお話で、もう一回確認ですが、設計コスト、トータル、合計としての設計コストは大体いいけれども、その中で、例えば意匠の方に行く設計料と構造の方に行く設計料の、その分配に問題があるのか。

小倉参考人 分配は、大体工事費の割合によってなされるのが通常でございますから、全体の工事費の割合の設計料の割合で大体どこでも決められていると思います。

 ただ、パイ全体が小さいものですから、全体の設計料が小さいものですから、それを割っていくわけで、それぞれ設備とか構造とか、我々も含めて、もらう額というのは非常にわずかで、それがやはり、特に構造のような専門化する事務所を構えるということが、そのわずかな設計料ではなかなか難しくなっているというのが現実だと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 続いて、設計施工のあり方については先ほど来御質問がありました。現実論としては、なかなか完全に分離するのは難しいというような皆様の御意見であったと理解をいたしました。

 その上で、建築主、設計者、施工者、この責任の明確化という観点からお伺いをいたします。

 これは弁護士の日置先生にお伺いいたしたいと思いますけれども、今回の事件をきっかけにこの法改正は起こっております。しかし、大多数のこういった建築に携わる方々は、当然に、法を犯して利益を追求することなど今もって考えられない、健全な建築に携わる方が大多数だと私は思っております。

 ただ、現実、こうしてこのような問題が発生してしまった以上、さまざまな防止措置を施さなければならないのは当然でございます。その意味で、建築主、設計者、施工者の責任を明確にする必要があると思いますし、そのためには、それぞれの立場での結果責任を求めなければならないと考えております。

 今回の法改正では、建築士に対する罰則強化というのが主に盛り込まれておりますけれども、建築主あるいは施工者に対する罰則、これは、今までいろいろな訴訟を見られてきて、整っているかどうかというところについて御意見をお聞かせください。

日置参考人 先ほどもお話ししましたが、建築主あるいは施工者に関して言いますと、違法な建築基準法違反があるという設計だということを知っていたかいなかったか、あるいは知る機会があったかという点が非常に大きいと思います。建築主と設計者が共謀して基準法を無視したような設計を行った、そういうものを施主の方も望んだ、そういうケースに関しては、当然、建築主に関しても行政上あるいは刑事上の責任を追及するということはあっていいかというふうに思います。

 ただし、多くの場合、建築主は建築の専門家ではないです。特に個人住宅においてはそうです。そういった場合に、どこまで基準法違反、あるいは、そういうものを認識しているのか、設計者が説明しているのかというところの問題をきっちりと判断する必要があろうかと思います。それを説明されないで、結果的に基準法違反があったからということで処罰されるということはおかしいと思います。ただ、結果的に、行政上、是正とかの責任を負わされるということは一面やむを得ないのかなというふうに思います。

 それから、施工者についてですと、施工者の側はある程度建築的な知識がありますから、明確な故意による違法行為あるいは明確なミスというようなものについては、専門家として気づく機会があるのではないかということで、建築主よりは、ある意味厳しい責任が問われる場合が広がるかというふうに思います。

 あくまでも、認識していたかどうか、認識することができたかどうかという点をきっちり考えていくことが必要かなというふうに思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 では、フェールセーフという言葉がありますけれども、そういった観点からお伺いをします。

 これも党内でさまざま議論していく中で、完全に故意的に今回のような事件が発生すると、買い主である一般の住人等では到底見破ることができないと思います。そうすると、やはり最後のとりではある意味、チェック機関、ここにかかってくるのかな。フェールセーフという考え方は、御存じのとおり、万が一失敗があっても安全側に傾くようにしておく、そういう考え方でございます。

 今回の法改正では、公正中立な第三者機関によって建築確認段階のチェック機能を設置すると考えていますけれども、実質的なチェック機能を向上するためには、やはりヒューマンエラーの低減ですとかダブルチェックの導入ですとか、実際の設計実務を適宜経験するために、第三者機関と設計会社あるいは建築主等との人事交流というか、本当の現場をやはり理解していくという努力も必要だと思うんですけれども、このチェック機能の向上のために今後とるべき方法について、これは済みません、宮本参考人と小倉参考人にお伺いをしたいと思います。

宮本参考人 宮本です。

 私は、今御質問いただきましたとおりでございまして、チェック機能を例えば何段階かやりますと、問題は、例えば確認のところで一応完璧にピアチェックされて、それが満点であったとしても、今度は工事が始まりました場合に、現場監理というのが非常に大事だと思うんです。

 私どもは、現場というのは、大体一週間に最低一回ぐらい、現場で設計者が、現場の状況の工程の検査あるいは材料の使われ方の検査、あるいは仕様書どおりにやっているかというようなことを大体一週間に一遍ぐらいやらなければ、実際に工事はどんどん進んじゃいますから、完璧に確認できません。

 ところが、現状は恐らく、そういった一週間に一度の、例えば私どもはそれを定例監理とかと呼んでいますけれども、そういった監理業務を十分に設計者側もやらなくちゃ、幾ら検査検査で検査にお願いしても現場はうまくいかないと思うんですね。

 ですから、私どもは、今度の教訓として一番大事なものは、現場の監理、それを一週間に最低一回は監理するんだ、それから、中間でいろいろな工程監理を、極端に言えば毎日やってもいいわけですから、そこまできめ細かくやらなければ、実際に完全なものはできないのではないか、そんなふうに考えております。

 以上です。

小倉参考人 フェールセーフということに対して、チェック機関のレベルの向上ということはとても必要なことだと思います。特にコンピューターによる計算が導入されてから、本来は、構造設計、構造デザインということの中に構造計算があったわけですけれども、コンピューターソフトが発達するにつれて、だんだん構造設計、大きな物の考え方から詰めていくというよりは、非常に容易に情報、データをインプットしてアウトプットが出てくるというような、全体を把握する力をかなりの設計者あるいはチェック機関の方々がなくされているとすれば、それはやはり、十分構造の設計を経験した人がそういうチェック機関に入っていくべきではないかというふうに思います。

 チェックというのは、いろいろ建築の中では行われているわけですけれども、我が国で、設計契約の中で、公的機関によるチェック以外にも我々としてはしておりますが、他の国、特にほかの国と比べてみると、銀行のローンの貸し付けのときのチェック、これが完全に担保物件になり得るかどうかというようなチェックとか、あるいは、保険に入るときに、これは保険の対象になるかどうかというときのチェック、ここら辺が欠けているように思いまして、それは消費者保護の視点からも、いろいろな分野からのチェックが建築になされるべきではないかと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 では最後に、保険制度の構築について日置参考人にお伺いをします。

 今回の法改正では、保険への加入の有無など、瑕疵担保責任の履行に関する情報の開示、これを義務づけることとしております。さらに進んで、保険への加入など、瑕疵担保責任の履行確保措置を義務づけることについては、被災者救済に必要な保険金の支払いが安定的に確保されるかどうか、あるいは、故意、重過失によって瑕疵が生じた場合の取り扱いをどうするのか等々、多くの課題があって引き続き検討という現状でございます。

 では、この保険制度が確立をできると仮定をして、だれが保険に加入すべきなのか、建築主、設計者、施工者、それぞれがそれぞれの成果物について責任を持つために、おのおのが保険に加入すべきなのか、この加入者の設定について参考までに御意見をお聞かせください。

日置参考人 消費者の立場からいえば、基本的には、購入あるいは請負でやった場合の瑕疵担保ということで、過失責任等の有無に関係なく、瑕疵があれば保険金が支払われれば、それで救済はできるというふうに思います。あとは、そのときに、今度は保険会社が、設計ミスがあったような場合に、設計者に求償するか。そうすると、設計者が自分の負担で負担するのか、さらに自分で保険を掛けて対応するのかといった、いわば建てて供給する側の内部負担の問題に実質的にはなるんじゃないかと思います。

 そういう意味では、出口である瑕疵担保のところがきっちりされれば、消費者の救済としては原則的にはいいのではないか。ただし、途中で増改築の場合だとか、それにおさまらないような事例というのがあるので、やはり建築家の賠償責任というのも必要な側面は残るのではないかというふうに思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、きょういただいた貴重な御意見を参考にして、本当に現場で起こっていることをしっかり把握して、本当に実際に物をつくる方々の役に立つ制度、そういったものをつくり上げていきたいと改めて決意を申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は日本共産党の穀田恵二です。

 きょうは、参考人の皆様方は、貴重な御意見を本当にありがとうございます。私も質問いたします。座らせていただきます。

 まず、日置参考人にお聞きします。

 私は、この一連の耐震強度偽装事件の要因また背景に規制緩和があると考えています。そこで、私どもが資料としていただいた大阪弁護士会の言を少し参考にしたいと思うんです。

 これでは、「チェックする者がチェックを受ける者に雇われるシステムでは公正なチェックは期待できない。建築確認検査業務を全くの自由競争に委ねてしまえば、必然的に市場原理が導入され、「安く早く緩く通す」業者が生き残ることとなり、その公正中立性は瓦解することになる。したがって、真の民間開放は、民間の人材を活用しつつも、市場原理を排除する制度として再構築されるべきである。」このように言っております。

 私どもは、共産党として、建築基準法の改正に当たっての提言を発表していまして、少なくとも建築確認については非営利の法人とし、検査業務は地方自治体からの委託によって行うという考え方を提案しています。この点についての御意見をお伺いしたいというのが一点。

 もう一点。参考人は先ほど、最初の御説明の中に、政府の規制緩和の問題、「長期的視点から対応すべき都市計画や建築の問題を、経済に対する規制の問題ととらえ規制緩和・民営化・自由競争の流れに安易に乗せてきた政策の存在を指摘すべきだと思います。」こういうふうに陳述の中での文書として提案されています。私もそうだと思うんです。

 問題は、政府の規制緩和がそれを助長し、そしてそれが各分野における、建築業界ですね、その中でのあしきコストダウンにつながって、安全がないがしろにされるという事態を生んだのではないか、この二つの点についての御意見をお伺いしたいと思います。

日置参考人 大阪弁護士会の方からも提案されていますし、私も述べたとおりですが、やはりお金ですね。民間企業の場合、よって立つ収入源と、そちらのものに対するチェックをするというのは相矛盾するところがあります。

 これは公認会計士等の問題でもやはり今回問題になっていますが、依頼される人からのお金でその人の問題点をチェックして、場合によっては許可を出さないという判断ができるか。法律上は、それは第三者としてやる、できるんですけれども、やはり会社としての経営という視点を考えると、経済的には難しいということがあります。これをやはり経済的に分離するためには、直接申請者から確認業務に当たる者はお金をもらうという形ではなくて、一種、何らかの形でクッションを置く、それはおっしゃるようなNPO的なものを設立するというような場合もあるでしょうし、幾つかの自治体で一部事務組合的なものをつくって、そこがやるとか、方法は幾らでもあると思うんですけれども、やはり経済的な依存関係を一たん分離するということが必要ではないかというふうに思います。

 それから、規制緩和ですけれども、私は全部民営化とか自由競争がいけないというふうに思っているわけではございません。ただ、物によって、やはり公的なコントロールが非常に重要な部分というのはあると思います。だから、民営化あるいは自由化をするに当たっては、これまで公共が担ってきた問題をそういうところに権限を与えるというときには、その弊害が出ないようなチェックシステムだとか、それを十分考えていく必要があろうかと思います。

 それから、それとともに、やってみないと率直に言ってうまくいくかどうかわからないというようなものもあります。それは、やってみる上で、問題が起こればなるべく早期に兆しを見つけて対応していく、そういう姿勢が必要だろうと思います。

 ちなみに、地下室マンションの問題、ずっと、立法後指摘されていて、やはり条例等で対応できるまで十年もかかっているんですね。その間につくられた建築物というのは一種の既存不適格という形で何十年も残っていくわけです。まさに、一過性の商品じゃなくて、この問題というのは長く社会に影響を残すということを考えると、慎重な対応とともに、問題が発覚したときには速やかに対応するということが重要かと思います。

穀田委員 ありがとうございました。

 事後チェック体制の強化というのは、当然、緩和の際には必要だという点は私も同感です。

 次に、小倉参考人にお聞きします。

 先ほど、まちづくりという観点を強調されました。私も同感です。同時に、それとの関係で、集団規定に関する相関関係を少しお話しいただければと思うんですが、短い時間では無理かと思いますが、そこで、私は、建築行為というのは周辺環境に大きく影響するわけですから、確認過程に地域住民が参加できる方向に改善すべきではないのか、そして、特に住民の多くの目が当該建築計画の適法性を監視する、こういうふうなことなど、とりわけ景観法などとの関係では望ましいと考えます。そういう意味で、国際的な例も含めてお話しいただければ、短時間で本当に申しわけないんですが、ありがたいんですが。

小倉参考人 建物は個人の資産でございますけれども、周辺の環境もその周辺に住む人たちの資産でございます。そういう意味で、景観を守るということは資産を守るということで、これは多くの国でそういう姿勢は持たれています。日本では、それぞれの建築はすばらしいけれども、町の景観、それが一体となったときの町の醜さ、これが多くの人々から指摘されているところです。

 一つの例を出しますと、オーストラリア、これも非常に景観を大切にしている国でございますけれども、この国で住宅の確認申請を出すときに建築家がまずやるべきことは周辺住民への説得でございます。周辺住民が自分たちと同じようなクオリティーを保つような建物だと認めてくれたときに初めて同意が出されまして、その同意が出された同意書を持って行政に行くと、初めて個別規定、向こうではテクニカルチェックと呼ばれていますが、構造とか基準に合っているかどうかということを審査される。

 そういう、やはり第一番になすべきことは、私は、それぞれの人たちの財産を守るという意味で、建築の枠の外の、周辺の環境までを含めた資産価値というのを認める方向に行くべきではないかというふうに思っております。

穀田委員 ありがとうございます。

 それでは次に、建築士の問題について宮本参考人にお聞きします。

 建築設計者の独立性が重要であることは、戦前からも含めて、一九一七年の日本建築士会が定めた徳義規約にも書かれています。そこには、建築士は、依頼者の意志にあらざる報酬を受くることを得ず、さらには、材料に関する営業を営むことを得ず、また、建設請負業を営むことを得ず、また、請負業者の使用人たることを得ず、そして、依頼者以外の利害関係を有する第三者または請負業者より手数料または物質上の報酬を受くることを得ず、こういうふうに気高く訴えています。要するに、基本的に設計依頼者の利益を第一とするということが職能の中心課題であったということは見てとれます。

 ところが、今日に至るまでも法的に確立し得なかったのはなぜなのかということについて、一点お聞きしたいと思います。

宮本参考人 宮本です。

 建築士の職責と申しますか、その職責については、私ども内部でも倫理規定等をつくりまして、絶えず制度委員会でその問題を徹底させるようにやっておりますが、基本的に、建築士の立場というのは施主、要するに発注者から受け身なんですね。その受け身ということをただストレートに受け身ということで片づけないで、社会的責任というのは非常に大きいわけですから、そういう意味で、自分たちの職務というのは絶えず市民の皆さんとか社会に対して非常に大きな影響力を与えるんだというようなことの、私ども、職能教育みたいなことを自主的にやっております。

 この問題は、このような事件が起きて顕著になりましたけれども、まだまだ私どもはやらなくちゃいけない、徹底しなければいけないと思いまして、この間、この問題が起きましてから、全建築士十一万人対象にアンケートをやりまして、最近ようやくそのアンケートが出てまいりました。回収率も非常に高くて、そのアンケートによりますと、やはり建築士の立場は弱いんだけれども、弱いというただ受け身だけれども、受け身だからといってそのまま言うなりになってはいけないという関係を、もう一度職能倫理に照らして、社会にうそをつかないように、自分にうそをつかずにやろうではないかというようなことを今、全会員とそれを話し合っております。

 恐らく、大分こういった倫理規定が徹底してくれば、やはり必ず効果はあると思うんですけれども、ただ、先ほどからちょっとありましたように、できるだけ士会に入ってもらって、要するにその入っていない人が非常に大勢いるものですから、できるだけ士会に入って、当然入るべきではないかということで、これからもぜひ進めていきたいと思いますし、御指導いただければと思っておりますが。

穀田委員 ありがとうございます。倫理性の問題についての新たな探求をお互いにしたいと思っています。

 最後に久保参考人にお聞きします。

 中間報告において、指定確認検査機関の公正中立性を確保するために、確認検査に利害がある設計、施工、不動産取引等の関係者の出資割合等が高くならないよう要件を強化する必要があると指摘されています。

 一方、緊急調査委員会の報告を見ますと、民間機関は建築主からの圧力を受けやすい立場にあることにかんがみての、そういう指摘が、制度の考え方を少し変える必要があるということで、本当の意味でどうしたら中立性を確保できるかという問題については、民間機関が建築主の圧力を受けやすい立場にある、制度それ自身についての問題点を指摘する、いわば緊急調査委員会の中間報告もありますが、その点についての御意見を最後にお伺いしたいと思います。

久保参考人 今の議員に対してのお答えでございますけれども、中間報告の方は、今お読みいただいたように、機関としての中立性を保つために、参加員の資格制度だとか、それから人数の制限をしてございます。

 ではなぜゼロという話かという点でお答えいたしますと、技術者としてのある程度の数を、やはり現状の実効性ということを考えたときに、実効性を図るために、今民間機関で活躍されている人材を利用しようと。ただ、それが数として過半にならないとかといったような条件はつけました。

 それと、やはり少し、私どもはまだ、建築家のプロフェッショナルとしての倫理性だとか、それから今後期待される継続教育で自己研さんを積むといったようなことに期待をしておりまして、中間報告では、今お読みいただいたようなことを出したということでございます。

穀田委員 私、久保参考人に反論するというんではなくて、今日の段階で、当時、私ども、九八年の段階でも、その出資割合を高くする低くするだけではだめなんじゃないか、そういう影響力が、市場原理で動く者に対して、そこを断ち切ることなしではだめなんじゃないかという指摘をしたということ、当初からありましたので、そこだけ述べて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 大変お疲れのところ恐縮ですが、私からも質問させていただきたいと思います。座らせていただきます。

 最初に久保先生に御質問させていただきたいと思うんですが、今回の構造計算偽装問題というのは、大臣認定のプログラム、これを悪用して行われてきたということで、先ほど三点挙げられましたけれども、これを偽装できないように改善しようということであったと思うんです。

 問題は、八年間にわたって、百七プログラムがあるそうなんです、百六ですか、百六か七、プログラムがあるんですが、この八年間に、このプログラムについて検証したり、これは悪用されないのかとか、きちっと点検をしたりということが実はやられてこなかったんじゃないかという思いがあるんですよ。

 そういう意味から考えると、改めてこの全プログラムについて点検をし、検証して、しっかりとセキュリティーを確保するということが必要じゃないかと思うんですが、先ほどおっしゃられたプログラムの見直し、もう少し具体的にお聞かせいただきたいと思います。

久保参考人 今の日森委員の御質問に対してのお答えでございますけれども、この八年間で私どもの手近にあるIT技術というのもひどく進歩したのも事実でございます。以前は、構造計算書がある程度の紙媒体、まあ現状も紙媒体でございますけれども、その形式であったのが、今、ITの技術、パソコンの技術を使えば紙媒体も書きかえられるという、これは技術的には可能だと言われております。

 今回の中間答申も、そのプログラムの問題とともに、設計行為としての悪意として、とんでもない数字が入らないということに対するチェックとともに、いわゆるプログラムとしてのセキュリティーを随分強調して、その内容の見直しということを報告事項として挙げてございます。

 今後の問題としては、今、電子認証の世の中、ぜひそういった方向でということで、これは早急ではなくて次の問題として、中間報告の後段の方でございますけれども、電子認証システムの可能性を探ると。ただ、これは、今回、やはり、私どもとしては、早急に対応すべき事項ということではまだ電子認証システムまでは提案できなかったという現状でございます。

日森委員 続いて、久保先生以下それぞれの参考人の方々にお聞きをしたいと思うんですが、共通して、中間検査、これをきっちり義務づけよう、これが非常に大事だという主張があったと思うんです。

 ただ、報告を見ていると、中間検査のあり方について余り具体的に示されていないということがあるんですね。今でいうと、一階部分の配筋がどうかとか、コンクリートの打設がどうであったかということだけ見て、いわば終わりという格好になっていると思うんです。この間の偽装を見ていると、どうも上の階に行っても、ちょっと僕は専門家じゃないんであれなんですが、これはちょっとひどい話になっているということがあったわけですね。

 そうすると、中間検査というのは、特に高層の建物なんかの場合、これは一回で本当に済むんでしょうかという思いがあるんですよ。配筋あるいはコンクリート打設、極端な言い方をすると、各階ごとに点検しないと、実は手抜きがあるのかないのかというのはわからないじゃないかという思いがあるんです。

 この中間検査のあり方について久保先生から、久保先生は三点目で挙げられましたので、どんなようにお考えなのか。それから、現場で頑張っていらっしゃるということはありませんけれども、それぞれの、宮本先生、小倉先生、日置先生、簡単で結構ですから、ちょっと御意見をお聞かせいただきたいと思います。

久保参考人 中間検査のあり方そのものは、いわゆる報告の中では具体的な提案はございません。

 こちらからの意見陳述の中にもございましたように、設計監理ということで、いわゆる監理業務のあり方で、やはりこれは職能団体が今後社会に姿勢を示す事項ではないかと思います。

宮本参考人 宮本です。

 やはり今御質問いただきましたとおり、例えば躯体の検査は、各階ごとに配筋検査等をやらなければ、これは正確にはできません。ただし、そういったことは、設計監理者がやる義務、それをやった上で、中間検査のある時期にそういったものを全部また照合しまして、資料を出させまして、それで一応やっていく、そういう積み重ねは絶対必要だと思っております。

 ですから、現場は二度検査すればいいとかそういうことでは成り立たないと思っています。

小倉参考人 おっしゃられたように、検査をするポイントは限りなくございます。一方、我々設計監理者はすべてのプロセスで監理をしていまして、それに対する写真あるいは検査の状況を残す資料もございます。

 したがいまして、そのうちの幾つかを抜き打ちにチェックしていただくということも必要かと思いますが、基本的には、その組み合わせとして、我々がやっている、業務としてしている監理を見ていただくということがよろしいかと思います。

日置参考人 私も、今、小倉参考人が言われたことと大体同じだと考えています。

 基本的には、フロアごとに、コンクリートを打ってしまうとわからなくなってしまうようなものについてはチェックをする必要があるんだと思います。ただ、それを行政あるいは確認機関の第三者が全部現場に赴いて目でチェックするかというと、そこまでやるわけにはいかないということで、施工者の記録、それから監理者のチェックとその記録、それらの記録も踏まえて、検査を行政機関、第三者機関がするという組み合わせでやる。もちろん、そこに、抜き打ち等も踏まえて、心理的にもその過程の記録等をごまかせないような工夫をするといったことが重要かというふうに思います。

日森委員 それでは、宮本先生にお聞きをしたいと思うんですが、連合会の提言で、元請、下請の適正な業務のあり方、これを含めて、設計、工事監理等の業務の不適正な行為の抑止とおのおのの責任のあり方を明確にすべきだというふうにおっしゃっていました。

 実際、ここの重層的といいますか、この構造が実は今回の偽装を生んでしまった大きな原因の一つだというふうに思っているんですが、実際、元請、下請の関係とか、設計、工事監理の関係というのは、具体的に今先生のところではどんな実態になっているのか、それをお聞かせいただきたいのと、どう改善をされようとしているのかということについて御意見を伺いたいと思っています。

宮本参考人 宮本です。

 元請、下請の関係は、例えば今度の事件なんかを見ますと、施工会社が元請で、設計事務所が下請というような関係というのは、非常に私はいびつといいますか、まずい、もうそれ自体が間違いだと思うんですね。

 やはり、元請というのは、クライアントから、建築主からじかに仕事をそこでお互いに契約するということは、設計者だと思うんです。それは設計事務所ですね、普通。その設計事務所が元請になるのが最初の話、始まりだと思うんですね。それから、今度は、その設計図によって施工者が決まっていくという段階になります。公共建築の場合、みんなそうやっているわけですけれども、今度の事件なんかのマンション事件なんかを見ますと、全く逆な関係なんですね。

 ですから、我々は、建築士会としては、やはり、例えば施工会社が元請になった場合あるいは設計事務所が下請的になる場合は、これはないことはないと思うんですけれども、本来は少ないと思うんです。

 しかし、地方などを見ますと、私、地方にずっとおりますから、ずっと長い間見ていますと、施工会社が元請になりましても、設計部を抱えている施工会社は非常に少ないんですね。まず皆無と言っていいぐらい、ほとんど少ないです。そうしますと、そういう施工会社は元請なんですけれども、設計事務所を下請に決めるわけですね。そうすると、そこの設計事務所は余り主体性がなくなってくるんですね。その主体性がないというのは、クライアントからじかに、いわば細かな打ち合わせをする機会が少ないですから、そこに非常に無責任的な状況が今までもあるわけですね。これがいろいろな疑惑を生む原因にもなります。また、逆に言いますと、クライアントに対する不誠実な行為にもなるわけですね。

 ですから、そういうことのないように、そういう関係になっても設計事務所というのは、やはり、組織としては、下請であっても、独立した一つの設計者の矜持、プライドと申しますか、職能といいますか、それを失ってはいけないということを士会ではよく言っております。しかし、本来は、元請というのは設計者がやるべきだと思っております。

 以上です。

日森委員 小倉先生にお伺いしたいんですが、先ほど来、設計入札制度、これがやはり問題じゃないかという御指摘をされていました。確かに、これはダンピングになるのかという思いもありますし、一方で、いや、そうではない、先ほどおっしゃっていた、例えば構造設計者の要するに設計料の安さみたいなことも問題にされていましたよね。以前、例えば、士会とか等々で、設計料はこれぐらいにしますというふうに決めたときに、公取からかなり問題があったりして、だんだん改善をされて、今またちょっともとに戻ったかなという話もあるんですが、ある意味では、そういう保障もきちんとしないと改善していかないということもあると思うんです。

 そこで、小倉先生がずっと主張されていた設計入札制度、これはどんな弊害を具体的に今まで生んできたのか、これをちょっと教えていただきたいと思うんです。

小倉参考人 設計入札制度につきましては、新聞紙上でもよく出ておりますダンピングという問題がまず最初に当たります。本来ならば数千万円はかかる設計を数千円で受注する。特に、基本設計だけの入札があったときにはすさまじいものがございまして、それは、その後実施設計をもらえる、そういう前提で特命でもらえるということでダンピングをするわけですけれども、そういう自由な競争によって、設計の質を守るということを忘れさせる。

 その裏に何があるかといいますと、実施設計でも、そんなに、四分の一、五分の一の設計料で設計ができるはずがありません。また、四分の一のワークで設計ができるはずがないですから、何らかの方法でそれを補う。多くのときに言われていますのが、施工会社との癒着の問題で、施工会社から助けを求める、そのかわり、仕事は、そのAという施工会社だとAの施工会社ですよ、いいですねというようなことで癒着が行われて仕事がなされていくという状態が、本当にいい建築をつくれるプロセスであるか。

 我々もこの問題については非常に強く危機感を持っておりますが、入札をしなければならない、これは、入札は会計法で決まっているからですというふうに皆さんおっしゃられます。しかし、会計法が決められたときは、明治時代でございますから、官庁の建築が外に発注されるということはありませんでした。ほとんどが物品購入のために会計法がつくられていて、今我々の設計料の入札というのは、この物品購入の欄を設計に当てはめて、それで設計者を選ぶということでやっておるわけですから、ソフトを軽視するということも非常に甚だしいわけで、もちろん工事に関しては、設計図がありますから、設計図に基づいて入札というのはあるんですが、設計というのは、何にもないだけに、知恵を出すということに対しての入札で、どなたが、自分の家で安い設計料を、この人の設計料より安いからこの人に頼みましょうよということは絶対ないはずなんですが、これが公共工事になりますと、会計法を守るということだけでこういう形になってしまうというのは、建築文化をつくる上で非常に憂うべき状態だと思っております。

日森委員 時間になりました。ちょっと日置先生に建築確認制度、確認ではなくて許可だという御主張があって、私もまさにそうだという思いがあるんですが、ちょっと時間がございませんので、これまた後でお聞きをする機会があったらと思います。

 どうもありがとうございました。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、当委員会にお越しいただきまして、また大変貴重な意見を賜りまして、本当にありがとうございます。私も、数点でございますけれども、質問させていただきたいと思います。座って質問させていただきます。

 まず、再三、久保参考人からはいろいろな御意見を賜っているんですけれども、久保参考人は、社会資本整備審議会の建築分科会の委員でいらっしゃる。基本制度部会に参加して議論をされておりましたが、この審議会の中間報告、これをどのように評価されているのか。特に、個人的に満足をされていない部分、それから盛り込みたかったんだというところ、それから異なっているんだ、これはもう異を唱えたいんだというところがあれば、異なる内容にもう少ししたかったんだけれども、例えば、これを実現したいとか、したかったんだとか、そういうことがございましたら、お聞かせいただければなと思います。

久保参考人 私、基本制度部会の中で、構造計算プロジェクトチームの座長もやりまして、座長としては、この方針をまとめたものと思います。基本制度部会、これは、国土交通大臣から比較的短期間にということで、二月に答申ということで、やや時間的には非常に迫られたというのか、短い時間でございました。

 今糸川議員の御指摘に、何が不足で何が私と見解が違うかというと、そうですね、かなりのことを盛り込んだと思います。早急にやるべき話と後に残す話ということで、まずは問題点の序列をつけたつもりでございますし、やや残された問題というのは、やはり確認制度であったかと思います、これは法的な確認制度であったかと思います。

 以上でよろしゅうございますでしょうか。

糸川委員 はい、わかりました。ありがとうございます。

 ではもう一問、久保参考人にお尋ねしたいんですけれども、今回の法改正では、建築確認業務のうち、構造計算書の適合判定というものは専門機関が行う仕組みにしようとしているわけでございます。これは、どのような機関であったら、これが役割としてしっかりと果たせるのか。それからまた、この法案では、都道府県の知事が、この機関を指定して、その指定機関に判定業務を行わせる、こういう仕組みになっておるわけでございますが、現実的に実行していける、そういうお考えなのか。例えば、量ですとか質ですとか、そういうものがともに機能していくということが現実的に可能なのかということの御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

久保参考人 具体的にどんな機関かというと、これは、建築の中でも耐震診断と耐震補強ということも私やっておりまして、その制度でいえば、多分、今全国的に耐震判定委員会と称する専門家集団が構成されていると思います。ですから、実効的には、何をするかは、これは大臣が告示の中で多分お定めになることだと思いますけれども、実効性としてはそういった機関はあり得る。それから、構造技術者協会といったような職能団体も、そういった協力も得られるということで、実効性は私あるというふうに判断しております。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、続きまして、宮本参考人にお尋ねしたいんですが、今回の民主党案では、この法案の提案理由説明におきまして、「構造設計士を含む、一級建築士の多くの方々が、ゼネコンや建設会社、デベロッパー等の下請的、隷属的立場に置かれています。」こういうふうに述べられて、弱い立場ではコストダウンへの要求を突きつけられると抵抗できない、また、現場で工事監理を徹底できないなどチェック機能が果たせないというふうにしていますが、この建築士の実態は実際そのとおりなのか、それから、そうだとすれば、どのような対策を講じれば、建築士が本来の役割を十分に果たすことができるようになるというふうにお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

宮本参考人 宮本です。

 建築士の実態は、今御質問いただいたほど、例えば、建築士がゼネコン、元請とか、そういう人から言いなりになっているという、そこまではいっていないと思いますね。特殊な例はあると思います。ただ、弱い立場であることは事実なんです。そういう意味では、やはり、自分たちの襟を正すというか、自分たち自身を守るということを、この間の私どものアンケートでも大分それが強く答えに出ておりますので、そのように進んでいきたいと思っております。ですから、それほど痛めつけられてはいないのではないかと思います。

糸川委員 はい、わかりました。ありがとうございます。

 本来、今のことは小倉参考人にもお聞きしようかなと思ったんですけれども、小倉参考人に、建築家協会の会員の多くの方は、建築士事務所というものを経営されていたり、それから勤務しているというふうに思いますが、審議会の中間報告では建築士事務所の業務の適正化というものを今後の検討課題としておりまして、夏ごろまでに結論が出されるということになっております。一方、民主党提出法案では、建築士法を大幅に改正して、建築士事務所のあり方を抜本的に変えることというふうにしておるわけでございます。

 ここで、参考人は、建築士事務所の現状の問題点ですとか、それから改善の方向についてどのようにお考えなのか。また、民主党案で提案している開設者を建築士に限定すること、それから建築士法人を創設すること、建築士連合会への全員加入等の内容につきまして、実際どのように評価をされているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

小倉参考人 建築士事務所を法人化するということは、かつて建築家協会も主張したことがございました。そのときには、弁護士とか公認会計士とか、そういうようなプロフェッションを設立して建築家法というような法律を新しくつくってということでやったんですが、それはもう無理だという結論を見ています。

 今、世界的に見てみますと、そういう理想的な法人格は、もし得られればそれにこしたことはないと思いますけれども、建築士の働き方としては非常に多様なものがございまして、私は、株式会社にするとか、そういう法人格のもの以上に、やはり建築士が独立性を持って仕事ができるかどうか、そういう仕組みをつくることの方がより重要だと思っております。

 例えば、PFI等におきましても、今、建築士が設計者として取り組んで、チームの提案の評価をなされていますが、建築家のコントリビューションの評価点というのは非常に低いものがあります。したがいまして、建築の質というよりは建築のコストの方に重点が置かれているというのが現実だと思うんですが、そういう点をどういうふうにするのか。

 あるいは、施工会社の設計部が、どちらかというと親会社、これはディベロッパーであれハウスメーカーであれ同じような条件にあると思いますけれども、それの独立性を保つにはどうしたらいいか。それは、契約とか、そういうようなことで解決していかなきゃいけないと思いますけれども、日本は、比較的、設計施工で代表されるように、我が国独自のシステムを持っていますけれども、その上に、よりよい消費者保護の観点にのっとった建築士のあり方が模索されるべきじゃないかというふうに思っています。

糸川委員 ありがとうございました。

 きょう、私も時間が終了してしまいましたので、本当は日置参考人に私も質問したかったんですが、またの機会にということでお許しいただきたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。終わります。

林委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二十一分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び長妻昭君外四名提出、居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の両案審査のため、午後の参考人として、慶應義塾大学理工学部教授村上周三君、東京大学生産技術研究所教授野城智也君、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授神田順君及び社団法人日本建築構造技術者協会会長大越俊男君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、村上参考人、野城参考人、神田参考人、大越参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず村上参考人にお願いいたします。

村上参考人 御紹介いただきました慶應義塾大学の村上周三でございます。

 今回、社会資本整備審議会の建築分科会会長として中間報告の取りまとめに当たりました。また現在、日本建築学会の会長を務めております。

 今回、多くの危険な建物が設計施工されまして、国民の皆様に不安と混乱を与えて御迷惑をおかけしたことを、建築関係者の一員として大変遺憾なことだと思っております。早急に抜本的な対策を示すことができなければ、国民の皆様の不安は解消されなくて、建築界が社会の信頼を回復することはできないと考えております。

 今回の一連の事件では、幾つかの重要な問題点が明らかになりました。例えば、技術者倫理、あるいは建築基準法や建築士法にかかわる問題、あるいは被害者救済のための保険システムなどであります。これらを踏まえて対応策を早急に検討すべきであると考えております。

 対応策を考えるときには、三つの点に着目すべきであります。まず第一は、建築関係者による設計施工システム改善のための関係者の自助努力でございます。二つ目が、法制度の整備でございます。三つ目が、被害者救済制度の整備でございます。行政機関で対応策を検討するときには、二番目の法制度と三番目の被害者救済を優先的に取り扱うべきであると考えております。

 今回、これだけ多くの不祥事が発生しているのでありますから、緊急に再発防止策を示すことが強く求められておりまして、ある範囲で法令規制を強化することは避けられないことであると考えております。したがいまして、今年二月に発表されました社会資本整備審議会の建築分科会の中間報告で、法令規制の強化や厳格化が打ち出されたことは妥当なことであると考えております。なぜならば、これだけ大規模な不祥事が発生しておりまして、国民に不安と混乱を与える状況で、敏速に混乱の収拾を図るには、これらの方法が当面最も有効であると考えられるからであります。

 ただし、法令規制の強化の効果は限定的なものでありまして、これですべて十分ということにはなりません。中長期的には当然他の対策も必要となります。これに関しましては最後に述べます。

 建築分科会の中間報告を受けまして、行政機関において準備されております政府案を拝見いたしました。この中では、建築確認制度の厳格化や適正化、あるいは建築士に対する罰則強化、あるいは建築士や建築士事務所や確認検査機関や売り主に対する情報開示などが盛り込まれております。大変適切な内容であると考えております。

 ただし、今回検討されております法律改正案に含まれていない問題で、重要な課題が幾つかございます。例えば、建築士の専門分化の問題や業務環境の改善の問題、あるいは被害者救済のための売り主の責任問題などであります。今後、これらの問題に関して、さらに改善策の検討を進めていただきたいと考えております。

 最後に、二つのことを申し上げたいと思います。

 一つ目は、質のよい建築をつくるためには、法令規制の強化だけでは不十分であるという点であります。

 法令規制の強化は、質の悪い違反建築の排除には効果がございますが、よい建築をつくるためのインセンティブを与えるわけではございません。質のよい建築を普及させるためには、設計施工など建築に携わる関係者の、よい建築をつくろうという意欲に基づいた自助努力が必須でございます。そして、その自助努力が消費者にわかるような仕組みを整備することが重要でございます。そのためには、消費者が、その自助努力の結果、すなわち建築の質のよしあしを評価できるような、格付システムを含めた情報提供が必要になってまいります。

 二つ目は、技術者倫理に関することでございます。

 今回、技術者倫理の低下が問題になっておりますが、これが低下しているからという理由で、性悪説に立って法令規制を強化しますと、行政システムが複雑になりまして、行政コストや行政処理にかかる時間が増加します。これらは結果的に国民に降りかかってまいります。例えば、確認検査を強化すれば、当然手数料が増加します。それが最終的には消費者に降りかかってくる可能性が高いわけでございます。保険制度に関しましても同様の点が指摘されます。

 したがいまして、長期的目標としては、信頼性の高い技術者倫理をベースにして、簡素でかつ信頼性の高い社会システムを構築することが国民の最終的な利益に資するものであると考えております。

 なお、事務局から民主党案が送付されてきております。これについて、時間が余りございませんでしたが、さっと目を通させていただきました。大変よくできておりまして、政府案と同様の規定が多かったかと判断しております。

 その中で、一カ所、気になる点がございました。それは、株式会社形態での建築士事務所の設立を認めないという点であります。これは政府案と異なっております。これは、現行の建築設計の実務の実態からはやや離れておりまして、実現性に疑問があるのではないかと危惧している次第でございます。御検討いただければ幸いでございます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、野城参考人にお願いいたします。

野城参考人 東京大学生産技術研究所の野城でございます。

 お手元に私の名前の入りました発言要旨もございますので、それをごらんになりながらお聞きいただければと思います。

 七点ほど申し上げたいと思います。

 まず第一に申し上げたいことは、今、村上先生もおっしゃいましたけれども、健全な設計・生産システムをつくるということが、国民が今抱いていらっしゃいます不安を根本的に払拭する手段、最終目標であるということであります。いわば、レフェリーを幾らふやしても、あるいはレフェリーを厳格化しても、プレーヤー自身がよくなっていただかなければ、これは根本的な解決になりません。

 したがいまして、これを実現するためには、包括的な政策体系をつくり、実行していく必要がございまして、本日御審議されておりますこういった法令の改正というものもそういった包括的な政策の重要な一翼をなすわけでございますが、ただ、それだけでは十分でないということを当初申し上げたいと思います。

 したがいまして、法令に関しましては、これに多くの機能を期待し、内容を付加していきますと、今回このような事件が起きてしまいましたことの遠因でございます法令の複雑さというものを呼んでしまいますので、やはり法令のそれぞれの機能というものを明確にしていく必要があろうかと思います。

 第二に申し上げたいことは、構造計算という言葉がひとり歩きしておりますので多少誤解があるところでございますが、本質は、構造設計そのものの質、あるいはそれで実現される建物の質を向上させていくことが重要だということでございます。

 構造設計のプロセスでは、技術者の方々がさまざまな裁量的な判断をされます。また、その一プロセスでございます構造計算におきましても、その入力をどうしたらいいかということを含めまして、また出てきた計算結果をどう解釈したらいいかということを含めまして、さまざまな裁量的な判断をされておられます。この構造設計の質、あるいはそれででき上がってまいります建物の質というのは、こういった裁量的な判断のよしあしというもので大きく左右されてまいります。

 したがいまして、今回の改正で盛り込まれております第三者機関におきましては、こういった構造設計における技術者の判断の質のよしあしというものを検証できるようなあり方になっていくということを大いに期待するものでございますが、これは運用を誤りますと、例えば、鉄筋が何本必要だということが構造計算上出てきた、しかし実際は、計算としては正しいんですけれども、設計した建物の断面にその鉄筋を入れるのは無理であるという結果であるにもかかわらず、計算が正しいからそれは適合するというような判定をしてしまってはまた困るわけでございまして、そういったことを防いでいくためには、多分三つぐらいの条件を満たしていく必要があろうかと思います。

 まず第一には、このレフェリー側に回ります第三者機関の方々が適合性を判断するに当たりましては、相当な経験を持った人材の方がレフェリーに当たるということが必要でございます。人材の質、量を確保するということが大変大事な条件になると思います。もう一つは、今申し上げましたように、裁量的な判断のよしあしを判断するという裁量をこういった適合性を判定する方々にゆだねるということが必要かと存じます。また、三点目としては、こういったプロセスというのは大変費用がかかるプロセスでございますので、この費用が負担されるという条件を整える必要があるかと思います。

 第四に申し上げたいことは、現場の検査の精度を上げていくということでございますが、この確認制度に加えまして、任意の、住宅に関しましては住宅性能表示あるいは住宅性能保証で、技術者が現場におって何らかの検証をするということがございます。この精度を上げていくためには、それぞれの制度の趣旨は違いますし、強制、任意が違いますけれども、もし利益相反ということがなければ、これら現場に行く検証というものが連携をして精度を上げていくということも一工夫あってよろしいかと思います。

 第五に申し上げたいことは、これは今回の法令改正の範囲から超えることでございますけれども、設計契約方式のことでございます。

 御存じのように、現在、世界的にも、単に設計、施工を分離した伝統的な方式以外に、設計、施工を一体とした調達方式あるいはCM方式といった、さまざまな調達方式が使われているところでございます。

 このように、発注者から見れば建物調達方式ということになりますが、こういった契約発注方式は多様化しておりますけれども、それぞれ一長一短があるところでございまして、大事なことは、それぞれの建築のプロジェクトに応じて適切に、それぞれ特徴がございます契約発注方式を選んでいく、適用していくということが大事だろうかと思います。

 私は、今回、特に民主党の案を急いで拝見いたしましたが、その中に、設計、施工分離ということを進めていくという御趣旨の提案があったかと思いますが、これも押しなべてすべて設計、施工分離方式というものが適切だとは私は決して思いません。

 むしろ、思いますところは、設計の自立性を高めるとしますと、設計料の問題、特に建設産業に対しまして政府あるいは自治体というのは最大のクライアントでございまして、その振る舞いというのは産業全体に大きな影響を与えるところでございますけれども、一部の自治体においては、とてもこれでは設計ができないというような低廉な設計料で設計を委託する、あるいは設計の質を考えずに単なる入札をして設計者を決めているという現実がございますけれども、むしろこういった点を改善していくことが設計者の自立性を強化していく道ではないかというふうに思います。

 第六に申し上げたいことは、今回の事件というのは、さまざまな匿名性と申しましょうかブラックボックスといいましょうか、これを隠れみのにして起きてしまったということがございます。

 したがいまして、広い意味での建築をつくっていくというプロセスの透明性を高め、またトレーサビリティーを高めていくということが急務であろうかと思いますが、これにつきまして、配らせていただきました資料の後ろの方の別紙二、三に、ささやかに私どもが行っている自主的な取り組み、住宅に関する情報をお住まいの方が自主的に集めていくような仕組みでございますけれども、こういった自主的な動きというのは既に始まっております。

 私は、これは、確かにこういった情報の開示ということを法的な強制力をもってするということも一案かと思いますけれども、若干気になりますのは、法令で決めますと、逆に、これだけ表示すればいいだろうといったようなことをお考えの方がいらっしゃると思います。むしろ、国民にとって望ましいことは、供給者が、今回の事件の状況を踏まえまして、情報を積極的に開示していく競争をしていく、できるだけ多くの情報を開示していくような競争が起きるような環境をつくっていくということが望ましいのではないかと思います。

 もう一つ最後に申し上げたいことは、例えば、現在議論に上っております各種保険制度の充実、あるいは非遡及型の、ノンリコースの住宅ローンの創設、あるいは職能団体自身によります技術倫理の強化、これも先ほど申し上げました包括的な政策の一翼を担うものであるというふうに考えるわけでございます。

 ただ、これは、私の方のメモに今申し上げたことを実施するに当たってのさまざまな隘路を書かせていただきましたが、省庁の枠を超えている、あるいは既存の産業の枠を超えた試みでございまして、これを急速に制度をつくるというよりも、むしろ優良な先行事例を立ち上げていくということが必要でございますし、今申し上げましたように、省庁の枠、産業の枠を超えるという意味では、ぜひ国会議員の先生方のリーダーシップ、御支援をいただきたいというふうに思う次第でございます。

 以上で終わらせていただきます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、神田参考人にお願いいたします。

神田参考人 御指名賜りました神田でございます。

 東京大学には一九八〇年に赴任いたしまして、建築の構造を専門としております。大学の卒業の後八年ほどゼネコンにおりまして、そこで構造設計も実務として担当したこともございます。専門のテーマは、風ですとか強風ですとか地震とかの設計荷重、構造設計の中で扱う重要な部分でございますが、それをテーマに研究しております。一九九九年に大学で創設されました新領域創成科学研究科というところに移りまして、単なる工学の枠を超えて、環境学というふうに呼んでおるんですが、構造安全といった問題をより幅広い視点から課題としてございます。

 建築基準法の諸問題に関しましては、私も、建築学会の中を含めていろいろなところで考えてきておりますけれども、二〇〇三年八月には、建築基本法制定準備会といったものを立ち上げまして、議論を繰り返しております。本日は、発言の機会をいただきましたことにお礼を申し上げます。

 資料として三点ほど提出させていただきました。

 一番目が、五月二日の毎日新聞の夕刊のコラムに書いたものでございます。その次は、岩波の月刊誌の「科学」四月号の抜き刷りでございますが、「「耐震強度」とは何か」ということで、少し大部なものですので、またお時間がございましたら御理解いただければと思っております。一番最後につけましたのは、この一月に開催いたしました建築基本法制定準備会のシンポジウムで発言いたしました内容を、社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会の中間報告、今回の政府案の内容を検討するに当たった報告と思いますけれども、それに対する意見書という形で幹事会で取りまとめましたので、つけさせていただきました。

 以上の三点でございます。

 きょうは、主に、一番目の、新聞のコラムに書いた部分を中心に意見を申し述べたいというふうに思います。

 まず、政府案についての意見でございますが、今回の法改正といたしましては、政府案それから長妻議員ら四名の案、二案いずれも、単に建築基準法にとどまらず、建築士法、建設業法、宅地建物取引業法などにも及んでおりまして、かなり膨大な内容になっておりまして、短期間にまとめられたことには敬意を表したいと思います。

 しかし、建築確認の厳格化による安全確保というような方向は、基本的には間違っているのではないかと私は思います。構造計算適合性判定機関の創設、あるいは構造耐力規定の詳細化といった事柄は、法律化することに関しては私は反対でございます。

 今必要とされております法令遵守のための施策というのは、建築基準法というような、肥大化してしまって膨大な規制が入っているわけですが、それをやはり本当に必要な規制のみに整理し、だれもが理解できて守れるような法律にすることが第一ではないかと思っております。

 今回の確認審査における見逃しといったような問題を、確認制度を多重にするという形では防げないのではないかと思います。やはり、どういう人が審査し、もちろんその前に、どういう人が設計し、どういう人が施工しというのがございますが、人の問題あるいはコストの問題だと思います。人もいない、あるいはコストもかけないということではとても問題の解決につながらないと思いますし、そのあたりの議論が必ずしも十分にされていないまま法律で制度がつくられているように私には見えます。このことは、九八年の民間審査機関導入のときにも、やや拙速な形での制度設計になってしまったのではないかというふうに思っております。

 建築士法の改正につきましても、構造技術者の実態といったものが必ずしも十分に調査されておりません。さらに、姉歯容疑者が今回の事件のきっかけになったわけですが、一つ一つの物件でどのようなことが行われたかというようなことについても、見落としだとかミスとかあるいは意図的な偽装とか、そういった事柄はやはり本人が一番よくわかるものだと思いますけれども、そういった部分について、特に、いわゆる耐震強度が〇・二から〇・九まで幅広く分布しているとか、そういったことがなぜそういうことになっているのかといったことについて明らかになっていないように思います。

 偽装とか審査ミス、あるいは計算方法の使われ方、そういった状況の把握がまだ不十分な段階で制度だけ複雑にするということになると、安全の確保にはつながらないのではないかと危惧しております。

 長妻議員らの案についての意見を申し上げます。

 三本の柱を立てて法律案が説明されておりますが、二点についてコメントしたいと思います。

 まず、設計、施工の分離でございますが、設計という業務、これはやはり独立して責任を伴う専門業務であるということ、これがシステムとしてうまく機能するということが大切ですし、施工に関しても、独立的で専門業務として、その専門性というのはやはり社会が認識すべきものだというふうには思いますが、具体的な仕組みをどのような形で進めていくかについては、これから、契約のあり方も含めて、さまざまな業態に応じた検討が必要な状況ではないかというふうに思っております。下請というような仕組みの中で自律的な判断が貫かれていないという現状は、やはり何か変えていかなきゃいけない状況だというふうに思います。

 保険制度の導入に関しましても、先ほど野城参考人の中の意見もございましたが、いろいろ多様な方法がございますので、これもやはり国民レベルでの議論が必要になるものだと思います。しかし、短期的にはといいますか、簡単な解決法は、やはり、金融制度の中でマンションや住宅の購入者の保護といったものを図るのだとすれば、ノンリコースローンといった形でのローンの制度、これが有効な方法だと思いますので、ぜひそのような議論を進めていただければと思います。

 確認制度厳格化の危険性ということで少し触れたいと思うのですが、建築基準法は、第一条にありますように、最低の基準を定めるということになっておりますが、なかなか行政の方から、これは最低だというような説明とか御報告が少ないように思います。国民の側からすると、法律に適合したら安全だというふうにどうしても思いたがってしまうというか、そういう状況があると思います。その一方で、法律に適合した形で設計し、施工されたものというのは、かなり安全なものが実際にはできているというふうには思います。しかし、安全かどうか、どの程度安全かというのは、やはりかかわった技術者の質によって決まるわけであります。

 しかし、建築基準法の中では、構造計算についての政令の規定が、技術的な知見として次々と投入されてしまっている状況がありまして、それがあたかも安全を厳格に見ることになるという幻想を抱くような状況になっているということに対しては、私は憤りすら覚えることがあります。やはり最低水準はあくまで目安でありまして、どの程度の安全性にするかというのは、建築主が責任を持って判断するものだと思います。そういった社会通念をこれからもつくるということが、今回のような事件の本質から解決していく方向ではないかと思います。

 法律で技術を縛るというようなことはやめるべきだと思います。良心的な技術者にとっては、それは足かせになってしまいます。一方、中身のよくわからない人にとっては、逆にそれが、マニュアルが整備されて、構造計算プログラムで大臣認定されるというようなことになると、とても便利なことになりますので、安全性といったものを考えることなく、計算機を使って図書をつくることができてしまいます。

 法改正をやはりこのような方向に持っていってはいけないのだと思います。耐震安全を達成するには、これからも多くの若い技術者たちの真剣な取り組みが必要だと思います。専門的な技術を互いに研さんし、責任もあるけれども創造性を持って取り組める、そういった仕組みにしていく必要があると思います。魅力を感じない形で、安い労賃で、プログラムさえ動かせば後は審査をパスしてでき上がってしまうというようなことでは、高い質の建築を期待することができないというふうに思います。

 今後の方向といたしましても、法改正に当たりまして、立法府の国会議員の先生方が、まさにこれは百年の計だという認識をお持ちいただいて、建築関連法のあり方に向けて、責任の所在を明確化するような方向も含めて、基本的なあり方の議論を進めていただければというふうに思っております。

 以上で終わらせていただきます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、大越参考人にお願いいたします。

大越参考人 ただいま紹介にあずかりました日本建築構造技術者協会会長の大越でございます。私の仕事は、構造設計の専門家でございます。

 社会が建築界に期待するものは良好な社会資産としての建築物であり、建築確認審査は本来そのための建物の品質の確保を目的としており、今般の改正案はこれをより確実なものとするために策定されるものと考えております。確認審査制度に第三者機関審査を取り入れることは一歩前進として評価できますが、単なる偽装の発見にとどまらず、良好な社会資産形成のための審査制度のためには十分な議論が必要だと考え、現実的で合理的な運用という視点から意見を述べさせていただきたいと思います。

 なお、構造設計者の専門資格の問題は、建築物の質の向上に不可欠な条件であるので、あわせての御検討を強く要望いたしております。

 最初に、まず構造計算適合性判定の対象建物に関してですが、構造設計の専門家の人数には限りがあります。長期的には、専門家を育成し、ふやす方策を検討しなければなりません。短期的には、本来の業務である構造設計を行いながら適合判定にもかかわれるような仕組みとすべきであり、判定員の人的パワーと対象建築物の数のバランスは熟考の必要があると考えております。

 例えば、今回の事件で問題となったマンションというのは建築主とユーザーが異なる建物ですので、それについては十分な審査をすべきではないかとか、今回の改正案でありますが、住宅の中間検査が三階建て以上に義務づけられております、ですからこれに合わせて対象を絞るとか、幾つかの考えがあると思います。

 それから次に、二番目ですが、適合性判定対象建物は、通常の審査、今までどおりの審査と、それからさらに第三者審査というような形でしてはどうかということを考えております。

 マニュアルなど審査体制を整備した上で、適法審査は従来の審査制度で行って、共同住宅などエンドユーザーが異なる場合等では必要な建物をさらに専門家による第三者審査を行うことが、本来の意味でダブルチェックになるのではないでしょうか。モデル化や建物の健全性の審査を専門家にゆだね、第三者機関審査の負担を軽くすることにより、判定員の人的パワーと対象建築物の数のバランスの問題の解消にもつながると考えております。

 それから次に、三番目でございますが、構造計算適合性判定員は構造設計の専門資格を要件とすべきと考えております。

 適合性判定員は、国交省令で定める要件を備える者のうちから選任するとあります。判定員は、構造実務を熟知した者で、さらに設計者と比べ能力が同等以上でないと意味がないので、構造設計者が国家資格として明快に位置づけられることが前提となりますが、専門資格の取得者の中からさらに上位の技術者を判定員として位置づけるのがよいと考えております。建築主事に一級建築士資格が必要であったことと同様に、構造計算適合性判定員は構造の専門資格を必要とすべきです。

 四番目でございます。構造計算適合性判定員の立場について意見を述べさせていただきます。

 構造計算適合性判定は指定された者によって行われますが、判定機関は適合性判定員に行わせなければならないとあります。現実的には、設計事務所の主宰者または所員の立場にある専門家が、兼業として非常勤の判定員となることが予想されます。このような場合にも判定員として活動し得るように、判定員の立場、責任が明確になっていませんと、現実問題として判定員が不足すると思われます。

 その次に、認定プログラムの件ですが、法の精神や構造技術を理解しなくても、プログラム操作だけできれば不適切な構造計算も適合と判断される状況にならないように、プログラムについては慎重な扱いが必要だと思っております。認定プログラム自体は有益です。大切なことは、構造設計者の質を上げることであり、設計者がプログラムを理解して設計を行うことです。設計内容を建築主に説明できるような真の技術者が構造設計を行うべきであり、認定プログラムも、使用者を専門資格者に限定するなど、構造設計者の質や建物の品質の向上に貢献する形で利用する必要があります。

 それから、今回改正で出ております構造計算書の証明について。

 構造設計者の専門資格を設け、確認申請時に構造設計者を明記することが重要だと考えますが、当面は、申請書の表書きに構造設計を行った建築士が記名押印すべきと考えております。建築士は構造計算の証明書を委託者に交付することとされておりますが、本来、専門資格を有する構造設計者が記名押印することが構造設計の証明となります。専門資格制度ができるまでの暫定処置であっても、構造設計を担当した建築士の記名押印とすべきです。

 それから、監理のことですが、また、適切な設計とともに、それを実現するには工事監理も必要です。現状では、一人の一級建築士の名前で監理業務は行われているため、構造体の監理が必ずしも構造設計家の関与がなく、形式的な監理となっていることがあります。構造体の監理業務に関しては構造の専門家が関与することが重要で、法律で義務づけるべきです。

 それから、私どもが今まで考えていた第三者審査についてちょっと述べさせていただきますが、従来の審査機関を充実させ、それを補完する意味で第三者の専門家による審査が行われることを提唱してまいりました。しかし、改正法案は第三者機関審査に重点が置かれている点に特徴があり、私どもが今までした主張とはちょっと異なっております。

 当協会の従来からの主張は、設計された建物の質や性能を確認する行為の方に重点が置かれ、確認申請制度とは別に建築主が自主的に行うことをイメージしておりました。医者のセカンドオピニオンをイメージしていただくと理解しやすいと思います。事件発生後、当協会に依頼された数百件の、現在二千件に及んでおりますが、構造計算の審査というのはこれに現在該当しております。

 最後になりますが、今回の計算書偽装事件で明らかになったことの一つは、構造設計者の質の問題です。構造設計者に何ら専門の資格がなく、意匠設計の後ろに隠れ、いわばだれでも設計できる状況はこの機会に改善されなければならないと考えます。事件発生後、構造設計の専門家のアドバイスを求め、多くの方々が当協会を訪れました。社会の人々も、安心して仕事を依頼できる構造専門家が明らかになることを求めています。

 審査制度の改善とともに、構造設計の専門資格制度を整備し、設計に関与した専門資格者が確認申請時の記名押印をして責任を明らかにするなど、審査制度改善と専門資格制度整備が一体となってこそ、良好な社会資本としての建築をつくり出すための効果的な制度となります。専門資格の法的な制度をあわせて実現するよう強く要望しております。

 ありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。

赤池委員 ただいま指名いただきました自由民主党の赤池誠章です。

 きょうは、村上先生、そして野城先生、神田先生、大越会長に御多用な折にお越しを賜りました。本当にありがとうございます。三十分ではございますが、座って質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、昨年初当選をさせていただいたんですが、実は、私の祖父、父方のおじいさんが、戦前、言ってみれば大工ということで、そういった仕事をしておりました。父は普通のサラリーマンになったんですが、実は、昭和三十年に、今私が生まれ育った実家は祖父と父がまさにみずからの腕でつくった、そんな住宅でございます。

 そういう面で、私にとって住宅というのは、日本の伝統的棟梁制度ではありませんけれども、設計と施工が一体となって、そこは本当に顔の見える関係、当然、信頼の中でやっておりますからとんでもないことはできない。また、昔かたぎの職人の方々は、欧米の国々ではキリスト教を信仰していますから神から与えられた天職というイメージがあるでしょうし、日本の場合は、そんなことをしたらおてんとうさまが見てるとか、また、職人の方々は本当に一つ一つの、今でも実家にはのみとかかんなとか、私はほとんどさわっておりませんからほこりをかぶっておりますが、本当に手入れが行き届いたものが祖父の時代から置いてあるというような、本当に道具を大切にするという心の中に、職人魂を込めてつくっていたのかなということを身近に感じております。

 その中で、私は、地域の活性化に取り組む中で、日本の伝統的な旅館の活性化に取り組む中で、古い旅館をリニューアルする。私は建築の専門家ではないんですが、そんなお手伝いをする中で、言ってみれば、そういった建築や今回の問題の構造に関して、まだまだ専門家とは呼べませんが、現場に携わる中で感じたことが幾つかございました。

 その第一点は、今回の昨年の姉歯さんの問題が出たときに、まさかということでございます。今回の質問に当たっても、地元を初め、私がかかわっていた建築士の方とか構造計算をなさっている方にもいろいろお伺いをさせていただきましたが、どなたも、まさかプロである構造設計、構造建築の方がそのようなことをするということ自体が全く想定外だったと。

 言ってみれば、その分野というのは、建築の中でも本当にプロ中のプロの方がやっていらっしゃる専門領域であり、本当に誇りを持って、聖域に近いような部分であり、周りの方から、もっと安全性のために、構造上難しいと設計変更を余儀なくされることはあっても、逆のことというのはほとんど考えられないし、ましてや、ぎりぎりの法的な部分としてのせめぎ合いはあるにしても、それを全く無視したような形で行われるということは考えられないということを一様に申しておりました。

 そういう面では、きょう、先生方はそれぞれ専門家として、私が今そのような感想を持ったと同じように、今回の最初の印象を、短いコメントで結構ですので、ぜひ教えていただきたいと思います。

 それでは、村上先生から一言よろしいでしょうか。

    〔委員長退席、吉田(六)委員長代理着席〕

村上参考人 お答えします。

 今先生の御指摘のとおり、我々も、最初にこの事件を聞いたときは大変ショックを受けたわけでございます。

 しかし、よく考えてみますと、建築学会等でも、例えば確認制度の問題とか建築士の資格制度とかいろいろ研究をしておりまして、過去にも、ある程度問題点があるということは薄々感じていたんではないか。ですから、これは決して一過性の偶発的な問題じゃなくて、構造的な問題だ。それは、設計、法律の制度、あるいは技能労働者を含めた建築の生産システム、そういう大変深い問題が背景にある。

 その一つは、例えば、バブル経済以降、建築市場が縮小しまして、非常にコストダウン圧力が強くなった。そういう中で、従来の建築の設計・生産システムがいろいろ変わらざるを得ない、だけれども十分変わっていない。そういうところでひずみがたまってこういう問題が起きたんだというふうに私は理解しておりまして、当初は大変びっくりしましたけれども、よく考えてみますと、前々からひずみはたまっていたんだろう、そう理解しております。

野城参考人 今、赤池先生がおっしゃいましたような、大工とコミュニティーの方々の関係というものを源とするような建築生産のあり方というのは、日本の建築生産が持っていた良質な部分だと思います。一言で言えば、チームワークといいましょうか。

 要は、設計者と施工者が密実にコミュニケーションしながら、お互いに至らざるところを補完し合っていく、そういう補完の連鎖があったわけでございますが、今回の件、こういったところに来て当事者の方がおっしゃれば、わからなかったとおっしゃるわけですけれども、私としては全く信じられない。つまり、あそこまでの状況がありますと、そのプロセスにかかわる方自身が気づいていただろうというように思います。

 そういう意味では、そういった補完の連鎖というものが、よい意味でのチームワークというものはなくなってしまったのかということに大変ショックを受けました。

神田参考人 私も、このような事態が起きるということは全く想像できませんでした。

 ただ、確認制度がなかなか破綻しているのではないかということは前からいろいろなところで書いてございましたが、それを逆手取って、意図的に荷重を落とすというようなことが現実に行われるということは想像もつきませんでした。

大越参考人 私はまさに構造設計を職業として一生を過ごしてきたわけですから、素直な感想を申し上げさせていただければ、本来、私は年間せいぜい三件から五件しか設計できておりません。そういう少ない設計に対して、私たち専門家というのは全部自分の作品を大事にしております。それで、アルバムをつくります。これは、家族に対しても、社会に対しても、私は自分でこれだけ立派な設計を持ってきたという自負を持っております。

 ですから、普通の構造設計者でしたら、これが何でプライドをなくすような事態に至ったかということに対して、やはり一様に疑問視しております。

赤池委員 ありがとうございました。

 そういう面では、大越参考人が最後の方で構造計算書の質を上げることということを強調なさっておりましたし、諸先生方も、言ってみれば、最終的な部分は法律の先にあると。いわゆる自助努力であったり、それから倫理という問題につながってくるということではないかと思いますが、その辺は最後にもう一度質問をさせていただきたいんです。

 まず、今回の政府の法案なんですが、午前中も久保先生に来ていただきましたし、午後は村上先生に来ていただいております。そういう面では、社会資本整備審議会建築分科会という形で御審議をいただいた、そういった中間答申を踏まえての法案作成という形だというふうに聞いておりますし、先ほど村上先生の方からのお話の中にも、そのような議論を踏まえて政府案に対して評価をいただいているということだと思いますが、その辺、改めて、中間報告と政府案、この取りまとめに当たっての関係と基本的な考え方を教えてください。

村上参考人 お答えします。

 今回、この一連の不祥事によりまして、大変大きな混乱が国民の中で生じております。でございますから、私の方では、とにかく緊急に抜本的な対策が必要である、これが大事であるということで、建築基準法あるいは建築士法の運用の厳格化を盛り込んだ中間報告を取りまとめました。特に注意してまとめましたのは、偽装を試みるに至った建築士にかかわる処分制度の改正や、偽装を見抜けなかった建築確認検査制度の厳格化などであります。

赤池委員 そして、野城先生は、いわゆる大臣の私的諮問機関の構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会という形で御参画をいただいたということで、中間報告、そして四月の最終報告ということで、相当分厚い形で、私も読ませていただいておりますが、村上先生の中間取りまとめと野城先生の委員会の報告、そして今回の政府案、その辺、三つの成果の関係と、先ほどもお話がありましたが、再度、政府案への基本的な考え方について、野城先生からお聞かせ願いたいと思います。

野城参考人 私ども、この緊急調査委員会は、御存じのように、行政対応のあり方について検証するということを目的とした委員会でございましたけれども、その中で、さまざまな方々に聞き取り調査あるいは現地調査などをさせていただきまして、この報告書には、なぜこういった問題が起きたのか、また、その対応にどのような問題があったかということについて問題を整理させていただきました。

 今回のこの法案というのは、そこで私どもが提起させていただきました問題の幾つかに対して回答を書いていただいたものであるというふうに理解しております。

赤池委員 そういう面では、それぞれ時間をかけ、専門家の方が集い、またヒアリングも行いということで、短期間ということの中でも、相当質の高い中間報告であり報告書を取りまとめていただいたなというふうに、私自身も読ませていただいて非常にわかりやすく、また問題点がよくわかったということなんです。

 そういう面で、特に、緊急に取り組む事項と、やはり急にやってもなかなかこれは難しいということで、分けた形でそれぞれ報告が取りまとめられていて、今回の政府案は、とにかく国民の不安を払拭するということの中で、やはり政府・与党一体となって、まずはできることをとにかくやろうということでの建築基準法を含めて改正案の取りまとめであったというふうに考えているわけです。

 そういう面では、まだまだ課題は当然あるわけですけれども、そういう緊急的にここまでとにかくやるということに関して、それぞれの先生方から率直な評価、感想をいただきたいと思います。

 それでは、村上先生、いかがでしょうか。

村上参考人 お答えします。

 私は中間報告を取りまとめた当事者でございまして、今回の政府の法律の改正案は、非常に緊急対応の大事な点が十分に盛り込まれた妥当なものだと考えております。

 その中の目玉と申しますと、やはり建築確認の検査制度の厳格化でございまして、さらにその目玉が構造評価のための第三者機関の新設ということではないかと思います。

野城参考人 赤池先生がおっしゃいましたように、今回の改正というのは、まずできるところからする、いわば対症療法としての改正だというふうに理解しております。ですので、これが意図したとおりに実効性があるかどうかということをぜひ今後十分に検証し、もし意図した効果があらわれなければ柔軟に見直していく、あるいは抜本的な改正も視野に入れるということが私は必要だと思います。

 特に、そういった中でぜひ御留意いただきたいことが二つございまして、一つは、こういった規定類は簡素、簡明であれば皆が理解できて守れるということがございますけれども、やはり長年の中でさまざまな改正を経てきて、非常に理解しづらい複雑な面がございます。これが実効性に対してどれだけ実を持っているかを検証する必要があるということと、もう一つ大事なことは、耐震技術というのは日々技術革新をもとに進歩しておりますし、またそうならなければ国民の生命財産を守れないわけでございますが、間々、外国のこういった建築規制の例を見ますと、規制のやり方を間違えますとそういった技術革新を阻害してしまうということがございます。

 この二点を特に留意しながら、今後、今回の改正がどのような効果があったかということを十分にモニターしていく必要があろうかと思います。

赤池委員 神田先生は先ほど、なかなか複雑になって評価できないという御指摘をいただいているんですが、その一方で、先生のこの新聞、いただいた資料を見ると、対症療法として限定すれば、これも一つの、まあしようがないのかなと。

 抜本改正を踏まえれば、わかりやすくどなたもができるというのは、当然先生の御趣旨というのも聞いていてわかるんですが、やはりこの時点で何をしなきゃいけないか。当然抜本改正は必要にしても、ここでできる施策というのは相当限られた中で、そういう限定つきであれば神田先生にとっても評価ができないでしょうかという、そういった御質問ですが、いかがでしょうか。

神田参考人 今やはり何か対応しなきゃいけないということはよくわかりますけれども、基本は、制度ではなくてむしろ人だと思うんですね。

 ですから、別に計算だけを別の機関に取り出して審査しなくても、今の審査のシステムの中だけでも、そこで適切な方が審査すればそれはわかるはずの話なわけでありまして、その人をどうするのか。場合によっては、審査料などコストも、海外に比べてもかなり安い金額になっております。

 本来、安全性をどの程度詳しく見るのかということになりますと、それに見合ったコストと人の問題がやはり一番大事だというふうに思いますので、今回計算だけをまた取り出して別の機関をつくるということになりますと、二重に機関ができることになって、本来は確認検査機関の中でやるべき内容だというふうに思いますので、あえて別に機関を取り出してやるということが本当に必要なのかというのは私はちょっと疑問に思います。そういう意味から反対というふうに申し上げたわけでございますが。

赤池委員 いわゆる屋上屋を重ねるではないか、やはり何が何でも人だという御指摘は、当然そういった御指摘もあるとは思うんですが、村上先生、その辺も当然議論の中で出た中での一つの第三者機関の創設だと思うんですが、その辺の経緯はいかがだったんでしょうか。

村上参考人 お答えします。

 構造安全性は、今回の一連の不祥事の発端でございまして、また建物性能の根幹でございますから、今回の審議会でも特に時間を割いて審議いたしました。

 それで、いわゆる構造専門家からは、構造設計の信頼性を高めるために第三者チェック、ピアチェックともいいますけれども、これが効果的であるという指摘がたびたびされておりました。今回提案した第三者機関は、これをなるべく中立性あるいは公平性の高い形で実現するものである、そういうふうに考えております。

赤池委員 大越会長、そういう面では、構造計算の専門家として、構造技術者協会としても、第三者機関に関しては、ちょっとこれは政府案と若干違うという御指摘を先ほどいただいたにしても、第三者機関という枠組みに関しては評価をしていただいているという考え方でよろしいんでしょうか。

大越参考人 おっしゃるとおりでございます。

赤池委員 そういう面では、いわゆる緊急的という枠の中であれば、当然、先ほど大越会長の方からも、実態としていわゆる数が相当ある中で、限られた専門家、構造計算の技術者のこのアンバランスの中でやるとなったら、こういった政府案である第三者機関のやり方が緊急的には一つのやり方だという考え方でよろしいでしょうか。

大越参考人 この話は、多分、もとの姉歯事件を顧みるとわかることですけれども、基本的には、まずチェックされていなかった。そういう意味で、相手がいなかった。つまり、出したのがそのまま判こを押されてしまった。

 そういう意味では、審査の質を私たちも今大変議論しておりますが、少なくとも審査されるされない、それから構造設計者の名前を書く書かない、もうそれだけでかなり違って効果的と私どもは考えております。

赤池委員 そういう面では、既に、今大越会長が御指摘になったような形は、村上先生また野城先生の報告書の中にも盛り込まれているという形でよろしいでしょうか。

野城参考人 私ども、まず大越先生がおっしゃいました審査ですけれども、外形的事実としては一人の構造設計の審査担当者が月に百件やっている、これは常識的に考えますとほとんど、御説のように、ごらんになっていないだろうということで符合いたします。

 それと、そういったことを踏まえまして、私どもも、まずは匿名を隠れみのにするような状況というのは改善する必要があるということで、ぜひ記名性を高める必要があるということはレポートに書かせていただいております。

赤池委員 そういう面では、先ほど私の方で何度か確認をさせていただきましたが、今回がすべてこれで終わりということではなく、当然、報告書の中にそれぞれ村上先生、野城先生に本当に御尽力いただいたものを、緊急の場合という形で、このような形で建築基準法改正を中心として取りまとめさせていただいたという形で、これが終わりではない。第一弾であって、さらにその先に抜本改革ということを含めてやっていくという、二段構えであるということをぜひ、先生方は当然おわかりでいらっしゃいますけれども、私も含めて広くアピールをしていきたいなというふうに考えております。

 そして、その次の抜本改革に向けてのさまざまな視点というものが報告書、中間取りまとめの中にも入っておりまして、私も読んだ中で、幾つかキーワードというか非常に気になった文言がございます。

 その一つとして、今回の場合もマンション、集合住宅、戸建てよりも集合住宅というのが大分問題になったわけなんですが、そんな中で、いわゆる青田売りという、青田買いというのが以前ありましたが、今回の問題でいきますと青田売り。まだ実際にマンションができていないのに、言ってみればモデルルームをつくっただけで、こうですよ、ああですよと説明をして売ってしまう。当然、業者としては、資金繰りから考えれば相当いいということなんでしょうが、本当に実物かどうか。

 村上先生はシックハウス症候群の論文を書かれておりますが、やはり人間というのはそこに行ってみれば、科学的分析ではなくて、何か気になって、あれ、ちょっとおかしいなということは体全体でわかるということから考えれば、やはり実物をしっかりチェックできない体制というのは非常に問題ではないかなということも、報告書を読ませていただいたり、また、自分の体験からも感じたところでございます。

 その辺、今後、抜本改正の中でそういったところの何らかの規制というのを考えるべきだということでよろしいんでしょうか。

 では、野城先生、いかがでしょうか。

野城参考人 私が先ほど申し上げましたように、包括的な政策体系の中では、今先生がおっしゃいましたことは当然施策の中に入っていくべきだろうと思いますが、建築基準法にはそういった機能をむしろ持たせるべきではないと思います。むしろ建築基準法の本来の機能というものが不全を起こしてしまうように思いますので、別の施策の中で今おっしゃったことを実現すべきだろうと思います。

 要は、青田売りということは、売る方は、集合住宅というのは代金をもらうといわば投下資本を早く回収できるということから、そういった商慣習ができているんだと思いますけれども、それに乗せられて、ついつい目に見える住宅の性能で心がよろめいて買ってしまうというのはぐあいが悪いわけで、むしろ見えざる性能、特にマンションというものが現実的に五十年、百年住み継いでいくとすれば、当然、この国は必ず一度か二度大地震に見舞われることがあるわけですから、できるだけ早く資本を回転させようというようなペースに乗らずに、ゆっくりじっくり見えざる性能に関心を払っていくようなことを、一般の方々が注意を払っていくような状況をつくり上げていくべきだろうと。

 これは、法規制というよりは、もうちょっと違うような施策なんじゃないかなというように思います。

赤池委員 ありがとうございました。

 その次に、野城先生が取りまとめていただいた委員会報告を読んでいて非常にいいなと思ったのが、いわゆるホームドクターの仕組みづくりということですね。いわゆるかかりつけのお医者さんがいると同時に、やはりこれだけの、言ってみれば生命にもかかわるし、生涯最大の買い物である、財産の一番の中核を占める住宅に関して、そういう面では、これだけ複雑な中で、専門家と接する機会が一般の方は非常に少ないということの中でのホームドクター制みたいな御提案もいただいているんですけれども、その辺、もう少し御説明をいただければと思います。

野城参考人 今申し上げましたように、この国のあり方として、住宅一般ですけれども、特にマンションについては五十年、百年使っていくものだといたしますと、当然そのライフサイクルの中で維持、改善、補修が必要でございますけれども、そこはなかなか建築の素人の方ではわかりづらいところもございますので、長く住み継いでいくために気軽にアドバイスをいただけるような方が身近にいるようにしていく。そういったことをしていくことによって住み継いでいくことが可能になるというように思いまして、これは私ども調査委員会の委員長の巽先生の御持論でございますけれども、そういった提案をさせていただいた次第でございます。

赤池委員 そういう面で、私が冒頭、日本の伝統的な施工、設計、棟梁制度みたいな、その現代版みたいな形の中で、ぜひホームドクター制も抜本改革の、これがどういう法体系になじむか、それは法律の問題かどうかというのは議論をいろいろ今後詰めていきたいと思いますが、ぜひ先生方の知見を含めて、こういった委員会の中でも議論して、制定をしていくべきではないかなというふうに考えております。

 最後に、それぞれの先生方、いわゆる倫理教育、技術者、建築士の質の向上ということを、いわゆる法の先にある、本当の意味で質の確保ということでの、住宅というものの担い手としての技術者の倫理教育の徹底ということをどの先生方も御指摘をいただいたと思うんです。

 私も日本航空学園というところで専門学校長を経験しておりまして、航空それから自動車整備という人材教育に携わっていた経験がございます。その中では、技術教育というのは、先ほど先生が言われたようにどんどん日進月歩で進んでいきます。ですから、当然資格を取るために勉強をさせるんですが、それだけではなくて、勉強をずっと一生涯取り組む意欲みたいなものを忘れるなということと、もう一点は、いわゆる倫理教育、人格教育、人間教育に相当力を入れて、当然、技術畑の方が大きいイメージがあるんですが、うちの学校としては車の両輪だというぐらいに、道徳訓育という時間を必修としてつくって、毎日毎日朝から、節目節目にはそんな話をさせていただいた経験がございます。

 そういう面で、建築士の方々の中に教育に携わっている先生方もいらっしゃいますし、また、協会としてもどのような形で倫理教育がなされているのか、また、先生方としてすべきか、最後にそれぞれお聞かせ願いたいと思います。

 それでは、村上先生からお願いいたします。

村上参考人 お答えします。

 全く御指摘のとおりでございます。倫理教育は、大学教育と同時に、社会人に対しても継続的に生涯教育という形でなされるべきだと思っております。

 それから、例えば一級建築士の試験などにおいてもそういった問題も今後取り入れていいのではないか、そういうふうに考えております。

    〔吉田(六)委員長代理退席、委員長着席〕

野城参考人 私は、ささやかながら、建築、建設関係だけではございませんけれども、工学部の学生に技術倫理の授業を四、五年させていただいた経験がございます。

 つくづく思いますのは、これは座学ではなくて、座学でいえば一言で終わってしまう部分がございますが、大事なことは、技術者があるジレンマなりトリレンマなりに陥ったときに、本当に適切な判断ができるかといういわば活術だと思います。

 そのためには、今後こういったことを実効性たらしめていくためには、建築士あるいは建築技術者がよく陥る、あるいはよく出会うジレンマやトリレンマの事例について教材をつくり、それを例えば職能団体なりあるいは大学教育等で行っていく。そのようなことをしませんと、ただやみくもに正しいことをしろということだけでは応用がきかないというように思います。

神田参考人 最近、工学教育の中でも倫理教育の重要性というようなことは言われておりまして、一つ一つの講義の中に倫理というような視点が大事だということは非常に強く認識してございます。

 ただ、それはもちろん専門家もそうなんですけれども、やはり倫理ということになりますと、建築そのものが社会的な存在でありますから、建築主が建築物を社会に出すことに対して倫理的な側面というのは当然あると思います。そういった社会的な器としての建築を最初に世の中に出そうとする人が、どういった質のものを世の中に出すことで世の中がよくなるのか、そういう視点が出てくることに期待したいと思っております。

大越参考人 当協会には建築構造士という自主認定資格がございます。試験は二日にわたって行われますが、一日目には三人の面接員による三十分の面接試験があります。この中で、主として、倫理及びいわゆる基準法でない設計規範ですね、一般にこうあらねばならぬということをまず入るための条件にしております。結果的にも、試験で、いわゆる筆記試験では優秀でも、倫理がないので合格しないということがあります。

 それから、当協会には倫理規定があります。ですから、実効性でいいますと、倫理に違反した者は除名させます。ということで、現在これに絡んで実は二名が除名されております。やはり除名されると、この世界では厳しい。

 ですから、精神的なものじゃなくて、やはり実効性のある倫理がないと難しいと思っております。

赤池委員 きょうは、本当に御多用の中、短い時間ではございましたが、貴重なお話をありがとうございました。

 ちょうどこの委員会の前に、本会議では教育基本法の改正の審議も始まりました。そういう面では、広い意味で教育基本法の中にも公共の精神であったり、先ほど私が自分のおじいさん、父親の話も含めましたが、そういった本当のいい意味の日本の伝統文化を、教育基本法の改正を実現して、そして、その広い意味での改正の中で、今回、建築基準法も、また建築士の教育、質の向上にもつなげていきたいというふうに思っております。

 きょうは本当にありがとうございました。

林委員長 下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 きょうは、村上先生、野城先生、神田先生、大越先生、お疲れのお忙しい時間、お時間をいただきまして本当にありがとうございました。限られた時間でございますが、これからの法改正について御参考になる意見をいただけたらというふうにお願い申し上げます。恐縮でございますが、ちょっと座らせていただいて御質問させていただきます。

 まず、村上参考人にちょっとお聞きをしたいと思います。

 参考人が会長を務める日本建築学会の「健全な設計・生産システム構築のための提言の枠組み」、ことし三月に出されています。その中で、設計・生産行為のすべての内容を定型的な法令基準だけで規定するのは非常に難しいと。建築の設計、生産にかかわる関係者のより一層の自助努力を進める必要がある、これはもう先ほどから人間のお話ということで随分承っております。

 この点から、どういうふうにこれから進めていくのが望ましいか、また、今回の改正案についてどのようにこの点をとらえていらっしゃるか、まずは村上先生の方からお答えいただければというふうに思います。

村上参考人 お答えします。

 今回の法律の改正案は、現在、社会的混乱が非常に大きくて、緊急対応として対応すべきであるという観点からまとめられていると理解しております。その緊急対応という意味は、建築確認検査制度の厳格化、適正化を初めとする法規制の強化ということでございます。これが緊急、いわば短期でございまして、中長期的には、私ども建築学会の提言でまとめましたように、建築にかかわる設計あるいは施工、生産、こういう人たちが意欲を持っていいものをつくる、そういうシステムをつくることが質のよい建築を普及させる最大の方策であるというふうに考えております。

 でございますから、今回、緊急対応の法規制の強化ということは、これは大変妥当だと思うのでございますが、中期的には、そういう設計・生産システム、特に最近、技能労働者の質の問題等あるいは数の問題等大きくなっておりまして、このままほうっておくと、日本の建築の設計・生産システム自体が大変大きな問題に直面しかねないという状況がございますので、そういう人の問題も含めて、総合的な設計・生産システムを整備する。

 それからもう一つは、そうやって自助努力で頑張った人が世の中で評価される、また、消費者も、頑張っているか頑張っていないかがわかるような情報提供をしてもらって、それに基づいて判断する、そういう仕組みをつくることが大事だろうというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 この点、同じ御質問になりますが、JSCAの大越会長の方からも、ちょっとお立場で御意見をいただければというふうに思います。

大越参考人 学会とJSCAは職能という意味でちょっと違って、それは前置きさせていただきます。

 私たちもやはり、阪神大震災以来、ある意味ではシステムが、昭和二十五年につくられたシステムということで、かなり機能がしなくなり始めているなということで、私たちの協会でもいろいろ研究を重ねて提案しております。ですから、そういう意味ですと、かなり学会の案と私どもの考えているのは同じですが、ただ、私どもはあくまで構造設計というところだけで、枠組みが非常に狭いものになっております。

下条委員 法規制の問題と自助努力のバランスが今後のブラッシュアップに必要だというお話だと思います。ありがとうございました。

 次に、日本建築学会の提言に「保険制度等による被害者救済制度の整備」というのがありますけれども、西欧諸国ではかなり保険制度が進んでいるということでございます。この辺について、保険制度のメリットを村上参考人にお聞きしたいというふうに思います。

村上参考人 お答えします。

 この保険制度、私そう詳しくございませんので、建築学会自体も余り蓄積がございませんで、そのための研究委員会を立ち上げて今スタートしたところでございますが、私の仄聞するところでは、海外でも日本で言われているほど保険制度が充実しているわけではない、特に住宅の保険というのは非常に難しいんだということを承っております。

 いずれにしましても、最後のセーフティーネットとして被害者の方が何らかの救済を受けられることが必要でございまして、これは、建築分科会の中間報告でもそれほどまだ明確には打ち出せてなくて、今後の最終報告に向けて作業する予定でございまして、建築学会でも、三月の提言は中間でございまして、九月に向けて提言する予定でございます。

 保険制度は、多分、多くの方がまだわからないところが多くて、どういう仕組みをつくれば一番社会にとって合理的かというところを暗中模索の状態だろうというふうに理解しております。

下条委員 ありがとうございます。

 まさに、おっしゃったとおりだと思います。日本でも、我々も与野党問わず、保険制度についていろいろ、現在の中で強制保険にしたらいいか、また、いろいろな弊害も出てくることを前提に。

 そこで、私ども民主党は、この保険加入有無の説明の時期をというふうに一点に絞りまして法改正をしたらどうかというので、今度提案をさせていただきました。つまり、初期の段階というのは広告の段階ということだと思います。住宅の品質確保の促進等に関する法律の第六条一項及び三項に規定する設計住宅性能評価書及び建設住宅性能評価書の有無、また、同法に基づく瑕疵担保責任の履行に関する保険の有無について記載するということであります。ないものは広告にないと表示させる。

 きょう、ちょっと理事会で了解を得まして、よくある例の広告の段階でございます。(パネルを示す)つまり、ここに、品確法に関する瑕疵担保の履行に関しての有無を、あるかないかを表示する、また、評価書があるのかを表示させるということだと思います。これは、簡単に言えば、業者さんがこの広告を出すに当たってはほとんどお金はかからない、しかし、購買者、住民にとっては、感情的に、ああ、もうすぐマイホームが手に入るという段階ではなくして、初期の、これの有無を非常に冷静に理解しながら、資料を徴求したり、また現場に足を運ぶことができるというふうに私ども民主党は考えました。

 そこで、広告の初期の段階に保険の有無を入れていくという我々の提案に対して、大変恐縮でございますけれども、きょうおいでの先生方、お一人お一人からちょっと御意見をちょうだいしたいと思います。まず、村上参考人からお願いできればと思います。

村上参考人 お答えします。

 ディテールはわかりませんけれども、今の御趣旨は、私は大変結構であると思います。

野城参考人 御趣旨は大変よろしいかと思います。

 ただ、先ほど申し上げましたように、法定でやった場合に、せこい保険といいましょうか、実効性の低い保険に入っていて、これを表示するような、そういった抜け道がないようにしないと、この法定で強制というのはそういうものを生むところを十分に注意する必要があるかと思います。

神田参考人 そういったマンションの企画とかいうことになれば、当然、企画の段階から保険は考えるか考えないかという判断をされるわけですから、情報公開という意味からも、どういう意図でマンションがつくられるのかということに含まれますから、それはぜひ早い段階で公開するのが望ましいというふうに思います。

 保険制度そのものも、なかなか問題があることは確かだと思いますが、諸外国などで実施されている例も多いわけですから、経済的な保護ということになるとどうしても保険ということになると思いますので、ぜひ日本でもそういう方向で検討されればよろしいかと思います。

大越参考人 私も内容的には賛成ですが、先ほど私が述べましたように、判定員の問題と同じで、まず、システムそのものが本当に実効性がないと結局難しいと思うんですね。そのためには、どうしても、損保業界の方も本当に対応できる、つまり人材の問題もあると思うんですね。ですから、ある程度、非常に短期間でやるのは大変すばらしいと思うんですけれども、そういった損保業界の人材難の問題であるとか、それからその実効性に絡んで、やはり慎重な御検討をお願いしたいと思っております。

下条委員 貴重な御意見、それぞれの先生方、ありがとうございました。できるだけ前向きに、私どもの政党としても、与野党一緒になって検討させていただきたいというふうに思っています。ありがとうございました。

 次に、建築確認についてちょっと御質問をさせていただきたいと思っています。

 神田参考人が、二〇〇二年に「建築確認制度が危ない」という評論の中で、次のようにおっしゃっているのをちょっと朗読させていただきます。

 建築主事は今、災難である。それはそれはおびただしい量の告示が次々に発せられ、その理解をする間もなく、時間内に確認をおろさねばならない。建築主事が設計図書を法令と適合しているかどうかの確認をしたからといって、構造性能が満足いくものかどうかは怪しい。それならば、構造設計が認められるためには、構造技術者がみずからのプロとしての生命をかけて責任をとるというならば、それに任せる方がよいのではないか。それでおかしなことをしたという場合は、裁判で構造技術者の責任を問えばよい。怪しげな計算や評価をしていたら、身分を剥奪するなり、極端な話、それが原因で死傷者を出したような場合は、業務上過失致死などというものもあるはずである。逆に、構造性能が多くの技術者の常識で問題ないと言えるような場合でも、告示にないから確認申請で拒否されるというようなことがあっては、我が国の建築技術は衰退するしかない。何のための確認申請制度かというふうなお言葉を述べていらっしゃいます。

 建築主事の限界と確認申請制度そのものに疑問をもう既にこの時点で投げかけられていらっしゃる。

 二〇〇二年の段階で先生はこのことを指摘なさっていますが、今回の改正案において、こういう点を踏まえて、この件についてどうお考えなのか、御意見をいただければというふうに思います。

神田参考人 建築基準法で安全性を担保するというのは、最低のレベルをどこに置くかということを担保することが基本だと思います。その最低のレベルがどの程度なのかということは、実は今法律には書いてないんですね。それは施行令であったり告示であったりしております。しかし、本来、どの程度のレベルが最低かということを国会で御審議いただいて、どの程度にするのかということを決めるのが、やはり最低基準を示す基準法であればやるべきことだというふうに思います。

 それが最低基準であることが現実に満足されるためには、もちろん構造計算も適切になされなければいけませんし、それは、計算だけではなくて、その計算の前のモデル化の段階、いろいろなところで専門家が適切に判断をしなければいけないんです。

 専門家が自分の技術を適切に使っているかどうかということを評価あるいは判断するのは、それは資格でございまして、今の法体系の中では、一級建築士、二級建築士、それぞれ建築士という資格の中で、ある業務独占が与えられて、その人がそれだけの技術を持っているというふうに認定しているわけですから、それが適切に行われているかどうかというのは、やはり建築士という資格の中で検討をすべき内容だと思います。

 ところが、非常に技術が進歩して、法律ですべて書き尽くされないような細かいところまで来ているわけでございますから、そういう意味で、今の建築士という形だけで一くくりにして建築構造に関する技術を持っている人間だというふうには、既になっていないわけであります。ですから、本来、建築士の資格、その中で構造計算が適切にできる人間であるかどうかが見えるという形にどうやって持っていくかというのが一つポイントだと思います。

 それを国家資格にするのか、あるいは民間資格の中で、社会がそれを認めて社会システムとして使えるようにするのかというのはまた議論のあるところだと思いますけれども、やはり、建築士法と建築基準法の役割分担が非常に不明確になってきて、建築基準法だけが細かい規定として膨大なものになってしまって、主事もその中身が理解できないままに審査しなきゃいけないという状況があったものですから、二〇〇二年の段階でそういった指摘をさせていただきました。ちょっと過激な言葉がございましたけれども、趣旨を御理解いただくためということで書かせていただいたものです。

下条委員 先生、決して過激と僕は思いません。大変正直でわかりやすい言葉じゃないかと私は思います。ありがとうございました。参考にさせていただきたいと思います。

 次に、構造設計の審査方法について、JSCAのことし二月の提言に、必ずしも再計算を行う必要はないとしています。その理由は、どのような審査方法がよいと考えているのか、端的にでございますけれども、大越会長の方から御意見をいただければというふうに思います。

大越参考人 再計算は、もともと最初から、ある仕組まれた、これは、計算するときにはいろいろなプラス、要するにイエス・オア・ノーで答えながらずっと設定条件をつくります。ですから、その設定条件、それから今度、インプットというのは非常に当人しかわからないようなことがあるんですね。ですから、そのデータを幾ら通したって結果は間違っているわけです。

 そういう意味で、本当の意味で正しいかどうかというんでしたら、ほかの人がその建物を再入力するしかないんですね。これを実はやっているところは、シンガポールはそうなんです。そういうところはあります、国としては。ですから、大変時間とお金が発注者にかかってきますけれども、でも、日本の場合は、我々はそんな必要は毛頭考えておりません。ずっと五十年間何もなかったんですから。それも前提にあります。

下条委員 そうしますと、審査方法はいかがでございますか。

大越参考人 審査方法は、私どもは、アメリカの構造技術者協会、イギリスの構造技術者協会、それから中国の協会といいますか、それと定期的に実は会合をやっておりまして、お互いの審査方法をずっと議論しております。

 その中で、審査方法については、日本は非常に独特で、一体なんですね。一括申請というのはほかの国ではありません。これはなぜかというと、教育からして建築といわゆるエンジニアは別ですし、向こうですと許可ですね、建築許可も実は建築とエンジニアというのは別なんですね。

 ですから、そういう意味では日本が独特で、やはりこれは、我々としては、先ほどもおっしゃられたように、建築主事の負担も大変で現実にはもう大変難しい。ですから、我々でも、構造設計者も設計するのには三十歳ぐらいまで本当に必要なわけですね。それを建築主事に求めることは本当に現実的ではないだろうと感じておりました。

下条委員 ありがとうございます。

 野城参考人が、構造計算書偽装問題についての緊急調査委員会、十八年、ことし二月に、やはり同じように、すべての構造計算を再計算させるような過剰反応をとらないよう注意が必要とおっしゃっていますけれども、この根拠と、そうしたら、どのような方向感がよろしいかというのを、ちょっと御意見いただければというふうに思います。

野城参考人 私どもの認識は、今、大越先生がおっしゃったことと同じでございまして、本当にそれをチェックするとすると、世の中全体の人材の分布ですね、要は、規制する側よりも規制される側である実際の実務者の方の方が高い技術と技能を持って、そして量も豊富であるということを考えますと、現実性がないということでそういったことを申し上げた次第です。

 そうではありますけれども、これだけの事件が起きますと、やはり、私を信用してくださいというだけでは、つまり、第一者だけがこれは正しいというだけでは国民の方々の納得が得られないかと思いますので、何らかの第三者的なレビューというのは、このシステム化をされる、これを法定でやるのか任意でやるのかというのはいろいろあるかと思いますけれども、それは必要だというふうに私は思います。

 また、そのレフェリングなんですけれども、これは非常に不謹慎な例えかもしれませんが、そういったレビューといいますと、ちょうどレフェリーに例えますと、野球のアンパイアが、ワンセッション、ワンセッション、ストライクだ、アウトだというようなことが可能かというと、それは全く不可能でございまして、もし最大限できるとしても、例えて言えばラグビーのレフェリーのように、一連の流れる動作の中でそれが適切に行われているかというのをじっと見て、必要があればそこに介入する程度のことは何らかの方法で工夫のしようがあるんじゃないかなというふうに思います。

 ですから、チェックをするとしても、一つ一つはしの上げおろしをチェックすることは不可能だというふうに思います。

下条委員 ありがとうございます。

 過剰反応ができない一方で人的な許容量の問題もあるという、非常に難しい問題だと思います。そういう意味では、御参考にさせていただいた意見をもとにまた私ども検討していきたいというふうに思っております。

 次に、指定確認検査機関の業務の適正化について、ちょっと皆さんにお伺いしたいと思っています。

 つまり、政府案では、指定要件の強化と特定行政庁による指導監督の強化が挙げられています。これはもう法案にそのままでございます。一方で、特定行政庁に対する指導助言だけではなくて、やはり特定行政庁への指導強化、指導監督強化が必要になってくるのではないかと私どもとしては思っています。

 といいますのは、意図的な耐震偽造や構造計算の誤りについては、不十分な審査があったものの六割が確認検査機関によるものだ、そして残りの四割が特定行政庁によって起きてしまったということだと思います。確認検査機関の方には簡単に言えば監督のメスが入りますが、特定行政庁の方には、指導監督の強化は行政庁がやる分にはできるんですが、一方で、国の方からのそこに対する指導監督の強化が今度の法案に盛られていないということだと思います。

 この点について、例えば特定行政庁が行った建築確認の情報開示などを求めていく必要があるんじゃないかと僕らは考えて、これは今回だけではなくて将来的にも含めまして、この点について、まず村上参考人の方から御意見をいただければというふうに思っています。

村上参考人 お答えします。

 特定行政庁の審査結果を情報公開するという方向、私は妥当な方向であると考えます。

 それから、最初に申されました、国が特定行政庁に対して監督を強化するか、その問題はまだ大変新しい視点でございまして、できましたらこれからの建築分科会で審議させていただきたいと思います。

下条委員 ありがとうございます。

 野城参考人、いかがでございましょうか。

野城参考人 歴史的な経緯を考えた場合、建築主事というのは御存じのように大変独特な制度でございまして、通常こういった許認可事務というのは首長、知事、市長の方がされるにもかかわらず、昭和二十五年の設計で、建築主事といういわば役所の中の独自なプロフェッションを設定したということがあるわけでございます。

 当然、先ほど言ったように、特定行政庁の方の監督をしなければ片手落ちという側面もございますけれども、民間確認検査機関に対する厳格な査察といいましょうか、チェックを含めまして、その効果等々を考えますと、建築主事の方々も確認検査員の方々も、プロフェッションとして扱う、あるいはプロフェッションとして成長していただく、技能を上げていただくという視点が肝要かと思います。

下条委員 ありがとうございます。

 神田参考人、御意見をいただければと思います。

神田参考人 こういった建築行政に関する問題は、基本的に特定行政庁が公共性ということで進めていることだというふうに考えられますので、国がそれに対して指導するというような性質のものではないのではないかというふうに私は思うんですけれども、問題は、国とか地方公共団体がこういう安全の問題に対してどの程度の責任を持つのかということがちゃんと議論されていないのではないかというふうに思います。

 国家賠償法でというような資料もございましたけれども、実際にどの程度の責任が国にあるのか、どの程度の責任が確認をするところにあるのか、そういった議論を正確にしていただいた上で、どういった制度にしていくのかという議論をぜひしていただきたいというふうに思います。

 私は、基本的にその地方ごとにやっていく問題ということでよろしいと思います。それで、情報公開されれば、そこで不適切なことがあれば、そこの住民の方々が正すということになるんだろうと思います。

下条委員 ありがとうございます。

 大越参考人、いかがでございますか。

大越参考人 私は構造設計者なので的確に答えられるかどうかわかりませんが、この確認の問題は、先ほどの続きになりますが、基本的には、いわゆる見てすぐわかる集団規定であるのと、安全である、いわゆる個別規定ですね、それを同時に見ているところが一番問題ではないか。

 今回の事件にしても、いずれにしても安全基準だけの問題ですね、安全基準以外については基本的には今まで何も問題が起きていないわけですから。そういう意味では、むしろ一緒に議論してしまうと多分混乱が起きるのではないかと思っております。

下条委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間も迫ってまいりまして、最後の質問になるかと思いますが、次に、いろいろ今同僚議員含めてお話しさせていただいて、やはり人間の限界というのはあると私は思います。そして、チェック機能の限界もある。そうすると、残されたものは何かというと、私はやはり罰則しかないんじゃないかと思っているんです。

 私もちょっと海外に長くおりましたが、やはりこの日本は、いろいろな物事が起きた後の罰則の部分がどうも諸外国と比べて甘い。極端な話、今、日本国じゅうに偽装をやった人は一人いるか百人いるか知りません。ただ、今全部出したら法的な処置によって罪に問われない、でも、一カ月後だと無期懲役に近いほど罪に問われるよと言ったら、日本国じゅうからもしかすると物すごい数の構造偽造のものが出てくるかもしれない。かもです、あくまでも。そういうのを踏まえると、どうも罰則規定が甘いなという感じはいたしております。

 今回の改正案では、建築士等に対する罰則の大幅強化、免許取り消し後の再交付の期間を延長すると盛り込まれている。そういう意味を踏まえて、罰則をもう少し、経済的な面も含めて強化していったらどうかなというのは、今回を含めて、また将来的にも改正が出てくると思いますが、先生の御意見をお伺いしたいと思います。

 村上先生、いかがでございましょうか。

村上参考人 お答えします。

 私も、先生の御趣旨とおおむね今回はそろった形で建築分科会の中間報告をまとめたつもりでございまして、いろいろな形で、建築士に対する処分の強化、あるいは建築士事務所に対する罰則強化ということが盛られております。

 それで、問題は、罰則強化はいわゆる質の悪い違反建築を排除することには役に立つけれども、本当に質のいい建築をつくるインセンティブにはならないという、そこのところの限界はあると思います。

下条委員 ありがとうございます。

 神田参考人、いかがでございましょうか。

神田参考人 今までの罰則規定というのがかなり時代の古いものでしたので、やはり今回のような形で罰則が強化されるということは、社会に対する説明性ということからも自然なことだというふうに思います。

 ただ、ここで、最初から繰り返しておるんですけれども、建築主の立場で、特にそれを業として行っている場合には、やはりそういう人の責任というのは非常に重いと思うんですね。それが、やはり専門家がちゃんと見て建物を不動産として業として扱うのであれば、そういう人たちの責任ということも明らかにしていかなければいけないんじゃないかと思っております。

下条委員 本当にありがとうございます。

 もう時間が来ているので以上にいたしますが、いずれにしても、建築士、そして業界の方、ほとんどの方がまじめに働いていらっしゃいます。その方の汗が実るようにしっかりとこれから後、きょうの参考人の方々の意見をもとに議論して、いい法案にしていきたいというふうに思っています。きょうは本当に皆さん、御意見ありがとうございました。

 以上で終わります。

林委員長 斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、四人の先生方、本当に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。心から御礼申し上げます。

 私の番から、いわゆる小さな政党、弱小政党になっていきまして、時間も短くなってまいりますので、早速でございますが……(発言する者あり)弱小政党と言いましたのは我が党だけでございます、ほかの党に失礼いたしました。短い時間になってまいりましたので、早速質問をさせていただきます。

 まず、最初の二問は、四人の参考人の方全員にお聞きをさせていただきます。

 最初の質問は、建築基準法に対する考え方、また、いわゆる行政が建築の設計や施工にかかわるかかわり方の問題でございます。

 お話をお聞きいたしておりますと、神田先生だけ少しお考えが違うようでございまして、私、建築基本法の起案書等も読ませていただきました。それによりますと、基本的に、細部にわたって公は、行政は設計や施工にかかわるべきではない、ある意味で行政のかかわりは集団規定だけで、単体についてはいわゆる建築技術者の責任に任せるべきだと。非常に極端な言い方をすれば、もう建築基準法は要らない、こういうお考えかと思います。それに対して三人の方は、きょうのお話をお伺いしますと、建築基準法という行政の関与は必要なんだというお考えかと思います。

 このことにつきまして、特に建築についてはほかの経済行為に比べて公の関与が大きい、このように言われておりますが、この問題についてどのように基本的にお考えになっているのか、いわば建築基準法の存在意義とでもいいましょうか、四人の参考人にお聞きしたいと思います。

村上参考人 お答えします。

 現在、調べてみますと不祥事がこれだけたくさん発生しておりまして、いろいろ調べるほど増加する状況がございまして、こういう状況のもとで、すべて建築基準法をなくして建築関係者に任せればいいというのは、現在の状況では社会は受け入れていただけない、そういうふうに考えております。

野城参考人 私は、法律の歴史的な変遷と性格の変遷をよく認識する必要があるかと思います。戦前、御存じのように市街地建築物法というものがございまして、これは警視庁が所管していました。戦後の民主化の中で基準法と建築士法ができたという歴史的な経緯は確認しておく必要があるかと思います。

 何が言いたいかと申しますと、基準法というのは当初は大変簡素でございまして、むしろ独立の技術者である建築士がその裁量において建築の品質を担保していくという考え方でスタートしたわけでございますが、その後、さまざまな災害等々があり、基準法が当時の簡素な姿をとどめないほどにどんどん改正されて複雑化を増していった中で、一方で建築士法というのは、当初想定したようには建築士のあり方というものが機能を発揮しなかった、こういった事実を考えた際に、ちょうどその二つをペアで考えていく必要があるだろう。

 要は、技術者の裁量がしっかりしてくれば法の規制というものは簡素にすべきだし、そうでないとするとある程度関与すべきだ、この二項関係の中で考えていくべきではないかというように思います。

神田参考人 今、斉藤議員の御質問で、私だけ何か一人仲間外れのような御紹介があったんですけれども、直ちに単体規定をやめて、行政は単体を見なくていいかという質問をすれば、大半の方はそうではないというふうになると思います。

 私が申し上げたいのは、やはり建築の理念ですとか、あるいは、たくさんつくればいいという五〇年代、六〇年代、七〇年代と、今はストックをどうしていくのかという、社会と建築の役割が随分変わってきたときに、それから、専門家もいろいろ細分化してきて、責任とか技術の内容とかプロフェッションが変わってきたときに、今までの建築基準法を前提にしてどうしたらいいかという議論ではなくて、そもそも建築が社会の中でどういう役割を持って、どういうことを我々は建築として考えなきゃいけないのかとか、建築にかかわる関係者、たくさんいるわけでありまして、国だとか自治体とか、設計者、施工者、不動産業の方、非常にたくさんいらっしゃる方、その人たちがどういうふうに責任を分担していくのかという議論をまず始めていただきたい。それは建築基準法を前提にするのではなくて、そもそも今の社会でどういう役割があって、どういう建築の理念があるのかという議論をしていただきたい。

 そうする中で、建築の安全性というのは行政がまず守るんですよということではないと思うんですね。安全性を守っていくのは、やはり建築を設計したり施工していく人たちにまず責任があるわけですし、そのあたりの責任の分担をどうするのかという議論をぜひこういう場でもしていただいて、それをもとに建築基準法が簡素化できる部分は大いに簡素化していく、そういうステップで議論を進めていただければというふうに思っております。

大越参考人 私は、日本とほかの国を比較しながら感じることですが、やはり世界でもビルディングコードというのは必ずあります。それはやはり、よいまちづくり、それから質の高い社会資本を確保するためには必ず要るわけです。そういう意味では、団体規定は必ず要ると思っております。

 ただし、そういった個別規定の問題で違うのは、日本はやはり非常に災害国である。世界でまれな地震であり、大雪なんかも世界で珍しくすごいんですね。それから台風だって、サイクロンよりちょっとちっちゃいかもしれないけれども、これもすごい。この三つがあるということ自身が、また大変厳しい国なんですね。

 そういう中で、ではどうやってやるかというのは、基本的には、私が感じていますのは、安全基準は、やはり我々設計者がこれだけ大きな災害をどうやって責任を持って設計するかというのは、わからないわけですね。ですから、そういう意味では国家資格。国家資格はもし難しいのであれば、本来、例えばイギリスとか諸国がやっていますようなBSとかDINに相当する、日本でいえば要するにJISの建築基準みたいにするという手はあると思います。

 いずれにしても、今の安全基準はかなり重層構造をとっております。そういう意味で、多分ほかの人にはほとんど理解できないという意味は、平易に書かれていない、全部この重層構造の中で書かれている、そういった建築基準法令が非常にわからなくなっていると思います。

 そういう意味でわかりやすいのは、やはりJISの例えば建築安全基準なんかを使って、実際、ではその担保をどうするかというところに、先ほどの罰則規定というのは当然あります。世界的には、やはり罰則規定と保険が入って、さらに、我々その安全を守る資格者がペアになった上での法律ということになっていると思うんですね。

 そういう意味で、私は、ちょっと違うのは、やはりそういった別の意味でもっと平易な基準にして、それをもう国ではなくて準の国、つまりJISみたいな形がよろしいと考えております。

斉藤(鉄)委員 大変参考になるお話をありがとうございました。それぞれにお考えがあるというのはよくわかりました。

 それと関係するんですけれども、今回の事件の背景に平成十年の建築基準法の改正があるのではないかという議論もございました。平成十年の建築基準法の改正は、一つは仕様規定から性能規定へ、それからもう一つが建築確認の民間開放、この二つが大きな柱だったわけですけれども、この平成十年の建築基準法の改正をどのように見られているかということでございます。

 特に一番目の仕様規定から性能規定へということで、これはある意味では、神田先生がおっしゃっている技術者の、建築家の自由度の拡大という方向性だ、このように思いますけれども、逆にこれが今回の事件の背景にあるのではないか。私は個人的にはそうは思っていませんけれども、とてもそういうレベルの今回の話ではなかった、このように思っておりますが、この点について、四人の参考人の方の御意見をお伺いできればと思います。

村上参考人 お答えします。

 基本的に、仕様規定から性能規定への流れは正しい方向であると思っております。

 それから、今回の事件がこの仕様規定から性能規定への流れと関連しているかといいますと、私は、ちょっとは関連していることはあるかとは思いますが、基本的にはないというふうに考えております。

野城参考人 私は、私どもが参加いたしました調査委員会でも、偽装の起きた原因というところでレポートさせていただいておりますけれども、性能規定というのはこれからのあり方として必要ですし、成熟させるべきだと思いますが、では、その法で書いた性能がどのようになっていれば法に適合しているかということについての基準が極めてあいまいで、恐らく十年の改正の際に、その基準があいまいだという議論があったがために、非常に羈束的に、一律的に基準を決める、その中の一連のあり方としてプログラムなどの認定の強化等々があり、それが今回の悪用されるすき間をつくってしまった。

 ですから、これは、制度をつくったときでは全く予想できなかったような副作用が起きてしまったということでは、間接的ではございますけれども、性能規定における法的適合性をどのように検証したらいいかということについての命題を今後も考え、かつ、こういったことが起きないようなあり方を考えていく必要があろうかとは思います。

神田参考人 性能規定化という形で平成十年に導入されたわけでございますけれども、実際に、それが性能規定化という形で、性能が見える形の設計というふうな運用にならなかったということが最大の問題だというふうに思っております。それは、やはり技術といったものは社会の仕組みの中で非常に密接に結びついておりますので、一年、二年の審議で設計法を変えるというような形にはとてもならないんだと思うんですね。

 ヨーロッパで、EUが統合することによって各国の構造基準を、経済統一ということもあって、ユーロコードというのをつくって議論しておりますが、これなどもやはり十年、十五年議論しております。十年、十五年議論する中からある程度様子が見えてくるというような形だと思うんですが、性能規定化にしますということを法律で決めて、二年間で施行令、告示を全部つくってしまった。それが現在の技術の流れと余りにも別の、机の上でつくってしまったということがやはり矛盾をいろいろな形で出しているのだと思います。

 法改正というのは、そういう意味で、拙速になることが世の中にとって、方向性が与えられるという形であればいいんですけれども、それが決まりになってしまうとなかなか実態と違った形で機能してしまうということがあって、性能規定化の場合も、例えば風とか雪の場合ですと、再現期間を幾つにするということが最低基準だというふうになっておりますので、もう少し長い再現期間にすることで性能が上がるということは見えるんですけれども、地震の場合などは、そういった性能がどういう形で見えるのかというのは非常に見えづらくなっております。

 再現期間も、解説などでは国土交通省などの御説明にあるんですけれども、法文の中にはその性能がなかなか見える形になっていない、そうすると、性能規定と言っておきながら実際は非常に詳細な規定になってしまっている、そういった実情だと思います。

大越参考人 この議論の前段として私は一つお伝えしたいと思いますが、阪神大震災以降に、その翌年一九九六年に、実は官庁施設については、官庁施設の安全基準として、重要度係数を含めた、それから免震、制振を含めて、建物のカテゴリーを安全基準から五つに分けております。ですから、そういう意味で、政府の建物いわゆる官庁の建物はちゃんとそういった性能が区別されて設計されております。一方では、民間の基準については、最低基準であると言っておいて、例えばデパートではどうするとか、それから高層のをどうするということは実は何ら触れずに、最低基準という形でつくられてしまったわけです。

 そういう中で、本来、平成十年の仕様から性能規定に至ったというのは、この複雑な流れ、つまり性能規定が何であるかということをその当時国民にちゃんと知らせなかったことが問題であって、やはり、官庁の建物はこんな五のカテゴリーがあるよとか、そういうのを本当は言わなくちゃいけないんですね。その上で、基準法は最低であるということを言って、その最低の議論をした上で、そういったカテゴリー、自分の建物はどういうカテゴリーにあるか、そういう性能ですね。これは車だったらもうはっきりしているわけですね。そういうぐらいに、建物も、ある意味では最低の建物と、それからちゃんとした建物はどうだという、そのカテゴリー分けをする必要がある。ですから、それを国民に言わなかったことが私は問題だと思っております。

 ちょっと補足しますと、それをバックにしているのが、今、住宅性能表示制度です。ですから、それは本来ペアで、それも二〇〇〇年の前の一九九九年に品確法の方が先につくられておりますから、これをペアだという理解がないとなかなか難しいと思います。

斉藤(鉄)委員 大越参考人にお伺いいたしますが、専門家の資格制度、構造設計士とかそういう専門家の資格制度を設けるべきだという御提言をされております。これに対してはいろいろな反対意見もある。例えば、設計事務所協会とか意匠設計をされている方からは反対意見が強いようでございますが、今回の事件を考えれば、構造設計をされている方、また、そのほかの専門の人たちも表に出て責任を明確にすべきだと私自身思いますけれども、この点について、設計界にそういう反対意見があるということを踏まえて、それに対しての御意見をお伺いできればと思います。

大越参考人 今の御質問、全くおっしゃるとおりで、本来、先ほどの繰り返しになりますが、日本だけ唯一、建築家とエンジニアを一緒に混同して、ある意味ではみんなわかったような形でつくられている。そういう中で、今回の法案も、多分資格制度が後回しになっておりますので、非常に苦しい提言がされております。

 それは、やはりこれは多分本当はペアで議論していただくと非常に明快だったと思うんですが、責任一つとっても、今回つくられた責任で、あくまでやはり元請の建築家になります。それから罰則規定についても、資格がないのでしたら罰則できませんよね。そういう意味で、確かに、認める、つまり社会的に専門資格と認めると同時に、罰則規定もありということにしておかないとやはり何か、今、多分審議中だからそうなんでしょうが、もうこれは世界的に見ても当然の制度だと思っております。

斉藤(鉄)委員 時間的に見て最後の質問になろうかと思いますが、野城参考人にお伺いいたします。

 緊急調査委員会の報告書の「取りまとめの視点」におきまして、建築物を消耗品のごとく考え、すぐれた建築資産を構築し、長期にわたり大事に利用するという認識の欠如ということを挙げておられます。このことについてちょっと教えていただけますでしょうか。

野城参考人 今の文言は座長をされました巽先生の言葉でございますけれども、意図しているところは、先ほど申し上げましたように、消耗品と考えれば、目に見える性能だけに着目して購入すればいいだろうというような風潮が助長されるわけでございます。

 これは先ほど申し上げましたように、長い年月にわたって使う、そうしますと、先ほど大越先生がおっしゃいましたように、必ず台風や地震や雪になっていくということを想像すれば、やはり目に見えざる性能に対する関心は一般の方々がどうしても払わざるを得なくなっていくかと思いますので、そういう意味で、消耗品ではなくて、これは長く使う、あるいは住み継いでいくものであるといったような国民的な意識が出てくることが、目に見えざる性能、その代表としての構造性能に対しての関心を高め、供給者に対して購買圧力をかけて建物をよくしていくような手がかりになるのではないか、そういう気持ちを込めて書かせていただいた次第でございます。

斉藤(鉄)委員 本当にきょうはありがとうございました。

 今回対象になっております改正法律案だけではなくて、長期的にわたってこの建築制度について議論をして、制度をよりよいものにしていかなくてはいけないというのがこの委員会の共通認識でございますので、きょうの御意見、本当に参考にさせていただきます。本当にありがとうございました。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党の穀田恵二です。

 参考人の諸氏には、本当にきょうは貴重な御意見をありがとうございます。

 座って質問いたします。

 まず、神田先生にお聞きします。配付された資料によりますと、「設計者が独立性を維持し自律的な判断の保証される制度こそが、安全性確保のための制度設計ではないか。」とおっしゃっています。この点で、いわば設計者の独立性という問題は決定的だと私はこの問題について考えているんですけれども、どのように担保すべきかお話しいただければというのが一つです。

 二つ目に、先ほど九八年の法改正の問題について、性能で見るということがありましたけれども、あわせて民間開放ということがございました。それでいいますと、例えば検査機関というのは、私、実は日本ERIの社長に質問しまして、厳しくすると逃げるということで、いわばお客さんとしての顧客の扱いをしているということが明らかになりました。

 検査機関は、厳しい検査をすればするほど、つまり、よい仕事をすればするほどお客さんから敬遠されてしまうという立場にある。普通、よい仕事をすれば歓迎され、悪い仕事をすると敬遠されるという形で、悪い業者は自然淘汰されていくのがいわゆる普通の市場原理かと思うんですが、しかし、検査機関はこの関係が逆転し、正常な市場原理が働かないという現実があるんじゃないか。その中に潜んでいる重大な問題というのは、コストダウンというものが貫かれている点に非常にありはしないか。

 まず、この二点についてお聞きしたいと思います。

神田参考人 設計者の独立性という問題ですが、特に構造安全の問題に関しては、やはり構造技術者が自律的で独立の判断ができなければいけないわけでありますけれども、現在は、多くの場合がやはり下請的な状況に置かれております。雇われている身でああしろこうしろということはなかなか言えないわけでありまして、そういう意味で、制度的にどのようにしていくのかということになりますと、構造技術者あるいは構造設計者が、社会から見てもこの人が構造設計者だ、自分も、私は構造設計者であって、建築総括はやらないけれども構造はやるんです、そういったことがやはり見える形にしていくことが一番大切なことだというふうに思います。

 もちろん、契約の仕組みですとか、それから例えばゼネコンの中の構造設計者の役割をどうするのかとか、細かい議論はいろいろ残ると思いますけれども、今は、まさに構造設計者が完全な匿名性の中にあって、建築士と一くくりにくくられて、多分十分の一ぐらいしか構造設計者はいないと思うんですけれども、外から見るとだれが構造がわかっている人か全くわからない。そういう中では、社会の信頼に足る仕組みという形にならないんだろうと思いますので、そこを変えていくことがポイントだと思います。

 それと、民間開放のことに関しましては、平成十年の段階で、今までは税金で確認検査をしていたわけですね。実際に申請料をもらっておりますけれども、確認審査に費やす時間とかコストはそれを上回っておりますので、税金がかなり補てんしていた形になっていたと思います。ですから、それを民間機関に移行した場合に、それだけでは業務が成り立たないんですね。それだけで業務が成り立たないということになると、ほかの会社から出向で来てもらうですとか、ほかの仕事をやりながら確認検査をやるというような形でないと成り立たないということが、やはりゆがんだ形でのスタートになってしまったのではないかというふうに思います。

 ですから、民間機関で公共的なことをやってはいけないということはないと私は思うんですけれども、民間がやるのであれば、コストと人が適切に配置できるということを十分検証した上でスタートしなければいけなかった。それがやはり拙速だという私の意見でございまして、今回も、構造計算の適合機関をつくるとおっしゃっているんですけれども、それをやる人がいるんでしょうか、あるいは、どのくらいコストをかけてやるんでしょうかというあたりの議論が全くされないで、機関だけつくるということになると、やはり全く同じ問題が出てしまうのではないかというふうに危惧しております。

穀田委員 ありがとうございます。特に最後の方では、同じような危惧を私も覚えます。

 次に、野城参考人にお聞きしたいと思います。

 緊急調査委員会中間報告では、やはり検査の公正並びに中立性の問題について語っていまして、民間機関は建築主からの圧力を受けやすい立場にある、こういうことにかんがみて、民間機関が確認事務を適正に行うための動機づけの問題が大切だという、大体そういうことを触れています。

 その中で、利潤追求を目的とする株式会社等において、株主への利益還元及び顧客へのサービス向上と国民の利益の保護が対立相反する場合が多々ある、国民の利益の保護に立った行動を当該機関がとるための行動規範の整備の問題が極めて重要だと。この点、私はとても大切じゃないかと思うんですね。このことの意味している点、国民的に言えばどういう点を今理解してもらうべきかというあたりはいかがでしょうか。

野城参考人 二点ございます。

 一つは、実は民間へのこういった業務の委託でうまくいった例としてあるのは、例えば、日本の住宅性能保証機構に当たるNHBCという民間の会社が英国にございますけれども、ここは保険を付与している。そうすると、その保険の検査員としてNHBCの社員が足しげく現場に通い、検査をするわけでございます。そういった人々に日本で言っているところの中間検査を自治体が委託するというのは、これは双方の利害が一致しているわけでございまして、大変うまいやり方だと思います。

 先ほど申し上げた、二つのベクトルが相反する側面があるということ、今思えば相反するということがあり得る。そうすると、やはり、民間企業としてこのような社会理念を持ってやっていますよ、国民の利益に基づいた業務をしていることが我々の会社の存在意義だということが確実に見えないと、逆にお客さんが来ないような構造をつくり上げていかないといけないのではないか。つまり、あくまでも当事者の利益ではなくて国民の利益にしている会社が信用されて、そうした民間機関にこういった確認業務が行われるような仕組みによって、そういった内在しているベクトルの対立を何とか補正できるのではないかなというように思いながら、そういった報告を書かせていただきました。

穀田委員 ありがとうございます。しかし、なかなかそれは難しいんですよね。しかも、現実の市場原理の働きというのは、どちらのベクトルで動いているかというのはなかなか現実は厳しいものがありまして、私はその点を危惧するものです。

 村上参考人にお聞きします。

 村上参考人だけが、ごめんなさい、神田さんも言われましたけれども、救済について言及されましたので、一言ちょっとお聞きしたい。

 今、政府の提案で、現実に進行している事態というのはなかなかうまくいっていないと私は考えているんです。やはり不備がある。その最大の問題は、二重ローンをどうするのかということが解決されていない点があると思うんです。

 住民は、被害者の方々は何ら責任がないわけで、とりわけ銀行も責任の一端があるということを述べられて、実は、自民党のワーキングチームも金利の減免などを初めとした銀行責任ということを言っています。私もその問題について銀行責任もあるんだということを言っていまして、その辺は、参考人、いかがお考えですか、率直のところ。

村上参考人 お答えします。

 いわゆる金融に関する問題、私、分野外でございますし、今回の建築分科会等でも全く審議していない状況でございまして、申しわけございませんけれども、お答えする情報を持っておりません。申しわけありません。

穀田委員 わかりました。でも、現実問題というのは、救済をどうするか。そこは、先ほど神田参考人が分けてということも文章の中で書いていましたけれども、これは緊急に解決すべき問題として、党派を超えて、今の窮状をどうするかということについては知恵を集めたいと私は考えています。

 そこで、大越参考人にお聞きします。

 先ほどもありましたが、日本の建設、建築全体の業界に占めているのは、貫かれている問題は、実はコストダウンという問題が非常に多いと思います。

 その点でいいますと、これは緊急調査委員会の中間報告でも、「建築ストック重視社会への転換」として、スクラップ・アンド・ビルドの体質からの脱却の必要性を述べておられます。そして、JSCAの場合の問題でも、試算でいいますと、耐震性を基準法水準の設計から免震設計にグレードアップしたマンションの場合、建設費は一〇%高くつく、しかし、耐震のグレードが上がれば上がるほど大地震の修復費用は少なくて済んで、建設費と修復費の合計は二〇%程度安くなるということが言われています。これはそのとおりだと思うんです。

 こういう問題が、私、今大事な時期に来ているんじゃないかと。つまり、今、つくる側も安ければいいと。あの一連の、今回の事件であった圧力というのは、鉄骨だとかその他安くしろ、ホテルの場合も、どういう工法で安くできるか、そしてさらに検査機関の問題についても、早くどうしたらできるか。早くできるというのは結局コストなんですね。こういう中で、実は、それを規制緩和という土台の中で進めたというのがこのあだ花が咲いた問題じゃないかと私は考えています。

 そういう意味でいいますと、コストというのは正当にかかるものだ、そしてまた、生涯コストというのはこういうものなんだ、また、本来的にいいますと、今のスクラップ・アンド・ビルドの体質から脱却が必要なんだ、こういうあたりについて、いわばつくり手の側として、またそれを支えるものとして、きちんと訴えていく必要があるんじゃないかと思うんですが、その辺についてのお考えをお述べいただければ幸いです。

大越参考人 私は構造設計者ですから、我々アンケートをとりましても、実は黙って丈夫にしているんですね。というのは、先ほど、自分ではやはり社会性があるし。ただ、こういうだんだんオープンになりますと大変難しくはなってきますが、個々の設計者は、私たち約二千棟をチェックしておりますけれども、やはり鉄筋を減らそうというのはいないんですよね。姉歯氏しかいなかった。そういう意味で、ですから設計者は基本的には、先ほど言いましたように、プライドの問題からいうとかなり真剣に考えてやっております。

 ただ、このコストダウンの問題は今に始まったことではございません。霞が関に始まって、プロジェクトをつくるときには必ずやはりコストダウンの問題というのは出ております。でも、それでめげるような人は、本来、構造設計者の資格がないわけですね。

 ただ、一つ問題は、逆に、今回、偽装事件以来、四月にアンケートをあるところでとっておりますが、では買う人は何を重視するか、逆に言えば、安全性を何番目に重視するかというのは、実は残念ながらこういう事態でも四番目なんですね。ですから、今回のいろいろな問題を含めて、国民が本当に安全性、つまり社会資本として百年もつ建物をつくろうという気構えが、いわゆるこういう上層部だけで議論していても始まらないと思います。そういう意味では、やはり大事なのは、国民に対する教育をちゃんとしないといけないのではないかと思っております。

穀田委員 国民的合意というのが必要だなということを改めて思うんです。

 私は、ただ、スクラップ・アンド・ビルドというのは、では、つくる側からそういうふうに求めたかというと、そうでもないわけですよね。ですから、与えられたものでして、その辺はなかなか難しいなと思うんです。

 したがって、設計士のそういう地位の問題につきましても、先ほど諸先生からお話がありましたように、みずからのコストという問題でさえたたかれるという問題について抗することができないという事態についても、これは社会的にも明らかにして頑張っていきたいと思うんです。問題は、再発防止のために私どもも頑張りたいと思います。

 きょうは本当にどうもありがとうございました。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 お疲れのところ大変恐縮でございます。社民党の日森文尋と申します。座って質問させていただきたいと思います。

 野城先生にちょっとお伺いしたいんですが、緊急調査委員会の最終報告で、「大臣認定プログラムであっても、構造計算の内容の適正さを保証するものではない」というくだりがあるんですが、そうすると、現在の大臣認定プログラム、この制度も含めてなんですが、ここにどこか問題点があったということなんでしょうか。

 ちょっとまとめてで申しわけございません。それが一点と、それから、最終報告の中で同じく、行政の対応についてというところで「通報のあった情報の扱い、」というのがございまして、そこで幾つか具体的な提言を行政に対して行っていますが、国土交通省は具体的にどんなリアクションがあったんでしょうかということが二点目。

 もう一つは、まとめてで申しわけないんですが、先ほど話が出ていました青田売りの問題なんです。これも最終報告で「「青田売り」の課題」というところがあるんですが、先日の新聞を見ていましたら、建築Gメンの会顧問の中村先生は、そもそも青田売りが問題であって、これは禁止すべきだという意見もあるわけですね。この青田売りの問題について、どのような議論がされて、どんな方向に持っていこうとしているのか。

 例えば保険の問題や、それから中間検査、完了検査の問題があるんですが、それがきっちり終わって、この建物は安全に住むことができるんだという確認ができるわけですね。本来、その上でそもそも建物を販売するというのが常識的な線なんだけれども、現在はそうなっていなくて、もうどんどん広告、つくる前にばんばん売っちゃっているという青田売りの問題について、ちょっと御見解をお聞かせいただきたいと思います。

野城参考人 まずプログラムについてですけれども、誤解のないように申し上げたいのは、プログラムの機能に瑕疵があるというより、入り口と出口でございまして、要はその入り口部分で建築物をどのような構造のモデルとして考えていくか、そこに先ほど申し上げたように裁量が入りますが、その裁量の適切さを保証するものではない。

 また、先ほど例を出しましたように、多くのプログラムというのは、建物がマッチ棒のような、いわゆるシングルラインの線ででき上がっているようなモデルになっておりますので、それに必要な、断面に必要な鉄筋の本数が出てくるんですけれども、先ほど申し上げましたように、具体的にそれが現実の断面に入るかどうかということを検証するような機能はプログラムにございません。

 これは、私どもが調査委員会で伺ったプログラムの開発の方々が言うには、当然これはプロの方がお使いになるいわば一種の電卓であるので、まさかそんなことまでプログラムの中で面倒を見るつもりはありませんということでございまして、ですから、プログラムの計算過程そのものの問題ではなくて、入り口と出口についてはむしろそれは人の問題であるという意味で、そういったことを書いてございます。

 二つ目の「通報のあった」云々でございますけれども、報告書では三つほど指摘しておりまして、一つは、神田先生初めいろいろな方々が危惧をされたような、現行制度に対する危機感が担当者に薄かったがために、通報があったときに非常に現実感を持って対応しなかったことが一点。それともう一つは、実際、問題が深刻だということで情報を集めようとしましたけれども、図面が散逸、散在していたという点。そしてさらに、その図面が集まったものについて検証するような役所の内部の人材が極めて限られていたという点が、通報してから事態を把握するまでにおくれたことは大変問題であるということを書かせていただいています。

 三点目でございますけれども、青田売りの件でございます。これは私も建築技術者の端くれですから、いかに現場の監理によって建物の品質が違うかということを肌身で感じておりますが、一般には、先ほど申し上げましたように、事業をされる方からしますとできるだけ資本の回転を速くする、つまり、一たん投資したものが売れたという気色があれば、またそこで借金をして次の事業に移れるというようなことで、これはまさに資本を回転していこうという方の論理が先行しているわけでございまして、これは禁止するのはともかく、少なくとも、こういった青田買いをすることについては大変なリスク、不確実なことを含めてお買いになることなんですよということは、国民的な常識にしていく必要があろうかというふうに思います。

日森委員 ありがとうございました。

 神田先生にお伺いしたいんですが、建築基本法制定準備会の会長もおやりになっていらっしゃるということなんですが、その準備会の基本制度部会中間報告に対する意見書というのがございまして、もちろん先生の方でお書きになったものなんですが、その中で、「確認制度の維持強化よりも、建築の質向上のための実効性のある具体案を」というふうに提唱されています。ということは、現在の確認制度そのものに問題点がある、先ほど来の話で大体わかったような気もするんですが、何かそういう問題点があるのかどうかお聞きをしたいということが一つ。

 それからもう一点は、これは基本的な問題で、具体的に先生の御本を読んでいないものですから大変失礼なんですが、現在の段階で建築基本法がなぜ必要なのか、この基本法をなぜ今つくっていかなければいけないのかということについて教えていただきたいと思います。

神田参考人 一番目の、「確認制度の維持強化よりも、建築の質向上のための実効性」ということに関しましては、そもそも、性能設計あるいは品確法とかいったものが、建築物の性能がよりよいものをつくるというインセンティブを国民に植えつけようというのがねらいだったというふうに思います。

 それがやはり実効を伴うような仕組みをどうするかということを考えていく必要があると思いまして、それは、平成十年の法改正のときも自己責任というようなことは随分議論されたのでありますけれども、建築主がどういう建築をつくることによって社会がよくなっていくのか、あるいは社会資産の構築になっていくのかということを認識できないと、よいものをつくるというインセンティブも働きませんので、単に審査を厳格にするという方向ではない方向で、質を上げていくという方向で、結果的に最低のものも上がっていくというような方向をやはり目指す必要があるだろうと。具体的には、もちろん資格制度の整備とかいったことにつながるかと思っております。

 二番目の御質問、基本法のことでございますけれども、これも先ほど御質問のときにもお答えしたんですが、やはり一九五〇年代と現在で社会の状況が大きく異なっております。先ほど来ストックの話もたくさん出ておりますけれども、たくさんあるストックをどういうふうにしていくのかというようなことは、そもそも建築基準法の中で目的として整備されている問題ではございません。建築基準法が目指してきた位置づけというのは、最低のものを、そのかわり効率的につくっていこうというような法律でございますから、やはり建築の理念ということになりますと、つい先ごろ議論されたかと思うんですが、住生活基本法、あれも住宅はそもそもいかにあるべきかという議論がその中でなされていると思います。

 しかし、建築基準法が実質的にさまざまな形の縛りになっておりますので、やはり建築の理念を社会の中で確認して、憲法のようなものかと思うんですけれども、単に財産権を守るということではなくて、隣に家が建つときにその環境をどうするのかといった権利、いろいろな形の、人権も含めて、建築がいかにあるべきかという議論から基本理念というものを構築して、それから関係各位の責務を明らかにする。関係各位の責務も、建築士には専門資格があるから責任があるということになるんですが、建築主の責任というようなことはほとんどうたわれておりません。でも、やはり、こういうストック社会の中で建築主の役割というのは非常に大きいと思うんですね。

 現在、我が国でも、土地基本法ですとか、住宅も基本法がございます。それから、景観に関しても基本法的な役割の法律ができてまいりました。やはり今、建築に対しても、そもそもどうするのかという議論をしていただいた上で、それに見合った形で、さまざまな、膨大な数の法整備をわかりやすい形に再構築していくということが大切ではないかと思っております。

日森委員 ちょっと僣越ですが、住生活基本法に対する先生の御評価はどんなことでしょうか。ちなみに、私ども、反対をした経過がございますので。住宅局長、申しわけございませんが。

神田参考人 昨年の五月ぐらいに朝日新聞に書かせていただいたのがあるんですけれども、基本理念のところでは、やはり、住宅に居住している人、利用している人が保護されなければいけないとか、住宅も長く使うものであるとか、あるいは、最初の御質問にございましたか、例えば木造の技術をどうやって伝承していくのかとか、理念的には大切なことがたくさん書かれておりますが、責務の部分がいま一つ明らかになっていないような気がいたします。

 それから、もしそういう、そもそも住宅はこうあるべきだということを実現していこうとするのであれば、それに合わせて建築基準法も根本から変えていくというようなことがやはり必要だと思いますが、そのあたりを触れずに法律だけつくればということにはならないと思いますので、これから、基本法というのはそもそも、つくった後でその後施策がどう展開されていくかということがポイントだと思いますので、そういう議論をしていただければと思っております。

日森委員 ありがとうございました。

 もう時間が余りございませんが、大越先生にお願いしたいんです。

 協会の方で限界耐力計算法について見解をお示しになっていますね。この見解と関連するんですが、先ほど来話が出ました、今、経済設計というのが大変大きな問題になっているんですが、これについて御意見があったら、率直なところをお聞かせいただきたいと思うんです。

大越参考人 現在使われています許容応力度等計算法というのは一九七〇年代につくられて、もともとそろばんと計算尺、多分御存じないと思いますが、そういう時代の実は法律なんですね。そういう意味で、ですから安全率は非常に高くとってあります。というのは、わからなかったわけですね、昔は。それで、現在、その後二十年の近代科学の発展する中でより細かくつくられて、ですから精度を上げていく。限界耐力は二十年後にできたわけですから、そういう意味で、ある条件で正確に解析できればできるほど、結局は安全率は下げていきます。

 そういう意味では、あるところは経済的になりますけれども、実はこれは、地盤のいいところに対しては確かに経済的にできます。ただし、地盤の悪いところについては、逆に、もっと不経済な設計を要求することになります。ですから、必ずしも、精度を上げていけば安全率が落ちるから経済的であるという議論ではありません。

日森委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が早いですが、終わります。ありがとうございました。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の皆様におかれましては、本委員会にお忙しい中お越しいただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。私からも数点、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、村上参考人に御質問させていただきたいと思うんですが、日本建築学会では、去る三月九日、「健全な設計・生産システム構築のための提言の枠組み」、こういうものをまとめていらっしゃいます。その中で、法令規制強化というものは必ずしも構造安全性の向上には結びつかないということ、また、むしろ、建築主及び建築の設計、生産にかかわる関係者の自己規律性が十分に強化されるということが、今回の事件の根を絶ち、国民に安全、安心な建築を提供するための根幹である、こういうふうにされております。

 関係者の自己規律性の重要性を強調されておりますけれども、その考え方は、世間やマスコミの認識とはずれがあって、審議会の議論や国土交通省の認識、そして、今回提出された法案とも方向性が異なっているのかなというふうに思います。

 建築学会の会長でありまして、また、社会資本整備審議会建築分科会の会長でいらっしゃいます参考人の御見解をお聞かせいただきたいなと思います。

村上参考人 建築学会の場合には、建築界全体をにらんで、どういうふうにすればいい社会資本としての建築ができるか、そういう形で建築学会としての報告をまとめております。社会資本整備審議会の建築分科会は、行政的な法令に絞って検討しております。ですから、初めから議論の枠組みが建築学会の方が広いわけでございます。

 それから、建築の専門家は、いい建築をつくるためには法令規制だけでは不十分で、建築関係者が自分たちでいいものをつくる、そういう意欲なしには決していいものはできないということは、これは多分、皆さん共通認識だと思うのでございます。

 建築学会ではそういうところを強調しておりまして、そういう自分たちの自助努力がまず第一で、それを補完するものとして法令規制がある、そういう位置づけになっておりまして、補完する法令規制の部分に関しては、私は、建築学会の主張と建築分科会の中間報告はおおむねそろっている、そういうふうに判断しております。

糸川委員 ありがとうございます。

 続きまして、野城参考人にお尋ねしたいんですが、野城参考人は、国土交通省の構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会に委員として出席されておりました。一月十八日に開催された第三回の委員会におきまして、私見未定稿、こういうもので断りながらメモを提出された。

 その中で、耐震性を含む建築の安全性を担保する柱として、諸法令に基づく建築に対する規制ですとか、それから、建築の生産にかかわる当事者みずからの努力の推進、保険に基づく安全性、信頼性の担保、この三つを挙げられていらっしゃいます。これが実際、建築学会が三月九日にまとめられた「健全な設計・生産システム構築のための提言の枠組み」というものの最初に、提言にかかわる基本認識としても記述されておるわけでございます。

 これら三つの柱に着目して、今回のこの構造計算書の偽装問題の本質、そして今後のとるべき対策として、参考人の御見解をお聞かせいただければと思います。

野城参考人 きょうの冒頭に申し上げましたように、包括的な、ですからこれは、ただ一つある施策をとったからといって今回の問題が解決できる問題ではない。やはりこれは、からめ手でさまざまな政策を複合的にしていかないといけない。それが今御紹介いただきましたような三つの柱でございまして、ですから、これは単に法令の規制だけではなくて、情報を流通させるとか、あるいは保険制度をさらに拡充するといったようなからめ手が必要だろうということで、そういった記述をさせていただいております。

糸川委員 ありがとうございます。

 もう余り時間もないんですが、ぜひ皆さんに一言ずついただきたいので、大越参考人にお尋ねいたしますが、三月九日に建築学会がまとめました提言の枠組みというもので、基本認識の一つとして、構造技術者の偏在というものを挙げております。構造設計にかかわる高度の知識経験を持った構造技術者の大半というものが、構造設計事務所、それから大手の設計事務所ですとか建設会社などに所属されておるわけでございます。

 そういうことで、参考人自身も建築構造技術者でいらっしゃいまして、また技術者団体の代表でもいらっしゃいますので、例えば、工学的判断も含めて高度化した構造設計の技術的適切さというものを第三者検証しようとしても、検証する側である特定行政庁ですとか民間確認検査機関側において、検証される側である構造設計者に匹敵するだけの構造技術にかかわる専門的能力を持った人材は限られている、こういうふうに指摘されていらっしゃいますので、今御紹介したような指摘というものがそのとおりであるというふうにお感じになられているのか、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

大越参考人 前提として、建築の話と工学の話を分離していないので、まず、そこの前提が問題であると考えております。

 そういう意味で、まず建築主事がやらなくちゃいけないのは、膨大な建築六法みたいなものを勉強しなきゃいけないわけですね。ですから、我々が、では構造設計をやっている人がああいう逆の立場になれるかというと、実はなれません。というのは、やはり専門分化が、全く違う分野ですから、建築主事もエンジニアの建築主事だったら多分対応できたと思います。ただし、それでは建築主事になれません、今のでは。

 ですから、そういう意味では、余りにも今の一級建築士、それから建築主事というのはオールラウンドを求められ過ぎているというところの問題で、やはり無理ではなかったかと考えております。

糸川委員 わかりました。ありがとうございます。

 では最後に、神田参考人に質問させていただきますが、神田参考人は、建築基本法制定準備会の代表を務められていらっしゃるわけでございまして、去る四月に、審議会の一月の中間報告に対して幹事会名にて意見書を発表されていらっしゃいます。この中で、「現状認識と確認制度の位置づけにおいて、行政の制度維持のための意図的な表現により歪められており、事件を契機にして国の権限強化を図る部分が強調されたものになっている。」こういう厳しい評価を下されていらっしゃるわけでございます。

 二月二十四日に取りまとめられた審議会の中間報告ですとか、そういうことを踏まえた今回の政府の提出法案に関しまして、主にどのような点が問題と認識されているのか。また、民主党から対案が出されておりまして、政府案と同じ内容も多いんですが、幾つかの主要ポイントで独自の提案を盛り込んでおるわけでございます。これについてどのように評価されているのか、簡潔にお答えいただければなと思います。

神田参考人 今まで申し上げなかった言い方を一つ申し上げますと、やはり今回、こういった事件が起きるに当たりまして、確認の検査済証があたかも安全のお墨つきのような形で利用されたわけですね。あれは明らかに利用されたんだと僕は思うんです。

 本来、マンションを提供する業者だとか設計者、施工者というのは、自分たちの責任において安全なものをつくる義務があるわけですけれども、それを、検査済証があることが安全ということなんだというお墨つきの使い方をした。そういった使われ方は本来の使われ方ではないわけでありますが、それが今回のように、計算の部分だけまたチェックしますよというようなことになりますと、結局、そういった温床をそのまま残すことになってしまう。それが私が一番危惧するところでありまして、本来、問題なのは何かというとやはり建築主であり、あるいは設計者である、その責任の順番が非常に見えにくい改正案になっているということを痛感しております。

糸川委員 ありがとうございました。終わります。

林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十九分散会


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