衆議院

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第6号 平成18年11月29日(水曜日)

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平成十八年十一月二十九日(水曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 後藤 茂之君 理事 中野 正志君

   理事 西銘恒三郎君 理事 葉梨 康弘君

   理事 山本 公一君 理事 伴野  豊君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    井澤 京子君

      石田 真敏君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    岡本 芳郎君

      鍵田忠兵衛君    梶山 弘志君

      北村 茂男君    木挽  司君

      坂本 剛二君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    杉村 太蔵君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      長島 忠美君    林田  彪君

      福田 良彦君    松本 文明君

      宮澤 洋一君    盛山 正仁君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      市村浩一郎君    小川 淳也君

      大串 博志君    逢坂 誠二君

      岡本 充功君    奥村 展三君

      黄川田 徹君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    下条 みつ君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鷲尾英一郎君    井上 義久君

      伊藤  渉君    穀田 恵二君

      日森 文尋君    糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    岡本 佳郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房官庁営繕部長)        藤田 伊織君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            宿利 正史君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  榊  正剛君

   参考人

   (社団法人日本建築士会連合会会長)        宮本 忠長君

   参考人

   (社団法人日本建築家協会会長)          仙田  滿君

   参考人

   (新建築家技術者集団全国代表幹事)        本多 昭一君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十九日

 辞任         補欠選任

  遠藤 宣彦君     岡本 芳郎君

  小里 泰弘君     井澤 京子君

  亀岡 偉民君     木挽  司君

  長崎幸太郎君     杉村 太蔵君

  泉  健太君     市村浩一郎君

  黄川田 徹君     大串 博志君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     小里 泰弘君

  岡本 芳郎君     遠藤 宣彦君

  木挽  司君     福田 良彦君

  杉村 太蔵君     長崎幸太郎君

  市村浩一郎君     小川 淳也君

  大串 博志君     黄川田 徹君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 良彦君     亀岡 偉民君

  小川 淳也君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  逢坂 誠二君     泉  健太君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 建築士法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、建築士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、社団法人日本建築士会連合会会長宮本忠長君、社団法人日本建築家協会会長仙田滿君及び新建築家技術者集団全国代表幹事本多昭一君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、宮本参考人、仙田参考人、本多参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず宮本参考人にお願いいたします。

宮本参考人 座ったままで失礼させていただきます。

 ただいま御紹介いただきました、社団法人日本建築士会連合会の会長をしております宮本忠長と申します。よろしくお願いいたします。

 私どもの考え方と申しますか、新しい建築士法等の一部を改正する法律案につきましての所見を申し上げたいと思いますが、お手元に御参考ということで資料を用意させていただきました。

 現在、建築士の登録者数というのは、御存じだと思いますが、百万名をちょっと超しております。これはなぜかと申しますと、士法ができまして約六十年間の間に、要するに登録をするということにおきましての数でございまして、現在、実務を離れている人や、それから、亡くなってしまわれた方とか、あるいは、代がかわりまして建築士活動をしていない、そういう人が大勢いらっしゃいまして、一級建築士、二級建築士、木造建築士というものを総合しますと、推計、活躍しておられる建築士は大体五十万から六十万ぐらいの間ではないかと推測されるわけです。

 大変あいまいな申し方なんですけれども事実でございまして、実は完全に把握がなかなか難しい状態でありました。その理由は、登録更新制度というのがございませんから、いわゆる資格を取ったときに登録をすれば、そのままずっと現在まで来ている、そういう状況でございます。

 御参考に、ページで申し上げますと一番最後の方に別表一、二とございまして、別表の一をちょっとお目通しいただきまして、一番下の欄で、正確には、十八年の、ことしの三月末現在で、一級建築士が三十二万、それから二級が六十九万、木造建築士が一万四千というふうになっておりまして、トータルで百三万ということになるわけです。

 ただし、これは一つは、二級建築士の場合は、二級を取りまして、それからまた何年か実務経験をして、それから一級を受けるということができます。そうすると、二級と一級、要するに二級のうち、今のこの六十九万の登録者数のうち約三割ぐらいの方が二級から一級へ行っているのではないか、そういうふうに推計されます。そして、その三割ぐらいの方が一級に入っていますから、三十二万二千というのは二級を持っている人もこの中に入っている、そういうふうにごらんになっていただければと思います。

 そういう現状でございまして、実は、私ども、四十七都道府県にそれぞれ単位士会がありまして、法人格を持って、民法三十四条の民法法人でございますが、職業が、建築士の場合には、実態は建築関係の異業種の集まりであるというふうに私は考えております。

 と申しますのは、設計を専門にやる人、それから工事を、施工をやる人、それから構造計算をやる人、それから設備の設計をやる人、あるいは大学で教育関係にいらっしゃる人、あるいは法令といいますか、そういう法令関係の方、そういういろいろな方々がいらっしゃいまして、建築士の資格を持って建築士会を構成しております。

 我々はそういうような立場でございまして、今回、昨年の末から、たった一人の建築士が、大変恥ずかしい、人間としてあるまじき行為を起こしまして、そして多くの人に、国家国民の皆さんに多大な危害を与えてしまった、本当に多くの人々に不信、不安を生じさせてしまいましたことを、私ども同じ建築士の一人といたしまして、本当に深く国家国民の皆さんに謝罪申し上げたいという心境であります。

 そして、二枚目にも申し上げますが、私ども多くの建築士にとりましては、この一年間を振り返りますと、本当に、全国の会長会議を何回か重ね、あるいは役員会を重ねてまいりましたが、義憤とやるせない気持ちと、このままではいけない、そういう気持ちが重なりまして、さらに我々建築士に課せられた課題というのは非常に大きなものであるというふうに改めて認識しているところであります。

 私ども建築士会は、倫理規定を実は一昨年の春につくりまして、これももう士会ができまして五十有余年たつんですが、正式な倫理規定というのを持っていなかったということは、正直申し上げまして、建築士会連合会としても大変恥ずかしいことであったというようなことを、実は、この事件の起きる前にそういう議論がありまして、倫理規定をつくりました。つくっているやさきに、こんなような事件になったという経緯がございます。

 今回、このような状況下にあります中で、国土交通省を初めとしまして国政レベルでこの問題に対応していただきまして、私ども、本当に感謝にたえません。本当にありがとうございます。建築士会連合会におきましても、全国都道府県建築士会の会長初め各建築士会会員の意見、対応を集約して、二度とこういうことのないようにやっていきたいと思っております。

 幸い、今度、見させていただきました新しい改正案というのは、私たちにとりまして、大変、改めて責任の重みをかみしめているところでございまして、今後精進を続けていきたいと思っております。

 士会連合会としましては、建築士法そのものは、先ほども申し上げましたが、建築異業種の皆さんの集まりでございまして、非常によくできている法律だと思っております。これは国際的にも大変評価されているシステムでありまして、かといって、その上にあぐらをかいていたというわけではございませんが、改めて士法につきまして会員全員が心新たに、今後どうあるべきかという、再発防止のためにはどうあるべきかということを議論して、意見をまとめております。

 三ページ目にも申し上げましたように、設計という行為は、建築士が業務独占というのを与えられているわけです、設計監理をするという。設計という行為は非常に広範囲でございますから、構造やそれから設備やそれから施工とか、それから法規はもちろんですが、非常に広い分野の技術というものの専門家、あるいは、そういったものを全部ある程度自分で理解して、その総合が設計という業務だと思っています。

 ですから、設計という業務は、独立して設計だけがあるのではなくて、そういったいろいろな技術の分野を統括するというのが設計の行為だと思っておりまして、そういう意味では、建築士会が、そういうような技術分野の人と交流ができる、情報交換ができるということで、私どもは、士会連合会の役割がそこに特徴としてあるのではないかというふうに思っているわけです。

 ところが、先ほども申し上げましたが、建築異業種の集まりでございますから、一般の人から見ますと、この人は設計をやっているか、この人は工事の専門家、これはなかなかおわかりにならないわけです。それで、我々は、やはり技術の進歩とかそういうものに合わせまして、自分たちの生業として、社会の、あるいは発注者に対してどのような責任を持てるかということをはっきり開示するために、異業種間でありながらも、自分の職業の専門性をはっきり出そうではないかということを、実はこれは二〇〇〇年の初めから研究し出しまして、二〇〇三年からスタートして、やろうということでやっておりますが、たまたま実際に、現在、専攻建築士という制度を我々士会として持ちました。そして、持っているやさきにまたこういう問題が起きたわけですが。

 と申しますのは、一般の人から見て、建築士が、何でもやるんですけれども、何にもできないのではないかというような、そういう不信感も確かにありました。そういうこともありまして、専攻制をつくりました。

 それともう一つ、専攻制をつくりました理由は、資格というのは建築士という国家資格で、これはもう非常に国際的にも定着しておりますので、それはそれで大変ありがたいことだと我々建築士は思っておりますが、その職業の専門性というのは、資格と違いまして、建築士という、あるいはそういう民間の団体で、やはり自主的に職業の専門性を市民やユーザーあるいはいろいろな方に開示しようということで現在やっておりますが、ただ、専門性を開示しただけではこれは信頼もありませんので、それはもちろん認定機関をもって認定するんですが、ありませんので、そこにはCPD、継続能力開発の要するに講習会をきちんとやらなくちゃいけないということでそれを裏づけて、一緒に職業の専門制をスタートしております。

 今回の改正建築士法というものの内容を拝見いたしますと、建築士の資質、能力の向上に関しまして、専門技術分野のうち、一定規模以上の建築について、構造、設備の専門能力を適正化し評価されたことは、大変時機を得たものと賛同するものであります。

 特に、一定の建築物につきましては、建築士資格の専門性につきまして、構造設計一級建築士と設備設計一級建築士を認定し、法適合チェックの義務づけを規定したことは、適切な処置と受けとめたいと思っております。

 と申しますのは、やはり、例えば鉄筋コンクリートの七階建てあるいは二十メートル以上というような建物になりますと、そんなに全国的には数はございません。大体都市部に集中しておりますが、しかし、かといってそれを野放しではいけない。そこにはやはり、構造の一級建築士という資格を持って、そういった素養を持った人たちの中で、構造のスペシャリストと申しますか、そういう責任を負える人をこうやって認定していただいたということ。

 あるいは設備も同じでございまして、延べにしまして五千平米以上の建物というのは、そんなに数はございません。これは都市部、大都市はありますが、地方で見ますと、今の、五千平米の建物というのはそんなにあるものじゃありません。ところが、それに対して、やはり、一級建築士の資格があって設備士の資格のある、そういう人を認定していただくというのは、大変これも大事なことではないかということで、まさに、これからの日本の現状を見ましても、大変すばらしいことではないかと思っているわけでございます。

 やはり、何遍も申し上げますが、新しい法律をつくって改正していただきましても、問題は、それを守る、励行する建築士の資質あるいは倫理、そういったものが一番基礎になります。そういう意味で、私どもは、資質、能力の向上ということをまず念頭に、第一に掲げます。

 それから、例えば受験資格の見直しも大変いいことだと思っているんです。これは、一級建築士が今まで、大学の建築学科といいますが、最近、大学の建築学科にもいろいろな学部が出てまいりました。ですから、これは当然、要するに履修した科目といいますか、学科を履修するという、その履修の内容で受験資格を与えるということも、これも大変大事ではないかと思って、賛成しているわけでございます。

 ただ、問題は、私ども士会連合会、この間も全国の会長会議で議論したんですが、設計をやるというのは、建築士になるには、幅の広い建築生産にかかわる、すべての、いろいろな、さまざまなことを経験して、実務で経験して、初めてまた受けられるのではないか、そういうことで、余り限定してしまうのも問題だから、幅の広い建築生産分野にかかわる人たちも当然受験資格があっていいのではないかというふうに考えているところではあります。

 そういうことでございまして、私どもとしましては、建築士会の特徴というのは、異業種の方が集まっていますので、お互いに顔が見えるんです。そうすると、フェース・ツー・フェースで、この人は今どんなことをやっているかとか、あるいはこの人はどんなような特徴があるかというのがお互いによくわかります。それが自浄作用を働かせまして、建築士会という一つの団体のメリットではないかというふうにして、会員をこれからもふやすように努力したいと思っております。

 時間になりましたので、済みませんが、これで私どもの考えを終わらせていただきます。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、仙田参考人にお願いいたします。

仙田参考人 日本建築家協会の仙田でございます。このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 日本建築家協会は、要は、建築の設計を業とする専業の建築家の職能団体であります。会員は約四千六百人でございます。

 もともと建築の設計というのは、国民の生命財産を守り、かつ文化的な仕事であります。国によってはその法人形態を、弁護士や医師と同じように、株式会社という形ではなく公益的な法人として位置づけているところも多いわけでございます。

 建築家の職能団体は、今から百二十年前に造家学会という形で立ち上がりまして、その後、学術団体と職能団体に分かれまして、戦後、一九五〇年に建築士法ができ、さまざまな経緯を経まして、現在のような建築家協会は、一九五六年に建築家協会が設立されて、その後、設計監理協会と合併した形では、一九八七年に現在の形になっております。初代会長は丹下健三先生であります。詳しくは、お手元に配付資料というか参考資料で、家協会の方から六つの資料を差し上げてございます。現在の話は資料六でございます。

 今回の士法改正につきましては、特に資料一の「「建築士法改正」へ向けて 日本建築家協会からの緊急提言」、これは平成十八年六月に出したものでございますが、それから、この十月に、資料四、「「建築士法改正」の制度設計へ向けての日本建築家協会の要望と主張」というところにまとめてございます。

 私たちは、建築は、国内だけでなくて国際的にも通用する資格でなければならないと主張してまいりました。

 一九五〇年、昭和二十五年に現在の建築士法がつくられたときに、この士法は昭和二十五年四月四日に、衆議院議員の、その当時の田中角栄さんを初め七名の衆議院議員の先生方による議員立法であったわけでございますが、そのとき、「建築士法の解説」というのが出されております。その第四に、建築士法制定の経過と今後の問題というところに、もう既に、欧米におけるアーキテクトは、ストラクチュラルエンジニアに対して、意匠や設計を主としてつかさどるものと考えられている、将来的には、構造、設備を専門とする建築士、設備士のような資格を分離することを検討する必要があるというようなことが述べられております。

 建築士の資格は、極めて排他的で強い資格であります。資格を持っていなければ建築の設計はできないわけでありますが、先ほど宮本先生からも話がありましたが、一級建築士で三十万、二級、木造を入れると百万の登録がありまして、これは極めて多いと考えられます。構造、設備というエンジニア、さらに建築施工、生産にかかわる人たちも包含しているからでありまして、日本建築家協会は建築家という建築設計を行う人を限定すべきだと主張してまいりました。

 世界の建築家の団体、国際建築家連合、UIAというのが一九四八年に設立されているんですが、これは現在百カ国、百三十万人の建築家が所属していると言われております。そういう点でも、日本の一級建築士だけで三十万もいるわけですから、いかに日本の建築士が多い、人口四百人に一人。世界的に見ますと、大体二千人に一人です。中国なんかは日本の大体百分の一ぐらいという形で、隣の韓国でさえも、大体人口六千人に一人というような数字であります。ちなみに、人口二・五倍、国土二十五倍のアメリカでは、ライセンスアーキテクトは十万人ということであります。

 やはり国民の皆さんに、この人が建築の設計を責任を持ってやってくれる建築家かどうかということは、一級建築士という資格だけでは今や判断できないという状況になっています。そういう意味で、やはり私たちは、世界的にも建築家と構造、設備の設計技術者はアーキテクトとエンジニアという形で分離されていますが、そういう形にすべきであるというふうに主張しているわけであります。

 姉歯元建築士によるこの事件も、多過ぎる建築士が過当競争を生んであのような事件が起きてしまったということも言えるのではないかと思いまして、やはり建築設計をする建築士を絞り込む必要があるというふうに考えています。

 国交省の基本制度部会でも、新たな建築士という形で全建築士をふるいにかけるという提案は、日本建築家協会は賛成したんですが、これは反対に遭いまして、最終的な報告書には載らなかったわけでございますが、今回の士法改正も、建築設計士を絞り込む方向を目指しているということは評価できるのではないかというふうに思います。

 講習や研修を受け、携帯用免許証を発行し、受講履歴を示すということは、ある意味ではその方向なんですが、要するに設計というのは総合的で統括的なものなんですね。やはりそういう建築士をきちっと認定する必要があるというふうに私たちは考えております。

 それで、構造、設備技術者については、現在は一級建築士の枠の中に含めておりますが、実際に、例えば設備技術者は約三万五千人というふうに言われておりますが、そこで一級建築士の資格を持っているのは二千人しかいないという状況であります。そういう意味でも、構造、設備については、そういう点で一級建築士の枠の中に入れるというのはやはり問題ではないかなというふうに私は思っております。

 それから、もう一つ、日本の特殊性というところでは、建築設計生産システムの中で、建築設計施工一貫体制というのがあるわけであります。これは古くからの工匠制度によって現在も引き継がれているわけですが、実際には、技術が高度化、複雑化し、そして国際化しています。日本一国のみが独自な手法あるいはシステムというものをとり続けるわけにはいかなくなっているというふうに思っています。私たちは、設計施工一貫、すなわちゼネコンの設計でも設計者の独立性を担保する必要があるというふうに思います。すなわち、設計契約をきちっと交わして、設計者としての責任を明確にすべきだと主張しております。

 建設会社も一級建築士事務所として一般には登録しているわけですが、その名称で設計契約をすべきだというふうに思っています。今回の士法改正では、士法案の二十四条の七で、設計契約前後の説明責任が明確にされたということは非常に評価するわけですが、家協会、私どもの協会としては、設計契約書の確認申請書の添付義務づけというものをぜひ認める方向にすべきだ、確認申請書に必ず設計契約書を添付しなければ受け付けないという形にすることによって、より実効あるものにできるのではないかなというふうに思っています。

 これは、一つには、今の日本の設計の業務環境が極めて悪化しているわけですが、これは二つの理由があって、一つは官工事における設計入札、それから民間の工事におけるサービス設計だというふうに思っております。設計をサービスやただで行うという慣習が特に設計施工一貫の場合にはかなりあるというふうにも聞いておりますが、そういう意味でも設計契約を確認申請に添付義務づけにすることによって、きちっとその設計者の役割と責任を明確にすることができると思います。

 今回、工事監理契約書が工事着工届に添付義務づけ、これは省令でやるそうでありますが、ここでも工事監理というのは非常に重要な部分でありまして、施工会社が工事監理を行うのはいかがか。やはり第三者性を担保する必要があるというふうに考えています。

 今回、この士法改正はどちらかというと安全性の議論が中心でございますが、やはり建築というのはいわゆる文化的な環境をつくっていくものであります。そういう点で、日本のこの建築設計、生産、それから産業全体を考えますと、現在、世界的にも日本の建築家はかなり活躍しておりますが、やはり日本のシステムをよりグローバル化しなければいけないというふうに思っています。特に、今後、日本のマーケットではアジアというものを視野に入れないと、と考えております。

 そういう点では、日本のこの伝統的なシステムのよいところは残しながら、やはりグローバル化というか、そういう世界標準に合わせていくことが必要ではないかなというふうに思っておりまして、そういう点では、今回の士法改正、まだまだ不十分なところもあると思います。

 日本の建築家や建築技術者をよりグローバルなものにするために、今後も日本建築家協会は貢献したいと考えておりますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、本多参考人にお願いいたします。

本多参考人 新建築家技術者集団の本多と申します。

 新建という団体は、建築士、建築家だけでなくて、名称にありますように建築技術者も含んでおります。設備の技術者、電気の技術者なども含んでいる団体です。団体の性格としては、建築運動団体というふうに性格づけております。

 建築運動と申しますのは、建築の在野の、現在の体制に対して批判的に改善をしていく、そういうことを目的としている団体ですが、発祥としては、大正九年に分離派建築会、それから大正十二年に創宇社建築会というような若手の団体ができまして、その流れが戦後、NAU、新日本建築家集団という団体になりまして、さらにその流れとして私どもの新建築家技術者集団ができているという、そんな流れでございます。

 戦前の建築士会は、ただいまの仙田さんの御説明にもあったように、建築士会自身が建築運動というような性格を持っておりまして、建築家の独立、特に工事施工、あるいは材料、部品の企業からの独立ということを掲げておりました。それは運動としてはずっと掲げてきたんですが、現在は、設計施工一体というか、一社でやることも合法というふうになっております。この辺に一つの問題があるというふうに感じております。

 私の意見はこの資料に大体書いております。揚げ足をとりやすいように全部私の発言を書いておりますので、その順に発言いたします。

 今回の改正は、いろいろ問題を含んでおります。不十分であるということは多くの人が感じているわけです。

 なぜ不十分かということを私なりに考えてみますと、姉歯元建築士による建築構造計算書偽装事件、これから起こったさまざまな不安を取り除くための緊急で臨時的な対策なのか、あるいは、建築行政、建築生産、建築法制全体の、これは長年にわたる問題がいろいろ積み重なっております、その山積した問題を抜本的に解決するための改正なのか、この辺がどうもあやふやなんですね。主語を書いていないんですけれども、私の感じでは、国交省自身があやふやなんではないかというような感じを持っているわけです。

 私は、結論的に言うと、今回の改正を臨時的、応急的なものというふうに位置づけて、割り切ってすべきではないかというふうに思っておりますが、全面的にやる場合はどうやるか、それから臨時的にやる場合はどうやるかということを、私なりに考えたことを申し上げます。

 一に、「全面的・抜本的な解決を目指す場合」と書きましたが、従来からさまざまな問題があるものを解決するんであれば、国交省所管だけでなくて、他の省庁、ここに書きましたように、環境省、厚労省、経産省、文科省、法務省など、全体で取り組むというような構えが必要であります。

 その具体的な取り組み方というのはここでは省略しますけれども、基本的に考えるんであれば、まず第一条から書き直さなければいけない。建築士法の第一条は、ここに書きました、下の方ですが、「建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかり、もつて建築物の質の向上に寄与させることを目的とする。」これだけ書いてあるわけですね。これだけでは、建築士がやるべきことがほとんど見えないわけであります。

 二ページ目に参りますが、例えば弁護士法ではこのように書いてあるわけです。これは読み上げませんが、弁護士法それから医師法を引用しておりますが、簡潔ながら専門家としての社会的使命、責任がきちんと掲げられている、そういう第一条を持っているわけです。

 それで、建築士というのは、国民生活の場の快適性、安全性の確保、それから美しい景観の創出、我が国の伝統文化の維持、深化、再生等々課題を持っているわけです。こういうことがまず最初に掲げられなければならないと思います。

 それから、そうした第一条を掲げた上で、その法案の中身には、現在の根本的な問題である設計監理業務の独立はどうやって保障するのか、今までの歴史上の議論も踏まえてそれの解決の方向を示す必要があります。それから報酬規程、これはダンピングが横行してそのために粗悪な設計が多くなっているというのは実情であります。そういうものがどうやったら解決できるのか、そういうことも含めて、全体として問題にしなければならない。そういうことをやるのか、やらないのかですね。

 実際には、今回の法案というのは、そういうところまで触れておりませんから臨時的なものだというふうに思うんですけれども、臨時的なものでありながら、ついでにほかのこともやるというようなことを含んでいるというふうに感じます。

 それは例えば、二の方に参りますが、今回の問題というのは、基本的には構造の問題で起こっているわけです。世の中で議論されたのもそこに集中しているわけですから、構造の部分をきちんとする。それからもう一つは、六月の国会で行われましたように、確認検査の部分をきちんとする。そこのところに限定したらいいと思うんですが、今回の改正を見ますと、構造のついでに設備もというような感じを受けるわけです。

 三枚目に参りますが、設備設計一級建築士というのをつくるというのは、これは机上の論ではないかという感じがします。一級建築士でこれに該当するというか、これからそういう資格を取れる人というのはもう非常に限られています。一方、これは建築士法の二十条の五で決まっていて、しかも施行規則の第二章の三で詳しく規定されている建築設備士というものがあるわけですね。この制度が二十年も続いていて、しかも建築設備士は三万人以上が活動しているわけです。この人たちが問題を起こしたという事件が起こっているわけではないわけです。なぜその人たちではいけないのか。ここは非常に説明不足ですし、むしろ設備設計一級建築士というのをつくるというのは、実際にはなかなかつくれませんから、現場で混乱することは必至であります。そういうものを一緒にやろうとしているんですね。構造のことが臨時に問題になったにもかかわらず、ついでに設備のことを持ち込む、こういうことをやっております。

 それからほかにも、これもちょっと気になったんですが、指定登録機関をつくって、従来は国土交通大臣や都道府県知事に登録していたのを、全部その指定登録機関を民間にするということであります。さして問題がないようにも見えますが、一方で言うと、建築確認を民間に開放したのと同じような問題を含んでいるかもしれません。少なくともこの問題は建築諸団体の中でも十分に議論されていないわけですが、そういうことが、今回、相当な条文数で載っております。

 こういうさまざまなことを一緒にやろうとしている、しかしこれは問題ではないかというのが私の意見です。

 三番に参ります。

 「三、建築基準法等もあらためて抜本的検討を」といいますのは、去年から民間確認機関のことが問題になりまして、この六月の議会で、民間確認機関の指定要件の強化とか、特定行政庁による指導監督の強化、その他の業務の適正化ということが決まったわけです。これはこれでいいんですが、これで全面的に解決したのではなくて、むしろ確認はきちんと公的に地方自治体が行うべきなのでありますが、しかし、今それをすぐ言っても、その能力がないわけです。人的能力も含めて、今すぐ民間確認機関をなくすというわけにいかない。したがって、緊急の問題としては、六月に決めたような業務の適正化でやむを得ないかと思うんですが、本格的にやるとすれば、そこは再検討が必要なわけです。

 四枚目に参りますが、建築の確認というのは、結局、国民の生活、活動の場の安全を確保するということだけでなくて、地域空間の活力を向上する、美しい町並み景観の持続的な創出、その中には伝統文化的な景観の保存という問題も含みます。それらすべてを含めて、都市計画法、景観法を含めて適合しているかどうか、この場所にこういう建物が建つということは地域の活性化のマイナスにならないか、そういうことまで判断すべきものです。

 ですから、姉歯事件以来、これは構造が安全かどうかというのを見るのが確認だというような誤解も一部にありますけれども、本来の確認業務をやるとすれば、首相が言っている美しい国をつくるというのは、ここでやらなければならないわけですね。

 そうだとすれば、確認というのは、基本的には民間企業でできるものではありません。例えばやったとしても、それが公平であるという保証がない。建設会社や住宅メーカーが出資している株式会社が、そんな公平な判断ができるはずがない。あるいは公平な判断をしたとしても、国民から見て公平な判断というふうに信頼ができない。本来、確認は、基本的に国家的な業務としてやらなければいけないと私は考えます。

 百歩譲って、単体規定、建物一つ一つの安全性などについては民間確認機関ができるとしても、集団規定ですね、その地域にとってその建物は将来にわたって問題がないかどうかというような検討は、これはやはり地方自治体でやるべきだろうと思いますし、これから陣容を整えてそのようにしていくべきではないかというふうに思います。

 最後に四番のところですが、四番、一括下請禁止ですね。例外をつくるべきではないと思います。

 今回、そこのところは強化されているとは思うんですけれども、多少抜け道がつくってあるわけですね。三行目に書きましたが、何々以外の建設工事で、発注者の書面による承認を得たときは、一括下請を禁止しないものとすること、こういうふうになっています。これは例外ですね。こういうのをやりますと、これは抜け穴に使われる可能性があります。

 ここのところで、私は、特にこれは基本的な問題を含むなと思いましたのは、考え方の中に、発注者の書面による承認を得ればいいという、発注者の承認ということだけでは困るわけです。つまり、建築というのは発注者がお金を出してつくるので、発注者に非常に決定権限はあります。決定権限はあるんですけれども、実際には、多くの人がその建物を使ったり、その建物に出入りしたり、その建物を見たりするわけですが、その人たちは発注者とは別な人なんですね。ですから、その人たちの利益をどう守るか、ここのところに建築士の仕事というのは非常に重点を置かなければならない。

 したがって、発注者、建築主、あるいはオーナーとも言いますが、その人たちが勝手にやってはいけないんだということを、これは最後のページに参りますが、前に出た社会資本整備審議会の答申にもこんな文章があったので、ちょっと引用したんですが、建築士の行う業務は、法令を守りつつ、建築主の利益を保護するために行わなければならない云々とあるんですが、ここは当然書きかえて、建築主の利益及び建築物の実際の使い手の生命、生活を保護するため、また、町並み景観を創出するため云々、こういうふうに書くべきなわけです。こういうことをきちんとやるには、教育も含めて、国民全体の課題にしていかなきゃならないわけですね。

 そういうことを考えますと、今回の法案については、やはり全体として臨時的、緊急の対処なんであって、今後、建築行政をめぐっては、根本的に検討する必要があるのだということをぜひ御確認願いたいというふうに思います。

 以上です。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大塚高司君。

大塚(高)委員 自由民主党の大塚高司でございます。

 本日は、参考人の皆様方、本当に貴重な御意見、まことにありがとうございます。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 構造計算書偽装問題を初めとする一連の事件が国民に大きな不安と損害を与えたことにかんがみ、再発防止と消費者保護の観点から建築士の業務の適正化を図ることは極めて重要であります。

 そこで、建築士のあり方や建築設計に関するさまざまな課題が、今お話ありましたように、明らかになったと言えます。

 三人の参考人の方々、それぞれのお立場で結構でございますから、今回の構造計算書偽装問題について、その原因と今後の課題についてどのように総括をされておられるか、まずお伺いをいたします。

宮本参考人 お答えしたいと思います。

 今回の事件は、根本的には一人の建築士の倫理観の欠如といいますか、これがとにかく一番の原因だと思っています。やってはいけないこと、これを平然とやったということは、その個人の問題でありまして、いろいろ社会システムはありますけれども、あるいは生産、あるいはいろいろな状況がありますが、問題は、構造計算をやる人、そういう意味では、建築士の倫理観、その偽装を起こした姉歯という建築士の倫理観の欠如が最大の原因だと思っています。

 私ども非常に心配しておりますのは、例えば法律というのは、幾ら強化したり、いろいろなところで縛りましても、それを守る本人たちがその自覚がなければどうにもならない。それで、建築士会としましては、やはり、先ほども申し上げましたけれども、お互いに建築士同士が顔の見える中での、一つの団体に加入して、団体の中でお互いにフェース・ツー・フェースで情報交換していくことによって自浄作用が働いて、建築士の自律性が高まるんだろうと思うんですね。

 どうも私は、一つ、非常に建築士会として反省しておりますのは、建築士会への団体加入のいわば数が、現在では非常に少ないわけです。実際に活躍しておられる建築士が、登録者数は別として、実数では大体恐らく五十万から六十万ですから、そのうちの今士会に入っている人は十万人をちょっと超えているわけですが、ざっと十万としましても、余りにも少ないわけですね。

 私ども士会としては、とにかく各都道府県の皆さんにお願いして、少なくとも、現在活躍している人が五十万とした場合の三割として十五万人ぐらいの方はやはり士会に入ってもらわなければいけないのではないか、また入るべきではないか、そのように士会もやらなくちゃいけないのではないかというような方針を立てております。

 そうすると、結局、十五万人の会員になれば、お互いに見えますから、簡単に言えば、そんなに悪さは人間としてできないわけですね。それと、あの人はどんなことをどうだということ、すべて士会にいると大体わかるんですね。お互いに口では言いませんけれども、大体この人はこういうことをやっているなとか、そういうのがわかります。

 そういう意味で、私は、団体加入をもっと積極的に進めていきたい、そんなふうに思っております。

仙田参考人 仙田でございます。

 家協会としては、その背景は、やはり過当競争であるとか業務環境の悪化であるとかという問題を先ほどお話しいたしました。でも、基本的には、建築家あるいは技術者としての倫理というものは、やはり非常にその問題が大きいというふうに思っています。

 家協会のこのパンフレットのところに、建築家憲章というのを掲げておりますが、建築家協会は、一九八八年、今から約二十年ほど前に、建築家憲章、それから倫理規定、行動規範、こういうものを定めておりまして、それを今までも何回か改定しております。そういうことで、倫理の問題は非常に徹底しようとしておりますが、あわせて、やはり大学においても、この倫理教育というのはよりよくやらなければいけないなというふうに思っております。

 私、大学の教官をしておりましたが、現在の日本の大学では倫理教育が非常に不足しています。この点については、大学でも、今回の事件を含めて非常に大きな課題と考えております。

本多参考人 私もずっと大学の教員をしていたので、同じように考えております。大学の教育の中に、特に技術者教育の中に倫理教育をもっと強く入れる必要があるというふうに考えております。

 それで、先ほどの委員の質問に、私なりに考えていることを少し違った角度から申し上げます。

 姉歯元建築士のような人物がまた出てくるであろうということは予想できます。つまり、たまたま一人ということであれば、一般的に言って、これは起きないはずがないわけです。そうすると、そういうことが起きたことが重大な問題なのではなくて、むしろ、それを、そういう変な計算書に基づく設計をやすやすと確認してしまった、そちらの方に問題があると思います。六月の議会でも、建築基準法改正でその点を議論したのですが、そこのところをきちんとすると。だから、たまたま全く例外的に変なやつがいても、それは社会的なシステムとして防げるのだ、そういうふうにすることが肝要かというふうに思います。

 なお、建築界の中には、あれは例外ではなくてもっといるんだという意見もありますが、私は、かなり例外的な、悪意のある偽装だというふうに思っています。

 もし心配があるのであれば、今まで姉歯関係、あるいは姉歯の関与した建設会社関係のマンションだけ調べておりますが、むしろこの数年のマンション全部について調査して、国民の不安をなくしていただきたいというふうに思っています。

 以上です。

大塚(高)委員 先ほど、倫理教育は大切だというようなお話がありましたけれども、続きまして、管理建築士の責任の明確化についてお尋ねを申し上げます。

 先ほどお話がありましたように、資格があればだれでも管理建築士になれるということから、受注者や丸投げの下請との間でトラブルが本当に絶え間なく起こっているということで、責任の所在をはっきりさせるためにも、管理建築士に監督責任を、病院長並みの管理責任を持たせ、設計等の業務経験と講習などを行い、充実強化が必要というふうに考えておりますが、皆さん方の御意見をお尋ねいたします。

宮本参考人 お答えいたします。

 私は、建築士事務所の技術レベルを担保する管理建築士の管理監督責任を強化することは非常に大事だと思っております。

 これは、今まで甘かったということじゃなくて、建築士事務所協会連合会という団体もあります。これは各都道府県にございます。法人格を持っています。そういう団体への加入がまだまだ足りないのではないかということがありまして、具体的には、そういう団体加入を強化して、そして、監督責任といいますか、これをとにかく強化することがまず第一だと考えます。

 それから、建築士としましては、経験年数だけで、この人は何年実務経験があるからいいということじゃなくて、実際には、実務実績というものを全部登録するといいますか、出すようにして管理建築士の強化を図りたい、そんなふうにやっていただきたいという感じを持っています。

仙田参考人 私は、管理建築士は、今どちらかというと事務所の技術的なマネジメントの責任者という位置づけになっているかと思うんですが、マネジメントじゃなくて、やはりプロジェクトの総合責任者であるべきではないかなというふうに思っております。

 アトリエと言われる少人数の事務所の場合には、開設者、いわゆる管理建築士、あるいは総合的なプロジェクトの各責任を一人で負うわけですけれども、大きな事務所の場合には、管理建築士が一人いて、プロジェクトはそれぞれ別々になっておりますが、いわゆるプロジェクトの責任というのはそれぞれの統括者という形で位置づけられていますが、やはり管理建築士は、何かそのプロジェクトで技術的にもあるいは管理的にも問題があった場合にはすべての総責任をとる必要がある。

 そういう意味では、例えば百人の建築士事務所であれば、二人ないしは三人の管理建築士がいるというような形の、やはり管理建築士は、マネジメントだけではなくて、総合的な、技術的な責任者にもなるべきではないかというふうに思っております。

 また、管理建築士のそういう意味での責任の重大さというところについては、先生の御意見に賛成でございます。

本多参考人 簡単に申し上げます。

 今委員の言われた、監督責任を強化するということに賛成です。

 それは、もちろん実務経験その他を厳しく見て強化していく必要があるんですが、そのほかに、現在の法律では、建築設計事務所の開設者は管理建築士でなくてもいいようになっていますが、これはやはり、事務所の全責任を負うのは管理建築士であるという意味で、開設者は管理建築士であるべきであるというふうに私は思っております。

 以上です。

大塚(高)委員 建築士に対する国民の信頼を回復するためにも、日夜御努力をいただいておりますことにまず感謝を申し上げ、そして、今後とも引き続きまして御努力をいただきますことをお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

塩谷委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。

 本日は、三人の参考人の皆様、本当に貴重な時間をいただきましてありがとうございます。以下、座って質問させていただきますので、お許しください。

 民主党といたしましては、さきの通常国会におきまして、居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案を提出しておりました。その中には、建築士制度の大幅な見直しということも含まれております。今、皆様方に、お手元に参考資料として民主党案の方を配らせていただいております。

 この点に関しましては、消費者の立場に立った、先ほど参考人の方からも発言がありましたけれども、やはり建築士の地位、耐震偽造のあの問題から起きたのは、この地位というものがきちんと確立していない。下請、孫請のような形で、賃金等、そういう意味では本当に大変な中で今仕事をされている、そういったこともありますし、また消費者から見ても見えづらいということもあり、やはりその点をきちんと変えていくこと、地位を変えていくこと、向上させていくことが信頼回復になり、そして何よりも信頼される建築士が生まれるんだという思いをしております。

 何点か質問させていただきますが、事前にお配りさせていただいておりますけれども、ちょっとずつ変えている部分もあります。先ほどお話を伺ってきて、そのほかも少し聞きたいことがありますので、順次質問をさせていただきます。

 まず第一点は、民主党案では、建築士の方々に誇りと責任を持って仕事をしていただきたい、そのためには、建築士の使命、職責、権利義務に関する規定の追加を挙げさせていただきました。今回の政府案では建築士に対するチェックはかなり強化されることになるかと思いますが、政府案では、こういう建築士法のままでは、二級建築士さんやいろいろな分野もございます、専門性ができたという意味では本当にこれは必要なことだと思いますけれども、消費者の側から見るとまた少し煩雑になり、また、信頼性を高めるという意味においてはまだまだ不十分ではないかと思います。

 この点につきまして、三人の参考人の皆様からまず御意見をお伺いしたいと思います。

宮本参考人 ただいまの小宮山先生の御質問、あるいはそういった関連することに関しまして、実は、はっきり申し上げますと、十年ぐらい前からどうしたらいいかと取り組んできました。その一つの形として、お手元の資料でブルーのプリントですね、このような専攻建築士制度、こういったプリントを用意させていただきましたが、実は、専攻建築士制度というものを始めなければいけないのではないかというふうに決まったわけです。これは、四十七都道府県の各士会長からの強い要望がありました。

 と申しますのは、建築士は、どちらかというと都市部の、中央、地方に分けますと、中央に非常に大勢の資格者がいます。地方には比較的少ないんですね。また、建築士会へ加入している人たちは、地方には多いんです。都市部に少ないんです。そういう現象がございます。そういったことも下地にして、やはり市民に対して、今まで自分たちも専門性をもっと情報をなぜ開示してこなかったか、そういう反省の念がありました。

 そういったところからスタートして、建築士のあるべき姿というのは、やはり市民への、あるいは社会への奉仕であるということから考えまして、専門性をはっきりさせようと。ちょうどお医者さんで例えますと、医師でありましても眼科か内科かわかるように、やはり市民の人は建築士というのは本当にわからないという現状ではなかったか、我々はそういう反省から専攻制度をつくりました。

 そして今、専攻制度が、これは資格じゃありません。職業分類による職能制度です。八分野に分けまして、八分野というのは、必ずどこかに該当する職業の専門性です。まずそこからスタートしようと。それで、その認定制度というのをつくりまして、これは第三者機関です。京都大学の名誉教授の巽先生に実は認定委員会の委員長をしていただきまして、そして、この人は本当に設計の専門であるか、この人はこうであるか、構造がどうか、やります。しかも、CPDを履修して、やはりそういう実績がちゃんとなければ認定しませんよと。

 今、全国で四十士会がやっておりまして、約一万名ちょっと現在は認定した人がいます。しかし、もっともっとふえなくちゃいけないと思うんです。実は私ども、もっと、もう一〇〇%しなくちゃいけないんじゃないか、そういう気持ちでおります。それが社会に対する責任のとり方ではないか、そのように考えております。

 以上でございます。

仙田参考人 私どもは、いわゆる今回の士法改正の中で、構造、設備の一級建築士の枠は無理があるというふうに私は先ほども指摘しましたが、それでもやはりそういう専門資格がきちっとできたということは評価できるというふうに思っています。

 あわせて、私どもの資料一あるいは資料四にも書かせていただきましたが、いわゆる統括する建築士というか、最終的に、建築というのは非常に総合的で、安全であることはもちろんのこと、美しく、快適で、また次世代育成のための環境をつくっていかなきゃならない、そういういわゆる総合性を担う、統括する建築士というものをやはりきちっと認定してほしいというふうに考えております。

本多参考人 私は、最初の意見陳述でも申し上げましたように、建築士法の最初に、前書きでも第一条でもいいんですが、委員の言われたような、建築士の使命、職責、権利義務に関してきちんと書くべきだと思います。若者は、建築士になろうとするときに当然建築士法をよく読むわけです。ですから、そこに基本的なことは全部書く、そういう改正がぜひ必要であるというふうに思っています。

 以上です。

小宮山(泰)委員 ありがとうございます。

 今ちょうどお話に出ましたが、専攻建築士制度、継続能力開発制度。継続的職能研修制度、CPDというんでしょうか。今後、定期的な講習であったりいろいろなものをこの建築士法で新しく制度として取り入れていくことになりますと、この点との兼ね合いというものはどうなるかということを、何かお考えがありましたら御意見を聞かせていただきたいと思います。

宮本参考人 士会連合会は、今、個人、建築士がCPDを履修する義務というものをここ数年から始めてやっているわけですが、しかし、これは一建築士会としてやるのではなくて、もっと広げまして、そしてそれをある程度社会的にも、また受ける人にも、あるいは社会の市民の人にも、こういうCPDをやっているんだ、こういうところで履修したんだという、何か証明みたいなものがもらえるようなそういう機関というんですかね、登録と別に、指定講習のようなそういう機関はもう絶対必要だと思っておりますし、また、今度の法律ではそういった方向を明示していらっしゃいますから、大変私どもはありがたいと思っております。

 それと同時に、やはり登録というのも非常に大事でございますが、指定登録の法人というのは、申請して指定登録を受けるか受けないかとなるわけでして、今我々、実は、ちょうどこの十二月の中旬に全国の会長会でその問題を議論して、建築士会の方向をはっきり出そうというようなところでございます。

 以上でございます。

仙田参考人 建築家協会は、先ほどもお話ししました一九八八年の建築家憲章で「たゆみない研鑽」というものを掲げております。

 それで、CPDをずっとやってきているわけでありますが、所属している会員に対する研修、講習はもちろんでありますが、今回の士法改正の中で、いわゆる建築士及び管理建築士について講習、研修が義務づけられる、それの受け皿というものについては、やはり建築家協会としては、建築家協会の別の、いわゆるNPO、例えばJIA建築教育機構とかそういうような受け皿をつくりながら、また家協会独自のCPDもそこで担うという研究開発機構的なものを立ち上げながら、そういうより高いレベルへの建築家の研修を義務づけたいというふうに思っております。

本多参考人 私どもの新建築家技術者集団でも、毎年、建築とまちづくりセミナーというのを泊まり込みでやりまして、勉強しております。また、二年に一遍ですが、それぞれが研究したことを持ち寄って発表する全国研究集会を開いております。また、都道府県別に支部があるんですが、その支部では実践報告会という形で、さまざまな仕事をやっていますから、設計でも、チーフになってやった人もいれば、若い人などはある仕事の一部をやったという人もいます、そういうことも含めて実践報告をして同じ仲間同士で披露し合う、そういうようなことをやっております。

 そういう勉強をしておるんですが、今後、全体的にこういう教育が必要だというふうになってきた場合に、統一的にやっていただけるのか、あるいはそれぞれの団体でやっている教育も認めていただけるのか、その辺、私どもは弱小団体ですので、私どもの中での勉強は正式には認められないなどということになるとこれは困るなというふうには思っております。

 以上です。

小宮山(泰)委員 ありがとうございます。

 第二点は、資格団体による講習、今お話にも出てきましたけれども、規律の維持の課題ということで質問させていただきたいと思います。

 民主党案では、建築士資格団体への加入義務化を提案させていただきました。建築士団体への加入義務化につきましては、審議会では、現在の加入率を考えると現時点での強制加入は難しいとの判断がございまして、実際、そのようにこの法案もなったかと思います。しかし、将来的には、どういった形、一つなのか複数なのか、それとも別の団体をまた立ち上げるのか、いろいろな方向があるかと思いますが、強制加入をある意味実現して、自主自律によるチェック体制というものを確立すべきではないかという思いもございます。

 ぜひ皆様方には、将来的展望も含めましてお答えいただければと思います。時間がないので端的によろしくお願いいたします。

宮本参考人 結論を申し上げますが、我々士会連合会は、建築士の資格者が全員加入してもらいたいというのが一つの悲願なんですね。ところが、いろいろ状況がございまして、今回、登録というような事務を士会がもし申請して許されてやるようになれば、住所、氏名がはっきりしますから、またさらに顔が見えますから、義務化というわけにはいきませんが、できるだけそれに近づけて、全員加入を目指したいと考えております。

 以上です。

仙田参考人 家協会も、建築士、いわゆる設計者の資格団体でございますが、そういう意味で、現在、複数の職能団体があり資格者団体がありますから、そういうところに加入を義務づけるということについては賛成でございます。そうすることによって、講習、研修、そういう能力の向上というところについて担保するというのは必要ではないかと考えています。

本多参考人 私も、国民の信頼を得るためにそういう方向というのはよろしいかと思うんですが、これが決まった一つの団体への強制加入ということになると、いろいろ問題がございます。その団体が本当に、それぞれの建築士が目指すもの、それを妨害しないかという問題を含んでおりますので、そういうことも含めて検討していただきたいというふうに思います。

小宮山(泰)委員 時間が来ましたので、本当は設計、施工、監理の分離ということに関してのことも伺いたかったんですが、最後に一つぜひお伺いしたいのは、この法案、きのうの答弁の中に、英語訳をしますと建築士さんは英語名でもケンチクシということで、残念ながら、他国のようにアーキテクトという英訳がまだつけられないということを伺いました。この点に関して、もしアーキテクトの方がいいと思われる方はちょっと挙手をいただけますでしょうか。――二方。ありがとうございます。

 ぜひ、建築士の地位向上においては、やはりしっかりとした倫理もまた必要だと思いますし、まだこの法案だけでは、この姉歯の問題、こういった信用を失ったような問題を解決できていない。もっと社会的な問題も含めまして、これからまだまだやらなければいけないということを、頑張っていくということをお伝えさせていただいて、質問を終了させていただきます。

 本当に皆様ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 本日、お忙しい中お時間を三人の先生方にいただきましてありがとうございます。

 まず初めに、ことしに入ってからの一連の法改正、その引き金になった耐震偽装の問題、既に一年、ちょうど去年の暮れごろだったと思います、この問題が発覚をして、一時期は、いわゆる施工者の圧力、こういったものによってやむを得ず姉歯建築士が偽装を行ってしまった、ホテルルート、マンションルートといったようなことが大々的にマスコミを通じても報道をされて、あたかも一連の、ぐるになっての犯罪かのような報道がされました。

 しかし、落ちついた議論が進む中で、最終的な司法の場での決着として、今回の問題は姉歯建築士の、はっきり、わかりやすく言えば単独の偽装であったというふうに私は事実関係として認識をしておりますけれども、まず、すべての始まりはここからですので、この点についての三人の先生方の御見解をお伺いしたいと思います。

宮本参考人 お答えいたします。

 やはり建築士は高い倫理観を持たなければいけないということを改めて認識しております。そして、クライアントからのいろいろなニーズを空間としてつくり上げる資質を持っているかどうか、そういった問題も今後取り組むべきではないかということを我々は議論しております。やはり建築士は幅の広い知識と技能というものが要求されるわけですし、そのためには、やはり絶えず研さんする、CPDを通じて自己研さん並びに団体としてもやる必要があるというふうに考えております。

 特に、最近、我々士会として、建築士の中に女性の人が非常に大勢いまして、女性建築士委員会とか青年委員会というのがありまして、福祉関係とか、いろいろそういった社会進出も著しい現況にありますので、そういった方にもおこたえしていくように士会としてはやっていきたいと思っております。

 そして、外から見ていただいても、やはり建築士は、建築士らしい一つの技術と、それから創造する一つの能力を持っている人だというふうに言われるようになりたい。今、そのために研さんしております。

 以上でございます。

仙田参考人 私は、昨年十一月にこの事件が発覚したときに、私自身、建築家でありますが、大変信じられませんでした。それは、やはり日本の今までの建築家あるいは建築設計技術者は、それなりに法を守る、法の範囲というかそういう中でやってきたというふうに思っておりますので、それを破るという、要するに動機がはっきり言ってわからなかったわけですね。ですから、そういう意味で非常にびっくりしたわけであります。

 ただ、今回の事件は、確かに、ある意味では、姉歯という、割かし個人というかそういう倫理観のない技術者の犯罪ではありましたが、ハインリッヒの法則ではありませんが、ある一つの事件の背景というのは、やはり非常に、それを生み出して、あるいはそれを許してしまった部分があったかと思います。また、そういう点については、やはり我々建築界全体がこれを反省して、修正し、そういうものが二度と起こらないような形に教育から含めて考えていかなければならないというふうに考えています。

本多参考人 先ほど申し上げましたように、私は、これまでの報道なども見て今回のは単独犯であるというふうに思いますが、しかし、今仙田さんが言われましたように、そういう側面と、やはり全体的な問題も含んでいると思います。

 それは、構造計算書偽装というのは非常に特異な事件であったけれども、欠陥住宅などというのはたくさん起こっているんですね。現在の法律では、住宅といえども建築士でなければつくれないわけです。それにもかかわらず、世の中に欠陥住宅が幾つもある。これは建築士が何らかの違法をしているわけですから、この辺についてまで含めて、我々は自分たちの団体の責任として解決していかなければならないというふうに思っています。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 冒頭にこのことをお伺いしたのは、この問題ももちろんですけれども、今、立法府である国会の議論も非常にマスコミに引きずられがちであるということ、この場でやはり慎重にかつ真摯に議論をしていかないと、本当に誤った方向に我々自身も進んでしまいかねないという自戒の念も込めて、改めて確認をさせていただきました。

 では、具体的に、こういった事件を制度的に防いでいくためにさまざまな制度改正を行っているわけですけれども、一つには、これもここまでの質問の中で出てきておりましたが、建築士の報酬、要するに、建築士と呼ばれる方に求められる結果に対しての報酬がきちっと担保されているのかどうかという議論がありました。きのうも質問の中で私は出させていただいて、国土交通省としても、ある一定の基準のようなものを考えているところだ、ざっくばらんな言い方をするとそんなお答えをいただいております。

 今そういった動きがある中で、参考になる建築士の対価について御意見をいただければと思います。

宮本参考人 建築士の今の報酬の件でございますね。報酬の件は、現在非常に厳しい状況にある現実は、これはもう既に長い間続いていると思います。

 しかし、問題は、例えば一二〇六という国交省の告示の報酬規定とかございますが、やはり設計という、あるいは建築をつくるという仕事は、クライアントがあって、いわゆる受注関係、受け身が大体建築側なんですね。ですから、報酬は非常に今まちまちになっていまして、我々建築士会としましても、その問題は、特別委員会をつくってそれぞれそのデータを集めまして、やはりきちんとした仕事をするにはきちんとした報酬が必要なんだということをもっと主張し、あるいはいろいろなところへ働きかけをして、一般の人にわかってもらえるようにする努力をもっとやらなければいけないんではないか、そんなふうに思っております。

仙田参考人 報酬の問題でございますが、国交省の方で言われております報酬基準の見直しというのが今回やられるわけであります。これは基本制度部会でも私大変主張したんですけれども、今の報酬基準そのものが二十年前につくられた基準であります。それがずっと改定されてない。やはり、いろいろ設計そのものが、プログラムができてそれをただデザインするという形ではなくて、今、プログラムそのものもつくらなくちゃいけない、住民参加でやらなければいけない、市民参加でやらなければいけないというような、非常に多様化しています。そういう点も含めて、やはり今の設計基準を見直す必要がある。

 それがまず第一なんですが、それよりも、設計報酬基準が地方自治体であってもそのとおり運用されてない、これが一番問題だ。やはり報酬基準がきちっと運用されるようにしてほしいということを国交省の方にもお願いしているところなんでありますが、ぜひ、この辺につきましては、国会の先生方の皆さんの御支援をいただきたいというふうに思っています。東京のある区では、その一二〇六の報酬基準の三分の一で予算化しているというような実態があります。

 もう一つは、設計業務環境を非常に悪化させているのは、先ほど私が話させていただきましたが、二つあって、一つは設計入札であります。要するに、設計を発注するときに、公の場合、それをいわゆる入札という形でやっている。これは世界的にも日本ぐらいしかありません、こんな乱暴なことをやっていますのは。設計料のお金を出させて、それで決めている。プロポーザルだとかコンペとかそういう形で、やはり設計者のアイデア、技術、そういうもので競争して設計書を決めていくという方向にぜひこれを持っていっていただきたい。そうしないと、やはり日本の、要するに建築文化そのものが上がっていきません。

 それからもう一つは、やはり民間のサービス設計です。民間工事で、設計をサービスで行いますよという形で、特に建設会社が多く行っています。これも非常に下げています。ですから、この点は、先ほど言ったように、設計契約を建設会社でしてない場合がすごく多いんですね。工事契約だけはする。だから、設計契約をきちっとしておいてほしいと。そういう形によってサービス設計をなくしたいというふうに思っております。

本多参考人 私も、設計入札を自治体がやるということは、全体に悪い影響がたくさんありますので、ぜひやめていただきたい。それから、設計入札をやめるというようなことをどこかに、法律なりで規制していただきたいというふうに思います。

 それから、これも仙田さんが既に言われましたが、設計と施工を一体にやることによって設計の部分をサービスするとか、あるいは安くするとか、そういうことが行われていては設計専業でやる人の報酬というのは保障されないわけで、そこを解決する必要があると思います。

 しかし、実際には、我々が実際に設計をして、クライアントの人たちとよく話し合って、こういう作業をやるからこんなふうにお金がかかるんだということを丁寧に説明していく必要があるわけですね。頭からこれだけ必要なんだと言っても、それはなかなか理解できない。

 我々の団体というのは、例えば東京の下町なんかで事務所を開いているのもいますが、設計料なんというのは聞いたこともないというおじさん、おばさんたちを相手にそれをやっているわけです。長年やっていますと、既に、工事費の比率でいうと一五%ぐらいいただいたりしています。というのは、設計に係ることを全部洗い出して、お客さんにちゃんと説明すればわかっていただけるわけですね。

 そういう側面も持っていますので、これは建築家の方の努力もこれから必要ではないかなというふうに思っています。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今非常に参考になる御意見で、公共工事のダンピングということも問題になっていますし、きのうの質問でも言いましたけれども、要するに、発注する側、依頼をする側の技術力というか、果たしてこの代物がこの価格でできるものなのかどうかというか、今は、その尺度がどうしても金銭、価格、安ければいいみたいなことになりつつあって、これは非常に危険だなと思っている一人です。

 というのも、やはり建物やインフラというのは、十年、十五年してこないとその本当の姿がわからないというか、それぐらいのスパンがたって改めて今やろうとしていることの問題点というのがまたクローズアップしてくる可能性があるので、その点については、危惧をしている一人としてしっかり取り組んでいきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、一問だけ、仙田先生にお伺いします。

 これは三人の先生方皆さんおっしゃっていますけれども、今回、構造と設備の専門的な一級建築士というのをつくる。建築という仕事を見ていて、確かに、意匠だったりさまざまな専門分野というのはあるし、それをトータルとしてコーディネートする人も必要だと思います。そういう意味では今回の法改正は一歩前進をしていると思いますけれども、最終的な形では決してないんだろうと私も思っています。

 そういう意味で、将来あるべき姿について、本当は三人の先生にお伺いしたいんですが時間がないので、仙田先生に最後お伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

仙田参考人 それは、先ほど小宮山委員からもお話があった、いわゆる今のケンチクシというのは世界用語になっています。やはり日本の建築士というのは割かし特殊なんですね。世界的にはアーキテクトとエンジニアというふうに分かれています。アーキテクトの方には日本の建築士法は今現在なっていないわけです。やはりアーキテクトという総合的な、そして全体に責任をとるという、その資格というところに将来的にはぜひしていただきたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、こういった法改正は不断の見直しがあって初めて成立していくものであると思います。今の世の中の風潮として、何か物事が起こるとぺたっとばんそうこうだけ張って終わりみたいな印象も非常に受けますので、そういうことのないようにしっかり取り組んでまいることをお約束して、私の質問を終わります。

塩谷委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は日本共産党の穀田恵二です。

 三人の参考人、貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 座って質問させていただきます。

 私は、耐震強度偽装によって、設計者側である建築士制度に不備があるという点も明らかとなったと。今回の改正は、建築士の資質、能力の向上、そして設計、工事監理業務の適正化を図って責任を明確にしようというものであって、一定の前進だと私は思います。しかし、耐震偽装事件が投げかけた問題の深刻さは、これらの問題だけでは解決できないと思っています。それは皆さん、私も何度か質問をさせていただきましたし、御承知かと思うんです。

 事件の背景にあったのは建築物の安全を軽視した安かろう悪かろうという競争だったし、いかに耐震基準ぎりぎりに設計するかという経済設計がもてはやされて、発注者などからの行き過ぎたコスト削減要請など、効率優先で建築物の安全を軽視する状況が蔓延しています。こうした中で、建築士が安全を確保する責任など本来の社会的責任、使命を放棄し、それらのダンピング競争などに取り込まれていく。つまり、建築士が本来の使命を果たすための独立性の確保がされていない現実があるんだと私は思うんです。

 そこで、事件の再発を防止するためには、この建築士の独立性の確保をいかにして図るか、これが焦点だと私は一貫して訴えてきたところです。ですから、その立場から若干質問したいと思っています。

 それで、まず、仙田先生も、独立性という点は不十分である、こう言っておられます。ですから、その点、参考人は、独立性の確保と、この法案によって独立性は確保されると思うかということを三方に。とりわけ、今お話あった仙田先生にはそれらの立場を詳述していただきたいし、それと、本多先生は論文で歴史的経緯もそれらについて書いておられますから、その辺を開陳願えればありがたいと思っています。お三方に。

宮本参考人 お答えします。

 日本の建築士の状況というのは、もう御存じだと思いますが、やはり設計施工というのが一つの慣行として伝統的にあります。それから、これはやはり慣行ですけれども、ユーザーというか発注者が、設計と施工が別の方がいいかということで、設計は設計、施工は施工というふうに発注するような状況にあります。そういう中でありますから、建築家というか設計者の独立性というのは、どちらかというと、非常にまだまだ日本ではなじんでいないのではないかという現実があります。

 しかし、公共性の高いもの、そういったものはやはり設計と施工というのが現在の日本でも別で、独立して別々に発注しているのが現状ですし、そういった客観性をきちんと持つということで官庁建築や公共建築はやっております。ですから、今回の事件では、マンションのような一種の共同住宅は完全に公共性が非常に強いわけですから、設計と施工というのは別な独立したシステムでやった方がいいというふうには私は思います。

 それからもう一つは、設計と施工が一緒の場合にも、経済行為ですから、設計費あるいは工事費、それをやはり、公には公開できませんけれども、少なくとも団体とかそういうところには例えば内訳の金額を担保することも必要だと思うんです。そういうことの裏づけがあって設計の独立性ということが確保できてくるのではないかと思っております。その手始めに、実は私ども、専攻建築士制度を職能制度としてスタートさせたのが今の状況でございます。

 以上でございます。

仙田参考人 先ほどもお話ししましたように、世界的な流れというか、世界は基本的には建築家といわゆる施工者とは分離した形でありますが、日本の場合には割かし歴史的なたくみの制度という部分があって、現在のいわゆる設計施工一貫という形の業務形態が成立しているわけでありますが、私は、同じ会社であっても、設計と施工部分は、やはり設計者として独立して、クライアントに対して要するにさまざまな説明責任、あるいは役割と設計者としての責任というものを、立場がやはり施工の部分とは違うという部分を明確にする必要があるのではないかというふうに思っております。

 そういう点で、私たちは、設計施工一貫の場合でも、設計契約は、一級建築士事務所という形でもってそれぞれ事務所を登録しているわけですから、その登録しているところでやはりきちっと契約をすべきだというふうに思っています。

 特に、設計者の独立性の中で施工側とかなり利害の衝突する部分というのは、ある意味で工事監理の部分が非常に大きい。やはり設計図どおりきちっと工事ができているかどうかというところをきちっと見なくちゃいけない、これが工事監理の部分です。ここの部分については、やはり第三者性を担保していく必要があるというふうに思っております。

 今回のこの士法改正とあわせて、国土交通省は、先ほどもお話ししましたが、工事監理契約書を工事着工届に添付するということを省令で行うというふうにしておりますが、それは極めて前進であります。

 ですが、あわせて、工事監理をする者を、やはり施工者とは違う第三者性をきちっと担保する必要があるというふうに思いますし、また、設計の方も、先ほど私が言いましたように、設計契約書を確認申請書に添付を義務づけることによって、必ず、設計者がどういう体制で、どういう役割で、どういう責任を負うかということをきちっとクライアントに明示していくということが必要だと思っています。

本多参考人 歴史的にいいますと、戦前の日本建築士会は、これは現在の建築士会とは別ですけれども、ずっと施工と設計は分離すべきだという方向で、帝国議会にも何度もその法案がかかっております。しかし、さまざまな反対があったり、特にそれは設計施工一貫でやっている部分から反対があって成立しなかった。それともう一つは、成立しそうになったときに、ちょうど戦争が盛んで審議ができなかったというような経過もあります。そういう歴史的な経過もあり、また戦後も、設計施工一貫、是か非かという議論もありました。

 そういうのを経て、現在で考えてみますと、建築家協会が言っているように、将来の方向としてはやはり設計と施工は完全に分離してやる。現在は一緒にやっている面がありますから、すぐには移行できないと思いますが、方向はそうだと思います。

 特に知っていただきたいのは、同じ会社でやっていても、かなり独立的に設計をやっているという会社は、これは大手ゼネコンであります。ごく少ない。実際に、中小の工務店で設計施工を一緒にやっているというけれども、設計図と言えるようなものはできておりません。できておらないのが多いです。ですから、監理をするにも、実際には工事をしながら図面をかきながらまた工事をしている、そういうような工事が多いのが実情です。

 ですから、方向としてきちんと、設計と施工を分離するという方向を打ち出して、そのためのランディングの方法を考えていくのが妥当かと思います。

穀田委員 仙田参考人にお聞きします。

 私は、設計入札というのはまずいと思うんですよね。あわせて、とりわけ公共建築物での設計料等のダンピング受注に対して、制度的改善がどうしても必要だと思うんです。ここのところが改善できないようでは何の意味もない。大体、公共物でそういうことをやられていて、どうして示しがつくのかと思うんですね。その辺の御意見を最後にお伺いしたいのが一つ。

 それと、本多参考人は、最後のページの一括丸投げ禁止というところの中で、建築の根本にも触れる問題だということを言ってはります。「建築は、」ということで、私は、本来の確認業務ということと、建築とは何ぞやという哲学が今問われていると思うんですね。そういう点が非常に、この法案というのは先ほど言ったように部分的な問題ですから、その議論がされずに進行してしまうという経過を私は危惧しているんですよね。ですから、その辺の哲学を本多先生には御披瀝願いたい。

仙田参考人 まず、設計入札の問題ですが、これはやはり、日本の建築設計、生産、全体にわたって非常に大きな問題を持っているというふうに思っています。ですから、先ほどお話ししましたとおり、私、建築学会の会長もやっておりましたが、そのときに多くの国々の設計発注のシステムを調べました。お金だけで設計を、安ければいいという形でやっている国は日本ぐらいしかありません。やはりこれは、私は創造力を喚起しないシステムだというふうに言っています。

 日本は、ある意味で、いわゆる資源のない国でありますから、やはり知恵、アイデア、デザイン、それでもって世界に進出していかなければいけない。そういう点では、お金で設計を決めていくというのは非常に問題だ。やはりコンペだとかプロポーザルだとか、あるいは面接だとか、さまざまな設計者選定の方法はあります。これは、国もそれをある意味では認めていて、国交省の官庁営繕部は原則として設計入札はしないというふうに決めています。ですが、地方自治体はまだ八五%が設計入札であります、実態は。それはなぜかというと、設計入札が一番簡単だからなんですね。

 だから、やはり、これから日本の建築文化は、やはり設計者をきちっと長い時間をかけて、設計者選定にもきちっと予算をつけて、選定委員会をつくり、議論をして、そして設計者を決めていくという方法にしていくことが必要だというふうに思っております。

本多参考人 この部分で私が特に言いたかったのは、発注者の承認があればというような文言にあらわれているように、発注者がかなり権限を持っているんです。実際に設計を進める上で、設計者がこれはやはり近隣にとってまずいだろうと思っても、発注者がそれでいいと言うとそうせざるを得ないような現状があります。

 しかし、実際には、発注者というのは金は出すんだけれども、全部自分の思いどおりにしてはいけないんだ、町をつくっていくということが発注者の義務なわけですね。建物をつくっていくことによって町ができていく。この町というのは我々の環境そのものです。それをつくっていくという立場がきちんと考えられなきゃならない。建築士は、そこのところを重視しなければならないと思います。

 それは、例えて言うと、例えば病気になったら医者にかかりましょうというのに近いわけです。とっぴなことを言うようですが、我が国では以前、病気になった子供をおはらいしてもらうというような風習もあったわけです。それに対して多くの人が、病気のこと、伝染病のこと、消毒のこと、ばい菌のこと、そういう教育をしていって、おはらいではなくて医者にかかるようにということをしてきた歴史があります。

 私たちも、建築はきちんと設計をする必要がある、その設計というのは、建物の安全性を確保すると同時に町を美しくつくっていく、そういう責任を持っているんだということを、これは建築士にも、あるいは発注者にもわかってもらわなければならない。さらに、私は、義務教育まで含めて、建築をつくるという、実際に発注者になるというのはそういう責任を持っているということを教えていかないといけない、これは長期的な問題であるというふうに思っております。

 以上です。

穀田委員 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 お疲れのところ恐縮でございます。社民党の日森文尋と申します。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 仙田先生が、「グローカルな二十一世紀建築家像をめざして」という本の中で、今度の姉歯問題について、日本の建築家を法的に規定しているのは建築士法である、この劣化現象の最たるものが二〇〇五年の事件であったというふうにおっしゃっていました。まさにそのとおりだというふうに私は思うんですが、そこで、仙田先生にはぜひ、今の建築士法がいかに劣化をしているのかというところを具体的にお示しいただきたいと思うんです。

 今回も、資格法としての位置づけしかずっとされてこなかったという建築士法。これは、先生方それぞれが、今のままではよくない、変えていかなきゃいかぬというお話があったと思うんですが、お三方には、あるべき建築士法の姿といいますか、先ほどからいろいろ御意見を伺っていて大体イメージとしてわかるんですが、それについて最初にお伺いをしておきたいと思います。

宮本参考人 士会連合会としてお答えしたいと思います。

 あるべき建築士の姿という御質問でございますが、やはり建築士法は、私は、日本の建築にかかわる一つの大きな憲法だと思っております。そして、この五十数年の歴史は、日本の復興あるいは住宅問題、いろいろなところに相当大きな効力を発揮してきているわけです。その建築士法というもの、いろいろな見方がありまして、中には制度疲労を起こしているのではないかとか、いろいろな御意見もございます。

 しかし、全国的なレベルで見ますと、我々、四十七都道府県の、言うなれば各地方事務所のあるところに支部、支所がありまして、非常に草の根的に建築士が士法によって今位置づけられております。現実に、建築士そのものは地域では随分いろいろな意味で働いていると思います。

 士法というのは確かに資格法です。資格法ですが、やはり建築士の資格というのは非常に大事だと思います。その資格が今の日本をある程度つくってきていただいたと私ども考えておりますが、決しておごりじゃなくて、建築士そのものは非常に忠実にやってきていると思います。

 ただ、我々士会として、先ほどもちょっと申し上げましたが、今度は市民の立場から見ますと、建築士の業種というのは非常に多方面にわたっております。そんなことで、どなたが専門かどうか、最近わからなくなりました。そこにいろいろな問題が起きてきて、例えば違反建築とか不適格建築とか、あるいは、住宅にしてもおかしな住宅ができてきた。そして、市民やユーザーに非常に迷惑をかけてきた。これは、言ってみると、我々が今まで自分の資格と技術ということに閉ざされていたんですけれども、もっと外へ向けて、やはり市民から見て専門性がはっきりわかるために、実は、専攻制というものを職能として我々は持とうではないか、はっきりさせようではないかと。

 ですから、士法そのものは資格法で十分である。ただ、職業というのは、職業の専門能力というのは職能ですから、これは資格では決められない。やはり団体が一つの職能のレベルをきちんと認定していくようにして、それを市民にわかりやすくお伝えしていったらいいのではないか、そんな考えを士会は持っておりまして、今、全国に一万数名の専攻認定者がおります。

 その専攻というのは、ここにもありますが、構造、設備、生産、施工ですね、それから法令、研究、棟梁、まちづくりとか、そういった八部門になるわけですが、ようやくこれが板についてきたやさきにこんな問題が、姉歯事件が去年起きたというのが現実でございます。

 以上でございます。

仙田参考人 先ほどもちょっと御紹介いたしましたが、昭和二十五年、一九五〇年に建築士法がつくられたわけですが、そのときに、この法律のいわゆる経過と今後の問題の中で、これは我が国におけるこの方面の専門分化がおくれていることに起因しているんだというふうに解説で書いているわけですね。

 ですから、戦後復興という事態もありましたが、やはりこの建築士法はある意味では過渡的なものだというふうに、この士法をつくったときに、もう既に議員立法でつくられたこの法律そのものが認めているわけであります。建築士あるいは建築家という、もともと設計及び工事監理をする者の法律なんですが、やはりこれも時代によって本来的にはどんどん変えていかなければならなかった。ところが、それが、不幸なことに大きな変革ができなかったわけです。

 やはり構造、設備のいわゆる専門資格が必要だということは、もう建築界としては常識であります。実際に我々も、小さな建物でもほとんどそういう専門家に頼んでいるわけですね。ところが、法律がそれに沿っていないというところで、この姉歯事件が起こる前から建築界としては議論をしていたわけです。

 この姉歯事件を契機にある意味でずっと進んだというところがありますが、日本の士法が、そういう意味で、非常に多くの建築士という、先ほども話しましたが、百万人が登録をされているというような、それが過当競争を起こし、国民にとって信頼のできる建築士というのが見えないところが非常に問題だ。国内的には、やはりそういう多過ぎるという部分が非常に劣化の大きな原因であります。

 もう一つは、やはり対外的に、これからの要するに建築というのも、あくまでも国内産業だけではなくなっているわけですね。アジアも含めた、特に建築設計という分野においては非常にグローバル化がこれから進む。

 だから、そういう意味では、例えば教育の問題でも、今現在、日本のいわゆる建築家の教育は、大学では四年であります。ところが、UIAという世界建築家連合の推奨年限は五年であります。そのため、中国はもう十年以上前から建築家の大学教育は五年になっています。それから、韓国ももう五年前からそれに移行しています。アジアでは日本だけが四年になっています。

 四年は、建築学会でも四プラス二という、学部四年と大学院二年をつけて、そして世界標準に合わせていこうというような形をしておりますが、そういうように、教育から資格を含めて、今後、日本の建築家たちがアジア、世界に寄与するためにも、やはり資格という問題についてよりグローバルな標準に合わせていく必要があるというふうに思っております。

本多参考人 簡潔に申し上げます。

 私は、最初の意見陳述でも申し上げましたが、建築基準法、建築士法含めて全体を改編して、もっとわかりやすいものにすべきだと思います。建築基準法などは例外規定がいろいろあって、例外規定を読んでいくとまたその例外があるということで、大学の国語の先生でもこれは解読するのが難しいというくらいな状態になっているわけですね。これをきちんと整理して、しかも今のような建築基準法、建築士法、建設業法という仕組みがいいのか、あるいは別な仕組みがいいのかということも含めて、例えば建築基本法というようなものをまず軸に据えて、そこから全体を構築するというようなことが必要かと思っています。

日森委員 ありがとうございました。

 時間が余りございませんので具体的な話だけになりますが、先ほど来出ています報酬の問題なんですよ。

 告示一二〇六というのは余り機能していない。実態、そうなんですよね。国土交通省は具体的な調査をしていないらしいんですが、実態としてはほとんど機能していなくて、ほとんどのところ、八割ぐらいがこれを無視した格好で報酬が決められたりしているというような統計もあるようなんですよ。

 それぞれ御意見もあったんですが、簡潔で結構なんですが、具体的にどういう格好で報酬が定められるのが望ましいのか、希望も含めてお聞かせいただきたい。

 以前、金額で決めたら、公取から、かなり問題だ、それは独禁法違反じゃないかという話があって、いろいろ国土交通省も御苦労されて一二〇六のような話になったと思うんですが、しかし、これも無視されているという実態があるものですから、どういう格好で報酬を決めていくのが士の会の皆さんにとって一番いいのかというお話をしていただけたらと思うんですが。

宮本参考人 基本的には、我々士会としては、設計なら設計の業務、工事監理の業務とか、あるいは施工なら工事の、工事にかかわる直接工事費とか間接工事費とかいろいろ内訳がありますが、そういった職人の、いわば人工から始まって積み重ねた、要するに工事費のつくられ方というんですかね、それをやはり国民の皆様に、あるいは特に発注者の皆さんに理解してもらう努力というのをまず一方で我々士会はやらなければいけないんだろうと思っています。

 一二〇六の、例えば国交省にお任せするということだけじゃなくて、やはり我々もそういう努力を今まで余りしてこなかった。例えば設計にいたしましても、工事監理というのをほとんど計算に入れていないような実情がありました。しかし、実際には、私も五十年設計をずっとやっていますが、工事監理にかかわる費用というのは非常にかかるんですね。今、設計は、コンピューターとかそういうのがありますから割と短時間にできるんですね。ですから、実際の作業時間は工事監理がやはりもっともっとかかるんですよということを我々もいろいろなところを通じてアピールする必要があると思って反省しております。

 以上でございます。

仙田参考人 委員の御指摘のとおり、二十年ほど前に、家協会も、それから多分、士会も、それぞれいわゆる設計報酬基準というのを持っておりました。一応、工事費に対するパーセンテージでもって設計報酬基準を持っていたんですが、これは公取から指摘されて、それを撤廃するかわりに、国土交通省でいわゆる設計報酬についての人工をもとにした基準をつくってくださいというふうにお願いしてつくられた経緯がございます。

 私は、このシステムは、世界的に見ても、そういう形でつくられていくということは妥当だというふうに思っております。ですから、問題は、やはり時代ごとに、五年なり、そのぐらいに見直すことが必要だし、それをまた実行させるシステムが必要だというふうに思っております。

本多参考人 私も、基本的には告示のような考え方、つまり、実際の業務を詳しく見て、その業務によって決めていくというのが正しいと思います。むしろ、先ほど少し出ましたように、設計施工込みだから設計を無料にするとか、あるいは設計入札で安いところに設計をやらせるとか、そういう風潮をなくすことが非常に重要かというふうに思います。

日森委員 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中御参加いただきまして、また大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 私も、数点でございますが、質問をさせていただきたいと思います。座って質問させていただきます。

 まず、構造計算書の偽装問題は、建築士のあり方が問われる、こういうような事件になったというふうに思っておりますが、今般のこの事案を踏まえまして、皆様方がそれぞれ代表という形でいらっしゃっていますので、建築士像というんでしょうか、皆様方が思われていらっしゃる建築士はこうあるべきだというようなところを一点お聞きしたいのと、それから、三人の参考人の方々のそれぞれのお立場でそれはお答えいただければ結構なんですが、そのためにはどのような取り組みを行うべきなのか。政府案では、定期講習の受講義務づけですとか受験資格の見直しといった、建築士の資質、能力の向上のための措置が講じられておるわけでございますが、これらについてどのように評価をされているのか、お答えいただけますでしょうか。それぞれお願いいたします。

宮本参考人 建築士の個人個人が、もっと建築士であるというプライドを一層自覚すべきであるというふうにして、我々士会連合会は倫理規定を持っておりまして、その倫理に従い、お互いに自律性をきちんとやろうではないかということで今進めております。

 今回こういう事件が起きたのは、彼は士会の会員じゃないんですけれども、では、会員でないからといってほっておいていいかというと、そういう問題じゃありません。そういう意味で、建築士会は、会員あるいは現在の非会員を問わず、もっといろいろな情報機関を通じまして、あるいはホームページとかそういうところで呼びかけて、建築士のプライドあるいは建築士の矜持というんでしょうかね、それをきちんと一層自覚させよう、してもらおうというようなことをやっております。

 一つには、我々、毎月、十万余の機関誌を発行しまして、そういう「建築士」という機関誌を通じて情報を伝達しようということをしょっちゅうやっておりまして、ただ、最近は、大変前向きに私ども考えておりますのは、まちづくりに建築士が参加するというケースが多うございまして、そういう意味におきましても、建築士が、よそから我々はこう見られているんだということもはっきり見えてきますので、これから建築士の姿は当然今までとは違ってくるんだろうと私は思っております。

 この問題を契機にして、建築士がもう一度、本来のあるべき姿というのは、やはり国民あるいはいろいろな方に対する安全で安心のまちづくりといいますか、そういうためにあるわけでありまして、それを自覚するような一つの機会ではなかったかと思っております。

 以上です。

仙田参考人 JIAのこの青いパンフレットの一番最初のところに、私は、建築家とは何かというところを少しまとめさせていただいております。

 そこに幾つかありますが、やはり建築家というのは、いわゆるクライアントから、ある意味で資産だとかそういうものを預かり、それを環境資産価値を上げる、そういうことが極めて重要。美しく安全で快適な建築環境をつくらなければならないんですけれども、建築家はある意味では資産管理者でもあるというふうに私たち言っておりますが、そういうように、資産というのは、ただ単にクライアントだけではなくて、いわゆる社会全体、社会資本としての建築という。だから、それができることによって、美しい町並みをつくることによって多くの外国の方々が日本を訪れる、あるいはそこに集客する、経済効果があるというような形で、建築の持っている意味は非常に大きいわけです。

 ですから、そういう意味でも、私たちは、ただ単にお金でもって建築家を選んだりあるいは設計者を選ぶということは、物すごく反対なわけですね。やはり、そういう総合的な能力を持つ人をぜひ国民の皆さん方にわかりやすく提示していくということが、建築士のこの改正にも非常に大きな課題ではないかなというふうに思っています。

 ですから、例えばマンションのようなああいう販売についても、ぜひ設計者名を記載する、そして、その設計者がどういう実績を上げているかというトレーサビリティーができるようなシステムをあわせてやって、建築家もあるいは設計技術者も、やはりきちっとよい仕事をする人がよい次の仕事ができるというような形の全体の社会システムにしていただければというふうに考えています。

本多参考人 先ほどから設計の独立ということを言っていますが、設計と施工を分離した方がいいというのは、経営の問題として分離した方がいいということを言っているのであって、実際につくっていく上では、設計者といえども、一方的に、独断的に施工者にこれをやれというようなことをすべきではないというふうに考えております。

 私どもの新建の中では、施工者も入っておりますから一緒に議論をしているんですが、設計者はこういうふうにしたい、しかし、施工者の方からするとこういうふうにした方がいいのではないかという逆に提案があれば、それじゃ一緒に考えようというのは当然だと思うんです。今、独立性が損なわれていて問題なのは、表立っての議論ではなくて、裏で設計に対しての圧力がかかることが問題なのであって、表立って施工の技術者と設計の技術者とが議論をするということは当然だというふうに建築家像として考えています。

 それから、それと同じような意味で、クライアントとも話し合うと同時に、ユーザーともきちんと話し合う。例えば劇場をつくるときに、劇場のオーナーからの注文だけで設計をするのではなくて、劇場を使うさまざまな劇団とか音楽家とか、あるいは地域の住民とかいます、それとも話し合って、その人たちの望むものを専門家としてつくっていくのが建築家像ではないかというふうに考えています。

 以上です。

糸川委員 ありがとうございます。

 次に、建築士について職能団体への加入というものを義務づけるべきじゃないか、今こういう議論があるわけでございますが、弁護士さんですとか公認会計士さん、こういう方々のように一つの団体に加入しろ、こういうことを義務づけることについてどのようにお考えでしょうか。三人の方にお聞きしたいと思います。

宮本参考人 建築士会としましては、現在の加入率が、登録者は百万と言われていますが、実際に五十万ぐらいが現在仕事をしておられる人だと私は思いますね。そうすると、五十万のうちで三割の、先ほども申し上げましたが、十五万人ぐらいはやはり入ってもらいたいというのが一つの気持ちとしてあります。

 と申しますのは、特に都市部では加入者が非常に少ないんです。地方部では非常に多いんです。やはり、入ることによってお互いに様子がわかります。情報も交換できます。あくまで資格者の団体でございますから、資格というものをいかに、もう一度自分たちがそれを自覚して、どうやってそれを自分の職業に生かすかという一つの土台、ベースになるようなのが建築士会だと思っております。

 そこで、建築士会は、今度は職業としてその資格を生かすために、実は、専攻制度と先ほども申し上げましたが、スタートさせて、それが職能のあり方だと思うんです。ですから、私どもいつも中で議論しているんですが、法律で資格は決めることができますけれども、職業は法律では決められないだろう、専門性は。これはやはり職能です。だから、やはり建築士法そのものは資格法です。一部、管理建築士の案件で業務法が入っておりますが、職能法ではありません。

 ですから、やはり職能法というのは、職業に裏づけされた能力ですから、専門的能力ですから、これはあくまで資格者団体として自主的に職能の一つのあり方を社会に提示しようというので今実はやっているわけでございまして、士会は、職能法を持つべきであるという考えは持っておりません。

 以上でございます。

仙田参考人 家協会は、いわゆる幾つかの職能団体がございますから、そういうものに対して強制加入をしていくことは望ましいというふうに表明しております。

 それは一つには、家協会なんかも、倫理の問題のことをお話ししましたが、懲罰委員会というものを持っています。職責委員会、懲罰委員会を持っていまして、やはり倫理的に問題がある建築家はそこでもって査問し、処分をする場合もあります。近年は、特に非常に不当とも見えるダンピング等をした方に対してはそういういわゆる審査をしておりますが、そういうような形で、倫理的な部分だとか能力の向上とかというような部分について、そういう点では、そういうところに所属するということは重要なことだというふうに思っています。

本多参考人 私も、建築家が社会的な責任を負う、それを担保するために、それに責任を負える団体に加入するということについては強制していいと思います。

 ただ、それを単一の団体に決めていいかどうかについてはなお議論が必要かと思います。

 以上です。

糸川委員 ありがとうございます。

 これで質問を終わりたいと思います。きょうはありがとうございました。

塩谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、建築士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房官庁営繕部長藤田伊織君、総合政策局長宿利正史君、住宅局長榊正剛君及び国税庁課税部長岡本佳郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 本日は、このような質問の機会をいただきましたことを関係の皆様方に御礼を申し上げたいと思います。

 建築士法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 私は、私ごとではございますが、公認会計士、そして税理士、また行政書士の資格を持ちながら業務をやらせていただいておる次第でございますが、有資格者として一つ思うことに、能力の維持向上というのは並大抵のことではない、それこそ営業ないし顧客開拓していく中で専門知識というのは徐々に徐々に薄れていくものでございまして、それを不断の努力によって維持向上していかなければいけないというのが有資格者としての社会的使命ではないかというふうに思う次第でございます。

 また、資格を有する者としては、職業倫理という面でも、この職業倫理を常に保ち続けるということが非常に社会にとって重要であるところでございまして、例えば公認会計士の例を挙げますと、公認会計士には公認会計士協会という団体があります。公認会計士は、名刺に公認会計士と試験に受かっただけで書くことはできません。公認会計士協会に登録して初めて名刺に公認会計士と書くことができます。

 翻って見てみますと、この建築士の業界ではそういった登録の団体も何もない。試験に通ればあとはそのままずっと名刺にも書いて営業ができるということでございまして、ある意味、建築士の業界、建築士を規制する、そしてその能力を維持向上させる面では今大分問題があるのではないか。

 今回、建築士について能力を向上させるために、この法案、一部改正が盛り込まれているわけでございますが、先日来から委員の先生方の説明にも一部ありましたとおり、この建築士の団体への建築士の強制加入というのはなぜ義務づけられていないのかというところを大臣にお聞きしたいと思います。

冬柴国務大臣 今お話がありましたように、公認会計士も司法書士も弁護士も、要するに事務系八士団体は強制加入制度がとられております。しかしながら、独占禁止とかあるいはこの問題で議論をされまして、強制加入がいいのかどうか、憲法二十一条の結社の自由というものを侵すことはないのかというような議論が古くからあります。そして、その中で、私、弁護士ですけれども、弁護士については強制加入は妥当だ、しかし、そのほかの、失礼だけれども、公認会計士等、本当にその憲法二十一条の結社の自由、結社は、そういう団体に入ろうが入るまいがそれは個人の自由だ、基本的人権の内容としてそうだという議論があるわけですね。

 弁護士はなぜそれは強制加入かといいますと、戦前は司法大臣の監督下にありましたけれども、国に対して訴訟を起こすとか、あるいは刑事事件はまさに国家権力相手の弁護をやるわけでございます。そういうことから、国からの支配を直接受けることがないという、そういう自律的な団体を構築して、そしてそこで、懲戒行為等は内部で行うという制度が確立をいたしております。

 したがいまして、弁護士の場合には、その議論の中でも、弁護士会については強制加入を認めて、そして内部的に秩序罰を科すというような、除名までその団体の中で行い、そして、そこに、団体に入っていない限り、今先生がおっしゃったように、業務が、弁護士の試験を受かっただけでは、登録をしない限りだめだということになっております。

 しかし、そのほかは、それを、憲法の二十一条の結社の自由を排除するだけの合理的な理由がない限り、この強制加入は認めるべきでないという議論が古くからあります。それが一つです。

 それからもう一つは、建築士の場合、百万人を超える方がいらっしゃるわけです。そして、その百万人の方が、現在、一番大きいところでも、日本建築士会連合会でございますが、十万四千三百十六人、全体の一〇%ぐらいしか加入していられないわけでして、そして、いろいろな団体がそのほかにも五つほどありまして、いろいろな団体に加入していられます。したがいまして、ここで急に強制加入でどこかに加入しない限り仕事ができないということになりますと、大混乱になります。

 それで、今回も、そういう団体で、加入の強制のことについての意見も伺いましたけれども、これに対して、関係するさまざまな団体からは、一の団体への強制加入に対する反対意見が強く述べられたということで、その理由として、参入規制になることから、そういうことはだめだという意見が強く述べられました。

 そういうことから、今回、強制加入というのは見送る、そのかわりに、もう御案内のとおり、法律の中で、一つの団体というものを認めて、そこへ登録をしていただく、そして、その中で、自主的に教育も講習等をやっていただく。それから、クライアントからのいろいろな不服とかそういう問題も、その団体で処理をしていただくというようなことを通じて、その団体に入っていられる建築士さんとそうでない人との市場における、お客さんにおける差別といいますかが起こり、こういう制度を、今、今回掲げているような制度をずっと行っていくことにより、加入状態も多くなってくるのではないかということを期待しているものでございます。

 以上が、その強制加入制度をとらなかった理由と、それから、今後、そうではあるけれども、我々が指定した団体へ入っていただくことが慫慂されるであろうという期待の理由でございます。

鷲尾委員 大臣、ありがとうございました。

 大臣としては、やはり、確かに、結社の自由という意味も含めて、強制加入することは現時点ではできないけれども、建築士さんの能力維持向上、そして、職業倫理の養成という意味では、そういう団体に加入するような、できるだけ自然と加入してもらうような政策を通じて、今一〇%ぐらいというふうにおっしゃっておりましたが、その加入率を上げることによって、コントロールという言い方は変ですけれども、要するに、建築士業界の自浄作用をより高めていくということに対しては、これは間違いではない、また、行政もそういう方向性でいくということで間違いないでしょうか。

冬柴国務大臣 おっしゃったとおりでございます。

鷲尾委員 それでは、加入率が今現在一〇%程度であるということで、先ほどの、前の質問の中でも幾つか、これから加入率を上げていくという意味での政策というか方策を大臣は少し述べられておりましたけれども、改めまして、この団体への加入率を向上させる、そしてまた、その団体に入れば得をするというような、建築士さんがそういうふうに思うような政策としては具体的にどういうことをお考えになっているか、改めてお答えをお願いします。

冬柴国務大臣 一つは、建築士の資質、能力の向上、これは、一回試験に通りましても、そのままで勉強を怠りますと能力も落ちてまいります。そういう意味で、建築士事務所の業務の適正化を図るために、この団体による自律的な監督体制を強化していくということは重要なテーマだと考えました。

 そういうことから、団体自身がこれまで培ってきたノウハウを生かしながら、建築士等に対する研修の実施、苦情相談業務や、あるいは建築士事務所の登録、そしてまた、それに対する閲覧業務等の実施等について積極的な取り組みを行っていただくということで、消費者の信頼を高め、そして、その加入率を向上させていくことを期待して、実質的に団体による監督の強化を図ることが重要であろうというふうに思っております。

 そういうことで、建築士自身が、その能力の維持向上を図るために常に自己研さんに励むことは当然のことでありますけれども、このような、今回と違って、前国会で建築士法の改正も一部いたしました。その中で、二条の二というところで、常に品位を保持し、業務に関する法令及び業務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行うという規定を置きましたけれども、そういうものをサポートする意味でも、やはり団体に加入していただいて、いろいろな、さきに述べたようなことをやっていただくということが、消費者、国民の安全、安心にも通じますし、ひいては、建築士自身の職業的な倫理観と申しますか、意識も高められるのではないか、そういうことを期待しているわけでございます。

鷲尾委員 それでは、加入率を上げるための政策を具体的にちょっと教えていただきたかったというところがあるんですが、団体に対しての加入率というのを高めると。高めるために、建築士の関係団体が今もあります、午前中にも参考人の先生方がおっしゃっていた、いろいろな団体が講習の実施機関となるということが当然法案に盛り込まれているわけですけれども、この講習の実施機関というのを、今回は認可するということではなくて、要件が整えば手を挙げて、手を挙げればその講習の実施主体として認められるということでありますが、手を挙げた人が講習の実施主体になれるということなんですね。手を挙げる人が多ければ多いほど、ある意味、どこでも教育指導が受けられる。

 それは一ついい面だと思います。いい面だと思いますが、先ほど大臣がおっしゃっていた、では、ある意味、ある程度の団体に集約する格好で、教育ないし職業倫理の養成という意味で、建築士さんの能力を向上させるという意味においては、どこでも教育受けるよというところであればそれはいいかもしれませんが、では、教育をある団体についてしっかりとやっていくよということになると、そのコントロールが逆にきかないような、いわば、今、建築士さんの団体はいろいろ乱立されている状況だ、乱立されている状況で、一番大きいところでも一〇%しか加入していないんだよという状況が、果たして、登録制というのを設けたことによってこれは改善されるのかどうかというところで私はちょっと疑問があるんですけれども、それについての大臣の御見解をお願いしたいなと思います。

冬柴国務大臣 登録した講習実施機関と、それから建築士事務所も、加盟している構成員である建築士に対して研修を義務づける、この二重になっております。したがって、建築士事務所がまた登録をして、そして講習機関になることも可能でございます。

 行う講習の内容は、登録した正規な講習機関のカリキュラムと申しますか、それはおのずから、建築士についての最近の情報であるとか、あるいはそういう面の建築士としての仕事の内容が講習の内容とされるでありましょう。しかしながら、建築士事務所が行うそういうものにつきましては、例えば職業倫理とか、それからまた、一つの会社の中で多くの建築士さんがいた場合に、例えば設計あるいは意匠あるいは設備、そういうようなものの連携とか、そういうような問題が講習の内容になるだろうし、法定的なものは、登録された研修機関で行われるカリキュラムをきちっとこなして、そしてそれの修了を終えたということが証明される、そっちの方が主なものでございます。しかしながら、もう一方では、二層に事務所にもそういう義務を課しているということでございます。

 したがいまして、今おっしゃるように、登録したところで受ければ、それはこちらの方の団体に加入しなくたっていいじゃないか、それは団体加入を慫慂すると言いながらおかしいじゃないかというお尋ねだと思うんですけれども、しかしながら、百万人の人を一挙にどこかで講習させるということは非常に難しいと私は思います。

 したがいまして、行政改革の中でも、できるだけ余り役所でいろいろなことをやるんじゃなしに、任意の、民間でできることは民間にやってもらうという制度から一つの要件をきちっと定めまして、カリキュラムも先生も、それからあるいは修了した試験も、こういうふうにやれということをきちっと私どもはやりますということになれば、株式会社でもそれは手を挙げればできるといういわゆる登録制というものをとるべきである、何もかも指定して役所がやるような仕事ぶりじゃなしに民間がやるべきであるというものとの非常に難しい中を、今回のような制度を採用したというのが理由でございます。

鷲尾委員 それでは、具体的に定期講習を実施しますよということの登録講習機関ですけれども、登録基準とか講習事務の実施方法というのは、当然、省令等で定める事項に該当する部分がまた多くなるとは思うんですけれども、これはどういう内容なのかということを具体的に、これは局長の方がいいですか、お願いします。

榊政府参考人 まず、登録講習機関の登録でございますけれども、団体からの申請に基づきまして登録基準に合致すれば登録を行う、こういうことになっておりますので、現時点でどんな方が申請されるかというのはちょっと私どももわからないんですが、建築関係の団体とか専門学校が申請するというふうに想定をしています。

 登録の基準でございますけれども、講習の科目ごとに所定の要件を満たす講師を従事させるということと、登録申請者が建築関連業者、すなわち、ここでいいますと、業として、設計、工事監理、建築物の販売その他の媒介といったような建築物とか工事を請け負うような者、こういう建築関連事業者ではない、かつ、建築関連事業者に支配される関係にないということ、それから債務超過状態にないということを規定いたしております。

 さらに、登録講習機関ですけれども、「省令で定める基準に適合する方法により講習事務を行わなければならない。」ということになっておりまして、この基準の具体的内容は、講習の内容、講習の回数、講習時間、修了考査の実施といったことにつきまして定める予定でございます。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 ちょっと質問をかえますが、定期講習の受講義務ですが、具体的に何年ごとを想定されているんでしょうか。その根拠も含めて御答弁願いたいと思います。

榊政府参考人 義務づける期間でございますけれども、改正法では、三年以上五年以内で省令で定める期間ごとというふうにいたしております。建築基準法等の関係法令は大体二、三年に一度重要な改正がなされているというようなことですとか、新たな建築技術も数年置き、こんな感じになっておりますので、現在のところ、私ども三年間というような形で定めたいというふうに思っております。

 ただ、省令を規定する際に、先ほど大臣も申し上げましたように、どの程度の数があるかということで、百万人とか三十万人とかという推定を今実は私どもしておりまして、そういった体制がきちっととれるかどうかというようなことも踏まえた上で、具体的な年数を決定いたしたいというふうに思っております。

鷲尾委員 局長おっしゃるとおり、具体的な実施体制というのも非常に重要だとは思うんですが、例えば会計士の業界でいってみると、これは毎年毎年講習をやっておりまして、確かに建築士さんの業界と比べて、税法の改正も毎年ありますし、細かい実務的な監査基準の指針の改正も毎年ある中で、だからこそ毎年研修するということにもなるとは思うんですが、今局長おっしゃったのは三年という話でした。

 三年という期間は、ある意味、想像するに、免許の更新、これはやはり三年から五年なわけですよね。そのときに、三年ごとの更新というのは、ある意味、免許の更新に似た感覚と言ったらそれはまたちょっと語弊があるのかもしれませんが、かなり長い期間であるということもぜひ認識していただけたらなというふうに思います。確かに、実施主体、実施体制、各地域によっても、これは地域間格差になっちゃいけませんから、いろいろなことも考えなきゃいけないのはよくわかりますけれども、三年という期間は普通で考えると相当長い、専門家としてかなり重い社会的な使命そして責任があるわけですから、その点も考慮していただきながら、三年がいいのかどうかということもこれは不断に見直すような格好でお願いしたいな、臨んでいただきたいなというふうに思う次第でございます。

 続きまして、今回の法案の改正ですけれども、建築士事務所に所属する建築士に限りまして定期講習の受講義務を課すという格好になっているんですが、これは先ほど局長がおっしゃっていたような理由とも関係してくるとは思うんですが、ひとつ教えていただきたいと思います。

冬柴国務大臣 今回の改正では、建築士事務所に所属する建築士に対して定期講習の受講を義務づけ、建築士事務所における設計、工事監理業務の適正化を図るということにしております。

 義務づけの対象を建築士事務所に所属する建築士としましたのは、これらの建築士は設計等の業務を業として行う、すなわち、設計等の業務を報酬を得て反復継続して行うということでありますから、業務の実施に当たり必要となる能力を確実に充足していかなければならないためであるということでございます。

 一方、大学の先生とか教授、あるいは研究所に勤務する人など、建築士事務所に所属していない人は定期講習の受講が義務づけられていませんけれども、これは、設計等を業として行っていない建築士についてまで定期講習受講を義務づけることは過剰な規制になるのではないかということを判断したためであります。

 なお、建築士事務所に所属していない建築士が任意で講習を受講することは、これは排除するものではなく、我々としてはむしろ奨励をしたいと思っておるところでございます。

鷲尾委員 大臣がおっしゃっていた趣旨は、非常によく理解できました。

 ただ、そうしますと、定期講習の受講対象者というのは、実際どの程度の人数を今もって想定されているんでしょうか。先ほど、その実施体制については、非常に難しい、想像を超えることになりかねない部分もあるというふうなお話もいただきましたけれども、これはどの程度の人数であるのか。地区によっては、それこそ離島も含めて同じ教育水準、同じ建築士の能力、内容、水準を維持しようとした場合、これは、では離島の人が全然受けられないような状況だと、これもまた困るわけで、そういうことも含めて、どういう状況を想定しているのかというのをお聞かせ願えたらと思います。

榊政府参考人 実は、建築士の登録を受けておられる方が百万人ございます。先ほど大臣も申し上げましたように、大学の先生とか研究所に勤めておられる方、そういう形で業をやっておられない方もおるということと、実はそこの百万人の中に、先ほど参考人の方も申し述べておられたようですが、一級建築士と二級建築士をダブって持っておられる方もおられる、こういうこともございまして、実は一概なあれなんですが、私ども、どうしても、どの程度の人数というのを想定しないと、この講習機関というのはなかなか難しいということで、粗っぽい推計をさせていただきますと、大体三十万から三十五万人ぐらいではないかというふうに思っています。

 この三十万から三十五万という方々が、この法律が施行されると、ある日突然三十万人の講習というのはもう無理なものですから、これを数年に分けて実施できるような体制ということを前提に考えておるわけでございます。

鷲尾委員 それは例えば、先ほど申し上げましたけれども、地域によって格差と言ったらちょっと違うのかもしれませんが、受けられる人、受けられない人がまばらに出てくる可能性もあるわけで、その点についてはどういうお考えを持たれているんでしょうか。

榊政府参考人 先ほど申し上げましたが、数年のうちにといううちには、実はこの法律が施行されるのが二十年の秋と二十一年の春という形になっています。したがいまして、それまでの間に、何らかの形で定期講習に準ずるような講習ができる体制がとれるのはどういうところかということと、建築士の名簿は、全部県ごとに登録している分と、一級建築士は国でということでわかりますので、ある意味では地方レベルの部分もある程度わかりますので、その線も含めまして検討していきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 ありがとうございました。

 続きまして、この定期講習ですけれども、受講するだけでいいのかというと、やはりそうではないと思うんですね。大変卑近な例で恐縮ですけれども、やはり毎年毎年の公認会計士の研修ですが、授業を受けますと、授業を受けてやはり半分ぐらい寝ておられる方がいらっしゃったり、それこそ途中で退出して、外でずっと仕事の話をされたりしている方もまれにいらっしゃいます。そういう方たちが、建築士さんの業界に今度照らしますと、そういう方たちを防ぐためにはどうするかというところも一つ重要なのではないかというふうに思います。

 要するに、受講しました、受講したことがしっかりと、それが質の向上につながらなければ、これは単に受講義務なだけ手間がふえただけであって、建築士の業界としては何のプラスにもならない、我々社会に対しても何のプラスにもならないということを考えますと、先ほど大臣は修了考査までお考えになっているという話もありましたが、修了考査を実施することも含めて、具体的に定期講習を実効性のあるものにするためにどういうことをお考えになっているかということをお聞かせください。

榊政府参考人 定期講習をせっかく義務づけておりますので、講習内容をきちんと理解されているかどうかということを確認するために、修了考査は実施するということで考えております。

鷲尾委員 修了考査は実施するという話でございますが、では、その先に、修了考査不合格になっちゃったけれども、そのままでいいのかという話もあると思うんですよ。大変細かい話ですけれども、そこまで含めて、実効力のある制度というところで、どういうことを想定されているのかもお聞かせください。

榊政府参考人 修了考査不合格ということでは修了していないということでございますので、原則として再度講習を受講していただく、修了考査に受かるまで講習を受講していただくということになるのではないかというふうに思っております。

鷲尾委員 例えば、これもちょっと公認会計士の話を申し上げますと、修了考査ではなくて、要するに業務に対する著しい瑕疵とか社会的な信頼性を失わせるような行為があった場合は、公認会計士協会というところが登録除名ということで、登録除名すると、先ほども冒頭申し上げましたとおり、名刺に会計士と書けないわけで、営業できないわけですよ。生活の糧を失う。つまり、そういう強制力を持って、ある意味、従わせる、定期講習もしっかり受けさせる、毎年毎年受けなきゃだめだよという強制力があるわけですよね。

 そういう部分で、では、建築士さんの業界というのは今そういう団体がないということですから、定期講習を受けるということで、受ける場所はあっても、受けない、不合格になる、不合格で再度受けてくださいと通知が来ても、そんなものやらなくたって、おれは別におれの腕一本で食っているんだみたいな人たちは多分いるわけで、そういう人たちをどういうふうに社会的な要請からしっかりと、強制という言い方が適当かどうか議論があるところかもしれませんが、ちゃんと教育を受けさせるという方向に持っていくためにどういうことをお考えになられているんでしょうか。

榊政府参考人 すべての建築士事務所に所属する建築士に、定められた期間内に必ず講習が受講できるように、まず国と公共団体と団体で連携して十分な周知を図るということにしておりますが、どうしてもそういう形で受講義務違反が出てくるという場合には、その違反をしている方に対して戒告、戒告をしてもまだ従わない場合には業務停止もしくは免許の取り消しといったような処分まで、違反の程度もございますけれども、考えまして、厳正に処分をしなきゃならないものだというふうに思っております。

 また、講習の受講義務違反の方については、携帯用免許証に定期講習を受講したということを書くことになっておりますので、実はそれを見ると、ああ、この方は三年ごとに一回ずつ受けていないなということがわかるということで、消費者の方にもそれがわかるような仕組みを考えているところでございます。

鷲尾委員 先ほど、定期講習を受けているかどうかを記載するというふうに、何に記載するとおっしゃったんでしょうか。

榊政府参考人 携帯用免許証に。

鷲尾委員 携帯用免許証ということですけれども、消費者の側からすると、携帯用免許証を見せてくださいというのも、これはなかなか言いにくいですし、正直申し上げて、名刺には建築士と書いてあるけれども本当に建築士なんですかというふうに問う方もいらっしゃいませんし、問うて、そして、携帯用免許証を見せてください、ちゃんと講習してあるかチェックしたいのでなんて言う消費者はいないわけで、そう考えると、果たして、書くことが本当に消費者のためになるのかどうかというところで一つ疑問があるんです。

 そういう、消費者の側から余り見えないという状況がある中で、じゃ、行政側としてしっかりと、要するに、研修を受けている、受けていない、修了されている、されていないということを把握するすべというのはないんでしょうか。

榊政府参考人 実は、講習修了者のリストを登録機関から、建築士の登録を行う者、例えば一級建築士ですと今現在大臣でございますが、指定登録機関ができれば、その指定登録機関というところに対して送付をしていただきます。建築士名簿の受講歴というのが送られてきますから、書きかえます。建築士名簿と、建築士事務所から提出される年次報告書、この中には所属建築士名ですとか講習受講歴を記載していただく、こういう予定をいたしておりまして、この建築士名簿と建築士事務所から提出される年次報告書を照合いたしますと、未受講者というのが把握されます。

 それで、そういう未受講者が把握された場合には、当該建築士事務所に対して、ちゃんと受けるようにあなたの方から言いなさいというふうな形で注意喚起をいたしたい。その未受講者に対して、事務所の方から注意を喚起してもまだ従わないという場合には、行政指導でちゃんとやるようにしろというふうなことを言うと同時に、これを繰り返すと懲戒処分になりますよということをその時点で申し上げるようなことをせないかぬだろう。そういうことをやったにもかかわらず未受講の状態が継続するという場合には、本当に処分の段階に入るということでございますので、聴聞をさせていただいて、業務停止なり免許の取り消しなりということを処分の内容としては考えざるを得ない、こういうことになると思います。

鷲尾委員 済みません、今の、例えば名簿の照合とかというのは、これは行政側がやるということなんですか。

榊政府参考人 そういうことでございます。処分をするための前提のチェックということになりますので、そういうことになると思います。

鷲尾委員 そうしますと、行政側も、定期講習なり、この制度が導入されるに当たって、事務量も相当ふえるんじゃないかなと思うんですが、その点についての行政側の体制というのはどのような格好になっているんでしょうか。

 今おっしゃっていた、要するに、例えば会計士、また会計士の話をして恐縮ですけれども、会計士協会であれば、協会が全部把握しているので、講習を受けたかどうかもデータで管理しています。だから、だれが何をやって、今どういう状況かというのはすぐわかるわけですね。私もつい先日、ちゃんと講習を受けてくださいという通知を受けましたし、すぐわかるわけです。

 ですから、そういう格好で、今建築士さんの業界では管理する団体がないということですから、それを行政が全部やるということになると、これは相当な事務量になると思うんですが、そこはどのようにお考えなんでしょうか。

榊政府参考人 そういうこともございまして、今度、指定登録機関制をとらせていただいて、その指定登録機関の方で、いわば建築士の名簿をそこで持っておりますし、消費者に名簿の閲覧もするということでございますので、名簿は指定登録機関にあります。指定登録機関の方に修了証が送られてくれば、そこでチェックをできるということになりますので、未受講者の把握という段階までは、一級建築士に関して言えば私ども国でもできるようにいたしますし、指定登録機関でもできるようにするということでございます。

 それはどちらがメーンでやるかというのは、今ちょっと私ども検討中ですが、できれば指定登録機関の方で照合ぐらいまではやっていただいて、その照合の結果を国なら国、都道府県に送っていただいて、処分の段階なり行政指導の段階に入るというのがいいのかなというふうに思っております。

鷲尾委員 その点についても、ぜひ実効力のある改正を、これから先施行になるまでまた議論があるんでしょうけれども、しっかりと整備していただけたらというふうに思います。

 ちょっと質問をかえますが、今局長もおっしゃっていた指定登録機関等の、建築士の登録事務を行う機関とか、建築士の定期講習を行う機関はどんどんどんどんこれからふえていくだろうというふうに想定されるわけで、これはほかの委員の先生方からも質問があったところではございますが、これがいわゆる悪い意味での天下りの温床になってしまうとまずいんじゃないかなというふうに思います。

 行政経験者そして事務に精通している人たちが、現場の状況との関係をいろいろと考慮しながら現実に事務を動かすことについて、ある意味、役人さんが現場の方との協力関係を維持するという意味での、言葉は悪いですが、天下りということであれば、まだまだ理解できるところでもあると思うんですが、それが固定化して既得権益化するということになると、業界と官庁とのなれ合いということになるわけでございます。

 新しい機関がどんどんどんどんできる制度改正に当たって、これをどのようにお考えなのかというところを大臣にお聞きしたいというふうに思います。

冬柴国務大臣 この法律の施行によりまして、今回、新たに、指定または登録を行う、指定登録機関とか登録講習機関というものが、複数、相当数できるというふうに想定されるわけですけれども、そのようなところへ、この業務に関連して新たに国土交通省出身者を再就職するということは、考えはないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 また、指定登録機関または登録講習機関が、役職員として、これは都道府県が置くところがありますので、そういう出身者を雇用する場合には、都道府県出身者の役職員の就職の状況について適切な情報開示をさせていただきたい。そしてまた、国民の不信や疑念を招くことのないように適切に措置する必要があるというふうに考えております。

 ただ、きのうも申し上げましたように、国と都道府県というのは、地方分権推進法によって対等、平等の関係になっております。したがいまして、我々から命令をするとかなんとか、そういう関係ではありませんけれども、そういう疑念を招かないようにやってほしいということは、この法律を施行し遂行する官庁として、我々の方から強く要請をしたいというふうに思っています。

鷲尾委員 大臣の方から、情報を開示していくというお答えがありましたが、だれもが頼んだらすぐそういう情報が出てくる、今個人情報保護法というのがありまして、すぐそれを盾に情報を開示されないという状況が、かなり、やはり我々の資料請求においてもあるわけですね。ですから、その点はどのように措置をしていくのかというのは、これは非常に難しいと思うんです。

 現実問題、情報が開示されないことによって、要するに、個人情報保護法を盾にとって内実がわからないという現状もあるということをぜひとも御認識いただきながら、この点、大臣としても、先ほど来、また先日からの各委員の先生方から質問があったときに、天下りはしない、させないんだというふうに強い決意でおっしゃっていましたから、その点については、改めまして地方との関係、またそこは難しいところもございますが、強く大臣の方でリーダーシップを発揮されて、行政を運営していっていただけたらというふうに思います。

 ところで、財団法人日本建築士事務所協会連合会ですけれども、現在、この財団法人に対しての天下りというのはあるんでしょうか。

榊政府参考人 一点、財団じゃなくて社団法人でございます。

 社団法人の日本建築士事務所連合会の方でございますけれども、常勤役員のうち、私どもの省の出身者が専務理事という形で一名行っておられます。

鷲尾委員 一名の方がおられるということですけれども、いわゆるこの方というのは、例えば、俗に言う、悪い天下りという言い方をするとちょっと語弊があるかもしれませんが、代々、やはり指定されたポストになっているということなんでしょうか。その専務さん、その前は、その前の専務さんも例えば国交省さんなんでしょうか。ちょっとそこの確認をしたいんですけれども。

榊政府参考人 実は、ちょっとすぐわかりかねる部分があるんですが、現在の方とその前の方と、その前の方までは今ちょっと聞いて情報でわかりましたが、専務理事という形で行っておられます。現在の方は昨年行っておられます。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 現状は現状として、過去のことについてとやかく言うというのも、ここではちょっと有益ではないので、この先の議論をさせていただくと、建築士事務所、これの業務の適正化を図ろうということで、ある意味、大臣もおっしゃいましたけれども、建築士団体の自律的な監督体制、これを今強化しようとしているわけですよね。強化しようというところでは大臣も御賛同いただけるとは思うんですけれども、強化しようとしている際に、では関連する団体に国からの天下りの方がいらっしゃるというのは、これはやはり、こういう新しい制度を導入して、リーダーシップをとってやっていくということからすると、ちょっと不適切なんじゃないかなというふうには私自身は思うわけですが、大臣はどういうふうに思われているかというところを御答弁お願いします。

冬柴国務大臣 これはやはり、役人として、長い間の知識経験、専門性もありまして、そういう団体のお守りをさせていただくということが適切な場合もあると思うんです。

 要するに、言われるように、たくさん報酬を取るとか、再三にわたって退職金を取るとか、そういうことは非常に妥当じゃないということから、公益法人の設立許可及び指導監督基準というものがあります。そういうものに基づいて適切に処理をされる、そしてまた、その結果がきっちり公表される、今回もこういうところに、先ほどちょっと言いましたように、常務理事ですかが一名だけ行っているということは、それが今先生がおっしゃるようなことに当たるかどうか、私はどうかなというふうに感じます。

 しかしながら、その前段でおっしゃったように、こういう法律をつくって、今からこういうふうにやっていこうという趣旨を考えたときに、これから新たにまた天下りをさせるとかいうことは避けた方がいい、私はそういうふうに思います。

 したがいまして、私は、そういう考えはありませんということをはっきり申し上げているわけであります。

鷲尾委員 もう時間が来ましたので、最後ですが、大臣おっしゃるとおり、天下りすべてが十把一からげでだめだという話ではないとは思います。ないとは思いますが、大臣おっしゃったとおり、既存のものはよくて、新しいものがだめというのでもないのかなというふうに私は思うんです。

 やはり、既存のものも新しいものも含めて、必要なところで、ある意味業界が望む部分もあるのであれば、そしてまた、業と官のなれ合いになるんではなくて、お互いが国益に従って成長していくということであるのであれば、私はそれも可なのかなというふうには思う次第でございますので、新しい、古いという感覚でやるのではなくて、すべて精査するというところから始まるのが私は適切ではないかなというふうには思うんですが、ちょっとそのことを含めて、最後、大臣の意見を伺います。よろしくお願いします。

冬柴国務大臣 非常に貴重な意見であります。

鷲尾委員 これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月です。

 お疲れさまです。同僚議員に引き続いて、建築士法の改正について質疑に臨みたいと思います。

 ちょうど一年がたって、前任の北側大臣、そして今の冬柴大臣、また前任の山本局長、そして今の榊局長、本当に大変だと思うんですけれども、それぞれこの問題の解決に向けて、また再発防止に向けて御尽力をいただいていることに敬意を表したいと思います。

 昨夜も、実はけさにかかるまで、職員の皆さんにはいろいろと御尽力をいただきました。大変申しわけございません。とはいえ、専門的で、また大切な問題ということで、法文にまでさかのぼっていろいろと教えていただきました関係で、そういう状態になりました。ぜひその成果を生かして、実りある質疑をしてまいりたいというふうに思います。

 先ほど鷲尾委員の方から、公認会計士制度と比較して非常に有意義な質疑がありましたので、若干順序を変えて、そのことを受けた確認からさせていただきたいと思うんです。

 お手元に資料を配らせていただきました。五ページをお開きいただきたいと思うんですが、今回、建築士、姉歯氏を含め不届きな建築士、また技能や能力が備わっていない建築士が出てこないための制度をつくろう、そのための一つとして、建築士事務所に所属をする建築士の皆さんに定期講習を受けていただこう。大臣、五ページ目なんですけれども、これは国交省の皆さんに教えていただきながら、ちょっと朝までかかってつくった資料なんですが、要は、いろいろ言葉が出てきてわかりにくいものですから、一体どんなシステム、どんなフローで定期講習が行われて、そしてそのことのフォローをどうやってやっていくのかということをちょっと図式化してみました。

 先ほど局長の方から種々答弁があったんですけれども、この定期講習を受ける人員は推定して大体三十万人から三十五万人、それを、法施行が二十年秋と二十一年春に行われるので、数年に分けて実施をする。

 これはまず確認なんですけれども、まだまだこれから検討中のところもあろうかと思いますが、大まかに言って、このフロー図、先ほど来答弁をされたこと、そして法の枠組み、新たに導入されようとすること等々と照らし合わせて間違いないかどうかだけ、まず冒頭、確認をさせていただきたいと思うんですけれども。

冬柴国務大臣 これでいいと思うんですが、「登録・講習等の関係」と書かれたすぐ下に「修了者リスト」ということがありますが、修了者じゃなしに、登録講習機関から、一番右側の事務所登録機関というところへ直接修了者リストが行くと書かれている部分だけを除きますと、あとは全部合っている、そのとおりだというふうに思います。

三日月委員 要は、この図もまだまだわかりにくいんですけれども、建築士事務所に所属をされる三角形のマークの建築士の皆さんが、左側に指定される登録講習機関で定期講習を受講されて、そして、その結果、修了したかどうか、先ほど局長から、修了考査は受かるまでやってもらうんだという話がありましたが、修了した人のリストが、名簿の登録業務をやり、消費者への閲覧等もやる指定登録機関に行く。また同時に、これはまだ検討中だと伺っていますけれども、建築士事務所の登録を行う右側の指定事務所登録機関に行くことも検討しながら、そして、先ほど議論になりました、指導監督権限を持つ都道府県が建築士事務所から受ける年次報告、これと照らし合わせながら、どの建築士が定期講習を受講して修了したかということの把握とフォロー、チェックをしていくんだということで相違ございませんか。局長でも結構です。

榊政府参考人 先ほど大臣も申し上げましたように、登録講習機関から指定事務所の方には行きませんが、あとについては、委員御指摘のとおりでございます。

 登録講習機関から中央指定登録機関、都道府県指定登録機関に修了者リストが行くということでございまして、年次報告は建築士事務所の方から、事務所でございますので都道府県の方に上がってくる、こういう形になっております。

三日月委員 いや、済みません、勝手に私がつくった資料に基づいての質疑ですから、この場でなかなかおわかりいただきにくいところもあるのは承知の上なんですが、しかし、これ、建築士の資質、能力を高めるための定期講習を導入して、都道府県も、そして新たに指定をする機関も、そして登録機関も講習機関も巻き込んで、みんなでこれをやっていこうということです。当然、今ある都道府県の業務等々も巻き込んでやっていくわけですから、かなり、先ほど鷲尾委員の御指摘にもありましたけれども、業務量として煩雑になってきたり、システムとしてややこしくなる可能性があるだろう。したがって、わかりやすく、どの方々にどの部分を担っていただくかということについて整理をしておく必要があるという認識のもとで、まとめさせていただきました。

 一点確認したいんですけれども、やはり消費者にわかる仕組みをどうつくるのかということが大事だと思うんです。免許証を持っています、そして、そこに定期講習を受けたこと、修了したことを書いていますと言っても、また、この登録機関に置いてある名簿にそのことが書いてありますから、閲覧していますと言っても、これから家を建てよう、もしくはいろいろな建築物の発注をしようという方々がその場に行って一々名簿をひっくり返して、この人がいついつの講習を受けているとか、また、あなた本当に建築士ですか、定期講習受けていますかみたいなことは、なかなかこれは言いにくいと思うんですね。

 したがって、もう少し消費者に建築士の資質、能力がわかりやすい仕組みをつくっていく必要があると思うんですけれども、そのあたりの問題意識、御見解、いかがでございましょうか。

冬柴国務大臣 施主さんから建築士事務所が設計について契約を、請負契約になると思いますが、そのような契約を結ぶときに、その建築士事務所には管理建築士というのが置かれていますね。その人が、この設計は何という一級建築士が製図をいたしますとか、そして、それを監理するのはどういうふうにしますとかいうことは、全部いわゆる事前にきちっと説明をする義務がありまして、また、それを書面にして交付する義務もあります。

 したがいまして、その中に、自分がお願いしたこの設計図書はだれが書くのか、それに関与する人、例えばそれに下請をさせたというような場合には、だれが関与したかということまで全部事前に告知をし、そして、その書面を交付する義務もありますから、その段階ではっきりすると思います。

 そしてまた、そのときに求めがあれば、建築士証を示すということも、それを示してくれということ、それが大きなものでは、一々それは大変だということから、こういうものも、小さい、名刺大といいますか、そういう顔写真もついた証票を一人一人にお渡しするということになっておりますので、かなりの部分、今委員がおっしゃっている部分については、一々名簿をひっくり返すまでもなく、契約の相手方そのものに確かめるということができる制度を構築したつもりでございます。

三日月委員 趣旨、思い、ねらいはよくわかりました。それが運用面できちんと担保されるように、私も確認していきたいと思うんです。

 この図には入れていないんですが、今回のいろいろな問題の中でも、一つの大きな問題点として指摘されておりますのは、検査機関による見逃し、もちろん偽装をやった人が一番悪いんですが、それをチェック段階で見抜けなかったということも、問題を大きくしてしまった一つの大きな要因だととらまえれば、この建築士の能力を高めていくというフロー、システムの中に検査機関が関与できる枠組みを検討してもいいんじゃないかと思うんです。

 具体的に申し上げれば、確認申請時に、だれだれが設計をしたということの写し、同時に、名前ぐらいは書いてあると思うんですが、その建築士が定期講習を受講しているのか受講していないのかというような、その写しを検査段階で添付することというのは難しいんでしょうか。

冬柴国務大臣 一定以上の大きな建物になりますと、前の国会で通していただきました建築基準法の改正の際に、ピアチェックということが行われる、そして、そのピアチェックが行われたものが、建築確認申請として建築主事、いわゆる特定行政庁とかに提出されるわけでありまして、そこの中には契約書の写しまでつけることになっております。したがって、その段階でどういう建築士が関与して、そして、もう一度チェックされたものであるかどうかということもわかりますので、かなりの部分、そういう疑問にはこたえられるというふうに思います。

三日月委員 もう一点、局長に確認をさせていただきたいと思うんですが、この定期講習を数年に分けて、導入後すぐは数年に分けてやります、三十万人から三十五万人ですねと。大体どれぐらいで、一回は定期講習が終わった人、要は百万人を超える方々が建築士としていらっしゃって、そのうち大体三十万人から三十五万人だろうと。今お座りいただいている一級建築士の吉田政務官やなんかが受けられるのかどうかわかりませんが、その方々も含めて、一体どれぐらいでこの定期講習を一通り終えられると想定されているのか。

 また、先ほど答弁にありました、それまでの間に、定期講習に準じる試験を考えたいんだと。しかも都道府県も含めて検討したいんだというような御答弁がありましたが、ちょっと、その最後の方もよくわかりませんでした。そのあたりのことについてお聞かせをいただければと思います。

榊政府参考人 平成二十年秋から施行されますので、実はその時点ではだれも定期講習を受けていないというのが法律の建前ですから、平成二十三年の秋までにというか、秋からその定期講習が始まるという形になるんです。

 私ども、それで今、どのぐらいの人数が来るか、よくわからないということもあるものですから、二十年以前の段階から定期講習にかわるような講習がもしできるのならやってみたいなというふうに考えておりまして、経過措置の中にはそういうことができるようには措置はしてある、こういうことでございます。

三日月委員 今のことを整理しますと、二十年秋に施行されて、定期講習というのは三年に一度だから、したがって、最初の定期講習は二十三年だ。それまではいわゆる定期講習で修了した人というのは発生してこない。そうすると、今から五年後になるわけですよね。それまでに何もしないのかと言われるとなんだから、定期講習に準じるような試験を検討したいというような御答弁だったと思うんですけれども、先ほど参考人の方々の中から、また、その資料、御発言の中からもあったんですけれども、やはり時間がかかり過ぎるんじゃないかと。今いる建築士の皆さんの資質、能力を確認するための時間がかかり過ぎるという指摘にこたえるべく、そういう準じる試験を検討したいということだと思うんですけれども、ぜひ、そのあたりの内容ややり方については、決まった段階で、また検討経過も含めて確認をさせていただきたいと思いますし、当然、そのことが新しく導入される定期講習や何かにきちんとスムーズにつながっていくということが必要になろうかと思いますので、ぜひそのあたりのことについては、詰めて聞きませんが、よろしくお願いをしたいと思います。

 それでは、予定をしていた内容について冒頭から確認をしたいと思うんですが、まず資料の一ページをごらんいただいて、ちょうど去年の十一月十七日に発表されて、去年のきょうだったと思うんですけれども、関係者の皆さんに国会に来ていただいて、一体だれが何をやったんだということの解明のための参考人質疑をやったと思うんですが、それ以降、わかっているだけで、この三角マークのついている、左側のいわゆる姉歯関連だけで百八件、誤りが判明した報告物件。そして、福岡のサムシングというところの会社の四十件。また、右側、北海道の浅沼さんという方が、三十五件の不整合が判明した物件。それだけかと思いきや、規模は小さいんですけれども数が多い、一建設というところで問題物件が六百八十件。加えて、九月にはアーネストワンという会社で百十七件、問題だというところが判明をしてきています。

 姉歯さんの問題についてはかなり踏み込んで、背景や人間関係、やられたことについても把握をしてきましたけれども、あとの二、三、四、五の部分はなかなかこの国会においてもつまびらかじゃないところがあるんですけれども、まずお伺いいたします。このうち、誤りだとか不整合だとかがあったんですけれども、耐震強度の面で問題があると判定されている物件は何件になるんでしょうか。

榊政府参考人 姉歯関連関係では、耐震基準を満たしていないものが八十一件でございます。全容を申し上げますと、把握できた二百五件のうち、偽装が九十九件、誤りが一件、合計百件でございますが、そのうち耐震基準を満たしていないものは八十一件でございます。

 それから、姉歯関連物件と申しておりますが、多数関与した業者の関与物件についての調査ですが、五百三十六件中八件について誤りが判明、五百十八件は偽装なしでございます。その他の八件は計画中止でございますので、そもそも問題化していない。それから、サムシング関与物件である二件は調査中ということでございまして、八件のうち、耐震基準を満たしていないものが五件ございます。

 それから、サムシング関与物件でございますが、七百七十件のうち、四十件が構造計算書不整合、百七十二件は偽装なし、五百五十八件は調査中です。耐震基準を満たしていないものは、今のところ出ておりません。

 浅沼元二級建築士の関与物件は、百四十三件中三十五件の不整合、百八件について偽装はなし。この三十五件の不整合中、耐震基準を満たしていないものは二十三件。

 一建設の関与物件は、六百八十一件について設計ミス、うち六百八十件が違反事実を確認、一件については耐震基準を満たす、こういうことになっておりまして、一建設の方で物件の安全性も確認を行う上、対応する、こういうことのようでございます。

 それから、アーネストワンでございますが、二百八十九件の設計ミス、うち百十七件について違反事実の確認がございまして、四件は耐震基準を満たすということでございまして、残り百六十八件は調査中、こういうような形になっております。

三日月委員 そうすると、姉歯さんの問題で八十一件の耐震強度不足、サムシングに関しては現在なし、浅沼さんについては二十三件、一建設については、既に補強工事等を行い始められているけれども、六百八十件あった。かつ、アーネストワンについては、百六十八件、現在調査中ということだと承りました。そうしますと、その耐震強度の面で不足をしていた、不整合や誤りや偽装があったというだけでも問題なんですけれども、まだまだ全容解明ができていないなという印象をぬぐい切れません。

 といいますのも、この左上の姉歯関連でいけば、調査中がゼロ件、二件、ああ、大分少なくなったな、しかも、二件についても、これはサムシングの関与物件なのかと言われるかもしれませんが、米印四番を見ると、「設計図書等が入手できない四十三件については調査対象から除外(これらについては耐震診断等により安全性を確認するよう特定行政庁から所有者等へ働きかけることを要請)。」要は、調査中ということですね。

 また、サムシング物件では、調査中が五百五十八件。これは余り減らないんですね。かつ、一建設の関連で、これは六百八十件もこういう違反があったんだから、設計ミスをした十二事務所について調査をかけている。また、アーネストワンについても、二十四事務所が関与していたので、この事務所が行った物件について大丈夫かという調査をやっている。

 この調査というのは、いつまでにどのような形で行われるんですか。

榊政府参考人 構造設計について不適切な行為を行ったことが疑われる建築士が関与した物件、すなわち、姉歯元一級建築士の関与物件ですとか、多数関与した業者の物件ですとか、浅沼元二級建築士の関与物件、一建設等については、調査が実は完了いたしております。

 それから、アーネストワンが関与した物件については、ここがみずから検証し補強工事を行うというふうにことしの九月二十七日に表明をいたしておりまして、特定行政庁でも順次設計図書の提出を求めて安全性の確認を進めておりますが、基本的には、このアーネストワンという会社がみずからちゃんと直すということを言っております。

 それから、サムシング関与物件でございますけれども、実は、建築年度が非常に古うございまして、確認申請書が既に廃棄されているといったようなことと、福岡県ということで、一つの特定行政庁に物件が集中をいたしておりまして、一件一件やっておりますのでどうしても時間がかかる、こういうことのようでございます。

 そういったような感じになっております、現在のところ。

三日月委員 いや、そのことの説明は、実は前通常国会から、特にサムシングの関連物件の調査が進まないことの状況や原因については伺っています。もちろん、それぞれ対応される職員の皆さんも、不眠不休で大変な状況の中、いろいろと、資産の問題もあり、また、一方ではこう言う、一方ではああ言うというようなこともあろうということについては、私も一定理解はいたします。

 しかし、調査中です、調査中ですと言いながらなかなか進まないことに対して、いつも状況の御説明だけではなくて、こうやってやろうとしているということの報告なり説明があってしかるべきじゃないでしょうか。

榊政府参考人 委員御指摘のように、実は、この物件の所在する特定行政庁の方で耐震性の検証ということで一生懸命やっていただいているところなんですが、御指摘のように、本当に、ほんの数カ月前と今とどこが変わっているんだと言われますと、数字的に見れば、そんなに目をみはるほど進展しているわけではないということでございます。

 私どもといたしましても、違反是正に対します支援を行う違反是正計画支援委員会を設けまして、特定行政庁に対する支援に努めておるところでございます。引き続き、調査の速やかな完了に向けまして、特定行政庁等関係者に要請をいたしたいというふうに思っております。

三日月委員 現在出てきているものだけではなくて、いろいろと垂れ込み、疑義があるんじゃないかという通報も含めてあって、それが五月十一日ですか、「違法行為若しくはその疑義に関する情報を把握した場合の初動対応と公表のあり方について(技術的助言)」というものも出されながら、新たに出てくるものへの対応も一方でされている。

 今おっしゃったように違反是正のための検討委員会も設置をされて、大変な特定行政庁のこういう確認、検証のための業務についても一定支援をしていこうということだと承りましたけれども、それだったら、当然、この進まない福岡県については、そういう技術的な支援を、人の配置等々も含めて行われているということでよろしいですか、確認なんですが。

榊政府参考人 実は、国の人間をそちらに配置するというわけにもいきませんで、人の配置ということに関しては、福岡県なら福岡県というところでやっていただくということしかないんですが、いろいろな彼らの相談事ですとか、技術的な支援といいますか、アドバイスというものは、こちらの方でやるようにいたしております。

三日月委員 そのために九州整備局や何かもあるんだと思いますから、ぜひそのあたりの連携を密にとっていただいて、大臣、これは御就任前のこともありますのでなかなか把握しかねるところもあるのかもしれませんが、やはりいろいろな対策をとろうと思っても、次の通常国会ではいろいろな保険制度の導入ですとか今検討中だと伺っていますが、やはり、一体どの程度、どんな形で偽装や何かが行われていたんだ、誤りがあったんだということの全容実態解明というのが私は不可欠だと思うんですね。

 したがって、私は、このあたりの調査をもっと急いでいただく、早期な全容実態の解明に向けての御決意を伺いたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 この建築関係につきましては、もちろん国土交通大臣の権限とともに、各都道府県知事の権限も相当重く規定されているわけでございまして、それぞれが分担をしながら仕事を進めなければならないと思います。

 通報等により構造強度に疑義がある物件を把握した場合には、当該物件の所在する特定行政庁において耐震等について調査を遂げるということになっているわけでございまして、それについての手順等を我々も定めて、それぞれ分担をしてやっているわけでございますが、ただ、その具体的な検証が終わるまでにそのような疑義物件について公表してしまうと、大変風評被害ということとか、あるいはそこにお住まいの方々にとって、あるいは所有する方々にとって大変な御迷惑になるわけですね。したがいまして、これの検証については、相当慎重にやらなければならないという点があることは御理解いただけるだろうと思うわけであります。

 いずれにいたしましても、おっしゃっていただくように、できる限り早急に安全性の確認を行うとともに、また必要な情報は公開しなければならない部分もあると思います、危ないのは。そういう意味で、住民の不安に対して適切に対処をとるように、一層、国土交通省と、そしてまた各県知事とも連携を密にして進めてまいりたい、このように思います。

三日月委員 ぜひお願いします。そして、これ以上出てこないことを信じて祈りつつ、その対応を見守っていきたいと思います。

 それでは、今どれぐらいあるのだという全容解明はおいておきまして、住民救済、被害に遭われた方々に対する救済の状況がどうなっているのかということについて三点お伺いをしたいと思うんです。

 まず、お配りしました資料、三ページ目、四ページ目のところに、国土交通省の方からいただいた、姉歯元建築士、ヒューザー関与の分譲マンションの建てかえ等、改修等の進捗状況について、入れさせていただきました。いろいろと問題が発覚してから二回目の年末年始を間もなく迎えられる方々、家を移り住まなければならない方、壊さないといけない方、改修しないといけない方々が、これだけで八百四十件超あるんですね。非常に大きな問題だと思います。

 まずは、ヒューザーの物件にお住まいだった方々の破産手続、管財手続等も絡めました破産手続について、一点確認をさせていただきたいと思うんです。

 当然のことながら、売り主であるヒューザーの瑕疵担保責任を徹底的に追及していくんだということが一つ。とはいえ、急いでやらないといけないこともあるし、一定、行政の責任もあるから、地域住宅交付金を活用した、補正予算も入れて公的支援措置をつくって実施してこられた。このことについては理解をいたします。今回、ヒューザーが持っている資産を破産管財手続の中で配当していくという状況の中で、居住者の債権と、そして補助金を出した地方公共団体の債権と、二つある債権に対して、破産の原資の配当が行われている。

 この状況の中で、これはちょっと技術的なことで難しいんですけれども、破産財団の原資の配当に当たって、居住者への配当額から、居住者一件一件に対して、ヒューザーの財産の中から幾らずつですというものの中から、地方公共団体は補助金を出したんだから、その分、ちょっと控除しますよという、いわゆる補助金調整が行われるということになろうとしていると聞いています。当然、迅速かつ適切な措置が必要ですし、他の納税者もいらっしゃるわけですから、きちんとその方々の理解の得られる対応も必要ですが、一定、行政の責任を勘案すれば、この補助金調整のあり方についても柔軟な対応が、具体的に申し上げれば、被害住民の立場に立って、個々それぞれ違う状況があるわけですから、その立場に立った柔軟な対応が求められてもいいんじゃないか。

 一点、確認も含めて具体的な事例を申し上げれば、建てかえ決議に応じてみんなが建てかえしましょう、新しい建てかえに、建てかえられたマンションにみんなで移りますという場合であれば、そういう配当についても、そこから控除をされるという枠組みについても、一定、公平性が担保されると思うんですが、しかし、建てかえは決議されました、これは五分の四で決まります、私は新しく建てかえられたマンションには住みません、違うところに引っ越しますという方々に対しては、この地域住宅交付金の枠組みの中でいけば、共同施設整備費に充てられる補助金がなく、かつ、そのことに対する補助金の控除というものが合理性を欠くということにもなるんじゃないだろうかといった観点から、この補助金調整については、もう少し個々の住民の方々の御意見を聞いた柔軟な対応が必要ではないかという意見に対して、どのようにお考えになられるでしょうか。

冬柴国務大臣 ヒューザーについては破産宣告が行われまして、破産財団の換価したものが、予想配当率として二割、二〇%の配当があるということを仮定いたしますと、例えば四千万円相当の瑕疵担保責任、要するに、変な建物をつかまされてしまったという入居者の方は四千万円の損害を破産財団に請求をして、そして、その二割である八百万の配当を受けるということができます。

 ところが、そういう手続が進む前に、特定行政庁等、地方公共団体から、例えば四千万のうち二千万相当の補助が出たという場合には、その地方公共団体は税金で払うわけですから、国から入ったお金もあります。それを二千万の、債権者代位といいますけれども、これで破産財団に届け出をしますと、これに対しては、二千万の二割ですから四百万の配当が行われるべきことになります。

 しかし、両方が、買い主は債権として、それからまた、地方公共団体からもまたそういう形での債権として届けられたときに、破産管財人としてはその調整に非常にややこしくなってしまうわけです。そういうところから、関係者が集まり、その団体の名前は構造計算書偽装問題対策連絡協議会の話で、それはもうお金を出したとしても、地方公共団体はそれを債権届け出はしないでおいてほしい、そして、それは後で、配当を受けたこの被害者の方、マンション所有者の方と地方公共団体の間で、それを順次、交付金を渡すごとに二割を返してもらうようにするのか、あるいは最後にまとめてその分を返してもらうようにするのか、これは話し合いでやっていこう。我々も、前向きにそれは処理した方がいいだろうと。

 しかし、そのままでいますと、例えば移転費とか仮住居費、除却費、お支払いするたびに二割ずつ返していただくというようなややこしい話になります。それは、話をしなければそういうふうになりますが、そこは被害者の方と特定行政庁との間で話し合いをして、両方が納得できるような、そしてまた、一番大事なのは、わずかな、たった二割の、損害全体から見れば二割の配当金をめぐって、これが手続が複雑になって、中間配当がどんどんどんどん先に延びるということはやはり避けなきゃならないだろうという難しい問題があります。

 したがいまして、国土交通省といたしましては、そういう事情、被害者になおつらい思いをさせないような方向で、前向きにその点については考えていきたいというふうに考えているところでございます。

三日月委員 ありがとうございます。

 大変丁寧で、そして心のこもった御答弁だったというふうに思います。

 当然、破産管財人の理解も必要ですし、種々、これまでずっと続けてこられた連絡協議会の中で、それぞれの特定行政庁と重々話し合いをしてこられて、そして、かつ、加えて、被害の二割しか配当されないんだから、その配当、中間配当も含めて、早期にやはり住民の方々に受け取られるような仕組みをつくろうという観点から、それぞれ話し合いを個別にやっていくんだという趣旨だったというふうに理解をいたしますので、ぜひそのあたり、しっかりとした取り組みをお願いいたします。

 もう一つ、仮住居の家賃補助についてお伺いしたいと思うんです。

 これは確認なんですけれども、仮住居の家賃補助が現在二年間に限定されているんですね。一部報道では、今月の中旬に、大体マンションの建てかえのめども大方たってきて、それが二〇〇九年の三月ぐらいまでに完了するんじゃないかという予測のもと、この家賃補助の延長の可能性も一部報じられておりますが、被害住民の皆様からしてみれば、ようやく建てかえ決議まではいった、これから建てかえます、その間、別のところに住まなくちゃいけません、公的な支援を求めるのは心苦しいけれども、しかし、その部分についての家賃補助が二年を超えて継続されることを相望まれているわけですけれども、このあたりについて、当然これも地方公共団体との調整事項だと思うんですけれども、方向性について明言をいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 国の制度としては原則二年でございます。しかし、今委員がおっしゃいますように、二年たったからといって、マンションが建っておればそれはそれでいいわけですけれども、まだ建っていないということになれば、当然それについては前向きに検討をしていいのではないか、私はそのように思います。

三日月委員 それともう一点、ローンに対する支援なんですね。これは地域住宅交付金の制度を活用して、これもメニューの中に、建てかえに係る新たな住宅ローンの利子相当分の軽減策が助成策として盛り込まれています。

 もう一つ、一方、全体的な枠組みとして住宅ローン減税という制度があって、災害を受けた方、また、今回の問題は災害に準じた問題として、その特例として適用するということも含めた、この住宅ローン減税の適用が行われています。

 実は、この住宅ローン減税というのは、税制全体の話なんですけれども、二十年分までしか枠組みがないということがまず一つありますし、かつ、その後、この住宅ローン減税について、どのような制度がつくられるかということいかんだとは思うんですけれども、この被害住民の方々からすれば、今までのマンションのローンも抱え、新たな住宅のマンションのローンも抱えるという中で、中長期的な生活設計の面で、この住宅ローン減税がどうなるのかなということも大きな不安材料の一つなんですね。

 したがって、まず、ちょっと運用面について、また今後の課題について、国税庁、きょう来ていただいていますので、若干説明をいただけますでしょうか。岡本課税部長、よろしくお願いいたします。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 住宅借入金等特別控除でございますけれども、委員御指摘のように、これにつきましては、居住日以降その年の年末までに引き続き居住の用に供している年に限り基本的に適用があるわけですけれども、本件のように、災害により居住の用に供することができなくなった年まではその適用がございます。

 ただ、委員おっしゃられたように、既に取り壊しを行ったりしたマンションのローンの残高、これにつきましては、この制度自体が新しく建てかえ取得したマンションの取得に要する借入金には当たりませんことから、本件借入金等特別控除の対象となる借入金には含めることができないということでございます。

 つけ加えまして、所得税の関係で一言。そのほかの本件に当たる制度として考えられますことは、本件のような耐震強度の偽装が行われたマンションは、所得税法上、災害により損害を受けたものというふうに認められます。このため、本件のマンションの入居者については、雑損控除、または災害減免法による所得税の減免措置のいずれか有利な方を選択することによりまして、所得税の全部または一部を軽減することができる仕組みになっております。

 この雑損控除の場合の損失の額が大きい場合には、その年の所得金額から控除し切れなかった金額につきましては、翌年以降、三年間に繰り越して、各年の所得金額から控除できることとされております。

 この点につきまして、国税当局としましても、当該マンションの管理組合等を通じまして、対象者に制度の内容を周知させていただいているところでございます。

三日月委員 まずは災害等に遭ったときの所得税法の枠組みで雑損控除というものがあって、三年間繰り越しができる、損金算入ができる。三年間できる。それは、もともとは持っているものについてそうだということで、加えて、今回、耐震強度偽装問題みたいなことが起こったことを受けて――失礼いたしました。

 その前に、住宅ローン減税についてはどうかといえば、それはもともと、もうその住宅の用に資することができなくなったわけですから、その年にそれぞれ終わってしまう。しかし、これは十一月に耐震強度偽装問題が起こって、十一月、十二月に強度不足が判明したマンションと、その次の年、年をまたいで判明したマンションとでは、十七年、十八年でこの住宅ローン減税が適用される期間が若干、一年ですけれども、差があったということもあります。

 ここで確認したいことは、まだこれは先の話ですからわからないんですけれども、まずは住宅ローン減税ですね。これから、今はまだ来年度の税制改正の段階ですから何とも申し上げられないかもしれませんけれども、大臣なりのこの部分についてのお考えと、当然、今の減税が延長されるのであるならば、この所得税法に係る雑損控除の枠組みも、今回の耐震強度偽装問題の被害住民の方々についても災害に準じて対象となる、なり続けるというふうに認識していいかどうか、このことについて伺いたいと思います。

冬柴国務大臣 私も、阪神・淡路大震災のときの体験も踏まえて、二重ローンになるわけですよね、ですから、二つのローンのことを考えなきゃならない。一番最初のローンについては、もう壊してしまうわけですから、家に居住していない以上、そのローンに対しての住宅ローン減税というものは対象にならない。しかし、議員がおっしゃったように、その時期によって、年をまたぐかどうかということによって若干違いますけれども、そういう問題が前の分にはあります。

 新しい分については、今も住宅ローン減税というものが十九年度も継続されるように我々は要求をいたしておりますし、そしてまた、三位一体改革で今まで所得税というものから住民税に一部税源移譲しましたね、それによって実質上ローン減税効果というものが下がらないようにしてもらいたいという要請を財務当局にいたしております。ですから、それはまだ未確定の問題ですけれども、私どもは頑張って、ローン減税はきっちり今までどおりにやるというふうに思っております。

 したがいまして、二重ローンの、前の家についての残ったローンについてはローン減税が残念ながらありませんけれども、しかし、今財務省が言ったように、雑損控除というのは案外大きくて、恐らくそちらの方が多いと思います。したがいまして、被害を受けた方について、税の面ではきっちり対処できるというふうに思っています。

三日月委員 財政面、税制面、いろいろな枠組みを使って被害に遭われた方々の支援、当然のことながら他の納税者の理解を得ながらということだと思うんです。この部分が非常に難しくもあり、またそれぞれ御担当いただく方々が苦慮なさっている部分もあろうかと思いますけれども、今の枠組みについてはぜひ継続されるよう関係者の皆さんの努力を要請したいと思います。

 それでは、若干話をかえまして、今回の法改正の趣旨や具体的な項目について、ちょっと時間も限られておりますので確認をいたしますが、国税庁の課税部長、どうも済みません、ありがとうございました。

 まず、きのうも大臣に御答弁をいただいていました建築士の、今回に限らずなんですが、いわゆる日本にいる建築士にはどんな使命、役割を持ってもらいたいかということについてお伺いしたいと思うんです。

 きょう午前中の参考人質疑の中でもそれぞれの先生方から大変貴重なお話をいただいたんですが、きのうの大臣の御答弁を伺っていると、建築士法第二条の二、前国会で改正された「職責」の部分を読み上げられて、今も御答弁なさろうとされていたのかもしれませんが、「常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、」等々、こんなことじゃなくて、日本の建築士についてはどんな役割を持ってもらいたいとお考えでしょうか。まずお伺いいたします。

冬柴国務大臣 我が国は、四季折々きれいな自然ではありますけれども、大変厳しい自然条件というものがあります。例えばその一番最たるものは地震でございますし、それに引き続いて起こる津波等の被害も、大変大きな被害を過去には引き起こしております。そしてまた火災、我が国の建物は木造建物が随分多いわけでございまして、そういうもの、あるいはその周辺の衛生状態等を含めた健康状態等、安全性、安心というもの、そのスペースが我々の居住、住居であると思います。

 そういう意味で、国民の生命財産に大きくかかわる基礎的な生活基盤というものが建築物、建物だと私は思います。特に、居住する建物はそうだろうと思います。したがいまして、確実にその安全性を確保する必要性がありまして、このため、建築基準法と建築士法というものを車の両輪として確実に執行することにより今のニーズを満たしていくことができる、そういうことは不可欠であるというふうに思っております。

 したがいまして、日本の建築行政、日本の建築物、あるいはそういうものについての士業を営む人たちはどうあるべきかということは、そこに規定された建築基準法あるいは建築士法にうたわれているそのような職責なり倫理観というものを本当に十全に備えた人であるべきでありますし、それから建築行政も、そういう国民の基礎的な生活基盤であるということにかんがみ、そういうものが脅かされないようにふだんから行政を進めていくべきである、このように思っております。

三日月委員 行政当局の長としての御見解かもしれませんけれども、何か夢がないですよね。

 また、例えば、きょう午前中は日本建築家協会の仙田会長が参考人としてお見えになって、もちろんそれぞれの概念の違いはあるんでしょうけれども、建築家というお立場から、建物は安全なものでなければならないし、美しくなければならない、そして快適なものでなければならないし、経済的な利益を生むものでなければならないし、当然のことながら周辺環境、地域環境、地球環境に配慮をされなければなりませんというようなことで、こういう多様な要請をまとめ、建築という環境を形成することによって社会に貢献する人が建築家と言えますというような、こういう日本の建築物をつくってほしい、そのことを担う人たちが建築士であり建築家だというような、明確な、明快なビジョンを、夢のあるビジョンをお持ちなんですね。

 このあたり、今大臣は、最低限の基準を定めるのが建築基準法であり、それを担う建築士かくあるべしということについて定めたのが建築士法だとおっしゃいました。私はこの第二条の二をなぜ出したかというと、この「職責」のところに、先ほどはそれ以降を読まなかったですけれども、「建築物の質の向上に寄与するように、」とあるんですね。しかし、今回の問題があったから変えるんですよね、耐震強度偽装問題が。

 そうすると、質の向上どうのこうのよりも、そもそも建物の安全を守れということについてもっときちんと職責や使命の部分にうたわないと、建築士かくあるべしというところに、質の向上に寄与するようにと。よりよくすることについてはいいですよ。しかし、最低限保たなくちゃいけない安全性について保つことがあなたの最低限の任務なんですよということについては、やはり法律できちっと定める必要があるんじゃないかと考えるんですが、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 こういう建物につきましては、この部分については建築基準法とかあるいは建築士法というものに基づいて今私が述べましたけれども、住生活基本法という立派な法律が六月に成立いたしました。この中には、今委員が参考人の意見として、こういうことを言っているよ、もっと品格の高いことを言っているよとおっしゃいましたけれども、住生活基本法では、我々の住居については今述べられたようなことはすべて網羅されて規定されております。

 そして、それ以外にも、そこでは言っておられませんけれども、バリアフリー改修というものを進めて、そして今、日本の住居というものは非常にストックというものが、中古住宅の売買というのが物すごく少ないんですね。建てたら三十年ぐらいで壊しちゃう。もったいないし、そうじゃなしに、中古の住宅も市場に乗るような高品質のものをつくり、また、適時適切に管理も維持もしていかなければならないということも規定されているわけでございます。

 したがいまして、そういうものをあわせて、この建物、建築物に携わる者、あるいはその町を管理する者、公園を管理する者、あわせて、我々に対する快適な住居というものを、居住空間というものを提供すべきであるという、いろいろな法律にそういうものは載っているわけであります。

 しかしながら、今おっしゃった、日本の建築行政あるいは日本の建築物がどうあるべきかということを、こちらの建築基準法なり建築士法、今御審議いただいているこの法律の立場からいいますと、甚だそっけないといいますか、ちょっと鑑定人の方がおっしゃったよりは質の低いというか、そういう認識ではないかという御指摘、おしかりをいただいておりますけれども、法律はいろいろありまして、そこで言われているようなことが実現できるように、建築行政としては今後進めていきたいというふうに思っております。

三日月委員 住生活基本法とこの建築士法がどう関係して、よくするためにどう機能していくのかということについては、これからも確認をしたいと思います。

 大臣が、厳しい自然環境の中にある日本において、地震がある、津波がある、火災がある、台風がある、その中において建物を建てていく役割を担っていく建築士について定めた法律がこの建築士法なんです。それならば、質の向上もいいけれども、まず最低限の安全を確保すべしじゃないかということについては、住生活基本法になぞらえて何か逃げられたような御答弁をなさいましたけれども、一定理解はしていただけたと思うんです。

 建築基準法の方は、この第一条「目的」のところに、「国民の生命、健康及び財産の保護」、安全という言葉はないですけれども、しっかりと明記されています。たかだか法文じゃないか、言葉じゃないかと言われるかもしれませんが、しかし、運輸の安全の確保法のときにも、それぞれ、一条の目的や理念のところに安全という言葉がなかったということにこだわって、あの大きな事故が二度と繰り返されないようにということで、「安全」というものを入れてきたんですね。したがって、耐震偽装問題が起こってやる改正なんですから、もう少し安全といったものに、法文上も、言葉でもこだわった改正があってもいいんじゃないだろうかと私は指摘をしておきたいと思うんです。

 そして、時間もありませんので、最後に一点、確認をさせていただきます。

 昨年五月の十七日、私がこの耐震強度偽装問題を受けて行った質疑の中で、大臣認定プログラムのあり方について質問をいたしました。ちょっと今回の改正とは外れるんですけれども、しかし、建築士の皆さんが、特に構造設計をなさる皆さんが使われる、そして検査をする方々についても重要なファクターとなるこの構造計算プログラム、これがブラックボックス化されているんじゃないかとか、かつ、検査する側にプログラムそのものがなかったり、更新されたのに前の古いのを使っていたり、そもそも、業者によって様式がばらばらで、出てくる構造計算書、設計図書のどこを確認したらいいかわからないとか、こういうことに対応するために、前国会でピアチェック機関をそれぞれ設けてきたところだと理解するんです。

 私は、前回の委員会質疑の中で、この大臣認定プログラム、大臣認定というんだから、お墨つきを与えて使ってもらうプログラムなんだから、検査機関に対してもきちんと備えつけを、最低限、市中に出回っている、建築士の皆さんが上げてくるプログラムについては、検査する側についても持っていてしかるべきじゃないでしょうか、つくった業者側から、ソフト会社側から無償提供で、それぞれの検査機関にサンプルぐらいはきちんと供与させるということについても一定検討してもいいんじゃないだろうかという指摘をさせていただいて、当時の山本局長からも、この環境を整備する必要がある、「大臣認定プログラムを常に使用できる環境を整備する必要がある」等々の御答弁もいただいています。

 その後、ソフト会社にアンケートや何かもされていると伺っておりますが、この大臣認定プログラムのあり方についての検討状況について、これは局長でも結構です、最後にお伺いをいたしたいと思います。

    〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕

榊政府参考人 社会資本整備審議会の建築分科会の中間報告の中で、基準法令の規定に適合しない数値が入力できないとか、構造計算途中の改ざんや計算結果の保存データの改ざんを防止するための措置が講じられていることなどの内容につきまして大臣の認定を行う必要があるというような御指摘をいただいております。構造計算プログラムの入出力情報につきまして、実は、ばらばらで様式が合っていないというようなことがございますので、標準化、共通化について検討してはどうかというふうな御指摘もいただいております。

 それで、実は、さきの改正建築基準法が来年に施行されるということでございますので、その施行にあわせた形で、構造計算プログラムの内容を見直した上で再認定を行うということにいたしております。

 この構造計算プログラムの見直しに向けまして、現在、学識経験者と日本建築行政会議、関係団体の協力を得まして、基準法令の規定に適合しない数値の入力ができないといったような措置をどう検討するかということと、構造計算プログラムの改ざん防止措置の検討、それから、審査側の視点に立った、審査しやすい表示方法の検討、要するに、打ち出しがみんなばらばらですと非常に混乱するということもございますので、そういったことを進めております。

 こういったような形で、構造計算プログラムの大臣認定制度の見直しを図りまして、偽装が行われないような仕組みを基準法の施行までにつくり上げたいというふうに思っているところでございます。

三日月委員 ありがとうございました。

西銘委員長代理 穀田恵二君。

穀田委員 冬柴大臣に質問します。

 耐震偽装事件公表から一年たちました。国は、居住者の安全、近隣住民の安全確保の観点から、耐震基準〇・五未満の耐震不足マンションの解体、撤去方針を打ち出しました。居住者は、退去命令等によってマンションから退去し、借家住まいを続けながら、建てかえなどの準備を進めています。昨日、その数字が報告されました。私は、数字の問題じゃなくて、一年たって被害者の生活再建のめどが立ったのかということをお聞きしたい。

 そして、前大臣は、被害者を救済し、もとの生活に戻るなど、問題の解決に国交省が最後まで責任を持つことを言明してまいりました。冬柴大臣も、被害者救済、問題解決に最後まで責任を持つという立場は一緒かどうか。

 その二つ、まずお聞きしたいと思います。

冬柴国務大臣 今まで救済策としてあとう限りの努力をしてきたと思いますが、私も前大臣と同じ決意でいることを披瀝したいと思います。

穀田委員 そこで、もう一つ言ったのは、生活再建のめどは立ったとお考えかと。

冬柴国務大臣 たくさんの被害者でありますから、個々具体的には私自身は把握をいたしておりませんけれども、しかしながら、特定行政庁においてそういうものは把握されていると思いますし、また、そういうものが、もし非常に困っていられる事案等があれば、私どもの方に御通知が当然ありますし、相談もありますし、その節には誠心誠意対応させていただきたいと思っております。

穀田委員 それを聞いて一つ安心しました。

 この間、新聞を見ていると、非常につれない対応があるということが出ていましたので。何せ、十一月二十二日付の産経新聞に、グランドステージ、いわゆるGS藤沢から退去させられた鈴木さんという方が国土交通省を訪ねたら、なぜ助成額を減らすのですかという話をしたら、方針ですからと。詳しいことは市に聞いてください、職員の答えは取りつく島がない、押し問答の末、もう来ないでくださいとまで言われたと。では、こんなことはないんだろうと思います。

 そこで、私は、今大臣もお話あったように、責任を持つということはとても大事だと思うんです。なぜ生活再建できたかという話を聞いたかといいますと、私と大臣は、阪神大震災の折にいろいろ被災者の救援のために、立場はいろいろ違いましたけれども、一緒したということがありまして、そういう被害を受けた方々のやはり根本は、生活の再建ができるかどうかというところに視点を置く必要があると思っているからなんですね。

 きのう、大臣や局長の話を聞いていますと、建物は建てるめどが立ったという話ばかりしているものだから、それで本当にいいのかということを私は解せないからなんです。建物が建つということはもちろんその前提となる話だけれども、その中に秘められた苦労というのがどれほどか、また、その都度その都度起きる事象に対して、どんな新しい苦難を抱えているかというところに思いをいたさなければ解決はできないと思っているからなんです。

 そこで、先ほども議論されている問題なんですけれども、住民には大きな負担がのしかかっていて、やはり建てかえのための合意などなかなか進まない。先ほども全部数値が出ましたけれども、結構大変なんですね。やはり最大の問題は二重ローンの問題で、追加負担が受け入れられないことがなっています。

 局長がきのう、数字をずっと述べて、大体二十一年にはできそうだなんという話をしているんだけれども、私、この間のテレビを見ていると、ほんま、そうかいなと思いましたよ。決議に賛成した。決議しなければめどがない。しかし、それもやむを得ない道だ、これしかないということで苦渋の選択をした方々の声がテレビにあふれていましたよ。そういうものに目をやらないで数値を見ている、もしそうだとしたら、私は行政じゃないんではないかと思うんですね。

 そこで、先ほど問題になった、例の、九月に国交省や自治体が助成金を二割程度減額する方針を決めたという問題なんですね。それも先ほど来いろいろ議論になって、いや、十分いろいろお話しして納得と理解を得てと。多分、私はそう簡単に納得、理解なんてせぬと思いますよ。

 問題は、ではそのことが及ぼした影響はないのかという問題についてどうお考えか。まず、そこから聞きたいと思います。

冬柴国務大臣 前大臣北側さんのときに、これはヒューザーという売り主の責任なんですね、実際は。民民の話ですね。しかしながら、民法上の売り主の責任の問題が根幹にあるわけです。そして、それに対してヒューザーというのが誠意を持って対処できない。また、破産をして、そして損害の全額を弁済することができないというような事態になったということであります。

 そういうことから、我々としては、それを単に民民の話だということで処理するわけにはいかないというところから、地域住宅交付金等を活用いたしまして、これは国民からいただいている税金であります、そういうもので相談、移転から、取り壊し、建てかえに至る総合的な支援策というものをとるとともに、また融資とか税制等に係る必要な措置ということを講じて、我々としてはできるだけのことはやってきているわけであります。

 しかしながら、今委員が指摘されたように、そのような被害を受けた多数の人の中に、本当に悲惨な生活の再建に今苦吟しておられる方がいらっしゃるだろうと私も想像いたします。それは阪神・淡路のときも一緒でした。そのときに、我々は被災者生活再建支援法というものを提案しましたけれども、なかなかこれは合意が得られなかったことも事実で、百万円というものをかち取るために本当に関西出身の代議士が一生懸命頑張ったということを思い起こすわけであります。

 今回の問題は天災ではありませんけれども、本当に天災に匹敵するような大きな範囲の損害を多くの人に与えたことは事実でありますから、我々としては誠心誠意、ただ、それをお金を払うにしても、これは税金であるということを考えながらここは考えていかなければならないというところでございますので、御理解をいただきたいと思います。

穀田委員 そこは先ほど来ずっとお話ししてきているところなんですね。

 私は、今度のことによってどういう困難が生じたかということについても率直に目を向ける必要があると言っているんですよ。結果は、そちらは行政としてそれしかないと言う、それはそのとおりなんですよ。そのとおりだという側面はある。しかし、違う側面が私はあると言っているんですね。では被害者に責任はあるのかということなんです。ないんです。

 ヒューザーだと言うけれども、それでは賠償責任について言うならば、やはり建築確認を見過ごした責任は自治体にあることは最高裁の判決でも明白なんです。だから、賠償責任ということで言うならば、そのことが問われる可能性があるということを言っているわけで、しかし、今やっているのは、被害者に対する助成は、賠償責任とは違う行政責任として実施しているはずなんですね。だから、居住者に対する税金投入ではないと一貫して言っているんですよ、行政は。だとしたら、そういう意味での助成というのは税金投入じゃないんだということで、いわゆる個別の税金投入じゃないんだという角度から攻めてもいいんじゃないかと私は思うんです。だから、私は納得できないと言うんです。

 そう簡単に出すことはできない、みんなの税金だ。それは、もちろんいろいろな意見がありますよ。だけれども、はっきりしなくちゃならないのは、賠償責任という問題と今の税金投入という行政責任と、二つ分けてやっているわけですから、私は、その可能性をしっかり今からでも追求する必要があると。その根本は何か。被災者に責任はない、被災者に新たな負担をかけてはならないということの二つを言っておきたいと思うんです。

 大体、もし責任とか負担というんだったら、被害者から価値のなくなった既往の住宅ローンの金利は受け取るわ、それから新たなローンによる金利を得ようとする銀行ぐらいに、せめて自民党のプラン、私どもも賛成した、そういう金利の問題の少しの負担ぐらいさせろというものぐらいは、そこはぐっと押し込むぐらい必要じゃないかなと思いますけれどもね。そういうことを言っておきたいと思います。

 そこで、次に、建築士の問題について言いたいと思います。

 今、きょうの午前の時間に参考人においでいただいて陳述していただき、質疑も行ったところです。そこでやはり一つ問題になったのは、建築士の使命、役割、責任ですよね。それについてお聞きしたいと思うんです。

 耐震偽装事件というのは、これまでの施工段階における手抜き工事などと違って、設計段階での偽装であったことから、設計にかかわる建築士の使命、役割とその責任のあり方が問われたんですね。しかも、姉歯元建築士だけの偽装ではなくて、次々と発覚しました。私は、何度か引用してきましたけれども、建築専門誌のアンケートでは一二・七%が偽装したことがあるという答えであって、極めて深刻な事態が横行しているということも明らかにしたつもりです。

 そこで、建築士がどういう使命を持ち、役割と責任を持っているのか、改めて考える必要があると思うんです。

 建築士の使命、先ほど議論になりましたけれども、建物が、ある場合には人の命や財産も奪うことになる、したがって安全性の確保は最低限の使命だ、これはまず第一ですね。それと同時に、建築物が長期にわたって土地を占有する社会資本であることからも、きょうの昼の話を聞きますと、人間の生存と生活の基盤となる。さらに第三に、まちづくり、コミュニティーの一部分を構成する、だからそういう意味でのまちづくりにも配慮する使命があるんだ。こんなことを大体語られていたと言っていいと思います。

 もちろん、市場経済のもとで、経済活動の一部ですから、重要な位置を占めていることについてはあるわけです。だけれども、何といっても、建築物の安全、安心を確保すべき使命というのは、もうけ本位だとか経済行為よりも優先される第一義的な使命だと考えますけれども、改めて確認しておきたいと思います。大臣に。

冬柴国務大臣 建築士には、建築物の設計とか意匠とか設備について、独占的にそれを処理する権限が与えられているわけであります。したがいまして、今おっしゃったような点について、その使命を果たす、その職責を果たす義務がある、私はそのように思います。したがいまして、もちろん職業ですから金もうけも必要でしょうけれども、しかし、今おっしゃったように、建物の安全、安心、そしてまちづくりの、それが町の構成部分の一部に属するんだというようなことを考えながら設計はすべきである。

 それで、私は、使命の中にそれは書いていないんじゃないかという話がありましたけれども、建築基準法の中には、例えば前面道路からどれぐらい離さなきゃならないとか、あるいは周辺の日光はどのように遮へいしてはならないとか、いろいろな規定がありまして、そういうものを充足することによって良好なまちづくりというものが、この基準に従って設計士が設計すればできるようにも、このほかの部分には書かれてあります。

 したがいまして、抽象的な使命といえば、先ほど申されましたように、前国会で建築士法を改正いただきましたように、その二条の二に書かれているように、「建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。」という、これは僕は、今までこれがなかったんですけれども、入れていただいたということは適切であったと思います。

穀田委員 そういうふうに言うと、やはり先ほどの同僚の話じゃないですけれども、では、士とつくところにある弁護士だとか、その他、医師もそうですけれども、これはまさに参考人の意見の中にありまして、今後そういう道を志す人々に対するその光明としての位置づけをはっきりさせる必要があるという意見があったということもぜひ見ていただきたいと思います。

 そこで、その使命を発揮し責任を果たす上で、きょうも議論になったのは、建築士の独立性という問題が最も重要です。これはこもごも午前の参考人質疑でも明らかにされたところです。資格を得た建築士が使命を発揮するためには、安全を軽視するいかなる圧力にも屈することなく、そして従属的立場に支配され、安全を軽視することがないようにしないといけない。

 大臣は、建築士の独立性の確保の重要性をどのように認識しておられ、また、制度的に独立性を確保するのには、どのような点が重要だとお考えでしょうか。

冬柴国務大臣 お説のように、建築士の責任をあらゆるところで明確化し、独立性を確保するということは重要であると思います。

 そのために、前回の改正において、建築確認申請書の様式の設計者欄というところを改正いたしまして、設計等に関与したすべての建築士の氏名を記入させる。これによって、責任の所在というものを明確にするということができると思います。

 また、今回の改正におきましても、工事監理業務の適正化を図るために、工事監理契約締結前に、管理建築士等に対し、建築主への重要事項の説明及び書面の交付を義務づけるとともに、建築基準法によるいわゆる着工届の際には工事監理業務の契約書を添付させる。もちろん、そこには、だれが、どういう建築士が関与しているかということが明記されております。

 さらに、建築士の独立性の確保に資する点から、適正な報酬を確保する、これも必要だと思います。そういう意味で、報酬基準につきましても、今、所要の実態調査等を行った上で見直しをしなければならないというふうに思っております。

 ただ、わかりにくいんじゃないかという、人工とか、ふだん聞かないようなことが基準になっておりますけれども、これはやはり独占禁止法の関係でそういう値段を同業者の間で決めてはいけないというような要請もあって、そういう中でも、しかし、この人たちの地位をきちっと独立して、そして仕事ができるように、それにふさわしい報酬が受けられるようにという配慮で今検討させていただいているところでございます。

    〔西銘委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕

穀田委員 後半の方は私またこれから質問する方なので、余り先に先に行ってもらうとちょっと困るんですけれども。報酬の問題とまた独立性の問題というのは、それは別個にもう少し議論したいと思うんです。

 今まであったように、今大臣がおっしゃったのは、責任の明確化というのを大体るる、どの点で歯どめをかけるか、どの点が新しく加えられたかという点では、責任の明確化という点の話だと思うんですね。だけれども、今回の偽装事件で明らかになったのは、やはり、私は何度もやったんですけれども、建設会社からのコスト低減の圧力、これになかなか対抗できない。そして、これは皆さん方の有識者の検討会議で受けたさまざまな指摘にもありますように、実は、建築士事務所が施工会社の附属的で下請的な位置に置かれているという実態があるということもあるわけですよね。そこのポイントが私は大事だと思うんですね。

 したがって、私は、建築士の独立性という問題について改めて提起していきたいと思うんですけれども、三つぐらいあるんじゃないかと。

 大臣は、今、責任明確化のラインをずっと言ったんですけれども、そうじゃなくて、私は、設計や工事監理と施工を制度的にも分離する必要があるということだと思うんです。そこで二つ目に、先ほど大臣が一番最後におっしゃった、建築士に対する設計や工事監理の報酬の適正化を図ること、これはそのとおりだと思うんです。三つ目に、施工会社からの従属的下請構造というものをどう是正するか。こういう三つは欠かすことができないと思っています。

 そこで、大臣おっしゃられたので、設計監理報酬の適正化の問題について、では少し議論したいと思います。

 今回の事件では、構造設計士などの報酬が低い状態に置かれていることが明確になりました。報酬が低い、したがって数をこなし、数をこなすために手抜きや不正が起こる、そして偽装を行う、こういう安かろう悪かろうというサイクルまで生まれてしまいました。だから、その意味では、個々の建築士の力量や質の問題では済ませられない深刻な事態であります。先ほど言った社会資本整備審議会もそのことを指摘していたわけでありまして、どう言っているかというと、「建築士は、契約関係上弱い立場にあり、十分な報酬が得られない等の問題が生じている」とまで言っています。

 先ほど少し改善をすると言いましたけれども、その十分な報酬が得られていないという実態について、ではどのように認識しておられるんでしょうか。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

榊政府参考人 午前中の参考人だとか、昨日の先生方の議論もございましたけれども、一級建築士の方の収入が四百万程度だとかそういうお話がございまして、それから私どもの方でいろいろ聞いているところでも、設計業といいますか、その費用は、ほかの士といいますか、何とか士に比べて非常に低い額だというふうには聞いておるところでございます。

穀田委員 その程度ですかね。要するに、低いという程度だと。そんなことでしょうかね。

 私は、標準報酬の見直しをする背景というのはこういう実態があるからだという、もう少し背景説明をしないと、それでは週刊誌ネタをそこに持ってきているという程度の話にしかならぬじゃないですか。それでは余りお粗末と思いませんか。

榊政府参考人 今回、元請、下請の契約関係が安易になされているというようなこともございますし、それから近年の、例えばCADを使いましてですとか、設計をする際に周りのアセスメント的なような調査業務がどんどんふえているとか、そういったような業務の拡大というのを、実は二十七年前の告示でございますので、そういったものが反映されていないという実態が一つございます。

 それと、実は今の報酬の告示は、工場、倉庫とか、学校とか住宅といったような用途別で、かつ金額別に人日というような形で割り振っている形になっておりまして、ここの中にありますような、デザインをやるとするとどのぐらいかかるのか、計画にどのぐらいかかるか、構造にどのぐらいかかるか、設備にどのぐらいかかるかと、いわば建物の用途だけで分類していますので、その建物についての中身がわからない形になっているわけですね。

 そういったことで、標準的な業務量につきまして分野別に示したいということと、金額が一億円の工事ならこのぐらいの形というふうになっておりますので、そういったのもちょっとおかしいのではないか、むしろ床面積別に出した方がいいのではないかというふうに思っておりまして、そういった意味で、意匠、計画、構造、設備というような分野ごとに示す、それから、工事金額を延べ床というような形に変えたい。それから、設計業務みたいなところでいろいろな技術の進展を踏まえたようなことですとか、調査業務の増大といったような業務量がふえておりますので、その部分もやりたい。こういうことでございます。

穀田委員 今のを聞いていてわかったかと思うんですけれども、つまり、標準報酬という額があって、それ自身が守られていなくて収入がひどいということですわな。その標準報酬を見直そう、その際にこういう角度で見直したい、こういうことでしょう。そこをちゃんと言ってくれなんだら、あきまへんで。

 それはそのとおりなんだけれども、問題は、要するに、それ自身が、決められたのが七九年ですよね、それから二十数年たっているという問題もあるんだけれども、守られていないということがあるわけですよね。それさえも守られていないところに問題があるという実態を踏まえて、なおかつ変えよう、こういうことで理解してよろしいね。そういうことなんだと。

 そこで、見直しのための調査をやるということ、それは当然なんですけれども、実際は、では現場が、二十七年前に決めたものよりも実勢は低い、だからまた低くするということは絶対あってはならぬということだけまず言っておきたいと思うんです。

 そこで、今、報酬基準についてどういう視点から算定されているか、もう既にるるお話がありましたので、一言言っておきたいと思うんですけれども、私は、建築物の安全性を確保するために、十分な調査や技術力、能力の向上など、社会的責務を果たす上で必要な報酬基準という考え方は、しっかり立脚する必要があるということだけ提起しておきたいと思います。

 そこで、では実際に何が起こっているかについて少し最後にやりたいと思うんです。

 民間での報酬が基準を大きく下回っているというだけでは済まないわけですね。実は、そういうことが起こっているわけです。公共建築物において、設計監理が競争にさらされて、到底、人件費、経費が賄えない安値受注がふえている。公立病院の設計がわずか八千円程度。通常なら一千万円を超える設計報酬だけれども、こんな事態が起きている。いわゆるダンピング受注というのが起きています。

 まず、大臣に聞きたいと思うんですけれども、公共建築物の設計報酬が、到底採算に合わぬどころか、ただみたいな安値で受注される、こういう事態について問題ありと思いませんか。

冬柴国務大臣 問題ありでございます。

穀田委員 そのとおりなんです。問題ありなんです。

 こういう事態が実は、八千円という話をしましたら大臣は割と驚いた顔をされていましたけれども、現実あるんですよね。それは御存じですよね。

冬柴国務大臣 病院の建物の設計が八千円でできるとは到底思えませんので、驚きです。

穀田委員 本当に皆さん驚かれる話なんですね。正確に言えば八千三百何ぼという額なんですけれどもね。もちろん、八千円と言っちゃったらあれなんですけれども。これは、日刊建設工業新聞のところに例も出され、さらには週刊ダイヤモンドでも特集されている内容であります。

 そこで、そういう公共の建物が、この場合、今お話ししたかったのは、問題ありというわけですけれども、ダンピングの問題だと思うんですね。国交省では今ダンピングの問題についての対応をしているわけですが、その辺について一言だけ。では、局長。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 公共建築物の設計業務については、適正な価格を無視した著しい低価格な入札が行われるということは非常に問題があると考えておりまして、官庁営繕工事に関しましての設計の品質というのは、施設そのものの品質確保に重要な役割を果たすということも認識しておりまして、設計業務が適正な価格で契約されるよう努力してまいりたいと思っております。

穀田委員 問題は、どうやって努力するかということなんですよ。そんなこと、そうあっちゃならぬ、驚きだ、問題あり、こう言っているわけですから、そこでどうしたらこれを防ぐことができるかということですよね。あかんことだと、そこまではお互いわかっているんですよ。そして今私が言っているのは、これはダンピングの親方と同じだろう、まずいだろうと。まずいと言っているわけですよ。問題はそこからなんですよ。

 きょうの昼も、その点であったのは、公共建築物の設計が入札で行われるということからこういう事態が生まれているんじゃないかと。もちろん、先ほど、その前にもう早速いろいろ大臣は言ってはりますけれども、設計を入札にかける設計入札の仕組み自身に私は問題があると考えているんですね。金額の安さだけで競い合う入札は、安全性確保が必要な建物の設計監理にはそぐわないのではないかという点で、大臣の見解を求めたいと思います。

冬柴国務大臣 入札をするからには大体どれぐらいの値段が相当なのかということが、もちろん内々、これは国直轄の事業による入札とそれ以外の地方がやる場合とは違いますけれども、我々国がやる場合には、会計法という法律がありまして、入札をした場合に、一番低い価格で入札した人に落札をするということが規定されております。ただし、それだけの価格ではそれが履行が困難であるという場合には、その最低価格の人をはねのけて、次に安かった人に落札をしなさいというような規定がございます。これは競争入札の場合でございます。

 もう一つは、総合評価入札ということで、値段だけではなしに品質についても判断の基準にするというようなこともあります。

 それからもう一つは、ボンド制度、これはまだ一般的には導入されておりませんけれども、東北と近畿の整備局ではボンド制度も導入して、金融機関がその業者がその値段でできるのかどうかというようなことを審査して、入札参加以前にこういうことを排除できる、そういうダンピングは。そういういろいろな工夫を今しているところでございます。

 八千円というのは、これは何か地方の団体の病院のようですけれども、地方と国では若干違うところがあるんですけれども、国の発注する部分については、私が今申し述べたような基準で行われているところでございます。

穀田委員 週刊ダイヤモンドではこう書いています。「民間工事で設計料をたたかれるのは、官の影響力が大きい。民間企業は、過去の官庁発注工事の事例を基に”なぜ、安くできないか”と主張してくる。」だから、官のところでやっていることが大事な問題をはらんでいるんですね。

 しかも、それが、きょうの午前の参考人質疑であったように、やはり設計入札というのはまずいと。それは詳しくは、「公共建築の設計者選定方法の改善についての提言」ということで二〇〇三年に建築業協会や日本建築家協会などを初め五団体が出していまして、大体、「もののかたちが未だ見えない段階での知的生産行為を金額で決めることの不合理性が以前から指摘されてきました。」と、設計入札は知的生産行為を軽視したやり方だということなどを初め、意見を出しているんですね。

 国土交通省の調査では、件数にして約八五%の公共建設が設計入札で選定されているという現実ですよね。だから、国と地方は違うと言うんだけれども、そこでそういうものの改善のための意見として出ているのは、こういうことをやめるべきだということだと思うんですね。

 私は、そもそも安全性を金額で競い合って、安全性は安い方が高いなどということはあり得ない話だと思うんです。だから、金額の多寡でなくて、安全性の効果でこそ競うべき問題だと思っているんですね。したがって、この点についての是正をやはり国としても強力な形で図る必要があるんじゃないでしょうか。

冬柴国務大臣 国土交通省の、我が方の官庁営繕工事に関する設計業務につきましては、その品質を確保するために、建設省告示第一千二百六号というものに定められた報酬基準の考え方に基づいて適切な委託料を算定し、原則として、技術的能力の審査に基づくプロポーザル方式により設計者選定を行っているということでございまして、こういう基準に従えば八千三百円は絶対出てこないと思うんですね。そういうことから、国土交通省、国レベルではそういうことはありませんということを私は申し上げた次第でございます。

 今後、国が手本になるような変な契約はいたしませんので、どうぞよろしくお願いいたします。

穀田委員 国がやっていると言っているんじゃないですよ。こういう事例が公共工事で行われていると。

 そこで、大臣、今一千二百六号の話が出ましたけれども、それじゃ公共工事でこのことが保たれているかというアンケートを見ますと、そうじゃないんですよ。公共工事では、契約金額が告示による見積もりと比べて八割から六六%の水準だと回答したのが四割なんですね。だから、そんな何か、うちは大丈夫だなんて言えるような顔をしていたんじゃだめなんですよ。

 問題は、それ自身も守られていない、そしてそういうアンケートの結果が出ている、また、事実、ある区では病院の設計で八千円が出ている、こういう問題があってはならぬということのためにきっちりと指導をすべきであるということを言っているわけですよ。よろしいね、それは。

冬柴国務大臣 午前中からずっと言っているんですけれども、地方分権推進法が成立してから国と地方は対等、平等なんですね。したがって、国が、こうあるべしというようなことを命ずることはできないわけであります。しかしながら、常識外れなことをやられたら、我々の所管事項に関する限りは、そういうことについてはやめてほしいとかなんとかいう勧告はさせていただきたいと思います。

 それから、六〇%、八〇%というのは、競争入札する以上、これは我々が見積もった金額から若干下がるとか、それが六〇%を切るというようなことになれば先ほど言ったようにいかぬと思いますけれども、値段の差があるのは、何人かが競争するわけですから、それはあり得ると思いますので、よろしくお願いします。

穀田委員 それはよろしくできないですよ。だから、それは標準の六割、七割下がっていることはまずいという立場でやらなくちゃならないんですよ。そういう実態があることは事実だけれども、それを認めちゃならぬと言っているんですよ。

 その上で一言だけ言うと、やはり勧告できるわけですよ、こういうことについて。命にかかわる問題の設計や建築物をそんな安易な形でやっちゃならぬという立場を表明するということなんですよ。何か指導できないとか指導できるなんて言っているんじゃなくて、事は命にかかわる建設の問題についてそういう構えでやっちゃ、それはだめでっせ。お互いにそういう点はきっちりしましょう。

 終わります。

塩谷委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 最後ですから、確認の意味も含めて、最初に大臣にお伺いをしたいと思います。

 三点セットで構造計算偽装はなくなるかということについて最初にお伺いしたいと思うんです。

 さきの通常国会では、建築基準法、これはもうるる説明がありましたから内容は触れませんが、これを行って、今回は建築士法の改正をやろうと。聞くところによると、来年、これからもあるかもしれない、あったら困る、だから被害者が出た場合救済するために保険制度を検討して、できたら通常国会に出したいと。

 これは三点セットというふうに思っているんですが、保険については、余談になりますけれども、どうも余り、やり方によってはいろいろ問題が出てくるというような批判もあって、消費者金融が生命保険を掛けるのと同じような意味があるんじゃないか、ちょっと問題もあるぞという声も聞こえるんですが、いずれにしても、この三点セットが重要な法案の改正になっています。この三点セットでいけば、実は姉歯さんがやったような耐震構造偽装問題が解決できるというふうに国土交通省が多分お考えになって、法改正を出したというふうに思うんです。

 そこで、今回の事件、裁判などでいうと、どうも姉歯さんが個人的にやったというような風潮が大分強まっていて、そうお考えになっている人も少なくないと思うんですが、国土交通省として、この三点セットの法改正を出したということは、今度の問題についてどういうふうに総括をされているのか、何が基本的な原因であったのかということについて、改めて大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 やはり、その点について法律上独占権を与えられている設計士という人が、研さんを怠って、期待された能力がなくなっているんじゃないかということを疑われることがありました。

 もう一つは、設計、これは請負契約に当たりますけれども、設計契約を請け負った元請の設計事務所が、事務が、最近非常に建物が大型化しております、そういうことで、設計業務も、構造あるいは設備、意匠等、一人でやらずに多くの人がかかわってする。それで、一部を、例えば姉歯一級建築士事務所のようなところへ構造計算について下請に出したというようなことで、建築士としての責任感が非常に希薄になってしまっている。元請、下請、そしてそれに関与した多くの建築士がだれであったかということがはっきりしないというような部分、そしてまた、そういうものが建築士の使命感とかあるいは責任感というものを希薄にしてしまったのではないか。

 そういうところが、我々が驚くべき事件としてこの姉歯事件を受け取ったときに、探っていけば、建築士については今申し述べたような問題点があるという認識をしたわけでございます。

 そのほか、建築基準法等でもう一度再チェックできないかとか、いろいろなものはありましたけれども、お尋ねの、根本的な問題としては、そういうふうな建築士自体の使命感の欠如なり、あるいは責任感が希薄になっている、そういうところがあったと私は思います。

日森委員 そうすると、今度の建築士法の改正でかなり厳しくなるし、具体的な中身はもう触れませんけれども、この建築士法を改正することによって、姉歯事件のような問題はもう起きないという確信を持ってこの改正案を提出されているというふうに理解してよろしいんでしょうか。

冬柴国務大臣 そのとおりでございます。

日森委員 きょうの午前中の参考人の意見の中でも触れられていましたけれども、実は構造的な問題があるのではないかと。これも私だけではなくて各委員もお触れになっていましたが、単なる建築士個人の倫理観の欠如とかいうことが犯罪を引き起こしたということではなくて、もう少し構造的な問題があるのではないかというふうに我々も思ってきて、これはもう出ました重層的な構造の問題とか、あるいは、後で触れますが、建築士さんの報酬が余りにも低過ぎるという問題や、独立性が担保されないとか、さまざまな問題があってこういう問題が引き起こされてきた。

 私も知り合いの何人かの建築士さんに聞いてみました。今回の建築士法の改正というのは、姉歯問題が起ころうと起こるまいと、むしろ、もっと前にこういう格好で改正をしておくべき課題であったのではないかというふうにおっしゃっている方が何人もいらっしゃいました。遅きに失したのではないかということなんですよ。もともと、ずっとさかのぼってこういう制度を変えていれば、姉歯の問題は起きなかったかもしれないし、いや、それでも起きたかもしれませんが、そういう問題であって、事の本質とは違うのではないかという意見があったんですが、これについては何か御見解をお持ちでしょうか。

榊政府参考人 例えば高層建築物ですとか、実は非常にこの間の技術進歩がございまして、建築基準法の方も随分改正をしてまいりました。

 ただ、建築士法に関して申し上げますと、昭和二十五年に制定をいたしまして、後、三十二年、三十四年でしたか、部分修正はございましたけれども、抜本的な修正というのが実はなされてこなかったということも思っておりまして、そういった意味では、委員の御指摘も正しいというふうに感じておるところでございます。

日森委員 そこで、これも何度も出ておりますし、きょうの午前中の参考人の意見の中でも主張されていましたが、建築士法を抜本的に改正するということであれば、この建築士法の中に建築士の機能あるいは社会的責任ということを明示しなければいけないのではないかというふうに考えるわけです。

 今回の一部改正は、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士制度、それから、それに伴う講習、あるいは管理建築士の要件強化などが触れられているわけですが、こういうことだけで建築士の職能や社会的責任は今回の法改正の中でどれだけ明確にされたのか。あるいは、先ほど大臣がおっしゃいました、どうも責任感が欠如している、倫理観がない、姉歯のようなやつがいるんだ、こうおっしゃるんですが、そういう責任感の希薄さ、倫理観が欠如している、一部でしょうけれども、こういう問題は今度の建築士法の改正で解消できるんでしょうか。

 私も、全く評価しないわけじゃありません。一歩も二歩も前進をしたというふうに思いますが、しかし、現在の建築士法というのは明確に資格法ですよ、先ほど参考人の意見にもありましたけれども。大臣も法律家だから専門家でしょうけれども、今回、少しだけ頭を出したかなという感じはするんですが、しかし、今度の改正というのは、なぜ建築士が担うべき社会的役割、社会的責任等に関する理念をここで明示しなかったのかということについて、非常に残念に思っているんですよ。

 今回の改正案は、建築士は公益に奉仕する職能である、安全、快適、環境も含めて十分な住環境、住空間を確保していくんだという、いわば公益に奉仕する職能である、私の思いで言えばですね、そこにしっかり踏み込んだ法改正にしていくべきだったのではないかという面があるんです。これからも法改正を続けていきます、今回は応急的な改正ですということであれば、それはそれで理解ができないこともないんですが、これまた継続して検討されていかれるのかどうなのか。もし、いや、そうではないんだということであれば、なぜ必要ないのかということも含めて御答弁いただきたいと思います。

冬柴国務大臣 実は今回、建築士法、相当大がかりな改正をお願いいたしておりますが、前国会で一部改正を行ったところがあります。二条の二というところでございまして、その中に今御指摘になったような部分を、全体の建築士法の改正は前国会では間に合わないけれども、この部分はやはりやっておかなきゃいけないんだろうということで、今御指摘のようなことをここへ改正をしたということだと思います。

 内容は、何回も読んでいるんですけれども、その二条の二は、「建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。」という部分でございまして、今挙げられた部分の中で、例えば安全、安心とか環境に配慮するとか、それは書いてありませんけれども、その部分については、この業務に関する法令の中に、環境配慮とかいうものはたくさん建築基準の中にちりばめられておるわけでありまして、これに精通して設計業務をやっておれば、町並みも保存されるし、あるいは建物自身も、人生の大半を過ごすくつろぎの場である建物というものができ上がるのではないかというふうに私は思っているところでございます。

日森委員 その話はその程度にしたいと思いますが、ぜひ、建築士の皆さんが本当に自信、確信、それから社会的な評価もきちんと踏まえて仕事ができるような制度にするためにも、法がもう少し踏み込むべきではないかということだけは申し上げておきたいと思うんです。

 問題は、これも何度も問題になっていますが、報酬の問題なんです。

 これは、きょうの参考人の先生方も意見としておっしゃっていましたが、過剰な報酬低下が一般的な話になっておりまして、これは大臣も御存じのとおりだと思うんですが、原因はもう大臣も御承知のとおりだと思うんです。社会資本整備審議会の資料でいいますと、一級建築士の賃金水準は医師の半分、弁護士の四分の一、これはいいんですかね、よくわかりませんが、冬柴弁護士はどの程度もらっていたかよくわかりませんが、そんな数字が出てきているようです。

 これに関しては、先ほど大臣もおっしゃったとおり、一九七九年の告示一二〇六号で基準が一応示されているんですが、しかし、国土交通省として、今回、問題が噴出した分譲マンションの設計報酬、これをめぐって、この告示がどの程度きちんと活用されていたのか、実態把握はできているんでしょうか。もし把握をしていないとすると、異常に低い設計報酬でやられたようなことがあるとしたら問題だと思いますし、これは実態把握することが問題の本質にメスを入れるということになると思うんですが、そこはいかがでしょうか。

榊政府参考人 委員御指摘の、危険な分譲マンションの個別ケースにつきましての報酬基準の活用実態というのは、実は私ども把握はいたしておりません。

 しかしながら、建築士事務所におきます業務報酬の実態把握につきまして、実は本年の五月に建築士事務所に対しましてアンケート調査を行いました。若干、数は少ないというところはあるんですが、一応、実態調査を行ったところでございます。その中身は、設計業務報酬の算定基準、算定基準を標準日額としている場合の報酬基準を使っているかどうか、それから業務報酬の目安の提示状況はどうかといったようなことについて把握をいたしております。

 調査の結果でございますけれども、設計業務報酬につきまして、算定基準につきまして、標準日額によるものが三五・七%、料率設定によるものが三一・八%、その他の方法によるものが三二%。算定基準を標準日額としている場合には、五四・四%が告示一二〇六号の報酬基準を活用ということでございますので、三五・七に五四・四を掛けたのが実態かなという感じでございます。それから、業務報酬の目安の提示状況なんですが、実は、契約前にあらかじめ説明しているというのが五四・九%、事務所に提示しているというのが二・九%、提示していないというのが三二・三%というふうな実態になっておるところでございます。

日森委員 その数字は確かにそのとおりで、社会資本整備審議会の建築分科会基本制度部会というところが行ったアンケートのようなんですが、結局、先ほど大臣は、いや、うちはちゃんと基準があるんだ、七九年につくった基準があるからそんな怪しげな話はないんだ、国土交通省に限ってはないと自信持っておっしゃっていたようなんですが、しかし、実際、サンプルは少なかったにせよ、このアンケートの結果を見ると、告示の標準日額、これは全体の一九・四%ですよ。一九・四%。あとの八割はこの基準なんか、無視とは言わないけれども、ほとんど使っていないんですね。そういう実態が、サンプルは少なかったけれども、明らかになったということを今局長がおっしゃいました。

 これは、どういうふうにお考えで、どんな評価をされますでしょうか。

冬柴国務大臣 数は少ないといっても、三千七百八十事務所を対象に調査していますからそんなに少ないとも思いませんけれども、もちろん百万人いらっしゃるわけですから。

 これが使われているのは少ないんじゃないかということでおっしゃいましたけれども、私が申し上げたのは、国直轄でお願いしている問題についてはこういうものをきちっと見ておりますということを申し上げたわけでありまして、自由競争の民民の契約にどうなっているかというところまでは我々は調べられないわけです。しかし、参考にはしていただけると思います。

日森委員 国土交通省の話ではなくて、実際には八割が、国土交通省がせっかく御苦労して二十数年前につくった基準を活用していないんですよ。活用していないということは、ここにも、一級建築士の皆さんが、大多数はまじめな建築士さんですよ、この方々の報酬ががっと引き下げられている大きな要因にもなっているんじゃないかというふうに思うんですよ。ここは、僕は、しっかり点検、調査などもできるはずですから、やるべきではないかという思いがあります。

 一方、これは世界が違う話になるかもしれませんが、国土交通省が関与する補助金事業の建築設計料、これは工事費に対する料率で示しているわけでしょう。これで明示をしているわけですよ。

 例えば、市街地再開発事業等補助要領というのがあるそうです。これは住宅局長通達で、何代前かわかりませんが、昭和六十二年五月二十日に出されているんです。これでいうと、上限らしいですけれども、工事費五億円の場合は、基本設計料は一・九三%、実施設計料、これは工事監理費を含む、七・三四%、合計すると九・二七%。十億円の場合は合計で七・八%。一億円なら一三・九二%というふうに通達で示されているわけですよ。

 このように通達を使うことで、国交省は料率によって設計料を決めているということを考えると、今後の設計業務の報酬基準のあり方、先ほどいろいろ難しいお話されましたけれども、これについても、これを基準といいますか参考にした検討の方向というのが必要なのではないかというふうに私は思うのですが、それについてお答えをいただきたいと思います。

榊政府参考人 御指摘の市街地再開発事業におきます国庫補助についての設計料、率という形で決めておりますが、委員御指摘のように、補助金の上限を決めているという形の性格のものでございます。

 現行の報酬基準でございますけれども、これは、事務所における業務の適正化を担保するということと、建築主にとって委託する設計業務とか工事監理業務の報酬を決めるという際の目安ということを目的といたしておりますので、そもそも性格が異なるものだというふうに考えておるところであります。

 きょうの午前中の参考人質疑のときに参考人の方から申し上げていたと思いますが、実は、昭和五十年以前は、各建築士関係団体から報酬規程で設計料率というような形で決めてやっておりました。ところが、昭和五十年、公正取引委員会の方からこれを廃止するように勧告を受けまして、そのときの勧告は、設計料率を、料率みたいな形で決めるなというような勧告だったように伺っております。したがいまして、実は、その後、建築士関係の七団体の要望を受けまして、昭和五十四年に現行の報酬基準が定められたという経緯がございます。

 したがいまして、具体的な報酬額を定める方式みたいなイメージに、料率ということになるとなりますので、そういったような御指摘がまた出てきかねないというような懸念もございます。

 したがって、現在検討したいと思っていますのは、今回、業務量を示すというような現行の枠組みは維持しつつも、先ほど来申し上げているような、分野ごと、床面積ごと、それから増大したようなCADだとか、アセスメントといったような調査業務の拡大といったようなものを踏まえた上での見直しを行いたいというふうに思っているところでございます。

日森委員 公取の独禁法違反でだめになったという話は私が参考人に申し上げた話でございまして、参考人もそのとおりだと。承知の上で、そういう基準があるんだから、別の世界、ちょっと違う世界だけれども、あるから、少し参考にしつつ、根拠まではいかないかもしれないけれども、しかし、それを実際におやりになっているわけだから、参考にしつつ、何とか、建築士の皆さん方が本当に誇りを持って仕事ができる、そういう報酬基準というものをぜひ策定していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 次に、指定登録機関それから登録講習機関の指導監督体制ということについて、もう時間が余りありませんが、お伺いをしたいと思います。

 今回の改正で、中央指定登録機関それから都道府県の指定登録機関、これが指定をされて、建築士の登録、構造設計・設備設計一級建築士証を交付するために必要な講習機関、あるいは建築士事務所に属する建築士、構造設計・設備設計一級建築士が定期的に受講する講習機関等の大臣による登録が行われるというふうになっています。

 ところで、中央指定登録機関というのは当たり前な話ですが全国一つ、都道府県で四十七ということですが、他の機関でいうとかなりの数に上るだろうということが想定されます。国土交通省として、そんな明確な数字をつかんでいるということではないと思いますが、どの程度の規模の機関がどれぐらい登録されるというふうに予想されているのか。

 それから同時に、かなりの数になると、これに対する指導監督というのが大変厳しい仕事になると思うんですよ。時あたかも、公務員は五・数%減らせ減らせという、私は反対ですが、そういう声が大変強い時代になっていまして、そうすると、公がなかなか膨大な数の機関をきっちり監督指導していけないような状況になるんじゃないか。逆に言うと、この問題の一つの原因にもなった民間の指定確認機関の問題等も見てみると、本当にしっかりと指導監督体制は担保できるのかということを大変不安に思っています。

 これについて、二点になりますが、お答えいただきたいと思います。

榊政府参考人 御指摘のように、指定登録機関の方は一と四十七ということなんですが、登録講習機関の方は実は正直読めない状況になっております。ただ、私どもの方が思っていますのは、建築関係の団体や専門学校、一級建築士の予備校みたいな専門学校がございますが、そういったようなところから申請が出てくるんじゃないかというふうに思っております。

 実は、建築関係の団体に関して申し上げましたが、つい先ほども触れましたが、講習機関の代表者が建築関連事業の役職員でないことといったような制限とか、役員に占める建築関連事業者の割合が二分の一以下であることというのがありまして、実はこの関連の団体がストレートに出てくるのかなと。きょうも参考人の方が言っておられましたが、自分の近くに傘下のNPOをおつくりになってやりたいんだというようなことを申されておりましたけれども、そういったような形で、私どもを講習機関にというような形の登録申請が出てくるケースもあるというようなこともございまして、ちょっと、今の段階でこのぐらいを想定しているというのが言いかねる状況にあるわけでございます。

 それから、そういう意味で、指導監督というのは、先ほど申し上げましたような、株式会社ですと建築関連の事業者の人が半分以上持っていちゃだめだとか、そういった規定がございますので、そういったような監督規定なんかをきちっと見ながら、報告、立入検査、業務の適正の確保をきちっとやっていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

日森委員 その監督指導というのはしっかりやっていただきたいと思います。

 最後に、まだ質問項目たくさんあったんですが、改めて大臣の決意だけ聞きたいと思うんですが、構造計算偽装問題というのは、この法改正だけで解決をしたということにはならないし、とりわけ、一年を迎えて、被害者の方々の問題、これはもう解決にはまだまだほど遠い状態にある、こう言わなければならないと思うんです。

 私は、確かにほかの制度と比べると問題が多いという声があることは承知の上で、二重ローンの問題とか、そういう問題で大変苦しんでいる被害者の方がたくさんいらっしゃるということでは、特別立法なども検討しつつ問題の解決を図っていく必要があるのではないかとずっと主張してきたわけですが、それも含めて、この被害者に対する救済、それをおやりになる大臣の決意を改めてお聞かせいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 このような対処には誠心誠意当たっていきたいという決意であります。

 ただ、他の災害、震災も、阪神・淡路の十一年前のものから、新潟の中越地震もありました。竜巻被害もこの間ありました。そういう被害に対する問題と、やはり解決する場合に、私は誠心誠意やりたいけれども、そういうものとの比較ということも考えていかなきゃならないわけでありまして、私は、委員の今の御指摘を十分わきまえながら、誠心誠意できるだけのことはやらせていただきたいという決意を披瀝させていただきたいと思います。

日森委員 ありがとうございました。

 終わります。

塩谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 建築士法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、中野正志君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び国民新党・無所属の会の五会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。中野正志君。

中野(正)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 なお、お手元に配付してあります案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることとします。

    建築士法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。

 一 構造計算書偽装問題等により国民の間に建築物の安全性に対する不安と建築界への不信が広まっていることを踏まえ、本法の的確な運用がなされるよう、国民、関係者等への周知徹底並びに特定行政庁、建築士及び建築士事務所関係の団体等への指導助言に努め、構造計算書偽装問題等の再発防止に万全を期すこと。

 二 建築士は、建築物の設計、工事監理等の専門技術者として、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の安全性の確保及び質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない職責を負っていることにかんがみ、工事施工者等との適切な役割分担を踏まえ、その職責が全うされるよう本法の施行に万全を期すこと。

 三 建築士が自己研鑽を図るとともに、建築士事務所が適正な業務の実施を行い、専門資格者としての社会的使命と責任を果たすため、団体の加入率向上の取り組みを通じて、団体による自律的な監督体制が確立されるよう、関係団体等に対して、十分な指導助言を行うこと。

 四 建築設備設計・工事監理業務において重要な資格として運用されている「建設設備士」について、設備設計一級建築士制度のもとにおいても、その有効活用と関係規定の適切な運用が図られるよう、特定行政庁、建築士関係団体等への周知徹底を図ること。

 五 建築物の品質を確保するためには、工事監理業務の適正化を図ることが重要であることにかんがみ、建築主に提出される工事監理報告書の記載内容を充実すること等により、工事監理の実効性確保に努めること。

 六 建築士の業務報酬基準については、建築士が行う業務の実情を十分に考慮し、必要に応じ、見直しを行うこと。

 七 消費者及び発注者の保護と施工体制の適正を確保するため、技術者の配置や施工の体系等の施工体制に関する情報について、工事管理の過程で、現場において確認を徹底させるとともに、閲覧等を通じて、消費者及び発注者に対する開示が適切になされるよう指導に努めること。

 八 政府は、法附則第八条に基づき、この法律の施行後五年を経過した場合において、建築士の能力及び資質の向上の状況、設計及び工事監理業務の適正化の状況、消費者への情報開示の状況、建設工事の施工の適正化の状況等を踏まえ、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

以上であります。

塩谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩谷委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣冬柴鐵三君。

冬柴国務大臣 建築士法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を初め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表します。

 大変にありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

塩谷委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷委員長 次回は、来る十二月五日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十四分散会


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